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クリームヒルト&西行寺幽々子「ちょっと本気出す」 霊夢「やめなさい」 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/15(土) 16:12:39.75 ID:nhHZWkYP0
いつの日から始まっていたのだろう? その異変はいつの間にか始まっていた。

         狂ったように次々と事件を起こす里の人々

        狂った人々の首筋に付けられた謎の印 (しるし)

       狂わされた人々が語る、謎の存在 『魔女』 とは?

疑いをかけられた『魔法使い』たちは幻想郷を駆け回る。
自身にかけられた疑惑を晴らすため、『魔女』の正体を暴く為、

 「いいぜ、魔女が異変を起こすって言うなら、私はその魔女をぶっ飛ばす!」

                                 ― 普通の魔法使い:霧雨 魔理沙 ―

 「半人半獣に天狗の新聞屋ときて今度は貴女……、流石の私もそろそろ我慢の限界よ」

                              ― 七色の人形遣い:アリス・マーガトロイド ―

 「そんな装備で大丈夫ですか?」
 「大丈夫よ、問題ない」

                             ― 動かない大図書館:パチュリー・ノーリッジ ―

 「一体いつから妖怪相手に武力行使しないと錯覚していたの?」

                                   ― ガンガンいく僧侶:聖 白蓮 ―

『魔法使い』と『魔女』が出会う時、幻想郷の歴史は新たな一ページを刻む!
果たして『魔女』の正体は? 幻想郷を舞台にした大捕物、『魔女異変』ここに開幕!


                    〜東方円鹿目〜

                  201X年XX月 捜査開始



と、言う内容になるかどうかは不明です。
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渾沌ゴア「それでもボクはアイツを殺す」 @ 2024/04/25(木) 22:46:29.10 ID:7GVnel7qo
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1714052788/

二次小説の面白そうなクロス設定 @ 2024/04/25(木) 21:47:22.48 ID:xRQGcEnv0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1714049241/

佐久間まゆ「犬系彼女を目指しますよぉ」 @ 2024/04/24(水) 22:44:08.58 ID:gulbWFtS0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713966248/

全レスする(´;ω;`)part56 ばばあ化気味 @ 2024/04/24(水) 20:10:08.44 ID:eOA82Cc3o
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1713957007/

君が望む永遠〜Latest Edition〜 @ 2024/04/24(水) 00:17:25.03 ID:IOyaeVgN0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713885444/

笑えるな 君のせいだ @ 2024/04/23(火) 19:59:42.67 ID:pUs63Qd+0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713869982/

【GANTZ】俺「安価で星人達と戦う」part10 @ 2024/04/23(火) 17:32:44.44 ID:ScfdjHEC0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713861164/

トーチャーさん「超A級スナイパーが魔王様を狙ってる?」〈ゴルゴ13inひめごう〉 @ 2024/04/23(火) 00:13:09.65 ID:NAWvVgn00
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713798788/

2 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/15(土) 16:21:28.77 ID:nhHZWkYP0
☢Caution!!☢☢Caution!!☢ ☢Caution!!☢

東方×まどマギ(基本魔女のみ例外あるかも)
幻想入りモノ
キャラ崩壊、オリキャラ化あり。
シリアスだったり、ネタに走ったりします。

以上をご了承下さい。
☢Caution!!☢☢Caution!!☢ ☢Caution!!☢

お願い
このスレでは発想力の低い作者の為に、魔女が使うオリジナルスペカを募集します。
使用キャラとスペカ名(出来れば弾幕の特徴)を投稿してもらうと作者が喜びます。
3 :序章:魔女たちの幻想入り [saga]:2011/10/15(土) 16:26:23.08 ID:nhHZWkYP0

『魔法使い』
妖怪や神と言った魑魅魍魎が闊歩する幻想郷に於いて、その言葉ほど広い意味と類義語を有する言葉はない。
人間の職業としてだったり、人の枠を外れ悠久の時を生きる種族の名だったり……

類義語、と言うか表記揺れも多く、例えば 『魔女』 という言葉は“○○の魔女”などと、しばしば有力な魔法使いの二つ名として使われる。

そんな、魔法使いの別称の一つ、と言う立場に甘んじていた 『魔女』 だが、ある日を境に一種族を指す言葉に昇格することとなった。

これは外の世界を追われ、幻想郷にやって来た『魔女』と、暇を持て余した亡霊が引き起こした、
賑やかで迷惑極まりない引っ越し挨拶、通称、『魔女異変』の記録である。


                                                                                                              稗田阿求 記 『幻想郷縁起』より
4 :序章:魔女たちの幻想入り [saga]:2011/10/15(土) 16:30:32.37 ID:nhHZWkYP0
――――――――――――――――――――――――――――――――――――

深い深い闇、決して晴れることも、一筋の光が射すこともない、真の闇。
そんな場所に私の意識は落ちていった。

全てを救い、全てを滅ぼす、そんな存在になった私に突然訪れたその瞬間。
それは別世界の私だった者が捧げた祈りにより訪れた救済と言う名の死。

全てを呪わずに済まなくなった事を安堵しつつ、また何処かでこのまま消えるのは嫌だな、とも思う。
でも、こうなった以上もはや何も出来ない。
あとはこのまま消え去るだけ。

だった筈なのだが……
沈んでいく一方だった感覚が急に浮遊感を覚えたかと思うと、あり得ないと思っていた光が射し込みはじめ、やがて……


クリームヒルト「…………あれ?」

気が付いてまず見えたのは、綺麗な木目だった。
木目調とか、そう言う作り物ではない、木板特有のソレだ。
感じる重さに、下を見ると、私の身体の上には布団がかけられていて、その向こうには障子が見えた。
どうやら、私はどこかの部屋に寝かされているらしい。

そこまで把握して、私ははっとなり、飛び起きた。
かけられていた布団を引っ剥ぎ、自分の身体を見下ろす。
手があって、足があって、服を着ていて……
その姿は私が意識が闇の世界に落ちる前のソレと大きく異なる。
と、言うより寧ろこの姿は、あの姿になる前の自分、即ち人間だった頃の……


??「あら?目が覚めたのね。どうかしら、気分の方は?」

急に声をかけられ、私は振り向いた。
さっきまで閉まっていた障子が開いていて、蒼い着物姿の女性がそこに立っていた。
5 :名無しの初心者 [saga]:2011/10/15(土) 16:32:10.08 ID:v/n/4K0f0
期待
6 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/15(土) 16:32:30.38 ID:jE0+tCzDO
かまわんつづけろ
7 :序章:魔女たちの幻想入り [saga]:2011/10/15(土) 16:33:20.58 ID:nhHZWkYP0

クリームヒルト「あ、その、えっと……」

??「……急に聞かれても、って顔ね。 ふふふ、ごめんなさい。起きたばかりでちょっと意地悪が過ぎたわ」

クリームヒルト「貴女は……?」

??「私は西行寺幽々子。 冥界の名家、西行寺家の主よ」

クリームヒルト「クリームヒルト・グレートヒェンです。 って、冥界…………?」

幽々子、と名乗った女性のその一言が引っ掛かり、思わず呟く。
冥界って、確かあの世とかそう言う意味だったよーな……
そこまで考えて、私は幽々子さんの周囲に幾つかの人魂が浮遊している事に気付く。
これはつまり、端的に言うと……

クリームヒルト「うきゃああああぁぁぁぁっ! お、おば、お化けぇぇぇぇっ!?」

幽々子「あら、久々過ぎて新鮮な反応ね。亡霊冥利に尽きるわぁ……、人間じゃなくて妖怪(?)相手なのがちょっと残念だけど」

クリームヒルト「あ、あぅ、あうぅぅっ……」

幽々子「そんな怖がらなくても、とって食べたりしないから大丈夫よ」

幽々子「妖夢、お客様がお目覚めよ、お茶と茶菓子を持って来なさい」

??「畏まりました〜」

そう言って座布団に腰を下ろす幽々子さん。
応えたのは執事かお手伝いさんだろうか?

クリームヒルト「えっと、あの、お構い無く……」

あの世で亡霊にもてなされる、と言うのも変な気がしたけど、そう言わずにはいられなかった。
が、幽々子さんは静かに微笑みながら首を横に降る。
8 :序章:魔女たちの幻想入り [saga]:2011/10/15(土) 16:36:58.08 ID:nhHZWkYP0

幽々子「良いのよ、私がもてなしたい、と思ってやっているのだから」

クリームヒルト「はあ、すいません。それにしても死んでからあの世で接待されるとか思ってもみませんでした」

幽々子「あら? 貴女たちはまだ死んでないわよ?」

クリームヒルト「えっ? でもさっき、ここは冥界だ、って……」

私が言うと、幽々子さんは何かに気がついたらしい。
手を軽く叩いて、語り始めた。

幽々子「ああ、確かにここは冥界、即ちあの世よ。 でも、貴女たちを拾ったのは此処じゃなくて、幻想郷との境目なのよ」

クリームヒルト「幻想郷?」

知らない地名に思わず首をかしげる。
あの世にも市町村とか区分けがあるのだろうか?

幽々子「その様子から察するに、貴女、外の世界から紛れ込んできたようね……。
    幻想郷は簡単に言えばあらゆるモノのるつぼよ」

クリームヒルト「るつぼ?」

幽々子「ええ、人間や動植物は勿論、妖怪や神、悪魔、そして私たち亡霊といったありとあらゆる存在が共存する、幻の郷……」

クリームヒルト「人と妖怪が……共存?」

幽々子「そうよ。人の世が否定し、追いやった幻想を束ねる最後の受け皿、それが幻想郷」

幽々子「偶に居るのよ、貴女たちのように外の世界、即ち人の世に存在することを否定され、幻想郷に流れ着く妖怪が……」

私自身、あんなだった(と言うか幽々子さんに妖怪呼ばわりされているあたり、今もそうなんだろうけど……)し、
目の前に亡霊は居るし、今更妖怪の存在を否定はしない。

しないけど、人と共存している、と言うのは信じられない話だった。
だって元いた世界で私たちの存在は……
9 :序章:魔女たちの幻想入り [saga]:2011/10/15(土) 16:42:29.22 ID:nhHZWkYP0
幽々子「畏れられ、排斥される存在だった?」

クリームヒルト「!?」

幽々子「驚かなくてもだいたい分かるわ。 私たちだってそんな感じだったし……」

最近は夏場ですら奮わなくなったけどねぇ……
と言いつつ肩をすくめる幽々子さん。

幽々子「その点、幻想郷は全く問題はないわ。
    確かに妖怪は人間をとって食う事も有るけど、食料確保のルートは確立されているし、秩序を保つ上で最低限のルールもある。
    そのルールに反しない限り、此処では人も妖怪も単なる隣人よ」

クリームヒルト「…………」

幽々子「さて、私からの話はこれくらいにして、貴女たちの話を聞かせてもらおうかしら?」

閉じた扇を私に向け、話を促す幽々子さん。
私の話をする前に、さっきから気になっていた事を尋ねてみる事にする。

クリームヒルト「えっと、さっきから幽々子さん、私たち、って言ってましたよね?と言う事は私以外にも……?」

幽々子「ええ、他にもいっぱい居たわ。 驚いたわよ、まるで打ち揚げられた鯨の群れみたいに集団で固まって倒れているんですもの。
    姿は貴女みたいに人間っぽいのから、妖精みたいなのまで色々だったんだけど、何て言ったら良いのかしら? 気配? 妖気?
    兎に角、纏ってる空気が似てたから同じ仲間だと思ったのだけど……」

クリームヒルト「じゃあ、他の魔女は……?」

幽々子「別の部屋に寝かせているわ、一応冥界随一のお屋敷だからね、部屋は余ってるのよ」

幽々子「……と言う事は、貴女たちは“魔女”なのね?」

クリームヒルト「えっ?」

幽々子「今貴女が言ったじゃない。 それにしても“魔女”かぁ……、
   外の世界の語意は変わりやすいとは聞いていたけど、結構変わるものなのねぇ……」

しみじみと呟く幽々子さん。
どうやらおっとりしたような見た目に反して、かなり鋭い人(?)のようだ。
10 :序章:魔女たちの幻想入り [saga]:2011/10/15(土) 16:48:12.15 ID:nhHZWkYP0

クリームヒルト「幻想郷にも“魔女”って、居るんですか?」

幽々子「う〜ん、居ると言えば居るし、居ないと言えば居ないわ」

クリームヒルト「と言いますと?」

幽々子「つまり、貴女の言う“魔女”は今日まで幻想郷には居なかったわ、“魔法使い”の女性、を指す言葉としては昔からあったけど……」

どうやら、元いた現世と幻想郷とでは、“魔女”が指す意味が違ったらしい。
よくよく考えてみると、コッチに足を踏み外す前に“魔女”と言う言葉に持っていたイメージは確かに幻想郷でのソレだった気がする。

幽々子「それで?貴女の言う“魔女”はどういう存在なのかしら? 良かったら話してくれない?」

クリームヒルト「あっ、はい、え〜と、私たちは……」


それから私は今までの事を話した。
元々は普通の人間だった事、魔法少女の事、魔女は魔法少女の成れの果てである事、
私も魔法少女から魔女となり、世界に呪いを振り撒いた事、
そして突然にも訪れた救済と言う名の消滅の事も……。


クリームヒルト「それで気が付いたらここに居て、姿も人間だった頃の姿になってて……」

幽々子「成程ねぇ……、不相応な穢れを溜め込み、堕ちた人の魂、それが貴女たちなのね。道理で人間っぽいな、と思ったら……」

ふむふむ、と一人納得する幽々子さん。
と、その時、おかっぱ頭の女の子が、障子を開けて部屋に入ってきた。

??「お待たせしました、幽々子さま。 生憎茶菓子を切らしてしまいまして……、取り急ぎ買って参りましたが、遅くなりました。 申し訳ありません」

幽々子「あら、お疲れ様ね、妖夢。 でも茶菓子を切らせていたのは感心出来ないわ、以後気を付けるように」

扇を片手にたしなめる幽々子さんは、さっきまで私の話を嬉々として聞いていた姿と違い、なんとも言えない風格が漂っていて……、
その姿を見ると名家の主と言うのも頷ける。
11 :序章:魔女たちの幻想入り [saga]:2011/10/15(土) 16:57:38.36 ID:nhHZWkYP0

妖夢「分かりました。幽々子さま」

そう言うと、妖夢と呼ばれた従者の女の子は静かに頭を下げる。

幽々子「まあ良いわ、おかげでクリームヒルトちゃんの話をゆっくり聞けたし……ね?」

クリームヒルト「あ、はい!……てぃへへへ」

ウィンクのおまけ付きで呼び掛けられ、私は思わず笑みをこぼす。
魔女として人を呪う存在になったときには考えられない程、私の心は穏やかだった。
身体が軽くなったと言うか、色々なものから解放された、そんな気分だ。

幽々子「漸く笑ってくれたわね……。安心したわ」

クリームヒルト「えっ?」

幽々子「これから幻想郷の一員になる子に辛気くさい顔は似合わないわ」

クリームヒルト「えっ、でも……私は……」

幽々子「言ったでしょう? 幻想郷は外の世界から弾かれた幻が集う最後の受け皿だ、って……
    幻想郷は全てを受け入れるわ……、例えそれが多大な穢れを背負った“魔女”であろうとも……ね」

もっと危険なのが闊歩してるしねぇ……、と茶化すように続ける幽々子さん。

励ますような感じではあったけど、私にはその前の『受け入れる』という言葉の方がが心に重く響く。
拒絶される事はあっても、それだけはありえない、そう思っていたから……

クリームヒルト「てぃへへへ……ぐすっ……あれ? なんでだろ? 嬉しいのに涙が……」

本来なら、こんな感情を二度と持つこともなく消え去る運命だった私。
人に仇なす前に無に帰す事こそが救いだった私。
そんな私に訪れた予想外の救いに、私の心は満たされつつあった。


幽々子「さて、話も一段落ついたところで、クリームヒルトちゃんに相談なんだけど……」

幽々子さんの声に顔を上げると、広げた扇で口許を隠しつつ微笑む幽々子さんの姿が……
その顔は起きたばかりの時と同じどことなく不敵な感じの微笑みで、


幽々子「幻想郷に移り住むにあたって、魔女の皆さんに引っ越しの“ご挨拶”をしてもらおうと思うんだけど……」


幽々子「やってくれるかしら? クリームヒルト・グレートヒェンさん?」


私は幽々子さんの言葉に小さく頷いていた。
12 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/15(土) 17:07:33.30 ID:ZoYTvIADO
恐らく、ラスボス前のボスは時計の魔女になったほむらちゃんかな?
13 :序章:魔女たちの幻想入り [saga]:2011/10/15(土) 17:09:07.67 ID:nhHZWkYP0
と、言うわけでシリアス風味な冒頭終了。
こっから東方のゆる〜いノリで行きます(多分)

簡単に補足すると
・まどマギはお察しの通り世界改変後(改変が何で幻想郷に及んでねーんだよwというツッコミ不可)
・東方は天則・DS辺り(変更するかも)
・クリームちゃんは見た目、服の色違いまどか(黒)で記憶アリ(オクタちゃんどうしよう……)

そんな感じです。

冒頭にも書きましたが、魔女のスペカを絶賛募集中です。
よろしくお願いします。
14 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/10/15(土) 17:23:26.89 ID:d0gyCo/p0
オクタちゃんもクリームちゃん仕様で良いでしょ。

オクタちゃんのスペカは音楽(クラシックとオペラあたり)と人魚から海っぽい感じでどうでしょ?
15 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/10/15(土) 18:23:04.38 ID:1jfsQlKSO
これは良いクロス
16 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2011/10/15(土) 18:38:00.07 ID:yXhURzlAO
小ネタのやつか、支援
17 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/15(土) 19:16:22.49 ID:ZoYTvIADO
取り敢えず考えてみたゲルトルートの弾幕。基本アレンジしてもらうつもりで考えてます。

薔薇符「薔薇の檻」
自機の居る方向に、ランダムに緑レーザーを連続で十本(難易度で本数が変化)程放つ(全部が画面端で固定されてから五秒で一旦消える)、ブレイクまでこれの繰り返し。

薔薇符「棘の嵐」
画面上方に移動し、左右に緑レーザーを放ち、画面端で(スペルブレイクまで)固定、レーザー全域から上下に方向ランダムで(中速の)棘型の弾幕を放つ。

使い魔「蝶の戯れ」
小・中球の弾幕を全域にばらまきながら、蝶型の使い魔(名前忘れた)を低速自機狙いで八羽、五秒おきに召喚。使い魔はショット十発で撃破可能。

薔薇符「蔦の舞」
自身を中心に、八方へ緑レーザーを常時放ち、それを左回りに回転させる。直後にアンソニーを二体(数は難易度によって変化)召喚し、鋏を模した八の字の弾幕を自機狙いで交互に出させる。

可憐「薔薇吹雪」
自身の周囲に六つの魔方陣を展開&回転させ、そこから薔薇の花びら型の弾幕を画面下方に緩やかな波状に落下させる。

こんなもんでどうでしょうか?
18 : [saga]:2011/10/15(土) 20:36:00.30 ID:nhHZWkYP0
続き書いててふと見てみたら>>17さんすげぇぇぇ
公式の魔女図鑑やら、各所の解説やら見て、とりあえずネタの多そうなシャルちゃんから……
とか考えてた自分が情けなくなるほどすげぇぇ

これが発想力の差か……orz

ありがとうございます、大いに参考に、と言うかそのまま使わせ(PAM!PAM!

ほむら「醜いわね、プライドってものはないのかしら? とりあえず一発撃たせなさい」
マミ「暁美さん、私も一緒に撃っていい?」
杏子「仕上げは串刺しなー」


さやか「出番なし(多分)組は荒れてるなー」
まどか「厳密には私たちも違うんだけどねー」
19 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/15(土) 21:02:41.23 ID:ZoYTvIADO
気に入ってもらえたのなら何よりです。しかしスペカの名前には(スペカ自体についても)、もっとそれっぽい表現があるかも知れないので、ご一考の程をお願い致します。
20 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/10/15(土) 22:22:28.35 ID:d0gyCo/p0
さやか、もといオクタちゃんの弾幕案。参考になれば。

通常:剣弾幕

懊悩「水車小屋の娘」
自身を中心に複数本(難度に応じて)のレーザーを放射、回転させる(水車)。下部側面より小玉弾(高難度では粒弾も)を流し、レーザーによって撹拌させる(水飛沫)。

賞賛「歌姫へのオベーション」
上部よりレーザー放射、自身を中心に収束ののち拡散(スポットライト)。下部より中小玉弾と、高難度で自身へ向けてのレーザー放射(客席からの拍手と視線)。

礼節「劇場ではお静かに」
自機狙い。避けるために動き過ぎると次第に発狂。ちょん避け推奨である。

泡沫「人魚姫の願い」
耐久スペル。中小玉弾が左右双方から波打って押し寄せ、上部になるほど上下の揺れも激しい(荒れ狂う海)。下部では当たり判定なしの自身が移動し、自機が接近すると円状に剣弾を放出。


ちなみに元ネタ
懊悩「水車小屋の娘」:パイジエッロ作曲の「Nel cor piu non mi sento」から。詞がもうまんまさやか。
賞賛「歌姫へのオベーション」:Look at meから。さやかは誰かに褒めて貰いたかったんだと思っている。
礼節「劇場ではお静かに」:「今はただ手下達の演奏を邪魔する存在を許さない」っていう以前に劇場鑑賞の最低限のマナーですよね。
泡沫「人魚姫の願い」:言わずと知れたアンデルセン。泡沫は「うたかた」って読んでもらえれば嬉しいなって。
21 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/10/15(土) 22:33:57.74 ID:Yx/Qe8SN0
東方といえばスペカ名にも色々と元ネタが色々あったりするよね

クリームヒルトがまどかの技を使うなら 輝弓「フィニトラ・フレティア」 とかどうだろう
イタリア語で終末の矢。実際にゲームでまどかが使う技だったりするから恐らくラストスペルとか?

クリームヒルトの元ネタを優先するんだったら 宝剣「ディキャピテートバルムンク」
ディキャピテートは斬首という意味。夫のジークフリードを殺害した仇ハゲネの首を打ち落とした時に、
クリームヒルト使用したジークフリードの愛用していた剣がバルムンクっていうそうです

まど神が魔女消滅に使った技にちなんで 救済「ハイパーまどかビーム」
とにかくルナティック濃い感じの矢の弾幕で魔女だろうが魔法使いだろうが消し飛ばしちゃうぞ☆


って厨二病全開だな…名前しか考えてないうえに使いづらいよなぁ
他にも 概念「円環の理」 とか思いついたけど、もはやどういう弾幕か想像できない…
22 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/16(日) 01:59:17.43 ID:InakWo3DO
おぉー、色々凄い人が増えてるぜ。
23 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2011/10/16(日) 04:38:50.55 ID:ACWf3Fvzo
まどかでなくてクリームなら円環の理はできんかなあ、言葉自体知らないだろうし
ゆゆ様の扇的な背負うギミックは魔女形態のスタンドを背後に立たせるとかどうだろう
24 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/10/16(日) 10:09:10.19 ID:bsLJHQrDO
ワルプルさんも幻想入りしてたらEXボスは決まりだなWWWW

???「僕と契約して、魔法少女になってよ!」
魔翌理沙「間に合ってるぜ」
アリス「同じく」
聖「あら、少女だなんて」
パチェ「その必要は無いわ」

???「わけがわからないよ」
25 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/16(日) 10:10:52.31 ID:bsLJHQrDO
sage忘れたorz
ちょっと円環の理に導かれてくる……

26 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage saga]:2011/10/16(日) 13:19:08.69 ID:skOc/Vbn0
H.N.Elly(Kirsten)

人の心を気にしすぎる程度の能力


記憶「シークレットトラウマ」 Easy-Normal
追憶「アザーズマインド」 Hard-Lunatic

籠符「安息結界」 Easy-Normal
籠符「多重心理結界」 Hard
大籠符「複合結界バリケード付き」 Lunatic

箱符「マジカルボックス98」 Easy
箱符「マジカルボックス2000」 Normal
箱符「マジカルボックスXP」 Hard
箱符「マジカルボックス7」 Lunatic

電脳「アンダーグラウンドメリーゴーランド」 Easy-Normal
電脳「ツーディメンジョンメリーゴーランド」 Hard-Lunatic

電脳「偶像の偶像」 Easy-Normal
電脳「フィクシャスアイドル」 Hard-Lunatic

「ドアの向こう側」 Normal-Lunatic


勝手に妄想してみたよ。スペカ名だけだけど好きに使ってね。
27 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/10/16(日) 16:39:17.54 ID:3Zj4xq3+0
>>26をリスペクトしてワルプルさんのスペカについて名前だけ考えてみたよ
難易度とかあるけど明らかに6面やEX面のボスだろってツッコミはナシにしてね

― 舞台装置の魔女:Walpurgis nacht ―
 あらゆるものを戯曲に変える程度の能力


愉符「オープニングパーティ」 Easy
踊符「アンティクスパレード」 Normal-Hard
宴符「スーパーセルフェスティバル」 Lunatic

光符「ブロッケンの怪」 Easy-Normal
彩符「カラミティハーローリング」 Hard-Lunatic

祭典「ハロウィーンの舞踏」 Easy-Normal
大祭典「聖者の篝火」 Hard-Lunatic

使い魔「高笑い道化役者」 Easy
使い魔「火炙り道化役者」 Normal
使い魔「血祭り道化役者」 Hard
使い魔「死狂い道化役者」 Lunatic

無力「くずれ近未来都市」 Normal
無力「こわれ人間的感情」 Hard-Lunatic

舞台装置「魔法の因果律」 Easy-Normal
舞台装置「コーザリティーギアエンゲージ」 Hard-Lunatic

悲劇「悪魔との契約」 Easy-Hard
戯曲「メフィストフェレスの歌」 Lunatic

災厄「超高速文明返し」 Easy-Normal
天変地異「オーバーターンハイパーソニック」 Hard-Lunatic

絶望「タービッドソウルジェム」 Easy-Normal
絶望「濁りゆく少女の魂」 Hard-Lunatic

終焉「魔女の饗宴」 Easy-Normal
   「ワルプルギスの夜」 Hard-Lunatic
28 : [saga]:2011/10/16(日) 16:56:23.04 ID:7IecTq/Q0
うわ、一日でこんなにスペカ案が……
ありがたやありがたや

何処まで活用できるか分かりませんが、出来る限り採用若しくは参考にさせていただきます。

それでは幻想郷パートのオープニング投下させてもらいます。
29 :オープニング:魔法使いたちの憂鬱 [saga]:2011/10/16(日) 17:02:54.06 ID:7IecTq/Q0
―――――――――――― 数日後、博麗神社 ―――――――――――――――


麗らかな日差し射す縁側に巫女が二人、並んでお茶を啜っていた。
そのうちの一人、白と蒼の巫女装束を纏った少女――東風谷早苗が、紅白の巫女装束少女――博麗霊夢に話し掛ける。

早苗「霊夢さん、知ってます? 最近巷で話題になってるあの事件……」

霊夢「“魔女騒動”ね……当然把握してるわ。私をなんだと思ってるの? 腐っても幻想郷の秩序を保つ博麗の巫女よ」

早苗「自分で腐ってもとか言わないで下さい。 ……で、霊夢さんはどう思います?」

霊夢「どう思う? って聞かれてもねぇ……」

最近、と言っても始まってから一週間と経っていないのだが……、幻想郷で少しおかしな事件が立て続けに起こっていた。

――例えば、秋を司る豊穣神の社で、お供え物の食べ物がごっそり食われたり、

――半人半獣が講師を勤める寺子屋での、机の投げ合い乱闘が勃発したり、

――騒霊姉妹の楽器を盗んでの、深夜の大合奏だったり、

兎に角様々な事件が発生していた。

犯人自体はそれぞれ判明している。
ただ全ての事件に共通して、騒動を起こした本人はその事を覚えておらず、
犯人は皆、普段は普通に人里に暮らす普通の人間であり、
調べた結果、犯人全員の首筋に謎の印があり、消したら正気に戻った事、
そして何より正気に戻った犯人が、話す内容と言うのが……
30 :オープニング:魔法使いたちの憂鬱 [saga]:2011/10/16(日) 17:05:37.64 ID:7IecTq/Q0

早苗「“魔女”と名乗る相手に会ってから、記憶がない……って、言ってるんですよね〜」

?「そうなんですよ早苗さん! ただ、その“魔女”が誰なのかがはっきりしないんですけどねぇ……」

早苗「って、うわっ!? 文さんいつの間に!?」

声にぎょっとして振り向くと、カメラを片手に持った鴉天狗――射命丸文が立っていた。

文「あややや、この射命丸文、事件と話題のあるところには何より早く現れますよ!」

早苗「それにしたって急すぎです! びっくりして寿命が縮まるかと思いましたよ!」

霊夢「諦めなさい早苗、コイツはそーいうヤツよ」

思わず怒鳴る早苗に対し、霊夢は冷めた目でお茶を啜る。

文「ん〜、相変わらず手厳しいですね〜」

霊夢「そんな事より……、調べてきたんでしょ? 幻想郷の“魔女”連中は何て?」

お茶を縁側に置きながら、幾分かまじめな口調で霊夢が尋ねる。
文は小さく咳払いをすると、書き溜めたメモ帖を取り出す。

文「……はい、皆さん揃って否認してます」

早苗「それはまあ、そうでしょうね……」

文「現時点で疑いがかかっているのは、まず紅魔館在住のパチュリー・ノーリッジさんと……」

文「命蓮寺在住、聖白蓮さん。 魔法の森在住、アリス・マーガトロイドさん。 そして……」

早苗「……っ」

霊夢「…………」

最後の一人を告げる前に、文はそれまで以上に間を空けた。
霊夢も早苗もその意味をすぐに察し……、早苗は俯き、霊夢は目を閉じた。
31 :オープニング:魔法使いたちの憂鬱 [saga]:2011/10/16(日) 17:09:43.32 ID:7IecTq/Q0

文「同じく魔法の森在住、霧雨魔理沙さん……以上、四名です」

霧雨魔理沙、この中で唯一の人間にして、これまで数多くの異変解決を手掛けてきた魔法使いである。
異変解決のために共同戦線を張ったこともあれば、対立した事もあった。
特に付き合いの長い霊夢など、その関係を全て語るには原稿用紙100枚をゆうに越える。

文「事件発生以降、多くの人がこの四人に接触を図っていますが、今の所四人に大きな動きはありません」

文「基本的にそれぞれの家に篭って、一人で居るようです」

霊夢「つまり、アリバイはない、って事ね……」

重くなっていく雰囲気。
それを誤魔化すかのように早苗がやけに明るい声で言う。

早苗「他に容疑者(?)は居ないんですか? ほら、狂わすと言えば、永遠亭の月兎さんとか……」

文「鈴仙さんですか? 有力候補だったんですけど無理ですねぇ……、
 10日前に永琳さんの新薬の臨床実験台になったとかで、今も寝込んでます」

早苗「それは……、なんと言うかスイマセン……」

別に謝る必要はないのだが、謝らずには居られなかった。
鈴仙さん、変な疑いかけてゴメンナサイ、そして末永く頑張ってください。
32 :オープニング:魔法使いたちの憂鬱 [saga]:2011/10/16(日) 17:11:51.63 ID:7IecTq/Q0

文「で? お二人はこれからどうなさるおつもりなんです?」

回答次第では記事にでもするつもりなのだろう、そう尋ねつつ文は白紙のメモ帖と筆を取り出す。

早苗「う〜ん、又聞きだけだと何とも言えないんですよねぇ……」

霊夢「そうね、直接本人に話を聞くぐらいはしてみようかと思ってるわ。 場合によってはその場で張っ倒すけど……」

早苗「それはいくらなんでも短絡的過ぎますよ」

霊夢「あら? じゃあアンタはやらないの?」

早苗「う〜ん………………、やるかも…………しれないです」

自重出来ないかもしれません。と答える早苗の目は若干だが輝いて見えた。
この娘、間違いなくヤル気満々である。

霊夢「アンタってヤツは……、まあ良いわ、私はとりあえず魔理沙の所に行くから、早苗と文はアリスか命蓮寺にでも行きなさい」

早苗「あれ? 霊夢さん、紅魔館は行かなくて良いんですか?」

霊夢「そっちは大丈夫よ。 専門の犬(人材)が既に居るわ」


33 :オープニング:魔法使いたちの憂鬱 [saga]:2011/10/16(日) 17:14:14.44 ID:7IecTq/Q0

――――――――――― 同じ頃・紅魔館 ――――――――――――――――

咲夜「本当に行かれるのですか? パチュリー様」

長い廊下を歩きながら、メイド服を纏った銀髪の女性――十六夜咲夜は前を行く紫の衣の少女――パチュリー・ノーリッジに尋ねた。
いつもは地下大図書館から動こうとしない彼女だが、今日はやけに早足で、紅魔館の出口へと歩を進めている。

パチュリー「ええ、本気よ。 それより、貴女こそ付いてくる気なの? 咲夜」

咲夜「お嬢様の申しつけです。 パチュリー様がお出になられるようなら付いていくように、と……」

パチュリー「従者も大変ね。 まあ良いわ、私のアリバイ証言、頼んだわよ」

咲夜「畏まりました」

恭しく頷きながら、長くなりそうだな、と咲夜は思う。
今日のパチュリーはいつになくやる気だ。
“魔女”の名を騙られた上、中途半端な事件ばかり頻発したせいで、“魔法使い”への風当たりが悪くなっている。
流石のパチュリーも腹に据えかねたのかもしれない。


咲夜(本当に怒ってるようですね。こんな早足で歩くパチュリー様は久々に見……)

パチュリー「っ!? むっきゅ!?」ズテーン

慣れない早足が祟ったのか、はたまた寝巻きのようなその格好のせいか、裾を踏ん付け、顔面から盛大にずっこけるパチュリー。
受身を取る間も無く床と熱烈なキスを交わしたせいか、痙攣するように身体がぴくぴくと震えている。

咲夜「えっと、そんなお召し物で大丈夫ですか?」

パチュリー「大丈夫よ、問題ない」

そう言って顔を上げたパチュリーの目にはうっすらと涙が浮かんでいた。


【七曜の魔女と瀟洒なメイド 組 行動開始】
34 :オープニング:魔法使いたちの憂鬱 [saga]:2011/10/16(日) 17:19:52.42 ID:7IecTq/Q0

―――――――――――― 数刻後・命蓮寺 ―――――――――――――――

文「あやや……これは……」

はるばる命蓮寺にやって来た文が見たのは、随分と様変わりした寺の様相だった。

ずらりと並べられた槍や薙刀、元は舟だった本堂には大筒(大砲)も見える。
寺特有のいつもの落ち着いた雰囲気はそこにはなく、大演習かはたまた合戦の直前か、と言った一触即発の雰囲気だった。

表に出てきていたのをこれ幸いと、文はこの寺の主――聖白蓮に話しかける。

文「あの〜、これは一体……」

白蓮「あら、これはこれは新聞屋さん、今ちょっと取り込んでるので……」

文「はぁ、まあ見るからにそうですよね……戦争でも始めるつもりですか?」

白蓮「戦争? 違います。ちょっとした掃除です」

文「掃除?」

いつもと変わらずにこやかに白蓮が言うので、文はふと思い直す。
これはもしかして、大掃除とか倉庫の整理でもしているだけなんじゃないか? と……
ああ、それならこの光景も、単なる日常の一こまに見えなくも……、なかったのだが、次の言葉で文は凍りついた。

白蓮「降りかかる火の粉は掃うもの、ですから(ニコッ」

文「ゾクッ)あ、あやや……ず、随分と物騒なんですねぇ……妖怪相手かも知れないのに全力投球とは……」

白蓮「あら? 新聞屋さん、それは勘違いと言うものですよ。 一体いつから私たちが妖怪相手に武力行使しないと錯覚していたの?」

文「………………」

白蓮「お痛が過ぎる子を正しい道に導くのも仏の教え、そこには人間も妖怪も関係ありませんよ? 新聞屋さん」


【密着!命蓮寺僧侶24時 組 行動開始】
35 :オープニング:魔法使いたちの憂鬱 [saga]:2011/10/16(日) 17:22:06.17 ID:7IecTq/Q0

―――――――――― ほぼ同刻・アリス宅 ――――――――――――――――

早苗「あはは…………」

文に命蓮寺を任せ、アリスの家に来た早苗は早くも後悔していた。
命蓮寺との関係は悪いわけではないが、信仰というパイを争いあうライバルである為、文に任せてしまったのだが、
その判断は裏目に出たようだった。

目の前の少女――アリス・マーガトロイドは不機嫌を隠そうともせず、鋭い視線を早苗に向ける。

アリス「また例の“魔女”の話? 今日だけで三度目なのよね……
   半人半獣に天狗の新聞屋ときて今度は貴女……、流石の私もそろそろ我慢の限界よ」

早苗「あっ、いえ、そういう訳では……」

アリス「じゃあ、何しに来たのよ?」

アリスの目が更に鋭いモノになり、早苗は背中で汗をかく。
あまりの剣幕に思わず否定してしまったが、さて、どうしよう……。

早苗「えっと、そう! 人形です! 人形作りを習いに来たんです!」

アリス「何の為に?」

早苗「えっと……、今度ですね、神奈子さま人形と諏訪子さま人形を売る事に…………、スイマセン、ウソですごめんなさい」

とうとう耐え切れなくなり、早苗はその場で土下座した。
その様子をアリスは暫らく見下ろすと、大きなため息を一つつき、頭を押えた。

アリス「はぁ……、まあ良いわ。 早苗、ちょっと付いてきなさい」

早苗「えっ? アリスさん? どちらへ」

アリス「そんなの、決まってるじゃない…………“魔女”に会いに行くのよ」


【都会派魔女と現代っ子な現人神 組 行動開始】
36 :オープニング:魔法使いたちの憂鬱 [saga]:2011/10/16(日) 17:24:23.37 ID:7IecTq/Q0

――――――――――― 同刻・魔理沙の家 ――――――――――――――

霊夢「部屋に篭ってる、と聞いて来てみれば……何やってるのよ?」

本やら道具やら相変わらず乱雑に放置されたゴミ屋敷、もとい魔理沙の家で、
霊夢は畳一枚分はあろうかと言う地図と格闘している旧知の友に問う。

魔理沙「見て分からないか? 地図でこれまでの事件現場を探してるんだ」

早苗ん家で見た“刑事ドラマ”ってのでやってたぜ! などと言ってのける彼女に、霊夢は肩をすくめる。

霊夢「アンタにしては随分と消極的じゃない、いつもならそんな事しないで現場に飛んでいくくせに……」

魔理沙「流石に今回は容疑者だからな。下手に動いて御用になるのはゴメンだぜ。 それに……」

霊夢「それに?」

声のトーンを落とした魔理沙を見やる。
その顔はいつもの興味本位で飛び出していく魔理沙のそれではなく、決意に満ちた表情だった。

魔理沙「今回ばかりは早く解決したいと思ってる。 この“魔女”がやってる事は、私たち“魔法使い”への明らかな挑戦だぜ?」

霊夢「……………」

魔理沙「早苗の時の異変と同じさ、売られた喧嘩は買わなきゃなんねぇ、
   そうじゃなきゃ“魔法使い”として、私が、私を許せなくなる」

霊夢「……協力はするけど、今回は裏方に回るわよ?」

魔理沙「ああ、それでいいぜ、魔女が異変を起こすって言うなら、私はその魔女をぶっ飛ばす!」
37 :オープニング:魔法使いたちの憂鬱 [saga]:2011/10/16(日) 17:28:06.73 ID:7IecTq/Q0

霊夢「まぁ、アンタがそれで良いなら、別に構わないけど……、で? 目星はつきそうなの?」

尋ねながら、霊夢は魔理沙の地図を覗き込む。
事件の起きた場所には大きく×印が付いていて、印はあちこちに散らばっている。

魔理沙「あー、それなんだがな、実は……」

地図との格闘を中断した魔理沙はいつになく神妙な顔を霊夢に向ける。
普段とはまったく違うその顔に、霊夢も思わず身構える。

魔理沙「さっぱり分からん!」

霊夢「……………………………アンタねぇ」

空気が一気にしらけ、霊夢のこめかみに青筋が浮かぶ。
拳をプルプルと震わせる霊夢に対し、魔理沙は大して悪びれる事もなく言う。

魔理沙「だって見てみろよこの地図、どっかに固まってるわけでもない、事件の内容もバラバラ、発生日時も同じくだ。
    これでどうやって特定しろって言うんだよ」

霊夢「やってたのはアンタでしょ……」

ため息をつきつつ、霊夢は再度地図を見る。
事件発生現場は人里周辺、魔法の森入り口付近、霧の湖、命蓮寺、妖怪の山の参拝道などなど、
ごく稀にだが、迷いの竹林付近や紅魔館手前でも起きている。
被害者の大半が人間なので、その行動範囲を考えればまあ妥当と言うべきか。

事件の内容を見ると、餓鬼に取り憑かれたような暴食が5件。
畑の作物や太陽の畑の花を薔薇に植え替えが3件。(後者は風見幽香により未然に阻止)
立て篭もり(と言うか引き篭もり)が6件。
寺子屋内でのあれこれが4件。
狂ったように演奏し続ける事件が7件。など、
起こる事件はある程度定まっているが、だからと言って発生場所が特定と言う訳でもない。
38 :オープニング:魔法使いたちの憂鬱 [saga]:2011/10/16(日) 17:31:13.52 ID:7IecTq/Q0

魔理沙「事件の内容で同じモノがあるって事は同一犯に違いないと思ったんだけどなぁ……」

霊夢「……ねぇ、魔理沙、私思ったんだけど、複数犯って事は考えられない?」

魔理沙「何?」

霊夢「つまり、特定の妖怪一人による事件じゃなくて、事件の種類ごとに担当者が居る、集団犯罪だったとしたら?」

それは発生件数を見ても明らかな気がした。
話に聞いていただけでは、大して意識していなかったが、こうして纏められるとその発生件数は異常だ。
単独でこれだけの事件を起こすのは、能力にも拠るが骨が折れる。

魔理沙「それで? 仮に集団犯行だとしたらその奴らの目的は何なんだ?」

霊夢「それがちょっと読めないのよねぇ……やっている事は、人に軽い呪をかけるだけ、それも印さえ消せば消える軽度なもの。
  妖怪の仕業だとしたら遊びにもならない軽度な呪……単なる愉快犯か、或いは……」

魔理沙「或いは……なんなんだよ?」

霊夢「いえ、忘れて頂戴、ちょっと引っかかっただけだから……」

魔理沙「なんだよ? 気になるな……」

霊夢「だから、忘れてって言ってるでしょ? それよりも行くわよ、魔理沙」

そう言いつつ立ち上がった霊夢は踵を返す。
床に転がっていた帽子と箒を手に取り、魔理沙はその後を追う。

魔理沙「おい、霊夢! 行くって、どこに行くんだよ?」

霊夢「決まってるじゃない、現場よ」


【白黒魔法使いと紅白巫女 組 行動開始】
39 :オープニング:魔法使いたちの憂鬱 [saga]:2011/10/16(日) 17:34:03.81 ID:7IecTq/Q0
――――――――――――――――――――――――――――――――――――

幽々子「どうやら、動き出したようね」

扇片手に、幽々子さんはちょうど良いおもちゃを見つけた児童(こども)の様に笑う。
こうしてみると、普段の“大人の女”な印象が消えて、同い年ぐらいの無邪気な少女のように見える。
あっ、年と言っても人間だった頃の年齢だけど……。

クリームヒルト「ホントに大丈夫なんですか? こんな事しちゃって……」

幽々子「大丈夫よ、博麗の巫女たちと例の方法で戦ってもらえば、必ず平和的に収まるわ……」

クリームヒルト「それが、スペルカードルール?」

幽々子さんが言っていた秩序を保つ上での最低限のルール、その一つがスペルカードルールと言うものらしい。

スペルカードと呼ばれるカードで攻撃を宣言し、その術が攻略されたら負け、と言うルール。
このルールで負けた側は例え余力があったとしても負けを潔く認める、と言う幻想郷内での唯一の決闘方法。

幽々子「言ってしまえばこれは単なる遊戯、愉しまなきゃ損なのよ……まぁ、見ていれば分かるわ」

クリームヒルト「………………」

本当に良いのかなぁ、と思いつつ私は幻想郷の人たちを映すソレに目線を戻した。

40 :オープニング:魔法使いたちの憂鬱 [saga]:2011/10/16(日) 17:43:09.21 ID:EDKixxyV0
と、言うわけで東方勢の行動開始まで、次回から弾幕戦です。
クリームちゃん以外の魔女にようやく出番です。
魔女のキャラ付けがオリジナルとなりますのでご注意を、


〜東方版タイトル(>>1)の『東方円鹿目』について〜
読み方は適当です。
“まどかなめ”でも“まどかもく”でもお好きにどうぞ

P.S.
弾幕戦ヤバい、まじヤバい
支部の擬人化魔女絵を見つつ、『クリスタライズシルバー』とか『もう歌しか聞こえない』とか聞きながら書いてるとマジでヤバい。

そしてそのヤバい展開を完全に文章に起こせない俺がマジでヤバイ……orz
41 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/16(日) 18:23:28.63 ID:9XSSxSJ20
まさかこれでスレ立てる人がいるとは
乙期待
42 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/16(日) 18:24:27.09 ID:InakWo3DO
うおおおぉぉぉ!続きが来てるううぅぅ!

”魔女“の皆さん…良かったな、また生を楽しむ事が出来て。
うっ…グス。
43 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/10/16(日) 18:40:51.47 ID:3Zj4xq3+0
まどマギの魔女は全部出るのかなー ルナティック期待してるぜ

エリーの能力ってさとりと似てね?トラウマ想起させるあたりとか
という訳で程度の能力だけ考えてみる

ゲルトルート: 薔薇を育てる程度の能力
シャルロッテ: お菓子を作り出す程度の能力
エリー: トラウマを掘り起こす程度の能力
ギーゼラ: すばやく動く程度の能力
エルザマリア: 影を操る程度の能力
オクタヴィア: (肉体の)痛みを感じない程度の能力
イザベル: 作品を真似る程度の能力
パトリシア: 青春をエンジョイする程度の能力
ロベルタ: 焼き鳥を用意する程度の能力
クリームヒルト: 人を救済する程度の能力
ワルプルギス: あらゆるものを戯曲に変える程度の能力

一部おかしいとかいうのは気のせいだ
44 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県) [sage]:2011/10/16(日) 19:55:20.35 ID:8XtPjVfh0
ワルプルさんとクリームさんにどうやって勝てとwwwwww
45 : [saga]:2011/10/16(日) 20:18:59.45 ID:EDKixxyV0
>>41-42
まどマギで幻想入り、を考えたらこれが一番自然に出来るなー、とは前々から思ってた。
魔女と魔法少女は=じゃないとの事だし、存在抹消じゃ魔女の救済にならないとも思ってたし、
ただ幻想入りさせたところで、オリキャラになるの確実だし、ほのぼの日常話やるのもキリがないしアレだなーと思って控えてた。
ソレが先日、俺の中のゆゆ様が囁いたんだ。

 「退屈な日常話がイヤなら異変を起こせば良いじゃない。 東方風神録っていう幻想入りに伴う異変もあるんだし……」


>>43
公式とか支部とかニコ百科とか見てなるべくなら出したい。
ギーゼラあたり最速勝負と称して文辺りとぶつけてみたいし、
言うは易しで、資料が少なくて厳しいのが現実なんだけど……

なので、おいしそうなネタがあったら下さい。頭から食べて咀嚼(租借)しますので

>>44
これは弾幕戦だ。問題ない

紫「絶対クリア出来ない弾幕はルール違反よ」
46 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage saga]:2011/10/16(日) 21:15:24.68 ID:skOc/Vbn0
思った以上に面白かったのでテンション上がってきた。乙乙。
銀の魔女はこんな感じかなー。


Gisela

内燃「エキゾーストマニホールド」Easy-Normal
静炎「ハイパーヘッダー」Hard-Lunatic

爆符「仏恥義理」Easy-Normal
爆走「走死走愛」Hard-Lunatic

爆音「直管マフラー大暴走」Easy-Normal
爆族「吐禍忌魔連合大爆走」Hard-Lunatic

錆符「ラストディフュージョン」Easy-Normal
錆符「オキシダイズドマイバディ」Hard-Lunatic

終焉「潮風ロンリーデイ」Hard-Lunatic
47 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage saga]:2011/10/16(日) 21:39:00.89 ID:skOc/Vbn0
作品を真似る程度の能力と聞いて、
東方世界のスペルカードってつまり作品なわけで。


Izabel

贋作「夢幻封印」 Easy-Normal
贋作「八方魔方陣」 Hard
贋作「八方龍魔陣」 Lunatic

贋作「スターダストイリュージョン」 Easy-Normal
贋作「シュバルツシルト」 Hard-Lunatic

贋作「オールドソーマタージ」 Easy-Normal
贋作「古めかしい秘儀」 Hard-Lunatic

贋作「見覚えのある韓国人形」 Easy-Normal
贋作「巨大コレジャナイ人形」 Hard-Lunatic

贋作「凱旋門」 Easy-Hard
真贋「プレイス・デ・エトワール」 Lunatic


ひとまず4キャラ分のみだけど、色々拡張できそう。
48 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/10/16(日) 22:40:30.49 ID:3Zj4xq3+0
ギーゼラは魔女本体じゃなくて結界が高速で移動しているから、
銀色の弾幕に身を包んでハイスピードで動くって感じかなぁ


シャルロッテちゃんのスペカについていっぱい考察してみたよ

甘符「シュガーサテライト」 Easy
舐符「キャンディコメット」 Normal-Hard
甜符「金平糖の星空」 Lunatic

軟符「マシュマロクラウド」 Easy-Normal
綿符「ワタガシキュムロニンバス」 Hard-Lunatic

太符「ハイカロリードーナツ」 Easy-Normal
必殺「ギャラクティカドーナツ」 Hard-Lunatic

溶符「チョコレートスプリンクラー」 Easy-Normal
山里「キノコタケノコウォーズ」 Hard-Lunatic

餡符「マジカルビーンジャム」 Easy-Hard
餡符「棚からルナティックぼたもち」 Lunatic

魔法「わっふるわっふる」 Easy-Normal
魔食「バニラアイスサンドホットケーキ」 Hard-Lunatic

質問「バームクーヘンは剥がして食べるか?」 Easy-Normal
難問「タイヤキテイルオアヘッド」 Hard-Lunatic

食符「ヘッドイーティング」 Easy-Normal
噛符「ワタシハホムホムハデス」 Hard
齧符「ブロンドヘアーモグモグ」 Lunatic

誘惑「ヘクセンハウスの魔女」 Normal
悲詩「スイートスイートレクイエム」 Hard-Lunatic

御馳走「インフィニットスイーツ」 Easy-Normal
願望「ひとつきりのチーズケーキ」 Hard-Lunatic
49 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage saga]:2011/10/16(日) 23:14:55.10 ID:skOc/Vbn0
>>48
GJGJ
キノコタケノコウォーズ吹いたw
そしてラストのスペルは泣ける。ENとHLの差がまた泣けるな。
50 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/10/16(日) 23:39:34.90 ID:JEOMT5Wt0
>>20だけれども、先人たちに倣ったスペカ表記オクタちゃん編。

悩符「わが心虚ろになりて」Easy-Normal
懊悩「水車小屋の娘」Hard-Lunatic

乞符「ルックアトミー」Easy
請符「ラブミードゥー」Normal
賞賛「歌姫へのオベーション」Hard-Lunatic

礼節「劇場ではお静かに」Easy-Normal
罰則「退出をお願いいたします」Hard-Lunatic

泡符「リザルトオブロストボイス」Easy-Normal
泡沫「人魚姫の願い」Hard-Lunatic

聖歌「アヴェ・マリア」Normal-Lunatic

最後の追加したのは明日あたり考えてみるます。
それと既出スペルのうち礼節「劇場ではお静かに」シリーズ以外にはハート弾も追加してもいいかもしれないと今更気付いた。
51 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/10/16(日) 23:42:53.32 ID:JEOMT5Wt0
ってか>>48齧符「ブロンドヘアーモグモグ」って……
魔翌理沙あぁぁぁぁアリスウゥゥゥゥ逃げてえぇぇぇぇ!!!!
52 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [ [sage]]:2011/10/17(月) 09:41:08.77 ID:HRlV8wRM0
おりこやかずみの魔女も出てくるのかな。
53 : [saga]:2011/10/17(月) 11:00:23.36 ID:VKGjBZHH0
夕方からのシフトに入る前に最初の弾幕戦だけ投下。
シフトの都合で、以後、更新頻度は落ちます。ご了承のほどお願いいたします。
54 :ステージ1 可憐に咲かせ、深紅の薔薇 [saga]:2011/10/17(月) 11:08:56.23 ID:VKGjBZHH0

――――――――― 【白黒魔法使いと紅白巫女】 @ 無名の丘 ――ー――――――――

鈴蘭の咲き誇る丘を風が吹き抜けていく。
その丘を行く人影が二つ、霊夢と魔理沙だ。

魔理沙「おい霊夢、どうしてこんな辺鄙な所に来たんだ? ここは事件現場じゃないぞ」

霊夢「……事件の一つに畑荒らし、と言うか薔薇植え事件があったじゃない」

魔理沙「ああ、あったな」

霊夢「気付いた? 荒らされた、若しくは荒らされかけた畑は、全部花畑だ、って事」

魔理沙「!? ……言われてみれば確かにそうだな」

向日葵の咲き誇る太陽の畑はもちろん、他に荒らされた人里の畑も菜種農家のアブラナ畑だ。
畑荒らしなら普通は作物の植わってる畑でしょ? と言う霊夢の言葉に魔理沙も頷く。

魔理沙「なるほどな、要約合点がいったぜ。確かに此処は幻想郷の花畑で未だに狙われていない場所だ」

魔理沙「でもよ霊夢、此処はいくらなんでも人通りが少なすぎるぜ。
    人を狙うのに、幻想郷界隈の事情を知ってるヤツなら、まず此処には来ないと思うぜ」

魔理沙は周囲を見渡しながら言った。
人里から割と近いこの丘だが、自分たち以外の人の姿は見えない。
唯一、丘に入ったときにここの住人である妖怪人形に会ったが、今は眠ってもらっている。

霊夢「それを含めて、確認に来たのよ」

魔理沙「? どういう意味…………おい、霊夢、あそこに誰か居るぜ」
55 :ステージ1 可憐に咲かせ、深紅の薔薇 [saga]:2011/10/17(月) 11:11:06.76 ID:VKGjBZHH0

立ち止まった魔理沙が丘のくぼ地を指差す。
人っ子一人居ないと思われた丘に、碧髪の少女が一人、佇んでいる。

霊夢「人……じゃあないわね」

魔理沙「蝶の翅っぽいのが付いてるしな。 珍しいタイプの妖精かもな」

霊夢「そうである事を願いたいわね」

少女のほうへと歩を進めながら、霊夢は巫女服の袖に手を入れ、魔理沙は懐に手を突っ込んだ。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――

霊夢「そこのアンタ、ちょっと聞きたい事があるんだけど……」

ごく普通に話しかけるように霊夢が呼びかけた。
が、翅の生えた少女は振り返ることなく言う、

??「何かしら?」

魔理沙「ずばり聞くぜ、この辺で最近噂の“魔女”を見なかったか?」

魔理沙の質問にも少女は振り返らない。

??「“魔女”? いいえ、私は見てないわ」

魔理沙「ありゃ? なんだ、勇み足になっちまったか?」

拍子抜けだ。というように魔理沙が頭を押えると、少女はようやく振り向いた。
その顔に、不敵な笑みを浮かべて……

??「だって、私の姿は私では見れないでしょう?」

魔理沙「っ!?」

霊夢「やっぱり、アンタが“魔女”ね」

風が変わる。
丘を吹き抜ける清々しいソレではなく、どこか淀んだような生ぬるい風。
56 :ステージ1 可憐に咲かせ、深紅の薔薇 [saga]:2011/10/17(月) 11:13:45.29 ID:VKGjBZHH0

??「私は不信の象徴にして薔薇園の魔女、ゲルトルート。
  ねぇ貴女たち、私の素敵な薔薇園造り、手伝ってくれないかしら?」

霊夢「生憎、食べられない植物に興味はないわ、他をあたりなさい」

ゲルトルート「残念だわ、薔薇はこんなにも綺麗なのに……」

ゲルトルートと名乗った少女の誘いを霊夢は即座に一刀両断にする。
対するゲルトルートも残念と言いつつ、口元は嗤っている。

魔理沙「奇麗かもしれんが、元々生えてた植物と植え替えるのは感心しないぜ」

霊夢「菜種農家と、幽香の所に突き出させてもらうわよ」

ゲルトルート「綺麗な薔薇には棘がある……。貴女たちは怪我をせずに、私を摘み取れるかしら?」


その言葉が合図になった。
ゲルトルートから魔理沙たち目掛け弾幕が放たれ、二人は空に舞い上がる。

魔理沙「こいつの相手は私がやる。 霊夢は下がってな!」

霊夢「最初からそのつもりよ、裏方に回るって言ったでしょ? その代わり……」

魔理沙「?」

霊夢「負けたら承知しないわよ」

霊夢の言葉に、魔理沙は一瞬ぽかんとした顔をして、すぐに口元を吊り上げた。

魔理沙「ああ、負けたらいくらでも賽銭払ってやるよ。
   さぁて、魅せて貰おうじゃねぇか、“魔女”のお手並み拝見だぜ!」
57 :ステージ1 可憐に咲かせ、深紅の薔薇 [saga]:2011/10/17(月) 11:16:35.04 ID:VKGjBZHH0

ゲルトルート「貴女が相手ね? それじゃあ早速行かせて貰うわ」


                           薔薇符 『薔薇の檻』


スペルカードが宣言されると同時に、ゲルトルートを中心に放射状に薔薇の茎を模したレーザーが放たれる。
自身に向かってきた茎を避けつつ、魔理沙は考える。

魔理沙(放射状の弾幕か、ヤツの方に近づくと間隔が狭くて厄介だな。ここは後ろに下がって……)

遠距離戦に持ち込むか、と考え後退しようとした魔理沙の背後で、先ほどかわしたレーザーの茎の先端が爆ぜる。

魔理沙「っ!?」

爆ぜた先端は花が開くように周囲に広がり、やがて消えた。それと同時にレーザーも消える。

魔理沙(危ねぇ、あのまま後退(さがって)たらピチュってたぜ……最初からこれとかルナティックかよ!?)

魔理沙(だが、今ので分かったぜ! このスペルは……)

魔理沙「中段に居れば安定だぜ!」

再び放たれたレーザーを今度は近づきすぎず離れすぎずの位置で避ける。
一回目と同じように後方で、弾幕の花が開くが、魔理沙の居る位置には殆ど届かない。

ゲルトルート「あら、一発で攻略法を見つけたのね。 なら、こんなのはどうかしら?」


                           薔薇符 『棘の嵐』


2度目のスペルカード宣言。
さっきまでのスペルと同じように茎を模したレーザーが放たれるが、数は2本と少ない。
少ない上、2本とも魔理沙へは向かってこなかった。 そのまま魔理沙の左右を後に通り抜けていく。
58 :ステージ1 可憐に咲かせ、深紅の薔薇 [saga]:2011/10/17(月) 11:21:34.68 ID:VKGjBZHH0

魔理沙「おいおい、どこ狙ってるんだ? 私はこっちだぜ」

ゲルトルート「言ったでしょう? 綺麗な薔薇には棘がある、って」

魔理沙の挑発にも不敵な笑みを崩さないゲルトルート。
『何か裏があるな』と魔理沙が警戒を強めると同時に、左右に展開されたレーザーから棘型の弾幕が放たれた。

魔理沙「ちっ、そう言う事かよ!?」

舌打ちしつつ、魔理沙は前方へと飛び出す。
最初のスペル同様、レーザーの茎が花を咲かせるのは容易に想像出来たからだ。
棘の弾幕に自ら突っ込む形となるが、花の弾幕との併せ技をくらうよりだいぶマシだ。

ゲルトルート「敢えて突っ込んでくるなんて、良い判断してるわね」

魔理沙「おいおい、相手を誰だと思ってるんだ?
    幻想郷のありとあらゆる弾幕を見てきた、普通の魔法使いさんだぜ。
    その実力と悪運の強さは誰にも負けてない自信があるぜ!」

ゲルトルート「実力と悪運……それが貴女の信ずるものね? なら、それを私が摘み取るまでよ」

魔理沙「へっ、やれるもんならやってみな!」

魔理沙がけしかけた直後、ゲルトルートは3度目のスペルを宣言した。


59 :ステージ1 可憐に咲かせ、深紅の薔薇 [saga]:2011/10/17(月) 11:23:55.05 ID:VKGjBZHH0
――――――――――――――――――――――――――――――――――――

ゲルトルートのラストスペル――可憐『薔薇吹雪』、
回転する魔方陣から放たれる花びらの弾幕は一面を覆わんばかりに拡がっていた。

が、しかし、どれだけ多くの花があろうとも、花から舞い散る花びらの数は無限では無い様に、
遂に、その弾幕も散り尽くす時がやって来た。
魔方陣が光を失い、花びらの弾幕もまた霞と消える。そして……

弾幕が消えた宙には未だに霧雨魔理沙が舞っていた。

ゲルトルート「…………私の負けね」

魔理沙「そうなるな。まぁ、初めてにしては良い線行ってると私は思ったぜ。……だが、私を負かすにはまだ早いな」

ゲルトルート「ぐ、どうして私が初めてだと?」

魔理沙「弾幕自体は良く出来てたんだけどな、出し方や発動タイミングがまるで素人だぜ。
    ま、練習あるのみだな。センスはあるんだから自信もってもいいと思うぜ」

ゲルトルート「そう……」

そう言うとゲルトルートは肩をすくめて瞳を閉じた。
不信の魔女に自信を持て、と言われるのはなんだか変な気分だったが、それでも今はなんともいえない充実感があった。

魔理沙「それじゃあ悪いが、決めさせてもらうぜ」


                      魔符 『スターダストレヴァリエ』


決め技が宣言され、箒に跨った魔理沙が、ゲルトルートに突貫する。
箒から尾を引くように伸びる星屑の光がゲルトルートの視界いっぱいに拡がり……彼女は意識を手放した。


60 :ステージ1 可憐に咲かせ、深紅の薔薇 [saga]:2011/10/17(月) 11:26:37.65 ID:VKGjBZHH0
――――――――――――――――――――――――――――――――――――

幽々子「ね? 大丈夫だったでしょう?」

弾幕戦に敗れ、倒れたゲルトルートさんを背負いつつ、人里へと戻って行く幻想郷の魔法使い――魔理沙さんたちの姿を見ながら幽々子さんが言った。

クリームヒルト「…………でした」

幽々子「えっ?」

クリームヒルト「……すごく、すごく綺麗でした」

始めて見る幻想郷の弾幕戦(スペルカード)、その美しさは一度で私を魅了した。

この感覚を私は知っている。
魔女にも魔法少女にもなる前、マミさんに助けられた時。
マミさんの華麗な戦いに見惚れて、魔法少女への憧れを抱いた、あの時に良く似ている。

一つだけ違うのは勝敗が決した後の結果。
消すか消されるかの命を懸けた戦いではなく、勝負が付いた後は互いの健闘を称える、一種の試合。
私もアレをこれからやるんだと思うと、胸が熱くなってくる。

静かに、それでも確実に弾幕戦の魅力に惹かれつつある私を見て、幽々子さんは優しく微笑む。

幽々子「ふふっ、そうね……、実際の所は大半が無駄弾なんだけど、弾幕戦の魅力の一つがソレよ」

自慢ではないけど、私の弾幕も綺麗さにかけては幻想郷屈指よ。と茶目っ気たっぷりの口調で言う幽々子さん。

幽々子「弾幕戦がどういうものか、何となくだけど分かったでしょう? さ、観戦に戻りましょう、次の戦いが始まるわ……」


61 :ステージ1 可憐に咲かせ、深紅の薔薇 [saga]:2011/10/17(月) 11:38:24.68 ID:VKGjBZHH0

以上、薔薇園の魔女 vs 白黒魔法使い 編でした。
>>17様、一部弾幕の形状変更の上採用させて頂きました。ありがとうございました。
ゲルトルートさんの外見は支部百科の擬人化絵が参考です。
弾幕解説は>>17様をご参照下さい。

中略を挟んでしまいましたが、最初のステージですのでなにとぞご理解を
と言うかステージ名でこんな有名どころを初っ端から使っちゃって大丈夫か?


〜予告と言うか募集〜
現在の進捗状況は以下の通り

アリス&早苗 vs シャルロッテ (進捗率75%)

白蓮&文 vs パトリシア (進捗率25%)

パチェ&咲夜 vs エリー (進捗率0%……orz)

と、なっております。
シャルロッテちゃん、エリーちゃんはだいぶスペカが集まってきたようなので、
その様子を傍観している委員長に手を差し伸べて頂ける人をお待ちしております。
62 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/17(月) 17:23:36.21 ID:FmfUFlBDO
ゲルトルートさんの弾幕、使ってもらえて感激です!素敵なアレンジまでしてもらえて…あぁ、俺は幸せ者だ。

取り敢えず委員長はお酒を一杯飲んだだけで潰れてれば良いと思うの。
63 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/17(月) 18:14:47.75 ID:L9qDAW810
今更ながら、オクタちゃんの通常弾は車輪じゃないかな

・・・そういえばフランって確か魔法少女だったよなぁ
64 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/10/17(月) 18:21:10.74 ID:ntdzi8Jf0
>>20=>>50ですー。

オクタちゃんの聖歌「アヴェ・マリア」草案
細いレーザーを4本一組にして複数組照射、回転。大玉弾を上から降らせ、一時停止ののちに小玉弾と粒弾に変化させ、十字状にして拡散。
難度が上がると回転速度が上がったり、レーザーが交差したりする。また、4本組レーザーに対して垂直方向にへにょりレーザー放射(ヴァイオリン)。
なんかぐちゃぐちゃで整理しきれてません。ここからもう少し洗練が必要かと。

それからパトリシアいいんちょのスペカ案(名前のみ)

机符「フライングデスク」
宣告「お前の席無いから」

傍符「パッシヴブリーング」
傍観「インビジブルヴィクティム」
処世「見ず聞かず関わらず」

佇符「ノンリーダーシップ」
佇立「お飾り委員長」

壊符「クラスウォーズ」
瓦解「クラスディスラプト」
崩壊「クラスカタストロフィ」

「学級内生前葬」
65 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/10/17(月) 18:30:01.75 ID:ntdzi8Jf0
しまった難度を忘れてた。

机符「フライングデスク」Easy-Normal
宣告「お前の席無いから」Hard-Lunatic

傍符「パッシヴブリーング」Easy
傍観「インビジブルヴィクティム」Normal-Hard
処世「見ず聞かず関わらず」Lunatic

佇符「ノンリーダーシップ」Easy-Normal
佇立「お飾り委員長」Hard-Lunatic

壊符「クラスウォーズ」Easy-Normal
瓦解「クラスディスラプト」Hard
崩壊「クラスカタストロフィ」Lunatic

「学級内生前葬」Normal-Lunatic

>>63あー、うーん、剣はさやかのイメージかなー。合わせて使ってもいいかもだけど。
66 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/10/17(月) 18:58:09.20 ID:lYObSlCF0
パトリシア書こうとしたら先越されたから唯一の成人であろうロベルタ姉さんのスペカを考えてみたよ


準備「胃もたれ防止薬」 Easy-Lunatic

飲友達「トリ頭の使い魔」 Easy-Normal
飲食店「スナックバー・トリカゴ」 Hard-Lunatic

乾杯「魔女のビアジョッキ」 Easy-Lunatic

肴符「枝豆形追尾ショット」 Easy-Normal
黄金比「柿の種とピーナッツ」 Hard-Lunatic

肴符「チー鱈型反射ビーム」 Easy-Normal
取寄「北海道の鮭冬葉」 Hard-Lunatic

肴符「裂きイカ型へにょりレーザー」 Easy-Normal
特製「マヨネーズ一味醤油ブレンド」 Hard-Lunatic

米酒「パラダイス吟醸」 Easy-Normal
米酒「パラダイス大吟醸」 Hard-Lunatic

飲獣「キュゥべえ漬けスピリタス」 Easy-Hard
魔法熟女「空飛ぶ呑んべぇのロベルタ」 Lunatic


黄昏酒場ネタが混じってる?気にしちゃいかんよ
67 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/10/17(月) 20:32:28.43 ID:lYObSlCF0
>>49 無限にお菓子が手に入っても、チーズだけはどうしても手に入らない…切ないぜ
という訳でEXシャルちゃん。ファンシーなお菓子じゃなく苦しい闘病生活を再現したような感じにしてみた


癌符「寝たきりの少女」 Extra

偽装「私のやさしい看護婦さん」 Extra

喰符「ぐちゃぐちゃミルキーブレイン」 Extra

激痛「ドラッグサイドエフェクト」 Extra

吐符「インカーネイトキャンサー」 Extra

執着「二ッ目のチーズ探し」 Extra

断頭「首無し魔法使い」 Extra

蝕符「グリーフシンドローム」 Extra

絶望「魂の割れる音」 Extra

救済「円環少女の贈り物」 Extra
68 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/10/17(月) 21:00:32.39 ID:ntdzi8Jf0
>>66-67
引き出し広い人だ!
かぶっても別にいいんじゃないでしょうか。いっぱい案が出たほうが>>1も助かるかと。
とういよりむしろ私が見たいんで書いてくださいお願いします。

>こんな有名どころを初っ端から使っちゃって大丈夫か?
大丈夫だ、問題ない……たぶん。本編登場が全部で11体、で最後はクリームちゃんに収束していくと考えれば何とか間に合うんじゃ……
イザベル画伯に4組全部当てる、おりこ☆マギカからも引っ張ってくる、いっそほむほむマミさんあんこちゃんも魔女化させる(そんな時間軸もきっとあるよ!)とかどうでしょう?
69 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/10/17(月) 22:52:40.07 ID:lYObSlCF0
>>67 じゃあ御言葉に甘えてパトリシアのスペカを考察してみたぜ 参考程度に


通符「桜散る春の通学路」 Easy-Normal
走符「四月桜街道」 Hard-Lunatic

鐘符「チャイム着席」 Easy-Normal
録符「使い魔の出席簿」 Hard-Lunatic

風紀「遅刻・持ち物・弾幕検査」 Normal-Hard
風紀「バッドガールクラックダウン」 Lunatic

昼時「おしゃべりタイム」 Easy-Normal
昼時「オールデイズ恋愛相談」 Hard-Lunatic

HR「ムーブメントデスク」 Easy-Normal
LHR「シャッフルチェンジシート」 Hard-Lunatic

勉学「中間定期考査」 Easy-Normal
勉学「不意打ちテスト」 Hard-Lunatic

鐘符「帰りの会」 Easy-Lunatic

青春「ロッカーの手紙」 Easy-Normal
青春「屋上にあの子を呼んで」 Hard-Lunatic


ちなみにLHRはロングホームルームの略なんだぜ
おりマギ魔女といえばシズルだよな!スペルが思いつかないけど…
70 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/10/17(月) 23:02:33.86 ID:lYObSlCF0
>>68だった…盛大なる安価ミスをお許し下さい

あとはエルザマリアちゃんのを補完しないとな…クリームヒルトちゃんもそうだけど
それじゃ任せたぜお前ら!>>1の事も応援してるぜ!
71 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/10/17(月) 23:13:45.17 ID:ntdzi8Jf0
>>69-70
おおう、こちらこそ厚かましいお願いを聞いていただいて何とお礼を申してよいやら。

そうか……そうだよな、普通に学校生活エンジョイさせても良いんだよな。
傍観の性質にとらわれてばっかりだった……おかげで殺伐としてスペカ編成になっちまった。
特に「ムーブメントデスク」、「シャッフルチェンジシート」その発想はなかった。
72 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/10/17(月) 23:14:35.98 ID:ntdzi8Jf0
>>69-70
おおう、こちらこそ厚かましいお願いを聞いていただいて何とお礼を申してよいやら。

そうか……そうだよな、普通に学校生活エンジョイさせても良いんだよな。
傍観の性質にとらわれてばっかりだった……おかげで殺伐としてスペカ編成になっちまった。
特に「ムーブメントデスク」、「シャッフルチェンジシート」その発想はなかった。
73 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/10/17(月) 23:21:02.32 ID:ntdzi8Jf0
ぎゃあ二重投稿失礼しました。
74 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/18(火) 12:14:09.32 ID:C4KF3eQDO
流行ってるみたいなのでパトリシアさんの弾幕を考えてみた。
勉強に関する事から五つ+α程捻り出してみます。

基本「和差積商」
+−×÷の形をした小球大の弾幕を低速〜中速で大量に全方位にばらまく。ただし+と−、×と÷がぶつかると粒球12個に変わり、進行方向のまま進む。

人間失格「お汁粉万歳」
画面中央に移動し、自身の周囲に小豆色の中球大もや弾幕(お汁粉をイメージ)を大量に発生させ、全域に一斉放射(画面外に向かうにつれ加速)する。もやが広がりきる前に、白い中球弾(白玉をイメージ)を方向ランダムに中速で八つ放つ。

球技「殺人ドッジボール」

自身を上方、使い魔を下方に置き、中球弾を低速で自機に向けて放つ。その弾が画面外に出る前に使い魔が受け止め、再度自機に向かって放つ。それを今度は自身が受け止め、また自機に向けて放つ。それを繰り返すごとに弾速を段々加速させてゆく。弾幕の軌道が横に移動した場合、自身と使い魔の位置関係が左右両端に置き換わる。

社会「ナチスの恐怖」

画面幅1/3程の半径を持つ卍型の弾幕の中心部を左上に置き、高速で右回転させながら中速で↓→↑←と壁に沿って移動させる。その最中、卍型弾幕の中央から画面内側に向けて中速で巨大球をまっすぐ出させる。それが画面半分の位置に来ると、はじけて中球大の右回転卍弾幕12個に変わり、中速で適当な方向に進む。

磁力「S&N」
画面左右端の上方〜下方の間で、左右から一本ずつ赤と青の太レーザーを低・中・高速(左右でいずれかの速度)で3秒間発射。その2つのレーザーの先端同士は引かれ合って衝突し、周囲に中速の粒・小球弾をばらまく。ブレイクまで繰り返し。

鋼糸「振り子運動」
画面上端中央にワイヤーを突き刺し画面外へ、出た画面側の下方から再度出現、よくある∀型の小型弾幕をマルチ連射しながら僅かに上昇しつつ反対側の画面外へ、それを繰り返して元の位置に戻ると∀型の小型弾幕を扇状に大量放射し、最初と反対側の画面外へ、これの繰り返し。

死合「電撃鋼糸デスマッチ」
中央やや上方に移動し、縦横2.5cmの幅で当たり判定無しのワイヤーを張り巡らし、その上に中球大の稲妻を高速で方向ランダム(一つの稲妻につき一度通った線は通れない)に走らせ画面外へ。ブレイクするまで放出し続ける。

おまけのネタ弾幕。
固定観念「眼鏡ビーム」
中央に移動し、ロックオンサイトを照射、自機に触れると止まる。1秒後、ロックされた位置に隙間の開いた2本の細レーザーを5秒間直射(じっとしてれば間に入る事が可能)する。その間、レーザーから少し離れた両脇に粒球弾が低速でスプレーの様に撒かれる。
委員長と言えば(していなくても)眼鏡だろう、と言うイメージからの弾幕。

災難「ドジっ子委員長の憂鬱」
画面上端より、白い長方形(中球弾が二つ並んだ位の大きさ)の弾幕が、斜めに回転しながら不規則な速度と軌道で落下して来る。しかもこの弾幕は下に少しづつ溜まって行き、スペルブレイクまで消えない。
せっかくまとめたプリントが…。

以上です。参考の欠片にでもなれば良いのですが。
75 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/18(火) 18:13:55.07 ID:C4KF3eQDO
今度はエルザマリアさんの弾幕を考えてみました。
やっぱりこれもアレンジ希望です。

呪遊「影踏み」
まず自機の後ろに回り込み、その場で弾幕を3秒程溜め、とがった黒い弾幕を20発程時間差加速で放つ。どちらが後ろかの判定は、画面の上下半分のどちらに居るかで決まる。上に居れば自機より上、下に居れば自機より下が後ろ。

否・妖怪「魔女の影女」
上方に移動し、カーブする黒い自機狙いのレーザーを複数放つ。避けられたレーザーは自機を取り囲む様に動き、影の輪の中に閉じ込める。数秒すると、囲んでいたレーザーは方向ランダムの短小黒レーザーに変化する。

尾行「影法師の呟き」
上方に移動し、中球大の黒い低速へにょり軌道もや弾幕を、自機の居る大体の方向に連射しながらジリジリ近付いて来る。10秒程で一旦上方に戻って再度同じ行動を取る。

侵蝕「影蝋」
上方に移動し、自身の周囲に影を大円型に広げ、そこから放射状に低速の追尾黒レーザーを4つ(難易度によって数が変化)伸ばす。軌道が溶けてから固まった蝋を思わせる事からこう名付けられた。

陰陽「光ある所に影あり」
近付けば近付き、離れれば離れると言った風に、まるで自機と対を成すかの様に動く。その上で、自機の反対方向に当たり判定無しの黄色い閃光弾を射出し、眩しく光らせる(画面外でも有効)。すると光の反対側にエルザマリアの影(これまた当たり判定無し)がある程度まで伸び、そこから影の伸びている方向に黒い弾幕が中速で噴射される。閃光弾の光が消えると、そこから虹色の低速粒弾幕が牽制程度に撒かれる。ブレイクまで繰り返し。

連想「影の中の宇宙」
当たり判定無しの影を画面全体に広げ(視覚的阻害は背景が黒くなるだけ)、エルザマリアの身体の中で作られた七色の光弾が足元を伝って渦状に回転しながら、全方位に中速で放たれる。
その様はまるで、宇宙の中に飛び込んだかの様だ。

考えられたのはこれ位ですね。それにしても、やはり>>1様は素晴らしいクロスをお書きになるお方。
76 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/10/18(火) 20:20:10.91 ID:9iNdOFha0
俺もエルザマリアちゃんのスペカを考えてたけど全然閃かない…参考程度に


独善「都合のいい祈り」 Easy-Normal
独善「セルフィッシュネスフォーチュン」 Hard-Lunatic

妄信「彷徨える黒い影」 Easy-Normal
妄信「シルエットビリーバーズ」 Hard-Lunatic

黒符「安息への誘い」 Easy-Normal
黒符「ムーンレスサバスデイ」 Hard-Lunatic

結界「モノクロの空間」 Easy-Normal
結界「ダークネスグラウンド」 Hard-Lunatic

影符「魔造の太陽」 Easy-Normal
影符「カウンターフェイトプロミネンス」 Hard-Lunatic

聖女「概念となった少女」 Easy-Normal
救済「サルバシオンリングサークル」 Hard-Lunatic
77 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage saga]:2011/10/19(水) 00:03:12.28 ID:zSXABd+30
画伯ことイザベルさんのスペカいくつか。>>47さんがやって無いキャラのを。

始符「グラウンドオンリンネル」Easy-Normal
始筆「ドローオンザカンバス」Hard-Lunatic

贋作「鉛からの金採掘」Easy-Normal
贋作「パラケルススズジュエル」Hard-Lunatic

贋作「パロディオブヒロヒコ」Easy-Normal
贋作「私の展覧結界」Hard-Lunatic

贋作「パープルクラウド」Easy-Normal
贋作「来迎往生の兆し」Hard-Lunatic

贋作「ストーミーガール」Easy-Normal
贋作「風と駆ける少女」Hard-Lunatic


以下、「どこかで見たようなものばかり」だから自機組以外の方がいいかなと思って。
誰のどのスペカでしょうか。

贋作「フリッジドグリント」Easy-Normal
贋作「金剛石の猛吹雪」Hard-Lunatic

贋作「梵我一如の境地」Easy-Normal
贋作「ブラフマンとの合一」Hard-Lunatic

贋作「体制崩壊の天王山」Easy-Normal
贋作「デンジャーオブエンペラー」Hard-Lunatic

贋作「カップルツリーズチャーム」Easy-Normal
贋作「相老松の御縁」Hard-Lunatic

贋作「コケモモの収穫」Easy-Normal
贋作「液果畑の少女」Hard-Lunatic

贋作「串刺し公の所業」Easy-Normal
贋作「ワラキア領の悪夢」Hard-Lunatic

贋作「秘宝のどっこいしょ」Easy-Normal
贋作「有り難き破邪の法具」Hard-Lunatic

贋作「マタギの山渡り」Easy-Normal
贋作「哀愁の漂泊民」Hard-Lunatic
78 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage saga]:2011/10/19(水) 00:31:13.28 ID:zSXABd+30
アッー!さとりんにもう想起されてたァーッ!?
ということで差し替えです……

贋作「鉛からの金採掘」Easy-Normal
贋作「パラケルススズジュエル」Hard-Lunatic
   ↓  ↓  ↓  ↓  ↓
贋作「アマテラスズジュエリー」Easy-Normal
贋作「天空に煌めく指輪」Hard-Lunatic
79 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/19(水) 16:23:31.66 ID:xgRxKq8DO
空気を読まずに投下。
クリームヒルトさんの弾幕、考えてみました。ただし既に>>1様が考えられている様な弾幕だと思われますが。
思い出弾幕って感じになっております。

私の始まり「ティロ・フィナーレ」
画面上端から黄色い極細の短いレーザーを雨の様に降らせ、その間に黄色い巨大弾をチャージし、終わったら自機狙いに時間差高速で射出。黄色い粒弾が尾を引く。ブレイクまで繰り返し。

竹馬の友「ブルー・フェンサー」
上方に移動し、青く透き通ったビームで構成された日本刀を一本作り出し、自機を追尾させる。移動は低速だが攻撃は高速で、ある程度近づくと攻撃モーションを取る。5つのパターンがあり、直接斬りかかる・斬撃を3WAYで飛ばす・剣撃に合わせて5本のレーザーを発射・扇状に青い弾幕を発射・動きを止め、まっすぐ突っ込んで来る(攻撃なので高速)。この5種がブレイクまでランダムで繰り返される。

偽りの悪女「スネーク・ランス」
赤い槍の弾幕を画面上部に5つ(内2つは多節槍)並べ、左の槍から順に、直槍はまっすぐ高速に、多節槍は螺旋状に中速で投函。直槍が通った後には螺旋状に小球弾を残し、多節槍が通った後は自機狙いの細レーザーに変わる小球弾を残す。1セットが終わると投函の順が逆になる。

私という呪縛「タイム・リーパー」
上端に移動し、画面下端全域から、小〜大の大きさの反時計回りに動く時計を模した弾幕(各サイズ10個、全部で30個なのは1ヶ月の日数から)を速度と方向ランダムで打ち上げる。画面の左右を反射しながら上に向かい、上端で一旦溜まる。全部の時計弾幕が上端に付いたら、次は速度と方向ランダムで左右を反射しながら落下させる。ブレイクまで繰り返し。

私の終わり「ライフドレイン」
耐久弾幕。画面中央上方に移動しその場で固定。そこに自分の魔女の頃の姿(例の黒い巨大樹)の幻影を映し出し、画面外全域から生命力をイメージした暗七色の小もや弾幕を自身に集め続ける。時間と共に弾速は最低速〜高速へと変わる。最後に、画面真上から桃色に強く輝く矢がクリームヒルトに刺さり、今まで集められた弾幕が明るい虹色に変わって超大量に放出される。これを避けられたらスペルブレイク。

概ねこんな感じになってます。ね、ありきたりでしょう?
80 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/20(木) 00:45:40.36 ID:3M9TsYODO
>>59ちょ、投函ってwwなぜ俺はこんな間違いをしたww
81 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/20(木) 00:50:51.35 ID:3M9TsYODO
数字まで間違った。>>59じゃなくて>>79だろ俺ェ…orz
あと連投してすみません。
82 : [saga]:2011/10/20(木) 09:39:11.43 ID:KJXFjDli0
やっと時間が出来たので、対シャルロッテ戦を投下します。
83 :ステージ2 別腹は欲多き魔女の為に [saga]:2011/10/20(木) 09:44:15.07 ID:KJXFjDli0
―――――― 【都会派魔女と現代っ子の現人神】 @ 人里の繁華街―――――――食欲の摩天楼

早苗「で、なんで私たちは人里の繁華街に居るんです?」

辺りを見回しても人ばかりで、紛れている妖怪もここでは単なる客に過ぎない。
幻想郷一の緩衝地帯ともいえるこの場所に何故来たのか、早苗は不思議でならなかった。

アリス「暴食事件にはね、面白い共通点があるの」

早苗「と、言いますと?」

アリス「狙われた食べ物はね、秋神のお供え物も含めて皆、お菓子なのよ」

食べ物は他にもいっぱいあったのにね。と続けるアリスに早苗はおどけながら言う、

早苗「なんですかソレ、それじゃあ犯人はスイーツ(笑)って事ですか?」

アリス「あり大抵に言えばそうなるわね」

早苗「それで、菓子店のある繁華街、ですか……。 でもやっぱり考えられませんよ。
   ここは幻想郷きっての非武装地帯ですよ? そんなところで事件を起こすなんて……」

常識知らずの幻想郷でもそれだけはない。
そう続けるつもりだったのだが、次のアリスの言葉に早苗は言葉を失った。

アリス「そうね、でも、そういう事情を諸々知らない相手だったとしたら?」
84 :ステージ2 別腹は欲多き魔女の為に [saga >>83はミス。サブタイ原案削除し忘れた…orz]:2011/10/20(木) 09:48:39.11 ID:KJXFjDli0

―――――― 【都会派魔女と現代っ子の現人神】 @ 人里の繁華街―――――――

早苗「で、なんで私たちは人里の繁華街に居るんです?」

辺りを見回しても人ばかりで、紛れている妖怪もここでは単なる客に過ぎない。
幻想郷一の緩衝地帯ともいえるこの場所に何故来たのか、早苗は不思議でならなかった。

アリス「暴食事件にはね、面白い共通点があるの」

早苗「と、言いますと?」

アリス「狙われた食べ物はね、秋神のお供え物も含めて皆、お菓子なのよ」

食べ物は他にもいっぱいあったのにね。と続けるアリスに早苗はおどけながら言う、

早苗「なんですかソレ、それじゃあ犯人はスイーツ(笑)って事ですか?」

アリス「あり大抵に言えばそうなるわね」

早苗「それで、菓子店のある繁華街、ですか……。 でもやっぱり考えられませんよ。
   ここは幻想郷きっての非武装地帯ですよ? そんなところで事件を起こすなんて……」

常識知らずの幻想郷でもそれだけはない。
そう続けるつもりだったのだが、次のアリスの言葉に早苗は言葉を失った。

アリス「そうね、でも、そういう事情を諸々知らない相手だったとしたら?」
85 :ステージ2 別腹は欲多き魔女の為に [saga]:2011/10/20(木) 09:49:52.36 ID:KJXFjDli0

早苗「えっ……?」

アリス「そう、かつていきなり霊夢に喧嘩売りに行った時の貴女みたいに、幻想郷のことをを大して知らない相手が“魔女”だったとしたら?」

早苗「…………」

アリス「そう考えるとね、起こってる事件が中途半端なのも説明できるのよ。
   つまり、幻想郷について良く分からないからどの程度までだったら“異変”で済まされるのか、判断が出来ないのよ」

アリス「そうよね、“魔女”さん」

早苗「えっ?」

アリスの言葉に早苗はぎょっとして背後を振り返る。
が、そこに人影はなく、ぬいぐるみが一つ、落ちているだけだった。

早苗「お、驚かさないでくださいよアリスさん、“魔女”なんて居ないじゃないですか……
   サン○オのキャラクターっぽいぬいぐるみは落ちてますけど……」

思わず苦笑する早苗に対し、アリスはあくまでも冷静な声音で言う。

アリス「いつまでそうしているつもりかしら? 人形遣いである私の目は、それくらいでは誤魔化せないわ」

??「あーあ、とうとうバレちゃった〜」

早苗「!? ぬいぐるみが喋った!?」

突然浮き上がって喋りだしたぬいぐるみ(?)に今度こそ早苗は腰を抜かした。
喋って動く妖怪人形が居るのは早苗も知っているが、女児の部屋にありそうなぬいぐるみが喋ると言うのはそれとは別の意味で怖い。
86 :ステージ2 別腹は欲多き魔女の為に [saga]:2011/10/20(木) 09:52:07.41 ID:KJXFjDli0

アリス「一応聞いておいてあげる。 貴女、名前は?」

??「シャルロッテ、執着するお菓子の魔女だよ」

早苗「お菓子? ああ、そのやたらファンシーな頭はキャンディーの包み紙なんですね……」

シャルロッテ「かわいいでしょ?」

早苗「それは認めます。出来ればお持ち帰りしたいくらいです」

アリス「止めときなさい。 妖怪人形なんか泊めた日には、気を抜いた瞬間に寝首をかかれるのがオチよ」

シャルロッテ「あっ、こんなかわいい子捕まえといて酷い事言うんだ……」

早苗「人形遣いの貴女がそれを言いますか……」

ちょっとムっとするシャルロッテと、呆れてみせる早苗。

他人のこと言える立場じゃありませんよ、とさらに言いつつ早苗は御幣を構え、
対するアリスは多数の自律人形を具現化させる。
戯れの時間は終わりと分かったのか、シャルロッテも表情を戻す。

シャルロッテ「私ね、お菓子も大好きだけど、ホントはそれよりもチーズの方が好きなの。
      だから、私に酷い事言った代わりに、私に美味しいチーズをちょーだい?」

無邪気な見た目と口調に反して、禍々しい空気があたりに漂い始める。
賑やかだった繁華街が急に静まり返り、アリスたちの周囲から他の人影が消える。

アリス「結界を張られたようね……。油断しないでね、早苗」

早苗「分かってます。この結界がどれだけマズいか分からない程、落ちぶれては居ません」

シャルロッテ「それじゃあ行っくよ〜、まずはこのスペル!」


                      菓子符 『ギャラクティカジャンボパフェ』



87 :ステージ2 別腹は欲多き魔女の為に [saga]:2011/10/20(木) 09:55:39.71 ID:KJXFjDli0
――――――――――――――――――――――――――――――――――――

早苗「お菓子の魔女と名乗るだけの事はありますね。さっきから弾幕が見事にお菓子です」

アリス「見てるだけで口の中が甘くなる弾幕ね。 あの“魔女”は胸焼け起こさないのかしら?」

キャンディーにケーキ、パフェにワッフルと言った甘ったるい弾幕の連続に思わずアリスは愚痴をこぼす。
甘いものが嫌いな訳ではないが、ここまでやられると普通の感覚の持ち主なら飽きる。

「お饅頭とか杏仁豆腐みたいな、和菓子や中華はないんでしょうか?」などどいう隣からのぼやきは聞かなかった事にする。

シャルロッテ「まだやるの? いい加減満腹でしょ? 降参するかチーズをくれたら許してあげるよ」

アリス「生憎チーズは持ってないし、降参する気もないわ」

シャルロッテ「ぶー、いいもん、くれないならこっちから探すもん」


                      探求 『燻製チーズはあるかい?』


スペルが宣言され、シャルロッテの周囲にキャップをつけた黒い影が複数現れる。
黒い影は瞬く間に増殖し、シャルロッテの周りを囲い込む。
良く見ると影には足と尻尾も付いているようだ。

早苗「足つきオタマジャクシの大量発生?」

アリス「やめなさい」

早苗の生々しい例えにアリスはげんなりした。
『この子と組んだの、間違いだったかしら?』 などと軽く後悔していると、足つきオタマジャクシが八方に飛び出していく。

アリス「来るわよ! 早苗っ!」

シャルロッテの周囲から飛び出した足つきオタマジャクシは、頭から緑のレーザーを伸ばすと左右を見回すように頭を動かす。
頭に併せてレーザーも左右に動き、避け回るアリスや早苗の脇をすり抜けていく。
レーザーが何かに当たると、何故か当たったものは赤く明滅する。
88 :ステージ2 別腹は欲多き魔女の為に [saga]:2011/10/20(木) 09:57:49.82 ID:KJXFjDli0

早苗「うわ、空港のレーダーみたい! はっ!? もしや探求って、レーザーでレーダー代わりって事?」

アリス「馬鹿言ってないで避けなさいっ!」

そうこうしているうちに、アリスは早苗とはぐれてしまった。
こうもレーザーが交錯している以上、簡単には合流できそうもない。

アリス「まぁ、すぐさま不利になる事はないかしらね。寧ろ隙をつける可能性も……」

と、思っていると周囲が急に開けた。
足つきオタマジャクシの群れの中から抜け出せたらしい。
そして、目の前にはピンクのぬいぐるみ、即ちシャルロッテの姿が……

アリス「ホントは遠距離戦の方が得意なんだけど……、折角ここまで来たんだし、決めさせてもらうわ」

アリスにここまで接近されているのに、シャルロッテは口をもごもごさせるだけでその場から動かない。
一瞬不審に思ったが、そのままスペル詠唱に入る。

アリス「……魔符 『アーティフ……」

早苗「アリスさん! 今すぐそこから逃げてくださいっ!!」

アリス「っ!?」


                      齧符 『ブロンドヘアーモグモグ』


早苗の切羽詰った声にアリスが身を翻した直後、アリスの居た場所を黒い大きな影が通り抜けていった。
大きな影はそれまでの影と違い、シャルロッテの口から直接伸びてきていて、
その先端には憎たらしくなるほど表情豊かな顔があり、その口は、全てを飲み込んでやると言わんばかりに大きく開かれていた。

咄嗟に身を翻していなかったから間違いなく餌食になっていただろう。
冷静に事を捉えられるようになると同時に、背筋が冷たくなるのを感じた。
89 :ステージ2 別腹は欲多き魔女の為に [saga]:2011/10/20(木) 09:59:50.46 ID:KJXFjDli0

シャルロッテ「あれ? 避けられちゃった? 惜しかったなぁ、もうちょっとで一人やっつけられたのに……」

相変わらず無邪気な声で言うシャルロッテ、対するアリスは隙を見せないようすぐさま後退する。

アリス「助かったわ早苗。……良くあの攻撃が読めたわね」

早苗「あまりにもタイムラグがありましたからね、仕掛けるとしたらあのタイミングしかありません。 それに……」

アリス「それに?」

早苗「あの手の不意打ちは聖蓮船異変でイヤというほど味わったので……(ヨミガエルニュウドウノトラウマ」

『弾幕戦で入道の特大パンチとか初見殺しにも限度がありますよ……』
どこか遠くを見るように早苗が言う。顔に縦線が入っている様に思えるのは多分気のせいではない。

アリス「まぁ、いずれにしても助かったわ、どんなに強力な初見殺しも一度見てしまえば怖くないわ」

早苗「それじゃあ……」

アリス「ええ、ここから反撃開始よ」


90 :ステージ2 別腹は欲多き魔女の為に [saga]:2011/10/20(木) 10:02:01.24 ID:KJXFjDli0
――――――――――――――――――――――――――――――――――――

シャルロッテ「ホントにしつこい〜、もう怒った! これで止めにしちゃうもん!」


                      願望 『ひとつきりのチーズケーキ』


戦いが長引きすぎた為か苛立ちを隠そうともせずにシャルロッテがスペルを宣言する。 が……


                             し〜ん


シャルロッテ「あ、あれ? 何でなにも起きないの? 私、スペル宣言したよ!?」

いつまで経っても発動しないスペルにシャルロッテが慌てはじめる。
カードを振ったり、かざしてみたり、もう一度掲げてみたりしたが、スペルは発動しない。

アリス「教えてあげましょうか? なんでスペルが発動しないのか?」

シャルロッテ「貴女には分かるの?」

アリス「簡単よ、そのスペルの発動に必要な力が、貴女にはもう残ってないの」

シャルロッテ「? どういうこと?」
91 :ステージ2 別腹は欲多き魔女の為に [saga]:2011/10/20(木) 10:04:06.20 ID:KJXFjDli0

アリス「一言で言えば魔力切れよ。ペース配分を間違えたわね。
   多分、貴女の魔力自体、殆ど残ってないんじゃないの?」

シャルロッテ「う〜言われてみたら確かにおなかが空いてるような……。
       うっ……気になりだしたらどんどん空いてきた……。
       あぁ〜っ! もうダメ、おなか空きすぎて動けない〜っ!」

悲鳴にも近いシャルロッテの叫びが決闘終了の合図となった。
結界が解かれ、周囲が元の賑やかな繁華街に戻る。

早苗「ふう、やっと終わりましたね。 これからどうしますアリスさん?」

アリス「話だけ聞いて秋神の社にでも括り付けておく、っていうのはどうかしら?」

服に付いた埃を掃いながら、意地悪げな笑みを浮かべたアリスが言う。
その言葉を聞いて、シャルロッテの顔が見る見るうちに青くなる。

シャルロッテ「そ、それだけは止めて! あそこ、甘そうな匂いはするのに、肝心の食べ物が何処にもないんだもん!」

早苗「そりゃあ、穣子さまのは香水ですからねぇ、お芋の匂いはしますけど、食べられる訳がありません」

アリス「お供え物食べちゃったのは擁護も看過も出来ないわ。 神様にたっぷり叱られてらっしゃい」

シャルロッテ「そんなぁ〜」

アリスの言葉に、シャルロッテはがっくりと肩を落とすのであった。


92 :ステージ2 別腹は欲多き魔女の為に [saga]:2011/10/20(木) 10:05:54.98 ID:KJXFjDli0
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

幽々子「可愛い顔してなかなかのやり手ね。山の巫女が居なかったらあの人形遣いは確実に負けていたわ……」

真剣な眼差しで今さっきの弾幕戦のリプレイを見ている幽々子さんの横で、私は画面を直視出来ずにいた。

クリームヒルト「う〜、まさか人間だった頃のトラウマをこんな形でまた見るなんて……(ヨミガエルマミサンパックンチョ」

幻想郷に来て、人間だった頃の記憶もはっきり思い出せる様になった今の私にはシャルロッテちゃんのあのスペルは衝撃的過ぎた。

??「ホント、嫌な事件だったよね……。 マミさんを頭からガブリ、だもん。 下手な衝撃映像より怖いよ」

クリームヒルト「うんうん、……………って、あれ?」

妙に聞き覚えのある声に、私は思わず顔を上げた。
私と同じように魔法少女の衣装を纏った青いショートカットが特徴的な、私がよく見知った女の子がそこに居た。

??「や、久しぶり! まど……コホン」

クリームヒルト「えっ? さ、さやかちゃ……」

??「あれ? さやかちゃんだと思った? 残念、オクタヴィアちゃんでした」

言いかけた私に軽くおどけてみせるさやかちゃん。
よく見ると上半身は魔法少女のさやかちゃんだったけど、下半身は脚じゃなくて尾びれで、人魚みたいな姿になっていた。
これが幻想郷での魔女としてのさやかちゃんの姿なのだろう。

そんな事を思っていると、リプレイ視聴を一時中断した幽々子さんが私たちに問い掛けてくる。
93 :ステージ2 別腹は欲多き魔女の為に [saga]:2011/10/20(木) 10:08:49.23 ID:KJXFjDli0

幽々子「楽しそうね、二人は知り合いなの?」

クリームヒルト「はい、人間だった頃から私の親友で、美樹さやかちゃんです」

オクタヴィア「だーかーらー、今の私は美樹さやかじゃなくてオクタヴィアだって!」

私がそう答えると、さやかちゃんが怒ったような声をあげる。

クリームヒルト「ティヒヒ……ならオクタヴィアちゃんも他人の事は言えないと思うな。
       最初、私の事、まどか、って呼びそうになってたでしょ?」

オクタヴィア「うっ、気付かれてたか……」

幽々子「ふふ、二人は本当に仲が良いのね。ところで二人にひとつ提案があるのだけど……」

クリ&オク「?」

突然切り出された言葉に私とオクタヴィアちゃんは幽々子さんの方を見る。

幽々子「少し早いけど、おやつの時間にしない?
    お菓子の弾幕をいっぱい見たせいか、私も何か食べたくなってしまったのだけど……」

そう言って微笑む幽々子さんの姿に、私はかつてお茶をご馳走してくれた先輩の姿を見たような気がした。

94 :ステージ2 別腹は欲多き魔女の為に [saga]:2011/10/20(木) 10:20:23.62 ID:KJXFjDli0
以上、シャルロッテ戦&クリームちゃんのトラウマ掘り起こし編でした。
そろそろ『まどか』要素の薄さが目に付いたので、裏パートにさや……オクタヴィアちゃん投入。
人魚の尾びれでどうやって海の無い幻想郷を歩くのか?って、こまけぇ事は(ry

>>48様のスペカ案の一部を使わさせてもらいました。
齧符「ブロンドヘアーモグモグ」は正直反則だと思います。
丁度その場面書いてる最中に見つけたので、思わず吹きましたよw
以下弾幕解説

 菓子符『ギャラクティカジャンボパフェ』 Hard-Lunatic
左右の画面中央と自機の居る場所の直下の下端を結ぶ太レーザーを展開し、その器の中に色違いの丸弾幕を積み上げる弾幕製のパフェ。
発動と同時に移動して、器の外に出てしまえば大して怖くは無い。

 探求『燻製チーズはあるかい?』
使い魔ピョートル(早苗曰く足つきオタマジャクシ)を召喚し、攻撃&チーズ探しをさせる。
ピョートルは左右に振れるレーザー(探知レーダー)を出し攻撃する。
難易度で出てくる数が変化。

 齧符 『ブロンドヘアーモグモグ』
所謂、マミらせる弾幕。それ以上でも以下でもない。
リグルキックとかそんな感じで

 願望 『ひとつきりのチーズケーキ』
ラストスペルなんだけど、発動成功確立がかなり低い。
魔力が減衰している後半戦だと発動確立は絶望的。
チーズにとことん縁の無いシャルロッテちゃんに誰か愛の手を……
95 : [saga]:2011/10/20(木) 10:23:47.44 ID:KJXFjDli0
ついでに進捗状況をば

白蓮&文 vs パトリシア (進捗率85%)

パチェ&咲夜 vs エリー (進捗率30%ェ……)

流石動かない大図書館のパッチェさん! 話も動かないぜ! ……orz

96 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/20(木) 18:40:34.83 ID:eAQUGeqU0
おっつん
続きは気長に待ってるよ
97 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/20(木) 18:58:30.65 ID:3M9TsYODO
色々とお忙しい中、続きの投下ありがとうございます!
シャル対アリス戦、楽しませて頂きました!とってもお菓子の魔女らしい弾幕でしたね。

それにしても、アリスがモグモグされなくて良かった…。あの恵方巻き、実際に当たったらどうなっちゃうんでしょうか?
98 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage]:2011/10/20(木) 19:29:09.65 ID:1NfBaFKi0
>>97
『ブロンドヘアーモグモグ』は命中したら強制ゲームオーバーって事かな
口の中で気力・体力・魔翌力などを全部吸われる、みたいな
99 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage saga]:2011/10/20(木) 20:24:33.99 ID:BxusSHlA0
ヒャッホゥ!採用ありがとうございます。シャルちゃんぬいぐるみ姿のまま救済されたのか…
齧符「ブロンドヘアーモグモグ」は正面安置と見せかけた初見殺し…だいたいイメージでした
そういえばパフェもデザートの定番だったぜ…さすが>>1は発想力が違うな。敬礼。

オクタヴィアちゃんはきっとゆらゆら揺れながら浮かんでるだよ多分!
戦闘の時にはあの仮面をつけたまま勝負をしかけてカッコつけちゃったりしてそう

>>97 『マミる』ならぬ『マガトる』んだよ多分!おそらくピチュるとは同義語


この前考えたワルプルさんのスペカをがんばって考察してみる 参考程度にどうぞ

愉符「オープニングパーティ」 Easy
踊符「アンティクスパレード」 Normal-Hard
宴符「スーパーセルフェスティバル」 Lunatic
楽しげな道化の行進と共に、終焉へのカウントダウンは始まる…『3』のないカウントダウンで有名な戦闘直前のアレ。
開始直後、カーテンのように弾幕が左右に広がり、右上から左下にかけて豪雨の如く魔弾が降り注ぐ。

光符「ブロッケンの怪」 Easy-Normal
彩符「カラミティハーローリング」 Hard-Lunatic
ワルプルギスの夜の後ろに映る七色の魔方陣。ドイツのブロッケン山で見られることで有名な虹の輪を表している。
背後に虹色の弾幕を輪状に展開して、放射状に拡散させていく。

祭典「ハロウィーンの舞踏」 Easy-Normal
大祭典「聖者の篝火」 Hard-Lunatic
『ワルプルギスの夜』とは神聖な儀式。聖女ワルプルガの遺品を移す日をそう呼ぶようになったとかなってないとか。
自機が停止していると弾幕の濃さが増すので、常に踊るように移動していないとピチュってしまう。

使い魔「高笑い道化役者」 Easy
使い魔「火炙り道化役者」 Normal
使い魔「血祭り道化役者」 Hard
使い魔「死狂い道化役者」 Lunatic
少女の姿をした黒い影の使い魔を召喚して弾幕を放たさせる。難易度が上がると使い魔の数が8体まで増えるよ!やったねワルちゃん!
ショットを撃てば弾幕の置き土産を残して消える。使い魔の耐久はぬえのUFO程度…か?

無力「くずれ近未来都市」 Normal
無力「こわれ人間的感情」 Hard-Lunatic
黒いハート弾幕を上から落下させる弾幕。弾幕はなかなか消えずに下のほうに溜まっていくため離れると危険。
ときどきでっかいビルの残骸みたいなモノが落ちてくるけどがんばって避けるべし。

舞台装置「魔法の因果律」 Easy-Normal
舞台装置「コーザリティーギアエンゲージ」 Hard-Lunatic
少女に絶望を与えるために、運命の歯車は冷徹に回り続ける…コーザリティーとは因果律。ギアエンゲージは噛み合う歯車。
螺旋状レーザーと歯車の回転弾幕。軌道が完全に決まっているため覚えてしまえばどうということはない。

悲劇「悪魔との契約」 Easy-Hard
戯曲「メフィストフェレスの歌」 Lunatic
ゲーテの戯曲『ファウスト』が元ネタ。契約して魂を捧げさせるあたり、キュゥべえとメフィストは似てるよね。
赤色の青色の弾幕が×を描くようにクロスしていき、下から紫色のレーザーが沸きあがってゆく。

災厄「超高速文明返し」 Easy-Normal
天変地異「オーバーターンハイパーソニック」 Hard-Lunatic
逆さまの人形が完全に正常位置に戻った時、暴風の如く飛び回って地上の文明を全てひっくり返してしまうんだとか。おお怖い怖い。
文みたいに凄いスピードで画面の上をビュンビュン。一回の移動で小粒な弾幕を少しばら撒く。でも高速で往復するから結局濃い。

絶望「タービッドソウルジェム」 Easy-Normal
絶望「濁りゆく少女の魂」 Hard-Lunatic
「生まれたての神霊」に似てる。上から雪のように虹色の中玉が降り注ぐ弾幕。グレイズすると停止し、黒く濁って爆散する。
一定時間経過すると微妙な追尾性能も付くので厄介。弾幕を浄化?そんな事はできないぜ。

終焉「魔女の饗宴」 Easy-Normal
   「ワルプルギスの夜」 Hard-Lunatic
これでラスト。最期に笑うのは、『魔女』か『魔法使い』か?そして夜明けは訪れる…お祭り騒ぎはそこまでよ。
魔女の周囲を使い魔が回り、歯車がリズムを刻み、吹き荒れる弾幕の嵐が『魔法使い』を絶望に包み込もうと迫り来る。
100 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/10/20(木) 21:23:56.78 ID:bdXwmhWU0
乙です!
足が無いなら浮かんでたっていいじゃないか、幻想郷だもの。
屠自古さんとか、あとはほら、えーと……まあいいや、そんな例だってあるんだし。

>流石動かない大図書館のパッチェさん! 話も動かないぜ!
あー、でもほら、萃夢想はともかく緋想天じゃそこそこ活動的だったじゃない。
特に今回は異変が異変だから少しくらいハッスルさせても違和感無いと思うの。

>>99
そうなると負けた後に壊れた仮面から素顔が覗くわけですねわかります。
ZUN絵で想像してみると……イナフ!なんていうかすごくイナフ!
101 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/21(金) 09:57:48.31 ID:lwML3X2DO
色々弾幕案が増えてきてるな、すっげぇぜ!

今のところ、出てない魔女で一レスしか案が来てないのは…エリー・ギーゼラ・ロベルタさんかな?これからどんどん増えて来るかな?
102 : [saga]:2011/10/22(土) 08:58:19.23 ID:Gg8d+0Bc0
おはようございます。

早速ですが、対パトリシア戦行きまーす!
103 :ステージ3 学び舎のダークサイド [saga]:2011/10/22(土) 09:01:34.55 ID:Gg8d+0Bc0
――――――――【密着!命蓮寺僧侶24時】 @ 人里の寺子屋――――――――――

文「寺子屋、ですか……。今日は休業日のようですね」

誰も居ない学び舎を見回しつつ、文がつぶやく。
白蓮が此処に来た理由は何となくだが、分かる。
発生場所がばらけている一連の事件のうち、なぜかこの寺子屋で発生する事件の件数だけ群を抜いて多い。
そして発生する事件自体も似通っていて、寺子屋での騒動に関しては同一犯の可能性が高いと文は踏んでいた。

文「とりあえず、現場写真を撮っておきますか、『“魔女”異変の舞台、狙われた寺子屋!』って感じで記事に出来ますし……」

そう言いつつ写真を撮り出す文。
対する白蓮は無言で教室の真ん中に立つ。

白蓮「居ますね。ここに……」

文「居るって、“魔女”が、ですか?」

写真を撮る手を止め、文は白蓮を見た。
白蓮は目を閉じると静かに手を広げる。

白蓮「ええ、救いが必要な迷える魂が此処に、確か居ます」

迷える魂が迷いついでに事件起こすとか性質が悪いなぁ……と文は思ったが、
今は異変解決にでた僧侶に密着取材している身なので黙っておく事にする。
104 :ステージ3 学び舎のダークサイド [saga]:2011/10/22(土) 09:03:27.67 ID:Gg8d+0Bc0

白蓮「ん〜、気配から察するにこの辺かしら……えいっ!」

                        べりっ

何もない虚空に手を伸ばしたと思ったら、何かを引っぺがすように手を動かす白蓮。
するとどうだろう、一部だけ剥かれた蜜柑の皮の如く、虚空に裂け目が生まれ、
その奥には寺子屋と似ているようで違う空間が形成されているのが見えた。

文(やけに可愛らしい掛け声で結界破ったーーーーーーーーーっ!?)

白蓮「身体強化の術をかければこの程度の結界は、障子紙同然ですよ」

文「いえ、それ無理です。貴女ぐらいにしか出来ません、って……」

白蓮「まぁ、そんな些細な話は置いといて、行きましょう! 迷える魂に仏の救いを……」

そういうと破った結界の中にずんずんと入っていく白蓮。
その後に続いて結界内に入りながら、『密着する相手間違えたかなぁ……』等と思う文であった。

105 :ステージ3 学び舎のダークサイド [saga]:2011/10/22(土) 09:05:34.00 ID:Gg8d+0Bc0
――――――――――――――――――――――――――――――――――――

結界の中は寺子屋と似たような施設になっていた。
机が並んでいて、教壇があって、部屋の前には大きな黒板があって……、
以前早苗に見せて貰った外の世界の寺子屋の写真がこんな感じだった気がする。

辺りをきょろきょろと見回していると、部屋の後ろ側のドアが開く音がした。
そちらを振り返ってまず見えたのは黒いセーラー服。

文「ああ、ここの生徒さんですか? 私たちは決して怪しい者では……」

言いかけて、文は言葉を詰まらせる。
目元まで隠れる長い髪のせいで一瞬分からなかったが、セーラー服を着た少女(?)には腕が4本もあったのだ。
一瞬ぎょっとして、それから此処が“魔女”の結界内だった事を思い出す。
考えてみれば、普通の少女が結界内部 (こんなところ) にいるわけが無いのだ。

白蓮「あら? 貴女は……噂に聞く妖怪・女郎蜘蛛さん?」

??「違います。 私はパトリシア、このクラスの委員長です。 と言うか貴方たちは何者ですか?」

白蓮「あら? 私としたことが申し遅れました。 私は聖白蓮、命蓮寺で僧侶をしております」

パトリシア「尼さんが何の用ですか? それに学校内(ここ)は生徒以外立ち入り禁止の場所ですよ?」

白蓮「ここに迷える魂が居るようなの。 私はその魂に仏の救いを授けに来たのです」

パトリシア「そうなんだ、じゃあ私生徒会行くね」
106 :ステージ3 学び舎のダークサイド [saga]:2011/10/22(土) 09:07:59.00 ID:Gg8d+0Bc0

話にならない、と言うように教室から出て行こうとするパトリシア。
が、一瞬早く、白蓮がその前に立ちはだかる。

白蓮「待ちなさい。 折角講師をしてあげると言うのに何処に行くつもりなんですか? “魔女”のパトリシアさん」

パトリシア「くっ、バレてたか……」

文(なんなんだろう、この茶番……)

パトリシア「とりあえず、そんな授業は要りません。帰って下さい」

白蓮「私にそうして貰いたいのなら、その主張をする前にやる事があると思うのですけど?
   まとめ役と言うなら、ルールを守る事の大切さは良くご存知でしょう?」

パトリシア「はぁ……、分かりました。 それじゃ、まずは場所を変えましょう」

パトリシアが言うと、結界内の景色が変わり始める。
部屋が消え、見渡す限り一面の青空が拡がる世界になる。
それと同時に、パトリシアの周囲に下半身のみの学生たちが現れる。
おそらく、式神か使い魔の類だろう。

パトリシア「言い忘れていたわ、私は“傍観”する委員長の“魔女”。
      後の事はクラスの皆に任せるわ。 それじゃあ私、傍観してるね」

白蓮「他者との関わりを絶ち、自身や周囲の問題すら傍観する。
  その姿勢、誠に利己的で、現実逃避であるッ! いざ、南無三――――!」


107 :ステージ3 学び舎のダークサイド [saga]:2011/10/22(土) 09:10:24.42 ID:Gg8d+0Bc0
――――――――――――――――――――――――――――――――――――

パトリシア「それじゃあ早速行くわよ」

開幕早々下半身学生使い魔を大量召喚し、早速スペルを発動させようとするパトリシアを見ながら、文は思案した。
相手は委員長の魔女、と名乗った。
外の世界に居た早苗によると、委員長と言うのは学校内でのまとめ役の人を言うらしい。

と、言う事は大量の使い魔を一子乱れぬ統率でもって操り、相手を追い詰める弾幕が来るに違いない。

そう、文は踏んだのだが……


                      宣告 『お前の席無いから』


スペル宣言と同時に、使い魔の手に椅子や机が現れた。
ソレも魔力で作られた概念的な何か、ではなく本物のソレが、である。

文「えっ?」

使い魔は大きく振りかぶると手にした椅子や机を放り投げてきた。

文「エェェェ(;´д`)ェェェ!?」

白蓮「新聞屋さん! 来ますよ!」

あまりの事態にぎょっとしている文の襟を掴み、白蓮は真横に跳躍する。
結果、二人に当たる事なく後方に飛んでいった椅子や机は結界の壁にぶつかり、音を立ててくだけ散る。
108 :ステージ3 学び舎のダークサイド [saga]:2011/10/22(土) 09:13:06.26 ID:Gg8d+0Bc0

文「ちょっ、ちょっとぉ! 私の聞いた委員長、って言うのはもっと知的なイメージでしたよ!?
 なんでこんな物騒な弾幕(物理)撃ってくるんですか!?」

飛んでくる机をかわしながら文は悲鳴に近い声で問い掛ける。

パトリシア「私の学校、底辺校でね。 荒れてたのよ」

文「いやいやいや、止めましょうよ!」

パトリシア「最初は止めたわ。 でもね……」

パトリシア「見てるだけなら巻き込まれないし、端から見る分にはなんの不都合もなかったから止めるのをやめたの」

文「うわぁ……」

ダメだこりゃ、と文は思った。
パトリシアが通っていた学校を底辺校だと言うなら、パトリシア自身は間違いなく底辺委員長である。

パトリシア「理解できない、って顔ね。 なら分からせてあげる。 どんな恐怖も見なければ、触れなければ怖くないのよ」


                      処世 『見ず聞かず関わらず』


突然文の周囲が暗転する。
少し離れた所にいた筈の白蓮すら見えなくなり、あれほど響いていた机の壊れる音もパタリと止まる。

文(ちっ、視界と聴覚を潰されましたね……)

舌打ちしつつ愚痴るように呟いたつもりだったが、それすら耳には聞こえない。
さて、どうしたものか……

文(さっきの弾幕(物理)は自機狙いオンリーでした。 だから絶えず動いていれば問題ありませんでしたが……)

文(この場合は動かない。 もしくは目の前に来たらちょい避け、が正解ですかね……)

長年の経験と勘からそう判断した文は、圧倒的に小さくなった視界の中で最大限の注意を払いながら、その場にとどまり続けた。

109 :ステージ3 学び舎のダークサイド [saga]:2011/10/22(土) 09:15:46.38 ID:Gg8d+0Bc0
――――――――――――――――――――――――――――――――――――

パトリシア「そうそう、ソレが正解よ鴉さん。 鳥にしては賢いじゃない」

文が一切の動きを止めたことを察知したパトリシアは気分が良かった。
文の行動はパトリシアの予想そのままだったからだ。

パトリシア「周囲でどれだけ恐ろしい光景が展開していようと、関わるのを止めれば自身の平穏は保たれるのよ」

白蓮「あら? 随分と後ろ向きな考えですね」

ほら見たことか!という気持ちを隠そうともせずに嘲笑していたパトリシアは、次の瞬間背後から聞こえた声に思わず戦慄した。

パトリシア「なっ!?」

振り返った先に居たのは他でもない聖白蓮、その人だ。

パトリシア「あの視界ゼロの中をどうやったら此処まで来れるのよ!?」

理解できない事態に慌てて距離をとるパトリシアをよそに、白蓮は諭すように言う

白蓮「周囲との関わりを絶てば確かに平穏になるのかもしれません。
  ですが、そんな平穏など所詮まやかし、どんな闇も切り開かなければ決して晴れる事はないのです」

パトリシア「くっ、分かったような口をッ! なら、貴女にはこんなのはどう!?」


                      絶望 『学級内生前葬』


この時、パトリシアが発動させたスペルは、実はラストスペルとして使うつもりの物だった。
だが、あまりにも桁違いの戦闘力と精神力を併せ持つ白蓮の姿が、彼女にこのスペルの前倒しを決意させた。

パトリシア(この尼は危険すぎる! これ以上何かされる前に、この尼だけでも潰してみせる!)

事実、それが出来るだけの力がこのスペルには秘められていた。
パトリシアの用意したスペルの中で、最も強力で、最も残酷で、最も強い念のこもったスペル。それがこのスペルだった。
これから展開される光景はこれまで以上にかなり堪えるモノになる筈だ。特に真摯な仏教徒である白蓮にはかなりのショックになるに違いない。

パトリシア(あの尼さえ倒してしまえば、後は五月蝿い鴉をゆっくり仕留めれば良い。この勝負、勝たせて貰うわよ)

110 :ステージ3 学び舎のダークサイド [saga]:2011/10/22(土) 09:18:42.54 ID:Gg8d+0Bc0
――――――――――――――――――――――――――――――――――――

パトリシアがスペルを発動させてまず現れた弾幕は花瓶に入った花の弾幕だった。
襲い掛かる弾幕を回避しようとした白蓮の脳裏にある光景が浮かび上がる。

白蓮(これは……弾幕に込められた念? っ!? この光景は!?)


最初は花瓶

―――朝、登校して来て目に付いた、自身の机の上に置かれた、白い菊の花の入った花瓶。


次は写真立て。

―――移動教室から戻って来たら置いてあった、白黒の写真が入った額縁


更にその次は位牌

―――昼休みが終わって戻ると、置いてあったのは自分の名が入った位牌


白蓮「これが今の現世の姿ですか……、
  妖怪を迫害し、神をも追い出した人間は、遂にその矛先を同じ人間に向けてしまったのですね」

弾幕を避ける度に浮かぶ残酷な光景を、しかと脳裏に焼き付けながら、白蓮は飛ぶ。

白蓮「ならば私は此処で墜ちる訳には行きません! 人の心が、人の心であるうちに、
  他者の痛みも理解できぬ真の亡者となる前に、正しい教えを此処で説いて聞かせます!」

進む度に密度を増し、すぐ脇を掠める弾幕が増える中、それでも尚、白蓮は飛び続ける。

飛び交う弾幕の中を真一文字に飛び続け、そして……、

パトリシア「なんで……、なんで貴女はあんな中を――――」


                    臆することなく飛び込んでこれるの?


白蓮「それは、それこそが人が本来持つ強さだからです。
   どんなに暗かろうとも、強く求め続ければ一筋の光明を得る事も出来るのです!
   受け取りなさい、これが私の、仏の救いです!」


                      吉兆 『極楽の紫の雲路』

111 :ステージ3 学び舎のダークサイド [saga]:2011/10/22(土) 09:20:48.30 ID:Gg8d+0Bc0
――――――――――――――――――――――――――――――――――――

文「どうやら、決着が付いたようですね」

遥か前方の青空に紫の雲が生まれるのを眺めつつ文は呟いた。
パトリシアはおそらく白蓮の迎撃で手一杯だったのだろう、暗闇と無音のスペルが解けた後、
文は使い魔を散々撃破して回ったが、最初の頃の切れ味は最後まで戻ることは無かった。

結界が解け、見慣れた幻想郷の空が頭上に広がる。
結界という異空間の中で弾幕戦をする内に、寺子屋の外まで出てきてしまったようだ。

今頃、あの二人は何をしているのだろうか?
パトリシア相手に説法でもしているのだろうか? 或いは弾幕で負った傷の手当てをしているのかもしれない。
とりあえず、まずは二人の下へ行ってみよう。

文「行ってみて、お二人に話を聞かない事には、記事を書けませんしね」

果たして二人は話してくれるのだろうか?
まぁ、話してくれなかったとしても、記事にはするのだけれど……


文「それにしても、悪戯で葬式の真似事をした様を描いた弾幕を放った相手に説いた救いが、
 臨終の際に現れる仏様ですか……、白蓮さんも冗談きついですねぇ……」

多分、そんなつもりは無かったんだろうな〜、と思いつつ、
天然な人の相手はこれだから疲れるんですよね〜、と肩を落とさずには居られない文であった。



――――――――――――――――――――――――――――――――――――

ちなみに、これはまったくの余談なのだが、魔女異変が解決した数日後、
文が魔女一同に取材(と言う名の弾幕戦)を行ったとき、黒髪のセーラー服少女の放った弾幕は、
かつての異変で披露された、暗く暴力的なモノではなく、
明るく楽しい学園生活を模したものだったそうで、取材を終えた文はたいそうご満悦だったそうだ。


112 :ステージ3 学び舎のダークサイド [saga]:2011/10/22(土) 09:23:29.13 ID:Gg8d+0Bc0
――――――――――――――――――――――――――――――――――――

妖夢「こっちの準備は整いました。 いつでもいいですよ〜」

オクタヴィア「ん、じゃあ行っくよ〜、スペルカード発動!」

庭の方から聞こえる、オクタヴィアちゃんと妖夢さんの声。
新作のスペルカードを作ったと言うオクタヴィアちゃんたっての希望で二人は今、模擬の弾幕戦をしている。

これまでの“魔女”仲間と幻想郷の人たちとの弾幕戦を見て、閃く物があったらしい。
オクタヴィアちゃんは既に幾つかのスペルを持っているが、これで良好なら更に追加すると言っていた。

それなのに、私は、と言えば……

幽々子「何をそんなに落ち込んでいるの? クリームヒルトちゃん」

クリームヒルト「あっ、幽々子さん……、
       オクタヴィアちゃんも他のみんなも、みんな自分のスペルを作って使ったりしてるのに、
       私だけまだスペル一個も思いついてないから……」

幽々子「周りに置いて行かれたようで、不安になってしまった?」

幽々子さんの言葉に、私は小さく頷く。
頷きついでに俯く私の肩に、幽々子さんがそっと手を添える。

幽々子「焦る必要なんて無いのよ。 焦って作ったって良いスペルは出来ないわ」

クリームヒルト「で、でもっ!」

思わず顔を上げる私。
それに対し、幽々子さんは落ち着いた思案顔で告げる。

幽々子「ん〜、さっきの尼と委員長さん? の弾幕戦とか良いお手本だと思ったんだけどなぁ……」
   クリームヒルトちゃんは、弾幕(スペル)についてちょっと、勘違いしてるみたいね」

クリームヒルト「勘違い?」

幽々子「弾幕戦、と言うか弾幕の本質……真髄、と言ってもいいわ、がまだ良く見えていないようね」

クリームヒルト「う〜、ごめんなさい」

幽々子「あら? 責めるつもりではなかったの、だから謝る必要なんて無いわ。
   そうね、これは弾幕戦の先輩からのアドバイスだと思って頂戴」

幽々子「弾幕に於いて最も重要な事、それは…………」

113 :ステージ3 学び舎のダークサイド [saga]:2011/10/22(土) 10:03:48.17 ID:Gg8d+0Bc0
以上、白蓮さんマジ金八先生な対パトリシア戦でした。
南無三の前に来る口上と四字熟語が今回一番の難産だったのは公然の秘密。

パトリシアは学級崩壊な暗黒スペル(>>64-65様)と、学園天国なイベントスペル(>>69様)の両方が集まっていたので、
かなり悩みましたが、こんな形に落ち着きました。
学園天国スペルをご期待していた皆様は、是非とも今後の委員長の活躍に思いを馳せてあげて下さい。


パトリシアの容姿に関して、首から上が無いのが委員長の特徴なのは重々承知していましたが、
東方的にどうなのよ?と思ったので、容姿を特定出来ない程度の顔を付けさせてもらいました。
委員長は首なしじゃなきゃイヤだ!って人は作り物を付けてたとか、色々脳内補完願います。

なお前回質問?のありましたシャルロッテちゃんですが、ぬいぐるみモードは擬態で、人型モードもきっちりあります。
裏設定メモにしっかり書いてあったのにどうして書き忘れたし……orz


最後になりましたが、弾幕解説を

 宣告『お前の席無いから』
物理弾幕(グレイズ不可) 当たるとマジで痛い。
召喚した使い魔に椅子や机を投げさせる弾幕、所謂砲台。
基本自機狙いなので、良く見て避けていれば回避は楽。
ただし、壁に当たった椅子や机はバラバラになって壊れるので、壁際にいると、破片の巻き添えをくう事も

 処世『見ず聞かず関わらず』
わずかばかりの視界しか得られず、弾幕発射音すら途絶える鬼畜スペル。
みすちーの上位互換。なお、こちらから攻撃しなければ、位置がばれないのでめったに弾は来ない。
撃ち合いしたい場合は気合でガンバ

 絶望『学級内生前葬』
精神的&物理的(ピチュる的な意味で)に殺しかかる別の意味での鬼畜スペル。
献花に始まり、遺影、位牌としつこくめまぐるしく襲い来るスペル。
屈してその場にくず折れるか、立ち向かい打破するかはあなたの行動次第である。
114 : [saga]:2011/10/22(土) 10:12:31.59 ID:Gg8d+0Bc0
恒例の進捗状況

パチェ&咲夜 vs エリー (進捗率150%)

もとい、

パチェ&咲夜 vs エリー&イザベル(進捗率75%)

文&白蓮 vs ギーゼラ(進捗率0%) ←NEW!

パッチェさんが、パッチェさんが動いた!
あれだけ動かなかった大図書館が一晩で見事な移動図書館に大変化だよ!

と、思ったら、その次に来るはずだったイザベルさんが参戦していた。
どうしてこうなったェ……
115 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/22(土) 10:30:27.38 ID:aSCGdrgDO
増えたw
116 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage]:2011/10/22(土) 10:40:11.01 ID:NZWDvMZz0
まさかのタッグ戦w
117 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/22(土) 11:06:20.64 ID:ZUkyhH9DO
早くも続きが!ありがたい限りですね〜。
やはり聖様は素敵で凛々しいお方だった!文は残念ながらオマケみたいなもんでしたね。

パトリシアさんは確かに女郎蜘蛛に見えない事もないかも?そして某生徒会長のスルースキルがww

アフターストーリーの方も広がってくれると嬉しいですな。
118 : [saga]:2011/10/22(土) 11:43:00.68 ID:Gg8d+0Bc0
あ、変に誤解させちゃう前に訂正。正しく表記すると……

パチェvsエリー & 咲夜vsイザベル(進捗率75%)

となります。

>>117
文はあくまで密着取材している記者なので今回はこうなりました。
さて、>>114の対戦表、良く見ると次々回の対戦は……
119 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage saga]:2011/10/22(土) 12:31:55.50 ID:tyLqM+ZP0
起きてみたら来てるしネタ拾ってくれてるしでヒャッホーイ。
あややの度肝を抜いたことで満足っスww

文花帖編も期待していいのかな?かな?(チラッ)

次はパッチェさん大ハッスルあやや大ハッスルですねわかります。

レミリア「こんなに嬉しいことはない……っ!」
フラン「死んじゃうよ?下手したら死んじゃうよお姉さまあのテンションだと!?」

アリス「めでたいわ……ええ本当におめでとうパチュリーウフフフフ……」
魔理沙「なんか含んでるだろ怖いぜアリス!?」

>シャルロッテちゃんですが、ぬいぐるみモードは擬態で、人型モードもきっちりあります。
つまり撃破時に擬態が解けたと補完すればいいわけですな。
秋神の社に縛り付けられたぬいぐるみシャルちゃんも良いものだ……
120 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage saga]:2011/10/22(土) 16:51:22.58 ID:lZRTT6/30
そうなんだ、じゃあ>>1乙してくるね
スペカ案が採用されなくても俺めげないぜ…>>1が使いやすい案を取り入れていけばいいのさ
シャルちゃん人型モードか…恵方巻きは雲山的なアレになるんだな!

救済されて幻想郷に来た魔女の中でも、パトリシアはまだ呪いを孕んでたって事なのかねぇ
ゲルトルートが一番弾幕戦を楽しんでた感じかなぁ。シャルちゃんがまるでゲームがクリアできない子供みたいで可愛いぜ…

次はエリー&イザベル…だと? トラウマ想起&パクリ弾幕か…さとりん?
文&白蓮VSギーゼラも期待。つーか全員めっちゃ素早いよ! さりげなく(妖怪の)山VS海と朝日VS夕日になってるよ!
121 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage saga]:2011/10/23(日) 00:40:16.55 ID:zIjwcXjN0
頭捻ってひり出した名前だけだった本編未登場三魔女衆のスペカちょこっと(名前と元ネタのみ)。


暗闇の魔女 Suleika(性質:妄想、使い魔の役割:夢)

黒符「スワロウインブラック」Easy
漆黒「光無きゆえの安寧」Normal-Hard
願望「胎内へ至る暗闇」Lunatic
・ツバメじゃないよ丸呑みだよ。

妄符「独善的で不幸な被害者」Easy-Normal
妄想「ハローバットボーイ」Hard
妄想「リリーフフロムパラノイア」Lunatic
・アニメ「妄想代理人」から。

思慕「フォンドネスダークナイト」Easy-Normal
忌避「ディスガストアトドーン」Hard-Lunatic
・資料「朝など来ません。夢ばかり見てる。永遠に私の周りはよるのまま」から。ドーンは喪黒でなく曙光です。

夢符「まどろみの楽園」Easy-Normal
夢路「暗夜の通い路」Hard-Lunatic

「胡蝶の園」Normal-Lunatic
・「荘子」から。


犬の魔女 Uhrmann(性質:渇望、使い魔の役割:インテリア)

縋符「スナグルサムワンズフィート」Easy-Normal
咬縋「バイトバイハンガーフォアラブ」Hard-Lunatic

箱符「プリーズテイクミーホーム」Easy-Normal
箱書「ひろってください」Hard-Lunatic

濡符「スクエアクラウド」Easy-Normal
濡犬「箱の中の雨空」Hard-Lunatic

無機「立ちんぼうの通行人」Easy-Normal
無機「マネキンマスターズ」Hard-Lunatic

渇望「フーイズマイビラブド?」Easy-Lunatic


落書きの魔女 Albertine(性質:無知、使い魔の役割:童心)

書符「オープンスケッチブック」Easy-Normal
書出「まっさらな紙の上」Hard-Lunatic

塗符「ゴーゴークレヨンズ」Easy-Normal
塗潰「ブルームクレヨンズ」Hard-Lunatic

忘符「ネセシティトゥクリーンアップ」Normal
欠如「お母さんのため息」Hard-Lunatic

待符「この指とまれ」Easy-Lunatic
・一緒に遊んでくださいいや本当に。

孤符「ロンリネスオブウィッチ」Easy-Normal
孤符「やってこない遊び友達」Hard
孤遊「ひとりかくれんぼ」Lunatic
・あのボンクラ使い魔たちは本当に……


……やっぱりムズい。使い魔とか結界が分かっているだけいいけれどもクタビレタ。
とりあえず公式ガイドにすら姿が載らなかったAlbertineちゃんマジ不憫。
Suleikaさんは本人より使い魔の方に引っ張られちゃった気ががが反省。
そしてこの中で一番優遇されてるはずのUhrmannたんが難産だったよう。
122 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/10/23(日) 00:56:59.78 ID:zIjwcXjN0
っと、解説追加。

縋符「スナグルサムワンズフィート」Easy-Normal
咬縋「バイトバイハンガーフォアラブ」Hard-Lunatic
・スナグルは縋る。日常22話の悲劇が……

無機「立ちんぼうの通行人」Easy-Normal
無機「マネキンマスターズ」Hard-Lunatic
・無機よりも使い魔のほうが良かったかしらん。

渇望「フーイズマイビラブド?」Easy-Lunatic
・そもそも愛って何ですか?

