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俺の妹がこんなに可愛いわけがないSSスレ Part.13 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/14(土) 23:35:25.72 ID:Rvh+QJMLo
■前スレ
俺の妹がこんなに可愛いわけがないSSスレ Part.12
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1322648060/

■まとめwiki
http://www43.atwiki.jp/vip_oreimo/

・鬱、エロ、NTR、オリキャラ、クロス作品の場合は、投下前に断り書きをしましょう
・完結させてからの投下が望ましいです。3回以上中断する場合は別スレを検討しましょう
・やむを得ず中断させた場合は、再開時に前回のものをアンカーで知らせてください
・前の作者の投稿から3時間程度の間隔をあけるのが望ましいです。無理な場合は一言断りましょう
・被り、苦情防止のために事前に投下時刻とカップリングを宣言しておくのもオススメ
・SS作家さんには惜しみない賞賛を
>>980 を踏んだ人が次スレを立てましょう

感想や雑談などご自由に

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1342276525
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ジュン「……ドールにだって穴はあるんだよな」真紅「!?」 @ 2019/11/11(月) 23:39:18.46 ID:RRoRCbC4O
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1573483158/

的場梨沙「ショットガンで狙い撃ちよ!」 @ 2019/11/11(月) 23:09:11.61 ID:yxvfG3Pf0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1573481351/

神谷奈緒「虹が出来る理由」 @ 2019/11/11(月) 23:00:18.71 ID:7woyvuSr0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1573480818/

ポッキーの日 @シャニマス @ 2019/11/11(月) 21:34:54.44 ID:M4wWe43DO
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1573475694/

馬場このみ「同級生はプロデューサー」P「ん?」【ミリマスSS】 @ 2019/11/11(月) 21:25:51.76 ID:TSW5RMPM0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1573475151/

【ドラクエ】勇者「安価で竜王討伐する」 @ 2019/11/11(月) 20:12:30.52 ID:3CAQvX/j0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1573470750/

【モバマス】「燻る心に火をつけて」 @ 2019/11/11(月) 19:54:17.40 ID:UdWl212k0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1573469657/

フランシュシュ「……アメリカ旅行?」 @ 2019/11/11(月) 19:48:56.08 ID:B0jPc9XJ0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1573469335/

2 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/14(土) 23:36:08.79 ID:Rvh+QJMLo

■関連SSスレ
○【俺の妹】高坂京介は落ち着かない
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1296372251/
○【俺妹SS】俺と妹が夫婦なわけがない!
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1300627984/
○京介「妹たちに安価で悪戯する」
○桐乃「妹たち総出で兄貴に悪戯する」(現)
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1321927800/
○【俺の妹】  願い   【序から始まる物語】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1310480351/
○沙織「京介先輩」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1305915497/
〇京介「ポケモン?」あやせ「はい」桐乃「その4!」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1333506723/
〇桐乃「ねぇ、散歩行かない?」京介「……そうだな、たまには行ってみるか」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1333985263/
〇あやせ「-------------------あなたのことが好きです」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1337109890/
3 : ◆YHxtVKAHbw [sage]:2012/07/14(土) 23:47:05.94 ID:bzJBBfuzo
乙です。
4 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/07/16(月) 05:11:41.43 ID:pe4QhIEGo
>>1
乙!
5 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2012/07/16(月) 07:54:06.77 ID:IWWDpeuu0
1けたゲット!!
6 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/16(月) 09:42:00.34 ID:PFmfqISDO
ここって、前スレ埋まってないのに1乙すんの?
あと、sageんのは普通の2ちゃんスレのように、メール欄にsage書けば良いの?それとも横にある、sageチェックつければ桶なの?
7 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/16(月) 20:10:09.59 ID:kDKVVPyGo
>>1
乙です
8 : ◆YHxtVKAHbw [sage saga]:2012/07/17(火) 21:56:47.53 ID:R5rxtn7yo
京介視点で一本。
時系列的には、原作九巻から十巻の間あたりかと。

それでは投下します。

タイトル未定
9 : ◆YHxtVKAHbw [sage saga]:2012/07/17(火) 21:57:27.28 ID:R5rxtn7yo
「あのさー」

 木曜日、学校から帰宅した俺に、リビングのソファに座っていた妹様からお声が掛かった。

「あんだよ」
「今度の日曜、アキバに行くから」

 そう言えば、ゲーム会社『ありす+』が妹めいかぁシリーズに関連したイベントをやるってどっかのニュースサイトで言ってたな。
 言っておくが、俺が自主的にこの情報を入手したのではないという事を力の限り強調させてもらう。
 ネットサーフィン中、あくまでなんとなくリンクをクリッククリックしている最中にそのページをチラ見したに過ぎない。
 その時は、こういうの絶対桐乃が見落とさないだろうな、と漠然と思っていたのだが案の定だったワケだ。


「何しに行くんだ?」

 分かっていながら聞いてみる。

「『ありす+』のイベント」

 ビンゴ。

「そっか。ま、行ってこいや」
「はあ?」

 この後に続く桐乃のセリフは容易に想像できる。
 俺は、桐乃の言葉に被せるように、

「「あんたも一緒に行くに決まってるでしょ」」

 ホラ見ろ。完璧にシンクロしたぜ。
 桐乃はチッと舌打ちする。

「分かってるんならいいケド──」
「言っておくが俺は行けないぞ」

 俺の返しには意表を突かれたらしい。
 目を大きく見開いて、

「なに勝手なこと言ってるのよ、あたしが誘ってんのよ?」
「その日は先約があるんだよ」
「そんなのキャンセルしなさいよ」

 相変わらず理不尽なやつだ。

「そういうわけにはいかん。前々から決まってたからな」
「じゃ、じゃあ例えばお父さんが急に倒れて病院に担ぎ込まれたとかあっても、あんたは先約の方を優先するの?」
「あのなあ……、それとこれとは事情が全然違うだろ」
「同じよ! 家族のコトなんだから!」
「……じゃあ、イベント中にでもぶっ倒れろや。そうしたら駆けつけてやっから」

 どうあっても俺は一緒には行けないという事を今更ながら認識した桐乃は、急に不安そうな、心細そうな表情になる。

「ねえ、どうしてもダメ? そんなに大事な用事なの?」

 俺だって桐乃の兄であると同時に、一人の人間だ。桐乃の予定に合わない事態だって起こり得る。いや、むしろ今までそういう事が無かったのが不思議なくらいだ。
 まあ実際のところ先約というのは赤城だったりするわけで、ちょっと断りの電話さえ入れれば問題無いと言えば問題無いのだが。

「黒猫や沙織を誘えばいいだろ?」
「あ、あの二人は予定があるって言うから……だからあんたを誘ってんじゃん!」
「その二人と同様、俺にも予定があるんだよ。それくらい分かれよ」

 こういうパターンだと、大抵桐乃は仇を見るような目付きになるのだが、今回は今にも泣き出しそうな顔になった。
 さすがにちょっと可哀想になり、赤城との約束を断ろうかなと思ったのだが──

「先約って……地味子?」
「ちげーよ! 仮にそうだとしてもお前には関係ないだろ! あと、麻奈実のことを地味子と言うな!」

 意地でも赤城との約束はキャンセルしてやらん!

「ゴ、ゴメン……」

 あれ? なんか調子が狂うな。
10 : ◆YHxtVKAHbw [sage]:2012/07/17(火) 21:57:55.96 ID:R5rxtn7yo
 俺は大きく息を吐き、桐乃の頭に手を乗せて、

「まあ、今回は悪いけど諦めてくれ。この埋め合わせはするから」

 そもそも、人の予定を無視する相手に埋め合わせするのもおかしな話なんだがな。
 こういう場合もいつもなら大きくかぶりを振ったりするか俺の手を払い除けたりするのだが、珍しく何の反応も示さない。
 代わりに今にも消え入りそうな声で、

「本当……? 嘘吐いたら[ピーーー]から……」

 [ピーーー]ってあたりは桐乃らしいのだが、どうも無理に虚勢を張ってるようにも見える。


 部屋に戻った俺は、黒猫と沙織に電話をかけた。

『今度の日曜? 悪いけどあなたの妹からそんな申し出なんて聞いてないわ』

『はて、可笑しいですね。きりりん氏からのお誘いは無かったでござるよ?』

 なんだ、桐乃のやつ。最初から俺しか誘ってないじゃないか。
 でも、いったい何のためにそんな嘘を言ったんだ?
 だいたい今日の桐乃の態度は可笑しい。
 麻奈実の事で怒ったら素直に謝ってくるなんて、あいつは本当に桐乃か?
 俺は改めて黒猫と沙織に電話をかけ直し、二人とも日曜に用事が無いことを確認した上で、偶然その場に居合わせたように装ってアキバのイベント会場に行ってもらうよう頼んだ。


 そんなこんなで翌日の金曜日だ。
 通学途中、横に並んで歩いている麻奈実が俺の顔を覗き込んできた。

「あ? どうした?」
「ううん、別に。ただなんとなくだけど、きょうちゃんに何かあったような気がして」
「何かってなんだよ」
「たとえば桐乃ちゃんのこととか?」

 こいつは超能力者か?

「何かあったといえばあったんだけどな」

 俺は桐乃のイベントの誘いを断ったらすごく悲しそうな顔になった事、桐乃の暴言(麻奈実のことを地味子と言った事には触れずに)に対して怒ったら素直に謝ってきた事、頭に手を乗せても抵抗しなかった事、俺以外にも誘える人間はいるにも関わらず断られたと嘘を吐いて俺だけを誘ってきた事を話した。

「うーん。よく分からないんだけど、どうしてもきょうちゃんと一緒が良かったんじゃないのかなあ」
「その程度の推理くらいは俺だって出来るわ。ただ、俺じゃないといけない理由ってのが思いつかなくてな」
「理由? 簡単だよー。桐乃ちゃんはきょうちゃんとでーとしたかったんだよ。ただ直接そう言うのは恥ずかしいからいべんとを口実にしたんだと思うよ?」
「は? それこそありえねーや」
「そうかなあ?」
「だいたいな、あいつははっきりと俺のことを大嫌いだと言ったんだぜ」

 俺にとっての一番は自分じゃないと嫌だと言ったことは……伏せておこう。

「ふーん。ところで、桐乃ちゃんからの誘いを断った理由は?」
「赤城との先約があったんだけど……くれぐれも他の誘いを断ってまで赤城との約束を優先させたってこと、赤城には言うなよ?」
「言われなくてもそのつもりだけど、どうして?」
「何かの弾みでそのことが赤城の妹の耳に入ったらまずいんだよ」
「なにがまずいの?」
「……腐るんだよ……」
「腐る……?」

 腐女子って概念、麻奈実はわかんねーだろうなあ。

「まあ、とにかくそういうことだ」
「ふーん?」


 学校が終わって帰ってくると、桐乃はリビングのソファの上で体育座りのように膝を抱えて顔を伏せていた。

「……ただいま」

 俺の言葉に桐乃はゆっくりと面を上げる。
 そして、か細い声で、

「あ、あのさあ……」

 とここまで言って、再び黙り込み、顔を伏せる。

「どうした?」
「ん……なんでもない……。おかえり……」

 おそらく日曜のイベントの事なのだろうが、ここまで塞ぎ込むなんて、麻奈実の言う通り俺とデートしたかったとか? いや、それは無い。
 普段の俺ならその可能性についても考える事もあるだろうが、今回に関しては何故かデートなどでは絶対に無いと確信めいたものを感じていた。
 理由はわからん。なんとなくそんな気がするだけだ。
11 : ◆YHxtVKAHbw [sage saga]:2012/07/17(火) 21:58:26.47 ID:R5rxtn7yo
 しかし、本当に覇気が全く無いな。学校でもこんな調子だったのだろうか。
 なんて考えながらリビングを出たところで、携帯にメールの着信が入った。
 確認するとあやせからで『公園で待っています』とあった。
 いつもなら飛んでいくところだが、多分桐乃のことだろうなと思うと気が重くなってくる。
 溜息つきつつ階段を上り、自室に通学鞄を置いて、また階段を下りる。
 はあ……しょうがねえな……。


 公園に着くとあやせはベンチに座っていた。
 俺に気付くと立ち上がって駆け寄ってくる。

「悪い、待ったか?」
「はい」

 はい、と来たか。少しはオブラート包んでくれてもいいものを。

「あの、さっそくですけどお話があります。桐乃の事なんですけど」

 やっぱりか。

「その前に俺からも質問させてくれ。あいつ、学校でどんな様子だった?」

 俺が聞くと、あやせは唇を噛み俯いた。

「……すごく暗くて……話し掛けても相槌しか打ってくれなくて……。こんなに落ち込んでる桐乃なんて見たことありません。わたしまで泣きそうになっちゃいました……」

 俺に断られたくらいで親友を泣かすなよ。

「そうか。家でも同じような感じだよ」
「いったい何があったんでしょうか……?」
「……良くは知らないけど、今度の日曜に人を誘ったけど断られた……みたいだな」

 嘘は言っていません。

「そんな……。あんなに落ち込んでしまうくらい桐乃に想われてる人がわたしの他にいるなんて……。なんでわたしを誘ってくれなかったんでしょうか? 嫌われちゃったのかな……?」

 ヤバい。別のベクトルであやせを傷付けてしまった。

「い、いや。あやせのことは大切だからこそ誘えなかったんだよ。オタク方面の趣味の件だからさ。逆に、あやせと共通の話題の件であやせを誘って断られても、やっぱり同じように落ち込むぞ。まあ、あやせが桐乃の誘いを断るなんて事は無いだろうからそういう事態は起こらないけどな」

 必死にあやせをヨイショする俺はなんて気配りの出来る人間なのだろう。

「だとしたら桐乃の誘いを断った人、許せません! 誰か分かりますか!? 分かったら連れて来て下さい!」

 急に激昂するあやせ。

「……連れて来たらどうするんだ……?」

 あやせは目から光彩を消失させ、

「どうするか聞きたいですか?」
「い、いいえ!」

 俺、殺される……!

「ま、まあ、桐乃は俺がなんとかするからよ」

 命が懸かってるからこりゃもう必死です。

「……わかりました。いささか不本意ですけどこの件はお兄さんにお任せします」
「任せとけって。月曜までには絶対元気にさせるから」

 黒猫と沙織に話は付けてあるから、既に手は打ってあるんだけどな。


 この時点での俺は、桐乃がどうしても俺を誘いたかった理由がデートなどではないと感じていた事もあり、どうせ『ありす+』のイベントで妹分を補充し、さらに黒猫や沙織とアキバ散策でもすれば桐乃の機嫌も良くなるだろうとタカをくくっていた。
 結論から言うと俺の予想は根本的な部分に落とし穴があったのだが、その事に俺が気付くのはもう少し後になってからである。
12 : ◆YHxtVKAHbw [sage saga]:2012/07/17(火) 21:58:54.20 ID:R5rxtn7yo
 さて、日曜日。
 俺は現在赤城との約束を優先させた事について絶賛後悔中であった。

「いやー、瀬菜ちゃんに買物頼まれてね〜」

 そういう事は俺を誘った時点で言っておけよ。

「いつもなら俺一人で済ますんだけどさ〜」

 お前は本当に勇者だよ。

「初回特典が二種類あるってゲームを頼まれたんだけど、お一人様一品限りなんだわ」

 今度赤城に真壁くんを紹介してやろう。
 瀬菜からの依頼なら文句言いつつツッコミ入れつつ応じてくれるはずだ。

「高坂、なにさっきからブツブツ言ってんだ?」
「別になんでもねーよ。ただ、何が悲しくて男二人で池袋の乙女ロードを歩かないといけないのだと思い悩んでいるだけだ」
「大丈夫だ。すぐに慣れる」
「一生慣れたくねえ」


 そこに、沙織と黒猫からメールが入った。

『例のイベント会場できりりん氏を発見したでござる。これより接触するでござる』

『あなたの妹、目が完全に死んでるわ』

 イベントを目前にして徐々に興奮状態に近付いていくだろうと思っていたのだが、予想に反して今朝見かけた桐乃は史上最高級の沈んだ表情をしていた。


「とっとと用事済ませようぜ。こんな場所からは一刻も早く退散したい」

 この俺の発言の真意は桐乃を心配してではなく、乙女ロードから逃げ出したいという思いによるものであると念を押しておく。
 正直、キツイ。


 数分後、沙織から再びメールが入る。

『きりりん氏合流ミッション完了したでござる。拙者と黒猫氏を見るなり嬉しそうに駆け寄って来たでござる』

 やっぱりあの二人に任せて正解だったな。
 おっと、まだ続きがあるぞ。
 えーと、

『ただ拙者の勘違いでなければ普段のきりりん氏の明るさと比較して五十%程度に見えるでござる』


 …………。
 俺は沙織のことを全面的に信用している。
 その沙織が言うのだから、桐乃のテンションが上がりきっていないのは事実だろう。
 残りの五十%はなんだ?
 俺か? 俺がいないことなのか?


 赤城との買物が終わったところで、今度は黒猫からメールが入った。

『あなたの妹、徐々に負の想念に押し潰されつつあるわ。心が闇に染まるのも時間の問題ね』

 おいおい、いい加減にしろよ。


「高坂、用事も済んだしその辺でメシでも食おうぜ」

 俺は、暗黒物質(瀬菜依頼のBLゲー)が入った袋を赤城に押し付け、

「悪い、急用が入った」

 駅に向かって走り出していた。
13 : ◆YHxtVKAHbw [sage saga]:2012/07/17(火) 21:59:23.47 ID:R5rxtn7yo
『ありす+』イベント会場は、メルル等のアニメのイベントとは趣が全く異なっていた。
 一言で言うと、展示会だ。
 デモとしてゲームの体験版をモニタに映し出し、関連書籍やグッズの紹介や販売をしている、そのようなブースが発売タイトル毎に設置され、パーテーションで区切られていた。


 桐乃たちは直ぐに見付かった。
 遠目で見ても分かる暗い表情の桐乃、必死に元気付けようとしている沙織、難しい顔をしている黒猫。


 ──こりゃ重症だな。


 黒猫と目が合った。
 驚いた表情で目を大きく見開き、そして桐乃の肩を軽く叩いて俺を指差す。
 ゆっくり面を上げ、黒猫が指し示す方向に視線を向ける桐乃。
 何が起きたのか分からないと言いたげな顔になり、何度も目を瞬いて俺を見る。
 徐々にその目に涙が浮かび──

「京介──ッ!!」


 信じられない事態に俺の思考は完全にストップしていた。
 あの桐乃が泣きながら俺の胸に飛び込んでくるなんて想定外にも程がある。


「いやー、仲良き事は美しきかな、でござるよ」

 うんうんと頷く沙織。

「落ち込んでいる妹に駆けつける兄、その兄に泣きつく妹。とんだシスコンとブラコンね」

 一方、黒猫は呆れていた。


 混乱しつつも兄貴の習性なのだろう、俺は無意識のうちに泣きじゃくっている桐乃の頭を撫でていた。

「京介氏、きりりん氏。ここだと人目に付きますから場所を変えましょうぞ?」
「あ、ああ。桐乃、歩けるか?」

 桐乃はしゃくり上げながら頷いた。


 イベント会場から廊下に出て、自販機の前の長椅子に桐乃を座らせる。
 自販機で適当に選んだジュースを買い、プルタブを開けて桐乃の手に握らせ、俺はその隣に座った。

「……だけどなあ、桐乃。今回はお前も悪いんだぞ。どうしても俺がいないといけなかったその理由さえ言ってくれてたら先約だってキャンセルしてたかもしれないんだぜ」

 もし赤城の用件を前もって知っていたら桐乃の理由がなんであろうとキャンセルしていただろうがな。
 というわけで、赤城は明日絶対殺す。

「ウン……ゴメン……」

 素直に謝る桐乃。
 そうか、黒猫や沙織ではダメで、やっぱり俺でないといけない“何か”があったんだな。
 俺は苦笑しながら、ぽんと桐乃の頭に手を乗せた。
 桐乃はしばらく大人しくしていたが、ぐしぐしと目をこすり──
 バシッ。
 俺の手を払い除け、顔を上げた。
 さっきまでの泣き虫の面影は全く無く、不敵な視線で俺を射抜く。

「いつまで妹の頭に手を乗せてんの? シスコンキモ」


 ……復活しやがった。
 桐乃は俺が買ってやったジュースを一気に飲み干し、空き缶をゴミ箱に投げ入れ立ち上がる。
 そして、俺の手を取ると歩き出した。

「ちょっ! どこに行くんだよ!?」
「いいから黙ってついて来なさい!」
14 : ◆YHxtVKAHbw [sage saga]:2012/07/17(火) 21:59:51.22 ID:R5rxtn7yo
 現在地、イベント会場、他のブースとは切り離された一角から少し離れた場所。

「通販とかなら年齢ごまかしたりするし、店で買うときもチェックが甘い店を選んでるんだけど、今回のイベントはそのあたりすごく厳しいの。あそこのブースは学生証とか免許証のような年齢が確認できるものが無いと入れてくれないんだって」

 えっと、その、つまり?

「あたしも黒いのも沙織も全年齢版ソフトのブースしか見れないの。あんた十八でしょ」

 ということは?
 桐乃はバッグからイベントの告知のチラシを取り出し、財布と一緒に俺に押し付ける。

「ここに書いてあるイベント限定グッズ、買ってきて!」

 いい笑顔だな、オイ!

「は、はは……」

 俺に殊勝な態度を見せたり泣きついたり、そうまでして欲しかったのかよ?

「分かったよ。買ってくりゃいいんだろ。この前言ってた埋め合わせはこれでチャラな?」
「はあ? 何言ってんの? “アキバに一緒に来た訳じゃない”んだからチャラになるわけないじゃん!」

 さすが理不尽大魔王だぜ。

「──ったく、ふざけるのもいい加減にしてよね!」

 お前がな!


 十八禁ブースから出てきた俺の手から戦利品を奪い取った桐乃は、手をシッシッと動かしながら、

「用は済んだから帰っていいよ」

 このクソアマ……。


 まあ、後は黒猫と沙織に任せて大丈夫だろう。
 だけどなんか引っかかるんだよな。
 まあ俺がシスコンなのは認めざるを得ないかも知れないが、

「黒猫、あいつの目的は見ての通りだ。桐乃に限ってブラコンというのは無いだろうよ」

 しかし黒猫は笑みを浮かべていた。

「どうかしら? どうしても十八禁グッズが欲しかったら他にも手段はあったはずよ?」
「他の手段って身分証偽造とか?」
「……莫迦?」

 バカとはなんだ、バカとは。
 だが俺の中の『引っかかり』は十八禁グッズ入手方法に関連しているような、そんな気がする。


 その引っかかりが何なのかが分かったのは、会場の外で自転車に施錠している男を見た時である。
 忘れもしないその自転車、匠の手で改造を施された痛チャリ、人呼んで『しゅーてぃんぐすたー号』。

「御鏡!」

 そうなんだよ、桐乃のオタク仲間には俺と同じ十八歳の御鏡がいるじゃねえか!

「あ、京介くん、奇遇だね!」
「そーだな、思いっ切り奇遇だな。ちょっとツラ貸せや」
「え? 僕、急いでて。イベントのグッズ、まだ残ってるかどうか……」
「在庫はたくさんあったよ。いいから来い」
「まだなんのイベントか言ってないけど?」
「『ありす+』だろ? とにかく来い」

 俺は「え?」とか「ちょっと」とか言う御鏡を無視して、イベント会場のビルの出入り口が見える位置にある喫茶店に連行した。
15 : ◆YHxtVKAHbw [sage saga]:2012/07/17(火) 22:00:19.39 ID:R5rxtn7yo
「御鏡、今日のイベントの事はどこで知った?」

 席に付いてウェイトレスさん(普通の喫茶店だからメイドさんじゃないぞ)にオーダーするなり詰問を開始する。

「インターネットで告知を見てだけど、どうしたの?」
「このイベントについてアレと何か話をしたか?」

 言いながら窓の外を指差す。
 調度ホクホク顔の桐乃が、黒猫、沙織らとビルから出てきたところだった。

「あ、桐乃さん。やっぱりチェックしてたんだね。抜け目ないなあ」

 演技には見えなかった。

「今回のイベント、十八禁のブースは年齢確認できるものを持ってないと入れないってのは知ってたか?」
「もちろん知ってるよ。だからホラ」

 言いながらパスポートを見せてくる。
 そういやこいつ、日本と海外をしょっちゅう行ったり来たりしてるんだっけ。

「桐乃は知っての通り、まだ中学生だ。十八禁のグッズを入手する事は出来ない」
「そうだね」
「そこまで知ってて、なんでお前は桐乃を誘わなかったんだ?」
「なんでって……。じゃあ逆に聞くけど、僕が桐乃さんを誘ってたら?」
「殴る」
「それはちょっと理不尽じゃないかなあ?」

 分かってる。
 理屈に合わない無茶な事を言ってることは充分理解している。

「まあ桐乃さんを誘わなかったのは何故かというと、僕と同じ十八歳の京介くんがいるからなんだろうね。でもこれは後付けの理由だよ? イベントに行こうと思ったときの僕は桐乃さんのことを考える余裕も無かったから」

 さすが二次元に本気で恋する男。

「じゃあ、もし桐乃から誘われたとしたらどうする?」
「多分丁重にお断りすると思うよ? 僕なんかが桐乃さんをエスコートするには荷が重過ぎるから」
「桐乃からの直々の誘いを断るとは何様のつもりだ?」
「じゃ、じゃあ御一緒するよ」
「泣かすぞコラ!?」
「どうすればいいのさ!?」

 調度そこに注文したコーヒーをウェイトレスさんが持ってきたので話を中断する。
16 : ◆YHxtVKAHbw [sage saga]:2012/07/17(火) 22:00:47.23 ID:R5rxtn7yo
 御鏡はコーヒーを一口含み、

「何かあったんだね?」
「まあな」

 俺は、桐乃からの誘いを断ってから今現在に至るまでの経緯を話して聞かせた。

「……なるほどね。やっぱり桐乃さんは京介くんと一緒に来たかったんだね」
「いや、その考えはおかしい。お前がイベントのことを知ったとき桐乃の事を考える余裕が無かったのと同様、桐乃もお前の事を考える余裕が無かっただけだろう」
「でも、お兄さんである京介くんのことを考える余裕はあったってことだよね?」
「何が言いたい?」
「桐乃さんが十八禁グッズを入手する手段として僕と京介くん、選択肢は二つあった。そのうち一つは京介くんの言う通り、考える余裕が無かったのかも知れない。でも残りの一つが駄目となったら、普通なら消えていた選択肢が再浮上するはずだよ?」

 俺は黙ってコーヒーを飲み、視線で続きを促す。

「桐乃さんは京介くんに断られた。だけど代替案である僕は桐乃さんの中に出てこなかった。出てきたとしても、あえてその手段は選ばなかった」

 御鏡はここまで言ってから一呼吸置き、

「僕は最初から桐乃さんの眼中に無かったってことだね。本当ならこの後も京介くんと一緒にアキバ巡りしたかったんじゃないかな? 追い払うような言い方したのは黒猫さんや沙織さんがすぐ傍にいたから照れ隠しでさ。京介くんを見て泣いたって言うけどその涙の意味を考えてみてよ」
「諦めかけていた十八禁グッズが手に入るという歓喜の涙だろ?」
「京介くんが本気でそう言ってるのならちょっと見損なうな」

 分かってる。
 本来の桐乃ならあの場面では何も言わずにずんずんと詰め寄り頭突きの一発でも食らわし「遅えんだよ」とか言うはずだ。

「さてと、京介くん。このまま家に帰るかな? それとも──」

 御鏡がここまで言ったところで、まるでタイミングを計ったかのように俺の携帯が着信を知らせた。
 桐乃だ。
 通話ボタンを押すと、

『いますぐアキバに荷物持ちに戻って来い』

 とだけ告げ、俺の返事も待たずに切りやがった。
 御鏡は笑みを浮かべながら、

「お呼びがかかったみたいだね。コーヒー代は奢るから行ってらっしゃい」

 俺は盛大に舌打ちして喫茶店を後にした。


<了>
17 : ◆YHxtVKAHbw [sage saga]:2012/07/17(火) 22:02:39.13 ID:R5rxtn7yo
以上です。
個人的には男同士の会話シーンがけっこうお気に入りだったりしますがいかがでしょう。
18 :10レス目訂正 ◆YHxtVKAHbw [sage saga]:2012/07/17(火) 22:05:42.25 ID:R5rxtn7yo
 俺は大きく息を吐き、桐乃の頭に手を乗せて、

「まあ、今回は悪いけど諦めてくれ。この埋め合わせはするから」

 そもそも、人の予定を無視する相手に埋め合わせするのもおかしな話なんだがな。
 こういう場合もいつもなら大きくかぶりを振ったりするか俺の手を払い除けたりするのだが、珍しく何の反応も示さない。
 代わりに今にも消え入りそうな声で、

「本当……? 嘘吐いたら殺すから……」

 殺すってあたりは桐乃らしいのだが、どうも無理に虚勢を張ってるようにも見える。


 部屋に戻った俺は、黒猫と沙織に電話をかけた。

『今度の日曜? 悪いけどあなたの妹からそんな申し出なんて聞いてないわ』

『はて、可笑しいですね。きりりん氏からのお誘いは無かったでござるよ?』

 なんだ、桐乃のやつ。最初から俺しか誘ってないじゃないか。
 でも、いったい何のためにそんな嘘を言ったんだ?
 だいたい今日の桐乃の態度は可笑しい。
 麻奈実の事で怒ったら素直に謝ってくるなんて、あいつは本当に桐乃か?
 俺は改めて黒猫と沙織に電話をかけ直し、二人とも日曜に用事が無いことを確認した上で、偶然その場に居合わせたように装ってアキバのイベント会場に行ってもらうよう頼んだ。


 そんなこんなで翌日の金曜日だ。
 通学途中、横に並んで歩いている麻奈実が俺の顔を覗き込んできた。

「あ? どうした?」
「ううん、別に。ただなんとなくだけど、きょうちゃんに何かあったような気がして」
「何かってなんだよ」
「たとえば桐乃ちゃんのこととか?」

 こいつは超能力者か?

「何かあったといえばあったんだけどな」

 俺は桐乃のイベントの誘いを断ったらすごく悲しそうな顔になった事、桐乃の暴言(麻奈実のことを地味子と言った事には触れずに)に対して怒ったら素直に謝ってきた事、頭に手を乗せても抵抗しなかった事、俺以外にも誘える人間はいるにも関わらず断られたと嘘を吐いて俺だけを誘ってきた事を話した。

「うーん。よく分からないんだけど、どうしてもきょうちゃんと一緒が良かったんじゃないのかなあ」
「その程度の推理くらいは俺だって出来るわ。ただ、俺じゃないといけない理由ってのが思いつかなくてな」
「理由? 簡単だよー。桐乃ちゃんはきょうちゃんとでーとしたかったんだよ。ただ直接そう言うのは恥ずかしいからいべんとを口実にしたんだと思うよ?」
「は? それこそありえねーや」
「そうかなあ?」
「だいたいな、あいつははっきりと俺のことを大嫌いだと言ったんだぜ」

 俺にとっての一番は自分じゃないと嫌だと言ったことは……伏せておこう。

「ふーん。ところで、桐乃ちゃんからの誘いを断った理由は?」
「赤城との先約があったんだけど……くれぐれも他の誘いを断ってまで赤城との約束を優先させたってこと、赤城には言うなよ?」
「言われなくてもそのつもりだけど、どうして?」
「何かの弾みでそのことが赤城の妹の耳に入ったらまずいんだよ」
「なにがまずいの?」
「……腐るんだよ……」
「腐る……?」

 腐女子って概念、麻奈実はわかんねーだろうなあ。

「まあ、とにかくそういうことだ」
「ふーん?」


 学校が終わって帰ってくると、桐乃はリビングのソファの上で体育座りのように膝を抱えて顔を伏せていた。

「……ただいま」

 俺の言葉に桐乃はゆっくりと面を上げる。
 そして、か細い声で、

「あ、あのさあ……」

 とここまで言って、再び黙り込み、顔を伏せる。

「どうした?」
「ん……なんでもない……。おかえり……」

 おそらく日曜のイベントの事なのだろうが、ここまで塞ぎ込むなんて、麻奈実の言う通り俺とデートしたかったとか? いや、それは無い。
 普段の俺ならその可能性についても考える事もあるだろうが、今回に関しては何故かデートなどでは絶対に無いと確信めいたものを感じていた。
 理由はわからん。なんとなくそんな気がするだけだ。
19 : ◆YHxtVKAHbw [sage saga]:2012/07/17(火) 22:17:13.45 ID:R5rxtn7yo
といいわけで、saga入れ忘れてましたorz
20 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/17(火) 22:36:48.03 ID:hPohEwqhP
[ピーーー]が気になって夜も眠れない所だったぜ……

そんな訳で、>>17乙!

俺も男同士の会話が気に入ったぜ!
特にこう御鏡の「どうすればいいのさ!?」の辺りが

全体的に面白かったぜ!
21 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/17(火) 22:43:09.89 ID:BUXz7Uoj0
おっつー
◆YHxtVKAHbwさんは俺妹知ってどのくらい?やっぱり最近になってから読んだのかな?
なんかSSからその作品にハマったばかりの頃のワクワク感を思い出すというかフレッシュな香りがする

いい意味で昔の雰囲気を思い出すSSだった
また何か書いてくれ
22 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/17(火) 22:50:42.77 ID:7RTJgX6DO
面白かったです
御鏡さん真面目なツッコミいいなぁw


魔眼遣い<マジですか!お兄ちゃんをさんざん弄び、捨てた揚げ句に御鏡さんに浮気!?なんてプレイボーイ!
京介<そっちじゃねぇーーーっ(怒!!
23 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/07/18(水) 01:43:03.30 ID:7wp4N27Co
>>17
乙!
良いな〜、なんか冷たいグレープフルーツジュースを飲み干したみたいな爽やかさで気持ちが良い。
こんなSSをもっと読みたいです。
ぜひまた書いて!
24 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/18(水) 06:04:16.57 ID:JcTGibJDO
最近御鏡が可愛い
なんだろう、この気持ち…
25 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/18(水) 06:32:10.28 ID:dZN+LI2h0
>>17 乙です

原作読んでいても感じていたんだけど、京介と御鏡に漫才させると抜群に面白いね
26 : ◆YHxtVKAHbw [sage]:2012/07/18(水) 14:16:07.67 ID:lQMDpLvwo
感想ありがとうございます。

>>21
俺の俺妹歴は一期のアニメからで、それから原作集めた口です。
それからちょっと空白期間があって、二期製作決定の報をみて再度原作読み返し、
アニメ版をニコニコの公式で見直し、ですね(DVDは持ってない)。
ゲーム版は機械本体を持ってないので未プレイです。


っと、しまった!
九巻と十巻の間らへんの時点だと御鏡の痛チャリは高坂家に保管中だった!

吊ってくる。
27 : ◆YHxtVKAHbw [sage]:2012/07/18(水) 14:20:05.59 ID:lQMDpLvwo
まあ、十巻28ページで痛チャリは京介にあげたものだと思っていたとのことなので、
同様のチャリンコを複数台持っていたってことにしておこう。
28 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2012/07/18(水) 14:25:50.87 ID:11nahfBc0
気にシナイ、気にしない
トテモ楽しく桐乃がトテモ可愛く動いてwwww又、よろしく。
29 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/18(水) 14:54:12.18 ID:JcTGibJDO
10巻の京介赤城御鏡のトリオもいいよな……
普段は年下だらけで気を使ってばかりな京介が素をさらけ出せてるというか

……違う、俺はノーマルだ。そんな同士を見つけたような表情でこっちを見るな、瀬菜ちゃん
30 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(鳥取県) [sage]:2012/07/19(木) 11:03:59.36 ID:Pho4ppHJo
原作見るとキャラによって同じセリフでも表記が違うのが面白いな。
あやせの「わたし」と黒猫の「私」とか。

ちなみに「ばか」を「莫迦」というのは黒猫のほかにもいるのかな。
31 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/19(木) 12:36:28.47 ID:m7p07oHDO
>>24>>29
(◎∀◎ <結婚したらいいんじゃないですか?
32 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/22(日) 09:37:02.31 ID:gFTtf7TDO
ノリッノリの佳乃さんどこいった?

そして続きはどーなった!?(´゚д゚)クワッ!
33 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/22(日) 09:38:29.55 ID:gFTtf7TDO
http://www43.atwiki.jp/vip_oreimo/m/pages/505.html?guid=on

ノリッノリの佳乃さんどこいった?

そして続きはどーなった!?(´゚д゚)
34 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/22(日) 11:10:08.75 ID:zcdwrFl/0
>>33
まとめの京介×加奈子の欄を見れ → http://www43.atwiki.jp/vip_oreimo/pages/66.html
35 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/22(日) 11:55:07.92 ID:gFTtf7TDO
>>34
見たんだよ。すべて読んだ。でも…ノリッノリの佳乃さんの描写がなかったんだよ!!
みてー。多分はっちゃけちゃってる佳乃さんみてーwwそんで、戸惑いまくりの加奈子みてーww
36 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/22(日) 17:01:40.87 ID:onT0fDnA0
>>35 なんだそういう事だったのか

気持ちは解るがそういうSS書いても「誰得?」っていう感じで誰も書かないんだろう
10巻でも京介の一人暮らしの原因を作ったのに扱いはアレだっただろ?

「佳乃」って名前も当初原作には書かれていなくてアニメ化の時に必要になって
後追いで決められた位なんだぜ
37 : ◆YHxtVKAHbw [sage]:2012/07/22(日) 17:53:29.69 ID:41WHPIQqo
前スレ>>995の投下はまだだろうか。
それとも>>1000で無かったから書くのをやめたのか。

前スレ終盤の(俺含む)投下ラッシュが嘘みたいで寂しい。
38 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/22(日) 17:55:31.34 ID:2pidK+1ko
昨日、0721の日だったから京介が桐乃の水着写真で妄想して自己処理してる小ネタを書こうと思ってたのに忘れてた・・・
39 : ◆YHxtVKAHbw [sage]:2012/07/22(日) 18:03:16.03 ID:41WHPIQqo
>>38
楽しみに待ってる。
40 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/07/22(日) 20:53:48.40 ID:onT0fDnA0
>>38

俺なんか一年中オナニーの日なんだけd・・・ おや? こんな時間に誰だ?
41 : ◆NAZC84MvIo [sage saga]:2012/07/22(日) 22:39:52.57 ID:btzdbPQ50
>>1000を取れなかったのでカップリングがずれました

8巻くらいの時系列でフェイトさん→京介です
42 : ◆NAZC84MvIo [sage saga]:2012/07/22(日) 22:40:29.32 ID:btzdbPQ50
俺の名は高坂京介、どこにでもいる平凡な高校三年生……のつもりだ。
二年前までは確実にそう言えたのだが、ちょっとここ最近自信がなくなってる。
俺は本当に「普通の」高校生なのか、と。
特に今現在、この瞬間において、その疑問はMAXだ。

原因はこのメール

差出人:フェイトさん
 題名:やっほー(^^)/
 本文:京介くん今日ヒマ?ちょっとご飯食べに行かない?

はたして日曜の昼間っから社会人に飯を奢らされる高校生が、世の中にどのくらいいるのかと。

そもそもこの人は別に友人と言うわけでもない。
出会いのきっかけは、俺の妹、桐乃が書いた小説をこの人が盗作したことだ。
その後色々あったが、妹とフェイトさんは和解して一応「知人」という枠には収まっている。

しかし、それがなんだというのだ。
この人はわかりやすいほどのダメ人間で、定職に就かず常に金欠で
高校生に飯をたかったり、中学生から借りた金をFXで溶かすなど、
その行動は常軌を逸している。
43 : ◆NAZC84MvIo [sage saga]:2012/07/22(日) 22:41:20.81 ID:btzdbPQ50

Re:俺、金ないっすよ。

大学受験もそろそろだというのにフェイトさんに飯を奢ってる暇など無い。


Re:Re:や〜ね、もちろん私の奢りよ!☆⌒d(*^ー゚)b グッ!!

Re:Re:Re:銀行強盗でもしたんですか?共犯になるのはごめんですよ

Re:Re:Re:Re:失礼な!ちゃんとしたお金よヾ(。`Д´。)ノ彡☆ブーブーッ!!


なんかやたらと顔文字使ってハイテンションな感じだな……
宝くじでも……いや、なにか一山当てたのか?

俺:なんかいいことでもあったんですか?
F:内緒(*/∇\*)キャ
俺:理由もなしに人から奢ってもらうなんて出来ませんよ
F:いつものお礼じゃダメかしら?(● ̄▽ ̄●;)ゞぽりぽり

やんわりと普段のことを責めたつもりが返されてしまった。

俺:ダメってことは無いですけど、そんな金があるなら桐乃から借りてる金を返してやって下さい
F:いいわよん(‐^▽^‐) オーホッホ♪

「まじでっ!?」
メールを見て思わず声が出てしまった。

「あのフェイトさんが金を返せるだと……?」
一体何があったというのだ。
44 : ◆NAZC84MvIo [sage saga]:2012/07/22(日) 22:42:06.42 ID:btzdbPQ50

F:じゃあ、12時にあの喫茶店でねσ(^∇^ヾ)コッチコッチ

「あの喫茶店……?」
どこのことだろうか?
いや、俺とフェイトさんの両方が知ってる喫茶店なんて――

俺:どこですか?

フェイトさん絡みで喫茶店と言って思いつくのは、盗作騒動の時に打ち合わせをした、あの新宿の喫茶店だけだ。
だが、あの時フェイトさんは桐乃としか顔を合わせていない。
フェイトさんは何故“俺があの喫茶店を知っていると知っている”んだろうか?
確認しようにも、それっきり返事は来なかった。
45 : ◆NAZC84MvIo [sage saga]:2012/07/22(日) 22:42:59.20 ID:btzdbPQ50

――新宿――

「ほんとにここでいいのかよ……」
まあ間違ってればフェイトさんと会わずにすむ。
合ってれば桐乃の金を返してもらえる。
どちらでもいいかと思い、結局あの時の喫茶店まで来てしまった。

「なんか懐かしいな……」
あの時フェイトさんはぷーりんさんの名刺を使う為に男装してたんだよな。
まったく気が付かなかったんだから、
あの人の胸ってかなりかわいそうな部類に入るんじゃなかろうか……

「何か失礼なこと考えてない?」
「うわぁっ!びっくりした!!」
突然後ろから声をかけられて素っ頓狂な声を上げてしまった。

「驚かさないで下さいよ……」
「あはは、ごめんごめん」
振り向いた先にはあの時とは似ても似つかないフェイトさんが居た。

「なんか……気合いの入った格好してますね」
「人間って見た目だけじゃないけど、見た目も大事なのよ」
「そうっすか」
うん。確かにそうかもしれない。
今日のフェイトさんはダメ人間のイメージからほど遠い。
キャリアウーマンって感じだ。

「なんでそんなにめかしこんでるんですか?」
「面接の帰りだからよ」
「就職活動?」
「そ、編集者としてやっていかないかって声かけてもらってね」
ほう、これはこれは更生の道を歩んでいらっしゃるのでしょうか。
確かに同人ゴロとしての活動を見る限り、作品をまとめ上げたりする能力はあるようだし
桐乃の小説をより面白くするアドバイスをしてくれたりしたことを考えれば、ある意味天職かもしれないな。

「上手くいくといいですね」
「そうね……」
「ん?あんまり手放しで喜んでるようじゃないですね」
「うん、まあね。やっぱり自分で作品を作るっていうのは私の夢だから
 それを諦めるみたいなのがチョットね……」
行き詰って中学生から盗作するような真似をするくらいなら
すっぱり諦めてくれた方がいいと思うんだけどな……
46 : ◆NAZC84MvIo [sage saga]:2012/07/22(日) 22:43:33.25 ID:btzdbPQ50
「でもまあ、いつまでも夢見る少女じゃいられないしね〜」
「ハ、ハハハ……少女ってフェイトさん」
「なによ?恋する女はいつでも乙女っていう言葉を知らないの?」
「知りませんよ」
「ちぇ」
拗ねたように口をとがらせてそっぽ向くフェイトさんの仕草がやけに幼く見えた。

「な〜んで京介くんは私を邪険にするかな〜?」
「自分の胸に手を当てて考えてみてください」
「……巨乳好きなのね」
「違います!いや違わないけどっ!!」
「いいのよ。もうこんな年だしね……諦めてるわ……」
「そうやってとぼけないで下さいよ、俺がフェイトさんを敬遠してる理由なんてすぐわかるでしょう?」
「あら?何かしら?」
「桐乃にしたこと忘れたんですか?」
「おぼえてるわよ」
「じゃあそれが理由ですよ」
「本当に?」
「え?」
いきなりの不敵な笑みに思わずたじろぐ――

「なんか京介くんが私を見たくない理由って他にもありそうな気がするけど?」
「な、なんなんですかいきなり?」
「たとえば〜……あの邪気眼厨二病な女の子、元気してる?」
「な、何でいきなり黒猫のことを?」
「私の若い頃によく似ているから気になるのよ、悪いかしら?」
「悪いってわけじゃないですけど……」
あまり思い出したくない、こんな人前では――
たった一ヶ月、されど一ヶ月。初めて出来た恋人との日々を忘れられるはずがない。
自分にはよくわからない理由で振られたことが、より一層、胸を締め付ける――

「好きなんでしょ?あの子のこと」
「――っ!!ななな、何を根拠に!?」
「その態度」
「〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!」
いきなりの指摘に顔から火が出るほど恥ずかしい!!
なんでバレた?って言うか知ってた?

「危なっかしくてほっとけない感じがして、いつの間にか気になってるんじゃないの?」
「そ、そんなんじゃないですよ!あいつは妹みたいなもんですって!」
実際、本人から妹の代わりにするなって怒られたくらいだし!!

「京介君が桐乃ちゃんみたいなもんなんて言うなら好きってことじゃないの?」
「俺がいつ、桐乃を好きだと言いましたか!?」
「嫌いな相手の為にあんな色んなことしてあげられる人って居ないと思うけどね」
「そ、そりゃ確かに俺はシスコン気味ですけど、それと黒猫は関係ないでしょうが!」
なんでフェイトさん相手にこんなドギマギしなくちゃならないんだ?
47 : ◆NAZC84MvIo [sage saga]:2012/07/22(日) 22:44:14.18 ID:btzdbPQ50

「あはは!!ごめんねからかっちゃって」
「……からかったんですか?」
「ううん、ちょっと安心してほしかったのよ」
「?」
「う〜ん……、年上の威厳?みたいな」
何が言いたいんだろう。
さっきの発言から、俺と黒猫が付き合ってたことや、一ヶ月で別れてしまったことを
知っているわけではなさそうだし……

「そんな人で遊ぶようなことするならもう帰りますよ」
「あん!もう!せっかちなんだから!!桐乃ちゃんのお金はいいの?」
「最初から期待はしてません」
「ヒドッ!!」
人の心の傷をえぐる人に言われたくありませんけどねっ!

「ま、まぁ、落ち着いてくれるかしら?もう少し話したいことがあるし」
「手短にお願いしますよ」
「せっかちなのは変わらずね……、そんなんじゃ女の子に嫌われちゃうぞ?」
「フェイトさんに嫌われても悲しくないですから」
「さ、さらにヒドイ!!」
大げさにショックを受けるフェイトさん……

…………………………お〜い、フェイトさーん?

……………………………………………………

なんか机に突っ伏したまま動かないぞ?
48 : ◆NAZC84MvIo [sage saga]:2012/07/22(日) 22:44:52.44 ID:btzdbPQ50

「ちょ、ちょっとフェイトさん?」
「なに?」
「どうしたんですか?いきなり」
「いきなりで悪いことなんてないわよ、好きならさっさと告白しなさいよ」
むくれ面してそんなことを言ったフェイトさんにちょっと腹が立ったのは言うまでもない。

「付き合ってましたよ!!もう別れたんですよ!!はいはい!!!どうせ振られましたよ!!!」
いい加減この話題を終わらせたくなってぶちまけた。
どうせ詳しい事情を話すつもりもないし、ちょっとばつが悪い思いのまま帰ってもらおう。
そのくらいの反撃は許してくれるよな?


「そ、そっか〜……無神経なこと言ってごめんね」
「そう思うならもう言わないで下さい」
決まりが悪そうにモジモジと体を揺するフェイトさん――ちょっとは反省したんだろうか?

「そっかー、あの子ちゃんとお付き合いとかできたんだー……」
反省してねぇ!?この人どこまで黒猫の話題を引っ張るつもりだよ!?

「それならあんまり気にすることなかったのかなー……」
「あの、フェイトさん、本当に何が言いたいのかわかんないんですけど?」
「あ、ああ!京介君が私のこと避ける理由があの子にあるんじゃないかって思っててね!」
「意味がわかりませんよ」
「ほら、私の若い頃に似てるって言ったじゃない?だから京介君は
 『黒猫さんが将来私みたいになるんじゃないか』って心配してるというか
 そういう気がしちゃうから私のこと避けるんじゃないかって」
「………………」
あながち的外れって訳でもない、ちょっとくらいは頭をよぎったことがある。
黒猫が将来あんな風になったらどうしようって。
でも、俺が傍に居ればそんな心配は無用だ、と。そう思いたかった。

「だから私が年相応とは言えなくても、京介君に年上の威厳みたいなのを見せてあげれたら
 そういう心配しなくて済むようになるんじゃないかって思ったのね!」
「………………余計なお世話っすよ」
「うん、ごめんね。『京介君があの子のことを好きなのなんてお見通しだぞー』って
 やってみたかっただけなんだけど、まさかあんな答えが返ってくるとは思わなくって……」
「あーハイハイ、悪気は無かったんすよね」
「本当にごめんなさい」
なんでこの人からこんな事いわれにゃならんのよ。

「で、なんで別れたの?」
まじで反省しねぇなこの人!!
ここまでヒドイと逆に感心するわ!!

「ご、ごめん、さすがに今の質問はまずかったわ!!」
「聞いてから詫びても遅すぎですけどね!!」
「ちょ、ちょっと動揺しちゃってて口が滑ったのよ!!悪気はないわ!!」
「余計タチが悪いです!!」
ダメだ!やっぱりこの人は鬼門だ!!もう帰ろう!!
49 : ◆NAZC84MvIo [sage saga]:2012/07/22(日) 22:46:13.82 ID:btzdbPQ50

「ごめん!本当にごめん!」
「もう、本当になんなんですか」
「言いたいこと……、ううん!聞きたいことがあったのよ!」
「また黒猫のことじゃないでしょうね?」
「そ、さすがにそれは無いわ!」
「じゃあ、サッサと聞いてください」
ゴク、と息をのんで大きく深呼吸するフェイトさん。
はたして休日を返上してこんな思いをしてまで聞く価値のあることなのだろうか。

「私がお金を返すって言った時、どう思った?」
「どうって……正直びっくりしただけですけど……」
「うん、まあ、そうよね。これ以上変なこと言う前にちゃんと返しておくわね」
ス――と封筒を差し出してきた。その厚みは1センチ近くあるだろうか。

「ここで確かめてもいいわよ」
「いや、正確な額は知らないんで……」
「そう、じゃ、桐乃ちゃんに渡しておいてね」
「わかりました」
お金返すってホントだったのか……ちょっと見直した

「いま、どう思った?」
まるで思考を読んだかのようにかぶせてきた――

「しょ、正直言って見直しました」
「――よかった、あんまりダメ人間過ぎだったものね」
「自覚はあったんですね」
「そりゃ、あったわよ」
反省は無さそうでしたけど、なんて喉まで出かかった言葉を危うく飲み込んだ。

「あと、就職のことを聞いてどう思った?」
「編集者の?」
「そう」
「…………まあ、良かったなって……」
「うん、ありがとう」
なんだろう、この感じ……、フェイトさんってこんな事聞く人だったっけ――
50 : ◆NAZC84MvIo [sage saga]:2012/07/22(日) 22:47:13.48 ID:btzdbPQ50

「……あの子とはちゃんと付き合ってたのよね?」
「またそれですか?」
「ごめんね、ちょっとショックだったの。私にはそういうことが出来なかったから……」
「………………黒猫とフェイトさんは違いますから」
「そ……う、……そうよね……違う人間だものね」
そんなに俺と黒猫が付き合ってた事実がショックだったのか?

「ごめんね、なんか色々と!」
「もう帰っていいですか?」
「うん、桐乃ちゃんによろしくね!」
「わかりました。フェイトさんも仕事がんばってください」
「あはは、ありがと!」
言葉や笑顔と裏腹に少し悲しそうに震えた声が気になった。

「本当にもういいんですか?」
「………………」
おせっかいと言われたってしょうがない性格だ。
だけど気になっちまったもんはしょうがねーだろ?
聞かなきゃいけない気がしたんだよ。

根気よくフェイトさんからの返答を待ってたら
なにかぽそりと呟いたかと思うといきなり顔を近づけて聞いてきた。


「京介くん、最後に聞いておきたいことがあるんだけど!」
「な、なんすか?あらたまって」




「京介くんは年上の女性って、どう思う?」



51 : ◆NAZC84MvIo [sage saga]:2012/07/22(日) 22:48:54.74 ID:btzdbPQ50
投下終了

以前、フェイトさんがこういうセリフを言って終わりみたいなSSっていうお題が出てたので
書きかけの奴を引っ張り出して無理やり落ちまで持って行きました
52 : ◆YHxtVKAHbw [sage]:2012/07/22(日) 23:42:03.24 ID:41WHPIQqo
>>51
乙〜。
京介のフェイトさんに対するツッコミが容赦なさ過ぎるwwwwww

>すっぱり諦めてくれた方がいいと思うんだけどな……
この心の声が口から出てたらワナビくずれの俺だったら自[ピーーー]るレベルですww
53 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2012/07/22(日) 23:51:54.53 ID:gvgVaa/AO
乙乙

あったね、こういうお題……懐かしす
自分はちょっと試しに書こうとして無理だったので、敬服します

くっつくことがカップリングの到達するべき前提ってのを取っ払ってやれば
フェイトそんも愛らしいヒロインに描けるかもしれない…気がする、かもww
54 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/07/22(日) 23:56:45.55 ID:ZTOfRtbCo
そういやフェイトさん、今となっては沙織姉や加奈子姉が出てきてるけど初の年上枠だったな。
55 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/23(月) 04:48:41.31 ID:gR1UEebDO
>>51
おつ
貴重なフェイトさんSSありがとう
56 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/07/23(月) 10:02:00.11 ID:wy3PFF5DO
>>36
あれって作者同じじゃないの?
どっちにしろみたかったなーorz

ま、さておき、参戦いたします。
書き方聞いても返事なかったから、もう書くぞ?
とりまメール欄にsage書きとsageチェックはしとくから、間違ってたら教えてくれ。
57 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/23(月) 10:05:28.44 ID:01iyOTO3o
sageとsagaな
58 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/23(月) 10:08:36.72 ID:QYYfTb+DO
sage saga と手打ちで入力しる!
59 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/07/23(月) 10:37:25.67 ID:wy3PFF5DO
すまん意味がわからん。
携帯から書き込むと、メール欄の横にsageと書かれたチェック欄があって、今俺は、メール欄にsage、sage欄チェックとやってるんだが、ちゃんとsageられてるんだろうか?
60 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/23(月) 10:45:24.58 ID:01iyOTO3o
不安ならチェック無視してメ欄にsageとsaga
下げと佐賀

sagaで殺 すとか死 ね回避
61 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/07/23(月) 11:16:23.85 ID:wy3PFF5DO
おっけ。
半角スペース入りでいんだよな?
さて、初投下と逝きますかww

俺妹初参戦ですが、よろしくお願いします(^-^)
62 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/07/23(月) 12:07:43.10 ID:wy3PFF5DO
「ねー・・・あんたさ」
「んー?なんだ?」
カリカリと書き込む手を止めないまま俺は声だけで答えた。
夕食を終え戻ってきた自室の中、俺はあと僅かと迫った受験日に備えて最後の追い込みをかけていた。

『一緒に居ようよ』

「えーっとさ・・・んーと・・・」
「なんだー?随分と歯切れ悪りーな?」
一旦手を止めて俺は椅子ごと振り向いた。
「どうしたよ桐乃?」
キイッと背もたれに体重を預けながらみつめる先、妹様は俺のベッドにうつぶせになったまま枕に半分顔をうずめていた。
「うー・・・」
・・・ホントに歯切れ悪いーな。
しかしここで『早くいえよ』などと言おうもんなら、『はぁ!?ちょっとくらい待てないの!?バカじゃん!?』とか罵倒されるのは目に見えてる。
・・・やれやれ。大分妹様の扱いにも慣れちまったもんだぜ。
それから待つこと5分。
桐乃は不承不承といった体で聞いてきた。
「あんたさ・・・大学受かったらどーすんの?」
うおい。また抽象的な問いだな。
知らず俺はおうむ返しに聞き返す。
「どーするって・・・なにがだ?」
「だからー!」
案の定、キレた桐乃が大声をあげる。
予想通りッスね妹様。
「家から通うのか、それとも一人暮らしスンのかってこと!」
「あーそういう意味か」
相変わらず分かりづらい聞き方するよなお前。
などと考えていたら先手をとられた。
「相っ変わらず察し悪いよねあんた」
蔑んだようなジト目で見られる。
あんまりだろそれ。
「いやわかんねーよあの言い方じゃ!?お前の聞き方が曖昧過ぎんだよ!」
「はいはい人の所為人の所為。あんたって男らしくないよねー?」
「どの口が言うんですかねえ?お前なんかいつだって人の所為にしやがるじゃねーか!」
「だってあたし女だし」
「ぐっ!」
なんだその理由!?
理不尽だ・・・理不尽すぎる・・・。
「あーはいはい。察しが悪くてわるうござんしたね」
言い合ってもどうせ負けるのはこっちだ。
俺は早々に白旗をあげた。
「わかればよろしい」
桐乃は口をω←こんな風にしてドヤ顔で頷いている。
毎度のことながらムカつく顔だなおい。
「んで?どーすんの?」
「ん?ああ、つってもまずは大学受かんないと何とも言えないんだが・・・」
「は?あんた落ちる気でいんの?うーわー情けなー」
思いっきり引いた口調で言われた俺は、慌てて取り繕うように返す。
「そ、そんなつもりはねーよ!ただ物事には絶対ってのはないわけで・・・」
「落ちた時の言い訳とか、チョー情けないんですけど?やる前からネガティブに考えるとか誰得?俺は絶対に受かるってぐらい口にしてみなさいよヘタレ」
「くっ!」
一言ぐらい言い返してやりたいが・・・桐乃のいうことはまったくもってその通りなので返す言葉もない。
ましてやこの妹様はそれを身をもって実践してきているわけで、正直さっきの俺は自分でもカッコ悪かったとか思っちまう。
「あー・・・すまん。お前の言う通りだ。今から後ろ向きじゃ受かるもんも受かんないよな。ありがとうな、桐乃」
「わ、わかればいいのよ!」
素直に礼を言うと、桐乃は真っ赤になってそっぽを向いてしまう。
いつものやり取りに思わず笑いがこぼれた。
「・・・で?どうするつもりなの?」
「あ?うーん・・・正直第1志望に合格した場合、家から通うのは意外に大変な気がするな。だったら学校の近くにアパートでも借りて一人暮らしの方がいいかもな」
「ふ、ふーん」
なんだ?また歯切れ悪くなりやがった?
「でもよ、なんでそんなこと聞いてくんだ?」
「べ、別にあんたに関係ないでしょ」
「いやあるよ!?てか、俺以外に関係者居ないよ!?」
「うっさいな!」
「うっ・・・おまえさあ、言い返すにも程があんだろ?なんだよ『うっさいな』って?」
「う・・・うっさいからうっさいって・・・」
「あーはいはい。ならおとなしく勉強に戻りますよ。お前も大概に自分の部屋戻れよ」
「う・・・」
そう言って俺はまた参考書に向き直る。
・・・最近分かったことだが、うちの妹様は、相手すればするほど饒舌になる。
反面、こちらがさっさと切り上げると・・・。
「え、えとね・・」
こうして自分から話しかけてくる。
どんだけ天邪鬼なんだよお前。
63 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/07/23(月) 12:14:54.54 ID:wy3PFF5DO
「その・・・きょ、京介が、その・・・ひ、一人暮らしするんなら・・・あ、あたしも・・・ついていっちゃおっかなー・・・なんて」
「はあっ!?」
「な、なによ?」
「お前・・・なに言ってんの?」
そう。ホントになに言ってんの、だ。
俺は今からほんの一か月前、受験勉強のため一人暮らしをさせられていた期間があった。
しかしそれは名目上受験の為だが、その実、急激に仲良くなり過ぎた俺たち兄妹の仲を、おふくろが勘ぐっての措置というものであった。
結局は笑い話に過ぎなかったのだが、それでもこのタイミングで俺と一緒に住むのはどんな藪蛇になるかわからない。
どこにも蛇など潜んでないとしてもだ。
「そんなこと、許されっこねーだろ?」
「わ、わかんないじゃん!お、お父さんに頼んでみるとか・・・」
「いやそれこそ無理に決まってんだろ。大体なんで一緒に住まなきゃなんないんだよ?」
「そ、それは・・・その・・・」
言いかけて黙ってしまう桐乃。
まったく何を言い出すかと思ったら・・・あ、まさか・・・。
「おい桐乃」
俺は思い至った理由に、内心でため息をついた。
「な、なに?」
「正直に答えろよ?」
「!!う・・・うん」
桐乃が少し身構える。
まったく困ったやつだ。
以前なら俺と一緒に住むなんて心から嫌だっただろうに、今となったらそれすら厭わないとは。
人間変われば変わるもんだぜ。
「お前俺と一緒に暮らしたい理由って、実は・・・」
「っ!!」
一瞬桐乃が息をのんだ。
「・・・ちょ、兄貴ストップ!」
「なんだよ今更?ここまで言わせて止めんなよ」
「や、だ、だっては、はっきり言われたらあたしの気持ちが・・・」
「わかるぜ桐乃。・・・俺だって同じ気持ちだからな・・・」
「・・・え?」
驚いたように動きを止める桐乃。
その目は信じられないものを見るように大きく見開かれている。
ったく。
お前の兄貴を舐めんなっての。
俺は一呼吸置くと、静かに微笑んだ。
「お前の気持ちはよくわかったって言ってんだよ」
「!?そ、そそそそそれって・・・!」
「ああ」
俺は一つ頷くと、ゆっくりと桐乃の頭に手を乗せた。
「俺も同じ気持ちだ」
「〜〜〜〜〜〜っ!?」
桐乃は顔を真っ赤にさせて二の句が継げなくなっている。
まあそうだろうな。
自分の目論見すべてを見抜かれちまったんだから。
「桐乃?」
「はははひゃい!?」
「・・・一緒に暮らすか?」
「っ!!!!」
もはや湯気でも出しそうなほど真っ赤になっている桐乃に笑いかける。
そんなに嬉しがられたらこっちまで嬉しくなるじゃないか。
「親父には俺から頼んでみる。俺の監視役って名目にすれば、納得してくれるだろうよ」
俺は先の一人暮らしで親父に書かされた、取得物報告書を思い浮かべた。
あの不本意ながらヒモみたいな取得物の多さを鑑みれば、親父も俺に監視役は必要だと思うだろう。
まったくもって冤罪ですけどね!
まあいいさ。
それで桐乃が喜ぶ状況が作れるなら、甘んじてヒモの烙印も背負うさ。
「ああああ兄貴?」
「ん?」
「ほ・・・本当に・・・いいの?」
見ると桐乃は両手の指を絡ませて、所謂もじもじと言った感じで俺を上目遣いで見上げていた。
俺は軽くため息をつくと、またクシャリと桐乃の髪を撫でてやった。
「ああ」
「!!あ、ありがと・・・」
そう言って笑った桐乃の笑顔は、本当に嬉しそうで、俺はこう思ったね

―――――――俺の妹がこんなに可愛いわけがない・・・ってな。

64 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/07/23(月) 12:18:49.03 ID:wy3PFF5DO

その後、見事第一志望に合格した俺は、一人暮らしを始める旨を親父に伝えた。
勿論、桐乃が監視役でくることも。
案外簡単に親父の許しは取れて、俺達は今引っ越しの準備をしている。
もっともいくつかの条件は付けられたのだが。
一つ、桐乃は週に2日は実家に帰ってくること。
一つ、部屋は親父が決めたところにすること。
一つ、家賃は基本親持ちだが、生活費は自分で工面すること(仕送り含む)
まあ実際これくらいならなんの制約でもない。
むしろ部屋を探す手間が省けて大助かりだ。
「兄貴ー、コレクション持ってっていい?」
「週に何日かは実家に戻るんだから、そのまま隠しとけ」
「えー?」
不満そうな声を上げながら、桐乃が渋々コレクションを押し入れへとしまいに行く。
「でもゲームは持ってっていいでしょ?」
「俺のPCにインストールしとけ。こないだ4Gの外付け買ったからそっちに」
極力持っていくものは少なくしておきたい。
そうでなくても桐乃の衣服だけですでにキャパオーバーなんだから。



「しかしお前も物好きだよなあ」
仕度も粗方片付いて、今は俺の部屋で寛いでいる。
仕事上がりの親父が車を回してくれれば、新生活の第一歩だ。
「え?な、なにが?」
缶コーヒーを飲みながらベッドに腰掛けていた桐乃が俺の言葉に反応する。
「ああ。俺と一緒に住むなんてさ、物好きだって言ったの」
「そ、そんなこと・・・」
言葉を濁しつつ、缶コーヒーへとまた向かう桐乃。
その顔が赤いのは照れくささと感謝かもしれない。
「ま、気持ちはわかるよ」
俺はこの間と同じことを言って、いすの背もたれに体重をかけた。
桐乃はチラチラとこちらを見ながらはにかむように笑っている。
まったく、そんなに嬉しいかね?
ま、嬉しいか。
「門限のない生活ってのは嬉しいよな」
「・・・・・・・・え?」
あれ?
一瞬桐乃の動きが止まったぞ?
65 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/07/23(月) 12:20:13.14 ID:wy3PFF5DO

「い・・・今、なんて・・・?」
「え?」
どうしたんだ?
桐乃がプルプルと震えてるぞ?

「いや、俺と暮らしたいってのはあれだろ?門限が実家だと早すぎるからって」
「・・・」
「わかるぜ。確かに少しばかり家の門限はきついもんな」
「・・・」
「まあでも、俺だって管理責任があるからな。家ほど厳しくなくても、せめて10時までには帰ってきてくれよな?」
「・・・」
「・・・おい桐乃?どうした?ちゃんと聞いてるのか?」
「・・・聞いてるわよ・・・」
「そか。ならいい・・・」
ブチッ。
「いいわけあるかこの鈍感勘違いヤローがっ!!」
「うぐお!?」
突然繰り出された桐乃のハイキックは、見事に俺のこめかみをとらえて・・・俺の意識は暗闇の中へ。
気が付けば見慣れない天井だったわけで・・・。

こうして俺たちの二人暮らしは、喧騒とともに幕を上げたのだった。
66 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/07/23(月) 12:26:15.69 ID:wy3PFF5DO
とりあえず以上です。
多分続きますww

あと三点リーダーは、嫌いなので使ってません。
突っ込みは無しでお願いしますm(__)m
67 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/07/23(月) 13:19:39.94 ID:CvrT2Ewo0
一個お願い
地の文とセリフのあいだは一行あけてくれると読みやすい

「ねー・・・あんたさ」
「んー?なんだ?」
カリカリと書き込む手を止めないまま俺は声だけで答えた。
夕食を終え戻ってきた自室の中、俺はあと僅かと迫った受験日に備えて最後の追い込みをかけていた。

『一緒に居ようよ』

「えーっとさ・・・んーと・・・」
「なんだー?随分と歯切れ悪りーな?」
一旦手を止めて俺は椅子ごと振り向いた。
「どうしたよ桐乃?」
キイッと背もたれに体重を預けながらみつめる先、妹様は俺のベッドにうつぶせになったまま枕に半分顔をうずめていた。
「うー・・・」

これ↑を、こう↓

「ねー・・・あんたさ」
「んー?なんだ?」

カリカリと書き込む手を止めないまま俺は声だけで答えた。
夕食を終え戻ってきた自室の中、俺はあと僅かと迫った受験日に備えて最後の追い込みをかけていた。

『一緒に居ようよ』

「えーっとさ・・・んーと・・・」
「なんだー?随分と歯切れ悪りーな?」

一旦手を止めて俺は椅子ごと振り向いた。

「どうしたよ桐乃?」

キイッと背もたれに体重を預けながらみつめる先、妹様は俺のベッドにうつぶせになったまま枕に半分顔をうずめていた。

「うー・・・」
68 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/23(月) 13:26:23.56 ID:nJKZNS97P
>>66


京介の勘違いがさすがにひどいなww
桐乃も苦労するなあ


最初とそれ以降で桐乃の京介に対する呼称が変わってるのは意図的なものだろうか?
そうじゃないなら統一したほうがいいかも
69 : ◆YHxtVKAHbw [sage saga]:2012/07/23(月) 14:22:01.06 ID:KKTi5pB7o
>>66
乙です〜。
どうせ京介は勘違いしてるだろうなと思ってたので
なにに勘違いしてるかを推理してたけど
門限というのは予想外でしたw
70 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/07/23(月) 14:22:10.75 ID:s5HW0Onto
やっぱり勘違いだったw
71 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(茨城県) [sage]:2012/07/23(月) 15:08:33.17 ID:3Evq5K9jo
乙〜
釘をさされてしまったがひとつ突っ込ませてもらう
桐乃の趣味だと4Gくらいあっという間だぞ
せめて2Tとか用意しないと話にならない
72 : ◆YHxtVKAHbw [sage saga]:2012/07/23(月) 15:34:01.66 ID:KKTi5pB7o
えっと、時系列は最低でも原作4巻以降で、
ある人の姉上様視点で一本いかせて頂きます。

投下します。

タイトル未定
73 : ◆YHxtVKAHbw [sage saga]:2012/07/23(月) 15:34:32.06 ID:KKTi5pB7o
 えっと、あたしは漫画家をやっています。
 名前は……仮にK.Kという事にしておいていいかな?
 本人はバレてるって気付いてないみたいなんだけど、あたしの妹は某魔法少女ものアニメの公式レイヤーをやっている、と言えばあたしが誰なのかは分かってくれると思う。
 あたしの漫画が原案となったアニメがかつてはあったんだけど、そのアニメの裏番組があたしの妹がやってるキャラのアニメっていうのも、いったい何の因果なんだろうね。
 もちろん、その裏番アニメも同人誌を作っちゃう程度には好きだよ?
 でも、割り切れない部分はあるわけで──

「まずい。このままでは妹の学費が出せない……」

 通帳を見ながら悩むあたし。
 なんで妹の学費の事で姉が頭を痛めているかというと、二人暮ししてるから。
 あ、両親は健在だよ?
 でも、妹が親と折り合い悪くてあたしのマンションに転がり込んできたワケ。
 単なるわがままなら、熨斗付けて宅配便で実家に送り返すところなんだけど、妹の言い分にもかなり同情してしまう部分もあったのでそのままウチにおいとく事にした。
 妹一人くらいあたしの収入があればどうって事ないとその時は思ってたから。
 だって、アニメの原作者だよ? 売れっ子漫画家だよ? そのへんのサラリーマンなんかじゃ相手にならないほどの収入があったんだから。
 実際、当時の年収は実家のそれを遥かに上回ってたし。

 アニメが放映されていた時は、放映料だけでなく、便乗効果でコミックスの印税も「がっぽがっぽ」だったし、裏でやってた魔法少女ものと比べても視聴率は遥かに上回ってたから安泰だと思ってたのね。
 あたしが裏番の同人誌を作ってたのもそのあたりの慢心があったと言われたら、今となっては否定できない。

 だけど──
 あたしのアニメ(一期)も裏番アニメも終わって、DVD/BDが発売された時の衝撃は今でも忘れられない。

 なんで視聴率が上回っていたはずのあたしのアニメがワゴン行きになってるの!?

 その夜あたしはアニメの原案となった漫画を描くきっかけとなった人に電話を掛けた。
 あたしがイニシャルで名乗っている以上、その人の名前を出すわけにもいかないので伏せ字になってしまうけどそのあたりは御了承いただきたい。

「シ○ヤ先輩ぁい。どうしよう。先輩がワゴンで売られてるんですぅ」
『久し振りに電話かけてきたと思ったら開口一番でなに訳わからんこと抜かすんだ?』
「だからぁ、マ○ケラのDV──」
『あーあー! 俺はマ○ケラとは一切関係ない! だから俺もワゴンなんかで売られていない! 以上!』

 先輩が電話を切る気配を感じ取ったあたしは慌てて、

「うにゃっ! 待って待ってぇ!」
『なんなんだよ?』
「このままじゃさ○らちゃんと顔合わせにくいんですぅ」

 さ○ら、というのはあたしの知り合いの漫画家で、やはり何の因果か裏番の魔法少女アニメのコミカライズをやってるペンネームさ○ら・G・さ○らちゃん。
 あたしがその魔法少女アニメの同人誌を描いてるのもその人繋がりだったりする。

『そんなこと俺に相談されても困る』

 とかなんとか文句言いながらも、結局はあたしの愚痴を最後まで聞いてくれるあたり、すごいお人好しだなぁ。

 先輩と電話して心の部分ではスッキリしたけど、経済的な部分ではスッキリとはいかない。
 アニメは放映されたらそれでお終い、というわけにはいかないのだ。
 アニメの制作にはお金がかかる。
 その費用はテレビ放映のスポンサーからの提供、グッズの売り上げなどで賄われているのだ。
 そのグッズが第一の問題で、魔法少女ものだと子供向けということもあって、主人公たちが使うアイテムを模したおもちゃなどが作られたけど、あたしのアニメは対象年齢が高いこともあっておもちゃ関係は望めない。
 一応、主人公が被っている仮面、ストーリーを題材にしたゲームなどが売られたりはしていたけど散々なものだった。
 せめてDVD/BDがそれなりに売れていたらまた話は変わってたかもしれないのに、よりにもよってワゴン行きなんてあんまりだ。

 その後、二期も放映されたけど、魔法少女アニメの二期も同時に放映されて、とどめを刺された形で終わってしまった。
 ついでに言うと、魔法少女アニメは三期も作られたけど、あたしのアニメは全くそういった話も出なくなってしまった。

 天国から地獄。
 さ○らちゃんもその件については触れないでいてくれるのだけど、気を使われてるようで逆に辛い。

 でも、あたしのアニメの三期を待ってる人もいるかもしれない、いやいるはずだよね!?
 その中にはファンを集めて嘆願書をアニメ会社に突き付けるという人もいるはず!

「『マ○ケラ 三期』っと」

 PCからブラウザを起動して検索してみる。

『誰も望んでないもの マ○ケラ三期』
『マ○ケラはオワコン』
 ・
 ・
 ・

 ……へっ、PCの画面が霞んで見えないぜ。
74 : ◆YHxtVKAHbw [sage saga]:2012/07/23(月) 15:35:02.02 ID:KKTi5pB7o
 数日後、あたしは匿名で取得できるメールアドレスを作り、同じく匿名で利用できる無料サーバーに登録した。

「トップページはこんな感じでいいかな。で、コンテンツは……」

 変にベタ誉めするのもわざとらしい。
 あたしはアニメの感想などを書いているブログを片っ端から閲覧し、あたしのアニメに触れている記事を集めまくった。
 そして、それをあたしの言葉で書き直す。
 普通の人が読んでも分かりやすい言葉にするよう注意して。

「ん? すごい絶賛しているのは分かるけど、あまりに難解すぎて一般語にはちょっと通訳し辛いな? ていうかあたしの漫画以上に難しい言葉使いまくってるし……。えっと、『†千葉の堕天聖黒猫†』……?」

 よし、『マ○ケラ三期を嘆願する会』サイト、完成!
 このサイトで同志を募ってアニメ会社に働きかける、うん、完璧!

 そう、あたしがやろうとしているのは、ステマと言われても言い訳できないような事だった。
 SNSでコミュニティ作るのも考えたけど、いくらハンドルネーム名乗っていてもSNS運営会社には本名で登録することになるので、どこから漏れるか分からない。
 だったら一からウェブサイト作った方がいいと踏んだ訳だ。
 もちろん、自分の活動を告知するためのあたし個人のサイトも持っているけど、そっちはドメイン取って有料のホスティングサービスを利用している。
 今回作ったサイトは個人が作ったファンサイトという形にしているので、『あたしのサイト』とは関係ないようにしないといけない。
 ので、他のアニメなどのファンサイトは公式サイトへのリンクは貼っていたりするけど、公式からファンサイトへのリンクなんて有り得ないから、片思いリンクにしておく。

 ちなみにコンテンツはブログ記事などを加筆修正したアニメの紹介ページ、掲示板(このサイトの活動主旨に賛同してくれる人は足跡を残して下さい、的な)等だ。
 ただ、このままではこっちからのリンクはあってもこっちへのリンクは無いからサーチエンジンも拾ってくれない。
 サーチエンジンに拾ってもらうためにURLを登録するのは当然として、さらなる起爆剤が欲しい。
 ここで登場するのは2ちゃんねるのマ○ケラ関係スレ。
 これだけ大規模な掲示板サイトにURL書けば被リンクの重要度も高くなるはず!

 ……アンチスレしか無い……。

 この空気の中で応援するスレを立てても叩かれるのが目に見えてるよね。
 まあいっか。
 アンチスレの中でも特にレスが盛んに書き込まれてるスレをセレクト。

悪あがきしてるサイトハケーン
http://……

 なんか書込みしてて泣きたくなってきちゃった。
 でも、このスレの住民の中には擁護レスしてる人も少なからずいるみたいだから、凸する人の中には三期制作運動に賛同してくれる人もいるよね、うん。


 翌日、あたしの新サイトのアクセスカウンターはとんでもないことになっていた。
 掲示板の書き込み件数もすごい。

 だけど、オール荒らし書き込み。

 個人サイトの荒らしに対しては下手に反応しない事。
 反論したら面白がってエスカレートするので黙って削除していく。


 サーチエンジンが拾ってくれてるか確認するために『マ○ケラ 三期』で検索。

『マ○ケラ三期を嘆願する会──』

 おーっ!

『──はパクリサイト その5 2ちゃんねる』

 …………。

 たった一日であたしのサイト叩きスレが『その5』まで立ってるんだ……。

 で、でもっ! それだけ注目されてるんだよねっ!?

 だけど、これこそ反論なんて出来ない。
 コンテンツのほとんどは個人ブログからの寄せ集めだからパクリと言われても仕方ない。
75 : ◆YHxtVKAHbw [sage saga]:2012/07/23(月) 15:35:36.55 ID:KKTi5pB7o
 そうだ!
 漫画家としてのあたしの公式サイトのブログに……


いまさらながらマ○ケラを応援してくれるサイトが出来たみたい

http://……

こういうサイトがあるとあたしとしても嬉しいんだけど

出来れば自分の文章で応援して欲しいなあ


 これで変則的ながら相互リンク完成!

 で、新サイトの方はトップページにお詫びを掲載して、コンテンツのパクリ文章は全削除、過去の評判などで名場面と言われてるシーンをキャプチャーした画像とそれについての注釈文を書いたページを新規に作成して置き換える。
 もちろん、公式ブログであたしからの苦言が出て即座に新サイトが更新されるのは明らかに怪しいから二、三日ずらして──。
 その間も掲示板の荒らし書き込みは黙って削除を続行。


 ちなみに新サイトの書き換え作業が終了する頃には2ちゃんねるの叩きスレは『その15』まで立っていました、ぐすん。


 全ての作業が済んで一週間経過。
 今日も今日とて掲示板の荒らしを削除するだけの簡単なお仕事。

 あっ!
 誤って勢いに任せて削除しちゃうところだった!

名前『†千葉の堕天聖黒猫†』
本文『私で良ければ協力しないでも無いわ』

 どこかで見た名前だな?
 でも、ようやく一人目の賛同者が現れたんだよね!?

 ……じーん……。
 いけない、またPCの画面が霞んで見えなくなってきちゃった。


 数日後。
 今日も今日とて掲示板の荒らしを削除するだけの簡単なお仕事。
 あ、また賛同者らしき書き込みがある。

 注:都合により一部伏せ字にします。

名前『魔眼使い瀬菜』
本文『三期ではル○シ○路線を更に強化して欲しい。夜○の女王はいりません』

 ……腐女子?

 確かにそういう描写はあるけど決してBL作品というわけで無いんだけど……。
 まあとにかくこれで二人目。

 さらに数日後。
 今日も今日とて掲示板の荒らしを削除するだけの簡単なお仕事。
 この文章、コピペしてるだけだって?
 細かい事気にしちゃ負けだよ?
 っと、この書き込みは……

 注:都合により一部(ry

名前『きりりん@メ○ル三期絶賛公開中(゚∀゚)』
本文『いまさらマ○ケラだってwww誰得www』

 なんだ荒らしか、削除っと。


「姉貴、なにやってんの?」
「あ、加○子!? な、なんでもないよー、ちょっとネットサーフィンしてるだけ!」
「ふーん」
「で、どうしたの? またマ○ケラのDVD見たいのかな?」
「ちげーよ。ホ、ホラ」
「なに、この封筒?」
「加○子もさー、バイト始めたから、自分の生活費、くらいは、だ、出してもいいぜって、それだけ! もう渡したからヨ!? 返金は受付ねーべ!?」

<了>
76 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/07/23(月) 16:01:36.81 ID:wy3PFF5DO
>>67
すまん、昔からその書き方で通してるから、読みにくいかもしれんが勘弁してくれ。

>>68
桐乃の8巻の台詞
「あたしは『京介』に彼女ができるのなんて絶対イヤ。だけど『兄貴』が泣いてるのはもっとイヤ」
この台詞が大好きでね。
意識して呼び方を変えさせてます。
基本はあんただしね。

>>71
素で間違えたww
ギガじゃないテラだww
4ギガじゃ、エロゲ一枚で終わりじゃねーかww
あと突っ込みしないでってのは、三点リーダーの件なんで、おかしいと思ったらどんどん突っ込んでください。
77 : ◆YHxtVKAHbw [sage]:2012/07/23(月) 16:14:34.62 ID:KKTi5pB7o
しまった、魔眼使いじゃなく魔眼遣いだった。
78 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/23(月) 16:18:41.67 ID:aKe3NNO4o
彼方さん、なにやってんすか・・・

ちなみに彼方さんは加奈子のことはかなちゃんと呼ぶ
79 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/23(月) 22:13:48.90 ID:1X3OBC82o
>>66
乙!
桐乃の反応がいちいち可愛いwwww
そして京介は予想通りの犯罪的鈍感さww

続きも待ってるよ!

>>75
彼方さんの入念なステマっぷりワロタwwww
その知恵と努力、本業に回せばいいのにww

そして何故か最後はいい話で締められてるww
80 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/24(火) 17:20:18.09 ID:Hq1XyhBDO
>>66

きりりん、蹴ったあとストンピングでいいよそのアホはw
てか、むしろ京介に一方的に門限を課したらいいんじゃねw自分はフリーで

>>75
か、彼方さん・・

その姿後輩が見たら泣くでござるよ?割と真剣に。
81 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/24(火) 21:24:45.35 ID:4lMsN4ODO
>>75
これがステルスマーケティングってやつか
82 : ◆YHxtVKAHbw [sage saga]:2012/07/24(火) 22:21:01.88 ID:5e9YGavOo
感想ありがとうございます。
ってか、名前は出してないのになぜ皆様彼方と断定する?www

>>78
原作で姉妹の会話シーンが無かったので知らなかったです。
ゲームのプレイ動画見たら確かにか○ちゃんと呼んでますね。
(本体持ってないので未プレイ)

>>79
やっぱり最後はああいう形で締めたかったのでw

>>80
大丈夫!
ほっ○ーがいないときを狙ったから!

>>81
厳密に言ったら違うかもしれませんね。
83 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/07/24(火) 23:40:53.71 ID:28KcrTfDO
さて、探りのSSもまぁ受け入れられたということで、ここからが本題。
実はこれが書きたくて、俺妹SSを書き始めました。
ただ人を選びます。
まず、俺妹PSP続・加奈子ENDをやってない方にはNGでしょう。
加奈子の違和感が拭えないから。
あと、続の特典書き下ろし小説を読んでない方もどうかな?
あれの続きなもので。

それでも、書きたくて書きましたww

それでは次レスより幾つか借ります。

タイトル、『「或る結末の続き」の続き』
84 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/07/24(火) 23:43:52.84 ID:28KcrTfDO

「ではよろしくお願いします」
そういうと加奈子は親父とおふくろに抱いていた娘を差し出した。
昇進祝いの豪勢な食事の後、加奈子の提案で俺達3人は久しぶりに水入らずで飲むことにしていた。
勿論今から飲みになど出るわけはない。
リビングでの家飲みである。

『「或る結末の続き」の続き』

「飲みすぎるなよ?」
「わぁーってるよ」
「ばいば〜い」
「おやすみ〜か〜なみちゅあ〜ん」
「ご迷惑おかけします」
「なに他人行儀なこと言ってるの。好きでやってるんだからいいのよ」
三者三様に挨拶を交わす俺たち。
それから二言三言話して親父たちは自分たちの寝室へと向かった。
パタンとリビングの扉が閉まるのが合図。
「さてそんじゃ始めますか」
そう声を掛けて俺たちはささやかな酒宴の用意を始めた。



「さて俺はそのままビール続行でいいが・・・っと」
がさごそと冷蔵庫の中身を物色しながら、俺はキッチンでつまみの用意をしてる二人に声を掛けた。
「なー、桐乃と加奈子はなに飲むー?」
「シンガポールスリング」
「私はジンフィズでお願いします」
「はいよっと・・・シンガポールスリングにジンフィズっと・・・は?」
おい待て。
今こいつらなんてった?
「す、すまん聞き違えたみたいだ。なに飲むかも一回言ってくれ」
「シンガポールスリング」
「私はジンフィズで・・・」
「いや、さらっと同じこと繰り返してんじゃねぇよ!?」
立ち上がりながらツッコむ俺。
なにその洒落た名前の飲み物!?
ほぼ聞いたことすらないんですけど!?
しかしその俺の激しいツッコみに、本当に、ほんとーに面倒くさそうに桐乃がじろりと目を向けた。
「・・・は?なにが?」
うおお・・・視線が氷点下だ。
しかもドM大喜びの視線に加え、吐き出す言葉も怖いくらいに冷たい。
お兄ちゃん、ちょっぴりあの頃のこと思い出しちゃったよ。
「や・・・あのほら、家に、カクテルなんてもんないじゃないッスか?」
「うん。それで?」
「そりゃあのつまり・・・俺に今から買った来いって事ッスか?」
「はあ?ばかじゃん?」
・・・言い方まで当時と一緒ですか。
桐乃はふんっと鼻を鳴らすと、腰に手を当てて俺に向き直った。
「今更お店行ったって閉まってるし、大体シンガポールスリングなんてその辺じゃ売ってないっつーの」
「んじゃそのありえない無理難題を、なんで今俺に言ったんですかねぇ!?」
「決まってんじゃん、あんたが作るから」
「・・・は?」
「聞こえなかった?あんたが、作るの」
さも当然のように言われた、明らかに異常な言葉に俺は混乱する。
数瞬間を置き、頭の中で言葉を吟味しこねくり回して、口から出たのはこの一言だった。
「あー・・・桐乃?お前何言ってんの?」
「はあ!?なに言ってんのじゃないでしょ!?あんたが作るんだって言ってんじゃない!!」
予想通りというかなんというか・・・お前ってほんと変わんねーのな。
そのまったく説明になってない説明はよっ!!
「いやそもそもその言葉の意味がわかんねんだっつの!!なんで俺が作るの!?つか俺つくれねーよ!?」
「はあ?その程度のスキルもないわけ?はあまったく、これだから万年平社員は・・・」
「いや俺出世したし!てかそーゆーこっちゃねーよ!!道具もなしにどうやって・・・!?」
「道具ならありますよ?」
白熱した言い合いに発展しかけたところで、傍らから声がかけられた。
「加奈子?」
頭一つ小さい俺の嫁は、にっこりと笑いながらすっと人差し指を自分の唇に添えた。
「とりあえず二人とも声が大きいです。お義父様たちに迷惑ですからもう少し静かにしましょうね?」
その仕草は愛らしい外見にとてもよく似合っていて、俺は思わずこう思った。
俺の嫁はこんなにもかわい・・・。
「見惚れてんな。キモッ」
繰り出された右拳は、見事に俺のこめかみを打ち抜いていた。
・・・あやせといいお前といい、その的確に急所を狙う癖やめねーか?



85 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/07/24(火) 23:47:48.46 ID:28KcrTfDO

「はあ・・・なるほどねえ」
俺は桐乃が楽しそうにテーブルの上に並べていくブツ達を見ながら、大きく息を吐いた。。
むろん溜息なわけだが。
「ちょっと何よそのリアクション?もっと驚きなさいよ」
「驚くっつーかむしろ呆れたわ」
そう言って俺は、今一度テーブル上のカクテル製造用具一式に目を向けた。
あのシャカシャカと振る銀色のコップやら、何やらおかしな形状のスプーンらしきもの、それを注ぐための高価そうなグラスが詰まった箱。
それにカクテルに使うであろう数種類の酒とリキュール。
本格的なやり方などもちろん知らないが、家で飲む分には十分なように見えた。
「どこで手に入れたんだこんなもん?」
当然の疑問を口にすると、桐乃が嬉しそうに答えてくる。
「撮影の小道具。使用後に欲しいって言ったら格安で譲ってくれたの」
「ほー、モデルってそういうメリットもあるのか」
なるほど、ギブアンドテイクとはよく言ったものである。
「へへん。凄いでしょ?」
得意げに鼻を鳴らす妹に、少なからず感心したのも事実で。
「ああスゲーな。お前が頑張ったからこその特典だもんな。大したもんだ」
素直に賞賛の言葉を贈る俺。
・・・だったのだが・・・。
「フ、フンッ!」
「?桐乃?」
「こ、心にもないこと言ったってわかってんだからねっ!どーせ、コネで貰ったーとかそんな風に思ってんでしょ!?」
「んなっ!?」
吐き捨てるようにしてそっぽを向く桐乃に絶句する。
なんだってこいつは素直に褒めると怒りやがんだ!?いつもいつも!
「い、言ってねーじゃねーかそんなこと!」
「い、言ってなくても、か、顔見りゃわ、わかるし・・・」
なんっだそりゃ!?
「おまっ・・!被害妄想も大概にしろよ!人が心底感心していったセリフを・・・」
「う、うっさいっ!!」
「うっさいじゃねーよ手前ぇ!大体俺がいつ・・・」
「二人とも・・・」
「「はいっ!」」
小さくかけられた声に背筋をピンと伸ばす俺と桐乃。
恐る恐る目を向けた先には、ニコニコと微笑む加奈子がいた。
その口が再び開く。
「同じことを・・・何度も言わせないでくださいね?静かにしてくださいと言いましたよね・・・私?」
微笑みの表情はそのままだが、妙な迫力がありやがる・・・やべえ。
「だ、だってこいつがさ・・・っ!」
「桐乃」
「はいっ!!」
「いい加減にしないと・・・おこるよ?」
「す、すいませんでした!!」
なおも食い下がろうとした桐乃が、冷や汗を浮かべて頭を下げる。
そのお辞儀は、腰の角度が完璧な理想的なお辞儀だった。
よっぽど怖かったんだな・・・バカな奴め。



86 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/07/24(火) 23:55:58.25 ID:28KcrTfDO

加奈子は結婚する前から、俺の幼馴染である田村麻奈実に家事一般の指導を受けていた。
当時は『師匠』と呼んでいたから、軽い弟子入りみたいなものだったのかもしれない。
その関係は、呼び方が麻奈実さんに変わった今も続いており、嫁の家事スキルは日々上昇を続けている。
まことにもってありがたい話しなのだが・・・一つだけ困ったというか、迷惑なものがある。
それが先ほどの『おこるよ?』である。
麻奈実は決して本気で怒ることなどない奴だが、同時に本気で怒らせてはいけないという、稀有な特性の持ち主である。
本気で怒らせたが最後、死よりも嫌な体験をさせられる羽目になることを、身をもって知っている俺である。
その迷惑極まりないスキルを・・・あろうことか加奈子に伝授してしまったわけだ。
師匠・・・やりすぎッスよ。
「あー・・・スマン加奈子。久し振りの水入らずだもんな。折角なら楽しく飲みたいよな」
「わかって下さったならいいんです」
ニコニコと微笑む嫁は、先ほどの迫力などどこへやら、楽しそうに飲み会の準備に取り掛かる。
「ほら桐乃、あれ」
「あ、うん」
どうにか落ち着いたらしい桐乃が、加奈子に促されて先のカクテルセットが入ってたバックをゴソゴソと漁る。
「ん、しょっと」
取り出したのは何枚かの紙の束。
それを「ん」と俺に差し出してくる。
訝しみながら受け取った俺だったが、表面に目を走らせた途端なるほどと腑に落ちた。
「用意周到だな」
苦笑交じりの俺の言葉に、へへっと二人が笑った。
それは、カクテルのレシピだった。
ネットで調べてプリントアウトしてあるそれは、素人でも一応は作れるように細かく書かれていた。
「どうせカクテルなんて洒落たもの知らないあんたのために用意してやったのよ」
あーめんどくさかったー。
ふんと鼻を鳴らして恩着せがましく言う桐乃。
・・・ホントに一言一言がムカつくなこいつは。
ひくひくと頬をひきつらせてる俺の耳に、クスクスと楽しそうな笑い声が届いた。
「そんなこと言って。『兄貴にカクテル作ってもらうんだー』って嬉々としてネットで調べてたのは誰だっけ?」
「・・・おいおいマジかよ?素直じゃないねぇ、うちの妹は」
さっき、チラリと加奈子が俺に視線をくれた。
なるほど。
明らかにからかう為の加奈子の言葉。
それを敏感に察知して俺は乗っかった。
案の定、桐乃は真っ赤になって否定し始める。
「ちょっ、加奈子!やめてよそんな言い方するの!勘違いされたら迷惑じゃん!あんたも納得すんなっ!!」
「そう?『なにこのサイト不親切ー!!もっとわかりやすく書きなさいよねー!?兄貴が悩んじゃうじゃん!』」
「うっわ泣きそう俺」
「わああああっ!!」
「『よっしこれでOK!加奈子、兄貴のカクテル楽しみだね!!』」
「おまえ・・・そんなこと思って・・・」
「きゃーーーーーーーーーっ!!」
でっかい声出すなよ。
面白そうだから加奈子に乗っただけだって。
お前がそんなこと、死んでも言うはずないもんなぁ・・・。
そう心で呟いて、ちらりと傍らの嫁を見る。
ひとしきり桐乃をからかった気が済んだのだろう、加奈子は満足そうな笑みを浮かべていた。
実はこの辺、若い頃と同じで加奈子の悪い癖であったりする。
今でも俺、たまにからかわれるもんな・・・。



87 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/07/24(火) 23:58:55.80 ID:28KcrTfDO

「かかかか加奈子?」
「ん?なに?」
「あ、秋物の新作バッグ、今度貰えるんだけどさ・・・いらない?」
「?え?」
すると突然桐乃が、加奈子に向かってプレゼントの提案をしだした。
しかも真っ赤になって必死に。
おいおい桐乃のやつ。
もしかして口止めしようとしてんのか?
誰もマジにしないってのに言われたくないとか・・・そんなに俺が嫌いかね?
・・・ちょっとへこむな。
「あ、あと!肌に超いい化粧水があるんだ!そ、それも、どう!?」
「・・・あ。もしかして私、脅してるとか思われてる?」
ようやく思い至ったらしい加奈子が、パンと両手を打ち鳴らす。
「そ、そんなことないよ?」
完全にひくついた笑いを浮かべている桐乃。
相変わらずわかりやすい奴だ。
「あはは桐乃。そんなものいらないよ。言われたくないなら言わないって」
ケタケタと笑いながら加奈子が両手を振る。
加奈子の言葉に桐乃がほっとした表情を浮かべる。
だが次の瞬間、桐乃は胡乱な目で加奈子を見つめて言う。ちょっと芝居がかった言い方で。
「・・・そう?・・・昔の加奈子なら絶対脅してたでしょ?ねえ?私本気にしていいのかなぁ・・・?」
「あー・・・黒歴史は勘弁してもらいたいかなー?」
心底イヤそうに苦笑いを浮かべる加奈子。
それを見て笑う桐乃。
その顔にふとあのころの面影が重なる。
「・・・ああいいな、それ」
「兄貴?」
「あなた?」
思わず零した俺の言葉に二人が顔を向ける。
そんな二人に向かって、俺は思いついたことをそのまま口にした。
「なあ、折角3人で久しぶりに飲むんだからよ。どうせなら学生時代に戻ってみないか?」
「は?」
「どういうことですか?」
頭にはてなを浮かべたような顔で聞いてくる二人。
すかさず俺は加奈子を指差した。
「ほらそれだ加奈子」
「え?」
いきなり指摘された加奈子は、訳がわからずはてなを3つほど増やしている。
そこですかさず答えを出してやる。
「お前が昔俺にそんな口をきいてたか?学生時代を思い出してみろ」
「・・・あ」
「・・・なるほど」
得心がいったと頷く桐乃と加奈子。
頭の回転の早いことで。
実に助かる。
「な?どうせだからさ・・・面白そうだろ?」
ニッと口の端を上げて笑うと、二人とも悪戯っぽい顔になって笑い返してきた。


88 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/07/25(水) 00:11:37.94 ID:yQMb00ZDO

「なーるほどねえ・・・フン。ま『京介』にしちゃ割とマシな提案なんじゃない?」
つんと顎を逸らせ不敵に笑いながら、まずは妹様の降臨だ。
「てゆってもぉ?『京介』は他にとりえなんてないわけだしぃ?せめて企画くらいはやってもらわないとねえ?」
「おーおー久しぶりだなぁ呼び捨て」
水を得た魚のように、遠慮なく俺を呼び捨てにする桐乃に知らず笑みがこぼれる。
俺と加奈子がつきあい始めてから桐乃は、俺のことを『兄貴』と呼び方を固定していた。
それまで『京介』と併用していたのに、だ。
当時、一度だけ理由を聞いたことがあるが「ケジメつけないと」とだけ言われた。
正直・・・少し寂しくも感じたもんさ。
「兄貴一辺倒だったからなお前。さぞや嬉しいんじゃねーの?」
そんなことはおくびにも出さず、俺は桐乃をからかってやる。
「ばばばばかじゃん!?あんたのこと呼び捨てんのなんか嬉しくもなんともないっつーの?」
「そうか?なんなら『お兄ちゃん』って呼んでもいいんだぜ?」
俺の言葉に真っ赤になって桐乃が怒鳴りつけてくる。
相変わらず煽り耐性ねーなお前。
「き、キモッ!おおおお兄ちゃんなんて一回も呼んだことないし!」
「そーか?俺、何度かお前の寝言で聞いたことあんだけど?」
「!?ねねね寝言なんてどどどどこで聞いたのよっ!?」
嘘に決まってんだろバカ。
「あー、そーいや聞いたことねーな。やー勘違い勘違い」
「なっ!?ああああんたねえ・・・!」
「・・・ひひっ」
俺達が当時(今も大して変わらんが)の口論をしていると、それこそ悪戯好きな小娘の声が耳朶を打つ。
俺と桐乃は一瞬顔を見合わせると、プッと噴き出してから声の主にゆっくりと目を向ける。
「よう」
「・・・あのぉ?シスコンにブラコンとかぁ、まじキメーんですけどー?」
「・・・初っ端っから全開だな『クソガキ』」
俺の言葉に、目の前の『クソガキ』は目を細め、意地の悪そうな笑顔を浮かべた。
「はあ?なにゆってんの『セクハラマネージャーさん』?オメーがやろーって言い出したんだべ?」
「・・・一瞬で後悔したぜ」
視線の先加奈子は、あろうことかソファーの上に胡坐をかいてニカッと歯を剥いた笑顔で座っていた。
「スッゲー当時のままだなお前・・・」
髪の色を除けばまったく当時の出で立ちの我が嫁に、少なからず俺は驚いた。
こいつ成長とかマジしてんのか?
「あんだよ『京介』ぇ?この成長しきった加奈子様の、どこが当時のままなんだヨ?」
「主に胸」
「なっ!?」
さらっと本当のことを言ってやると、加奈子は真っ赤になって両手で自分の胸を隠した。
「て、てめーっ!?い、今、一番触れちゃいけねー部分に触れたぞっ!?」
「そーかそーかー気にしてたのかー。加奈子様はかわいいなあ」
頭を撫でながら、俺は、はっはっはとわざとらしく大声で笑ってやった。
心配すんな。俺はその小さい胸が好きだから。
「て、てめー調子乗ってんじゃ・・・」
「加奈子」
「え?」
不意に名前を呼ばれて、加奈子が桐乃に向き直る。
なんだおい桐乃?その真剣な表情は?
「加奈子」
「な、なんだよ?」
「・・・カナカナちゃん、て呼んでいい?」
「いや、それまじキメエからかんべん」
「あううう・・・」
玉砕し、目の前でorz←こんな感じになってる我が妹に俺は声をかけた。
「・・・お前って、良くも悪くも成長しないよな・・・」

――――俺の妹がこんなに残念なわけがない・・・。

俺がそう思ったかどうかはともかく、俺たちの『なりきり』飲み会はこうして幕を開けた。
89 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/07/25(水) 00:13:48.38 ID:yQMb00ZDO
とりあえずはここまで。
続きは近日中に。
っても、書きたいとこから書くやり方なんで、長い目で見ててくれると助かりますww
最初のSSの続きも書きたいしね(^-^)
90 : ◆YHxtVKAHbw [sage]:2012/07/25(水) 00:19:46.51 ID:EixsP7e1o
>>89
GJ.
ゲームは未プレイだけど、プレイ動画見て加奈子√は知ってるから違和感無く読めました。
(そろそろ本体込みで買おうかなぁ)

ただ、子供を「差し出す」というのは養子にでも出すようなニュアンスが感じられるので
言い回し変えたほうが良かったかな?
91 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/25(水) 00:21:15.78 ID:DWQFhM0IP


長くなるようなら個別スレ立てるとかしてもいいかも
ちょっとシリアスを期待しちゃうけどさすがにそうはならないかな

しかし分岐がよくわからないかも
ゲームに準じるなら京介呼びはしないと思うんだけど、その辺は個人の自由だしそんなものか
92 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/25(水) 06:09:10.66 ID:th6YUDw20
>>89 乙だが・・・

すまん、やはり読みにくいよ・・・
地の文と台詞の間は一行あけてくれると読みやすい

他にも場面や心情に変化がある場合はやや多めに行をあけたらどうか
水泳だって息継ぎなしじゃ長い距離泳ぐのは無理だろ?

