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ヴェント「私の背中はアンタに預ける」 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/11(金) 08:02:57.99 ID:+oy27w/DO


スレ建て初めてです
物凄い緊張してます


※更新ペースは二〜三日に一回
最低一週間以内には必ず更新します

※原作設定、キャラ設定、もしかしたら違いが出て来るかもしれません
脳内変換、ご都合主義、よろしくお願いします

※地の文も下手くそ、キャラの掛け合いも下手くそ


他に質問がある場合は僕にまでどうぞ

では投下します
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荒木比奈「何百回目のプロポーズ」 @ 2020/03/30(月) 23:00:17.66 ID:nJ12rVXd0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1585576817/

【ゆるゆり】京子「悪い子は・・・がー!」 @ 2020/03/30(月) 22:28:31.72 ID:7XWkS4Le0
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【ミリマスSS】歌織「えっ!?自宅から動画配信ですか!?」 @ 2020/03/30(月) 21:34:19.90 ID:DDZM1RDH0
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高峯のあ「牛丼並……玉子とみそ汁もつけて」 @ 2020/03/30(月) 21:08:43.53 ID:pVyNxzTm0
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【安価】菜々「鷺沢文香の決闘講座2020ですか」【モバマス×遊戯王】 @ 2020/03/30(月) 10:36:07.35 ID:tmLylIZUO
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有栖川夏葉「選手宣誓」 @ 2020/03/30(月) 02:53:03.44 ID:d/1h7rEH0
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菜々「ジャスティスくんじゃないですか!!」ジャスティスマン「ウサミンッ!?」 @ 2020/03/30(月) 01:08:24.20 ID:bWxs4Q9i0
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2 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/11(金) 08:04:06.37 ID:+oy27w/DO

戦争が終結して一週間が経つ。双方の国も大分復旧が進み、元の日常が戻りつつある日の事。


「はぁ? フィアンマの生存を確認しろぉ?」


バチカン、聖ピエトロ大聖堂。静謐で神聖たる雰囲気にそぐわない、荒々しい言動が響く。
声の主は全身が真っ黄色でワンピースのような服装を身に纏う、中世ヨーロッパを連想させる女性。
彼女は“元”神の右席。「前方のヴェント」。


「別に確認しなくてもフィアンマならどっかでしぶとく生き延びてんでしょ? わざわざ考えなくても判る事じゃない?」


至極億劫そうに言い放つ。眉間を顰めるあたり、行く気は更々無いようだ。


「確認など建前に過ぎん。要は「連れ戻して来い」と言いたいのだろう」


返すのは荘厳なる声色。青を基調とした服装の男。屈強の肉体は布越しからも露呈していた。
彼は“元”神の右席。「後方のアックア」。


「それこそ変な話。何で私らなのよ? ローマ正教から抜け、神の右席からも外され、何処にも所属していない放浪者の魔術師に」
3 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/11(金) 08:05:06.59 ID:+oy27w/DO


堅っ苦しい文章が綴られた書類が送り付けられたのは、つい先日の事。

『自分本位なる行動で、数多くの損害損傷。命令は一人の少年が標的で、学園都市ではない。
加えて少年は今回の戦争に大きく貢献した模様。よって命令は元ローマ教皇の発言の下で破棄。
処罰は皆無とする代わり、神の右席は解散。ローマ正教の追放を此処に命ずる』

大凡の予想は出来ていた反面、随分と淡白してる事に肩透かしを食らっていたりするのが事実。
行き場を失い、各々が自由の身となったのは良いが、さしてする事も無い。

アックアはイギリスへ一時的に帰還。
フィアンマは戦争以来行方不明の状態。

一方の自分。帰る当ても無ければ、目標となる当ても無い。
何なら今直ぐ学園都市に侵入して、アレイスターの野郎をブチのめすのも有りだが、残念ながらそういう気分にはなれない。

そこへアックアからの急な呼び出し。来てみればフィアンマを連れ戻せときたもんだ。
呆れを通り越し、溜息すら出ない。ローマ正教を永久追放されて、今更何をしろと言うのか。


「適任が居らぬらしい。奴と対等に話し合える存在は我らぐらいであるからな」

「使い勝手もいいトコね」

「全くだ」


これには流石に嘆息を漏らす。
誰しも利用されて良くは思わないだろう。
4 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/11(金) 08:05:49.43 ID:+oy27w/DO
「私がそういうの性に合わないと判ってて言ってるのかしら?」

「しかし蔑ろにする訳にもいかん。仮にも元教皇からの依頼だ」

「……へぇ。新しい方のじゃないんだ? てっきりそっちばっかだと思ってたんだけど」

「両方からである。昇格された方は兎も角、元教皇は恩がある。それに……」


一度切る。吐息を挟んで呆れるような仕草を見せると、再度彼女を見据えて口を開く。


「フィアンマが単に姿をくらましてるとも思えん。またよからぬ計画を目論んでる可能性も否めない」

「成る程ね、一理ある。ここ最近色んな厄介が有ったから、当分は七面倒なコトは勘弁してもらいたいし……いいわ。乗ってアゲル」


楽しそうに笑みを浮かべ、ジャラリと舌に取り付けられた細い鎖が音を立てた。その先端には、唾液に濡れた見覚えのある小さな十字架。
5 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/11(金) 08:06:41.12 ID:+oy27w/DO


「―――『天罰術式』。復元したのであるか?」

「未完成よ。使用制限も限られてるから、いざという時殆ど使えない。そういうアンタこそどうするき?」


不躾に指差して尋ねる。

問われたアックアは、別段彼女の態度を意に介しないようで、戒めない様子。寧ろ質問の意味が解らないらしく、眉を顰めるばかり。
有り様を察したのか。ヴェントは自らの腰に手を当て、吐き捨てるように言う。


「『聖人』、『神の右席』。この二つの力を有していたアンタも、今では失って普通の人間。脱退したものの、私はまだ“神の火”を扱える。でもアンタは違う。
何らかの原因で戦闘する羽目になったらどうするつもり? それとも新しい術式でも組み立てちゃうのかしら」


アックアは得心したとばかりに頷く。だが、と呟く彼は身を翻してヴェントに背中を向けた。


「愚問であるな」

「……はぁ?」
6 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/11(金) 08:07:14.93 ID:+oy27w/DO



余りに予想外の回答に、彼女からは素っ頓狂な声が漏れる。
そんな状態に対してアックアは、不可解で占める彼女にそれ以上何も告げず、歩み出す。


「……」


唖然と立ち尽くす彼女を余所に、依然と歩み進めるアックア。
……だが、十メートル程離れた所で足を止め、顔だけヴェントへ振り返る。


「力を所有しなくとも『戦う理由』は消失せぬ。幾らでもあるさ、それこそ樹木の木の枝のようにな」


アックアは口元が僅かに緩んで笑みを浮かべ、戦争時を想起する。
7 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/11(金) 08:07:54.11 ID:+oy27w/DO
雪の世界。ロシアとエリザリーナ独立国同盟の国境から少しだけ離れた場所。
そこで迎え来る死を待っていた時。東洋人である“あの男”が突然やって来たのだ。


――うるせえっつってんだろうがよ!!


事前に自分が述べた全てを、引き裂くように男は否定した。


―――だったら……アンタを待ってる人はどうするんだよ。


この言葉を皮切りに、自分が僅かに止まってしまったのを今でも覚えている。


―――アンタの後ろには多くの人達がついてきてる。そういう人達はどうするんだよ!!


まるで説教をするような口頭。
上条当麻を彷彿させる男は、自身には存在しない強さを持ち合わせていた。


―――アンタが掲げる『戦う理由』ってのは、アンタを待つ人達の泣き顔を見て笑みを作るようなくだらねえモンなのかよ!!


走馬灯が駆け巡り、諦めの境地に達していた心境が覆す。まともに動かない身体を叱咤して奮え立たせ、アックアは生き延びる道を選ぶ。
壮年の過ぎない傭兵でしかなくなった彼だが、何か大切なモノを掴む決意をした瞬間だった。


「尤も戦闘に関して、逝去も敗北のつもりも皆無である。我が戦場に立つならば蹴散らすのみ、それだけだ」


捨て科白を吐き、ヴェントの応答も聞かないまま彼はその場を去る。
例え何か応えたとして、アックアは足を止めず、取り合わないだろう。彼はそういう男だ。
8 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/11(金) 08:08:51.77 ID:+oy27w/DO

一方のヴェントは去る様子を目で追うだけで、何も言葉を発しない。
アックアが居なくなった後も、暫く彼女は微動だにせず、凍結していた。音もしない場所で、ヴェントは視線を移し天窓を一点に見つめる。

天窓の縁には小鳥。空の長旅に疲れて休憩中なのだろうか。チュンチュンとさえずる鳴き声が窓越しにヴェントへ伝わる。


「……ったく」


ボソッと今日一番の重い溜息。
誰に語り掛ける訳でもなく、彼女は蟠りを晴らす手段を選ぶかのように漏らした。
彼女がアックアに対し何故応じなかったか。去り際のアックアに言葉を投げ掛けなかったか。

アックアが語った言動が―――あの忌々しい上条当麻に似ていて、重なってしまったから。

思念した瞬間、身の毛が弥立ち反吐が出た。おそらく今自分の顔を鏡で見たら、苦虫を噛み潰したような表情をしているだろう。
9 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/11(金) 08:10:23.17 ID:+oy27w/DO


「まるで病原菌ね……フィアンマも感染者だったりして」


止めよう、冗談に聞こえない。これ以上考えても気分を自ら悪くするだけだ。
思考を切り替えよう。フィアンマ捜索について……と、そこで彼女は気付いた。

些か混乱してきたので状況を整理する。先日アックアに呼び出されて、元ローマ教皇の依頼でフィアンマを連れ戻して来いとアックアから伝えられ、本題の路線が逸れて術式の話になり、アックアが先にこの場を去り……現在までの事柄を辿って再確認。一つの過程が抜けているのだ。―――ということは?


「肝心の手掛かりを訊き忘れてる……?」


彼女は慌てて身を翻して大聖堂の玄関へ駆ける。バン! と乱暴に扉を開け放ち周囲を見渡すが、目的の人物は当然の如く既に居なかった。

諦めたのか、ヴェントはがっくりと項垂れるように落胆。アックアとの通信手段は無い。途中で合流という手もあるが、その間にフィアンマが見付かっている可能性が高い。
結論として自分の足で手当たり次第、手掛かりを探していくしか無さそうだ。


「チッ……私は情報収集にゃ向いてないっつーの」


『自分本位なる行動』。

彼女はつい先日見た書類の中に、そう綴られていた文章を反芻する。
あながち間違っては無さそうだ。何だかそれも癪な気がするが。
10 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/11(金) 08:10:59.99 ID:+oy27w/DO


―――余談。


「そう言えばさ」

「む?」

「どうして場所をココに選んだの? 別にそこら辺にある飲食店でよくない?」

「……」

「もしかして騎士道精神とか鍛えすぎちゃって、そういうのには疎いとか? って、んな訳ないか。流石のアンタでも行きつけトコぐらい一つや二つ……」

「……」

「は? まさか図星?」

「……」

「ちょっと、何戦闘の構え取ってんのよ! アンタ仮にも元『神の右席』だった―――」

「ふんっ!!」

「危なっ!? ……イイわ。そっちがその気なら乗ってやろうじゃねえかあッ!!」

「うおおおおッ!!」

「凡人が私に勝てると思ってんじゃねえぞおおお!!」
11 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/11(金) 08:12:39.59 ID:+oy27w/DO
とりあえず投下終了です
この勢いだと書き溜めはすぐ無くなりますね…

続きは昼頃に
12 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/11(金) 08:27:56.54 ID:uOnR1RuAO
待ってたんだぜ?
13 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/11(金) 09:36:40.28 ID:ykhdrrjro
おつなんだぜ?
14 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/11(金) 10:37:12.80 ID:+NKtP5Ipo
乙だと言ってンだよォ三下がァ!!!!
15 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/11(金) 10:50:31.17 ID:gfchMNlc0
乙すぎるんだぜ?
俺得の予感なんだぜ?

あとアックアがイギリス戻ったってことは
ウィリアムはもう既婚者か
16 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/11(金) 12:02:09.25 ID:o+RoNcYAO
ヴィリアン=オルウェルか

胸が熱くなるな
17 :>>1です [sage]:2011/02/11(金) 12:48:33.93 ID:+oy27w/DO
ご飯食ってました

では投下しますね
18 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/11(金) 12:49:14.34 ID:+oy27w/DO


―――ロシア。現象管理縮小再現施設。


「ふっふふーんふっふふーんふっふっふーん♪」


やけに上機嫌な鼻歌が廊下に響く。紅茶を淹れたティーカップが二つ。トレイを両手で掴み、軽やかなステップを弾むも紅茶は零さないという偉業を成す。
真っ赤な修道服を身に包む女性。名はワシリーサ。


「サーシャちゃんと息抜きタイム。息抜きタ・イ・ムー♪」


向かう先はサーシャ=クロイツェフが勤しむ部屋。ワシリーサはタイミングを見計らって、紅茶を用意したのだ。

彼女らが所属する『殲滅白書』。半月程前に起きた戦争のさなか、サーシャは戦争の元凶に狙われ、ワシリーサは世界の広い範囲を敵に回す。……結構過激な数日間を送っていた。
戦争終結後。サーシャは兎も角、ワシリーサは計り知れない敵から狙われる“はずだった”。そう、はずだったのだ。
彼女が全て破った契約書のような書類については、なんと綺麗さっぱりお咎め無し。おそらく誰が裏で飛び回ったのだろうが、こちらとしては好都合。
代わりに生じた天井に届く程の始末書を出された時には嘆いたもの。
19 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/11(金) 12:50:01.20 ID:+oy27w/DO

閑話休題。

無事『殲滅白書』に帰還し、全てが戻りつつある日々。彼女は先刻立てた今日のスケジュールを振り返る。


(まずはサーシャちゃんと紅茶タイムで、満たされたサーシャちゃんのラヴリーなお腹をマッサージしてあげてー、そのまま抱擁で堪能した後は、サーシャちゃんのドキドキ着せ替えのタイムー。うふ、うふふ、うふふふふふふふ)


微笑みは次第に変態気質に満ちた笑みへと変貌していく。口元から涎を垂らしそうな勢いだ。
シスター達がワシリーサと擦れ違う度に脅えられるのは、言うまでも無いだろう。中にはトラウマさえ覚えたシスターも居たとか。

部屋前に到着し、ドアノブに触れるその瞬間、


「――だ――さ――よ」

「――と――い」


ピタッと凍結する。ワシリーサは首を斜めに傾けて疑念。
20 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/11(金) 12:50:53.92 ID:+oy27w/DO
耳に届いたのは声は二つ。片方は自分がよく知る人物の愛しい声だ。では、もう片方の女性の声は……?


(オッケー。冷静になれ私。この部屋からサーシャちゃんじゃない別の女が居て、サーシャちゃんと喋っていると……女?)


思考を素早く回転させる。彼女は自身に冷静になれと必死に訴えかけ、分析の途中で『女』というキーワードに刮目した。ワシリーサの見解はこうだ。

女が居る。
サーシャちゃんと会話中。
会話するほど仲が良い。
だがそれは私が居ない間。
私が居ると邪魔。
つまりサーシャちゃんを狙ってる。
女は泥棒猫。


(―――サーシャちゃんの貞操の危機っ!!!!)


女=サーシャを奪おうとする泥棒猫。と極論直結に至った彼女は、ご機嫌だった頃の笑顔とは打って変わって、鬼の形相へ。
鬼を討つべき桃太郎は、不幸な事に彼女の周りには一人も存在しなかったらしい。

本人的には、ヒロインを攫う悪役に怒りを覚え、退治すべく立ち上がる主人公のポジションであるのだが……端から見るとその見解が、手の平を返されるように覆る事を彼女は知らない。
21 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/11(金) 12:51:45.42 ID:+oy27w/DO


「サーシャちゃああん!! 私が来たからには安心だよー!!! 横から奪って行くよゴパァーっ!!!?」


扉を蹴破り、バターン!! と、つんざく轟音を響かせて室内に駆け込む……が。
突如としてワシリーサの顔面に金鎚が鈍い音と共に突き刺さった。しかし無傷である。痕さえ残らない。


「意味不明な言動は放っておいて第一の解答ですが、私にとって最も危険な存在は貴様だという事にさっさと気付けよクソ野郎」


冷淡な言葉をワシリーサに贈り付けたのは小柄な少女。サーシャ=クロイツェフである。
見に包むのは、赤いマントの下にインナーそのもののようなスケスケのスーツと黒いベルトで構成された、水着のような拘束服。
但しこれは彼女自身が、自ら望んで着てる訳では無いという事を覚えといて欲しい。


「あぁん、冷たいサーシャちゃんも可愛いー」

「第一の質問ですが、面倒くさいので出て行ってもらえませんか?」


腰をくねくねして頬を染める上司にサーシャは溜息をつく。
22 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/11(金) 12:54:16.46 ID:+oy27w/DO
話しにならないと感じたのか、彼女は身を翻して歩き出し、椅子に座って『客人』と対面する。


「第一の質問ですが、多少逸れましたが話を戻していいですか? 付け加えて補足しますと、先程と同じような答えを出されますと永遠とループする羽目に―――」

「手伝いなさい」

「……第二の質問ですが、せめてあなただけでも話を聞く常識人で居て下さい。私が疲れます」


困り果てる彼女を余所に、目の前の人物は構わない様子で自ら話を促す。


「別に良いじゃない。アンタどうせ暇でしょ。それとも、戦争の時の恩を仇で返すつもり?」

「う……だ、第一の解答ですが、それとこれとは話が別です。付け加えて解説しますと、私は暇ではありません。なので手伝う事は出来ません」

「私に否定形はない。だから手伝え」

「第二の解答ですが、それは何度も言うように、ただの横暴ですっ!!」


ガタッと身を乗り出して力説。全く意見を取り合わない彼女にサーシャは声を荒げる。
そこでワシリーサが二人の会話に乱入してきた。机の上に紅茶が入ったカップを二つ置き、


「あらあらぁ〜ん? 『神の右席』がサーシャちゃんに何の御用かしら?」


サーシャと同様に用意された椅子に腰を掛け、相対するのはヴェント。彼女は手足を組み、片目を瞑り淡々と対応していた。
突然割り込んで来たワシリーサに眉を顰めるも、変わらない調子で答える。


「“元”だ。今は何処にも所属しない流れ者の魔術師よ」

「その報告は受けてなかったわ。あのクソジジィめ……」

「第二の質問ですが、あなたが関わるとややこしくなるので、部屋の隅で黙っててくれませんか?」

「酷いっ!? サーシャちゃんは私よりこの女が良いっていうのーっ!!!?」

「第二の解答ですが、断言が可能なほど比べるまでもありません。寧ろ価値があるのですか?」


彼女はさらりと刺々しい言葉を放ち、置かれたカップを一つ手に取って口の中へ流す。
23 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/11(金) 12:54:44.62 ID:+oy27w/DO
そして愕然な衝撃的発言をされたワシリーサは、文字通り『拗ねた』。


「ちくしょぉぉぉ……サーシャちゃんは私だけのモノなのに、あんな女に穢されて……」


膝を抱え、ブツブツと止む事無く一頻りに念仏を唱えるように呟く上司の姿があったという。

ヴェントはそれを尻目に一言。


「いいのか?」

「第三の解答ですが、問題ありません。どうせ長くは保たないでしょう」


それより、とサーシャは畳み掛ける。
24 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/11(金) 12:55:54.38 ID:+oy27w/DO


「第三の質問ですが、そもそも何を手伝えと言うのですか? 何の説明も無しに単刀直入ばかりでは理解が追い付きません。事によっては場合も異なりますが」


言い終わってから再度、紅茶を口に含む。理由によっては断れなくもない、そう明言した。

ヴェントにしたら今回の件は確実に内輪の話になるため、余り事実を公言するのは控え目にしていたのだが、……仕方無いと腹を括る。


「捜索よ。赤い男の」

「?」


遠回しに気付かせようとしたのが間違いだったらしい。サーシャは全くピンと来てない様子。
心の中で大きく舌打ちをし、


「フィアンマ。『右方のフィアンマ』の事しかないでしょ」


今度こそピタリと、カップを傾けていたサーシャの手が停止し、ワシリーサまでもが念仏を止めた。
25 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/11(金) 13:01:37.04 ID:+oy27w/DO
投下終了です

さてはて、続きは夜ですかね
26 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/11(金) 14:34:51.12 ID:gfchMNlc0

まあこのへんはもう見た感じだけど
27 :>>1です [sage]:2011/02/11(金) 16:31:02.96 ID:+oy27w/DO
何か早く投下したい!という気持ちが抑えきれないんで今までの分、投下しちゃいます

こういう時の時間って遅いですから、待ちきれなくて

初見の方、すいません
>>1のワガママにより総合で書いた分、投下させていただきます
28 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/11(金) 16:32:11.32 ID:+oy27w/DO


場が凍り付く。それもそうだろう。
フィアンマは今回起きた戦争の首謀者。表沙汰には名が挙がって無いが、多くの魔術師から殺害の対象となっているのは間違いない。
しかもその大半がロシア成教の魔術師である。そしてココはロシア成教の中枢、場を間違えばヴェントさえ狙われかねない。


「……第四の解答ですが、状況を把握しました。詳細の続きをどうぞ」

「だから手伝え」

「ですからっ!! 何度もっ!! 言ってるじゃないですかっ!!」

「チッ、せっかちなヤツめ。騒ぐと誰か来るわよ?」


ギリギリと強く握り拳を作り、彼女は融通の利かないヴェントに頭を悩ます。
どうして自分の周りは話を聞かない人ばかりなのだろうか、これも運命なのか。サーシャは苦悩の種が尽きない。
29 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/11(金) 16:32:47.46 ID:+oy27w/DO


「一応言っとくけど、私はアイツを助けようとか守りたいとか、そんな下らない概念で動いてる訳じゃないから。
アイツがどうなろうと知ったこっちゃないし、どうでもイイしね」


彼女は本当に心の奥底からどうでもいいと吐き捨てた。
組んだ手足も表情も変わらない。元々仲間意識が無かったからなのか、真実は彼女にしか判らない。


「第四の質問ですが、では何故捜索を? あなたがそこまで言うんです。相応な理由があるでしょう?」

「アンタはホントに間抜けね」


呆れて盛大に溜息をつく。対するサーシャはムッと顔をしかめる。
……後ろの方で何やら上司が悶絶して騒いでいるが、この際無視。
30 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/11(金) 16:33:21.29 ID:+oy27w/DO


「仮にも元『神の右席』。私の存在を関知、尚且つ戦争の元凶と面識のある人間……こう考えたら簡単でしょ?」

「元ローマ教皇。あのクソジジィか」

「ビンゴ♪」


的を射たワシリーサに指を差し、口元を吊り上げて嫌な笑みを浮かべた。


「正確には『連れ戻せ』って依頼らしいけどね。それにあのクソ野郎が意味も無く姿を晦ます何て気色悪い。また面倒事を起こされたら堪ったもんじゃないわ」


勘弁被る、と首を横に振った彼女は肩を竦める。
31 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/11(金) 16:34:07.02 ID:+oy27w/DO
ヴェントの言葉にサーシャは頷き、


「第五の解答ですが、事情は理解しました。しかし協力は困難が立ちはだかります。
更に補足しますと、今ロシアは学園都市からの攻撃を受け、復旧に必死です。私達も例外ではありません。
その状況中で私だけ戦争の元凶を捜索というのは、必ずしも上への許可が必須。事が悪い方向に行けば私は罰則が下ります。
第六の質問ですが、その上、同行の人物が元だとしてもローマ正教に属すると知れば、あなたまで危険が及びますよ?」
32 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/11(金) 16:34:53.40 ID:+oy27w/DO


ロシア・ローマの仲は、戦争以降どちらかと言えば悪くなった。何故こんな曖昧な表現について掻い摘んで説明すると、上の人間だけが今回の戦争を引き摺っているのだ。
大の大人が責任はそっちだそっちだのと、お互い罪を擦り付け合いを議論している。七つの美徳や七つの大罪なんて何処へやら。
だからこそ、サーシャは懸念するのだ。過去形にしても元ローマ正教のヴェント。上が黙っちゃいないだろう。今こうして会話しているだけで十分危険極まるのだが……。
ヴェントは「大人の事情」とやらに嘆息を漏らす。


「……はぁ、面倒ね。結局無駄足だったってわけか」

「第六の解答ですが、もしフィアンマ捜索に当たるなら有力な情報があります」

「それを先に言えよ私の気分が無駄に落ちたじゃない」

「……第七の解答ですが、疲れてきたので、何だか段々どうでもよくなってきました」
33 :>>1です。 [sage]:2011/02/11(金) 16:37:30.22 ID:+oy27w/DO


一旦区切りが入りまーす
34 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/11(金) 16:38:08.35 ID:+oy27w/DO


ヴェントは山の雪道を歩いていた。
吹雪は吹いてないものの、現在並木道は小降りの雪がしんしんと降り、山全体を白銀の世界に染める。
気温にしてマイナス三度程度。正直彼女は極寒の中で歩く格好ではない軽装。それでも寒さを微塵も感じないのは術式の効果か。


「…………」


ザッ、ザッと真っ白に彩られた雪道に足跡をつけながら目標地を目指す。
目を配らせれば所々の樹木が抉られていたり、薙ぎ倒されている。
明らかに自然の猛威で作り出されたモノでは無い。人の手によって現象されたモノだ。考えなくても判断出来る、戦争時の人害だろう。
その有り様をヴェントは些か目を細めるだけで気に留めない。彼女は先刻ロシアでの件を振り返る。
35 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/11(金) 16:38:42.52 ID:+oy27w/DO



『第七の質問ですが、最近イギリス清教の一部の動向が活発なのを知っていますか?』

『イギリス清教が?』

『はい。と言っても一部だけですが。補足説明しますと、東洋の聖人が先導を切ってロシアの雪山を中心に活動を行っているようです』

『それがどうしたって言うのよ? 有力どころかゴミクズのように要らない―――』






『上条当麻を、ご存じですか』
36 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/11(金) 16:39:32.93 ID:+oy27w/DO


「…………」


一瞬でも、言葉が詰まらせてしまったのを明確に覚えている。
上条当麻という名前が挙がるだけで敏感に反応を示す自分が居るのも自覚している。それは決して、好意とか友好的な物ではない。対照的の『悪意』だ。

別に憎んでる訳では無い。憤りを感じてる訳でも、怨恨という訳でも無い。
ただ、気に食わないだけ。



―――死に掛けてたお前の弟は、お姉ちゃんを助けてくださいって、どんな気持ちで言ったんだよ!!



偽善立てて綺麗事を並べた言動も、



―――自分がどんな状況にいるのか全部知った上で、それでもそいつはお前を助けたいって願ったんじゃねえのか!!



狼狽しないその心も、



―――そんな人間が、科学に対して復讐して欲しいなんて言うと思ってんのかよ!



屈服しない精神も、



―――お前の幸せを誰よりも願っていた人間がッ!!



怯む事のないその姿勢がただ、



―――少しだけお前を救ってやる。もう一度やり直して来い、この大馬鹿野郎!!



……気に食わない。
37 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/11(金) 16:40:22.33 ID:+oy27w/DO


「……ケッ」


彼女は自身の行為に唾を吐く。
実に不愉快だ。反吐が出る。


(何であのガキに掻き乱されなきゃならないワケ……クソが!!)


ガシガシと乱暴に頭を掻いて、歯軋りをする。
上条当麻という名が挙がるだけで乱される自分が鬱陶しい。
何故行くトコ行くトコその名前が必ず有るのか、そう考えるだけで煩わしい。


「纏わり付くハエみたいね……」


天を仰いで嘆息する。
彼女は再びサーシャとの会話を回顧する。
38 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/11(金) 16:42:10.57 ID:+oy27w/DO


『第八の解答ですが、あの少年もフィアンマ同様に姿を消しています。
付け加えて補足しますと、少年が姿を消す直前に『神の力(ガブリエル)』が観測されました』

『……大体読めてきたわよ。つまりあのガキが全部持って行ったってワケね』

『そう結果情報を受けています。補足説明しますと、少年が消失に伴い東洋の聖人率いる一部が慌ただしく、捜索に励んでいる事が確認されています』

『ってか、それがどうしたってのよ?』

『第九の解答ですが、簡潔に言いますと、協力を要請するならば彼らが適任かと』

『…………』

『……? 何か?』

『いや、……そうね、考えておくわ』
39 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/11(金) 16:42:53.10 ID:+oy27w/DO


使い勝手の良い人員が出るのは甚だしく構わない。聖人という強大な怪物も大いに結構。

しかしだ。

自分は元ローマ正教で、元『神の右席』。闇の奥底に潜み、そのキーワードすら一握りしか知られない存在。
そのような自分と対峙した時、快く受け入れるだろうか? 答えは否。
自分が仮定として、もし上条当麻が目の前に現れたら、迷いも躊躇も逡巡も無く、寸分の動作も与えないまま突っ込んで行き得物を振るうだろうから。


(接触は避けた方がいいわね。すこぶる面倒くさそうだ。
……ってコトは結局、私一人でフィアンマの野郎を捜さなきゃならないんじゃない)


彼女は、ここで一つの失態を犯していた。
思考に没頭していた所為で、周りに配る注意を失せていたのだ。
40 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/11(金) 16:44:35.78 ID:+oy27w/DO


結果、後頭部に―――コツンと固い何か当たる。同時にカチャッと軋む音。
ヴェントは進めていた歩みを止める。後頭部に当たる感受は消えない。

ここは雪山の奥。見渡す限り白銀に染まる樹木並木道。
静寂なるこの場所に人気なんて皆無。獣の気配すら絶無。

山奥。そう、ここは山の奥。
しからば答えは一つに辿り着く。


「ひひ、ひひひひ。奇抜な姉ちゃんだ。逃すには勿体無ぇが、こちとら生活が係ってんだ……持ってる物は全部置いてってもらおうか!!」


―――山賊だ。
41 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/11(金) 16:46:26.85 ID:+oy27w/DO


「…………」


ヴェントは視線を巡らせる。
背後の声に呼応するように樹木の陰から一人、二人、三人……。
数えるのが面倒になる程、続々と仲間であろう山賊が姿を現す。見事に極数秒で彼女を中心に取り囲んだ。
それぞれ山賊が両手に抱えるのは、遠くの獲物を狙う時に用いる、標準サークル付きのライフル。


「ひひ、ハハハッ!! 余計な抵抗はしない方が得策だぜ〜? その瞬間、姉ちゃん頭がボーンだぁ!!」


後頭部に当て続けているのは、おそらく周りの山賊と同じ系統の物だろう。
ライフル、又は小型の拳銃。若しくはハッタリか。


「オラどうした!! さっさとしやがれ!! さもねぇと身包み剥ぐぞォッ!!」


ここまでは山賊も完璧だろう。
全て予定通り、一寸の狂いも無いはずだ。『ここまで』は。
42 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/11(金) 16:46:55.33 ID:+oy27w/DO


「……クク」

「あぁん?」


彼らの誤算は二つ。


「アッハハハハハハ!!」

「な、なんだ……!?」


一つは、彼女が元であれ、『神の右席』である事。


「アンタら最っ高……くくっ。
はーあっ、久し振りにこんな笑ったわ。そうね、ここは発散しておいた方が良さそうだ」


二つ目は、


「上等ね。誰に向かって舐めた口効いてんだ?」
43 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/11(金) 16:47:44.61 ID:+oy27w/DO







―――彼女は今、非常に恐ろしいくらい、機嫌が悪い事。
44 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/11(金) 16:48:25.36 ID:+oy27w/DO


バタバタバタバタバタッ!! と。
突如として、彼女の背後に居る男以外全員が、力を失ったように倒れていく。
当然、男は理解が追い付けるはずも無く、狼狽するばかり。


「お、おいっ!? どど、どうしたテメェら!!? 何が起きて―――」

「範囲を限定させてもらったわ。使用制限もあるから節約しないとね」


彼女の手には、何時の間にか全長一メートルを越すハンマーが握られていた。
普段のヴェントならば問答無用で全員気絶させ、転がった人間を跨いで足を進めていただろう。
しかし、今は機嫌が物凄く悪い。故、彼女にとっては足枷すらならないのだ。
45 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/11(金) 16:49:32.81 ID:+oy27w/DO


「それに、私も遊びたいじゃない?」


ゴシャッ!! と鈍い音が、男の手首と得物から響く。
男が呻き声を漏らす隙も与えないまま、男の腹部と顔面がベコッと、……決して人間が鳴ってはならない音が木霊する。


「がァァァああああああああああッッ!!!??」


ボールを蹴った時のように、彼は綺麗な放射線を描いて十メートル以上吹き飛んだ。
幸いな事に地上は雪が積もってクッションになっている。地面に叩き付けられる事は無かった。
それでも致命傷なのは間違いない。
思考回路が上手く働かない男は、何が起きたか見当も付かない。
一瞬だ。一瞬で立場が逆転したのだ。


「あがっ……ぁがふ……?」


話す言葉すら儘ならない有り様。
鼻はへし折れ、顎が粉々に砕かれた状態で喋れというのも酷な話だが。
46 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/11(金) 16:51:09.52 ID:+oy27w/DO


「おやおや、大の大人が何とだらしない。露骨にダラダラ血を垂らしてんじゃないわよ」


頭上から声。男にとってはもはや絶望にしか聞こえないだろう。
まるで死神の吐息のようだ。吐く一言一言が、彼を確実に窮地に追い詰める。


「大丈夫、殺しはしないわ」


その言葉に彼は過剰に反応する。見上げてヴェントを目視。
彼女は遊び道具を見つけたかのように、嘲笑っていた。


「殺したらつまらないでしょ。
せっかく狩人と獲物が逆転したんだ。私を楽しませてよ?」


ゆっくりとハンマーを振り翳す。
それを成す意味を、回転が遅い頭でも男は早急に理解する。


「―――ッッ!!!!」


声とは程遠い、奇声を上げながら男は逃げていく。
彼も人間だ。生き延びたいのだろう。
47 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/11(金) 16:51:37.31 ID:+oy27w/DO


「……ふん」


彼女は尻尾巻いて逃げていく男を尻目に興が削がれたのか、踵を返す。
普段通りの澄ました表情に戻り、何事も無かったかのように歩み出した。


(甘くなったな……私も)


自分に敵意を向け敵対したはずなのにワザと逃してる当たり、アックアとフィアンマに「誰かさんの影響を受けているんじゃないの」と、人の事を言える立場じゃ無くなった。


「最悪……」


そこには心底嫌そうに呟くも、足は止めないヴェントの姿が在ったと云う。
48 :>>1でございます [sage]:2011/02/11(金) 16:58:36.03 ID:+oy27w/DO
っしゃあ!
総合の分しゅーりょー!

さあて、いよいよ書き溜めが無くなって参りましたよっ

でも小説って良いよね、うん
独り善がりの自己満足に過ぎないけど、書いてて楽しい


次はちょびっと科学サイドです
投下時間は22時ぐらいですかね
49 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/11(金) 17:22:39.58 ID:+NKtP5Ipo
乙ー
けっこうこうして見ると多いね
50 :>>1ですの [sage]:2011/02/11(金) 21:58:50.35 ID:+oy27w/DO
さて、投下しちゃいますね

かなりオリジナル要素含むので、ご注意を
51 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/11(金) 21:59:42.41 ID:+oy27w/DO


―――学園都市。窓のないビル。


「部屋」……というのも言い難い広大な空間にはドアや階段、エレベーターと通路すら無い。
存在するのは、ただ一つだけ。
中央に床から天井まで繋って聳え立つ、培養液で満たされた巨大なビーカー。
中に浮かぶのは、男にも女にも大人にも子供にも聖人にも囚人にも見える……『人間』。

『人間』の名はアレイスター・クロウリー。

彼と相対する影が存在した。
黄金の輝きを放つ髪。
肢体を包む白い布の装束。
全てが異質、名は『エイワス』。


「…………」

「ふふ、面白い事になっているな?」


彼らの前方の空間に立体映像が、二つ映し出されている。
52 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/11(金) 22:00:29.61 ID:+oy27w/DO
片は三人の集団、片は四人のグループ。

三人の映像はファミレス。
黙々と口内に肉を放り込む『一方通行』。
お子様ランチのハンバーグを口一杯に頬張る『打ち止め』。
日替わりランチを食すが、時折一方通行に毒を吐く『番外個体』。

四人の映像は何処かの家。
何度も床に頭を叩き付けて土下座する『浜面仕上』。
手足を組み、鬼の形相で浜面を見下ろす『麦野沈利』。
両膝を立て軽蔑な目線を送る『絹旗最愛』。
絹旗の隣で紙パックのジュースを飲む『滝壺理后』。
53 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/11(金) 22:02:00.88 ID:+oy27w/DO


「一方通行の暗部を卒業。浜面仕上の学園都市へ帰還。更には幻想殺しの消失。
……見事に君のプランとやらには無い手順じゃないか?」


エイワスは薄く微笑む。
対するアレイスターは目を瞑り、


「……あなたの言う通り、これは私の計画するプランには無い。完全なる予定外だ」


表情を変えず言う。
その様子にエイワスは笑みを濃くする。


「ふむ。あっさりと肯定する所、存外に期待していいのかな?」

「あなたの期待に沿えるかは危ぶむが、大層な事態が起きて予定外が生じているんだ。
―――こちらも『予定外のモノ』を出す他ないだろう?」

「ほう、垣根帝督でも復活させる気かね?」

「いや」


シュンと。この空間に新たな影が現出した。
54 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/11(金) 22:03:17.18 ID:+oy27w/DO
扉が無ければ出入り口さえ無い場所だ。大能力者(レベル4)の『空間移動』や『座標移動』が居なければ入る事すら出来ない空間。

そこに、一人の人間が侵入する。


「……これはこれは、実に興味深い結果が起きそうだ」


エイワスは顎に指を添える。
その佇まいが、楽しみで仕方無いと語っていた。

カツ、カツ、と小気味の良い音を鳴らして近付く影は、次第に姿を現す。
55 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/11(金) 22:03:59.62 ID:+oy27w/DO

身に包むのは何の変哲も無いとある高校の制服。シャツの上に学ランを羽織り、黒いズボンにスニーカー。唯一、首から上は仮面によって隠されていた。
視界を遮断しないように左目の部分だけ、羽の形に穿つ白い仮面。中央には太い黒字で円を描いて『0』の数字。





そして―――“ツンツンヘアー”の髪。
56 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/11(金) 22:05:13.17 ID:+oy27w/DO


「目覚めたばかりだとは思うが……調子はどうかな?」


閉じた瞳を開け、アレイスターは姿を現した人間に尋ねる。
暫く間があった後、人間は自らの手の平を見つめ、ゆっくりと拳を作って再び開く。


「……無問題。体の不具合は確認されない。正常だと思われる」

「そうか。ならば、早速仕事だ」


空間に浮かぶ映像は、人間の目の前へ移動。
そこには相も変わらず肉を貪る『一方通行』の姿。
57 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/11(金) 22:06:22.46 ID:+oy27w/DO


「名は一方通行と言う。彼を殺害する。それだけでいい」

「手段は?」


“何処までが許容範囲?”の短縮。
アレイスターは笑みを浮かべ、


「君に任せる。月並みな方法を取ってもらって構わないさ。例えば……」


次に映し出されたのは、お子様ランチを食べ終えたらしく、一方通行に縋り付く『打ち止め』の姿。
更にもう一つ。こちらはまだ食べ終えてなく、意地の悪い笑顔を見せて一方通行に毒を放つ『番外個体』の姿。


「―――彼女らを人質に取るとかね。用いるかどうかは君の判断に委ねよう」
58 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/11(金) 22:06:56.52 ID:+oy27w/DO

「了解した。任務内容を繰り返す。
『目標コード、一方通行。達成条件、一方通行の殺害。成し遂げるための手段は、状況に合わせて適切に処理。困難が生じた場合、月並みに人質を優先』。……これでいいか?」

「構わない」


皮切りに人間の姿が消える。
あたかも最初から何も無かったように跡を残さず。

今まで口を閉ざしていたエイワスが、ボソッと独り言を呟く。


「――――」


吐息だと思わせる程、口を動かさず小さく呟いた。
アレイスターでさえ気付かなかったそれは、本人にしか判らない。
59 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/11(金) 22:09:32.58 ID:+oy27w/DO
投下終了と
科学の方も織り交ぜていく予定なので

次は再びヴェントさん目線です
60 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/11(金) 23:06:05.85 ID:DkIQMMuDO
乙!
61 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/12(土) 00:58:22.23 ID:GBpAZ7fj0
乙なんだよ!
62 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/12(土) 01:41:05.60 ID:hVCfROeKo

おもしろいな
63 :>>1でございますよ :2011/02/12(土) 19:49:53.82 ID:uGgtFTwDO
投下しますね

今回は色々と崩壊してます

後半部分が疲れてきて、雑になってるかも…
64 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/12(土) 19:50:41.58 ID:uGgtFTwDO


ヴェントは頭を抑えて思念する。―――どうしてこうなってしまったんだろうか?―――と。


「五和ーっ!! 落ち着くのよなーっ!!」

「離じて下ざい建宮ざあぁん!!!!」

「あいつが行方不明になって悲しいのは同意するが、自殺は駄目なのよーっ!!」

「上条ざんが居ない世界で、私が生きる価値なんて無いんでずううぅぅぅぅ!!!!」

「まだ死んだとは決まっとらーん!!」

「上条ざあ゛ぁ〜ん!!!!」


木の枝から吊した縄で、自らの首を絞めようと典型的な自殺を謀る五和。
顔面はぐしゃぐしゃに崩れ、大粒の涙をボロボロと零すそんな彼女も恋する乙女。
今にも首を吊って死のうとする彼女を羽交い締めにして、必死に食い止めようとするのは建宮斎字。


「…………」


目の前の光景に呆れて物も言えない。
多方面から視点を変えても、ヴェントにはコントにしか見えないからだ。
本人達は至って真面目なんだろうが……。



―――それは数十分程前に遡る。
65 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/12(土) 19:51:16.36 ID:uGgtFTwDO


少し考慮すれば判る事だった。
あれだけ騒いだのだ。人気が無いからって、意味も無く声を張り上げて笑ったりしてたら気付くだろう。
サーシャも言っていたではないか。―――最近ロシアの雪山で東洋の聖人率いるイギリス清教の一団が活発に行動している、と。結果、


「あなたは……っ!?」

「……?」


視界に入るのは黒い修道服。

三つ編みをした赤い髪の少女。丈の短いスカートに三十センチくらいの厚底サンダル(チョピン)。

その背後には更に修道服が二つ。
警戒心バリバリでこちらを睨むのは、猫目で背が標準より些か高い少女。先頭に立つ少女と同様に丈の短いスカート。
彼女を盾にビクビクして寄り添うのは、猫背で背が低い少女。二人とは対照的にロングスカートだ。

ヴェントは彼女らの存在を見た事も聞いた事もある。
ローマ正教を抜け、今ではイギリス清教の傘下に入った二五十名のシスター部隊。確かこういう名だったはずだ。


「アニェーゼ部隊……」

「『神の右席』……ッ!!」
66 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/12(土) 19:52:02.53 ID:uGgtFTwDO


アニェーゼ=サンクティスは牙を向く。『蓮の杖』を展開させ、敵意を剥き出しにしていた。
目の前の怪物がどれほど危険かを熟知するからこその行動。……当然、勝てる見込みや勝機を掴めるはずが無い事も把握している。

対するヴェント。これが困ったもので、彼女は露骨に牙を向くアニェーゼに対抗して、戦闘意識を活発化させて撃退するつもりなど、更々無い。
理由? そんな物は一言に尽きる。


(面倒くさいわね……)


別に戦闘がという訳では無い。
ただ純粋に相手にするのが面倒なだけ。

何だったら裏切り者や大罪人などと、罵ったり嗾ける事すら造作に無い。
以前までの彼女ならばそうしていただろう。比喩無きに五臓六腑を圧砕していた。以前までは。

但し今は違う。甘くなったし、面倒くさがりになった。
厄介事は御免被るし、なるべく関わりたくない。平和ボケもいいトコだと自分でも思う。
先刻の山賊共の場合は、偶然機嫌が悪い時に現れたので適当にあしらったが、今は発散したので別に機嫌も悪くない。
67 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/12(土) 19:53:00.80 ID:uGgtFTwDO

さて、どう対処すべきか。
『天罰術式』を発動させても良いが、使用制限の方も気になる。
依然としてお互い停止状態。あちらは敵意剥き出しで、今にも飛びかかって来そうな勢いだ。
このまま現状維持で、誰かが横槍が入るのを待つという手段も良いかもしれない。
実際状況は悪化していな―――いや、前言撤回しよう。状況は悪化した。


「どうしちまいました? 『神の右席』とあろう御方がのんびりと。まさか増援を呼んでないと思いで? ハッ、クソ食らえやがれってんです」


私服を纏う多数の老若男女。
各々の武器を構え、矛先をヴェントへ向ける。―――「天草式」だ。


「チッ……」


いよいよ『天罰術式』を使う羽目になり兼ねない事態に陥った。
どうやら黙ったままでも状況はエスカレーター式に自動で急降下していくらしい。


「あなたが何故ココに居やがるとか、こんな所で何をするつもりとか、知ったこっちゃねえですけど」


アニェーゼは『蓮の杖』の先端をヴェントに向け、宣告する。


「―――あの少年の捜索を邪魔しやがるってんなら、例え『神の右席』だろうと容赦しねえです」


シスター三人と天草式を含む全員が、一斉に彼女へ飛びかかる寸前、





「待つのよな!!」





勢いを引き裂くように、押し留める声が響く。
68 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/12(土) 19:54:22.68 ID:uGgtFTwDO
結果全員が静止して、背後を振り返る。
目立つのは黒光りするクワガタのような髪をした男。建宮斎字だ。


「全くお前らは、あいつを捜すのに集中しすぎなのよ。体調管理がなってない所為で気が立ってるのよな。ほら、武器を下ろせっ!!」


建宮が怒鳴ると、大人しく武器を下ろしていく。
全員が仕舞うのを確認した後、天草式のメンバーを掻き分けて進んで行き、ヴェントの前に立つ。


「元『神の右席』。前方のヴェントでいいのよな?」

「……」


眉間を顰める彼女は、言葉も発しなければ頷きもしない。
警戒をというより、何の用だ? と問い掛ける佇まいだった。

建宮は肩を竦め、


「連絡は承っているのよ。ロシア成教の『サーシャ=クロイツェフ』から、じきに我々の下へある人物の捜索を要請しに来る、と」

「……余計な事を」

「そんな事は無いのよな。我々も恩人を捜している身。目標の人物は違えど、道のりは同じなのよ」

「アンタらが私と行動して享受する得は? 寧ろ損しかしないと思うけどね」

「んなもん関係無いのよな」


間髪を容れず、彼はきっぱりと言い切った。
69 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/12(土) 19:54:55.93 ID:uGgtFTwDO


「損や得なんて必要無いのよ。困っている人が居るならば救いの手を差し伸べる、それが我らが掲げるモンなのよな」

「はぁ……呆れた」


本当に心底呆れる。
ただのお人好しではないか。
目も当てられない程の重症だ。

でも、


「……勘違いはしないでよ。あくまで利害関係に過ぎないから。
私は勝手に行動させてもらうし、抜ける時は自己の判断で抜けるし、どっかの魔術師と戦闘になっても助太刀はしないから。
私は私に降り懸かる火の粉を振り払う。それだけよ」

「構わないのよな」


―――それも良い気がしてきた。
70 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/12(土) 19:55:53.35 ID:uGgtFTwDO


「教皇代理っ!! 大変っす!!」


雪道の奥から、小柄の少年が慌てた様子で走ってくる。
建宮は振り返り、


「どうしたのよな?」

「“また”っすよ!!」


呼吸を整え、一言。端から聞いたら全く判らない。
拘わらず、瞬時に建宮は把握する。


「またかーっ!! 俺は先に戻るから、誰か案内してやるのよなー!!」


全速力で走り、奥に消えていく。
ヴェントが状況の置いてけぼり食らっていると、


「え、と……。勘違いをしちまったようです。すいませんでした」


呆然とする彼女に近付くのはアニェーゼ。見れば頭を下げていた。
アニェーゼに倣って、ルチアとアンジェレネが同様に頭を下げる。

ヴェントは至極面倒くさそうにシッシッとアッチ行けと言わんばかりに手首を二回払う。


「気にしちゃあ無いわよ。敵意なんて浴びれ慣れてる。今更気にするようなタチじゃないし」


それより、と続け、


「さっきのアレ、なに?」

「……あー、何て言いますか」


苦笑を浮かべ、視線を漂わせてルチアとアンジェレネを見る。


「……私達に振らないで下さいシスター・アニェーゼ」

「え、ええと……」


振られた二人の反応も曖昧。
それほど言い難い事なのだろうか? ヴェントは些か思考を巡らすが、幾ら考えようと解るはずもないと判断したのか、頭を振って歩き出す。


「行けば判るでしょ。案内しなさい」




―――そして、現在に至る。
71 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/12(土) 19:57:03.04 ID:uGgtFTwDO


「…………」


確かに理解した。迅速に判った。
同時に抱いた感想は、下らないの一言。
しかも、あれだけ騒いでいたのにも拘わらず、都合良く耳に届いたらしく、更にヒートアップ。
その時に聞こえてきた会話の中身はこのようなもの。

『私の恋なんて下らないモノだったんでずよーっ!!!!』
『う、うおおおぉぉぉっ!!? 五和の力が何時もより三倍くらいに跳ね上がったのよなー!!!? ぶほぉっ!?』
『教皇代理ーっ!!!!』

……どうしろと?

自分は彼らみたいにバカ騒ぎするスキルは身に付いていない。って言うかキャラじゃない。
ヴェントがこの有り様の対応に困っていると、


「紅茶でございますよー」

「……」


コトっと、紅茶が入ったコップがテーブルに置かれた。
視線を移せば、これまた見覚えがある黒い修道服のシスター。
『法の書』を解読したため、ローマ正教から追われる羽目になってしまった女性。


「オルソラ=アクィナスか」

「あら、私をご存じなのでございますか?」
72 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/12(土) 19:57:57.78 ID:uGgtFTwDO

「『法の書』。このキーワードで知らないやつは居ないでしょ」

「そうでございましたかっ。私はオルソラ=アクィナスと申すのでございますよ」

「は? いや、名前は知ってるわよ」

「『法の書』でございますか。では、あなた様はローマ正教の方でございましょうか?」

「…………」

「? どうなさいました?」


拙い。非常に拙い。
今まででダントツに拙い。

これは最上級に面倒くさい人物と関わってしまったようだ。
名前と顔を関知しただけで、性格や口調の詳細情報は判らなかったが、……まさかこれ程とは。

よし、何か理由を付けてこの場から離脱しよう。このままでは耐えられない。


(何か……)


彼女は縋る思いで目を配らせる。
73 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/12(土) 19:58:28.61 ID:uGgtFTwDO

未だに騒ぐ五和と建宮、天草式複数。
デザートに手を伸ばそうとしてルチアに頬を引っ張られているアンジェレネ。
アニェーゼは何やらずっと写真を眺めていて、何故か恍惚に浸っていた。

全員を見渡してヴェントは思う。


(どれに転がり込んでも碌なコトにならなさそうね……)


マトモな人間は存在しないのかと嘆く。
と、そこでオルソラがヴェントと同じように辺りを見渡す。


「そういえば、神裂さんが見当たらないのでございます」

「神裂……? あぁ、聖人か」

「はい。建宮さん達には女教皇様(プリエステス)と呼ばれていますが……自室でございましょうか?」


もう一往復して、小首を傾げる。

自室、おそらくそこら中に有るテントのどれかだろう。
74 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/12(土) 19:59:02.36 ID:uGgtFTwDO
好機! と逃げ道を見つけたヴェントは勢い良く立ち上がる。


「私が見に行く。丁度暇だったし、色々聞きたいコトもあるからね」

「あっ、そうでございますか? なら、神裂さんにそろそろご飯でございますと、伝言をお願い出来ますか?」

「イイわよ。だからどのテントか言いなさい」

「あちらの一番奥でございますよ」


ヴェントはテントを確認して、少し早いスピードで奥に歩いて行く。
彼女にしたら苦痛で堪らなかったのだろう。


(聖人ねぇ。アックアしか知らないけど、まぁココに居る連中の中で一番マシでしょ)


漸く普通の人間と情報交換出来ると考えただけで、気持ちが晴れていく気がする。
彼らはキャラが濃すぎるのだ。
相手にするだけで結構疲れる。
75 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/12(土) 19:59:47.68 ID:uGgtFTwDO


そんなこんなでテント前に辿り着く。
呼び掛けも無しで堂々と入ると、






「かかか、上条当麻ー? おおお帰りなさいですよ☆」






「――――」


ヴェントは、時が止まった感覚を覚えた。
目の前に居るのは間違い無く聖人の神裂火織その人。

等身大の鏡を前に立つ彼女は、何やらポーズを決めていた。
左手を腰に、右手は人差し指と中指を立てて目元に。片目を瞑り、引き吊った笑顔を放つ。
今にも『キラッ』と響きそうな状態。

問題はその格好。露出しまくった胸元と、透けまくったスカート。
ある人物はこの衣装をこう述べるだろう。
76 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/12(土) 20:00:56.65 ID:uGgtFTwDO











「堕天使エロメイドだにゃー!!」と。
77 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/12(土) 20:01:46.03 ID:uGgtFTwDO


「はっ」

「……」


鏡越しでバッチリと視線が交差した。
長い長い間、沈黙が訪れる。

口が動かないと察したヴェントは―――無言で退室。
78 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/12(土) 20:02:17.36 ID:uGgtFTwDO
そこへ神裂が飛びかかった。


「ちちちょ、ちょぉっ!? ちょっとちょっと待って下さいっ!!!!」

「趣味は人それぞれだって言うしね。別に気にしなくてイイわよ?」

「じゃ、じゃあ! どうして入り口を開けてくれないんですかっ!!!?」

「私は一瞬で理解したのよ。関わりたくないって」

「弁明を!! どうかお願いしますから弁明を!! これにはちゃんとした理由があるんですよっ!!!!」

「理解したら私までそっちの領域に蝕まされそうだから、遠慮しとくわ」

「土御門おおおおおッ!!!! あなたが!! あなたが余計な事を唆すからああああッ!!!!」


東洋の聖人、神裂火織。
ヴェントの中では一番マトモではない人間に指定された。
79 :>>1だァ :2011/02/12(土) 20:05:56.63 ID:uGgtFTwDO
投下終了でございますよー

今回長いので疲れました
まぁ書いてて楽しかったのでいいや

そして色々とすいません
80 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/12(土) 20:33:32.50 ID:gCaOYLTKo
おっつ
81 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/12(土) 20:41:49.64 ID:xwWmLTmx0
>>1乙術式
82 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/12(土) 22:22:15.77 ID:xK8FobtY0
>>1
おつおつ
おもしろいわ
83 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/13(日) 00:14:22.72 ID:zCPJJY7Go
乙!

神裂と五和が平常運転で建宮の何胃痛がマッハだな
>>1はトリップつけないの?
84 :>>1です。と>>1は懇切丁寧に説明します :2011/02/13(日) 01:10:56.20 ID:euIP+LMDO

トリップって何ですか……?
無知ですみませんorz
85 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/13(日) 01:17:07.08 ID:5tt3HHJwo
名前欄に”◆〜〜”って英数字並んでるの見たことない?
2chとかで本人って証明するためのもんだけど、別にいらないから気にすることないよ
86 :>>1だよ、って>>1は>>1は答えてみたり! :2011/02/13(日) 01:37:58.60 ID:euIP+LMDO
あー!あれですか!