忘符「ネセシティトゥクリーンアップ」Normal
欠如「お母さんのため息」Hard-Lunatic
・無知な彼女は汚れた部屋もお母さんの手間もそっちのけ、で許されるのはイージーモードまで。
123 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/10/23(日) 01:06:18.22 ID:zIjwcXjN0
わー違う違う!>>121訂正。
スナグルは縋るんじゃなくて擦り寄るんです。
124 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/23(日) 09:39:35.76 ID:1vIntW9SO
幽々子に死亡フラグが立ってるな…
125 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/23(日) 13:33:31.52 ID:S5RjEKcDO
3つと少なくて申し訳ないですが、ギーゼラさんの弾幕を考えてみました。恐らくネタ被りが起こっていると思います。
もし気に入られた部分がありましたら切り貼りして使ってやって下さい。

曲符「ドリフトタイヤトラック」(トラックは跡の意)画面上端左右から、タイヤを模した弾幕を交互に反対側にドリフトさせ、その軌跡に合わせて黒いレーザーを発生させて中速で画面下に落とす。

反射「存在顕示リフレクター」
周囲に8個の反射板を中速回転させる。自機の弾が反射板に当たると、青白く短いレーザーに変わって反射される。たまに反射板から長いレーザーを発射する。
常に存在を意識してもらえないと、いつ轢かれるか…

遠心力「ランナバウト・イン・グローブ」(グローブは球状の意)
相手共々作り出した巨大な球体に閉じ込め、高速で走り回りながら上(球体中心部)に向けて粒弾を中速でばらまき続ける。
サーカスやバイクショーでたまにやってる球の中でバイクを走らせるアレが元。

自分の圧倒的な無知が悲しくなってきますね。
126 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/10/24(月) 02:06:13.67 ID:ffKbyTSAO
会劫「ニンフの残響」
失望「希望的観測の反転」
絶望「黒黒黒黒黒黒」
弦葬曲「末路唄・奏」
櫻花「極楽蝶一片」
恋文「愛し愛しと云ふ心」
127 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/10/24(月) 02:08:16.48 ID:ffKbyTSAO
うわあああああ間違えたスイマセンスイマセン
誤爆じゃないけど誤射です誤報です
忘れてー!
128 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/24(月) 10:18:16.23 ID:NKA8g4Yu0
>>127
お前ちょっとかわいいな
129 : [saga]:2011/10/24(月) 17:41:27.82 ID:1Ra67Tjl0
パチェvsエリー & 咲夜vsイザベル 戦、投下します。
130 :ステージ4 ラクトメモリー 〜記憶密室〜 [saga]:2011/10/24(月) 17:44:48.09 ID:1Ra67Tjl0

――――――――【七曜の魔女と瀟洒なメイド】 @ 魔法の森―――――――――――

咲夜「パチュリー様、こんな森の中に入ってどちらに行かれるつもりなのです?」

人里離れた森の中、森の奥にずんずんと入っていくパチュリーの背中に、咲夜は問い掛けた。

パチュリー「もうすぐ着くわ、あてもなく歩いている訳じゃないから安心なさい」

咲夜「御意に」

それから暫く、草を掻き分けつつ行軍していたが、ある時急に視界が開けた。
森の中にポツリと現れたら原っぱ。
その中央には、木や蔓に覆われた鉄骨の塔が鎮座している。

咲夜「これは……?」

パチュリー「電波塔、と言う外の世界の通信施設よ。 少し前に外の世界から流れ着いたそうよ」

咲夜「電波塔……、これが……」

パチュリーの言葉に咲夜は少し前に神社で霊夢がそんな話をしていた事を思い出した。
元々、かなり老朽化した代物だったそうだが、妖精の悪戯でわずか数日にしてこんな姿になってしまったらしい。

咲夜「それで、ここがどうかしたのですか? ここは事件現場ではないと聞いていますが?」

パチュリー「直接の現場ではないわ。 咲夜、紅魔館の別館であった引き篭り事件は覚えてる?」

咲夜「勿論です。あの時は大の大人が酷い恐慌状態になっていて、落ち着かせるのも一苦労でしたから」

それは昨今頻発する魔女事件の中で、唯一紅魔館が舞台となった事件。
湖の方から必死の形相で逃げてきた男性が、紅魔館に駆け込んできたのは3日前の日没直後の事。
その様子にただ事ではないと判断し、最初に応対しようとした紅美鈴を男性は錯乱した様子で殴り倒し、そのまま別館に立て籠ったのだ。
131 :ステージ4 ラクトメモリー 〜記憶密室〜 [saga]:2011/10/24(月) 17:49:31.51 ID:1Ra67Tjl0

パチュリー「なぜ恐慌状態だったのか? と言う話は聞いている?」

咲夜「一応、後日新聞屋から聞きました。 なんでも過去のトラウマが急に甦ったとか……」

聞くところによると、恐慌状態に陥った男性は、幼少の頃、夜道を歩いていて妖怪に襲われ、一晩中逃げ回った経験があったそうだ。
今となっては単なる笑い話、の筈だったのだが、あの日に限って何故か当時の恐怖がまざまざと甦り、あんなことになってしまったらしい。

パチュリー「そうね、そんな所よ。 ところで咲夜、その話にはちょっと変わったところがあってね。
     引き篭った人が”魔女”と会ったのは、引き篭る直前ではなく、数時間から半日のタイムラグがあるのよ」

咲夜「? どういう事です? 頃合いを見計らった、とでも?」

パチュリー「それもあり得るわね。 会ってすぐ恐慌状態にしたのでは犯行がすぐに露呈してしまう。
     捕まる可能性を低くするためにもある程度離れる必要があった」

咲夜「少し離れた所から見張っていた?」

咲夜が言うとパチュリーはそれを直ぐに否定する。

パチュリー「いいえ、それじゃあ私たちみたいな実力者に直ぐに感知されてしまうわ。
     “魔女”はもっと離れた場所から術を発動させたのよ」

咲夜「超遠距離遠隔操作呪式ですか? ですがそれこそ直ぐに感知されて……」

パチュリー「そこで、この外の世界の通信施設が出てくるのよ」

咲夜「!?」

パチュリーの言葉に咲夜もはっとした。
そう、それならばこの施設は……

パチュリー「この施設は電波塔……、魔力的要素は一切ない、科学的送受信施設よ。
     私たちに悟られず物事を進めるならこれ以上適した施設は無いわ」

咲夜「…………」

パチュリー「こんなところに篭って、魔法使いの株を暴落させた落とし前、きっちりつけさせてもらうわよ」

132 :ステージ4 ラクトメモリー 〜記憶密室〜 [saga]:2011/10/24(月) 17:52:11.40 ID:1Ra67Tjl0
――――――――――――――――――――――――――――――――――――

蔓に覆われた電波塔の中で、塔の直下に建てられた小屋の扉だけは蔓が這っていなかった。
此処に誰かが出入りしているのは間違いないようだ。
錆が浮いているドアのノブに軽く手をかけてみる。
どうやら鍵はかかっていないようだ。

パチュリー「開けるわよ?」

咲夜「あら? パチュリー様、少々お待ちを、中から何か音がします」

パチュリー「音? どんな音が聞こえるの?」

咲夜「カタカタと何かを叩くような音です。 何をしているのかまではよく分かりませんが、中に誰かいるのは間違いないです」

パチュリー「また呪を操っているのかしら? だとしたら急がないといけないわね」

二人は互いに顔を見合わせると、頷きあった。
次の瞬間、パチュリーは勢いよくドアを開け放つ。

パチュリー「そこまでよ!」

そのままの勢いで小屋に突入すると、中にはこちらに背を向けるツインテールの少女の姿が……

??「…………」 カタカタカタ……

パチュリー「?」

かなり大声で怒鳴り込んだ筈なのに、箱っぽいモノに向かったまま全く反応を見せない少女。
想定外の反応にパチュリーが眉をひそめていると、何かに気付いた咲夜が囁きかけてきた。

咲夜「パチュリー様、どうやら彼女は耳に詰め物をしているようです。 おそらく聞こえていなかったのでしょう」

パチュリー「詰め物? ……ああ、イヤホンね」

咲夜に言われ、少女の耳を見たパチュリーはすぐさま納得する。
イヤホン、確か耳に突っ込んで、一人で音楽を楽しむ道具、とパチュリーは記憶していた。
ちなみに情報源は外から流れ着いた本と、実際に同じものを使っていた早苗だ。
133 :ステージ4 ラクトメモリー 〜記憶密室〜 [saga]:2011/10/24(月) 17:54:47.90 ID:1Ra67Tjl0

パチュリー「人がこうして乗り込んできたのに、無視するとは良い度胸ね……。そっちがそのつもりなら、こっちにも考えがあるわよ」


                      水符 『プリンセスウィンディネ』


水の魔法を発動させ、それを少女の頭の上から一気にぶっかける。

??「ひゃっ!? 冷たっ!? って、私のパソコンがっ!?」

水をかけられ、飛び上がらん勢いで驚いた少女は、直後に煙を吹き出し始めた箱を見て、悲鳴をあげる。

??「……完全にショートしてる……、私の秘蔵お宝画像がぁ……」

がっくりと膝を突く少女、暫らくそのままの状態で呆然としていたかと思うと、
やがて全身を震わせつつ、ようやく振り向いた。

??「いきなりこんな残虐非道なマネをするなんて……、一体どこの誰よ!?」

パチュリー「幻想郷の魔法使い、パチュリー・ノーリッジよ」

怒気の孕んだ声を上げる少女に対し、パチュリーは極めて落ち着いた声音で答えた。
もちろん悪びれる様子など一切無い。
一方の少女は、と言うとパチュリーの名乗りを聞いた途端、慄くように後ずさった。

??「魔法使い……って、えっ、ウソ、特定された!?」

??「見つからないと思ったのに……、なんでバレたんだろ? はっ!? もしや貴女も引き篭り?」

パチュリー「私は単なる喘息持ちよ。決して引き篭りなどではないわ」

咲夜(大して変わらない様な気が……)

毎日毎日地下大図書館に篭って読書に耽っているパチュリーの姿を見ている咲夜はそう思ったが、
口にも顔にも出さず、その様子を見守っている。
134 :ステージ4 ラクトメモリー 〜記憶密室〜 [saga]:2011/10/24(月) 17:57:27.39 ID:1Ra67Tjl0

持ってきた魔導書の頁を開きつつ、パチュリーが問う。

パチュリー「それは置いといて、一応聞いといてあげる。 貴女、名前は?」

??「……エリー、箱の魔女、エリーよ」

パチュリー「…………偽名ね?」

エリーと名乗った“魔女”の言葉をパチュリーはすぐに切り捨てた。
図星だったのか、エリーはぎょっとしたような顔でパチュリーを見る。

エリー「っ!? なんでバレたの!?」

パチュリー「挨拶代わりに呪いを……と思ったのに発動しないからよ」

エリー「ひどっ! 他人の事言える立場じゃ無いけどひどっ!」

私そろそろ泣くよ!? と声を荒げるエリーに対し、パチュリーは鋭い視線を向ける。

パチュリー「何故かしらね? 私の勘が告げてるのよ、『まともに相手するな、速攻で潰せ』 って……」

エリー「あー、魔法使いさん。 貴女の勘、正しいわ。 だって……」

パチュリーの言葉に、エリーはそれまでの涙目になりそうな態度から一転してどす黒い笑みを浮かべてみせる。 
刹那、眩い閃光が辺りを包む。


                      読込 『スキャンユアメモリー』


エリー「貴女たちの記憶(メモリー)だいぶ読ませて(ダウンロードさせて)貰っちゃったし」

咲夜「っ!? パチュリー様!?」

閃光が収まると同時に、彼女にしては珍しい上ずったような咲夜の声がしたかと思うと、パチュリーと咲夜の間に半透明の壁が構築される。
パチュリーだけ、“魔女”の結界内に取り込まれてしまったようだ。
135 :ステージ4 ラクトメモリー 〜記憶密室〜 [saga]:2011/10/24(月) 18:00:24.91 ID:1Ra67Tjl0

パチュリー「面倒な事になったわね……、初っ端からもっと強い術を撃つべきだったかしら?」

エリー「ふふ、貴女たちは今日、私に新たなトラウマを植え付けられるのよ」

先ほど水をぶっかけて壊したモノと同じ箱がエリーの手元に現れる。
現れた箱を操作しつつ、エリーが笑う。

エリー「ふーん、読書の虫な引き篭りなんだ、貴女……随分と時代遅れね」

パチュリー「電気が無いとなにも出来ない低級引き篭りに言われたくないわ」

手元の本をめくり、エリーの持ち物が電気演算処理装置――即ちパソコンである事を突き止めたパチュリーも鼻で笑ってみせる。
因みにどちらも検索時間はほぼ同じくらいだ。

エリー「…………」

パチュリー「…………」

なんとも言えない空気が流れる。
見る人が見れば、二人の間に火花が散っているのが見えたであろう、そんな空気だ。
暫らく睨み合っていた二人だが、先にエリーの方が肩をすくめてみせる。

エリー「まあ良いや、こっちには読み取った貴女の記憶があるし、これからたっぷりとトラウマ地獄を味わせてあげる」

パチュリー「貴女、随分と悪趣味ね……」

エリー「いきなり呪いをかけようと試みる魔法使いには言われたくないわ。 それじゃ、行くわね」


                      恐符 『フォーオブアカインド』


発動と同時に、パソコンが4つに分裂し、そのモニター画面に人影が映し出される。
画面に映ったのか誰なのか、一瞬過ぎて判別する間も無かったが、始まった弾幕を見てパチュリーはげんなりした。

最初に現れた弾幕は見慣れた、けど見たくはない紅魔館組(身内)の弾幕。
手加減と言うものを中々覚えない、親友の妹――フランドール・スカーレットの定番弾幕が発動したのだ。

パチュリー「ホント、悪趣味過ぎて反吐が出るわ……」


136 :ステージ4 ラクトメモリー 〜記憶密室〜 [saga]:2011/10/24(月) 18:05:44.99 ID:1Ra67Tjl0
―――――――――― 【十六夜咲夜 @ 結界外】 ―――――――――――――

咲夜「パチュリー様! パチュリー様っ! ……くっ、聞こえない、か……、結界をどうにかして壊さないと」

結界外からの呼び掛けは、効果が無いと悟った咲夜は得物であるナイフを取り出した。
そのまま、ナイフを結界に投げつけようとして……、咲夜はそのナイフを自身の背後に投擲する。

??「あら? 随分と鋭いメイドさんね。」

咲夜「貴女も……よく今まで気配を完全に殺せましたね」

振り返るとかぼちゃスカートを履いた石像のような少女……いや、動く少女の石像が居た。

??「見ての通り、私、石像ですから……。このまま隠れていても良かったんだけど、エリーの邪魔をさせる訳には行かないから……」

咲夜「ここで相手になる、と?」

??「そうよ、瀟洒なメイドの十六夜咲夜さん」

咲夜「っ!? どうして私の名前を……!?」

名乗った覚えも無いのに名を当てられ、咲夜は一瞬身構えたが、すぐにある事実に思い当たり、笑みをこぼす。

咲夜「……なるほど、さっきの“魔女”と貴女とで情報を共有し合っているのね」

エリーと名乗った“魔女”が、咲夜たちを結界で分断する前に放ったスペル――『スキャンユアメモリー』。
スペル名を直訳すると、 『貴方の記憶を詳しく調べる』 つまり、読心だ。

目の前の“魔女”が現れたタイミングから考えて、二人が共闘していたのはほぼ確実と言っていいだろう。
そうなると、エリーが得た他者の情報を二人で共有し合っていた可能性も、かなり高いと言える。

??「ご明察よ。 そんな賢いメイドさんにご褒美として私の事をちょっとだけ、教えてあげる。
  私はイザベル、虚栄の芸術家な“魔女”よ」

咲夜「ご丁寧にどうも」
137 :ステージ4 ラクトメモリー 〜記憶密室〜 [saga]:2011/10/24(月) 18:08:47.69 ID:1Ra67Tjl0

イザベル「それにしても貴女、いい弾幕(モノ)を持っているのね。羨ましいわ……
     ねぇ、メイドさん。 その弾幕、私が貰ってあげるから今すぐこの場で死んでくれない?」

咲夜「私に命令出来るのはこの世にただ一人しか居ないの。 貴女の言い成りにはならないわ」

イザベル「なら、力ずくで死んでもらうわ、自身が作った美しい弾幕でその命を散らせなさい」


                      始筆 『ドローオンザカンバス』


咲夜「?」

イザベルが取り出したスペルカードを見て咲夜は眉をひそめた。
取り出したカードが絵柄の一切無い、白紙だったからだ。 当然弾幕も現れない。

「失敗したのかしら?」などと思っていると、白紙だったスペルカードに絵柄が浮かび始める。
浮かびあがりつつ絵柄に咲夜が物凄い既視感を感じた直後、スペルが発動する。


                      贋作 『幻惑パワーディレクション』


咲夜「っ!?」

発動したスペルを見て、咲夜は思わず目を見張る。
イザベルが使用したスペルは、咲夜が良く使うスペル― 奇術『幻惑ミスディレクション』 ―にそっくりだったのだ。

自身のスペルを相手が初っ端から使ってきた事に内心驚きつつ、咲夜の身体は極めて正確に行動に移っていた。

こちらに向かってくるクナイ弾を避けつつ、咲夜は弾幕とは反対の方向にナイフを投擲する。
流石に自分のスペルだけあって、スペルの特性は完璧に把握している。
このスペルの場合、初弾を撃った位置の反対側に術者が移動するため、反対側に攻撃しないと命中しない。

咲夜「読心で読んだ私の弾幕の情報から“贋作”を作って発動する……。 見事ね。 そっくりで驚いたわ。
  でも、いくらそっくりでも所詮は物真似よ。 私の弾幕は私自身が一番熟知してる。 それじゃあ私は倒せないわ」

イザベル「本当にそう言える? 貴女自身すら把握していない貴女の事実が無いと、本当に貴女は言い切れるの?」

咲夜「今のうちにほざいてなさい、すぐに黙らせてあげる」

138 :ステージ4 ラクトメモリー 〜記憶密室〜 [saga]:2011/10/24(月) 18:11:16.75 ID:1Ra67Tjl0
――――――――― 【パチュリー・ノーリッジ @ 結界内部】 ――――――――――

一方その頃、結界内で自身のトラウマ弾幕と相対させられているパチュリーは、
致命的なダメージこそ受けていないものの煤と細かい傷でボロボロになっていた。

パチュリーの格好を見て、エリーは愉快だと言うように嗤う。

エリー「あはは、良い格好ね。 もうボロ雑巾も同然じゃない」

パチュリー「こんなの、かすり傷にもなってないわよ……」

そう言いつつ、パチュリーは内心焦っていた。
身内の弾幕から始まったトラウマ弾幕は、かつて対戦した亡霊やら鬼やらスキマ妖怪やらの弾幕“もどき”となり、難易度はぐっと高くなっていた。

無論、それらの強者の研究や攻略法の開発を怠っていた訳でない。
怠っていた訳ではないが、『特徴を知っている』事と、『実際に相対した時に対処出来る』事とでは、その難易度は天と地ほどの差がある。
ここまでボロボロにされたのも、頭で分かっていても、身体の方が追い付かなかった為だ。
今日ほど自身の頭脳と身体のアンバランスさを恨んだ日は無い。

パチュリー「………………」

エリー「もう口も利けなくなったようね。それじゃ、貴女の一番のトラウマで止めにしてあげる」

パチュリー「っ!?」

エリーの笑みが更に凶悪さを増す。
それはまさしく獲物を追い詰めた狩人のソレ。

エリー「さようなら、時代遅れな読書スキーな魔法使いさん」

にやつきを隠そうともせず、嬉々としてスペルカードを取り出すエリー。
パソコンの画面に、ある人影が映り、直後にスペルが発動する。
光の粒子がエリーの前に集まり始め、その大きさは見る見るうちに大きくなる。


                      恐符 『ファイナルマスタースパーク』


集められた光が特大クラスまで大きくなったかと思うと、全てを飲み込まん勢いの奔流となりパチュリーを襲う。
単純にエネルギーだけならこれまで以上に圧倒的なパワーを誇るソレに対し、パチュリーはニヤリと笑い……

139 :ステージ4 ラクトメモリー 〜記憶密室〜 [saga]:2011/10/24(月) 18:14:39.54 ID:1Ra67Tjl0
――――――――――――――――――――――――――――――――――――

圧倒的な光の奔流が棒立ち同然のパチュリーの目前まで迫った時、エリーは勝利を確信した。
あんな状態で、撃った本人であえうエリーでさえ驚くほどの高威力エネルギー弾幕を受けて、無事で済むはずがない。
その直後、パチュリーの姿が見えなくなる。
規格外の極太さを誇るレーザーの影に隠れて見えなくなってしまったのだ。

エリー「これは、やったかな?」

光の奔流がパチュリーのいた場所を通り過ぎて行き、そのまま後方へと消えていく。
全ての光が流れきり、スペルがブレイクしたとき、地に倒れ伏したパチュリーの姿が……無かった。

エリー「なっ!? 消えた!? ど、何処に行ったの!?」

今撃った『ファイナルマスタースパーク』の威力は半端ではないが、人一人が完全消滅するようなモノでは無かった。
つまり、直撃したそこに居なければおかしいのだが、パチュリーの姿は影も形も見えない。

パチュリー「何処に目を付けてるの? 私はここよ。“魔女”さん……」

エリー「っ!?」

静かな、それでも確固とした意思を感じさせるパチュリーの声が頭上から響き、エリーは頭を上げた。
目に映るのは結界の天頂付近で、結界全体を覆わんばかりの巨大火球を片手に掲げたパチュリーの姿。

エリー「なっ、なんで!? 何で無事なの!? アレだけの術を受けたのに……」

パチュリー「答え合わせは後でたっぷりしてあげるわ。
     とりあえず今は……、今まで人の記憶で散々おちょくってくれた御礼、纏めて受けときなさい」


                      日符 『ロイヤルフレア』


火球を掲げた手をパチュリーが振り下ろす。
結界内で限界クラスにまで大きくなった火球が地上へと降り注ぐのを、エリーはただ、呆然としながら見つめる事しか出来なかった。


140 :ステージ4 ラクトメモリー 〜記憶密室〜 [saga]:2011/10/24(月) 18:16:46.88 ID:1Ra67Tjl0
――――――――――――――――――――――――――――――――――――

エリー「なんで? どうして貴女はあのラストスペルを受けて無事だったの?」

地面に半ばめり込んだ状態でエリーは問う。
パチュリーの放ったスペルはまさしく必殺と言っていい威力で、一撃でエリーを行動不能にしてみせていた。

パチュリー「簡単よ。 貴女は隙を作りすぎたの」

エリー「隙?」

パチュリー「日符『ロイヤルフレア』は発動さえしてしまえば攻撃終了まで完全無敵になる魔法。
     貴女は散々喋った挙句、エネルギーチャージに時間の掛かる『ファイナルマスタースパーク』を選択した。
     その間に、貴女から見づらい結界の天頂付近に『ロイヤルフレア』を発動させておいたのよ」

仮に技が、チャージ時間の短い『マスタースパーク』だったら、負けてたけどね。
と付け足すパチュリーにエリーはある疑問を抱く。

エリー「どうして? どうして私が発動するスペルが『ファイナルマスタースパーク』だと分かったの?」

パチュリー「半分は賭けのような物だったけどね。 残りの半分は貴女の言葉よ」

エリー「私の言葉?」

パチュリー「ええ、私の一番のトラウマ、と聞いてピンと来たのよ。
     このスペルが来るのは、大抵、魔理沙が図書館を荒らしに来た時。
     図書館を滅茶苦茶にされる上、秘蔵の本まで盗られるんだからこれ以上無いトラウマよ。
     それ故に、このスペルだけは完璧に読めるし、対処も慣れっ子なのよ」
141 :ステージ4 ラクトメモリー 〜記憶密室〜 [saga]:2011/10/24(月) 18:18:08.58 ID:1Ra67Tjl0

パチュリーが言うと、倒れたままのエリーは乾いた笑いをもらした。

エリー「……完全な私の読み間違え、って事ね……。データは完璧だったけど使い方を誤っちゃ、勝てる試合も勝てなくて当然ね」

パチュリー「……少なくともラストスペル以外の選択は間違ってなかったわ。 
     どっちが勝ってもおかしくなかったのよ。今の戦いは……。 今回はたまたま私に勝利の女神が微笑んだだけ……」

パチュリー「むしろ初回でここまで私をズタボロにしてくれた事、誇って良いわよ。 “キルスティン”さん?」

エリー「!? どうしてその名前を!?」

突然本名を言い当てられて驚いたのだろう、これまで力なく倒れていたのがウソのように跳ね起きるエリー。
パチュリーはエリーの脇で地面にめり込んだままのパソコンを指差す。

パチュリー「持ち物にしっかり名前を書いておくなんて、貴女も結構几帳面なのね」

エリー「あっ…………」

パチュリーに言われて気が付いたエリーは一瞬呆けた後、再度パチュリーと顔を見合わせた。
どちらからとも無く笑みがこぼれる。 二人の笑い声は結界の効果が切れるまで響きあっていた。


142 :ステージ4 ラクトメモリー 〜記憶密室〜 [saga]:2011/10/24(月) 18:19:34.57 ID:1Ra67Tjl0
―――――――――― 【十六夜咲夜 @ 結界外】 ―――――――――――――

パチュリーの辛勝で、結界内の弾幕戦に決着がついた時、咲夜とイザベルの戦いもまた、佳境を迎えていた。


                      贋作 『殺人フィギュア』


何度目かとなる、イザベルの模倣弾幕。
相手の周囲にナイフを発現させ、逃げられないようにする弾幕だが……

イザベル「くっ! なんで当たらないの!?」

イザベルは苛立ちを隠そうともせずに声を荒げた。

弾幕の形状はエリーが読み取った通りに、ほぼ完璧にトレースした筈だ。
それなのに、この弾幕ですら咲夜は易々と避けて見せた。

イザベル(さっきからなんでこうも当たらないの? 
    元々読み取ったスペル自体が大した事が無かったのかしら? ……いえ、そんな訳が無いわ。
    弾幕の形は良く考えられたものだし、あのメイドさんの戦闘能力はかなりのモノ、手落ちがあるとは考えにくい……)

イザベル(何か見落としている要素がある?
    エリーが読み取った弾幕形状の記憶だけでは足りない何かが……」

咲夜「その通りよ。貴女のコピー弾幕には決定的に欠けているものがある」

必死に思考を回転させるイザベルに咲夜の肯定が割り込む。
どうやらいつの間にか思考が口から漏れ出ていたらしい。
だが、イザベルは思考に突っ込まれた事よりも、咲夜の声が聞こえた場所――立ち位置の方に驚愕していた。
143 :ステージ4 ラクトメモリー 〜記憶密室〜 [saga]:2011/10/24(月) 18:21:19.88 ID:1Ra67Tjl0

イザベル「……いつの間に背後に来たの? いくらなんでも速すぎるわ!?
     瞬間移動か、さもなくば時間停止でもしないと説明が……、まさか!?」

咲夜のスペルの情報を見たとき、素早い移動が前提のスペルが多いとは思っていた。
弾幕を囮にしての移動だったり、相手の周囲に大量のナイフを配置したり……
普通に形を真似るだけでも骨が折れる弾幕ばかりだ。 
そう、“普通の手段”で、形を真似ようと思うのなら……、である。

咲夜「ご明察です。 やっと気付きましたか……
  私の弾幕の本質は、その形ではなく、私の能力を如何にフル活用するか? と言う一点」

咲夜「貴女のコピー弾幕は、形だけ立派で本質を理解していないから弱い。
   なぜこの弾幕を使うのか? その弾幕の真髄は何か? 重要なその点が抜け落ちた時点で片手落ちなのよ。
   贋作(コピー)を名乗るなら、その本質を見極めて、本質まで再現出来てからにしなさい」

咲夜の言葉に、イザベルは自身の過去を思い返す。
まったく同じような事を、展覧会の批評家に言われたような覚えがある。

記憶情報だけで安心して、物事をしっかり把握していなかったのは、自分自身の方だったのだ。

咲夜「私を倒したければ、そうね……。貴女が一から作った(オリジナル)スペルか、
  真髄までコピーし、昇華させた本物を越える贋作スペルを持ってくるか……
  とにかく、貴女自身の確固たる意思が篭った作品(スペル)を次の機会に見せて頂戴」

咲夜はそう告げると、手に持った銀時計を止めた。


                      『咲夜の世界』


144 :ステージ4 ラクトメモリー 〜記憶密室〜 [saga]:2011/10/24(月) 18:23:23.46 ID:1Ra67Tjl0
――――――――――――――――――――――――――――――――――――

クリームヒルト「自分自身を、さらけ出す?」

鸚鵡返しにそうつぶやいた私に、幽々子さんは静かに頷いた。

幽々子「そう、自分自身を表現する、と言ってもいいわ。
   それは趣味嗜好だったり、主張だったり、人によって色々あるけど、自己表現であるのは変わりないわ。
   弾幕戦は相手をねじ伏せる事を目的とする闘争ではなくて、自己表現のぶつかり合い、一種のスポーツと言えるわね」

クリームヒルト「スポーツ……」

幽々子「そう、それに最初にも言ったけど、弾幕戦は決闘方法でありながら、また最大限楽しむ物でもあるの。
   物事を楽しもうと思ったら、まず自分を偽ってはダメ。 自分の中の全てを出し切るつもりで戦ってこそなのよ」

クリームヒルト「自分の中の全てを……出し切る……」

反芻しながら、私は私の中で何かが芽生えるのを感じた。
欠けていた何かが、ようやく見つかった。と言ったほうがいいかもしれない。

幽々子「そう、それこそが最も大切な事。 形や見た目の美しさなんて二の次でいいの」

クリームヒルト「…………なんとなく」

さっきまでの悩みがウソのように晴れていくのが分かった。
なんでそんな事で悩んでいたんだろうとさえ思えて来て、私は思わず苦笑する。

クリームヒルト「何となくだけど、分かったような気がします。 ありがとうございます、幽々子さん」

幽々子「良いのよ、これくらい……。 その代わり、貴女の全てを出し切った素敵な弾幕、後でしっかり拝ませてもらうわ」

そう言うと幽々子さんはニコリと微笑んで見せた。


145 :ステージ4 ラクトメモリー 〜記憶密室〜 [saga]:2011/10/24(月) 18:32:59.35 ID:1Ra67Tjl0
以上、
パチュリー「魔女かと思ったらさとりと戦っていた」編と、
イザベラ「もしも私が襲った相手がメガほむじゃなくてほむほむだったら?」編でした。

>>43様の能力と、>>77様のイザベルスペカ案を採用させて頂きました。
イザベルさんが限りなくかませっぽくなってしまった感がありますが、相手が悪すぎた。
日符『ロイヤルフレア』の発動後、無敵設定は緋想天版からです。

ちなみにイザベルさんの『私』は『わたくし』と読んでいただけるとイメージが合うかと

以下いつもの進捗です。

文&白蓮 vs ギーゼラ(進捗率85%)
早苗&アリス vs オクタヴィア(進捗率5%) ←NEW
146 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/24(月) 18:54:14.14 ID:pTm7MyTDO
続き来たっ!ありがとうございます!今回はみんな楽しそうで何よりでしたね。

次はギーゼラさん戦で良いのかな?あまりに速すぎるバトル展開だと俺らがヤムチャ視点になりそうww

所で、今>>1様が求めている弾幕案は誰辺りの弾幕なんでしょうか?
147 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/10/24(月) 19:16:20.30 ID:6chzYi+70
投下乙&スペカ案使用ありがとうございます。
ついでに前に投下した未登場トリオのスペカを一部考察。


ズライカ

黒符「スワロウインブラック」Easy
漆黒「光無きゆえの安寧」Normal-Hard
願望「胎内へ至る暗闇」Lunatic
自身を中心に渦を巻いて黒い小玉弾と中玉弾が展開。中心=自身に近いほど弾の密度は濃い。
加えて自機に引力が働き、密集地帯である自身に引き寄せられる。いわゆるダイソン弾幕。

妄符「独善的で不幸な被害者」Easy-Normal
妄想「ハローバットボーイ」Hard
妄想「リリーフフロムパラノイア」Lunatic
妹様のレーヴァテインのように、レーザー一本を展開し、左右に振りながら一定間隔を置いて自機に突撃。
軌道上に突起のある中玉弾が出現、動揺に突起を振りながら落下。
難度に応じて突撃速度が中速→高速、中玉弾が一列→二列と変化。
ツキチャンハワルクナイヨ。らーいーやーららいよら。

思慕「フォンドネスダークナイト」Easy-Normal
忌避「ディスガストアトドーン」Hard-Lunatic
外周ぐるりに大中小の黒玉弾が設置され、自身に収束。忌避ではそれに加えて自身の周囲に大中小の白玉弾を設置、拡散。
灯りの少ない幻想郷に移ってズライカさん大勝利。この騒動でひょっとすると一番得した人かも。


ウーアマン

縋符「スナグルサムワンズフィート」Easy-Normal
咬縋「バイトバイハンガーフォアラブ」Hard-Lunatic
ゆっくりと自身が自機追尾。追尾軌道上に犬の足跡を模した小3個大1個一組の弾を配置、数秒後ランダム方向に発射。
咬縋はこれに加え自機の上下に食い違うように一列に弾幕を配置、かみ合わせる。
うあまんすりすりうあまんかみかみ。

濡符「スクエアクラウド」Easy-Normal
濡犬「箱の中の雨空」Hard-Lunatic
上部に灰色の当たり判定を四角く展開。そこから雨粒弾を降り注がせる。
濡犬にはそれに加えてレーザーの箱で左右移動を制限。
おい京極堂、ここから見ると空g(ry


アルベルティーネ

書符「オープンスケッチブック」Easy-Normal
書出「まっさらな紙の上」Hard-Lunatic
レーザーが伸び、それに対して垂直に白い四角の当たり判定が展開、数秒後白の小玉弾に変化して拡散。
書出は上下どちらかから横幅一杯のレーザーが迫り、その範囲が白の小玉弾に満たされて拡散する。
最初はイザベル画伯のスペカ案だったが、スケブはむしろアルベルちゃんと思い差し替え。

塗符「ゴーゴークレヨンズ」Easy-Normal
塗潰「ブルームクレヨンズ」Hard-Lunatic
色とりどりの大玉弾が縦横無尽に飛び交い、奇跡が小玉弾で描かれる。数秒後に拡散。(星の「浄化の魔」みたいな)
ブルームは轟音を立てて進むさま。こういうときこそぶぅんぶぅん使い魔の出番なのにネ。

忘符「ネセシティトゥクリーンアップ」Normal
欠如「お母さんのため息」Hard-Lunatic
色とりどりのワイヤーが画面上に描かれ、動く。横幅三分の一程度の長さのレーザーが動き、ワイヤーを消す。

待符「この指とまれ」Easy-Lunatic
ダイソン弾幕その2。自身を中心に太めのレーザーを展開。粒〜大玉弾を発射する。
148 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/10/24(月) 19:29:24.83 ID:6chzYi+70
っと、縋符と咬縋、濡符と濡犬について補足。
足跡弾の大小組み合わせは以下の通り。
E:粒&小玉、N/H:小玉&中玉、L:中玉&大玉
灰色当たり判定は斜めにはなりません。レーザーの間隔は当たり判定の横幅ぴっちりです。
149 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/10/24(月) 19:44:14.80 ID:uErB21GX0
古明地さとリー・キルスティンちゃん可愛い! 今回も素晴らしい読み応えだったぜ!
って、俺の能力案をさりげなく採用してたのか…嬉しい限りだ

ギーゼラさんのスタイリッシュ結界アクションをわくわくしながら待ってるよ!
エルザマリアの前にオクタヴィアか…しかもサナアリが相手とは

   私ってほんとフルーツ(笑)
150 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/10/24(月) 20:17:09.03 ID:6chzYi+70
oh……もう一つ忘れてた何なの自分馬鹿なの?orz
願望「胎内へ至る暗闇」はそれまでの黒符、漆黒の要素に加えて当たり判定なしの中大玉弾が周囲から発射されます。
151 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/25(火) 16:37:45.99 ID:XF53pLaDO
出て来ないとは思うんですが、一応魔女化したほむらちゃんの弾幕を考えてみました。
他の魔女でも改造すれば使えそうな弾幕がありましたら、切り貼りして使ってみてはどうでしょうか?

時符「インペイシェントタイム」
画面中央で止まり、時計の時針と分針をイメージした中太レーザー(分針は画面外を越え、時針は横端に届かない長さ)を作り出し、分針は中速、時針は低速で右回転させる。同時に分針の方向に合わせて粒弾をばらまく。単純に時計をイメージした弾幕。

時符「フォーシーズン」
画面中央で停止し、3cmの時針と4cmの分針を作り出して右回転させる。しかし弾幕はそれとは関係無く、画面の上下左右で種類の違う弾幕を同時展開させる。下は桜の花びらを吹かせ、左には黄色の中長レーザーを乱射、上では枯葉の弾幕を揺らめかせ、右には雪の弾幕を静かに降らせる。
時と共に移り変わる四季をイメージした弾幕。

時符「スリーインダイヤル」
画面中央に移動し、右上・左上・下の三ヵ所に3cmの時計の針を作り出す。下は高速・左上は中速・右上は低速で右回転させる(それが済むと、自身は上方で適当に移動する様になる)。その上で、下の針は先端から常時粒弾を乱射させる。左上の針は軸部分から1秒毎に12方向に小球弾を中速で発射させる。右上の針からは常にレーダーが照射され、自機がそれに触れると、軸部分から中太レーザーが5秒間発射される。
高級な腕時計の中にたまにある小さな針の部分(インダイヤル)をイメージした弾幕。

振動「91億9263万1770回」
画面中央で止まり、中球弾を1秒毎に低速で全方位に発射。一回発射されるたびに次の弾は右に2mmずれる。
セシウム原子の振動数は一定不変とされている。そのセシウム原子が91億9263万1770回振動する時間が1秒と定義されている事からイメージされた弾幕。

爆符「ツーカウントボム」時を止め、自機の上・右下・左下にデジタル数字で2の書かれた大球弾を配置する。数字が0になった瞬間に(実質3秒で)爆発し、周囲に爆炎と爆風を高速で、粒弾を低速で撒き散らす。

爆符「デジタルカウントバーストボム」
画面上端からデジタル数字で9と書かれた中球弾が中速で落ちてきて、画面半分に到達すると爆発し、書かれた数字分の少炎弾が下にばらまかれる。ショットを3発当てると数字が−1される。

歯車「ロータリーギアーズ」
画面上端に移動し、まず小さい歯車を少し下にばらまき、低速落下させながら左右ランダムで中速回転させる。次に、それに左右ランダムで低速回転させた大きい歯車をぶつけて一組の弾幕にする(一組になったら他の歯車とはくっつかない)。同じ方向で回転している一組は回転速度が上がり、反対の方向で回転している一組は回転速度が下がる。ブレイクまで出し続ける。

歯車「ギアワーク」
巨大歯車と大歯車を、隣接した状態かつ画面外へ出ない様に2つずつ出して右回転させる。その表面に沿って移動し、画面外側に向けて小円錐型の弾幕を噴射する。1周したら、歯車の配置をランダムで変えて繰り返し。

憎殺「インキュベーター ヘイトストロングリー」
画面上方に移動し、中央部の左右端からインキュベーターの顔の中球弾を中速で大量に横流しする。自身はそれにバルカン弾幕を撃ち込み、白い肉塊(粒弾)を下に飛び散らせる(肉塊はショットが当たった方向に従って飛び散る)。自機のショットでも飛び散る。意外と楽しいかも?
インキュベーター殺したい症候群発症時の対策用スペカ…と言えば聞こえは良い(?)が、正直に言ってストレス解消用のスペルカードだろう。

こんな感じでどうでしょうか?相変わらず長ったらしくて済みません。
152 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/10/25(火) 23:00:39.32 ID:7Dn3vcke0
パチュリーの苗字ってノーレッジだったような…ノーリッジでもどっちでもいいのか?

この時間軸ではクリームちゃんとオクタヴィアしか居ないってことはまどかとさやかしか魔女化してないって事だよね
無数にある時間軸うち1つの時間軸の魔女が、救済されたら偶然にも幻想入りしたって事なのかな
153 :1@携帯 [sage]:2011/10/25(火) 23:52:50.23 ID:WIdBQ9RDO
うわあああ、パッチェさんの名字間違ってるー!?
ケータイの変換予想候補で誤読側が上に来てるだと……
マーガトロイドさんは間違えずに正しいの選んだのに……

はい、お察しの通り、携帯→PC→投稿の手順です。ろくに見ずに変換予想に頼るからこうなる……
とりあえず誤記は脳内変換で訂正願います。orz


さて、SGが濁りきる前にロイヤルフレアくらってくるか……λ
154 :1@携帯 [saga]:2011/10/26(水) 00:00:23.87 ID:55LLohuDO
>>152
まど神さまに救済された世界の内の一つ、とお考えください
(状況は限り無くまどか本編に近い)
全世界救済なんてやった日には幻想郷がパンクするw
155 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sega]:2011/10/26(水) 15:26:02.89 ID:MzVh0lASO
>>153
携帯の予測変換なんて馬鹿丸出しだから受け狙い以外で誤変換スルーはしない方が良い
156 : [saga]:2011/10/26(水) 17:55:06.08 ID:mhvCW6AZ0
>>155
ですよねー、という訳でいい機会なので誤字訂正版を幾つか、まずは>>1から


いつの日から始まっていたのだろう? その異変はいつの間にか始まっていた。

         狂ったように次々と事件を起こす里の人々

        狂った人の首筋に付けられた謎の印 (しるし)

       狂わされた人々が語る、謎の存在 『魔女』 とは?

疑いをかけられた『魔法使い』たちは幻想郷を駆け回る。
自身にかけられた疑惑を晴らすため、『魔女』の正体を暴く為、

 「いいぜ、魔女が異変を起こすって言うなら、私はその魔女をぶっ飛ばす!」

                                 ― 普通の魔法使い:霧雨 魔理沙 ―


 「半人半獣に天狗の新聞屋ときて今度は貴女……、流石の私もそろそろ我慢の限界よ」

                              ― 七色の人形遣い:アリス・マーガトロイド ―


 「そんな装備で大丈夫ですか?」
 「大丈夫よ、問題ない」

                             ― 動かない大図書館:パチュリー・ノーレッジ ―


 「一体いつから妖怪相手に武力行使しないと錯覚していたの?」

                                   ― ガンガンいく僧侶:聖 白蓮 ―


“魔法使い”と“魔女”が出会う時、幻想郷の歴史は新たな一ページを刻む!
果たして“魔女”の正体は? 幻想郷を舞台にした大捕物、『魔女異変』ここに開幕!


                    〜東方円鹿目〜

                  201X年XX月 捜査開始
157 : [saga]:2011/10/26(水) 18:00:48.91 ID:mhvCW6AZ0
続いて>>4

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

深い深い闇、決して晴れることも、一筋の光が射すこともない、真の闇。
そんな場所に私の意識は落ちていった。
全てを救い、全てを滅ぼす、そんな存在になった私に突然にも訪れたその瞬間。
それは別世界の私だった者が捧げた祈りにより訪れた救済と言う名の死。
全てを呪わずに済まなくなった事を安堵しつつ、また何処かでこのまま消えるのは嫌だな、とも思う。
でも、こうなった以上もはや何も出来ない。
あとはこのまま消え去るだけ、だった筈なのだが……
沈んでいく一方だった感覚が急に浮遊感を覚えたかと思うと、あり得ないと思っていた光が射し込みはじめ、やがて……


クリームヒルト「…………あれ?」

気が付いてまず見えたのは、綺麗な木目だった。
木目調とか、そう言う作り物ではない、木板特有のソレだ。
感じる重さに、下を見ると、私の身体の上には布団がかけられていて、その向こうには障子が見えた。
どうやら、私はどこかの部屋に寝かされているらしい。

そこまで把握して、私ははっとなり、飛び起きた。
かけられていた布団を引っ剥ぎ、自分の身体を見下ろす。
手があって、足があって、服を着ていて……
その姿は私の意識が闇の世界に落ちる前のソレと大きく異なる。
と、言うより寧ろこの姿は、あの姿になる前の自分、即ち人間だった頃の……


??「あら?目が覚めたのね。どうかしら、気分の方は?」

急に声をかけられ私は振り向いた。
さっきまで閉まっていた障子が開いていて、蒼い着物姿の女性がそこに立っていた。
158 : [saga]:2011/10/26(水) 18:03:28.50 ID:mhvCW6AZ0
>>11


妖夢「分かりました。幽々子さま」

そう言うと、妖夢と呼ばれた従者の女の子は静かに頭を下げる。

幽々子「まあ良いわ、おかげでクリームヒルトちゃんの話をゆっくり聞けたし……ね?」

クリームヒルト「あ、はい!……てぃへへへ」

ウィンクのおまけ付きで呼び掛けられ、私は思わず笑みをこぼす。
魔女として人を呪う存在になったときには考えられない程、私の心は穏やかだった。
身体が軽くなったと言うか、色々なものから解放された、そんな気分だ。

幽々子「漸く笑ってくれたわね……。安心したわ」

クリームヒルト「えっ?」

幽々子「これから幻想郷の一員になる子に辛気くさい顔は似合わないわ」

クリームヒルト「えっ、でも……私は……」

幽々子「言ったでしょう? 幻想郷は外の世界から弾かれた幻が集う最後の受け皿だ、って……
    幻想郷は全てを受け入れるわ……、例えそれが多大な穢れを背負った“魔女”であろうとも……ね」

もっと危険なのが闊歩してるしねぇ……、と茶化すように続ける幽々子さん。

励ますような感じではあったけど、私にはその前の『受け入れる』という言葉の方が心に重く響く。
拒絶される事はあっても、それだけはありえない、そう思っていたから……

クリームヒルト「てぃへへへ……ぐすっ……あれ? なんでだろ? 嬉しいのに涙が……」

本来なら、こんな感情を二度と持つこともなく消え去る運命だった私。
人に仇なす前に無に帰す事こそが救いだった私。
そんな私に訪れた予想外の救いに、私の心は満たされつつあった。


幽々子「さて、話も一段落ついたところで、クリームヒルトちゃんに相談なんだけど……」

幽々子さんの声に顔を上げると、広げた扇で口許を隠しつつ微笑む幽々子さんの姿が……
その顔は起きたばかりの時と同じどことなく不敵な感じの微笑みで、

幽々子「幻想郷に移り住むにあたって、魔女の皆さんに引っ越しの“ご挨拶”をしてもらおうと思うんだけど……」

幽々子「やってくれるかしら? クリームヒルト・グレートヒェンさん?」

私は幽々子さんの言葉に小さく頷いていた。
159 : [saga]:2011/10/26(水) 18:05:19.14 ID:mhvCW6AZ0
>>30


早苗「“魔女”と名乗る相手に会ってから、記憶がない……って、言ってるんですよね〜」

文「そうなんですよ早苗さん! ただ、その“魔女”が誰なのかがはっきりしないんですけどねぇ……」

早苗「って、うわっ!? 文さんいつの間に!?」

声にぎょっとして振り向くと、カメラを片手に持った鴉天狗――射命丸文が立っていた。

文「あややや、この射命丸文、事件と話題のあるところには何より早く現れますよ!」

早苗「それにしたって急すぎです! びっくりして寿命が縮まるかと思いましたよ!」

霊夢「諦めなさい早苗、コイツはそーいうヤツよ」

思わず怒鳴る早苗に対し、霊夢は冷めた目でお茶を啜る。

文「ん〜、相変わらず手厳しいですね〜」

霊夢「そんな事より……、調べてきたんでしょ? 幻想郷の“魔女”連中は何て?」

お茶を縁側に置きながら、幾分かまじめな口調で霊夢が尋ねる。
文は小さく咳払いをすると、書き溜めたメモ帖を取り出す。

文「……はい、皆さん揃って否認してます」

早苗「それはまあ、そうでしょうね……」

文「現時点で疑いがかかっているのは、まず紅魔館在住のパチュリー・ノーレッジさんと……」

文「命蓮寺在住、聖白蓮さん、魔法の森在住、アリス・マーガトロイドさん、そして……」

早苗「……っ」

霊夢「…………」

最後の一人を告げる前に、文はそれまで以上に間を空けた。
霊夢も早苗もその意味をすぐに察し、早苗は俯き、霊夢は目を閉じた。
160 : [saga]:2011/10/26(水) 18:08:21.30 ID:mhvCW6AZ0
>>33


――――――――――― 同じ頃・紅魔館 ――――――――――――――――

咲夜「本当に行かれるのですか? パチュリー様」

長い廊下を歩きながら、メイド服を纏った銀髪の女性――十六夜咲夜は前を行く紫の衣の少女――パチュリー・ノーレッジに尋ねた。
いつもは地下大図書館から動こうとしない彼女だが、今日はやけに早足で、紅魔館の出口へと歩を進めていた。

パチュリー「ええ、本気よ。それより、貴女こそ付いてくる気なの? 咲夜」

咲夜「お嬢様の申しつけです。 パチュリー様がお出になられるようなら、付いていくように、と……」

パチュリー「従者も大変ね。まあ良いわ、私のアリバイ証言、頼んだわよ」

咲夜「畏まりました」

恭しく頷きながら、長くなりそうだな、と咲夜は思う。
今日のパチュリーはいつになくやる気だ。
魔女の名を騙られた上、中途半端な事件ばかり頻発したせいで、魔法使いへの風当たりが悪くなっている。
流石のパチュリーも腹に据えかねたのかもしれない。


咲夜(本当に怒ってるようですね。こんな早足で歩くパチュリー様は久々に見……)

パチュリー「っ!? むっきゅ!?」ズテーン

慣れない早足が祟ったのか、はたまた寝巻きのようなその格好のせいか、裾を踏ん付け、顔面から盛大にずっこけるパチュリー。
受身を取る間も無く床と熱烈なキスを交わしたせいか、痙攣するように身体がぴくぴくと震えている。

咲夜「えっと、そんなお召し物で大丈夫ですか?」

パチュリー「大丈夫よ、問題ない」

そう言って顔を上げたパチュリーの目にはうっすらと涙が浮かんでいた。


【七曜の魔女と瀟洒なメイド 組 行動開始】

161 : [saga]:2011/10/26(水) 18:13:52.70 ID:mhvCW6AZ0
>>112

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

妖夢「こっちの準備は整いました。 いつでもいいですよ〜」

オクタヴィア「ん、じゃあ行っくよ〜、スペルカード発動!」

庭の方から聞こえる、オクタヴィアちゃんと妖夢さんの声。
新作のスペルカードを作ったと言うオクタヴィアちゃんたっての希望で二人は今、模擬の弾幕戦をしている。

これまでの“魔女”仲間と幻想郷の人たちとの弾幕戦を見て、閃く物があったらしい。
オクタヴィアちゃんは既に幾つかのスペルを持っているが、これで良好なら更に追加すると言っていた。

それなのに、私は、と言えば……

幽々子「何をそんなに落ち込んでいるの? クリームヒルトちゃん」

クリームヒルト「あっ、幽々子さん……、
        オクタヴィアちゃんも他のみんなも、みんな自分のスペルを作って使ったりしてるのに、
        私だけまだスペル一個も思いついてないから……」

幽々子「周りに置いて行かれたようで、不安になってしまった?」

幽々子さんの言葉に、私は小さく頷く。
頷きついでに俯く私の肩に、幽々子さんがそっと手を添える。

幽々子「焦る必要なんて無いのよ。 焦って作ったって良いスペルは出来ないわ」

クリームヒルト「で、でもっ!」

思わず顔を上げる私。
それに対し、幽々子さんは落ち着いた思案顔で告げる。

幽々子「ん〜、さっきの尼と委員長さん? の弾幕戦とか良いお手本だと思ったんだけどなぁ……
    クリームヒルトちゃんは、弾幕(スペル)についてちょっと、勘違いしてるみたいね」

クリームヒルト「勘違い?」

幽々子「弾幕戦、と言うか弾幕の本質……真髄、と言ってもいいわ、がまだ良く見えていないようね」

クリームヒルト「う〜、ごめんなさい」

幽々子「あら? 責めるつもりではなかったの、だから謝る必要なんて無いわ。
    そうね、これは弾幕戦の先輩からのアドバイスだと思って頂戴」

幽々子「弾幕に於いて最も重要な事、それは…………」

162 : [saga]:2011/10/26(水) 18:16:19.78 ID:mhvCW6AZ0
>>133


パチュリー「人がこうして乗り込んできたのに、無視するとは良い度胸ね……。そっちがそのつもりなら、こっちにも考えがあるわよ」


                      水符 『プリンセスウィンディネ』


水の魔法を発動させ、それを少女の頭の上から一気にぶっかける。

??「ひゃっ!? 冷たっ!? って、私のパソコンがっ!?」

水をかけられ、飛び上がらん勢いで驚いた少女は、直後に煙を吹き出し始めた箱を見て、悲鳴をあげる。

??「……完全にショートしてる……、私の秘蔵お宝画像がぁ……」

がっくりと膝を突く少女、暫らくそのままの状態で呆然としていたかと思うと、
やがて全身を震わせつつ、ようやく振り向いた。

??「いきなりこんな残虐非道なマネをするなんて……、一体どこの誰よ!?」

パチュリー「幻想郷の魔法使い、パチュリー・ノーレッジよ」

怒気の孕んだ声を上げる少女に対し、パチュリーは極めて落ち着いた声音で答えた。
もちろん悪びれる様子など一切無い。
一方の少女は、と言うとパチュリーの名乗りを聞いた途端、慄くように後ずさった。

??「魔法使い……って、えっ、ウソ、特定された!?」

??「見つからないと思ったのに……、なんでバレたんだろ? はっ!? もしや貴女も引き篭り?」

パチュリー「私は単なる喘息持ちよ。決して引き篭りなどではないわ」

咲夜(大して変わらない様な気が……)

毎日毎日地下大図書館に篭って読書にふけっているパチュリーの姿を見ている咲夜はそう思ったが、
口にも顔にも出さず、その様子を見守っている。
163 : [saga]:2011/10/26(水) 18:17:57.96 ID:mhvCW6AZ0
>>139

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

圧倒的な光の奔流が棒立ち同然のパチュリーの目前まで迫った時、エリーは勝利を確信した。
あんな状態で、撃った本人であるエリーでさえ驚くほどの高威力エネルギー弾幕を受けて、無事で済むはずがない。
その直後、パチュリーの姿が見えなくなる。
規格外の極太さを誇るレーザーの影に隠れて見えなくなってしまったのだ。

エリー「これは、やったかな?」

光の奔流がパチュリーのいた場所を通り過ぎて行き、そのまま後方へと消えていく。
全ての光が流れきり、スペルがブレイクしたとき、地に倒れ伏したパチュリーの姿が……無かった。

エリー「なっ!? 消えた!? ど、何処に行ったの!?」

今撃った『ファイナルマスタースパーク』の威力は半端ではないが、人一人が完全消滅するようなモノでは無かった。
つまり、直撃したそこに居なければおかしいのだが、パチュリーの姿は影も形も見えない。

パチュリー「何処に目を付けてるの? 私はここよ。“魔女”さん……」

エリー「っ!?」

静かな、それでも確固とした意思を感じさせるパチュリーの声が頭上から響き、エリーは頭を上げた。
目に映るのは結界の天頂付近で、結界全体を覆わんばかりの巨大火球を片手に掲げたパチュリーの姿。

エリー「なっ、なんで!? 何で無事なの!? アレだけの術を受けたのに……」

パチュリー「答え合わせは後でたっぷりしてあげるわ。
      とりあえず今は……、今まで人の記憶で散々おちょくってくれた御礼、纏めて受けときなさい」


                      日符 『ロイヤルフレア』


火球を掲げた手をパチュリーが振り下ろす。
結界内で限界クラスにまで大きくなった火球が地上へと降り注ぐのを、エリーはただ、呆然としながら見つめる事しか出来なかった。

164 : [saga]:2011/10/26(水) 18:21:11.21 ID:mhvCW6AZ0
以上、多分訂正箇所はこれくらい。
他にも誤字等ありましたらご指摘願います。

次の話は明日か明後日には投下できるかと思います。
165 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/26(水) 20:54:56.04 ID:5tMf0QmDO
またもやエルザマリアさんの弾幕をいくつか考えてみました。ネタ被りしてる案があるかも知れません。最後にパクり弾幕があります。
基本型はイージーで考えられてます。また、難易度を記号で表している部分があります。
 ↓難易度記号
・イージー=E←今回不使用
・ノーマル=N
・ハード=H
・ルナティック=L

ここから下が弾幕案です。

使い魔「キメラテンタクル」
自身の影を円形(画面上直径6cm)に広げ、そこから使い魔を数匹作り出し、自機狙いの時間差加速で発射。使い魔は中速の粒弾を吐き散らす。ショットで撃破可。撃破すると粒弾が少量飛び散り、使い魔は補充される。

使い魔「フリーウィル・オブ・サーヴァント」
使い魔を多数呼び出し、好きに行動させる。行動パターンは5つ。自身の前で止まって盾になる・自身の周りを周回する・粒弾をばらまく・自機に突撃する・どこかに突撃する。ショットで撃破可。撃破された分は補充される。難易度が上がるにつれ、使い魔は数・速度・堅さが増す。弾幕は弾速・量・大きさが増す。

使い魔「シャドーコネクト」
自機に当たり判定の無い極細の影を当て、自機の直下に(例え空中でも)影を作り出し、そこから一旦下に出たあと自機を低速(難易度H〜Lで中速)追尾する使い魔を次々に出す。ショットで撃破可。撃破されると粒弾を低速で中量(難易度Nで大量、Hで小球弾を中速・中量、Lで小球弾を高速大量に)ばらまく。
アニメのOPとは無関係。

使い魔「シャドウシートサモン」
画面上端(難易度N〜Hで左右端、Lで更に下端が追加)に1.5cmの影を敷き、そこから低速追尾する使い魔を多数出し、低速粒弾(難易度が上がると、使い魔は数・速度・堅さ、弾幕は弾速・量・大きさが増す)を吐かせる。ショットで撃破可。撃破された分は補充される。

白黒符「モノクロダブルスパイラル」
白と黒の小円錐弾で2色の二重螺旋を展開。難易度上昇で弾速・量・螺旋数が増す。

白黒符「モノクロームジレンマ」
画面やや上部に移動し、縦・横・斜めのいずれかに、1.5cm間隔で当たり判定無しの白と黒の射線を交互に引き、2秒後、その上に同じ色の細レーザーを発射。レーザーが横・斜めの場合は下、縦の場合は横に低速移動する。画面下方の部分で、レーザー一本一本のどこか1箇所に穴が開いて移動出来る様になる。このレーザーは7秒持続する。レーザー発射直後、自身から自機の居る方向に白と黒の中太レーザーを八の字に5秒間発射する。難易度が上がると、1セットの間隔が短くなる。

白黒符「IKARUGA」
上方に移動し、自機に白か黒の球型結界を与え、全域に白と黒の小球弾(たまに短小レーザー)を低速で濃厚にばらまく。自機に与えた結界と同じ色の弾幕は消える。一定時間で一度リセット。ブレイクまで繰り返し。難易度が上がると弾幕の速度が上がり、種類も豊富になる。難易度Lでは消せない弾幕も出て来る。
完全に某STGのパクり。大丈夫か?

少しでも使える案があると良いのですがね。
166 : [saga]:2011/10/27(木) 10:01:00.84 ID:t6Wz/lC60
予告どおり対ギーゼラ戦、投下します。
167 :ステージ5 騒がしき疾風らの血 [saga]:2011/10/27(木) 10:06:09.59 ID:t6Wz/lC60
――――――――― 【密着!命蓮寺僧侶24時】 @ 人里 ―――――――――――

白蓮「痛そうでしたねぇ、上白沢先生の頭突き……」

昼を迎えた人里で、先刻の光景を思い出しながら、白蓮が呟く。
パトリシアを寺子屋の主である上白沢慧音に託した後、二人は人里へと繰り出していた。

寺子屋を後にする直前、今までウチの子供たちに散々呪をかけたお仕置き、と称して頭突きが炸裂するのを見ていたのだ。
おそらく今頃は延々と説教を受けている筈だ。

文「まぁ、散々寺子屋で問題起こされましたからね。アレ位で済んだだけマシかと……ん?」 ピリリリ……ピリリリ……

白蓮「あら? 何の音です?」

突然聞こえた軽快な音に白蓮は眉をひそめ、一方の文は慌てて小物入れに手を突っ込む。

音を出す小さな箱のような物を取り出した文は、音を止めると白蓮に頭を下げた。

文「失礼しました、お騒がせしてしまって……」

白蓮「いえ、別に大丈夫ですけど……それはその箱は一体何なのです?」

文「“ぽけべる”と言う最近外から入ってきた道具を河童が幻想郷でも使えるようにしたモノでして、
 何でも呼び出し連絡とかに使えるから、とかで天狗の里の方から持たされてるんです」

そう言って小さな箱――ポケベルを操作し始める文。

白蓮「まぁ、それじゃあ今、新聞屋さんに呼び出しが?」

文「そうみたいですね。一体何の用件やら…………あや?」

ポケベルを操作していた文が突然歩を止める。 連絡内容が意外な物だったらしい。

白蓮「どうしました?」

文「あー、天狗の里に侵入者が入った、って言う良くあるメッセージだったんですけど、その侵入者って言うのが……」

文「結界を伴って高速で逃げ回る厄介なヤツだと……」

168 :ステージ5 騒がしき疾風らの血 [saga]:2011/10/27(木) 10:07:38.68 ID:t6Wz/lC60
――――――――――――― 数刻後、妖怪の山 ――――――――――――――

文「あや、あそこに居るのは……椛! 状況はどうなってるんです?」

妖怪の山に駆けつけた文と白蓮は、見知った白狼天狗――犬走椛を見つけ、駆け寄った。

椛「文さん? 珍しい、呼び出しに素直に応じるなんて……」

文「今調査している事件と関連がありそうなので戻ってきたんですよ」

白蓮「貴女が話に聞いた千里眼を持った天狗ね。 はじめまして、私、命蓮寺の僧侶、聖白蓮です」

そういいながら白蓮が恭しく頭を下げると、つられて椛も頭を下げる。

椛「これはこれはご丁寧にどうも……、って文さん! 部外者連れてきちゃダメじゃないですか!?」

天狗の里手前まで一緒に来るとか何考えてるんですか! と怒鳴りかからん勢いで食って掛かる椛をスルーして文は尋ねる。

文「それで? その結界ごと逃げ回る怪しいヤツは今何処に?」

椛「人の話を聞い……ハァ、天狗の里と守矢神社の中間辺りに今は居ます」

何を言っても無駄だと悟ったのだろう、椛は素直に千里眼で見通した結果を伝える。

文「と言うと、7合目付近か……白蓮さん、行きましょう!」

白蓮「ええ、急ぎましょう!」

文は背中の翼を羽ばたかせて空に舞い上がり、対する白蓮は魔術で強化した足で連続ジャンプをしつつ、山を登っていく。
あっという間に小さくなっていく二人を見送った椛は、嵐が過ぎ去った直後のような脱力感に見舞われた。

椛「あっちは二人に任せて良さそうですね……、哨戒任務に戻っていよう……」

169 :ステージ5 騒がしき疾風らの血 [saga]:2011/10/27(木) 10:10:09.22 ID:t6Wz/lC60
――――――――――――――――――――――――――――――――――――

??「ちぇ、ここでもあたいに追いつける(満足させる)ヤツは居ない、か……」

妖怪の山7合目付近に展開された結界の中、幻想郷には存在しない鋼鉄の馬――バイクに跨った状態で特攻服を着た少女がぼやく。

いつの間にかド田舎を思わせる世界に来てしまったり、
バイクで空を飛べるようになっていたり、色々あったが、やる事は変わらない。

ひたすら速さを追い求め、最速の座をこの手に……と思っていたのだが、今の所、競り合うどころか追いついてくる相手にさえ会えて居ない。

ここに自分の求めるような相手は居ないのか……そんな事考えが一瞬脳裏をよぎる。
が、次の瞬間、特攻服少女は何かを感じ取り、顔を上げた。

目に付いたのは、黒い翼を生やした少女と、地上スレスレを疾駆する女性の姿。

??「へっ、やっとおでましかい。 待たせやがってバカヤローが……」

思わずニヤリとする特攻服少女の目の前に、まず黒い翼の少女――文が着地する。
少し遅れて女性の方――白蓮も現場に駆けつける。

文「この結界、間違いなく貴女は“魔女”ですね? 私、射命丸文と申します。
 そこに居るのは分かってます、姿を見せてください」

今張ってある結界は内側からは外が見えるが、外からは内側が見れない。所謂マジックミラー状態だ。
カメラを片手に持っているあたり、写真でも撮りたいのだろう。

??「やなこったね。 アンタの言う事を聞く義理は無いし」

文「そこを何とか! 貴女の事を速攻で記事にして上げないと、幻想郷最速のブン屋の名が泣くので……」

??「最速だってぇ? アンタが?」

『最速』と言う言葉に、特攻服少女は敏感に反応した。
どうやら本当にアタリを引いたらしい。

文「ええ、そうですが……それがどうかしました?」

??「あたいは速いヤツと戦いたくて、こんなド田舎をかけずり回ってたんだ。
  アンタ、その『最速』の座を賭けてあたいと勝負しな」

声音だけでこちらの意図が伝わったのだろう、訝しげだった文の表情が不敵な笑みに変わる。

文「ルールは?」
170 :ステージ5 騒がしき疾風らの血 [saga]:2011/10/27(木) 10:13:30.80 ID:t6Wz/lC60
乗ってきた、そう直感した特攻服少女は結界のマジックミラー状態を解く。
これでやっと文は姿を見ることが出来た訳だが、文はカメラを向けようともしない。

??「そうだな、ここは分かりやすく一発勝負と行こう。 クリティカルヒット1回でどうだ?」

文「私が勝ったら独占取材させてもらいますよ?」

??「ああ、構わないぜ、インタビューだろうが、写真だろうが好きにしな」

文「いいでしょう、受けて立ちます。 白蓮さん、すいませんが……」

白蓮「わかってます。 判定をすれば良いのでしょう?」

手出しはしません、と言うように白蓮が両手を上げる。

??「おっと、名乗りがまだだったな。あたいはギーゼラ、銀の“魔女”だ。
   さぁて、それじゃあ早速おっぱじめようか、……アンタはあたいを満足させてくれるのかい?」

文「足腰立たなくなるまでやってあげますよ」

ギーゼラ「へっ、面白ぇ……行くぜ、まずは挨拶代わりにコイツだ!」

開幕と同時にスロットル全開、土埃を上げて宙に躍り出た愛車の上でギーゼラは最初のスペルを発動させる。


                      暴符 『世露死苦』


文「これはこれはまたご丁寧な挨拶だ事で……、それじゃあ、こちらも参りますよ!」


                      疾風 『風神少女』


ワンテンポ遅れて飛び立った文もスペルを発動、空中に無数の弾幕の花が咲き、二つの影が交錯する。
文が前方から飛んできたギーゼラの弾幕をバレルロールで回避したかと思えば、
斜め後ろから飛んできた弾に対し、ギーゼラはジャックナイフで空振りさせる。

早くも音速戦闘の様相を見せ始めた空中戦を見上げつつ、白蓮は呟く。

白蓮「お二方とも速いですねぇ……、
  瞬間的な速さなら私も自信がありますが、連続してあの速さはちょっと難しいかもですね……」

さて、と言いつつ腰を上げた白蓮も空へと飛び出していく。

白蓮「公平かつ厳正な審判を求められてしまいましたし、きっちりと見届ける事にしましょう」


171 :ステージ5 騒がしき疾風らの血 [saga]:2011/10/27(木) 10:17:46.67 ID:t6Wz/lC60
――――――――― 同刻、妖怪の山8合目【守矢神社】 ――――――――――

守矢神社の縁側でこの神社の主である二柱――八坂神奈子と洩矢諏訪子は眼下で始まった弾幕戦を見下ろしていた。

神奈子「今日はまた随分と派手にやってるじゃないか、酒の肴に丁度良さそうだ」

諏訪子「そうだねぇ……、まぁ、早苗が居ないと飲みたくても出せないんだけどね、お酒……」

財政に余裕があるとは言えない守矢神社の懐事情は、風祝であり、買出し役でもある早苗に一任されている。
当然、お酒の管理も早苗が行っているので、今の二柱には手を出すことすら出来ない。

諏訪子「…………早苗、帰ってこないねぇ」

神奈子「大方、最近流行の“魔女”異変に首を突っ込んでるんじゃないか? 確か博麗神社に遣いに行ったんだろう?」

朝も早くから山を下っていった実娘同然の風祝の姿を思い出しながら、神奈子は茶を啜る。
時間は既に昼過ぎなのだが、未だに帰ってくる気配すらない。

諏訪子「最近、妖怪退治(弾幕戦)が楽しい、とか言ってたし、たぶんそうなんじゃない?」

神奈子「今すぐ帰ってきたりとかは……」

諏訪子「無いと思うよ。 少なくともアレが終わるまでは……」

7合目付近での弾幕戦を指差しながら、諏訪子は断言した。
超スピードで行われている弾幕の応酬は、空も地上も関係なく覆いつくし、降り注いでいる。
今の状態で麓からここまで登るのは、登山道を含めて不可能に近いだろう。

諏訪子「どうする神奈子? カップめんでも食べる?」

神奈子「カップめん? あんな良い弾幕を前にしてるのに、ツマミがカップめんなのかい?」

諏訪子「食べ物だった炭を食べる覚悟があるなら何か作るけど?」

神奈子「カップめんで良いや……」

神奈子の言葉を聞き、台所へと向かっていく諏訪子。
守矢神社はいつもと変わらぬ極めて平和な昼下がりを迎えていた。

172 :ステージ5 騒がしき疾風らの血 [saga]:2011/10/27(木) 10:21:30.27 ID:t6Wz/lC60
――――――――― 同刻、妖怪の山5合目【天狗の里】 ―――――――――――

一方その頃、平和な守矢神社とはうって変わって、天狗の里は蜂の巣をつついたような騒ぎの真っ只中にあった。
上空で派手なドッグファイトが始まったかと思うと、無数の弾幕(流れ弾)が流星の如く降り注いで来たからだ。

文とギーゼラ、二人が撃った弾幕のほぼ全てが外れ弾となり、山の木々やら里の家やらに着弾する。
その内のひとつ、窓と言う窓を全てぶち破られた家から、ツインテールの鴉天狗――姫海棠はたてが飛び出してくる。

はたて「ちょっとぉ! いきなり人の家の窓破るとか一体何処のどい……って、また文なの!?」

上空で弾幕戦を展開する人影の中に良く見知った同業者の姿を見つけ、はたては激昂する。

山に謎の侵入者が入った事は知っていたが、もっぱら念写を用いるはたては部屋に篭っていた。
それがいつの間にかこんな事になっているのは、文がいつものようにちょっかいを出したからに違いない。
文句を言ってやろうと飛び立とうとしたはたては、次の瞬間呼び止められた。

椛「あっ、はたてさん! 丁度良かった、私と一緒に来てください!」

呼び止めるなり、はたての襟首を掴む椛。
いきなり連行しようとする椛にはたてがたまらず声を上げる。

はたて「ちょっ、椛!? 離してよ、これから文に文句を言いに……」

椛「里全域に大天狗さまの御殿防衛の命令が下ってるんです! つべこべ言わずに来てください!」

はたて「あーもうっ! 文っ! 後で覚えてなさいっ!」

天狗の里の混乱はまだまだ続きそうである。

173 :ステージ5 騒がしき疾風らの血 [saga]:2011/10/27(木) 10:25:48.95 ID:t6Wz/lC60
――――――――――――――――――――――――――――――――――――

地上での悲喜こもごもなど露知らず、二人の闘いは続いていた。
遥か高空で弾幕を撃ち合ったかと思えば、地上スレスレに舞い降りて木々の陰で被弾を避けたりと、状況は目まぐるしく変化する。

ギーゼラ「いいねぇ、アンタ、気に入ったよ。 だが、そろそろバテてきたんじゃねーか?」


                      爆走 『走死走愛』


文「そっちこそ、燃料大丈夫ですか? ガス欠で決着とかこっちから願い下げですからね」


                      旋符 『紅葉扇風』


同時にスペル発動、口が減らないのも、二人が超スピードで回避するのも、弾が外れ弾になるのも変わらないが、
一つだけ、開始時より明らかに変わった事があった。
その事に真っ先に気付いたのは、他でもない、一番近くで見ていた白蓮である。

白蓮「お二方とも、弾幕の濃度が薄くなってますね。 ああ見えて限界が近い、と言う事でしょうか……
   これは、そろそろ決着かもしれません」

一方、当事者である文とギーゼラも相手の弾幕が衰えている事をつぶさに感じ取っていた。
無論、自身の力が衰えている事も重々承知している。

文&ギーゼラ((次が、最後ですね(だな)…………))

互いのスペルがブレイクし、二人の間につかの間の静寂が訪れる。
奇しくも今、二人が立っている場所は守矢神社裏手の湖だった。
遮るものなど一切無く、そこに小細工の入る隙は無い。

文とギーゼラはお互い同士顔を見合わせ……、ほぼ同時にニヤリと笑って見せた。
どちらともなく、適度に距離をとった二人は、それぞれ無言でスペルカードを取り出す。
174 :ステージ5 騒がしき疾風らの血 [saga]:2011/10/27(木) 10:27:40.71 ID:t6Wz/lC60

出会って半刻と経っていない二人だが、最早二人の間に言葉など必要なかった。
血沸き肉踊る大空中戦、そのフィナーレ。

山頂から吹き降ろす風に舞い上げられたのか、一枚の木の葉が二人の間に飛んでくる。

木の葉は、はらりはらりと舞い落ちて……、静かに水面に波紋を立てた。

エンジンの咆哮と、翼の羽音だけを残し一気に加速。 二人の距離はあっという間もなく縮まり、次の瞬間交錯する。


                   『ハートオブザチキン』
                      『幻想風靡』



                        カッ!



すれ違い、互いに動きを止める文とギーゼラ。
暫くその場で制止していた二人だが……

文「っ……!」

文が声にならないうめきを漏らす。見ると右腕がだらしなくぶら下がっている。
その場に文が膝をつく様を、振り返って視認したギーゼラはニヤリと笑い……


ギーゼラ「アンタの勝ちだよ、新聞屋……」


次の瞬間、ギーゼラはバランスを大きく崩し、愛車諸共湖面に落下した。


175 :ステージ5 騒がしき疾風らの血 [saga]:2011/10/27(木) 10:30:11.94 ID:t6Wz/lC60
――――――――――――――――――――――――――――――――――――

幽々子「勝つには勝ったけど、新聞屋は行動不能と判断していいわね。
   紅魔館組に続き、命蓮寺組も脱落、っと……」

妖怪の山(と言うか天狗の里)を巻き込んだ過激な弾幕戦の結果を見て、
幽々子さんが黒板の『命蓮寺組』と書かれた欄に大きな×印を入れる。

幽々子「でも今の戦いは良かったわね。ここまで清々しくやられると、見ているこっちまですっきりしてくるわ」

クリームヒルト「分かります。『これぞまさしく決闘!』って感じの戦いでしたね」

格闘技の名試合を観戦したときの感覚、と言えばいいのだろうか?
凄い戦いを見終えたばかりで、私は興奮を押えきれずにいた。

幽々子「さてと、他の二組は何をしてるのかしら、っと……」

そんな私の脇で、幽々子さんは他の人たちの行動を見ようと、ソレを操作する。
色々操作をして、画面を切り替えていた幽々子さんの手がある時ふと止まった。

見ると、何処かの社の前で、ロープに縛られたシャルロッテちゃん(人型.ver)の姿が映っていた。
時代劇で御用になった下手人のように、黄色と赤の衣を纏った女の子の前で正座させられている。

クリームヒルト「うわっ、ホントに縛り付けられちゃったんだ……」

幽々子「これは、そろそろここがバレるのも時間の問題かしら?」

扇を広げつつ、幾分か眼差しを鋭くした幽々子さんが呟く。
176 :ステージ5 騒がしき疾風らの血 [saga]:2011/10/27(木) 10:33:00.35 ID:t6Wz/lC60

クリームヒルト「えっ?」

幽々子「この状態で、シャルロッテちゃんが口を割らずに黙って居られると思う?」

クリームヒルト「あ〜……無理、かも……」

今のシャルロッテちゃんは全力を出し切った弾幕戦の後で、極度の空腹状態になっている。
聞いた話によると、今映っている女の子は美味しそうなお芋の匂いを纏った豊穣の神様らしい。
決して信用していないとかそういうわけではないのだけど、相手としては分が悪すぎる。

幽々子「証言を得られた、って訳でもないのになぜか博麗の巫女たちもこっちに向かってるし……
    相変わらずあの巫女はいい勘してるわねぇ……。ホント、困ったものだわ」

そう言いつつ、幽々子さんは笑っていた。
これから残った二組が乗り込んでくるかもしれないのに、それすら楽しんでいる感じがする。

クリームヒルト「あっ、幽々子さん! シャルロッテちゃん、とうとうバラしちゃったみたいですよ。
        人形遣いさんと巫女さんたちが社から出ようとしてます」

幽々子「仕方ないわね。 出迎えの準備にかかるとしましょうか……」


177 :ステージ5 騒がしき疾風らの血 [saga]:2011/10/27(木) 10:36:13.45 ID:t6Wz/lC60
――――――――――――――――――――――――――――――――――――

白玉楼の門から剣を携えた青髪の少女が出てゆく。

その手に握られているのは数枚のスペルカード。
幽々子や妖夢のアドバイスを受け、熟考し、精査し、作り上げた。
模擬戦も繰り返し、戦術もある程度組み立てた。 
実戦でもこれらが通用すると今なら自信を持って言える。

そんな中、ようやく巡ってきた檜舞台。
ここ数日の成果と、恩義を返す又とないチャンス。
そんなチャンスを無駄にするつもりなど、少女には毛頭なかった。

強く言い聞かせるように少女――オクタヴィアは呟く。

オクタヴィア「これは幻想郷での、あたしにとっての大事な第一歩。
      例えどんな相手が来ようと、負けられない。 負けてなるもんか!」

一人白玉楼を後するオクタヴィアの表情は硬かった。


178 :ステージ5 騒がしき疾風らの血 [saga]:2011/10/27(木) 10:56:09.87 ID:t6Wz/lC60
以上、対ギーゼラ戦でした。

えー、まず謝ります。
文とギーゼラの超スタイリッシュ弾幕戦をご期待された皆様、スイマセンでした。
弾幕戦の規模に対し、内容が追いついてません。どう見ても私の描写力&文章力不足です。
これから佳境だって言うのに……

ギーゼラの弾幕として、>>46様から一部お借りしました。
以下簡単に解説を

 暴符『世露死苦』
まずは小手調べ
ライト(レーザー)が灯り、マフラーからは排煙(へにょり含む弾幕)が放たれる。
エンジンの暖気をしつつ、徐々に強くしていくスペル。

 爆走 『走死走愛』
相手の脇をすり抜けるように高速移動しつつ、弾幕を放つスペル。
同じ場所に留まっていると包囲されてピチュるので、相手に合わせて巴戦に持ち込むのが吉。
バイクのねーちゃんと情熱的なダンスのひと時を

 『ハートオブザチキン』
ラストスペル
相手に激突する勢いで高速突撃をかましつつ放つ弾幕。
ギーゼラ自身に当たり判定は無いので、真正面からぶつかれば回避可能
ただし、ギーゼラ周辺の結界(弾幕)は当たり判定があるので、ちょっとでもずれれば即ピチュる。
大逃げをかまして、弾幕を気合避けするか、挑戦するか、まさしく度胸試しである。
179 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/27(木) 10:59:58.77 ID:Y5gmrmZSO
面白かったζ
180 : [saga]:2011/10/27(木) 11:05:00.35 ID:t6Wz/lC60
そろそろ、異変解決に向けて話が動きます。
次回、冥界決戦の先鋒、対さやか……もとい対オクタヴィア戦となります。
さやさやの見所を何処まで引き出せるか、微力ながら精進してまいりますので、お付き合いいただければ幸いです。


進捗状況

早苗&アリス vs オクタヴィア(進捗率75%)
霊夢&魔理沙 vs エルザマリア(進捗率0%) ←NEW !
181 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/27(木) 13:12:01.54 ID:fthbVRRDO
ギーゼラ戦お疲れ様です!結構激しかったですねー。最後のぶつかり合いも熱かったです!しかし文の腕を折るか…凄いな。

パトリシアさん。頭突きで済んで良かったね!シャルちゃんは…神のお叱りはどんなもんだったんですかね〜?
そしてはたては不憫ww

次回も楽しみに待ってますよ〜!
182 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/10/27(木) 21:07:51.42 ID:yXIZrEpt0
この戦いの後、ギーゼラは河童の技術力によってパワーアップしたバイクで文にリベンジをするのであった…って展開はないですか

シャルちゃん…災難だなぁ…
183 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/28(金) 18:28:28.57 ID:scSOU58DO
それにしても、もう次が殆ど出来上がってるんだから凄いよな。
184 : [saga]:2011/10/29(土) 22:48:59.73 ID:/t7jTfnG0
たまには夜に投下してみる。
対オクタヴィア戦です。
185 :ステージ6 亡き少女の為の独奏曲 [saga]:2011/10/29(土) 23:01:12.84 ID:/t7jTfnG0
――――――― 【都会派魔女と現代っ子の現人神】 @ 三途の川 ――――――――

早苗とアリスは三途の川の脇を通り、一路冥界へと向かっていた。
秋神の社での秋穣子による“美味しそうな匂い”攻撃に、空腹が限界に達したシャルロッテが洗いざらい暴露したからだ。

早苗「それにしても驚きました。一連の魔女事件の背後にまさか幽々子さんが居たなんて……」

アリス「そう? 裏で誰かが手引きしているのは確実だと思っていたし、あの亡霊ならやりそうだと思うけど……」

事件の内容から考えると、亡霊やスキマ妖怪は容疑者筆頭候補よ。などと言ってのけるアリスに早苗は眉を寄せる。

早苗「さっきの推理といい、何処まで読んでるんです? アリスさんは……」

アリス「冷静に考えれば分かるわよ。
   犯行内容だけを見ると、一連の事件は幻想郷に詳しくない者の犯行としか思えない。
   でも、だからといって外から来たばかりの妖怪が挨拶代わりに異変を起こす、なんて思考に至るとは考えられないのよ。
   なにも考えてないド天然か、幻想郷の内情に通じた首謀者が居る場合を除いてね……」

早苗「なんでしょう……遠回しに馬鹿にされたような気がします……」

アリス「気のせいよ。……っ! 早苗、止まって!」

一旦は早苗から目を反らしたアリスは、次の瞬間何かを感じ取り、早苗を手で押し止めた。

早苗「アリスさん? 一体どうし……、ん? この気配は……」

アリス「ええ、魔女のものね……」

どうやら早苗も気がついたらしい。
本日二度目となる、独特の気配……

早苗「手厚い歓迎、ってヤツですかね……」

アリス「でしょうね。……居るのは分かってるわ、出てきなさい」

??「ん〜、バレたか……」

そう言いながら出てきたのは上半身が普通の人間で、下半身が尾びれになった女の子。
つまり端的に言うと……
186 :ステージ6 亡き少女の為の独奏曲 [saga]:2011/10/29(土) 23:04:22.71 ID:/t7jTfnG0

早苗「リトルマーメ……」

??「ストーップ! それ以上はどっかのネズミが出てくるからアウトーっ!」

言いかけた早苗をすかさず制止する人魚少女、その答えに早苗はある種の確信を持ちつつ言う。

早苗「見事なツッコミありがとうございます。元人間の“魔女”さん」

??「っ!? どうしてその事を……、あっ! まさかシャルロッテが全部吐いた?」

早苗「いえ、私たちが聞いたのは、この異変に幽々子さんが関わっている、と言う一点だけです。
  私が貴女が元人間だと判断した材料は今のツッコミと、貴女たちの魂のオーラ……」

??「オーラ?」

耳慣れない言葉だったのだろう、首をかしげる人魚少女。
良く分かっていない様子だったので、アリスが簡単に解説する。

アリス「人間から妖怪になった(人間やめた)モノ特有の気配よ。 私も同じだからよく分かるわ」

早苗「私も半分人間やめてますからね……」

アリスは種族・魔法使いになった人間、早苗は人間でありながら神の域に入ってしまった現人神。
過程や結果は違えど、根本的には大差がない。

??「幻想郷って思ってた以上にスゴイ所なのね……」

早苗「端的に言えばカオスですから……」

早苗の言葉に人魚少女は「うんうん」と頷きかけ……、はっとしたように二人に向き直る。

??「おっと、感心してる場合じゃなかった。 あたしはオクタヴィア、見ての通り人魚の魔女」

早苗「オクタヴィアさん、ですか……早速ですけど、穏便に済ませません? 私たちは幽々子さんに話があるだけですので……」
187 :ステージ6 亡き少女の為の独奏曲 [saga]:2011/10/29(土) 23:07:38.45 ID:/t7jTfnG0

オクタヴィア「うん、それ無理。 幽々子さんからここから先に通すな、って言われてるしね」

早苗「ですよねー」

にこやかに相槌を打った早苗だが、次の瞬間、声音をぐっと低くして言う。

早苗「そうなると、退治しなくてはなりませんね……悪い“魔女”さんを」

オクタヴィア「た、退治?」

雰囲気を一変させた早苗にオクタヴィアは思わず後ずさる。
一方の早苗は御幣と御札を構え、完全に戦闘モードに移行している。

早苗「忘れたとは言わせませんよ。 貴女たちは里の人たちに呪をかけて事件を起こしまくりましたよね?
  それに、この件ではアリスさんたち“魔法使い”の皆さんが要らぬ疑いをかけられて随分と迷惑を被りました。
  退治されても文句は言えないと思いません? ねぇ、アリスさん」

アリス「そうね、かなり性質が悪いし、一度懲らしめる必要があると私も思うわ」

「だから頑張ってね、巫女さん」と言いつつ後に下がるアリス。
どうやらこの場は早苗に任せることにしたらしい。
対するオクタヴィアは、と言うと、あまりの急展開に一瞬ポカンとした後、すぐに口元を吊り上げた。

オクタヴィア「……面白いじゃない、アンタがあたしを退治する?
       やれるものならやってみなよ! 返り討ちにしてあげるからさ」

早苗「ホント、泣きを見ても知りませんからね!」

オクタヴィア「ソレはこっちの台詞よ! あたしの超絶スペルで悶えなさい!」


                      懊悩 『水車小屋の娘』


スペル発動と同時にオクタヴィアから、青い音符型弾幕が放たれ、二人の周囲に散りばめられる。
直後、12条のレーザーが放射状に放たれたかと思うと、時計回り方向に回転を始め、最初にばら撒いた弾幕をかき混ぜ始める。
188 :ステージ6 亡き少女の為の独奏曲 [saga]:2011/10/29(土) 23:10:52.53 ID:/t7jTfnG0

早苗「水に見立てた青い弾幕を、水車を模した回転レーザーで攪拌ですか……。名は体を表すってヤツですね」

レーザーへの接触を避ける為、オクタヴィアの周りを時計回り方向に周りつつ、早苗が感嘆の声を上げる。
そんな弾幕戦の様子を後から見守りつつ、アリスは一人考える。

アリス(水を模した弾幕が音符なのは、元ネタがオペラ楽曲だから……。狂気の演奏事件の犯人は彼女と見て間違いなさそうね……)

アリス(問題があるとすれば、相手が弾幕として使う『音』の特性……、
    直進性にスピード、波紋、揺らぎ……、弾幕にすると厄介なモノばかり……。
    まぁ、下がると決めた以上、手出しは出来ないし、早苗のお手並み拝見、って所ね)

一面が青に覆われんばかりの中で、それでも目立つ白と蒼の巫女装束少女、
このまま水面に呑まれるか、はたまた切り抜けるか、この時点ではどちらに転んでもおかしくないとアリスは判断していた。



――――――――――――――――――――――――――――――――――――

オクタヴィア「う〜ん、このスペルはダメだったか……、じゃ、次行ってみようか」

スペルが途絶える間の牽制として、小型の車輪を模した弾幕を放ちつつ、オクタヴィアは二枚目のスペルを取り出す。

オクタヴィア「っと、その前に、奏者使い魔と踊り子使い魔を召喚して……、
      派手な援護射撃、頼んだわよ。 それじゃ、二枚目発動っ!」


                      賞賛 『歌姫へのオベーション』


使い魔の召喚により、音符弾幕が濃度を増す中、三方向から極太のレーザーが射す。
まず、中央に居るオクタヴィアを煌びやかに照らしたかと思うと、
極太のレーザーはてんでバラバラの動きで左右へと動き、今度は早苗を捉えようとする。

早苗「これは……コンサートステージのスポットライト、ですかね? 私から見ると厄介なサーチライト以外の何者でもないんですが……」

オクタヴィアとしては劇場のつもりなのだろうが、早苗の気分はさながら刑務所から脱獄した囚人のソレだ。
角度の都合なのか、レーザーの光量が時折少なくなるので、その隙を見計らって早苗は闇の中へと身を隠す。
189 :ステージ6 亡き少女の為の独奏曲 [saga]:2011/10/29(土) 23:14:17.51 ID:/t7jTfnG0

オクタヴィア「大振りな弾幕じゃこれが限度か……じゃあ、第二形態発動っと……」

早苗「っ!?」

オクタヴィアが指を鳴らすと、スポットライト弾幕は、オクタヴィアを射す初期状態で固定される。
その代わり現れたのは、四方八方からオクタヴィアへと注がれる無数の小レーザー。
右から来たかと思えば、次の瞬間には下から、また次の瞬間には斜め左上から、と目まぐるしく弾幕は姿を変える。
早苗は上下左右、全方向に最大限の注意を払いつつ、自身に向かってくるレーザーを把握し、身体を捻る。

早苗「スポットライトだったり、これだったり、よっぽど注目して欲しいんですね!?
  オクタヴィアさんは元はアイドルか何かだったんですか?」

オクタヴィア「アイドル? あはは、そんなんじゃないよ。 あたしの柄でもないし……。それに……」

言葉を区切ったオクタヴィアはちらりと先ほど召喚した奏者使い魔を見やる。
目線を送られても手にしたヴァイオリンを弾き続ける使い魔を見て、思わず小さなため息が口をついて出る。

その様子に早苗は一瞬眉をしかめたが、使い魔とオクタヴィアを交互に見やって、納得した。
ヴァイオリンを奏でる男性奏者と、その周りで踊る女性、二体の使い魔を見る目線にある感情が見て取れたのだ。

早苗(…………なるほど、そういう事ですか)

顔に出ないよう、口元だけで小さく微笑みつつ、早苗は小声で呟いた。

早苗「色々な意味で私の後輩なんですね、貴女は……。
  あーあ、負けられなくなっちゃったなぁ〜。 まぁ、元々負けるつもりなんて無かったんですけど……」


190 :ステージ6 亡き少女の為の独奏曲 [saga]:2011/10/29(土) 23:16:45.78 ID:/t7jTfnG0
――――――――――――――――――――――――――――――――――――

多数の弾幕が早苗に襲い来る。
スペル、礼節『劇場ではお静かに』は、これまでの流れから言うとある種の罠だといえた。

最初、わずかばかりだった自機狙い弾幕は、早苗が移動する度にその数を増し、
今では無数としか言えないほどの数に膨れ上がっていた。

早苗(回転レーザーに、照射レーザーと言った逃げ回るのが必須な大振り技の直後に、
   移動すればするほど数が増えるホーミング弾を持ってくる。 完全にハメられましたね……)

追い詰められてようやくこの弾幕の意図に気が付いたが、今更小降りの回避に切り替えたところで意味はない。
だが、これ以上の大移動は自分の首を絞める事になる。

早苗「だったら……!」

御幣を構え、早苗は素早く五芒星を描く、それは早苗の技の中でも即効性の高い小スペル発動の儀。


                      秘術 『グレイソーマタージ』


発動と同時に生まれた五芒星型の弾幕は回転しながら周囲の弾幕と言う弾幕を打ち消す。
攻撃の為ではなく、防御の為にスペルを発動したのだ。

オクタヴィア「へー、そういう使い方もあるんだ……。
      でもそんな使い方するって事は、かなり切羽詰まってる、って判断してもいいんだよね? 巫女さん」

早苗「ボムの一つや二つでいい気にならないで下さい。
  ドヤ顔するなら私を撃墜さ(ピチュら)せてからにしないと足元掬われますよ」
191 :ステージ6 亡き少女の為の独奏曲 [saga]:2011/10/29(土) 23:19:10.49 ID:/t7jTfnG0

オクタヴィア「ご忠告どーも、ふむ、今のでリセットかかっちゃったし、そろそろ次のスペル行こっか……」


                      泡沫 『人魚姫の願い』


スペル発動と同時に、波打つ青い弾幕が展開され、オクタヴィアの手に剣が生成される。
剣を手にしたオクタヴィアは早苗目掛け、一気に間合いを詰める。

早苗「っ!?」

咄嗟に身を翻した直後、鋭い斬撃が早苗の脇を掠める。
かわされたと分かるや、オクタヴィアはステップを踏んで方向転換、再度躍りかかってくる。
モノはためしと、早苗はお札を放ってみるが、放たれた直後に剣で斬り捨てられる。

オクタヴィア「ほらほらほら、このままじゃ斬られちゃうよ!」

早苗「くぅっ!」

間一髪のところで斬撃を避けながら、早苗は考える。
オクタヴィアの近くに居る限り、絶え間ない斬撃に襲われる。
かといって距離をとろうと思えば、周囲に展開された青弾幕が早苗を飲み込もうとするだろう。

早苗「ならば……」

大振りになった斬撃を回避した直後、早苗は一気に距離をとった。
予想通り雪崩れ込んでくる青弾幕に対し、早苗は御幣を頭上に構える。

オクタヴィア「なに?また防御スペル? 荒れ狂う海原の弾幕にあんなのが通用するなんて……」

早苗「防御? 何を勘違いしてるんです? これは歴とした攻撃スペルです!」


                      開海 『海が割れる日』


早苗がスペルを発動させると同時に、早苗を飲み込もうとしていた弾幕の海原がピタリと制止する。
それどころか、早苗の目の前に道を作るように弾幕が二つに割れ、オクタヴィアの姿を露にする。
192 :ステージ6 亡き少女の為の独奏曲 [saga]:2011/10/29(土) 23:22:19.47 ID:/t7jTfnG0

オクタヴィア「なっ!?」

早苗「貴女が海原を行く人魚姫だと言うのなら、私はその海を割くまでです!」

弾幕を一気に打ち消され、驚愕で隙だらけとなったオクタヴィアに数枚の御札が突き刺さる。
攻撃スペルと名乗るだけの事はあり、これまでの牽制も兼ねたソレに対し、今回の御札は鋭く、重い。

オクタヴィア「っ!? かはっ……!?」

重い一撃をもろに受けた衝撃でオクタヴィアはその場に膝をつく。

早苗「これは……、勝負ありで……」

オクタヴィア「まだよ!」

言いかけた早苗の言葉を悲鳴に近いオクタヴィアの叫びが遮る。
見ると、オクタヴィアは剣を杖代わりにしてよろめきつつも立ち上がる。

オクタヴィア「あたしはまだ……まだやれるわ。 このくらいで敗けにされてたまるもんですか!
      あたしはこれからここで生きる為にも、幽々子さんに報いるためにも、こんなところで負けられないのよ!」

必死の形相で自身に言い聞かせるようにそう言うオクタヴィアに対し、早苗は真剣な眼差しで問い掛ける。

早苗「はぁ……、貴女って人は……、一体どれだけ自分で自分を追い詰めたら気が済むんです?」
193 :ステージ6 亡き少女の為の独奏曲 [saga]:2011/10/29(土) 23:28:00.18 ID:/t7jTfnG0

オクタヴィア「? なに言ってるの? 別にあたしは自分を追い詰めてなんか……」

早苗「いいえ、追い詰めてます。貴女、無理に順応しようとしてますよね?
  ホントは新しい世界への不安とか、外の世界や遺してきた人たちへの想いとか、色々あるのに全部無理に抑え込んで、
  弾幕戦に没入することで考えないようにしている。 違いますか?」

早苗の言葉に、オクタヴィアがびくりと体を震わせる。
思いもしなかった指摘に思わず声も上ずる。

オクタヴィア「さ、さっきから言わせておけば何を……、それにアンタにあたしの何が分かるって言うの!?」

早苗「同じなんですよ……」

オクタヴィア「えっ……」

小さく、それでもはっきりとした声にオクタヴィアは顔を上げる。
困ったような笑顔を浮かべ、早苗は言う。

早苗「……私も貴女たちと同じで外から来たんです。 家族も友達も故郷も、好きだった人でさえ全部、全部向こうに残して……」

オクタヴィア「あ…………」

一旦は頭まで上った血が見る間に下がる。
そして気付く、幻想郷に来てから今日まで鏡に向かう度に見ていたモノと同じ眼差し――何処か憂いと寂しさを帯びたソレを早苗がこちらに向けていることに……。

オクタヴィア「あはは……、なにそれ?
      弾幕戦で主導権握ってアンタを手のひらの上で踊らせていたつもりだったのに、実はアンタは全部お見通しだった、って事?」

早苗「お見通しと言うか、一緒だったんですよ。 幻想郷に来たばかりの頃の私にね……。
  同じ経験をした先輩として、黙って見ていることなんて出来ません」
194 :ステージ6 亡き少女の為の独奏曲 [saga]:2011/10/29(土) 23:30:09.50 ID:/t7jTfnG0

急いで慣れようとして、弾幕戦に没入した辺りもそっくりです。と続ける早苗の言葉にオクタヴィアは頭を押さえる。

オクタヴィア「そこまで見透かされてるのに、気付かないなんてね……。アタシってほんとバカ……」

早苗「安心して下さい。幻想郷(ここ)に来てバカやったのは私も一緒でしたから……」

そしてコテンパンにされたんですけどね。と付け足すと、オクタヴィアから苦笑いが漏れる。

オクタヴィア「おーい、慰めにならないって、そんな話……。 でもそれなら……」

オクタヴィア「尚更あたしは敗けるわけには行かないね……。 “先輩”とは違うってこと、ハッキリさせないと……」

剣を構えつつ、オクタヴィアが言う。
その瞳に、先刻までの憂いや気負いは一切ない。純粋な闘志だけがそこにあった。
その様子を見て、早苗も小さく笑みをもらす。

早苗「いいえ、このまま敗けてもらいます。 じゃないと私の立場がなくなってしまいますから……」

言いつつ、早苗も再度御幣を構える。
それは一度は決着宣言が出されかけた決闘を続行すると言う意思表示。

オクタヴィア「いくよ」

早苗「ええ、いつでも……」


オク&早苗「「勝負っ!」」


                      聖歌 『アヴェ・マリア』
                       秘法 『九字刺し』


195 :ステージ6 亡き少女の為の独奏曲 [saga]:2011/10/29(土) 23:32:29.19 ID:/t7jTfnG0
――――――――――――――――――――――――――――――――――――

アリス「…………で? 大見得切った結果が、両者相討ち、って訳?」

二人仲良く地面に倒れている早苗とオクタヴィアを見下ろしながら、呆れ顔のアリスが言った。
気絶しているオクタヴィアの脇で寝転がったまま、早苗は頬を膨らませる。

早苗「失礼な、決して相討ちなどではないです。
  私が倒れたのはオクタヴィアさんが気を失った後ですし、ちょっと力を使い過ぎただけです」

アリス「事実上の相討ちじゃない。そんな状態で白玉楼まで行くつもり?」

早苗「行くだけなら行けますよ…………ウソです。ごめんなさい」

冗談めかして一旦はそう答えた早苗だが、アリスに思いっきり睨まれ、すぐに引っ込める。
アリスは暫らくそのまま早苗を睨んでいたが、やがて盛大なため息をついた。

アリス「30分だけ待ってあげる。その間にどうにか回復しなさい。 まぁ、そんなに待ってたら、全部終わってるでしょうけど……」

早苗「すいません、私が足を引っ張ったばっかりに……」

二人には共通の予感があった。
そしてその予感はほぼ間違いなく現実のものになるだろうと、二人は思っていた。

川岸に寝転がり、空を見上げつつ、早苗はアリスに問う。

早苗「アリスさん……」

アリス「なに? 早苗……」

早苗「私、きちんと“先輩”出来てましたか? 大事な事、ちゃんと伝えられてましたか?」

『何の』とも、『何を』とも早苗は言わない。
言わないが、何を言わんとしているか、アリスには良く分かった。

アリス「そうね。十分やれてたんじゃないかしら……。まぁ、霊夢にはだいぶ劣るけどね」

早苗「あはは……、手厳しいですね……」

苦笑しつつそう漏らすと、早苗はそれきり黙りこむ。
アリスは三途の川の行く先――冥界の方に目線を送りつつ、小声で呟いた。

アリス「最初はどうかと思ったけど、“魔女”も中々どうして、ちゃんとやっていけそうな相手よ。 だから……」


アリス「きっちり決着をつけて来なさい。 霊夢……、魔理沙……」


196 :ステージ6 亡き少女の為の独奏曲 [saga]:2011/10/29(土) 23:49:06.33 ID:/t7jTfnG0
以上、『さやさやは決断や行動は早いけど、吹っ切る事が出来ない悩める乙女だよ』編でした。
簡単に言っちゃえば風神録での早苗さんポジです。
このクロスを考えた時点で、さや……オクタヴィアちゃんがここに納まるのは決定してました。

スペカとか弾幕戦とかのめり込むように取り組むだろうけど、現世への未練は捨てられないだろうなぁ、と言う勝手な妄想です。
と言うか早苗さんから指導してくれる人(二柱)をなくして、過酷な魔法少女システムにぶち込んだ姿がさやかかな、とも

つまりアレか、このオクタヴィアちゃんは幻想郷に馴染んだら常識を捨て……る事は無いだろうなぁ……
どうして早苗さんはああなった。


早苗さんが恋話だけやたら鋭いのはああ見えても元JKだから、って事で
尚アリスが元人間だったと言う設定とか、早苗さんの過去とかは公式設定ではありません。あしからず。
(二次界隈ではどちらも良く使われる設定ですが……)

>>20>>50様の弾幕案をほぼそのまま採用させて頂きました。ありがとうございました。
弾幕解説もそちらを参照で
197 : [saga]:2011/10/29(土) 23:53:52.07 ID:/t7jTfnG0
以下進捗

霊夢&魔理沙 vs エルザマリア(進捗率70%)
クリームヒルト vs 霊夢&魔理沙(進捗率0%) ←NEW !

>>183
なぜ次が仕上がっているかって?
次の話がある程度仕上がる位まで寝かさないと矛盾が生まれかねないからです。
198 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/10/30(日) 00:01:43.36 ID:SLk4nlE90
投下乙&ネタ使用ありがとうございます!!
今日あたり来そうだったから張りついといて正解だったぜ!

弾幕案もさらに洗練されてました。参加できてうれしい!
それだけに聖歌『アヴェ・マリア』がなんというかふわっとしたものだったのが悔やまれます……もっと俺に発想力を。
199 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/30(日) 02:45:58.22 ID:M8RkKBnao
乙!

クリームヒルトが出てるって事はワルプルの出番はなしかな?
200 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/30(日) 09:06:02.36 ID:2dITXyxDO
>>1


>>199
EXとかファンダズムがあるじゃまいか!
気長に待とうぜ
201 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/30(日) 12:09:58.84 ID:ml5z45HDO
オクタヴィア戦、投下お疲れ様です!今回はシリアスな感じのバトルでしたね。弾幕は派手目でしたが。

そういえば、初めてボムが使用された様で、段々と戦いのレベルが上がって来てるなー、って感じますね。やっぱり>>1さんは凄いなぁ。

多分、このSSのオクタヴィアちゃんみたいな状態を“女々しい”って言うのかな。いや、女の子だからこそそうなのかも。
202 : [saga]:2011/10/30(日) 16:52:12.45 ID:4cydie/X0
ヤバイ、マジヤバイ
休日にのんびり書くつもりが、寝て起きたらネタが沸いてきて一気に書き上げてしまった。
普通起きたら忘れているモノなのに……

これが所謂降りて来た、って事なのね! もう何も怖くない!


はい、スイマセン調子乗りました。投下参ります。
203 :ステージ7 黒影審判 〜黒き影弄びし少女〜 [saga]:2011/10/30(日) 16:57:16.19 ID:4cydie/X0
――――――――― 【白黒魔法使いと紅白巫女】 @ 冥界 ―――――――――――

魔理沙「おい霊夢、なんで冥界なんかに向かってるんだ?」

白玉楼へと続く長い階段を上りながら、魔理沙は霊夢に尋ねた。
ゲルトルートを幽香に預け(ついでに処遇も任せた)、魔理沙の地図などで改めて事件を精査した後、
霊夢はなぜか急に冥界行きを主張しだしたのだ。何故その決断に至ったのか、魔理沙は気になっていた。

霊夢「端的に言えば勘よ。いくつか根拠もあるけどね……」

魔理沙「ほう?どんなだ?」

霊夢「今回の事件は幻想郷の各地で起きてるわ。
   紅魔館や迷いの竹林みたいに滅多に里の人が行かないような場所でもね……
   でもある方角だけ、事件とは無縁の場所があったのよ」

霊夢の言葉に自身で作成した地図を思い返す。
幻想郷の各地に×印が書き込まれた地図の中で、印がまったく入らなかった場所は……

魔理沙「中有の道に三途の川、再思の道、無縁塚……、なるほど、冥界方面か……」

霊夢「そうよ。それでピンと来たの。 アイツらの根拠地若しくは匿っている人物が冥界に居るんじゃないか、って……」

自分の家の前で事件を起こすヤツなんて普通いないでしょ?と続ける霊夢に魔理沙は頷く。

魔理沙「確かに。 自宅の前で盗みなんか働いた日には即バレるだろうな」

霊夢「そして、冥界が怪しいとなると、いかにもこういう事が好きそうな人物が一人居るのよ」

魔理沙「西行寺幽々子、白玉楼の主か……」

魔理沙が言うと、霊夢は無言で頷く。

魔理沙「しかし、幽々子が犯人ならそろそろ妖夢のヤツが出てきても良い気がするんだが……」

階段は既に7割近く上ってきている。
仮にも異変を起こした張本人であるなら、白玉楼の防衛を疎かにするとは思えない。
204 :ステージ7 黒影審判 〜黒き影弄びし少女〜 [saga]:2011/10/30(日) 17:00:38.42 ID:4cydie/X0

霊夢「多分、妖夢は出てこないわ。
   幽々子は間違いなく関わっているでしょうけど、今回の異変は対外的にはあくまで“魔女”が主体となって行っている事にしたい筈よ。
   白玉楼として表立った動きは見せないと思うわ」

魔理沙「あくまで“魔女”任せ、って事か……。 霊夢、お前の考えはどうやら正解らしいぜ」

??「……気付かれましたか」

階段の脇に並んだ燈篭の陰から、修道服を纏った少女が顔を出す。

??「私は影の魔女、エルザマリア……。 時にお二方は救いを求めてはいませんか?」

霊夢「アンタの言う救いがなんなのかは知らないけど、この異変を終わらせる手伝いなら今すぐ欲しいわ」

「夕飯までには全部片付けときたいのよねぇ……」と面倒くさそうにぼやく霊夢に対し、胸の前で両手を組みながらエルザマリアが言う。

エルザマリア「ならば私と共に祈りましょう、そして救済が訪れるのを待つのです」

魔理沙「あいにくだが、待つのは私の性分じゃねーんだ。 他のヤツを誘いな」

霊夢「天は自らを助くる者を助く、救済は待つものじゃなくて掴む物よ。
   それにお祈りをするなら賽銭奮発して10秒祈ったほうがよっぽど御利益があるわ」

御札を構え、臨戦態勢をとりつつ、霊夢は魔理沙に目配せをする。
霊夢の意図を察し、魔理沙は小さく笑いつつ一歩下がる。

魔理沙「賽銭の強要もそこそこにしとけよ? 相手は新参なんだからな」

霊夢「失礼ね。一度たりとも強要なんかしてないわ。 あくまで相手の自由意志を尊重してるわよ」

魔理沙「そう仕向けてるだけだろ」

エルザマリア「そろそろよろしいでしょうか?」

軽い調子でやり取りを交わす二人に、若干困惑気味のエルザマリアが尋ねる。
小さい咳払いと共に、霊夢はエルザマリアに向き直る。
205 :ステージ7 黒影審判 〜黒き影弄びし少女〜 [saga]:2011/10/30(日) 17:03:51.41 ID:4cydie/X0

霊夢「いつでも良いわ、というかさっさと終わらせたいから早くやっちゃってくれない?」

エルザマリア「そんなに早く終わりにしたいのですか? なら、私の影の世界に入ってしまえば楽ですよ?」


                      影符 『魔造の太陽』


エルザマリアは霊夢たちに背を向けると、燈篭の一つに祈りを捧げるように膝立ちになる。
燈篭に灯っていた僅かな灯が目を焼かんばかりのモノに変わり、3人の影をハッキリと浮かび上がらせる。

霊夢「ちょっと、明るくなっただけで弾幕じゃないじゃない。何考えてるのよ」

エルザマリア「慌てないで下さい、これは言うなれば準備です。それでは、行きますよ?」


                      引込 『影法師の反逆』


エルザマリアが言うと、燈篭からの光が霊夢を殊更強烈に照らす。
霊夢の背後に濃い影が生まれ、その影から無数の弾幕が放たれる。

霊夢「っ!?」

背後から飛んできた弾幕に、驚きつつも霊夢の身体は回避に動いていた。

エルザマリア「どうですか? 自分自身の影に攻撃される気分と言うのは」

霊夢「背後から撃たれて気分が良い訳ないでしょ!」

怒鳴りつつ、霊夢は小刻みに移動する。
弾幕は放たれた時点で霊夢がいた場所を狙う、自機狙い弾なので、上手く動けば当たることはない。
ただし、放たれる間隔が短いので考えて移動しないと、すぐに階段の端に追い詰められてしまうだろう。
206 :ステージ7 黒影審判 〜黒き影弄びし少女〜 [saga]:2011/10/30(日) 17:08:08.78 ID:4cydie/X0

魔理沙(まぁ、霊夢ならその心配は無いけどな……)

その点、霊夢の機動は最適と言えた。
同じ方向に移動するのではなく、隙を見計らって移動方向を切り替えることで上手く左右へと誘導している。

エルザマリア「まったく危なげない回避……。 流石、と言っておきましょうか。
       ですが、後ばかり気にしていてはダメですよ?」


                      使役 『彷徨える黒影』


3枚目のスペルが発動し、エルザマリアの周囲に影の使い魔が多数出現する。
使い魔は四方八方に散ると、霊夢を取り囲むように周囲に展開し、弾幕を放ってくる。
更にそれだけではなく、霊夢の影から放たれる弾幕も継続したままだ。

霊夢「ちょっとアンタ! スペル2つを多重発動とか何考えてるのよ!」

思わず声を上げる霊夢に対し、エルザマリアは澄ました声で答える。

エルザマリア「多重発動ではなく上位互換です。
       先ほどのスペルは貴女の影を操るスペル、このスペルはこの場に存在する影全てを操るスペル、まったくの別物です」

霊夢「〜〜〜〜っ!! 今に見てなさい、この御礼はきっちり返させてもらうわよ!」

魔理沙「霊夢、それは悪役の台詞だぜ!」

地団駄を踏みつつ捨て台詞をもらす霊夢に、魔理沙はツッコミとも茶化しとも取れる言葉を放つ。
霊夢は魔理沙をキッと睨みつけたが、すぐに弾幕が殺到してきたので次の瞬間には視線を戻した。

霊夢「使い魔ってことはあの影も妖怪なんでしょ? それなら……」


                      夢符 『二重結界』


霊夢のボム発動と同時に二重の陣が霊夢の周囲に展開される。
展開しきると同時に陣は強力な結界となり、使い魔たちを弾き飛ばした。
結界の展開で外側まで弾かれた影に対し、追い討ちと言わんばかりに御札による追撃がかかる。
もろに御札の直撃を食らった影はその場で瞬時にして消滅する。
207 :ステージ7 黒影審判 〜黒き影弄びし少女〜 [saga]:2011/10/30(日) 17:11:07.82 ID:4cydie/X0

霊夢「ひいふうみぃ…………、八体はやったわね」

なんとか二重結界の内側に残る事が出来た一部の影が弾幕を撃ち続けているが、その濃度はぐっと薄くなっている。
霊夢の弾幕に封魔属性が含まれているのを見て、エルザマリアは思案する。

エルザマリア「使い魔では貴女に対しては分が悪いようですね。作戦変更が必要かしら?」

霊夢「必要だと思うわ。 他力本願な相手に負けるほど私は甘くないもの」

エルザマリア「ご忠告ありがとう、それでは私自らが相手になることにするわ」


                      侵蝕 『影蝋』


燈篭の光が今度はエルザマリアを照らし、その背後に黒々とした巨大な影を作り出す。

同時にエルザマリアから放たれた弾幕は、黒色のソレ。つまり……

魔理沙「影の中に入ったら弾が見えない、ってか、厄介な事してくれるぜ」

背後で弾幕戦を見守っていた魔理沙が呟く。
相手にならなくて良かった、と言う風だ。

霊夢「そう? 簡単な話じゃない、アイツの影に入らなければ良いのよ」

魔理沙「そうは言うがな、アイツの影の向きがしょっちゅう変わるから、意外と厄介だぜ?」

そう、燃え上がる燈篭がランダムで変わるので、影のできる向きもまた変わるのだ。
右前方の燈篭が燃えれば影は左後方に広がり、逆に左前方の燈篭ならば右後方、といった具合だ。

霊夢「燈が強くなってから、影が濃くなるまで若干だけど時間があるわ、その隙に移動するのよ」

エルザマリア「なかなか良い慧眼をお持ちですね。ではこれならどうでしょう?」

エルザマリアの言葉と共に弾幕が途絶える。
何をする気か訝しがる霊夢の前で、次の瞬間、燃え盛る燈篭がそれまでの1つから3つに増える。
光源が3つに増えた事により、影の出来る向きも3方向となり、霊夢の周囲の殆どが影に覆われてしまう。
208 :ステージ7 黒影審判 〜黒き影弄びし少女〜 [saga]:2011/10/30(日) 17:13:37.87 ID:4cydie/X0

エルザマリア「これで明るい所は殆どありません。 さてどうなさりますの? 紅白の巫女さん」

霊夢「………………」

お手並み拝見と言わんばかりのエルザマリアに対し、霊夢がとった行動は静かに目を瞑る事だった。
その様子を見ていた魔理沙が思わず声をあげる。

魔理沙「おいおい、何考えてるんだよ霊夢! 弾幕が来るぞ!」

魔理沙の忠告を受けても尚、霊夢は目を開かない。
影の濃さが増し、エルザマリアが再度弾幕を放った瞬間になってようやく霊夢は目を開く。

魔理沙「霊夢のヤツ、一体何がしたかったんだ…………ん?」

不可解な行動に、眉を寄せていた魔理沙は、霊夢が影の中を移動しつつそれでも被弾を許していない事に気が付いた。
黒い影の中で、その影に紛れてしまうような黒い弾幕に襲われているのに、である。

魔理沙「どうなってるんだ? ……まさか!?」

目を凝らして、影の中を見た魔理沙は、ある事実に気が付いた。
影の黒と、弾幕の黒、どちらも同じ黒なのだが、微妙に色や濃さが違ったのである。
影の黒が灰をぐっと濃くしたような黒なら、弾幕の色は群青を濃くしたような青味がかった黒なのだ。

魔理沙「良くあんなのが見分けられたな、あんなの目を慣らさなきゃ分からんぞ…………ああ、そういう事か」

呟いて、魔理沙ははっと気付く。
霊夢が何故目を瞑ったのか、それは同じような黒の見分けを付けやすくする為だ。
自ら一時的に一切の光を遮る事で、闇に目を慣らし、弾幕の襲来に備えたのだ。

霊夢は最初の段階で、影と弾幕の黒が微妙に違う色であることに気が付いていたのだろう。
仮に影に入ってしまっても、すぐに対応出来るよう、『目を慣らす』という対抗策を考え付いていたに違いない。

エルザマリア「本当に鋭い方ですね。 仕方ありません、次に参りましょう」

悔しがるどころか感心するような声をあげつつ、エルザマリアは次のスペルを発動させた。


209 :ステージ7 黒影審判 〜黒き影弄びし少女〜 [saga]:2011/10/30(日) 17:16:03.44 ID:4cydie/X0
――――――――――――――――――――――――――――――――――――


                      連想 『影の中の宇宙』


エルザマリアの影に自身の影、影の結界に影の使い魔、霊夢の周囲はありとあらゆる影に覆われていた。
光の弾幕が描く軌跡にあわせて、新たな影が生まれ、その影が敵となり霊夢の前に立ちはだかる。

そんな中、神業的な身のこなしでそれらを回避しつつ、霊夢はエルザマリア目掛け御札を放つ。が……

エルザマリア「無駄ですよ、巫女さん」

放たれた御札はエルザマリアを庇うように現れた影によって遮られる。
直撃を受けた影は消えたが、エルザマリアには傷一つつけるに至らない。

霊夢「くっ……」

エルザマリア「いい加減諦めたら如何です? 貴女の周囲は最早影ばかり、影を操る私の世界に取り込まれてしまったと言っても良いのです
       そのまま影に飲まれてしまえば今すぐ楽になれますよ」

霊夢「そんな偽りの救済はいらないわ、それが救いなのかどうか決めるのは私よ」

霊夢(とは言え、これ以上はそろそろヤバいわね……)

霊夢は全方向に注意を払いつつ、辺りを見回した。
周囲はエルザマリアの言うとおり影だらけで、襲い来る弾幕はなおその数を増やしている。
こちらから攻撃を放っても、撃った攻撃により作られる影が、エルザマリアの盾となり、通じない。
何をやっても相手の戦力を増すばかりで、泥沼とはまさにこの事かと思えるほどだ。

そんな中で明るいモノがあるとすれば、互いの弾幕と、エルザマリアが祈りを捧げる燈篭ぐらいだ。

霊夢「……!」

その事に気が付いたのはまさにその時だった。
気付いた瞬間、霊夢は苦笑する。
それはこの布陣に絶対的自信を持っているエルザマリアへの嘲笑であり、自嘲でもあった。
絶対不利と思われたこの形勢を一発でひっくり返す、単純な一手。

霊夢「あー、何で今まで気付かなかったのかしら……こうすれば最初から一発だったじゃない……」
210 :ステージ7 黒影審判 〜黒き影弄びし少女〜 [saga]:2011/10/30(日) 17:18:53.61 ID:4cydie/X0

エルザマリア「? なにをなさるつもりです?」

霊夢「こうするのよ!」


                      霊符 『夢想封印 散』


七色の光弾と紅く燃える御札を現出させ、四方八方へとばら撒く霊夢。

エルザマリア「無駄です! 私に向かう攻撃は全て影が……」

霊夢「誰がアンタを狙うって言った?」

エルザマリア「なっ!?」

放たれた光弾と御札はエルザマリアではなく、その背後や周囲で燃える燈篭を直撃、その全てをなぎ倒す。
灯りと言う灯りが全て吹き消され、エルザマリアから伸びていた“影”も、弾幕が作り出す“影”も全てがふっと姿を消す。
光と共に影が全て消え、辺りは影より濃い“闇”に包まれる。

霊夢「“影”があるのはソレを照らす“光”があるからこそ、“闇”の中では影の作りようがないのよ。
   アンタが操っていた影は全部闇に消えたわ。 今のアンタには使い魔も盾もない」

エルザマリア「なっ!? なんと言うことを……でもこうなってしまえば貴女たちもなにも見えな……」

霊夢「あら、アンタが祈ってばっかで同じ場所から動いてないのは分かってるのよ。それに……」

口元に笑みを浮かべつつ霊夢が放った次の言葉に、エルザマリアは冷水をかけられたように戦慄した。


       『光の方ばっか向いてずっと祈ってたアンタの方が、何も見えないんじゃないの?』


灯りを消され、ただでさえ暗くなった世界で、エルザマリアの視界は完全な闇に覆われていた。
目を瞑っていても目を焼く様な明るさの燈を前にしていたのだ。一転して闇に包まれた世界にその目は順応する事ができない。

霊夢「他人は影に取り込む癖に自分は常に光の方を向いてるとか、アンタ、自己矛盾の極みなのよ。
   真の救済を望むのなら、アンタ自身がしっかり影の中も見て、陰陽あわせて見通してからにしなさい」


                      宝具 『陰陽鬼神玉』


211 :ステージ7 黒影審判 〜黒き影弄びし少女〜 [saga]:2011/10/30(日) 17:21:57.88 ID:4cydie/X0
――――――――――――――――――――――――――――――――――――

魔理沙「夢想封印じゃなくて陰陽玉で殴ってケリとか随分とケチなシメ方だったな」

大量の陰陽玉に埋もれるように倒れているエルザマリアに合掌しつつ、魔理沙はケラケラと笑う。
エルザマリアの頭には陰陽玉の直撃により出来た見事なたんこぶ。
霊夢の反撃で一瞬とは言え恐慌状態となり、隙だらけになったエルザマリアにこれでもかと言わんばかりに陰陽玉をぶつけまくったのだ。
おそらく暫らくは起きないだろう。

霊夢「仕方ないでしょ、夢想封印の光で影が出来たら意味ないし、勝てばいいのよ、勝てば……」

魔理沙「やっぱりそれは悪役の台詞だぜ」

そう言いつつ、霊夢と魔理沙は何事もなかったかのように階段の次の段に足をかける。 と、その時――、


           「あらあら、倒した相手をそのまま放置なんて、随分と酷い事をするのね……」


霊&魔「「っ!?」」

聞きなれた声に見上げれば、階段の最上段に蒼い衣と特徴的な帽子を纏った亡霊――西行寺幽々子の姿があった。
ミニ八卦炉に手をかけつつ、魔理沙が尋ねる。

魔理沙「おいおい、異変の張本人自らがお出迎えとは今回は随分と潔いじゃねーか」

幽々子「残念だけど今回の件での私は単なる脇役なの。貴女たちの相手は別よ」

私は案内役兼観客その1よ、などと言ってのける幽々子に霊夢は胡散臭そうなものを見る目を向ける。
冥界に行こうと思ったら迎撃受けたのだ、今の状況で幽々子の言葉を鵜呑みにすることは出来ない。

霊夢「とか何とか言って、焚きつけたのはアンタでしょ? 外から来たばかりの連中に計画できる事件じゃないわ」

幽々子「あらあら、右も左も分からない新しい人たちが来たのよ。 幻想郷各地への挨拶回りを勧めて何が悪いのかしら?」
212 :ステージ7 黒影審判 〜黒き影弄びし少女〜 [saga]:2011/10/30(日) 17:23:24.32 ID:4cydie/X0

魔理沙「そりゃまた随分とはた迷惑な挨拶を仕込んでくれたな……。
    お陰で私ら魔法使いがどれだけ変な疑いをかけられたことやら……」

げんなりしながら魔理沙が言うと、幽々子は思い出したと言わんばかりに手を軽く叩く。

幽々子「そうそう、その件に関して、挨拶ついでに話があるらしいのよ。 二人とも、ついて来てくれないかしら?」

魔理沙「…………おい霊夢、どうする?」

霊夢「怪しいって言えば怪しいんだけど……、その割りに幽々子にやる気がまったく感じられないのよね……
   っていうかアンタたち魔法使いの問題なんだから私に聞かないで自分で決めなさいよ」

ぶっ飛ばすんじゃなかったの? との霊夢の言葉に魔理沙は帽子を目深に被る。
正直、今日一日幻想郷を回って、“魔女”と実際にやり合ってみて、“魔女”に対する『怒り』に似たような気持ちはだいぶ治まってきている。
弾幕戦で気が晴れたという事もあるが、基本的に悪いヤツじゃないというのもやり合って分かったし、幽々子がそそのかしたと言う事情も知ってしまった。
大人にそそのかされて悪戯を働いた子供に怒りをそのままぶつけるほど、魔理沙も子供ではない。

つまり、今朝までの魔理沙を突き動かしていた動機は殆ど霧散してしまっているのだが……

魔理沙「〜〜〜っ! ああ、もうっ! 一度買った喧嘩だ! 最後まで付き合ってやるよ!」

幽々子「なら、行きましょう。 あの子は白玉楼で待ってるわ」


213 : [saga]:2011/10/30(日) 17:24:36.13 ID:4cydie/X0
対エルザマリア戦投下終了、このままクリームヒルト戦になだれ込みます。
後書きや解説はその後で
214 :ラストステージ ラストサルヴェイション [saga]:2011/10/30(日) 17:28:49.00 ID:4cydie/X0
――――――――― 【救済の魔女・クリームヒルト】 @ 白玉楼の庭 ―――――――――――

幽々子「連れてきたわよ。クリームヒルトちゃん」

クリームヒルト「あっ、ありがとうございます。幽々子さん」

幽々子さんの声に私は振り返る。
幽々子さんの後ろから続けて入って来たのは、紅白の巫女さんと、白黒の服と箒を持ったいかにもな魔法使いスタイルの女の子。

クリームヒルト「二人だけ……ですか?」

幽々子「ええ、ここまで来れたのは博麗の巫女たちだけよ」

クリームヒルト「博麗の巫女……、じゃあこの人が?」

霊夢「ええ、私が結界の管理と幻想郷の秩序を保っている素敵な巫女、博麗霊夢よ。 ……アンタが“魔女”の元締めね?」

クリームヒルト「一応そうなるのかな……。私はクリームヒルト・グレートヒェン、救済の魔女です」

自己紹介をしつつ頭を下げると、魔法使いの使いの女の子が感心したと言うように笑ってみせる。

魔理沙「こりゃまたご丁寧な挨拶だな。霧雨魔理沙、普通の魔法使いだ」

霊夢「で、早速聞きたいんだけど、こんな丁寧な挨拶が出来る貴女がなぜあんな事件を計画したの?
   愉快犯や単なる悪戯心ではないんでしょ?」

クリームヒルト「勘が鋭い、って聞いてたけどホントだね……。
        私たちは一週間くらい前に幻想郷に来たの。
        外の世界で消滅する筈だったんだけど、たまたまこの近くにみんな一緒に流れ着いて……、
        そんな私たちを最初に見つけて介抱してくれたのが幽々子さんだったんだ」

私は落し物を拾って持ち帰っただけよ〜と幽々子さんは軽い調子で言う。

クリームヒルト「私たちは幽々子さんから幻想郷について教えてもらって、ここで暮らしていく事に決めたの……。
        外にはもう私たちの居場所はないから……」

外の世界は他ならぬ平行世界の私の願いにより“魔女”が存在できない世界になってしまった。
奇跡的に流れ着いた幻想郷で生きるか、完全消滅か――結果、私たちが選んだのは“生きる”と言う選択だった。

私だって、出来る事なら消えたくは無い。そして消えずに居る方法が幻想郷(ここ)にあると言うなら、それにすがるしか方法がなかった。
215 :ラストステージ ラストサルヴェイション [saga]:2011/10/30(日) 17:33:24.75 ID:4cydie/X0

クリームヒルト「私たちはみんなで相談して、“魔女”と言う妖怪として幻想郷に加わるつもりだったんだけど、
        幽々子さんから幻想郷で “魔女” と言ったら魔法使いの女の人を意味する言葉だ、って聞いたの」

霊夢「なんとなく見えてきたわ……。
   要するにアンタたちは “魔法使い” とは違う “魔女” と言う新しい存在――概念と言っても良いわね――を、
   幻想郷に広めようと、そう思ったわけね?」

霊夢さんの言葉に私は頷く。
物分りの良い人だと、中継を見ていたときも思ったけど、こうして実際に話しているとホントに助かる。

クリームヒルト「そう、その他にも幽々子さんからスペルカードルールや貴女たち博麗の巫女についても教えてもらったの。
        私たち“魔女”の存在と、スペルカード、そして幻想郷の秩序を守る巫女、
        この三つを使えば簡単に、それでいて平和的に問題解決が出来るんじゃないか? って……」

霊夢「“魔女”が事件を起こして幻想郷で噂になって、その事件を調査に出た私たちに“魔女”がどういった存在かを見せ付けて、
   最終的に“幻想郷における規律”である私たち退治してもらう、って算段かしら?
   確かに、これなら悪さをしても表向きは退治されて改心しました。って事に出来るわね……」

それに以前、幻想郷に外の世界から神さまが来た時も同じような事があったと幽々子さんから聞いていた。
その事も理由として挙げると、霊夢さんと魔理沙さんは一様に呆れた表情を浮かべた。
「また守矢か……」とか言ってた気がするけど、この話はタブーだったのかな?

クリームヒルト「結果的に“魔法使い”の皆さんには迷惑をかけちゃったんだけど……。
        他に良い手段が思いつかなかったんです。 ごめんなさい!」

そう言いながら私は頭を深々と下げた。
それを見て魔理沙さんと霊夢さんは顔を見合わせ、肩をすくめる。
まさか、謝罪されるとは思ってなかったらしい。

霊夢「それにしても最終的に退治されるなんて話によく“魔女”全員が納得したわね」

クリームヒルト「もちろんみんなには退治されちゃうことはナイショにしたよ」

霊夢「あー、いい子ちゃんかと思ったけど、アンタも十分“魔女”だわ」

私が軽く笑いつつそう答えると、呆れというか白けた視線を向けられた。
多分、相当意地の悪い笑みを浮かべてしまったのだと思う。
216 :ラストステージ ラストサルヴェイション [saga]:2011/10/30(日) 17:36:21.80 ID:4cydie/X0

霊夢「で? 仮に誰もここまでたどり着けなかったり、貴女が私たちを倒してしまった場合はどうするつもりだったの?」

クリームヒルト「ん〜、そうしたら、巫女さんすら退けた悪の魔女軍団の大ボスとして君臨……とかダメかな?」

そこまで想定していなかったので適当にそう答える。
幽々子さんの話を聞く限り、誰かしらが来てくれる確信があったので、考えていなかったのだけど……。
それはそれで意外と……って、ダメに決まってるよね?

そんな事を考えていると霊夢さんが殊更大きなため息をつく。

霊夢「事情は分かったけど、理解はし難いわね。 結局貴女は一度は痛い目を見るんじゃない……」

クリームヒルト「ティヒヒヒ……こう見えて私、救済の魔女だから……」

みんなが困ってるのを見ると救いたくなってしまう。例えどんな手段を使ってでも……

クリームヒルト「だから、この場で私と戦って、お願いします!」

霊夢「……そんな話を聞いたら断れる訳ないでしょ」

魔理沙「分かってるとは思うが、手抜きはいっさいナシだぜ」

声には呆れが混じっていたけど、二人の顔は本気でやり合っていた時のソレと同じだった。
だから、私も答える。ここで私が手を抜いたら霊夢さんたちにも、本気で戦いに挑んでいったみんなにも失礼だしね。

クリームヒルト「うん、それは当然だよ」

幽々子「話はついたようね。それじゃあ私は妖夢と茶菓子でもつまみながら観ててあげるから、三人とも派手にお願いね」

子供の遊びを見守るお姉さんのような微笑を浮かべつつ、幽々子さんが後ろに下がる。
途中でチラッと振り返った幽々子さんは、私を見てニコリと笑う。
その瞳は私に「頑張って」と言っているように見えて、私は小さく笑って答える。

魔理沙「さて、私らの準備はいいぜ、いつでも来な」

霊夢「アンタの目論見通り、“魔女”については良く分かったわ、今度はアンタについて教えてもらうわよ」

クリームヒルト「うん、いいよ。 私、クリームヒルトの……ううん、“鹿目まどか”の全てを魅せてあげる!」
217 :ラストステージ ラストサルヴェイション [saga BGM:幽雅に咲かせ、墨染の桜 〜Border of Life〜]:2011/10/30(日) 17:40:10.74 ID:4cydie/X0

私は最初と決めていた黄色いカードを手に取る。
最初に語るのは全ての始まりとなったあの日、“魔法少女”と“魔女”と言う非日常の世界に足を踏み入れたあの日の出逢い。
しっかりしてるけど、内に秘めた弱さを見せまいと振舞っていた優しい先輩――マミさんのお話。


                      憧憬 『ティロ・フィナーレ』


発動と同時に自在に舞う黄色いレーザーが現れる。 それはマミさんの華麗なリボン捌きの化身。
一拍の間をおいて、私の周囲に無数のマスケット銃が出現。 それはマミさんが愛用したこだわりともいえる武器。
マミさんがかつて見せた、舞踏のような身のこなしを思い出しつつ、私もまた舞う。

クリームヒルト「いくよっ! ファイアっ!」

黄色のレーザーが霊夢さんたちを絡め取ろうと四方から襲い掛かり、マスケット銃が光る弾を放つ。
単装式のマスケット銃は弾を撃ったモノから光の粒子となって消え、光の粒子はまた新たなマスケット銃となる。
レーザーと弾幕をほぼ同時に受けることになった霊夢さんたちは、それでも落ち着いた様子で動き始めていた。

霊夢「舞うように戦っている様が見える弾幕ね。 アンタ良い先輩もったじゃない……」

クリームヒルト「どうしてそれを!?」

針と御札で弾幕を迎撃し、レーザーを右へ左へとかわす霊夢さんがもらしたつぶやきに私は驚く。
「マミさんのこと、二人には話していないのに……」と思っていると、それが伝わったのか、魔理沙さんが言う。

魔理沙「こういうことをやってるとな、不思議と伝わってくるもんなんだぜ。
    私個人の意見を言わせて貰うと、魂が宿るんだろうな……、文字通り精魂込めるってヤツさ」

魔理沙「さぁ、このスペルの真髄を見せてみな。その先輩の本気はこんな程度じゃないんだろう?」

そう言いつつ、魔理沙さんは不敵に笑ってみせる。
魔理沙さんに分かったと言う事は、霊夢さんも勘付いているのだろう、こうなっては隠す必要は無い。

クリームヒルト「それじゃ、遠慮なくいくよ!」

レーザーとマスケット銃による弾幕を続けたまま、私は手元に魔力を集中させる。
現れたのは、今までのものとは比べ物にならないほど巨大なマスケット銃。
最早大砲と言っても過言ではないそれに、魔力を注ぎ込んでいく。
218 :ラストステージ ラストサルヴェイション [saga BGM:幽雅に咲かせ、墨染の桜 〜Border of Life〜]:2011/10/30(日) 17:42:24.79 ID:4cydie/X0

魔理沙「いいねぇ、そういうパワー一辺倒の弾幕は大好きだ! 霊夢っ!」

霊夢「分かってるわよ、手出ししないから好きになさい」

霊夢さんがやや後方へと下がっていき、前に出た魔理沙さんがミニ八卦炉を構える。
魔理沙さんの掲げたミニ八卦炉に魔力が集まっていくのを感じつつ、私も巨大マスケットに魔力を注ぎ続ける。そして――、

クリームヒルト「いくよ! これがマミさんの、私の憧れた先輩の必殺技!」


                     ――  ティロ・フィナーレ ――


魔理沙「一度一緒にその先輩と飲んでみたいもんだ。すぐに意気投合出来る気がするぜ!」


                      恋符 『マスタースパーク』


私の手元の巨大マスケットからは一際大きい黄色の極太レーザーが、魔理沙さんのミニ八卦炉からは虹色の光の奔流が放たれ、互いに激突する。
激突した瞬間、その場で巨大な爆発が起こり、物凄い爆風と噴煙を巻き起こす。

風と煙が消えたとき、その場には私の『ティロ・フィナーレ』も、魔理沙さんの『マスタースパーク』も残滓すら残さずに消えていた。

クリームヒルト(マミさん……)

消えてしまったスペルに、一抹の寂しさを覚えていると、魔理沙さんの悔しげな声が聞こえてきた。

魔理沙「スペルブレイク、引き分けか……」

クリームヒルト「……そうみたいだね。 なら今度はコレだよ!」

気を取り直し、自分自身を鼓舞しつつ、次に取り出したのは蒼いカード。
私の昔からの友達で、非日常に足を踏み入れたのも、魔女として生まれ変わったのも、スペルカードルールに慣れるのも私より少し早かった、
それでもいつも一緒に居てくれた親友――さやかちゃんのお話。


                       真友 『ブルー・フェンサー』


現れたのは蒼きサーベル。
魔法少女となったさやかちゃんが魔女との戦いで常に携え、斬り込み、切り抜けていった苦楽をともにした武器。
219 :ラストステージ ラストサルヴェイション [saga BGM:幽雅に咲かせ、墨染の桜 〜Border of Life〜]:2011/10/30(日) 17:46:32.32 ID:4cydie/X0

私はサーベルを手に取り、目を瞑る。
心を沈め、風の音さえ耳に入らないほど精神を研ぎ澄ます。

クリームヒルト「――――っ! そこっ!」

まずは一閃。
剣の太刀筋にそって青い光の刃が生まれ、霊夢さんたち目がけ飛び出していく。狙うは霊夢さんの進むその先!

霊夢「未来位置を狙うとはいい勘してるわね! でも、まだまだ甘いっ!」

光の刃を寸での所で、それでもまったく動じた様子もなく回避する霊夢さん。
こうなってしまえば、狙いを澄ました一撃は望めない。

私は剣を構えると光の刃と剣による斬撃、双方を織り交ぜながら二人に肉薄する。

霊夢「剣術使いってそういう攻撃がなぜか好きよね。 その友達、妖夢辺りと相性ばっちりだったんじゃない?」

クリームヒルト「はい、毎日弾幕の練習だ、って言いながらやり合ってましたよ!」

魔理沙「妖夢と気が合うんじゃ真面目が過ぎて気苦労が多そうだな。 肩の力を抜けって今度アドバイスしてやれよ」

クリームヒルト「はい、そうします!」

外野から妖夢さんの「どういう意味ですか二人とも!」と言う声と幽々子さんの「まぁまぁ、落ち着いて」と言う声が聞こえてくる。
妖夢さんにとっての一番の気苦労は幽々子さんだと思ったけど、あまり深く考えない事にする。

霊夢「ふーん、アンタのこの友達、早苗と引き分けたんだ」

弾幕を通じて、“魔女”オクタヴィアとして幻想郷に来た後のさやかちゃんの事が伝わったのだろう、霊夢さんが感心するようにつぶやく。

霊夢「そっかそっか、最近調子に乗ってきた早苗がねぇ……これはいい話の種を見せてもらったわ」

一瞬ニヤリと笑った霊夢さんだが、すぐに表情を引き締める。

霊夢「でも早苗がやられたんなら油断ならないわね。早めに決めさせてもらうわよ!」

クリームヒルト「早苗さんって人のこと、随分と買ってるんですね」

霊夢「当たり前よ。 私は、認めた相手か客人にしかお茶を出さない主義なの」
220 :ラストステージ ラストサルヴェイション [saga BGM:幽雅に咲かせ、墨染の桜 〜Border of Life〜]:2011/10/30(日) 17:48:54.14 ID:4cydie/X0

クリームヒルト「なら私は?」

霊夢「……今後の結果次第ね」

霊夢さんはそう言って不敵な笑みを浮かべ、その場から姿を消した。

クリームヒルト「っ!? 一体何処に……」

霊夢「ここよ!」

背後から霊夢さんの声が聞こえ、私は振り返る。 が、それより早く霊夢さんの蹴りが、私の持っていた剣を弾き飛ばしていた。

クリームヒルト「えっ? ええっ!?」

魔理沙「出た、霊夢の瞬間移動技、『幻想空想穴』……、やっぱアイツ相当人外だよなぁ……」

あまりに急な事に驚く私と、呆れる魔理沙さん。
対する霊夢さんは心外だと言うように顔をしかめた。

霊夢「失礼ね、私は歴とした人間よ。とりあえずスペルブレイクはスペルブレイクよ。次のスペルを出しなさい」

魔理沙「汚い……、流石霊夢、汚い……」

クリームヒルト「あっ、はい、それじゃあ今度はこれっ!(ゴメンねさやかちゃん!)」

不意をつかれて不本意なブレイクをさせてしまった事を内心さやかちゃんに謝りつつ次のカードを取り出す。


                      偽悪 『慈悲深き介錯』


次の弾幕はこれまでの青と対照的な燃えるような深紅。
自らを馴れ合いを好まぬ一匹狼と言い、辛辣な言葉を吐きつつも、他人のことを見捨てられない、不器用な優しさをもった女の子――杏子ちゃんのお話。
さやかちゃんの弾幕の時と同じように、今度は紅い槍が数十本と形成され、私はそのうちの一本を構える。

手にした槍以外の槍を何本か纏めて放射状に放つ。
221 :ラストステージ ラストサルヴェイション [saga BGM:幽雅に咲かせ、墨染の桜 〜Border of Life〜]:2011/10/30(日) 17:51:15.53 ID:4cydie/X0

魔理沙「銃、剣ときて次は槍か! だが、そんな直線的なスペルじゃ私は捉えられないぜ」

クリームヒルト「直線的? 本当にそうかな、魔理沙さん」

放った槍のうち、魔理沙さんの横をすり抜けた槍のギミックを発動させる。
真っ直ぐに伸びていった槍が途中に組み込まれた節で折れ、かわしたばかりの魔理沙さんに矛先を伸ばす。

魔理沙「なっ!? 多節槍だと!?」

回避は間に合わないと判断したのだろう、魔理沙さんは乗っていた箒から飛び降りて槍の矛先をかわす。
片手で箒にぶら下がる形となったまま、飛行を続ける。

クリームヒルト「よし! 今……っ!?」

チャンスだと判断し、たたみ掛けようとした私目掛け、引き裂かん勢いで数枚の御札が飛んでくる。
私は手に持った槍で咄嗟に迎撃。 御札を斬り捨てるが、その時には魔理沙さんは再び箒に跨っている。

霊夢「余所見は厳禁よ。 今のアンタの相手は私と魔理沙の二人いるんだからね!」

クリームヒルト「そうでした。 ついうっかりしちゃったよ。 ティヒヒヒ……」

危ない危ないと思いつつ、私は笑っていた。
自分でも気が付かないうちにだいぶテンションが上がっていたらしい。

魔理沙「しっかし、この槍の使い手は相当捻くれてるだろ? 外の言葉でなんて言ったっけ? たしか“つんどら”だっけ?」

クリームヒルト「それって“ツンデレ”の事? うーん、そうなのかなぁ……」

まあ、杏子ちゃんの最後の方のさやかちゃんへの入れ込み様を思うと、案外そうなのかもしれない。
後でその辺の事をオクタヴィアちゃんに聞いてみよう。思い切りはぐらかされそうな気もするけど……

霊夢「私も同意見ね。 まるで魔理沙に対するアリスを見てるみたい」

魔理沙「は? なんでいきなりアリスが出てくるんだ? まあアリスのヤツも本気を出せば厄介なぐらい強いけどさ……」

霊夢さんの言葉に、意味が分からないと言うように首をかしげる魔理沙さん。
アリスさん……、確か蒼い巫女さんと一緒にシャルロッテちゃんやオクタヴィアちゃんと戦った人形遣いの人だった気がするけど、
霊夢さんの態度を見るに魔理沙さんと何かあるようだ。 魔理沙さんにその自覚はなさそうだったけど……。

何処にでも似たような人、似たような関係の人と言うのは居るんだなと思い小さく苦笑する。
その内に、最初に生み出した槍が底を突き、全てが回避される。 と同時に、私の持っていた槍も消えてゆく。
222 :ラストステージ ラストサルヴェイション [saga BGM:幽雅に咲かせ、墨染の桜 〜Border of Life〜]:2011/10/30(日) 17:55:18.16 ID:4cydie/X0

クリームヒルト(ありがとう、杏子ちゃん……)

最後まで共に戦い抜いてくれた事に感謝しつつ、次のスペルに手を伸ばす。

クリームヒルト「……っ!」

分かっていた事だけど、そのカードを見た瞬間、私は胸が痛むのを感じた。
私じゃない、別の世界の私の話とは言え、私が重い十字架を背負わせてしまった。
そして、私自身、最後の最後で裏切ってしまった、大切な友達――ほむらちゃんのお話。


                      因果 『タイム・リピーター』


発動と同時に現れる無数の紫の弾幕。砂のように小粒な弾幕が流れるように霊夢さんたちの方へ降り注ぐ。
小粒弾幕を避けながら、霊夢さんたちがぼやく。

霊夢「今度のは武器じゃないのね。細かすぎて厄介なのが嫌らしいわ」

魔理沙「だが、こういうのは一旦避けきっちまえば後は楽だぜ」

クリームヒルト「本当にそう思う?」

多分、その時の私は端から見てすぐに分かるほど、悲しげな笑みを浮かべて居たんだと思う。
これが、私が友達に、ほむらちゃんに背負わせてしまった終わらない苦痛。

私の背後に時計を思わせる長短二つのレーザーが現出する。
レーザーの針は最初、ごく普通の時計回りに回っていたが、間も無く針が静止する。
そしてそれと同時に、霊夢さんたちの周囲を流れ落ちていた弾幕も静止する。

霊&魔「「っ!?」」

何が起こるのか、二人とも気が付いたのだろう、二人の表情が驚きのソレに変わる。
次の瞬間、レーザーの時計は反時計回り方向へ時を刻み始める。
それに併せて、静止していた弾幕も、ビデオを巻き戻すように上方へと流れていく。

霊夢「時間操作!? まったく、アンタの友達はなんつー技をもってるのよ!」

魔理沙「咲夜のヤツとどっちが厄介なんだろうな。気になるぜ」

クリームヒルト「あはは、ほむらちゃんはこっちに来る事はないと思うから、比べるのは無理かも……」
223 :ラストステージ ラストサルヴェイション [saga BGM:幽雅に咲かせ、墨染の桜 〜Border of Life〜]:2011/10/30(日) 17:58:28.29 ID:4cydie/X0

苦笑しつつ、本当に会うことは無いだろうなと確信する。
私たちに訪れた救済、平行世界の私による導きがほむらちゃんをあちらへと導くだろうから……。

私は二度とほむらちゃん……、いや、マミさんや杏子ちゃんとも会えないんだろうなと思うが、それも仕方が無い。
こうなったのはほむらちゃんを裏切って、魔法少女となり、結果“魔女”となってしまった私に科せられた罰だと思うから。

霊夢「おーい、そこ! 弾幕戦の途中に辛気臭い顔して考え込まない! 弾幕が止まってるわよ」

霊夢さんに言われて気が付くと、紫の小粒弾幕は全て元の初期位置に戻っていた。
物思いにふけっている間に巻き戻しが完了してしまったらしい。

クリームヒルト「あっ、ご、ゴメン。 それっ、もう一回!」

私は時計レーザーの針を再び時計回りに切り替える。
今度は紫の小粒弾幕に加え、小型の時計弾幕も一緒に放つ。
弾幕が回を追うごとに増えてゆく様は、ほむらちゃんの時間遡行で私に因果が集まっていった様を思わせる。

クリームヒルト「ホント、こんなのを背負わせちゃったんだよね……」

霊夢「繰り返す度に弾幕が増えるとかイライラするわね! アンタの友達、よく心が持ったわね。それだけは感心するわ!
   ああ、もうっ! 使いたくなかったけど使うわ! 霊符、夢想封印っ!」

霊夢さんがこれまで使用を控えてきたボムを放ち、私のスペルが打ち消される。
私には止められなかったソレをあっさり止めてしまった事に悔しさと敬意の念を覚える。
私たちを救済した平行世界の私と言うのは霊夢さんのような人だったのかもしれない。

クリームヒルト(ゴメンね。ほむらちゃん……)

魔理沙「なーに、くよくよしてるんだよ」

クリームヒルト「っ!?」

俯いている所に急に声をかけられ、私は顔を上げた。
私の目に入ってきた霊夢さんと魔理沙さんは……笑顔だった。
泣いている幼子をあやす様な優しい笑みを二人とも浮かべていた。
224 :ラストステージ ラストサルヴェイション [saga BGM:幽雅に咲かせ、墨染の桜 〜Border of Life〜]:2011/10/30(日) 18:00:45.68 ID:4cydie/X0

霊夢「信じられないかもだけど、安心しなさい、アンタの仲間は誰もアンタの事を恨んでなんか居ないわよ」

魔理沙「弾幕にこもった記憶をちょっと覗かせて貰っただけの私らだって、それくらいは分かったぞ」

クリームヒルト「で、でも……!」

霊夢「なに? じゃあアンタは一度の過ちでそれまでの親交をひっくり返すような仲間だと思ってたの?」

クリームヒルト「そ、そんな事ない! そんな事は絶対ないよ……、でも……」

みんなが私を見捨てるような真似の出来ない優しい人だったのは私も自信を持って言える。だけどこの後私は……。

霊夢「なら、見せなさい」

クリームヒルト「えっ?」

霊夢「互いに信頼し合ってる仲間に恨まれてるんじゃないかとアンタに思わせてる不安を、私たちに見せなさい」

有無を言わせない口調だったけど、それでも私の中の戸惑いは消しきれない。

クリームヒルト「で、でも……」

霊夢「アンタ言ったでしょ、全部を魅せるって、こっちは最初から受け止める準備は出来てるの。全力でかかって来なさい。
   じゃ無いと私はアンタを、アンタ達“魔女”を、一生認める事が出来ないわよ。 これまでの全員の努力、無駄にするつもり?」

クリームヒルト「っ!? そ、そんな事出来るわけないよ! そんな事になったら私が私を許さない!」

今回の件は、全員で相談して決めたとは言え、核心部分を黙っていた私に責任がある。
これまでのみんなの努力を、あの美しくも激しい、正々堂々とした戦いの全てを無駄にする事は私には出来なかった。

クリームヒルト「……ホントに良いんだね?」
225 :ラストステージ ラストサルヴェイション [saga BGM:ボーダーオブライフ]:2011/10/30(日) 18:07:16.04 ID:4cydie/X0

魔理沙「くどいぜ。私らをなんだと思ってるんだ、百戦錬磨の魔法使いと巫女だぜ」

クリームヒルト「いくよ! これが、これが今の私の真の姿! そして私が犯した罪!」


                      終焉 『新世界創造』


発動と同時に、地響きが巻き起こる。
私の背後に現世での私のおぞましい姿が投影され、それと同時にありとあらゆる物をその中に引き込む力が発生する。

魔理沙「っ!? コイツは……結構洒落にならないぜ!」

霊夢「魔理沙っ! 目をしっかり開きなさい! 後ろから来るわよ!」

魔理沙「なにっ!?」

私の元に引き込まれつつあるモノ、黄色いレーザーに、蒼い斬撃、自在に折れる紅い槍に、紫の砂粒弾幕。
これまで私が放ってきた、世界に生み出された全ての弾幕が、私の中に還ろうとしているのだ。

幽々子「ふーん、そういうことだったのね」

白玉楼の縁側で観戦をしていた幽々子さんがここで始めて腰を上げる。

幽々子「全ての生命を吸い上げ、新しく創造した世界へと導く、それが貴女の能力ね?
    新世界の創造、と聞けば聞こえはいいけど、それはつまり旧世界の終焉、一つの世界を終わらせる事なのよね。
    数え切れないほど多数の“死”を背負ってるから変だな、と思ってたのよ。 これなら納得だわ」

クリームヒルト「幽々子さん?」

幽々子「ごめんなさいねクリームヒルトちゃん。 私、言ってなかったのだけど“死”を操る能力をもってるの。
    だから最初貴女を見たときに全部視えちゃったのよ。 物凄いものを貴女がその小さな背中に背負っちゃってるのを……」

勝手に貴女の事を視てしまってごめんなさい、とすまなさそうに頭を下げる幽々子さん。
突然の告白に私の思考は追いつかない。

クリームヒルト「そんな、最初から全部視えてたって……、そ、そんな相手を、そんな相手だと分かって私たちを助けてくれたんですか!?」

私には訳が分からなくなっていた。
知らなかったのならいざ知らず、私が全てを、世界を一つ滅ぼした存在だと分かった上で、何故助けてくれたのか、それが分からなかったから。
226 :ラストステージ ラストサルヴェイション [saga BGM:ボーダーオブライフ]:2011/10/30(日) 18:09:59.42 ID:4cydie/X0

何も分からずその場にうずくまる私。
そんな私に答えたのは幽々子さんではなく、弾幕との格闘を続けている霊夢さんだった。

霊夢「そんなの決まってるでしょ。 答えは一つしかないじゃない……」

クリームヒルト「えっ?」

私は思わず顔を上げ霊夢さんを見た。 霊夢さんは、諭すような優しい瞳を向けていた。

魔理沙「ああ、ホントだぜ。 “救済の魔女”が聞いて呆れるな」

同じように弾幕を避けつつ、魔理沙さんは苦笑する。
私は半ば呆然としたまま二人に問う。

クリームヒルト「どういう……こと?」

魔理沙「お前さんの“救済”は一人だけ、救われていないのが居るんだよ」

クリームヒルト「えっ?」

霊夢「救われなかった一人、それはクリームヒルト……、いえ、鹿目まどか、他ならぬ貴女自身よ。
   一人でそんな重い十字架を背負って、貴女は本当にそれで救われた、って言えるの?」

クリームヒルト「それは……」

言えない、でもそれは私がこれからも背負っていかなくてはいけない罪だから、私だけは逃れる訳にはいかないから……。
227 :ラストステージ ラストサルヴェイション [saga BGM:ボーダーオブライフ]:2011/10/30(日) 18:12:43.19 ID:4cydie/X0

霊夢「幽々子は、アンタの背負ってるものが視えてしまった。視えてしまったからこそ助けようと思ったのよ。
   一人で無茶して背負い込もうとする、子供な貴女をね……」

霊夢さんに言われ、私は幽々子さんを見た。
扇を広げて、いつものはぐらかすような笑みを浮かべていたが、霊夢さんの言葉が間違っているとは不思議と思えなかった。
幽々子さんが優しい笑みを浮かべたまま、私の元へと近づいてくる。

幽々子「クリームヒルトちゃん、私貴女に言ったわよね? 弾幕戦は自分の全てを出し切るモノだ。って……」

クリームヒルト「はい……」

幽々子「それは言い換えるとね、全てを出し切った後は、相手に全部任せちゃう、って事でもあるの。
    霊夢と魔理沙は貴女の全てを見ても臆すことも逃げる事もなく戦い続けたわ。
    それは二人に貴女の全てを受け止める覚悟があると言う決意の顕れ、貴女が一人で全て背負う必要はもうないのよ。
    それに最初に出逢ったときに言ったでしょう?」


                    ―― 幻想郷は全てを受け入れる最後の受け皿だ、って ――


クリームヒルト「っ!?」

その言葉が合図となった。
私の中の全てを引き込む力が急激に失われ、嵐のように吹き荒れていた弾幕も全てがその場に静止する。
弾幕はその場で全てが虹色の粒子へと変わり、あたり一面に拡散してゆく。

それは相手を傷つける弾幕ではなく、私を含む全ての人に降り注ぐ、救いの光だった………。


228 :ラストステージ ラストサルヴェイション [saga BGM:ボーダーオブライフ]:2011/10/30(日) 18:14:58.26 ID:4cydie/X0
――――――――――――――――――――――――――――――――――――

早苗「30分待ってたらホントに終わっちゃいましたねぇ……」

白玉楼から眩いばかりの光が放たれているのを見ながら、早苗が呟いた。
早苗に背負われた状態で、同じように白玉楼を見上げていたオクタヴィアも声を上げる。

オクタヴィア「あっちゃー、クリームヒルトも負けちゃったか……、
       でもなんだろう、なんだかあの光を見てるとなんだか清々しい気持ちになる」

パチュリー「きっと、見てるほうが恥ずかしくなるほどの試合をやってのけたんでしょ……」

文「あの二人ならやりかねませんねぇ……見れなくて残念です」

アリス「あら?パチュリーに新聞屋じゃない、遅かったわね……って、その格好と腕はどうしたのよ?」

会話に割り込んできた二人を見てアリスが驚いたような声を上げる。
揃って視線を逸らす二人に代わり、事情を知っている別の声が答える。

エリー「パチュリーは私がトラウマ弾幕撃ちまくってボロ雑巾に……」

白蓮「新聞屋さんったら凄いんですよ。 こちらの方と最後はチキンレースを……」

パチェ&文「「それ以上は何も言わないで(下さい)!!」」

パチュリーと文が悲鳴に近い懇願を上げつつエリーと白蓮を押さえにかかる。
エリーはパソコンの中に逃げ込み、白蓮はギーゼラを抱えたまま跳躍する。

ゲルトルート「何やってるのよ、まったく……」

パトリシア「あんまり大きな声出さないで……うぅ、まだ頭が……」

エルザマリア「なんだか良く分からないけど、気絶している内に終わってしまったようですね」

イザベル「あら、ゲルトルートにパトリシア、それにエルザマリアじゃない、ん? シャルロッテはどうしたの?」

呆れ顔でやって来た三人を見て、イザベルはこの場にシャルロッテだけが居ない事に気がつき辺りを見回す。

早苗「ああ、それでしたら……」

??「コラーッ! 早苗ーっ!」
229 :ラストステージ ラストサルヴェイション [saga]:2011/10/30(日) 18:17:06.31 ID:4cydie/X0

秋神の社に置いてきた。と早苗が説明しようとした時、怒気を含んだ怒鳴り声が割り込んでくる。
ぎょっとしてそちらを見ると、当の秋神の豊穣神――秋穣子が立っていた。
普段なら帽子の葡萄がついている所にシャルロッテ(ぬいぐるみ.ver)をのせ、なぜか顔に歯形をつけた状態で、だ。

穣子「まったくこんな食いしん坊妖怪置いてくとか私を殺す気!?
   あんまりにもお腹を空かせてるからかわいそうだと思って弾幕で焼き芋を出したら、まさかの頭からガブリよ!」

咲夜「匂いだけでなく本物の芋まで出したから、食べ物と間違えられたんですね……」

シャルロッテ「穣子、お芋もっとちょーだい」

穣子「言わないでっ! 神として情けなくなるからっ! あーはいはい、今出すからちょっと待ってね……」



クリームヒルト「うわっ? 騒がしいと思ったらみんな来てる……」

外の喧騒を聞きつけて、門まで出てきたクリームヒルトはあまりにもカオスな状況に目を丸くする。
対して、後から出てきた霊夢や魔理沙、幽々子の対応は慣れたものだ。

霊夢「アンタたち揃いも揃って何やってるのよ? ……門の前で立ち話もアレでしょうし、中に入ったらどう?」

魔理沙「おい霊夢、お前はいつから白玉楼の主になったんだ?」

幽々子「あら? 私は別に構わないわよ。 今日はいい物を見せてもらったから気分が良いの……。 妖夢! 宴会の準備をなさいな」

妖夢「はーい! かしこまりましたー!」

幽々子の無茶振りに近い命令に、妖夢がごく普通に答える。
まるで最初からこうなる事が分かっていたかのような返答だ。

クリームヒルト「えっ? 宴会!? どういうことですか!?」

霊夢「異変解決を祝しての単なる祝勝会よ。 ところでアンタ、酒はイケる口なの?」

クリームヒルト「えっ? 酒って……ええっ!? わ、私まだ未成年ですよ!?」

幽々子「ああ、言い忘れたわクリームヒルトちゃん、スペルカードルールのほかに、宴会でのお酒は幻想郷では絶対だから」

そう言って幽々子はたおやかに微笑んだ。
その微笑みは、いつも見ていた微笑みと大差なかったのだが、何故だかこのときばかりは悪魔に微笑みに見えたそうだ。


230 :ステージ??? 星空の影 [saga]:2011/10/30(日) 18:25:18.22 ID:4cydie/X0
――――――――――――――――――――――――――――――――――――

??「ん? あらー、夜まで寝ちゃったか……」

白玉楼の一室で寝ていた彼女は辺りの暗さに、今が夜である事に気がついた。
そして、それと同時に、ここにしては珍しく、歓声が聞こえてくる事にも気が付き、彼女は身体を起こす。

??「外が騒がし……って、なんかいっぱい居るな……」

障子を開けて中庭を覗き込んだ彼女は仲間の魔女と見知らぬ人間(妖怪も混じってるだろうけど)が杯を交わしているのを見た。
その光景を見て、彼女はすぐに全てを悟る。

??「あー、今日で終わったのかー、どうするかなー」

結局何もしていなかった訳だが、今更どうにもならない。
起きて居ればよかったと思ったが、元々夜型なのだ、最後まで起きれていた自信はない。
このまま何食わぬ顔で加わってしまおうか? そう思ったとき、彼女は部屋の奥に彼女とは違う影があることに気が付いた。

良く見るとそれは同じ“魔女”仲間である少女だった。
少女も外の状況に気が付いたのか、残念そうな顔をしている。
異変解決に来た幻想郷(こっち)の住人と派手にやり合う機会を逃したのだから当然かもしれない。

??「おっ、なんだ、お前も寝てたのか? 何? 弾幕を考えてたらいつの間にか寝てた? そりゃ残念だったな」

??「……………」

??「そうなんだよ、どうやら昼のうちに終わっちまったようでさ……、おっ、そうだ! ちょっとアタシにいい考えがあるんだけどさ……」

彼女は少女に自分の考えを耳打ちする。
最初は残念そうだった少女の顔にやがて笑みが浮かび、最後は喜びのソレとなった。
どうやらやる気満々のようである。

??「おーし、その意気だ! それじゃあアタシらであいつらに教えてやるとするか! 祭りの夜はまだ終わらない、ってな!」



――――――――――――――――――――――――――――――――――――

こうして、“魔女”異変というお祭り騒ぎは夜の部に突入する事になった。
当然この夜の部も昼に負けず劣らず大変な事になるのだが……、その話はまた後日、記す事にしよう。
幻想郷における“魔女”の歴史はまだまだ始まったばかりなのだから……。


稗田阿求 記 『幻想郷縁起』 〜魔女異変の章〜 第一部 より

231 : [saga]:2011/10/30(日) 18:40:17.59 ID:4cydie/X0
と、言うわけで『東方円鹿目』本編終了ーっ!
お付き合い&ご協力頂いた方誠にありがとうございました。

色々ありますが、まずはエルザマリア戦から、正直難産でした。
スペカ案も色々出してもらったのですが(>>75>>76>>165様)イメージを文に起こすのが難しかった。
結果、スペカ名を参考したり、内容だけを参考にしたりで虫食い状態で殆ど原型がありません。スイマセンでした。

エルザマリア峠を越えたら早かったクリームヒルト戦
弾幕の内容はほぼ>>79様から、名前及び符名だけ一部変更しました。
この回のみBGMをメ欄で指定させていただきましたが、これだけは最初から譲れないと思っていた事ですのでご了承を、
死を操るゆゆ様と、全ての生命を天へと誘うクリームちゃん、ここまでイメージがぴったりなモノはないだろうと、そういう訳で

と言うか私は書いてる最中から今まで『幽雅に咲かせ、墨染の桜 〜Border of Life〜』リピートしっ放しです。
やけに調子がいいのはその所為か?

さて、これ以降はエクストラステージとなります。
最後に出てきた二人は一体誰なんでしょうねー? えっ、もろバレだ?スイマセン

それではエクストラステージもよろしくお願いします。
以上、スレタイをいつ回収しようか悩んでる>>1でした。
232 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/10/30(日) 18:54:23.88 ID:aEPNmz1Y0
乙ー。まさかの二話連続投下とはやるな>>1……これがネタ神様の力か。

ラストに出てきた謎の二人組……いったい何者なんだ。
とはいえExも期待!

せんせー、一段落したら救済世界のマミさんあんこちゃんほむほむ幻想入りさせてもいいと思いまーす。







未登場トリオェ……(>>121>>147)まあ>>1が書きやすいのが第一だしね。
233 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/30(日) 19:05:04.27 ID:n5cEMt2SO
>>231
スレタイの回収はスペルプラクティスのラストワードかオーバードライブで
234 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/30(日) 23:50:27.69 ID:ml5z45HDO
第一部、完結ありがとうございます!いやー凄い…ただただ凄い、それにつきますね。
魔女達のこれからに祝福を!

出した弾幕案も、色々とっても素敵に変えてもらって、俺も凄く嬉しいですし、案達も浮かばれる事でしょう!