長くなるんだったら個スレは立てるべきだな
93 : ◆YHxtVKAHbw [sage]:2012/07/25(水) 08:23:26.84 ID:EixsP7e1o
実際の書籍は適度に行間開いてるし、原稿用紙だって行と行の間に空白があるよね。
俺は昔小説サイト作ってたけど、その場合はスタイルシート使って
行と行の間に文字の大きさの1/3〜1/2位の空白あけてた。

だけど、こういう掲示板に投下するときにはスタイルシートなんて使えないわけだから
書籍としてのイメージと掲示板としてのイメージの違いを考慮したうえで
行間空けるなどの修正はした方がいいかなと思って試行錯誤してるけど
未だに「適切な状態」になってるかどうかの自身は全く無いわけで。

もちろん元のテキストは保存しておくけどね。
94 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/25(水) 17:15:05.59 ID:1wZhoYnRo
なんか面倒くさい奴だな
95 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/25(水) 20:08:06.27 ID:/oeC+/gd0
>>94 どっちが?
96 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/07/26(木) 13:06:23.43 ID:y5PEQ6PDO
>>95
どっちだっていいじゃん。
俺も大概めんどくさいしww

さて>>92がいうから、ためしに一本書いてみた。
これなら読みやすいのかい?
97 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/07/26(木) 13:11:03.20 ID:y5PEQ6PDO
あ、タイトル忘れた。
えーと・・・いいや。
とりあえず『京介side』

「ねー高坂くんってさ、結構たらしだよね?」
「・・・いきなり何を言い出すんだお前?」

季節は寒風吹き荒ぶ2月半ば。
さっさと大学進学を決めた俺は、卒業までなにもすることもなくダラダラと過ごしていた。
そこに後輩である黒猫から、一つお願いをされた。

『妹・・・日向の勉強を見てくれないかしら?』

日々を無為に過ごしていた俺はこの提案にすぐさま飛び付いた。
いい加減、妹物エロゲ漬けの日常には嫌気がさしていたからだ。
桐乃はいい顔をしなかったが、俺は正直助かったと思ったね。
そんなこんなで、只今黒猫の家で即席家庭教師をしているわけだが、

「たらしってなんだよ?」
「えーだってさ」

日向は俺をみつめると指折り数えだす。

「桐姉でしょー、瑠璃姉でしょー、沙織さんでしょー、あとこないだ会ったあやせさんでしょー・・・他にもいそうだけど、4人も誑かしてたら結構なたらしでしょ?」
「人聞き悪いこと言うな。そして桐乃を入れるな」

あいつは俺に嫌悪感しか抱いていない。
まぁ、嫌いだが自分を一番にしろとか理不尽な話はあるわけだが。

「それに黒猫はともかく、沙織は別にただの友達だし、あやせに至っては俺には殺意しかない」
「えーうっそだー」
「本当だ。俺は何度殺されかけたかわからん」
「たとえばどんな時に?」

日向の無邪気な質問に、んーと俺は記憶を遡る。
98 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/07/26(木) 13:14:29.66 ID:y5PEQ6PDO

「そうだな・・・結婚してくれって言ったら、真っ赤になって蹴っ飛ばされた」
「・・・」
「あと、黒猫と付き合ったとき、そのことを報告したら『嘘つき』って言われて階段から落とされた」
「・・・」
「あとはー・・・」
「もういいよ高坂くん」

見ると日向が呆れたような顔で俺を見ていた。
なにその顔?

「そっか?」
「うんよくわかった。でさ高坂くん」
「ん?」

日向はにっこりと、それはいい笑顔でこう言った。

「なんで殺されなかったの?」
「ひでえな!」

思わず突っ込んじまったじゃねーか!

「いや、普通に殺されてしかるべきだと思うけどねえ?」
「いや、さらっと何言ってんの!?俺命一個しか持ってないんですけど!?」
「まー、乙女心を弄んだ報いってやつ?」
「弄んでねーし!今の話のどこにそんな要素あったよ!?」

どこにもないじゃねーか!殺されかけた記憶しかねーよ!

「・・・ねえ高坂くんさ?今まで自分に好意を持ってくれた女の子って心当たりある?小学生あたりから」
「ねーよ。こんな地味顔の奴、好きになってくれたのは物好きな黒猫くらいなもんさ」

そして振られましたしね。
やべ、泣きたくなってきた。

99 : ◆6U1bthnhy6 [sage saga]:2012/07/26(木) 13:16:22.90 ID:y5PEQ6PDO

「・・・はあ」

見ると、日向が心底憂鬱そうなため息をついていた。

「ん?なんだよ?」
「・・・あのさ、高坂くん」
「ん?」
「好きだよ」
「なっ!?」

日向がまっすぐに俺をみつめて言ってきた言葉に、年甲斐もなく動揺する。

「な、なに言ってんだよお前!?」
「なにって・・・告白?」

なーっ!?
ちょっと待てちょっと待て。
なにがどうしてこうなった!?

「あ、あのさ日向ちゃん?・・・自分が何言ってるかわかってる?」
「もちろん」

エッヘンと胸を張って言われた。
いや可愛いけどもさ。

「いや、その・・・な、なんで急に?」
「高坂くんが他の人にとられないように抜け駆け?」

かくんと首を傾げて言う日向。
真顔で言うな。
可愛すぎるだろ。

「と、とられる?俺が?誰に?」
「気づいてないならいいよ。むしろそっちのが好都合だし」

にっこりと笑うと、日向はそっと俺に寄り添ってきた。

「・・・で?返事は?」
「い、いや。確かに日向ちゃんは可愛いし、俺も好きだけど・・・あくまで妹みたいなもんとして好きってだけで・・・」
「恋愛感情じゃない?」
「・・・ああすまん」
「なら今はそれでいいよ」
「へ?」

日向は立ち上がると、俺の目の前で両手を広げて一回転して見せた。

「今はまだ妹のポジションでも、必ず振り向かせて見せるし」
「・・・たいそうな自信だな?」
「えーだってー・・・」

不意に日向はしゃがみこむと、俺に向かって顔をずいっと寄せてきた。
うおおい!近い近い近い!

「高坂くん、女の子に好きって言われたことないんでしょ?」
「・・・お前の姉さんがいますけど?」
「それだけじゃん」
「ぐ・・・」

否定できないだけに悲しい。
100 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/07/26(木) 13:17:03.30 ID:y5PEQ6PDO

「だったらさ、こーんな可愛い子が、ずーっとアプローチしてたら、もう攻略したも同然じゃん」

ニッと笑って日向は言い切った。

「自分で可愛いとか言うな・・・」
「えー?可愛くない?」

・・・くそ、首を傾げるな。

「・・・可愛い」
「へへでしょ?」

目の前で照れたように笑う日向は、本当に可愛くて。

「だからさ、覚悟しててよね?」
「お、おう・・・」

やばい。
俺は決してロリコンなんかではないはずだ!
・・・ないはずなんだが、気が付けば日向に良いように振り回されてる。
そして・・・日向の言葉にドキドキしている。

「あ、そーだ」
「あ?な、なに?」

日向は悪戯を思いついたような顔で笑うと、そっと俺に顔を近づけてきた。

「これは・・・」

ちゅ。

「マーキング。へへっ」

照れくさそうな日向の顔。
唇に残る淡い感触。
それを自覚しつつ、俺は頭が沸騰しそうだった。
そしてグラグラしつつある頭で、こんな風に思った。

『俺がこんなにロリコンなわけが・・・あってもいいんじゃねえか?』
101 : ◆6U1bthnhy6 [sage saga]:2012/07/26(木) 13:19:37.33 ID:y5PEQ6PDO
続いて『日向side』

「ねー高坂くんってさ、結構たらしだよね?」
「・・・いきなり何を言い出すんだお前?」

あたしの言葉に、高坂くんが怪訝に眉を寄せる。
季節はまだまだ寒い2月。
あたしは自分ちで、瑠璃姉がお願いしたっていう臨時家庭教師、高坂くんに勉強を教わっていた。

「たらしってなんだよ?」
「えーだってさ」

あたしは高坂くんをみつめると指折り数えだした。

「桐姉でしょー、瑠璃姉でしょー、沙織さんでしょー、あとこないだ会ったあやせさんでしょー・・・他にもいそうだけど、4人も誑かしてたら結構なたらしでしょ?」
「人聞き悪いこと言うな。そして桐乃を入れるな」

・・・なに言ってんのかなーこの人?
桐姉が高坂くんのこと大好きなんてもうバレバレじゃん?
もしかしてシスコンて思われるのが嫌なのかな?

「それに黒猫はともかく、沙織は別にただの友達だし、あやせに至っては俺には殺意しかない」
「えーうっそだー」
「本当だ。俺は何度殺されかけたかわからん」
「たとえばどんな時に?」

あたしは興味津々に聞いてみる。
・・・てゆーか何度も殺されかけるって何?
102 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/07/26(木) 13:24:27.08 ID:y5PEQ6PDO

「そうだな・・・結婚してくれって言ったら、真っ赤になって蹴っ飛ばされた」
「・・・」
「あと、黒猫と付き合ったとき、そのことを報告したら『嘘つき』って言われて階段から落とされた」
「・・・」
「あとはー・・・」
「もういいよ高坂くん」

・・・呆れた。だめだこの人。

「そっか?」
「うんよくわかった。でさ高坂くん」
「ん?」

あたしは殊更にっこりと笑うことを意識して言ってやった。

「なんで殺されなかったの?」
「ひでえな!」

小気味良いツッコみが返ってくる。
でもひどくはないと思うよ?

「いや、普通に殺されてしかるべきだと思うけどねえ?」
「いや、さらっと何言ってんの!?俺命一個しか持ってないんですけど!?」
「まー、乙女心を弄んだ報いってやつ?」
「弄んでねーし!今の話のどこにそんな要素あったよ!?」

あったじゃん。
話し聞いただけでもわかるよ。
だってさっき聞いたあれ、明らかに照れ隠しとやきもちじゃん・・・あれ?もしかして・・・。

「・・・ねえ、高坂くんさ?今まで自分に好意を持ってくれた女の子って心当たりある?小学生あたりから」
「ねーよ。こんな地味顔のやつ、好きになってくれたのは物好きな黒猫くらいなもんさ」

・・・なるほどね、なんかわかった。
この人とっことん鈍いんだ。
いないわけないじゃん考えたって。
あたし会って半年くらいだけど、そんだけでもさっきの4人がいるんだよ?
それにさ・・・。

「・・・はあ」

思わずため息が漏れた。

103 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/07/26(木) 13:26:18.37 ID:y5PEQ6PDO
「ん?なんだよ?」
「・・・あのさ、高坂くん」
「ん?」
「好きだよ」
「なっ!?」

これはズルいかなあ?
でもなー・・・ほっとくと他の誰かにとられちゃうし。
この人気づいたら、絶対その人に惚れちゃうもん。

「な、なに言ってんだよお前!?」
「なにって・・・告白?」

ひーっ!自分で言ってて恥っずかしい!
でもでも、高坂くんが動揺してる。
やっぱりだ。
この人恋愛経験薄いから、スッゲー流されやすい。
やっぱ・・・今のうちに手を打っとこう。

「あ、あのさ日向ちゃん?・・・自分が何言ってるかわかってる?」
「もちろん」

エッヘンと胸を張って言う。
ここまで来たらあとはもう勢いだ!

「いや、その・・・な、なんで急に?」
「高坂くんが他の人にとられないように抜け駆け?」

かくんと首を傾げて言ってやる。
もちろん計算ずく。

「と、とられる?俺が?誰に?」
「気づいてないならいいよ。むしろそっちのが好都合だし」

そう好都合。
今のあたしじゃ、まだまだ足りないものだらけで、他のライバルたちに太刀打ちできないもん。

「・・・で?返事は?」
「い、いや。確かに日向ちゃんはかわいいし、俺も好きだけど・・・あくまで妹みたいなもんとして好きってだけで・・・」
「恋愛感情じゃない?」
「・・・ああすまん」
「なら今はそれでいいよ」
「へ?」

あたしは立ち上がると、高坂くんの目の前で両手を広げて一回転した。

「今はまだ妹のポジションでも、必ず振り向かせて見せるし」
「・・・たいそうな自信だな?」
「えーだってー・・・」

あたしはしゃがみこむと、高坂君に向かって顔をずいっと寄せた。
明らかに動揺した顔が目の前にあってあたしは嬉しいやら楽しいやら。

「高坂くん、女の子に好きって言われたことないんでしょ?」
「・・・お前の姉さんがいますけど?」
「それだけじゃん」
「ぐ・・・」

言葉に詰まる高坂くん。
バカだねー。
高坂くん好きな子なんて実はいっぱいいるのに。

「だったらさ、こーんな可愛い子が、ずーっとアプローチしてたら、もう攻略したも同然じゃん」

教えてなんかあげないけどねっ!

104 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/07/26(木) 13:27:02.60 ID:y5PEQ6PDO

「自分で可愛いとかいうな・・・」
「えー?可愛くない?」

またかくんと首を傾げる。
ごめんね高坂くん。
あたしズルい女だから。

「・・・可愛い」
「へへでしょ?」

ハッキリ言われると、それはそれで恥ずかしいよ!?
ま、まあ嬉しいんだけどね!

「だからさ、覚悟しててよね?」
「お、おう・・・」

あたしはそう言うと、高坂君からスッと顔を離した。
だってやばかった。
至近距離の高坂くん、本当にカッコよくて、下手したらデレデレになりそうだった。
よく我慢したあたし!
ドキドキしている胸を押さえつつ、日向グッジョブと内心で呟く。
・・・でもこれだけじゃ、いまいち安心できないなー。
もう一つインパクトのあるやつを・・・あ。

「あ、そーだ」
「あ?な、なに?」

落ち着けあたし。まずは笑え。
急いじゃダメだ。
ゆっくりと、ゆっくりと・・・顔を高坂くんに近づけて・・・。

「これは・・・」

ちゅ

「マーキング。へへっ」

唇に残る淡い感触。
それを自覚しつつ、あたしは頭が沸騰しそうだった。でも目の前で、あわあわと顔を真っ赤にして慌てている高坂くんを見て、あたしはこんな風に思った。

『あたしの高坂くんはこんなにも可愛い』
105 : ◆6U1bthnhy6 [sage saga]:2012/07/26(木) 13:35:00.50 ID:y5PEQ6PDO
以上です。
これで読みやすくなったのかな?
106 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2012/07/26(木) 14:28:35.98 ID:CXMpfMTqo
にゃあー
かわええ
107 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(佐賀県) [sage]:2012/07/26(木) 15:08:05.75 ID:VWesKMNRo
いいんじゃないでしょうかいいんじゃないでしょうか
108 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/07/26(木) 17:14:20.77 ID:NlumNwTlo



京介が新たなスキルを獲得しました!

ロリコン ← New!
109 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/26(木) 19:02:42.99 ID:CIH9BaVIO
まだJSなのに日向策士可愛いすぎるwwww

そして京介相変わらずの鈍感クオリティww
110 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/26(木) 19:28:47.58 ID:jgfyyeZDO
> 『俺がこんなにロリコンなわけが・・・あってもいいんじゃねえか?』


いいんだよ!いいんだ!!!!

こういう2Side的なお話の作り方 いいなぁ。
つか日向かわえぇwこの・・ロコリンめ!
111 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/26(木) 20:23:50.40 ID:o6rkE+fF0
>>105 乙乙!

良いよ良いよ〜 w-sideの構成が斬新だし内容も面白かった
そして何よりも凄く読み易くなったしね

ただ一点だけ、日向が桐乃を呼ぶ時は「ビッチさん」だからね
112 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/26(木) 20:39:55.36 ID:HehqhPU4o
>>105

実に素晴らしかった
これはあやせの告白はなかったことになってるのかね…

>>111
ネタか釣りなのか分からんが普通に桐姉に進化してなかったっけ?
九巻時点で
113 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/26(木) 20:52:18.84 ID:E/MYbxS3o
ゲームでも原作でも桐姉って呼ぶからな
ビッチさん言うのは最初だけ
114 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/26(木) 22:23:06.72 ID:jgfyyeZDO
うっかり珠希から秘密がばれそうな気が

「姉様、ろりこんってなんですか?」
115 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/26(木) 22:26:37.56 ID:1dSqZC6kP


しかし京介よ、いくら普段からそういう対象として見てないと言ってるとはいえ、
面と向かって好きと言ってくれた麻奈実を忘れるのはどうかと思うぞww
116 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) [sage]:2012/07/26(木) 22:37:26.85 ID:eldc0xNAO
>>105
なんという日向ちゃん大勝利
なんというロリコンホイホイ

原作を読んだ人なら思った事があるであろう、「素直に真っ直ぐ伝えればいいのに」という、話を盛り上げる為なのか引っ張る為なのか
そんな部分を突いた二次創作らしい話で、読みやすくてとても良かったです
激しく乙です
117 : ◆YHxtVKAHbw [sage]:2012/07/27(金) 21:19:10.30 ID:aK94Gr/zo
>>105
乙です。
京介、日向に篭絡される日も近いかww
118 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/27(金) 22:18:35.24 ID:8FyTcPPDO
日向ちゃんへ武器を授けよう

つ伊達メガネ
つメガネ+おさげ+JSの薄い本(高坂家へ送付)
119 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/28(土) 15:08:46.05 ID:+VNa8Oml0
願い落ちてもうた(´・ω・`)
120 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/07/28(土) 15:39:18.48 ID:o/pLK8yWo
あちゃー
ついに逝ったか
121 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(鳥取県) [sage]:2012/07/28(土) 17:12:27.87 ID:I/JtNOnwo
>>119
あらら。
122 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/28(土) 17:31:32.67 ID:VI7COJWDO
>>119
なにが落ちたの?
123 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(鳥取県) [sage]:2012/07/28(土) 19:02:10.14 ID:I/JtNOnwo
>>122
○【俺の妹】  願い   【序から始まる物語】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1310480351/
124 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/07/29(日) 00:08:44.47 ID:JZ/lMrCDO
>>123
おおすまねぇ。
やっぱ個別スレはないなー。俺も書くの遅いから落ちるの目に見えてるしww
ここに書いていくから気長に待ってて欲しい。

書き方変えるのに試しに書いた日向SSが、思いの外好評でかなり驚いてるww
まとめにも京介×日向は少ないんで、なら自分で書こうって思ったのが受けると、すごく嬉しいのな。ありがとう。

んで>>118がなにやら面白いもんくれたんで書いてみたww
次レスより投下開始。
125 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/07/29(日) 00:10:35.33 ID:JZ/lMrCDO

それはある家庭教師の日のこと。

「ねえねえ高坂くん?」
「ん?どした?」
「これどう?」
「ん?」

なん・・・だと?
言われて顔を上げた視線の先。
そこには眼鏡をかけた美少女が座っていた。

『日向に眼鏡が届いたら』
126 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/07/29(日) 00:12:03.40 ID:JZ/lMrCDO

「ねーねーどうかな?」

日向はクイクイッと、つるの部分を弄くりながら楽しそうに聞いてくる。
無邪気に笑いながら聞いてくるんじゃねえ・・・。

「あ、か、可愛いよ」
「ほんとに?えへへ」

うおお照れた!
やべえ・・・可愛いなんてもんじゃねえ。
元々日向の小さい顔には眼鏡は似合うだろうと思っていたが、これは予想のはるか上をいくクオリティーだ。
正直今まで見たどの眼鏡っ娘よりも可愛いかもしれん・・・。
い、いかん。見惚れてる場合じゃない。
と、とりあえず疑問点を晴らさないと。

「きゅ、急に眼鏡とか、どうしたのそれ日向ちゃん?」
「ん?これ?こないだあたし宛に送られてきた」
「だ、誰から?」
「んーと・・・『スレ住人』さん?」

なんで疑問形なんだよ?
それにスレ住人?HNかなんかか?

「だ、誰なのそれ?」
「知らない人」
「受け取ってんじゃねーよ!」

思いっきりツッコんじまったじゃねーか!
危なっかしいなお前!!
127 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/07/29(日) 00:13:50.19 ID:JZ/lMrCDO

「いやー軽かったしさ。危ないもいんじゃないと思って」

アハハと笑いながら答えてくる日向。
笑いごっちゃねーよ。

「だとしてもだ。不用意に過ぎるぞお前。今後はやめとけよ?」
「はーい」

悪びれた様子もなく、軽く返事する日向。
大丈夫かこいつ・・・。
しかし内心ではこう思いつつも、あえて俺はこう言わせてもらおう。
スレ住人さん、GJ!

「でもさ、実際のところどう?嬉しい?ねえねえ嬉しい?」

うりうりと俺の頬を指でクリクリしながら、日向が悪戯っぽい笑顔で聞いてくる。
相変わらず聞き方うざいなお前。
あと顔近い!
・・・ま、まあ実際?嬉しくないと言ったら嘘になりますけどね!!
・・・ん?嬉しい?

「・・・日向ちゃん?」
「ん?なに?」

日向はかくんと首を傾げて答えてくる。
だからお願いだからそれやめて。
いつも可愛いのに、今日は眼鏡の破壊力が付与されてんだぞ?
はっきりいって心臓に悪い。
いかん。冷静に冷静に・・・。

「・・・なんで、『似合う?』でも『可愛い?』でもなく・・・俺に嬉しいか、聞いてくるのかな?」
「え?だって高坂くん眼鏡フェチなんでしょう?」

ばれてるーーーーーーーーーーーーーーっ!?

128 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/07/29(日) 00:15:14.78 ID:JZ/lMrCDO

え!?なんで!?どうして!?
なんで俺の秘密の嗜好が小学生女子にダダ漏れになってんの!?
ちょ、ま、これどんな罠な訳!?
お、落ち着け俺。
まずは息を整えろ。
そして素数を数えろ。
クールだ。クールになれ高坂京介。

「だ、大丈夫高坂くん?なんかすごい汗だよ?」

日向が驚いたような顔で俺に声をかけてきた。
だからそのままで顔を覗き込むなー!!
可愛すぎるんだよ!
俺の心臓はもうさっきから臨界点突破してんだよ!
お前俺を萌え[ピーーー]気か!?

「ひ、日向ちゃん・・・お、お願いだから、その眼鏡外してくれるかな・・・?」
「なんで?気に入らなかった?」
「い、いや大いに気に入ったんだけど・・・その、正直俺の身がもうあんまし保ちそうにない・・・」

息も絶え絶えにそれだけをお願いしてみる。
下手すると理性も保たねーかもだしね・・・。

「ふーんそっか。なんかよくわかんないけど、高坂くんがそういうならもう掛けないよ」

日向は残念そうな声で眼鏡をはずそうとする。
慌ててフォローに入る。

「あ、いや・・・か、掛けないでくれとは言ってないんだけど・・・」
「?」
「あー・・・つ、次来たときは・・・掛けててくれていい」

俺も心の準備をしてくるしね。
って何言ってんだ俺は小学生相手に。

「うーんやっぱりよくわかんないけどわかった。次は最初から掛けてるね」

首を捻らせながらも、なんとか理解してくれたようだ。
よかった。
この眼鏡美少女を二度と見れないのは、正直勿体無いからな。

「あ、ああ。ありがとね日向ちゃ・・・」

ちゅ

「じゃ次までのマーキング」

ペロッと舌を出して、はにかむように微笑む眼鏡日向。
はい俺死んだー。今死んだー。
油断したところにメガネ美少女のドアップktkr。
日向ちゃん。俺のライフはもう0よ・・・。
129 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/07/29(日) 00:17:09.57 ID:JZ/lMrCDO

その後数分間気を失った俺を、日向ちゃんが真っ青になって介抱してくれたとかなんとか。



「じゃ、帰るな。悪かったな気絶なんかしちゃって」
「ほんとだよ。あたし気が動転してルリ姉に電話するとこだったもん」

ふうっ、と苦笑いを浮かべて日向が言う。
・・・よかった俺気がついて。
だって黒猫とか来てたら、気絶の理由話さなくちゃいけねーじゃん。
・・・地雷どころの話じゃねーからなマジで。
ちなみに今日向はもう眼鏡は掛けていない。

「っとそうだ、日向ちゃん」
「ん?なに?」

そうそう。
帰る前にこれだけは聞いておかねばなるまい。

「えっとさ、その、日向ちゃんに教えたの誰?」
「へ?なにが?」

頭にはてなを浮かべて聞き返す日向。
あーやっぱはっきり言わなくちゃダメかー・・・。

「俺がその・・・メガネ好きって・・・」
「ああ。キリ姉」
「やっぱりかあの野郎!!」



その後家に帰り、早速桐乃を問い質したところ、『いろいろ葛藤はあったけど、リアル妹ができるならって納得した』とのこと。
なんのこっちゃ。
後日、俺のもとに少女物の薄い本が届いたりしたのだが、それはまた別のお話。
130 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/07/29(日) 00:20:18.23 ID:JZ/lMrCDO
以上です。

しかし日向SSほんとにねーなww
さっきまとめ見たら×じゃなく+だったしなー(;´∀`)
131 :>>118 [sage]:2012/07/29(日) 00:59:13.40 ID:oOzEoNrDO
うおおおマジで届けやがった!
しかも日向かわえぇえええ!?うほぉおおおお!やばいやばいやばい!

取り乱しましたが大変乙です。妙な小猫、もとい小ネタを拾って頂き感謝。

京介が順調にロリコンへ傾き中、大変危険ですw桐乃は桐乃で駆け引き上手いw
132 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(茨城県) [sage]:2012/07/29(日) 01:02:28.77 ID:hrIbeOyoo
乙〜
珍しい日向×SS俺得だ!
だが実は眼鏡属性が俺には無かったwwなんてこった
133 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) [sage]:2012/07/29(日) 01:20:48.96 ID:A05oz9cAO
>>130
コレは良いロリコン誕生記ww
京介が日向に陥落される日はそう遠くないようだww

今後は、日向が家事の手伝い(特に料理)を積極的にし出したり、自分と同じ様にに髪を降ろしたり、京介の態度がよそよそしくなったりと、不振に思った黒猫が京介と日向がキスしているのを目撃して、一悶着あるわけですね

続きが気になるなぁ(チラッ
134 : ◆YHxtVKAHbw [sage saga]:2012/07/29(日) 01:45:08.61 ID:us8t0VD5o
>>129
乙です。
桐乃、そういう理由で納得するなよwww

あと、>>128にsagaが入ってないので[ピーーー]変換されちゃってますよ。
135 : ◆YHxtVKAHbw [sage saga]:2012/07/29(日) 01:49:10.25 ID:us8t0VD5o
フェイトさんのFX奮戦記を書こうとしたが
俺自身のノンフィクションになりそうな悪寒。
136 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/29(日) 06:53:30.58 ID:lWUqgZm40
>>130
乙乙!日向可愛いじゃないか!!
137 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/29(日) 08:32:56.56 ID:ThoJuJGj0
一気にペド祭に発展しそうな悪寒
138 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/07/29(日) 08:56:59.62 ID:3FyWbSRpo
ペド坂くんだああああああああ
139 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/30(月) 02:24:51.17 ID:d7kA9LUDO
「・・は?黒猫氏、とりあえず落ち着くでござる。
え?・・・・はぁ。・・・・はぁ。
まずもう少し落ち着くでござるよ。

・・・・はぁ。なんとなく理解してきたでござる・・・・。
つまり平たく言えば京介氏のロリコンを矯正したい、と・・?
・・・・・・。
そう大きな声を淑女が出すものではござらんよ?」

(胃薬、胃薬飲まなきゃ・・いたた)
140 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/07/30(月) 20:44:45.77 ID:xF92xcFDO
>>137
いや、俺が書いてるだけで祭りにはならないだろーが・・・その悪寒が気に入った(´゚д゚)d
ぺドSS続行やってやんよ!

ちなみにぺドがわからなくて、ググッたあと凹んだのは内緒だ…orz
141 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/07/30(月) 20:47:09.09 ID:xF92xcFDO

「ふう、まだ寒いな・・・」

何度目かの家庭教師を終え帰路につこうとしたその時、

「おにぃちゃん」

掛けられた声に振り向くと、五更珠希――――日向の妹が玄関からちょこんと顔を出していた。

『ぺドと言われて泣いたから』
142 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/07/30(月) 20:48:46.81 ID:xF92xcFDO

「ん?どうしたの珠希ちゃん?」

俺がそう声を掛けると、珠希はててててっと俺のすぐ傍まで走ってきた。
相変わらず可愛らしい擬音の似合う娘だな。

「あのですね・・・」
「うん、なに?」
「どうしておねぇちゃんとちぎりをむすんでいたのですか?」
「・・・ごめん珠希ちゃん。ちょっとお兄ちゃんにもわかるように言ってくれるかな?」

俺は視線を合わせるようにしゃがみこむと、意味不明の単語に疑問符を浮かべる。
契り?結ぶ?
以前黒猫と付き合ってる時に聞いた言葉だが・・・ん?いや、いやいやちょっと待てよ!?
あれは確か初めて黒猫の家にきて、日向と珠希に会って・・・そんで・・・ああっ!!

「ちょちょっと待った珠希ちゃん!」
「えーと・・・どうしておねぇちゃんと、ちゅーしていたのですか?」

やっぱりだーっ!
143 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/07/30(月) 20:55:05.40 ID:xF92xcFDO

「み、みてたの?」
「はい」

にっこりと笑いながら無邪気に答える珠希。
・・・そういや俺の家庭教師中、この子どこに居たんだ?

「珠希ちゃん?」
「はい?」
「お兄ちゃんと日向ちゃんがお勉強してる時、珠希ちゃんはどこに居たのかな?」
「おねぇちゃんに言われておへやにいました。おねぇちゃんが『こうさかくんはあそびにきてるわけじゃないんだから、たまちゃんはおへやから出ちゃだめだよ?』ていいました」

あーいーつー!
追い出し方がまるっきり黒猫とおんなじじゃねーか!!
それで失敗した姉の姿をお前は知ってるだろう張本人!

「でもやっぱりおにぃちゃんにあそんでもらいたくて、え本をもっておへやをでてしまいました」

悪いことをしたんだと思ってるのだろうか、珠希は少ししゅんとしているようだった。
まったく。

「ごめんな珠希ちゃん。これからは一緒に居ていいからね?」
「・・・いいですか?おねぇちゃんおこりませんか?」
「怒るわけないだろ?今まで日向ちゃんが怒ってるとこ見たことあるか?」
「・・・ないです」

だよな。
日向はなんだかんだで珠希には大甘だからな。

「だったら平気だ。なんなら俺から日向ちゃんに言っておいてやる」
「ほんとですか!?」
「ああ」

笑いながら頭をなでてやると、パアッと顔を明るくして珠希が抱きついてきた。

「うれしいですー」
「はは、これからよろしくな」

しかし本当にうちの妹とは別もんだな・・・。
なんか悲しくなってきた。
「それでおにぃちゃん?」
「ん?なんだ?」
「どうしておねぇちゃんとちゅーしてたんですか?」

忘れてたーっ!!
今それ聞かれてたんだよ俺っ!
144 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/07/30(月) 20:58:29.78 ID:xF92xcFDO

「あー・・えーっと・・・」

なんて言う!?考えろ俺っ!!

「えーっと・・・こ、これからも仲良くしようねっていう意味でしてたんだよ?」
「?」
「ほら今、俺は日向ちゃんに勉強教えてるだろ?だから喧嘩しちゃったらできないだろ?だから仲良くしようねって意味でしてたんだぞ」

どうだこの言い訳!
一瞬で考えたとは思えないだろ!?
伊達に理不尽な妹や電波の元彼女、ちょっとヤンでる中学生に鍛えられてないっての!
・・・ろくな奴いねーな俺の周り・・・。

「へええ」
「わ、わかってもらえたかな?」
「はい!」

珠希はぐっと拳を上に突き出して全身で肯定を表した。
はは。ホントに可愛いなこいつは。

「じゃあわたしにもちゅーしてくださいおにぃちゃん」
「なんでそうなる!?」

えーっ!?なに言っちゃってんのこの子!?

「ど、どうしてかな珠希ちゃん?」
「わたしもおにぃちゃんとなかよくしたいです」

ニコッと珠希が笑って言った。
あーそっかそっかそーきたかー。
なるほどな―そりゃそうなるか―・・・って俺のバカー!!
145 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/07/30(月) 20:59:30.76 ID:xF92xcFDO

「えーとえーと・・・」
「・・・なかよくするのいやですか?」

泣きそうな顔やめてっ!
・・・あーもう。
これ一回だけ・・・これ一回だけ・・・。

「・・・おねぇちゃんには内緒にできる?」
「?ないしょなんですか?」
「そう。できる?」
「んーと・・・はい!ないしょにできます!」
「よし。じゃ・・・目瞑って・・・」
「はい!」

ん、と素直に目を瞑る珠希。
・・・こうして見るとやっぱ似てんだよなこの三姉妹。
やっぱ可愛い・・・って、さすがに珠希はヤベーだろ!?
いかんいかん・・・変な気持になる前に・・・。

ちゅ。

「・・・はい。もう目、開けてもいいよ」
「はい・・・えへへ」

少し照れくさそうに笑う珠希はギュッと俺に抱きついてきた。

「えへへ、おにぃちゃんだい好きです」
「はいはい、俺も大好きだよ」
「・・・なにをしているのかしら?」

後方からの声に、ポンポンと珠希の頭を叩いていた手が一瞬で硬直する。
ちょ、ま、このタイミングで・・・?

「あ、姉さま」

黒猫登場かよ!?
146 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/07/30(月) 21:00:28.93 ID:xF92xcFDO

「よ、ようおかえり・・・」

俺はギギギッと油の切れた人形のような動きで首を後ろに向けた。

「ええ、ただいま。で?もう一度聞くわ。なにをしていたのかしら?」
「た、珠希ちゃんとスキンシップ?」
「・・・アパートの廊下で?」
「か、帰ろうとしたら、珠希ちゃんが出てきちゃって・・・」
「へえ・・・そうなの珠希?」
「はい!」
「・・・嘘じゃないわね?」
「はい!姉さま」

黒猫の言葉に元気よく返事する珠希。

「ふぅん、そ」

珠希の言葉に、不承不承といった体で納得する黒猫。
やっべー!
間一髪だったよ今俺!
見られてたら完全にアウトだったよ!!
ありがとう珠希!

「おにぃちゃんにチューしてもらいました!」
「うおおおい!言っちゃうのかよ!?」

さっきお兄ちゃんと約束しただろ!?

「?・・・おねぇちゃんには言ってませんよ?」

頭にはてなを乗っけたまま珠希は、間違ってないよね?てな風情で聞いてきた。
あーそっかー、そうだよねー。
おねぇちゃんは日向であって、黒猫は姉さまだもんねー。
そっかそっかーあははは。

「・・・先輩?」
「はいぃ!!」
「・・・ちょっと・・・お話をしようかしら?」

やばい。
これ俺死んだね。
だって黒猫の目に・・・光彩がねーもん

「珠希は先に帰っていてちょうだい」
「はい姉さま」

ててててっと、出てきたときと同じように走り去ると、玄関に入る直前俺を振り返って珠希はこう言った。

「またですおにぃちゃん」

ほわんとした笑顔で手を振ると、パタンと扉を閉めた。
ふるふると手を振り返しながら、俺は心で呟いた。
珠希ちゃんごめん・・・。

「・・・さ、先輩?行きましょうか・・・?」

次は・・・ないかもしれん。

>>139に続く。
147 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/07/30(月) 21:03:05.62 ID:xF92xcFDO
以上。
ぺドと言われて、悔しくて勢いで書いた。
後悔はしていない(´ω`)b
148 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/07/30(月) 22:11:45.91 ID:Gi3LCjTto
玉卵
149 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/30(月) 22:36:53.81 ID:nquQwcsDO
ペド坂くんだあああぁぁぁぁ
150 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/31(火) 00:27:00.21 ID:eWmsVi+DO
これはペドい


つまり素晴らしい。
151 : ◆YHxtVKAHbw [sage]:2012/07/31(火) 02:05:45.22 ID:b9dmCdVxo
>>146
乙です。
珠希が無垢すぎるww

ところでこれって時系列的には黒猫が転校して狂気の街に引っ越した後、だよね?
152 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/31(火) 02:32:01.53 ID:eWmsVi+DO
>>139も眼鏡を送り付けたのも俺な件w

あんたとは美味いペd・・美味い酒が飲めそうだ

ようこそ、ペd

黒猫姉妹好きの世界ヘw
153 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/07/31(火) 08:37:39.06 ID:sonh45PDO
だから、ぺドぺド言うなお前ら。いい加減泣くぞ?ww
ほんとVIPは楽しいなww

>>152
お・ま・えww
どんだけのトラップマスターだよ?ww
ここまでさせたんだ、せめて>>139の矯正話は期待するかんな?

>>151
そだよ。だから場所がアパートの廊下。
つかあんたも書いてくれ;
俺だけだと、なぜかぺド呼ばわりされて悲しくなるからorz

>>149
つか、日向モドキうるせえww
京介聞いたら泣くぞ?ww
154 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/31(火) 22:11:12.89 ID:jkQvkdMP0
>>146 乙です

ところでペド板にはどうやって行けばいいんですかね?
155 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/08/01(水) 00:33:21.22 ID:qDCIYYYDO
>>154
知らねーよ!?Σ(゚д゚;)

なんだかまぁ、乙に変なもんくっついてるけどありがとさん。

さて小ネタ一つ投下。
156 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/08/01(水) 00:34:21.75 ID:qDCIYYYDO

「だからね、ご近所でも噂されてるのよ」
「だからそれは誤解だって言ったじゃん」

自由登校になった2月末。
あたしと京介はリビングでお母さんと向き合っていた。

『お母さんは心配性』
157 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/08/01(水) 00:35:10.82 ID:qDCIYYYDO

「そうなんだけどさー、お母さん心配で」

そう言ってお母さんは困ったような顔で頬に手を当てる。
心配してくれるのは嬉しいけど、見当違いも甚だしいといい加減うんざりしてくる。

「あたしが京介とどうこうなんてあるわけないでしょ?」
「あんたはそーはゆーけどねー・・・」

お母さんはちらりと、京介を見ると、また一つ大きなため息をついた。

「もー、その為にこいつが一ヶ月一人暮らししたんじゃない」

そう、あれは10月初めのころ。
とある件で、お母さんにあたしと京介がただならぬ関係(キモッ!)ではないかと疑われたことがあった。
当然全くの誤解なので必死に弁解したんだけど、結果は芳しくなく、京介が一か月一人暮らしをする羽目になった。
・・・正直ウザい奴が消えてくれてあたしは大喜びだった。
その上、京介の部屋を自由に使っていいわけだから二重に万々歳だ。
・・・ま、結局一か月後には帰ってきちゃったんだけどね。
でもま、そんなわけで。

「あれでチャラになったんじゃん」
「それはそうなんだけど・・・京介?あんたはどうなの?」

お母さんはまたため息をつくと、今度は京介に矛先を向けた。
むー・・・お母さんちょっとしつこくない?

「い、いやだから誤解だって言っただろ?」

どもんなバカ!
変に勘ぐられたらどーすんの!?

「こんなプリクラまで撮っておいて?」

お母さんはピッ!と指先に貼ったプリクラを見せてきた。
あ、そーだった!!

「だからそれは、桐乃への嫌がらせだったって・・・いてっ!つねんなよ桐乃!」
「うっさい!思い出したらムカムカしてきた!そーよ!あんたがあんなもん貼るからこんな事になったんじゃないっ!!」

こいつがこんなもん貼るから、あたしは京介と一か月も離れて・・・って違うっ!!

「い、いやだから悪かったって・・・」
「ふんっ!」

そんなもん謝罪になるかバカッ!
・・・顔が熱いのは部屋が暑いせい!あーもーエアコンきき過ぎっ!!
158 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/08/01(水) 00:36:05.10 ID:qDCIYYYDO

「・・・まーねー、お父さんもこの件をこれ以上追及するなって言うんだけどねー・・・」
「ならもういいじゃん。ホントお母さんは心配性なんだから」

あたしが笑うと、お母さんもどうにか納得したのか、小さく息をついて笑顔を浮かべた。

「ふう、まあいいわ。あんたがそう言うんなら信じてあげる」
「ありがとうお母さん」
「す、すまねーなお袋」

誤解が解けてなによりなにより。
ま、本当に何もないんだから当然ちゃ当然なんだけどねー。

「はいはい。まあ、とりあえず・・・桐乃?」
「ん?」
「京介の膝から降りなさい」
「え?やだ」

あれ?なんで二人してため息ついてんの?


END
159 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/08/01(水) 00:36:45.75 ID:qDCIYYYDO

以上です。
160 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(佐賀県) [sage]:2012/08/01(水) 00:44:56.33 ID:/b8q5ty4o
別に本人が違うって言ってれば膝の上に乗ってても問題ないよね(´・ω・`)
161 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/01(水) 00:50:02.69 ID:ibhGFS1aP
桐乃が膝に座ってるなら匂いが気になって京介がどもってもしかたないな
162 : ◆YHxtVKAHbw [sage]:2012/08/01(水) 01:19:52.98 ID:BR3oCDRdo
>>158
乙〜。
桐乃ってこんなに可愛かったっけww

>>153
>つかあんたも書いてくれ;
俺だけでなく前スレの投下人たちにも参上願いたいものだがww
ちなみに次回投下分は出来てて現在推敲中。
163 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/08/01(水) 07:44:33.02 ID:PA+xYHEDo
素晴らしい作品の投下が続いてるな
最近買ったゲームに夢中で暫く離れてたがそろそろ何か書くかな
164 : ◆YHxtVKAHbw [sage saga]:2012/08/01(水) 08:08:55.44 ID:BR3oCDRdo
つらつらと書き綴ったので投下します。
はっきり言って山場も無ければオチも無いのに無駄に長いのでお気をつけください。
時系列的には桐乃がアメリカから戻って以降ですね。
夏休み前あたりを想定してるので、まだ黒猫とは付き合ってません。

今回もタイトル未定です
165 : ◆YHxtVKAHbw [sage saga]:2012/08/01(水) 08:09:33.38 ID:BR3oCDRdo
 桐乃がまた小説を書くと言い出した。

 俺は例によって例のごとく取材と称して引きずられる運命となった。


 という訳で着いたのは──

「なあ、桐乃」
「なに?」
「なんでまた皇居なんかに。皇室でも題材にするのか?」
「違うよ。あたしが見たいのはあくまで江戸城址」

 江戸城、ね。
 どうやら時代小説のようだ。
 これなら危ない事を書いて不敬罪でしょっ引かれる事は無さそうだが。

 現在地、堀の前の道路。
 桐乃は現在の地図と古地図、江戸城の図面を見比べている。

「江戸時代の火事で無くなっちゃったけど、天守があったのはこの方向か……よし」

 ……この時点で嫌な予感がするのは気のせいだろうか。

 桐乃はおもむろに紙袋を俺に差し出してきた。

「なにこれ?」
「ロケット花火」

 ちょっと待てちょっと待てちょっと待て!

「城攻めのシーンを書きたいんだけどさすがに大砲、当時の大筒なんて用意出来ないから」

 そういう問題ではない!

「それじゃ、あっちの方向にぶっぱなして」
「思いっ切り逮捕されるわ!」

 皇宮警察本部マジ近衛兵(マジのマジで)。

 ていうか皇居でなく他の城跡でも公共物に向かって花火を打ち上げたらマズイだろう。

「大丈夫。あたしは離れてるから」
「お前じゃなくて俺がだ!」
「その程度のリスクは覚悟してる」
「俺は覚悟できねーよ!?」

 桐乃はチッと舌打ちし、

「使えねー……」

 このシチュエーションで使える奴っているのか? と小一時間問い詰めたい衝動を俺は何とか押さえ込んだ。

「だいたい、取材って他にもあるんだろ? ここで俺が国家権力によって強制退場させられたらこの後どうすんだよ?」

 桐乃はしぶしぶといった感じだがどうやら納得してくれたようだ。

「じゃあ、ここの取材は一番最後にする」

 ──前言撤回。
 このアマ、全然納得してねー!

「最後でも俺はやらん!」
166 : ◆YHxtVKAHbw [sage saga]:2012/08/01(水) 08:10:03.19 ID:BR3oCDRdo
 続いて到着したのは──

「なあ、桐乃」
「なに?」
「赤穂事件でも題材にするのか?」

 泉岳寺である。
 江戸城松の廊下の刃傷事件で切腹になった浅野内匠頭、その仇討ちをした大石内蔵助ら赤穂浪士の墓がある寺だ。

「直接的には関係ないケド、時代的には同じ時期を想定してるから一応」

 元禄時代に江戸城攻めの戦ってあったっけ?
 ていうか江戸城を舞台にした戦なんて、室町時代の江戸城築城した太田道灌死後の内乱程度だったと思うのだが。
 幕末にしても勝海舟とかの活躍によって無血開城したわけだし。

「あのねー、あたしが書こうとしてるのは歴史書じゃないの、小説! あくまでフィクションなの!」

 ま、まあ確かに水戸徳川家の隠居爺は日本漫遊なんてしてないし、八大将軍は旗本の三男坊を自称して火消し一家に居候なんてしていないし。

「あと、現代からお医者さんがタイムスリップしてくるから」

 JINかよ!? あ、あれは幕末だっけ。

「ちなみに針灸医ね」

 現代から来た意味ねー!

「江戸時代には発見されてなかったツボの知識を引っさげて、敵を体内から破壊するの」

 北斗の拳かよ!?


 ここで俺はある事をふと思い出した。

「ところで桐乃。今までの取材で、妹に関係するモノは無いようだが?」

 そう、桐乃が書く小説で妹が登場しないのはおかしい。

 しかし桐乃は俺の発言に対し何を勘違いしたのかジト目で「シスコン」と答える。

 いやいやいやいや。
 リアルでは俺は桐乃に対してシスコンと言われても仕方ないが、フィクションにおいては桐乃の方がよっぽどシスコンですってば。

 過去書いた桐乃の小説は理解できない世界だし、ゲームに置いても俺は未だに妹に対してアレやコレやをやるストーリーには抵抗がある。
 さしずめ俺はリアルシスコン、桐乃はリアル&フィクションシスコンといったところか(桐乃の場合、黒猫の妹も萌えの対象なので)。

 俺の質問の意味をようやく理解したらしい桐乃は、

「今回は今までのあたしの小説には無い斬新なストーリーにするつもりだから」

 と言う事は妹は登場しない、と?

「主人公のセリフは最初から最後までずっと男言葉で通すの。他の登場人物も主人公の性別に関するセリフは無いようにする。そうすると読者は『あ、主人公は男だな』と思うでしょ? ところがここにどんでん返しがあるワケ。主人公は実は妹だった! とね」

 ここでこの質問を桐乃に対してしてはいけないんだろうな、と思いながらもあえて聞く。

「誰の妹?」

 桐乃は途端に機嫌を損ね、

「妹は妹よ」

 答えになってねー。

 俺は幼稚園児に説いて聞かせるように、

「桐乃、お前は妹だよな?」
「なにいまさら当たり前のこと言ってんの?」
「でも、それは俺の妹という訳で、兄にしろ姉にしろお前の上にきょうだいがいない限り妹ではない。つまり、お前の家族に俺がいなかったとしたらお前には妹という属性は無くなり、単なる親父、お袋の娘でしかなくなる。分かるよな?」
「ワケ分かんないコト言わないでよ。京介がいようといまいとあたしは妹よ」
「だから、誰の妹なんだよ?」
「妹は妹って何度言ったら分かるの!?」

 逆ギレしやがった!

 いつもの桐乃ならこの程度の分別は出来ている(と信じたい)が、今は小説にのめり込んでテンションMAXのせいかヤバい状態になってる。

 これ以上この話題を引きずるのは俺の生命にも関わるような気がする。
167 : ◆YHxtVKAHbw [sage saga]:2012/08/01(水) 08:10:34.51 ID:BR3oCDRdo
 しかしそのトリック(と呼んでいいのかどうか分からんが)を実践するには問題点がある。

「主人公の名前はどうすんだよ? 現代だと色んな名前があるから、聞いただけだと男なのか女なのか分からないというのも結構あるけど、江戸時代だろ? ナントカノスケって名前を女に付けるわけにはいかないだろ?」
「あだ名というか通り名で呼ばせるようにしたらいいじゃん。本名なんて出さなくてもストーリーは進めれるよ。もちろん作中には出さなくても設定として名前は決めてるよ」
「……言ってみろ」
「みやび」

 やはりエロゲネタか。

 しかし名前でなく通り名で呼ばせ、尚且つ性別をうやむやにしても違和感無いようにしようとしたら、主人公は江戸の町で普通に生活しているとは考えられない。
 どうしても盗賊とかそういう素性になってしまうだろう。

「主人公の職業は?」
「普通の町人の娘だとみやびって名前はこの時代だと高貴すぎるよね」
「そうだな」
「この名前に説得力持たせようとしたら花魁さんしかないでしょ?」

 いやいや、公家なんかにもあるかも知れないじゃないか。
 やはりこいつの脳はエロゲ脳か?
 ていうか、花魁って女でしかありえないじゃないか。
 これでどうやって性別をうやむやにするんだ?
 完璧に破綻している。

 だが、今の桐乃には何を言っても無駄だろう。

「──そうかい」

 これ以外にどうコメントしたらいいんだ。


「無駄話してるヒマは無いよ。取材するよ」

 と桐乃。
 ここは依然として泉岳寺である。

「はいはい、とっとと終わらせようぜ」
「それじゃあアレに向かってロケット花火ぶっぱなして」

 やっぱりそれか!?
 しかもアレって浅野内匠頭のお墓じゃないか!?
 お墓にそんなことしたらバチ当たるぞ!?

「京介がやるんだからあたしにバチは当たらないよ?」

 なにキョトンとした顔で言ってるんだ、こいつは!?

「あのなあ、小説のイメージを掴むためにストーリーを実践してみるのは分かる。実際にそういう作家もたくさんいるだろうからな。だが、法律とか公序良俗に反する行為はダメだ。ミステリ作家だって取材で本当に人を殺したりはしないだろう?」

 あと、違反行為ではないが、ファンタジー作家だって魔法なんか使えないしな。
 自分はナントカの転生ですごいチカラを持っていると思い込んでいる知り合いならいるが。
 たとえば黒猫とか黒猫とか。

「だから、現代日本においての常識内での取材なら協力するけどロケット花火は止めておけ」

 お願いですから、桐乃さん。

 桐乃は頬を膨らませ唇を尖らせた。

「……じゃあ、次に行くよ。今度こそ協力してもらうから」

 ──へいへい。
168 : ◆YHxtVKAHbw [sage saga]:2012/08/01(水) 08:11:04.96 ID:BR3oCDRdo
 続いて到着したのは吉原である。

 なるほど、『みやび』は花魁だからか。
 それにしてもこいつはどうやってこの主人公の性別をうやむやにするんだ?
 謎は深まる。

「それじゃ、あそこの喫茶店で待ってるからソープランドってとこ行ってどんなサービス受けるのか実地体験してきて?」

 いきなり爆弾投下しやがった!

「ただし、最後までやったら殺すから」

 そういう問題じゃなくて!?

 だいたい、そういうお店に行ってお姉さんとハダカになって入浴だけして帰ったら俺自身いろんな意味で耐えられないんですけど!?
 そもそも、そういうお店に出せるほどの大金なんて持ってきてねーし!?

「──桐乃、訂正だ。万単位の金銭の協力も俺には無理だ」

 すると桐乃は気味悪くなるくらい満面の笑みで、

「昨日『妹空』増刷の印税の振込みがあったから取材費用なら出すよ?」

 ……クリスマスの取材では俺の金で一万のピアス買わされたのにいったいどういう心境の変化だ?

 まあ、金の心配しなくていいのなら、喜んで突撃取材に──

「行かねーよ!!」


「江戸城攻撃シーンもダメ、泉岳寺爆破シーンもダメ、吉原遊郭シーンもダメ。全く取材にならないじゃん」

 さっきから桐乃がブツブツ言ってるが、俺は爽やかに無視する。

 ていうか、お墓にロケット花火打ち込むだけでなく寺そのものまで破壊するなんて大それた事を考えていたのか、こいつは?

 ちなみにソープランドに俺を行かせようとしていたのは、主人公『みやび』の普段の仕事を書きたかったかららしい。
 本当にこれでどうやって性別をうやむやにするつもりだったんだ?
 野郎言葉の遊女なんて絶対に萌えないぞ?

 しかし、不思議な事に桐乃の脳内ではこれでもしっかりと整合性は取れているらしい。

 そもそも、遊女のお仕事シーンなら客の立場ではなく実際に働いている立場で取材した方がいいんじゃないだろうかとも思うが、それは俺的に絶対にやらせない(さっき「仕方無いからちょっとあたしが面接受けてくる」と言うので、年齢的にアウトだ、小説の取材のために下手したら店一つ潰すことになる、となんとか思い留まらせた)。

 言い忘れたが、ここは喫茶店である。
 俺はコーヒー、桐乃は紅茶を飲んでいる。
 店内には俺たちの他にこれから出勤なんだろうとおぼしきお姉様方が何人かいる。

 実は俺は何度も桐乃に取材メモとかを見せろと言っているのだが、クリスマスの時と違って頑なに拒否されている。
 これじゃあ協力するにも何も出来ない。

「そうだ!」

 何やら桐乃の脳内ランプが点灯したようだ。

 桐乃はいきなり立ち上がり、店内を歩く。
 目指すは気だるそうに煙草をふかしているお姉さん。

「あの、済みません! ちょっと質問なんですけど、お姉さんは何のお仕事──」

 この時の俺のダッシュスピードは間違い無く陸上選手の桐乃よりも速かっただろう。

 俺は素早く桐乃の背後に駆け寄り、片手で桐乃の片腕を羽交い絞めし、もう片方の手で桐乃の口を塞いだ。

「いやー、何でも無いっす! いま起こったことはきれいさっぱり忘れてください!」

 じたばたしながら「むー、むー!」と叫ぶ桐乃を引きずって元の席に戻る。
 お姉さんは当然のことながら口をポカンと開けていた。

「何すんのよ!?」
「それはこっちのセリフだ! お前何やろうとしてたんだ!?」
「見て分かんない!? インタビューに決まってんじゃん!」

 見て分かったからこそ止めたんだがな!
169 : ◆YHxtVKAHbw [sage saga]:2012/08/01(水) 08:11:33.71 ID:BR3oCDRdo
 しかし改めて見ると凄く綺麗なお姉さんだな。
 大人の色気っていうのがムンムンしてる。
 年齢は二十代半ばから三十代、店のプロフィールには二十二歳と書かれてるって感じ。
 こんな美人があんな事やこんな事を──

「エロキモい」
「ハハハ、何言ってんだ桐乃。さ、飲み終わったら外に出るんだ。お茶代くらい払ってやるよ」

 桐乃の背を押すようにして店の外に出し、レジで精算していると、先ほどのお姉さんが妖艶な笑みで近付いてきて、

「いつでもいらっしゃい。サービスするわよ?」

 と耳元で囁きながら小さな紙を俺の手に握らせた。

 紙を見るとお姉さんのお店での名刺だった。
 本名ではないだろうが、お店での名前は……『みやび』……?

 当然のことながらエロゲの妹キャラのみやびちゃんとは全く違う容姿だ。
 しかしこの喫茶店には他にもお姉さん方はいらっしゃるのにピンポイントでこの名前の人にインタビューを敢行しようとしていたとは、桐乃の嗅覚おそるべしってところだな。
 ひょっとしたら桐乃の脳内イメージによる花魁『みやび』に似ていたのかもしれない。

「あー、みやびさん、抜け駆けずるい!」
「わたしも!」

 気付いたら喫茶店内にいるお姉さんたち全員(みんな凄い美人)から名刺を頂いていた。
 それぞれ『いきな』『くいな』『しおり』『ファナ』だった。
 この人達のお店のオーナーはエロゲオタか?


「おっそーい! 会計するのにどんだけ時間かかってんの!?」

 店から出ると桐乃はお怒りモードだった。

「あー、この喫茶店のマスターにちょっと探り入れてたんだ。少しでもお前の取材に協力してやろうと思ってな」

 口から出まかせ言うと桐乃は目をパチクリと瞬いて、

「へえ? あんたにしては殊勝な心掛けじゃん? なんか面白い情報あった?」
「いま店にいた女のお客さんはみんなそういうお店で働いている人たちだってさ。マスターから名刺貰った」

 お姉さんたちから直接貰ったとは言えないので嘘を付きつつ桐乃に名刺を渡す。
 俺がポケットに入れっぱなしにしたままお袋が洗濯しようとして気付く、なんて事があったら桐乃のオタバレイベントどころの騒ぎではなくなる。
 かと言って仮にも名刺、捨てるのも忍びないので所有権を妹に譲渡したという訳だ。

 桐乃は名刺の名前を見て、

「すごーい。オーナーさん分かってるねー」

 心から感心しているようだ。

「でさでさっ! 他に何か分かった事ある!?」

 大昔の少女漫画のキャラクターのように桐乃は目をキラキラさせた。

「あ、いや、これだけだけど?」

 途端に「信じらんない」という表情。

「名前だけ分かっても意味無いじゃん!? もう一度聞いてきてよ!?」

 いま店内に戻ったら、お姉さん方のお店に拉致されて回されたあげく法外な代金を請求されそうな予感がする。

「タダで聞けるのはこれだけだって。これ以上の情報は百万だってさ」

 口から出まかせパート2。
 半端な値段だと取材費なら出すと言いかねないが、この金額だとさすがに桐乃も諦めるだろう。

「そっか……。じゃあ仕方無いか」

 百万あれば情報を聞くまでも無く実地取材を何回も出来るはずだろうに、なんで桐乃は気付かないんだ?
 相変わらず妙なところで抜けている。
170 : ◆YHxtVKAHbw [sage saga]:2012/08/01(水) 08:11:59.32 ID:BR3oCDRdo
 最後の取材の地は──

「おい桐乃」
「なに?」
「……いやなんでもない」
「だったら話し掛けんな」

 だってさ!?
 どう突っ込めばいいの!?
 江戸時代を舞台にした小説の取材で東京スカイツリーなんてさ!?

 桐乃は展望台から見える風景をケータイカメラでぱしゃぱしゃ撮っていた。
 どう見ても取材ではなくただの記念撮影。
 たまたまそばを通りかかった人に頼んで俺と並んだところを撮ってもらうなんて、小説となんの関連性があるんだ?

 あれ?
 展望台から見える風景をバックに桐乃とツーショット?
 これって傍目からだとどう見ても──

「なに呆けてんのよ。そんな暇あったらケータイ貸して」

 返事も待たずに桐乃は俺のポケットから携帯電話を勝手に取り出し、

「済みませーん。このケータイでもあたしたちの写真撮って下さーい」

 どう見てもアツアツバカップルデートじゃないですか!?
171 : ◆YHxtVKAHbw [sage saga]:2012/08/01(水) 08:12:29.25 ID:BR3oCDRdo
「──なんて事が先日あってな」

 放課後のゲー研の部室で俺は黒猫に話していた。
 ここには現在俺と黒猫しかいない。
 他の連中は掃除当番か日直か何かで遅れているんだろう。

「はぁ……」

 これは黒猫の溜息だ。

「呆れてものも言えないわ。兄妹の惚気話を聞かされなきゃいけない理由なんて私には何の心当たりも無いわよ?」
「な、なにが惚気だ? 桐乃の思い付きに振り回された俺の不幸な話のつもりだぞ?」
「不幸の割には顔がにやけているわ」

 え? にやけてる?
 そんなつもりは全く無いのだが。

「で、あなたの妹の小説ってこれかしら?」

 言いながら部室のデスクトップのディスプレイの角度を変えて俺に見せる。
『けーたいi倶楽部』のPC用ページ(このサイトは携帯からの操作に特化しているが当然ながらPCからでもホームページの閲覧や編集が出来る)だ。

「えっとどれどれ? あれ? 作者名が『理乃』じゃなく『きりりん』ってなってるぞ?」

『妹空』も元々は他の名前で書いていたが、例の盗作騒ぎでフェイトさんが勝手に名乗った『理乃』の名前でいくことになったのは御存知の通りである。

「あの小説が無駄に評判になったから『理乃』という名前も一つのブランドになってしまった事をあなたの妹は不本意に思っているみたいよ」

 なるほど。
『理乃』で小説を発表したら、あの『妹空』の作者だ、という目で見られるぶん一定のページビューは稼げるだろうが、その代償として正当な評価をされない恐れがある。

「んで、タイトルが『えー毎度』? ふざけてんのか? それにどこにも『妹』なんて入ってないぞ?」

 桐乃らしくないな。

「ふざけたタイトルというのは同意するけど……先輩、どこに目を付けているの? 『江戸』に『妹』という字を挟んで『江妹戸』、そこから転じてこのようなタイトルにしただけってすぐ分かるでしょう?」

 すぐにその回答を導き出せるお前こそ信じられないぞ。

「でも『理乃』でないのに露骨に『妹』という字を使うと、良くてペンネームを変えただけ、下手をしたら『理乃』の二番煎じと思われるでしょうね。これで一般読者の目は誤魔化せるわ。でも身内のあなたが分からないなんて本当に救いようのない莫迦だわ」

 悪かったな。

「まあ、このまえのアレも一応取材だったという事だな」
「そう。そして東京スカイツリーも」
「いやいや、あれだけは本当に無意味だったぞ?」

 黒猫はブラウザで別ページを開く。

 表示されたのは浮世絵のようだった。

「スカイツリー建設は江戸時代に予言されていたという説があるの。ここを見て頂戴」

 その浮世絵の黒猫が指し示す部分を見ると、当時の技術的には有り得ないであろう高さの塔が描かれていた。

「この絵は幕末に描かれたもの。あなたの妹の小説は元禄だから時代は違うけど、位置的には現在のスカイツリーとほぼ同じ場所に描かれているわ」
「う、嘘だろ……?」
「そう、嘘よ」

 なっ……!?

「予言なんてのは嘘。でもこの絵が江戸時代に描かれた事は真実。位置的な部分はただの偶然ね。当時は江戸城よりも高い建物は御法度だったからその鬱憤を晴らすために描かれた、ただの櫓よ」

 ふう。脅かしやがる。

「でも、この高さの櫓が江戸時代に本当にあった、という設定であなたの妹の小説は書かれているわ。相変わらず有り得ない展開だらけで文章も稚拙だけど『妹空』よりも私的には楽しめたわ。悔しいけど本当に面白かったわ」

 黒猫がここまで言うからにはよっぽどの事だろう。

「もちろん、江戸城を見下ろすような櫓は恐れ多い、御法度だという設定はちゃんと生かされていて、取り壊しをしようとする幕府側とそれに対抗するレジスタンスという対立の図式がストーリーの基本となっているようね」

 そこから江戸城攻撃シーンに繋がる訳か。
172 : ◆YHxtVKAHbw [sage saga]:2012/08/01(水) 08:12:56.62 ID:BR3oCDRdo
「赤穂浪士の吉良邸討ち入りは主君の仇討ちではなく幕府への異議申し立てだという説があるのは知っているでしょう?」
「ああ、喧嘩両成敗のところが吉良には何のお咎めも無かった事への抗議運動だったという考え方だな」

 幕府が不平等に扱うのだから自分たちで喧嘩両成敗を成立させよう、という説だ。

「つまり、泉岳寺に葬られている浅野内匠頭や赤穂浪士は反幕府の象徴として描かれている。だからレジスタンスへの見せしめのために、」
「幕府は泉岳寺を取り壊した訳か」
「そう。よく分かったわね」

 なんだ桐乃のやつ。
 しっかりストーリーライン練られてるじゃないか。

「レジスタンスメンバーの一人がタイムスリップして来た針灸医っていうのはちょっと笑えたけど、この程度のお遊び要素は物語のアクセントとしてじゅうぶん機能していたわね」

 北斗神拳の使い手も登場するんだな。

「それにしても私としたことが騙されたわ。主人公は最後まで男だと思ってたのに」

 えぇ──!?

「吉原の花魁が男のわけ無いだろう!?」
「ずっと男言葉だったから遊女だとは思えなかったのよ。せいぜい遊郭の客引きかなにかだろうと思ってたわ。でも主人公が妹だったと分かってから改めて読み返したら、なるほど確かに上客でないと遊べないレベルの花魁だ、という伏線があちらこちらに散りばめられていて。あのビッチによくここまで綿密な計算が出来たものだと本当に驚かされたわ」

 そっか、やはりただの女ではなく『妹』なのか。

「ちなみに、誰の妹だ?」
「妹は妹よ?」

 黒猫さん、桐乃菌に感染してませんか?

 黒猫はフッと笑みを浮かべ、

「これはストーリーの根底に関わる部分だから自分で読んで確認して頂戴。話を聞いた限りでは、あなたの妹の取材で無駄になった行為は一つも無かったわ。そう、」

 いつのまに黒猫の手には俺の携帯電話が握られていた。
 俺の抗議を無視して携帯を操作し、データフォルダから一枚の写真を表示させる。

「──これもしっかりストーリーに反映されてるわね」

 スカイツリーの展望台での俺と桐乃のツーショットがそこには写っていた。

「先輩から取材の話を聞くまで私のこの小説に対する評価は高かったのだけど、ストーリーの中に隠されたこの写真──当時は写真なんて無かったけど──の意味を考えたら私的評価は一気に落ちたわ。ストーリーの根底部分の『妹は妹』も重ね合わせて考えると……よくもまあいけしゃあしゃあと甘々ラブストーリーを書いたものだと反吐が出そうになったわ」

 罵倒しながらも黒猫の顔には笑みが浮かんでいた。

 それにしても幕府と反幕府の図式でラブストーリー?
 バイオレンスじゃなくて?

「でもこれは私の評価に過ぎないし、面白かったと言うのは事実だから誤解はしないで頂戴。あなたの妹──桐乃の小説の完成形と言っても過言ではないから」

 確かに黒猫の解説だけ聞けば凄く面白そうに聞こえるのだが、『妹』が出てくるラブストーリーという部分が引っかかる。
 読んだら俺の中の何かが壊れてしまいそうな予感がする。

「ま、まあ。気が向いたら読んでみるわ……」

 言いながら俺はマウスを動かして浮世絵ページから『けーたいi倶楽部』の『きりりん』ホームページの小説表紙ページに戻す。
 更新日時と現在のページビューを確認するとかなりの勢いで伸びている。
 このペースだと『妹空』もすぐに超えるだろう。
173 : ◆YHxtVKAHbw [sage saga]:2012/08/01(水) 08:13:27.33 ID:BR3oCDRdo
 続いて、この小説の読者レビューを見た。
「ハラハラする展開」だの「映像化希望」だの、概ね好評だ。
 しかし、恋愛要素についてのコメントは見付からなかった。
 事情を知らない人が読んでもラブストーリーには見えないらしい。

「そういえば黒猫? この小説の主人公、名前は出てきたか?」

 無言でページ閲覧するのもなんだから場の繋ぎとして出しただけの俺の質問に、

「最後まで明かされなかったわ。でも物語の随所にヒントはあったわね。そこから導き出される答えは……『みやび』ね、多分」

 恐らく正解だろう。

「本当、下手なミステリ作家にも負けない高等なトリックだったわ」

 桐乃の小説を読むかは決めかねているのだが、読んだとしても俺の読解力で『みやび』のヒントは見つけれるだろうか。

「そうそう、取材の事を私に話したなんてあなたの妹には伏せておいた方がいいわよ?」

 黒猫の言葉の意味が分からず俺は首を傾げる。

「話してもいいことなら本人から自慢たっぷりに言ってくるはずだからよ。でも私はあなたの妹からこの話は聞いていない」
「ようするに、俺は余計な事をしたっていう事か?」
「そう。やっと分かったのね。本当に莫迦だわ」

 そういう黒猫の顔は優しい笑みで彩られていた。

<了>
174 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/08/01(水) 08:37:35.68 ID:h6Urw29Qo
そのきりりんの小説が読みたい
175 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/01(水) 09:06:02.96 ID:Nnv/zWsz0
>>174
同意
176 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/08/01(水) 19:53:05.46 ID:PA+xYHEDo
>>173
桐乃の書いた小説が気になるな
というか不思議な作品だな
読み応えがあるというか、歴史に疎い俺でも最後まで読ませる書き方
しかし分かりやすい形での何かがある訳でもない
決して批判するつもりはないが、俺妹らしからぬような印象
キャラは俺妹だが作品としては俺妹じゃないような
個人的にオリジナル小説とかあるならそれを読みたい感じだな
177 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/08/02(木) 00:55:00.06 ID:9PPDowwDO
>>173
乙です。
俺も皆さん同様桐乃の小説読みたいなーww

あと、時系列帰国直後なら、京介呼びじゃないと思われます。
178 : ◆k4qYXRI5uY :2012/08/02(木) 16:48:49.25 ID:3hSDoCH60
パッと書いてきたものを投下します
179 : ◆k4qYXRI5uY :2012/08/02(木) 16:49:32.98 ID:3hSDoCH60
夢の中で見つけたもの。







リビング、そこで俺はテレビを見ていた。
桐乃には今日は友達が来るから部屋から出てこないでよね、と言われていたが、あまりにも暇で出てきてしまったしょぞんだ。

まぁテレビをみても、なにかしら面白い番組がやっていることも無く、暇をつぶせなかったのだが。
それでも部屋に居るよりは良かった。桐乃の部屋から声が聞こえてくるのだ、聞きたくも無いキャッキャウフフとした声が。
いたたまれなくなった俺は致し方なく、静かに部屋をでてリビングに来たのだ。

あぁ、駄目だ、暇だー。

なんて事を考えていると、上の部屋が開く音が聞こえてきた。
ヤバい、桐乃か? と思い隠れようとするが、テレビの音量からして無意味だと悟った俺は溜息をつくと居ないふりを諦めたのだった。

なるべく平静を装いテレビに向き直る。
後ろのリビングの扉が開くと、だらしない声が聞こえてきた。

「ふぃー、あっちーなー。なんかちべたい飲み物は……。 ん? お前クソマネか?」

ここでまさかの加奈子登場。予想外すぎだろ常考。

「よ、よぉ、ひさしぶりだな」
「そうだっけ? まぁ確かに最近顔見てなかったっけかな。ってかそんな事より今何してんの? 暇?」

何か嫌な予感がするので、全力で回避にかかる。

「いや、今すっげぇテレビが良いところなんだ」
「へぇ、ニュースですっげぇ良いところなんてあるんだ……」
「へ?」

テレビを見ると、いつの間にかニュースをしていた。政治関係の。
俺は気まずげに苦笑すると、誤魔化した。

「な、なーんてな、ははは」
「……」

加奈子はジトーっとした目をこちらに向けてくる。
俺はそれを直視できず目を逸らした。
180 : ◆k4qYXRI5uY :2012/08/02(木) 16:50:06.32 ID:3hSDoCH60

「で、で? なんか用なのか?」
「はぁ、まぁ良いよ。 クソマネが暇なら一緒に映画でもどうかなと思ったんだけど、どうよ?」
「映画? 俺は是非見たいが、上の桐乃達はどうすんだ?」
「下で映画見てる、ってメール送っとくから平気だろ」

ま、まぁそう言う事なら、と言う事で俺は了承した。
暇で仕方なかったところだ、良い暇つぶしになるだろう。

「でも俺なんかとで良いのか? 桐乃達と見るほうが楽しいんじゃ」
「まぁ確かに桐乃達と見る予定だったんだけどよ、まぁ上で盛り上がってたしクソマネとで良いやと思ったわけよ。だから加奈子にとってクソマネは桐乃達の代わりってわけ、お分かり?」
「へいへい、了解」

まぁなんにせよ暇をつぶしてくれるってんだ、乗らない手はないな。

「で? どんな映画なんだ?」
「ん〜、恋愛物」
「ふ〜ん、そうか、まぁなんでも良いけどさっさと見ようぜ」

時間の無駄だって事で促すと、加奈子はDVDプレーヤーに近づくと、ディスクを入れてソファに腰掛けた。
なんで飲み物取りに来ただけなのにDVD持ってんだ、とツッコみたかったが、まぁそこにツッコんだら長くなりそうなので自粛した。

映画が始まり、互いに静かになる。
だが途中からだろうか、どうにも加奈子の視線が画面ではなく、俺に向かっている気がする。
ふいに加奈子に視線を向けてみても、そんな素振りは一切無く画面を真剣に見ているのだが、どうにも視線を感じて仕方無い。

もうこちらに視線はよこさせまいと、加奈子をジッと見続ける。こうしていたらこちらに視線を向ける事など出来まい。
ん? あれ? でもこれだったらなんか俺映画見れなくね?
ずっと加奈子見続けているとそういう疑問行き着くも、もうここまできたら最後まで見つめ続けてやる。
と、何故か意固地になってしまった。

するとどうだろうか、加奈子の頬がどんどんと赤くなっていく。面白いように赤くなっていきリンゴのようになると、加奈子はこちらにガバッと向き直ってきた。

「さっきからなんだよ! クソマネ!!」
「お前から先に俺の事見てきたんだろ!?」
「べ、べべべ、別に見つめてなんか無い!!」
「嘘つけ!!」
「嘘じゃねぇ!!」
「嘘だ!!」
「嘘じゃない!!」

あぁ、駄目だ、これじゃ押し問答だ。
いくら言っても一緒だと悟ると、俺は言うのをやめた。

「ま、まぁいい。とにかく落ち着こうこのままじゃ埒が明かん」
「う、うん。そうだな、こんなのずっと言ってても意味ないしな」
「そうだ、意味ない。だからこの件は水に流してお互い映画に集中しよう」

俺がそう言うと、加奈子はぎこちなく頷いた。
はぁ、これでやっと映画に集中できる。

「あ、そうだ加奈子」
「ん?」
「巻き戻しても良いよな? 今さっき見てなかったし」
「おう、良いよ」

了承を得ると、巻き戻してもう一度再生した。

「と、ところでさ、クソマネ」
「あん? なんだよ」

妙にイジイジしながら話しかけてくる加奈子に、怪訝に思いながらも返事をする。
何か拾い食いでもしたのだろうか。それに顔も赤いし。病気なのか?

「く、クソマネの膝って気持ち良さそうだよな」
「……は?」

さっきまで心配していた事も忘れて、思わず間抜けな問い返しをしてしまう。
いきなり何を言い出すのか、こいつは。
俺の膝が気持ち良さそうだと? そんな事言ったらお前のぷにぷにの膝の方が万倍気持ち良さそうだろうが。

「座ってもいい?」
「はぁ!?」
181 : ◆k4qYXRI5uY :2012/08/02(木) 16:50:41.44 ID:3hSDoCH60

加奈子はあろうことか俺の膝に座りたいと言ってきた。俺は素っ頓狂な悲鳴を上げてしまう。
一体どうしたというのだ、何故急に俺の膝に座りたいなどと。

「ま、まぁ別に良い……って待て待て、加奈子、一旦冷静になれ」

思わず反射的に了承してしまいそうになるが、なんとか思いとどまる。
どうする、何故か知らないが加奈子は膝に座る気満々らしいぞ。

でも考えてみろ、上にはまだあいつらが居るんだろう? それに下で映画見てると言ったんだろう?
ということは、だ。あいつらはいつ下に下りてきても不思議じゃない状況なのではないか?

下に降りてきたあいつらが加奈子を膝に座らせている俺を見たらなんて思うだろうか? それは簡単だ、『変態だ』って思うに決まっている。
そして加奈子を救うために俺の事を殴り、加奈子を俺の膝から引き離すだろう。
あやせの声もしていたから、下手をしたら殺される可能性だって出てくる。

という事で今俺がこいつを膝に座らせる=死ぬ覚悟が必要ってことだ。

さぁ、これからどうしようか。
そう考えると、先程まで見ていたテレビで子供のあやし方をやっていたことを思い出す。
よし、と気合を入れる。

俺は一先ず落ち着かせようと加奈子の頭を撫でる事にした。
するとどうだろうか、加奈子の顔が一気にふにゃぁとして蕩けてしまった。
顔が赤くなり、目がトロンとしている。

おぉ、流石NHK。凄い効果だ。

「く、クソマネぇ」
「うん? うんんんん!?」

だが、効果がありすぎたらしい。加奈子はふにゃけた顔のまま俺の膝にポスンと頭を乗せてしまった。
こ、これはいわゆる膝枕状態なのでは?

この状況では、膝に座っているのと一緒なのでは無いだろうか。
どっちにしろ見つかったらボコられるのではないだろうか。

嫌な考えが次々に浮かび、冷や汗が背中を伝った。

「だ、駄目だ、嫌な未来しか想像できねぇ………って、え!?」

どう転んでも最悪の結果にしかならない現状を確認していると、上の扉が開く音が聞こえてきたではないか。
これは、これはもう最悪のパターンなのでは?

駄目だ、冷静になれ、冷静に。そうだ、タイムマシーンを探せ。
ってそうじゃ無ぇだろ! ま、待て待て、本当に待って? もうどうすれば良いか全然分かんねぇんだけど。

足音が響くたびに、どんどんと冷静さを欠いていった俺は、何故かその時こんな結論に至った。
そうだ、寝たふりしよう。

この時の俺にどうしてそうなったかを小一時間程問い詰めたい。

「加奈子? 映画終わった?」

よりによってあやせかよ!!
心中で叫びを上げてしまう。

「ってお兄さん? どうしてここに?」

あやせは少しずつこちらに近づいてくる。
そして俺のすぐ傍まで来ると、息を呑む音が聞こえた。

「な、ななな、何してるんですかお兄さん!」

叫ぶと、あやせは俺の頭を引っぱたいた。重力にしたがって、横に倒れていく俺。
そう、そうだ、俺は今寝ているんだ。だから重力に逆らうな。あくまで自然に倒れろ。

体から力を抜き、横にポスンと倒れる、すると頭が柔らかい感触の何かに乗った。
ポヨンとしていて、ふにっとしていている。
? なんだこれは。

倒れた方向からして加奈子の方に倒れたのだが、一体何とぶつかったのだろうか。こんな感触のクッションは家には無かった気がするのだが。

「―――――――!!???」

俺がこの感触の正体について考えていると、どうしたのだろうか、あやせが声にならない悲鳴をあげた。
それから数分も経たず、なにかに掴まれて体をもとに戻された。

あぁ、もうちょっとあのクッションの感覚を味わっていたかった。
人知れず俺は嘆いたのだった。
182 : ◆k4qYXRI5uY :2012/08/02(木) 16:51:15.89 ID:3hSDoCH60









   ・・・・








加奈子視点。





どうしてこうなった。
加奈子が起きると、クソマネは加奈子を膝枕しながら寝ていた。すぐ近くであやせが慌てている。
なんで加奈子は寝てたんだっけか。そう考えて記憶の中を探ると、すぐに答えが見つかった。

そ、そうそう、クソマネに頭撫でられたから……だったっけな。

思い出して赤面してしまった。
くそ、たまにこういう事をしてくるから困る。するならするで事前に言ってくれないと加奈子の身がもたねぇよ。
事前に言ってくれたらなんでもしていいのに。き、ききき、キス、とかも。

そこまで考えると、頭がショートしてしまいそうになった。
あ、危ねぇ危ねぇ。

そんなふうに加奈子がトリップしていると、なんだろうか、太ももに軽い衝撃を受けた。あやせにバレないように薄目を開けて確認する。
そこには、加奈子の膝に頭を乗せたクソマネがいた。

………うひゃい!!

心臓がドクンと跳ねた。や、ヤバい。これあやせにバレて無ぇよな!?
ヤバいヤバい。今加奈子の顔超赤いって!
嫌でも顔に熱がいってしまう。
って、駄目駄目、冷静にならなければ!!

そんなふうに心の中で悶々としていると、ふとももの感覚がなくなってしまった。どうやらあやせがクソマネをもとの位置に戻したらしい。
え、後もうちょっとだけこの状況でいたかったな。

「危ない危ない。お兄さんは寝ていても危険人物ですね」

やれやれと言わんばかりに肩をすくめると、あやせは何故かクソマネの隣に座った。
何故か顔が赤くなっていて、もじもじしている。

「そ、そんなお兄さんには罰が必要です。うん。必要です」

そう言ってあやせはギュっと目を瞑ると、あろうことかクソマネの膝にダイブした。
ぼすんとソファがゆれる。

「!?」
「そ、そう、これは罰です。きっと起きた時には膝が痛くてしょうがなくなっているでしょう。っだから罰なんです。 ふわぁ」

ならなぜそんな気持ちの良さそうな声をだしている。
そうツッコみたくてしょうがなかった。

溜息をつきたくなるが、我慢する。
まぁ良いか、加奈子は加奈子でこの膝枕を楽しむとしよう。

そうしめくくると、加奈子は心中で頷いたのだった。
183 : ◆k4qYXRI5uY :2012/08/02(木) 16:51:52.27 ID:3hSDoCH60







    ・・・・






京介視点。





現状を確認する。
左に加奈子、右にあやせ。どちらも膝枕状態。

……どうしてこうなった。

あやせ、何故こんな形で罰を与えるんだ。生殺しじゃないか。俺のムスコがテントを張ってしまっても知らないよ?
まぁそんな事態になると、俺がどんだけ言い訳をしようとあやせは俺を[ピーーー]か俺のムスコを[ピーーー]だろうな。

ムスコよ、今日はお前の出番は無いので大人しくしていなさい。

俺は全力で明後日の方向に気を逸らしたのだった。

そんなふうに俺が「あ、あの雲飛行機みたいな形してるー」とか空想に耽っていると、またもや上のドアが開く音がした。
あぁ、今度は桐乃か。

どうする。

考えるも、このまま寝たふりしか俺には選択肢が無いので続行する。
あ、こら、お前の出番は無いと言ったろ? ムスコは引っ込んでなさい。








   ・・・・







あやせ視点。


気がつくと、結構時間が経っていたようです。
上から桐乃が降りてくる音がしますから。 はぁ、あっというまでした。それではそろそろ起きますかね。

そう考えるも、私の体は反応を示しません。それどころか、顔をお兄さんのお腹に向けて寝転がってしまいました。

ちょ、なにしてるんですか私! あ、でもなんか気持ち良い。どうしよう、お兄さんの匂い良い匂いです。
だからしっかりしてください私! そんな事してたら桐乃が降りてきてしまいます!

「あやせー? 加奈子ー? どこー?」

あっ!!
手遅れになってしまいました。桐乃はリビングの扉を開くと、私達を探してキョロキョロ見回しているみたいです。
184 : ◆k4qYXRI5uY :2012/08/02(木) 16:52:23.12 ID:3hSDoCH60

「って兄貴!? 部屋から出てくんなっつったじゃん! 何出てきてるわけ!?」

桐乃はお兄さんを見つけたかと思うと、そう言いながらこちらに向かって歩いてきました。
多分桐乃の事ですから、お兄さんがこんな所にいると私達に見つかって絡まれると思ったんでしょう。だからお兄さんを私達から遠ざけようとしてお兄さんに部屋から出ないようにと言っていたんでしょう。
はぁ、心配性だなぁ。別にお兄さんがいたって絡んだりしませんよ。こんな変態。

そう内心で罵倒するも、今の現状を思い出し、思わず顔を赤くしてしまう。
や、やっぱりお兄さんを別の部屋に隔離しておくのは正解だったかもしれませんね。

「はぁ、返事無し。って事は寝てんのね。兄貴、早く起きて自分の部屋に戻れっつの」

そう言ってさらに近づいてくる桐乃。とうとう、お兄さんのすぐ近くまで来てしまいました。
桐乃はこちらを覗き込んだかと思うと、一気に真っ赤になり口をあわあわとさせ始めました。

「あ、あああ、兄貴!? 何してるわけ!?」

桐乃は叫んだかと思うと、お兄さんの頭をパシンとはたきました。その衝動でお兄さんが倒れてきます。
……あれ? デジャヴ?

私がそう思うと同時に太ももに軽い衝撃が。さらさらとした髪の毛の感覚が。
こ、こここ、これ、これってぇぇぇぇ!!!!!

ボンッ!!

か、顔が熱いです!! お、お兄さん早くのいてください!!!

「わ、わわわ、しまった! は、早くもとに戻さないと!!」

桐乃は慌ててお兄さんをもとの状態に戻します。
……もうちょっと良かったんですけど。

……違います。間違えました。あぁ、清々しました、お兄さんの汚らわしい頭が私の太ももに当たったなんて考えるだけで鳥肌です!!
私は頭の中を訂正すると、これからどうするかを考えます。お兄さんの太ももは寝心地が良いので、仕方なくもうちょっとだけ寝たい気分なので桐乃に起こされるわけにはいかないのですよ。

って桐乃!? 何をやろうとしてるんですか!?

薄目を開けたまま、桐乃の方を見てみると、桐乃は何故かソファの前に移動していた。
そしてあろうことかお兄さんの太ももを開き始めたのです。

「ふぅ、な、なんか疲れちゃったから休も。それからでも良いよね、あやせたちを起こすのは。」

太ももを開き終わると、桐乃は「あー疲れたー」という声と共にその間に座りました。
な、なにやってるんですかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!

私の心の中で叫び声が空しく響きました。
185 : ◆k4qYXRI5uY :2012/08/02(木) 16:52:51.24 ID:3hSDoCH60









   ・・・・









京介視点。



何故だぁぁぁ!!!
何故俺の股の間に座るんだぁぁぁ!!

おい桐乃、いくら友達と一緒が良いからってな、これはやっちゃいけないことだぞ?



なんて考えていた桐乃が座ったときから早くも20分の時がたっていた。
そろそろ太ももの感覚がなくなってきた頃だ。
肝心の下の奴等は起きる気配など微塵も見せずにより深い眠りに陥っていた。呼吸もゆったりとしてるし、時々寝返りもうっている。
加奈子なんて何回転げ落ちそうになるのを防いでやったことか。

でも、そろそろ何とかして起きてもらわなければならない。この状況で親父やおふくろが帰ってきたら俺の世間体的に人生が終了する。

左に加奈子。右にあやせ。そして中央に桐乃という、異常な事態。
こんなものをあの親父達に見られてなるものか。

知恵を振り絞れ、俺。

「ん、うぅ」

桐乃が寝苦しそうに眉を顰めながら身じろぎした。
お、悪いな。起こしてしまうところだった。

俺が桐乃の頭を撫でると、桐乃は満足そうにもう一度身じろぎして寝た。
ふぅ、なんとか起こさずに済んだか。

………ってあやしてどうすんだ俺ぇぇぇ!!!!

思わず自分でツッコんでしまった。

「どうする、どうする俺!?」

何時まで経っても結論が出ないまま、過ぎていく時間。
そして、ついに時は来た。

おふくろ様のお帰りだ。

玄関が開く音と共に俺の体が冷や汗を大量に排出する。
どうする、おふくろなんかにバレてみろ、近所の情報網を俺の変態説が駆け巡るぞ。
無理やり立っちまうか? でもそんな事したら皆が地面に頭をうつ事になる。却下だ。

どうするぅぅ!! 俺ぇぇ!!

そして、リビングの扉が開く瞬間。俺は近所での俺の評判を諦めた。
あぁ、俺は明日から近所で変態として扱われるんだな。

なんて事を考えて、「はぁ、やれやれだZE」と言って肩を竦める。
186 : ◆k4qYXRI5uY :2012/08/02(木) 16:53:17.66 ID:3hSDoCH60

「京介、あんた…」
「一応言っとくがな、おふくろ。これは俺のせいじゃないんだ」
「居たんなら返事ぐらいしなさいよ、それとほら、荷物片しといて」
「……へ?」

変だな、何故おふくろは平常運転なんだ? こんな事があったらおふくろの事だから「あ、あんたなんて事してんの! 桐乃の友達だけならともかく桐乃にまでそんな事させて!!」みたいなことを言い出すと思っていたんだが。

「ほら兄貴、お母さんがあぁ言ってるんだから手伝いなよ」
「そうですよ、お兄さん」
「はぁしっかりしろよな! なにボケっとしてんだよ!」

「へ?……へ?」

気がつくと、桐乃達も起き上がっている。
バカな。何時の間に?
それどころか、まるで何事も無かったかのように振舞っているではないか。
そう、まるでさっきまでの事は現実に無かったかのように。

……ちょっと待て。うん。ちょっと待とう。
ではなにか? 俺が今さっきまで体験していた事は夢か何かだというのか? あんなにリアリティがあったのに? 桐乃の髪の感覚も、何か柔らかいクッションの感覚も全部覚えているのに?

「いつまで寝惚けてんの、兄貴。さっさと手伝ってきなって!」

桐乃はそう言うと、俺の背中を思い切り叩いてきた。バチンと音をたてる。
痛い。

そうか、今さっきまでのは俺の夢だったのか。っていうか俺はなんて夢を見てしまったんだ。あやせたんはともかく何故桐乃や加奈子まであんな事になるんだ! 夢は心の奥の願望とか言うしもしかしてあの夢は俺の願望なのか!? い、いや、そんな事は無ぇ、断じて無ぇ!! あれだよ、エロゲのやりすぎだよ。多分桐乃から借りたエロゲのせいであんな夢を見たに違いない。

そうだ、そうに違いない。そう言う事にしとこう。

精神的に崩れそうになるが、なんとか誤魔化すと俺はこの件を忘却するためにおふくろの手伝いに向かった。

今日のご飯はなんだろなー。ニンジン玉ねぎジャガイモお肉にカレールー、ってまたカレーかよ!!









 ・・・・









晩御飯後。

晩御飯をご馳走になっていったあやせ達を見送る事になった。
おふくろの命令で。

昼間にあんな夢をみたせいで妙に気恥ずかしいが、それをなんとか押さえ込みながら一緒に歩く。

距離的に近いのはあやせの家なので、先にあやせの家に向かう。あやせは何故か先に加奈子の家に向かいたがっていたが、距離的に遠回りになると言うと渋々といった感じながらも諦めてくれた。

黙々と夜道を歩く。冷えた空気が気持ち良い。
187 : ◆k4qYXRI5uY :2012/08/02(木) 16:53:48.25 ID:3hSDoCH60

「あのさ、お前ら今日の昼間、その、俺の膝枕で寝なかったか?」

思い切って聞いてみる。どうしても今日のあれが夢だなんて思えなかったのだ。

「はぁ? 何を言ってるんですか? お兄さん」
「はひゃひゃひゃ、とうとう妹の友達で妄想かよ、童貞乙wwwwww」

……そうですよね。

その後は散々弄られ、気付くとあやせの家についていた。
軽く挨拶を交わして分かれようと背中を向けるが、そこであやせに引き止められた。

「お兄さん、今日はありがとうございました。おかげで良い夢が見れましたよ」
「ん? 夢? なんの事だ?」

いきなりお礼を言われたので問い返すが、あやせはすぐに背中を向けると家の中に入っていった。
ちょっと耳が赤くなっていたが、大丈夫なのか?

俺は心の中で風邪引かないようにな、と言うと加奈子の家に向けて出発した。






「なぁ、クソマネ」
「あん? なんだよ」
「お前ってさぁ、就職とかしねぇの?」
「まぁ高校卒業したら就職も良いかもなぁ」
「マネジメント、興味あったら言えよな、すぐに紹介してやっから」

いきなり話かけてきたかとおもうと、いきなり就職先を紹介してくれる、と言うものだから少し驚いてしまった。
思わず加奈子の方に視線を向ける。するとそこには耳まで真っ赤になった加奈子がいて、俺とは反対の方向に視線を向けていた。

笑ってしまいそうになるのを我慢しながら、加奈子の頭を撫でてやる。
加奈子はビクリと肩を震わせるも、振り払おうとはせずにされるがままにされている。

「あぁ、あんがとよ」
「……ふんっ」

マネジメント、か。まぁそれも良い未来なのかもな。

なんて事を考えて、歩いていると加奈子が小走りに家に飛び込んだ。
どうやらついたらしい。

「じゃ、おやすみ」

そう言って帰ろうとする。
が、またもや引き止められた。

「クソマネ! 今日は良い夢が見れた! サンキューな!!」

またそれか、と思ったものの、どうせ聞き返しても返答は無いのだ。
俺は手をフリフリと振ると、そのまま歩いていったのだった。



188 : ◆k4qYXRI5uY :2012/08/02(木) 16:54:22.71 ID:3hSDoCH60





家に到着。
俺はリビングに入ると、麦茶を入れてソファにもたれ掛かった。
昼間は太陽の光が入ってきていたリビング、今は月光が入ってきて静かな空気を醸し出していた。

コクリと麦茶を飲むと、机に置いた。

そのままぼんやりと月を見ていると、リビングの扉が静かに開かれる。

「桐乃…か?」
「うん。兄貴、その、さ。ありがとね、おかげで良い夢が見れた」
「どういたしまして」
「あれ? なんの事だ? とか聞かないんだ?」

俺はもう一度麦茶を飲むと、桐乃を見る。お風呂上りなのだろうか? 上気した頬はピンク色に染まっている。

「聞いたさ、けど皆答えてくれないだろ? なら良いよ。俺はお前らが良い夢を見れたならそれで良いよ」

くさすぎたかな? と思い桐乃を見るが、桐乃はバカにするどころか、さらに頬を赤くして微笑んでいた。

「うん。ありがと」
「あぁ、早く寝ろよ」
「分かってる、お休み兄貴」
「おう、良い夢を」

桐乃はもう一度ありがとうと言うと、リビングを出て行った。

また静かになったリビング。
俺はソファに深く腰掛けて、息を吐き出した。


俺にとって今日は、精神が磨耗するだけの最悪の日だった筈だ。
この人生の中で、これ程多くの冷や汗をかいた日もそうは無いだろう。

それほど今日は俺にとって辛い日だった筈だ。

だけど、今はどうだ? 何故こんなにも満足しているんだ?
こんなにも充足感のある日になっているのは何故だ?
189 : ◆k4qYXRI5uY :2012/08/02(木) 16:55:01.39 ID:3hSDoCH60


自分に問いかけてみる。
答えは見つからない。見つからないと思い込む。

本当は分かっているんだろう?

分かっていないと思い込む。

本当は気付いているんだろう?

気付いていないと思い込む。

お前は、分かっているんだ。何故今日という最悪の日が最高の日に変わったのかを。とっくの前に気付いていたんだ。
俺は気付いていない、分かっていない、見つからない。そう考える。
だけど、もう見えていた。答えは見えていた。


『お前はあいつらが喜んでくれたから、良い夢を見れたから、それが嬉しくて今日と言う最悪が最善に変わったんだよ。気付いてたんだろ? だって俺は、お前なんだから』


あぁ、そうだよ。
素直じゃなかっただけだ、だから俺は目を逸らした。
嫌々あいつらに付き合っているという俺を作っていたかったんだ。

「なんだ、分かってるじゃねぇか、俺」

俺はふっと笑うと、目の前の麦茶を全部飲み干した。
コップを持っていくと、そっとリビングを出る。


きっと良い夢を見ている妹を起さないように。


さて、明日は久しぶりに秋葉でも回るか?
黒猫や沙織、そして桐乃の笑顔を思い浮かべながら俺は自分のベッドに潜り込んだのだった。




fin
190 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/02(木) 17:16:48.51 ID:maNGMtGf0
>>178


今日も京介のハーレムは平常運転ですねww
191 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/03(金) 00:10:37.17 ID:yBke+WWIO
京介モテモテ杉ワロタwwww
表組好きな俺得SS、乙でした!ww
192 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/03(金) 00:41:13.99 ID:ESnn1j4DO
>>189
乙…だが、俺得加奈子SSかと思いきや、まさかの3フラSS(加奈子最下位…orz)

ちくしょう、やはりあやせたん強いなぁ…(ノ_;)
193 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2012/08/03(金) 00:54:10.47 ID:t2MQJUsHo
表三人娘はかわいいな
194 : ◆YHxtVKAHbw [sage saga]:2012/08/03(金) 06:54:15.85 ID:x9jjLvvQo
感想ありがとうございます。
きりりん氏の小説ですが、俺はどうもケータイ小説のフォーマット、

黒猫曰く
二文字とか三文字で平気で改行
顔文字や記号が句読点より多い
句読点がほとんど無い
以下略

がよくわからんのできりりん氏が直接投下するのを永遠に待ち続けてください。

>>176
確かに俺妹らしからぬ話かも知れんw

>>177
手癖で何も考えず桐乃の台詞での兄の呼び方が「京介」になってた事、後で気付いたw
脳内補完頼む。
195 : ◆YHxtVKAHbw [sage]:2012/08/03(金) 07:02:20.97 ID:x9jjLvvQo
>>189
乙です。
あやせと加奈子を家まで送り届けてるとき、あやせが先に加奈子の家に行きたがっていたと
さりげなく書かれてたのが俺的にはヒットだったww

あと、加奈子は姉とマンションで同居だけど、一軒家ぽく書かれてるように見えたのが
ちょっと気になったかな。

次回作も待ってる。
196 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/03(金) 07:36:19.97 ID:hTvKPT6BP
>>194
待て
桐乃が書いたのはあくまでケータイ小説の文体だったと言うのか?

ケータイ小説で色々練りこまれた時代劇風を書くなんて滅茶苦茶高度だぜ

キキー!
どーん!
京介が車に轢かれた
\(^o^)/\(^o^)/\(^o^)/
人が集まる
(T_T)
そのなかで悲しむあたし(号泣)

みたいな感じじゃないっけ?
197 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/03(金) 08:23:26.03 ID:zcE5HsVy0
キラーン☆
ざくっ!
京介が斬られた
\(^o^)/\(^o^)/\(^o^)/
人が集まる
(T_T)
そのなかで悲しむあたし(号泣)

こうですか?かわりません><
198 : ◆YHxtVKAHbw [sage saga]:2012/08/03(金) 08:26:50.77 ID:x9jjLvvQo
>>196
>>197
おまえらwww
なぜ例文が京介挽肉&刺身www
199 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/03(金) 10:57:28.36 ID:ESnn1j4DO
>>197
『嘘つき…』
ざくっ!
京介があやせ斬られた
\(^o^)/\(^o^)/\(^o^)/
人が集まる
(T_T)
そのなかで悲しむあたし(号泣)

こうですね?わかります(^-^)
200 : ◆k4qYXRI5uY :2012/08/03(金) 23:40:02.18 ID:3Q4skfzz0
またパッと書いてきたものを投下。短めで衝動的に書いたのでグダグダ感あり。
201 : ◆k4qYXRI5uY :2012/08/03(金) 23:40:41.05 ID:3Q4skfzz0
京介日記。






注意。これは俺、高坂京介の日記である。

この日記の目的は、どれほど俺が桐乃に嫌われいるかを証明する事である。
であるからして、甘甘な話を期待しているものはこの日記を見ないことをお勧めする。









6月20日


快晴である。何故か今日は早く起きてしまったが、ベッドから離れる気が起きないのでこのままグダグダするしょぞんだ。
グダグダしていると、桐乃が入って来た。
起きていることを知られて面倒なことをさせられるのは嫌なので寝たフリをし続けることにする。

ふむ、なにをするつもりだ? と疑問に思っていたら、何故かベッドの下の俺の秘蔵本を探り始めた。

「む、また眼鏡っこばっかり。妹物をもっと増やせっつの」

何故かお怒りのようだ。怒りたいのはこちらだと主張したいが、寝たふりをしていたと知られるとどれだけボコられるか分からないので待機。
俺のセンクチュアリ(エロ本倉庫)を散々物色した桐乃は、何がしたいのだろうか、今度は俺の頬をつつき始めた。

爪が結構伸びているので、たまにチクっとする。
薄目を開けて観察してみると、何故かとてもニコニコしている。何か嬉しい事でもあったのだろうか。
それともこれから俺に何かをやらせるところを想像して楽しんでいるのだろうか。

まぁどちらにしても俺が被害を被ることになりそうなので是非勘弁してほしいものだ。

桐乃が俺の頬をつつくのをやめる。今度は何をするつもりだ? と思っていたら俺の携帯を見始めた。

「む、黒猫に沙織にあやせに加奈子にブリジットちゃんまで、なんでこんなに電話の回数多いの!?」

ふむ、どうやら俺に友達を取られていないかの確認らしい。
俺と電話してる回数が皆多かったのだろう、桐乃は不機嫌面だ。

まぁなんにせよ、瞼が痙攣してきたのでここらで寝たフリを切り上げようと思う。

俺は寝返りするフリをする。すると桐乃は面白いように俺の部屋から退散していった。



ふぅ、疲れた。
今日の分の日記はもう埋まってしまいそうなので今日はここらで終わる。
202 : ◆k4qYXRI5uY :2012/08/03(金) 23:41:20.15 ID:3Q4skfzz0






6月21日


最近、俺のパンツがよくなくなっている。誰の仕業だと疑うも、うちの家族に俺のパンツなぞ盗んでも得する奴がいないので探しようが無かった。

今日も、お気に入りのパンツが無くなっていたのでもう我慢が出来なくなった。
俺は桐乃の部屋に行き、パンツの行方を聞くことを決意する。

だが、桐乃の部屋をノックしても返事が無かった。誰も居ないのか確認するためにドアを開いてみる。ふむ、鍵がかかっていないと言う事は桐乃の奴は居ないのか。
ハァ、しょうがない、今日聞くのは諦めるか。
と思い引き返そうとする瞬間、俺は見てしまった。

……俺のパンツがある。
箪笥の隙間から俺のパンツがこんにちわしていた。

ふむ、そうか、そういう事か。どうやら、桐乃の奴は俺に嫌がらせをしたくてしたくてしょうが無いらしい。
どうしてこんな陰湿な悪戯をするのか。甚だ疑問だ。

これは帰って来たらきちんと言い聞かせなければならないな。

そう思い俺はパンツを回収した。何故かねっとりしているので、早急に洗濯籠にシュートした。



その後、俺は桐乃が帰ってきたときに今回の事を話した。
すると桐乃の奴はあろうことか逆切れして、顔を真っ赤にしながら俺を殴ってきた。

「あ、あああ、あんたあたしの部屋に入ってんじゃないわよ!!」

あぁ、わずらわしい。これからはパンツが無くなったらこっそりと桐乃の部屋に侵入して取り返す事にしよう。
また殴られるのは嫌だからな。
203 : ◆k4qYXRI5uY :2012/08/03(金) 23:41:47.65 ID:3Q4skfzz0







6月22日



リビングに忘れ物をしてしまった。携帯だ。
別に後からでも良いのだが後回しにするとやる気がもっと無くなるのでパッと取ってこようと思う。

リビングの扉の前に来ると何故だろうか、桐乃の甲高い声が聞こえてきた。
ちょっと気になって覗き込んでみる。

どうやら冷蔵庫から俺のジュースを取り出しているらしい。
最近何故か勝手に減っていると思っていたら桐乃の仕業だったらしい。
くそぅ、ジュースぐらい自分の金で買えば良いものを。何故お前より金の持っていない俺のジュースを飲むのだ、嫌がらせか?