必要無いならそれでいいですけど…

あ、多数のコメントありがとうございますっ
コメントや読者があってこその書き手なので、歓喜極まりないです、はい
87 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/13(日) 03:17:36.99 ID:1lyl10wAO

そんなにキャラ壊れてないよ!
とっても面白かった!!
88 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/13(日) 03:23:06.23 ID:9W4EUUDm0
乙!
ところで、アニェーゼが見てる写真って何?上条さん?
89 :>>1じゃん! :2011/02/13(日) 16:32:27.55 ID:euIP+LMDO
>>88さん、あれは恐らく上条さんです
彼女の言動で各自判断を

今日は多分更新できませんねー
執筆中ですけど、用事があったんであまり書いてません
投稿しても限りなく短いですorz
90 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/13(日) 19:57:04.31 ID:VQN7FQ7K0
更新についてはそこまで気にしなくてもいいと思う

むしろ速いほうだから
91 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/15(火) 00:57:30.32 ID:fuvl3U8H0
 乙!!
キャラがほんと原作通りで凄いなあ……
天草式が平常運転で思いっきり吹いた
 続き待ってます!!
92 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/15(火) 02:24:43.49 ID:cnInVjaw0
>1乙!
これは久しぶりに面白いSSに巡り合えた。しばらく楽しめそうです。
93 :>>1なのよな :2011/02/15(火) 09:03:34.72 ID:P2/0f+SDO
帰ってきました>>1です
さて、投下しますよっ

今回は学園都市ですね
ちょっぴりシリアス入り

そして誰かさん達の会話に地の文がないーわーわわわわ
仕様ですのでご安心を
94 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/15(火) 09:04:07.48 ID:P2/0f+SDO



―――学園都市。



御坂美琴は何時ものルートで、常盤台に向かって歩行していた。
ルートと言うのは、“あの馬鹿”が必ず通る道の事。だが、日常になってしまったあの馬鹿に声を掛ける事も、当分は無くなってしまっている。

彼女は推し量る。戦争時、上条当麻は確かに居た。この目でしっかりと目撃した。
しかし、戦争が集結して半月が経とうとした今でも、彼は帰って来ない。


(あの時……アイツが拒んだ理由は、絶対に有るはず)


過去を振り返れ。
そして従来の経験を生かすんだ。
95 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/15(火) 09:04:39.07 ID:P2/0f+SDO
彼のあの瞳は、よく見て来た瞳。

例えば8月21日の“絶対能力進化実験”の時。
例えば9月14日の“残骸”事件の時。
例えば9月30日の“0930”事件の時。
例えば記憶喪失を打ち明けたあの時。

全て同じ瞳をしていた。
理由について詳しくは知らない。
彼は語ってくれなかったから。
きっと真実は自分が想像しているモノより、遥かに凌駕するモノだろう。
それでも、彼がその瞳を持つ理由は、何かしら決意を示して行動に移す時分。
だからあの時、彼が自分の手を掴まず、首を振ったのはそういう意味合いが込められているに違いない。

―――まだやり残した事がある、と。
96 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/15(火) 09:05:24.85 ID:P2/0f+SDO


「あんの馬鹿……」


彼女は葛藤に苦悩。
もし、この仮説が正解だったとする。確かに彼の言えない事情や複雑な事柄も踏まえて、ズカズカと割り込むのは御門違いなのかもしれない。











―――そうであっても、彼の役に立ちたいと思うのは、我が儘なのだろうか?






―――お節介だとしても、彼の背負う荷を軽くさせたいと思うのは、自分勝手だろうか?
97 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/15(火) 09:06:14.41 ID:P2/0f+SDO


「……よしっ、もう一度捜すか」


悩んでたって仕方無い。
何も行動に移さないのは性に合わない。自分がやれる範囲の事は全てしよう。
上条当麻の“バンク”上には『帰省中』とされているが、そんな訳が無い。
捜そう。例え学園都市を敵に回す事になっても。
矢張り、恋を自覚した乙女は何でも出来るのだ。

だが、そんな思考も中断される。何故なら、


「―――っ!?」


目の前に、見覚えのある背格好。
指定の制服で、黒髪のツンツン頭。
あの後ろ姿を見間違えるはずがない。
98 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/15(火) 09:06:57.36 ID:P2/0f+SDO











―――上条当麻だ。
99 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/15(火) 09:08:10.23 ID:P2/0f+SDO


「な、んで……っ!!?」


彼女は言葉が詰まる。
行方不明になっている上条当麻が何故ココに居るのか。
様々な感情があり、色々な疑問が混ざり合って縺れる中。
前を歩く『上条当麻』が止まった。

ビクッと体が怖じ気ついた。
何故かは判らない。本能的に彼女は畏怖する自分に気付く。
だが、彼に脅えたのはコレが初めてではない。


―――じゃあ、本気出してもいいんかよ?


昔、夏休みに入った直後の頃。
御坂美琴は初めて、上条当麻に恐怖を抱いた瞬間。
あの雰囲気と全く同じ。底が見えない穴に食い潰される感覚。
100 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/15(火) 09:09:09.22 ID:P2/0f+SDO


「…………」


不意に、『上条当麻』がこちらに振り向く。
一瞬、御坂美琴は安心を覚えた。

と言うのも、彼の顔面は仮面で覆われていたから。
上条当麻という人物は装飾系を身に付ける事を好まない。いや、興味が無いのだろう。
仮装の案も有るが、流石に無い。
結論として、目の前に居る人間は『上条当麻』ではなくなった。


「アンタ……誰?」


こめかみに冷や汗が一滴垂れるも、彼女は目の前の人間に問う。
感覚は初めて妹達(シスターズ)と出会った時を反芻。
101 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/15(火) 09:10:01.29 ID:P2/0f+SDO


「学園都市第三位、『超電磁砲』。御坂美琴か」

「……?」


美琴は疑問を覚えて、眉間を顰めた。
人間が放った声がオカシイのだ。何とか聞き取れるものの、不協和音になって耳に届く。
仮面越しだからといって、こんな声にはならない。まるで人間ではないような……、


「残念だが、目標は『一方通行』の殺害。『超電磁砲』ではない」

「―――っ」


一方通行の名が出た。疑問だった声の不協和音とか、瞬時にどうでもよくなった。
102 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/15(火) 09:10:58.99 ID:P2/0f+SDO
ドッと背中に比べ物にならない程の汗が噴き出す。脳裏に焼き付いた絶対な恐怖。

そんな化け物を『殺害』と発言。
美琴は止まらずには居られない。


「あ、アンタ判って言ってんの!? アイツの能力―――」

「勿論。心得ている」


遮って、当然のように言い放った。


「対処法は既成済み。加えて一方通行は現在、能力に制限が生じている。問題は皆無」

「制限って……?」

「知らないのか?」


次の瞬間、御坂美琴は事態を覆すセリフを耳にする。
103 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/15(火) 09:12:32.71 ID:P2/0f+SDO


「一方通行は検体番号20001号を救出の代償として、演算能力を消失。8月31日の出来事だ」

「―――」

「詳細情報は自身で。『超電磁砲』ならば造作に無い事だろう」

「っ!! ちょ、待ちなさいよ!!」


言葉を待たずして、人間は姿を消す。空間移動を使用したみたいに。

御坂美琴は困惑していた。
聞き慣れないキーワードが、頭の中で駆け巡る。
20001号? 8月31日の事? 演算能力を消失? ―――一方通行が救出?
訳が判らない。しかし一つ判る。
あの馬鹿の事もそうだが、どうやら学園都市でも自分のあずかり知らぬ所で、まだまだ深い闇や暗躍があるようだ。


「…………」


彼女は踵を返す。上条当麻の捜索も大事だが、予定を変更。
学校も今日は欠席だ。代わりに向かう場所がある。―――10032号、通称御坂妹が居る病院だ。
104 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/15(火) 09:13:14.06 ID:P2/0f+SDO




―――とあるコンビニ。
105 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/15(火) 09:14:19.54 ID:P2/0f+SDO


「これが欲しい! ってミサカはミサカは懇願してみたり!」

「却下。もっと年相応なモンを選びやがれ」


間髪を容れずピシャリと放った。

一方通行が普段通り珈琲をカゴに入れていた時、打ち止め(ラストオーダー)が持って来た漫画。
隅のロゴには『新連載! 姉妹二人が男を争うドロドロの三角関係!?』という物。
承諾を得られないのは言わずもがな。
106 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/15(火) 09:15:45.14 ID:P2/0f+SDO


「ケチーっ!! ってミサカはミサカは叫んでみたりー!!」


再び漫画コーナーに戻っていく。
彼は一度溜息を吐く。


(『姉妹二人が男を襲う』って、俺に対しての皮肉かよ……)


最近の彼は、悩みの種が絶賛増加中なので困る。

姉妹に当て嵌るのは『番外個体』と『打ち止め』以外何者でも無いだろう。
何故か番外個体をライバル視して、対抗心を勝手に燃やし続けるのは大して問題じゃない。
便乗して番外個体が直接的過ぎる面倒くさい行動を移すのが問題なのだ。
そう、例えば、


「じゃあミサカは年相応だから問題無いでしょ?」
107 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/15(火) 09:16:36.54 ID:P2/0f+SDO


入れ替わりにやって来たのはニヤニヤとした表情を浮かべる話題に挙がった番外個体。
打ち止めとは違って、手には雑誌が握られていた。……年齢確認(R18)をされる方の。

一方通行は僅かに舌打ちし、


「もっと却下だボケ。どォせテメェの私利私欲のために使う訳じゃねェンだろォが」

「半分正解で半分ハズレ。ミサカの私欲はあなたを困らせる事だし、でも確かにミサカがコレを使う訳じゃない。だけどこうしてるだけで―――」

「な、何してるのーっ!? ってミサカはミサカは驚愕してみたり!!」


何時の間にか寄って来ていた打ち止めが、喚声を上げた。
顔を真っ赤にして、雑誌を指差す。
108 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/15(火) 09:18:09.12 ID:P2/0f+SDO


「あああ、あなた達はそこまで発展しているの!!? ってミサカはミサカは体の差で敗北を実感じてみたりっ」

「ンな訳ねェだろ。ちったァ頭使え」

「だ、だって昨日は一緒に寝てたじゃない!! ってミサカはミサカは事後の予測を立ててみたりぃっ!!」

「バカか。あれは俺が寝てる間に、コイツが了解も無く入って来たに決まってンじゃねェか。
そこを付け狙ったよォなタイミングで、オマエが朝早く部屋に侵入したンだろ」

「昨晩は凄かったよっ、ミサカ何度も達しちゃった♪」

「た、たたたたたたたたた、たぁーーーっ!!!!!!!?」

「テメェらマジで黙れ」
109 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/15(火) 09:19:16.98 ID:P2/0f+SDO


ヒクヒクと眉を吊り上げる一方通行。
若干だが眉間のシワが増えたような気もする。

こんなやり取りが毎日。
番外個体がその気が有るような言動で打ち止めを唆し、一方通行に憤慨する小さな少女。
全く身に覚えが無い事ばかり呟いて嗾けるのだから、彼からしたら迷惑極まりない。
それでも近頃は漸く彼も勉強して、「面倒だから放っておく」手段を用いるようになった。

取り合わない形で、一方通行は「もォ何も買ってやらン」と吐き捨て、まだ言い合っている二人を放置してレジに向かう。
110 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/15(火) 09:20:16.55 ID:P2/0f+SDO

カゴを台の上に置くその刹那、









『一方通行。聞こえているかな?』









ピタリと。カゴを持つ手が止まる。
耳にではない。脳に直接語りかけてきている。

しかも能力じゃない。そういう次元の話ではないのだ。
忌々しくも、一方通行はこの声を聞いた事がある。だからこそ判る。
111 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/15(火) 09:20:56.52 ID:P2/0f+SDO


「ど、どうしました……?」


店員が怖々と尋ねた。
一方通行は我に返り、無言でカゴを置く。
オドオドしながら店員はテキパキ仕事をこなす中、一方通行は心中で呟く。


『なンの用だ、“エイワス”』
112 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/15(火) 09:23:41.38 ID:P2/0f+SDO

『理解が速くて助かる。今回はそう時間も無いものでな』

『いいからさっさと言え』

『なに、このままだと一方的な結果で結末を向かえそうなのでね。それでは面白く無い』

『抽象的過ぎンだよ。要点を言っていきやがれ』

『そこからか。全てを言うのは面倒だ。掻い摘めば君は“負ける”』


一方通行は、怪訝そうに目を細めた。


『……へェ。またテメェとやり合ってボッコボコにブチのめされるってかァ?』

『ほう、君ならばここで激昂すると推測していたのだが、……ロシアで成長でもしたか』

『ンなこたァどォでもいい。テメェじゃなけりゃ誰だ。上の連中が造った新ネタか?』

『いや、寧ろ逆だ。それは兎も角、まぁ案ずるな。私のように物理的に適わない相手ではない。勝てる見込みは存在する』

『……なンで俺の方を持つ。テメェに何の利益が有るってンだ』

『言っただろう? 平行線しか見えない道は興味が持てない。ならば多少なりに道をねじ曲げて、答えを判らなくする方が一興というものだ』

『命令か?』

『助言だ。尤も受け入れるかは君次第だがね』
113 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/15(火) 09:25:34.98 ID:P2/0f+SDO


彼は盛大に溜息を吐く。


『何をしろってンだ。話によって受け入れるか決めよォじゃねェか』

『君の側に番外個体と打ち止めが居るだろう? 彼女らを夜に出歩かせない事だ』

『……オイ、どォいう事だ』

『しからば君の勝率は愕然と上がるだろう。ま、それでも限り無く低い訳だが』

『オイ!! どォいう事だっつってンだ!!』

『どういう事かどうかは実際に体験してみなければ判らない事さ。しかし、彼女らを危険に及ぼしたくないのなら、自宅待機を釘を差しておくの―――』


言葉は最後まで続かない。“時間”とやらが来たのか、どうやら途絶えたようだ。
彼は大きく舌打ちをする。その際に店員がビクッと震えたが、どうでもいい。
114 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/15(火) 09:27:29.21 ID:P2/0f+SDO


(ココは温和しく従うべきか?)


もしエイワスの言葉が本当ならば二人は必ず家から出させない。その話が真実ならばの話だが……。
だが仮に嘘だとして、エイワスが得するような事は何もない。
結局、一方通行は信用する他に道は無いのである。


(……いざとなりゃァ俺が側に居てやればいいか?)








―――後に彼は思い知る事になる。その選択が、悲劇を生むことに。







「そんなに悔しいんだったら誘ってみれば? 案外受け入れてくれるかもね♪」

「え、えーっ!!!? って、み、みしゃかはみしゃかは……っ!!」

「…………やっぱ放置は悪化の原因なるかァ?」


教育に悩む一方通行であった。
115 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/15(火) 09:30:03.87 ID:P2/0f+SDO
投下終了です
今日も忙しいので次の投下は明日か明後日になりますね

質問があるならどしどしどうぞー
116 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/15(火) 09:31:54.21 ID:PWNA3Q0AO
もつもつ
面白かった
117 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/15(火) 16:29:21.07 ID:XJQKBxXU0
面白くなってきましたのぉ〜
118 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/15(火) 17:16:43.98 ID:fuvl3U8H0
 これは……一方通行頑張れ!!!
119 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/16(水) 01:15:32.23 ID:7Bm/2JQno
続きみたい
120 :>>1ぜよ! :2011/02/17(木) 00:27:25.67 ID:A/uIhSDDO
書けましたので帰って参りました>>1です

と、その前に風呂やら犬の散歩を済ませてきます
121 :>>1だにゃー! :2011/02/17(木) 01:24:59.51 ID:A/uIhSDDO
さて、投下いたします

今回は短いです
そして、地の文が難しい!

あ、今回も自己勝手な設定ですので
122 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/17(木) 01:25:59.13 ID:A/uIhSDDO


「我々が捜索した範囲は上条当麻が消失した北極海を含み、上条当麻と行動を共にしたレッサーという魔術師の情報を基にロシアの山道を手当たり次第、といった所です。
捜索メンバーは私が率いる『天草式』。元アニェーゼ部隊から三名。後、オルソラもですね」

「……あ? 禁書目録は一緒じゃないワケ?」

「インデックスは療養のため同行はしていません。本人は凄く行きたがっていたんですが、ね……」


神裂は微笑む。妹が我が儘を言った時に姉が笑みを見せる表情に酷似していた。
彼女の笑みを理解したヴェントの脳裏に、ほんの数秒だけ映像がよぎる。
123 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/17(木) 01:26:55.51 ID:A/uIhSDDO



それはまだ幼い頃の話で。



今ではもう取り戻せない記憶で。



生涯で唯一輝いてる時間で。









――――お姉ちゃんっ。









ヴェントは僅かに目を細め、眉間を顰めた。
124 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/17(木) 01:27:52.71 ID:A/uIhSDDO


「……」


仄かに憂いを帯びた表情の真意は、神裂には判らない。彼女のそれは無意識かもしれないし、有意識かもしれない。
彼女の胸中は彼女本人にしか理解出来ないモノ。しかし、神裂はただ一つだけ感じ取れるモノは有った。……ヴェントは何かしら背負っている事。
125 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/17(木) 01:28:47.75 ID:A/uIhSDDO

こんな推測、的中させた所で自分は何も行動に移せない。おそらく自分では彼女を救えない。
「救われぬ者に救いの手を(Salvere000)」の名が泣くだろう。だが仕方無い。
これらは“彼”の専売特許なのだから。


「随分と……あのガキに執着ね」


依然とシャッターのように口を閉ざしていたヴェントが、唇を動かさず言う。
相変わらず憂いを漂わせて、まるで自らの葛藤を晴らす手段を求めるかのような口調だった。
126 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/17(木) 01:30:24.22 ID:A/uIhSDDO

神裂は、笑みを濃くして話す。


「私は、上条当麻に返しきれない程の恩や借りがあります。ですが、彼と最初から仲が良いって訳じゃないんですよ?
当初の頃はインデックスの件に関して、『何も知らないくせに』と憤慨して拳を交えたものです」


古い、古い記憶を辿る。
今となっては懐かしい映像。

悲しみしか存在しなかった時。
インデックスを救えない悲劇の連鎖が続いて、ただ敵に回るしか出来なかった自分。
127 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/17(木) 01:31:19.18 ID:A/uIhSDDO


「でも、彼は教えてくれました。まだ会って間もない私に。
説教……と、言うんですかね?」


照れくさそうに首を傾げる。
頬を染める当たり、恥ずかしい気持ちが混ざっているのだろう。


「上条当麻はあなたが思っている程、悪い人間ではありませんよ? ですから、少しずつでいいので、彼に対する印象が変わる事を祈ります」

「……私が何時、あのガキを嫌ってると言った?」

「それくらい様子で判断出来ます」


ヴェントは大きく舌打ちし、顔を逸らす。
128 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/17(木) 01:32:00.28 ID:A/uIhSDDO
それに、と神裂は続け、


「これは外に居る五和達も含みますが、おそらく我々は……上条当麻に憧憬を抱いているんだと思います」
129 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/17(木) 01:33:33.98 ID:A/uIhSDDO


人は必ずしも、『諦めなければならない局面』に陥る時がある。
極端に例えるならば、親しい人間二人が崖から落ちるとして、一人しか助けられない場面に直面した時、必ず一人は見捨てなければならない。……そういう状況。

神裂火織の場合は、『インデックスの記憶を消さずに脳のパンクを抑える』という事柄。
ヴェントを助けた医者の場合は、『姉弟二人とも欠けずに助け出す』という事柄。

プライドや信念を無理矢理屈折させても“どうにもならない”と思惑する瞬間だ。
130 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/17(木) 01:34:38.31 ID:A/uIhSDDO


「ですが、上条当麻は違います」


上条当麻という人間は、どんな絶望的な局面に陥落しても、どうにもならない状況でも、決して諦めない。

例え学園都市最強の相手をする事になっても。
例え二五十人のシスターと対峙する事になっても。


―――決して諦めない。
131 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/17(木) 01:36:27.62 ID:A/uIhSDDO


「我々には持っていない強さを、彼は有しています」

「…………」


彼女が述べる言葉をヴェントは黙って耳を傾けていた。
重い口を開け、溜息を吐く。


「ベタ惚れじゃない。私は惚気を訊きに来たんじゃないんだけど?」

「べ、べたぼっ!!? ちちち、違いますっ!! 私はただ借りを感じているだけで、そのような感情は一切―――っ!!!!」

「ハイハイ。しっかしまぁ私服はマシかと思ったら、露出狂に変態癖が有るとわね」

「ろっ!!!? さっきの光景は忘れて下さいッ!! 着たくて着た訳じゃないんですッ!!
それに、この格好も魔術的な意味合いも含まれているので露出狂ではありません!!」

「だとしても無駄に肌見せ過ぎでしょ。誘惑してるようにしか見えないわよ」
132 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/17(木) 01:37:25.37 ID:A/uIhSDDO


誘惑っ!!? と嘆く神裂を放って置き、胡座から立ち上がって外へ向かう。
去り際にヴェントは神裂に述べる。


「私はあのガキに対する対応は変わんないわよ。今でも現れたら問答無用で叩き潰すつもりでいるし、これからもずっとそうでしょうね」


でも、と続け、
133 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/17(木) 01:38:43.63 ID:A/uIhSDDO


「印象は……変えてやらない事もないわ」


捨て台詞を聞いた時は、話して良かったと、神裂は心の底から本当にそう思った。
134 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/17(木) 01:41:33.92 ID:A/uIhSDDO



―――辺りを占めるのは闇。


静寂なる森林。
暗闇を染める雪も、削がれる。
ロシアの雪山。しかし雪は降らない。

“雪が降っているはずなのに、一つさえも降らない”矛盾。
“本来の時間帯は太陽が頂点を指す時間のはずなのに、月が顔を出し闇を照らす”矛盾。

その二つの矛盾の中で、二つ存在する“モノ”があった。


「――――っ」


一人の人間が雪道を駆ける。
後から追跡する形で、一歩遅れて雪道が爆ぜていく。

と、人間が行き道を予測したように五メートル先で“何か”が降り立った。
ドンッ!!!!!! と地表を抉って、人間と相対する。


「くそっ……しつけえな」


背中に“氷の翼”を携えて、莫大な殺意を人間に向け、―――地響きを起こす。

視界が縦へ小刻みに揺れ動く。その現象を感知した人間は、咄嗟に構えを取って、拳を振るう。
途端に、パキンと、人間を突き刺さんと伸びた“一本の氷”が、跡形も無く砕けた。


「ったく、何時になったらみんなの下に帰れるんだかッ!!」


人間は再度、前進。
倒すべく怪物を拳一つで立ち向かう。

今宵も大規模の爆発と、轟音が鳴り響く。
135 :>>1やでー! :2011/02/17(木) 01:47:13.05 ID:A/uIhSDDO
投下終了でございます

そしてすいません
凄く偏見がありますorz

そろそろ一つ目の山場と戦闘シーンですね

戦闘シーンは苦手ですが、頑張ります



あ、ヴェントさんは何か忘れていることがありますね
勿論>>1の故意です
136 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/17(木) 01:53:50.76 ID:bsfVKFSJo
おつ
137 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/17(木) 10:18:22.32 ID:im3BmLuIO
乙!
楽しみにしてるんで頑張ってくれ!
138 :>>1なのですー :2011/02/18(金) 10:56:32.39 ID:jLYAcDzDO
書けましたので、投下しますね

魔術と科学、両方からお送りします
139 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/18(金) 10:57:16.19 ID:jLYAcDzDO


時刻は『1』を指す。
昼食を終えた上条捜索メンバー(一人除く)は再び足を動かせる。

食事の際にリーダーである神裂火織が遅刻した事以外は、何の音沙汰も無い時間を過ごしていた。
遅刻の理由として、単なる「ヴェントのガチ忘れ」とだけ言っておこう。多くは語らない。
ヴェントのたった一言で神裂火織のプライドをズタズタに崩壊させたのだから。
140 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/18(金) 10:58:15.11 ID:jLYAcDzDO

『あぁ、また天使に喧嘩売ってるような変態服でも着てたんじゃないの?』

勘の鋭い建宮を筆頭に天草式メンバー(主に男性陣)が騒ぐ騒ぐ。昼食そっちのけで嘆き喚く悔やみ唸る呻く。
『またしても機会を逃してしまったのよなーっ!!!!』とかなんとか。
彼らを鎮めようと「七天七刀」を持ち出す神裂や、彼らに便乗してルチアに熱い視線を贈るアニェーゼとアンジェレネ。
事態は雪だるま式に膨らんでいった。
爆弾を放り込んだ本人は、黙々とオルソラが作った絶品料理を食していたそうな。



そんなこんなで活動開始である。
141 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/18(金) 10:58:47.32 ID:jLYAcDzDO


「先程は酷い目に遭いました……」

「アンタらって、何時もあんな感じなワケ? 喧しいコトこの上無いんだけど」

「あの騒動の元凶はあなたでしょうっ」


先陣は建宮に任せ、最後尾を歩く神裂とヴェント。捜索と言っても、全員で行う訳ではない。
先刻建宮が述べたように、己の体調管理を顧みず、捜索を続行するメンバーも居るので、『救護班』というのを設けている。
オルソラ+天草式メンバー十数名で構成。主に移動用の車で待機中だ。
142 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/18(金) 10:59:39.87 ID:jLYAcDzDO

そこで捜索中にも拘わらず、建宮が昼食の件を引きずっているのか、隣に居る五和に爆弾を放り込む。


「くっ……! 女教皇様が遂に堕天使エロメイドを解禁となると、五和も負けてられないのよなっ!! ここはやがて見付かるあいつに備えて、大精霊チラメイドに着替えてお出迎えという手段も視野に入れておくのよっ!!」

「ぶほっ!? たったた、建宮さん!? 一体何処からそれを取り出したんですかっ!!?」


ワナワナと震えて指差す先には、大精霊チラメイドの衣装を手にした建宮の姿。
143 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/18(金) 11:00:45.39 ID:jLYAcDzDO
彼は意気揚々と衣装を掲げ、


「こんな事もあろうかと用意しといたのよ!! しかし!! 女教皇様が画策してるとは流石に予想外だったのよな!! 五和もウカウカしてられんのよ!!」


と、会話を聞いていた神裂が、最後尾から建宮の所まで一気に飛躍。……「七天七刀」を構えて。
よって、一瞬の閃光が建宮の目の前を煌めく。


「うおぉっ!? ぷ、女教皇様!? お気を確かに―――」

「どうやらあなたには本格的に制裁が必要なようですね……。
五和!! 援護を頼みますッ!!」

「うぇあっ!? で、でも……」


ゆらりと抜刀の構えを取る神裂を宥めようと狼狽える建宮だが、今の女教皇様は聞く耳を持たないのでその努力は全て皆無である。
144 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/18(金) 11:01:40.87 ID:jLYAcDzDO

対する五和は突然名前を呼ばれ、びくぅっ!! と飛び上がった。
彼女的に大精霊チラメイドは最終兵器として忍ばせておいたが、あの少年の帰還にこの衣装で出迎えしてイチコロ作戦も確かに有りかも?
とか何とか大胆ながら思念してしまう訳で、加えてサイズもぴったりなので破棄するのはちょっと勿体無い、と感じて……悩んだ結果、


「―――了解しましたっ!! すみませんが建宮さん、その衣装は綺麗に残したまま女教皇様に助太刀します!!」

「「それじゃあ何の解決にもなってない(のよな・です)!!」」


見事にハモった二人。
それぞれの意味は当然ながら違う。
建宮は制裁を与える事に関して。
神裂は大精霊チラメイドを残す事に関して。
どうしようも無くなった五和は、じゃじゃあどうすればいいんですかーっ!? と嘆くばかり。
145 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/18(金) 11:03:11.19 ID:jLYAcDzDO

止まる事を知らない影響はアニェーゼ達にも広がって行く。


「うぅぅむ、矢張りあの少年を射止めるにはメイド服とやらが、必要不可欠なんでしょうか」


チラッ。


「で、ですがシスター・アニェーゼ。私達のような体形では胸の部分が悲しくなってしまいますよ!?」


チラッ。
146 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/18(金) 11:04:28.61 ID:jLYAcDzDO


「そこに難が生じちまいますね。聞く所によると、私達の体形用もあるみてえですけど……」

「や、やっぱり見栄えって大事でしょうか。何処か私にも誇れる美点があれば武器に出来るんですが……」


チラッチラッ。


「……何なのですか二人して。昼時の際にも言いましたが、そこまでして私にそんな物を着せたいのですか」


小柄二人組の会話は、昼食と同様の熱い視線を時折ルチアに向ける。
ルチアは惘然とした口調で二人の内容を否定。途端にアニェーゼとアンジェレネは火を噴くような勢いで食い付いた。
147 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/18(金) 11:05:36.56 ID:jLYAcDzDO


「何を言ってやがりますかっ!! まるで栄養が全てそっちに行っちまったような発達!!」

「そっ、そうですよシスター・ルチア!! 持て余した胸を活用せず、野放し状態にするんですか?!」

「少なくとも、あなた達が描いているメイド服という物を着て、あの少年を射止めるために発達したのではありません」


「そもそも好んで発達させてません」と、二人にトドメの一撃。
悔しがって地団駄を踏むアニェーゼに、虚しく胸にぺたぺたと両手を当てるアンジェレネ。
148 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/18(金) 11:06:24.91 ID:jLYAcDzDO

この光景を遠目で見ていたヴェントは嘆息を漏らす。


「私が居なくても、勝手に盛り上がるんじゃない……ん?」


チョンチョンと、肩をつつかれた。振り向けば、何時の間にかオルソラが接近していた。


「実はヴェントさんに差し上げたい服がございまして……」


持って来た紙袋をガサガサと探り出す。
嫌な予感がして堪らないヴェントは、杞憂に終わって欲しいと願う。
149 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/18(金) 11:07:04.25 ID:jLYAcDzDO


「シェリーさんが断られたので、ならば是非ヴェントさんにと……じゃーん!! 女神様ゴスメイドでございますよー!!」

「アンタ喧嘩売ってんでしょ?」



結論。おそらく今日の捜索は進まないだろう。
150 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/18(金) 11:08:16.65 ID:jLYAcDzDO



―――一方、学園都市。


こちらの時刻は『11』を指す。
深夜と言っても過言ではない時間帯。

一方通行は杖を付きながら、歩道を歩いていた。目指すはコンビニ。しかし、特に買う物は無い。
出掛ける前に「買い忘れたモンがあるから、コンビニ行ってくるわ」と、適当な理由にしただけの話。黄泉川や芳川も訝る様子もなく、すんなりと外出。

ただ、唯一怪訝そうな顔を見せたのが番外個体だった。
151 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/18(金) 11:09:43.13 ID:jLYAcDzDO


『……ねえ。ミサカも付いて行っていい?』

『駄目だ。大したモンでもねェから温和しくオネンネしてろ』

『いいじゃん別に。夜の散歩してみたいお年頃だから、さ』

『俺は夜遅くまでお嬢ちゃンをエスコートするスキルなンざ、持ち合わせてねェンだ。諦めろ』
152 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/18(金) 11:10:27.01 ID:jLYAcDzDO

『あなたの後ろ付いて行くだけでいいから』

『ンだよ、頭でも打ったかァ? えらくしおらしくなってよォ』

『……別に。ただ、付いて行きたくなっただけ。ほら、こうすればあなた困るじゃない?』

『だったら尚更駄目だ。ココであのガキみてェにグースカ寝てろ』
153 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/18(金) 11:11:11.29 ID:jLYAcDzDO

『……じゃあさ。約束してくんない?』

『あン? 何だよ?』

『必ず帰って来て。絶対』

『……ったりめーだろォが。何の心配も要らねェよ』
154 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/18(金) 11:12:09.12 ID:jLYAcDzDO


何故、番外個体が感づいたのかは判らない。
もしかしたら、自分の僅かな顔の動きで判断したのかも知れない。だが、気付いたとして連れて来させる訳にもいかないだろう。

エイワスの助言とやらも、蔑ろには出来ない程、不吉なモノであったし。
一応、釘を差しておいた。これで絶対に付いて来ないかどうかは危惧するが、黄泉川や芳川が止めてくれるだろう。
155 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/18(金) 11:12:50.24 ID:jLYAcDzDO

問題は敵について。
エイワスは言った、「君は負ける」と。
番外個体や打ち止めを外出させ無かったとしても、勝率は限り無く低いとも言った。

消去法としてまず候補に挙がったのが『エイワス』。だが、本人が否定したので削除。

次に『垣根帝督』。しかし、何かしら機械で生きているだろうが、相手にならないので削除。

最後に『外側の勢力』。戦争時に聞いた“魔術”とやらだ。対峙したあの怪物でさえ「反射」が上手く働かなかったので、可能性としては一番有力。
156 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/18(金) 11:13:52.76 ID:jLYAcDzDO


(有り得そォなのは最後か? だとしたら厄介だな。どンな戦法で攻めてくるか予想が付かねェ)


とか何とか思考を巡らしてる内に、仮の目標であるコンビニの目の前まで辿り着く。
一旦、一方通行は足を止めた。


「……そォだな、珈琲でも飲ンで休憩すっかァ」


コンビニに入り、真っ先に飲み物コーナーで缶珈琲を一本を手に取る。
レジに向かい、台に乗せてから財布の中身を確認。


「チッ、札しかねェ」


仕方無いと、千円札を一枚取り出して缶珈琲の横に添える。
と、そこで一方通行は気付く。言ってしまえば漸く気付いたのだ。
157 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/18(金) 11:14:26.20 ID:jLYAcDzDO


―――コンビニに、誰も居ない事に。


時刻はまだ11時。他に客が居てもオカシくは無い時間帯。
客だけでは無い。店員さえも居ないのだ。

一方通行は缶珈琲と千円札を放置して、急いで外に飛び出した。
辺りを見回す。そして大きく舌打ち、


「何時からだ……思い出せ。何時からこンな状態になってやがった……!!」


人さえ通らない街は、車も通らない。
街灯は点いてるものの、ビルの明かりは皆無。
158 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/18(金) 11:15:01.05 ID:jLYAcDzDO







―――カツン。
159 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/18(金) 11:16:31.33 ID:jLYAcDzDO


刹那。一方通行の背後で反響するように響く足音。
彼は後ろへ振り返る。視界に映る歩道の奥底は、闇に包まれて何も映さない。




―――カツン。




ただ、虚空に足音だけが響くだけ。
彼は目を細める。見つめる先は暗闇。




―――カツン。




……その暗闇から、一人の『人間』が現れる。
160 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/18(金) 11:17:42.84 ID:jLYAcDzDO


「確認。殺害対象『一方通行』と一致。速やかに戦闘態勢移り―――」


引き金は、十分だった。

バンババン!! と。

唐突にズボンのベルトに挟んでおいた拳銃を、出し惜しみや躊躇う事無く、闇から現れた「殺害」とほざいた奴に発砲。
同時に杖を投げ捨てて、首のチョーカーにスイッチを入れる。


「嘗めてンじゃねェぞコラ」


ギュン!!!! と、ベクトルを脚に利かせ、音速の速さで『人間』の懐に潜り込む。
そのまま拳を顔面に叩き込んで意識を刈り取る。戦闘は終了。



……そのはずだった。
161 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/18(金) 11:18:23.40 ID:jLYAcDzDO

パシ、と。
『人間』の手に一方通行の拳が収まる。


「は……?」


流石の彼も驚愕を隠しきれない。敵が目の前に居るのに素っ頓狂な声を上げてしまう程。
それもそうだろう。彼が放った今の一撃は、ベクトルを加えた必殺の拳。当たればボール球のように吹っ飛んで行くはず。

それを、片手一つで受け止めた……?
162 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/18(金) 11:19:14.75 ID:jLYAcDzDO


「問題は絶無。忠告はしておく、『能力』は無効だ。故に、反射は効かないぞ」


一方通行の顔面に―――弾丸の如く拳が突き刺さる。
163 :>>1になりけるのよ :2011/02/18(金) 11:25:45.57 ID:jLYAcDzDO
投下終了です
書き終わった後に気付いたんですよね、あれ?日本とロシアの時差が全然ちがくね?って…orz

圧倒的に科学が少な過ぎますが、まぁ今後ですね
次回はヴェントさん側中心で
164 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/18(金) 14:43:31.33 ID:jKatC6de0
 これは……いよいよ楽しみでしかたない!
上条さんアンタまた……
165 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/18(金) 17:03:57.72 ID:XuO0UJQAO
乙です。
ちなみにこのスレのヒロインはヴェントですか?

だったらテンション上がりまくりだぜ
ヒャッハー!!!

最後までガンバって!!
166 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/18(金) 18:12:49.94 ID:CxkyZQk30

ヴェントってちょっとシェリーに似てるよなと思った
性格的な意味で
167 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/19(土) 05:01:16.22 ID:uM99mzCG0
おつ!
魔術と科学の両方が描写されているSSは少ないから、そのことも含めて期待してます!
168 :小説を上位に、>>1を下位に :2011/02/20(日) 09:17:50.38 ID:IPw4RKqDO
木原くンとヴェントさんの出演に興奮しつつ書いてた>>1です

投下致しますね
169 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/20(日) 09:19:11.42 ID:IPw4RKqDO


時刻は『2』を指す。
活動開始から早くも一時間経過。
存外にも騒動は短時間で治まった。

特にする事も無いヴェントは相変わらず最後尾に立って、腕を組んで彼らの様子を傍観していた。

故に不可思議な点を見付ける。
最後尾で傍観していたからこそ気付いたのか、彼女だからこそ気付いたのかは、些か不明。
170 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/20(日) 09:20:02.78 ID:IPw4RKqDO


「ねえ、一つ尋ねてもいい」

「はいっ、何でございましょう?」


未だに隣に居るオルソラに不躾ながらも訊く。
何故か彼女は意気込んで応答。しかも予備動作で紙袋に又しても手を突っ込む。凡その推測は可能だった。


「予め言っておくけど、別にあの衣装をやっぱ着たいとか、そんなんじゃないわよ」

「そう、でございますか……」


シュン……、と明らかヘコんだ様子のオルソラを尻目に、溜息をヴェントは漏らす。
171 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/20(日) 09:21:29.27 ID:IPw4RKqDO
打って変わって真面目に捜索に励む天草式+αに指差し、


「何でさっきから活動範囲が“右側だけ”なのよ?」


雪山の森林が並ぶ並木道。
何故か右側の森林だけを活動。
まるで『避ける』ように。左側を捜索しないよう意識を根本的に『削ぐ』みたいに。


「……あら? そういえばそうでございますね」

「…………」


彼女は冷静に状況を分析する。
オルソラの有り様。“今初めて意識しました。”そんな感じの言動だ。
この様子だと、捜索中のメンバー、露出狂聖人さえも言い兼ねない。

『根本的に“左側を捜索する”という意識そのモノを無くしている』。
そうヴェントは結論付けた。
172 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/20(日) 09:22:39.67 ID:IPw4RKqDO


(人払いの一種? だとしてもプロの魔術師が揃って引っ掛かるとも思えないわね……)


彼女は歩み出す。道から外れ、左側の木と木の間に踏み入れる。
視線を移して足下や、顎を上げて樹木の天辺を刮目。
別に何の変哲も無い。特筆する異変も感じられない。


(考え過ぎ、か?)


ならば、あれだけ上条当麻に執着していた連中が何故「左側だけ捜索しない」何て、手を抜くような生半可な行動をしているのだろうか?
五和という少女とか、吟味されてない箇所が微塵さえ有ったら、鬼の如く激怒し兼ねないのに。


「って、何コイツらのために真剣に考えてんのよ」


今日何度目になるか判らない嘆息を漏らす。
腕を組んだまま樹木に寄り掛かり、少々寛ごうかと思案した時だった。


―――ブォンッッ!!!!!! と、世界が反転する。
173 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/20(日) 09:23:18.00 ID:IPw4RKqDO


「っ!!!!」


視界に移るのは月夜の闇。
太陽が昇った景色は、月明かりが照らす光景に一変する。
まるで、全く別世界に放り込まれた感覚に囚われているようだ。

慌てて彼女は辺りを見渡す。
神裂火織や建宮の天草式のメンバー、アニェーゼの三人にオルソラ。
……全員がこの場に居なかった。


「チッ……これだから厄介は面倒なコト極まりないわね」


吐き捨てるように言う。
174 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/20(日) 09:25:03.66 ID:IPw4RKqDO
神裂達が何処かに吹っ飛ばされたのではない。自分が何らかの“領域”に足を踏み入れ、取り込まれたのだ。
仮定でこの現象が魔術師による術式だとする。しからば自分が何らかの行動を取ったか、何らかの物体に接触したために発現したに違いない。
例えば、


「……ふっ!!」


―――背もたれに使った、『樹木』とか。

ヴェントは突然出現させたハンマーで、下から上へ掬うように振り上げる。
それだけの動作で彼女が寄り掛かっていた樹木は、いとも簡単に薙ぎ払われた。
けたたましい音を立てて崩れていく樹木を無視し、ヴェントは再度辺りを見渡す。


「変化無し、ね」
175 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/20(日) 09:26:22.92 ID:IPw4RKqDO


一向に変わる様子は見当たらない。これで魔術師である線は消えた。
もし薙ぎ倒した樹木に仕掛けていたなら、術式は壊されたのでヴェントは既に元の世界に戻されているはず。
樹木じゃなく範囲を指定した術式ならば、あれだけの人数が居た中で、ヴェントだけが放り込まれたというのは変な話だから。
ヴェントだけを狙っていたという場合も有るが、流石に無いだろう。ピンポイント過ぎるし、都合が良すぎる。
以上の事柄で魔術師という線は失せる。

しかしそこで新たに生じる問題が、ならば「誰」という点。現時点では全貌どころか欠片すらも判らない。
176 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/20(日) 09:27:40.90 ID:IPw4RKqDO
周辺は至って変わらない。ロシアの雪山だ。つい数秒前の樹木の位置も全て同じ。

一目で判る違いは、被害の酷さ。
見る限り引き裂いた跡が甚だしい上に、


(傷が新しいわね。雪は……止んで――って)


夜空を目視した彼女は我が目を疑う程、驚愕する。
こめかみにじとりと嫌な汗が一滴。


「何よ、コレ……っ!?」


天空を覆う魔法陣。
この現象をヴェントは知っている。
177 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/20(日) 09:29:02.80 ID:IPw4RKqDO

自身の属性強化のために、強制的に空を支配し夜闇に変える『世界を終わらせる力』―――『天体制御』。

ヴェントは再び樹木の甚だしい引き裂いた跡に視線を移す。


「『水翼』で抉った跡……っ」


何という事だろう。厄介や面倒事では済まされない事態に陥る羽目になっている。
178 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/20(日) 09:30:12.81 ID:IPw4RKqDO

ヴェントは駆け出す。足下に目を凝らせれば、足跡が幾つもの存在した。全て同様の型だ。


「たった一人で立ち向かっている? ……フザケてるわね」


名も姿も知らぬ人間に悪態を吐く。
もしあの怪物を一人で相手してると言うなら、正直人間業じゃない。
世界を終わらせる力を有する怪物と対等に相対出来る人間なんて、少なくともヴェントの知る中には居ない。そもそも居るはずも無いから有り得ない。
怪物と渡り合える何てそう居るはずが……、と。
忽然と彼女の思考は中断された。
179 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/20(日) 09:31:31.89 ID:IPw4RKqDO

足を止め、目を見開き、息を詰まらせる。

彼女の行く手には、森林とは隔てるようにポッカリと樹木の無い空間が広がっていた。
真ん中には寂しく切り株がポツンと孤立。……その切り株に、腰掛ける人影が一つ。


「……あは」


瞬時に怪物だとか世界を終わらせる力だとか、どうでもよくなった。

自分の中で何かが駆り立てられる。
その意は、憤怒? 憎悪? 焦燥? 復讐? 怨念? いや―――歓喜だ。
180 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/20(日) 09:35:05.01 ID:IPw4RKqDO

彼女の形相が深い笑みへと変貌していく。艶めかしく舌なめずりをする姿は、獲物を見付けて奮い立つ獣に酷似していた。
ヴェントはステップを踏むように十メートル以上空を飛翔。ハンマーを携えて、咆哮の如く叫ぶ。







―――だから言ったではないか。




―――もし目の前に現れたのならば、迷いも躊躇も逡巡も無く得物を振るう。




―――寸分の動作も与えないまま突っ込み、五臓六腑を圧砕してやると。








「―――幻想殺しァァァァあああああああああああッッ!!!!!!」







あの容姿を見間違えるはずがない。
面構えも、ツンツン頭も、服装も、身長も、苛立たせる信念が籠もった瞳も全て。
……忌々しい存在を見誤るはずがない。


―――上条当麻だ。
181 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/20(日) 09:38:53.37 ID:IPw4RKqDO


「いっ!? ヴェ、ヴェントぉっ!?」


非常に猛々しい叫び声に反応して空を見上げた上条当麻は、視界に映る彼女を即座に識別した。

より一層笑みを濃くするヴェントは、舌に取り付けられた細い鎖の先端の十字架を操る。
ジャラジャラと音を立て、鎖と十字架が描くのは―――螺旋。


「やばっ!?」

「アッハー!!!!」


落下しながらハンマーを振り下ろし、上条当麻に矛先を向けて『空気の鈍器』が鎖をなぞるように螺旋状に発射。
182 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/20(日) 09:40:11.97 ID:IPw4RKqDO
直ちに彼は前方に沿って大きく飛び跳ね、回避を試みる。
その僅か数秒後。着弾した空気の鈍器は、切り株を木っ端微塵に炸裂。
しかし被害はそれだけに留まらず、周りの雪や泥を根刮ぎ抉って、四方八方飛び散らせた。

上条当麻はこの一連の動作を目視し、悲鳴を上げた。


「うおぉぃっ!? ヴェントさーん!!? 一歩遅かったら上条さんミンチになってましたよーっ!?」

「当たり前でしょ。そのつもりでやったんだから」


とん、と彼女は元切り株が在った所へ軽快に着地。
ハンマーを担ぎ、体勢を整える彼を見据え、ヴェントは愉しげに言う。
183 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/20(日) 09:41:32.13 ID:IPw4RKqDO


「ハッアァーイ♪ アンタをブチのめすために、こーんな元の場所とは切り離されてる下らない所までやって来たわよ。
感謝しろとは言わないから、素直に潰されなさい」

「……何つーか、ビリビリみたいな発言だな。アイツなら言い兼ねないし」

「否定も肯定もしないなら潰す。ま、私に否定形は存在しないから、否定しようが関係無いけど」

「いやちょっと待とうぜ!? ココは穏便にいきたいな〜、何て上条さん的にも思う訳ですよはいっ!!
ほらっ、仮にも一度は同じ敵を倒そうと、共に戦場を―――」

「何自分の都合良いように解釈してんのよ。あの時は偶然アンタと利害が一致しただけに過ぎない。
っていうワケで潰されろッ!!」

「結局こうなるのかよ!! こんな事してる場合じゃねーのにぃ!!
ああいいぜ、久し振りに叫んでやる!! 不幸だあああああッ!!!!」


彼らの逃避劇が幕を開ける。
184 :>>1である :2011/02/20(日) 09:48:05.78 ID:IPw4RKqDO
投下終了です
次回は魔術と科学両方ですね
科学を多めにしていきます


>>165さん。それはもうスレタイを見ていただければ直ぐに理解可能かと
185 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/20(日) 09:48:54.08 ID:zAhyn/rEo

楽しみにしてます
186 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/20(日) 12:52:56.22 ID:Gx+pMCe60
 マジかよ……どんどん先が楽しみになってくるだと……!?
 >>1さんマジパねえっす
187 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/20(日) 16:27:20.13 ID:fx42uHoZ0

ヴェントはツンデレ決定だなこれ
188 :>>1です。テストです [[saga]]:2011/02/21(月) 01:02:08.20 ID:SvkP3l3DO
ちょっとテストです

死ぬ、死ね、殺す、殺せ

出るかな…
189 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/21(月) 01:10:51.13 ID:vW4L0SuAO
(sage saga)って
入れてもいいと思いますよ

ガンバって!!
私はアナタを応援してる…
190 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/21(月) 10:44:56.52 ID:Lq+Ed03AO
ハァ〜〜イ♪

>>1はこういう書き込んでない時間にもこっそり割り込んでいるってことでしょお?
これからも良いお話書いてくれると嬉しいんだけどナァ?

ごめんなさい
も〜あの声にやられちゃってやられちゃって
乙です、期待
191 :テッラは大切にね♪ ビリビリッ!! [saga]:2011/02/21(月) 14:30:20.17 ID:SvkP3l3DO
>>1です。
>>190さん。何故判ったし…

じゃあそんな要望に応えて速攻で今作りました
ネタには大変乏しいですが軽く目を通す形でよろしいかと

※ミサワさんがログインしましたので、大変下ネタお盛ん状態です
192 :アクセラさんの楽園だった場所 [saga]:2011/02/21(月) 14:33:03.42 ID:SvkP3l3DO


一方「あー……唯一の安らげる時間が風呂と睡眠だけ何て、ドコの主婦なンだよ俺は」ワシャワシャ


一方「たく、過労やストレスで死ぬンじゃねェの? どっかのメルヘン野郎がバカ笑いしそォだな……」ジャー


一方「ふゥ〜……なァンかオッサンくせェな俺」ザパー



ドタドタドタッ


一方「あン? なンか喧し―――」


番外「やっほー、ミサカがあなたの背中を流しにきた序でに、一緒に風呂入らせてもらいに来たよ」バターンッ


一方「」
193 :悪ガキには制裁を [saga]:2011/02/21(月) 14:34:44.61 ID:SvkP3l3DO


番外「何? そんなにミサカの体を凝視しちゃって。もしかして裸に見惚れて勃っちゃったとか♪」


一方「」


番外「まぁ勃ったとしても、あなたモヤシだから、鉛筆程度にしかならないと思うけど。ぎゃはっ☆」


一方「……こォいう時って、どォ反応したら良いンだろォな。まァとりあえず」カチッ


番外「あり? 打ち止めは調整中で今は能力モードは使えないはずじゃ……」


一方「残念。お湯の滝地獄行きだァ」ザパァッ!!


番外「え、ちょ、熱っ!? 口の中に入っちゃ―――〜っ!!!」ガポガポコポ


一方「安心しろォ。悪ガキの制裁にちょびっとお灸を据える程度で済ませる。死にゃしねェよ」


因みに能力モードが使えなくなる三分前でした。
194 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/21(月) 14:35:55.43 ID:SvkP3l3DO
以上。じゃあ本編書いてきます

何か違うもの投下してすいません
195 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/21(月) 17:03:42.72 ID:qd372NgO0
ミサワが可愛すぎて昼に寝れない
196 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/21(月) 21:22:18.47 ID:/i2ku6lAO
番外固体が可愛すぎて夜しか眠れない
197 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/21(月) 22:42:03.78 ID:mGyn4Mrs0
>>196
それ普通やで
198 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/21(月) 23:08:43.38 ID:f3RPZe/f0
 擬人化ワーストたん萌え
199 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/22(火) 01:06:10.32 ID:I0d+tC9AO
ワーストが可愛すぎて夜も眠れない。
仕方ないから昼寝する。
ニ○トの俺ならではの死角絶無の完璧な奇策。
200 :第一の解答ですが、>>1です [saga]:2011/02/22(火) 02:32:56.91 ID:KTKGNVuDO
書けましたので投下します

何と申し訳ないのですが、魔術をノリノリで書いてたら量が多くなっちゃって…orz

今回も魔術だけです
201 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/22(火) 02:34:17.55 ID:KTKGNVuDO


二人は森林とは隔離された空間に留まっていた。……著しく一方的な戦闘を繰り広げながら。


「いやだからっ!! 一回話し合いましょう!? だったら分かり合えるってえぇ!!」

「アンタと和解なんて、真っ平御免よ!!」


乱雑にハンマーを振り回し、十字架で的確に狙う。
上、横、斜め、時には曲線を描いて上条当麻の命を刈り取ろうと牙を剥く。

しかし、彼も黙って空気の鈍器を浴びる程、馬鹿ではない。
寧ろヴェントのパターンは、既に九月三十日の時に会得済み。
だからなのか、未だに一発も命中しない。巧みに回避し、時に右手を使って直撃を免れている。
202 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/22(火) 02:35:15.37 ID:KTKGNVuDO


「チッ!! 情けない戯言ほざきつつも、しっかりと避けてんじゃないのよ!!」

「避けなきゃ比喩とか関係無く死んじゃいますからねっ!? まだまだ上条さんには未練が―――って、うほおぉいっ!!!?」

「躱すなクソガキがぁ!!!!」

「あーもう!! こんな事をしてる場合じゃねえのにチックショー!! 大体っ!! 俺はそんな無闇に拳を振るうほど暴虐じゃありませんのことよ!!?」

「散々人のコト殴ったヤツの台詞じゃないわよ!!」


水平にハンマーを振るい空気の鈍器を生み出す。が、射出される前に彼女は手首を返すと、掬うように振り上げた。
二発目の鈍器が生み出される。
203 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/22(火) 02:36:28.68 ID:KTKGNVuDO

この光景を目に、上条当麻は「げっ」と蛙が潰れたかのような声を漏らす。
有り様の現象を彼は熟知している。体験者だからこそ、粟立つ悪寒に感づけた。
膝を曲げて体勢を低くし、足のバネを利かせて横へ跳ね飛ぶ。
躓かないよう片足ずつ交互に前へ前へと、駆け抜けていく。

途端に一つの塊になった数百もの尖った空気の錐が彼の元居た場所へ襲いかかった。
悍ましい爆音を立て、雪と泥が炸裂する。


「うおっ」


散弾となった雪と泥が上条当麻の身体を叩く。だが彼は左腕で顔面を守るだけで、駆け抜ける足は止めない。
行き先は……ヴェントの方向。


「やっと戦う気になったのかしらぁ!!?」

「ちげーよ!!!!」


新たに射出された空気の鈍器を右手で打ち消して、二人の距離は確実に縮まっていく。
204 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/22(火) 02:38:25.42 ID:KTKGNVuDO
ヴェントは上条当麻限定で、接近戦が苦手。何故なら右手でハンマーに触れられたら、おそらく一時的に消滅させてしまうから。
この理論は上条当麻が作り上げたモノ。確証なんて何処にも存在しない。
しかし学園都市を襲撃した際、実証付ける反応は彼女は示したのだ。

今のヴェントは、上条当麻のどんな言葉を述べても取り合わないだろう。
ならば、無理矢理にでもとりあえず彼女を落ち着かせる状況を作る他、彼の道はない。


「ッ!!」


懐に潜り込み、彼女のハンマーに右手を伸ばす。


「馬鹿かアンタ。単純過ぎるわよ」
205 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/22(火) 02:39:38.18 ID:KTKGNVuDO


行動を読んだ彼女は故意に手元からハンマーが消す。
しかし、ココから二人の予想だにしなかった事態が起きる。

ハンマーがヴェントの意図で消した事で、上条の右手は空を切った。
上から下へ振り下ろした右手は、奇しくも……いや、上条当麻ならば普段通りなのかもしれないが。
兎も角、虚しく空振った右手はそのまま元々ハンマーを所持していたヴェントの片手へ。


「へ?」

「ん?」


当たっただけならまだしも、況してや何をどう間違ったのか重ねる形で、……所謂『恋人同士限定』で出来る貝殻繋ぎを。
206 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/22(火) 02:41:32.34 ID:KTKGNVuDO


「……」

「……」


先程の凄まじい死闘とは手の平を返すように、温和しく二人は微動だにせずジッと繋がれた手を見つめていた。
しかも上条の方は意識してしまったのか、反射神経が働いて離れようとしたのだろうが、何故か却ってヴェントの手を握り締めてしまう。


「……」

「……」


何とも言えない空気が流れ、長い長い沈黙と静寂が訪れる。

二人の光景を知り合いが見れば、必ず『勘違いパラダイス』や、周りを巻き込んでいく『勘違いスパイラル』が起きる事間違い無いだろう。
学園都市と天草式に居る、上条当麻に恋する乙女二人が、もしヴェントと同様の状況になった場合、卒倒モノだ。
207 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/22(火) 02:43:03.66 ID:KTKGNVuDO
だが残念な事にヴェントは上条当麻に恋をしていない。寧ろ嫌悪を感じている。
なので、


「―――何時まで握ってんのよ!!」


長年、手を握るという行為をしていなかった所為か、人の感触は新鮮な物ではあった。
しかし状況と相手なだけに彼女は振り払おうと、思わず引いてしまったのだ。それがいけなかった。


「うぉっ、おぉおおっ!?」


呆然と油断していた彼は、急に引かれたので体勢を崩してしまい、前へ倒れるように転倒。
……当然、前方にはヴェントが居るわけで。


「えっ、ちょっと……!?」

「おぅわぁっ!!?」


結果、二人は仲良く倒れ込む。
208 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/22(火) 02:44:18.86 ID:KTKGNVuDO
オマケに端から見れば「上条当麻がヴェントを押し倒した」構図に見えるので、ココにて上条当麻のスキルが本領発揮中である。


「いやこれはっ、不可抗力というか何というかですねっ!?」

「……」

「黙られたら余計に怖いですがヴェントさーんッ!!!!」


自分が腕を引いてしまった所為とは言え、まさかこれはアンタの所為じゃない? とヴェントは思念せざるをえない。

けれども上条当麻の唯一のラッキーは、この状態に陥った事でヴェントの頭が幾分冷静になれたことだ。
209 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/22(火) 02:46:12.43 ID:KTKGNVuDO


「べ、別に疚しい考えが有った訳じゃなくてですねっ!? ほらやっぱり人間急な出来事には対処が遅れるっていうかぁ!?
上条さんも矢張り健全な男子高校生で……いやいや駄目だ駄目だこれじゃ墓穴掘っちまオフッ!!?」

「さっさと退け。何時まで跨ってるつもり?」


喧しく狼狽する上条の股間目掛けて結構強めに膝蹴りをかます。
成果は彼が傍らで、股を押さえながらうずくまる事柄で済んだ。

フンッと鼻を鳴らし、立ち上がる。
そうだ、呑気に戦闘を繰り広げてる場合ではない。少々自分を見失い過ぎた。
衣服に付いた雪を払いながら、彼女は上条に近付く。


「ぐぉぉぉ〜……、これは流石の上条さんにも響きましたよぉ……」

「この程度で勘弁するんだから感謝するコトね。アンタには色んな情報を聞き出さなきゃならないんだから、早く立て」

「うぅ……何やら大事物を失った気がする」


渋々緩慢とした動作で起き上がり、同じように髪の毛や制服に付いた雪を払う。
210 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/22(火) 02:47:23.08 ID:KTKGNVuDO
ヴェントは腕を組み、言葉を投げかけた。


「別にアンタが何でココに居るとか、どうやったら帰れるとかはこの際一切無視。一つだけ訊くわ」

「んぁ? 何か判んねー点あったけど……まぁいいか。何だよ?」

「……」


ヴェントは無言で上を指差して示唆する。それだけで、上条当麻は察せれた。
だが、彼はヴェントに答えを告げる事は出来ない。


―――彼らの五十メートル以上離れた場所で、爆音と共に何かが降り立ったからだ。
211 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/22(火) 02:48:40.64 ID:KTKGNVuDO


「「!!!!」」


二人は迅速に身を翻す。
視線の先には人型のシルエット。
眼も鼻も口も無い上、皮膚の代わりに体表を全て白い布で覆った姿。髪も後頭部から更に後ろへ流れるように形作られている。

他にも様々な特徴が有るが、その情報だけでヴェントの思い描く怪物と一致した。
背筋にドライアイスをぶちまけられたように戦慄が走る。
明確な事実を突き付けられ、彼女は奥歯を噛み締めて声を漏らす。皮肉にも、若干声色は震えて。


「ガブ、リエル……っ!!」


大天使、『神の力(ガブリエル)』。ここに降臨。
212 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/22(火) 02:52:15.49 ID:KTKGNVuDO
正確にはミーシャ=クロイツェフだが、今はそれどころではない。


「gjtmd邪duabty魔rieo」


小さく呟く。理解不能な言語は、僅かな怒りを窺わせる。

ヴェントへ向いたミーシャ=クロイツェフは、彼女に手の平を突き付けた。明確な殺意だ。

第六感が警告を鳴らす。マズい、と。行動に移そうと気付いた時にはもう遅い。





―――時間がスローになる感覚。



―――反応が追い付かない自分。



―――来る。避けられない。



―――死ぬ。



そして視界を駆け巡るのは、自分が今まで目にしてきた記憶の光景。走馬灯と言うのだろうか?