EXも、もう物凄く楽しみです!
235 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/31(月) 00:21:13.74 ID:AE6dBM5DO
>>1

クリームとゆゆこの共通点忘れてたWW
読んでてあー!ってなったWW


EXにも期待!
しかし、イッタイダレナンダ
236 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2011/10/31(月) 10:57:59.45 ID:dItMKkfAO
面白かった
EXにも期待
237 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/10/31(月) 19:13:33.53 ID:RhQ7Fdij0
>『光の方ばっか向いてずっと祈ってたアンタの方が、何も見えないんじゃないの?』
>「アンタ言ったでしょ、全部を魅せるって、こっちは最初から受け止める準備は出来てるの。全力でかかって来なさい。
 じゃ無いと私はアンタを、アンタ達“魔女”を、一生認める事が出来ないわよ。 これまでの全員の努力、無駄にするつもり?」

霊夢さんマジ博麗の巫女。
238 : [saga]:2011/11/04(金) 21:56:34.53 ID:buuHKWav0
どうも、ご無沙汰しております。
本編を一気に書き上げた反動か、筆の進みが亀の歩みになって、SGが一気に濁りかけたりしましたが、
ぼちぼち書き溜めが溜まってきたので、エクストラステージの導入だけ、投下させていただきます。
(踏ん切りをつけると言うか逃げ道を自ら塞ぐ為とも言う)

イベント事が一区切り付いた後の燃え尽き症候群の恐ろしさ、改めて思い知ったぜ……
239 :ステージEX 魔女と魔法使い達の後夜祭 [saga]:2011/11/04(金) 22:14:03.73 ID:buuHKWav0

――――――――― 【魔女と愉快な飲兵衛たち】 @ 冥界・白玉楼 ―――――――――

夕方から始まった白玉楼での宴会は、噂を聞きつけた有力妖怪らが押し寄せた結果、止まる事を知らぬ大宴会へと発展した。
吸血鬼に、月人の姫と従者の医師、守矢の二柱まで降りてくる始末。
まぁその辺はいつもの事なのだが、今回はいささか勝手が違った。
本日をもって正式に幻想郷に迎え入れられた新参妖怪“魔女”ご一行様がそれである。

聞くところによると、魔女はほぼ全員が本をただせば中高生の少女だと言う。
つまり酒を飲んだ経験など、まったくない訳で、その結果は……

早苗「あーあ、皆さんあんなに飲んじゃって……大丈夫なのかしら?」

乱痴気騒ぎの中、ほぼ素面のままの早苗は辺りを見回してため息をついた。

とっくの昔に酔い潰れて端のほうで蹲っている者、
一杯飲んですぐに寝てしまう者、
酒豪組に混じってフツーに飲んでいる者、
酒が入った途端色々はっちゃけはじめる者、
見事なまでのオンパレードである。

早苗「う〜ん、なんと言う酔っ払いの見本市状態……」

咲夜「あら? 貴女が酔い潰れていないなんて珍しいわね」

主であるレミリア・スカーレットの世話がある都合だろう。比較的素面を保っている咲夜が目を丸くしながら早苗に声をかけてきた。

早苗「流石の私も学習します。酔っ払いにまともに付き合ったら吐いても飲まされるんですから……」

幻想郷きっての下戸として知られる早苗だが、何度か経験すれば心得たもので色々理由をつけてのらりくらりと酒を回避していたのだ。
あと酒も飲まずに働いているのは幽々子の従者である妖夢くらいで、これは給仕やら調理やらをやらされている所為だ。
240 :ステージEX 魔女と魔法使い達の後夜祭 [saga]:2011/11/04(金) 22:18:09.85 ID:buuHKWav0

早苗「どうですか? レミリアさんたちの方は……」

咲夜「ウケの方はいいわね。 最初の挨拶としてあんな事をした意気を買ってるみたい。
   ゲルトルートはウチの庭園の整備、イザベルはお嬢様の肖像画を描く事になったわ」

早苗「それは、また結構気に入られましたね……」

どうやら今回の異変は、紅魔館の主にして、幻想郷の有力者の一角でもあるレミリアにはウケが良かったらしい。

今回の異変においてレミリアは、魔女からの迷惑極まりない風評被害に、親友のパチュリーが激怒していたのに、
咲夜をお供につけただけで、表立った動きは一切見せなかった。
彼女の能力である運命を操る程度の能力で、結末をあらかじめ見通していたのかもしれない。

咲夜「それにしても、こうなってしまうと新参も何もあったものじゃないわね……」

祝勝会を通り越して、乱痴気騒ぎの様相を呈し始めた宴会場を見渡して、咲夜は呆れたように呟く。

早苗「そうですね。 でもこれはこれで幻想郷らしくていいと思います」

咲夜「貴女からそんな言葉が聞けるなんてね。 新参の看板は彼女たちに引継ぎかしら?」

早苗「そうなると思います。これでやっと私も先輩ですよ」

そう言って二人でひとしきり笑いあっていると、二方向から声がかかってきた。
片方は主である吸血鬼、もう片方は仕える主神様。どうやらお呼びがかかってしまったようだ。

咲夜「それじゃ、酔い潰れてなかったら後片付けで会いましょう」

早苗「はい……、と言いたいところですが生き残れる自信がありませんねぇ……」

確か神奈子と諏訪子は、幽々子や霊夢、それにクリームヒルトという面子で飲んでいたはずだ。
早苗はある程度の覚悟を決めて、神奈子らの元に向かった。

241 :ステージEX 魔女と魔法使い達の後夜祭 [saga]:2011/11/04(金) 22:25:50.62 ID:buuHKWav0
――――――――――――――――――――――――――――――――――――

早苗「あれ?」

目も当てられない惨状を予想していた早苗は、意外な光景に思わず足を止めた。
いつもの飲めや歌えのどんちゃん騒ぎ、だと思ったのだが、月を見上げて静かに杯を傾ける神奈子と幽々子、そして霊夢の姿があった。

早苗「珍しいですね。神奈子様たちがこんな風に静かにお酒を……って、あっ……」

近寄ってみて、気付く。
幽々子の膝の上で、静かに寝息を立てているクリームヒルトの姿。
どうしたのかと尋ねる声も自然と小声になる。

早苗「酔い潰れちゃったんですか? クリームヒルトさん」

霊夢「泣き疲れたのよ」

早苗「泣き疲れた?」

クリームヒルトの頭を撫でつつ、複雑な笑みを浮かべた幽々子が早苗の疑問に答える。

幽々子「今まで色々溜め込んでたんでしょうね。飲んで、饒舌になったと思ったら泣き出しちゃって……。今ようやく眠ったところなの」

無理もないな、と早苗は思う。
オクタヴィアに対しては説教染みた高説をたれた早苗だが、クリームヒルトの抱える事情には同じ様な対応は出来ない。

『みんなを助けたい』 という心優しき少女の願いは、皮肉にも彼女を『全生命を極楽と言う楽園に導く』破滅の化身に仕立ててしまった。
救済と全生命の消滅、相反する言葉のようにも思えたが、白蓮によると、 『悪質かつ過激な方向に解釈した浄土信仰』 で説明が出来ると言う。

人の道を外れた者の苦しみは早苗にも分かるが、人の道を外れた結果、地球規模の惨禍の当事者となってしまった者の苦しみには、想像すら及ばない。

霊夢と魔理沙、そして幽々子はそんなクリームヒルトの苦しみを受け止め、助けたいと手を差し伸べたそうだが、
いざ自分自身がその場に居たとしたら同じ事が出来ただろうか? 正直なところ、一片の迷いもなく『はい』とは答えられる自信はない。
最近はだいぶ霊夢たちに近づけた気がしていたが、その差はまだまだ大きい事を早苗は改めて思い知らされたような気がした。

早苗がそんな物思いにふけっていると、「頼みがあるのだけど……」と幽々子が早苗の方を向く。
242 :ステージEX 魔女と魔法使い達の後夜祭 [saga]:2011/11/04(金) 22:31:43.89 ID:buuHKWav0

早苗「なんですか? 幽々子さん」

幽々子「悪いのだけど、部屋から何か羽織るものを持ってきてくれないかしら? 妖夢は調理で忙しいみたいだから……」

早苗「あっ、はい、分かりました」

踵を返しながら、早苗は小さく苦笑した。
深く、複雑な事情があるのは重々承知しているが、幽々子とクリームヒルトの姿は、仲の良い姉妹か、親子かと思うほど微笑ましいものだったからだ。

ニヤニヤしながら、白玉楼の寝殿に向かっていると、パチュリーが訝しげな視線を向けてくる。

パチュリー「早苗、何ニヤニヤしてるのよ? 端から見ると怪しい人よ」

早苗「いえ、ちょっとほっこりしてしまいまして……」

早苗は幽々子たちのほうに視線を送り、パチュリーもそれに倣う。
最初は良く分からなかった様だが、そのうち幽々子に膝枕をされているのが、クリームヒルトだと分かったのだろう、ふっと表情を崩す。

パチュリー「……まるで親子ね」

早苗「ええ、そう思います」

髪の色も似ているせいだろう、パチュリーも早苗と同じような感想を抱いたようだ。

パチュリー「それで? 早苗はあの親子から何を頼まれたわけ?」

どうやらパチュリーの中で、二人は親子と認定されてしまったらしい。
と言うか幽々子からの頼まれ事だとすぐに察してしまった辺りは流石としか言いようがない。

早苗「羽織るものです。 この時季でも夜は冷えますから……」

パチュリー「そう、それならついでに私の分も持ってきてくれないかしら? ちょっと寒くなってきたのよね……」

とパチュリーは凍えるジェスチャーをしてみせる。

早苗「分かりました。持ってきます。 あっ、でも幽々子さんには……」

パチュリー「分かってるわ、亡霊には私から言っておくから……」

「ついでに少々からかってあげましょう」などと口元に笑みを浮かべながらパチュリーは幽々子たちのほうに向かっていく。
早苗はこれ以上オーダーが増える前に用事を済ませてしまおうと、早足で寝殿へ入って行った。


243 :ステージEX 魔女と魔法使い達の後夜祭 [saga]:2011/11/04(金) 22:39:17.57 ID:buuHKWav0
――――――――――――――――――――――――――――――――――――

早苗「とりあえずここから持って行こう……」

魔女たちが間借りしていたと言う大部屋の押入れから早苗は薄手の布団を取り出す。
大部屋の中は布団が敷きっ放しになっていて、綺麗に整頓してある布団もあれば、乱れたままの布団もある。
そんな布団がずらりと並んでいる様は早苗に修学旅行の宿泊先や林間学校での合宿場を思い起こさせた。

早苗「広い部屋だなぁ……、魔女の皆さん全員を寝させてもまだ余裕があるんですから……あれ?」

薄手の布団を持ったまま部屋を出ようとした早苗は、ふとあることに気が付き立ち止まる。
敷いてある布団の数が11組あったのだ。

早苗「確か9人でしたよね? なんで2組多いんだろう……」

幽々子と妖夢もこの部屋で寝ていたのだろうか?
どちらも自分の部屋がある筈なので、正直それは考えにくいのだが……

早苗「なんだろう、なにか妙な予感と言うか悪寒がする……」

布団を持って庭に出ながら、早苗は思案する。
もし仮に、布団の枚数と同じ人数の魔女が居たとしたら?
残りは二人は何処に行ったのか? 今何をしているのか?

早苗「終結したと知らずにまだ幻想郷のどこかに居るとしたら厄介ですね……」

でも、それだとしたら何故幽々子や他の魔女は動かないのか?
泊めていた幽々子はもちろん、魔女たちも自分の仲間の数なら把握しているはずである。

そんな事を考えていると、蓬莱山輝夜とパソコンに向かって、何かをしているエリーの姿が目に入った。
このまま悶々としたままにするのは精神衛生上宜しくない。 この際だ、11組の布団について聞いてしまおう。

早苗「あの、エリーさん」

エリー「…………」

早苗「エリーさん? エリーさん!
   もうっ! パソコンで何してるんです? ゲームかなにかですか?」

いくら呼んでも返事がないので、何をしているのか気になった早苗はパソコンの画面を覗き込む。
パソコンのモニターに映されていたものは……
244 :ステージEX 魔女と魔法使い達の後夜祭 [saga]:2011/11/04(金) 22:49:19.47 ID:buuHKWav0
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
幻想入りした魔女だけどなにか質問ある?

1 :以下VIPにかわりまして名無しがお送り致します:201X/06/12(日) 19:29.54 ID:elLykrST
  蓬莱ニートと飲んでまーす(^_^)v

2 :以下VIPにかわりまして名無しがお送り致します:201X/06/12(日) 19:30.21 ID:H0mu2gNs
  >>1
  魔女?今は魔獣の時代だろJK

3 :以下VIPにかわりまして名無しがお送り致します:201X/06/12(日) 19:30.49 ID:ankMjSIj
  >>1
  東方厨乙

4 :以下VIPにかわりまして名無しがお送り致します:201X/06/12(日) 19:31.06 ID:gNSEmAMi
  幻想郷(笑)
  不夜城レッド(笑)

5 :以下VIPにかわりまして名無しがお送り致します:201X/06/12(日) 19:31.19 ID:kIHngSyK
  >>1
  なんかそっちに逝けそうな気がするんだが……

6 :以下VIPにかわりまして名無しがお送り致します:201X/06/12(日) 19:31.38 ID:ankMjSIj
  >>6
  行くなよ!?絶対行くなよ!?

7 :以下VIPにかわりまして名無しがお送り致します:201X/06/12(日) 19:31.58 ID:H0mu2gNs
  >>4
  ティロさんちっーす

8 :以下VIPにかわりまして名無しがお送り致します:201X/06/12(日) 19:32.00 ID:madoGOt3
  >>1
  特定しますた


――――――――――――――――――――――――――――――――――――
245 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(千葉県) [sage]:2011/11/04(金) 22:51:44.37 ID:JkhKe8DGo
神さまなにやってんだァアアアア!
246 :ステージEX 魔女と魔法使い達の後夜祭 [saga]:2011/11/04(金) 22:57:46.97 ID:buuHKWav0

早苗「って、なんかスレ立ててるーっ!?」

エリー「うわぁっ!? な、なに!? って、早苗じゃない、急に耳元で大きな声出さないでよ」

寿命が縮まるでしょ!? と言いつつ胸を押えるエリーに早苗はすぐさま頭を下げる。

早苗「ああ、スイマセン……って、そうだ、それよりもちょっと聞きたい事があるんですけど……」

エリー「聞きたい事? 何?」

ブラウザを一旦落として、早苗に向き直るエリー。
「えーなんで切っちゃうのー」とぼやく輝夜の姿は見なかった事にする。

早苗「今ちょっと布団を取りに部屋に行ったんですけど、敷いてあった布団が11組あったんですよ。
   魔女の皆さんってここにいるのは9人じゃないですか、残り2組は誰の布団なのかな? と、気になってしまいまして……」

エリー「誰のって、私たちのに決まってるじゃない。 あと二人、そこで昼寝してなかった?」

何を当然な事を聞いているの? と言いたげなエリーの態度に、早苗の中の嫌な予感が急速に膨れ上がる。

早苗「いいえ、誰も居ませんでしたよ。 と言うかもう夜の7時ですし、こんな時間に昼寝してる人が居るんですか?」

エリー「え゛っ?」

早苗の言葉に今度こそ、エリーの動きが止まる。
心なしか、血の気がさっと引いていったようにも思えたのだが……。
これはもう確定かな、と早苗も内心諦めながら、最後の確認とばかりに尋ねる。

早苗「えっと、その昼寝していた二人、ってどんな方なんでしょうか?」

エリー「どんなって、簡単に言えばお水と超核弾頭娘……?」

その言葉に早苗は思わず泣きたくなった。
今の話を合わせるとお水はともかく超核弾頭クラスの力を持った魔女が行方知らずになっている、と言うことになる。

早苗とエリーはお互い顔を見合わせると、無言で頷きあった。

早苗「私、霊夢さんたちに伝えてきますね……」

エリー「お願い、私も他の魔女呼んでくるから……」

247 :ステージEX 魔女と魔法使い達の後夜祭 [saga]:2011/11/04(金) 23:03:23.47 ID:buuHKWav0
――――――――――――――――――――――――――――――――――――

霊夢「で、集まったのはコレだけな訳?」

霊夢は不機嫌を隠そうともしないで、集まった面子を見回す。
集まったのは幻想郷の在郷人が霊夢、魔理沙、早苗、アリス、パチュリー、咲夜の六人。
魔女が、オクタヴィア、エリー、ゲルトルートの三人だ。

昼に活躍した魔法使いとお付きのオマケ軍団のうち、負傷とその回復で、命蓮寺組が戦力から外れ、
魔女の方も酔いつぶれたり、寝てしまった者が出てしまったりでこの人数となってしまい、戦力が低下した感は否めない。

特に魔女側の中心たるクリームヒルトが熟睡中で、尚且つダウンした魔女の介抱と、
何事もなく帰って来た時の事を考え、幽々子と妖夢が白玉楼に残る事になったのは痛い。

レミリア、神奈子、輝夜と言った他の有力妖怪はそれぞれ連絡体制の確立こそ確約を取り付ける事が出来たが、
レミリアが自宅の守備を固める必要があると言い出し、これに他の二人も倣った為、本人が捜索隊に参加する事は拒否された。

紅魔館からは咲夜が、守矢神社からは早苗が、それぞれ派遣されたのが最大限の譲歩であると言えよう。
永遠亭はそういう役割の鈴仙が寝込んでいる都合で、誰の派遣も無かったのだが……。

咲夜「愚痴っても何の解決にもないないわよ、霊夢。 それより今は今後どう動くか? それを考えましょう」

アリス「咲夜の言う通りね。 そっちの方がよっぽど建設的だわ。
    それで、悪いんだけど、居なくなった魔女の詳しい情報を教えて貰いたいのだけど……」

相手の情報も知らずに捜索なんて出来ないわ、と言うアリスに応えたのはオクタヴィアだ。

オクタヴィア「あー、えっと、名前は『ワルプルギスの夜』って言って……
       あっ、そんな顔しないでよ。ホントにそう呼ばれてるんだから……」

名前を聞いた途端、霊夢たちが一様に訝しげな表情になった為だろう、オクタヴィアは頬を膨らませて抗議する。

霊夢「あー、名前に関しては何も言わないわ、だから続けて頂戴」

オクタヴィア「うん……、無力の性質を持つ舞台装置の魔女で、現世だととんでもなく巨大な魔女だった、って聞いてる。
       纏ってる呪いの量も半端じゃなく強力で、最強の魔法少女だったクリームヒルトでさえ、その呪いを受けて魔女になっちゃったぐらい」
248 :ステージEX 魔女と魔法使い達の後夜祭 [saga]:2011/11/04(金) 23:07:47.74 ID:buuHKWav0

早苗「呪詛返し、ってレベル超えてますね……」

魔法少女だった頃のクリームヒルトがどれだけの実力者だったのかは分からないが、
人一人をあれほどまでに強力な魔女に仕立てると言うのなら、その呪いの力は半端ではない。

魔理沙「うん、現世での特徴は分かった。 で、こっちに来てからの特徴はどんななんだ?」

オクタヴィア「あー、それがねー…………、一見するとただの幼女」


霊夢他一同「「「「はい?」」」」


オクタヴィアの言葉に霊夢たちは思わず声を上げた。
再び訝しげな視線の集中砲火を浴びる羽目になったオクタヴィアが堪らず声を荒らげる。

オクタヴィア「だって本当なんだから仕方ないじゃん! 幼女なの! 青いドレスを纏ったツインテール幼女なの!」

静寂がその場に訪れる。
言った本人のオクタヴィアは顔を真っ赤にして黙ってしまうし、エリーとゲルトルートはそんなオクタヴィアを哀れむ様に見ているし、
対する幻想郷の住民らも色々思うところがあるらしく、みんな黙ってしまった。

その静寂を破ったのはこれまで一言も喋らずに話を聞いていたパチュリーだった。

パチュリー「……一つ、愚痴ってもいいかしら」

霊夢「良いわ、私も愚痴りたかった所だから……」

パチュリー「紅魔館(ウチ)にも居るから言えた立場じゃないんだけど、どうしてこう幻想郷の厄介な連中って幼女が多いのかしら?」

例えばそれは紅魔館の妹様ことフランドール・スカーレットだったり、守矢神社の呪い神な洩矢諏訪子だったり、
あるいは地霊殿の無意識娘こと古明地こいしだったり……
249 :ステージEX 魔女と魔法使い達の後夜祭 [saga]:2011/11/04(金) 23:14:07.05 ID:buuHKWav0

とにかく『カワイイ顔して凶悪極まりない妖怪』の幼女率の高さは異常と言えた。

今度は幻想郷の住人らに微妙な空気が流れたが、こんな事をしている場合ではないので、すぐに気を取り直す。

霊夢「……とにかく、此処で議論してても始まらないわ、手分けして今すぐ探しに行きましょう」

ゲルトルート「手分けをするのは賛成だけど、どうやってこの人数を分けるのよ?
       私たち魔女は幻想郷の地理とかまだ分からないことが多いし……」

ゲルトルートの言う事は最もだ。
いくら幻想郷の各地で騒ぎを引き起こしていたとは言え、来て一週間の魔女に幻想郷内を探せというのは酷である。

魔理沙「昼の組み合わせに、魔女を一人つける、で良いんじゃないか?
    文たちが脱落して私たちは3組だし、魔女も3人だ。丁度いいと思うが?」

咲夜「そうね、それが良さそうね。此処に居る魔女も丁度私たちが昼にやりあった相手だし……」

オクタヴィアたち3人を見ながら、咲夜が言う。
オクタヴィアは早苗とアリスが、エリーはパチュリーと咲夜が、ゲルトルートは魔理沙と霊夢が、それぞれ戦った相手である。
弾幕戦という形ではあるが、他の組み合わせよりも多少なりとも気心が知れているだけ、最適といえた。

エリー「ところでさ、お互いの連絡はどうするの?」

組み合わせが決まっても連絡取れなきゃ意味ないよ。というエリーの疑問に答えたのはアリスだ。

アリス「それなら私に任せて、全部のチームにこの子を持たせるわ」

そう言ってアリスは肩に乗る程度の小さな自律人形を三体、具現化させる。
地霊騒ぎの時に、魔理沙との連絡手段として用いた人形と同じものだ。

アリス「この子を持っていれば、互いに会話が出来るわ。 活用して頂戴」

霊夢「決まりね。見つけたらすぐにコレで連絡しなさい。 それじゃ、解散!」

250 :ステージEX 魔女と魔法使い達の後夜祭 [saga]:2011/11/04(金) 23:18:41.66 ID:buuHKWav0
と言うわけで今回は以上、ここからは長い長いワルプルギス戦です。
書くの頑張らないと……

ワルプルさんが幼女なのは東方的お約束。
戦闘中に「キャハハハハ」とか笑っちゃうお方は漏れなく幼女の法則です。
オーエンとかハルトマンとか聞いて気分を盛り上げてください。

それでは長くなるかと思いますが、エクストラもお付き合い下さいませ。
251 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/04(金) 23:21:43.71 ID:2RkYKpgCo
劇団乙カレー
ワルプルさん+αの活躍が楽しみです
252 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/05(土) 01:00:53.39 ID:IqTjc9iDO
遂に、EXが始まりましたか…!幻想郷はどうなってしまうのか?
しかし金髪ツインテ幼女か、可愛いじゃないか。

VIPネタには笑ったが、神の特定ががが…
253 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(山陽) [sage]:2011/11/05(土) 01:01:36.25 ID:Ag5wNNjAO


エリーのパソコン外の世界どころか別の世界に繋がってんじゃねえか
254 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/05(土) 01:40:43.71 ID:IqTjc9iDO
>>252
しまった。ワルプルさんが金髪だなんてどこにも書いてないじゃないか!
255 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/05(土) 01:43:08.35 ID:Ao9IZLQio
金髪ロリ好きというお前の願望が明らかになったな・・・

お巡りさんこっちです
256 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(東京都) [sage]:2011/11/05(土) 10:35:25.06 ID:bit91/uM0
スルガムイデンティデム(ワルプルギスのテーマ)を東方の曲調にアレンジしたものが脳内で流れてるぜ…

白蓮っぽく後ろに虹色後光を展開して歯車とかビルの残骸をブン投げてくる高笑い逆さま幼女だなんてわけがわからないよ!
257 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(中国地方) [sage]:2011/11/05(土) 19:04:03.61 ID:syd6XKzG0
こいしやフランとは仲良くなれそうだな
……色んな意味で……
258 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/06(日) 15:33:31.88 ID:IIMmKcqDO
それにしても、親子みたいなお二人の姿を想像すると、心が暖かくなるねぇ。
259 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/06(日) 19:44:56.66 ID:HU4OjMpDO
>>258
思い浮かべる絵面をまどかに合わせるか、ZUN絵にするか、二次絵にするかで印象変わるけどな
260 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/07(月) 16:12:47.49 ID:ZN3vNWsDO
ゲルトルートさんが幽香様の下僕とかじゃなくて良かった。
紅魔館勤務で本当に良かった。
261 : [saga]:2011/11/09(水) 01:17:14.02 ID:NVzYNTEF0
長くなりすぎて何処で区切っていいのか分からないのでワルプル戦前半(?)投下

>>260
幽香りんは向日葵の素晴らしさをゲルトルートさんに徹底的に“教育”したので満足なさったそうです。
あの人、どS(親切)ですので……


ゲルトルート「バラモイイケドヒマワリモイイヨネ……」

オクタヴィア「完全に棒読みだし……一体何が……」
霊夢「詮索しない方が身の為よ」
262 :ステージEX 魔女と魔法使い達の後夜祭 [saga]:2011/11/09(水) 01:21:25.59 ID:NVzYNTEF0
――――――――― 【七曜の魔女と瀟洒なメイドと引篭り娘】 ―――――――――― 12(日) 亥の刻

エリー「それでー、何処に向かってるの」

月明かりに照らされた幻想郷を、ひたすら飛んでゆくパチュリーの背にエリーが話しかけた。
チームごとに別れ、冥界を後にしたエリーたちは、パチュリーを先頭に同じ方角へと飛び続けている。
まるで、最初から目的地が決まっているかのように……

パチュリー「紅魔館よ」

エリー「えっ? 紅魔館って、パチュリーが住んでる? あれだけ言っといて帰るとか、やっぱりパチュリーって根っからの引篭……」

からかう様な口調でエリーが言うとその鼻先にナイフが突き立てられる。
思わず背筋を硬直させながら脇を見ると、真剣な表情をした咲夜が居た。
怒っている風ではないところを見ると、黙って聞いて居ろ、という意味らしい。

背後の二人に構う余裕がないのか、パチュリーは振り返りもせずに言う。

パチュリー「面白い事に積極的に首を突っ込みたがるレミィが“帰って守備を固める”なんて言う訳がないのよ。
      もし仮に言うなら余興にもならないと思ったか、或いは……」

パチュリーはそこで言葉を一旦区切る。
エリーも何となくだが、パチュリーが何を言おうとしているのかが分かり、表情を硬くする。
簡単に聞いただけだが、紅魔館の主であり、パチュリーの親友であるレミリアは運命を操る程度の能力を持っているらしい。
そのレミリアがなりふり構わず紅魔館への帰宅を決めたという事はつまり……

パチュリー「レミィが帰らなくてはならないほどの脅威が紅魔館に迫っている。そうとしか考えられないのよ」
263 :ステージEX 魔女と魔法使い達の後夜祭 [saga]:2011/11/09(水) 01:27:17.55 ID:NVzYNTEF0

エリー「その脅威って……」

咲夜「十中八九、ワルプルギスでしょうね。 外の世界だと街を一つ吹き飛ばす程のものだったのでしょう?」

咲夜の言葉にエリーは頷く。
現世では結界を作らずに暴れまわる事の出来た数少ない有力な魔女である。
まずは自身の結界に引き込まなくては人を襲う事もままならなかったエリーなど足元にも及ばない。
単身で対抗できるとしたら、同じく結界要らずだったクリームヒルトぐらいだろう。

エリー「でも、それならどうしてパチュリーや咲夜を残して帰ったの?
    紅魔館を守りたいなら、戦力は多いほうが良いんじゃないの?」

咲夜「私たちに『不自然だ』と思わせる事で、紅魔館行きを促すつもりだったのでしょうね。
   現に私たちは怪しいと踏んで紅魔館へと向かっているし、或いは勘の鋭い霊夢が気付いてくれると言う確信があったのかも知れないわ……」

現実には霊夢たちは人里の方向に向かって飛んでいってしまったわけだが、
霊夢がレミリアの真意に気付かなかったのか、博麗の巫女として人里の様子見を第一に考えたのか、今となっては真意は分からない。

パチュリー「とにかく、レミィがどんな運命を垣間見たのか分からないけど、紅魔館へ行く価値はあるのよ。
      それに紅魔館方面なら戦うにしてもおあつらえ向きの場所があるわ」

咲夜「霧の湖ですね。 確かにあそこなら多少派手にやったところで周囲への被害は抑えられます」

湖周辺にあるのは紅魔館のほかは森だらけだ。
人もめったに立ち寄らないし、あの辺に住んでいる妖精たちには悪いが、決戦場になってもらおう。

月の光を受けてキラキラと光るものが見える。霧の湖だ。

パチュリー「後は、レミィの運命視が何処まで当たってるか、なんだけど……」

エリー「パチュリー……、貴女の友達の能力、間違いなく本物だよ」

紅く鎮座する屋敷と、広々と広がった湖を眼下に見下ろしながら、エリーは湖の湖面を指差す。
パチュリーと咲夜がそちらを見ると、青いドレスを纏い、頭を下にした状態で湖面近くを浮遊する幼い少女の姿が見えた。

264 :ステージEX 魔女と魔法使い達の後夜祭 [saga]:2011/11/09(水) 01:36:13.83 ID:NVzYNTEF0
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

何をするわけでもなく、少女が一人、月下の湖面の上を飛んでいる。
逆立ちをする様に頭を下にした少女――ワルプルギスの足元には満天の星の輝きが、
頭上には月の光を受けて星空に負けぬ輝きを見せる湖面がそれぞれ広がっている。

いずれも現世では見たことのないものだった。
現世では空は厚く黒い雲に覆われていたし、水面は何時も荒く波立って、茶色く濁っていたから。
ワルプルギスとしては、それらを眺めているだけでも十分心躍る景色なのだが……

ワルプルギス「………………!」

上空から近づいてくる3つの影を見つけ、ワルプルギスは色めきたった。
ここに一緒に来た仲間であるお姉さんの提案を受け、白玉楼を抜け出して約3時間超、ようやく遊び相手がやってきたのだ。

提案を受けた段階で愉しそうだとは思ったが、こうして計画通り遊び相手が来てくれると、その楽しさも一入だ。

上空から降りて来た3つの影――その内一人は見知った魔女仲間だったけど――はワルプルギスの前に立つと、その場で静止した。
3人のうち、紫の髪に、ピンクの寝巻きのような服を着た少女が分厚い本を片手に尋ねてくる。

??「貴女がワルプルギスね? 私はパチュリー・ノーレッジ。 貴女を連れ戻しに来たわ、さぁ白玉楼に帰りましょう」

そう言って、手を差し伸べてくるパチュリー。 対するワルプルギスは口元に笑みを浮かべつつ、言葉を漏らす。

ワルプルギス「……………よ」

パチュリー「?」

手を差し伸べたまま訝しげな表情をするパチュリー。どうやら聞こえなかったようだ。
なら、今度は聞こえるように言ってあげる事にする。その代わり……

ワルプルギス「……お姉ちゃんたち、私の遊び相手になってよ。
       朝まで、夜が明けるまで、私と一緒に遊びましょ? 私の用意した舞台劇のお祭りで!」

この一言が合図となった。
ハッキリとした声で言うと同時に、ワルプルギスは手に隠し持っていたカードを発動。
辺りに強力な魔力が満ち溢れ始め、巻き起こった暴風雨は霧の湖の水面を大きく波立たせる。
満天の星空は、不気味さを感じさせる虹色の光と、黒い雲に覆いつくされ、
荒れ狂う波は、巨大な津波となって、沿岸の森や紅魔館の方へと押し寄せていく。


                      宴符 『スーパーセルフェスティバル』


まさしく幕を思わせるような弾幕が現れ、左右へと広がっていく。

幕が開くと同時に現れるのは、数字の『5』。
ご丁寧にも○で覆われた弾幕の数字は、それが映画か舞台の開幕だと言うようにカウントダウンしてゆく。
265 :ステージEX 魔女と魔法使い達の後夜祭 [saga]:2011/11/09(水) 01:38:50.78 ID:NVzYNTEF0

パチュリーが彼女にしては珍しい大声で叫ぶ。

パチュリー「エリー、アリスの人形で全員に呼びかけなさい! 今すぐにっ!」


                               『4』


エリー「わ、分かった!」

パチュリー「咲夜、カウントダウン終了と同時に、こっちも仕掛けるわよ」


                               『2』


エリー「って、ちょっ!? なんで『3』がないのよ!? 反則でしょ!?」

咲夜「畏まりました。パチュリー様」


                               『1』

エリー「あっ、繋がった!
    み、みんな! 急いで、えっと、霧の湖……だっけ? まで来て! ワルプルギスがいきなり弾幕戦を…………」


                               『0』


エリーの呼びかけが終わらないうちにカウントは『0』となった。
直後、豪雨の様な弾幕が降り注ぎ、エリーの手の中にあったアリスの人形を撃ち抜く。

夜通し行われる事になる“魔女”異変の後夜祭、後に彼女の名をとって『ワルプルギスの夜祭』と称される一大弾幕戦はこうして開幕した。


266 :ステージEX 魔女と魔法使い達の後夜祭 [saga]:2011/11/09(水) 01:46:57.60 ID:NVzYNTEF0
―――――――――――――― 【同刻・紅魔館】 ―――――――――――――――

レミリア「始まったわね……」

湖の中央で弾幕が展開するのと同時に、嵐の様な暴風雨が巻き起こるのを見ながら、レミリアは呟いた。
窓ガラスがガタガタと揺れ、ガラスは水滴で瞬く間に曇る。 こうなってしまうともう、レミリアは屋敷の外に出る事は出来ない。
ちゃんと意図を察してくれたパチュリーと咲夜が駆けつけてくれた為、ここまでは上手く行ったようだが、ここから先どうなるかは分からない。

レミリア「見てるだけ、というのも随分ともどかしいモノね……」

美鈴「お嬢様、失礼します」

聞こえた声に振り向くと、ノックと共に門番をしていた紅美鈴が部屋に入ってくる。
今夜は咲夜が居ないので門番ではなく、雑務全般を彼女に任せたのだ。

レミリア「美鈴、あの子らの収容は終わった?」

美鈴「はい、パーティーと称して霧の湖周辺の全妖精を呼び寄せました。 大妖精に確認させたので欠員などはありません」

宵闇の妖怪も居たので、一緒に招いてしまいましたが、と報告する美鈴に、レミリアは「そう……」とだけ答える。
これでレミリアの“視た”被害もある程度押さえ込めるはずだ。 ここが絶対安全という保障は全くないのだが……

レミリアは再び窓の外に目をやる。
吹き荒れる暴風で、庭園の垣根や木々が大きく揺れている。 揺れ過ぎて根こそぎ吹き飛んでいってしまいそうだ。

レミリア「庭の整備を頼んだのに、これだと一から作り直しになるかも知れないわね……」

出来ればそんなことにはなって欲しくなかったが、その程度で済むなら安いと、レミリアは思っていた。

267 :ステージEX 魔女と魔法使い達の後夜祭 [saga]:2011/11/09(水) 01:50:45.04 ID:NVzYNTEF0
――――――――― 【都会派魔女と現人神とお転婆人魚姫】 ――――――――――

アリさなオク「「「っ!?」」」

幻想郷の各地が見渡せる場所へ行こうと、妖怪の山の頂上を目指していたアリスたちは、眼下で起こった異変に素早く気が付いた。
山の麓から広大な森を挟んだその先、霧の湖付近で、強烈な魔力と、竜巻にも似た暴風が巻き起こるのが見えたのだ。、

直後、アリスの持った人形を通じて、エリーの悲鳴に近い声が届く。

エリー『がった! み、みんな! 急いで、えっと、霧の湖……だっけ? まで来て! ワルプルギスがいきなり弾幕戦を…………』

ブツッ、と言う音と共に途絶えるエリーの声。
向こうに余裕がないのか、通信を担っていた人形にトラブルでもあったのか、とにかく通信が出来なくなってしまったようだ。

オクタヴィア「あはは、凄い魔力……、話にしか聞いてなかったけどこれ程とはねぇ……オクタヴィアちゃんもびっくりだよ」

度肝を抜かれすぎて呆気にとられているのか、オクタヴィアの声には逆に緊張感がない。
対する早苗は表情を強張らせながら、アリスと顔を見合わせる。

早苗「アリスさん……」

アリス「探す手間が省けたわね。 行きましょう」

268 :ステージEX 魔女と魔法使い達の後夜祭 [saga]:2011/11/09(水) 01:53:00.21 ID:NVzYNTEF0
――――――――― 【白黒魔法使いと紅白巫女と薔薇乙女】 ――――――――――

霊夢「ああ、もうっ! やっぱり勘があってたんじゃない! どうして私は人里なんかに来ちゃったのよ!」

レミリアの態度が怪しいと思いながらも、大した守護者の居ない人里を優先した判断が裏目に出たことを霊夢は後悔していた。

魔理沙「まぁまぁ、抑えろ霊夢、人里に被害が出てからじゃ遅いからこうして来たんだろ?」

人里に被害が出ないことがハッキリしただけで万々歳じゃないか。 いきり立つ霊夢をなだめるように魔理沙が言う。
霊夢はどうにかしてイライラを抑えようと、ため息を一つつき目を瞑る。
数秒間瞑目した霊夢は、幾分か落ち着いた様子でアリスの人形を片手にしたゲルトルートに問う。

霊夢「今の話だと、そのワルプルギスだっけ? が見つかったのは霧の湖よね?」

ゲルトルート「ええそうよ。それでちょっと聞きたいんだけど、ここからだとどれ位かかるの?」

ゲルトルートの問いに答えたのは魔理沙だ。

魔理沙「ちょっと時間がかかるな。 暫らくはパチュリーたちに持ちこたえてもらうしか無いな」

ゲルトルート「そんな……」

魔理沙の言葉に絶句するゲルトルート、開幕早々通信が途絶えたのだ。
熾烈な弾幕戦が既に展開されている事は想像に難くない。

魔理沙「まっ、出来るだけ早く駆けつけられるよう、超高速で行くしかないな。 早速行こう……」

霊夢「ちょっと待って!」

箒に飛び乗って、飛んで行こうとした所を霊夢に呼び止められ魔理沙は不機嫌そうな顔を向ける。
時間が無いのに何をしてるんだ?と言いたげな顔だ。

霊夢「時間はとらせないわ、行く前に、あそこに連絡を取っておいて欲しいのよ」

そう言って霊夢は連絡先を告げる。
この状態で動かすのは気が進まなかったが、最後の保険だけは掛けておきたかった。

269 :ステージEX 魔女と魔法使い達の後夜祭 [saga]:2011/11/09(水) 01:57:23.25 ID:NVzYNTEF0
――――――――― 【七曜の魔女と瀟洒なメイドと引篭り娘】 ―――――――――― 12(日) 子の刻


                      大祭 『聖者の篝火』



ワルプルギス「キャハハハハ、面白い面白い! ほらほら、みんな踊ってよ!」

確実に逝っちゃってるとしか思えない笑い声と共に圧倒的な弾幕を放つワルプルギス。
襲い来る狙いを澄ました弾幕に、パチュリーたちは機敏かつ臨機応変な回避を余儀なくされる。

自機狙い弾の典型とは言え、自身を狙う弾だけでなく他の2人を狙う弾も無数に放たれており、
互い同士で注意を払いつつ上手く誘導しないと、いつ巻き添えを食うか分かったものではない。

エリー「ちょっ!? パチュリー、そっちに誘導しないで! 私の逃げ道が無くなるでしょ!?」

パチュリー「私の逃げ道もそっちしかないのよ。 貴女はまだどうにでもなるでしょ?
      次の弾幕が途絶えた瞬間に反対側に動きを切り替えなさい。 そんなに難しくない筈よ」

そう言って弾幕と弾幕と僅かな切れ間を指差すパチュリー。
既にいっぱいいっぱいのエリーは悲鳴にも似た……いや、最早悲鳴でしかない声を上げる。

エリー「あの隙間できり返しって、弾幕戦に慣れた貴女たちと一緒にしないで!?」

私初心者よ!? イージーシューターなのよ!? と錯乱気味に喚くエリーに、二人から冷たい宣告が告げられる。

咲夜「出来ないならそこで墜ちなさい。 骨は拾ってあげるわ」

パチュリー「墜ちるなら私の見えないところで頼むわね」

エリー「〜っ!! やればいいんでしょ!? やれば!? それとパチュリー! エスコン自重!!」

半ば自棄になった様子で弾幕に飛び込んでいくエリーを見て、咲夜はやれやれと肩をすくめ、
パチュリーは「ネタにツッコむ余裕はあるんじゃない」とぼやく。

エリー「引篭りの私はこうして無いと神経がもたないの! ナチュラルハイなの!」

パチュリー「何でも良いから黙って頂戴。 ただでさえ喘息持ちなのに貴女に付き合ってると余計呪文が唱えられなくなるの」

魔術書を読む時間ぐらい黙ってられるでしょ? とパチュリーが愚痴ると、エリーは溜まった鬱憤を吐き出すように突っ込む。

エリー「貴女、喘息持ちって絶対ウソでしょ!? そんな派手に動き回れる喘息持ちが居て堪るもんですか!」

パチュリー「…………幻想郷では常識に囚われてはいけないのよ」

エリー「なら、目線を合わせなさい。 それと最初の沈黙は何?」

弾幕戦の真っ最中だと言うのに言い合いを始めた二人に、一人黙々と反撃を試みていた咲夜が低い声で二人に言う。

咲夜「…………パチュリー様もエリーも漫才をするならこれが終わってからにしてくれません?」

殺気のこもった声にパチュリーとエリーはびくりと背を震わせ、弾幕の回避に専念し始める。
今度ふざけたら、間違いなく咲夜も弾幕を撃つ側に回るだろう、そう思わせる何かが声にこもっていた。


270 :ステージEX 魔女と魔法使い達の後夜祭 [saga]:2011/11/09(水) 02:01:15.39 ID:NVzYNTEF0
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

咲夜の一声の後、弾幕の回避に専念した結果、3人はある程度の法則を見出す事に成功した。
ある程度3人の避け方が安定してくると、その様子を見ていたワルプルギスは眉を寄せる。

ワルプルギス「同じ動きばっかりでつまんない。 題目か〜えよ」


                      召喚 『死狂い道化役者』


新たなスペルが宣言され、ワルプルギスの周囲に8体の影が現れる。
現れたのは黒一色で塗り潰された人影で、その中には見覚えのある背格好のモノも混じっている。

ワルプルギスによって召喚された使い魔はパチュリーたちを取り囲むように四方に散ると各々弾幕を放ち始める。
放つ弾幕は一定ではなく、通常弾幕もあれば、レーザーだったり、斬撃だったりと使い魔によって放つ種類は違う。
弾幕の見本市、そう評するのが正しいのかもしれない。

咲夜「使い魔ですか、話には聞いていましたけど、厄介ですね」

昼の弾幕戦では唯一使い魔を使役する相手とぶつかる事の無かった咲夜たちは、
初めて見る使い魔を駆使した四方八方からの弾幕に思わずそう呟く。

パチュリー「とりあえず完全に包囲される前に何体か潰すしかないわね」

そう言って魔道書を開いたパチュリーは辺りをちらりと見回す。
今居る場所は湖のほぼ中央で、障害物はおろか利用できそうな手頃なモノすらない。
が、すぐに自分たちの足元にアレがあることを思い出し、魔道書の項を捲る。


                      土水符 『ノエキアンデリュージュ』


呪文をさっと唱え、スペルを発動。
足元で荒れ狂う湖から水の弾幕を精製し、手近なところに居た使い魔目掛け集中砲火を浴びせる。

ワルプルギス「……………(ニヤッ」

その様子を見て、ワルプルギスは誰にも見えないほど小さく口元を吊り上げた。
無論、そんな変化に気づく者は居ない。

避けにくい、うねるレーザーを放っていた使い魔の頭が弾丸と化した水に撃ちぬかれ、爆ぜる。
頭が爆ぜると同時に使い魔の身体も幾つかの弾幕となって爆ぜ、四方八方に飛び散る。
271 :ステージEX 魔女と魔法使い達の後夜祭 [saga]:2011/11/09(水) 02:04:23.23 ID:NVzYNTEF0

パチュリー「っ!?」

使い魔自身が弾幕となると言う予想外の事態にパチュリーは目を見張る以外の行動を取ることが出来なかった。
眼前に弾幕が迫るが、動く事が出来ないパチュリーに対し、エリーの鋭い声が割り込む。

エリー「パチュリー! 危ないっ!」


                      防衛 『ファイヤーウォール』


パチュリーに弾幕が直撃するか否かと言う、間一髪のところでパチュリーの眼前に魔力で作られた壁が展開される。
エリーがボム代わりに持っていた防御スペルがギリギリのところで間に合ったのだ。
展開された壁に阻まれた弾幕は、その瞬間打ち消され、パチュリーへの直撃を果たすことなく消失する。

爆ぜた使い魔による弾幕が全て打ち消されると同時にパチュリーはどっと息を吐いた。

咲夜「大丈夫ですか!? パチュリー様!」

パチュリー「ええ、大丈夫よ。 エリー、ありがとう、お陰で助かったわ」

慌てて駆けつけてきた咲夜にそう答えつつ、パチュリーはエリーに向き直って微笑みかける。
エリーは一瞬呆気にとられたが、すぐに笑顔になる。

エリー「貸し一個ね。 御礼は貴女の図書館を漫喫代わりにすることで勘弁してあげる」

パチュリー「ちょくちょく五月蝿いネズミが来るけど、それでもいいならいつでも招待してあげるわ」

エリー「ありがと、さて、おしゃべりの時間もそろそろおしまいかしらね」

魔力防壁にひびが入り始めたのを横目に見ながら、エリーが言う。
ひと時の休息は間も無く終わりを告げ、終わると同時に再びあの嵐の中に突っ込む事になる。

パチュリー「今ので分かった事だけど、あの子の使い魔は撃破すると使い魔自身が弾幕になるわ。攻撃する時は注意して」

エリー「言われずとも重々承知してるよ。目の前であんなの見ちゃったらね……」

咲夜「攻撃を仕掛けるなら、近くに居る使い魔より遠くの使い魔の方が対処がしやすそうですね」

防壁のひびが急速に広がる中、三人は最後の打ち合わせを行う。そして訪れる限界の時――、
272 :ステージEX 魔女と魔法使い達の後夜祭 [saga]:2011/11/09(水) 02:07:18.88 ID:NVzYNTEF0

エリー「時間ね。 覚悟だけは決めといてよ」

咲夜「お二方ともご武運を……」

パチュリー「咲夜、貴女もね。 それじゃあ、行くわよ!」

パリンと言う軽い音と共に崩壊する魔力防壁、これまでの静けさを踏みにじるように暴風と弾幕が吹き荒れる。
防壁崩壊と同時に三方に散った三人は、自爆への注意を払いつつ使い魔へたちに挑んでいく。

そんな三人を嘲笑うようにワルプルギスの笑い声が湖に響く。

ワルプルギス「さっきはギリギリのところで逃げられちゃったね。でも、かくれんぼの時間はオシマイだよ。ふふふ、キャハハハハ!」

咲夜「そうね、戯れの時間は終わりよ。 一度露呈した仕掛けにかかるほどこっちも素人じゃないの」


                      奇術 『ミスディレクション』


ワルプルギスの挑発じみた言葉も、自爆と言う初見殺しと対処法が判明した今、効果をあまりなさなかった。
咲夜は時間停止と高速移動を巧みに使い、パチュリーたちは冷静に弾幕と使い魔たちとの位置関係を見極め、
それぞれが次々と使い魔を撃破していく。
もちろん、自爆に巻き込まれる愚を犯すものは居ない。

パチュリーたちにとってはいい傾向と言えたが、コレを面白く思わない者がいた。 ワルプルギスである。
さっきまでの耳障りな高笑いがウソのように、ぶすっとした表情を浮かべたワルプルギスはつまらなそうにぼやく。

ワルプルギス「やっぱり、タネも仕掛けもバレちゃった演目じゃお話にならないか……次行こう、次!」


                      無力 『くずれ近未来都市』


まだ残っている使い魔も居たのだが、ワルプルギスはそれらを自らの手であっさり消し去ると、次のスペルを発動させる。
宙に無数の弾幕と瓦礫が現れたかと思うと、次の瞬間、それらは重力に従っていっせいに降り注ぐ。
弾幕は湖面まで落ちると、その場で堆積し、瓦礫は盛大な水柱を立てて、湖面の弾幕を再び跳ね上げる。
273 :ステージEX 魔女と魔法使い達の後夜祭 [saga]:2011/11/09(水) 02:10:23.55 ID:NVzYNTEF0

弾幕と瓦礫を迎撃しようと、咲夜はナイフを投擲するが、打ち消せるのは弾幕だけで、瓦礫には逆にナイフが弾かれる。

咲夜「くっ!? 物理弾幕!? パチュリー様、エリー、瓦礫は本物です。
   瓦礫の迎撃は出来ませんから、瓦礫に対しては回避に専念して下さい!」

エリー「了解っ!」

パチュリー「分かったわ。 それにしても何処からあんな瓦礫を持ってきたのよ……」

降り注ぐ瓦礫は、幻想郷で見られる木造家屋のソレではなく、煉瓦造りの紅魔館に似た、いやそれよりももっと大きな片ばかりだ。
それらの瓦礫は皆、所謂鉄筋コンクリートなのだが、幻想郷の住人であるパチュリーたちは知る由もない。
とにかく幻想郷内で調達した瓦礫ではない事は分かったが、それ以上は推察も観察も出来ない。と言うかする暇すらない。

低空を飛べば、着水した瓦礫の水柱が跳ね上げた弾幕に巻き込まれる可能性が増し、
上空に上がろうとすれば、次々と生み出される濃度の濃い弾幕に突っ込む羽目になる。
中段域になると、重力により弾幕と瓦礫の落下速度は上がるが、その分隙が出来て、回避しやすくなる。

咲夜(弾速にさえ注意すれば中段域が安定圏ですね……。けど、これは……)

上手く中段域に留まる事ができればいいわけだが、言う程容易い事ではない。
いつの間にか低空域か上空に誘導されてしまい危ない場面が散見される有様になる。

エリー「あーっ! もうっ! 上も下も逃げ場がないじゃない! 何でこんな弾幕思いつくのよ!」

パチュリー「同じ魔女仲間でしょ? 趣味嗜好は貴女の方が詳しいんじゃないの?」

エリー「だって私引篭りだしー、あの子と会ったのも幻想郷(こっち)に来てからだしー」

「エリーちゃん分かんない」等と余裕があるのか無さ過ぎて一周しちゃったのか判断に困る態度を見せるエリー。
厄介な弾幕との併せ技で流石にイラっと来たのか、パチュリーの額に青筋が浮かぶ。
274 :ステージEX 魔女と魔法使い達の後夜祭 [saga]:2011/11/09(水) 02:15:14.15 ID:NVzYNTEF0

咲夜「パチュリー様落ち着いて下さい、そんな事をしている場合では……」

咲夜が二人を宥めに入り、三人の注意が弾幕と瓦礫から離れた瞬間、上空のワルプルギスから驚愕の一言が降って来た。

ワルプルギス「あれあれあれー、仲間割れなんかしてて良いのかな〜、特大のが行っちゃうよ〜っ!」

パチェ咲エリ「「「っ!!!?」」」

ワルプルギスの言葉に上空を見上げた三人が目にしたのは超特大クラスの瓦礫の塊。
幻想郷の平均的な民家は愚か、紅魔館の時計台より大きいんじゃないかと思える程の瓦礫が、三人目掛けて降って来る。

エリー「大きい大きい大き過ぎだってコレ!? 避けられる訳ないじゃん! またなの!? またこの負けパターンなの!?」

パチェ&咲夜「「………………」」

視界いっぱいに広がる巨大な瓦礫に、昼間の弾幕戦で受けた『ロイヤルフレア』のトラウマが蘇ったのかエリーが頭を抱えてうずくまる。
咲夜とパチュリーは取り乱しこそしなかったが、冷静でいられたからこそ分かってしまった。


                      これはもう避けられない。と……


これのような瓦礫が来ると最初から想定していたか、迎撃の為の高位魔法を発動する時間があれば、まだ手はあっただろう。
或いは戦っているのが咲夜一人であったなら、時間停止で逃げる事も出来たかもしれない。

しかし、今の二人には事前の想定も、迎撃用のスペルの準備もない、丸腰と行っても過言ではない状態なのだ。
咲夜が時間停止もしたとしてもパチュリーとエリーの二人を助ける事はできない。

これまでどうにか避けきり、乗り切ってきた三人だが、事茲に及んで今この場に居る三人全員が生き延びる手段は最早残されていなかった。 


275 :ステージEX 魔女と魔法使い達の後夜祭 [saga]:2011/11/09(水) 02:26:42.89 ID:NVzYNTEF0
今夜はここまで、校正前の書き溜めも同じくらいの文量があるのにまだ終わらないとか……
ワルプルさんマジ半端じゃねぇ……

そして狂言回しのエリーさん輝きすぎ。
やっぱり、プロの戦いに混じるトーシロさんが居ると話作りやすいねー

>>253
エリーのパソコンがすごいんじゃない、神のパソコンが全世界と繋がってるだけだ。

>>256
だれか東方風アレンジしたもの作ってくれないですかねー>スルガムイデンティデム

>>258-259
このSSは、クリゆゆを推奨しております。心行くまでほっこりしてください。
うめてんてー絵の幽々子だろうと、ZUN絵のまど……クリームちゃん、どっちもありだと思います。
276 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(東京都) [sage]:2011/11/09(水) 02:46:30.86 ID:Slr8LHTC0
こんな真夜中に投下だなんてこんなの絶対おかしいよ!乙!

ワルプルさんというよりワルプルちゃんだな…ハシャイジャッテ
エリーちゃんのツッコミもそうだけど、防衛『ファイヤーウォール』とか自作スペカのセンスが輝いてるなwwwwww

考えたスペカがいっぱい採用されて、俺はとっても嬉しいなって思ってしまうのでした!
後半が楽しみで仕方ないぜ…!
277 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [saga]:2011/11/09(水) 03:05:41.44 ID:JubCJGpSO
EXが長丁場なのはお約束だぜ
278 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/09(水) 07:47:02.06 ID:ec17dAyDO
お疲れ様です!いやー、壮絶な弾幕な事で…どうやって避けろと。ほむらちゃんはあんなのぶつけられてるんだよな。

ところでロベさんは何を企んでるやら…。
279 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/09(水) 15:48:11.95 ID:NNx7DTlT0
PHまでやるのかね?

それとQBが弾幕ごっこに参加したらどうなるのっと
280 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(中国地方) [sage]:2011/11/09(水) 16:43:09.53 ID:O0xl16Xa0
そろそろフラン辺りが気づきそうな暴れ具合じゃね
281 : [saga]:2011/11/09(水) 20:18:21.84 ID:NVzYNTEF0
ぎゃああ、良く見たら咲夜もとい昨夜のラスト誤字ってるううっ!
たまの平日休みだからって夜中に投稿するんじゃなかった……orz

と言うわけで本日の投稿は>>274の誤字訂正版から参ります。

>>279
やるとしたらあの人です。が、正直プロットどころか妄想の域を出てません。
伏線だけは本編やEXで張ってるんですけどね。

ベェさんだとピチュっても次がすぐ出てくるので以下無限ループです。
と言うか『弾幕戦に勝ったら契約する』とでも言わない限り回避すると思われます。
まあほむほむの銃撃かわしまくってたので、回避は得意かもですが……

ん?魔女がみんな人型になったのだからQBもやっぱり人型に……白髪ツインテール娘?
282 :ステージEX 魔女と魔法使い達の後夜祭 [saga]:2011/11/09(水) 20:23:19.73 ID:NVzYNTEF0
>>274

咲夜「パチュリー様落ち着いて下さい、そんな事をしている場合では……」

咲夜が二人を宥めに入り、三人の注意が弾幕と瓦礫から離れた瞬間、上空のワルプルギスから驚愕の一言が降って来た。

ワルプルギス「あれあれあれー、仲間割れなんかしてて良いのかな〜、特大のが行っちゃうよ〜っ!」

パチェ咲エリ「「「っ!!!?」」」

ワルプルギスの言葉に上空を見上げた三人が目にしたのは超特大クラスの瓦礫の塊。
幻想郷の平均的な民家は愚か、紅魔館の時計台より大きいんじゃないかと思える程の瓦礫が、三人目掛けて降って来る。

エリー「大きい大きい大き過ぎだってコレ!? 避けられる訳ないじゃん! またなの!? またこの負けパターンなの!?」

パチェ&咲夜「「………………」」

視界いっぱいに広がる巨大な瓦礫に、昼間の弾幕戦で受けた『ロイヤルフレア』のトラウマが蘇ったのかエリーが頭を抱えてうずくまる。
咲夜とパチュリーは取り乱しこそしなかったが、冷静でいられたからこそ分かってしまった。


                      これはもう避けられない。と……


このような瓦礫が来ると最初から想定していたか、迎撃の為の高位魔法を発動する時間があれば、まだ手はあっただろう。
或いは戦っているのが咲夜一人であったなら、時間停止で逃げる事も出来たかもしれない。

しかし、今の二人には事前の想定も、迎撃用のスペルの準備もない、丸腰と言っても過言ではない状態なのだ。
咲夜が時間停止もしたとしてもパチュリーとエリーの二人を助ける事はできない。

これまでどうにか避けきり、乗り切ってきた三人だが、事茲に及んで今この場に居る三人全員が生き延びる手段は最早残されていなかった。 

283 :ステージEX 魔女と魔法使い達の後夜祭 [saga]:2011/11/09(水) 20:28:35.27 ID:NVzYNTEF0
―――――――――――――――――――――――――――――――――――― 13(月) 子の刻

パチュリー「……咲夜、貴女だけでも逃げなさい」

咲夜「っ!? パチュリー様!? ですがっ!」

覚悟を決めた、パチュリーの低い声。
当然予想されていた言葉ではあったが、咲夜は声を上げずには居られなかった。
思わず目を剥く咲夜に、パチュリーは首を横に振ってみせる。

パチュリー「昼間も十分綱渡りだったけど、それもここまでみたいね……。 後の事は頼ん……」


                      「諦めるなんてらしくないわよ、パチュリー」


そんな声が割り込んだのは直後のことだった。
その言葉と同時に、超特大瓦礫にも負けないほどの巨躯を誇る影が、瓦礫を一刀両断する。


                         試験中 『ゴリアテ人形』


ぱっくりと真っ二つに両断された瓦礫は三人の脇をかすめ、湖面目掛けて落下していく。
特大クラスの瓦礫による危険は去ったが、二つに割れた際に生じた瓦礫の破片はまだ残っている。
それだけでも十分危険なのだが……

??「あたしに任せて! どりゃあああぁぁぁっ!!」

そんな喊声と共に飛び出してきた青い装束の少女が、その手に構えたサーベルを一閃させる。
サーベルの斬撃に併せて生まれた弾幕の刃が、瓦礫を粉々に斬り裂き、粉砕する。

他方、三人への直撃こそしなかった特大瓦礫だが、その瓦礫が墜ちようとしている湖面には無数の弾幕が浮いたままとなっている。
三人は湖面へ着水した瓦礫が巻き上げる弾幕を巻き込んだ巨大な水柱が来ることを警戒したが、
瓦礫が着水する直前に、湖自体に穴、と言うか裂け目が生まれ、水柱を立たせることもなく瓦礫は地面が露になった湖底へ更に墜ちていく。
284 :ステージEX 魔女と魔法使い達の後夜祭 [saga]:2011/11/09(水) 20:38:52.94 ID:NVzYNTEF0

咲夜「これは……、早苗の開海『モーゼの奇跡』!? それじゃあさっきの影は……!」

目の前で次々と起こった事にようやく理解が追いつき、三人は声のした方を見上げる。
上空から降りてくるのは、青い衣装ばかり纏った三人――巫女と、人魚と、人形遣いの姿。


??「ご名答です咲夜さん。 正解者に拍手!」

御幣片手に、おちゃらけてみせる巫女――東風谷早苗。


オクタヴィア「どーにか間に合ったみたいだね。 良かったぁ……」

サーベルを鞘に納めながら、胸をなでおろす人魚――オクタヴィア。


アリス「待たせたわね。加勢しに来たわよ」

操っていた巨大人形の具現化を解きつつ微笑みかける人形遣い――アリス・マーガトロイド


パチュリー「……まったく、どういうタイミングで来るのよ、寿命が縮まったじゃない」

見知った顔ぶれに、思わず冗談じみた愚痴が口をついて出る。
とんだ乱入者の出現と相成ったわけだが、一部始終を見ていたワルプルギスは――笑っていた。

ワルプルギス「アハハ、すごいすごい! あの瓦礫を真っ二つにするなんて!
       やっぱり役者は多い方が良いよね! お祭りはこうでなくちゃ!」

きゃっきゃと言う歓声が聞こえてきそうなほど盛り上がっているワルプルギスを見て、早苗が頬を引きつらせる。

早苗「アレは……見事にフランさんとかこいしさんと同じ類ですねぇ……」

アリス「天候が荒れてて助かったわね。紅魔館からあの子まで出てきてたら今頃大惨事よ」
285 :ステージEX 魔女と魔法使い達の後夜祭 [saga]:2011/11/09(水) 20:44:45.84 ID:NVzYNTEF0

事前に話は聞いていたが、実際に見て改めて実感する。
アレは間違いなく、相手をするだけでも疲れる相手である。と……

ワルプルギス「役者さんが増えたんだから演目を変えなくちゃだね。次の演目はこれ!」


                      装置 『コーザリティーギアエンゲージ』


現れるのは放射状に放たれる多条の回転レーザーと、先ほどまでの瓦礫と同じ、完全物理の無数の歯車。
レーザーは出力が抑えてあるのか、実体化した歯車に当たると、その瞬間だけ遮られるが、それ以外は隙など殆どない。
回転するレーザーを見た途端オクタヴィアが頭を抱える。

オクタヴィア「ちょっと、この回転レーザーって、完全にあたしの上位互換じゃないの!?
       私だって12条が限度だったのに……、これじゃあ立場がないじゃない……」

などと妬みとも羨みともとれるぼやきをもらすオクタヴィアに早苗がトドメと言わんばかりの一言を放つ。

早苗「後から出てきた相手が上位互換してくるのは良くある事なんで諦めて下さい」

降り注ぐ弾幕と自機狙いと、自機外しと、回転と、へにょりは基本です。
となぜか胸を張って偉そうに言う早苗に対し、オクタヴィアはがくりと膝を付く。
実際には、オクタヴィアに膝はないのだが……

エリー「まぁ、これなら攻略法も分かりやすいし、まだなんとか……」

一方最初から相手をしていたパチュリーたち三人はこの弾幕は中休みになると踏んでいた。
早苗の言うとおり、良く見られる基本的な弾幕なので、レーザの隙間に入って、一緒に回っていれば回避も容易いからだ。

ワルプルギスが次の行動を起こすその時までは……

ワルプルギス「キャハハハ、準備は良いみたいだね。それじゃ二つ目の歯車行くよーっ!」

全員「「「「なっ!?」」」」

ワルプルギスの言葉と共に現れるもう一つの回転レーザー。
条の数こそ違うが、最初の回転レーザーとは反対周り、つまり噛み合うように現れた形だ。
二つのレーザーが噛み合って回転する姿はまさしく歯車と言えた。
286 :ステージEX 魔女と魔法使い達の後夜祭 [saga]:2011/11/09(水) 20:48:53.41 ID:NVzYNTEF0

当然、レーザーの隙間に入って回り続ける回避法はこの弾幕には通用しない。
噛み合うレーザーが現れる直前に上手く逃げるか、実体化した歯車にレーザーが遮られる一瞬を利用して、別の隙間に逃げる他手段はない。

真の姿を現した弾幕を見て、にこやかな表情を浮かべたエリーがやけに抑揚のない声で言う、

エリー「うわー、まさかの電流イライラ棒状態だー(棒読み」

早苗「懐かしいですねー、まさか今になって体験できるとは思いませんでしたよー」

エリーの呟きに、早苗が緊張感の欠片もない声で相槌を打ち、そこに更にアリスのツッコミが入る。

アリス「…………貴女たち、随分と余裕綽々ね」

オクタヴィア「余裕綽々と言うか、アレはどう見ても現実逃避のような……」

絶望すら通り越して壊れた反応を見せる者が現れるが、煉獄はまだまだ終わらない。
トドメと言わんばかりの宣告が降って来たのは、二つ歯車の動きに全員がようやく対応出来るようになった直後の事だった。

ワルプルギス「キャハハハ! 楽しんでる、って事はもっと行けるよねー。 今度は巨大歯車だよー? そーれっ!」

恐怖すら感じさせるほどの無邪気な声と共に、ワルプルギスが生成する物理の歯車が一気に巨大化する。
その大きさは、一度はパチュリーたちを挫けさせた超特大瓦礫と同じか、それよりも大きい。

あまりにも予想外な展開に、錯乱していた者も、そうでない者も一気に現実に引き戻された。

早苗「っ!? アリスさん! さっきの人形もう一回出して下さいっ!!」

さっきの気の抜けようがウソの様に表情を引き締めた早苗が僅かばかりの希望を込めて、アリスに呼びかける。
だが、アリスから返ってきた返答は、そんな希望をあっさりとぶち壊した。

アリス「無理よ。 あの人形は試験中のもので、一日に3分動かすのが限度なの。
    さっきので今日の分は使い切ってしまったわ」
287 :ステージEX 魔女と魔法使い達の後夜祭 [saga]:2011/11/09(水) 20:55:42.58 ID:NVzYNTEF0

咲夜「他に、アレに対抗可能な人形は?」

アリス「ごめんなさい、ないわ……」

そう言って俯いたアリスは強く唇を噛む。
パチュリーたちの危機を救うためだったとは言え、切り札の投入が早すぎたのでないか?
あの時、他の手段でも、十分対抗可能だったのではないか?
そんな疑念が、アリスの中で生まれては消える。
一度本気を出してしまえば、後はない。 それは分かりきっていた事なのに……

パチュリー「来るわよ!」

アリス「っ!!?」

そんなアリスの思考は、パチュリーの簡潔な、それでいて切羽詰った声によって遮られた。
反射的に見上げると、完全に実体化した巨大歯車が今まさに、こちら目掛けて墜ちて来ようとしていた。

巨大歯車はほぼ一枚板と言っても良く、穴が開いているのは中心軸の部分だけ、その幅も人一人が通るのがやっとの幅であり、
回転レーザーとの兼ね合いを考えれば、そこを通り抜けられるのは、六人中、一人だけ。 例え奇跡が起きたとしても二人が限度だろう。

オクタヴィア「…………よし!」

絶望的な表情で皆が墜ちてくる巨大歯車を見上げる中、飛び出していく影が一つあった。 オクタヴィアだ。
オクタヴィアは巨大歯車を見据えると、その手にサーベルを構える。

固い決意を感じさせる彼女の表情に、オクタヴィアの真意を悟ったのはエリーだった。

エリー「くっ!? やめなさいオクタヴィア! その術は諸刃の剣よ!」

オクタヴィア「そんなこと言ってる場合じゃないでしょ!? 今はやるしかないの! 行くよっ!」


                      特攻 『痛覚遮断』


レーザーが飛んでくるのにも構わず、オクタヴィアは巨大歯車に斬りかかる。
一切の回避を試みずに行われた攻撃により歯車に細かいひびが入り、ひびは歯車の穴を徐々にではあるが拡げていく。
が、その対価と言わんばかりにレーザーは次々とオクタヴィアの身体を刺し貫き、その肌を焼く。
288 :ステージEX 魔女と魔法使い達の後夜祭 [saga]:2011/11/09(水) 21:04:43.81 ID:NVzYNTEF0

あまりにも無謀な行動に咲夜が思わず声を上げる。

咲夜「なっ!? 何を考えているのよあの子は!? 死ぬ気なの!?」

パチュリー「……おかしいわ、あれだけ被弾すればいつ撃墜されて(ピチュって)もおかしくないのに……。 エリー、あれはあの子の特殊能力か何かなの?」

オクタヴィアの行動に驚愕しつつも、冷静な洞察と思考を続けていたパチュリーがエリーに尋ねる。
こんな状況だと言うのに冷静な思考が出来てしまう自分が少し嫌になったが、そんな事を言っている場合ではない。

エリー「あれは痛覚遮断って言ってね。 身体からの痛みを一切感じないようにする事で、被弾したと自覚させない術なのよ。
    もちろん自覚しないだけでダメージは受けるから普通は意味を成さないんだけど、オクタヴィアには驚異的な再生能力が備わっているの」

アリス「つまり、感覚の遮断と強力な回復魔法を同時に行う事で、一時的な無敵状態になって限界を突破するって術ね?
    確かに諸刃の剣だわ、博打要素が大きすぎるし、術が解けた後の反動がバカにならないじゃない」

アリスの言葉にエリーは無言で頷く。
だが、こうして術を発動して、既に斬りかかっている今、オクタヴィアに任せる以外手段はない。

下手な事をして邪魔にならないよう、静観しているのが正解。

誰もがそう思ったのだが、一人だけ、違う行動を取った者がいた。
オクタヴィアの後を追うように上昇してゆく緑髪の少女――早苗の背中にエリーの鋭い声が飛ぶ。

エリー「やめなさい! 貴女が行ったところでオクタヴィアの足手まといにしか……」

早苗「オクタヴィアさんだって無茶を承知で諦めずに向かっていったんです! やりもしないうちから決め付けないで下さいっ!」

エリー「……っ!」

早苗「……幻想郷に来て早数年、神奈子さまたちに頼らないでもやっていけるようにと編み出したこの技……、
   これが守矢の……、いえ、私、東風谷早苗の“奇跡”です!」


                      妖怪退治 『妖力スポイラー』


289 :ステージEX 魔女と魔法使い達の後夜祭 [saga]:2011/11/09(水) 21:10:59.19 ID:NVzYNTEF0
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

その時、一か八かの痛覚遮断で勝負に出ていたオクタヴィアは限界を迎えつつあった。

オクタヴィア(くっ、被弾が多すぎて回復が追いつかない! このままじゃ術が切れると同時に行動不能かな……?)

これ以上の被弾を避けて回復に専念出来ればいいのだが、
レーザー弾幕は止まらないし、なにより目的であった巨大歯車の破壊を果たせなくなる。

この術を発動した時点で覚悟は決めていたが、いよいよこれまでかもしれない。

オクタヴィア(ま、いかにも後先考えないあたしらしい魅せ場が出来たし、ここで終わっても……)

などと、思考がネガティブな方向に傾き始めたその時、オクタヴィアを襲っていたレーザーがふっと霧散した。

オクタヴィア(……なに? 急にレーザーが……)

スペルブレイクかとも思ったが、そうではない。
ワルプルギスの頭上で光を放つスペルカードは未だ発動状態だ。

自身のダメージばかりに気が行っていたが、周囲を見回してみてオクタヴィアは気付く、
レーザーはただ単に霧散しているのではなく、微粒子に分解された上である一定の方向へ流れて行っている、と言う事に……、

オクタヴィア「っ!?」

ワルプルギス「キャハハハ、お見事だね! 私の技を吸収しようとする人、初めて見たよ!」

その流れを視線で追ったオクタヴィアは目を見開き、上空でそれら全てを見ていたワルプルギスは賞賛とも感嘆とも取れる声を上げる。
微粒子の流れる先にいたのは他でもない早苗だった。

早苗「こう見えて私も神の端くれですからね! 甘く見ないで下さい!」

粒子化した弾幕をその身体に取り込みながら、不敵な笑みを浮かべた早苗がオクタヴィアのもとへ飛んでくる。

オクタヴィア「早苗! アンタ一体何やって……!」

早苗「何って、見ての通り、相手の妖気の吸収ですよ? 弾幕は私が打ち消しますから、今のうちに歯車を!」

オクタヴィア「くっ! お願いっ!」
290 :ステージEX 魔女と魔法使い達の後夜祭 [saga]:2011/11/09(水) 21:17:59.14 ID:NVzYNTEF0

本当なら言いたい事は山ほどあったのだが、オクタヴィアは言われたとおり歯車の迎撃に全力を注ぐ。
早苗はあっけらかんとした態度をとったつもりだったようだが、その表情は明らかに苦痛に歪んでいた。

早苗(ツッコミすらナシですか……これは表情に出ちゃったかな?)

オクタヴィアやワルプルギスに対してあんな啖呵をきった早苗だが、状況は思っていた以上に過酷だった。
ワルプルギスの弾幕、と言うか妖気に籠められた穢れや瘴気が想像以上に濃いモノだったのだ。

その濃さは半分神の域に足を踏み入れている早苗でさえ、気を抜けば闇へ堕ちてしまうのではと思わせるほどだ。

早苗(クリームヒルトさんが一気に魔女になってしまったのも納得ですよ。
   これほど強烈な呪詛をまともに受けて無事で済むわけがない……!)

早苗の葛藤が伝わったのか、はたまた被弾することがなくなったのでリミッターが外れたのか、
オクタヴィアの斬撃のペースが上がる。 そして……


オクタヴィア「これで、終わりだああああああああぁぁぁぁぁぁっ!!」


一際大きく振りかぶった一撃が巨大歯車に叩き込まれ、その巨体に明らかな亀裂が入る。
一度入った亀裂は瞬く間に大きくなり、亀裂は圧倒的な重量を持つ歯車を崩壊へと導く。

オクタヴィア「みんな! 後は上手く避けてっ!」

早苗「レーザーは私が抑え込みます! 今のうちに上空へ!」

永い様で短い攻防の末、満身創痍と言ってもいい状態の二人の声に、全員が弾かれたように動き出す。
ある者は魔法で、ある者は人形で、またある者は自身の能力を駆使して、二人が切り開いた血路を駆け上がる。

その内、真っ先に飛んできたアリスが二人の前に立つ。

早苗「アリスさん、私たちやりましたよ!」

オクタヴィア「ちょ〜っと、ボロボロになっちゃったけどね〜」

アリス「〜〜〜〜〜〜っ!!」

やけにいい笑顔を浮かべる二人に対し、アリスは無言で上海人形を二体、具現化させる。
次の瞬間、上海人形はその手に持ったハリセンで、オクタヴィアと早苗の頭を思いっきり引っ叩いた。

パチェ咲エリ「「「!!!」」」
291 :ステージEX 魔女と魔法使い達の後夜祭 [saga]:2011/11/09(水) 21:24:01.09 ID:NVzYNTEF0

不意打ちだった上、全く遠慮のない一撃をもろに受け悶絶する二人。
そこに、アリスの口から彼女らしくもない罵声が飛び出す。

アリス「バカ! 何考えてるのよ貴女たちはッ!?
    昼から見ててバカだバカだとは思ってたけど、ここまで救いようのないバカだとは思ってもみなかったわ!
    魔理沙並み……、いいえそれ以上のバカよ!」

オク&早苗「「す、すいません……」」

あまりの剣幕にオクタヴィアたちは思わず頭を下げるが、アリスの小言は止まらない。
口調こそキツイが、棘のない、言うなれば妹を叱る姉の様なモノだったが、二人はすっかり縮こまっていた。

そんな様子を横目に見ながら、パチュリーが苦笑する。

パチュリー「相変わらず変なところで世話焼きよね、アリスって……」

咲夜「本人は絶対認めようとしませんけどね……」

咲夜も小さく微笑みながら相槌を打ち、エリーは「へー意外」と呟きながら目を丸くしている。
そこに空気を読んでいるのかいないのか、ワルプルギスの声が割り込む。

ワルプルギス「そろそろいーかな? 次行くよ〜っ!」

オクタヴィア「うへー、まだやる気なの!? あたし今ので限界近いんだけど……」

早苗「私もですよ。 と言うか宣言が必要な弾幕戦で助かりましたよ。 ガチでやり合ってたら勝てる気がしません」

早苗の言葉にその場にいた全員が気まずそうに目線を逸らす。
最低限のルールが守られている為、かろうじて勝負になっているが、
これが何でもありの普通の戦いであったなら、ここまでやり合えた自信はない。

ワルプルギス「今度の演目は、これだよー 戯曲 『メフィストフェレスの………」

そんな雰囲気など何処吹く風でスペルを発動させようとするワルプルギス。
どんな難題スペルが来るのか、全員が身構えた直後の事だった。

ワルプルギスの周囲に多数の御札が現れ、ワルプルギスに直接攻撃を加え始めた。
更に何処からともなく伸びてきた棘付きの茎がワルプルギスの腕を拘束し、発動寸前だったスペルを打ち消す。
292 :ステージEX 魔女と魔法使い達の後夜祭 [saga]:2011/11/09(水) 21:29:23.62 ID:NVzYNTEF0

アリス「御札に薔薇の茎……!? まさか!」

目の前で起こった光景にアリスは御札と茎の飛んできた方向を振り返る。
その先にいたのは二人の少女……。

??「これはまた随分と派手にやられたのね……、ボロボロじゃない……」

??「それにしたって弱気が過ぎるわよ。
   アンタたち、疲れすぎて弱気になってるんじゃないの? 気迫で負けたらその時点で勝負は負けよ」

翅の生えた少女――ゲルトルートと、嵐の中でも目立つ紅白の巫女服少女――霊夢が、口々に漏らしながら戦場と言う舞台に参入する。
パチュリーたちがその見た目通り、かなり疲弊しているのを感じ取り、霊夢はやや後ろを飛んでいるゲルトルートに指示を出す。

霊夢「ここまで手酷くやられてる様じゃ、無茶は出来ないわね。 ゲルトルート、乙案で行くわよ」

ゲルトルート「分かったわ。 なるべく早く戻ろうとは思ってるけど、それまでお願いね」

そう言ってゲルトルートはパチュリーたちの方へ降りていき、霊夢はワルプルギスの方へと向き直る。

霊夢「アンタがワルプルギスの夜?」

ワルプルギス「そーだよ。 お姉ちゃんスゴイねぇ、私のスペルを発動前に無理矢理無効化するなんて……」

霊夢「隙があり過ぎなのよ。アンタは……
   初めての弾幕戦で色々魅せたい気持ちは分かるし、アンタの力が強いのも認めるわ。
   でもね、アホみたいにただスペルを連発するだけで勝てるほど甘くないのよ。 弾幕戦は……」

呆れたように肩をすくめてみせた霊夢は次の瞬間、ニヤリと不敵な笑みを浮かべる。

霊夢「まぁ、お陰でアンタのスペルの攻略法はきっちり見つけさせてもらったけどね」

ワルプルギス「攻略法? なにそれ? 大体お姉ちゃんは今までこの場に居なかったじゃん」
293 :ステージEX 魔女と魔法使い達の後夜祭 [saga]:2011/11/09(水) 21:33:35.29 ID:NVzYNTEF0

霊夢「確かに直接は見てないわ。 けど、ありがたいことに逐一状況を教えてくれる便利なモノがこっちにはあるの」

そう言いつつ、霊夢は捜索開始前にアリスから渡されていた自律人形をちらりと見やる。
視線を向けられ、人形はえへんと言うように胸を張ってみせる。

霊夢「アンタの弾幕は、多人数、それも共同戦線を張って抵抗してくる相手との戦闘に特化してるのよ。
   一見するとどのスペルも凶悪且つ圧倒的な攻撃よ。
   だけど、それらのスペルには必ず“一人”は生き残れるような穴、と言うか設定があるのよ」

例えば、巨大瓦礫。
あの時、咲夜がパチュリーやエリーの事を顧みず、自身が生き残る事に重点を置いていたのなら、
咲夜は時間停止を使って、あっさりあの瓦礫を避けて見せただろう。

或いは、巨大歯車。
二つの回転レーザーが厄介だったとは言え、巨大歯車には人一人が通れる穴が開いていた。
つまりタイミングを合わせる事が出来る者が一人でもいれば、その時点でその一人が生き残れるのは確定する。

『他が犠牲になっても誰か一人が生き残ればいい』と言う思想で臨んでいたのなら、クリアは容易だったのである。
では、何故それが出来なかったのか?
それはいずれの場面に於いても、『全員でこの弾幕を乗り切ろう』と言う考えで全員が動いていたからだ。
仲間と共同で戦っている、と言う潜在的な要因が、パチュリーたちから選択肢を奪っていたのだ。

地にしっかり根ざした木々を簡単にへし折る暴風が、弄ばれるまま宙を漂う無力な葉っぱを完全に消滅させる事が出来ないのと同じで、
抵抗するものには容赦がないが、用意された流れに従うと途端に優しくなるのがワルプルギスの弾幕の特徴と言えた。

霊夢「アンタ、舞台装置の魔女、とか呼ばれてたわよね?
   確かにアンタの弾幕は舞台よ。 多数の役者を揃えて、見事に掌の上で踊らせてみせたんだからね」

ワルプルギス「フフフ、アハハハ、キャハハハハハ! そこまで気が付くなんて流石だよ!
      お姉ちゃんはこれまで相手してきたお姉ちゃんたちと比べて一番スゴイよ! だから……」


                         「特別に私の本気、見せてあげるね」


                      天変地異 『オーバーターンハイパーソニック』


294 :ステージEX 魔女と魔法使い達の後夜祭 [saga]:2011/11/09(水) 21:38:03.55 ID:NVzYNTEF0
―――――――――――――――――――――――――――――――――――― 13(月) 丑の刻

一方、一時的に戦場から離脱したパチュリーたちは、ゲルトルートの回復魔法などで体力回復に努めていた。

咲夜「!? パチュリー様! ワルプルギスが!」

傷が浅かった為、見張りを買って出ていた咲夜が声を上げ、全員がワルプルギスの方へと振り返る。
振り返った先に見えたのは真下を向き続けていた顔を上げ、身体を起こそうとしているワルプルギスの姿。

パチュリー「逆立ちをし続けていたワルプルギスが起き上がろうとしている? 一体何が……」

エリー「ゲェーッ!? あれは!」

早苗「知ってるのですか!? エリーさん!」

思わず聞き返した早苗にエリーは顔を真っ青にしながら頷く。

エリー「逆立ちしている時のワルプルギスは実力の1/3も出してないの。 ワルプルギスが逆立ちを止めたと言う事は……」

ゲルトルート「手加減抜きの本気モードに入った、って事ね」

神妙な顔をしたゲルトルートの呟きに、早苗の声も思わず上ずる。

早苗「そんな! あれでまだ本気じゃないなんて、どれだけ化け物なんですかあの子は!?」

オクタヴィア「だからあたしが最初に言ったじゃん、半端じゃなく強力だ、って……」

早苗「……………」

オクタヴィアの言葉に今度こそ早苗は黙りこくる。
想像を絶する状況に、とうとう言葉も出なくなってしまったようだ。

そういう意味では長い経験と付き合いがそうさせたのだろう、咲夜やアリスたちは早苗より幾分か落ち着いていた。

咲夜「どっちにしても、今は霊夢に任せる他なさそうね……」

アリス「そうね……、そう言えば魔理沙はどうしたの? 姿が見えないようだけど……」

捜索開始時には確かにいた筈の魔法使いの姿がない事に今更ながらアリスが気がつく。
それだけ余裕がなかった、という事なのだが、そこにこの場で突っ込む野暮な者は居ない。

ゲルトルート「ああ、魔理沙なら出迎えに行って貰ってるわ」

パチュリー「出迎え? 出迎えって誰を迎えに行ったのよ?」

事情を唯一知っていると思われるゲルトルートの答えに、パチュリーが当然の疑問を漏らす。
ゲルトルートは戦場から視線を逸らし、ある方向――冥界の入り口のある方角に目線を送る。

ゲルトルート「あの子、ワルプルギスに唯一対抗しうる私たちの最後の切り札……クリームヒルトよ」


295 : [saga]:2011/11/09(水) 21:40:09.62 ID:NVzYNTEF0
すいません、ちょっとメシと風呂行ってきます。
296 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(東京都) [sage]:2011/11/09(水) 22:08:10.15 ID:Slr8LHTC0
出たー!ワルプルさんの本気モードだー!
ここで逆さまだった立ち絵が正常に戻って「CAUTION!!」ならぬ「DESPAIR...(絶望)」の文字が…という妄想をば
297 : [saga]:2011/11/09(水) 22:57:38.10 ID:NVzYNTEF0
それでは投下再開。たぶんラストまでいける筈です。
298 :ステージEX 魔女と魔法使い達の後夜祭 [saga]:2011/11/09(水) 23:02:37.29 ID:NVzYNTEF0

――――――――――― 【白黒の魔法使い @ 白玉楼】 ――――――――――― 13(月) 丑の刻

魔理沙「なるほどねぇ、どうりで白玉楼と連絡がつかないわけだ」

霊夢たちと別れ一人、白玉楼へと舞い戻ってきた魔理沙は白玉楼の寝殿周囲に展開された檻のような結界を見て納得したように呟いた。

最後の切り札――クリームヒルトを呼び寄せる。
そう言って白玉楼に連絡をとろうとした霊夢だったが、いくら呼び掛けても通じない。
幽々子たちも事情は分かっている筈なのだから、呼び掛けに応じない訳がない。
それでも通じない、と言う事は何らかのアクシデントが発生している可能性が高い。
そう踏んだ霊夢は魔理沙に連絡役兼、クリームヒルトを連れてくるよう頼み、魔理沙もそれを受けて白玉楼に飛んだのだ。

魔理沙「お? あれは……」

今、魔理沙が来ているのは白玉楼の庭。
途中で宴会が切り上げとなった為、飲みかけ酒瓶やら徳利が放置しっぱなしになっているその庭に一つの影が見えた。
箒から飛び降りた魔理沙は、檻の前で座って一人で酒を飲んでいる女性に呼びかける。

魔理沙「こっちは急いでるんだ、そんな所で酒飲んでないでこの檻をどけてくれないか?」

??「あら?バレた?」

魔理沙「バレたもなにも檻の真ん前で一人で酒飲んでりゃ誰だってアンタを疑うと思うぜ」

魔理沙の言葉にそれもそうかと言いつつケラケラと笑う女性。

??「んー、まぁアタシとしちゃこうやって酒飲んでる方が楽だし、いいんだけどねー。
   ちなみにアタシはロベルタ、今居る魔女の中じゃ唯一のオ・ト・ナだ」

魔理沙「随分だらしのない大人だな……。私は霧雨魔理沙、普通の魔法使いだ。
    ちなみに、私としては黙って通してもらっても全く構わないんだぜ」

ロベルタ「でもまぁ一応、あの子に持ちかけたのアタシだし、言いだしっぺが何もしないわけにはいかないよなー」

頭をぽりぽりと掻きながら、腰を上げるロベルタ。
既に酒が回っているのか、その動きは緩慢だ。
299 :ステージEX 魔女と魔法使い達の後夜祭 [saga]:2011/11/09(水) 23:08:12.95 ID:NVzYNTEF0

魔理沙「おいおい、そんなに飲んだ状態で大丈夫か? 一気に酔いが回っても知らんぞ」

ロベルタ「あー、大丈夫大丈夫、アタシもあんたらと同じでケッコー飲み慣れてるし……。 ん〜、そーだなー」

立ち上がってきょろきょろと辺りを見回したロベルタは、酒が注ぎっ放しになった杯を見つけ、ニヤリと口元を吊り上げた。
杯を左手で持ちつつ、ロベルタは魔理沙の方へと向き直る。

ロベルタ「よし、アタシがこいつを持ってるから、これを撃ち落してみせな。 出来たら言う事を聞いてやるよ」

魔理沙「撃ち落す……それだけで良いんだな?」

八卦炉を構え、最後の確認と言わんばかりに尋ねる魔理沙に、ロベルタは頷く。

ロベルタ「ああ、どんな手を使っても構わないぞ。 おねーさんは女には寛容なんだ。 男にゃ容赦しないけどな」

魔理沙「なら、遠慮なく行くぜ!」


                      魔符 『ミルキーウェイ』


まずは小手調べと言わんばかりに魔理沙は小スペルを発動。
箒に飛び乗ると星屑弾幕をばら撒きつつ、ロベルタ目掛け突進する。
が、ロベルタはあっさりとその攻撃を回避した。

ロベルタ「おっと、そのスペルはゲルトルートとの戦いで使ったヤツじゃん。その程度じゃアタシは倒せないよ」

白玉楼の寝殿を檻の結界で覆った後、暇つぶしにと見た昼の弾幕戦を記録した映像を思い出す。
酒を飲みながら見ていたので、スペル名までは覚えていなかったが、確かゲルトルート戦で決め技として使っていたような気がする。

そんな事を思っていると、魔理沙が不敵な笑みを浮かべつつ言う、

魔理沙「残念だが、コイツは昼のヤツより遅い下位互換スペルだ。 さぁて、それじゃ速度を上げさせてもらうぜ!」


                      魔符 『スターダストレヴァリエ』


ロベルタ(っ!? 速い!)

同じような弾幕だが、今度は先の『ミルキーウェイ』に対し、速度が段違いに上がる。
心なしか、その後ろに伸びる星屑の弾幕も量が増えているように見える。
右へ左へと回避するロベルタに対し、魔理沙は執拗に突貫を繰り返す。
300 :ステージEX 魔女と魔法使い達の後夜祭 [saga]:2011/11/09(水) 23:15:01.14 ID:NVzYNTEF0

ロベルタ「まったく、こうもしつこく追ってこられちゃ酒をあおる時間すらない」

魔理沙「ゆっくり酒を飲みたいなら、なんであんな事をしたんだよ?」

アンタとあの魔女が抜け出さなきゃ今頃二次会三次会に突入してた筈だと言う魔理沙にロベルタは小さく笑ってみせる。

ロベルタ「なんで?だと、『その方が面白そうだったから』に決まってるじゃないか」

何を当然のことを、と言わんばかりの態度のロベルタに、魔理沙は攻撃を続行しつつ笑い出した。

魔理沙「こりゃ傑作だな。 そういうシンプルな動機、私は好きだぜ。
    酒も問題なさそうだし、アンタなら幻想郷でも上手くやって行けると思うぜ」

ロベルタ「そりゃどーも」

魔理沙「……で、ホントの理由はなんなんだ?」

笑うのをやめて、魔理沙が表情を引き締める。
今の一言でも十分動機になりうるのだが、これは真の動機ではないと魔理沙は踏んでいた。

魔理沙「確かにアンタが暴れまわるならそれで十分さ、でも実際問題暴れまわってるのはワルプルギスって子供だ。
    これは単なる推察に過ぎないが、この騒ぎはその子の為にやった事、なんじゃないのか?」

ロベルタ「……ちゃらちゃらしてるように見えて、中々鋭いじゃないの。そーだよ、その通りさ」

元々積極的に隠すつもりはなかったのだろう、ロベルタはあっさりと認める。

ロベルタ「魔法使いのお嬢ちゃん、魔女たちが現世から幻想郷(こっち)に来た時に全員にある変化が起こったんだが、なんだか分かるかい?」

魔理沙「いんや、全く見当もつかん。 第一、私は外の世界でのアンタたちがどんなだったか、知らないしな」

ロベルタ「それはな、明確な自意識、いや理性って言った方が良いかな……が戻った事なんだ」

外の世界に居た頃の“魔女”はひたすらに呪いを振り撒く化け物でしかなかった。
結界と言う巣を作り、そこに人をおびき寄せて襲う。そこには欲望と生存本能しかない。

それが幻想郷に来て、変わった。
301 :ステージEX 魔女と魔法使い達の後夜祭 [saga]:2011/11/09(水) 23:21:56.32 ID:NVzYNTEF0

今現在、幻想郷に住み着いている他の妖怪が、外に居た頃は人に仇なす存在ばかりだったのが、
幻想郷に来てからはある程度の秩序(もちろん人間側の譲歩もあるのだが……)を遵守するようになったのと同じで、
魔女にも、人間だった頃の人格と理性が戻ったのだ。

ロベルタ「まぁ、そのせいで救済の魔女は随分と悩んでたようだけどな」

理性の芽生えは言い換えれば、罪の意識の芽生えでもある。
もとより優しく真面目な性格だった事もあって、クリームヒルトは悩み苦しむ事になったのだが、それはまあ措いておく。

ロベルタ「でだ、ここで問題になるのがワルプルギスだ。 あの子が私らの中じゃ一番幼いのは知ってるか?」

魔理沙「ああ、聞いてるぜ……って、成る程な。そういうことか……」

そこまで聞いて魔理沙はロベルタが何を言いたいのか悟った。
既に何度か挙がっている話ではあるが、フランやこいしと同じなのである。

ワルプルギスは見てのとおり、規格外の魔女だ。 当然抱えている穢れも半端なものではない。
が、その穢れを宿している本人の理性は、というと無邪気な子供程度でしかない。

抑圧は本人の知らぬ間に鬱憤となって溜まり、ある時一気に噴出する事になるだろう。
本人は愚か、周囲を巻き込む圧倒的な暴力となって……。

魔理沙「それで、アンタは遊び場を作ってやった訳だ。 最悪な形で鬱憤が爆発する前に……」

ロベルタ「まぁそんなところさ。 ところでお嬢ちゃん、そろそろスペル変えてくれない? いい加減見飽きたんだけど……」

魔理沙「そうだな、こっちも丁度飽きてきた所だ。 次に行かせて貰うぜ!」

答え合わせも終わったので、そろそろお話は終わりにして、弾幕で語り合う事にする。


                      恋符 『ノンディレクショナルレーザー』


箒に乗ったまま、魔理沙は周囲に複数の魔方陣を展開する。
時計回りに周回する魔方陣から細いレーザーが放たれ、一拍の間をあけて反時計回りに周回する魔方陣から太目のレーザーが放たれる。

とは言え、大小あわせて10本に満たないレーザーなので、避けるのは容易だ。
302 :ステージEX 魔女と魔法使い達の後夜祭 [saga]:2011/11/09(水) 23:30:22.13 ID:NVzYNTEF0

ロベルタ「ガラッと手を変えてきたねぇ、でもこの程度じゃ……」

魔理沙「気が早いぜオネーさん。このスペルはここから先が勝負だ!」

レーザーの発射を継続しつつ、魔方陣の中から大小様々な星型の弾幕がばら撒かれる。
それも真っ直ぐな流れではなく、波打ちつつ範囲を広げながら、あたり一面を覆っていく。

ロベルタ「前言撤回だな。 こりゃ少々厄介だ」

魔理沙「そうかい、なら厄介ついでにもういっちょ上乗せだ」

そう言って魔理沙は弾幕を展開しながら、ロベルタの周囲を回り始める。
魔理沙が動くたびに位置関係が変わるので、当然ロベルタも立ち位置を変える必要が出てくる。

魔理沙「酒が入った状態で、ぐるぐる追い回される気分はどうだい?」

ロベルタ「そりゃ良いとは言えないな。 お嬢ちゃんが男なら張っ倒してる所だ」

魔理沙「まあ当然だよな。 ちなみに私だったら女だろうと構わずぶっ飛ばしてるところだぜ」

そう言って八卦炉を撃つ仕草をして見せる魔理沙。

ロベルタ「おー、怖い怖い。 次にお嬢ちゃんとやるときには用心棒を雇った方が良いかもだな」

魔理沙「半端な用心棒じゃ話にならないから強いのを連れて来いよ。オネーさん」

ロベルタ「ご忠告、ありがたく受け取っておくよ」

ロベルタ(さて、どうしたもんかな……)

冗談じみた会話を交わしつつ、ロベルタは魔理沙が懐へと仕舞おうとしている八卦炉を見つめた。
魔理沙が対クリームヒルト戦で見せた、魔力砲撃――『マスタースパーク』をこの試合の決め技として使ってくるのはほぼ間違いないと見ていいだろう。
クリームヒルトの砲撃弾幕である『ティロ・フィナーレ』と互角にやりあったスペルだ。
砲撃戦に特化した魔女か、クリームヒルトやワルプルギスといった規格外組でもない限り、真正面から受けるのは愚策でしかない。
303 :ステージEX 魔女と魔法使い達の後夜祭 [saga]:2011/11/09(水) 23:36:59.48 ID:NVzYNTEF0

ロベルタ(そうなると、打つ手は一つしかないな……)

オクタヴィア辺りなら、何も考えずに向かっていきそうだが、その点ロベルタは大人だといえた。
真正面から受ける気も、もちろんくらうつもりも一切ない。
その時がきたのなら、逃げるだけだ。 逃げて、直後に出来た隙を狙い反撃する。

ロベルタ(お嬢ちゃんからすれば大技だ。 隙が出来ないわけがない、そこで一気に接近して決めてやろう)

魔理沙「ふーむ、コイツもダメだったか……んじゃ、次だな」

ロベルタの考えが大方まとまったところで、魔理沙はスペルを解除する。
魔理沙が懐に右手を突っ込むのを見て、ロベルタは確信する。

ロベルタ(来るな……来たら予定通り、避けるだけだ)

魔理沙「行くぜオネーさん、これが私の弾幕の真骨頂、パワー第一主義の十八番だぜ! 恋符、マスタースパーク……」

ロベルタ(今だ!)

ロベルタは魔理沙が、特大のレーザー弾幕を撃つ直前の“タメ”に入ると同時に身を翻した。
どんなに特大なレーザーが来ようと、このタイミングで動けば確実に回避が出来るからだ。

魔理沙「!?」

ロベルタが先刻まで居た場所を強烈な光がすり抜けていくが、これは見事なまでに空振りとなった。
右手に構えた道具から放たれたレーザーが収束し、魔理沙の周囲ががら空きになる。

ロベルタ「よしっ! 貰った!」

まさしく、想定した通りだった。 後は隙だらけの魔理沙に反撃を加えて、この弾幕戦を終わらせるだけ!
そう、ロベルタは思っていたのだが……

魔理沙「惜しかったなぁ、オネーさん……(ニヤッ」

魔理沙に一撃加えるべく、突貫してきたロベルタに魔理沙は、それまで箒を掴んでいた左腕を向ける。
その手の中に見えたのは八角形の魔法道具――すなわち、八卦炉!
304 :ステージEX 魔女と魔法使い達の後夜祭 [saga]:2011/11/09(水) 23:42:13.32 ID:NVzYNTEF0

ロベルタ「なっ!? 何でそれがココに!? それは今右手に持っていた筈だ……」

言いかけて、魔理沙の右手を凝視したロベルタは自身の犯した過ちに気が付く。
魔理沙の右手に握られていたのは、八角形の八卦炉ではなく、円筒形の懐中電灯だったのだ。

ロベルタ「っ!?」

魔理沙「気付いたようだな。だがもう遅いぜ!」


                      恋符 『マスタースパーク』


最早、手は残されていなかった。
回避しようにも魔理沙が居るのは目と鼻の先で、いまからレーザーの圏外に出ることは不可能だ。
一気に決めようと接近したのが完全に裏目に出た形だ。

ロベルタ(こりゃ、やられたな……、全治3日、いや一週間ぐらいか?)

自らの負けを悟り、ロベルタは戦いが終わった後のことをぼんやりと考える。
迫り来る圧倒的なエネルギーからして、無事で済む訳がない。
諦めにも似た心境のロベルタに光の奔流が迫り……、その手に持った“杯”だけを撃ち抜いて後方へすり抜けていく。

ロベルタ「!?」

魔理沙「……最初の約束通り、杯だけを撃ち抜かせて貰ったぜ。さぁ、結界を解いてもらおうか」

一瞬呆気にとられたような顔をしたロベルタだったが、次の瞬間自嘲染みた笑みを浮かべる。

ロベルタ「私の負けだよ。 それにしてもさっきの懐中電灯はなんなんだい?」

魔理沙「さっきのアレか? アレはな、恋符『マスタースパークのような懐中電灯』って言う、宴会芸のようなスペルさ。
    人のスペル宣言は最後まで聞いといた方がいいぜ。 私みたいにフェイクを仕掛ける性悪女が居るからな!」

そう言ってやけにいい笑顔で言う魔理沙にロベルタは苦笑しつつ愚痴の様な呟きをもらす。

ロベルタ「ホント、お嬢ちゃんが男だったら張り倒してるところだよ」


305 :ステージEX 魔女と魔法使い達の後夜祭 [saga]:2011/11/09(水) 23:45:47.16 ID:NVzYNTEF0
―――――――――― 【博麗の巫女と特大災害級幼女】 ―――――――――――― 13(月) 寅の刻


                      絶望 『濁りゆく少女の魂』


その弾幕は量り知れないほどの穢れに満ちていた。
その量は人ならば破滅するだろうし、妖精ならば一回休みどころか堕ちてしまうだろう。
妖怪だって、下手な下級妖怪はもちろん中級ぐらいまでなら、確実に傀儡にされてしまうに違いない。

そんな穢れの中を飛び続けている霊夢を見て、オクタヴィアが感嘆の声を上げる。

オクタヴィア「すご、あの中を一発の被弾もなく飛び続けるなんて……」

あの巫女も化け物なんじゃないの? と呟くオクタヴィアの横で、早苗が眉をしかめる。

早苗「おかしいです。いつもの霊夢さんらしくありません」

オクタヴィア「えっ?」

咲夜「そうね、いつもの霊夢ならあんな安全牌を切る様な避け方はしないわ。もっとギリギリの所を攻めていく筈よ」

そう今の霊夢は回避優先で、積極的に攻撃を仕掛ける素振りが全くないのだ。
ギリギリの所を見極めて、弾幕の合間を縫うように飛び抜け、手痛い一撃を加える。
そんな戦術を多様する彼女にしては珍しい事だ。

アリス「たぶんだけど、霊夢の事だから勘でグレイズは危険と判断したんじゃないかしら?
    離れた場所で見ている私たちにも分かるほどの穢れを纏っている弾幕よ。 近寄るだけで危ない可能性はあるわ」

パチュリー「いくら博麗の巫女とは言え、人間である以上危険なのは変わりない、という事ね」

アリスに続けたパチュリーの言葉に早苗が頷く。

早苗「確かに二人の言うとおりかも知れません。本気を出していなかった時の穢れでさえ、かなり危険なモノでしたから」

今思えば良くあんな事が出来たな、と早苗は自分自身でも思う。
切羽詰っていたとは言え、一歩間違えば本当に破滅していたかもしれないのだ。
少なくとも本気の穢れをこうして冷静に推し量れる様になった今、二度と同じ事をする気はない。

エリー「それで? これからどうするの私たちは……このまま見てる?」

ゲルトルート「私としては、回復が終わったのなら加勢するつもりだったのだけど……」

言いかけて、ゲルトルートは霊夢とワルプルギスを相互に見る。
本気を出す前がまるでお遊戯か何かだったと思えるほど、レベルの高い戦いが二人の間で繰り広げられていた。
あの中に今から飛び込んだ所で、何が出来るのか、正直怪しいところだった。
306 :ステージEX 魔女と魔法使い達の後夜祭 [saga]:2011/11/09(水) 23:50:28.33 ID:NVzYNTEF0
皆が沈黙する中、最初に動いたのはオクタヴィアだった。

オクタヴィア「……私は行くよ」

全員「「「「!?」」」」

全員の視線が集中する中、オクタヴィアはけらけらと笑ってみせる。

オクタヴィア「大丈夫だって、あたしも一応魔女だし、穢れへの耐性はあるし……、
      流石にあの戦いについていける自信はないけど、盾代わりぐらいなら出来るでしょ」

アリス「ちょっ、また貴女はそうやって無茶を……」

早苗「…………そうですね。時間稼ぎと踏み台代わりぐらいなら出来るかもしれません」

アリス「さ、早苗まで……! 貴女たち、さっきので懲りたんじゃないの!?」

思わず声を荒くするアリスに、二人は茶化すような口調で言う。

オク&早苗「「だってあたし(私)、ホントにバカなんだもん(ですから)……」」

「やって、痛い目見ないと分からないんだ(です)」とまで、言ってのけた二人にアリスは頭を抱えながら盛大なため息をつく。
そして嫌悪感に満ちた視線を二人に浴びせ、もう一度ため息を漏らした。

アリス「貴女たちと一緒にいるとこっちにまでバカがうつる気が…いいえ、気がするじゃなくてホントにうつるわ」

オク&早苗「「えっ……?」」

ポカンとするオクタヴィアたちに対し、アリスは自律人形を召喚する事で答えとする。

アリス「なにボサっとしてるの? 加勢するなら早く行くわよ」

一言残し、アリスは飛び立つ。
そんなアリスの姿を見たオクタヴィアと早苗は一瞬顔を見合わせ、頷きあうとアリスの後を追って飛び出す。

エリー「うわーなんと言うツンデレ、本物は初めて見たかも……」

パチュリー「本人の前で絶対言っちゃダメよ。切り刻まれるから……。さて、それじゃあ、私たちも行くとしましょうか」

咲夜「私は問題ありませんが……パチュリー様は大丈夫なんですか?」

同じ紅魔館に住むものとしてパチュリーの事は良く分かっている咲夜が念を押した。
昼からの動きを考慮に入れずとも、そろそろ体力の限界が近いはずだ。

パチュリー「ここで逃げて紅魔館に更に被害が出たらレミィに怒られるわ。 だったらさっさと片付けてしまった方が楽よ」

そう言ってチラリと紅魔館の庭を見やるパチュリー。
遠目に見ても、庭園の木々や垣根が相当崩壊しているのが分かった。
ゲルトルートに庭の整備を頼んであるそうだが、復旧させるだけでも骨が折れそうだ。
幸か不幸か、肝心のゲルトルートはその事に全く気付いていないのだが、まあ仕方がない。

パチュリー「それじゃ行くわよ、もう一度あのお祭りの中にね」

307 :ステージEX 魔女と魔法使い達の後夜祭 [saga]:2011/11/09(水) 23:57:03.30 ID:NVzYNTEF0
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

霊夢「っ!」

霊夢がパチュリーたちの参戦に気付いたのは、ワルプルギスに多数の方向からの攻撃が殺到した直後の事だった。
火球にナイフ、自爆人形に御札、薔薇に車輪というありとあらゆる種類の弾幕がワルプルギスに直撃し、彼女を煙で覆う。

周囲に視線だけを送り、状況を把握した霊夢は手近なところに居た早苗に対し、怒鳴りつける。

霊夢「アンタたち、一体何しに来たのよ!」

早苗「安心してください、邪魔をするつもりは一切ありません。私たちの事は砲台か何かだと思って忘れてください!」

霊夢「ぐっ、アンタたちねぇ……」

早苗の言葉に霊夢は唇を噛み締めた。 それは最初から気にせず切り捨てろ、と言う意思表示。
『他が犠牲になっても誰か一人が生き残ればいい』が、ワルプルギス攻略の鍵だと分かっている霊夢だが、
いざこうしてその場に立たされるとその決意も揺らぐ。

ワルプルギス「キャハハ、ソロもいいけどやっぱり舞台は大人数でやってこそだよね。 お祭りなんだからそう来なくっちゃ!」

対するワルプルギスは純粋に喜んでいた。
自分が不利になるとかそういった事は一切考えていない。迷っている暇はなかった。

霊夢「最悪骨も拾わないし、後ろから撃たれるような事があったら本気で消し炭にするわよ!」

早苗「消し炭になる前に逃げるので構いません!」

後ろからそんな早苗の声が聞こえてきたが、霊夢には届かない。
このとき既に霊夢は早苗達の存在を意識の外に追いやっていた。

ワルプルギスを見据え、弾幕の弾道を見極める。
六方向からの攻撃にワルプルギスの弾幕は先刻と比べると散発的になっている。
霊夢ではなく、うしろの“砲台”を代わる代わる狙っているからだ。

狙われた“砲台”は圧倒的な弾幕に襲われるが、それより一瞬早く現れた防壁が、その弾幕を弾き、減衰させる。
黒いツインテールをなびかせて、六つの“砲台”を守る“防壁”を視界の隅に映しつつ、霊夢は弾幕の中を潜り抜ける。

御札を取り出し呪を込める。
呪が宿った御札は赤々と燃え上がり、術式が即時発動状態になった事を示す。

何度目かになる“砲台”への攻撃で霊夢の眼前ががら空きになった瞬間、霊夢はスペルを解き放つ。

霊夢「霊符、夢想ふう……!?」

スペルの宣言をしようとして、霊夢は気が付いた。気付いてしまった。
こちらをがら空きにしていた筈のワルプルギスが、こっちを見てニヤリと笑っていた事に。
308 :ステージEX 魔女と魔法使い達の後夜祭 [saga]:2011/11/10(木) 00:07:55.01 ID:es1RGKCu0

ワルプルギス「キャハハハ、引っかかった〜」

霊夢「ヤバっ……」

気付いた時には遅かった。
霊夢のスペル発動より早く、ワルプルギスの左手からこれまで以上に濃い穢れを帯びた弾幕が霊夢目掛けて放たれていた。
その穢れは、手にしている御札で取り除けるほど、甘いものではない。

全員「「「「霊夢(さん)っ!!」」」」

悲鳴にも似た声が周囲から響くが、霊夢に取れる行動はない。
今からスペルを放って無駄にあがくか、このままなす術もなくやられるか、その二択だった。

少なくとも“霊夢”がとり得た行動は……


??「霊夢! ちょっと息止めてろよ!」

そんな声と共に襟首が後ろに思いっきり引っ張られ、次の瞬間、霊夢の身体は急降下していた。
ギリギリの所を弾幕が掠めて行くが、霊夢に当たる弾はない。

忠告があったとは言え、瞬間的に首を絞められた形となった霊夢は咳き込みながら文句をこぼす。

霊夢「げほっ、アンタねぇ、ちょっとは加減ってモノを考えなさいよね!」

恨みがましい視線を向けてくる霊夢に、白黒の服を纏った魔法使い――霧雨魔理沙はにやりと笑う。

魔理沙「愚痴が言えるなら大丈夫だな。 おーい、こっちに箒を持ってきてくれ〜」

??「は、は〜い、今行きま……うわっとと!?」

霊夢の襟首を掴んだまま、自由落下を続ける魔理沙の言葉に、覚束ない飛び方で箒に乗ったピンク髪の少女――クリームヒルトが答える。
一度は大きくバランスを崩したクリームヒルトだが、どうにか持ち直すと両手を広げてバランスを保ちながら二人のもとへと飛んでくる。

魔理沙「よーし、いい具合に乗れてるし、似合ってるぞ。 なんなら今度箒の乗り方をレクチャーしてやってもいいぜ」

クリームヒルト「あはは、気持ちだけ受け取っておくね……」

魔理沙に箒の操縦を返しつつ、クリームヒルトは胸をなでおろす。
箒の操縦を任せていた時間は30秒とないはずだが、如何せん慣れていなかったせいか相当神経を使ったようだ。
一方、ようやく襟首を解放された霊夢は息を整えつつ、クリームヒルトに尋ねる。

霊夢「で、ここに来たって事はアンタの方は大丈夫な訳?」
309 :ステージEX 魔女と魔法使い達の後夜祭 [saga]:2011/11/10(木) 00:14:47.43 ID:es1RGKCu0

クリームヒルト「はい、おかげさまで、お酒飲んで思いっきり泣いたらスッキリしました。もう大丈夫です」

そう言ってニコリと笑ってみせるクリームヒルト。
その表情は作り笑顔やぎこちないモノではなく、自然な笑顔だ。

魔理沙「ま、悩みなんてのは酒飲んで寝ちゃえば大抵スッキリするもんよ。なぁ霊夢」

霊夢「年がら年中悩みのタネがそばに居る場合はその限りじゃないけどね。 さて、それよりも……」

気を取り直して、霊夢はワルプルギスに向き直る。
魔理沙も箒の後ろにクリームヒルトを乗せたまま、ワルプルギスの前へと向かう。

魔理沙が割り込んで無理矢理回避させた弾幕が最後だったようで、先ほどまでのスペルは解除されていた。
そして変化はそれだけではなかった。

ワルプルギス「………………」

ワルプルギスは彼女にしては珍しく、無言で魔理沙を……いや、その後ろに居たクリームヒルトを見つめていた。
その瞳に宿るのは不安と明確な恐れだ。 
このまま黙っているだけで猛獣に襲われた小鹿のように震えだすのでは、と思うほど、ワルプルギスは縮こまっていた。
おそらく、現世で人間だった頃のクリームヒルトに一撃で倒されたという時の恐怖が蘇ったのだろう。
そこに先ほどまで圧倒的な力を振りかざし、笑い続けていた少女の姿はない。

クリームヒルト「………………」

乗っていた箒から降りたクリームヒルトはワルプルギスの前に立つと、その手を伸ばす。

ワルプルギス「……っ!あっ…………いやぁっ……!」

ワルプルギスの身体がビクリと震え、目を強く瞑る。
クリームヒルトが伸ばした手はワルプルギスの頭に優しく触れると、その頭を撫でた。

ワルプルギス「っ!」

クリームヒルト「ティヒヒヒ、怖がらせちゃったかな? ゴメンね」

そう言って優しく微笑んでみせるクリームヒルト。
強張っていたワルプルギスの表情がふっと緩み、身体の震えが止まる。
310 :ステージEX 魔女と魔法使い達の後夜祭 [saga]:2011/11/10(木) 00:20:18.75 ID:es1RGKCu0

クリームヒルト「ワルプルギスちゃんは、遊びたかったんだよね? 思いっきり相手をして欲しかっただけなんでしょ?」

優しい口調で尋ねるクリームヒルトにワルプルギスは小さく頷く。

クリームヒルト「そっか、それならお姉ちゃんと、私と一緒に遊ぼう?」

ワルプルギス「!?」

クリームヒルトの意外な提案にワルプルギスは目を丸くする。
意外すぎる展開に魔理沙以外の全員も目を丸くする。

魔理沙が一人でニヤニヤしていると、魔理沙に一番近いところに居た霊夢が小声で尋ねてくる。

霊夢「ちょっと魔理沙、一体どういうことなのよ?」

魔理沙「まぁ、そのなんだ、あの圧倒的な弾幕も、とんでもない穢れも、あの子からすると遊ぶ為の手段でしかなかった、って事さ」

早苗「なんですかソレ、尺度の違いってレベルを超えてますよ」

一気に疲れちゃいました。といつの間にか集まっていた早苗がもらすと、
ぐったりと言う形容がぴったりなパチュリーが呆れ気味に呟く。

パチュリー「その辺も含めて、子供だった、と言う事なんじゃないの?」

咲夜「これは……妹様以上の大物かもしれませんね」

咲夜の言葉に幻想郷在住の全員が乾いた笑いを漏らす。
それに対して、首をかしげているのは魔女三人組だ。

オクタヴィア「前から気になってたんだけど、その妹様ってどんな子なのよ?」

ゲルトルート「あっ、それは私も気になるわ。こんどそっちで働くわけだし……」

エリー「ゲルトルート、覚悟だけは決めといたほうがいいと思うよ。話を聞いただけでも相当だし……」

エリーがゲルトルートの肩をポンポンと優しく叩き、ゲルトルートは顔を青くする。
『ご愁傷様』と言うムードが漂い、空気が緩みきったその時、クリームヒルトたちの方を見ていたアリスが強張った声を上げる。

アリス「ところで、みんなちょっといいかしら?」

魔理沙「ん? どうしたんだ? アリス、そんな怖い顔をしちまって……」
311 :ステージEX 魔女と魔法使い達の後夜祭 [saga]:2011/11/10(木) 00:22:46.72 ID:es1RGKCu0

アリス「私の記憶が間違いでなければ、クリームヒルトは“一緒に遊ぼう”ってあの子に言ったのよね?」

霊夢「そうだけど、それがどうし…………って、ああっ!?」

アリスの言葉にその場に居た全員がはっとした。
今のワルプルギスにとっての遊びは即ち先ほどまでの弾幕戦だ。

それをクリームヒルトは「一緒にやろう」とワルプルギスに持ちかけたのである。

早苗「アハハハ、幻想郷最後の日ってこんなあっさり訪れるものなんですね」

パチュリー「まだ読んでない本がたくさんあったのに……死んでも死にきれないとはまさにこの事ね」

エリー「うわーっ!? パチュリーたちが壊れたー!?」

オクタヴィア「帰ってこーい! 二人とも帰って来ーい!!」


下界にいる全員がそんな阿鼻叫喚の大混乱に包まれているとは露知らず、
上空で対峙したクリームヒルトとワルプルギスはお互いに満面の笑みでスペルを発動させる。

クリームヒルト「それじゃ、行くよ!」

ワルプルギス「いつでもいいよ!お姉ちゃん!」


                      輝弓 『フィニトラ・フレティア』
                       終焉 『ワルプルギスの夜』



その日の夜明け、嵐が止んだ紅魔館で、跡形もなく吹き飛んだ時計台を見て、お口をあんぐりと開けたお嬢様が一人居たそうだが、
詳しく書くと怒られそうなのでこの辺で筆を擱くことにしよう。

312 :ステージEX 魔女と魔法使い達の後夜祭 [saga]:2011/11/10(木) 00:27:07.98 ID:es1RGKCu0
――――――――――――――――――――――――――――――――――――

最後に簡単にだが、その後の“魔女”たちについて少しだけ記そう。


薔薇の魔女、ゲルトルートと、芸術家の魔女、イザベルは紅魔館に住み着いている。
あの『ワルプルギスの夜祭』事件で大きな被害を被った紅魔館だが、二人以外の魔女も再建に協力し、
今は当初の予定通り庭の整備と、肖像画の作成をしているそうだ。


紅魔館と言えば、住んでこそは居ないが地下大図書館でエリーの姿を良く見かける。
最近は魔理沙以上に訪れる回数が多いとかで、紅魔館に顔パスで入れる数少ない存在となっている。
司書の小悪魔曰く、仕える相手が二人に増えたので大変です。との事だが、
笑ってそう話している辺り、関係は極めて良好なようだ。


委員長の魔女、パトリシアと、舞台装置の魔女、ワルプルギスは寺子屋に行くことになった。
パトリシアは講師である上白沢慧音の補佐として、ワルプルギスは生徒として、それぞれ通っている。
たまにワルプルギスが発作のように“遊び”たがるのでその度にクリームヒルトや白蓮を呼ぶ騒ぎになっているそうだが、
あの夜以降、決定的な大爆発には至らずに済んでいる。最近では寺子屋からの大音響にもだいぶ慣れてきた。


お菓子の魔女、シャルロッテは魔法の森に住んでいる。
自身の魔法で作ったお菓子で家を構えた時には、早苗に「ヘンゼルとグレーテル?」と突っ込まれたそうだ。
秋神の社で見かける回数も多く、豊穣神の穣子は生傷(主に歯形)が絶えないが、
それでも満更ではない様で、なんだかんだと言っては芋などを分け与えている。


影の魔女、エルザマリアは人里近くに教会を作った。
命蓮寺の近くであり、信仰合戦に新たな一角が加わったと鴉天狗の間ではもっぱらの噂である。
実際の所は、命蓮寺、守矢神社共に関係は良好で(信者数が少ないからと言う噂もあるが)、
毎日、信者と向き合って祈りを捧げているとの事だ。
313 :ステージEX 魔女と魔法使い達の後夜祭 [saga]:2011/11/10(木) 00:33:20.75 ID:es1RGKCu0

鳥かごの魔女、ロベルタは最近までハッキリしていなかったが、
どうやら鬼たちに紛れてあちこちで酒宴をしているらしい。
飲みっぷりも良いので鬼からの評判も良く、地下の旧都の星熊勇儀宅で見かけたとの目撃談も


人魚の魔女、オクタヴィアと、銀の魔女、ギーゼラは妖怪の山に住んでいる。
ギーゼラは天狗の里近くに一軒家を構え、文と良くつるんでいる。
同じく山に住む河童にバイクの整備をしばしば頼んでおり、ついでに改造される事も一度や二度ではないとか。

一方のオクタヴィアは渓谷近くに住んでいる。
人間だった頃からのクリームヒルトとの親交は続いていて、人里でも良く見かける。
早苗と一緒に居る事も多く、人里の他、守矢神社に居る事も多いらしい。


救済の魔女、クリームヒルトだが、冥界からほど近い、再思の道近くに家を構えた。
オクタヴィア共々人里にもちょくちょく顔を出し、里の人からの評判は良い。
異変以降魔女の代表として動く事も多く、皆が集まっての宴会には必ず参加している。
代表者として有力者との折衝も彼女が大半を担っているらしい。
その内、白玉楼を訪ねる回数は最も多く、西行寺幽々子との個人的な親交も続いているようだ。


稗田阿求 記 『幻想郷縁起』 〜魔女異変の章〜 第二部 より
314 :ステージ??? 魔女と死霊の夜桜 [saga]:2011/11/10(木) 00:47:18.22 ID:es1RGKCu0
――――――――――――― 【白玉楼の縁側】 ―――――――――――――――

吹く風に、庭の桜の木々がざわめく。
冥界は万年真夜中状態なので時刻は真昼間だと言うのに気分は夜桜見物だ。

幽々子「残念ねぇ……春だったらクリームヒルトちゃんたちに綺麗な桜を見せることが出来たのに」

私の自慢の一つなんだけどなぁー、と心底残念そうな幽々子を見て、クリームヒルトは苦笑する。

クリームヒルト「ティヒヒヒ、それじゃあ来年の春を楽しみにしてますね。
        でも私、こうやって静かにお茶を飲んでいる時間も結構好きですよ。落ち着きますし……」

クリームヒルトがそう呟きつつ湯飲みを縁側に置くと、幽々子はそっとその手に触れる。

幽々子「それで生活の方はどう? だいぶ落ち着いたかしら?」

クリームヒルト「そうですね。人里にもだいぶ馴染めましたし、基本的に皆さん優しいですから……」

幽々子「あら、それはちょっと違うわ。
    貴女たちが馴染めたのは、貴女たちの方から積極的に混じろうと努力した結果よ。
    壁を作っている人を受け入れてくれるほどここの住人は甘くないわ。 と言っても油断出来る相手ばかりでもないんだけどね」

「有力妖怪は特に曲者揃いよ」と言う幽々子の言葉にクリームヒルトは乾いた笑いを漏らす。
レミリアや輝夜、神奈子と言った有力者と顔を合わせる機会の多いクリームヒルトは身をもって良く知っていたからだ。

幽々子「私も他人の事を言える立場じゃないけどね……。 でもねクリームヒルトちゃん……」

クリームヒルト「?」

幽々子「ここにきた時は、心からゆっくりしていって良いからね。 クリームヒルトちゃんならいつでも大歓迎よ」

幽々子の言葉に、クリームヒルトは幽々子を見た。
幽々子はこの庭で霊夢たちと弾幕戦をした時と同じ、いや、それ以上の優しい笑顔を向けていた。
だからクリームヒルトもこれ以上無いという笑顔で答える。

クリームヒルト「幽々子さん……はい、ありがとうございます!」

そう言って笑い合う二人。
二人の笑い声は、風に乗り、白玉楼の庭に響き渡っていた。



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

そんなこんなで新たな仲間が加わった幻想郷、しかしそれで何かが大きく変わったわけではない。
あれほどの大騒ぎも、終わってしまえば井戸端会議のネタでしかなく、一度溶け込んでしまえば魔女も一住人となってしまう訳で……
今日も今日とて幻想郷は賑やかで平和だった。


315 : [saga]:2011/11/10(木) 01:07:12.68 ID:es1RGKCu0
と、言うわけでエクストラステージ終了ーっ! ようやく11人全員出し切ったぞー!
出せなかった外伝魔女とかの皆様はごめんなさい。もう限界です。

『東方円鹿目』本編の約6割、ワルプルさん、もといワルプルちゃんだけででも本編の半分相当とか何事ですかこれは?
まぁ、何はともあれ、これで晴れて魔女の皆さんも楽しい幻想郷ライフの仲間入りな訳で、
自分で書いておきながら良かったと胸をなでおろしている所存です。

対ワルプルちゃん戦ですが、基本『スルガムイデンティデム』やら『オーエン』やら『ハルトマン』やらを聞きながら、
それぞれのキャラの見せ場的な反撃を見せる時に限りキャラBGMが入る、なんて事を想定して、書いてました。
具体的には『the Grimoire of Alice』(非想天則版)とか、『信仰は儚き人間の為に』とか、『恋色マスタースパーク』とか、

テンションがおかしかったらその所為です。エクストラで霊夢よりも魔理沙が活躍してるのもその所為です。
霊夢さんは本編ラスト2話で活躍したから、良いよね? あっ、お願いだからその陰陽玉仕舞って下さい。 orz

エクストラのMVPはやっぱりエリーさんかなぁ、この子居なかったら話進まなかった気がします。いやマジで

一応ここで終われるように完全に区切っちゃいましたけど、暫らく充電かなー。
ネタが出てくればいいんだけど……

それでは、長々とお付き合い、ありがとうございました。

以上、やっぱりスレタイを活用していない>>1でした。
316 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/10(木) 01:17:37.75 ID:0YOQKkYDO
EX完結、本当にありがとうございます。バトル終盤の展開は熱かったですね!

ロベルタさんの密かな優しさを伝えるシーンと、ワルプルギスちゃんを宥めるシーンでは、とても…とても感動しました。

皆、幸せそうで…良かった。心から、そう思えます。
317 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(東京都) [sage]:2011/11/10(木) 01:24:47.11 ID:yXiHwuDp0
スペカが出る度に思わず叫びそうになってしまった…ワルプルちゃん半端ないぜ…

ともあれ乙まみ!いいもの読ませてもらったぜ…これでやっと寝れる
またいつか>>1がSSを書いてくれることを楽しみにしてるよ!
318 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(滋賀県) [sage]:2011/11/10(木) 01:26:07.36 ID:KhJif6szo
Phでは神様がひょっこり遊びにくるパターンですねわかります
319 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [ [sage]]:2011/11/10(木) 06:50:41.92 ID:X2jvwDfV0
紫さまはドコいった。
320 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/10(木) 09:33:30.47 ID:36fKKACDO
>>1

べ、別にアフター的な小話なんて、期待してなんかないんだからね!
321 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/11(金) 05:29:17.22 ID:EhehitqSO
これは神霊廟より前の話ということにしてしまえば…
322 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/11(金) 07:16:50.49 ID:EVvhnsqDO
>>321
>>13の注意書きを見なされ、このSSはもとより神霊廟より前だ
つまりこの幻想郷では一面ボスとしてゆゆ様とクリームちゃんが出てくるのか……無理ゲーってレベルじゃねーぞ!
323 : [saga]:2011/11/12(土) 18:21:10.18 ID:hUfGJ5rB0
小ネタと言うか楽屋ネタ投下。
今回の小ネタは東方に付き物のアレです。
324 :ミュージックルーム BGMについて考える [saga]:2011/11/12(土) 18:30:59.33 ID:hUfGJ5rB0
――――――――――― 【まどマギ楽屋にて】 ―――――――――――――

さやか「まどかだけズルイ!」 ←オクタヴィア役

まどか「え、えっと……、なんの話かな、さやかちゃん?」 ←クリームヒルト役

さやか「まど……じゃない、クリームヒルトの最終ステージだけBGM指定されてるじゃん!
    しかも神曲と名高いラスボス曲を2曲も! あたしもBGM欲しい!」

まどか「そんな事私に言われても……、それに別にゲーム化する訳じゃないんだからBGMなんかなくても……」

さやか「するかもしれないでしょ!? どっかの酔狂で親切な人が弾幕風で作ってくれるかもじゃん!
    それに、あるとないならあった方が良いに決まってるじゃない! まどかは既に決まってるからそんな事が言えるんでしょ!?」

まどか「うっ……」

マミ「あら、面白そうな話をしてるわね」 ←某掲示板のねらー役、その3

ほむら「そう? 単なる暇潰しにしかならなさそうだけど……」 ←某(ry その1

マミ「それは貴女の場合、『フラワリングナイト(緋想天.ver)』辺りで決定してるからでしょ?」

参考:『フラワリングナイト(緋想天.ver)』
http://www.youtube.com/watch?v=P8av8KV6rpk&feature=related


ほむら「巴マミ……、貴女、私の時間停止能力だけで決めたでしょ……」

まどか「あー、でもそんな感じかも……」

さやか「まどかお嬢様に忠誠を誓う従者……、うん、確かに……」

まどか「ただし忠誠は鼻から出る」
325 :ミュージックルーム BGMについて考える [saga sage]:2011/11/12(土) 18:33:42.02 ID:hUfGJ5rB0

ほむら「なっ!? まどかまでそんな事を……!? くぅっ……、ならまどか、貴女に良いことを教えてあげる。
    作中でBGMになった『幽雅に咲かせ、墨染の桜 〜 Border of Life』と『ボーダーオブライフ』だけど、あれはあくまでもクリームヒルトのイメージ曲だそうよ」

参考:『幽雅に咲かせ、墨染の桜 〜 Border of Life』
http://www.youtube.com/watch?v=Nl9V6IpDSGE&feature=related

参考『ボーダーオブライフ』
http://www.youtube.com/watch?v=raEtiuLFABk&feature=related


さやか「ん? するとつまり……?」

マミ「鹿目さんのイメージ曲はまた別にある、と言う事かしら?」

まどか「えっ? そうなの!?」

さやか「ちなみにその曲は?」

ほむら「まどかの>>1のイメージは『千年幻想郷 〜 History of the Moon』だそうよ。 ちなみにまど神になると『感情の摩天楼 〜 Cosmic Mind』よ」

参考:『千年幻想郷 〜 History of the Moon』
http://www.youtube.com/watch?v=P5VwW1D10LU&feature=related

参考:『感情の摩天楼 〜 Cosmic Mind』
http://www.youtube.com/watch?v=34byKHkLBTU&feature=related


さやか「また6ボスかーい! どんだけインフレさせれば気が済むの!?」

ほむら「美樹さやか、安心しなさい、>>1の作中でのオクタヴィア/美樹さやかのBGMはEX曲の『ラストリモート』らしいから」

参考:『ラストリモート』
http://www.youtube.com/watch?v=TWtti2nLCI4&feature=related


さやか「暗っ!? しかも道中曲!? と言うかそれ絶対対戦相手が早苗さん、って言うのが影響してるよね!?」
326 :ミュージックルーム BGMについて考える [saga sage]:2011/11/12(土) 18:36:04.35 ID:hUfGJ5rB0

ほむら「第二候補は『信仰は儚き人間の為に』、第三候補は『少女が見た日本の元風景』だけどどうする?」

参考:『信仰は儚き人間の為に』
http://www.youtube.com/watch?v=tpfU45IC-TM

参考:『少女が見た日本の元風景』
http://www.youtube.com/watch?v=6kLMvNxUrnI


さやか「やっぱり早苗さんの曲じゃん!(ガーン」

ほむら「それだけ東風谷早苗のイメージと被ってるって事よ」 

まどか「やったねさやかちゃん! 次回作でエクストラで中ボスを経験したら、次々回作では自機になれるよ!」

さやか「私が自機……? それは良いかも……」

ほむら「ボソッ)まどマギ本編のオクタヴィアのイメージ曲、だと『緑眼のジェラシー』一択らしいけどね」

参考:『緑眼のジェラシー』
http://www.youtube.com/watch?v=ZBrH0RX5g7g&feature=related


まどか「ボソッ)なんだろう、納得でき過ぎて涙が……」

さやか「ん? 何か言った?」

まどか「うぅん、何も言ってないよ」

マミ「暁美さん、私のイメージ曲についてはなに聞いてないかしら?」

ほむら「巴マミは『the Grimoire of Alice(非想天即.ver)』と聞いているわ」

参考:『the Grimoire of Alice(非想天即.ver)』
http://www.youtube.com/watch?v=YtKlHCluIFQ&feature=related


さやか「これまたラスボス曲(元だけど)、だと……?」

まどか「アリスさんの人形捌きとマミさんのマスケット銃捌き、確かにどっちもカッコイイし綺麗だし、イメージ的には合うかも……」

マミ「もう、鹿目さん! 褒めてもケーキとお茶ぐらいしか出ないわよ!」

まどか「わーい!」
327 :ミュージックルーム BGMについて考える [saga sage]:2011/11/12(土) 18:39:06.36 ID:hUfGJ5rB0

さやか「……うん、もうこの際だから聞いちゃえ! ほむら、杏子のイメージ曲はなんなのさ?」

マミ「美樹さん! そういうことはせめて佐倉さんが来てから……」

さやか「まーまー、硬い事言わずに……。ねえほむら、知ってるんでしょ?」

ほむら「…………杏子はね。 『月まで届け、不死の煙』よ」

参考:『月まで届け、不死の煙』
http://www.youtube.com/watch?v=M9tpxshJN10&feature=related


さやか「げぇ、まさしく本物のEX曲!?」

まどか「あー、でもなんだろう、なんか納得かも……」

マミ「そうね。境遇とか考えるとちょっと……」


杏子「おーい、今来たぞー! って、なんだよお前ら、みんなしてそんな顔でこっち見て……」 ←某(ry その2役

まどか「頑張って生きてね杏子ちゃん、私応援してるからね!(ガシッ」 ←肩を掴んだ。

マミ「つらくなったらいつでも私たちを頼っていいのよ(ギュッ」 ←手を握った。

杏子「お、おう……ありがと……、なあほむら、こいつら一体どうしたんだ?」

ほむら「気にしたら負けよ。 だから早めに忘れなさい」


――――――――――――――――――――――――――――――――――――

まどか「えっと、ここまでで挙げたイメージ曲はあくまで>>1の個人的イメージだそうです」

ほむら「こっちの方が似合ってるぞ! と言う意見ならいつでも受け付けているわ」

まどか「受け付けてどうするの?」

ほむら「さぁ? 私たちが幻想入り、とかのネタになった時のイメージ作り用じゃないかしら?」

さやか「え? ほむらたちも幻想入りしちゃうの? 円環入りじゃなくて?」

ほむら「モブと楽屋でしか出番がない、って結構つらいのよ」

マミ&杏子「「…………」」

さやか「あー、うん、ゴメン……」

328 : [saga sage]:2011/11/12(土) 18:41:59.74 ID:hUfGJ5rB0
簡単ですが、以上で小ネタ終了
ほむほむとマミマミとあんあんを書きたかったんです。ハイ

本編で出せれば(と言うか書ければ)良いなぁ〜
329 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(不明なsoftbank) [sage]:2011/11/12(土) 19:23:30.68 ID:/9dSJ5f80
杏子と妹紅で竹林ホームレス生活・・・

いや、なんでもない
330 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/12(土) 19:29:01.07 ID:mymkDLBDO
>>1さんなら、書こうと思えば書けるじゃないですか〜。
331 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(東京都) [sage]:2011/11/12(土) 21:23:15.40 ID:msjs2nrw0
ほむほむとマミさんとあんこちゃんを幻想入りさせて!さぁ叶えてよキュゥべえ!

各キャラのテーマ曲を東方風アレンジしたものが自然と聴こえてくる俺はもう何も怖くない
クリームちゃんはコネクトで、シャルちゃんはウェーナーリーストリガース(魔女戦のテーマ)とか…と妄想してみる
332 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/14(月) 19:22:01.69 ID:VQU2x0fDO
ウェーナーリー…えなり?
333 : [saga]:2011/11/16(水) 17:57:55.98 ID:k7S6jM3x0
短編の時間だぞー(謎
アフター見たいな小話2つ他を投下します。
334 :短編1 穣子様に叱られるけど [saga]:2011/11/16(水) 18:06:17.14 ID:k7S6jM3x0

みなさんこんにちは、季節神の秋静葉です。
最近、妹の穣子ちゃんに可愛らしいお友達が出来ました。
今日はちょっとだけ、その話をしようと思います。

??「おーい! 穣子、いるー?」

穣子「!」

蝉の声が響く社に、聞きなれたものとなった声が響いたのはお昼過ぎの事。
うだるような暑さの中、板の間でだらしなくぐてーっと寝転がっていた穣子ちゃんだけど、その声を聞いてがばっと起き上がる。

静葉「穣子ちゃん、お客さんよ」

穣子「……ないって言って」

静葉「?」

穣子「居ないって言って、お願い!」

手を合わせてそう懇願してくる穣子ちゃんに、わざと盛大なため息をついてみせつつ、私は玄関へと向かう。
戸を開けた先にいたのは、可愛らしい桃色の髪の女の子――シャルロッテちゃん。

お菓子の魔女、と名乗っているだけのことはあって、この子が来ると甘い匂いがする。
美味しそうなその匂いを今日も鼻先に感じつつ、私は微笑みかける。

静葉「いらっしゃい、シャルロッテちゃん」

シャルロッテ「あっ、静葉! おはよー」

静葉「はい、おはよう。 でも今はおはようじゃなくてこんにちはの時間よ」

シャルロッテ「え? そうなの?」

大方、自宅でお菓子作りに没頭していたのでしょうね。
だいぶ時間間隔のずれた挨拶にそんな事を思っていると、シャルロッテちゃんが尋ねてくる。

シャルロッテ「ねぇ静葉、穣子は居る?」

静葉「……………」
335 :短編1 穣子様に叱られるけど [saga]:2011/11/16(水) 18:11:29.97 ID:k7S6jM3x0

私はちらと社の奥を見やる。
奥の方から、「居ないと言って」と言うような、なんとも言えないオーラが漂ってきているのを感じつつ、私はシャルロッテちゃんに言う。

静葉「ええ、居るわよ。上がって頂戴」

穣子『〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!! 静姉ぇええええええええええええええええ!!』

わざと、ハッキリとした口調で私がシャルロッテちゃんを招き入れると、穣子ちゃんの恨みがましい声が響く。

シャルロッテ「穣子ーっ! お願いがあるんだけどー!」

てとてとと廊下を駆けていくシャルロッテちゃんの後をゆっくりと追いながら、私は板の間へと向かう。
途中、ふと思いついて台所に立ち寄った私は、水の張った桶に浸けておいた西瓜を切り、お皿に盛り付ける。

塩と一緒にお皿を持ち、板の間に戻ると、シャルロッテちゃんが穣子ちゃんにひっついておねだりをしている真っ最中だった。

シャルロッテ「ねぇ穣子、葡萄とリンゴ出してよぉ〜。今度の新作お菓子で使いたいの〜」

穣子「葡萄とリンゴ、って無茶言わないで! 梨もまだだって言うのに……」

シャルロッテ「無茶って、葡萄ならいつもここにあるじゃん!」

穣子「それはあくまで飾り代わりよ!」

端から見ると戯れているようにしか見えない。 いや実際戯れているだけか……
ただでさえ暑い昼下がりにひっつかれているのに、振り解こうとしていないのが何よりの証拠だ。

静葉「ふふ、穣子ちゃんったら……」

相変わらず素直じゃないんだから……。
小さく苦笑しつつ、私は戯れる二人の脇に腰を下ろす。

静葉「二人とも、西瓜を切ったから食べましょう?」



ふっと、風が吹き、風鈴のかすかな音が響く。
暑い日差しの中でも良く分かる涼風に、少しずつ近づく次の季節を感じつつ、私は戯れる二人の様子を飽きることなく見続けていた。


336 :短編2 とある魔女ら紅茶時間(ティータイム) [saga]:2011/11/16(水) 18:24:37.33 ID:k7S6jM3x0

えっと、皆様はじめまして、私、紅魔館地下図書館で司書などをしております小悪魔と申します。
最近の紅魔館について、僭越ながら私から話させて頂きます。

??「こぁ〜、珈琲持ってきてー」

??「こらこら、その子はウチの司書であって、貴女の召使じゃないわよ。 小悪魔、私には紅茶ね」

たった今、私に飲み物をご所望なさったのは、図書館の主であり、私が仕えているパチュリー様と、
最近よく図書館に出入りなさっている幻想郷生活一年目の新人さんであるエリーさん。

6月の異変で打ち解けた、とかでここの所毎日のように二人は図書館で駄弁ってます。
まぁ、パチュリー様は図書館の蔵書に、エリーさんは持ち込んだ箱に、それぞれ向き合っているので、
二人で何かをしている、と言う訳ではないのですけど……

小悪魔「分かりました。 少々お待ちくださいね」

本を整理する手を止めて、私は図書館を後にする。
地下大図書館の本は防水防火その他の処理を施したものばかりなのですが、
飲食物の取り扱いに関しては最低限のものを、とされているのでお茶の一つにしても食堂まで取りに行かなくてはならない。

地階から一階に出ると、夏の強い日差しに照らされた庭園が窓の外に見えます。
件の異変で、目茶目茶に壊された庭園は、今やすっかり元通り、いえ、それ以上に綺麗に整備されています。

その庭園の中、植物の合間を右へ左へと移動する麦藁帽子を見つけ、私は思わず苦笑い。
最近、紅魔館専属庭師とさえ称されるようになった薔薇の魔女、ゲルトルートさんは、今日も整備に余念がないようです。

小悪魔「ゲルトルートさん、今日も頑張ってますね〜。 ん〜、ゲルトルートさんにもお茶を持って行こうかな?」

どうせこれからお茶を淹れるのだ。
ゲルトルートさんと、美鈴さん、二人分ぐらい余計に淹れても時間的に大差はない筈です。

今は昼間で、レミリアお嬢様は眠っているし、咲夜さんや、肖像画が仕上げに入りつつあると言うイザベルさんは部屋で休んでいる時間。
誰かお客人でも来ない限り、これ以上、人が増える事はない。

食堂へと入り、まずはお湯を沸かします。
その間に茶葉とコーヒー豆を用意して居た私は、戸棚にお菓子の魔女さんから貰ったフルーツケーキがある事を思い出す。
あんまり置いておいても悪くなってしまうので、お茶と一緒に出す事にします。

季節はずれの果物がふんだんに使ってあるケーキを切り分けて居ると、
何処でこんな果物が手に入るのだろう?と言う素朴な疑問がわいて来ます。
多分、魔女ですから自らの魔法で作ったのでしょうけど、それはそれで便利そうです。

茶葉と豆とケーキの準備が終わったところで、丁度お湯が沸きました。
私は二人分のお茶だけ先に淹れてしまうと、残りのお湯を魔法瓶に入れそれら全てを手押し車に載せて食堂を後にします。

まずは表の庭園へと向かい、やっぱり作業を続けているゲルトルートさんに呼びかけます。
337 :短編2 とある魔女らの紅茶時間(ティータイム) [saga >>336タイトルミスった、こっちが正規です。]:2011/11/16(水) 18:26:59.36 ID:k7S6jM3x0

小悪魔「ゲルトルートさ〜ん、お茶が入りましたよ〜」

ゲルトルート「あら、ありがとう。丁度喉が乾いたな、と思ってたのよ」

小悪魔「相変わらず精が出ますね〜」

ゲルトルート「これが私の仕事だし、何よりこうしているのが一番楽しいから……」

そう言って微笑むゲルトルートさんは本当に楽しげで、つられて私も微笑んでしまいました。
手押し車に載せておいた小さなお盆にケーキと美鈴さんの分のお茶を載せて、ゲルトルートさんに託し、私は図書館へと戻ります。

図書館へと戻ると、やっぱり本と箱に向かったままのパチュリー様とエリーさんが居ました。

パチュリー「遅かったわね。何かしてたの?」

小悪魔「すいません、デザートに、とケーキを用意してたら遅くなってしまいました。 今淹れますね」

エリー「えっ? ケーキもあるの? やった、ラッキー」

パチュリー「あら、これはシャルロッテがウチに、と持ってきたケーキよ。 貴女の分はないわ」

エリー「…………ぐすん」

突き放すようなパチュリー様の言葉に、しゅんとなってしまったエリーさん。
そんなエリーさんの前に、私は淹れたてのコーヒーとケーキのお皿を置きます。

小悪魔「パチュリー様、お戯れが過ぎますよ。 大丈夫ですよエリーさん、きちんとエリーさんの分もありますから……」

エリー「〜っ! こぁ〜、……ねぇ、パチュリー、やっぱりこぁお持ち帰りしても……」

パチュリー「ダメに決まってるでしょ」

それぞれ手を止めて、二人仲良くお茶をし始めるパチュリー様たち。
そんなお二人を見ながら私は定位置まで下がろうとして……呼び止められました。

エリー「あれー、何やってるのよこぁ? 一緒にお茶しないの?」

小悪魔「えっ? で、ですが……」

エリーさんの申し出に私が戸惑っていると、パチュリーさまが呆れたような顔をこちらに向けました。

パチュリー「これは命令よ。お茶に付き合いなさい」

小悪魔「……はい、分かりました!」


日没まではあと3時間、私たちはしばしのティータイムを楽しんだのでした。
338 : [saga]:2011/11/16(水) 18:31:32.25 ID:k7S6jM3x0
と言うわけで短編……超短編2編投下。
秋姉妹と小悪魔可愛いよ秋姉妹と小悪魔。
うん、いくら好みとは言え、風神と紅魔が優遇され過ぎだな。(妖々夢もか?)

今回の短編、一番困ったのは投下時に考えているタイトルと言うオチ……orz


さてさて、そしたら後は……って、何だお前はうわなにをす……
339 :>>1キュベーター [saga]:2011/11/16(水) 18:37:55.36 ID:k7S6jM3x0
>>331
それが君の願いだね?
いいだろう、契約は成立だ。君の祈りは、>>1の創作意欲を凌駕した。

さあ、受け取るといい。これが新しい物語の一ページさ
340 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/16(水) 18:42:52.04 ID:9omzjBlDO
うめぇww
341 :新章予告編(予定) [saga]:2011/11/16(水) 18:44:27.34 ID:k7S6jM3x0

    田の稲が、その頭を垂れ始め、ただ暑いだけだった日々に仄かな涼しさが混じり始めた頃の事。

 あれほど幻想郷を騒がせた事件もすっかり話題にならなくなり、彼女らの存在も馴染みのものとなりつつあった。

                  そんな幻想郷に、ある日やってきた少女たち。

           ある者は偶然に迷い込み、またある者は自らの意思でその地を踏んだ。

                    まるで、何かに導かれたかのように……



 「まさか、妖怪に混じって宜しくやってるウチの新人さん達を引き渡せ、とか言いに来た訳ではないのでしょう?」


               「なんでこんなところに……、まどかが写っているの!?」


                「あら? そういう事なら私、良い温泉を知ってるわよ」


           「キュゥべえとも連絡がつかないし……、ここは一体何処なのかしら?」


                「ウソ……、ホントにほむらちゃん、なの…………?」

                         「まど……か……?」



                夏の終わりに起こった、異変とは呼べないちいさな事件。

     幻想郷で生きて行くと決めた魔女・クリームヒルトに訪れた、それは僅かばかりの邂逅の物語。

                   『東方円鹿目』 ファンダズムステージ 改め


                            〜東方焔環神〜

                          201X年1X月 連載開始


予定
342 : [saga]:2011/11/16(水) 18:50:37.62 ID:k7S6jM3x0
さあやっちまったぞ、風呂敷広げちまったぞ、また妄想と物書きの日々がはじまるお!

あーもう、無計画にも程がある!俺ってホントバカ……
神様だけのつもりだったのにどうしてこうなった。

あっ、ちなみに予告編どおり異変じゃないで弾幕戦成分減ります。
と言うかまどが成分が増えそうな悪寒と予感。
ぼちぼち書いていくつもりなので、よろしくお願いします。
343 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/16(水) 19:23:35.52 ID:RVNiUE6DO
次回作予告!?超期待!!
ほむらとまどか(クリーム)とまど神で 焔 環 神 か。タイトル格好良いっすね!

短編の方ではとってもほんわかさせてもらいました。
344 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(東海) [sage]:2011/11/16(水) 19:36:55.73 ID:hqBrO4MAO
新作キター

超期待
345 : [saga]:2011/11/16(水) 20:09:48.88 ID:k7S6jM3x0
ぎゃああああああああ、新章パートかいてて今更ながらきがついたぁぁぁ!!!
>>313のクリームちゃんの住所間違ってるぅぅぅ
再思の道とか思いっきり寂れてる場所に家作るわけねーだろ!中有の道だよ、俺のバカ! マジ大バカ!

取り乱しました、以下訂正です。

>>313

鳥かごの魔女、ロベルタは最近までハッキリしていなかったが、
どうやら鬼たちに紛れてあちこちで酒宴をしているらしい。
飲みっぷりも良いので鬼からの評判も良く、地下の旧都の星熊勇儀宅で見かけたとの目撃談も


人魚の魔女、オクタヴィアと、銀の魔女、ギーゼラは妖怪の山に住んでいる。
ギーゼラは天狗の里近くに一軒家を構え、文と良くつるんでいる。
同じく山に住む河童にバイクの整備をしばしば頼んでおり、ついでに改造される事も一度や二度ではないとか。

一方のオクタヴィアは渓谷近くに住んでいる。
人間だった頃からのクリームヒルトとの親交は続いていて、人里でも良く見かける。
早苗と一緒に居る事も多く、人里の他、守矢神社に居る事も多いらしい。


救済の魔女、クリームヒルトだが、冥界からほど近い、中有の道近くに家を構えた。
オクタヴィア共々人里にもちょくちょく顔を出し、里の人からの評判は良い。
異変以降魔女の代表として動く事も多く、皆が集まっての宴会には必ず参加している。
代表者として有力者との折衝も彼女が大半を担っているらしい。
その内、白玉楼を訪ねる回数は最も多く、西行寺幽々子との個人的な親交も続いているようだ。


稗田阿求 記 『幻想郷縁起』 〜魔女異変の章〜 第二部 より
346 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(東京都) [sage]:2011/11/17(木) 23:13:57.84 ID:NB6NTCtq0
QYK(急に予告が来たので)嬉しさあまって魔女の皆さんのオリジナルテーマを考えてみた。

ゲルトルート:ロージーパフューム〜不信の苑
シャルロッテ:スイーツドリーム〜Sick in Bed
パトリシア:無法教室〜Where is the Chairwoman?/エンジョイスチューデントライフ
キルシュテン(エリー):電脳トラウマ籠城〜Digital Phantasm
イザベラ:違和感の多い展覧会〜So Many Fakes
ギーゼラ:爆苦騒鬱幻走狂
オクタヴィア:邁進する犠牲への聖挽歌〜lamentabile ed scherzando
エルザマリア:一念専修の影法衣
クリームヒルト:繋げ合わせし因果と縁〜Connected Paralleis
ロベルタ:酔いどれ魔女の大トラ籠
ワルプルギスの夜:楽しき愉しきサバト

委員長が二つあるのは異変前後で彼女が大きく変わったため。
異論は大いに認める。自分でもこれむしろスペカとか二つ名とかステージ名じゃね?って思うのあるし。
ただ、オクタヴィアはConturbatio(Decretum)の、クリームヒルトはコネクトの、ワルプルギスはSurgam identidemの東方アレンジと言うのは譲れない。









スペカ案にあったのは覚えてたけど、ロベルタ姐さんで「空飛ぶ呑んべぇのロベルタ」が真っ先に頭をよぎったのは公然の秘密……
あ、ちょっと待って姐さん踏みつけないで酒瓶で殴らないで痛い痛い。
「流石にねーよ」って話だから、「スペカに無くてもそれやっちゃおしまいよ」ってことだから。勘弁してください。
347 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(東京都) [sage]:2011/11/17(木) 23:38:55.42 ID:NB6NTCtq0
あ、誤字が……

クリームヒルト:繋げ合わせし因果と縁〜Connected Parallels

ね。
348 : [saga]:2011/11/18(金) 21:15:19.64 ID:+k6gOFpQ0
皆様こんばんはモチベ維持とケツに火を付けに参りました。
新章に移りたいと思います。 それでは新章の注意点を以下に


☢Caution!!☢☢Caution!!☢ ☢Caution!!☢

東方×まどマギ
幻想入りモノ
キャラ崩壊アリ、独自解釈もあり。と言うか大有り
シリアスだったり、ネタに走ったりします。

クリームちゃんとオクタちゃんを除く魔女の方の出番は減ります、多分(←ココ重要!)