俺が沸々と怒っていると、桐乃は今度は俺のコップに麦茶を入れた。そして俺の席に座って飲み始めた。


……なにがしたいんだ、桐乃の奴は。行動が不思議すぎるぞ。


俺はもう我慢できなくなり、リビングに入った。

「ぷはぁ、生き返るぅ!!」
「そうか、良かったな。でもコップをちゃんと洗っていけよ」

どうせ俺のコップだったら洗わないで良いだろ。とか思って使ったんだろうが、そんな行為は断じて許さないからな。
そう思って俺が話しかけると、桐乃は麦茶を口から盛大に噴出した。

「あ、兄貴!? なんでここに!?」
「携帯忘れたから取りに来ただけだ。それよりも、ちゃんとそのコップ洗っとけよ、絶対だからな」

俺は溜息をつくとリビングから出ていった。
最後に桐乃が「え!? 兄貴公認!? やっふぅ!!」とか言っていたがどう言う事なのかは分からない。
どうせいつもの突発的な発言だろう。

桐乃の奴はたまに意味の分からないことを言い出すからな。
204 : ◆k4qYXRI5uY :2012/08/03(金) 23:42:25.43 ID:3Q4skfzz0







6月23日




……今度は歯ブラシが無くなっている。
この事件は前にも何回かあった。何故か次の日には見つかる(でもたまに何故かネトネトしている)のだが、どうにも気持ち悪い。できれば原因究明をしたいしょぞんである。

まずはさりげなく家族に聞き込みをする事にする。まずは桐乃だ。
こいつは俺の物を隠すという陰湿な悪戯をたまにするので、この事件も桐乃の仕業だと思っているのだ。

ひとまず桐乃の部屋に行き、ノックする。桐乃は半分ドアを開き、顔を覗かせる。

「……なに?」
「なぁ、俺の歯ブラシしらねぇか?」
「知らない。ってかあたしが知ってるわけないじゃん。……無くなったの?」
「あぁ、何故かな」
「じゃ、じゃぁ今回だけ特別にあたしの歯ブラシ使って良いよ?」
「あ、いえ。」


このような会話をする。何故か殴られた。
だが今回は桐乃が犯人では無さそうだ。だって桐乃が自分の歯ブラシを使わせてくれるなんて言う筈が無いのだから。桐乃がとったのだとしたら、詫びれもせず歯ブラシを突っ返してくるはずだからな。


その後、親父やおふくろにも聞いてみるが犯人は結局見つからなかった。
どうやら俺には明日に帰ってくる歯ブラシを待つ以外の選択肢は無いらしい。


さて、今日はもう歯磨きを諦めて寝るとしよう。
最後のページなので明日には新しい日記を買わなければならないしな。

おやすみ。
205 : ◆k4qYXRI5uY :2012/08/03(金) 23:43:22.79 ID:3Q4skfzz0







・・・・








そこまで書くと、俺は溜息をついてベッドにダイブした。
あぁ、何故だ。もう二冊目だというのに、桐乃の俺にたいする態度が一つも変わっていない。いい加減もうちょっと俺の事を好いてくれてもいい気がするのだがなぁ。


明日になったら桐乃の俺に対する好感度がマックスにならねぇかなぁ、なんて考えながら俺は深いまどろみの中に意識を沈めたのだった。



fin
206 : ◆YHxtVKAHbw [sage]:2012/08/03(金) 23:52:10.55 ID:x9jjLvvQo
>>205
乙です。
本当にこの妹は兄貴に嫌がらせばかりで憎たらしいアマですね(棒)。
207 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/03(金) 23:56:30.81 ID:2sh6fZGk0
>>200


最初から好感度MAXだから態度が変わらないんだよね!
208 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/08/04(土) 00:00:59.55 ID:at8Jc3yfo
乙です

きりりんはなんて悪い妹なんだろー
これはお仕置きが必要だねー
京介はきりりんのパンツを盗んでネットリさせればいいよー
どうせだからきりりん本体もネットリさ
<以下の文章は削除されました>
209 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(茨城県) [sage]:2012/08/04(土) 00:17:07.34 ID:74jELl1Wo
乙〜
不可解な現象の起こる家ですね(棒)
きっととんでもないド変態の仕業ではな(ry
210 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/04(土) 05:36:02.50 ID:3eHzC2XIO
乙です〜

どーでもいい話だけど、SS中の6月23日は桐乃の中の人の竹達彩奈さんの誕生日だったりする。
211 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/08/04(土) 09:33:29.02 ID:SxJr/XdDO
乙乙!

やー盛り上がってきたねー。
俺も負けてらんねーなーww

んなわけで投下。
時系列っつーか、俺妹P続・桐乃√クライマックス前if。
212 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/08/04(土) 09:35:59.04 ID:SxJr/XdDO
京介side

「・・・京介?」
「・・・ベランダでなにしてんのあんた?」
「んー?」

背後から声を掛けられ、俺は肩越しに真っ暗な部屋の中を振り返った。

「星を見てた」
「星?」
「ああ」

桐乃にそう答えてまた目の前の空に顔を向ける。
目の前には満天の星空が広がっていた。

『星に願いを』

213 : ◆6U1bthnhy6 [sage saga]:2012/08/04(土) 09:37:17.46 ID:SxJr/XdDO

俺が大学を卒業してすぐ。
今俺は、桐乃と黒猫とで郊外のマンションに住んでいた。

「・・・そんなによく見えるの?」
「ああ。部屋を暗くしてるとなおさらな」

カラカラと窓を開けつつ黒猫が出てくる。
自然と隣にスペースを作ってやると、ちょこんとそこに収まった。
そして、「へえ」と楽しそうな息をもらす。

「すごいわ。松戸のアパートでもこんなに良くは見えなかった」
「ここが最上階ってのがあるんだろうな。周りを遮るものや街灯の明かりが邪魔にならないから」
「よく気付いたわね?」
「引っ越しから1週間。やっと粗方片付いた今日、ふとベランダに出たら偶然」
「へえ、さすがね」

なにが流石なのかわからなかったが、とりあえず、ありがとうと言っておいた。
214 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/08/04(土) 09:39:34.83 ID:SxJr/XdDO

そしてまた星を見上げる黒猫。
でも俺は、星に目を移さず、そのまま黒猫の綺麗な横顔を見続けた。
あの頃と違い、もう猫耳をつけていない彼女の顔を。

「・・・見惚れてるとかチョーありえないんですけど?」
「げ」

耳元でいきなり声を掛けられて、ビクンと体が跳ね上がる。
今ので何か月か寿命が縮まったな。

「・・・どうしたの?」
「今こいつ、あんたの顔にポーッと見惚れてたの」
「あらまあ」
「あー・・・桐乃?とりあえず気配を絶って背後に立つのはやめなさい」
「ぼーっとしてるあんたが悪いだけでしょー?」

言いながら俺がすでに、黒猫とは反対側に作ったスペースに腰を下ろす。

「わ!ほんとに綺麗!」
「すごいわよねえ」

桐乃の忌憚ない賞賛に、黒猫も素直に同調する。
・・・こんな風に二人がいがみ合うことなく一緒に居られるなんて、当時のこいつらは思ってもいないだろうな。
俺は知らず微笑んでいたらしい。
215 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/08/04(土) 09:40:33.85 ID:SxJr/XdDO

気が付けば桐乃が俺の顔を覗き込んでいた。

「・・・どしたの?締りの無い顔がもっと緩んでるよ?」
「・・・」
「あらほんと。なんというか不謹慎な顔になっているわ」

桐乃に続き顔を覗き込んだ黒猫が困ったわ、といった表情を形作る。

「・・・お前らはよ・・・」

左右からひどいことを言われて、少しだけ当時を思い出す。。
まだまだガキだったあの頃、それでも俺たちは、ガキはガキなりに必死だった。

『だからっ!京介が大学に受かったら、あんたは黙って一緒に住めばいいのよっ!』
『訳が分からないわ!!私に同情でもしているつもり!?無様にも振られてしまったこの憐れな私をっ!?』
『黒猫、もう一度同じこと言ったらお前でもぶん殴る。俺の大切な人を憐れとか言ってんじゃねえ』
『っ!・・・くっ!な、ならどうしてこんなこと言うのよ!?』
『決まってんでしょっ!あんたと一緒にいたいからよ!!』
『!』
『桐乃が言ったんだ。あの黒いのは、高校卒業と同時にあたしたちの前から姿を消す。絶対に。だから京介お願い。あいつを絶対に離さないでって・・・な』

思わず苦笑が漏れる。
なんて身勝手な言い草だ。
216 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/08/04(土) 09:41:10.98 ID:SxJr/XdDO

黒猫の心情そっちのけで、俺たちの思いだけぶつけるなんてよ。
バカだったと思う。
ガキだったと思う。
それでも・・・俺たちは必死にあがいていたんだ。
今・・・こうしているために。

「・・・まったく可愛い奴らだよ」
「や、ちょ・・・!」
「ど、どうしたの急に?」

両手で抱きよせてクシャクシャと頭を撫でてやると、言葉とは裏腹に、一切抵抗せずに二人ともされるがままになっている。
そう。
こうして三人笑いあっているために。

「いや・・・このままずっといられたらいいなあって、急に思ってさ」
「このまま?」
「・・・そうね」

めいめいの呟きに、心の中で、わかってるよ、と呟く。
このままずっとなんて無理なことぐらい。
俺はあの時、桐乃を選んだんだ。
それなのに黒猫をつなぎとめてるのはただのエゴに過ぎない。
だけど・・・と、俺は星に願わずにはいられない。
どうかできるだけ長く、俺達がこのままでいられますように・・・と。
217 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/08/04(土) 09:43:04.39 ID:SxJr/XdDO
続いて黒猫side

「・・・京介?」
「・・・ベランダでなにしてんのあんた?」
「んー?」

桐乃との話しが一段落して飲み物をとりに来たリビング。
ベランダにいるあの人を見つけ、声を掛けた。

「星を見てた」
「星?」
「ああ」

桐乃にそう答えてまた夜空に顔を向けるあなた。
その横顔はあの頃と変わらず愛おしくて・・・。

『星に誓うわ』
218 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/08/04(土) 09:44:19.24 ID:SxJr/XdDO

彼が大学を卒業した翌4月。
今私は、彼と桐乃と一緒に郊外のマンションに住んでいた。

「・・・そんなによく見えるの?」
「ああ。部屋を暗くしてるとなおさらな」

カラカラと窓を開けつつ彼に話しかける。
自然と隣にスペースを作ってくれるあなたの横に、私はちょこんと腰かけた。

「へえ」

思わず感嘆の声が漏れる。

「すごいわ。松戸のアパートでもこんなに良くは見えなかった」
「ここが最上階ってのがあるんだろうな。周りを遮るものや街灯の明かりが邪魔にならないから」
「よく気付いたわね?」
「引っ越しから1週間。やっと粗方片付いた今日、ふとベランダに出たら偶然」
「へえ、さすがね」

素直に感心して見せると、ありがとうと返してくれた。
思わず笑みが漏れる
そしてまた星空へと目を向ける。
降ってきそうな空とはこういうのを言うのだろうか?
美しさとともに、どこか寂寥感を覚える私の耳にふと彼女の声が飛び込んだ。
219 : ◆6U1bthnhy6 [sage saga]:2012/08/04(土) 09:47:09.49 ID:SxJr/XdDO

「・・・見惚れてるとかチョーありえないんですけど?」
「げ」

何事かと目を向けると、そこには彼の耳元に口を寄せている彼女・・・桐乃の姿があった。

「・・・どうしたの?」
「今こいつ、あんたの顔にポーッと見惚れてたの」
「あらまあ」

呆れたような声音にくすりと笑みを漏らす。

「あー・・・桐乃?とりあえず気配を絶って背後に立つのはやめなさい」
「ぼーっとしてるあんたが悪いだけでしょー?」

言いながら彼女は私とは反対側の位置に腰を下ろす。

「わ!ほんとに綺麗!」
「すごいわよねえ」

桐乃の忌憚ない賞賛に、私も素直に同調する。
・・・こんな風に私たち、がいがみ合うことなく一緒に居られるなんて、当時の私たちは夢にも思ってもいないでしょうね。
ふと気が付くと彼が微笑んでいた。
先に気が付けいたらしい桐乃が、彼の顔を覗き込んでいた。

「・・・どしたの?締りの無い顔がもっと緩んでるよ?」
「・・・」
「あらほんと。なんというか不謹慎な顔になっているわ」

桐乃の言葉に、すかさず私も言葉を重ねる。
覗き込んだ彼の顔は、なんともいえない表情を形作る。

「・・・お前らはよ・・・」

私たちにひどいことを言われて、それでも彼は笑っていた。
それだけの年月を過ごしてきたのだと、少しだけ当時に思いを寄せる。
まだまだ子供だったあの頃、それでも彼らは私を救ってくれた・・・必死に捨て身で。
220 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/08/04(土) 09:48:04.16 ID:SxJr/XdDO

『なんで・・・?私が離れようと離れまいと、あなたたちに関係ないでしょう!?』
『あんたそれ・・・本気で言ってんの?』
『ほ、本気よっ!卒業してしまえばもう関係なくなるじゃない!それのどこが・・・』
『俺たちが嫌なんだよっ!』
『っ!?』
『・・・あんたが一緒に居たくないってんならそれでもいい・・・なんて絶対に言ってやらない!!あたしはっ!あんたと京介と・・・一緒に居たいの・・・』
『!』
『ねえ・・・お願いだから・・・一緒にいてよう・・・』

思わず苦笑が漏れる。
なんてバカな娘だ。
そのままでいれば一人占めできるものを。
本当に馬鹿で・・・優しい娘。
自分の心情そっちのけで、私のことだけ思いやるだなんて。
バカだったと思う。
子供だったと思う。
それでも・・・私はそれに縋り付いてしまった。
今・・・こうしているために。

「・・・まったく可愛い奴らだよ」
「や、ちょ・・・!」
「ど、どうしたの急に?」

両手で抱きよせてられてクシャクシャと頭を撫でられる。
私は一切抵抗せずにされるがままになる。
そう。
この優しい手に身をゆだねて。

「いや・・・このままずっといられたらいいなあって、急に思ってさ」
「このまま?」
「・・・そうね」

あなたの呟きに、心の中で、ありがとう、と呟く。
でも、このままずっとなんて・・・無理。
あなたはあの時、桐乃を選んだんですもの。
それなのに私がここにいるのは・・・ただのエゴに過ぎない。
だから・・・と、私は星を見上げて誓う。
できるだけ早く、この幸せな空間にサヨナラを告げようと。
私の心が、完全に囚われる前に・・・。
221 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/08/04(土) 09:50:12.08 ID:SxJr/XdDO
ラスト、桐乃side。

「・・・京介?」
「・・・ベランダでなにしてんのあんた?」
「んー?」

瑠璃と二人、飲み物をとりに来たリビング。
ベランダにいるあのバカを見つけ声を掛けた。

「星を見てた」
「星?」
「ああ」

あたしにそう答えて、また夜空を見上げる京介。
・・・なにが楽しいのかわかんないけど、寒くないの?

『星になど祈るもんか』
222 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/08/04(土) 09:52:06.59 ID:SxJr/XdDO

京介が大学を卒業して翌月。
今あたしは、京介と瑠璃・・・黒いのと一緒に郊外のマンションに住んでる。

「・・・そんなによく見えるの?」
「ああ。部屋を暗くしてるとなおさらな」

カラカラと窓を開けつつ、瑠璃が京介に倣って出ていった。
薄着なのに平気かな?
京介の横にちょこんと腰かけた瑠璃は、「へえ」と感嘆の声を上げた。
そんなに綺麗なのかな?

「すごいわ。松戸のアパートでもこんなに良くは見えなかった」
「ここが最上階ってのがあるんだろうな。周りを遮るものや街灯の明かりが邪魔にならないから」
「よく気付いたわね?」
「引っ越しから1週間。やっと粗方片付いた今日、ふとベランダに出たら偶然」
「へえ、さすがね」
「ありがとう」

二人の背中を見ていたあたしだったが、

「あれ?」

星空を見上げる瑠璃をみつめている京介に気付き、そろりとベランダに出る。
223 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/08/04(土) 09:53:39.18 ID:SxJr/XdDO

「・・・見惚れてるとかチョーありえないんですけど?」
「げ」

突然声を掛けてやると、京介は飛び上がるようにして驚いた。
いい気味だと内心で笑う。

「・・・どうしたの?」

瑠璃の声に、わざとらしい渋面を作って答えてやる。

「今こいつ、あんたの顔にポーッと見惚れてたの」

十分わかっているのだろう。
瑠璃は頬に手を当て「あらまあ」と笑って見せた。

「あー・・・桐乃?とりあえず気配を絶って背後に立つのはやめなさい」
「ぼーっとしてるあんたが悪いだけでしょー?」

べっと舌を出しながら、あたしも京介の隣に腰を下ろす。
224 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/08/04(土) 09:54:54.54 ID:SxJr/XdDO

「わ!ほんとに綺麗!」

思わず声が出てしまった。
だって本当に綺麗だったから。
降ってくるような星空ってのはこういうのを言うんだろうな。

「すごいわよねえ」

あたしの言葉に、瑠璃も素直に同調する。
・・・こんな風にあたしたちが、いがみ合うことなく一緒に居られるなんて、当時のあたしたちなら考えられないだろーな。
・・・あれ?京介が笑ってる?
なーに嬉しそうに笑ってんのよ?

「・・・どしたの?締りの無い顔がもっと緩んでるよ?」
「・・・」

あたしの言葉に、予想通り複雑な表情を浮かべる京介。

「あらほんと。なんというか不謹慎な顔になっているわ」

勝手知ったる何とやら。
瑠璃がすかさずあたしに続く。
この辺の呼吸はすでに阿吽だ。

「・・・お前らはよ・・・」

どんな反応するかな?と思っていたら・・・それでも京介は笑っていた。
それだけの年月を過ごしてきたのだと思うと、少しだけ感慨深い。
それもこれもあの時に諦めなかったからだ。
ううん、ちがう。
あの時のあたしは、諦めるなんて微塵も考えてなかった。
225 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/08/04(土) 09:56:37.93 ID:SxJr/XdDO

『一緒にいてよぅ・・・黒猫ぉ・・・瑠璃ぃ・・・』
『な、なんで泣くのよあなた・・・』
『あんたが離れるとかいうからじゃんー・・・やめてよーそんなこと言うのぉ・・・お願いだからさぁ・・・』
『・・・』
『・・・俺からも頼むよ、く・・・瑠璃・・・』
『・・・ああ、もうっ!信じられない!なんだってこうあなたたち兄妹は・・・もう!わかったわよっ!』
『!』
『・・・どこにもいかない。一緒に居てあげる』
『・・・ほんとに?・・・嘘じゃない?』
『ええほんとよ。・・・ああもう!可愛い顔が台無しじゃない!ほらこっちきなさい!』
『うえーん。うれしいよー』

いやー思い出すと恥ずかしいなー。
なんてバカな娘だあたし。
友達引き止めるのに、泣き落としとかマジありえないし。
でも後悔なんていっこもない。
あたしはそれだけ真剣だったし、瑠璃も真剣に受け止めてくれた。
バカだったと思うし、子供だったとも思う。
でも今こうしていられるのは、大袈裟じゃなくあの時選択肢を間違えなかったからだ。
あの時瑠璃は言っていた。

『・・・桐乃。一つだけ確認させて?私が京介と住むということは・・・間違いが起きるかもしれないということを含むのよ?』

そのことは何度も考えた。
そしてあたしは、それでもいい、としっかり答えた。
瑠璃は驚いていたようだけど、実際あたしは本当に平気だと思っていた。
あ、腰の軽いあのバカのことじゃなくて、あたしの気持ち的にね。
もし京介と瑠璃がそういう関係になったとしても・・・絶対にあたしを蔑ろにするはずないって信じてたから。
むしろ、大好きなあいつと、大好きなこいつが、そうなるなら嬉しいとさえ考えた。
あはは。あたしバカだねー。
226 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/08/04(土) 09:58:19.03 ID:SxJr/XdDO

「・・・まったく可愛い奴らだよ」
「や、ちょ・・・!」

そんなことを考えてたらいきなり京介に抱き寄せられて、クシャクシャと頭を撫でられた。
見ると反対側では瑠璃も同じようにされている。
思わず笑いがこぼれてしまう。

「ど、どうしたの急に・・・?」
「いや・・・このままずっといられたらいいなあって、急に思ってさ」

京介が笑顔のままそう言った。

「このまま?」
「・・・そうね」

瞬間ぴくんとあたしの耳が動く。
瑠〜璃〜?一瞬口ごもったのわかってんだかんね?
あーもーったくぅ。
どーせまた、『いつかは・・・消えなくてはならない身だわ。たとえ煉獄の炎に包まれようとも・・・』とか、わっけのわかんないこと考えてんでしょあんた?
そうは問屋が卸すかってーの。


227 : ◆6U1bthnhy6 [sage saga]:2012/08/04(土) 09:59:02.49 ID:SxJr/XdDO

・・・三人でいることが歪だってのはよくわかってる。
他人の目から見たらどー見えるのかってのも。
でも・・・だからどーした!
他人なんか知ったこっちゃないっつーのっ!
大事なあんたの気持ちすら無視したあたしに、怖いもんなんかあるかっての!
ずっと前に、沙織に見せてもらったアニメですっごくいいこと言ってた。

『そんな道理っ!私の無理でこじ開けるっ!!』

ひゃっはーっ!グラハムさんカッケーッ!
そうよ。
どんな道理も、あたしの無理でこじ開けてみせる。
そのための秘策もあるしね〜。
これはこないだ見たアニメで言ってたんだけど、等価交換てやつ。

『等価交換だ!俺の人生半分やるから!お前の人生半分くれ!!』

うっひょーっ!エドワード君カッチェーッ!
そうよ。
等価交換で人生貰っちゃえばいいのよ。
しかも!
エドワード君は一人だけだけど、こっちはなんと京介と二人!
つまり、あたしの人生半分と、瑠璃の人生半分。
そんで、京介の人生半分と、瑠璃の人生半分。
やったー!瑠璃の人生すべてゲットーッ!
あんた一生ウチの猫ー!
・・・なーんてね。
そんな簡単にうまくはいかないだろうけど、あたしは絶対に諦めない。
そしてあたしは星を見上げる。
よく星に願いをなんていうけど、そんなもん気休めだ。
だからあたしは不敵に笑う。
見てなさいよあんた?
あんたなんかに祈らなくても、あたしは必ず欲しいものを手にしてみせる。
そこにどんな障害があろうとも、必ず乗り越えてみせる。
だってあたしは、欲張りな女だから。
すべて手に入れるまで、諦めたりなんかしてやんないから。
だからあたしは。
星になんて祈ってなどやらない!
228 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/04(土) 10:15:42.60 ID:6Jh2BOLiP
ある意味で一番のご都合だなあ
こういう形で割り込まれるようなのが一番嫌だわ

原作がこういう風にならないことを祈る
229 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/04(土) 21:33:10.64 ID:7CSF/SbCo
>>227
こんなストーリーも面白いんじゃない? って何気に書いたSSが、人によっては地雷だったりするんだよね〜
そういうときのために注意書きが必要らしい(事前にネタバレさせて何が面白いんだって思うが……)
万人受けしない展開やカプでも、それはそれでSSらしくて良いと思うんだけどね
その昔、キャラスレまで飛び火して叩かれてるSSがあったことだけは付け加えておこう
かなりへこむぜ
230 : ◆k4qYXRI5uY :2012/08/04(土) 22:56:11.23 ID:wOTQnEbq0
>>229
まさに僕が書いた桐乃の変態行動ssですね。分かります。
231 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/05(日) 00:16:36.54 ID:NjGYiQUl0
>>227
なんか叩かれてるが俺は好きだから頑張れ!
232 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/08/05(日) 00:26:52.69 ID:2d2Rp42DO
んー・・・単純に、なんでゲームで黒猫が桐乃たちと一緒に暮らしてたか?って考えて書いただけなんだけどな。
とりあえず>>228は俺の酉のSSは読まない方がいいぞ?俺またこーゆーの書くし。
まー全力否定は凹むよな実際(苦笑)
お互いの為にも頼むわ。

>>231
好きって言ってくれてサンキュ。
あんたのお陰で、また書こうって気になった。
助けられたよ。
233 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/05(日) 00:46:26.99 ID:1uU01pNSO
>>227
乙です
叩かれてるみたいだけどこういうのもいいとは思う

でもさすがに称賛以外いらねってのもどうかと思うかなぁ

まあ、貴重な書き手さんがいなくなるのも寂しい話ではあるが…

しかし時にはこういうこともあることは頭に入れといた方がいいと思うよ
特に京介桐乃黒猫の関係には思うとこがある人も多いみたいだし
234 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/05(日) 01:30:46.26 ID:66qfxaQLo
これくらいの叩かれ方ならご愛嬌ってことでいいじゃん
俺のときなんか、書くのは勝手だが読みたくないから注意書きしろって……
どうやら地雷を踏んだらしい
235 : ◆YHxtVKAHbw [sage]:2012/08/05(日) 01:30:56.38 ID:UjvDsMO6o
>>227
乙〜。
俺は好きだぜ、こういうの。
ゲームはやったこと無いけど、そのゲームでそういう√があるんなら
そこから発展していくのもアリだと思うから。
むしろ、こういうSSを読むことでゲームへの興味が沸く俺みたいな人間もいるワケだし。
凹まずにどんどん投下してくれ。
236 : ◆YHxtVKAHbw [sage]:2012/08/05(日) 01:36:31.08 ID:UjvDsMO6o
原作のしょっぱなの『妹と恋しよinメルルDVDケース』を
桐乃が必死に自分のじゃないと否定したのを京介が信じてしまった、
というIF√をなんとなく書き始めたが、
なぜか桐乃のツン分が滅茶苦茶少なくなってデレ分多量になってしまったので
どうしようか迷っている。

完成させるのやめて他にしちゃうかもしれない。
237 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/05(日) 01:53:36.21 ID:1uU01pNSO
>>234
もしかしてあのあやせSS(だったはず)の書き手さんか

あれはなんというかお気の毒としか……
あれ見ていかに妹の扱いが難しいか実感したわ

まあ、原作の状況がアレで色々過敏になってたのかもしれんが…
238 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/05(日) 02:21:42.36 ID:66qfxaQLo
>>237
憶えておいででしたか。その節はどうも
京介×あやせ の世界だけで完結させることが如何に無難か学びました
239 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/05(日) 09:35:54.43 ID:2d2Rp42DO
>>234
それは・・・なんといっていいかわからんな。すまん。

一度トラどらSSで、否定コメで引退したことがあってね。それで過敏になっちまう。

まぁグダグダ言ってもなんにもならん。
空気悪くしたら謝る。
次は頑張るから許してくれ。
240 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) [sage]:2012/08/05(日) 14:12:51.88 ID:2sSnWovAO
>>236
デレッデレでもいいじゃまいか
そんなのが好きな自分みたいなのもいるぜ



色んな人の考え方が有るだろうけど、匿名掲示板な上、二次創作なんだから、書き手の態度が悪いとかじゃなければスルーすればいいのに
内容が余りにも不味ければレスだって付かないしな
そんなんだから、個人的には>>228みたいなのは気持ち悪く感じるな

>>234が書いたのが、どんなんか気になる今日この頃
241 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/08/05(日) 20:42:24.97 ID:2d2Rp42DO
さて、とりあえず思い付くまま書いた短いのを一つ。
閲覧注意じゃないから安心してドゾー。
242 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/08/05(日) 20:43:31.00 ID:2d2Rp42DO
「あー・・・もう11時か・・・」

俺は携帯の液晶をみつめ、それを握りしめたまま大きく伸びをした。
机に向かう姿勢のまま固まっていた体から、パキポキと小気味良い音が漏れてくる。

「・・・・・・ふぅ」

ひとしきり体を伸ばした後、首をゴリゴリと左右に回す。
夕飯からこっち、ずっと勉強していたコリが僅かながらほぐれた気がする。
8月某日。
今日俺は部活の仲間と夏コミに参加していた。
1年ぶりの夏コミはさすがにすごくて、早起きだったことも手伝って、俺は早々に寝てしまうことに決めて勉強を切り上げた。
明日は黒猫のサークルで同人誌販売もあるしな。
俺のマスケラコスプレ写真の記念すべきデビューだぜ。

『ある兄貴の葛藤』
243 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/08/05(日) 20:44:10.04 ID:2d2Rp42DO
『パチリ』

電気を消しベッドへと横たわる。

「・・・」

・・・眠れん。
別に明日が楽しみすぎて、眠れない子供と一緒というわけではない。
そりゃちょっとは楽しみでもあるが、眠れないというほどではない。
眠れないのはただ単純に、シンプルな理由ですなわち。

「・・・暑い」

ただこれに尽きる。
なんでも今年は空梅雨で、尚且つ連日猛暑ときているものだから、夜になってもアスファルト熱が引かず、連日熱帯夜になっているという始末。
その上俺の部屋にはエアコンだなどと洒落たものなどなく、ちゃちい扇風機一つだけ。
不用心にも開け放しの窓から一切風は入ってこず、必然的に部屋にこもった熱気が風に流されるのみとなっている。
だから慢性的に寝不足な俺だった。
そこへきて今日のサークル参加だ。
冗談じゃなく半ば本気で死を覚悟したね。
行きの電車。
サークル入場までの炎天下。
そして会場内の熱気。
正直、精も根も尽き果てた感じだ・・・。
でも、だからこそ今日はぐっすり寝られると思っていたんだが・・・。

「・・・はぁ」

一つため息をつくと、俺はごろんと『壁』に向かって寝返りを打った。
・・・原因はわかってる。
今俺は一つ悩みを抱えている。
それは・・・妹桐乃の彼氏疑惑。
この間、桐乃がすれ違いざまに呟いた、

『――今度紹介してあげよっか?あたしの彼氏』

この言葉に、ずっと悩ませ続けられているわけである。
別に妹に彼氏ができようがどーでもいいはずなのに、なぜかそれが気になって仕方がないのだ。

「ったく・・・」

自嘲気味に吐き捨てる。
なぜ妹の色恋沙汰に頭を悩ませなけりゃならんのだ?
別にいーじゃねーか。
桐乃の横に誰かが立つって事だろ?
そうしたら桐乃の面倒はそいつが見るわけだ。
なら、俺はお役御免。
晴れて自由の身の上だ。
良いことずくめのはずなのに・・・なぜか胸の辺りがムカムカする。
あーったく!なんなんだろーなこれは!?
他にも考えなきゃいけないことはあるってーのに、全くバカみたいだ。
あー・・・考えたら余計に目が冴えてきた。
とりあえず・・・目先の懸念事を片づけることに勤しんでみるか・・・。

「桐乃」
「ん?」
「俺に抱きついてないで自分の部屋で寝なさい」
「え?やだ」

そう言って桐乃は、またモソモソと俺の胸に顔を埋めた。
・・・16連敗か・・・。
244 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/08/05(日) 20:45:12.81 ID:2d2Rp42DO

以上です。
短くてすまん。
245 : ◆YHxtVKAHbw [sage]:2012/08/05(日) 20:49:10.81 ID:UjvDsMO6o
>>243
乙〜。
この状態の桐乃に彼氏疑惑なんてありえんだろwwwwww
どうせならエアコンの効いた桐乃の部屋で二人でやすらかに寝ればいいのにwwwwww
246 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) [sage]:2012/08/05(日) 21:22:59.78 ID:2sSnWovAO
>>244
ダメだこの桐乃良いぞもっとやれww
16連敗が日数換算出来るとするなら、今回分を除いて15夜は添い寝してるのかww
京介を鏡の前に立たせて、鏡を指差しながら「この人が彼氏だよ」って言い出しても可笑しくないww
247 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/05(日) 21:42:41.13 ID:WN8uh30AO
乙乙

このシリーズ(?)の桐乃は、デレとかじゃなくお兄ちゃんっ子で、ギャップ萌えが凄いな
248 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/08/05(日) 23:26:42.34 ID:2d2Rp42DO
>>247
ギャップ萌え!?これ、ギャップ萌えっていうのか!?
俺としちゃあ、ブラコンを自覚してない桐乃が書きたかっただけなんだが・・・(;´д`)

ペドといい、地雷といい、知らねーことばかりだよ俺・・・orz
249 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(茨城県) [sage]:2012/08/05(日) 23:34:11.96 ID:Wci0qaLso
乙〜
多分原作の桐乃と比較してギャップってことじゃないかな?
あと知らないことは恥じゃない、無知を自覚するのって大事よ
なんでも知ってる人なんていないんだから
250 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/08/05(日) 23:52:42.14 ID:JiFSPlKKo


このきりりん重症すぎるwwもっとやれ
6U1bthnhy6氏の「え?やだ」シリーズはまだまだ続きます!
251 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/06(月) 00:48:46.93 ID:Te/9xvADO
「え?やだ」シリーズかwwいいなソレ。色々シチュエーションが広がりんぐ。

だんだんエロゲ的に攻略してしまえ>桐乃
252 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/08/06(月) 13:20:20.21 ID:NDPdLiODO
>>250
お!?名前つけられたww

しかも、俺つけようとしてたやつww
ヤルナーオマエラww

それはさておき、黒猫で一つ。
次レスから投下
253 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/08/06(月) 13:21:34.96 ID:NDPdLiODO

「屋台、結構楽しかったな」
そう言って先輩――京介が私に笑いかけてくる。
つられて私も微笑みを返す。
夏休みも半ばを過ぎた8月。
私たちは、近所のお祭りに花火を見に来ていた。

『心残り』
254 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/08/06(月) 13:22:51.91 ID:NDPdLiODO

『これは?』
『ディスティニーレコード・・・平たく言えば運命の記述。これから私たちが、ここここ恋人としてやらなければいけないことが書かれているわ』
『へえ・・・つまりこの夏休みで、俺たちがやることってことだな?』
『え、ええ・・・そうよ・・・』

・・・まったく身も蓋もないんだから。
思い出して一人苦笑する。
あれから約半月。
私たちは様々なイベントをこなしてきた。

『先輩とデートする』
『先輩に私のことを知ってもらう』
『先輩を私の家に呼ぶ』
『先輩の部屋に遊びに行く』

そのすべて私には宝物のように楽しい日々だった。
あなたが私に気を使ってくれた。
あなたがバイト帰りに一緒に帰ろうと言ってくれた。
あなたが私の家族と仲良くなってくれた。
あなたが私のゲームをプレイしてくれた。
あなたが。あなたが。
・・・そしうて今日、新たな運命の記述が発動する。

『先輩と花火を見る』

この記述を見る度・・・私の心に寂寥とした想いが広がる。
・・・本来ならば楽しいはずのイベントなのにね。
知らず、私は傍らの愛しい人を見上げたいた。
京介は私の視線に気づかず、夜空に浮かぶ大輪の花に夢中になっていた。
思わず笑みが漏れる。
子供のような人・・・。
誰に対しても真剣で、まじめで、困っていたら思わず助けに入ってしまうおせっかい。
その実、純粋で、繊細で・・・傷つきやすい人。
・・・ごめんなさい。
私は今日・・・あなたにひどいことをします。
ほんの僅かに頬を伝った滴を強引に擦りとる。
泣いてはいけない。
否。
泣くことなど許されない。
これは私のわがままなのだから。
私が望むべき未来に向かって進むために、私の為にするエゴなのだから。
だから・・・ごめんなさい、京介・・・。

「・・・ねえ」
「ん?」
「この夏・・・私と過ごしてどうだった?」

それでも・・・聞かずにいられなかった。
この後、どれほどのひどいことをしようとしてても。
そうしてあなたは・・・私をみつめたまま、満面の笑みで言ってくれた。

「楽しかったよ。・・・お前と過ごしたこの夏は、きっと一生忘れない」

・・・嬉しかった。
涙が零れそうになるのを堪えるので必死だった。
・・・ありがとう、京介。
そうあなたが言ってくれたことで、私の想いは報われた。
もしこの後・・・次の運命の記述を見せることであなたに嫌われたとしても、私はあなたを想いながら生きていける。
・・・ただ唯一の心残りがあるとしたら・・・。

「桐乃」
「ん?」
「先輩の腕からはなれて頂戴」
「え?やだ」

・・・二人きりで一度もデートできなかったことだろうか・・・。
255 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/08/06(月) 13:23:53.32 ID:NDPdLiODO

以上でーす!
はぁ、楽しくなってきたww
256 : ◆YHxtVKAHbw [sage]:2012/08/06(月) 13:40:13.03 ID:DufMtpvzo
>>254
乙!
そう来たか!ww
これは予想外だった。
257 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/06(月) 18:30:46.84 ID:LvrZa0LAO
>>254
いwwたwwのwwかwwよwwww

気のおけない妹枠ってより、マスコットキャラ枠な気がしてきたww

描写が少ないからか、こういう素朴に見える桐乃は新鮮。
258 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/08/06(月) 18:31:47.06 ID:w7/AXUkwo


まさかこれも「え?やだ」とは思わんかったw
259 : ◆YHxtVKAHbw [sage]:2012/08/06(月) 18:51:18.15 ID:DufMtpvzo
>>236で書いたIF√が出来たので、ちょっと投下。
時系列的には一巻のしょっぱな。
もし、玄関先で拾ったDVDケースを桐乃が「自分のじゃない」と否定したのを京介が信じてしまったら、です。
260 : ◆YHxtVKAHbw [sage saga]:2012/08/06(月) 18:51:46.64 ID:DufMtpvzo
「大事なもんなんだろ? 返すから、ちゃんと受け取れ」
「だ、だから、あたしのじゃ……」

 あれ? 違うのか? さっき俺の手から奪おうとしていたのだが。

 まあこのブツが、この家の誰のものでもないと言う事が分かっただけでもいいか。

 どういう経緯で我が家の玄関先にあったのかという謎は残るが、これ以上妹と口論していても埒があかないな。

「悪かったな、俺の勘違いだった。コレがおまえのもんじゃないってのは、よく分かったよ。誰のなんだかしらないが、俺が持っててもしょうがねぇ。なんか忘れ物したような気がして戻ってきただけだから、コンビニ行くついでにそこのゴミ箱に捨ててくるわ。お袋のアイスも買わないといけないし」

 基本、コンビニのゴミ箱はゴミの持ち込みは禁止なんだけどな。

「あ、あの……!」

 部屋から出て行こうとした俺に桐乃が声をかけてきた。
 俺は首だけで振り返り、

「なんだ?」
「そ、それ、あたしが……捨てておくから……」
「いや、コレが万一お袋に見付かったら、この家でこういうもんを持っていそうな人間って消去法で俺ってなってしまうじゃんかよ。変な疑いかけられる前にこの家から出してしまったほうが安全だからいいわ」

 そう言って、俺は部屋を出た。
 階段を降り、玄関ではなく勝手口に行き、靴を履いて出て行こうとしたところで、

「あのさ……」

 超ビックリした。
 いつの間について来てたんだ、この妹は?

「コンビニだったら、あたしが行ってくるから……。ハーゲンダッツの季節限定のやつ……だよね……?」
「お袋のアイスだけじゃなく、俺の買物もあるし、」
「そ、それも、買ってきてあげるから……。その……さっきのアレもあたしが捨ててくるし……」

 さんざん俺のこと無視して嫌いなはずなのに、どういう風の吹き回しだ?

 まあ、俺の買物までしてくれるって言うんだから一応礼くらいは言っておくか。

「サンキュ。でもな、こんな時間に女子中学生のお前を買物に行かせたなんて親父にでも知れたら、俺が怒られてしまうわ。気持ちだけ受け取っておくよ」

 俺は桐乃に軽く片手を上げて見せてから勝手口の扉を開けた。

 背後から「あ……」と桐乃の小さな声が聞こえたような気がしたが、気のせいだろうと外への一歩を踏み出す。
 が、俺の足はそれ以上進まなかった。

 桐乃が俺の服の裾を握り締めていたのだ。

 振り向いて見ると、桐乃は若干青ざめた、思い詰めた表情で俺を見ていた。

「どうしたんだよ、おまえ? さっきから様子がおかしいぞ?」
「お……おにい……あに……き……。ちょっと話があるの……」

 兄貴、か。

 桐乃の俺に対する呼称は元来『おにいちゃん』だった。
 しかし、全く話をしない期間が続いたので、いまさらそう呼ぶのも照れくさいのだろう。

「今じゃないと駄目か?」
「今でないと……ダメ……なの……」
「しかしなあ……」

 ここで時間食ったところでコンビニは逃げたりしない年中無休二十四時間営業だけど、今度は俺の睡眠時間が圧迫されてしまう。

「一生のお願い……」

 やっぱりまだまだ子供だな、こいつは。
 気安く『一生のお願い』なんて言葉吐けるのは子供だけの特権だからな。
 俺だってガキの頃は数え切れないほど言っていたし。

「分かったよ。なんだ? 話してみ?」
「ここじゃ……ダメ……。あたしの部屋に……来て……」
261 : ◆YHxtVKAHbw [sage saga]:2012/08/06(月) 18:52:12.65 ID:DufMtpvzo
 そんなわけで初めて桐乃の部屋に足を踏み入れた訳だが、特に感慨はない。

 いつも俺のことを虫けらのように扱っている桐乃が恥ずかしそうにもじもじしている様子が珍しくて、そっちの方に気が行っていたのだ。

「で、なんだ? 話ってのは?」

 次の瞬間に起こった眼前の光景に、俺は自分の脳味噌を疑った。
 あの桐乃が俺に深々と頭を下げてきたのだ。

「な、な、な……?」
「……嘘吐いてゴメンなさい……。さっきのアレ……あたしの、もの、だったの……」

 この時の俺は、完全に気が動転していたので、『さっきのアレ』が何を意味しているのか分からなかった。

「……だから……捨てないで。お願い……!」

 なんか彼氏に別れを切り出された彼女のようなセリフだな。

 と、俺は見当違いのことを考えていた。

「捨てる訳ないだろ」

 この後に続く俺のセリフは完全に黒歴史ものだった。

「確かにしばらく口も聞かない時期があったけど、おまえは俺の妹だ。その関係を解消することなんてどんな事があっても出来やしねぇよ」
「え……?」

 桐乃の頭上に無数のハテナマークが飛び交っているのが目視でも確認できた。

 桐乃はしばらく目を瞬いていたが、

「ほんとに、ほんと?」

 そう聞かれたらこう返すしかないだろう。

「本当に本当に本当だ」

 ぱぁーっと笑みを浮かべる桐乃。
 どこか安心したような、ほっとしたような気配を感じる。

「あたしも……いつまでも妹だよ……。あに……おにいちゃん……」

『兄貴』から『おにいちゃん』に変わった。
 この年頃の女ってのは本当によく分からない。

 ていうか、なんでこの妹は寄り添うように兄の胸に顔をうずめているんだ?

「ほんとの事言うとね、全然話とかしてなかった時、すごく寂しかった。おにいちゃんがおにいちゃんで無くなってしまうような、どこか遠くに行ってしまったような気がして」
「そ、そうか……」
「今日のこともゴメン。あたしのバッグの中身、拾ってくれようとしたのに手を叩いてしまって」
「ま、まあ、気にすんなって。やっぱあれだろ? 化粧品とかそういうの、女の子としては男に触られたくないものだろ?」

 ここで桐乃は顔を上げ、俺の目を睨む……いや、見つめてるんだな、この表情は。

「“違うの”。化粧品なんかよりも見られたくないものがあったからなの。今日のゴハンの時の話、覚えてるでしょ? お父さんとお母さんが言ってたこと」

 夕食の時の話?

『あら、じゃあハーゲンダッツの新しいの買ってきてちょうだい。季節限定のやつね』

 お袋のセリフはこれだったな。

 って、やべ。
 早くこの話切り上げてコンビニに行かねえと。

 そいでもって、親父は……

『母さん、あとで桐乃を呼んできなさい』

 いや、これは桐乃が食卓から出て言った後のセリフだから桐乃は聞いてないはずだ。
262 : ◆YHxtVKAHbw [sage saga]:2012/08/06(月) 18:52:41.36 ID:DufMtpvzo
 他の親父のセリフは……

『ああ。わざわざ自分から悪影響を受けに行くこともあるまい』

 悪影響って何のことだっけ?

『やぁだー、そういうのって確かオタクっていうんでしょ?』

 このお袋のセリフか!?

 ここから考えられる桐乃の化粧品以上に俺に触れられたくないもの……。

 依然として桐乃が俺に取りすがってるので、少し腰を引いて腹のあたりに空間を作り、服の中に隠したままだったブツを取り出した。

「これ……おまえの物だったのか……?」

 DVDケースを桐乃に見せる。

「え……? うん。さっきもそう言わなかった?」

 いつ言ったっけ? そんな記憶は全然ない。
 ていうか、自分のものではないと否定している姿しか記憶に無いぞ?

 まあいい。どこかに思い違いがあったのだろう。
 このあたりは後で頭の中を整理したらいい(その結果、恥ずかしさと気まずさに身悶える事になるとは、この時には想像してなかったのだが、それはまた別のお話)。

 ようするに、俺の予想が間違いでないとしたら、桐乃は──

 オタクだ。

 親父とお袋は食事の時の言葉から分かるようにオタクにいい印象は持っていない。
 かく言う俺もそういう人達に対して、得体の知れないもの、と思っているフシがある。

 オタクに偏見持っている人に自分がオタクだとバレるのは出来れば避けたいだろう。
 俺だって眼鏡属性があることなんて他人には知られたくないからな。

 ──あ、そういう事か。
 どんな趣味であれ、それを嗜好していない人から見たら理解できないものなんだ。
 例えば、俺のツレにサッカーバカがいるけど、そいつと野球部のクラスメートの会話って、まったく噛み合ってなかったもんな。

 つまり俺は、理解できないというだけの理由でオタクに偏見持っていたって事……なんだろうな。

「じゃあこれ返すよ。この事は俺の胸にしまっておく。くれぐれも親父やお袋にはバレないように気を付けろよ?」

 出来るだけ兄貴っぽく言いながらDVDケースを桐乃に差し出す。
 桐乃は両手で受け取ると、また俺の顔を見上げて、

「妹がこんなのが好きって失望しない? おにいちゃんをやめちゃったりとかしない?」

 なんでそんなに心配そうな目をするんだよ。

「さっきも言ったろ? 俺はいつまでもおまえの兄貴だし、おまえはいつまでも俺の妹だ」

 桐乃は満足そうに微笑んで頷いた。

「そうだ、桐乃。もう遅いし俺もコンビニに行かないといけないから今日はいいんだけど、今度時間があったらちょっといろいろ話聞かせてもらっていいか?」
「え? 別にいいけど、なに?」
「人生相談って言ったらいいのかな? 俺の見聞を広めるためにおまえの趣味がどういうものなのか知りたいんだけど……ダメか?」

 桐乃はぶんぶんと顔を振った。

「ダメなんかじゃない! いいよ! あたしの全て見せてあげる!」

 おいおい桐乃よ、その言い方は誤解を招くぞ?

 桐乃は俺と話が出来なくて寂しいと言っていた。
 そう言われて俺も気付いたんだろう。“寂しかった”と。
 さっきは偉そうに、いつまでも兄妹だ、なんて言ったけど、実際この数年は兄妹の関係とは程遠いものだった。

 もしかすると、久し振りに兄妹に戻れるかも知れない。
 そう思うと、その機会をくれた、ピンクというありえない色の目と髪をしたDVDケースのイラストもなぜか愛らしく感じる。

「その女の子、可愛いな」

 桐乃の手に戻ったケースを指差しながら言うと、

「うん!」

 と、それはもう嬉しそうに答える桐乃だった。
263 : ◆YHxtVKAHbw [sage saga]:2012/08/06(月) 18:53:08.27 ID:DufMtpvzo
「お袋、ほれアイス」

 コンビニから帰ってきた俺は、まだリビングにいたお袋にコンビニ袋を見せる。

「あ、ありがとー。今夜は遅いから冷凍に入れておいてちょうだい?」
「はーい」
「それにしても、かなり時間かかったわね?」

 現在、夜九時半過ぎ。
 この時間に就寝するというのなら高校生にしては早すぎなのだが、風呂に入ってその他いろいろやってたら十一時を過ぎるだろうからかなりギリギリの時間だ。
 家族の誰かが風呂に入ってたら上がるのを待たないといけないしな。

「ちょっと立ち読みしちゃって」

 本当は桐乃との話が終わった後、ダッシュで往復したんだけど。

「まあいいけど。お父さんももう寝室に入っちゃったし。でも、お父さんがここにいる時に帰ってきてたら叱られてたわよ?」
「はーい。次からは気をつけるわ」
「じゃあ、適当にお風呂に入って寝なさい。おやすみ」

 って、お袋さんよ。立て替えたアイスの代金、出してくれないの?
264 : ◆YHxtVKAHbw [sage saga]:2012/08/06(月) 18:53:36.80 ID:DufMtpvzo
 桐乃の衝撃の告白があった翌日、我が家ではちょっとした異変が起きていた。

「おかわりー」
「あ、あたしが入れてきてあげるよ?」
「おう悪い。頼むわ」
「…………」

 最後の三点リーダはお袋だ。

「……桐乃、熱でもある? それとも変な物食べた?」
「え? 何言ってるの、お母さん?」
「だって……ねえ、お父さん?」

 お袋の言いたいことは分かる。
 ずっと冷戦状態だった俺と桐乃が普通に会話しているなんて、事情を知らなければ正気の沙汰には見えないだろう。

 でも、俺の事は心配してくれないんですね、母上様?

「兄妹ならこれが普通だろう。今までが異常だったのだ」

 と親父。あの強面の親父が、まるで我が子を見るような優しい目で俺と桐乃を交互に見ている。
 俺と桐乃は親父の子供なんだから当たり前なんだけどね。

「桐乃、おまえの雑誌のプロフィールに書いてあることも本当に出来るようになるかも知れないな?」
「え? あ、うん……」

 何故か赤面して俯き、チラチラと俺に視線を寄越す桐乃。

 ところで、なんかサラリと凄い事言いませんでしたか、親父殿?

「雑誌ってなんだよ?」

 すると親父は、いまさら何を言っている、とでも言うかのような表情で俺を見た。

「桐乃って女の子向けのファッション雑誌で読者モデルやってるのよ? 兄妹なのに知らなかったの?」

 初耳だよ!? え? なに? ティーン誌モデルが俺の妹? 確かにモデルみてーだとは思っちゃいたけど?

「よし。夕食が終わったら俺の宝物を見せてやろう。桐乃、いいな?」

 笑みを浮かべて桐乃に優しく声をかける強面。
 家族でない赤の他人のお子様なら失禁するレベル。

 桐乃はさらに真っ赤になり、聞き取りにくいような小さな声で「……うん……」と答えた。
265 : ◆YHxtVKAHbw [sage saga]:2012/08/06(月) 18:54:04.42 ID:DufMtpvzo
『休日は大好きなお兄ちゃんと買物して過ごしてます♪』

 親父の宝物は、雑誌の桐乃の掲載ページのスクラップだった。
 この一文は、桐乃の雑誌向けプロフィールの休日の過ごし方に書かれていたものだ。

「おまえ達は口も聞かないような仲だったが、桐乃の本心は仲良くしたいということはこれを読めば一目瞭然だ。京介もそうだったろう?」
「ああ。確かに人並の兄妹っぽい仲ってやつは憧れが無かったと言えば嘘になるよ」

 親父に俺は答える。
 桐乃は先程から俺の横で赤面続行中だ。

「母さんは今まで仲が悪かったその反動が怖いと変な心配をしているが……俺は信じているぞ。昔仲が良かった頃の桐乃の一番の理解者は京介、おまえだったからな、今もそうだろうと俺は確信している」

 確かに、今の桐乃の特殊な趣味という秘密を共有しているのは俺だけだからな。
 オタクの件に関して言えば、桐乃を守れるのは俺しかいない。

「桐乃、今まで出来なかった分、せいぜい京介に甘えろ。京介、桐乃の支えになってやれ」
「……うん……」
「ああ」

 桐乃と俺が答えると、親父は満足そうに頷いた。

「お互い大人になって好きな人が出来て結婚してこの家から出て行っても、おまえ達はたった二人の兄妹だという事は忘れないようにな?」
「ああ」

 俺は答えるが、桐乃は黙って俯き、膝の上に置いた手をぎゅっと握り締めていた。
266 : ◆YHxtVKAHbw [sage saga]:2012/08/06(月) 18:54:30.92 ID:DufMtpvzo
 自室に戻ってベッドに寝そべって少しまどろみ始めたとき、控えめなノックの音が聞こえた。

「あ? やべぇ、風呂入らずに寝てしまうところだった」

 ドアを開けると、桐乃が立っていた。
 恥ずかしさとは別の意味で赤く染まった顔、半乾きの髪から香るシャンプーの匂いからすると、風呂上りなのだろう。

 桐乃はぎこちない笑顔で視線をさまよわせながら、

「お風呂、開いたから」
「おう」
「お風呂から上がったら昨日おにいちゃんが言ってたこと……」
「ああ、俺の“人生相談”か。今日でいいのか?」
「うん。それまでにあたしも用意しておくから」
「おっけ。風呂から上がったらお前の部屋に行くわ」

 ここで桐乃は初めて顔を上げて本当の笑顔を俺に見せた。

「うん!」

 ……ところで用意ってなんだ?
267 : ◆YHxtVKAHbw [sage saga]:2012/08/06(月) 18:54:57.25 ID:DufMtpvzo
 風呂から上がり二階に上がると、桐乃の部屋からなにやらガタゴトと物音が聞こえていた。

 訝しがりながらも俺は桐乃の部屋のドアをノックする。

「おい、桐乃。上がったぞ」

 すると、部屋の中から、

「あ、入っていいよ」

 との返事。

 ドアを開けると、桐乃は本棚の中身を取り出して、ベッドの上に積んでいる真っ最中だった。

「なんだ? こんな時間に模様替えか?」
「ごめん。髪ドライヤーで乾かすのに時間かかって、用意するの終わらなかった」
「なんかよく分からんが、手を貸そうか?」
「ごめん、おねがい」

 意味が分からないまま、本棚の中身をベッドに移動する作業を手伝うこと数分。
 二つある本棚の片方が空っぽになった。

 桐乃はまだ中身が半分ほど残っている本棚を指差して、

「悪いけどあれ、こっちの本棚があった場所に押して動かして」

 と、空の本棚を手前に引いてスペースを作る。

 言われた通りに本棚を動かすと、そこに襖が現れた。

「なんだ、これ? 押入れ?」
「この部屋、元々和室だったのをリフォームしたからその名残だと思うんだ」
「へぇ……」
「夕べ、あたし、おにいちゃんに言ったよね? あたしの全てを見せるって」
「あ? ああ」

 だから桐乃さん? その言い方は誤解を招きますよ?

 桐乃は襖に手をかけるが、なかなか開けようとしない。

「…………」

 思い詰めた表情で、俺をじっと見つめてくる。

 桐乃の全て。おそらくこの中には桐乃の趣味のものが入っているのだろう事は想像に難くない。

 ひょっとしたら、俺は桐乃を追い詰めていたのではないだろうか。
 確かに俺は桐乃の趣味を理解する事で妹に近付きたいと思った。
 一方で桐乃も幼かった頃の仲のいい兄妹に戻りたいと思っていた。
 だけど、夕べのDVDの件でも分かるように、桐乃は自分の趣味を恥ずかしいものだと思っているフシがある。
 無理に桐乃の趣味の全てを知らなくても仲を改善する方法は他にもあったのかも知れない。
268 : ◆YHxtVKAHbw [sage saga]:2012/08/06(月) 18:55:24.19 ID:DufMtpvzo
 桐乃は襖に手をかけたまま「嫌われちゃったら」とか口篭っている。
 こいつもこいつで葛藤しているのだろう。

「あ、桐乃? 相談持ちかけた俺が言うのもなんだけどさ? 嫌なら別にいいんだぞ?」

 俺が声をかけると桐乃は視線を下に落とした。

 すまん、俺の思いつきでここまでおまえを悩ませちまって。

 でも、これだけは言っておこう。なによりこいつの兄貴として。

「ただな、桐乃。見せないなら見せないでもいい。だけど、あまり自分を卑下するんじゃないぞ? どんな事があっても俺はおまえの兄貴をやめたりなんかしないから」

 そう言ってから、

「それじゃ、本棚戻すか?」

 と動かしたばかりの本棚に再び手をかけようとしたところで、

「待って!」

 桐乃に止められた。

 夕べからおどおどした喋り方だったのだが、今の桐乃の声は力強かった。

「理解できなくてあたしのこと失望しちゃってもいい。でも知ってて欲しいの。おにいちゃんにだけは」

 そう言うと、きゅっと目を瞑り、一気に襖を開いた。

 ぽとっ。

 開いた勢いで落ちたのは「妹と恋しよっ♪」のパッケージ。
 例の「星くずなんとか」のケースに入っていたディスクは本来これに入っていたものだろう。

 改めて押し入れの中を見ると、大量のアニメのDVDやゲームのパッケージの山がそこにあった。

「…………」

 コレは──想像以上に……スゴい……。

 こんだけのモノ、一体どこから購入費用を捻出するんだ? と考えるが、すぐに答えは出てきた。
 さっき食事の時の会話で、桐乃がモデルだと知らされたばかりじゃないか。
 つまり、そのギャラで、ってことなんだろう、な。

 俺自身のCDのディスクとケースがシャッフル状態になった経験からすると、「星くずなんとか」のディスク本体はこの中のどこかにあるんだろう。
 そうなったらこれだけの量だ。
 元のケースに戻す作業はかなりの重労働だろう。

 そのような事を桐乃に言うと、

「あ、メルルのDVDならそこのパソコンに入ってるよ?」

 との返事。ここで初めてPCでもDVDが見れる事を俺は知った。

 確かにこの趣味をひた隠しにしていたこいつの事だ。
 リビングのテレビで鑑賞するのはリスクが高いだろう。
269 : ◆YHxtVKAHbw [sage saga]:2012/08/06(月) 18:55:51.09 ID:DufMtpvzo
「で、どう……?」
「どうって?」
「この押入れの中を見た感想……」
「えっと、びっくりした」

 他に言葉なんて見付からない。

 すると桐乃は俯いて、

「失望……した?」

 と小声で聞いてくる。

「だから、そんなに卑屈になるなって。でも、こうして目の当たりにしてしまうと、ちょっと覚悟しなきゃって思うな」
「え? 見る前じゃなく、見た後で何を覚悟するの?」

 キョトンと俺を見上げる桐乃。

「だって、これだけの量、生半可な気持ちじゃお前の全てを知ることは出来ないじゃないか?」
「えっ、じゃあ……?」
「俺も同じ趣味を持つなんて無責任な事は言えない。でも知るだけは知ろうと思う。この全てを」
「おにいちゃん!」

 桐乃は叫ぶが速いか俺に抱きついてきた。
270 : ◆YHxtVKAHbw [sage saga]:2012/08/06(月) 18:56:23.51 ID:DufMtpvzo
 ここで俺は、ふと思いついた疑問を口にした。

「おまえ、何年ぶりか知らねぇけど俺と話出来るようになるまで、どんな気分で過ごしてた?」
「え? 昨日も言ったでしょ? 寂しかったって」
「いや、俺との兄妹関係じゃなくて……。今の中学生はこういう──オタクみたいなのが当たり前なのか? って」

 俺が中学の頃は、オタクという人種は周りから浮いた状態だったので、時代は変わったのかな? と思ったのだ。

「ううん。たぶんあたしの勝手な想像だけど、オタクを一番毛嫌いしてるのは女子中学生だと思う……」
「じゃあ、おまえ、ひょっとして友達とかいないんじゃないか?」

 桐乃は大きく首を横に振って否定した。

「そんなことない! 友達はたくさんいるよ!?」
「そっか。良かった。俺の思い過ごしだったか」

 桐乃は首を微妙な角度で傾げる。
 その視線に促されるように俺は言葉を続ける。

「いやな、もしかして学校でも寂しい思いしてたんじゃないかって。家でも寂しくって学校でも寂しかったらちょっといたたまれない気持ちっていうのかな?」

 気にしすぎだって。なに心配してるの? という言葉を期待したが、桐乃は予想に反して眉間に皺を寄せた。
 目には涙さえ浮かべている。

「……かった……」
「え?」
「寂しかった……。さっきも言ったように、あたしの友達はオタクを嫌ってるから……。だからこの趣味隠さないといけなくって……。学校の友達と一緒にいるのが楽しくないわけじゃないけど……でも……自分の趣味を気兼ねなく話せる友達だって……ほんとは欲しかった……」

 俺の思い過ごし……ではなかった。
 やはりこいつは心の奥では一人ぼっちだったんだな。

「わかった。じゃあ、俺はおまえの兄貴だけど、そっちの趣味の友達にもなってやろうか?」
「え? それは……ダメだよ……。おにいちゃん、オタクじゃないもん……」

 桐乃が言うには、友達というからにはお互い教えあったりして共に向上して行く間柄でないといけないとのことらしい。
 今の俺だと教わるばかりだし、桐乃の趣味の全てを知った後でも、オタクに理解がある一般人のままで、オタクになるとは限らないとの事だ。
 確かに桐乃の趣味に偏見は持たないようにしようとは思うが、俺がオタクになるかどうかは別の次元だしな。

「でも、寂しいんだろ?」
「いいの。おにいちゃんが昔のように話相手になってくれて、あたしの趣味を知っても気にしないで接してくれるだけで」

 本当にそれだけでいいんだろうか。
 これでこいつの寂しさを癒すことが出来るのだろうか。

 今の桐乃は左右の重さが全然違う天秤のような状態だ。
 万一俺がオタクになったとしても、それだけでは桐乃の心の天秤は釣り合う事はないだろう。
 いや、そもそも俺は桐乃の天秤の「学校の友達」の反対側にいるべき人間ではない。
 俺の役割は兄貴としての妹の支え、つまり天秤そのものだ。
「学校の友達」と対になる「趣味の友達」がこいつには必要だろう。

 しかし、そうなると天秤である俺としては桐乃の趣味だけでなく、学校の友達と桐乃の共通の話題というものも理解する必要があるわけか。

 でも、妹の交友関係を根掘り葉掘り聞くのもいやらしいし、とりあえず当面の懸案事項、趣味の友達をどうするか、だな。


「おにいちゃん? さっきから黙って、なに考えてるの?」
「──おまえの事」
「え?」

 桐乃はとたんにゆでだこのように真っ赤になって、両手を頬に当てていた。

「や、やだ……」

 たぶん、盛大な勘違いが発生しているだろう。

 しかし、俺はあえて勘違いを解消するのはやめておいた。
 恥ずかしがる仕草をする桐乃が──正直に言おう、めちゃくちゃ可愛かったからだ。

<了>
271 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/06(月) 21:05:54.67 ID:NDPdLiODO
乙。

なにこのカワイイ生き物?ww
272 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/08/06(月) 21:57:56.29 ID:w7/AXUkwo
これは、誰だ!?……桐乃?え、別人だろ?
きりりんの全力お兄ちゃん発言むずかゆいww

273 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(茨城県) [sage]:2012/08/06(月) 23:02:50.35 ID:NZFePem+o
乙〜
こういうのもいいなwww
続きも待ってる
274 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/07(火) 02:26:04.93 ID:1bb/D02DO
何この生クリーム特盛にしたようなお兄ちゃんデレッデレッな甘甘桐乃わwwww

もっとやれください。
275 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) [sage]:2012/08/07(火) 12:54:26.29 ID:yKb+Iv8AO
桐乃自ら堰を切った?事により、変な甘えや照れ隠し(我が儘言ったり、照れ隠しの為に暴力を振るっても、京介なら受け止めてくれる的な)が無いって事なのでしょうか
原作ではボタンの掛け違えが殆どマイナスにしか働かないのに、この話では大きくプラスに働き、それにも直ぐさま気付く察しの良さ
原作がああだからこそ、こういう話が輝いて見えると言うのはあるのだろうけど、ニヨニヨしっぱなしで安心して読めて、とても良かったです
続きに期待してます
276 : ◆YHxtVKAHbw [sage saga]:2012/08/07(火) 22:17:54.13 ID:6ISRJJhKo
感想ありがとうございます。
今思えば注意書きとして「キャラ崩壊」と書くべきだったかなあ、とw
ストーリー的には原作設定を基本に、一部アニメ設定も、というところでしょうか。
桐乃のファッション誌のプロフ「休日は大好きなお兄ちゃんと〜」は
アニメにあったものをそのまま採用、とか。

>>275
桐乃設定はまさにそれですね。
察しの良さってのは京介でしょうか。
でも肝心な部分では鈍いように書いたつもりですw

続きを期待してる方もいらっしゃるようですが、
この設定のまま原作ストーリーを追っかけるのは難しいですね。
親父バレとかあやせバレとかwww
まあ、書けたら書きたいと思いますが過度の期待は禁物ですw

277 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/08/09(木) 13:44:44.13 ID:L6pxaohDO
さて、「え?やだ」だけだとあれなんで、違うのも一つ。
9巻ラストのエピソードその後。
次レスより投下。
278 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/08/09(木) 13:46:42.12 ID:L6pxaohDO

「千葉までお願いします」

トランクに自転車(痛チャリ)を乗せてもらいながら、京介は運転手にそう告げた。
長かった一日もこれで終わり・・・。
そう自覚すると同時に、京介の体は言いようのない悲鳴を上げた。

『・・・明日は筋肉痛だな』

思わず苦笑するが、その疲れはどこか心地いいもので。
何とはなしに見上げた夜空には、すでにポツポツと星が瞬いていて・・・―――。

『祭りのあと』
279 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/08/09(木) 13:58:17.61 ID:L6pxaohDO

「いやー・・・しっかし疲れたなー・・・」

走り出した車内。
思わず呟いた一言に重なる声一つ。

「そりゃあんだけチャリで全力疾走すればねー」
「ンだよ?」
「あったしだったらできないなー」

あー恥ずかしかったー。
そう言外に桐乃が含ませた声を出すと、反対側の席にいた京介がむっと眉を潜ませる。

「・・・なんだよその言い方?言いたいことがあるならはっきり言え」
「べっつにー?それとも何か心当たりでもあるのー?」

お互い触れ合わないように、限界まで左右に離れた後部座席。
窓の外を見ながらの、殊更小バカにしたような声音に、京介のこめかみがピクピクと震える。

「ぐ・・・てめえって奴はよ・・・」
「なによ?」
「・・・たく。なんでもねーよ」

挑発的な桐乃に対し、応戦しようと身構えた京介だったが、急にフッと体の力を抜くと、座席にドサッとその身を預けてしまった。

「・・・急にどうしたのよ?」

不意に毒気の抜けた京介の声音に、桐乃は見るとはなしに見ていた窓の外から京介に視線を移す。
視線の先、京介はぐったりと座席に身を預けたままぽつりと呟いた。

「・・・折角ライブ楽しんできたんだ。今日ぐらいは喧嘩やめとこうぜ・・・」

言われて桐乃もハッとする。
困ったような表情を浮かべると、二・三度視線を彷徨わせながら、結局京介と同じように座席に身をうずめた。
それからどれくらい経ったろうか。
桐乃がポツリと呟いた。

「・・・ごめん」
「・・・いいよ」

そしてまた沈黙が落ちる。
280 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/08/09(木) 13:59:58.11 ID:L6pxaohDO

聞こえてくるのはエンジンの駆動音と、タイヤの軋む音。
時折聞こえるタクシー無線の声。
流れていく街灯の明かりが、二人の顔をオレンジと黒に交互に照らし出す。

「・・・ライブ、楽しかったね・・・」
「・・・ああ」

ポツリポツリと、どちらからともなく話し始める。

「クラリス可愛かったね」
「ああ・・・確かに。歌もうまかったしな」
「うん。今からメルルが楽しみ」
「メルルっていえば・・・加奈子に悪いことしたなあ・・・」
「間に合わなかったもんねえ・・・見たかったなー、かなかなちゃんとブリジットちゃん」
「・・・お前ってなんで加奈子までそっちで呼ぶんだ?」
「えー?コスプレしてる時ってそんなもんだよ。ほら沙織だって、槇島沙織と沙織・バジーナじゃん」
「それどっちも呼び方沙織だけどな・・・しかし美咲さんて、大胆な人だな?」
「ほんと。いっつも思いつきでやっちゃうんだ。しかもそれが大当たり」
「すげーな。運の良いフェイトさんってところか?」
「比べちゃ可哀想だよ。あの御鏡さんの雇い主だよ?」
「たしかに・・・あの完璧超人な変態の雇い主ってだけでマジぱねえ」
「ほんと・・・まさかあんな痛チャリ常用してるなんてねー・・・さすがに引くわ」

そこまで言って、二人で顔を見合わせて笑いあう京介と桐乃。

「お前ヒデエ!そのおかげで迎えに行けてライブに間に合ったってのに!」
「いやでもあの痛さは半端ないって!さすがのあたしでも公道走らせるとかありえないし!」
「オタク趣味隠す気ありませんっ!キリッ!の世界だよな!」
「いやーやっぱお金のあるオタクは一味違うわ」

うんうんと腕を組んで一人納得する桐乃。
そんな桐乃に、京介が意地の悪そうな笑顔を浮かべる。

「お前だって似たようなもんじゃんか」
「んなっ!?」

あからさまに傷付いた仰天顔で桐乃が一歩のけぞる。

「い、一緒にしないでよっ!」
「そうか?お前だって稼いだ金ほとんどオタク趣味に使ってるだろ?」
「それとこれとは話しが別!第一、桁が全然違うじゃん!?」
「はは、まーなー・・・」

そして・・・次の言葉が引き金。

「そう考えると、可愛いよなお前は」
「!!」
281 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/08/09(木) 14:01:01.80 ID:L6pxaohDO

瞬間、ストンと桐乃が座席に座り直してしまう。
顔をわずかに俯かせて両膝は揃えたまま。
その上には握りしめられた両拳を乗っけて。

「?どした?」

不意に黙りこくってしまった桐乃に、訝しげに京介が声を掛ける。

「・・・なんでもない」

固い声。
不意に京介の顔が曇る。
何か悪いことを言ってしまったのか?そんな疑念に駆られて慌てて言葉を重ねる。

「あ、い、いや。お、お前のコレクションだって俺とかから見ればかなりのもんだと思うぜ?」
「うっさい。だまれ」

しかし返ってくる言葉はすげなく冷たい。
ぐ・・・と一瞬黙る京介。
しかし、気を取り直したのか、はたまた開き直ったのやら。
少し強引に桐乃の手を取ると、無理やりこちらを向かせようとする。

「や!離せ!」
「なにが気に入らなかったか知らねーが、さっきまで楽しく会話してたじゃねーか!?いきなりキレるとかなんなんだよ一体!?」
「キレてない!」
「キレてんじゃねーか実際!?」
「キレてないから!いいから離して!!」
「とりあえず・・・こっち向け!!」

半ば力ずくで京介が桐乃の手を引っ張ると、バランスを崩したのか、桐乃の顔が京介の顔の至近距離まで来る。
そうして・・・固まる二人。
282 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/08/09(木) 14:01:30.10 ID:L6pxaohDO

「・・・な」
「・・・」

至近距離で見た桐乃の顔。
京介は言葉もなくそれに見入っていた。
真っ赤なリンゴのように赤い顔は、決して街灯の光ではない桐乃自前の色。
その大きな目には、今にも零れ落ちそうな涙。
恥ずかしいのか、その小さな唇はグロスの色も鮮やかにフルフルと震えたいる。

「・・・離して」
「あ・・・ああ」

どれほどの時みつめ合っていたのだろうか?
桐乃の言葉にようやく京介が我に返る。
それからまた暫く沈黙が支配する車内。
それを破ったのは、

「・・・あんたが・・・」
「え?」

またしても前進しか知らない姫君。

「あんたが・・・か、可愛いよな・・・とか言うから・・・」
「え、え!?・・・あっ!?あああれはそんない、意味で言ったんじゃないぞ!?」

「わかってる!」

桐乃が俯いたまま叫ぶ。

「で、でも・・・勘違いは分かってても、い、意識しちゃった顔は・・・すぐには戻らなくて・・・」

察しろバカっ!
そう言われて、京介はますます縮こまって。

「す、すまん・・・」
「謝んな・・・バカ」

真っ赤な顔の兄貴。
真っ赤な顔の妹。
しかしてその彼我の距離は、以前とは違ったもので。

「あの・・・な?」
「?・・・なに?」
「・・・今日のお前・・・スゲー可愛い」
「なっ!?」

驚いてあげた赤い顔は、はたして羞恥か恥じらいか?

「マジで。・・・お姫様みたいだ」
「・・・フ、フン!バカじゃん?」
「わりぃ・・・」
「あ、謝んないでよ!そ、その・・・アリガト」
「お、おう」

不器用な二人の、不器用ながらのやり取り。
そしてそこに飛び込む声一つ。

「・・・お二人さん」
「「は、ほい!?」」
「・・・この近くに、お若いお二人が休めるところがありますが・・・行き先変更なさいますか?」

ブッ!っと噴き出す桐乃と京介。
お互い目を見合せて、そのまま火のように顔を真っ赤にさせる。

「「こっ!!ここここのままでお願いしますっ!!」」
「かしこまりました」

くつくつと聞こえる運転手の笑い声に、二人は殊更距離をあけ窓の外に目を向ける。
狭い後部座席の右と左。
お互いが触れ合わないように。
・・・お互いの赤い顔を見ないように。
でも。

「・・・散々ね」
「・・・散々だな」

繋いだ手は決して離さないようにしながら―――――。

END
283 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/08/09(木) 14:04:07.65 ID:L6pxaohDO
以上です。

今更ながら>>246
夏休み初日からって換算したんだけど、夏コミ日程と照らし合わせたら二、三日ズレが出ちゃったww
ま、ご愛敬ってことでお願いしますww
284 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(鳥取県) [sage saga]:2012/08/09(木) 14:49:24.53 ID:VkwIYQz8o
>>283
乙〜。
これで京介が一人暮らしする羽目になったんですなw

それにしてもタクシーの運ちゃんのおせっかいGJw

>>夏コミ日程と照らし合わせたら二、三日ズレが出ちゃったww
どんまい。
285 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/09(木) 18:46:17.54 ID:zO4sGaIDO
お姫様可愛いw
タクシーの運ちゃんから見たらどうみてもすれ違い気味ラブラブバカップルです、本当に(ry
286 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/09(木) 21:23:48.42 ID:ah0+yW+vo
最近ハイクオリティな桐乃SSが多くてめっちゃ2828してるww
>>283乙でしたww
287 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/10(金) 20:51:44.05 ID:amD9aCu8o

『桐乃とあやせと俺の妹』
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1344441040/
288 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/08/11(土) 00:56:31.99 ID:U/Gx8bEDO
感想多謝多謝♪
元々俺は、一人称書きじゃなく>>278みたいな俯瞰で書くのが好みだったんだ。
でも俺妹は原作が一人称だからそっちで書いてたんだけど、俯瞰でも多少のコメ貰えるのがわかったから、これからはゴチャ混ぜにして書いていくよww

しかし感想もらうのはやっぱ嬉しいよなww
なんつーか、力になるww
匿名掲示板の二次創作でなに言ってんだ?ってツッコミ聞こえてきそうだけどな(笑)
289 : ◆YHxtVKAHbw [sage saga]:2012/08/11(土) 02:29:27.21 ID:33cJv7M5o
>>288
俺も三人称小説はオリジナルではよく書いてた。
だからその癖で、一人称で主人公(語り手)には分からないはずの事を書きそうになることがあるw
ていうか、俺がこのスレに投下してるのも完成品は一人称だけど
プロットの段階では三人称だったりするんだけどwww

現在、甘甘デレ桐乃IF√の続きの構想を練っている最中。
ツン分のない桐乃が沙織や黒猫にどういう態度で接するのか
頭を悩ませておりまする。
290 :或る妹猫と黒猫の団欒  ◆ebJORrWVuo [sage saga]:2012/08/11(土) 23:56:39.58 ID:hEJc7d7LP
やってたゲームとか仕事に一段落がついたので
投下をしに来たぜ!

何か色んなSSが投下されてて毎日楽しませて貰ってます

今回、10巻のサイドストーリーが書き上がったので投下してみる
当然のことながら、10巻のネタバレになりかねないので
10巻まで読んでない人はスルー推奨

イチャラブはないし、オチというのオチも無いという展開ですが
暇つぶし程度に読んで頂ければと
291 :或る妹猫と黒猫の団欒 1/3  ◆ebJORrWVuo [sage saga]:2012/08/11(土) 23:57:06.75 ID:hEJc7d7LP
「……貴女は何故、平気なの?」

 黒猫からそんな言葉が飛び出したのは、あたしが五更家に入り浸っていたある日の事だった。
 
「なにが?」

 日向ちゃんや珠希ちゃんと一緒にいて、という質問であれば全然平気じゃなく今直ぐ抱きしめたい衝動に駆られているというのが答えになるけど、そういう意味?
 因みに自制出来ているのは、日向ちゃんも珠希ちゃんが今、仲良くこたつで眠っているからだ。

 この可愛い寝顔の前には、あたしが行動を起こせる筈も無い。
 さっきから一瞬足りとも微動しないようにして、二人を起こさないよう細心の注意を払っているぐらいだった。
 
「貴女のお兄さんの話よ」

 お茶をズズと飲みながら、黒猫は言う。
 不思議とこのゴスロリの格好にお茶が良く似合っている。
 なんでだろう、と考えながらもあたしは黒猫に答える。
 
「あのバカがどうかした?」

 あたしがあくまでしらを切るようにそう応えてみせると、黒猫はふぅ、と溜息を吐く。
 
「今……、京介はあの女と二人きりなのよね?」
「……そ、そうだけど」

 いきなり京介とか呼ぶな、なんかイラッとするから。
 
「悔しいけど、あの女は美しいわ。熾天使に対抗して闇天使のおつもりなのかしらね。あの美貌で誘惑でもされたら大抵の男は堕ちるんじゃないかしら?」
「熾天使ってなに?」
「……なんでもないわ。それよりも、貴女は気にならないの?」
「だって、あやせ、あいつの事嫌いだし」

 少なくとも誘惑とかは嫌いな相手にしないだろう。

「そう答えるという事は、あの女が誘惑をしたら京介が堕ちるかも知れない事は否定しないのね?」

 堕ちない、じゃなく、あやせが嫌いだから、誘惑をしない、という答え方をしたあたしに、黒猫が意地悪く笑う。
 
「……だって、あいつ、すぐふらふらするし」
「その事は否定しないわ。少なくとも、私と付き合ってる時は誠実には視えたけど。誰かと付き合ってないあの人は、ね」

 ……確かに、黒猫と付き合ってる時は、結構誠実そうだった、かな?
 でも知らないだけで、誰かと二人きりで会ってたりしそうだケド。
 そう言えば、何故か怪我して帰ってきた日があったけど、あの日は誰と会ってたんだろう?
 
「でも、貴女、もしかしてあの女が本当に京介の事を嫌いだと思っているのかしら?」

 過去を回想していたあたしに、黒猫が質問をぶつけてくる。
 意地悪そうで、しかし、真面目な表情。
 適当に誤魔化す事も出来そうにないので、あたしは真剣に考えてみる事にする。
 
 あやせが、京介の事を嫌いかどうか。
 
 あやせの事を信じるのであれば、嫌いだ。
 あやせの事を信じないのであれば、好きだと思う。
 
「それは、貴女が信じたい結果と、信じたくない結果ではなくて?」

 あたしがまだ答えてもないのに、黒猫はそう質問を重ねてくる。
 こいつ、時々妙に勘が鋭い時があるんだよね。
 時々、闇の力とか本当にあるんじゃないか、と思ってしまうぐらいに。
 
「……でも、他に選択肢がなかったし」

 あの時、あの場面。
 あいつを一人にしておくと、コンビニ弁当漬けになるのは分かっていた。
 だから誰かが面倒を見るというのはいい案だと思った。
 ただ、じゃあ、誰か適任かというと……。
292 :或る妹猫と黒猫の団欒 2/3  ◆ebJORrWVuo [sage saga]:2012/08/11(土) 23:57:40.22 ID:hEJc7d7LP
 ……麻奈実さん、だろう。
 でもあの場面じゃ、とても言いたくなかった。

 黒猫じゃ、京介がドキドキしちゃうだろうし、勉強に集中出来ない。
 加奈子じゃ、料理に偏りが出てしまう。
 沙織じゃ、何となくだけど京介の勉強の邪魔を無意識にしちゃいそう。

 消去法で行くと、あやせしか思いつかなかった、というのが事実。

「……赤城さん、と言う方が居るでしょう? 同じく妹想い、のね」

 …………。
 せなちーのお兄さんか。
 実は、あの場面で脳裏に掠めた選択肢だったんだけど。
 
 言えない。
 まさか、あの二人が付き合ってるかも知れないから、だなんて。
 せなちーが余りに断言するものだから、今でもチラチラと脳裏を掠めるんだよね。
 
「……まさか、あの腐り姫の言う事を真に受けている訳じゃないでしょうに」
「…………」

 そう言えば、同じクラスだったんだっけ。
 黒猫とせなちー。

 あたしが無言で居ると、黒猫が僅かに目を見開きながら言う。
 
「まさか……貴女……」
「ち、違うって! せなちーがこう断言するから、ちょ、ちょっと疑っただけで」
「静かになさい。二人が起きてしまうわ」

 ふぅ、と溜息をついて、黒猫があたしを窘める。
 
「……残念ね。貴女も腐の道に足を踏み入れてしまっているなんて」
「な……、ふ、踏み入れてないから。踏みとどまってるから」
「より最悪じゃない……」

 踏み入れた挙句に留まってるなんて、とぼやきながら、黒猫があたしから視線を逸らす。
 
 …………。
 コホン。
 
「ま、まあ、大丈夫っしょ。あいつ、一応あたしと約束してるし?」
「……『おまえが誰かと付き合うまで、俺も誰とも付き合わない』?」
「…………」
「で、京介は貴女が誰かと付き合うのが嫌で、貴女は京介が嫌がる事が嫌で……」
「…………」
「……上手いこと仕向けたものよね」

 黒猫が目を輝かせるようにして、酷く黒猫らしい表情を浮かべながらあたしを見る。
 
「……な、なにが?」
「一見して、全てが上手く行く方法が無いように見える条件。でも、これ、実は解決方法があるわよね」
「…………」

 あたしの頬に、冷や汗が一筋流れる。
 
「全ての条件を満たす唯一解。京介は、貴女が『誰か』と付き合うのが嫌で、貴女は『あたし』以外の誰かが一番になる事が嫌で……」
「…………」

 これ以上、この話題を続けると不味い。けど、黒猫を止める言葉が浮かばない。
 その結論を聞かされたら、あたしは……。
293 :或る妹猫と黒猫の団欒 3/3  ◆ebJORrWVuo [sage saga]:2012/08/11(土) 23:58:07.63 ID:hEJc7d7LP
「……むにゃ、……あれ? あたし寝てた?」

 そしてその奇跡とも思えるタイミングで、日向ちゃんが目を覚ます。
 
 正直、ほっとした。
 何故か追い詰められてるようなそんな感じがした。
 自覚したくない何かを、自覚させられるような。
 
「ええ。寝てたわよ。そして、最悪なタイミングで目を覚ましてくれた訳ね。今日の夕飯は覚悟なさい」
「え、え。なんで起きただけでいきなりバッドエンド直行なの!?」

 ゴメン、日向ちゃん。
 今だけは日向ちゃんが犠牲になってくれた事に感謝せざるを得ない。

 そして、黒猫。
 ごめん。まだその話題に対する答えはあたしは返せない。
 でも必ず答えは出すから。
 その時まで、待ってて。
 
 あんたには、必ず話すから、さ。
 
 あたしが、これから、どうするか。
 こうして、家から京介が家から居なくなって、あたしは沢山考える時間が出来た。
 あたしにとって、あいつが何なのか。
 
 あいつが居ない日々を、あたしはこの家に入り浸っていて。
 それは寂しさを紛らわしているように思えて。
 何かの答えを得ようとしているのかも知れない。
 
 兄が居なくなっても、大丈夫なのか、否かを。
 良くも悪くもあたしを見通すこの黒猫の側で。
 
 
終わり。
294 : ◆ebJORrWVuo [sage saga]:2012/08/12(日) 00:02:08.71 ID:0Jlxs+tGP
どうも俺は10巻辺りだとあの兄妹のイチャラブが書きづらい事が分かったぜ……

あやせ視点での同棲生活でも書いてみるかね

ここまでお読み頂き感謝を
295 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(茨城県) [sage]:2012/08/12(日) 00:15:54.62 ID:NQ7KOiFqo
乙〜
10巻の同棲生活のあやせ視点といったらとうとうあのるんるんスキップが、ごはぁっ……
296 : ◆YHxtVKAHbw [sage saga]:2012/08/12(日) 00:17:43.22 ID:yJcfa9O4o
>>294
乙!
俺も10巻を題材にいくつか投下したけど
あやせ視点だったり、桐乃視点ではあるけど加奈子メインだったりだったからなぁ。
強いて言えば、一章時点、まだ京介が高坂家にいる一人暮らし前ならイチャラブも書けると思うけど。
と、自分では書かずにネタフリだけして去ってゆくwww
297 :或るモデルの自覚  ◆ebJORrWVuo [sage saga]:2012/08/12(日) 01:58:24.05 ID:0Jlxs+tGP
そんな訳で、ちょっとあやせ視点を書いてみた。

10巻ネタ。10巻を読んでない人はスルー推奨。
あやせと京介以外の登場人物無し。

298 :或るモデルの自覚  ◆ebJORrWVuo [sage saga]:2012/08/12(日) 01:59:15.80 ID:0Jlxs+tGP
 わたしは新垣あやせ。一応、モデルとして仕事をさせて頂いている女子中学生。
 そんなわたしが今、どこに居るかと言うと……。
 
「〜♪」

 一人暮らしをしている男性の家に居ます。
 しかも自前のエプロンを持参で、料理を作りにきていたりします。

 特にお金を貰っていたりする訳じゃありません。
 更に言うと、この男性、わたしの彼氏、という訳でもありません。
 
「〜♪ 〜〜♪」

 じゃあ、なんでこんな状況になっているかというと……。
 詳しく言うと長い話になってしまうので簡単に言います。
 この男性……高坂京介さんは、わたしの親友である高坂桐乃のお兄さんで、親友である桐乃にお願いされてしまったので、嫌で嫌で仕方ないんですけど、こうして京介さんの面倒を見ている訳です。
 
「……なんだか、あやせ、楽しそうだな?」

 わたしが料理をしていると、後ろからお兄さんが声を掛けてきました。
 あ、お兄さんというのは京介さんの事です。
 わたしが京介さんをお兄さんと呼ばせていただいているので、お兄さんと言ったら京介さんと考えておいてください。
 
「そ、そんなコトないですよ? こんなところで貴重な時間を費やしてしまって内心苦痛しかありませんからっ!」
「……それは、悪かったな」
「い、いいえ、大丈夫です。桐乃のお願いですし」

 しまった、ついお兄さんに酷いことを言ってしまいました。
 フォローもフォローになってない気が……。
 
 ちら、と視線を後ろにやると、頭を掻きながら勉強机に戻っていくお兄さんの姿が。
 心なしか肩を落としてます。やはり傷付いてるんでしょうか。
 
 んー。言いすぎてしまいました、よね?
 これで落ち込まれて勉強に支障が出てしまっては世話係として失格です。
 桐乃に信頼されて頼まれているというのに。
 
 …………仕方ないですよね。
 これは、お兄さんを励ます為だけですから。
 決して、他の意図とかありませんからっ!
 
 殆ど出来上がってる具材を、小皿に移して、いそいそとお兄さんの元へと。
 
「……ん、どうした? 何か足りなかったか?」
「い、いえ。その、お、お兄さん?」
「なんだ?」
「あ、あーんしてください」
「ぶっ!」

 思いっきり吹き出すお兄さん。
 ……何ですか、その態度。気に食いませんね。
 言い方が変だったんでしょうか。
 
「わ、わたしが食べさせてあげますから、あーん、ってしてくださいねっ」
「い、いや、分かる、分かるけど、分かんねえよっ!」

 どうもお兄さんが錯乱しているようで、何やら悟りを開いた人のような良く分からない事を言い出しました。

「……もしかして、わたしが食べさせてあげる事が嫌なワケじゃないですよね?」
「た、食べます、食べさせてください!」

 ようやく素直になってくれました。
 でも、わたしが想定していた反応とは大分違うんですが……。
 もっと、こうドキドキなシーンだと思ったんですけど……。
 
 べ、別にそういう反応を期待していた訳じゃありませんから!
 で、でもなんだか寂しいじゃないですか。
 こう、あーんとしてるシーンで、相手が怯えた囚人のような表情を浮かべられると。

 …………あ、そうだ。
 
「あ、待ってください。今、この人参はお兄さんに一瞬でやけどを負わせる事が出来る温度ですから、冷ましてあげます」
299 :或るモデルの自覚  ◆ebJORrWVuo [sage saga]:2012/08/12(日) 01:59:44.46 ID:0Jlxs+tGP
 ふー、っと人参に息を吹きかける。
 う……、これはわたしも結構恥ずかしいですね。
 でも、これなら、お兄さんだって……。
 
 あれ、なんか一層、怯えてますね。
 この人参をぶっ掛けてやりましょうか。
 せっかくわたしがここまでやってるのに怯えるとはどういう事ですか。
 
「はい。あーんしてください」
「え、冷めたの、本当に今のだけで冷めたのか!?」
「冷めましたよ、はい、早く口を開けてください」
「わ、分かった……」

 お兄さんが覚悟を決めた顔で、口を開ける。
 その口に人参を運ぶ。
 
「あ」
「ふぉ、どうひふぁ!」

 口に人参を運ぶ直前で、少しつゆが垂れてしまいました。
 下がフローリングなので後で拭いておきますか。

「いえ、大丈夫です」
「ふぉ、ふぉんとか?」

 何言ってるかよく分からないお兄さんに、人参を運んであげます。
 お兄さんは目を瞑りながら口に運ばれてきた人参を、慎重に食べます。
 そして。
 
「あれ、美味しいな」
「……あれとはどういう事ですか? 今更わたしの料理の腕を疑ってるんですか?」
「いや、もっと地獄の業火のような熱さにのたうちまわる挙句になるのかと思ってた」
「一体何を想定してるんですか、あなたは……」

 というかそれなら食べる前に断ればいいんじゃないでしょうか。
 それともその熱さを期待していたのでしょうか。
 
「……心底変態ですね」
「え、何が!? 今の会話の何処に変態要素があったってんだよ!?」
「これからは、熱々の状態で食べさせてあげます」
「なんだよその拷問?! 俺が何をした!」

 全く……、変態の人と付き合うのは大変ですね。
 …………。
 つ、付き合うっていうのは、別にそういう意味じゃありませんからね?
 わたしとお兄さんが付き合うなんて……あり……。
 
 ちら、とお兄さんの顔を覗き見る。
 きょとんとした表情でわたしを見返すお兄さん。
 
 あ、ありえないかどうかは、神ではないわたしには分かりかねますが……。
 と、とにかく!

「で、どうなんですかっ」
「何がだよ! つか今日のおまえいつもに増して分からねえよ!」
「あーんしてあげた感想ですよ」
「ああ、…………、色んな意味でドキドキした」

 ……変ですね。
 想定通りの解答なのですが、お兄さんの視線が泳いでるのが気になります。
 更に言えば、少しげっそりしたような表情なのも。
 
 わたしがむーっとした表情を浮かべていると、お兄さんはその表情に気付いたのか、優しい表情を浮かべて。
 
「あやせの料理が美味しい事は知ってるよ。いつもありがとうな」
「べ、別に味の感想は聞いてませんっ」
「あれ、違ったか……」

 こ、この人は……。
 なんで狙いすましたかの表情で優しい声を出すんですかっ。
 少し的が外れていますが……その分、油断してて、その……。

「じゃ、じゃあ料理に戻ります」
「お、おう。お願いする」

 い、今はお兄さんに顔を見られたくありません。
 だ、だって……頬が熱くなってるのが分かりますから。
 も、もう、この人は……。
300 :或るモデルの自覚  ◆ebJORrWVuo [sage saga]:2012/08/12(日) 02:00:32.04 ID:0Jlxs+tGP
 チラ、とお兄さんへと視線を向けてみると、もう机に向かって勉強に取り組んでるようです。

 本当に……この人は……。
 
 わたしは気を取り直すと、台所へと戻ります。
 もっと勉強に頑張れるように、そ、そして、もっと美味しいと思える料理を食べてもらう為に。
 

 次の日。
 今日も、わたしはお兄さんの家に向かいます。
 
 ほぼ、毎日こうやって通ってると、何だかその……通い妻、み、みたいですよね。
 いや、い、嫌ですけどっ。

「〜♪」

 ――ハッ!
 今、何かの視線を感じた気がします。
 まさか、見られて……ないですよね?

 …………。
 というか、なんでわたしスキップしてたんでしょうか。
 凄い恥ずかしいんですけど。
 ほ、ホントに誰も見てないですよね?
 
 つい、なんていうか、最近おかしいんですよね。
 お兄さんの家に行く時間になるとそわそわしてしまって。
 段々と家を出る時間が早くなってるのが実感できます。
 
 今だと初めの日よりも一時間ぐらい前には、お兄さんの家に着いてますし。
 家にいても次に作る料理の隠し味とかそういうのばかり探しちゃいますし。
 なんていうか、四六時中、お兄さんに関する事ばかり考える気が……。
 
 …………勘違いです。
 そうそう、これはただの思いこみです。
 お兄さんの高度な策略によりそう思い込まされているだけです。
 だって、これが勘違いじゃなかったら……。
 
 ……確かめてみましょう。
 
「おじゃまします」

 桐乃から預かっている合鍵で、お兄さんの家に入ります。
 そして、まだ家主が帰ってきてない事を確認して……。
 
 もし、わたしがお兄さんに対して、そ、そういう感情を抱いていれば……。
 こうお兄さんの布団の匂いとか嗅いだら、ドキドキしちゃうハズです。

「…………」

 な、なんか嗅ぐ前からドキドキしてきちゃいました。
 というかわたしが今からしようとしている行動がそもそも変じゃないですか?
 ふ、普通、匂いなんて嗅ごうと思いませんもんね。

 …………。
 ま、まあ、ものは試しってやつです。
 少しだけ、そう、少しだけ。
 
 お兄さんが普段寝ている布団に、顔を近づけて……。
 
「ただいまー」
「きゃっ!」

 な、なんてタイミングで帰ってきますか!
 つか早いですよね、わたしの計算だと後一時間は帰ってこない筈なんですけど!

「ん、あやせか? どうした、何かあったか?」
「な、な、なんでもないですっ! 来ないでください!」
「うえ、え、なに、なにがあったの……!」

 わたしの制止が効いたのか足音が止まる。
 そして今のわたしは、お兄さんのベッドにダイブした格好だった。
 
 う、うわあ……。
 お、お兄さんがいつも寝てるベッドに、今わたし、横になってる……。
 ……あ、……おにいさんの、匂いだ。
 
 そうか、……実際に一緒に居るんだから、既にわたしは何度かお兄さんの匂いを嗅いでたんだ。
 だからこれがお兄さんの匂いだと……分かる。
301 :或るモデルの自覚  ◆ebJORrWVuo [sage saga]:2012/08/12(日) 02:00:59.39 ID:0Jlxs+tGP
「あ、あやせ。そろそろ入っていいかな?」
「だ、駄目です、入ってきたらぶち殺しますよっ!」

 いけない。つい、ベッドを堪能してしまいました。
 
 慌ててベッドから身体を起こし、そして素早く整え、服の乱れを直して。
 
「は、はい、どうぞ」
「お、おう」

 わたしの声を合図にお兄さんが玄関からやってきた。
 そしてちらちらと辺りを見渡して、訝しげに呟く。
 
「……何も、無いな」
「な、何もありませんよっ」
「しかし、だとすると一体、なんで制止を食らってたんだ?」

 やばいです。滅茶苦茶おにいさん、怪しんでます。
 
「と、特に理由はありませんっ」
「んな訳あるかよ。何だかすげえ必死そうだったぞ」
「あ、ありませんってば」

 必死にはぐらかそうとしているわたしに対して、お兄さんは真っ直ぐと真剣な表情でわたしを見つめてきた。

「あやせ。おまえは、嘘が嫌いだって言ったよな?」
「う……、い、いいましたけど」
「それで、おまえ自身は他人に嘘をつくのを良しとするのか?」
「…………」

 う……ううう……。
 悔しいけど……、正論です。
 これはわたしが間違えています。
 
 け、けど。
 言える訳ないじゃないですか。
 あなたの匂いを嗅いでました、とか、ベッドで匂いを堪能していました、なんて!
 
「…………」
「…………」
「…………分かったよ」
「え?」

 ふぅ、と息を吐くお兄さん。
 そして優しげな表情を浮かべて、お兄さんは言う。
 
「言いたくないってのは分かった。何をしてたかは、聞かない。
 別に怪我をしてたとか、そういうんじゃないんだよな?
 もしそういうのを隠してるって言うんなら、俺は怒るからな」

 あ……。
 お兄さんが真顔でわたしに問い詰めてきた理由が分かった。
 わたしが怪我をしたんじゃないかって思ってたんだ。

 途端、何だか疚しい事をしていたわたしは自分が恥ずかしくなった。

「お……お兄さん」
「ん、どうした?」
「わ、わたし、お兄さんの匂いが……気になって」
「…………」

 恥ずかしい。とても恥ずかしい。
 けど、お兄さんに嘘をつきたくなくなってしまったので。
 暴露する事にします。
 
「だから、ベッドで匂いを嗅ごうとして……」
「…………」
「ご、ごめんなさい」

 ぺこり、とわたしは謝ってみせる。
 対して、お兄さんは少し俯いてしまった。

 ひ、引かれてしまったんでしょうか。
 う、ううう。
 
「そ、そんなに気になるか?」
「え、その、そ、それなりには」
「……そうか」
302 :或るモデルの自覚  ◆ebJORrWVuo [sage saga]:2012/08/12(日) 02:01:27.44 ID:0Jlxs+tGP
 何だか凄い落ち込んでます。
 なぜでしょうか。
 
「お、お兄さん?」
「……すまん。自分では気付いてなかったけど、結構、匂い放ってるんだな」
「ま、まあ、そうです、ね?」
「……そうか。もう少し念入りに身体を洗った方がいいのかな」

 …………。
 あれ、お兄さん、何か勘違いしてません?
 いや、体臭には違いませんが、その……。
 
「……お兄さん」
「ん、なんだ?」

 落ち込んだ雰囲気を醸し出しているお兄さん。
 
「わたしは、お兄さんの匂い、好きですよ」
「…………」

 だから、落ち込まないでください。
 そういう想いを込めて、出来る限り誠実に伝えてみた。

「…………」

 お兄さんからの返答を待つが一向にお兄さんからの反応が無い。
 何か呆けたような表情で、こっちを見ている。

 …………。
 あれ、もしかしてわたし、結構恥ずかしい事を言ってたりしません?

 自分の台詞を思い返してみると、結構どころか、かなり恥ずかしい台詞だった。
 
「や、やっぱ無しです。今のは無かった事にしてください」
「…………」

 あ、でも無しにしちゃったら、お兄さんが結局凹んでしまう。
 それは避けなくては。
 
「無し、は無しでも、嘘じゃないです。ただ聞かなかったことにしてください」
「…………」

 あれ、それじゃ結局なしの意味がなくありません?
 というか、わたしが何を言ってるかわかりません。
 
 そうやって、わたしが慌てていると、いつの間にかお兄さんが近づいてきていた。
 そして、わたしの頭に、ぽふっと優しく手を乗せるとこう言った。
 
「ありがとうな、あやせ。嬉しかった」

 それは今まで聞いたどの言葉よりも誠実に聞こえて、そして優しく響いた。

「……お、お兄さん」

 頭が真っ白になってしまう。心臓が、ドキドキしているのが分かる。
 ああ、駄目だ。分かってしまう。これじゃ、わたし。
 わたし……、お兄さんの事……。
 
『だってあやせ、こいつの事嫌いっしょ?』
『うん』
『だから、あやせがいいの』

 ドクン……。
 大きく、心臓が鳴る。

 駄目だ。
 このままでは、桐乃の信頼を裏切る事になる。

 せめて……この生活の間は、わたしはそういう気持ちを抱いていてはいけない。

「……お兄さん、早く手をどかしてください。つ、通報しますよ」
「うお……、分かった、悪かったって。まあ、感謝してる事を伝えたくてな?」

 分かってます。この上無く、伝わりました。
 
「ホントですか? そう言いながら、実はわたしの事、口説いて良からぬ事をしようと企んでたんじゃないですか?」

 分かってます。そんな意図がない事は。
303 :或るモデルの自覚  ◆ebJORrWVuo [sage saga]:2012/08/12(日) 02:01:57.02 ID:0Jlxs+tGP
「ははは。言ったろ、もうセクハラはしないって」

 ……知ってます。寂しい事ですけど。
 
「本当ですか? ……まあ、今は信じてあげますけど」

 悟られては、いけない。
 
「おう、信じてくれ。証明してみせるからさ」

 知られては、いけない。
 
「はい。信じてますから」

 せめて、この生活を終わらせない為にも。

 それが、わたしが付いてきた嘘の代償だ。
 今まで付いてきた嘘が、わたしを縛り付ける。
 その結果、動けなくなったとしてしても。
 
 ただ、わたしは、桐乃がくれたこの時間を。
 大切にする為に、自覚的に嘘を続ける。
 それが、きっとわたしの罪だから。
 
 お兄さん。
 お兄さん、……。
 
 わたし、お兄さんの事……。
 本当は、本当は……。
 
 いいえ。
 大嫌いです。
 あなたの事で頭いっぱいになってしまうぐらいに。
 大大大嫌いです。
 
 こんな出会い方をした貴方を。
 こんな形に歪めてしまった貴方を。
 
 ただ、妹の為に。
 
 本当に……貴方が嫌いになりそうです。
 なれないのに。
 悲しいのに。
 
 ねえ、お兄さん。
 わたしは、あなたの事が……。
 
 
 
おわり。 
304 : ◆ebJORrWVuo [sage saga]:2012/08/12(日) 02:04:45.71 ID:0Jlxs+tGP
そんな訳であやせ視点を投下!
9巻のお陰で、それぞれの視点のヒントが手に入って
SSの幅が広がったよな
作者的に喜ばしい事とは限らないかもだけど

>>296
一人暮らし前か……。確かに書けそうだな
ちょっと妄想が膨らんできたぜ、ありがとうな

305 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(茨城県) [sage]:2012/08/12(日) 02:10:46.26 ID:NQ7KOiFqo
乙〜
あやせはなんか京介の私物とか半ば無意識に手にとったり確認したり
持ってたr……とかしてそう

一人暮らし前とか一人暮らし初期の頃なら裏でのガールズトークとかもいけそうだな
306 : ◆YHxtVKAHbw [sage saga]:2012/08/12(日) 02:21:38.26 ID:yJcfa9O4o
>>304
乙〜。
匂いについての食い違いはさすが京介クォリティw
てか、あやせ、そこまで変態だったかwww

>>ちょっと妄想が膨らんできたぜ、ありがとうな
構想ではなく妄想かwww
307 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/08/12(日) 04:13:38.85 ID:IKhNVKiDO
・・・ちぃ。
まさかのチョイ被りorz
まぁ・・・カプじゃなく、シチュなのがまだ救いか。

乙。
日向と黒猫の会話において、

「何で起きただけでバッドエンド直行なの!?」
「知らないわ。あなたの胸に聞いてみなさい」
「え!?ルリ姉と一緒のカップのこれに!?」
「・・・うふふ。日向?今あなたの夕食がピーマンの炒め物に決まったわ」
「いきなり最下層!?キリ姉助けてよ!」
「日向ちゃん、グッジョブ」
「なんで鼻血MAXなの!?」

・・・などと、思ってしまったのは内緒ww
308 : ◆ebJORrWVuo [sage saga]:2012/08/12(日) 05:46:23.93 ID:0Jlxs+tGP
10巻一人暮らし前を書いてみたが何故かBADENDになってしまった
BADENDって需要あるのか?