私の弟。
遊園地。
医者の顔。
ローマ正教。
聖ピエトロ大聖堂。
神の右席。
テッラ。アックア。フィアンマ。
学園都市。
人工天使。
サーシャ。
アニェーゼ部隊。
天草式。
オルソラ。
露出狂聖人。
ガブリエル。


視界が光に埋め尽くし―――上条当麻の背中が映る。
213 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/22(火) 02:53:04.88 ID:KTKGNVuDO














パキン、と。奇跡の音が耳に届く。
214 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/22(火) 02:54:01.13 ID:KTKGNVuDO


「―――はっ……、はぁっ……」


息が詰まっていたようで、縋るように乱れた呼吸器官を取り戻す。
一気に現実に覚める。大量の冷や汗が額やコメカミから滴るのを視認。


「……大丈夫か?」


安否を気遣う優しい声が届く。
息が乱れるも視線を巡らす。
目の前に上条当麻が立っていた。


「アンタが……?」


何も告げず頷く。
215 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/22(火) 02:57:29.75 ID:KTKGNVuDO
彼は一度深呼吸し、




「オイ」




彼の声色が、一変する。
ただ低く。ひたすら低く。
それは言葉の殺気だ。
矛先は天使に。自分ではない。
なのに、恐怖が迸った。




「テメェの敵は俺なんだろ」




感じたことが無い。
学園都市の時も。戦争の時も。
今さっき戦闘の時も。
目の前に居るのは、誰だ……?




「狙いが俺ならヴェントに手を出すな。もし、それでも狙うっつーなら―――その幻想ぶち殺すぞ」
216 :第一の質問ですが、それは>>1です [sage]:2011/02/22(火) 03:00:45.54 ID:KTKGNVuDO
投下終了です

次回は科学一色でいきます
では寝ます
217 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/22(火) 03:53:00.94 ID:pi2Jcwn0o
おつー
218 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/22(火) 11:26:04.81 ID:/J0QZTTZ0
 乙!!
続き楽しみです!!
219 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/22(火) 14:13:51.20 ID:YtsvNMh80
テッラさんも末期症状で再登場なるか
220 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/23(水) 13:19:37.80 ID:9i8fCAn20
頑張って
ヴェントかわいいです
221 :その>>1(幻想)をぶち殺す! :2011/02/23(水) 22:53:54.38 ID:uSpadqfDO
投下しまーす

科学一色です、ある意味魔術より難しかったですね
222 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/23(水) 22:55:13.94 ID:uSpadqfDO

学園都市。大通り十字路前。


誰も通らない道路。
車さえも走らない車線。

闇。ただ闇が広がっているだけ。
一方通行は想起する。
まるで、九月三十日みたいだと。

一方通行の頬に拳を入れたのは、生涯に二人だけだ。
能力でダメージを与えた垣根帝督や、訳の判らない攻撃で圧倒したエイワスは含まれない。

何の理屈も無しに殴る事が出来るヒーロー。
反射の隙を極論を叩き付け擦り抜けた木原数多。

そして今、


「く、は……っ。ゴフッゴホッ」


―――一方通行は、再び窮地に陥っている。
223 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/23(水) 22:56:15.07 ID:uSpadqfDO

頬は赤く腫れ、口元からは血が流れ出ていた。
彼は奥歯を噛み締めて、前方に居る人間に睨みを利かす。
ぶつけられた漠然たる殺気に、人間は眼中も無いようで意に介さない。


「戦闘開始から五分経過。……もう息切れか?」

「ンな訳ねェだろォがッ!!!!」


呼吸は荒いが、威勢は逞しい。
猛々しい彼の様子に人間は臆せず、冷淡に言葉を贈る。


「ならば仕留めるまで」


人間が体勢を低くし、片手に拳銃をぶら下げて一方通行に駆け出す。
224 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/23(水) 22:57:00.70 ID:uSpadqfDO

対する一方通行は迎え撃とうと拳銃を構え、引き金を引く。一発だけだ。
瞬時に脚にベクトルを働かせ、爆発的に前へ出る。
当初は殴打して意識を刈り取るか、触れた途端に血流操作して内部から破裂させてやればいいと踏んでいた。
しかし、それでは駄目だ。人間は先刻こう告げた。能力は無効だ、と。
どの範囲で無効になるかは不明だが、少なくとも人間に触れれば発動するだろう。

ならば血流操作は効かない。その他の『風』も『プラズマ』も効かない。
だがその反面、ベクトル操作した打撃は食らう。槍のように飛ばした線路のレールだとか、拳でも威力を消す訳では無いはず。
ただ、普段敵に能力無しで拳を突き刺す程度に落ちただけの話。現状では所持する拳銃が最適だろう。
225 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/23(水) 22:58:31.33 ID:uSpadqfDO
掻い摘めばあの『ヒーロー』と戦ってる要領でいけば何の問題も無い。


(背後からぶっ飛ばして、後頭部に銃弾をブチ抜く)


突撃する前の一発はあくまで囮。
正々堂々だろうと不意打ちだろうと、真っ正面から撃った銃弾は人間に当たらない。
現に出会い頭の三発ですら全て外れ。どういう理屈で避けたかは些か判らないが、だったら確実に避けられない状況の中、銃弾をブチ込んでやればいい。


「……」


人間は銃弾を無造作に首を横に逸らして避けた。奥に居る一方通行を視認……不可。
226 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/23(水) 22:59:33.15 ID:uSpadqfDO

一方通行は銃弾を避けた時点で、人間の背後に回り込んでいた。頭上を通過する一発の銃弾を確認し、人間に突撃する。
片手に拳銃を携え、もう片方はアスファルトに叩き付けようと脳天目掛けて腕を伸ばす。

触れるその直前、―――人間が“ブレた”。


「っ!!」


腕を伸ばした先、既に人間は忽然と姿を消していた。
危険を察した一方通行が早急に場から離脱する前に、頬に何かが当たる感触を感受。

―――拳だ。
227 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/23(水) 23:01:13.38 ID:uSpadqfDO

そして迸るのは鈍痛と衝撃。
脳を揺さぶられ、視界が霞む。
数歩覚束無い足取りで後退し、彼は脚にベクトルを働かせる寸前、今度は胸にトンと何か押し当てられた。
眼を動かし、目視。確認した瞬間彼は、背筋が極寒の境地に浸る。

胸の位置は心臓。
当てるのは人間が携える拳銃。
故に貫けば一撃必殺あの世逝き決定事項。
カチャリと弾丸を装填され、より一層焦燥感に駆けられる。


(マ、ズ……ッ!!?)


フザケるなと憤慨し、身体を強引に捻って銃口を胸の位置からずらす。
“BANG”と。人間が引き金を引いた。
228 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/23(水) 23:02:38.11 ID:uSpadqfDO


「ご、ああああああああァァァァァァァァァッッッ!!!!!!!」


絶叫が闇夜に響く。
幸いにも、弾丸は心臓でなく左肩を貫通。
血が噴き出す肩を抑え、後先考えずただ乱暴に能力を脚に振るい、勢い良く後退。
体勢を整えない状態でアスファルトを蹴ったので、着地の際に転がる形となってしまう。

地に手を付きつつ、一方通行は苦悩。顔色は随分優れない。
229 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/23(水) 23:04:40.86 ID:uSpadqfDO


(クソッ、エイワスのヤツ忠告が足りなかったンじゃねェのか?)


「負ける」何てモンじゃない。
遠回しに過ぎなかったのだ。
物理的に適わなかったエイワスとは、また違う次元の壁を感じる。


「何者だ、という顔をしている。知りたいか?」


ふと、意味の解らない言葉が人間から放たれた。
確かに、この『0』を描かれた白い仮面を付け、不協和音になって届く声色。
到底、声の時点で人間とは考えられない。
230 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/23(水) 23:08:02.13 ID:uSpadqfDO
何者だ、と問いたいかと言われれば肯定だ。しかし、まさか相手から申告されるとは思わないだろう。


「考えが読めねェな。俺に教えて何の得があるってンだ? テメェの素性まで晒してよォ」

「殺害宣告したが、名も存じない人間の手によって逝去と言うのは、腑に落ちないと思案した」

「ハッ、そりゃどォも。だが残念、殺害とか吼えて尚且つそンな野郎に情けを掛けられ……、俺が癪に障らねェと思ってンのかァ?」

「超能力者(LEVEL5)は七人で構成され、序列を表す」


人間は聞く耳を持たない。
余程、喋りたがりなのか。
一方通行は目を細め、眉を顰める。


「なに当たり前の事言ってやがンだ? 小学生の復習タイムじゃねェンだぞ」

「学園都市、第0位」


一瞬、完全に思考が止まった。
強張っていた表情から愕然だと言えば惘然とも取れ、ただポカンと。
231 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/23(水) 23:09:29.67 ID:uSpadqfDO

数秒後復活した頭で、彼は疑問する。
―――第0位?


「仮設定だ。完成型オリジナルの肩代わりに自分が存在。第0位」

「待て、オリジナルだと?」

「クローン体。だが『超電磁砲』のではない。『欠陥電気量産計画』以前に一体だけ造られた模造品が自分。
唯一異なる点は、己は元々駆り出される予定では無かった点」


人差し指で一方通行を指し、


「一方通行の暗部卒業。番外個体の生存。これらの理由で自分は出撃命令が下った」

「……皮肉のつもりか?」

「その概念は有さない」


一度人間は口を閉ざすと、顔を動かし辺りを見渡す。
232 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/23(水) 23:10:43.52 ID:uSpadqfDO
二往復した所で、仮面にに掘られた奥の鋭い瞳が一方通行を再度射抜く。


「見る限り、打ち止めと番外個体はこの場に無存在のようだ。手段によって二人を捕獲又は殺害は思案したが、無用か」




―――ドッ!!!! と。




幾百に分かれた“黒い”杭が人間に襲い掛かった。
233 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/23(水) 23:12:06.59 ID:uSpadqfDO
人間は冷静に対処。呼吸をするかのように、ステップを踏む。それだけで『空間移動』を引き起こす。
残された黒い杭は、アスファルトを数十メートルに渡って根刮ぎめくり上げる。


「……テメェの言い分はよォく判った」


ゆらりと一方通行の身体が揺らぐ。左肩から血はもはや流れていない。『破壊』ではない、『治癒』のためのベクトル操作。
背中には黒い翼が噴射していた。明確な殺意を含む真っ赤の瞳が、第0位を射抜く。


「要は前置きの自己紹介も、俺を煽るためなンだろ? だったら容易な解答を言ってやる。
―――ブチ殺し決定だ乱造品が」

「捉え方は自由。煽る目的で述べたつもりは無いがな」

「そォにしか聞こえねェンだよ、クソッタレ」


得心したとばかりに頷き、独り言のように呟く。
234 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/23(水) 23:14:13.89 ID:uSpadqfDO


「手順を短縮。オリジナルの記憶に基づいて情報データを入手。相手に適切な記録を取り入れる」


瞬間。辺り一面の空気が変わる。
第0位はこう告げた。









「発動。―――神の力(ガブリエル)」








周囲一帯が炸裂する。
235 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/23(水) 23:17:42.72 ID:uSpadqfDO
しゅーりょーです

次回ていうか、暫くは科学で行きます
236 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/23(水) 23:21:06.06 ID:4KbKJuVd0
 乙です!!

しっかし、☆もよくこんなクローン作れたな……
237 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/24(木) 01:42:59.12 ID:KRWZZJt1o
乙です
238 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/24(木) 10:28:47.45 ID:iEgts9IQo
なんかヤミー臭がww
239 :>>1です :2011/02/24(木) 11:53:09.93 ID:0uczDL0DO
ヤミー臭……?
240 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/24(木) 12:00:51.72 ID:vawMfwvTo
ブリーチでエスパーダの10番だった奴が実は1が消えて0番になりますって奴だよ
241 :>>1です [sage]:2011/02/24(木) 12:18:58.99 ID:0uczDL0DO
ブリーチは名前ぐらいしか

てかマジですか
242 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/24(木) 16:12:41.01 ID:5Z4d3xs70
まじだよ
そいつ喧嘩にまきこまれて死ぬから
243 :フレンダは大切にね? ビリビリッ♪ :2011/02/25(金) 08:31:50.74 ID:4w6URmLDO
>>242さん。なン、だと……。

多分、ヤミーさんとやらにはならないのでご安心をっ


今回は二部に分かれています
では投下します
244 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/25(金) 08:33:04.56 ID:4w6URmLDO


ギャリギャリギャリッッ!!!!!!


交じり合う翼。火花が迸る夜空。
空を裂き、衝撃波が鳴り響く。

黒と青のコントラストが、月光の下で獰猛な牙を剥く。


ギャリギャリギャリッッ!!!!!!


互いに翼で空を高く舞い、五十メートル以上距離の間が有る中で、第一位と第0位は音速を超える戦闘を行う。
ビルを越え、周りを気にせず破壊を被る対象が一人となった今、一方通行が黒い翼を振るうのに危惧する必要は烏有。
245 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/25(金) 08:34:14.69 ID:4w6URmLDO

第0位は能力を無効にする力がある。しかしそれは不完全、若しくは限定されているはずだ。
もし、どんな異能も無差別に効果が発揮するのならば、一撃目の黒い翼を避ける必要は無い。
拘わらず、第0位は回避に転じた。それはつまり、


(少なくともコレは効き目が有るっつー事だ。なら休む余地を与えないまま徹底的に叩き込むッ!!)


右翼は縦に振り下ろし、左翼は横に薙ぎ払う。
対する第0位は、迎え撃つため何十の水翼を展開させ、相殺。
246 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/25(金) 08:35:13.33 ID:4w6URmLDO

大天使ガブリエルの天罰『水翼』は、海と接続する事で何本も再生が可能で、本来なら海が存在しない学園都市では上記の事柄は不可能。
だが、理屈が通じないのか、第0位は水翼の再生を可能にしていた。


「翼二本では融通が利かないように思えるが?」


氷の翼は意図的に分解し、数千の破片の刃となって、一方通行へと四方八方降り注いで行く。
247 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/25(金) 08:36:46.86 ID:4w6URmLDO

回避するには無茶だと判断した彼は、同様に数千を越す黒い杭を噴射させ、片っ端から撃ち落とす。


「嘗めてンじゃ、ねェッ!!!!」


第0位までの道筋に、右翼が奔流の如く流れ込む。だがそれで終わらない。
右翼が到達する前に先端が弾けた。一本の奔流が枝分かれして数百の槍となり、第0位の視界を覆う。

対して、無造作に片手を振り上げて空へ掲げる。手元に水晶が生まれ、自然と砕けていくと氷の『剣』が完成した。
248 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/25(金) 08:37:46.65 ID:4w6URmLDO
剣を握ると、垂直に振り下ろす。
それだけだ。それだけで全ての槍は纏めて嵐が吹き荒れると共に一刀両断。
まるで動画の停止スイッチを押したように一時的に停止し、巻き戻されるように一方通行の背後まで右翼は弾き飛ぶ。



一瞬の間。僅か一秒にも満たない時間のさなか、二人の視線が交差する。



即座に二人は音速を越す破竹の勢いで突撃。翼を振るい、剣を薙ぎ払う。―――爆音が響いた。
249 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/25(金) 08:38:48.82 ID:4w6URmLDO
刃物と刃物が擦れ合う、人によっては嫌悪を抱く音が鳴り、第0位が生み出した剣が……黒い翼を断ち切る。


「―――っ」

「…………」


そのまま剣を持ち替え、一方通行の胸部目掛けて掬い上げた。
リーチは楽々と範囲内。外れる事は無い……が、剣は空を斬っただけで目標たる一方通行には届かない。

彼がもう片方の翼を用いて後退したからだ。
250 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/25(金) 08:40:07.56 ID:4w6URmLDO


(圧縮、圧縮……ッ!!)


唐突に両手を広げると、彼の頭上で空気が一箇所に収縮される。
圧縮され続け、生じるのは……『プラズマ』。


「っおおおおおォォォォォ!!!!」


眩い煌めきと空気を灼く気体は第0位に射出。受けようものなら、超高温にやられ肉や骨が溶けてしまうだろう。
251 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/25(金) 08:41:42.08 ID:4w6URmLDO

第0位は剣とは逆の手で、又もや無造作にプラズマに向け翳す。
何かが、手の平から発射された。
突如としてプラズマは跡形も無く爆ぜる。代わりに生じた煙が立ち籠め、視界を塞いだ。

だが、第0位は手段を選ばない。
容赦無く煙に向かって数百の氷の翼を振るい、串刺しの有り様に。
互いに擦れ合う削る音が後を絶たないが、一瞬にしてハリセンボンを形成した。


「……」


しかしハリセンボンに目も呉れず、剣を横にスライドするように薙ぐ。
252 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/25(金) 08:42:46.20 ID:4w6URmLDO
矢先、ゴッギィッ!!!! と剣が衝突する。数秒後、余波が生じた。突風が突き抜け、髪と制服が靡いたのだ。
剣を妨げたのは『黒い翼』。即ち、


「ッチ。上手くいかねェもンだな」

「大層な翼で不意打ちは勝手が悪いと思える。狙うならば仕舞う方を優先すべき」

「忠告どォも、ってなァ!!!!」


もう片方の翼が曲線を描き、僅か三メートルしか距離が無い至近距離で、第0位目掛けて放たれる。
253 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/25(金) 08:46:55.80 ID:4w6URmLDO
即座に衝突したままの翼を弾き飛ばし、上から下へ垂直に振り下ろす形で、牙を剥く翼を断ち切った。

だが一方通行による攻撃の手は止まない。
弾き飛ばされた翼が三つに分かれ、上、真ん中、下からそれぞれ獰猛な爪の如く襲い掛かる。
身兼ねた第0位は空いてる片手を突き付け、ッヂ!!!! と、音が響くと三つに分かれた翼はプラズマと同様に跡形も無く爆ぜ、翼の八割が消失。


一方通行は表情を歪め、歯を軋ませた。
幾ら黒い翼が八割消失しようが断ち切られようが、また新たに噴射が可能だから問題は無い。
彼にとって今最大のミスは、ゴリ押しで徹底的に攻めに転じていたので、右翼左翼とも一時的に怯ませられ、“懐に入る隙”を与えてしまった所だ。



当然、第0位はその隙を逃さない。



剣を突き立て音速の早さで僅か三メートルの距離を無くし、―――剣が一方通行の腹部を貫通。
254 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/25(金) 08:47:44.13 ID:4w6URmLDO



暫しの間、無言の時が訪れる。



両者静止のまま、風が吹き抜ける音だけが耳に届く。

一方通行のジャケットから血が滲み出るも、動き出す気配は全く見られない。
255 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/25(金) 08:49:10.03 ID:4w6URmLDO



そして、ガシッ!! と第0位の腕が掴まれた。


「!!」

「悪ィが」


口元から血を垂らしつつも、一方通行は不敵な笑みを漏らす。
弾丸を装填して、銃口を仮面の額部分に突き付ける。


「一発は一発だよな? 弾丸のお返しだ0位さンよォ」


ズガン! と、引き金を引いた。
256 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/25(金) 08:51:05.68 ID:4w6URmLDO
とりあえず投下しゅーりょーです

次の上映時間は14時頃になります
257 :>>1っちまうんです :2011/02/25(金) 14:09:13.45 ID:4w6URmLDO
では投下します。
258 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/25(金) 14:10:21.57 ID:4w6URmLDO


バキバキバキ、と背中の氷の翼が音を立てて崩れていく。一方通行の腹を貫通した剣も同様に、粉々に崩れる。
どれもこれもが、月明かりに照らされて星の瞬きのように輝いていた。

頭を撃たれた衝撃で、背後へ倒れるように落下する第0位の様子を、一方通行は冷めた瞳で追うだけで動かない。
彼は意図的に黒い翼は霧散させると、吐き捨てるよう悪態を吐いた。


「何が0番目だ。学園都市が決めた序列の数字付けなンざ今更勉強し直す気にもなンねェが、数学でさえ……もう少しマシな答えを出しやがンぞ」
259 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/25(金) 14:11:11.82 ID:4w6URmLDO


言い終えた途端、大量の血を吐き出す。即座に口元を押さえ、眉を顰める。
蓄積されたダメージが確実に一方通行を蝕んでいる証拠だ。
今でさえ腹部に刺された穴をベクトルで操作で血を最小限に抑えているが、それも時間の問題。
電池の残りも気になる所。


「クソッ……予想以上に喰らい過ぎた。さっさとあの医者に―――」


彼が踵を返して、カエル顔の医者が居る病院にこのまま直行する寸前、……一方通行の世界が“反転”する。
ビルが視界の端から端へ移動して行くのを視認。―――落下しているのだ。
260 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/25(金) 14:12:06.23 ID:4w6URmLDO
気付いた時は既に、彼はそのまま地上へ叩き付けられた。

戦車に備える大砲が発射したような轟音が辺りに響き、アスファルトに小規模のクレーターが無人の大十字路に具現する。
ビリビリと地響きが数秒間、木の葉がざわめきビルの窓が揺れ、歪んだ地盤に信号機の体重が傾いて転倒。

何が起きたか判らない一方通行は、朦朧とした意識の中で手探りをするよう必死に目を動かす。


(な、に……が……?)


もぞりと手足を這い、上体を起こそうと、感覚が殆ど無くなった両手に力を入れる。
しかしそれも虚しく、なかなか思うように働いてくれない。
奥歯を食い縛り、ひとまず『治癒』を優先すべきと判断。
幸いな事に頭は無傷のようだ。
演算が可能ならば幾らでも回復は可。
261 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/25(金) 14:12:53.12 ID:4w6URmLDO


「保険を掛けて正解か。仮面は右上部破損だが、戦闘の際に問題は見られない」


と、そこに頭上から声。
今夜何度も聞いた癪に障る、声。


「テ、メェ、生きてやが……ごふっ」

「無理に喋らない方が賢明。反射を発動させていたようだが、頭部の代わりに臓器は幾つか破裂を被っているはず」
262 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/25(金) 14:13:37.46 ID:4w6URmLDO


相変わらずの口調で、一方通行の状態を丁寧に説明。
つまり一方通行が空から地上へ落下の原因は、彼が引き起こしたという事。

歯軋りする一方通行を目に、第0位は近付きながら口を開く。


「弾丸を発砲した瞬間、悪いがオリジナルの記憶に有る『一方通行』の情報データを適用した。
実に勿体無いが『ベクトル操作』を行使。故に自分は生存。仮面は一部破損したがな」


一方通行の下まで辿り着き、僅かに惘然とした口調を含む声色を感じさせた。
今まで業務化したような印象とは違う、人間味が滲み出る様子。
263 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/25(金) 14:14:30.78 ID:4w6URmLDO

見上げて視認した第0位の顔面は、破損で露わになった片目。
光を宿さない空虚の瞳は、皮肉にも『超電磁砲』のクローン体を窺わせる。


「自分はオリジナルから情報データを適用、一度でもそのデータを上書きした場合、同じ物は行使不可だ。
しからば『神の力』と『ベクトル操作』が使用不可。再び培養液に入るまでな」


カチャリと銃弾を装填。銃口は地を這い蹲る一方通行の頭部に矛先が向いていた。
264 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/25(金) 14:15:36.76 ID:4w6URmLDO


「潔いな。逃避手段を行使する様子が見られない」

「……そォだな。まずテメェから逃げ切れるとは思えねェ。どォせストーカーみてェに纏わり付くンだろ?
無関係の一般人を巻き込むほど三下には堕落してねェンだよクソッタレ」


存外、饒舌に話す。

覚悟を決めたからか、悟ったからか、些細な事なのに自分でも判らない。
ロクな死に方をしないとは感じていた。
一万以上の『人間』を無惨に殺しておいて、よくノウノウと現在まで生き残れたモノだと今でも思う。

決して償えきれない罪。
絶対に下されるだろう罰。
265 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/25(金) 14:16:58.26 ID:4w6URmLDO

一方通行は思う。振り返れば、憎くも反吐が出る人生だったと。

何度、この手で人の血を浴びて罪を蓄積してきたか。
何度、罪滅ぼしと幼い少女とクローン体を護ってきたか。

自分の手では護りきれない時は、様々な人間の手により援助を受けた。
カエル顔の医者。芳川桔梗。大食いのシスター。そして……ヒーロー。


嘲笑もしたくなる。自分の行為に腹を抱えて嗤い、唾を吐きたくなった。

―――なにやってンだよ俺、と。
266 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/25(金) 14:18:30.85 ID:4w6URmLDO


護ると決めた。
死なせないと決めた。
確かに、結果的に彼女らは生存した。

だが、所詮『結果論』にしか過ぎないのも事実。
無傷で済まない場面も……存在した。


この世界のクソッタレな神様は、必ず一万通行には微笑んでくれない。
きっとそれは死んでも変わらないだろう。地獄に堕ちようが天国に昇ろうが、関係無い。
悪魔に取り憑かれた自分に、穏やかで平和な日々は訪れはしない。
267 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/25(金) 14:19:49.12 ID:4w6URmLDO


しかしその反面で、束の間の出来事だが、『光』を浴びていたのもしかり。

絶望と暗闇しか存在しない人生だったが、打ち止めという『希望』が居た御陰で、僅かだが、一方通行は光を浴びていた。
ヒーローという人間が居たから、拳を交えながらも気付けた真実も有った。



確かに人生の大半は、辛く悲劇の連続で、笑えない事ばかりだ。
けれど―――ほんの些細な幸せが存在したのも、しかり。
268 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/25(金) 14:20:33.47 ID:4w6URmLDO


逃げた所で、周りを巻き込むのは確実。電池を充電するにはそれ相応の場所が必要。
加えて受けた傷。治療するには病院という施設が必須。そこには必ず人が居る。巻き込まない保障は何処にも無い。

この戦闘にミサカ達は直接関与していない。逃避して目標が自分でなくミサカに変わる恐れは無いとは言い切れない。
なら、ココで首を差し出してアイツらが助かるのならば、喜んで死んでやろう。


口を吊り上げるように狂笑する。
最後も彼らしいと語っておこう。

その狂った笑みが……些か穏やかに見えたのは、目の錯覚でないことを願いたい。
269 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/25(金) 14:21:18.35 ID:4w6URmLDO




……。




…………。




………………。




―――?
270 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/25(金) 14:22:06.25 ID:4w6URmLDO


(なンだ、まだ生きてンのか?)


薄ら閉じた瞼を開ける。事態は依然として一つも変化は無い。

銃口は突き付けられたまま。装填もしたはずだ。後は引き金を引くだけ。
なのに……第0位は動かない。
271 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/25(金) 14:23:58.19 ID:4w6URmLDO




「……問題が生じた」




静かに言葉を発する。
まるで独り言のように。




「上層部の人間が自分のためにココら一帯、全ての人間を一時的に移動させたと耳にしたが……」




心の底から困った様子で。
どう対処すべきか判らない有り様で。




「どうやら―――乱入者のようだ」




破壊音。拳銃が粉砕される。
カランと三本の鉄物質が転がる。




「なン……?」




地を這い、顔を上げて視認。
目を見開き、驚愕した。
272 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/25(金) 14:26:07.68 ID:4w6URmLDO





―――おそらく本当に。





「ココで殺害しても、彼女は自分を赦さないと予測。戦闘は避けられない」





―――この世に存在する神様は。





「自分は彼女を殺害も構わない。難儀の必要も皆無。
だが、果たしてそれで納得か?」





―――俺の事を嫌ってるらしい。





ノースリーブのシャツ。
紺のジャージ姿。
走って来たのか、息切れして。

手には『鉄釘』。
前髪は『紫電』を撒き散らし。











「そこで、何してるのかな? ミサカにも判るように説明してくれると、嬉しいんだけど」











番外個体(ミサカワースト)。
幸か不幸か、怪物同士の戦闘に乱入する。
273 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/25(金) 14:31:17.17 ID:4w6URmLDO
投下、終了です…
正直、二個目の方は今さっき出来ましたorz

とりあえずまだ科学が続きます

勝手な自己見解入ってすみません
274 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/25(金) 14:33:55.98 ID:kxgGtuxAO
乙ッ
275 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/25(金) 15:04:32.37 ID:rWUkQrTAO
こういうの見ると新約の発売が待ち遠しくなる
276 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/25(金) 15:55:56.71 ID:Pb5cI6LG0
 一瞬、あの操車場の夜を思い出してしまった。

ていうか新約が出ても勿論続けてくれますよね!?
277 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/25(金) 16:14:02.17 ID:9JnjibY50
おつー
278 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/25(金) 20:04:42.25 ID:A2FwiQA4o
乙です

続きwwktk
279 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/26(土) 00:14:30.62 ID:fGOZit6b0
もうこれが新約でいいや
1乙
280 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/26(土) 10:44:36.19 ID:W+WOzVkp0
乙!!
281 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/26(土) 18:07:40.03 ID:+8IzK56f0
乙〜
282 :我。>>1。 :2011/02/27(日) 08:15:26.74 ID:KpoO8qEDO
投下しますね

今回はめっちゃ書いたので長いです

後、質問にありましたが発売しても続けます
かぶらないことを祈るばかりなのですが…
283 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/27(日) 08:16:27.82 ID:KpoO8qEDO


一方通行は我が目を疑う。
驚愕と絶望。
それだけが彼を占める。

その姿を見間違えるはずがない。
その声を聞き誤るはずがない。

けどこの時ばかり、幻覚であって欲しいと願った事は無い。
幻聴であって欲しいと祈った事は無い。


「何、してンだよ、オマエ……?」


何で。何故だ。どォして!
俺を追い掛けて来た―――!!?
284 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/27(日) 08:17:04.70 ID:KpoO8qEDO


「変だと思ったんだよねー。コンビニの時から妙に思い詰めた辛気臭い顔しちゃってさ」


彼女は心の底から呆れるように。
それでいて殺意の籠もった瞳を宿し。


「言っとくけど、打ち止めも気付いてたよ? あの人の事だから、って片付けてたけどさ。正直、ミサカは黙って居られるほど大人じゃない」


―――矛先は第0位に向けていて。
285 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/27(日) 08:17:58.83 ID:KpoO8qEDO


「逃、げろ……」


番外個体は足を止めない。
何時でも飛ばせるよう指の間に鉄釘を挟み、紫電を撒き散らす。
一方通行が地に伏せてると言うのに、彼女の闘争心は消えない。
勝敗何て目に見えている。するまでもないだろう。
差など歴然としているのだから。
286 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/27(日) 08:20:19.91 ID:KpoO8qEDO




―――彼女らを夜に出歩かせない事だ。




エイワスの言葉が、想起する。




―――どういう事かどうかは実際に体験してみなければ判らない事さ。




漸く、気付いた。
遅過ぎた。甘過ぎた。
打ち止めと番外個体が完全に熟睡するまで自宅待機するべきだったのだ。


いざとなれば自分が側に居てやれば良い? フザケるな。
この怪物を前にして、それは意味を成さない。


今度こそ本当に、番外個体の命は保障されなくなる。


「バカ野郎ォッ!!!! 逃げやがれェェェェッッ!!!!」


悲痛な叫び。声は殆ど掠れていた。
言い終えた途端、血を吐き出す。


お願いだから。一生に一度だ。

これ以上贅沢言わないから。
これ以上何も望まないから。
我が儘も放縦もしないから。

土下座だってしてやる。
パシリだってしてやる。

好きなだけ殴らせてやるし、願うなら死んでやっても構わない。
だから……だからお願いだから、逃げてくれ。


彼女の足は―――止まらない。
彼女は耳を―――貸さない。
彼女は―――取り合わない。
287 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/27(日) 08:20:53.63 ID:KpoO8qEDO


「攻撃手段を用いるのを確認。優先すべき対象を変更。迎え撃つ」


第0位が動く。学ランの内ポケットから新たな拳銃を取り出す。
一方通行を跨いで、空虚な瞳は番外個体を射抜き、明確な敵意をぶつける。

彼女はくしゃりと表情が歪み、悪意の剥き出しの笑みを浮かべた。
鉄釘を数本、発射。


「ミサカに銃弾は当たらない」


鉄釘をいとも簡単に避けたヤツの動きが、止まる。
288 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/27(日) 08:21:42.83 ID:KpoO8qEDO
様子に調子を良くした彼女は、捲くし立てた。


「弾には鉄物質が含まれてる。そしてミサカはオリジナル譲りの電撃使い。なら話は簡単でさ、ミサカ自身に磁力を掛けて限定で磁気力を働かせればいいの。
あひゃひゃ! 銃弾限定でミサカと弾を同種の磁極にしたら、ミサカが動かなくとも弾が勝手に避けてくれるんだよねぇ!!」


物によるが共通する部分は、弾丸は鉛が主要だという事。
例え御坂美琴のように砂鉄を自由自在に操れなくとも、“磁力で銃弾の軌道を逸らす”程度なら容易い。
289 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/27(日) 08:22:41.57 ID:KpoO8qEDO

しかし第0位は意に介さない。
雑用をやるような有り様で、弾丸を装填。銃口を番外個体に向ける。


「要はゼロ距離で撃てば問題皆無。速やかに行動不能にさせる」

「ミサカの話聞いてた? 近付こうが例え空間移動しようが、ミサカが少しでも離れれば意味無いんだよ?」

「嗚呼。承知済みだ」


“BANG”と。引き金を引いて、音が響き渡った。




―――番外個体の『背後』から
290 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/27(日) 08:23:10.68 ID:KpoO8qEDO


「え……?」


振り返り、肩を見る。
弾丸は後ろから肩を穿つ。
背後には第0位が銃を構え、悠然と立っていた。


「い、つの間に……がはッ!?」


彼は番外個体の言葉に応じない。
拳を鳩尾に減り込ませるよう放ち、くの字に曲がった彼女の髪の毛を乱暴に掴み、アスファルトへ顔面から叩き付けた。
291 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/27(日) 08:24:21.16 ID:KpoO8qEDO


「ご、が……ぁっ」

「身柄の拘束完了。呆気ないな」


暴れ出す予防線として、両腕を背中に締め上げる。後頭部には拳銃を構えた。弾丸の装填はしたし、後は引き金を引くだけ。
ただ、それだと非効率的だ。何が非効率? 簡潔に言えば面倒でしかない。

そう、例えば―――治癒が進んで何とか立ち上がるまで回復した『一方通行』とか。


「離れろ……」

「存外に早かったな。しかし手遅れだ」

「離れろっつってンだろォがァ!!!!」
292 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/27(日) 08:25:17.39 ID:KpoO8qEDO


予め拾っておいた鉄釘をベクトル操作で、拳銃と頭蓋に突き刺す。それでいい。
だが、彼が行動に移す前に第0位は言葉を放った。


「“蜃気楼”。先刻の現象だ」

「なに……?」

「『ステイル=マグヌス』……これでは不可解か。言わば番外個体は蜃気楼の自分と対峙していた。
だから背後に居る自分に気付けなかっただけ。そう解釈して構わない」

「それがどォしたってンだ」

「今見てる光景、本物か?」


―――成る程、そォきたか。
293 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/27(日) 08:26:32.82 ID:KpoO8qEDO


一方通行は吟味する。視線を配らせる限り、彼らと同様の姿は無い。
だが第0位には『能力を無効にする』能力と、『空間移動』を引き起こす能力が備わっている。もしかしたら何処かへ空間移動した可能性も否めない。
大気のベクトル操作の応用で居場所を感知しようにも、能力を無効にされているので意味を成さない。

そして一番恐ろしいと感じる点。
仮に鉄釘をベクトル操作で発射して、蜃気楼が本当で鉄釘が外れた場合。番外個体の命が安全であるかどうか。
万が一、第0位の拳銃が番外個体の後頭部をブチ抜く事も考えられる。

そんな非情な事はさせられない。
そんな悲劇を繰り広げて堪るか。




「状況を察したか。
―――さて、取引の時間だ」




静かに第0位は告げる。
294 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/27(日) 08:27:33.23 ID:KpoO8qEDO




「一方通行が買う物は彼女の命」




番外個体。体中の苦痛に耐えているのか、片目を瞑って歯を食い縛り、抗おうとするが虚しく儚い抵抗に終わっている。




「代わりに一方通行が売る物は自信の命」




自らの命を引き替えに、番外個体には手を出さない。
信憑性など絶無だ。けれど反論する立場でも無いのも事実。


「案ずるな。本来の殺害対象は『一方通行』だ。彼女に危害を加えない、安否は保障しよう」


ココで嘘を吐く皆無だろう。
得する理由が無いからだ。

つまり、一方通行が選択する道は一つしか存在しない。
295 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/27(日) 08:28:20.47 ID:KpoO8qEDO


「……」


残り一発。弾丸を装填。
銃口の矛先は……自らのこめかみ。


「……ハッ」


いざとなると、恐いモノだと実感する。自然と震えはしない。
何時か背中を刺されるとは思念していたが、自分から死を迎えるとは何と由々しき事態だろう。
296 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/27(日) 08:29:29.79 ID:KpoO8qEDO


ふと、一方通行は昔を思い出す。そもそも悲劇の幕開けの切っ掛けは些細な喧嘩だった。


自分に突っかかって来た人間は纏めて一掃した。
喩え戦争するかのような武装を身に纏った連中だろうと関係無い。
存在したのは徹頭徹尾の『破壊』だけ。

己に宿したのは“傷付け”、“滅亡”しか齎さない能力である事を、幼い身にして把握したのだ。
そして彼は学ぶ。この能力が争いを生むなら、争いが起きなくなる程の『無敵』の存在になればいいと。
297 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/27(日) 08:31:06.18 ID:KpoO8qEDO


そんな歪んだ彼を変えたのが、後に出会う『打ち止め』である。
彼女は一方通行を一人の人間として接し、好意を向けて、歪んだ彼に希望の光を浴びせ、見事救い上げた。
彼女と関わって、まだ半年も経っていない。にも拘わらず様々な出来事が有った。
思えば、目まぐるしい日々の連続。全部が全部、一片たりとも欠けてはならない掛け替えのない日常。

木原数多の事件も。
暗部に堕ちても。
垣根帝督と殺し合っても。
エイワスに圧倒的敗北を突き付けられても。
ロシアでヒーローと再戦を叩き込んでも。

どれほど悲劇的な事だとしても、一つでも欠陥してしまったら今の自分は居ない。
298 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/27(日) 08:32:46.46 ID:KpoO8qEDO


そりゃあ未練が無いと言えば嘘になる。
まだまだやらなければならない事何て腐るほど存在する。

しかしそれでも、護りべき対象を自らの命と引き換えに傷付けないと言うのならば、構わない。






「フザケ……な、いで……」






―――そんな時だ、思考を遮るように言葉が耳に届いたのは。






「フザケてんじゃねえぞ!! こんのクソもやし野郎がァッ!!!!」




―――番外個体……?
299 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/27(日) 08:33:48.02 ID:KpoO8qEDO


声の矛先など、誰に向いているか言うまでもない。
彼女は声を荒げ、怒りの籠もった瞳をぶつける。眉間を顰め、歯を食い縛り必死に叫ぶ。


「一人で勝手に死のうとしてんじゃねえよッ!! あなたが死んでミサカが生き延びて、ハッピーエンドってかあ!!? 自己満足に浸るのも大概にしろよ第一位ッ!!!!」


番外個体のセリフは止まらない。
激情と激昂が彼女の中で渦巻く。
300 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/27(日) 08:34:46.34 ID:KpoO8qEDO

彼女には、今一方通行が誰と対峙して、この夜に何が起きているのか把握しきれない。
何故かミサカネットワークとの回線は切断されているし、怪盗気取りの仮面野郎は阿呆みたいに強いし、正直困惑気味だ。


だけど、そんな彼女にも判った事が有る。


あの一方通行がコメカミに銃口を突き付け、自殺を図ろうとしている事。
ミサカのために、ミサカの命を救うために自ら命を絶とうとしている事。

見逃す訳にはいかない。
許す訳にもいかない。

だから叫ぶ。吼える―――ッ!!
301 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/27(日) 08:35:54.65 ID:KpoO8qEDO


「そんな事でミサカが喜ぶと思ってんの?!! 人に散々治療したり活路を見出せとか生き延ばさせたくせに、自分の命は容易く投げやがって!! ザケンなあああああッ!!!!」


後半は殆ど掠れていた。
ミシミシと体が悲鳴を上げる。
無理に拘束を解こうとしているからだ。
見兼ねた第0位が口を挟む。


「……警告だ。それ以上無理すると骨が粉砕又は折れるぞ」

「五月蝿いッ!!」


ピシャリと言い放つ。
話にならんと第0位は首を振る。
302 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/27(日) 08:37:09.23 ID:KpoO8qEDO

彼女の次第に声色は震え始め、



「許さない。あなたを犠牲にしてミサカが生存なんて許さない……ッ」



ポタ、と。
水が地面に滴る音がした。
音は止む事無く、寧ろ増えていく。

一方通行は驚愕する。その光景に、目を見開け、ただただ凝視する他無い。



「ぎ、ぎゃはは……。こんな機能、ミサカに付いてたっけ? ―――『涙』、なんて……」
303 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/27(日) 08:37:59.67 ID:KpoO8qEDO


本人さえ信じられないという様子。
彼女はミサカネットワークから『負の感情』を拾いやすいよう脳を調整されているはず。
故に取り付けられていないか、有っても可能性は限り無く低いだろう。

なのに、『涙』が流れた。
これは奇跡と言っても過言ではない。


「何、これ……。すっごいやる瀬無いんだけど。切ない、鬱陶しい……」


涙を堪えようと、必死に抑え込む。でも、一向に涙は止まってくれない。
逆に抑え込めば抑え込もうとする程、奥底から涙は洪水のように溢れていく。
体の作りは理不尽なものだ。幾ら涙を止めようと拭っても、無尽蔵に流れ出る涙を止める手段にはならない。
304 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/27(日) 08:38:57.47 ID:KpoO8qEDO

番外個体は初めての経験に戸惑うばかりで、そして何故か、一方通行に対する悪意が消えていくような気がした。
震える唇を噛み締め、ゆっくりと口を開ける。




「ミサカはあの日、本当なら死んでた。死ななければならなかった」




ロシアの戦争時。

第三期製造計画(サードシーズン)。
一方通行を『破壊』するためだけの計画。そこで生まれたのが番外個体。
305 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/27(日) 08:40:30.69 ID:KpoO8qEDO




「なのに生き延びた。あなたが、治療してくれたから。行き場を失って使い潰されるはずだったミサカを、あなたは活路を見出せと言ってくれた……」




打って変わってしおらしく。
それでいて淡々として口調で。
相変わらず大粒の涙を流していて。




「ミサカはっ、あなたのお陰で生存したんだからさ。今だから言えるけど、心の奥底では感謝してるんだからね……?
だけど、だけど……ッ!! あなたが死んだら、意味無いじゃん!!」




段々と溢れんばかりの激情を露わにする。
普段の彼女とは思えない。それこそ別人なのではないかという程、悪意が全く無い状態。

もはや、街中を歩く普通の女の子と変わりなかった。
306 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/27(日) 08:41:47.53 ID:KpoO8qEDO




「無理矢理ッ、押し付けるような形でミサカの寿命を延ばしたくせして、あなたは勝手に死ぬなんて……絶っ対に許さないからッ!!」


泣きじゃくるその姿は、幼い少女にしか見えしかなった。









「お願いだからっ!! ミサカを、独りに、しないでぇ……っ」








番外個体は地にへばり付いたまま、初体験の涙に溺れる。会話を交わせそうにないだろう。
307 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/27(日) 08:42:50.48 ID:KpoO8qEDO

一方通行は、愕然とする他無い。
言葉など出るはずがない。
彼は天を仰ぐ。銃口はコメカミ。
嘲笑するように呟く。



「……やっぱオマエ、俺を困らせる事に関してはピカイチだ。柄じゃねェ。柄じゃねェなァクソッタレが……」



大きく溜息を吐く。空に浮かぶ月を眺め、彼は儚い願望を告げる。







「生きてェ。畜生がァ……」
308 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/27(日) 08:44:11.98 ID:KpoO8qEDO


折角覚悟を決めたのに。
見事粉々に砕かれてしまった。
これでは修復の仕様が無いではないか。
不覚にも、まだ生きたいと思ってしまったのだから。




「未練何か幾らでもあンだよ。
あの三下にもォ一度再戦申し込ンでブチのめしてェし、打ち止めや番外個体含む妹達全員の最後を見届けてェし、この腐れきった街もぶっ壊してェ」




一体どうすれば、ハッピーエンドを迎える?
どの手段を用いれば、あのヒーローみたいに危機的状況を打破出来る?

どうすれば、どうすれば……。
309 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/27(日) 08:45:07.04 ID:KpoO8qEDO




(……オマエなら、どう切り抜けるよ)




あのヒーローなら。
こんな場面も屈折せず、助け出すだろう。鋼の精神と諦めない信念を持ち合わせている彼なら。

だが、幾ら思考しても、一方通行は彼にはなれない。到底追い付く事が無い。
矢張り、自分には悲劇が似合っているのだろう。そんな現実、ブチ殺したくなるのが正直本音だが、致し方無い。
310 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/27(日) 08:46:29.86 ID:KpoO8qEDO




「オマエの言いたい事はよく判った。……でもなァ、それでも俺はオマエに、生きて欲しいンだと、思ってる」




誰かが言っていたような気がする。
何時だったか、とても局面の時に聞いた気がする。




(あァ、そォだ。オリジナルが言ってたンだっけな……)




御坂美琴。10032回目の実験の時。彼女は述べたのだ。
少し、ほんの少しだけ、彼女の気持ちが汲めたような気がする。
311 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/27(日) 08:47:23.11 ID:KpoO8qEDO
もしあの世で再び出会えたら、謝ろう。許される罪ではない。理解している。
それでも謝ろう。電撃を飛ばされようが砂鉄を操られようが、構わない。
この気持ちを忘れたくはない。
一歩でも前へ進める鍵となるから。





「――――ッッッ!!!!!!!!」





番外個体が今までにない悲鳴を上げる。それはもう言葉になって無い。
彼を少しでも気を引かせ、ガムシャラに食い止めようとする手段に過ぎない。
312 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/27(日) 08:48:21.78 ID:KpoO8qEDO

そんな彼女の努力も虚しく、一方通行は微笑む。優しい、少年の笑み。
何時か打ち止めが見た、去り際に放った表情と酷似していた。

一方通行は番外個体、そして打ち止めを胸に刻み込み……静かに引き金を引く。










「諦めてんじゃねえよ最強ォォォォォおおおおおおおおおおッッ!!!!!!」










―――その、直前だった。
313 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/27(日) 08:49:51.09 ID:KpoO8qEDO


第0位が声に気付いて、背後へ振り返ろうとするが、




「超こっちです」




番外個体から手が離れ、拳銃を飛ばされ、世界が反転した。
目で確認もままならない状態で、彼は大十字路へ投げ飛ばされる。




「今です浜面!!」




宙を舞う第0位に視界で確認出来たのは、ボブカットでワンピースのような衣服を身に纏う少女と、―――自分に向けて突っ込んで来るワゴン車だった。
314 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/27(日) 08:53:13.10 ID:KpoO8qEDO




「ハッハー!! 天国へご招待だぁーっ!!」




鈍くて重い音が響いた後、流れるままに第0位はノーバウンドで十メートル以上、吹き飛ぶ。




「な……?」




ポカンと。呆けてる一方通行を余所に、ワゴン車の扉が開く。
中から出て来たのは少年が一人。




「助けに来たぜ一方通行」




浜面仕上。エイワスの言う、もう一人のヒーロー。
一瞬だけ、神様が一方通行に笑みを浮かべたと、感じ取れた。




「何言ってんですか、超キモイです。さっさと車へ運びますよ」

「せめてココは格好良く決めさせてくれよっ!!」
315 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/27(日) 08:57:42.00 ID:KpoO8qEDO
投下終了です。


そしてすいませんすいません
色々思案した結果です

ミサワを素直にさせたい

うーんと悩む

カキカキ

どうしてこうなった



最後の彼には「天国へご招待だ」と言わせたかったんです、ハイ
316 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/27(日) 09:34:19.54 ID:N33KxAem0
おつ!浜面かっけなぁwwwwwwwwちくしょうwwwwww
317 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/27(日) 11:25:34.60 ID:O9Y/eVkIO
浜面かっけえのになんか締まらんよなw
318 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/27(日) 11:54:03.56 ID:e/ZCkwRm0
乙!新生アイテムか!胸熱

ところで1の中では
第0位の読みはどっち?
ダイレイイ?ダイゼロイ?
319 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/27(日) 12:48:15.88 ID:A5G3liAG0


浜面いいよ!
320 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] :2011/02/27(日) 13:14:50.63 ID:AHPF54b/0
  乙
321 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/27(日) 14:22:55.07 ID:LZ6GoChy0
 ったく……かっこつけてんじゃねえよヒーロー共にワースト……
ていうかあの操車場やら暗部での出来事やら色々ごっちゃになって微妙に涙腺がやばいんですけどww

 そしてノーバウンド キター!!
新約来ても続けて下さるようで何よりです!
322 :>>1です [saga]:2011/02/27(日) 18:08:44.26 ID:KpoO8qEDO
>>318さん
読み方としては『だいぜろい』です
323 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/27(日) 20:33:59.47 ID:geGDlGBS0
>>322
だいぜろい了解

れいいと読んでたことは秘密だ!
324 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/28(月) 18:16:47.72 ID:09ZpRVov0
つーか第0位何かに似てるなと思ったらアレだ
セルだ

325 :い、>>1ですっ! [saga]:2011/02/28(月) 19:22:34.87 ID:I71bx87DO
セル、ってドラゴンボールの?
似てますかね……?