以上をご了承下さい。
☢Caution!!☢☢Caution!!☢ ☢Caution!!☢

>>343
実は『円環神』だったのが、『円』の字だけ読みが同じ『焔』に変えただけと言う
349 :東方焔環神 [saga]:2011/11/18(金) 21:23:12.76 ID:+k6gOFpQ0
――――――――― 【円環の神様】 @ 現世とあの世界の境目 ―――――――――

闇なのか光なのか良く分からない空間を少女は飛びぬける。
ちょっと抵抗感があったが、概念となった今の自分に不可能はない。
少女はささやかな抵抗を試みる障壁――結界をすり抜けて、さらに飛ぶ。

???「こんな場所があったんだねー」

長い桃色の髪と、純白の衣をなびかせつつ、少女――鹿目まどかは呟いた。

それは初めて見る光景だった。 人の身を越え、概念となったまどかは今までありとあらゆる世界を見てきた。
太古の昔も見たし、想像も出来ないような未来だって見て来た。
どの世界のいつの時代に行ってもやる事は同じだったのだけど……。

それは“魔法少女”の救済。
穢れや絶望が溜まり、周囲に呪いを振り撒く“魔女”と化す前に安らかな“死”へと導く、せめてもの救い。
そうやって全世界から“魔女”の存在を消して回るのが今のまどかの役目であり、存在意義だった。

消した存在の中には“魔女”になってしまった平行世界の自分や友人らも含まれている。
自らの手で自分自身や友人を消す事になる訳だが、それも何万回何億回と繰り返してくると単純作業になってしまった。
感覚が麻痺していた、と言ってもいい。

そんな日々を送っていたまどかがある日偶然、本当に偶然にも見つけたのが、この“世界”だった。
いや、“世界”と言う表現は正しくないかも知れない。
この“場所”が存在するのはまどかたちが普段飛び回っている“世界”の一角であり、先ほどすり抜けた結界を一枚隔てただけなのだから。

それだけなのに、まどかはあの日まで、この“場所”の存在を感知できなかった。
おそらく、アレが無ければまどかは一生、この“場所”の存在に気付かなかっただろう。

まどか「それにしても驚いたなぁ……“魔女”が普通に暮らしてるし、その上“妖怪”もそこに住んでるなんて……」

それはまさしく驚愕と言ってもよかった。
所構わず、ただ呪いを振り撒く存在、それがまどかにとっての“魔女”だった。
時と場合によっては世界を一つ滅ぼしかねない程凶悪なモノ、そんな認識でしか無かったのだ。

それがあの“場所”に流れ着いた“魔女”たちは違った。
まるで“魔女”になる前の様に、しっかりとした意識と考えを持ち、それに何より自身が犯した罪と向き合う。
その姿はまどかの良く知る“魔女”の姿とはかけ離れていた。

“魔女”とは直接関係ないこととは言え、その“場所”に多数の“妖怪”がその地域の人々らと共存していると言う事も驚きだった。
“魔法少女”や“魔女”と言った存在が居る以上、“妖怪”の存在を否定するつもりはないが、はいそうですか、と受け入れられるものでもない。

そんな訳も含めてまどかは久々に、本当に久々に、単純作業ではない旅に出たのであった。
350 :東方焔環神 [saga]:2011/11/18(金) 21:35:51.63 ID:+k6gOFpQ0

まどか「そろそろ結界を抜けるかなー」

現世とその“場所”を隔てる空間の終わり近くで、まどかが一人呟いた、その時の事だった。

???「あら? かわいいお客さんね。 はじめまして、でいいかしら?」

まどか「!?」

突然の呼びかけに、まどかは思わず立ち止まった。
自身が普段居るあの世界なら兎も角、現世の一角であるここで、他者から自分の姿が見える訳がない。
なぜならまどかは……

???「“概念”の貴女が何故見えるのか? そう言いたいんでしょう?」

声のしたほうを振り向くと、ピンク色の洋傘を持った女性が一人、こっちを見ていた。
何が起こっても対応出来るよう、警戒しつつまどかが頷くと、女性は苦笑してみせる。

???「そんなに怖がらなくてもいいのに……。まぁ、仕方ないでしょうけど……」

???「まず、貴女の疑問に答えるわ。 何故私が貴女を見れるのか、それは貴女が今潜り抜けてきた壁が、『常識と非常識』の境目だからよ」

そう言って、女性はまどかの後ろにある障壁、結界を指差した。
耳慣れない言葉にまどかは思わず聞き返す。

まどか「常識と、非常識の境目……?」

???「そう、その壁を越えたが最後、外の世界での常識は通用しないわ。
     普通の人には見えない存在も見えてしまうし、呪いしか生まない存在とも普通にコミュニケーションが出来てしまう、
     そんな非常識の世界に貴女は来たの」

「こうでもしないと私たちも生きていけないのよ」とサラッととんでもない事を言いつつ、それでも女性は笑みを崩さない。
底が知れない相手、と言うのはまさしく彼女の様な人(?)の事を言うのだろう。

???「そして一応、私はその世界の元締めをやっているの。 ああ、言い忘れてたわ、私は八雲紫、境界を操る妖怪よ」

そう言って紫は閉じた洋傘の先をこちらに向ける。
促されている。そう受け取ったまどかは、遅ればせながら名乗る事にする。
351 :東方焔環神 [saga]:2011/11/18(金) 21:40:24.90 ID:+k6gOFpQ0

まどか「私は鹿目まどか。 “魔法少女”を救済して、“魔女”と言う呪いを生まない為の概念だよ」

紫「そう、まどか、ね……。 それで? 貴女は一体なにをしにここに来たのかしら?
  まさか、妖怪に混じって宜しくやってるウチの新人さん達を引き渡せ、とか言いに来た訳ではないのでしょう?」

そう言って紫はすっと目を細める。
口元は微笑んだままだが、明らかに警戒されているのが分かる。

まどか「てぃひひ、本当ならそうしないとなんだけど、ここだけは例外だよ。
    私の概念も、ここだとよく発揮出来ないし、なによりここの“私”たちは過去ともちゃんと向き合って生きてるし……」

それは本当だった。
ここに“魔女”が住み着いて居る事を突き止めたのはこの世界の時間換算で二ヶ月前のことであり、今日まで放置していたのだ。
それはこの“場所”で起こった一連の“事件”を見て、この“場所”の“魔女”については消す必要はないと判断したからだ。

更に言うと紫の言うように『常識』の通じない、『非常識』の世界に来てしまった為だろう、
概念という一種の常識であるまどかの力は現世と比べるとぐっと弱くなっていた。

紫「なら良いわ……、もしそのつもりであったのなら、詳しくお話しする必要があると思ってたけど……杞憂だったようね……」

「短期間でここまで馴染んでしまった勢力を消されると、パワーバランスの調整が面倒になるのよねぇ」とボヤく紫。
受け持つ世界も違えば範囲も違うが、同じ統べる存在としてその気持ちは良く分かるので、まどかは思わず苦笑する。

まどか「てぃひひ、管理役って大変だよね……」

紫「それで? 貴女の用件は?」

紫に促され、まどかは表情を引き締めた。
そう、ここに来たのは“魔女”たちの救済でもなければ、物見遊山でもない。
もっと重要で、なお且つ大切な、“友人”を探しにここに来たのだ。

まどか「……最近、と言うかここ二・三日の間に、幻想郷に入ってしまった人間、っていませんか?」

紫「ここ二・三日? ……居るわね、それも三人」

まどか「やっぱり……」
352 :東方焔環神 [saga]:2011/11/18(金) 21:47:04.09 ID:+k6gOFpQ0

三人、と言う言葉を聞いてまどかは確信する。
全世界を見渡せる概念となったまどかでさえ、見通す事が出来ないこの“場所”にあの三人が、
あの時を境に感知出来なくなってしまったあの三人が、ここに来ている事を……

紫「成る程ね、納得したわ。 そういう事なら貴女の好きにして頂戴」

まどか「それで、今その三人は何処に?」

まどかが尋ねると紫は首を横に振った。

紫「流石にそこまでは分からないわ。 私に分かるのは博麗大結界をすり抜けた者が貴女を含めて四人居ること、それだけよ」

まどか「紫さんはその三人には会ってないんですか?」

紫「ええ、会ってないわ、人間の幻想入り、なんて日常茶飯事だもの。
  貴女のような高位の存在が押し掛けてきたら流石に動かざるを得ないけどねぇ」

「私もそんなに暇人じゃないの」と言いつつ紫は持っていた傘を差す。
その顔に浮かぶ表情は相変わらず、妖しく、胡散臭い笑み。

紫「なんなら貴女の人探しを手伝わせても良いわよ。 土地勘のない神さま一人に探させるのも酷だと思うし……」

まどか「てぃひひ、なら、お言葉に甘えさせてもらおうかな」

そう答えつつ、まどかは紫の真意を図る。
手伝いと言うのは方便で、実際は好き勝手やらせないための監視役代わりだろう。
仮にも一つの世界を統べる存在なら、その程度の警戒はあって然りだ。
まどか自身、円環に他者が紛れ込んだ場合、同じことをすると思う。

兎に角、探して見付ける事が出来れば良いのだ。
“その時”を迎えた訳でもないのに、忽然と姿を消してしまったあの三人を……

こうして、円環の理こと、鹿目まどかはこの“場所”、幻想郷へと降り立ったのであった。


353 :東方焔環神 [saga]:2011/11/18(金) 21:57:03.19 ID:+k6gOFpQ0
――――――――――――― 【三日前@白玉楼】 ―――――――――――――――

牽制の小弾幕を放ちつつ、距離をとる。
想定通り弾幕回避の為、蒼と白の巫女服――早苗さんが上空へと上っていったのを確認して私は手に持っていた弓を構える。
構えると同時に魔力の矢を生成。 
チャージ時間を短くする代わりに誘導属性を付与し、直ぐ様放つ。

早苗「っ!?」

距離があった為、早苗さんはギリギリの所で矢をかわす。
が、その時には私は既に二本目の矢――魔力を十分に込めた必殺スペル――の発動準備を整え、早苗さんの背後に回り込んでいた。

早苗「ヤバっ……」

気付いた早苗さんが振り向きつつ御幣を構えるが、もう遅い。
この勝負、勝たせてもらいます!

クリームヒルト「行くよ!」


                      輝弓 『フィニトラ・フレティア』


万を辞してスペル発動。
強力な矢が無防備な早苗さん目掛け勢いよく飛んでいく。
その距離は短く、もはや回避も迎撃も不可能だ。

クリームヒルト「決まりだね!」

早苗「くっ! 私は只では倒れませんよ!」


                      奇跡 『白昼の客星』


私の矢が肩を射抜く直前に早苗さんもスペル発動。
眩いばかりの光が辺りに溢れ、私は思わず目を瞑る。

クリームヒルト「っ!?」

一瞬とは言え視界を失った私に、次の瞬間、御札弾幕が突き刺さる。
354 :東方焔環神 [saga]:2011/11/18(金) 21:58:36.18 ID:+k6gOFpQ0
参考
http://pc.gban.jp/?p=35661.jpg
355 :東方焔環神 [saga]:2011/11/18(金) 22:02:01.28 ID:+k6gOFpQ0

クリームヒルト「きゃあっ!?」

勝ったと思い、気が緩みかけていた所に返ってきた思わぬ反撃に、私は受け身もとれずに墜落した。
背中から墜ちた体勢のまま倒れ伏していると、幽々子さんののんびりとした声が降ってくる。

幽々子「はい、そこまで。 この試合、双方クリティカルヒット判定で引き分けね」

クリームヒルト「〜っ! 痛たたた……」

盛大に打ち付けた背中を擦りつつ私が起き上がると、私の矢(先端は吸盤)を肩に付けたまま降りてきた早苗さんが声をかけてくる。

早苗「大丈夫ですか? クリームヒルトさん?」

クリームヒルト「あ、はい、大丈夫です。 それより今の私の動き、どうでした?」

早苗「うーん、もうノーマルはクリアでいいと思いますよ。 回避もスペルの使い方もだいぶ上手くなりましたし……。
   あっ、でも最後の油断は誉められませんね。 アレがなければくらいボムで引き分け、なんて形にはならないでクリームヒルトさんの完全勝利でしたから」

最後まで気だけは抜かないで下さい。と言うもっともなアドバイスに私は肩を落とす。
何度目かになる、弾幕戦の模擬練習。
日替わりで技を変え、相手を変えやって来て、そこそこ自信もついてきていたけど、初歩的なミスを犯すようでは未熟さを痛感せざるを得ない。

クリームヒルト「はぁ……、やっぱりまだまだ未熟だなぁ……」

早苗「何言ってるんです? 本格的に弾幕戦をやり始めて二ヶ月でこれなら十分凄いですよ!
   私なんかこのレベルに来るだけで半年も掛かったんですからね!」

眉をつり上げた早苗さんが語気を強めて言った言葉に、判定役をお願いしていた幽々子さんも頷く。

幽々子「そうね。十分胸を張ってもいいレベルよ。 はい、これで汗を拭いて」

クリームヒルト「あっ、ありがとうございます。 幽々子さん」

幽々子さんが差し出した手拭いを受け取りつつ私は頭を下げる。
手拭いで、額の汗を拭いていると、隣の剣道場から大音響が響き、間もなく対照的な表情をした2つの影が出てくる。

ニヤニヤしながら出てきたのは魔理沙さんで、悔しそうに表情を歪めていたのはオクタヴィアちゃんだ。
あちらは完全に勝敗が決したみたい。

幽々子「そっちも決着がついたようね。 勝ったのは白黒の魔法使いのようだけど……」
356 :東方焔環神 [saga]:2011/11/18(金) 22:04:49.39 ID:+k6gOFpQ0

オクタヴィア「嵌められた……、あんなのってアリなの?(ブツブツ」

魔理沙「まぁ、良いセンまでは行ってたんだけどな。 ブラフに引っ掛かるようじゃまだまだだぜ」

呪詛でも吐きかねないオクタヴィアちゃんに対し、魔理沙さんはけらけらと笑いながら言う。
一体どんな試合をしたのか気になるけど、聞かない方が良さそうだ。

クリームヒルト「お疲れ様、オクタヴィアちゃん」

幽々子さんから受け取ったもう一枚の手拭いを差し出しながら、当たり障りのない言葉をかける。

オクタヴィア「ああ、ありがと、クリームヒルト。 そっちはどうだったの?」

クリームヒルト「ティヒヒヒ、実は引き分けだったんだ。 最後の最後で気を抜いちゃって……」

苦笑しつつ私が言うと、オクタヴィアちゃんの表情が意地の悪い微笑みに変わる。
右手で私を抱え寄せると、左手で私の頬をぷにぷにと弄りだす。

オクタヴィア「ほー、それはそれは残念だったね〜。 詰めの甘さでやられる様じゃまだまだだぞぉ……」

クリームヒルト「ひゃ、ひゃめてよ、おふたびぃあひゃん」

頬を弄られているせいで、必然的に変な声をあげてしまう私。
戯れる私たちを見て幽々子さんが微笑ましいモノを見る目をこちらに向けてくる。。

幽々子「あらあら、相変わらず二人は仲が良いわねぇ。妬けちゃうわ〜」

早苗「……気心の知れた幼馴染、って良いですよねぇ……。ハァ……」

魔理沙「早苗、目が死んでるぞ……」

ニコニコ顔の幽々子さんの向こうで、早苗さんが遠くを見るような目をしながらため息をつく。
何か気の利いた一言でも、と一瞬思ったけど、オクタヴィアちゃんが頬を弄り続けていたのでやめておく事にする。

オクタヴィア「はぁ〜、それにしても暑いなぁ〜、どこか良い具合に汗を流せる所とかないかなぁ〜」

手拭いで汗を拭いつつ、オクタヴィアちゃんが呟く。
試合で汗をかいたから暑いのは当然だけど、間違いなく私を抱き寄せてるのも大きな要因だと思う。
突っ込みを入れようか入れまいか悩んでいると、幽々子さんが小さく手を叩きながらオクタヴィアちゃんに言う。

幽々子「あら? そういう事なら私、良い温泉を知ってるわよ」

オクタヴィア「え?温泉? 幻想郷に温泉があるの?」

温泉と言う言葉にオクタヴィアちゃんが反応し、私はようやく解放される。

幽々子「ええ、丁度そっちに出かける用事もあったし、ちょっと行ってみましょう」


357 :東方焔環神 [saga]:2011/11/18(金) 22:09:31.56 ID:+k6gOFpQ0
―――――――――――― 【同じ頃@旧地獄・地霊殿】 ――――――――――――

ほむら「う………? ここは?」

意識を取り戻した少女――暁美ほむらが最初に見たのは見馴れない天井だった。

ほむら「?……確か私は魔獣と戦っていて……」

まだはっきりしない頭でおぼろげな記憶をたどる。
巴マミや佐倉杏子らと共に何時も通り魔獣狩りに出て、普段より多い魔獣を相手にして……

ほむら「それで確か、一体の魔獣に後ろから……」

自身で呟いて思い出す。
あの時、不覚にもほむらは致命的とも思える一撃を貰ってしまった覚えがある。

見ると、わき腹の部分の衣装が裂けていて、包帯による処置が顔を覗かせていたが、痛みはさほどでは無い。
ほむらの弱い魔力でも、暫らく回復をかければ簡単に治りそうだ。

ほむら「思ってた以上に大した事が無かったのかしら? それにしてもここは一体……」

起き上がり、辺りを見回す。
寝かされていた部屋は石造りの洋室だ。
床には絨毯が敷かれ、趣向を凝らした鏡台がベッドの脇に鎮座している。

ほむら「洋館のようね。 電気が無いのが気になるけど……」

灯り代わりに置いてある燭台を見つつ、そんな事を呟いていると、背後の戸が開く。

???「おや、目が覚めたのかい? どうだい、気分の方は?」

振り返って、目に入った存在に、ほむらは一瞬目を疑った。
そこに居たのは人ではなく、一匹の黒猫(尻尾がなぜか二本あったが……)だったのだ。

ほむら「…………ネコが喋った?」

呆然とそう呟いてから、似たような存在が居た事を思い出す。
ちょっと前まで憎むべき対象で、今では(多少小憎たらしいとは言え)相棒兼マスコット認定までようやく格上げされた白い生き物――インキュベーターの事を。
思い出してよかったのか、悪かったのか、微妙な気分にほむらが陥っていると、その反応を見た喋る黒猫が、仕舞ったと言うように声を上げる。
358 :東方焔環神 [saga]:2011/11/18(金) 22:13:22.29 ID:+k6gOFpQ0

???「おっ、こりゃ失礼。 姿を変えるのを忘れてた」

ほむら「?……っ!?」

黒猫の言葉に疑問符を浮かべていると、黒猫の体が眩いばかりの光を放ち始める。
光が収まった時、そこには、共に戦った仲間――佐倉杏子を思わせる紅い髪を、三つ編みにした少女が立っていた。

頭には髪の毛と同じ紅いネコ耳が、お尻には黒い二本の尻尾が、ご丁寧にも生えていたが……

ほむら「…………変身魔法?」

たっぷり考えて、ほむらはそう尋ねた。
ほむらの知りうる知識で、この事象を説明するとしたら、それ以外に考え付かない。
が、ネコ耳少女はすぐさまその言葉を否定した。

???「魔法? そりゃ違うね。 あたいは単なる化け猫さ」

ほむら「化け猫……ですって?」

思わず眉を寄せるほむらに、ネコ耳少女は得意げに話を続ける。

???「そうさ、あたいは火車の火焔猫燐。 ここ灼熱地獄跡で怨霊の管理とかをしてる妖怪だよ。
    あたいら火車は人間の亡骸を地獄に運ぶ妖怪なんだけどねぇ、お姉さんはまだ生きてる様だったからここに連れてきたのさ。
    ああ、あたいを呼ぶ時はお燐とでも呼んでくれればいいから」

お燐と名乗るネコ耳少女の言葉を、ほむらは殆ど理解出来なかった。 理解の及ぶ範囲を超えていた、と言った方が正しい。
唯一分かったのは、下手をしたら今頃自分は地獄送りになっていたかも知れない、と言う事だけだ。

ほむら「…………」

お燐「理解できない、って顔だね。 まぁこればっかりは仕方ないけど信じてもらうしかないね。
   そうだ! お姉さん、身体の調子に問題が無ければついて来てもらいたい所があるんだけど、良いかい?」

お燐の提案に、ほむらはしばし思案する。
怪しい事この上ないのだが、なにぶん情報が少な過ぎる。
ここは敢えて虎穴に入るべきかもしれない。
359 :東方焔環神 [saga]:2011/11/18(金) 22:15:39.39 ID:+k6gOFpQ0

ほむら「それは別に構わないけど……、ついて行ったら死んでました。って言うのはナシよ?」

お燐「あ〜、ないない、お姉さんからは確かに不思議な力を感じるけど、そんなに強そうじゃないし……」

ほむら「っ!?」

笑いながら言うお燐の言葉にほむらはピクリと身体を震わせた。
この自称化け猫に、自身が魔法少女である事は教えていない。
拾われた時に持ち物を調べられたかもしれないが、ほむらの正体に迫るようなモノはそもそも持ち歩いていない。
それなのにお燐はほむらが“不思議な力”、即ち魔力を持っていることを見破ったのだ。

言葉を鵜呑みにする訳ではないが、このお燐という少女が、少なくともほむらの理解が及ばない存在であると言う事は認めざるを得ない。

立ち上がり、お燐の後を追おうとすると、お燐がふと立ち止まり、こちらを向いた。

お燐「そう言えば聞きそびれてたんだけど、お姉さんの名前はなんて言うんだい?」

そう尋ねてくるお燐の表情はごく普通で、悪意とかそういったものは感じられない。
訳の分からないこの状況で、敵を作るのもアレなので、ほむらは素直に名乗る事にした。

ほむら「私の名前はほむら、……暁美ほむらよ」

お燐「ほぅ、『焔』ねぇ……。あたいとは同じ焔同士、気が合いそうだねぇ……」

そう言って笑うと、お燐はついて来いと言う様に歩き出した。
ほむらも歩き出したが、まだ笑おうと言う気は起きなかった……。


360 :東方焔環神 [saga]:2011/11/18(金) 22:39:54.20 ID:+k6gOFpQ0
本日はココまで。マミマミとあんあんは次回以降かな?
なお新章ではサブタイはありません。
異変=ステージじゃ無いので、と言うかぶっちゃけ考えるのが面倒くさ(ピチューン

途中にはさんだ参考画像はお遊びです。挿絵代わりとでも思って下さい。
絵心はないし、他に使えそうな手持ちも無いので、挿絵は二度とないでしょうけど……


以下東方的参考BGM(別名>>1の個人的趣味のコーナー)
>>349-352
シンデレラケージ
>>353
信仰は儚き人間の為に
>>355-356
妖々夢
>>357-359
廃獄ララバイ


ではではまた次回〜
361 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(東京都) [sage]:2011/11/18(金) 23:17:34.08 ID:KmqmCnLW0
新編きただと…まど神にほむマミあんまで混じったらみんなで宴会するしかないじゃない!

そういえばロベルタ姉さんは1回もスペカ使ってないんだな
魔翌理沙のアレの影響で 憧憬「ティロフィナーレのようなチーズかまぼこ」 とか使わ…ないか

ともあれ乙、続きが楽しみで夜なのに眠れない…いや夜だから眠れない
362 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/19(土) 02:50:59.92 ID:AwYNpU9DO
まど神様とほむほむキター!これから先も楽しみですっ!
363 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/20(日) 16:25:07.04 ID:Qpl4vacDO
温泉か〜…イイよね。
364 : [saga]:2011/11/20(日) 18:01:44.89 ID:QASY5XbT0
続きを少々投下、その前に誤字訂正版を以下に

>>353

――――――――――――― 【三日前@白玉楼】 ―――――――――――――――

牽制の小弾幕を放ちつつ、距離をとる。
想定通り弾幕回避の為、蒼と白の巫女服――早苗さんが上空へと上っていったのを確認して私は手に持っていた弓を構える。
構えると同時に魔力の矢を生成。 
チャージ時間を短くする代わりに誘導属性を付与し、直ぐ様放つ。

早苗「っ!?」

距離があった為、早苗さんはギリギリの所で矢をかわす。
が、その時には私は既に二本目の矢――魔力を十分に込めた必殺スペル――の発動準備を整え、早苗さんの背後に回り込んでいた。

早苗「ヤバっ……」

気付いた早苗さんが振り向きつつ御幣を構えるが、もう遅い。
この勝負、勝たせてもらいます!

クリームヒルト「行くよ!」


                      輝弓 『フィニトラ・フレティア』


万を持してスペル発動。
強力な矢が無防備な早苗さん目掛け勢いよく飛んでいく。
その距離は短く、もはや回避も迎撃も不可能だ。

クリームヒルト「決まりだね!」

早苗「くっ! 私は只では倒れませんよ!」


                      奇跡 『白昼の客星』


私の矢が肩を射抜く直前に早苗さんもスペル発動。
眩いばかりの光が辺りに溢れ、私は思わず目を瞑る。

クリームヒルト「っ!?」

一瞬とは言え視界を失った私に、次の瞬間、御札弾幕が突き刺さる。
365 :東方焔環神 [saga]:2011/11/20(日) 18:05:05.96 ID:QASY5XbT0
――――――――――――――――――――――――――――――――――――

お燐に案内され、だだっ広い部屋へと通されたほむらがまず取った行動は室内の観察だった。
タイル張りの床に石造りの壁、それにステンドグラスと言う内装はその広さも相まって教会を思わせる。

あからさまに変なものが鎮座しているような事は無かったが、良く見るとステンドグラスが床についていたりする。
奇妙でないようで奇妙、そんな印象を受けた。

その部屋の真ん中に、少女は居た。
薄紫色の髪に空色の服を纏い、胸元に赤い目玉(?)を付けた、小学校高学年ぐらいの女の子。

女の子は自身の目は瞑ったまま、赤い目玉だけをこちらに向ける。

ほむら「?」

???「ようこそ地霊殿へ。私はここの主、古明地さとり。
    貴女は……暁美ほむらさん、ですか……。 良い名前ですね」

ほむら「っ!?」

名乗りもしないうちから名前を当てられ、ほむらは思わず身構えた。
ほむらの一歩後ろに立つ、お燐が教えたのか? などと思っていると、さとりと名乗った少女が補足をしてくる。

さとり「ああ、ごめんなさい、驚かせてしまいましたね。 ちょっとだけ、貴女の頭の中を読ませてもらいました」

ほむら「読ませて……? 貴女、読心術が使えるの?」

ほむらが尋ねると、さとりは瞑っていた瞳を開きつつ頷いた。

さとり「ええ、その通りです。 ですが貴女の考えているような魔法ではありませんよ?
    これは私たち、覚(さとり)妖怪固有の能力です」

ほむら「覚妖怪?」

耳慣れない言葉に、ほむらは鸚鵡返しに呟く。
さっきの化け猫ぐらいならまだ分かるが、生憎ほむらはそっち方面の知識には疎かった。

さとり「簡単に言えば今のように人の心を読んで、相手を驚かす妖怪です。
    考えていることが全て見透かされてしまうので厄介者扱いされてしまいますけどね」

ほむら「…………」

苦笑するさとりに対し、ほむらは黙ってさとりを見つめる。
あからさまに見定める様な視線を送っていたのか、或いはまた心を読んだのか、さとりはため息をつく。
366 :東方焔環神 [saga]:2011/11/20(日) 18:07:11.08 ID:QASY5XbT0

さとり「半信半疑、と言ったところですか……。
    まあ貴女のように不思議な事でも簡単に説明がついてしまう事象に長く触れていた人からすると、
    得体の知れない妖怪の存在を認めるより、よく見知った魔法で片付けてしまいたくなる気持ちは分かります。
    ですが、私は貴女の思うような“魔法少女”ではありませんし、正真正銘、本物の妖怪です。 その点だけは承知して下さい」

ほむら「分かったわ、そういう事にしておいてあげる。
    それで?一体ここはなんなの? 自称妖怪は居るし、人魂はあちこちに浮いているし……あの世かなにかな訳?」

そう言ってから、ついさっきお燐が灼熱地獄跡、とか言って居た事を思い出す。
あの世、と言うのは適当に言った言葉だったのだが、あながち間違いでは無いのかもしれない。

内心、そんな事を考えていると、背後からお燐のやけに明るい声が飛んでくる。

お燐「惜しいね。正確にはあの世じゃなくて、地獄だった場所さ。 言うなれば旧地獄だね」

さとり「お燐の言う通り、ここはかつて地獄でした。
    今は怨霊が少なくなったので、冥界に統廃合され、私たち妖怪の住処になっています」

ほむら「じゃあなに? 私はその妖怪の住処に迷い込んだと、そう言うの?」

ほむらがそう尋ねると、さとりは首を縦に振る。

さとり「その通りです。簡単に言ってしまえば“神隠し”ですね。
    私たちの世界では“幻想入り”と言われていて、人が迷い込む事はしばしばあるのです。
    いきなり旧地獄に迷い込むのは流石に希ですけど……」

ほむら「そんな希少性は出来れば遠慮したかったわ……」

げんなりしつつ、ほむらはぼやく様に言う。
それと同時に、これが夢なら早く覚めて欲しいと心から強く願う。
今ならこの願いで、もう一度インキュベーターと契約してもいいような、そんな気さえしてくる。

そんな事を考えつつ、ほむらはさとりの方を見る。
さとりは自身の目と、赤い目玉の三つの目でじっとほむらを見続けている。
さとりの言う事が本当なら今まさに頭の中を読まれているんだろうな、と思って居ると、さとりは手元の呼び鈴を鳴らした。
ほむらの背後で控えていたお燐がさとりに近づき、さとりはお燐に何か言伝をする。

言伝を受けたお燐は、部屋の奥へ消えて行き、対するさとりはほむらの方に向き直る。

さとり「…………暁美さん、一つ、貴女にお見せしたいものがあるのですが」

ほむら「なに?」

さとり「これです、どうぞ……」

さとりの言葉と共に、戻ってきたお燐が差し出したのは一枚の紙切れだった。
右上に文々丸新聞と言う囲い文字と、2ヶ月近く前の日付があるので新聞なのだろう。
367 :東方焔環神 [saga]:2011/11/20(日) 18:09:10.91 ID:QASY5XbT0

ほむら(新聞、ねぇ……妖怪が読む新聞、それも古新聞なんか見せてどうするつも………っ!? これって!?」

胡散臭いと思いつつ新聞を受け取ったほむらだったが、次の瞬間、見出しとして載っていた写真を見て、思わず声をあげていた。
写真に写って居たのは数人の少女の姿なのだが、その中にほむらがよく見知った、そして絶対にあり得ない姿が写っていたのだ。

ほむら「ウソ……どうして? なんで……?」

さとり「…………」

新聞の見出しに釘付けになったまま肩を震わせるほむら。
そんなほむらをさとりは落ち着いた様子で見守っている。

ほむら「なんでこんなところに……、まどかが写っているの!?」

心拍数が上がり、頭に血が上りつつある事を感じながら、ほむらは顔を上げた。
やはり落ち着いたままのさとりに対し、ほむらは声を震わせながら問う。

ほむら「ちょっ、貴女、この新聞を一体いつ何処で……」

さとり「やはりそうですか……。
    貴女の記憶の中にある名前と、この記事に載っている名前とが違うので、別人かと思いましたが、貴女の反応を見るに間違い無さそうですね」

ほむら「名前……?」

さとりの言葉に、写真から本文へと目を移したほむらは、これ以上ないと言うほど目を見開いた。
説明文にあった名前、それは……


                      “クリームヒルト・グレートヒェン”


ほむら「これは……この名前は……」

一体何度この名前を見たのだろう?
それはほむらの力及ばず、幾多の世界で生まれてしまった大切な人の変わり果てた姿の名前。
姿かたちは大切な人と寸分も違わぬのに、名乗る名は魔女のソレと言う奇妙な状態にほむらの混乱は深まるばかりだ。
368 :東方焔環神 [saga]:2011/11/20(日) 18:11:34.98 ID:QASY5XbT0

完全に固まってしまったほむらに、さとりが語り始める。

さとり「二ヶ月前の事です。 地上にある郷、“幻想郷”に新しい妖怪が現れました。
    彼女らは自らを“魔女”と名乗り、その郷に住み着きました。 その新聞はその時に出された号外です」

ほむら「二ヶ月前に魔女、ですって……?」

その言葉に、ほむらは思い当たる節があった。
ほむらがなんとしても救いたかった存在――鹿目まどかが、自らの存在と引き換えに全世界を救済して消えた、あの日がちょうど二ヶ月前なのだ。

ほむらは新聞の記事を読み進める。
そこに書いてあったのは、“魔女”らが幻想郷にやって来た経緯と、その際に引き起こした事件の顛末。
そして彼女ら魔女が、自らの意思として、この地での永住を希望している旨などがそこに綴られていた。

ほむら「ここに書いてあることは本当なのね?」

さとり「私はまだ会ったことはありませんが、地底の者に彼女らを見た、と言う者はかなり居ます。
    貴女のお友達が、地上に居るのはほぼ間違いないかと……」

写真の少女――まどかが友達であることがいつの間にかさとりに漏れ伝えられていたが、対するほむらはそれどころではなかった。

かつて救えなかった大切な友人が、会うとしたら自分が死ぬその時だと思っていた友人が、この近くに居る。
それだけでほむらの心は大きく揺れ動き、掻き乱された。

さとり「お燐、ほむらさんを連れて地上へ行きなさい」

お燐「えっ? あたいが、ですか?」

さとり「私はこれから会わなくてはならない人が居るの。 私の代わりに、ほむらさんを案内してさし上げなさい」

そんな言葉が、ほむらの耳に届く。
いつの間にか勝手に話が進んでいるのだが、今のほむらにさとりたちの申し出を断る理由も、余裕も、あるわけが無かった。


369 :東方焔環神 [saga]:2011/11/20(日) 18:13:08.55 ID:QASY5XbT0
――――――――――― 【ほぼ同刻@幻想郷・魔法の森】 ―――――――――――

マミ「キュゥべえとも連絡がつかないし……、ここは一体何処なのかしら?」

鬱蒼と生い茂る深い森の中、金髪ドリルロール髪の少女、巴マミは呟いた。
確か気を失う前まで見滝原の街中で、魔獣相手に戦っていた筈だ。
それがどうしてこんな森の中に来てしまったのか、いくら記憶を辿っても答えは出ない。

マミ「確か、暁美さんが最初に不意打ちを受けて、そっちに気を取られた後……ダメね。良く思い出せないわ……」

それは、思い込みと些細なミスから始まった。
戦い慣れていた暁美ほむらが、背後を取られるとはあの時まで思っていなかった。いや決め付けていた、と言う方が正しいか。
更に痛いのは、魔獣の攻撃を受けて、ほむらの身体がその場に崩れ落ちた瞬間、
それを見ていたマミ自身が一瞬の思考停止状態に陥ってしまった事。

それが決定的となった。
一瞬とは言え隙を見せた者が生き残れるほど甘い戦いではなく、マミもまた例外ではなかった。
気付いた時には、相対していた魔獣がその手をこちらに振り下ろしていて……直後、マミの意識は暗転した。

マミ「てっきり死んじゃったかと思ったけど、そんな事もなかったし……」

見下ろした自身の身体はあの時の戦闘で負った小さなかすり傷と服の汚れがあるだけで、大した事はなかった。
あんな一撃をもろにくらっていたのなら、こんな事があるわけがないのだけど……。

よくよく思い返してみると、意識を失う瞬間、痛みとかそういった感覚がなかった様な気がする。
いや、感じる暇もなく、落ちた、と言う可能性の方が、どう見ても高いのだが……。

マミ「まぁいいわ、生きているならそれで十分よ。 それにしても、これからどうしましょうか? ここだと方角も分からないし……」

そう言ってマミは生い茂る木々を見上げた。
木々は高くそびえ立っていて、地上へ差し込む日差しの大半を遮っている。
見上げた空は狭く、太陽がどっちにあるのかも分からない。

マミ「間違いなく見滝原の何処か、ではないわよね……」

あの街にこんな樹海があると言う話は聞いた事がない。
いや、周辺の町を含めたってそんな場所はない。

マミ「とりあえずここにずっといる訳には行かないわね。 森を抜けてみないと……っ!」

そう呟きつつ、マミは一歩踏み出そうして、止める。
背後の茂みが小さくゆれた様な気がしたからだ。

咄嗟にマスケット銃を生成し、そちらに振り向ける。
少々気にしすぎかと思ったが、状況が状況だ。 用心するに越した事はない。
370 :東方焔環神 [saga]:2011/11/20(日) 18:15:55.71 ID:QASY5XbT0

マミ「誰か居るの? 居るなら出てきなさい」

静かに、それでも有無を言わさぬ口調でマミは茂みの方へと呼びかける。
一旦は収まっていた茂みが、再度ガサガサとゆれ、そして現れたのは……

マミ「えっ?」

現れたのはフリルの付いた服を着た小さな西洋人形だった。
あまりにも予想外というか、常識はずれな光景に、マミは思わず間の抜けた声を上げてしまう。

大きさとしては猫ぐらいだろうか?
女の子がおままごと遊びで使う人形より一回り大きい人形は、銃口を向けられプルプルと震えている。

マミ「……えっと、今そこに居たのは貴女なの?」

銃口を人形から外しつつ、それでも警戒だけは解かずにマミは動く人形に問う。
人形は身体を震わせたまま、こくりと小さく頷く。 どうやら喋ると言うことはなさそうだ。

人形と、周囲の森に目線を送りつつ、マミは考える。
この人形は一体なんなのだろう?
勝手に動いているし、喋らないとは言え受け答えが出来るあたり、意思はあるようだ。
オカルト話で良く聞く、呪いの西洋人形とかそういった類のものだろうか?
それにしてはやけにこちらに怯えているのだけど……

キュゥべえの仲間か、はたまた新手の魔獣かと色々思考を巡らせていると、再び茂みがゆれ動く。

マミ「っ!」

陽動か!? そう思い、再びマスケット銃を振り向けるマミ。
だが、それよりも早く、マミの周囲を多数の人形が包囲していた。

マミ「くっ…………!」

目の前のオカルト現象に気を取られ、包囲を許してしまった事にマミの表情が歪む。
と、そこに少女のものと思しき声が割り込んできた。

???「そんな顔しないでくれる? 私はその子を返して欲しいだけなの」

そんな言葉と共に現れたのは、御伽噺の中から出てきたような、人形を思わせる美しさを持った金髪の少女。
その手からは多数の糸が伸びていて、マミの周囲を包囲している人形へと繋がっていた。
371 :東方焔環神 [saga]:2011/11/20(日) 18:17:27.92 ID:QASY5XbT0

マミ「なるほどね。 人形が一人で動くなんてどうもおかしいと思ったら、貴女が操っていたのね?」

???「あら? 別におかしい事なんて何もないわ。 その子に関しては勝手に動くように作ってあるし……」

少女の言葉を聞いて、マミは自分の考えが正しかったと確信した。
この少女はマミと同じ、“魔法少女”だ。 おそらく人形を操るのが、彼女の魔法なのだろう。

???「貴女、名前は?」

マミ「……………巴マミ。見滝原中学の三年生よ」

少女の言葉に、棘はなかったが、こちらは包囲されている身である。
下手な口答えはしない方がいいだろう。

???「巴マミ……ですって?」

マミ「?」

マミの名を聞くなり、訝しむような表情を見せる少女。 心なしか観察されているような気がする。
マミの事を知っているのか、単なる気にしすぎか……。
少なくともこっちには見覚えは愚か、思い当たる記憶はない。
少々気味悪く思っていると、人形による包囲が急に解除された。

マミ「っ!? な、なに? どうして……!」

訳が分からなかった、マミはてっきり、他の魔法少女の縄張りに入ってしまったのだと思っていたのだ。
マミはそんな事はないが、大抵の魔法少女は縄張り意識を強く持っている。
自分のテリトリーに他の魔法少女が入り込もうものなら、すぐさま排除に来る。
今回も、その類だとそう思っていたのだ。 今の今までは……

理解の及ばぬ事態に、マミが戸惑っていると、人形を後ろに下げた少女が言う。

???「ちょっと、不躾過ぎたわね……。 てっきり、あの子が貴女に襲われていると思ってしまったのよ」

と言いつつ苦笑する少女。
先ほどまでの鋭く、刺すような雰囲気はいつの間にか消えていて、マミはすっかり毒気を抜かれてしまう。

マミ「あの、貴女は一体、……」

???「とりあえず立ち話もなんだから、場所を変えましょう。 私の家、すぐそこだから……。
    そうね、名前ぐらいは名乗っておくわ。 私はアリス・マーガトロイド、ここ“魔法の森”に住む“魔法使い”よ」

そう言って、少女――アリスはマミに微笑んで見せたのだった。


372 :東方焔環神 [saga]:2011/11/20(日) 18:20:16.46 ID:QASY5XbT0
――――――――――――――――――――――――――――――――――――

アリス・マーガトロイドと言う少女は聡明な人物であった。
その点において巴マミは幸運だったと言える。
少なくとも霧雨魔理沙や東風谷早苗など直情で動く人間と会っていたなら、彼女の混乱はより酷いものになっていたに違いないのだから。


アリス(巴マミ……ね。
    確かにクリームヒルトやオクタヴィアから聞いた通りの子だわ……。 でも……)

自宅へ案内しつつ、アリスは考える。
クリームヒルトたちの話によると彼女は既に死んだ人間の筈である。
が、目の前に居る巴マミは明らかに幽霊などの類ではなく、生きた人間であった。
気配を見るにクリームヒルトたちの様に、魔女になっていると言う訳でもない。

???「う〜ら〜め〜し〜……ばあーっ! って、ぎゃああああっ!?(ピチューン」

そうなるとクリームヒルト達から聞いた巴マミと、この巴マミは似て非なる存在、と言うことになる。
そもそも、クリームヒルトたちの話を全面的に肯定するのであれば、この世界自体、一度滅んでいる筈である。

???「ルナ! スター! ジェットストリームアタックを仕掛けるわよ!」

???「「了か……いやあああっ!?(ピチューン」」

が、こうして自分達は生きていて、世界が滅んだと言う事実はない。
しかし、クリームヒルトたちの話が全くの絵空事だとは到底思えない。
絵空事と断じる事は、事の大小はあれど、過去に犯した罪と向き合い、悩み、それでも生きて行くことを決めた彼女たちを否定する事だからだ。
とにかくアリスたちの経験と、クリームヒルトたちの経験、両方が現実にあった事だとすると、考えられる可能性は一つしかない。


クリームヒルトらが経験した一度滅んだ世界と、今アリスたちが居る世界は別の世界である。


所謂、平行世界と言うヤツである。
別世界からの幻想入りが可能なのか少々疑問だが、何が起こってもおかしくないのが幻想郷である。
世界の一つや二つ飛び越える事など案外容易いのかもしれない。

アリス(そうなると、この子の処遇が問題ね……)

おそらく今アリスの目の前に居るのは、アリス達と同じ世界、即ち博麗大結界を隔てた外の世界から、純粋に幻想入りしてきた巴マミなのだろう。
とすると、クリームヒルト達から聞いた話をそのまま彼女に聞かせるのは、彼女を混乱させるだけだ。
さて、どう説明したものか……

373 :東方焔環神 [saga]:2011/11/20(日) 18:22:32.26 ID:QASY5XbT0
――――――――――――――――――――――――――――――――――――

巴マミと言う少女も聡明な人物であった。
出合った相手がマミであった事は、アリスにとって幸運だったと言える。
少なくとも行動が先に出やすい佐倉杏子や、疑ってかかる暁美ほむらが相手であったなら、事情の説明だけでも難航していたに違いないのだから。


マミ「…………」

前を歩くアリスの背中と、足元でぷすぷすと煙をあげて伸びている女の子たちを交互に見ながらマミは考える。
先ほどは、アリスを自分たちと同じ、魔法少女だと断じたが、早くもその判断は間違いだったのでは無いか? と思い始めたのである。

理由は足元の女の子をはじめとする死屍累々の山。
皆、突然飛び出してきては、アリス(の人形に)に有無を言わさず撃墜された者たちなのだが、その内訳が異常なのだ。

まず最初に出てきたのは人魂で、数も多くて10体は倒している。
次に出てきたのは、大きな口と舌の付いた和傘を持った女の子で、「うらめしや」とか言っていた様な気がする。
最後が、足元に転がっている女の子で、身の丈は幼稚園児程度なのだが、その背中には半透明の羽が生えている。
そして、これら全員が例外なく、さも当たり前の如く、空を飛んで現れていたのである。

マミ(あの子たち、どう見てもお化けとか妖精よね? いつの間にか夜の墓場にでも迷い込んだのかしら?)

目の前の光景から導き出された答えに、マミは昔見たアニメの主題歌を思い出す。
マミから見ると、今の状況は極めてそっちの歌詞の内容に近い。

少なくとも、アリスが撃墜して回っている存在は、マミが普段戦っている魔獣ではない。
ではないのに、アリスはそれらの存在が、ごくあり触れたモノであるかの如く、動じずに、冷静に対処しているのだ。

マミ(そう言えばアリスさん、私に“魔法少女”じゃなくて“魔法使い”と名乗っていたわね……。
   あの時は言葉の綾、程度にしか考えていなかったけど、もしアリスさんが、“魔法少女”とは違う“魔法使い”であったとするなら、もしかしてここは……)

アリス「ついたわよ」

マミ「!?」

思考の海に沈みかけたマミの意識は、アリスのそんな声に遮られた。
気が付くと、一軒の洋風家屋が目の前に建っていた。

アリス「さ、入って。あんまり大したもてなしは出来ないけど……」

マミ「……し、失礼します」

アリスに促され、マミはアリスの家だと言う建物へ、足を踏み入れた。
アリスから語られる話が、自身の予想したような突拍子もない話ではない事を願いつつ……。


374 :東方焔環神 [saga]:2011/11/20(日) 18:24:23.11 ID:QASY5XbT0
――――――――――― 【同じ頃、幻想郷・迷いの竹林】 ―――――――――――

杏子「じゃあ、何かい? ここはアンタたちみたいな妖怪の住む隠れ里だ、って言うのかい?」

差し出された鰻の串焼きを頬張りつつ、佐倉杏子は目の前の少女――ミスティア・ローレライに尋ねた。

ミスティア「そうだよ。 まあアナタみたいに外から来た人には信じられないと思うけど……」

杏子「あー、普通ならそうなんだろうけど、生憎アタシは変な話には結構縁があるからな。 それにこうして目の前にアンタが居るわけだし……」

鳥だか蝙蝠を思わせるような羽に、不自然に長い爪(しかも伸縮自在)、獣っぽい耳と言うミスティアの出で立ちは、どう見ても人間のソレではない。

ミスティア「でも酷い目に遭ったわ。 急に空からアナタが降ってきて、私の屋台壊したかと思ったら、斬りかかってくるんだもの」

杏子「そりゃアンタが爪で急に襲いかかかってきたからだろ?
   ああ、屋台の件は悪かったと思ってるさ。 だからそんな顔すんなって……」

喉元に鋭い爪を突きつけられ、杏子は思わず乾いた笑いを漏らす。
一応話は付いたはずだが、ミスティアはいまだお冠らしい。

杏子(ま、仕方ないか……、出会いとしちゃ最悪だったしな……)

そんな事を考えつつ、杏子は自身が座っている屋台を横目で見回した。
深い竹林の中にぽつんと置かれた一台の屋台。
彼女を知る人妖たちからは、絶品と称される憩いの場となっている屋台は、屋根の一部が大きく欠けている。
ここに“飛ばされて”、空から落ちてきた杏子が、派手に屋根をぶち破ったからだ。
屋台の持ち主であるミスティアは激昂し、杏子に襲い掛かってきたが、どうにか落ち着かせる(返り討ちにする)事に成功していた。

ミスティアの身なりを見たときから予感めいたものはあったが、彼女は人間でも、杏子の知る人ならざる存在、“魔法少女”や“魔獣”の類ではなかった。
彼女は、自らを『夜雀の怪』と称し、ここがそういう存在、即ち妖怪が闊歩する世界である事を世間話を語るように教えてくれた。
ついでに言うと、杏子のように人間がこっちの世界についうっかり入ってしまう事はあまり珍しい事ではないらしい。

多少の事なら動じない自信のあった杏子だが、流石にこの話は受け入れがたい話だった。
目の前にこうしてミスティアが居なければ絶対に信じなかったに違いない。
375 :東方焔環神 [saga]:2011/11/20(日) 18:26:21.95 ID:QASY5XbT0

杏子(まったく、変な事に巻き込まれちまったなぁ……)

二本目の串焼きを口に運びつつ、杏子は考える。
あれは普段どおりの魔獣狩り、だった筈だ。
それが、ほむらが不意打ちをくらって倒れ、マミがそっちに気を取られ、隙を見せた瞬間、おかしな事が起こったのだ。

まず、倒れていたほむらが、地面に出来た不思議な裂け目に呑まれて沈み込み始め、
次に、魔獣の攻撃を受けそうになり足元が疎かになったマミもその裂け目に呑みこまれてしまったのだ。

新手の転移魔法かなにかで、ほむらやマミを誰かが助けてくれたのか? とも思ったが、
裂け目の纏う雰囲気はどちらかと言うと禍々しいもので、妙な胸騒ぎを覚えた杏子はその裂け目に自ら身を投じたのであった。

が、結局先に裂け目に落ちた二人の姿を(僅かの差であったにも拘らず)見つけることは出来ず、
杏子は裂け目の出口――即ちこの竹林の上空に放り出され、ミスティアの屋台に墜落した、と言う訳である。

杏子「それで? あの変な裂け目はこの世界のどっかに絶対通じているんだな?」

ミスティア「うん、それは間違いないよ。 でも、知り合いを探そうとなると大変だと思うけどね……」

「狭いようで広いからねー」と軽い口調で言いつつ、ミスティアは蒲焼きを焼き始める。
最悪の部類に入る出会い方をしたミスティアであったが、中々どうしてお人よしらしい。
或いは鳥頭過ぎて既に記憶が薄れているだけかもしれないが……

杏子「サンキュ、だいぶ参考になった。 それじゃアタシはこの辺で……」

ミスティア「ちょいと待ちなよ、お客さん。 御代がまだじゃない」

席を立とうとする杏子にかけられた声は心なしか低く感じられた。
振り返ると、にこやかに右手を差し出すミスティアの姿が……

杏子「御代? 御代ってさっきアンタが焼き鰻はサービスだって……」

ミスティア「鰻の御代はいいよ。 でも、壊した屋台の修理代までサービス、とは私一言も言ってないよ」

そう言って、右手をずいっと伸ばしてくるミスティア。
出合った直後の様な怒気に満ちた妖気をぶつけてくるミスティアを見て、杏子は前言を撤回する。

コイツ、お人よしもでもなければ単なる鳥頭でもないぞ、と……


376 :東方焔環神 [saga]:2011/11/20(日) 18:28:19.29 ID:QASY5XbT0
―――――――――――― 【数刻後、旧地獄・地霊殿】 ――――――――――――

さとり「…………この念は……幽々子さんですか」

お燐がほむらを連れて、地上へと向かってから数刻後、さとりは扉の方に語りかける。
直後、現れるのは思っていて居たとおりの人物。

幽々子「あら? バレちゃったようね」

さとり「私に隠し事は通用しませんから……」

幽々子「そうだったわね。それで? 最近こっちの方は大丈夫かしら?」

一瞬苦笑して見せた幽々子だが、次の瞬間向けられた話題は極めて事務的なものだった。
とは言え、元々その件で話し合う予定であったのだけど……

さとり「ええ、怨霊の方は問題ないです。地下の妖怪も同様に……」

幽々子「そう、なら良かったわ。 最近こっちに来てなかったし……」

ちょっと前からいろいろあったのよねぇ〜、と口元に笑みを浮かべる幽々子を見て、さとりはあることを思い出す。

さとり「そういえば幽々子さん、確か、聞いた話だと六月の異変以来、懇意にしていらっしゃる方がいるとか?」

幽々子「ええ、居るわよ。 クリームヒルトちゃんの事ね?
    あの子はいい子よ〜。可愛いし、素直だし……。 で、それがどうかしたのかしら?」

ニコニコ顔で答える幽々子。
どうやら噂どおりの入れ込み様らしい。

噂では件の異変の時に、思ったように動いてくれた為、玩具代わりにしている、などと言われていたが、
決してそんな程度ではなく、もっと深い親交を結んでいるようだ。

さとり「その方は今、どちらにいらっしゃるか分かります?」

幽々子「分かるわ、と言うかすぐそこの温泉まで来てるわよ。そろそろ帰る時間かもしれないけど……」

さとり「えっ?」

幽々子の答えにさとりは思わず顔をしかめる。
地上にいると思っていた対象が、幽々子らと共に地底に来ている。と、言う事は……

さとり「失敗しましたね。 完全に行き違いじゃないですか……」

ため息と共に頭を押えるさとりに、幽々子はすっと目を細くする。

幽々子「…………古明地さん、詳しい話を聞かせて欲しいのだけど?」

さとり「実はつい先刻の話なのですけど……」

さとりは、全てを話し始める。
幽々子の表情が、驚きのソレになり、やがてさとりと同じため息を漏らすまで、時間はさして掛からなかった。


377 :東方焔環神 [saga]:2011/11/20(日) 18:34:59.18 ID:QASY5XbT0

本日はここまで
アリスさんは第一部から引き続き再登場。
アリスさんに有無を言わさず撃墜された方々はあの人たちです。
ミスティアは2ボス初のレギュラー入りとなりました。
やったねみすちー、出番が増えるよ!

ほむほむ、マミマミ、あんあん、みんな目的が違う三者三様状態となったわけですが、
まあ気長にお待ち下さい。と言うか待ってください。筆がかなり遅くなっておりますので……

ではでは
378 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/20(日) 18:45:24.85 ID:9Cd9S5vIo


改変後ってことはほむほむは時間停止能力はないのか

今後まど神さまとクリームとの間でゆれるほむらの乙女心的なアレが待ってるかと思うとwwktkがとまらぬぇー
379 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/20(日) 19:12:45.44 ID:Qpl4vacDO
続き感謝です!

まど神様がちょくちょく遊びにこれるなら、ほむほむは幻想郷に残った方がお得かも知れないね。クリームさんともイチャ付けるし。魔女化したくないなら、霊夢に(穢れを祓う術を使えれば)頼んでみるしかないかな、やってくれるかどうか分からんけど。
380 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/11/20(日) 19:46:13.83 ID:sCr9fgYBo

てっきり焼き鳥屋の所にあんこちゃん落ちると思ってたけど焼き鰻屋だとはww

>>379
さやかだって下半身が魚なだけ、まどっちに至っては外見変わらずだから、いっそ魔女堕ちまであるのではないだろうか。
381 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(東京都) [sage]:2011/11/21(月) 20:59:35.18 ID:LDBIl/bG0
この場合シャルちゃんはマミさんの事知ってるけど、マミさんは魔女を知らないんだよな
でもマミさんの事だから、ぬいぐるみシャルちゃんを見ただけで震えたりしそうな

それはそうと、相手が魔法少女だとはいえ返り討ちにあっちゃうみすちーかわいいぜ…
382 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/22(火) 00:29:55.36 ID:rmIT4ToDO
>>381
確か、油断しなかったらシャルにも勝てるらしい(違う世界線ではそうだったとかなんとかどっかで聞いた)


女神まどにクリームにってほむほむは藍化するな……
383 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/11/22(火) 00:42:46.89 ID:luD0HJO7o
おりこ☆マギカ時間軸だと単独で勝利してるんだよね。
ここだとキリカ魔女はいないのは残念かもしれない。
384 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/22(火) 16:23:20.62 ID:AcNRq0RSO
そんなことよりほむほむのおっぱい揉もうぜ!
385 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/11/22(火) 19:49:29.07 ID:O+2mkeKjo
ほむらちゃんのちっぱいは私だけのものだよウェヒヒって白い服の女の子が笑ってた。
386 : [saga]:2011/11/23(水) 16:35:00.80 ID:uotYbNIu0
続きの投下行くよー

>>384-385
ほむほむとメイド長に揉めるようなおっぱいがあるわけ無いだろ……って、なんか周りのモノが止まっ(ピチューン!
387 :東方焔環神 [saga]:2011/11/23(水) 16:37:43.31 ID:uotYbNIu0
―――――――――― 【焔な火車と魔法少女】@中有の道 ――――――――――

お燐「ありゃ、おかしいね。確かにこの子の住所はここなんだけど……」

一度人里に出て住所を突き止めたほむらたちは、まどか……もとい、クリームヒルトの自宅へとやって来ていた。
表札もしっかり出ていたし、里で聞いた話も、この記事の少女が間違いなくまどかである事を裏付けていたので、期待していたのだが……。

ほむら「どうやら留守のようね……何処に行ったのかしら?」

お燐「うーん、その子と直接会った事もないし、あたいにはちょっと分からないねぇ……」

お燐がそう漏らすと、ほむらはぺたんと膝を付く。
(ほむらが飛べないので)ここまでの長い徒歩移動も祟って、一気に力が抜けてしまった形だ。

ほむら「そんな……ここまで来て、手がかりゼロだ、って言うの?」

お燐「あー、まぁそんなに落ち込まないで……、おっ、あれは……」

あまりの落ち込みようにどう声をかけたものかと、視線を逸らしたお燐は上空にある人影を見つけ、声を上げた。
その影は、こういう場合だと強い味方になる、幻想郷随一の情報通のものだ。

お燐「捨てる神あれば拾う神あり、って言うのはまさにこの事だね。 おーい!」

ほむら「?」

お燐の呼びかけが聞こえたのだろう、上空を飛んでいた鴉天狗――文が羽音と共に舞い降りてくる。

文「あや? これはこれは火焔猫さんじゃないですか。今日はこんな所で何をしてるんです?」

お燐「いやー、丁度よかったよ。 実は今、あたいたち人探しをしていてさ……」

お燐がそう切り出すと、文は訝しげな表情になる。

文「人探し……ですか? 珍しいですね。地底の妖怪が地上で人探しなんて……」

お燐「いや、用事があるのはあたいじゃなくて、ほむらでね」

文「ほむら……?」

そこでようやく、文は足元で膝を付いているほむらの存在に気が付いた。
それと同時に、この場所がクリームヒルトの家の前である事に気付き、口元を吊り上げた。
長年、記者をやってきた文の勘が告げている。 これは何か面白そうな事が始まっているぞ、と……。
388 :東方焔環神 [saga]:2011/11/23(水) 16:43:26.66 ID:uotYbNIu0

お燐「さとり様の命令でさ、ちょっと案内してたんだよ」

文「なるほど、付き添いですか……、で? 見ない顔ですけどどちらの方です?」

お燐「まぁいつものアレさ、珍しくいきなり旧地獄に来ちゃってたんだよねぇ〜」

アレとは即ち幻想入りの事である。
見ない顔を、それも人間を見かけたら、まずこれで間違いない。

ほむら「暁美ほむらよ。 まど……クリームヒルトとは、向こうで知り合いだったのよ」

文「暁美ほむら……? ああ、確かそんな名前をクリームヒルトさんとオクタヴィアさんから聞いた覚えがありますねぇ……。
  そうですか、貴女が二人の言っていた“ほむらちゃん”ですか……」

そう言っていつの間にか取り出したカメラで写真を撮り出す文。
いきなりフラッシュの嵐に襲われ、ほむらは眉をしかめる。

ほむら「ちょっと、いきなりなんなのよ? この妖怪は……」

お燐「あー、勘弁してやってくれないかな。 文は新聞記者なのさ」

ほむら「記者? それじゃあこの新聞は……」

ほむらがさとりから失敬した新聞記事を取り出すと、文はフラッシュ攻撃の手を止めて言う。

文「あっ、それ私が書いた記事です」

ほむら「成る程、確かに拾う神のようね……」

この新聞を書いた主が目の前に居るのだ。
当然持っている情報も、その正確さも期待していいだろう。

文「クリームヒルトさんが出かけそうな場所、ですか? う〜ん、ありえるとしたら人里か、オクタヴィアさんの家か、白玉楼ですね」

ほむら「白玉楼?」

聞きなれない言葉に、ほむらは思わず聞き返した。
389 :東方焔環神 [saga]:2011/11/23(水) 16:47:29.51 ID:uotYbNIu0

文「ええ、クリームヒルトさん達が幻想郷(こっち)に来た時にお世話になってた場所ですよ。 冥界にあるお屋敷です」

ほむら「冥界って……、地獄から抜けたと思ったら今度はあの世なの?」

文「ああ、でもそういえば幽々子さんは午後から出かける、とか言ってましたから今はいないと思いますよ」

行き先を知ったほむらがげんなりとしていると、手帖を操っていた文が補足する。
どうやら、件の恩人とやらはあいさつ回りに出ているらしい。

お燐「なら、冥界には居ないだろうねぇ……。ほむらはどうしたい?」

ほむら「どうしたい、ってそれは会いたいわよ……」

お燐「いや、そういう意味で聞いたつもりじゃ……、とりあえず人里に戻ろうか?」

一度は通った場所だが、お燐は無難な選択肢を上げた。
情報が少ない今、できる限り多くの人から情報を得た方が好ましい。

文「それなら私は山に行ってオクタヴィアさんの家を見てきましょうか? 徒歩で妖怪の山を登るのは厳しいでしょうから」

お燐「ああ、それはありがたいねぇ、頼むよ」

ほむら「私からもお願いするわ」

文「いえいえ、お安い御用ですよ。 その代わり、後で取材させてくださいね?」

そう言って、文はニヤリと笑うと、羽音を立てて空へと舞い上がっていった。

お燐「……さて、あたいらも行こうか」

ほむら「そうね。 早くしないと日が暮れてしまいそうだし……」


390 :東方焔環神 [saga]:2011/11/23(水) 16:51:18.22 ID:uotYbNIu0
――――― 【ドキッ!金髪だらけの魔法使いと魔法少女】 @ 魔法の森 ―――――

マミ「それで? 私たちは何処に向かっているの?」

アリス「博麗神社よ。 貴女たちの居た世界に帰るなら、そこが出口になるわ」

マミ「ふーん、妖怪の郷って聞いたときは帰れないかと思ったけど、出口があるのね……」

マミの質問にアリスは背中越しに答えた。
結局、アリスの取った行動は、普通の幻想入りとして扱う――即ち、幻想郷のことだけを説明して帰ってもらう、と言う事だった。
仮に、アリスの考えた平行世界説が正しいのなら、この巴マミにクリームヒルトたちの話をするのは百害あって一理なし、と判断したからだ。

アリスは幻想郷の事と、自身の身分が“魔法使い”であり、人間であるマミとは違う事などを説明し、
元の世界に帰してあげるから、と言って早々に連れ出していた。

ここは齟齬が起こる前に帰ってもらうのが吉だろう。
その方が彼女にとってもクリームヒルトたちにとってもいい事である筈だ。

表情には出さずにそんな事を考えていると、上空から見知った影が降って来るのが見えた。
直後、アリスの中で巻き起こる予感と悪寒……。

アリス(マズイのに見つかっちゃったわね……)

文「あややや? アリスさんも見知らぬ方を連れてますねぇ……その方は知り合いですか?」

降って来たのは文だった。
彼女はほむらたちと別れた後、約束通り妖怪の山に向かっていたのだが、
眼下にアリスと見知らぬ少女が一緒に居るのを見かけ、持ち前の好奇心が抑えられなくなってしまったのだ。

マミ「えっと、アリスさん? こちら方は?」

アリス「鴉天狗のパパラッチよ。 厄介者とも言うわね。 (ちょっと文、話があるからこっちに来なさい」

文「そんな酷いですよアリスさん、私は清く正しい射命丸ですよ? (なんです? 真面目そうな話のようですけど……」

マミには聞こえないよう、小声と目線でアリスは文を引き離す。
文は確かに面白い事ならすぐに頭を突っ込んでくるが、話を出来ない相手ではない。

アリス「マミ、悪いのだけど、ちょっと待っててくれない? このパパラッチを黙らせてくるから」

マミ「え、ええ。 分かったわ」

文「おー、こわいこわい。 こわいついでにアリスさん、貴女から話を聞かせてもらいますよ」

マミに不審を抱かせないよう、呆れやおどけを織り交ぜつつ、アリスは文と共に道の脇に移動する。
マミがやたら鋭い人間でなければ普通のやり取りに見えた筈だ。
391 :東方焔環神 [saga]:2011/11/23(水) 16:55:33.09 ID:uotYbNIu0

文(それで? 今アリスさん、マミって言いましたよね?)

アリス(話が早いじゃない。 そうよ、そのマミよ)

説明する前から切り出してきた文に、やけに鋭いなと思ったが、アリスは頷いておく。

文(こっちも色々あったんです。 で? 確か話では彼女は既に故人なのでは?)

アリス(彼女たちの話を全面的に採用するなら私たちも全員故人よ)

文(……つまり、どういう事です?)

文も十分聡い妖怪だが、それでも平行世界という考えには及ばなかったようだ。
アリスはあくまで推測だけど、と前置きしつつ自身の考えを述べる。

文「なるほど、確かにそれなら説明がつきますね。 ですが、さっき会った暁美ほむらさんは……」

マミ「暁美さんですって!?」

アリ&文「「!?」」

突然割り込んだ声に、アリスと文は恐る恐る振り返る。
目の前にいたのは、金髪ドリルロールの少女、即ちマミだった。

アリス「え、えっと、マミ? 一体いつからそこに……?」

マミ「悪いとは思いましたが、結構最初の方から聞かせてもらいました。 アリスさん、詳しいお話、お願いできますよね?」

やけににこやかな笑顔を向けつつ、それでも有無を言わせない雰囲気を纏うマミ。
アリスは自身の失態を呪いつつ、ため息をついた。

アリス「いいわ、話してあげる。 その代わり、これはかなり信じがたい話になるわよ?」

マミ「妖怪の闊歩する世界の存在、と言う時点で十分信じがたい話だと私は思いますよ?」

どうやら本格的に腹をくくらなくてはならないようだ。
アリスはもう一度、ため息をつかずには居られなかった。


392 :東方焔環神 [saga]:2011/11/23(水) 17:03:33.88 ID:uotYbNIu0
―――――――― 【夜雀と放浪娘の放浪屋台】 @ 妖怪の山の麓 ――――――――

杏子「ハァ、結局見つからなかったなぁ……」

屋台から少し離れた岩場に腰をかけつつ、杏子は思わずため息をついた。
あの後、壊した屋台の御代は身体で返す、と言う事になり、杏子はミスティアと共に屋台を引いて歩き回った。
が、出会うのは妖精やら妖怪やらばかりで、ほむらやマミは愚か人間にすら会えずに日没を迎えてしまったのだ。

杏子「骨折り損のくたびれもうけ、ってか……。おっ、そういえば……」

全身を襲う疲労感に、杏子はふとある事を思いだし、宝石の様なソレを取り出す。
ソレは魔法少女となった者が持つ、自らの依代の結晶――ソウルジェムだ。
普通に身体を動かすだけでも魔力を消費してしまう魔法少女が、特に扱いに注意しなくてはならないモノで、
魔力を使ったり、穢れを受けるとすぐ濁るので、常に浄化しておかなくてはならないのだが……。

杏子「アレ?」

取り出したソウルジェムを見て、杏子は思わず声を上げた。
これまでの経験から言うと、今日一日で消費した魔力の量はそれなりのものだ。
更に言うと、ここに迷い込む直前まで魔獣と戦っていたので、濁りの量は相当なものになっている。筈なのだが……

杏子「大して汚れてないな。 どうなってるんだこりゃ?」

ミスティア「おーい、杏子! お客さん来たから手伝って〜」

自らのソウルジェムを片手に、思考の海に呑まれかけた杏子だが、
次の瞬間、背後からかかってきたミスティアの声に引き戻された。

杏子「まぁ、濁りが溜まってないなら良いか……。 おー、今行くよー」

杏子はソウルジェムを服のポケットに仕舞い、屋台へ戻る。
屋台に座っていたのは、フリルのたくさんついた赤いリボンと服を着た少女だった。

???「あら女将さん、こちらの可愛らしい方は?」

ミスティア「ああ、佐倉杏子って言ってね、訳あってウチで働く事になった外来人なんです。
      杏子、こちらの方は鍵山雛さま。この辺だと天狗と並ぶお得意様よ」

ほら、挨拶挨拶とミスティアに急かされ、杏子は小さく頭を下げる。

杏子「佐倉杏子だ。色々あって今はこき使われる身なんだけど、まぁ、よろしく頼むよ」
393 :東方焔環神 [saga]:2011/11/23(水) 17:09:44.21 ID:uotYbNIu0

雛「ええ、こちらこそ……あら? 貴女、手の中に何か持ってないかしら? 貴女の服から厄を感じるのだけど……」

杏子「へ?」

いきなり訳の分からない話を切り出され、杏子は間抜けな声を上げてしまう。
どうしていいのか分からず、杏子が戸惑っているとミスティアが耳打ちしてくる。

ミスティア「杏子、雛さまは神さまなのよ。 何か変なものを持ってるならすぐに出しなさい」

じゃないと雛さま頑として動かないわよ。と言うミスティアの言葉に、杏子は思わず頭を掻く。

杏子「んなこと言われても、アタシが持ってるのはコレくらいしかないぞ」

雛「ああ、やっぱり厄を溜め込んでいるわね。ちょっと貸して」

しぶしぶポケットからソウルジェムを取り出すと、雛が杏子の手ごと胸元に引き寄せる。
突然の雛の行動に、流石の杏子も度肝を抜かれた。

杏子「あっ! おい、コラッ何を…………って、えっ?」

思わず怒鳴りつけようとした杏子だが、次の瞬間、動きを止めた。
雛の手の中に握られたソウルジェムから濁りが外に吸い出されたかと思うと、黒い霧状の気体になり、雛の周囲を漂い始めたのだ。

雛「…………はい、コレくらいで良いでしょう」

雛がソウルジェムから手を離した時、ソウルジェムの濁りは完全になくなっていて、本来の深紅の輝きを取り戻していた。

杏子「お、おい、アンタは一体……」

雛「私は厄神、人の厄を祓い、厄を流すのが私の役目。 簡単に言うなら厄除けの神様よ。
  貴女のソレ、ちょっとだけ厄が溜まっていたから祓わせて貰ったわ。 驚かせてごめんなさい」

杏子「あ、いや、それは別にいいけどさ……。それにしても厄除けねぇ……」

呟きつつ、穢れも厄のようなモノかと思い直す。
教会や神社に行ったらソウルジェムの穢れが減った、などと言うことは元の世界では絶対に起こらなかったのだが、
神様自身が直接手を下すのなら、そういう事も出来るのかも知れない。
394 :東方焔環神 [saga]:2011/11/23(水) 17:15:57.74 ID:uotYbNIu0

雛「さて、女将さん、悪いのだけど今日は帰らせてもらうわ」

杏子「え?」

いきなりそう切り出したかと思うと、雛はそそくさと席を立つ。
まだ鰻も酒も殆ど手を付けていないのに帰ろうとする雛の行動は、杏子から見るとかなり不可解だ。
が、ミスティアはまるで当然の事であるかのように、平然と雛を送り出す。

ミスティア「うん、分かった。こればっかりは仕方ないしね。 いつでも待ってるからまた来てよ」

雛「ありがとう、また来るわ」

そう言って、雛は森の奥へと消えて行く。
雛の姿が見えなくなってから、杏子はミスティアに尋ねる。

杏子「おい、あの神様はどうしちまったんだ? まだ殆ど手をつけてないじゃねーか」

ミスティア「雛さまの周り、貴女から祓った厄が漂ってたでしょ? あの状態だと厄が他の人にうつっちゃうのよ」

杏子「は?」

ミスティア「つまり、今の状態だと厄を引き離しただけで、浄化した訳じゃないの。
      そのままだと色々危険なんで、雛さまは厄の浄化が終わるまで他人との接触は避けるのよ」

勿体無いから食べなさい、と鰻の串焼きを差し出さすミスティア。
杏子はその串焼きを言われるがまま受け取ったが、食べる気など起きなかった。

杏子「おい、それってつまりアタシが……」

ミスティア「あーあ、雛さま帰っちゃったから、今日の営業は終わりかなー。杏子、早く食べて片付けるの手伝いなさい」

話はコレで終わり、と言わんばかりに、ミスティアは片付けに取り掛かる。
杏子はしばし、呆然とその様を見ていたが、思い直して串焼きを一気に頬張った。

杏子「なんだい、妖怪や神様の世界も案外世知辛いモンなんだな……」

ぽつりと呟いた杏子の言葉に、ミスティアは答える事なく、黙っていた。


395 :東方焔環神 [saga]:2011/11/23(水) 17:20:29.70 ID:uotYbNIu0
――――――― 【幻想を生きる魔女と巫女と魔法使い】 @ 中有の道 ―――――――

オクタヴィア「あー、さっぱりしたー。 いい湯だったね〜」

温泉からの帰り道、日も暮れて星々が瞬く中、私たちは家路についていた。
ゆっくりと温泉に浸かり、いまだ火照ったままの体に夜風が心地いい。

クリームヒルト「そうだね。 また行きたいな〜」

早苗「明日から忙しいですからねぇ……。 今日はゆっくり出来て良かったです」

クリ&オク「「へ?」」

背筋や首筋をほぐしつつ、そんなことを言う早苗さんに、私たちは揃って声をあげる。
何か行事でもあったっけ?と、オクタヴィアちゃんと顔を見合わせていると、魔理沙さんが苦笑しながら言う。

魔理沙「明日からお盆だからな。 せいぜい頑張ってくれよ」

クリ&オク「「あっ!」」

魔理沙さんに言われて思い出す。
今日は8月12日、明日13日からは世間一般ではお盆に入る。

お盆――それは去年までごく普通の学生でしかなかった私たちにとって、夏休み期間中の一時期、程度の認識でしかなかった。
けれど、幽霊や神様が普通に存在する幻想郷では、その意味は重い。

オクタヴィア「そー言えば明日から忙しいから暫らく会えない、って幽々子さん言ってたなぁ……。そっか、そう言う事だったんだねー」

魔理沙「幽霊はそうだろうなぁ……。ま、私には大して関係ないけどな」

早苗「ダメですよ。 ちゃんとご先祖さまをお迎えしないと……。
   私たちと違ってこっちにお墓もあるんですから、きちんと行って下さい!」

けらけらと笑う魔理沙さんを早苗さんがたしなめる。
早苗さんは神社の巫女さんであってお寺さんではないのだけど、看過できなかったのだろう。

オクタヴィア「そー言えばさ、あたしたちはどうなるんだろうね?」

クリームヒルト「? どうなるって、何が?」
396 :東方焔環神 [saga]:2011/11/23(水) 17:23:45.87 ID:uotYbNIu0

オクタヴィア「ほら、あたしたちはさ、外の世界から消えちゃったわけでしょ?
       死んだ幽霊みたいにお盆にひょっこり〜、なんて事は出来るのかな?」

クリームヒルト「う〜ん、どうなんだろう……。 早苗さん、分かります?」

考えたことは愚か、お盆の事すら忘れていた私は、少し考えて早苗さんに話を振る。
考えても分かりそうもなかったし、幻想入りの先輩である早苗さんなら、何らかの答えを持っているんじゃないかと思ったからだ。

早苗「ん〜、たぶんですけど、無理なんじゃないですか? 死んだ訳じゃありませんからねぇ……」

オクタヴィア「そっか、そうだよねぇ……」

そう言ってため息をつくオクタヴィアちゃん。
何が言いたかったのか、その気持ちは私にもよく分かる。
覚悟は出来ていたつもりだけど、あらためて突きつけられるとやっぱり寂しい。


早苗「さてと、それでは私たちはこっちなので……」

物思いにふけっていた私は早苗さんのそんな声に現実に引き戻された。
気付くと、お馴染みとなりつつある分かれ道に立っていた。

オクタヴィア「あれ?もうこんなところなんだ……。 それじゃ、クリームヒルトに魔理沙もまた明日」

魔理沙「ああ、またな」

クリームヒルト「うん、また明日ね」

簡単に別れの挨拶を交わして、それぞれの道へと歩いていく。

クリームヒルト「さて、帰ってご飯にしないと……、って、あっ!?」

みんなが見えなくなってから、私も家に帰ろうとして……、あることを思い出し、足を止める。
お米の蓄えがなくなっていた事を、今更のように思い出してしまったのだ。
今帰っても、お米が無いからご飯の作りようがない。 明日まで我慢するか他の主食で過ごすと言う選択肢もあったけど……

クリームヒルト「今から戻ればギリギリで買えるよね? 人里もそんなに遠くないし……」

私は踵を返すと、来た道を引き返す事にした。

幸い、お金はあったし、お店もまだ開いている時間だ。
お米を買いに行っても、寝る時間に大差はない。

そう思っての行動だったのだけど、これが思わぬ出会いの発端になるとは、このときの私は思ってもいなかったのでした……。


397 :東方焔環神 [saga]:2011/11/23(水) 17:27:12.89 ID:uotYbNIu0
―――――――――― 【焔な魔法少女】 @ 人里の繁華街 ――――――――――

ほむら「はぁ、結局手掛かりは見付からず仕舞いだったわね……」

宿屋で借りた提灯を片手に、ほむらは街を歩く。
文と別れた後、お燐と共に徒歩で人里に戻ったほむらであったが、人里に着いた時点で日没となり、捜索は翌日に持ち越しとなっていた。

ほむら「それにしても本当に電気もないのね……。街中でこれなのだから、森の中とかはもっと冥いんでしょうね……」

店先の燈籠や提灯の明かりぐらいしか光源の無い町は、これが本当に繁華街かと言いたくなるほど薄暗い。
お燐が捜索打ち切りを提案してきたのも、これなら納得だった。
幻想郷の夜は元の世界のソレよりも深い闇に包まれている。

ほむら「この闇の中を妖怪たちが歩き回っているのよね……。
    お守りをしている身としては動くな、と言いたくなるのも当然だわ」

かつて、まどかを守るために駆けずり回っていたほむらは、お燐にかつての自分を見たような気がして、自嘲気味に呟いた。
そんなお燐は、ほむらを宿屋の主人に預けると、主であるさとりに報告に行くから、と言って帰ってしまっている。
合流は明日の朝、と言うことになっているので、それまでは自由時間だ。
そんな訳でほむらは、夜食を食べてくるから、と言って、人里の繁華街に繰り出してきていた。

ほむら「さて、食事も済ませたし、宿に帰って明日に備えると……きゃっ!?」

???「きゃあっ!?」

それは宿に帰ろうと、曲がり角に差し掛かった時の事だった。
角から突然人影が飛び出してきたかと思うと、避ける間もなく正面衝突。
互いに小さい悲鳴をあげつつ、ほむらと相手はその場で尻餅をつく。

ほむら「痛たた……、なんてベタな……。 えっと、大丈……えっ?」

立ち上がりつつ、ぶつかった相手を見たほむらは、次の瞬間硬直した。

目の前にいたのは、一人の少女。

和服が多いこの人里の中では異彩とも思えるファンシーなピンクの装束。
ショートのツインテールにまとめられた髪は装束と同じピンク色で、
それらを結わえるリボンはほむらが持っているのと同じ、鮮やかな赤。

その姿は、間違いなく探し求めていたその人で、
こちらを見上げる少女の瞳は、信じられないと言うように大きく見開かれていた。

???「ウソ……、ホントにほむらちゃん、なの…………?」

ほむら「まど……か……?」

探していた少女――クリームヒルトとの再会は、全くもって呆気ないかたちで訪れたのであった。


398 :東方焔環神 [saga]:2011/11/23(水) 17:30:27.90 ID:uotYbNIu0
――――――――――― 【救済の魔女】 @ 人里の繁華街 ―――――――――――

ここを通りかかったのは気まぐれと言っても良かった。
お米以外の主食はあったのだから、買いに来る必要性はなかった。

だから、この出会いは、本当に偶然で……、運命的な再会と言うべきなのかもしれない……。


クリームヒルト「ウソ……、ホントにほむらちゃん、なの…………?」

???「まど……か……?」

頭にリボンが結わえられていたけど、それ以外は記憶の通りで……、
聞こえた声は、確かにほむらちゃんの声で……、
私は呆然と、目の前に立つ女の子を見つめる事しか出来なかった。

私の見つめる前で、女の子の瞳が涙で潤んだかと思うと、次の瞬間、私の体は抱きしめられていた。

???「その声……やっぱりまどかなのね……? ―――― っ!まどかぁ!」

クリームヒルト「ホントのホントに、ほむらちゃん……なんだよね?」

抱きしめられたまま私は聞き返す。

夢なんじゃないかと思った。
遊び疲れた私が見た幻覚なんじゃないかと、そう思った。
でも……

???「それ以外の誰に見えるって言うの? 私は正真正銘、貴女の知る暁美ほむらよ」

抱きしめられた感触、感じる鼓動、どこか呆れたような、それでいて優しい声。
その全てが、これは夢でも幻でもないと私に告げていて……。
これは現実なんだ、と思った瞬間、私の視界は急速に滲む。

クリームヒルト「っ……うぅっ……、ぐすっ………ほむらちゃ……会いたかったよぉ……」

溢れる涙は止められず、大して力も入らなかったけど、私はほむらちゃんの体をしっかりと抱きしめていた。


399 :東方焔環神 [saga]:2011/11/23(水) 17:36:24.65 ID:uotYbNIu0
―――――――― 【救済の魔女と焔の魔法少女】 @ 人里の宿屋 ――――――――

ほむら「そう……、それじゃあ貴女はあの時のまどかなのね……」

宿屋にとった一室で、一つの布団に二人で横になったまま話を聞いていたほむらは納得したように頷いた。
それはほむらが最後に経験した時間軸とよく似ていた時間軸の話。
ただし最終時間軸の様な救済は無く、まどかが魔女化して終わると言う最悪の結末を迎えてしまった時間軸だ。

クリームヒルト「あ、ほむらちゃんまた間違えた。私は『鹿目まどか』じゃなくて、クリームヒルトだよ。
        あの世界の『鹿目まどか』は他の世界の私に救われて、一緒になっちゃったんだから……」

ほむら「そうだったわね……。でも、貴女もまどかの事、『私』って言ってるわよ?」

クリームヒルト「あっ……」

やっちゃった、と言うように苦笑するクリームヒルトはやっぱり記憶の中のまどかと同じで、
目の前に居る、自らを魔女のクリームヒルトだと名乗る少女も、間違いなくまどかなのだとほむらに確信させた。

ほむら「でも良かったの?家に帰らなくて……」

クリームヒルト「うん、帰っても私一人だし、それにほむらちゃんと話したい事、いっぱいあったから……」

ほむら「そう……」

ほむらのそんな返事の後、二人の間に沈黙が訪れる。
時刻は既に深夜、二人が黙ってしまうと、聞こえるのは互いの息遣いと虫の鳴き声だけになった。
その虫の声すらすぐに気にならなくなり、部屋は完全な静寂に包まれる。

その静寂を破ったのはクリームヒルトだ。

クリームヒルト「……ねぇ、あの後ほむらちゃんはどうしてたの?」

ほむら「まどかは……何処まで知ってるの?」

クリームヒルトの質問に、ほむらは質問で返した。
クリームヒルトは天井を見上げたまま、その質問に答える。

クリームヒルト「平行世界の私が、全世界の魔女を消して、魔法少女を救う願いをしたのは知ってるよ。私の所にも来たし……」

あれはいつの事だったのか、クリームヒルトが全世界を滅ぼした後の様な気もするし、その前だったような気もする。
とにかく、彼女はクリームヒルトの前に現れた。
400 :東方焔環神 [saga]:2011/11/23(水) 17:39:44.49 ID:uotYbNIu0

クリームヒルト「平行世界の私は、“魔法少女の私”を救って、“私”の魔女化をなかった事にしたの。 その瞬間に、“魔女の私”は“なかった事”になった」

ほむら「…………」

クリームヒルト「私の存在は幻想として消え去る筈だったの……。
        それが偶然、他のみんなと一緒に幻想郷(ここ)に流れ着いて、亡霊の西行寺幽々子さん、って人に助けてもらって……」

その後の事はほむらが見た、新聞記事の通りだった。
クリームヒルトたちを助けた亡霊の姫君は、少々手の込んだ引越しのご挨拶を魔女たちに仕込み、
その結果、晴れて妖怪たちの住む隠れ里に迎え入れられた。と言う事らしい。

クリームヒルト「それで? ほむらちゃんはどうしてたの?」

ほむら「私? 私は……ずっと戦ってたわ、まどかを救うためにずっと……。結局、最後の最後で助けられてしまったけどね……」

そう言って、ほむらは苦笑する。
長い旅路の果てが、あの結末だったのだから、ほむらとしては笑う他ない。

クリームヒルト「そっか、ありがとう、ほむらちゃん」

ほむら「ちょっとまどか? 私は貴女に感謝されるような事、何一つしてないわよ? あの時は貴女の魔女化を防げなかったのだし……」

クリームヒルト「それでも、ほむらちゃんが私の為に頑張ってくれた事は変わりないでしょ? それと、ゴメンね……」

今度もクリームヒルトは何の事かは言わなかった。が、今度は何の事なのか、はっきりと分かる。
分かったからこそ、それに対する返答も決まっていた。

ほむら「いいのよ、まどかが気に病むことじゃないわ。
    それに形はどうであれ、こうしてまた出会えただけで私は幸せなの。 だから、そんな悲しい顔、しないで頂戴?」

クリームヒルト「何でもお見通しなんだね……。 ティヒヒ、やっぱりスゴイや、ほむらちゃんは……」

そう言ってほむらの方に向き直ったクリームヒルトは苦笑いしていた。
そんなクリームヒルトにほむらは優しく微笑みかける。

ほむら「さ、そろそろ寝ましょう? だいぶ遅くなってしまったし、明日も早いのでしょう?」

クリームヒルト「そうだね。 おやすみ、ほむらちゃん」

ほむら「ええ、おやすみ、まどか……」

二人は布団の中で向き合ったまま、目を閉じた。
それきり声はしなくなり、部屋には外で鳴く虫の声だけが響いていた。


401 :東方焔環神 [saga]:2011/11/23(水) 17:58:12.33 ID:uotYbNIu0
以上、本日分終了。
コレを書いているときにニヤついたり、涙ぐんでた俺は間違いなく変人です。
温泉パートがあると思ってた方、そんな高度なサービスシーンは俺には書けねぇよ! 残念ッ!

ほむマミパートでは文が再登場。
やっぱり文は便利です。話が繋がる繋がる……。

クリほむパートではクリームちゃんの過去大暴露となりました。
本編の11話までほぼそっくりで、12話で選択を誤ると言う (ノ∀`)ノ∀`)ノ∀`)ジェットストリームアチャー なまどかさんです。
もうコンプレックスどころか罪悪感がマッハなレベル。
こんな想定を(第一部当初から)思いつくとか俺はやっぱり鬼畜か……

>>379
惜しい、霊夢さんじゃなくて雛さまにご登場願いました。
やっぱり美味しいお話は無い、と言う教訓としてなんですが……。
でも霊夢や神奈子辺りなら、普通に祓えそう……まあ、厄神様の女神様っぷりには適わんがな!

それにしても風神勢のまどマギとの混ぜやすさは異常。コレが神か……。

>>380
火の鳥さんじゃなくて焼き鰻屋さんにご登場願ったのは、他キャラが絡め安い、と言う一点です。
火の鳥さんだと、一気に答えを出しかねないので……。
まぁあんあんと絡めると面白そうなキャラなんですけどね……>もこたん
402 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(東京都) [sage]:2011/11/23(水) 18:10:11.23 ID:VCHhvnnn0
乙なんだぜ! 雛さまの食べかけの鰻を杏子が食べたのなら間接キsピチューン
風神勢で未だに出番のないにとり…いやギーゼラと絡んでるらしいからいいんだけども
やはりほむまど、いやほむクリはいいものだ…オクあんとシャルマミに期待するっきゃない

キリカに帽子を被せたら蓮子になるよ!きっとおりマギ作者が東方同人誌描いてるからだね!
そういえばまどマギの世界も幻想郷の外の世界もちょっと近未来だよな…
403 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/23(水) 18:12:35.16 ID:ZENYMFZBo
>>386
見えて……いるのか? 見えているのかと聞いているのだ!!
404 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/23(水) 18:45:04.25 ID:Hzxz0sQDO
超乙っ!
頑張って歩いた甲斐があったな、ほむらちゃん!

QBはいまだに現実で猛威を奮っているから、幻想入りはしないかな?って言うか来ても精々サンドバッグだろうなww
405 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [saga]:2011/11/23(水) 22:01:30.77 ID:0MB3KMoSO
ほむらちゃんのおっぱいはいつ幻想入りしますか
406 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/23(水) 23:51:20.67 ID:nZsR6ERDO
QBは、僕と契約して〜 がネット流行語にノミネートされてるレベルだからな
しばらくは幻想入りもないだろう

407 : [saga]:2011/11/27(日) 18:11:07.42 ID:lAJBXs9I0
続きを投下します。
408 :東方焔環神 [saga]:2011/11/27(日) 18:14:43.79 ID:lAJBXs9I0
―――――――――――――― 8月13日 ―――――――――――――――――
―――――――― 【救済の魔女と焔の魔法少女】 @ 人里の宿屋 ――――――――

???「……だい、私の居な……つかったのかい」

ほむら「ええ、おかげさまでね。」

頭の上から聞こえるそんな会話にうっすらと目を開けると、ほむらちゃんともう一人、赤髪の女の子が会話しているのが見えた。
女の子の方の頭には猫耳の様なものが生えている。どうやら妖怪の子みたいだ。

クリームヒルト「……ん?」

私が僅かに身じろぎすると、ほむらちゃんたちがこちらを振り向く。

ほむら「あら? 起こしてしまった?」

クリームヒルト「ん……いいよ、そろそろ起きないとだし……ぁふ…………っ!」

伸びをしながら起き上がると、私の口から自然とあくびが漏れる。
まだ完全に起ききれていない私の視界の端に、ほむらちゃんと女の子が苦笑している姿が映り、私はその場に縮こまった。

???「あー、ゴメンゴメン。 そういうつもりじゃなかったんだけどね」

クリームヒルト「いえ、こっちこそお恥ずかしい姿を……えっと……」

私が、言葉に詰まると、赤髪の女の子も気付いたようで、すぐに名乗ってくれた。

???「ああ、あたいは火焔猫燐、昨日ほむらをここまで案内した、地霊殿の火車さ」

クリームヒルト「あっ、貴女がお燐さんなんですね。 はじめまして、クリームヒルト・グレートヒェンです」

布団から抜け出して、私は小さく頭を下げる。

クリームヒルト「それにしても地霊殿、ですか……。地底の方には昨日まで行ったことが無かったんですよ。 今度ご挨拶に伺いますね」

お燐「そうしてもらうとありがたいね。 さとり様も喜ぶだろうし……」
409 :東方焔環神 [saga]:2011/11/27(日) 18:16:08.68 ID:lAJBXs9I0

ほむら「ところで、今日はどうするの? 本当なら、今日もまどか探しのつもりだったのだけど……」

尋ね人は見付かってしまったから、特に用事もないのよねぇ……と、呟くほむらちゃん。
それならと、私は自分の予定を切り出す。

クリームヒルト「えっと、私は今日はオクタヴィアちゃ……さやかちゃんと会う予定だったんだけど……」

ほむら「ふぅん、さやかと……ね。良いんじゃないかしら、私も久々に会ってみたいし……。
    それと一々言い直さなくても良いわ。 まどかたちが魔女になっているのは、重々承知してるから……」

クリームヒルト「うん、ありがと……」

幻想郷(こっち)に来たばかりの頃は、『さやかちゃん』と呼んでしまう回数の多かった私だけど、
幻想郷での生活に慣れるにしたがって、『オクタヴィアちゃん』と呼ぶのが自然になっていた。
最近は、私自身の事も、『鹿目まどか』と言うより『クリームヒルト』と言う方がしっくり来るようになっている。
色々な意味で、馴染んできた、と言うことなのかもしれない。

そんなちょっとした物思いにふけっていると、お燐さんが、遠慮がちに切り出してきた。

お燐「えっと、ほむらたちは山に行くんだよね? なら、あたいもついて行って良いかい?
   あの新聞屋に一言言っておかないとだからねぇ……。 あっ、お邪魔なら別に良いんだよ。あたい一人で行くから」

ほむら「私は別に構わないわ。 私からもあの天狗には一言お礼を言っておきたいし……、まどかはどうかしら?」

クリームヒルト「うん、私も問題ないよ。 それじゃあ、朝御飯食べて、出よっか」


410 :東方焔環神 [saga]:2011/11/27(日) 18:20:12.51 ID:lAJBXs9I0
――――― 【ドキッ!金髪だらけの魔法使いと魔法少女】 @ アリスの家 ―――――

マミ「…………ん」

カーテンの隙間から射し込む光に、マミは静かに目を覚ます。
光の射す角度は高く、肌で感じる気温もまた高い。
どうやら多少寝過ごしてしまったようだ。

軽く身支度を整え、一階へ降りると、台所に立って鍋を火にかけているアリスの姿があった。

アリス「あらおはよう、よく眠れた?」

マミ「はい、お陰さまで良く眠れました。……射命丸さんは?」

マミは結局最後まで付き合わせてしまった鴉天狗の姿が無いことに気が付き、問う。
あの後、アリスの家で行われた再度の事情説明は、その難解さも手伝って、深夜まで及んだ。
事情を知る一員として文も加わり、二人はアリスの家に泊まる事になったのだ。

アリス「文なら今朝早く帰ったわ。色々用事があるみたいよ」

釜の火を消し、鍋の中身をお皿によそう。
湯気をたてるスープと、パン、野菜サラダと言う簡単な食事が並べられ、間もなく朝食となった。

アリス「それで?マミはどうするの? 文の言っていた知り合いを探すつもり?」

マミ「そうですね。 平行世界の美樹さんと、鹿目さん……?の事も気になりますけど、先ずは暁美さんを見つけるのが先決だと思います」

マミたちより2ヶ月も前、この世界に現れた新参妖怪・魔女。
マミの居た現世とは異なる歴史を刻んだ世界からやって来たそれらは、彼女もよく知る美樹さやかをはじめとする魔法少女たちのなれの果てだと言う。
そちらの世界ではマミたちも既に故人であるそうなので、確実に平行世界――パラレルワールドの存在に過ぎないのだが、
それでも今や会うことすら叶わない後輩が――奇しくも同じ2ヶ月前に円環へと導かれてしまった美樹さやかの事が――気にならないと言えば嘘になる。

マミ(でも…………)

それを差し引いても、ほむらとの合流は優先すべきであると、マミは考えていた。
もちろんそれはほむらのことが心配、と言う事もあるのだが、内実、マミの方が心細かったのだ。
アリスたち幻想郷の住人は、確かにマミに良くしてくれるのだが、それでも見知った仲間ほど安心できるものはない。

淡々と食べるだけの食事をしつつ、マミの思考は更に深い所へ沈もうとしていた。
が、次の瞬間かけられたアリスの言葉に引き戻される。

アリス「そう、じゃあ朝食が終わったら少し待っていてくれる? 支度を済ませてしまうから」

マミ「えっ? でも……」

先に食べ終えたアリスの言葉に、マミは思わず手を止めてアリスを見た。
アリスの表情は明らかに苦笑い、と言った感じだったが、それでも穏やかだった。
411 :東方焔環神 [saga]:2011/11/27(日) 18:23:15.57 ID:lAJBXs9I0

アリス「貴女一人じゃ道も分からないでしょう? 乗りかかった船よ。最後まで付き合うわ」

マミ「アリスさん……、ありがとうございます」

アリス「お礼なんていいから、冷める前に早く食べ……」

???「きゃあああああああああああああっ!!」


                      どんがらがっしゃーん!


マミ&アリ「「!!」」

ほっこりしかけた二人の雰囲気だったが、それは文字通り窓と共にぶち破られた。
居間の窓を一枚巻き添えにして屋内に吹っ飛ばされてきたのは、ピンク色のファンシーなぬいぐるみだ。

マミ「!(ゾクゾクッ」

見た目は可愛らしいぬいぐるみなのだが、なぜかマミは妙な悪寒を感じた。
破ったガラスの破片やら窓枠やらに埋もれているせいかと思ったが、それも違う気がする。
この感覚は、どちらかと言うとトラウマが蘇ってきた時のそれに近い。

アリス「いきなり人の家の窓を破るなんて随分な挨拶ね。シャルロッテ?」

マミが軽い恐慌状態に陥っているとは露知らず、アリスは額に青筋を浮かべながら、ぬいぐるみに詰め寄る。
詰め寄られたぬいぐるみ――シャルロッテは慌てた様子で首を横に振る。

シャルロッテ「ち、ちがうの! 私はただ魔理沙に吹っ飛ばされて……」

アリス「魔理沙に?」

???「おー、悪いなアリス! お前ん家の窓、壊しちまったぜ!」

やけにハイテンションな声と共に典型的な魔女っぽい黒衣を纏った少女が、箒に乗って降りてくる。
悪びれた様子など一切ない少女――魔理沙の言動に、アリスは一気に疲れたような顔になる。

アリス「魔理沙、弾幕ごっこをするなとは言わないわ。でも、ぶっ放す時ぐらい周りを見てからにして頂戴」

魔理沙「そんな時間があったら、ぶっ放すのが私だから、それは無理な相談だな」

アリス「……一回痛い目見ないと分からないのかしら?」
412 :東方焔環神 [saga]:2011/11/27(日) 18:24:53.27 ID:lAJBXs9I0

火に油、いや火にガソリンを注ぐような魔理沙の言葉に流石のアリスも目が据わる。
あまりの急展開にマミが呆然としていると、ここにいると危ないと思ったのかぬいぐるみがこっちに這って来た。
一触即発な二人から少し離れたところで、ぬいぐるみはピンク色の髪の女の子に姿を変え、マミの元に駆け寄る。

マミ「え、えっと、大丈夫?」

普通ならぬいぐるみが女の子に姿を変えた時点で取り乱すところなのだが、意外にもマミは落ち着いていた。
昨日からの一連の出来事で、慣れてしまった、と言うか感覚が麻痺してしまったのだろう。

シャルロッテ「は、はい、大丈夫で……、って、きゃあああぁぁぁぁ!? オバケぇぇぇぇぇぇぇっ!!?」

マミ「えっ? あっ、オバケ……?」

二人から離れて、胸をなでおろしていた女の子だが、マミの顔を見るなり悲鳴を上げた。
呆気に取られるマミの前で女の子は跪いて土下座をすると、念仏を唱えるようにまくし立てる。

シャルロッテ「噛み付いてゴメンナサイ、食べちゃってゴメンナサイ、殺しちゃってゴメンナサイ! だからお願いだから化けて出ないでぇぇぇっ!!?」

マミ「えっ? 噛み……食べ……殺すって……ええっ!?」

身に覚えない懺悔と謝罪にマミが戸惑っていると、一触即発モードを解除したアリスがそっと耳打ちしてくる。

アリス「この子ね、平行世界で貴女を殺しちゃった子なの。 丁度お盆だし、化けて出られたと思ったのよ」

マミ「ああ、そういう事なんですか……、平行世界で私を……って、ええっ!?」

アリスの言葉に一瞬納得したマミだが、今度は別の意味で戸惑う羽目になった。
思いっきり取り乱すマミを見て、アリスが仕舞ったと言うように顔をしかめる。

そんな中、一人だけ面白いものを見た、と言わんばかりにニヤニヤしている者がいた。
他でもない霧雨魔理沙その人である。

魔理沙「アリス、なんだか面白い事になってるじゃねーか……。 話、聞かせてくれるよな?」

アリス「はぁ、分かったわ。 教えるから二人を落ち着けるのを手伝って頂戴」


413 :東方焔環神 [saga]:2011/11/27(日) 18:26:01.04 ID:lAJBXs9I0
―――――――― 【救済の魔女と焔の魔法少女+α】 @ 妖怪の山 ――――――――

オクタヴィア「うわっ!? ホントに転校生じゃん! 変わらないなぁ〜」

ほむら「貴女も変わらな……いえ、随分と変わったわね……美樹さやか……(ソレトテンコウセイッテイウノヲヤメナサイ」

言いかけたほむらだったが、足元の尾びれを見て訂正する。
まぁ、尾びれだけで済んでいる分、マシなのかも知れないが……。

ほむら「それにしてもまどかを見たときから思ってたけど、この世界の魔女は本当に普通の人間っぽくなってるのね」

お燐「そりゃあ、あたいら妖怪もそうだからねぇ……。幻想郷じゃ良くあることさ」

オクタヴィア「何? 転校生はごっついアノあたしを見たかったの?」

ほむら「いえ、そういう事ではなくてね……」

妙に口ごもるほむらを見て、オクタヴィアは眉を寄せる。
首をかしげるオクタヴィアに対し、クリームヒルトが小声で話しかける。

クリームヒルト「それがね、ほむらちゃんったら……」

ほむら「ちょっ、まどか!? 言わないで!!」

オクタヴィア「ふむふむ……それで? ……ほ〜、成る程ねぇ〜」

ほむらが制止したときにはもう遅かった。
見る見るうちにオクタヴィアの表情がにやけたモノになり、ニヤニヤはニコニコ顔になる。

オクタヴィア「そっか、長年戦ってた相手があんな“幼女”だ、って分かったら流石のほむらも動揺するよね〜」

ほむら「くっ!」

丁度いい玩具を見つけた、と言わんばかりのオクタヴィアにほむらは思わず唇をかむ。
話は、ここに来る少し前のことに遡る……。

414 :東方焔環神 [saga]:2011/11/27(日) 18:28:05.36 ID:lAJBXs9I0
――――――――――――――――――――――――――――――――――――

それは山に登る前の人里での事、寺子屋の前を通りかかったほむらたちの前に一人の少女が現れたのだ。

???「あっ、お姉ちゃんおはよー!」

ほむら「…………?」

元気な声と共に、駆け寄ってきたのはドレスを着て髪をツインテールにした幼い女の子。
なぜか駆け寄る直前まで逆立ちをしていた女の子を見て、ほむらは妙な胸騒ぎを覚える。
が、周囲の人たちには見慣れた光景らしく、こちらを気にする者は一人として居ない。

クリームヒルトもその一人で、駆け寄ってきた女の子に合わせてしゃがむと、女の子の頭を優しく撫でる。

クリームヒルト「はい、おはよう。 最近はどう? ワルプルギスちゃん」

ほむら「えっ?」

クリームヒルトの言葉に、ほむらは一瞬耳を疑った。
確かに容姿の特徴は一致していたし、逆立ちだってしていた。でも、だけど、流石にこれは……。

???「あれ? お姉ちゃん、この人は誰?」

クリームヒルト「あっ、こっちは私の友達の暁美ほむらちゃん。
        ほむらちゃん、この子は私たちと一緒にこっちに来た魔女の一人でワルプルギスちゃんだよ」

ほむら「あ、暁美ほむらよ。宜しくね……」

もう確定だった。
間違いなくこの子は、ほむらと幾多の世界で激戦を繰り広げた魔女、ワルプルギスの夜に違いなかった。
他の世界はどうなのか分からないが、少なくとも目の前に居る最強の魔女が、こんな幼子であるという事は大いにほむらを動揺させた。
多少口ごもってしまったとは言え、表情だけは何とか笑顔を保つことが出来たのは奇跡に近い。

事実、ワルプルギスはそんなほむらの葛藤には気付かなかったようで……

ワルプルギス「ほむらおねえちゃんだね? よろしくー(ニコッ」

ほむら「!!!(ドッキーン!」

ほむらは、ワルプルギスから向けられた無邪気な笑顔を見て、今度こそその場に沈み込んだ。

415 :東方焔環神 [saga]:2011/11/27(日) 18:30:18.27 ID:lAJBXs9I0
――――――――――――――――――――――――――――――――――――

オクタヴィア「アハハハ! そりゃ傑作だ! あのほむらが、あの無愛想なほむらが不覚にも萌えたなんて……!」

ほむら「黙りなさい、美樹さやか!」

お腹を抱ええて転げまわるオクタヴィアにほむらは顔を真っ赤にして激昂する。
それでも笑っているオクタヴィアに、ほむらはとうとう飛び掛らん勢いで……いや、実際に飛び掛ろうとして、あっさり避けられた。

ほむら「なっ!? 飛ぶなんてズルいわよ! 降りて来なさい!」

オクタヴィア「いやー、ごめんごめん、悪かったって」

苦笑しながら、一度は上空に逃げたオクタヴィアが降りてくる。
小突いてやりたい衝動に駆られたが、何とか抑え込んで、ほむらはため息をつく。

ほむら「貴女、姿だけじゃなく空まで飛ぶなんて、ホント妖怪じみてきたわね」

オクタヴィア「んー、妖怪じみてきたと言うか、一応あたしたちも妖怪だもんねぇ……」

お燐「空を飛ぶくらいは常識だからねぇ……」

オクタヴィアの言葉にうんうんと頷くお燐。
対するほむらはげんなりとしている。

ほむら「なにこれ? 私の方が異端なの?」

クリームヒルト「大丈夫だよほむらちゃん、ほむらちゃんは一応人間なんだから、落ち込むことはないんだよ!」

がっくりと膝を付くほむらをクリームヒルトが慰める。
が、そこに止めと言わんばかりの言葉が、空から割り込んだ。

??「ん〜、例え人間でも飛べる人は飛びますけどね。 霊夢さんとか魔理沙さんとか……」

オクタヴィア「あれ? 文じゃん、久しぶり!」

降りて来たのは文だった。
文は、今朝方アリスの家を出た後、一旦里に帰り、ほむらたちとの約束を果たす為にオクタヴィアの家に来たのだが……
416 :東方焔環神 [saga]:2011/11/27(日) 18:31:31.23 ID:lAJBXs9I0

文「どうもお久しぶりです! それにしても一足遅かったようですね……。 まあ無事解決したようですから、良いんですけどね……」

オクタヴィアの家の前に居る面子を見て、文は頭を掻く。
後れを取ってしまったのが、彼女としては不服らしい。

ほむら「ああ、その件に関してはありがとう。 色々手をかけたわね……」

文「いえいえ、この程度、片手間で済む事ですから」

お燐「その割には今朝まで掛かるなんて、幻想郷最速にしちゃ遅いんじゃないかい?」

ほむらに礼を言われ、文字通り天狗になる文に、お燐が意地悪げな表情で皮肉を言う。
文の表情が一瞬ぴしりと固まり、次の瞬間愚痴とも取れる身の上話が始まる。

文「いやそれが大変だったんですよ。 暁美さんたちと別れた後、アリスさんが金髪の女の子を連れているのを見かけましてね。
  話しかけたら、森の中で偶然出会った、巴マミさんを博麗神社に……」

クリほむオク「「「(巴)マミさんが(ですって!?)」」」

文「あっ……」

文が気付いた時には遅かった。
クリームヒルトとほむらとオクタヴィアという三人に三方を囲まれていて、その内、オクタヴィアにはしっかりと肩まで掴まれていた。

クリームヒルト「巴マミ、って……マミさんも幻想郷に来てるの!?」

オクタヴィア「と言うかなんでその話を早くしないの?」

文「いえ、早くも何も私、今来たばかりで……」

今にも食いつかん勢いで詰め寄られ、流石の文も縮こまる。
二人の勢いに、逆に落ち着いたのか、ほむらが間に割って行って二人を制する。

ほむら「二人とも落ち着きなさい。 それと文、一体どういうことなの? 詳しく話しなさい」


417 :東方焔環神 [saga]:2011/11/27(日) 18:32:42.04 ID:lAJBXs9I0
―――――――― 【夜雀と放浪娘の放浪屋台】 @ 妖怪の山の麓 ――――――――

屋台の女将の朝は遅い。
だいぶ気温が上がり、寝苦しくなってきた昼近くになってようやく目を覚ます。

ミスティア「ふぁ〜、良く寝た〜」

杏子「ホントだよ。良くこんな暑くなるまで寝られるな……」

ミスティアが起き上がると、額に汗を浮かべた杏子が呆れ顔で声をかけてくる。
多分に皮肉が篭っていたが、ミスティアは動じることなく、寝巻きから服へ着替える。

ミスティア「いや、その為に屋台を木陰に止めたんだし、営業時間は主に深夜なんだから寝られるときに寝ないと……」

杏子「アタシが言えた義理じゃないけど、生活習慣どうにかした方がいいぞ」

ミスティア「はいはい、ご忠告ありがと。 さて、食材仕入れに行こうかな」

服を着替え、顔を洗うと、ミスティアは屋台の下から籠を取り出す。
仕入れと言う言葉に、客席側で寝転がっていた杏子も起き上がり、興味深げに覗き込んできた。

杏子「食材? 狩りでもするのか?」

ミスティア「何言ってるの? 人里に買いに行くに決まってるじゃない」

しれっと言ってのけたミスティアの言葉に杏子は耳を疑った。
今この妖怪、何処に買いに行くと言っていた?

杏子「は? 人の住む里がこの辺にあるのか?」

ミスティア「ええ、それくらい当然でしょ? 言わなかったっけ? ここは妖怪と人が住む隠れ里だ、って……」

杏子「言ってない、少なくとも人が住んでるとは一言も言ってない……」

妖怪や神様の話は聞いたが、ここに住む現地人が居るとは杏子は聞いていない。
迷い込む人が居るとは言っていたが、ミスティアはそれで説明した気になっていたようだ。
或いは単なる鳥頭……
418 :東方焔環神 [saga]:2011/11/27(日) 18:33:42.91 ID:lAJBXs9I0

ミスティア「杏子、鳥頭とか言うな」

杏子「しまった、口に出してたか……」

ミスティア「はぁ、まあ良いや。それより、杏子もついて来るんでしょ? 人探しするなら人里が一番だし……」

杏子「そうだな。 そうさせてもらうよ」

ミスティアの申し出に杏子が頷くと、ミスティアは杏子の襟首をむんずと掴む。
いきなりの事だったので、一瞬、きょとんとしてしまったが、次の瞬間、ミスティアから発せられた言葉に、一気に血の気が引く。

ミスティア「それじゃ飛ぶからしっかり掴まっててね!」

杏子「ちょっ、おい! 飛ぶってなにを……」

ミスティア「何って、里まで歩くつもり? そんなことしてたら日が暮れちゃうよ。それじゃ、行くよーっ!」

杏子「ぎゃああああああああぁぁぁぁっ!!?」

杏子が返事をする前に、ミスティアは背中の羽を羽ばたかせ空へと舞い上がる。
飛び立つ直前の口調が、明らかにからかうソレだったのだが、杏子に突っ込む余裕はない。

ミスティア「あんまり暴れると落としちゃうよ〜。私って華奢だし〜」

杏子「人一人あっさり持ち上げといて華奢も何もあるかっ!」

見た目はこんなだけど、やっぱりコイツ化け物だ。などと内心思いながら、人里までの数分を上空で過ごす。
佐倉杏子人生初の飛行は、とにかく怖かった、と言う印象に終始した。


419 :東方焔環神 [saga]:2011/11/27(日) 18:35:58.87 ID:lAJBXs9I0
――――― 【ドキッ!金髪だらけの魔法使いと魔法少女+α】 @ 人里 ―――――

アリス「残念だけど朝のうちに出てしまったようね。でもここに泊まっていたのは間違いないわ」

マミ「行き違い、と言う訳ね。残念だわ……」

昨日文から聞いた『ほむらたちは人里へと向かった』と言う情報を元に、人里の宿屋へとやってきたマミたちだが、
待っていた情報は残念ながら望んだものではなかった。

魔理沙「ま、しょうがないな」

シャルロッテ「しょうがないね」

アリス「家を出るのが遅れたのは誰のせいだったかしら?」

がっくりと肩を落とすマミの背を軽く叩いて宥める魔理沙とシャルロッテに対し、アリスは睨むような視線を送る。
シャルロッテの乱入と、その後の壊れた窓の修理がなければ1時間は早くこれた筈である。

魔理沙「まぁまぁ落ち着けって、行き先なら大体見当がつくからさ」

アリス「本当でしょうね?」

魔理沙「ああ、本当だ。宿屋の親父、そのほむらって子がクリームヒルトと一緒に居た、って言ってたろ?」

それは確かにアリスも聞いていた。
なんでも、昨夜夜食を食べて帰ってきた時にピンク色の髪の少女を連れて帰ってきたそうだ。
あれっ?と思って見ると、6月の異変の時のお嬢ちゃんだったと言うので、ほぼ間違いなくクリームヒルトだろう。

シャルロッテ「私の可能性もあるよ」

アリス「お願いだからモノローグにまで突っ込みを入れないで……」

エリーじゃないんだからとげんなりするアリスには構わず魔理沙は続ける。

魔理沙「昨日あいつ等に会ったけど、確か今日もオクタヴィアと会う約束をしてたぜ」

かく言う私もしてたんだがな。と何故か胸を張る魔理沙。
何故約束をすっぽかして、シャルロッテと弾幕戦をしていたのか疑問だが、魔理沙だから、で納得する事にした。

マミ「オクタヴィア……? つまり、美樹さんの居る所に暁美さんたちは向かった、って事?」

アリスたちから聞いた話――平行世界のさやかの話を思い出しながらマミが言うと、アリスが頷く。
420 :東方焔環神 [saga]:2011/11/27(日) 18:38:19.92 ID:lAJBXs9I0

アリス「そういう事になるわね。 オクタヴィアの家は妖怪の山だったかしら?」

魔理沙「ああ、そうだぜ! そうと分かったら、早速……」

???「ちょっと待ったあああああああああああっ!!」

頭より行動が先に出る魔理沙らしく、魔理沙が箒に跨るのと、そんな声が降って来たのはほぼ同時だった。
声につられて上を見上げると、空から降って……いや、飛び降りてきている赤髪の少女が一人、こちら目掛けて落ちてくる。

アリ魔理シャル「「「!!?」」」

マミ「さ、佐倉さんっ!?」

ぎょっとして目を見開くアリスと魔理沙とシャルロッテに対し、マミは別の意味で驚く。
落ちてきているのはマミの良く見知った魔法少女仲間である杏子だったのだ。

杏子「ようマミ! 探したぞ! でさ、再会して早々悪いんだけど……」

マミ「?」

杏子「ちょっと受け止めてくれ! 後先考えず飛び降りちまった」

マミ「ちょっ!? 佐倉さんっ!?」

杏子の言葉に今度こそマミは驚愕した。
咄嗟に魔法少女に変身しようかとも思ったが、既に時間はない。

再会早々、最悪の光景がマミの脳裏によぎったその時、杏子の背後から別の声が聞こえたかと思うと、
蝙蝠の様な羽の生えた少女が物凄い勢いで急降下してくる。

???「バカ杏子ーっ!! いきなり何してるのよーっ!!」

杏子「ぐえっ!?」

地面まであと数メートルと言うところで少女――ミスティアは杏子の服を掴むと、羽を一気に広げてその場で減速する。
一気に勢いを殺された杏子は、その反動で肺の空気を残らず吐き出した。

ブレーキをかけることに成功したミスティアはそのままゆっくりと着地する。
421 :東方焔環神 [saga]:2011/11/27(日) 18:39:27.13 ID:lAJBXs9I0

マミ「ちょ、ちょっと佐倉さん? 大丈夫?」

杏子「あはは、なんとかな……」

苦笑する杏子を見て、安心するのと同時に、マミの中で別の感情が湧き上がる。

マミ「もう、無茶しすぎよ! 寿命が縮まるかと思ったわ!」

杏子「だから悪かった、って……」

最初その感情は怒りとなって表れ……

マミ「貴女は何時もそう! 無茶ばっかりして……心配かけて……ぐすっ……」

杏子「あっ、おい……マミ……」

マミ「ホント、どうかしちゃうかと……ひっく……思っ……うぅっ……」

そしてそれは、とめどない涙となって溢れ出る。
怒りと安心感と、そのほか色々な感情がごちゃ混ぜになって、マミ自身、何で泣いているのか良く分からない。

その場で泣き崩れてしまったマミに、最初は呆然としていた杏子だが、やがて震えるその背中をそっと抱き寄せた。

杏子「悪い、マミの姿が見えたせいで、ちょっとだけ羽目を外し過ぎた。 アタシは大丈夫だからさ……」

マミ「…………もうこんな無茶はしない、って約束して」

杏子「分かったよ。 もうしない」

静かに涙するマミとそれを優しく抱きとめる杏子。
二人の様をアリスたち幻想の住人は肩をすくめつつ、それでも優しく見守っていた。


422 :東方焔環神 [saga]:2011/11/27(日) 18:41:06.53 ID:lAJBXs9I0
今回分終了、再会・合流パートが長すぎワロエナイ
423 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(滋賀県) [sage]:2011/11/27(日) 18:51:43.10 ID:WsvTGEGmo
乙乙
ワルプルギスの夜は通称だし名前としても使いにくいしサバトちゃんとか夜からとってナハトちゃんとかでもいいんじゃね?と思いましたまる
まあ誰だかわからなくなるけど
424 :1@携帯 [sage]:2011/11/27(日) 19:07:56.40 ID:SWRs90LDO
所用があるので以下携帯で
既にエクストラを越えているのに杏子ちゃんとオクタヴィアちゃんすら出会わないとか……
まだまど神さまも控えてるのに……、これがファンタズムステージか……

>>404
有力な資質持ち人材を無駄遣いしまくってる改編前べえさんなら間違いなく撲滅対象でしょうね。
畏れてくれる人間、信仰してくれる人間が居て初めて妖怪や神々は成立するものなので……。

でも一番マジ切れしそうなのは輪廻転生を狂わされる四季映姫さま以下閻魔さまたちかもしれない……
425 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/27(日) 20:04:23.77 ID:esaP/7aDO
続き乙です!
お話しが長くなっても、俺達はむしろ喜んじゃいますけどねっ。

確かに幻想郷から見れば、QBは邪仙みたいなもんなのかも。

それにしても、杏子ちゃんはまたミスティアに借りをつくっちゃったねぇ…。
426 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(東京都) [sage]:2011/11/27(日) 21:50:37.36 ID:a6fFHpP40
>>425
むしろ一件清楚な青い仙女様も「一緒にしないで欲しい」と言うレベルだろ……
427 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(東京都) [sage]:2011/11/27(日) 22:04:11.66 ID:25q2maf70
乙! 早くオクタちゃんとあんこちゃん出会って欲しいなーと思ってしまうのでした!

シャルちゃんとマミさんの関係が奇妙すぎて素敵 ヒヤヒヤするのにほっこりするとはこれいかに
お化けだと思って怖がるくせに、ちゃっかりスペカに使っちゃってるし…ブロンドヘアーモグモグ
428 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/11/27(日) 23:14:47.24 ID:KEX9Lzn9o

ちょくちょく合流し始めたなぁ
429 : [saga]:2011/11/30(水) 23:41:40.42 ID:LWNaE3pf0
どうも、夜分遅くにこんばんは
例にもよって誤字訂正項から

>>412

火に油、いや火にガソリンを注ぐような魔理沙の言葉に流石のアリスも目が据わる。
あまりの急展開にマミが呆然としていると、ここにいると危ないと思ったのかぬいぐるみがこっちに這って来た。
一触即発な二人から少し離れたところで、ぬいぐるみはピンク色の髪の女の子に姿を変え、マミの元に駆け寄る。

マミ「え、えっと、大丈夫?」

普通ならぬいぐるみが女の子に姿を変えた時点で取り乱すところなのだが、意外にもマミは落ち着いていた。
昨日からの一連の出来事で、慣れてしまった、と言うか感覚が麻痺してしまったのだろう。

シャルロッテ「は、はい、大丈夫で……、って、きゃあああぁぁぁぁ!? オバケぇぇぇぇぇぇぇっ!!?」

マミ「えっ? あっ、オバケ……?」

二人から離れて、胸をなでおろしていた女の子だが、マミの顔を見るなり悲鳴を上げた。
呆気に取られるマミの前で女の子は跪いて土下座をすると、念仏を唱えるようにまくし立てる。

シャルロッテ「噛み付いてゴメンナサイ、食べちゃってゴメンナサイ、殺しちゃってゴメンナサイ! だからお願いだから化けて出ないでぇぇぇっ!!?」

マミ「えっ? 噛み……食べ……殺すって……ええっ!?」

身に覚えのない懺悔と謝罪にマミが戸惑っていると、一触即発モードを解除したアリスがそっと耳打ちしてくる。

アリス「この子ね、平行世界で貴女を殺しちゃった子なの。 丁度お盆だし、化けて出られたと思ったのよ」

マミ「ああ、そういう事なんですか……、平行世界で私を……って、ええっ!?」

アリスの言葉に一瞬納得したマミだが、今度は別の意味で戸惑う羽目になった。
思いっきり取り乱すマミを見て、アリスが仕舞ったと言うように顔をしかめる。

そんな中、一人だけ面白いものを見た、と言わんばかりにニヤニヤしている者がいた。
他でもない霧雨魔理沙その人である。

魔理沙「アリス、なんだか面白い事になってるじゃねーか……。 話、聞かせてくれるよな?」

アリス「はぁ、分かったわ。 教えるから二人を落ち着けるのを手伝って頂戴」


430 :東方焔環神 [saga]:2011/11/30(水) 23:45:48.97 ID:LWNaE3pf0
――――――― 【救済の魔女と焔の魔法少女+α】 @ 妖怪の山の麓 ―――――――

クリームヒルト「うーん、今から行っても居るのかな? もうほむらちゃんを探しに出ちゃったんじゃない?」

オクタヴィアの家を出て、麓まで下りて来た所で、クリームヒルトは当然とも言える疑問を漏らした。
文曰く、マミたちはほむらを探しているそうだし、最後に見たのは今朝の話らしいので、既に家に居ない可能性が高い。

クリームヒルトの嫌な予感に対し、すぐ背後からほむらの小さな声が返ってくる。

ほむら「い、居なかったら人里経由でさやかの所に戻るだけよ。 さやかに残ってもらったのはその為なんだし……」

クリームヒルト「それはそうなんだけど……。 ねぇ、ほむらちゃん」

クリームヒルトは振り返ることなく声をかける。
返ってくるほむらの声は、やっぱり震えている。

ほむら「な、なにかしら? まどか……」

クリームヒルト「落としたりしないから、そんなにくっつかなくても大丈夫だよ」

ほむらの声が背後から聞こえる理由、それはクリームヒルトの背中に、ほむらがしがみ付いているからだ。
それも、空を高速で飛ぶ、箒に跨った状態で、である。

ほむら「い、いえ、別にまどかの事を信用してない、って訳じゃないのよ? ただ、こういうのって慣れてなくて……」

クリームヒルト「ごめんね、ほむらちゃんと一緒に飛ぼうと思ったらこうするしかなくて……」

幻想郷に来た当初こそ、魔理沙の箒に乗せて貰って空を飛んでいたクリームヒルトだが、
流石に2ヶ月も過ぎると空を飛ぶ事ぐらい普通に出来るようになっていた。

ただしそれは、『一人で飛ぶなら』という注釈がつく。
空を飛ぶ手段のないほむらと一緒に飛ぼうと思ったら、ほむらを何かに乗せるしか手はない。
結果、選んだのは入手しやすい箒となった訳である。

お燐「箒が嫌ならあたいの猫車に乗るかい? 普段は死体を乗っけてるヤツだけど……」

ほむら「遠慮させてもらうわ(キッパリ」
431 :東方焔環神 [saga]:2011/11/30(水) 23:48:17.65 ID:LWNaE3pf0

お燐の申し出を、ほむらは即座に断った。
箒よりも安定感はありそうだが、死体運びの道具で運ばれるのは気分が悪い。
お燐としても冗談で言っていた様で、だよねぇ……と言いながら、けらけらと笑っている。

ほむら「とにかく、まどかは気にしなくて良いわ。 あの険しい山道を上り下りする必要がない、と言うだけで十分恩恵を受けているし……」

クリームヒルト「うん、分かった。それじゃあなるべく早く着くようにするね。ちょっとペースを上げるよ。 お燐さん!」

お燐「はいよ! あたいもちゃんと付いていくから気にしなくて良いよ」

お燐の返事を聞き、クリームヒルトは箒を飛ばす速度を更に上げる。
風きり音が強く大きいモノになり、それにも増して風圧も上がる。
夏の昼間だからまだ良いものの、寒い時期には出来れば遠慮したい。

クリームヒルト「それにしても、“私”が存在しない世界のマミさんかぁ……。つまりマミさんは私の事は知らないんだよね……」

ほむら「まどか……」

表情こそ見えないが、クリームヒルトが落ち込んでいるのは声音だけでも良く分かった。
こっちは知っている相手なのに、相手はこっちを知らない……。
ほむらもその寂しさをイヤと言うほど味わってきたので、その気持ちは良く分かる。
分かるが、どう声をかけるべきか、までは分からない。

ほむら「…………」

だから代わりに、ほむらは強くクリームヒルトの身体を抱きしめる。
クリームヒルトは一人ではない、私がここに付いている、そう伝わるように……。
少しでも彼女の寂しさを溶かせるように……。

そんな二人を、少し後ろから見ながら、お燐は小声で呟いた。

お燐「ふむ、ちょいとばかしこれは難儀な話だねぇ……」


432 :東方焔環神 [saga]:2011/11/30(水) 23:53:40.96 ID:LWNaE3pf0
――――――― 【魔法使いと魔女と魔法少女+α】 @ 妖怪の山登山道 ―――――――

ミスティア「あ、ありのまま、起こった事を話すわ。
      私は杏子と一緒に人里に買い物に出た筈なのに、いつの間にか妖怪の山で天狗と弾幕戦をしていた……」

杏子「テンパるのは良いけど絶対手を離すなよ! 離したら焼き鳥にするからな!」

顔を真っ青にして、現実逃避じみた台詞を吐きつつ、ミスティアは弾幕の飛び交う空を飛ぶ。
そのミスティアの真下で本日二度目となる恐怖の飛行を味わっている杏子は、悲鳴に近い声を上げつつも、向かってくる弾幕を槍で迎撃する。

クリームヒルトたちが山を降りていったちょっと後、妖怪の山上空で弾幕戦が勃発していた。
なぜ、こんな事になっているか、と言うと……

魔理沙「天狗の里に勝手に入っちまったんだからコレは当然の結果だぜ」

アリス「真っ先に天狗の里の上空に入っていった貴女に言われたくはないわ」

片や圧倒的火力で、片や無数の人形を駆使した物量戦で、哨戒天狗たちを蹴散らしつつ魔理沙とアリスが先陣を切る。
無数の弾幕が飛び交う空で、二人が通った場所が道となり、その後に黒く大きな影が続く。
『空飛ぶ恵方巻』、『第二の雲山』など影で散々言われまくっているシャルロッテの相棒と言うか第二形態だ。

シャルロッテ「マミ! 三時と十時の方向から来るよ!」

マミ「オッケー、任せて!」

使い魔から送られてきた情報をマミに伝えつつ、操縦に専念するシャルロッテ。
対するマミはその背後で魔法少女に変身し、マスケット銃を具現化させる。

マミ(三時と十時……あの二人ね)

シャルロッテが言っていた方向にチラリと目線を送ると、脇から攻撃を仕掛けようとする白狼天狗の姿が見えた。
先頭を行く魔理沙とアリスが強敵なのを見て、真横からの攻撃を選択したようだ。

マミ「とりあえず、先手必勝ね! 行くわよ!」

果たして魔獣とは違う妖怪相手に、自身の魔法がどれだけ効果があるのか、
少々疑問ではあったが、マミはマスケット銃による弾幕射撃を開始する。

白狼天狗「!」

突如始まった弾幕による迎撃に、真横から斬りかかろうとしていた天狗の動きが止まり、一転して逃げの体制に入る。
僅か一回の斉射で逃げ出した天狗を見て、杏子は思わず眉を寄せる。

杏子「なんだ? あの程度で逃げるとか、天狗ってのは随分と臆病なんだな」
433 :東方焔環神 [saga]:2011/11/30(水) 23:56:01.46 ID:LWNaE3pf0

ミスティア「臆病なんかじゃないよ。 弾幕戦はもろにくらったらその場で退場って言う、シビアなルールなんだからね!
      回避に専念するのは基本中の基本だよ。 まぁ例外も居るには居るけど……」

そう言ってミスティアはちらりと魔理沙を見る。

魔理沙「何人寄ってこようが、私の間合いに入ったが最後だぜ! くらいな、必殺、『マスタースパーク』っ!」

天狗たち「「「ぎゃああああああああああっ!(ピチューン!」」」

魔理沙は向かってくるのが弾幕であろうと天狗であろうと、ところ構わずレーザーをぶっ放し、蹴散らしていく。
後に残るのは、黒焦げになって撃墜された哀れな天狗たちの山だ。

魔理沙「ま、ざっとこんなもんだな」

アリス「多少は手加減しておきなさいよ。あの子たち、まだ新米じゃない……」

飛んでくる天狗に若い顔が多いのを見破ったアリスが、たしなめる様に声をかける。
そんなアリスも、人形による遠距離攻撃で、次々と天狗たちを屠って居たのだが……。

杏子「なんて言うか、さやかには最も不向きな決闘方式だな……」

基本的に飛び道具(と言うか弾幕)ばかりが飛び交う戦場を見て、杏子はそんな感想を抱いた。
この戦場の中では、サーベル一つで斬り込んで行く、今は見れないあの戦闘スタイルは分が悪い。

ミスティア「さやか? ああ、あの人魚の事ね。 確かにあんまり向いてるとは言えないわねぇ……。
      一度やりあった事があるけど、内懐に飛び込んでくる戦術が主だったから、視界奪って返り討ちにしたし……」

1ヶ月以上前の話だから、今はどうか知らないけどね。と語るミスティアの話に、杏子は苦笑した。
違う歴史を辿った結果、魔女という妖怪になってしまったさやかがこの郷に居るとの事だが、
話を聞く限り、中身は杏子達の良く知るさやかと大差ないようだ。

ミスティア「さて、そろそろおしゃべりはおしまいかな」

ミスティアの言葉に、杏子は前方を見た。
ズタボロにされた白狼天狗が引き上げて行き、別の所から応援に来たであろう他の天狗がこちらに向かってきている。

ミスティア「ちょっと派手に動くよ。 舌を噛んでも恨みっこなしだからね!」

杏子「そっちこそ、回避ミスって被弾するなよ?」

表情こそ見えなかったが、ミスティアは笑っているのだろう、
かく言う杏子自身、湧き上がる感情に笑みを浮かべずには居られなかったのだから……。


434 :東方焔環神 [saga]:2011/12/01(木) 00:00:40.86 ID:bcd/dNZ90
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

文「で、貴女たちは哨戒天狗を袋叩きにした、と言う事ですか?」

オクタヴィア「あーあ、こりゃまた派手にやっちゃったねぇ……」

惨状としか良いようの無い里の景色を見て、文とオクタヴィアは驚くを通り越して呆れていた。

一時は天狗の里全域を巻き込んだ全面戦争に発展しかけた弾幕戦だが、
マミたちが探していた内の一人であるオクタヴィアたちがやって来た事により、双方が矛を納める事になった。

魔理沙が里の領空を侵犯したのは事実だが、最初に迎撃に出た若い白狼天狗が無警告で攻撃を仕掛けた事が判明したからだ。

マミ「一応、喧嘩両成敗、って形になったけど……、やっぱりやり過ぎだったかしら?」

杏子「少なくともアタシらの攻撃は自己防衛の範囲内だと思うぞ……たぶん」

戦いが終わって、落ち着いたせいか、現実に引き戻されたマミが、不安げに辺りを見回す。
対する杏子は、一見すると普通の態度に見えたが、よく見ると頬をひきつらせている。

魔理沙「大丈夫だって、弾幕戦のダメージはどんだけ強い術でも死ぬほど痛いだけで実際には死にはしないからさ」

杏子「死ぬほど痛いって時点で洒落にならねーよ……」

すっきりしたと言わんばかりにやけに良い笑顔で解説する魔理沙に、すかさず杏子はツッコミを入れた。
死ぬほど痛いと言うことは、一歩間違えばここに転がっているのはマミたちだった、と言うことだ。
冗談だとしても笑えない。

魔理沙「それにしてもマミの方はクリームヒルトの弾幕を見たときから相当のやり手だろうな、と思ってたけど、杏子もなかなかだったな。
    あとは単独で空さえ飛べれば二人とも合格なんだがなぁー」

杏子「おい、話を聞け。と言うか二度とやらねーからな、こんな事……」

オクタヴィア「あー、杏子? 魔理沙相手には何言っても無駄だから、諦めた方がいいよ」

魔理沙の言動にはあたしも手を焼いているからね、と励ましにもならない事実を告げつつ、オクタヴィアが杏子の肩をつかむ。
杏子はがっくりと肩を落としつつ、オクタヴィアの方を横目で見る。

杏子「はぁ、なんなんだここの連中は……お前以上に疲れるぞ」

オクタヴィア「む? 再会早々言ってくれるじゃない?」

杏子「再会、ねぇ……? 少なくともアタシの知り合いに人魚が居た覚えはないんだけどな……」
435 :東方焔環神 [saga]:2011/12/01(木) 00:03:09.75 ID:bcd/dNZ90

今朝方、ほむらがそうしたのと同じように、杏子もオクタヴィアの尾びれを見る。
上半身だけを見るなら、記憶の通りの『美樹さやか』なだけに、違和感がすごい事になっている。
そんな言葉と視線を同時に受けたオクタヴィアは、次の瞬間、その場に膝……というか尾びれをついた。

オクタヴィア「うっ……、ほむらといいアンタといい、人が地味に気にしてるところを突いてくるわね。
       クリームヒルトは魔法少女の頃と大差ないのになんであたしだけ……」

そう言いながら、その場で地面にのの字を書き始めるオクタヴィア。
漫画的表現なら間違いなく彼女の周囲には縦線が入っているであろう。

杏子は一瞬、仕舞ったというような顔をすると、ばつの悪そうな顔で頭を掻きつつ、オクタヴィアに声をかける。

杏子「あー、でもまあ……」

オクタヴィア「?」

杏子「そのカッコもカワイイと思うぞ。 似合ってるし……」

オクタヴィア「!!」

そんな言葉をかけられるとは思ってもいなかったのだろう、のの字を書くのを止めたオクタヴィアの顔が、瞬く間に真っ赤になる。
割り込むのも憚れる、謎空間が形成されていくのを遠巻きに見守りつつ、文が呟く。

文「あややや、落として上げるとは、高度な話術をお持ちですねぇ……。あれが天然なら恐ろしい事になりますよ」

マミ「佐倉さんったらいつの間にあんな殺し文句(魔法)を覚えたのかしら?
  幻影魔法は昔から得意だったけど、コレはちょっと厄介ね。 私も惑わされないように気をつけないと……」

冗談めかしてそんな事を言いながら、マミはじゃれあう杏子とオクタヴィアの姿に、過ぎ去りし日々の記憶を重ねる。
目の前の光景と雰囲気は、かつての二人と全く同じで……、それらを前にすると、世界の違いだとか、人と妖怪だとかと言う問題も小さく思えてくる。

――平行世界の存在など、似て非なるものであって、別人同然である。

アリスの話を聞いた直後から、心のどこかで引っかかっていたそんな懸案は、少なくともあの二人には適用されなかったらしい。

マミ(わたしの杞憂だったみたいね……。でも、そういうことなら……)

懸案が晴れて、ほっとするのと同時に、ある感情がマミの中に起こる。
それはとても難しい事だと、マミ自身分かっているだが、それでも願わずには居られなかった。

マミ(せめて……、せめて二人には、この優しい時間が、出来るだけ長く続きますように……)


436 :東方焔環神 [saga]:2011/12/01(木) 00:07:36.85 ID:bcd/dNZ90
―――――――― 【救済の魔女と焔の魔法少女+α】 @ 妖怪の山 ――――――――

ほむら「はぁ……、見事なまでに行き違いだったわね……」

クリームヒルト「あはは……、そうだね〜」

背後から聞こえるほむらちゃんの疲れたような声に私は思わず苦笑した。
アリスさんの家に誰もいない事を確認し、人里へと向かった私たちを待っていたのは、マミさんたちが妖怪の山へと向かったと言う情報だった。
互いに相手を探しに出た結果、見事にすれ違ってしまった、と言う事のようで……。
そんな訳で私たちは来た道を引き返していた。

クリームヒルト「オクタヴィアちゃんを残しておいて正解だったね……」

ほむら「そうね。全員で探しに出ていたら昨日の二の舞になるところだったわ……」

お燐「昨日は地底の温泉に来てたんだって? さとり様から話を聞いた時は流石のあたいも頭を抱えたよ……」

それは私とほむらちゃん、双方の話をまとめた結果、判明した笑い話のような笑えない話。
ほむらちゃんがお燐さんと共に地底を出た直後に、幽々子さんたちと一緒に私が地底に入って行ったという、今日以上に洒落にならないすれ違い。
わずかの差でほむらちゃんは幻想郷を歩き回る羽目になってしまった。
昨日の夜、繁華街で私とほむらちゃんが出会えたのはやっぱり奇跡と言っても過言ではないと思う。

クリームヒルト「ほむらちゃん、寒くない?」

ほむら「ええ、大丈夫よ。 さっきみたいに大してスピードは出てないし、むしろ風が心地いいくらい……」

ふと気になり尋ねた私の言葉に、ほむらちゃんのリラックスしたような返事が返ってくる。
急いでいた行きと違い、ゆっくりと地表近くを飛ぶ飛行は気軽な空中散歩と言った感じで、確かに心地いい。

だけど、今の私に、そんな心地いい空中散歩を楽しむ余裕はなかった。

マミさんたちがほむらちゃんを探して妖怪の山に向かった、と言う事は間違いなく目的地はオクタヴィアちゃんの家だろう。
その場合、山に残ったオクタヴィアちゃんと文さんがマミさんたちを引き留めてくれる手筈になっている。
急いで帰る必要はどこにも無い。

そう、急ぐ必要は無いのだ。
私の事を知らないマミさんたちとどう顔を合わせたらいいか、少しぐらい考える時間があってもいい筈。
ゆっくり飛んだ所で、稼げる時間など大したモノではないのだけど……。

私の葛藤が伝わってしまったのか、暫し会話の無い空中散歩が続く。
そのまま山の中腹に差し掛かったときの事、真横を黙って飛んでいたお燐さんが前に出てきて、私たち二人に向き直る。

お燐「ところでお二人さん、ちょいと聞きたいんだけどさ……」

クリームヒルト「なんですか? お燐さん」
437 :東方焔環神 [saga]:2011/12/01(木) 00:10:27.69 ID:bcd/dNZ90

お燐「その、二人の知り合いだって言う子は、一体どんな子たちなんだい?」

どんな子、その言葉が意味するのはもちろん人相や容姿の話ではない。
私たちから見て、どんな人なのか? どんな存在なのか? それをお燐さんは尋ねてきた。

お燐さんから問われて、私は考える。 いや、改めて確認する、と言った方が正しいかもしれない。
マミさんと、杏子ちゃん、この二人は私にとってどんな存在なのか、私は二人とどんな関係でありたいのか、再度、自分自身に問う。

クリームヒルト「憧れの先輩と、友達……ううん、違う。 それよりも……それよりも、大切で大好きな人、かな……」

ほむら「そうね。私もまどかと同意見よ。 マミ……巴さんは少し抱え込む癖があるけど、私たちが手本としたくなるほどいい先輩だし、
    杏子はちょっとガサツだけど、ああ見えて優しい子だしね。 二人が私たちにとって大切な存在なのは間違いないわ」

クリームヒルト(ああ、そっか、そうだったんだ……)

自分でそう答えて、『ああ、そうなんだ』と私は納得する。
どうやら深く考え過ぎていたせいで、基本的な、最も大切なことが見えていなかったようだ。
深く考えなくても最初から、自分自身の中に答えはあったのだから……。

その答えに気付くのと同時に、私は以前、幽々子さんが言っていた事を今更のように思い出す。

『貴女たちが馴染めたのは、貴女たちの方から積極的に混じろうと努力した結果よ。 壁を作っている人を受け入れてくれるほどここの住人は甘くないわ』

つまりはそういう事。
問題があるとするのなら、それはむしろ会う前から勝手に壁を作り上げていた私自身の方であって、何事も始めてみなければ結果は出ない。
まず、きちんと会わない事には話は始まらないのだ。考えるのはその後でもいい。

お燐「そうかい、二人がそう言うなら間違いなさそうだね。 なら、初対面のあたいでも仲良く出来そうだ……」

「いや〜、安心したよ〜」と、安堵したように呟くお燐さん。
その顔がやけににこやかなのは、私たちの話を聞いたから、では無い筈だ。
先ほどの質問にしても、答え自体を聞きたかった訳では無く、それを改めて私に自覚させる為のものだったに違いない。

クリームヒルト「……ありがとう、お燐さん」

お燐「? 何か言ったかい?」

クリームヒルト「うぅん、なんでもないです」

そう言いつつ、私は前を見る。
オクタヴィアちゃんの家がはっきりと見えるところまで飛んできていたけど、さっきまでの不安はもう何処にもなかった。


438 :東方焔環神 [saga]:2011/12/01(木) 00:13:20.70 ID:bcd/dNZ90
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

クリームヒルト(……と、思っていた時期が私にもありました)


マミ「いちばん!巴マミ!歌っちゃいま〜す」

杏子「おっ!いぃぞマミぃ、やれやれ〜っ!」

オクタヴィア「マミさんカッコいーっ!」

文「皆さんノリが良いですね〜。これはいい記事になりますよ〜。あっ、ミスティアさん、熱燗と串焼き追加で」

ミスティア「はいはい、少々お待ちを」

シャルロッテ「うぅっ、気持ち悪いよぉ……」

アリス「弱いのに無理して飲むから……、出すならこれに出しなさい」


ほむら「…………なんなのこの状況は? って、お酒臭っ!?」

お燐「こりゃあ完全に出来上がっているねぇ……」

オクタヴィアちゃんの家に戻った私たちを待っていたもの。
それは目も当てられないようなどんちゃん騒ぎだった。

あまりの惨状に扉の前で呆然としていると、頬をわずかに赤く染めた魔理沙さんが、私たちに気がついて声をかけてくる。

魔理沙「おっ、クリームヒルトじゃん。遅かったな! そっちの子が例の“ほむらちゃん”か?」

クリームヒルト「う、うん、そうだけど……。いったい何があったんですか?」

オクタヴィアちゃんや文さんなどと共に乱痴気騒ぎを繰り広げるマミさんたちを見ながら、私は魔理沙さんに尋ねた。
たぶん、今の私の顔は相当ひきつっているのだろう、魔理沙さんは「あははは……」と、乾いた笑いを漏らしつつ目線を逸らす。
答えようとしない魔理沙さんに代わって、シャルロッテちゃんの介抱をしていたアリスさんが答えてくれた。
439 :東方焔環神 [saga]:2011/12/01(木) 00:15:34.09 ID:bcd/dNZ90

アリス「色々とあってね。白狼天狗が持ってきた酒を、そこの後先考えない魔法使いがマミたちに無理矢理飲ませたのよ」

単なる水だ、って嘘までついてね……と、補足したアリスさんは心底侮蔑したような目線を魔理沙さんに向ける。
すべてを理解した私は、にこやかな笑顔を浮かべながら魔理沙さんの方に向き直り、問い掛けた。

クリームヒルト「……魔理沙さん、マミさんたちに無理矢理お酒を飲ませたんですか?」

魔理沙「い、いや、私は少しでも場を盛り上げようと思ってだな……」

クリームヒルト「……飲ませたんですね?」

魔理沙「はい、飲ませました」

笑顔のままの私が詰め寄ると、さしもの魔理沙さんも堪えきれなくなったようで、降参と言うように両手をあげた。
何があったのか、ようやく理解が追い付いたほむらちゃんも呆れた表情を浮かべ、アリスさんは肩をすくめている。
対する私は、それまでの作り笑顔を止め、これ以上ないぐらいの大声で、一気に捲し立てた。

クリームヒルト「ダメじゃないですか魔理沙さん! 魔理沙さんだって、オクタヴィアちゃんやシャルロッテちゃんが、私ほどお酒強くないのは知ってますよね!?
        それだけじゃなく、普通の中学生のマミさんたちにも盛るっていったい何を考えてるんですか!?」

魔理沙「悪かったって、まさかアレだけでこんなに酔うとは思ってなかったんだよ。だからお願いだからそのスペルカードはしまってくれ」

クリームヒルト「いいえ、許しません! 少し頭を冷やしてください!」


                      憧憬 『ティロ・フィナーレ』


440 :東方焔環神 [saga]:2011/12/01(木) 00:21:14.61 ID:bcd/dNZ90
―――――――― 【魔女と魔法少女と魔法使い+α】 @ 守矢神社 ――――――――

早苗「――――で、オクタヴィアさんの家を吹き飛ばしてしまったから、ウチに来た、と?」

アリス「簡単に言うとそう言うことよ」

クリームヒルト「うぅっ、面目ありません……」

話を聞き終えて、心底げんなりした様子の早苗さんに、私は深々と頭を下げた。
ついカッとなった私が、魔理沙さんと一緒にオクタヴィアちゃんの家を吹き飛ばしてから数時間後、私たちは山の上にある守矢神社へと来ていた。
ある程度の広さがあったオクタヴィアちゃんの家を壊してしまったので、みんなで集まれる場所がなくなってしまったからだ。

アリス「クリームヒルトが謝る事じゃないわ。 悪いのは全部アイツよ」

そう言ってアリスさんは、背後の境内を見やった。
広い境内の真ん中では、酔いから回復したオクタヴィアちゃんと魔理沙さんが、弾幕戦を繰り広げている。


オクタヴィア「よくもあたしの家を吹き飛ばしてくれたわね! 今日という今日は許さない!」

魔理沙「いやいや、吹っ飛ばしたのは私じゃなくてクリームヒルトだぜ」

オクタヴィア「問答無用! もともと魔理沙が酒なんか飲ませたのが悪いんでしょ!?」


怒号とも罵声ともとれる会話と、弾幕の応酬が繰り広げられ、時々派手な爆音が聞こえてくる。
その様子をマミさんたちは遠巻きに苦笑しながら見守っている。

早苗「お盆の時期は忙しいのに……。 まぁ、話は分かりました。
   神奈子さまたちにお伺いを立ててきますので……クリームヒルトさん、一緒に来てください」

クリームヒルト「あっ、はい、分かりました」

頷きつつ私は奥へと戻っていく早苗さんの後に続く。
長い縁側を歩いて、表から見えない位置まで来たところで早苗さんはふと立ち止まり、私の方へと振り返る。

早苗「ところで、クリームヒルトさん。 その、マミさん、って方たちとはどうなったんですか?」

クリームヒルト「? どうなったって……ああ、酔いの方なら大丈夫ですよ。
        オクタヴィアちゃんの家には永琳さんから貰った酔い醒ましの薬がありましたから……」

早苗「それは良かった……じゃなくて! ちゃんと話は出来たんですか? って話ですよ!」

私の発した答えを早苗さんはにこやかに受けて、次の瞬間声を荒げて突っ込んだ。
見事なノリツッコミだったな、としょうもない事を頭の片隅で考えつつ、私は思わぬ質問に縮こまる。

クリームヒルト「えっと、話さないとダメ、ですか?」

早苗「出来れば聞きたいです。 さっきのクリームヒルトさん、困ったと言いながら、随分とにこやかな表情でしたよ?
   そんな表情になれるほどの良い話、って興味あるじゃないですか。 それに、私にそんな奇跡が起こった時の参考にもしたいので……」

そう答える早苗さんの目は興味津々と言うように輝いていて、それでも表情はどこか寂しげで、
そんな早苗さんを見てしまうと、断る事など出来なくなってしまった。

クリームヒルト「え〜と、ここに来るちょっと前の話なんですけどね……」

441 :東方焔環神 [saga]:2011/12/01(木) 00:25:00.73 ID:bcd/dNZ90
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

それは酔い醒ましの薬を飲ませたちょっと後の事。
家を壊してしまったので、どうしたものかと悩んでいると、マミさんが話しかけてきたのだ。

マミ「えっと、貴女が鹿目まどかさん?」

クリームヒルト「はい、鹿目まどかです。 と言っても今は魔女のクリームヒルトなんですけどね……。
        ああ、でも呼び方は好きな方で呼んでもらって構いませんから……」

はにかみながら私がそう言うと、マミさんはニコリと微笑んで私の手を取る。

マミ「そう、それじゃあ鹿目さん、って呼ばせてもらうわ。 貴女の方は知っているかも知れないけど私は巴マミよ。
   貴女の話は暁美さんから聞いているわ。暁美さんの一番大切な友達だ、って……」

クリームヒルト「そうなんですか? そっか、ほむらちゃんがそんな事を……」

マミさん言葉に、私は嬉しくなると同時にちょっとだけ悲しくなった。
“私”の居なくなった世界でも、ほむらちゃんは私の事を「友達だ」と言ってくれている。
これは素直に嬉しい。 魔女の私にも変わらず接してくれるし、ほむらちゃんには感謝してもしきれない。

でもそれは、マミさんたちからすると、ほむらちゃんの話を介した存在、と言う事でもある。
仕方が無い事だけど、事実として突きつけられるとやっぱり寂しい。

マミ「……一つ、聞きたいんだけど、“魔女”と言う事はあの美樹さんと同じで平行世界からここに来た、って言う事なのよね?」

クリームヒルト「はい、そうですけど……」

正確に話すと、私に関してはちょっと事情がフクザツなのだけど、ここはそういう話にしておく。
私がマミさんの言葉に頷くと、マミさんは私の手を取ったまま、小さくため息をつく。

マミ「そうよね。 はぁ、残念だわ……」

クリームヒルト「えっ?」

ため息と共に出た、残念という言葉に私は思わず声を上げていた。
何の事だか分からないでいると、マミさんは私に優しく微笑みかける。

マミ「平行世界の私にはこんな可愛いお弟子さんが居たのに、私には居ないなんて、平行世界の私が羨ましいわ」
442 :東方焔環神 [saga]:2011/12/01(木) 00:27:28.85 ID:bcd/dNZ90

クリームヒルト「えっ? ええっ!? わ、私、マミさんの弟子とかじゃ……」

マミ「あら?違うのかしら? 暁美さんの友達で、美樹さんの親友なら当然私とも知り合っていたのでしょう? それに……」

クリームヒルト「それに?」

マミ「さっきのアレ、見事な『ティロ・フィナーレ(弾幕)』だったわよ。 
   私の『ティロ・フィナーレ』をあそこまで自分のものに出来てる子が、私の友人じゃないなんてウソよ」

そう言ってマミさんは私にウィンクしてみせる。
その表情は、私の記憶の中のマミさんと全く同じ笑顔で……、
そんな笑顔を今日初めて会った私に向けてくれた事が嬉しくて……

マミ「えっ? あっ、鹿目さん? 私、変な事言っちゃったかしら?」

クリームヒルト「えっ?」

マミ「いえ、だって、鹿目さん泣いて……」

言われて初めて、私は涙を流していた事に気が付く、気付かないうちにうれし涙が零れてしまったらしい。
私が慌てて涙を拭っていると、背後からからかうような口調の杏子ちゃんの声が聞こえてきた。

杏子「おうおう、女の子泣かせるとは随分じゃねーか。 おーい、ほむらーっ! マミがお前のお友達泣かせてるぞーっ!」

ほむら「なんですって!?」

マミ「ちょっ、佐倉さん!?そんな人聞きの悪いこと言わないで!? 暁美さんも、そんな怖い顔をして弓を構えるのは止めて!」


443 :東方焔環神 [saga]:2011/12/01(木) 00:30:32.43 ID:bcd/dNZ90
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

クリームヒルト「……と、言うことがありまして……」

早苗「なんと言いますか普通に良い話過ぎて泣けてきました……。 ……よし!決めましたよ!」

私の話を聞いて、自分の事のように喜んでくれた早苗さんは、話が終わると拳を握りしめた。
それから、くるりと身を翻すと、さっきにも増して強い足取りで、廊下を歩き出す。

早苗「神奈子さまがなんと言おうと、大部屋を確保してみせます! 皆さまの為にこの東風谷早苗、一肌脱ぎましょう!」

???「あー、早苗?そんな事しなくても部屋ぐらい貸すよ。そんな話を聞いてしまったら尚更ね」

勢い込んで早苗さんが奥の襖に手を掛けようとしたとき、そんな声と共に襖の方が勝手に開く。
襖の奥から現れたのは、私にとっても馴染みとなりつつある神さま――八坂神奈子さんだ。

クリームヒルト「あっ、神奈子さん、お久しぶりです。それと、お邪魔してます」

そう言って私が深々と頭を下げると、神奈子さんは笑いながら言う。

神奈子「ああ、そんな畏まらなくてもいいよ。事情は承知しているつもりだしね。 それで、いつまで居るんだい?」

クリームヒルト「えっ……?」

たぶん、神奈子さんとしては純粋に予定を尋ねただけだったのだと思う。
だけど、その質問は私には、全く別の意味に聞こえて……、私は思わず固まった。

言葉につまる私を見て、質問の意図が伝わらなかったと思ってしまったのか、神奈子さんが言葉を付け加える。

神奈子「いや、部屋を貸す、と言ってもいつまでもと言う訳には行かないからね。 どのくらいで家が直るのか聞きたかったんだ」

クリームヒルト「あっ、えっと、長くても二・三日です」

神奈子「そうかい、うん、それくらいなら問題ないね。 早苗、部屋の準備は私がするから、みんなを連れてきなさい」

早苗「分かりました、神奈子さま」

早苗さんは一礼すると表へと戻って行き、神奈子さんは奥へと取って返す。
そんな様子を私は、どこか遠くのことの様に感じながら、その場で動けずに居た。

全く考えていなかった訳ではない。
奇跡的な再会を果たしたあの時から、そうなるんじゃないかと言う予感はあった。
だけど私は、それを敢えて考えない様にしていた。 見ないようにしていた。
考えてしまうと、見てしまうと、色々な意味で動けなくなってしまいそうだったから……。

だけど私は考えてしまった、とうとうその事実を直視してしまった。
一度意識してしまうと、火のついた思考は、もう私自身にも止められなかった。

間違いなく訪れるであろう“その時”の事で、私の頭はいっぱいになってしまう。

クリームヒルト「いつまでもと言う訳には行かない、か……。 私は……どうしたらいいのかな?」

小さく呟いた私の言葉に、返ってくる答えは、無かった。


444 :東方焔環神 [saga]:2011/12/01(木) 00:40:31.80 ID:bcd/dNZ90
ようやくまどマギ勢が全員集合と相成りました。
まぁ息つく暇も無くシリアスパートに入ってまいるわけですが……
クリームちゃんにどんだけ試練を与える気だよ俺、正直かいてるこっちも気が重いよ……

ちなみに補足しておきますと、マミと杏子にとってまどかは、
『ほむらが語る昔の友達』=『今は居ない人(円環に導かれた?)』と言った認識です。
アリスから平行世界の話を聞きたマミは、『平行世界では』生きていたのでほむらとさやかの友達だった、と判断しました。


それにしてもオクタヴィア家と本編についで戦場となった天狗の里ェ……
445 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/12/01(木) 07:41:55.76 ID:98XeHh5DO
超、お疲れ様!