需要あるならwikiにでもひっそりと貼っておくが
309 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/12(日) 08:38:07.07 ID:fH31x0+DO
>>304
ニヨニヨしすぎで頬肉がやばいwwwwww
最後はしんみりな落差もいいね
310 : ◆YHxtVKAHbw [sage saga]:2012/08/12(日) 09:25:08.07 ID:yJcfa9O4o
>>308
ひっそりとしなくていいから普通にここに投下しろください。
311 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/08/12(日) 12:19:32.88 ID:IKhNVKiDO
うーん・・・個人的にはbadendはちと(苦笑)
基本ハッピー志向なもんで、鬱展開注意も読めないんだよねー。
閲覧注意を書いてください←最近覚えた。

んなわけで、キャラ崩壊注意を一つww
>>247が言った『お兄ちゃん子』が妙に気に入って書いたやつww
次レスより投下。
312 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/08/12(日) 12:22:56.79 ID:IKhNVKiDO

朝6時。顔を張られて起こされる。

パンッ!

「んあっ!?」

頬に痛みを感じて薄目を開けると、桐乃が俺の上に馬乗りになって顔を覗き込んでいた。

「朝」

言われて枕元にある時計に目を向ける。

「・・・まだ6時じゃねーか・・・休みなんだから、もう少し寝かせろよ・・・」

それでなくとも昨夜は、桐乃に渡されたエロゲ攻略で夜更かしさせられたのだ。
眠い目を擦りつつ抗議の声を上げると、妹は意外にもあっさり引き下がった。

「わかった」
「ありがとよ・・・」

ゴソゴソ
それじゃと言いつつまた眠ろうと目を瞑りかけると、布団の中に何やら違和感。
見ると桐乃が、俺の胸にちゃっかりと抱きついていた。

「・・・お前も寝るのか・・・?」
「だめ?」

・・・追い出すのも面倒だ・・・。
ポンポンと桐乃の頭を軽く叩いて、今度こそ俺は二度寝を決め込むことにした。

「・・・いや・・・おやすみ」
「おやすみ」

起床はそれから3時間後だった。


『なにもない休日』
313 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/08/12(日) 12:24:40.36 ID:IKhNVKiDO

10時。用意されていた飯を食べる。

「んあー・・・ごちそうさま」
「ごちそうさま」

まだ眠い頭を振り払うように大きく伸びをする。
珍しく両親のいない朝。
書き置きを見ると、親父は仕事。
お袋はカラオケらしい。
朝も早よから人生謳歌してんな。

「洗いもん、俺がやるから拭いてくれ」
「おけ」

カチャカチャと流しに食器を運び、俺は慣れた手つきで洗い出す。
後ろでガタガタと音がしたので首だけで振り返る。
見ると、なにやら桐乃が椅子を流しに移動させているとこだった。
なにやってんだあいつは。
そうこうするうちに食器は洗い終わり、水切りに伏せて並べていく。

「・・・よし。じゃ後は頼む」
「おけ」

桐乃が親指を立てた後、俺に椅子を差し出した。

「・・・なにこれ?」
「座って」
「は?」
「いいから」



「・・・なあ」
「なに?」
「・・・拭くの、俺の膝の上でないとだめなのか?」
「うん」
「・・・そか」

桐乃は俺の膝の上に子供のように座り、なにやら楽しげに食器を拭いていた。
314 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/08/12(日) 12:26:13.34 ID:IKhNVKiDO

12時。リビングにて今日の予定の計画。

「昼飯はさすがにまだ入らんが今日はどうするかな」

リビングのソファーに座り、なにをするでもなくボーっとする。
実はこういう何もしないのが意外と気に入っている。
親がいないときにしかできないんだが。

「このまま家でゴロゴロ」

桐乃も仰向けに寝そべったまま、最新のファッション誌などを読んでいる。
しかし桐乃の意見には賛成なのだが、正直それには一つ問題がある。

「うーん・・・でももう食べるもんないぞ?」

そう。
お袋が用意していったのは朝食のみ。
昼飯は自分で用意しなければならないのだ。
カップ麺くらいならあるだろうが、料理となるとからっきしだ。
カップ麺だけというのも味気ないしな・・・さてどうしたものか。

「お昼は外で」

パラリと雑誌のページをめくりつつ桐乃が一言。
なるほど。
一日中家にいる気はないってことか。

「オーケーそうするか・・・とりあえず桐乃」
「ん?」
「いい加減左膝が痺れてきたんだが・・・」
「やだ」
「・・・ああ、どかないわけね」

俺の膝を枕にしながら、桐乃はまたパラリと雑誌をめくった。
315 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/08/12(日) 12:27:57.04 ID:IKhNVKiDO

14時。遅めの昼食をとりに外出。

「で?どこに食いに行くか?」
「ファミレス」

トントンとつま先で地面を叩きながら聞くと、駅前にあるレストランの名前を告げられた。

「まあ無難か・・・」

玄関を出つつそんな風に呟いた。
確かあそこは午後3時までランチタイムをやってるから、俺の懐もそれほど痛まないしな。

「そのあとはどうする?」
「食べてる間に決める」

なるほど、建設的だな。
それなら会話のない朝みたいな食卓にはならんわけか。

「わかったそれでいこう。・・・ところで桐乃?」
「ん?」
「腕を離してくれないか?」
「やだ」

俺の言葉に、殊更ギュッと腕に絡める力を強める桐乃。
ああ・・・逆効果だったか・・・。

「・・・やたらと男の視線が痛いんだが・・・」

皆さん、こいつは俺の妹なので、その『なんでお前みたいのが!?』的な視線で見るのやめてください。

316 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/08/12(日) 12:34:15.85 ID:IKhNVKiDO
15時。ファミレスにて食事中。

「このビーフドリア意外にいけるな。お前のカルボナーラはどうだ?」
「まあまあ」

なんとかランチタイムに間に合い、お互いにドリンクバー付きのセットを頼んで今に至る。

「そうか」

こいつがまあまあというのだから、それなりに美味いんだろう。
料理の腕は壊滅的だが、味覚は意外にしっかりしている。
俺を含めて、お袋がちゃんとしたものを食わせてくれたお蔭だと親父に聞いた。
見た目の割にちゃんとしてるんだよな、お袋。
口軽いけど。

「はい」

そんなことを考えていたら、突然スパゲティーを巻いたフォークが目の前に差し出された。

「・・・なにこれ?」
「味見」
「・・・」

・・・おいおいおい。
とてつもないミッション来ちゃったよこれ・・・。
額に汗が浮かぶのを感じる。
顔が引くついた笑いに変わるのがわかる。

「・・・自分で食えるぞ?」
「あーん」
「・・・」

最後の抵抗を試みるが、あっさりとこの妹様は微塵に砕きなすった。

「あーん」
「・・・」
「あーん」
「・・・」
「あーーーーん」
「・・・あーん」

ぱく。もぐもぐ・・・。

「どう?」
「・・・まあうまい」

味なんかわかるかーっ!

「そう。じゃあおかえし」

ヤベー、俺今顔真っ赤!
もー絶対真っ・・・今・・・なんて言いました桐乃さん?。

「あーん」
「・・・え?」
「あーん」
「・・・」

なん・・・だと?
まさかのリターン希望だとっ!?

「あーん」
「・・・」
「あーん」
「・・・熱いぞこれ?」
「ふーふーして」
「・・・」
「あーん」
「・・・ふーふー・・・ほら」

ぱく。もぐもぐ。

「おいしい」
「・・・そりゃよかったな」
「もっと食べる?」
「・・・いや、さすがに視線に耐えきれなくなってきたからいい」
「そっか」

・・・だから男性の皆さん。俺たちは兄妹ですから、呪い殺しそうな目で見るのやめてください。
317 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/08/12(日) 12:42:26.80 ID:IKhNVKiDO

16時。映画を見に行く。

「よくわからんが、この映画面白いのか?」

座席に座り、買ってきたドリンクをホルダーに置く。
食事の後、見たい映画があるからと桐乃にシネコンに連れてこられた。
・・・考えたら映画館で見るのって、えらい久し振りな気がする・・・。

「うん」
「まあ席は埋まってるが・・・沙織からでも聞いたのか?」
「ランちん情報」

ランちん?

「・・・誰それ?」
「モデル仲間」
「へえ・・・」

・・・いきなり知らない人をあだ名で紹介するなよ。

「前、家にも来た」
「・・・あの最初の時か?」
「うん」

そりゃ面識あるってことか?
いやでもあのとき・・・?
うーん・・・。

「・・・あやせと加奈子しかわからん」
「別にいい」

そりゃそっか。
あやせ・加奈子とはその後も面識あるのに、その子とないってことは、それほど深い仲でもないってことだろう。

「だな。・・ところで桐乃」
「ん?」
「・・・手は繋いだ、ままじゃないといけないのか?」
「うん」
「そっか・・・」

・・・これってホラー映画なのか?
318 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/08/12(日) 12:43:20.38 ID:IKhNVKiDO

18時。近くの喫茶店で一休み。

「うーん・・・ああいうのが面白いのか今時の女子中学生は・・・?」

買わされたパンフを見ながら、一口コーヒーを啜る。
ひろげられたパンフの中では、これ見よがしなラブロマンスが写真付きで解説されていた。
・・・前々から思ってたんだけど、パンフってネタバレの宝庫だよね?
観る前に買った奴らって、いったい何考えてんだろ・・・?

「面白くなかった?」
「というより、恋愛映画が性に合わんらしい」
「経験ないから?」
「・・・まあそうだな」

言いにくいことをはっきり言いますね桐乃さん。

「まあぶっちゃけ、今はまだいいや」

手のかかる誰かさんもいるしな。
そんなことを考えていると、ポツリと桐乃が呟いた。

「してみる?」
「なにを?」
「恋愛」
「は?」

なにが?と尋ねる間もなく桐乃は息を吸い込むと、とんでもないことを言いやがった。

「・・・お兄ちゃん『妹と恋しよっ』」

ブハァッ!
思わず含んでたコーヒーを根こそぎ吹き出してしまった。

「ちょっ!桐乃っ!おま・・・!!」
「冗談」

ならもっと小さい声で言えよっ!
店中の注目集めちまってんじゃねーかっ!!

「・・・時と場所を考えてやってくれ」
「うんわかった」

・・・ああ。地味に店員の視線が痛い・・・。

「で?」
「・・・ん?」
「してみる?」
「みません」
「そっか」

・・・なんでちょっと残念そうなんだ、お前?
319 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/08/12(日) 13:06:37.96 ID:IKhNVKiDO

19時。帰宅。

「ただいま」
「ただいま」

ようやく我が家に帰り、リビングで帰宅の挨拶をする。この辺は親父の躾の賜物だな。

「あらおかえり」
「親父もただいま」
「ただいまお父さん」
「うむ」

お袋は台所でせわしなく夕飯の支度をしており、親父はリビングで難しい顔で夕刊を読んでいる。
いつも通りのいつもの風景。

「今日はカレーだから、できるまでお風呂入っちゃいなさい」

・・・そんでいつもの献立、か・・・。

「はいよ。桐乃先いいぜ」
「ありがと」

・・・お礼なんて珍しいことで。
桐乃を待つこと、約50分。

「あいたよ」

リビングの戸が開いて、湯気を上げたままの妹様が帰ってきた。

「あいよ。お袋まだ平気か?」
「うん、15分くらいでしょあんた?ちょうどいいくらい」

・・・勝手に決めないで下さいお母さん。
それじゃゆっくり湯船につかれないじゃないッスか。
っても、親父の方針で、全員が揃わない限り食事をはじめない家族なわけで、

「はいよ。ならいってくるわ」

仕方ない。
今日はシャワーだけで終わりにするとしますか。
320 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/08/12(日) 13:07:21.52 ID:IKhNVKiDO

それから約15分。

「ふう。あがったぜー」

どーよ、この計ったような上がり時間。
俺の体内時計も捨てたもんじゃねーだろ?
ガシガシとバスタオルで頭を拭いてると、タオルの隅からスリッパを履いてる足が見えた。
バスタオルを肩にかけ、視線を向けると、

「はい」

髪が濡れたままの桐乃が立っていた。

「・・・なにこれ?」
「ドライヤー」

見ればわかる。

「・・・なにこれ?」
「乾かすの」
「は?」
「あたしの髪」

ちょいちょいっと自分の髪を指しながらこともなげに言う桐乃。

「えーと・・・誰が?」
「あんた」
「・・・俺が?」
「うん」
「お前の髪を?」
「うん」
「・・・下手ですよ?」
「別にいい」
「いいの?」
「うん」
「・・・」

・・・ダメだ揺るぎねえ・・・。
このまま押し問答してても・・・押し問答じゃねーな。
柳に暖簾、ぬかだこりゃ。

「・・・お袋あと5分待ってくれ」
「はいはい。相変わらず甘いわね―京介」
「そんなんじゃねーよ・・・。ほら洗面所行くぞ」
「うん」

手を取って洗面所に向かう時ちらりと見えた桐乃の顔。
・・・なに嬉しそうに笑ってんだよお前?

321 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/08/12(日) 13:08:28.91 ID:IKhNVKiDO

20時。夕食後受験勉強。

「さて今日は1日遊んじまったからな。気合い入れて集中集中」

カリカリ・・・。
カリカリ・・・。
カリカリ・・・。
カ・リ・・カリ・・・。
カ・・・リ・・。
・・・ダメだ。限界です。

「・・・桐乃さん」
「ん?」
「気が散るから背中に引っ付くのやめてくれなませんか?」
「やだ」
「・・・できれば再考を・・・」
「やだ」
「そっか・・・」

そう言って俺はまたノートに向かったのだが・・・桐乃が首に手をまわして俺に寄りかかっているため全く集中できない状態だった。
・・・風呂上がりの女の子ってなんでこんなにいい匂いなんだ?
くそ・・・思考がまとまらん・・・。
しかも背中に何かやわらかいものが・・・。
いや違う。待て京介。
そこは決して意識しちゃいけないところだ。
無になれ・・・素数を数えろ・・・。
よし。
これは俺に課せられた試練だ。
どんな状況でも集中できるようにとの・・・。

「あきた」
「へ?」
「マンガ読んでる」
「・・・ああそう・・・」

桐乃は俺から離れると、本棚にあった漫画を何冊か抱えて俺のベッドに寝転がった。
・・・俺の決意までの時間を返してください。
322 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/08/12(日) 13:09:22.24 ID:IKhNVKiDO

24時。勉強終了。

「ふう。今日はこんなもんにしとくか・・・あれ?」
「すー・・・すー・・・」

体を目いっぱい伸ばしてコリをほぐすと、視界の隅で桐乃がうつぶせで寝ているのが目に入った。

「おーい桐乃。寝るなら自分の部屋いけ」
「んー・・・すー・・・」

一瞬返事らしきものをしたものの、そのまままた寝息を立てる桐乃。
ったく・・・最近毎日じゃねーか。

「・・・仕方ない連れてくか・・・」

ひょい。
いつもの如くいつものように桐乃を抱き上げる。

「相っ変わらず軽いよなー。ちゃんと飯・・・食ってるよな」

しかも結構。

「・・・なんで太くならねーんだ?」

ぴくり!
思わず俺が呟いた声に呼応するように、桐乃の体がビクンと震えた。

「・・・」
「・・・」
「・・・寝たふりって・・・ことはないよな?」

コクコク。
・・・頷いてどーすんだお前・・・。

「・・・まあいいか」

カチャ。
どうせ隣に運んで横たえるだけの簡単なお仕事ですよ。
それぐらいお安い御用だ。
323 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/08/12(日) 13:09:58.81 ID:IKhNVKiDO

深夜2時

「・・・ん・・・」

・・・なにやら胸のあたりに重さを感じて目を覚ます。

「・・・」
「・・・」

無言のまま布団をめくると、朝同様、胸に引っ付いてる桐乃と目が合った。

「・・・」
「・・・」
「・・・桐乃」
「やだ」
「自分のベッドに・・・」
「やだ」
「・・・」
「やだ」

・・・まあ、いいか・・・。

「・・・朝には戻れよ?」
「うん」
「よし」

ポンポンと頭を優しく叩いてやると、心なしか気持ちよさそうに桐乃が目を細めた。ような気がした。

「ふぁ・・・おやすみ桐乃」
「おやすみ兄貴」

そうして俺たちの休日は更けていった。

END
324 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/08/12(日) 13:19:13.37 ID:IKhNVKiDO
以上です。

貼ってる最中、店が混んでどーなるかと思った・・・(-""-;)
325 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(茨城県) [sage]:2012/08/12(日) 13:26:42.30 ID:NQ7KOiFqo
乙〜
このシリーズの桐乃は結構無口だな行動も言動も可愛いが
しかし両親は慣れたもんだなwww
326 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2012/08/12(日) 13:47:21.38 ID:IoI/o6HAO
なんという微笑ましい兄妹愛。
そうとも、ほほえま…えま……

京介爆発しろ!ww
327 : ◆YHxtVKAHbw [sage saga]:2012/08/12(日) 15:30:53.09 ID:yJcfa9O4o
>>323
乙。
ランちん……。俺もネタで二回ほど使ったが……www
相変わらず京介は甘いな。
だが、それがいいw
328 : ◆YHxtVKAHbw [sage saga]:2012/08/12(日) 17:47:34.75 ID:yJcfa9O4o
>>259の甘甘デレデレ桐乃の続きです。
桐乃の、京介の呼び方は「ねえ」でも「あんた」でも「兄貴」でもない、
ましてや「京介」と呼び捨てなんかじゃない、完全にキャラ崩壊なので、
ご注意願います。
(前回は注意書き忘れた)

それでは投下します。
329 : ◆YHxtVKAHbw [sage]:2012/08/12(日) 17:48:02.09 ID:yJcfa9O4o
「アニメのDVDは普通に買えるだろうけど、こういうゲームはどうしたんだ?」

 俺は「妹と恋しよっ♪」のパッケージを見ながら桐乃に聞いた。

 今日も桐乃の部屋でオタク知識の勉強中である。

 桐乃は口篭るように、

「通信販売を……」

 ……なるほど。
 桐乃の見てくれだと高校生くらいに見えることもあるけど(背も中学生にしては高いからな)、十八以上かと言われたら学生証を確認するまでもなくアウトだろうからな。

「送られてきた梱包のダンボールとかはあるか?」
「ううん。この押し入れだってスペースは限られてるから処分してるよ?」

 ちょっと思案に暮れる俺。
 俺たちの親父は警察官、つまり法を遵守する職業だ。
 そんな親父が、娘が十八禁のゲームを買っているなんて知ったらえらい事になる。

「なに考えてるの?」
「──おまえの事」
「えっ、えっ……?」

 瞬間的に赤面する桐乃。

 あれから俺は妹の照れる仕草を見るためにわざとこんな受け答えをする事が度々ある。
 ……実際、嘘を言ってるわけでもないしな。

 ただ「おまえの事」と言わせるために「なに考えてるの?」と聞いてきてるな、と思える時もあるので、わざと晩メシの事とか別の答えを言う事もある。
 そんな時の桐乃の唇を尖らせた拗ねた表情も見ていて面白い。
330 : ◆YHxtVKAHbw [sage saga]:2012/08/12(日) 17:48:28.01 ID:yJcfa9O4o
「よしっ」

 俺は膝を叩いて桐乃に向き直る。

「これからはこの手のゲーム買う時は、俺の名前で注文しろ。ダンボールは俺が保管しておいてやるから」

 俺も現在十七歳だから厳密にはアウトだろうけど、エロ本お袋バレという前科があるぶん、桐乃より厳しく当たられる事も無いだろう。

「え? でも……それは……」

 桐乃はもじもじしながらゲームパッケージに書かれているタイトルロゴの中の一文字を指差す。

「おにいちゃんがこういうゲーム買うっていうのは……これはこれで問題あるとお父さんに思われたりしない……?」

 桐乃の指先に書かれている文字は「妹」だった。

 確かに妹にあれやこれやをするゲームは、実際には妹がいない人間が妹に過度の美化された妄想を膨らませつつプレイしているというイメージがある。
 俺の勝手な想像だけど。

 俺が妹がいない一人息子だったら問題無い。
 しかし、目の前にいる桐乃は紛れもなく妹だ。
 俺がこの手のゲームを買ったと親父に知れたら、桐乃をどういう目で見ているんだと殴られるのは火を見るより明らかだ。

「……分かった。これについては別の対策を考えよう。しかし──」

 ──なんで妹もののゲームなんだ?

 桐乃のコレクションを見る限り、好きなアニメはいわゆる美少女ものがほとんどだ。
 つまり、単に可愛い女の子が登場するという理由なだけで、ゲームに関してもそういうものを集めている。
 それがたまたま妹ものだった、という事なんだろうか。
 しかし、俺もあまり詳しくないが、美少女が出てくるゲームの全てが妹ものとは限らないだろう。
 桐乃の持っているゲームの中に何個か妹ものがあっただけ、というのなら話は分かるが……

「……妹ものがほとんどだな……」

 俺の呟きに、桐乃は気まずそうに俯くので、俺は慌てた。

「い、いや。責めてるわけじゃないんだ。好きなものに理由なんて無いだろ? そんな事より──」

 言いながら「妹と恋しよっ♪」のパッケージを手に取り、

「これ、ちょっとやってみてくんね? どんなものか知っておきたいし」

 オタクに限らず何かしら趣味を持っている人間は、一度スイッチが入ると饒舌になるという事は俺自身も身を持って知っているので、少しでも桐乃の気を上向きにさせようと思って言ったのだが、予想に反してこの妹はふるふると首を振った。

「い、嫌だよ……。絶対ドン引きしちゃうもん……。少なくともおにいちゃんが見ている前では出来ないよ……」

 大事なことを失念していた。
 このゲームは恐らく妹にエッチなことをする内容なのだろう。
 そういうゲームを俺の前でやるという行為は、桐乃にとって抵抗があるのだろう。
331 : ◆YHxtVKAHbw [sage saga]:2012/08/12(日) 17:48:54.51 ID:yJcfa9O4o
「分かった。悪い、今のは忘れてくれ。じゃあ俺がこのゲーム遊んでみるから、ノーパソ貸してくんね? もちろん嫌ならいいぜ」

 桐乃の趣味を知ると啖呵を切った手前、せめて一つくらいは見ておくのが俺の義務だと思う。
 だからプレイするのを見物しようと思ったのだが、生憎桐乃は俺の前では気まずいので出来ない。
 だったら俺がやってみるしかない、という事になる。
 正直この家には実在する妹がいるので、妹にあんな事やこんな事をするというシチュエーションは生々しすぎてやりたくないというのが本音だけど。

「……分かった。いいよ。せっかくだからおにいちゃんの部屋からでもインターネット出来るようにしてあげる」
「そこまでしなくてもいいって」
「ううん。このゲーム、ADVってジャンルだから、初心者だと謎解きとか分岐とか迷うと思うの。ネットで検索したら攻略ページも結構あるから」
「そ、そうか……」

 あどべんちゃーげーむ?
 妹との恋愛でどこを冒険するんだ?
 未開のジャングルに取り残された兄と妹、というゲームなのか?

「おにいちゃんだっていちいち妹に、ここはどうしたらいいんだ、って聞くのはカッコ悪いでしょ?」
「そういやそうだな」

 すまん。既に訳分からん状態だ。

「あたしとしては些細な事でも聞いてくれた方が、おにいちゃんとお話できるぶん嬉しいんだけど……」

 頬を赤く染めつつ、上目遣いで俺を見る桐乃。

「じゃあ、早速質問いいか?」
「えっ!? あ、なに!?」

 なんでこの妹は反応がいちいちオーバーなんだろう。

「このゲーム、冒険とかするのか?」
「え? しないよ?」
「だって、アドベンチャーって」

 ドラゴンなんたらとかファイナルなんたら、いわゆるRPGこそがADVになるんじゃないだろうか。

「……そのあたりはよく分かんない。この手のゲームはADVってジャンルだという風に擦り込まれちゃったから考えた事無かった」

 そういうものなのか。

 よし、せっかくネット繋げるようにしてくれると言うのだから、このADVというジャンルのことを調べてみるか。
332 : ◆YHxtVKAHbw [sage saga]:2012/08/12(日) 17:49:22.40 ID:yJcfa9O4o
「そうそう。ブラウザのキャッシュの消し方とかも教えておいてあげる」
「なんだそりゃ?」
「ネット使うとその履歴が残るの。そういうのを消す方法」
「別にそんなの残ったところで問題は無いだろ?」

 俺が答えると、桐乃はなぜかもじもじとし始めた。

「だって、おにいちゃんだって男でしょ? その……男の人が好きそうなサイトとか見る事だってあるかも知れないし……」

 俺は思い切り咳き込んだ。
 それってつまりエロサイトっていうやつじゃないか。

「いーやいやいや! ゲームやるために借りるんだから、そんなことしないって!」
「でも、このゲーム、エッチなゲームだから……。攻略ページ見て分からない部分とかあったらやましい心とか無くっても純粋に調べてみようってなっちゃうでしょ? その調べた結果から更にリンク辿っていったら、気付いたら、その……変なサイトに行ってたりするワケで……」

 ……なんか実体験に基づく言葉に聞こえるのだが、あえて突っ込むのはやめておこう。

「分かった分かった。その気が無くってもそういう事になるかも知れないからな。俺が万一エロサイト見てしまったとしてもその痕跡を見るのは桐乃的には嫌だろうし」
「……そうだけど……その、エ…サイトなんて露骨な言い方しないでよ……」

 桐乃はちょっと不機嫌そうに唇を尖らせた。

 確かに今のは俺の失言だったな。
 こいつはほんの子供の──女の子なんだからそういう単語には抵抗あるだろう。

「すまん、悪かった。じゃあ、そのナントカの消し方とかもしっかりレクチャーしてくれ」
「うん。じゃあちょっとこのデスクトップでやってみるから」

 言いながら桐乃はブラウザを起動させ実演し始めた。

「悪い。いらない紙とかあるか? 見ただけじゃ覚えれそうに無いからメモしておきたいし」
「あ、はい」

 俺は白紙のレポート用紙とシャーペンを桐乃から受け取った。

 携帯でニュースとか天気予報くらいは見たことあるけど、これで俺も本格的にネットデビューということだな。
 ちょっとワクワクしてきたぞ。

 もちろん桐乃の言う変なサイトとかは見ないよ!? ……多分。
333 : ◆YHxtVKAHbw [sage saga]:2012/08/12(日) 17:49:48.98 ID:yJcfa9O4o
 そんな訳で俺の部屋。

 さっそく借り受けたノーパソでゲームを起動させる。

「……えっと、まず名前入力か。名字が『高坂』で……名前は『京介』っと……」

 主人公『京介』のモノローグによるプロローグが始まった。

 そして、最初の選択肢。
 朝目が覚めたら妹のしおりが布団にもぐりこんでいて、さてどうする? という部分。

 俺は実妹とこういうシチュエーションになったらどうするかを頭の中でシミュレートした。

 この間までの全く話などしてなかった頃だったら、俺もクソ妹と思ってたから『問答無用で、布団から蹴り出した』になるかな?
 でもその頃の桐乃が俺の布団に入ってくるなんて絶対にありえないし。

 じゃあ、今の桐乃なら?
 まさかよっぽどのブラコンでない限り今の桐乃でもそんな事はしないと思うが……。
 でもまあ仮にそうなったとしたら、後で事情を聞くにしろその場では取り合えず『起こしてしまわぬよう、そっと布団を抜け出した』か。

 いや、そもそもこれは妹とあんなことやこんなことをするのが目的のゲームだ。
 となったらその布石をここから打っておく必要があるかな。
 じゃあ『ぎゅっと優しく抱き締めてあげた』がベストだろう。
 ……桐乃相手にだと想像するだけでも恐ろしいが……。


 早い話がADVってのは、要所要所で自分で行動を決める事が出来る紙芝居、ということらしい。
 やはり俺が想像したような冒険の要素は全く無さそうだ。
 恋の逃避行(言ってて恥ずかしい)なんかも冒険の一種だと言えなくもないが、ちょっとニュアンスが違う。
 ここは早急にADVの起源とか定義とかを調べる必要があるな。

 よし、取り合えず今日はここまでにしておこう。
334 : ◆YHxtVKAHbw [sage saga]:2012/08/12(日) 17:50:16.89 ID:yJcfa9O4o
 翌日の放課後、俺は帰宅の途についていた。

「きょうちゃん? なんか変な顔になってるけどどうしたの?」

 俺の顔を見ながら話し掛けてきた眼鏡の女は幼馴染の田村麻奈実。

 失礼なやつだな。どうせ俺は変な顔だよ。

「ここんとこ妙に機嫌良さそうだけど、今日はそれと眠そうな顔が一緒になったような感じ、かな?」

 心当たりは──あった。
 俺自身顔に出してた自覚は無いが、桐乃と数年ぶりの会話をかわして以降の俺の気は上向き加減。
 それに加えて夕べは慣れないパソコン操作で寝不足気味だ。

「まあ、いい事と難しい宿題とが同時にやってきたって感じかな」
「いい事?」
「ずっと話もしてなかった妹と久し振りに兄妹の会話ってやつが出来るようになった」
「へぇ〜、そうなんだぁ」

 ゆるゆるな笑みを浮かべる麻奈実。

「それで、難しい宿題って?」
「妹はパソコンが趣味らしくてな」

 オタク趣味については伏せておこう。

「やっぱり兄貴としてはどんな趣味なのか気になるじゃん? だからいろいろ教わってるんだけど、俺の頭じゃなかなか理解できなくてな」

 特にアニメのこととかエロゲーのこととか。

「優しいね、きょうちゃんは」
「そんなんじゃねぇよ」

 そんな会話をかわしているうちに、我が家のそばの丁字路まできてしまった。

 が、そこでタイミングよく下校中の桐乃と遭遇した。

 俺はとっさに足を止める。

 桐乃はクラスメートらしい同じ制服の女子たちとお喋りしながら歩いている。

「あ」

 ふいに横を向いた桐乃と目が合った。

 面白いように顔が満面の笑顔に変化し、今まさに「おにいちゃん」と言おうとしているかのように口が開きかける。

 ところが、そこでハッとした表情になり、顔を逸らした。

「桐乃、どうしたの?」

 黒髪ロングの女の子(超美少女)が桐乃に話し掛けているのが聞こえた。

「う、ううん。なんでもないよ」

 作り笑いっぽい笑みを浮かべて答える桐乃。

 そして、桐乃とその一行は目の前を通り過ぎていった。

 さすがに桐乃も自重したか。
 友達の前で「おにいちゃん」なんて言おうものならからかわれるだろうからな。
335 : ◆YHxtVKAHbw [sage saga]:2012/08/12(日) 17:50:45.42 ID:yJcfa9O4o
「はぁ〜……。いまの、すっごくかわいい娘たちだったね」

 羨望の眼差しで彼女たちを見送りつつ眼鏡の幼馴染が言った。

「ていうか、いまの中に俺の妹がいたんだが」
「え!?」

 麻奈実はまじまじと俺の顔を見る。

「きょうちゃんに似てる娘っていなかったよ?」

 どうせ俺はあんな垢抜けたイマドキの女子中学生とは似ても似つかねぇツラだよ。

「あのなあ、昔から男は女親に、女は男親に似るって言うだろ? お婆さんの癖に分からんのか?」
「おば……ひどーい!」


 そうだ。この前から悩んでいた事をこいつに相談してみよう。

「その妹なんだけどさ、学校の友達との会話は今風の話題で、それはそれで楽しいらしいんだけど」
「うん?」
「妹がパソコンが趣味ってのは言ったよな? そりゃイマドキの子供なら多少はパソコンとかも使えるだろうけど、あいつはかなり深いところまでのめりこんでて──」

 特にアニメのこととかエロゲーのこととか。

「そういう趣味を腹を割って話せる友達がいないのが寂しいらしいんだ」
「ふぅ〜ん?」

 麻奈実は唇に人差し指をあて、なにやら考え始めた。

「つまり、そういうお友達を作るにはどうしたらいいかってことだよね? 学校のお友達とは別の趣味のお友達」
「そういうことだ」

 さすが麻奈実は察しがいいな。

「だったら力になれると思うよ? うちでも似たようなことがあったもん。弟だけど」

 麻奈実の弟もオタクだったのか?

「あーるあんどびーって音楽が弟は好きなんだけど、」

 なんだ、音楽か。これは多分『R&B』の事だな。

「学校のお友達とはそういう音楽の趣味が合わなくって。それで、ぱそこん使っていんたーねっとでお友達を作ったんだって」

 パソコン? インターネット?
 これはまさに天からの啓示ではないか!

「それ、ちょっと詳しく教えてくれ!」
336 : ◆YHxtVKAHbw [sage saga]:2012/08/12(日) 17:51:13.19 ID:yJcfa9O4o
 帰宅した俺は、着替えもそこそこにノーパソを起動させ、ブラウザを立ち上げた。

『「そーしゃるねっとわーきんぐさーびす」って知ってる?』

 そう麻奈実は言っていた。
 これってSNSの事だよな。
 名前くらいなら聞いた事がある。

 俺は『オタク SNS』で検索をかけて、表示されたページを物色し始める。

「あ、このサイトは紹介状がいるのか。桐乃だったらSNSに入りたいから紹介してと言えば応じてくれる友達はたくさんいるだろうけど、即座にオタクバレしちゃうよな。ここはボツっと……」

 などなどの経緯を経て、紹介のいらないSNSサイトを発見する。

「桐乃に勧める前にどんなものか知っておいたほうがいいな。一応入ってみっか」

 適当にハンドルネームやプロフィールを決めて登録。
 問題は、ここに桐乃にぴったりのコミュニティがあるかだが。

 アニメオタクなら桐乃と同年代もいるだろうが、エロゲーオタクとなったら十八歳以上の男が多いだろう。
 そんな中に桐乃を放り込むわけにはいかない。
 女の子だけのコミュニティはあるか……。

「あった!」

 しかもメンバーでないと詳細は見れないけど『お茶会の誘い』というトピックまである。
 麻奈実の言っていた「おふかい」つまりオフ会が近々催されるって事だよな?
 まさに友達作りに打ってつけ、今の桐乃にぴったりじゃないか。


 俺は意気揚揚と桐乃の部屋のドアをノックした。
 ドアを開けた桐乃は俺を見て目を丸くする。

「なんで家の中なのにまだ制服なの?」

 あ、結局着替えるの忘れてた。

「そんなことより──」

 強引に話を変える。

「──お前の他にどんなオタクの人がいるか知りたくなってな。この前俺が持ちかけた人生相談の続きと思ってくれ。俺の見聞を広めるためってヤツ」

 桐乃はさらに目を大きく見開く。

「この前話したじゃん? オタクの友達はいないって」
「だから、一緒に勉強しようぜ」
「勉強……?」

 訝しげな目で俺を見る桐乃。

「借りたゲームを遊んでる片手間に面白そうなサイト見つけたんだ。どういうものなのか一緒に見てみようぜ」

 桐乃の友達を作るために調べた、なんて言うのは押し付けがましいからな。
 俺も知りたいというスタンスは崩さないように。

 桐乃は首を傾げながらも俺を部屋に招き入れた。
 そしてデスクトップを起動する。

 俺はさっき見たばかりのSNSサイトの名前を告げる。

「桐乃に教わるばかりでなく、俺もオタクの事を知ろうと思ってここに登録してみたんだ。初心者向けのコミュニティとかあったら参加してみようと思ってな。生憎俺向けのコミュニティは見付からなかったんだけど、その代わり面白そうなのがあったんだ」
「どんなの?」

 ここで桐乃が興味を持ってくれるかが勝負だ。

「『オタクっ娘あつまれー』ってコミュニティ。俺は男だからメンバーには入れないけど、さらっと見た限り参加してる女の子って中高生がメインで、お前と年齢的にも近いみたいだぞ?」
「へ、へぇ〜……」

 口では平静を装ってるけど、満更では無さそうだな。

「まあ、入る入らないはおまえ自身の問題だし、ただちょっと面白そうだと思っただけだから」

 俺はそう言うと「それじゃ邪魔したな」と告げて桐乃の部屋を後にした。

 あとは桐乃が釣れるかどうかだが、表情を見る限り仕掛けは上々といった感じだな。
337 : ◆YHxtVKAHbw [sage saga]:2012/08/12(日) 17:51:40.44 ID:yJcfa9O4o
「よし! これでしおりルートはクリアだ」

 夕食が終わって風呂から上がった後、桐乃から借りたゲームをプレイしていた俺だが、とうとうヒロインの中の一人にスポットを当てたストーリーを終わらせる事に成功した。

 その時、ドアをノックする音。
 出てみると桐乃だった。

「あ、あのさ……」
「おお、桐乃。調度いいところに来た。しおりルート最後まで行ったぞ!」

 桐乃の言葉を遮るように俺はまくし立てる。
 クリアした事でちょっとハイになっていたようだ。

「え? ほんと? ちょっと見せて」

 桐乃を部屋に入れた俺は、ノーパソの前に座らせた。

 桐乃はCGを確認して目を丸くする。

「すごい! しおりルートのCG全部回収しちゃってるじゃん! あたしでも最初のプレイではフルコンプ出来なかったよ!?」
「ふっ、兄貴にかかればこんなものどうってこと無いぜ」

 ……本当は攻略サイトの中に全ルートの回答がそのままズバリ載ってるのがあったので、それをそのままカンニングしただけだけど。

 邪道とか言わないでくれ。
 素直にストーリーを楽しむのならこれだってアリだろう? な?

「この調子で他のヒロインのルートもどんどんクリアしていくぜ」

 カンニングしながらな。

「うん、がんばって!」

 両の拳を胸の前で握り締め、何度も大きく頷く桐乃。

「それはそうと、なんか用があったんじゃないか?」

 桐乃の言葉を遮っておいてこの言い草は悪かったかな。

「あ、そうそう! あたしの部屋に来て!」

 ──もしかしてSNSの件かな?
338 : ◆YHxtVKAHbw [sage saga]:2012/08/12(日) 17:52:08.55 ID:yJcfa9O4o
「このコミュニティの管理人さんからメッセージが来たの」

 大当たりだ。
 あのあとすぐにSNSに登録し、『オタクっ娘あつまれー』の管理人にコミュニティ参加希望の旨を伝えたらしい。

「ところで桐乃……?」
「なに?」
「……この……名前欄の『きりりん@このサイトは大好きな人に教えてもらいましたさん』ってなんだ?」
「あたしのハンドルネーム。かわいいでしょ?」

 いや、『きりりん』って名前が可愛いとしても、『@』の後の文字が意味不明なんだが。

「だっておにいちゃんって書いたらブラコン妹って思われちゃうでしょ?」
「そっか、そうだよなー……」

 ……って、そういう問題じゃないだろ?
 そもそも、わざわざ人から教えてもらったって事をハンドルネームで記す必要あるか?
 登録の際の「このサイトはどうやって知りましたか?」の欄に記入するべき文章だろ?

「ちなみに、登録の時のアンケートにはちゃんと『大好きなお兄ちゃん』って書いたからね?」

 ……なにが「ちゃんと」だろう。
 まあいい、もうおにいちゃんは突っ込み入れるの疲れたよ。

 そういえば雑誌のプロフィールでも兄貴好きを表明したな、こいつは。
 親父なんかはそれを額面通りに受け止めていたし、俺もその場のノリに流されてた。

 だけど、男の存在を匂わすことでストーカーとかに対する牽制ではないかという考えもあった。
 だったら「お兄ちゃん」じゃなく「彼氏」にすべきだろうという意見もあるだろう。
 確かに高校生以上だったら「彼氏」でいい。
 しかし桐乃はまだ中学生だ。
 そりゃあイマドキの中学生は進んでるから彼氏とかがいても不思議ではないし、ストーカー対策にはもっとも効果的だ。
 しかし、今度は親父が「彼氏とはどこのどいつだ?」と騒ぎ出すのが目に見えてる。
 そこで俺に白羽の矢が立った、ただそれだけの事ではないのか。
 あの雑誌のプロフィールを見た時、俺も桐乃と仲良くしたいみたいなことを親父に言いつつも、頭の片隅で「お兄ちゃん」は消去法で選ばれただけではないかとも考えていたワケだ。


「……で、管理人さんからのメッセージは?」
「あ、これだよ」


『はじめまして、きりりん様。「オタクっ娘あつまれー」コミュニティの管理人を務めております、“沙織”と申します。(中略)近日開催を予定しておりますお茶会にもご参加くださいませ。(中略)それでは、今後ともよろしくお願いいたします』


「沙織さん……ね。そっか。コミュニティ参加希望は承認されたってことだな」

 文面から感じる沙織さんの印象は清楚なお嬢様という感じだ。
 なるほど、桐乃のような垢抜けたティーン誌モデルもいれば深窓の令嬢もいる。
 オタクってテレビなんかでよく見る「いかにもオタク」って感じの人ばかりじゃないんだな。
 まあ、こういう趣味を持っているってだけで基本は普通の人だと思うし。

「それで、オフ会、このコミュニティだとお茶会か。参加するの?」
「それ……なんだけど……」

 急に歯切れが悪くなる桐乃。

「どうした?」
「あの……ごめん……。こういうのに参加するの初めてだから……心細いから……おにいちゃんと一緒でもいいですかって……返信しちゃった……」

 お〜〜い! せめて事前に相談してからにしてくれ〜〜!

「……ほんとにごめんなさい……」

 しかし、心細いというのは分かるような気がするからあまり強く文句は言えないな。

「まあ、俺もそっとついて行こうとは思ってたんだけどな」

 これはその場しのぎの嘘ではなく、最初から思っていたことだ。
 女だけのコミュニティだから表立って参加する事は出来ないけど、影から見守ろうと思っていたのだ。
 やっぱり見ず知らずの相手っていうのは不安になるものだし、万一変な人だった場合は桐乃を腰に抱えて遁走するくらいの事も想定しないといけない。
 俺自身のオタクを知るための勉強というのもあるしな。

 だけど、ブラコンと思われないためにハンドルネームに「大好きな人」とあるのに、ここで「おにいちゃん」と同伴したいというのはどうなんだ?
 いや、俺のことを管理人“沙織”さんに「彼氏」と紹介して欲しいという気は全く無いけど。
 第一、女だけのオフ会だ。
 桐乃の申し出は兄だろうと彼だろうと却下されるのが関の山ではないか。
339 : ◆YHxtVKAHbw [sage saga]:2012/08/12(日) 17:52:35.92 ID:yJcfa9O4o
「なんにしても、この沙織さんがどう返してくるか、だな。メッセージが来たら教えてくれ」
「うん……」
「じゃあ、そろそろ寝るわ」

 そう言って、桐乃の部屋から出ようとしたその時、

「あ、来た! 来たよ!」
「え、マジで?」

 なんてタイミングだ。
 もちろん偶然だろうけど。

「で、沙織さんからは何って?」
「えっと、きりりん様、メッセージ読ませていただきました──」


『きりりん様、メッセージ読ませていただきました。お茶会にお兄様と一緒に参加したいとの事ですが、このコミュニティは女の子だけの集まりですので、申し訳無いのですがご遠慮願いたいと思います。ですが、参加するのは駄目でも、たまたまそこに居合わせたというのでしたら問題ありません──』


 この沙織さんって出来た人間だな。
 ただNOと言うだけでなく、ちゃんと妥協案も出してくれるなんて。

「まあ、桐乃。沙織さんもこのように言ってるんだから……えっと、この場所……カフェか? そばの席に俺も座っててやるよ」
「……うん」
「心配すんなって。ちゃんと見ててやるから」

 だから今にも泣きそうな目で俺を見るなよ。
340 : ◆YHxtVKAHbw [sage saga]:2012/08/12(日) 17:53:02.37 ID:yJcfa9O4o
 そしてお茶会当日。

「おーい、桐乃ー。早くしろー」

 既に靴を履いた俺は、階段に向かって呼びかけた。

「ちょっと待って、今行くー」

 なんで女ってのは外出する準備に時間がかかるのかね。

 外に出て門扉のところで手持ち無沙汰で待つ事数分。
 やっと桐乃が出てきた。

「待たせてごめん」

 バツ悪そうにペコリと頭を下げる桐乃。

「じゃあ、行くか」
「うんっ」

 桐乃はタタタッと駆け寄り、俺の腕を取って絡めてきた。

「え? あ、おい」
「なに?」
「なんで当たり前のように腕を組むんだ?」
「いいじゃん。兄妹なんだし」

 いや、兄妹だからこそ問題だと思うのだが。

「もしこんなところ学校の友達に見られたらどうするんだ?」
「だいじょうぶ。友達は雑誌であたしがなんて言ってるか知ってるから」

『休日は大好きなお兄ちゃんと買物して過ごしてます♪』ってやつか?

「でも、ただ一緒に歩いてるだけでなく腕まで組んでるんだ、完璧にブラコン妹と思われるぞ?」

 だからこそSNSのハンドルネームは『大好きな人』にしてるんじゃなかったのか?

「雑誌のプロフィール見られた時点でブラコンと思われちゃってるから、別にいいよ。それとも──」

 ここで悲しそうな顔で俺を見上げる桐乃。

「──あたしと腕組むの、イヤ?」

 だから目に涙ためて言うなって。
 そんな顔されたら嫌とは言えないじゃないか。
 ……実際、嫌ではないけど。
 もちろん、腕を組みたいと思っているわけではないから念のため。
 組みたいわけでもないが嫌でもない。
 桐乃がそうしたいのならそうさせておくさ、という程度だ。

「嫌じゃないけど、慣れてないからさ。俺とお前とじゃ歩幅も歩くスピードも違うし……」

 このまま走られたら俺のほうが引きずられそうだが。
 なんとなくだけどこいつって結構引き締まった体格してるし、体育系の部活とかやってそうなイメージあるからな。

「おにいちゃんのペースで歩いていいからだいじょうぶ。ちゃんとどこまでもついて行くから」

 そう言うと桐乃は絡めた腕に力を入れてきた。
 まるで俺の腕を抱きしめるかのように。

 ──可愛いじゃねぇか。こんちくしょう。

<了>
341 : ◆YHxtVKAHbw [sage saga]:2012/08/12(日) 17:53:58.84 ID:yJcfa9O4o
以上です。
沙織や黒猫との出会いは次回へ持ち越し。
次回があったら、だけどw
342 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(茨城県) [sage]:2012/08/12(日) 18:03:08.85 ID:NQ7KOiFqo
乙〜
くそっ最近可愛い桐乃が多いな俺も何か妄想したくなってきた
沙織も違うみたいだし続きも期待してる
343 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/12(日) 20:51:45.14 ID:V9SnAy4j0
なんか大量に投下されてるし
>>304超面白かったよ!
344 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/12(日) 23:21:03.37 ID:ini/fG5X0
コミケで買ってきたあやせたんの本にニヤニヤしてたらここにもニヤニヤ成分が大量投下されてた

今日はいい一日だ
345 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) [sage]:2012/08/13(月) 06:28:11.25 ID:RtBBzL0AO
>>324
クーデレな桐乃とか斬新で初めて見たけど、静かにデレまくる様にニヨニヨしっぱなしでしたww

>>341
初っ端の「おまえの事」の件で吹いてしまったww
他にもエロサイト閲覧を許容してたりとか、誰だよ桐乃に性格反転茸喰わせたのww
いいぞもっとやれください
346 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/08/13(月) 11:26:33.75 ID:NwkGmR0x0
おっぱいもみもみしたい
347 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/08/15(水) 09:43:54.72 ID:UYU7GYWDO
>>345
そうかクーデレか!
自分で書いてて、なんかコレあれだなーとか思ってたんだけど、そうかクーデレか!ww

んじゃまぁ、昨日投下しなかったことだし、その辺のやつ投下ww
348 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/08/15(水) 09:45:49.89 ID:UYU7GYWDO

夏休みも半ばの午後3時。
猛暑にふさわしい熱気の籠っている部屋で勉強をしていたその時。

バンッ!

「うわ!ビックリした!」

いきなり部屋のドアが勢いよく開けられた。

「兄貴」

はたしてそこに立つのは我が家の暴君・・・もとい、俺の妹様だった。

「な、なんだ桐乃か・・・どした?」
「ちょっと来て」

言うが早いか、ずかずかと俺の部屋に入ってきて俺の手を握る。

「へ?ど、どこへ?」
「いいから」

そのまま踵を返すと、俺を引きずるようにして桐乃は歩き出した。
・・・相変わらずよくわからん奴だ・・・。

『20分間の誘惑』

349 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/08/15(水) 09:47:23.74 ID:UYU7GYWDO

「・・・」
「・・・」
「・・・あのー桐乃さん?」
「なに?」
「・・・これはどういった状況なんでしょうか?」

先ほど強引に拉致されて後5分。
現在俺は、桐乃のベッドに寝かされうちわで扇がれていた。
・・・なんなんだこれ?

「・・・」
「・・・」

・・・まあ待て。
落ち着け俺。
とりあえず現状を把握しよう。
まず俺は部屋で勉強をしていた。
そこへ桐乃が突如乱入。
有無を言わせずそのまま拉致。
監禁場所は妹の部屋。
抵抗むなしくベットに拘束。
・・・もう一度言おう。
なんなんだこれ?

「・・・俺今勉強してたんだけど・・・?」

考えてもわからないなら聞いてしまうのが早い。
単に面倒くさいというのも含まれてるが。

「なんでこんなことになってんの?」
「仮眠とるため。根詰め過ぎはよくないから」

パタパタとうちわを振る手を止めないまま、端的に桐乃が答えてきた。
・・・ってもよ。

「いや・・・今までサボってた分、それくらいしねーと・・・」
「効率悪い。やると休むはきっちりしないと」

・・・こいつが言うと、妙な説得力があるよな。
今までのこいつをよく知った今ならなおさら。

「・・・なるほどわかった」

不本意ながら恭順の意を示すと、心なしか桐乃の表情が緩んだ気がした。
・・・なんか嬉しかったのかお前?
350 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/08/15(水) 09:48:06.95 ID:UYU7GYWDO

まあ、それはさておき・・・。

「で?ならなんで俺は妹のベッドに寝かされてるんだ?」

眠るんなら俺の部屋でも構わんだろーに?

「あそこエアコンないから。暑くて眠り浅いと逆効果」

・・・そういうもんなのか?
まあ確かにこの部屋は温度も心地よく、こうして話している間にもウトウトと微睡んでしまいそうだ。

「快適な仮眠は、快適な場所でとるのがいい」

・・・暗に俺の部屋の環境が劣悪と言われているようだが・・・まあいい。
どうやら確かに体は疲れているらしいしな。
それに、どういう風の吹き回しか知らないが、桐乃がこうしてくれてるんだ。
ここは素直に甘えるとしようか。

「んじゃ寝るけど・・・」
「仮眠に最適なのは15〜20分。20分後に起こしてあげるから」

・・・なにからなにまで至れり尽くせりか。
正直言ってちょっと怖い。

「・・・後で何か要求されるんですかね?」
「当然」

ですよね・・・。
無償の親切なんて幻想ですもんね・・・。
まあでも。
そういうことなら気持ちも楽だ。
遠慮なく寝かせて貰おう。

「ありがとな桐乃。じゃ頼むわ」
「うん」

そうして俺はポンポンと桐乃の頭を叩いてから、そのまま意識を手放した。



結局その後、なぜか桐乃も一緒のベッドに寝てて、お袋が起こしに来た7時までぐっすりと熟睡してしまったわけだ。
ちくしょう。
今夜も夜中まで勉強だよ。
END
351 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/08/15(水) 09:51:11.14 ID:UYU7GYWDO

「・・・兄貴ー・・・?」

兄貴が目を瞑って約5分。
あたしは目の前に眠る、大好きな男に控えめな声を掛ける。

「・・・寝たかな?」

真上から顔を覗き込んで一人ごちる。
まだ寝てないのなら、何らかの反応があるだろう。

「・・・」

1分経過。変化はなし。
よし寝たな。
あたしは中腰だった体勢を、元のようにぺたんと床に座りなおした。
視線の先には、マヌケな顔して眠る兄貴の横顔。

「ふへへ」

自然と頬が緩むのを自覚する。
こうしてあたしの『じっくり兄貴の寝顔を見よう大作戦』は幕を開けた。

『20分間の独り占め』
352 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/08/15(水) 09:52:34.88 ID:UYU7GYWDO

「あーにきー?」

ツンツン。
とりあえず人差し指でほっぺたをつついてみる。
ぷにぷにと指に伝わる感触がなんか気持ちいい。

「あにきー?」

ツンツン。

「ふひひ」

なにこれ?なにこれ?
なんかすっごい楽しい。

「うりうり」

ツンツン。
ツンツン。
ツンツンツンツンツンツンツンツン。

「ふへっ!ふへへへ」

どれくらいそうしていただろうか?

「・・・ん・・・ううん・・・」

兄貴が急に身じろぎだした。
やば。起きちゃったかな?

「ん、んん・・・」
「!!」
「・・・すー・・・」

・・・ビックリした。
起きたかと思ったからじゃない。
兄貴が、寝返り打ってこっちに顔を向けたからだ。
353 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/08/15(水) 09:53:55.22 ID:UYU7GYWDO

「うーわー・・・」

口をぽかんと開けたまま、あたしは兄貴の顔をまじまじと見る。
わー無防備ー。
わーマヌケ面ー。

「ふ、ふへへへ」

プニッ、と指で鼻を押した後、一人お腹を抱えて笑い転げる。
そうだ落書き。落書きでもしちゃおっかな?
口紅で額に肉とか。
その顔を想像して又笑い転げた。
ま、しないけどね。
ひとしきり笑った後、あたしは体を元に戻して、今度はじーっと兄貴の顔をみつめる。

「・・・黙ってたらかっこいいんだよねー・・・」

親指で目元に触れ、唇をなぞり、あごのラインを手のひらで撫でる。
その時のあたしの顔は、絶対に鏡ではみれない。
だって多分・・・幸せそうに蕩けた表情をしていただろうから。
むず痒いような照れくさいような・・・そんな感情をないまぜにした顔を。

「・・・あ、そーだ」

あたしは自分のホットパンツをまさぐると、携帯電話を取り出した。
それを兄貴の顔に向けて構えて、

『ピロリーン』

軽快な音とともに、画面には今取ったばかりの兄貴の寝顔が表示されてる。

「兄貴の寝顔ゲットだぜ」

一人ほくそ笑むと、早速それを保存フォルダに登録する。
待ち受けにもしちゃうかな?
そんなことを考えていると、

「あ」

ちょっとした悪戯心がわいてきた。
354 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/08/15(水) 09:55:12.38 ID:UYU7GYWDO

「・・・自慢してやる」

ふひひっ、と笑いながら携帯を弄るあたし。

「送信アドレス・・・っと・・・」

新規メール作成を開いて、送信先にアドレスを呼び出す。
そこに表示されたのは、『黒猫』の文字。
件名は・・・『いいでしょ?』っと。
あとは添付ファイルにさっきのを貼っつけて・・・よし、そーしん。
本文は敢えてなにも書かない。
送信から約十秒。

『ムーン・・・ムーン・・・』

手にしていた携帯が震えだす。
あまりに予想通りの反応の速さに、あたしは笑い声を押さえるのに必死だった。
お腹を押さえ、ゴロゴロと床を転がりながら携帯を操作し留守番電話に。
そのままメール作成画面を立ち上げて一言。

『兄貴が寝てるので電話はNG』

はい送信。
待つこと数秒。

『ムーン・・・ムーン・・・』

またも震えだす携帯電話。
しかし今度は、三回ほど震えただけで沈黙する。
着信ではなくメールの証拠だ。
わくわくしながらメールを開く。

『Re:いいでしょ?
本文:なにJをしていNるのよあなた!?』

ぶっは。
思わず噴き出した。
慌てすぎでしょあんた!
ひーっひーっと目元を擦りながら、返信メールを打つ。

『兄貴にひとときの安らぎを』

送信。
・・・
『ムーンムーン』

受信。
『なんであなたのベッドに居るのよっ!?』

送信
『兄貴の部屋暑いから』

受信
『・・・うまい言い訳ね。いいわ。今から私もそちらに向かうわね?』

送信
『だーめ。今日はあたしの一人占めー♪』

受信
『ず、ずるいわそんなの!』

送信
『だからおすそ分けしたじゃん?』

受信
『あ、あなたは実物を見ているのでしょう!?わ、私だって見たい!』

送信
『だーめ。妹特権ww』

受信
『く・・・いいわ。あと5枚ほど、彼の写メを送りなさい。それでこの件、先輩に内緒にしてあげるわ。いいわね?』

送信
『りょーっかい。んじゃまたね(^^)ノシ』

ピ。

ふはー楽しかったー。
あたしは一仕事終えたような充足感に包まれながら、床に大の字に寝転がった。
355 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/08/15(水) 09:55:46.49 ID:UYU7GYWDO

やっぱあいつとのやり取りはすっごい楽しい。
兄貴の件が絡むとなおさらだ。
ふへへっと笑いながら、あたしは、よっと一声あげて起き上がる。
視線の先には相変わらず寝たままの兄貴の顔。

「・・・」

ついっと、兄貴の顔5センチくらいまで顔を近づけぽそりと呟く。

「・・・お兄ちゃん大好き・・・」

うわあ!言っちゃった言っちゃった!
ふええ、今すっごく顔熱い!
聞かれてないから平気だけど!
でもっ!でもっ!
また恥ずかしさで、ゴロゴロと床を転げまわるあたしの耳に不意に届いた声一つ。

「んー・・・俺も好きだぞー・・・」

え!?
驚いて勢いよく体を起こす。
今のなに今のなに!?
あわあわとキョドリながらちらりと兄貴に目を向ける。
さっきまでと変わらない兄貴の顔。
寝息もそのままで、何一つ変わったトコはない・・・。

「・・・寝言かー」

あーびっくりした。
安堵なのか、がっかりなのかわからないため息が口から洩れる。

「・・・でも、俺も好きだって」

えへへ。
寝言でも嬉しいな。
頬に手を当てて反芻していると、ふと視界に時計が入った。

「あ・・・」

・・・30分経ってる。

「・・・」

・・・仕方ないな。

「・・・兄貴、ごめん」

ぱん!と一つ兄貴に向かって拝むと、あたしは静かに兄貴の布団をめくり、そのまま兄貴に抱きついて添い寝の態勢に入る。

「一緒に寝ちゃったから起こせなかった・・・よし」

あたしはさっき決めた言い訳を一回口に出して復唱すると、そのまま兄貴の胸に顔を埋めながら夢の世界へと歩き出した。

「おやすみ兄貴」

END
356 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(鳥取県) [sage]:2012/08/15(水) 10:36:59.40 ID:XonPtJqho
>>355
乙。
きりりん確信犯か。
これで受験に失敗したら桐乃のせいだなww

『なにJをしていNるのよあなた!?』
にわろたww
357 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/15(水) 13:09:48.35 ID:/glawoFUo
28282828ww
358 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2012/08/16(木) 01:02:07.30 ID:UQu8j8EAO
近頃総合がだんだん活気づいてきて俺歓喜
個別も刺激になるだろう、なってほしい。

>>355
この場合のきりりんはクーデレと素直クールとどっちなんだろう?
と小一時間悩んだが今回のクールを装わなくていい状況での桐乃も実にいい…

つられて桐乃を書いてみたくなるから困りまる
359 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(鳥取県) [sage]:2012/08/16(木) 11:42:39.13 ID:5FcaG8zqo
>>358
素直クールとクーデレの合わせ技っぽい。
京介が起きてるときは自分の欲望に素直でありながら淡々としているし、
京介が寝て意識が無いときは思い切りデレてるので。
360 : ◆YHxtVKAHbw [sage]:2012/08/16(木) 15:06:56.07 ID:5FcaG8zqo
感想ありがとうございます。

>>345
性格自体は変わってないつもりです。
ただ、前作で京介に対しては素直になるきっかけがあっただけで。
だから沙織や黒猫に対してはいつもの桐乃節が炸裂……するんじゃないかなぁ……?
次のプロットはまだできてないのでどうなるかは分かりませんけど。
361 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/08/16(木) 22:02:51.03 ID:a0TirVPDO
ちょっまっ!?また知らねー属性つけられるだとっ!?Σ(゚艸゚;)
・・・俺はただ、京介の前じゃ平静を装って、寝たとたんにデレデレになる桐乃を書きたかっただけなのにorz
なんだよ素直クールって・・・つけてくれてありがとう>>358>>359ww
読んでくれてんだーって実感がわくよww(^-^)

>>341
乙ww
いいねーオープンにデレな桐乃ww
続き読みたいねー。
362 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/17(金) 18:01:38.90 ID:4pKdRF+DO
>「フヒヒwwww」
>「フヘッwフヘヘヘwwww」

こ、これが・・キモウト全日本代表選手の力・・かッ!

(改変して草生やさずにはいられなかった。今はニヤニヤしている)
363 :或る兄妹の別れ  ◆ebJORrWVuo [sage saga]:2012/08/18(土) 00:00:58.15 ID:w9Y/glPqP
何やら忙しくなってて言うだけ言っておいて投下してなかったが
というか余り投下したくないが、作品として書き終えてしまったので投下する。

※※BADEND 鬱エンドなので注意※※

或る兄妹の別れ ← でもNGに入れておいてください
364 :或る兄妹の別れ 1/10  ◆ebJORrWVuo [sage saga]:2012/08/18(土) 00:02:06.67 ID:w9Y/glPqP
「京介、お前は一人暮らしをしろ」

 そう言われて。
 両親にそれぞれ理由を言われて。
 実のところ、納得はしてなかったが、しかしお膳立ては済んでて。
 それに一人暮らしってのも結構悪くないと思ったのもあって、俺はその提案を受け入れた。
 
 ただ、桐乃は最後まで受け入れる姿勢を見せなかった。
 俺達から視線を逸らして。
 嫌な顔をして見せて。
 そして、「じゃーね、ばいばい。ずっと帰って来なくてもいいよ」だ。
 
 それで、俺はムカッとしたし、一人暮らしすれば妹の顔を見ずにすむぜ、とせいせいした気になった。
 だが、考えてみれば、あいつは、俺が一人暮らしをする事を反対していた。

 いや、少し違うな。
 
 俺がこの家を出ていく事に納得していなかった。
 
 そう、そういう感じだ。
 しかし、考えてもみれば、桐乃にとってもそう悪い話じゃない筈だ。
 俺が居なくなれば、二階は桐乃だけの空間になる訳で。
 好きなようにゲームだって出来るし、音楽だってボリュームを気にせず聞けるだろう。

 そもそも、俺が怒るならまだしも、桐乃が怒る理由なんてない筈だ。
 
 怒る……。そうだ、桐乃は怒っていた。
 親父に、お袋に……そして俺に。
 
 戻ってくる条件がそこにあって、それを達成すれば戻ってこれる。
 離れるのは最短で二ヶ月ちょっとだけだ。

 それでも桐乃は怒っていた。
 何に?
 俺が戻ってくる事に?
 違うな、その条件を提示する前に、桐乃は怒っていた。
 俺をこの家から追い出すというその提案自体に。
 
 それは……何でだ?
 
 俺は、桐乃の部屋の前まで来ると、扉をノックした。
 あの家族会議の後、桐乃は自分の部屋に閉じこもってしまった。
 この分だと明日の朝まで、部屋から出てきそうにない。
 
 ……しかし、俺がここを出ていくと決まってしまった以上、俺と桐乃が話せる時間はそう多くない。
 両親の意見からして基本、俺の一人暮らし先に桐乃は来れない筈だ。
 さすがに電話もメールも一切禁止とまでは行かないだろうが、直接的には会えないかも知れない。
 
 それは……、少し寂しいと思う。
 こう仲違いした侭、家を離れるというのは避けたかった。
 だから俺は、桐乃が部屋から出てくるまでノックをし続ける覚悟でノックをした訳だが。
 
「……入って」

 思いの外、直ぐに桐乃から返事が来た。
 
「入るぞ」

 ドアノブを回して、桐乃の部屋に入る。

「うわ、暗っ! なんで真っ暗なんだよ」
「……別に良いでしょ。ほら、そこに座って」
「いや、電気ぐらい点けようぜ?」
「いいから。早く、座れって言ってんの」

 うわ、桐乃の奴、滅茶苦茶不機嫌でやがる。
 不機嫌な癖して、部屋には招き入れる矛盾。
 まさかまた無茶難題を押し付けるつもりじゃねえだろうな。
 
 ドアからの灯りで辛うじて見慣れたクッションが床に見えた。
 そこに座ろうとした所で、桐乃から言葉が飛んだ。
 
「ドアぐらい閉めなさいよ」
「え、だって、これ閉じたら本気で真っ暗になるだろ」
「何、真っ暗なのが怖いワケ?」
「そういう問題じゃなくてだな」

 なんで起きてんのに真っ暗で二人して部屋に篭らないといけないんだよ。

 ちっ……と舌打ちが聞こえて、パソコンのディスプレイが光る。
365 :或る兄妹の別れ 2/10  ◆ebJORrWVuo [sage saga]:2012/08/18(土) 00:02:38.46 ID:w9Y/glPqP
「これで充分でしょ。ここが今のあたしが許せる範囲。これ以上は無理だから」
「……分かった」

 扉を閉める。ドアからの灯りがなくなり、パソコンのディスプレイが唯一の光源となった。
 
 ……なんだってんだ?
 何故、部屋を暗くしたがるんだ。まさか、怪談話でも始めるつもりじゃねえだろうな。
 大体、その手の話、桐乃のが怖がりだしな。

 それに……ディスプレイがついてる割には桐乃、パソコンの前には座ってないな。
 そこから少し離れたベッドに腰を掛けてるようだ。
 
 光源の位置関係上、桐乃の表情は影になっていて見れない。

「で、何?」
「……いや、特にこれといって用はないんだが」
「用がないのに、あたしの部屋をノックしたワケ?」
「用がなくちゃ、おまえと話に来ちゃ駄目なのかよ」
「……駄目なんて言ってないじゃん」

 てっきり、駄目に決まってんでしょ、バカ?と返されると思ってたんだが……。
 別に機嫌が悪いって訳じゃないのかね。

「そっか。そんなら良かった」
「……じゃあ、あんたの用は特にないって事で良いんだよね?」
「ああ」
「なら、あたしの用に付き合って」

 桐乃の、用?
 なんだか嫌な予感しかしないんだが。
 まさか今からエロゲを買いに行けとか言い出すんじゃねえだろうな。
 
「……さすがに今から外には出たくねえぞ?」

 元々、おまえと居る時間がそんな無いからこの部屋に来たってのにそれじゃ本末転倒だ。
 
「あたしだって今から外に出すような鬼じゃないって。用っていうか、幾つか質問させて」

 深夜にエロゲを買いに行かせた鬼とは思えない台詞を吐きながら、桐乃は言う。
 
「質問? まあ、そんぐらいなら」

 何か答えづらいような質問でもぶつけてくるのだろうか。
 エロ本の隠し場所とかそういうのなら答えかねるぞ。
 
「あんた、さ……」
「なんだよ」
「……一人暮らし、あんな簡単に受け入れちゃったけど、どういうつもりなワケ?」
「どういうつもりって……」

 まあ、決まった事ならやるしかないよな。
 この家で決まったことを覆す事は殆ど不可能みたいなもんだ。
 
「あんたは、賛成なワケ?」
「……別に賛成って訳じゃねえさ。引越しの手間とか考えたらその時間使って勉強した方がいいんじゃねえかと思うしよ」

 こんな受験シーズンに起こすイベントとしては、余り相応しくない気がする。
 大体、金を支援して貰えるとはいえ、家事は自分でやる必要があるんだろ?
 どう考えても実家暮らしより、勉強する時間とか減ってるしな。
 
「あたしもそう思う」

 珍しく、桐乃から同意の意見が出た。

「だよな。まあ、その勉強よりもお袋や親父には俺とおまえの仲のが気になったのかも知れないけどな」
「そう、それ。何、そのあたしと京介の関係って。仲良くしちゃいけないワケ?」
「…………」

 仲良くしてるって自覚があったんだな。
 
「いいじゃん。仲良くして。何が問題なワケ? そしてなんで親がその仲を裂くような事をすんの? せっかくさ、仲良くなれたってのに……」

 …………。
 
「桐乃も、そう考えてたんだな……」

 不覚にも少し感動してしまった。
366 :或る兄妹の別れ 3/10  ◆ebJORrWVuo [sage saga]:2012/08/18(土) 00:03:04.68 ID:w9Y/glPqP
 桐乃と仲良くなれた、と思ってたのは俺だけじゃなかった。
 
「あ……。う、うっさい。い、今のは言葉の綾ってか、なんか、そういうのなの!」

 全然分からねえよ。
 
「あー、とにかく! あたしは納得いってない!
 けどあんたは粛々と受け入れてる、それがあたしは気に食わないワケ!」
 
 と言われてもなあ……。
 
「おまえだって分かってんだろ。この家で、決定事項は確定事項なんだよ。それを覆す事は不可能だって」
「嘘。だって、だってあんた……」

 桐乃は、少し語尾を弱めながら、続ける。
 
「あんた……、あたしのコレクションを守ってくれたじゃん」
「…………」
「あれ、決定事項だったでしょ。あたしの趣味を捨てるって、お父さん言ったんでしょ?」
「…………」
「でもあんたが、それを守った。自分を犠牲にして。そして趣味さえ容認させてくれた」
「……たまたまだっての。親父の機嫌が良かったんだろーよ」

 あの時の事を思い返し、俺は顔を背けて言う。
 今でもあの時の俺は可笑しかったと思う。
 
 ……それでも。俺はあの時の判断を間違えてたとは思わねーけどな。
 
「じゃあ、今回も機嫌良くしてあげればさ……」
「……いや、そうそう上手くは行かねえだろ」
「やってみないと分からなくない?」
「いや、前と今回は違うだろ。当事者が反論しても、こういうのは上手く行かねえよ」

 前回は、俺は第三者だったからこそ、説得出来たんだと思う。
 今回、俺が説得してもそれはただの言い訳にしかならないんじゃないだろうか。
 何より……、今回、俺にそこまでの熱い情熱は無い。
 
「あんたが……」
「…………?」
「あんたが、あそこで受け入れなければ、次はあたしが、って思ってた」
「おまえが……?」

 おまえが、親父に立ち向かったって言うのか?
 やめとけ、俺はおまえを親父殺しにさせる訳には行かねえ。
 いきなり灰皿で殴りかかろうとする奴に任せる訳には行かねえだろ。
 まあ、でも?

「気持ちはありがとうな。だが、それはしなくていい」
「なんで?」
「なんでって……。そうだな、俺が兄で、おまえが妹だから、とか?」

 兄が妹を守るのは当然なんだよ。
 それが先に生まれた者の後に生まれた者に対する宿命みたいなもんだ。
 
「なんかやだ」
「……何がだよ」
「その、兄だから、とか。妹だから、とか」
「いや、だって俺は兄で、おまえは妹じゃん」

 というか、妹ゲー好きの台詞とは思えない事言い出しやがったな。
 兄妹の力を否定ッスか。
 
「ねえ、京介?」
「んだよ」
「なんで、あたしがあんたを京介って呼ぶようになったか分かる?」

 ……理由、あったのか。
 というか、いつからだっけ?
 
 気付いたらそういう風に呼び方が変わっていた。
 お袋辺りは「ねえ」とか「あんた」から「京介」になったと言ってたが正確に言うと違う。
 今でもねえ、って言うしあんたとも言い続けている。
 変わったのは、「兄貴」から「京介」にだ。
 
「……兄貴として、失格になったから?」

 その理由を思いついて、背筋が寒くなった。
 気付いた。どのタイミングから、桐乃が俺を京介と呼ぶようになったのか。
 それは、俺が……兄が妹を頼った時。
 黒猫の相談を持ちかけた時だ……。
367 :或る兄妹の別れ 4/10  ◆ebJORrWVuo [sage saga]:2012/08/18(土) 00:03:32.87 ID:w9Y/glPqP
 あの瞬間、俺は妹に兄である事を見限られた……?
 
「……あんたってさ、本当、ネガティブだよね」
「……違うのか?」
「もっと好意的に物事を捉えられないワケ?」

 ……おまえ相手じゃなかったらもっと好意的に考えるっての。
 基本、俺に対してネガティブな事しかしねえじゃん、おまえ。
 
「じゃあ、……なんだよ」
「ふふん、聞きたい?」
「……聞かせろよ」

 正直、聞きたい。
 これで聞かせて貰えなかったら、一人暮らし先で勝手にネガティブ妄想して、落ち込む事は請け合いだ。
 
「あたしはね……、あんたと対等で居たいと思ったから」
「…………」

 どちらにしろ、それ、兄貴失格って事じゃね?
 妹でありたいとは、思わなくなったって事だろ?
 
「……あたしはね、ずっとずっと追いかけてた人が居るんだ」
「…………」
「因みにあんたじゃないから」

 ……べ、別に期待した訳じゃないからねっ!
 …………嘘です、少ししてました。
 少し……いや結構がっかりだぜ……。
 
「で、ようやくさ。対等になれたかなと思った」

 …………。
 俺と対等になりたいと言っていたのに、その追いかけてた人は俺じゃない。
 じゃあ、誰だ?
 何だか……嫉妬しちゃうな、そいつに。
 
「ようやく……あたしも候補にあがったんだってさ」
「候補……?」
「色んな事が出来るようになれば、対等になれると思ったんだけど、多分、それは違ってさ」

 俺の質問には答えず、桐乃の独白は続く。
 
「ただ、近くにいて、仲良くしていれば良かったんだって……やっと気付いたんだ」

 逆光で、桐乃の表情は見えない。
 けど、なんだろう。なんだか……何故か、泣いてるような気がした。
 
「……俺は、どうすればいい?」

 妹扱いとかはもうしない方がいいって事なんだろうか。
 それは……なんだか、とても……寂しい事だと思った。
 
「別に今まで通りでいいよ、あんたは」

 今まで通りで、良いのか?
 でも、妹だから、とかそういうのは嫌なんだろ?
 
「あんたは、今まで通りでいい。ただ、妹が兄を助けちゃ駄目とは思わないで」

 …………。
 
「それって妹に対して失礼だから。妹だって、たまには兄貴に恩返ししたいって思う時だってあるっての」

 …………え?
 
「そ、それって、つまり……」
「はい、この話は終了」

 ええええええ!?
 一方的に言いたいことだけ言って終了かよ!
 俺だって、こう言いたいことあるんですけど。
 
 というか、結局、どういう結論になったんだ?
 妹扱いはしてもいい。ただ、兄だから妹を助けるってのは駄目……。
 
 違うな、兄だから妹を助ける、じゃなくて、妹が兄を助ける必要は無いってのが駄目って事か。
 ……ああ、そうか。
 兄妹ってのは、一方的に助ける関係じゃなくて、助け合う関係か。
368 :或る兄妹の別れ 5/10  ◆ebJORrWVuo [sage saga]:2012/08/18(土) 00:04:12.51 ID:w9Y/glPqP
 そうだったな、黒猫の時に俺はそう知ったというのに。
 そういう型にはまっただけの兄妹から、本当の兄妹になれたと。
 兄だからとか、妹だから、とかそういう理由付けじゃなくてさ。
 ただ、助け合う。
 兄が、妹が。
 
 俺達は……兄妹なんだから。
 
「……分かった。なら桐乃。俺からも一つ質問していいか?」
「……何よ」
「……応援を、してくれないか?」
「応援?」

 ああ、これは質問じゃなく、お願いだな。
 
「俺は一人暮らしをする。それは覆す気はない。でもって、A判定取って戻ってくる。これも変える気はない」
「…………」
「だから、俺が戻ってこれるよう、応援してくれないか」

 おまえが応援してくれるなら、俺は頑張れる気がするんだよ。
 どんな結果だって出せる気がするんだ。
 
「……なーに、いってんだか」

 桐乃が呆れた様な声を出す。
 ……やっぱ駄目だったか。そうだよな、こいつが俺の応援するなんて……。
 
「言われなくても、応援するに決まってっしょ。あんたが戻って来なかったら、誰がシスカリであたしと対戦するワケ?」

 …………。
 もっと好意的に物事を捉えられないの、か。
 確かにそうなのかも知れない。
 俺は、桐乃の捻くれた好意を今までずっと見逃してきたのかも知れない。
 期待して裏切られるのが怖くて、ネガティブに捉え続けていた。
 自分を守る事に精一杯で、桐乃を見ない振りをしていたのかもしれない。
 
 桐乃は早々、優しい言葉を投げかけては来ない。
 厳しい奴で、甘くない奴だから。
 けどそれは……俺を思っての言葉だったんじゃないだろうか。
 
 あの幼馴染が母性で俺を受け入れ甘やかした様に。
 桐乃は……父性のように厳しく叱っていただけなのかもしれない。
 
「桐乃……。ありがとうな」
「い、いきなり何を言い出すワケ? 頭でも打った?」
「いや、何か凄く感謝したくなってきてな」
「そ、そう」
「俺、桐乃好きだわ」
「ブッ……!」

 げほげほと、桐乃がむせる。
 失敬な奴だ。
 
「あ、あんた、乙女になんて事やらせるワケ?」

 いや、そんな意図は決してなかった。
 つか勝手にむせただけじゃん。
 
「なんだよ、俺が桐乃を好きじゃ駄目だってのか?」
「な、な、な、だ、駄目に決まって……るワケじゃ、ないケド」

 なら問題ないじゃないか。
 
「桐乃、大好きだぜ」
「………………」

 お、ついに無反応になった。
 
「……あんた、もしかしてからかってる?」
「いや、割と本心だが」
「…………い、妹としてだよね?」
「……んー」

 感謝と共に、好意が溢れてる。
 だが、これは妹として、だろうか。
 
「んー、じゃなくて! 真面目に答えて!」
369 :或る兄妹の別れ 6/10  ◆ebJORrWVuo [sage saga]:2012/08/18(土) 00:04:45.02 ID:w9Y/glPqP
「いや、真面目に考えてるんだが中々難しくてな」
「なんで!」
「いや、なんでって言われても……つか、そこ重要なのか?」
「重要に決まってんでしょ! さあ、早く言えっての!」

 テンション高えな……今、夜中だって事忘れてんじゃねえよな?
 
「んー。言葉として当てはめるなら、桐乃として、だな」
「はあ!? なにそれ、つまりどういうこと?」
「妹として、って訳じゃねえな」
「じゃ、じゃあ、……お、女として?」
「いや、それも違うな」

 ボフ……!
 うお、何か飛んできた!
 なんだ、このタコみたいなシルエットは。
 逆光の所為で良く分からねえが、ベッドの上に置いてあるぬいぐるみか?

「あ、あ、あ、あんたねぇ……ッ!」
「な、なにすんだよ、つか何を怒ってんだ?」
「〜〜ッ!」

 ヤバい、何か知らねえが、スゲエ怒りマックスだ。
 これだけ怒った桐乃を見るのは久しぶりだ。
 何が逆鱗に触れたってんだ……!?
 
「…………」
「……、き、桐乃さん?」

 怒りのオーラを纏った侭、いきなり静かになった桐乃。
 逆光で見れないが、何か見るのが怖い表情をしてそうだ。
 
「……京介」
「は、はい。な、なんすか」
「……あたし、あんたの事、好きだから」
「はい!?」

 何か言い出しやがったぞ、こいつ。
 
「大好き。超好き。めっさ好き。愛してるといってもいい」
「お、おま……」
「大好きで大好きで大好きで、ホント好き」
「…………」

 こ、これは、アレだな、こいつ。
 
「おまえ、からかってんだろ」
「いや、結構本心かな」
「…………」

 ……分かった、こいつ、さっきの俺の言葉を返してんだ。
 仕返しのつもりだってんだろ。……充分効果はあったが。
 今まで大嫌いとか言ってた奴がいきなり好きとか愛してるとか言ってきたらマジ正気疑うわ。
 
「悪かった。で、京介として、って言うんだろ。
 別に俺はおまえを困らせようとして言ってた訳じゃなくな」
 
「いや、違うケド?」
「…………え?」
「京介として、じゃないって言ってんの」
「……じゃあ、兄として?」

 桐乃は、にひひと笑う。
 子どもの頃に見た意地悪とする時の表情を思い出す。
 
「それも、違うケド?」

 …………。
 京介として、でもなく、兄としてでも、なく。
 ただ、俺が超好きってのが結構本心で……。
 
 じゃあ、どういった意味合いで?
 
 俺が思考停止状態で、フリーズしかけていると、桐乃が付け加えてきた。
 
「正確に言うと、京介としても、兄としても、あたしは好きだよ?」
「……そ、そうか」

 それ以上でもそれ以下でもないよな?
 いや、そうか、はっはっは、超好きか。
370 :或る兄妹の別れ 7/10  ◆ebJORrWVuo [sage saga]:2012/08/18(土) 00:05:12.72 ID:w9Y/glPqP
 ……やべえ、結構、いやかなり恥ずかしい。
 つか嬉しいのかよく分からねえな。
 
「……聞かないの?」
「なにを、だ?」
「……ふーん」
「…………」
「ヘタレ」

 ……うっせえ。
 もし、冗談だったとしても万が一にその質問をして、そうだよとでも返ってきてみろ。
 なんて言うか、なんて言うかだろ。
 俺が自身で想定してない展開だけあって、どういうリアクションが俺から出るか分からねえぞ。
 
「……さ、さて、そろそろ戻るか、な」
「ねえ、京介」
「な、なんだよ?」
「今の本当、だから」
「…………」
「あたし、本気で結構……あんたの事、好きだから」
「……そ、そうか」

 そ、それ以外に何を答えろっつーんだよ。
 つか、何かヤバい。
 これ以上はここに居ないほうがいい。
 なんてか、本気でデレた桐乃ってのはもはや凶器のレベルだ。
 
「……ねえ?」
「…………」
「家、出てかないでよ」
「……ちゃんと戻ってくる、って」
「やだ」
「……それは戻ってくるのが嫌って事か?」
「違うに決まってるっしょ」

 駄目だ、頭がくらくらしてくる。
 実は夢なんじゃねえか、今。
 周り暗いし、気付いたら寝てたとか。
 
 早く出よう。取り敢えずドアに向かって――
 
 ブゥン……プツ。
 
 ――そして視界が真っ暗に染まった。
 音で分かる。桐乃がパソコンを閉じやがった。
 
 そうか、こいつ、コードレスのマウスで……。
 
「あんたと二ヶ月も会えないなんて、嫌だから」
「……桐乃、電気を点けてくれ」
「あんたが一人暮らし始めたら、あたし絶対押しかけちゃうよ?」
「……桐乃」
「そしたら、今よりも健全じゃなくなっちゃうかもよ?」
「…………」

 ……これは、もう脅迫だ。
 なんだ、俺はどこかで選択肢を間違えたのか?
 
「もうあんたの手は離さないって、あたしは決めたから」
「…………」
「側に、居てよ」
「…………」
「いつかは……離れちゃうんだから」
「…………!」

 こいつは……。
 
「……別に、兄妹ってのはそりゃ……いつかは離れるけど、会えなくなる訳じゃないだろ」
「それでも、……誰よりも一緒には居られなくなるし」
「……それは……そうだけどよ」
「それにあたしが……留学したら、どうするワケ?」
「……するのか?」

 こいつは俺が幾ら聞いても何処に進学するかは言わなかった。
 だから、可能性としてずっと考えていた。
 また留学する可能性。
 前に、友人と話していた時、少なくとも卒業までは留学しないと言っていたのを聞いたことがある。
 じゃあ、卒業したら?
 
「…………」
371 :或る兄妹の別れ 8/10  ◆ebJORrWVuo [sage saga]:2012/08/18(土) 00:05:39.71 ID:w9Y/glPqP
「また……海外に行っちまうのか?」

 だからか。
 だから、こんなに必死になって。
 十月。
 卒業は三月。
 後、もう半年も無い。
 そこから、二ヶ月を引く。
 すると三ヶ月しか、無い……。
 
 俺が一人暮らしをしたら、後、三ヶ月だけが俺たちの時間になる。
 
 せっかく……仲良くなったのに。
 これだけ、距離を縮められたのに。
 こうして、二人で居られる時間は、たったの三ヶ月。

 それは……悲しいと思う。
 寂しいと、思う。
 
 でも、行くな、とは言えない。
 だってそれはもう将来に関わる範囲だから。
 中学卒業と共に、義務教育が終わって、そこからは自分の人生だ。
 
「……ねえ、もしあたしがさ」
「…………」
「海外に付いてきて、といったらあんた、どうする?」
「…………」

 それは……どうするだろうか。
 だってそれは俺の人生の問題になる。
 大学に行かないで、妹に付いて行くなんて。
 それは……正しくは、無いだろう。
 
「ホントはさ、言うつもりなかったんだ」
「…………」
「今回もさ、ちゃんとあんたを見届けようと思っててさ」
「…………」
「一人暮らしだって止める気、無かったんだよ」

 でもさ、と桐乃は続ける。
 
「あんたが……、あんたがあたしを好きって言うから」
「…………」
「ただの兄妹の関係として上手くやろうと思ってさ」
「…………」
「それであたしの中で折り合いつけてたのに……」
「…………」
「またあんたが、……夢を見せるから」

 桐乃の気持ちは……分からない。
 ただ漠然と、俺は酷いことをしてしまったのだけは分かる。
 
「……桐乃」
「あんたは……何度、あたしに夢を見せるワケ?」
「……俺は……」
「陸上で海外に行った時もそう。あそこであんたとは一区切りつけるつもりだったのに」
「俺は……」
「偽彼氏を連れてきた時だって、殆ど諦めていた」
「……俺は」
「あんたが、黒猫と付き合うって決めた時は……」
「…………」
「もうこれで諦められる、諦めるしか無いって思ったのに……」

 俺は、何を言うことが出来るだろう。
 
「あんたが、黒猫に振られてもあいつの事、好きっていってさ」
「…………」
「そして、黒猫とあたしの二択であたしを選んだ時」
「…………」
「あたしは妹として選ばれたのだと分かったから」
「…………」
「理想の兄妹であろうと思った」
「…………」
「そうじゃないと、あんたが、好きな人と付き合えないから」

 ……俺は、何も言うことが出来ない。
 桐乃が言う度に、その時の想い出が蘇る。
 積み重ねた兄妹の想い出に、挟まっていく桐乃の想い。
 
「ねえ、あんたさあ……」
372 :或る兄妹の別れ 9/10  ◆ebJORrWVuo [sage saga]:2012/08/18(土) 00:06:06.25 ID:w9Y/glPqP
「……なんだ」
「……酷いよ」
「……悪かった」

 本当に、酷い兄貴だよ、俺は。
 ずっとずっと、気付かなかった。
 気付かないまま、兄妹としての関係を進展させて。
 ここまで来てしまった。
 
「これ以上、夢は見せないで」
「…………」
「ホントにこれが最後であって」
「…………」
「もう、耐えられないから」
「…………」
「ねえ、言ってよ」
「…………」

「あたしを、異性としては見れないって」

 …………。
 ギリ、拳を握り締める。
 殴れるなら、過去の自分を全て殴り倒したい。
 何が、理想の兄妹だ。
 何が、妹ともっと仲良くなるだ。
 ふざけんな。結局俺がやった事は……。
 桐乃を徹底的に追い込む事だけだったんじゃないか。
 
 俺たち兄妹が築きあげてきたこの想い出は……。
 全てこの瞬間に、叩き壊す為だけに……。
 俺は、頑張ってきたっていうのかよ……ッ!
 
「……桐乃」
「……うん」

 俺は……桐乃を守る。
 
「俺は、一人暮らしするよ」
「……うん」

 それが、例え……。
 
「でさ、A判定取って戻ってくる」

 失う物が多かったとしても。

「……うん」

 結局、俺は馬鹿だから。
 
「で、おまえの卒業まで馬鹿みたいに遊んで」

 結局、俺は……馬鹿だから。
 
「そして、俺は、おまえと別れる」

 ……本当に、馬鹿だから。
 
「…………」
「桐乃、今こそ告げてやる」

 それが残酷であっても、俺はこうするしか出来ない。
 
「俺は、おまえを女として見れない」

 男としての俺を、おまえの中から壊す。
 希望という希望を、徹底的に。
 二度と、俺を男として見れないように。
 
「それは、いつまでたっても変わらない」

 はっきりと、断言していく。
 はっきりと、断罪していく。

「俺にとって、おまえは生涯妹なんだよ」

 涙がボロボロと、零れてく。
 ああ、分かってる。
 
「ずっとずっと妹で、死ぬまでも妹だ」
373 :或る兄妹の別れ 10/10  ◆ebJORrWVuo [sage saga]:2012/08/18(土) 00:06:34.33 ID:w9Y/glPqP
 これは、嘘が混じっている。
 
「おまえが幾ら言ってきても、俺は決しておまえを異性として見ることはない」

 俺の初恋は……おまえなんじゃないかと思う。
 
「だからおまえは……俺以外の誰かと幸せになれ」

 無視しあってた時だって考えてたのはどうにかしておまえと仲直り出来ないか、だった。
 
「俺以外の誰かと結婚して、幸せになれ」

 今だって、ずっと側に居たいと願うのは、おまえだから。
 
「おまえの結婚式を見届けるのが、俺の夢なんだよ」

 だから、今、俺は全力で失恋している。
 
「いいかよ、桐乃……」

 さあ、終わらせていこうぜ。
 兄妹の関係に、邪魔なものを全て。
 
「俺は女としてのおまえは、大嫌いだ」

 ……全てを、言い切った。
 容赦など忘れて、優しさなど忘却して。
 ただ、ただ、言い切った。
 
 暗闇で良かった。
 俺の涙を見られる事はない。
 
 ひっく。
 
 桐乃の、泣き声が聞こえる。
 ……それを泣き止ます事は俺には出来ない。
 今日負った傷は、きっと誰かが癒してくれるだろう。
 
 それは決して俺の役目じゃない。
 俺は手探りで扉をあけて……出ていく。
 
 またこの部屋に来る事があれば……。
 その時はどこまでも兄妹としてだろう。
 
 うわああああああ……ッ!!
 
 背に、悲痛な叫びを感じながら、俺は、自分の部屋へと戻ることにする。
 
 俺も、今夜は泣き明かすのだろう。
 でも、それでいいんだ。
 
 兄妹は、結婚出来ない。
 そして、祝福されない。
 
 もし、もう少し早く、こういう展開が来ていたらもしかしたら違う選択肢もあったかも知れない。
 けど、俺達にはもう共通の友達が沢山いて。
 桐乃を、きっと黒猫や沙織たちが癒してくれる。
 あやせだって支えてくれるだろう。
 
 だから、大丈夫。
 俺達は、明日を信じて生きていくことが出来る。
 
 だから……今日ぐらいは絶望の中で泣き喚こう。
 人生を呪うようにして、泣き叫ぼう。
 
 ……おやすみ、桐乃。
 
 そして、また、明日。
 
 
 
 
 end
374 :或る兄妹の別れ  ◆ebJORrWVuo [sage saga]:2012/08/18(土) 00:09:29.54 ID:w9Y/glPqP
という訳で投下終了

言っておくけど俺はHappyEndが好きです

けど基本、作品を書く時って別にこうしてやろうとか考えずに
自分の考えているキャラに勝手に進めさせてしまうので
なんか気付いたらこんな展開に……

……原作はハッピーエンドがいいなあ
375 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/18(土) 00:31:28.04 ID:hYOPAbzGP


ぶっちゃけこうやった時点で明日も何もないよね
帰って来て馬鹿みたいに遊ぶなんて不可能だろ
ただの兄妹、兄と妹以外にはなれまいて。仲が良くもないね
少なくとも家じゃまともな会話も出来ない冷戦のときと同じようなことになりそう
表向きはどうかは知らんけどね
完全に将来疎遠ルートだろ
だからどうあってもバッドにしにかならないよね

原作でこういう展開になったら京介は主人公として最低のレッテル張られるんでないか
376 : ◆YHxtVKAHbw [sage]:2012/08/18(土) 00:40:26.30 ID:fnE+Iukxo
乙です。
俺としては兄妹のケジメつけた京介かっけぇ〜という印象でした。
だから、バッドエンドとは全く感じなかったな。

まあ、これも感覚の違いってやつで。
個人的にはすごく読み応えがあって未来への希望が持てるいいお話でした。
377 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/18(土) 00:45:27.41 ID:ql3bWFtSO
>>374乙です

京介があやせにコロコロされちゃう未来しか見えない
結局最終的にあやせ他に追い詰められて本音吐かされそう

原作でこんな終わりになるなら、いろんなものまとめてポイするだろうなぁ……
378 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/08/18(土) 00:50:31.48 ID:B+CKgd+eo
賛否両論だと思うが、自分的にはアリ。
個人的にどんな形になってもこの兄妹はずっと関わり合っていくという思いがあるから。
かけがえのない仲間もいるしな。

乙。
379 : ◆YHxtVKAHbw [sage]:2012/08/18(土) 01:09:13.26 ID:fnE+Iukxo
>>361
感想ありがとう。
結構悩んでるんだ。
この設定で続きを書くとして京介への態度はアレだけど他への態度がどうなのか。
オリジナル桐乃と違うのは京介への態度だけで基本的な性格は同じという設定なので
これで原作と同じイベントをこなしていく、先が読めないww

と言うわけで次に投下するのは別モノかもしれない。
380 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/18(土) 01:10:38.22 ID:hYOPAbzGP
あ〜はいはい、そういえば否定的な感想はイラねなんだったっけここ
マンセーしかダメなんだったね忘れてたよごめんね


無駄にクオリティ高い欝エンド書かれるのはどうしていつも桐乃だけなんかね
しかもその上で兄妹であれという無理強いつき
欝するなら徹底的にやって何もかかわりなくなるぐらいまでやりゃいいのに
381 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/08/18(土) 01:19:59.12 ID:AE6fNBkDO
>>374
乙。
読んでる最中、MP3プレーヤーからランブリング・ハーツ(君が望む永遠OP)が流れてきて、切ないの2乗でなんか涙出てきた。

でもこれ、リカバリー可能だよね?
例えば留学先で落ち込みまくって調子崩してる桐乃。

周りに責められ、詰られ、後押しされ、そして吹っ切れる京介。

ハッピーエンドww

・・・イケる(´゚ω゚)b
382 : ◆ebJORrWVuo [sage saga]:2012/08/18(土) 01:21:06.63 ID:w9Y/glPqP
ああ、俺に限っていえば否定的な感想も構わないぜ
というか否定的な感想ともそう思ってなかったんだが……>>375の事をさして言ってんだよな?

まあ、否定的といっても一言だけのつまらねえとかそういうのは嫌だけどな
383 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/18(土) 01:22:45.80 ID:mq1q5KuB0
>>374

あー、またこの兄妹イチャイチャしてるよ
とか思っちゃった俺は一体……

>>380
別にいいんでないの?
まあ気使わなきゃあかんっぽいが
384 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/08/18(土) 01:37:54.28 ID:AE6fNBkDO
>>380
誰かお前の感想を否定したか?
被害妄想やめれ。
原作がコレならポイするのは俺も一緒だ。
ただ、さっきも書いたがリカバー可能な展開だからな。
脳内妄想でも、意外にイケるもんだよ桐×京ww
385 : ◆YHxtVKAHbw [sage]:2012/08/18(土) 01:42:35.78 ID:fnE+Iukxo
別に否定的感想はアリだと思うぜ。
>>375の感想も「そういう考え方もあるんだ」以上には感じなかったし。

俺も否定感想は受けた事あるけど、あーなるほど確かになぁ、と受け止めたしね。
ただ、>>382が最後に言ってる「ツマンネ」一言は俺も勘弁。
386 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方) [sage]:2012/08/18(土) 09:57:08.88 ID:AepfeFxH0
>>374

ハッピーエンドにするのは簡単だろう
原作と同じように京介と桐乃の間に恋愛感情が無い設定にすればいいだけ
それだけで同じような会話の流れでもだいぶ印象が違ったものになると思う

もし恋愛感情があると言う設定で書くなら
会話の途中で実は血が繋がっていない事が発覚する様な展開を作ればいい

その他にも如何とでもやりようがあると思うけど
個人的にはこういう感じのも嫌いじゃないんで楽しませてもらいました
ありがとうございます
387 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/18(土) 10:31:24.36 ID:ql3bWFtSO
京介はなんともいえないけど、桐乃に関しては
ゲームのP続の桐乃とは義妹であること以外は一緒と明言されてるし、
恋愛感情がないと言うのはさすがに…
388 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/18(土) 12:06:32.27 ID:ZeDoa8co0
青春時代で完結する恋愛物語としてはBADENDかもしれないけど
人生単位で考えれば高校三年中学三年の時点で一線こえちゃう前に気持ち伝えてケリつけるって
ハッピーエンドの気がするわ

十年後にはお互いの黒歴史で笑い話ってとこかな
それこそ、その先は仲のいい兄妹としてやっていけると思うけどな
389 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/18(土) 12:07:32.97 ID:ZeDoa8co0
肝心なことを言い忘れてた
面白かったぜ>>374乙!
390 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/08/19(日) 00:25:06.55 ID:Qpg4B9gDO
>>379
いんでねーの?
俺なんか書きたかったシリーズほっぽらかして好き放題絶頂に書きまくってるしなww
そんなわけで、ありがたく頂いた素直クールってのを書いてみた。
例のごとくキャラ崩壊注意。
次レスより投下。
391 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/08/19(日) 00:26:49.64 ID:Qpg4B9gDO

「兄貴大好き」
「な!?なに言ってんだお前!?」

驚いた。
言われた内容もさることながら、部屋のドアが開いた瞬間に言われたことがこれだ。
親父等に聞こえたらどーなる!?
速攻部屋のドアを閉めて桐乃を部屋に連れ込んだね。
・・・誤解を招く言い方だなこれ。

『素直クールを実践してみた』
392 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/08/19(日) 00:28:10.57 ID:Qpg4B9gDO

「?素直に気持ちを言ってるだけだよ?」

・・・なぜ頭にはてなマークがくっついている?
お前ついこの間まで俺と険悪モードだったじゃないか。
オタバレの件からこっち、確かに仲良くなっては来たけど、そこまで好かれるようなことしてねーだろ俺。

「それはずっと前から好きだったから。こうして普通に話せるようになった今だから素直に言ってるの」
「そーかい・・・なら少しでいい。オブラートに包んでくれ」

正直こっちはまだあんまり慣れてねーんだ。
なんかあるたびに寿命が削られてく気分なんだ、はっきり言って。
・・・嬉しくないわけじゃないからそこは勘違いすんなよ?

「・・・お兄ちゃん大好き?」
「それはオブラートじゃない!ビックリ箱レベルの驚かしだ!!」

なんでしばらく考えての答えがそれなんだ!?
お前は俺を長い目で殺しに来た暗殺者か?
地味に殺されるとか勘弁してほしいぞ!?

「文句多いね?」
「これは文句じゃねえ。まっとうな意見だ」

ため息つくな。
そして呆れたような顔すんな。

「じゃあどうすればいいの?」
「う・・・そ、そうだな・・・」

・・・どうすればいいんだろう?
てゆーか、なんでこんな事で悩まなくちゃいけねーんだ?
いかん思考が乱れてる。
そもそも何の話なんだっけこ・・・。

「・・・ぎゅ」

・・・無言で抱きついてきたぞこの妹・・・。

「・・・これはこれでやばい気がする・・・」
「・・・どさ」

・・・そのままベッドへ押し倒されたぞ俺。

「・・・やばさが上がっただけだな・・・」

・・・なんだこれ?
桐乃に借りたエロゲの世界か?
しかし・・・何にも興奮しねー。
やっぱ2次元と3次元は違うんだな。
393 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/08/19(日) 00:29:18.32 ID:Qpg4B9gDO

「・・・ふあ・・・」
「ん?眠いのか?」
「平気」

こしこしと目を擦り、なんとか意識を保つ桐乃。
・・・全然平気に見えねーな。
そういやもう11時か。

「無理すんな。そういや昨日も3時くらいに目覚ましたからな俺ら」
「・・・兄貴が起きるから・・・」

・・・なんで恨めしそうに言うんだお前が?