とりあえず何か随分早く出来たんで投下します
326 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/28(月) 19:25:22.49 ID:I71bx87DO


「オマエ、どォして……?」

「事情は車の中でだ!! 今はとりあえず逃げるぞ!!」


一方通行の下まで駆け寄り、担ぐように肩に腕を回す浜面。
何とか立てるとは言え、重傷を負った怪我人には変わりない学園都市最強。
よもや走って来いと言う訳にもいかないだろう。
327 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/28(月) 19:27:13.51 ID:I71bx87DO

先に番外個体を車内に送った絹旗が、窓から身を乗り出して叫ぶ。


「浜面!! 超早くして下さいっ!! キモくてノロマ何て救いようがありませんよ!!」

「うるせえ!! てめえは勝手良い能力が有っていいよなっ、俺は無能力なんだぞチクショー!!」


必死に言い返すが、若干歩く速度を上げる当たり彼も必死なのだろう。

漸く辿り着いて、一方通行を後部座席に移動させる。
後部座席と言っても、運転席と助手席以外は全体が平らに広がっているため、席とは程遠いかもしれない。
328 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/28(月) 19:31:08.94 ID:I71bx87DO
見届けた浜面は即座に運転席へ。扉を閉めつつ後部座席に居る二人に向かって声を張る。


「滝壺!! 絹旗!! 二人の治療は任せたぞ!!」

「言われなくても超判ってますよ。浜面は気にせず運転に集中してて下さい」

「はまづら。こっちは任せて」

「っしゃあ!! 最初から飛ばして行く、舌噛むんじゃねえぞ!!」


ギュイン!! と急速にタイヤが回転して発進。
ワゴン車は無人の十字路を右に曲がって走行し、闇に消えていく。
329 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/28(月) 19:32:16.57 ID:I71bx87DO
窓を駆け抜ける夜の街は、明かりが一つも無い。ビルも飲食店も、人影さえ絶無である。
一方通行は窓から覗いて見える景色に、事の重大さを再確認。上層部は本気なのだと。

大分、車の揺れが安定してきた頃、まず絹旗が動いた。


「では消毒や包帯を巻きますから、上着を脱いでもらっていいですか?」

「……ミサカは平気だから、あの人を……」


可愛らしいカエルのマークがプリントされた救急箱を取り出す絹旗に、番外個体は首を振って拒否。
顔を動かして一方通行に。番外個体の顔色は優れない。彼の事を心の底から気遣っているらしい。
330 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/28(月) 19:33:19.51 ID:I71bx87DO
凭れ掛かり暗闇の夜景を眺めていた一方通行。話を振られ、絹旗と番外個体の視線が集まった事に対し、彼は気怠そうに答える。


「俺はいい。応急措置は能力で済ませてる。大体、ンなちっせェ箱で治せる程、軽い傷じゃねェしな」

「む、そうですか。という訳みたいなんで、宜しいでしょうか?」

「……うん」


頷いた番外個体は上着を脱ぐ。後ろへ回った滝壺に補助されつつ右腕を抜き、左腕を抜く。
上着の下は、ノースリーブの薄手のシャツ。結構露出度が高かった。
曝け出した肩や、ふくよかに育った胸も、世の男性が目のやり場に困りそうな、はだけた姿。
331 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/28(月) 19:34:10.00 ID:I71bx87DO


「の、ノーブラですか!?」

「……寝間着なんだから当たり前じゃん」

「だ、だ、だとしても出掛けるなら付けません!?」

「いや……面倒臭かったし。あの人を揶揄するのにもいいかなーって思ってさ。こう、胸を押しつけて」

「ぶふっ!!」


誰よりも逸早く反応を示したのは、矛先を向いていた一方通行でなく運転中の浜面。
意外とデカい声が出てしまったため、一方通行以外の全員の視線が集中した。狼狽する絹旗を放って置き、黙々と治療をしていた滝壺でさえ浜面に視線が行く。
332 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/28(月) 19:34:53.70 ID:I71bx87DO
バックミラーで有り様を見た彼は、出るわ出るわの背中に流れる汗状態である。


「……最低ですね。超最低です。死ねばいいと思います」

「きぬはた、それは私が困るからダメ。でも、他の女の人に見惚てれるはまづらは、流石に応援出来ない」

「うおーっ!! 嫉妬してる滝壺も可愛いが、違うんだよコレはーっ!!」


ぎゃあぎゃあ!! と喧しく騒ぐも、着々と番外個体の肩に包帯が巻かれていく。
最後は綺麗に可愛くリボン結びで、キュッと締めた。
333 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/28(月) 19:35:43.39 ID:I71bx87DO


「うん。できた」

「あ、ありがと……」

「いいよ。代わりに名前、聞いてもいい?」

「な、名前? 番外個体だけど……」

「み、みさか、わー……すと? 超長いですし呼びにくいです!」

「そんな事言われても……」

「略して『ミサワ』さん何てどうでしょう? 結構名案だと思うのですが」

「みさわ、みさわ……。うん、いいね」

「えぇぇー……、何かミサカの名前が定着しつつあるんだけど」
334 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/28(月) 19:37:02.86 ID:I71bx87DO


うむ、と一方通行は思考する。
番外個体には打ち止めみたいに教養よりも、コミュニケーション能力が必要なようだ。
現に今も何処か余所余所しさが感じられる。打ち止めは人懐っこい性格のお陰か、初対面でも直ぐに打ち解けられるのだ。

打ち止めには教養。
番外個体にはコミュニケーション。


(一度二人とも、どっかの学校に放り込ンでみるか? いや、それだと変な野郎に絡まれる可能性が否めねェ)


彼の教育の悩みは尽きない。
立派な大人に育てるために、今宵も親代わりの一方通行は案を出す。
335 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/28(月) 19:40:04.57 ID:I71bx87DO


「……あン?」


唸りながら思考を巡らせていた彼だが、突如頬に何か触れる感触。故、思考は中断されて現実に戻される。

目の前に絹旗達と雑談していた番外個体が迫っていたからだ。頬に感じる感触は彼女が片手を宛行っている。
ジッと一方通行を見つめて、手を一向に離す気配は無い。くすぐったい感覚に囚われ、見兼ねた一方通行は尋ねる。


「どォした?」

「……っ」


問われた途端、彼女はじわっと涙を浮かべて―――一方通行の首に両腕を回して抱き付いた。
336 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/28(月) 19:42:10.93 ID:I71bx87DO
突然の事に驚愕し、どうしたらいいか判らないので、彼は不覚にも狼狽するばかり。
絹旗や滝壺、運転中なので音や声で判断出来た浜面も二人に集中した。

先刻のような大粒の涙を流してないが、彼女は涙声を小さく漏らす。







「―――良かった……っ。ホントに、生きてて良かった……!!」








震える声色で、声量も微かで聞き取りづらかったが……断面的でも汲むには容易だった。
337 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/28(月) 19:46:02.48 ID:I71bx87DO
己の血で汚れていない手で、彼女の頭を胸に引き寄せるように優しく撫でる。




「―――悪い。心配掛けた」




悪意が消失した少女は、愛しい彼の胸に抱かれ涙に溺れる。
彼女が本当の意味で救われた瞬間だった。
338 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/28(月) 19:47:59.64 ID:I71bx87DO


「……よくよく考えたら私だけですね。相手居ないのって。ミサワさんはそういうのじゃなさそうですけど」

「大丈夫。私はそんな一人ぼっちのきぬはたを応援してる」

「くーっ!! 何ですかその言い回し!? 勝者の余裕ってヤツですか!! 超悔しいですっ!!」

「その内きぬはたにも相手が見つ―――」


滝壺は言い終えない。唐突に彼女が背後を振り返ったからだ。
視線の先は第0位が居た方向。
絹旗は彼女に懸念の言葉を掛ける。
339 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/28(月) 19:51:00.23 ID:I71bx87DO


「どうしました滝壺さん? もしかして……」

「ううん、違うよ。……ただ、信号が一つ多いなって。これは……?」


二人の会話を聞いていた一方通行が、空いてる片方の手で運転席をド突く。
因みに未だ彼は番外個体の頭をナデナデ中である。


「オイ。そォ言えばあのクソ野郎は放って置いて平気なのか? 車なンぞに振り切れるとは到底思えないンだがな」

「え? あ、あぁ。その辺は心配要らねえよ。全力で行けとは言ってないし、時間稼ぎだからな」

「あァ? 誰が立ち向かってンだ?」
340 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/28(月) 19:52:49.08 ID:I71bx87DO



―――――――――――――――


―――数分前。


第0位はノーバウンドで十メートル以上、吹き飛ばされた後、更に五メートル転がり回った。
額からダラダラと血を流すも、彼は平然と立ち上がり、無機質な声を漏らす。


「……“声認識で適合、『浜面仕上』か。予想外の打撃を感受。損傷は頭部の傷と右腕右足の打撲。瞬時の結界が幸い”―――状態確認完了」


ワゴン車が去って行った方向を見据え、飛ばされた拳銃を空間移動で手元に戻す。
341 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/28(月) 19:53:43.70 ID:I71bx87DO
戦闘の際に差し支えや故障がないか確認。幸いな事に何処も異常が見当たらなかった。


「タイヤに一発。それで行動不能に―――」


彼は最後まで言葉を告げず、ステップで横に移動。
その刹那。第0位が居た場所に一筋の『閃光』が貫く。位置的に心臓だ。
一歩でも遅ければ、彼の命は刈り取られていただろう。

彼は無言で背後へ振り返る。










「あら〜ん? 完璧に死角から撃ったのに避けられちゃった。期待していいのかにゃーん?」
342 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/28(月) 19:55:56.75 ID:I71bx87DO



カツ、カツ、と。
反響して耳に届く音は、足音。




「まぁ? テメェは今聞き捨てにならねぇ戯言ほざいたから、容赦はしなくていいよねー」




時間が経つ度に足音の音量は増していく。
次第に姿を現すのは片腕も片目も完全回復した―――新たな怪物。




「うちの“仲間”に手ぇ出すなんざ良い度胸じゃねえか、あ゛ぁ!!?」




―――麦野沈利。
343 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/28(月) 19:58:13.11 ID:I71bx87DO


「“仲間”、か。情報とは異なるな。第四位は仲間意識は存在しないとデータには有るが。
……切っ掛けは浜面仕上と推測」


ズバァッ!! と閃光が迸った。

今度は顔面目掛けて麦野は『原子崩し』をぶっ放す。しかし当たる事は無い。
逆鱗に触れたのだろうか、彼女は据わった目つきで、第0位を睨む。
344 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/28(月) 19:59:11.60 ID:I71bx87DO


「……テメェのようなヤツが、気安く浜面の名前を呼んでんじゃねえよ。上層部の使い捨てが」

「戦力の差は歴然だぞ? そういう風に造られてるらしいのでな」

「ハッ!!」


一度鼻で嘲笑い、挑発的指を鳴らすと、







「ブ・チ・こ・ろ・し・か・く・て・い・ね」







表情が殺意に満ちる。
345 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/28(月) 20:00:15.35 ID:I71bx87DO
しかし、


「あぁ?」


直ぐ素っ頓狂な声を漏らす。
その瞳は第0位を見ていない。
彼の『背後』に向けている。
まるで、「何でテメェがこんな所に居るんだ?」とでも言うように。

第0位が彼女の視線を追うように、背後に振り返る前、








「ちょろっとー、会話の途中悪いんだけど」
346 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/28(月) 20:02:16.39 ID:I71bx87DO


ピン、と。何か弾く音。
麦野は無造作に横にステップして避ける。




「―――私も混ぜてもらっていいかしら」




彼は危険を察知し、空間移動。
その場から十メートル離れた場所へ移動する。

その直後、辺りに響き渡る轟音。
アスファルトを一直線に砕き。
空気中の水分が焼かれ水蒸気が生じる。




「あの子に色々聞いて、結構頭の中がこんがらがって困惑してんのよねー。……でもさ」




靡く前髪に伴ってバチッと放電。
347 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/28(月) 20:04:22.14 ID:I71bx87DO


「とりあえずアンタを片付けてから、本人に直接聞こうと思ってね。“第0位”さん?」




君臨するのは学園都市第三位―――御坂美琴。


彼女は携帯の画面を見せる。
そこには文字の羅列が並び、中には特筆するように『第0位』の文字。



「依頼内容までしか載ってないけど、アンタを片付けないと一方通行にゆっくり聞けないみたいなのよね」



緩慢と近付き、麦野の横に並ぶ。
麦野は反吐が出るように鼻を鳴らし、忌々しいと言わんばかりに嫌悪を示唆した。
348 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/28(月) 20:05:17.46 ID:I71bx87DO


「邪魔する気? テメェもブチ殺すぞ」

「相変わらず物騒過ぎるわよ。
安心して、私もまさかアンタが居るとは思わなかったし。
……でもさ、好都合じゃない?」

「あぁ?」


腕を組み、第0位を睨め付ける。
彼女は不敵な笑みを浮かべると、こう告げた。


「お互いの敵は同じ目の前に居るアイツ。戦う理由は違うにしても、背中を預けるぐらいは良いんじゃない?」
349 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/28(月) 20:06:57.18 ID:I71bx87DO


以前の麦野沈利ならば、取り合わなかっただろう。寧ろ閃光をぶっ放し罵って、敵に回していただろう。
だが今は違う。彼女は変われた。浜面仕上という人間の出会えたからこそ、変われた。

故に、




「……フンッ。邪魔だけはすんじゃねえぞ。足手纏いと感じたらテメェも殺す」




腰に手を当て、同様に第0位を睨む。彼女の言動に御坂美琴は苦笑を浮かべ、




「だから怖いって……。アンタが言うとシャレになんないのよ」

「ハッ! だったらそこらへんの隅で×××から小便漏らしてビクビク震えてな」

「……アンタ、躊躇いないのね」




当時、お互いは敵同士で戦闘を繰り広げていた彼女達。

それは今も変わらない。
だがそれも一旦休戦を終える。

彼女達は第一位を超える化物に立ち向かうため、互いの矛先を変更。

彼女らは倒すため、背中を預け合う。


―――ここに、学園都市最強の女子コンビが降臨する。
350 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/28(月) 20:10:38.03 ID:I71bx87DO
投下終了です


次は短くなると思いますが、魔術ですね
351 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/02/28(月) 21:08:06.27 ID:wosySqQ+0
おっつおっつ。
短くても魔術サイド楽しみ
352 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/28(月) 21:40:59.62 ID:GILu5tAlo
かつて敵だった者達の共闘展開熱いねぇ、乙!
353 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/28(月) 22:03:52.86 ID:G5nJLz3ao
乙 麦のんかわいいよ
354 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/28(月) 22:42:02.88 ID:WlFzQsCZ0
乙おつです
期待してる
355 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/01(火) 01:38:28.66 ID:zdenFes50
おっつー
魔術楽しみ!
356 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/01(火) 08:41:35.86 ID:GJK2r39N0
>>325
セルも各キャラの能力を使えてたからじゃない?
357 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/01(火) 08:47:09.01 ID:a9+M5haro
能力をインストールしてるって感じだからドラゴンボールよりはハンターハンターの団長に近いかな
でもセルって細胞クローンだから、そっちの意味かもね
358 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/01(火) 14:18:38.34 ID:bvMpMMb1o
幻想殺しで無効化したことがある攻撃は一回限り再現出来る
家に帰って新しい肉体になればノーカンとかかね

どことなくアンパンマン
359 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/01(火) 15:00:23.68 ID:qnQACibIO
なんという熱い展開
360 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/01(火) 18:28:57.48 ID:XofKkzrq0
セルに似てると書いた>>324です
困惑させてすまなんだ1さん。>>356-357のフォローの通りです
両名サンクス

これまでの敵との異質さ、かつての強敵や仲間の技を使うとこ、科学者の盲執、クローン技術
その辺を連想しました。口調やルックスじゃないよ

滞空回線を見たとき最初に思い出したのがゾナハ虫とドクターゲロ製の採取ロボだったり
瞬間移動と聞くと額に指をイメージしちゃうのは俺だけでない、はず
361 :そろそろ名前ネタが亡くなってきた>>1です [saga]:2011/03/02(水) 12:49:31.22 ID:WU43fT9DO
来てみたら凄いコトになっててビックリ
てかセルってそんな設定だったんですか…

まあ気にしないで下さい。何やら色々な者に被っちゃってますが、作ってしまった者は仕方ないのでガンガン突っ切ろうと思ってます


では投下します
例の如く時間掛けたわりに短いです
362 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/02(水) 12:51:41.10 ID:WU43fT9DO



上条当麻は至って普通の人間だ。

音速で移動する事も、一蹴りで十メートル以上跳躍する事も、空を飛翔する事も、手の数が多い訳でも無い。

彼の技法は極めてシンプル。
ただ、右手を振るうだけ。
人並みの速度で駆け抜け、右手一本で様々な敵と相対してきた。

そして現在彼は、




「ptl排jdtbmri除kg」




―――人生最大の強大な怪物と対立している。
363 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/02(水) 12:53:28.50 ID:WU43fT9DO


『神の力』。大天使の一角。

逆らおうモノならば、山を裂き大陸をも吹き飛ばす。その様は天罰の如く、五体満足では居られない氷の翼が降り注ぐ。



「―――」



だが、上条当麻は臆しない。
前へ出る。走り、駆け抜く。

天使だろうが天罰だろうが、山を裂こうが大陸を吹き飛ばそうが、その程度では彼の足枷にすらならないのだ。
364 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/02(水) 12:59:24.67 ID:WU43fT9DO

地を駆ける彼に何百の水翼が牙を向く。樹木を巻き込んで薙ぎ払い、地を穿つ。
しかし、上条当麻には一つも当たらなければ、傷一つも付かない。
先刻述べたように、別に彼は音速を超える速度で避けている訳ではない。



それは水翼に限った事では無かった。



山を斬り裂く氷の剣も、山を消し飛ばせる目視不能な手を翳す攻撃も、―――上条当麻は無傷で済ます。
だが、全て避けきっている訳ではないのだ。回避が不可能と感知したら右手で安全地帯を作る。
氷の剣は必ず右手で対処し、手を向けられたら地面に沿って転がって躱す。
要するに彼は最低限且つ絶対に回避可能な退避しか行っていない。
その反面、一撃でも食らえば即死覚悟の莫大なる破壊力を誇る。

確かに当たらなければ良いだけの話。しかし、


(だからといって、相手は世界を破滅に追い込む怪物。そんな理屈で適うワケが……ッ!!)
365 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/02(水) 13:00:47.53 ID:WU43fT9DO


ヴェントは歯を軋ませる。

聖人でなければ特殊な魔術の施しさえ無い、曰く付きの右手だけの少年。それ以外は何の変哲も無い一般人。
幾ら死線を巡って来ても、今回は桁が違う。もはや人間ではないのだ。



(なのに対等以上に渡り合えてる。このガキ……)



ハンマーを強く握り締める。
僅かだが、微かに震えていた。
矢張り自分も人間。恐怖は存在。
だけど、今となっては流れ者だが、曲がり形にもプロの魔術師。
何もしないまま、ただ歯を食い縛って見ているのは癪な話。
366 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/02(水) 13:01:53.24 ID:WU43fT9DO


見ればガブリエルが又しても氷の剣を携えていた。おそらく上条当麻に突進するのだろうか?
彼の顔色は焦りが感じられない。神経を研ぎ澄ませているようにガブリエルから目を離さないでいる。


ヴェントはハンマーを振るい、空気の鈍器を生み出す。射出される前に手首を返して振るう。二発目の鈍器が現出。
更にもう一度繰り返し、合計三つの鈍器が渦を巻き、一本の杭を形成する。


ガブリエルを見据え、―――射出。
367 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/02(水) 13:03:18.55 ID:WU43fT9DO



「!!」



上条当麻へ突撃の直後、氷の剣が砕け散る。だが既に音速の勢いで彼の懐に突撃しているため、今更速度は落とせない。
即座に手段を氷の翼へ変更して駆使しようとするも、―――彼の右手の拳が、直前まで迫っていた。



「ふっ!!」



どうして氷の翼が砕けたか、薄々と原因を推し量りつつ、好機と感じた上条当麻は右手を振り抜く。
そして見事にガブリエルの顔面へ右手がクリーンヒット。
下から掬って繰り出した所為か、野球ボールのように飛んで行くガブリエル。
368 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/02(水) 13:04:29.79 ID:WU43fT9DO

彼は一度、安堵の息を漏らして背後へ振り向く。



「サンキュ、ヴェント。助かっ―――ふごっ!?」



途端に上条当麻の顔面へ拳が決まる。側まで近付いていたヴェントが繰り出したのだ。
手加減とは言え、綺麗に決まったパンチは相当な威力(特に鼻)を持っていた。

結果、顔面を押さえながら身悶える上条当麻の姿が在ったと言う。……合掌。
369 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/02(水) 13:05:56.73 ID:WU43fT9DO



「勘違いすんじゃないわよ。本来ならアンタ何か、骨ごとグチャグチャの塊にしてやりたいトコだけど、……そうは言ってられない現状なのも事実。黙って見るっつーのも私の性に合わない」

「……ん? って事はヴェント。お前……」

「今だけよ。それに一回しか言わないから耳の穴を掻っ穿いて良く聞いときなさい」



ヴェントは彼の隣に並ぶ。
視線は合わせない。依然と前を向くだけ。
腰に手を当て、上条からの視線を感じるが無視したまま告げる。



「私の背中はアンタに預ける。
さっさとこんな面倒事は片付けて、元の場所に帰るわよ」
370 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/02(水) 13:08:26.04 ID:WU43fT9DO



上条は意表を突かれたように、目を見開く。だがそれも一瞬。

彼はヴェントと同様に前を向き、右手の拳を二回程、左手の掌に打ち付ける。
爆音と共にガブリエルが姿を現したのに対し、上条は不敵な笑みを漏らす。



「突撃は任せてくれ。ヴェントは後方支援を頼む」

「そうね。あんな化物とマトモにやり合える何てアンタだけだろうし」

「……何だかその言い方だと上条さんも化物みたいな扱いになってると思うのですが……」

「実際、私の目にはアンタも十分化物に見えたから言ってんのよ。
ほらっ、もう一匹の化物が向かって来たし、行きなさい幻想殺し」

「痛っ!? 俺は名前は上条当麻で、アンタじゃ無ければ幻想殺しでも無いっつーの!!」


双方は敵同士だった二人。
彼らもまた、互いに背中を預け合う。



四人の死闘は、これからである。
371 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/02(水) 13:12:21.83 ID:WU43fT9DO
投下終了です
んー少ない!

次回も引き続き魔術で
科学側の二人は次の次ですね


あ、偶にちょいちょい小ネタ挟んでいきます
372 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/02(水) 14:30:12.15 ID:Hg+/6syh0
 ただの人間つっても、上条さんの中の人が敵の攻撃を見きるのをバックアップしてんだろうな……
御使堕しのときのガブリエルの水翼での攻撃は百分の一秒単位だし……

 とうとうスレタイに来たー!続き待ってます
373 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/02(水) 16:13:34.97 ID:KNJG7VpDO
期待
374 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/02(水) 22:18:55.98 ID:Nk1uGzZX0
ワクテカの魔術師
375 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/03(木) 19:17:43.10 ID:U2iw8Sdr0
376 :その幻想(>>1)をぶち殺す! [saga]:2011/03/04(金) 09:53:19.54 ID:DDLO/5kDO

投下しますね

本当はもっと長くなる予定でしたが、事情により結構端折らせてしまいましたorz
377 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/04(金) 09:54:26.37 ID:DDLO/5kDO


ガブリエルの顔面には僅かなヒビが入っていた。拳の威力が効いたのか、幻想殺しが効いたのか、どちらかは不明だが、



(多分、幻想殺しだろうな。左手が当たった時は、あんなヒビ無かったし)



現在まで上条当麻は左の拳しか命中していない。何故なら、右手は大体が護りに徹しているからだ。
378 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/04(金) 09:55:45.97 ID:DDLO/5kDO

右手で殴ろうと自分から接近に転じても、右手の危険性を判っているのか必ず飛翔する。
ガブリエルから接近した場合、カマを掛けようと先に左手の行使を考えたが、氷の剣やら水翼やら一発の衝撃や威力が尋常ではないのだ。幻想殺しを宿さない左手が持ち堪えるはずがないだろう。

彼一人だけでは一向に終わらない。そこで優勢に働くのが、



「おらっ!!」



―――ヴェントのハンマーである。
379 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/04(金) 09:57:09.22 ID:DDLO/5kDO

遠距離攻撃が可能なヴェントは主に水翼と氷の翼を破壊。
鈍器に錐や杭を使い分けて、上条当麻に降り懸かる水翼を穿ち、氷の剣を粉砕する。
これらを駆使してガブリエルへの道筋を作ったり、先に牽制して上条当麻が右手の拳を突ける隙を作るのだ。


しかし、ガブリエルとの勝機が見えた代わりにデメリットも浮かび上がるのだ。


一つ。上条当麻はガブリエルの速度に反応可能(理由は不明)だが、ヴェントは僅かに反応が遅れる事。
況してや数百を越す水翼など、対応しきれるはずが無いだろう。

二つ。ヴェントへ穂先が向けられた時、彼女は天使相手に身を護る手段なんて持ち合わせていない事。
氷の剣でも死にはしないものの、タダでは済まないだろう。一瞬で意識を刈り取られる自信が有ると自負出来るほど。
場合によっては上条当麻に護ってもらわなければならなくなる。……本人は嫌がるだろうが。
380 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/04(金) 09:58:26.07 ID:DDLO/5kDO

以上の事柄を踏まえ、故に二人の共闘は勝機を見出す手段になるが、その分二人に係るリスクは跳ね上がる羽目になるという事。



「なあヴェント! お前のアレで何とかなんねーの? 学園都市で使ってたヤツ」

「『天罰術式』のコト? あんな化物に効くと思ってるワケ?」

「ですよねー!」



二人は一定の距離を保ち、ガブリエルへと接近していた。最低限、ヴェントには上条当麻が咄嗟に庇う事が可能な範囲に入ってもらっている。
これで例え彼女に矛先が転じても、危険性は限り無く減少されるだろう。
381 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/04(金) 10:00:21.23 ID:DDLO/5kDO


「gkadnjruxnk」



コキリ、と。首を傾けた。眼球の無い部分が、二人を射抜いたような気がする。


―――突如、今までとは比べ物にならない量の水翼が互いを削って重なり合い、天を昇って行く。
ほんの数秒で物の見事に、ガブリエルの背後で極大な氷の柱が完成する。



「い゛ぃっ!?」



目視した上条が蛙を潰したかのような珍妙な声を漏らす。天を見上げるが……先が見えない。
もはや『柱』でなく『塔』に近かった。
382 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/04(金) 10:01:14.21 ID:DDLO/5kDO



「いよいよ嫌な予感しかしねーぞこれっ!!?」

「戯言ほざく前に走れッ!! あんなモン倒れてきたら圧縮されて死ぬわよ!!!!」



二人は一旦足を止め、方向転換。来た道を戻っても、縦に甚だしく長い塔に潰されるだけ。
だから真横を駆け抜く。縦は長くとも横に広くはない。と言っても、人間の視点から見れば計り知れなく広いわけだが……。
383 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/04(金) 10:02:38.44 ID:DDLO/5kDO

ガブリエルは再度、氷の剣を携え―――塔の根元を撫で切り。
傾く方向は当然、二人の元へ。



「クソがッ!!」



駆け抜けながらヴェントはハンマーを振るう。合計三回。
よって生み出されるのは、三つの空気が渦巻く杭。舌に取り付けている鎖の十字架を駆使して、杭を射出。

滑らかな曲線を描き、少しでも軌道を変えようと横から塔を穿つ。
……遠くで響き耳にしてたのは微かな破壊音。塔は微動だにしていなかった。
384 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/04(金) 10:03:54.16 ID:DDLO/5kDO


「チッ!!!!」



今度は二回振るう。生み出すのはお互いを食い潰して出来る数百の空気の錐。
速度で駄目ならば、量で試す。


―――しかし、結果は変わらない。


そうこうしてる内にも塔は益々加速して行く。このままでは二人が圧縮されミンチ状態に陥るのを免れない。



「くっ……オイ上条当麻ッ!! 首守っときなさいよ!!」

「へ? どういうべぇっ!!?」



彼が身に包む制服とシャツの襟を乱暴に纏めて掴んで、ヴェントが断然に速度を増す。音速には劣るが、常人では必ず出せないスピード。
385 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/04(金) 10:04:58.86 ID:DDLO/5kDO
上条当麻は襟を引っ張られ、首にシャツがめり込んで呼吸困難に陥るが、何とか首とシャツの間に隙間を作って一安心。

ヴェントは流し目で塔を視認。
眉間を顰め、思考する。



(……間に合わないわね)



迫り続ける塔に悪態を吐く。

規模の甚大さとメチャクチャな破壊行動に溜息すら出ない。
現在が元の場所では無いからいいが、普通あんな物が地上に叩き付けられた場合、地震では済まされない。
地球に多大なダメージを負わせる羽目になるだろう。
386 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/04(金) 10:06:33.89 ID:DDLO/5kDO

そして同様に、上条当麻も間に合わないと感じていた。
思考を巡らし、解決策の手段を模索する。



「……仕方ねえか」



一つだけ見出す。手段は決定。
上条当麻は実行に移すため、―――ヴェントの手を払った。



「なっ……!!」



彼女が驚愕の表情を放って振り返る中、彼はヴェントに笑顔を浮かべる。笑顔の裏はこう語られていた。……「逃げろ」と。
387 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/04(金) 10:07:28.75 ID:DDLO/5kDO

それも一瞬。彼は目と鼻の先まで迫っている氷の塔を睨む。
ギリ……ッと強く拳を作り、腕を引く。


正直、どうにかなるとは思えない。右手で殴った所で、打破出来るとも思えない。
水翼の一本一本が重なり合って氷の塔が構成されてる。故に殴打しても何万何十万本の内一つを砕くだけで、全てを破壊する訳ではないのだ。

しかし、構わなかった。己の身体が潰されようと気にしない。



(ヴェントが逃げる時間を稼ぐ。それでいい)
388 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/04(金) 10:08:46.81 ID:DDLO/5kDO


何も、二人とも絶命しなくていい。


彼女は自分を引っ張っていたので速度が落ちたに違いない。
ならば彼女を逃して自分は右手で時間を稼ぐ。

それでいい。彼女のために生を絶つのも悪くはないが、死んでやるつもりは更々無いのもしかり。

精々抗ってやろう。天使に。



「人間、嘗めてんじゃねえぞ!!」



掬い上げるように引いた右手の拳を放つ。
氷の塔と拳が―――衝突する!
389 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/04(金) 10:10:10.92 ID:DDLO/5kDO



血管が破裂する感覚。
骨が砕けていく感覚。


激痛が右腕を駆け巡り、血管やら骨やら神経やら、内部から迅速に損壊されていくのが感受。

肌の表面に浮き出す血管がブチブチと音を立て、骨がミシミシと鳴り、神経を伝って肩まで尋常じゃない程の激痛が迸る。



「う、おおおおおおおおおおおおッッッ!!!!!!」



それでも、振り抜こうと渾身の力を振るう。
腕がどうなろうと知ったこっちゃ無い。どうせ諦めたらミンチ決定だ。
ならば最後まで反抗してやる。


―――その時、“何か”が視界を掠めた。
390 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/04(金) 10:11:39.48 ID:DDLO/5kDO


氷が炸裂。一回だけじゃない。

何回も。何回も何回も何回も。

炸裂を繰り返す。氷の塔を穿つように。


上条当麻は知っている。
それは空気という名の鈍器。
錐、杭と使い分けも出来る武器。
自身が知る中で、行使するのはただ一人。



「―――ヴェントッ!!」



何で戻ってきた、と。

生き延びる手段は有ったはずだ。彼女の中で自分は相当嫌悪する人物に指定されているはずだ。

なのに、何故戻ってきた。
391 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/04(金) 10:16:28.34 ID:DDLO/5kDO




「そんなの知らないわよッ!!」




歯を食い縛り、空気の鈍器をぶつけ、彼女は叫ぶ。




「アンタが死のうが勝手だけど、横から持ってかれんのは性に合わない!! アンタをブチ殺すのは私って決まってんだよクソッタレがッ!!!!」




数百の錐をぶつけ、畳み掛けるよう杭を射出する。




「こうなりゃ乗り掛かった船!! とことん付き合ってやろうじゃねえかあッ!!!!」
392 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/04(金) 10:17:17.30 ID:DDLO/5kDO



上条当麻は奥歯を噛み締める。
犬歯を剥き出しにして、唸りを上げる。




「うおおおおおおおおおおッ!!!!!!」




呼応するように、ヴェントも轟きを上げる。




「らああああああああああッ!!!!!!」




二つの獰猛な牙は、互いを高め合う。自身のポテンシャルを相手が伸ばし、相手のポテンシャルを自身が伸ばせてやる。


無限の可能性を秘めた牙の矛先は、氷の塔を穿つ―――!
393 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/04(金) 10:18:37.89 ID:DDLO/5kDO




―――――――――――――――




僅かな時間が経った。
一分にも満たない時間だ。
氷の塔が崩れ倒れてから。

未だ呻く地表。揺れ動く世界。
倒れた衝撃で氷が砕け、中には、



「はっ、はぁっ……。ヴェ、ント、生きてるか?」

「当たり、前……でしょ」



―――生存者が居た。
394 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/04(金) 10:20:54.32 ID:DDLO/5kDO


体力を存分に使った所為か、呼吸は荒い。身体が悲鳴を上げている。
とてもじゃないが、動ける状態ではなかった。しかし、二人は必死に体を奮い立たせ両足をぐっと踏ん張って立つ。

呼吸を整え、辺りを見回す。



「……あいつ、何処行った?」

「気を付けなさい。下から這い出て来ても変じゃ無いわよ」



んな馬鹿な、とツッコミを入れる直前、―――周りの雪や砕けた氷が水になっていくのを視認する。
395 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/04(金) 10:25:59.34 ID:DDLO/5kDO



ぞぞぞぞぞぞぞぞぞぞッッッ!!!!!! という気味の悪い音と共に、膨大な液体が空中に吸い寄せられていく。


その先、存在するのはガブリエル。


水を吸収した翼が、凶悪な姿へと変貌する。





「……sergv 範 hy 設定……」





ガブリエルの言語がクリアになっていく。





「投 gre 準備……djku 完了」





二人の背筋に悪寒が際立つ。
粟立つ戦慄に恐怖する。

上条当麻も、ヴェントも知っている。その恐ろしさを感知している。
ヴェントを右手で護ろうとして……気が付いた。


動かない。右腕が全く動かない。


原因は容易に辿り着く。“氷の塔”だ。




そして。




今や明確となった『声』は、彼らに無慈悲な宣告を贈る。





「命令名『一掃』―――投下」





夜空が瞬いた。


数千万に及ぶ裁きの礫が、降り注ぐ。
396 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/04(金) 10:29:40.63 ID:DDLO/5kDO
投下終了です


次は科学です
397 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/04(金) 10:50:43.20 ID:4rmtmqPDO
ぎゃー
398 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/04(金) 11:45:56.65 ID:RvD5gRXs0
乙。
ヴェントがちょっとデレたか?
399 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/04(金) 12:17:14.43 ID:Ujnp2i7e0
 乙!!

 もう二人とも人の域じゃねえな……
しかも一掃説きましたか。どうすんだろ……
400 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/04(金) 12:52:10.60 ID:JHj0YXQao
人間二人相手に一掃とか大人げなさ過ぎるww
もう天草式が元の世界に引っ張り戻すくらいしかMAP兵器かわせないんじゃ…
401 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/03/04(金) 19:00:23.01 ID:8qyKUqcV0
まさかの一掃ww
402 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/04(金) 19:34:12.96 ID:+3fAoVZ6o
ツンでる
403 :悪意しか感じられない [saga]:2011/03/04(金) 22:35:05.84 ID:DDLO/5kDO




一方「そォ言えば何でテメェは俺がココに居るって判った?」


浜面「あ、そうだったそうだった。何か土御門? って人から聞いてさ。後……」ガサゴソ


一方「はァ? 土御門だと」アヤシイ


浜面「これ。手紙。何か一方通行に渡せって」つ


一方「……」ピラッ





土御門『拝啓。アクセロリータ(笑)様へ。最近は著しく肌寒くなり、メイド服を着た妹君に萌えて眼福する良い季節ですが、如何お過ごしでしょうか? きっと貴方様も幼女に戯れて』グシャ





一方「ブチ殺す!! 完膚無きまでに、ぜってェ殺す!!」ビリビリ


浜面「何が書いてあったんだ……?」
404 :>>1です [saga]:2011/03/04(金) 22:35:50.46 ID:DDLO/5kDO
以上。今さっき思いついたネタでした
405 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/03/04(金) 22:38:13.44 ID:Ujnp2i7e0
 ぶち殺していいからせめて最後まで読んでやれよwww
406 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/05(土) 00:15:47.29 ID:YaNnCFRr0
このSSだけじゃないけど、ようやく とかは変換しないのが普通
逆に言えば変換しただけ中二感が増してかっこよく見えるわけだけど
次回も頑張れ
407 :当然。>>1だ。 [saga]:2011/03/07(月) 09:28:12.00 ID:f0+Zu3GDO
投下いたしますね

ではでは、
408 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/07(月) 09:29:32.21 ID:f0+Zu3GDO


―――学園都市。


全身が緑の装束を身に纏い、白いマスクをした初老の男が扉の奥から出て来た。
彼の下へ駆け寄るのは若い男女が四人。浜面仕上、滝壺理后。絹旗最愛。番外個体だ。

ココは『例の少年が自室を所有している』と患者やナースの中で噂が広まっている病院。

四人の顔色を汲んだ男、冥土帰しがマスクを外して安否の声を掛ける。


「手術は成功。臓器破裂や腹部の刺し傷以外は大した物じゃ無かったからね」


その言葉を聞いた瞬間、彼らの強張った表情が綻びる。各々が安堵の息を漏らす。
409 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/07(月) 09:30:23.60 ID:f0+Zu3GDO
中でも番外個体は緊張が解けたのか、力が抜けたように膝が崩れて大きく息を吐いた。


「よかったね」


滝壺が同様に膝を落として、ニッコリと微笑んだ。対して番外個体も彼女に礼の意味を込めた笑顔を向ける。


「全治一ヶ月……と言いたい所だけど、そうもいかない状態みたいだね?」


浜面に視線を移す。その眼差しは、真剣な物。瞳の真意は「理由を話してくれるかい?」と遠回しに促しているのだ。
410 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/07(月) 09:35:05.77 ID:f0+Zu3GDO
問われた浜面は乱暴にクシャクシャと頭を掻き、困った表情を見せた。


「実の所、俺も詳しい事情は知らねえんだ。場所と一方通行がピンチだから向かえ、って抽象的に電話で言われただけで……」

「でも、ここは長く持たないと思いますよ。あの仮面の人、超不気味でしたし」

「いやいや、あの仮面野郎が不気味だからってココが長く持たないのと、どう関係あるんだよ」

「超バカ面。よく考えて下さい。第一位がやられたんですよ?
車で移動中の際には“能力で応急処置は済ませてる”とか言ってました。ていう事は能力者同士の戦闘って訳です。
能力有りで戦って負けたって事は……もう判りますよね?」

「……!!」
411 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/07(月) 09:36:29.55 ID:f0+Zu3GDO


自分は愚鈍だという事ぐらい自負している。けれども、絹旗の言い回しで幾ら何でも気付いた。
もし仮面野郎がココに来るという事は、


「麦野が危険だ……っ!!」


麦野沈利。彼女が敗北したという事に繋がる。
踵を返して麦野の下へ向かおうとする浜面だが、絹旗に腕を掴まれて行けなかった。
絹旗は浜面が反論を捲くし立てる前に言う。


「麦野も浜面みたいに考え無しではありません。身の危険を感じたら超逃げるでしょう。それに一応全力で行くな、って忠告してますし」

「……スイッチが入ったら判んねえけどな」

「……否定する要素が無さ過ぎて同意しか出来ません」


二人には悪いが一言述べよう。
既に手遅れだ。
412 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/07(月) 09:38:10.47 ID:f0+Zu3GDO

会話を聞いていた冥土帰しは得心したとばかりに頷き、丁度通りかかったナースを呼び止める。


「ちょっと君、この番号を掛けてくれるかな?」


懐から取り出したのは、折り畳まれた紙切れ。
ナースは戸惑いながら、差し出された紙切れを受け取る。広げて番号を確認。


「至急来るよう伝えてくれ。警邏を頼みたいと加えてね」

「は、はあ。了解しました」

「僕の名前を使えば素直に承ってくれるよ。じゃ、宜しく頼むね?」


一度軽く頭を下げたナースはパタパタと駆けていく。
413 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/07(月) 09:38:55.19 ID:f0+Zu3GDO
見送った冥土帰しは再び、浜面に目を向けた。


「これで患者達の安全は保証されたね。君らも立ち向かうなら、何らかの措置を講じとくと良い」

「あ、嗚呼」


言い終えると、冥土帰しは歩み出した。
浜面と絹旗は去って行く彼の背中を見つめ、疑問を互いにぶつける。


「誰を呼んだんだろうな?」

「超判りませんね。トランプで言うジョーカーかもしれないですよ? まっ、私達も対策を練っておきましょう」


彼女の催促で些か辟易されるも、浜面は半ば納得いかない様子。

彼は暫く頭を悩ますが、まあいいかと思考を切り替える。今は仮面男の方が優先すべき。
標的は一方通行だと土御門という人物から聞いているので、麦野を真面目腐って相手すると思えない。
何時ココが感知されるか不明だが、おそらく時間の問題だろう。
相応の手段は施すべきだ。
414 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/07(月) 09:40:14.87 ID:f0+Zu3GDO



―――――――――――――――



一方、無人の大十字路。


「アッハハハハ!!!! オラオラどうしたどうしたよぉっ!!? 這い回る豚になってるだけじゃ私の相手になんねえぞ!!」


第0位に三点射。光線が四肢を吹き飛ばそうと迸る……が、彼は直撃したのにも拘わらず五体満足に生き延びていた。
光線が触れる寸前に跡形も無く霧散したからだ。原因は彼の右手。
麦野は舌打ち、悪態を吐く。
415 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/07(月) 09:41:33.00 ID:f0+Zu3GDO



「チッ、相変わらず鬱陶しいわねその右手。まどろっこしい事極まりない」



第0位は何も告げない。何か思考に耽っているように。
一瞬だけ彼の視線が下に向き、蠢く砂を確認。足を弾ませ『空間移動』を引き起こす。

途端、そこへ雪崩の如く途轍も無い量の“砂鉄”が流れ込んで来た。
砂鉄は瞬時に旋風を起こし、辺り一帯を巻き込んで微塵に斬り刻む。―――御坂美琴だ。
416 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/07(月) 09:42:23.84 ID:f0+Zu3GDO

空中に転移した第0位は砂鉄の竜巻を視界に入れ、空中を浮遊しながら手に持つ拳銃を装填。



「呑気に風船ごっこしてて良いのかにゃーん?」



丁度右斜め下。麦野沈利の声。
竜巻から視線を移して目視。



「撃っても右手で防がれるなら、“防ぎきれない”ようにすればいい」
417 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/07(月) 09:43:13.47 ID:f0+Zu3GDO


彼女は三角形のパネルが組み合わさった形状のカードを、指で弾いて上へ飛ばす。
カードの正体―――『拡散支援半導体(シリコンバーン)』だ。
面制圧を不得手とする原子崩しの弱点を補う、麦野が所有する道具。

宙を舞うカードはクルクルと回転。麦野は片手をスーッと挙げていき、第0位に標準を合わせた。
カードと標準が重なった瞬間、光線を射出してカードが貫かれ、―――拡散する!

光線は何十にも分かれ、そのどれもが第0位を穿つ刃となる。
418 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/07(月) 09:45:14.19 ID:f0+Zu3GDO

目を細め、彼の姿がブレた。
空間移動を発動させたのだ。

地に手を付いて、麦野と遥か十メートル以上離れた地上へ転移する。



(空中に有利は皆無。だが……)



チラリと眼球を動かし横目で視認。透かさず前方でなく、斜め前に大きく飛び跳ねて転がった。
刹那、前方と左方の二方向から巨大な光線が彼の居た場所にズバァッ!! と煌めく。

左からは御坂美琴の超電磁砲。
前からは麦野沈利の原子崩し。

閃光が交差して象ったのは十字架。そして起こる現象は―――絶大な爆発。
419 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/07(月) 09:46:41.38 ID:f0+Zu3GDO
伴って生じた爆風や衝撃波が第0位を存外に吹き飛ばし、ビルに背中から激突する。

爆風によってビリビリと空気が震動。けたたましい音を立ててビルの窓ガラスが割れていく。
並び立っていた木々が焼かれ薙ぎ倒し、砕けたアスファルトの破片が散弾のように飛び散る。

彼は背中に受ける痛みを感じつつ、立ち上がって思考する。



(―――地上も危険。矢張り空間移動と能力無効だけでは難が生じるか)



あくまでも冷静に。いや、寧ろ彼には狼狽や動揺と言った機能が働いていないのかもしれない。
額から垂れる血が増すも、気にも留めない彼は、第三位と第四位の二人を見やる。
420 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/07(月) 09:48:49.41 ID:f0+Zu3GDO



「ちょっと! 少しは加減してぶっ放しなさいよねっ!! 巻き込まれそうになったんだから!!」

「ハッ、テメェなら私の原子崩しも軌道を変えれるでしょうが。爆発は知らないけど。てか、いっそ食らってくたばっちまえよ」

「なんですってえ!!? こんのオバサンが!!」

「あ゛ぁ!? やんのか売女ァ!!」



自分を余所に戦闘態勢で互いを罵り合う。……正直、仲が良いのか悪いのか判らない。

―――その時だ。





『第0位様。準備完了致しました。何時でも戦闘可能でございます。整い次第、移転をして下さい』





彼の脳に直接、無機質な音が流れた。
421 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/07(月) 09:49:29.61 ID:f0+Zu3GDO
一度凍結するが、直ぐ溶けたように肩を竦め、漸く血を拭うと彼は一言だけ呟いた。




「了解」




瞳が、据わった気がした。
422 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/07(月) 09:50:53.14 ID:f0+Zu3GDO



「じゃれ合いの所すまないが」

「「あ゛ぁッ!!!!?」」



異口同音。額を擦り付け合って超電磁砲やら原子崩しをぶっ放しそうなピリピリとした気迫の中、第0位は空間移動で接近して、ポンと二人の肩を叩く。





「絶望の時間だ。君達には地獄へ招待しよう」





―――御坂美琴と麦野沈利が、この場から消える。
423 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/07(月) 09:51:54.62 ID:f0+Zu3GDO



―――――――――――――――



「あ? 何処よここ」


麦野が見えた世界は一変していた。
コンテナ。鉄筋。鉄パイプ。クレーン車。コンクリート等々。

上を見れば錆び付いた屋根。少々鉄の匂いで充満しているのか、鼻がツンと来た。
嗅ぎ慣れたはずなのに、半月も暗部から離れて平和ボケしてると、こうも違うかと実感する。
辺りを見る限り何処かの工場ようだ。しかし、自分が居た学区は工場なんて存在しなかったはず。
424 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/07(月) 09:53:19.05 ID:f0+Zu3GDO



「要するに、アイツの能力で飛ばされたってわけか。チッ、面倒ね」



頭をガシガシと掻く。如何にも至極面倒と言うように悪態を吐き捨てる。
だが浜面に時間稼ぎだけで、怪我したら無理せず逃げろと言われていたし、一応目的は達成したかな? と彼女は思考して納得。

懐に手を伸ばし、携帯を取り出す。



「とりあえず絹旗に連絡して、迎えに―――」



彼女の言葉は最後まで続かない。
何故なら、










「むーぎのーん」









―――背後から、冷たくて歪んだ音がしたから。
425 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/07(月) 09:55:28.09 ID:f0+Zu3GDO


背筋から汗が噴き出るのを捉える。
全身が固まったように動かなくなったのを感じ取る。
携帯から少女の声が虚しく響くが、麦野の手からスルリと落ちた携帯は誰にも拾われない。


時が止まった。
全てが彼女の中から除外される。

思考も。
携帯も。
場所も。
第0位も。
ツンと来る匂いも。
仲間も。
浜面さえも。
どうでもよくなっていく。


心の底から振り返りたくないと思った。
これ程までに今が夢であって欲しいと思ったのは何時以来だろうか?






「むーぎのーん?」






再度。今度は尋ねるような口調。
426 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/07(月) 09:56:43.47 ID:f0+Zu3GDO
それを切っ掛けに体が震え始めた。微動だにしなかった身体を緩慢と動いて、振り返る。



“ソレ”を目にした瞬間、ソレ以外の視界全てがモノクロになった。



周りなんて見えてなかった。
周りなんてどうでも良かった。
ソレしか眼中に無い。
いや、目が離せなかったのだ。

体の奥底から恐怖を感じる。
それは垣根帝督よりも。
はたまた浜面仕上よりも。
彼らの恐怖なんて底辺だ。目の前のソレの方が遥かに凌駕しているだろう。
427 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/07(月) 09:58:44.75 ID:f0+Zu3GDO


記憶から消えていれば、“ソレを忘れて”、笑っていたのかもしれない。
記憶から消えていれば、“今の自分”は、無かったのかもしれない。
記憶から消えていれば、全てを忘れたまま……倖せに生きていられたかもしれない。






「結局、久し振りって訳よ〜」






―――フレンダという、存在を。



瞳に殺意を宿し、フレンダは狂笑する。
ケタケタと笑い。
クククと笑い。
ハハハと笑い。
ゲラゲラと笑う。

嘲るように嗤うのは、何に対してか。他者か。己か。

或いは学園都市か。




「まあ結局さ、再びこうしてお涙頂戴の感動ストーリーみたいに再会した訳だけど」




くしゃりと顔が歪み、告げる。




「―――死んで♪」
428 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/07(月) 10:04:18.91 ID:f0+Zu3GDO



―――――――――――――――



御坂美琴は機会だらけの囲われた空間に居た。戦闘や実験だけに用いられそうな場所だ。
おそらく何処かの研究所。自分は第0位の空間移動によって飛ばされたのだろうと冷静に判断出来た。
超電磁砲とかで穴を空け、脱出して再び第0位の所へ向かえばいい。
……そう、結論付けていたのだ。




―――目の前に居る、人物を見るまでは。




「…………」




無言で、告げている。
態度が、告げている。
他の誰でもない、私へ。


初めまして、と。


だから、認められなくて。
問い掛けだけが口から零れて。




「アンタ……?」




戸惑いだけが露骨で。
動揺だけが隠せなくて。

それもそうだろう。“敵”だなんて考えたことも無かったから。
目の前の人物から感じる溢れる殺気を否定したくて堪らなかったから。
429 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/07(月) 10:05:28.55 ID:f0+Zu3GDO




「どうも、お姉様」




言葉を、紡ぐ。
空虚な瞳が、射抜く。

夢では無い。現実だ。




「ミサカは、00001号の前に造られた個体。……検体番号『00000号(フルチューニング)』と言います」




自分と瓜二つ。写し鏡のよう。
ガチガチに固まった全身に恐怖が迸る。

一方通行よりも。
上条当麻さえも。

二人から感じた恐怖を、目の前の妹は遥かに凌ぐ。




「どうやらミサカに命令が下ったようです。“オリジナルと殺し合え”と」




それは歴とした宣告。

未だトラウマを覚える過去に。
古傷を掘って抉るように。




「そんなわけでお姉様」




神は、彼女に残酷過ぎる試練を与える。







「―――ミサカに殺されて下さい」
430 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/07(月) 10:10:18.65 ID:f0+Zu3GDO
投下終了です


さて、そろそろごっちゃになってきましたね。なんてこったい


次回は魔術と科学をちょびっとずつで
431 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage ]:2011/03/07(月) 11:34:48.87 ID:czn3xsDL0
学園都市らしいエグいやり方だなあ
番外個体の時と同じくらい嫌なやり方だ……
続き待ってます!!
432 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/03/07(月) 11:53:26.99 ID:ydTW2jbY0
トラウマと向き合わせるなんて催眠能力の一部か?

なんかデッドマン・ワンダーランド思い出した
433 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/07(月) 15:53:01.94 ID:+Guefe+B0
人は何かを捨てて前に進む、それとも拾って帰るか?
434 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/07(月) 18:54:50.68 ID:5q/Cvul20
なんていう展開…
1乙
435 :ヴェントさんが愛らしくて仕方無い>>1です [saga]:2011/03/09(水) 03:36:40.10 ID:hM5mGqBDO
こんな時間に投下だなんて自分は何をやっているんだと嘆きます

…いいんだ。学校が始まるまでに話は終わらせるつもりなのさ。多分

そんなワケで投下します
量が多くなっちゃって魔術だけです
436 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/09(水) 03:37:56.41 ID:hM5mGqBDO



―――ロシア(仮)。



冷たい。痛い。白い。
上条当麻が五感で把握出来た感覚だ。

意識が朦朧とする中、生きているのかどうか不思議であった。
体中に激痛が走って、筋肉が動かない所為か関節も曲げられない。
記憶でさえ曖昧。何故こんな冷たくて白色ばかりなのだろう? 一つ一つ辿って行けば答えに辿り着くはずだ。

氷の塔をヴェントと一緒に破壊した。そこまでは覚えている。
その後は? 確か……ヴェントと互いに生存の確認をして、



(そうだ。ガブリエルが『一掃』を……)



漸く自分の思考も回復してきた。
437 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/09(水) 03:38:55.77 ID:hM5mGqBDO

つまりこの冷たい感覚は雪。ていう事は視界が真っ白なのも雪か。
おそらく直撃を免れなかった『一掃』を生身で受けた所為で、意識を刈り取られて地面に体が投げ飛ばされたのだろう。
だとしたら自分は倒れている。
どうりで全身が冷たい訳だ。

思考が回復したが、体が回復した訳では無い。未だに筋肉は動かないし、寧ろ全身に激痛が迸っている。
そこでふと、上条当麻に不安がよぎった。



(ヴェントは……?)



彼女は生きているのか?
無事に生存しているのか?
438 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/09(水) 03:39:43.02 ID:hM5mGqBDO

確認したい。その一心で己を叱咤する。必死に筋肉に動けと命令をかけるが、一向に聞く気配は見られない。
矢張り受けたダメージの蓄積量が甚だしいのだろう。無視を出来ない程に。

……どうやら首は動かせられるらしい。
視界が霞む。頭から流れる血が余計に邪魔をする。
雪に顔面を擦り付け、粗雑に血を拭き取った。そして―――



「ヴェ……ント……?」



居た。彼女はすぐ近くに居た。
居たが……彼女はピクリとも動かない。
まだそれだけならいい。何せ自分も首だけしか動かないのだから。
439 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/09(水) 03:40:29.01 ID:hM5mGqBDO

しかし、彼の焦燥感を駆り立てているのは、ヴェントが仰向けに倒れているため、顔が見えるのだが―――彼女の表情が安らかに眠っているように見えたから。

違うかもしれない。
見誤りかもしれない。
単なる錯覚かもしれない。
己の不安な気持ちが、そういう風にさせているだけなのかもしれない。

だけど。だけどだけどだけど!



「ヴェント……ッ」



一瞬でもそう見えたのは間違いなくて。
彼がヴェントの下へ走り出すには十分で。
440 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/09(水) 03:41:19.56 ID:hM5mGqBDO

全身に激痛が迸ろうが、蓄積されたダメージが尋常じゃない量だろうが……関係無い。
筋肉が働かないだろうと何だろうと―――そんな程度の足枷で、上条当麻が彼女の下へ駆け寄られない理由にはならないのだ。

と言っても、当然フラフラである事には間違いない。生きているのが不思議で仕方ないのだから。
覚束ない足取りで今にも倒れそうになるが、彼はヴェントの下へ辿り着く。
441 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/09(水) 03:42:48.56 ID:hM5mGqBDO

右腕は相変わらず動かない。代わりに左腕で彼女の首に手を添え、脈を診る。



「……良かった。まだ生きてる」



安堵の息を漏らす。
ただの気絶だけのようだ。『一掃』を受ける直前に結界でも張ったのだろう。それでも頭から血は流れ、満身創痍に変わりはない。


そして上条当麻は思念する。
何故、彼女がこんな目に遭わなければならないのだろう? と。
442 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/09(水) 03:44:34.40 ID:hM5mGqBDO

ヴェントは、ガブリエルと上条当麻の戦いに一切関係の無い人間。自分達の戦闘に巻き込まれた、云うなれば被害者である。
彼女が上条当麻と共闘して、ガブリエルを討つ理由など更々無い。
にも拘わらず、ヴェントは逃げる訳でも黙って見てる訳でも無く、憎き相手のはずの上条当麻に背中を預け、共闘を自ら進んで言及した。
何処にも手を貸す理由は無いはずなのに……。



「―――っ」



ヴェントの眉間が僅かに顰めた。呻き声にも足らない声も微かに聞こえた。
何か、苦しんでる表情。
悪夢でも見てるのだろうか?
443 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/09(水) 03:46:02.98 ID:hM5mGqBDO



「…… Mi …… scusi」



今度は明確。母国語だろうか? 上条当麻には翻訳するスキルを持ち合わせていないので、彼女が何を言ったか判らない。




でも―――目尻から流れる涙は、理解できた。




彼女は夢の中で悲しんでいる。
苦しみ、悔やみ、悲しんで、涙を流している。

だが感情論を判っても、理由は判らない。
ヴェントが今何を見て、何を感じているのかは判ってやれない。
それは彼女にしか理解出来ないし、あかの他人である自分なら尚更。



「……姉ちゃんが、守ってやれなくて……ごめん、ね……」




―――だからこそ、日本語で呟かれた時は、心を打たれた。
444 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/09(水) 03:47:40.70 ID:hM5mGqBDO



言葉から察するに、彼女は悔やんでいる。
弟を守れなかった事を。
代わりに死んでやれなかった事を。
それは何年と過ぎ去った今でも、夢としてその事件の日を鮮明に思い出すのだろう。


9月30日の時、自分は彼女に言ってやった。
死に掛けてた弟はどんな気持ちで姉を助けてくださいって言ったんだよ、とか。
自分がどんな状況か全部知った上で姉を助けたいって願ったんじゃねえのか、とか。
色々言った覚えがある。


でも、その意味は絶無だったのだ。
何故なら彼女自身が―――幼き頃に理解していたから。
445 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/09(水) 03:53:26.76 ID:hM5mGqBDO


弟がどんな気持ちで助けて欲しいと医者に言ったかを。その頃の自分は寸分の狂いも無く、気付いていたのだ。
故に幼き少女は苦しんだはず。弟を犠牲にして自分が生きて良いはずがない、と。
でも弟は自分に生きて欲しいと願った。じゃあどうすればいい? 自分の葛藤を打破する活路は何処にある?