僅かな時間かも知れないとは言え、良かったじゃないか、クリームヒルトちゃん。

そろそろ、あのお方の登場が近づいて来てるんでしょうか…。でも結局、どうするかを選ぶのはあの三人しだい…なんですよね?
446 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/12/02(金) 06:22:18.82 ID:yOpVKq5DO
生身飛行にビビって思わずギュッとしちゃうほむほむ可愛い。
447 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(滋賀県) [sage]:2011/12/03(土) 00:51:47.02 ID:8R4tnE4+o
本編で余裕でぶっ飛んでたけどあれは跳躍であって飛翔ではないという事なのか
まあどうでも良いか
448 : [saga]:2011/12/08(木) 21:29:49.52 ID:T+KBN3p90
どうも、大変お待たせいたしました。
続きの投下でございます。

>>447
そういう理解でお願いします。
杏子の生身飛び降り事件とかも同様で
449 :東方焔環神 [saga]:2011/12/08(木) 21:31:52.47 ID:T+KBN3p90
――――――――――― 【その日の夜 @ 守矢神社】 ―――――――――――――

ほむら「博麗神社?」

マミ「そう、博麗神社。 そこがこの世界と私たちの居た世界の境目になっているそうなの」

聞き返したほむらの言葉にマミは頷いた。
守矢神社の大部屋に通されて、ようやく落ち着くことが出来たほむらたちは、
夕食までのひと時を互いに持っている情報の交換に費やす事にした。

当然と言えば当然なのだが、最初に挙がったのは「元の世界に帰れるのか?」と言う疑問だった。

杏子「なんだ、ちゃんとした出口があるのか。 アタシはてっきりあの変な裂け目を探さないとかと思ったよ」

ほむら「変な裂け目?」

ここに来た時の記憶がハッキリしないほむらは思わず聞き返し、マミも興味深げに身を寄せてくる。
今ここに居る魔法少女の中で、唯一裂け目をはっきりと目撃し、自らの意思で飛び込んだ杏子が、その時の様子を説明する。

杏子「ほむらたちが魔獣にやられかかった時に出来た、得体の知れない変な空間さ。
   アタシは二人がそこに落ちて行くのが見えたから、そこに自分から突っ込んだんだ。 そしたら、この世界に抜けて……」

ほむら「さっきの妖怪の屋台をぶっ壊した、と……」

ほむらの一言に、杏子は思わず声を詰まらせた。
クリームヒルトたちの口利きもあって、オクタヴィア家と共にミスティアの屋台も修理してもらう事になったのだが、
それで貸し借りが完全にチャラになったか、と言うと、そう言う訳ではない。
未だに杏子はミスティアにこき使われる身であり、夕食が終わり次第、屋台営業に出ることになっている。

マミ「それで納得が行ったわ。 アリスさん曰く、ここは人の世である私たちの世界から結界で隔離された場所らしいの。
  私たちが落ちた、って言うその裂け目は、その結界が何らかの原因で緩んで出来てしまった綻びだったのよ」

杏子「成る程ね。 魔獣が作り出してるあの異相空間をもっと強力にしたような感じなんだな……。
   そういや、さやかたちもその結界を潜り抜けてここに来たのか?」

マミの説明で、自分の経験が裏付けが得られた為だろう、うんうんと頷いていた杏子は、
他の幻想郷の住人たちと共に、その他の準備をしていたオクタヴィアに話を振る。

オクタヴィア「ん? あたしたち? まぁ、似たようなものだけど、あたしたちの場合は、『そうするしか無かった』って言うのが正しいかな」

ほむら「!」

マミ「美樹さん、それはどういう事かしら?」

自嘲するようなオクタヴィアの言葉に、ほむらは全てを把握し、マミと杏子は首をかしげた。
苦笑いを浮かべつつ、オクタヴィアは話を続ける。

オクタヴィア「えっと、あたしたち魔女って、こう見えてももう人間とは違う化け物なんですよ。
       幻想郷は『非常識』の世界だからまだどうにかなるんだけど、外に出ると呪いとか穢れとかが駄々漏れになっちゃうんだよね。
       それにマミさんたちの居た外の世界って、魔法少女が堕ちて、あたしたちみたいなのになる前に消しちゃうヤツが居るんでしたよね?」

マミ「円環の理、ね……」

マミが呟いた言葉にオクタヴィアは小さく頷く。
それはマミたちの居た世界で、魔法少女の間で語り継がれてきた、ささやかな救済を意味する言葉。
450 :東方焔環神 [saga]:2011/12/08(木) 21:34:26.06 ID:T+KBN3p90

オクタヴィア「あたしが元居た世界にはそう言うのは無かったから、外に居ると超ヤバい化け物、ってだけだったけど、
       今はそれがあるから、ここから出たくても出られない、って言う訳なんですよ。 アハハハ、参っちゃっいますよねー」

早苗「オクタヴィアさーん、この布団そっちに持っていって下さ〜い!」

オクタヴィア「あっ、はーい!」

そう言って最後までおどけてみせたオクタヴィアが部屋から出て行くと、杏子がぽつりと呟いた。

杏子「あのさやかにはせめてもの救いすら無かったんだな……」

ほむら「まどかやシャルロッテもそうよ。
    望んだ奇跡の代償として呪いと絶望を背負い、自らが呪いとなってしまった悲劇の魔法少女。 それが彼女たち魔女なのよ……」

マミ「そんな彼女たちが人を呪わずに生きようと思ったら、箱庭のようなこの非常識な郷に籠るしかなかった……。 そう言う事なのね」

口々に呟きながら、ほむらたちは幻想郷について説明を受けたときに聞いた話を思い出す。


                      ――妖怪は人に畏れられるモノ――

                        ――怨念は人を祟るモノ――

                        ――神は人に祀られるモノ――


そんな常識を非常識に変えるのが、幻想郷であると。

ここでは人に仇なす妖怪も、災厄しかもたらさない呪いも、人に触れ得ぬ存在である神も、外の世界と同じであるとは限らない。
それぞれが個人の意思と感情を持ち、それぞれが勝手気ままに生きる摩訶不思議な郷なのだ。

裏を返すと、妖怪や怨念はおろか、神々すら存在を否定されつつある今の世では、そんな箱庭の中でしか、妖怪や神たちは存在できないと言う事でもある。
そしてそれは、円環の理と言う一種の常識により、存在を否定される魔法少女が生み出す呪いも含まれる訳で……。

マミ「あの美樹さんや妖怪、神さまたちにとっての最後の救い、それがこの幻想郷の正体なんでしょうね」

杏子「仮にも教会の娘だったアタシにはきっついハナシだなぁ……。
   神様すら救いが必要なほど、アタシらの世界はどーしようもない、って事じゃねーか」

ほむら「だからこそ、私たちで守らないといけないのよ。 それが出来るのは、元の世界では私たちしか居ないのだから……」

そう言いながら、ほむらはふと考える。
ほむらが今でも魔法少女として魔獣と戦っているのは、世界が改変されたあの時に抱いた想いがあるからだ。

『まどかが守ろうとした世界を守りたい』

これが今のほむらの柱であり道標となっている。
世界を守れるのは、魔法少女だけであり、世界を守ろうと思ったら、ほむらたちはここから帰らなくてはならない。
451 :東方焔環神 [saga]:2011/12/08(木) 21:39:40.70 ID:T+KBN3p90

ほむら(でも帰ると言うことは同時に、ここから出られないまどかやさやかたちと別れなくてはならないと言う事。
    そうなった時、私はここのまどかたちを置いて本当に帰れるの? この奇跡的な再会を一時の白昼夢だと切り捨てる事が、私に出来るの?)

???「……ら!……おい、ほむら!」

ほむら「!」

思考の海に呑まれかけたほむらだが、自身を呼ぶ声に引き戻される。
気付くと不可解そうな顔をした杏子がこちらを覗き込んでいた。

杏子「なにボーッとしてるんだよ? 話続けるぞ?」

ほむら「え、ええ、お願い」

取り繕いつつほむらが促すと、杏子は改めて話を切り出した。

杏子「でだ、そんな非常識な場所だからなんだろうな。アタシたち魔法少女にとっての常識も、ここじゃ通用しない」

マミ「魔法少女にとっての常識? それって一体何の話なの?」

遠回しな言い方にマミから当然の疑問が挙がるが、杏子はそれには答えず話を続ける。

杏子「マミ、ほむら、二人ともここに来てからソウルジェムはどうしてた?」

ほむら「ソウルジェム? ああ、そう言えば穢れを取るのを忘れて……あら?」

ほむマミ「「たいして穢れてない?」」

杏子に言われ、ほぼ同時に自身のソウルジェムを見たほむらとマミは、ほぼ同時に全く同じ言葉を呟いていた。
その反応を見て、杏子は自身の経験は偶然ではなかったと確信する。

杏子「やっぱりそうか……」

マミ「やっぱり、って事は佐倉さんもそうだったのね?」

杏子「ああ、アタシは昨日気がついたんだけどな。 で、その事について昨日こんなことがあってな……」

それから杏子は昨夜出会った厄神の鍵山雛と、その時に起こった出来事について、二人に話した。
厄祓いと穢れの浄化と言う、言われてみれば納得できる話に、ほむらたちは思わず唸り声を上げる。

ほむら「確かに神社なんかでやってる厄除けの儀は穢れを祓う儀式でもあるから納得できるわ。 信じがたい話ではあるけど……」

マミ「私は信じるわ。 神さまなら、それくらい出来てもおかしくないと思うし……」

???「はい、その位の穢れなら簡単に祓えますね」

ほむマミ杏子「「「!?」」」
452 :東方焔環神 [saga]:2011/12/08(木) 21:41:08.15 ID:T+KBN3p90

突然背後から割り込んだ声に、三人はぎょっとして振り返った。
振り返った先では話に割り込んで来た少女――早苗がやっちゃったと言うように苦笑いを浮かべていた。

早苗「ああ、すいません。 なんだか私たちの専門分野の話をしていたようなのでつい立ち聞きしてしまいました。 ごめんなさい」

マミ「いえ、それは別に良いのだけど……。 今の話は本当なの?」

早苗「はい、厄祓い、若しくは厄落としの儀と言って神様自らは勿論、神様の力を借りることで神主や巫女でも祓えます」

「時間は多少かかりますけど、私でも祓えますがどうします?」と早苗が申し出てきたので、ほむらとマミは好意に甘える事にした。
神社の中に居るならソウルジェムの有効範囲を出ることもないと判断したからだ。

早苗「はい、確かに預かりました。 あっ、そういえばこっちにクリームヒルトさん来ませんでしたか?」

マミ「鹿目さん? いいえ見てないわ」

杏子「見てないな。 ほむらは?」

ほむら「私もよ」

ほむらたちが一様に首を横に振ると、早苗は首を捻る。

早苗「おかしいですねぇ……、そろそろ夕食が出来るから呼びに行く、って言ってたんですけど……。 トイレか何かですかね?
   まぁそれは置いといて、とりあえず皆さんついてきて下さい。広間に用意してますので……」


この後、広間に通されたほむらたちは、そこで神奈子たちと夕食を共にする事になった。
夕食直前に厠の方から広間に来たクリームヒルトを最後に全員が揃い、半ば宴会じみた夕食が始まった。
食事はシャルロッテの作ったデザートもつくと言う豪華なもので、夕食は大いに盛り上がった。

が、なぜかクリームヒルトだけは口数が少なく、食事が終わると早々に後片付けに行ってしまった。
その後も、そのまま色々な事を手伝っていたとかで、夜遅くになっても大部屋に戻る事は無く、
ほむらは、クリームヒルトと一言も言葉を交わすことなく、就寝した。


453 :東方焔環神 [saga]:2011/12/08(木) 21:43:45.39 ID:T+KBN3p90
―――――――――――――― ?月?日 ―――――――――――――――――
―――――――― 【人魚の魔女と幻惑の魔法少女】 @ ??? ――――――――

そこは上も下も分からない不思議な空間だった。
その空間に、少女が二人、目を瞑り、手を取り合った状態で、漂っている。
片方は短く切られた青い髪が、もう片方は腰まで届く赤い髪が、それぞれ特徴的な少女だ。

二人は、手を取り合ったまま、漂い続ける。
二人の時間は既に止まってしまって、もう動かないとでも言うかのように……。

そんな二人に変化が起こったのは、その空間に白衣を纏った桃色の髪の少女が現れた直後の事だ。
桃色の髪の少女が、二人の身体を抱き寄せ、そっと声をかける。

???『待たせちゃったね。 さやかちゃん、杏子ちゃん、迎えに来たよ……』

暖かい光が二人の少女を包んだかと思うと、二人の瞳がゆっくりと開かれる。

さやか『あれ……? その声……―――?』

???『うん、そうだよ。 ―――だよ』

杏子『なんだいその格好は? アンタは天の使いか何かにでもなったのかい?』

随分と様変わりしちまったな、と杏子が言うと、桃色の髪の少女ははにかむ様に笑う。

???『てぃひひ、恥ずかしいからあんまり見ないで欲しいな』

さやか『雰囲気は凛々しいのに、この恥じらい……やっぱり―――はあたしの嫁になるべきだと思……あいたっ!?(ベシッ』

杏子『バカやるのはそれぐらいにしとけよ』

おちゃらけつつ、桃色の髪の少女に飛びかかろうとしたさやかに杏子は痛烈な手刀を脳天に叩き込む。
その場に蹲るさやかに冷ややかな視線を向けつつ、杏子は桃色の髪の少女に向き直る。

杏子『ところでアンタ、さっきに迎えに、とか言ってたけど、あれはつまり……』

???『うん、そういう事なんだ。 私は二人をあの世界に送る為に迎えに来たの』

そう言って寂しげに微笑む桃色の髪の少女に対し、さやかは「そっか……」と言いつつ、ため息を漏らし、杏子は訝しげな顔で更に尋ねた。

杏子『ちょっと待て、アンタ今、“二人”って言ったよな? じゃあ、あっちのさやかはどうなるんだ?』
454 :東方焔環神 [saga]:2011/12/08(木) 21:46:18.77 ID:T+KBN3p90

さやか『あっちのあたし……? って、うわっ!? あっちにもあたしが居る!?』

さやかが振り返った先、正確には先ほどまで二人が手を取り合っていた場所に、もう一人の少女が居た。
短く切られた青い髪から顔立ちまで、さやかと瓜二つでありながら、下半身が人魚のような尾びれという決定的な違いを持つ少女。

最初に気付いた時は、杏子もぎょっとしたが、落ち着いて考えてみれば彼女が何者なのかすぐに分かった。

杏子『あれ、魔女になったさやかだよな? あっちのさやかも連れて行く事は出来ないのか?』

尋ねる杏子に、桃色の髪の少女は小さく首を横に振る。
それはつまり、不可能か拒絶を示していた。

???『ゴメンね。 私の力で救えるのは“魔法少女”だけなの。 魔女のさやかちゃんには悪いけどここでこのまま消えて……』

杏子『んなバカな話あるかよ!』

???『っ!?』

桃色の髪の少女の答えが終わりきる前に、杏子は怒気に満ちた声を上げていた。
桃色の髪の少女が縮こまるのも気にせず、杏子は言葉を続ける。

杏子『アタシはさやかを一人ぼっちにしたままあの世なんか行くつもりはねーからな。
   悪いけどさやか、先に―――と行っててくれ。 アタシはあっちのさやかに最後まで付き添ってから行くから』

さやか『杏子…………、うん、分かった。先に行ってる。 それと、ゴメン、本当に最後まで手間掛けちゃって……』

???『本当にいいんだね? 杏子ちゃん』

片やすまなさそうに、片や念を押すように声をかけてくる二人に、杏子は笑って答えた。

杏子『良いんだよ。これはアタシが決めた事なんだから……。 付き添いが終わったらそっちに行くから待ってろ』



―――――――――――――― 8月14日 ―――――――――――――――――
――――――――――― 【幻惑の魔法少女】 @ 守矢神社 ―――――――――――

杏子「…………んぁ?」

差し込む日差しと小鳥のさえずりで目を覚ました杏子は布団からのそりと起き上がる。
寝ぼけ眼を擦りつつ、周囲を見ると、そこは昨日借りた守矢神社の大部屋で、
隣を見れば未だに寝息を立てているほむらやマミ、クリームヒルトやオクタヴィアの姿があった。

杏子「……なんだ、夢か……」

そう呟きつつ、やけにリアルな夢だったな。とも思う。
まるでどこかで一度経験した事をそのまま思い返しているだけなのではと思えるほど、鮮明な夢だった。

さやかと一緒にあの世に招かれかけてたり、昨日初めて会ったばかりのまどかと似た少女とやけに親しそうに話していたり、
色々辻褄の合わないと言うか、矛盾点の多い夢ではあったのだが……

杏子「まぁ、夢なんてそんなもんか……」

そう呟きつつ、それでも杏子は納得することが出来なかった。


455 :東方焔環神 [saga]:2011/12/08(木) 21:49:23.53 ID:T+KBN3p90
――――――――――― 【救済の魔女】 @ 守矢神社 ―――――――――――

クリームヒルト「昨日はなに考えてたんだろう……。ほむらちゃんたちが帰るか帰らないかなんて、私が考えても仕方ない事なのに……」

一晩寝て起きて、私自身、だいぶ落ち着けたようで、昨日感じた不安や焦燥感はかなり薄らいでいた。
冷静になった途端、昨日の考えや行動が身勝手なものに思えてきて、私は朝から猛烈な自己嫌悪に苛まれる。


       『だからこそ、私たちで守らないといけないのよ。 それが出来るのは、元の世界では私たちしか居ないのだから……』


昨日の夜、マミさんたちとそう話すほむらちゃんは使命感に燃えていて……、
邪魔しちゃいけない事なんだとこっそり覗いていた私にも分かった。

クリームヒルト「ほむらちゃんたちが戻らないとパパやママ、タツヤや見滝原の皆も危ないし、私一人のワガママで引き留めるのは……」

???「…………トさん。……クリームヒルトさん!」

クリームヒルト「!?」

私を呼ぶ声に我に返ると、心配そうにこちらを覗き込む早苗さんの姿があった。

クリームヒルト「さ、早苗さん!? いつの間に……」

早苗「いつの間にも何も、ちょっと前から声をかけてましたよ……。 何かあったんですか?やけにぼーっとしてましたけど……」

クリームヒルト「い、いえ、なんでもないです。 寝起きで少し寝惚けてただけですから……」

早苗「そうなんですか? それなら別にいいんですけど……」

私のとっさの言い訳に早苗さんは訝しげな顔をしたけど、それでも納得してくれたようだ。
朝ごはんの準備をすると言う早苗さんと別れ、私は大部屋に戻る。

クリームヒルト「そうだよ。あんなことをしちゃった私の事も『大切な友達だ』って言って貰えるだけで、私は十分嬉しかったし、欲張っちゃいけないよね……」

ほむらちゃんに友達だと言って貰えたし、マミさんたちだって私を受け入れてくれた。
これ以上の他の人を巻き込んで、自身の幸せを望むのはバチが当たるような気がする。

クリームヒルト「よし、ほむらちゃんたちがちゃんと帰れるよう、全力でサポートするぞー!」

私は固く決意するように握りしめた拳を高く振り上げた。
固くつき固めた決意に、ものの数時間でヒビが入るなど、このときの私は知る由もなかった。


456 :東方焔環神 [saga]:2011/12/08(木) 21:51:58.93 ID:T+KBN3p90
――――――― 【救済の魔女と焔の魔法少女+α】 @ 博麗神社 ―――――――

クリームヒルト「えっ? 紫さん今居ないんですか?」

霊夢「そうなのよ。 ちょっと前にどっか行っちゃってね。 今は連絡すら取れないのよ」

お昼前、幻想郷と外の世界との丁度境界に位置する博麗神社を訪れた私たちを待っていたのは、そんな返答だった。
「幻想入りの対応なんですけど……」と申し出た途端、霊夢さんが面倒くさそうな顔をしたので嫌な予感はしていたのだけど、悪いタイミングで訪れてしまったようだ。

霊夢「それにしても盆の時期に知り合いが幻想入りしてくれるなんて、変なめぐり合わせもあったもんね」

クリームヒルト「ティヒヒヒ……、ホントだね……」

ほむら「冗談だとしたら出来すぎよね……」

不機嫌さを隠そうとしない霊夢さんに、私とほむらちゃんが一緒に対応していると、
視界の隅で、疑問符を浮かべたマミさんたちがひそひそと会話しているのが見えた。


マミ「どう言うことなの?」

早苗「えっとですね、ここは確かに外の世界との境目なんですけど、結界を開け閉めしようと思ったら、結界の管理をしてる妖怪の力が必要なんですよ」

アリス「八雲紫って言ってね。境界を操る胡散臭い妖怪よ。
    こういう場合じゃなきゃあんまり関わりたくない相手なんだけど……、肝心な時に居ないのよね」

マミ「その妖怪が今は居ないからなにも出来ないと、そう言う事なのね」

早苗さんとアリスさんの説明を受けて事情を察したのか、マミさんはため息をつきながらがっくりと肩を落とした。
そんなマミさんの腕の中でぬいぐるみ形態で抱かれているシャルロッテちゃんが、慰めるように言う。

シャルロッテ「元気だしてよマミ……。ほら、今帰れてもキョーコだけ置いてく事になるし、みんなで一緒に帰る為と思えば……」

今この場に居るのは私とほむらちゃん、マミさんにシャルロッテちゃん、それと付き添いとしてついて来たアリスさんと早苗さんの六人だけだ。
杏子ちゃんは相変わらずミスティアさんの屋台(仮)で賠償労働の真っ最中で、オクタヴィアちゃんや魔理沙さんはソレを冷やかしに行っている。

マミ「ありがとう、シャルちゃん。心配しなくても私は大丈夫よ。 もともと今日は話だけでも聞いておきたかっただけだから……」

シャルロッテ「わわっ!?マミ、撫でないで……恥ずかしいよぉ……」

早苗「なにこのカワイイ生き物……」

アリス「早苗、鼻血出てるわよ……」


背後で、漫才のような微笑ましい会話が繰り広げられていたのだけど、気にしていると話が進まないので、私は霊夢さんの方に向き直る。
457 :東方焔環神 [saga]:2011/12/08(木) 21:54:38.48 ID:T+KBN3p90

クリームヒルト「それで、紫さんはどちらに?」

霊夢「さぁ? なんか厄介な神様が来るとか良く分からない事を言ってたけど……」

クリームヒルト「神さま?」

鸚鵡返しに聞き返した私は、次の瞬間、霊夢さんが呟いた言葉に思わず息を呑んだ。

霊夢「ええ、えっと、確か……エンカクだかネンカンだとか言ってた気がするわ」

クリームヒルト「っ!?」

うろ覚えなのか、いまいちハッキリしない、歯切れの悪い返事だったけど、私には何の事を言っているのか、瞬時に分かってしまった。
私たち魔女や、ほむらちゃんたち今の魔法少女たちに良く知られた存在であり、全世界を救ったもう一人の“私”の事を指す言葉。

ほむら「…………もしかして、円環?」

霊夢「そう!確かソイツよ。 なに?アンタたちの知り合いな訳?」

この言葉が決定的となった。
円環の理――それは、私たち魔女の呪いを人の世に広めない為に魔女になる前に魔法少女を導く、
魔法少女たちにとっての希望となった“鹿目まどか”に付けられた通称。

クリームヒルト「えっと……その……」

その言葉が、霊夢さんの口から漏れた事に私が口ごもっていると、ほむらちゃんが代わりに補足する。

ほむら「私たちの界隈で語り継がれてる神さまよ。 たぶん、私たちを探してるんだと思うわ……」

霊夢「ふーん、随分と親身な神様が居るのね。 まぁ、私としてはどうでも良いんだけど……」

霊夢さんは紫さんが動くほどの神さまが、何故ほむらちゃんたちの捜索、などと言う不相応な行動を取っているのか、不思議で仕方が無いらしい。
だけど、私はそんな霊夢さんよりもほむらちゃんの方が気になって仕方がなかった。
ほむらちゃんは“概念になった私”の話が出た途端、色めき立つように目を光らせていたから。

ほむらちゃんにとって概念の私が特別な存在である事は私自身、十分分かっているつもりだ。
長い間、あの一ヶ月間を繰り返し続け、苦しみ続けたほむらちゃんにとって、最後の最後で助けてくれた人なのだから当たり前だろう。

対する私は、ほむらちゃんが救えなかった“鹿目まどか”の一人でしかない。
そう思い始めると、ほむらちゃんにとって私と言う存在は大したものではなかったのではないか?と言う疑念が沸き上がってくる。
458 :東方焔環神 [saga]:2011/12/08(木) 21:57:14.15 ID:T+KBN3p90

クリームヒルト(ほむらちゃんにとって本当に大切なのは概念の私の事で、私はその代わりでしかないんじゃ……って、私、なにを考えてるの!?)

疑念がほむらちゃんへの不信感になりつつある事に気が付き、私は慌ててその考えを振り払う。

私は、これ以上動揺をほむらちゃんに悟られない様に、意外な話題だったから少し驚いただけだと、
周りにも、私自身にも思い込ませるように、努めて冷静に、いつも通りの口調で、霊夢さんに尋ねた。

クリームヒルト「それで、紫さんは何時ごろ戻られるんですか?」

霊夢「少なくとも今日中は無理、って言ってたわ。 来るなら明日以降にして頂戴」

明日以降……。
紫さんが概念の私にどう対応するのか、全く検討もつかないけど、早ければ明日には概念の私がほむらちゃんたちを迎えに来ると言う事。

クリームヒルト「明日以降ですか……。分かりました。それじゃあ紫さんが戻られたら宜しくと伝えておいて下さい」

霊夢「アンタがアイツにそんな畏まる必要なんてないわよ。 一応会ったら伝えとくけど……」

世界を守ると言う責務を背負っているほむらちゃんたちからすれば、早くも明日には帰れると言うのは喜ばしい事実だ。
更に、概念の私もこっちに向かってきているとなれば、ほむらちゃんにとってこれ以上ないくらい嬉しい事である筈……。

クリームヒルト「お願いします。霊夢さん」

だけど、私はその喜ばしい事実を……。

クリームヒルト「良かったねほむらちゃん。明日にはなんとかなりそうだよ」

ほむら「そ、そうね……色々ありがとう、まどか……」

その事実を、心から喜ぶ事は、出来なかった。


459 :東方焔環神 [saga]:2011/12/08(木) 21:59:43.33 ID:T+KBN3p90
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

ほむら(さっきのまどか、笑顔が妙に痛々しいと言うか、無理に笑っているような感じだったわね……。
    やっぱりもう一人のまどかの事を気にしているのかしら?)

博麗神社からの帰り道、マミやアリスたちと談笑しているクリームヒルトを目で追いつつ、ほむらは一人考える。
もし、クリームヒルトの懸案事項が、もう一人のまどかの事であるなら、ほむらに出来ることはほとんどない。
それはクリームヒルト自身が踏ん切りをつける以外、手がないからだ。
だがしかし……

ほむら(いえ、それだけじゃない筈よ。 思い返してみれば昨日から少し変だったし……)

様子がおかしくなったのは、昨日の夕食以降の事だ。
それまでほむらとの再会や、マミと杏子が、初対面である筈のクリームヒルトを普通に受け入れてくれた事を、
純粋に喜んでいたクリームヒルトが、一転してよそよそしくなったのだ。

ほむらやマミたちに今さら気後れを感じた訳ではないだろう。
守矢神社で誰かに何かを吹き込まれた可能性はあるが、ほむらの知る限り、悪意をもってそんな事をしそうな人物は居なかった。
むしろ、同じ郷に住む者として良くしてもらっている印象の方が強い。

ほむら(私たちが帰る事になって寂しくなったのかしら?)

胸のうちを、それも『寂しい』などと打ち明けるのを恥ずかしがっているのだろうか?
或いは人間だった頃と変わらない優しさをもったクリームヒルトの事、ほむらに遠慮して言えなかったのかもしれない。

ほむら(私もまどかとずっと一緒に居たい。 そう言えれば、言い切ることが出来れば、良かったのだけど……)

だが、その言葉を言う事はほむらには出来なかった。
昨日のマミたちとの会話で、現世に戻って戦い続ける事が、現世だけでなく幻想郷を守る事に繋がると言う事を強く実感していたから。
一度は守れなかったまどか――クリームヒルトが居るこの世界を守れるなら、その力があるのなら、ほむらは今度こそ、守り通したかったのだ。
それが、クリームヒルトへの贖罪になると思ったし、あの日立てた誓いを裏切る事にもならない。

ほむら(ここに居るまどかも、あのまどかも、私にとってはどちらも同じくらい大切なの。
    大切だからこそ離れなくちゃならない……私のこんな我侭、まどかは受け入れてくれるのかしら……?)

ほむらとしては、これからもあくまでまどかを守る魔法少女として生きて行くつもりであった。
その思いが、クリームヒルトに不安と勘違いを巻き起こしている事にほむらが気付くのは、色々と取り返しがつかなくなった後の事だった。


460 :東方焔環神 [saga]:2011/12/08(木) 22:05:48.24 ID:T+KBN3p90
――――――― 【人魚の魔女と幻惑の魔法少女+α】 @ 霧雨魔法店 ―――――――

魔法の森にある、霧雨魔法店。
立地条件が悪すぎて普段は閑古鳥が鳴いている店ナンバーワンなこの場所だが、今日は歓声が響いていた。

オクタヴィア「ちょっと杏子、この鰻焦げてるよー」

霧雨魔法店の店先に臨時に設けられた仮店舗のカウンターで、鰻の串焼きを食べていたオクタヴィアだが、
急に眉を顰めたかと思うと、串焼きのうちの一本を杏子に突き出す。

杏子「あー? ほんのちょっとじゃねぇか、それくらいなんとも……」

ミスティア「杏子、焼いてる時は手元をしっかり見なさい。 焦げた串焼き量産するつもり?」

杏子「誰が好き好んでそんな事するんだよ!? ちゃんと焼けばいいんだろ、焼けば!?」

突き出された串焼きを見やり、手元から目を離した杏子にすかさずミスティアの注意が飛ぶ。
先にクレームをつけたオクタヴィアと共にニヤニヤしている辺り、おちょくる為の注意なのは明白だ。

が、現状、杏子には従う以外に手は無かった。
オクタヴィアはこの場では『お客』だし、ミスティアは『雇い主』だった。
今の杏子の立場はこの中では底辺なのだ。

ミスティア「ん〜、大体焼き加減はそんなものかな〜。 杏子、ここちょっと任せるよ。 私、買い物行ってくるから」

杏子「はいはい、任されてやるからとっとと行って来いよ」

杏子はせめてもの嫌味を込めて、買い物籠を取り出したミスティアを見やることなく、手で追い払う仕草をしてみせる。
今はまた新しい串焼きを作っている最中なので、目を離せばまたツッコまれるからだ。

オクタヴィア「じゃあ、あたしが監視役しといてあげる」

杏子「お前は帰れ。 一体何時間粘……」

ミスティア「うん、それじゃあオクタヴィア、見張りは頼んだよ〜」

杏子の言葉を遮ってミスティアがオクタヴィアの申し出を許可する。
公認を貰えた形となったオクタヴィアは、玩具を見つけた子供の様な笑みを杏子に向けた。

杏子「……勝手にしろよ」

オクタヴィア「うん、そうさせてもらう」

ミスティアが買い物に出てしまうと、仮店舗は一転して静かになった。
店先を貸している魔理沙は、出かけると言ってだいぶ前に出て行ったので、今この場には杏子とオクタヴィアの二人しか居ない。
461 :東方焔環神 [saga]:2011/12/08(木) 22:09:12.35 ID:T+KBN3p90

串焼きを焼く音と、時折吹く風の音が、暫し辺りを包み込み……、そこに杏子の呟きにも似た声が溶け込んだ。

杏子「なぁさやか、一つ聞いてもいいか?」

オクタヴィア「何よ?」

杏子「さやかの居た世界のアタシってさ、どんなヤツだったんだ?」

予想外の質問に、オクタヴィアは杏子を見た。
急に視線を向けられた杏子はばつが悪そうに目線を逸らす。

杏子「いや、深い意味はないんだ。 ちょっと気になっただけで……」

もちろんそれはウソだった。
杏子は今朝の夢の事がどうにも気になってしまい、確認せずには居られなくなってしまったのだ。
杏子の考えが正しければあの夢はおそらく……

杏子が思案をめぐらせる横で、オクタヴィアはカウンター席に座ったまま空を見上げると、ぽつりと答えた。

オクタヴィア「……アンタと大して変わらないよ。 意地っ張りで素直じゃなくて……」

杏子「悪かったな、素直じゃなくて……」

オクタヴィア「でも、他人を放っておけない優しいところもあって……」

杏子「ばっ!? さやかお前何言って……」

不意打ちの様な言葉をかけられ、杏子の顔が瞬く間に赤くなる。
顔を真っ赤にしながら、オクタヴィアの方を見た杏子は……、オクタヴィアが寂しげな笑みを浮かべている事に気が付き、言葉を失う。

オクタヴィア「あたしの世界の杏子はさ。 呪いに呑まれて化け物になったあたしを何とか救おうとして、死んじゃったんだ……」

杏子「!」

オクタヴィアは泣き笑いと言った感じの表情で、話を続ける。

オクタヴィア「バカだよね。 とっとと倒しちゃうか逃げちゃえば良かったのに、
       最期はあたしを一人ぼっちにしたくないから、って言ってあたし諸共自爆して……、気付いたらあたしはここに居た」
462 :東方焔環神 [saga]:2011/12/08(木) 22:14:49.96 ID:T+KBN3p90

杏子「…………」

オクタヴィア「幻想郷(ここ)で目覚めた時、杏子の姿はどこにもなかった。
       でも目覚める直前にさ、あたし、杏子の言葉を聞いたような気がしたんだ」


         『仲間の所まで連れてきてやったぞ。 アタシが付き添えるのはここまでだけど、寂しがるんじゃねーぞ』


オクタヴィア「その内会いに行ってやる、とも言ってたかな? そしたら平行世界の杏子(アンタ)が来た、って訳。
       偶然なんだろうけど、これも不器用なアイツが起こした奇跡だったのかな、ってあたしは思ってる。
       だから、訳が分からないと思うけど、言わせて……」

そこまで言ってから、オクタヴィアは杏子の方に改めて向き直る。
その表情は寂しげな笑みでも、泣き笑いでもなく、優しい笑顔だった。

オクタヴィア「あたしを助けてくれて、ありがとう……」

杏子「……バカ野郎。 そういう事はお前の世界のアタシに言えよ。 お前の世界のアタシが、約束通りさやかに会いに来た時にさ……」

オクタヴィア「あはは、そうだよねー。 本人に言ってやらなきゃ意味ないよねー」

まあ、会ったらまずは思いっきりぶん殴ってやるけど、と言いつつ苦笑するオクタヴィアはいつもの調子に戻っていた。
これでこの話はおしまいだ、と言うように……。

杏子も、それ以上話を聞こうとはしなかった。
オクタヴィアの話を聞いて、考えなくてはならない事が出来てしまったからだ。

杏子(一人ぼっちにしたくない、か……。 アタシは何処の世界に行ってもアタシなんだな……)

杏子の脳裏に浮かぶのは今朝の夢と二ヶ月前に消えていった、元の世界のさやかの事。
今朝の夢は間違いなく、オクタヴィアが辿ってきた世界の杏子の記憶だ。

あの世界の杏子は、魔法少女として死を迎えたさやかと、魔女として死んださやか、
二人を見捨てる事が出来ず、最後まで現世に残ったのだろう。

いくら違う世界の事とは言え、あんな自分自身の姿を見てしまった以上、
今すぐ如何こう、と言う訳ではないが、杏子としては彼女の事を…………

杏子「やっぱり一人には出来ないよなぁ……」

誰にも聞こえないくらい、小さな声で杏子は呟いた。
それが杏子の答えであり、決意だった。


463 :東方焔環神 [saga]:2011/12/08(木) 22:22:24.56 ID:T+KBN3p90
以上、投下終了

難産だった……、マジで魔女化するかと思った。
いやこのパート自体はすんなり出てきたのですが、この後にどう続けるかが、このパートに掛かって来てるので……、
方向性はだいぶ定まってきましたが、爆弾も見えてきました。

焔環神もそろそろ話が動きます。遅くなるかもしれませんが、進めてまいりますので宜しくお願いいたします。
464 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/08(木) 22:25:30.70 ID:H72fYaIW0
乙! 1週間も続きがなくて寂しかったけど、それだけ真剣に書いているんだったら何も言うまい

ほむクリとあんオクがどんどん重みを増していくぜ…マミシャルかわいい
465 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [saga]:2011/12/08(木) 22:36:14.32 ID:aVJgDMlSO
キテタッ
466 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/08(木) 23:38:48.13 ID:VCxYODwAO
まど神がどう動くかだよなぁ……
あと紫様も
467 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/09(金) 00:30:01.01 ID:3MgJe48DO
お疲れ様!

なんだかほむらちゃんがミュウツーの逆襲終盤のサトシみたいになりそうで怖いな…。
468 : [saga]:2011/12/12(月) 19:10:12.15 ID:pdfcKQAW0
※ 超急展開注意 ※


それでは続き投下します。
469 :東方焔環神 [saga]:2011/12/12(月) 19:16:10.79 ID:pdfcKQAW0
―――――――――― 【焔な魔法少女】 @ 人里の繁華街 ――――――――――

ほむら(結局、あの後はまどかとまともに会話も出来なかったわね……)

???「おや? ほむらじゃないか。 博麗神社へ行ったんじゃなかったのかい?」

今夜以降分の買出しに行くと言うクリームヒルトたちと一旦別れ、人里をぶらぶら歩いていたほむらは、背後から声をかけられ振り返った。
振り返った先に居たのは赤毛三つ編みの猫耳少女、お燐と、白黒装束の魔法使い、魔理沙の二人だった。

ほむら「あらお燐と魔理沙じゃない。 ……担当の者が居ないからまた日を改めて、だそうよ」

ほむらの言葉で、大体の事情を察したお燐と魔理沙は小さく苦笑する。

魔理沙「成る程な。 それじゃあどうしようもないな」

ほむら「それよりお燐は別に良いとして……、魔理沙、貴女はオクタヴィアと一緒に杏子の所について行ったんじゃなかったの?」

魔理沙「あ〜、最初は面白そうだと思ってついて行ったんだけどな。 普通の営業と大差なかったんで抜けてきたんだ」

家を荒らすような連中でもないし、見てる必要性も無かったからな。 と言いつつ魔理沙は肩をすくめる。
面白いか否かで動けば良いと言うものではない気もしたが、これが彼女の性分なのだろうとほむらは勝手に納得する。

魔理沙「で、ほむらはなんでそんな辛気臭い顔して人里をほっつき歩いてるんだ?」

ほむら「えっ?」

魔理沙「顔に書いてあるぞ。 私悩んでます。って……。なぁ?」

お燐「確かに、顔見りゃ一目で分かるねぇ……」

魔理沙が同意を求めると、お燐もすぐさま頷いた。 どうやら本当に表情に出ていたようだ。

ほむら(さて、この場合、どうしたらいいのかしら?)

個人的な事ならまだしも、クリームヒルトも絡む話だ。
果たして本当にぶちまけてしまって良いのか判断に困るところなのだが……。

ほむらはチラリとお燐と魔理沙を見た。
お燐はこちらを待っている様子だったが、魔理沙は口元をニヤつかせながら、こちらを見ている。
ほむらがどう返してくるか、明らかに待ち構えている形だ。

ほむら(お燐は兎も角、魔理沙は見逃してくれる気はなさそうね……。 そうなると……)

適度にお茶を濁しつつ、二人の意見を聞くだけ聞いてみるのはどうだろうか?
参考程度に聞いてみるのも一つの手かもしれない。

ほむら「……二人に一つ聞きたいのだけど、
    『大切でなんとしても守りたい人が居たとして、守ろうと思ったら、大切な人と離れなくてはならない』 
    そんな状態になったとき、二人ならどうする? どうするのが最良だと思う?」

魔理沙「なんだそりゃ? 戦場かどっかにでも行く兵隊の話か?」

ほむら「まぁ、そんなものだと思って頂戴」

実際はもっと身近で、もっと危険で、もっと根本的なモノを守りに行く話なのだが、
そこまで打ち明ける気はほむらには無いので、そう思ってもらった方が都合が良い。
470 :東方焔環神 [saga]:2011/12/12(月) 19:21:04.71 ID:pdfcKQAW0

お燐「それは守りたい人のそばに居たままじゃ出来ない事なのかい?」

ほむら「そうよ。 守る力は持っているけど、それを行使して実際に守るには離れないといけないの。
   守りたい人は表向きは選択を尊重してくれるだろうけど、実際には寂しい思いをさせてしまうのよ……」

お燐「つまり、出来れば泣かせたくない、でも守りたい、そう言う事かい?」

ほむら「そんな都合の良い手段があるなら、ね……」

半ば諦めを滲ませた声で答えつつ、ほむらはそこで言葉を切る。
さて、どんな答えが返ってくることやら……。

魔理沙「ん〜、難しい質問だな。敢えて言うなら守りたいって気持ちが強いなら離れるしかないんじゃないか?」

ほむら「そうよね……。やっぱりそうなるわよね……」

予想通りの答えに、聞くだけ無駄だったかな、と思っていると、ほむらの耳に魔理沙の真剣な声が響く。

魔理沙「ただし、その大切な人、ってヤツとよーく話し合ってからだな」

ほむら「えっ……?」

魔理沙「そいつの意思が固いならそうすればいい。
    だけど待たせる相手が居るなら相手にしっかり考えを打ち明けて、きちんと分かり合う必要があると思うぜ」

じゃないと変な勘違いをさせちまうしな。 と言う魔理沙にお燐も頷く。

お燐「うん、魔理沙の言う通りだね。 決めるのは自由だけど、相談だけはしっかりすべきだと思うよ」

二人に言われて、ほむらはいつの間にか自分が受身の態勢になっていた事に気が付いた。
クリームヒルトの気持ちを推し量る事はあっても、自らの考えを積極的に打ち明けようとはしなかった。
自分の我侭を押し付けるみたいで、何となく気が引けたからだ。

だが、何も知らせず、自分で抱え込んだまま話を進めると言う事は、ほむら自身の経験に当てはめてもやってはいけない悪手だ。
知らないうちにその愚を再び犯しかけていた事に気が付き、ほむらは自身の浅はかさを恥じる。

ほむら「ありがとう。 二人のお陰で最悪の選択肢だけは免れたわ」

ふっと微笑んでみせつつ、ほむらは踵を返した。
まずはきちんと話し合ってこよう。
クリームヒルトが簡単に納得してくれるとは思えないが、それでもきちんと話し合おう。


人ごみへと紛れて行くほむらを見送りつつ、魔理沙とお燐は同時にため息をついた。

お燐「行き先は……あのお嬢ちゃんの所かねぇ?」

魔理沙「それ以外に無いだろ?
    ……まったく、こっちに来た頃の早苗といい、クリームヒルトといい、最近まで外に居たヤツは面倒くさいヤツしか居ないな」

お燐「魔理沙に関してはちょっと考えてから動いた方が良いとあたいは思うよ」



471 :東方焔環神 [saga]:2011/12/12(月) 19:28:17.14 ID:pdfcKQAW0
――――――――――― 【救済の魔女】 @ 人里の外れ ―――――――――――

クリームヒルト「はぁ…………」

買い物籠を片手に、人里を歩いていた私は足を止めると、ため息をついた。
人里の入り口でほむらちゃんと別れた後、個人的に買う物がある、と言ってマミさんたちとも別れた為、
人通りの少ないこの場所で、ため息をつく私を気にする人は誰一人としていない。

クリームヒルト(ほむらちゃん、何か気付いた風だったけど、結局話も出来なかったなぁ……)

思い出すのは別れ際のほむらちゃんの心配するような表情。
内なる葛藤を悟られないようにと、なるべく自然に振舞ったつもりだったけど、
それでもほむらちゃんは私の様子がおかしいことに気が付いたようだった。

けれど、ほむらちゃんは声をかけてくる事はなかった。 と言う事はつまり、ほむらちゃんは……

クリームヒルト(やっぱり私は“概念の私”の代わりなのかな……。 ほむらちゃんにとって大切なのは、一番なのは“概念の私”なんだろうな……)

黙って一人で歩いていると、人通りの少なさも相まって余計に塞ぎこんでくる。
ついつい思考もネガティブなものになり、悲嘆が妬みを帯びてきたその時だった。
あの声が聞こえてきたのは……


――なら、一番にしちゃえばいいじゃん。


クリームヒルト「えっ?」

突然聞こえた声に、私は思わず顔をあげる。
けど、いくら見回しても、私に話し掛けている人など一人もいなかった。 と言うか人影一つ見当たらなかった。

それはそうなのかもしれない。 だって、今聞こえた声は……


――本当は寂しいんでしょ? ほむらちゃんが私を通して“概念の私”を見ているのが……


クリームヒルト「や、やめて……」

私は首を振って耳を塞ぐ。
声が聞こえる度に私の中にどす黒い感情が沸き上がり、その感情はマグマのように流れ出して私の心を覆いつくし始める。


――悔しいんでしょ?妬ましいんでしょ? なら、無理矢理一番にしちゃえばいいじゃん。


耳を塞いだのに、声はそれでも聞こえてきた。
それじゃあやっぱり、聞こえてくるこの声は……

クリームヒルト「お願いだから止めて! これ以上私に変な気を起こさせないで!」


――変な気? 何を言ってるの? すでに起こしてるじゃない。だって私は……


この声は間違いなく……


――他ならない貴女自身、クリームヒルトなんだからね?


クリームヒルト「あああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁっ!!」

その言葉を聞いた瞬間、私の中でなにかが弾けたような、そんな気がした……。


472 :東方焔環神 [saga]:2011/12/12(月) 19:30:56.93 ID:pdfcKQAW0
――――――――――――――――――――――――――――――――――――

ほむら「あら、あんなところに居たわ。 一人で何をしているのかしら? ボーっとしているようだけど……。 まどか! 何をしてるの?」

クリームヒルト「…………」

魔理沙たちから助言を得たほむらは、人里の外れでようやくクリームヒルトの姿を見つけ、声をかけた。
が、クリームヒルトは突っ立ったままピクリとも動かない。

不審に思ったほむらは、クリームヒルトに近づきながら、再度声をかける。

ほむら「まどか? ……まどか、どうしたの?」

クリームヒルト「あっ、ほむらちゃん。 どうしたの?」

手の触れられる距離まで近づいた時になって、ようやく振り返ったクリームヒルトは……、笑顔だった。

ほむら「?」

その時、クリームヒルトの笑顔を見たほむらは、妙な違和感を感じた。
一見するといつもと変わらない笑顔なのだが、どことなく影があると言うか、冷酷と言うか、とにかく冷たい笑顔のような気がしたのだ。

あまりの違和感に、ほむらの中に一瞬、警戒心が芽生えるが、気のせいだろうと振り払う。

ほむら「えっと、貴女に話したい事があるのだけど……」

クリームヒルト「そうなんだ。 それじゃあまずは……」


――場所、変えよっか?


ほむら「えっ? ……かはっ!!」

その時、ほむらは何が起こったのか分からなかった。
クリームヒルトが、普段の彼女なら絶対しないような微笑みを――口元を醜いまでに吊り上げてみせたかと思うと、
手元に生成した魔力弾をほむら目掛けて放ったのだ。

至近距離からの不意討ちだった為、ほむらはもろに魔力弾の直撃をくらう事となった。
相手がクリームヒルトであり、なおかつ抱いた警戒心すら切り捨てた直後だった事もあって、ほむらは受身すらとることも出来ずにその場に崩れ落ちる。
473 :東方焔環神 [saga]:2011/12/12(月) 19:35:10.80 ID:pdfcKQAW0

ほむら「……ま、まど……か? 一体、何……を…………」

クリームヒルト「ティヒヒ、ほむらちゃん、私たち、ずっと一緒だからね?」

ほむら「くっ……まど……か…………」

明らかにおかしいと分かる邪悪な笑みをクリームヒルトが浮かべているのを、霞ゆく視界の中で見ながら、ほむらは自らの意識を手放した。

クリームヒルト「…………」

ほむらが気を失ったのを確認すると、クリームヒルトは小さな結界を作り、その中にほむらを寝かせる。
ほむらの入った結界は宙に浮く球形の檻となり、ほむらを拘束する。

クリームヒルト「ティヒヒ……、それじゃ、行こうか……」



ミスティア「……ちょっと、なんなのよ。 何がどうなってるの?」

ほむらを閉じ込めた結界と共に人里を出て行くクリームヒルトの後ろ姿を、建物の影から見つめながら、ミスティアは思わず呟いた。
買い物を終え、仮店舗に帰ろうとしていたミスティアは偶然にもクリームヒルトがほむらを襲う様を目撃してしまったのだ。

ミスティア「アレが噂の“やんでれ”なのかしら? あの子はそんな事するような子には見えなかったけど……、
      って、こんな事してる場合じゃないわ! 早く誰かに知らせないと!」

一瞬、現実逃避しかけたミスティアだったが、それでも判断は早かった。
あの様子から見て、今この場でミスティアがほむらの救出を図るのは無謀だろう。
追跡して、居場所を特定するのも一瞬だけ考えたが、気付かれてしまったら終わりだ。

そこでミスティアは、通報役に徹する事にした。
今の二人の話なら、杏子やマミたち魔法少女や、オクタヴィアやシャルロッテをはじめとする魔女一同、
それに魔理沙や人形遣い、守矢の巫女あたりの有力者の協力がすんなり得られると踏んだからである。

ミスティアは助っ人を集めている間に事態が最悪のものにならない事を祈りつつ、人里の繁華街へと引き返していった。


474 :東方焔環神 [saga]:2011/12/12(月) 19:42:30.20 ID:pdfcKQAW0
――――――――― 【現代っ子現人神】 @ 人里の繁華街 ―――――――――

早苗「あれ? あそこに居るのは……、雛さまと地底の橋姫さん……?」

早苗がその珍しい組み合わせを見つけたのは買い物を終えた直後の事だった。
組み合わせもさることながら、人里に居る事自体が珍しかったので、早苗は二人のもとに行ってみる事にした。

早苗「雛さまにパルスィさんじゃないですか、どうかしたんですか?」

雛「あら、守矢の巫女さん、こんにちは」

パルスィ「雛だけさま付けとか……妬ましいわね」

雛と一緒に居たのは、普段は地底の入り口で番人をしている水橋パルスィだった。
声をかけて早々、妙な嫉妬心に駆られているようだが、これが彼女にとっては普通なので無視する。

早苗「組み合わせもそうですけど、人里にお二人が居るのって珍しいですね」

パルスィ「私が人里に居ちゃ悪いのかしら?」

雛「実はね、流してる途中の厄が逃げちゃったのよ」

早苗「えっ!? 逃げた!?」

心底困ったと言う風に、深いため息をつきながら話す雛の言葉に早苗は目を丸くした。
流している最中の厄は、取り憑くと不幸を振り撒く厄介な代物だ。
それだけでも十分危険なのだが……

パルスィ「しかもその厄、私の能力の影響で嫉妬心を煽る能力も持っちゃったのよね……。 ああ、妬ましい」

早苗「なにその混ぜるな危険」

あまりにもヤバすぎる事態に、早苗の言葉も棒読みになる。
パルスィ自体は、むやみやたらに能力を使うことなどしないのだが、純粋な不幸の塊でしかない厄がそんな配慮をする訳がない。
危険度は極めて高いと言っても良いだろう。

雛「それで、誰かに取り憑く前に、と後を追ってきたのだけど……」

パルスィ「人里近くで厄の気配が途切れたのよね……」

早苗「えっ? それってまさか……」

厄を感知できる雛にも行方が分からなくなってしまった。と言うことは……
嫌な予感に襲われた早苗に雛たちは小さく頷く事で、その予感が正しい事を肯定する。

雛「誰かに取り憑いちゃったみたいなのよね。人里に居る誰かに……」


475 :東方焔環神 [saga]:2011/12/12(月) 19:47:31.61 ID:pdfcKQAW0
――― 【ドキッ!金髪だらけの魔法使いと魔法少女+α】 @ 人里の繁華街 ―――

マミ「えっ? 鹿目さんが暁美さんを襲って連れ去った!?」

休憩していたお茶屋さんに息を切らせて駆け込んできた夜雀の話を聞き、マミはこれ以上無いと言うほど驚いた。
昨日初めて会った相手ではあるが、クリームヒルトがとてもいい子だと言うのは、会った人みんなが話していたし、
何よりマミ自身、昨日実際に何度か話をして、優しい子だと言う印象を抱いている。

さっきまで一緒に行動していたマミからすると、にわかに信じがたい話だった。

ミスティア「そうなのよ! なんか様子が変だな、と思ってたら、いきなり弾幕をぶち込んで気絶させて……!」

アリス「ちょっと待ちなさい。 あのほむら、って子はクリームヒルトの親友でしょ? 親友相手にあの子がそんな事をする訳が……」

早苗「皆さーん! 大変なんですーっ!!」

ウソか冗談でしょ? と言うようにアリスが声を上げたその時、ミスティア以上に顔を青くした早苗が飛び込んできた。
絶える間どころか、話すら終わる前に持ち込まれた新たな厄介事に、その場に居た全員の顔が険しくなる。

シャルロッテ「どうしたの早苗? 顔が真っ青だよ?」

早苗「そ、それがですね。ちょっと洒落にならない事態が発生しまして……」

アリス「こっちも現在進行形で洒落にならない事が起こってるわ」

この場に居る全員の苛立ちを代表するようにアリスがぼやいたが、次の瞬間、その表情は一変した。

早苗「雛さまが祓っていた厄の塊が、この人里に居る誰かに取り憑いちゃったんですよ!」

ミスティア「何だそんな事か……って、ええっ!? それって超マズいじゃん!!」

一瞬、さらっと流しかけて、事の重大さに気付いたミスティアは思わず目を剥いた。
話の内容が良く分からなかったマミ以外の全員が、早苗の周りを取り囲む。

アリス「ちょっと早苗! それは一体どういうことなのよ!?」

思わずアリスが早苗に詰め寄ったその時、申し訳ないと言うように縮こまった雛が店に入って来た。

雛「……全部、私の不注意なの。 お盆でパルスィが遊びに来てくれたから、お茶でも、と思って気を抜いたら……」

パルスィ「厄流しの最中に訪ねた私の方が悪い、って何度も言ってるのにこの子は……妬ましいわね」

涙声で身体を震わせる雛を抱きかかえつつ、パルスィは深いため息をつく。
やるせない雰囲気が漂う中、話についてこれなかったマミがすまなさそうに小さく手を挙げる。
476 :東方焔環神 [saga]:2011/12/12(月) 19:50:41.37 ID:pdfcKQAW0

マミ「えっと、ゴメンなさい。 話が良く見えないのだけど……」

早苗「ああ、すいません。 えっと、マミさんは昨日の穢れ祓いの話を覚えてますか?
   あれで祓った穢れが浄化する前に逃げちゃった、って話なんです」

パルスィ「しかも私の影響を受けて、嫉妬心を煽る能力が付いちゃった厄介なのがね……」

早苗の解説にパルスィが全くありがたくない補足を加える。
が、その話を聞いて、アリスたちの脳裏にある仮説が浮かび上がる。

マミ「ちょっと待って、嫉妬心を煽るって言うその厄? に憑かれたら、その人はどうなるの?」

パルスィ「抱え込んでる鬱憤とかにもよるでしょうけど、嫉妬に狂いまくるのは間違いないわね。
     人間だろうと妖怪だろうと、普通なら精神を病んでしまうんじゃないかしら?」

精神を病むほどの嫉妬と聞いて、仮説は確信に変わる。
そんなモノに憑かれたのなら、信じがたい凶行にも説明がつく。

シャルロッテ「ねぇアリス、ミスティアが見た、ほむらを襲って拉致したクリームヒルトって、まさか……」

アリス「ええ、ほぼ間違いないわね。 まったく、厄介な事になったわよ。 これは……」

アリスが頭を押えながらため息をつき、今度は早苗たちが眉を顰める。
戸惑いと疑問符に支配されつつあった茶屋に、別の声が割り込んだのは、丁度そんな時の事だった。

???「その話、詳しく聞かせてくれないかしら?」

ミスティア「っ!? さ、西行寺幽々子!? 」

そんな声と共に、現れたのは蒼い衣の亡霊――幽々子だった。
個人的な事情も含めて、思わず声を上げたミスティアに、幽々子は視線すら向けることなく、アリスの前に立つ。

幽々子「今、厄が如何こうとか、クリームヒルトちゃんが如何こう、って言ってたわね? どういう事なのか、説明して頂戴」

そう問いかける幽々子の眼差しは真剣そのもので、その視線を真正面から受け止めたアリスは、小さく頷いた。

アリス「…………分かったわ。 最初から順を追って話すから、みんなも聞いて頂戴」


477 :東方焔環神 [saga]:2011/12/12(月) 19:54:35.16 ID:pdfcKQAW0
――――――― 【幻想の住人と現の魔法少女】 @ 博麗神社 ―――――――

霊夢「また厄介な事を引き起こしてくれちゃったわね……」

話を聞き終えた霊夢は、昼前に訪ねた時よりも不機嫌そうな顔で、そう呟いた。

あの後、幽々子を含む全員にクリームヒルトに起こった異変について話したアリスたちは、
事態を重く見た幽々子の提案により、霊夢を含む、今回の件に関わった幻想郷の全住人を集め、協力を要請したのだ。

杏子「でもよ、なんでまどかはほむらにそんな事をしたんだ? まどかがほむらに対して嫉妬を抱いているような様子は一切無かったぞ」

早苗「嫉妬の相手がほむらさんじゃないから、と言うのは考えられません?
   ミスティアさん曰く、「ずっと一緒」みたいな事を言っていたようですし……」

皆が一度は抱いた疑問を杏子が口にすると、早苗が推測ですけど……と付け足した上で答える。
その言葉に頷いたのは魔理沙とお燐だった。

魔理沙「たぶん、それは間違いないな。 私らはその直前にほむらと会ってるんだが、
    ほむらは自分たちが帰る事でクリームヒルトが寂しい思いをしてるんじゃないかと気にしていたからな。
    ほむらの懸念した通りだったわけだ」

マミ「そうなると鹿目さんが嫉妬していた相手って一体……」

オクタヴィア「…………もう一人のまどか、じゃないかな……?」

マミ「えっ?」

オクタヴィアの呟いた言葉に、マミと杏子は思わずオクタヴィアを見た。
オクタヴィアは視線が集まることを気にすることもなく、話を続ける。

オクタヴィア「マミさんや杏子が居た外の世界って、まどかが居ない世界なんですよね?」

マミ「え、ええ、でもそれが今の話とどんな関係が……」

オクタヴィアの質問にマミは小さく頷いた。
本当に世界中を探しても居ないのかどうかまでは分からないが、少なくともマミたちの周囲には『鹿目まどか』は存在していなかった。
それを確認する事が今、何の意味を持つのかマミにも、アリスたちにも分からなかったが、続く一言にその場に居たほぼ全員が戦慄した。

オクタヴィア「マミさんたちの居た世界のまどかは、自らの存在と引き換えに私たち魔女を消し去る願いをしたんです。全世界の魔法少女を救う為に……」

マミ「っ!?」

杏子「ちょっと待て! “魔法少女”を救って、“魔女”を消すって……、まさか“円環の理”って……!」

声を荒げて詰め寄ってきた杏子の言葉に、オクタヴィアは頷きながら答える。
478 :東方焔環神 [saga]:2011/12/12(月) 20:02:08.42 ID:pdfcKQAW0

オクタヴィア「そうだよ。杏子たちが“円環の理”って呼んでるソレこそが、杏子たちの世界のまどかの成れの果てなのよ。
       とてつもない願いを叶えて自らが皆の希望になった最強の魔法少女……、それが円環の理の正体なの」

私たちの所にも一度来てる、ってクリームヒルトも言ってたからね、とオクタヴィアが言うと、杏子は手近にあった机に拳を叩き付けた。

杏子「くそっ! それじゃあやっぱりあの夢は……」

マミ「ちょっと待って、二人とも一体なんの話をしてるの!?
   鹿目さんが円環の理で、更には佐倉さんが見た夢? 訳が分からないわよ!」

杏子「今朝、夢の中で見たんだよ。 コイツが幻想郷に来る直前の事を……、
   まどかが平行世界で死んだアタシとさやかを救いに来て、魔法少女のさやかだけを導いて、魔女のコイツを残して去った、その時の事をな……」

杏子がそう言うと今度はオクタヴィアが目を丸くした。
それから昼の会話を思い出し、そう言う事だったのかと一人納得する。

マミ「で、でも、それならどうして暁美さんは鹿目さんの事を覚えていたの? 私たちの世界の鹿目さんは存在ごと消えてしまったのでしょう?」

霊夢「あり得ない話じゃないわ。 例え存在ごと消えて、神様になったとしても縁の深い人は覚えていたりするものよ。
   完全に幻想入りしたモノだってそうだもの」

霊夢が解説するように言うと早苗が目を伏せる。
紫からの又聞きではあるが、彼女にもまだ覚えていてくれた友が外に居たらしい。

幽々子「…………それだけじゃないわ」

マミ「えっ?」

それまで黙って話を聞いていた幽々子がゆっくりと立ち上がり、前へと進み出た。
魔女異変が解決し、だいぶ落ち着いた頃にクリームヒルトがその話をしてくれた時の事を思い出しながら、幽々子は語り出す。

幽々子「これはクリームヒルトちゃんから聞いた話なのだけど……、そのほむら、って子は平行世界を渡り歩く能力を持っていたらしいの」

杏子「平行世界を渡り歩く能力だって?」

杏子が聞き返すと、幽々子は静かに頷いた。
驚きに目を見張る一同の中で、唯一平然としているオクタヴィアにお燐が尋ねる。

お燐「お姉さんは、その事も知ってたのかい?」

オクタヴィア「私もその話はクリームヒルトから聞いてたし、何より会った時にすぐ分かったから……。
       あたしの記憶の中のほむらと全部一緒だったんだもん。 ホントなら多少の食い違いがある筈なのに……」

杏子やマミさんだって似てるようで違ったんだよ、と呟いたオクタヴィアは寂しげに笑っていた。

元の世界でのオクタヴィア、いや、“美樹さやか”の事を覚えているのが、ほむら一人しか居ないと言うのは彼女も一緒だ。
恐らく今この場に居る全員の中で一番、クリームヒルトの心境を察する事が出来たのは他ならない彼女だろう。
479 :東方焔環神 [saga]:2011/12/12(月) 20:05:12.06 ID:pdfcKQAW0

早苗「と、言う事はクリームヒルトさんにとってのほむらさんも、
   その神さまになった、って言うまどかさんにとってのほむらさんも、どちらもあのほむらさん、と言う事なんですね?」

幽々子「そう言う事になるわね」
オクタヴィア「そうだよ。 その通り……」

確認するように早苗が尋ねると、幽々子も、オクタヴィアも、揃ってそれを肯定した。
これまでの話を聞いて、納得が行ったというように頷いたアリスが、話を纏めるように切り出す。

アリス「これで話が繋がったわ。 その“円環の理”こともう一人のクリームヒルト、いえ、“鹿目まどか”が、貴女たちを迎えにこっちに向かっている」

魔理沙「それを知って、只でさえほむらたちと別れる事を寂しがっていたクリームヒルトは怖くなったんだな。
    自分と全く同じ姿をした別人に、ほむらたちが奪われてしまうんじゃないか、そう思ったとしても不思議じゃないぜ」

自分と同じだけど、全く違う他人。
それは一体どれ程の恐怖なのだろう?
存在を上書きされてしまうような、今度こそ完全に消されてしまうような、そんなとてつもない恐怖を覚えたに違いない。

パルスィ「そして、恐怖はもう一人の自分への妬みになった」

雛「そこを厄につけこまれて……、最悪ね。 その子の不安や恐怖が全部嫉妬に転化されたとしたなら……、厄介ってレベルじゃ済まされないわ」

アリス「一刻も早く、クリームヒルトたちを見つけて、厄を祓う必要があるわね。 みんなで手分けして探しましょう」

アリスの言葉に、その場に居た全員が頷く。
文やミスティアと言った妖怪たちが我先にと神社を出ていく中、幽々子は支度を整え始めた霊夢に話しかける。

幽々子「霊夢、貴女はここに残りなさい」

霊夢「は? ちょっとアンタ、なに言って……」

幽々子「博麗の巫女が動くと何事も“大事”になるのよ。 出来ることならこの件、あまり大きくはしたくないの」

そう霊夢に囁いた幽々子の表情は憂いを帯びていた。
その表情を見て、霊夢は気付く。 今、目の前に居るのは冥界の姫君でも、白玉楼の主でもない。
ただ純粋に友の身を案じる、一個人としての西行寺幽々子なのだ、と……。

霊夢「…………分かったわよ。 紫たちとの連絡役もしないとだし、私はここに残るわ」

幽々子「ありがとう、霊夢……」

幽々子はそう言って微笑むと、マミやアリスたちと共に飛び立って行った。
小さくなっていく皆の姿を見送りながら、霊夢は一人呟く。

霊夢「何がありがとう、よ。 アンタのあんな顔見たら、断れる訳無いじゃない……」


480 :東方焔環神 [saga]:2011/12/12(月) 20:17:26.82 ID:pdfcKQAW0
以上、投下終了

邪神・クリームヒルトちゃん降臨の巻

うん、ゴメン、クリームヒルトちゃんがいい子過ぎて……
雛さまも泣かせてゴメンなさい、マミさんが蚊帳の外でゴメンなさい、色々はっちゃけすぎてゴメンなさい


以下簡単に補足(あくまで作中設定です)

穢れ:妖怪や魔女が纏う呪いの力(幻想郷内では妖怪が纏う分には脅威度『低』)
瘴気:穢れのある所にある呪いの気、濃すぎる場合人体に影響(気分が悪くなる等)
怨念:穢れに恨み辛みなどの思念体が憑いたモノ、穢れより厄介度は上
厄 :上記の総称。 純度が高いほど脅威度は上がる。


改編後世界について
一言で言えば『最終ループ=改編後世界』
改編後世界は、ほむらの最終ループを元に、“魔女と、鹿目まどかが存在しなかった場合”に書き換えられたモノと設定しています。
つまり、魔女が居なくなった為に、マミさんと杏子の戦死が打ち消され、その状態で世界が上書きされた、としています。
481 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [saga]:2011/12/12(月) 21:32:21.45 ID:BcZll2VSO
優しい霊夢が読めるのはこのスレだけ!
482 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/12(月) 21:58:57.01 ID:KfPsA6lDO
お疲れ様です!
ヤンデレってもう幻想入りしてるのかwwって笑ってる場合じゃない状況だったわこれ。
483 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/12(月) 22:31:47.81 ID:sxjDHrCAO
>>480
パルシィ「私だけ謝罪がないのね……妬ましい、あぁ妬ましい」
484 : [saga sage]:2011/12/12(月) 23:34:26.82 ID:pdfcKQAW0
>>483
パルスィ「名前を間違えるとか……妬ましい」

パルスィさん犯人に仕立ててゴメンなさい、早苗さんに無視させてゴメンなさい
485 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/13(火) 17:18:43.31 ID:dhAxAi8DO
杏子ちゃんは神を信じなくなりかけの現実を憂いている様だけど、教会とか有名な一神教の神様なら、早々幻想入りはしなさそうだよね。エルザマリアさんは教会の幻想郷支部を建てたみたいだけど、それとこれとは話は別だし。
486 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/13(火) 19:51:45.95 ID:MZjz48zDO
>>485
キリストさん自体は幻想入りしないだろうけど、キリストさんが説いた隣人愛とかは(ry
いや、そんな事になったらホントに救いようがないけどさ……

このSS世界のゆまとかどうなってるんだろ……
487 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/14(水) 09:13:07.89 ID:DZPUw6oDO
ネタ的副題を勝手に付けると…。

 〜ヤンデレ化したクリームヒルトに死ぬほど愛されて眠れないほむら〜

ってな感じかな。まぁ、今ほむらちゃんは気絶してるから寝てるのと同じ様なもんなんだけどね。
488 : [saga]:2011/12/16(金) 18:07:07.10 ID:XzjD/EGe0
※ 独自解釈の嵐です要注意 ※


それでは続きを投下致します。
489 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/16(金) 18:10:16.05 ID:/PAdFskDO
やったー続きだっ!!
490 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [saga]:2011/12/16(金) 18:11:17.91 ID:XzjD/EGe0
――――――― 【魔法使いと魔女と魔法少女+α】 @ 魔法の森 ―――――――

杏子「くそっ! ほむらたちは一体何処に行ったんだよ!? さやか! 心当たりとか無いのか!?」

オクタヴィア「あったらとっくに見つかってるよ! むしろあたしが聞きたいくらいだよ!」

早苗「二人とも落ち着いて下さい。 仲間割れしている場合じゃありませんよ!」

日が傾き始めた頃から始まった捜索は、日没を過ぎても尚、実を結ぶ気配を見せなかった。
手分けをしているのに、未だに発見の連絡が無い事に、杏子もオクタヴィアも苛立ちを隠せない。

オクタヴィア「クリームヒルトもそうだけど、ほむらのヤツ、大丈夫かな……」

杏子「その辺は大丈夫だろ? アイツがほむらに何かするとは思えないし……、たぶん……」

思わずオクタヴィアが漏らした懸念に、杏子は自信なさげに答える。
既にクリームヒルトによってほむらが拉致されてから六時間近くが経過していた。
クリームヒルトがほむらに手を出すような真似はしないと思うが、それでも心配になる。

早苗「そろそろ八時になりますね……」

手に持った携帯電話の液晶に表示された時計を見ながら、早苗が呟いた。
幻想郷では時計かカレンダー代わりにしかならないソレだが、早苗曰くなかなか手放せないらしい。

オクタヴィア「とりあえず、一旦魔理沙の家に行こう。 他の誰かが何か手がかりを掴んだかも」

約束の時間が迫っていることもあり、オクタヴィアの提案に異論は上がらなかった。
魔理沙の家へと向かうため、オクタヴィアと早苗は杏子の手をとると、それぞれ魔力と霊力を注ぎ込む。
三人の周りだけが無重力になったように身体がふわりと持ち上がり、三人はそのまま夜空へと舞い上がる。

杏子「悪いな、手間かけて……」

オクタヴィア「いいよ、これぐらい。 どうって事ないから気にしないでよ」

魔理沙の家には、既にアリスや文たちが集まっていた。
互いに肩をすくめあっているところを見ると、アリスたちも手がかりを掴めなかったようだ。

降りてくる杏子たちに気が付いたのだろう、マミがこちらに寄ってきて、結果を尋ねてくる。

マミ「佐倉さん、そっちはどう? 暁美さんたち見つかった?」

杏子「いや、ダメだ。手がかり一つ掴めなかった。 そう言うマミの方は……、やっぱりダメだったんだな」

目を伏せながら首を横に振るマミを見て、杏子は肩を落とした。
ざっと見たところ、単独で捜索に出ている幽々子とミスティアを除く全員が、集まっているようだ。
491 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [saga]:2011/12/16(金) 18:15:59.79 ID:XzjD/EGe0

これだけの手数で捜索しているのに見つからないとなると、あとの二人も空振りの可能性が高いと誰もが思ったが……、
羽音を響かせてすっ飛んできたミスティアが、そんな空気を一気に打ち破った。

ミスティア「みんなーっ! 分かったわよ! クリームヒルトたちの居場所が!」

杏子「ホントか!? ミスティア!?」

真っ先に反応した杏子が尋ねると、ミスティアは興奮気味に首を縦に動かす。

ミスティア「うん、何人かの妖精が、女の子を閉じ込めた檻と一緒に歩いているクリームヒルトを見てたのよ」

魔理沙「で、それはどこなんだ?」

ミスティア「それが……、無縁塚の方へと歩いて行った、って……」

オクタヴィア「なっ!? 無縁塚って、また厄介な……」

ミスティアの答えを聞いた途端、幻想郷の住人たちは揃って顔をしかめた。
皆の反応に、マミと杏子が戸惑っていると、文が簡単に解説する。

文「無縁塚、って言うのは文字通り無縁仏、具体的には貴女たちのように外の世界から迷い込んで、
  そのまま帰る事も叶わず死んでしまった人間が埋葬されてる場所の事です」

マミ&杏子「「なっ!?」」

ここに来て初めて、二人は幻想郷の厳しい一面を垣間見る事になった。
思い返してみればマミたちは、多少の脅威であっても自力で排除できる魔法少女だったからまだ対処出来たものの、
それがごく普通の人間だったらどうなっていたか、深く考えずとも、答えは分かってしまった。

雛「そんなだから幻想郷の中でも例外的な場所で、穢れや怨念が本来の呪いを帯びていて、人間はおろか妖怪ですら避けて通る場所なのよ」

人間なら下手をすれば破滅するし、妖怪も怨念に憑かれかねないわ、と語る雛の表情は堅かった。
厄神の雛ですら手が出ない、雛にとっては屈辱とも言うべき地だからだ。

シャルロッテ「穢れに怨念、人なら破滅……、マズイよマミ! 早く助けに行かないとホムラが魔女になっちゃう!」

マミ「えっ?魔女? それってシャルちゃんや美樹さんの世界の話じゃ……」

突然声をあげたシャルロッテにマミは思わず目を丸くする。
理解が追い付かない一同に、シャルロッテは声を荒くして訴える。

シャルロッテ「忘れちゃったの!? 幻想郷の中では“円環の理”は通用しないんだよ!?
       幻想郷だと、魔法少女が穢れを溜め込むと、私たちと同じように魔女になっちゃうの!」

シャルロッテの言葉に今度こそ全員がはっとした。
いくら魔法少女と言えども、監禁拘束された状態で長時間穢れや怨念に晒されては無事で済む訳がない。

アリス「そう……、そう言う事なのね。 クリームヒルトはほむらを魔女化させる事で、幻想郷に縛り付けるつもりなんだわ」

早苗「そんな!? 普段のクリームヒルトさんならむしろ止めにかかる程の凶行じゃないですか!?
   そんな事になったら他ならぬクリームヒルトさんが一生後悔する羽目になりますよ!?」

事態を把握したアリスがクリームヒルトの魂胆を見抜き、早苗はそれが悲劇しか招かない事を嘆く。
クリームヒルトは幻想郷に来た当初、自分の居た世界を滅ぼしてしまった事を深く悔やみ、苦しんでいた。
そんな少女だ、自分が親友であるほむらを魔女にしたとなれば――例え厄に侵されてやった事だとしても――その罪悪感に押しつぶされてしまうだろう。
492 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [saga]:2011/12/16(金) 18:19:02.83 ID:XzjD/EGe0

杏子「…………(ギリッ」

話を聞いていた杏子は奥歯を強く噛み締めると、ソウルジェムを取り出して魔法少女へと変身する。
マミもまた、表情を引き締めると、同じように変身してみせる。

ミスティア「行くんだね? 助けに……」

杏子「ああ、そんな話を聞いちまった以上、放ってはおけないからな。 ほむらも、まどかも……」

オクタヴィア「私も行く! って言いたいところなんだけど、私たちは行くと逆にマズイから……」

他の場所なら兎も角、無縁塚特有の濃い怨念は、魔女や、ミスティアたち肉食妖怪の本能を呼び覚ます可能性が高いので、行くこと自体が危険だ。
そんな怨念に憑かれてしまえば、厄に憑かれたクリームヒルトの二の舞になりかねない。
必然的に無縁塚へと向かえる面子は、怨念への耐性がある強力な者か、神や冥界関係者、或いは自然の化身である妖精などに限定されてしまう。

顔を俯かせ、肩を震わせるオクタヴィアの手を握りながら、マミがその耳元で優しく囁く。

マミ「その気持ちだけで十分よ、美樹さん。 暁美さんと鹿目さんのことは私たちに任せて頂戴」

オクタヴィア「うん、お願いします」

そう言ってオクタヴィアはぎこちなくではあるが笑ってみせた。
親友の危機に何も出来ない事が、悔しくて悲しい筈なのに、それでも笑ってみせていた。
それだけに、託された想いはとても重く感じられた。

文「私は行けなくもないですけど、幽々子さんや霊夢さんへの連絡も必要でしょうから、残りますね」

魔理沙「ああ、そっちは頼むぜ」

アリス「行くのはマミたちと、私と魔理沙、早苗とお燐の六人でいいかしら?」

全員を見回して、アリスが突入部隊の人選を告げる。
魔理沙とアリスは瘴気の扱いに長けた魔法使い、早苗は巫女、お燐は普段から怨霊を扱っており、耐性に関しては問題ない。

お燐「あたいはそれでいいと思うよ。 決める事が決まったのなら、早く行こうじゃないか」

早苗「そうですね……。 あっ、マミさんと杏子さん、一応これを持っていて下さい」

厄除けの御札です、と言いつつ早苗は御札を一枚ずつマミと杏子に手渡す。
早苗曰く、気休め程度との事だが、それでもその御札にはそれなりの力が込められているのが、二人にも分かった。

魔理沙「準備はいいな? それじゃあ行くぜ、クリームヒルトのヤツをたたき起こしにな!」

魔理沙の言葉に、マミたち突入班は力強く頷いた。


493 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [saga]:2011/12/16(金) 18:22:34.77 ID:XzjD/EGe0
―――――――― 【救済の魔女と焔の魔法少女】 @ 無縁塚 ――――――――

クリームヒルト「……ほむらちゃん、大丈夫? 怖くないからね、ほむらちゃんはここに居るだけで良いんだから……」

ほむら「…………」

大丈夫かと問いかけるクリームヒルトの瞳には光がなく、明らかに正気ではない事は、ほむらにもよく分かった。
が、両手両足を拘束され、濃い瘴気に身体を侵されつつあるほむらが、クリームヒルトに対して出来る事など何一つとして無い。

ここから脱出する事はおろか、言葉を発する事すら、今のほむらには儘ならないのだ。
出来る事と言えば、霞みかけた視界と思考の中で、自身のソウルジェムが穢れに侵食されていく様を見届ける事だけ。
それはまさしく、絶望的な状況と言えた。
が、そんな状況にあってもほむらは、自身の境遇ではなく、別の事を悔やみ続けていた。

ほむら(まさかまどかがここまで思い詰めていたなんて……、
    こんな事になるんだったらもっと早く、まどかと話をしておくべきだったわ……)

自分がクリームヒルトをこんなになるまで追い詰めてしまったのだと言う後悔と罪悪感が、ほむらを苦しめる。
泣きそうになっているほむらを見て勘違いしたのか、クリームヒルトがほむらを閉じ込めた檻をそっと抱きしめる。

クリームヒルト「ホントに大丈夫だから……、私が、私だけはいつまでもほむらちゃんのそばに居るから……、ね?」

言葉や仕草が普段と変わらない優しいクリームヒルトのままなのが、ほむらは悲しかった。

クリームヒルト「ティヒヒ……、私ね、ほむらちゃんが私の事を、“まどか”って呼び続けてくれて、とっても嬉しかったんだ。
        ほむらちゃんを裏切って、魔女になって、“概念の私”にすら見放された私に、そう呼ばれる資格なんてないのに……」

ほむら「っ!」

悲しい顔で自嘲するように呟くクリームヒルトに、「そんなことない」と声をかけることも出来ない事が、悔しかった。

ほむら(どうして? なんで肝心な時に限って、私は何も出来ないの!?)

この“まどか”が魔女になってしまった時も、あの“まどか”が概念になる契約を結んだ時も、ほむらはただ見ている事しか出来なかった。
あのまどかとの約束を守り、このまどかの居る世界を守る。
それが出来るのは、自分なのだ、自分がやらなくてはならないのだ、そう思っていた矢先にコレである。
ほむらの思考は、急速に負の方向へと傾こうとしていた。
ソウルジェムの濁るスピードが早くなり、本来、紫に輝いている筈のその宝石は、その大半を漆黒の闇より深き黒に染め上げられていく。

ほむら(ごめんなさい、まどか……、私やっぱり貴女を守れそうも……)

???「シケた面してんじゃねーよ! バカ野郎っ!」

ほむらが絶望に呑まれかけた、まさにその時だった。
多分に怒気をはらんだ、聞きなれた声が、無縁塚に響いたかと思うと、同時に何本もの槍が飛来する。
飛んできた槍はクリームヒルトの周囲を覆うように突き刺さり、彼女と檻の間で壁となって、クリームヒルトの動きを封じる。
494 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [saga]:2011/12/16(金) 18:24:53.47 ID:XzjD/EGe0

クリームヒルト「っ!? これは……、杏子ちゃん!?」

魔理沙「おっと、驚くのはまだ早いぜ!」


                      『ブレイジングスター』


そんな声と共に極太のレーザーを後方に放って一気に加速した魔理沙が突貫する。

クリームヒルト「くっ!」

一度は不意を衝かれたクリームヒルトだが、突っ込んでくる魔理沙に対して、すぐさま迎撃弾幕を放つ。

魔理沙「流石にこんな不意打ちじゃ通用しねーか……、だが、惜しかったな……」

そう言ってニヤリと笑った魔理沙は、身体をぐっと傾けて箒の向きを変える。
そのままクリームヒルトの脇を掠め通り、そこに居たほむらを閉じ込めていた檻ごと奪い去る。

魔理沙「私の狙いはこっちだぜ!」

クリームヒルト「なっ!?」

箒の柄を檻に引っ掛けて掻っ攫うと言う大胆な戦法に、今度こそクリームヒルトの表情が驚愕のソレに染まる。
それでも尚、飛び去ろうとする魔理沙に弾幕を放とうとして……、四方からの弾幕に阻まれた。

クリームヒルト「大量のマスケット銃!? いつの間に……!」

マミ「悪いけど、暁美さんは返してもらうわよ」

弾幕を身を翻して回避しながら、クリームヒルトは視界の隅にマスケット銃を操るマミの姿を捉える。
四方からの一斉射撃は、マミの中でも必殺技に準じる高威力攻撃だ。
しかし、それすらも弾幕戦に慣れたクリームヒルトにはまだ温く見えた。

クリームヒルト「流石マミさんだね。 でもこの程度じゃ……まだまだだよ!」

一瞬だけ出来た間を見計らって、魔力でサーベルを作り出したクリームヒルトは、襲い来る弾幕目掛け一閃する。
サーベルとサーベルの斬撃が生み出した光の刃が、マミの弾幕を打ち消し、クリームヒルトの前に道を作る。

マミ「なっ!?」

マミが表情を強張らせるよりも早く駆け出したクリームヒルトは、手にしたサーベルでマミに斬りかかる。
495 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [saga]:2011/12/16(金) 18:28:07.01 ID:XzjD/EGe0

???「マミ、その場に伏せなさいっ!」

マミ「っ!?」

背後から飛んできた声に従い、マミがその場に身を投げ出すのと同時に、マミの頭上を小さな影が飛び越える。
マミの身体を捉えんと、襲い掛かってきた刃は、小さな影の持った十字剣により阻まれる。
アリスの操る自律人形が、ギリギリのところで間に合ったのだ。

アリス「マミ! 今のうちに下がりなさい! 魔理沙は早苗の結界へ!」

お燐「ここはあたいらに任せて、一旦引きな!」

アリスは剣や槍を装備した自律人形で、お燐は従えた大量のゾンビフェアリーで、それぞれクリームヒルトを牽制しながら、口々にそう叫ぶ。
すぐさま体勢を立て直したマミと、檻ごとほむらを奪還した魔理沙は、アリスの指示に従い後退する。

早苗「こっちです! マミさん! 魔理沙さん!」

後退した先では、陣を張って結界を作り上げた早苗が、杏子と共に待っていた。
結界に入るなり、杏子は、魔力で作られた檻を槍で壊し、中からほむらを救出する。

杏子「おい、ほむら! 大丈夫か!?」

ほむら「うぅっ……きょう……こ……?」

早苗「だいぶ穢れに侵されてますね。 早く祓わないと」

弱々しい呻き声を漏らすほむらを見て、早苗は真剣な面持ちで厄祓いの儀を行うための霊力を練り上げる。
その様子を横目で見ながら、魔理沙はマミと杏子に向き直る。

魔理沙「ほむらの事は早苗に任せて、私らはアリスたちに加勢しよう。 マミ、お前はほむらと早苗を守りつつ、援護射撃を頼む」

マミ「分かったわ」

魔理沙「杏子は私と一緒に切り込むぞ。 無茶して墜ち(ピチュ)るなよ?」

杏子「へっ! そっちもな!」

簡潔な打ち合わせを終えると、三人はそれぞれ三方に散る。
マミは、早苗の結界の前に陣取ってマスケット銃を生成し、魔理沙と杏子はそれぞれの武器を片手に、戦場へととって返す。
アリスとお燐は手数を利用してクリームヒルトを牽制しているが、ダメージを与えるには至っていないようだった。
ほむらの奪還には成功したものの、本来の目的であるクリームヒルトに憑いた厄を祓えるのか、見通せる者は誰一人として居なかった。


496 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [saga]:2011/12/16(金) 18:32:06.72 ID:XzjD/EGe0
―――――――― 【博麗の巫女と円環の神様】 @ 博麗神社 ――――――――

霊夢「……来たわね」

月下の博麗神社の境内で、ソレ特有の気配を感じ取った霊夢は、気配のした方を振り返った。
宙に現れた裂け目――スキマから一人の少女を連れて出てきたスキマ妖怪――八雲紫は、そんな霊夢の姿を見て、目を丸くする。

紫「あら霊夢、出迎えなんて珍しいわね。 どういう風の吹き回しかしら?」

霊夢「アンタが居ない間に色々あったのよ……。 で、そっちのアンタが円環の理、いえ、鹿目まどかかしら?」

まどか「は、はい、そうですけど……」

名乗っても居ないのに霊夢から名前を呼ばれ、白衣の少女――鹿目まどかは戸惑いつつも、頷いた。
その様子を見て、何かを覚ったのか紫はすっと目を細める。

霊夢「私は博麗霊夢、この幻想郷で、結界の管理と、人と妖怪のバランスを保っている巫女よ。
   アンタの話はクリームヒルトやほむらから聞いてるわ。 当然アンタの目的も分かってるつもりよ」

まどか「! それじゃあ……」

霊夢「ええ、協力してあげる……、と言いたいところだけど、アンタにはまず全部話してもらうわよ」

まどか「? 全部話す……?」

話を受ける素振りから一転して突き付けられた要求に、まどかは思わず眉をひそめる。
霊夢の真意を、まどかが量りかねていると、霊夢自らが先の言葉に補足する。

霊夢「アンタがどんな経緯を経て円環の理(神様)になったのか、洗いざらい話して、って言ってるのよ。
   それを聞いておかないと、私はアンタへの態度を決められない」

きっぱりとそう言い切ってみせる霊夢の態度は、一見すると高圧的で敵愾心に満ちているように見える。
が、まどかに向けられた瞳は射ぬかんばかりに真っ直ぐで、真剣そのものであり、これが極めて真面目な話である事を如実に物語っていた。

まどか「……分かりました。全部話します。 私が、私たち魔法少女が辿ってきた、悲しみと不幸の連鎖の話を……」


                        【少女説明中】


まどか「……そして、私は願ったんです。 全ての魔女を消し去って、悲しみと絶望にうちひしがれて消えていった魔法少女を救いたい、と……」

霊夢「アンタは皆を救うために、不条理極まりない悪魔みたいなヤツの思惑と能力を逆手にとって、世界自体を書き換えた……、そういう訳なのね?」

一通りの話が終わり、最後に確認するように聞いてきた霊夢にまどかは頷いてみせる。
それを見て霊夢は静かに瞑目すると、ぽつりと一言呟いた。

霊夢「間違っては居ないけど間違えた、そう言う事なのね……」

まどか「?」

霊夢が漏らした言葉の意味を、まどかは理解出来なかった。
話の流れからして、まどかが行った世界の書き換えについての話の事だとは分かったのだが、
それのどこに間違いがあったのか、分からなかったのだ。
497 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [saga]:2011/12/16(金) 18:36:36.53 ID:XzjD/EGe0

霊夢「アンタの想いは正しいわ。そう考えるのは人として当然だもの。
   けどね、その想いを達成する為の手段として、“魔女を消し去る”って言う願いは正解とは言えないわ」

まどか「正解じゃない、って魔女は魔法少女の絶望と呪いから生まれた危険な存在なんだよ?
    魔法少女を呪われた運命から救おうと思ったら、そのルールを覆さないと……」

霊夢「その覆すべきルールに、魔女は穢らわしい危険な存在、って言う前提条件は含まれない訳?」

一度は声を荒げて反論しようとしたまどかは、霊夢の更なる問い掛けに言葉を詰まらせる。

霊夢「ここに来た魔女たちは話が出来ない相手じゃなかったわ。
   確かに穢れは纏っていたけど、あの子たちからすれば息をするようなもので、あの子たち自身を責めていい理由にはならないわ」

まどか「それはここが特別な場所だからじゃ無いんですか?
    私自身、魔女が外の世界で、人を襲って呪いを振り撒くところを見てるんですよ?」

まどかは幻想郷が、外での常識が通用しない場所であると言う紫の話を思い出しながら、霊夢に問い返す。

霊夢「そうね。 それは事実なんだろうし、ここだけが特別、と言う可能性は大いにあるわ。
   それじゃあ聞くけど、野生動物に人間が襲われたとして、その動物が悪意でもって人を襲った、と証明することはできる?」

まどか「そ、それは……、で、でも、それとこれとじゃ話が……」

霊夢「暴論に近いけど、同じなのよ。 人間の“常識”なんかが通用しない、と言う一点に於いて、魔女も妖怪も動物も同じなの」

幻想郷の中のように、直接対話が可能であるなら、相互理解も容易だろう。
だが、それが出来ない外の世界では、人間としての尺度を捨て、相手の側から物事を捉えない限り、完全な正答を導く事は出来ない。
人間同士の普通の人付き合いでも全く同じ事が言えてしまうのだから、この言葉には説得力があった。

霊夢「特に妖怪や神なんていう精神的な存在はね、人間の認識次第で敵にも盟友にもなり得る不確かな存在なのよ。
   怨念や妖怪が時代の変化で神となり祀られる、なんて例は古今東西で見られるわ。 一方的な見方で凝り固まるのは失敗の原因よ」

まどか「…………」

まどか自身、その事をまったく考えなかった訳ではない。
とくにこの幻想郷に流れ着いた魔女の存在を知ってからは、ここの魔女が自分たちと同じように生きている事を知ってからは、疑問に思う事も多くなった。

果たして、魔女とは一体なんだったのか? 消さねばならないほど危険な存在ではなかったのか?
魔女に関しては、マミもほむらも、インキュベーターも打ち倒すべき敵、としか言っていなかったのでそうだと信じてきたが、それは本当に正しいのか?

そんな疑問を抱いては、深く考えないようにしていた。 単純作業だと思い込むようにしていた。
そうしなければ、まどか自身の心が擦り切れてしまいそうだったからだ。
ある世界の杏子に魔女のさやか――オクタヴィアを救えないのはおかしい、と断じられた時など暫く引きずった覚えがある。

霊夢「そもそも、人って言うのはね、一度や二度の絶望程度でダメになるほど柔じゃないの。
   どうしようもなさそうな絶望ですら糧にして、這い上がるだけの底力を、人は持ってるの。
   それを一度の絶望で呪いに堕ちるように仕向けたその獣……インキュベーターだっけ? は勿論言語道断よ。
   でもね、だからと言って絶望で堕ちてしまった人たちに、そうして生まれてしまった呪いに、やり直しの機会も与えずに消していい、って事にはならないの」

まどか「…………」

霊夢「人間、間違えもすれば、絶望する事だってある。 問題は間違えたり、絶望したソイツが、その後をどうするか、よ。
   アンタ一人が他人の分まで背負い込んで、裁量すれば良い、ってモノじゃ無い。 なかった事にしたんじゃ意味がないのよ。
   何が問題だったのか、きちんと認識して、それを乗り越えないと、結局それは新たな歪みの元凶になるわよ」

全てを見て、全てを分かったつもりになっていたまどかだが、霊夢の言い分も道理が通っており、その自信はぐらつきつつあった。
すっかり黙ってしまったまどかを見て、霊夢は言い方が乱暴過ぎたと今更ながら思ったが、それでも尚、言葉を続ける。

霊夢「ついてきなさい、アンタの正しい想いから生まれた願いが、何をもたらしたのか、見せてあげるわ……」


498 :1@携帯 [saga]:2011/12/16(金) 18:54:21.04 ID:zwT0mVhDO
以上、投下終了

てかタイトルいれ忘れた……orz
慌てすぎだろ俺……

あーあ、ついにやっちゃった。霊夢さんがまど神さまにケンカ売っちゃったよ。
どーするんだコレ……

まあ、どんなにお痛をやらかしても、ボッコボコに退治はするけど、殺さない(存在否定はしない)が東方の世界観だから、
魔女相手とは言え、一方的に殲滅するまど神さまの方針は受け入れがたい話なんですよね。
人妖どちらの味方でもある霊夢さんならではとしてください。

うん、一言で言わせてもらうなら、

魔法少女と魔女が一緒に笑い会う世界があったっていいじゃない!
と言うかクリームちゃん目線で書いてたから、どうしてもまど神さまが敵になっちゃうんだよ!悪いか!?


まど神「ウェヒヒ……、言いたいことはソレだけかな?」


げぇっ!?貴女はまど神さ……ぎゃあああっ!?(ピチューン
499 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/16(金) 19:51:23.74 ID:/PAdFskDO
投下お疲れ様です!
連れて行くのは、やっぱりクリームヒルトの所だろうか。現実ってシビアだからな、上手くいかない事の方が多いのは仕方が無い。
500 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/16(金) 22:42:38.83 ID:ay1WQQNOo
お疲れ様でした。

問答無用かつ現在進行形で襲われて対抗する術を持たない人からすると、
悪戯ですまないわけですし・・・・・・・・・。殺害を含めた対応手段を取らざるを得ないかと。
501 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/16(金) 23:06:57.22 ID:ZeJpjgFFo
乙です。
本編がベストでなくベターな選択だったとはいえ、幻想郷だからこそって面は大きいしね。
502 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/16(金) 23:52:38.45 ID:+zlLuGI80
投稿乙です。

本編中じゃ魔女の仕業で死に掛けてる人間が何度も描写されてる上まどか自身も巻き込まれて死に掛けてる訳だしなぁ。
直接的に被害を被っている状況では魔女を倒すべき敵と認知しても仕方が無いと思うな
503 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [saga]:2011/12/17(土) 09:27:51.65 ID:IaghxqQSO
( ´_ゝ`)…
504 : [saga]:2011/12/17(土) 10:24:50.80 ID:ksixEzXJ0
うん、見事に予想通りのコメントだ。(挨拶)

と言うか俺の作者※が一番酷かったね。
いくら急用が出来たからとは言え、あそこで投稿切って、あの※ならこうなるわな。

霊夢さんも作中じゃ霊夢さんなりに譲歩してますが、部外者の戯言の域を出てません。
それは無意識のうちに霊夢さんが幻想郷の常識の範囲で、外の世界の人間の立場を推定してるから、なんですよね。
ああ、無常なり常識の壁……

戯言が過ぎました、投下し損ねた続きの残り、投下します。
505 :東方焔環神 [saga]:2011/12/17(土) 10:31:17.48 ID:ksixEzXJ0
―――――――― 【救済の魔女と無縁塚突入隊】 @ 無縁塚 ――――――――

クリームヒルト「……ティロ・フィナーレ」

アリスがソレに気付いた時、全てが手遅れになっていた。
いつの間にか内懐に潜り込んでいたクリームヒルトが、回避不可能な至近距離で大砲にも似た銃を構えていたのだ。

アリス「なっ!? 零距離射撃っ!?……きゃああっ!?」

杏子「っ!? アリス!?」

砲撃をもろに受け、その場に崩れ落ちるアリスを見て、杏子は思わず声をあげる。
撃墜されたアリスに気をとられ、視線を逸らした杏子に、すかさず魔理沙の怒号が飛ぶ。

魔理沙「バカっ! よそ見すんな! 次はお前が狙われるぞ!!」

そう叫ぶ魔理沙自身も圧倒的な弾幕を相手にしていた。
アリスが墜ち、お燐もゾンビフェアリーの数が少なくなっていた為、牽制し続けることが、難しくなったからだ。
それでも魔理沙は、これまでの経験と培ってきた技能とで、この難局に挑んだが、それでも限界は訪れた。

魔理沙「っ!? ヤバい、囲まれた!?」

気が付いた時には無数のマスケット銃が、その銃口を魔理沙に向けていた。
この時、杏子はクリームヒルトを挟んだ反対側に、お燐は後方の離れたところに居て、魔理沙の援護が出来ない状態だった。

お燐「魔理沙! 一旦引きな!」

魔理沙(それが出来たら苦労はないぜ……)

お燐の絶叫にも似た声を背中に受けつつ、魔理沙はやけに冷静な思考で、向けられた銃が火を噴くのを見ていた。
放たれた弾幕は、魔理沙を撃ち抜くべく、四方八方から襲い掛かってきて……、次の瞬間、別の方向から飛んできた銃撃により相殺された。

魔理沙「っ!?」

マミ「どうにか間に合ったわね。加勢するわ」

金髪のドリルロールをなびかせて、魔理沙の前に立ったマミを見て、魔理沙は目を見張る。

魔理沙「マミ!? 早苗の援護はどうなったんだ!?」

マミ「暁美さんの厄祓いは終わったわ。 今は暁美さんを連れて後方に下がっているところよ」

護衛役はお役御免、って訳、と言いつつウィンクをしてみせるマミに、魔理沙は苦笑する。
いくら援護射撃役に徹していたとは言え、マミの魔法少女装束は煤と硝煙でたっぷり燻されていた。
余裕があるとはお世辞にも言えた状態ではない。

それでも最前線に飛び込んできた辺り、やはり性分なのだろう。
救いようのないバカが居たもんだと、魔理沙は思ったが、それは自分自身も同じなので代わって別の言葉をかける。

魔理沙「助かったぜマミ。 この一件にカタがついたら取って置きの一杯を奢るぜ」

マミ「あら、嬉しいわ。 でも、そう言うことはケリがついてからにして頂戴。 じゃないと……」

言いかけたマミは魔力のリボンを一閃して、魔理沙の背後の弾幕を打ち消し、魔理沙は八卦炉で、マミの背後に現れた槍の弾幕を吹っ飛ばす。

マミ「変なフラグが立っちゃうじゃない」

魔理沙「だな、流石に私も、そいつは勘弁だ」


506 :東方焔環神 [saga]:2011/12/17(土) 10:37:57.78 ID:ksixEzXJ0
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

早苗「ふぅ、ここまで来れば一安心ですかね……」

無縁塚を離れて、再思の道まで戻ってきた早苗は、そこで一旦息をついた。
背負っているほむらを落とさないように地面に軟着陸すると、そこで一旦、ほむらを地面に降ろす。

早苗「だいぶ苦戦してるみたいですね……。 これは私も加勢した方が……」

ほむら「わ、私も……」

無縁塚の方を見やりつつ、早苗が険しい表情をしていると、ほむらがよろけながらも腰をあげる。

早苗「ちょっ、ダメですよほむらさん! まだほむらさんの身体は……」

ほむら「まどかは……、私に助けを求めてきたの。 寂しい、って……、救って欲しい、って……」

声をあげる早苗に構わず、ほむらは立ち上がる。
早苗の言う通り、身体に力は入らず、立ち上がるだけでも膝がガクガクと震える。
それでも自力で立ち上がったほむらは、真剣な顔で無縁塚を、クリームヒルトがいる方を見据える。

ほむら「私はまだ、まどかに答えを言ってない。 貴女の居場所は間違いなくあるんだ、って伝えられてない!
    だから私は戻らないといけない。 戻って伝えないと、まどかを本当に救う事は出来ないの」

早苗「ほむらさん……、でも……」

???「そのくらいにしておきなさい、守矢の巫女……」

尚も言葉をかけようとした早苗だか、それは背後から聞こえた声によって遮られた。
見ると、幽々子が丁度、再思の道の入り口に降り立ったところだった。

早苗が今にも出かかった言葉を呑み込んだのを確認すると、幽々子はほむらに向き直る。

幽々子「貴女がクリームヒルトちゃんが話していた、暁美ほむらさんね?
    私は亡霊の西行寺幽々子。 クリームヒルトちゃんたちとは、色々と良くしてもらってるわ」

もしかしたら、話は聞いているかも知れないけど……、と言う幽々子に、ほむらは小さく頷く。
クリームヒルトを知るきっかけとなった新聞でも読んだし、クリームヒルト自身からもその話は聞いている。
507 :東方焔環神 [saga]:2011/12/17(土) 10:40:22.08 ID:ksixEzXJ0

幽々子「あつかましい話だとは思うし、無責任な事だとは重々承知してるつもりだけど、私からもお願いさせて欲しいの。
    クリームヒルトちゃんを助けてあげて……。 今のあの子を救えるのは貴女しか居ないの」

静かな声ではあったが、それだけにその言葉は重かった。
早苗は幽々子の心中を察して唇を噛み、ほむらは幽々子の視線を真正面から受け止めて……、やがて大きく頷いた。

ほむら「最初から私はそのつもりよ。 だってあの子は、私の大切な……、大切な友達なんですもの……」

幽々子「ありがとう、私の我が儘にしっかりと答えてくれて……。 でも、その言葉を言うのはここじゃないわ」

真っ直ぐな瞳で、そう答えたほむらに、幽々子はそう言うと小さく微笑んで見せた。

幽々子「行きましょう。 クリームヒルトちゃんを本当の意味で助けに……」

早苗「でもどうするんです? 先程までの様子ですと、いくらほむらさんの言葉でも、そう簡単に届くとは思えませんよ」

厄のせいも相まって、随分と盲目的になっていたクリームヒルトの姿を思い出しながら、早苗が懸念を漏らす。
別の声がその場に割り込んできたのは、ちょうどその時だった。

???「それなら私に考えがあるわ」

早苗「っ!? 紫さん!?」

いつの間にか現れた、スキマ妖怪の八雲紫に早苗は思わず声をあげる。
対する幽々子は表情ひとつ変えることなく、長年の親友に問う。

幽々子「考えって、何をする気かしら? 紫……」

紫「ちょっとした茶番よ。 気付けにぴったりな、ちょっと刺激の強いヤツをね……」

紫は悪戯を提案するような、胡散臭い笑みを浮かべると、自身の案を話し始めた。


508 :東方焔環神 [saga]:2011/12/17(土) 10:45:20.73 ID:ksixEzXJ0
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

一方、無縁塚の戦いも、展開が劇的に動こうとしていた。
クリームヒルト優勢のまま、魔理沙以下、四人で戦線を支えると言う構図は、霊夢と共にある人物が降り立った事で、様相が一変してしまったのだ。

マミ「か、鹿目さんが……、二人?」

クリームヒルトとマミたちの間に立つように降り立った人影は、相対するクリームヒルトとよく似た、桃色の髪の少女だった。
夢で見た姿と寸分違わぬその少女を見て、杏子はこれ以上ないくらい目を見開く。

杏子「アイツは……! アタシが夢で見た……」

お燐「夢って、さっきお姉さんが話してたヤツかい? それじゃあ……」

マミ「あれが“円環の理”になった、私たちの世界の鹿目さん、なの?」

口々に呟きながら、マミたちは対峙する二人の少女を見た。
“円環の理”こと鹿目まどかが現れた途端、クリームヒルトは弾幕を撃つことを止めていた。
飛び交う弾幕で騒がしかった辺りは、一転して静寂に包まれており、それが却って気味の悪い雰囲気を醸し出していた。

まどか「…………」

まどかをじっと見据えたまま、動かないクリームヒルトを見て、まどかは思案する。
実はこの現場で、一番戸惑っていたのが、他ならぬまどかだった。
まどかはマミたちがクリームヒルトと戦っているのを見て、反射的に戦場に介入したのだが、割り込んだ後になってその違和感に気付いたのだ。

まどか(おかしい。確か、魔女・クリームヒルトは救済の魔女だった筈。
    こんな回りくどい戦いなんかしなくても、能力を発動させちゃえば、ううん、能力を使わずとも一秒と経たずに戦いは終わってる筈なのに……)

が、マミたちの様子を見るに、戦いはかなりの持久戦で、無防備に倒れている少女に止めを刺さないなど、不可解な点が多い。
能力が発動出来ないのかとも思ったが、まどかの“救済”は意図して発動する分には可能であり、クリームヒルトのソレが出来ないとは思えない。

そんなまどかの戸惑いを察したのか、霊夢が疑問に答える。

霊夢「別におかしなところは何一つないわ。 クリームヒルトは幻想郷でのルールに則って魔理沙たちと一戦交えてただけなんですもの」

まどか「ルール?」

霊夢「そうよ。 危ういバランスで成り立ってる幻想郷での、唯一にして絶対のルール。
   そのルールを守るぐらいの良心は、まだあの子の中に残ってた、って事。 厄なんて言う憎しみの塊に侵されてしまった後でもね」

まどか「…………」

霊夢の言葉を聞いて、まどかは再度、クリームヒルトの方を見た。
背後でこちらを見守っているマミたちも相当だったが、クリームヒルトの方も良く見るとあちこち小さい傷や、煤まみれであり、
戦いが決して一方的な虐殺や蹂躙ではなかった事を如実に物語っていた。
むしろ、傷の具合だけを見るなら、クリームヒルトの方が嬲られていたと思えるほどだ。
509 :東方焔環神 [saga]:2011/12/17(土) 10:49:13.03 ID:ksixEzXJ0

まどか(これが、最悪の魔女なの? これじゃあ、まるで……)

クリームヒルトの姿を見て、まどかの中に様々な疑問が湧き出して来る。
そんなまどかをじっと見守っていた霊夢は、次の瞬間、魔理沙に声をかけられ振り返る。

魔理沙「なぁ霊夢、お前、クリームヒルトに何かしたのか?」

霊夢「? 別に何もしてないけど……、なんでそんなこと聞くのよ?」

魔理沙「いや、クリームヒルトのヤツが急に弾幕を撃つのを止めたからさ、お前が厄を祓ったのかな、と……」

厄を抑え込んでも居ないのに、クリームヒルトが正気に戻るわけないだろう? と言う魔理沙の言葉に、霊夢は今更ながら疑念を抱く。
クリームヒルトが攻撃を止めたのは、まどかが来たからだ、と考えて深く考えなかったが、良く考えてみると、まどかが何らかの力を使っている様子はない。

となると、攻撃を控えて、いや抑えているのは他ならないクリームヒルトの意思と言う事になる訳で……。
霊夢の中で疑念が、悪寒になり、その悪寒は、間も無く現実のものとなった。

クリームヒルト「……い、……まえ……なく……て……」

消えそうなほどの小声をクリームヒルトが漏らしたのは、ちょうどその時だった。
声が良く聞き取れなかった上、クリームヒルトが俯き気味に立っていた為、表情を読む事も出来ず、まどかは顔をしかめる。

まどか「?」

クリームヒルトは震え出した手を、もう片方の手で押さえながら、今度ははっきりとした口調で言う。

クリームヒルト「お願い、私の前から居なくなって……、じゃないと私、もう抑えきれな……」

霊夢「っ!?厄が強くなってる!? アンタ、今すぐそこから離れなさい!」

霊夢がクリームヒルトの異変に気が付いた時には、既に手遅れになっていた。
クリームヒルトは魔力の弓を現出させると、爆発的な魔力でもって矢を作り出し、まどかたち目掛けて放ったのだ。


                      輝弓 『フィニトラ・フレティア』


わき腹を魔力の弓が掠め、まどかがその場に倒れるのを見ながら、霊夢は激しい後悔と自信への憤りに唇を噛んだ。
直後、辺りは閃光に包まれ、霊夢たちは思わず目を瞑る。

霊夢(そうよ、あの子は最初っからそういう子だったじゃない! なんで気が付かなかったの!? 博麗霊夢っ!)

クリームヒルトは他人を傷つけるくらいなら、自分で抱え込んで抑えようとする傾向がある。
それは魔女異変の時もそうだったし、今回の件でもそうだった。
510 :東方焔環神 [saga]:2011/12/17(土) 10:56:49.67 ID:ksixEzXJ0

それだけ優しい子なのだが、それはその抑えが利かなくなると一気に爆発する危険性があるということでもある。
クリームヒルトが弾幕を撃つのを止めたのは、厄が抑え込まれた訳ではなく、嫉妬の対象であるまどかが現れた事で、
残された良心と、厄に煽られた嫉妬心とが、最後のせめぎあいをしていたからだったのだ。

そして、今、残された良心と言う最後のダムも決壊した。
こうなってしまっては、あとは嫉妬心に任せるまま、憎しみに堕ちていくのみになってしまう。

霊夢「っ! ダメよ、クリームヒルト! それ以上は……」

閃光が納まった時、クリームヒルトは倒れたまどかの目の前まで来ていた。
倒れたまま、こちらを見上げてくるまどかを、光のない瞳で見下ろしながらクリームヒルトは、呟くように言う。

クリームヒルト「私は貴女が羨ましかった……。 ほむらちゃんを、みんなを救えた貴女が……」

口から漏れだすのは、これまで隠して、抑えてきた、本心。
それは全てを救ってみせた、自分とは違う自分に抱いた羨望。

クリームヒルト「私は何一つ守れなかった。 マミさんも、杏子ちゃんも、さやかちゃんも!
        私の為に頑張ってくれたほむらちゃんだって裏切って、しまいには世界中の人を巻き込んで!
        私は、私自身の手で、全てを壊しちゃったの!」

それは、それらを手に入れるどころか、自ら壊してしまった事への罪悪感。

クリームヒルト「こんな私だもん、そんな資格はない、って言うのは良く分かってる。
        でも、それでも、ほむらちゃんはこんな私の事も覚えていてくれたの!
        外の世界から、完全に忘れ去られた私にもまだきちんと覚えている人(居場所)があるんだ、ってそう思わせてくれたの」

後悔と卑下に苛まれた少女に、それはどれほどの救いとなったのであろう。
全てを失い、ゼロからのやり直しを覚悟していたクリームヒルトにとって、まさしくそれは最後の希望だったに違いない。

クリームヒルト「私は怖いの、私の居場所が無くなるのが……、貴女と言う存在に書き換えられて、完全に消えちゃうのが!」

クリームヒルトの瞳から、光る雫が零れ落ち、頬を伝う。
最後の希望すら奪われてしまうのではないかと言う不安が、強くあろうと、やり直そうと決意した少女を、こんなにも弱くしてしまったのだ。

クリームヒルト「お願いだから、私から最後の居場所を盗らないで! そこに居て良いんだよ、って認めてよ!」

まどか「…………」

まどかはなにも言うことが出来なかった。
目の前で涙ながらに叫ぶ“魔女・クリームヒルト”も、自分自身と同じ、“少女・鹿目まどか”なのだと気付いてしまったから。

そこに居たのは、世界を滅ぼした最悪の魔女ではなく、自分の居場所を守りたいと真摯に願う一人の少女だった。
ただ一度、間違ってしまっただけで、居場所を失ってしまった悲しい少女が、そこに居た。

まどか(あはは、これじゃあ恨まれちゃっても、仕方ないよね……)

まどかがなにも出来ずに居ると、クリームヒルトは持っていた弓を構えた。
そのままなにも言わずに魔力の矢を生成し、鏃をまどかへと向ける。

クリームヒルトの纏う厄の気配が一気に強くなり、その表情が憎悪に染まる。
それと同時に極めて濃い穢れが二人の周囲を取り囲み、霊夢ですら近寄れなくなってしまう。

クリームヒルト「それじゃ、死んでね」

まどか「っ!?」

クリームヒルトがゆっくりと弓を引き絞り、まどかが目を瞑ったその時の事だった。
鋭い声と共にその人物がその場に割り込んだのは……


???「やめなさい!」


聞きなれた声に、よく見知った姿に、クリームヒルトは目を見張る。
まどかがゆっくりと顔を上げると、クリームヒルトの前に立ちふさがるように、まどかを庇うように、一人の女性がその場に立っているのが見えた。

そこに居たのは、クリームヒルトが幻想郷で最初に出会った相手であり、幻想郷での居場所を作ってくれた亡霊、西行寺幽々子だった。
511 :東方焔環神 [saga]:2011/12/17(土) 11:05:16.54 ID:ksixEzXJ0

幽々子「やめなさい、それ以上は絶対にしちゃダメよ。 クリームヒルトちゃん」

いつも見せる友への優しい笑顔ではなく、どこまでも真剣な幽々子の眼差しに、クリームヒルトは一瞬たじろぐ。
が、すぐに冷徹な笑みを浮かべると、低い声で幽々子に問いかける。

クリームヒルト「なに? 幽々子さんも私の邪魔をするの?
        私とほむらちゃんを引き裂こうとするなら、相手が幽々子さんでも容赦しないよ」

幽々子「あら? そんなつもりは無いわ。 馬に蹴られるのは嫌だもの。
    でもね、妬みや厄なんていう低俗なモノに憑かれて、一時の激情で間違った道に進もうとしている親友を見過せる程、私は薄情者じゃないの」

クリームヒルトのそんな言葉を聞いても、幽々子は動じなかった。
逆に、周囲で見ている者がすくんでしまう様な、有無を言わさぬ眼力でもって、クリームヒルトを射抜く。

クリームヒルト「どうしてもやめるつもりは無いんだね?」

幽々子「当然よ。 クリームヒルトちゃんは純真で傷つきやすい子なの。 これ以上、クリームヒルトちゃんが傷つく前に、止めさせてもらうわ」

クリームヒルト「交渉決裂だね。 それじゃあ……」


クリームヒルト&幽々子『ちょっとだけ、本気だすよ(わ)』


霊夢「ちょっ、やめなさい二人とも! アンタたちが本気なんか出したらどうなると思ってるの!? 本当に殺しあうつもり!?」

殆ど同時に、殆ど同じ言葉をクリームヒルトと幽々子が呟いたのを見て、霊夢が声を上げる。
だが、両者とも、引き下がるつもりは一切無かった。
幽々子は、それでも尚、飛び込んでこようとする霊夢を手で制する。

幽々子「止めないで頂戴、博麗の巫女。
    クリームヒルトちゃんは私にとって妹みたいな存在なの。 だからこそ、取り返しのつかなくなる前に止めたいのよ。
    こればっかりは他の誰かに任せる気も、このまま引き下がる気も無いわ」

幽々子の言葉が終わると、クリームヒルトは無言でスペルへと魔力を込め始める。
幽々子もまた、霊力を手にしたスペルへと練り込んでいく。
そして……

クリームヒルト「行くよ、幽々子さん……」

幽々子「ええ、いつでもいいわよ」

クリームヒルト&幽々子「「勝負っ!」」



                        『西行寺無余涅槃』
                      『幸ばかりの天への誘い』



ほむら「やめてえええええええええぇぇぇぇっ!!」

それはクリームヒルトたちが同時にスペルを発動した、そのときの事だった。
そんな絶叫と共にクリームヒルトと幽々子の間にほむらが飛び込んできて……、その身体を、両者の放った弾幕が貫いた。


512 :東方焔環神 [saga]:2011/12/17(土) 11:07:52.46 ID:ksixEzXJ0
以上、今度こそ投下終了。
ようやくスレタイ回収したよ……

多分、次の投下で最終回になるかと思います。
あと少し、この物語にお付き合い頂ければ幸いです。
513 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/17(土) 11:17:29.44 ID:/uHxJhuy0
乙!
って、まさかのほむら特攻……!?
514 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/17(土) 12:42:30.43 ID:9f597PyDO
スレタイ回収お疲れ様です!

くっ、なんということ…!しかし、ソウルジェムさえ、ソウルジェムさえ無事ならきっと…っ!
515 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [saga]:2011/12/17(土) 15:01:36.53 ID:IaghxqQSO
幽々子がカリスマ扇展開してるなら
クリームヒルトもカリスマに満ち溢れた何かを展開しているのだろうか
てか背後に何か展開するのってかっこいいね
516 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/18(日) 18:04:27.41 ID:CSQHMDkDO
>>1



>>515
小林●子とか?
517 : [saga]:2011/12/18(日) 20:13:10.33 ID:+Qld3n350
みなさまこんばんは
東方焔環神最終話、投下いたします。
518 :東方焔環神 [saga]:2011/12/18(日) 20:19:24.94 ID:+Qld3n350
――――――――― 【救済の魔女と焔の魔法少女】 @ 無縁塚 ―――――――――

クリームヒルト「!!?」

幽々子「えっ? あっ、暁美さん!?」

ほむら「かはっ……」

私たちの弾幕の直撃を受け、傷だらけになったほむらちゃんの身体がその場に崩れ落ちるのを、私はただ見ていることしか出来なかった。

何が起こったのか理解するよりも早く、私は全身から一気に血の気が引くのを感じた。
それと同時に、私の全身を支配していた熱のようなモノが一気に消えうせて、冷酷な事実が私を現実に引き戻した。

クリームヒルト「っ!? ほ、ほむらちゃん!?」

その事実を認識すると同時に、私は持っていたスペルを全部その場に投げ捨てて、ほむらちゃんのもとに駆け寄っていた。

クリームヒルト「ほむらちゃん! しっかりして!」

ほむら「……まどか、貴女……! 良かった。 正気に戻ったのね……」

涙ながらに私がほむらちゃんを抱きかかえると、ほむらちゃんは心の底から安心したと言うように微笑んでみせる。

クリームヒルト「なんで、どうしてこんな事したの!?」

ほむら「どうして? 決まってるじゃない、貴女の事が大切だからよ……。
    他ならない、今、私の目の前にいる貴女の事がね……。 この気持ちに関しては概念のまどかも関係ないわ」

クリームヒルト「うっ……うぅっ、ごめんほむらちゃん。 私、勝手に勘違いして、早とちりして……、ほむらちゃんの事まで疑って……」

急速に滲む私の視界の中で、ほむらちゃんはゆっくりと首を横に振る。

ほむら「良いのよ。 貴女は厄のせいで嫌な夢を見ていただけ、それだけなんだから……」

クリームヒルト「ううん、それは違うよ。 あれも私の一部、私の心の弱い部分が作り出した、私自身なの」

ほむら「あら、なら嬉しいわ……」

クリームヒルト「?」

ほむらちゃんの言った言葉の意味が理解出来ずにいると、ほむらちゃんはちょっと意地悪げな笑みを浮かべて、私に問い掛ける。
519 :東方焔環神 [saga]:2011/12/18(日) 20:25:25.83 ID:+Qld3n350

ほむら「だって、私といつまでも一緒に居るって言う、あの言葉もまどかの本心なのでしょう?」

クリームヒルト「ほむらちゃん……」

ほむら「お願いまどか……、笑って……。 笑って、私に笑顔を見せて頂戴……」

クリームヒルト「うん……、うん……」

力の無い笑顔で懇願するほむらちゃんに応えて、私は笑顔を作る。
涙は止められなかったけど、出来る限りの笑顔を、ほむらちゃんへと向ける。
私の笑顔を見たほむらちゃんは優しく微笑むと……

ほむら「ふふっ……、やっぱりまどかは……笑顔がよく似合っ…………(ガクッ」

そのまま動かなくなってしまった。

クリームヒルト「ほむらちゃん!? ほむらちゃん、しっかりして! ほむらちゃああああぁぁぁん!」

ほむら「…………」

まどか「そん……な……」

安らかな顔のまま、ぐったりして動かないほむらちゃんの身体を、私は半ば取り乱しながら揺さぶり続ける。
概念の私ですら呆然と見ているだけしか出来ない状況に、私の恐慌状態が限度を超えかけて……、
そこに、何処からともなく現れた早苗さんが割り込んで来て、ほむらちゃんに話しかけた。

早苗「えー、空気読めとか言われそうですけど、……ほむらさん、そろそろ洒落じゃ済まなくなるので起きてください(デコピン」

ほむら「あいたっ!?」

クリームヒルト「へ? ほむら……ちゃん?」

早苗さんのデコピンを受けてほむらちゃんが飛び起きると言う事態に、私は自分の目を疑った。
呆然としている私の前で、早苗さんはほむらちゃんにソウルジェムを差し出しつつ、怒ったような口調で叱りつける。

早苗「それくらい我慢してください。 当初の手筈を無視して、無茶やった罰です。 あと、コレ返しますね」

ほむら「だって、殺しあう、なんて物騒な言葉を聞いたら、いてもたっても居られなかったのよ。
    本当にそんな雰囲気だったし、それに、被弾しても大丈夫だ、って聞いてたから……」

でも案外痛くて一瞬、本当に死んだかと思ったわ、とほむらちゃんが呟くと、早苗さんが当然だと言うように肩をすくめる。

早苗「それはそうですよ。 紫さんが弄ったのはあくまで当たり判定と、死属性防御だけですからね。
   あそこまでもろに弾幕に突っ込むことなんか想定してないと思いますし……」

クリームヒルト「あ……、えっ? 当たり判定……?」

幽々子「ごめんなさいね、クリームヒルトちゃん、吃驚させちゃったわよね? 実は暁美さんはね、紫に頼んで、味噌っかす状態になっていたのよ」

クリームヒルト「味噌っかす……?」

幽々子さんの言葉に私が鸚鵡返しに呟くと、早苗さんが困ったような笑顔で頷いてみせる。
520 :東方焔環神 [saga]:2011/12/18(日) 20:32:21.54 ID:+Qld3n350

早苗「ええ、幽々子さんの弾幕で、ギリギリまで追い込んで、そこに説得役のほむらさんが介入する、って手筈だったんですけど……」

そう言うと早苗さんは“当初の手筈”について一通り話してくれた。
どうやらほむらちゃんが突っ込んできたのは、最初から織り込み済みだったようで、万が一への対策も、色々と行っていたらしい。

ほむら「私が我慢出来なくて、少し早く飛び出しちゃったのよ……」

早苗「紫さんのことだからほむらさんが飛び出しちゃった場合も想定内……、と言うかむしろ筋書き通りだったりして……」

幽々子「可能性としては高いわね。 紫の案にしてはやけに温いな、と思ってたのよ。 私まで騙すなんて……、後でお話する必要があるわね」

すまなさそうに目を伏せるほむらちゃんや、疲れたような顔をする幽々子さんたちの言葉を聞いて、私はようやく何が起きていたのかを理解した。
紫さんの能力を使えば、例え見た目の上で弾幕の直撃を受けても、弾幕を受けていないことにすることが出来てしまうわけで……、

クリームヒルト「それじゃあ、ほむらちゃんはなんともないの?」

ほむら「ええ、当たった時には本当に痛かったけど……、まどかたちに心配をかけた罰ね……」

私の漏らした呟きに、ほむらちゃんたちが頷くのを見て、私は心底ほっとした。
心底ほっとして、そしてひとしきり安堵すると、私の中にそれらとは違う、別の感情が芽生え始める。 それは……

クリームヒルト「…………ほむらちゃん、幽々子さん、早苗さん、ちょっとお話があるんだけど、とりあえず正座してくれないかな?」

声を出した私自身が驚くぐらい低い声が私の口から飛び出して、ほむらちゃんたちの身体がピクリと震える。
ゆっくりと私の方を向いたほむらちゃんと幽々子さんと早苗さんの表情は、明らかに引きつっていた。

ほむら「ま、まどか? 顔がなんだか怖いのだけど……、落ち着いて、ね?」

幽々子「そうよクリームヒルトちゃん、想定外だったとは言え、万事丸く収まったんだから良いじゃない」

早苗「わ、私は反対しましたよ? いくらなんでも危険すぎる、って……。 でも、紫さんの案ならどうにかなるかなー、と……」

幽々子「ちょっ、守矢の巫女!? その言葉は火に油よ!」

三人はどうにかこの場を取り繕って、私を宥めようとしていたけど、私の怒りは収まらない。
私は、最後の抵抗を試みるほむらちゃんたちに、はっきりとした口調でその言葉を叩き付けた。

クリームヒルト「  せ  い  ざ  !! 」

ほむゆゆ早苗「「「はい……」」」


521 :東方焔環神 [saga]:2011/12/18(日) 20:39:14.49 ID:+Qld3n350
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

正座をさせたほむらたちに、先程の身体を張りすぎたドッキリまがいの件について、クリームヒルトがお説教を始めてから数分が経っていた。
まどかが、そんな悪戯を叱る姉のようなクリームヒルトの姿を見ていると、まどかの隣にスキマが現れ、そこから紫が顔を出す。

紫「どうだった? この世界での魔女を実際に見た感想は?」

不敵な笑みを浮かべながら尋ねてくる紫に、まどかはクリームヒルトたちから視線を外すことなく答える。

まどか「私、今まで魔女は魔法少女を救うために消さなきゃいけない存在だ、って思ってました。
    でも、本当は違ったんですね。 魔女も、魔法少女と同じように救われなくちゃいけない存在だったんですね……」

紫「貴女がそう勘違いしてしまったのは仕方がないことよ。 貴女たちにとってはそれが常識だったんですもの……。
  ましてや、願い事をした時の貴女は普通の人間だったのでしょう? その時点でアレ以上の答えを出すのは不可能に近いわ。
  貴女は、貴女がやれるだけの事をやったの。 悔やむ事なんて何一つとしてないのよ……」

まどか「でも……」

尚も言葉を続けようとするまどかを紫は手で制した。
振り向いたまどかに、紫は穏やかに微笑んでみせながら、首を横に振る。

紫「霊夢の言ったことなら気にする必要はないわ。
  妖怪との共存が当たり前な霊夢と貴女たちとじゃ、価値観が違い過ぎるのよ。 一つの参考意見として気に留めておいて貰えるだけで充分……」

それは世辞でも慰めでもない、紫の本心だった。
妖怪や怨念が一般的な存在ではない現代の外の世界に於いて、魔女と言う存在はかつての妖怪と同じ様に、食うか食われるかの相手であり、
そこに遠慮や相互理解が入り込む余地が殆どないというのは、妖怪の賢者である紫自身が良く分かっている。
同じ妖怪としては、消滅ではなく浄化と言う手段を用いて欲しい所ではあるが、生死の境でそれを要求するのは酷だろう。

紫は言葉を一旦区切ると、脇へと目線を送る。
ほむらたちがお説教を受けていると言う珍しい光景に、マミたち魔法少女や、意識を取り戻したアリスを含む幻想郷の住人たちが、
クリームヒルトたちのもとに集まって来ているのが、視線の先に見えた。

紫「……でもそうね、敢えて言わせてもらうなら、これからの行動で見せて頂戴」

まどか「これから?」

紫「ええ、魔女がどういう存在なのかを正確に理解した今の貴女なら、出せるでしょう? 皆を救って、影で泣く者が一人として出ない、本当の正解を……」

紫の言葉に、まどかも再度、クリームヒルトたちの方を見た。
お説教を受けている三人も、周りで見守っている霊夢やマミたちも、小言を続けるクリームヒルトも、みんな笑顔を浮かべていた。
それは苦笑だったり、呆れ混じりの笑みだったり、様々ではあったが、それでも、皆が笑っていた。

その光景を見て、まどかもふっと微笑むと、力強く頷いた。

まどか「…………はい。 紫さん、色々とお手数をお掛けしますけど、お願いします。 “私”たちの事……」

紫「その点も気にする必要はないわ。 だって幻想郷は……」



                      「全てを受け入れる土地、ですもの……」



522 :東方焔環神 [saga]:2011/12/18(日) 20:41:19.31 ID:+Qld3n350

まどか「全てを受け入れる、ですか……。 いいですね、そう言うの……」

紫「あら、結構大変よ。 癖の多いヤツばっかり集まるんですもの」

まぁ、それが楽しいのだけどね、と言って微笑む紫。
そんな紫を見て、まどかは声音を真面目なものに変えて、声をかける。

まどか「ところで紫さん」

紫「なにかしら?」

まどか「さっきのほむらちゃんの一件、私も本当に驚いたんですよ。 それこそ心臓が止まっちゃうんじゃないかと思うほど……」

先ほどのクリームヒルトと同じくらい、いや、それ以上に低い声でそう呟きながら、まどかが紫の肩をしっかりと掴む。
紫の顔がいつになく引きつったものになり、まどかから思わず目を逸らす。

まどか「あっちの“私”がそうだったように、私にとってもほむらちゃんは大切な友達なの。
    だから、あっちの“私”の気持ちはよーく、分かるんだ……。 ちょっと二人で、弾幕戦(お話し)しませんか? 八雲紫さん?」

この後、円環の神さまと、妖怪の賢者による一大弾幕戦が勃発し、無縁塚が今度こそ焦土と化すのだが、
まぁ、蛇足にしかならないので省かせてもらおう。


523 : [saga]:2011/12/18(日) 20:43:20.99 ID:+Qld3n350
以下、推奨BGM
『KAZE NO KIOKU』(サークル:SOUND HOLIC アルバム:風-KAZE- より)
http://www.youtube.com/watch?v=1J0TfSmsm-U
524 :東方焔環神 [saga]:2011/12/18(日) 20:49:35.07 ID:+Qld3n350
―――――――――――――― その後 ―――――――――――――――――
――――――――― 【救済の魔女と幻想の住人】 @ 寺子屋前 ―――――――――

ワルプルギス「あっ、お姉ちゃんおはよー! ……あれ?」

パトリシア「あら、クリームヒルトじゃない……、って、どうしたの? その髪形?」

朝、寺子屋の前でばったり出くわしたワルプルギスとパトリシアは、クリームヒルトの姿を見るなり首を傾げる。
二つの赤いリボンと、ショートのツインテールが特徴的だったその髪型が、いつの間にかショートポニーになっていたからだ。

クリームヒルト「おはよう、二人とも……。 これ? ちょっと変えてみたんだ、似合うかな?」

パトリシア「似合ってるとは思うわ。 でもホントにどうしたの? まさか色恋沙汰とか?」

ベッタベタな勘違いをしてみせるパトリシアに、クリームヒルトは手と首を振って、慌てて訂正する。

クリームヒルト「そ、そんなのじゃないよ! ……ちょっとリボンをね、友達に貸しちゃったんだ」

パトリシア「友達に? オクタヴィアか、西行寺さん?」

クリームヒルト「うぅん、ちょっと遠くに住んでる、私の大切なお友達……」

クリームヒルトはそう呟くと、遠くを見るような目をしながら、ふっと微笑んだ。
何の話なのか、パトリシアが見当を付けかねていると、それまで話を聞いていたワルプルギスが、思い出したように呟く。

ワルプルギス「ん〜、それってもしかしてほむらおねえちゃ……もがっ!?」

クリームヒルト「さ〜て、ワルプルギスちゃん、学校に行こうね〜」

言いかけたワルプルギスの口をクリームヒルトは手で塞ぐと、寺子屋へと押し込むようにその背中を押しはじめる。

パトリシア「何この慌てっぷり……、って言うかほむら、って……」

文「詳しく聞きたいですか?」

パトリシア「うわあっ!? びっくりした……、誰かと思ったら、鴉天狗の新聞屋じゃない……」

あからさまな態度にパトリシアが訝しげな顔をしていると、いつの間に現れたのか文が顔を出してくる。

文「あやや、これは失礼しました。 で、お話の方ですけど、まずはこの定期講読の契約書にサインを……」

クリームヒルト「文さん? 一体何をしてるんですか?」

文「何ってそれはクリームヒルトさんの話をダシに新聞の契約を……って、クリームヒルトさん!?」

言いかけた文は、にこやかに笑っているクリームヒルトに気が付き、思わず後ずさる。
顔をひきつらせる文に対し、クリームヒルトは笑顔を浮かべたまま文に詰め寄る。

クリームヒルト「おかしいなぁ、あの時、あの場所には私とほむらちゃんしか居なかった筈なんだけど……、どうして文さんが知ってるんです?」

幽々子さんや概念の私だって席を外してたのになぁ〜、と呟くクリームヒルトに、文の顔が瞬く間に蒼くなる。
実はあの時、文は連絡役を早々に済ませた後、少し離れた場所で、隠れてずっと覗いて居たのだが、今この場で、そんな事が言える訳がない。

文「クリームヒルトさん、これには深い事情がありましてね……、とりあえずまずは私の話を……」

クリームヒルト「うん、それ無理」

クリームヒルトは一言で切って捨てると、魔力弾を生成し、それを文目掛けて解き放つ。


                      因果 『タイム・リピーター』

525 :東方焔環神 [saga]:2011/12/18(日) 20:53:33.61 ID:+Qld3n350
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

突如響いた爆発音に目をやると、寺子屋の方から噴煙が上がっているのが見えた。

魔理沙「なんだ? またやってるのかアイツらは……、懲りないヤツらだな……」

人里近くで営業していた屋台で夜通し飲んでいた魔理沙は、八目鰻を頬張りながら眉をひそめた。
魔理沙の言葉に、隣で一緒に飲んでいたオクタヴィアが、心底呆れた表情でツッコミを入れる。

オクタヴィア「アンタも他人の事を言える立場じゃないでしょ? またアリスの家でやらかしたそうじゃない」

今度はドアだっけ? と、オクタヴィアが尋ねると、魔理沙は乾いた笑いを漏らす。
ひとしきり笑ってから、魔理沙は酒をあおると、空を見上げながら呟いた。

魔理沙「今頃アイツら、何してるんだろうな……」

ミスティア「…………」

誰の事なのか魔理沙は言わなかったし、ミスティアも何も言わなかったが、それでもなんの事なのか察したオクタヴィアは、同じように空を見上げる。
思い出すのは、再会の約束だけを残して、盆の終わりと共に外へと帰って行った仲間たちの姿。

オクタヴィア「元気でやってるんじゃないかな。 暫くこっちに来る気はない、って言ってたし……」

魔理沙「それでお前は、寂しくないのか?」

オクタヴィア「寂しくない、って言ったら嘘になるけど、あたしにはクリームヒルトたちが居るし、それに……」

魔理沙「?」

オクタヴィア「アンタたちも居てくれるんでしょ?」

オクタヴィアの言葉に魔理沙は一瞬だけ、ぽかんと口を開けたままオクタヴィアを見て……、それから口元をつり上げた。

魔理沙「言うようになったな、お前も……。 それじゃ、外で頑張ってるアイツらの為に……」

そう言ってコップを差し出してくる魔理沙の意図を察し、オクタヴィアも自身のコップを手に取った。
オクタヴィアのコップに注がれているのは烏龍茶なのだか、この際それはどうでも良いだろう。

オクタ&魔理沙「「……乾杯」」


526 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/18(日) 20:59:47.85 ID:6FbHORGko
まど神さまの力って、魔女が生まれる前にソウルジェムを消滅させることであって
魔女自体をどうこうするものじゃないんじゃなかったっけ
527 :東方焔環神 [saga]:2011/12/18(日) 21:00:09.74 ID:+Qld3n350
――――――――― 【焔の魔法少女】 @ 外の世界・見滝原市市街 ―――――――――

キュゥべえ「おや? ほむら、髪型を変えたんだね」

キュゥべえにしては珍しく、他愛ないと言うか雑談染みた言葉を漏らしたのは、
いつも通り魔獣狩りに現れたほむらが、いつもと違う姿でやって来た日の事だった。

ほむら「ちょっとね……、色々あったのよ……」

冷めた口調で素っ気なく返事をしていると、先に来てほむらを待っていた杏子が物珍しそうに身を乗り出してくる。

杏子「へー、リボン増やしてツインテールにしたのか……。 似合ってるじゃん」

ほむら「ありがと、お世辞でも嬉しいわ」

杏子「バーカ、誰がお前にお世辞なんか使うかよ。 人の好意は素直に受け取っておくもんだぞ」

互いに苦笑しながら、そんなやり取りをしていると、キュゥべえに聞かれない為だろう、幾分か声のトーンを落としたマミが、ほむらの耳元で囁く。

マミ「ところで暁美さん、その増えた方のリボンってもしかして……」

ほむら「これ? そうよ、あっちの“まどか”から預かったリボンよ。 御守り代わりにつけておこうと思ってね……」

杏子「おいおい、再会した時に返すんだろ、それ? 無くしたりするなよ?」

話を聞いてひそひそ話に加わった杏子に、ほむらは当然だと言うように頷いてみせる。

ほむら「誰が無くすものですか、肌身離さず持って歩くつもりよ」

胸を張らんばかりの勢いで、ほむらが宣言すると、少し憂鬱そうな顔をしたマミが、小さなため息をつく。

マミ「はぁ、妬けちゃうわねぇ……。 そんな一生モノの友達、一人でいいから欲しいわ」

ほむら「マミ、貴女は何を言っているの?」

杏子「だな、今のは聞き捨てならねーな」

マミ「?」

訝しげな表情をしたほむらたちに一斉に反論され、マミは思わず首を傾げる。
訳が分からないと言いたげなマミの態度に、今度はほむらたちがため息をついた。

ほむら「少なくとも私たちは、マミも同じくらい大切な友達だと思っているのだけど……? ねぇ?」

杏子「アタシらの片思いだったようだな。 ほむら、今夜一杯付き合ってくれよ」

ほむら「やけ酒ね。しょうがないから付き合ってあげる。 マミに嫌われちゃった者同士、朝まで飲みましょう」

呆れ顔から一転、意地悪げな笑みを浮かべつつ、わざとらしい慰め合いをし始めるほむらたちに、マミは顔を真っ赤にすると、声を張り上げた。

マミ「ちょっと!暁美さんも佐倉さんも意地が悪いわよ! それと、二人とも飲酒はダメよ。あっちじゃないんだからね!」

そのまま、コント染みたじゃれ合いを開始する見滝原の魔法少女たち。
そんな彼女たちの姿を見て、完全に茅の外に追い出されてしまったキュゥべえがぼやきとも愚痴ともとれる呟きを、ため息と共に漏らした。

キュゥべえ「やれやれ、お盆の行方不明騒動の後から増えた変な言動のせいで、今日も僕だけ置いてきぼりとか、まったく訳が分からないよ」


528 :東方焔環神 [saga]:2011/12/18(日) 21:02:49.51 ID:+Qld3n350



まどか、そっちで元気にやってるかしら?
さやかや、幽々子さんたちがついててくれてるとは思うけど、少し心配です。
私たちが、幻想(そっち)に行くその日まで、少し寂しいかも知れないけど、それまでさやかたちと待っててね。


私たちの方は相変わらず魔法少女として人知れず戦う毎日を送っているわ。
マミや杏子たちも元気でやってるから心配しないでね。 もちろん、私も元気よ。
と言うか、あの一件で、私も含めて良い意味で使命感が湧いたようで、みんな張り切りすぎて困るくらい。
マミたちは一番乗り気なのは私だ、なんて言うけど、決してそんな事はないわ……たぶん……いえ、きっと!


貴女から預かったリボンはあっちのまどかのリボンと一緒に、御守り代わりとして使わせてもらってるわ。
二つのリボンを使うために髪型を少し変えたら、事情を知らないキュゥべえに色恋沙汰かと疑われてしまったけど、私としては結構気に入ってるの。
返す頃には少し煤けてしまうかもだけど、約束だけは必ず守るから、見守っていてくれると嬉しいわ。


マミの攻撃が、弾幕戦を意識したモノになったとか、杏子が千歳ゆま、って言う女の子をつれ歩くようになったとか、
色々と話は尽きないのだけど、それらは全部、そっちに行った時の土産話にさせて頂戴。


書き足りない事ばかりなのだけど、今回はこのぐらいで失礼させてもらうわね。

次に会うその日まで、元気でね、まどか。
現世からいつも祈ってます。




暁美ほむらより、私の大切な親友のまどかへ


529 :東方焔環神 [saga]:2011/12/18(日) 21:06:42.99 ID:+Qld3n350
――――――――――――――――――――――――――――――――――――

                      原作
                    東方project
                魔法少女まどか☆マギカ


                      出演

               クリームヒルト・グレートヒェン
                   西行寺幽々子


                博麗霊夢   霧雨魔理沙
               東風谷早苗  アリス・マーガトロイド
               十六夜咲夜  パチュリー・ノーレッジ
                射命丸文   聖白蓮

               オクタヴィア  シャルロッテ
                  エリー  ゲルトルート
                パトリシア  イザベル
                ギーゼラ   エルザマリア
                ロベルタ   ワルプルギス


                   暁美ほむら

                 巴マミ   佐倉杏子
              キュゥべえ
       美樹さやか(平行世界)   佐倉杏子(平行世界)


                魂魄妖夢  上白沢慧音
                 犬走椛   姫海藤はたて
               八坂神奈子  洩矢諏訪子
                 秋穣子   秋静葉
         レミリア・スカーレット   紅美鈴
              蓬莱山輝夜   八意永琳
                 小悪魔   稗田阿求

               火焔猫燐   ミスティア・ローレライ
                鍵山雛    水橋パルスィ
             古明地さとり   多々良小傘
             サニーミルク   ルナチャイルド
           スターサファイア   ゾンビフェアリー


                    八雲紫
                   鹿目まどか



           東方円鹿目・東方焔環神 総合イメージ曲
                    『コネクト』
            (魔法少女まどか☆マギカ OPテーマ)


            東方円鹿目 東方パートイメージ曲
                『色は匂へど散りぬるを』
                  (幽閉サテライト)


         東方円鹿目・東方焔環神 エンディングイメージ曲
                『KAZE NO KIOKU』
                 (SOUND HOLIC)


                  参考文献・画像

                 公式サイト(魔女図鑑)
                  ピクシブ百科事典
                  東方元ネタWiki


                 スペシャルサンクス

             弾幕案を投稿して下さった皆さま
              本作品を読んで下さった皆さま
530 :東方焔環神 [saga]:2011/12/18(日) 21:09:44.91 ID:+Qld3n350
―――――――――――――― 十数年後、幻想郷・白玉楼 ――――――――――――――


                        「こんにちは〜」


             「あら、いらっしゃい。 ごめんなさいね、急に呼んじゃって」

          「いえ、大丈夫ですから……、それで幽々子さん、話って言うのは……」

              「ああ、それはね、ちょっと会わせたい人が居るのよ」

                       「会わせたい人?」

                 「ええ、貴女の大切な、“お友達”よ……」

                 「私の大切なお友達、って、まさか……!」



               「ええ、そのまさかよ。 久しぶりね、まどか……」



         「ほむらちゃん!? ……そっか、とうとうこっちに来ちゃったんだね」

               「ええ、だから、あの時の約束、果たしに来たわ」

                   「ちゃんと覚えててくれたんだね……」

       「勿論よ。 一時たりとも忘れた事なんて無いわ。 まどかとの大切な約束だもの」


 「ティヒヒ、ありがとう……。 でもほむらちゃん、一つだけ訂正させて、私はまどかじゃなくてクリームヒルトだよ?」

       「あら、それなら私も訂正させてもらうわ。 だって私は暁美ほむらじゃなくて……」



―――――――――――――――― 同じ頃、円環の理 ――――――――――――――――

ほむら「今頃、魔女の“私”はあっちのまどかと会ってる頃かしら?」

まどか「気になる?」

ほむら「気にならない、と言ったらウソになるわね。 約束がちゃんと果たせたのか、とか結構色々と……」

まどか「紫さんに頼めば見に行けるよ、行ってみる?」

ほむら「う〜ん、今は止めておくわ。 あっちの私とまどかに、水を差しそうで悪いし……、それに……」

まどか「?」

ほむら「貴女とも、積もる話はたくさんあるしね……」

まどか「てぃひひ、そうだね。 それじゃあ私、お茶を用意するね」

ほむら「それならマミやさやかや杏子たちも呼びましょう。 みんなでテーブルを囲んで……ね?」

まどか「……うん! そうだね、ほむらちゃん!」




                          < 東方焔環神 完 >

531 : [saga]:2011/12/18(日) 21:20:07.41 ID:+Qld3n350


              おめでとう リボほむ は ツインテほむ に しんかした!



はい、と言うわけで焔環神本編、これにて終了です。

終わった、これで本当に終わった。
東方円鹿目を10月15日に始めて約2ヶ月、これにて魔女幻想入りの物語の本編は終了です。
やりたい事を全部やりきったので私としては満足です。
こんなお話ですが、楽しんでいただけたのなら幸いです。

焔環神ラストは『ミュウツーの逆襲』とか『なのは(一期)』とか『まどマギ(漫画版)』とかから美味しいところ取りしました。
途中で当てられた時はぎょっとしましたよ、いやマジで……


本作を書くにあたり、弾幕案などで協力していただいた皆様に、再度、御礼申し上げます。
あれがなければこの物語も単なる個人の妄想で終わっているところでした、ありがとうございました。


>>526
本来は呪いを消して、魂ごと浄化、なのは重々承知しておりますが、『幻想入り』と言う体裁をとる上で、独自解釈させて頂きました。
どう解釈したのかは、続くキャラ別あとがきで書きたいと思います。
532 : [saga]:2011/12/18(日) 21:26:45.79 ID:+Qld3n350

クリームヒルト・グレートヒェン/鹿目まどか

本作を通しての主人公
クリームヒルトとは名乗っているけど、実際は間違いなく鹿目まどかその人。
この物語は、一度すべてを失ったまどかが、幻想郷でそれらを取り戻すお話です。
今の居場所と、共に生きてくれる友達を円鹿目で、失ったと思った友達と居場所を焔環神で、
それぞれ手にした彼女に幸多い未来が末永く続くことを祈りたいと思います。

その立場上、何度か泣かせてしまった上、焔環神のクライマックスではあんな事をさせてしまいましたが、
正直、私の良心がマッハで擦り切れるかと思いましたよ。ええ、SG真っ黒になるかと本気で……
その分、最後は可能な限り幸せにしてあげたつもりです。
良かったね、まどっち!


西行寺幽々子

本作に於ける総合MVP
助演優秀賞を差し上げるなら間違いなくこの方です。
円鹿目での導入役から、親友ポジション、焔環神では少ないながらも要所要所で決めてくれました。
お陰でオクタヴィアちゃんが割りを食った印象も……
やけにクリームヒルトを気に入ったゆゆ様ですが、無意識の内に生前の自分と重ねて見ていた、と言う裏設定があったりします。
まあ、ゆゆ様の意思と人徳によるものが多いんですけどね……
扇を片手に微笑みながら、いつまでもクリームヒルトたちを見守っていくことでしょう。
頼みましたよ、ゆゆ様


博麗霊夢

円鹿目東方パート主役兼、焔環神助演
今回の霊夢さんはひたすら博麗の巫女に徹してもらっています。
人と妖怪の調停役として、時には人の立場から、またある時には妖怪の立場から、物事を解決に導く存在として動きました。
お陰でかなり真面目な霊夢さんとなり、まど神さまには随分と手厳しい物言いをしたりと、汚れ役もさせてしまいましたが、
普段はいつも通りの霊夢さんをしてますのでご安心を
私の個人的お気に入りは対エルザマリア戦の決着の場面です。
書いてて惚れ惚れしました。 その代わり思いっきり難産だったけどw


霧雨魔理沙

円鹿目東方パート主役兼焔環神助演。
『魔女と魔法使い』がテーマだった第一部に於ける中心人物。
開幕からエクストラまで、彼女らしい勢いで話を引っ張ってくれました。
エクストラの対ロベルタ戦は私の中でも屈指のお気に入りです。
焔環神ではどちらかと言えばトラブルメーカーの印象が強いですが、
決めるときはバッチリ決めている辺り流石の主人公、と言った感じでしょうか。



東風谷早苗

円鹿目及び焔環神助演
幻想入りの先輩であり、クリームヒルトたちのよき理解者として活躍させてもらいました。
たぶん、霊夢さんや魔理沙よりも直接関わる率が高くなってると思います。
特にまどマギキャラが増えた焔環神ではその傾向が強く出ていたかと、
外の世界の事や、お年頃の中高生など、色々な意味で共感できる珍しい東方キャラだと思います。
それだけに霊夢さんや魔理沙ほど、突き抜けた対応が出来ない、と言うジレンマもある訳ですが……
霊夢さん同様、随分と真面目な早苗さんになりましたが、所々ではっちゃけてみせたのは流石だと思います。

余談ですが、早苗さんが主役な前作が無ければこの作品は無かったので、リアルな意味での功労者は彼女です。
533 : [saga]:2011/12/18(日) 21:28:40.30 ID:+Qld3n350


アリス・マーガトロイド

円鹿目及び焔環神助演
突っ込み役から、推理・解説役まで幅広い役割をこなしてくれた縁の下の力持ちです。
円鹿目ではシャルロッテと関わり、焔環神ではマミと絡みました。
合わせようとか狙ったわけではなく、この辺は完全にイメージで出したキャスティングですし、
実際書いていて、いい感じに混ざっていたような気がしますので、マミシャルとは相性が良かったようです。
焔環神で唯一、ピチュってますが、円鹿目と焔環神の両方で撃墜ゼロなのは魔理沙ぐらい(しかもマミの補助アリ)なので脅威の生存率なんですよ。


パチュリー・ノーレッジ

円鹿目助演及び同作エクストラステージ準主役
まずは名前を間違えてゴメンなさい。 本作における私の最大の後悔です。
円鹿目序盤では(筆が)動かない事に定評のあるパッチェさんでしたが、
その代わりエリーと組んだエクストラステージではこっちが心配になるほど動き回ってくれました。
同じ紅魔館パートの咲夜さんがどちらかと言えばシメを担当してましたので、これには助かりました。
焔環神では出番がありませんでしたが、エリー辺りと地下図書館で駄弁っていたのでしょう。
うん、と言うかあのおまけパートが、焔環神の裏パートだったんだよ!(AA略



射命丸文

円鹿目及び焔環神助演
東方パート序章から、焔環神後日談パートまで、お騒がせな情報屋として暗躍してくれました。
彼女が居なかったら、ここまで話は進まなかったと思います。
ぶっちゃけて言うと最強の便利キャ……(ピチューン
ちなみに焔環神に於けるクリームヒルトとほむらの約束を、二人以外で唯一知ってる人です。
この約束が気になる方は “\射命丸!/\射命丸!/\射命丸!/” と書き込むとご覧に……(円環の理


534 : [saga]:2011/12/18(日) 21:34:02.00 ID:+Qld3n350
暁美ほむら

焔環神主役
円鹿目では出番なしでしたが、焔環神ではそのタイトル通り、主役として頑張ってくれました。
間違いなく焔環神で一番身体を張ってた人です。 
徒歩移動に生身飛行、拉致監禁、魔女化寸前にラストの特攻……、うん、どこのアクションヒロインだお前。
実は投下が途絶えた時期、書いたけど没になった展開が幾つかあって、その中の一つに、

『ほむらのソウルジェムだけある理由で穢れが溜まりやすくて、魔女化しラスボスになる』

と言うトンデモ展開があったりします。
結局当初の着地点(本作のエピローグ)にもっていけなくなるので没になりましたが、幾つかの伏線ごと没ったのは痛かったなぁ……
(具体的には幻想入りの理由とか、旧地獄で拾われた理由とか、最初期に張ったモノばかり……)

まあ、あのラストは気に入ってますので、幸せに終われたのでヨシとしてます。
ほむほむの魔女の名前は……、皆さまのご想像にお任せします。



オクタヴィア/美樹さやか

円鹿目及び焔環神助演
円鹿目ではクリームヒルト以外では唯一のまどマギ正規キャラとして、幻想入りの苦悩とか色々と担ってくれました。
ゆゆ様の項目でも述べましたが、親友兼相談役ポジションを持っていかれた形となってしまった為、
かなり割を食ってしまいましたが、焔環神では杏子との絡みで、それなりに前に出せたと思います。
杏子の夢とか、鰻屋仮店舗の場面は、個人的に良く書けたと思ってたり、
円鹿目でちょこっと触れましたけど、このオクタヴィアちゃん、恭介くんへの未練は結構残ってます。
それだけに、焔環神で『円環の理』について触れる場面では結構痛々しく思いつつ書いてました。
本編では書けなかったけど、早苗さん辺りとその辺の事で意気投合してそうだなー



巴マミ

焔環神助演
焔環神に於ける癒しパート担当です。
アリスと絡んだ時点では推理役担当にする予定だったのに、どうしてこうなったェ……
と言うかシャルロッテの登場があんなだった時点で、終わってたような気もします。
外の常識に囚われて推理役が出来ないのなら、マミシャルに癒されるしかないじゃない!