「だからいきなり布団に誰か入って来たら起きるだろ普通?」

そうなのだ。
昨夜も桐乃は俺の布団に侵入を試みて、見事に俺の目を覚ましてくれたのだ。
完全にお前の所為じゃねーか。

「入ってくんならこっそりやれこっそり」
「でも・・・起きちゃうんでしょ?」
「う・・・まあな」
「・・・こっそりの意味ない・・・」
「んー・・・確かに」
「・・・最初から入ってていい?」

おおう・・・。
すげーこと言いだしやがりましたようちの妹様。

「待て。入るのが前提になってないか?」
「うん」
「おかしくないか?」
「なんで?」
「・・・おかしくないのか?」
「うん」

え?あれ?
・・・おかしい・・・よな?
あれ?
・・・おかしくないのか・・・?

「・・・なあ?」
「ん?」
「今のくだり・・・おかしいよな?」
「おかしくないよ」
「・・・おかしくないのか?」
「うん」
「・・・そっか・・・ならいい・・・か?」
「うん。なら最初から入ってる」
「お、おう」

・・・なんか今、すごい何かを間違った気がする。
なんだろう・・・こう人として、大切な何かというか・・・。
あーいいやもう。
394 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/08/19(日) 00:30:06.90 ID:Qpg4B9gDO

それよりも・・・。

「・・・なんの話してたんだっけ?」
「兄貴大好き」

あーそれか。
・・・んー・・・。

「めんどくせーもういいや」
「?」
「ありがとな。俺も好きだぞ」

ポンポンと頭を叩きながら言ってやる。
すると、桐乃は丸い顔をさらに丸いふくれっ面に変えて俺を睨んできた。

「?なんだよ?」
「・・・めんどくさいって言った」

ああ。それが気に入らなかったわけね。

「なんか難しく考えるのがめんどくさいって言ったんだよ」
「?」
「ストレートに素直になったら、俺もお前が大好きだってこと」

そうだ。
こうしてまた甘えてきてくれる桐乃の事が、俺は正直大好きなんだ。
単純な話だ。
俺は、妹とまた仲良くなれて本心から喜んでる。
それだけのことだ。

「・・・」
「?どした?」

急に黙り込んでしまった桐乃に目を向けると、なぜか真っ赤になってプルプルと震えていた。
・・・なにこの小動物?

「・・・もう少しオブラートに包んでください」

その言葉に破顔した。

「はは。可愛いなお前は」
「・・・オブラート・・・」

俺の胸に顔を埋めながら、より一層服を握る手に力を込める桐乃。
その頭を優しくなでてやる。
ああ今わかった。
俺の妹はこんなにも可愛い。

「はいはい。とりあえず今日はもう寝るか」
「うん。・・・このままでいい?」
「おう。朝にはちゃんと帰れよ?」
「うん。・・・おやすみ兄貴」
「おやすみ桐乃」

・・・ほんとは額にキスでもしてやりたかったけど、それはまた今度でいいや。
とりあえず今夜は、この可愛い小動物が風邪でも引かないようにしっかりと抱きしめておいてやろう。

END
395 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/08/19(日) 00:33:29.82 ID:Qpg4B9gDO
以上です。
好きなもん書いてるのは楽しいなww

今更ながら>>327
ランちんは9巻で華麗に復活なさいましたよ?
まあ、ネタキャラなのは違いないけどねww
396 : ◆YHxtVKAHbw [sage]:2012/08/19(日) 10:42:08.55 ID:mXDI+QD5o
>>395
乙。
京介の「めんどくさい」を誤解して拗ねる桐乃のくだりが良かった。

>>ランちんは9巻で華麗に復活なさいましたよ?
「妹のウエディングドレス」だねww
これ、アニメになったらちゃんと動くランちんが出るんだよなと期待してるww
このシーンばかりは他のモデル仲間のあやせや加奈子にする事は不可能だから。
てか「華麗に復活」……?wwwwww
397 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/08/20(月) 18:41:24.35 ID:sxvc9N5DO
調子乗りすぎたかな?
空気悪くしたなら悪かった。
しばらく自重する。
398 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/20(月) 19:08:50.11 ID:hK4s2nUIO
>>397
あー、最近他の人が自分の感想を代弁してくれてたから感想書いてなかったww

全然調子乗ってなんかないよ。
このシリーズのきりりん可愛いので自重どころかいいぞもっとやれって思ってますww
399 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(鳥取県) [sage]:2012/08/20(月) 22:06:14.78 ID:BSjPDmx6o
>>398
他の人の感想と内容的にかぶっていても構わないから
どんどん書いて欲しいな。

前スレと比べて勢いが減ってるのがちょっと寂しい。

書き手の一人より。
400 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/20(月) 22:30:10.52 ID:gPbgTaTno
>>399
いつもスマホから見てるから長文書くのがしんどいんだよね(苦笑
1、2行のレスでも良かったら感想ちゃんと書きます…ww
401 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) [sage]:2012/08/20(月) 23:29:45.20 ID:qIO2ltzAO
>>397
リアルで疲れ果ててて読んだけど感想書いてなかったすまにあ
いつも楽しく読ませて貰ってます
もっと書けくださいおぬがいします
402 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/08/21(火) 08:45:18.33 ID:5o4mayIDO
ああよかった。
自分の書いたもんの後からレスなくなったから、マジビビった。
ありがと。
したら、自重するっつったけど、も少しだけお付き合いを。
次レスより投下。
403 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/08/21(火) 08:47:47.55 ID:5o4mayIDO

「桐乃」
「・・・なに?」
「今日どっか出かけるか?」
「・・・いい」
「そっか?・・・退屈じゃねーか?」
「・・・学校も仕事も休みなんだし・・・兄貴とこうしてる方がいい」
「そうか・・・」

・・・可愛いことを言ってくれるねぇ・・・。
リビングのソファの上、俺の膝に寝転がりながら雑誌を読んでいる桐乃の頭。
その頭を撫でながら、俺は思わず苦笑をもらした。

『俺の妹はこんなに可愛い』
404 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/08/21(火) 08:49:26.03 ID:5o4mayIDO

「そうか・・・でも残念だな」
「・・・?なにが?」

俺の言葉が気になったのか、桐乃は雑誌を少しずらして、俺を器用に見上げてきた。

「いやな、こないだ加奈子のマネージャーの仕事をやってな・・・いって!」

答えたらいきなり太ももをつねってきやがったよこの妹!

「いきなりなにすんだお前!?」
「・・・聞いてない」
「はあ!?」
「・・・聞いてないよ・・・?」

お・・・おおう。
・・・目がすわってますよ桐乃さん・・・。

「い、いや・・・」

ハッキリいってメチャ怖え!
どれくらいかってゆーと、部屋の温度が何度か下がったと感じるくらいに。

「・・・説明」

うおお・・・なんだこのプレッシャー?
俺なんか悪いことしたのか!?
目を眇めた桐乃に完璧にのまれながら、俺はとりあえず説明を始めた。

「え・・・あ、えーっとですね?また例の如く加奈子様が俺をご所望しましてですね・・・いてえ!!」

だからいきなりつねるのやめて!!

「・・・加奈子様とかマジキモい・・・」

・・・目がマジだ。
こりゃ、ふざけてたらマジで命を落としかねん・・・。

「わーかった!ちゃんと説明するからとりあえず聞けって!!」
「・・・聞くだけ聞く」

・・・なんスか?
その聞いた後にはなにするか分からない的な返事は?

「ああもう・・・とにかくだ、加奈子にせがまれてまたマネージャーの仕事をしたんだよ。今度はちゃんとバイト代出るって話だったからな」
「・・・バイト代?」
「そうだ。ちょっと金が入用だったんでな」

桐乃が首を傾げるのもまあ当然だろう。
俺は、まだ親父たちからちゃんと毎月小遣いを貰っているからだ。
そして無趣味な俺は、そのほとんどを貯金に回している。
だからバイトなどしなくても、それなりに手持ちはあるわけだ。

「・・・お金ないの?」
「いやあるよ?最新のパソコン一式揃えるくらいは」
「・・・お金ないの?」
「今の会話の流れでなんでその結論になるっ!?」

現役人気読モ&ベストセラー作家のお前と比べないでください!!
405 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/08/21(火) 08:51:26.80 ID:5o4mayIDO

「高校生ならそれくらいあれば十分なんだよ!!」
「・・・そか。なら・・・なんで?」

『なんで?』のところで、また桐乃の様子が激変した。
・・・静かに怒るのやめてください。
ホントに怖いので・・・。

「なんで・・・バイトなんか・・・?」
「か、買いたいもんができたんだよ!」

ビビりながらも、当初の目的通りの説明をする。

「買いたいもの・・・?お金・・・あるんでしょ?」
「あ・・・うん」

桐乃の疑問に目を逸らして頬をかく。
・・・いざ言うとなると照れるな。

「・・・自分の稼いだ金で買いたかったんだよ・・・」
「!」

うわ、恥ずい。
こいつにしてみりゃ当たり前のことだからか、妙に照れくさい。
今までバイトなんてしたことなかったからな、俺・・・。

「・・・働いて金稼ぐってのしたことなかったからさ、ちょっとでも慣れてる仕事をって思って、加奈子の一日マネージャーをしたわけだ」
「・・・へえ」
「へえって・・・そんだけか?」

さっきまで怒りまくってただろお前?

「兄貴がちゃんとした目的でしたんなら・・・いい」
「・・・そっか」

・・・まったく。
わがまま理不尽なお前はどこ行っちまったんだか。
可愛くなっちまってよ・・・ったく。

「・・・で?」
「ん?」
「・・・買いたいものって?」

どことなく躊躇したように聞いてくる桐乃。
言いたくないなら言わなくていい。
言外にそんな雰囲気を含ませる妹の頭を、俺は優しく撫でてやる。

「・・・兄貴?」
「お前の欲しいもの」
「・・・え?」

俺の言葉に呆けたように見つめてくる桐乃。
俺は撫でる手を止めないままに優しく答えてやる。

「・・・俺たちが仲直りした記念っていうのかな?なんでもいいからお前に買ってやりたくなってな。・・・そんでバイトした」
406 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/08/21(火) 08:52:18.50 ID:5o4mayIDO

「・・・」
「引くなよ?俺もなんでそんな風に思ったかわかんねーけど・・・とにかくそう思ったんだ」
「・・・」
「・・・なんか言えよ」

・・・いい加減恥ずかしくなってきたぞ?
兄貴が妹と仲直りしたからなにかを記念に・・・うーわー有り得ねー。
恥ずかしくてどうにかなりそうなので、とりあえず何らかのリアクションをください。
そんな風に思ってると、

『ボンっ!』

という音が聞こえてきそうなほど急に、桐乃の顔が真っ赤になった。

「き、桐乃!?」
「み・・・見ないで・・・」

雑誌で顔を隠しながら、桐乃はそれだけを言ってきた。

「いやでもお前顔が・・・」
「わ、わかってるから・・・ちょっと待って・・・」

桐乃は身じろぎしながらズリズリとソファを降りると、そのままソファを背もたれにして体育座りをしてしまった。

「だ、大丈夫か?」

心配で覗き込むように問い掛けると、フルフルと小さく頭が振られた。

「え?ダ、ダメなの?」

コクコクと今度は縦に振られる。
な、なにがどうしたってんだ?

「お、おい・・・」
「ふ・・・不意討ちとか・・・ズルい・・・」
「え?な、なにかいったか?」
「・・・なんでもない・・・けど、もう少しこのまま・・・」
「あ、ああわかった」

桐乃は揃えた膝に顔を埋めながら、それでも右手で俺のズボンの裾をつかんでいた。

「・・・今日・・・」
「ん?」
「・・・今日、出かける・・・」
「あ?・・・ああ、了解!」

顔を伏せながらの桐乃の意思表示に、俺は破顔して答えてやった。

END
407 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/08/21(火) 08:54:57.07 ID:5o4mayIDO
以上です。
一応>>394の後日譚。
もし許されるなら、次は二人でお出掛けしますww
408 : ◆YHxtVKAHbw [sage]:2012/08/21(火) 11:56:22.37 ID:ka9T9xLmo
>>407
乙。
桐京ものだからあまり関係ないかもだけど、できればそのバイトの内容でも一本書いて欲しいなww
409 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2012/08/21(火) 13:50:43.26 ID:cVzlqGxLo
2828
まつぞ
410 : ◆edVjqBIbnQ [sage]:2012/08/21(火) 19:18:28.73 ID:+sDISLls0
>>407
お疲れ様です。
いつも楽しく読ませて頂いています。
これからも頑張って下さいね!応援しています!
411 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/21(火) 23:01:35.33 ID:JRo1yv0IO
>>407
デレきりりん相変わらず可愛いww
でも嫉妬する時は原作通り怖いのね。その方がきりりんらしいケドww
412 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/22(水) 01:05:58.78 ID:ax6M+b5uo
ニヤニヤ話もバットエンドもどっちも楽しめる
やっぱりきりりんは絵になるな
413 :あたしの兄貴がこんなに格好いいわけがない :2012/08/22(水) 12:20:01.62 ID:O5yT/DRs0
投稿するのは初めてなんで乱文とかご了承ください
原作1巻より桐乃視点でいきます。
反響があれば頑張って原作最新刊までこぎつけたいと思います。
僕の個人的解釈によるところがあります。
原作読んでない方は、ネタバレとかあります。




第一章


リビングでガッコの友達と電話していると、兄貴が家に帰ってきた。
兄貴の名前は、高坂京介。現在17歳。近所の高校に通っている男子高校生。
どこにでもいそうな地味面男で、スポーツ・学業ともに平均的な怠け者のへたれ--。
私服だってなんでもパーカー着てれば万事OKとか思ってるダサ男。
例えば、ガッコにたいてい幾つかの友達グループとかると思うんだケド。そんなかでも、帰宅部やら部活の補欠組で構成されてるような中途半端な奴らっているじゃん? あんな感じなわけっっ! 
そんな男が家族だって想像してみてよっっっ!! 同じバカ兄貴を持つ妹は分かってくれると思うケド、兄妹だって思われたらマジ恥ずかしいしかんべんなわけ。  
……どう、わかった? わたしの気分。


「ただいま」
こっちを一瞥して、一応挨拶してくるわケド、そんな形式的なやりとりとかウザいだけだし、無視して電話を続ける。
「えー? ウッソー? なにそれぇ。きゃはは、ばっかみたーい」
横目でチラリと盗み見ると、いつも通りにぱかんと冷蔵庫を開け、パックの麦茶を取り出し、グラスに注いで一気にあおってる。
マジで、ウザぁっっっ!! 結局あたしのことほったらかしてまた麦茶飲んでるし!!!

「うん…うん…わかった。じゃあ着替えて、これから行くね−−」
電話を終えたときには、あいつはもう自分の部屋に上がっていった後のようだった。
「ってか、毎度毎度どんだけ麦茶が好きなワケ? あいつ。」
あたしは、ひとり心のなかで呟いて支度をはじめた。



あたしの名前は高坂桐乃。自分でいうのも何だけど、スポーツ万能学業優秀容姿端麗である。ライトブラウンに染めた髪の毛、両耳にはピアス、長く伸ばした爪にはマニキュアなんて塗って、背もスラッと高く、スタイルもよくて、学外じゃ読モなんかしちゃってる。
近所の中学に通う、イマドキのイケてる14歳。
完全無欠なスーパー女子中学生のあたしに欠点が一つあるとすれば、い、い、妹が好きなことぐらい。
ちょっとした、っていうかガッツリの妹愛好家で、これが普通の女の子の趣味じゃないことはわかってるんだケド。
カワユイちっちゃな妹が健気に慕ってくるアニメやギャルゲー、エロゲーが超・大っっっ好きで悶えずにはいられない。むしろ、愛してるといってもいい!!
妹に対するあたしの思いを綴りだしてたら余裕でタウンページ超えちゃうケド、妹楽園に行くのがあたしの夢って感じ。

あたしん家は二階建ての一軒家。家族構成は、あたしと兄貴、それに両親の四人。
そこそこ裕福な、別段珍しくもない、ありふれた家庭。あたしと兄貴の部屋は二階にある。
リビングで一休みし、あたしの崇拝するとある神アニ『星くず☆うぃっちメルル』の予約特典をガッコの友達と会った後奪取すべく、DVDの入ったバッグを手に持ち玄関へと向かった。ちなみにリビングを出て右手が玄関ね。
「っと」
玄関付近で、階段を下りてきた私服の兄貴とぶつかった。実はこの位置、お互いにとって死角になっちゃってるから、接触事故が多発するポイントなワケ。
どん。あたしの胸が兄貴の左肩にぶつかるような形で、軽く衝突。衝撃自体はたいしたことなかったんだケド、その拍子にあたしのバックが手から離れ、床に中身をぶちまけた。
「あっ……」
「お、悪い」
普段と違い素直に詫びて、床に散らばった化粧品等の諸々に手をのばす兄貴。
ぱしっ。思わず兄貴の手を平手で払ってしまったあたしを誰が責められるっての?
だってバッグに入れてたブツが見つかったりしたら……あたし−−。
顔が引きつってしまいそうになるを必死に堪えて、兄貴を睨みつけ牽制する。
「なっ」
どうやらあたしの威嚇がきいたみたいで驚いる。
「……いいから、さわんないで」
と告げ、動揺を悟られないように無表情で黙々と散らばったバックの中身を拾い集める。どうやら、ブツはバックの中にあるみたい。
これで一安心と、兄貴に背を向けそそくさとパンプスを履き、
「…………行ってきます」
と逃げる様に家をあとにしたんだケド。数分もたたないうちに怒りがヒシヒシとこみ上げてきた。
このあたしが、バカ兄貴のせいでなんでこんなエッチなブツを必死に隠そうとする男の子の気分を味合わなきゃいけないワケ!?


414 :あたしの兄貴がこんなに格好いいわけがない :2012/08/22(水) 13:54:52.09 ID:O5yT/DRs0
マジ、万死にあたいするっての!!
まぁ一応バッグの中身は拾おうとはしたわけだし……それに……。ってあたし何考えてんの!?
とにかく、世が世ならメテオインパクトものだケド。今回は許してあげる! きりりんのメルちゃんのように広い心に感謝しなさいよね!!

そんなことを考えているうちに友達との待ち合わせ場所に到着し、いつもみたいに少しおしゃべりしてから別れたのち、とあるお店へと足を運ぶ。
とあるお店って何かって? それはあたしたちにとっては桃源郷のような世界。
「デゥヘヘェ……ジュル」
口からこぼれ落ちそうになったものを舌でなめとる。
お店に入る前にブツを取り出す準備するためにバックをのぞくと無い。無い。何が無いって、例のブツに決まってんじゃん!
「な、なんで……?」
ついさっきまでとは一変して口からは言いいうのない焦燥感のこもった言の葉とともに、額からは冷や汗ががこぼれ落ちる。
思い当たる節は、玄関付近で兄貴とぶつかった時。そう、あの時、散らばった中身は、化粧品等でブツはバッグのなかにあると思い込んで一安心していた。
「ウソ……昔のギャルゲーやエロゲーじゃあるまいし」
現実を直視できず一人呟き、店前で周囲の視線も気にせずバッグの中身を一心不乱に探した。
ヤッパリ無いい……。あの時落としたんだ。
あたしがおとしたのは食パンみたいな炭水化物じゃないケド。んなベタな展開マジ普通ありえなくない!?
気がつけば、家に向けて全力で走りだしてた。
今思うと、モノクロのストライプのTに、ブラックのハーフスカート、パンプスで街を疾走する美少女は周囲にはどんな風に見えただろ?


パンプスとはいえ、陸上で鍛えあげた脚力のおかげでかなり早く家につけた。
玄関を開け、ただいまの挨拶をすますなりさんざん玄関探し回ったんだケド見当たらない、ブツがどこにも見当たらないワケ。
もうすぐ夕食の時間だというのにあたしは、何もできず立ち尽くしていると。
「……なぁ。なにやってんの?」
リビングのドアノブに手をかけ、首だけ振り返って兄貴が珍しく声をかけてくる。
ったくなんでよりにもよってこんな時に声かけてくるワケ?
いつもいつもタイミング最悪だし、今回のことといい新手の嫌がらせか何か!?
「………は?」
思わず睨みつけってしまう。
だって仕方なくない? あいつにぶつかんなきゃこんな事にならなかったワケだし。
「チッ、なんでもねえよ」

415 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/22(水) 15:22:13.97 ID:VRnKQ/edo
いくらなんでも2レス投下するのに時間かけ過ぎ
投下するなとは言わないけど、書き溜め作ってから投下してくれ
416 :あたしの兄貴がこんなに格好いいわけがない :2012/08/22(水) 15:53:40.16 ID:O5yT/DRs0
とドアを開けリビングに入っていく。
あたしも後をおうようにリビングへと向かい夕食のカレーと味噌汁が並べてある食卓に着く。
夕飯にちょっとでも遅れるとお父さんに問答無用で飯抜きにされるから。
前にもあのバカが数回飯抜きにされたの目の当たりにしている。
さすがは現職の警察官って感じだケド、風呂あがりはいつも着流し姿だし、圧迫感のある服装と顔なにより、鋭い眼光のせいでハッキリいって堅気に全然っ見えない。
粛々と味噌汁をすするお父さんと、福神漬けを噛んでいるいかにも専業主婦って感じの母が並んで腰掛け、あたしと兄貴が対面に座っている。

家族が食事を摂るこの部屋は、リビング・ダイニング・キッチンが一体化しているため仕切りがなくなくかなり広々してるためか、それとも家族にバレてないだろうかという心配のせいかテレビでニュースキャスターが報道している内容がまったく頭に入ってこない。
特別味が薄いワケでもないのに、味噌汁の味を感じない。カレーもドロドロなワケじゃないのに喉を通らない。
第三者が見れば、最後の晩餐と見間違えるカモ。

救いがあるとすれば、普段から食事の時はほとんどしゃべんないから、黙ってても怪しまれないし。動揺を悟られない事。
そんなことを思っていると、隣でズズッっと音を立てながらアサリの味噌汁を一気に飲み干すなり
「俺、メシ喰ったらコンビニ行くけど。なんか一緒に買ってくるものある?
「あら、じゃぁハーゲンダッツの新しいの買ってきてちょうだい。季節限定のやつね」
「ほいよ」
「そういやさ。俺の友達が、最近女の子向けのアニメにはまってるらしんだけど。えーと、確か、ほしくずなんとかっつーやつ」
なんとかじゃなくてメルルでしょ!! 後ちゃんと、☆いれなさいよ!!! 
思わずプッチンしそうになっのを押さえ込んだあたしは、さすがともいうべきね。
ってかなんでこのタイミングでメルルの話なんて……。まさっか兄貴が拾ったんじゃ!?
そんなあたしの気を知ってか知らずか。
「なぁに、突然?」
「イヤ別に、面白いってすすめられたからさ。一回くらい見てやってもいいかなって」
あんたの友達にしては着眼点は悪くないケド、何様のつもり!? 
「見てやっても」じゃなくて見させてくださいでしょ!!
と一大事に一人心でツッコミをいれてる自分に驚いた。

「やだぁー、そういうのって確かオタクっていうんでしょ? ほら、テレビとかでやってる……あんたはそういうふうになっちゃだめよー? ねぇお父さん」
クぅっっ…………………………!!
「ああ。わざわざ自分から悪影響を受けに行くこともあるまい」
悪影響ってなに? ダレがオタクは悪いって決めたの? 何にも知らないクセにっっ……!!
ムカツクっっ!!ムカツクムカツクムカツク!!! 
今にも怒りを吐きださんとする唇をキツク噛みしめるが、全身に固く力がこもってしまい、手に持った橋の先が小刻みに震える。
「……桐乃?」
あたしの異変に気づいたのか、お母さんが軽く声をかけてきたがもう我慢の限界だった。
「……ごちそうさまっ」
ばん、と立ち上がりスタスタと足早にリビングをあとにする。怒りにまかせて、ドアを閉め階段をドンドンと駆け上がって自分の部屋に戻ってベットにクッションを叩き付ける。
なんも知らないクセに。何にも、何にも知らないクセにっ! あたしのメルちゃんを悪影響だなんていって!!
ムカツクムカツクムカツク!!!


ひとしきり暴れて落ち着くとふとあいつの言葉を思い出した。
「確かコンビニ行くとかどうとか」
御飯の時といい多分あいつがブツを持ってるのは間違いないわね。
どうせ頭の悪いあんたのことだしベットの下にでも隠してるんでしょ?
さっきはあたしに鎌をかけたかつもりかもしんないケド、あんたのダッサイ計画にひっかかワケないじゃん! 孔明にでもなったつもりかってんの!
あんたがコンビニ行ってる間に、あたしがカリオストロのルパンよろしくでメルちゃん助け出してみせるからwwww

「さあて、コンビニいくか」
ドアに耳を当てると。ばたん、隣の部屋からドアの閉まる音に次いで、どんどんどん、階段を下りる音が聞こえてくる。
どうやら、ロリコン男爵がコンビニ行ったみたいね! 
「待っててね、メルちゃん! 今助け出してあげるから」


417 :あたしの兄貴がこんなに格好いいわけがない :2012/08/22(水) 15:57:36.41 ID:O5yT/DRs0

415さんアドバイスありがとうございます。
とろりあえずかきだめしてから投下することにします。
あんまり、マナーとか把握できてなかったりするんで
そのつど注意していただけると幸いです
418 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/22(水) 16:32:37.97 ID:VRnKQ/edo
とりあえず投下するならこの板のローカルルールと各スレの>>1を見ること
このスレはそこまで厳しくないけどスレによってはながら投下は禁止してるとこもある
419 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/23(木) 21:59:44.48 ID:pTA/bX/R0
>>417 

ほとんど>>415が言ってくれたけど補足ね

投下前に
1. どんなカプか
2. 全体で何レス位を予定しているか
3. オリキャラの有無
は宣言しておいた方が良いね

あと中断時には
4. いつまで中断していつ頃戻ってくる予定か
書いてくれると待ちやすいね

それから
5. 行の長さはある程度そろえる
6. 地の文と台詞の間は行を空ける
7. 心理や場面の転換部分は数行空ける
と読み易いし評価が高ければ「まとめwiki」にも
編集してもらいやすい
420 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/23(木) 23:11:28.28 ID:AOvXhoRDO
まとめwikiの管理人さんはどこへ行っちゃったんだろう
自分で編集して載せられる人は自分で載せとかないと
スレが新規になったら、過去ログ送りになるよ
421 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/08/23(木) 23:15:41.79 ID:ueKp9gAWo
まとめwikiの管理人が載っけてたのか
残しておきたいと思った人が勝手に載せてるのかと思ってたぜ
422 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/24(金) 00:55:03.85 ID:IqjvK7ZDO
俺が初めて投下したのは7巻が発売されてからだったけど
あの頃の管理人さんは何かに憑かれたかのように載せてたよ
投下完了→ゲッ!もう載ってる!? みたいな
423 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/08/24(金) 02:15:32.24 ID:ITA1WgADO
>>415
まぁ、他の人投下中に投下しづらいってのもあるしな。長時間かけての投下はちと困るよな(苦笑)

>>409
それは二人でお出掛けだろうか?それとも>>408のリクエストだろうか?(汗)

とりあえず>>62の続きできた。
次レスより投下。
424 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/08/24(金) 02:18:32.60 ID:ITA1WgADO

「ただいまー」
「おかえり京介」

パタパタとスリッパの音を立てて駆け寄ってくるのは高坂桐乃。
同居人であり俺の妹だ。

「遅かったじゃん」
「ああ。サークルでな」
「そっか」

俺は靴を脱いで上がると、ポンポンと桐乃の頭を優しく叩いた。
嬉しそうに眼をつむってそれを受けながら、桐乃が聞いてくる。

「ご飯できてるけどどうする?先にお風呂?それともあ・た・し?」
「桐乃」
「えっへへおっけー!すぐに用意するからちょっと待ってて」
「あ・・・」

そう言うと桐乃は出てきたとき同様、パタパタとリビングの方に戻っていく。
ため息をつきながらその背中をみつめつつ、思わず漏れる苦笑。
桐乃と暮らし始めて2か月。
ようやく今のやり取りにも慣れてきた。

『一緒に居ようよ・2』
425 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/08/24(金) 02:20:41.10 ID:ITA1WgADO

「も、ほんっと信じらんない!!」
「・・・」

とりあえず今の状況を説明しよう。
一悶着あった末、俺と桐乃の二人暮らしが始まって二日目。
俺高坂京介は、家に帰ってくるなり玄関に正座させられていた。

「ありえなくない?ねえ?ありえないよね?」

そして目の前で怒り心頭で怒鳴りつけてくるのが高坂桐乃。
俺の実の妹であり同居人だ。

「あんたさー・・・」

帰宅からかれこれ30分俺は怒られ続けてるわけだが・・・。

「なんであたしが怒ってるのかホントに理解してる?」
「・・・」

ここで正直に言っていいものかどうか?
・・・多分ダメなんだろうけど、とにかくこの状況を打開するためのとっかかりが欲しい。
俺は意を決して桐乃に答えた。

「いいえわかりません」
「バカじゃん!?」

言うや否や蹴りが飛んできた。
・・・お願いです桐乃さん。
せめて急所は狙わないで下さい。
426 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/08/24(金) 02:22:44.35 ID:ITA1WgADO

「・・・あんたさっき帰ってきたとき、あたしの問いかけになんて答えた!?」

このままじゃ埒が明かないと桐乃も判断したようだ。
不承不承といった体で怒りの原因を俺にほのめかしてきた。
さっき?問いかけ?
さっきってのは俺が帰ってきたときだよな?
あんときは・・・。



「ただいまー。桐乃帰ってんのかー?」
「あ、おかえり京介ー・・・どしたの?」
「いや、なんつーか・・・驚いてんだよ単に。お前の態度に」
「なんで?」
「今までが今までだからだよ」

考えてみやがれ。
今まで俺が帰ってくるたび、おかえりどころか、視線をくれることさえなかったこいつがだぞ?
おかえりーなんて言ってくるなんてよ・・・学校でよほどいいことでもあったのか?

「べ、別にあれは実家だったからだし、お母さんとか居る前で言うのが恥ずかしかっただけだし、こ、ここは二人っきりだから、く、空気とか悪くなったら嫌だし・・・それに・・・だし・・・」

俺が素直に疑問を投げかけると、桐乃は少し言い淀みながらも答えてきた。
なるほどね。
意外に考えてんだなこいつ。
最後聞き取れなかったけど。

「まーなんにせよ、悪い気分じゃねーな。お前が明るく出迎えてくれるってのはな」
「ほ、ほんと!?」
「ああ」

だって機嫌が良いってことだろ、それ?
正直桐乃の言う通り、この二人っきりの空間で喧嘩するのは避けたい話だ。

「そっかー・・・へへっ!」

そんなことを考えてる間も嬉しそうに笑う桐乃。
本当に機嫌が良いな。
ありがとう桐乃の学校の人。
君のおかげで我が家は今日も平和です。

「じゃあさじゃあさ、続きいくね」
「・・・は?」

今なんて言ったこいつ?
続き・・・ってなんのことだ?

「桐乃?」
「じゃあいくね!」

ちょっと待て!
俺の呼びかけに気付かないのか、顔を真っ赤にして桐乃が早々に続きとやらを始めようとする。
「ちょ、ちょっと待て桐乃。意味が・・・」
「えとね・・・おかえり京介!」

続きってゆーか、始めからなのな・・・。
まあいい。なんとかなるだろ・・・。

「あ、ああただいま・・・」
「ご、ご飯にする?お風呂?そそそれとも、あっ!あああああたし?」
「・・・なにいってんのお前?」
「っ!?信っじらんない!」
「ええっ!?」


427 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/08/24(金) 02:24:56.53 ID:ITA1WgADO

だったよなぁ確か・・・。
それで今に至るわけだが・・・。

「どうわかった?」

目の前では相変わらず桐乃がお冠で見下ろしてくるわけだが・・・仕方ないよなあ。

「まったくもってわからん」
「はあ!?ばかじゃん!?なんでわかんないの!?」

そんなことを言われても、わからんもんはわからんのだ。

「あたしさっき、ちゃんと言ったじゃん!?」
「ちょっとまて?ちゃんと言ったって・・・なにを?」
「はあ!?あ、あんたがい、以前のあたしと違って、ちゃ、ちゃんとおかえりって言うっていった時・・・」
「・・・ああ。もしかして最後聞き取れなかったあれか?」
「聞き取れなかったの!?」

心底驚いたように桐乃が目を見開く。

「いやだってお前、あそこだけ極端に声が小さくなるし」
「・・・」
「頼むから順序立てて説明してくれ」

本気で訳がわからん。
あと正直足が痛い。
俺が両手を上げて、降参の意を示すと、桐乃はむすっとした顔のままポツポツと説明を始めた。
あ、場所はリビングに移したからな?

「京介・・・兄貴と二人っきりで住むわけじゃん?」
「うむ」

それは聞いた。
空気悪く云々のくだりだな。

「そしたらさ、やっぱ『ただいまー』『おかえりー』なんて挨拶も交わすわけじゃん?」
「うむ」

それも聞いた。
でもそんくらいのこと一般家庭なら普通にやってるけどね?

「そ、そしたらさ・・・妹妻のシチュエーションと一緒じゃん?」
「・・・は?」

・・・なんだか雲行きが怪しくなってきたぞ?
妹妻?
えらいヤバい響きの言葉だな・・・。
とりあえず聞いておくか。

「なあ桐乃・・・?」
「な、なに?」
「・・・なんだ、妹妻って?」
「はあっ!?あんた忘れたの!?」

立ち上がるな。そして指をさすな。
しかし妹妻・・・。
確かにどこかで聞いたような・・・あ!

「あれか!?お前が引っ越し祝いと称して持ってきた超地雷兵器!」
「妹妻を地雷呼ばわりすんなーっ!!」

言いながら繰り出してきた桐乃の右ストレートは、見事に俺の鼻っ柱をとらえ、俺は盛大に鼻血を出し話し合いは一時中断。
428 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/08/24(金) 02:33:24.35 ID:ITA1WgADO
閑話休題。

「・・・んで?今の状況がその妹妻と酷似してるってわけで、そしたらお前は?」
「・・・マ、マネしてみたくなっちゃって・・・」
「そんで帰宅直後のあれに繋がったわけか・・・」

俺の言葉に小さくコクリと頷く桐乃。
鼻血を出させた後ろめたさからか、すっかり大人しくなっちまってる。

「・・・なるほどねえ・・・」

ようやく理解できたよ。
まあ・・・さすがエロゲマイスターの桐乃ってところか。
確か秋葉でアニメの聖地巡礼んときも、嬉々としてそのアニメキャラのポーズとってたもんな。
シチュが合えば真似してみたくなるってことか。
まったくオタクもここまでくればいっそ清々しいよ。・・・お、鼻血止まった。

「ま、そういうことなら付き合ってやるよ」
「え・・・い、いいの?」

まだ悪いと思っているのか、その表情は戸惑いの色が濃く残っている。
バカだねえ。
こんなもん兄貴なら誰だって笑って許すレベルだよ・・・たぶん。
冷戦状態の時の精神的な痛みに比べたら微々たるもんさ。
俺はポン、と桐乃の頭に手を置くと、目をみつめながら優しく微笑んでやった。

「ああ。お前がやりたいっていうんならそれくらいお安い御用さ」
「兄貴・・・」

そーだよ。
こんなふうに顔を真っ赤にして喜ぶ妹の顔が見れるんなら、俺はどんなことだってやってやるさ。

「じゃ、じゃあさ・・・さ、さっきの・・・もう一回やってもいい?」
「さっきの・・・ああ」

おかえりなさいってやつか?
上目遣いにチラチラとこちらを見てくる桐乃に向かって快諾の旨を伝えると、桐乃は本当に嬉しそうに笑った。
そうして俺たちはまた玄関まで戻る。

「・・・よし、いいぜ」
「じゃ、じゃあいくね?」

すうっと息を吸い込む桐乃。

「おかえりお兄ちゃん」

ブフォ!?

「ちょ、ちょっと待てっ!!」
「な、なによ?」
「お、お兄ちゃんとか・・・聞きなれない呼び名はねーだろ?」

さすがに気恥ずい・・・。

「もっと普通の呼び方にしてくれ」
「じゃ、じゃあ・・・きょ、京介ならいい?」
「ああ。そっちで頼む」
「じゃ、じゃあそうする・・・」

・・・しかしなにやってんだろーな俺ら。
これ傍から見たら、さぞやマヌケに見えるんだろーなー・・・。
そんなことを思いながら、ちらりと桐乃を見る。
エロゲ脳の妹様は、真剣な顔で「よーし、いくぞー」と気合を入れていた。
ぷ。
ま、傍からどんなにマヌケに見えてもいいか。
妹のやりたいことにつきあってやる、それが嬉しくてしょうがないんだから。
やれやれ、とんだシスコンになっちまったもんだよ俺も。

「じゃ、い、いくね・・・」
「おう、いつでもこい!」
「じゃ・・・お、おかえり、京介!」
「ああ、ただいま桐乃」
「ご、ご飯できてるけど、どうする?」
「お風呂先が良い?」
「そ、それとも・・・あ、あたし?」
「汗かいたから先に風呂」「ばっかじゃないの!?」

そして俺は本日2度目の右ストレートを食らったのだった。


429 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/08/24(金) 02:37:13.94 ID:ITA1WgADO

その後、今までなにやってただの、エロゲ展開踏襲だの、照れるなキモいだの、妹妻未プレイバレだの色々とあったわけだが、ようやく最近慣れてきて、桐乃も満足してくれてるというわけだ。

「おまたせー・・・ってあれ?京介ー?」

リビングから聞こえてきた声に応えてやる。

「あんたなんでまだ玄関に居るの?お茶入ったよ?」

ちなみにあの3択、桐乃を選ぶと『お前に任せる』という意味になる。
今日はまず一服ということらしい。

「お前が話の最中で行っちゃうからだろ?」
「へ?話の最中って何?」

またパタパタとスリッパを鳴らして玄関まで来た妹に向かって後ろを指差す。

「?」

キョトンとしている桐乃を尻目に、俺は玄関の外に声を掛けた。

「すんませんお待たせして。お前らも悪いな」
「・・・俺等入っていいのか?」
「どうぞ遠慮なく部長」
「高坂先輩・・・僕ら帰った方がいいですかね?」
「なんでだよ真壁くん?せっかく引っ越し祝いにきてくれたのに」
「・・・これから鬼畜先輩って呼んでいいですか、高坂先輩?」
「なんで前より呼び名が悪化してんだよ赤城?」

なにやらおどおどとした様子で入ってくるのは、高校最後の1年を共に過ごした部活の面々。

「あ・・・」
「ん?おお桐乃、お茶ならこの人たちの分も用意してくれ」
「あ、ああ・・ああ」

向き直り桐乃に人数分のお茶の追加を頼む。
しかし桐乃はなにやら曰く言い難いおかしな表情で立ち尽くしたまま動こうとしない。
・・・なんか見たことあんなーこんな絵面。
ああ、あれだ。
よくドラマなんかで、彼氏が、他の女と会ってるところを偶然見てしまったヒロインが、信じられないものを見たように立ちすくむのにそっくりなんだ。
・・・でもなんでだ?
・・・ああ。

「驚いたか桐乃?知ってるだろ、高校のゲー研の人達だ」

なるほど、久しぶり過ぎて驚いてるわけだ。
確かに今ここでこいつらに会うのは、桐乃にとっては予想だにしなかったことで、それだけに驚いて立ち尽くしてるってわけだ。
なるほど、ドラマのヒロインがフィードバックしてくるのも納得だぜ。
あっちも、結局は驚き過ぎて声が出ないんだもんな。

「まあ部長は今俺と同じ大学に入って一緒にゲームサークルに入ってるけどな」
「あ・・・あわわ・・・あああ」
「それで今日、俺たちの都合がよければ引っ越し祝いしてくれるってんで連れてきた」
「あ・・・あああああんた・・・」
「ん?どした?」
「ささささっきの『挨拶』んとき・・・こ、この人たち。いいいいたの?」
「ああドアの外に」

ブチッ!

「なんで他の人がいるときにあれをやることに疑問を持たないのよあんたはっ!!?」
「へぶらっ!?」

意識が飛ぶ一瞬、桐乃が真っ赤になり泣きながら叫んでいたことを覚えている。
430 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/08/24(金) 02:39:11.52 ID:ITA1WgADO

気が付くと俺はソファに寝かされており部屋には一人きり。
テーブルの上には『実家に帰る!!』と一言殴り書きされた書き置きがあった。
部長たちからはメールが入っており、皆一様に『誤解は解けたから』との内容が書かれていた。
なんのことやら。

「いっててて・・・」

思いきりぶん殴られただろう右頬を擦りながら、俺はソファの上に座り直した。
時計を見ると既に7時半。
大分長いこと気絶してたことになる。

「・・・」

テーブルの上の書き置きに手を伸ばすと、それにゆっくり目を通す。
まあ、実家に帰るの5文字だけだからゆっくりもなにもないけどな。
まあでも・・・桐乃は迎えに行ってやらなくちゃいけねーかな。
あんだけ怒ってたことを考えると頭が痛いが、それでも大切な同居人だし。
それに・・・。
俺はチラシの書き置きにつっと指を滑らせる。
そこには多分、涙であろうシミの跡。

「・・・泣かせちまったしな・・・」

俺は最後に見た桐乃の顔を思い出してため息をつく。
・・・思いの外クルんだよなーあいつの泣き顔・・・。
御鏡の時も思ったけど、笑顔に慣れちまった今だから、余計にいたたまれない気持ちになる。

「あー・・・なーにが悪かったんかなー・・・」

思い返してみてもよくわからん。
桐乃の最後の台詞、

『なんで他の人がいるときにあれをやることに疑問を持たないのよあんたはっ!!?』

・・・ああそっか。

「恥ずかしかったのか」

考えてみりゃ簡単な話だ。
他人に、兄妹でまんまエロゲシチュの会話を聞かれる・・・どんな羞恥プレイだよ・・・。
俺は右手で額を叩くと、そのまま天井を仰いだ。

「あー・・・鈍い方だとは思ってたけど、ここまでだとは自分で驚きだ・・・」

・・・っても、自己嫌悪に陥っててもなんも解決しないわけで。

「・・・とりあえず、土下座でもなんでもして許してもらうしかねーな」

方針が決まるとなんとなく気持ちが楽になった。
単に楽観主義者なのかもしんねーけどな。
しかし・・・クク。

「・・・実家に帰った嫁を迎えに行くって、こんな気持ちなのかね・・・?」

結婚したことねーからわからんけど。
まあ、それでも何となくわかるもんさ。
一人くつくつと笑うと、俺はソファから立ち上がった。
とりあえずやることは山積みだが、まずは風呂に向かうとしよう。
折角桐乃が俺の為に沸してくれたものだ。
身も心もすっきりして、明日にでも実家に向かうとしよう。

END
431 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/08/24(金) 02:42:23.78 ID:ITA1WgADO
とりあえず以上です。
次は嫁を迎えに親父とバトルかなー?ww

432 : ◆YHxtVKAHbw [sage]:2012/08/24(金) 02:53:00.13 ID:QIsd1z1qo
>>430
乙。
これは……京介も桐乃もどっちもどっちだよ……なぁ……ww
433 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/24(金) 05:37:38.94 ID:ANs+UaDVo
>>431
乙!
「実家に帰る」で盛大に吹いたwwww
きりりん完全に新妻気分ww

しかし2人とも素直になれてないまま同居するとハプニングに事欠かなそうだな。
続きもwwktk
434 : ◆3XYrXGTOAI [sage]:2012/08/24(金) 07:59:37.94 ID:aXmmqmF60
>>431 
乙 良かったよ
もうこの2人結婚しちゃえばいいのにw
435 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/24(金) 08:29:53.47 ID:JCOH1dCx0
>>431
いいねー!面白いわwwwwww
436 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/08/24(金) 19:21:37.25 ID:ITA1WgADO
すまん。
誉めてくれたのに悪いんだが、ラストの>>430は次レスのに変更しといてください。
このシリーズの京介なら↓この程度だ。
ちと書き込み過ぎちまった(苦笑)

すまないがお願いします。
437 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/08/24(金) 19:36:07.20 ID:ITA1WgADO

気が付くと俺はソファに寝かされており、テーブルの上には『実家に帰る!!』と一言殴り書きされた書き置きがあった。
部長たちからはメールが入っており、皆一様に『誤解は解けたから』との内容が書かれていた。
なんのことだ?
しかし何はともあれ、桐乃は迎えに行かなくちゃいけねーかな。
あんだけ怒ってたことを考えると頭が痛いが、それでも大切な同居人だしな。
それに・・・。

「実家に帰った嫁を迎えに行くってこんな気持ちなのかね・・・?」

一人クククと笑うと、俺はソファから立ち上がった。
とりあえずやることは山積みだが、まずは風呂に向かうとしよう。
折角桐乃が俺の為に沸してくれたものだ。
身も心もすっきりして、明日にでも実家に向かうとしよう。

END
438 : ◆YHxtVKAHbw [sage]:2012/08/24(金) 21:13:20.76 ID:QIsd1z1qo
>>437
なるほど乙。
確かにこっちがしっくりくるかも。
439 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/24(金) 23:33:19.24 ID:vcmB4lqa0
>>420 >>421 >>422

wikiにまとめるのは管理人じゃなくて善意の編集人だよ
俺も登録していてピーク時は夜中に投下されたのを早朝に編集したりしていた

今は忙しいのもあるけれど積極的に編集したいSSが少ないんだよね
投下宣言の時にあらすじとか何レス位のボリュームだとかを書いておいてくれると
読んでいてチェックしやすいし編集もやりやすい
440 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/08/25(土) 00:53:00.94 ID:Arxrc+pDO
>>439
ははっ。
暗に、今投下されてるSSは、まとめに入れる価値ないって言われてるようで少し寂しいなww

以前住み着いてたとらドラSSスレじゃ、2ちゃんにまとめスレがあって、まとめ人さんが一人で編集してくれてたな。
未だにDAT落ちしてないとこみると、まだやってるのかな?
441 :あたしの兄貴がこんなに格好いいわけがない :2012/08/25(土) 03:38:44.64 ID:OgNoMljW0

皆さんおひさしぶりデス。
新参者417デス。

皆さんがしてる>> 数字 の仕方がわからなくて
数字だけでもとりあえず打ち込んでみました。

一応、続きつくってたんですケド
量的にshort story ちゃうやんってことに気づいて

オチの部分だけつくってみました。

時間軸は原作一巻で
京介が桐乃のオタク趣味を守るため
お店で桐乃と別れて父親と戦うところデス。


カップは一応桐京。
桐乃目線で1巻の最後までいきます。


何スレいくとか予想がつかないですケド
最後まで読んでいただければ幸いデス。

アドバイス等してくれたかたありがとうございます。

生暖かい目で見守って下さい。

442 :あたしの兄貴がこんなに格好いいわけがない :2012/08/25(土) 03:43:48.63 ID:OgNoMljW0
「桐乃−−」

おもむろに立ち上がり
親指で自分の顔をグッと指さす京介。

「俺に任せろ」

あの顔だ。あの頃と何一つ変わってない。
あの日を境に、居なくなってしまった。

世界でたった一人、たった一人のかけがいのない

あたしの−−あたしの、だ、だい……だった
お兄ちゃんが確かにそこにいた。


その後あいつは、
まくし立てるように言いくるめ
あたしの返事もろくに聞かず。

1時間経ったら家に帰ってくるよう言い残すと
一人店を後にした。


「きょ、京介っ」

そして、あたしは家の縁側で聞き耳を立てるように
窓に張り付くようにもたれ掛かっている。


か、勘違いしないでよね!
別に、あいつのことが心配になって
コッソリお店から
あとをつけて来たとかじゃなくて……。

一方的だったけど、
一応あいつと約束したし。
ちゃんと一時間経ってから帰るつもりだったケド
家飛び出してきちゃって、
時計も携帯もないし体内時計で
家に帰ってみたら、その……。
まだ話の途中だったみたいで
縁側で待ってたの。

そしたら、あいつとおとうさんの声が
窓越しにちょっと聞こえてきて……。

それに! さっきから
だんだんあいつの声でかくなってきてるせいで
カーテン締め切ってんのに全部丸聞こえだし!

だから、その、そういうことだから!!


「……! 全部があって、初めてアイツなんだよ! 
一つでもかけたら、アイツじゃなくなっちまうんだよっ!」

ホント、バカじゃん?
何熱く語っちゃってんのよ……あのバカ。
首筋も徐々に熱くなりだし呼吸が荒くなる。

そこで、あたしと呼応するかのように
あいつの語気もさらに荒くなる。

「イイか……! これを見て、
まだアイツの趣味をみとめねえってほざくんなら……!
桐乃の代わりに俺が親父をぶっ飛ばすぜ!? 
何もしらねえくせに、チキトー言ってんじゃねえよ!」

そこから多少の言葉のやりとりはあったケド
耳に伝わってきた言の葉達が
脳とやりとりをかわすことわなかった。

あたしの思考は完全にストップした。





443 :あたしの兄貴がこんなに格好いいわけがない :2012/08/25(土) 03:46:27.36 ID:OgNoMljW0

………………………。
………………………。


「これは俺のなんだ!」


………………………っん?


「だからっこれは絶対桐乃のじゃねえ!
俺が預かってもらってた俺のもんなんだって!
だったらすてなくてもいいだろ!?」


………………………前言撤回。
思考をローギアから一気にトップギアにするあたし。


言い訳にしても苦しすぎるでしょ!
あんた、それじゃ妹に
妹にエッチなことをするゲームを預かってもらってて
しかもゲームするために
妹の部屋で妹のPC使ってエッチなゲームしてる
超絶ウルトラド変態だからっっ!!
そんな高等変態動物聞いたことないっての!!!


「……よく知らないが、
これはパソコンに入れて遊ぶゲームなのだろうが……
この家で、パソコンは……
桐乃しか持っていないはずだ……」

ほら、絶対そーなるに決まってんでしょっっ!

「そ、それは、桐乃にパソコン借りたやったんだって!」
「……ほ、ほほう。……お、おま
おまえは妹の部屋で、妹のパソコンを使って、
妹にいかがわしいことをするゲームを
やっていたというんだな?」

「超面白かったぜ! 文句あっか!」

ごとっ! どんどんどん! ばんっ!

「京介っっ!!」

声ともいえぬ声と同時に
とっさに部屋に飛び込もうとするのを
必死に堪える。

ここで出て行ったら全てが台無し。
あいつが、こんなバカやってまで
してることが。

それに……それに京介の叫びは−−


444 :あたしの兄貴がこんなに格好いいわけがない :2012/08/25(土) 03:47:41.31 ID:OgNoMljW0

「とにかく、アレは俺のなんだって!
高校生だって、18禁のエロ本くらい
持ってたっていいだろ!?
お袋だって、ベットの下のコレクション、
持ってていいって認めてくれてるもん!
そのゲームだってエロ本と同じようなもんだろが!
なんか違いがあんのかよ? えぇオイっ!
ねーよなぁ? だからゼッテー捨てねぇ−−よ!
ふヘアはは! 誰になんて言われようがな、
命をかけて護り抜くぜ! よっく聞けよ、親父。
俺はなぁ、アニメも、エロゲーも、
超・大・好き・だぁ−−−−−−っ! 
愛してると言ってもいいね!
こいつを捨てられたら俺は俺じゃなくなっちまうんだよ!
エロゲーは俺の魂なんだよ……っ!」


あたしの本心そのもの。
あたしの心の、魂の叫びでもあったから。


「分かったかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ−−−−−−−っ!」

ただし後半だけ。前半は全殺し確定。

あたしの超カワユい妹たちを
あんたの汚らわしい、え、ええ、エッチな本と
一緒にすんな! ぶっ[ピーーー]よ!

あとあたしはあんたのコレクションこれっぽちも
みとめてないかんね!
もしも妹物じゃなかったら絶対ぶっ飛ばす!!
べ、別に他意はないからっ!

ぷぷっ!

そんなことを一人考えていると
可笑しくてつい口の端が
つり上がってしまう。

だって普通ありえないっしょ?
あんなの? 

たまにはちょっぴり、
ほんのちょっぴり格好いいとこもあるじゃん? 
って思ってたら、すぐコレでしょ?

ほんと、昔からいつもいつも
どうしようもないんだから。


「ありがと。お兄ちゃん」


そして、あたしは玄関へと向かう。




翌朝、部活の都合もあり早く家を出ててガッコへと向かう。

正直ちょっと助かったカモ。
昨晩からズッと考えてはいるんだケド
興奮して……っじゃなくて!
緊張してなかなか寝付けなかった。

部活や授業中は切り替えて
ちゃんとやってるつもりだったケド

親友でもあり読モ翌友達でもあるあやせは
あたしの異変を察知したようだ。


「桐乃? ねぇ、桐乃聞いてる?
445 :あたしの兄貴がこんなに格好いいわけがない :2012/08/25(土) 03:48:41.80 ID:OgNoMljW0
さっきから心あらずって感じだけど、大丈夫?」

「ふぇ? う、うんっ!
ちょっと寝不足なだけだから大丈夫、大丈夫!」

「先生に言って、ちゅおっと保健室で休んでくる?
さっきから、桐乃。見たことないぐらい
スッゴく幸せそうな顔したかとおもうと
今度はスッゴく恥ずかしそうな顔するから……
桐乃がよかったら私、話聞くよ?
だって私たち親友でしょ?」

不安そうに小首をかしげる親友。
だけど、あたしの頭の中は……

『イイか……! これを見て、
まだアイツの趣味をみとめねえってほざくんなら……!
桐乃の代わりに俺が親父をぶっ飛ばすぜ!? 
何もしらねえくせに、チキトー言ってんじゃねえよ!』

ヤバイ! ヤバイヤバイヤバイヤバイ!!!
あいつ、あたしを[ピーーー]つもり!?

『……! 全部があって、初めてアイツなんだよ! 
一つでもかけたら、アイツじゃなくなっちまうんだよっ!』

き、キザ過ぎでしょ! あいつっ!

あ、ああぁぁあぁ〜〜〜〜〜
ふ、フフォォオオオオオオ−−−−−−−!!!!!



ハッキリ言って相談できるような状態じゃなかった。
446 :あたしの兄貴がこんなに格好いいわけがない :2012/08/25(土) 03:49:54.98 ID:OgNoMljW0


日も少しずつ傾きだした頃。

「ゴメーン。今日は、どうしても
しなきゃいけない用事があるから。また、今度ねっ」
部活が早く終わった日は
大抵真っ直ぐ家には帰んないんだケド……。
うやむやにいうあたし。

「何!? 何!? キリノー? 
もしかして、カレシーー?」

「えー!? ほんとー桐乃ん?」

あたしのもう一人の親友の加奈子。
読モ翌友達でもある、ランちん。
せっかく煙に巻こうとしてるのに食いかかってくる。

「加奈子。桐乃も忙しいみたいだし
話はまた今度しよ? ね?」

さっすが、あやせ!

「あんだよ、それ! 読モしゅちょーかよ!」

「べ、別にそんなんじゃないって? ね? あやせ? ランちん?」

「別にそんなんじゃないよ」

「あはっ、そーだ! 加奈子! 
今度、桐乃の家で遊びにいった時聞くっていうのはどう?
私もまだ、桐乃の部屋おじゃましたことないし。
桐乃? 駄目かな?」

「それ名案! 桐乃んの部屋見てみたい!」

「加奈子も、桐乃ん家いったことねーべ?」

「えぇ!? それは、ちょっと……どーだろう?」

言葉に詰まってしまう。

だって、あいつところ構わず
昔や、昨日みたいなことやりだすし。
もし、この中のダレかが
あいつのこと、す、す、好きになっちゃったりしたらどうするワケ!?


………………そんなの



そんなの−−絶対にいやっっ!

447 :あたしの兄貴がこんなに格好いいわけがない :2012/08/25(土) 03:51:05.74 ID:OgNoMljW0
「桐乃ー?さっきから黙り込んでどーしたんだよ?」

「…………なんでもないよ?」

「もしかして…………カレシしか部屋に上げね〜みたいな?」

「ちがうっっ!」

「うわっ!」

「桐乃ん?」
「桐乃」

「じゃなくて……そう!
違うの! 最近模様替えしてて!
コーディネイトがなんか違うな〜って
ズッと昨日の晩から悩んでたの!!
だから部屋がととのっとら招待するから! ね!」

悲しいかな。
我ながらとっさの言い訳が苦しすぎる。

「桐乃んって完璧主義者っぽいもんねぇ〜」

「いししっwwww な〜んだ、えろい本でも隠してんのかと思った」

「加奈子!」

加奈子の口を一文字へとせんばかりの
勢いで引っ張るあやせ。
ってか加奈子さっきから
近からず遠からずいってることが怖い!
まぁ、どうせカンなんだろうケド。

「いひゃぃ!いっひゃいぃいい! いっぱるなー!」

「うわぁー、人の口ってあんなに横に広がるんだ〜」

冷静に実況するランちん。

「加奈子。桐乃がそんな汚らわしい物持ってるはずないでしょ?」

ぐさっ!
あたしの心臓に深く鋭利な言葉のナイフが刺さる。

「桐乃ん? 桐乃ん? 今、虹彩、消えなかった……?」

「ん? ダレの? っじゃなくて、
あやせそろそろ加奈子離してあげよ?」

「でも、桐乃〜?」

「お願いあやせ! 今度みんなで
あたしん家招待するから!」

「ホント!? 桐乃!?」

「ホント、ホント、だから。ね?」

あたしに背を向けようやく手離すあやせ。
加奈子の頬は耳まで真っ赤になり
さながら口裂け女そのものだった。

「痛っっってぇーー! あにすんだよ、ブス!」

「きゃはは! 口裂け女みたい!」

ちょっ! ランちんwwww
「ごっめーん! 加奈子。痛かったよね?
でも、加奈子があんなこと言うのがいけないんだよ?」

「ひぃっっ!?」

なぜか悲鳴をあげる加奈子。
引っ張られたとこが痛むのかな?

「とにかく、今度みんな家に上がっててよね?
じゃぁあたしこっちだから。みんなまたね!」


448 :あたしの兄貴がこんなに格好いいわけがない :2012/08/25(土) 03:52:45.67 ID:OgNoMljW0
幸か不幸か話はうまくそれたケド
結局みんなが家にきちゃう……。

とりあえず、これはまた今度考えよ。
今はあいつのことだ。

ようやく家につき
いつものようにあいつが帰ってくるまで
リビングの ソファーでくつろぐ。

幸いお母さんは、
夕飯の買い出しにスーパーに行ったようだ。

時刻を確認しようと、携帯を開く。
そろそろ高校も放課後。
帰宅部のあいつが帰ってくる時間だった。

その時、液晶画面にバカ猫の文字が
表示される。電話だ。

バカ猫こと黒猫は
あたしの裏のとも……ち、
知人である。

たまたま携帯開いてたし?
まぁあいつ友達全然いなそうだし
相手してやってたワケ。
きりりん優っしいぃ!!

「もしもし? 何なんかよう?」

興味なさげに呟いてみる。

「………………」

「へ? もしもし? もしもし?」

返事がない、まるで屍のようだ。
電波を拾うため。ソファーに立ち少しでも
高くしようとする。

「ちょっ!? えっ? 聞こえてる、黒猫? 
もしもーし、もしもーし!?」

「五月蠅いわね。聞こえているわよ」

「だったら、すぐ返事しなさいよね!
このあたしが電話で話聞いてあげようってんだから!」

「……するの初めてなのよ」

電波が悪いのかやはり聞こえずらい。

「え? なんて? もう一回言って」

「なんでも無いわ。それより、
ワンコールで電話に出ないで貰えるかしら?
貴女のせいで、闇の眷属たる私をもってしても、
深淵なる堕天せし心の臓が幾つあっても足りないわ」

「はぁ? 厨二病、乙!!
あれはたまたま携帯いじってたら
あんたが急にかけてくるからびっくりしちゃっただけでしょ!
あと、後半違う電波混線しちゃってて意味わかんないからっ
ちゃんとアンテナ立ってんの!?」

「巫山戯ないでちょうだい、アンテナもちゃんと3本たてるし
貴女が喚き散らすから、
わざわざ迷いし子羊達の集う、かの地へと
赴いてあげたというのに、
脳から脊椎はおろか携帯までスイーツ(笑)なのかしら?」

「はぁ!? だから、
それが電波だって言ってんじゃん!
あんた、天然でやってんの!?
っていうか、あたしだってアンテナ3本だしーーっ」


そんな、他愛もないやりとりを続けるあたしと黒猫。
449 :あたしの兄貴がこんなに格好いいわけがない :2012/08/25(土) 03:53:20.76 ID:OgNoMljW0
がちゃっ!

昨日の夜以来、丸一日ぶりだった。
正確には20時間15分ぶりに聞く声である。

「ただいま」

リビングに入ってきたあいつは。
一目散にキッチンに向かうと
日課と言わんばかり、
冷蔵庫から麦茶をだしコップに注ぐと
一気に飲み干す。

手慣れたその動作には”あらゆる無駄”が
入る余地はなさそうだった。


リビングを後にしようと
ドアノブを握る寸前。


…………行っちゃう。

また、あの時みたいに。
あたしじゃ見えないぐらい遠いところに
消えていってしまう。

あんな思いもう二度としたくないっ
言わなくちゃ、昨日あんだけ考えて
練習したんだから言わなきゃっ

「ねぇ」
「……あん?」

ホント……バカなんだから。

京介は左頬に絆創膏を貼り
青あざを顔に作っていた。

あんなに、なってまで。


きゅんっ

心臓が締め付けられる。

あたしのせいであんな怪我までして。
かけずり回って。無茶やって。
守ってくれて。

ヤッパリ自分勝手かな?
めんどくさいって嫌われちゃうかな?


……………コワイ。



それでも、嬉しかった。
スッゴく嬉しかった。

不安や恐怖や焦燥、嬉しさいろんな感情が
ごちゃ混ぜになって。
心臓のテンポを速める。

昔みたいに側にいて
あたしだけを見てくれて、守ってくれる…………。
450 :あたしの兄貴がこんなに格好いいわけがない :2012/08/25(土) 03:54:44.17 ID:OgNoMljW0
昔みたいに一緒に居てほしいから

だから−−

「人生相談、まだあるから」

「それと−−一応、ええと……」

あたしにとって気持ちを伝えるのは
とても難易度が高いことだ。
そう連発できるもんじゃない。
だけど、ここまで言えたんだからっ
最後までいわなきゃ。
言わなきゃ、きっとあのバカには伝わんない。

目を合わせ、ハッキリ伝える。

「ありがとね、兄貴」

頬が紅く染まっていくのが分かる。
思わず顔をういっと背けてしまう。


あたしは思うのだった。

『あたしの兄貴がこんなに格好いいわけがない』
451 : ◆3XYrXGTOAI [sage]:2012/08/25(土) 10:46:26.88 ID:bhK53Gjf0
>>450
乙。

それとさ、何回も話を続ける人は個別スレたてた方がいいと思うんだが
452 : ◆YHxtVKAHbw [sage]:2012/08/25(土) 11:35:33.30 ID:9bWa8wUuo
>>451
俺も連作シリーズがあるから個別スレ立てようか迷ってるが、
やっぱり立てたほうがいいかな。
453 : ◆YHxtVKAHbw [sage]:2012/08/25(土) 11:37:48.36 ID:9bWa8wUuo
>>450
というわけで乙でした。
黒猫はおそらく妄想友達ではなくリアル友達に電話するの初めてだったんだなと
勝手に想像しましたww
454 :あたしの兄貴がこんなに格好いいわけがない :2012/08/25(土) 13:21:12.60 ID:OgNoMljW0

そうですね。
とりあえず、桐乃目線で話進めたら
個人的に面白そうと感じるとこだけ
ピックアップすることにします。
455 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/25(土) 22:45:16.40 ID:YMfuNngb0
>>440

別に編集の価値が無い訳じゃないんだが連続投下する人が複数人いると
誰が誰だか判らなくて整理するだけでも大変なんだ

>>451 の言う通り間を置かずに話を続けるならば個スレを立てた方が
読者にも編集人にも優しいと思わないか?
456 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/08/26(日) 01:28:37.37 ID:4AunwLtDO
>>455
悪い。
俺の悪い癖なんだが、複数シリーズを何本か一緒に書くんだよな。
んで好きなとこから書く。
今でも、数えで3ある。
増えることも考えると、個別は落ちる可能性大なんだわ。
だから、個別スレは俺には無理。
悪いな。
457 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/26(日) 02:23:35.28 ID:xcPbaBduo
そういや、あやせSS減ったね
以前はあやせ専門に書いてた人もいたようだけど
458 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/08/26(日) 09:44:52.02 ID:ti0h4Lemo
>>456
横槍だが、マナー的なところもあるから少し検討したほうがいいかも
余りシリーズ連投してスレを支配しちゃうとそのうち追い出される形になってしまいかねない
シリーズになりそうなのは幾つか書き溜めておいて
単発で終わるのだけここに投下していけばいいんじゃないかな?
459 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/08/26(日) 10:59:48.59 ID:4AunwLtDO
>>458
言い方が悪いのかな?
具体的に言うと、日向・クーデレ桐乃・一緒にいようねの三本と、不定期的に単発を投下するって話。
あと、或る結末の続きの続きも、繋ぎができてないだけでいずれ投下する。

ただ書きたいものから手をつけるから、要するに、どれからいくかがわからない。
だから個別スレだと落ちる可能性大だから怖いんだよ。

シリーズを一本、ガンガン投下してスレ独占て話じゃねーんだけどな・・・間違ってるか?

460 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/08/26(日) 11:34:03.48 ID:eKrHrySfo
>>459
まあ、どちらにせよ投下するのは書き手だからね
判断は任せるよ

ただ自分の都合でばかり物事を主張するのは如何なものかと思ったから横槍を入れただけ

なぜ、
>>455>>451が意見を書き込んだのか
読者の立場も考慮した上で検討してくれればいいさ
461 : ◆3XYrXGTOAI [sage]:2012/08/26(日) 14:22:24.19 ID:3r8q9gNT0
>>451です。
読者の立場からいうと、話が途切れたりするから、個別スレ立ててくれた方が有難いんだよね。
でもまぁ、俺たちは読まさせて頂いてる側だから、文句は言えないけどね。
>>460の言う通りに、最終的な判断は書き手に任せます
462 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/08/26(日) 20:32:00.39 ID:4AunwLtDO
うーん・・・まあ、検討してみるよ。
とりあえずシリーズ物でも、投下の一回一回は完結しているから、暫くはそれで勘弁してくれ。
>>457のように書かれたりすると、つい悪い癖が出たりするんもんでさww
そんなわけで次レスよりあやせ物投下。
463 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/08/26(日) 20:33:19.08 ID:4AunwLtDO

「そんなあなたのことが大好きです」

夕闇が空を覆う少し前の赤い世界。
その中で私の大好きな人は顔を真っ赤にして・・・。

『さようなら私。こんにちは私』
464 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/08/26(日) 20:35:01.70 ID:4AunwLtDO

「・・・驚きました?」

私は自分の顔が熱いのを意識しながら、それでも強気に笑顔を浮かべた。
ただの虚勢なんですけどね。
それでも件の人は十分に嵌ってくれたようで、

「・・・今年最大の驚きだよ・・・」

私が望む以上の言葉をくれた。

「そうですか?実際私の好意には気づいてくれてるものと思ってましたが」
「・・・お前の行為のどこに好意があったというんだ?」
「主にハイキックです」
「あれって愛情表現だったのっ!?」

面白いようにツッコんでくれるお兄さん。
私はクスクスと笑いながら言葉を重ねていく。

「はい。渾身の愛情表現です」
「マジかよ・・・俺そうするとだいぶ愛されてたんだなあ・・・」

しみじみと吐息交じりに言うお兄さん。
その顔には僅かながらでも喜色が見えて少し嬉しい。
でも・・・っそんなことはおくびにも出さない。

「そうですね。殺したいくらいに思ってましたから」
「それは好意じゃなく殺意ですよねっ!?」
「ほら、殺したいほど愛してるってあるじゃないですか?」
「それは殺意前提の愛情だからな!?先には俺の死体しかないからなっ!?」
「大丈夫です。私はたとえ死体のお兄さんでも愛する自信があります!」
「俺にその覚悟がねーよっ!てゆーかマジで怖いからもう勘弁してください!!」

ガバッと頭を下げたお兄さん。
暫くしてどちらともなく笑いあう。
465 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/08/26(日) 20:36:26.96 ID:4AunwLtDO

「はは・・・冗談はさておき、マジで嬉しいよ」
「ふふ・・・半ば冗談じゃないんですけどね」
「そうかい・・・」

呆れたように肩を竦ませながら、お兄さんは苦笑を浮かべる。

「なにはともあれ・・・ありがとうあやせ」
「告白にお礼とかおかしくないですか?」
「いやまあそうなんだけどよ・・・」

困ったような顔をして頭を掻くお兄さん。
知ってますよ。
情報はすでに入手済みです。

「いや実はさ・・・今俺はある事情によって」
「桐乃のことでしょう?」
「え?知ってんの!?」
「はい」
「なんで!?」
「貴重な情報源がありますから」

驚くお兄さんを尻目に、私は最近知り合った、小さくて、少し電波な友達を思い浮かべた。

「相変わらず恐ろしい奴だな!?」
「相変わらずとは・・・どういうことでしょうか?」
「マジすんません!謝りますから目から光彩を消すのはやめてください」

・・・相変わらず土下座の似合う人ですね。

「もう、顔を上げてください。怒ってなんかいませんから」
「そうか?」
「ええ。土下座が板につき過ぎていて、少し呆れましたけど」
「いやあそれほどでも・・・」
「褒められたと思ってるっ!?」

全くこの人は・・・ふふ。

「はあ・・・結構緊張して告白したのにグダグダじゃないですか」
「はは、わり」

困ったような笑顔を浮かべながら立ち上がるお兄さん。
・・・たぶん無意識なんだろーなこーゆーの。
どんな場面でも、気が付けば和やかな雰囲気になっている。

「ま、いいです。思いは伝えましたから」

きっとこの人は、誰とでもこんなふうに気が付けば笑っているのだろう。
だからこそ、ライバルは多いわけなんですけど。
466 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/08/26(日) 20:37:24.90 ID:4AunwLtDO

「まだ答えは出てないんですよね?」
「あ、ああ・・・桐乃とのことがケリつくまでは」
「・・・妹の為に彼女と別れたなんてドン引きでした」
「うう・・・それに関しては耳が痛い・・・」
「でもだからこそ・・・」

私はここで思いっきりお兄さんに顔を近づける。
案の定、驚いて顔を真っ赤にするお兄さん。
よしいいもんみーれた。

「私にもチャンスが出てきたんですもんね」

目の前でにっこりと微笑んであげると、ますます顔を真っ赤にする。
ああもう。
本当に可愛らしい人だ。

「お、お前な・・・」
「これで私も参戦決定です」

顔を離しつつ、目の前でくるっと回転して見せる。

「覚悟しててくださいね?」

ウインクしながら言った私の言葉に、お兄さんは口を金魚のようにパクパクするばかり。
暫くの間があって、結局お兄さんはため息をつきつつ一言。

「その言葉は殺害宣言かよ?」
「ええ。そうかもしれません」

シャレになってねーや。
皮肉るように呟いて、お兄さんは相好を崩した。
私はその反応に満足しつつ、そーだと思いだした。

「あともう一つ、致命傷を与える言葉がありました」
「本気で[ピーーー]気ですねあやせさん」
「ええ。新しい友達から頂いた貴重な言葉です」
「・・・いってみ」

少し身構えたお兄さんに、私は殊更笑顔を深くして言った。

「もしお兄さんが望むのなら・・・メガネだってかけてあげます!」
「ぶはぁ!黒猫!あの野郎!!」

思い切り咳き込むお兄さんを尻目に私は大声で笑った。
そうして私は思いを馳せる。
さようなら、昨日までの天邪鬼な私。
こんにちは、今日からの素直な私。
これから私は、この恋心と真剣に向き合っていくのだ。

END
467 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/08/26(日) 20:39:15.07 ID:4AunwLtDO
以上です。
今更ながらですが、10巻のネタバレ有りなんで閲覧注意です。書き忘れました。
468 : ◆3XYrXGTOAI [sage]:2012/08/26(日) 21:25:22.18 ID:3r8q9gNT0
>>467
乙。
久しぶりにあやせSSの良いもんがみれた
469 : ◆YHxtVKAHbw [sage saga]:2012/08/26(日) 21:26:27.26 ID:czvnechao
>>467
乙です。
すっかり黒猫とも打ち解けてるようでほほえましいw
[ピーーー]の部分は、殺す、でしょうか?
470 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(佐賀県) [sage]:2012/08/26(日) 21:47:13.38 ID:0paDqPGPo
もしかして
あやせってヒロインの一人なんじゃね
471 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/26(日) 23:19:02.01 ID:nyV9R7ux0
>>470
当たり前じゃあ!!
472 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/08/26(日) 23:29:23.67 ID:0XjP1frro
乙。あやせSSでシアワセ

>>469
何言ってんの?あやせたんは天使だよ
473 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/08/26(日) 23:30:04.04 ID:0XjP1frro
ごめ
>>470
474 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/08/26(日) 23:39:31.73 ID:4AunwLtDO
>>469
なんか俺のsagaが役に立たねーんだよ?
sage saga←書き方これであってるよな?

>>470
おお。最近俺も気づいたww

ちなみに、さ。
コレの悲恋バージョンもあるんだけど・・・読む?(;´ω`)
475 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(茨城県) [sage]:2012/08/26(日) 23:44:41.64 ID:y1EqfI5Do
乙〜
>>474
それでいいはずだけどメ欄にはsageしかないね……
あ、あと俺はハッピーエンド主義者なんで個人的にはあんまり……
476 : ◆6U1bthnhy6 [sage saga]:2012/08/26(日) 23:50:47.32 ID:4AunwLtDO
オッケー書かないd(゚ω゚)
俺もハッピー至上主義だからな!
でもなんつーか・・・この二人書くままに書いたら、悲恋endまっしぐらでよー・・・軌道修正に手間取った手間取った(苦笑)

>>475
あれマジだ!(;゚д゚)
チェックがいけねーのかな・・・とりあえずこれでどーだ?
477 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/26(日) 23:54:11.44 ID:kj2uzu0Yo
吾輩は禿しく読みたいですお!
なんつーかあやせって笑顔の影で泣いてる姿が似合うと思うんだよね
もし時代劇だったら政略結婚で無理矢理嫁がされる旗本や商家の娘みたいな感じで
478 : ◆YHxtVKAHbw [sage saga]:2012/08/27(月) 00:00:38.04 ID:uEGSXFTvo
>>474
メール欄に[sage saga]と書くだけだよ。
479 : ◆6U1bthnhy6 [sage saga]:2012/08/27(月) 00:19:17.23 ID:af2Zcm1DO
>>477
いや、大したことないからやめとけやめとけ(゚д゚)ノシ

>>478
できたよできたよw
480 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/27(月) 05:59:59.15 ID:pwDhPHqDO
…はぁ。
481 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福島県) [sage]:2012/08/27(月) 08:44:33.06 ID:XIZsWVLyo
散々ハイキックで蹴っ飛ばしておきながら今更私も参戦とか都合良すぎじゃね?
これまでの自分の所業を心底反省して泣きながら土下座する勢いじゃないと許せない
482 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/27(月) 08:59:00.78 ID:egM9VW4IO
前のスレであやせとロックで書いていたんだけど、中途半端なままにしてしまったから

今から完成品を投下します。

ロックの口調とかよく分からないし、文体もまとまり書いちゃってるけど、良かったら批評して下さい。
483 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/27(月) 09:00:21.46 ID:egM9VW4IO
ロックの初恋

「よぉ?っす!あんちゃん!超久しぶりじゃん?う?っと3ヶ月くらい?」
「・・・2週間前に会ったろうが。いくらなんでもお前ボケるの早すぎじゃね?」
「オーッ、さすがあんちゃん!切れ味鋭いね!で、今日は何しに来たの?あ、お父様から伝言なんだけどさ!ねーちゃんと風呂入るのはまだダメだって!」


ちわーっす。俺の名前はロック!本名じゃないけど俺の魂の名前なんだ。なんでこんな名前にしたかって?ハハ、気にしない気にしない。


「もう、お客さんに失礼でしょ?。ごめんねきょうちゃん。おじいちゃんがお父さんにあの事言っちゃったみたいで」

今話したのは俺のねえちゃん。田村麻奈美って言うんだ。で、今姉ちゃんに謝られていたのが高坂京介。俺のあんちゃんで命の恩人だ。

「おい、なんでこのタイミングでその黒歴史を思い出さなきゃならんのだ。もう大分前のこったろ?てかジジイ!」
「おじいちゃんなら今いないよ。元気なうちに海外に旅行したいっておばあちゃんと出かけてるんだ。」
「そっ、そうか。なら帰ってきてから」
「そんなことより」

あれ?知らない声がするけど・・・誰かいるのかな?
484 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/27(月) 09:11:51.40 ID:egM9VW4IO
見つけた。長い黒髪のすっごい美人。背は俺より少し高いかな?

「お兄さん。お姉さんとお風呂ってどういうことですか?」

あれ、なんかむっちゃ怒ってんなこの人。なんでだ?

「あ、あやせ。話を聞いてくれ」

あんちゃんがむっちゃビビってる。やべえよこの人!

「そんなに怯えられても傷付くんですけど。まあ、今日はお姉さんの御宅ですし1回までは許してあげましょう。ところでお姉さん、そちらの方は・・・」

といって、矛先を俺に向ける黒髪美少女。

「あ、あやせちゃんは会うの始めてだったっけ?私の弟のいわおだよ?」

「新垣あやせと申します。お姉様にはいつもお世話になっております。」

と丁寧に挨拶をしてきた。しかし、冷静かつ用心深い俺は警戒を解かない。この人は怖い人に違いない!だって、あのあんちゃんがあんなにビビってるんだよ?
485 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/27(月) 09:13:26.72 ID:egM9VW4IO
「こ、こここんにちわ。僕の名前は田村いわおです。宜しくお願いします・・・」
「お、なんだロック?あやせの美貌にさすがのお前もタジタジか?そうだろ、そうだろ。なんせあやせは俺と将来を誓いあ・・・ウッ!」
「2回目ですね、お兄さん。いい加減懲りないんですかねえ。さすが変態です。」

お、俺のあんちゃんが変態?

「もう、きょうちゃん?あやせちゃん?ケンカはしちゃダメ!分かった?」
「すいません。お姉さん。」
「ああ、わりぃ」
「じゃあ上がって?今お菓子とお茶の用意するから」
つ、ついてけねえ。この絡み、ついてけねえよ。
「あんちゃん、大丈夫か?」
「はは、ロック・・・これくらい耐えられなくて男を名乗れるかっての。」
さっすがあんちゃん!よくわかんないけどカッケエ!!
486 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/27(月) 09:15:03.78 ID:egM9VW4IO
あんちゃんが新垣さん(怖いからさん付けな)のハイキックから立ち直り、俺たちは居間で姉ちゃんの淹れたお茶を飲んでいた。なんでもあんちゃんとねーちゃんが学校帰りに一緒にいるところに新垣さんが遭遇したらしい。

「ヘェ〜、新垣さんって桐乃ちゃんのお友達なんだ。」
「ええ、まあ。」
「ところで新垣さんはなんで今日家に来たの?」
「お姉さんに料理を教えて頂きに・・・」
「なんであんちゃんもいんの?」
「こーら、いわお?お客様に質問ばかりしないの。」
「へへ、ゴメン姉ちゃん。ところであんちゃんさ、さっきのお風呂の話なんだけど・・・」
「お前は黙ることを覚えろ!」
「ゴメン、あんちゃん痛いよ!」
「いわおさんでしたっけ?お兄さんと仲良いんですね。」
「そうだねえ。昔から本当の兄弟みたいだったから。」
487 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/27(月) 09:15:54.61 ID:egM9VW4IO
新垣さんがあんちゃんと一緒に家に来てから数日。俺は時折新垣さんのことを思い出していた。スゴく綺麗で礼儀正しく、ただあんちゃんに対してだけは容赦がない。なんであんちゃんはあの子に嫌われちゃっているのかな?

「ねえ、ねーちゃん」
「なあに?」
「なんで新垣さんはあんちゃんのこと嫌いなの?」
「え?あやせちゃんはきょうちゃんのこと嫌いじゃないと思うけどなあ。」
「ねーちゃんは鈍いなあ、だってあんちゃんあんなにボコボコにされてたじゃん。それに新垣さんがあんちゃんを見る目が、なんていうか生気がなかったし」
「そんなことないよ?」

駄目だ。この姉は鈍すぎる。俺があんちゃんと新垣さんを仲直りさせないと。だって新垣さんとあんちゃんは知り合いなんだろう?会うたびにあれじゃあんちゃんの身体が持たないよな。

「こんにちわ?」
「あ、あやせちゃん。いらっしゃい」

新垣さんは週に1回くらい家に来るようだ。

姉ちゃんに料理を習うそうだけど、料理が趣味なのかな?
488 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/27(月) 09:16:49.44 ID:egM9VW4IO
「こ、こんにちわ」
「あ、いわお君。こんにちわ?」

何度か会ううちに、あやせさんは俺のことを「いわお君」と呼ぶようになっている。こんな可愛い子に名前を覚えて貰うのは嬉しいけれど、俺はまだ「新垣さん」がイマイチ信用出来なかった。あのあんちゃんの悶え方。俺にはどうしてもタダの女の子には見えなかった。空手かなんかやってんのかな?

でも、新垣さんは俺にはとても優しい。桐乃ちゃんの同級生ってことは俺と同い年のハズなんだけれど、大人っていうか俺より年上って感じがするんだよね。

「いわお。」
「なに、じいちゃん?」

海外からとっくに帰ってきていたじいちゃんが俺を手招きする。

「あのあやせちゃんって子可愛くね」

じいちゃん、ヒソヒソ声をやめろ。

「さっきなんて『あ、お祖父様。お元気ですか?』って声かけられちゃったよ。じいちゃん感激!な、いわおもそう思うじゃろ?」

じいちゃん、もうヤメテ!俺じいちゃんのこと嫌いになっちゃう。

「あー、あんな可愛い子がいわおの嫁さんになってくれたらなあ。」
「じ、じいちゃん!変なこと言うなよな」
「じいちゃん別に悪いこと言ってないも?ん。そうなって欲しいなあって思っただけだも?ん。」

そういってじいちゃんは逃げ去っていった。でもじいちゃんが言ってた通りにもしなったら・・・俺何考えてるんだろ。「新垣さん」はもしかしたら、怖い人かも知れないし。あんちゃんの事嫌いな人なんて好きになれないしな。
489 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/27(月) 09:17:36.32 ID:egM9VW4IO
俺と新垣さんが会ってから1ヶ月が経った頃、あんちゃんがひとり暮しをすることになった。なんでも勉強に集中する為らしい。姉ちゃんはあんちゃんの引っ越しパーティーをすると大はしゃぎだ。

「いわおも来る?きょうちゃんも喜ぶと思うよ?」
「俺は良いよ。その日用事入れちゃってんだよね。あんちゃんには宜しく言っておいて。」
「そっかあ、分かった。」
「ちなみにねーちゃんの他には誰が来るの?」
「桐乃ちゃんには来てもらうかな。うーん、きょうちゃんのお友達でいわおが知っているのはあやせちゃんくらいだと思うよ?」
「あ、新垣さん?」
「そう。お姉ちゃん言ったでしょう?あやせちゃんはきょうちゃんのこと嫌いじゃないって。あやせちゃんの他にもきょうちゃんのお友達が沢山来るからお料理頑張らないとねえ。」
490 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/27(月) 09:19:02.31 ID:egM9VW4IO
あんちゃん、新垣さんと一緒で大丈夫かなあ・・・

「ただいまー」
「お、ねーちゃんじゃん。おかえりー」

件のパーティーが終わったらしく、帰ってきた姉ちゃんは少し疲れているように見えた。

「ねーちゃん?何かあったの?」
「ちょっとねー。でも大丈夫。何でもないよー。」
「新垣さんとあんちゃんは大丈夫だった?」

この質問に「ギクッ」とわかりやすい反応。へへっ、ねーちゃんチョロいな。

「で、あんちゃんは?無事?」
「いわお!?貴方何考えてるの?」

新垣さんがあんちゃんボコしたんじゃないの?と、その時

「失礼しまーす。」
「こ、この声は新垣さん!?」

玄関に駆けつけると、そこには新垣さんがいた。興奮してるのかな?顔真っ赤なんだけれど。

「あ、いわお君?こんにちわ。」
「こ、こんにちわ。」

あんちゃんの安否を確かめようにもどう切り出して良いか分からない。

「姉ちゃんに用だよね。ちょっと待ってて。」
「はい、おねが・・・待って!」
「え?」
「あの、いわお君に聞いた方が良いかもしれない。」
「俺に?何?」
「お兄さんのことなんだけど・・・」
491 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/27(月) 09:19:45.74 ID:egM9VW4IO
あんちゃんの話題をそっちから振ってくるとは・・・これは好都合!

「悪いけど、公園に行かない?あ、お姉さんは呼ばないで・・・」

ここじゃ話せない話をするつもりなのかよ・・・

「で、用事は何?」

近くの児童公園まで出掛けて来た訳だけれど、ここでしか話せない話ってなんだ?

「あの、お兄さんの好きな食べ物って知ってる?」
「何で俺に聞くの?姉ちゃんでも良いじゃん」
「そ、それは・・・そうなんだけど・・・」

なんか、俺の話し方冷たかったかな。俺、別に新垣さんのこと嫌いじゃないんだけど面と向かっていつもみたいに話せないんだよね。美人だしこえーし。それにしてもあんちゃんの好きな食べ物を知りたい?何でだろ?

「あんちゃんはねー嫌いな物は特にないと思うな。姉ちゃんの作ったものいつも美味しいって食べてるよ」
「そ、そうですか・・・」
「実は俺も新垣さんに聞きたいことがあったんだよね」
「えっ?」
「新垣さんさあ・・・あんちゃんのこと嫌いなの?」
「うん」

うわあ・・・やっぱりだ・・・姉ちゃんのほんわかした頭じゃ気付かないかもだけど、俺は初対面で見抜いたよ?
492 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/27(月) 09:22:58.14 ID:egM9VW4IO
「で、今日あんちゃんに怪我をさせちゃったから一応お詫びをしたいって所?」
「ち、違う!何でそうなるの?」

え、違うの?それしか考えられないんだけど。

「実は今日こんなことがあって・・・」

そうして新垣さんは今日のパーティーで自分があんちゃんの世話係兼監視役に選ばれた事を説明してくれた。とても信じられないような話だったけれど、嘘はついてないような気がする。だって目がマジだったからな。

「へえー、新垣さんって優しいんだな。」
「え?」
「だって桐乃ちゃんの為に嫌いなあんちゃんの好きなもの調べてさ。作ってあげるつもりだったんでしょ?優しいじゃん。」

新垣さんは俺の言葉を聞いてじっと俺を見つめ、そして首を振った。なんていうか、仕草まで可愛いんだな。俺、新垣さんのことを誤解してたかも知れない。確かに少し怖いところもあるけれど・・・きっと根は優しい子なんだ。

「ありがとう、いわお君。私、いわお君に嫌われてると思ってた。」
「なんで?」
「いわお君に初めて会った日、いわお君の前でお兄さんを蹴っちゃっていわお君の顔が引きつってたからさ。その後もなんとなく避けられてるような気がしてたし。」
493 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/27(月) 09:24:25.49 ID:egM9VW4IO
概ね正解。反論出来ねー

「でも、いきなり私が押しかけたのにこうして公園まで来てくれて。相談にものってくれて。なんかお兄さんに似てるよ、いわお君。」

そう・・・なのか?あんちゃんが、俺や姉ちゃんの為に頑張ってくれる熱い人だってのは知ってたけどさ。でも、新垣さんはあんちゃんのこと嫌いなんだよね。あんちゃんに似てるって(苦笑)

「とにかく、今日は相談にのってくれてありがとう。それじゃあ。」
「またね。」
「あ、そうだ!」
「ん?」
「連絡先・・・教えてくれない?」

その日以来、新垣さんは家に来なくなった。あんちゃんの世話で忙しいんだろう、せっかくメアドを交換したのにメールも来ない。ふとそうしたことばかり考えてしまう。

「いわお?」
「じいちゃん!なにへこんでんだよ!」
「あやせちゃんが来ないよ?。寂しいよ?」
「じいちゃん、本気で落ち込むなよな?」
「いわお!何を甘いことを言っとるんじゃ!あやせちゃんに彼氏が出来ていたらどうするつもりじゃ!」
「どうもしねぇよ。」
494 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/27(月) 09:25:44.90 ID:egM9VW4IO
あれ、なんで俺まで不機嫌になってるんだろう。

「いわおだってあやせちゃんに会いたいくせに?」

確かに今まで良く家に来ていたのに急に来なくなったから気にはなるけど・・・きっと、今はあんちゃんのお世話で頑張ってるだけだよな。

「いわお?いわお?ちぇ、じいちゃんのこと無視するの?じゃあじいちゃんも怒っちゃうもんね!ぷんぷん!」

このじいさんに呆れて来なくなったのかもな。

新垣さんが来なくなり殆ど2ヶ月が過ぎようとしていた。やっぱ今まで来ていた人が来なくなると寂しいよな。

明日はあんちゃんとねーちゃんの受けた模試の結果発表の日。あんちゃんと新垣さん、上手くやってっかなー。電話でもかけてみっか。

「よーっす、あんちゃん!手を怪我したんだっけ?大丈夫?」
「もう1月も前だハゲ。要件は3行にまとめてくれよな」
「あ、あんちゃんなんで俺には冷たいの?それはいいけどさ、明日の模試の結果発表自信あんの?」
「お前は人の神経をすり減らす天才だな!」
「ゴメン、ゴメン」
「まあ、どうだろうなあ。」
「自信ねえの?」
「まあ、英語以外はいけると思うけどな。」
「そっか。」
「なんだよ、あんま興味なさそうじゃねえか。」
「いや、そんなことねえって!」
「なんだ、他に用事でもあんのか?」
「いや、新垣さんにあんちゃんがボコられてないか心配でさ。」
「余計なお世話だ。それにお前まであやせがここに来てたこと知ってんのかよ。もうあやせは来てないんだ。模試が終わるまでっていう約束だったからな。」
495 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/27(月) 09:26:27.63 ID:egM9VW4IO
え?じゃあ、なんで家に来ないままなんだろう?

「お前、あやせになんか用があんの?伝えとこうか?」
「いや、別にないんだけど。前は良く家に来てたのに最近会ってないからさ。どうしたのかなって。」
「あいつも大変だったからな。ストーカーにつかれてたんだよ。」

えっ?新垣さんが?

「いや、とっくに解決したんだけどな。」
「そっか、そりゃ良かったぜ!」
「まあな、また落ち着いたらお前の家に行くよ。」
「ああ、来てくれよあんちゃん!」
「じゃあな、ロック。」

ストーカー、かあ。でも解決したなら良かったな。それにしても心配だな。一回連絡をとってみっか。

「もしもし。」
「あ、新垣さんですか?田村です。」
「いわお君?久しぶり!どうしたの?」
「いや、ストーカーにつきまとわれてたって聞いて心配でさ。」
「お兄さんに聞いたの?もう、おしゃべりなんだからー」

あれ、あんちゃんと仲直りしたのかな?あんちゃんのことを嫌いな子の話し方には聞こえないけど・・・

「でも、もう大丈夫なんだって?良かったな。」
「うん。ありがとう。用事はそれだけかな?」
「え?う、うん。じゃあな。」

やっぱりいきなり電話なんかかけちゃ迷惑だよなー、俺のバカバカバカ。

「ちょっと待って!」
「え?」
「今から会えないかな?前の公園で。」
「何で?」
「少し話したいしたいことがあって。」
「分かった。」
496 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/27(月) 09:28:44.34 ID:egM9VW4IO
ストーカー対策ならあんちゃんのお父さんとかの方が良いと思うけどな。

「ありがとう来てくれて。」
「いや、別に良いよ。」

久しぶりにあったけれど、やっぱり可愛いな。

「で、相談って何?」
「私ね、いわお君に嘘ついてたんだ。」
「嘘?」
「本当はね、お兄さんのこと・・・嫌いなんかじゃなかったの。」
「気付いてたよ。」
「えっ?」

ついさっきだけどね。新垣さんが、俺の大好きなあんちゃんと仲良くなれない訳がないよな。だって、新垣さんは優しいもの。

「新垣さんは優しいもん。あんちゃんはたまに熱くなってバカやっちゃうけど、新垣さんなら分かってあげられるし、許してあげられる。」
「そう、かな?」
「うん。」
「でも、私今までお兄さんのこと一杯傷つけてきた。ヒドイことも言ったし暴力もふるった。」
「知ってるよ。」
497 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/27(月) 09:30:15.50 ID:egM9VW4IO
この目で見たしな!

「言いたかったことってそれだけ?」

ぶっちゃけ、目新しい話は聞かなかったな。

「・・・」

あれ、黙りこんじゃったよ。ああ、俺またドジッちゃったか。「知ってるよ」なんて冷たすぎるよな。よし、フォローするぞ!

「でもさ、あんちゃんはきっと気にしてないよ。新垣さんが困った時、あんちゃんなら絶対に助けてくれる。あんちゃんはとても頼りになるんだ。例え、何があっても。」
「そんなこと、知ってるよ。」

そう、だよな。あんちゃんと一緒にいたら誰でも気付くよな。てか、あんちゃん褒めてるだけじゃフォローになってなかったな。

「私は今までずっとお兄さんに嘘をつき続けてきた。私自身にも。今更、正直になんてなれないよ。それにね、いわお君に相談したい話はこれからなの。」

あ、そうなの?
498 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/27(月) 09:34:42.21 ID:egM9VW4IO
「私ね、本当は・・・お兄さんのことが本当は好きなの。」
「えーっ!」

新垣さんが・・・あんちゃんのことを好き?

新垣さんとあんちゃんには仲良くなって欲しい。それにしても予想外すぎるよ!でも、何で俺がこんなに動揺してるんだ・・・

「いわお君、私、お兄さんに告白しても良いのかな?お兄さんやお姉さん、桐乃は許してくれるかな?私、もう嘘吐きたくないよ。」

あんちゃんはバカで突拍子もないことばっかするけど、優しいからな。姉ちゃんもそんなあんちゃんに惚れたんだよな。新垣さんもきっとそうだ。桐乃ちゃんはもう何年も会ってねえけど、あんちゃんにベッタリだったからな。多分、今でもそうなんだろ。

新垣さんもあんちゃんに負けねえくらい優しいからな。だから、こんなに悩んでるんだ。

くそ、何自分のなかでしみじみしちゃってんだよ俺。俺に思い切って相談してくれた新垣さんの背中を押してあげられない理由でもあるのかよ?

いや、あるんだよな。こんなになるまで気付かなかったけどさ。俺、新垣さんに好きな人がいるってきいてショックだったんだよ。

最初に会った時はスゲー怖い人かもと思ってたけどさ。思いやりがあって、気配りも出来て。

じいちゃんが変なこと言ってきた時に、新垣さんが彼女だったらとか考えちまってさ。新垣さんが家に来なくなった時、俺寂しかったよ。
499 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/27(月) 09:35:34.68 ID:egM9VW4IO
なんのことはない、俺は新垣さんのことをいつの間にか好きになっていた。

もし俺があんちゃんに告白するなって言ったら?新垣さんは告白をしないかもしれない。もし、新垣さんがあんちゃんと付き合ったら。きっと俺は泣いてしまうだろう。

「いわお君、私、どうしたら良いの?最近私お邪魔してなかったでしょう?お姉さんを裏切ったのに、行くことなんて出来なくて。でも相談出来るとしたら、いわお君だけなの!」

うっすら涙を浮かべて、俺の答えを持つ新垣さん。俺はどう答えて良いか分からない。いっそ、自分の気持ちをこの場でぶつけられたらどんなに楽だろう。

でも、もし、もしあんちゃんが俺みたいになったら、何も言わずに応援するハズだ。自分に嘘をついてでも、大切な人の為に行動するハズだ。へっ、そう考えたら俺って女々しいよな。

「正直になりなよ、新垣さん。」

俺はそう答えていた。

「新垣さんは自分に正直になっていい。誰かの為に我慢しなくても良い。それで何か問題が起こってもあんちゃんが何とかしてくれるよ」
500 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/27(月) 09:36:15.27 ID:egM9VW4IO
そう、あんちゃんならなんとかしてくれる。絶対にな。

「そっか、そうだよね。いやだなー私、お兄さんが何とかしてくれない訳ないのにね。」

新垣さんは全てに吹っ切れたかのような晴れ晴れとした笑顔になっていた。

はあ、これが失恋かあ。目の前の新垣さんの笑顔に俺の心はズタボロだよ!かっこつけた癖に俺の方が泣けてきたわ!

「ありがとう、いわお君。やっぱりいわお君はお兄さんに似てるよ。」

まあ、でも良しとしよう。新垣さんが喜んでくれたなら。ロックの道は険しいぜ。

「そうだ。前から言おうと思ってたんだけどさ。その『新垣さん』ってやめてくれない?あやせ、で良いよ。」

この女、俺が惚れてたって知ってていたぶってんじゃねえの?

「だって私たち『友達』じゃない!」

そーだよ。友達だよ(泣)

「あれ、いわお君なんで泣いてるの?」
「へへっ、なんでだろうな。全然大丈夫だぜ?」
「本当に?じゃあ、私もう行くね?」

本当に俺のことは眼中にないって感じだな。

「またね、いわお君!私、頑張るから!」

そう言って、新垣さん・・・いや、あやせは去っていった。

今日ははしゃぐ元気もなくしちまった。でも、後悔はしていない。

あんちゃんなら、きっとあやせと上手くやってくれるって信じてるからな。

【10巻のラストへ続く】
501 : ◆YHxtVKAHbw [sage]:2012/08/27(月) 10:45:50.32 ID:uEGSXFTvo
>>500
乙乙。
ロックも災難だなww 失恋確実の相手に惚れるなんてww
502 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/27(月) 11:00:53.17 ID:af2Zcm1DO
>>500
乙。
あれー?最後にロックが先に帰ったあやせを追いかけてく話、あれの作者かと思ったんだけど、違ったか。
あっちはロックに目があったんだけどなww
503 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) [sage]:2012/08/27(月) 21:47:55.75 ID:xCQXqRBAO
>>500
乙ですます
ロックいきて><

あやせ様の下僕達に埋められてしまいそうだが、あやせが京介に振られる前提なら、芽が有りそうな気がする
京介に埋められ、傷心のあやせをロックが慰めていい感じになるも、それが卑怯に思えたロックが身を引こうとする話はよ書けください
504 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/08/28(火) 09:12:37.27 ID:FX4FqTfIO
>>501
読んでくれてありがとう。

>>502

そんな方がいらしたんですか。パクリみたいになっちゃったかなあ。

>>503

ご要望に沿えてるか分からないけれど、参考にして続編を書いてみました。良かったら読んでやって下さい。

ということで、>>500の続きを投下しますね。
505 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/28(火) 09:16:44.84 ID:FX4FqTfIO
>>504でsageにし忘れた。初心者だから、こういうことするかも。ごめんなさい。

続編はロック視点とあやせ視点から入っていきます。京介×あやせ派にはもしかしたら不満かも知れない。
506 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/28(火) 09:17:29.61 ID:FX4FqTfIO
ロックの逆襲

(あやせ視点)

お兄さんの驚いた顔を私は直視することが出来なかった。

いつも、私を助けてくれたお兄さん。そんなお兄さんを私はいままでヒドいことばかりしてきた。でも、何回ヒドイことをしても、彼は私を助けてくれた。

何故今まで言い出せなかったのだろう。とっくに気付いていたはずなのに。

私はお兄さんを好きだった。そして今、その想いをようやく伝えることが出来たのだ。「正直になっていい」という彼の言葉を支えとして。

「あやせ」
「は、はい」
「素直にお前の気持ちは嬉しい」

今まで私の気持ちに気付かなかった鈍いお兄さん。私の想いをどう受け止めてくれたのだろう?