簡単だ。第三者を持ち込めば良いだけの話。
弟の死に係わっている且つ全く怨む相手が違う第三者。




―――そう、『科学』だ。




科学に復讐を活路すれば、生きる目標になる。全ての原因を科学の所為にすれば、万事解決する。

逆恨みだって事は承知済み。
御門違いだって事も知っている。
筋違いや不条理だとも理解している。

でも、その手段しか解らなかったのだ。その解決方法しか思い付かなかったのだ。
幼い自分には、この仕方しか見出せなかったのだ。


だから科学を恨み憎む。
そんな……悲しい決意を胸にして、今を生きてきた。
446 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/09(水) 03:57:59.56 ID:hM5mGqBDO


たった一言二言の寝言の呟きに、上条当麻は全てを把握した。
ヴェントの事情を関知している彼だからこそ、瞬時に理解したのだ。

涙目になる。何故、判ってやれなかったんだ、と。
上条当麻は余りの歯痒さに奥歯を噛み締めた。
彼女は救われるべきだ。誰かが救ってやらないといけない存在だ。




「第二 ko 波。攻 wager 撃準備 ws 開始。『一掃』再 ise 投下まで nvsp 三十秒」




―――なのに。
447 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/09(水) 04:00:33.86 ID:hM5mGqBDO




「…………」




上条当麻は左腕をヴェントの肩に回し、胸に抱き寄せる。

意外と小柄な体。ハンマー振り回していたものだから、鍛えているとばかり思っていたが、女性らしい細い腕。

眠る彼女の寝顔は、何時もの悪意や邪気など皆無の……優しい顔。
448 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/09(水) 04:01:40.95 ID:hM5mGqBDO




「……どうして」




―――ヴェントが、こんな目に遭わなくちゃならない?




幼い頃に弟を亡くし、今でも自分の所為だと密かに悔恨して。
それでも弟から譲り受けた命を無駄にせず、曲がり形にも生きてきた。




「……なんで」




―――ヴェントばかりが、辛い現実とぶつからなければならない?




何処にでも居る何の変哲も無い一途な少女だ。
心に傷を抱えて尚、屈強たる精神で耐えてきた少女だ。
449 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/09(水) 04:03:05.84 ID:hM5mGqBDO




「……護れる範囲で護ってやるつもりだったけど」




―――苦しくも精一杯生きてきた人間が救われないまま、しかも殺されるなんて、




「前言撤回だクソ野郎」




―――させテたまるカ。そんなコトは俺が赦サない。




「テメェなんかにコイツを殺させはしない。指一本触れさせねえ。絶対に護ってやる。天使だから許せるとか、他のヤツら許しても、この俺がテメェを……」




―――絶対に、ゼッタイニ……ッ!!




「―――ユルサネエ」
450 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/09(水) 04:03:47.48 ID:hM5mGqBDO




上条当麻の呟きと同時だった。
クリアな『声』が響き渡る。




「命令名『一掃』―――再投下」




夜空が瞬く。数千万の裁きの礫が、彼らに降り注いだ―――その直後である。


……全ての礫が、破壊されたのは。
451 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/09(水) 04:05:23.67 ID:hM5mGqBDO



「!!」



そしてガブリエルは目視する。

少年から邪悪な陽炎が立つのを。
右腕部分に『竜の顎』が顕現するのを。
不可視の竜は上条当麻の血、はたまた雪を被り姿を現していた。

上条当麻の瞳が、空に浮かぶガブリエルを射抜く。
その瞳に、ガブリエルは初めて彼に対して恐れおののいた。全てを飲み込むかのような、深い深い黒の瞳に。




「U……OOOOOOOooooooo!!!!」




竜が……吼えた。
452 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/09(水) 04:11:47.26 ID:hM5mGqBDO
投下終了です


まあこんな時間に見てる人が居るとは到底思えないですが…
居たら歓喜してネタに走ろうかしら


次回は科学。“三人”をお送りします
453 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/09(水) 04:16:34.47 ID:pPFWRoWAO
なんと居た。楽しみにしてます。
454 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/09(水) 05:15:16.62 ID:wtrP0tXAO
乙!!!
超面白かった!
ヴェントの心情の表現が神がかっていて泣けた!
455 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/09(水) 05:33:50.06 ID:mFHnbyDAO
まぁ居るんだがな
ヴェントネタなら大歓迎だぜ!
もちろんそれ以外でもなb
456 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/09(水) 12:07:34.32 ID:/aXydwjE0
乙!!
うん。ヴェントの抱えてるもののところはちょっと反則ぜよ
ここでは上条さん竜王の顎なんだな
457 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/09(水) 12:20:19.18 ID:7A7VVsSko

ヴェントがデレるのはいつだ
458 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/09(水) 18:41:24.22 ID:S+telA/O0
1乙!
くそっ、泣いたら電車で見てたもんだから注目を浴びてしまった…
459 :ヴェントさんが可愛くて仕方無い>>1です [saga]:2011/03/09(水) 20:51:14.27 ID:hM5mGqBDO
うおぉぅ、まさかこんな嬉しいコメが来るとわ
やっばい皆様のコメに泣けてきた

ってなわけであの深夜に見てる人が居たのでネタに走ります
460 :そもそもの目標は? [saga]:2011/03/09(水) 20:53:21.14 ID:hM5mGqBDO




アックア「…………」


ヴィリアン「…………」


アックア「………すまないが」


ヴィリアン「ダメです」


アックア「…………」


ヴィリアン「…………」


アックア「……フィアンマを」


ヴィリアン「ダメです」


アックア「…………」


ヴィリアン「…………」


アックア(ヴェント……すまないが任せたのである。私もなるべく迅速に向かおう)


ヴィリアン「ダメですよ? 絶対に」


アックア「…………」


ヴィリアン「…………」


アックア(可能性が低いことを否めないのである)





in ロシア(仮)





ヴェント「アッハー!!」ドゴォッ


上条「話し合いましょうよヴェントさあああん!!!!」ヒィーッ










フィアンマ「えっ…………え?」
461 :お茶目な第0位 [saga]:2011/03/09(水) 20:54:58.68 ID:hM5mGqBDO




in 公園




0(喉の渇きを確認)


自動販売機 ドーン


0(オリジナルの記憶から札系統は飲み込むと推測)


自動販売機


0「……御坂美琴のデータを入手。角度は四十五。構えて……」ス…


自動販売機 ビクッ


0「蹴り上げるッ」ドゴッ


自動販売機 ガゴン


0「……」缶


0(衝動に駆けられる……自分には無い概念……)



0「結果。満足するまで繰り返す事に決定。蹴り上げを続行する」


自動販売機 ヒィッ!?




若干楽しかった第0位さんであった。
462 :乙女な番外個体 [saga]:2011/03/09(水) 20:56:23.97 ID:hM5mGqBDO





in 病室





一方「……」


番外「……」ポーッ


一方「……」


番外「……!」ハッ


番外「い、いやっ、べべ別に……見惚れてた訳じゃ……ッ!!」


一方「……」


番外「……」


番外「これって……き、キス出来るチャンス……?」

一方「……」


番外「……」


一方「……」


番外「……っ」ソ〜



番外(近い近い近い近いーッ!!)



一方「ん……」ゴソ…


番外「ッ!!?」ビクゥッ


一方「……」シーン


番外「……っはぁ〜」ヘナヘナ




番外「だ、ダメだ……」
463 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/09(水) 21:02:03.56 ID:hM5mGqBDO
まあこんだけなんですけど

明日は用事があって書けないんですよね
なので、書くのは明後日で、投下は12日になります

おそらく皆様が新約を読み終えてる頃でしょう
残念ながら自分は投下を終えてから買いに行くので
464 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/09(水) 21:40:36.17 ID:pPFWRoWAO
よし、待ってる。
465 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/09(水) 21:45:39.49 ID:KobCV4de0

第0位は和解したら御坂妹あたりと仲良くなれそうな気がした
466 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/09(水) 22:13:07.12 ID:/aXydwjE0
待ってる!!
467 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/09(水) 22:27:59.74 ID:EKcv9N/AO
竜王の顎ってなに?

アウレオルスの時でてきたあれだろうけど、あれって名前表記されてたっけ?

みんな詳しく教えてくれないか?
468 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/09(水) 22:38:12.16 ID:eQj8XbHro
>>467
アウレオルスの時に出てきたアレでおk
469 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/10(木) 01:03:34.33 ID:5yI6JCsDO
ドラゴンストライク
470 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/10(木) 03:26:21.78 ID:QrdSva6Jo
はいむらーのサイト更新きたみたいなんだが

新約のラフ以外でヴェントの素顔ラフがオマケで公開された件
471 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/10(木) 08:35:32.09 ID:9YEY2N57o
ヴェントたんかわいいよ
472 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/10(木) 16:50:35.63 ID:K5xJIVx30
473 :ヴェントさんの素顔が可愛くて仕方ない>>1です [saga]:2011/03/12(土) 20:07:36.98 ID:GZ0ynT3DO
ゆっくり書いた結果がこの時間だよっ!!
というわけで投下します


今回は場面チェンジが激しいです。ご注意を
474 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/12(土) 20:09:04.90 ID:GZ0ynT3DO


麦野沈利は走っていた。
ただひたすらに駆ける。
正鵠に言えば、逃走だ。

際立つ戦慄。粟立つ悪寒。
恐ろしい。純粋にそう思う。

実際問題、麦野沈利ならば敗北は決して無い。
実力なら歴然と。火力なら圧倒的に。

しかし今回ばかりは例外。
寧ろ論外だろう。


「あっはははは!! むーぎのー、どうしちゃった訳よぉ!!」


爆発。彼女……フレンダが得意分野とする火薬を用いた爆弾である。
475 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/12(土) 20:09:57.81 ID:GZ0ynT3DO
その一個が閃光と共に起爆。
音は麦野の近辺からではない。

―――コンテナの下からだ。

角の部分が砕け、衝撃と爆風によりコンテナは麦野に向かって、甚だしい勢いで急発進する。


「っ!!」


麦野は原子崩しを応用して、ボウゥンと低い音を響かせ、水の波紋のように広がる透明の壁を形成。
突撃するコンテナは壁によって消失。辺りは爆発で角が砕けて穴が空いた所から、零れ出た粉塵が一面を籠める。
476 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/12(土) 20:11:20.00 ID:GZ0ynT3DO


(チッ……迂闊に隠れられないじゃない)


物陰に身を潜めるのは難と見た。
フレンダが何処に爆弾を仕掛けているか判らない。油断は禁物だ。

兎に角逃げよう。
今はそれが優先だ。

麦野はフレンダに警戒しつつ、逃走を図る。粉塵が立ち籠める中、視界は至極悪い。
あちらも易々と姿を現さないはず。おそらくフレンダの達成条件は『麦野沈利を殺害』だろうから。


「あちゃー、これじゃあ視界が悪いし私が不利になっちゃったか。やっぱり小麦粉が入ったコンテナに設置型爆弾は拙かった訳よ」


所でさあ麦野ー、と続け、彼女は口元を吊り上げて狂笑する。





「“粉塵爆発”って知ってる?」





麦野が血相を変え、叫ぶ直前。
狂笑する彼女はリモコン式遠隔操作のスイッチを―――押した。
477 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/12(土) 20:12:57.35 ID:GZ0ynT3DO



―――――――――――――――



雷撃の槍が飛び交う。
空気を灼き、互いを相殺。

片は超電磁砲の御坂美琴。
片はクローン体の00000号。


「往生際が悪いですね。諦めは肝心だと思いますが?」

「残念ねっ!! 妹に下剋上をされる程、鈍ってないわよ!!
アンタは黙って救われなさい!!」


しかしながら、二人の攻撃はそれぞれ向ける目的が相違している。

“殺す”と00000号は言い。
“救う”と御坂美琴は言う。

片や殺意を。
片や救いを差し伸べ。
478 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/12(土) 20:14:00.24 ID:GZ0ynT3DO

御坂美琴は思考を巡らす。
00000号の元は妹達と同類だろう。ならば学園都市は彼女に僅かな仕掛けを施しているはず。
例えば、頭脳に『シート』を被せて御坂美琴という人物限定に殺意を湧かす。そして御坂美琴を殺害の命令を下せば、相応の場所を提供するだけで00000号は素直に行動を移す仕組み。
この理論だと00000号の行動も納得がいく。


唯一の疑問と言えば。


あの子、10032号の話によれば全ての妹達は打ち止めという上司が存在すると言う。
喩え妹達が反乱を起こしてもミサカネットワークを介し、彼女達に直接命令を下す事が可能なので、そのような事態に陥る事は決して無い。
00000号とて例外では無いのだ。にも拘わらず彼女は、反乱意識の範囲内で平然としている。
何かあるのだろうか?


「ミサカネットワークの遮断。上位個体の命令を拒否を可能にしただけですよ。お姉様」


―――答えは、予想外にも彼女から告げられた。
479 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/12(土) 20:15:22.04 ID:GZ0ynT3DO


「お姉様は激怒した時以外の戦闘の際、始めは小手調べで手加減をします。同時に不可解な相手の場合、眉間を顰めたり歯を食い縛る癖がお姉様には存在します」


ハッと、美琴は眉間や口元に手を宛行い確認する。
しかしそんな彼女を気にも留めない様子で、00000号は淡々と畳み掛けた。


「その仕草の意は分析の証。相手はミサカなので、大体お姉様の思考を辿る事は可能です。
何故、上位個体から緊急停止命令が下されていないのだろう? と考えていますね。答えは簡単、『調整』を行っただけなんですから」

「調整……?」

「はい。ミサカは“この戦闘が終了”するまでの時間、ミサカは上位個体に縛られない単体の個体として存在します。それに……」
480 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/12(土) 20:17:40.06 ID:GZ0ynT3DO


一度切って懐へ手を忍ばせる。
彼女が取り出すのは一枚の“コイン”。

ピンとコインを指で弾き、上空へ飛ばす。





「―――お姉様は色々と勘違いをしているようですね」





出来事は束の間。
数秒遅れて響くのは轟音。
背後で機械の壁が粉砕される音。

頬を掠め、突き抜けたのはコイン。
微かに焼けてジンジンする頬をなぞる余裕も無く、御坂美琴は愕然と00000号を見つめるだけ。
今の業。良く熟知している。
何しろそれは己の必殺技でもあるのだから。


「れーる……がん……」

「察しの通り。お姉様は音速の三倍の速さでしたね? 残念ながら、ミサカの超電磁砲はお姉様を遥かに上回る音速の“十倍”。
まあお姉様を超える代償として、何かしら損傷は有るようですが」
481 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/12(土) 20:18:55.92 ID:GZ0ynT3DO


ふむ、と自らの人差し指と中指を視界に入れる。
彼女の二本の指は有り得ない方向へと、それぞれ折れ曲がっていた。

代償。御坂美琴を超える能力を行使する代わりに自らの身体を削ぐ。
再確認と言わんばかりに00000号は視認した後、視線を美琴に戻す。


「それにお姉様はミサカを救おうと宣言してるようですが、どういう方法で?」

「……そんなの気絶でもさせて、脳に仕込まれた部品を私の能力で解析して、破壊すれば良いだけじゃない」

「無駄ですよ?」

「何ですって?」
482 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/12(土) 20:21:03.55 ID:GZ0ynT3DO



―――――――――――――――



立ち昇る爆炎。コンテナというコンテナが全て爆発し、地を響かせる程に大爆発が轟いた。


「キャー、麦野格好良いぃぃ!! 咄嗟に二点レーザー発射して私を守るなんて。結局、流石って訳よー」

「くっ……」

「代わりに麦野は喰らっちゃった訳ね。それでも盾を使って最小限にダメージを減らす所、レベル5の貫禄が垣間見える訳よ」


両手を重ねて頬にピッタリと添え、至極歓喜と飛び跳ねる。

態度も相変わらずな、麦野を煽るような口調も依然として。
暗部の時のフレンダとは打って変わって、麦野相手に余裕綽々な様子の根元は、麦野の心理を理解しているからか。


「でも、麦野は何か勘違いしちゃってるみたいだけど……結局、逃げても無駄な訳よ?」

「……何だと?」




―――この時、全く場所が異なるが、二つの存在はまるで打ち合わせをしたかのような動作とセリフを放って見せた。
483 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/12(土) 20:23:47.92 ID:GZ0ynT3DO

00000号とフレンダは相対する彼女らに現実を突き付けるように言い放つ。
それは、至ってシンプル且つ単純明快な言葉。



00000号が指で頭を指せば。




「もしミサカが行動不能になった場合、自動的に自爆プログラムが発動。ミサカは敗北します」




フレンダは心臓部分を指す。




「もし私と麦野が一定の距離範囲内に居なければ、組み込まれた爆破装置が作動してボーンって訳」




00000号が指で心臓部分を指せば。




「もしお姉様がこの部屋から出た場合、頭と同様に自爆スイッチが発動」




フレンダは頭を指す。




「もし私が気絶で動けなくなった時も、結局さっきと同じで私が死ぬって訳よ」
484 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/12(土) 20:25:59.40 ID:GZ0ynT3DO




「簡単な事……ですよね?」




そう、何も難しくない。単純なこと。




「簡単な事……って訳よ?」




そう、何も難しくない。明快なこと。




「現実を受け入れられなくて、トラウマであるミサカを見殺しにして逃げるか」




幻想(自分)を、守るか。




「現実を受け入れて、トラウマである私を殺して跨いで行く道しか残ってない訳」




現実(相手)で、足掻くか。




「「―――ただ、それだけの事」」




現実を受け入れるか受け入れないか。そんな単純明快な話。

そして話を聞いていた彼女達は覚悟する。学園都市は完璧に自分達を潰しにかかっていると。
485 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/12(土) 20:27:40.45 ID:GZ0ynT3DO



―――――――――――――――



―――とある病院の玄関前。



「一つだけ忠告しておく。今から臨む相手は一位でも適わなかった男。それでも自分の前に立ちはだかるか―――浜面仕上」

「…………」

「……受諾したと承る。敵性を確認。オリジナルから記憶を引き取り、適切なデータは不要。
徒手空拳のみで戦闘を行う」



浜面仕上と第0位は相対していた。この場に居るのは二人だけ。
絹旗や滝壺は存在しない。故に応援皆無で浜面は立ち向かうという事。
無謀な事極まりない。しかしやるしかないのだ。

例えツンツン頭のヒーローみたいに意志が強くなくとも。
例え第一位みたいに絶大な破壊力を誇る能力がなくとも。

護りたい人が居る。
理由はそれで十分だ。

絹旗は麦野に異変を感じたと、センサーと地図を持ち出して急速に麦野の下へ向かい。
滝壺は病院内に隠れていてくれと、必死に懇願して待機中。


僅かな浜面仕上の戦いが、幕を開ける。
486 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/12(土) 20:31:12.79 ID:GZ0ynT3DO
投下終了です
すっごく短いなorz

では新約を>>1は読んできます
487 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/12(土) 21:25:07.61 ID:CBrHJnA+0

>>1は地震大丈夫?
488 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/13(日) 09:58:34.82 ID:9NYCSyyL0
いつの間にか来てたか 乙
>>1が無事で何よりだ
489 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/13(日) 10:30:54.03 ID:A75AaGk90

>>1が無事でよかった
490 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/14(月) 09:26:42.48 ID:yhR8VZmZ0
麦野とか美琴の戦い、番外個体vs一方通行 に似てるな。
491 :ヴェント派の>>1です [saga]:2011/03/15(火) 10:50:49.28 ID:Bv5yjycDO
地震の時>>1は兵庫にいたので無事でした。地震は携帯で知りましたね

というわけで投下します

本当ならひっそりと深夜に投下するつもりだったんですが、まさかの寝落ち
492 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/15(火) 10:55:12.81 ID:Bv5yjycDO
粉塵爆発によってコンテナは勿論、クレーン車や鉄筋など近辺に有った障害物は全て、問答無用に爆風で吹き飛んだ。
荒廃した工場は一瞬にして、炎や衝撃波で地は削れ物は吹き飛び、焼け野原というフィールドを形成する。

相対するのは麦野沈利とフレンダ。彼女達は能力や爆弾を使わず、素手や脚の格闘を繰り広げていた。
元々二人の格闘技術が、ある程度鍛えた風紀委員(ジャッジメント)より確実にセンスがズバ抜けて高いため、肉弾戦は寧ろ好都合。
しかし、矢張り麦野は何処かしら躊躇や逡巡を窺わせる雰囲気を醸し出す。不謹慎だが、戦闘に関して好戦的な麦野が防戦一方なのも至極珍しい。


「ふっ!!」


両足を重心に腰を巧みに捻り、フレンダが下から上へアッパーカットを麦野の顎へ掬い上げた。
精鋭された拳は弾丸の如く。
493 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/15(火) 10:57:02.12 ID:Bv5yjycDO

麦野はその拳を軽くいなす。逆に手の震えを抑えるように血が滲むほど強く握り締め、彼女は拳を作る。

未だに、目の前に対立するフレンダに眼が慣れない。冷静さを忘れて動揺も隠しきれない。
フレンダという仲間は死んだのだ。己の手で胴を分離してやり、殺した。認めよう。

現実は背けられないのだから。
自分にはケジメが必要だ。

だから今存在する『フレンダ』は偽物以外何者でも無い。自分の知っているフレンダではないのだ。何故なら彼女はもうこの世に居ないのだから。
どれほど消してしまいやり直したくても、決して、取り戻す事が出来ない記憶なのだから。
494 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/15(火) 10:59:59.60 ID:Bv5yjycDO


―――神に頼んで願いが叶うなら幾らでも懺悔ぐらいしてやる。

―――己の身と魂が必要ならば悪魔との契約だって構わない。

―――地獄だろうと奈落の底だろうと喜んで堕ちてやろう。

―――己の犠牲に一度だけ奇跡が起きるならば……それでも良かった。


だが、その誓いが星に届く事はない。何度渇望しようと幾度言葉に想いを込めようとも、意味はなさないのだ。
墓参りしに行った時も、諦めきれず、みっともなく泣き喚いて、天に慟哭した。
浜面や滝壺と絹旗にはその構図を晒していないだけ、まだマシであった。
この美しくも醜い世界で少女は泥水を啜り、石に噛り付いてでも生きていく。
それが、フレンダへせめてもの罪滅ぼしになると願うしか無いのだから。
495 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/15(火) 11:02:18.47 ID:Bv5yjycDO

恐怖を押し殺し、フレンダの胸中へ正拳突きを放つ。
だからこそ、目の前に居る彼女をフレンダと被せるのは筋違い。
自分の精神を狂わすために学園都市が造った偽物。そう思えばまだ戦える。

フレンダは麦野が拳を放つ直前、自分の腹部をさすって、






「……痛かった訳よぉ〜、切断された時」






―――こんな事を言い出した。
496 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/15(火) 11:03:37.84 ID:Bv5yjycDO


「!!!!!!」


拳がピタッと急停止して、麦野の脳裏に物事の発端である“あの日”が走馬灯のように想起する。




―――『結局さ、サバの缶詰がキてる訳よ』


―――『結局、そのうろたえ方がキモいんだって』




彼女は死んだ。殺した。

この手で。胴を分離した。

大量の血を浴びて。

彼女が叫ぶ声も聞こえた。

そう、この手でコロシタ。

コノテデ……、



「―――ごぁっ!?」



麦野の鳩尾に拳がめり込む感覚を得て、思考は強制的に現実へ引き戻された。
497 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/15(火) 11:05:40.74 ID:Bv5yjycDO
胃液が逆流するのを覚え、一瞬だけ吐き気を催す。


「なにボーっとしてる訳よッ!!」


ヒュン、と風を切る音。
フレンダが片足を軸に回転しているのを視認。遠心力を活用した回し蹴りだ。

それも束の間、続いて前屈みになった麦野の左コメカミに鈍痛と甚だしい衝撃が、彼女を襲う。
ぐらついて三メートルほど後退し、麦野は脳に響いた左コメカミを手で押さえる。
ベットリと血が手にこびり付く。どうやら彼女の回し蹴りは、血が流れる程度の威力に相当するらしい。


「どうしたの麦野? 結局、何か嫌な事でも思い出した訳?」


ニヤニヤとした表情だが、それとは裏腹に、掛ける言葉は心配するかのような素振りを見せるフレンダ。
498 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/15(火) 11:06:40.25 ID:Bv5yjycDO

実に白々しいと思う。答えが判っている場合の聞き方だ。
誰の所為かと言えばフレンダかもしれないが、たかが一言二言で心を揺さ振られて、グズグズに決意が崩れた自分の方も問題。



(……本当に、どうしたらいいの)



自分でも解らない。おそらく攻撃を仕掛ける度に、動揺して狼狽するような言動を故意に放り込んでくるだろう。
一々彼女の言葉に反応しなければ良い。取り合わなければ良い話。……それが可能ならば、今の苦労は存在しないのだ。

どうすればいいのだろう、と心の底から思考。
皆がハッピーエンドで迎えるシナリオは、有り得ない。
どのルートを選択しても、先に在るのはバッドエンド。
499 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/15(火) 11:11:04.29 ID:Bv5yjycDO

頭脳と心臓に設置された爆発物だけを破壊。という手も有るが、遺憾な事に自分の能力はそういう汎用性は皆無。
第一位や第三位の能力であれば、まだ救いの手は差し伸べられたかもしれない。
それでも、容易とはいかないだろう。もしかしたら緊急用に自らの意識を失わせ、気絶させる装置の施しが在る可能性も否めない。



(浜面……助けて……)



浜面の顔が脳裏をよぎる。
本音……いや、弱音を言えば、助けて欲しいの一言。
彼ならば理由無しで自分のために駆け付けてくれるだろう。……でも、今この瞬間、彼は絶対に来てくれはしない。

現実はそんなに甘くはないのだ。
逃げるか殺すか、二択のどちらか自分で踏ん切りを付けなければ、この死闘は決して終わらない。




「因みに、麦野が死んだからって私が生存するって訳じゃないからね」




―――ポツリと。フレンダは自らの生命の先が無い事を断言した。
500 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/15(火) 11:12:31.47 ID:Bv5yjycDO
それは余りにも残酷で。醜悪で。冷酷で。無惨で。悲劇で。滑稽で。
神は嘲笑って嘲笑って、嘲笑を繰り返す。冷徹な視線を麦野に送っていたのだ。

最終手段として、頭の隅に『自らの死』ぐらいは入れてはおいた。
逃げても駄目。気絶させるのも駄目。ならば自らの命を絶とう、と思案程度には考えていた。


―――虚しくも、最後の希望をも粉々に打ち砕かれたが。



「そりゃ当然って訳よ。結局、私は麦野を殺すためだけに造られた乱造品。
任務達成したら後は用済み。『焼却炉』に放り込まれるか、若しくは実験用の『人形』に堕ちるか……結局、生きる道は元から閉ざされてる訳」



心底どうでもいい、と。自分の行く末の運命に興味が無いとでも言うように吐き棄てた。
まるで感情が籠もって無い。それこそ、“本当に人形”のように。
501 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/15(火) 11:14:37.99 ID:Bv5yjycDO

結果、彼女は未来永劫助からない。
どんな手段を用いても、フレンダが待ち受ける定めは“死”のみ。
『光』を浴びる事は決して無い。そういう風に学園都市が仕組んだシナリオ。









そして、―――麦野の中で“なにか”が弾けた。









「そろそろ終いにするってわ―――」


彼女が右手に握っていたリモコン式遠隔操作のスイッチ押して、爆弾を起爆させる瞬間。……右肩から先の感覚が“消失”する。
502 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/15(火) 11:18:22.66 ID:Bv5yjycDO

フレンダは純粋に訝しむ。麦野の生気を確実に削り取られ、葛藤のさなかを彷徨っているはずだ。
逃げ道を完全に塞いで戸惑いを隠せないでいる今が、彼女の命を刈り取る絶好のチャンス。
なのに爆弾は一向に爆発を呼び起こさない。寧ろスイッチを押す感触が無かったような気がした。
何故だろう? 理解が全く追い付かない。

しかし、その謎は至って簡単で容易く、悩む必要は無い単純な答えだったりするのだ。

そう、例えば―――右肩の付け根から指の先までゴッソリと喪失している―――とか。



「ッッッ!!!!!!!!???」



自覚した瞬間から時が流れるのは速い。痛みも迅速に伝わっていく。
一気に嫌な汗が体中から噴き出る感覚を得た。……だが、まだ彼女の悲劇は終わらない。
503 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/15(火) 11:23:26.60 ID:Bv5yjycDO



「が……ッ!!!!?」



両太股。両足の甲。左肩。左腕。
合計六つ。それぞれに槍を貫通させたかのように、『レーザー』が貫いた。

この現象を知っている。
この業を知っている。
何故なら―――生前はこれを喰らって死んだのだから。



「む、ぎの……ッ―――ごぁッッ!!!!?」



三メートル以上も離れていた麦野だが、一瞬の内に直ぐ側まで詰め寄って来ていた。
彼女の姿を視認出来ないまま突如視界に入って、腹部に甚だしい衝撃を与えた麦野の蹴り。

フレンダはまるでボールのように上空へ蹴り上げられ、……漸く麦野を眼で確認する。
504 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/15(火) 11:25:35.08 ID:Bv5yjycDO

虚ろな瞳。青ざめた顔色。
様子から推測するに、何処か“吹っ切れた”有り様だった。
ゆらりと片手を自分に向け、翳す。途端に光が収縮されていく。

その意をフレンダは熟知している。だが、抵抗は皆無だった。
微動だにせず、ただただ狂笑するだけ。勝利を確信した訳でも、辟易した訳でもない。
ポツリと、彼女は独り言のように呟く。






「それでこそ、麦野のって訳よ。―――ばいばい」






光に包まれた彼女がどうなったかは、……言うまでもない。
505 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/15(火) 11:25:59.93 ID:Bv5yjycDO




……。




…………。




………………。
506 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/15(火) 11:28:27.10 ID:Bv5yjycDO


何秒、何分、何十分、何時間が経過しただろう。

燃え盛っていた火炎も鎮火して無風無音の静寂の中、麦野沈利は何をする訳でもなく、ボーっと無気力に立っていた。
天を仰ぎ、原子崩しで穴が空いた工場の天井から顔を覗かせる夜空を無言で見詰めて。

僅かに憂いを帯びる顔色は、彼女の心情の片鱗でしか過ぎなくて。
言い表せない感情が、心の中で渦巻くのを抑えきれなくて。




「アハ、ハハハ……アッハッハッハッ!」




顔を手のひらで隠し、隙間を抜くように声が漏れる。
笑いは、狂笑へと変わる。




「あはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは」




どうしようもない程の蟠りが声となった。

笑いたくて嗤いたくて嘲いたくて仕方なかった。
泣きたくて哭きたくて亡きたくて仕方なかった。

掻き毟りたい程堪らなかった。
喉が枯れる程耐えられなかった。

……もう、どうしたいのか、解らなかった。
507 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/15(火) 11:30:12.59 ID:Bv5yjycDO



「―――麦野」



ジャリ、と。地面に転がる砂利が僅かな軋む音を鳴らすと同時に、背後で自分を呼ぶ声が耳に届く。
ひとしきり嗤った後、麦野は狂笑を止めて、声に応じる。
誰かなんて声色で判別がつく。



「絹旗……居たの?」



自分でも驚愕に値する程、冷たくて淡々としていた。
けれど、絹旗は意に介さない様子で麦野に返答を返す。



「はい。超……結構前から」



今にも泣き出しそうな震える声で。何時もの口調も覇気が無く。

結構前から、と絹旗は言った。
麦野は得心する。どうやら絹旗は『彼女』を見たらしい。
ならば出て来なかった理由も、おのずと理解は可能。
大方、足が竦んで動けなかったのだろう。



「そ」



麦野は踵を返す。向かう場所は、顔は俯き服の袖をギュッと握って、頼りなさげに佇む絹旗の下。

傍らまで近付くと、ビクッと体を震わせて、再度掠れるような声を漏らす。



「……超すいません」

「いいのよ。別に咎めたりしないから。誰でも絹旗のようになってただろうしね」



ただ、と続けて麦野は膝を地面に落とし、……絹旗の胸に顔を埋めた。



「……少しだけ、こうさせて」



―――ここが、彼女の限界地点だった。
508 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/15(火) 11:33:21.19 ID:Bv5yjycDO




「……幾らでもどうぞ。そして最後には笑って帰りましょう。浜面の下に。
私達の居場所は、もう浜面と滝壺さんの所にしか超無いんですから」




こうして現実を打ち破った一人の少女は、涙に溺れ、悲しみにふける。

―――学園都市という、憎き場所で。
509 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/15(火) 11:47:08.95 ID:Bv5yjycDO
しゅーりょーです

さて、このスレも500を越えましたね。なんとも有り難いことです

新約ですが……どうしましょう。取り入れるべきか取り入れないべきか
まぁ多分使います、すいません

ヴェントさん小ネタは考えています
投下するかは、>>1の気分次第です
510 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/15(火) 12:02:04.16 ID:YuB0tq3Mo
>>1
511 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/15(火) 13:19:09.89 ID:kKFzDqLp0
惜しみない乙を!!
512 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/15(火) 14:12:29.97 ID:O0H8m1na0
>>1乙!
513 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/15(火) 14:35:45.18 ID:05gZtZrT0

特にフレンダは新約絡みで書きにくいかなーとか心配だったけど
これはいいフレンダ。00000号も期待してます
514 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [saga]:2011/03/15(火) 21:30:35.18 ID:rC5r/1X/0
乙 むぎのん…胸が切なくなるな
515 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(富山県) [sage]:2011/03/15(火) 21:32:05.10 ID:AHhyBDJyo
516 :ヴェントらぶの>>1です [saga]:2011/03/17(木) 11:19:04.18 ID:TwTrVj3DO
なんてこった…
御坂編の量が麦野編より多いだと…

まだ全部書けてないのですが、量が多いため分割しようと思います
前半後半みたいな感じで


※今回は新約のネタバレが有ります。注意してください

では投下します
517 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/17(木) 11:24:58.71 ID:TwTrVj3DO


00000号は自らの姉に対して殊勝する。

己の存在は本来、『御坂美琴』を超越するための実験用として造られた個体。
超能力も身体能力も体術も、戦闘に於ける大部分は軽く凌駕している。“そういう風”に調整されているのだ。
しかしながら超能力関してだけは例外。先刻のようにオリジナルを超越するには己の身を削らなければならない。
だが、00000号は臆しない。元々妹達は軍事用に造られたクローン。云わば、“当たって砕ける”ための存在なのだ。
けど自分という存在は“当たって砕ける”ために造られてはいない。“砕いて砕かれる”存在。

御坂美琴を殺して自分も死ぬ。

万が一、この戦闘で凱旋したとして、今後自由気ままに生き残れる可能性は絶無。
結果、自分が生きる道は造られた時から鎖されているだけの事。ただ、それだけの話。
518 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/17(木) 11:26:45.24 ID:TwTrVj3DO


話を戻そう。閑話休題。
00000号が殊勝する理由。結論として、御坂美琴は生き延びていた。……至る所に電撃を受け、満身創痍になりながらも。
何億ボルトを越す電撃だ。致死レベル級に値するのは間違いない。
体力が削がれ、脚が崩れてもオカシくはない状況に彼女は陥っている。
気絶では済まない、心臓が停止してもオカシくはない電撃を被っている。



―――それでも、御坂美琴は倒れない。



00000号は溜息を吐かざるおえない。
我が姉ながら困ったものだ。こうもしぶといと、“手段”を次の段階に移す必要が出て来る。
519 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/17(木) 11:27:48.78 ID:TwTrVj3DO


「命知らずの典型、と言うべきでしょうか」



首を傾げ、素直な心境を呟く。
視線の先には姉の御坂美琴。覚束無い足取りで自分と相対していた。
もはや意識さえ定かではない彼女だが、朧気に開く瞳には、確かな闘志が宿っている。

そして00000号が自分の姉に対して、一番不可解と思う点が、



「……何故、攻撃を仕掛けないのですか?」



この点である。一応電撃は弾いたり軌道を逸らしているが、全く攻撃をする気配が感じられない。
00000号が怪訝する理由も無理はない。己の姉は逃げるか殺すかの二択しか無いと宣言の後、積極的な突撃はして来なくなった。
520 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/17(木) 11:30:15.76 ID:TwTrVj3DO

怖じ気付いた? それは無いだろう。我が姉はこの程度で気後れする性格では無い。

救出の手段を思考? 可能性としては随一を誇るだろう。でも攻撃を繰り出さないのには繋がらない。
では、何故……?



「……アンタさ、もしかして私を殺す気無いでしょ?」



―――返ってきた答えは、予想だにしないモノだった。
521 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/17(木) 11:32:18.23 ID:TwTrVj3DO

虚を突かれたように、00000号は停止する。
指二本が有り得ない方向にねじ曲がった時も、憶測より幾分姉が電撃を喰らった時も、姉が一切攻撃を仕掛けて来なくなった時も、己の思考や行動までもが凍結状態になる程では無かった。


しかしだ。
これは思いも付かなかった。


逆に質問返しされたのも有るが、そのくらいで思考は止まったりしない。
我が姉は電撃を受け過ぎて、頭のネジ二、三本ぐらい吹っ飛んだのだろうか?



「アンタは殺すと宣言したわね。尚且つ超能力は私を越えるとも言った。―――じゃあ、何でさっさと殺さないのよ?」



フラフラと頼りない様子で彼女は明言する。00000号の心髄を突くように、裏をかくように、御坂美琴は言い放つ。
522 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/17(木) 11:33:37.37 ID:TwTrVj3DO



「十億ボルトを越えるなら、私の『超電磁砲』を上回るなら、何で! 一発で私は死んでないのよ?」



彼女は反芻する。
時は8月21日。場所は橋梁。
上条当麻と対立した時だ。

御坂美琴は漸く彼の言葉を、今ここで理解したと思う。
きっと上条当麻には、こういう風に自分が見えていたのだろう。



「こんな大量に電撃を浴びて尚、私は生きている。何で? 答えは単純よ。―――アンタが、私に対する攻撃を自分でも気付かない内に“手加減”をしてるから」
523 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/17(木) 11:35:31.47 ID:TwTrVj3DO


そんな事は有り得ない。00000号はそう否定の言葉を投げ掛ける……が。
出ない。言葉が出ない。口が動かない。紡ぐ事が出来ない。
そして心の中で呟かれるのは、もう一人の自分が己に対する疑問。




―――本当に有り得ない?




有り得ない。有り得ないはずだ。
自分が姉に対して手加減など有り得るわけが、




―――絶対に?




…………。
524 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/17(木) 11:42:04.44 ID:TwTrVj3DO



「……手段を選ぶ余地無し。速やかに攻撃性のシフトチェンジに移行。全力を持って敵を撃破せよ」



ボソボソと口が蠢き、00000号は独り言を呟く。途端、……彼女の瞳から躊躇いの色が消えた。
美琴が危機感を覚え、地を蹴ってバックする直前、―――頭上でガシャガシャと機械の動力音を耳にする。

天井を見上げれば、機械で覆われた天井に一ヶ所だけ扉のように開くと、奥から機関銃。
それも一回りも二回りも強大で、銃口の部分は何本ものコードが繋がれていた。
対侵入者用に備えるために使うのだろうか、鉄板と合体して構図は監視カメラと酷似している。
機関銃の側面にはこう記されている。







   ガトリング レールガン
―――Gatling_Railgun′と。
525 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/17(木) 11:44:31.61 ID:TwTrVj3DO




「ッ!!」




疑問とか憤慨より先に、恐怖が御坂美琴の全身を迸った。
もう殆ど無意識や反射神経の感覚で、機械の壁による磁気を作用して、自らの磁力を用いて身体を強制的に壁へと引き寄せて緊急回避。

その瞬間、






――――ッッッッ!!!!!!!!!!!!






「音」という比喩では表せきれない。
526 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/17(木) 11:45:21.09 ID:TwTrVj3DO
警備員(アンチスキル)で見掛ける銃撃戦や自分の超電磁砲が子供騙しの戯れにしか見えない程、絶大な破壊力を誇っていた。
直径十メートル範囲に及び、床に著しい大規模な穴を穿つ。
まるでスコップで地面を掘るように、御坂美琴が居た場所を綺麗に抜き取る。

壁と衝突した反動が、どうでもよくなった。背中に受けるダメージ何か気にしてられない。
御坂美琴は未だに速射を続ける機関銃を見据えると、電撃の槍を放って破壊。
この時ばかり己の能力が遠距離攻撃が可能で、能力の関係上機械に詳しくて良かったと思念。



「安息するには早過ぎますよ?」



―――視界の端で突如、閃光が煌めく。
527 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/17(木) 11:47:44.44 ID:TwTrVj3DO



「く……ッ!!?」



咄嗟に腕を振るい、迫り来る閃光の軌道を逸らす。自分の能力と同系である事が幸いした。
逸らした閃光は御坂美琴の頭上を越えて、機械の壁を貫通する。壁程度では閃光の妨げにならなかったのだろう。
御坂美琴は目線を変え、00000号を視認。彼女の両手には見た事の無い銃が携えられていた。

銃には変わりは無い。唯一異なるのは「弾」を撃つ銃では無い事。
「弾」の代わりに装填されるのは「光」。御坂美琴がそれに気付いたのは、尾の部分に透明で缶が六個分の大きさをした、エネルギー充電式の円柱型が有るからだ。
しかもおそらくそれは特殊。もう一つ、彼女は気付いた重要な部分が存在する。
銃の側面。そこにはこうあった。






   メルト ダウナー
―――Melt_Downer′と。
528 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/17(木) 11:50:38.74 ID:TwTrVj3DO
とりあえず終了です

続きは書け次第投下します
今日中には済ませたいところ
529 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(富山県) [sage]:2011/03/17(木) 21:57:37.85 ID:rJhXt0Cvo
530 :ヴェント好きの>>1です [saga]:2011/03/17(木) 22:54:16.36 ID:TwTrVj3DO
やっと書けたー!
そしてコメントの無さにビックリだぜハッハー!……ちくしょう

まぁそんな茶番はどうでもいいので、投下します
531 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/17(木) 22:56:01.34 ID:TwTrVj3DO




御坂美琴は想起する。

“絶対能力進化実験”の時。
実験に関わっている研究施設を片っ端から撃滅していた時。

一度だけ『彼女』と出くわした。
後々知った事だが、彼女は麦野沈利。学園都市の第四位らしい。
その能力名が『原子崩し』。

という事は、



「察しが付いてると思いますが、この銃器は学園都市製。第四位の能力をベースにした対戦争用兵器です。
本来は後一段階巨大で、駆動鎧(パワードスーツ)に付属なのですが、この通り駆動鎧が無くても扱えるようにコンパクト化されています。
その分のデメリットとして、威力や規模、射程距離や範囲は格段と劣りますが……」



ジャキ、と銃口の矛先を御坂美琴に向けて、00000号は告げる。
532 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/17(木) 22:57:39.71 ID:TwTrVj3DO



「さて、お姉様。もうお気付きですね? 科学は常にどんな時も進化を遂げています。今この兵器を見たからと言って、明日同じ物が見れるとは到底有り得ません。
憶測に過ぎませんが、明日になれば超電磁砲と原子崩しが同時速射される兵器が開発される可能性も否めなくは無いのです」



科学は毎秒ごとに進化する。
今触ってる最新の機械が一秒後、最新では無くなってるという事。
例え、LEVEL5がモチーフだろうと関係無い。それが『学園都市』の世界。表舞台には決して出ない、裏のやり方。

と言っても、と御坂美琴は思念する。こんだけ悟った所で、学園都市の片鱗にしか過ぎないのだろう。
覗いたら出るわ出るわの盛り沢山なのだ。もっと、もっともっともっと深淵なる“闇”が存在するに決まっている。
533 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/17(木) 22:59:29.26 ID:TwTrVj3DO



「元々は行使する予定では無かったのですが……不思議ですね。
これが『憤り』なのでしょうか? ミサカに感情はインプットされていないのは間違いありません。ですが、お姉様のお言葉により躊躇いが消えました。感謝します」

「……そりゃどうも。こっちも、やっと活路を見出す手段を見付けたわ!!」

「その活路とやらは実現は不可です。ミサカに軍配は上がりますので」



言い終えた途端、ズバァッ!! と銃口から原子崩しが射出。
御坂美琴は00000号を中心に円を描くように、横に駆け出した。
その動きに00000号は眼を細める。彼女が回避や弾く動作でなく、“突撃の構え”としての回避に転じたからだ。
何か彼女の引き金を引いたのか。
原因は些か不明だが、あちらが真っ向から立ち向かうと言うのなら、こちらは迎え撃つのみ。


御坂美琴は思考する。
煽りに煽った甲斐があったと。
00000号は自分の言葉を過剰に反応を示し、怒りを露わにした。
これでいい。おかげで確信を持てる事が可能になった。
534 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/17(木) 23:00:42.12 ID:TwTrVj3DO

以前上条当麻に橋梁で同じセリフを言われた時、自分は激情を抑えきれず激昂した覚えがある。
端的に言えば、今この瞬間は『あの時』の立場とそっくりなのだ。



上条当麻は自分で、御坂美琴は00000号。



ならば00000号は自らの明確な動揺を否定しているはず。
そんなはずはないと。
決して有り得ないと。
だからこそ自分がそうだったように、彼女の怒りの矛先は目の前に居る自分に向かう。
八つ当たり以外何物でもない。
でも受け止めよう。
『彼』も受け止めてくれた。
『彼』が教えてくれたから、今度は自分が我が妹を受け止める番。
535 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/17(木) 23:01:55.21 ID:TwTrVj3DO

御坂美琴には解る。
00000号は、自らの姉を“わざと”窮地に追い詰めて、精神を崩壊させた上で―――理性を失った姉に殺されようとしている事を。
何故確信出来るか? だって00000号が自分から言ったではないか。


“躊躇いが”、と。

“元々は行使する予定では無かった”、と。


確信足る理由はそこ。
彼女も知らず知らずの内に発した言葉だ。本心なのは間違い無い。
このセリフの裏側は、少しでも姉を殺すのに逡巡していたという事。
彼女は殺すと明言したのにも拘わらず、だ。
最初から殺害する気満々ならば、出会い頭直後に行使すれば一発で終わっていただろう。
536 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/17(木) 23:03:27.19 ID:TwTrVj3DO
だからこそ、00000号に殺す気は無いと推測した。

御坂美琴という姉を出来るだけ追い詰めて追い詰めて、最後に砕け散る。
彼女の運命は「死」しか迎えない。この戦闘に勝っても負けても、引き分けでも行き先は「死」。
生きる道は元から閉ざされている。ならばせめて、我が姉に殺されよう。
出来るだけ姉を精神的に苦しめて。何も無しに呆気無く己が死んだら、姉が一生後悔に悩む。
姉は強がっているだけで、実は脆く弱いから。
だから、精神的に追い詰め理性のタガも外れてしまえば、僅かながら己の所為にする事が出来る。

……そんな、報われない思いが、心の奥底、扉で閉められた場所に有るのだろう。
537 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/17(木) 23:04:29.39 ID:TwTrVj3DO

御坂美琴は歯を強く食い縛り、歯軋りする。
我が妹の胸中を漸く理解した彼女は、憤りと共に決意を示唆。



(必ず、この子を救ってみせる!!)



学園都市が仕組んで扉を閉められたなら、自分が無理矢理にでもこじ開けてみせる。
538 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/17(木) 23:06:17.76 ID:TwTrVj3DO

00000号は再度、原子崩しを姉へ撃つ。
瞬く閃光は猛々しく視界を覆い、一発でも喰らえば肉だろうが骨だろうが金属だろうが消し飛ぶ威力。
美琴は手を翳し、原子崩しの軌道を変えて直撃を逃れる。



(厄介ね……。あの子より優先した方が良さそうだわ)



タイミングを見計らい、電撃の槍を放ち銃器を破壊した方が無難。
00000号も電撃使いだ。そう容易く事が進展するとは思えない。
無闇に放ったって軌道を変えられるか相殺されるか、どっちかだろう。
ここは虚を突くように隙を狙い……と、美琴の思考は中断される。
539 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/17(木) 23:07:59.09 ID:TwTrVj3DO

何故なら―――頭上で又もやガシャガシャと動力音が響いたからだ。
それも、一ヶ所からではない。
動力音は左右の耳から違ったタイミングで聞こえてくる。
つまり、―――設置された機関銃は『二つ』。

御坂美琴は考える間も無く、磁力を使ってなるべく遠い壁へと吸い寄せられるように急発進。

直後、




――――ッッッッ!!!!!!!!!!!!




再び、機関銃が牙を剥く。
御坂美琴へ向けた、圧倒的な掃射。
それも、先刻の二倍の破壊力。
540 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/17(木) 23:09:44.78 ID:TwTrVj3DO



「本気でシャレになんないっつーのッ!!」



応戦する形で、電撃の槍を機関銃に放ち、二機連続で破壊。
あんな物一発でも喰らえば、速射の餌食。人間一人ぐらい軽く消し飛ぶ勢いだ。
おちおち00000号の相手もしてられない。天井にも気を配らせながら戦闘が可能な程、緩い相手ではないというのに。


―――ジャキッと、側頭部に銃器を押し付けられる触覚を感受する。


強引に胴を捻り、銃口から出来る限り逸らすように体を反り返す。
その矢先、ズバァッ!! と閃光が御坂美琴の頬を掠め、髪の先端を消した。
541 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/17(木) 23:11:48.46 ID:TwTrVj3DO



「―――っ」



息を飲む。僅か数秒単位でも回避に転じるのが遅ければ、首から上は消滅していただろう。
まさか能力の副次物であるレーダーを掻い潜って接近するとは、到底思わなかった。

閃光は00000号が携えていた銃器の原子崩し。ならば急接近を逆手に取って銃器を破壊する!
……が、彼女が行動に転機する寸前、頭を乱暴に鷲掴みされた。

00000号の片手。その成す意味、理解に時間は要らない。
妹は自分と同じ電撃使い。故に、





「が、ァァァああああああああああああああああああッッッ!!!!!!」





―――電撃以外に何があろうか。


00000号の腕を通して御坂美琴に直流された放電は、彼女の命を蝕み削り取る。

室内に響き渡る雷鳴と、少女の音色。虚空に奏でる悲劇の合唱に介入する者は儚くも、存在しない。
542 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/17(木) 23:13:21.49 ID:TwTrVj3DO



「……頃合いでしょうか」



電流が止み、余韻が占める。

常盤台の制服も焦げて、所々崩れ始めた。勿論、対象は自分のではなく御坂美琴。
00000号は現状把握するため、空虚な瞳が御坂美琴を射抜く。
我が姉はピクリとも動く気配を見せない。未だ頭を鷲掴みされているのにも拘わらず、手を払う動作や生き延びようとする抵抗すら皆無。
だが、



「息は……辛うじて機能していますね。本当にタフなんですね、お姉様は」



微弱ながらも、呼吸はしていた。
生死の間を彷徨う状態に陥ったのだろう。
543 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/17(木) 23:14:48.15 ID:TwTrVj3DO

それにしても、十億未満とは言え電流を直接流し込んだのに、姉は生存。
ただ運が強いだけなのか、若しくは純粋に体が丈夫なだけか、定かではない。しかし……どうでもいい。



「…………」



ジャキ、と。銃口を御坂美琴の心臓部分に宛行う。
後は引き金を引くだけ。それだけのはずなんだが……、



「この期に及んで、抵抗を示しますか? お姉様」

「……っ、あん、たは……私が、……助け……るん、だから……っ!!」



鷲掴む手を、彼女は掴む。
544 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/17(木) 23:16:03.95 ID:TwTrVj3DO
力がもう入らないのだろう。手首を払うだけで退けそうな程に弱々しく、衰弱しきっていた。



「残念ですが、何度も言うようにお姉様では不可能。断言します」

「……っ」



姉は一度、強く歯を食い縛ると、こう、呟いた。









「―――缶バッジ、覚えてる? 私、達の……思い出」









ドクンと、心臓が高鳴りを告げる。
545 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/17(木) 23:17:44.98 ID:TwTrVj3DO




「缶……バッジ……?」




―――ミャー……と鳴く四足歩行生物がピンチです。




そう、




―――グッジョブです! とミサカは惜しみない称賛を贈ります。




それは、




―――半分コしましょう。




とても暖かい、




―――いやいやねーだろ、とミサカはミサカの素体のお子様センスに愕然とします。




一日の出来事。




―――お姉様から頂いた初めてのプレゼントですから。
546 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/17(木) 23:19:35.82 ID:TwTrVj3DO


銃器が手から滑り落ち、頭を鷲掴みしていた手を離し、両手で自らの顔を覆い隠す。




「あ……あぁ」




―――こ、こ……ッ、コラァアッ!! 何スカートまくり上げてんのよーーっ!?




「ミ……ミサカは……っ」




―――アンタはあれか? 腹ペコキャラってやつか?




「あぁ……ッ」




―――うん! 鏡で見るより分かりやすいし客観視できるわね。




「……ッッッ!!!!」




―――やっぱ返せーっ!!
547 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/17(木) 23:21:36.84 ID:TwTrVj3DO




「あああああああああああああああああああああああッッッ!!!!!!」




00000号の全身から電撃が放電される。一種の『能力暴走』に近い現象だった。
天井を焼き払い、地を薙ぎ払い。
LEVEL5と同等以上の力を持つ暴走だ。近付こうものなら巻き込まれて命の保障はされないだろう。


……『彼女』以外は。





「大丈夫よ」





御坂美琴は暴走する妹を、微笑みを浮かべながら優しく抱き締める。
そっと包み込む様子は羽毛を撫でるかのように。泣きじゃくる子供をあやすかのように。




「大丈夫。何時だって、私はアンタ達の味方だから」




そして―――パキンと。

00000号の脳と心臓から、何かが壊れる音がした。
548 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/17(木) 23:22:41.32 ID:TwTrVj3DO



……。



…………。



………………。
549 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/17(木) 23:23:56.51 ID:TwTrVj3DO


何秒、何分、何十分、何時間が経過しただろう。

放電は何時の間にか治まり、半壊状態になった実験用の空間がそこにあった。
もはや天井に備えられた機関銃がマトモに機能しない程。黒焦げで、滅茶苦茶に破壊されているのだから。

二人の体勢は依然と変わりは無い。随分と手間がかかった願いが、かなり遠回りしながらも漸く叶ったのだ。




―――そんな時だ、引き裂くように壁を突き破って乱入者が来たのは。




「「!!」」



二人の姉妹は目視する。
それは駆動鎧。
カマキリを彷彿させる図体。
一機だけでなく、一機に呼応するように二、三、四……十機以上。
550 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/17(木) 23:25:38.70 ID:TwTrVj3DO

しかし二人が釘付けになっている部分は全体ではない。
カマキリの羽を収めるための腹部側面に刻印されたアルファベットに、凝視した。


FIVE_Over.
Modelcase_"RAILGUN".