……はい、取り乱しました。
まどマギでは先輩キャラでしたが、東方キャラに混じると年下の一人になると言うジレンマを抱えた彼女ですが、
それでも杏子やオクタヴィアの前では頼りになるお姉さんであり続けました。
弾幕戦に影響を受けたマミさんが、現世でどんな技を編み出し、どんな名前をつけたのか、気になりますねー
おぜう様と同レベル……ではないと思う。 たぶん……



佐倉杏子

焔環神助演
焔環神での幻想郷探求パート担当です。
ミスティアと共に色々と巡りながら、雛さまと絡んで、『穢れと厄』と言うキーワードを掘り下げたり、
オクタヴィアの過去を夢で見て、まど神さまや平行世界の存在を比較的早く実感したりと、話を深くする上で活躍しました。
弾幕戦なんか二度とやらない! と言いつつ、最終決戦には一番槍で突っ込んで行っているあたり、流石杏子ちゃんマジ聖女!って感じです。
ちなみに本作に於いて、一回たりともマトモな飛行を経験してません。
この杏子ちゃんは高所恐怖症になってもいいと思います。 うん、書いたの俺なんだけどね……。

そうそう、ミスティアとの絡みが、自分でも驚くほどしっくり来たのが意外でした。
屋台で鰻を食わせても、焼かせても似合うとか、やっぱりこの子放浪娘だ(ピチューン



鹿目まどか(まど神さま)

焔環神助演
焔環神に於ける実質的ラスボスです。 この人にいかにして認められるかが、焔環神最大の焦点でした。
『非常識の世界・幻想郷』が焔環神のテーマでしたので、現世側の常識の権化として動いてもらいました。

『まど神の救済=魔法少女と魔女(穢れた部分)を分離して魔法少女を救済』

としてしまった本作では、ある意味、一番つらい役を押し付けてしまった人でもあります。
霊夢さんにだいぶきつい事を言われましたが、そもそも前提としている立ち位置が全く異なりますので、
幻想郷という現世の中の異世界っぷりが、あの辺りで強調できていれば幸いかと。

霊夢さんがきつかった代わりに、外の世界もそれなりに把握しているゆかりんがフォローに回りました。
エピローグを除く、本編終了後ではゆかりんと結託して真の救済に精力を注いでいるのですが、それはまあ別のお話、と言う事で……
535 : [saga]:2011/12/18(日) 21:45:16.21 ID:+Qld3n350
作品イメージについて

ズバリイメージ曲の『コネクト』です。
作中の此処を幻想郷と仮定すると……作中のクリームヒルトちゃんにしっくり来るのは私だけでしょうか?

一番が幻想入りした直後の円鹿目で、二番が焔環神とか考えてニヤニヤしてた俺マジきめぇw

エンディングは『KAZE NO KIOKU』のイメージに合うように心がけてましたので、大団円での終了となりました。

本編として書きたい事は全てやり切ってしまいましたので、今後は書いたとしても小ネタや番外編になるかと思います。
いや、創作意欲的には燃え尽きた状態に近いんですけどね……

さて、まだまだ書きたい気もしますが、きりがないのでこの辺で、
今までこのスレに付き合っていただいた皆さま、本当にありがとうございました!


ほむクリは夢の幻想、ゆゆクリは死後の楽園、がジャスティスな>>1でした。



スレタイ回収できて良かった、いやマジで……
536 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/18(日) 21:52:22.56 ID:DVfD/DjI0
大団円乙でした!
……と思ったら
>余談ですが、早苗さんが主役な前作が無ければこの作品は無かったので、リアルな意味での功労者は彼女です。
あの作者だったんか!!前作もリアルでおっかけさせていただきましたよー。
537 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/18(日) 23:44:30.83 ID:ngB+xXoAO
乙!

過去作があるなら是非みたいところです

URLとか張ってもらえませんかね
538 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/18(日) 23:50:07.51 ID:ngB+xXoAO
検索かけたら見つかったー

そしてリアルタイムで見てたヤツだったー

ので>>537は無視してください
539 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/19(月) 00:19:37.21 ID:U3Mx3V0DO
完結、ありがとうございます!

ゲルトルートさんの弾幕案を初め、感想等色々と勝手に書き込ませて頂きましたが、いや本当に…お疲れ様でした。ちゃんと希望のある終り方で、心の底から良かったと思います。

こんなにも、心に響く素晴らしい物語を読ませて頂いて、どうもありがとうございました!! >>1様に、盛大な感謝と乙と拍手を!!!
540 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/19(月) 00:21:37.21 ID:Y68US5lyo
お疲れ様でした。
541 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/19(月) 10:07:37.16 ID:lN5AW8hAO
おつ
よくぞ頑張った
542 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/19(月) 11:16:17.23 ID:K0yvXAjBo

なんとか良い所に落ち着いたなぁ
543 :1@携帯 [sage]:2011/12/19(月) 13:56:26.65 ID:Y2phgXVDO
わーい、今更ながらスタッフロールでの誤字に気が付いた

誤)姫海藤はたて → 正)姫海棠はたて


はたてちゃんゴメンなさいm(__)m
544 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/19(月) 17:30:24.90 ID:I1FWcSPwo
乙!

まあ女神まどかの救済を原作通りにしちゃったら
因果関係的に魔女が幻想郷に来れないというかそもそも生まれなくなっちゃうからなww
幻想郷でのほほんとくらす魔女たちを見るためなら改変もやむなし
545 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/20(火) 09:59:55.00 ID:BqwcJepDO
>>1乙〜
短編、番外も楽しみにしてるよ〜
あと、>>538は大丈夫と言ったけど、俺は見てないから是非にURLかタイトルを(ティロフィナーレ
546 :1@携帯 [sage]:2011/12/20(火) 14:53:59.11 ID:wfy4t30DO
>>545
東風谷早苗「見滝原?」 八雲紫「ええ、見滝原」
http://ex14.vip2ch.com/news4ssnip/kako/1318/13181/1318127188.html

本作と違ってお手軽短編ですが、色々と考察する上で、東方とまどマギの親和性を確信した短編です。
547 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/20(火) 22:07:19.57 ID:wT+F+mKi0
心の底から湧き上がる気持ちを一文字で表させてもらおう。乙!!

シャルロッテやワルプルギスのスペカ案とか次回作の要望とか色々出させてもらったけど、
こんなSS速報の素敵な筆者さんの作品が読めた事に感謝してもしきれないんだぜ。感動した!

またどこかで>>1の作品が読める事を心待ちにしているぜ…本当にありがとう!
548 :1@携帯 [sage]:2011/12/20(火) 23:38:04.61 ID:wfy4t30DO
>>547
いえいえ、こちらこそシャルロッテやワルプルちゃんの弾幕案ありがとうございました。
それと続編要望を叶えたのは>>1キュベーターですので、契約して魔法少女になってあげてください



って、よく見たら貴方はっ!?
足を向けて寝られないあの方じゃないですか!?
今まで気が付かずすいません……orz
ご支援とご声援、本当にありがとうございました。
549 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/21(水) 08:15:30.76 ID:BULOwIFDO
>>546
お〜こっちもおもしろかった!(流石早苗、俺のヨ(メメタァ

SS速報、探せば東方系結構ありそうだな……
550 :1@ 〜小ネタというか告知的ななにか〜 [saga]:2011/12/22(木) 19:53:45.99 ID:fbZlKovx0
―――――――――――――――――――――――――――――――――――

早苗「群馬県M市在住、ティロティロさんから頂きました」


 Q) この作品には、クリームヒルトとまど神さまの二人の鹿目さんが登場しますが、見分け方を教えて下さい。


早苗「髪が長くて白衣の方がまど神さまで、魔法少女のカッコなのが……えっ? 文面的な意味ですか?」


                    〜 しばらくお待ち下さい 〜


早苗「えっと、笑い方が片仮名なのがクリームヒルトさんで、平仮名なのがまど神さま、だそうです!」

早苗「以上、お便りコーナーでしたー!」


551 :1@ 〜小ネタというか告知的ななにか〜 [saga]:2011/12/22(木) 19:59:48.16 ID:fbZlKovx0
BGM 妖精村の月誕祭 〜Lunate Elf (サークル:どぶウサギ)
http://www.youtube.com/watch?v=DGqhNcyODSA

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

早苗「みなさまメリークリスマ……じゃなかった、こんにちは、東風谷早苗です」

さやか「みんなおっはー! オクタヴィアちゃんだと思った? 残念、さやかちゃんでした! 美樹さやかだよー。
    それにしても早苗、なんで言い直したのさ? ここは楽屋裏なんだから別に挨拶がメリークリスマスでも良かったんじゃないの?」

早苗「いえ、クリスマスがない人も多いんじゃないかな〜と……」

さやか「ぐはっ!? 早苗、その言葉は色々な意味でブーメランだからやめて……orz」

早苗「ああっ!? さやかさんが燃え尽きた灰のように真っ白に!?」

さやか?「へへへ……、いいよいいよ、どーせあたしは一人寂しいクリスマス……(シュゥゥゥ…」

早苗「さやかさん! 足が尾びれに! オクタヴィアさんになりかけてますよ!!」


                     〜 しばらくお待ち下さい 〜


早苗「はい、改めまして東風谷早苗です」

オクタヴィア「さやかちゃん改めオクタヴィアちゃんだよー。 いやー、間に合わなかったねー」

早苗「まだマシですよ。 妖力スポイラーが間に合ってなかったら、今頃穢れで私を除くスタッフ一同全滅でしたからね〜」アハハハハ

オクタヴィア「だから悪かったって、 で? 今日は何をするのさ?」

早苗「設定の再確認と今後の方針決定だそうですよ」

オクタヴィア「設定の再確認?」

早苗「ええ、作中の描写と、>>1の発言設定とで矛盾などがあるので、訂正も兼ねて、だそうです」

オクタヴィア「へー、それで? どの辺が変わってるの?」

早苗「まずは時間軸設定ですね。 『神霊廟より前』と、>>1>>13では宣言してますが、
   エクストラで発覚した日付と曜日が2011年なので、神霊廟異変より後になります」

オクタヴィア「神霊廟が桜の咲く季節でよかったね〜、ちょっとでもずれてたらアウトだったよ、それ……」

早苗「幽々子さんは神霊廟異変で一面ボスをやった直後に、魔女異変の黒幕をやった事になりますが、
   この辺はまぁ、久々に一面ボスとは言え異変の最中で弾幕戦やって、ウズウズしてた、って事で宜しくお願いします」

オクタヴィア「他には何かあるの?」

早苗「もう一つはクリームヒルトさんの服装設定ですね。 >>1は黒を基調の装束、とやっぱり>>13で宣言してますが……」

オクタヴィア「あー、まどかの服装の描写がない円鹿目はともかく、焔環神ではほむらが“ピンクの装束”って言っちゃってるね〜」

早苗「そうなんですよね。 と言う訳で、異変後に着替えた、若しくは最初からピンクの装束だった、として下さい」

オクタヴィア「本文だけで判断するなら後者でも十分通るしねー。 とりあえず>>1は土下座ね」

552 :1@ 〜小ネタというか告知的ななにか〜 [saga]:2011/12/22(木) 20:15:16.07 ID:fbZlKovx0
BGM 神々が恋した幻想郷(サークル:どぶウサギ)
http://www.youtube.com/watch?v=WJP2WZUVyPo

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

早苗「そういえば魔女化したマミさんが発表されましたね」

オクタヴィア「本編でそこらへんぼかしといてよかったね。 魔女のほむらの名前を勝手に決めてたら今ごろ後悔の嵐だったろうし……」

早苗「と言うかあのラストだと私30代越えしちゃうんですよねぇ」

オクタヴィア「あー、大丈夫、アレより更に後日談、とかは>>1がそもそも書く気無いから……」

早苗「それじゃあ何をやるんです?」

オクタヴィア「ん〜、妄想段階のはこんな感じだって」


( 1 ) 東方三月精的な何か

オクタヴィア「つまり日常モノね。 ネタやら主役を募集する事もあるかも」


( 2 ) 巴マミのスペルプラクティス

早苗「現世で新技に悩んだマミさんが再度幻想郷を訪れる番外編、だそうです。 マミさんの弾幕を募集する事になるかと」


( 3 ) 射命丸文による魔女たちへの突撃取材

オクタヴィア「円鹿目パトリシアステージで示唆されてた文のお話。 所謂文花帖ね」



早苗「ネタとか要望があったら書いて欲しいそうです。 もしかすると>>1キュベーターが来て叶えてくれるかもしれません」

オクタヴィア「なんと言うか、名前的にとんでもない代償を要求してきそうで怖いんだけど……」

早苗「大丈夫です。 代償をもって行かれのるは>>1ですので」

オクタヴィア「なら、安心だね」



――――――――――――――――――――――――――――――――――――

早苗「それではお別れの時間となりました、お相手は信仰してくれない人は絶対許早苗、な東風谷早苗と」

オクタヴィア「冒頭で『安定のさやか』とか考えたヤツ、全員クリスマス連休中あたしの使い魔の刑、なオクタヴィアちゃんで、お送りいたしました」

早苗&オクタ「「それではさよーならー! ばいばーい!!」」
553 :1@ 〜小ネタというか告知的ななにか〜 [saga]:2011/12/22(木) 20:17:15.39 ID:fbZlKovx0

と言う訳で告知兼募集
番外編の希望とかネタとか、いろいろ書いていただけるとありがたいです。

更新はかなり不定期になると思いますが、宜しくお願いします。
554 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/22(木) 20:30:41.76 ID:krqGrEE60
乙っ! まさかまだ続きがあると言うのかい!?そんな事になったとしたら、それは因果律そのものに対する反逆だ!!

後日談かぁ…円環の神様の弾幕を是非とも見てみたいなって思ってしまうのでした
東方といえば弾幕戦だし…魔女異変の後からはそういうシーンが少ないから、是非とも新聞記者に頑張ってほしいな


ブロントヘアーモグモグは自分でもお気に入りなんだぜ
>>1キュベーター、他に願いを叶えてくれるとしたら…可愛いシャルちゃんがもっと見たいなっ!

ところで足を向けられて寝られないあの方って何さwwwwww俺はそんな偉くなんて無いぜ?
俺はただ純粋に>>1のSSを楽しませてもらった。ただそれだけの事さ
なーんてカッコつけてみたり… >>1の作品がこれからも見れるなら、それはとっても嬉しいなって
555 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/22(木) 21:16:29.28 ID:47JgSP0S0
続き……だと!?(ゴクリ
嬉しいこと言ってくれるじゃないの。
ふむん……三月精も良いかもしれないけれどもやっぱりここは文・花・帖!文・花・帖!
三月精になるんだったらH以下バカルテットとの絡みとか、魔女たちの命蓮寺ツアーとか、永遠亭との絡みとか、首領会談とかどうでしょう?

オクタヴィアちゃんやいいんちょのスペカ考えた甲斐があったぜ。どうも、詰めの甘いことに定評のある東京都です。

それと余計かもしれないけれど、マミさんあんこちゃんほむほむの東方的テーマのタイトルを考えるくらいの余裕はありますよー?
556 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/26(月) 08:42:39.56 ID:1zjAwLBT0
これが現行スレとは恐れ入った・・・・

ここの話は個人的幻想入り小説作成に大いに役に立ちそうです。
というかこんな話がみたかった!


擬人化ネタ取られちまったがここまで凄いので何とも思わん。
オリジナル小説と設定が含まれるのがどうかわかりませんが・・・

しかしvipってこんな事が出来るのか、スゲエ。
557 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/26(月) 11:14:54.58 ID:1zjAwLBT0
>>556です
結局3時間かけて読み終えました。

ただただスゲエ・・・の一言


幻想郷があって、いろいろ苦心続けたけど「本当の幸せ」が得られた結末は感動しました。
再改変の際の描写があまりないのは書くだけ野暮ということでしょうかね。

自分の考えてたチンケな妄想が根本から崩れ去っていく感じがしましたwwwwwwwwww
ちなみに内容は焔環神の方に近いです、原作終了時のCパートのその後を幻想入りにて考えてました

たまにこういう文才のある方の作品を読むと創作意欲も湧いてきます。
あくまでオリジナルキャラ付きで妄想段階ですが。


そして一番感じたのは2つの作品に対する愛ですね・・・・
非の着けようがない世界観理解と描写は完璧といって差し支えないと思いました。

では素人の感想を終わります。
558 : [saga]:2011/12/26(月) 18:35:15.43 ID:7dUMxn9J0
あやや人気過ぎてワロタwww

そーだよねー、円環の神さまの弾幕が出てないんだよね〜
おっかしいなぁ、本来のファンダズムステージは『クリームちゃん vs まど神さま』の予定だったのに、どうしてこうなった。
幸い魔女弾幕は投稿してもらった中でも未使用があるし、やらないと言う方がおかしい!

と、言うわけで文花帖+αな第三部、例によって前説から投下行きます。
559 :東方魔戯歌伝 [saga]:2011/12/26(月) 18:38:38.30 ID:7dUMxn9J0

           彼岸花や秋桜が咲き誇り、人々が待ち望む稔りの季節も近くなった頃の事。

円環の神さまと妖怪の賢者の手により、幻想の仲間入りを果たす魔女が、ポツリポツリと増える様になった幻想郷。

                とは言え、何か大きな変化があったかと言えばそうではなく、

       しいて言えば、新たな住人を自陣営に取り込もうと一部有力者が精を出すようになったぐらいで、

                 幻想郷の住人は相変わらず平穏な日々を過ごしていた。



 だがしかし、平穏過ぎる日々は、そんな状況を退屈だと思う者も、幻想郷の内外に生み出してしまう訳で……、

          これは色々とひと段落がついた幻想郷やその外で、暇を持て余したモノたちの、

                     賑やかで、楽しくて、ちょっとはた迷惑な、

               思いつきがもたらした、暇人による暇つぶしの物語である。



          第一部・『東方円鹿目』 と、第二部・『東方焔環神』 に続く、ボーナストラック的な第三部


                           〜東方魔戯歌伝〜

                          201X年1X月 連載開始


560 :東方魔戯歌伝 [saga]:2011/12/26(月) 18:47:39.84 ID:7dUMxn9J0
――――――――――――――― 初秋のある日 ―――――――――――――――
―――――――― 【救済の魔女と水棲の技師 @ 妖怪の山・渓谷】 ――――――――

暑い昼下がりであっても、涼しい場所として知られる妖怪の山の渓流。
だが、今に限って言えば、そこはアツい場所だと言えた。

???「お前のお手並み、拝見させてもらうぞ!」


                      河童 『のびーるアーム』


青色の髪をツーサイドアップにして、髪の色と同じ、青色の服を纏った少女――河城にとりが、スペルを宣言する。
スペル発動と同時に、放射状のレーザーが放たれ、そのうちの一部がこちら目掛けて飛んでくる。

クリームヒルト「っ!? 速いっ!?」

放たれたレーザーの速さに、ピンク色の髪をショートポニーで纏めた少女――クリームヒルトは、驚きつつもその身を翻す。
身体を、川面ギリギリまで降下させ、レーザーの切っ先をかわす。
流れる渓流の岩に当たり、跳ねた水飛沫が髪や服を濡らすが、構っている余裕は無い。

直撃を回避したレーザーは減衰することなく、クリームヒルトの頭上で網を張っているし、
なにより第二撃と言うべき高速弾幕を、にとりが放つのを見ていたからだ。

クリームヒルト(来るっ! ……どうしよう、迎撃する? ううん、ダメ。 
        このレーザーの網がある内は武器を作ってる余裕なんて無い! それなら……)

反撃は危険と判断したクリームヒルトは襲い来る弾幕に対し、川面ギリギリの高度を維持したまま、身体を傾けて斜線をずらす。
狙いの付けにくい水面ギリギリに居た事もあって、弾幕の精度はお世辞にも精密とは言えない。

外れ弾が起こす水柱の中を掻い潜りながら、クリームヒルトはレーザーの網の薄い所へと素早く移動する。
レーザーと弾幕を回避だけで捌くクリームヒルトを見て、にとりが感心したように口笛を吹く。

にとり「咄嗟の判断にしてはやるな、お前! 上空に逃げてたら今ごろ弾幕の餌食だったぞ。
    守矢の所の巫女が相手をしてやって欲しい、って頼んできた時は、どんなものかと思ったけど、少なくとも退屈はしないで済みそうだよ」

クリームヒルト「私もこの三ヶ月、練習だけはしっかりやってきたつもりだからね。 そう言って貰えると嬉しいよ!」

今の会話で少しだけ、にとりの意識がそれた為だろう、レーザーの網の減衰と、弾幕の切り替わりによる途切れ目とが、上手い具合に重なり、
クリームヒルトはそのタイミングにあわせて武器を作り出す。

にとりとの距離や、武器の特性を考えると、マスケット銃を選択するのが一番のように思えたが、ここは牽制ではなく、
素早く強烈な一撃を加えて、にとりの体勢を崩し、一気に反撃に出るべきだと判断し、クリームヒルトは魔力の弓を現出させる。


                      輝弓 『フィニトラ・フレティア』


すぐさま矢をつがえ、込められるだけの魔力を込めて、矢を放つ。
一瞬とは言え、クリームヒルトにより爆発的な魔力を込められた光の矢は、水面を切り裂くように飛びつつ、にとりに襲い掛かる。
561 :東方魔戯歌伝 [saga]:2011/12/26(月) 18:51:15.78 ID:7dUMxn9J0

にとり「ひゅい!?」

瞬間的に、ここまで強烈な反撃スペルを撃たれるとは思っていなかったのだろう、にとりは飛んでくる矢の大きさに、
思わず目を丸くしながら、それでも動転する事なく川面へと身を投げる事で、その矢を回避する。
矢はにとりではなく、にとりが跳ね上げた水柱だけを撃ち抜いて、後方へと抜けていく。

???「ああっ! 惜しいっ! 惜しいですよ、クリームヒルトさん!」

???「クリームヒルト! そこだ! やっちゃえっ!」

あと一歩の所で、惜しくもかわされた事に、川岸から観戦していた巫女と人魚の魔女――東風谷早苗とオクタヴィアが揃って声を上げる。

クリームヒルト「ティヒヒ、よーし、この調子で……」

にとり「行かせると思ったら大間違いだぞ! 魔女っ子!」

恩師の一人である早苗と、親友のオクタヴィアからかけられた言葉に、クリームヒルトが思わず笑みをこぼしたその時だった。
渓流の水が突如として盛り上がったかと思うと、次の瞬間には弾幕を伴う巨大な波となって、下流のクリームヒルト目掛け雪崩れ込んで来たのだ。


                      水符 『河童のフラッシュフラッド』


にとり「ひとたび暴れだした濁流の恐ろしさ、この弾幕で味わうといい!」

クリームヒルト「っ!?」

全てを呑み込まんとする鉄砲水を前に、クリームヒルトは動転しそうな気持ちを抑えながら、思考をフル回転させる。
川面付近にこのまま居続けるのはもってのほかだが、上空も安全とは言えない。
鉄砲水と連動するように放たれた弾幕が、上空を覆い尽くすべく、向かってきているからだ。

クリームヒルト(ここにいるのもダメ、上空もダメ……。 下に逃げようにも、下は川だし……、って、川?)

そこまで考えて、クリームヒルトは今しがた、にとりがどうやって矢を避けたのかを思い出す。
水面より上でやり合っていたし、鉄砲水の威力に驚いた事もあって、無意識のうちに選択肢から除外していたが、水の中に潜ってはいけないと言うルールは無い。

クリームヒルト「やるしかない、よね……」

河童のにとりと違って、クリームヒルトの衣装は普通の服だ。
水の中にダイブすればずぶ濡れになる事は避けられないが、今はなりふり構っていられる状況ではない。
クリームヒルトは意を決すると、鉄砲水が押し寄せるまさに直前に川へと飛び込む。
水面近くにいては、鉄砲水に巻き込まれるので、そのまま川底まで一気に潜り込み、波の影響を最小限に止める。
562 :東方魔戯歌伝 [saga]:2011/12/26(月) 18:55:07.90 ID:7dUMxn9J0

オクタヴィア「よーし、さすがあたしの嫁! ナイスプレ…………」

早苗「ああっ!? クリームヒルトさん、それはマズイです!」

オクタヴィア「……え?」

水の中に逃げる事で、弾幕を回避したことに歓声をあげかけたオクタヴィアは、早苗が真逆の非難を漏らしたことに目を丸する。
何故そんなことを言うのか分からず、ぽかんとしていると早苗が表情を強張らせたまま言う、

早苗「にとりさんは水を操る能力を持つ河童ですよ? 水中戦が一番の十八番なんです。
   人魚のオクタヴィアさんならまだしも、クリームヒルトさんでは分が悪すぎるんですよ……」

にとり「ふっふっふ、守矢の巫女は流石に分かってるじゃないか……、だけどもう遅いよ。 この勝負、貰ったぁ!」

このときを待っていたと言わんばかりに、仁王立ちになって腕を組んだにとりがにやりと邪悪な笑みを浮かべる。
にとりは、川底に居るであろうクリームヒルトに告げるようにそう言うと、懐から一枚のカードを取り出す。

にとり「私相手に水中戦を選んだ愚を後悔するんだな! 私の必殺スペルを受けてみろ!」


                      漂溺 『光り輝く水底のトラウマ』


早苗「って、にとりさん! それルナティックですよ! ルナティック!!」

発動したスペルを見て、すぐさま異変に気が付いた早苗が、大声でにとりに呼びかける。
早苗に言われ手の中のカードを見たにとりは、今更ながら自身が犯したミスに気が付き、それまでの悪役面が一転して蒼白になる。

にとり「え? あっ!ごめん! 調子乗ってたら間違えた!?」

オクタヴィア「間違えたで済む問題!? ってかこのスペル、ホントに洒落にならないって!」

発動したスペルにより、水面下に無数に放たれた弾幕を見て、オクタヴィアは上ずった声を上げる。
この弾幕を空中より抵抗の多い水中でかわし切るのは、人魚であるオクタヴィアでも難しいと思えた。

オクタヴィア「何やってんの河童っ子! 早くクリームヒルトを助けに……」

早苗「……いえ、ちょっと待ってください」

オクタヴィア「早苗も何言ってるの!? クリームヒルトが溺れても良いって言う訳?」

早苗「良く見てくださいオクタヴィアさん、クリームヒルトさんは、まだ勝負を捨ててませんよ」


563 :東方魔戯歌伝 [saga]:2011/12/26(月) 19:00:58.09 ID:7dUMxn9J0
――――――――――――――――――――――――――――――――――――

一方、渦中のクリームヒルトはそのスペルを文字通り水底から見る羽目となった。
水と共に波打つ弾幕が、水中に潜ったクリームヒルトの周囲を取り囲む。
水底から見える川面の輝きと、弾幕の光弾の輝きとが混じって、どちらが上で、どちらが下なのかすら分からなくなってしまう。

クリームヒルト「っ!? かはっ……」

上下感覚を失うと言う事態に、流石のクリームヒルトも動揺を隠し切ることが出来ず、思わず水を飲んでしまう。
水を飲むと同時に、口内に溜めておいた息が漏れ出し、一気に息が苦しくなる。

クリームヒルト(まずい! このままじゃ私、溺れちゃう……)

息苦しさで霞みかけた視界の中に、自らの口から漏れた息が、気泡となって上へと上っていく。
その様を最初はぼんやりと見ていたクリームヒルトだったが、次の瞬間、あることに気が付き、目を見張る。

クリームヒルト(気泡が上っていく、って事は水面はあっちなんだ!)

良く見れば、一時は絶え間なくクリームヒルトの周囲に展開されていた弾幕はその数をだいぶ減じていて、移動できるスペースが出来ていた。
実際は、スペルのミスに気が付いたにとりが、発動を中途半端に止めた為なのだが、水中に居たクリームヒルトがそんなことを知るわけが無い。

クリームヒルト(……一か八か、やってみよう!)

クリームヒルトは手に持ったままだった弓を再度構えた。
水中からではにとりが何処に居るのか、特定できないので、込める魔力量を限界まで増やす。
ただしそれは、一撃で決める為の必殺技ではない。 一撃を圧倒的物量に変換させる為の布石だ。

膨大な魔力が込められ、今までに見たことも無いほど巨大な矢となったソレに、咄嗟に思いついた術式を組み込み、一気に解き放つ。

クリームヒルト『行っけぇーっ!!』


                      輝弓 『天上の矢』


放たれた一本の矢は水中であっても減衰する事無く、川面から天へと飛び出す。
にとりを正確に狙って放った訳ではないので、この矢自体は盛大な空振りとなったが、矢が天へと上っていったかと思うと、
次の瞬間、その天から、無数の小さな矢が、流星群の如く戦場である渓谷に降り注いだ。

オクタ&早苗「「っ!?」」

にとり「なっ!? こんな量の矢をただの一撃で!?」

オクタヴィアは愚か、反撃があると予想していた早苗ですら度肝を貫かれる光景に、当事者であるにとりはただただ驚愕する事しか出来ない。
驚きのあまり、ただ呆然とその光景を見ていることしか出来ないにとりに、それらが降り注ぎ……、着弾の煙と水柱がにとりを包み込む。

564 :東方魔戯歌伝 [saga]:2011/12/26(月) 19:06:20.53 ID:7dUMxn9J0

クリームヒルト「ぷはぁっ!」

それと同時に、全身ずぶ濡れとなったクリームヒルトが、川面を突き破って現れる。

オクタ&早苗「「クリームヒルト(さん)!!」」

クリームヒルト「ティヒヒ、ごめんね。 心配かけちゃった……」

駆け寄ってくるオクタヴィアと早苗の姿を見て、クリームヒルトは苦笑いを浮かべつつ、二人に向き直る。
それと同時に、弾幕の直撃による水柱が収まり、水煙の中から、背負ったリュックの中から飛び出した防具で、身体へのダメージを防いでいたにとりが姿を現す。
多数の矢を一度に受けた為だろう、にとりの使った防具は、完全に焦げていて、一部にはひびまで入っていた。

クリームヒルト「あっ、にとりちゃん! 大丈夫だった? 咄嗟の急造スペルだから出力調整出来なくて……」

にとり「大丈夫大丈夫、防具の耐久テストには丁度良かったし……。
    それよりこっちこそゴメンな。 発動するスペルのレベルが間違っててさ、ホントはあんな鬼畜スペルを出すつもりじゃなかったんだけど……」

そう言ってすまなさそうに肩を落とすにとりに、クリームヒルトは微笑みながら首を横に振る。

クリームヒルト「うぅん、私も大丈夫だから気にしないで、お陰でこうして新しいスペルも作れたし……」

練習に付き合ってくれて、ありがとう、とクリームヒルトが言うと、にとりは顔を俯かせながら頬を赤く染める。
笑顔と一緒に感謝の言葉をかけられ、気恥ずかしくなってしまったようだ。

にとり「こ、こんなので良いならいつでも相手してやるよ。 お前とは、その、いい友達になれそうだしな」

クリームヒルト「うん、ありがとう」

照れが限界に達したのか、まともにクリームヒルトの方を見ることも出来ずに顔を真っ赤にするにとりを見て、オクタヴィアが手をわきわきさせはじめる。

オクタヴィア「何この河童っ子、破壊力がとんでもないんだけど……」

早苗「にとりさん、ああ見えて結構恥ずかしがりやさんですからねぇ……」

オクタヴィア「う〜、このかまってちゃんオーラ、我慢できないっ! にとり〜っ! にとりも私の嫁になるのだ〜ぁ!」

色々な意味で我慢の限界を超えてしまったのだろう、オクタヴィアは恥ずかしがって丸くなっているにとりに抱きつくと、その身体をぎゅっと抱き寄せる。

にとり「ひゅい!? お、お前、一体何を……って、何処触ってるんだよ人魚っ!」

オクタヴィア「何処でも良いでしょ、スキンシップだよ、スキンシップ!」

そう言いつつも、オクタヴィアの表情は獲物を狙うハンターのそれだった。
手をわきわきさせたまま迫るオクタヴィアに、にとりの顔から一気に血の気が引いていく。

にとり「や、やめろよーぅ、特にセクハラはやめろよーぅ! ああっ!? ホントにやめてぇ!!」



565 :東方魔戯歌伝 [saga]:2011/12/26(月) 19:10:59.65 ID:7dUMxn9J0
――――――――― 【幻想郷最速のブン屋 @ 妖怪の山・上空】 ―――――――――

文「う〜ん、最近ネタがありませんねぇ……」

特にどこかを目指すわけでもなく、ぶらぶらと空を飛びながら、射命丸文は一人呟いた。
自宅のタイプライターを最後に打ったのは三日も前の話であり、ネタが書かれた手帖も、使用済みを意味する赤斜線ばかりだ。

文「ほむらさんたちの一件が使えれば、引き出しが底をつく事もなかったんですけどねぇ……」

盆に起こった事件、通称“円環事件”は関係者と一部の有力者を除き、その全容は知られていない。
内容が内容だけに、記事にするのを控えるように、博麗霊夢や魔女たちから釘を刺されてしまったのだ。

まぁ、隠れて見ていた文自身、クリームヒルトと暁美ほむらの間に起こった事は、大っぴらに広めていいモノではないと思っていたし、
そんな個人のプライバシー丸無視のネタに頼らずとも、他に書ける記事があの頃はあったので、その要請を素直に受けたのだ。

が、今となってみると、使えるネタは使っておいた方が良かったような気がしてくる。
いずれにしても、あの件は既に賞味期限が切れたネタであり、使いようが無い訳だが……

文「まぁ、記事にしてたらクリームヒルトさんに今度こそ蜂の巣にされてたでしょうけど……」

文は事件後、一部の妖怪や魔女にこっそり話を流そうとしているのを見つかり、クリームヒルトにこってり油を絞られた時の事を思い出す。
朝方の、それも寺子屋の前だというのに、静かな怒りに燃えたクリームヒルトは文に弾幕を放ち、道の真ん中に大穴を開けてしまったのだ。

文「あそこまで強力な弾幕を受けたら、流石の私でも危なかったかもしれませんね。 狙いが甘くて助かりました……ん?」

そこまで言って、文は眼下で弾幕戦が行われている事に気がついた。
噂をすればなんとやら、と言うべきか、弾幕戦をやっていたのはそのクリームヒルトで、相手は同じ妖怪の山に住む、河童の河城にとりだった。

文「あやや、クリームヒルトさん、また腕を上げましたねぇ……」

本気の七割方に近い弾幕を放つにとり相手に、互角の戦いを演じているクリームヒルトを見て、文は思わず唸り声を上げた。

そう言えばクリームヒルトは、霧雨魔理沙やアリス・マーガトロイド、東風谷早苗などと、時々手合わせをして、弾幕戦の練習に励んでいるらしい。
噂によれば、最近は冥界の姫であり、親友でもある幻想郷きっての有力者、西行寺幽々子も相手をしているとか、
噂の真偽は兎も角、クリームヒルトの腕前が前より上がっているのは確実なようだ。

文「そう言えば、他の魔女の方はどうなんでしょう?」

よくよく考えてみれば、他の魔女も弾幕戦に関するデータは六月の異変の際に見聞きしたものしか、存在しない。
クリームヒルトやオクタヴィアがあの調子なのだ、あの異変から3ヶ月が経とうとしている今、このデータが最新のソレと同じであるとは、文には思えない。

文「そうと決まったら、早速取材に行きますか!」

文は手帖とカメラを鞄から取り出すと、そのまま一気に加速しながら山を下りていった。



566 :東方魔戯歌伝 [saga]:2011/12/26(月) 19:16:06.37 ID:7dUMxn9J0
―――――――――――――― 【同じ頃、円環の理】 ――――――――――――――

まどか「はぁ〜、楽しそうだなぁ〜、あっちの“私”は……」

盆の一件で知り合った八雲紫から貰ったスキマで、幻想郷の様子を覗き見ていた概念の少女――鹿目まどかは、
そこに映し出されたもう一人の自分――クリームヒルトたちの姿を見て、ため息を漏らす。

ここ最近、まどかは魔法少女の救済の合間に、ほむらたちの居る現世や、クリームヒルトたちの居る幻想郷の様子を覗き見ている。

そして、その度に思うのだ。 みんな生き生きしているなぁ……と、

現世で魔獣と戦っているほむらや、模擬戦の様なものとは言え幻想郷で弾幕戦をこなしているクリームヒルト。
前者は、生死のかかった危険な戦いであるが、『世界を守る』と言う使命感に燃えるほむらたちは、見ていて素直にカッコイイし、
“ごっこ”遊びですら真剣に、がモットーな幻想郷の弾幕戦は、スポーツの試合に通じる清々しさと高揚感がある。

翻って自分の生活を省みると、限界を迎えた魔法少女を救済に出向く毎日であり、そうした高揚感とは無縁の生活を送っている。
いや、魔法少女の最期を優しく導く存在が、そんな高揚感に満ちていては色々台無しなのだけど……

まどか「でも、私だってたまには派手に戦いたいなぁ……」

概念になってしまったとは言え、一応まどかも元は魔法少女なのだ。
かつての仲間や、もう一人の自分が、かっこよく戦っている姿を見ていると、自分も戦いたい、と言う欲求が湧いてきてしまう。

???「あれ? まどか、またそっちのあたしたちの様子を見てたの?」

まどか「あっ、さやかちゃん……、うん、ちょっとね……」

かけられた声に振り返ると、見慣れた青い髪の少女――美樹さやかがこちらを覗きこんでいた。
まどかの横に座って、スキマに映ったオクタヴィアの姿を見て、ポツリと呟く。

さやか「ホント、あっちのあたしたちも、あたしなんだね」

スキマには、セクハラ、もとい度を越したスキンシップで、我慢が限度を越えたにとりが、オクタヴィア相手に弾幕を放つ姿が映し出されていた。

さやか「あはは、弾幕戦、だっけ? またやってるよ、あっちのあたしたち……」

まどか「楽しそうだよねぇ……」

苦笑しながらまどかが呟くと、さやかがニヤニヤしながらまどかにある提案を持ち出す。

さやか「ねぇ、まどか、あたしたちもやってみない? 弾幕戦……」
567 :東方魔戯歌伝 [saga]:2011/12/26(月) 19:19:19.22 ID:7dUMxn9J0

まどか「えっ?」

さやか「いや、ちょっとあたしも身体を動かしたいなー、と思ってさ……。 丁度いい運動になりそうじゃん、アレ……」

見てる暇があるんだから、見よう見まねでやってみても良いんじゃない? と言うさやかの言葉に、まどかは目から鱗が落ちたような気がした。
今まで、楽しそうだと見ているだけで、そんな事など思いつきもしなかったのだが、確かにそうだ。

救済の合間に、まどかたちが何をしようと咎める相手は居ない。
ちょっとぐらい、息抜きの“ごっこ遊び”があったって良い筈だ。

まどか「……そうだね。 たまにはそういうのも良いかも……」

さやか「よしっ! そうと決まったら早速弾幕の内容を……」

まどか「あっ! 呼ばれてる! ちょっと私、現世に行って来るね」

救済が必要な魔法少女の気配を察知したまどかは、話を途中で区切ると立ち上がる。
さやかは話を切られてしまった形となったが、これが役目なのは重々承知しているので、笑ってそれを見送る。

さやか「うん、行ってらっしゃい。 あっ、スキマを忘れないでよ?」

まどか「うん、分かってる。 これが無いと“魔女”の方の子が消えちゃうもんね……」

そう言ってまどかは、幻想郷を映し出していたスキマを一旦手のひらサイズにまで縮め、それを持って円環を出る。

スキマは幻想郷を覗き見る為だけのモノではない。
本来はこうして救済の際に持ち歩いて、幻想郷という非常識空間をすぐ近くに発生させる事で、
魔法少女から分離した魔女が消え去る前に、円環と幻想郷という二つの世界に導く為に使っているのだ。
つまりこれは、円環の神であるまどかと、妖怪の賢者が恒久的に手を組んだ証でもあるのだ。

現世への短い道程を飛びながら、まどかは頭の片隅で考える。
お仕事の前に悪いような気もしたが、それほどまでに先程のさやかの提案が魅力的だったのだ。

まどか「……弾幕戦か、どんなのが良いんだろう?」


568 :東方魔戯歌伝 [saga]:2011/12/26(月) 19:31:06.17 ID:7dUMxn9J0
と、言うわけで、『幻想のブン屋は弾幕調査に出かけるようです』な文花帖パートと、
『円環の神さまは弾幕戦に興味を持ったようです』なまど神さまの弾幕戦パート、
それに時折雑多な話が混ざる魔戯歌伝、ぼちぼちですが開始します。

魔女の追加スペル案とか、まど神さまのスペル案とか、要望とか、ありましたらお願いいたします。
ついでに現時点での設定などを下に、

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

1)クリームヒルト・グレートヒェン 【一人称『私』 他人には『〜ちゃん』付け若しくは『〜さん』付け】

※今回の設定変更で完全に魔法少女のまどかと同じ容姿に、

戦闘力
 弾幕戦(自機側)  5面勢(咲夜・妖夢・早苗・お燐など)をハードで練習中。
 弾幕戦(攻撃側)  6面ボスレベル(ラストスペル『幸ばかりの天への誘い』は、幽々子の『西行寺無余涅槃』とほぼ互角)
飲酒 普通にいける口【幻想郷有力者と普通に宴会が出来るレベル】


2)オクタヴィア 【一人称『あたし』 他人は基本呼び捨て、明らかに年上のお姉さん(永江衣玖あたり)以上は『〜さん』づけ】

※下半身が尾びれな魔法少女のさやか(上半身のみでは判別不可)
  (現世魔女の時のごっつい仮面も所持しているが、一度つけた際に、ワルプルギスに大泣き+ドン引きされたので以後封印)

戦闘力
 弾幕戦(自機側) もっぱら4面勢若しくは5面勢のノーマルを相手に練習の日々
 弾幕戦(攻撃側) 5面ボスレベル(大体風神録の早苗互換)
飲酒 付き合いなら兎も角、一定量を越すと確実に悪酔い+二日酔い


3)シャルロッテ 【一人称『私』 他人は呼び捨て(ただしお子様的な親しみがある)】

※通常生活する分には人間体だけど、弾幕戦の時はほぼ間違いなく『ぬいぐるみモード』

戦闘力
 弾幕戦(自機側) 当たり判定が小さいので逃げに徹する。 ただし全体攻撃に弱いのでマスパは天敵。
 弾幕戦(攻撃側) 4面〜5面ボスレベル
飲酒 甘酒でも酔う。 日本酒なんかもってのほか、お菓子作りではフツーに使うのに……


4)ゲルトルート 【一人称『私』 目上は『〜さん』づけ、勝手知った相手だと呼び捨て】

※麦藁帽子が似合う妖怪第二位(一位はゆうかりん)な紅魔館の専属庭師。 翅が似ているので妖精から慕われている。

戦闘力
 弾幕戦(自機側) ―― 実戦未経験 ――
 弾幕戦(攻撃側) 中級妖怪レベル、潜在的にはそれ以上(異変以後、庭の手入れに専念していて、大してやっていない為)
飲酒 まあ普通
569 :東方魔戯歌伝 [saga]:2011/12/26(月) 19:35:55.52 ID:7dUMxn9J0

5)エリー 【一人称『私』 基本的に呼び捨て】

※ツインテール繋がりで「エリーにゃん!」とか呼ばれる日を今か今かと待ちかねる引篭り系オタク少女

戦闘力
 弾幕戦(自機側) イージーシューター(引篭りの時点で察してください……)
 弾幕戦(攻撃側) 相手により変動
飲酒 もっぱら洋酒派


6)パトリシア 【一人称『私』 呼び方は相手によりけり】

※エリーから「髪を切って和ちゃんになってよ!」と迫られる程度の容姿と口調の持ち主

戦闘力
 弾幕戦(自機側) 寺子屋でワルプルちゃん相手にやり合ってるので、実力急上昇中のダークホース
 弾幕戦(攻撃側) 暗黒スペルは3〜4面レベル、 学園天国スペルだと3面レベル
飲酒 シャルロッテほどではないが弱い


7)イザベル 【一人称『私(わたくし)』 目上は『さん』付け】

※紅魔館の動く石像少女。 最近、完成間近のおぜう様肖像画が、例によって妹様の手により「きゅっとしてドカーン」されてしまい余計色白に……

戦闘力
 弾幕戦(自機側) ――― 実戦未経験 ――― (と言うか石像に回避を期待してはいけない)
 弾幕戦(攻撃側) 相手により変動
飲酒 洋酒派だが、日本酒も可


8)ギーゼラ 【一人称『あたい』 他人は基本『アンタ』呼ばわり】

※妖怪の山の特攻服少女。 最近、天界への峠アタックを敢行中。

戦闘力
 弾幕戦(自機側) 回避に専念出来ればトップクラス。 ただし性分的に真正面からぶつかりに行っちゃうのが玉に瑕
 弾幕戦(攻撃側) 厄介度では文とほぼ互角。 そろそろ文も少し本気を出しても良いかと思っている。
飲酒 問題ない。抵抗感もない。ある訳がない。


9)エルザマリア 【一人称『私』 基本的に『〜さん』付け】

※人里の教会のシスター。 レミリア以下、西洋風な妖怪たちから地味に人気

戦闘力
 弾幕戦(自機側) ――― 実戦未経験 ――― (基本受身)
 弾幕戦(攻撃側) 影を巧みに使役する為、下手すると有力者でも負ける。 ただし闇を作るルーミアやミスティアは天敵。
飲酒 嗜む程度、洋酒中心
570 :東方魔戯歌伝 [saga]:2011/12/26(月) 19:41:50.66 ID:7dUMxn9J0

10)ロベルタ 【一人称『アタシ』 呼び方は相手によりけり】

※オトナなお姉さん。 お酒大好きな姉御肌

戦闘力
 弾幕戦(自機側) 相手の動きを読んで、適当に流す。 基本的に『遊び』
 弾幕戦(攻撃側) 適当に遊んであげる。 本気を出す事はないが、鬼と一緒にいる時点で察してください。
飲酒 鬼と一緒に飲めるほどの底なし


11)ワルプルギス 【一人称『私』 呼び方は『〜お姉ちゃん』 ただしトランスモードに入ると色々酷い】

※宙に浮くと逆さになるドレス幼女。 寺子屋に通い始めてだいぶ安定してきた。

戦闘力
 弾幕戦(自機側) ――― 実戦未経験 ――― (と言うか自機側に回るような事が無い)
 弾幕戦(攻撃側) エクストラをふつーにこなせる。 フランちゃんと戦わせてはいけません。
飲酒 飲ませるな危険


番外1)鹿目まどか(まど神さま) 【クリームヒルトと一緒】

※ご存知まど神さま。 件の一件以来、ちょくちょく覗き……もとい視察に来ている。

戦闘力
 弾幕戦(自機側) ――― 実戦未経験 ―――
 弾幕戦(攻撃側) エクストラぐらい(潜在的には紫にギリギリ届かないレベル)
お酒 まさかの全くダメないい子ちゃん
571 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/26(月) 23:00:10.98 ID:YVU19bglo
いちおつ
572 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/27(火) 06:10:34.94 ID:a19TRzZa0
と思ったら早速続編来てた〜〜!
お疲れ様です、続編もwwktkして待ってます。

この設定を見て原作最難易度キャラは誰なのかなと思ったりする。
スペカ難易度なら金閣寺?
573 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/27(火) 23:26:47.98 ID:a19TRzZa0
連投
ついでに前作も読ませていただきました。
あれで短編ってウソですよww

やはり構成に違和感がなく読みやすかったです。 シーンごとのBGM推奨が出来る文章かなと。
前作の中盤の見せ場で信仰は(ry流したらぶっちゃけテンションがおかしくなりましたwwww 相乗効果パネエ・・・
574 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/28(水) 01:00:16.85 ID:1TvI1WJho
まど神様は最後のスペル以外はクリームちゃんコンパチで
ティロ・フィナーレ→スクワルタトーレ(青剣)→ロッソ・ファンタズマ(介錯)→理解『私の、最高の友達』(リピーター)ってのは安直過ぎるかな。
ロッソはなんかまど神様が分身して分身全てから赤レーザーを自機に向けて叩きこんできそうだけれども。
575 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/28(水) 06:57:34.43 ID:+yij1SPY0

ずっと気になってたことが一つ
自律人形って言葉がよくでてくるけどアリスの人形は自律してないぞ
だから操ってるわけだし
576 :1@携帯 [sage]:2011/12/28(水) 12:01:31.54 ID:aNWX4l7DO
>>575
はい、アリスさんの人形が“完全自律”でないのは重々承知しております。

ある程度の指示を出せば、あとは勝手にやってくれる、謂わば“半自律人形”(三月精第二部ほか参照)とするのが正しいのですが、
語感その他などから、本作では便宜的に“自律人形”と表記させて頂いております。


ただ単に“人形”って表記じゃ物足りないとか、文面的にカッコいいからとか、そう言う意味では決してな……(バカジャネーノ
577 : [saga]:2011/12/30(金) 20:56:02.52 ID:7jOFW91Y0
――――――――――――――――――――――――――――――――――――

エリー「円環の理在住、まどゴットさんから頂きました」

 Q) この作品はクリほむ推奨との事ですが、ほむらちゃんとわた……クリームヒルトちゃんの濃厚な絡みは無いのでしょうか? 教えて下さい。

エリー「濃厚な絡みって……、見たいの? ソレ……? でもまぁ、見たいって言うならちょっとだけ……」

パチュリー「そこまでよ!!」



――――――――――――――――――――――――――――――――――――

パチュリー「まず最初に誤字の訂正よ。 >>560の『斜線』を『射線』と読み替えて、との事よ」

エリー「戦闘場面なのにこのミスとか、しょーも無いわね。 本編終わって気が抜けてるんじゃない?」

パチュリー「色々誤字ってるのは本編中も同様よ。 これで投下前にチェックしている、って言い張るんだからスゴイと思うわ」

エリー「うっわ、辛辣〜っ、やっぱり名前誤字られた恨みは……」

パチュリー「その件には触れないで」



パチュリー「むきゅ〜、ここからはパチュラ……もとい、魔戯歌伝の本編よ〜」

エリー「レス返しなどは投下終了後に書くわね」

パチェ&エリー「「それでは、どうぞ!」」


パチュリー「そうそう、今回の私たちの出番、もしかすると楽屋裏(ここ)だけらしいわ」

エリー「マジで!? Σ( ̄□ ̄ )」


578 :東方魔戯歌伝 [saga]:2011/12/30(金) 21:00:10.99 ID:7jOFW91Y0
――――――――― 【幻想郷最速のブン屋 @ 幻想郷・紅魔館】 ―――――――――

???「♪〜っ ♪〜っ……」

多数の薔薇が咲く、庭園の中を麦藁帽子の少女――ゲルトルートが、鼻歌交じりに歩いている。
季節は田の稲が黄金色に輝こうか、と言う時期だが、昼下がりのこの時間はまだまだ暑い。

???「ゲルトルートさ〜ん」

???「おーい、ゲルトー!」

ゲルトルート「あら?」

いつも通り薔薇への水遣りに精を出していたゲルトルートは、背後から聞こえた声に顔を上げた。
振り返ると、黄緑色の髪をサイドポニーで結わえた小柄な少女――大妖精が、青い服の妖精――チルノと一緒に、地上スレスレを飛んでくるのが見えた。

ゲルトルート「大妖精にチルノじゃない、今日はどうしたの?」

水やりの手を一旦止めて、ゲルトルートは二人の妖精に問いかけると、いつもと変わらず、自信満々と言った様子で、チルノが胸を張る。

チルノ「あたいたち今、かくれんぼの最中なの!」

大妖精「で、ちょっとだけ、ここに居たいんですけど……、いいですか?」

垣根の影に隠れて、周囲の様子を伺いつつ、小声で尋ねてくる大妖精。
ゲルトルートは辺りを見回して、他に誰もいないことを確認すると、しゃがみ込んで二人と目線を合わせるようにする。

ゲルトルート「それは良いけど、垣根を壊しちゃダメよ。 あと、建物の中には入らないでね。 お嬢様たち、今寝てるから……」

チルノ「じゃあ隠れるのは良いんだね? 大ちゃん、行こっ!」

大妖精「きゃっ!? チルノちゃん、急に引っ張らないで……! あっ、ゲルトルートさーん、ありがとうございました〜」

来たときと同じように垣根で身を隠しながら飛んでいくチルノたちを見送りながら、ゲルトルートはふっと微笑んだ。
蝶のような翅のおかげなのか、はたまた彼女たちが自然の化身だからなのか、ゲルトルートは妖精たちから結構慕われている。
紅魔館が妖精の多い、霧の湖から程近いこともあり、庭園整備の合間に、こんな風に訪ねてくる妖精も多い。
そんなだからだろう、最近ついたあだ名が……

文「あややや、流石、“紅薔薇のお姉さん”ですねぇ……。 ほっこりする一コマ、ありがとうございます」

シャッター音と共に聞こえた声に、ゲルトルートが空を見上げると、ちょうど真上から文が降りてくる所だった。

ゲルトルート「あら、誰かと思ったら文じゃない……。 定期講読の契約更新なら私じゃなくて咲夜さんに……」

文「いえいえ、今日はゲルトルートさんに用があって来たんですよ」

そう言って、文は簡潔に用件を伝える。
新しい弾幕開発の為に、ともっともらしい嘘をついて、記事にすることだけは伏せておく。
長く文と付き合っている在郷人相手には通らない嘘だが、来て3ヶ月のゲルトルートには気付けと言う方が酷だった。
579 :東方魔戯歌伝 [saga]:2011/12/30(金) 21:02:42.91 ID:7jOFW91Y0

ゲルトルート「え? 私のスペルを見せて欲しいの?」

文「ええ、色々と参考にしたいので……」

ゲルトルート「困ったわね。 私最近、弾幕戦を全然やってないのよね。 夏は庭園のお手入れが大変で……」

これだけ広いと雑草の処理だけでも一苦労で……、と言いながら苦笑するゲルトルートは、それでも愉しそうだった。
庭師人生(?)を楽しむ麦藁帽子のお姉さん、とでも称してドキュメンタリー風に記事にするのも一興かと思ったが、
そう言うネタならストックしておいても使えるので、文はなおも食い下がる。

文「そこをなんとか! なんなら異変の時の改良型とか、開発中のモノとかでも構いませんので……」

ゲルトルート「開発中ねぇ……。 あっ、そう言えば庭園のお手入れ中に思い付いた弾幕が一つあるのよね」

文「おおっ! それは絶好のスクープ……もとい、いい参考になりそうです! 早速で悪いのですが、見せて頂けませんか?」

ゲルトルート「ええ、良いわよ。 ちょっと待ってね、片付けてしまうから……」


580 :東方魔戯歌伝 [saga]:2011/12/30(金) 21:05:59.18 ID:7jOFW91Y0
――――――――――――――――――――――――――――――――――――

ゲルトルート「久々の弾幕戦だから、肩慣らしから始めてもいいかしら?」

紅魔館屋上の時計台の前で、ゲルトルートがそう申し出てくる。
垣根を壊したくないと言うゲルトルートの希望で、ある程度の広さがあるここにやってきたのだ。

文「構いませんよ。 ゲルトルートさんに任せますので……」

ゲルトルート「ありがとう、なら最初は……」


                      薔薇符 『薔薇の檻』


ゲルトルートが発動したスペルは、魔女異変で彼女が魔理沙と戦った時に、最初に使ったスペルだ。
放射状に伸びる茎を模したレーザーと、伸びきった際に花開く、花弁の弾幕が特徴的な薔薇園の魔女らしいスペルなのだが……

文「あれ? ゲルトルートさん、この弾幕、ちょっと改良しました?」

ゲルトルート「ええ、花びらの弾幕を追加させてもらったわ。 他の子の弾幕を見てたら、ちょっと寂しいかな、って……」

今、文の目の前で展開している弾幕は、茎と花のみで構成される、かつてのソレではなかった。
茎のレーザーが伸びていくのと同時に、薔薇の花びらを模した弾幕がゲルトルートからばら撒かれているのだ。

ゲルトルート「改良してから使うのは今日が初めてなんだけど……、難しくしすぎたかしら?」

頬に手をやりながら、心配げに呟くゲルトルートに、文は笑ってみせながらカメラを構える。

文「いえいえ、これくらい華があった方がいいと思いますよ。 写真栄えもしますしね」

ゲルトルート「えっ?」

文「あやや、こっちの話ですよ、こっちの話。 えっと、資料用に写真を撮らせてもらいますねー」

いいわよ、と言うゲルトルートの答えを受け、文は写真を撮り始める。
当然、文はこの改良型弾幕の洗礼を受けているのだが、長年記者をやって来た文からすれば、回避しながらの写真撮影も余裕だ。

文「ほっ、はっ! とりゃっ!(パシャッパシャッパシャッ!!」

ゲルトルート「なんだろう、あんなに余裕綽々で回避されながら写真を撮られると自信がなくなってくるわ……」

そう言えば私って不信の魔女だったっけ……、などと言いながら落ち込むゲルトルートに、文は乾いた笑いを漏らしながら慰めの言葉をかける。

文「いえ、職業柄、こう言うのに慣れてるだけですから、十分難しいと思いますよ」

少なくとも見た目の可憐さでは最上級レベルです、と中途半端にフォローになってないフォローを入れながら、文は写真を撮り続ける。
581 :東方魔戯歌伝 [saga]:2011/12/30(金) 21:11:03.04 ID:7jOFW91Y0

ゲルトルート「なんか微妙だけど、ありがとう……。 それじゃあ、腕ならしも終わったし、新作弾幕、行くわよ」

気を取り直したゲルトルートは、新たなカードを取り出すとニヤリと不敵に笑ってみせる。
なんだかんだと言って新技のお披露目なのだ、気分が盛り上がらないわけが無いだろう。

ゲルトルート「紅魔館の薔薇庭園――、私の自慢の庭園を、そのまま弾幕にしたこのスペル、本日開園よ!」


                      庭園 『紅薔薇の迷宮』


文「おおっ!?」

発動したスペルを見て、文は思わず歓声を上げる。
茎のレーザーが縦ではなく横向きに張り巡らされ、ソレが迷路を形作し、紅い弾幕と共に押し寄せてきたのだ。

ゲルトルート「どうかしら? 茎の弾幕を基本にして、垣根っぽく仕上げてみたのだけど……」

文「緑のレーザーで垣根を、紅の弾幕で薔薇を、それぞれ表しているんですよね? 見た目も実用性もありそうでいい感じですよ」

簡単に感想を述べつつ、文は過去の記憶などをもとに、この弾幕の構成を見極める。

文(所謂速度の遅い金閣寺、って感じですね……。 慣れてないからこのスピードですが、速さが上がると厄介ですねぇ……)

一つ前の弾幕から引き続き放たれる花びらの弾幕をかわししつつ、文はレーザーの切れ目に素早く身体を滑り込ませる。
レーザーの切れ目が比較的大きいのと、迷路の押し寄せるスピードが遅い事もあって、難易度としてはさほど高くは無い。

実はこのスピードは、“庭園をゆったり散策する光景”をテーマにすえたゲルトルートが、敢えてゆっくり気味に設定したものなのだが、
流石の文と言えど、そこまで察する事は出来なかった。

文(とは言え、このセンスは十分評価に値しますね。 魔理沙さんの評もあながち外れじゃなさそうです……)

引き続き、弾幕を写真に収めながら、文は魔女異変の際の魔理沙のゲルトルート評を思い出す。
発動タイミングなどはまるで素人だが、弾幕自体のスペルはいいセンまで行っている。 との事だったが、成る程、これならその評も納得できる。

文(あとは経験、でしょうね。 庭園の手入れで手一杯な現状では実戦経験を積め、と言う方が酷でしょうけど……)

紅魔館の庭師という立場は、幻想郷の中でも比較的、平穏無事な生活が送れる職である。
不審者対応は門番の紅美鈴やメイド長の十六夜咲夜の役目であり、厄介者である魔理沙の狙いは大体地下図書館で、庭園には見向きもしない。
仮に興味を持ったとしても、人が毎日手入れをしているモノに手を出すような真似は、流石の魔理沙と言えどもやる事はない。
唯一問題があるとすれば気まぐれな妖精ぐらいだが、見ての通りゲルトルートと妖精の関係は良好で、この点も問題とはならない。

魔女の代表役として弾幕戦をマスターせざるを得なかったクリームヒルトや、面白そうな事にちょくちょく首を突っ込みたがるオクタヴィアたちと違い、
弾幕戦をやる必要性があまり無かった、と言うのが、経験不足の原因なのでゲルトルート本人に非がある訳では無い。

ゲルトルート「あっ、しまった!?」

文「? ……っ!?」

ゲルトルートが上げた声にそちらを見た文は、すぐに何が起こったのかを悟った。
本来切れ目が出来ていなくてはならないレーザーの垣根が、切れ目の無い完全な壁として構成されてしまったのである。
今日初めて使うスペルゆえに、間違って“回避不可能”な弾幕を作ってしまったのだろう。
582 :東方魔戯歌伝 [saga]:2011/12/30(金) 21:13:12.64 ID:7jOFW91Y0

ゲルトルート「文! 今すぐ逃げてっ!」

回避不可能な弾幕はご法度、と言う絶対のルールを侵してしまった為だろう、切羽詰った様子でゲルトルートが叫ぶ。
それに対し文は、動じる事も無くカメラを構える。 向かってくる弾幕の壁にピントをあわせ、少々の妖気を込めてシャッターを切る。


                      カシャッ!


ゲルトルート「えっ?」

悠長にカメラなど構えだした文に再度、忠告をしようと思っていたゲルトルートは、その瞬間、自分の目を疑った。
先程までと同じような写真撮影だと思ったのに、文が写真を撮った途端、撮られた部分の弾幕だけがごっそり姿を消したからだ。

そのままゲルトルートが呆然としていると、弾幕をすり抜けた文が苦笑しながらゲルトルートの元へとやって来る。

文「いやー、今のはちょっと焦りましたよ。 まぁ、初めてですからね、こういう事故が起こるのも仕方ないです」

ゲルトルート「……えっと、文? 今、私の見たことが正しければ、弾幕が途中で消えたような気がするんだけど……」

あまりにも不可解な事態に、ゲルトルートは慰めの言葉より、疑問への回答を文に求めた。
そこで初めてゲルトルートの様子に気が付いたのか、文は失礼しましたと言いつつ、簡単に解説をする。

ゲルトルート「それじゃあ、文はそのカメラで、弾幕を写真に収める事で、その弾幕を消す事ができる訳?」

文「消す、と言うか文字通り“写し取る”と言った方が正しいかもしれませんね。 まぁ、一種の自己防衛みたいなものです」

そう言って、文はニヤリと笑ってみせた。



――――――――――――――――――――――――――――――――――――

文「今日はお付き合い頂き、ありがとうございました」

ゲルトルート「こっちこそ、未完成のスペルに付き合ってもらってありがとう」

文「いえいえ、これくらいお安い御用ですよ。 それではっ!」

軽く会釈をすると、文は次の取材対象を探す為に紅魔館を後にした。
結局、先程のスペルの発動ミスにより、ゲルトルートがこれ以上の弾幕披露を拒否した為、資料撮影の名を借りた隠密取材が出来なくなったからだ。
対するゲルトルートだが、新作スペルを事故を起こす事無く、正確に発動出来るまで練習する、と文に告げて、この日は笑顔で別れた。

ゲルトルート「さーて、お手入れの続きをしないと……、そう言えば大妖精たちのかくれんぼは終わったのかしら?」

後日、正式披露前の弾幕が、記事としてばら撒かれている事を知り、文の家に押しかける事になるのだが、この時はまだ、知る芳もなかった。



583 :東方魔戯歌伝 [saga]:2011/12/30(金) 21:16:39.19 ID:7jOFW91Y0
―――――――――― 【円環の神さまとその親友 @ 円環の理】 ――――――――――

さやか「さて、まどかの“お仕事”がひと段落付いたところで、早速弾幕について考えてみようと思います!
    と、言うわけでまずは参考資料なんかを用意してみました。 拍手〜っ!」

まどか「わ〜っ!! って、さやかちゃん! いつの間にそんなの用意したの!?」

分厚い装丁の本を片手に高らかに宣言するさやかに対し、まどかは思わずツッコミを入れる。
見事なノリツッコミに、さやかは待っていましたと言わんばかりに、得意げな顔で答える。

さやか「ふっふっふ、さやかちゃんの構築した裏ルートを駆使すれば、幻想郷からのお取り寄せも思いのままなのよ」

まどか「素直にスキマを使ったって言おうよ、さやかちゃん……。 で? その本は一体……?」

さやか「ん〜、なんでも幻想郷の弾幕を纏めた本らしいよ。 むこうのあたしたちの弾幕も載ってるみたい」

そう言って、さやかはまどかにその本を手渡す。
洋書の様な装丁のなされたその本には、金の文字で『The Grimoire of Marisa』とタイトルが入っていた。

まどか「魔理沙……って、幻想郷の魔法使いの? ホントに取り寄せたんだね〜」

さやか「だからそうだ、って言ってるでしょ。 ほらほら、早く中を見ようよ」

まだあたしも読んでないんだから、と言うさやかに急かされ、まどかは本を開く。
パラパラっとページをめくり、『種族・魔女』という項目が目に付いた辺りで、その手を止める。

さやか「おっ、コレ、魔女のまどかの弾幕じゃん」

開いたところは、ちょうどクリームヒルトの弾幕について解説しているページだった。
比較的、弾幕戦をする機会が多い為か、数ページに渡って解説が書かれている。

まどか「憧憬『ティロ・フィナーレ』、因果『タイム・リピーター』……、この辺はマミさんたちとの思い出がモチーフになった弾幕だね」

さやか「この辺は、まどかの弾幕の参考に出来そうじゃん。
    あはは、あたしがモチーフの弾幕の符名が“真友”って……、いやこれは結構照れますな……」

でもちょっと大げさだなー、などど言いつつ苦笑するさやか。
そんなさやかに、まどかはにっこりと微笑みかけると、静かに首を横に振る。

まどか「うぅん、全然、大げさでもなんでもないよ。 私にとってもさやかちゃんは大切な親友だもん」

さやか「っ!? ……も、もうっ! 恥ずかしい台詞禁止っ! 話が進まないでしょ!」
584 :東方魔戯歌伝 [saga]:2011/12/30(金) 21:20:48.94 ID:7jOFW91Y0

まどか「てぃひひ、ごめんごめん、さっ、続きを読もう?」

そういってまどかは、手元の本へと目線を戻す。
そのまま何気なくページを一枚めくったまどかは、そこに書かれていた内容に、その手を止める。

さやか「ん? どうしたの……って、ああ……」

まどかの様子がおかしいことに気が付いたさやかは、そのページへと目をやり、すぐに納得した。
そのページには、ある弾幕の解説が載っていたのだ。 その弾幕は……


                      終焉 『新世界創造』 / 『幸ばかりの天への誘い』


さやか「魔女のまどかの呪いをそのまま弾幕にしたスペルだね。
    “救済の魔女・クリームヒルト最強のスペルだが、事実上の封印状態。”だって……、魔女のまどかにとっても忘れていたい過去なんだろうね」

まどか「それは違うんじゃないかな?」

さやか「えっ?」

書かれた解説文を読んださやかが呟いた言葉を、まどかはすぐさま否定する。

まどか「忘れていたいのなら、最初からスペルになんてしないと思う。 これはむしろ、“戒め”なんじゃないかな……」

さやか「戒め……、うん、そうだね。 あたしもそう思う」

まどか「どっちにしてもこれは参考には出来ないね。 次のページ、めくっちゃうよ?」

問いかけにさやかが頷くのを見て、まどかは更にページをめくる。
早々にページをめくることになってしまったが、それでもまどかは、いまの弾幕の事が気になって仕方が無かった。

まどか(戒め、か……、魔女の私が戒めから解放されるのは、何時になるんだろう……)

こればかりは、いくら概念となったまどかであっても癒しきることなど不可能だ。
その日が来るのは、ゆりかごの様な幻想郷をもってしても長い年月が必要になるに違いない。
おそらく、幻想郷の住人や、魔女の仲間たち、そしていつの日か向こうへ行くであろうほむらたちの助けを得て、徐々に癒えるのを待つしかないのだろう。

まどか(そう言えばまだ私、魔女の私ときちんとお話し出来てないや……。 もう一度、幻想郷(むこう)に行ってみようかな……)

さやかと共に本を見ながら弾幕について色々と語り合いつつ、まどかは頭の片隅でそんなことを考えていた。



585 :東方魔戯歌伝 [saga]:2011/12/30(金) 21:49:50.05 ID:7jOFW91Y0
以上、本年内の投下はこれで終了です。
お付き合いいただきありがとうございました。 来年もお付き合い頂ければ幸いです。

>>573
前作も読んでいただきありがとうございます。
そうですか、ヤバかったですか……、よしっ!計画通り(ニヤ
ちなみに私的には前作はラストのあの人の魅せ場で「少女綺想曲 〜 Dream Battle」のをオススメします。

>>574
よし、それで行こう、全面採……(ピチューン

まど神「他力本願もいい加減にしておこうね?」


以下、焔環神以降やってなかった弾幕解説を久々に

 【クリームヒルト】

輝弓 『フィニトラ・フレティア』
 魔力で巨大な矢を作り、自機狙いで放つ弾幕。 簡単に言えば弓矢版マスパ。
 魔力量(難易度)により矢の大きさが変化
 ルナティックでは左右どちらかに誘導してから回避しないと回避不可レベルの太さに


輝弓 『天上の矢』
 上の上位互換スペル。
 巨大な矢を作って放つところまでは一緒だが、放たれて画面外に消えた後に無数の小さな矢の弾幕が降り注ぐ。
 普通の弾幕戦なら、一度でも被弾すれば撃墜となるが、緋想天風にやると、

   巨大な矢を当てて上空に吹っ飛ばす → 受身の取れない上空で矢の弾幕を更にくらう

 の必殺コンボが可能です。
 なお、上のスペルも含め、チャージに時間が掛かるので、チャージ中に撃破しようと思えば出来る。


『幸ばかりの天への誘い』
 終焉 『新世界創造』の上位互換スペル。
 それまでに放った弾幕の全てを吸引するのと同時に、死属性弾幕を放つと言う耐久スペル。
 終わった後には生命一つ残さない極悪スペル。 まぁ、既に死んでる相手だと意味が無いのだけど……


 【ゲルトルート】

薔薇符 『薔薇の檻』(文花帖版)
 本編内にあったように、花びら弾幕がデフォルトで追加。
 茎レーザーに花開く花弁、舞い散る花びらの三位一体攻撃に進化


庭園 『紅薔薇の迷宮』
 太目の茎レーザー(通称『垣根』)で迷路を構築し、薔薇弾幕をばら撒くスペル。
 なお、迷路は迷路らしく、入る道を間違えると袋小路に突入するので、注意。

 薔薇園の魔女ご自慢の庭園散策のひと時を……愉しんでる余裕あるのかな? コレ……
586 :SS速報でコミケ本が出るよ[BBS規制解除垢配布等々](本日土曜東R24b) [sage]:2011/12/31(土) 11:54:53.95 ID:4fT0xktj0
まど神様はまどマギらしくイタリア語を活用してほしいなー
俺がスペカ考えたら全部厨二臭くなるけどせっかくなので案を


創世「スペランツァ・エノルメ」(途方も無い願み)
神創「ラ・リスポスタ・デリヴァ」(導き出した答え)
アニメ12話にてまどかが契約した時にできた光の柱がモチーフ。でも下のと被るので極太レーザーじゃなく数条に分かれてる。
10条ほどの直線レーザーが地面から垂直に飛び出し、レーザーに矢が放たれてバラバラになり爆散する。

聖弓「ラデーア・フレティア」(女神の矢)
聖弓「希望と救いの光矢」
フィニトラ・フレティアと天上の矢リスペクトだけど、女神パワーで矢が在り得ない曲線を描いたりする。
無数の矢も厄介だけど、巨大な矢を放った後は眩しい光で視界を妨げられたりとめんどくさい。誰かルーミアかミスティア呼んで来い。

物語「30日の箱庭」
枢軸「因果の大回廊」
耐久スペル。クリームヒルトが使用する思い出弾幕を1つにまとめたような感じ。
その場に残るリボンを張り巡らせたり、超高速で移動したり、13人ぐらいに分身したり、時間を停止したりと無茶苦茶する神様である。

再編「新宇宙構築」
祈跡「終焉する魔女の旧世界」
弾幕がまどかの周りからじわじわと構成されていくスペルかと思えば、いきなり自機の周りに弾幕が現れホーミングしてくる不意打ち。
魔女を消し去ろうと言わんばかりの自機狙い弓矢弾幕。そして回避に専念していたらまどかの作った宇宙的にヤバい弾幕が襲い掛かる。

救済「希望を信じた魔法少女」
円環の理「少女たちへの安らかな救済」
ラストスペル。極悪。>>1の事だからスペル名が出た後すぐに『辺りが焦土となったのは言うまでも無い』とか書きそうなレベル。
魔女が受けたら多分ピチュるどころじゃ済まないけど、他の人間とか妖怪とかはかなり痛い程度で収まるはず。
587 :SS速報でコミケ本が出るよ[BBS規制解除垢配布等々](本日土曜東R24b) [sage]:2011/12/31(土) 11:55:40.09 ID:wSnVZPlDO
いや〜、色々と素敵な小ネタが詰まってますな。弾幕解説も楽しいですし。

久々に軽く弾幕案(イージー基準)を書いてみますか。今回はまど神様のです。

円環符「もう、苦しまなくていいんだよ」
画面上、自機の当たり判定3a上から輝くピンクの矢が中速で一秒おきに発射される。魔女の理解前の円環の仕事を表現した弾幕。苦しまなくて良いなどと言うが、避けなくてはいけないので苦しい。

救済「分かれし魂」
自身を中心に白く輝く中球(SGをイメージ)と黒く輝く中球(GSをイメージ)を左右一つずつ作り右公転させ、白球からは横2列の白小球を自機狙いで低速連射、黒球からは、同じく横2列の闇色ネチネチ弾を低速連射させる。魔女の理解後、どちらも救う術を得た後の円環の仕事を表現した弾幕。

待符「二つの絆を結ぶ紐」(難易度:???)ツインテールの暁美ほむらの幻影を作り出し、相手をさせる。但し、この暁美ほむらの幻影は鹿目まどか(円環の理)のイメージ上の存在なので、本人がしそうもない行動をする可能性がある。

こんな所で如何でしょうか?それでは良いお年を!
588 :SS速報でコミケ本が出るよ[BBS規制解除垢配布等々](本日土曜東R24b) [sage]:2011/12/31(土) 14:32:24.48 ID:NuPd6qq30
>>586>>587
おまえら結構仲いいな
589 :SS速報でコミケ本が出るよ[BBS規制解除垢配布等々](本日土曜東R24b) [sage]:2012/01/01(日) 08:01:54.50 ID:P/ZZYaaDO
新年、明けましておめでとうございます!
今年も何とぞよろしくお願いいたします!

>>588
>>587書いたやつだけど、まさかの1分差だからなww両方見直し修正含めての事だろうし、俺自身も信じられんわww
590 : [saga]:2012/01/01(日) 13:03:41.75 ID:/WPskKFC0
俺のスレにも遂に支援絵が!! と思ったら夢だった>>1です。
新年早々こんなのってないよ!

げふん、げふん、取り乱しました。 改めまして、皆さまあけましておめでとうございます。
今年も宜しくお願いいたします。



まずはご挨拶代わりにこちらをどうぞ
http://loda.jp/madoka_magica/?id=2797

背景はpixivより拝借致しました
http://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=21386560


幽々子「あら? わたしとクリームヒルトちゃんじゃないのね?」

ゆゆ様フィギュアとしっくり来るものがなかったので……、新年なので神社組に花を持たせてあげてください。

霊夢「ならウチにしなさいよ。 ウチに!」

ん〜、なんとなくだけど却k(夢想転生



>>586
そんな、まったまたぁ! 言うに事欠いて『ハイパーまどかビーム』なる名前をつけるセンスをお持ちの方ですよ?
そんなカッコイイ名前を思いつけるわけが……(円環の理

まど神「新年早々神さまに喧嘩売るとはいい度胸だね!」

さやか「でもそれなら何で魔女のまどかのネーミングセンスは普通なの?」

オクタヴィア「あー、それはひとえに幽々子さんのお陰だね」

クリームヒルト「ティヒヒ、弾幕の内容だけじゃなくて、スペル名に関してもアドバイスして貰ったんだぁ〜」

さやか「と、言う事はアドバイサーが紅魔館のお嬢様だったら?」

オクタヴィア「……考えただけでも頭痛モノのスペルになってたと思うよ」


>>587
>>586様共々毎度毎度ありがとうございます。
しっかし、シンクロ率がすごすぎてワロタ
591 :SS速報でコミケ本が出るよ[BBS規制解除垢配布等々](本日土曜東R24b) [sage]:2012/01/01(日) 14:50:16.42 ID:TZ1B0UwAO
>>583
最後のさやかの『恥ずかしい台詞禁止!』ってどこぞの水先案内人みたいだしキャラがはまりすぎている…
さては狙っているな!!
592 :SS速報でコミケ本が出るよ[BBS規制解除垢配布等々](本日土曜東R24b) [sage]:2012/01/01(日) 15:11:30.62 ID:ipmjekHn0
あけましておめでとうございます! 神社が忙しく時期だぜ

フィニトラ・フレティアもスクワルタトーレもロッソ・ファンタズマもマミさんが考えた物なんだろうなぁ
かずみマギカのイタリア語の技もみんなマミさんの影響だし…マミさんの必殺技考案のための幻想郷訪問も楽しみだぜ
593 :SS速報でコミケ本が出るよ[BBS規制解除垢配布等々](本日土曜東R24b) [sage]:2012/01/01(日) 19:04:15.36 ID:mMX+u3PSO
あけましておめでとうございます

不夜城レッドは普通にかっこいいと思うんだ

全世界ナイトメア?うん・・・・・・
594 : [saga]:2012/01/06(金) 16:09:46.47 ID:+HkMBDfP0
――――――――――――――――――――――――――――――――――――

パトリシア「幻想郷在住、奇跡の巫女さんから頂いたわ」

 Q) 東方×まどマギなのに、メインカプがまどマギキャラの中で完結してるのって、ぶっちゃけどーなんですか?

パトリシア「何言ってるの? ゆゆクリとか、マリオクとか、アリシャルがあるじゃない……。 実質、ほむクリやオク杏、シャルマミの下位互換だけど……」


――――――――――――――――――――――――――――――――――――

白蓮「どうも、お久しぶりです。 円鹿目本編以来久々登場の聖白蓮です」

パトリシア「えーと、焔環神後日談以来だから、そんなに久々じゃないパトリシアです……」

白蓮「それで?その後はどうですか? 上手くやれてます?」

パトリシア「ええ、ワルプルギスがたまに愚図りますけど、最近は減りましたし……、その節は色々とありがとうございました」

白蓮「いいえ、私はただ、仏の正しい教えを説いたまでのこと、頑張ったのは貴女自身なのですから、謙遜しなくて良いんですよ」

パトリシア「いえいえ、あの時の白蓮さんの教えが無かったら、私、今でもどうしていたか……」


                          【以下謙遜合戦の無限ループ】


ワルプルギス「長くなりそうだから本編に行くよ!」

595 :東方魔戯歌伝 [saga]:2012/01/06(金) 16:14:25.49 ID:+HkMBDfP0
――――――――― 【幻想郷最速のブン屋 @ 幻想郷・迷いの竹林】 ―――――――――

???「あ〜、もうっ! 一体何処に行ったのよ!」

生い茂る竹林の中をきょろきょろと見回しながら、永遠亭の月兎、鈴仙・優曇華院・イナバはため息をついた。
ただでさえ広くて迷いやすい事で知られる竹林だ。 ここで逃げ回る相手を探すと言うのは、厄介を通り越して不可能に近い。

鈴仙「はぁ〜、あの子もなんで話を聞く前に逃げちゃうかなぁ……、
   ちゃんと話を聞いていればこんな事には……ん? あれは……、おーい! 文ーっ!」

岩に腰をかけて、空を見上げた鈴仙は、上空を行く見知った姿――文を見つけ、呼びかける。
鈴仙の声に気が付いたのか、文はこちらを振り向くと、くるりと方向転換をして、鈴仙の目の前に降り立つ。

文「あや? 私に何か用ですか? 鈴仙さん」

鈴仙「ちょっと聞きたいんだけど、この辺でお菓子の魔女、見なかった?」

文「シャルロッテさんですか? いいえ、見てませんが……」

どうかしたんですか? と文が問い返すと、鈴仙は顔をしかめながら事情を話し始める。

鈴仙「実はね、あの魔女ったら、お師匠様の診療中に逃げ出しちゃったのよ」

文「逃げた? それは一体、どうしてです?」

永遠亭で八意永琳の診療と言えば、大抵の事なら回復が約束されたも同然である。
わざわざ診療を受けに言ったのに、逃げ出す、と言うのはいささか理解しがたい行動だと言えた。

鈴仙「それがね……、虫歯の治療だったのよ」

文「ああ……」

げんなりした鈴仙から返ってきた答えに文は物凄く納得した。
年がら年中、甘いお菓子を作っては食べているシャルロッテの事だ、虫歯が出来ない方がおかしいと言える。

おそらく虫歯が酷くて、削るか抜歯という話にでもなったのだろう、
魔女の中では比較的お子様なシャルロッテは、脱兎の如く逃げ出したに違いない。

鈴仙「まったく、麻酔を効かせるから痛くない、って言う前に逃げるんだから……、嫌になっちゃう」

そう言って鈴仙は肩をすくめてみせる。
対する文は、色々な意味でネタに使えそうだと手帖に書きとめながら、確認するように尋ねる。

文「分かりました、見つけたら永遠亭まで連れて行けば良いんですね?」

鈴仙「お願い、そうしてもらうと助かるわ」

そう言うと、鈴仙は再び竹林内の捜索を開始し、文は空へと飛び立っていった。



596 :東方魔戯歌伝 [saga]:2012/01/06(金) 16:17:00.19 ID:+HkMBDfP0
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

シャルロッテ「う〜、まさか魔女になってから虫歯になるなんて……、こんなの絶対おかしいよぉ……、っ!? 痛たた……」

ズキズキと痛む口元を押さえながら、お菓子の魔女・シャルロッテは竹林の中を歩いていた。

異変が起こったのは今朝の事、
いつも通り朝食代わりのお菓子を作って、食べる前に冷たい飲み物でも、と思い、牛乳を一気飲みしようとして……、その激しい痛みに襲われたのだ。

一度は気のせいかと思い、そのまま朝食を食べ、やっぱり痛みが治まらないので、永遠亭に出向いたら、
綺麗な女医のお姉さん(お姉さんと呼びなさいと言われた)に、「間違いなく虫歯ね」と断定されてしまった。

それだけでも衝撃的だったのに、女医のお姉さんはドリルやら、抜歯の道具やらを、次々と用意し始め、
そして、最後の最後に、鋭い針のついた注射器を、女医のお姉さんがやけにいい笑顔で持ってきて……、そこでシャルロッテの恐怖感は限界を超えた。

一旦、ぬいぐるみモードになって椅子の拘束から逃れたシャルロッテは、そのまま一目散に永遠亭から逃げ出し、
今はこうして、追っ手を撒くために竹林の中を逃げているのだ。

シャルロッテは、周りに人影一つ無い事を確認して、ほっとため息をつく。

シャルロッテ「ふぅ、ここまで逃げれば大丈……」

???「あや? シャルロッテさん?」

シャルロッテ「っ!!? って、文かぁ〜、びっくりさせないでよ……」

安堵した途端聞こえた声に、思わずビクリとなったシャルロッテは、声の主が文である事に気が付き、胸をなでおろした。

シャルロッテ「今日はどうしたの? またネタ探し?」

文「いえ、ネタは見つかってるんですよ。 丁度いいネタが……」

そう言って、文はニヤリと口元を吊り上げる。
よほど面白いネタなのだろうかと思いつつ、シャルロッテは文に問う。

シャルロッテ「そうなの? それじゃあ早く現場に行かないと……」

文「永遠亭から逃げ出した虫歯少女が御用になる、ってネタなんですけどね」

シャルロッテ「っ!?」

文が告げた言葉に、シャルロッテは今度こそ身体を硬直させる。
文から目線を離さないよう、身構えつつ、シャルロッテは後ずさる。
597 :東方魔戯歌伝 [saga]:2012/01/06(金) 16:19:20.78 ID:+HkMBDfP0

文「悪く思わないで下さいよ? これも新聞のネタの為です」

手をわきわきさせつつ、文は背中の翼を大きく広げる。
シャルロッテが逃げ出すと同時に、一気に飛びかかるつもりなのだろう。
スピード勝負になってしまえば、シャルロッテに勝ち目は無い。 それならば……

シャルロッテ「なら、そのネタは差し替えだね。 『鴉天狗の新聞屋、虫歯少女を取り逃がす』、にね!」


                      聖戦 『キノコたけのこウォーズ』


スピード勝負に持ち込まれるぐらいなら、とシャルロッテはスペルカードを宣言する。
弾幕戦で文を打ち負かしてしまえば、勝率ゼロ%な追いかけっこだけは回避できるからだ。

文もシャルロッテが弾幕戦を仕掛けてくる事を読んでいたのだろう。
スペル発動の直前に放たれた通常弾幕を、宙へと飛び上がる事で回避する。

文「おっと、やっぱりそうきましたか……。 ですが、こっちもスクープが掛かってますからね。 簡単に負けてはあげませんよ?」

地面から生えてくるたけのこ型のレーザーと、四方八方から生えて来るキノコ型の弾幕を避けながら、文はニヤリと笑う。
たけのこの生えるスピードは本物のたけのこの如く速く、キノコは胞子のようにふわふわとした動きで飛び回るので、共に回避が難しい。
が、それでも持ち前のスピードと反射神経で、文はこの弾幕を避け続ける。

文「それにしてもキノコとたけのこですか……、確かシャルロッテさんの弾幕はお菓子だったと思ったんですけど……」

シャルロッテ「うん、私の弾幕はお菓子だよ。 コレは外の世界のお菓子だから、文は知らないかもだけど」

文の漏らした疑問に、えへんと胸を張りながら答えるシャルロッテ。
対する文は、フムフムと頷きながら、メモや写真を取る。

文「成る程、そう言う事ですか……、幻想郷に情報すら入ってこない、って事は相当人気のお菓子なんですね」

そう言ってから文は、このたけのことキノコの弾幕から、チョコレートの匂いが漂っている事に今更ながら気が付く。
本物の竹に混じって、チョコのたけのこが生える光景は極めてシュールなのだけれど、画的には美味しいので突っ込まないでおく。

シャルロッテ「人気どころか大人気だよ。 キノコ派とたけのこ派が戦争するぐらいにね」

文「おー、こわいこわい、それはまた物騒な話ですね」

やっぱり自慢げに解説をしてみせるシャルロッテに、文はわざと怯えてみせながら相手をする。
まぁ、逆に言ってしまえば、お菓子の一つでそんな事が出来るぐらい平和である、と言うことなのだが……それは口には出さずにしまい込む。
598 :東方魔戯歌伝 [saga]:2012/01/06(金) 16:21:52.98 ID:+HkMBDfP0

文「でも残念ですねぇ……」

その代わりに漏れるのは不敵な微笑みと、呆れ混じりの声。

シャルロッテ「?」

文「そこまで人気のある、定番のお菓子のせいなんでしょうね、この弾幕も……」

文の態度に、自慢げな態度が消えて、首をかしげるシャルロッテに、文は落ち着いた声音で、それでも冷酷な事実を、突きつける。

文「回避方法(お約束)がワンパターン過ぎて、正直片腹痛いです。 ぶっちゃけて言ってしまえば……」


                      「マンネリなんですよ」


シャルロッテ「がーん!」

文の告げた一言は、シャルロッテの心に深く深く突き刺さる。
弾幕戦が始まって以来、文は反撃の弾幕を一発たりとも放ってもいないのに、シャルロッテは物凄いダメージを受けたかのように、その場に崩れる。

お約束も度を越せばマンネリになる。
特に普段から新しい話題を追い求めている文たち記者には、そういう傾向が強く出る。
シャルロッテの名誉の為に言うと、この弾幕は簡単にパターンを構築出来るほど、単純なものではない。
ではないのだが、適応性の早い文から見ると、避け方の決まった、パターン弾幕に見えてしまったのだ。

シャルロッテ「うぅっ……、やっぱり市販のお菓子じゃそうなるよね……、でもまだ負けないもん! 次はコレだっ!」


                      調理 『スイート・三分クッキング』


シャルロッテ「たまには完成品だけじゃなくて、製作過程も見せないとね! まずは材料を用意するよ!」

そう言ってシャルロッテはありとあらゆる種類の弾幕を現出させる。
丸弾、大弾、へにょりに、レーザー……、まさしく弾幕を構成するための材料が、そこに揃っていた。

文「あやや、これは厄介そうですね……」

用意された弾幕の量を見て、文は長期戦を覚悟する。
クッキング、と言うことはあれらの材料を組み合わせたり、混ぜ合わせて様々な弾幕を作るつもりなのだろう。
そう、文は考えていたのだが……、

シャルロッテ「これらを色々とやって、完成したのがこっちだよ!」

シャルロッテが放った弾幕はケーキを模した弾幕だった。ご丁寧にもフォークの物理弾幕がついた、ショートケーキの弾幕だ。

それは別に構わない。 お菓子がモチーフであるとすぐに分かったし、シャルロッテらしい弾幕だと思う。
だと、思うのだけど……
599 :東方魔戯歌伝 [saga]:2012/01/06(金) 16:29:29.25 ID:+HkMBDfP0

文「あの〜、シャルロッテさん……、なんで最初に用意した材料を使わないんです?」

そうなのだ、シャルロッテは最初に用意した弾幕は一つたりとも使うことなく、新たに作り出した弾で、弾幕を構築したのだ。
切り崩されるケーキの弾幕にも、それらと一緒に襲い来るフォークにも、“材料”と称して用意された弾は一切使われては居ない。
弾幕への対処を抜かりなく行いつつ、文が尋ねると、シャルロッテは訳が分からないと言うように首をかしげる。

シャルロッテ「なんで、って三分でお菓子が作れる訳無いでしょ?」

三分クッキングで完成品が用意してあるのは常識だよ。とまで言ってのけるシャルロッテに、流石の文も乾いた笑いを漏らす。

文「それはそうでしょうけど……、でも出来あいのお菓子、って正直どうなんです?」

シャルロッテ「それは……、確かに自分で作ったお菓子の方が美味しいんだけど……。
       自分で作るとどうしても食べたくなっちゃうから、虫歯が治るまではあまり見たくないの」

文「虫歯を治したいならどうして逃げたんです? 永琳さんに任せておけばすぐでしょう?」

腫れ上がった頬を押さえながらため息をつくシャルロッテに、文は当然の疑問を漏らす。
鈴仙にも尋ねた事だが、一応本人から言質を取っておこうと思ったからである。

シャルロッテ「だって、注射怖いんだもん……」

文「麻酔しないで歯の治療、の方がよっぽど痛いと思いますけどねぇ……」

注射器が出てきた、と言うことは間違いなく抜歯レベルの酷さだったのだろう。
おそらく永琳の事だから、シャルロッテを落ち着かせようと、にこやかに注射器を持ち出して、それが却ってシャルロッテを怖がらせてしまったのだろう。

文がそんな事を考えながら、いまだ続くインスタントなお菓子弾幕を避けていると、
涙目から一転して表情を引き締めたシャルロッテが宣言するように声を上げる。

シャルロッテ「とにかく! 私はぜったいに、注射なんてゴメンだからね! だから文にはここで負けてもらって……」

文「あー、そうしてあげたいのは山々なんですけどね。 シャルロッテさん、もう貴女は負けてるんですよ」

シャルロッテ「? 私が負けてる? 文、決着もついてないのに適当な事を……」

言わないで、と釘を刺そうとして、出来なかった。
シャルロッテの背後からやけに低い声がしたかと思うと、肩を思いっきり誰かに掴まれたからだ。

???「はい、つっかまえたっ!!!(ガシッ」

シャルロッテ「!!!?(ドッキーン!」

聞こえた声におそるおそる振り返ったシャルロッテの目に飛び込んできたのは、満面の笑みを浮かべたウサ耳少女――鈴仙の姿。
にこやかなのに、背筋が凍り付くようなその微笑みに、シャルロッテの顔色が瞬く間に青くなる。

鈴仙「弾幕戦で自分の位置を教えてくれるなんて随分と殊勝な心がけじゃない。 さあて、診療に戻りましょうねぇ〜、お菓子の魔女さん?」

シャルロッテ「えっ、あっ……、ウソ……、そんなっ!? こんな事って……、いやああああぁぁぁぁっ!?」

断末魔のような悲鳴をあげるシャルロッテを、鈴仙は絶対零度の笑みを浮かべたまま引き摺っていく。
シャルロッテが弾幕戦をする時は、必ずと言って良いほどぬいぐるみ形態をとっているので、永遠亭から逃げ出したときの様な縄抜けは今度こそ不可能だ。

シャルロッテ「文! お願い、弾幕戦は私の負けでいいから助けて!!」

一縷の望みをかけて、シャルロッテは手足をじたばたさせながら、文へと呼びかける。
それに対し、文はシャルロッテが連行されていく様を写真に収めながら、手を振ってみせる。

文「シャルロッテさん、今回の件の記事が出来たら真っ先に届けますからね〜」

シャルロッテ「文の鬼! 悪魔! パパラッチ〜っ!!」

ありったけの呪詛を吐きながら、シャルロッテは永遠亭で再度、診療を受ける事となった。
結果だけを言えば、永琳の適切な処置で、シャルロッテは虫歯の苦しみから無事、解放された。

この件で懲りたのか、これまでお菓子に偏りがちだったシャルロッテの食生活が、この日以後、幾分かマトモなモノになったそうだ。


600 :東方魔戯歌伝 [saga]:2012/01/06(金) 16:33:57.93 ID:+HkMBDfP0
―――――――― 【救済の魔女と人魚の魔女 @ クリームヒルトの家】 ――――――――

オクタヴィア「ちょっ、クリームヒルト! これ見てよ、コレ!」

クリームヒルト「うわっ!?オクタヴィアちゃん!? どうしたの、そんな慌てて?」

オクタヴィア「そんな事はどーでもいいからとにかくコレを見て!」

クリームヒルトの家に、やけに落ち着かない様子のオクタヴィアが飛び込んできたのは、ある日の昼下がりのこと。
鬼気迫るその様子に目を丸くするクリームヒルトに、オクタヴィアは一枚の紙を突きつける。

クリームヒルト「これは……、手紙?」

オクタヴィア「そ、手紙。 これが表の郵便受けに入ってたの!」

クリームヒルト「……オクタヴィアちゃん、私の家だから別に構わないけど、他所さまの家の郵便受けを勝手に覗くのはどうかと思……、って、えっ?」

さらっととんでもない事を言うオクタヴィアに、クリームヒルトは冷静なツッコミを入れつつ、手渡された手紙に目を落とす。
手紙の文面を一度見て、再度顔を上げたクリームヒルトは、真顔でオクタヴィアに尋ねる。

クリームヒルト「えっと、オクタヴィアちゃん……、これ、イタズラか何かじゃ、無いんだよね……?」

オクタヴィア「手紙に関しては正真正銘、クリームヒルトの家の郵便受けに入ってた手紙だよ。 と言うかいくらあたしでもこんな手紙は書けないって……」

疑いの目を向けるクリームヒルトに、オクタヴィアは心外だと言うように答える。
見慣れた筆跡、と言うか自分自身の筆跡と全く同じソレで書かれたその手紙の文面は、極めて簡潔なモノだった。


               『一週間後ぐらいに、そっちに“お話”をしに行くつもりです。 待っててね。  鹿目まどかより』


オクタヴィア「ねぇ、クリームヒルト。 あたしの記憶が正しければ、概念のまどかの“お話”って言うのは、弾幕戦とイコール……で、良かったんだよね?」

クリームヒルト「? イコールかどうかは分からないけど、前回は確かにそうだったよ……」

神妙な面持ちで問い掛けてくるオクタヴィアに対し、クリームヒルトは小さく頷いてみせる。
その言葉で思い出すのは、盆の円環事件のシメとなった無縁塚での一コマ。

ほむらを(結果的にではあるが)囮として使った事に激怒した概念のまどかが、八雲紫と行った熾烈な“お話”と言う名の一大決戦は、
事件の舞台となったかの地が焦土になるまで止まらなかったのだ。
601 :東方魔戯歌伝 [saga]:2012/01/06(金) 16:35:43.87 ID:+HkMBDfP0

クリームヒルト「え?なに? それじゃあオクタヴィアちゃんは、私がいつの間にか概念の私を怒らせるような事をしちゃった、って言うの……?」

オクタヴィア「『お話=一心不乱の弾幕戦』ならそうなんじゃない? でもそうなるとマズいかもね〜、どう考えたって、勝ち目がないよ、コレ……」

心当たりがまるでないことに首をかしげるクリームヒルトの横で、オクタヴィアが捲し立てる。
その脳裏に浮かぶのは、訪れて欲しくない最悪の光景。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

まど神『あなたを、殺します……』


                      『超すっごい概念的なスペル!』


クリームヒルト『きゃああああぁぁぁっ!?(ピチューン!』


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

オクタヴィア「うん、どう考えてもこうなるね」

クリームヒルト「ネタが古いし、さらっと弾幕戦の域を越えてるよソレ!?
        と言うかオクタヴィアちゃんの中での概念の私、ってどうなってるの!?(マドーン!」

オクタヴィア「こうなったら特訓しかないわよ、クリームヒルト! 概念のアンタすら凌駕する三倍ティロ・フィナーレを修得すればあるいは……!」

クリームヒルト「うん、完全に楽しんでるよね? 私をオモチャにして遊ぶ気マンマンだよね!?」

オクタヴィア「それじゃあ早速特訓の旅に出ようじゃないか、恭仁使い魔、召喚っ!」

遅まきながらようやくオクタヴィアの意図に気が付いたクリームヒルトだったが、その時には既に手遅れだった。
クリームヒルトの身体はオクタヴィアは使い魔数体によって拘束され、そのまま有無を言わさずに連れ出されてしまう。

オクタヴィア「まずは幽々子さん辺りに稽古をつけてもらおうかな〜。 レミリアや永琳さん辺りでも良いかもだけど……」

クリームヒルト「オクタヴィアちゃんのバカぁ〜っ! あとでぜったい、倍にして返してあげるからね!?」

話が引っ込みのつかない方向に向かいつつあるのをひしひしと感じつつ、
それでもクリームヒルトは意味の無い、遠吠えにしかならない声をあげる事しか出来なかった。


602 :東方魔戯歌伝 [saga]:2012/01/06(金) 16:37:23.84 ID:+HkMBDfP0
―――――――――― 【円環の神さまとその親友 @ 円環の理】 ――――――――――

さやか「え? 魔女のまどか宛てに手紙を出したの?」

まどか「うん、一週間後にそっちに遊びに行く、ってね……。 だからそれまでにマスターしておかないと!」

さやか「一週間、ってまた急な……。
    そう言えばまどか、まどかは一度、幻想郷で“八雲紫”、って言う妖怪相手に弾幕戦やってるんだよね? その時はどうやってやったの?」

宣言の時に使うカードを作りながら、勢い込むように言うまどかを横目に見ながら、さやかが尋ねる。
弾幕を一から作り出す、と言う話になっていたので、すっかり忘れていたのだが、まどかは既に弾幕戦を経験している筈なのだ。

さやかが質問を投げかけると同時に、カードを作るまどかの手が止まり、直後、盛大なため息がその口から漏れる。
『あ、地雷踏んだかな?』と、さやかが思っていると、まどかは顔を赤くしながら苦笑する。

まどか「てぃひひ、それが恥ずかしい話なんだけど、あの時はまだ、弾幕戦についてよく分かってなかったんだよね。
    だから、取り敢えず魔力エネルギー弾を撃ち込んどけば良いかな?ぐらいにしか思ってなくて……」

さやか「あー、さじ加減を間違えて殺る気満々の全力全壊でやっちゃったのね……」

まどか「その時は、紫さんに思いっきり呆れられちゃったんだ……」

その時の事を思い出したのだろう、『ずーん』という擬音が聞こえてきそうな程、落ち込むまどか。
なんでも、一発一発に力を込めすぎて、周囲を滅茶苦茶にした上、肝心の攻撃もその戦略性の無さからあっさりとかわされてしまったらしい。

さやか「そ、それで? どんな弾幕にするかは決まったの?」

まどか「え、あっ、うん、とりあえずこんな感じにしようかな、って言うのは考えてみたよ」

暗くなりかけたムードをどうにか変えようと、さやかは話題を切り替える。
まどかも、それが分かったのか、表情をどうにか取り繕いながら、手元にあったノートをさやかに手渡す。

ノートの中には、弾幕の試案や構想が書いてあって、その中の幾つかに赤いマーカーで丸印がついていた。
採用を意味するであろう、マーカーのついた案に目を通しながら、さやかは感嘆の声を漏らす。

さやか「ふ〜ん、結構いい感じなんじゃないの? で、スペル名は?」

まどか「えーと、上から、『スペシャルまどかミラクル』に、『アルティメットまどかアロー』でしょ、それと『エターナルまどかフレンズ』に、『ハイパーまどかビーム』……」

さやか「うん、ちょっと頭冷やそうか、そこのバ神さま」

そう言えば、この子のネーミングセンスは小二レベルだったっけ……、と今更ながら思い出しつつ、それでもさやかは突っ込まずには居られなかった。



603 :東方魔戯歌伝 [saga]:2012/01/06(金) 16:47:14.59 ID:+HkMBDfP0
短いけど、ここまでー

シャルロッテちゃんは相変わらず災難だけど、涙目カワイイから仕方ない。
クリームヒルトちゃんも災難だけど、ここのクリームヒルトちゃん(弱)はどっちかと言うとM(まどか)だから仕方ないね。

まど神「私の扱いが酷い気がするよ! と言うかこのままだと私返り討ちだよね?」

あ、ネーミングセンス小二さんだ、ちーぃs(ピチューン!



昨日一日接続出来なかったので、暇つぶしに作った動画をニコ動にうpしますた。
円鹿目のイメージオープニング見たいなMADも憑いてるので、お暇とアカウントがありましたらどうぞ。
http://www.nicovideo.jp/watch/sm16623044
604 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/06(金) 17:28:15.53 ID:ST+V7mvDO
乙!
うおおぉぉ!動画まで制作してもらえるとか凄ぇ!こりゃあ後でパソコンで見るしかないっしょ!

シャルちゃんの弾幕は愉快で楽しいね。
605 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/01/06(金) 18:50:00.59 ID:W+k1w2wj0
ハイパー乙ビーム!
動画ですって!?そんな物が作られたのなら、みんな見るしか無いじゃない!

わーいっ!キノコたけのこウォーズ使ってもらえたー 嬉しい限りだぜっ
パトリシアちゃんの学園天国スペルがとっても楽しみだなって思ってしまうのでした
まど神さまのスペカ名はどう改善されて行くんだろうか…
606 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/06(金) 19:32:19.67 ID:ST+V7mvDO
動画、見させて頂きました!勢い余ってコメントもしちゃいました!オープニング…素敵でした!
607 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/01/06(金) 23:25:33.91 ID:9VTRcvbm0
投下したうえに動画も……だと!?(ヤマダクーンゼンブモッテキナー
主はどこまで進化する気なんだ……

動画でもコメしたけれど、続きを作っても……良いのよ?(チラッチラッ
608 : [saga]:2012/01/07(土) 16:03:41.33 ID:7J1hfXju0

       __
      |・∀・|ノ  おだてられて
     ./|__┐
       /  調子
    """"""""""""""
         .__
       ((ヽ|・∀・|ノ  調子に乗りました
         |__| ))
          | |
          調子
    """""""""""""""""



http://www.nicovideo.jp/watch/sm16631836

まあ、こっから先は擬人化魔女の素材が無いから無理なんだけどな!

首ありパトリシアさんとかロリプルちゃんとか、絵心の無い俺にはマジ無理ゲー
609 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/07(土) 17:30:13.94 ID:NVVDTCgDO
今度のも絶対見る。
610 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/08(日) 01:40:52.57 ID:sxWYO8zDO
>>1
動画も乙

擬人化魔女なら、ピクシブとか探せばありそうだけどな……
もちろん作者の使用許可取得絶対ですけどねww


スペカ名だけでふと思いついた物
さやか「奇跡も魔法もあるんだよ」
早苗「奇跡も信仰もあるんです」


さや早「「奇跡『魔法も信仰もあるんだよ!』」」


魔法と信仰が合わさり最強の奇跡に見える
611 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/01/09(月) 04:32:57.88 ID:8hQdSkoPo
誰か妖夢ちゃんの行方を知らんかね
612 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(宮城県) [sage]:2012/01/09(月) 13:31:09.91 ID:BJE5NpBd0
>>611
残念だったな、妖夢ちゃんはおれの膝の上で寝てるんだぜ
613 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) :2012/01/09(月) 14:19:29.62 ID:iWNWgDwT0
>>612
じゃあその膝ごともらおう
614 : [saga sage]:2012/01/10(火) 01:11:23.15 ID:tVpB5nGO0
動画版の更新ばっかりでそろそろ心苦しくなってきた>>1です。
この連休が終わればPCを使う動画作成は一旦切り上げだから、本編を書ける……筈。

http://www.nicovideo.jp/watch/sm16656403

と言うか投稿者本人が30分以上、『視聴できません』ってどういうことなの?
プレミアム(笑)とか正直笑えねぇ……

>>610
結局そのセンで行く事になりました。>ピクシブで許可を頂き使用。
絵師の皆さまありがとうございます。

>>610-611
ふむふむ、オクタちゃんと妖夢の弾幕戦を希望とな?
魔戯歌伝はオムニバス形式だからそれはリクエストと受け取るぜ!
615 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/01/10(火) 01:47:12.25 ID:8GfiWIjqo
>>614
オクタヴィアちゃんと妖夢ちゃんの弾幕戦に剣使い繋がりで天子ちゃんが乱入とか妄想してみたり
でもあの娘は弾幕アクションメインでDSでいくつか追加された分しかないか…
しかも地形をどっかんどっかん変えちゃって出禁になりそうだ
616 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2012/01/10(火) 21:00:24.70 ID:LBwt1fen0
まさかの動画続編!!
後で見ますね。 しかし普通の小説すら更新してない自分にとっては本当に尊敬します。
617 : [saga]:2012/01/13(金) 18:15:57.36 ID:3h3Tje0g0
また、動画版の更新、だと……?

http://www.nicovideo.jp/watch/sm16683156

やばい、新作を書くより、既存作の動画化の方が楽だし楽しくて執筆止まりそうでヤバい。
その動画化もイザベルさん(石像少女)とワルプルちゃん(ロリ幼女)が(素材的な意味で)爆弾過ぎてヤバい。

動画化始めてからSGの濁りがマッハ、希望(創作意欲)と絶望が、等価交換ってホントだね……

二兎を追うなんて、あたしってほんとバカ……
618 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/01/13(金) 18:19:32.42 ID:zFr+HIcl0
しばらくは動画版に専念されては?
とりあえず円鹿目一段落(EX終了)までなら個人的には待てますよ。
619 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/13(金) 18:48:45.54 ID:8L9hdr/DO
↑に同意。

しかしここの人達とかニコ動の人達から新たな弾幕案が来るかなーとか思ってたけど、以外と来ないもんだね。
620 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) :2012/01/13(金) 19:46:29.37 ID:GUj2eHah0
>>618 同意。
むしろいきいきと動くクリームヒルト、オクタヴィアに和んだですよ。
まど神様のネタがまとまるまで動画やっててもよいのでは。

ウォッチリスト登録して気がついた、
ジャンル変わってもいいもの作る人はやっぱすごいなぁ
621 :1@携帯 [saga sage]:2012/01/13(金) 20:09:53.95 ID:u57fs1tDO
とりあえず書き始めてるオクタヴィアvs妖夢戦を書いてから考えることにします。長く放置してもろくな事にならないので……>専念するか否か


『ブロンドヘアーモグモグ』が向こうでも滑り出し好評で噴いたw
このスレのオリジナル弾幕で人気投票やったら一位になりそうw
やっぱりシャルロッテちゃんは人気者だなぁ、と再確認した次第。
イメージにぴったりな立ち絵の提供が大きいとは思うけど……


>>620
(/´△`\)やめて気付かないで、気付いても黙っててぇぇぇっ!(ガクブル
622 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/01/13(金) 21:56:36.67 ID:rPIqCSt00
シャルちゃんしゃるしゃる! さぁ俺のおっぱいをぬいぐるみモードの状態でモグモグしt(ピチューン
SSのほうもそろそろ更新してほしいかなーとか思ってるけど、動画も動画で楽しめてるから贅沢は言わないぜ

ブロンドヘアーモグモグがこんなに受けがいいとは思わなかったぜ…俺はキノコたけのこウォーズのほうがお気に入りだけどね!
それと動画素材について。ロリプルちゃんはまだしも、石像イザベルさんは…うーん、どうしたものかなぁ…
623 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/14(土) 13:02:24.18 ID:k3kaL5HDO
イザベルさんの見た目…石像っぽく加工したベレー帽雪歩(アイマスの)なんてどうですか?
624 : [saga]:2012/01/15(日) 11:24:18.63 ID:DuyXmRiN0
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

エルザマリア「群馬県M市在住、ほむほーむさんから頂きました」

 Q) わた……もとい、見滝原の生存組に出番は無いんですか?

エルザマリア「えっと、少なくとも暁美さんは本編エピローグの日(十数年後)まで再度の幻想入りはしないそうですよ」


???「がーん!」 ナ、ナンダッテー!?


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

エルザマリア「皆さまこんにちは、エルザマリアです」

霊夢「博麗霊夢よ」

エルザマリア「早速で申し訳ないのですが霊夢さん、うちの教会に来て頂ける人間の方が少ないのですが、どうしたら良いのでしょうか?」

霊夢「それは何? 参拝客が少ないウチに喧嘩売ってるの?」

エルザマリア「いえ、そういう訳では……。 ただ、命蓮寺や守矢神社に聞いても人数的に大差が無い、と言う事なので、少し気になってしまって……」

霊夢「人里の人間からの信仰を見込んでるなら、殆ど無駄よ。 絶大な信仰を集めてるのが居るし……」

エルザマリア「? それは一体どなたなんです?」

霊夢「秋神の姉妹よ。 特に豊穣神の方ね……」

エルザマリア「ああ、そういう事ですか……」

霊夢「ご利益に釣られるんだから、現金なものよねぇ……。 だいたいあいつ等は、能力的には……」


                          【以下信仰についての愚痴の無限ループ】



625 :東方魔戯歌伝 [saga]:2012/01/15(日) 11:29:53.45 ID:DuyXmRiN0
――――――――― 【救済の魔女と人魚の魔女 @ 白玉楼】 ―――――――――

幽々子「行くわよ〜。 『反魂蝶 ‐八分咲‐』〜っ」

クリームヒルト「えっ? ちょっ、八分って私まだ五分咲きでしか練習してな……、きゃああああぁぁぁっ!!」


                      ちゅどーん!      キャアアアアアアアアアア>


妖夢「……クリームヒルトさん、何だかんだと言いつつ腕をあげましたね」

幽々子の必殺スペルに、悲鳴をあげつつもなんとかついていこうともがくクリームヒルトを見ながら、妖夢が呟いた。
その言葉に、真横で一緒に観戦していたオクタヴィアもうんうんと頷く。

オクタヴィア「だね〜。 魔力的な資質が高いとは言え、弓矢以外の得物も上手く使えるようになったしね〜」


                      ちゅどーん!          チョッ、マッ……>


剣術使いのオクタヴィアちゃんとしてはそろそろ立場が無くなってきましたよ。などと言いつつ苦笑するオクタヴィア。
口調こそ茶化してみせるようなソレだったが、その表情には若干の焦燥が滲んでいるように見えた。

少し考えてから妖夢はある提案をオクタヴィアに持ちかける。

妖夢「それなら、私の鍛練に付き合ってくれませんか?」

オクタヴィア「えっ?」


                      ちゅどーん!            ピチューン!>


妖夢「こう見えても私、オクタヴィアさんたちが来るまでは数少ない剣客家でしたから……、
   サーベルと日本刀では些か勝手が違うとは思いますが、どうですか?」


         <クリームヒルトチャン,ダイジョウブ-?               ナ、ナントカ〜>


オクタヴィア「あたしは良いけど……、妖夢は良いの? 相手があたしなんかで?」

クリームヒルトより弱いよ? と、言葉を足すオクタヴィアに妖夢は首を横に振る。

妖夢「強い弱いは互いに斬り結んでから初めて判るモノです。 最初から決めてかかるモノではありません」

オクタヴィア「そんな事を言われちゃ、引き下がる訳にはいかないね。 よし、やろう妖夢!」

以前からの妖夢をよく知っている者なら、また悪い癖が出たと呆れる事だろう。
異変などの際に、とりあえず斬っとけ、な行動指針を採ったが為に“辻斬り妖夢”とまで言われたほど、妖夢は他者との斬り結びに拘る傾向がある。

言ってしまえば、今回もソレなのだが、生憎とオクタヴィアの知る妖夢は、平時の庭師兼従者としての妖夢であり、
また、幻想入りして最初の練習相手が妖夢だったことも手伝って、オクタヴィアは大して疑問を抱く事もなく、素直にコレを受け取ってしまった。
その結果……、
626 :東方魔戯歌伝 [saga]:2012/01/15(日) 11:35:48.08 ID:DuyXmRiN0


クリームヒルト「えっと、アレは大丈夫、なんですか?」

幽々子「少なくともオクタヴィアちゃんは幽霊じゃないから大丈夫よ。 斬られたら物凄く痛いと思うけど……」

それってダメじゃないですか!? と倒れたまま声をあげるクリームヒルト。
物騒な返答に何とかしたいと思ったが、幽々子との弾幕戦で疲弊した身体は動いてくれそうもない。

幽々子「大丈夫よ。 妖夢も一線は越えないと思うし、あの様子ならオクタヴィアちゃんも十分対応出来そうだし……」

クリームヒルト「でも……、模擬戦で真剣、ってどうなんですか?」

幽々子「それは言わないであげて、あの子の癖、みたいなものだから……」

そう言って苦笑する幽々子の表情はどこか疲れたような感じで、クリームヒルトはそれ以上何も言えなかった。


一方、試合……いや死合の真っ只中に居るオクタヴィアは、背筋が冷える感覚を感じつつ、サーベルで妖夢の斬撃を凌いでいた。
斬撃を振り払い、一旦距離をとったところで、オクタヴィアは抱いていた疑問を妖夢にぶつける。

オクタヴィア「ちょっと! 抜き身のガチ斬り合いとは聞いてなかったんだけど!?」

妖夢「? 言いませんでした?私の鍛練に付き合って欲しい、と……」

オクタヴィア「それにしたって普通ならせいぜい模造刀でしょ!? 真剣で鍛練するヤツがどこにいるのよ!?」

妖夢「? ここに居ますが?」

オクタヴィア「〜〜〜〜っ!」

話にならないと思いつつ、オクタヴィアは数度の鍔迫り合いで刀身がボロボロになったサーベルを投げ捨てる。
いくら魔力で作り出したサーベルとは言え、斬る事に特化した、それも霊力が込められた日本刀である楼観剣や白楼剣が相手では歯が立たない。
折れたり、ぶった斬られないだけまだマシなのだが、その程度ではなんの慰めにもならない。

オクタヴィア(このまま持久戦に持ち込まれたらまず勝ち目はない! なんとかして一撃重いのをぶち込んで、形勢を引っくり返さないと!!)

オクタヴィア(でもその一撃をどうやって加える? 痛覚遮断で肉を切らせて骨を断つ?
       ……ダメだ。妖夢相手じゃ肉どころか骨ごと持っていかれる。 そんな小手先の策じゃ通じない……!)

それならばどうしたら良いのか?
痛覚遮断による特攻が無理だとすると、他に何が使えるのか?

妖夢「さっきから防戦一方ですよ? 仕掛けてこないんですか?」

オクタヴィア「へっ、そっちこそ余裕じゃん。 いいのかな、そんなに気抜いてて?」

妖夢の挑発に皮肉で返しつつ、オクタヴィアは思考をフル回転させる。
何かアクションを起こすなら弾幕戦的な何か、と言うことになるが、近接戦主体の今、車輪弾幕や使い魔の召喚は生まれる隙が大きすぎて危険すぎる。
斬撃弾幕は使えない事はないが、それだけでは妖夢の下位互換にしかならず、打開策には程遠い。

残る弾幕は音符弾幕だが……

オクタヴィア(それこそ使い物にならないじゃん。 音じゃ大したダメージなんて……、ん? 音……?)

妖夢「っ! そこっ!!」

考え事に気をとられ、出来た隙を妖夢は見逃さなかった。
楼観剣を手早く翻し、峰でもってオクタヴィアの持っていたサーベルを弾き飛ばす。

オクタヴィア「しまっ……、っ!」

妖夢「…………決まり、ですかね?」

オクタヴィアの鼻先に楼観剣を突きつけつつ、妖夢が問いかける。
オクタヴィアの手に得物は無く、反撃に使えそうなモノは手元には無い。
627 :東方魔戯歌伝 [saga]:2012/01/15(日) 11:41:32.69 ID:DuyXmRiN0

オクタヴィア「くっ……! ……?」

追い詰められて、思わず後ずさったオクタヴィアは、自身の尾びれの先に何かが当たった事に気が付き、足元に視線を送る。
そこにあったのは、さっきの鍔迫り合いの最中に投げ捨てたサーベルのうちの一本。
刀身はボロボロのままで、一合持つかどうかすら危うい一振りだったが、今はこの一振りに賭けるしかない。

妖夢「どうします? 降参ですか?」

オクタヴィア「降参? そうだね……、この悪あがきが終わったらね!」

妖夢「っ!?」

尾びれでサーベルを弾きあげ、突きつけられた楼観剣の切っ先を撫でるようにして振り払う。
ただの一合でそのサーベルは折れてしまったが、楼観剣が長剣なのも幸いして、生まれた隙にオクタヴィアは距離をとる。

妖夢が楼観剣を構えなおしている間に再び魔力でサーベルを作り出し、それを構える。

妖夢「一度は捨てた剣を再利用するとは……、ですが、偶然は二度は通用しませんよ!」

オクタヴィア「二度? 二度もやる気はこっちにも無いよ。 コレで決めてやる!」

作り出したサーベルに、音の弾幕の特性を付与する。
音の特性――、波紋に揺らぎ、直進に反射、そして何よりも……、


                      演舞 『剣の舞』


妖夢「なっ!?」

音の速さ、即ち音速の特性が付与された剣撃は、目で捉える事すら最早かなわない。
射命丸文ですら目で追えないほどの剣技を持つ妖夢であってもそれは同じで……、この時の妖夢はオクタヴィアの攻撃に対応する事が出来なかった。

オクタヴィアの連続斬撃をもろに受け、妖夢がその場に膝を付く。
二人の試合を固唾を呑んで見守っていたクリームヒルトはその様を見て、思わず歓喜の声を上げる。

クリームヒルト「やった!」

幽々子「相手を追い詰めた、と言う慢心があったんでしょうね。 妖夢も詰めが甘いんだから……、でも……」

そこで幽々子は言葉を一旦止め、勝利者である筈のオクタヴィアを見る。
妖夢が膝を付いたのを見て、ふっと笑顔を浮かべたオクタヴィアは……、次の瞬間、その場に崩れ落ちた。

クリームヒルト「っ!? オクタヴィアちゃん!?」

幽々子「生身で音速を超える動きをしたせいね。
    スペル発動中は痛覚を遮断していたようだけど、それで身体へのダメージがなくなる訳じゃないわ」

今日の所は事実上の引き分けね。と言いつつ立ち上がった幽々子は、
先に駆け出して行ったクリームヒルトの後を追う様にして、二人の元へと向かう。

妖夢とオクタヴィア、二人の剣士が己が実力を完全に引き出せるようになった時、どのような戦いを魅せてくれるのか、その未来に思いを馳せながら……。


628 :東方魔戯歌伝 [saga]:2012/01/15(日) 11:47:10.97 ID:DuyXmRiN0
――――――――――――― 【その頃、現世・見滝原】 ―――――――――――――

マミ「ふぅ、さっぱりした。 さて、もう遅いし、これを飲んだら寝ましょ……」

まどか「あっ、マミさん! 夜分遅くにお邪魔してます」

学業に魔獣退治にと、忙しい一日をお風呂上りの一杯(むろん牛乳です)でしめようとした巴マミを出迎えたのは、純白の衣を纏った女神さまだった。

マミ「ぶっ!? が、概念の鹿目さん!?」

飲みかけた牛乳を噴出しそうになって、どうにかこらえたマミは、それから遠くを見るような目でまどかを見る。

まどか「? マミさん、どうかしたんですか?」

マミ「はぁ、以外と早かったわね……。 暁美さん、佐倉さん、ゆまちゃん、ゴメンナサイ。 私、一足先に逝かなきゃいけないみたい……」

まどか「えっ?あっ!? 違いますよ!? 今日は迎えに来たとかそう言うのじゃないんです!」

その言葉に、ようやくマミが盛大な勘違いをしていることに気が付いたまどかは、慌てて訂正を加える。
まどかの慌てた様子を見て、逆に落ち着いたのか、表情を元のそれに戻しながら、マミは首をかしげる。

マミ「えっ? じゃあなんで概念の鹿目さんがウチに……? と言うか概念、って現世に顕在出来るモノなの?」

まどか「ちょっと個人的な用事がありまして……」

神さまに個人的な用事も何もあるのかしら?と一瞬思ったが、すぐに幻想郷で会った神さまの事を思いだし、納得する。

まどか「マミさんは、幻想郷のスペルカード戦、って覚えてます?」

マミ「ええ、覚えてるわ」

むしろ現在進行形で、オリジナル弾幕を考えてます。とは口が裂けても言えない。
そんな事を考えながら背中で汗を流していると、顔を紅くして俯き気味になったまどかが恥ずかしそうに言う。

まどか「実は、今度幻想郷に行くまでに、私も弾幕戦をマスターしようと思ってるんですけど、スペル名で良いのが思い浮かばなくて……」

マミ「それで、私のところに相談に?」

まどか「はい……。 さやかちゃんに、『まどかのネーミングセンスで名付けるぐらいならマミさんの方が百倍マシだ』って、言われちゃって……」

マミ「マシ、って……、美樹さんとはいつかじっくりお話しないといけないわね……」

まぁ、その“いつか”はたぶん、相当先のことになるとは思うけど……、いや、そうでなくては困るのだが……。

まどか「あはは……、それで、その、アドバイスの方なんですけど……」

マミ「う〜ん、明日は学校も無いから大丈夫だけど……、とりあえずそれを見せてくれないかしら?」

おずおずと尋ねてくるまどかに、マミは手に持ったノートの開示を求めた。
盆の一件で、少し会話しただけとは言え、平行世界では自分の後輩だった子だ。
頼られて悪い気はしなかった。

まどか「は、はい……、でも、あんまり笑わないでくださいよ?」

マミ「大丈夫よ。 問題ないわ」

そう言ってノートを受け取ったマミは飲みかけだった牛乳を口元へと運ぶ。

その後、弾幕の内容よりそのネーミングセンスに思わず噴出してしまい、色々と大変なことになるのだが、
マミとまどかの名誉の為に詳しくは語らないことにする。
629 :東方魔戯歌伝 [saga]:2012/01/15(日) 12:10:02.30 ID:DuyXmRiN0
ようやく本編書けたよ……。 かなり短いけど……(汗

うん、マジで魔女化するかと思ったw
ガチの斬り合いなんか書くもんじゃないと改めて思った次第。

>>623
やっぱり既存キャラの改変しかないですかね?
個人的にかぼちゃスカートは外したくなかったのだけど……

いや、既に一名ずつ、キャラ改変立ち絵や、SS版と外見設定が違う立ち絵になってる方が居るんですけどね……。
ホント、擬人化絵の世界は地獄だぜー

次の本編投下が、何時になるか分からないし、オリジナル弾幕解説行くよー


 【シャルロッテ】

聖戦 『キノコたけのこウォーズ』
 画面下から伸びてくるたけのこ型レーザーと、周囲から生えてくるキノコ型弾幕の同時攻撃。
 たけのこレーザーのイメージは非想天即早苗ルートの諏訪子戦最終スペル(空中戦)見たいな感じ。
 たけのこレーザーは兎も角、キノコ型弾幕の動きはふわふわしているので、作中の文みたいに完全なパターンを作るには慣れが必要です。

調理 『スイート・三分クッキング』
 ありとあらゆる弾幕の材料を画面上に配置した状態で、別に用意した完成品弾幕を放つ弾幕。
 用意されたまま放置プレイされた材料が、回避のスペースを狭くしているので邪魔で仕方が無い。
 文花帖的には先に材料弾幕を消しておく事をオススメします。

 【オクタヴィア】
演舞 『剣の舞』
 音速で斬りかかって来る連続斬撃弾幕。
 斬りかかる前に針路が決まるので、それと同時に逃げないとまず斬られる。
 自身に掛かるダメージも大きいので、攻撃回数事態は少ない。
 難易度により、衝撃波やら反射音波やらが増加。
 真似できるものならやってみろ。
630 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/15(日) 12:47:11.16 ID:FgoSCPmDO
乙です!
笑う前に何かを飲むのは、既にお約束だか様式美なんだろうか?ww

>>623 まぁ、所詮案ですから、>>1さんのイメージに合ったものを使うのが一番に決まってますよ。
631 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/01/15(日) 12:51:46.50 ID:W1B9VjlNo
みだりに使うと閻魔翌様に怒られてしまう白楼剣で魔女ちゃん達を斬ったらどうなるんだろうか
迷いは吹っ切れてるみたいだけどまさか成仏しちゃったり…
632 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2012/01/15(日) 13:01:01.83 ID:WnlYx0UC0
乙です、是非ともまど神様の名前案を見てみたいwwww
(もちろん牛乳を口に含みながら)

>>立ち絵案
いっそのことpixivで募集かけてみるとかどうでしょう?
一つも来ないときのダメがでかいのが難点ですが。
633 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/01/15(日) 15:55:57.30 ID:9Ve5kgLb0
マミさんの必殺技の影響力は凄まじいからな…杏子とかプレイアデス聖団とかみんなイタリア語の技だし

動画のほう、SSには無かった 甜符『金平糖の星空』 が使われててびっくりしたんだぜ…
こんなにスペカ採用してくれるなんて…さてはシャルちゃん、俺の事が好きなんz(ブロンドヘアーモグモグ
634 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/16(月) 21:00:37.69 ID:KK+/ieIDO
とりあえず、マスケット(巨大も含め)の銃口の方にリボンを絡み付かせて投げればアンカー扱い出来ないかな?
635 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/01/16(月) 21:10:02.82 ID:3q5X+qFeo
マスケット銃で一本足ピッチャー返しやっちゃうマミさん
636 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2012/01/17(火) 23:06:31.04 ID:UfqNc7rD0
本編も更新乙です。
いやあフラグが強烈過ぎる。 牛乳は口に含んで吹き出すものですねわかります。

てかマミさん弾幕戦やる気満々だったのかwwww リアル二度見した。
僭越ながら小説作るのにここの文章を参考にさせてもらってます。
637 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/01/19(木) 16:09:02.77 ID:rm7jwB+So
ワルプルギスの夜の嗤い声ってマミさんやたっくんと同じミズハスだったよね

つまり幼女ワルプルちゃんは……うっ…
638 :1@携帯 [sage]:2012/01/19(木) 19:55:04.38 ID:EI/xZ2+DO
たまにはレスだけ返してみる。

>>636
幻想郷の弾幕戦はマミさんの厨二な心をくすぐりまくったようです。
と言うかこんな中途半端な文体、真似して大丈夫か?

>>637
無論ミズハスのロリボイスです(キッパリ
そりゃほむほむも一撃で沈むわ
639 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/01/19(木) 20:10:53.00 ID:C05HTP640
勝手にこのSSのネタを使ってしまったけど大丈夫だろうか…ダメなら今後控えます

ロリミズハスの夜か…これは勝てる気がしない
でも俺はシャルちゃんが大好きなんだぜ。シャルちゃん、俺を優しくモグモグしてくれー!
640 :1@携帯 :2012/01/19(木) 20:50:36.51 ID:EI/xZ2+DO
>>639
幽々子「幻想郷は全てを受け入れる場所よ。問題ないわ」

クリームヒルト「? 誰に話してるんです?幽々子さん?(ズズッ」旦〜

幽々子「ちょっと迷いこんできた魂に……ね?」
641 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(宮城県) [sage]:2012/01/19(木) 21:53:12.33 ID:mhj2N4ga0
どうでもいいけどこのスレ長文多いな
642 : [saga]:2012/01/20(金) 12:36:33.74 ID:TRD5TqWD0
動画版更新のお知らせ。
文章でもきつかったけど、映像にしたらもっときつかったパトリシアさんのラストスペル。
良い子の皆さんは真似をしてはいけません。
http://www.nicovideo.jp/watch/sm16740440

まあラストスペル以外は手抜きっぽくなったがな!(机投げと暗黒攻撃)


>>641
私の文章の『一文辺りの長さが長い』と言う意味なら、
本来()で表現すべき思考なども地の文に混ぜているせいです。
動画版にすると、絵になったり、()に置き換わったりで大半が消えます。
正直、悪い癖です。 はい。

『一レス辺りの文量が長い』と言う意味なら、投稿容量が分かるようになったので、調子に乗ったからです。
見づらかったらすいません。
643 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(宮城県) [sage]:2012/01/20(金) 21:18:38.32 ID:elTKsQvT0
>>642
あぁ、>>1のことじゃない、見てるやつらのことだ
>>1は文章量が多くなるのが当たり前だが、他のやつら感想に何行もかけ過ぎだろjk
644 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(宮城県) [sage]:2012/01/22(日) 00:56:13.72 ID:ipSfj7rZ0
>>643
なんかすまんかった
645 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/27(金) 07:31:25.06 ID:B+9pekVB0
マミさんとマミゾウさんのコンビはまだですか
646 : [saga]:2012/01/27(金) 23:26:13.38 ID:0dWTOQqt0
動画版『円鹿目』みんなのアイドルエリーちゃん&立ち絵最難関のイザベルさん戦更新
やっぱり前後編になっちゃったよ……、時間掛かっちゃったよ……

http://www.nicovideo.jp/watch/sm16805284
http://www.nicovideo.jp/watch/sm16806281

結局イザベルさんは某キャラの立ち絵を加工でごまかす羽目に……
この素材を使う事はもう無いと思ったんだけどなぁ……


そして本編の筆が進まないよ〜
地味に応援されてるし、書きたいけど、ほのぼの日常バトルって難しい……

>>645
それはマミゾウさんとキャンデロロさんの絡み、って事かね?(絶対違う
647 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) :2012/01/27(金) 23:49:15.94 ID:rSiSh/oAO
>>646

更新お疲れ様です!
いつも動画は楽しんで見ていますよ。
648 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/28(土) 01:27:50.76 ID:DgyDW5uDO
見やしたー!
コメしやしたー!
649 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2012/01/31(火) 23:08:26.83 ID:FsiHEBpa0
それにしても動画見るたびに思うのはOPの曲
よくこれを選んだなと・・・ 元アニメの方ももちろん凄いんですがこちらも全く負けてないですからね。

そして原曲が自分の中で急上昇中ww こんないいのがあったのかと 
動画新作の感想はまた後ほど。
650 : [saga]:2012/02/01(水) 14:39:39.86 ID:xbyUdRnI0
あれ?ここ確かSSスレだったよね……?
ゴメンなさい、やっぱり動画版の更新です。
んでもってイザベルさんに続き代打さん起用です。
これでも女の子扱いだからね?なるべく突っ込まないでね?

http://www.nicovideo.jp/watch/sm16847443

円鹿目本編(EX除く)の動画化が終わるぐらいまでには次を投下したい。
と言うかこのカキコが終わったら今日こそ書こう! 動画編集ソフトを閉じて!

>>649
ぶっちゃけ前期OP(東方アレンジの方)は直感的に作ったヤツでして、実はコネクト版の方が先に出来てます。
素材集め中に惚れ込んでしまい、こちらを先にもって来ちゃいました。
アニメーションといい、ホント、満腹神社&幽閉サテライトさんはいい仕事するなぁ〜
651 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/02/01(水) 19:06:33.11 ID:+Fu6vMWV0
比叡さん、動画みたよー! あれ…? ギー、ゼラ…?

SSのほうも待ってるよ!学園天国パトシリアが待ち遠しいぜ…
果たしてマミさんの協力を得たまど神様は一体どんなスペルを披露してくれるのやら
それともゆかりんに魔法少女と魔女の境界をイジられ、一時的にキャンデロロになって弾幕戦とか…は無いかー


ギーゼラ(仲)「この世界のボクって色々とはっちゃけすぎじゃないかな。思いっきし暴走族だし…」

フィナ「…他の魔女も向こうと少し性格がズレているけど、あなたとワルプルギスは特にギャップが凄いわね」モグモグ

ワルプルギス(仲)「幼女…ワタシが幼女って…ロリミズハスだなんて…アハハハ…」 フルフル

ギーゼラ(仲)「いつもの笑いはどうしたんだい。声が乾ききってるじゃないか」

クリームヒルト(仲)「ほらほら、あんまりこっちの世界に居るといろいろ勘違いされちゃうから帰ろうねwwwwwwウェヒヒwwwwww」
652 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(宮城県) [sage]:2012/02/01(水) 21:48:39.36 ID:+rR9d+8n0
>>651
一瞬投下かと思ってしまったじゃねぇか……
小話とかは作らないほうがいいぞ
叩かれるからな。少なくとも俺は叩く
653 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/02/01(水) 22:58:18.76 ID:+Fu6vMWV0
>>652
すまんかった…
いやね、俺のスレの所にここの>>1がよく小話を書いてくれるから俺も書こうかなと思って
迷惑だと思ったのなら申し訳なかった
654 : [saga sage]:2012/02/01(水) 23:05:31.68 ID:xbyUdRnI0
>>652
スイマセン(>>653)という訳で正直私の身から出た錆です。
ええ、やり始めたのはこちらが先なので、この場は矛を収めてください。

>>653
ゴメンなさい。
マズイマズイとは思いつつ、向こうだと雰囲気がああだからやっちゃうんだけど、
やっぱり考え足らずだったなぁ〜。
お詫びと言う訳ではないけど、パトリシア戦は次の予定だから、心待ちにしてて下さい。
655 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/02/01(水) 23:14:00.18 ID:+Fu6vMWV0
こっちこそ、自分のスレのノリを持ってきてしまって悪かった
パトリシア戦楽しみに待ってるよ!比叡さん頑張ってっ!
656 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/02(木) 09:00:37.87 ID:rCTOj5wDO
動画乙!
いやー、まさかカイトの改変立ち絵とは思わなかったよww
657 : [saga]:2012/02/04(土) 19:25:33.69 ID:UBI/uQdp0
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

クリームヒルト「住所不定の契約獣さんから頂きました」

 Q) 僕たち……じゃなくて、インキュベーターはなんで幻想入り、と言うかそもそも何故幻想郷を認識してないんだい?

クリームヒルト「簡単に言うと、人間界がコインの表側なら、魔法少女やキュゥべえはコインの裏側。
        そして幻想郷はコインの本当の意味での『裏』、つまり中身にあたるらしいの」

クリームヒルト「コインの裏側はひっくり返せば表側になるけど、中身である幻想郷は決して表側に出てくる事は無い。だから気付かないんだって」

※コインをぶった切って、断面を出したとしてもその時点で断面は『表』になるので『裏側』は見れない。

クリームヒルト「ちなみに概念の私はそのコインを外から見たり、中身を透視することも出来る外側からの観測者、らしいよ。 すごいね!」


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

クリームヒルト「みなさんこんにちは、なんだかんだで毎回出番のあるクリームヒルトだよ」

魔理沙「……逆に出番の無い霧雨魔理沙だ。 まぁブン屋の“すとーきんぐ”は真っ平ゴメンだがな」

クリームヒルト「あはは……、そろそろ自重して欲しいなぁ……」

魔理沙「安心しろ、アイツの辞書に“自重”なんて言葉はそもそも無い(キッパリ」

クリームヒルト「それって全然大丈夫じゃないよ!?(マドーン!?」

魔理沙「それじゃ、東方魔戯歌伝、始まりだぜ〜!」

クリームヒルト「ねぇ、お願いだから流さないで!? 結構死活問題なんだよ!?」


658 :東方魔戯歌伝 [saga]:2012/02/04(土) 19:28:54.96 ID:UBI/uQdp0
――――――――― 【幻想郷最速のブン屋 @ 幻想郷・人里近くの田園】 ―――――――――

パトリシア「体育はあんまり得意じゃないんだけど……、行くわよ!」


                      球技「殺人ドッジボール」


ボール大の弾幕を手にしたパトリシアが、それを文目掛けて放つ。
自機狙いの弾幕とは言え、一発だけなら回避も容易、なのだが……。

パトリシア「みんな、文を挟み撃ちにするのよ!」

一度かわした弾幕をパトリシアの使い魔がキャッチし、すぐさま投げ返してくる。
背後からの殺気を感じ取り、身を投げた文の脇を、再び弾幕が掠めていく。

文「自機狙いの追跡弾、ってところですか……。 でも一対多数って卑怯すぎやしませんかね?」

外の世界の学校では定番の球技を模したとのことだが、弾幕戦故にキャッチしての反撃が出来ない為、
ルールとしては著しく回避側である文の方が不利だと言えた。

パトリシア「普通ならイジメでしょうね。 でも貴女ならコレくらい、余興にもならないでしょう?
      それより、余所見なんかしてて良いの? ボールを追加するわよ」

文「真っ向勝負だったら使い魔を片っ端から撃破してるところなんですけどね。 観客に免じて今日は踊ってあげますよ」

新たなボールを生み出したパトリシアがからかうような口調で言うと、文も不敵に笑いながら宙を舞う。
そんな二人の様子を、多くの歓声が包んでいた。

弾幕戦が行われている空から地を見やれば、刈り取りが終わった後の田に座り込んで、こちらを見ている人妖たちの姿が見える。


オクタヴィア「パトリシアーっ! やっちゃえーっ!パパラッチを許すなーっ!」

はたて「そうよ! 文なんかボコボコにしちゃいなさい!」

にとり「お前ら……、私怨があるのは分かるが、妖怪の山の住人としてそれはどうなんだ?」

一対多数の戦い故に文の方が絶対的に不利なのだが、パトリシアばかりを応援する同郷人――オクタヴィアと姫海棠はたて――ににとりはげんなりする。
文の性格や立場上、敵を作りやすいタイプであるのはにとりも認めるところではあるのだが、空気と言うものを読んでもらいたい。
659 :東方魔戯歌伝 [saga]:2012/02/04(土) 19:31:10.30 ID:UBI/uQdp0

ワルプルギス「パトリシアお姉ちゃんも、カラスのお姉ちゃんもガンバレ〜!」

慧音「パトリシア〜、分かってるとは思うが、ほどほどにしといてやれよ〜」

エルザマリア「大丈夫だと思います。 文さん、どう見ても余裕綽々ですし……」

一方、上白沢慧音をはじめとする人里組はと言えば、こちらは完全に静観の構えだ。
茣蓙の上にお茶まで出して、上空での戦いは話の種、と言わんばかりの雰囲気をかもし出している。

穣子「おっ、良い匂いがすると思ったら秋冬番茶じゃん」

慧音「これはこれは穣子様、一杯如何ですか?」

穣子「良いの? じゃあお言葉に甘えて」

エルザマリア「本日の主賓ですからね。 あっ、こちらにお掛け下さい」

差し出された湯のみを受け取った穣子は、茣蓙の上に正座をすると、一息入れつつ上空を見た。

穣子「いやー、今年の演舞は随分と派手だねぇ。 こんな弾幕戦が見れるとは思って無かったよ」

いつもは人間たちの舞だからね〜。と呟く穣子はこの戦いを随分と愉しんでいる様だ。
主賓がこれなら、この催しも成功といえるだろう。


季節は九月の末、今日は新米の収穫祭である。



660 :東方魔戯歌伝 [saga]:2012/02/04(土) 19:33:13.36 ID:UBI/uQdp0
―――――――――――――― 【数日前・幻想郷某所】 ――――――――――――――

文「あや? 催しで弾幕戦の模擬戦、ですか?」

パトリシア「そうなのよ。 稲刈りが終わった後の奉納でね。演舞代わりにやることになっちゃって……」

本当は面倒だからやりたくないんだけど……、と心底面倒くさそうにため息をつくパトリシア。
相変わらずなげやりな性格は変わってないなと文が思っていると、考えを読まれたのかパトリシアがジト目で睨んできた。

パトリシア「なに? なにか言いたそうね?」

文「いえ、そんな事は……。 それで?その相手を私に、ですか?」

文の問いに気を取り直したのかパトリシアはええ、と頷く。

パトリシア「収穫の取材には来るのだろうし、それに貴女、最近私たち魔女の新作弾幕をすっぱ抜いているそうじゃない?」

文「あや? バレましたか……」

パトリシア「バレるもなにも私たちからすれば身内の情報よ。 回ってこない訳が無いじゃない」

呆れたようにパトリシアは肩をすくめてみせる。
騙し討ちですっぱ抜かれたゲルトルートを筆頭に、虫歯騒ぎと一緒にスクープされたシャルロッテ、
白玉楼内でこっそり行われていた筈なのに盗撮されていたオクタヴィアなど、被害者は増加の一途を辿っている。

つい先日も、ゲルトルートとオクタヴィアの愚痴聞きに付き合わされたばかりだ。
因みに一番の被害者は勿論クリームヒルトで、幽々子以下、幻想郷の実力者を相手にした弾幕戦の殆どをすっぱ抜かれている。

文「いや〜、最近の話題提供者としてはかなり美味しいんですよねぇ〜。 ガード甘いし、色々やってくれるし……」

パトリシア「だからって限度、ってものがあるわよ? 最低限、盗撮とか騙し討ちはやめなさいよ……」

文「はいはい、前向きに検討させていただきますね……」

パトリシア「ちょっ、文!?貴女真面目に聞く気な……」

霖之助「ねぇ、君たち、話をするのは構わないんだけど、冷やかしなら帰ってくれないかな?」

店先で話すだけで、商品を一向に見ようとしない二人に、この店――香霖堂店主の森近霖之助は突っ込まずには居られなかった。


661 :東方魔戯歌伝 [saga]:2012/02/04(土) 19:39:09.45 ID:UBI/uQdp0
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

文「……と、こんなことがあったのが三日前の話なんですよねぇ」

パトリシア「? 何か言った? と言うか余所見している暇なんてあるの?」


                      LHR 『シャッフルチェンジシート』


スペル発動と同時に、周囲に規則正しく並べられた机が現れる。
机自体は障害物代わりのようで、その場に固定され、机と一緒に現れた大玉の弾幕が、机の合間を縫って、文の方に向かってくる。

文「あやや、また机を使った物理弾幕ですか。 おー、こわいこわい」

パトリシア「失礼ね! 前よりだいぶ良心的よ!」

文「机にも当たり判定がある時点で良心的とは言い難いと思いますよ?」

パトリシア「貴女ならこれくらいハンデにもならないでしょ? 最悪そのカメラで写し取れば良いんだし……」

文「……手の内を悉く読まれる、って気分悪いですねぇ」

パトリシア「言っておくけど全部貴女の身から出た錆だからね?」

文「分かってますよ。だからこそ気分が悪いんです」

これだから切れ者の相手は疲れるんだよなぁ〜、とは心の中で呟く。
クリームヒルトのように素直な子や、オクタヴィアのように直情的な相手なら、手玉にとるのも容易いが、
理詰めで攻めてくる相手と真っ向から勝負するのは色々な意味で疲れる。

それにそれとは別に気になることが文にはあった。

文(収穫祭、なんていう年に一度のイベントなのに、クリームヒルトさんの姿が見えないんですよね……。
  あの人の性格上、こういうイベント事には必ず参加してそうなんですけど……)

仮にも魔女の代表役を買って出ている立場だ。
こういうイベント事をすっぽかすとは思えないのだが……。

そんな文の思考も、次の瞬間、パトリシアから投げかけられた言葉に流されてしまう。
662 :東方魔戯歌伝 [saga]:2012/02/04(土) 19:50:02.38 ID:UBI/uQdp0

パトリシア「文、何を考えているのか知らないけど、ホントに集中しなくていいの? 今度は机ごと動かすわよ?
      それとも丸ごと写真に収めて打ち消すつもりかしら?」

文「いやいや、私がそんな無粋な真似をするとお思いで? その程度、片手間で乗り切ってあげますよ」

パトリシア「言ったわね? その余裕も、そろそろお終いよ!」

パトリシアの号令とともに、並べられた机が、スライド式のパズルのように上下左右へと移動を開始する。
動き回る机と、飛び交う弾幕の間を縫うように飛びながら文は内心、唸り声をあげる。

文(ふむ、言うだけのことはあって難易度としては上がってますね。
  凶悪っぷりはだいぶ緩和されましたけど、その辺は相手の撃墜しか考えてなかったからでしょうね)

六月の異変の際にパトリシアと対峙した時のことを思い出しながら、今回の弾幕の評を下す。
あの時の異変における魔女は大別して二種類に分かれる。

幻想入りという事態を受け入れ、早くも順応した者と、現世への未練という呪縛を抱えつつ異変に従事した者の二つだ。
パトリシアはオクタヴィアなどと同じく後者の筆頭と言える存在で、
シャルロッテやエリーなど、嬉々として異変に積極参加していた前者に比べるとだいぶ余裕のない戦いをしていた。

スペルもまた同様で、あの当時のスペルは余裕がない攻撃一辺倒な弾幕ばかりであり、記者的には面白みに欠ける弾幕ばかりであった。
まぁ後者の中でも、幽々子から適切なアドバイスを受け、じっくり自分と向き合って弾幕を作ったクリームヒルトのような魔女もいるので、
一概に真面目さんだからと言ってネタにならない、という訳ではないのだが……。

文(お祭り向けに見た目が派手で、面白いものを持ってきただけかもしれませんが、これはいい傾向ですね)

思い出し笑いと言うか、なんとも微笑ましい気分にニヤついていると、聡くも気付いたのかパトリシアが怪訝そうに眉を寄せる。

パトリシア「? 何をニヤニヤしてるのよ? 気味が悪いわね……」

文「いいえ、なんでもありませんよ。 こっちの話です」

適当に取り繕いつつ、これだから記者は辞められないと、文は思う。
最初はぎこちなかった者たちが、徐々に幻想郷の“色”に染まっていく様を見るのはやはり楽しい。
その楽しさを面白おかしく広めて、皆と共有し、茶請けのネタになる様を見るのはもっと愉しい。

聞くところによると、幻想郷の妖怪の元締めでもあるスキマ妖怪と、魔女や魔法少女と深く関わっている神様との間で、
何らかの密約が交わされたとかで、今後も新たな魔女が幻想入りしてくる可能性が高いそうだ。
文としてはそれだけネタが増えるということなので、これ以上喜ばしいことはない。

とりあえず、さしあたって今は……。

文「私の変な噂が根付かないように、たまには真面目にやってあげますかね!」

観客やパトリシアに聞こえないよう、小声でそう呟いた文は、パトリシアが繰り出す新たな弾幕の渦へと、飛び込んで行く。

文「さぁて、手加減してあげるから本気で掛かってきなさい!」

パトリシア「本当に人の神経を逆撫でするのが大好きな鴉ね! どうなっても知らないんだから!」

文の挑発に見世物の演舞であると言うのに、難易度を本気のソレに引き上げるパトリシア。
そうこなくちゃと湧き上がる興奮を抑えつつ、文はカメラを構えるのであった。


663 :東方魔戯歌伝 [saga]:2012/02/04(土) 19:57:19.92 ID:UBI/uQdp0
――――――――― 【救済の魔女と紅魔の吸血鬼 @ 紅魔館】 ―――――――――

レミリア「ふ〜ん、冥界の亡霊が入れ込むだけの事はあるわね。貴女、なかなかやるじゃない」

クリームヒルト「はぁ……はぁ……、あ、ありがとうございます……」

人里での収穫祭の演舞が佳境を迎えていた頃、紅魔館の中庭では土埃に塗れたクリームヒルトが汗だくになっていた。
クリームヒルトの実力を見て、後半徐々にペースアップをして言った結果、ハードまで乗り切って見せたことに、
紅魔館の主であるレミリア・スカーレットは気分が良いと言わんばかりに笑顔で紅茶を口に運ぶ。

レミリア「でもそうね、貴女、攻撃と回避は十分だけど、防御がなってないわ。
     魔力が強いからこれまで防御の必要がなかったんでしょうけど、それじゃあこれより上に行くのは夢のまた夢よ?」

クリームヒルト「えっと、それじゃあどうしたら……」

レミリア「スカーレット家に伝わる由緒正しいカリスマ的な防御方法があるにはあるけど、貴女、知りたい?」

飲み終えた紅茶のティーカップをテーブルの上に置きつつ、レミリアは妖しく微笑む。
幻想郷での生活で言えば大先輩であるレミリアから申し出を、断る理由などあるわけもない。
クリームヒルトは紅美鈴から手渡されたタオルで、汗を拭いつつ、その言葉に頷く。

クリームヒルト「はい、是非ともお願いします!」

レミリア「ふふ、いい返事ね。 分かったわ、教えてあげるからちょっと館内(なか)までいらっしゃい」

妖しい笑みを崩すことなく立ち上がったレミリアは咲夜を連れて中庭を後にする。
その後ろに続く、クリームヒルトの姿を見送りながら、美鈴はぼやく様に呟く。

美鈴「はぁ、お嬢様ったらあんなに見栄を張っちゃって……。
   よっぽど新聞屋にすっぱ抜かれるのが嫌なんでしょうね、あのしゃがみガード……」

収穫祭の演舞で、文が動けない事を知った上で、急遽クリームヒルトを呼びつけた当主に、なんとも言えない気分になりつつ、美鈴は正門へと戻っていった。

レミリア「さぁ行くわよ! 私の完璧なガード、得と拝むが良いわ!」

クリームヒルト「よろしくお願いします!」

この後、巷で『カリスマ・ガード』と呼ばれる別の意味で最強クラスの防御技が、レミリアによって披露され、
これを覚えたクリームヒルトが模擬の弾幕戦でオクタヴィアを困らせるのは、まどかが幻想郷を訪れる前日の事であった。




エリー「あのガードってさ、攻撃してるこっちがイジメてる見たいで、攻撃出来なくなっちゃうんだけど、正直ガードとしてはどうなの?」

パチュリー「攻撃を控えさせた時点で、レミィの勝ち。 つまりそういう事よ……」

エリー「ああ、やっぱりそうなんだ、あのカリスマガード……」

そんな会話もこの日、あったとか無かったとか……。




664 :東方魔戯歌伝 [saga]:2012/02/04(土) 20:05:16.95 ID:UBI/uQdp0
つーわけでパトリシア戦投下完了、あややがパトリシアさんの成長をしみじみと感じるイイハナシ、
の筈なのにいつの間にかとんでもないおまけが付いていた……、どうしてこうなったェ……

まぁ、フィグまどかにカリスマガードをやらせてみたらツボったのが原因なんですけどね。
まどっちにカリスマガードなんかやられた日には攻撃できねーよ! 恐るべし、カリスマガード!!