「だがな、あやせ。お前と付き合うことは出来ない」
「知ってます。桐乃のことですよね?」
507 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/28(火) 09:18:24.71 ID:FX4FqTfIO
桐乃が、お兄さんに彼女を作って欲しくない、と思っているのは私も知っている。

「私はただ、お兄さんに聞きたかっただけなんです。私のことをお兄さんはどう思ってくれているのか」

お兄さんを散々傷付けてきた私。でも、お兄さんを大切に想う気持ちは彼女達に負けはしないから。だからこそ、お兄さんにとっての私という存在を確かめたいのだ。

「俺にとっての、あやせ、か」

お兄さんは苦笑いをしながら

「なあ、あやせ。俺はこういうのをうやむやにするのは本当はそんなに好きじゃない。だからハッキリ言うぞ。」

「俺にとってのお前は、妹の大事な親友だ。」

え・・・

「確かに今まで俺はお前にちょっかいを出してきた。実際、お前と付き合えればなあって何度も思った。でもな、今は全くそういう気持ちにはなれない」
「それは、桐乃のためですよね?」

そうであって欲しかった。桐乃の為であれば『今』は諦めがつく。

「黒猫の為だ」

お兄さんの一言に私の最後の希望が崩れていくのを感じた。黒猫さん。彼女が・・・お兄さんにとって大切な人。その現実をまざまざと見せつけられたような気がして、いたたまれなかった。
508 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/28(火) 09:19:08.01 ID:FX4FqTfIO
「分かってくれるよな、あやせ。黒猫は俺と桐乃のわがままを聞いてくれた。それでもいい、と。それでも俺を好きでいてくれる、と。俺はそんな黒猫を裏切ることは出来ない」

お兄さんは最後に決定的な追い打ちをかけた。

「お前は『妹の親友』だ。そして、俺にとってもかけがいのない『友達』だ。これからもずっとな。」

「だから・・・それ以上を俺に求めないでくれ。そうしたら、俺はお前を拒まなくちゃならなくなる。」

「すまん!あやせ!」

分かっていたことのような気がする。優しいお兄さんだからこそ、黒猫さんを裏切れないこと。私に淡い希望を持たせ続けないように、わざとハッキリと言ってくれたこと。

「・・・してくれ」
「え?」
「結婚してくれ、って言ってくれたじゃないですか!黒猫さんと付き合うよりも前に!私は、私のことは裏切れて、黒猫さんはダメって。そんなのないですよ・・・」

私は正直に言った。何もかも。無様でも良い。全ての想いを伝えきった。何て言われても良い。ただ、もう我慢はしたくない。正直にいたかった。そうさせてくれた人がいたのだから。

「ああ、言ったよ。確かにな。」
「あれは、やっぱり嘘だったんですね?」

最後の勇気を振り絞って聞く。望む答えなど返ってくるはずがないのに。

「今となっては言い訳出来ないな。そうだよあやせ、あれは嘘だ。冗談だったんだよ」
「・・・わざわざ付き合って頂いてありがとうございました。お兄さん。ご迷惑をおかけしてすみません。失礼します。」

もうこれ以上聞いたら、生きていけそうにもない。

「あ、あやせ。俺は」
「さようなら!」

今は涙を隠してこの場から逃げることしか出来ない。でも今の私は1人で帰る気力すらない。

誰かに助けて欲しい。でもお兄さんに頼ることは出来ない。桐乃、黒猫さん、お姉さん。駄目だ。助けてなんて頼めない。

今の私が頼れるのは彼しかいない・・・
509 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/28(火) 09:19:48.29 ID:FX4FqTfIO
(ロック視点)

「いわおー?もう少しご飯食べなきゃ駄目だよ?」
「ほっといてくれよねーちゃん。食欲ないんだ。」
「でもここ何日か、あまり食べてないし・・・お姉ちゃん、いわおが好きなもの沢山作ったから今日は沢山食べて。いい、絶対だよ」

あやせの想いを聞いてから数日が経った。『友達』としてあやせを応援した俺だが、いまだショックから立ち直れずにいた。

「いわおー、じいちゃんお前の唐翌揚げもらって良い?」
「おじいちゃん!いわおに食べさせなきゃ!いわおお腹減ってるでしょ?最近、何かあったの?」
「麻奈実ー、お前も鈍いのう。あやせちゃんが家に来ないからいわおは落ち込んどるんじゃよ。当分、食欲なんて戻らんからその唐翌揚げワシにくれ」

じーちゃん、意外とするどいな!まあ、唐翌揚げの為だってわかってるけどね。ねーちゃんは相変わらず優しい。これ以上心配させちゃいけねえよな。空元気でもいい、しっかり腹ごしらえしてもう忘れないとな。

「よっし、ねーちゃん!ロックの申し子、いわお様の完全復活だぜ!ガンガン食べるぞー」
「ちぇっ」
「良かったー。いくらでも食べていいからね。まだまだ揚げるから。」
「わーい」(じーちゃん)
510 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/28(火) 09:21:03.43 ID:FX4FqTfIO
はは、俺が心配かけてちゃいけないもんな。よしっ、今日限りで忘れるぞ・・・

プルルルッ!プルルルッ!

電話かよ!せっかく、人が重大決心をしたのに誰だよ!

「もしもし」
「グスン、い、いわお君?あやせです。新垣あやせ。ヒック」
「あやせ!?」

この俺の決心を1番揺るがす人からの電話だろ!それにしても泣いてる・・・のか?あやせというワードに反応したジイさんを見て、俺は自分の部屋へと引きこもった。

「うん、ゴメンね。いきなり電話かけて。」
「いや、大丈夫だけど。何か用?」
「今会えない?私、いつもの公園にいるんだけど」
「今は夜の8時だよ?外寒いだろ!家に来いって。それともねーちゃんに聞かれたらマズイ話?」
「うん。そうなんだ。会えない?」
「いや、そんなことないけど取り敢えず家に来て。」
「いや、行けない・・・」
「良いから来い。大丈夫、ちゃんと2人きりで話せるようにするからさ」
「え・・・うん、分かった」

あやせが泣いてるってことは・・・あんちゃんならあやせを泣かさないと思ったのに。

「お邪魔します」
「あ、あやせちゃん?いきなり来るっていうからビックリしたよー」
「お久しぶりです。お姉さん。」
「うん。あやせちゃん、お夕飯まだでしょう?食べてってね」
「いや、申し訳ないです・・・」
「ダメ。お腹空かしちゃいけないよ?」
511 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/28(火) 09:21:52.93 ID:FX4FqTfIO
ねーちゃんの台詞が田舎のおばあちゃんみたいだって誰かが言ってたけど、大当たりだな。あやせは俺と2人きりになりたいようだが、俺にそのつもりはなかった。まだな。

「ごちそうさまでした。」
「あやせちゃん、沢山食べるんだね。嬉しいなあ」

あやせの食欲は凄かった。皿の上のものを片っ端から平らげていき、ねーちゃんが「作りすぎちゃったかな」と言っていたご馳走の大半を1人で食べてしまった。ねーちゃんは喜んでいたが、これってヤケ食いってやつじゃね?まあ、たらふくメシを食えばあやせも少しは落ち着いただろう。あとは帰り道に俺があやせを送りにいけば、2人きりで話せるハズだ。

「あやせちゃん」
「なんですか、お祖父様」
「もう夜も遅い。家に泊まっていかないか?」

じーちゃん、何を企んでる?そして、ばーちゃん。止めないのか?うちの年寄り達がなんか企んでるぞ・・・

「そうだよ、あやせちゃん。」

ねーちゃんものってきたあ。

「ええ、今日は両親が家にいないので差し支えありません」
「おー、そうじゃぞ。1人で留守番よりワシらといた方が安全じゃからな」
「それじゃあ、あやせちゃんのお布団は私が敷いておきましょう。」
512 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/28(火) 09:22:59.37 ID:FX4FqTfIO
夜10時。俺たちの家だと、みんな寝付くころだ。

「お祖母様、私のお布団はどこにあるんでしょう?」
「すぐに分かりますよ」
「え?そうなんですか?」

全くばーちゃんも布団敷いた部屋くらい教えてやれば良いのにさ。

「じゃ、ばーちゃん。おやすみなさい」
「いわお、上手くやるんですよ」

何のことだ?

「いわお君!」
「お、なんだあやせ。」
「その・・・お話があるんだけど」
「ああ、そうだったな。じゃあ、寝る前に俺の部屋に来てよ」
「まあ、おじいさん。いわおが自分からあやせちゃんを部屋に誘いましたよ。」
「うむ。きょうちゃんよりよっぽど甲斐性があるのう。さすがワシの孫じゃ」

年寄りの会話の意味を理解したのは俺の部屋に入った時だった。

「なんじゃコリャー!」

なんで布団が2人分あるんだよ!しかもピッタリくっつけて!

「いわお君、どうかした?」
「あ、あやせ。今入っちゃダメだ・・・」

時既に遅し。あやせは既に俺の部屋に入っていた。

「な、ま、ま、まさかこれが私の布団・・・?」
「た、多分・・・?」

ばーちゃん、やってくれたな!覚えてろよ!

「と、とにかく布団を客間に移そう」

いつもあんちゃんが寝てる部屋のことだ。

「も、もちろん。いわお君と一緒に寝るわけにはいかないよ!」

その通りだ。でも布団を持つ前に

「でもその前に・・・話だけ聞いてくれない?」

この緊急事態よりそっちが優先か!まあ、でも・・・あやせにとてみればそうかもな

「よし、話ってなんだ?」
「・・・」

言いにくい・・・やっぱりあんちゃんのことなんだな。思い切って切り出すか。

「あんちゃんに・・・振られたのか?」
「ふふ、なんだ気付いてたの?」
「まあな、で、相談は?」

自分からは話づらいことこそ、人から聞いてやった方が思い切って話せたりすることもある。あやせの心に溜まったものを吐き出させてやりたい。へっ、俺はまだあやせに惚れたままなんだな。
513 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/28(火) 09:23:30.81 ID:FX4FqTfIO
(あやせ視点)

いわお君、気付いてたんだ。お兄さんみたいに鈍感な人だと思ってたけど。

「で、相談は?」

随分と高飛車だけど、聞いてくれた方が話しやすいかな。

「お兄さんね・・・夏休みの間に付き合っていた彼女さんがいるの。訳があって別れたけれど、まだお互いに好いてる。私はその中に割り込めなかった。」

いける、と思ったのにな。

「それで?」
「私は『妹の親友』で、お兄さんからみたらただの『友達』だって。これからもずっとって。そう言われたの」

また自然と涙が零れてくる。お兄さんにとって『友達』にすぎないと知った悔しさに。
514 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/28(火) 09:24:21.17 ID:FX4FqTfIO
(ロック視点)

好きな人に友達としか思われていなかった悔しさは言われないとわからないよな。

「それで?」
「え?」
「それであやせはどうしたいんだよ?」

俺は『友達』というワードに反応した。俺はその言葉であやせを諦めた。あやせはどうしたいんだよ?

「わたしは、わたしはお兄さんを諦めたくない!お兄さんに好きな人がいても、私がお兄さんを好きな限り諦めたくないよ・・・」

でも、と断りをいれながら

「多分、お兄さんをこれ以上想うと迷惑になってしまうと思う。京介さんに言われたの。これ以上私がせまったら『お前を拒まなくちゃいけない』って。」

あの、あんちゃんがそこまで言ったのか?信じられない。ただ、それが本当ならあんちゃんは本当に前の彼女さんが大事なんだな。キツイ言葉で『友達』を拒んでまでも。

「いわお君ならどうする?」

俺なら?

「諦める?それとも想い続ける?」

俺は、前者の選択をした身だ。だが、俺はいまでも目の前のあやせの表情1つに心を動かされている。諦めきれてなんかいない。

「いわお君、私に『正直になって』って言ってくれたよね。だから、私正直になった。結果はお兄さんに振られたけど、私はいわお君の言葉に支えられたの。」

俺の言葉が支えに?

「だからお願い。いわお君も正直になって」

俺を見つめるうるんだ瞳に、俺の『決心』は揺らいだ。分かった、俺も正直になるよ。

「俺なら諦めきれない」

そうだ、簡単に諦めることなんて出来ない。あんちゃんの為と言って俺は現実から逃げていただけだ。俺はやっぱり・・・

「俺、あやせのこと好きだよ」
515 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/28(火) 09:25:11.97 ID:FX4FqTfIO
(あやせ視点)

「俺、あやせのこと好きだよ」

え?えー!

「い、いわお君?それ本当なの?」

私のバカ。なんでこんなことしか言えないの。

「ああ、俺はあやせが好きだよ。いつからかは分からないけどな。」

そんな。私、私は自分のことばかり見て・・・お兄さんを困らせるばかりかいわお君まで・・・

「な、ならなんで私の背中を押してくれたの?いわお君が告白するなって言ったら、私は告白してなかったよ!?」

それは間違いない。私は想いを伝えた時、心に彼と彼の言葉を思い出しながら自分を支えていたのだから。

「あんちゃんならそうしただろ?あんちゃんなら自分の好きな子を応援したよ」

そういうこと、か・・・お兄さんを尊敬する彼はお兄さんのように、私を助けてくれた。

「俺はあんちゃんみたいにはなれないけどな。だって、結局あやせを悩ませちまったもんな」

十分お兄さんみたいだよ。優しいところも。そして、あの時私は傷付けてしまっただろうに、今でも助けてくれる。

気が付けば私の涙は止まっていた。私は恵まれている。こんな優しい人に支えていてもらっているんだもの。

2枚並べられた布団。私といわお君がどうにかなるなんて、あり得ないと思っていた。でも、彼の優しさは既に私のお兄さんへの想いの中に割り込んできている。目の前にいる彼を想う気持ちが変わっている自分に気が付く。

「だからさ、あやせ」

彼はこのあと、何と続けるのだろう。もしかして、さっきと同じ言葉をもう一度聞かせてくれるのだろうか。

その時、私はどうすれば良いのだろう。お兄さんへの気持ちはまだ変わらない。でも、きっとそれは彼が私の想いを支えていてくれたからに過ぎないのかも知れない。

言葉を紡ぎ出す彼の口を見て思った。彼が私に紡いでくれる言葉に身を委ねようと。

「あんちゃんを諦めるなよな」

その言葉は私が望んでいたものか、私にも分からない。

「俺、あやせがあんちゃんと上手くいくように手伝うよ。あやせがあんちゃんを諦めるかどうか迷って泣いてた時、俺、あやせがあんちゃんの事を好きって言った時よりショックだった。だから、諦めないでよ」

それが、彼の出した答えなら私は従おう。

「ありがとう、いわお」
516 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/28(火) 09:25:53.79 ID:FX4FqTfIO
(ロック視点)

なんか、こっぱずかしいこと言ったような気がするけど、まあいいか。

あやせは俺の隣の布団で寝息をたてている。あの後、力尽きたようにそのまま寝ちゃったんだ。

にしても、あやせはこんなに可愛いのに振っちまうなんてな。あんちゃんの前の彼女さんってそんなに美人なのかな。

俺は自分に正直になれたのだろうか。もし、「あんちゃんを諦めるなよな」ではなくて「俺と付き合ってくれ」と言ったらどうなっていただろう。

まあ、何にも変わらないか。どうせ、俺はあやせの眼中にないだろうからな。

あんちゃんとあやせがもし付き合えたら俺は・・・そしたらあやせはねーちゃんって呼ばないとな。それはそれで良いかも知れない。

とにかく今日は疲れた。もう寝よう。

おやすみ、あやせ。
517 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/28(火) 09:29:31.08 ID:FX4FqTfIO
【終わり】

宜しければ批評をお願いします。
518 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/08/28(火) 10:55:28.55 ID:4DVDRkJDO
>>517
乙!
俺、これ結構好きだ。
そして、

「黒猫の為だ」

この京介にマジ惚れたww
519 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方) [sage]:2012/08/28(火) 11:46:20.17 ID:paxnnhlP0
>>517


この京介の反応からしてあやせ逆転の可能性あるかもと思った

あとロックは初登場した時の姿だと見栄えが悪いので
DAIGOの姿に変換して読んでみたら結構しっくり来た
520 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/28(火) 12:52:56.51 ID:FX4FqTfIO
>>518
>>519

感想をありがとう。

本当はあやせのリベンジまで書きたかったんだけど、続編を書いたからにはロックの線を含みに残したくて、敢えて書きませんでした。

後味も内容も>>503の期待からは逸れた気がするけど、原作で不遇なロックにあやせとの夢を見させたくなってきてしまったためです。

11巻は過去編みたいだからロックの登場場面が増えることを期待しているんですが、ロックの絡んでる話がまとめwikiにも数えるほどしかなかったし、SSの中では活躍して欲しいですよね。
521 : ◆ebJORrWVuo [sage]:2012/08/28(火) 19:58:43.04 ID:oGDtPnVYP
>>517
素晴らしい!
いいものを読まさせて貰った。
京介が格好いいな。
大人になった、優しいまま厳しさを兼ね備えた京介って感じ。

個人的にはあやせの逆襲も見たかった。そして最後に全体を通した京介視点とかね。

俺も書いてみたくなってきたわ。
522 : ◆YHxtVKAHbw [sage]:2012/08/28(火) 21:20:13.42 ID:D9DKDri1o
>>517
乙乙。
京介が格好よすぎる。
優柔不断でない京介は京介じゃないwwwwww
でもこういう京介もいいね。
良かったです。
523 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/28(火) 23:48:51.23 ID:4DVDRkJDO
カッコいい京介って言えばさ、アニメの最終回。
桐乃の様子を確かめに行くとき、

「親父」
「ん・・・なんだ?」
「・・・俺が行くっ!!」
「・・・よし!行ってこい!!」

このシーンが大っ好きなんだけど、原作、あとで読んだら3行って・・・orz
524 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/29(水) 02:58:29.95 ID:GRPDIjZ2o
アニメの京介は第三者目線でかなり美化されてるからなぁ
525 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/29(水) 08:39:22.45 ID:HtheJldt0
>>517 乙乙!

面白く読ませてもらった ありがとう
たまには優柔不断じゃない京介も良いね

それにしてもまさかの「いわお祭り」wwwwww
11巻では高坂兄妹が田村家に凸するらしいから
いわおターンもあるかも知れないよ
526 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/29(水) 09:10:39.45 ID:ARFQbYbb0
>>521
>>522
>>525

感想ありがとうございます。

あやせの逆襲を読んでみたいって言われてしまったので、自分なりに続きを書いて一応完結させたのですが

(ここからはネタバレ込み)

脳内いわお祭り状態だったので、京介を空気にしてしまい、自分としてもちょっとマズイかなあと思うところがあるので、また京介ルートを書くかもしれません。

一応、次に投下するものはロックが勝利します。京介派の方には不愉快かも知れないのでご注意下さい。
527 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/29(水) 09:11:47.95 ID:vGCHjocIO
あやせの葛藤

(あやせ視点)

あのまま寝てしまったのね・・・

いわおの告白で私の心は彼に傾きかけた。いや、実は傾いたのかもしれない。

隣で眠る彼の寝顔を見てはいけない。彼の優しさに本当に心が動かないように。彼は自分に『嘘』をついてまで私を送り出してくれた。それをむげには出来ない。

学校の準備があるため、早く家を出なくては。お祖母様は既に起きていて、朝ご飯に誘って頂く。お赤飯?お祝いでもあるのかな?
528 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/29(水) 09:13:07.36 ID:vGCHjocIO
(ロックの視点)

「おはよー、ばーちゃん」

朝7時。俺が起きた時、あやせはもういなかった。考えれば昨日の俺告白しちゃってたじゃん。ああ、立ち直れねえ。

「いわお、よくやりましたね」
「ん?ばーちゃんなんのこと言ってんの」
「おじいさんから聞いてますよ」

何だよ?やな予感しかしないけど。

「いわお、昨晩の話を聞かせてくれよ」

ニヤついたじーちゃんが近づいてくる。

「じーちゃん知ってるぞ。『俺、あやせのこと好きだよ』って言ってたよな。」

ジ、ジジイ・・・盗み聞きしてやがったな。

「いや、たまたま聞こえちゃってね。そしたら、あやせちゃんもさ『ありがとう、いわお』とか言ってたし!」

偏ったとこしか聞いてねえな・・・おい、ニヤついてんだよ。その顔やめろや。

「そしたら、急に黙っちゃってさ。2人の世界に入ってたみたいだから、じーちゃん安心した」
「私もですよ。一か八かでいわおの部屋に布団を敷いてみたら、あやせちゃんにも喜んでもらえたようで、うれしいわ。いわおが大人になったお祝いにお赤飯炊きましたからね」

うちの年寄りは頭沸いてんな!

一応言っておくと、俺とあやせの間には何にもなかったからな!あー、ちょっと考えちゃったじゃんか!

「俺もう学校行くから!じゃあな!」

俺もうこの家に帰ってきたくねえな。

俺はまだあやせのことが好きだ。でもな、あやせがあんちゃんを好きな限り、俺はあやせを応援したい。あやせが俺を頼ってくれた。それだけで俺は嬉しいのだから。
529 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/29(水) 09:14:38.12 ID:vGCHjocIO
(麻奈実視点)

学校から帰るとおじいちゃんがいわおに絡んでいた。

「なあ、いわおー、教えてよー。」
「なんも教えることなんてねーって!」

おじいちゃんたら、まだあやせちゃんといわおが付き合い始めたと思ってるの?そんな訳ないじゃない、あやせちゃんはきょうちゃんが好きなんだよ?

「おじいちゃん!もうやめてあげなよ」
「麻奈実ー、お前妬いとるんじゃろ。きょうちゃんは据え膳食わなかったもんね」
「もう、何言ってるの!ぷんぷん!」
「はいはい、ごめんちゃい」

おじいちゃんはつまらなさそうに去っていった。

「ねーちゃん、助かったぜ!サンキュー」
「いわお、ちょっと待ちなさい」
「なに?」
「昨日、あやせちゃんと何があたの?」

今朝、あやせちゃんがいわおの部屋から出てくるの、見ちゃったんだよね。すごく名残惜しそうに、でも何かから逃げるようだったから。いわおとあやせちゃんの間に何かあったとは思わないけど・・・気になるじゃない?

「ね、ねーちゃん。信用してたなに」
「いや、おじいちゃんみたいなこと聞きたいんじゃなくて」

あやせちゃんがいわおに話しそうなこと。きっと私には話せないことなのだろう。きっときょうちゃんのことだ。

私がこれを聞く必要はないかも知れない。聞いてはいけないかもしれない。でも、昨日までのいわおの落ち込み方に関係があるのだとしたら。私はいわおの姉としてそれを知りたい。

「あやせちゃんから何を相談されたの?」

かまをかけてみる。いわおは『嘘』がすぐに顔に出るから分かりやすい。

「えっ!?なんのことかなねーちゃん」

図星だね。

「それってもしかしてきょうちゃんのこと?」
「何のことかなあ」
「あやせちゃんはきょうちゃんのこと好きなんだよね?」
「・・・」

やっぱりそうか。あやせちゃん、口ではきょうちゃんのこと厳しく言っていたけど、本当は大好きだったんだよね。

もし、そのことといわおが落ち込んでいたことが繋がるなら。

「いわおはあやせちゃんがきょうちゃんを好きなことを知ってたんだよね?」
「・・・」
「だけど、いわおもあやせちゃんのことが好きだった。違う?」
「・・・だとしたら何なんだよ。」

当たりだったみたいだけど・・・いわお、今日は口が堅いなあ。いつもなら「かぁー、抜けてるねーちゃんにもバレてんのかよー」ってあっさり口を割るハズなのに。あやせちゃんの秘密を守ってあげたいんだね。だったら、無理に聞き出すことはない。私はいわおとあやせちゃんを支えてあげたいだけなのだから。
530 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/29(水) 09:15:46.13 ID:vGCHjocIO
(ロック視点)

「お姉ちゃんの思い過ごしかも知れないけど、良かったら聞いてくれる?」

ねーちゃん、完璧に気付いてるな。でも、きっと深く聞いてくるつもりはないんだ。きっと俺たちを支えたいだけ。だから、こんなまわりくどい台詞で助けてくれようとする。

「ああ」

そんなねーちゃんの好意を無駄には出来ないよな。

「あやせちゃんがもしきょうちゃんのことを好きできょうちゃんに告白しても、きょうちゃんは優しいから、桐乃ちゃんとか前に付き合ってた彼女さんのことを気にして、あやせちゃんに気がないふりをすると思うのね」

その通りだよ。

「でもね、それはきょうちゃんの優しい『嘘』。あやせちゃんに対して中途半端にせずに、ハッキリ断った方があやせちゃんがむしろ傷付かなくて済むと思って、きょうちゃんが吐く『嘘』なんだよ」

そう・・・なのか?優しい『嘘』?いや、あんちゃんらしいのかも知れない。

「でも、きょうちゃんはあやせちゃんのことをスゴく大事にしてあげてるよ?桐乃ちゃんや前の彼女さんに負けないくらいに」

「だから、もしお姉ちゃんの思う通りだったらあやせちゃんにこう言ってあげて。きょうちゃんは絶対にあやせちゃんのことをみてくれているから。きょうちゃんはあやせちゃんのことを絶対好きになってくれるから、って」

ねーちゃんはあんちゃんのことが好きなハズだ。なのに、あやせのことをこんなにも思い遣れている。

「分かった」

ねーちゃんの言っていることが正しいって認めたような答えだけど、悟られちまってるんじゃ仕方がない。

「いわお、もう1つ話があるの」

なんだろう。

「いわお、お姉ちゃんさっきも言ったけど、お姉ちゃんもしかしたらあやせちゃんがきょうちゃんのことを好きだって知っちゃって、あやせちゃんのことを好きないわおが落ち込んでたんじゃないかなあって思っていて」

ねーちゃん、こんなに鋭かったっけ?それに、傷口を抉って塩をすり込むのはやめてくれ!

「でね、いわおはきっとあやせちゃんのことを好きでも、きょうちゃんとあやせちゃんの為に我慢しちゃうと思うんだ」

我慢?俺は、納得している・・・しているハズだ。

「あやせちゃんに昨日告白したっていうのはおじいちゃんの嘘なのかな?」

嘘、ではない。そこ以外の殆どは嘘だけどな!

「いわお。もし、告白したのに『あんちゃんのこと諦めるなよ』なんて言ってたら最悪だよ?」

・・・え?俺は最悪だったの。

「一度告白しておいて、頑張れよって言うのは格好良いけれど、された側からすると辛いと思う。だって、告白してくれた人のことが気になっちゃうもの」

そんなことはない。あやせは俺のことなんて眼中にないはずだ。あやせが俺のことで、悩む訳なんて、ない。

「だからね、いわお。もしあやせちゃんに言えてなかったら、ちゃんと自分とあやせちゃんがどうなりたいのかを伝えなさい。」

俺は・・・あやせとどうなりたいんだ?俺はあやせが好きで・・・でも、あやせとあんちゃんが付き合えるようにも応援した。俺は自分が何をしたいのか伝えきれていなかった。

「お姉ちゃん、『もしかして』の話を沢山しちゃったね。変な話をしてごめんね。」

いや、ねーちゃん。全部大当たりだよ。まるで見ていたかのようにな。

行ってくるよ、ねーちゃん。
531 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/29(水) 09:18:59.36 ID:vGCHjocIO
(あやせ視点)

学校帰り、いつもの公園。何年ぶりかに乗るブランコで、私は考え事をしていた。

プルルルッ!プルルルッ!

「もしもし、あやせ?」
「いわお君?」

また、私を助けてくれるの・・・?

「いやさ、あやせと会って話したくて」
「今から?」
「ああ」

もし、また彼に優しい言葉をかけられたら・・・いけない、今は会えない!

「また今度じゃダメ?」
「忙しいの?」
「いや、そんなことはないけど・・・」
「だったら会いたい」
「どうしても?」
「ああ、ダメか?」

私も会いたい。

「何度か会った公園で会えないか?ってオイ!」

ツーツーツー

電話が切れた?

「おーい、あやせ!」
「え?」

いわおが公園の入口から走ってくる。しまった、逃げられない。

「あやせ、お前も公園にいたのか?」
「た、たまたまね」
「あやせ、大事な話がある」
「ダメ!話さないで!」
「なんでだよ?」

理由なんて・・・言えるわけがない。

「いいから!帰って!帰ってよ」
「だあーっ!なんでだよ、大事な話なんだって!あんちゃんと俺の話をしたいんだ!」
「聞きたくない!」

わがままなのは分かってる。でも、いわおが守ってくれた私のお兄さんへの気持ち。私は壊したくない。

「そうかよ。でもな、あやせ。俺は絶対お前に聞いて欲しい。お前に返事をしろとは言わない。俺のひとり言だと思ってもらっていい。」

なんでこんなに真摯なの?私なんかの為に。私を苦しめないでよ。

「あんちゃんがあやせを『友達』としかみていないなんて、多分嘘だ。あんちゃんはあやせを桐乃ちゃんや前の彼女さんと同じくらい大切にしてくれる」
「で、でも。お兄さんは前の彼女さんの為に私と付き合えないって」
「あのな、あやせ。あのあんちゃんが自分に告白してくれた女の子をバッサリ振れるような人間じゃないって知ってるだろ?」

そうなのかも知れない。お兄さんは優しいから。

「もっと言えば、あんちゃんはそこまで根性がない。付き合いの長い俺が言うんだから間違いない」

そう言われればそうだ。優柔不断でチキンなのがお兄さんじゃない。

「あんちゃんはな、多分、あやせちゃんと自分は付き合っちゃいけない、て考えたんだ。でも、ダラダラ答えを先延ばしにしたらあやせを余計傷付けてしまうって思ったから、あんなに厳しいことを言ったんだよ」

いかにもありそうな話だ。あのお兄さんなら。
532 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/29(水) 09:19:39.99 ID:vGCHjocIO
「で、そんな話を私にしてどうしたいの?」
「あんちゃんが、本気であんなこと言ったんじゃないって分かっただろ?だからさ、あやせにもチャンスあるって!前の彼女なんかに遠慮なんかしないで良いって言いに来たんだよ」
「話はそれだけ?」
「え?」
「なら、もう帰りたいんだけど」

お兄さんが私の為に嘘をついてくれたというのは、私も気付いていた。でも確信出来なかった。それをいわおが認めてくれた。嬉しかった。

だけど、これ以上彼と話すと私が壊れてしまいそうだった。

「いや、実はもう1つ話がある」
「そう、早くしてくれる?寒いんだけど」
「ああ、すぐ終わる」

「あんちゃんを諦めてくれないか?」

え?

「何言ってるの?さっき、あんなにお兄さんのことを話してくれたのに。それに、昨日も!」

何を言ってるの?今更・・・その言葉は昨日聞きたかったのに。

「たしかに、筋は通っていない。おかしな話をしてると思う。けどな、これが俺の本心なんだ!」
「なっ・・・」
「俺は知りたいんだ!あやせが、俺をどう思ってくれてるのか。あんちゃんとの仲を応援するのはそれからにしたい。」

「俺はあやせが好きだ。お前さえ良ければ・・・俺と付き合って欲しい!」

私の中の何かが崩れた。
533 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/29(水) 09:20:21.91 ID:vGCHjocIO
ロック視点)

俺、やっぱり最悪かな。支離滅裂にもほどがあるよな。

あんちゃんと頑張れ、俺と付き合え。何言ってるか自分でもわかん無いよ。

「私を弄んでるの?」
「えっ?」
「『お兄さんのこと諦めるなよ』って言ってくれて。お兄さんが私のこと大切にしてくれてるって言ってくれたじゃない!」
「ああ」
「なんで、私がお兄さんを想う気持ちを邪魔するの?貴方が後押ししたんじゃない!」

か、顔が真っ赤だ。気迫が違う。俺、怒らせちまったのかな。

「ごめん」
「『ごめん』じゃない!何でって私は聞いてるの!」
「好きだからだよ!あやせが好きだからだ!」

えーい、やけだ。もう全部話してやる!

「あやせがあんちゃんのことで悩んでるのが辛かった。だから俺は相談にのった。俺なんかが出しゃばっちゃいけないと思って我慢した。でもな。あやせが他の男と付き合うかもなんて耐えられなかったんだよ!たとえあんちゃんとでもだ!」

正真正銘の俺の本音だった。

「だから、『付き合ってくれ』って言ったんだ。」

もう何を言われても仕方がない。俺は最悪な奴だ。でも、悔いはねえ。やりきったって感じだよ。
534 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/29(水) 09:22:21.62 ID:vGCHjocIO
(あやせ視点)

バカ、バカバカバカ!もう、後戻り出来ないじゃない!もう、お兄さんのことを想えないじゃない!
あんな・・・あんなこと言われて

「ごめんな、あやせ。迷惑だったよな。でも、俺も腹を括ってこんな話をしたんだ。だから・・・答えを聞かせてくれないか?」

間抜けで鈍感でお調子者で優しくて。お兄さんに似ているけど、別に好きではなかった。

でも、昨日の晩。泣いていた私に伝えてくれた彼の想い。それが私を揺さぶった。

あんなにも、率直に私への想いを伝えてくれた彼。私がお兄さんから得られなかったものを与えてくれたようだった。

私のお兄さんへの想いに偽りはなかった。でも、今は・・・私の前で緊張している小柄な男の子の方が私にとって大切な人なのだ。

「いいよ。」
「へっ?」

気の抜けたような顔をするいわお。

「いわおに好きって言って貰えて嬉しかった。お兄さんのことが好きだったけど、私の為にあんなにしてくれたいわおに好きだって言って貰えたんだよ?」

そう、あの時。私の心は違う人の方向を向いたのだ。

「好きだよ、いわお。これから宜しくね!」

お互いの想いが芽吹いて、まだ幾日も経っていないうちに

私達は恋人になりました。

【終わり】
535 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/29(水) 09:24:05.75 ID:vGCHjocIO
批評宜しくお願いします。

あと、イーモバからだと連続投稿出来ないんですね。

イーモバから外して投稿続けたんですけど、何か問題ありますかね?
536 : ◆YHxtVKAHbw [sage]:2012/08/29(水) 14:09:39.73 ID:Fxm2+e0jo
乙。
個人的にはもうすこし、あと1レスぶん位はあやせの心の中の葛藤が見たかったかな。
537 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方) [sage]:2012/08/29(水) 17:40:17.48 ID:mgZeWKpS0
>>535


面白かったよ

個人的にはロックをDAIGOの姿に変換して読んでいたから「小柄な男の子」の描写で
頭身が縮んだ小柄なDAIGOの姿が思い浮かんで思わず笑ってしまった
538 : ◆Ly8skjOOFQ :2012/08/29(水) 20:05:57.40 ID:Tbek/quh0
>>535
乙。
京介派の俺には辛い終わり方だったが…
それでも面白かったよ。
また頑張ってくれ。
539 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/29(水) 20:13:47.43 ID:c9v8MiVDO
乙彼。

あやせはホントに扱い辛いよな。
このあとロックには事あるごとに、光彩の消えたあ・・・おっと?誰だこんな時間に・・・?
540 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/29(水) 20:59:36.00 ID:6q3M3M/O0
>>535
乙です!
何だか出し切った感がある俺妹SSだけどこんな伏兵がいたとは…
これからの作品にも期待しているぜ
541 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/29(水) 22:22:22.52 ID:f6qs4tAIO
感想ありがとうございます。

>>536
題に葛藤と据えた割には、分量が少なかったでしょうか?

あまりしつこ過ぎるのもなんだと思い、少し削ったのですが・・・

>>537
ロックはイケメンではなさそうですものね(笑)

ただ、なにぶん原作でもアニメでも描写が少ないので、良く見ればかっこ良かったということにして頂ければ幸いです。それにしても、小柄なDAIGOは笑えますね。

>>538
私も京介は好きなのですが、原作のハーレム状態が許せなくて(笑)

1人くらいロックに割いてやれよ、と思い書いてみました。でも、実際はあやせには京介しか見えていないんでしょうね。

>>539
おっしゃる通りです。

まあロックはあやせにベタ惚れですから、耐えてくれるのでは・・・

>>540
マイナーキャラのSSは少ないですから、意外な絡みが生まれるかも知れないですよね。

ロックの他にはランちんくらいしか思いつかないのですが、他にも意外なキャラはいますかね?
542 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/29(水) 23:47:16.39 ID:6q3M3M/O0
>>540です

ランちんはデータが少なすぎて大部分脳内補完しないと

出番の少なさで言えばフェイトそんとか来栖彼方とか星野くららとか
絡ませ方が解らないけどぷーりんさんという手もwww
543 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/08/30(木) 00:41:55.84 ID:Z3mWNnADO
>>541
よく見たら、俺と同じ三点リーダー嫌いじゃないかww仲間仲間ww

もしマイナーカプ狙ってるんなら、槇島香織を期待するww
ゲームの絡みでなんとかならまいか?ww
544 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/30(木) 02:33:04.35 ID:mgpz+QZDO
>>535


あのあやせたんがたったこれだけのことでゲットできるなら俺がryみたいな欝な部分GJ
ぶっちゃけあるんだよな高翌嶺であってもタイミング次第で落とせることが

ロックなら確かにありえそうだから非常に面白かったです
545 : ◆YHxtVKAHbw [sage saga]:2012/08/30(木) 07:50:05.89 ID:uZIdCeH4o
>>543
香織姐さんは既婚者だからNGじゃない?
本当の意味でのNTRになっちゃうぞw
546 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/31(金) 16:21:38.80 ID:ZinZJKEIO
>>542

ぷーりんさんは完全に忘れてました。来栖彼方や星野三姉妹と夢が広がりますね。

>>543

まあ、嫌いってわけじゃないんですけど、SSならではのカプを作りたいっていうのもあって・・・これを嫌いっていうのかも知れませんが(笑)

ゲームの方はやってないんであまり詳しくないんですよね。香織はどんな感じで現れるんですか?

>>544

確かに簡単に落ちすぎかもですね。前の方でご指摘頂いたんですが、あやせの葛藤をもう少し細かく書いていれば、簡単っていうイメージを消せたのかなとは思います。

ただ、高翌嶺の花をロックが落とした話として読んだ方が良いかも知れませんね。

>>545

前述ですが、ゲームはやっていないので香織のキャラが掴めないんですよね。

SSの中でも、サブキャラ的に扱えれば良いんですが・・・

今まで書いてきて、やはり京介の影が薄すぎたのとあやせの心情が汲み取りにくかったので、前回で完結と言ったのですが、ダラダラと続きを書いてしまいました。

こういうの編集の方にご迷惑なんですよね?私の文章などをまとめて頂いたら嬉しい限りですが、そうした方にご迷惑をかけないよう、ロック×あやせシリーズはこれで本当に終わりにします。

では次から投下
547 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/31(金) 16:22:22.05 ID:ZinZJKEIO
あやせの本音

(あやせ視点)

いわおと付き合って1週間。

彼氏が出来たなんて初めてのことだから、何を話していいのか分からないけど・・・彼といると不思議と心が落ち着く。学校生活も、学校帰りに彼と会えると思えばあっと言う間だ。

優しくて、おっちょこちょいで、私が『前に好きだった人』に少し似ている。でも、彼とは違い、私だけを見てくれた事。皆の為に頑張る『あの人』も素敵だけれど・・・私は私だけを見てくれた彼が好きになっていた。

お兄さんを想っていたころより、ずっと気が楽だ。手強いライバルもいなさそうだしね!

でも、まだ誰にも彼と付き合っているとは言えない。もし、私がお兄さんに告白したと知っている人の耳に入ったら・・・私が男を取っ替え引っ換えする女だと思われてしまう。


(桐乃視点)

最近あやせの調子がオカシイ。京介に告白したのには驚いたが(あやせが教えてくれた)、もっと落ち込むかと思ったのに今はなんか「幸せ!」って感じだ。

「あやせさぁー、最近ちょっとおかしくネ?付き合い悪いしヨ」

加奈子からもそう見えていたらしい。たしかにあやせはここ1週間私達と一緒に帰ろうとはしない。あやせは私達に何か隠し事をしているのだろうか?

「なんていうかー、恋する乙女?って感じでヨ。あやせ彼氏でもいんのかなー。桐乃なんか知ってる?」

いやいや、ないない。京介に振られたばっかだよ!?あのあやせがすぐに他の男に目移りするとは思えないし・・・

「へへっ、桐乃さー加奈子今超良いこと思いついたんだけどー、桐乃ものれヨ」

加奈子の顔はいたずらっ子以外の何ものでもなかった。
548 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/31(金) 16:23:41.88 ID:ZinZJKEIO
放課後。私は私と加奈子はあやせを秘密で尾行している。

あやせに彼氏がいるとは思えないけど・・・もしかしたら京介とあやせが私に内緒で逢瀬を重ねているとも限らない。確認に越したことはない。

「あやせの奴、今んとこ怪しいとこねーよな」

退屈そうに加奈子が言う。今の所たしかにあやせは自宅へと向かっているようだ。そして・・・

「なんだよ、ただチョッキしたかっただけかよ。ああ、放課後の時間を割いて損したー」

あやせは何ごともなかったかのように、家へと入っていった。

「無駄骨だったなー、桐乃。なんか甘いもの食ってもう帰らね?」

確かにあやせは怪しい行動をしてはいなかった。しかし、私達と1週間も一緒に帰らなかったのだ。何かある。そんな気がした。

「加奈子ー、あと30分だけあやせの家見張ってない?」
「30分?そんなに待ってたら凍えちまうっての。それより桐乃さー、あったかいおしるこでも食べにいこうぜ」
「あ、私は良いよ。あやせのこと気になるしさ。」
「桐乃も変わってるよな。んじゃ、私帰るからヨ」

1人であやせの家の前に立っている私は不審者そのものだったが・・・気にしないで欲しい。

あやせが家に入って20分後。やはり、あやせが出てきた。服を着替え、なんというか「恋する乙女」の表情で。

おめかしして、あの表情・・・や、やはり兄貴と会うのか・・・

あやせをつけて数分。そこは私とあやせが仲直りした「公園」だった。く、ここが兄貴とあやせの思い出の場所だっての!?

あやせが小走りになる。私もついていこうとして迷う。もし、もし京介とあやせのイチャラブシーンを見せられたら?

尾行してきたということは、そういうシーンを見る為でもある訳だが、いざとなると踏ん切りがつかない。

第一見たところでどうしようと言うのだろう。「別れて?」とか「私が1番にじゃなきゃヤダ」とか?いやいや、ただの面倒臭いブラコン妹じゃん。あれ、なんで脳内に黒いのが浮かんでくるんだろう・・・

まあ、どうするかはその場で決めれば良い。私は公園へと踏み込んだ。

「そう、それでねー。あははは、うふふふ」

誰?

あのあやせと話してる小柄なハゲチビは誰なのだろう。顔も可もなく不可もなく。地味子・・・もとい麻奈実さんの男版とも言うべき無個性さはむしろ価値ある個性と言っても良い。あれが?あれがあのあやせの恋人?

いや、まて京介は。京介はどうしたのよ、あやせ!あんな無個性君にうちの京介が負けたっての!?

「あ、あやせ!」

まあ、京介じゃなかったのは素直に嬉しいけど。でも、あやせに内緒で、しかも京介に振られてこんな短期間に彼氏を作られたのには腹が立った。

「き、桐乃!?どうしてここに!?」
「どうして、じゃない!?隣のハゲについて説明しなさいよ!」
「いわおの悪口を言うな!」
549 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/31(金) 16:24:29.09 ID:ZinZJKEIO
ひっ!なんか眼から光彩が・・・京介はいつもこんな思いをしていたってゆうの!?

「いわおの悪口は・・・例え桐乃でも許さない!」
「だあっ、あやせ、そんなに怒るなよ!俺がハゲだっていうのは間違っちゃないしさ」
「で、でも・・・」
「良いからって。桐乃ちゃんにちゃんと説明してなかった俺たちが悪いよ」
「うん・・・分かった、いわお」

あの、あやせを宥めた・・・だと?こ、こやつ出来る。思わず身構えてしまう。

「さ、さっきは失礼を言ってごめんなさい。でも、あやせの彼氏さんですよね?私、驚いちゃって」
「気にするなよ、桐乃ちゃん。それにしても、背えたっけえな。皆俺より背えたっけえのな。」

何を言っているんだろう、このチビは。初対面の人間に無礼だろう。私だったら絶対に初対面の人にそんな口の利き方しないね。あれ、なんで脳内に黒いのが浮かんでくるんだろう・・・

「あ、あのう、私、知らない方とそんなに親しくするつもりないんで。」

しれっと釘を刺す。あれ?みたいな顔すんなよ、チビ。

「あ、あはは。桐乃ちゃん、俺のこと忘れちゃった?ほら、俺だよ俺。田村いわお。田村麻奈実の弟だよ。」
「えーっ!」
「驚いた?」

彼がいわお君?ああ、全然昔と違うな。特に頭髪のあたりが。

「野球部入ったの?」
「だあっ、ちげえって!さ、さすがはあんちゃんの妹。切れ味が違うな」
「あの・・・いわお?」

心配そうな顔でこちらを伺うあやせ。うむ、完全に放置していた。

「ごめんな、あやせ。でもこうなったらハッキリ言わないとな」
「うん、そうだね。桐乃、嘘ついててごめんね。私達、付き合っているんだ。」

ほんのりと顔を赤らめるあやせ。なんというか「デレ」そのもの。

「あ、あやせ。あんた、兄貴に告白したんじゃないの?」
「そ、そうなんだけど・・・かくかくしかじかで・・・」
「ふうん、それでいわお君と付き合うことにした、と」

あのあやせが簡単に落ちすぎな気もするが・・・昔から京介2号のようだったいわお君があやせだけを見ればこれくらい出来るかもね。

それに、京介が私だけの京介だとしたら・・・最強じゃん。無敵じゃん。

京介の「あんな所」に惚れたあやせ。その点、いわお君なら京介に似ていると言えよう。

ただ、京介には無意識に女を囲う悪癖がある。あやせにしろ私にしろ、黒いのにしろそれをいつも気に揉んできた。

そこに京介並に私のことを、私ためだけに考えてくれる男が現れたと考えれば、あやせがコロッと落ちたというのもあり得る話ではあるのかも知れない。しかも失恋の直後を狙われているのである。その破壊力に耐えられなかったのであろう。

ただし、問題は「失恋直後」ということだ。失恋の傷にいわお君が忍び込んでいるだけだとしたら?あやせは騙されているだけかも知れない。

京介の周りからあやせがいなくなれば、私としては安心する。しかし、あやせは私の親友だ。彼女の心が惑わされているとしたら、私が目覚めさせなければいけない。

「で、あやせさ。兄貴のことはどう思ってるわけ?」
「お、お兄さんのこと・・・?」
「振られたにしても、変わり身早くない?なんか、あやせらしくないっていうかさ」
「そ、それは・・・そうかも知れないけど・・・」
「ハッキリして欲しいんだよね、私。兄貴だってあんたに告白されてさ、それなりに迷ったと思うよ?馬鹿だから、何言った知んないけどさ・・・兄貴、あやせのこと気にいってるし。その・・・なんていうか・・・」

「あたしの兄貴に告白しといて、なんでそんなのと付き合ってんのよ!あんた、私の兄貴のこと何だと思ってるの?」

言っていて思う。こんなブラコン妹なかなかいないよね。

「もしかして、あやせさ。兄貴に振られたショックでいわお君と付き合ってるだけじゃないよね?」
550 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/31(金) 16:24:59.23 ID:ZinZJKEIO
(あやせ視点)

私にとってのお兄さんは・・・

今、改めて聞かれると複雑な問いだった。今の私はお兄さんをどう思っているのだろう?

「わからない・・・」
「はっ?何がわかんないっての?」
「お兄さんのことどう思っているかなんてわからないよ!」
「へーっ、あやせは兄貴のことどう思ってるか分からないんだ。じゃあもしかしてさ、まだ兄貴のこと好きかも知れないわけ?」
「それは違う!」

これだけは確信出来た。今の私はいわお君がお兄さんに似ているから好きな訳ではない。

「私は、お兄さん関係なしにいわおが好きなの!み、見た目だって悪くないし、話は面白いし、とんちんかんな所もあるけど、気遣いが出来るし、私のことを好きって言ってくれたもん!私が、私がいわおを好きになっちゃなんでいけないのよ・・・」

「桐乃は何がそんなに気に入らないの?なんで、いわおのこと『そんなの』なんて言うの?私のあたわおを馬鹿にしないで!」
「ご、ごめんあやせ・・・そんなつもりじゃ・・・」
「じゃあ私が嫌いなの、桐乃?私を傷付けてそんなに楽しい?」
「だ、だからそんなつもりじゃないって・・・」

気圧されたかのように弱気になる桐乃。許さない。許さない。許さない。許さない。いわおのことを悪く言う人は誰でも許さない!

「絶交です。高坂さん。今後一切近づかないでくれます?」

いわおを傷付ける人と友達になんてなれない。

「じゃあね、いわお。私もう帰るから。また明日!」
551 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/31(金) 16:25:35.37 ID:ZinZJKEIO
(桐乃視点)

「あ、待てよあやせ!」

立ち尽くす私を置いていわお君があやせを追いかける。全く私はなんて馬鹿なんだろう。

うちの京介がいわお君に負ける訳がないと思っていた。あやせが本気なハズがない、きっと騙されているのだと。

でも、あのデレっぷりだよ!ガチじゃん。あやせ、マジで惚れてるじゃん。それなのに私は・・・。

また、あやせに嫌われたかな。今度ばかりは京介にも頼れないと思うし。どうしよう。また、あの日みたいになるのかな・・・

「おーい、桐乃ちゃーん」

あ、あれはいわお君じゃん。あやせは?

「いやー、桐乃ちゃん。まだ公園にいてくれて良かったよー」
「え、あんた私に会いに来たの?あやせは?」
「あー」

苦笑しながらいわお君は

「あやせの奴、泣きながら走っててさ。俺が追いついても『今日は放って置いて』って。でね、俺だけじゃどうしようも出来ねえと思って、桐乃ちゃんに助けて貰おうと思ってさ」

ど、どういう・・・てか、この人・・・

「あ、あのさいわお君。怒ってないの?」
「俺が?なんで?」
「だって、ヒドイこと言っちゃったしさ・・・ごめん」
「いやいや、良いって。俺、たしかにあんちゃんに敵わないからさ。桐乃ちゃんの言うとおりだよ。そんなことよりさ、桐乃ちゃん、あやせと仲直りしなきゃな」
「え?無理だよ、だってあやせの好きないわお君のことあんなに言っちゃったんだもん」
「でもさ、あやせが泣いてたのって俺のためだけじゃないと思うんだよ。友達にあんな強いこと言ってケンカしちゃったのも大きいと思うんだ。だからさ、あやせと仲直りしてやってよ。俺からのお願い。ダメ?」

なんか・・・あやせがいわお君に惚れた理由が分かった気がするな。

「あ、当たり前じゃん!私とあやせは親友なの!」
「よっし!じゃあ、明日の夕方の4時にこの公園に来てよ。絶対、あやせを連れてくるからさ!」
「オッケー、わかった」
「あとさ、あんちゃんも連れてきてくんない?」
「は?何で?兄貴呼んだら完全にこじれると思うんだけど」
「良いから良いから。俺があんちゃんに用があるからさ」

何年間も会っていなかった小柄な童顔の「幼馴染」。彼の自信に満ちた笑みに支えられて私は歩き出した。

「分かったよ。・・・ありがとう、いわお君」
552 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/31(金) 16:28:04.37 ID:ZinZJKEIO
(京介視点)

最近の俺は周囲の変化への対応力も大分ついてきたと思っていたのだが、どうやら過信だったらしい。

「・・・って訳なの。だから、明日の夕方あんた予定あけといてよね。」
「なあ、桐乃。俺は今お前の話についていけていない」
「は?超分かりやすく説明してあげたつもりなんですケド」
「お前があやせとケンカしたのは分かった。だがな、あやせとロックが付き合っているという部分が分からんのだ」
「ロックっていわお君のこと?まあ、私も良くわかんないけどさ・・・とにかく明日来れば分かるって!」

強引な妹様の命令に俺が逆らえるわけもなく今こうして公園にいる訳だが・・・俺が受験生だって理解している奴は一体どれだけいるんだ?

それにしても、俺に桐乃にロックにあやせ。まさか、この面子で集まる事になるとはな。

「お久しぶりです、お兄さん」
「おう。あやせ。久しぶりだな。」

俺があやせを振ってからおおよそ10日しか経っていない。なんというか気まずいが、あやせの隣に立ってるのは

「うーっす、あんちゃん!元気にしてた?」
「はは、元気に決まってんだろ。」
「ごめんな、忙しいだろうに呼び出しちゃってさ」

こいつがあやせと付き合っているとは想像もつかん。ハッキリ言って俺はまだ信じていない。それに、なんか・・・煮え切らない部分がある。

「じゃあさ、早速本題なんだけどさ。」

といってロックの奴が桐乃に目配せを送る。桐乃に謝らせてあやせと仲直りさせるつもりなんだろうが・・・そんなに上手くいくかねえ、何しろ相手はあやせ様だ。

「あ、あやせ?昨日は本当にごめん。私、どうかしてたよ。」

さあ、ロックお前の腕をみせてみろ!

「な、あやせ。桐乃ちゃんもこう言ってるし許してやれよ」
「い、いわおが気にしてないなら、私も別に良いよ。」
「じゃ、桐乃ちゃんと仲直りしてくれる?」
「うん。」

「桐乃、昨日は私もどうかしてた。つい、いわおの事で頭が一杯になっちゃってて。だから、ごめんね。仲直りしよ?」
「うん!」

がっしり抱き合う桐乃とあやせ。なんていうか、俺は要らなくないか?

それにしても今の口ぶりからしてあやせとロックはマジでできてるっぽいな。てか、あやせってあんなデレんのか?うらやま・・・もとい信じられん!ロックの悪口だけで桐乃と絶交って・・・俺の知ってるあやせ様じゃないっすよ!?

「なあ、ロック。お前、あやせに催眠術かなんかかけたんじゃねえの?」
「あんちゃん、何言ってんの?」
「ふっ、独り言だ。」

それにしてももう2つ聞かにゃならんな。

「今からお前に2つ質問すっぞ。良いか?」
「うん」
「まず問1だ。お前あやせと付き合ってんの?」
「ああ」

くう、なんか悔しい。なんでだ?ラブリーマイエンジェルあやせたんは俺に告白してきたんだぞ!それは、黒猫のこともあるしビシッと振ったけどよう。なんていうか、あやせルートを消したかった訳ではなくてだな・・・って俺も大概浮気性だな。あやせに変な名残を持たせまい、ってつもりだったんだけどな。いざあやせに彼氏が出来ると、こんなに寂しいものか。まあ、あとで追求するとしてだ・・・

「2つ目の質問だ。何故俺を呼び出した?」

今の流れでいけば、俺は不必要なハズだ。いなくてもなんとかなる。

「へへっ、あんちゃん鋭いな。」
「俺を暇人だと思ってんのか!」
「いや、あんちゃんに大事な話があるからさ」
「大事な話だー?」

もしかして、あやせと付き合いましたとかいう自慢話じゃないだろうな。くそ、イラつくぜ。

「俺さ、あやせと付き合ってるんだ」
「ああ、どうやらそのようだな」
「だけどさ、あやせはあんちゃんに告白しただろう?ついこの間」
「ああ」
「だからさ、俺考えたんだよ」
「周りくどい奴だなあ、何なんだよ」
「このままじゃ、俺もあんちゃんも今の関係に踏ん切りをつけられないと思うんだよ。だからな・・・」

「あやせ、俺とあんちゃんのことをどう思ってるか答えを出してくれないか?」
553 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/31(金) 16:29:11.87 ID:ZinZJKEIO
(あやせ視点)

昨日の帰りのこと。桐乃に絶交を告げ走る私を追い、いわおがかけてきた。

いわおはこう言った。桐乃と仲直りして欲しい、と。私もいわおさえ怒っていなければすぐにも桐乃と仲直りしたかった。でもいわおは言った。『明日までに答えを出して欲しいことがある。その時まで、桐乃ちゃんとは仲直りしないで欲しい』。その時頼まれたことを、いま彼が私に問うてきた。

「いま、あんちゃんと俺がいる前で答えて欲しい。あやせにとって俺たちはどういう存在なんだ?」

この問いに答える為に昨晩どれだけ悩んだか。答えは出そうで出ない。私はいわおが好きだ。でも、お兄さんの優しさを思い出すと・・・胸が苦しくなる。

桐乃と仲直りしたことをきっかけにお兄さんにはあまりにもお世話になりすぎた。優しいお兄さんへの思いは尊敬に近いものでさえあった。

「私にとってお兄さんは『憧れの人』です。」

偽りのない想いだった。息を呑む桐乃とお兄さん。

「あんなに優しくて、頼りになって、お兄さんがいなければどうにもならないこともありました。」

「でも、お兄さんは鈍感で、もちろんそんなお兄さんも素敵なんですけど、私には荷が重すぎたんです。黒猫さんやお姉さん、それに妹の桐乃でないとお兄さんには耐えられないと思います。」

「優しくて頼りになる。尊敬もしている。それでいて、近くにいるようでなかなか私を見てくれない、そんな『手の届かない憧れの人』。それがお兄さんです。」

「そして、いわおは」

「お兄さんに似ているんです。お節介で妙に優しくて、鈍感なところも。でも、お兄さんと違うのは鈍感でどうしようもない癖に触れられる所にいつも居てくれるんです。お兄さんのように、桐乃な黒猫さんの所に飛んでいかない。いつも近くにいてくれて、癒してくれる。」

「それが、『私の好きな人』だって気付いたんですよ。お兄さんへの気持ちに偽りはありません。好きでしたよ。大好きでした。でも見ているばかりの想いは私には辛すぎた。そばにいてくれたいわおの温かさに私は救われた。それがお兄さんといわおの違い。私の2人への想いです」
554 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/31(金) 16:30:38.61 ID:ZinZJKEIO
(京介視点)

「そうか、そうだったのか」

あやせは確かに好みのタイプだったよ。でも、あやせの言うとおりだ。俺はあやせを直視しようともしていなかった。俺があやせの為だけに何かをしたことなんてなかった。

桐乃とあやせの為。あのストーカー少女との一件もあのストーカーの女の子と、俺の試験勉強を応援してくれた皆の為にやったんだ。

桐乃がアメリカに行った時、黒猫が遠くに引っ越したと思った時。俺は俺の為にあいつらを迎えに行った。

でもな、もしあやせがアメリカに行ったとしたら・・・寂しいけど、連れ戻しにはいかんな。もし行くとしたら俺の妹様が泣き出した時だ。俺にとってのあやせは、桐乃の友人以上じゃない。あやせを振った時口走った俺の言葉が、まさか本心だなんてな。あやせに言われるまで気付かない俺は、徹頭徹尾鈍感野郎だった訳だ。

しかし、ロックの奴にとってあやせはそんな軽いもんじゃなかった。それがあやせに伝わったんだな。

確かに、あやせが俺のヒロイン路線から抜けるのは抵抗があるが・・・もし、今俺があやせに食い下がってもここにいる奴らを傷付けるだけだ。俺込みでな。

「ロック」
「へへっ、なんだいあんちゃん」

何感動して泣いてんだよ!

「良い彼女が出来て良かったな。」
「おう、自慢の彼女だ」
「彼女、大切にしろよ」
「おう!任せとけよ、あんちゃん!」

胸を張って言えるお前を尊敬するよ。心からな。

「帰るぞ、桐乃。お熱い2人の邪魔は出来ん」
「ま、そうだねー。じゃ、いわお君、あやせお幸せにー」
「も、もう桐乃!からかわないでよ!」

本当、幸せにな2人とも。
555 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/31(金) 16:31:44.78 ID:ZinZJKEIO


(ロック視点)

「今日はゴメンな。あんな事言わせちまって。」
「ううん、気にしないで。言っておいた方が良い事だったと思う」

2人だけ残された公園。俺たちはブランコに乗りながら、少ない会話を交わす。

「じゃあ、もう帰るか」
「うん、そうだね。でもその前にいわお君の家に寄って良い?」

俺の家に寄ったあやせは俺たちが付き合っていることを俺の家で打ち明けた。父ちゃんと母ちゃんは驚いてるみたいだったけど、何を今更みたいな顔をしてる年寄りと、「おめでとう」と言ってくれたねえちゃん達には感謝しないとな。この人達がいなかったら、俺あやせと付き合えてねえもん。

当然のように、あやせに夕飯が運ばれてくる。じいちゃんがまたあやせを泊めようと言い出し、あやせが良いと言った為だ。

そして夜。まあ、2度目ともなれば驚かないが、布団がピッタリくっついて敷かれている。

俺とあやせはそれぞれ別の布団に入ると、

「あ、いわお。まだ、そういうのはナシだよ」

くっ、別にしようとはしてなかったけどいざ言われると気恥ずかしすぎるな。

「まだ付き合えて10日くらいなんだ。手もつないでないし、キスもしてない。期待してなんかないよ」
「ふふっ、そっか。じゃあ今日はここまでね」

妖艶な笑みを浮かべたあやせは、俺の方に顔を寄せ・・・

チュッ

あれ、今何かが頬に触れたような。

「じゃ、じゃあおやすみね。いわお」
「ま、待てよ。今俺になんかした?」
「デリカシーないな、いわおは。もしかして蹴られたい?」
「滅相もありません」

まあ、あのことはしばらく忘れるとするか。

隣のあやせも寝息をたて始めた。俺も寝よう。

大好きだよ、あやせ。

【終わり】
556 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/08/31(金) 17:30:25.48 ID:rmJC9WYT0
>>555 超乙です!

何だかどんどんクオリティーが上がってきているね

いわおとあやせの二人だけで完結させると話が薄くなりそうだけど
今回は京介と桐乃を上手く絡めてきた所に力量を感じるよ

ただ一つだけ言わせてね
時々目いっぱい長い行があるけど適当なところで折り返して行の長さを
揃えるとリズムが良くなって格段に読みやすくなると思うよ
557 : ◆YHxtVKAHbw [sage]:2012/08/31(金) 18:08:56.63 ID:DcKC8hjfo
>>555
乙。
アメリカに行ったのがあやせだったら桐乃が泣き出さない限り連れ戻しには行かない
の下りが京介のスタンスを見事に言い当てているな〜。
でも、いずれにしても京介が連れ戻しに行く事はないね、その役目はロックだから。
よかったです〜。
558 : ◆YHxtVKAHbw [sage]:2012/08/31(金) 18:13:00.98 ID:DcKC8hjfo
>>546
俺もゲームはやってないけど原作9巻「カメレオンドーター」で
香織姐さんの大まかな人となりは分かると思うよ。

香織さんを沙織は「姉さん」と言ってるけど俺的には「姐さん」の方がしっくり来るwwwwww
559 : ◆YHxtVKAHbw [sage]:2012/08/31(金) 18:17:45.82 ID:DcKC8hjfo
そういえば俺ってコメディがメインで特定のカプに特化したものってほとんど無いな。
強いて言えば短編で京介×あやせをやった位か。
560 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/31(金) 22:33:25.94 ID:UmcdojXDO
>>555
乙彼。

読んでてふと思った。

俺の知ってるおバカなロックは何処に行ったんだろう…?(;´ω`)
561 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/31(金) 23:06:00.84 ID:Tncjr0xI0
>>560 11巻で戻って来るさ
562 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/01(土) 01:12:43.72 ID:SHtQq4jDO
>>555
乙です満腹です

>>557
あやせが妹で"新垣桐乃"が海外に行った場合
妹あやせが泣き付く以前に京介が桐乃を迎えに行ってる気がする


いきなりですが、どなたか重婚SSよろしくお願いします

この度、兄と重婚(的内縁)することになりましたてへ
ノンフィクション混じりで書いてみたかったんですが…文才がががorz
563 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/01(土) 01:21:17.29 ID:FEwJ2EfDO
>>562
すまん。面白そうなので詳しく。
重婚は禁止されてる日本だが、近親婚は罪じゃない日本。
あんたのケースを教えてくれ。
564 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/01(土) 03:51:25.03 ID:SHtQq4jDO
>>563
ブラコン拗らせすぎた私のために兄と嫁が提案してくれたものなので
まだ私自身が詳しく理解出来ていないので不十分な点があるかもしれませんorz

重婚は"婚姻が複数"の場合のみアウト

"役所が見落としなどのミスをしない限り、そもそも重婚は発生しない"ので、法として存在していても無いものと同じ
※役所のミスを役所有罪にしないための法律でしかない状態

重婚的内縁=婚姻関係が1つだけであとは"内縁の妻=婚姻はしていないが妻"の場合は法的に重婚には当て嵌まらないのでセーフ、
※分かりやすく言えば"夫婦+愛人"と考えてくれたらいいですね

10巻で黒猫が"京介と桐乃が×××していても構わない"みたいなのがありましたが
実の兄妹なら結婚が出来ないため、結婚するならば内縁婚しかない(正式にはこれは結婚でも夫婦でもない)

それなら重婚ENDがあっても可笑しくはないかなって今更ながら思えました
夫京介、嫁1号黒猫(婚姻上の妻)、嫁2号桐乃(内縁の妻)とかね
565 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/01(土) 04:08:58.05 ID:lELvGCpDO
>>564
なるほどね…でもちょっと悲しいかなぁ
なんと言えばいいのか…気持ちや意識上だけの嫁でしかないとか複雑
566 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/01(土) 04:19:23.06 ID:l9gC9R/zP
黒猫はそう思えど、桐乃はそれに耐えられなかったって結論が8巻だしねえ・・・
彼女であれなのに、同じ立場のはず(実際は色々と明確な差があるが)の黒猫だけが子供作ったりに桐乃が耐えられるものかなあ
やるなら時系列遡って色々いじりながら書かなきゃ難しいと思われ

ゲームでの各ヒロインEDの桐乃は妹だからと割り切れてたからこその態度だろうし
というかそれじゃあ麻奈実やあやせが不憫すぎる
567 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/01(土) 04:20:36.60 ID:idBhLSh20
感想ありがとうございます。

>>556

確かに段落が長すぎるというのはありますね。気をつけます。

ただ長さを揃えるのは少しシンドイかもしれません。端末によって1行の文字数が違うので。

>>558

9巻の内容だけでいけるなら、書けるかな。しかし、香織姐さんを使うシチュが上手く思い浮かばないです。

>>560
>>561

ロックが11巻で重要人物になってくれないか期待しているんですが・・・

是非原作でもロックにはイケメンになって欲しいです。原作の最後でちゃっかり桐乃をゲットとかないかなあ。誰得って感じですかね。
568 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/01(土) 04:51:29.44 ID:z8DZrdlSO
それは誰得どころか一番やっちゃいけない暴挙だと思うわ…
569 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/01(土) 05:20:36.82 ID:SHtQq4jDO
>>565
どのみち実の兄妹の近親婚自体が成立しないので
こればかりはどうしようもないですけどねorz

どう頑張っても紙切れ上での"お兄ちゃんのお嫁さん"になることは出来ないけど
紙切れ上で"お兄ちゃんと家族"になることなら可能なんですよね

これが私にとっては盲点であり、"たかが紙切れ上でも繋がりがある"ことが嬉しくてたまらなかったです

>>566
私の場合の例として以下にあげときますので参考にでも










※ご都合設定
京介=桐乃もあやせも同じくらい大事、桐乃の彼氏や旦那になっていいのは京介だけで他は認めない

あやせ=桐乃も京介も同じくらい大事、桐乃の彼氏や旦那になっていいのは京介だけで他は認めない、京介にとって1番桐乃・2番私でも構わない

桐乃=あやせも京介も同じくらい大事、京介にとって自分が1番じゃなきゃイヤ


京介、あやせが婚約

新垣家が京介の婿入り熱望&桐乃が結婚反対

桐乃説得と婿入り条件を京介が提示

桐乃があやせの娘になる(養子縁組)

京介とあやせが結婚

夫新垣京介、嫁新垣沙織、娘新垣桐乃の家族誕生
あとは娘桐乃を内縁の妻として接するだけ

養子縁組で桐乃があやせの娘になっても"京介の実の妹"として紙切れ上にも残るから"兄妹関係は無くならない変わらない"

ツンデレ桐乃が耐えられるかはわかりませんが、ヤンデレ私にとっては満足すぎる提案でした

子供については近親の場合は産まれても養子になるので、代理出産という選択もありますよ
570 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/01(土) 07:15:47.46 ID:FEwJ2EfDO
>>569
なあ・・・先に言うぞ?

これ、俺の書きかけのネタバレなんだが・・・(汗)
571 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/01(土) 07:29:00.00 ID:idBhLSh20
>>568

いや、確かにマズイ暴挙なんですけど原作の話の拡散具合からしてないかなあ、なんて。

例えば、昔は桐乃はロックが好きだった、とか。ありそうなのはその反対かな。

田村家と高坂家をロックと桐乃がつないで。京介は気ままなハーレムライフっていうのは・・・なしですね。御鏡さようなら、か。

原作でフラグたてまくり過ぎて、回収不能っぽいのでロックに誰かを・・・っていう根っからのロック魂(笑)が書かせた暴言でした。結構反省しています。

>>569

結構具体的に話をまとめてらっしゃるようですけど、多少キャラ崩壊って感じかな・・・

でも、意外性があって面白いかも知れないから読んで見たいです。お時間割けるようならご自分で1回書かれてみては?

文才なんて気にしなくても良いと思いますよ。私もつたない文章で皆さんの目を汚していますし(苦笑)
572 : ◆6U1bthnhy6 [sage saga]:2012/09/01(土) 11:49:43.07 ID:FEwJ2EfDO
正直心折れた。
まさかのネタバレ。
完成してねーままだけどとりあえず書くわ。
抜けてるとこは、脳内補完頼む。
573 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/09/01(土) 11:59:31.43 ID:FEwJ2EfDO
>>88の続き。

「ねえあなた」
「ん?どうした加奈子?」
「少し真面目な話をしてもいいかしら?」
「なんだよ急に改まって・・・」

「・・・桐乃おめーよー?かなみに自分のこと『ママ』って呼ばせよーとしてんのって・・・かなみが京介の子供だからだべ?」
「っ!」
「そ、そうなのか?」
「ち、違うっ!」
「見てりゃバレバレだっつーの、今更下手な嘘つこーとすんな」
「う、ううう・・・」
「か、加奈子それは・・・マジなのか?」
「マジもマジおーマジ。大方京介の血を引くかなみを、自分との擬似娘として可愛がってるってとこだろーよ」

あーキメェキメェ。
加奈子の言うことに間違いがないのか、桐乃は俯いたまま何も言おうとはしない。
ただ膝の上に置かれた両方の拳がブルブルと大きく震えていた。

「い、いやでも・・・なんでそんなことを・・・?」
「相変わらずバカだなお前」

か、加奈子にバカって言われた!?
・・・なんだろう?俺の中の何かが崩れていくような気がするくらいショックだ。

「な、何がバカなんだよ・・・?」

加奈子は一度俺の顔を見つめ、思いっきり目を眇め、それからわざとらしいほどに盛大なため息をついて見せた。
うわースッゲーむかつく。スッゲー昔のこと思い出す。
しかしここは我慢だ。

「き、聞かせてくれませんかねえ・・・加奈子さん」
「・・・はぁ・・・京介、お前よぉ・・・」
「ん?」
「なんで桐乃がこの家にいると思ってんの?」
「え?そ、そりゃ海外でのモデルの仕事が一段落して、かなみに会いたくなったからだろ?」
「・・・それマジで言ってんの?」
「あ、ああ・・・」
「お前バカだろ?」
「二回目っ!?」

ショックを受ける俺を尻目に、加奈子はくるんと桐乃を振り返った。

「なあ桐乃」
「・・・なに?」
「聞いての通り京介は何にもわかっちゃいないようだからよ・・・教えてやってくんね?」
「え?」
「お前の口で」
「え、ええっ!?」
「なに驚いてんだよ?たりめーだろ?」
「む、無理に決まってんじゃん!!」
「はぁ?お前の言い分なんて聞いてねっつの。いいから言えよ」
「む、無理!」
「お前なあ・・・どうせ加奈子が京介に言ったところで、お前絶対否定するだろ?」
「う・・・」
「だから逃げ場なくして言わせようとしてんじゃねーか」

大概である。
もう少しオブラートに包もうよ加奈子さん。
ぶっちゃけ言っちゃうのにもほどがあるだろ?
574 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/09/01(土) 12:29:49.71 ID:FEwJ2EfDO
「いいから言えよ、ほら」
「やだ」
「・・・かなみともう遊ばせねーぞ?」
「う!〜〜〜〜〜・・・ダメ無理!」
「ち、強情な奴だぜ・・・」
「な、なあ加奈子?」
「あん?」

見かねて声を掛けた俺を加奈子が振り返る。

「あ、あのさ、今日はもう遅いし、その・・・き、桐乃も言いたくないみたいだし、きょ今日はこの辺で・・・」
「はぁ?今逃したら、あん時と一緒じゃねーか?」


「お、おい待てよ・・・あの時って?」
「つきあい始めん頃、加奈子があやせと瑠璃に公園に呼び出された時のことだよ」
「・・・・・・・・・あ、あーあったなあ言われてみると・・・んでそれが?」
「あの時、加奈子が呼び出された理由言ってみ?」
「理由?・・・スマンさすがに覚えてない」
「お前バカだろ?」
「四回目きたーっ!!」

いやだってあれ何年前よ?
加奈子があやせたちと口論してたっぽいのは覚えてるけど、理由までとなるとそりゃ無理じゃねーか?

「・・・あたしが・・・兄貴を好きだから」
「え?」
「仲良くなって・・・喜んでるあたしがいるから」
「桐乃・・・?」
「だから・・・だから黒猫とあやせは・・・加奈子に京介と別れるように言いに行った」
「!?」
「よっく覚えてんじゃん。さっすが桐乃」
「・・・でもそれがなに?」
「はぁ?」
「あたしが・・・妹が兄貴のこと好きなんて・・・普通にどこにでもある話しじゃん!?そんなの今更ひっぱり出してきて何を・・・」
「普通じゃねージャン」
「え?」
「お前ら普通じゃねージャン」
「お、俺も入ってんのか?」
「たりめーだろ?どこの世界に留学した妹を寂しいからって連れ帰る兄貴がいんだよ?」

もっともである。
言われてみて初めて気づくが、それは普通じゃない。異常だ。

「同様に、兄貴が好きすぎて、でも結婚ができねーから、恋人も作らず一緒に暮らしてる妹も普通いねーけどな」
「っ!」

その言葉が図星なのか、桐乃は唇を噛みしめたまま沈黙してしまう。
575 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/09/01(土) 12:32:56.12 ID:FEwJ2EfDO
「・・・ち、近いうちに出ていくからさ・・・それで勘弁して・・・」

それだけ言うと桐乃は、立ち上がり無言のままリビングを出ていこうとする。
その背中が・・・あまりにも寂しそうで思わず声を掛ける。

「お、おい桐「まだ話は終わってねーよ」
「え?」

加奈子の言葉に振り返った桐乃。
その目尻にはうっすらと涙を浮かべていた。

「ったく、なに死にそうな顔してんだよ? 」
「え?だ・・・だって・・・」
「加奈子は別に怒ってねーよ」
「え?」
「むしろ・・・感謝してっくらいなんだよ」
「か、感謝って・・・」

桐乃が理解できないっといった顔で加奈子に問いただす。
その目を逸らすことなく見返しながら、加奈子は小さく笑った。

「あのときよ・・・あやせと瑠璃が京介と別れろって言ってきたとき、あたしゆったんだよね。『京介と別れるくらいなら、桐乃が地獄に落ちる方が100万倍マシだ!』って」
「!」

桐乃は驚いたように固まった。
が、それは知らなかったというより、加奈子が覚えていた事への驚きのように見えた。

「あれさ、マジに言った言葉なんだけどさ、そんでも桐乃、あんたに対してひどいこと言ったってずっと思ってた」

ほら加奈子ムキになると後先考えないし。
そういって加奈子は乾いた笑いをもらした。

「でもさ、桐乃あれ聞いた後でも加奈子に普通に接してきてくれたじゃん?大好きな京介を奪った・・・加奈子にさ」
「・・・加奈子・・・」
「それにかなみのことも。ほんとなら、京介寝取った女の子供なんて憎くてもしょうがないじゃん。でも桐乃は・・・京介の血が半分入っているとはいえ、かなみのこと溺愛してくれた」
「・・・」
「そんでなにより・・・かなみが生まれてからの3年間・・・あたしに京介を独占させてくれた」
「!!」
「・・・ありがとう、桐乃・・・」
「か・・なこ・・・」
「あたしは・・・加奈子はこの3年・・・ううん。つきあい始めからだから8年。京介の1番でいられた。1番じゃなきゃヤダッって気持ちを我慢してくれた・・・桐乃のおかげでな
「そ、それは・・・あ、あたりまえじゃん・・・」

ゆっくりと加奈子が首を振る。

「ううん。それは嘘。桐乃が認めなくても私は・・・加奈子は知っている。だからね桐乃?」
「・・・なに?」
「今度は加奈子が返す番」
「・・・え?」
「桐乃」
「ん。うん?」
「・・・京介を半分やんよ」
「・・・え?」
「京介と、子供作れよ」
「え?・・・えーっ!?」

576 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/09/01(土) 12:35:00.07 ID:FEwJ2EfDO

「・・・加奈子は・・・それでいいの?」
「いいっつってんべー」
「で・・・でも・・・」
「うっせーなあ。本妻がいいって言ってんだから、妾はわーいラッキー!って言ってりゃいいんだよ。それに・・・」
「そ、それに?」
「・・・こんなに可愛い妹の為なら、多少のことは我慢してやるって」

なんたって姉貴だからな。
あまりにも乱暴な物言いに、思わず俺は苦笑いを浮かべる。

「お前、やっぱ大物だよ」
「へへ、だべ?」

いひひっといたずらっぽく笑う加奈子の頭に手を乗せながら、俺は自分の嫁の寛大さに心底感心していた。

「じゃー桐乃、旦那の相手はしばらくお前な?」
「はひ!?」
「なに驚いてんだよ?たまに加奈子も混ぜて貰うけど、基本的には京介と二人っきりな?」
「むむむむむ無理っ!」
「あんでだよ?せっかく加奈子が気ぃ利かせてやろーってのに?」
「い、いきなり二人っきりとか、マジ無理だから!!」
「めんどくせー妹だなー。そんなもん京介に任せてりゃいいんだよ。なあ京す・・・なに土下座とかしてんのお前?」
「勘弁してください加奈子様」
「そのカッコで様づけとか・・・さすがに引くわー」
「引くんじゃねえ!」

ガバッと顔を上げ俺は切実かつ、もっともな事を訴えた。。

「確かに俺はシスコンだ!それは認める!だが俺は基本、いたってノーマルな普通人間なんだよ!その俺にいきなり妹と二人っきりで子供作れとか、ハードル高過ぎにもほどがあんだろ!?」
「・・・シスコン認めて普通とかいうお前を少し怖くなった」
「頼むから引かないで下さい加奈子様!」

なんで俺、嫁にこんな目で見られなきゃなんねーの!?
577 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/09/01(土) 12:37:03.09 ID:FEwJ2EfDO

「なあわかってくれ加奈子。桐乃と俺が子供を作る・・・それはわかった。正直こっちとしても望むところだ」
「・・・望むところとかいうお前に少し愛想が尽きた」
「尽きたら少しじゃなくね!?頼むからそんな目で見ないで下さい加奈子様!あなたが言ったことじゃないッスか!?」
「いやまあそうなんだけどよ・・・」
「だけど、なあ加奈子。わかってくれよ・・・。実の妹と浮気なんて、さすがに俺も二の足を踏むって。そこへきていきなり子作りとか流石に俺のキャパ超えて・・・」
「・・・京介は、あたしとの子供が欲しくないんだ・・・」
「え?」

声に驚いて振り向いてみると、ソファーの上で膝を抱えた桐乃がグズグズと鼻を鳴らしていた。

「あ、あたしがき、嫌いだから・・・そ、そうやって遠回しに・・うええ・・・」
「そ、そんなわけねーだろ桐乃!?お前今までの俺の話聞いてねーのか!?」
「だ、だって・・・ふぇ・・うえええ・・・」

いきなり子供のように泣き出した桐乃。
・・・おかしくねーか?
ついさっきまでは、テンパりながらも普通に・・・って、おい。
思わず心中で突っ込んでしまった俺の気持ちを察してくれ。
視界のなか、空になった酒瓶が桐乃の横に転がっていた。
こいつウオッカ一本空けやがった―っ!!
通りで言動怪しいわけだよ!
思いっきり酔っ払いじゃねーか!!

「き、桐乃?ま、まずは落ち着け、な?」
「だ、だってえ・・・京介が・・・京介があたしのこと嫌いってー」
「言ってない!まったく言ってない!」
「言ったー・・・御鏡さんの前で『勝手にしろ』って・・・嫌いって言ったー・・・ふえええ」
「それいつの話し!?もしかして受験前のあれ!?今更あれ持ち出すの!?しかも意訳!?てか大切って言ったよね俺っ!?」
「でも『勝手にしろ』ってー・・・嫌いってー・・・」
「嫌いじゃない!好きだ!!」

なんで俺、妹にマジ告白してんの!?
578 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/09/01(土) 12:39:01.74 ID:FEwJ2EfDO

「ぐすっ・・・本当?」
「ああ本当だ」
「本当に・・・好き?」
「ああ、好きだぞ」
「・・・嫁の前でシスコンこじらせてる旦那に心底絶望した」
「やめて加奈子様!俺のライフはもう0よ!?」

なんなのこれ!?
これなんてエロゲ!?
嫁に妹との浮気を提案されて、戸惑いながらも受け入れようとしたら嫁ドン引きって・・・難易度高過ぎだろ!?
誰か俺に攻略wikiプリーズ!!

「・・・でもさっき・・・俺にはハードル高すぎるって・・・」

くそどうすりゃいい?
今の幼児退行桐乃に理解させるには、小難しい言葉を並べても無駄だ。
また、ふええと泣きそうになる桐乃に向かって俺はなんとかわかりやすいように言葉を探りつつ説明する。

「いやあれはな桐乃。その・・・自分で今まで知らなかった部分・・・たとえば俺が加奈子に手を出した時のように、『ロリコン』という名のタブーを犯すことへの躊躇と一緒だ。禁忌と思っていたロリコンへ一歩踏み出すまで、俺がどれほどの葛藤を・・・」

ドガアッ!

言い終わらない内に加奈子の踵蹴りが後頭部に落ちてきた。

「どさくさ紛れに今聞き捨てならねーこと言ったなテメー?」
「誤解ッス加奈子様」

盛大に後頭部を踏まれた俺は、そのまま額を床に押し付ける土下座の姿勢のまま否やといった。

「つーかお前もこの状況どうにかするのに協力しろよ!」
「いやさー、巻き込まれたくなくて」
「お前が元凶だろ!?」
「今となったら、あなたに任せるしかないかと思いまして・・・」
「今に戻るなよ!どんな逃避テクニックだよ!?」
「やーもうこりゃ京介に任せるしかねーかなーって」
「同じだよ!?口調変えて同じこと言ってるよ!?」
「・・・お前、そんなに突っ込んでてよく疲れねーのな?ちっと感心した」
「いや疲れるよ!?てか感心するとこ其処かよ!?」
「・・・加奈子と一緒・・・」
「え?」

言い合ってた俺たちの耳に聞こえた声。
見ると桐乃が膝の上に顎を乗せたまま、真っ赤な顔で言ってきた。

「加奈子と一緒・・・ならいい」
「・・・桐乃?」

恥ずかしさからか、また顔を膝に埋めてしまう桐乃。
埒が明かない・・・と思った時に、役立つのがまさに暴君。

「桐乃テメーハッキリ言えよハッキリ!聞こえねーんじゃ意味ねーんだよっ!!」

その通りでーす加奈子さーん!
やっぱサイコーッス加奈子様!
579 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/09/01(土) 12:44:28.00 ID:FEwJ2EfDO

加奈子の言葉が効いたのか、桐乃は逡巡したあと、おずおずと顔を上げて言った。

「か、加奈子と一緒なら・・・平気」
「はあ?なにが?」
「・・・子作り・・・」
「はあ!?」

加奈子が困惑とともに声を上げる。
驚いたのは俺も一緒だ。
やばい。そろそろ突っ込みきれなくなってきてる。

「おま・・・なに言っちゃって・・・?」
「わ、私処女だもん!」
「!?」

大きな声で何言ってんのお前!?
乙女の口にしていい台詞じゃないでしょ!?
ぽかんと口を開けたままみつめる俺と加奈子から目を逸らしながら、桐乃がポツポツと呟く。

「きょ、京介のこと、こ、怖くないけど・・・で、でも・・・怖い・・・」
「・・・あー桐乃ぉ?加奈子もそーだけど、それは誰もが通って・・・」
「わかってる!」

耳まで真っ赤にしながら桐乃が怒鳴る。
なにこの羞恥プレイ?
俺まで赤くなってきたんですけど?

「・・・で、でも怖いの・・・怖くて・・・一人じゃ・・・」
「や、つってもよー、普通子作りは二人でやるもんでさー、あたしがいたらまあ邪魔になるっつーか・・・」
「・・・加奈子は・・・私の『お姉ちゃん』でしょ?」
「・・・へ?」

突然言われた聞きなれない単語。
加奈子はまたポカンとアホ面を晒す。
どうでもいいけど可愛いなお前のその顔。
そんなこと考えてる時にも桐乃は、上目遣いに加奈子をみつめている。

「・・・」
「・・・」

うわ、加奈子の顔が真っ赤だ。
桐乃の言葉を理解したんだろう、唇があわあわと震えている。

「お、おま・・・な、なにいって・・・」
「い、妹からのお願い・・・」
「!?お、おい桐乃!!お、お前、ちょちょっとま・・・!!」
「『お姉ちゃん、私のこと助けて?』」
「っ!?」

覿面だった。
潤んだ瞳で自分を見上げてくる妹・桐乃。
それを目の当たりにした加奈子は一瞬よろめいてから、ガクリと片膝をついた。
580 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/09/01(土) 12:49:52.07 ID:FEwJ2EfDO


「・・・おい、京介・・・」
「なんスか加奈子様?」

まるで殴られたのを耐えるような格好で鼻を押さえながら加奈子は、真っ赤に紅潮した顔で言ってのけた。

「・・・今、エロゲ脳桐乃の気持ちがわかったぜ・・・」
「あいつが呼ばれたいのは、『お兄ちゃん』ですけどねー」
「ぱねえ・・・妹パワー半端ねえ・・・普通に『いいよ』って言いそうだぜこれ・・・」
「・・・お姉ちゃん?」
「ぐっ!・・・きょ、京介!」
「へ?」
「なんとかしろ!!」
「は?・・・なんとかってどうやって?」
「なんかあんだろー!?ともかくこの可愛い生き物を加奈子の目の前から遠ざけろ!!!

既に顔を覆う手は、がたがたと震えている。
・・・陥落寸前じゃねーかお前。
つってもなー・・・俺的にはお前が居てくれた方がありがたいわけなんで。

「桐乃」
「な、なに?」
「加奈子お姉ちゃんは快諾してくれたぞ」
「ちょっ!?きょっ!?」
「やった!」
「よかったなー桐乃。加奈子お姉ちゃんは桐乃が可愛くて仕方ないんだってよ?」
「ほんとに!?」
「ああ。ほんとだ」
「てめっ!京介この・・・!」
「お姉ちゃん!」
「あ、へ?あ、な、なに!?」
「あ、ありがとう・・・ね」
「くっ・・・お、おうよ・・・」
「ハハハよかったな桐乃」
「うん!」
「くっそ・・・反則だろあんなん・・・」
「加奈子お姉ちゃん」
「え?な、なに?」
「Hするときは、メルルの衣装着てきてね?」
「テメー酔い覚めてんだろーっ!!?」
581 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/09/01(土) 12:59:24.08 ID:FEwJ2EfDO
このあと、妊娠した桐乃が一旦アメリカに渡って、スタントマンと付き合い始めたと嘘つくこと。
そのスタントマンが事故で死んでしまったが、桐乃のお腹には赤ちゃんがいると親父らに伝えること。
その子は桐乃が一人で育てるって言うのを、京介達が手助けするってアメリカに迎えにいき、帰国すること。
万事うまくいったと思ったら、帰国するなり京介が親父に殴られること。

「・・・騙されることにやぶさかではないが、騙しおおせたと思ってるのなら勘違いだからな?」

と、親父らはすべて見抜いていること。
最後に、かなみは加奈子と京介をおとうさん・おかあさん、桐乃をママ、桐乃の子は桐乃・京介をパパママ、加奈子をおかあさん呼ばわりすること。

・・・全部書きたかったなぁ・・・。
582 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/01(土) 13:25:30.97 ID:wgk9X2lAP
いや全部書けば良かったんじゃね?
つか>>569は別に何も悪くないと思うけど、なんか>>569のせいで最後まで書けなかったわ感が感じられて
正直イラッとしたわ
地獄のミサワかよ
583 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/09/01(土) 13:57:13.68 ID:FEwJ2EfDO
>>582
すまんな。
始めに書いた通り、俺はこれが書きたくて俺妹SSはじめたんだわ。
だがまだ完成にはほど遠くてな。
そこにきてリアル含みのリクエストで、完全に心が折れた。
当分ここには来ないから、それで勘弁してくれ。
不快な思いさせてすまない。
584 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/01(土) 14:04:04.57 ID:l9gC9R/zP
ネタバレなんて言わなけりゃわからんだろうに
人のせいにして書けなくなったって言うのはさすがにどうなのよ
盗作されたわけでもなく、細かい部分は色々違うのに

そもそも教えてくれいうた本人がそれはどうかと思うわ
いくら書き手とはいえこの態度はない
585 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/01(土) 14:10:35.65 ID:wgk9X2lAP
>>583
気持ちは分からんでもないが
それならほとぼり冷めた辺りで完成させてから投下すればいいじゃないか

2番煎じだと思われるかもと焦ったのかも知れないが
オチが未完成で更に作者自らネタバレまでされた日には一読者として悲しいぜ

そんだけ思い入れがあるなら
そして本当に悪いと思ってるならちゃんと完成させてくれ
時間かけてでも良いからさ
586 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/01(土) 14:18:23.14 ID:tkcMjYzB0
>>583
>>585の言う通りだと思うぞ
ほとぼりが冷めてからエロ要素を補強してエロパロスレ↓
http://pele.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1342354795/
に投下してみたら良いんじゃないか?
587 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/01(土) 14:26:22.55 ID:CSWQ36jBo


--------------------------------- キ リ ト リ -------------------------------------

読むに堪えるSSはありませんか?
588 : ◆3XYrXGTOAI [sage]:2012/09/01(土) 15:20:57.85 ID:/jVxnZHG0
>>555のシリーズ読んでて、
あまり関係無いのに、
京介xまなみ
桐乃xいわお
の終わり方を何故か予想してしまったww

>>583
貴方の作品はいつも楽しみにしています。
別に気にすることはないと思います。
その作品を完成させてくださる事を心待ちにしています。
589 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/09/01(土) 15:30:36.48 ID:FEwJ2EfDO
空気悪くしてしまって本当にすまない。
ピンポイントで内容が被ってしまい、正直>>585の言う通り焦ってしまった。
最初から暖めてたプロットだけに尚更。
たしかにほとぼり冷めるまでじっくり手元においときゃ良かったんだよな・・・申し訳ない。

しばらく冷却期間置いて、もし許されるなら、また投下させていただいてもよろしいだろうか?

本当にすいませんでした。
590 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/01(土) 16:26:27.75 ID:wgk9X2lAP
>>589
完成させて投下してくれるのを拒む人が果たして居るかね?
少なくとも俺は楽しみにして待つよ
591 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/09/01(土) 22:51:12.34 ID:FEwJ2EfDO
>>590
何よりも救われる言葉だな。ありがとう。

じゃ、最後に誰得かわからない三浦+桐乃を投下して自重期間に入る。
舞台は7巻、夏コミ会場の初コンタクト。
592 : ◆6U1bthnhy6 [sage saga]:2012/09/01(土) 22:52:55.42 ID:FEwJ2EfDO

「あー!わかるっ!わかるよせなちー!ほんと兄貴ってのはさあ・・・」
「なに人の悪口で盛り上がってんだよ」

さっき知り合った赤木瀬菜――せなちーと話し込んでたらいきなり後頭部を叩かれた。

「いった・・・なにすんのよっ!?」

反射的に振り向くと、あたしの兄貴・・・もとい、バカが一人立っていた。

「なにすんのじゃねー。ったく、兄貴の悪口談義に花咲かせるなんて、場所考えてやりやがれ」

あ、やるのは禁止じゃないんだ。

「そんで?なんの用?今ガールズトークで盛り上がってたんですけどー?」
「それは断じてガールズトークじゃない!ただの悪口だっ!!」

相変わらずツッコミ役だなー・・・まー面倒見がいいとそうなるか。
あたしは殊更渋面を作ってせなちーに振り返る。

「あーウザ。ねーせなちー?こいついっつもこんな感じでウザいんだよ。マジキモい」
「おーまーえーなー・・・」
「はははは!」

いつものやり取りをしていたその時、突然兄貴の横の人が大声で笑いだした。
見るからにオタクの風貌。
にもかかわらず、なんだか底抜けに明るい印象。

「部長」

これがあたし・・・高坂桐乃と三浦さんとのファーストコンタクトだった。

『オタクの友達増えました』
593 : ◆6U1bthnhy6 [sage saga]:2012/09/01(土) 22:55:58.43 ID:FEwJ2EfDO

「なんだ高坂。良い妹さんじゃないか?仲も良さそうだしよ」

・・・どこを見たらそう思えるんだろう?
あたしはこの部長と呼ばれた人に、呆れたような視線を送る。

「んなことないですよ」
「そうか?少なくとも妹さんの方は、お前のこと好きじゃねーの?」
「んなわけないじゃん!どこに目つけてんのよっ!?」
「桐乃っ!!」

兄貴に怒鳴られてはっと我に返る。
やば。
今あたし年上の人になんて口を・・・。

「・・・お前な・・・」
「あーいーっていーって高坂。気にしてねーって」

兄貴が怒りかけた瞬間、軽い調子の声がそれを止めてくれた。

「でも・・・」
「いーんだって。・・・悪かったな妹さん」
「え・・・あの、こ、こちらこそ・・・すいませんでした」

深々と頭を下げて謝意と感謝の意を示す。
今のは完全にこっちが悪いのに、先に謝られてしまった気まずさもあって。

「気にすんなって。それより・・・高坂、この子なんだろ?」

部長さんは振り返って兄貴にそう言った。
え?なに?あたし学校でなんか言われてんの!?

「・・・兄貴?」
「ええそうです」

兄貴はにこやかに答えながら、あたしに目を向けてこういった。

「桐乃、お礼ちゃんと言えよ?」
「へ?」
「実はこの人が、深夜販売のときチャリ貸してくれた人なんだ」
「・・・え?あのおにパンの時の?」
「おーやっぱそーかー!改めてよろしくな妹さん!」

部長さんはあたしの手を握ると大きく上下に振った。
無駄に背が高いせいで肩が痛い。

「・・・にしちゃあ高坂?全然元気じゃねーか?不治の病はどうした?」
「それあんたの妄想の中だけッスから」

あたしなんだと思われてるの!?
どーゆー設定それ!?

「いや、チャリ借りる時にちょっとな」
「ちょっ!言葉濁さずちゃんと教えなさいよ!?」
「まあ・・・いずれな」

よほど言いたくないのか、言葉巧みにのらりくらりとかわす兄貴。
むー、なんか気に食わない!

「ちょっと・・・」
「ああ!そういや赤城!お前の兄貴の所為で、俺とんでもない目に・・・」
「え?なにがですか?」
「お前あの日兄貴にガチホモゲーの深夜販売並ばせたろ!?」
「え、ええ・・・なぜそれを?」
「俺もいたからだよ!そんときに・・・」

あたしが食い下がろうとした瞬間、兄貴はせなちーに対して何やら話しかけてしまった。
言葉の様子を聞く限り、文句を言っているらしい。
矛先を失ってしまったあたしが所在なさげにしていると、

「はは。確かに災難だったからな」

部長さんが笑いながら一言呟いた。
594 : ◆6U1bthnhy6 [sage saga]:2012/09/01(土) 22:57:42.73 ID:FEwJ2EfDO

「あの・・・」
「ん?」

あたしはもう一度深々と部長さんに頭を下げた。

「その節は、本当にお世話になりました。兄貴の無茶なお願いを聞いて頂き、お礼の言葉もありません」

兄貴に言われた通り、あたしはお礼を言った。
よそ行きだが、しっかりとお礼を言ったはずだ。
しかし、

「ふむ・・・」

部長さんはあごの無精ひげをいじりながら、何やら無表情でこっちを見ていた。
え・・・なに?

「あ、あの・・・?」
「そういう言い方はいけねーな妹さん」
「・・・え?」

見ると、真剣な顔で部長さんは言ってきた。

「あの日あいつは真剣だった。俺に頼む顔も真剣そのものだった」
「・・・」
「だから俺もそれに感銘してチャリ貸したんだ。でもそりゃあ・・・あんたの為だろ?」
「!!」
「あいつよ、土下座したんだぜ?」
「・・・え?」
「『どうしても今日中にこれを妹に届けなきゃいけないんです!!』ってよ。天下の往来で大の男がだ」
「・・・」
「ましてや相手は見ず知らず。貸してくれる可能性なんざ皆無に等しい。それでもあいつは、妹の為にお願いしますって頭ぁ下げてきたんだよ」
「・・・」
「それをよ・・・兄貴の無茶って言っちゃあいけねーよ。そりゃ全部、あんたの為にした無茶なんだからよ」
「・・・ごめんなさい・・・」

あたしはいたたまれず、小さな声で謝った。
この人の言ったことは何から何まで正論だったから。

「わかってくれりゃあそれでいい。俺はよ・・・高坂って男がお気に入りでよ。あいつの、なんてーか他人の為に我が身を厭わないってのか・・・おっと。んなこたー妹さんのがよくわかってっか」

そう言って部長さんはまたカラカラと大声で笑った。
あたしは嬉しいの半分、悔しいの半分でその様子を見ていた。
嬉しいのは、兄貴の良さをわかってくれる人がいたこと。
悔しいのは、わかってるのがあたしだけじゃなかったってこと。
それでもあたしは万感の意を込めてもう一度頭を下げた。

「ありがとうございます。兄貴のこと、これからもよろしくお願いします」
「おうまかせとけ!」

ニッと歯を剥いて笑う彼に、あたしもつられて笑った。
595 : ◆6U1bthnhy6 [sage saga]:2012/09/01(土) 22:59:13.10 ID:FEwJ2EfDO

不思議な雰囲気を持った人だ。

「ところでよ・・・おにパン好きなの?」

不意に部長さんが内緒話をするように、手を口に当てて聞いてきた。
後半を、ひそひそ話のように声を潜めてきたのであたしもならう。

「はい。てゆーか妹ものエロゲ全般が好きです」
「マジか?今の女子中学生スゲーな・・・ためしに聞くが、お気に入りのタイトルとか言ってみ?」
「大概全部好きなんですけど・・・あ、妹×妹は神ゲーだと思います」
「おお!よくわかってんな!!本気で好きなんだな?」
「そりゃもう!愛してるって言っていいレベルです!」
「・・・うちの腐女子と似たよーなこと言ってるけど、まあ熱意は伝わった。気に入ったぜあんた」

グッと親指をたてて言ってくる。
あー、こーゆートコはやっぱオタクなんだ・・・。

「ありがとうございます・・・あの」
「ん?」
「・・・よかったらメアド交換しませんか?実はこういう話題で盛り上がれる友達がいなくって・・・」
「高坂がいるじゃねーか?」
「兄貴とエロゲで盛り上がる妹がどこに居るのよ!?キモいを通り越して頭おかしいでしょそんなん!!・・・あ、す、すいません・・・」

またやっちゃった。
なーんかこの人、ツッコむときに遠慮なくいっちゃうんだよね・・・。

「・・・兄貴にエロゲの先行販売並ばせた女の言い分じゃねーと思うが・・・まあいいか。別に俺でよかったらいくらでもいいぜ」
「あ、ありがとうございま・・・」
「ああ敬語もいらねーよ」
「え、で・・・でも・・・」
「なーに。おんなじ趣味もってる、いわば同好の士なんだ。それに、さっきのあれがあんたの素なんだろ?遠慮してたんじゃ楽しむもんも楽しめないぜ?」

そう言って部長さんは八重歯を見せてニッと笑った。
・・・面白い人だな。
あの兄貴が屈託なく接してる理由がなんとなくわかった。
なんていうか、するっと人の心に入ってくる気安さを持った人だ。
でも決して不快じゃないそれは、いつの間にか人の警戒心を綺麗さっぱり取っちゃう。
兄貴が天然・・・無自覚たらしなら、この人は天然無自覚の籠絡者だ。
気が付けば、まったくしょーがねーなーって誰にでも許されちゃう人。
気が付けば、周りに人が集まってる人。
誰も独り占めしようとはしないけど、でもずっと傍に居たくなる気にさせる人。
・・・なんであたしの周りにはこんな天然スーパーマンばっかいるんだか・・・。
596 : ◆6U1bthnhy6 [sage saga]:2012/09/01(土) 23:05:19.49 ID:FEwJ2EfDO
「『シスコン・ダラー・ベイビーズ』って知ってるか?」
「え!?それってあの前評判メチャ高かったけど、会社が不渡りして出なかったっていうあの伝説の・・・!?」

思いもかけないレアタイトルの出現に、あたしは我知らず大きな声を上げていた。

「しーっ!声がでかい!」「す、すいません!・・・でもあれって発売されなかったでしょ?」

そうなのだ。
エロゲ業界の少数性。
所詮ゲームの中心に居座れないジャンルなだけに、その出版元は常に倒産の危機に晒されている。
先のシスコン・ダラー・ベイビーズも、そういった経緯で発売されなかった幻の名作の一つだ。

「それがな、会社を解雇されたスタッフ達が、このまま埋もれさすのは勿体ねーってんで、自分たちで作ったんだ。限定50枚」

ニヤリッと笑って部長さんが顔を寄せてくる。
あたしはごくりと喉を鳴らすと、まさかと思いつつ捨てられない思いを言葉に乗せる。

「・・・ま、まさかそれ・・・持ってるんですか?」
あたしの言葉にコクリと頷く部長さん

「たまたまスタッフに知り合いがいてな、そのよしみで譲ってもらったんだ」
「!?・・・聞いたことない・・・」
「ああ。ネットなんかに流出するとよ、正直高騰は間違いねえし、下手すりゃ追っかけてくる危険性もある。だから持ち主がわかるようにシリアルナンバー付きで作った代物だ。その上信用のおける奴だけに配った。だから秘匿性は折り紙つきだ。逆にあんたが知ってたらそっちのが問題だぜ」

肩を竦めて言う部長さん。でも正直あたしはそれどころではなかった。

「・・・い、いいなあ・・・」

そう。
羨ましすぎて呆けていたのだ。
涎も出てたかもしれない。ほ・・・ほんとにいいなあ・・・。

「・・・いるか?」 
「えっ!?」

あたしは一瞬にしてトリップから我に返った。
いいいいいい今なんて?