おそらく、自分の能力の機構を機械的に再現するために作られた駆動鎧。加えて弾は全部『超電磁砲』といった所か。
先刻の機関銃のように掃射で。

御坂美琴は00000号から離れる。
もう自分には能力を使う体力も戦闘用に残していない。有っても逃走のため。



「……逃げるわよ。こんな機械ぶっ壊してやりたい所だけど、一旦退いて―――」



トン、と。



美琴は押された感覚を得た。
551 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/17(木) 23:28:08.31 ID:TwTrVj3DO
同時に足場が無くなって宙に浮く感覚も。機関銃で空けた巨大な穴に放り込まれたのだ。

押した張本人はこの中で一人しか居ない。



「お姉様は逃げて下さい。ここはミサカが時間を稼ぎます。そこに入れば一階へ通じるはずですので」

「ちょっと!! アンタ……ッ!!」

「お姉様があの人に言いましたように、ミサカもお姉様に言います。―――それでもミサカは、きっとお姉様に生きて欲しいんだと思います」



『最後』に見た00000号の表情は、無感情とは思えないくらいに―――満面の笑みだった。









「イヤァァァアアアアアアアアアアアアアッッッ!!!!!!!!!!」









こうして現実を打ち破った二人目の少女は、涙に溺れ、後悔にふける。

―――学園都市という、憤る場所で。
552 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/17(木) 23:32:11.68 ID:TwTrVj3DO
終了ですっ
久しぶりにこんな書きました

新約ネタバレがバリバリですみません

最後は悩んだ結果です
>>1は別に美琴さんが嫌いなわけではないのであしからず
553 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) [sage]:2011/03/17(木) 23:36:40.51 ID:T5rKAIjAO
乙。
ちなみに、無駄レスしないように待ってただけだい。
554 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/03/17(木) 23:40:22.92 ID:DdeWbBYAO
乙ッ 続き楽しみに待ってます!
555 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/17(木) 23:44:50.65 ID:J8j54BjDO
乙なのですよ〜♪

556 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/18(金) 01:16:27.02 ID:3PxS+ZF4o
ヴェントさんまだー?
557 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/03/18(金) 02:39:37.82 ID:UfEfGSIBo

ヴェントって美人なんだな
558 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岐阜県) [sage]:2011/03/18(金) 10:11:59.66 ID:OBwYpAYX0

00000号ぅぅぅぅ

そういや浜面氏どうなった
559 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [saga]:2011/03/18(金) 10:12:21.25 ID:KhkX8rAI0
乙ッ
続きが楽しみで仕方ない
560 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2011/03/18(金) 22:40:06.40 ID:8mMToWaO0
>>1乙!
新約と同じぐらい面白い!
561 :ヴェント大好きな>>1です [saga]:2011/03/19(土) 14:46:36.48 ID:Klmpo7sDO
>>556さん
…………orz

だ、大丈夫です!第0位とガブリエルが終わったら、後は上条さんとヴェントさんの独壇場ですのでっ!
わっふぅーい!テメェら結婚しろよクソがーッ!!状態になるほどやっちまうんで!!(多分


そんな訳で投下します
562 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/19(土) 14:49:13.56 ID:Klmpo7sDO



一方、とある病院玄関前。



浜面仕上は第0位との闘争に苦戦していた。
野郎達と路地裏で学んだ喧嘩術を繰り出す浜面に対して、『学習装置』の入力で、拳だけで殺す技術を完璧に繰り出す第0位。
第0位からしたら浜面の技法は、ド素人極まりない。
それでも渡り合える時点で、十分浜面仕上に宿っている潜在する力は計り知れないのだが……。

まあいい。現在の状況で明確なのは浜面が劣勢だという事。
数々の死線を潜り抜けてきた彼も、今回ばかりは容易に対処できる程、甘く無いのだろう。


暗部の抗争を代表とする。
三度に渡る麦野沈利との死闘。
学園都市から逃走して巻き込まれた第三次世界大戦。
ラインの確定を策略した『新入生』の騒動。
563 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/19(土) 14:51:24.22 ID:Klmpo7sDO

多くの勝利を収めてきた浜面。

時に逃げに徹し、時に攻めに徹する。逆手に取って予想外の攻撃を仕掛ける事も有れば、巧みに欺く事だって有る。
彼は様々な手段を用いて、絶好のタイミングと絶妙な境目を見極め、敵を負かし勝利を掴んできた。

一般人がこなすには到底不可能。
例えば、浜面曰く車の運転に必要なのは免許カードではなく『技術』と公言するように。
要は『センス』の問題。野郎達との数多なる喧嘩、暗部やLEVEL5と激戦を繰り返していれば、嫌でも精鋭に研かれていく。
……その頃には、既に『一般人』では無くなっているかもしれないが。
564 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/19(土) 14:52:40.55 ID:Klmpo7sDO

考え方の優先、咄嗟の判断力。
これらを臨機応変に発揮して上手く有効活用する。


それが浜面仕上。


しかし第0位には悪戦苦闘。
彼は全て『演算』と『第六感』で挑んでいると、浜面は推し量っている。
565 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/19(土) 14:54:59.25 ID:Klmpo7sDO

敵の攻撃。どの方向から来るか、どんな状況の最中に特定手段を行使するか、拳か蹴りか頭か膝か肘か若しくは技を決めてくるか、顔色の様子や指一本の動きまで全部、『演算』で計る。

自分の防御。どの判断が一番最良か、どんな手段を用いたら良いか、いなすか受け止めるか反らすか転がるかステップを踏むか若しくは空間移動か、状況に相応しい適切な回避が好ましいか全部、『演算』で計る。


だが残念な事に、演算では理解不可能な不特定手段が存在するのだ。

良い例が“不意打ち”。

平たく言えば、目で察する事が出来なかったり、耳で感知出来なかったりと、“五感”に情報が入らない場合の事柄。
背後から急に殴り掛かってきたら、避けようが無い。それこそ第三位みたいな能力が有していれば、レーダーを活用出来るのだが、無い物ねだりしたって仕方無い。

そこで、有利に働くのが『第六感』。
殆ど直感に過ぎないではないかと、一言でバッサリ切りたくもなるが、実際に第0位は会得し自分の物にしているので、文句の付けようが無い。
566 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/19(土) 14:56:15.15 ID:Klmpo7sDO

浜面は過去を振り返る。

初めて駆動鎧を着用して、モデルは異なるが同じく駆動鎧を着用した『新入生』と拳を交じり合った時。

身体こそ絶対付いていけるはずも無いが、当時の感覚と記憶は残っているまま。
今後のためにも、どうにか習得出来ないかとイメージトレーニングをしたもの。
……その光景を絹旗や麦野に目撃され、揶揄や罵られたのも、また一つの思い出。
567 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/19(土) 14:59:16.97 ID:Klmpo7sDO


口元から垂れる血を拭わず、浜面は第0位の顎を目掛けてアッパーカット。駆動鎧の時を意識して、見様見真似に繰り出す。
振り抜いた拳は第0位にあっさりと片手でいなされた。

すると、第0位のもう片方の手が、浜面に牙を剥く。
上から振り下ろすように拳を打つ。鈍器の如く迫る拳を、浜面は彼と同様に片手でいなす。
ズン……ッ、と流す直前に感じる重量は拳の威力を表している。

一撃一撃の重さ。力や筋肉が強いから重くなるのではない。勿論筋肉も必要だが、闇雲に振るうだけでは宝の持ち腐れ。


それ以上に必須条件が『型』。

型の呼吸をマスターするだけで、威力は断然と違う。例え細身の人間だろうと、型を覚えれば瓦の一枚ぐらい拳で割れると言う。
568 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/19(土) 15:00:23.11 ID:Klmpo7sDO

結局、一撃の重さも二人の違いもそこにあるのだ。

浜面は筋肉の動かし方は、駆動鎧の見様見真似で拳を打つのに対し。
第0位は学習装置で全部頭の中にインプットされてるため、型を使った拳を打つ。

彼らの拳と拳が衝突し合った場合、衝突したまま僅かな静寂が訪れるのか、どちらかの拳が弾かれて軍配が上がるのか……言うまでも無いだろう。

一撃の重さ。この戦いでまた一つ学んだ浜面である。
569 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/19(土) 15:02:34.38 ID:Klmpo7sDO

拳をいなした直後、第0位は地面を蹴ってバック。その様子に浜面は訝しむ。
今まで息を忘れるほど、局面の拳の打ち合いを交わしていたにも拘わらず、今更一旦区切りを導入するという事は……何かしら理由が出来たか、勝機への導きを得たか。



「……成る程。上層部が危険因子と危惧視する事情を理解。見事なものだ、浜面仕上」

「……誉められてる気がしねえけど、ありがとよ」



これが浜面仕上。
負け犬が見せる、底力。
570 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/19(土) 15:04:24.51 ID:Klmpo7sDO



「しかし残念だ。今回に限っては運が悪かったとしか言いようがないな」


告げると、第0位は指を突き立て、指し示す。
それも指の向かう先は浜面にではない。浜面の“背後”に向けているのだ。

だが浜面は取り合わない。
寧ろ古典的な手段を選抜した第0位に肩透かしを喰らうほど。
わざわざ距離を置いたのは、この為か? ……いや、違う。



(もっと違う目的があるから間合いを取ったんだ。じゃあ、背後に何か意味が……?)

「はまづらっ!!」




―――その声で、自分の余裕を失われるのを感じ取る。
571 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/19(土) 15:05:20.96 ID:Klmpo7sDO


慌てて振り向けば、病院玄関に自分の愛する人。
駆け付けて来たのか、肩を上下に揺らして息遣いは少々荒く、顔色は心配や焦りの色を窺えた。

浜面は深夜だとか病院だとか考える余地も無く、声を荒げる。



「滝壺ッ!!?」



滝壺理后。
恋人である彼女が、そこに居た。



「はまづら、血が出てる……」



駆け寄ってきた滝壺は、ポケットからハンカチを取り出し、彼の口元から垂れる血を拭う。
572 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/19(土) 15:06:38.38 ID:Klmpo7sDO

滝壺の好意を対照に、浜面は彼女へ説得するように怒りをぶつける。



「滝壺っ!! 隠れてろって言ったじゃねえか?! ここは俺が食い止めるから早く逃げろっ」

「ダメ」



彼女は僅かに横へ首を振り、否定した。
つぶらな瞳が、浜面を射抜く。



「はまづらが頑張ってるのに、私だけじっとしてるなんて出来ない。私も戦う」

「……っ」
573 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/19(土) 15:08:06.04 ID:Klmpo7sDO


彼は歯を食い縛る。
こうなるなら看護婦や先生に見張っててもらうよう懇願しとけば良かったと、今更ながら後悔。

今回の敵が敵なだけに滝壺を守れるかどうか定かではない。
現在の所は徒手空拳で衝突しているが、何時あちらが能力を行使するか解らない。



(……そういえば、結局何のために退いたんだ……?)



ふと、考える。
574 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/19(土) 15:10:06.39 ID:Klmpo7sDO
距離を置いた意味と滝壺が姿を現した意味は、決して繋がらない。

浜面は再び、第0位を射抜く。
肝心の彼は仮面の砕けた所から覗かせる空虚な瞳を……瞑る。



「一度だけチャンスを言及する。……滝壺理后と逃避を行え」



―――あまりにも、予想外の言葉を告げられた。



「元々の標的は『一方通行』で『浜面仕上』ではない。貴様を殺した所で自分の利益は皆無。
それで一方通行を誘き出す事柄が可能ならば、比喩無きに八つ裂きにするが……どうやら違う者を誘き出すようだしな」



肩を竦めて見せ、瞼を開けて浜面を視界に入れる。



「次は絶無。否定の場合、武器と能力を用いさせてもらう。手加減は無用だ」
575 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/19(土) 15:12:20.19 ID:Klmpo7sDO


先刻とは比べ物にならない程、殺気が浜面の身体を襲う。
人間が出せる範囲を容易く超越した、深い深い底の冷たい恐怖。
背筋にイヤな汗が噴き出る感触。少なくとも、今後戦闘を続行しても時間は稼げないと理解する。

おそらく、この機会を逃したらもう無いだろう。
だから、浜面は断言する。






「どかない」






せめて、一方通行が回復するまで譲る気は無いと、確かな意志を持って第0位に……宣言した。






「あくせられーたには、私もお世話になってる。だから、戦う」






追随するように、滝壺も言う。
非力ながらも浜面と共に戦う、と。
576 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/19(土) 15:13:19.17 ID:Klmpo7sDO



「……二度目は無いと忠告はした。全力で行かせてもらう」



懐から拳銃を取り出し、装填。
浜面も呼応するように、半蔵から譲り受けたレディースの拳銃を構える。




その瞬間―――ゴッ!! と。




決して銃声の音ではない、鈍器を人体に殴打した鈍い音だった。
響いたのは第0位から。彼は血を迸らせて、何故か宙を舞っていた。
577 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/19(土) 15:14:50.44 ID:Klmpo7sDO



「は……?」



浜面は目の前の光景の理解に苦しむ。何が起きたかも整理が付かない。
彼にとって微かに漏れた疑問が全て。

視界に映るのは新たに割り込んできた『人間』。
背は180は越すだろう長身の大男。
月明かりに反射して煌めく耳のピアス。
手には血がベットリと付いた金属バット。

そして、外見の中で一際目立つであろう……『青い髪』。
578 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/19(土) 15:16:24.34 ID:Klmpo7sDO

大男は第0位がノーバウンドで五メートル以上飛ばされて行くのを確認して、浜面に振り向く。



「早よ行き。ここはボクが引き受けたる」



口調は些か怪しい関西弁。
金属バットを肩に担ぎ、大男は浜面達に逃げろと言った。



「あ、あんたは……?」

「質問に答えてるヒマ無いで。それに、あのまま戦っても勝てる見込み無かったんやろ? 奴さん、本気出すみたいやしな」

「で、でもよ!」

「言い方変えよか?」
579 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/19(土) 15:17:43.41 ID:Klmpo7sDO


大男は飄々とした態度で、線のように細い目が僅かに開き、鋭い目つきで浜面に告げる。



「第一位の警護を頼むわ。せやから行ってくれると助かるんやけどな〜。早よせな奴さん、復活してまうで?」

「そういう事か。……死ぬなよ」

「ハッハッハッ! 心配はご無用ッ。ボクはこう見えて丈夫に出来てんねん」



浜面は踵を返し、「行くぞ」と滝壺を促して彼女のスピードに合わせて院内へ消えていく。
580 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/19(土) 15:19:45.80 ID:Klmpo7sDO

大男……青髪ピアスは二人の背中を見送り、感嘆する。



「はーっ、ええなぁええなぁ。
彼女持ちは毎日がパラダイスやろうに」



彼は金属バットを無造作に横に振るう。―――刹那、ガァン!! と硬質音が辺りを奏でた。

片は金属バット。
片は裏拳。

青髪ピアスの顔面目掛けて放たれた裏拳と、振るった事で盾になった金属バットが衝突して響いた音だ。




「―――見えとるで?」




時が止まったような錯覚のさなかで、青髪ピアスは不敵な笑みを浮かべる。
錯覚は一瞬。金属バットを振り抜いて、裏拳を弾き飛ばした途端に時は動き出す。
581 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/19(土) 15:21:05.69 ID:Klmpo7sDO



「……オリジナルの記憶から摘出。通称『青髪ピアス』と判明」



仮面が完全に砕けて素顔を晒した第0位が、額から流れる血を拭いつつも、口に出して状況把握。



「問いを一つ良いか?」

「んー? ええよ。因みに萌えバナなら大歓迎や!」

「貴様……何者だ?」



そのセリフを切っ掛けに青髪ピアスが凍り付く。表情からおどけた色が消え、ただひたすらに無表情。

瞳を僅かに開け、鋭い目つきで第0位を射抜く。
582 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/19(土) 15:22:40.64 ID:Klmpo7sDO



「『バンク』には無能力と記されている。しかし、先刻の一撃は常人では不可能の打撃力。
加えて接近した時に見せた移動速度。死角からの奇襲をも対応。
無能力者の一般人が出せる身体能力を優に凌駕している。上記を述べた上で再度問わせてもらおう。―――貴様は何者だ?」



言い終え、暫くの静寂が訪れる。

青髪ピアスは何も発しない。
ともすれば微動だに動きもしない。
第0位は彼が口を開けるまで、同様に何も発しなければ動作も見せない。

辺りは静寂が占める。
無言無風の中、彼らを見守るのは夜空から顔を出す、月だけ。


やがて、青髪ピアスは痺れを切らしたのか、思いっ切り盛大に「はぁぁ〜」と溜息を吐く。
583 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/19(土) 15:25:17.72 ID:Klmpo7sDO

片手をひらひらと振り、諦めたような口調で喋り出す。



「何もあらへんよ。正真正銘の無能力者で、ただの一般人。平凡な高校に通って、つっちーやかみやんと莫迦やって楽しんどる何処にでもおる高校生や」



そんなはずが無い、と第0位が言う寸前に、……目の前から青髪ピアスが消える。



「ただな」



耳元から声。
視線を移せば、目と鼻の先に消えた青髪ピアス。
アッパーカットを構えた体勢で、彼はまたもや不敵の笑みを浮かべていた。

第0位が危険を察知して、空間移動を引き起こす前に青髪ピアスは拳を振り抜きながら、囁くようにこう告げた。




「―――曰く付きの、『一般人』や」




第0位は二撃目を喰らい、再び宙を舞う。



「残念やけどボクの親友は二人だけやねん。にゃーにゃー言ってるつっちーと、不幸だ不幸だ言ってるかみやんの『二人』だけ」



金属バットの先端を第0位……上条当麻のクローンに向け、「せやからな〜」と畳み掛ける。



「善用ならええけど、悪用された親友の『クローン』は要らへん。
それに素体のかみやんさえも悪用されてると知ったら、流石のボクも“オフザケモード”では居られへんわ」



顔色から、仄かに怒りが宿る。



「悪く思わんとってや。手加減は無しやで」
584 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/19(土) 15:32:07.94 ID:Klmpo7sDO
しゅーりょーです

そして書いてから気付きました
上条さん帰ってないのに『新入生』の騒動を終わらせちゃ駄目じゃん……と
ご都合主義ですみません


登場した『彼』は記述されていませんが、以前カエル医者がナースに頼んだアレです
585 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/03/19(土) 16:13:51.43 ID:R8Kp/03Lo
ドゥフフwwwwww青髪ピアス氏かっこいいですなwwwwwwww
>>1氏乙でござるwwwwww
586 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [saga]:2011/03/19(土) 18:33:50.19 ID:mafnv7o30
1おつ
まさか青ピがくるとは
587 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/03/19(土) 19:23:27.95 ID:iE5V99Vno
乙ー
588 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/03/19(土) 19:48:58.48 ID:Ek31n2QLo
青ピが化けるSSでのかっこよさ以上過ぎだろ・・・かっけー
589 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/19(土) 21:03:35.19 ID:m0z+pM+DO
青ピ無双の始まりか…胸熱だな
590 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/19(土) 21:04:50.62 ID:m0z+pM+DO
青ピ無双の始まりか…胸熱だな
591 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2011/03/19(土) 21:50:46.36 ID:/EpqhfiAO
なんで二回言うねん!
592 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方) [sage]:2011/03/19(土) 22:00:28.72 ID:MFePK8cpo
浜面は『1人』ヘヴィーオブジェクトだからなぁ
パートナー(滝壺)来たら弱体化も仕方ない
593 :ヴェントを愛してやまない>>1です [saga]:2011/03/20(日) 08:07:30.35 ID:oIsl0lcDO
速攻で仕上げました


では投下します
594 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/20(日) 08:08:23.85 ID:oIsl0lcDO



何も無かった。何も解らなかった。生きていることさえも解らなかった。
何も解らなくて、記憶すらも無くなっていた。恐怖が、全てを忘れさせていた。自分を忘れさせていた。


自分の名前? 名前って何?
考えるって何? 動くって何?
怖いって、何? 忘れるって、何?

何って、何?


腕を動かした。動いた感触はあった。
何をしていたのか解らなくて、何を見ているのかも解らなかった。



ただ、白い世界。
595 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/20(日) 08:09:13.25 ID:oIsl0lcDO




―――何かが動いた。




自分ではない何かがあったけれど、何かは解らなかった。
自分が解らないからどこに居るかも判らなくて。
自分が何をすればいいのか知らないから、考えることも判らなくて。

動いた“何か”に目を向ける。




『…………』




人が居た。幼い男の子が居た。
どこかで、見たことがあった。
何故そう感じたか解らないけれど。

白い世界に、居た。
596 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/20(日) 08:10:25.47 ID:oIsl0lcDO

誰だろう? ぼくは、なにをしているのだろう?

“ぼく”って、なんだろう?

判らない。判らないということが判らない。




――――。




音がした。強い音。何も無い白い世界に、響いていた。

ふふ。はは。あはは。

音だった。沢山の音。温かくて、優しい音だった。不思議な何かの音。




『…………』




ぼくは、それが、わらいごえだと、しっていた。

目の前の“ソレ”が、わらっている。
目の前の“ソレ”が、よろこんでいる。

何かを楽しむことを喜んでいる。笑っている。
597 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/20(日) 08:11:24.73 ID:oIsl0lcDO

“ソレ”は近付いてきた。

足音は響くことはなく、まるで空中を歩いているように見えた。

“ソレ”はぼくの目の前にきた。

その目がぼくを見る。
ぼくもその目を見る。




だ。
れ。
だ。




ぼくは、そんな音を伝えたかった。
だ、れ、だ。……その音が、何か判らないけれど。
近くにいる“ソレ”に、伝えたかった。白い世界で、言いたかった。

わらっていた“ソレ”が、“誰”というモノであることをぼくはまなんだ。
598 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/20(日) 08:13:30.50 ID:oIsl0lcDO




『君は……どうしたいの?』




音が、聞こえる。何かが、繋がる。
声が、問い掛けであることを知る。




―――白い世界の僕は、何かを気付いていた。




記憶には残らない。記録にもできない。
今の景色には、何の意味も無い。
覚えていることも出来ない。

ぼくが俺であることも。
誰かが“何”であることも。
何を思って。何をしたくて。何を忘れているのかも、忘れてしまう。

けれど、湧き上がる何かがあった。
599 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/20(日) 08:14:31.41 ID:oIsl0lcDO




『善か悪かなんて意味がないこと、わかった?』




耳に触れる音を。
目の前にいる誰を。
佇んでいるその存在を。

何をすればいいのかも判らない。
何がしたいのかも判らない。
何を思っているのかも判らない。
行為も解らず、望みも解らず、思いも解らない。

何も解らないけれど、湧き上がる何かに従うべきだとということだけは解っていた。




『……応援してるよっ』




手を差しのばしてきた。

それが何を意味するかは解らない。けど、掴むべきだと、そう確信した。
根拠なんかない、保証さえもない。それでも、手を伸ばした。




『君ならきっと、あの人に追い付けると思うから』




何が、言いたいのか? そう思う頃には、意識が遠ざかっていた。




『頑張れ』
600 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/20(日) 08:15:39.81 ID:oIsl0lcDO


目に映る景色は、真っ白い天井だった。
若干霞む視界が邪魔くさかったが、それ以上に胸の空白が苦しかった。

一方通行は意識を覚醒させる。



「…………」



覚えていたかった何かがあるのに、何も思い出せなくて。
それでも、たった一つだけ、焼き付いていた。

ぬくもりの中で、忘れた一瞬の中で、聴いたような気がしていた。
頼りなさげで、けれど『頑張れ』と微笑む、強い誰かの声。
たった三つの言葉が、胸に刻み付けられていた。
601 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/20(日) 08:18:00.43 ID:oIsl0lcDO

寝起きが悪いと自ら認めている彼だが、何故か今は随分と思考がクリアで、サッパリした穏やかな気分に浸る。

上体を起こせば、まず目に入ったのが番外個体。
彼女は自分が寝ているベッドに上半身だけ身体を寝かせ、椅子に座ったまますやすやと寝息を立てていた。

次に辺りを見回す。
どうやら病室の様子。
そして気付く。外が騒がしい。

ベッドから床に足を着き、窓から外を覗く。
玄関前の広場にて、青い髪の男と見覚えのあるツンツン頭の男が、互いに得物を有して戦闘を繰り広げていた。



(……あの動き、第0位か)



暫く眺めていた一方通行は迅速にツンツン頭の男の正体を見破る。
しかし、自然と驚きは薄い。何処かで己は感付いていたのかもしれない。
602 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/20(日) 08:19:07.21 ID:oIsl0lcDO

正直、今の彼は万全の状態じゃない。
左肩は銃弾で撃たれ、腹部は剣で貫かれ、内臓は破裂を引き起こし……戦える調子ではない。



(―――けど)



誰かが、言ってくれた。

言ってくれた人の顔も。声も。
何も思い出せないけれど。

その全ては、眠ってしまうだけで忘れる程……儚いモノかもしれないけれど。

……それでも、今は“憶えて”いる。
603 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/20(日) 08:21:16.31 ID:oIsl0lcDO



「あン……?」



点滴を引き抜き、窓を開けて飛び出そうとした時、気付く。
窓の縁には何やら紙切れがあった。しかもご丁寧に折り畳まれて、『一方通行へ』と書かれている。

『電池は充電しておいたよ。君の事だろうから、すぐに行っちゃうだろうしね? 10分だ。10分でけりを付けろ。判ったね?』

おそらく、あのカエル顔の医者だろう。まるで人の思考を全て見透かしたような言い種。



「……楽勝だ、クソッタレ」



負ける気はしなかった。
根拠は無い。保証すら無い。

だけど、



「頑張れ、か……」



“頑張れ”―――あの言葉だけは、裏切れないから。
604 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/20(日) 08:24:03.96 ID:oIsl0lcDO



「あンなセリフ聞かされたンじゃ、負ける訳にはいかねェよなァ?」



背中に、光り煌めく“白い翼”を携える。
頭の上に、金に輝く天使のようなリング。

点滴を抜いてから、一分経過。
それでも充分過ぎると思う。


決意を胸に刻んだ一方通行は―――再び戦場に赴く。
605 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/20(日) 08:29:59.96 ID:oIsl0lcDO
しゅーりょーです

第0位編も、次で最後です
そしてこの長き科学と魔術の戦闘も後二、三回で終わります

多分、それぞれ短いと思います
606 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(富山県) [sage]:2011/03/20(日) 19:05:10.12 ID:1k8nQgPdo
607 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/22(火) 07:18:10.92 ID:q25r4vLDO
投下します

今回で科学編は終了です




深夜の3時に投下しようとしたらまた寝落ちorz
608 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/22(火) 07:19:48.95 ID:q25r4vLDO


第0位は思考する。今日一番の化物に出会ってしまった、と。
それは以前戦ってきた彼らを凌駕すると言っても過言ではない。

一方通行よりも。
番外個体よりも。
麦野沈利よりも。
御坂美琴よりも。
浜面仕上よりも。

目の前の男、青髪ピアスは想像を絶する人間だと認識。
総合的な能力で計るならば一方通行の方が遥かに上だが、その他の超電磁砲だろうと原子崩しだろうと、青髪ピアスにかかれば舞い踊るように避けるだろう。



「こっちやで」



二人は百メートル以上間隔を空けていたが、青髪ピアスは一瞬で第0位の懐に潜り込み、金属バッドを顔面目掛けて薙ぐ。

上体を後ろへ反らし、金属バッドが触れるか触れないかの境目、微かに前髪を掠めた。
流れるまま透かさず拳銃を突き付ける。完全に金属バッドを振り抜いた青髪ピアスに。
609 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/22(火) 07:21:52.88 ID:q25r4vLDO
“BANG”と銃声が轟き、時間がスローモーションのさなか、弾丸が彼の額を穿つ寸前―――姿が“ブレる”。



「っ!!」



第六感が警告の鐘を鳴らす。即座に第0位は空間移動で回避を試みる。
移動先で彼は地に手を付いて、元居た場所を目視。
ソコにはアスファルトへ金属バッドを叩き付けている青髪ピアス。



「うそん、避けられてもうたか……」



ざーんねん、と肩に担いでぼやく。



「……移動速度から計測、秒速三六十メートル以上の脚力。銃弾に対応する反射神経。アスファルトをも砕く腕力。
以上の解析を基に無能力として判断し、全てに匹敵、適合する事柄……唯一存在」



立ち上がり、脳内で青髪ピアスの身体能力を冷静に吟味。
610 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/22(火) 07:23:18.62 ID:q25r4vLDO
必要無いと感じたのか若しくは携えても無駄だと感じたのか、定かではないが、第0位は懐に拳銃を仕舞う。
血を拭い、空虚な瞳を青髪ピアスへ向けた。分析が完了して、一つの答えに辿り着いた第0位は紡ぐ。




「―――『聖人』か」




神裂火織。後方のアックア。
上条当麻の記憶から同一の人間。
生まれた時から神の子に似た身体的特徴、魔術的記号を持つ人間。
世界に二十人と居ない……その一人。
611 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/22(火) 07:25:32.17 ID:q25r4vLDO

聖人ならば辻褄が合う。
人間の基本能力の脚力、腕力、耐久力、反射神経、聴力、視力に於いて圧倒的能力を発揮する。

二十メートル級の空中要塞五機分の塊をモーニングスターのように振り回せば。
百メートル級の鉄より重い残骸物質を受け止め。
一蹴りで五十メートルの壁を津波の如く吹き飛ばして。
百分の一秒の領域に対応する反射神経を持ち合わせた怪物。



「その言葉は暫く振りに聞いたわぁ。せやけど、ご明察。
曰く付きの『一般人』とは、何と世界に二十人しか居ない『聖人』だった訳や」



飄々たる口調で片手をひらひら振る青髪ピアス。
些かフザケた態度とは対照的に、決して失せない溢れる殺気と敵意。
線のように細い目から僅かに視認出来る鋭い瞳が、一層濃くする。
612 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/22(火) 07:26:51.33 ID:q25r4vLDO



「ボクの自己紹介も終わったトコで、そろそろ本気出してや?
学園都市最強を沈めた能力、こんなもんちゃうやろ?」



ニヤリと不敵な笑みを浮かべる。
余裕の表情。勝利への絶対的な自信。相反するような侮りや油断は無いと感じ取れる。

それはただの煽りでしかない。

何時までも消極的な戦法、本当の能力を隠蔽。これらの行動を徹する第0位。
事態の計算や逡巡の様子を窺えるが、だとしても今の態勢を崩さなければ、張り合いが無い。



「……手順を最終手段へ移行」



第0位は瞳を閉じ、自分に語り掛ける。

空虚な瞳が唯一淡い光を宿す時。
閑寂なる辺り一面が瞬時に変貌する時。
大気が焼き付けるように張り詰める時。

そう、それは合図。
613 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/22(火) 07:28:29.77 ID:q25r4vLDO



「オリジナルの記憶に基づいて情報データを入手」



形勢逆転への導き。
聖人を超越。



「相手に適切な記録を取り入れる」



正直、時間はもう殆ど皆無。
故に第0位は決意を示す。

惜しんでる場合では無い、と。



「片は魔術を。片は科学を。二つのデータ混合、二重で敵を排除せよ」



彼は、こう告げる。






「発動。―――『ヒューズ=カザキリ』」






右翼に紫電を撒き散らす雷光の如く鋭い翼が数十と生え、






「発動。―――『神の力(ガブリエル)』」






左翼は空気を引き裂いて水晶の如く獰猛な翼が数十と生やす。
614 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/22(火) 07:30:45.07 ID:q25r4vLDO

時は一瞬。出来事も刹那。



「―――ッッ!!!!?」



背中に迸った嫌な予感と滴る冷たい汗を感じた青髪ピアスは、顔を咄嗟に後ろへ反らす。

直後、“何か”質量の有る物質が横薙ぎに通過した。

聖人の彼は超越した反射神経と視力でギリギリ目視する。
第0位が紫電を纏う氷の『剣』を薙ぎ払ったのだ。
そして振り抜かれた剣に金属バッドが触れた途端―――消滅してしまった。

斬撃だから寸断したとか、打撃だからへし折ったとか、そんな底辺の争いじゃない。もはや児戯。
触れた箇所から先端まで消え去ったのだ。
615 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/22(火) 07:32:35.37 ID:q25r4vLDO
青髪ピアスが反応を示す隙を与えないまま、振り抜いた剣の余波が彼を襲う。
聖人が対応出来ない速度で急接近且つ剣を振り抜いた事で、凄まじい突風が生じたのだ。

突き抜ける旋風に青髪ピアスは耐えきれず、病院の壁まで吹き飛ばされて衝突。



「予測はしてたんやが、想像以上やな……」



身体に駆け巡る激痛に呻き、得物の消失に悔やむ。
相応の対策を考察する余地も無いだろう。金属バッドを失った事が一番の痛手。
両者肉弾戦ならば勝機は幾らでも見出せるが、自分は徒手空拳で敵は剣。それも触れたら消滅ときたもんだ。
616 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/22(火) 07:33:54.53 ID:q25r4vLDO

第0位が剣を水平に展開していく。



(マ、ズ……!?)



際立つ悪寒に焦燥が駆り立てられる。
今度は回避を行っても、背後には病院が在る。自分が助かっても院内に居る人達が救われない。

それでは駄目だ。ならどうする?



(……しゃーない。どんや攻撃も受け止めたるさかい、全力でかかってきぃやッ!!)



神経を研ぎ澄ませて、例え剣だろうと翼だろうと、己の持つ渾身の力を振り絞って挑む。




―――そのはずだった。
617 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/22(火) 07:35:52.88 ID:q25r4vLDO



「―――なんや、この羽根……?」



ひらりと。ふわりと。
青髪ピアスの足下に一枚の“白い”羽根が舞い降りる。
白い羽根は闇夜を照らすように発光。淡く煌めきを放つ羽根は、天使を彷彿した。

彼は気付く。それは一枚では無い事を。淡く輝く羽根は病院玄関前一帯に降り注いでいる事に。
緩慢と空中を漂う無数の羽根は、あまりにも幻想的な風景を描く。



その突如、―――剣が音を立てて砕け散った。
618 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/22(火) 07:37:13.04 ID:q25r4vLDO



「随分ハシャいでンじゃねェか?」



上空から、白い人間が降臨する。

白い髪。真っ赤な瞳。
背中に生える煌めく白き翼。
頭上に浮かぶ輝く黄金のリング。



―――全体の八割を学生で占める学園都市の中、最強の座を冠する者。



―――掌握する能力はあらゆる向きを操る事が可能な『ベクトル操作』。



―――本名は不明。しかし人々は彼をこう呼ぶ。『一方通行』と。
619 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/22(火) 07:39:02.87 ID:q25r4vLDO



「……オマエ、あいつのクローンだったンだな」



一方通行は大した驚きも興味も示唆せず、再確認の作業をするような佇まいで呟いた。



「抽象的な表現だが、自分の素体は『上条当麻』。……それが何か?」

「いや、そォだな。一言で表すなら安心した」

「安心……?」



一瞬、肩を竦めて見せると、一方通行は悪戯をする少年のような笑みを浮かべる。
620 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/22(火) 07:41:25.40 ID:q25r4vLDO



「もしオマエがあいつを“越えていた”なら、俺が目指す場所が無くなるからな」



それは、認めている証拠。



「けど安心した。クローンだからって訳じゃねェよ。もっと深い根本的な部分だ。例え、今のテメェがあいつに挑戦しよォと敗北以外考えられねェな」



自分が上条当麻に憧憬を抱いている、と。



「……一方通行が第三次世界大戦で目撃した、この二つを有していてもか?」

「少なくとも、俺に負けるよォじゃ無駄だな。あいつは俺達の気付かない内に遥か上へ到達してる」



終えるのと皮切りに、最後の戦闘が始まる。しかしそれも瞬く間の僅かな時間。
一秒にも満たない一瞬の中、勝敗は今までの激戦が嘘のように呆気なく結末を迎える。
621 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/22(火) 07:45:58.41 ID:q25r4vLDO


第0位が、両手に氷の剣と雷光のような剣を携えて突撃。
数百を越す右翼と左翼が一斉に襲い掛かり、一方通行に直撃する―――寸前だった。


……数百を越す翼、二対の剣が、全て同時に白い翼によって引き裂かれたのは。


空中に無数の粉砕された破片が舞うさなか、一方通行と第0位の視線がバチリと交差。


―――コンビニ前の出会い頭から。

―――ビルを越えた激化する空中戦。

―――番外個体を交えた命の取引。

―――そして……今。


過去から現在に至るまでの死闘の映像が、第0位の脳裏でフラッシュバックのように想起する。





「―――ここがテメェの限界だ。天国で俺があいつに追い付く様を、肉塊みてェに無様な姿で眺めてろ」





白い翼が第0位を包む。
視界から景色が消え、後に残るのは―――もう、何も無い。
622 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/22(火) 07:51:27.67 ID:q25r4vLDO
終了、です

これにて、第0位 VS 科学軍勢は終わりました
最後だから、もうちょっと演出とかクオリティとか壮大にしたかったんですけど
まあ、自分の技量なんてこんなもんだ


次回は魔術です
623 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府) [sage]:2011/03/22(火) 07:57:22.12 ID:m/m1OH3no
624 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/22(火) 08:26:22.75 ID:qz6uXKHDO
やっとヴェントたん来るか
625 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(富山県) [sage]:2011/03/22(火) 08:38:30.74 ID:xFLwrUHSo
626 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岐阜県) [sage]:2011/03/22(火) 16:03:28.10 ID:j8yGZIGG0

これで第0位は完全退場かね
地味に好きだったんだが

ヴェント期待
627 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/03/22(火) 20:03:46.19 ID:+gv7+sMZo
おつ やっとロシアかな
やっぱ再生怪人はがっかり怪人なのはお約束か、0位は
安っぽさ全開でちょっと盛り上がらなかった印象。
そのなかで再生フレンダは輝いてた。
628 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/22(火) 23:01:51.18 ID:HSTODTJ30


一方通行マジ天使
青髪ピアスもかっこ良かった

そして次はヴェントか…楽しみだ
629 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/03/22(火) 23:28:46.91 ID:hAqshqVb0
乙です
すごく楽しみです。

630 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) [sage]:2011/03/23(水) 01:14:03.09 ID:ePtMogiAO
いちもつ
青ピはやっぱ第六位よりも聖人設定のが好きだわー

っぽいよね
631 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方) [sage]:2011/03/23(水) 02:14:27.06 ID:WYuqIqLeo
性人だしな
632 :ヴェントを愛してる>>1です [saga]:2011/03/23(水) 06:00:04.52 ID:1G3E9jEDO
さて、投下しちゃいますねー


ヴェントさんと一方通行とは明らかに完成度が…
633 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/23(水) 06:01:54.33 ID:1G3E9jEDO



――――夢を見る。



極一般の家庭に生まれ、何の変哲もない弟と一緒に学校へ通い。
クラスには友達が居て、毎日のように日が暮れるまで外で遊び。
帰宅すると父さんと母さんが弟が先に帰りを待っていて、一緒に夕飯を食べ。
深夜になれば父さんと母さんが、私と弟をを挟んで睡眠を取る。


……そんな、誰にでもある当たり前の日々。そこには必ず“笑顔”が有った。
634 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/23(水) 06:03:33.81 ID:1G3E9jEDO


これは鏡。反面世界。
現実の自分と、幻想の自分。


硝子に亀裂が生じれば現実に強制返還という儚く脆い物だけれども。
現実より貧相で見栄えは無いが、鏡に映る“私”は幸せそうに見えた。




今の私は幸せだろうか?




鏡に映る“私”のように……笑えているだろうか?
635 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/23(水) 06:07:52.36 ID:1G3E9jEDO



――――夢を見る。



果ての無い海。
無限と続く空。

上は壮大に漠然と広がる蒼い空。
下は全てを飲み込む深淵の青い海。



水面に私は浮いていた。
これは分岐点。人生と同じ。



翼も無い私に空を飛ぶコトは不可能。
しかし、海の奥底へと沈むコトは造作もない。

地獄の底から這い上がるコトは難しいが、奈落の底へと堕ちるのは容易い。




私は静寂に深海へ沈む。

助けてくれる人も居なければ。
手を差し伸べてくれる人も居ない。


深海の中は鏡の世界。


沈めば飲み込まれるだろう。
けど、それも良い気がする。

幻想に堕ちる暁に“笑顔”を享受出来るならば、それはそれはとても幸せなコトだろう。
636 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/23(水) 06:10:28.82 ID:1G3E9jEDO






『少しだけお前を救ってやる。もう一度やり直して来い、この大馬鹿野郎!!』






ある、映像と音声が再生された。






『上条さんも矢張り健全な男子高校生で……いやいや駄目だ駄目だ墓穴掘っちオフッ!!?』






何処かで聞いたコトのある声。
私は何時聞いたのだろう?






『狙いが俺ならヴェントに手を出すな。もし、それでも狙うっつーなら―――その幻想ぶち殺すぞ』






―――何故、こんなにも安心感が沸き上がるのだろう?
637 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/23(水) 06:12:33.77 ID:1G3E9jEDO



全く判らない。理解が追い付かない。

どうして急に声と映像が彷彿したのか、意味が判らない。
どうして視聴しただけで、これ程までにも安心感を覚えたのかも腑に落ちない。


……でも、






『テメェなんかにコイツを殺させはしない。指一本触れさせねえ。絶対に護ってやる』






無意識に笑えてる自分がいるコトに、気が付く。
無意識に幸福感を得ている自分がいるコトに、気が付く。


どうしてだろう? まだ現実で生きていたいと思えた。
未練という概念を今この瞬間、理解出来た気がする。
638 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/23(水) 06:15:33.35 ID:1G3E9jEDO



……足掻こう。聞こえてきた声の人のために。精一杯抗ってやろう。

私は水の中を必死にもがく。水上に上がろうと手足をひたすら動かす。



挫けたくない。
この決意を無駄には出来ない。



初めて、……初めて『生きたい』と思えたんだ。

様々な苦難や壁が立ちはだかろうが、構わない。

それでも、それでもそれでもそれでもそれでも―――ッ!!








“アイツ”と生きたいと思えたのは嘘偽り無い真実だから―――!!
639 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/23(水) 06:19:34.35 ID:1G3E9jEDO
終了です

誰の視点なのかは言うまでもない



こんな朝っぱらから見てるヤツは居るのか…
640 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/23(水) 06:25:18.84 ID:2eVBe8ZGo
乙ですよ
641 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府) [sage]:2011/03/23(水) 06:25:46.04 ID:l+x60TE5o
642 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2011/03/23(水) 06:27:53.77 ID:ZvIFuqrf0
朝っぱらから乙
643 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(富山県) [sage]:2011/03/23(水) 06:45:50.65 ID:HuWGQoEUo
見てるよ乙
644 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/23(水) 08:31:27.70 ID:Xb4byLzIO

ヴェントさんのデレ キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!
645 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/23(水) 19:49:08.91 ID:e6KCaTvDO
と見せかけてミーシャだったら…

デュフフ
646 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/03/23(水) 20:43:26.38 ID:nR+RDyut0
>>645
その発想は無かった
647 :ヴェントを溺愛する>>1です [saga]:2011/03/28(月) 02:41:21.42 ID:XKbl6oTDO

鼻水、くしゃみ、涙、鼻づまり……所謂、花粉症に悩む>>1です

毎年恒例のヒドい花粉症で頭が回らず、くしゃみの連発で書けませんでしたorz

それでもまあ、治まった頃を見計らい書いてはいました

ようやく、投下できます
648 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/28(月) 02:42:47.03 ID:XKbl6oTDO
ガブリエルが取った行動は先ず距離を置く事だった。
上空へ飛翔して500メートル以上隔てる。大天使は邪悪な陽炎を立つ上条当麻を凝視。
視線を変えて右腕に添えるように生える血に染まった不可視の竜に。

どの手段が有効か、どう破壊すべきか優先順位を定めて考察しているのだ。
『一掃』による数千の裁きの礫は“何らかの反撃”で降り注ぐ事無く、『一掃』は相殺。
目視した故に些か慎重になっているのかもしれない。
ガブリエル自身、上条当麻という人間に危機感を抱いているのだろう。



「ghkntbe」



もぞもぞと口を蠢かしたガブリエルが、行動を示した。
背中に携えた水翼が数百を越す氷の槍となって、ヴェントを胸に抱き寄せる上条当麻へ一律に襲い掛かる。
水翼の一本だけで、空を飛行する学園都市製の超音速戦闘機(時速7000qオーバー)を串刺しにして撃墜させる程。
649 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/28(月) 02:45:09.17 ID:XKbl6oTDO

生身の人間が喰らおうものなら、五体満足では済まされない。
最低限、体に穴が空く事は免れないだろう。
上条当麻とて例外では無い。先刻は万全な状態だったし、右手のお陰も有った。
しかし、現在は氷の塔による多大なダメージに加え、ヴェントを両手で抱き寄せているために右手は封じられている。
彼の身を護るものは皆無。迫り来る氷の槍に上条当麻は動かない。

ボソリと。彼はヴェントにしか聞こえない声量で、小さく呟いた。


その時だ。竜が上条当麻を氷の槍から護るように阻んだのは。


氷の槍は止まらず、行く手を遮った竜に容赦無く叩き込む。
……が、氷の槍は竜に触れた途端、パンッと渇いた音が響き渡り、根刮ぎ砕け散った。

全て霧散していくのをガブリエルは注視。眼球が捉えるのは上条当麻ではない。竜だ。
650 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/28(月) 02:47:02.19 ID:XKbl6oTDO



「gbdnk 危険 uqhy」



再度に渡って、水翼が振るわれた。
しかも、一回目のようなガムシャラに降り注がれる様子は絶無。
四方八方あらゆる方向の軌道を描き、氷の槍が上条当麻を狙う。

それは死角を突いて竜から護れなくするため。

背後から奇襲を仕掛けるように、前方を護りに徹するとしたら、必然的に後方はガラ空きとなってしまう。
逃げる余地は存在しない。




「URUOoooooooooooooooooo!!!!」




―――竜が、吼える。


すると氷の槍は一瞬だけ時が止まったかのようにピタッと停止し、ビルの窓硝子が一斉に割れていくのと同様に、けたたましく。
651 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/28(月) 02:48:49.98 ID:XKbl6oTDO
上条当麻は微動だにもしていない。口を動かす様子も見せなければ指一本さえも。

だとすれば今の咆哮は竜の意志。
身を挺して護れないなら、別の手段を行使する。主人に害が及ぼさないための立派な自意識。



「―――」



上条がつい、と顔だけ上空に飛翔するガブリエルへ振り向かせた。
何を発言する訳でもなく無言を貫き通し、視界に入れた大天使を睨む。

信念が宿った瞳が変貌して、淡く邪悪な光を宿す。それは彼の身体から溢れ出す陽炎が、両目に集中した故に起きた現象。
彼が漸く静かに口を開け、何か発しようとした時だった。



「ghmu 物理 qxbe 圧砕 gky」



ドンッッ!!!!!! と。
500メートル上空から雪に覆われた地面へ、瞬時で降り立つ。
652 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/28(月) 02:50:52.72 ID:XKbl6oTDO
更に何らかの力を操作したのか、近辺に有った樹木が十本以上を根っこごと纏めて、地から切り離すように浮かび上がる。

空中に浮かぶ樹木はガブリエルの水翼によって、バットでボールを打つ感覚で樹木が飛ばされて行く。
凄まじい勢いで向かうその矛先は―――言うまでもなく上条当麻。
雪を穿ち地を抉って突き刺さり、周辺の樹木を巻き込んで薙ぎ倒し、瞬く間に樹木が積もって山を作り上げた。


中心には上条当麻が居るはず。
生きていればの話だが。


ガブリエルは樹木の山を刮目する。追い討ち掛けるべきか見限っているのだ。
未だに静まり返った空気の中、上条当麻は一向に動きを示さない。これはもしや本当に死んだのか?



「ghybkfvr」



スッと右手を樹木の山へ翳す。
徹底的に追い討ちを掛ける手段を選んだのだ。
軌道が逸れるような邪魔が入る事も、躊躇いを見せる様子も無い。
653 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/28(月) 02:52:20.47 ID:XKbl6oTDO
死んだのならそれでいい。
生きているならば殺すまで。
言わばソコでしかない。

例え相手が人を庇ってようが、何か決意や想いを秘めて立ち向かっていようが、生存な事に変わりは無い。
逡巡する必要も無い。水翼や剣を行使する理由にそれ以上の事柄を追加は不要。

そして、樹木の山はいとも簡単に吹き飛ぶ。








―――中から飛び出して来た竜によって。








獰猛な牙を剥き出し、疾風怒濤の如く。荒れる気性は樹木を噛み砕き、地を這う。

手の平から射出される前に急接近して来た竜の顎。しかしながらガブリエルは翳した手を下ろさない。
そのまま、ッッジ!!!! と地を這って向かって来る竜に射出。
654 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/28(月) 02:53:42.98 ID:XKbl6oTDO
丘をも吹き飛ばす攻撃が竜の眉間に衝突……だが、パキンと幻想殺し独特の音が響き渡る。
攻撃も衝撃も効力も全て失い、虚空に空しく霧散。

竜の勢いは更に増し、ガブリエルとの差は目と鼻の先まで迫っていた。
大天使は咄嗟に氷の剣を現出させて血を払うように、足下の地面を横薙ぐ。
途端にボゴォッ!! と地面がめくり上げられ、一瞬で10メートルを越す壮大な壁を築き上げ、竜と隔離する。




―――だが、






「GAAAAAAAAAAAAAAAAッ!!!!」






―――その壁を、すり抜けた。
655 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/28(月) 02:54:51.37 ID:XKbl6oTDO


猛々しい様子は一変せず、めくり上げた壁を障害ともしない。
まるで漫画の幽霊のように通り抜け、ギラギラと煌めく獣の瞳がガブリエルを射抜く。

意表を突かれた大天使は一寸だけ止まる。
……それが、竜に与えた決定的な隙だという事に感付くには、些か遅かった。




結果―――ガツンと。




剣を携えていた片手を、指の先から肩の付け根まで食いちぎった。
元々血が通って無いのか、血が噴き出す様子も無い。
寧ろちぎられた肩は、さながら石像を砕いた感じに酷似。
656 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/28(月) 02:56:57.08 ID:XKbl6oTDO

矢張り地上は危険と感知したのか、ガブリエルが上空へ飛翔する……直後の事。
一瞬にして1000q以上に到達する。故に途中余程の弊害が起きなければ止まらない。

だから、『上条当麻が10メートルを越す壁を利用し、空中で先回りしていた』ぐらいでは飛翔を中断する事は出来ない。



「―――ッ!!!!」



邪悪な光を宿した瞳がガブリエルを確かに捉える。
動かなかったはずの右腕も何故か回復。身体の蓄積されたダメージは残っているものの、ガブリエルを殴り倒す事に関しては、造作に無い。

彼は右腕を振りかぶって、狙いを定めタイミングを計り―――ガブリエルの顔面に上条当麻の拳が突き刺さった。

それも、一度ヴェントの協力の下で加えられた一撃。
ヒビが入った箇所へ同様にクリーンヒット。
威力は先刻より著しく凌駕。
振り下ろすように喰らわせたため、ガブリエルは森林に激烈な勢いで突っ込んで行く。



バキバキバキメキメキメキッッッ!!!!



背中に携える水翼が木々を薙ぎ倒す。
水平に氷の翼が伸びているので、ガブリエルが奥へ突っ込んで行くのに伴い、水翼が樹木を巻き込んでいるのだ。
657 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/28(月) 02:58:44.26 ID:XKbl6oTDO



「つ、はぁ……はっ、がはっ!」



着地の体勢なんて知らない上条当麻は、みっともなく10メートルという高さから地面に体を叩き付けられる。
雪が多少なりのクッションになった事が幸いか。骨折には至らない。
冷たい感覚に意識が飛ばされないよう、血が滲むほど強く拳を作って立ち上がろうと己を叱咤。

それでも、蓄積された身体への莫大なダメージが甚だしい様子。
何とか必死に立ち上がるも、足はガクガクだし、息切れも激しい。
しまいには吐血までする有り様。



「げほっげほっ……くそ、長くは持たねえな」



竜も消え、瞳も元に戻り、“何時も”の上条当麻は激痛に悶え苦しむ。
658 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/28(月) 03:01:10.82 ID:XKbl6oTDO
記憶はしっかりと有る。自分が何をやらかしたか明確に理解。
だが意識は絶無。ほとんど無意識に体が動き、口を蠢かせていた。
無意識である事が一番恐ろしい。
自分外の『有意識』で行動を起こしていたとなると、上条当麻の底には何かが存在するという事。
少なくとも、彼は“そういう”のに心当たりが有る。




―――第三次世界大戦だ。




ベツヘレムの星でフィアンマと衝突し、彼の力で右腕が切り離された時。
己自信に語り掛けてきた声。
未だ鮮明に覚えている。
何を言っているか、上条当麻の頭では理解し兼ねなかった。
……だが、自分の意識が『乗っ取られる』気がしたのは間違い無い。



(……いや、今はそれどころじゃない)



彼は邪念を振り払うように頭を横に振る。
確かに今後、無視出来ないほどの事態に陥る可能性は否めない。
だけど、“今”考えるべき事では無いのだ。
幾ら思考を巡らそうと、自分の頭では理解する部分なんて一つも存在しないのだから。


上条当麻は空を仰ぐ。相変わらず広がるのは天空を覆う魔法陣。
それはつまり、一つの事象を提示する。
659 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/28(月) 03:03:11.93 ID:XKbl6oTDO


ボバッ!!!! と森林の奥で轟音が炸裂した。考えるまでも無い、ガブリエルだ。
大空に高く昇り、夜月と重なる水翼が星のように輝き―――上条当麻に降り注ぐ。
一本の氷の翼が何十にも砕けて『刃の破片』となった幾千の刃は、上条当麻を中心に地面を叩く。

彼は咄嗟に右手を空に翳す。
回避は不可能と判断したのだろう。
その直後、容赦無い雨の如く天罰が上条当麻だけでなく、周りにある10メートル以上の壁や雪を覆った地面や樹木を文字通り『叩き潰す』。

地面を抉って飛び散る泥や石ころが上条を襲う。
異能で影響を及ぼした物理的な攻撃は右手も意味をなさない。
避ける事も出来ない今、彼は被るしかない現実。



「―――ッ!!」



一つ一つの破片の衝撃が凄まじい上に、連続で降り続けるので衝撃は重なる。
故に微かだが、確実に足が地面を擦って後退していってしまう。
660 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/28(月) 03:04:20.08 ID:XKbl6oTDO
腕が衝撃の重なりで弾かれそうになるが、左手で押さえて何とか防ぐ。
これで右腕は保障されたが、外部からの異能攻撃は右手で防げなくなった。
降り注ぐ『刃の破片』が止まない限り、右手は使えない。

しかし対抗策を練る余地は上条当麻に用意されない。
何故なら森林の遙か奥で―――ドンッ!!!! と爆ぜたのだから。



「や、ば……ッッ!?」



あんな地震を起こすほど甚大な力量の持ち主なんて、この場にたった一人しか上条当麻は知らない。
視力で確認不可なくらい森林の遙か奥だとしても、ガブリエルならば五秒と掛からないだろう。
661 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/28(月) 03:05:23.86 ID:XKbl6oTDO





―――五、





視線を『刃の破片』に移す。
雨は一向に止む気配を見せない。
上条当麻は奥歯を噛みしめ、コメカミに滴る冷たい汗が焦りの色を窺わせる。





―――四、





右手は『刃の破片』に使用。
防御は必然的に不可能となる。





―――三、





(どうする……何か、何か手立ては……っ!!)





―――二、





ガブリエルは顔面の三分の一と右腕が消失しているも、烈火の如く雪や樹木を薙ぎ払いながら悍ましい速度で迫る。
剣を携えなければ、手を翳す訳でも無い。背中に生える氷の翼を行使する素振りも皆無。
そのまま突っ込む気だろうか?
……若しくは上条当麻を巻き込んで自滅を謀る気か?





―――一、





既に、鼻先まで接近していた。
662 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/28(月) 03:07:19.98 ID:XKbl6oTDO



「……ッッッ!!!!?」



彼は全力で回避に転じようと無我夢中に体を反り返させ、折れたように膝を曲げてガブリエルの突進をかわす。
それでも体は万能に作られておらず、当然の理論で人間は地球に存在する限り重力には逆らえない。

故、彼は尻餅を付いた。

相変わらず右手は翳したままなので、尻餅に伴い高さも変わる。
そして、幸か不幸か、高さが低くなった右手は―――ガブリエルの顔面へ。


瞬間、暴風が吹き荒れた。


雪を払い樹木を吹き飛ばす風の塊がガブリエル一帯で暴発。
案の定、上条当麻という細身の軽い人間程度は、いとも簡単に宙に浮く羽目に。



「なにが……?」



強打した腰を手でさすりつつ、彼はガブリエルを視界に入れる。
663 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/28(月) 03:09:19.10 ID:XKbl6oTDO
大天使の首から上は、もはや口だけしか残っていない。頭部も眼も鼻も耳も後頭部に流れるラッパ状の布も全て消失。
右腕も顔面の半分以上も無くして尚、ガブリエルは行動に移す。
しかし、身体に係る負担が臨界点を越えているのか、全身にヒビが入り始めていた。




―――辺りに、ガブリエルの咆哮が響き渡る。




人間の頭では到底理解の出来ない、だけど単なる爆発音とは明らかに違う、禍々しい感情が込められた絶叫。
全身に入ったヒビの割れ目から漏れ出す閃光。
光は次第に大きく、一面を照らすように強さが増していく。


それは予兆。起こりうる現象はおそらく……大爆発。


上条当麻はハッとして、ガブリエルへ駆け出す。
大天使が今から何をしでかすか、悟ってしまったから。

例え、足がガクガクだろうと。
例え、意識が失いかけだろうと。
例え、体力がもう無いだろうと。

どんな言葉の羅列を並べても、上条当麻の原動力を潰す理由にはならない。
ガブリエルが大爆発によって、ココら一帯を消し炭になる有り様を黙って見てられるほど―――彼は無責任ではない。

大天使を自滅まで陥れた原因は自分。その範囲に周りが巻き込まれるのは御門違い。
己が招いた結果はキチンと始末すべき。
664 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/28(月) 03:10:42.26 ID:XKbl6oTDO



「おおおおおおおおおッ!!」



叫び吼え、ガブリエルを右手で抑え込もうと伸ばす。



触れる直前、―――起爆した。



純白の閃光が炸裂する。全てを呑み込む、純粋すぎて恐ろしい光。
目を閉じていても眼球を焼き尽くすほどの莫大な光が、不自然な夜を真っ白に塗り潰す。
本来であれば、半径数10キロが灰になっていただろう。
単純な爆発とは違う『特殊な力』による爆発だ。それ以外にも、奇妙な副産物が生まれてきてもオカシくはない。
文字通りの不毛の地になっていた可能性だって高い。




だが。




爆発は広がる前に、消去されていく。
跡形も無く消し去り、余波さえも残さない。
上条当麻の右手に宿る幻想殺しが爆発の規模を最小限に抑え込んでいるのだ。
665 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/28(月) 03:13:32.82 ID:XKbl6oTDO
威力も爆風も完全に右手で防がれるも、右手を跳ね返そうと更に力は増量する。
対して彼は弾かれないために左手を加え、必死に抑え込む。

幻想殺しの処理速度は良好。
右手に支障は無い……が、




(ッ!! 弾かれる……ッッ!!!?)