まど神さまのパートが無いけど、次辺りで幻想郷襲来だから許してちょ!


という訳でついでに動画版も更新
http://www.nicovideo.jp/watch/sm16875399

動画版円鹿目本編も残すはエルザマリアさんとクリームヒルトちゃん戦のみ。
まぁその後には長い長いワルプルちゃん戦が控えてるんだけどな!

そして、ワルプルちゃんすら素足で逃げ出す長さの焔環神も……
うぅ、考えただけで俺のSGの濁りがマッハだぜ……
665 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/02/04(土) 20:23:20.62 ID:BVhQJmpf0
投下乙なんだぜ! パトリシアちゃんがいい子になってく感じが実にいいな…
カリスマガードか…確かにクリームちゃんに似合いそうだが、ワルプルちゃんにやらせたら俺はきっと卒倒すると思う

新たな魔女が幻想入り…となると、やっと全員の姿が公開された本編未登場組か、
はたまた魔法少女姿が明らかになってるおりマギ組が出てくるのかな…
某所で自分の事を『キャラが増えると動かせなくなる不器用』って言っていたのに大丈夫か?

ついでで動画版を更新とか、あんたはどこまでハイペースなんだ…?
俺の考えた弾幕がいっぱいのワルプルちゃん戦が楽しみで何よr(ピチューン

つΦ
グリーフシードここに置いておくから、これでソウルジェムを浄化するといいぜ!
666 : [saga sage]:2012/02/04(土) 21:49:34.94 ID:UBI/uQdp0
“その後”を匂わせているが“その後”を書くとは一言も(ry

と言うか正直な話、『これからも魔女たちの幻想郷ライフは続くよ!』エンドにしないと〆ようがないので、
どんなに頑張ってもこのスレ内で終わりです。(コレはマジ)
今の魔戯歌伝自体、ボーナストラックの後日談ですから……。

そろそろクリームヒルトちゃんvsまど神を練らないとならない時期かな〜
最後の大花火だろうし、じっくり書きたいところ……、そんな暇ないんだけどな!(オイ
667 :>>1(=セヴァン) ◆SEVAN.goO2 [sage.]:2012/02/04(土) 22:07:09.93 ID:BVhQJmpf0
oh... このスレが完結したら俺の楽しみがまた一つ減っちゃうぜ…
でも、>>1がやりたい様にやるのが一番だからな。 また機会があったら、SSを書いてくれたらとっても嬉しいなって!
668 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage.]:2012/02/04(土) 22:08:37.67 ID:BVhQJmpf0
ぎゃあああああああ盛大に名前欄ミスってエンター押しちゃったあああああ!!
お許し下さい、お許し下さい、お許し下さい
669 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/04(土) 22:35:09.12 ID:TLaMAKmDO
お疲れ様です!
殺人ドッジボール…使ってもらえてとっても嬉しいです!ありがとうございます!!

しゃがみガード。みてくれはどうあれ…これは良き構え!

動画の更新も乙ですっ!
670 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/05(日) 07:14:30.64 ID:nyc8RXYDO
>>667ヌチョるよ
671 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/11(土) 21:30:29.59 ID:SEYcim3ho
虫歯って魔法で治せそうな気もするけど...
治し方がわからないと無理だったりするかも?

傷の治療レベルではなくて、失った指とか腕とかの再生と同等の難度はありそうだし。

595-599の虫歯事件後に、シャルが誰かから「魔法で治せるじゃん」とか指摘されて〜〜〜
みたいなイベントがあったと空想してニヤニヤしてみるテスト
672 : [saga]:2012/02/11(土) 21:58:28.19 ID:ai3aSATE0
動画版の更新と、重要なお知らせ。

まずは動画版円鹿目、対エルザマリア戦を
http://www.nicovideo.jp/watch/sm16942055

影ばっかで全体的に真っ黒とか、表現のし様がねぇよ! やっぱり難産だよ!この人のステージ!
後はクリームヒルト戦を作って投稿すれば円鹿目通常ステージは終了ですね。


で、ちょっと申し訳ないお知らせなんですが、SS版の更新の方、暫らくお待ち頂きたい。
と言うのも、私の悪い癖である『隣の芝生が青く見えすぎる病』が発症したもので……、
たぶん、この状態で書いても他所様ばっかり気になって、私の文章、と言うか『私なりのノリ』で書けないと思いますので、
今一度、見直す時間を頂きたいのです。

動画版で頭から順繰りに振り返っている真っ最中ですので、『私のノリ』を取り戻すのもたぶん、容易なんじゃないかと思います。
暫らく動画版のみの更新となってしまうかもしれませんが、ご了承下さい。
673 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/02/11(土) 22:07:03.44 ID:MbHjq5ch0
ほう
674 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/02/11(土) 22:31:06.51 ID:iarXfkzF0
俺はいつまでも待ってるから、自分のペースを大事にしてくれ
動画も期待してるよ!頑張って!
675 : [saga]:2012/02/15(水) 18:26:58.99 ID:PT8F+Vaf0
やっと復旧したよ……
動画版対クリームヒルト戦更新のお知らせ。
http://www.nicovideo.jp/watch/sm16973470

案の定長くなったのでエンディングは次回に持越しです。
戦いだけで30分、BGMはあの2曲、この時のクリームヒルトちゃんは間違いなくラスボスでした。



そんな訳でティン!と来た!
このSSはまどかSSであると同時に、東方SSだったんだ!

まど神「うわっ!? いきなり今更な事を言って……、どうしたの?」

焔環神がまどか寄りだったからすっかり抜けてたけど、東方キャラも出張ってナンボだよね! ってハ・ナ・シ!

まど神「なんだろう、なんか良くない未来が見えたよ。今……」

まど神さま、最近あっちとかこっちとかでラスボスしてるし、ラスボスならラスボスらしく……ね?(ニヤ
さあ、プロット練り直すぞー! なーに、悪いようにはしない!(ニヤニヤ

まど神「笑みが邪悪だよ!? 悪いようにする気マンマンだよね!? あんまり酷いと後で円環る(まどる)からね!?」
676 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/15(水) 18:43:05.41 ID:9L6BWLPDO
一体まど神様はどうされてしまうと言うのか?ww
677 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage saga]:2012/02/15(水) 19:42:16.69 ID:PIVdukyE0
おつ! 昨日は大変だったな…そんな>>1の為に一日遅れのチョコをプレゼントだぜ
クリームちゃんクリクリ!くりっくりっ!ウェヒヒwwwww

邪悪クリームの次は邪悪まど神さまが来るのか…だれか厄神様呼んでこい!
678 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) :2012/02/15(水) 20:33:05.15 ID:HqcAIIIAO
まさか逆に現代入りですか?
679 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/15(水) 21:11:27.55 ID:qjJO7JeDO
>>678
現代入りしたらクリームちゃん円環るやん……。
或いは改変後世界終了のお知らせ
680 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) :2012/02/16(木) 15:19:23.51 ID:7MYh7XIAO
>>679
いや、魔女達じゃなくて東方キャラ達が魔法少女と魔獣が戦ってる世界に迷い込むのかと。
681 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/16(木) 15:32:57.70 ID:v1Hav3gDO
外ではお金さえあれば美味しいものがたくさん食べられるぞ! まぁ、都会は心無い所だけどね…。
682 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) :2012/02/16(木) 18:02:57.47 ID:7MYh7XIAO
>>675

今、動画版を見てきました。
クライマックスだけあって激戦でしたね。そしてBGMが合いすぎww
もしもゲーム化したらこの弾幕交わせる気がしない。
683 : [saga]:2012/02/18(土) 19:22:55.35 ID:m4D8DldK0
動画版『円鹿目』通常ステージ編終了のお知らせ
エピローグ
http://www.nicovideo.jp/watch/sm17008504

表現を変えたり、展開を添削したりでなんだかんだで一ヵ月半掛かってしまいました。
動画化の段階になって見つかった誤字脱字が意外に多くて愕然としましたw
次からEXのワルプルちゃん戦ですが、その前にSS版の導入だけでも投下したいな〜、と思っています。


>>678 >>680
早苗「その道は既に私が短編で通った道です!(ドヤ顔」

ここだけの話、件の短編には後日談の構想があって、早苗さんと行き違いで見滝原入りしたフランちゃんが、
『キュッとしてドカーン』しまくる魔法少女勢涙目のEXステージ、とか考えてましたが、
どう見ても本編の雰囲気ぶち壊しにしかならないので、お蔵入りしてます。

>>682
SS版の頃からイメージBGMはこれしかない!と思ってましたからね〜。
ゆゆ様とクリームヒルトちゃんの互換性は異常。


クリームヒルトちゃんの“救済”は、“亡霊”(=生命ではない)のゆゆ様には効かないから、改変前の世界では、
妖夢や紫を亡くして復讐の鬼と化したゆゆ様と全力バトル、なんて悲しい世界があったのかも……。

う〜ん、考えただけでSG濁るわ〜。
684 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/02/18(土) 19:49:42.27 ID:UcEZlUYf0
ゆゆクリはいいものだ…動画更新お疲れさまなんだぜ!
SSには無かったスペルとかが登場してるから、SSも動画を比較する楽しみがあってよきかなよきかな
そしてワルプルちゃんは俺の考案スペカがいっぱいだからニヤニヤがとまらn(キュットシテドカーン

このスレに鬱展開は似合わないな…やっぱり、どんちゃん騒ぎしながら弾幕ごっこするのが一番だぜ
グリーフシードここに置いておくから、自由に使ってね! つΦ
685 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2012/02/20(月) 17:41:44.25 ID:7KxbRCKF0
早苗さんの現代入りのSSの動画も作ってくれたら、それはとってもうれしいなって
686 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/02/21(火) 21:45:32.80 ID:uuRQNEbi0
外伝でいいので、EX4人娘(ワルプル・こいし・フラン・ぬえ)に挑む話とか見てみたいなぁって
687 : [saga]:2012/02/23(木) 19:14:12.93 ID:QoZSUIIo0
>>685
シナリオ量が圧倒的に足らないので勘弁してください。
むしろアレをたたき台にして、東方×まどかの完全再構成クロスを誰か書いても良いのよ。(チラッチラッ

>>686
幻想郷滅ぼす気ですか貴方はwww


さあて、衝撃(笑)の対まど神戦の導入、投下行くよ〜
688 :東方魔戯歌伝 [saga]:2012/02/23(木) 19:17:14.63 ID:QoZSUIIo0
―――――――― 【概念の少女と救済の魔女 @ 人里近くの田園】 ――――――――

まどか「…………なに、コレ……?」

スキマを潜り抜けて、幻想郷へとやって来たまどかは思わずそう呟かずにはいられなかった。
現地時間では一ヶ月半ほどだが、数多の世界を渡り歩く少女にとっては久々となる幻想の地は、予想外の出で立ちで少女を出迎えようとしていた。

刈り取りも終わり、休耕地となった田畑に観客席やら実況席が組まれ、張られたロープに万国旗がはためく光景は学校の体育祭を思わせる。

その中で一際目立つ大きな幟。
そこにはやたら大きな字で、『円環の理vs救済の魔女 世紀の対決』などと書かれていた。

妖怪の里だけに狐にでも化かされたのかな?とまどかが思っていると、クリームヒルトがさも当然の事だと言わんばかりの様子で答える。

クリームヒルト「なに、って会場だよ? 弾幕戦専用の特設会場」

まどか「うん、それは何となく分かるんだ。 で、一体誰と誰の弾幕戦の会場なの?」

クリームヒルト「えっ?それはもちろん私と、概念の私のに決まってるでしょ?」

あの幟の通りだよ。と言う認めたくなかった事実を突き付けられ、まどかは思わず声を荒らげる。

まどか「つまり、私と魔女の私が戦う、って事だよね? 訳が分からないよっ!?」

クリームヒルト「えっ? ……えっ?」

地団駄を踏みかねないまどかの態度と言葉に、クリームヒルトもようやく何かがおかしい事に気が付く。
とは言え、何がおかしいのかまでは分かる訳もなく、小首を傾げるだけ。

まどかは来て早々深いため息をつきつつ、どうしてこうなったのか、己の半身でもある少女に向き直った。


                      【少女説明中……】


クリームヒルト「それじゃあ、私たちの早とちり、って事?」

まどか「そうだよぉ! 一度和解した相手に、それも自分自身の片割れに、訳もなく殴り込みの手紙送り付けるとか、幻想郷での私の評判ってどうなってるの!?」

クリームヒルト「えっと、現世に蔓延っていた有力妖怪に匹敵する魔女を、一人で滅殺した、超絶クラスの退魔師?」

まどか「なにそれ怖い」

言ってる事としては確かにその通りなのだけど、もうちょっと言い方と言うものがあるんじゃないでしょうか……。
私だってこう見えて一応女の子なんだからね!

概念の少女は内心涙しつつ、そう思わずには居られない。
689 :東方魔戯歌伝 [saga]:2012/02/23(木) 19:22:09.41 ID:QoZSUIIo0

まどか「とにかく、私はただ単に遊びに来ただけなの! そんな勘違いで魔女の私と本気の弾幕戦なんて真っ平ごめんだよ!」

クリームヒルト「う〜ん、勘違いで話を大きくしちゃったのは謝るけど、戦わない、って言うのは無理かな……」

まどか「なんで!? 勘違いでしたごめんなさい、で済むんじゃないの?」

クリームヒルト「えっとね、概念の私、落ち着いてあっちの方、見て欲しいんだ……」

まどか「あっち?」

顔をひきつらせつつ、苦笑するクリームヒルトにつられて、まどかは振り返る。
振り返ったまどかの目に飛び込んできた光景は……

文「さぁ、魔女の元締めと、現世の概念、世紀の対決だよぉ! 事前予想は五分と五分、さぁさぁ張った張ったぁ!」

神奈子「う〜ん、ここは同じ神様だからね。 概念の方に拾圓賭けるよ」

早苗「じゃあ私はクリームヒルトさんに四拾伍圓、賭けますね」

まどか「賭け事の対象になってるーッ!?(ガイネーン!」

大きな配当表と、次々とかけ金を積んでいく幻想郷の住人たちの姿だった。

まどか「あっ、でも良く見ると掛け金は五円とか十円とか、結構低いから何とか……」

クリームヒルト「……幻想郷ではね、壱圓あれば食料品の買い溜めが出来るんだ……」

まどか「…………」

あんまり嬉しくない幻想郷の豆知識に、まどかは今度こそ絶句する。
膝こそ付かなかったものの、その顔色は青を通り越して白に近い。

紫「あらあら、来て早々そんな蒼くなっちゃって……、大丈夫なの?」

まどか「あっ、紫さん! お願いします、紫さんの口利きでこのイベントを無かったことに……」

渡りに船、と言わんばかりにまどかは紫にすがり付いた。
が、紫から返ってきた言葉は期待とは正反対の、出来れば聞きたくなかった事実だった。

紫「私、貴女に百円賭けてるのよ。 だからそれはダーメ」

まどか「…………」

弾幕戦に於けるまどかのレベルは、お世辞にも誉められたものではない。
素人に毛が生えた程度でしか無いことは、一度やり合った紫は重々承知している筈である。

時の流れが違うとは言え、この数週間に実戦経験を積み、自己鍛練を重ねたクリームヒルトに分があるのは分かっている筈なのだ。
そこを敢えてまどかに賭けたと言うのだから、コレはもう嫌がらせに等しい。
逃げ場を塞いで、楽しむためだけに、大金すら溝に捨ててみせたのだ。

紫「その代わりと言ってはなんだけど、補佐をつけてあげる。 それで何とかしなさい」


690 :東方魔戯歌伝 [saga]:2012/02/23(木) 19:24:56.80 ID:QoZSUIIo0
――――――――――――――――――――――――――――――――――――

霊夢「で、私が呼ばれた訳?」

呼びつけられた霊夢は、不機嫌そうな顔をしていた。
前に会った時もそんな顔をしていたので、これがデフォルトなのかと、一瞬思ったが、
流石に今回に関しては呆れられても仕方がないほど間の抜けた話なので、決めつけるのは止めておく。

紫「そうよ。 貴女の神降ろしの儀で補佐してあげて欲しいの。 この子、幻想郷だと上手く出力調整出来ないみたいだから……」

霊夢「調整出来ない、って……、地底の鴉と同レベルじゃない……」

まどか「てぃひひ、現世だと常に全力しか出さないから……」

ため息をつく霊夢に、まどかは申し訳なさそうに縮こまる。
言ってしまえば、そもそも概念には手加減も何もないのだが、今更この地で、そんな常識を説いても意味がない。

一介の巫女相手に概念が頭を下げると言う、摩訶不思議な光景の脇で、何故か霊夢と一緒に呼び出された早苗が、小さく手を挙げる。

早苗「あの〜、霊夢さんがまどかさんの補佐に入る理由は分かりました。 でも、それなら私はなんで呼ばれたんでしょうか?」

紫「いくらお客さまとは言え、片方だけに補佐が入ったら不公平でしょう? それに早苗は邪神の扱いには長けてるじゃない?」

後半、声のトーンを落としつつ、そう言ってのけた紫は、脇できょとんとしているクリームヒルトと、
『面白そうだから』、と言う理由で付いてきた洩矢諏訪子を横目で見やる。
紫の言葉と視線に、少々ムッとしながら早苗は声を荒げた。

早苗「クリームヒルトさんは邪神じゃありませんし、ついでに言うと諏訪子さまも正確には違います! まあ似たようなモノかもしれませんけど……」

諏訪子「っ!? 早苗っ!?」

突然の早苗の言葉に、諏訪子が一転して涙目になる。
紫の言葉を聞いていなかった諏訪子からすれば、実子同然の風祝からの邪神認定は、完全な不意討ちと言っても良い。

諏訪子「うわーん! 神奈子〜っ! 早苗が、早苗があぁぁぁぁ〜っ!!」

早苗「はっ!?諏訪子さま!? 今のは違……!」  

早苗は今更になって自信の犯した失態に気が付いたが、既に手遅れだった。
諏訪子は脱兎の如く駆け出した後であり、早苗の弁明も届かない。

紫「それじゃ、一時間後に始めるから、それまでに打ち合わせするなり練習するなり、頑張ってね」

まどか「ねぇ、魔女の私、なんであの人が治めてるのに、幻想郷(ここ)はこんなに落ち着いてるの?」

絶対平穏無事じゃ過ごせないと思うんだけど、と小声で話しかけてくるまどかに、クリームヒルトは苦笑してみせる。

クリームヒルト「あはは……、でも良い人なんだよ、紫さんも他の皆さんも……」

色々な意味で自由奔放なのが、良い意味でも悪い意味でも幻想郷の特徴なのだと、最近実感してきたクリームヒルトはそう答えるのが精一杯だった。


691 :東方魔戯歌伝 [saga]:2012/02/23(木) 19:28:01.12 ID:QoZSUIIo0
――――――――――――――――――――――――――――――――――――

まどか「うぅ〜っ、どうしてこんな事に……」

ロベルタ「ちぃーす! 失礼するよ、概念の嬢ちゃん」

控え室でまどかが一人頭を抱えていると、そんな声と共に一人の女性が入ってくる。
振り返ったまどかは女性がかつて救済した魔女の一人である事に気が付き、その顔を綻ばせる。

まどか「あっ、ロベルタさん、お久し振りです」

ロベルタ「おう、久し振り、救済以来だから……、かれこれ4ヶ月、ってところか?」

まどか「この時間軸だと、そうなるのかな? 今日はどうしたんですか?」

ロベルタ「いやなに、面白そうなイベント事をやる、って聞いたから、陣中見舞いにさ」

まどか「そんな別に良いのに……。 そちらの方は幻想郷の方ですか?」

まどかはロベルタの背後から入ってきた小学生くらいの女の子に目をやりながら尋ねる。
二本の角を生やした女の子は胸を張りつつ、その問いに答える。

萃香「おう、私は鬼の伊吹萃香。 ロベルタとは毎晩飲み明かす仲さ。 ほれ娘っ子、元気の出る茶を持ってきてやったから飲みな?」

まどか「(飲み明かす?) あっ、ありがとうございます……」

一見すると幼子に見える萃香の言葉に、まどかは妙な引っ掛かりを覚えたが、それ以上の疑問を抱く事もなく、萃香の瓢箪から注がれたお茶を一気に飲み干した。


これが、今回における最大の間違いだった事など、気付けるわけもなかった。



692 :東方魔戯歌伝 [saga]:2012/02/23(木) 19:32:45.75 ID:QoZSUIIo0
――――――――――――――――――――――――――――――――――――

早苗「ん〜、いくら弾幕戦とは言え、救済概念を発動されると厄介ですね。 対円環パワー用の護符でも作っておきましょうか?」

クリームヒルト「護符、って、作れるんですか?」

言いながら白紙の御札に筆を走らせる早苗の手元を、クリームヒルトは興味深げに覗き込む。
何を書いているのかさっばりだったが、印や文字が書かれる度に、御札の霊力が高められていくのだけは分かった。

早苗「まどかさんの円環の理を、魔女限定で作用する呪、と無理矢理解釈すればなんとか……。 たぶん、気休めですけど……」

霊夢「なんだかんだ言いつつアンタたち張り切ってるわね……。 余興みたいなモノでしょうに……」

用意されたお茶すら飲まずに打ち合わせをするクリームヒルトたちに、霊夢は呆れ混じりの視線を送る。
まどかと組むのは今日が初めてなのに、打ち合わせすら面倒臭いと切り捨てた霊夢からすると、対照的過ぎてついて行けないと言った感じだ。

早苗「なに言ってるんですか霊夢さん! やるからにはフルボッコにしたいじゃないですか(やるからには真剣にやらないと、失礼じゃないですか)!」

クリームヒルト「そうですよ。 それに『遊びだからこそ本気でやるのが幻想郷での鉄の掟』って幽々子さんも言ってましたし!」

霊夢「あー、うん、アンタもだいぶ思考があっちに染まってきてるのね……。 それと早苗、本音と建前が逆になってるわよ」

拳を握りつつ力説する二人に、霊夢は乾いた笑いを漏らす。
早苗はある意味通常運行だが、比較的マトモだと思っていたクリームヒルトの染まりっぷりには、流石の霊夢もショックが大きい。
まあ、幻想郷に於ける姉貴分が幽々子だった時点で、この事態は容易に想像できたのだが……、

霊夢(深く考えるのは止めておいた方が良いわね……)

もうこの際だから、試合まで無視しよう、と霊夢が諦めにも似た決意を抱いたその直後の事だった。
突然の爆発音と共に、大気が揺れた。


                      ちゅどーん!


霊さなクリ「「「!!?」」」

あまりの大音響に、護符を作る手も、湯呑みに伸びた手も、一様にして止まる。
いち早く疑問を漏らしたのは、控え室に背を向けていた早苗だ。

早苗「な、なんです!? 爆発?」

霊夢「なんか例の神様の控え室から噴煙が上がってるように見えるのは気のせいかしら?」

クリームヒルト「気のせいじゃないよ! 概念の私!大丈夫!?」

視界の隅で控え室が吹き飛ぶ様を見てしまった霊夢は頬をひきつらせ、クリームヒルトは慌てて吹き飛んだ控え室跡へと駆け寄る。
爆発と同時に起こった土煙が収まると、そこには膝をついて座り込むまどかの姿があった。
693 :東方魔戯歌伝 [saga]:2012/02/23(木) 19:36:50.64 ID:QoZSUIIo0

まどか「…………」

クリームヒルト「? ……概念の私?」

真っ先に駆け寄ろうとしていたクリームヒルトは、沸き上がる妙な予感に思わず足を止める。
概念の少女の様子は明らかにおかしかった。 それに、この位置に居ても分かるこの匂いは……!
どうしてこうなったのか、訳こそ分からないけど、すごく、すごくイヤな予感がする!

まどか「ウェヒヒ……」

クリームヒルト「っ!?」


                      神創 『ラ・リスポスタ・デリヴァ』


まどかの突然のスペル宣言により、辺りは一転して戦場となる。

クリームヒルトは最初の爆発にもどうにか耐え抜いた控え室の壁の残骸の影に逃げ込み、
間も無くそこに霊夢たちも駆け込んでくる。

早苗「ちょっ、いきなり不意討ちとか随分と好戦的……、って、うわっ!? なにコレ、お酒くさっ!?」

霊夢「どーいう事かしら? 二人とも、説明してくれない?」

片や早苗は現場近くに漂う酒の臭いに敏感に反応し、片や霊夢は別の残骸に身を寄せている鬼と魔女を睨み付ける。

ロベルタ「いや、私らはあの子の緊張を解いてやろうと思ってな……?」

萃香「そう、それでちょっとこの瓢箪からお茶を出したんだけど……」

冷や汗を浮かべつつ、ロベルタは目線を逸らし、萃香は瓢箪から飲み物を注ぐジェスチャーをしてみせる。

霊夢「その瓢箪から出てきた時点でお酒でしょ!? 何やってんのよ!?」

早苗「あー、お茶割りか〜。 アリかもしれませんが、萃香さんのお酒と混じった時点で色々アウトですね」

萃香の一言で全てを察した霊夢は激昂し、早苗は頭を押さえる。
二人ほどではないが、何が起こったのか、なんとなく見えてきたクリームヒルトは思わず眉をひそめる。

クリームヒルト「つまり概念の私は……?」

早苗「はい、完全に酔っぱらってますね。 それも、かなり質の悪い酔い方で……」

まどか「ウェヒヒ……、ヒック、ほらほらひくよ〜!いっひゃうよ〜!」

頬を紅く染め、僅かばかりの狂気さえ感じる笑みを漏らしながら、弾幕をばら蒔く概念の少女。
そこには先程まで自分の半身との弾幕戦にすら戸惑いを覚えていた優しき少女の面影は一切無い。
どうやらあの神さまは酒を飲ませてはいけない人種だったらしい。
694 :東方魔戯歌伝 [saga]:2012/02/23(木) 19:39:22.75 ID:QoZSUIIo0

ロベルタ「酔いが醒めるまで暴れさせる、ってのは?」

霊夢「却下、お米以外の秋の味覚、全滅させるつもり?」

萃香「だよね〜」

ロベルタの提案が間髪入れずに切り捨てられるのを見て、萃香はなんとも言えない表情を浮かべる。

今回の会場は畑作地区のすぐそばに設営されていた。
このまま暴れさせるのは、農作物への被害を考えると、看過できるものではない。

霊夢「ところでアンタたち、何か変わった事は無い?」

クリームヒルト「? 何かって……、って、あれ? なんだか身体から力が……」

霊夢に言われ、疑問を抱いた直後、クリームヒルトは身体から力が抜けていくような感覚を覚えた。
脱力感と言うか、倦怠感にも似たそれは、意識していないと分からないほど微弱だ。
それでも、力が吸われている。 と言うのは確実に言える。

霊夢「やっぱり……。 あの神様、酔った勢いで能力(ちから)が駄々漏れになってるようね。 早苗っ!」

早苗「はいどうぞ!」

まどかの救済概念が、クリームヒルトたち魔女に影響を与えている事を見抜いた霊夢は早苗に呼びかける。
早苗は、まるでこうなる事が分かっていた、とでも言うように、すぐさま一枚の御札をクリームヒルトに手渡す。

差し出されるままに御札を受け取ったクリームヒルトは、御札に触れるなり倦怠感が治まった事に目を丸くする。

クリームヒルト「これは?」

早苗「さっき言ってた対救済概念用の護符です。 “奇跡的”に人数分、ギリギリの所で作れました」

神職に就く者として、霊夢共々、まどかの神力が暴走している事をいち早く見抜いたのだろう、
早苗はまどかの能力がクリームヒルトたちに致命的な影響を与える前に、自らの能力を総動員して護符を作り上げたのだ。

早苗「ロベルタさん、萃香さん、この護符を他の魔女に! それと、誰でもいいので援軍を呼んできて下さい!」

ロベルタ「分かった。 すぐに呼んで来る」

萃香「任せたぞ、霊夢と早苗に魔女っ子!」

物陰に身を潜め、被弾を避けつつ、ロベルタたちは観客席の方に駆け出していく。
最悪の事態はコレでどうにか避けられそうだ。

霊夢「仕方がないわね……。 やるわよ!早苗、クリームヒルト!」

早苗「クリームヒルトさん、その護符は“救済概念”を遮断する抗力こそありますが、
   被弾に耐えられるほど強くはありません。 くれぐれも無茶だけはしないで下さい」

クリームヒルト「分かったよ、早苗さん!」

御札や御幣、弓と言った各々の得物を構えつつ、三人は物陰を飛び出す。
これが、『神無月の御乱神事件』と呼ばれる魔女関連の事件の大トリを飾る弾幕戦の幕開けだった。



695 :東方魔戯歌伝 [saga]:2012/02/23(木) 19:50:53.45 ID:QoZSUIIo0
さぁやっちまったぞ〜。 東方に付き物のお酒のトラブル。
『お酒は飲んでも飲まれるな!』 ってね。

まど神「ねぇちょっと、なんなのコレ? 通常ステージもEXステージも焔環神もシリアスだったのに、私だけなんでこの扱い!?」

魔戯歌伝は歌えや騒げの番外編だからな!
ソレにこうでもしないと、暴走しないでしょう、貴女は……。

まど神「それにしたって概念が酔って暴走なんて非常識だよ! こんなの絶対おかしいよ!」

幻想郷じゃ神だろうとなんだろうと、酔う時は酔うんです。 それが東方です。(キリッ
それに貴女、作中だと台詞が『まどか』表記になってるでしょ?
それ、神だろうと幻想郷では一キャラクターに過ぎませんよ、って言う意味だからね?

まど神「よし、円環ろう、この作者を早急に円環ろう……」



で、ついでに動画版EXの導入部も投下しておくよ〜。
http://www.nicovideo.jp/watch/sm17055371

あ〜、どうしよう、最近『焔環神』とか『魔戯歌伝』用のOPを作るのが楽しくて止まらない。
動画版じゃ『焔環神』すらまだまだ先の話なのに〜

まど神「私もチラッと登場するヤツだね。 もう三つぐらい(没含む)作ったんだっけ?」

うん、まあ現状では暇つぶし以外の何者でもないんだけどね……。
696 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/24(金) 05:50:19.13 ID:IXCtK7WDO
お疲れ様です!
遂に始まりましたか、“まど×まど大戦”が!っと、思ったら…なんと酒乱戦に突入ですと!?幻想郷の食料事情は一体どうなってしまうのか!?

動画EXも感謝!
697 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2012/02/24(金) 07:18:46.71 ID:EN84i2kr0
改変後の世界観がわかれば現代入りも出来なくないと思うけど設定がないからなあ・・・
今のところ幻想入りが限界な自分、そしてボヤっとしてるあいだに擬人化ネタが使われるという。

まあオリキャラが出る本編ありきなんですけどね。 たしか演歌でも人が変わるとか聞いたことがある。
そして全般的な声イメージがまどか声優を早苗に直あてしたり妄想が止まらない>書けよ
698 :1@携帯 [saga sage]:2012/02/24(金) 16:27:32.57 ID:0gs2DqqDO
>>696
ワルプルちゃんですら被害は(紅魔館以外)大したことはなかったんだ。
今回も大丈夫だ、問題ない。

>>697
ここのスレもだいぶ独自解釈が強くなってきたんで、そろそろ他の人のまどか×東方も見たいなぁ……(チラッチラッ
個人的に早苗さんは米澤円さんか、今○麻美さんですね。完全に某所の丸パクリですが……。
699 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2012/02/25(土) 01:02:32.51 ID:Y6rDbcWo0
動画ともどもうぽつです

大トリを飾る弾幕戦の幕開け”ですか
わくわくするけど、少し寂しい気もします。

以外にまどか×東方のSS少ないですよね
どっちも好きな自分にとってこのレスは完全に俺得です

最後まで期待してるのZE☆
700 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2012/02/26(日) 14:17:26.41 ID:H2PyU9nAO
おつおつ
マミに続き杏子の魔女姿も判明したね
701 : [saga]:2012/02/27(月) 22:53:45.85 ID:2/3Efwti0
動画版更新
円鹿目シリーズ唯一のおぜう様のカリスマシーン
http://www.nicovideo.jp/watch/sm17097195

東方緋想天風立ち絵製作セットのゴスロリ服がワルプルちゃん風でテラワロスwww


ついでに小ネタ(本編とは関係ありません)
――――――――――― 【ある日の守矢神社にて】 ―――――――――――――

クリームヒルト「え? “魔女”と戦った事があるんですか?」

諏訪子「んーだいぶ昔の話だし、あの当時は単なる妖怪だと思ってたけどね〜」

神奈子「ああ、諏訪の地で民に不審な死が相次いだ時期の話か……」

オクタヴィア「へー、それで、どうしたんです? 退治しちゃったんですか?」

神奈子「それがなぁ、民に手を出されて相当頭に来てたんだろうな。 呪いごと食っちまったんだよ」

クリ&オク「「え゛?」」

諏訪子「ちょっ、神奈子っ!? 食べたって意味が違うからね!? ミシャグジ様の贄にしただけだからね!?」

神奈子&早苗「「大して変わらないだろう(変わりませんよ)」」

クリ&オク「「((((;TДT))))ガクガクブルブル」」←部屋の隅まで逃げた

諏訪子「あ〜、全盛期の話だし、結構弱い相手だったからね? 今はそんな事しないからそんな逃げないでよぉ(汗)」


――――――――――― 【同じ頃・現世・見滝原】 ―――――――――――――

キュゥべえ「世の中には不思議な土地があってね。 例えば隣の県の諏訪とかはなぜか最近まで魔獣の発生が少なかったんだ」

ゆま「へー、そうなんだ〜」

マミ杏ほむ(((間違いなくあの神さまのせい、なんでしょうね(だろうな)……)))

702 : [saga]:2012/03/01(木) 22:11:29.49 ID:KbukckWA0
怒涛の動画版更新、このまま一気に駆け抜ける!
と、行きたいところだけど、暫らく休みがないので無理ーっ!

エリーちゃんが輝くEXステージその3
http://www.nicovideo.jp/watch/sm17123936


そんなわけで暫らくケータイで書き溜めに勤しむ事にしました。
また通勤電車でポチポチ打ち込む作業が始まるよ!

まど神「うん、そろそろ本腰入れて仕上げようよ。 妄想だけじゃSSは書けないんだよ?」

でもねー、ついつい他のSSスレとか、モバゲーとか、動画版に寄せられたコメントを見に行ってしまうクセが……。

まど神「よし、そのケータイの通信機能をダメにしよう」

それケータイって言わねぇよ……。
703 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/03/04(日) 22:07:05.08 ID:QxeXWpyio
壊れて電話に出れなくなっても持ち歩きできなくなるわけじゃないさ
携帯することだけならできるよ
これが本当の携帯出んわ、なんちゃってー
704 : [saga]:2012/03/05(月) 11:01:54.47 ID:tHEUH+Ob0
すこし時間が取れたので少なめだけど本編投下。
705 :東方魔戯歌伝 [saga]:2012/03/05(月) 11:05:23.25 ID:tHEUH+Ob0
――――――――――――――――――――――――――――――――――――

クリームヒルト「輝弓『フィニトラ・フレティア』!」

早苗「秘術『グレイソーマタージ』!」

クリームヒルトが魔力の矢を放ち、その対面から早苗が五芒星型の弾幕を放つ。
まどかを挟み撃ちにするように放たれた弾幕は、そのまままどかに直撃するかと思われたが……、

まどか「ウェヒヒヒ、そんなの通じにゃいよ〜」

まどかが放つピンク色の弾幕がそれらの前に現れ、矢や弾幕を打ち消していく。
円環符『もう、苦しまなくていいんだよ』は、魔力的及び、霊力的な弾幕を尽く打ち消していく、驚異的なスペルだった。

霊夢「クリームヒルトに早苗も、物理系の攻撃に切り替えなさい! そんなのじゃいくら撃っても届かないわよ!」

弾幕の性質を早々に見抜いた霊夢が、二人に呼びかける。
そう言う霊夢も、攻撃手段を御札から物理的要素を含む封魔針に切り替えている。

クリームヒルト「分かりました、霊夢さん!」

早苗「切り替えたいのは山々なんですけどね。 私、物理攻撃ってあんまり得意じゃないんですよ……」

霊夢の言葉に、早々に攻撃手段を弓から剣に切り替えたクリームヒルトに対し、
大した物理的攻撃手段を持たない早苗は弾幕による攻撃を継続する。

早苗「こんな厄介なスペルの名前が『もう、苦しまなくていいんだよ』なんて、ホント洒落の効いた神さまですね!」

クリームヒルト(絶対名前を付けたの“私”じゃ無いんだろうなぁ……)

一発目の神創『ラ・リスポスタ・デリヴァ』といい、明らかに自分のネーミングセンスからは想像も付かないほど、
技巧と洒落の効いた命名に、クリームヒルトは内心苦笑する。
現世のマミか、円環に居るというさやか辺りがアドバイスしたのだろう。

クリームヒルト(それだけ真剣に考えてた、って事だよね……)

試合前、あれほど戸惑っていたまどかだが、ことスペルに関してはしっかり考えていた事が伺える。
今回はそのようなつもりではなかった様だが、クリームヒルトたちの前でお披露目する為にそれらのスペル案を温めていた事は想像に難くない。

クリームヒルト(こんな形でのお披露目、概念の私も望んでなかった筈だよ……。 何がなんでも止めてあげなくちゃ!)

内心、決意を新たにしながら、剣を構えなおす。
その間、僅か数秒でしかなかったのだが、今回に関しては相手が悪すぎた。

霊夢「クリームヒルト! そっちに大きいのが行ったわよ!」

クリームヒルト「えっ!?」

霊夢の忠告が飛んできた時には、ピンク色の弾幕は回避不可能な位置まで迫っていた。
クリームヒルトを囲むように展開されたその弾幕に逃げ場は無い。
706 :東方魔戯歌伝 [saga]:2012/03/05(月) 11:10:53.14 ID:tHEUH+Ob0

クリームヒルト「マズっ……!?」

クリームヒルトの脳裏を早苗の忠告が過ぎる。
早苗から渡された護符は、弾幕の直撃には耐えられない、というあの一言。
この弾幕に救済概念が含まれているのは、弾幕が打ち消されている事からも明白で、このまま直撃を許せば無事では済まない。

打つ手のないクリームヒルトに対し、いち早く動きを見せる者が居た。 早苗だ。

早苗「坤神招来『盾』!」

諏訪子『呼ばれて飛び出てジャジャジャーン! ケロちゃんだよ〜』

クリームヒルト「す、諏訪子さん!?」

早苗が短い呪を唱えると同時に、クリームヒルトの眼前に特徴的な帽子を被った少女が現れる。
召喚された神――洩矢諏訪子の分霊は、召喚されるなり防壁を展開し、まどかの弾幕を弾き返す。

クリームヒルトに向かっていた弾幕の大半を弾き返すと、諏訪子の分霊がクリームヒルトの方に向き直る。

諏訪子『大変な事になってるみたいだね〜。 畑に結界を張り終えたらそっちに行くからそれまで早苗をお願いね』

クリームヒルト「分かりました。こっちは私たちに任せてください。 それと助けて頂いて、ありがとうございました」

諏訪子『良いって良いって、それじゃ、私は帰るね〜』

普段と変わらぬ軽い口調で、消えて行く諏訪子の分霊。
再び始まる激しい弾幕戦に、クリームヒルトは気を引き締めなおす。

クリームヒルト「早苗さん、ありがとうございました!」

早苗「気にしないで下さい。 それより、一人で前線を支えている霊夢さんに加勢してあげて下さい」

私は援護射撃と補助に周ります。と言う早苗の声を後ろに聞きながら、クリームヒルトは前に出る。

クリームヒルト「霊夢さん!」

霊夢「まったく、危なっかしいわね……。 幽々子やレミリアが、だいぶ上達してきた。とか言ってたからどんなだと思ったら、この程度だなんて……。
   私から言わせればアンタはまだまだ手のかかる新参よ。 あとでみっちりしごいてあげるから覚悟なさい」

クリームヒルトに目線を向けることすらなく辛辣な言葉を吐く霊夢。
一見するとキツい言葉にも思えるが、これが霊夢なりの優しさなのは、声音からも分かる。
こちらを見ようともしないのも、概念のまどかの弾幕が激しいからで、もう少し余裕があれば、呆れ混じりの笑顔で罵倒していたに違いない。

まどか「そろそりょ次に行こうかな〜。 うん、行っちゃうよ〜。かにゃめまろかの第三スペル、発動〜っ!」


                      聖弓 『ラデーア・フレティア』


707 :東方魔戯歌伝 [saga]:2012/03/05(月) 11:15:08.02 ID:tHEUH+Ob0
霊夢「っ!?」

クリームヒルト「うわっ、大きい!?」

まどかが発動したのはクリームヒルトも良く使う魔力の弓を放つスペル。
だが、同じ弓矢の弾幕でもその内容は大きく違う。

まず見てすぐ分かるのはその大きさ。
魔力のチャージ時間が短いにもかかわらず、クリームヒルトが限界ギリギリまで魔力を込めた時のソレに匹敵する巨大な矢がその手に握られていた。
持っている弓もまた、クリームヒルトのモノより一回り以上大きく、荘厳な装飾があしらわれている。

霊夢「クリームヒルト!」

クリームヒルト「うん、分かってる!」

まどかが魔力の矢をつがえているうちに、霊夢とクリームヒルトは左右に散る。
矢の太さからして、まどかの正面に居るのは自殺行為であり、今のうちに誘導しておかないと、逃げ場がなくなってしまう。
念のために霊夢とは反対方向に飛びながら、クリームヒルトは後方で控えている早苗に呼びかける。

クリームヒルト「早苗さん、矢が行きますよ!」

早苗「把握してます! お二人は回避に専念してて下さい!」

まどか「行くよ〜っ! えぇいっ!」

矢を引く手が離され、今まで引き絞られていた弓が一気に反り返る。
クリームヒルトの弾幕より五割り増しほど速い速度で放たれた矢が向かうのは、霊夢の逃げた方だった。

矢が向かってくるのを認めた霊夢は、ふっと小さく笑みをこぼす。

霊夢「あら、私を狙うなんて、酔ってる割には良い判断してるじゃない……。 でも……」

真一文字に飛び抜ける矢は、そのまま霊夢に直撃するかと思われた。
が、次の瞬間、霊夢の姿はその場から消えている。

霊夢「私を捉えるにはやっぱり甘いわ」

亜空穴で一気に反対方向、即ち、クリームヒルトの逃げた側に移動した霊夢は、まどか目掛け御札と封魔針を撃ち返す。
一方のクリームヒルトも、短時間チャージで生み出した小さな矢を放とうとして……、後方から飛んできた早苗の声に身を翻す。

早苗「霊夢さん、クリームヒルトさん! 小型の矢が戻ってきますよ!」

早苗の声が聞こえた直後、さっきまで居た場所を光の矢がすり抜けていく。
どうやら『フィニトラ・フレティア』ではなく、『天上の矢』に相当するスペルだったらしい。
そんな事を思っていると、明らかに外れコースを辿っていた矢の内の数本が、ぐにゃりと向きを変えてクリームヒルトと霊夢の方を指向する。
708 :東方魔戯歌伝 [saga]:2012/03/05(月) 11:37:14.80 ID:tHEUH+Ob0

クリームヒルト「なっ!?」

霊夢「ちょっ、矢のクセにヘにょり特性持ち!?」

弓矢にあるまじき軌道を辿る弾幕に、流石の霊夢も上ずった声を上げる。
それでもどうにか矢の第二群を回避する二人だが、思わぬ方向から第三、第四の矢の大群が向かって来ていて、息を付く暇すらない。

早苗「今どうにかして道を作ります! ちょっとその場から動かないで下さい!」


                      開海 『モーゼの奇跡』


二人が苦戦しているのを察知した早苗がスペルを発動させる。
戦場を入り乱れるように飛んでいた矢が、早苗がスペルを撃った方向だけ一気に打ち消され、二人の目の前に道が生まれる。
他の矢が再度雪崩れ込んでくるより早く、クリームヒルトと霊夢は出来上がった裂け目を通り、一気に後退する。

霊夢「ナイスタイミングよ。早苗……。 それにしても、無茶苦茶やる神さまね……」

クリームヒルト「同感です。 流石に今回ばかりはやられちゃうかと思いました」

早苗「さて、これからどうします? 流石にこんなのを連発されたらどうにもなりませんよ」

同じ手は通用しなさそうですしね。 と言う早苗の言葉に自然と表情が硬くなる。
早苗のスペルの中でも強力な部類に入る『モーゼの奇跡』をもってしても、一時的に退却路を作るので精一杯だったのだ。
今後飛び出てくるであろうスペルに対して、マトモにやり合って避けきれるとは到底思えない。

???「避けきれないなら、真正面から対抗する、ってのはどうだ?」

???「まーた魔理沙はそんな無茶を言う……。 でも、やってみる価値はあるかも?」

クリームヒルト「っ!? 魔理沙さんにオクタヴィアちゃん!?」

背後から聞こえる茶化すような声と呆れ混じりの声。
聞き慣れた声に振り返ると、そこに居たのは想像した通りの二人の姿。
白黒の魔法使い――霧雨魔理沙と、蒼い人魚――オクタヴィアの二人がちょうど駆け付けた所だった。

魔理沙「おう、手伝いに来てやったぞ」

オクタヴィア「なんかすごい事になっちゃったねぇ……。 いや、話を大きくしたあたしが言えた立場じゃないんだけど……」

魔理沙は普段と変わらぬニヤニヤ顔で胸を張り、一方のオクタヴィアは申し訳なさそうに縮こまる。
事態は6月の異変の際の『ワルプルギスの夜祭』に匹敵する様相を見せており、この増援は嬉しい限りだ。

クリームヒルト「魔理沙さんもオクタヴィアちゃんもありがとう。 正直、私たちだけじゃキツくて困ってたんだ」

霊夢「言っとくけど、今回は生半可な覚悟でどうにかなる相手じゃないわ。 気だけは抜かないでね」

素直に謝意を述べるクリームヒルトと、釘を刺す霊夢。
正反対な二人の言葉に、魔理沙もオクタヴィアも表情を引き締める。

魔理沙「ああ、分かってる」

オクタヴィア「覚悟は出来てるよ。 相手はあの“まどか”だもん」

早苗「皆さん、そろそろ次が来るみたいですよ!」

支援役として、まどかの動向を窺っていた早苗が声を上げ、全員がそちらに向き直る。
既に無茶苦茶なレベルに達しつつあるまどかの次なるスペルが、如何なるモノになるのか、予想出来る者は、誰一人としていなかった。


709 :東方魔戯歌伝 [saga]:2012/03/05(月) 11:42:34.01 ID:tHEUH+Ob0
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

神奈子「ふむ、田畑への結界はこんなもんで大丈夫かな……」

諏訪子「うん、流れ弾ぐらいならコレで充分なんじゃない?」

突貫工事で造り上げた結界を見上げつつ、二柱は額の汗を拭う。
畑の周りを御柱で囲い、そこに二柱の神力でもって障壁を構築したのだ。

一仕事を終え、神奈子はまずため息を一つついて……、次の瞬間、戦場となっている会場を見つめて動かない、もう一人の神――洩矢諏訪子の方に向き直る。

神奈子「さて諏訪子、これからどうするんだい?」

一言だけ故に簡潔だが、傍から見ると要領を得ない神奈子からの問い。
一見曖昧に見える問いだが、それが極めて真面目な話である事は、長い付き合いである諏訪子には声音だけで分かる。
だが諏訪子は、表情一つ変えることも、神奈子の方を振り向く事も無く、逆に聞き返す。

諏訪子「どうする、って言うと?」

神奈子「さっき分霊が呼ばれた時に言ってしまったんだろう? 加勢に行く、って……」

諏訪子「うん、確かに言ったね……」

それはつい先刻の話。
クリームヒルトの危機に早苗が諏訪子の分霊を降ろした時、諏訪子が分霊を通じてクリームヒルトに言った一言だ。

神奈子「諏訪子も分かってるんだろう? 今回の弾幕戦は単なる酒乱とは訳が違う事くらい」

諏訪子「そりゃ、あれだけ色々と抱え込んで、根をつめてれば、一目で分かるよ。 あのままじゃマズい、って事もね」

思えば6月の異変の時も、8月の事件の時も、彼女の半身である“あの子”に、同じような傾向が見られている。
魔女と概念と言う違いはあれど、根っこの部分は変わらないようだ。

いや、いずれにしてもほぼ直前まで、妖怪は愚か神にも縁の無い、ごくごく普通の女子中学生だったのだ。
思い詰めるな、と言う方が無理な話だろう。

神奈子「ああ、アレは出しきらせないと、あの神さま、早々に潰れるね。 或いは反動で堕ちるかもしれない。 諏訪子はそれでも加勢に行くのかい?」

諏訪子「私の答えは変わらないよ。 かわいい早苗たちを放ってはおけないし、それに……」

神奈子「それに?」

諏訪子「新米の神さまに、“神遊び”のやり方、って言うのを伝授してあげないとだしね」

「永い付き合いになりそうだし、餞別代わりにね」と言いつつ、振り向いた諏訪子は笑ってみせる。
その言葉に神奈子もようやく表情を崩す。

神奈子「ならついでに、酒の飲み方も伝授して来ることを勧めるよ。 酒が入る度にこの騒ぎじゃ、身が持たないからね」

諏訪子「りょーかい、それじゃ、行って来るよ〜」

そう言うと、諏訪子はぴょんとその場から飛び出した。


710 :東方魔戯歌伝 [saga]:2012/03/05(月) 12:07:55.31 ID:tHEUH+Ob0
マズイマズイ、投下中に少し寝落ちしてた……。
やっぱ夜シフト明けはキツイ……。

まど神「あ、あれ? なんかシリアスっぽくなってきた?」

おや?コレが御所望の展開じゃなかったの?

まど神「いや、だってどう見たってあの導入からこの展開って……。
    こう見えて私、ちゃんとした“概念”なのに他の神さまからも心配されてるし……」

言っとくけど第二部(焔環神)からぼちぼち伏線は張ってあったからね?
少なくとも俺は張ったつもり。

まど神「またそんな他力本願な……」

未熟なのは重々承知してます〜。
とりあえず今日はここまで、次回はいつになるかな〜?
とりあえず>>703さま、こんな場末の戯言に付き合っていただきありがとうございました。

まど神「うん、感謝するのはいいけど、仮にも作者なら本編投下で返そうよ。 目指せ日刊投下!」

うん、それ無理。
あと〆よろしく。 俺はこれから寝……

まど神「ハイパーまどかビーム!(意訳:お休みなさい)」

って、ちょ、おまっ、それじゃ永み……(ピチューン!
711 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/05(月) 15:24:07.22 ID:1su21SYDO
本編来たー!!感謝っ!
まど神さまぁ〜、夜勤明けで疲れてる>>1さんに対して容赦が無さ過ぎますよ!

スペカ案を使っていただき、どうもありがとうございます。 しかしマミさんのが依然として浮かんで来ませんね…。
712 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/09(金) 16:28:36.58 ID:OaVsj/wDO
チャリーン (博麗神社に賽銭を入れる音)
713 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/09(金) 21:21:09.19 ID:JmZUWueDO
>>712
うちゅうのほうそくがみだれる!
714 :1@携帯 [saga sage]:2012/03/09(金) 23:49:31.60 ID:NVscCKYDO
>>712-713

まど神「ああっ!円環の理が!? 私の願いで創った世界がまさかこんな些細な事で終わるなんて……」

クリームヒルト「概念の私! しっかりしてよぉっ!」

幽々子「幻想郷もこれまでのようね……」

紫「案外呆気ないものねぇ……」



霊夢「アンタたちねぇ……。 いっぺん本気で死んでみる?」ズゴゴゴゴ……

早苗「霊夢さん!抑えて抑えて!」

魔理沙「その霊力は洒落にならんからマジで止めろ!」


うん、このネタはすぐに拾わないといけない気がしたんだ。
書き溜めに戻りますね。
715 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/10(土) 15:52:12.15 ID:QPkevc9DO
まさかお賽銭を入れただけでこんな騒ぎになるとは、微塵も思ってませんでしたな…(^^;

しかしすぐ拾ってもらったのに反応が遅くてすみません。
716 : [saga]:2012/03/12(月) 21:11:44.32 ID:OyTazF4p0
動画版更新
魔理沙が主役やってるEXステージ対ロベルタ戦
http://www.nicovideo.jp/watch/sm17231774

動画版円鹿目もそろそろ終わるなあ……。
本編執筆本気で頑張らないと……。
717 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/17(土) 19:52:12.48 ID:+5l5BgaE0
魔女化ほむら判明したな。
ホムリリーだってさ。
718 : [saga]:2012/03/19(月) 00:33:15.10 ID:uinCTF0W0
動画版『東方円鹿目』本編分、最終更新
http://www.nicovideo.jp/watch/sm17291594

正月明けから始まった動画版もコレにて一旦完結です。
第二部こと『東方焔環神』は素材その他の理由もありますので作成はだいぶ後になるかと、
SSスレなのに、動画版にまでお付き合い頂き、ありがとうございました。
暫らくはSS版本編の執筆に戻れると思います。お待たせしてしまいスイマセン。



おまけの駄弁り動画とかうpするかもだけど……。

>>717
いやー、ようやく胸のつかえがとれましたよ。
コレで安心して終われる。 いや、まだまだ全然書かないとなんですけど……、
719 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/19(月) 00:38:49.61 ID:PhSbDWQH0
がんばれ
720 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/19(月) 01:14:11.66 ID:QKjgnFmho
まってる
721 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/19(月) 08:38:55.77 ID:OKIlPkHDO
お疲れさんっ!
ダベり動画ねぇ…コメ返しとかもするのかねぃ?
722 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2012/03/20(火) 09:10:05.48 ID:efN8oCyVo
>>1
お疲れっす。
723 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) :2012/03/20(火) 19:34:54.74 ID:f/z5OQw+0
お疲れ様です 動画中々の出来でした

今度は 魔女達のテーマ曲を考えるのもありだと思います
勿論 アレンジですが?

>>1
724 : [saga]:2012/03/25(日) 12:45:59.23 ID:RMtsDo2a0
皆さんこんにちは
今日は動画版、では無く本編です。


※久々に独自解釈強めにつき注意!※

もしかしたら焔環神以上かもしれません。
725 :東方魔戯歌伝 [saga]:2012/03/25(日) 13:08:16.82 ID:RMtsDo2a0
―――――――――― 【その頃 @ 現世・見滝原市・巴マミ宅】 ――――――――――

紫「こんにちは」

そんな声が巴家の一室に響いたのは、休日の昼下がりの事。
たまの休みなので皆で昼食会でも……、と、暁美ほむらに佐倉杏子、それに連れ子の千歳ゆまを招いて、食卓を囲んでいた時の事だった。

囲んでいた食卓の真上に突如として現れた女性に、少女たちは目を見張る。

ほむら「っ!?」

マミ「す、スキマ妖怪の八雲紫……さん?」

紫「あら?お鍋の最中だったのね。これは失礼したわ」

澄し汁を啜っていたほむらは思わずむせ込み、煮えていた肉と白滝を箸で掴もうとしてしたマミはその場で固まる。
突然の事態に鍋の煮える音以外の音が消える中、よく分かっていない様子でゆまが首を傾げる。

ゆま「えっと、誰……?」

杏子「ゆま、ちょっと下がってな。 おい、妖怪の元締めがこんなところまで来るとかどう言う風の吹き回しだよ? また面倒事か?」

マミ「ダメよ佐倉さん。決め付けは良くないわ」

変身こそしなかったが、得物の槍を具現化させた杏子をマミは手で制する。
むせたまま立ち直れないほむらや、杏子の反応に対し、その行動は幾分か落ち着いているように見えた。

紫「あら? 巴マミ、貴女はあまり驚かないのね?」

マミ「最近、似たような事があったばかりなので……」

紫「似たような事……? もしかして、鹿目まどかがここに?」

苦笑しつつそう答えたマミに紫は表情を険しくしながら問い返す。
紫の声音が若干だが低くなった事にマミも気が付いたのだろう、眉をひそめつつ頷く。

マミ「はい、そうですけど……」

ほむら「なっ!?まどかが!? 巴マミ、一体どういう事なのか説め……モガッ!?」

杏子「はいはい、抑えろ抑えろ、話が進まなくなるだろうが……」

まどかと言う言葉に外野が俄に騒がしくなったが、空気を読んだ杏子がすかさず押さえ込む。
当然だが、紫もこれをスルーした。
726 :東方魔戯歌伝 [saga]:2012/03/25(日) 13:11:28.63 ID:RMtsDo2a0

紫「成る程ねぇ……、どうやら思ってた以上に事態は深刻なようね」

マミ「一体何があったんです? まさか鹿目さんたちの身に何かが?」

一人考え込むような紫に、マミは思わず問い返す。
先日の一件から大して日が空いていない事から、そうとしか思えなかったからだ。

紫「あったと言うか起こりつつある、と言うべきかしら? 盆の一件のあとね、私はあの子にあるモノを渡したの」

杏子「あるモノ?」

紫「貴女たちが盆に落ちた裂け目と同じモノ。 幻想郷のカケラだと思って頂戴」

ゆま「マミお姉ちゃん、なんの話?」

紫と面識もなければ、盆の一件も知らないゆまが小声でそう尋ねてくる。
マミは鍋の載っていた携帯用コンロの火を止めつつ、ゆまに諭すように言う。

マミ「私たちの大切な友達の話よ。後でゆっくり話してあげるわ。 だから今は……ね?」

ゆま「うん、分かった」

そんな会話をかわす間にも紫の話は続いている。

紫「私はソレを“円環の理”の効力を弱めて魔法少女と魔女を一緒に救う為に持たせたのだけど、それが弱めたのは“円環の理”だけじゃなかったのよ」

杏子「? どういう事だ?」

紫「マミ、先日会った貴女も気付いているかも知れないけど、普通なら概念でしかないあの子は現世じゃ知覚出来ない存在なのよ。
  それが貴女の前に現れた。一個人の“鹿目まどか”として」

概念や常識と言ったモノは、その物が目に見える訳ではない。
その力の働きにより、他のモノに何らかの影響が出て初めて観測出来るのだ。
それがこの世の常識であり、理。

それは円環の理こと鹿目まどかも同様である。
彼女を知覚したければ、幻想郷のような世の理がねじ曲がっている場所に行くか、彼女と同格の存在――即ち神――になるしか手はない。
魔法少女を救う概念なので、死に目に会うことは出来るだろうが、その時点で人としては終わっている。
727 :東方魔戯歌伝 [saga]:2012/03/25(日) 13:15:32.81 ID:RMtsDo2a0

紫「元々ね。あの子はとんでもない歪みを抱えてるの」

ほむら「歪み?」

紫「まずはあの子、“鹿目まどか”が“円環の理”と言う概念でもある、と言う事」

マミ「?」

紫の言葉に、その場に居た少女たちは一様に首を傾げた。
紫の言った事の何処がおかしいのか、分からなかったからだ。

が、その反応は想定内だったらしい。
紫は大して気にした様子もなく、話を続ける。

紫「あの子は『全ての魔法少女を救う』と言う願いを叶えるために円環の理と言う“概念”になった。 “神”じゃなくて“概念”に……、
  それはね、願いを叶えるには“神”でも不足だったからよ。
  幻想郷で実際に見た貴女たちなら分かると思うけど、神さまだって万能ではないわ。
  気紛れだって起こすし、効力も毎回同じとは限らない。
  全てを“確実に”救うのに、そんな不安定な存在になったのでは不都合が出る。 だからあの子は“概念”になったの」

紫の説明にマミやほむらたちの脳裏に鍵山雛や八坂神奈子と言った幻想郷で出会った神々らの姿が過る。
確かにあそこで見たのは、失敗もすれば、贔屓もする、全能とはほど遠い姿だった。
そう考えると、紫の話も頷ける。

紫「で、問題はここからよ。全てを等しく救う為に不確定要素のない“概念”になった訳だけど、
  その際に『彼女自らの手で救う』と言う願いも反映された結果、“鹿目まどか”としての意識を有したまま、概念になってしまったのよ」

杏子「? それの何処が問題なんだ? 世界はまどかの願い通り改編されたんだから、万々歳だろ?」

紫「分からないかしら? 矛盾してるのよ。
  “円環の理”は意思のない概念で、救済を行う“鹿目まどか”は意思を持った少女なの。
  本来、相反する二つの存在が同一の存在になっているのよ。 結果、そこに齟齬が生まれるの」

紫「概念は確かに平等だけど、故にこの上なく残酷よ。 条件を満たせばすぐに作用するんですもの。 そこには情も贔屓も入る余地すらない。
  じゃあ、それを間近で見届けて“救済”をこなさなくてはならない“鹿目まどか”はどうなるかしら?」

マミ&杏子「「!」」

紫が何を言わんとしているのか、悟ると同時に、マミたちは息を飲んだ。
分かってしまったのだ。 概念になった“鹿目まどか”を襲ったであろう悲劇が、現在進行形で彼女に巣食って居るであろう病魔が……。

ほむら「……普通に考えたって苦行以外の何物でもないわね。 優しすぎるまでに優しいまどかなら尚更よ……」

万単位、若しくは億単位すら越えるかもしれない程の“救済”を行うと言うことは、それと同じ分の死に目に立ち合うと言うことでもある。
いくら自らが望んだこととは言え、普通なら発狂してもおかしくない所業である。
他人の事を思いやる事の出来る優しい彼女の事、その苦しみも人一倍だろう。

728 :東方魔戯歌伝 [saga]:2012/03/25(日) 13:18:56.17 ID:RMtsDo2a0

紫「さて、それじゃあそんなこんなで溜まりに溜まったであろう鬱憤をあの子は晴らせるのか、と言えばこれも否。
  鬱憤を晴らすどころか、そもそも鬱憤を抱く事すら出来ないからよ。 だってあの子は……、“概念”なんですもの」

紫「“鹿目まどか”がどれだけ鬱憤を溜め込もうとも“概念”と言う種族がそれを許さない。
  “概念”は鬱憤を抱くような存在ではない、と言うのが世の常識だから……」

もし仮にその鬱憤を一度でも自覚してしまうような事があれば、“鹿目まどか”は壊れてしまうだろう。
そうなってしまえば、同一存在である“概念・円環の理”もまた壊れてしまう。
だが、そうなってしまうとまどかの願いは果たせなくなってしまう。

紫「だからあの子は自身がとんでもない鬱憤を抱いて居ることに気付けない。 気付く事は即ち、全ての破滅だから……」

ほむマミ杏子「「「…………」」」

もはやほむらたちに言葉はなかった。
マミと杏子はまどかが抱えてしまったモノの大きさに、ある程度予感のあったほむらは、事態が想像以上に危機的であることに、それぞれ打ちのめされたからだ。

紫「ここで話は冒頭に戻るわ。 あの子がこれまで円環の理として役目をこなし続ける事が出来たのは、
  概念に自由意思なんかないと言う常識に、“鹿目まどか”の意志が抑え込まれていたから」

それが幻想郷と言う常識外れの異界を知り、スキマと言う常識を打ち消す手段を得てしまった事で、内包していた大いなる矛盾に気付く可能性を高くしてしまった。

更に、致命的だったのが、あの一件で、まどかが潜在的に抱いていた「本当に自分のしたことは正しかったのか?」と言う疑問を決定的なモノにしてしまった事。
これが円環の理と鹿目まどかのバランスを急速に崩す事になってしまったのだ。

紫「あの子が即時効果性の高い概念でありながら、二ヶ月もの間、幻想入りした魔女たちを放置したのは、幻想郷に効果が及んでいなかった事もあるでしょうけど、
  本能的に自身の危ういバランスを崩しかねない場所だと感じ取っていたからだと、私は思っているわ。 あの子にとって幻想郷は開けてはならないパンドラの箱だった」

マミ「それじゃあ、この間鹿目さんが家に遊びに来たのは……」

紫「潜在的な不安の顕れよ。今までの状態が長かったお陰で色々なモノが麻痺していたからその程度で済んだけど……」

予想通りの返答にマミは胸が苦しくなるのを感じた。
あの晩、笑顔で訪ねてきた少女は、その笑顔からは想像も出来ないほど深い傷をその心に抱えていた。
ほむらでも杏子でもなく、自分の家にまどかが来たのは、本能的に先輩であるマミに助けを求めていたからに違いなかった。

ほむら「それで、まどかは今何を?」

紫「溜まりに溜まった鬱憤を一気に爆発させて現在進行形で大暴れしてるわ。 幻想郷流のやり方で」

マミ「え゛っ!?」

幻想郷流のやり方、と言う言葉にマミは思わず声をあげる。
幻想郷流とは即ち、弾幕戦の事だ。
そして、先日、まどかがマミの元を訪ねてきた理由もまた弾幕戦に関することだった。と、言うことは……?

マミ「…………」

マミが一人青くなっているとは知らず、紫はほむらたちに現状を語る。
729 :東方魔戯歌伝 [saga]:2012/03/25(日) 13:22:14.25 ID:RMtsDo2a0

紫「幸い、何となくムシャクシャした、程度の認識でしか無いようだけど、色々な意味で危ないのは事実ね」

杏子「で、そんな状況でアンタがここに来た、って事は……」

ほむら「私たちの力を貸して欲しい、と言ったところかしら?」

方や具現化させたままの槍を掴み直しながら、肩や自身のソウルジェムに手を添えながら、杏子とほむらは腰を浮かせる。
が、紫から返って来た答えは、二人の想像したようなモノではなかった。

紫「当たらずとも遠からず、ってところね。 貴女たちにはね、アフターケアをお願いしたいのよ」

杏子「なに?」

紫「今回の一件だけなら私たちだけで対処出来なくもないわ。
  でもね、あの子が今日の一件から立ち直って、もとの“円環の理”としての日々に戻った後、
  あの子を支えてあげられるのは外の世界に居て、尚且つあの子の存在をきちんと認識している貴女たちだけなの」

そこで紫は一旦言葉を区切ると、ほむらたち三人を順繰りに見やる。
紫のお願いの内容が、現状への対処と同等か、それ以上に重要な事であると伝わったのだろう、話を聞く三人の表情は真剣その物だった。
その表情を確認して、紫はふっと微笑む。

紫「貴女たちはね、永い時を概念として過ごすあの子にとってのオアシスなのよ。
  だから、色々と無理をしがちな神さまが来た時は、優しく出迎えてあげて欲しいの」

杏子「なんだ、そんな事か……、そんな話をしにわざわざ来るなんてアンタも結構世話焼き……」

紫「因みに対応を間違えたら世界滅亡もあり得るから注意してね?」

話が終わると同時に、わざと茶化すようにぼやいた杏子に、紫はすかさず釘を刺した。
刹那、一瞬だけ緩みかけた空気が見る見るうちに凍りつく。

杏子「…………」

ほむら「それは確かに責任重大ね……」

紫「そういうこと、だから頑張ってね? 現役魔法少女の皆さん?」

爆弾発言に今度は杏子やほむらの顔が真っ青になったのを見て、今度は紫が茶化すように言う。
そんな紫におずおずとした様子でマミが話しかける。

マミ「えっと、紫さん? ちなみになんですけど、この間の私の対応は……」

紫「ああ、アレなら問題無いわ。 なんで概念が〜、みたいな対応をとっていたら、その場で終わってたけど……」

マミ「…………」

返ってきた答えにマミは聞くんじゃなかったと、今更ながら後悔した。



730 :東方魔戯歌伝 [saga]:2012/03/25(日) 13:29:30.26 ID:RMtsDo2a0
―――――――― 【概念の少女と救済の魔女 @ 人里近くの田園】 ――――――――

霊夢「あの神さまが慈悲深い、って絶対冗談でしょ!? 分身した上で全員が違う弾幕を撃ってくる、って鬼畜以外の何者でもないわ!」

飛んでくる数々の弾幕をかわしながら、吐き捨てるように霊夢が声を上げた。
まどかの新たなスペルは4体の分身を作り出し、まどか本人と合わせて5人で多種多様な弾幕を放つという厄介なものだった。

霊夢の漏らした愚痴に、回避と反撃を繰り返していた魔理沙も舌打ちする。

魔理沙「それも魔女たちの使い魔と違って耐久力も上がってるしな。 紙装甲だった分、使い魔の方が気楽だったぜ」

早苗「容赦なく問答無用で昇天させてあげる、って言う点では慈悲深いかもしれませんね。 迷惑極まりない慈悲ですけど……」

オクタヴィア「アンタたちねぇ……。 仮にもその半身が居る前でよくもまあそんな遠慮のない台詞を吐けるわね……」

クリームヒルト「あはは……、概念の私の弾幕が無茶苦茶なのは事実だし、仕方ないよ……」

ずけずけと言ってのける早苗たちにオクタヴィアが苦言を呈する脇で、クリームヒルトは乾いた笑いを漏らす。
どちらも事実であり、まさしく板ばさみ状態と言っても良いクリームヒルトの胸中は複雑だ。

魔理沙「で、どうするんだ? このまま全員でアレに付き合い続けるのはごめんだぜ?」

オクタヴィア「それはアタシも同感。 弓と銃と剣と槍と時間操作の同時攻撃なんか相手にしてられないよ」

人数的には拮抗しているとは言え、状況は芳しいとはいえない。
酔いや、弾幕戦に慣れていないなど、様々な要因が重なってどうにか対抗出来ているが、誘導ミスや連鎖事故などを考えると放置して良い状況ではない。
少なくとも今のように全員が纏まったままで戦い続けるのは愚策と言えた。

早苗「なら、手分けするしか手は……」

魔理沙「私は銃使いな」

オクタヴィア「じゃああたしは剣士のまどかね」

霊夢「仕方ないから槍使いの相手をしてあげる」

早苗「…………」

早苗の出した提案に、待っていましたと言わんばかりに飛び出していく霊夢たち。
出汁に使われた上、残り物を押し付けられた形となった早苗は思わず絶句する。

言葉を失ったまま肩を震わせる早苗を見て、残っていたクリームヒルトがおずおずと提案する。

クリームヒルト「あの、早苗さん? 私が時間操作の相手をしましょうか?」

クリームヒルトの言葉に早苗は一瞬だけ顔を輝かせたが、ぐっと堪える様な仕草をすると、笑顔で首を横に振ってみせる。

早苗「いえ、そのお気遣いだけで結構です。
   クリームヒルトさんは弓使いのまどかさんの方をお願いします。 弓使いには弓使いが当たった方が効率的でしょうから……」

クリームヒルト「すいません。 何かあったらすぐに駆け付けますから!」

時間操作まどかに挑むべく飛んで行く早苗の背中にそう声をかけながら、クリームヒルトは弓使いのまどかの方に向かう。
他の場所では既にそれぞれのまどかと、幻想の住人の戦いが始まっている。
731 :東方魔戯歌伝 [saga]:2012/03/25(日) 13:35:19.73 ID:RMtsDo2a0


まどか(砲撃)「ティロ・フィナーレ!ティロ・フィナーレ!ティロ・フィナーレぇぇっ!」

魔理沙「ナロースパーク、ダブルスパーク、ファイナルスパークっ!」

――開始早々、大技の撃ち合いに突入している魔理沙。



まどか(剣術)「ウェヒヒ、どうかなさやかちゃん? ありとあらゆる魔法少女の剣術を見てきた私の剣捌きは?」

オクタヴィア「ふん!まどかにしてはやるじゃん。 でも、圧倒的に足りてないよ、経験が!」

――目にも止まらぬ速さで繰り出される斬撃を的確に捌きつつ笑ってみせるオクタヴィア。



まどか(槍)「行くよ〜、ロッソ・ファンタズマ!」

霊夢「アンタねぇ……、どれだけ分身すれば気が済むのよ……? とは言え……」

霊夢「多節槍使いだと(種も仕掛けも)分かってる相手に真正面から付き合ってあげる程、私はお人好しじゃないの」

――分身を使って四方から攻撃を仕掛けようとする相手に対し、強力な結界でもって攻撃その物を弾き返してみせる霊夢。



まどか(時使い)「そ〜れ、ここで巻き戻し!」

早苗「させません! 妖怪退治『妖力スポイラー』っ!」

――時間を操る時計が効果を発揮する直前に弾幕ごと吸収してみせる早苗。



自身の得意分野でもって一人一人に確実に対応すると言う作戦は現状を見る限り成功と言えた。

クリームヒルト「私もやることをやらなくちゃ! まずは……」

前を向きつつ、クリームヒルトは弓使いのまどかを見据える。
酔いのせいか、上気しているのか、その頬は紅く、瞳はトロンとしている。

まどか「ウェヒヒ、来たね。魔女の私……、その実力、見させてもらうよ」

クリームヒルト「っ!?」

一瞬にして生み出した多数の矢を、まどかは弓につがえずに放射状に発射した。
弓から放たれた時ほどの威力は無いが、手数が多い分、避ける側としては厄介だ。
襲い来る矢の第一波をくぐり抜け、クリームヒルトは弓を構える。

クリームヒルト「輝弓『フィニトラ・フレティ……っ!?居ない!?」

が、弓を向けた先、先刻までまどかが居た場所には、既に誰の姿も無かった。
慌てて辺りを見回すクリームヒルトの背後から、からかうような声が飛んでくる。
732 :東方魔戯歌伝 [saga]:2012/03/25(日) 13:40:36.12 ID:RMtsDo2a0

まどか「何処を狙ってるの? 私はこっちだよ?」

クリームヒルト「くっ!?」

弾幕戦的な勘で、クリームヒルトは振り向くより早くその場で身を翻す。
次の瞬間、クリームヒルトの脇ギリギリのところを矢が掠め抜けていき、勘が正しかった事を裏付けた。

まどか「うわっ、今のを避けちゃうんだ。 凄いね、魔女の私」

クリームヒルト「ティヒヒ、幻想郷のみんなにお稽古してもらってるからね。 私だって、いつまでも素人じゃないよ」

他のみんなと比べればやっぱり素人なんだけど……、と言う言葉は口に出さずにしまい込む。
戦いの中での効果的な虚勢やはったりの使い方も、クリームヒルトが学んだ事のひとつだ。
そう言う意味では現世に居た頃の自分、つまり魔法少女だった頃の自分は、色々な意味で未熟だったと言える。

まどか「ホント、魔女の私は楽しそうだね……。 色々な人たちに囲まれて、一緒の時を過ごして……、それに比べて私なんか……」

クリームヒルト「? 概念の……私?」

それまでの笑顔が嘘のように肩を落として俯くまどかに、クリームヒルトも思わず顔をしかめた。
下を向いている為、表情こそ見えなかったが、その言葉には寂しげな響きが混じっているように思えたからだ。

まどか「私の周りに居るみんなはいつも『ありがとう』って言って笑うんだよ? 魔女になるのを防いだだけで、死なせちゃった事に変わりはないのに……」

クリームヒルト「っ!」

自嘲気味に呟かれた一言に、クリームヒルトは息を呑む。
弾幕どころか弓の具現化すら解いたまどかがその場に膝を付く。 と同時に光るモノが一つ、その頬を伝い、零れ落ちる。

まどか「最近色々な事が辛いの。 だって私、何も出来ないんだよ?
    さやかちゃんだって生かしてあげられなかったし、マミさんや杏子ちゃん、ほむらちゃんでさえ死ぬ運命は変えられない。
    私はそれを迎えに行くだけ……。 行って『お疲れ様』って声をかけるぐらいしか、私には出来ないの」

ポツリポツリと独白するまどかを見て、クリームヒルトは悟る。
今のまどかは、魔女異変の頃や、お盆の事件の時の自分自身と同じなのだ。と……、
色々な事を抱えて、どうしようかと考えて、それでもどうにもならないから抱えて、抱え込みすぎて、とうとう耐え切れなくなってしまった。 あの時の自分と……、

まどか「さやかちゃんなんか、昔と変わらず接してくれるし、みんなも私に良くしてくれるよ。
    けれど、私はそんなみんなを見ている方が苦しいの。 他にやれた事があったんじゃないか?って考えちゃうの。
    “魔女”の件でも最善だと思って間違っちゃった私だよ? さやかちゃんやみんなの事だって間違ってない保障が何処にあるの?」

あの時は幽々子やほむらと言った多くの人に助けてもらった。
相談や愚痴だけでは収まらず、色々な方面に迷惑をかける結果となってしまったが、助けてもらったお陰で、致命的な破局には至らずに済んだ。
反省すべき事も多かったが、得たモノもまた多かったとクリームヒルトは思っている。

ならば、今この場でやるべきことは唯一つ。

733 :東方魔戯歌伝 [saga]:2012/03/25(日) 13:44:58.92 ID:RMtsDo2a0

クリームヒルト「…………間違っても、良いじゃない」

まどか「え?」

持っていた弓を捨て、一歩踏み出す。
膝立ちのままぽかんとしているまどかに一歩、また一歩と近づいていく。

クリームヒルト「お盆の事件の時、紫さんが言ったんだってね? 『これからの行動で』って……。
        まだ私たちには先があるんだよ? やり直す機会も償う時間もまだまだたくさん残ってる。
        どうしようもない間違いを犯しちゃった私だって、今はこうして幻想郷でやり直してる。
        だったら、貴女にも出来ない訳がない。 だって“貴女”は“私”なんだもん! 私と同じ、“鹿目まどか”なんだもん!」

まどか「っ!?」

言いながらクリームヒルトはまどかの身体を抱き締める。
抱き締めた身体は、衣装の荘厳さとは打って変わって華奢で、こんな身体一つで皆を救っていたのかと今更ながら驚く。

クリームヒルト「それに私は、貴女がやった事が間違いだなんて思った事は一度も無いよ。
        貴女の祈りで、現世から消されなければ、私たちは幻想郷(ここ)には来れなかった。
        幻想って言う救いがあることも知らずに、一生世界を呪って過ごしてたと思うの。 間違いなく貴女は、私たちを救ったんだよ?」

クリームヒルトの言葉にまどかは目を見開く。
驚きと嬉しさと、色々な感情が入り混じったその瞳を、クリームヒルトは真っ直ぐ見据えながら自信を持って断言する。

クリームヒルト「貴女のやった事は間違いなんかじゃ、決してない。 他の誰がなんて言っても、私は間違いだなんて思わない。 これまでも、そしてこれからも!」

強い口調で言い切ったクリームヒルトは、それからふっと微笑んでみせる。
その表情を見て、まどかも目尻に涙を浮かべつつ、微笑み返す。

まどか「てぃひひ、ありがとう、そう言ってくれて……。 ねぇ、魔女の私……」

クリームヒルト「なに? 概念の私?」

まどか「私ね、やっぱり怖いの。 私自身が、私のこの能力(ちから)が、いつか皆を傷つけちゃうんじゃないかって、
    そんな事ばかり考えちゃって、不安で不安で堪らなくなるの。 だからお願い、私の中の不安、吹き飛ばしてくれないかな?」

それは多くの魂を独りで救ってきた少女が見せた僅かばかりの甘え。
現実に縛られ続けた神さまが、幻想を生きる半身にひと時の夢幻を見せて欲しいと言うささやかな願い。

まどかが漏らした願いに、クリームヒルトは首肯する事で答えとする。

クリームヒルト「わかった。 その不安、私が……、私たちが、全部受け止めてあげる。 “全てを受け入れる”この幻想郷で!」



734 : [saga]:2012/03/25(日) 13:58:13.26 ID:RMtsDo2a0
本日分投下終了。
さあ後は気が済むまで弾幕戦じゃ!

まど神「なにこの空気? 歌えや騒げの番外編じゃなかったの?」

う〜ん、どうもまど神さまの事を考えるとシリアスになるらしい。
更に言うと幻想郷との相性も悪いっぽい。
だって、まど神さまって、見るからにムチャシヤガッテなんだもん。

まど神「そんなに私って頼りないかなぁ?」

頼りないと言うよりその上に掛かる荷重が酷すぎる。
まど神って、SSだと度々フリーダムだったり、変態淑女だったり、ラスボスだったりするだろ?
それってやっぱり、皆もその辺が気になってるからだと思うし……、ぶっ壊れなきゃやってらんない、って感じ。

まあ何はともあれ胸のつかえは吐き出したんだ、後は弾幕祭りじゃ!

まど神「ちなみに次回の投下予定は?」

ゴメンナサイ、未定です。スイマセン……orz
735 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/03/25(日) 14:04:53.30 ID:aBmC1Ttq0
ほむ達三人の魔女の弾幕戦をやってくれぇ
736 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/03/25(日) 14:05:30.30 ID:aBmC1Ttq0
忘れてた乙
737 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/25(日) 17:03:50.73 ID:Xy1fJ0BDO
まど神様慰安回、超お疲れ様ですっ!!
まど神様よ…戦隊弾幕なんてマジで鬼畜過ぎっすよ!!しかも更にロッソとか!それ対多数でなきゃ絶対に使わないで下さいよ!?

そっか…まど神様が抱え込んでいたのは、矛盾による軋轢と、正しさへの悩みだったんですね…。でもそれは、普通の人間だって、みんな持って生きてる。って事は、まど神様…違う次元を生きてても、貴女は…紛れもなく人間だ!みんなと…一緒なんだっ!
738 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山形県) [sage]:2012/03/26(月) 18:34:10.13 ID:gB45Pq2e0
一歩間違えるとカミーユみたいになりそうだったってか
739 : [saga sage]:2012/03/26(月) 22:35:07.75 ID:7gp79iGV0
『東方円鹿目』ラスト動画、と言うか>>323辺りの楽屋裏動画
http://www.nicovideo.jp/watch/sm17368304

『制服立ち絵使いたかっただけだろ』とか
『ほむマミ杏子の立ち絵が使いたかっただけだろ』とか色々言われそうだけど……

ああそうだよ! その通りだよ!


まあいずれにしても次に動画を作る時には『東方焔環神』です。
色々障害があるので、まだ作るかどうか未定だけど……、

と言うかまど神さまの立ち絵を誰か作って下さい。お願いします。

クリームヒルト「まさか障害って概念の私の立ち絵……なの?」

筆頭はね。
まどかたちのフリー立ち絵の時点であっただけ奇跡的なのに、表情差分のあるまど神立ち絵とか最早無理ゲーでしょ。

まど神「本編で珍しく持ち上げられたと思ったら……、コノアツカイッテイッタイ……」ズーン
740 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) :2012/03/28(水) 08:33:20.38 ID:8ms9UzOAO
更新乙です!
クリームヒルトとまど神様の会話シーンで挿入されるBGMはやはり『神々が恋した幻想郷』でしょうか?
741 :1@携帯 [saga sage]:2012/03/29(木) 06:08:40.59 ID:E6h/lwuDO
>>740
ん〜、『神々が恋した幻想郷』はいい曲なんですけどねぇ……、
何だろう、厚い雲に覆われていた空に徐々に日が差すイメージなので、ちょっとイントロが強過ぎるかなぁ?


まったく個人的なイメージで挙げさせて頂くなら。
まど神さまの独白辺りから通しで、『天空の花の都』か旧作だけど『不思議の国のアリス』
或いはクリームヒルトちゃんの台詞から『東方緋想天(全人類ノ天楽録版)』辺りを挙げてみます。
その前の弾幕戦で何の曲をイメージするかで変わると思うけど、宜しければ参考に
742 :本編の途中ですが>>1が番外編をお送り致します。 [saga]:2012/04/06(金) 20:01:40.02 ID:rHu3w5YDO
――――――――――――【幻想郷・キャンデロロの家】――――――――――――

オフィーリア「ん? なんだ、もう無いじゃん……。 キャンデロロ、お茶のお代わりがないぞ」

キャンデロロ「あらごめんなさい。 すぐに持ってくるわ」

オクタヴィア「ちょっと、少しは自分で動きなさいよ」

オフィーリア「良いだろ、今日は客として招待された身なんだし……」

オクタヴィア「だからってアンタねぇ……」

クリームヒルト「まあまあ落ち着いてオクタヴィアちゃん。 それよりこのケーキ、本当に美味しいよ」

ホムリリー「クリームヒルト、頬にクリームが付いてるわ」フキフキ

クリームヒルト「んっ……、ありがとう、ホムリリーちゃん」ティヒヒ

ホムリリー「これくらいお安いご用よ」ウフフ…

オクタヴィア「あー、もう、この二人は……、ん?なんだろう結界に乱れが……」


                      クパァ……
                      〜スキマオープン〜


ほむら「ちょっと失礼するわよ」

ホムリリー「あら? だれかと思ったら魔法少女の私じゃない……」

クリームヒルト「一人で幻想郷(こっち)に来るなんて珍しいね。 今日はどうしたのほむらちゃん?」

ほむら「ちょっと、大変な事になってしまったのよ……」


743 :本編の途中ですが>>1が番外編をお送り致します。 [saga]:2012/04/06(金) 20:09:12.29 ID:rHu3w5YDO

平和な昼下がり、その事件は起こった。



ホムリリー「なんですって!? 概念のまどかが!?」

クリームヒルト「記憶喪失……?」



まどか「…………」ぽけ〜

永琳「これは病気とか怪我の類いではないわね。 呪いによる記憶喪失よ。
   いつからこうなってしまったの?」

ほむら「それが、いつも通り救済に行って、帰って来たと思ったら……」

鈴仙「となるとこれは妖怪……、もとい魔女の仕業ですかね?」

永琳「恐らくそうでしょうね。 いずれにしても呪いの詳細が分からないと治しようがないわ」

ほむら「そんなッ!?」



キャンデロロ「それじゃあ、鹿目さんは当分このままなの?」

オフィーリア「おいおい、どうするんだよ。 まどかがダメになると円環の理もダメになっちまうんだろ?」

紫「その件について、一つ提案があるのだけど」ババーン!

クリームヒルト「っ!? 紫さん!?」

紫「救済の魔女、クリームヒルト、貴女ちょっとだけ、“鹿目まどか”になってみる気はない?」




円環の理こと、鹿目まどかが記憶喪失に!
世の理を保つ為、救済の魔女はスキマ妖怪の手を借り、仲間と共に調査へと乗り出す!



魔理沙「へっ、久々に解決し甲斐のありそうな異変だな!」

早苗「勘弁して欲しいんですけどねぇ……。 私たち、もうそんなに若くないんですよ?」

霊夢「とかなんとか言って、フル装備で一番やる気なのはアンタじゃない……」

早苗「あっ、バレました?」

幽々子「あらあら、年が気になるなら人間止めちゃえば良いじゃない。 楽しいわよ、亡霊ライフも……」ウフフ…

妖夢「さらっととんでもない事を言わないで下さい、幽々子さま!?」ミョーン!



地球外からの魔女と、幻想が交差するとき、新たなステージがその幕を開ける。

                      劇場版『東方円鹿目』 〜概念代行編〜




の連載予定はありません。
744 :1@携帯 [saga sage]:2012/04/06(金) 20:20:13.29 ID:rHu3w5YDO
うん、ゴメン、とあるスレを読んだら妄想が広がり過ぎてつい書いちゃった。
いえ、ちょっと電波を受信しちゃったんですよ。或いは魔女の口づけでも良いけど……。

裏ボスらしいし、魔女と魔法少女の境界操作で、一度はダークサイドに堕ちた主人公が〜、とか良い感じしない?
ああ、しませんか、それは失礼しました。


すいませんでしたッ!
本編も書いてるので勘弁して下さい。オネガイシマス!orz
745 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/06(金) 20:49:15.53 ID:JidxRjyi0
>>744
続きはまだかね?(殴
746 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/06(金) 21:07:05.18 ID:30sIRzYDO
遅めのエイプリルフールかい?まぁ、個人的には続いて欲しいけどね。
747 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/04/06(金) 23:00:09.77 ID:jexEAzqJo
現シリーズが終わったあとで始める次回作の予告か。

クリームさん・オクタヴィアさんは円鹿目序章で容姿が描写されてるけど、
キャンデロロさんとオフィーリアさんとホムリリーさんはどういう容貌になるんだろう。

クリームさん同様に魔法少女姿のまま? オクタちゃんの人魚形態のごとく、半人半妖?
748 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2012/04/07(土) 01:54:36.11 ID:jlszyxDAO
>>747
個人的にはキャンデロロさんは服装が変わっててオフィーリアたんはポニーテールがメラメラしてるイメージ。
ホムリリーはまどか同様に黒くなった魔法少女姿かな。
749 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 01:56:59.56 ID:SWvbKeKFo
今最初から全部見たけど面白かったわ〜
ただ途中ででてきた概念のまどかがかわいそうになったけど
750 :1@携帯 [saga sage]:2012/04/07(土) 08:33:54.06 ID:XF/+PiODO
あ……れ? 夜シフト明けて見たらなにこの反応?
もしかしてもしかしなくても逃げ道塞がれた?((((゜д゜;))))

>>748
個人的なイメージもそんな感じです。
強いて言うならホムリリーちゃんに魔女帽子を追加かな?

>>749
まど神さまって正直どんな存在でどんな生活なんだろう、と真面目に考えたらこうなりました。
考えてたこっちのSGがマッハで濁りましたとも。どうすりゃ良いの?って感じで……、
結果は取り敢えず鬱憤だけでも吐き出させる、と言う対処療法になりました。
「まど神頑張れマジ頑張れ、愚痴とやけ酒なら付き合うぞ」が紫や神奈子たちの立ち位置です。

そして俺は本編の執筆頑張るぞ、と……
751 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/08(日) 19:25:14.72 ID:KyYfFw4DO
魔女達の容姿より、三十路代を迎えた東方自機勢の皆さんの近況の方が気になる訳なんですが?見た目とか、お子さんがいらっしゃるのかとか、そんな素敵な奥様を得た羨ましい旦那さんはどんな人なのかとか。
752 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/12(木) 17:58:55.54 ID:WtLuDlsDO
ニコ動で、早くもキュウべえが幻想入りしちゃってますね。どういう話しになるんでしょうな?
753 :1@携帯 [saga sage]:2012/04/12(木) 22:25:15.06 ID:t3waT4ZDO
>>752
まさかと思って検索したら本当だったw
ネタかぶりが怖いから見てませんが……、

因みに本作では彼の幻想入りはありません。現実で手一杯のようです。
まあ改編後だから害はないけど、魔女たちから謂れのない風評被害でフルボッコだろうからその方が平和でしょうしね。


>>751
う〜ん、なんと言うかそこに触れると荒れそうだなぁ……、と言うか俺が荒れる。
取り敢えず一つだけ言うなら、現人神の血筋はしっかり受け継がれました。って事くらいかなぁ……
後はご想像にお任せします。 一発ネタなので
754 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/04/14(土) 00:49:52.72 ID:grUmMx3to
一休み、一休みということで1から読み返してきました。
最新の投下分でおやっ?と思う部分があり再度読み返したら……、

>>550の設定もごっちゃになっている?
755 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2012/04/14(土) 18:18:18.52 ID:yEBgkY6Go
ttp://2ch-ita.net/upfiles/file2012.png

支援絵というかなんと言うか・・・
ふと思いついたのでやってみたっていう

細かいところは見ないでマジで
756 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/14(土) 23:46:20.51 ID:UOzDwQaDO
>>753
キュウべえの幻想入りに関してですが、たぶんネタ被りはして無いと思いますよ。

違いとしては↓
・キュウべえが主人公!?(JBも出て来たが、母星で待機中)
・とりあえずの目的は魔女からのGSの回収らしい。
・今の所出ているヒロイン?東方キャラ…華扇さんと聖様。二人共、魔女避けという布(梵字?が一文字書かれている)で目隠しをしている。魔女に気付かれなくなるとか(QB以外が触るとバレるらしいが)。救う為で、戦いたくないかららしい。
・他の東方キャラも救済や退治に繰り出している様子。
・魔女は普通に魔女として登場。初登場は太陽の塔の様な魔女で、QBが魔女の隙間(そんなんあんのか?)から侵入、無事GSを回収した。結界が解けた後に出て来た魂の抜け殻は、ゆのちゃんみたいな娘だった。
・現時点では、ほむらちゃんと杏子ちゃん(多分、他にも来ている)がナチュラルに幻想入りしてた様子。QBの目的と魔法少女の全て(改変前)を流布したみたいです。
・QBは幻想郷の少女に興味(契約と絶望的な意味で)がある模様。
・聖様に、紫様と霊夢から自分の存在を匿って欲しいと頼む。

と、現状はこんなところみたいですよ。
757 : [saga]:2012/04/16(月) 07:23:10.54 ID:wnHtsDWY0
かな〜り、お待たせいたしました。 本編投下です。
展開変更などがあったので遅くなりました。スイマセン。

>>754
そこに気付くとは、やはり天才か……

実はまどかの笑い方には深い意味があります。
通常、まどか=「てぃひひ」で、クリームヒルト=「ティヒヒ」なんですが、
“酒に酔った後の”まどかに関しては『ウェヒヒ』になってます。

本来は平仮名のように優しく柔らかく笑うまど神さまが、酒に酔って暗黒神的な笑みを浮かべている、と言う表現です。
この笑みを浮かべるまど神さまは歯止めの利かない暴走状態だと思って下さい。
だから内心をぶちまけて落ち着いた後のまど神さまは平仮名の微笑みなんですね〜。納得していただけたでしょうか?

>>755
よし、それで今すぐ弾幕風を作るんだ(真剣
今度はクリームヒルトちゃんでお願いします!(←無茶言うな

>>756
華仙さんかぁ〜、出したいけど魔女に対してどんな反応を示すか想像がつかないんだよなぁ……。
罪を認めてやり直そうとしている子たちだから普通に教えを説いてくれそうな気もするけど……、
とりあえず参考になりました。ありがとうございますね〜。


では本編投下です。どうぞ、
758 :東方魔戯歌伝 [saga]:2012/04/16(月) 07:29:37.61 ID:wnHtsDWY0
―――――――――― 【その頃 @ 現世・見滝原市・巴マミ宅】 ――――――――――

ほむら「概念のまどかだけじゃく、魔女のまどかも頑張っているのに……、私には見ている事だけしか出来ないの!?」

杏子「おいほむら、机を揺らすな。 鍋があるんだぞ!?」

紫による説明が終わった後、見滝原の魔法少女(+α)はスキマで幻想郷での弾幕戦を固唾を呑んで見守っていた。
思わず机に拳を叩きつけたほむらに咄嗟に鍋を死守した杏子から非難じみた声が飛ぶ。

マミ「暁美さん、気持ちは分かるけど落ち着きなさい。 今の私たちには見守ることしか出来ないの」

ほむら「で、でも……!」

マミ「紫さんだって言っていたでしょう? 幻想郷(あっち)に行くという事は幻想に近づく事だから勧められない、って……。
   暁美さん、貴女は鹿目さんたちの為に世界を守るって決めたのよね? なら自分の為すべき事も分かる筈よね?」

紫が言っていた事を思い出しながら、マミは真っ直ぐほむらを見る。
ほむらは一瞬だけ目を剥いたが、次の瞬間、浮かしかけた腰を下ろし、大きく深呼吸する。

ほむら「…………ゴメンなさい。 ちょっと思考が短絡的になってたわ」

マミ「良いのよ。 私だって本当は今すぐ加勢に行きたいって思うもの。
   多分、暁美さんが取り乱していなかったら、私が同じ様な事を言っていたかも知れないわ……。 兎に角、今は落ち着きましょう、ね?」

ほむら「分かってる。少なくとも頭では分かってるつもりよ。 あら? お茶が無いわね……、ちょっとお湯を沸かしてくるわね」

空になったカップに紅茶を足そうとして、中身が無いことに気が付いたらしい。 ほむらが今度こそ腰をあげる。

マミ「えっ? ああ、それじゃあお願いするわ」

杏子「それと、ついでだから顔も洗ってきな。 ひどい顔だよ、今のアンタ……」

わざと茶化すような口調で声をかける杏子に、「そうさせてもらう」と言う代わりに手を挙げて応えるほむら。
ほむらの姿が見えなくなった所でマミと杏子はお互いに顔を見合わせて、ため息をつく。

杏子「ほむらもお前も苦労性だな……」

あのポット、まだ中身入ってただろ?とぼやく杏子に、マミは苦笑する。
中身がまだある事を知りつつ、見送ったと言う事は即ち、杏子も似たもの同士、と言うことで……、

マミ「あら、その言葉、佐倉さんにそっくりそのまま返すわ」

杏子「ばっ、アタシは別にそんなんじゃ……」

マミ「ふふっ、照れなくても良いのに……」

杏子たちの様子を見て、もう大丈夫だと思ったのだろう、それまで黙ってスキマに映される映像を見ていたゆまが、杏子に問い掛ける。
759 :東方魔戯歌伝 [saga]:2012/04/16(月) 07:32:46.61 ID:wnHtsDWY0

ゆま「ねぇキョーコ、この人たち、キョーコたちの知り合いなんだよね?」

杏子「ん? ああ、知り合い、っつーか戦友、かな? 短い間だが、色々世話になったんだ、こいつらには……」

将来的にはまたお世話になるのだが、その事は伏せつつ、杏子は語る。
自分たち以外に頼る相手の居ないゆまに、“その事実”はまだ言うべきではない。

ゆま「知り合い同士なのに戦ってるの?」

杏子「親しい相手だからこそ、戦わなくちゃならない時があるんだよ」

難儀な事だとは杏子も思う。
杏子も同じような経験があるし、だからこそ今の関係がある為、必要な事であるのは承知しているが、見ていて気持ちの良いモノではない。

特に今回のまどかの問題は杏子やマミやほむらたち、魔法少女の問題でもある。
幻想郷と言う隠れ里で、ひっそりと過ごすクリームヒルトやオクタヴィアに任せっきりの現状は杏子としても我慢ならなかった。
だが……、

杏子(今はまだ、ゆま(コイツ)を残して逝く訳にはいかねーんだ。 ちっ、アタシもほむらやマミの事、言える立場じゃねーな……)

表情には出ないよう、小さく歯を噛み締める事で杏子は湧き上がる激情を抑え込む。
が、それでも千歳ゆまと言う聡い少女には分かってしまったらしい。
ゆまは一瞬だけ目を見開くと、次の瞬間、杏子の手を握り締める。

ゆま「…………」

手を握るだけで、なにも言わないゆまに対し、杏子はその手を握り返す事で応えとする。
その様子を黙って見守っていたマミはスキマに映る中継に目をやる。
再度激しい弾幕戦へと突入していくクリームヒルトたちの姿を目に焼き付けつつ、マミは祈るように呟いた。

マミ「鹿目さんに美樹さん、それに霊夢さんたちも、どうか無事で居て……。
   それと、お願いね。 鹿目まどか(私たちの希望)を、救ってあげて……」



760 :東方魔戯歌伝 [saga]:2012/04/16(月) 07:36:42.94 ID:wnHtsDWY0
―――――――― 【概念の少女と救済の魔女 @ 人里近くの田園】 ――――――――

霊夢「まったく、言うようになったわね。 幻想郷に来て半年も経ってないのに……」

まどかとクリームヒルトの様子を少し離れた場所から見守っていた霊夢はそう言うと肩をすくめてみせる。
一時は激しく攻め立てていたまどかの分身は、クリームヒルトがまどかの想いを受けとめ、それに応えると同時に姿を消していた。

まどか自身の酔いが醒めてきたのと、胸につかえていたモノを吐き出した事で、落ち着き始めたのだろう。
取り敢えず一段落ついたようだった。

早苗「あれ?知らないんですか? あの位のお年頃の女の子って、結構あっさりと一皮剥けちゃうものなんですよ」

オクタヴィア「はぁ〜、なんて言うか親友のああいう場面に出くわすと見てるこっちもこそばゆくなって来るね」

良いものを見たなと言うように早苗とオクタヴィアが頷きあっていると、
そこに幼げな影が一つ、地面から文字通り涌いて出てきた。

???「あれ? 手助けが要りようだと思ったけど、大丈夫だったみたいだね〜」

早苗「っ!? 諏訪子さま!?」

霊夢「……何しに来たのよ?」

突如現れた目玉付きの帽子が特徴的な神さま――洩矢諏訪子に、早苗は目を丸くし、霊夢は訝しげな視線を向ける。
霊夢の露骨な反応には流石にムッと来たのか、諏訪子はカエル座りを崩しつつ、頬を膨らませる。

諏訪子「何しに、とは随分なご挨拶だねぇ……。 今日は純粋に助太刀だよ。 相当テンパってる新人さんの教育も兼ねて、ね……」

魔理沙「テンパってる、って、じゃあなんだ?お前らは気付いてたのか?」

魔理沙が尋ねると諏訪子は当然だと言うように胸を張る。

諏訪子「神力が僅だけど呪いを帯びてたからね。
    ウチみたいに祟り神の性質があるなら兎も角、あの子の性質であの種の呪いはろくな事にならないし……」

早苗「はあ……、気が付きませんでした。 てっきり単なる酒乱だと……」

諏訪子「……早苗、帰ったらまた修行ね。 守矢の風祝がそんなようじゃ困るよ?」

魔理沙やオクタヴィアならまだしも、神職に就いている早苗からそんな言葉が漏れた事に諏訪子は呆れ顔だ。
はぁ、とため息をつく諏訪子に対し、オクタヴィアが先を促すように尋ねる。
761 :東方魔戯歌伝 [saga]:2012/04/16(月) 07:38:46.19 ID:wnHtsDWY0

オクタヴィア「で? まどかはどうやったら元に戻るの?」

諏訪子「それなら簡単さ。 神さまが荒ぶってるんだから鎮めてやれば良い。 つまり……」

全員「つまり……?」

諏訪子「あの子の気が済むまで神遊びに付き合えば良いのさ」

諏訪子の答えに対して反応は二つに割れた。
何を言わんとしているのか理解出来た者と、理解出来なかった者とだ。

霊夢「はぁ……、じゃあなに? あの飲んだくれが言ってた事が正解、って事な訳?」

オクタヴィア「……神遊び?」

前者の筆頭である霊夢が頭を押さえる脇で、四人の中で唯一の後者だったオクタヴィアが首を傾げる。
そこに早苗と魔理沙が簡単な補足を付け加える。

早苗「お祭りの事ですよ。 祭りとは本来、祀りと書いて神さまを奉り、鎮める行事の事を言うんです。
   神さまと人が一緒になって遊ぶ、と言う事で神遊び、と呼ぶんですよ」

魔理沙「で、だ。 この幻想郷で神さまと人が一緒になってやれる事、って言うと……」

オクタヴィア「まさか……、弾幕戦?」

豆知識的な早苗の解説と、「皆まで言わずとも分かるよな?」と言わんばかりの魔理沙の言葉に、オクタヴィアは顔を青くしながら呟く。

霊夢「そー言うこと、つまり今までやってた事をこのまま続けろ、ってこの祟り神は言ってるの」

諏訪子「祟り神なのは認めるけど、なんか感じ悪いなぁ……。 う〜ん、どうせ神遊びなんだし、あっちの味方に回ろうかなぁ〜」

早苗「お願いしますからそれだけは勘弁して下さい諏訪子さま!」

とんでもない事を言い出す諏訪子にすかさず早苗が土下座をしかねない勢いで頭を下げる。
そんな早苗を見て諏訪子は一瞬きょとんとすると、やがてけらけらと笑い出す。

諏訪子「流石に冗談だよ。 他所さまの、それも新人さんの初めてのお祭りに水を差すなんて野暮な事、私もしたくないしね。
    その代わり、しっかりあの子と遊んであげてよ?」

霊夢「まったく、どうしてこう神さまも妖怪も揃いも揃って面倒臭いヤツが多いのかしら?」

諏訪子「何事も面倒臭いのが世の常さ。 そこは人間も妖怪も神も関係無いんだよ」



762 :東方魔戯歌伝 [saga]:2012/04/16(月) 07:43:28.73 ID:wnHtsDWY0
――――――――――――――――――――――――――――――――――――

まどか「それじゃあ続きから行くよ? 今度はこのスペル!」


                      再編 『新宇宙構築』


クリームヒルト「っ!?」

新たなスペルが発動し、まどかの持つカードが光った途端、クリームヒルトは激しい虚脱感に襲われた。
まどかが酔って暴れだした時よりもきついソレに、クリームヒルトは思わずその場にへたりこむ。

クリームヒルト「なに……コレ……? 概念の私の“救済”は早苗さんの御札で抑えて……、っ!?」

無くさないようにと懐に忍ばせておいた御札を取り出したクリームヒルトは思わず目を見開く。
印と呪が書かれた対救済概念用の護符が端の方から徐々にどす黒くなり始めていたからだ。

クリームヒルト「これってまさか、“円環の理”がこの場で!?」

霊夢「なにやってるのよ!? 早く下がりなさいッ!」

余りの事態に茫然としていたクリームヒルトは、罵声に近い霊夢の言葉に我に返る。
と同時に、クリームヒルトの体は後ろに引っ張られ、次の瞬間、放り投げられていた。

クリームヒルト「きゃあっ!?」

魔理沙「おっと、大丈夫か?」

力任せに投げられバランスを崩したクリームヒルトを、後ろから飛んできた魔理沙が抱き止める。
まどかから離れた事でスペルの効果が弱まった為だろう、虚脱感は治まったが、一度力が抜けてしまった体はなかなか言うことを聞いてくれない。

魔理沙「あ〜、あんま無茶すんな。 お前らからすれば一番受けちゃマズい攻撃をくらったんだ。
    前線は霊夢に任せて一旦下がれ、な?」

魔理沙の言葉にクリームヒルトはチラリと後方を見やる。
後方では早苗とオクタヴィアが待機していたが、結界など特別なモノを展開している様子はない。
あそこにはまどかの“救済”概念は及んでいないようだ。 だけど……、

クリームヒルト「……ごめんなさい魔理沙さん。 私、それだけは出来ません」

魔理沙「……クリームヒルト、お前今、何を言ってるのか分かってるのか?
    向こうは本気で来てるんだ。 下手したら本当に消されるかも知れないんだぜ?」

クリームヒルト「うん、それは私も分かってるよ。 だからこそ私は行かなくちゃいけないの。
        私が受けとめる、って約束したから。 概念の私が、私のその言葉を信じて、本気を出してきたから! 私が退く訳にはいかないの!」

そう言ってクリームヒルトは魔理沙と真正面から向き合う。
真っ直ぐな、揺るぎないクリームヒルトの視線からその決意の強さを認めたのだろう、魔理沙はふっと微笑むと箒の後ろにスペースを作る。

魔理沙「…………後ろに乗りな。 私は回避に専念する。反撃は任せたぜ」

クリームヒルト「っ! ……ありがとう、魔理沙さん」

感謝の言葉を述べつつクリームヒルトは箒の後ろに跨がる。
本当なら自力で飛びたい所だが、不意を突かれたとは言え、救済概念の影響下では飛ぶ事は愚か立つ事すらまともに出来なかったのだ。
無茶をして、消されてしまっては元も子もない。 ここは魔理沙の好意を素直に受ける事にする。

魔理沙「ヤバかったら早めに言えよ? 間違って消しちまった日には幽々子に何をされるか、分かったもんじゃないからな」

クリームヒルト「はい、お願いします!」

冗談染みた魔理沙の忠告にクリームヒルトは力強く頷いた。



763 :東方魔戯歌伝 [saga]:2012/04/16(月) 08:00:57.43 ID:wnHtsDWY0
――――――――――――――――――――――――――――――――――――

オクタヴィア「えっ!? あっ、ちょっ、何やってんの!? なんで魔理沙はクリームヒルトを乗せたまま向かってくの!?」

一旦は離脱を図っていた魔理沙が、クリームヒルトを乗せたまま戦場へと引き返していくのを見て、オクタヴィアが上ずった声を上げる。
慌てふためいているオクタヴィアの脇で、険しい表情を浮かべた早苗が呆れたと言うようにぼやく。

早苗「クリームヒルトさんも無茶しますね。 変なところで頑固なんですから……」

オクタヴィア「頑固って……、じゃあクリームヒルトは自分の意思で?」

早苗「十中八九そうでしょうね。 ここまで来て他人任せに出来るような性格じゃ無いですし……」

オクタヴィア「だからって、ああっ、もうっ、あのお人好しはッ!」

そう言って頭を掻き毟ったオクタヴィアはサーベルを構え、飛び出そうとする。
が、オクタヴィアが動くより早く、早苗の制止の声が飛ぶ。

早苗「待って下さいオクタヴィアさん! 今、前線に不用意に出るのは却って危険です! 邪魔にならないように私たちはサポート役に徹しましょう」

オクタヴィア「邪魔、ってなんでそんな事が言い切れるのよ!?」

邪魔だとキッパリと断言されたオクタヴィアは思わず早苗を怒鳴りつける。
激昂するオクタヴィアに対し、早苗は努めて冷静に、現在の状況と、そこから導かれる結論をオクタヴィアに説く。

早苗「オクタヴィアさんが典型的な近接戦タイプだからですよ。
   まどかさんの至近に居たときは立つことも出来なかったクリームヒルトさんが、距離を取ったらある程度回復しました。
   そして、まどかさんから離れているここには救済の影響は全く見られません。 つまり……」

オクタヴィア「概念のまどかの近くに寄れば寄るほど救済の影響を受けやすくなる?」

早苗「そうです。そしてまどかさんの耐久力の高さはこれまでの戦いで証明されています。
   今のまどかさんを攻撃するなら中遠距離からの高威力攻撃以外、手はないんです」

オクタヴィア「って、それじゃあ魔理沙とクリームヒルト以外、事実上戦力外じゃん!」

端的に言ってしまえば、その通りだった。
近接戦専門のオクタヴィアや、属性攻撃が主体の早苗は言うに及ばず、あの霊夢でさえ回避こそ問題ないが、現状では火力不足に喘いでいる。
火力面で対抗出来そうなのはクリームヒルトと魔理沙だが、激しい弾幕の中で共同戦線を張るので精一杯であり、その火力を活かしきれていない。

オクタヴィア「どうするの、このままじゃ押し負けるよ!? くっ! 五人も協力しててこの様とか、情けなくなってくるよ……」

早苗「私たち全員の力を一点に集中出来れば良いんですけど……、
   ん? 力を……集中……? そう言えば確かクリームヒルトさんの能力って……」

何事か一人呟いていた早苗の脳裏にある考えが浮かぶ。
色々な意味で綱渡りなアイディアで、正直実用性は皆無に近い無謀な考えだったのだが……、

早苗「分の悪い賭けですが、この状況じゃ大差ないでしょうし……。 オクタヴィアさん、ついてきて下さい。 前線に出ますよ!」

オクタヴィア「えっ? 前線って、さっき早苗はダメだって……」

早苗「状況が変わったんです! 行きますよ!」

そう言って早苗は飛び出していく。
早苗の態度の変わりようにオクタヴィアは一瞬だけ面を食らったが、すぐさまその後に続いて前線へと飛び出す。

オクタヴィア「ああっ、もうっ!訳分かんないよ! 早苗、後でしっかり説明して貰うからね!?」

そうぼやきつつ、オクタヴィアは剣を構えた。



764 :東方魔戯歌伝 [saga]:2012/04/16(月) 08:04:59.27 ID:wnHtsDWY0
――――――――――――――――――――――――――――――――――――

飛び交う弾幕の中を箒に乗った二人の少女が飛び抜けていく。
本気を出したまどかの弾幕は一瞬でも気を抜けば被弾を許してしまいそうなほど熾烈で、
箒の操縦を担当している魔理沙は針穴に糸を通すような的確な回避を要求されていた。
そんな魔理沙を横目に見つつ、反撃の為に矢をつがえていたクリームヒルトは、ある時急にその感覚を感じ、声をあげる。

クリームヒルト「くっ、魔理沙さん!」

魔理沙「ちっ、今度はこっちに来たか! 一旦離れるぜ!」

クリームヒルトの苦しげな声に魔理沙は箒の針路を変更する。
針路を変え、少し飛んだところで倦怠感――救済概念による強制浄化――がすっと引いていく。どうやら効果範囲を抜けたようだ。
クリームヒルトは上がってしまった息を整えると、申し訳なさげに俯く。

クリームヒルト「……すいません、さっきから足を引っ張ってばかりで……」

魔理沙「おっと、クリームヒルトが気にする必要は無いぜ。
    それにしても厄介だな。せめてあの神さまの“救済”が今どの辺りを覆っているのか分かれば良いんだが……」

クリームヒルトに声をかけつつ、魔理沙は愚痴のように一人ごちる。
普通ならばそんな都合の良い話などある訳がないのだが……、この時はその要望に応える声があった。

???「見分けをつけ易くすれば良いんだな? なら任せろ!」

クリームヒルト「っ!? 萃香さん!?」

声と共に飛び出てきた小柄な鬼の姿に、クリームヒルトは目を丸くする。
魔女たちへの警告と援軍を集めるために一旦戦場から離れていた萃香が、戻ってきたのだ。

萃香「行っくよ〜、それっ!」

掛け声と共に萃香の身体が空気に溶けるように薄く、いや霧散し始める。
萃香がその姿を消すのと同時に辺りは形容しがたい靄に包まれる。

クリームヒルト「これは……、霧?」

魔理沙「成る程な、萃香のヤツ、考えてるじゃん」

クリームヒルト「? どう言う事ですか?」

一人納得した様子の魔理沙に対してクリームヒルトは首を傾げる。
そんなクリームヒルトの疑問に弾幕を引き付けつつ飛んできた霊夢が簡潔に説明する。

霊夢「萃香の能力の一つよ。 萃香は自分の身体の疎と密を操って霧状になれるの。
   そうして出来た妖霧は当然妖気を纏っているわ。 そんなだからあの神さまの神力とは何があっても混じることはないのよ」

魔理沙「つまり、霧があるところを通ればあの神さまの厄介な“救済”の影響は受けない、って事さ」

クリームヒルト「それじゃあ……」

霊夢と魔理沙の解説にクリームヒルトの顔に喜色が浮かぶ。
だが箒を操る魔理沙の表情は堅かった。
765 :東方魔戯歌伝 [saga]:2012/04/16(月) 08:10:44.68 ID:wnHtsDWY0

魔理沙「ああ、大分やり易くなる筈だぜ。 とは言え、まだまだ気は抜けないけどな……」

霊夢「そうね。 本番はこれからの筈よ」

クリームヒルト「えっ?これが概念の私の本気じゃないの?」

霊夢「能力的には本気でしょうね。 でも、弾幕の方は本気じゃないわ」

魔理沙「ああ、一見すると熾烈な弾幕だが、良く見ると通常弾幕の強化型でしかないしな。 この後にデカい一発があると見て間違いないぜ」

クリームヒルト「デカい一発…………、っ!?」

ベテラン二人の厳しい見通しに息を呑んだ次の瞬間、伝わってきたソレにクリームヒルトは全身の毛が逆立つような感覚に襲われた。
霊夢たちも感じたのか、三人がほぼ同時にまどかの方へと振り返る。

振り返った先には、目を瞑り、何かを詠唱しているまどかの姿があった。
激しい弾幕が途絶える代わりにまどかの周囲に桃色の気――魔力が物凄い勢いで集まりつつあるのが、遠く離れたここでも良く分かった。
彼女にしては珍しく、引きつる表情を隠そうともせずに霊夢がぼやく。

霊夢「そんな事言ってたらホントに来ちゃったじゃない……。 魔理沙、何とかしなさいよ。弾幕はパワーなんでしょ?」

魔理沙「霊夢が魔力をチャージするまでの時間を稼いでくれるなら受けてたつぜ?」

クリームヒルト「霊夢さんに魔理沙さんも、そんな事を言ってる場合じゃ……」

早苗「霊夢さん!」

売り言葉に買い言葉で、霊夢と魔理沙が喧嘩腰な会話を交わした直後、早苗の声が割り込む。
見ると、救済概念の薄いところをすり抜けて早苗とオクタヴィアが駆けつけた所だった。

オクタヴィア「クリームヒルト! 大丈夫!?」

魔理沙「今のところ大丈夫だが、そろそろ大丈夫じゃなくなりそうだぜ。
    あの神さま、本気で決めにかかって来てる。 このままじゃ全員お陀仏だな」

魔力のチャージを続けるまどかを指差しながら、魔理沙は肩をすくめて見せた。
膨大な量になりつつある魔力から考えると、今からでは逃げることも無理だろう。

早苗「その件で話があります。 クリームヒルトさん、私たちの魂、一時的に預けて良いですか?」

クリームヒルト「えっ? 魂、って……、えっ?」

あまりにも突拍子も無い言葉に、クリームヒルトは一瞬、早苗が何を言っているのか理解できなかった。
思わず呆然とするクリームヒルトに構わず、早苗は言葉を続ける。

早苗「クリームヒルトさんの“救済”能力は、周囲の魂を自身の結界に引きずり込む事で発動します。 この特性を使うんです」

クリームヒルト「ちょっ、早苗さん!?」

霊夢「早苗、続けなさい」

声を荒げるクリームヒルトに対し、さっきまではとは打って変わって真剣な顔つきをした霊夢が先を促す。
クリームヒルトからの反応は想定していたのだろう、早苗は小さく頷くと、順序だてて説明をしていく。

766 :東方魔戯歌伝 [saga]:2012/04/16(月) 08:16:39.23 ID:wnHtsDWY0

早苗「私たちがそれぞれの能力(ちから)を発動して対抗した所で、今のまどかさんの一撃必殺は抑えようがありません。
   それは私たちの能力がそれぞれ違う属性を帯びた別物だからです。 纏まりが無い、と言えば分かりやすいでしょうか?」

早苗「そこで今回は、ワンクッションを挟み込みます。 私たちが能力を発動した状態で、クリームヒルトさんが“救済”をこの場で行った、と考えて下さい。
   当然、私たちの魂はクリームヒルトさんの結界に取り込まれ、そこに集約することになります。
   私たちの能力が全て混ざった状態で、クリームヒルトさんの結界内にプールされる事になる訳です」

オクタヴィア「そっか、そこで集めた力をクリームヒルトが操って一気に解放すれば!」

魔理沙「あのバカみたいな魔力にも対抗できる、って事か……。 なるほど、やってみる価値はありそうだぜ」

もしこの場に、この状況に於いても冷静に物事を判断するタイプの人が一人でも居たのなら、この提案は通らなかっただろう。
だが、この場に集まっていたのは、冷静な判断より、思い込みと勘で動く直情型の人妖ばかりであり、
まどかのラストスペルと言う差し迫った問題も相まって、この無謀極まりない作戦に疑問を漏らす者はこの場には居なかった。

たった一人、この作戦の骨子に挙げられ、重責を背負う羽目になった当人――クリームヒルトを除いて……。

クリームヒルト「ちょっ、ちょっと待ってよ! 他の人の力を操るなんて、私やった事ないし、それにそんな事したらみんなが……」

早苗「これは弾幕戦です。 一時的にピチュるだけですから気にしないで下さい」

霊夢「そうね。その心配は要らないわ。 それにこの作戦なら、色々な武器の扱いに長けてるアンタが最適よ」

方や安心させるように、方や現実的な観点からそれぞれクリームヒルトを宥める早苗と霊夢。
が、そんな事を言われた所ですぐさま 「はいそうですか」 と納得できる訳も無い。

クリームヒルト「で、でも……」

霊夢「どっちにしたって各々が立ち向かった所で待ってるのは全滅オチなのよ。
   絶望的な抵抗を試みるか、それともアンタに最後の希望を託すか、こうなったら二つに一つよ」

踏ん切りのつかないクリームヒルトに霊夢がぴしゃりと言ってのける。
何処までも真剣で真っ直ぐな瞳は「決めるのは他でもないアンタ自身だ」と言っているようで……、
そんな瞳に射抜かれたクリームヒルトは、小さくそれでいてしっかりと頷いた。

クリームヒルト「……分かった。 みんなの力、ちょっとだけ借りるね」

本当はもっと言いたい事もあったのだが、今の状況が、残された時間が、それを許さなかった。
唇を噛み締めつつ、拳を強く握るクリームヒルトの肩にオクタヴィアがそっと手を添える。

オクタヴィア「うん、いいぞ。 それでこそあたしの嫁だ」

魔理沙「私らは大丈夫だからさ、デカいの一発、頼んだぜ」

クリームヒルト「うん、わかったよ。 オクタヴィアちゃん、魔理沙さん……」

早苗「すいません、クリームヒルトさん。 無茶なお願いをしちゃって……」

霊夢「それじゃ、任せたわよ」

クリームヒルト「いえ、良いんです。 もともと私が受け止めるって言い出した戦いです。 みんなの力を借りれるのなら、それで十分です」

霊夢の言葉にクリームヒルトは静かに頷くと、自身の“救済”能力を発動させる。
発動と同時に霊夢たち四人から放たれた力がオーラとなり、クリームヒルトの周囲に吸い寄せられていく。

767 :東方魔戯歌伝 [saga]:2012/04/16(月) 08:20:43.85 ID:wnHtsDWY0

クリームヒルト「…………」

オクタヴィアの魂と共に『癒し』の力が、早苗の魂と共に『奇跡』の力が、霊夢と魔理沙の魂と共に絶大な『霊力』と『魔力』が、クリームヒルトの中に注がれていく。
注がれたそれぞれの『能力』は、やがて一つの溢れんばかりの『力』となってクリームヒルトの全身を駆け巡り、その身体にかつて無いほどの力を漲らせる。


クリームヒルト「…………ありがとう、みんなの『力』、確かに受け取ったよ」


『力』の高まりを感じつつ、クリームヒルトはまどかの方に向き直る。
それと同時に、魔力チャージの間、目を瞑り続けていたまどかがゆっくりとその瞳を開く。


まどか「そっちも準備が出来たみたいだね」

クリームヒルト「うん、出来たよ。 私一人じゃ、無理だったけど……」

まどか「うぅん、それは確かに貴女の『力』だよ。 貴女が集めた“信頼”の力……」

クリームヒルト「ありがとう、概念の私。 それなら、ここから先はどうなっても恨みっこ無しだよね?」

まどか「うん、ここまでお膳立てして貰ったんだもん。 文句の付けようもないよ」


向かい合った桃色の髪の少女たちは、鏡写しのように寸分違わぬ動きで魔力の弓と矢を生み出す。
その矢は先程まで飛び交っていた極太の猛々しいモノではなく、むしろ神々しく、見ている誰もが見惚れる様な流麗な姿をしていた。


クリ&まど「「…………」」


二人同時に矢をつがえる。
動作、タイミング、立ち居振る舞い、その全てがぴったりで、その光景は良く出来た演舞か、或いは本当に鏡写しなのでは無いかと思えるほどで、

その瞬間、二人の間から、否、二人を見守っていた全ての者から音が消えた。


そして……、


                              『いざ、勝負ッ!』



                      円環の理 『少女たちへの安らかな救済』
                         慈悲 『尽滅大結界内の奇跡』



クリームヒルトとまどかの放った矢は、まるで互いが互いを求めていたとでも言うように、吸い寄せられるように真正面から交差して……、
会場全体を眩いばかりの光が覆いつくした。




768 :東方魔戯歌伝 [saga]:2012/04/16(月) 08:53:52.76 ID:wnHtsDWY0
本編投下終わりーっ!
いやー難産だった。なんどリテイクを繰り返した事か……

現役魔法少女組みの参戦を本気で考えてみたり、魔理沙&クリームヒルトの火力コンビで押し切ろうかと思ったり、
色々考えましたが結局この形に落ち着きました。
現の魔法少女には幻想の戦いでは退いてもらって、幻想郷の自機勢の総力を結集させて、まど神と真っ向から戦ってもらいました。
没った文章の方が圧倒的に多いな、今回は……

以下弾幕解説でーす。



鹿目まどか(まど神)

 神創 『ラ・リスポスタ・デリヴァ』
 円環符『もう、苦しまなくていいんだよ』
 聖弓 『ラデーア・フレティア』

基本的に>>586-587を参照。


 枢軸 『因果の大回廊』

別名『まど神戦隊』弾幕。
五人に分身したまど神によるありとあらゆる弾幕の混成攻撃。
この神さま、もう何でもアリである。


 再編 『新宇宙構築』

『円環の理』を形成する弾幕。
次に来る弾幕への布石でもあり、自身にとって最適の状態に周囲を改編する。

なおこの時、自機が魔女の場合、弾幕にグレイズしただけで一気にパワーを削られる鬼畜使用。
魔女以外の自機の場合、ボムを含む全ての攻撃が無効になる耐久弾幕になる。 それでも十分鬼畜とか言ってはいけない。


 円環の理 『少女たちへの安らかな救済』

前のスペルで構築したフィールドにより、全力発揮が可能になったまど神のラストスペル。

>>586さんの言うとおり、こんな弾幕文章で表現出来る(書ける)わけ無いじゃないッ!



クリームヒルト

 慈悲 『尽滅大結界内の奇跡』

“救済”後のクリームヒルトの結界内を模した弾幕。
クリームヒルトが吸い寄せた全てが集約された結界を全フィールドに展開する。
ありとあらゆる力が奇跡的な配分で混じった全てを滅する結界に、最早敵などあるわけ無い。


以下本編未登場

 魔砲『マスター・ティロ・フィナーレ』
 封印『夢想救済』 & 大結界『救済弾幕結界』
 奇跡『少女の強すぎる希望(ねがい)』

上から魔理沙、霊夢、早苗との協調弾幕。
ちょっぴり破滅的な印象がするが、その辺は仕様です。
769 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/16(月) 16:57:41.07 ID:Mk6REsfDO
うおっ、眩しっ!(SS自体が)
770 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/17(火) 09:21:49.79 ID:CX/5vjODO
神投下お疲れ様ですっ!!

まど神様…まさか本気で消しにかかって来るとはな…。それでも、様々な助けを受けて、遂には魂の吸収融合を果たし、究極の一撃を放つ…。
そして、あの激しい光りの後に訪れるものとは…?

いや〜、やっぱり良いですねこういう展開!大好物です!でも、もうバトルシーンは無いだろうから…少しと言わず、残念です。このSSが、終わってしまう事自体も…ね。
771 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/18(水) 14:47:01.57 ID:QIKFYYODO
もどかしき現(うつつ)の者達…いずれ来る瞬間を、熱く静かに待つ。
772 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/19(木) 02:05:50.22 ID:kANdr25DO
ストレス=呪いって…神の世界って恐いなぁ。
773 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/21(土) 15:24:47.69 ID:BQrk4Z9DO
まど神遊び 〜そして宴会へ〜
774 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2012/04/21(土) 18:15:46.25 ID:rGhWIxhMo
乙!


ttp://uploader.sakura.ne.jp/src/up95083.png


クリームヒルトちゃんって黒でしたっけ?
今となってはもう遅いですが・・・
775 : [saga]:2012/04/22(日) 11:02:19.62 ID:o86NUcWj0
大変長らくお待たせいたしました。東方魔戯歌伝も〆のお時間となったようです。
本編投下参ります!

>>772
力が強い分、話が大げさになるのは神々の世界では常識です。

>>774
黒のつもりだったけど、動画版の都合でノーマル(ピンク)になりました。ご安心を(何が?
776 :東方魔戯歌伝 [saga]:2012/04/22(日) 11:10:20.40 ID:o86NUcWj0
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

まどか「……引き分け、だね」

四肢を大の字に投げ出したまどかが、ポツリと一言、呟く。
少し離れた場所で同じ様に仰向けになって倒れていたクリームヒルトも小さく首肯する。

クリームヒルト「そうみたい、だね……」

力なく地面に寝転がったままの二人に、先刻までの神々しさは微塵もない。
あるのはとてつもない疲労感と、全てを出し切ったと言う充足感だけ。

まどか「はぁ、まさか本当に受け止められちゃうとは思わなかったなぁ……。 全力だったんだよ?さっきのアレ……」

クリームヒルト「ティヒヒ、受け止めさせて貰いました。 全部の力、根こそぎ持っていかれちゃったけど……」

まどか「それは私も同じだよ。 こんなに力使ったの、概念になってから初めてかも……」

「弾幕戦って結構ハードなんだねぇ……」とぼやきにも似た呟きを漏らすまどか。
その言葉にクリームヒルトは思わず苦笑する。

クリームヒルト「 『遊びだけど本気で』 が、幻想郷での鉄の掟だからね」

まどか「どうりで……、ここの人たち、やけに強いんだもん。 これが“遊び”なら納得だよ……」

そう言ってお互いに顔を見合わせた二人は、同時に笑みをこぼす。
まどかと二人でひとしきり笑いあっていると、遠くから聞き慣れた声が聞こえてきた。

幽々子「クリームヒルトちゃ〜ん!」

クリームヒルト「ん?あれ? 幽々子……さん?」

声のした方に首だけ動かしてそちらを見ると、幽々子が妖夢と共にこちらに駆け寄ってくるのが見えた。
どちらかと言えばいつも悠然としている彼女にしては珍しく、息を切らせて駆けてきた幽々子は、その場に膝をついてクリームヒルトを抱き寄せる。

幽々子「大丈夫、クリームヒルトちゃん? なんだか最後、すごい事になってたみたいだけど……」

クリームヒルト「あっ、はい、お陰さまで何とか……」

相変わらず力は入らなかったが、それでもクリームヒルトは出来る限りの笑顔を作ってみせる。
身なりこそボロボロではあったが、クリームヒルトはどこか誇らしげで……、幽々子はそんな姿に、内心胸を撫で下ろした。

幽々子「良かったわぁ、クリームヒルトちゃんが無事で……。
    私、クリームヒルトちゃんのことが心配で心配で、お弁当も喉を通らなかったのよ?」

妖夢「あれ?確か幽々子様、決着の瞬間もポップコーン食べてまし……もがっ!?」

空気を読まずに余計な事を口走りかけた従者の口を、幽々子は目にも留まらない早さで塞ぐ。
いきなり口を塞がれ、暴れだす妖夢を更に押さえ込む幽々子にクリームヒルトはただただ苦笑する事しか出来なかった。
777 :東方魔戯歌伝 [saga]:2012/04/22(日) 11:14:15.38 ID:o86NUcWj0

まどか「…………」

クリームヒルトと幽々子がそんな風に戯れている様子を、まどかは黙って見守っていた。
微笑ましさすら感じる二人(+α)のやり取りに、悪戯心が芽生えたまどかは、クリームヒルトたちに聞こえるようにわざとらしくぼやいてみせる。

まどか「はぁ、なんだか妬けちゃうなぁ〜。 ねぇ、魔女の私、もしかしてわざと見せつけてない?」

クリームヒルト「っ!? そ、そんな訳ないでしょ!? いくらアウェイだからって、ちょっと卑屈になりすぎてない?」

まどか「あはは、ごめんごめん。 でも、羨ましいのはホントだよ。 あ〜あ、私も誰かに慰めて貰いたいなぁ〜」

クリームヒルト「…………」

頬を膨らませて抗議するクリームヒルトに、まどかは苦笑いを浮かべつつ、素直な気持ちを口にする。
そんなまどかにクリームヒルトは一声掛けようとして……、それとは別の、良く通る声に遮られた。

???「まどか〜っ!!」

ドップラー効果が全開にかかったその声はクリームヒルトやまどかがよく知る親友の声で……、
その声が轟音に近い足音と共に近づいてくる。

まどか「あれ? この声は……オクタヴィアちゃん? もう動けるようになったのかな?」

クリームヒルト「う〜ん、違うみたいだよ。 ほら……」

クリームヒルトのラストスペルに巻き込まれた割りには早すぎる復活に、まどかがその場で首を傾げると、
幽々子に抱えられて居た為、声の主を見る事が出来たクリームヒルトがすかさず訂正する。

背後を指差すクリームヒルトに釣られ、振り返った先に居たのは……、

さやか「まぁぁぁどぉぉぉぉかあああぁぁぁぁぁぁっ!!!」

オクタヴィアには無い、二本の足で畑の中の畦道を疾駆する少女――美樹さやかの姿だった。
思いもよらぬ事態に、まどかはこれ以上無いと言うほど目を丸くする。

まどか「っ!? さやかちゃん!? どうしてここに居……」

さやか「この阿呆んだらあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

まどか「へぶぅっ!?」

当然の疑問を漏らしかけたまどかにさやかの罵声と右ストレートが突き刺さる。
次の瞬間、まどかの身体は綺麗な放物線を描きつつ宙を舞い……、数瞬の後、地面にグシャリと叩き付けられた。
778 :東方魔戯歌伝 [saga]:2012/04/22(日) 11:20:31.94 ID:o86NUcWj0

クリームヒルト「へ……? えっ?あっ……、ええっ!? が、概念の私、大丈夫っ!?」

幽々子「あら、見事な右ストレートね」

妖夢「…………(ポカーン」

余りの急展開に一瞬呆けてしまったクリームヒルトは、我に返ると慌ててまどかを抱き起こす。
一方の幽々子は驚いているのかいないのか良く分からない感想を漏らしつつ、その様子を見守っている。
妖夢は完全に度肝を抜かれてしまったのか、完全に固まっていた。

そんなクリームヒルトたちには一切目もくれず、ずかずかと迫ってきたさやかは、殴られた頬を押さえて呆けているまどかを怒鳴り付ける。

さやか「あんたねぇ、何が 「みんなの笑顔が辛い」 よ!? その笑顔を作ったのは、笑える世界を創ったのは他ならぬあんたでしょ!?
    まどかが創らなきゃ、あたしたちは笑う事も出来なかったの! まどかは十分、あたしたちを救ったの!
    あたしたちにもう一度笑顔をくれた女神さまを……、うぅん、あたしの大切な親友を、一人で決め付けて否定しないで!」

まどか「なん……で? どうしてその事をさやかちゃんが……?」

さやか「お節介な妖怪が来て教えてくれたんだよ。「スキマで幻想郷を覗いてみろ」って……。
    そしたらこんな事になってるんだもん。 涙の衝撃告白に流石のさやかちゃんもビックリだよ」

まどか「ご、ごめん……」

さやか「あたしに謝ってどうするのよ? 言ったでしょ?あたしの親友を否定しないで、って……」

謝る相手が違うよ。と強い剣幕で言われ、まどかは思わず縮こまる。
そんなまどかの肩にさやかはそっと腕を回すとまどかの耳元で優しく囁く。

さやか「まどか、あたしたちの方こそゴメンね。あんたが苦しんでるのに気付けなくて……」


その言葉は、渇いた大地に降る恵みの雨のように……。


さやか「あたしバカだからさ、言ってくれないと気付けないんだよね。
    だからさ、今度こー言う事があったら、すぐに話してよ。 相談ぐらいならいつでものってあげるからさ……」


永い時を渡るうちに傷ついてしまった少女の心に深く、深く染み渡って……、
やがてそれは、大粒の涙となって概念の少女の瞳から溢れだした。


まどか「さやかちゃん……。 うん、ありがとう……」

目尻に涙を光らせつつ、そう答えたまどかの表情は……、晴れやかな笑顔だった。




779 :東方魔戯歌伝 [saga]:2012/04/22(日) 11:30:51.47 ID:o86NUcWj0
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

クリームヒルト「…………幽々子さん」

幽々子「ええ、邪魔者は退散しましょうか……」

クリームヒルトと幽々子は静かに頷きあうと、妖夢を連れて会場を後にした。
流れ弾被害防止の為に神奈子たちが張った結界をすり抜けた所でクリームヒルトはどっと息を吐いた。

クリームヒルト「はぁ〜っ、良かったぁ〜」

吐いた息と共に、再び身体から力が一気に抜け、クリームヒルトはその場にへたり込む。
今はただ、今回の件をどうにか収める事が出来たという安堵感だけがそこにあった。

幽々子「お疲れさま。 ふふっ、今回は大手柄ね」

妖夢「本当ですよ。あれ程の戦いを大きな被害もなく収めてしまったんですから……。 感服しました」

クリームヒルト「そんな、大げさですよ。 元はと言えば私が蒔いた種だし、それに私は最後まで独りじゃなかったし……」

最初から最後まで共に戦ってくれた霊夢や早苗。
危険な戦いだと承知しつつ加勢に来てくれた魔理沙とオクタヴィア。
彼女たちの助力が無ければ、この結果はありえなかった。

まどかの圧倒的な弾幕を前に成す術もなくやられていたに違いない。

クリームヒルト「あっ、そう言えば霊夢さんたちは大丈夫なんですか?」

幽々子「それなら大丈夫よ。 ほら……」

クリームヒルト「へっ? ……っ!」

思い出したようにクリームヒルトが訪ねると、幽々子は微笑みながらクリームヒルトの背後を指差した。
振り返ったクリームヒルトの視線の先に居たのは……、


オクタヴィア「お〜い! クリームヒルト〜っ!」

早苗「大丈夫ですかーっ?」

弾幕戦でボロボロになった姿のまま、大きく手を振ってみせるオクタヴィアと早苗に……、


霊夢「よくもまあ、あんな大声が出せるわね。 私としては早く帰って休みたいんだけど……」

魔理沙「今回ばかりは同意するぜ。 ま、そうは問屋が卸さないだろうけどな」

その後ろで、疲れを隠そうともせず愚痴をこぼしている霊夢と魔理沙に……、
780 :東方魔戯歌伝 [saga]:2012/04/22(日) 11:32:41.38 ID:o86NUcWj0


文「まぁまぁそう仰らずに……。 かけ金を集めに集めたのに結果が引き分けでしたからね。 お金の有効活用です」

諏訪子「あれ? でもそれって、集めたお金を皆に返せば良いだけのような……?」

神奈子「大方、集めすぎて返すのが面倒臭くなったんだろう。 全く、山の連中は変なところで適当なんだから……」

ロベルタ「まぁまぁ、酒が飲めるんだから別に良いじゃないか」

萃香「そうそう、細かい事は気にしな……」

全員「「「「話をややこしくしたお前らが言うなッ!!」」」」

酒樽やら料理を並べて宴の準備をしている幻想郷の面々の姿が、そこにあった。


クリームヒルト「…………」

そんな光景を、クリームヒルトはへたり込んだまま黙って眺めていた。
そこへ、真横からすっと手が差し伸べられる。
手を差し伸べていたのは幽々子だった。

幽々子「さぁ、クリームヒルトちゃん、私たちも宴会に加わりましょう?」

クリームヒルト「そう……ですね。 でも、それならまずは主賓を呼ばないとですよ? 幽々子さん」

差し伸べられた手を取って立ち上がったクリームヒルトは来た道の方を見る。
一瞬だけ、幽々子は怪訝そうな表情を浮かべたが、すぐに納得したのかその表情を崩す。

幽々子「主賓? ああ、そう言えばそうだったわね。 それじゃあ、呼んで来ましょうか?」

クリームヒルト「はい、概念の私とさやかちゃんの二人を呼びに……、ね!」





                              東方魔戯歌伝 〜 お わ り 〜





781 :東方魔戯歌伝 [saga]:2012/04/22(日) 11:35:02.24 ID:o86NUcWj0
―――――――――――――― 【オマケ その後のまど神さま@】 ――――――――――――――

まどか「ちょ、ちょっと待って、待とうよ魔女の私。 そもそも今回の原因は、私がお酒に酔っちゃったからで……、だから考え直そう? ね?」

目尻に涙を浮かべつつ、概念の少女は手と首を力なく横に振る。
尻餅をついた状態で壁際まで追い込まれた彼女に最早逃げ道は無い。

すっかり怯えきったその姿は、小動物のようで……、凛々しい姿しか見たことの無い円環の住人が見たら、目を丸くしたに違いない。
まどかの事を良く知っているさやか以外、この場に円環の住人が居なかったのがせめてもの救いと言えるだろう。

文「いや〜、良い怯えっぷりですね〜。 こういう反応は幻想郷じゃ珍しいですからねぇ……」パシャッパシャッパシャッ

さやか「あっ、その写真、後であたしにも頂戴。 皆に見せないと……」

訂正、救いなんてありませんでした。
あっさりと親友を見限ったさやかに、心の中でありったけの呪詛を吐いていると、まどかを追い詰めていた少女、クリームヒルトが周囲を見渡しながら言う。

クリームヒルト「皆さ〜ん、こんな事言ってますがどうします?」

魔理沙「聞く必要あるのか? それ……」

霊夢「そうね。 答えなんて決まってるじゃない」

早苗「同じ下戸として、骨だけは拾ってあげますね」

オクタヴィア「ゴメンまどか、私には何も出来ないよ……」

幽々子「と、言う訳で……、クリームヒルトちゃん、やっちゃいなさい」

クリームヒルト「は〜い!」

まどか「魔女の私のバカっ! 鬼畜っ! 魔性の女〜っ!!」

下された刑は、満場一致での死刑宣告。
嬉々として迫ってくるクリームヒルトにまどかは最後の足掻きと罵声を浴びせかける。 が、しかし……

クリームヒルト「ティヒヒ、だって私、“魔女”だもん! それじゃ、行っくよ〜っ!」

まどか「っ!? ぁ……、そんな……、こんな事って……! ぃ、いやあああああああああああああああああっ!!!?」


まどかのこれ以上無いと言うほど大きな悲鳴は神無月の高い空に響き、吸い込まれていった。

因みにこれは全くの余談だが、この様子を終始スキマで見ていた現世の魔法少女たちは、この宴会での惨状を見て、
『早まった真似をしなくて良かった』と、ほむらを含む全員が胸を撫で下ろしたそうな。



782 :東方魔戯歌伝 [saga]:2012/04/22(日) 11:52:33.95 ID:o86NUcWj0
―――――――――――――― 【オマケ その後のまど神さまA】 ――――――――――――――

クリームヒルト「ねぇ、概念の私、いい加減帰ったらどう? いつまでも主神さまが不在じゃ円環(向こう)も大変だと思うんだけど……」

『神無月の御乱神事件』の数日後、まどかはまだ幻想郷に居た。
自分の家のようにすっかりくつろいでいるまどかに、クリームヒルトが促すように声を掛ける。
が、しかしまどかはあっさりと、そしてやんわりとその言葉を拒否する。

まどか「嫌だよ。さやかちゃんが広めてくれちゃったせいで、みんなが私にお酒を飲ませようとするんだもん。 みんなが反省するまで絶対に帰りません」

クリームヒルト「だからって私の家に転がり込まなくても……」

まどか「現世のほむらちゃんたちはほむらちゃんたちで、なんか妙に優し過ぎると言うか、余所余所しいんだもん。
    そ・れ・に! 弾幕戦の練習をするなら幻想郷(ここ)が一番だしね!」

帰ったらさやかちゃんに目に物見せてやる!と意気込む概念の少女にクリームヒルトはがっくりと肩を落とした。
そして、近い将来親友を襲うであろう悲劇に、心の中で静かに合掌する。

クリームヒルト「はぁ……、それも程々にしておいてね? 概念の私がしょっちゅう勝負を仕掛けてるせいで、この辺が最近物騒になったって言われるんだよ?」

近所付き合いの面から見ても好ましくない事態に、クリームヒルトが釘を刺す。
そんな苦労を知ってか知らずか、まどかはやけに自信に満ちた表情で胸を張りながら答える。

まどか「大丈夫、強そうな人にしか勝負を仕掛けてないし、大体が接戦で終わるから」

クリームヒルト「うん、それが問題なんだって、概念の私……。 今度挨拶回り行かないと……」

永遠亭に守矢神社、命蓮寺、まどかが対戦を吹っかけた有力所を思い出しながら、クリームヒルトはため息をついた。
どんな菓子折りを持って行こうか、とまで考えたクリームヒルトは、次の瞬間、まどかの思わぬ言葉に目を剥いた。

まどか「あっ! 吸血鬼さんの所の妹さんと鴉天狗さん見っけ! すいませ〜ん!ちょっと話があるんですけど〜!」

クリームヒルト「ちょっ!?概念の私!? それ洒落にならないから! せめて場所変えてよ、ねぇ!? ねぇってばぁ!!」

この後、幻想郷縁起にて、鹿目まどかの欄に 『好戦性:極めて高』 などと書かれる羽目になるのだが、まあ当然であると言えよう。



783 :東方魔戯歌伝 [saga]:2012/04/22(日) 12:06:11.81 ID:o86NUcWj0
おめでとう
まじめなまど神さま は フリーダムなまど神さま に 進化した!


はい、全然お目出度くないオチがついた所で続き物としての東方魔戯歌伝、終了です。
この後は本当に番外編とか小ネタで消費する事になるんじゃないかと思います。


と言いますか、シリアスなバトルを書きすぎて、ハチャメチャなノリを全身が欲してるんですよ。
ええ、まど神さまについてかなり真剣に考察して、そんなまど神さまをどう落ち着けりゃ良いのか、
そして無理ゲーの域に入ってるまど神さまの弾幕をどう処理したものか、リアルの多忙さもあって頭がオーバーヒートしました。

疑問点や指摘、要望などがありましたらお気軽にお書き下さい。
答えられる範囲でお答えします。


それでは、そろそろクリームヒルト以外の魔女を主役に据えた話を書くべきかなぁ〜、とか、
そろそろ本気で焔環神の動画化の検討と、まど神の立ち絵探しをすべきかなぁ? と思っている>>1でした。
784 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/04/22(日) 12:37:25.40 ID:A3Bzt0u70
乙かれさまだぜ!だぜ! やっぱりクリまどは最高だなぁ!ゆゆさまもほむほむも好きだけどね
もう続編的な話は無いの?ロロさんとシャルちゃんのイチャイチャとか針巫女VS針の魔女とか見たいぜ…

ロベルタさんが一度もスペカを披露してないから、文ちゃんに撮影をお願いしてもいいでしょうか!
785 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2012/04/23(月) 01:39:52.20 ID:y9icC1ow0
ひとまず完結お疲れ様なのぜ!
ほんと、すばらしく俺得なSSに出会えたことに感謝。

番外編と動画の方も楽しみにしてるので頑張ってください
786 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/25(水) 15:06:39.80 ID:CBWAKjjDO
完全完結…お疲れ様でした!!
いやー、こんなにも暖かくて素晴らしいSSを読ませてもらえて、スペカ案なんかも結構な数を採用してもらえて…俺は…俺はとっても幸せ者です!