「ああああああのあの・・・」
「ん?いらねーか?」

部長さんの傾げた首に、あたしは思い切り掴みかかった。

「いっ!いるいるいるいるっ!ほしいほしいほしいほしいっ!!」
「おおう!スゲー喰いつきだなっ!?」

あたしにガクガクと揺さぶられながら、それでも部長さんは笑っていた。

「オーケーオーケー。高坂に持たせるから楽しみにしてな」
「は、はい」

それから数分、あたしは何度目かの非礼をわびた後、改めてレアソフトの貰い受けを確約されていた。

「で・・・でもいいんですか?」
「ん?なにがだ?」
「だ、代金とか・・・その・・・秘匿性とか・・・」

そうなのだ。
このソフトは聞く限り、かなりのセキュリティを要する。
しかも個人個人の意識でだ。
それなのに会ったばかりのあたしに譲るなんて・・・。
その上、正直かなり高価なはずで・・・。

「気にすんな」
「・・・え?」
「もしバレたら俺の見込み違いだ。あんたに迷惑は掛からねーよ」
「え、え?でも・・・」
「それに俺がやりたくてやったんだ。あんたは素直に受け取ってくれりゃいいのさ」
「・・・お金は?」
「おいおい。大切な女を金で売るほど、俺は無粋じゃねーぜ?」
「『大切な女』・・・ですか?」
「ああ」

そう言って笑う部長さんを、あたしは笑顔で返すしかできなかった。

「大切にします・・・」
「おう!」

ニッと笑いながら親指を立てた部長さんに、あたしは同じように親指を立てて答えたのだった。

END
597 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/09/01(土) 23:06:19.21 ID:FEwJ2EfDO
以上です。

ではまたいずれ。
本当にすいませんでした。
598 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/01(土) 23:20:10.21 ID:SHtQq4jDO
>>570
え、ごめんなさいorz
599 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/02(日) 04:40:00.19 ID:OTRYr7ZLo
尿失禁という言葉と同列に便失禁という言葉がある
もう糞は出ないかと思えばダラダラと……うぜえったらありゃしねぇ
600 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/02(日) 05:22:02.51 ID:zGGSepMDO
やっとウザいの消えたか
まぁ残ったのはコテが馴れ合うクソスレだが
さすがとらドラスレ潰しただけはあるな
601 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/09/02(日) 13:30:34.72 ID:B20kaiBVo
いきなり殺伐としだしたな
602 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/02(日) 14:17:09.14 ID:6ydm/5zv0
ひとつケリがついたから残り400レスに期待しようぜ
603 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方) [sage]:2012/09/02(日) 17:12:21.29 ID:+VLA5ewj0
>>600
いや全然消えてないぞ
>>599とか>>600とか
604 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/02(日) 22:52:25.42 ID:6ydm/5zv0
俺妹のSSスレがこんなにウザいわけがない
605 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/03(月) 06:00:06.38 ID:WPqF8HGIO
ロック×あやせ書いたから

次は京介×あやせで行きたいと思います。

展開・文体がややマニアックかもですが、読んでやって下さい

では次から投下
606 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/03(月) 06:00:43.34 ID:WPqF8HGIO
離婚届

「あやせ、あとはお前が記入するだけになってる」

「荷物は1週間中に引き払うから。財産分与とかに関しては弁護士を通じて話し合おう」

目の前に置かれた一枚の書類。離婚届と書かれた書類に、今の夫の心境が現れている。

ガチャ、ガッチャン

マンションのドアを夫が出て行く音がした。もう夫は2度と私のもとには帰ってこない。

何故、こんなことになってしまったの?私は、私は今でも京介さんを愛しているのに・・・


今から2年前。私は24歳。夫の京介は27歳だった。

私の友人・来栖加奈子のマネージャーを勤める夫と、大学卒業後モデルを辞め、代議士の父の秘書として働いていた私。

私たち2人の馴れ初めは、私が親友・高坂桐乃の家へ遊びに行った時に、桐乃の兄として夫と出会った時。

その後、夫を想う気持ちが芽生えたものの、素直でない私は夫に何かとつらくあたったものだった。

しかし、そんな私を受け入れてくれた夫は9年近くにも渡る交際の末、私にプロポーズをしてくれた。昔夫がしたおふざけではない。心のこもったプロポーズに私はどれだけ喜んだことか。

優しい夫を慕う女性は思いのほか多かった。ただ皆、私と夫との仲を最後には認めてくれた。必ず夫を幸せにする。それが彼女達が私に与えた条件だった。

華やかな結婚式。私や夫の友人、家族に囲まれて・・・私はこの人と幸せになろうと心に決めた。夫もそうだったのだろう。あの晩、私を抱いて幸せにしてくれると誓ってくれた。

新婚生活は楽しいものだった。共働きだったものだから、一緒に過ごす時間は少なかったが、それだけにその一瞬を大事に出来た。

結婚から2カ月。父が国政に進出。父のもとを訪れる人、仕事の量。信用出来る古くからの知り合いとしか仕事をしたがらない父が側近を増やすハズもなく。私は家に帰る暇も惜しんで働いた。
607 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/03(月) 06:01:25.81 ID:WPqF8HGIO
夫の誕生日を一緒に祝えなかったこと。2人が付き合った記念日を仕事が忙しく私が忘れてしまったこと。結婚記念日に夫からの電話にも気付けなかったこと。

たまに家に帰っても、夫は眠っていたり。加奈子の仕事が長引いていたり。2人で過ごす時間は目に見えて減ってきた。内心、寂しかった私も、父のため今が踏ん張りどきであると言い聞かせ、仕事を続けた。

夫からの連絡に応えられない日が続いた、2回目の結婚記念日。遅くまで働き、家に帰ったのは夜の1時。

「もう、寝てるよね・・・」

静かに家へと入った私を迎えてくれたのは、久しぶりに見る夫の顔だった。

「あなた、まだ起きていたんですか?」
「ああ」

目の前には夫が腕をふるったのだろう。ご馳走が並んでいた。

「ごめんなさい。今日はもう食べてきてしまったの」
「今日は結婚記念日だろ。メールをいれといたハズだけど?」
「えっ、そう?・・・本当だ、忙しくて気付かなくて」
「そっか。なら、俺が1人で食うよ」

ふらっと立ち上がり、食べ物をよそう夫。無神経な私は一言

「そうして下さい。では明日も早いので。おやすみなさい」

といって、寝床へと向かった。久しぶりに見た夫の顔は今思い返せばさみし気だったような気がする。

次の朝。寝不足だったものの、今日も遅れる訳にはいかない、と起きると居間の机で夫が何やら書いているのが見えた。

「おはようございます、貴方」
「ああ」
「何をしてらっしゃるんですか?」

丁度書き終えたのだろうか。ペンを机におくと夫は振り返り

「あやせ、座ってくれ」
「いや、私今日も早いので」
「大丈夫だ。すぐ終わる」

夫の前に腰掛けた私に、彼はこう告げたのだ。

「俺たち、別れよう」

と。
608 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/03(月) 06:02:17.17 ID:WPqF8HGIO
「何を言ってらっしゃるんですか?」
「離婚しよう、と言っている」
「冗談はやめて下さい。私は忙しいんです」
「冗談でこんなことが言えるか!」

夫と付き合って初めて怒鳴られた。あの優しい人がこんなになるだなんて。その言葉に一寸の嘘も混じっていないことを思い知らされた。

「お前と結婚して2年間。お前は一体何をしてくれた?」
「え・・・」
「お義父さんの手伝いで忙しいのは分かるけどよう。2人の大切な日にまで、仕事、仕事ってよう、俺はどうなるんだよ!」

「俺は楽しみにしてたんだ!お前と一緒にいられる日を。1日でも良い。半日でも良い。お前と2人きりで過ごしたかったんだよ。」

「だから、加奈子にも無理を言ってさ。昨日は早く切り上げて、慣れてねえ料理まで作ってよ。お前が帰ってくるの待ってたんだよ」

「お前、1回目の結婚記念日のこと覚えてるか?連絡を受け取れなかったお前を俺はずっと待ってたんだ!」

「夜中に帰ってきたお前は約束してくれたよな?来年の結婚記念日は絶対に2人で過ごそうって。だから、だから俺は・・・」

泣き崩れる夫を見て後悔の念が押し寄せた。ここ1年、家のことも何もかも夫に押し付け自分は外で働いていた。

夫がたまに「いつなら一緒にいられる?」と聞いてきても、「忙しいんです」と答えるばかり。夜に私を抱き寄せた夫にも「疲れているのでまた今度」と言ってきた。

休みの日には、たまの休みと家で昼まで横になり、夕方から友人と飲みに出かけ、酔って帰ってくると夫の相手もせずまた床へ着く日々を送ってきた。

夫を愛していなかったのではない。いつも隣で寝ている夫に私は癒されてきた。夫なら分かってくれる。今は忙しくても待っていてくれると思っていた。

また今度、休みでもとって2人で旅行に行こう。それにいずれは子どもも欲しいな。桐乃も甥っ子や姪っ子を待ってるって言っていたし。出来れば兄弟が欲しいな。一人っ子は寂しかったから。

隣にいる夫の寝顔を見ながら1人で夢物語を描いていたのだ。だが夫は思ったより繊細で・・・私を待つことなど出来なくなっていた。
609 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/03(月) 06:02:57.48 ID:WPqF8HGIO
「なあ、あやせ。こんな生活もうやめよう。お互いの為にならない。お前は若いんだ。まだ他の男とやり直せる」

静かに涙を拭った夫は先ほどの書類を取り出し、いつも持ち歩いている判子をその書類に押すと、私に渡した。

「俺は今日は早いんだ。離婚届に必要なことを書いといてくれ。それから暫くは実家で暮らすから。」

今まで優しく、私を気遣ってくれた夫の内心に気付けなかった愚かな私は、あまりの衝撃に引き止める言葉すら紡げなかった。


夫が離婚届を置いて去った後。私は回想に耽りながら、静かに泣いていた。

あの優しく、いつもわがままな妹やその友人(私も含めて)に耐えていた夫。その夫があんなに追い詰められ、自分だけでここまで決めてしまうとは。

その決心の深さに驚いて引き止めることすら出来なかった私。とても仕事に行く気にはなれない。1人になりたかった。

体調が優れないから休みたい、と父に連絡をとる。そういえば朝食も食べていない。食べる気もしないが。

いっそあの時、胸ぐら掴んでふざけたこと抜かすな、ぶち・・・等と叫んだ方が良かったかも知れない。でも、出来なかった。そんな力は残されていなかった。

机に置かれた離婚届が現実に私を呼び戻す。これを書いてしまえば・・・私と夫は赤の他人になる。そうなれば、夫はどうするだろうか。

お姉さん、黒猫さん、きっと誰かが夫を今よりも幸せにしてくれる。残念なことに、今の私は彼女達に勝てない。私には京介さんの妻は役不足だったのだ。

夫の幸せの為。私がペンを取り出した時

プルルルッ、プルルルッ

家の電話が鳴る。もしや夫では・・・

「も、もしもし!?」
「お、あやせ?ちーっす、加奈子だけどさ」

一瞬期待した自分が愚かだったのに、旧友からの電話を喜べず怒っている私がいた。

「いやさ、京介そっちにいねーかなって」

京介。その言葉に心を動かされる。

「なんかさ、急に今日は休むって電話かけてきやがってよ。超迷惑だっての。んで、もし風邪とかなら加奈子夕方オフだからよ。見舞いにでも行こうかなって思ってさ。」

そんな・・・今日は早いって言って出たはずなのに・・・

「そんでこっちから電話かけても出ねーしよ。あっれー、あやせ?聞いてる?」
「うるさい!」
「ヒッ!あ、あやせ様何を怒ってらっしゃ・・・」

ガチャ!
610 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/03(月) 06:03:33.59 ID:WPqF8HGIO
どうしよう、どこにいるんだろう?もしかして事故に巻き込まれたのでは?

携帯に電話をかけても・・・これって着信拒否?初めてされた・・・

いてもたってもいられなかった。ただ少し連絡がつかないだけで、こんなにも不安になるなんて。今まで夫を苦しめていた一端を味わったような気がした。

どうしよう・・・もし、事故にあってたらどれくらいで連絡が来るのだろう?それとも・・・私には連絡が来ないかも知れない。

いや、まだ結婚してる訳だし!そう、まだ籍は入ってるんだから連絡は入るはず。でも、もし別れたら?

もし、私が夫と別れて何かあっても誰も何も知らせてくれないだろうか?だとしたら・・・私は京介さんに何かあっても知らないまま一生を送るの?

考えただけで耐えられなかった。有り得なかった。彼の側にいたい。今からでも良い。何でも良い。彼を助けられるようになりたい。

気付いた時、わたしは寝間着のまま町に飛び出していた。駅までの道を走って夫の姿を探した。事故があったかどうか、警察にも行った。

夫の痕跡は見つからなかった。もう、どうして良いか分からない。もしかして、あそこにいるのでは?思い当たる場所が一箇所だけあった。

私の足は桐乃と仲直りした、あの「お兄さんとの思い出の公園」。もし、もし彼が私をまだ愛していてくれるのなら・・・

そして、そこに彼はいた。

泣きじゃくりながら、ペットボトルのお茶を飲む夫が。

「あなた!」
「あ、あやせ・・・か?」

呆然と食い入るように私を見つめる、愛しい夫の姿。
611 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/03(月) 06:04:31.07 ID:WPqF8HGIO
「何をやっているんですか?仕事も休んで、こんな所で・・・」
「お前こそ仕事は・・・ってかそれ寝間着だろ!それで町中ウロついてたのか?」

言われてみると恥ずかしいが、それどころではなかった。

「馬鹿!馬鹿馬鹿馬鹿!仕事なんて行ける訳ないじゃないですか!あんな、あんな紙突きつけられて!」
「そ、それの事だ。あやせ、俺・・・」
「私が貴方と離婚?寝言は寝て言いなさい、ばーか!私は、私は何があっても貴方を離さないんだから?」
「あ、あやせ?」
「2人で旅行に行こうって秘密で貯金もしてたんです!それに、まだ・・・あ、貴方の子どもも授かってません」

「まだ私は貴方とやりたいことが沢山あるんです。貴方といたいんです!貴方を、貴方を愛してるんです」

「貴方な為なら何だってします。仕事だって辞めて良い。貴方さえいてくれるなら。だから、お願い・・・」

「私を捨てないで・・・」

夫の胸にしがみついて懇願した。貴方を、貴方を幸せにしないと・・・彼女達との約束が果たせない。

「もう良いよ、あやせ」

「俺が馬鹿だった。お前と別れたいなんて、俺もこれっぽっちも思ってねえよ」
「えっ?」
「俺はさ。お前が俺に愛想尽かしたんじゃねえか。心配でさ。もし、そうなら・・・別れた方がお前の為だと思ってな」

全くこの人は・・・どこまで馬鹿で鈍感でお人好しなんだろう。

「もう、何処までも貴方は馬鹿です。なんでまだ・・・いえ、この先は次の時にとっておきます。」
「次?次なんてあんの?」
「貴方は信用出来ません」
「くっ・・・仲直りした矢先にこれかよ」

私たちは2人で家に帰り久しぶりのデートへ出かけた。これと行って特別なことはない、その時間が1番の幸せだった。

「なあ、あやせ」
「何ですか?貴方?」
「1日遅れだけどさ・・・祝わないか、結婚記念日」

夫の料理の腕前はなかなかのもので・・・久しぶりの2人の夕食はとても楽しかった。

その晩、父に連絡をし私は仕事の量を減らすことにした。週に1度は必ず夫と過ごす日を割きたかった。
612 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/03(月) 06:05:06.33 ID:WPqF8HGIO
・10ヶ月後

第一子、男の子を授かった。私の両親も夫の両親も、桐乃も顔が緩みっぱなし。お義父様が1番喜んでいたかな。

・5年後

第二子誕生、女の子が誕生。そして父が政界を引退。父がどうしてもとせがみ、夫が地盤を引き継いだ。夫の友人に財閥の娘がいたこともあり、夫は以後盤石な地盤を持つ政治家として手腕を発揮していった。

そして、あの離婚騒動から30年が過ぎた日。私たちは沢山の思い出の詰まったマンションを離れることになった。

「なあ、あやせ。覚えてるか、30年前のこと」
「ええ、一生忘れません」
「次越す所は都心だ。あの公園にはなかなか行けなくなるな」

そう、ここは・・・私たちの思い出が詰まった町。家。

「新しい家は住みやすそうですか?」
「どうだろうなあ。よく家主が変わってるよ」
「知ってます。貴方は追い出されないようにして下さいね?」
「へいへい、分かってますよ」

持ち運ばれる荷物。場所は変わっても思い出は変わらない。貴方が側に居てくれるなら。

「なあ、あやせ」
「何ですか?」
「あの時別れてたら・・・どうなってただろうな」
「さあ、想像もつきませんけど・・・でも、今より幸せではないと思いますよ?お互いに」
「お互いに、か・・・そうだな。」
「ところで、あの離婚届・・・どこにあるんでしょうね?」
「さあな、あの日気付いたらなくなっていたから」

そう、あの届はどこかに消えていた。

「もし、見つかったら・・・どうします?」
「さあな。でも、とっておくかな。」
「えっ?」
「まあ、あれだって大切な俺たちの思い出だからな」

そういって微笑んだ夫の姿を30年見てこられたのは、どこに行ったとも知れない離婚届のおかげかも知れない。

【終わり】
613 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(鳥取県) [sage saga]:2012/09/03(月) 07:23:41.13 ID:D8j4jlf7o
乙。
家主がよく変わる都心の新居
しかも家主がよく変わることをあやせも知っている

ひょっとして京介、内閣総理大臣√?
竹島問題頼んだぞwww
614 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/03(月) 10:39:45.41 ID:Igwumi8DO
>>599
>>600
なんでわざわざ嫌味とか言いにきてんだ?気持ち悪りい。

>>612
乙。
あんたの作品好きだ。
次も頼むww
615 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/09/03(月) 14:27:51.31 ID:gpMNSbg60
>>612
乙乙!
色んな京介×あやせSSがあったけどこういう切り口は新鮮で良かったよ
これからも気が向いたら投下してくれ
616 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/03(月) 14:58:03.32 ID:iwTsen4IO
感想ありがとうございます。

>>613

まあ、その役職ですね。京介の人柄なら人望も厚そうなので、周りに押し上げられてなりそうなイメージです。

>>614

そう言って頂くのが1番の励みです。

>>615

離婚騒動を黒猫編でやるか、全く違う方面で桐乃に手を出すか

暫く時間はあまり割けなそうですが、少しづつ書いていくつもりです。
617 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/03(月) 17:48:42.48 ID:ZKvKs924o
よりを戻すのじゃつまらないのでどうせならバッドエンド(NTR付)で頼むよ
618 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2012/09/03(月) 20:00:34.16 ID:QHXpfJXAO
安価悪戯スレ打ち切りになったのか

しょうがないとはいえ寂しいな
619 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/03(月) 21:01:56.91 ID:Igwumi8DO
>>618
まぁ仕方ないっちゃ仕方ないよな。
原作先行で遣り尽くした感あるし、アニメ二期っても原作踏襲だろうし。
けいおんみたいに、原作無視でアニメオリジナルばんばんやってくれんならまだなんとかなるだろうが…此処も何時まで持つかな…。
620 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(茨城県) [sage]:2012/09/03(月) 23:34:19.50 ID:H9RoEUhZo
安価悪戯スレは>>1のリアル事情が理由だよ
621 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/04(火) 07:27:19.43 ID:ZwCAyvkM0
>>619
ちゃんと確認してからレスしろボケ
622 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/04(火) 09:35:00.83 ID:6GIaKxuDO
>>621
嵐が出てんのか。
そーゆーのは本スレだけでやれボケ。ウゼーから。
623 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/04(火) 12:33:09.33 ID:a3fP+puDO
>>622
安価スレは1がリアルで悲報に見舞われてSSどころじゃなくなって打ち切りなんだけど
それを荒らし扱いってどういう了見?
624 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/09/04(火) 13:05:25.99 ID:FEN9JXUt0
>>619 >>622
今まで楽しく読ませてもらったのに1のリアル事情も理解出来ねぇなんておまいら糞だな
625 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/04(火) 16:17:18.27 ID:vI7uc4MrP
>>619はただ自分の勝手な思い込みで判断して偉そうに語ってみたところを
>>621に指摘され煽られたと勝手に思い込んで>>622を書き込んでしまっただけの
視界が狭くで自分が正しいと思い込んでる
こんな上司がいたら嫌ランキング上位にいそうな人なんだからそんな責めてやるなよ

まあ、これも俺の勝手な思い込みだかね
626 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/09/04(火) 22:38:36.43 ID:/KJk749Po
《ほのぼの四コマ風 SS劇場》

―徒競走―

桐乃「ねぇ、あたしとあんたとどっちが早いか、勝負してみない?」

京介「おまえ、現役の陸上部じゃねえか」

桐乃「だったらハンデ付けてあげるけど、それであんたが勝ったら、あんたの願いを一つだけ叶えてあげる」

京介「いくらハンデ貰ったって、初めっから勝負は見えてるじゃねーか」

あやせ「あ、あの、お兄さん、わたしとも勝負してください。もちろん、ハンデはわたしが貰いますけど」

京介「あやせならいくらでも抜けるぞ! てか、俺はいつもおまえで抜いてるしな」

あやせ「わたしで抜いてるって、どういう意味ですか?」

京介「」


スマン、ちょっとした戯れさ、気にしないでくれ……
627 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/04(火) 23:35:00.38 ID:g0l96IV30
>>626
クスッときた
この調子でシリーズ化よろしく
628 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/05(水) 01:37:53.09 ID:246YEtPOo
調子に乗ってもう一本だけ

《ほのぼの四コマ風 SS劇場》

―シングルベッド―

桐乃「これで予習も完璧――って、なっ、何であんたがあたしのベッドに寝てんのよ!」

京介「しょうがねーだろ、俺のベッド、あやせに取られちまったんだよ」

桐乃「あやせに取られたって……じゃ、じゃあ、あたしはどこに寝ればいいのよ」

京介「すまねえけど、今日は俺のベッドであやせと一緒に寝てくれ」

桐乃「何であたしがあんたのベッドに寝なくちゃ…………今日だけだかんね」

深夜――

京介「うわっ! なっ、何であやせが俺と一緒に寝てんだよ!」

あやせ「何でって、桐乃の鼻息が荒くて眠れないんです。クンカクンカって……」

京介「…………」
629 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/05(水) 01:51:05.94 ID:adUnTRMso
ここんとこがっつりしたのが多かったからこういう力抜いて読めるやつは良いな
630 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/05(水) 06:35:23.40 ID:V0BsPd270
>>626は我慢できたが>>628で吹いてしまったwwww
631 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/05(水) 21:33:17.21 ID:KFUox+Wv0
んじゃあ、別のSS中に使う予定の小ネタだけ抜き出して俺も投下

 於、高坂家

加奈子「じゃあなあ〜」

あやせ「お邪魔しましたー」

桐乃「ばいばい〜い、また明日学校でねー」

大介「これからも娘とは仲良くしてやってくれ」

あやせ「もちろんです!!」

  …………………………

京介「珍しい組み合わせだな」

佳乃「あやせちゃんがお父さんと話してみたかったんですって」

京介「ふ〜ん……」


―――――――数日後―――――――


大介「………………」ムッスー

京介「おい、おふくろ、親父は一体どうしちまったんだよ!?」

佳乃「それが仕事の備品を紛失してしまったらしくて……」


  …………………………


あやせ「……ふふっ♪本物だぁ」
632 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/05(水) 22:11:36.25 ID:TeRIuwnDO
>>631
手錠か!?

それとも拳銃か!?
633 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/05(水) 22:32:16.28 ID:+wgI2MDw0
>>632
両方+特殊警棒
634 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/09/06(木) 00:23:18.90 ID:x+IWk8TDO
面白そうなんで俺も参加。
原作一巻、親父と対決する京介。


京介「これは俺のなんだ!だからこれは絶対桐乃のじゃねえ!俺が預かってもらってた俺のもんだって!だったら捨てなくてもいいだろ!?」

大介「…よく知らないが、これはパソコンに入れて遊ぶゲームなのだろうが……この家で…パソコンは…桐乃しか持っていないはずだ…」

京介「そ、それは、桐乃にパソコン借りてやったんだって!」

大介「ほほう…お前は妹の部屋で、妹のパソコンを使って、妹にいかがわしいことをするゲームをやっていたというんだな?」

京介「超面白かったぜ!文句あっか!」

大介「……」

肩ポン

大介「そうか。実は俺も好きなんだ妹ものエロゲー」

京介「えーっ!?」

大介「妹×妹って神ゲーだよな?」

京介「えーーーーーっ!!?」
635 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/06(木) 01:24:12.86 ID:QV0MKOM8o
親父ぇ・・・
636 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(茨城県) [sage]:2012/09/06(木) 01:27:07.09 ID:jvgu+4obo
佳乃さんってまさか……
637 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/06(木) 05:28:58.35 ID:texwbOwDO
佳乃「(ガラッ)あら、真の神ゲーは『弟×弟』よ!」

大介「俺にBLゲーを語られても理解はできんし、するつもりも無い。」


京介「(逃げなきゃ、逃げなきゃ、逃げなきゃ)」
638 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/06(木) 05:56:24.47 ID:b4ligOhi0
何か桐乃スレのショートSS大会みたいになって来たぞ
639 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/06(木) 16:51:23.53 ID:x+IWk8TDO
>>638
その桐乃スレとやらを見てきた。

なにあれ怖い。
640 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/06(木) 18:39:59.47 ID:pDq1vHEL0
>>639
最近は大人しいけどピーク時は1日に20個くらい小ネタが投下されていて漏らしそうになった
641 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/06(木) 19:41:21.98 ID:x+IWk8TDO
>>640
いや、現行スレを頭から読んだだけだから小ネタとかはわからなかったんだけど、兎に角作者批判と黒猫アンチの基地害ぶりに怖気がはしった。
途中で早々に逃げ帰ってきたよ。
642 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/06(木) 19:51:17.92 ID:CUN+vSBIO
>>641
黒猫アンチが歓迎されてる訳じゃないけどね
原作者とか公式の批判もネガ厨しつこいって言われてるし

今は新しい燃料がないから同じようなことしか書き込まれないけど、
普段は小ネタとかSS、イラストがメインだよ
643 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/06(木) 20:22:18.99 ID:x+IWk8TDO
>>642
なら読みたいなと思いスレ16を見に行って、おもいっきり黒猫アンチの祭りになってて心底凹んだ。
もうここでSS投下をじっと待ちます。
644 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/06(木) 20:30:11.98 ID:M0OaB6aM0
>>641
すまん>>640で俺が言ったスレは別の桐乃スレだったようだ
あんたの言っている桐乃スレ見て来たが確かに気持ち悪かった
645 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/06(木) 20:42:29.46 ID:K6HY8NjSO
見るなら文芸でなくキャラスレの桐乃スレ見るべきだろう
小ネタやらは基本キャラスレのほうだし

たぶん>>643が見たのは文芸の方だと思う
646 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/06(木) 21:51:34.39 ID:W61hCgqUo
通常のSSが投下されるまでの場つなぎのつもりで

《四コマ風SS劇場 わかると怖いシリーズ》

桐乃「ねえ、ノーパソ使ってないんだったら持ってってもいい?」

京介「あ、悪かったな。今、おまえの部屋に返しに行こうと思ってたんだ」

桐乃「じゃあ持っていくね。あ、そういえばさー、あやせが今日学校にクッキー焼いて持って来てくれたんだよ」

京介「へー、そういやおまえ、クッキーが食いてえとか言って騒いでたもんな」

桐乃「騒いでなんかないわよ。ただきのうは、寝る前に急にクッキーが食べたくなっちゃったんだもん」

京介「おまえの食い意地の張った思いが、運の良いことにあやせに届いたってわけか」

桐乃「ふん、何とでも言いなさいよ。でも、やっぱあやせっていいとこあるよね」

京介「まあな、多少思い込みの強いとこはあるけど、何だかんだ言ってもあやせはいいヤツだよ」

  ♪ピロリロリン ピロリロリン

京介「こんな時間に……あやせ!? よう、どうした? こんな時間に掛けてくるなんて珍しいじゃねえか」

あやせ「あはっ、お兄さんですか? もう、そんなに褒められたらわたしだって恥ずかしいじゃないですか」
647 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/06(木) 22:09:50.69 ID:W61hCgqUo
《四コマ風SS劇場》

あやせ「お兄さんが自転車なんて珍しいじゃないですか」

京介「お袋の用で、急いで郵便局まで行かなきゃなんねーんだよ」

あやせ「駅まで行くなら、わたしも乗せてってくれませんか?」

京介「ニケツはマズイだろうーが」

あやせ「二穴はまずいんですか?」

京介「だってニケツだろ?」

あやせ「ええ、でも女の子なら誰だって二穴……あれ? 三穴?」

京介「酸欠?」



こんなことばっかやってると、いつか怒られるな
648 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/06(木) 22:16:54.67 ID:M0OaB6aM0
>>647 乙
俺は怒らねぇよ
649 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/06(木) 23:16:11.01 ID:texwbOwDO
疲れて頭使いたくないときとか、
こういうおやつ感覚の小ネタはありがたいの。
てか、乙。
650 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/06(木) 23:28:26.96 ID:x+IWk8TDO
>>646
ふと思ったんだけど、クッキーの件は桐乃が自分の部屋で。
パソ返してもらう話は、話の流れから京介の部屋。

…………え?
まさか両ほ…ん?誰だこんな時間n…アーッ!
651 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/09/07(金) 00:45:25.95 ID:sBqHsGgDO
俺も便乗して書いとこw
2巻。あやせに弁明するため、嘘をつく京介。
同人誌を見せつけ指を突き付けたシーン。

京介「そいつはなあ!俺と桐乃の『愛の証』なんだよ!」

あやせ「え…ええーーーっ!?」

桐乃「な、なにとんでもないこと口走ってんのあんた!?」

京介「(桐乃を抱き寄せ口をふさぐ)見てのとおりだあやせ!俺たちは愛し合ってんだよっ!だからこそ許されざる愛の物語を集めていたんだ!てめえにボロクソ言われるほど悪いもんじゃあねえっ!」

あやせ「な、な、な…何を…!?」

京介「…桐乃の趣味は、俺たちの兄妹の仲を、ぶっ壊れた絆を繋いでくれたんだよ。あのときアレを見つけなけりゃあ、俺たちの関係はずっと冷めきったままだった。一番そばにいた妹のことを…泣いている妹のことを助けてやるこたあできなかったんだ……!だから俺は俺は心底感謝してるぜ!てめえが汚らわしいと抜かしたオタク趣味全部にな!……この想いを、誰だろうと否定されてたまるかよ。いいか、よく聞け、俺はなあ……妹が、大っ好きだあああああああああ――――っ!」

桐乃「あたしも兄貴が大好きっ!!」

京介「えーっ!?」

あやせ「わたしもお兄さんが大好きっ!!」

京介・桐乃「えーーーーっ!!?」

麻奈実「私も京ちゃんが大好きっ!!」

京介・桐乃・あやせ「どっから出てきたーーーっ!!!?」
652 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/07(金) 00:58:14.70 ID:FGAuCJ4Xo
>>651
話の流れ的に桐乃とあやせまでは予想した
しかし、まさか麻奈実が出てくるとは……イチゴのドロリッチ噴き出すとこだった
653 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(茨城県) [sage]:2012/09/07(金) 01:02:53.74 ID:Eq+DJR6Ho
>>651
???「俺もあんちゃんが大好きっ!!」
654 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/07(金) 03:59:29.32 ID:ydbewf7vo
>>653
京介「お前は帰れ!」
とか突っ込みそうだな
655 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/07(金) 05:17:09.12 ID:LREVXGkDO
麻奈美スネークwwwwwwww
656 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/07(金) 06:29:49.56 ID:Fdd1cHhC0
>>654
「お前は帰れ!」と言いながら後ろから突っ込む?
そういう話はゲイスレでやれください
657 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/07(金) 12:21:53.44 ID:sBqHsGgDO
>>653
加筆嬉しいな。
また思い付いたら書こう。
658 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長野県) :2012/09/07(金) 22:07:33.34 ID:Q8QLd99N0
久しぶりに来てみたらSSがたくさん投下されてるではないか…
楽しませてもらったよ。
それはそうと、今日俺妹11巻が売っていた(ラッキー☆)ので買ってきた。
内容はネタバレになるので言わないが、これだけは言わせてもらおう。
超面白かったwww
659 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/07(金) 23:05:56.28 ID:PzPDafAJ0
>>658
新聞と同じで首都から遠い地域から配本されているんだね
横浜はどこを探しても置いていなかった
660 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/08(土) 07:08:33.00 ID:fTQK/xD80
>>659
御茶ノ水でも買えたんだぜ
661 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/09/08(土) 08:26:09.27 ID:LMk9jiXSo
そうか、11巻発売されたんだ……。通常のSSが投下されないのはそういうわけだったのか

《四コマ風SS劇場》

―チェーンメールの巻―

桐乃「ねぇ、チェーンメールってあるじゃん、最近また流行ってるみたいなの」

京介「あの手のもんは数年おきに流行るからな。あんなの来たって放っておきゃいいんだよ」

桐乃「そうなんだけどさー、でも、やっぱ気になるじゃん」

京介「俺んとこにも来てるぜ、見てみるか? ほら」

桐乃「えーと、『俺はお前が好きだ! 結婚してください……』 何これ、キモ!」

京介「それだけならいいんだけどな、続き読んでみろよ」

桐乃「あ、うん。『このメールを三日以内にあなたの妹の同級生で黒髪ロングの……』 って、えっ?」

京介「この何ともいえないピンポイント感がハンパなく怖ぇーだろ」


翌日――

 ♪ ピロリン メ〜ルだよん メ〜ルだよん

京介「どーせまた……」

京介「えーと、『俺はお前が好きだ! 結婚してください……』 ったく、バレバレだっつーの」

京介「はぁ? 『このメールを三日以内にあなたの妹へ転送しないと……』 って」
662 :658 [sage]:2012/09/08(土) 09:11:36.78 ID:xQAWP/VZ0
まだ買えている人はかなり少ないと思うよ
正式な発売日は9/10だし
俺が買えたのは偶然だよ
663 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/08(土) 10:24:30.28 ID:mZ0TYy2DO
>>662
フラゲいいな。
俺も、後半出勤の従業員に本屋寄ってくるよう頼んでみた。
とらドラ最終巻がフラゲできたトコなんで、今からwktkしてるww
664 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県) [sage]:2012/09/08(土) 10:29:35.95 ID:PRr8G5k3o
>>662
>まだ買えている人は少ないと思うよ
そうでもないかも?
Amazonから早期調達できたので早く送るねってメールがあって
もう届いたよ
665 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/08(土) 13:51:34.47 ID:fTQK/xD80
>>661
あwwwwwwやwwwwwwせwwwwwwたwwwwwwんwwwwww
666 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長野県) :2012/09/08(土) 22:08:21.90 ID:xQAWP/VZ0
フラゲできた人けっこういたのかww
667 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長野県) [sage]:2012/09/08(土) 22:11:47.41 ID:xQAWP/VZ0
さげ忘れたスマソ
あとゾロ目げとしてたしww
668 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/08(土) 22:22:47.69 ID:mZ0TYy2DO
11巻買った!読んだ!パネェ!!
669 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/09(日) 01:12:39.14 ID:V88lDAHi0
>>618

私も買いました。いやー、ネタバレSSが書きたくなってきました。

と言うことで>>606のシリーズの黒猫篇。>>617が言った通りバッドエンド風にした上にNTR的な要素もいれたんですが、NTRとは言えないかもです。

>>543>>545にもヒントを頂きました。ありがとうございました。

では次から投下。
670 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/09(日) 01:13:27.28 ID:IHnFLe1IO
離婚届(黒猫編)

「私が書くべき所は書いてあるわ。残りを貴方が記入して頂戴」
「約束は守ってくれるんだよな」
「ええ。子ども達には会わせてあげる。貴方もあの子達の父親なのだから、私に止めることは出来ないわ」
「瑠璃・・・」
「何かしら?」
「本当に悪かった!」
「もう済んだことよ。許す気はないけれど、怒る気もないわ。」
「そうか・・・それがお前のケジメの付け方なんだな」
「そうよ。さあ、責任をとって頂戴」

夫が震える手で離婚届を書く時。「やり直したい」と一言言うだけで私の幸せは守られたかも知れない。でも、それは「ケジメ」が許さなかった。


私と夫の出会いは私が中学3年の時。女だけのコミュニティのオフ会に参加した妹を気にしてついてきたシスコン。それが夫だった。

当時の私は・・・黒歴史ね。とにかく痛々しい子だったから、夫にも夫の妹の桐乃にもトゲトゲしい物言いをしていた。

しかしこの兄妹は・・・照れ臭いけれど、私は兄の方を好きになり、妹とは親友になった。

1度は夫と付き合ったが、夫のブラコン妹の為に私たちは別れた。でも夫は最後には他の女よりも私を選んでくれた。

結婚したのは今から5年前。夫は25歳、私は23歳。今では4歳の息子と1歳の娘がいる。

タレントのマネージャーである夫の収入は、4人家族には充分なものだった。比較的裕福で落ち着いた幸せな家庭。
671 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/09(日) 01:14:14.04 ID:IHnFLe1IO
2ヶ月前までは

夫の浮気が分かった。浮気といっても一晩限りのものだったが。私と夫の共通の友人・槇島沙織の家が主催したパーティーでのこと。

本当ならば子ども達と家族4人で参加するハズだったのだが、下の娘が体調を崩し私と娘は家を離れる訳にはいかなくなった。

長男は妹の面倒見が良い子だから、妹を気遣って家を離れようとせず、とはいえいきなり家族全員が欠席するのもどうかと思い夫だけがパーティに出掛けた。

「なるべく早く帰る」と言い残して。

まだ赤ん坊の娘になにかあってはと、車で小児科まで送った為夕飯は外食にすることにした。

息子は沢山食べてくれたし、娘もお医者様の言った通り大したことはなかったようで、穏やかに眠っていた。

家に帰ると、まだ夫は帰ってこなかった。きっと、久しぶりに沙織に会ってはしゃいでいるのだろう。そう思い、息子を抱いて床に着いた。

翌朝。夫は帰ってこなかった。心配で携帯を見たら一通のメールが。しかし差出人は

「沙織?」

夫に何かあったのでは、と心配をさせる差出人であった。その内容は

その晩の全てだった。

夫は、沙織の姉で既婚者でもある香織さんと肉体関係を持っていた。香織さんはかなり積極的な人で夫に言い寄っては寝室に引きずりこみコトに及んだそうだ。

「面白いことは全部したい」

それが香織さんの性分だそうだ。自分が結婚していても好きになった男は捕まえて寝る。そして翌日には忘れる。

夫の何かが彼女の琴線に触れたのだろう。姉の部屋からこっそり出てきた夫を沙織がたまたま見つけた。というのが今朝だそうだ。

無論、すぐに信じた訳ではない。しかし沙織は嘘をつくような人ではないし、なるたけ皆が幸せでいられるようにと取り計らう人だ。
672 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/09(日) 01:15:48.34 ID:IHnFLe1IO
そんな彼女がこんな人間関係に荒波を立てるようなことを言うとも思えない。恐らく真実を知った彼女は断腸の思いで私に連絡したのだろう。

「京介さんを信じてあげて下さい。何かの間違いだと思いますから」彼女のメールはこう締めくくられていた。

私も信じたかった。しかし夜中に仕事から帰った馬鹿正直な夫は、顔面蒼白にしながらあるがままのことを私に語った。

沙織の言った通り、香織さんに連れこまれ、何時の間にか自分もその気になっていたそうだ。

確かに2人目を産んでから私は一切夫の相手をすることはなくなっていた。2人の子どもを抱える主婦の心労は並大抵ではない。

ようやく上の息子が寝静まったとしても、下の子にはお乳をあげる必要もある。夫の相手など出来る訳がなかった。

夫も分かってくれてはいた。しかし、若い夫には苦痛だったのだろう。そこにあのような誘いがあり、それに食いついてしまったのだ。

事情を聞いて私は・・・正直に言って怒ってはいなかった。

驚くほど冷静な自分自身に驚いたものだ。まあ、夫があらゆる所で無自覚に女をタラす癖があることは知っていた。

ただ現実には私の覚悟より斜め上からの変化球だったが。夫を取りに来るならあの闇天使やベルフェゴール、メルルもどきくらいかと思っていたのだが。

冷静になればなるほど怒りは薄れていく。そして湧くのは失望。夫ではなく自分自身の、夫を繋ぎとめられなかった弱さに。

目の前で打ちひしがれる夫。反省しているのだろう。そんな夫を見る度に私は自分を責めた。夫をこんなに苦しませているのは私ではないのだろうか?

夫が、あの優しい夫が他の女に手を出すまでに追いつめたのは私なのではないだろうか?

必死に謝る夫。浮気したのは夫だ。今回の件で悪いのは夫だ。でも、夫を追いつめたのが私なら?謝るのは私の方なのではないか?

馬鹿馬鹿しい考えだが、この負の想念は私を支配して止まなかった。

夫を幸せにする。私のかけがえのない親友とした約束を私が果たせていなかったとしたら?私に・・・夫の妻である資格はない。
673 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/09(日) 01:17:24.95 ID:IHnFLe1IO

「貴方・・・」
「なんだ瑠璃?」

すがりつくような夫に私は非情な質問を投げかけた。

「貴方は・・・私と過ごしたこの年月。幸せだったかしら?」

彼は一瞬何を聞かれたのか分からないという顔をしながら、ハッキリと言った。

「もちろんだ。お前と結婚したことに何の後悔も無い」
「質問の答えになっていないわね。後悔しているかどうかなんて聞いてない。幸せだったかと聞いているのよ?」
「ああ、当たり前だ!」
「嘘ね。」

その力強い言葉の裏にある嘘に気付かないふりをするのは容易だった。夫が、夫自身すら気がつかない嘘。

「嘘?嘘なんて言ってねえ!」
「第一に」

静かに、しかし確実にこの場の主導権を握る。

「貴方は常にこう考えていたはずよ。もし結婚したのがあの新垣あやせだったら?」

「その新垣あやせの部分を田村麻奈美や来栖加奈子と言い換えることも出来るかしら。」
「はっ?」
「私は気付いたのよ。今まで自分が目をつむっていた事実に」

「貴方にとって私が大切だというのは本当でしょう。でもね、彼女達と比べても私が大切かしら?」
「そ、それは・・・」
「おかしい話じゃない。妻よりも大切かも知れない女がいるなんて。」
「くっ・・・」

「第二に、貴方の妹のことよ。」
「桐乃も関係あるのか?」
「ええ、とてもね」

「私はね、約束したの。あの女に貴方を幸せにすると」
「えっ?」

心底驚いたような顔をした夫に私は畳み掛けた。

「でも役不足だったわ。今の私には貴方を幸せにする力はない。他のことで手一杯よ。そしてそれを言い訳にしてきたわ。」

「でもね。今回のことで気付いたのよ。私には貴方を完全には繋ぎとめられないと」

今の家庭と妻に満足している男が、ぽっと出の(美人であったとしても)年増に寝取られる訳はない。
674 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/09(日) 01:18:20.20 ID:IHnFLe1IO
「貴方が私を選んでくれた理由は・・・ただ1番最初に想いを伝えた。その一点に過ぎないのではないかしら?」
「そんなこと」
「あるわ。」

頬を伝う涙に私は続きを言うことをためらった。でも、続けなければならない。私はもう自分に嘘はつけないのだから。

「貴方のことくらい分かるわ。貴方は決して『私だけ』を見てくれたことはなかった」

「あくまで最初は『妹の友達』として。そして今は『貴方の子どもの母親』としか見ていない」

「ねえ、京介?貴方はさっき答えに詰まったわよね。私と他の女どちらが大切かと聞いた時」

「貴方が気付けていないなら、私が教えてあげるわ」

「貴方にとってね。私も新垣あやせも田村先輩も来栖加奈子も、一直線に並んで大切な人ってことよ。」

「貴方は私達だけを天秤にかけて結婚相手を決めたのよ。でもね、貴方が女性として愛してるのはこの中にはいない。」

この人に始めて告白した日から気付いていた。この人が見ているのは違う人だと。

「正直になって、京介。もう、こんな茶番はやめましょう」


この話し合いから2ヶ月。ついに夫は離婚届に判を押した。

2人の子どもは私が育てることになった。子ども達にはパパとは毎週会えると約束した。京介もこの子達のことは本当に愛してくれていた。

私が手に入れることの出来なかったものを、私のお腹の中で手に入れた子ども達。私はそんな子ども達が愛おしくてたまらなかった。

彼との想いは遂げられなかったけれど、この子達がいれば大丈夫。それは確信出来た。

実家に帰った私は全く変わっていない、自分の部屋のドアをあける。日向と珠希が守ってくれた部屋にそれはあった。

「ふっ・・・私の儀式はまだ終わっていないわ」

痛々しい「運命の記述(来世篇)」こそが。今の私を支えてくれた。

それから2年後

私の元夫が再婚した。子ども達が式に呼ばれたので式場まで私が送りに行く。

そこには若い金髪の花嫁を伴って幸せせうに歩く元夫と、父親の新たな花嫁に戸惑いつつも心からのお祝いを述べる、まだ6歳の息子と4歳の娘の姿があった。

ふと、元夫が子ども達に向けていた目線を上げて私と目が合う。

「瑠璃・・・」

声をかけて来た元夫に、私はまだ恋慕の情を引きずっていた。でも、もうこれ以上彼を惑わすつもりはない。この現世では。

気付かないふりをしてその場を離れた私の目に涙が浮かんでいたのを見つけた人は誰一人いなかった。

【終わり】
675 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/09(日) 01:27:52.48 ID:C+B16dBDP


まさかの大穴、ブリジットが掻っ攫うENDに驚愕したww

ところで黒猫とブリジットって面識あったっけ?
676 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/09(日) 01:51:11.27 ID:V88lDAHi0
>>675

早速の返信ありがとうございます。

確か直接の面識はないハズ。

でも6巻で桐乃と一緒にメルルイベントに来ていて、そこでブリジットのことを黒猫が知っていることは確かです。

そして、そこに京介がいたことも黒猫が察してるような描写があったと思います(ウロ覚え)。

黒猫との結婚式で会っていたとか誰かは分からないけれど黒猫が察していたとか、そういう解釈の方がやりやすいでしょうか?
677 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2012/09/09(日) 03:21:12.10 ID:5HdMut4AO
乙乙乙

投下量以上に圧倒される文に感嘆しきり。
シリアスつええ…

テーマやモチーフの選択もさりながら、書き手ごとの違いって、やっぱり京介の人物像に如実にあらわれると痛感。

まったく同じ背景設定であっても、自分ならこの夜の京介と黒猫との会話は違った展開に、
もう少し暑苦しくかつウェットな感じになるんじゃまいか…などと思い巡らせてしまう
ぐらいに力作と感じますた

オチ部分にはコメントしかねるけど
678 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/09/09(日) 06:06:12.24 ID:okNTjQPro
すげえなぁ。
ちょっと離れている間にクオリティ高いSSが次々と。

離婚届シリーズ面白いです。
各キャラの性格がちゃんと表れてていい。
あやせならなり振り構わずすがりつくよね、黒猫なら自分を責めるよね、ってのが自分のイメージと一致してスラスラ読めるわ。
もっと他のキャラのも読みたいです。
とは言え美味しい2人の後の候補は少ないけど。
679 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/09(日) 14:41:19.95 ID:GGyTgS+p0
>>677

シリアスな文に耐えられなくて、オチはちょっと工夫?しました。

リアと瀬名かでも迷ったんですけど。

>>678
あやせと黒猫の続きは考えてなかったです。麻奈実と京介の別れ話は想像もつかないので、やるなら加奈子かなあという気はします。
680 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/09(日) 14:46:13.79 ID:Tr6oeTTIO
>>677

シリアスすぎる話なんで、オチで何とかしたいと考えました。

リアや瀬菜もあるとは思ったのですが。

>>678

桐乃と離婚っていうのは作りにくいですもんね。麻奈実と別れ話は出そうにないし・・・やるなら加奈子くらいですかね?
681 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/09(日) 14:47:50.39 ID:GGyTgS+p0
イーモバ云々で書き込めていないと思ったので重複書き込みしてしまいました。ごめんなさい。
682 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/10(月) 09:40:49.89 ID:AjdGPQeDO
>>674
BADEND苦手だからなんともなぁ………。
683 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/09/11(火) 00:38:37.72 ID:pz20lM+DO
11巻を読んだ直後のテンションのまま、勢いだけで書き上げた!
後悔はしてないが、ネタバレ満載なので閲覧注意でお願いしますw

京介「さあて次で最終巻かー…。やっとここまで来たって感じだな」

桐乃「うん。あたしの葛藤も気持ちも全部出し切ったからね。もう感無量って感じ」

京介「おいおい、感無量になるのはまだ早いだろ?今、次で最終巻て言ったばかりなのに」

桐乃「気持ちの上ではってことだよう。あんたへの気持ちも、黒いの達にも宣言しちゃったし、あとはもう思いっきりぶつかっていくだけ。すっごく晴々した気分」

京介「そーかい。俺にしてみりゃ、なんで俺みたいのに、お前らみたいな美少女どもが躍起になってるのか不可思議でしょうがないけどな」

桐乃「そりゃあ、普段どーっしょうもないあんたが、時折見せるかっこよさのギャップ萌えだよ『お兄ちゃん』」

京介「はは。中学までの恥ずかしい話は思い出させてくれんなよ」

桐乃「でもあれがあったから今の京介があるわけじゃん。かっこよかったよ京介」

京介「ありがとよ。なんにせよ俺も好きな奴がいるって宣言しちまったしな。もう腹括るしかねーな」

桐乃「そうだよねー。誰なんだろーなー…やっぱ麻奈実さんが本命かなあ?あの人だけだもんね、京介のこと本当に理解してたの…悔しいなあ…」

京介「そうか?俺はお前の前では見栄張ってたから、わかられてたら逆にへこむぞ?」

桐乃「うーん…その辺は今も複雑なんだよねー…。あの頃のかっこいい京介を好きになって、でもそれは背伸びして無理してた姿で、でもあの人生相談からの京介もやっぱり好きになってって…あーもう!こう言うと、あたしどんだけブラコン拗らせてんのよ!?」

京介「まー落ち着けよ。なんにせよ次の巻で全部わかるわけだから、期待して待ってようぜ」

桐乃「…ちなみに聞くけど、さ…」

京介「ん?」

「…ここのあんたは…誰が好きなわけ?」

京介「そんなもん…(チュ)」

桐乃「!?」

京介「お前に決まってるだろ?」

桐乃「…シスコン///」

京介「なんとでも言え。俺はこれからもこう思い続けるよ。『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』ってな」

桐乃「…バカ///」
684 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/11(火) 01:47:41.73 ID:z21GLDkbo
え、これで終わり?
685 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/11(火) 05:48:46.13 ID:QQHjOUilo
キャラコメみたいでいいねww 乙!
686 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/11(火) 10:23:07.88 ID:pz20lM+DO
>>685
あんがと。
言われてみりゃキャラコメみたいだwwおこがましいけどww

>>684
これで終わり?っつわれても…書き足せんのはこれくらいしかねーぜ?

京介「…ちなみに…よ」

桐乃「?なに?」

京介「…『卒業までに、エロゲーよりすっごいことしてやるんだから!』って…具体的に…なにしてくれんの?」

桐乃「(カアッ!)ひ、秘密!!///」
687 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/09/11(火) 12:05:25.27 ID:hO84rGblo
そうじゃなくて、終わりなら終わりと書いてくれってことでしょ。
688 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/11(火) 12:12:11.45 ID:vc1TsOzIO
だがお陰でいい続きを読ませてもらったww
689 : ◆YHxtVKAHbw [sage]:2012/09/11(火) 17:29:55.23 ID:DWa/Zh0ko
11巻やっと買って読んだぜ。
俺が二作ほど書いたIFルートSSで矛盾が生じたので書き直しが必要だぜ。
690 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/11(火) 17:48:45.98 ID:oUzhthfDO
11巻読破したが12巻どうなるのやら・・・
妹婚√や重婚√とかの桐乃√ENDになってほしいが
691 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福島県) :2012/09/11(火) 23:46:47.14 ID:txQrDmgM0
だれか秋美SSを頼みます・・・
11巻読んだけど切なさ過ぎて虚無感が襲ってきやがる・・・
692 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(茨城県) [sage]:2012/09/11(火) 23:49:04.14 ID:6xo2WL2oo
もったいないキャラだよな
693 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福島県) :2012/09/12(水) 00:03:24.37 ID:MkLwlUaY0
でも過去編のエピソード用にまったく魅力のないキャラであまり深くない内容じゃなくて、あれだけの光るキャラクターやエピソードをわざわざ書いたってのも俺はめっちゃ評価したいんだよなぁ・・・ 
秋美はすごい
694 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(栃木県) [sage]:2012/09/12(水) 06:06:06.04 ID:MVWJOdYgo
あれだけのキャラがよしんば告白できていたとしても切り捨てられていたってのも切なさ乱れ打ちだよね
695 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(栃木県) [sage]:2012/09/12(水) 06:31:18.84 ID:MVWJOdYgo
さらに言うなら秋美とあれ以上関わらせると設定そのもののパラドックスになっちゃうからな
某説教サイドみたいな京介とか諦めない一貫してお兄ちゃん大好きな桐乃とか
もしそうだったらっていうif風味なのも面白そうだが
696 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/13(木) 06:51:20.05 ID:EPK7fuZZ0
残り1巻の段階で新キャラ投入とは思いもよらなかったぜ
ふさたんは俺たちをどこに連れて行ってくれようとしているのか?
697 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/13(木) 11:05:09.92 ID:Omm9YT/SO
>>691
京介「櫻井!危ない!」ギュッ 秋美「あっ……」
http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1347404081/l50

VIPに投下されてたぞ。ググってまとめサイトで見てくれ
698 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/09/13(木) 18:56:34.21 ID:7FDEmavDO
>>691

秋美「あ、そーいや高坂」

京介「ん?なんだよ?」

秋美「今だから言うけどさ」

京介「うん」

秋美「部屋に転がってたペットボトル。あれやっぱあたしのおしっこだった」

京介「…違うっつったじゃねーか」

秋美「うん、嘘だった。ごめん」

京介「…なんで嘘ついた?」

秋美「やっぱ恥ずかしーじゃんそー言うの」

京介「…俺、飲んだよな?」

秋美「うん。ごくごく飲んでた。引いた」

京介「…誰の所為で…」

秋美「まあ、若気の至りだよね」

京介「…3年しか経ってねーけどな?…まあやっちまったもんはしゃーねえ」

秋美「あ、大丈夫。安心して。ちゃんと君の学校裏サイトには晒しておいたから」

京介「ちょっと外でよーか櫻井さん#」

こうですか?わかりません。
699 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(茨城県) [sage]:2012/09/13(木) 22:14:00.38 ID:NCf7GVYEo
飲んでたのは櫻井の方だけどな
700 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/13(木) 22:54:17.98 ID:50Vf/XQIO
700ゲト

離婚届のSSを書いていたものなんですが

事故や不妊症といった、リアルにトラウマになっている人がいるであろうことを織り交ぜたSSって書いて良いのでしょうか?

離婚とか扱った割には変な質問ですが、結構気になっていて
701 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(茨城県) [sage]:2012/09/13(木) 22:57:58.71 ID:NCf7GVYEo
最初に注意置いときゃいいんじゃないかな
俺は苦手だから回避させてもらうけど
702 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/14(金) 06:52:31.63 ID:XhFrBOeE0
>>700
過去にもっと酷い内容のSSがあったけど最初にちゃんと
注意書きがあったからなんの問題も無く進んでいたぞ

キャラ崩壊・死亡・NTRなんかはちゃんと書いておいた
方が後で問題が起きなくて良いかも
703 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福島県) :2012/09/14(金) 07:02:33.17 ID:e1gYOnIB0
>>698
最高です!

その調子でどうかよろしくお願いします。。。
704 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/09/14(金) 09:22:53.63 ID:acwJPBv80
京介の人格形成の遠因を語るために櫻井秋美を登場させたのなら
ふさたんはもっと早い段階で出しておくべきじゃなかったのかな?
リアやブリジットもそうだったけどチョッと出しで終わらせるには
惜しいキャラだよね

桐乃が再度海外に行く事は大方のスレ住人は気付いていたし麻奈実が
黒化して全員が宣戦布告したし残る謎は桐乃の宝箱の中のアルバムと
ipodだけかな
705 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/14(金) 09:40:18.46 ID:M5OinszDO
タイトル『もし落ちなかったら』

ガラッ!

秋美「あ…」

京介「あぶねえ!!」

グイッ!胸ポヨン。

秋美「あ…」

京介「うわ!悪い!!」

秋美「う、ううん!助けてくれてさんきゅ!」

京介「お、おうっ!」

秋美「…///」

京介「…あの、よ」

秋美「な。なに!?」

京介「…意外にあんじゃん…パットなんかいらねーよお前」

秋美「そ、そう…かな///」

京介「おう…俺は好きだぜ///」

秋美「ほ、ほんと?…高坂が好きなら…いいかな///」

京介「ば、ばか!俺基準に考えんじゃねーよ!///」

秋美「…いいんだ。高坂が好きならそれで…///」

京介「さ…櫻井…///」

秋美「高坂…///」

麻奈実「二人とも、そろそろ現実に戻ってこよーねー(にこにこ)」

クラス一同『田村さんの笑顔がコエー!!!』

こうですか?わかりません。
706 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/09/14(金) 17:18:28.24 ID:U5mf7v8IO
>>705
そう、それでいいんです!
この調子でお願いします!!
707 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/09/14(金) 17:23:02.58 ID:acwJPBv80
この調子で秋美祭りに発展すると面白いな
708 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/09/14(金) 19:27:05.30 ID:M5OinszDO
>>706
タイトル『林間学校その後』

麻奈実「なんで皆してきょうちゃんを責めてるのかな?」

クラス一同「……」

麻奈実「…裏さいとで、そういうことにしようって空気になったから?」

クラス一同「!!」

麻奈実「あれよくないよねえ?だめだと思うな、わたし。…ねえ陽子ちゃん?」

陽子「!」

麻奈実「陽子ちゃんがあの掲示板の管理人なんでしょう?消してくれるかな?」

ガラッ!!

秋美「違います!あそこの管理人はあたしですっ!!」

クラス一同「櫻井っ!?」

秋美「…高坂の、カッコよさを皆にわかってもらおうと思って作ったんだ…///」

京介「櫻井…///」

秋美「どうかな高坂?…喜んでくれた?///」

京介「ああ…スッゲー嬉しかった!!///」

クラス一同「(バカが二匹ここにいるっ!!!)」

その日の夜。高坂家。

麻奈実「敵が出たよ桐乃ちゃん!!」

桐乃「じゃあ殺そうまなちゃん!!」

こうですね?わかりました。
709 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/14(金) 19:53:51.63 ID:z0e1Qgg10
>>708
GJ!
710 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福島県) :2012/09/14(金) 21:20:43.91 ID:e1gYOnIB0
そう、それでいいんですよ!!
やればできるじゃないですか!!
あなたが神ですか神ですね!!!
711 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/09/14(金) 21:55:52.13 ID:6IBcTIdAo
おけ、ちょっと秋美書いてくるわ
構想が浮かんだ
712 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/09/14(金) 21:56:18.24 ID:6IBcTIdAo
ってここエロパロやないやん
無かった事にしてちょ
713 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/14(金) 22:14:21.34 ID:yzGEPvuno
別にエロでも、先に注意書きしておけば良いと思うけどね

やっぱ次で最後かね、あの雰囲気だと
あやせの告白の続きを期待してたけど、軽くスルー気味だったし、仮に次で触れられたとしても秋美みたいになるのがオチだろうなぁ
714 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(茨城県) [sage]:2012/09/14(金) 22:16:34.93 ID:VXmg9+apo
作者スレではそこ含めて大激論が日夜されておる
正直殺伐としていて怖い……
715 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福島県) :2012/09/14(金) 22:29:48.81 ID:e1gYOnIB0
>>712
秋美風に言うなら超いーのを期待してます!!
716 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福島県) :2012/09/14(金) 22:33:38.80 ID:e1gYOnIB0
連レスごめん。
>>712
>>1にも書いてあるとおり断り入れればOKだと思いますし、なによりとても秋美SSを体が欲しているので個人的にもどうかお願いします!
717 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/09/14(金) 22:34:28.95 ID:0p0Znw2Fo
>>712
無かったことにしてはいけない
718 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/09/14(金) 22:37:28.13 ID:M5OinszDO
>>710

タイトル『林間学校にて』

秋美「登山とかマジだるーい。断固拒否だねっ!!」

麻奈実「櫻井さん、希望者は、ろーぷうぇいに乗って山頂までいけるらしいよ〜」

秋美「マジで!ぜひそれで!」

京介「おい麻奈実、怠け者に余計な情報与えるな。俺事前に調べたけど、これから行くのってめっちゃハイキング初心者コースじゃねーか」

秋美「ほらでも…高坂?」

京介「ん?…ああ!」

麻奈実「?」

到着

先生「まあ、そんなに(中略)現時点で体調の悪いものは名乗り出るように」

秋美「ハイハイハーイ!」

京介「はい俺も」

クラス一同「高坂!?」

先生「ふむ、二人か・・・よし。お前らはロープウェイで登ってこい」

登山開始

生徒A「しかし櫻井だけならともかく高坂もなんてな」

生徒B「櫻井さんの面倒見てて疲れちゃったのかなあ?」

生徒C「でも見た目めっちゃ元気そうだったけどな?」
生徒D「・・・おいやけに揺れてないか?あのロープウェイ…?」

頂上

京介「ようっ!お疲れさん諸君っ!!(つやつや)」

秋美「こ…高坂…は、激しすぎだよう…///」

クラス一同「中でなにやってたーっ!!?」

後日の夜。高坂家。

麻奈実「きょうちゃんのが奪われちゃったよ桐乃ちゃん!!」

桐乃「じゃあ夜這いかけようまなちゃん!!」

やりました。できました。
719 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福島県) :2012/09/14(金) 22:54:40.06 ID:e1gYOnIB0
>>718
あざとい秋美ちゃんマジプリティ!!!
ある意味見せつけてるところが最高!!
>>718様には頭が上がらないよ!!
でもあなたならきっともっともっと可愛い秋美ちゃんが書けるはずだよ!!



いや、ホントありがとうございます。
720 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/14(金) 23:51:37.36 ID:0NNvcUss0
>>718
ニヤニヤできたので長編書く作業に戻ってくださいお願いします。
721 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/14(金) 23:52:46.05 ID:z0e1Qgg10
この流れ良いぞもっとやれwww
722 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/15(土) 00:11:48.04 ID:EQwEjEFdo
vipの俺妹スレが気持ち悪い議論の繰り返しだな
723 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/15(土) 00:32:13.20 ID:IW/YR+sf0
>>722
kwsk
724 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福島県) :2012/09/15(土) 00:33:33.95 ID:5A5H7bCQ0
いわせときゃいいじゃない別に個人情報ばれるわけじゃないし
725 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/15(土) 00:52:48.01 ID:1JgcQwzDO
すまん。長編書くからVIPの俺妹スレのウラル貼ってくれ。
携帯からググったけどわからん。
あと、俺の妹が〜、東洋で出てくるらしいブロガーとやらもできたら。

…ネットに暗すぎだろ俺…orz
726 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福島県) :2012/09/15(土) 01:23:02.32 ID:5A5H7bCQ0
ウラルとはなんぞ・・・。
力になれなくてすまないorz
727 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/15(土) 01:25:56.11 ID:EQwEjEFdo
ただの雑談スレだったし、もう落ちてるぜ
それでもいいならログ速だが
http://logsoku.com/thread/hayabusa.2ch.net/news4vip/1347623178/
728 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/15(土) 08:25:31.01 ID:64khmGOf0
>>726
URLの事ぢゃないか?
729 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/15(土) 10:05:58.71 ID:1JgcQwzDO
>>727
おう、ありがとう!
あとでゆっくり読ませてもらう。
約束通り長編書く。

しかし>>720のいう長編が、はたして秋美ものなのか、それとも今まで続けてきたやつの続きなのか…まあ、秋美かww
730 : ◆ebJORrWVuo [sage saga]:2012/09/15(土) 13:07:56.85 ID:cRjnl64vP
昨日の711だぜー。
書いてみたけど、そんなエロくならなかったからこっちに投下しに来た。

11巻の分岐ネタ
あの時、麻奈実を連れて行かなければ分岐

少しエロネタがあるので、嫌な方はスルー推奨。

では、投下開始!
731 :或る分岐点 秋美ルート  ◆ebJORrWVuo [sage saga]:2012/09/15(土) 13:09:21.18 ID:cRjnl64vP
 俺は高坂京介。中学三年生で、クラス委員をやっていて超絶ハイパーな男子中学生だ。
 色々な難題を片付けながら日々修行を積んでいる俺が、今挑んでる問題。
 それは、登校拒否児に登校させること。
 
 無論、これが難しい問題であることは分かっている。なんせ大人の先生でも出来なかったことだ。
 だからそう簡単に行くとは思っていない。というか、だからこそだ。
 そういう無理難題だからこそ、これをこなしたら俺はめっちゃスゲーって事になる。
 
 なのでやる気は充分。
 朝早く、妹に起こして貰って俺は、その登校拒否児の家に来ているというわけだ。
 
「…………相変わらず、でけえ家だな」

 ピンポーン。
 表札に書かれた「櫻井」という文字を確認しながら、俺はインターホンを鳴らす。
 今はまだ朝の七時。この時間ならゲーセンに行っているという事も無いだろう。
 
 …………。
 しかし俺の予想に反して、誰でも出ない。
 まさかあの女、学校に行くよりも早くに起きてゲーセンに通ってるのか?

 それにしたって、親とか他の人が居そうなもんだが……。
 
 ピンポンピンポンピンポンピンポンピンポン――。
 怒涛の連射を行なってみる。

 …………。
 しかし、応答なし。
 
「…………」

 裏に回ってみるか。もしかしたら、ベランダが開いてるかもしんねーしな。
 キョロキョロと周囲を確認。よし、誰も居ない。
 ささっと、素早い身のこなしで、門の中に入り、家の裏へと回る。
 確か不法侵入になるんだっけかなー、言い訳を考えとくかと、思いつつ、ベランダをチェック。
 ……見た感じ、鍵が掛かってそうだな。
 トイレの窓っぽいのも確認。しっかり掛かってやがる。
 
 どうやらこの家の住人はそれなりにしっかりものらしいな。
 だが……と俺は上を見る。
 そこには二階のベランダがあり、……そして締め忘れたのか若干開いている事が見える。
 二階の住人は、それなりに間が抜けているらしい。
 
 ちょうどいい感じの位置に木が生えている事を確認。
 これは、もう俺に侵入をしろという神の思し召しに違いない。
 へいへい、仰せのままにってな。
 
 悪ガキ時代にならした木のぼりテクニックを使って、難なく木を上り、枝の強度を確認する。
 よし、充分だ。
 そこから、目的の場所への距離を測る。問題ない距離だ。
 俺は、そこから華麗に跳躍すると、目的の場所、つまりはベランダに着地を決めた。
 
 ふっ、決まった……。
 
 誰も見てないのが残念だ。今度からは写メでもスタンバっておくか……。
 まあ、今回は不法侵入の証拠になっちゃうからやらないけどな。
 
 さて、では入らせて頂くかね。
 靴を脱ぎ、ベランダを開けて、そろーりと侵入。
 
 そこは、散らかっている部屋だった。
 錯乱している衣服、本、CD、ぬいぐるみ。
 埃を被っているとかそういうわけではないので、掃除自体は定期的にされてるんだろうが、その度に散らかされているという感じか。
 
 錯乱している衣服から、この部屋は女の部屋だという事が分かる。
 
 ……つか、下着が普通に散らかってるのはどうなんだ。
 しかもこれ、洗いたてというか、脱ぎっぱなしのような……。
 
 とと、不味い。雑念を抱くな。俺は俺のやるべき事をやらねえと。
 なるべく下を見ないようにして、とりあえずこの部屋から出ようとドアを目指したところで――。
 
 むぎゅ。
「うぐぅ……」

 何か踏んだ。

「あん?」
732 :或る分岐点 秋美ルート  ◆ebJORrWVuo [sage saga]:2012/09/15(土) 13:09:57.76 ID:cRjnl64vP
 足の下を見る。
 そこには蛙のようにうつ伏せに倒れている知人の姿があった。
 紹介しよう。これが登校拒否児、櫻井秋美の姿だ……!
 片手にゲームのコントローラーが握られていて、倒れた方向にはテレビがゲーム画面を映している。
 この事から、ゲーム途中で寝たのだと推測出来る。
 
 ……どんだけ暇を潰すことに必死なんだこいつは。

 俺が観察している間、ずっと踏んづけてたわけだが、さすがに重くなってきたのか櫻井が呻きながらも、体勢を変えようとする。
 つか、起きろよ。
 さすがに全力で踏みつけているわけではないので、俺が今朝食らった妹プレスほどの痛みは無いだろうが……。
 
 そろそろ足をどかしてやるか。
 櫻井の抵抗も強まってきたので、俺は足をどかしてやる。
 すると体勢を変えようと必死だった櫻井は、突然抑えていた力から開放されてしまい、勢い良く転がっていった。 
 そしてそのまま壁に激突する。
 
 ……ってかシャツの前のボタンぐらい閉めろ。
 超オープンだったから。めっちゃガン見しちゃったから。
 まだ知り合っても間もない美少女のおっぱいをまさか直視するハメになるとは思ってなかったぜ。

 頭を打ってしまったのか、頭を抑えてゴロゴロしている櫻井を見つつも、俺は俺で自分のリヴァイアサンを抑えるのに必死だった。
 忘れろ、いや忘れるのは勿体無いから脳内秘密フォルダに保存しておいて……取り敢えず一時的に忘れるんだ、そう、妹の胸みたいなもんだ、あんな平坦な胸は……。
 
「……いたーい」

 俺が漢の闘いをしていると、頭を抑えたままのっそりと櫻井が起き上がった。
 相変わらず前が全開だ。
 ってまた見ちゃったじゃねえか、さっきよりもはっきりと、うおおお、静まれ、静まるんだリヴァイアサン!
 
「うう……、またゲームしながら寝ちゃってたか。変な体勢で寝たせいか頭痛いよ」

 いや、頭痛い理由はそれじゃないからな。
 変な体勢で寝て痛くなるのは体だろ。
 
 そう突っ込んでやりたかったが、考えてみれば今見つかるのは不味い。
 リヴァイアサンを押さえ込んでいる姿を見られるのも嫌だが、それよりも不法侵入してるわけで。
 流石に知り合いを速攻で警察に通報するような異常な思考を櫻井が持っているとは思えないが、万が一という事もある。
 
 幸い、まだ櫻井は俺に気付いてないようだ。ここは、こっそり去るべきだな。
 俺が忍び足でベランダに戻ろうとしていると、櫻井が寝ぼけ眼のまま、小さく呟いた。
 
「……こーさか」
「……はいッ?!」

 ば、バレた!?
 
「あいつ、また来んのかなー……ってえ、ええ!?」
「なんだよただの独り言かよっ!びびらせんじゃねえ!」
「え、あ、ごめんなさいっ!」
「分かればよろしい。じゃあ、また学校でな」

 シュタ、と片手を上げて堂々と俺はベランダへと向かう。
 それを数秒、唖然とした表情で見送る櫻井。
 そして、突如俺に向かってダイビング。
 
「うおっ! 足を掴むな、転ぶだろうがっ!」
「待って待って待って、ちょっと思考を整理させて」
「思考を整理させたいなら一人で考えるのがベストだな」

 冷静に櫻井の手を振りほどく俺。
 しかし、頑なに離そうとしない櫻井。
 
「離さないから! 秋美ちゃんの握力舐めんな! 十キロぐらいあるからっ!」

 平均値の二分の一しかねえじゃねえか!

 何か逆に哀れになってきて、手を振りほどくのを諦める。
 それをどう捉えたのか、櫻井はふっふーんと笑ってみせて、そしてようやく核心をついてきた。
733 :或る分岐点 秋美ルート  ◆ebJORrWVuo [sage saga]:2012/09/15(土) 13:10:37.69 ID:cRjnl64vP
「つーか、なんで高坂がここにいるんだよっ!」
「おまえを迎えにきたんだよ」
「え、ゲーセンに?」
「学校に決まってんだろーがっ!」

 俺としては至極当然の主張を返したつもりだったのだが、櫻井にとっては予想外だったらしくて衝撃を受けた表情を浮かべた。
 ゆっくりと俺の足から手を離していきながら、櫻井は言葉を返してくる。
 
「……こーさか、キミ、ウザいよ」
「うっせえな。ウザいって言われてもおまえを学校に連れて行くって決めたんだよ」
「それってあたしの為ってわけじゃないよね?」
「ああ」

 自分の為だという事ぐらい、俺だって分かってる。
 だが、だからこそ、俺は俺のやりたい事を信じる事が出来る。
 ふっ、今の思考、格好良くね?
 
「……こーさか」
「なんだよ?」
「……おっぱい触らせてあげるから、帰ってくんない?」
「そこまでするほど学校行きたくねえの!?」
「うん」

 断言かよ。どんだけ学校に行きたくねえんだ、こいつは。
 櫻井は口を尖らせながら、ちらっ、と俺を見て言う。
 
「どう、この提案?」
「う、うーん」

 俺は眉を潜めながら、ちらっ、と櫻井の胸を見る。
 ……触るっていってもな。こう、偽乳状態のボリュームがあれば、なあ?
 
「ん、キミ、どこ見てる……わ……け……?」
「おっぱい」
「にょあああああああああああっ!!」

 どうやらようやく自分の格好に気付いたらしい。
 シャツの前全開で、ダイビングなんて決めてたから余計にはだけて、片乳がデフォルトでオープンだった。

「おいおい、叫ぶなって。親が来たらどうすんだよ」
「あたしの親は出張中だから今居ないし!」
「それはいいことを聞いた」
「今悪い顔したーっ!!」

 いちいちリアクション大きいな、こいつ。
 つか胸を隠せよ、胸。
 
「で、おっぱいなんだが」
「このタイミングで話戻す!? 今、両親が居ない二人っきりの状態なんだよっ!?」
「…………」

 ……おまえこそこのタイミングでそんな状況説明するなよ。
 普通に断ろうとしてたのに、な、なんだか意識しちゃうじゃんか。
 つか誘ってるよな、これ、誘ってるよな?
 
「あ、あくまで、おっぱいだけだからねっ!?」
「…………」
「というか、なんで部屋に侵入してるわけ?」
「…………」
「よ、夜這い!?」
「……今は朝だぜ?」
「じゃ、じゃあ、朝這い?」

 …………。
 
「……そうだと言ったら?」
「ま、マジで!?」

 さっと、前を隠す櫻井。
 だからシャツを閉じろっての。
 シャツオープンで、前を腕で隠されても変にエロいからっ!
 
「あ、あのなあ……。コホン。いいか、もう俺たちは中学生なんだぜ?」
「う、うん」
「来年には高校生だ」
「そだね」
「そんな年齢の時に、おっぱい触っていいなんて冗談でも口に出すなっての! 滅茶苦茶魅力的な提案に聞こえちまうだろうが! つか誘惑しすぎ! どうなっても知んねえぞ!」
734 :或る分岐点 秋美ルート  ◆ebJORrWVuo [sage saga]:2012/09/15(土) 13:11:07.18 ID:cRjnl64vP
 ……理性が勝った。危ねえ、なんて危ねえ、提案なんだ。正直、結構ギリギリまで葛藤してたぜ。
 ふう、と俺は息を吐きながら、櫻井から視線を外す。

「……ふーん。魅力的だったんだ」
「わ、わりーかよ」

 これでも健全な男子中学生だからな、エロいことには興味津々だっての。
 
「高坂ってエッチなんだ」
「普通だっての」

 この歳でエッチに興味が無い男の方が珍しいだろうよ。

「ねえ?」
「今度はなんだ?」
「冗談じゃなくて、マジなんだけど」

 …………。
 
「……お、おい」
「エッチなのは、男子だけじゃないんだぜぇ?」

 頬を赤く染めながら、櫻井は意地悪そうな表情を浮かべてそう言いのける。
 
「しゃ、洒落にならねえって」
「ほらほら、正直になりなって。……あ、あたしも、触られたらどんな感じなのかなー、って気になるし」

 ごくっ。

「………だ」
「……だ? 大好き?」
「ちげえよっ! ……駄目だ、って言おうとしたんだ」
「……なんで?」
「………………俺と、櫻井は別に付き合ってるわけじゃねえし」
「…………」

 馬鹿げてる、と思うだろうか。
 でも、それが正直な俺の気持ちだった。
 ここは、もしかしたら、普通の男子中学生、とはいえないのかも知れない。
 もっとエロに一直線なのが、それこそ、普通って事なのかもしれない。
 
 けど、いま、ここでエロに屈したら、これから先の俺は胸を張っていきていけないと思う。
 少なくとも俺の目指す「理想の男」ならこういう事はしない筈だ。
 
 だから、俺はしない。そう、決めた。
 
「だから、おっぱいに触るのは諦める」
「……じゃあ、さ」
「まだあんのかよ」
「……あたしと、付き合えば、いいんじゃん?」

 …………。
 それもそうだな。
 いや! 待て待て、落ち着け。確かに付き合ってればその、エッチぐらいは、しても、いいのか?
 待て待て待て、そうだ。そもそも俺は櫻井と付き合えるのか。
 だって、櫻井だぞ?
 こう、顔が可愛くて、性格も少し騒がしいが面白くて嫌いじゃない、その櫻井だぞ?
 
 …………あれ、問題なくね?
 俺と、櫻井が、付き合う?
 
「…………」
「……あたしの、おっぱい、見たよね?」
「……見た」

 流石に見てないとは言えない。
 さっき、ガン見しちゃったし。
 
「そんな誠実な高坂としてはさ、人の裸見て、責任を取らないのは、オーケイなのかな?」
「……それは……」
「…………ゴメン。なんだかあたし、凄く意地悪なコト、言ってるね……」
「…………」

 櫻井は、顔を伏せて、視線を俺から逸らした。
 そして、数瞬。再び顔を上げた時には、今まで俺が見たことがないような真剣な表情がそこにあって。
 
「……でもさ、結構本気で……高坂と付き合ってもいいかなって、思ってるんだよね」
735 :或る分岐点 秋美ルート  ◆ebJORrWVuo [sage saga]:2012/09/15(土) 13:11:36.65 ID:cRjnl64vP
 心に渦巻くのは葛藤。
 俺には……、と言いかけて言葉が止まる。
 確かに、裸を見た。
 それを責任取らないのは、オーケイなのか?
 でもだからといってそれを理由に付き合うってのは正しいのか?
 それは、「理想の男」足りえるのか……?
 
 俺の心に渦巻く葛藤を知ってか知らずか、暫く俺の顔を見ていた櫻井が顔を逸らす。
 答えを出さない俺にしびれを切らしたのか、それとも。
 
「……ごめん。聞かなかったことにして。ていうか、こんな部屋も掃除出来ないような女、高坂だって嫌だよね」

 顔を逸らした先が、泣いているように見えたからだろうか。
 それともこのまま櫻井が去ってしまうような気がしたからだろうか。
 俺は、咄嗟に櫻井の肩を掴んで、こっちに振り向かせる。
 
「……俺は……」

 何を言おうとしてるのか、何を伝えようとしてるのか。
 それすらも分からない侭、俺は櫻井の目を真っ直ぐと見る。
 
「俺は……多分、好きな人が居る」
「…………」
「そいつの事が誰なのか、浮かんでくるけど、そうじゃない気がすんだ。そうなんだけど、そうじゃない。つか分からねえんだ、まだ、分からねえんだよ、好きとか、そういうの」
「…………」
「でもさ、俺は……おまえだって……もっと仲良くなりてえって……思うんだよ」
「…………」
「ごめん、何言ってんのか分からねえ、よな」

 本当に何を言ってるか分からない。
 結局どうなんだよ、って感じだ。
 だが、櫻井は何かに納得したのか、目に涙を溜めたまま、少し馬鹿にしたような表情を浮かべて。
 
「こーさかって、ハーレム希望?」
「は?」
「俺には好きな人がいるけどおまえも気になるんだぜ、って聞こえたんだけど」
「…………」

 ……言われてみれば確かに。
 ってあれじゃん。俺、最悪じゃん。最低な解答じゃね?
 
「……全く。なんでこんなの、好きになっちゃのかな、あたし」
「……悪い」
「いいよ。確かに、そんな感じ。三年後も、七年後もそんな感じっぽい」
「いやそれはないだろ。もっとしっかりしてるって」
「どーかな」

 櫻井はくすっと笑うと、俺に背を向ける。
 
「……櫻井?」
「部屋から出てって」
「…………分かった」

 だよな。
 俺は櫻井を傷つけた。だから、ここは去るべきだ。
 そう思ってベランダから出ようとしたところを、櫻井に止められる。
 
「ちょ、なんでベランダからでていこうとしてんの?」
「ああ、わりい。出るなら玄関からか」
「……ああ、そういう勘違いね。……もう一度言うから良く聞いて、高坂」
「?」
「……部屋から出ていってと言ったのであって、家から出ていけって言ってない」

 ……確かに言ってないな。
 だがその違いがなんだってんだ?
 
「キミって察しが悪いよね。馬鹿ってわけじゃないと思うけどさ。……あたしが遠回しすぎなのかもだけど」
「わりい、まるで分からねえ。つまり、どういうことなんだ?」
「……今から、制服に着替えるから。学校、連れて行ってくれるんでしょ?」
「……へ?」

 櫻井が言い出した事が全く理解できなくて、俺はつい間抜けな声を出してしまった。
 なんで学校に行く事になってんだ?
 ああ、そもそもそれが目的だったんだったか。
 じゃあ、なんで学校に行く気になったんだ?
 寧ろ、もう俺に会いたいくないとかで、学校に来なくなるかと思ったんだが……。
736 :或る分岐点 秋美ルート  ◆ebJORrWVuo [sage saga]:2012/09/15(土) 13:12:04.34 ID:cRjnl64vP
「あたしが、キミの代わりに判断してあげるから」
「……何を?」
「キミが誰を好きで、そして誰が一番、キミの事を好きなのか」
「…………」
「そして三年後、七年後、キミが本当に今よりしっかりしてるか、見届けてあげる」

 …………。
 
「そいつは……頑張らねえとな」

 俺は、櫻井に背を向ける。
 迂闊にも、涙が出そうになってしまったからだ。
 嬉しかったのだ、単純に。見ていてくれるという事が。
 俺は……誰かに見ていてもらいたいのだ。
 認めてもらいたくて、頑張り続けているんだと思う。
 
 だから、見届けてくれるという言葉だけで、嬉しい。
 
 部屋のドアに手を掛ける。
 登校拒否児が学校に来てくれる。
 これでクラス委員としての仕事は終わりだ。
 
 だからここからはクラス委員としてじゃなく。
 俺を見届けてくれるという友人に対して。
 
「……これからも、一緒に行こうな」
「……うん」

 ……こうして、俺と秋美の物語は始まった。
 まずは小さなきっかけから。
 そして、積み重ねが始まって。
 
 三年後、七年後。
 そして、それから先。
 
 今はどうなるかなんてまるで分からないが。
 ただただ、その道が幸せに繋がってる事だけは、知っている。
 それは、今も、七年後も、変わらない。
 
 
737 : ◆ebJORrWVuo [sage saga]:2012/09/15(土) 13:14:06.31 ID:cRjnl64vP
投下終了。

本当はエロルートの筈だったんだが、どうも俺の中の京介って人物は
変に真面目で困る

それでは、ここまでお読み頂いた方には感謝を
738 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/15(土) 13:21:38.50 ID:EQwEjEFdo


既に京介は中学生の時点で分岐ルートがあったんだな
739 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福島県) :2012/09/15(土) 17:50:29.55 ID:5A5H7bCQ0
>>737
お疲れ様です!!!
投下をとても楽しみにまっていました!

超いーSSで感動させてもらいました。
ありがとうございました!
740 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福島県) :2012/09/16(日) 01:03:35.48 ID:o97ophl70
11巻もう一度見直したけど秋美ちゃん振るところとさいごの俺の妹がこんなに可愛いわけがない 最終巻へ続く で2度切なくなった
741 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/16(日) 09:32:23.50 ID:FLFrfOxDO
なんつーか、最終巻に向けて事態が収束し始めてるから、SSを書くモチベーションにならん。
皆が皆、京介に立ち向かってるだけに、何書いてもハズレたときのこと考えちまう。
これで、きっちり誰かとくっついたって描写があれば、その後とかも書けるのにな。
742 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/16(日) 09:47:19.05 ID:8TdcN1yDO
あやせ失恋確定でつらい
743 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/16(日) 10:44:49.25 ID:R0ulpTRa0
>>741
おまいの為にふさたんが櫻井秋美というキャラを創造したのだよ
744 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/16(日) 11:55:39.71 ID:FLFrfOxDO
>>743
あーそれはきついな。
振られてるとこまであるから尚更。

とりあえず最終巻までのつなぎとして、誰かリクエストくれないか?
題材決めてもらえば書くよ。
745 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/16(日) 11:58:34.82 ID:I4A7X7EZP
ハズレとか考えずにIFと割り切って書いたほうがいいと思うけど
SSってそういうのを楽しむもんだと思ってるんだが
746 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/16(日) 11:59:56.97 ID:FLFrfOxDO
あ、悲恋、鬱、NTR等のBADEND系は無しでお願いします。
747 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/16(日) 13:27:04.94 ID:l6MB8P/00
>>744
秋美さんの滑落が数十秒遅れていたら、という歴史改変SFお願いしますww
748 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/16(日) 13:35:10.60 ID:ioHKpNcV0
>>747
禿支援
749 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福島県) :2012/09/16(日) 14:26:08.73 ID:o97ophl70
>>746
個人的にはあのゲーセンで再会した時振らずに付き合っていたっていうシチュも読んでみたいけど、>>747のシチュもとっても読んで見たい。
超いーSS!!期待してます!!
750 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/16(日) 14:34:58.98 ID:FLFrfOxDO
>>747
それ、あくまで滑落はするんだよね?
それとも、滑落を止めたらってifなのかな?

そこkwsk頼む。
751 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(茨城県) [sage]:2012/09/16(日) 14:42:45.76 ID:iY0uic9+o
滑落するが京介も一緒に落ちて庇うif
滑落するも奇跡的に無傷なif
櫻井の両親が良心的な人であれは事故で
むしろ娘と仲良くしてくれた京介を気に入るif
752 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/16(日) 14:45:08.99 ID:ioHKpNcV0
>>750
二人で抱き合って滑落して人格が入れ替わるという「転校生」的展開はどうだろう?
753 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/16(日) 23:30:51.02 ID:xZE2KaEao
筒井康隆先生に謝れ!
754 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/16(日) 23:58:38.97 ID:XANZMxdo0
>>753
転校生の原作は山中恒で筒井康隆じゃない

そもそも何で謝らなきゃならないんだ?
755 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/17(月) 00:36:30.31 ID:XFcTxOMDO
>>754
謝る必要はないが、あまり読みたいとは思わない。
ポッと出との人格交代ネタなんざ。
756 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/17(月) 01:30:29.46 ID:gI0UDqnn0
>>750
滑落はします。
それでそのまま引き離されちゃった二人の三年越しのラブストーリーをだな(ry
757 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/09/17(月) 02:57:51.34 ID:P8dq3IaUo
京介が櫻井さんのおっぱいを触っていたら、という歴史改変SFお願いします
758 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/17(月) 10:34:00.43 ID:7W3BbEFJ0
>>752
京介の人格を持った秋美が妹や幼馴染や後輩にモテモテになる百合百合な展開に
秋美の人格を持った京介が身悶えるんですね判ります
759 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage saga]:2012/09/17(月) 15:41:09.62 ID:EPEdYzB9o
櫻井が滑落しても助けられたIFって俺も書いていいんだろうか
それともID:FLFrfOxDOが書いてるだろうから違うネタのがいい?

俺も何か書くわ
760 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/17(月) 15:47:42.36 ID:Of8I3M7oP
人によって同じ設定でも展開とか違ってくるだろうし、書きたいなら書いても全然問題ないと思う

まあ、あんまりに同じような話になっちゃうとちょっとアレかもしれないが
761 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/17(月) 16:00:00.74 ID:nul/sqox0
>>759
以前別のスレで京介が交通事故に遭って記憶がアレになっちゃったのを
良い事に桐乃が云々というSSが続いた事があったけどそれぞれ視点や
展開が違ってて面白かったぞ

だからおまいも遠慮せずに書けください
762 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福島県) :2012/09/17(月) 16:04:58.39 ID:Qo+QR0tY0
>>559
同じネタでも書き手によって十人十色
それでいいじゃない。そういうものだと思うよ 俺は
763 :或る分岐点 秋美Bルート  ◆ebJORrWVuo [sage saga]:2012/09/17(月) 17:26:31.23 ID:EPEdYzB9o
中身が似通ってたらごめんなさい
そんなわけで、滑落時の分岐で書いてみた
この時、京介は誰が好きだったんだろうなー?

では、投下開始
764 :或る分岐点 秋美Bルート  ◆ebJORrWVuo [sage saga]:2012/09/17(月) 17:27:04.43 ID:EPEdYzB9o
 がらっ! と彼女の足元が崩れた。

「え……きゃっ……」
「! ……さ、さくらい……ッ!!」

 俺は咄嗟に櫻井へと手を伸ばした。
 しかしそれだけじゃ、手が届かない。
 届かなかった、だから仕方なかった――
 
「なんて許すかよおおおおおおっ!!」

 たっ、俺は地面を蹴る。
 その俺の行動を見て、目を見張る櫻井。

「き――きょうちゃん……ッ!!」

 誰かの叫び声が、響き渡る。
 宙に浮かぶ俺の身体、岩場から落ちようとしている櫻井の身体。
 極度のスローモーション、時間が止まってみえる程。
 
「うおおおおおおおっ!」

 櫻井の手へと手を伸ばす。
 櫻井もまた俺へと手を伸ばす。
 
 やがて重なり合う双方の手。
 俺はその手を引っ張る。

「…………え?」

 声を漏らす櫻井。
 それもその筈、彼女はこの結果を知ってて俺に手を伸ばしたわけじゃない。
 寧ろこの結果を知っていたら、彼女は手を伸ばさなかったかも知れない。
 
 彼女の手を引っ張れば、自然、踏ん張る地から離れてしまっている宙の俺は、櫻井の居る方へと近づく。
 岩場から落ちる位置へと。
 
「おおおおおおおっ!!」

 それでも俺は全力で引っ張りあげる。
 その行動に櫻井の抵抗が感じられた。
 口からは声を出せず、ただ、駄目と口が動いてるのだけは見えた。
 
 安心しろよ、身体の鍛え方がちげえんだよ、俺とおまえじゃ。
 
 櫻井に目で軽く笑んでやれば、そのまま力任せに。
 俺と櫻井の位置を逆転させた。
 
「……ッ!」

 岩場の上に引き上げられた櫻井は、体勢を崩しつつも無事、そこに留まる事に成功する。
 そして、対して落下側に自分から加速させた形になる俺は、景色を楽しむ間もなく、その侭、岩場の下へと落下した。
 
//

 格好良く櫻井を助け出し、一躍ヒーローになったかと思いきや、俺はその後、麻奈実に大泣きされ、担任に2時間ほど説教を食らう羽目になった。
 因みに、片手を強く打った為、片手こそミイラ男みたいに包帯巻きになっているものの、他に大きな怪我とかはしていない。
 一度、教師の間で林間教室を中止にしようという動きがあったようだが、怪我人たる俺が全力で反対を主張し、挙句にこの手で逆立ちをしてやろうとし始めた辺りで、続行が決まった。
 但し俺に関しては教師の強い監視の元、という制約がついてしまったが。
 
「……なあ、麻奈実」
「……なに」
「ち、ちょっと散歩行ってくる」
「着いてく」

 そして監視するのは教師だけじゃなかった。
 何だか怖い顔をしている麻奈実も自主的に俺の監視を行なっていたのだ。
 しかも俺が立てた作戦の全てを麻奈実に看破され、監視の目を掻い潜ることが出来ずに居る。
 
「……そう言えば、櫻井はどうなった?」

 以下に麻奈実の目から逃れるかを考えながら、俺は部屋から出て、散歩コースに設定されている近くの森を目指す。
 その後ろを付いてくる麻奈実。
765 :或る分岐点 秋美Bルート  ◆ebJORrWVuo [sage saga]:2012/09/17(月) 17:27:31.39 ID:EPEdYzB9o
「少し手を擦りむいたみたいだけど、特に怪我はないみたい。でも、きょうちゃんを怪我させたのは自分だって思ってて、目に見えて落ち込んでるよ」

 ……馬鹿だな。俺は誰にも怪我させられてない。寧ろ、自分から怪我をしたんだ。
 それよりも手を擦りむいた事は間違いなく俺に怪我させられた事なんだから、怒るべきなのに。
 
「……きょうちゃんが何を考えてるか分かるけど、わたしは今回の件、櫻井さんにも非があると思うよ」
「なんでだよ?」
「まずきょうちゃんの誘いを断らなかった事、危ない場所に居るって分かってたのに体勢を変えようとして足を滑らせた事」
「いやいやいや、待てよ。あれは俺が強引に誘ったわけだし、そもそも俺が誘わなければ危ない場所にいなかったんだから、全部、俺が悪いだろ」
「きょうちゃんが原因な事は分かってるよ。けどね、全てがきょうちゃんが悪いとはわたしは思わないかな」
「…………」

 麻奈実は、俺に甘い。だから、庇ってるのかと思ったが、しっかりと俺が原因だという事は認識してる。
 基本、公平な奴でもあるからな。
 悪いことは悪いし、間違えてることは間違えてると言ってくれる貴重な幼馴染。
 
「全てが悪いとは思わない、というだけであって、今回、きょうちゃんは悪いことは一杯してるんだからね。ちゃんと反省すること」
「……悪かった」
「あとでちゃんと櫻井さんにも謝るんだよ?」
「おう」

 そうだな……。自分でも言ったが、あれは少し調子に乗りすぎていた。
 あれで櫻井が落ちて怪我でもした日には、林間教室が中止になっていた可能性もある。
 そもそも怪我どころでは済まない事態になっていた可能性もあった。
 ……反省しよう。
 
 森の小道に入り、既に夕暮れになろうという木漏れ日を浴びながら、麻奈実と二人で歩く。

「……そうだ、麻奈実」
「……なに」
「…………」

 俺は足を止めて、麻奈実へと向き直る。
 さっきから怖い顔をしている麻奈実は、少し驚いたように立ち止まる。
 
「ごめん!」

 そんな麻奈実に対して俺は頭を下げた。
 深く深く頭を下げた。
 
「……いいよ」
「約束したのに、危険な事して、ごめん!」
「うん」
「おまえが、危ないって指摘したのに、止めなくてごめん!」
「……うん」

 そんな俺の謝罪を真っ直ぐに麻奈実は受け入れ、そしてようやく表情を和らげてくれた。
 
「すべて、許すよ」
「……ごめんな」

 簡単にこの幼馴染は許すと言ってくれているが、それがそんな簡単じゃないことを俺は知ってる。
 例えば麻奈実が、俺と同じように無茶をして怪我をした場合、きっと俺はそう簡単に許せないと思う。
 心配ってのは簡単に割り切れるものじゃないからだ。
 だからこうやって許してくれる麻奈実を俺は密かに尊敬していたりする。
 ホント、俺なんかより全然スゲー奴なんじゃねーかな、こいつは。
 
「あ、きょうちゃん」
「ん?」
「……前」

 麻奈実に促されて、その視線の先に目を向ける。
 そこには一人の少女が立っていた。
 先ほど、俺が怪我をさせてしまった少女。
 櫻井秋美。
 
「……謝る、んだよね?」
「ああ」
「じゃあ、わたしは先に戻ってるから、いってらっしゃい」

 謝る場面なら二人きりがいいだろうとした配慮だろう。
 麻奈実は、そう言いのければあっさりと俺に背を向けて来た道を戻っていく。
 ……監視の目はいいんだろうか、と思ったが、しかしそれは自明の理だ。
 櫻井の片手に巻かれた包帯を見れば、俺が何か無茶なことを出来るわけがない。
766 :或る分岐点 秋美Bルート  ◆ebJORrWVuo [sage saga]:2012/09/17(月) 17:27:58.12 ID:EPEdYzB9o
 俺は軽く駆け足気味に櫻井へと近づく。
 櫻井はそんな俺を見て、声を発する。
 
「……こーさか」
「櫻井……」

 二人の距離が、岩場の上での距離と同じぐらいになったタイミングで、
 
「ごめん!」
「ごめんね!」

 二人とも頭を下げた。
 
「待て待て、本当に謝るべきは俺だって。俺が原因なんだからさ」
「いやいや、あたしだって悪いよ……あの時、ちょっと危ない場所に立ってるってコト、忘れちゃってたし」
「忘れちゃってたって……なんでだ?」
「うぇ?」
「そう言えば、何か言いかけてたよな、あの時」
「げげっ! やば、こいつ覚えてやがる……っ!」

 というか今の会話で思い出した。
 確かに、櫻井が落ちる前、彼女が何かを言おうとして、少しこちらに一歩を踏み出した。
 その時に、足元が崩れて、という流れだった。
 忘れたくても忘れられないぐらい、脳裏に焼き付いている場面だ。
 
「あれ、何を言おうとしてたんだ?」
「え、ええ、ええと……わ、忘れちゃった、かもっ!」
「『だからぁ! あたしは、』だったか」
「う……た、タンマッ! 思い出すなっ!」
「いや、忘れちゃったって言うから、少しでも思い出せるようにな……?」
「ばぁか! 忘れてるわけないでしょっ!」

 いや、忘れちゃったかも、とか言ってたじゃねえか……。
 腑に落ちないが、しかしそこに突っ込んでも会話が終わらなくなりそうなので、無理やり納得する事にする。
 
「じゃあ……なんだよ?」
「う〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!!」

 何故か顔を真赤にして唸り声をあげる櫻井。
 まさか野生動物の真似だろうか。俺も何か吠えたりした方がいいんだろうか。
 いや待てよ、こういう態度、そういえばうちの妹もよくやるな。
 その後、「知んない、バカっ!」とか続くんだが……。
 
「……景色、思い出して」
「ん、何の?」
「キミって本当に察しが悪いよね……」
「あ、ああ、山頂のな?」
「そう、景色、思い浮かべて、今直ぐっ!」
「お、おう」

 凄い剣幕で言う櫻井に気圧される形で、俺は頷き景色を思い出そうと目を閉じる。
 そして景色を思い返す。
 山頂、そう、そこに広がるのは絶景。どこまでもどこまでも、遠くに広がる世界――。
 
「超いー景色! 感動した! 最っっ高の気分だよ! ぜんぶ、ぜんぶキミのおかげっ!」

 その景色を一緒に眺めている櫻井が、俺の隣でそう叫ぶ。
 最も俺が欲しがっていた言葉、勝手な努力が、自己満足のお節介が、認められる言葉。
 
「櫻井秋美は! 高坂京介のことが! だいっ好きだぁああああああああああぁっ!」

 そして、そこから繋がった言葉は……愛の告白としか思えない、叫びだった。
 
「……え?」
「……っ……はぁ……はぁ……はぁ」

 全てを言い切ったのか、櫻井が息を切らせて、何故か涙を溜めた目で俺を見ている。
 対して俺は、阿呆のように口を開いた侭、身動ぎ一つ出来ずに居た。
 
 人生、初の告白。
 身体の奥が痺れるような、足が浮き上がるような、そういう感覚。
 
「い、今のは……」
「ひひ、びっくりした?」
「すげえびっくりした」
「へへ……これがあたしの言おうとしてた言葉」
「…………」
「少しだけ、鮮度が落ちちゃったけど、でも気持ちは全然変わってないから」
767 :或る分岐点 秋美Bルート  ◆ebJORrWVuo [sage saga]:2012/09/17(月) 17:28:25.16 ID:EPEdYzB9o
 真っ直ぐと俺を見つめる櫻井。
 その視線に否が応でも心が高鳴ってしまう。
 そうか、この身体を湧きあがらせる感情は、嬉しいんだ。
 今、告白されて、身体がしびれてしまうぐらいに嬉しいんだ。
 油断したら涙が出てしまいそうなぐらいに。
 
 けど……。
 
「……ありがとう、な。俺、すっげえ、嬉しかった」

 それは心からの言葉だ。ならこの先に続く言葉は?
 頭よりも先に、心が答えを出している。
 俺は、この告白を――。
 
「すとっぷっ!」
「……へ?」
「まだ、まだだから!」
「……ええと、何が?」
「い、今のはまだ決意表明だから」

 ……決意表明?
 
「宣戦布告っていうか、これから覚悟してなさいよってとか、そんなのっ!」

 宣戦布告? 覚悟?
 