左手を加えて尚、係る衝撃が凄まじ過ぎて右手が跳ね返されるのも時間の問題になってきた。
歯を強く食い縛り、疾うに限界を越えている右腕に力を付け加える。もはや感覚が失っている。

それでも、現状は変わらない。
後数秒。僅か数秒耐えれば良いのに……腕が、反れる。




(ク、ソ……ッ!!!!)




まぶたを閉じる。
彼は決死の覚悟で右手に全身全霊を捧げ、抵抗を止めない。
今後、暫くはマトモに動けない可能性は否めない。
だけど、自分が傷を受ける代わりに平和を取り戻せるなら、迷う必要は無いから。

上条当麻が、命を賭ける理由にしては、十分だろう。







―――そして、





―――彼の右腕は、





―――重圧に耐えきれず、





―――反れる。





―――……はずだった。
666 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/28(月) 03:16:04.80 ID:XKbl6oTDO



上条当麻は、ふと疑問を浮かべる。未だ爆発を防ぎきっている右手に。
何が起きて、何が影響して、何が起因で、……何もかも判らなかった。

怖々とまぶたを開く、一瞬だけ眩い光が視界を奪うが、目を細めて和らげる。
景色は至って変わってない。
己の右手が爆発を抑え込む光景。
反れる事も無く、安定した状態を保っていた。




―――横から伸びている、黄色い布に包まれた腕が、上条当麻の右腕に添えていたから。




感覚を失っていた所為か、腕が添えられている事に気付かなかったのだ。
彼は黄色い腕には見覚えがある。たった一人しか居ない。
しかし今“彼女”は『一掃』を身に受け、気絶しているはず。

視線を横へ移し、腕を辿って行く。そこに―――居た。

何時の間に側まで近寄って来たのか、判らない。
でも彼女は腕を伸ばして、爆発を抑え込もうとする上条当麻に、非力ながらも助太刀していた。




「ヴェント……」




返事は無い。半開きの目。
奥の瞳は虚ろ。
殆ど意識が飛んでいる有り様。
それでも彼女の意志はしっかりと、上条当麻に伝えられていた。
667 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/28(月) 03:17:03.21 ID:XKbl6oTDO



上条当麻。ヴェント。


二人による不屈の精神が奇跡を起こす。


以前は敵同士だった彼らだが、それはもう過去の事柄。


未来を生きるため、互いに背中を預けて力を合わせ、果てしなく聳え立つ壁(幻想)を打ち破る!!
668 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/28(月) 03:17:39.10 ID:XKbl6oTDO




……。




…………。





………………。
669 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/28(月) 03:19:32.51 ID:XKbl6oTDO

視界に映る景色が、硝子を割っていくみたいに一変する。
空も、森林も、雪道も、全て粉々に砕けていく。
荒れた様子も無い光景。薙ぎ払われていた樹木も嘘のように元通りに戻る。
雪や森林を彩る西日が、彼らを照らす。




元の世界に……帰還した瞬間だった。




しばし呆然と夕陽の空を眺めていた上条当麻だが、直ぐ側でドサッと音を聞いてハッとした。

ヴェントが雪道に倒れたのである。

意識が削がれたのだろう。
元々半分は気を失っていたような状態だったのだ。無理もない。
フードは取れ、隠れていた亜麻色の髪が露わになり、ヘアピンも幾つか零れ落ちていた。
670 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/28(月) 03:21:04.84 ID:XKbl6oTDO



「ヴェントっ!!」



上条当麻は早急に彼女の下へ駆け寄り、肩に腕を回す。
生きているものの、傷が尋常ではない。
それは自身にも言えた事だが、彼にとって己は二の次三の次なのだろう。



「何処か……何処か、治療をしてくれる施設を探さないと」


この山奥で? という言葉が頭の中で反芻する。
どの方向が街に繋がるのか判らないし、そもそも仮に辿り着いたとして日本語が通じるのか?

言葉という壁。
距離という壁。
方向という壁。

聳え立つ絶壁を打ち破った次に立つ、小さいが数のある様々な壁。
言語なんて上条当麻には到底乗り越えそうに無い。だけど、



「……じっとしてても、何も始まらない。探すしかねえだろ!!」



ヴェントを抱きかかえて立ち上がる。
所謂、『お姫様抱っこ』。
671 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/28(月) 03:25:22.57 ID:XKbl6oTDO

何時着くかなんて判らない。
けど、何もしないままココで居続けても、待ち受ける運命は吹雪の山奥で凍え死ぬだけ。
ならば上条当麻は動く。
山に無いなら下りて探すまで。



「―――行くかっ!!」



歩み出す、その時だった。







「行く当てが無いなら、俺が面倒を見よう」







背後から雪を踏む足音が聞こえた。
上条当麻は振り返る。
そこに居たのは、奇妙な男だった。

金髪の髪。薄い水色のシャツの上から、ベージュ系のベストを羽織った格好。
とてもこの極寒の中で移動できるような服装ではなかった。
にも拘わらず、彼の表情は変化しない。




「君達の宿と身の安全は保障しよう。代わりに学園都市の状況を聞かせてほしい。まあ何にしても、まずは傷を癒さなくてはな」

「誰、だ……?」




上条当麻は問う。
問いはシンプルなもので、




「オッレルス」




返ってきた回答も、またシンプル。




「かつて魔神になるはずだった……そして、隻眼のオティヌスにその座を奪われた、惨めな魔術師だよ」




ロシアの時刻は『6』を指す。
日本の時刻は『3』を指した。

死闘の鐘を鳴らして、僅か四時間。
彼らは一旦、安息を取る。



……次に訪れる、その日まで。
672 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2011/03/28(月) 03:31:29.53 ID:ziMMbUwH0
乙です
これはフィアンマさんクルー?
673 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/28(月) 03:32:47.54 ID:XKbl6oTDO
投下しゅーりょー!
そして戦闘シーンしゅーりょー!

ようやく一段落つきました
おそらく一番長かったと思います

最後のヴェントさんと上条さんが力を合わせる場面はやりたかった演出です

うん、満足

これからは二人の独壇場
投下は>>1の学校の課題が終わったらですね


……問題はオッレルスとシルビアなんだよなぁ、SSは読んでないんだよなぁ
674 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) [sage]:2011/03/28(月) 03:44:58.24 ID:PEjnf24AO
おつかれさま。つづき待ってます。
675 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [saga]:2011/03/28(月) 10:33:40.44 ID:Ld5yb35A0
キテたー 乙
676 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/03/28(月) 11:12:07.34 ID:iTAMy5Qx0

さすがです。
おつかれさまです。
677 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(富山県) [sage]:2011/03/28(月) 11:15:35.61 ID:skAnoyszo
678 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2011/03/28(月) 17:58:41.29 ID:glnlmAwAO
乙。すっげえ面白い
だが地の文の擬音をもうちょい何とかしてほしいな。安っぽく感じてしまう
679 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方) [sage]:2011/03/29(火) 00:45:27.64 ID:s3bV4lyMo
原作の悪k(ry
680 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/03/29(火) 08:52:56.98 ID:xbCMOtrl0
いやあ。久しぶりに来てどばっと読んだら引き込まれてた。
ちょこちょこ涙腺が制御不能になりかけたのは内密に……
681 :このスレが満たすまで終わるかどうか判らない>>1です [saga]:2011/03/29(火) 19:35:10.37 ID:viHnszSDO


何か合間に書いてたら出来てしまった

投下いたしますねー
682 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/29(火) 19:36:21.49 ID:viHnszSDO


長い、永い夢を見ていた気がする。
とても温かくて包まれるような、縋りたくなる……優しいぬくもり。

現実と幻想を彷徨うさなか、微かに差した光と『声』だけを頼って。
自分が望んで求める日溜まりを目指し、ひたすらにもがいてもがいて―――漸く、到達した所だった。


頬に触れる感触が甚だ愛おしくて堪らない。
優しく包み込まれる感覚が慈愛に満ちて抱き締めたくなる程に、



(……あん?)



頬に触れる、感触……?



彼女の意識が覚醒した瞬間だった。
683 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/29(火) 19:37:49.55 ID:viHnszSDO

明らか風や雪とか自然なモノでは無いし、氷の塊や石といった物理的なモノでも無さそうだ。
肌触りから考察して、このジワジワ伝わるぬくもりは人の温度。
つまり頬に感じるのは、



「…………」



うっすらとまぶたを開けた途端、橙色の光が視界を覆い尽くす。
木材で造られた天井。備え付けた電気が発光して、橙色を彩っているのだ。

何処だ? とか、化物に勝ったのか? 等と数え切れない様々な疑問が頭の中で按ずる。



「気が付いたか?」



だが、それらを全て払拭するように耳の付近で声がした。
タイミングを考えて、自分に向けての言葉。
聞き覚えがあるからこそ、危機感や警戒感は無い。
寧ろ安らかな気持ちになった。
どうしてかは判らないけれど。
684 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/29(火) 19:41:32.59 ID:viHnszSDO

目と顔だけ、僅かに横へずらす。
そこには予測通りの男が、至極心配そうな顔色で自分を見つめていた。



「上条当麻……」

「良かった。ホントに良かった」



安堵の息を漏らす。
顔色も緊張の糸がほぐれたように、穏やかな表情が生まれる。
でも、矢張りまだ心配なのか、完全に安心した訳では無い様子。

そして、ヴェントは気付く。
意識が覚醒する原因を必然的に視界に入った事により、呆気なく答えに辿り着いてしまったのだ。
彼女は逡巡せずに、問う。



「一つ、訊いても良いか?」

「ん? 上条さんに答えれるものなら何でも来いですよ」



ピッと人差し指で自らの頬を指し、



「何でアンタの手が、私の頬にピッタリと添えられてるワケ?」

「……あー」
685 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/29(火) 19:44:53.21 ID:viHnszSDO


ヴェントは特に反応を示さない。
恥ずかしがる様子も無ければ、驚愕や憤る事も無かった。
更に付け加えるならば嫌がる仕草も示唆しないが、それは野暮と云うものだろう。

逆に反応を示したのは上条当麻の方だった。
若干頬を紅く染め、頭をポリポリ掻く。羞恥を含めた故の素振り。
誰から見ても動揺している事は間違い無い。



「何よ焦れったいわね。後ろめたい事実でも隠してるのかしら?」

「そ、そういう訳じゃねえんだっ!! ただな」



彼はヴェントから視線を逸らすと、



「……お前が俺の名前を呼んで、手を握ってきたんだよ。更には頬擦りするわで上条さん大変でしたよ」

「―――は?」
686 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/29(火) 19:46:32.27 ID:viHnszSDO


余りの予想外な回答に、ヴェントの口から素っ頓狂な言葉が出た。
上条当麻のセリフが脳裏で反芻される。




―――私が寝言でコイツの名前を呼んだ?



―――しかも私から手を繋いだ?



―――挙げ句の果てに頬擦り?




人間という者は不思議な生き物で、ある“場面”を文字や言葉で表現された時、頭の中でその“場面”を想像する性質が存在。


故に。


自分のボイスで上条当麻を呼び。
おもむろに彼の手を握り締め。
その手を頬まで持って行くと、頬擦りをする。

この一連の映像が、ヴェントの中で再生された。
そして自覚が伝わるのは甚だしく迅速なもので、



「―――っ!!?」



寝起きの思考が一気に醒めていく。
立場上、優位に立っていたはずのヴェントも、今では顔を真っ赤にした有り様。
687 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/29(火) 19:48:15.22 ID:viHnszSDO
何を発して良いか判らず、口は開閉を繰り返す。頬を指していた手もワナワナと震えだし、明確に狼狽。
それでも頬に添えられる上条当麻の手を拒否らないのは、彼女の本音か。はたまた別の事柄か。



「〜〜〜っ」



湯気が出るほど顔を真っ赤にしたヴェントは少々俯き加減で、歯軋りが生じるほど強く歯を食い縛る。
当然彼女の様子を、朴念仁唐変木甲斐性無し完璧鈍感野郎こと上条当麻は別の意味で受け取ってしまう。

例えば先刻の傷が疼き出したとか。
例えば極寒の中に居たから熱で顔が紅潮したとか。
例えば未だ疲れが取れず些か眠いとか。

全国に居るフラグ建築済みの女性陣が頭を悩ます原因の一つ。
「もはや病気ね」と語るのは学園都市の常盤台中学生。

ヴェントは頬に添えられた片手の指一本を掴む。


「どうしたヴェン、とぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおお!!!!??」


メキッ、と。

決して曲がっては駄目な方向に、上条当麻の指が彼女の手によって折れ曲がった。
彼自身が突然奇声を上げた訳では無く、指が折れ曲がった激痛に絶叫しただけなのでご注意を。
688 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/29(火) 19:50:57.88 ID:viHnszSDO



「ぎ、ぎ、ギブ! ギブギブ!! 折れてるっ、折れてるからぁーっ!!?」

「砕けろッ!! そして死ね!!」

「おほぉいぃぃぃっ!!!?」



最後の方は既に上条当麻にも何が言いたいのか判らないのだろう。
日本語になっていない。
彼女の言動+更なる激痛から零れたセリフにしか過ぎないのだ。

こんな端から見たらじゃれ合いの光景だが、それで尚、依然と体勢を崩さない偉業を二人は成す。



「目を覚ましたか?」



全くの意識外からの声に二人は同時に停止して、振り向く。
視線の先には別室から現れた金髪の男。
689 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/29(火) 19:52:47.96 ID:viHnszSDO

突如現れた男にヴェントは上条当麻と違って警戒心を露わにする。
彼女の様子を察した男は、やれやれと肩を竦めると、



「俺はオッレルス。名前程度なら聞いた事あるだろう? 前方のヴェント」

「オッレルス……成る程ね」



得心したとばかりに口元の片端を吊り上げると、彼女は上体を起こす。
上条当麻が心配の色を含んだ声を掛けるが、ヴェントは発する前に片手で制する。



「世界各国の魔術結社から狙われてる魔術師様が、私達に何の用かしらぁ?」

「……人を助けるのに、理由を一つや二つ作らないといけないのか?」



彼は心底呆れるように溜息を吐く。何を当たり前の事をと、態度で示唆した。

対してヴェントは返答に辟易された訳では無いのだが、眉を顰める。
オッレルスの物言いにすこぶる不満そうな声色で、



「何か、このガキと同類って感じがして嫌ね。初対面で悪いけど、無条件で嫌悪感が全身に走ったわ」

「なんでっ!?」

「てか、俺って相当ヴェントに嫌われてたんだな……」



共に背中を預け合った仲なのになぁ、と幾分落ち込んでボヤく。
間髪容れず反応したのは起因の基であるヴェント。
690 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/29(火) 19:58:26.55 ID:viHnszSDO



「アンタが嫌いっつーか……死んでほしい、とか?」

「酷っ!? それに“とか”って何だよ!! お前、俺に対する扱いがぞんざい過ぎねえか!?」

「寧ろ良くなりたいワケ? こんな私に。ってかアンタ年上好きなの? ……それとも熟女が?」

「んな訳あるかあああああああッ!!!! 今っつーか漸く気付いたぜ、例えが極端なんだよコノ野郎!! テメェの思考は極論しか叩き出さねえのかッ!!
どうせアレだろっ?! 今の質問に否定したらロリコンとか幼女好きとか意味判んねえレッテル貼られんだろうがよ!!」

「何マジになってんのさ。顔近い上に必死とか、どれほど拭いたいコトなのよ」

「めんどくせぇぇ!! 何なのこの子!? 急に常識人になっちゃって!! 上条さんはそんな直ぐに冷静になれるスキルは持ち合わせていませんのことよ!!?」

「アンタこそ誰よ。キャラ変わってんじゃない」



……と、話の路線がズレまくった上条当麻とヴェントの会話だが、それは唐突に終わりを告げる。
多少な障害では止まりそうに無い二人の会話の勢い。しかし、







「なかなか愉快な内容だな。見知りの仲、俺様も混ぜろ」







―――時が、止まった気がした。
691 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/29(火) 20:07:04.96 ID:viHnszSDO
しゅーりょーです

オッレルスに関しては……まぁ、うん
おそらく作中で一番壊れるであろうフィアンマは仕様です


ヴェントさんと上条さんがもっと見たいという方は、
総合の25冊目の最初らへんに『もし上条さんとヴェントが姉弟だったら』という姉弟設定で4レス投下した記憶があるので
そちらを覗かれたら宜しいかと
692 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県) :2011/03/29(火) 20:46:30.03 ID:goMHyTPm0
なるほど。あの作者はあなた様だったのか!
乙です!!
693 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage saga]:2011/03/29(火) 23:29:25.63 ID:xbCMOtrl0
乙!!
とうとう来たなフィアンマ!!!
続きが超楽しみです!!相変わらずヴェントがツンデレなのが微笑ましい
694 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/29(火) 23:49:08.09 ID:g+SPqYz40
放置プレーだったフィアンマが来たか。wktk
695 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2011/03/30(水) 13:01:09.53 ID:3zrr1/NN0
これは面白くなりそうな予感!
696 :課題の原稿用紙が見つからない>>1です [saga]:2011/03/31(木) 02:11:12.32 ID:byKh2vfDO
投下しますね

今回、フィアンマとヴェントが結構序盤でハチャけます

戦闘シーンより早く書けたなんて…どーゆーことなの…
697 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/31(木) 02:12:48.63 ID:byKh2vfDO
アックアからどっかのクソ野郎を捜索しろと言われ、未だ二十四時間も経っていないが、振り返れば色んな事が有ったと思う。


サーシャ=クロイツェフに手伝いを要請しに行って断られ。
山奥の雪道では徘徊する山賊を返り討ちしてやったり。
東洋の聖人率いる天草式と共に行動をすれば個性豊かのメンバーに疲れてしまい。
何らかの原因で異世界に放り込まれて上条当麻と劇的な再会をへて。
大天使のガブリエルを撃破するため上条当麻と共同戦線を繰り広げる羽目に。
挙げ句の果てに何処かも判らない場所で世界の魔術結社から狙われているオッレルスと来たもんだ。


捜索開始からまだ一日も経っていない。早速だがもう動きたくないのが本音。
今日が特別なだけだろうが、こうも毎日ドタバタでは正直身体が保たない。
何とあのガブリエルに曲がり形にも出逢ってしまったのだ。これ以上は驚く事柄も無いだろう。
……と、踏んでいた。さっきまでは。
698 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/31(木) 02:14:04.14 ID:byKh2vfDO



「久しい顔だな。何の音沙汰も無く、こうしてお前と対面するのは何時振りの事やら。
しかし光栄に思え。流石の俺様も驚いたぞ。まさかお前らが一緒だったとはな」



神様、十字教で信仰していた自分が言うのもアレだが、居るのなら一言だけ言わせてくれ。




―――これは流石にねーよ、と。




「……ふん、こちとらオシメの替えも出来ない、どっかの誰かさんの後始末で大変だったのよ。
勝手に散らかせたんだ、ケツぐらい自分で拭いて欲しいわねぇ?」

「ハッハッハッ、何を言うかと思えば、全くその通りだな。
だが残念、『天罰術式』の範囲指定が出来ないお陰で、ローマ正教の身内にまで被害を及ばせたヤツのセリフでは無いな」



ピキ、と。

ヴェントのコメカミ辺りに青筋が浮かぶ。ついでに上条当麻の指を掴んでいた握力も増した。
699 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/31(木) 02:16:02.42 ID:byKh2vfDO
笑顔が引き吊り、今にも爆発しそうだが、それでも堪えようと自分を抑え込む様子が窺える。

現在の時点で被害は上条当麻だけ。何やら呻き声が聞こえるが、この際無視だ。



「ハッ、相変わらずムカつく野郎ね。性根が腐ってやがる。その喋り方が腹の底から苛立たせるわ」

「どの口が言う。お前の男勝りな性根こそ腐敗じゃないか?
だが……ふむ、これはこれは光栄だな。発動条件として『天罰』は相手に敵意を抱かさせなくてはならない。その“本業”であるお前を苛立たせるとはな。
いやはや、まさか賞賛を称えられるとは考えもしなかった」



ブチッ、と。

今度こそ本当に、取り返しの付かない音がオッレルスが用意した宿の一部屋に響く。
彼女はゆらりと立ち上がり、上条の指を離して、ハンマーの代わりに拳を作る。

眉間を今まで以上に深く顰め、引き吊った笑顔で犬歯を剥き出しにすると、彼女はこう呟いた。





「―――上等だ、ブチ殺す♪」





一瞬だけ、場の温度が下がった気がした。
700 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/31(木) 02:17:37.37 ID:byKh2vfDO

ヴェントがフィアンマに殴りかかる前に、瞬時に反応した上条が彼女を羽交い締めにする。
両腕を捕らえられ行動を拘束されたヴェントは、火を噴くような勢いで彼に食い付く。



「離せ上条当麻ッ!! やっぱりこのクソ野郎は一遍地獄に葬るべきなのよ!! いや、永遠に眠ってろッ!!」

「落ち着け!! 確かに俺も最初驚いたし、あれ、こんなキャラだったっけ? とか思ったけどさ!!」

「私に否定形は存在しない、だから離せぇッ!! 寧ろアンタも手伝いなさい!!」

「ハハハッ!! 短気な所はお前も相変わらずだな。だがしかし、まず戦力の差を弁えろ。
貴様如きが俺様を葬ろうなど片腹痛いぞヴェント。得物を有さない徒手空拳とは、児戯にもならんぞ?」

「やってみねえと判んねえだろうがあッ!! こんの陶酔ナルシ野郎には粛清が必要なのさ、だからいい加減言うコトを聞け上条当麻ーッ!!!!」

「ふむ、戦争前は幻想殺しと呼んでいて今はフルネーム。随分と心を許したのだな。恋に落ちたか?」

「なっ!? ―――殺す!!」
701 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/31(木) 02:19:05.55 ID:byKh2vfDO



HAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHA!! とフィアンマは高笑う。火に油を注ぐ言動なのは間違い無い。
彼も半分はヴェントを囃し立てて楽しんでるのだろう。質問に関しては本気。
二人のテンションが更に斜め上へ跳ね上がり、ヒートアップを遂げようした丁度その矢先、



―――スパァン!! と小気味の良い音が“二回”響いた。



重ねた紙類を結構強めに叩いたような音。切っ掛けに二人は急停止。
それもそのはず。ヴェントとフィアンマの頭頂部で奏でたのだから。



「ったく、大の大人……それも神の右席がこんな所でドンパチやってんじゃないよ。我が家を消し飛ばす気?」



突如現れたのは金髪の女。
額に押し上げたゴーグル、深い色の実用的で分厚い生地のジャケットとズボンの上から、作業用のエプロンを身に着けている。
イギリス製の侍女のような印象。
彼女の名はシルビア。
702 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/31(木) 02:20:20.95 ID:byKh2vfDO



「やりたきゃ外でやりな。子供じゃないんだ、仲直りは自分達でする事ね」



彼女の片手には白い紙で作られたお手製のハリセンが握られていた。
ヴェントが見る限り、先刻の音はハリセンが起因してるとしか考えられない。
でも構える動作どころか、何時この部屋に入って来たのかさえ感知出来なかった。
頭を叩かれて、幾分冷静になった彼女はポツリと呟く。



「……この家の住人は忽然と出現するのがマイブームなワケ?」

「伊達に魔術師をやってないよ。それで十分。頭が冷えたなら、案内してやるから風呂入って温まって来な。雪被って体が冷えてるだろうしね」



それと、と一度切り、部屋の入り口を一瞥する。



「そこで如何にも逃げようとしてる大馬鹿野郎」

「ひっ!?」



びっくぅっ!! と肩だけでは無く体全体が飛び跳ねるように震え上がった。オッレルスだ。
コソコソと密かに逃げ出そうとしていたらしい。
703 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/31(木) 02:22:00.34 ID:byKh2vfDO
シルビアは襟首を乱暴に掴むと、鼻先まで引き寄せてオッレルスにしか聞こえない声量で彼女は囁く。



「あんたがこの宿に移動してまで連れ込んで来たんだ。今回ばっかりは勝手に出て行くんじゃねえぞ?」

「わわ、判ってますともっ!! は、はは……」

「なら良し」



微笑んで襟首を離すとヴェントの方へ向き、首を動かして彼女を促す。



「行くよ。遠慮は無用さ」

「……はぁ、ハイハイ」



些か躊躇ったが無駄だと観念したのか、軽く溜息を吐いて素直に従ってシルビアに付いて行く。
辟易されるヴェントも、また珍しいものだと上条当麻は実感した。
704 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/31(木) 02:23:58.39 ID:byKh2vfDO



「なあ、何時もこんな感じなのか?」



相当痛かったのか、未だに頭を抑えて悶えるフィアンマに上条はこっそりと耳打ち。
声を聞いた彼は、上条と同様に声を潜めて返答する。



「嗚呼。お前も気を付けとけよ。
シルビアは俺様だろうが何だろうがお構い無しだ。この宿で暮らす間、必ず一発は喰らうと覚悟しとけ」

「……肝に銘じとく」



眼前で早速制裁を喰らったヴェントを目の当たりにして、上条当麻には頷くしか道は残されていなかった。



「内密にしてる所すまないが、残念だが全部筒抜けだぞ君達」



恨めしそうな目でオッレルスは二人を睨め付け、意味が無いと察したのか睨むのを止めて緩慢と立ち上がる。
705 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/31(木) 02:27:33.93 ID:byKh2vfDO

上条とフィアンマの二人と向き合い、若干情けなかった目つきが真剣な物へと一変。
その変貌に僅かに上条当麻は息を呑む。
殺気で恐怖を感じさせる視線とは違う、緊張を迸らせる視線に驚愕を隠せない。

初対面で言われた学園都市の状況についての話題に触れる……つまり本題に移すという事が上条当麻にも把握した。

そんな緊張の中、フィアンマが口を開けた。



「矢張り俺様達が昨日まで居たペンションでは無くココに移動する理由として、上条当麻を匿う事が起因するのか?」

「鋭いね。推測通り、君だけなら多少の弊害が生じようと問題は皆無だったんだが、今回ばかりはそう容易くいける相手ではない」

「……へ? 何で俺が療養のため宿を取るだけなのに、そんな大掛かりなの? まるで上条さんが狙われてるみたいな言い回し……」

「実際お前は捕獲対象さ。言っておくが魔術側では無い、学園都市にだぞ」

「何を言っとりますかフィアンマさんや。LEVEL5ならまだしも、上条さんに希少価値は微塵もありませんのことよ?」

「まあまあ。君の言う通りだとしてもだ。学園都市内の学生、それも能力者をアレイスターが何の施しもせず、みすみす放置なんてしないだろう? 少なくとも回収には来るはず」

「いや、まあ、うーん。そう……なのか? てかアレイスターって学園都市の統括理事長だよな? 何でその人が俺を?」

「じきに解る時は来る。ここで語っても君が理解可能な部分は欠片も無いさ。
今重要なのは君が学園都市に移り住んでからの学園都市の状況及び変化だ。この二つを教えてくれ」
706 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/31(木) 02:29:23.91 ID:byKh2vfDO



上条当麻は腕を組み、首をうねって悩み逡巡する。
内部の機関とか授業内容、その全てを話すべきなのか。又は限定するべきか。
そう易々と述べて良いものでは無いと思う。



―――しかし、『絶対能力進化実験』と言うフザケた内容を設計し、了承した学園都市を匿ってやる義理も無い。



だけど。だけとだ。
曲がり形にも今まで世話になった街。だからこそ出会った人々が居たし、思い出も結構有る。
裏切るような行為は出来るならしたくない。



(でもなぁ……)



オッレルスの目を一瞥。
瞳は真剣その物。
とても悪用するような人間には見えない。フィアンマの方も何やら改心の様子を窺わせる。



彼は悩み悩み悩みを重ね……そして、上条当麻は決断する。
707 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/31(木) 02:30:25.46 ID:byKh2vfDO



「……言っとくが、俺は学園都市についてそんな詳しくないぞ。知ってもおそらく片鱗だ」

「構わない。君の知る限りで良い」



世界の魔術結社から狙われている魔術師、オッレルス。

戦争を企てた大罪人として狙われている魔術師、フィアンマ。

学園都市から回収対象として狙われている無能力者、上条当麻。



ここで、三人の密談が行われる。
708 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/31(木) 02:36:00.96 ID:byKh2vfDO
投下しゅーりょーです

今回は前回に比べてジャレる成分の代わりに、ギャグや暴走成分が豊富でした
書いてて楽しい
フィアンマが壊れてるぜ!!


学校始まるまでに絶対終わらないと判断したので、のんびりやっていこうと思います。はい
709 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(九州) [sage]:2011/03/31(木) 03:35:49.17 ID:TDWkR4XAO
乙です!
自分のペースでガンバってください。
ヴェントもフィアンマも大好きです!!
710 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(富山県) [sage]:2011/03/31(木) 09:59:09.23 ID:AKq4Bedlo
711 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage saga]:2011/03/31(木) 10:23:25.32 ID:wUr93kSj0
ヴェントかわいいwww
おっれ留守にフィアンマに上条当麻……嬉しさといふで鳥肌が……
712 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/03/31(木) 11:02:14.06 ID:nVLuc48c0
指折れてるのに上条さん冷静だなwwww
713 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [saga]:2011/03/31(木) 13:23:28.02 ID:/zWVZ5Ec0
フィアンマが輝いてるww
上条さん、指指!
714 :977 [saga]:2011/04/01(金) 11:29:56.62 ID:hmootBDDO
書けましたので投下しますね

あ、名前は977に統一しようと思っています。殆どノリで決めました

今回はやたらとヴェントさんが叫んでます。
……あれ?何時も叫んでる?
715 :977 [saga]:2011/04/01(金) 11:31:16.00 ID:hmootBDDO


水の音。今日の疲労を癒やすように丁度良い温度のお湯が、彼女の身体を洗い流す。
肩まで湯船に浸かり、雪や極寒で冷え切った素肌を温める。
思わず声が漏れてしまう程、気持ち良い。体の芯まで癒やす心地好さ。もはや天国の域。



「ふぅ……良いお湯ね」



ヴェントはシルビアに案内された浴場に居た。
しかもご丁寧に洗面所には化粧落としのクリーム。更にはピアスやヘアピンを置く小箱まで。
風呂に入る前提の用意周到並み。
これには流石に感嘆する他無いだろう。

板張りの宿。湯船を満たす桶も木材で造られている様子。
風情が出て良し。後は見晴らしの良い夜景が付けば文句無しの満点。とか何とか考えてしまうヴェント。
716 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/01(金) 11:32:37.12 ID:hmootBDDO

ふと、仰いで天井を眺める。
浴槽から湯気が立ち上り、熱気が籠もるも、取り付けた小さな窓の隙間へ逃げていく。
頭に浮かぶ事は……何も無い。
虚無感に覆われ、モノクロの世界に彼女は放り込まれた。



「……」



虚ろな瞳が捉えるのは、空間。
天井ではない。そんな所をヴェントは見ていない。
視線を辿れば天井だが、彼女が見ているのはもっとその先。
瞳に映す板張りの天井はヴェントに何も齎さない。彼女の心を晴らす手立てにはならないのだ。
717 :977 [saga]:2011/04/01(金) 11:34:23.70 ID:hmootBDDO

蟠り。靄。憂鬱。鬱積。葛藤。
様々な感情の糸が、彼女の中で縺れて、解け合う事は決して無い。
糸は心を縛り、身体を呪縛する。
多くの糸は表情さえも奪う。





―――思考に耽る時間が出来て、漸く自覚した。





何本もある糸の正体は、たった一つの芽生えた『感情』。根底に存在する、生涯で初めての経験。
自分は子供では無い。だからこそ別の事柄に置き換える機能は持ち合わせていなかった。

最初は否定した。否定形は無いとか己に掲げているが、知らない。
否定して、否定に撤回に拒否に拒絶に忌避に狷介に謝絶に却下に棄却に反発に反抗に拝辞に撥無を重ね。
あらゆる否定する言葉の羅列を並べ、全身全霊をかけてその『感情』を烏有に帰す。



……しかし、一度芽生え自覚した時点で、もう遅いのだ。



確固たる『感情』は微動だにしない。傷一つ付かなければ、逆に増幅していく現実。

頭に浮かぶのではない。
心に留まり続けているのだ。
あの憎たらしい存在が。



「上条当麻、か……」



―――『恋』という、感情を。
718 :977 [saga]:2011/04/01(金) 11:36:21.90 ID:hmootBDDO



「……〜〜っ」



チャプンと。肩より深く浸かっていき、口元まで沈んでやっと停止。
仄かに赤みを帯びた頬は、湯船の体温上昇から起因したモノでは無い事が明らか。

蟠り。靄。憂鬱。鬱積。葛藤。
これらの糸は恋からであり、上条当麻から離れて一人になった事で生まれた物である。


―――所謂、『寂しい』というヤツだ。


いつ。何処で。なんで。何処に。
よりによって何故コイツ?
何もかもが意味不明。理解不能。
だけど、



「あのガキが……す、す、す―――酢昆布っ!! って!! 言えるワケねえだろうがああああああああああああッッッ!!!!!!」



両手で髪を掻き毟り、湯船に全身を沈ませる。
719 :977 [saga]:2011/04/01(金) 11:37:23.51 ID:hmootBDDO
ブクブクと暫く泡が湯船に幾つか浮かんだ後、緩慢とした動作でヴェントの顔が水面に覗かせた。
眉間を顰め、先刻より真っ赤になった顔で涙目になりつつも、彼女はボソッと呟く。



「大体、あんなガキの何処が……のわああ畜生クソボケがァッッ!!!!!」



言葉の途中、「でも好きなんだからしょうがない」という文字が頭の中で反芻して言い続ける事が不可能になり、自分でも何が言いたいのか判らないセリフが口から迸る。

結果、狭い浴場で叫んで身悶えて沈んで……同じ動作を繰り返す。



「……ダメだ、これ以上ココに居たら私の体が保たない」



肩を大きく揺らして息切れ。殆ど自滅行為なのだが、致し方無い事。
戦闘や洞察力に長けていても、恋愛には疎い青い果実なのだから。

もはや天草式の五和を見て「下らない」と斬り捨てていた頃が懐かしい。
切実にそう思うヴェントだった。
720 :977 [saga]:2011/04/01(金) 11:38:13.31 ID:hmootBDDO


上条当麻は通路を歩いていた。

さっきまでフィアンマとオッレルスを加えた男三人という、実に華が無い状況で密談を行っていた所である。
“学園都市の変化”と言っても記憶喪失の彼には昔と今で、どう変わり果てたのか全く判らない。
とりあえず、有体に学園都市内部を報告。街の風景だったり技術の進歩、市街に彷徨くロボットなど。

その回答にオッレルスは数分の間、唸り悩む。当然の如く上条当麻はどうしたらいいか困る。
見兼ねたフィアンマが呆れつつ述べたのだ。「風呂に入って疲れを癒やしたらどうだ?」と。

特に懸念もせず、難なく承諾。
指摘されて気付く。体のアチコチから骨が悲鳴を上げてる事に。
ついでに折られた指も。
721 :977 [saga]:2011/04/01(金) 11:39:03.23 ID:hmootBDDO

運が悪い事に折れた指は右手なので、魔術では治らない。
一階に下り、キッチンに居るシルビアに救急箱を借り、仕方無く指を最低限に手当て。
何度も病院へ運ばれている内に、指の骨折程度なら何とか自分で治療を覚えるようになったのだ。
……何だかそれも悲しい気がするが。



「えっと、ここの突き当たりに……有った有った」



スライド式の扉が見えた。
プレートには英語じゃない、別の外国語が書かれている。彼には英語だとしても翻訳出来ないので、無視。



「上条さんにも、漸く休みの一時が訪れましたよっとー」




―――彼はミスを犯していた。
722 :977 [saga]:2011/04/01(金) 11:40:23.12 ID:hmootBDDO



オッレルスやフィアンマと話していたからか、はたまた大天使との疲れが有ったからか。
どちらか定かでは無いが、彼は少なくとも“二つ”、重要な事柄を忘れている。

一つ。己は重度の不幸スキルを所持の上、過去に風呂場で女性の裸を目撃している事。
二つ。僅か数十分前なのに、風呂場へ先に誰かが入っているという事。

疲労が有るとは言え、経験済みなのだから細心の注意を払うべき。
安堵の息が漏らす、その隙を突くように惨事は起きるのだから。


故に、



「―――は?」

「―――へ?」



二人は、邂逅を果たす。
723 :977 [saga]:2011/04/01(金) 11:41:27.21 ID:hmootBDDO
上条当麻は我が目を疑う。
眼前に広がる光景の意味を、理解出来なかった。状況の整理が追い付かない。

人。人が居る。
それも女性。しかも裸。

透き通るような白い肌。
スラリと長くて細い脚。
首までの亜麻色の頭髪。
端正に整った顔。

正直、誰だか判らない。こんな美人な女性がこの宿に居たのかと、暢気に心の中で呟いた。



「え、ちょ、なな、なぁ……ッ!!?」



女性がバスタオルを引っ張り出して前を隠し、瞬く間に全身が真っ赤になっていくのを目の当たりにして、彼の思考は現実に戻される。
更に声色で女性の正体が明確。
彼の頬もまた、赤みが帯びていく。



「ヴェ、ント……?」



何か発しなければと思い、咄嗟に出た言葉がコレ。もう少しマシな事が言えないのかと自分を戒める。
724 :977 [saga]:2011/04/01(金) 11:43:11.75 ID:hmootBDDO



「い、いや! ここここれはワザとじゃなくてだな、うん!! 俺も疲れてたし、お前が先に入ってた事忘れちまってて……」



彼女は俯くと、震える程に強く拳を作った。
歯軋りが耳に届く。歯を食い縛ってるのを瞬時に察する。



「は、早まるな!! 落ち着こうぜ!? ていうか落ち着いて下さいっ。人間話し合えば判り合えるって、きっとォッ!」



両手を前に突き出して、必死に弁明。しかしヴェントは依然と変わらない。
寧ろフフフ、と笑い出しているし、悪化の可能性が大。
当然、上条当麻に動揺の色が溢れんばかりに際立つ。
背筋に流れる汗が奔流のようだ。

これは非常に拙い。
彼女の空気が全く弛緩しない。



「……いいいやっ!! ごめん!! 俺が悪かった、申し訳ありませんでした!! 上条当麻は深く反省しております!! だからお願い許し―――」

「ガタガタ抜かして御託並べる前に、さっさと出て行けこのエロガキがああああああああああああああッッ!!!!!!!!」







その頃、フィアンマ。







「ハッハッハッ、叫んでる叫んでる。途中で流石のあいつも気付くかと思ったが……予想以上に疲れていたのか、若しくはただの鈍感なだけか。
どちらかは定かで無いが、俺様の策略に見事ハマったな。愉快なヤツらだ。揶揄のしがいがある」



今日の勝利者の呟きであった。
725 :977 [saga]:2011/04/01(金) 11:48:31.67 ID:hmootBDDO
投下しゅーりょーです


やっと自覚、かな?
一人の時間が出来る事で考え耽て、気付かされたって感じです
726 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/01(金) 12:18:53.86 ID:tiV7xqpIO
乙です
フィwwwアwwwンwwwマwww
このお茶目さんめ、いいぞもっとやれ
727 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage ]:2011/04/01(金) 12:36:59.68 ID:ax8KSqZS0
乙!!
フィアンマ、これからも頼むぜ!!
それにしても乙女なヴェント可愛すぎる
728 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/01(金) 12:55:33.92 ID:ZVc8VYBDO
ヴェントの可愛さに気付いていたのは俺だけじゃなかったかッ・・・・
729 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/01(金) 14:01:32.03 ID:mv/3KT03o
すっぴんヴェントさんは超美形ですからね
730 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岐阜県) [sage]:2011/04/01(金) 21:17:07.38 ID:CIhXDtwc0

ヴェントかわえええええ

ここで言うのもあれだが、総合の暗部条さんて>>1だよな?
すげえ好きな設定で面白かったよ
731 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方) [sage]:2011/04/02(土) 00:31:54.02 ID:50zG80wgo
肩を大きく揺らして息切れ。殆ど自滅行為なのだが、致し方無い事。

自慰行為に見えた俺は…
732 :977 [saga]:2011/04/02(土) 12:55:45.91 ID:B0wVuVbDO
投下しますね

>>730さん
あ、はい。その通りです
ヴェントさんの物語が一部完結したら、上条さんの暗部入りを書こうと思ってます
先走って書いてしまいました
タイトルは思い付いていません


>>731さん
ちょwwwww
733 :977 [saga]:2011/04/02(土) 12:56:56.07 ID:B0wVuVbDO


―――夜の帳が下りる頃。


あの後、状況を声だけで察したシルビアに揶揄されながらも、リビングのソファーで待機。
ヴェントが洗面所から出て行ったのを見計らい、改めて浴室に赴く。

風呂から上がってリビングに戻ると、二階から下りて来たらしい男組が先に夕飯を済ませていた。
辺りを見渡して、ヴェントが居ない事を尋ねると、彼女は睡眠取るために用意された自室に戻ったらしい。
上条当麻はホッと胸を撫で下ろす。何せ曲がり形にも裸を見てしまったのだ。
気まずい事この上無い。
734 :977 [saga]:2011/04/02(土) 12:59:32.52 ID:B0wVuVbDO

そんなこんなで彼も夕食を済ませ、再びオッレルスとフィアンマを交えた密談が行われ、夜も更け始めた時。



「ほれ」



シルビアがリビングにやって来るやいなや、上条に向けて何かを放り投げた。
些か慌てつつ、両手でキャッチ。見れば、それは小さな鍵。
上条が鍵を受け取るのを確認し、投げた本人はオッレルスの首根っこを掴みながら告げる。



「自室の鍵だよ。時間も遅いし、寝な。こいつの話に付き合っていたら、朝になってしまうからね」

「え? いや、そっちって拷問部屋だよね!!? た、助けてーっ!!」



終えると、身悶えるオッレルスを無視してそのまま別室に消えて行く。
735 :977 [saga]:2011/04/02(土) 13:00:43.21 ID:B0wVuVbDO
暫く呆然としていたが、フィアンマが先に席を外すと、促されるように上条自身も席を立つ。
歩きながら再度、鍵に視線を移す。鍵の表面には「M」とマジックで書かれている。
おそらく部屋番号なのだろう。

二階に上がり、各々の部屋に繋がる扉のドアノブには札がぶら下がっていた。
札にはNやL……それぞれ英語の大文字。フィアンマや自分、ヴェントと割り当てているのだ。



「Mは……一番奥か」



今更ではあるが、猛烈に眠い。
体や頭が「睡眠を取る」と決定した途端、急に睡魔が上条当麻を襲い掛かった。
736 :977 [saga]:2011/04/02(土) 13:03:59.33 ID:B0wVuVbDO
寝る前に思考すべき事は幾らでも有るのにも拘わらず。


完治した場合、どのような手段で日本に帰国しようとか。
その前に一度イギリスへ赴いて、インデックスを安心させてやりたいとか。
電撃を被るのは決定事項な御坂美琴に、ベツヘレム星の時を何て説明して何て謝ろうとか。
まずこの山奥から下山出来るのかどうかとか。


事柄は様々。だがしかし、明日考えようとブン投げてしまう。
睡眠は下位だったが、正に形勢逆転の下剋上を果たし、優先を勝ち取ったのだ。
故に今は兎に角、寝る!
その一心。


ガチャッと扉を開けて、中に入って扉を閉める。
廊下から差し込む光が失われたため、部屋の中の光は窓から僅かに侵入する月の明かりだけ。
それでもカーテン越しなので、視界が家具をしっかりと映さない。
見えない程では無いので、差し支えは生じない。ベッドは安易に捉える事が出来た。
737 :977 [saga]:2011/04/02(土) 13:05:15.59 ID:B0wVuVbDO

髪をガシガシ掻いて、足を進ませる。
ベッドの下まで近寄り、毛布を掴んで捲ろうとし……気が付く。
はっきり言ってしまえば、上条当麻は漸く気付いたのだ。





―――妙に布団が膨らんでいる事を。





大きさとしては大人一人分。
しかも端っこ寄りで、もう一人分入るぐらい空きがあった。まるでソコに入れと言わんばかりに。
疲れがあったから気付かなかったのか、眠過ぎて感付かなかったのか……そんな些細でつまらない事情はどうでもいい。


ズザザザザザザザザザザザゴンッ!!!! と。


状況を瞬時に理解した上条当麻は、全力で後退して行き、最終的には壁へ吸い込まれるように後頭部が衝突。
なかなか鈍い音を響せた。
738 :977 [saga]:2011/04/02(土) 13:06:59.88 ID:B0wVuVbDO



(な、何だ何だよ何ですかぁーっ!!? 最近はこんな奇妙に膨らませる技術があるって言うのでせうか……?
いやいやいや、何のためにだよ)



思わず自分でボケとツッコミを繰り広げる程、彼はパニックに陥っている。
兎に角、意味不明極まりない。

彼はそろりと近付いて行き、上体を傾け首を必死に伸ばし、枕元を覗く。
そこには亜麻色の髪をした女性……ヴェントが寝息を立てて熟睡していた。



「……何でヴェントが―――ぶッ!!!?」
739 :977 [saga]:2011/04/02(土) 13:11:36.95 ID:B0wVuVbDO


不意に彼女がモゾモゾと動き、寝返りを打つのに伴って布団が大きく捲れたのだ。
上条当麻が思わず声が漏れ、露骨に狼狽と動揺を表現してしまった起因。それは彼女の格好。


短パンにキャミソール、以上。


するとどうだろう? ついさっき目撃した、透き通るような白くてスラリと長い脚が露わに。
ヘソチラは勿論。強調される胸。
健全な男子高校生である上条当麻にとって、甚だしく拙い格好なのだ。理性的な意味で。
街を歩けば世の男性が、目のやり場に困る……いや、寧ろ眼福だろう。

それ程の艶めかしいライン。
素晴らしいプロポーション。

普段のヴェントからは想像も付かない。とても女性らしく、色っぽさ満点の姿。
上条は目を凝らす。寝相で緩んだ肩紐の隙間を見るに……ブラが無い。という事はつまり、



「ノーブむっ!」



衝撃の事実を最後まで言い終える前に、彼は咄嗟に自らの鼻を抑える。一瞬、鼻血が出そうになったのだ。
740 :977 [saga]:2011/04/02(土) 13:12:53.36 ID:B0wVuVbDO
何回か深呼吸を繰り返し、だいぶ落ち着いた所で身を翻した。



「と、とりあえずこの部屋から出ようっ」



声量は最小限にして、若干慌てつつ廊下へ繋がる扉のドアノブに手を伸ばす。
ドアノブに触れ、開けるその直前、




『ぎゃァァああ!!!! ちょっと待ってぇぇ!! 三角木馬が進化してないですかっっ!!!!?? いやっ、やだっ!! それは駄目でしょォォォォ!!? アアアアァァアアァァアアアア―――』




耳にする断末魔の悲鳴。
声はオッレルスのものだった。

ガタガタガタガタッ、と上条当麻の手が尋常じゃないほど震え出して、扉を開ける事が出来ない。
この部屋から出たいのに、体が言う事を聞いてくれない。
更には手汗……いや、全身から汗が噴き出るのを実感する。
741 :977 [saga]:2011/04/02(土) 13:14:13.00 ID:B0wVuVbDO

怖い恐ろしい。
廊下へ出て行ったら決して、戻って来られないと思う。
そんな気がするのだ。
何故かは判らない。



「……」



彼は振り返り、再びベッドに視線を移す。
矢張り彼女の格好は体に悪い。
理性的な意味で。
寧ろ「崩壊して下さい」と言わんばかりに仕組まれたとしか思えない。

とは言え、宿の中は暖かいが、あの肌寒い服装で睡眠とは風邪を引く。
僅かな抵抗として、腕を必死に伸ばし、毛布を指先で摘んで捲れたのを直す。
何事も無くヴェントに毛布をかけるミッション終了。不幸スキルは空気を読んだらしい。
742 :977 [saga]:2011/04/02(土) 13:15:36.79 ID:B0wVuVbDO



「……はぁ〜、つ……疲れた」



ほんの些細な作業に過ぎないが、精神力の削りが極めて甚だしい。
へなへなと膝が折れてしまい、情けなく崩れしまう。

ふと、ヴェントを一瞥。

彼女の寝顔は以前、大天使の『一掃』を喰らった後に一度だけ、見た事が有る。
その時は過去を思い出していたのか、涙を流し表情も優れなく、魘されていた。
今回で二度目になるが、前回みたいな苦しむ様子は皆無。逆に穏やかで安心しきった寝顔である。

有り様に安堵の息を漏らす。
どうやら、過去の夢で魘されていないらしい。
上条の懸念は無用のようだ。

そして彼は悩む。悩みの種はヴェントが抱える「科学」への憎しみ。
どのような手段を用いたら、科学に対する憎しみは解消されて、彼女は救われるのか。
出来る事ならば協力してあげたい。
743 :977 [saga]:2011/04/02(土) 13:17:04.12 ID:B0wVuVbDO
余計なお節介とヴェントに罵られる可能性は限り無く高いが、それでも彼女の救いとなるならば手助けをしたいし、活路を見出してやりたい。



(断るんだろうなぁ、ヴェントの事だから。寧ろ殴りかかって来るかもな)



クスッと一笑。
ベッドへ上体だけ乗り出す。
腕を交差させ、それを枕にして頭を預ける。
ココに来て、睡魔が復活を遂げた。心地好い布団に意識が揺らぎ、このまま眠りに付きたい気分。



「う……ヤベ……ねむ。……つーか。げん、か―――zzzzz」



完全に意識がシャットアウト。
無意識に、上条当麻の手はヴェントの手と繋がれていた。



……朝。この宿全体に女性の叫びが轟かせたのは、言うまでも無いだろう。
744 :977 [saga]:2011/04/02(土) 13:17:38.17 ID:B0wVuVbDO




―――部屋前の廊下。




フィアンマがそこに立っていた。
おもむろにドアノブにぶら下がる札、「S」と「M」を入れ替える。



「……ふっ、すり替えておいたのさ!!」



彼の悪戯はまだまだ続く。
745 :977 [saga]:2011/04/02(土) 13:21:53.69 ID:B0wVuVbDO
投下しゅーりょーです


フィアンマがどんどん磨きが掛かっていく…

ちょこちょこ暗部篇を書いていこかな
746 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/04/02(土) 13:24:33.66 ID:37SY8X3eo
フィアンマwwwwwwwwww
いいぞもっとやれ
747 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/04/02(土) 13:25:37.18 ID:Wo1nRtgko
ちょっとかおかしいはずなのにフィアンマならありえそうで困る
748 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/02(土) 13:44:09.06 ID:ufWKBJWIO
フィアンマ自重s…しなくていいです
749 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/04/02(土) 14:51:20.47 ID:JlmUCU/do
フィアンマ△
750 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/04/02(土) 22:45:50.02 ID:hxDzIElW0
右方さんGJ!
俺は「M」と「W」を読み違えたのかと思ってた
751 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/02(土) 23:53:03.33 ID:4xM/eTTa0
Sの部屋にヴェントが入って
Mの部屋に上条さんが入ったのか
752 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/03(日) 02:43:59.19 ID:tY3FFpXD0
Sでヴェントが寝てて
フィアンマさんがSとMの札を入れ替えて上条はSの部屋にはいったってことか
それにしてもSとMまんまじゃねーかw
753 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage ]:2011/04/03(日) 08:44:08.87 ID:keo0/r9X0
目覚めたヴェントはびっくりだろうなあ。
もし上条さんといちゃつく夢見てたりしてたら尚更
しかしSとMって・……
754 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/03(日) 13:19:20.37 ID:cvTgwcyIO
ヴェントはむぎのんと一緒で隠れM
これは譲れない絶対に譲れない
755 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2011/04/03(日) 13:42:22.75 ID:NME8iM++o
>>754
  `¨ − 、     __      _,. -‐' ¨´
      | `Tーて_,_` `ー<^ヽ
      |  !      `ヽ   ヽ ヽ
      r /      ヽ  ヽ  _Lj
 、    /´ \     \ \_j/ヽ
  ` ー   ヽイ⌒r-、ヽ ヽ__j´   `¨´
           ̄ー┴'^´
756 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(富山県) [sage]:2011/04/03(日) 16:25:44.17 ID:AK0Ljdwro

どうでもいい事かもしれんが、コテは自スレ内だけにしといた方がいいんじゃない?
757 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方) [sage saga]:2011/04/03(日) 21:24:55.70 ID:uV59PdZJ0
>>754>>755
我ら三人、生まれた年、生まれた月、生まれた日は違えども!
願わくば同年同月同日に死せん!
758 :977 [saga]:2011/04/03(日) 21:52:48.94 ID:V61pSrPDO
>>756さん
コテ?総合の事ならご安心を
あれ以上の投下はネタバレになりますので投下しないつもりです
とか言いながらあの続きを書いちゃったんですけどね


では投下しますねー
今回は残念ながらフィアンマさんはお休みです
759 :977 [saga]:2011/04/03(日) 21:56:13.39 ID:V61pSrPDO


朝日の閃光が差し込み、眩しく思ったヴェントは覚醒した。


―――目を開けると、有り得ない光景が広がっていた。


視界に映る景色が余りにも信じられ無くて、思わず三回ほど瞬きを繰り返し、頬を抓ってしまう。結構痛い。



「…………………………は?」



たっぷりと時間を置き、辛うじて発せられた言葉。
何が起きているか判らず、どういう経緯でこんな事になっているのかも判らなかった。

兎に角、意味が解らない。
それに尽きる。

よし、昨日の記憶を辿ろう。答えのヒントが隠されているかもしれない。
760 :977 [saga]:2011/04/03(日) 21:57:30.12 ID:V61pSrPDO
まず頬に違和感により目が覚めて、驚愕の事実で相手の指を折り。
当初の目的であるフィアンマ登場で、話題の路線が間違った方向へ懸け離れて行き。
シルビアに促されて湯船に浸かって疲労を癒し。
一人の時間が出来て思考に耽け、改めて芽生えた感情を思い知って。
洗面所にて用意された衣服に着替えようとした矢先、洗面所に上条当麻が入ってきて益々ややこしい状況に。
さっさと着替えて夕飯を腹に叩き込み、就寝についた。


オッケー把握。
全くヒントが見出せ無い。


大方判っていたが、昨日の出来事に現状の関係性は皆無のようだ。
結局、振り出しに返るしか手段は無い。戻りたく無いのが心からの本音だが……、



「………………」



一切変わっていない。
微動だにしていなかった。
何故か繋がれていた手も。
ドコも変化が生じない。


―――上条当麻の顔が、視界を埋め尽くしている光景。


距離も結構近い。
寝息が自分の鼻に掛かる。
僅かに顔を詰め寄れば唇が重なる程。
761 :977 [saga]:2011/04/03(日) 21:59:42.01 ID:V61pSrPDO



(あぁ、成る程ね……)



そして理解した。
これは現実では無い。夢だ、と。
夢なら辻褄が合う。万事解決だ。

おそらく彼の事を考え過ぎて好き過ぎて、夢に出て来てしまったのだろう。
何時もなら恥ずかしいが、夢と判った途端にタガが外れたように冷静になれた。
どうせ夢なんだ。思う存分に堪能しようではないか。



「ん……」



握られている手を顔まで持って行き、彼の手の甲を頬擦り。
762 :977 [saga]:2011/04/03(日) 22:00:29.79 ID:V61pSrPDO
スーッと思いっ切り匂いを嗅ぐ。



「やば……」



嗅いだ瞬間、全身が震えた。
心地好い香り。落ち着く匂い。
何時までも嗅いでいたい。
完全にハマってしまったようだ。
好きな男だからか。
理由は定かでは無い。



「……」



ふと、上条当麻の顔が目に入る。
穏やかに眠り、安定した寝息を立てる寝顔。
ヴェントが凝視するのは……唇。
763 :977 [saga]:2011/04/03(日) 22:01:57.54 ID:V61pSrPDO



「……良いか。別に夢だし」



モゾモゾと身体を動かし、彼の顔へ自ら近寄って行く。
お互いの唇が重なるまで数p。


そう、夢。

結局は夢なのだ。

だから許される。

するなら今の内。

実行するべき。

今を逃したら次は無い。


どうせ現実では叶わないのだ。
夢の中だけでも良い思いをしよう。

目を瞑り。息を整える。
高鳴る鼓動。増大する緊張。
顔が火照るのを感受。
764 :977 [saga]:2011/04/03(日) 22:03:24.63 ID:V61pSrPDO









―――そして。








―――タイミングを見計らい。







―――顔を寄せて。









―――二人の唇は重な、










「……って、んなコトあるワケねえだろおおおおおおおおおおッッ!!!!!!」






こうして幸せな一時を終え、彼女の朝が始まったのである。
765 :977 [saga]:2011/04/03(日) 22:05:14.52 ID:V61pSrPDO



―――――――――――――――



「……で? これはどういうワケ?」



ベッドに腰を落とし、腕を組み足を組み、目の前で正座する上条当麻に軽蔑の視線を含めて尋ねた。
対して彼は、引き吊った笑みを浮かべて言い分を述べる。



「いや、あの……ですね? これが何とも不思議で上条さんにもさっぱり解らないんです……」

「言い訳にもなってないわよ」

「だっ、だってだな!? 『M』の札がぶら下がった部屋に入って見れば、ヴェントがベッドで寝てたんだぞ!! 上条さんパニック状態ですよ!!?」

「何言ってんだか。この部屋の札は『S』、『M』は隣」

「……何だって?」



両手をわたわたと動かして、必死に表現していた上条がピタリと停止。
信じられないと言った様子。
766 :977 [saga]:2011/04/03(日) 22:06:20.77 ID:V61pSrPDO



「いや、ちゃんと確認したし、『M』だろ?」

「馬鹿仰い。頓珍漢は髪型だけにしときなさいよ」

「いーや!! 絶対『M』だ!! ヴェントが間違えたんだろ?」

「『S』に決まってんじゃない!! まるでアンタをベッドで待ち伏せしてたみたいな言い方は止めろ!!」

「誰もそんなこと微塵も言って無いんですけどーっ!!?」



あーだこーだと、二人の争いは止まらない。
それどころかエスカレーター式にヒートアップしていく。
数分間。床で正座の上条とベッドで足を組むヴェントという、端から見たら凄まじく奇妙な光景の中、論争が続いた。

……無駄な事に労力を使っているのは間違い無い。
767 :977 [saga]:2011/04/03(日) 22:08:08.42 ID:V61pSrPDO



「よぉ〜し。そこまで言うなら、今から確認しに行こうぜ!! もし俺が間違ってたら、言う事一つ何でも聞いてやる!!」

「……言ったわね? イイわ。乗ってアゲル」



共にある一点を一瞥。
視線を追えば―――扉。
漂う二人の気迫。
その気力は無駄な事極まりない。

上条は勢い良く立ち上がり、ドスドスとワザとらしく床を踏み鳴らして廊下に繋がる扉へ進む。
追随するようにヴェントもベッドから腰を上げ、腕を組みながら歩く様は優雅である。

ドアノブを乱暴に掴み、扉を引く!!