本当に…どうもありがとうございました!!!
787 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/26(木) 21:40:42.87 ID:Z+wKBinDO
>>1

フリーダムまど神……
半分くらい中の人に(ry
788 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/27(金) 08:21:27.83 ID:BKiono/DO
さやかちゃんに殴られる辺りのところとか、何だか青春の風を感じるなぁ…。
789 :1@携帯 [saga]:2012/04/27(金) 21:17:47.04 ID:peVDjI9DO
東方求聞口授面白いわ〜。どうも、>>1です。

早速ですが、アンケートです。
幻想郷縁起の魔女版と、数レス程度の小ネタ、どっちが良いですか?
あと、魔女の二つ名(下記の“〜○○〜”の部分)で希望とかあったら書いて下さい。

例1:〜祀られる風の人間〜 【東風谷早苗】

案1:〜天へと誘う魔の少女〜【クリームヒルト・グレートヒェン】


>>784
あややや、私も取材したいのはやまやまなんですが、鬼の皆さんと一緒に居ることが多くてですねぇ……
隙を見てすっぱ抜こうと思ってますので、暫しお待ちを

>>787
フリーダムと言っても地霊殿の頃の早苗さんぐらいなのでまだそこまで酷くありません。
使命一辺倒だったのが、数千年ぶりにはっちゃけられたのでハシャイジャッテるだけです。

>>788
まど神さま、そんな青春を味わうこともなく概念になっちゃいましたからね〜
ホント、どうしてこうなった
790 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/27(金) 22:59:00.54 ID:BKiono/DO
俺は>>1さんが考えたもので良いと思うけど、考えてる人が居るかも知れないから…時間稼ぎ的な意味としても、小ネタからで良いんじゃないでしょうか?
791 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/28(土) 08:26:24.48 ID:0h6JvUBDO
没られた霊夢さんとの協力弾幕は、早苗さんのSSのラストシーンみたいな感じで…さらに二人のスペカを入れ換えて、しかもその上位互換Ver.って感じなのかな?
ぜひ見てみたいわ〜。
792 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/29(日) 18:30:55.37 ID:biBQmTaDO
まど神空間にまど神が居ないってのは、天岩戸をやられているのと似た様な気分を味わってるんだろうな。
793 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/01(火) 09:49:38.99 ID:LdshL9IDO
外に残ってたオリジナルな妖怪さんの話しとか。
794 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/05/01(火) 12:10:54.01 ID:VL0GHmr10
ふと思ったんだが、このスレの魔女にCVをあてるとしたら誰になるのでしょうか?
>>1さんのイメージCVとかあったら教えてください。
795 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/02(水) 21:35:36.47 ID:djYJ6bBDO
まだ出てない人や妖怪さん達との交流。
796 :1@ 〜小ネタ&幻想郷縁起編〜 [saga]:2012/05/03(木) 07:46:52.73 ID:9XHmyMRJ0


静葉「〜〜〜〜♪」

秋静葉。
豊穣神・秋穣子の姉であり、幻想郷の季節を担う季節神の一柱である彼女は、基本的に物静かな性格であると言われている。
現に普段から里を飛んで回っている妹の穣子などと比べると、あまり動き回るような質でもなく、
むしろそんな穣子や訪ねてきた客人をニコニコと見守って居る事の方が多い為、その評は外れとは言えない。

そんな静葉だが、この日ばかりは勝手が違った。
いつも以上のニコニコ顔で妖怪の山を行く静葉の足取りは飛ぶように軽く、更には鼻歌まで口ずさんでいる。
誰がどう見ても明らかに彼女は上機嫌だった。

静葉「ふふ、今年もようやくこの日が来たのね。 里や山を美しく染め上げるこの日が……」

自然と緩む表情を引き締める事すらする事なく、静葉は山の奥へ奥へと分け入っていく。
そんな彼女に最初に気が付いたのは、守矢神社の前で立ち話に花を咲かせていた二人の少女だった。

オクタヴィア「……早苗はさ、コンビーフの缶詰の秘密って知ってる?」

早苗「コンビーフ? いいえ、ちょっと分かりませんね。 それって一体どんな……、ん?って、あれは……、静葉さま?」

オクタヴィア「えっ?静葉……? ホントだ、こんな山奥まで何しに来たんだろう……」

最初に静葉に気が付いた早苗の声に釣られ、振り返ったオクタヴィアは、珍しい来訪者に首を傾げた。
『山の麓にある社(と言う名の掘っ建て小屋)からあまり動かない』、『出歩くにしても穣子とセットで』、と言うイメージが強い静葉が、
何故こんな山奥を一人で歩いているのか、不思議に思ったからだ。

一方の早苗は、最初こそ怪訝な顔をしていたが、すぐに納得したのか、ポンッと手を叩きつつ呟く。

早苗「ああ、そう言えばもうそんな季節でしたねぇ〜」

オクタヴィア「ん?なに、早苗は何か知ってるの?」

早苗「ええ、今日は静葉さまの年に一度の大仕事の日なんですよ」

オクタヴィア「? どう言う事?」

余計に分からないよと言うように顔をしかめるオクタヴィア。
そんな彼女に早苗は少し考えてから答えの代わりにある提案を持ち掛ける。

早苗「ん〜、そうですね。口で言うより見た方が早いでしょうから、ちょっとついて行ってみましょう」


797 :1@ 〜小ネタ&幻想郷縁起編〜 [saga]:2012/05/03(木) 07:49:22.00 ID:9XHmyMRJ0
――――――――――――――――――――――――――――――――――――

静葉「う〜ん、この辺で良いかしら?」

山の頂上近くにある大木のてっぺんに登った静葉は、そう言うと辺りをきょろきょろと見回した。
山を見て、麓を見て、里を見て、丘を見て、幻想郷の主だった所を一通り見回すと静葉は満足げに頷いた。

静葉「うん、良さそうね。 天気も良いし、風は穏やかだし、今日は絶好の紅葉日和ね。 それじゃあ……」

そう言うと静葉は静かに目を瞑った。
静葉の周りに力が集まり始め、それが溢れんばかりの量になったところで一気に解き放つ。
解き放たれた力は最初は山の木々に、そこから徐々に麓に、里に、丘にへと広がっていく。

木々の葉にはあらかじめ静葉が呪を仕込んでいて、トリガー代わりのこの力を受けた木々は、
一斉に夏の面影が残る緑や黄緑の衣を脱ぎ捨て、色鮮やかな朱や黄に、次々と染まっていく。

その光景を眺めながら静葉はこれ以上ないと言うほどの高揚感と優越感を感じていた。

静葉「ふふ、今年もみんな綺麗に染まったわね。 さぁ、もっと良い色を魅せてちょうだい!」




オクタヴィア「おぉっ!?すごっ!?」

その様子を近くの茂みの中からこっそり覗いていたオクタヴィアは思わず声を上げていた。
その隣で同じ様に静葉の儀式を見ていた早苗も感嘆の声を漏らす。

早苗「やっぱりそう思います? これが静葉さまが司る秋の季節神としての役目の一つなんですよ」

オクタヴィア「うん、これは素直に凄いと思うよ。 こんな綺麗な紅葉、あたし見たことないもん」

早苗「異常気象や大気汚染で紅葉がダメになってしまう所が多いですからね。
   かく言う私も、ここまで綺麗な紅葉は、幻想郷に来て初めて見ました」

「神奈子さまたちに言わせると昔は諏訪の地もこんな風だったそうなんですけどね」と小声で呟きつつ、早苗は複雑そうに苦笑した。
その苦笑の意味を早苗は決して語らなかったが、オクタヴィアには何となく早苗の言いたい事が分かってしまった。

かつては何処でも見られたであろうこの感動的な景色を、“幻想”にしてしまったのは他ならぬ外の世界の人間だ。
モノの豊かさと引き換えに、捨ててしまった豊かさの一つがこの景色なのだと、オクタヴィアや早苗は痛感させられたのだ。

オクタヴィア「なるほどねぇ……、こりゃ静葉も張り切る訳だ。 こんな檜舞台に立ったらあたしでもテンション上がるわ」

早苗「ええ、そう思います。 さて、それじゃあお邪魔になっては悪いので、そろそろ私たちは……」



798 :1@ 〜小ネタ&幻想郷縁起編〜 [saga]:2012/05/03(木) 07:51:25.57 ID:9XHmyMRJ0





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              ノi|lli; i . .;, 、    .,,            ` ; 、  .; ´ ;,il||iγ
                 /゙||lii|li||,;,.il|i;, ; . ., ,li   ' ;   .` .;    il,.;;.:||i .i| :;il|l||;(゙
                `;;i|l|li||lll|||il;i:ii,..,.i||l´i,,.;,.. .il `,  ,i|;.,l;;:`ii||iil||il||il||l||i|lii゙ゝ
                 ゙゙´`´゙-;il||||il|||li||i||iiii;ilii;lili;||i;;;,,|i;,:,i|liil||ill|||ilill|||ii||lli゙/`゙
                    ´゙`゙⌒ゞ;iill|||lli|llii:;゙|lii|||||l||ilil||i|llii;|;_゙ι´゚゙´`゙




                      ちょどおおおおおおおおおおおん!!




オクタ&早苗「「って、ええェェェェェェェェェェ!?」」
799 :1@ 〜小ネタ&幻想郷縁起編〜 [saga]:2012/05/03(木) 07:53:03.29 ID:9XHmyMRJ0

静葉「 (゚Д゚)ポカーン… 」

感動的な場面から一転、絨毯爆撃の方がまだマシだと思える程の焦土と化した山にオクタヴィアたちはおろか、当の静葉すら絶句する。
静葉の中に満ちていた優越感や高揚感は一気に失せ、代わりに芽生えたある感情が、頬を伝う一滴の粒となって溢れだす。

静葉「ぐすっ……、ひぐっ……」

オクタヴィア「え〜っと、静葉……さん?」

静葉「っ!?」

早苗「あー、私たちの事は気にしなくて良いので、むしろ思いっきり泣いて下さい。 なんなら胸を貸しますよ?」

静葉「うっ……、ぐすっ……、うわ〜ん!!」

オクタヴィアたちが現れたことに、静葉は一瞬だけびくりとなったが、二人の言葉に堰を切ったように泣き出した。
十数日間に及ぶ仕込みが、ようやく日の目を見たかと思ったら、一瞬にして灰燼に帰してしまったのだ。
その心中は察するに余りある。

と、そこに純白の衣を纏った、概念の少女が慌てた様子でやって来る。

まどか「ごめんなさ〜い、撃ち損じちゃいました〜。 大丈夫でしたか……って、オクタヴィアちゃんと早苗さん?」

オクタヴィア「ああ、さっきのはまどかのか……。 まどか、とりあえず静葉に土下座」

まどか「へ?」

最初こそ怪訝そうな顔をしていたまどかだが、背後の惨状とオクタヴィアの説明を聞くうちに、見る見るうちに顔が青ざめていく。


この後、まどかに暫らくの間、幻想郷への出入り禁止令が言い渡されたのは言うまでもない。



800 :1@ 〜小ネタ&幻想郷縁起編〜 [saga]:2012/05/03(木) 07:53:30.53 ID:9XHmyMRJ0
――――――――――――――――――――――――――――――――――――

〜泡沫の人魚姫〜 【オクタヴィア】

能力       痛みを感じない程度の能力
危険度     中
人間友好度  中
主な活動場所 妖怪の山、玄武の沢、八坂の湖、守矢神社など


一見すると人魚に見える新参妖怪・魔女の一人。
人魚と聞くと、唄や悲恋と言った言葉を思い浮かべる人も多いと思うが、彼女も例外ではなく、彼女の場合、西洋音楽である。
美しくも哀しい調べを奏で続けるその音楽は聴き続けると生気を吸われるので注意が必要であり、
特に失恋直後の女性には効果抜群らしいので、夜道で物悲しい音楽が聞こえてきたら、まずは聞き流す事をお奨めする。

決してやってはいけないのは演奏を邪魔する事で、演奏を邪魔されると、音楽隊の中に引きずり込まれるので、絶対にやめてもらいたい。
そうなると彼女の気が済むまで延々と演奏をする羽目になる上、生気も吸われるので非常に疲れる。
死ぬことは無いらしいが、死ぬ方が楽だと言わしめる程疲れるので、バカにできない。

なお、音楽を奏でて居ない時の彼女は別段害は無いので、普通に接するのは問題ないと思われる。


〔能力〕
彼女の能力は普段ならなんの意味も持たないが、いざと言うときになると非常に厄介だ。
と言うのも、いくら攻撃受けても痛みを感じない為、いつまで経っても平然としていられるからだ。
実際には限度と言うモノがあるのだが、大筒3発程度ではびくともしないそうなので、普通の人間が相手をするのはまず不可能である。


〔対処法〕
基本的に害は無いので放置で構わない。
と言うか放置が一番無難である。

向こうから話し掛けて来た時はそれなりに話を合わせてやると良いかもしれない。
ただし色恋関係の話題はタブーに触れやすいので避けよう。


801 :1@ 〜小ネタ&幻想郷縁起編〜 [saga]:2012/05/03(木) 07:59:13.81 ID:9XHmyMRJ0




さとり「想起『ロイヤルフレア』」

エリー「いっけーっ! 恐符『マスタースパーク』」


                      カッ!


さとり「な、なかなかやりますね……(ガクガク」

エリー「そ、そっちもね……(ブルブル」

さと&エリ「「ふふ、ふふふふ…………」」

得意のトラウマ弾幕を相手にお見舞いしつつ、さとり妖怪の古明地さとりと、ハコの魔女・エリーは不敵に微笑んでみせた。
良く見ると、二人の膝はガクガクと震えていて、笑みを浮かべている筈の頬は引きつっているのだが、お互い余裕がないのか、そこに気付く事はない。

まるで鏡写しのように虚勢を張り続ける二人を見て、さとりのペットで旧灼熱地獄の管理者でもある火焔猫燐はため息をついた。

お燐「まったく、さとり様もあっちの子も無理しちゃって……、見てらんないよ」

こいし「ねぇ、お燐、お姉ちゃんたち止めなくて良いの?」

お燐「う〜ん、あたいとしても止めたいのは山々なんだけどねぇ……」

いつの間にか隣に現れた古明地こいしに動じるどころか驚く事もなく、お燐は二人を見やる。
相対する二人は、普段の様を知っている者から見ると違和感を感じるほど、白熱している。


                      想起 『くずれ近未来都市』
                        恐符 『夢想封印』


超大技クラスの弾幕が交差し、その度にお互いから血の気が引いていく。

お燐「流石にあの中に割り込むのは勘弁してもらいたいねぇ……」

こいし「ああ、うん、確かにそうかも……」

どうしてこんな事になったのか、話は数時間前に遡る。



802 :1@ 〜小ネタ&幻想郷縁起編〜 [saga]:2012/05/03(木) 08:02:52.28 ID:9XHmyMRJ0
――――――――――――――――――――――――――――――――――――

パチュリー「そう言えば、今更だけど、貴女の弾幕ってさとり妖怪と似てるわね」

ふと思い出したようにパチュリーがそんな事を言い出したのは冬も近付いて、そろそろ外を出歩くのが辛くなってきた日の事。
パチュリーの言葉にパソコンに向かっていたエリーは思わず顔を上げた。

エリー「さとり妖怪? なにそれ?」

パチュリー「常に相手の心を読んでる厄介な妖怪よ。 その能力故に嫌われてるから地底に篭って出てこないんだけど……」

エリー「なん……だと?」

パチュリー「?」

パチュリーの話を聞くなり、肩をわなわなと震わせ始めるエリー。
他愛ない会話、程度にしか考えていなかったパチュリーはその反応に思わず首を傾げる。

パチュリー「エリー? 一体どうしたのよ? 只でさえ不健康そうな顔が真っ青よ?」

エリー「読心術の使い手で、更には引き篭り……、マズいわ、弾幕どころかキャラまで丸被りじゃない!? って言うか寧ろ私の方が下位互換!?」

パチュリー「あ〜、考えてみるとそうかもしれないわね……」

エリーの読心術はどちらかと言えば過去のトラウマに特化している。
現在進行形で読み取り放題なさとりと比べると、使い勝手は悪そうだ。

エリー「こうしちゃ居られないわ! そのサドリだかニトリって妖怪に目にもの見せてやらないと!」

パチュリー「あら?貴女がやる気になるなんて珍しい事もあるのね……」

エリー「アイデンティティーの危機なのよ! それじゃあパチュリー、私ちょっとそのさとりって子の所に行ってくるわね」

パチュリー「勝手にしなさい。 あっ、餞別代わりに行き方だけは教えてあげるわ。 だからこぁを拉致しようとするのはやめなさい」

勢い込んで出ていくエリーに地図を差し出しつつ、パチュリーが釘を刺すように言うと、エリーは笑いながら振り返る。

エリー「あはは、拉致?なにを言ってるのよ?そんな事私がするわけ無いでしょう?
    それじゃあ、この地図はありがたく使わせて貰うわね〜〜」

地図を受け取り、そそくさと図書館を後にするエリー。
扉が閉まり、エリーの姿が見えなくなったところでパチュリーはポツリと呟いた。

パチュリー「そんな事、ねぇ……。 使い魔の召喚符を片手に持った状態で良くそんな事が言えたわね……」

エリーの使い魔、その性質は『運搬』である。



803 :1@ 〜小ネタ&幻想郷縁起編〜 [saga]:2012/05/03(木) 08:08:38.34 ID:9XHmyMRJ0
――――――――――――――――――――――――――――――――――――

そんなこんなで地底に足を踏み入れたエリーはトラウマ弾幕を駆使して地霊殿への殴り込みに成功したのだが……、


エリー「いやぁぁぁっ!? もうダメぇぇぇっ!?」
さとり「うぅっ……、もう限界……です」



                      ぴちゅーん!



トラウマの弄りあいと言う考えただけでも嫌な予感しかしない戦いは、両者が同時に音をあげると言う引き分けに終わった。
自身のトラウマを目の前で見せられつつ、相手のトラウマを探るという行為は、読心のプロである二人にとっても厳しいものがあったのだ。

ズタボロになった状態でエリーがぼやくように呟く。

エリー「はぁ〜、さとりの能力が羨ましいなぁ〜。
    私の能力は基本的にトラウマ限定だから見てるこっちも気が滅入ってくるし、使い勝手は悪いし……」

さとり「そうですか? 年がら年中他人の思考が丸聞こえ、と言うのもあまり良いとは言えませんよ?
    私からすると好きな時にだけ相手の心を覗き見る事が出来る貴女の能力の方が羨ましいぐらいです」

エリー「えー、そうかな〜?」

さとり「そうですよ」

そんな会話を交わしているうちに、自然と二人から笑みがこぼれ始める。
お互いに無いものねだりをしているだけで、結局は大差が無い事に気が付いたからである。

エリー「散々トラウマ弄っといてなんだけど、さとりとは仲良くなれそうな気がする」

さとり「奇遇ですね。 私もそんな気がします……」

エリー「最近パチュリーの図書館も冷えるんだよねぇ。 冬場の別荘代わりに遊びに来てもいい?」

さとり「それでしたら本を何冊か持って来てくれませんか? 地底暮らしはいささか暇なので……」

「パチュリーの所から何冊か借りてくれば良いのね?」と聞き返すと、さとりは満足げに頷いた。
読書が趣味のさとりにとって、万を越えるという蔵書を持つ、紅魔館の地下図書館は一度は訪ねてみたい場所だったからだ。
心を読むという能力の都合上、地上にあまり顔を出すわけには行かないので、残念ながら訪問は一度たりとも実現していないのだが……。

エリー「さーて、そうと決まったら家に戻って冬篭りの準備をしてこないと……」

さとり「そうして下さい。冷え込み始めると早いですよ。 あっ、でも、その前に、あちらの方たちとも話をつけてから、にして下さいね?」

エリー「? あちらの方たち……、っ!?」

さとりに言われ、振り返ったエリーは、次の瞬間、血の気が引くのを感じた。
地霊殿の広間の入り口の前に見覚えのある影――ここに来るまでにトラウマ弾幕で蹴散らした地底の妖怪たちが居たからだ。

パルスィ「いきなり来て、人の傷口に塩を塗りこむとか、妬ましいわね」

ヤマメ「さっきは酷いご挨拶をしてくれちゃって、どーもありがとう。 お返しと言うかプレゼントがあるんだけど、受け取って貰えるかい?」

キスメ「…………(ニヤリ」

エリー「えっと……、その……、ゴメンナサイ」

この後、紅魔館に戻ってきたエリーは39度の高熱を出してぶっ倒れ、紅美鈴の手により永遠亭に緊急搬送される事となった。
パチュリーたち紅魔館の一同は呆れていたそうだが、エリーの診察をした八意永琳は「今年の土蜘蛛の病気が分かって助かった」とホクホク顔だったと言う。



804 :1@ 〜小ネタ&幻想郷縁起編〜 [saga]:2012/05/03(木) 08:14:51.78 ID:9XHmyMRJ0
――――――――――――――――――――――――――――――――――――

〜電脳トラウマBOX〜 【エリー (キルスティン) 】


能力       トラウマを掘り起こす程度の能力
危険度     中
人間友好度  低
主な活動場所 魔法の森、紅魔館など


魔女異変の際、幻想郷にやって来た魔女の一人。
常に白い箱のようなモノを弄っており、基本的に他者と関わろうとしない、引き篭りな性格の持ち主。

その為、人間の里など、人が多い場所には滅多に顔を出さず、大抵が自宅代わりにしている廃墟か、紅魔館の地下図書館に篭っている。
一時期噂になった魔法の森の電波塔付近に出る女幽霊の正体が彼女で、噂の真偽を確かめに行って帰ってきた人の話によると、
面白い話には普通に食い付いて来たらしいので、普通に話すぐらいは問題ないのかも知れない。


〔能力〕
彼女の能力である相手のトラウマを掘り起こす程度の能力は一見すると、相手の心を読み取るさとり妖怪と良く似ている。
さとり妖怪が基本的に常に相手の心を読んでいるのに対し、彼女の場合、過去のトラウマを重点的に読み取るので、ある意味さとり妖怪以上に嫌らしいと言える。

彼女が掘り起こすトラウマは自己嫌悪に襲われる程度の他愛ない悪戯から、相手に自殺を考えさせる程の洒落にならないモノまで多種多様である。
が、彼女自身から話を聞いた人によると、

「自殺に追い込む程のトラウマは見ているこっちもしんどいから見たくない」

などと言っていたそうなので、心配する必要は無さそうである。
また、一部の情報筋によるとこの能力は彼女が持ち歩いている箱のようなモノが無いと発動できないとの事なので、
万が一の時は箱をどうにかすると良いと思われる。


〔対処法〕
基本的に引き篭りがちで、向こうから関わってくることは無いので、森や紅魔館に近寄らなければ、遭遇率は著しく低い。

もし出会ってしまい、襲われそうになった場合は前述の通り、彼女の持つ箱を狙うと良い。
一説によると水が天敵らしいので、ぶっかけるのが良いだろう。

ただし、箱を壊すと一気に凶暴化するとの情報もあるので、箱を壊し次第、早急に逃げた方が良い。
なお、「フタエノキワミ、アーッ!」と言う呪文を唱えるのも効果的との噂もあるが、真実は定かではない。

805 :1@ 〜小ネタ&幻想郷縁起編〜 [saga]:2012/05/03(木) 08:32:14.26 ID:9XHmyMRJ0
以上、秋の終わりの(文字通り)紅葉狩り編と、冬の初めのトラウマ合戦編でした。
静葉にさとりに、ってみんな再登場やん!

まぁエリー×さとりは動画版のコメントでも「見たい!」って人が多かったし、別にいっか……

幻想郷縁起が魔女たちに辛辣な書き方になっているのは仕様です。
基本的に人間たちの立場から書いてるので……

>>792
天照大神は他の神々が連れ戻しに来ましたが、まど神は追い出されたようですw
因みに、焼けた山は神奈子さまと諏訪子さまが何とかしました。

>>794
えっと、クリームヒルトちゃんが悠木碧さんで、ワルプルギスちゃんが水橋さんで、オクタヴィアが喜多村……えっ?違う?
とりあえずイメージ的に固まってるのはパトリシアさんで、『けいおん!』の和の人かなぁ……

>>795
そう、出てない東方キャラは出したいんですよ。
とりあえず今回は地霊殿から攻めてみたけど、やっぱり登場済みキャラの方が強く出てるし……
さて、どう絡ませようかなぁ……
806 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/03(木) 09:04:58.66 ID:Q5UpZIvDO
乙!
静葉さま、俺の胸ならいつでも泣いてくれ!

オクタちゃんでも友好度低くなるのか。
あっきゅん直接取材は寺子屋ならありそう
807 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/03(木) 17:28:13.71 ID:tPmkX8vDO
まど神様は、魔法少女達にとってはありがたい(ついでに弄り甲斐のある)神様だけど…、幻想郷からすれば、魔女は増やすわ戦略兵器級の土地破壊はするわで、とんだ迷惑神だなww
808 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山口県) [sage]:2012/05/03(木) 18:14:34.15 ID:RDSszQVso
投下乙でした

>>798が一瞬荒らしかと思ったwwwwww
809 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/03(木) 19:18:35.89 ID:4uhXOIbo0
そもそも改変後の世界においてまどか、というか円環の理はどんな風に考えれてるんだろうか。
俺ら視聴者やほむらはSGが濁る=魔女化を知ってるから改変後の世界についてはそれなりに納得できたが、何も知らない改変後の世界の魔法少女達にとってはSGが濁ると消しにかかって来る死神みたいに思われて恐れられてたりして・・・
810 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/04(金) 14:55:38.14 ID:d8vY/gaDO
>>809
そういうので悩んだから御乱神事件が起きたんじゃなかった?

救済された魔法少女達って、幻想郷に遊びに行ったり出来るん?
811 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/05/04(金) 15:33:20.81 ID:AlirGREzo
「円環」が機能不全を起こした、キュべレイ未来編で救済代行したほむらが死に神呼ばわりされてたのと同じ発想か。
812 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/05(土) 15:10:04.03 ID:ETcwK1WDO
キリカの魔法は弾幕戦には有利だろうね。出てくればの話だけど。
813 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/05/05(土) 19:33:31.94 ID:mF450GMT0
ゆま以外のおりこ☆マギカのキャラも出してください。
814 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/05(土) 21:38:16.99 ID:B3HQPNMp0
>>811
あのほむらが死神扱いされてたのは実際にほむら個人が実在してたせいだけど、まどかの場合は導かれる本人以外にはただの現象としか捉えられないと思う
まあ直前まで苦しんでた奴が、突然幸せそうな顔して消えていくのは見様によっては不気味かもしれんが
815 :1@携帯 [saga sage]:2012/05/06(日) 00:34:24.85 ID:EyuJ51EDO
>>806
ヒント:にとりでさえ“中”

と言う冗談はおいといて、オクタちゃんは他人の感情に敏感なので、「やべっ、妖怪だ!」とか思ってる人にはそれなりに接します。
ある意味空気が読めてるとも

>>809-811
絶望と悲劇しかもたらさない魔女を消す為、って理由があったから無理矢理自分自身を納得させてきたのに、結界一枚隔てただけの片田舎で、

魔女「がおーっ、食べちゃうぞーっ!(棒読み」

人間「きゃーっ!(棒読み」

霊夢「夢想封印!」(或いは 魔理沙「マスタースパーク!」)

魔女「きゃーっ、やられたーっ!(棒読み」

なんて光景が繰り広げられてたらそりゃ「今までの苦労や葛藤って一体……orz」ってなりますよ。
まあ、まど神さまの抱える諸々の問題を決定的にしたのは作中の通り、紫が渡したスキマが直接的要因なんだけど……

>>810後段
まどか若しくは紫からスキマの取り扱い方法を教わっているか、
段ボールを装備して冥界に一旦抜けて、冥界と幻想郷の境をすり抜ければ来れます。
ただし冥界経由は閻魔さまに見付かったら即刻連行です。素人にはオススメ出来ない。

>>812-813
織莉子さんとキリカさんはねぇ……。どうするんだろ、幻想郷に来たら?二人で愛の巣作ってそう……

因みにゆまっちは魔法少女にならずに大人になって、魔法少女の調査に来た秘封倶楽部の面々と絡む〜、
なんてネタもありましたが、見事に没ったので、裏設定って事でここで放置しときます。
816 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage saga]:2012/05/06(日) 01:05:25.08 ID:I+0AwTXv0
〜薔薇の香りがする魔女さん〜 【ゲルトルート】

〜お菓子の家の小さな主人〜 【シャルロッテ】

〜爆走暴走特攻隊〜 【ギーゼラ】

〜黒影に祈るシスター〜 【エルザマリア】

〜真作を描く贋作〜 【イザベル】

〜とある学園委員長〜 【パトリシア】

〜酔に生き、夢に死す乙女〜 【ロベルタ】

〜闇夜に廻る魔女の饗宴〜 【ワルプルギス】


一通り考えてみたよー 気に入ったのがあれば是非とも使って欲しいぜ!
817 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/06(日) 20:04:03.52 ID:B4W05a2No
秘封倶楽部×ゆまとか俺得。
だけど杏子に出会わないゆまは長生きできる気がしないよ……。
818 : [saga sage]:2012/05/06(日) 21:37:07.91 ID:KPAj0Doo0
>>816
成る程成る程、そう来ましたか……。 魔戯歌伝以降に書かれた文献ならそっちの二つ名の方が良さそうだなぁ……。
いや、魔女たちが妖怪してた円鹿目(魔女異変)当時の印象で考えてたもんで、う〜ん、どっちも捨てがたいなぁ……。

>>817
いえ、秘封×ゆまはこのスレの世界観での話ですよ?
マミや杏子はおろか、ほむらですら導かれた後、無事に大人になったゆまが秘封組と出会って、
魔法少女や魔獣、引いてはまど神さまや幻想郷の謎について外の世界の視点から迫る〜、って話です。
秘封ってまどマギよりも時代が先っぽいし、そんな設定にしたんですが、大人なゆまちゃんで躓きました。
たぶん大人なゆまちゃんじゃ需要も無さそうだし、書いてるこっちも(東方自機組の大人な姿と同じで)キツイものがあったので……


まあ円鹿目とは別件でまどマギ×秘封SS案も(だいぶ昔に)あった事もあったけど(ボソッ
誰か秘封倶楽部が見滝原入り、書かないかなぁ(チラッチラッ
819 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2012/05/06(日) 22:29:18.12 ID:5/eTxCVDO
冥界に段ボールって、即バレじゃねw?
ゆゆ様は食べ物かと思って開けてみたり。妖夢は見付け次第斬りそうだしw
ところで、閻魔様に連行される場所ってどっちですかね?まど神空間?裁判所?
820 : [saga sage]:2012/05/06(日) 23:57:14.32 ID:KPAj0Doo0
>>819
現世から忽然と姿を消した筈の魂(特に卑弥呼とかジャンヌ・ダルクとか)を閻魔さまが冥界で見付けたら……、
言わずとも分かりますよね? まど神空間はある種の治外法権なんで、外部に出たら狩り放題です。

『ゆゆ様に見つかる』『妖夢に斬られて成仏か消滅』『閻魔さまに連行』……、
うん、やっぱり冥界は素人にはオススメ出来ないなぁ。
821 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/05/07(月) 02:54:17.95 ID:pugiQphPo
大人ゆま というと、白い不思議生物 とか 10年たった とか...
いくつか見た記憶があるが、特に不評というわけではないような?
まあ、他キャラ以上にオリジナル性格に化けやすいから、不評を買わないこと自体が難しいか。
822 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/07(月) 16:45:53.62 ID:joJghT3DO
“妖怪を呼び出したい”なんて願った娘がいたら、妖怪サマナーになれるかな?
823 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/07(月) 19:12:59.18 ID:4psOhn3S0
改変後の世界で魔女になりたいという願いで契約した場合どうなるんだろう?
願いが叶った瞬間速攻で導かれたりしてwwww
824 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/05/07(月) 20:27:09.43 ID:D17gn8JAo
>>823
箒に乗って空を飛び、大鍋で魔法の薬を作り、動物と会話できる魔法少女が誕生するだけの事じゃね?
魔法少女候補がそうなりたいと願うような「魔女」ってのはイヌカレー空間に巣くう魑魅魍魎の事じゃないと思うんだ。
一瞬でしわくちゃの老婆になって絶望した魔法少女とか一人二人くらいはいてもおかしくないが。
825 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/08(火) 18:51:56.09 ID:7J7dLSGj0
イヌカレー的な魔女になるためには改変前の世界の魔女の概念を知ってる必要があるから難しいな。
仮にもしそういった情報を知っていて契約した場合、かずみみたいな魔女と魔法少女の中間的存在になるかも。
まど神さまの魔女判定がどこからなのかは知らんが。
826 :1@携帯 なお、このスレのゆまちゃんは普通の人間です。 [saga]:2012/05/08(火) 19:07:13.38 ID:w7hop5eDO
>>823-825
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

ほむら「ゆま、ちょっとこの紙に書いてある事をやって欲しいのだけど……」

ゆま「この紙の通りで良いの? 分かった」


                〜五分後〜


ゆま「えーと、最後はこうやって……、えいっ!」


ジョロジョロジョロ……


ゆま「うわっ!?水が出てきたよ!?」

QB「何をしているんだい?水なんか出して……、手品かなにかかい?」

ほむら「まあそんなモノよ」

ゆま「手品かぁ……。 色々描いたり唱えたりして、魔女みたいな手品だね」

QB「魔女? ああ、君たち人間が空想する魔法使いの一種だね。でもそんな存在居るわけが(ry」



マミ「ねぇ、暁美さん、今ゆまちゃんにやらせたのって……(ヒソヒソ」

ほむら「ええ、幻想郷(むこう)で教えて貰った水の精霊を呼び出す魔法よ(ヒソヒソ」

杏子「ゆまやキュゥべえには見えてないんだな。あの精霊……(ヒソヒソ」

ほむら「でも素質はあるようね。 素質の無い人だとコップ一杯分も出ないそうだから……(ヒソヒソ」

マミ「奇跡も魔法も普通にあるのね……(ヒソヒソ」

杏子「もう何があってもアタシは驚かない自信があるよ(ヒソヒソ」

ほむら「奇遇ね。私もよ(ヒソヒソ」
827 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/08(火) 19:30:25.77 ID:VfbA7cdDO
「奇跡も魔法も普通にあるのね……
魔法少女ェ……。

水の精霊はきっとかわいい。

青娥さんは魔法少女のぬけがらを見たら欲しがりそうだよね。
それと、もし芳香ちゃんが契約したら、あのキョンシー用の札がSGになるんだろうか?
828 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/08(火) 19:41:13.43 ID:fol+QU6q0
>>827
水を氷にしてごらん
ほ〜らとたんに(ry
829 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/09(水) 00:53:47.97 ID:YJQ1zvp10
>>827
まあまどマギにおける奇跡や魔法はQB星人の科学技術による紛い物みたいなもんだし・・・
ある意味こっちが本物といえる
830 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/09(水) 15:34:32.41 ID:DV7vTTtDO
じゃあQBに素質を見出だされた少女に、魔法使いって選択肢も与えてあげればいいんじゃないかな?
831 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/10(木) 08:43:13.22 ID:p3RHOfdDO
東方×まどマギの安価企画が始まりましたね。仲間が増えたよ!やったね>>1さん!

ほむほむと幻想郷……どうなるんだろうなぁ?
832 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/10(木) 09:28:53.91 ID:Al1USTQDO
>>827
水色の毛玉がそっちむかってったよ

三( ゚Д゚) 三( ゚Д゚)

三( ゚Д゚) 三( ゚Д゚)

三( ゚Д゚) 三( ゚Д゚)
833 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/10(木) 13:59:39.60 ID:p3RHOfdDO
お?なんかかわいいのがたくさん来た! ん?な、なにをする ぬゎーっ!(ピチューン!
834 :1@携帯 そんなに旨いハナシは無いと言う御話 [saga]:2012/05/10(木) 18:43:03.95 ID:bYRIJZUDO
>>827-830
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

魔理沙「ところがそうは簡単には行かないんだよなぁ……」

早苗「ええ、魔法にしても奇跡にしても十分な修行と鍛練が必要です。 魔法なら専門家の教えがあれば数年ですが……」

魔理沙「独学だと軽く数十年コースだな」

早苗「更に言うと私の奇跡は咄嗟の発動だと、そんなに使い勝手が良くないんですよね。
   例えばマミさんの事故の場合、“奇跡的に助ける”事は出来ても、“五体満足で助かる”とは限りません。
   さやかさんの想い人の場合も然りで、“奇跡的に手が動かせる”かもですが、そこから先は本人の努力次第です」

早苗「ほむらさんの場合はまどかさんが既に亡くなってますので完全に手遅れです。
   まどかさんの霊を降ろして話をさせるのが限度ですかね〜」

クリームヒルト「あの戦いに早苗さんが居たら、どうなってました?」

早苗「ワルプルギスさんとの戦いですか?大局は変わりませんねぇ。
   時間稼ぎで精一杯でしょうから『ここは私に任せて逃げて下さい』ってなるんじゃないですか?」

オクタヴィア「早苗、それだと死亡フラグだよ(笑)」

早苗「はい、間違いなく死にますね。
   しかもこうなるとワルプルギスさんは“現人神を倒した妖怪”になりますので更にパワーアップしちゃいます」

オクタヴィア「げっ!?なにそれ怖い。 そっか〜、上手く行かないもんなんだね〜」

霊夢「世の中そんなもんよ」

クリームヒルト「それじゃあ杏子ちゃんの場合は?」

早苗「……信仰を簡単に増やす手段があるならむしろ私が教えて貰いたいぐらいですよ……。 ハァ……(遠い目」

霊夢「そうね。同感だわ……(遠い目」

クリームヒルト「うっ……、なんて言うかゴメンナサイ……」



835 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/10(木) 18:57:15.68 ID:rdqWHtiU0
霊夢と早苗の遠い目ってそれだけ苦労が有るわけか
つまりそれなりに年がいっt(ピチューン
836 :1@携帯 [sage]:2012/05/10(木) 19:11:55.89 ID:bYRIJZUDO
>>835
マジレスすると風神録が2007年秋なんで、仮に早苗さんが当時高校生(15〜18歳)だったとすると、
2011年の神霊廟(魔女異変はこれのちょい後)の時点で19〜22歳と言うことに……(ピチューン!


早苗「それ以上言ったら退治しますのでそのつもりで(ニッコリ」
837 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/05/10(木) 20:09:24.50 ID:QqLbFWp7o
>>835
マジレスすると風神録〜神霊廟までの間での作中時間経過は1作=3ヶ月だぜ。
秋に風神録(と緋想天)、冬に地霊殿(と非想天則)、春に星蓮船、夏に神霊廟。
838 :1@携帯 :2012/05/10(木) 20:49:52.81 ID:bYRIJZUDO
>>837
???
えーと、非想天則は夏の話で神霊廟は春先ですよ?
東方求聞口授の本文にも風神録から四年ぐらい〜、って言ってるし
巻末の新聞集も緋想天での神社倒壊が124季の文月、神子の記事が126季なんで間違いないと思うけど……
あれ?俺が何か勘違いしてる?
839 :1@携帯 [sage]:2012/05/10(木) 20:51:21.08 ID:bYRIJZUDO
ぎゃあ!sage忘れたあああっ!?
840 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) :2012/05/11(金) 00:14:21.73 ID:7In16NOq0
東方円円鹿目 救済の魔女幻想入り シリーズ 全部 楽しめましたが
今度は、違う作品もありではと思いました…

それは…刀語という作品に登場した 主人公が叩き壊した 武器(1話〜最終話に出たもの)です
もしかしたら 幻想入りして 妖怪化しており 異変を起こして 霊夢達に退治されるという展開ありな気がします
ここでは、場違いですが もしも、作者の方がご存知ならば…と思いますが 皆さんはどう思われますか?
841 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県) [sage]:2012/05/11(金) 00:39:03.47 ID:opbGVmX70
言いたいことは分かるがスレチだぜ
842 :1@ 〜小ネタ&幻想郷縁起編〜 [saga]:2012/05/11(金) 10:34:55.81 ID:b/yq79gs0
――――――――――――――――――――――――――――――――――――

魔理沙「はぁ!?夜が怖い!?」

昼下がりの霧雨魔法店に、魔理沙の声が響く。
相変わらず散らかっている居間で、白い修道服を纏った少女――エルザマリアが俯きながらその言葉に頷く。

エルザマリア「はい、お恥ずかしい話なんですが……」

魔理沙「お前なぁ、仮にも妖怪の端くれだろ? 夜が主体の妖怪としてそれはどうなんだよ?」

エルザマリア「それは解っているのですけど、幻想郷の夜は暗すぎて、操る影が作れないんです」

エルザマリアの言葉に魔理沙は頭を押さえた。
魔女異変の時には霊夢でさえ苦戦させた影を操る能力だが、それには決定的な弱点があったのだ。

エルザマリア「霊夢さんと戦って負けた後、現世での私を改めて思い返してみたんです。
       で、良く考えてみたら結界は魔造の太陽で明るいし、外を移動する時も影が良く出来る明るい所にしか行ってなくて……」

魔理沙「深く考え出したら“闇”が怖くなっちまった。と……。 まったく、霊夢も嫌なトラウマ作ってくれたな……」

光源を全て壊して闇を作る事で、エルザマリアにとっての唯一の攻撃手段である影を完封し、
更に闇討ちで完膚なきまでに叩きのめすと言う効率的だが非人道的な攻撃は、彼女の中の潜在的なトラウマを掘り起こしてしまったようだった。

アリス「ちなみに聞いておきたいのだけど、ミスティアやパトリシアたちとはどうしてるのよ?」

しゅんとなるエルザマリアに、魔理沙と一緒に相談に乗っていたアリスが尋ねる。
人里に居を構えるパトリシアや、ちょくちょく買い物に訪れるミスティアとは顔を合わせている筈であり、付き合いは必須な筈だ。

エルザマリア「えっと、私の前では“そういう事”はしない様にと、お願いしています」

魔理沙「ついでに聞くとルーミアはどうなんだ?」

エルザマリア「絶対に会いたくありません!!」

アリス「……重症ね。 コレは……。 まったく、何をどうしたらこんな事に……」

ルーミアの名を聞いた途端ガタガタと震え出すエルザマリアに、アリスは盛大なため息を漏らす。
注がれた紅茶を一口啜ってから、アリスは思い出したように呟いた。

アリス「そう言えばさっき“明るい所”とか言ってたけど、今の外の世界って、夜でもそれなりに明るいの?」

エルザマリア「はい、人工の光で影があちこちに出来るほどに……」

魔理沙「なんと言うか現代の妖怪ってのも案外面倒くさいな。 明るい事が当たり前で夜の闇が怖いとか本末転倒だぞ?」

エルザマリア「すいません……」

肩を落としすぎたあまり、とうとうその場に縮こまってしまうエルザマリア。
このままでは話が進まないので、アリスの方から話を切り出す事にする。
843 :1@ 〜小ネタ&幻想郷縁起編〜 [saga]:2012/05/11(金) 10:41:51.65 ID:b/yq79gs0

アリス「それで?貴女はなんで今になってそんな相談を、私たち二人に持ち掛けたの?」

エルザマリア「えっと、お二人は“クリスマス”と言う日はご存じですか?」

魔理沙「ああ、知ってるぜ。 お前たち十字教のお祝いの日だろ?」

エルザマリア「はい、そうです。 それで、普段私は夜になると教会を閉めてしまうのですが、その日は聖夜なので……」

アリス「夜でも教会を開けておく必要がある、と言う事ね?」

エルザマリア「はい……」

俯きながら答えるエルザマリアに魔理沙とアリスは納得した。
年に一度の聖夜に、「夜が怖いので教会は開けません」などと言える訳がない。
更に言うと、教会を切り盛りしているのはエルザマリアただ一人であり、聖夜の行事を他者に任せる事も出来ない。
現状では八方塞がりなのだ。

魔理沙「ん? そう言えばお前、確か太陽みたいに明るい燈を出せたよな? それで一晩中照らしたんじゃダメなのか?」

アリス「魔理沙、良く考えなさいよ。 聖夜の儀をするのに昼間のように明るくしちゃったら意味が無いでしょう?」

魔理沙「む。言われてみれば確かにそうだな……。 そうなると妹紅や地底の馬鹿鴉を呼ぶ、ってのも当然ながらアウトか……」

アリス「妹紅に八咫鴉って、教会が燃えちゃうじゃない……」

エルザマリア「出来ればそう言うのではなくて、月明かりぐらいの方が良いのですが……」

方や呆れ顔で、方や困惑気味に、それぞれからツッコミを入れられた魔理沙は再度思案顔になる。
月明かり程度の明るさを希望との事だが、確かその日は……、

魔理沙「確か新月だったよな?」

アリス「ええ、ちょうど間の悪いことにね……」

今年こと第126季(外の世界で言う西暦2011年)の12月25日は新月になる筈なのだ。
ここまで出来のいい話だと、仕組まれてるのではないかと疑いたくなってしまう。

アリス「月明かりねぇ……。 パチュリー辺りに頼むのは?」

魔理沙「パチュリーねぇ……。 真冬の夜に教会なんかに居たらぶっ倒れないか?」

アリス「ああ、なんかすごくありえそうね……」

「夜が明けたら真っ青になったパチュリーの姿が視えたわ……」とアリスが呟くと、エルザマリアも顔を青くする。
本人が聞いていたら間違いなく激怒しそうだが、絶対にありえないとは本人も言い切れないに違いない。

844 :1@ 〜小ネタ&幻想郷縁起編〜 [saga]:2012/05/11(金) 10:45:56.51 ID:b/yq79gs0

エルザマリア「他にそう言う魔法を使えそうな方は居ないのですか?」

魔理沙「他にねぇ……。 おっ、そういやアリス、アイツらならどうだ?」

アリス「アイツら? ……ああ、“あの子”たちね?」

エルザマリア「? 一体誰の事です?」

突然頷きあいはじめた魔理沙とアリスに、エルザマリアは首を傾げながら尋ねた。
二人には思い当たる人物が居るようだが、エルザマリアには見当すらつかない。

アリス「光の三妖精って言ってね。 日の光、月の光、星の光をそれぞれ司る妖精が居るのよ」

エルザマリア「妖精……ですか?」

魔理沙「ああ、アイツらなら居場所は分かってるし、上手く条件をつけてやれば協力してくれるんじゃないか?」

エルザマリア「成る程、やってみる価値はありそうですね。 それで、その妖精たちは一体何処に行けば会えるんですか?」




魔理沙「一筋縄じゃいかない奴らだな。 アイツらも……」

光の三妖精たちと話をつけてくるべく、飛んでいくエルザマリアを見送りながら魔理沙はやれやれと肩をすくめた。
一仕事終えたと言わんばかりの魔理沙に対し、アリスはいささか不安そうな顔で言う。

アリス「ねぇ魔理沙、本当に大丈夫なのかしら? あの子たちって、仮にも妖精よね? 悪戯ばかりで話にならないんじゃ……」

魔理沙「そん時はそん時で文のネタが増えるだけだろ?」

「どっちにしても私は困らん」とキッパリ言い切った魔理沙にアリスはため息をつくことしか出来なかった。



本番の聖夜を前に練習する為、光の三妖精たちに照明係を頼んで夜間礼拝を始めたエルザマリアが、
彼女たちの悪戯に音をあげて博麗神社に駆け込むのはこれから数日後の事である。





―――――――――――――― 【 お ま け 】 ――――――――――――――

サニー&ルナ&スター「「「…………(ぷしゅ〜っ」」」

エルザマリア「うぅっ、ぐすっ……」

霊夢「あ〜、もうっ! 礼拝の真っ最中に光を消されたぐらいで泣くんじゃないわよっ! アンタ妖怪でしょ!?」

エルザマリア「で、ですが……」

霊夢「とりあえず身内の問題は身内で解決しなさいよ! と言う訳でクリームヒルト、コイツを何とかしなさい!」

クリームヒルト「えっと、そう言われても……」

こんな一幕があったとか無かったとか。
すっぱ抜いた筈の鴉天狗が何も語らないので深く突っ込まない方が身の為かもしれない。

因みにこの問題、佐倉杏子こと魔女・オフィーリアが幻想郷に来るまで続いたそうである。



845 :1@ 〜小ネタ&幻想郷縁起編〜 [saga]:2012/05/11(金) 10:52:44.26 ID:b/yq79gs0
――――――――――――――――――――――――――――――――――――

〜黒影に祈るシスター〜 【エルザマリア】

別称:〜一念専修の影法衣〜 (東方円鹿目)

能力       影を操る程度の能力
危険度     中
人間友好度  極高
主な活動場所 人間の里


幻想入りしてきた魔女の一人で人里の近くで教会を開いている。
妖怪になる前は敬虔な十字教教徒だったようで、朝夕の礼拝は欠かさず行っている。
説法や懺悔なども行っているので、その時間に教会に行けば優しく出迎えて貰える。
妖怪としての行動より十字教教徒としての行動が主体で、妖怪の中では比較的人間に近いとされている魔女の中でも、人に近い方だと言えるだろう。
ただ、祈りに没頭するあまり、周囲が見えなくなる事があるので、時間外に教会を訪れるのはあまり勧められない。

十字教に興味が有るのなら時間を守り、教会では静かに話を聞き、礼拝の邪魔をしないようにしよう。
最低限のマナーさえ弁えれば、教会内で何かされることは無い筈だ。


〔能力〕
その名の通りあらゆる影を自在に操る事が出来る。
影は光が有る限り誰にでも付いて回る、云わば分身のようなモノである。
その影を完全に乗っ取られてしまうと、本人も操り人形同然になってしまう為、影が勝手に動き始めたら警戒すべきである。

そのような能力の持ち主である為、その実力は推して知るべしであり、敵に回してはいけない妖怪の一人である。
影を盗られたくなかったら、影が出来ない暗闇に逃げるしか手はないが、そうなると他の妖怪に襲われやすくなるので、逃げ込む時は注意しよう。


〔対処法〕
礼拝の邪魔をするなど、こちらから何かしなければ、まず問題は無い。
少々積極性に欠けるが、教会の運営は真面目に行っており、少なくともその点に関しては幻想郷の宗教家の中では真摯な方である。
真面目すぎるきらいがあるが、それ故に真剣に話を聞いてくれる為、マトモな悩みなら相談に行くのも十分ありだろう。

万が一、彼女を怒らせてしまった場合は、前述のように闇に紛れて逃げよう。
影を操られ、傀儡になってからでは手遅れであり、解呪も難しい。

普段優しい人ほど、怒らせてはならないモノなのである。


846 :1@ 〜小ネタ&幻想郷縁起編〜 [saga]:2012/05/11(金) 11:09:48.78 ID:b/yq79gs0
以上、短いけど久々のエルザマリアさん編終了。
自分で書いといてやっぱりあの決着はトラウマものだろうなぁ〜と思ったんで、
真っ暗闇でフルボッコとか流石霊夢さん容赦が無い。

因みに三月精がそれぞれの光を操れると言うのは雑誌掲載時の三月精のキャラ紹介欄(所謂柱枠)から
具体的な描写は作中では一切無いんですけどね。(サニー以外)


そしてトラウマを弄られて妖精の悪戯でパニくって涙目になるエルザマリアさんカワイイ。
礼拝の途中で灯りを消されて、顔を真っ青にしながら、それでも祈り続けようとするエルザマリアさんとかマジ萌え。

そんな想像でニヤニヤが止まらない俺マジきめぇwww ちょっとエルザマリアさんに粛清されて来ますね。 ノシ


>>840さま
えー、申し訳ございません、当方、そちらの作品について良く分からないので、そのリクエストにはお答え出来ません。
良く知らない作品で話を書いても、理解不十分で納得の行くモノが出来ないと思いますので、ご容赦願います。申し訳ありません。
847 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2012/05/11(金) 19:46:17.61 ID:lAmg7ony0
乙乙! 心配するな、俺も読みながらずっとニヤニヤしてたww
848 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/05/11(金) 20:40:53.79 ID:nMvLI3Da0
エルザマリアさんマジ聖女。霊夢さんマジ鬼巫女。

そしてだいぶ前に投下した自分のネタが使われてるじゃないですかやったー!
849 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/11(金) 23:52:49.11 ID:K1b4XFuDO
お疲れ様!
まぁ、平和な話でしたなww

あぁー…、炎ポニ灼眼の魔女オフィーリアさんも、元々は教会の人だもんな…そう納まったりもするよね。
850 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) :2012/05/12(土) 02:32:50.74 ID:kxmhAnlz0
本当にご迷惑をおかけしました…でも、どこかで紹介できるスレッドがあればいいのですが
動画では省略されましたが これを見て ワルプルギスVS幻想郷チーム(エリー達を含む)の戦いを想像出来ました

本当にお疲れさまでした 今度は、どんな新作が出るのか楽しみです
それと 再び、EXステージを見ましたしたら 紅魔館・本館の部分で…動画が停止しました
これはどこに連絡すれば宜しいのでしょうか…
851 :1@携帯 [sage]:2012/05/12(土) 05:03:58.19 ID:25a8XueDO
>>850
負荷軽減対策をしていない事による、一時的な読み込み不良だと思われます。
異常ではありませんので、暫く間を開けて再度読み込みをかけて下さい。

それとあくまで自己満足の道楽ですので宣伝などはお気持ちだけ頂いておきます。
852 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/05/12(土) 11:57:55.27 ID:/L6YX3YW0
動画の方のギーゼラの立ち絵ですが、ちょうど良い特攻服を着た女キャラを見つけました。
詳しくはピクシブで『向井拓海』で検索してみてください。
853 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(鳥取県) [sage]:2012/05/12(土) 13:44:31.44 ID:af4NizR6o
>>849
ああ、そういう収まり方なのか
てっきり幻覚使ってなんとかするもんかと
854 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/12(土) 13:48:09.11 ID:VmbgMkJM0
そういや今ってウルトラモードが終わったんだよな
改造LUNATICはまだでs(ry
855 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/13(日) 15:04:37.14 ID:8T0lWxJDO
突攻服の女なんて、定光(女Ver.)以外記憶にないな。
856 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/15(火) 23:49:13.91 ID:bjzajukD0
駄絵を投下。エリパチュ
ttp://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org2983659.jpg
857 :1@携帯 [sage]:2012/05/16(水) 00:37:11.24 ID:eU7XZuJDO
>>856
支援絵ktkl!!
テンション上がって来たアアア!
ありがとうございます!
858 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(栃木県) [sage]:2012/05/18(金) 16:31:28.94 ID:O8VExQvW0
すげえ、すげえ! また感動した!
やはり作者さんは天才だと思います。 ハードルがどんどんあがっていくのぜ
完成してると思うと感無量です(手前味噌みたいですみません)

俺なんてまた投稿したと思ったら即非表示ですもん… 心折れるorz
でもまだ続いてくれるというのは嬉しいです まだ神霊廟や天界・華扇あたりのメンツが出てないかな
その辺もゆっくりと書かれるのを待ちたい

PS あの焦土爆撃はてっきりskmdy!爆撃かと思いました(前セリフがちょっと微妙な) 
あそこに毒されすぎかな・・・

次スレはあるのかな? 
859 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/18(金) 16:33:29.61 ID:SIAPmz2mo
さすがに気持ち悪いな
860 :1@ 〜小ネタ&幻想郷縁起編〜 [saga]:2012/05/19(土) 10:01:54.88 ID:X6LWLopP0
――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「今年は秋を満喫出来なかったから!」と頑なに頑張っていた秋神の姉がとうとう折れ、
冬の怪が「冬ですよ〜」と勝利宣言をして回った翌日、幻想郷は記録的な大雪に見舞われていた。

里も山も一面が白で覆われ、開幕直後から全力全開な降り方に、流石の幻想郷でも各地で混乱が相次いだ。
妖怪の山では氷の張った川に雪が積もり、道と勘違いして溺れる者が続出し、
里では雪降ろし中の事故が多発、商店など軒並み休業する有り様だった。

いくら冬とは言え、これでは困ると幻想郷の人妖たちが思い始めた頃、博麗神社に集まる少女たちの姿があった。

魔理沙「おいおい、今年のレティは少しやり過ぎじゃないか? いくら静葉のヤツがごねまくったとは言え、いきなりこれは限度を超えてると思うぜ?」

早苗「そうですよ。やり過ぎです! 例えこれが自然に降ったモノだとしても、寒気を操れるなら調整できる筈です!」

片や魔法で雪を溶かしながら、片や風起こしで雪を吹き飛ばしながら、博麗神社までの道を切り開いてきた魔理沙と早苗が口々に愚痴をこぼす。
降り止まない雪に、早々に雪掻きを放棄して、居間の炬燵でごろ寝を決め込んでいた霊夢は、そんな二人とは対照的に気だるそうにため息をついた。

霊夢「それで、わざわざ私に『雪女退治に行け』、と言いに来た訳? アンタたちも暇ね……」

早苗「死活問題なんですよ。 このまま登山道が雪で埋まってしまうと、参拝の方が来れないんです!」

魔理沙「こっちもアリスやシャルロッテが騒いでるんだよ。 『家が雪で潰れるからなんとかして来い』って煩いったらありゃしない」

霊夢「アンタたちの事情なんか知らないわよ。 私に言わないで二人で行けば良いじゃない……」

面倒臭いと切り捨てるように言って、霊夢は再び炬燵に潜り込む。
魔理沙と早苗は更に詰め寄ろうとして……、背後で閉まっていた障子がスッと開く。

???「お邪魔するわよ……、って、魔理沙に早苗も居るじゃない」

吹き込んだ風に一瞬、霊夢たちはぎょっとしたが、声の主が咲夜であることに気付き、浮かしかけた腰を下ろす。
この天候の為だろう、いつものメイド服に長めのマフラーと言う出で立ちの咲夜は障子を閉めると早々に炬燵に足を入れる。

魔理沙「よう咲夜、今日はどうした? この雪にとうとうレミリアが泣き言でも喚き出したのか?」

咲夜「お嬢様がこの程度の事でそんな事をする訳無いでしょう? まあ、この雪に関する話で来たのは合ってるけど……」

早苗「ああ、そう言えば霧の湖はレティさんの活動拠点の一つでしたね……。 それで、どうかしたんですか?」

「レティさんの様子がおかしいとか?」と早苗が尋ねると、咲夜は首を横に降った。
それから咲夜はフクザツそうな顔をすると、言い難そうに切り出した。

咲夜「あー、この大雪なのだけど、どうもレティが主犯じゃなさそうなのよ」

魔理沙「? どう言う事なんだ? レティ以外に雪を降らせているヤツが居る、って言うのか?」

咲夜「雪自体はレティが寒波を連れて来たせいよ。 でもここまでの大雪に発展させたのは別の妖怪らしいのよ」

早苗「別の妖怪? 一体、誰なんです?」

咲夜「それは……、私自身が見た訳じゃないから、ここで断言は出来ないわ……」

彼女にしては珍しく歯切れの悪い言葉に魔理沙と早苗は揃って首を傾げた。
この豪雪災害の犯人らしき妖怪について、何らかの情報を持っている様だが、
話したくないと言うか、咲夜自身も戸惑っているらしく、咲夜は中々話そうとしない。
どうやら余程言い難い相手らしい。

霊夢「……分かったわ。行けば良いんでしょう? 案内しなさい、その妖怪の元に……」



861 :1@ 〜小ネタ&幻想郷縁起編〜 [saga]:2012/05/19(土) 10:07:23.92 ID:X6LWLopP0
――――――――――――――――――――――――――――――――――――

???「キャハハハ、白い!冷たい!面白〜い!」

レティ「お願いだからそろそろ勘弁して〜」

そうしてやって来た霧の湖で霊夢たちが見たのは、半泣きと言った表情で懇願する女性――レティ・ホワイトロックと……、
逆さま飛行が特徴的な幼い少女――ワルプルギスの姿だった。

魔理沙「まさかのワルプルギス……だと?」

咲夜「美鈴がレティと一緒に居る逆立ちの女の子を見た、って言っていたから多分そうなんじゃないかとは思ってたけど……」

草影からワルプルギスの姿を認めた魔理沙が口をポカンと開けながら呟き、ある程度覚悟を決めていた咲夜はやれやれと肩をすくめる。
その横では霊夢と早苗が、これまた呆れ顔で乾いた笑いを漏らす。

早苗「あー、そう言えばあの子の魔法って基本、嵐になるんでしたね……」

霊夢「気分がのって来た時もね……」

霊夢の言葉に魔女異変の後夜祭、通称“ワルプルギスの夜祭り”の時の異常なテンションのワルプルギスを全員が思い出す。
魔女絡みの異変や事件が相次いだ今年だが、あの夜の騒動はその中でも群を抜いて厄介だった事件だ。
今ここでワルプルギスを強制的に止めようとすれば、あの時ほど酷くはならないだろうが、それに次ぐ騒ぎになるのは確実だろう。

ワルプルギス「アハハ、面白〜い!(キャッキャ!」

レティ「お願いだからもう止めて。 ね?いい子だから?
    ……あら? この気配……、あっ!巫女たちがあんなところに!?
    ちょっとそこの博麗の巫女!この子を何とかするの手伝って頂戴!」

楽しそうにはしゃぐワルプルギスを止めるに止められずに居たレティが霊夢たちの存在に気が付き、助けを求めてくる。
が、霊夢以下四人はこれを華麗にスルーした。

霊夢「で、アレはどうしたら良いと思う?」

魔理沙「いや、それを私に聞かれても困るぜ」

咲夜「寧ろ私が尋ねたいぐらいよ……」

早苗「はい、霊夢さん」

「助けて〜」と騒ぐレティをよそに、魔理沙と咲夜が霊夢に言い返す中、早苗が一人、小さく手を挙げる。
他に意見は出なさそうなので、霊夢は(やはりレティの助けを無視して)先を促す。

早苗「はい、ワルプルギスさんは雪遊びをしているだけのようですから、このまま遊ばせてあげるのが良いと私は思います」

咲夜「その心は?」

早苗「無理に止めずとも、このまま雪遊びで魔力を使いきって貰った方が良いんじゃないかと……」

言い換えるとワルプルギスの説得の諦め、このまま雪を降らせ続けると言う事だ。
それはつまり、この豪雪災害を放置する事になる訳だが……、

862 :1@ 〜小ネタ&幻想郷縁起編〜 [saga]:2012/05/19(土) 10:28:17.68 ID:X6LWLopP0

霊夢「それもそうね」

魔理沙「だな。 むしろ冬に雪が降るのは当たり前だしな」

満場一致で早苗の案は採択された。

レティ「!? ちょっ、貴女たち正気!?」

じゃあ解散だ、と言わんばかりの霊夢たちにレティは思わず目を剥く。
が、レティが騒ぎだすより早く、霊夢たちは撤収し始めていた。

レティ「ちょっと霊夢!? 貴女、博麗の巫女でしょ!? 妖怪退治が仕事でしょ!?」

霊夢「子守りは専門外よ。 そー言う訳で、頑張りなさい」

レティ「鬼巫女!鬼畜!人でなし〜っ!!」

悲鳴にも似た冬の怪の叫びが湖畔に響いたが、霊夢たちは振り返る事すらなく、霧の湖を後にした。
このワルプルギスの雪遊びは結局、三日三晩続き、幻想郷の大雪記録を塗り替えたらしい。






―――――――――――――― 【 お ま け 】 ――――――――――――――

ワルプルギス「あ♪ そう言えば雪ってかき氷みたい!ちょっと食べてみよっ!」

レティ「ッ!?ダメよ! 少なくとも地面に積もった雪は食べちゃダメっ!!」

ワルプルギス「え〜っ……」

レティ「……ねぇ、雪遊びは楽しい?」

ワルプルギス「えっ? うん!楽しいよ! 私、雪大好き」

レティ「どうして?」

ワルプルギス「だって、綺麗な向日葵も、美味しいお芋も私が遊ぶとダメになっちゃうんだもん。
       でもね、雪は違うんだよ。 私が遊んでもダメにならないの。 だから大好き!」

レティ「…………(だきっ」

ワルプルギス「? どうしたの?」

レティ「今は分からないかも知れないけど聞いて。 今はダメにしちゃうかも知れないけど、大丈夫になる日がきっと来るわ。
    だから、雪……うぅん、冬以外の季節も嫌いにならないで欲しいの。 私と約束、出来る?」

ワルプルギス「……うん、分かった。 約束する」

レティ「ありがとう。 さて、それじゃあ私とめいっぱい遊びましょうか」

ワルプルギス「うんっ!」


三日後の朝、人間の里の上白沢慧音の元を少しくたびれた様子の冬の怪が訪れた。
その背中に、安らかな寝息を立てる少女を背負って……。

冬の怪の背中で眠る少女の顔は、たいそう満足げな顔で、流石の慧音もこの時ばかりは怒らなかったそうだ。


863 :1@ 〜小ネタ&幻想郷縁起編〜 [saga]:2012/05/19(土) 10:32:45.98 ID:X6LWLopP0
――――――――――――――――――――――――――――――――――――

〜嵐を呼ぶ舞台劇〜 【ワルプルギス】

能力       あらゆるものを戯曲に変える程度の能力
危険度     不明
人間友好度  不明
主な活動場所 人間の里


幻想郷にやって来た魔女の一人で、その中でも珍しい子供の魔女である。
妖怪と言うのは通常、見た目が幼く見えても、精神的にはある程度成熟しているモノが大半だが、
彼女については見た目相応の精神の持ち主であり、今後の成長如何によって判断が分かれるとされている。
人間の里の寺子屋や、命蓮寺を中心に彼女に対する教育が施されている最中であるので、本稿に於いては彼女に対する評価は未定としたい。

それ以外の特徴として、空を飛ぶと逆さまになる事が挙げられる。
これについては良く分かっていないが、子供特有の独特な感性によるものではないかと言われている。
寺子屋で一度癇癪を起こした時は普通に飛んでいたと言うので遊びの一種なのかもしれない。


〔能力〕
難しく言っているが、“何事も遊びにしてしまう”能力である。
人間の子供が、大人なら考えもつかない物事を遊び感覚でやってしまうのと同じで、彼女のまた、あらゆる事を自分の望む“遊び”にしてしまう。

『遊び感覚で色々なモノを自在に操る』、と書くと恐ろしい能力なのだが、この辺は本人自身も良く分かっていないようだ。
遊んで良いモノと、悪いモノについては前述の通り躾けている最中なので、今後の為にも出来る範囲で協力したい点ではある。

なお、たまに能力の調整が上手くできていないのか、魔力が漏れて周囲の天候に影響を及ぼす事がある。
彼女の場合、突風か激しい通り雨になるので、この点も注意して貰いたい。
たいていの場合、半刻で収まるとの話で、この辺りは気が変わりやすい子供ならではと言えるだろう。


〔対処法〕
寺子屋関係者曰く、人の子と同程度の聞き分けは出来ているとの事なので、里の子供と同じように接するのが良いだろう。
つまり、褒めるところは褒め、叱る時はきちっと叱り、物事の分別をしっかり教えるべきである、と言う事だ。
子供の頃の躾が大切なのは人も妖怪も変わらないとの話なので、その点に関しては注意深く見守るべきだろう。

ただし、彼女が人間より強い妖怪である事は事実なので、必要以上に刺激することは避けるべきだ。
彼女がひとたび能力を発揮し始めると、命蓮寺か有力な魔女を呼ぶ騒ぎになるなど、人の手に負えなくなる事もある。
文字通り『寝た子を起こす』騒ぎになるので、気をつけて貰いたい。
私としては寺子屋や命蓮寺の努力が良い形で実る事を祈りたいと思う。


864 :1@ 〜小ネタ&幻想郷縁起編〜 [saga]:2012/05/19(土) 10:43:33.75 ID:X6LWLopP0
以上、ワルプルギスとレティ編でした。
支援絵でテンション上がったけど、ペースは上がらず……orz ナサケナイ、メンボクナイ……

昨シーズン(2011〜2012年)の雪が凄かったのでこんなネタです。
時系列的にはエリーの話の後で、エルザマリアさんの話の数日前ぐらいを想定。
レティさんは小さい子の相手とかなんだかんだと言いつつやってくれそう。

一面ボスの中だと包容力とか一番ありそう……、あっ、一番はゆゆ様かw

865 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2012/05/19(土) 10:53:18.05 ID:n99r+icAO
なんでも遊びに変えるって子供のすごいところですよね
それはともかく乙!
866 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2012/05/19(土) 16:12:53.63 ID:KGpZ6lrf0
乙乙! 人里が瓦礫で埋まらないよう気をつけないとな!
867 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage saga]:2012/05/19(土) 17:12:47.67 ID:RjaPlFji0
乙だぜ!レティワルとか新境地すぎるだろ…
危険度は不明っていうよりか未知数だよなーと思ってしまうのdした

なんか魔女たちの程度の能力が俺の考えた物ばかりで不安になってくるんだけども
ゲルトルートやギーゼラやロベルタ姐さんががもうちょっとそれらしい能力になってる事を願おう

キャンデロロ :お茶会に誘い込む程度の能力 or 人を縛り付ける程度の能力
オフィーリア :幻影を魅せる程度の能力
ホムリリィ :時を遡る程度の能力
キトリー :姿を偽る程度の能力
イツトリ :忘却を起こす程度の能力 or 世の中から忘れ去られる程度の能力

とりあえず考えるだけ考えてみたけど、イツトリさんの出番は無いんだよね…寂しいなー(チラッ
868 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/19(土) 19:08:32.68 ID:s6DyoJKDO
お疲れ様!
ほんわかちょっぴりしんみりなお話しでしたね。

ホムリリィさんの能力が時間逆行(制限無し)なら、自分ゲシュタルト崩会議が開けそうだなww
869 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/19(土) 21:29:08.59 ID:zWx7MBb50
ほむらは本編での時間遡行や時間停止だけでなく、PSPで時間遅延、加速までやってたから、
ホムリリィも(魔女だからこそ)制限なしで同じことができるのだとしたら、
能力的に咲夜さんの上位互換になるのでは?咲夜さんは時間遡行できないし。
870 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/05/19(土) 22:34:42.18 ID:qbILCVnk0
>嵐を呼ぶ舞台劇
何だかワルプルちゃんが「ほっほ〜い」とか言ってる映像が目にうkあれなんだ急に風か強くなtt
871 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(栃木県) [sage]:2012/05/20(日) 09:00:44.99 ID:AYvg32cF0
ほむらは空間をいじる事は出来ないからその辺は良し悪しでは?
とコラボネタを考える身としては考えたりする 

※あくまで個人的な想像
872 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/05/20(日) 21:55:33.33 ID:cX5BFL+n0
>何だかワルプルちゃんが「ほっほ〜い」とか言ってる映像
もうアラレちゃんでしか絵が浮かばないんだがww

咲夜さんは『時間』も操れれば空間も操れるってなこと言っててどっちも操作して
ほむらちゃんは『時』を止めたり、遡行する(ただし違う時間軸の世界になる)まどポだと遅延加速も有
ただどっちも描写や設定が少ない事もあるからなんともいえんなあ
咲夜さんは並行世界から自分呼び出したりしてなんかしてるって話もなんかで聞いたような気もするし

クロス的にはホムリリーさんがメイド服で紅魔館でこき使われているのが見たい気もするww
873 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2012/05/20(日) 23:38:02.54 ID:i8hPlNSz0
ホムリリーさんはクリームヒルト専属だろう、JK
874 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/05/21(月) 09:13:53.42 ID:4hlCpJoXo
あの四次元盾は咲夜のいう時間をあやれれば〜の効果じゃないかな
875 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/21(月) 21:13:21.24 ID:CPKD7T/V0
ほむらの盾の中はほぼ無限の広さだったな
ほむホームもアパートの外観からは考えられない広さだったし
紅魔館みたいに空間を拡張してるんじゃないか?
876 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(茨城県) [sage]:2012/05/21(月) 21:58:59.74 ID:vejHZDRyo
いくつか疑問が(ってかなりあるけど)

1. このSSの(まどマギ的な意味での)時間軸はどの時間軸?
  4周目時間軸のクリームヒルトと本編時間軸のオクタヴィアが同時にいるような?

2. 円環の理は魔法少女が最期を迎えるその瞬間に発動するのに
  クリームヒルトに世界を滅ぼした記憶があるのはなぜ?

3. 10代の少女の5000人に1人が魔法少女、魔法少女の平均寿命を10年として
  幻想郷にどれくらいのペースで魔女がやってくるのか見積もったところ、
  月に約1000体という計算になったんだが、幻想郷の人間の数っておそらく1万もいかないよね…?
  これだけのペースで魔女が増え続けたら、幻想郷が魔女でごった返してしまう気がするが、
  全ての魔女を受け入れて本当に幻想郷は大丈夫なの?人妖のバランスが崩れてしまわない?

4. 過去の魔女も幻想郷に受け入れられたの?それとも消されたまま?
  受け入れられたとして、幻想郷に結界が張られるよりも前の時代から魔法少女はいたはずだけど、
  その時代の魔女はどうなったの?受け入れ先無くない?

5. ほむら・マミ・杏子が幻想郷に来た原因って結局何だったの?何であそこにスキマが?

6. >>657の説明を読む限り、まど神はスキマを使わなくても幻想郷の様子を知ることができそうだけど、
  >>566でスキマを使ってるのはなぜ?

7. 魔女はグリーフシードを孕んだり使い魔が成長したりして増殖するけど、
  幻想郷でも増えるんだろうか?増えるんだとしたらどうやって区別付けるんだろ?
877 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県) [sage]:2012/05/21(月) 22:42:53.45 ID:9n+VObeQ0
>>875
あれはたしか立体ホログラムで、実際の部屋は漫画版みたいな感じらしいぞ
878 :1@携帯 [saga sage]:2012/05/22(火) 00:16:43.93 ID:nbD+zekDO
>>876
上から順繰りに

1) オリジナル時間軸です。本編に極めて近いけど、最後のお願いでミスったアチャーな時間軸。

2)リボほむが改編後にも過去を覚えていたのと同じで、まど空間を一時的に経由したため
>>399で語られてる様に世界を滅ぼした事もその後の可能性としておぼえてます

3)導かれた魔法少女は円環&幻想入りの他に普通に輪廻転生する選択肢もあります。
じゃないと魂が足らなくなって閻魔さまが悲鳴あげるので
この場合清濁合わせて死神に引き渡しです。

4)最初の11人の幻想入りは“たまたま引っ掛かったから”と言う奇跡的な偶発事象です。
それ以前と円鹿目及び焔環神本編の間は普通に救済が済んでいるので、幻想入りが可能なのは、現在進行中の改編後世界の2011年の盆以降です。

5)魔獣の攻撃でほむらが死にかけたせいで、“食べても良い人間”として引っ掛かりました。
魔獣との戦いで空間が歪んでたのもあります。
魔力が豊富な幻想郷に来たので、回復しちゃいましたが……

6)まど神さまは全世界を見れますが、幻想郷は博麗大結界が邪魔をするので完全に見通す事は出来ません。
故にハッキリ見ようと思ったらスキマが必要なんです。
ほむらたちをわざわざ迎えに来たのも同様の理由です。

7) 幻想郷での魔女は他の妖怪同様、現世とは変質してますのでグリーフシードを孕みません。
ピチュった時に一回休みとしてグリーフシードになることはありますが……



以上、作中でいちいち説明するのも野暮なので、ざっとですがお答えしました。
如何でしょうか?ご納得頂けました?
879 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/22(火) 16:10:16.99 ID:v18KchVDO
きっちり答える>>1さん凄ぇ。

ところで>>1さん。
もしも幻想郷の人達が外の人間で、魔法少女の素質持ち
だったら、QBにどんな事を願ったと思いますか?
880 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(茨城県) [sage]:2012/05/22(火) 17:15:55.28 ID:9zNqxyjMo
>>878
回答ありがとうございました
おかげで大分納得できました
ただ、これだけ補足してもらってもいいですか?

1)について
もう少し詳しくお願いします
この場合のミスったというのはクリームヒルトのことなのか、それともまど神のことなのか?
物語の舞台となっている幻想郷がある時間軸は、
クリームヒルトが契約した時間軸と同一なのか、それともまど神が契約した時間軸と同一なのか?
まど神の契約内容は原作と全く同じなのか、それともわずかに異なるのか?

まど神の契約内容が原作と異なっているのなら、
その違いが気になるので、それを教えてもらってもいいでしょうか?

5)について
これは要するに食料調達用のスキマが誤作動を起こしたってことでいいのかな?
881 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/05/22(火) 17:52:16.88 ID:8WL1VNnf0
>>1さんマメやなぁ
動画もキッチリしてるし。
そこに痺れる憧れるゥ!
882 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/22(火) 18:54:52.37 ID:7l9c5sGH0
>>880
俺は>>1じゃないんだが、この場合ミスったのはクリームヒルトだろう
あとまど神の力の解釈が異なるのは>>1が幻想入りさせるに当たって独自解釈したって言ってなかったか?
883 :1@ 〜小ネタ&幻想郷縁起編〜 [saga]:2012/05/22(火) 22:27:02.38 ID:A9mA+Em10
――――――――――――――――――――――――――――――――――――

天子「何とかは風邪をひかない、ってよく言うけど、アレって眉唾よね」

ギーゼラ「うるせ、ほっとけ……ごほっ、ごほっ!」

皮肉とも呆れともとれる言葉を漏らす比那名居天子を、銀の魔女・ギーゼラは万年床になっている布団に潜り込んだまま睨み付ける。
幻想郷に降った記録的な大雪から数日後、普段なら爆音を立てて天界に殴り込んでくる筈の不良娘が来ないことが気になり、
天子は妖怪の山中腹のギーゼラの家を訪ねていた。

天子「雪で埋もれた川を道と間違えて突っ込んだそうじゃない。 なかなか出来る経験じゃないわよ」

ギーゼラ「したくてしたんじゃねーよ! と言うかんな事やりたがるヤツなんか居るのかよ?」

天子「私に聞かないでよ。 分かる訳ないでしょ?馬鹿の考える事なんて……」

ギーゼラ「だからあたいは馬鹿じゃねぇっ! ごほっ、げほっ!!」

布団から飛び上がらんばかりの勢いで反論しかけて、ギーゼラは思いっきり咳き込んだ。
「ああ、もう、何してるのよ……」と呆れた様子で呟きつつ、天子はギーゼラを布団の中に押し戻す。

ギーゼラ(くそっ、なんであたいはこんなヤツと知り合っちまったんだか……)

天子と出会ったのは妖怪の山に居を構えてすぐの事。
整備を終えたバイクの慣らしついでに、妖怪の山の登山道を上まで登ってみようと思った時の事だ。

天狗の里を突っ切り、守矢神社の脇をすり抜け、頂上までたどり着いたギーゼラはそこから先が天界になっている事を知り、
どうせ来たついでだからと天界にも足を踏み入れたのである。 そして……、

天子「まったく、あんな出会いは私も初めてよ? 後ろから変な音がしたかと思ったらいきなり轢かれるんだもん」

ギーゼラ「だからそれは悪かったって何度も言ってるだろ? アンタもそーとー根に持つタイプだな……」

天子「根に持つも何も天界に来るたびに轢き逃げアタックをかまして来るのは貴女の方じゃない」

「ここ数ヶ月で回避が前より上手くなった気がするわ……」と怒りながら言う天子。
技能が上がったのなら、それはそれで良いじゃないかとギーゼラは思ったが、話をこじらせるだけなので言わずに黙っておく。

天子「さてと、あんまり長居して風邪をうつされてもアレだし、そろそろ帰ろうかな」

ギーゼラ「アンタなら大丈夫じゃないか? 何とかは風邪をひかないんだろ?」

天子「それはどういう意味かしら?」

884 :1@ 〜小ネタ&幻想郷縁起編〜 [saga]:2012/05/22(火) 22:30:34.62 ID:A9mA+Em10

ギーゼラ「言わねぇと分かんねーか? つまり……」

???「お邪魔するよっ!!」

ギーゼラ&天子「「っ!?」」

売り言葉に買い言葉で一触即発の状況になった所に、新たな人物が転がり込んできた。
ぎょっとして振り返ると、見知った女性――最年長魔女のロベルタが、壁に隠れるようにして息を整えていた。

ロベルタ「はぁ、はぁっ……、悪いね。 ちょっと匿ってくれない?」

ギーゼラ「誰かと思ったら姐さんか……。 またアイツに追われてるのか?」

ロベルタ「ちょっと一人でいるところを見つかっちゃってねぇ……。 そろそろ諦めてくれないかねぇ……」

そう言うとロベルタはチラリと窓の外を見やる。
相変わらず厚い雲が垂れ込めている空で、カメラと手帖を手にした鴉天狗――射命丸文が辺りをきょろきょろと見回しているのが見えた。

天子「えっと……、誰?」

突然の乱入者に話しについて来れなかった天子が思わず声を漏らす。
ポカンとしている天子にロベルタはしまったと言う顔をすると、握手を求めつつ自己紹介をする。

ロベルタ「“魔女”の一人でロベルタだ。 普段は地下の旧都とかで酒盛りをしてる。 来る機会があったら奢るよ、お嬢ちゃん」

天子「天人の比那名居天子よ。 それにしても地下ねぇ……、もしかして、鬼の連中とよくつるんでる、って言うのが貴女?」

ロベルタ「ご名答だよ、お嬢ちゃん」

そんな話を鬼の伊吹萃香から聞いていた天子が呟くように尋ねると、ロベルタは小さく微笑みながら頷く。
鬼と普段からつるんでいる魔女なら、鴉天狗のパパラッチに追い掛けられるのも当然か、と妙な納得をしてしまう。

ギーゼラ「それより姐さん、あんまり長居しないほうが良いぜ。 あたいの風邪をうつしちまう」

ロベルタ「ああ、私もそのつもりはないよ。 ああもう、しょうがないなぁ……、ちょっと相手をしてやるか」

天子「なっ!!?」

文がこの周辺から離れようとしないのを窓越しに確認したロベルタは、しゃがんだままロングスカートの中に手を入れる。
思わず目を見開く天子の前で、スカートをばさっとめくり上げ……、次の瞬間、その手に二丁の機関銃が握られていた。

885 :1@ 〜小ネタ&幻想郷縁起編〜 [saga]:2012/05/22(火) 22:32:36.05 ID:A9mA+Em10

ロベルタ「邪魔したね。 それじゃ、しっかり治せよ!」

ギーゼラ「へいへい、姐さんも気をつけてな……」

ロベルタ「伊達に場数は踏んでないよ。 さて、それじゃあいっちょやってやるか!」

そう言うとロベルタはころあいを見計らってギーゼラの家を飛び出していった。
上空の文が気を逸らした隙を狙って、横合いから奇襲攻撃を仕掛ける。
使っているのはペイント弾のようだが、油断していた文には効果覿面だったようで、二人の影はすぐに見えなくなった。

天子「えっ?あっ……、ええっ!?」

ギーゼラ「はぁ、姐さんも大変だねぇ……」

天子「……ねぇちょっと、今の何? 明らかに物理法則を無視した得物が出てきたんだけど……」

ギーゼラ「何って姐さんの魔法に決まってるじゃねーか。 ま、あれは姐さん本来の魔法じゃないらしいが……」

呆然としている天子に、いつもの事だと言うようにギーゼラが言う。
同じ魔女仲間であるギーゼラも詳しい事は知らないらしい。

ギーゼラ「ああ見えて姐さんは用心深いぜ。 魔力は弱いが、なんだかんだと言って手の内は絶対晒さねぇ……」

天子「外の世界のオトナの女って凄いのね……」

「ああ言うオトナになりたいもんだなー」と言いつつ布団に再度潜り込むギーゼラに対し、天子は苦笑することしか出来なかった。






―――――――――――――― 【 お ま け 】 ――――――――――――――

文「痛たたた……、また逃げられてしまいました」

椛「いい加減諦めたらどうです? どう見ても遊ばれてますよ?」

文「何を言ってるんですか椛! ここまでされて私が引き下がる訳ないでしょう?
 ロベルタさんは引き出しをたくさん持って居るようですが、それならそれで、引き出しが出尽くすまでやりあうだけです!」

椛「お願いしますから天狗の里を戦場にするような真似だけはしないで下さいね?」




886 :1@ 〜小ネタ&幻想郷縁起編〜 [saga]:2012/05/22(火) 22:36:53.73 ID:A9mA+Em10
――――――――――――――――――――――――――――――――――――

〜疾駆する銀の荒馬〜 【ギーゼラ】

能力       すばやく動く程度の能力
危険度     中
人間友好度  皆無
主な活動場所 妖怪の山など


妖怪の山を中心に鋼鉄の荒馬を駆って走り回っている魔女の一人。
基本的に単独行動を好み、また外に居るときは常に走り回っているそうなので、会話などをする事はまずないと思われる。

彼女の駆る“荒馬”は空も飛べるらしいが、どういう訳か地表を走っていることの方が多い。
単に速く移動するだけなら、空を飛んだほうが圧倒的に速いのでこの辺は趣味なのではないかと思われる。

彼女の荒馬は一度走り出すとかなりの爆音を出すので、少し離れた場所でも彼女が走っている事は音で分かる程である。
身を守る上でこの音が重要なので、変な爆音がしたら注意しよう。


〔能力〕

その名の通りである。 とにかく彼女の移動は素早い。

速すぎて急に止まる事はまず不可能なので、爆音が間近に聞こえたら危険である。
轢かれないように物陰に隠れるなどして、やり過ごす事をオススメする。


〔対処法〕

遭遇場所は大抵、妖怪の山の山道なので山に入らなければまず会う事はない。
もし、何らかの用事で山道に行く場合は常に耳を澄ませて彼女の操る“荒馬”の音を聞き逃さないようにするべきである。
道の真ん中にいるとほぼ間違いなく轢かれるので、変な爆音が聞こえたら、道の脇の木陰に身を隠してやり過ごしたい。

仮に轢かれたりすると、まず大怪我は間違いなしであり、最悪自力の下山が不可能になるので、
極力山に行く事は避けて貰うか、二人以上で、なるべくなら力のある人と行く事をお勧めする。



――――――――――――――――――――――――――――――――――――

〜酔に生き、夢に死す乙女〜 【ロベルタ】

能力       焼き鳥を用意する程度の能力
危険度     低
人間友好度  中
主な活動場所 旧都、妖怪の山など


現在確認されている魔女の中でも最年長で、その分、謎も多い。
ここに記載されている能力も本人の自己申告であり、正確なところはハッキリしていない。
鬼と一緒に行動しているのが確認されているので、その実力はかなりのものであると思われるが、
状況証拠だけであり、その実力や能力は謎に包まれている。
そのため本稿に於いては判明していることだけを書かせてもらう。

唯一はっきりしているのは男嫌いと言う事である。
所構わず襲ってくるような真似こそしないが、男性に対しては得てして厳しい。
子供や年寄りと言った例外もあるにはあるが、基本良い顔はされないようだ。


〔能力〕

付き合いのある鬼と飲む時に活用されているのが目撃されている。
また、焼き鳥ゆえに、夜雀など一部の妖怪からはウケが悪く、鳥系の妖怪から避けられている節がある。
仕入れ先など詳しい事も不明で、ここまで徹底していると、生前に何かあったのではと穿った見方をしたくなってしまう。


〔対処法〕

活動拠点が地底と妖怪の山なので会う機会はそうそう無いだろう。
性格は温厚であり普通に会話する分には問題ないと思われる。

ただし、前述の通り能力を隠していたり、鬼との付き合いなど強者であることが窺える事から、侮って掛かるのは避けた方が良い。
特に男性はその傾向が強く、女性なら冗談で流してくれる場面でも、男性だとダメな場合があるので、男性諸氏は特に気をつけよう。
オンナの扱いと言うのは難しいモノなのである。


887 :1@ 〜小ネタ&幻想郷縁起編〜 [saga]:2012/05/22(火) 22:38:44.07 ID:A9mA+Em10
――――――――――――――――――――――――――――――――――――

ゲルトルート「こんにちは」

魔女異変以降、紅魔館専属庭師として庭園整備に精を出していた薔薇園の魔女・ゲルトルートが、彼女のもとを訪ねたのは師走の中頃の事。
時折雪の舞う中、傘を片手にしゃがんで花を眺めていた風見幽香は意外な来訪者に僅かではあるが目を見開く。

幽香「あら、誰かと思ったらゲルトルートじゃない……。 今日は何の用?」

ゲルトルート「特に用事と言う訳では……。 ただ、お嬢様から暇を出されてしまって……」

春や秋に花を付ける薔薇も流石にこの時季になるとシーズンオフに入る。
無論、花が咲いていない時季でも世話は必要だが、夏に比べるとその頻度はグッと下がる。

幽香「ふぅん、魔女ご自慢の薔薇園も冬季休業はするのね……」

ゲルトルート「茶化さないで下さい幽香さん。
       確かにやろうと思えば冬でも咲かせる事は出来ますけど……。 でもそれは幽香さんも同じでしょう?」

「魔法で咲かせ続ける事ぐらい朝飯前でしょう?」と、からかうように言う幽香に、ゲルトルートは逆に尋ね返す。
花を操るフラワーマスターの異名をもつ幽香だが、彼女も季節に逆らってまで花を咲かせるような真似は基本的にしないと聞いている。
まだ知り合って半年程度だが、ゲルトルート自身も幽香が季節外れの花を咲かせている場面は今のところ見ていない。

幽香「私は貴女と違って、四季折々の花を愛でる主義なの。 どういう訳か向日葵に特化してるイメージが広まってるみたいだけど……」

ゲルトルート「そう? 何だかんだと言って太陽の畑に居ることが多い気がするけど……」

かく言うこの場所も太陽の畑から程近い花の群生地だ。
疎い人や興味の薄い人たちから見れば同一視されてもおかしくない場所である。

幽香「花の群生地がたまたまこの辺に集中してるだけよ」

ゲルトルート「“たまたま”ねぇ……」

幽香「ええ、“たまたま”よ」

しれっと追撃をかわしながら立ち上がった幽香は、ついて来なさいと言うようにくるりと身を翻し、ゲルトルートもその後に続いた。



888 :1@ 〜小ネタ&幻想郷縁起編〜 [saga]:2012/05/22(火) 22:42:36.91 ID:A9mA+Em10
――――――――――――――――――――――――――――――――――――

ゲルトルート「今の時季だとどんな花があるんです?」

ところ変わって幽香の家。
ゲルトルートは淹れたてのお茶を幽香に差し出しながらふと思い出したと言うように尋ねた。
花びらが浮かぶティーカップを口許に運び、湯気と共に立ち上る香りを楽しんでから、幽香はカップに口を付ける。

幽香「そうね。やっぱり代表的なのは寒椿や水仙じゃないかしら? 後は……、そうね、西洋桜草もそろそろ咲くわ。
   あら、このローズティー美味しい……」

ゲルトルート「椿や水仙は分かりますけどサクラソウですか……。 こんな時季から咲くサクラソウもあるんですね。
       あっ、それ、ウチの薔薇で作った紅魔館特製ブレンドなんです。 幽香さんのお口に合ったなら何種類かお譲りしますよ?」

再び舞い出した雪を見ながらゲルトルートは感心したと言うように呟く。
暖冬続きの外の世界と違い、寒さ厳しい幻想郷の冬。
一見すると過酷にも見える環境だが花はしっかりと咲いているのだ。

幽香「それにしてもすっかり丸くなったわね、貴女……。 最初は“私の”花たちに平然と手を出してくる程だったのに……」

「張り合いが甲斐が無いわ」と冷笑を浮かべる幽香に、ゲルトルートは乾いた笑いを漏らす。

ゲルトルート「幽香さんにはなにかとお世話になってますし、それに……」

幽香「それに……、なにかしら?」

ゲルトルート「いっ、いえ、なんでも!」

ニヤニヤしている幽香に対し、ゲルトルートは慌てて首と手を横に振る。
六月の魔女異変の時の幽香は思い出しただけでも震えがくるトラウマとしてゲルトルートの心の中に深く刻み込まれていた。

現世で呪う存在としての“魔女”をしていた時の癖が抜けきっていなかったとは言え、よくあんな事が出来たものだとゲルトルート自身も思う。
霊夢たちに幽香の前につき出されて、筆舌に尽くしがたいお仕置きを受けた時は、自身の行いを深く悔やんだ程だ。

幽香「心配しなくても大丈夫よ。 弱い者虐めは趣味じゃないの。花に手を出す愚か者は例外だけど……」

ゲルトルート「あ、あはは……」

しれっと言ってのける幽香にゲルトルートは顔を青くした。
身をもって知っているだけに洒落に聞こえない。
それどころか、幽香なら間違いなくやるだろうと言う確信すらあった。

幽香「まあ、貴女はもうそんな心配はないと思ってるけど……」

ゲルトルート「えっ?」

幽香「なんでもないわ。 ところで、時間の方は大丈夫なの? あそこのお屋敷、門限とかあるんじゃないの?」

ゲルトルート「お暇を貰いましたから今日は大丈夫……、と言いたいところなんですけど、天気が天気なのでそろそろおいとまさせて頂きます」

幽香「天気? ああ、また強くなってきたのね。雪……」

勢いを増してきた雪を見て幽香は納得した。
最初から記録的な豪雪で幕を開けた今年の冬だが、まだまだ自重するつもりは無いらしい。


結局、ゲルトルートは雪が酷くなる前に帰っていった。
ゲルトルートを見送った後、幽香は分けて貰ったローズティーでティータイムの続きを楽しむことにした。
さっきとは違う、別のブレンドティーを淹れる。
ほのかに香る薔薇の香りがなんとも言えない、見事なローズティー。

幽香「流石、と言ったところかしら。 薔薇に関しては私もうかうかしていられないわね……。
   新参さんに負けたんじゃ、フラワーマスターの名が泣くわ」

そうポツリと呟いた幽香は、刺のある言葉とは裏腹に、嬉しそうな笑みを浮かべていた。




889 :1@ 〜小ネタ&幻想郷縁起編〜 [saga]:2012/05/22(火) 22:46:20.44 ID:A9mA+Em10
―――――――――――――― 【 お ま け 】 ――――――――――――――

【第126季六月・魔女異変時 太陽の畑にて】


ゲルトルート「…………」

幽香「貴女、仮にも花を愛でる趣味を持っているのなら、自分が何をしたのか、分かってるわよね?」

縄でぐるぐる巻きにされ頭を垂れる少女――ゲルトルートに幽香は静かに問いかけた。
あからさまに怒気を含ませるのではなく、あくまでも静かな問いかけにゲルトルートは親に叱られる子供のように縮こまる。

ゲルトルート「…………はい」

幽香「私はね。弱いヤツに興味は無いけど、か弱い草花に手を出すバカは大嫌いなの。
   他人の花に手を出すなんて阿呆な真似をするバカに、花を愛でる資格なんて無いわ」

ゲルトルート「うぅっ……、ごめん……なさい……」

一見すると厳しい言葉だが、それ故に幽香の言葉は正鵠を射るモノだった。
涙を目に浮かべて謝罪の言葉を述べるゲルトルートだが、幽香は表情一つ、眉一つ動かさずに言う。

幽香「私に頭を下げられても困るわ。 貴女がダメにした花たちに謝って頂戴。
   さて、貴女、信賞必罰って言葉は知ってるわよね? 貴女には同じ罰を受けてもらうわ」

ゲルトルート「っ!? それだけは、それだけはやめて下さいッ!」

幽香「っ!? 貴女ねぇ……、自分が何を言っているのか分かって……」

拒否の声を上げるゲルトルートに幽香は思わず目を剥いた。
所詮はその程度の反省でしかなかったか、と内心失望しかけて……、次の瞬間、ゲルトルートが発した言葉に幽香は動きを止めた。

ゲルトルート「私はどんな罰でも受けます! だから私の薔薇たちには手を出さないで下さい!!」

幽香「なっ!?」

ゲルトルート「悪いのは私です。私は何をされても良いです。 だから……、お願いしますっ!!」

ゲルトルートは縛られたままなのも気にせず平伏して、幽香に涙ながらに懇願する。
その必死な表情は、その言葉に嘘偽りが一切無い事を如実に物語っていて……、幽香は思わず苦笑した。

幽香「ふふっ、貴女、私の言葉を聞いて居なかったのかしら?」

ゲルトルート「えっ?」

幽香「言ったでしょう? 『他人の花に手を出す阿呆に花を愛でる資格なんてない』って……。
   こっちがやられたからと言って、私が貴女の花に手を出したらそれこそ本末転倒でしょう?」

ゲルトルート「それじゃあ……」

幽香「ええ、貴女の薔薇には手を出さないと誓うわ。 罰を受けるのは貴女自身よ。
   さて、それじゃあ、変な誤解も解けた事だし……、ちょっと貴女、歯を食いしばりなさい」


この後、ゲルトルートは二度と幽香相手にこんな真似はするまいと固く誓う程のお説教をその身に受けることになる。
ともすれば加虐嗜好者などと噂される幽香が、この時は別な意味で笑みを浮かべていたのだが、ゲルトルートが気が付く事は無かった。




890 :1@ 〜小ネタ&幻想郷縁起編〜 [saga]:2012/05/22(火) 22:48:51.17 ID:A9mA+Em10
――――――――――――――――――――――――――――――――――――

〜不信の紅薔薇〜 【ゲルトルート】

能力       薔薇を育てる程度の能力
危険度     中
人間友好度  低
主な活動場所 紅魔館など


外の世界からやってきた魔女の一人。
緑を基調とした姿に、蝶の翅と言う妖精がそのまま大きくなった姿をしている。
その姿から分かるように彼女が操るのは植物で、その中でも薔薇系の花を操ることに特化している。

その能力を買われ、紅魔館で住み込みの庭師をしている。
基本的に紅魔館で庭園整備に精を出しているので、他の場所で見かけることは極めて稀。
たまに太陽の畑や無名の丘など幻想郷各地の花畑に出没する事もあるらしい。


〔能力〕

薔薇を生み出し、育て、自由の操る能力である。
棘を使って攻撃したり、茎を鞭のように操ったりと、地味だが当たると結構痛い。
また毒物を生成することもやろうと思えば出来るらしいので、その辺も注意が必要だ。

“薔薇園の魔女”という異名が語るように、彼女の能力は薔薇そのものだけでなく、
剪定鋏や如雨露と言った園芸用具も操れるモノの範囲に入っている。

鋏を使った攻撃は普通に致命傷になり得る強烈なモノなので、植物を操る能力なんて〜、と甘く見ると痛い目を見る。
『綺麗な薔薇には棘がある』の言葉通り、油断してはいけない。
何事にも注意が必要なのだ。


〔対処法〕

基本、紅魔館から離れないのでまず会う機会がない。
外であったとしても、いきなり襲われるような事はまず無いと思われる。
薔薇園を見せて下さいと言えば、紅魔館内部の庭を案内してくれる事もあるらしい。
魔法で薔薇を生み出す事は季節を問わず出来るそうなので、薔薇の花が必要な時は頼むといいかも知れない。

が、しかし、それ故に薔薇園に手出しをする者には一切の容赦がない。
不慮の事故ならともかく、悪戯などには普段の穏やかさが嘘のように激昂して手が付けられなくなる。
人の機微を察するのも得意なようで、そういう人間には最初から厳しく、門前払いをくらうこともある。

冷やかし、悪戯目的の来訪は厳禁だ。
良識をもって行動し、彼女の不信を買わないようにしよう。


891 :1@ 〜小ネタ&幻想郷縁起編〜 [saga]:2012/05/22(火) 23:18:17.85 ID:A9mA+Em10
そろそろスレが終わりに近づいてきたので一気に3人分投下。
ギーゼラさんは本編以降の登場なのにこんな出番でスイマセン。
天子ちゃんが轢かれまくってるのはご愛嬌。
愚痴愚痴言いつつちゃっかりお見舞いに下りてくる天子ちゃんまじ天使。


ロベルタさんは“『ロングスカートばさっ』→『ごっつい武器登場』”がやりたかっただけ。
某犯罪都市が舞台の漫画の方からイメージを引っ張ってきているのは公然の秘密。
まあどっちかといえばメイドさんより、二丁拳銃の方だけど……

解説欄が色々と凄い事になってるけど、ミステリアスな女性ってオトナの女の特権だと思うんだ。
そんなわけで能力を含めて全面採用です。ホント、『幻想郷縁起』の自己申告って設定は素晴らしいと思います。


ゲルトルートさんはドSさんこと幽香さまとの絡みをなれ初めも含めて初公開。
なんだかんだで、ゲルトルートさんは和解さえすれば幽香さまの妹分になると思うんだ。
西洋桜草の伝来は明治末期とか細かい事は気にしない。気にしてはいけない。


>>880
時間軸の話ですが、クリームヒルトの出身時間軸がオリジナルと言うだけで、ほむらやまど神さまはアニメ版での正史を通っています。
>>882さんが補足してくれた通り、若干能力の解釈で独自解釈をしていますが、基本アニメ版に準拠しています。
簡単に言うと……

一周目→二周目→三周目→四周目 → (クリームヒルトの出身周回や『おりこ』周がこの間に)→ アニメ版1話〜(最終時間軸・まど神誕生)

となっており、アニメ本編ラストで世界改編が起こった事により、世界は『改編後世界』と言う新たな時間軸に統一された、と言う設定&解釈です。
そちらの言い方に直すとまど神が契約した時間軸とほぼ同一と言う解釈で構いません。
アニメ版でマミがシャル戦で不利な事をほむらが知っていたので、同じような場面が以前にもあったのでは?と思い設定しました。


スキマですが、その通りです。
紫が『人間の幻想入りは日常茶飯事』と言っていたり、ほむらを拾ったのがお燐だったり、
杏子が幻想入り早々にミスティアに襲われていたり、無縁塚の話を聞いてマミや杏子が顔を青くしたり、
食料調達としての幻想入りを匂わせる描写は入れていたのですが、分かりにくかったようですね。 スイマセン。
892 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/22(火) 23:42:08.21 ID:okh3bv/DO
乙乙!
893 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(茨城県) [sage]:2012/05/22(火) 23:51:12.38 ID:9zNqxyjMo
>>891
投稿お疲れ様です

そして再度の回答ありがとうございました
今度は十分に納得できました
894 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/05/22(火) 23:58:39.38 ID:y3gz1nEb0
乙だぜ! …って
能力がそのまま採用されちゃってるゥゥッ!?(ティローン

ロベルタ姐さんが素敵すぎて辛い あのギーゼラにまでさん付けで呼ばれるとかカリスマがヤバい
薔薇のゲルト、向日葵のゆうかりん…あとは花といえば鈴蘭のメディもいるぞ!
895 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [sage]:2012/05/23(水) 15:12:09.70 ID:m95Pj9mAO

トラウマって言ってもそこらの悪戯目的の連中へのお仕置きよりはマシだったんだろうな
896 :1@ 〜小ネタ&幻想郷縁起編〜 [saga]:2012/05/28(月) 22:30:08.88 ID:nHi33yfc0
さて、大変長らくの間お付き合い頂いた東方円鹿目シリーズですが、いよいよ最後の投下と相成りました。
思えば小ネタスレで反応をもらえた事から始まったこのスレですが、色々な人の手助けを得て、どうにかここまで来る事ができました。

東方×まどマギと言う厨丸出しな組み合わせでしたが、如何でしたでしょうか?
ひと時の幻想を楽しんでいただけたのなら、私としても幸いです。

弾幕案に協力して頂いた方
今後の方針案を出して頂いた方
動画版製作に於いて、素材利用の許可をして頂いた方
そして勿論、この話を読んで頂いた方

皆様が居たからこそ、私もここまでやることが出来ました。ありがとうございました。

それではいま少し、このお話に付き合い下さい。
東方円鹿目シリーズ、小ネタ&幻想郷縁起編、最後までごゆっくりとどうぞ。


>>895
ハハハ、まさかそんなご冗談を(AA略
あいてはゆうかりんですよ? ソレはソレ、コレはコレですよw
あの人はケジメはきっちりつけるお方だと私は思いますよ?
897 :1@ 〜小ネタ&幻想郷縁起編〜 [saga]:2012/05/28(月) 22:33:59.50 ID:nHi33yfc0
――――――――――――――――――――――――――――――――――――

レミリア「ようやく完成したのね。 よくやったわ、イザベル……」

イザベル「ありがとうございます。お嬢様」

出来上がった絵を前に満足げに頷くレミリア・スカーレットに、イザベルは恭しく頭を下げる。
異変の後、お抱え絵師として紅魔館に来てから約半年。
イザベルはついに当初の依頼であるレミリアの肖像画を完成させるに至ったのだ。

大広間の正面に飾られた肖像画は巨大で、ほぼ等身大と言っても過言ではなかった。
絵自体も精巧で、本物と見間違えたフランドール・スカーレットに壊された事もあるくらいだ。

咲夜「長かったわね……。 お疲れさま」

イザベル「いいえ、私の方こそ、良い経験をさせて頂きました」

フランドール「おめでとう。それとごめんねイザベル。 あの時は絵をダメにしちゃって……」

イザベル「頭を上げてくださいフランドール様。 ショックじゃなかったと言えば嘘になりますが、それも過ぎた事です」

労いの言葉をかける咲夜や、すまなさそうに縮こまるフランにイザベルは丁寧に受け答えする。
咲夜とは魔女異変の時にやり合った相手であり、無邪気なフランとは大小様々なトラブルが絶えなかった。
それでもここまでやり続ける事が出来たのは、やはりこの絵が、イザベルにとっても色々な意味で特別な絵だったからだと思う。

この絵は幻想郷で最初に描いた絵であると同時に、イザベルが本当の意味で1から描いた初めての作品だった。
魔女になる直前の頃のイザベルは、上手い絵を描くことばかりに目を奪われ、自分自身の絵と言うモノを見失っていた。
その事に咲夜との弾幕戦で気付かされたイザベルにとって、レミリアからの肖像画の依頼は色々な意味で新たな一歩と言ってよかった。

レミリア「本格的に整備された庭園に、この館の主である私の肖像画……。 紅魔館の対外的な体裁は整ったと言っても過言ではないわね」

「誰が来ても恥ずかしくない館が出来上がったわ」と不敵に微笑むレミリア。
気分がノっているためだろう。 その姿は普段と比べるとカリスマが5割ぐらい増えているように見える。

イザベル「それで、お嬢様、私は今後如何致しましょうか?」

レミリア「今後? そうね、もうすぐ年末だし、暫らくは休養をとって良いわ。 その後は……、来客用の部屋に飾る絵でも描いてもらおうかしら?」

「もう少し飾りっ気が欲しいのよね」と言うレミリアにイザベルは紅魔館に来た時に案内してもらった時の事を思い出す。
確か、咲夜の能力で空間拡張されまくったせいで、来客用(実質未使用)の部屋がたくさんあった筈だ。

898 :1@ 〜小ネタ&幻想郷縁起編〜 [saga]:2012/05/28(月) 22:36:34.38 ID:nHi33yfc0

レミリア「出来るなら部屋ごとにモチーフを変えて頂戴。 数が多いから大変だとは思うけど……」

そこでレミリアは言葉を区切ってイザベルを見る。
その目が「やれるか?」と問い掛けているような気がして、イザベルは再び頭を下げた。

イザベル「分かりました。 不肖イザベル、“芸術家の魔女”の名に懸けて誠心誠意やらせて頂きます」

レミリア「宜しい。 期待しているわ、イザベル。 今日はもう休んで良いわよ」

イザベル「はい、ありがとうございます」

一段と深く頭を下げてからイザベルは大広間を出た。
広間を出て戸を閉めたところでイザベルはどっと息を吐いた。

イザベル「はぁ〜、久々に緊張したわ。 もしかしたら今までで一番緊張したかも……」

思い返してみれば依頼を受けて絵を描くと言う事自体、初めてだった気がする。
紅魔館の当主として振る舞ってきたレミリアの目は本物で、現世でのコンクールとは比べ物にならない程厳しかった。

挫けそうにもなったし、投げ出したくなった事も一度や二度では無かった。
それだけに今日、レミリアに満足して貰えた事がイザベルは何より嬉しかった。

イザベル「ふふっ、絵を描き終えて、こんな気持ちになったのは随分と久し振りのような気がするわ……。
     ああ、そっか、私が本当に欲しかったのは、絵の評価なんかじゃなくて……」



                      “私の”絵で喜んでくれる人が欲しかったんだ……。



その日、イザベルは気持ち良く床に就いた。
その姿は、翌朝、小悪魔が起こしてしまうのを憚った程、安らかなモノだったそうだ。





899 :1@ 〜小ネタ&幻想郷縁起編〜 [saga]:2012/05/28(月) 22:38:31.54 ID:nHi33yfc0
――――――――――――――――――――――――――――――――――――

〜既視感の多い展覧会〜 【イザベル】

能力       作品を真似る程度の能力
危険度     中
人間友好度  低
主な活動場所 紅魔館


魔女の一人で、紅魔館で住み込みのお抱え絵師をしている。
活動的な魔女と引篭りがちな魔女に二分される中で、引篭りがちな魔女の筆頭候補が彼女だ。

最もその見た目通り、彼女の身体は石像なのであまり動き回ることに適していない。
基本的にその場にじっとして、自身の創作活動に励んでいる。

彼女の作る作品は主に絵画であり、基本的にその手の依頼は普通に受けてくれる。
その腕は確かであり、人里に住む者から依頼された事もあるそうだ。
一点だけ気をつけるとしたら、人物画を描くと、ごく稀に描かれた人の魂を抜いてしまう事だろう。

幸い一時的な幽体離脱程度で済んでいるが、少々物騒な感は否めない。
安全策をとるなら風景画など、人以外の絵にしよう。


〔能力〕
一見すると他者の物真似をする能力のようにも思えるが、彼女の場合“作品”に特化しており、使い勝手は良いとは言えない。
しかし、この場合の“作ったモノ”には『鍛え上げた特技』も含まれる為、何か特技を持っていると逆に不利になってしまう。
彼女の模倣の再現性はきわめて高いが、所詮は模倣であり、何処かしらに穴ができることもしばしばだと言う。

言い換えれば、自分自身を相手にしているようなものなので、大した特技もない平々凡々な人間であればこの能力は大して怖くない。
逆に、彼女が模倣できるレベルを越えた特技を持っていた場合も同様で、この場合、彼女の模倣は不完全なものとなり、圧倒する事ができる。

中途半端が一番良くないので、何か特別秀でた技術を持つか、すっぱり諦めた方が良いだろう。


〔対処法〕
活動拠点が限られている上、基本的に自室から出てこないためまず遭遇の機会はないだろう。

上記の注意点の他に、絵を描いている最中の彼女を邪魔しなければ問題はないと思われる。
もっとも何かしている人の邪魔など、そもそもするものではない。

触らぬ神に祟りはない。 最低限の節度と常識をわきまえて行動しよう。


900 :1@ 〜小ネタ&幻想郷縁起編〜 [saga]:2012/05/28(月) 22:41:31.76 ID:nHi33yfc0
――――――――――――――――――――――――――――――――――――

パトリシア「えっと、明日の授業は算盤と歴史とお習字だから……」

師走も中旬を過ぎ、間も無く年の瀬と言う時期、人間の里の寺子屋でパトリシアは翌日の授業の準備をしていた。
必要な教材を持ってパトリシアは準備室を出る。
授業の構成上、教材も多く、手が塞がってしまったので、パトリシアは足代わりにしている手で教室の戸を勢い良く開け放つ。


                      がらっ


パトリシア&青娥「「あっ……」」


誰も居ない筈の教室で、蒼い衣を纏った天女っぽい女性――霍青娥と鉢合わせてしまい、間の抜けた声を上げるパトリシア。
無人の寺子屋であちこちを引っ掻き回している場面を見られた青娥は、一瞬、「ヤバっ」と言う顔をして……、

青娥「えっと……、お邪魔してま〜す……」

パトリシア「ああ、はい、どうも……、って、ど、泥棒ーっ!!」

にこやかに挨拶を交わして教室から出て行こうとして、次の瞬間、我に返ったパトリシアに取り押さえられた。



――――――――――――――――――――――――――――――――――――

青娥「ねぇ、見逃してくれない? もうここには来ないって約束するから」

パトリシア「ダメよ。慧音先生が来るまでは」

文字通りお縄になった青娥が猫なで声で取引を持ちかけるが、パトリシアはぴしゃりとはねつけた。
交渉の余地が無いと悟った青娥は途端に頬を膨らませて不貞腐れ始める

青娥「つれないわね〜。もうちょっと遊びがあった方が良いと思うわ」

パトリシア「人の家に忍び込んで悪戯して回るのは遊びの範疇を越えてる気がするのだけど……?」

901 :1@ 〜小ネタ&幻想郷縁起編〜 [saga]:2012/05/28(月) 22:44:36.19 ID:nHi33yfc0

青娥「…………」

冗談すら正論で返され、青娥は壁に寄りかかって黙りこくってしまう。
青娥が黙ってしまうと、一転して教室は静かになった。

そのまま、無言の時間が流れ……、やがて思いついたように青娥がぽつりと尋ねた。

青娥「ねぇ貴女、確か“魔女”の一人よね? 魔女が元は普通の人間だった、って言うのは本当なの?」

パトリシア「そうですけど……、それが何か?」

青娥「ちょっと興味があるのよ。 何をどうやったらそうなるのか……」

パトリシア「何を、って……キュゥべえのせいとしか言いようが……」

青娥「キュゥべえ?」

パトリシア「インキュベーターっていう宇宙人よ。 白くて耳の長いネコっぽい生き物で……」

青娥「ああ、“魔法少女”の勧誘をよくやってるアイツね……」

パトリシア「っ!? キュゥべえを知ってるの!?」

青娥「知っていると言うか商売敵よ。 才能のありそうな子をみんな魔法少女にしちゃうんだもん。
   お陰で仙人になろう、って子が最近めっきり減っちゃったのよねぇ……」

「みんな手軽な魔法少女になっちゃうのよ。世知辛いわ〜」と青娥はわざらしく嘆いてみせる。
が、パトリシアにはそれよりも気になる事があった。

パトリシア「キュゥべえを知ってる、って事は向こうも貴女の事を……?」

青娥「ん〜、それは知らないんじゃないかしら? 仙人や魔法使いはおろか、死神すら迷信扱いだったし……。
   人の魂を扱っておきながら、死後の世界に無頓着とかちゃんちゃらおかしいわ」

現世の事を思い出したのか、青娥は鼻で笑いながらそう言うと、次の瞬間、一転してしかめっ面になる。

青娥「それだけに悔しいのよねぇ……。 そんなヤツなのに、“魔法少女”に仕立てた後の事はしっかり考えてあるんだから……」

パトリシア「?」

902 :1@ 〜小ネタ&幻想郷縁起編〜 [saga]:2012/05/28(月) 22:46:43.57 ID:nHi33yfc0

青娥「ほら、あのケモノって魂を肉体から引っこ抜いちゃうじゃない? だからキョンシーの材料にしてやろうと思ったんだけど……」

パトリシア「おい、ちょっと待て」

青娥「魂が消えたら肉体も消えちゃったのよねぇ。 いい材料だと思ったんだけどなぁ……」

「魔法少女の身体でなんて事してるのよ!?」と声を荒げるパトリシアを完全に無視して青娥はため息をつく。
その態度に悪びれる様子は一切無い。

パトリシア「今ので確信したわ。 貴女みたいな極悪人、絶対突き出してやるんだから」

青娥「あら怖い、でも残念ね。 お喋りの時間はそろそろお仕舞いよ」


                      ボコっ……


パトリシア「っ!?壁に穴が!? いつの間に!?」

青娥「ふふっ、縛る前に何か隠し持っていないかチェックするぐらいの用心は必要よ。 それじゃ、また何処かで会いましょう?」

驚くパトリシアに、袖の中に隠し持っていた壁抜けの鑿を見せびらかしながら青娥は開けた穴にその身を躍らせる。
青娥の身体が穴を潜り終えるのと同時に穴はその姿を消し、もとの白い壁に戻る。
その時になってようやく気を取り直したパトリシアは、慌ててその後を追ったが、既に青娥の姿は何処にも無かった。

パトリシア「はぁ〜〜〜〜っ。 私とした事が完全にしてやられたわ……。
      霍青娥、か……。 なんか厄介なのに目を付けられちゃったなぁ……」


この後、青娥によるクリスマス(と言う名の不法侵入)が人間の里の各地で相次ぐことになるのだが、このときのパトリシアは知る芳も無かった。




―――――――――――――― 【 お ま け 】 ――――――――――――――

【円環にて】

さやか「ねぇまどか……、この書類にある『逮捕歴一件』って何?」

まどか「え?ああ、これ? えっとね、ほら、私って最初のうち魔法少女の魂をみんな円環(こっち)に連れて来てたでしょ?
    そしたらなんか、輪廻転生?のバランスを崩しちゃったみたいで、閻魔様にお縄になっちゃって……」

さやか「へー、そうなんだ……。 なんて言うか、大変なんだね……」

まどか「まぁでも、事情を話したら、転生か円環かを選ばせる様に業務改善命令が出ただけで、服役はしてないんだけどね〜」

「いや〜、失敗失敗」と言いながらまどかは舌を出して苦笑する。
さらっととんでもない事を言う親友に、さやかは神々の裏世界を垣間見たような気がして、この事は早急に忘れようと心に誓うのであった。



903 :1@ 〜小ネタ&幻想郷縁起編〜 [saga]:2012/05/28(月) 22:51:31.83 ID:nHi33yfc0


                      〜※ 注意 ※〜


              今回の話はあくまで『青娥さんが話したお話』です。
       外の世界の団体・魔法少女・インキュベーターに関して必ずしも正しい描写とは限りません。

               その点を十分ご理解頂いた上で、お楽しみ下さい。



                     〜※ 注意終わり ※〜
904 :1@ 〜小ネタ&幻想郷縁起編〜 [saga]:2012/05/28(月) 22:54:48.43 ID:nHi33yfc0
――――――――――――――――――――――――――――――――――――

〜虚栄な委員長〜 【パトリシア】

能力       青春をエンジョイする程度の能力
危険度     低
人間友好度  高
主な活動場所 人間の里


魔女の一人である。
人里に住んでいて、なおかつ寺子屋で手伝いをしている為、私たち人間からすると一番馴染みの深い魔女と言えるかもしれない。

彼女の特徴は足を含めて全てが手になっている事で、その自由度は極めて高い。
寺子屋で忙しなく動き回っている彼女からすると、それでも尚、猫の手でも借りたいそうだが、贅沢な悩みだと思う。

生前の彼女は“委員長”と言う寺子屋内のまとめ役をしており、寺子屋でもそのように振舞っている。
寺子屋の子供たちは私から見ても自由奔放な子が多いのだが、「外の世界に比べればかなりマシ」らしい。
少々涙ぐんでいたので深く聞かなかったが、外の子供がどんななのか一度見てみたいものである。


〔能力〕

基本的に彼女の能力は周囲の統率を執る能力である。
と言っても範囲が限定されており、現在の所、その能力が発揮できるのは寺子屋内だけであり、また、対象も基本的に子供たちに限定されている。
大人にはそもそも通じない上、寺子屋から一歩でも外に出てしまうと、手の多い単なる妖怪になってしまうのが現状だ。

とは言え、前述の通り、手の自由度は高く、応用力もそれなりに持っているので、
普通の人間の体術でねじ伏せるのはまず不可能である。 無謀な事はやめて貰いたい。


〔対処法〕

基本的に警戒は必要ない。
能力の範囲も効果も限定的であり、また彼女自身に悪用の意思が基本見られない為、普通に接するのが良いだろう。

友好的な妖怪であり、手伝いや頼まれ事も普通に受けてくれるが、あまりおんぶに抱っこにならないよう、互いに支えあって行きたいものである。


905 :1@ 〜小ネタ&幻想郷縁起編〜 [saga]:2012/05/28(月) 23:01:02.23 ID:nHi33yfc0
――――――――――――――――――――――――――――――――――――

???「おはよー♪」

青娥による迷惑なクリスマスや、エルザマリアの教会での騒動など、何かとゴタゴタの絶えなかった幻想郷のクリスマス。
そんな中、ここ、命蓮寺に関して言えば「クリスマス?なにそれ美味しいの?」と言わんばかりに、平常運行が続いていた。

そんな命蓮寺に少女の声が響いたのは年の瀬も迫った師走の下旬の日の事。
少女の軽やかな挨拶に、般若心経を口ずさみながら境内の清掃をしていた幽谷響子はその手を止めて、思わず振り返る。

響子「おはよー、……ってもうお昼だよ」

おうむ返しに挨拶を返してからおかしい事に気付いた響子は、思わず突っ込む。
一方、挨拶にツッコミで返された方の桃色の髪の少女――シャルロッテはポカンとしながら首を傾げてみせた。

シャルロッテ「あれ? 今何時?」

響子&シャルロッテ「「そうね大体ね〜」」

響子「っ!?」

シャルロッテの問いに答えようとした響子は、声がハモった事に驚いてシャルロッテを見た。
口元を押さえながら小声で、「ホントにそう言う返事をするんだ〜。すご〜い」とこぼしている姿に、響子はシャルロッテに担がれたのだとようやく気が付く。

響子「もうっ!私が山彦だからってからかわないでよ! いくら私でも怒るよ!」

持っている箒を投げ捨てかねない勢いで怒り出す響子。
と同時に、シャルロッテはクスクスと笑いながら脱兎の如く駆け出した。

シャルロッテ「あはは、ゴメンゴメン! じゃ、私は帰るね! バイバ〜イ響子、また明日も遊んでね〜っ」

響子「あっ、コラーッ! 逃げるな〜っ!! って言うか明日はこうは行かないからね!」



シャルロッテ「あ〜、楽しかった。 誰かを驚かすのって面白いな〜」

まんまと悪戯が成功し、愉快だと言うようにシャルロッテは笑う。
ここ数日の間、シャルロッテは些細な悪戯を仕掛けては楽しむ日々を送っていた。
秋までは秋神の姉妹やリグルなど、遊び相手に事欠かなかったシャルロッテだが、冬に入り、皆が冬篭りに入ってしまうと途端に退屈になってしまった。

はじめの内は珍しかった雪も、数日も経てば鬱陶しいだけになり、暇を潰す為にはじめたのがこの悪戯だった。
最初は良く知ったご近所や仲間の魔女たちを相手にしていたが、その内に警戒されるようになってしまい、
ターゲットを身近な相手から、ちょっと遠くの相手へ、ちょっと遠くの相手から更に遠くへと、手を変え品を変え今日も里へと繰り出してきたのだ。

シャルロッテ「ふっふっふ、このまま魔女界、うぅん、幻想郷きっての悪い妖怪として名を馳せちゃうのもアリかな〜」

悪いも何も、妖怪としては正しい姿であり、上には上が居るのだが、気分のノっているシャルロッテがその事に気付く事はなかった。


906 :1@ 〜小ネタ&幻想郷縁起編〜 [saga]:2012/05/28(月) 23:07:44.61 ID:nHi33yfc0
――――――――――――――――――――――――――――――――――――

そんな、言ってみれば『調子付いている』シャルロッテの姿を木陰からこっそりと窺う影があった。
目と口と長い舌の付いた紫色の和傘を持ったオッドアイの少女――多々良小傘はシャルロッテに覚られないよう気を付けながらその後を追う。

小傘「う〜、人を驚かせるのは私のする事なのに……。 このままじゃ、私の立場がないよ〜」

小傘は人を驚かせる事で腹を満たす古典的な妖怪である。
魔女界でも不意討ちに定評のあるシャルロッテとは言え、その立場を取られてしまうのは死活問題だった。

小傘「何とかして私の方が凄いんだ!って事を思い知らせないと……! でもあの子、本当に驚かすの上手いんだよねぇ〜」

思い出すのは数日前の事、誰かを驚かせようと魔法の森を歩き回っていた小傘はその日、道の真ん中にピンク色のぬいぐるみが落ちているのを発見したのだが……。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

ぬいぐるみ『…………』

小傘『あれ? こんな所にぬいぐるみが……? 誰かの落し物か……』

ぬいぐるみ『キュピーン!)今だっ! 嚼符『ブロンドヘアーモグモグ』っ!!(ぎゅいーん!!』

小傘『ぎゃああああああああああっ!? おばけええええええええええええええええっ!?』



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

小傘「……で、不覚にも腰を抜かしちゃったんだよね。 あの時は吃驚した……。 シヌカトオモッタ……」

当時を思い出し、思わず身体を震わせる小傘。
誰かが聞いていたら確実に色々とツッコミが入っただろうが、幸か不幸か周りには誰も居なかった。

小傘「さて、そうなると問題はどうやってあの子に思い知らせるか、なんだけど……」

順当に考えれば目には目をの精神でドッキリを仕掛けるべきだろう。
が、小傘の驚かせ方が古典的過ぎて子供騙しレベルだと言われている事を、小傘自身も良く知っている。
あのようなドッキリを仕掛けるシャルロッテが相手なのだ。 このまま行っても返り討ちに遭う危険性の方が高い。

小傘「他の驚かせ方かぁ……。 崖の上で背中を押してみる?
   って、ダメダメ! それだと普通に飛んでっちゃうだろうし、何より洒落にならない」

付かず離れずの位置でこそこそと後を付けながら小傘は一人頭を悩ませる。

小傘「普通に行ってダメなら、顔に蒟蒻とか? でも最初に蒟蒻が見えたらダメだし、大体蒟蒻なんて持ってないし……、ん?」

物騒な手段を却下した小傘の思考は、やはりと言うべきか古典的な方向に流れる。
それでも一瞬はない物ねだりだよなぁ……と考えた小傘の目に、ふと眼前に垂れ下がっているあるモノが目に入る。

気付くと小傘はソレに手を伸ばし、感触や質感を確かめて……、次の瞬間、ぱぁと顔を輝かせた。



907 :1@ 〜小ネタ&幻想郷縁起編〜 [saga]:2012/05/28(月) 23:11:00.00 ID:nHi33yfc0
――――――――――――――――――――――――――――――――――――

シャルロッテ「さ〜て、今度は誰に悪戯を仕掛けようかな〜……っと、あんな所にチルノと大妖精発見!」

次なるターゲットを探しながら歩いていたシャルロッテが見付けたのは、やたら上機嫌な氷の妖精と、その一歩後ろを行く妖精の姿だった。
驚かせる相手としては好都合であり、また妖精相手なら後で変な問題になる事もない。
この上なく、ドッキリのターゲットには適した相手と言えた。

シャルロッテ「どうやって驚かせようかな? 普通に行ってもつまらないし、やっぱり不意討ちかな?」

茂みに身を隠しながらシャルロッテは考える。
先日はぬいぐるみモードを使った方法でドッキリを仕掛けたが、チルノたちが相手では通じないだろう。
ここは直接、真横から襲い掛かる事にする。

シャルロッテ(ふふふ、何も知らずにこっちに来てる……。 よ〜し、そのままそのまま……)

チルノと大妖精は何も知らずに道を歩いてきている。
会話が盛り上がっているのか、脇の茂みにシャルロッテが隠れている事に二人は気付かない。
シャルロッテは口をもごもごさせて、スペルの発動準備を整える。そして……、

シャルロッテ(よ〜し、今だっ! 嚼符『ブロンドヘアーモグモ……)

ドッキリのために小声でスペルを宣言しようとして……直後、首筋から背筋にかけて妙な感覚が走った。


                      にゅるん!


シャルロッテ(×▲○■!? キャアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァ!!?」

チルノ「でさ、あの三人ったら霊夢に……って、うわっ!?」

大妖精「きゃっ!? しゃ、シャルロッテさん!?」

突然首筋に受けた変な感触にシャルロッテは自身がドッキリを仕掛けようとしていたことも忘れて飛び上がった。
シャルロッテが突然茂みから出てきたことに、通りかかった妖精二人も目を丸くする。

シャルロッテ「何なにナニ!? 今のナニ!? 何なの一体ッ!?」

小傘「やった! ふくしゅー大成功! あの魔女から一本取ったぞーっ!!」

シャルロッテ「小傘!? 今のは小傘だったの?」

小傘「そうだよ〜、いや〜、久々に満腹だよ〜。 ご馳走様でした」

愉快だと言うようにけらけらと笑う小傘に、シャルロッテの顔が見る見るうちに赤くなる。
小傘にしてやられた事で一瞬、頭に血が上りかけたシャルロッテは、次の瞬間、背後から聞こえた声に一気にどん底に突き落とされた。
908 :1@ 〜小ネタ&幻想郷縁起編〜 [saga]:2012/05/28(月) 23:13:56.55 ID:nHi33yfc0

チルノ「なんだ、魔女が妖怪にドッキリを仕掛けられただけか……。 でもその程度であんな悲鳴を上げるなんて、あの魔女も所詮はその程度ね!」

大妖精「あっ、ダメだよチルノちゃん! そんなこと言っちゃ……」

シャルロッテ「ガーン!!」

大妖精が慌てて止めた時には手遅れだった。
チルノの台詞を一字一句はっきりと聞いてしまったシャルロッテはその場に崩れ落ちる。
小傘のドッキリに、チルノの言葉にと、二重のショックに喘ぐシャルロッテ。
が、彼女の災難はまだ終わらなかった。


                      パシャッ!パシャッ!パシャッ!


???「いやー、貴重な場面を見せていただいてありがとうございます。 シャルロッテさん」

シャルロッテ「っ!? この声はまさか……、文!?」

聞き慣れた声にその場に居た全員が顔を上げる。
上空に居たのは誰もが良く知った幻想郷最速を名乗る鴉天狗のパパラッチ。

文「どうも、毎度お馴染み清く正しい射命丸です。 いや〜、今のは美味しかったですよ。早速記事にしますので楽しみにしてて下さい」

シャルロッテ「待って! 待って下さい文さまっ! それだけは、それだけは勘弁して〜っ!!」

文の言葉に顔を真っ青にしながらシャルロッテは飛び去る文の後を追う。
事態の急展開についていけなかった一人の妖怪と二人の妖精はその姿を半ば呆然としながら見送る。

文とシャルロッテの姿が見えなくなったところで、チルノは思い出したように小傘に尋ねた。

チルノ「ところでさ、アンタは今どうやってあの魔女を驚かせたの?」

小傘「ん? ああ、それなら簡単よ。 後ろからこっそり忍び寄って首筋をこの傘の舌で舐めてあげたの」

ぺろんとね! と小傘が言うとチルノは腕組みをしながら納得し、大妖精は舐められた感触を想像してしまったのかぶるりと身体を震わせる。
種明かしも終わったところで、小傘は大きく伸びをすると、空へと舞い上がった。

小傘「それじゃ、私は他の人間たちを驚かせに行ってくるから。 じゃ〜ね〜」

チルノ「おー、またなーっ!」

さっきのシャルロッテとは違い、小傘は満たされた気分でその場を後にした。
古典的な妖怪の小さな復讐はこうして成功し、この一件で懲りたシャルロッテは暫らくの間、大人しくしていたとの事だ。


なお、コレは全くの余談なのだが、この後小傘はシャルロッテにやったのと同じ要領で人間を驚かせようとしたのだが、
忍び寄る段階でばれてしまい、結局この作戦は長続きしなかったそうだ。




909 :1@ 〜小ネタ&幻想郷縁起編〜 [saga]:2012/05/28(月) 23:17:10.94 ID:nHi33yfc0
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〜悪食で大食な甘味狂〜 【シャルロッテ】

能力       お菓子を作り出す程度の能力
危険度     高
人間友好度  中
主な活動場所 魔法の森、人間の里など


小動物のような姿と、幼い少女の姿と言う二種類の姿を使い分ける珍しい妖怪。
どちらも見た目は可愛らしく、また性格も子供っぽい為、ついつい気を許しそうになるが、
多くの妖怪がそうであるように彼女もまた、油断ならない相手である。

子供のせいかはたまた彼女の体質なのか、お腹が減ると食べ物に喰いついてくる。
ごく稀に人間に噛み付いてくる事もあるので、大変危険である。

見た目にそぐわず大口で、人の頭程度なら一飲みに出来るそうなので、手持ちの食べ物があるならそちらをあげた方が賢明である。
甘いものが大好物との事なので、お菓子を与えれば確実にそちらに喰いつくと思われる。

食べ物を持って居ない場合は何はともあれ逃げよう。 少しでも呆けていれば一巻の終わりである。


〔能力〕

そんな彼女だが、意外にもその能力は好物であるお菓子を作り出す能力である。
和洋中華問わず、お菓子なら何でも作り出せるとの事で、作り出したお菓子を食べても別に問題は無い。
むしろ、彼女のお菓子を食べた人曰く、美味すぎて、暫らく普通の食事が不味く感じたらしい。

このようにこの能力自体に害は無い。
が、この能力は彼女の体力と魔力を大幅に消費するらしく、調子に乗ってお菓子を作り過ぎると、彼女自身が激しい空腹に見舞われる。
その為、最近は体力温存のために普通にお菓子を作ることの方が多いらしい。

空腹状態の彼女は上記の通り大変危険であり、襲われかねないので、勝手に彼女のお菓子を食べるのは止めておこう。
お菓子を食べたせいで、逆に食べられてしまったのでは洒落にならないからだ。


〔対処法〕

彼女がお腹を空かせていると分かったら、何はともあれ食べ物を与えることである。
森の中を歩く時は、お菓子を持ち歩いて行く事をオススメする。

人里に食材を買いに来ることもあるが、その場合は他の妖怪同様安全なので特に警戒する必要は無い。
毎度毎度大量に買い込んでくれるそうなので、上手くすればお得意さんになってくれるかもしれない。


910 :1@ 〜小ネタ&幻想郷縁起編〜 [saga]:2012/05/28(月) 23:20:30.09 ID:nHi33yfc0
――――――――――――――――――――――――――――――――――――

クリームヒルト「すぅ〜、すぅ〜……」

幽々子「ふふっ、結局寝ちゃったのね……。 まあ色々大変だったようだし、仕方ないかしら?」

年越しも間もなくと言う大晦日の夜、博麗神社の離れの縁側に腰を掛けながら、幽々子は膝の上で眠るクリームヒルトの頭をそっと撫でた。
夕方から始まった博麗神社での年越しの宴は集まった妖怪で大いに盛り上がり、年の終わりに相応しい大宴会となった。
妖怪ばかりで人間が来ない上、続出した脱落者への対応などで、霊夢は頭を抱えていたが、まあそれも些末な事だ。

盛り上がる本殿に対し、離れは静かで、幽々子は誰も居ない筈の虚空に問い掛ける。

幽々子「さて……、紫、居るんでしょう? 出てきなさい」

紫「あら?バレてたのね……」

幽々子「バレるわよ。 何年付き合ってると思ってるの?」

紫「そうだったわね。 それで、何の用かしら? 私は冬眠前の挨拶に、と思って来たんだけど……」

「お邪魔になりそうだったから帰ろうかとも思ったんだけど……」などと言う紫に、幽々子は小さく微笑む。
もっともらしい事を言っているが、帰らずにそこに居た時点で、興味本意での覗きだったのは確実だからだ。

幽々子「……紫は今年の件、一体どこまで読んでたの?」

紫「どこまで、と言うと?」

幽々子「六月の異変から今日までの全部よ。
    今まで一度たりとも存在したことのない妖怪、“魔女”の一件を私に言われるままに任せたり、
    貴女にしては珍しく、あの神さまの件じゃ対応を間違えたそうじゃない?」

考えてみればおかしい事ばかりなのだ。
一つの種族が纏まって幻想入りすると言う事態はかなりの異常事態だ。
それなのに紫自身は動こうとせず、事実上、幽々子に一任するカタチとなった。
かと思いきや盆の事件や、神無月の事件では紫は真っ先に動いている。
動きだけを見るなら紫が警戒していたのは“魔女”ではなくてむしろ……、

紫「その事ね……。 ねぇ幽々子、貴女はある日を境に、自分以外の全ての人の認識から、
  そこに居た筈の妖怪が“存在していなかった事に”なる瞬間を認識してしまったらどうする?」

幽々子「あの神さまの話ね? ああ、成る程ね」

言ってから幽々子は目の前の友人の能力を思い出し、納得した。
つまりこの件に関して言えば、紫はあの“暁美ほむら”と同じ状況だったのだ。

911 :1@ 〜小ネタ&幻想郷縁起編〜 [saga]:2012/05/28(月) 23:25:33.43 ID:nHi33yfc0

紫「そう、私は境界を操るスキマ妖怪。あの子がやってのけた“全世界を書き換えた瞬間と言う境界”も私は認識しているの」

紫「びっくりしたわ。ある瞬間を境に私の中に魔女の存在した世界と、していなかった世界の二つの記憶があったんですもの。
  最初、何が起こったのか、私ですら訳が分からなかったわ」

幽々子「で、貴女は調べたのね? あの神さまの事を……」

紫「ええ、久々に骨の折れる作業だったわ。 情報も限られていたし……」

幽々子「で、対応を間違えた、と……」

遅かれ早かれあの神さま――鹿目まどかが抱えていた矛盾は解決しなければならない事だったのは事実だ。
だが、その矛盾があんなに早期に、それもかなり深刻なカタチで露呈したのは紫のミスとしか言いようがない。

紫「仕方ないじゃない。 人から神さまになる例は数あれど、人から一気に概念に、それも人格を有したままだなんて前代未聞にも限度があるわ」

「兎に角、今年は大変だったのよ」と言いつつ、紫は盛大に溜め息をついた。
いつもの余裕に満ちた胡散臭げな賢者の姿はそこにはない。
親友にだけに見せる素の八雲紫がそこに居た。

幽々子「それはまた大変だったわね。 とりあえずお疲れさま」

紫「ええ、疲れたわ。 そう言う訳だから、私はそろそろ休ませてもらうわ。 それじゃあ幽々子、良いお年を……」

幽々子「ええ、良いお年を」

互いに挨拶を交わすと紫はスキマの中にすっと消えていく。
あとに残されたのは幽々子と、その膝の上で寝息を立てているクリームヒルトだけ。


幽々子「来年か……、来年はどんな年になるのかしらねぇ……」

一人呟きながら幽々子はふっと微笑んだ。
何が起こるのか、それは幽々子にも、紫にも分からない。だけど……、

クリームヒルト「うっ……、う〜ん……。 あ、あれ?私……寝ちゃってた……?」

幽々子「あら?ごめんなさい、起こしちゃったかしら?」

クリームヒルト「あっ、いえ、大丈夫です。 それより今は何時ぐらいですか?」

幽々子「そろそろ年越しよ。 ギリギリ、ってところね」

壁に掛けられた時計を見ながら幽々子は答えた。
命蓮寺から聞こえる除夜の鐘の音も、年越しが間もない事を告げている。

912 :1@ 〜小ネタ&幻想郷縁起編〜 [saga]:2012/05/28(月) 23:27:23.30 ID:nHi33yfc0

クリームヒルト「良かった〜。 幻想郷で初めての年越しなのに寝過ごしちゃうところでした」

幽々子「う〜ん、私としてはクリームヒルトちゃんの可愛い寝顔を見ながらの年越しも魅力的だったのだけどねぇ」

クリームヒルト「そんなイジワルなこと言わないで下さいよ〜」

「幽々子さんが楽しいだけじゃないですか!」と頬を膨らませるクリームヒルトを宥めつつ、幽々子は小声で、
本当に小さな声でポツリと呟いた。

幽々子「まあ、どんな年でも私は私のやりたいようにやるだけなんだけどね……」

クリームヒルト「? 幽々子さん、何か言いました?」

幽々子「いえ、何も……。 さて、そんな事よりそろそろ時間よ、クリームヒルトちゃん」

壁掛け時計が零時を指し、最後の鐘の音が響く。
異変やら事件やらで瞬く間に過ぎていった年はこうして終わりを告げる。
それと同時に、新しい年が始まるのだ。交わされるこんな言葉と共に……、


幽々子「明けましておめでとう。クリームヒルトちゃん」
クリームヒルト「明けましておめでとうございます。幽々子さん」





                      「「今年も宜しくお願いします」」





913 :1@ 〜小ネタ&幻想郷縁起編〜 [saga]:2012/05/28(月) 23:29:07.90 ID:nHi33yfc0
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〜天へと誘う魔の少女〜 【クリームヒルト・グレートヒェン】

能力       救済する程度の能力
危険度     極高
人間友好度  高
主な活動場所 中有の道、人間の里、冥界など


外の世界からやって来た新種の妖怪である魔女の一人。
人間が穢れに侵され堕ちた姿である魔女の中でも極めて強い力を有しており、この新参妖怪たちの長として認知されている。

元々が人間の少女であり、温厚な性格も相まって、彼女の方から人間に手出しする事は一切無い。
むしろ、人間に害を及ぼしかねない自身の能力を憂いているぐらいで、これは妖怪としては珍しい存在と言える。

また、似たような能力の持ち主である西行寺幽々子とは極めて仲が良い為、一緒に見掛ける事も多い。
傍から見ていると最も恐ろしい組み合わせの一つなのだが、本人たちにその自覚は無いようだ。


〔能力〕

一見すると分かりにくい能力だが、簡単に言ってしまえば生者の魂を極楽浄土に導く能力である。
極楽浄土に逝けば全ての苦しみから解放されるので、ある意味救いと言えるが、理不尽な屁理屈以外の何物でもない。

亡霊や怨霊など既に死んでいる魂など一部を除き大体の人妖に通用するとのことなので、危険極まりない能力だが、
前述の通り、彼女自身がこの能力を忌避しているきらいがあるので事実上、封印されている状態である。


〔対処法〕

彼女の性格を考えると普通に接する分には問題ないであろう。
ただし、能力が危険極まりない事は事実なので、十分な用心が必要である。
彼女を怒らせるような事は絶対に避けてもらいたい。

基本的に平穏無事な生活を好み、他者の不幸をよしとしない為、魔女関連で何か事件に巻き込まれた時は相談すると良い。
が、近くにいると巻き添えをくう可能性が高いので、通報したらすぐに離れた方が身のためだ。



914 :1@ 〜小ネタ&幻想郷縁起編〜 [saga]:2012/05/28(月) 23:47:05.36 ID:nHi33yfc0


      〜※ 推奨BGM ※〜

フラグメンツ(原曲『ネクロファンタジア』)/発熱巫女〜ず
http://www.youtube.com/watch?v=i9Q2FZsS5PE


915 :1@ 〜小ネタ&幻想郷縁起編〜 [saga]:2012/05/28(月) 23:52:50.78 ID:nHi33yfc0
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                      原作
                    東方project
                魔法少女まどか☆マギカ


                      出演

               クリームヒルト・グレートヒェン
                   西行寺幽々子


                博麗霊夢   霧雨魔理沙
               東風谷早苗  アリス・マーガトロイド
               十六夜咲夜  パチュリー・ノーレッジ
                射命丸文   聖白蓮


               オクタヴィア  シャルロッテ
                  エリー  ゲルトルート
                パトリシア  イザベル
                ギーゼラ   エルザマリア
                ロベルタ   ワルプルギス


                   暁美ほむら

                 巴マミ   佐倉杏子
              美樹さやか   千歳ゆま
              キュゥべえ    鹿目まどか


               魂魄妖夢    上白沢慧音
                犬走椛    姫海棠はたて
              八坂神奈子   洩矢諏訪子
                 秋穣子   秋静葉
        レミリア・スカーレット   紅美鈴
             蓬莱山輝夜   八意永琳
                小悪魔   稗田阿求

               火焔猫燐   ミスティア・ローレライ
                鍵山雛    水橋パルスィ
             古明地さとり   多々良小傘
             サニーミルク   ルナチャイルド
           スターサファイア   ゾンビフェアリー

                    八雲紫

              河城にとり   鈴仙・優曇華院・イナバ
                 チルノ   大妖精
             森近霖之助   伊吹萃香
     フランドール・スカーレット   古明地こいし
             黒谷ヤマメ    キスメ
       レティ・ホワイトロック    比那名居天子
              風見幽香   霍青娥
              幽谷響子   ルーミア(動画版のみ)

916 :1@ 〜小ネタ&幻想郷縁起編〜 [saga]:2012/05/28(月) 23:58:51.68 ID:nHi33yfc0
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幽々子「……とまあこんな感じかしら」

白玉楼の応接間。
そこで話を区切った幽々子はパタリと広げていた扇を閉じる。
その仕草が何を意味するのか、すぐに覚ったのだろう、幽々子と正対して話を聞いていた少女が思い出したように息を吐く。

???「クリームヒルトたちも色々あったのね……。 最初の一年でそんなに……」

幽々子「あったわよ〜。 曲者揃いの幻想郷ですもの。 何か無い方がおかしいわ」

???「どうしよう、こっちでやっていけるのか不安になってきたわ……」

茶化すように幽々子が言うと、少女は不安げに眉を寄せる。
落ち着いたと言うか、ともすればクールな印象すら受ける少女のそんな表情に幽々子はふっと苦笑する。

幽々子「それは貴女の努力次第ね……。 と、言いたいところなんだけど、貴女なら大丈夫だと思うわ」

???「? どうしてです?」

やけに自信たっぷりな様子で幽々子が断言したからだろう、少女は「何故?」と言うように小首を傾げてみせる。
問い掛けつつも不安の色を滲ませる少女とは対照的に、幽々子は落ち着いた様子でお茶を一口啜ってみせる。

幽々子「だって貴女にはちゃんと居るじゃない。 一緒に歩いてくれる子が……。 ね?」

???「っ!?」

茶目っ気たっぷりの口調に、ウィンクのオマケもつけながら幽々子は逆に問い返した。
幽々子の言わんとしている事を察した少女が、顔を赤らめつつも小さく頷いた直後、白玉楼に別の少女の声が響く。
幽々子にとっては聞き慣れた、少女にとっては久方ぶりに聞く声が……。

幽々子「あら?どうやら来たみたいね。 さ、出迎えてあげましょう? 貴女の大切な友達を……」

幽々子が手を伸ばすと、少女は差し出された手をしっかりと握った。
そこに不安や戸惑いの色と言ったモノは、最早微塵も無かった。





                      これが貴女の幻想郷での第一歩。


                      さあ、貴女の物語を魅せて頂戴?




                      私たちと紡ぐ、幻想の夢物語を……






                                                    東方円鹿目シリーズ 完
917 :1@ 〜小ネタ&幻想郷縁起編〜 [saga]:2012/05/29(火) 00:11:31.73 ID:1bPMe9wt0
と、言うわけで東方×まどマギ(主に魔女)な俺得でお送りしました東方円鹿目シリーズ。
こんどこそ本当に完結です。 グランドフィナーレです。

もう後日談なんかは皆さんの中で勝手にキャッキャウフフしちゃって下さい。
そのための障壁は全部作中で取っ払ったつもりです。

約八ヶ月……、八ヶ月!?
うん、書いてるこっちが驚くほど長期の連載となりました。

前作の早苗さんSSでまどっちが空気だったので『まどかが主役で幻想郷が舞台の話を書こう!』と思ったら、こんな事になってました。
全く、あの時の私の頭の中でどんな化学反応が起こったんでしょうね? 我ながら理解不能です。

とにかく、今までお付き合い頂き、本当にありがとうございました。


さて、最後にお手数ですが、文章面、設定面、構成面何れでも構いません。
「ここは直して欲しい」とか「ここら辺は良かった」なんて意見があれば、今後の参考にしたいと思います。

ついでに好きなキャラクターとか、好きな作中のカップリング(組み合わせ)、
良かった場面とかも書いてもらえると、私としては大変嬉しく思います。

人気投票はもしかしたら集計して発表するかも?


さてさて、長々とお付き合い頂きました『東方円鹿目』、そろそろ筆を擱かせて頂こうかと思います。
協力して頂いた皆様、読んで頂いた皆様、楽しいひと時をありがとうございました。 それでは


敬具
918 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/05/29(火) 01:16:42.60 ID:0+VIcUWC0
まずは一言、お疲れ様でした!
立った当初からチェック→スペカ案という名の燃料投下を若干させていただいたものです。
ちょくちょく採用させてもらったことで物語に参加でき、本当に嬉しく、楽しかったです。
また先にも言いましたが、前作もリアルタイムで楽しく読ませていただきました。今後の活躍も楽しみにしています。

好きなキャラ:エルザマリア&パトリシア、(元含む)魔法少女五人衆
好きなカップリング:パチェ&エリー、天子&ギーゼラ(この二人は良いコンビになると思ってた!)
好きなシーン:円鹿目本編におけるエルザマリア戦終盤の霊夢の啖呵及びクリームヒルト戦における霊夢の説教

P.S.作者様とは異なります、私以外の精力的に書き込まれていた(東京都)様
重ね重ね委員長のネタかぶり&潰しの件についてはすいませんでしたァァァ!!(ジャンピング土下座)
そしてあなたがあの方とも知らず「引き出し広い人」なんて生意気言ってすみません……
そりゃそうだよ当たり前だよ広いはずだよ……そちらもひっそりと応援しております。
919 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/05/29(火) 06:37:51.54 ID:gCaTieEUo
お疲れ様でした
920 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/29(火) 12:28:37.39 ID:vmxAZeeDO
完結…………感謝!感激!お疲れ様でしたっっ!!

激しくもあたたかい。そしてちょっぴりユーモラスな世界…。
こんな素敵な世界を楽しませて頂いて…、ありがとうございました。

弾幕案も、多くを使って頂けまして。心の底から、感極まっている次第です。



直した方が良いとか、偉そうに言うつもりは無いんですが、
希望としては…クリームさんの服が黒のままだったら、もっと
嬉しかったかなー…。なんて、思ったりはしましたかね、はい。

好きなキャラクターもカップリングも…みんなそれぞれ、
とても魅力に溢れていて…一番なんて、選べない気持ち
ですが…。強いて選ぶなら、やっぱりメインのあのお方々…。
好きなキャラクターは、クリームヒルトちゃんで。好きな
カップリングは、幽々子様とクリームヒルトちゃんでしょうか。

良かった場面はもちろん。それぞれの章の終盤!盛り上がり
から感動の終わりの部分でしょう。他にも…最初にクリーム
ヒルトちゃんが目覚めて、再びの生の歓喜にむせぶところ。
まど神様と霊夢さんの初会話。魔法少女達の、静観という
戦いとか…良い場面はたくさん、たくさんありましたけどね。


作者様。長い、とても長い間。
魂の奥底から感じる程の至福の時を、本当に…。
本当に…!どうもありがとうございました!!!
921 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2012/05/29(火) 19:03:41.91 ID:C69LiJfc0
乙乙! 中だるみも失速もなく最初から最後まで面白かったです。
感動した!

CPは、幽々子・クリームヒルトで!
922 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2012/05/29(火) 21:06:06.37 ID:R8K+7vaO0
遂に完結か
乙でした

いつも楽しみにしてました
923 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/05/29(火) 21:54:41.13 ID:86jSLBL60
とうとう終わってしまったか… 本当に素晴らしいSSをありがとう。
あんたにはいくら乙しても足りないぜ!

まどマギ×東方ってだけでも俺得なのに、魔女が主体の話だなんて最高じゃん!って思ってたら
文章力すごいわ展開熱いわシャルちゃん可愛いわワルプルちゃん可愛いわで何度悶え死にそうになった事か!

スペカや能力の案もいっぱい採用してもらったし、俺の要望が>>1キュベーターによって>>1の創作意欲を凌駕したし
普通にSSを読んだりする以上に楽しくなれたよ! これで終わるなんて名残惜しい…楽しみがまた1つ減って寂しくなるなぁ…

好きなキャラクターはシャルちゃんとワルプルちゃんとギーゼラちゃんとロベルタ姉さんと… いっぱい居すぎて書ききれないよ!
カップリングはシャルみのが一番!でもエリパチュやゆうゲルも大変おいしかった。 もちろん、ゆゆクリも大好きだぜ!

あと>>918の人、ジャンピング土下座はヒザを痛めるから謝らないで!
そちらのスペカ案も自分が思いつかないような物ばかりで素晴らしかったです
それに自分はあのお方なんて呼ばれるほどの人柄じゃ無いですし… 応援して頂けるなら是非とも宜しくお願いしますねー!


何はともあれ…お疲れ様でしたーッ! 比叡先生の次回作にご期待してます!
もし良ければ、次に書く事を予定しているSSがあれば教えてくれたら…それはとっても嬉しいなって!
924 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/29(火) 22:48:01.59 ID:/DFZjXrz0
作者様、Candeloro、Ophelia、Homulillyの小ネタ&幻想郷縁起もお願いします!
925 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/30(水) 00:11:27.23 ID:Ojrexgtjo
乙でしたー
最後まで楽しませてもらいましたよー
926 : [saga]:2012/05/30(水) 21:34:16.62 ID:SmnObaLx0
おーい、最後の最後の感想で欠点指摘が無いってどういうこったい! 逆にこっちが怖いよ!
まぁ、ここまで付いてきてくれた人たちですしね。 ホント、皆さまは神さま仏さまです。

人気は等分されてる感じですね〜。
仲間外れや格差も生まれないので、ある意味このSSらしいかも知れません。


>>918
 いえいえこちらこそお世話になりました〜。
 実は投稿開始時、ゲルトルートさんの弾幕案で早速手詰まりになってたのは今だから言える秘密。

>>919
 はい、ありがとうございます。 うむ、簡潔ゆえにストレートだから照れるな……

>>920
 良かった場面の選択が細かすぎワロタw
 自分で書いた話なのに見返しちゃったよ。 読者に負ける作者とかプギャー  ……ッテ,ワライゴトジャネーヨ ///orz///

>>921
 そう思って頂けたなら幸いです。
 個人的には最初の方の表現とか描写とか既に悲鳴上げたくなりますが……

>>922
 はい、遂に完結です。 お付き合い頂きありがとうございました。

>>923
 浮気性が過ぎますぞ、ちょっとは自重しろwww
 次回作はネタ神さま待ちなので私にも分かりません。

>>924
 最終投下後書きで述べましたが、それは皆様がそれぞれの心の中で紡いで頂こうかと
 色々妄想、もとい、幻想に思いを馳せるのも面白いですよ?

>>925
 ありがとうございますー。 こちらこそ最後まで読んで頂き乙でした〜。



さて、それでは名残惜しいですが、HTML依頼の方に行って来ようと思います。
いつかまた何処かの幻想で会えるかな?会えたら良いな。

それでは ノシ
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