「ほらこの通り『M』って……」



カランコロンと。
札が揺れ、扉に何度かぶつかって、回って表裏表裏と繰り返す。
768 :977 [saga]:2011/04/03(日) 22:10:00.42 ID:V61pSrPDO



「…………」

「どう?」





―――『S』と、表記されていた。





「ちゃんと確認した? 絶対? 挙げ句の果てには私が間違ってる? ……へぇ〜ほぉ〜?」


今更言い訳の余地も無い彼に対して、更に追い打ちをかける。
彼は背筋から汗が滝の如く流れるのを実感。



「確か、“何でも言う事を聞く”って言ってたわね〜?」



ニヤニヤと意地の悪い笑みを浮かべ、随分と強調する部分を明確にして述べる。
勿論故意以外に何物でもない。

上条当麻は又しても正座の姿勢を取り、ヴェントと向き合うと、



「誠に、申し訳ありませんでした……」
769 :977 [saga]:2011/04/03(日) 22:12:31.93 ID:V61pSrPDO

「……はぁ、もうイイわよ。別にナニされたワケでもないし」



溜息を吐いて、やれやれと首を振る。
だが直ぐに人差し指を自らの唇へ運ぶと、



「でも、罰ゲームはきっちり受けてもらおうかしら」



ビクッと露骨に彼の体が震えた。
そんな上条を余所に、ヴェントは考え込む。
いざ『何でもしてくれる』と言われても、早々に願望何か無い。

有るとすれば―――



「……〜〜っ」



若干頬を赤く染め、両手で髪を掻き毟りながら豪快に頭を振った。
彼女にとっての幸いは、上条が未だ頭を下げていて今の姿を見られていない事だろう。
深呼吸を繰り返し、心を落ち着かせる。



「……とりあえず この件は保留。猶予を与えたに過ぎないから」



―――どうせ、叶わぬ願いなのだ。


―――彼と自分は住む世界が違う。


―――自分にはそれを願う資格が無い。


―――上条当麻と、共に生きたいなんて……。
770 :977 [saga]:2011/04/03(日) 22:18:46.07 ID:V61pSrPDO
しゅーりょーです


そう言えば、前回の投下で記述し忘れていたんですが
>>1はヴェントさんの格好を想像しながら書いてたんですが、鼻血が出そうになりました

だって……ねぇ?
短パンにキャミだけですよ
誘ってる以外に何があるんですか
書いた自分で言うのもアレですが
771 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/04/03(日) 22:25:33.84 ID:Gam+/YZgo
上条さん上条さん
鍵を検証すれば助かると思うんだよ

まぁそれをしたら2828が無くなるんだが
772 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/04/03(日) 22:28:29.71 ID:2lHeg8/AO
乙乙

>>758
あのアイテムwith上条一家のとこの話では?
773 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/04/03(日) 22:31:32.38 ID:Gam+/YZgo
>>772
上条さんが暗部リーダーの話じゃないの?
774 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(富山県) [sage]:2011/04/03(日) 22:53:33.33 ID:AK0Ljdwro
いや、総合スレ見たいな皆が使うような所でコテ付けてるのを見るのは何だかなー
と思ってたんだが実にチラシの裏に書いとけな意見なので気にしないで欲しい、と思いました。
775 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(富山県) [sage]:2011/04/03(日) 22:56:48.36 ID:AK0Ljdwro
忘れてた
776 :977 [saga sage]:2011/04/04(月) 11:21:42.01 ID:MJGXQp9DO
>>774さん
それでも、気分を害したのには変わりないので謝ります。どうもすいません

言い訳をさせてもらうと、書き溜めとして書いたのはいいんだけど、やっぱりいち早く皆様に見てもらいたい!
という感情が溢れ出てしまい総合に投下、となってしまったのです
誠に申し訳ないです

まあそんな>>1の言い訳でした
777 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/04(月) 11:41:31.90 ID:1W0EVhrDO
壁殴ったらタライが落ちてきて鼻血がでた
だが気にしないかまわん続けろ
778 :977 [saga]:2011/04/05(火) 09:24:44.66 ID:BZDrqByDO
書けましたので投下しますね
779 :977 [saga]:2011/04/05(火) 09:25:42.82 ID:BZDrqByDO
木材で造られた宿の外周は樹木で覆われている。
オッレルスによると結界を張っているらしい。自分達以外は宿なんて見えてないとの事。
相当腕の利くか実力が有る魔術師でない限り、絶対にバレないと自ら明言。



「……寒っ」



そんな思考は、衣服の隙間を縫い侵入した極寒に吹く風により、纏めて吹き飛んだ。
上条当麻は現在、外出―――と言っても宿の外周だが―――を散歩していた。

しかし寒い。とても寒い。
暖房が利いた宿の中に居たのだから無理もない。格好が軽装であった事が災いした。
何時も通りの制服にマフラーと手袋だけ。戦争の時も大天使の時も大して気にならなかったが、今になってだ。
……まあ上記に記述した二つの事柄は、どれも寒いとか注意が向かない程に無我夢中だったのだが。
780 :977 [saga]:2011/04/05(火) 09:26:26.63 ID:BZDrqByDO



「おっ、居た居た」



ザッザッ、と真っ白に彩られた雪道に足跡を付けながら、宿の正面玄関とは逆の裏側に回り込む。
ソコには適当に切り分けられた木材が積み上げられていた。
おそらく人為的に火を焚いて、湯船の水を沸かすためだろう。

木材の側には休憩用に用意したであろう横へ長い二人分ぐらいの椅子。
丁度真ん中に―――彼女は居た。



「よっ、ヴェント」



と化粧(ピアス込み)はせず、お馴染みの全身黄色い衣服。しかしフードは邪魔だったのか、覆っていない。
彼女は椅子に腰を掛け、顔は若干俯き加減。視線の先に有るのは両足。交互にブラブラさせていた。
781 :977 [saga]:2011/04/05(火) 09:27:34.65 ID:BZDrqByDO
声に気付いたのか、眼球だけを動かして上条を一瞥。
だが直ぐに視線を両足に戻す。際に「アンタか……」と沈んだ声色で呟く。
その様子に彼は首を傾けた。



「元気無いな、どうかしたか?」

「別に。何かあってもアンタには無用でしょ」



ぞんざいな扱いと言い回しをされるも、椅子の端に寄って自分が座れる隙間を空けてくれる。
至って無言であるが、遠回しに座れと促しているのだ。
こういう部分を見るに、自分の扱いも以前よりは良くなったのかな? と思う。

彼女の不器用な気遣いと優しさが垣間見える瞬間だったりする。
782 :977 [saga]:2011/04/05(火) 09:29:30.64 ID:BZDrqByDO

上条は素直に行動を移し、ヴェントの隣へと腰を掛けた。
つい、と改めて彼女の顔が少しだけ上条に向く。



「……てか、何でココに来たワケ?」

「随分な言い方だこと。いいだろー? 別に」



先刻己が使った言い草を逆に使われて腑に落ちないのか、彼女は上条当麻を睨む。
そんなヴェントの様子に彼はポリポリと頬を掻き、苦笑を浮かべて述べた。



「……いやまあ、実のところは居辛いと感じちゃって出て来たんだけどな」

「居辛い?」

「ほら、フィアンマは何かずっとあんな調子じゃん? 戦争の時とギャップが凄まじくて上条さんも手に負えないんですよ」

「そうね。鬱陶しいコト極まり無いわ」

「だろ? オッレルスやシルビアも……」



突如、何処からともなく男の断末魔の叫びが辺りに轟く。
宿の中から響き渡ったモノだが、外に居る二人にも軽々と届くほど、声量は大音量だった。



「―――あんなんだし」

「……成る程」



お互い同時に頷く。この宿にはマトモな人間が少ないという現実に嘆くばかりだ。
783 :977 [saga]:2011/04/05(火) 09:31:40.37 ID:BZDrqByDO



―――――――――――――――



その後もこんな感じで、二人は会話を続ける。
主に話題の主導権は上条。どちらかと言えば彼女は何故か話さないので、無条件で権利を握り締めてるに過ぎない。
戦争前に起きた、今となっては笑える話。上条は絶えず話し続けた。

そんな彼の努力が通じたのか、ヴェントも淡々とした素っ気無い返答を繰り返していく内、ポツポツと自ら上条に話題を持ち掛けるようになった。

嬉しい、と純粋に思う。
彼女の中で自分は嫌われている部類に属する人間。だからこそ、僅かでも心を開けてくれたようで。

結構な時間の間、他愛もない話をし続け、とうとうネタが尽きたのか、両者とも黙りこんで沈黙が雰囲気を支配した。


上条は空を仰ぎ、ヴェントは俯く。


その時、彼の隣からとても可愛らしいクシャミをするヴェントの声が聞こえた。
直ぐに上条を睨み付け、
784 :977 [saga]:2011/04/05(火) 09:33:15.52 ID:BZDrqByDO



「……聞いた?」

「言っておくけど、不可抗力だぞ?」



小さく舌打ち。恥ずかしかったのだろう。彼から顔を背ける。



(俺としては、フィアンマに聞かれなかっただけマシだと思うが……)



とか何とかボヤキつつ、上条は手袋とマフラーを外す。



「寒いんだろ? 使えよ」



微笑みを浮かべ、二つの防寒具をヴェントへ差し出した。
唐突な事に彼女は呆気に取られて、ポカンと暫く防寒具を凝視。
785 :977 [saga]:2011/04/05(火) 09:34:50.21 ID:BZDrqByDO
復活後も戸惑いを隠せないのか、視線が定まらず泳ぐばかり。



「ば、馬鹿がっ。私はそんな柔に出来てないわよ! 大体、アンタはどうする気?」

「上条さんの事は気にしない気にしない」



ヴェントは黙り込む。辟易された訳では無い。どうするべきか悩んでいるのだ。
暫く防寒具を見つめ、判断と決心が付いたのだろう。こんな事を言い出した。









「……そうね。どうせアレなら、大胆に出てみようかしら」
786 :977 [saga]:2011/04/05(火) 09:36:12.99 ID:BZDrqByDO

「ん? 何か言った―――っ!?」



びっくぅ!! と。全身が飛び上がるほど驚きを露わにする上条。笑顔さえ引き吊る始末。
視線を下ろし顔も下げる効果音が、ギギギギと機械の動力音が鳴り響きそうな有り様。
その様はさながらロボットのよう。

上条当麻の視線の先には片手。
まだそれは良い。自分の手だ。
数秒前と何ら変わりない。



しかし今は―――彼女の手と繋がれていた。



所謂『恋人繋ぎ』と謂われるものを。
787 :977 [saga]:2011/04/05(火) 09:37:36.44 ID:BZDrqByDO
再度、ギギギギと。
顔と視線が真正面に戻り、頬を紅く染めたヴェントへ。
彼女は上条から視線を背けていた。



「えええ、えーっと……ヴェント、さん……?」

「……なによ」

「な、なにゆえ、このような事をしていらっしゃるんでせうか?」

「産物より、人肌の方がイイって言うじゃない」

「いやっ!! そうかもしれないけどだな!?」



純情ウブ少年こと上条当麻は露骨に狼狽。
対するヴェントは何処か吹っ切れたような澄んだ様子。今の彼女に躊躇いは皆無だ。


……その後、結局夕方になるまでこのような光景が繰り広げられていたらしい。
788 :977 [saga]:2011/04/05(火) 09:38:26.92 ID:BZDrqByDO












物陰に潜み、一部だけ見ていた青年F氏はこう語る。











「流石の俺様も、あの状況にズカズカと入り込んで茶化すような野暮な人間ではない。自粛させてもらおうか」
789 :977 [saga]:2011/04/05(火) 09:40:48.99 ID:BZDrqByDO



―――――――――――――――



日は流れ、宿の生活も一週間が経つ。そして、



「……うん。傷は完治してる。明日には帰れるね」



オッレルスが上条にそう告げたのは、凡そ一時間前。
夕飯を済ませ、風呂から上がった所で、彼は明言。

心の奥から沸き上がる嬉しさと、この生活が無くなる寂しさの半々と言う遣る瀬無い感情に囚われつつも、今夜最後の宿での睡眠を取るため自室に向かう上条。



「ここで間違えてヴェントの部屋に入ったのもまた良い思い出、かな〜」



鼻歌でも言い出しそうな上機嫌で、自室の扉を開ける。






―――月夜が映し出す、ベッドに腰掛ける女性。






「ヴェント……?」



背景に満月を挿頭す。
夜光を浴びて、闇に佇む。
身体を覆う月光は、まるで衣のよう。

彼女は声に気付いたのか、窓から覗かせる満月から自分へ顔を向ける。
視線が交差して数秒後―――ヴェントは、優しく『微笑んだ』。



上条当麻。
宿生活最大の、幻想とぶつかる事になる。
790 :977 [saga]:2011/04/05(火) 09:43:39.92 ID:BZDrqByDO
投下しゅーりょーです


>>1の休みは今日と明日で終わり
7日から学校…

書けるだけ書くとします
791 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/05(火) 10:00:41.40 ID:xAFNhA+DO
あー、カミやんのちんこもげねぇかなー



ギギギ…
792 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岐阜県) [sage]:2011/04/05(火) 10:14:50.67 ID:GRNNFZVl0

上条さんは結界の中には入れないんじゃね右手的に
793 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/05(火) 10:25:30.13 ID:21HbkKkI0

ヴェントの本名が知りたいなー

もうあれか、上条風子とかでいいか
794 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/05(火) 10:53:10.93 ID:+hTGQHaIO
上条さんなんですぐ爆発せえへんの?
795 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [sage]:2011/04/05(火) 11:48:33.88 ID:VrqgUC+AO
頼むから幸せになってくれお二人さんm(_ _)m

つーか上条さんウブすぎwwwwww爆発とは言わんが膨張せよ


やっぱ学校始まるから>>1の投下ペースも落ちるんかね……
796 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府) [sage]:2011/04/05(火) 13:31:04.40 ID:6mC8B2KRo

誰か上条さんを爆発させる方法知りませんか?
797 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/05(火) 18:49:23.67 ID:TtuUbEoDO
ルチアさんの出番ですな
798 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方) [sage]:2011/04/05(火) 21:18:58.72 ID:2vlCvCs/o
結局、私の出番って訳よ
799 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/06(水) 00:28:23.00 ID:wZqXwhEIO
>>795
上条さんの股間が膨張して・・・
800 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山口県) [sage]:2011/04/06(水) 01:11:39.21 ID:9lvHG/eEo
熱膨張って知ってるか?(キリッ
801 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/06(水) 01:13:27.83 ID:DT4XKIuDO
ねぼしっ!
802 :977 [saga]:2011/04/06(水) 01:27:26.96 ID:yItfY7+DO
投下しまーす


寝落ちしないように頑張ります
803 :977 [saga]:2011/04/06(水) 01:28:57.98 ID:yItfY7+DO
何処か、別世界に放り込まれた錯覚。人々を魅了して惹き付ける神秘的光景。
呼吸すら忘れ、全ての意識がベッドに腰掛けるヴェントに奪われる。
月光を帯びる彼女は、まるで夜空を佇む姫のよう。
宿生活で初めて見た“微笑み”が、その光景をより一層濃くした。

余りにも呆然と眺めていたのか、“何時も”の様子でヴェントが嘲笑う。



「なに腑抜けた顔してんのよ。
予め言っとくけど、アンタは部屋を間違えて無いから安心しな」



ハッと現実に戻り、改めて現状を把握した上条当麻は若干たじろぐ。
言葉から推測するに、彼女はワザとこの部屋に入ったという事。

正直、嫌な予感しかしない。
不幸センサーが過剰に反応を示唆。

一週間の宿生活中でも、ヴェントに関わる時は大抵何かしらイベントが発生する。
804 :977 [saga]:2011/04/06(水) 01:31:53.37 ID:yItfY7+DO

彼女はインデックスや御坂美琴のように年下で妹的要素など含まれていない。
なので、手を繋ぐとか風呂場で鉢合わせとか夜這い行為もどきをしてしまったとか、大人の女性である彼女に平気で居られるはずが無いのだ。
……別に、インデックスや御坂美琴なら平気だとか、そういう訳では無いのであしからず。



「ま、座んなさい」



ポンポン、と自身の隣を叩いて催促。
彼女の表情はこれと言って、何か企んでそうな悪い笑みを浮かべてはいない。

その全てに上条は益々訝しむ。
怪しい。怪し過ぎるのだ。
彼女が自ら進んで自分の部屋に待ち伏せなんて、必ず何かイベントが発生するに決まっている。
805 :977 [saga]:2011/04/06(水) 01:33:49.40 ID:yItfY7+DO



「……はぁ」



だが、何時までもココで突っ立ってる訳にもいかない。
辟易では無いが仕方無く、本当に仕方無く部屋に入って扉を閉め、決心したようにズカズカと歩いてヴェントの隣に躊躇わず座る。
我ながら雄々しい動作だったと賞賛を称えたい程だ。



「で、ヴェントさんは上条さんに何の用でせうか?」

「……傷、完治したらしいわね」



彼女のこの発言で、大体察せれた。そしてヴェントに対して怪しいと怪訝した自分の気持ちや行動を戒める。

上条当麻は相変わらず驚異の回復力で一週間で完治。明日の朝は帰国予定。
しかしヴェントはまだ療養中。
言うなれば居残り。
おそらく会話出来る機会は今だけ。朝は話せるか判らない。

だから自分の部屋で待ち伏せしていたのだろう。ならば納得がいく。
806 :977 [saga]:2011/04/06(水) 01:35:11.61 ID:yItfY7+DO



「全く。私より化け物と戦ってたのに、アンタの方が先に完治だなんて馬鹿げてるわね」

「上条さんは日本でも大体が入院生活で埋め尽くされていましたからねー。回復能力が特化されてるんじゃねえの?」

「自慢にならないわよ、それ」

「返す言葉もございません……」



自分で振っといて勝手に落ち込む。
極めて払った代償が甚だしい上で会得したスキルなのだ。特に出席日数とか出席日数とか出席日数とか。

留年するのかな俺……、と若干自虐モードに浸り、ブツブツと呟く崖っぷち少年上条当麻。
807 :977 [saga]:2011/04/06(水) 01:36:32.23 ID:yItfY7+DO



「……元々はさ、アンタを捜すためにロシアを歩き回ったワケじゃないのよねー」



ポツリと。憂いを漂わせる顔色で、ヴェントは物寂しげに口を動かす。懐かしい記憶を思い出すように。
その物言いと雰囲気に、上条当麻は神妙に耳を傾ける。



「本当はフィアンマのクソ野郎を連れ戻せって言われたから。正直な話、放っときゃイイじゃないとか思ったわ。
まっ、元ローマ教皇の命令でも有るから蔑ろに出来なかったワケ」



ケラケラと笑う。
両足をブラブラさせ、上条に顔を向ける。
808 :977 [saga]:2011/04/06(水) 01:38:11.92 ID:yItfY7+DO



「アンタの噂。気持ち悪いほど広まってたわよ? 私の行くトコ行くトコ、上条当麻上条当麻って名前が挙がってたし」

「……マジで?」

「マジも大マジ。サーシャ=クロイツェフにアニェーゼ部隊の同行を加えた……あー、天草式だっけ? 後、変態癖の有る露出狂聖人とか。
全員キャラの濃い連中ばっか。あん時は流石に気が滅入ったわね」

(変態癖の有る露出狂聖人って多分……神裂、だよな)


上条当麻は苦笑を浮かべる他無い。
義理堅いが良いヤツなのは間違い無いので、何をやらかしたかは知らないが誤解である事を願い、晴れる事を祈ろう。

そんな神裂へ……合掌。
809 :977 [saga]:2011/04/06(水) 01:39:59.22 ID:yItfY7+DO



「てか、結構俺の事考えてくれてる人居たんだな。上条さんビックリ」

「まあ、その時の私からしたら嫌で嫌で堪らなかった。殺したくてしょうがないヤツの名前が毎回挙がるのよ? 拷問かっつーの」

「は、はは……」



引き吊った笑いしか出ない。本人を前にして言うセリフでは無いのだから余計。
待ち伏せの理由も今ココで殺すためじゃね? とか何とか思考する始末。
……止めよう。冗談に聞こえない。ヴェントならばやり兼ねないからだ。



「今は別に。殺したい何て微塵も無い。だからそんな怯えてくてイイわよ」

「そ、そうか。なら良かった」



ほっと胸を撫で下ろす。
兎に角、命の保証はされた。
これ以上に安心出来る事は無いだろう。



―――しかし、次のセリフと行動によって別の意味で驚愕する羽目になる。














「寧ろ今は完全に逆ね。物にしたいって思うようになったわ」
810 :977 [saga]:2011/04/06(水) 01:41:33.56 ID:yItfY7+DO

「………………へ?」



ボスン、と。

気が付けば天井と、ヴェントの顔だけしか視界に映っていなかった。
彼女は意地の悪い笑みを浮かべて、自分を見下ろす。頬は仄かに赤みを帯びて。

状況の理解に時間が掛かる。
何が起きて何をされているんだ?
天井? ヴェントの顔?




―――ヴェントに押し倒された?




全ての辻褄が一致。現状を理解。
止まった思考が覚醒していき、何か発言しようにも却って言葉が出なく、口を開閉を繰り返す有り様。
811 :977 [saga]:2011/04/06(水) 01:45:23.87 ID:yItfY7+DO



「初めてこの宿に来た日、私に向かって言ったでしょ。極端とか極論しか出さねえのかって」



クスッと鈴が鳴るかのような小さな微笑。
彼女の表情から何処か“吹っ切れた”様子が窺えた。



「つまりはそういうコト。色々考えるのは面倒だ。だったら極論叩き出して割り切ればいい。
こんなだから私には情報収集とか性に合わないんでしょうけど」



一息置いて……彼女は紡ぐ。














「どうやら私は、アンタのコトをどうしようも無いほど好きみたい」














「…………っ」
812 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方) [sage]:2011/04/06(水) 01:45:24.04 ID:OTGIMEEUo
わっふるわっふる
813 :977 [saga]:2011/04/06(水) 01:47:27.55 ID:yItfY7+DO



息を詰まらせる。
人生初めての経験で何を発すればいいか、どんな顔をしていればいいか至って判らない。
心臓が打って高鳴る鼓動がもどかしくて、邪魔くさくて仕方無かった。

そんな上条の様子を知らない彼女は、放置して饒舌に続ける。



「本当は言うつもり何て更々無かったけどね。アンタと私は住む世界が画然と違う。
好きだからって科学を赦したワケじゃないし、未だに憎んでる。潰してやりたい程に。
だから告白する資格なんて無い。持ち合わせていない。何もしないまま、自然消滅でもすればいいやとか軽く見限っていたワケ」



そんな事無い!! と上条が乗り出して彼女へ怒鳴る直前。
人差し指を唇に押し当てられて何も言えない。
“落ち着け”と示唆しているのだ。



「けど、現実は容易くなくてね。体は嘘を吐きたく無いみたい。
だから、六日ぐらい前に宿の裏側で二人で居た時、手袋よりアンタの手を選んだってコト。
で、明日になれば離れると判った瞬間、タガが外れた……って感じね。判ったか?」
814 :977 [saga]:2011/04/06(水) 01:49:21.05 ID:yItfY7+DO



問われた上条は何も発せない。
ただ聞くだけに留まる。
何か言うべきなのに、口が動いてくれない。心の中にもやもやが果てしなく広がるばかり。

よもやヴェントから告白の言葉を貰うと誰が予想しただろう。
あれほど科学に憎悪を抱いている彼女が。科学側に属する自分に好意を抱くなんて。
それならインデックスが告白して来る方がまだ現実味が存在する。



スッと上条の頬に片手を添えて、ヴェントが顔だけを緩慢とした動作で下ろしてきた。

―――……瞳を閉じて。

彼は一瞬で感付く。その動作のなす意味を。彼女が止まった時、結果どうなるかを。
ヴェントは本気だ。嘘偽り無い覚悟で上条当麻に挑んでいる。

このままでは駄目だと感じたのだろう。上条がココに来て漸くマトモに体が機能して、今更ながらも抵抗を試みる……その寸前、



「ヴェ……―――んっ!?」








唇と唇が―――重なった。
815 :977 [saga]:2011/04/06(水) 01:51:22.49 ID:yItfY7+DO
漫画でも頻繁に見掛けるファーストキスはミント味とか、在り来たりな場面。
だが今の彼に、ファーストキスの味を確認する余地など与えられない。

ただ、彼女から伝わる唇の感触。
ふわりと仄かに香る女性の匂い。
心臓がこれまで以上の速度で鼓動を打つ。




当然の如く緊張はヴェントも変わらない。
それでも彼女は上条当麻の続く言葉を吐き出させず、吐息を停める。


一瞬だけ。
そう、ほんの一瞬で構わない。
唇に、自分の熱を送る。


心を支配するように。
魂を舐るように。
彼を慈しむように。


一瞬を永劫に永劫を一瞬へと変える魔法(幻想)を。
816 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/06(水) 01:51:49.09 ID:mORBFhzDO
うっひょおおおおおおおお
817 :977 [saga]:2011/04/06(水) 01:53:41.39 ID:yItfY7+DO

唇の先に感触を残したまま……二人の顔が離れていく。




「返事は……聞かないでアゲル」




上条から顔を逸らした。
矢張り彼女も恥ずかしいのだろう。
それでも、自身に宿る勇気を振り絞って視線を合わす。




「俺、は……」

「もし、私の傷が完治したら……必ず、会いに行くから。その時に、返事を聞かせて……?」

「……判った。約束する。絶対だ」




返答を聞き終えると彼女は、上条当麻が見て来た中でも、群を抜く満面の笑みを浮かべ、













「―――ありがとうっ」












―――宿生活最高の笑顔を彼に放った。
818 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県) [sage]:2011/04/06(水) 01:56:42.84 ID:1zwyVlxf0
えんだあああああああああああああああ                                     スマン誤爆
819 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/04/06(水) 01:57:47.15 ID:AAezeWjlo
ナイフ持って来たぞ
820 :977 [saga]:2011/04/06(水) 02:04:59.48 ID:yItfY7+DO
しゅーりょーです


当初ではディープまで行っちゃう予定でしたが、二人にはまだ進展途中だし、お預けという形で済ませていただきました
ヴェントが素直になってリードするみたいな感じで



そして、残念ですが
次回の投下で最後です

最後だからって長くないです
むしろ短いです

あ、でもヴェントさん×上条さんの話が終わるわけではないです
何時か必ず続きを書きに戻ってきますんで
821 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/06(水) 02:09:14.51 ID:DT4XKIuDO
冗談きついぜ
822 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県) :2011/04/06(水) 02:10:17.65 ID:1zwyVlxf0
期待してますからねー                                                                 私は葡萄酒でも飲みながら待ちますかねー乙でした
823 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/06(水) 02:51:55.58 ID:jDwse24IO
>>820が見えない
824 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府) [sage]:2011/04/06(水) 03:27:17.98 ID:X6qAK/Cyo

わたしまつわ
825 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2011/04/06(水) 03:40:28.68 ID:9oHkY3Kdo
ちょっと待ってくれ
科学側は全然解決してなくないか
826 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) [sage]:2011/04/06(水) 06:15:59.54 ID:2KypA4pAO
うがが。 次で最後。 続き待ってるよ。
827 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/04/06(水) 07:15:32.32 ID:jW0JlgVAO
必ず続くなら問題ないな
一旦閉幕、再び幕が上がるのを待ってるぜb
828 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2011/04/06(水) 14:08:04.33 ID:etKwyQWi0
うわあああああああ
そんなあああ
829 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/06(水) 14:17:49.66 ID:BHxpk611o
当初「いくら上条さんが一級フラグ建築士でもヴェントはねーよ・・・」って思ってたけど・・・
これがヴェントの破壊力か・・・すさまじいな・・・
830 :977 [saga]:2011/04/06(水) 20:18:46.72 ID:yItfY7+DO
投下します

最後となると矢張り寂しいですね…

短いとか言いながら、結構長いです
831 :977 [saga]:2011/04/06(水) 20:20:51.73 ID:yItfY7+DO


更に数日が経った。
激戦を潜り抜けて生き残り、それぞれの思いを胸に日々を過ごす少年少女。

彼らを少し、覗いてみよう。





―――――――――――――――





―――とある病院の一室。




「そろそろ本当に何があったか話して欲しいなー? ってミサカはミサカは瞳をうるうるさせながら懇願してみたり」

「別に。ガキが心配するよォな事じゃねェよ」

「もー!! ずっとそればっかりーっ!! ってミサカはミサカは露骨に憤慨を表現してみたりぃ!!」

「……つーかよォ、番外個体から記憶引き出せンだろ? 何でわざわざ俺に吐かさせる訳?」

「言ったじゃん。ミサカは第三製造計画だから頭の回路が違う。悪意の思考や感情を抽出可能でも逆は全く。
まあ、回路だけじゃなく成長促進剤も別物だからこんな胸がデカくなったり身長が伸びたんだけど」

「またおっぱいの話っ!? ってミサカはミサカは勝機を導き出せない話題にたじろいでみたり」

「うるせェ。ってか寝かせろ」
832 :977 [saga]:2011/04/06(水) 20:22:41.32 ID:yItfY7+DO



病院のベッドはどれも一人用である。にも拘わらず三人が一つのベッドに乗っかかるというのもまた奇妙な光景。
アホ毛が目立つ小さい少女こと打ち止め何かは、本来病人扱いである一方通行のマウントポジションを取る程。

彼の幸運は病室が個室だった事。
何故なら五月蠅いし喧しい。
迷惑極まりないだろう。
そりゃこの部屋に“七人”も集まれば、自然にそうなるのは仕方無い事かもしれないが。


―――“七人”と聞いて怪訝を露わにする人が続出だと思うので、補足説明しておく。


一方通行。打ち止め。番外個体。
これでは数が全く足りない。
つまり、この部屋には彼ら以外に四人存在。



「……胸の話で勝てる気がしません。寧ろ超虚しくなるだけだと思います」

「じゃあ何で自らその話題を振るのよ」

「振ってません!! 超独り言ですから拾わないで下さい!!」

「こんな至近距離で独り言ってのもどうかと思うけどな。拾って下さいと公言してるようなもんだろ?」

「浜面のくせに超生意気です。これは女の戦いなので入って来ないで下さい」

「勝てる気がしないなら戦いも何も無いんじゃない?」

「……流石。病んだ最年長は言う事が違います。もはや様々な所に貫禄が垣間見えますね」

「ブチ殺すぞ?」

「……ぐーすかぴー……」
833 :977 [saga]:2011/04/06(水) 20:23:40.93 ID:yItfY7+DO



窓際のソファーに座るのは胸の薄さに悩む絹旗最愛に、両目を開けたまま熟睡する滝壺理后。
絹旗の隣で円柱の椅子に腰を掛けて足を組むのは麦野沈利。
更にその隣で立ったまま壁に背中を預けるのは世紀末帝王浜面仕上。

彼の唯一救いである『ザ・天使』こと滝壺はお休みタイムなため、相変わらず非道い扱いに嘆くばかり。
もう少し、もぉ〜少し良くならないかと唸る。悩みの種は尽きないのだ。
悩みの根源、我が儘お姫様の二人は冷戦の如く睨み合い。
胸の話なのに何故そこまで発展に及ぶのか判らない。女の子という者は難しい人種だ。



(……まあ、無いよりは有った方が良いかもしれんが)



思わず、記憶を辿ってファミレスの時に目視した我が恋人、滝壺の胸。
ジュースを被ったお陰でシャツ越しに露呈された二つのカタマリ。
834 :977 [saga]:2011/04/06(水) 20:26:01.84 ID:yItfY7+DO



「うっわ、浜面鼻の下伸びてます。超キモいです」

「どうせ滝壺のバニー姿でも想像したんでしょ」



ともすれば何時の間にか仲直りしてる二人。……矢張り浜面に女の子という者を理解するには、中々時間が必要なようだ。



「どォでもいいけど。何でオマエらは如何にも当然のよォに居座ってンだ?」



一方通行は顔だけを浜面に向けて、至極億劫そうに尋ねる。
対する彼は鼻の下を伸ばした状態から、打って変わって真剣なものへ。
浜面だけでは無い。麦野も絹旗も同様に。しかし滝壺は眠ったまま。
835 :977 [saga]:2011/04/06(水) 20:28:22.39 ID:yItfY7+DO
それは『仕事』の時に見せる顔。
自然と一方通行の目も細くなる。番外個体も打ち止めを揶揄するのを止め、浜面達を目視。
今から述べるのは、決して笑える愉快な話題では無い事を悟らせた。



「一方通行、力を貸して欲しい」

「力?」



彼の言葉は最後まで続かない。
流れを引き裂くように、廊下へ繋がる病室の出入り口が―――激しい音を立てて開かれたのだから。

音に伴って全員の視線が扉へ集中。ソコには一人の少女が息を切らして堂々と立ち尽くす。
少女を見た打ち止めは狼狽を露わにして、声を小さくして番外個体に救いを求める。
求められた彼女は肩を竦めて首を振って見せた。



「オリジナル……」



一方通行が微かに呟く。
オリジナル―――御坂美琴。
836 :977 [saga]:2011/04/06(水) 20:30:21.81 ID:yItfY7+DO



「一方……通行……」



彼女の目は真っ赤に腫れていた。
涙を流して起きる現象。御坂美琴は化粧で誤魔化す事も無く、彼の前に姿を現す。
彼女の視線は一方通行に一点。周りに居る麦野や打ち止めに見向きもしない。

張り詰めた緊張の中、一方通行が打ち止めを退かせて身体を起こし、ベッドから降りる。
杖を用いて彼女の下へ近付くと、












「……悪かった」











頭を、下げた。
837 :977 [saga]:2011/04/06(水) 20:32:13.22 ID:yItfY7+DO



「―――ッッ!!!!」



御坂美琴は彼の胸ぐらを乱暴に掴んで、壁に叩き付ける。
彼女の形相は誰が見ても判断が付く程、激昂を露わに。
院内故、放電は抑えているのだろう。しかし微弱ながらに髪の毛の先端からバチバチと紫電を迸らせた。



「アンタが……アンタが謝って、私はどうすりゃいいのよ……っ!!」



ただでさえ真っ赤に腫れているのに、目元からは涙が零れて行く。
憤りの剣幕を剥き出しに、だがその反面、心の縁に存在する儚く弱い己が涙となって溢れ出す。
言い表し切れない『あの時』の激情が今になって、一方通行へ向けられた。
838 :977 [saga]:2011/04/06(水) 20:34:55.69 ID:yItfY7+DO



「アンタが謝った所で!! 居なくなったあの子達は還って来ない!! 未来永劫永遠永久一生に!!
それは、あの子達を殺した私やアンタに死ぬまで纏わり付く“罪”と“咎”よっ!!」



一方通行だけではない。
己自身も妹達を殺している。
自分だけが救われようなんて、悲劇のヒロインを気取った、逃げてばかりで甘ったれた精神の子供じゃない。

一方通行や御坂美琴は向き合わなければならないのだ。
向き合った上で、神に懺悔をするように『想い』を噛み締めていかなければならない。
過去の罪や咎を背負い、残りの妹達を救ってやらねばならない。



「なら!! 突き通しなさいよ!! 殺した事実をッ!! 私に謝ってなんかいないで!! アンタが死ぬ最後の時まで!!!!」



慟哭の叫び。
過去の事実を胸を張れとは言わない。

しかし、自分に謝るぐらいなら妹達を殺したと明言して突き通せ。
その上で妹達と向き合え。打ち止めを護った時みたいに護り抜け。

なのに。なのになのになのに!!



「アンタが謝ったら……私の立つ瀬が無くなるじゃない……!!」



意味が、無くなってしまう。
決意した意志が。決心した意思が。







「……悪い」








―――それでも、一方通行は繰り返す。
839 :977 [saga]:2011/04/06(水) 20:41:49.22 ID:yItfY7+DO



「……ッ!!!!」



今度こそ。彼女はもう片方の手で拳を作り、本気で一方通行の頬を殴った。
結構強く鈍い音が響き、彼は衝撃に耐え切れず床へみっともなく転倒。
倒れた所に、打ち止めが一方通行の下へ駆け寄った。

御坂美琴は、そんな小さな自分が彼の側に寄り添う光景を目の当たりにして落ち着いたのか、緩慢とした動作で近付く。



「私は、赦す気は無い。根底に残る私怨は変わらないから」



決して、消えない。
この恨みはきっと、死んでも失せる事は無いだろう。
墓場まで持って行ってやるつもりだから。



「でも」





―――しかし、





「アンタ以上に、赦されない人間が居る」





―――最も、潰さなければならない敵が存在する。
840 :977 [saga]:2011/04/06(水) 20:43:09.47 ID:yItfY7+DO



「学園都市統括理事長。こいつを落とす。だからアンタも手伝いなさい」



アレイスター=クロウリー。
諸悪の根源。全ての元凶。

御坂美琴は手を差し伸べる。
協力しろ、と。
これ以上、悲しみを増やさないために。



「俺達もだ」



横から、浜面も同様に手を差し伸べた。
彼の背後には絹旗や麦野、騒ぎで起きた滝壺が立っていた。



「いい加減、上層部には腹を立ててたんだ。折角取り戻した平和を失いたくない」



彼らの敵は同じで同じ位置。
協力し合うのに理由は要らない。

ただ―――自分の護るべき『者』のために背中を預ける。
それさえ有れば十分なのだから。





「ハッ、上等だ」





一方通行は不敵な笑みを浮かべ―――御坂美琴の手と、浜面仕上の手を握った。
841 :977 [saga]:2011/04/06(水) 20:44:45.75 ID:yItfY7+DO




―――――――――――――――


ある診察室では、



「いやあ、今回は骨が折れたで先生」

「お陰で僕の患者の命は救われた。感謝してるよ?」

「当然やん。ボクも返し切れない恩有るし、構わへんよ」

「……今回の襲撃者。詳細は把握しているのかい?」

「勿論。抜かりは無いでっ!!」

「そうか。じゃあ、一つだけ言っておくよ?」

「んー? なにか?」

「君も僕の患者だ。君が今から実行しようとする考えは容易に辿り着く。だから一つだけ。
出来るだけ無茶はしないでくれ。どんな傷を受けようと治してみせるが、死んでから送り付けられても治す者も治せないからね?」

「……適わんな。了解や。任せとき」



青髪ピアスは告げ終えると、椅子から腰を持ち上げて、片手をヒラヒラさせながら立ち去った。
842 :977 [saga]:2011/04/06(水) 20:46:01.98 ID:yItfY7+DO
扉を完全に閉めると、左の通路から近寄って来た人間が、青髪ピアスに声を掛ける。



「もういいかにゃー?」



金髪。サングラス。
学ランの下にアロハシャツ。
モテるために鍛えたと言う筋肉。
彼の名は、土御門元春。
青髪ピアスの親友の一人。



「あぁええよ。何ならこの勢いで萌えバナを咲かせても構わへんで〜?」

「おっ、それもいいにゃー。だが残念、萌えバナはまた今度ぜよ」



彼は自身の背後を親指で示唆。
青髪ピアスが彼越しで覗くと、通路の奥には見知らぬ人物が二人。

土御門から事前に報告を受けていた、自分達が計画を謀り、行動を共にするメンバー達だ。



「あらら、しゃあない。お預けやな」

「そういう事。じゃ、行くとするぜい」



彼らはメンバーに向かって歩み出す。
青髪ピアスは不敵な笑みを浮かべて、心で思う。



(……アレイスター、首洗って待っときやぁ)
843 :977 [saga]:2011/04/06(水) 20:47:29.07 ID:yItfY7+DO




―――――――――――――――




―――そして、



とある寮の一室。
長いこと部屋を空けていたからか、ゴミや埃が溜まっていた。
居候と足を踏み入れた途端、一瞬だけウッ!! と息を詰まらせる程。
という訳で、帰宅早々に部屋の掃除開始なのだ。



「あーっ!? スフィンクス、水拭きした上からゴロゴロ転がって行っちゃダメなんだよーっ!!」



雑巾を片手に、高速で廊下を転がって行くスフィンクスを追い掛けるインデックス。
つい先日、日本へ帰還の前にイギリスに寄って、神裂率いる天草式と彼女と再会を果たした。
予想外だったのは、ステイルから拳の一つも貰わなかった事だろう。
『当初は一発殴ってやるつもりだったんだけどね。……彼女を笑顔にしたんだ。チャラにしてやる』
……と、彼は述べた。
844 :977 [saga]:2011/04/06(水) 20:48:24.40 ID:yItfY7+DO



「お前が走り回ったら、もっと意味無いと思うんだが……」



掃除機を終えた家主の上条当麻は、一息を吐く。
大体物品は片付いたし、埃も見当たらなくなって来ている。

この調子だと、夕飯には間に合う予定。後はご飯の買い物と、溜まりに溜まった洗濯物。
どちらから処理すべきか、悩み所。



「とうまとうまー!! 買い物に行ってきてあげるんだよっ」



改めて水拭きと乾拭きを終えたインデックスが、彼の下へ駆け寄って来た。
上条当麻が一番驚いたのは、彼女が家事に積極的になった事。
飛行機の際には何処から取り出したのか、メモとペンを手に持ち、自分に家事のやり方を自ら進んで聞いてきたのだ。
845 :977 [saga]:2011/04/06(水) 20:49:52.47 ID:yItfY7+DO

彼女も彼女なりに考えがあるのだろう。だがやっぱり機械を使う家事は苦手らしい。
上条を監督に付かないと、破壊し兼ねないとインデックス自身が述べていた。

適当に紙とペンを引っ張り出し、食材と個数を書いていく。
彼女には『完全記憶能力』を有しているため、言葉だけで充分だと思われがちだが、インデックスは余り“漢字”を見ていない。
つまりスーパーに行って、野菜とかが漢字で書かれていた場合は終わりだ。
それに、初めてのお使い的な気分で行ってもらえば良し。



「ん、コレに書かれてる物な」

「うん、わかったんだよ!」

「因みに一応言っとくが、買い食いしたら夕飯は無いと思え。俺もお前も」

「う……わ、わかってるかも!!」



スフィンクスを抱いて、玄関へパタパタと駆けて行く。
846 :977 [saga]:2011/04/06(水) 20:52:42.41 ID:yItfY7+DO
見極めた後、彼は溜息を吐いた。

平和な日常。
帰ってきた日常。
何時も通りの日常。




でも―――『彼女』は、ソコに居ない。




一週間という短い期間だったが、共に過ごした『彼女』はココに居ない。
攻撃の矛先を向けられても、指を折られても、最後には満面の笑みを見せた『彼女』は……居ない。


この切ない感情が恋と聞かれれば、そうではない。
だが、遣る瀬無い気持ちが心の底から湧き上がっているのは間違い無かった。
彼女との一週間は、ハプニングが多発しているも、苦では無い。
寧ろ楽しめたと思う。

欠けてしまったパズルの一片のように、物足り無さを感じる。
別にインデックスとの平和な日々が辛い訳じゃ無い。色々あるが、逆に楽しいぐらいだ。



ただ……ただ、
847 :977 [saga]:2011/04/06(水) 20:53:58.21 ID:yItfY7+DO



「……」



止めよう。考えても無駄だ。
思考の悪循環を起こすだけだ。

邪念を振り払うように頭を横に振る。
とりあえず洗濯物。考えたいならやる事をこなしてからにしよう。



「あ、御坂に謝らなきゃならねーんだよな」



予め入れておいたカゴを持ち上げて、ベランダに向かう……が。
ゴトッと。カゴは上条当麻の手から滑り落ちた。
848 :977 [saga]:2011/04/06(水) 20:56:46.35 ID:yItfY7+DO
床へ落ちた時に足の指に直撃して、衝撃でカゴの角が砕けてしまうなど、不幸スキルを発動させるが……彼は微動だにしない。
まるで上条当麻という人間だけ時が停まったかのように凍結。
彼の視線の先には何の変哲も無いベランダ。そう、ベランダは。

凍結から溶けた上条は、クスッと一笑。おもむろにポケットへ手を突っ込み、携帯を取り出す。
二、三回入力して耳に添えた。



「……あ、インデックスか? まだ何も買ってねえよな? なら良かった。今すぐ帰って来い。
喜べ、今日の夕飯は外食だ。貧乏生活まっしぐらな俺も、奮発してやるぞ」



後数回返答を繰り返し、通話を切る。
携帯を閉じてポケットへ直すと、ベランダへ彼は歩み出す。



「毎回不幸だ不幸だ叫んでるけど、今この瞬間ばっかりは、上条さんの歴史に刻むほどに幸せを感じてますよ。そうだと思わないか?」



カラカラカラ、とスライド。
同時に上条は問い掛ける。
ソコに立つ“人物”へ。
849 :977 [saga]:2011/04/06(水) 20:58:38.03 ID:yItfY7+DO



「知ったこっちゃ無いわよ。アンタが感じて来た今までの幸せがどんな程度だったが判らないけど……まあ、そうね。
今不幸とかほざきやがったら、五臓六腑は間違い無くグッチャグチャ決定だったわ」



何時も通りの全身黄色い衣服。
化粧とピアスはしていないが、フードは被っていた。
魔術要素を含むからだろうか?



「相変わらず手厳しいことで」

「そう? 随分アンタに対してだけは丸くなったと思うわよ。抱き締めたいほどに」



どうやってベランダへ乗り込んだとか、どうやって学園都市に潜入したとか、衛星から見付からずに来れたとか。
彼女に聞きたい事は様々有る。

でも、それ以上に伝えなければならない言葉が存在する。まず言おう。



「とりあえず、完治おめでとう。ヴェント」

「……それだけ? 私が一番聞きたいのはもっと別なんだけど」



彼女促す。上条は緊張の所為にならぬよう、深呼吸を落ち着かせ、
850 :977 [saga]:2011/04/06(水) 21:00:06.27 ID:yItfY7+DO



「そうだな。正直、俺は経験した事が無いから恋ってのがどんな物か判らないし、どの感情に達したら恋なのかも判らない……けど」



微笑みをヴェントへ向ける。



「ヴェントが居なかった時は寂しいと思ったし、今会えて凄い安心感を覚えた。
もしかしたらヴェントが求めてる感情とは違って、まだ発展途上なのかもしれない。……それでもいいか?」

「……十分よっ」



彼女は笑顔を浮かべると上条へ飛び出し、両腕を彼の首へ回して、抱き付いたのだ。



「少なくとも私に軌道が乗ってる。しかもゴール地点まで。なら後は、私が後押ししてアゲル」

「ははっ、ありがたいな。まあ、これから宜しくな?」














「勿論に決まってんじゃない。当麻♪」














END
851 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2011/04/06(水) 21:02:05.24 ID:EBikFRVLo
超お疲れ!!
面白かった!

エピローグとかないの?
852 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方) [sage]:2011/04/06(水) 21:06:29.31 ID:b5qFN6/v0
学園都市に舞台が移るのか…先が気になるがなんにせよ乙でした

ヴェントが学園都市入りで上条さんと同棲生活開始か…
当然番外的な同棲生活の様子はあるんだろうな!?
853 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/06(水) 21:06:29.18 ID:jM/u+zTDO
乙です!

続きが非常に待ち遠しいぜ!
854 :977 [saga]:2011/04/06(水) 21:08:58.11 ID:yItfY7+DO







――――








―――――――






―――――――――――――――
855 :977 [saga]:2011/04/06(水) 21:11:38.48 ID:yItfY7+DO








―――――――――――――――










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856 :977 [saga]:2011/04/06(水) 21:17:25.32 ID:yItfY7+DO




















―――窓の無いビル。














_
857 :977 [saga]:2011/04/06(水) 21:19:06.49 ID:yItfY7+DO
空中に浮かぶ画面には、手を取り合う一方通行達。
更にはもう一つの画面には、上条当麻の姿。

二つの画面を注視するのは、生命維持装置のビーカーに逆さまで浮かぶ、男にも女にも子供にも老人にも聖人にも囚人にも見える『人間』。

アレイスター=クロウリー。


更にはもう一つの存在。
金髪の光り輝く身体。ゆったりとした白い装束を身に纏う者。

エイワス。



「どうやら幻想殺しが帰還したようじゃないかアレイスター。
代わりに幻想殺しとは対極に位置する第0位は消滅したようだが?」



アレイスターは無表情でエイワスの言葉を聞くだけに留まる。
考えているのか、悩んでいるのか、困っているのか、定かでは無い。



「いやはや、彼には中々興味をそそられた。幻想殺しのクローンでありながら ghm 力 enw は逆の物。存分に楽しめたよ」

「……あなたにしては珍しい。何やら勘違いをなさってるようだ」



口を閉ざしていたアレイスターが、薄く笑う。何を言ってるんだ? と。
今度はエイワスが黙り込む番だった。
858 :977 [saga]:2011/04/06(水) 21:22:57.57 ID:yItfY7+DO



「幻想殺しも手中に納まり、遠回りだったプランの軌道修正が完了で、終盤に差し掛かった。
寧ろ漸く下準備を整えた、といった所だろう」

「……ほう。第0位の消滅もプラン通りなのかね?」

「何を言っているんだエイワス。彼なら……」



シュン、と。
出入り口が皆無な空間に新たな影。
『空間移動』を引き起こして、侵入する者。

ツンツン頭。
光を宿さない虚ろな瞳。
黒いズボンにスニーカー。
シャツの上に学ランを羽織り。
身に包む何の変哲も無い制服。
しかし、右肩から先は無くなっていた。












―――第0位。













「彼は二回『神の力』を発動させた。一回と規定有るにも拘わらず。何故? 答えは容易い。
それが―――発動条件に起因しているからさ」



目を配らせ、視線だけで第0位を促す。
得心した彼は、一度頷き―――右腕を生やした。



「まだ期間にしては迅速だが、幻想殺しが戻ったのなら丁度良い。プランが進行次第、余興の幕を開けようではないか」



アレイスターは画面に映る一方通行を視界に入れ、次に上条当麻を。
859 :977 [saga]:2011/04/06(水) 21:24:16.37 ID:yItfY7+DO













「さて、開始と行こうか」















――――To_be_continued...?
860 :977 [saga]:2011/04/06(水) 21:32:19.30 ID:yItfY7+DO
以上しゅーりょーです!!


約二ヶ月間、どうもありがとうございました!
冴えない人気もないひっそりとしたスレでしたが、見てくれた皆様
本当にありがとうございます


この続きは必ず書きます
では新作までさよならです
861 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) :2011/04/06(水) 21:36:16.61 ID:2WPKr50m0
超乙!!!
862 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2011/04/06(水) 21:37:13.11 ID:EBikFRVLo
続編楽しみに待ってる!
863 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/06(水) 22:02:55.85 ID:0QcuavI00
――――To_be_continued...?
――――Yes!To_be_continued...!

新作を楽しみにしてます
幻想弁当乙!
864 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/04/06(水) 23:09:36.14 ID:O+5B7D0y0
乙!

最高だぜい
865 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [saga]:2011/04/06(水) 23:50:06.68 ID:Q4FeEQ3f0
すっげえ乙!!
俺が見てきた中だが、トップ5に入るほど良かった!!
866 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/04/07(木) 00:10:21.64 ID:XhkiprQKo
乙乙
867 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/04/07(木) 00:56:15.45 ID:Q718urybo
868 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/07(木) 03:31:48.42 ID:etnfMbyo0
乙!
869 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2011/04/07(木) 03:38:44.92 ID:f3R5zVj70
あとは>>1があまあまな同棲生活を描いてくれればハッピーエンドだな

とりあえず乙!
870 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/07(木) 09:17:39.15 ID:IjzZL8oXo
ヴェントとのいちゃいちゃものなのになんで最後なんでシリアスになってんだ?って思ったけど元々凄いシリアスなSSだった・・・
それを忘れるほどにヴェントの破壊力が凄かった・・・乙
871 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/07(木) 09:58:31.19 ID:mtopoh2A0
バ…ヴェントー!俺だー!!結婚してくれー!!!
872 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2011/04/07(木) 20:16:36.46 ID:g5bDhR2S0

関係ないけどヴェントの本名が知りたい
873 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方) [sage]:2011/04/07(木) 20:29:00.43 ID:G96KHuX7o
ランチ
874 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/07(木) 23:16:37.63 ID:Ew4oRDHw0
乙。新作待ってます
875 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/04/08(金) 08:28:25.66 ID:uqjNnQav0
>>1地震大丈夫だったか,てか東北にいるのか?@山形
876 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/09(土) 01:06:44.69 ID:WT3mfG0fo
877 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/11(月) 21:53:26.97 ID:0fKmL73P0
乙です!
何故にこのヴェントはこんなに可愛いのだろうか・・・。
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