「答えはまだ要らない、けどいつか絶対貰うからっ! でもまだ要らない」
「……今はまだ?」
「そう。だって今はまだ、キミのいいそうな答え、知ってるから」
「…………」
「だからね、あたしはこれから毎日学校行って、そして沢山、キミの側で過ごす」
「……毎日学校に来てくれるのは、嬉しい、ぜ」
「うん。絶対行く。これでもかってぐらい、毎日いって皆勤賞目指す」
「今からじゃ皆勤賞は取れねーだろ」

 何を言おうとしているのか、何となく分かった。
 俺がどう答えるか、俺よりも先に櫻井は分かったのだろう。
 だから俺がその答えに自覚するよりも先に、櫻井は止めた。
 
 まだその時じゃないと。
 
「ふふん。まあ、今はこれでいーかなっ!」
「ん……」

 櫻井を見ると、差し出してきたのは包帯が巻かれてない方の手。
 そして都合よく俺の包帯が巻かれてない手なら、目的は達する事が出来る。
 
「今だけでいいから、ね?」
「……わかったよ」

 差し出された手を握れば、櫻井は頬を赤らめながら笑みを浮かべる。
 俺はそんな笑みを浮かべながら、確定されてない未来を浮かべる。
 
「じゃ、行こ? そろそろ夕飯だしさ」
「あーもうそんな時間か。麻奈実の飯、うめえから楽しみだな」
「…………」
「……いっ!」

 そう、まだ始まったばかりなのだ。
 色んな歯車が、まだ重なり合おうとしている時。
 俺が無理やり回している今の歯車の歯がいつかは欠けて。
 止まらざるを得ない時。
 
 俺は何を得て、何を失うのだろう。
 願わくば、皆が幸せになる未来を。
 
 
768 :或る分岐点 秋美Bルート  ◆ebJORrWVuo [sage saga]:2012/09/17(月) 17:32:09.85 ID:EPEdYzB9o
因みに俺の脳内設定では、この後の
高校三年生の11巻と同時期に、再び告白イベントが起きる予定
結局おばあちゃんは死んじゃうことで、今ほどではないが挫折を味わう京介と
麻奈実と櫻井と桐乃の京介争奪バトルが展開される訳だが

それはまた別の話、という訳で
ここまでお読み頂き感謝を
769 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福島県) :2012/09/17(月) 18:10:57.40 ID:Qo+QR0tY0
>>768
あなたが神だ!!
今回も超いー秋美SS、お疲れ様です!
とても面白く、感動させてもらいました。

また次回作があるようなら、楽しみにしてます!
770 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/09/17(月) 21:31:09.84 ID:0nOcCzZJo
>>768
GJを言わせてもらう。
どうも自分は過去にいた系に弱いらしい。

今の候補者は桐乃がヲタ化しないと立たなかったフラグだろうけど、
それが避けれらないのであれば櫻井さんは十分対抗・対決できる人だと思う。
771 : ◆odaAq0EgoE [sage saga]:2012/09/18(火) 00:18:14.82 ID:bENp5PQDO
>>744です。
とりま総括すると>>751が一番具体的なんでそれに添ったやつを。
次レスより投下
772 : ◆odaAq0EgoE [sage saga]:2012/09/18(火) 00:19:48.76 ID:bENp5PQDO

「ちっ!!」

瞬間、俺は迷うことなく地面を蹴っていた。
目の前には、呆けたように俺をみつめる女生徒―――櫻井秋美。
バカ面晒しやがって。
まだ自分の状況がわかってねーんだろーなお前。
櫻井を見つつ、ちらりと視線を下方に。
・・・3mってとこか・・・。
まあなんとかなるだろ。
俺はそう楽観を決め込むと、今度こそ視線を櫻井に固定した。
これで捕まえ損ねましたじゃ笑い話にもならねえ。

「へっ!こんな状況で俺が失敗なんかするもんかよっ!!」

自らの中にある小さな不安をかき消すように、敢えて大声で叫ぶ。

「こっ・・・」

櫻井が何かを言いかけたようだったが、俺は強引にそれを黙らせる。
抱き寄せることで。
櫻井の頭を包み込むように胸に押し当てながら、一言だけ祈る。

「南無三・・・」

そうして俺と櫻井は抱き合ったまま・・・崖から落ちていったのだった。

『リクエストに応えてみた』
773 : ◆odaAq0EgoE [sage saga]:2012/09/18(火) 00:21:17.88 ID:bENp5PQDO

・・・あー・・・きれいだねー。
気が付くと、目の前に真っ青な空が広がっていた。
ああ地面に寝てるのか、と気づいたのは少し間を置いてからだった。

「・・・いてえ・・・」

それと同時に、体の端々に鈍い痛みが感じられる。
どうやら骨折はしてないようだが、数か所に打撲ぐらいはありそうだ。

「・・・意外に高えし・・・」

起きるのもだるいので、そのままの姿勢で今落ちてきたばかりの崖を仰ぎ見る。

「あそこから直に真っ逆さま・・・か」

・・・転げ落ちなかったのは幸いだったかもしれん。
あの尖った岩場をゴロゴロと転げ落ちたら、ハッキリ言って洒落んならんことになってただろーな・・・。
そこまで考えて俺は一旦思考を止める。
・・・あー・・・気になってしょうがねえ・・・。
俺は一つため息をつくと、晴天の大空から、大粒の雨を降らせている奴に声を掛けた。

「・・・なーに泣いてんの、お前?」

膝枕した俺の顔に、ぼたぼたと大粒の涙を零しながら、子供のようにしゃくりあげている櫻井秋美その人に。
774 : ◆odaAq0EgoE [sage saga]:2012/09/18(火) 00:22:51.67 ID:bENp5PQDO

「・・・ばか・・・ばか、だよっ・・きみっはっ・・・」

ひっくひっくと喉をひきつらせながら、櫻井はそんなことを言ってくる。
おいおいひどいねえ、命の恩人に対して。

「た、のんで、ないっ!・・・あ、あんな・・・あんっなっ・・・!」

そこまで言って、櫻井は本格的にわんわんと泣きだした。
俺が目を覚ましたことで、それまで張りつめていたものが切れてしまったのだろう。
俺の頭を抱きしめて櫻井はしばらく泣き続けた。
・・・どうでもいいけどこの体勢、胸がもろにあたってるんだけどな・・・。
10分程も経っただろうか?
ようやく櫻井から解放された俺は、ほっと一息ついて胸をなでおろした。
言っておくが、断じてリヴァイアサンがヤバかったからとかではない。

「・・・落ち着いたか?」

俺の問いかけに、櫻井は無言で首肯する。
ちなみに体勢は膝枕のままである。
櫻井がこれだけはどうしても解放してくれなく、根負けして今に至る。
まあ心地良いからいいか。

「・・・やっぱバカだよ君・・・」
「なんだー?まーた同じ話に逆戻りかー?」

櫻井の膝に寝転がったまま、俺は体のあちこちを伸ばしたり曲げたりしている。
予想通り骨折はなし。
ヒビも・・・ないな。
打撲は・・・右肩と背中。
落ちた時に打ったか。
幸い動かすのに支障はなし・・・っと。
・・・まあ打ち身は、あとになった方が痛んでくるからまだ楽観はできないが・・・。
そこまで考えたところで、また顔に滴の感触。
おいおい、よく漏れる蛇口だねえ。
775 : ◆odaAq0EgoE [sage saga]:2012/09/18(火) 00:24:07.75 ID:bENp5PQDO

「今度はなんだー?」

俺の言葉に櫻井は、グシグシと目元を擦りながら答えてくる。

「・・・なんで怒んないのさ?あたしが不注意で落ちて・・・君が庇ってくれて・・・そ、そんで君は怪我し、て・・・!」
「おいおいおい待て待てストーップ!」

ほっとけば、また本格的に泣き出しそうな櫻井を慌てて止める。
それにも増して今の言葉は聞き捨てならねーし。

「いいか勘違いすんなよ?」

俺はビシッ!と櫻井の鼻面に向けて指を突き出した。
・・・膝枕されたまま。
はあ・・・しまらねーなあ・・・。

「あれは俺が全面的に悪い。お前を危険な場所に連れて行ったこと。登山を終えたばかりでお前が疲れてるのを失念してたこと。何より落ちる前に助けてやれなかったこと。すべて俺の責任だ。怒る要素なんて一個もねーよ」

俺の言葉に、櫻井は納得のいかないような表情を浮かべた。
そのまま、何かを言おうと口を開きかけるが閉じる。
そんな動作を何度かした後、櫻井は・・・もっとも俺の見たくない表情を浮かべやがった。
最悪の言葉とともに。
―――自嘲的な笑みを。

「はは・・・やっぱ、さ・・・あたしは・・・学校に来なきゃよかったんだよ・・・」
776 : ◆odaAq0EgoE [sage saga]:2012/09/18(火) 00:25:29.58 ID:bENp5PQDO

一瞬怒りで目の前が真っ暗になった。
怒鳴りつける声を懸命に押し殺した。
掴みかかろうとする手を理性でかろうじて抑えた。
そうして・・・ギリッと奥歯を軋ませて俺は呟いた。

「なん・・・だと?」
「だってそうじゃないか!」

櫻井はぶんぶんと頭を振りながら、俺に訴えかけてきた。

「あたしが来たからこんなことになった!この事故でもしかしたら林間学校が中止になるかもしれない!あたしはいいよ!?ずっと学校に来てなかったあたしが、それを惜しいなんて思っちゃいけない!おこがましいにも程がある!でも・・・でもっ!そんなあたしを誘ってくれたクラスのみんなは、ずっとこれを楽しみにしてた!そんな・・・そんなみんなの楽しみを・・・あたしなんかが奪っちゃうかもなんだよっ!?嫌だよそんなの!!そんならあたしなんか家に引きこもってればよかった!!あんなに優しく迎え入れてくれたクラスのみんなに・・・高坂に・・・恩を仇で返すくらいなら・・・あたしなんていなけりゃよかったんだ・・・」

パシン。

「・・・え?」

辺りに響く乾いた音。
俺が櫻井の頬を叩いた音。

「・・・今のはクラスのやつらを舐めた分な?」
「・・・高坂?」
「・・ったく・・・なーんでお前はそんなに明るい癖にネガなのかねえ?」

俺は頭を乱暴に掻きながら、怒りを少しづつ発散させた。
このままじゃ怒鳴りつけそうだもんな。
777 : ◆odaAq0EgoE [sage saga]:2012/09/18(火) 00:26:31.40 ID:bENp5PQDO

「あのよ?」
「な、なに?」
「あいつらは、本気でお前を心配してたんだかんな?」

そう。本気で心配してた。
あれから俺もしばしば裏サイトを見ていたんだが、最近は、櫻井が学校に来るのを喜ぶ声が多数書かれていた。
無論匿名の掲示板だから、どこまで本気かわからないが、確かに奴らは櫻井の復学を喜んでいた。

「それに林間学校だってお前と来たいって声が多数だったじゃねーか」

お前だって読んでんだからわかってんだろ。
だからこそさっきの、来なきゃよかったなんだろ?。

「だったらさっきのお前の台詞、あいつらが聞いたら激怒するぜ?だから俺が代表して殴った。文句あっか?」

俺の言葉に櫻井は小さな声で一言、ない、と答えた。

「ならよし。そろそろ迎えも来るだろーから準備して・・・」
「でもさ・・・」
「あん?」

まだなんかあんのお前?

「あたしを連れ出してくれた高坂には・・・迷惑のかけ通しっていうか・・・迷惑しかかけてないっていうか・・・」

まだ言うか!?
いい加減呆れるよ!?お前のその後ろ向き思考!
俺は大きくため息をついた後、至極根本的なことを聞いた。
778 : ◆odaAq0EgoE [sage saga]:2012/09/18(火) 00:27:39.37 ID:bENp5PQDO

「・・・あのよ櫻井?」
「な、なに?」
「お前・・・楽しくねーの?」
「なっ!?」

俺の言葉に櫻井は、心底慌てたように即座に返事を返してくる。

「た、楽しいよ!楽しいに決まってんじゃん!!じゃなきゃ登山なんてしない!高坂につきあって危険なトコに行ったりしない!それにさっきだって本当は、君にそのことを言おうとしたんだ!!超いい景色だって!感動したって!最高の気分だって!本当に・・・本当にありがとうって・・・!」
「じゃあいいじゃねーか」
「え?」

俺の言葉に櫻井は目を丸くする。
まったく、なんだってこいつはこう小難しく考えるかねえ。

「いいか?お前が心から楽しんでて、それ見て俺が満足してんだ」

他に何か必要か?
敢えておどけたような口調で言ってやる。

「・・・」

櫻井は、俺の言葉にしばし呆けたような表情を浮かべた後、

「ふ・・・あはははは」

それはそれは極上の、泣き笑いの笑顔を見せてくれたのだった。

「やっぱ君はバカだよ」
「うるせえ。自覚はあるからほっとけ」
「はあ・・・自覚のあるバカほど厄介なものはないねえ」
「自覚のないバカよりはマシだ」
「それって50・100じゃね?」
「倍も違うんだぞ?かなりの差じゃねーか」

そんな馬鹿な会話を交わしながら、俺たちはまた二人で笑いあった。
上の方からは、そろそろ俺たちの名前を呼ぶ声が聞こえ始めた。
さてさて、見つかるその間に、なんとか(特に麻奈実に)あまり怒られないようなうまい言い訳でも考えるとするかね・・・。

END
779 : ◆odaAq0EgoE [sage]:2012/09/18(火) 00:29:03.44 ID:bENp5PQDO
以上です。
とりあえず>>751の要望、上二つはこなしたと思います。
つぎはお母さん登場ですねーww
780 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(茨城県) [sage]:2012/09/18(火) 00:30:18.59 ID:eqkeMAG9o
乙〜
まさか採用されるとは思ってなかったぜサンクス!
781 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福島県) :2012/09/18(火) 01:52:51.42 ID:Z+PpI3/I0
>>779
超いーSSをありがとう!!!
秋美ちゃんSSが大量で超うれしいよ!
続きも楽しみにまってますねー
782 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/18(火) 06:46:46.08 ID:h80Fj4AI0
>>779
乙です>>743です
なんだかんだ言って秋美を使ってもらってうれしいよ
続きが楽しみだ
783 : ◆odaAq0EgoE [sage]:2012/09/18(火) 09:53:41.29 ID:bENp5PQDO
感想Snks。
続きは・・・ま、気長に待ってくだされww
さて、リクエストくれたら大概書くよ。
できれば次のミッションぷりーずww

あ、SFはちと勘弁。
現実主義者なもんで、サイエンスフィクションには疎くてね。
時間戻すとかよくわからんww
784 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福島県) :2012/09/18(火) 18:41:49.15 ID:Z+PpI3/I0
>>783

あのゲーセンで再会した時に、京介が秋美を振らなくて、付き合う(後に付き合うことになる)パターンとか見てみたいです。
京介の心情描写的に結構難しいのは分かってますが、それでも見てみたいと思うのはすべて秋美ちゃん幸せSSへの渇望ゆえ・・・
ご検討お願いします
785 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/18(火) 22:21:28.14 ID:1DhVL0YP0
>>783
歴史改変SFってのは別に理系なお話じゃないんだぜ?
ただ「あの時こうなっていたら〜」ってのを追求するだけさ。

俺としては多少頑張りが報われて、なおかつ秋美ちゃんを引きずっちゃった京介がどんな振る舞いを見せるかってのを見たかったのさ。
786 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(茨城県) [sage]:2012/09/18(火) 23:13:41.39 ID:HsCQZORlo
この場合はあれじゃないか?
過去に戻った京介がそれを防ぐために云々的なの
787 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/18(火) 23:31:30.31 ID:bENp5PQDO
>>785
書き方書き方ww
SFなんて書くから、時かけとかタイムリープみたいなの想像しちゃったじゃないか。

てゆか、あれだよね?
滑落が数十秒遅れてたらってやつ。
あのリク、実はよくわかってないんだよなー・・・ってさっきまで思ってたらやっとわかった。
つまり告白はできたけど、やっぱり落ちちゃったifってことね?
努力してみる。
あ、間違ってたら訂正してくれ。
788 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/18(火) 23:37:18.52 ID:1DhVL0YP0
>>787
SFはSFでもスペキュレイティブなフィクションですからww

告白はできたけど〜って解釈でOKよ。
その平行世界での高三の京介達の話を見てみたかったわけです。
789 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage saga]:2012/09/19(水) 00:13:28.61 ID:3d8aXTGRo
時をかける少年

で考えたがただのハーレム展開にしかならない気がしたので考案の段階でボツ
俺はそろそろ秋美以外のネタでも考えておくかなー
790 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(茨城県) [sage]:2012/09/19(水) 00:15:52.68 ID:Mel+Bz7Do
ハーレムもアリだと思うぜ
791 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/09/19(水) 01:18:49.25 ID:39Jkz08DO
>>784
『ゲーセンにて』

秋美「じゃあ言うよ…櫻井秋美は!高坂京介のことが!だいっ好きだぁぁあああああああああああああああ!」

京介「お、おまえっ!?」

秋美「ひひ、びっくりした?」

京介「超びっくりしたよ!」

秋美「これが3年前に言いかけた言葉。今更だけど伝えられてよかった」

京介「…お前」

秋美「いまも同じ気持ちです。……虫のいい話だけれど、答えを聞かせてもらえるかな?」

京介「…ああ」

秋美「…」

京介「三年前での、いまでも…答えは同じだ」

秋美「…」

京介「俺も好きだ付き合おう!」

秋美「えー!?」

京介「というか結婚しよう!!」

秋美「えーーーっ!?」

HAPPY END

その夜、高坂家。

麻奈実「き、きょうちゃんの嫁が挨拶に来たよ桐乃ちゃん!」

桐乃「よし、埋めようまなちゃん!」

やりました。できました。
792 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/09/19(水) 01:34:05.19 ID:58piR2ICo
この展開はwwwwwwwwww

あと2名くらい闇化しそうだww
793 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/19(水) 12:06:56.62 ID:39Jkz08DO
>>784からのツッコミがねぇ・・・orz

こちとら、ツッコミ待ちだってのによww
794 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/09/19(水) 14:17:32.62 ID:zY0VYVBIO
すまん!!
>>784だけど車に轢かれて左腕折って病院いっててチェックできてなかった!!

昨日の夜にやられてついさっき検査入院オワタ

>>793相変わらずラブデレな京介秋美ちゃんで最高です!!
さぁはやく続きor新しいしちゅのSS書いて俺に砂糖はかせてください・・・!

腕折って思いついたんですけどけど、秋美ちゃん庇って落ちて腕折ってそれに責任感じちゃって甲斐甲斐しく世話する秋美ちゃんみたいなシチュはどうでしょうか?
林間学校が中止になるかは書き手さんにおまかせします。
もしよろしければお願いします!
795 : ◆odaAq0EgoE [sage]:2012/09/19(水) 23:30:48.52 ID:39Jkz08DO
>>794
おお、災難だったな!
轢かれて骨折なら、まだましな方かな?
頭とか打ってたら洒落ならん。
なんにせよお大事に。

さて、こっちが本命。
さっき書き上がったばかりのホヤホヤだから、自分でもよくわからんww
読んだ人、忌憚ない感想くれると助かる。
次レスより投下。
796 : ◆odaAq0EgoE [sage saga]:2012/09/19(水) 23:32:15.37 ID:39Jkz08DO

「三年前でも今でも答えは同じだ・・・」

うん。わかってる。

「ごめん俺好きな奴がいるんだ」

わかってるよ・・・高坂。

「俺・・・今度こそ自分から告白するって決めたんだ」
「・・・うん知ってた」

そう言ってあたしは笑った。
涙をポロポロと流しながらだったけど、あたしは確かに笑って答えた。

「ちゃんと振ってくれて・・・ありがとうね」

『リクエストに応えてみた2』
797 : ◆odaAq0EgoE [sage saga]:2012/09/19(水) 23:33:59.21 ID:39Jkz08DO

「あー泣き尽くしたー!」

夕焼けに染まる空。
あたしは大きく伸びをすると、そのまま大きく息をついた。

「超ーすっきりしたっ!」

ニッコリと笑いながらくるりと後ろを振り向く。

「高坂もすっきりした?」
「・・・なわけあるか・・・」

あたしの視線の先。
そこにはどんよりとした空気をまとった男がいた。
高坂京介。
あたしが告白して振られた男だ。

「なーんでさー?今まで胸につかえてたもんがなくなったんだろー?イヤッホーッ!きたこれーっ!なーんて叫んじゃってもいいくらいじゃない?」
「あのなあ・・・」
「ん?」

続く言葉はわかっている。
でも敢えてここは知らんふりを決め込む。

「なんですかご主人様?」
「それだよっ!!」

高坂はガバッと顔を上げると、どこぞの小学生探偵のようにあたしに指を突き付けてきた。

「てめえ!!あのゲーセンでとんでもないこと言いやがって!!」
「とんでもないこととは?」

あたしは口をω←こんなふうにして聞いてやる。
案の定高坂はこめかみに血管を浮かべながら不敵に笑いだした。
変わってないねーこういうとこ。

「・・・お前・・・泣いてるのを心配して近寄ってきた店員さんになんて言った?」
「『ご主人様があたしを捨てるっていうんです―』」

クネクネと体をよじらせながら、あたしは泣いてるふりをする。

「・・・てめえ、俺の社会的地位を失墜させる気か?」
「元からないじゃんそんなもん」

知んないけど。

「あの辺りは今でもちょくちょく行くんだよ!顔見知りも何人か居る中であんなこと言いやがって!!」

しかも大声で!
少し涙目になりながら高坂はもう一度あたしを指差してきた。
・・・ちょっぴりやり過ぎたかな?

「おまっ・・・あんなっ・・・ご主人様なんて・・・も、二度とないって・・・なんでまた・・・」

・・・あーちがう。
これあれだ。トラウマだ。
798 : ◆odaAq0EgoE [sage saga]:2012/09/19(水) 23:36:10.23 ID:39Jkz08DO

「・・・前にも何かあったの?」

高坂はグシグシと涙をぬぐいながら、途切れ途切れに答えてくる。

「・・・メイドコスの・・・妹と友達に・・・ご主人様って辱しめを・・・人目があるのに・・・」
「高坂ほんとマジごめん!」

やっべー!
なにその羞恥プレイ!?
罰ゲームにしたって酷すぎる!

「てゆーかそれどんな状況!?」
「・・・人間、生きてると色々あんだよ・・・」

・・・遠い目をしてるけど全然かっこよくないよ高坂?

「まあいいさ。やっちまったもんはしょうがねえ」

苦笑を浮かべたまま、肩をすくめて呟く高坂。
その一言に、あれっ?とあたしは首を傾げる。

「ん?どうした櫻井?」
「いや・・・今君、しょうがないって言った?」
「あ?・・・ああ、はは。おう言ったぞ」

あたしの言葉に、高坂は少し照れたような、バツの悪そうな笑みを浮かべる。

「君の主義って・・・『世の中には仕方ないで済ませていいことなんて一個だってねーんだよ』じゃなかったっけ?」
「宗旨替えしたんだよ」
「・・・どうして?」

・・・あたしは今、一つの可能性を感じて・・・青ざめてる。
だってそれはもしかしたら・・・。

「あ、たしの・・・怪我の・・・所為?」
「ちげーよ」

あたしの言葉に、即座に高坂の否定が重なる。

「お前の怪我は確かにきっかけだったかもしれねえ。でも・・・それから学んだのは決してお前の所為なんかじゃない」

力強い一言。
そこにはゆるぎない確固たる何かが見て取れた。
・・・やっぱ変わってないよ、君。

「・・・あの一件で、俺は・・・自分が特別な人間じゃないと思い知らされた」
「・・・」
「考えてみりゃそうだよな。たかが中学生のガキが一人、なにができるっていうんだか。今考えると恥ずかしいぜ」
「・・・」
「俺はただの一人の無力なガキ。無理していきがって後先考えずに突っ走っちまうだけのバカなガキだったんだ。・・・それを、お前の一件で学んだ。・・・お前の骨折っていう高い授業料だったけどな・・・」
「・・・」
「だからこれはお前の所為じゃない・・・強いて言えば、『おかげ』だ」
「そっか・・・おかげか・・・」
「お、おい・・・?」

・・・気が付けばあたしは泣いていた。
799 : ◆odaAq0EgoE [sage saga]:2012/09/19(水) 23:37:29.82 ID:39Jkz08DO

自分でも自覚がないほど自然に涙が溢れだしていた。
はらはらと流れ落ちる涙をぬぐうこともせず、あたしはただただ突っ立っていた。
突っ立ったまま・・・高坂に頭を下げた。

「・・・・・・ごめんなさい」
「・・・え?」

正直自分でも何に対してなのかわからない謝罪だった。
頭の仲がグチャグチャで、心の中が張り裂けそうで、それでも・・・あたしはごめんなさいを繰り返した。

「ごめん・・・ごめんね高坂・・・ごめんなさい・・・ごめん・・・」
「な、なに謝ってんだよ!?わけわかんねーよ!?」
「ごめん・・・ごめんね・・・」
「・・・ち!」

不意にぐっと手を引っ張られる。
抵抗する気力もないあたしはされるがままに体勢を崩した。

ぽすん。

そうしてあたしは、高坂の胸の中にいた。

「・・・ったくなんだってんだ一体・・・」

毒づきながらも、高坂はあたしをギュッと抱きしめてくれた。
胸に押し当てて、泣き顔が周りから見えないようにしてくれた。
頭に添えた手で・・・優しく撫でてくれた。

「・・・いきなり泣くとか勘弁してくれ・・・正直心臓に悪い」
「ごめん・・・ごめんね・・・」
「・・・いいよもう」
「ごめん・・・ごめん高坂・・・」
「・・・本当にもういいよ。俺は・・・もうすべて許してるから」
「・・・ごめん・・・あ、りがとう・・・」
「・・・おう」
800 : ◆odaAq0EgoE [sage saga]:2012/09/19(水) 23:38:09.96 ID:39Jkz08DO

あの頃、君はヒーローだった。
誰もが憧れて、誰もが羨むヒーローだった。
無鉄砲に走り出して、無理難題にぶち当たって、そうして力づくでそれを解決する。
誰にも頼られて、それを原動力にして、そうして君はまっすぐに突っ走っていくヒーローだった。
ただの人なのに。
それでも自分はできると言い聞かせて、思い込んで、そうして君はヒーロー足りえた。
凄いことだった。
本当に感激した。
あたしを連れ出して、学校に行かせてくれて、みんなと一緒にいる楽しみを教えてくれた。
でもその所為で君は・・・。

「・・・俺はもうヒーローじゃないけど、それでも一人の女の子の涙くらい止められるって程には自惚れてるよ」
「・・・ずいぶんとこじんまりとしちゃったね?」
「ほっとけ・・・ああもう。おい櫻井」
「え?」

名前を呼ばれて顔を上げる。
至近距離で見る高坂の顔はやっぱり格好良くて。

「さっきのは無しだ」
「・・・へ?さっきのって?」
「お前を振った話」
「は?」
「俺は決めた。今確かに俺は好きな奴がいる。でも・・・今こんなに泣いてるお前を放っておくことはできない。告白してくれた女の子をな。だから返事は保留に変えといてくれ。今後・・・そうだな、卒業までには自分の中で結論を出してやる。それからだ、お前の告白に応えるのは。いいな?」

・・・バカじゃないの?

「ぷ、はは・・・」

思わず笑っちゃったじゃないか。

「あ、てめ!人が真剣に言って・・・」
「好きだよ、高坂」

そうしてあたしはまた高坂の胸に顔を埋めた。

「お、おい・・・!」
「・・・一回振られてるから期待はしてない。でも、あの頃と君はやっぱり変わってないよ。『仕方ないなんてことは一個もない。俺に任せとけ』・・・そう言ってた頃となーんにもかわってないよ」

君はまだあたしのヒーローのままだよ。
そう言うと、高坂は体を硬直させた。
今真っ赤なんだろーな。
胸が心地良いから顔上げらんないけど。

「・・・ありがと、高坂」
「・・・どういたしまして、櫻井」

そうしてあたしたちはそのまましばらく、街の真ん中で抱き合っていたのだった。

END
801 : ◆odaAq0EgoE [sage]:2012/09/19(水) 23:41:09.60 ID:39Jkz08DO
以上です。
このあとは、正直12巻読まないと書けませんww
もし誰かとくっついたなら、それを両天秤にかけて、どちらかを選ぶ京介が書けると思います。
とりあえずご感想お待ちしてまーすノシ
802 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/19(水) 23:56:20.03 ID:fxwSEhO2o


秋美SSが一気に出だしたなぁ
一つ気になったんだけど、小説だと「・・・」は「…(三点リーダー)」で偶数個って決まりがあったはず
文句を言うわけじゃなくて、普通の点より三点リーダーの方が見やすいから言ったんだけど、自分の中でこだわり的なのがあったならごめん
803 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2012/09/20(木) 01:32:29.19 ID:sXCw27sL0
作者さん全員GJ!
秋美さん、このまま放置するにはキャラ的に魅力強すぎる

せっかくお節介でいろいろやってくれてるんだから、ついでに身の回りのお世話を全部やってもらうべきだったと思うんだ
髪梳かしてもらったりみみかきしてもらったりとか甘ええおけばもっと告白イベントでもちっとは有利に・・・
804 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/20(木) 06:33:08.00 ID:9LYv34nu0
天才祭りじゃ〜!

秋美と言う新キャラのおかげで作家さんたちが活気づいて来たのは喜ばしいな
805 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福島県) :2012/09/20(木) 07:21:29.39 ID:LL5AEFFn0
>>801
リクエスト答えてくれてありがとう!
いい秋美ちゃんSSでした!
活力が湧いてきたー

正直十二巻はあまり早くきて欲しくないなー
あやせは振られちゃうと思うし、なにより物語が終わってしまうってのがなにより寂しい。
でも楽しみなんだよねぇ。。。
806 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/09/20(木) 09:56:52.78 ID:RVtYHEPlo
>>805
俺はまだあやせが振られるとは諦めてないぜ!
もし振られたとしても、あやせエンドを投下しまくって歴史を変えてやるぜ!
807 : ◆odaAq0EgoE [sage]:2012/09/20(木) 10:09:46.59 ID:005Cn/UDO
感想サンクス。
やっぱ原動力になるわ感想はww
次のミッションぷりーずww
ちなみに秋実は飽きたww
あと、あやせは>>806が書きまくるそうなんで除外ww

さあ、リクエストお待ちしてます♪
808 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/20(木) 14:50:56.58 ID:9LYv34nu0
>>807
物凄く黒化した麻奈実の話をおなしゃす!
809 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/09/20(木) 16:27:49.41 ID:a6yILu05o
>>807
では>>757で一つおながいします。
……エロパロじゃないと無理か?
810 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/09/20(木) 16:44:28.14 ID:ZIhs/X3IO
>>807
あやせたのもうとしたけれど、そういうことなら加奈子はどうでしょう。

P続の加奈子ルートで好きになりました。
さすがの田村ゆかり様だった
811 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/09/20(木) 19:35:30.63 ID:HXHrQS6uo
せっかくSSが続いてるというのに空気も読まずに失礼……

《ほのぼの四コマ風 SS劇場》

京介「なあ、少し寒くなってきたことだし、たまにはドンケツでもやらねえか?」

あやせ「……お兄さんとドンケツですか? 別にかまいませんけど、……やるなら真面目にやってください」

京介「おう! そーれ、ドンケツ、ドンケツ、ドンケツ」

あやせ「は〜い、ドンケツ、ドンケツ、ドンケツ」

京介「おっと、ドンケツ、ドンケツ、ドンケツ」

あやせ「あ〜ん、ドンケツ、ドンケツ――って、なんでわたしの方を向いたままやるんですか!」
812 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福島県) :2012/09/20(木) 21:22:47.79 ID:LL5AEFFn0
ドンケツってなんぞ?
813 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/20(木) 21:24:03.91 ID:9LYv34nu0
>>812
尻相撲のことさ
814 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/20(木) 22:04:06.44 ID:0SjdYjEd0
>>812
ヒップドロップで相手をマグマの海に落とす遊び。
たまに氷点下の湖に落としたりする。
815 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/09/20(木) 23:38:29.72 ID:005Cn/UDO
>>808
5巻。黒猫・麻奈実、はじめての邂逅。

黒猫「・・・先輩こちらは?」

京介「おう、実はこいつを紹介しようと思ってな」

麻奈実「田村麻奈実です、よろしくね」

黒猫「!!・・・ベルフェゴール・・・」

麻奈実「べるふぇ・・・??」

黒猫「いいえなんでも・・・はじめまして五更瑠璃です」

麻奈実「はい、はじめまして。・・・黒猫さんって呼んだ方がいい?それとも五更さん?」

黒猫「お好きにどうぞ」

麻奈実「そっか。じゃあ糞ビッチって呼ぶね」

京介・黒猫「えーっ!?」

麻奈実「おいこの糞ビッチ。電波の分際で私のきょうちゃんに手だしてんじゃねーよ。山ん中埋めて樹木の肥やしにしてやろーかおい?」

京介・黒猫「えーーーっ!?」

やりました。できました。
816 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/20(木) 23:42:29.88 ID:005Cn/UDO
>>809
うーん・・・たしかこれ、前に誰か書いてなかった?あれ?あれは揉んでなかったかな?

>>808
加奈子はねー・・・もう、俺が好きすぎて逆に書けないっつーか(苦笑)
いやでも書いてみるかー・・・苺のドロリッチみたく甘甘でも構いませんね?そーですね、わかりましたww
817 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/21(金) 06:54:24.90 ID:omoE2Epz0
>>815
ありがとう
麻奈実は普段が常識的で大人しいから黒化するとギャップが面白いと思った次第

罵るところで普段なら「びっち??」とか言いそうなのを「糞ビッチ」と言い切る
のが芸が細かくて良いね
818 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/21(金) 10:50:36.70 ID:cWg4nusDO
>>817
・・・え?あ、いやごめん。
これ、えと、悪ふざけなんで;
あとでちゃんとしたの書く気だよ?
納得とか、マジやめて!?;;;
819 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/09/21(金) 12:18:34.88 ID:PwbIhmyB0
>>818
悪ふざけでも何でも面白いから良いよ

まぁちゃんとしたのも期待してた訳だけどとりあえず納得してみた
820 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/09/21(金) 12:32:59.80 ID:cmvILi6so
>>816
>うーん・・・たしかこれ、前に誰か書いてなかった?あれ?あれは揉んでなかったかな?
非常に、ひじょ〜に残念ながら、あの京介は理性が勝ってしまったのだよ
821 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/21(金) 17:43:08.47 ID:PwbIhmyB0
>>815
そういえば黒猫は随分前から麻奈実のダークサイドを看破していたんだよね
12巻でその辺りのからくりが解ると良いんだけど誰か予想して書いてくれないかな?
822 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/09/21(金) 22:31:50.75 ID:190M5MW3o
>>815
あやせが想像で黒猫を泣かす麻奈実というのやってたの思い出した。

あと黒猫が当初麻奈実に警戒していたのは人見知りなのに加えて、
桐乃による刷り込みが大きいと思われる。
823 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/24(月) 12:21:07.91 ID:nCxC/DTDO
>>808
黒麻奈実は意外に困難じゃね?
とくにP続義妹ルートやった奴にとっては。
正直、麻奈実好きの俺には読みたいもんじゃねぇ。
824 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/24(月) 12:37:51.76 ID:Rt5PVk9G0
>>823
俺も俺妹のキャラでは麻奈実が一番好きだけど原作ではありえない展開だからこそ
黒化した麻奈実のSSは読んでみたいな

俺はゲームをやっていないからP続義妹ルートをやれば考えも変わるのかな?
825 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/09/24(月) 16:20:40.61 ID:bkf6Rx1+o
>>824
ゲームは寧ろ白い
826 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/27(木) 23:57:19.26 ID:pI3QDLBDO
好きな作家の新作を買った。
主人公の名前が高坂健輔。

なんてゆーか、誰かのSSが投下されるまで楽しく読めるよ、うんww
827 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/28(金) 16:40:34.74 ID:xvR4z1Za0
>>826
ふさたんの副業?
828 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/01(月) 22:50:12.18 ID:VgCGMjkDO
一時の祭りが嘘のようだな…。書き手はどこにいっちまったんだろう…。
829 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2012/10/01(月) 23:54:54.69 ID:zbxN37iAO
1.読書の秋、ネタを仕込んでいる
2.食欲の秋、ネタを仕込んでいる
3.スポーツの秋、ネタを仕込んでいる

希望は明るい。
830 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/10/02(火) 12:31:31.36 ID:hS82M+YIO
そろそろあやせSSとか秋美ちゃんSSよんでほっこりしたいな!!!

神な書き手さん略して神手さんまってます!!!
831 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/10/02(火) 12:35:07.96 ID:hS82M+YIO
そろそろあやせSSとか秋美ちゃんSS読んでほっこりしたいな!!

神な書き手さん略して神手さん投下待ってます!!!
832 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/02(火) 16:33:01.81 ID:vgcgEGVDO
大事なことなんで二度書きましたってかw
833 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/02(火) 16:36:25.49 ID:iGnMI4kg0
オ・ワ・コ・ン とは思いたくない!
834 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/02(火) 19:24:26.72 ID:vgcgEGVDO
>>810

『或る結末の続きの続』

桐乃「そういやあんた、さっき加奈子に『二人目か?』って聞いてたけど・・・そゆことしてるってこと?」

京介「ぶっはっ!お、お前なあ!?な、なにも食事中に聞くことねーだろそんなこと!!」

桐乃「だ、だって・・・気になったんだもん・・・」

京介「いや、にしたってだなあ・・・なあ加奈子?」

加奈子「はひっ!?」

京介「お前だって困るよなあ?」

加奈子「ああああなたがこ、ここで私に話を振る方が困りますっ!」

京介「へ?・・・あっ!!す、すまん!」

加奈子「ま、まったく昔っから、そう言ったデリカシーというものが・・・(ぶつぶつ)」

佳乃「あはは全くいつまでも初々しいわねえあんた達」

加奈子「お、お義母様までからかわないでください!」

佳乃「ごめんごめん。でもねえ加奈子ちゃん?子供には絶対兄妹がいた方がいいわよ?」

加奈子「そ、そういうものですか?」

佳乃「うんー。うちの京介と桐乃だって、お互いがいたからこんなふうに育ってくれたんだもん。一人より二人。絶対そのほうがかなみちゃんだって喜ぶわよ。あなただってお姉さんいてよかったでしょ?」

加奈子「あ・・・はい。それは本当にそう思います」

佳乃「うん。だったらかなみちゃんの為にもがんばりなさい」

加奈子「・・・はい」

京介「お袋・・・さんきゅな」

佳乃「いいのよ。それにあたしだってがんばったし」

京介「・・・へ?」

佳乃「京介、桐乃。あんたら春にはお兄ちゃんとお姉ちゃんだから」

京介・桐乃「えーっ!?」

佳乃「かなみちゃんには年下のおばちゃんができるからね?」

かなみ「えーーっ!?」

桐乃「ってことは、待望のリアル妹ktkr!!!」

京介・加奈子・かなみ「喜んでんじゃねえ!!!」

あれ?京加奈どこいった?
835 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/10/02(火) 19:43:59.92 ID:kMT0HKBIo

やっぱ桐乃はブレねぇなぁw
836 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福島県) :2012/10/03(水) 01:30:13.79 ID:bnLywihs0
>>834
乙!! やっぱり大人加奈子はかわいいなぁ!
PSP続の後日談では正統派田村ゆかりボイスで癒された
837 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/03(水) 06:52:22.04 ID:9YmA/tyy0
>>834
乙!  いい流れだ
838 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/04(木) 16:47:05.21 ID:kSPdu+jDO
>>809

秋美「ねえ、こーさか?」

京介「なに?」

秋美「おっぱい触らせてあげるから、帰ってくんない?」

京介「そこまでするほど学校行きたくねえの!?」

秋美「うん」

京介「うーん・・・困ったなあ・・・」

秋美「どう?この提案?」

京介「いや、だってよ・・・(ふにっ)」

秋美「あんっ!い、いきなり揉むとかどういう了見!?」

京介「いや・・・麻奈実の半分もない胸取り引きに出されてもなあ・・・と」

秋美「えーっ!?君、田村ちゃんの胸揉んでんの!?!

京介「てゆーかお前、うちの妹にも敗けてるし」

秋美「えーーっ!?き、君、い、妹の胸も揉んでるの!?」

京介「最近大きくなってきてな」

秋美「聞いてないよっ!?」

ガラッ!

桐乃「お兄ちゃんに毎晩揉んでもらったおかげです!!」

京介・秋美「どっから入ってきたーーーーっ!?」

桐乃「窓ですっ!」

京介・秋美「律儀に答えなくていいよっ!?」

・・・俺にエロは無理だな・・・。
839 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/04(木) 20:04:30.37 ID:BVXxlgjf0
>>838
wwwwwwエロは無理でもパロは上手だなwwwwww
840 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/06(土) 11:08:18.15 ID:Bl0XFvwZo
夏の暑さもここに来てようやくやわらぎ、朝晩はめっきりと涼しくなったものです。
もうしばらくすれば、きっと街の木々も色付き始めることでしょう。
澄み切った秋空の下、はるか遠くでわたしの名を呼ぶ声が聞こえます。

「おーい。あやせー、聞こえっか――――!」

「お兄ぃ――――さ――――ん。なんか用ですか――――!」

「オワコンだってよ――――!」

「……!? わたしがいるのにオワコンなんて……そんな……」

「よっ! やっと追いついた。……ってなわけだから、恒例の『あやせ祭り』でもすっか」

「……恒例? 『あやせ祭り』がですか?」

「おう。デッドストック抱えたあやせ好きが、なんたってこの機を逃すわけがねえよ」

やけに自信満々なお兄さんの顔を見あげて、わたしは心の中でお兄さんに拍手を送っていました。
「あやせ祭り」、……なんて心地よい響きなんだろう。
そういうことなので、「あやせ祭り」を皆さんで盛り上げてくださいね。
ちなみに、わたしは観戦オンリーですけど。
841 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/10/06(土) 11:37:48.86 ID:efsLWcT+o
焚き付けるならせめて黒猫と二人で罵って欲しかったなー

しかし何故死蔵品が幾つもあるのがバレたんだろう(棒読み)
842 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(茨城県) [sage]:2012/10/07(日) 00:14:09.15 ID:SYtTXP4oo
ヒトデ祭……いやなんでもない
843 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/07(日) 23:42:44.90 ID:a4+W4viDO
しかし何でこんな急に廃れちまったんだ?
アニメ第二期・最終巻を目の前にして、盛り上がりこそすれ廃れるとかあり得ないだろ普通。

いったいなにがあったんだか…。
844 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/08(月) 00:00:46.05 ID:1GaGrpCPo
みんな書き溜めてんだよ言わせんな恥ずかしい
845 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/08(月) 21:40:33.32 ID:Nc1yg1cMo
デッドストックなら誰しも抱えてるんじゃないかね。途中まで書いたけど、なんとなくやめちまったみたいなのとか……
まあ、話は変わるけど、暇なんで小話を一つ投下


『京介と桐乃と給料日』

桜もすっかりと散ってしまった四月某日、俺は両手に荷物を抱えてアパートに帰った。
最愛の妻、桐乃は夕飯の支度中らしく、アパートの換気扇からは美味そうな香りが漂ってきていた。
俺は荷物を片手に持ち直し、そっとドアを開けた。

「――あっ、おかえり京介、もうすぐ晩ごはんできるから待っててね。
 今日はあたしが腕によりをかけて、いっぱい美味しいもの作ったからね。
 ……どうしたの京介? なんか浮かない顔してっけど」

「すまねえ桐乃! 俺を罵るなり蹴飛ばすなり好きにしてくれ!」

「どうしたのいきなり――って、土下座なんかしないでよ、ねぇ。
 ……会社でなんかあったの?」

ことごとく就活に失敗した俺は、大学を卒業する間近になって、ようやく書籍の某取次会社に就職できた。
そして何を隠そう今日が、俺が就職して初めての給料日だった。

「……何なのそれ?」

「給料の代わりだって言いやがって――社長の野郎! ぶっ殺してやりてえよ!」

「まさか……現物支給!?」

そのまさかだった。
俺は溢れ出る涙を拭うこともできず、桐乃の目の前で乱暴にその包みを解いた。
桐乃は恐ろしいものでも見るような目で、ただ呆然とそれを見つめていた。

「信じらんねーだろ。……これが給料の代わりなんて」

「なんていったらいいのか、あたしもわかんないけど、……でも、元気出してよ。
 あたしは、京介と結婚できただけで幸せなんだからさ。
 たとえ、法律上は夫婦として認めてもらえなくたって、それでも幸せだよ」

「桐乃、……桐乃。――俺は、世界一の幸せもんだよ!!」

俺は、大量に返品された『俺の妹がこんなに可愛いわけがない 11』に顔を埋めて泣いた。

(オワコン)
846 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/10/08(月) 21:58:19.62 ID:ipYul3nXo
>>805
おいww  素直に笑ったよ、乙。


ところで、800行とかだったら別スレの方がいいのかな?
847 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/10/08(月) 21:59:33.54 ID:ipYul3nXo
あ、アンカーミス。>>845でした。すみません。
848 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/08(月) 23:26:34.66 ID:fwneTxUu0
>>846
800行なら14レスくらいだろ?
ここに投下してよ
849 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2012/10/09(火) 01:55:32.58 ID:0N6t+3SAO
>途中まで書いたけどやめちまった

あるあるすぎて胸に刺さること甚だし。
完成させられなかったのだから、当然投下のしようがないわけで…

・関係性消失もの
・記憶喪失もの
・平行世界通話もの
・身体的欠損もの

ぐらいかなぁ、お蔵入りに成り果てたのは…
これ全部同一の共通した設定の京介で書こうとした無謀もいいとこ
850 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/09(火) 02:31:04.05 ID:IJCydK7ro
10巻読んだ直後にあやせのエロパロ書こうと思ったけど思ったように書けなくて、今もメモ帳に冒頭だけ書いたのが眠ってる

あとは黒猫と付き合ったのに別れたとか、最新刊で好きなやつがいるって言ってたからうまくネタが浮かばないってのもある
851 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/11(木) 23:11:15.17 ID:UgVSypyPo
デッドストックといえば、去年の4月頃に途中まで書いたSSがあるんだ
書いてる途中でラストの展開が思いつかなくなったというか、なんとなく投げ出したようなヤツ
とりあえず話しのキリのいいとこまで書いてあるんで暇つぶしにどうぞ

『梅雨の晴れ間』 京介×麻奈実×あやせ 27レス

ほんと、何を書きたかったんだか今になるとわからん
852 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/11(木) 23:11:43.54 ID:UgVSypyPo

関東地方が梅雨入りして、今日で早くも一月が経過しようとしていた。
今年も例年通りなら、夏休みに入る頃には、この鬱陶しい長雨からも開放されるはずだ。

朝の通学路を傘を差して俺と肩を並べ歩きながら、さっきからしきりと俺の顔を心配そうに覗き込む幼馴染。
名前を田村麻奈実という。料理と裁縫、これ以外は特に趣味らしき趣味もないらしい。
顔は十人並みで、並外れて美人というわけでもないが、俺は麻奈実の顔を見ているだけでなぜか心安らぐ。
学校の成績は上の下といったところだが、もちろん俺よりは数段上だった。

「きょうちゃん、受験勉強はちゃんと進んでいるのかな?」

「この顔を見ればわかんだろうが。……昼も夜もジメジメして、勉強どころじゃねえよ」

「あっそうか〜、きょうちゃんのお部屋、えあこんがなかったんだよね」

「仕方ねえだろ、親が買ってくんねえんだから」

この蒸し暑い梅雨を、なんとか自己暗示で耐え忍びながら少しでも忘れようとしてるってのに。
麻奈実は、俺を一瞬のうちに現実に引き戻してくれた。

「せんぷうきだけじゃあ、この時期けっこう辛いよね〜」

麻奈実とは幼馴染で、高校へ進学するときも、お互いになんとなく同じ高校を選んだ。
それに家が近いこともあって、小学校の集団登校を除けば、中学から登下校はいつも一緒だった。
麻奈実んちは、地元で古くから続く『田村屋』という和菓子屋だ。
俺もガキの頃からの縁で、田村家の皆さんとは、爺ちゃん婆ちゃんを含めて家族同然のお付き合い。
お袋たちは、俺たちが付き合ってると思ってるようだが、別に付き合ってるわけでもない。

「ところで、きょうちゃん、今日の放課後は何か予定があるかなぁ〜」
853 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/11(木) 23:12:10.05 ID:UgVSypyPo

一時限目の授業が体育だったことを思い出し、憂鬱な気分の俺に麻奈実はマイペースに話し掛ける。
俺が憂鬱な顔をしていようがいまいが、いつものことだから麻奈実はまったく意に介さない。

「おじいちゃんがね、きょうちゃんに、新しいお菓子をお披露目したいとか言って聞かないの」

「新しい菓子っていやあ、麻奈実がいつだったか俺に話していた例のアレか?」

「あっ、きょうちゃん、ちゃんと覚えていてくれたんだ!?」

「まあな、どうせ金曜日だし、帰りにちょっとだけ寄らしてもらうとすっか」

昨夜から降り続いていた雨は朝になっても止まず、通学路のあちこちに水溜りを作っていた。
この鬱陶しい梅雨空と降り続く雨を除けば、いつもと変わらぬ麻奈実との登校風景。
平凡であることが一番だと思っている俺には、こんな何気ない日常の風景が何よりも心地よかった。

 ☆

これまたいつもと変わらぬ退屈な授業を終え、俺たちは早々に学校を後にした。
雨は昼過ぎには上がり、雲の切れ間から覗く陽射しが、アスファルトの上の小さな水溜りに乱反射していた。
俺は傘に付いた雫を振り払い、横でほわんとした顔で歩いている幼馴染の顔を何となく見つめていた。

「なぁ麻奈実、俺たちがこの道を一緒に歩くのも、もしかすっと高校を卒業するまでだな」

「わたしがきょうちゃんと同じ大学に行けたとしても、学部が違うし、時間割とかも全然違うんだろうね」

「麻奈実が俺と同じ大学じゃなくて、俺が麻奈実と同じ大学に受かれば、だろ。
 あっという間に時間は過ぎちまうんだから、俺も頑張らねえとな」

「えへへ〜。きょうちゃん、お店に電話するからちょっとだけ待っててね」
854 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/11(木) 23:12:36.18 ID:UgVSypyPo

麻奈実と同じ大学へ行きたいと思い始めたのは、高校へ入学したときだった。
幼馴染の腐れ縁と言ってしまえばそれまでなんだろうが、
麻奈実とはこの先も一緒にいたい、またそうするのが当然のことなのかもと漠然と思っていた。

「……黒猫さんも、お誘いした方が良かったかな?」

「なんだよいきなり!? ……黒猫は確か、今日は部活に顔を出すとかって言ってたよ」

「黒猫さんのことになるとよく知ってるんだね〜、きょうちゃんは」

出会った当初、ゴスロリファッションに身を包み、厨二病丸出し邪気眼電波女だった黒猫。
桐乃の親友の一人であるが、俺と同じ高校へ入学する頃には、可憐な美少女へと変身を遂げていた。
俺が、単に制服フェチに目覚めただけかもしんねえけど。

黒猫はその性格から人付き合いがもともと苦手なヤツだが、高校へ入学してからも俺の予想は的中した。
今でこそゲー研の仲間やクラスメイトにも馴染みつつあるが、入学当初は惨憺たるものだった。
校舎の裏庭で一人弁当を広げる有様、……しかし、俺のお節介で世話好きな性分を呼び覚ますには十分だった。
何の役にも立てないと分かっていても、そんな黒猫を俺は一人にはできなかった。

『好きよ……あなたの妹が、あなたのことを好きなくらいには』

黒猫があのとき俺に告げた一言が、今も残響となって耳から離れない。

「きょうちゃん? どうかしたのかな? なんだか、ぼ〜うっとしてたよぉ」

「……えっ、ああ、……ちょっと考え事してただけだから」

「ふ〜ん、きょうちゃんも考え事なんかするんだねぇ〜」

「ぶっ飛ばすぞ」
855 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/11(木) 23:13:02.29 ID:UgVSypyPo

気が付けば、田村屋の前だった。
黒猫が告げた言葉の真意なんて、今の俺には分からねえ。
単なる気まぐれかもしれんし、それを黒猫に確かめる程の勇気も俺にはない。
俺はかぶりを振って、くだらない妄想を打ち払った。

田村屋の店の裏側に回ると、そこには母屋へと繋がる門がある。
格子戸を潜り抜けると、良く手入れの行き届いた庭には、きれいな玉砂利が敷き詰められている。
特に広い庭というわけでもないが、苔むした岩が適度に配置され、玄関先までは飛び石が敷かれていた。
和菓子屋に相応しい純日本庭園だ。

「麻奈実んちの庭って、いつ見てもいいよな。俺の理想っていうか、これぞ日本人っていうか」

「う〜ん、そうかなぁ〜。でも、今日みたいな雨上がり、わたしは好きだよ」

飛び石を伝い玄関に着くと、軒下の傘立てに傘が一本差してあった。

「お客さんが来てんじゃねえのか?」

「えっと、確かお母さんのお友達が来るとかって言ってたかなぁ」

「まずかったんじゃねえの? 俺は、別に今日じゃなくってもいいんだぜ」

玄関の引き戸を麻奈実が開けると、お香の香りが家の中から仄かに漂ってくる。
店に置かれた香炉で焚いているわけだが、長年のことで家中に香りが染み込んでいた。

「ううん、だいじょうぶだよぉ〜」

「まぁ、麻奈実がいいっていうんなら、俺は構わねえけどさぁ」
856 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/11(木) 23:13:28.38 ID:UgVSypyPo

俺は大きく深呼吸をして、その香りを胸いっぱいに吸い込んだ。

「もう、きょうちゃんたら、おじいちゃんみたいだよぉ〜」

「別にいいじゃねえか。俺はこの香りを嗅ぐと、何でかしらんけど落ち着くんだよ」

高校三年生の男女が、玄関先で交わすような会話じゃないことは十分承知さ。
爺さんと婆さんが、仏具屋で話してんのと変わんねえ。

「ほら、きょうちゃん、いつまでも深呼吸なんかしてないで……」

「すまん、つい我を忘れちまった」

勝手知ったる他人の家とはいえ、俺は一旦靴を脱ぐと、玄関の式台に膝を突いて靴の向きを揃えた。
麻奈実の友達は靴の脱ぎ方も知らねえなんて思われたくはないし、後で麻奈実が注意されても可哀想だから。

「なぁ麻奈実、……お客さんの靴が見あたらねえけど?」

玄関には、いま俺が脱いだ靴と麻奈実の靴しかなかった。
外の傘立てにお客さんの傘があるんだから、当然のこと、玄関には靴があるはずだ。
不思議に思って良く見りゃ、玄関のたたきには濡れた跡がある。

「あ、たぶん、靴が濡れちゃったから、お店か作業場の方で乾かしてるんだと思うよ。
 そんなことよりもきょうちゃん、早くあがってあがって」

「まぁ、確かにそんなことといやあ、そんなことだけど……」
857 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/11(木) 23:13:55.64 ID:UgVSypyPo

麻奈実に急き立てられるようにして廊下を歩き、俺はいつものお茶の間に通された。
仏壇のある隣りの部屋と、俺のいるお茶の間とは襖で仕切られている。
普段ならその襖は開け放たれたままだが、今日はしっかりと閉められていた。
おばさんの友達というのは、多分隣りの部屋にいるんだろう。
俺が麻奈実に眼で合図を送ると、麻奈実は無言のまま笑って頷いた。

「じゃあきょうちゃん、いま持って来るけど……その前に着替えてもいいかなぁ〜」

「おう、俺はここでゆっくり待ってっから、先に着替えてきてくれ」

麻奈実がお茶の間を出てから、俺は座卓の前に敷かれた座布団に腰を下ろした。
久しぶりに触れる畳の感触、何とも言えない懐かしさを感じる。
俺んちで和室といえば、唯一親父たちの部屋だが、ベッドを置く関係で床全体が絨毯に覆われている。
言うなれば、俺んちに和室と呼べるような和室は既にない。

俺は、この和室の雰囲気が昔から好きだった。
特に麻奈実の家は天井が高く、壁は昔ながらの土壁仕様だし、その上縁側まである。
理想を絵に描いた、俺好みの和室だ。
畳の部屋なら座布団一枚あれば、そのまま横になって寝ることも出来るのもいい。

俺は座布団を枕代わりに二つ折りにして横になると、縁側の先に見える庭を何となく眺めていた。
この家の庭には、花好きの年寄りが二人揃っているせいか、何らかの花が一年中咲いている。
今は秋になると無数の赤い実をつける南天の木が、白い小さな花を咲かせていた。
地面に目を移せば、真っ白なユリの花や、赤紫色の紫陽花も咲いている。
858 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/11(木) 23:14:21.78 ID:UgVSypyPo

麻奈実が部屋を出てからさほどの時間も経っちゃいねえだろうが、俺は眠気に誘われて目を瞑った。
それにしても、おばさんの友だちってのは、随分と物静かな人なんだと思ったよ。
隣の部屋からは確かに人の気配はしても、会話らしい会話が聞こえてこない。

「ったく麻奈実のヤツ、いつまで着替えてんだよ……」

部屋中に漂う仄かな香の香りを嗅ぎながら、俺はいつの間にか眠りに落ちていた。

 ☆

静かに廊下側の襖が開く気配で、俺は浅い眠りから目が覚めた。
そこにはお盆に急須と湯飲み茶碗を載せ、ポットを片手に持った麻奈実が立っていた。

「あれ、きょうちゃん、寝てたんじゃなかったの?」

「……いや、ちょっとうたた寝してただけだから気にしないでくれ」

「きょうちゃんが気持ち良さそうに寝てたから、起こさな方がいいのかなぁ〜って。
 いま、お茶いれるね。そのあと、お待ちかねのお菓子をお持ちします」

「すまねえな。……お茶の方は俺がいれとくから、麻奈実は菓子の方を頼むわ」

「うん。じゃあきょうちゃんにお願いしちゃおうかな〜」

麻奈実が持ってきた急須も湯飲み茶碗もどちらも触ると温かかった。
俺に対してさえこれなんだから、麻奈実にとってはごく普通のことなんだろうけどな。
クラスの女子の中で、麻奈実と同じくらい気配りが出来るヤツがいるだろうか。
俺は、クラスメイトの顔を一人ひとり思い浮かべながら思わず苦笑した。
麻奈実の本当の良さを知っているヤツなんて、俺だけかもしれん、と。
859 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/11(木) 23:14:47.84 ID:UgVSypyPo

「きょうちゃん? 何を笑っているのかな? お待たせしました、これが新作です」

「いや何でもねえよ。麻奈実なら将来はいい嫁さんになるだろうなって、な」

「もう、きょうちゃんたら〜、あんまりわたしのことからかうと、ほんとうにおこるよ。
 それより、どうかなぁ〜。……けっこういいかなって、思うんだけど」

新作の和菓子は、浅手のガラス製の皿にちょこんと二つ載せられていた。
麻奈実が言うところによれば基本は水羊羹らしいが、小さな手毬のような球状で、
表面は極々小さなサイの目状にカットされた葛で覆われていた。
更に水羊羹を覆う葛は、鮮やかな赤紫色に染められている。

「いやぁ、なんだかこの時季に涼しげでいいんじゃねえの。
 今の季節にぴったりじゃん――これって、麻奈実のアイデアなんじゃねえのか?」

「きょうちゃん、覚えていてくれたのかな?」

「紫陽花、だろ? 今だって、あんなに庭に咲いてるじゃねえか。よくあんなに増えたもんだよなぁ」

それは、ずっと昔のこと、俺と麻奈実がまだ保育園に通っていた頃の話だ。
俺たちは保育園に通っていた当時も、今と同じように行き帰りはいつも一緒だった。
梅雨のある日の朝、俺と麻奈実は傘を差して保育園に向かって歩いていた。
ある家の前を通り掛ったとき、俺はちょっとした悪戯を思い付いた。

「なぁ麻奈実、いいもんやるから手ぇ出してみぃ」

「手を出せって……きょうちゃん、わたしに何かくれるの〜? ……じゃ、じゃあ〜」
860 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/11(木) 23:15:14.75 ID:UgVSypyPo

麻奈実が不思議そうな顔をしたまま、俺に向かって手を差し出した。

「ほら、麻奈実にこれやるよ」

俺は庭先に咲いていた紫陽花の、葉の上にいたカタツムリを麻奈実の手のひらに乗せた。
いつも、にへら〜としたゆるい顔の麻奈実の表情が、見る間に蒼ざめていった。
麻奈実はカタツムリを見詰めたまま身体が固まっちまって、全く身動きが取れねえ。

ガキの頃にありがちな、本当に他愛もないいたずら。
しかし、麻奈実が見せた反応は、当時の俺の予想を遥かに超えたものだった。
怒るわけでもなく、大泣きしたわけでもない。
麻奈実はその場に立ち尽くし、蒼ざめていた顔が真っ赤になり、目から涙を溢れさせた。

「麻奈実、……ごめん、俺そんなつもりじゃ……」

「……」

麻奈実は、足元にできた小さな水溜りを呆然と見詰め、
羞恥心に打ちのめされた表情で俺の顔をチラリと見ると、無言で踵を返し歩き始めた。
……麻奈実はその日、保育園を欠席した。

子供心にも罪悪感を感じた俺は、その日の保育園の帰り道、例の家に立ち寄った。
その家の人にお願いして、紫陽花を一株だけ分けてもらったんだ。
昼過ぎから再び降り始めた小雨の中、麻奈実んちに着いた俺は、爺ちゃんに麻奈実を呼んでもらった。
しかし、麻奈実は決して俺に会おうとはしなかった。
861 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/11(木) 23:15:40.87 ID:UgVSypyPo

朝の出来事を爺ちゃんに話すと、「きょうちゃん、あとはこの爺ちゃんに任せろ」と優しく言って、
馬鹿な俺の頭を撫でてくれた。爺ちゃんに頭を撫でられ、それまで我慢していた俺の目から涙が溢れた。
俺は、泣きじゃくりながら紫陽花を爺ちゃんに手渡した。

翌日の朝、麻奈実はいつもの待ち合わせ場所で俺を待っていた。
俺が昨日のことを謝ると、麻奈実は、にへら〜と、いつものよう笑って全部許してくれた。
そんな出来事があってから数年が経った梅雨のある日のこと、
麻奈実んちで遊んでいた俺は、庭先に数株の紫陽花が咲いていることに気が付いた。

「なぁ、麻奈実のところに紫陽花なんてあったっけ?」

「おじいちゃんがね……植えてくれたの。
 今はあれだけしかないけどぉ〜、もっともっと増えるんだってぇ〜」

俺と麻奈実は、同じ学校へ通う高校三年生になった。
あの日のたった一株の紫陽花が、今では麻奈実んち庭で、その存在感を示すように咲き誇っている。
紫陽花を見るたびに想い出す、懐かしくもほろ苦い俺の大切な想い出だった。

透明感のある鮮やかな赤紫色、まるで庭に咲く紫陽花をそのまま摘んできたようだ。
俺と麻奈実の幼い日の想い出が、長い年月を経て、菓子の形に姿を変えて目の前に現れたようだった。
何だか、このまま食っちまうのがもったいねえ。

「きょうちゃん? どうかしたの? ずぅ〜っと、お菓子を見つめちゃったりして」

「いや、なんだか食うのがもったいなくてな。爺ちゃん、この菓子にどんな名前を付けたんだ?」

俺が笑いながら麻奈実を見ると、麻奈実は俺の背後にある襖を見ていたようで、顔からは笑顔が消えていた。

「……えっ!? きょうちゃん、いま何か言った?」
862 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/11(木) 23:16:17.56 ID:UgVSypyPo

「どうしたんだ麻奈実、なんだか焦点が定まってなかったけど、どっか具合でも悪いんじゃねえのか?」

「ううん、そんなことないよ〜、……で、何だっけ?」

「ああ、この菓子の名前、何ていうのかなって……」

麻奈実は皿の上の菓子に眼をやると、口元に含み笑いを浮かべた。

「なんだったら、きょうちゃんが名前を付けてもいいよ」

「何をわけの分かんねえ冗談言ってんだよ、ったく。 俺が商売モンの菓子の名前なんか付けたって――」

「ぴったりだと思うけどなぁ〜、紫陽花ときょうちゃんって」

紫檀で作られた重厚な座卓を挟んで、俺と麻奈実との間に重苦しい沈黙の時が過ぎていく。
ふと庭先に目をやると、先程まで止んでいた筈の雨が音もなく降っていた。
相変わらず麻奈実は無表情なまま、俺の目の前に置かれた和菓子に眼を留めていた。
こんな表情をする麻奈実を、今だかつて俺は見たことがない。
俺の中で何かが壊れていくような気がした。ゆっくりと、音もなく。

「……麻奈実!? 俺と紫陽花の、どこがぴったりだって言うんだよ」

この重苦しい雰囲気に押し潰されそうになって、俺は思わず口を開いた。
口元に薄い笑いを浮かべて、麻奈実は俺に視線を戻した。

「なぁ麻奈実、どこが――」

そのとき、コトリと小さな物音が隣の部屋から聞こえてきて、俺は慌てて口を噤んだ。
今、この俺の目の前にいる麻奈実は、俺のよく知るほわんとした顔のいつもの麻奈実じゃない。
どことなく他人行儀で、どこか冷酷ささえ感じさせる雰囲気を身に纏った、別人。
863 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/11(木) 23:16:45.02 ID:UgVSypyPo

「ねぇ、きょうちゃん。……黒猫さんは、最近どうしてるの?
 今でも一緒に、きょうちゃんのお家でげーむとか作っているのかな?」

「麻奈実、おまえは、何かとんでもねえ勘違いをしてんじゃねえのか」

「あはは、きょうちゃんこそ何か勘違いしてるんじゃないのかなぁ〜。
 黒猫さんは最近どうしているのかなぁ〜って思っただけで、別に他意は無かったんだけどな〜」

麻奈実は俺の淹れたお茶を一口啜ると、「だって、わたしには関係のないもん」と呟いて、口元だけで笑った。
他意はないなんてあからさまに言われると、俺のような小心者は余計につまらねえことを考えちまう。
このまま笑って誤魔化すか、それとも、この際はっきりと言って置くべきか……。
俺は、麻奈実の視線を避けるように天井を見上げた。

人一倍プライドが高くて、それでいてどこか不器用な黒猫に心惹かれたことは事実だ。
桐乃がアメリカに留学しちまって、その寂しさを紛らわすために世話を焼き始めたってことも否定しない。
だからって、それがすぐに恋愛に発展するかといえば、それは麻奈実の妄想というか思い過ごしだ。
いつだったか黒猫が俺に言った台詞だって、俺をからかってやろうとしたいつもの気まぐれに違いない。

「麻奈実、俺の話を聞いてくれるか? 俺と黒猫はただの――」

「もしかしたらきょうちゃんは、わたしがやきもちを焼いてるんじゃないかって、そう思ってるのかなぁ〜。
 だったら、ほんと〜うにきょうちゃんの思い過ごしだよ。あははは」

人を見下した物言いってのは、桐乃と黒猫の専売特許かと思っていた。
多分これは夢なんだ、俺が昔から知っている麻奈実はこんなヤツじゃねえもん。
いつもほわんとしていて思いやりがあって、自分のことよりも、人のことばかり気に掛ける優しいヤツだったじゃん。
俺は麻奈実をガキの頃から知ってんだぜ。だからこれは夢なんだ、たちの悪い夢なんだよ。
864 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/11(木) 23:17:12.01 ID:UgVSypyPo

「きょうちゃん。おばあちゃんがね、いつかわたしに言ったことなんだけどね。
 ……自分が好きだと思う人よりも自分だけを見ていてくれる人を好きになった方が、
 女は幸せになれるんだよ、だって」

俺は口元まで運びかけていた菓子を、思わず取り落としそうになった。
お茶を飲んでいる最中じゃなかったことが、これほどまでにありがたかったことはない。
雨はいつの間にか雷を伴って、音を立てて激しく降っていた。

今朝の天気予報じゃ、午後からは晴れるって言ってたじゃねえか。
晴れるどころか土砂降りだよ。ほんと、天気予報なんてもんは当てになんねえよ。
それにしても、麻奈実のヤツは一体どういうつもりなんだろう。
俺は平静を装い菓子を一口食ってからお茶を啜ると、麻奈実とは目を合わせず訊ねた。

「婆ちゃんが言ってたっていう台詞の意味は、俺にはいまいち分かんねーよ。
 もしかして、麻奈実……誰か好きなヤツでも出来たのか?」

「わたしの好きな人は、昔からきょうちゃんだけだよ。
 ……だけど、それが幼馴染として好きなのか、それとも別の意味で好きなのか、
 今のわたしにはよく分からないんだよねぇ。……でも、この前ある人からね……」

俺が目を逸らせても、麻奈実が俺をジッと見詰めていることくらい分かるってもんさ。
座卓を挟んで座っているだけだからな。
それで俺にどうしろってんだよ。祝福でもしろって言うのかよ。

麻奈実は明るい性格で人当たりも良いが、それほど交友関係の広いヤツでもねえ。
となると、麻奈実に告白しそうな物好きなヤツで、めぼしい野郎といえば……。
自分の親友を悪く言いたくはないが、アイツなら麻奈実に言い寄っても不思議じゃねえ。
いつだったかも、俺に麻奈実のことをそれとなく訊いてきたもんな。

「赤城か?」
865 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/11(木) 23:17:38.20 ID:UgVSypyPo

「はっきりと言われたわけじゃないよ〜。赤城君は妹さんが大好きなんだって。
 それでね、……わたしは、その大好きな妹さんに何となく似ているって言われたんだよ」

麻奈実が男から告白されたんじゃねえかと思ったとき、俺は正直言ってかなり動揺した。
どんな野郎が麻奈実に告白なんかしやがったんだ、ふざけんじゃねえよって。
しかし、麻奈実の口から直に赤城の名を聞くと、不思議と落ち着きを取り戻していた。
もしかしたら、こんな日がいつか来るんじゃねえかとも思っていたんだ。

麻奈実の表情をそっと窺うと、彼女はあやしげな視線を俺に向けていた。
俺がどんな反応を示すか、どんな台詞を吐くのか期待している目だ。
麻奈実が俺に期待している台詞なんて、神様でもあるまいし分かるわけがねえ。

「麻奈実……その、あ、赤城のこと……どう思ってんだよ」

動揺を隠し切れない俺の声が麻奈実の耳に届くと、口元に微かに笑みがこぼれた。
俺をからかってんじゃねえだろうな、地味子のくせに。

「さっきも言ったけど、わたしが好きなのはきょうちゃんだけだよ。
 いつも一緒にいて……いつもわたしはきょうちゃんのことだけを見てた。
 きょうちゃんに追い付きたくて、きょうちゃんの後だけを追っかけてたんだよ。
 ……でもね……でも…………もう疲れちゃった」

俺が色恋に疎いって言っちまえばそれまでだけど、まさか麻奈実のヤツ……
いや、それはねえだろ。そもそも俺と麻奈実は、ガキの頃からの幼馴染じゃねえか。
黒猫と少しばかり仲が良いんで、やきもちを焼いてるだけかもしれねえけど。

「いつだったかきょうちゃん、わたしに言ったよね。
 見た目はあやせちゃんが好みだって。……でも、一番仲がいいのはわたしだって。
 わたしと一緒にいると楽だとも言ってくれたよね」
866 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/11(木) 23:18:05.80 ID:UgVSypyPo

麻奈実は俺から眼を逸らし、俺の後ろにある襖を見てやがる。
襖が何だってそんなに気になるんだ? お客さんに聞かせたいわけでもあるまい。

「きょうちゃん……わたしって、きょうちゃんにとって楽なだけ?」

いつの間に、こんなおかしな展開になったんだ?
俺が今日麻奈実んちに来たのは、元はと言えば爺ちゃんの新作の菓子をご馳走になるため。

「ごめんね、きょうちゃん。……わたし、お母さんに言われてお店を手伝わなくちゃいけないんだ。
 お皿とかお茶碗とか、あとで片付けるからそのままにして置いてね」

呆気に取られている俺を残して、麻奈実は静かにお茶の間を出て行った。
俺は仕方なく皿に残された菓子を口に放り込み、湯飲みの茶を一気に飲み干すと腰を上げた。

俺が店の裏にある作業場に顔を出すと、爺ちゃんは既に明日のために仕込を始めていた。
洗い終わった小豆を大鍋に入れ水に浸したり、上新粉を何度もふるいに掛けたりと、
ガキの頃からの見慣れた風景だった。

「よっ、爺ちゃん、……ご馳走になったよ。良くできてるじゃねーか」

「ほほう、きょうちゃんにそう言ってもらえれば、間違いはないじゃろう。
 きょうちゃんは、昔から和菓子にはうるさいからのう」

「ケッ、なに言ってんだか。俺が爺ちゃんの和菓子に、文句つけたことなんかねーだろが」
867 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/11(木) 23:18:32.08 ID:UgVSypyPo

麻奈実の爺ちゃんは、ことあるごとに俺と麻奈実をくっ付けたがる。
どーしようもない性格の爺さんだが、こと和菓子作りに関しては根っからの職人だった。

「ところできょうちゃん、日曜日の件は大丈夫なのかのう?」

「……? 日曜日って?」

「……麻奈実から、なんも聞いておらんのか?」

なーんも聞いてねえよ。てか、今日の麻奈実は普段の麻奈実じゃねえだろっての。

「なんじゃ麻奈実のヤツ、自分で説明するとか言っておったのにのう。
 実はな、今度の日曜日なんじゃが、駅前のデパートの催事場で地元の物産展が開かれるんじゃ」

「……物産展。――で、それが俺と何か関係でも?」

「その物産展に、地元が誇る我が田村屋も出展できることになったんじゃよ。
 という次第で……出来ればきょうちゃんにも手伝ってもらえたらと思ったんじゃが……」

爺ちゃんの話は良く分かった。しかし、なぜかそのとき俺は即答を避けた。

麻奈実んちを出ていつもの丁字路へ差し掛かると、真っ赤な傘を差した、制服姿の少女がひとり佇んでいた。
傘の陰で顔は見えなくとも、桐乃と同じ中学校の制服だということは一目で判る。
近付くにつれ、俺の身体に戦慄ともいえる衝撃が走る。――麻奈実んちの玄関先にあった傘。
ゆっくりとした動きで、女子中学生が振り返った。

「今、お帰りですか? ……お兄さん?」

「チッ、あやせだったのかよ、おばさんのお客ってのは……」
868 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/11(木) 23:18:58.88 ID:UgVSypyPo

皮肉を言ったつもりだが、あやせは微笑むだけで、俺の言葉などまったく意に介さない。
傘の柄を指先でもてあそびながら、少女と呼ぶには似つかわしくないほど魅惑的な瞳を俺に向ける。
あやせがこういう眼差しをしたとき、俺にとっては大抵ロクなことがない。
と、そう思ったとき、俺の目は、あやせが学生鞄と一緒に持っていたある物に留まった。

「……それ、紫陽花じゃねえか。……麻奈実んとこにあったやつだろ?」

「ええ、お姉さんに分けてもらったんです。
 赤紫色の紫陽花なんて、珍しい気がして、……紫陽花というと、青い色が殆どじゃないですか」

俺と紫陽花談義がしたくて、あやせがここに佇んでいたわけじゃねえことは確かだ。
あきらかに、俺に話があって待ち伏せしていたとしか思えない。

「お姉さんの家でこの花を見ていたら、わたしも植えてみようかと思ったんです。
 ……わたしが育てたら、どんな色の紫陽花が咲くんだろうって」

「赤紫色の紫陽花は赤紫だろうし、元が青けりゃ青い花が咲くんだろ?」

あやせが何を考えているのか分からねえうちは、適当に話を合わせておくのが無難だ。

「お兄さんは……気付いてないんですね」

冷めた瞳で俺の顔を見ながらそう呟いて、大きなため息をひとつ吐いた。
あやせは俺の顔を残念そうに見つめたあと、踵を返して黙って歩き始めた。

「お、おいっ。……なんで黙って帰ろうとしてんだよ」
869 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/11(木) 23:19:25.24 ID:UgVSypyPo

仕方がないという表情を顔に浮かべ、あやせは振り返るとまた元の位置に戻って来た。
そのまま学生鞄で張り倒されるような気がして、俺は一瞬身構えた。

「……お兄さんも召し上がったんですよね? 新作のお菓子。
 お姉さんが、お兄さんに似ているといった意味、やはり気付いてなかったんですね」

俺のことを哀れみの目で見るのはやめてくれ!

「紫陽花は、……紫陽花という花は、植えた場所によって花の色が変わるって知ってました?
 そういうところから、紫陽花の花言葉は『移り気』なんです。
 気の多い人、浮気者という意味です。お兄さんにはぴったりじゃないですか」

最近になって、麻奈実が俺を見る目付きや振る舞いが以前に比べて妙にぎこちなく感じるのも、
あやせの言う通りなら、もし、それが本当のことだとすれば……。

「お兄さんに気付いてもらいたかったんだと思いますよ、お姉さんは。
 ずっと昔からお兄さんが好きだったと、他の誰よりもお兄さんのことが好きなんだと……」

あやせは、俺の顔から視線を逸らすと、手に持った紫陽花を寂しげに見つめた。
二人の仲が良いことは知っていたし、俺の知らないところで何をしていようが俺には関係ねえ。
しかし、それでもどうしても確かめておきたかったのは、あやせが隣の部屋にいたことを麻奈実が黙っていたことだ。
どう考えても、今回の情況は釈然としない何かがあると思った。
あやせが素直に答えてくれる保障なんてねえが、今はあやせに訊くしかない。

「俺がそういったことに疎いっていうのは認めるよ。
 ……ところでさぁ、何であやせが隣の部屋にいたのか教えてくんねえか?」
870 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/11(木) 23:19:52.30 ID:UgVSypyPo

あやせは紫陽花を見つめたまま逡巡していたが、やがて口元に笑みを浮かべ……

「わたしもお兄さんと同じように、お菓子をご馳走になりに行っただけですよ。
 ……なーんて言い訳、今度ばかりは通用しそうにもないですよね?」

「いくら俺が鈍いヤツだっていっても、そういつもいつも騙されねえよ」

「正直にお話しします。……わたし、お姉さんから相談をされていたことがあるんです」

「麻奈実が相談……? あやせに?」

「……お姉さんが髪型を変えたこと、お兄さんも知っていますよね?」

麻奈実の髪型なんていつも同じ――じゃねえな、言われて思い出したよ。
いつだったか、麻奈実が妙に髪の毛をいじくりまわして気にしていた日があったじゃねえか。
あのとき、俺も確か麻奈実に何か言ってやったような記憶があるんだが……。

「お兄さん? お姉さんに、寝癖っぽくなってるっておっしゃったそうですね?
 わたしがもしお兄さんに同じことを言われていたら、今頃お兄さんは……」

多分その場でブチ殺されて、今頃はどこかの山の中に埋められている筈さ。
いや、あやせなら埋める穴も俺に掘らせるようなヤツだ。……ブチ殺されるのは、その後ってわけか。
それは分かるんだが、なぜ麻奈実があやせに髪型のことで相談したのかが分からねえ。

「初めてお会いしたときから、なんとなく感じてはいたんです。
 お兄さんって、女の子に対して結構鈍いとことがあるんじゃないのかなって」
871 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/11(木) 23:20:19.15 ID:UgVSypyPo

「……それについては、否定はしねえけど……」

「それに、以前お姉さんとお話ししていたときのことなんですが、
 お兄さんは、昔は平凡でごく当たり前、退屈でも普通の日常が好きだったと、そう言ってました」

麻奈実はいったい、あやせに何を吹き込んだんだよ?

「でも、わたし思うんです。……平凡って、何も変わらないこととは違うんじゃないかって」

「何が言いたいのか分かんねえけど、俺は――」

「最後まで話をさせてください、大切なことなんです。お姉さんにとって、それに……」

俺は以前にも、今と同じ目をしたあやせを見たことがある。
偶然にも親友である桐乃のオタク趣味を知ってしまった、あの夏の出来事。
親友の隠された趣味を受け容れられないという想いと、その親友を失いたくないという想い。
どこか寂しげで、それでいて瞳の奥に何か熱いものを秘めていた、あのときと同じ……。

「お兄さんと同じ高校に、お知り合いの方が入学して来ましたよね?
 確か、黒猫さんとかいう方が。……とても、仲が良いそうじゃないですか」

今日、黒猫の名を聞かされるのは、これで二度目だった。

「……ここまでわたしが言っても、まだ気が付きませんか?」

「俺と麻奈実はガキの頃からの幼馴染だ。
 あやせが言いたいことは何となく想像はつくけど、それはあやせの考えすぎじゃ――」

「お兄さんと同じように、お姉さんも平凡な日常が好きなんだと思います」
872 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/11(木) 23:22:40.95 ID:UgVSypyPo

俺の言うことなんか聞いちゃいねえ。思い込みの世界に入り込んだあやせは天下無敵だ。

「ずっと続くと思っていた日常が、……ずっと信じていたものが、ある日を境に音を立てて壊れ始めた。
 そう感じているんじゃないでしょうか。
 だとしたら、麻奈実さん自身が変わるしかなかった、そうは思いませんか?」

多少天然っぽいところのある麻奈実と、思い込みの強いあやせが、なぜこれほど仲が良いのかさっぱり分からん。
お婆ちゃんと孫娘みたいな関係でもあるまい。

「わたしがなぜ隣の部屋にいたのか、まだお答えしていませんでしたね。
 昨日の夜、お姉さんからお電話を頂いて、学校が終わったら家に来ないかとお誘いを受けていたんです。
 詳しいことは学校の帰りにでも携帯で連絡するからと」

「隣りの部屋にいたくせに、俺が来たってわかったのになんで何も言ってくれなかったんだよ」

「わたしもお姉さんから教えてもらっていなかったんです。
 お兄さんの声が聞こえて、何かあるなって、わたしすぐに気が付きましたけど。
 さっき、紫陽花は植えた場所によって色を変えるとわたしが言ったこと、覚えていますか?
 ……申し訳ありませんが、少しの間だけわたしの傘を持っていてください」

俺が傘を代わりに差してやると、あやせは学生鞄を開け、中から一通の封筒を取り出した。
封筒の表には、二等賞というスタンプが押されている。

「商店街の福引で当たったものなんですが、一枚はお兄さんに差し上げます」

あやせがその封筒から取り出したものは、映画のペアチケットだった。

「このチケットの下の方に書いてあることを良く見て欲しいんですけど、
 期限が来週の月曜日までなんです」
873 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/11(木) 23:23:20.03 ID:UgVSypyPo

チケットを手に持ったまま、あやせは、自分の傘を無視して俺の傘に入ってくる。
あやせは同じ歳の女子中学生と比べても背が高い。今、俺の目の前にはあやせの顔がある。
ふわぁ〜と、あやせから良い香りが漂ってくるのがはっきりと分かる。

「――と言うことは、わたしがこれを観に行けるのは……
 今度の土曜日は撮影があって都合が悪いので、日曜日だけなんですよ。
 それに学校の校則で、生徒が一人で映画館なんかに行ってはいけないんです」

学校としての立場上、生徒がそういったところに出入りするのを問題にするのは当然のことかもしれん。
だが、今の俺にとって問題なのは、毒ガスよろしく石鹸の芳香を撒き散らせているあやせだ。
少し首をかしげながら潤んだ瞳で俺を見る、あやせ本人だ。

「高校生のお姉さんかお兄さんが、保護者として付いて来てくれればいいんですけど……」

換気扇じゃあるまいし、ずっと息を吸い込み続けるわけにもいかねえ。
そうかと言って、鯨みたく吸い込んだ息を何十分も止めてられるもんでもねえ。

「……お兄さん、なんだかさっきから鼻息が荒くないですか?」

「い、いや、気にしないでくれ。……鼻の具合がちょっとな、花粉症?」

まるで拷問。
憧れのあやせが目の前にいる状況で、俺の両手は自分の傘とあやせに持たされた傘で塞がっている。
それを知ってか知らずか、あやせは更に俺に一歩詰め寄って来た。

「もし、校則を破ってわたしが一人で映画を観に行って、
 たまたま男の人にナンパされても、それはわたしの自業自得ということなんですよね?
 この映画ずっと前から観たかったんですよね〜。でもでも、変な男の人にナンパされたら怖いしな〜。
 あっ、お兄さん、わたしの独り言ですから別に気にしないでくださいね」
874 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/11(木) 23:24:25.03 ID:UgVSypyPo

あやせがそこいらのナンパ野郎にホイホイついて行くなんて、絶対に有り得ねえ。
とはいっても、俺の脳ミソは勝手によからぬ妄想をし始める――というより、暴走!?
そんな俺を見透かしたように、あやせは天使のような笑顔で俺に言った。

「遅くなるといけないので、わたしもそろそろ帰りますね」

「あ、ああ……気をつけてな。――あっ、あやせ、日曜日のことはまだ……」

ふっとその瞳から光彩を消し去り、深くお辞儀をしながら台詞を棒読みするあやせ。

「……それではお兄さん日曜日までごきげんようさようなら」

あやせは顔を上げ、俺からひったくるように傘を奪い返すと、スタスタと歩き始めた。
いつの間にか雨は上がって、雲の切れ間から幾筋もの光芒がまっすぐに地上に向かって延びている。
その光の束に向かって歩くあやせの後ろ姿は……

「天使が天へお帰りあそばすってわけか」

いやいやいや!? このままじゃ、俺が一緒に映画を観に行くと約束しちまったも同然じゃねえか。
あやせの後ろ姿に向かって、俺は慌てて声を掛けようとした。――しかし、その瞬間、あやせが振り返った。
学生鞄と折り畳んだ傘を制服のスカートの前で重ねるようにして持ち、
少しだけ首を傾げ、ニッコリと、俺の脳ミソが溶けてしまうんじゃねえかと思うほどの可愛い笑顔で。

「……今度の日曜日、ですよ」

「おっ、おう! 日曜日だよな」
875 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/11(木) 23:24:55.19 ID:UgVSypyPo

あやせが曲がり角を曲がってその姿が見えなくなるのを待って、俺は家へ向かって歩き出した。
どうせ俺は、あやせ蜘蛛(顔は天使で腹が黒い)に捕まった情けない昆虫さ。
それにしても、麻奈実は俺のことが好きなんだと言ったときの、あやせの苦しそうな表情は一体何なのか。

「なわけねえよな。……からかわれてんだよ」

俺が難攻不落なあやせを攻略しようとして、どれだけ辛酸を舐めさせられたことか。
そのたびにあやせから叩かれ蹴られ、それでも立ち向かって行く俺って、ある意味勇者じゃねえか。
まあ、見ようによっては、俺の中のドM体質が覚醒したのかもしれねえけど。

  ☆

田村屋の手伝いをするかあやせとの映画を優先するか決めかねていた土曜日の夕方、
突然、当のあやせから「明日はお姉さんのところでバイトですからよろしくおねがいします」との連絡があった。
俺をおちょくるのもいい加減にしろ! と、怒鳴りつけたいのは山々だが、できるわけがない。
内心、これで麻奈実も機嫌を直してくれるだろうし、爺ちゃんの顔も立つだろうと、それが正直な感想だった。

物産展では麻奈実やあやせたち女性陣が販売の先頭に立ち、俺はおじさんが店から運んできた和菓子の補充など、
要は裏方というか、雑用全般を引き受けた。
売れ行きの方は順調で、夕方には用意した品はあらかた捌けていた。
中学生のあやせに配慮してか、おばさんの好意で俺とあやせは閉店よりも少し早く上がらせてもらえた。

「お兄さん、さっき田村屋さんで頂いた封筒を見せてもらえませんか?」

「麻奈実のとこでもらった封筒って、バイト代の入った封筒のことか?」

「あやせが何を考えてんだか分かんねえけど、中身は同じだぜ」

俺は特に気にも留めず、バイト代の入った封筒をあやせに差し出した。
876 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/11(木) 23:25:22.93 ID:UgVSypyPo

「それじゃあこれは、わたしが預かって置きますね」

「ちょ、ちょっと待てっての、そりゃどういうことなんだよ!」

俺の悲痛な叫びにも拘らず、あやせは中身も見ずに封筒を手提げ袋の中に入れちまった。

「お兄さんがお金を持っていても、どうせロクなことに使わないじゃないですか。
 ですから、わたしがしっかりと預かっておくんです」

その後、いくら俺が頼み込んでもあやせは微笑むだけで、取り合ってはくれなかった。
あやせが持っている手提げ袋に、俺が無理やり手を突っ込むわけにもいかねえ。
何で俺はあやせにこんなにも弱いんだろう。

「あやせが将来結婚したら、おまえの旦那、すべておまえに財布を握られちまうんだろうな」

無駄な抵抗だと分かっちゃいるけど、皮肉のひとつも言ってやりてえじゃねえか。

「どう思おうとそれは勝手ですけど、……今のうちに練習だと思えばいいじゃないですか」

あやせが何を言ってんだか、全く分かんねーっての。
無茶苦茶な言い草に呆れ返る俺なんかにはお構いなく、あやせは急に立ち止まると、大きくため息を吐いた。
そして腕を組み、ブツブツと何か独り言(呪文?)を呟いていた。正直言って怖い。
どう見てもあやせのこの顔は、俺にとって不幸が訪れる前兆にしか見えない。
877 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/11(木) 23:26:00.50 ID:UgVSypyPo

「何か失礼なことを考えていませんか?」

「いっ、いや、もしかしたらあやせに殴られるんじゃねえかと――」

「わたしがお兄さんを殴ったことなんて、……まあ、何度かあったような気もしますけど、
 それは全部お兄さんに原因があったからじゃないですか」

「何度どころの騒ぎじゃねーだろうが」

「――それはこの際横に置いとくとして、どうしてもお金を返して欲しいと言うのなら、
 わたしのお願いを聞いて下さい」

何なのこの言い草。論理のすり替えにも程があるんじゃないですかっての。
俺のバイト代を横取りしておいて、返して欲しけりゃ言う事を聞けって、どういう教育を受けてきたんだか。

あやせは、俺に家まで送ってくれた礼を丁寧に述べて、口をギュッと結んで家の中へと消えた。
俺は、あやせが別れ際に告げた言葉が胸に突き刺さって、しばし呆然としていた。

「わたしが本当に心配なのは、お兄さんの後輩の黒猫さんではありません。
 もう誰にも遠慮はしません。……麻奈実さんであっても、それがたとえ……桐乃であっても」

氷のように冷たく、そして固い決意にも似たあやせの言葉に、俺は途惑いと同時に恐怖すら感じた。
星さえ見えない夜空の下、自分の家へ向かって歩きながら、あやせが近頃俺に示す態度を思い起こしていた。
878 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/11(木) 23:27:26.75 ID:UgVSypyPo

 ☆

あやせにバイト代を取り上げられて、早くも一週間が経過した。
朝起きると降っていた雨も俺が家を出る頃には上がり、駅に到着したときには晴れ間さえ覗いていた。
「天気予報も結構当たるもんだ」と、俺は心の中で一人呟き、改札口をゆっくりと見回した。
日曜日の午前中とあって、駅に集う人々の足並みもどことなくのんびりとしている。
そのなかで人波を避けるように、改札口の一番端の柱の陰、俯いて自分の靴先を見つめているやつがいた。
俺は、そいつに気付かれないように近寄って声をかけた。

「時間どおり……だろ」

「――おはようございます。……お待ちしていました」

さっきまで不安そうにしていたあやせの顔が、一瞬のうちに笑顔に変わった。


(ここで終わってるんだ)
879 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/12(金) 19:33:46.64 ID:TGHZHYvIO
乙!
力作だから完成したのを読んでみたいな。
880 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/14(日) 22:22:23.42 ID:tvUjOlCNo
このラノベ、特定のキャラファン以外はとっくの昔にオワコン
こんなとこでSS投下したって時間の無駄
誰も読んでねーよ
881 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/15(月) 09:25:35.54 ID:U8KdKvMDO
ならどこに投下したらいんだよ?
882 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/10/19(金) 12:52:54.33 ID:5EokBe3IO
おれは読んでるけどな。
続きはようおねがいします!
883 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/10/19(金) 12:56:54.83 ID:5EokBe3IO
おれは読んでるぜ。
続きはようお願いします!
884 : ◆k4qYXRI5uY :2012/10/19(金) 23:27:39.92 ID:AmIPQw1A0
ふむ、投下おk?
皆続き待ってる感じ?

オッケーなら合図よろ

ちなみにネタは一足も二足も早い初詣ネタ。
885 : ◆k4qYXRI5uY :2012/10/20(土) 00:27:51.02 ID:HeVeLoH20
ふむ、反応が無いな。全滅したか。

出直すとします、それでは
886 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/20(土) 00:34:01.85 ID:pU4Lvqumo
最近このスレ出入り少ないんじゃないかな?

まぁ気が向いたらいつでも投下して欲しい
887 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/20(土) 00:53:10.01 ID:cRVijAHjo
(゚∀゚)カモーン
888 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/20(土) 01:01:47.64 ID:+LLUF7HDO
>>884
Go
889 : ◆k4qYXRI5uY :2012/10/20(土) 01:03:48.55 ID:HeVeLoH20
サンクス。では、投下する
890 : ◆k4qYXRI5uY :2012/10/20(土) 01:05:12.35 ID:HeVeLoH20
寂しい木と俺の初詣。










正月ぅぅぅ!!
はい来ました、来ましたよこれ。
リア充イベント。いっつも思うんだよなぁ、これ。俺に彼女がいたらなぁ、とか、はぁ 今年も彼女が出来る様に神に祈らねぇといけねぇのか、とか。
もう本当嫌になる。
だって彼女いないやつのイベントなんて婆ちゃん家に行ってコタツで餅とかミカンとか食うだけだろ!? もはやこんなのイベントでもなんでもないからね!?
俺だってやりたいんだよ、彼女に「はい、甘酒。二人で飲も?」とか「ねぇ、なんて祈った? 私はねぇ……来年も貴方と一緒に楽しく過ごせますようにって祈ったよ!」とかさぁ!!!! やりたいんだよ! でも出来ねぇんだよ!! 分かってくれよ神様!! 俺に彼女を作ってくれるか地球を滅ぼしてくれ!!

まぁそんな事を涙をボロボロ溢しながら思ってもどうにもならない事は分かってるんだけどね? でも分かっててもしょうがないんだ、この衝動は。本当に、しょうがないんだよ。
もう本当勘弁してくれよぉ、なんでこんな季節があんだよ。お年玉ももうこの歳で貰うのなんか気まずいだけだっつぅのによぉ。

時は正月当日。場所は自分の部屋。
俺はまたもや彼女無しで迎えてしまった正月に嘆き悲しんでいた。

「まぁ別に? 彼女がいても? ど〜せ二人で甘酒を飲んで間接キスだね〜とか言い合ったりとか? そ、そそそ、そんな甘甘な? 砂糖みたいな? 黒砂糖みたいな? やり取りをしたりするだけだし? 別にそこまで彼女が欲しいわけでもな……」

俺はそこまで言うとギリ…と歯軋りをした。
こんなのは嘘だ、本当はそんなイベントをやってみたい、彼女と間接キスをしたい。キャッキャウフフな事をしまくりたい。
そうさ、したいんだよ悪いかこの野郎!!

どうしても、心までは嘘をつけなかった俺は悲しみで地面をドコスカと叩き、咽び泣いた。
くそぉおお! なんで俺には彼女が居ないんだぁ!!

そうしていると、正月だというのに家のチャイムが鳴らされた。なんだ、どうしてこの家のチャイムが鳴るんだ。親父もお袋も家にいる。桐乃の配達物か? いや、あの桐乃が親父達にバレるような事をするとは思えねぇ。

そうすると桐乃の友達、っつう可能性が一番高いか? っていうか桐乃のやつ友達と初詣に行く気じゃねぇだろうな? そりゃ友達『も』なら許せるけど友達『と』だと俺は死んでも許さねぇからな。
俺だけ放置されて親父達と一緒なんて気まずくて死にそうになるわ。

なんて最悪のパターンを考えて俺が恐怖を覚えていると、やはり桐乃の客らしく、桐乃の部屋が開く音が聞こえた。
気になったのでちょっと涙目になりながらも、俺も玄関に向かった。



   ・・・・



891 : ◆k4qYXRI5uY :2012/10/20(土) 01:05:52.09 ID:HeVeLoH20

チャイムが鳴った。
あたしは嫌な予感がしながらも、迎えにいこうと部屋を出た。待ち合わせの場所は家ではない。でも他に心当たりが無い。

玄関へと行く途中、あたしは嫌な予感の原因である昨日の事を思い返した。




昨日、まず始まりは沙織からのメールだった。
なんだろ、なんか用事かな? とか思いながらメールを開いてみると明日の予定についての質問がかかれていた

『きりりん殿、明日のご予定はありましょうか? 初詣などでしたら拙者にも参加させていただきたく思っているのでござるが。
どうでござるか?』

う〜ん、でも明日は兄貴と…じゃなくて、家族で初詣に行く予定だしなぁ。
だから沙織も一緒ってなると気まずくなっちゃったりするんじゃないかな?

そう思って思ったことをそのまま送信すると、沙織はあろう事かこんな返信をしてきたのだ。

『別に拙者は構いませぬゆえ是非参加させていただきとうござる。最初はきりりん殿をお誘いした後京介殿をお誘いする予定だったのでござるが、お誘いする必要は無かったようでござるな』

しまった、沙織がお父さんやお母さんの事を気にするような玉じゃないなんて事はとっくに分かっていたはずなのに。
なんでこんな事を言い訳になんかしたのだろうか、するのだったらもっと決定的なものにしとけばよかったものを。例えば『毎年初詣は親子で行くって決まってるんだ、だからゴメンね。』とかだったら無理矢理来るなんて事にはならなかった筈だろうに。

むむむ……こうなったら沙織の事は諦めよう。しょうがない、こんな事になってしまったんだ、断りたくても断れない。

なんて事を思っていると、まだ用事があるのだろうか、沙織からまた一通メールが来た。
恐る恐るメールを開いてみる。

『あ、もちろん黒猫どのも誘っておくでござるよ。安心してくだされ』
892 : ◆k4qYXRI5uY :2012/10/20(土) 01:06:26.64 ID:HeVeLoH20

ちぃっ!! 余計なことを!!
急いでしなくていいという意思表示のメールを送信しなければ!!

なんて事を慌てて思い急いでメールを打つ。
しかし、どうやら遅かったようだ。あたしがメールを打っている最中に黒猫からメールが届いたのだ。

おそらく沙織はあたしにメールを送った時にはもう黒猫に誘いのメールを送っていたのだろう。

『ふふ、しょうがないから初詣には私も参加してあげるわ。感謝しなさい、本当だったら駄天使である私は神聖なる神の宮古には踏み入れないのに、無理してでも付いて行ってあげようというのだからね』

あぁ、駄目だ、こいつ来る気満々だ。もうなんていえばいいの? 文字から喜色が見えるみたいなの。もう嬉しそうだこと嬉しそうだこと。

「はぁ…」

あたしは溜息をつくと二人が来ることを渋々受け入れたのだった。
しょうがない、これからはもう兄貴とどうやってイチャイチャするか計画ではなく、どうやって二人を出し抜くか計画の方向で考えるしか無いな。

そんな事を考えてウンウンとうなっていると、今度は誰なのだろうか、またしても携帯がなった。
その瞬間から嫌な汗が背中を伝っていく。

恐る恐る携帯の画面を開くと、そこに表示された名前にまたも冷や汗が流れた。

『fromあやせ』

ダラダラと汗が出てくる。その名前からは何故かとてつもない気配が漂っている気がした。
震える指先でメールを開いた

『明日の初詣私も行きたいな』
「……」

瞬間、あたしの中のミニ桐乃達が相談を始めた

「断るべきよ!!、これ以上ライバルが増えたら対処しきれなくなる可能性がある!!」
「ちょっと待って、そんな事したら後で何されるか分からないわ!! よく考えて行動すべきよ!!」
「そうね、あの死んだ魚の様なレイプ目で見つめられて何を要求されるか分かったもんじゃないもんね」
「なによ!! あんたらもしかして兄貴の事嫌いなんじゃないの! ううん、別に嫌いじゃなくてもあたしよりかは絶対に好きじゃないわね!!」

「「「「あたしが一番兄貴の事好きに決まってんじゃない!!!!!!!!!!」」」」

……駄目だ、まとまらない。このまま考えていても結論が出る事は無いだろう。
どうする、どうすればいい?
893 : ◆k4qYXRI5uY :2012/10/20(土) 01:07:14.86 ID:HeVeLoH20

頭を抱えて悩んでいると、もう一度携帯は鳴った。

『何時に待ち合わせする? もちろん断ろうなんて考えてないよね?』

どうやら最初からあたしに決定権は無かったらしい。
あたしはいさぎよく、顔文字を使ったニコやかなメールで了承のメールを送ったのだった。

……さて、作戦を考えなければ…。
まぁこの様な状況を覆せる、あたしだけが勝てる作戦があるのかどうかは甚だ疑問だが。

自嘲気味に笑って携帯をベッドに放る。瞬間、またしても携帯が鳴った。


プルルルルル…

「………」

パカッ

『from加奈子』

パタン。

「ふぅ」

いやいや、待て待て待て。もしかしたら勘違いかも知れない。もう一度よぉく見るべきだ。

パカッ

『from加奈子』

パタン。ガクッ。

見間違いじゃ無かったらしい。
あたしはがっくりと膝を折ると、本文を見るために携帯をもう一度開いた。

『明日の初詣待ち合わせ何時にするよ?』

最早行っていいかの確認すら無い!!
何故先に行けば行くほど劣化していくのか!!
894 : ◆k4qYXRI5uY :2012/10/20(土) 01:07:46.12 ID:HeVeLoH20

一先ず、無駄とは分かっていながらも断りのメールを入れてみる

「ごめん、明日は家族で行くんだ」
『いつからあやせは桐乃の家族になったんだ?』

どこで聞いたのよ!?
内心で恐々としていると、続けて加奈子からメールが来た。

『いや、あやせが明日は桐乃に付いていくって言ってたからさぁ。だって桐乃はあやせを断れないだろ?』

…その通りです。
ていうかあやせも何考えてんの!? これ以上ライバル増やしてどうする気なわけ!?

『ま、そう言う事なわけ。待ち合わせと時間教えてくれ』

続けて送られて来たメール。その本文を見てもう断れない事を悟る。
あたしは場所と時間をメールに書いて送った。
それと同時にもう一通加奈子からメールが届く。

『あ、それと、ブリジットも連れてくから』
「がはっ」

あたしはベッドに倒れこむと折れそうになる心の英気を養うために眠ったのだった。







……と、言う感じで約束をしたわけだ。
だが待ち合わせ場所は家では無かったはずだ。でも現にチャイムは鳴った。

まぁ全く予想していなかったわけではない。あやせ達の事だ、どうせ一秒でも長く兄貴と一緒にいたいから、とかそんな理由で来たのだろう。
895 : ◆k4qYXRI5uY :2012/10/20(土) 01:08:25.94 ID:HeVeLoH20

思わず溜息がもれそうになるのをなんとか堪えると、鍵を外してドアを開いた。

「あ、桐乃ちゃん。久しぶりだね」
「おう、桐乃! 待つの嫌だったから直接来ちまったわ」
「か、加奈子ちゃん、マネージャーさんは? 知らない人ばっかりだよ?」
「桐乃、私も来ちゃった」
「おぉ、きりりん氏! すみませぬ、気が急いて来てしまったでござるよ」
「早くしなさい、私の力は神の領域ではそう持たないわ」

……気が抜けそうになった。ってか地味子まで来てるし!!
流石にここまで揃うと壮観って感じね。

あたしはヒクつきながらも顔に笑みをうかべ家えと促した。

「は、はは、約束と違うからちょっとビックリしちゃった。ま、まぁ良いから上がって待ってて」

リビングに通そうとして、もう一度玄関の扉を開く。
するとそこには兄貴が居て、こちらをちょっと涙目になって見ていた。しょうがない、あの大勢を後ろで見たのだから。あたしが京介の立場でもこれからあんな大勢と一緒に初詣に行くって思うと憂鬱になるに決まっている。

「は、はは。結構な人数になっちゃった」

苦笑いを京介に向ける。
それに兄貴も苦い笑みを浮かべると、さらに目に涙を溜めた。

ふふん、この様子だと兄貴もあたしとの初詣を楽しみにしてたみたいね! だってこんなに悲しんでるし!!

「も、もしかしてなんだけどさ…」
「うん、なに? 兄貴」
「お、お前は俺だけ残して初詣に行く気なのか?」
「……へ?」
「そうか、そうなのか。俺を……俺を見捨てるのかぁぁ!!」

兄貴は何を思ったのか拳を握り締めて叫んだ。
何事!?
その行動にあたしを含め皆が固まっている。

一体何を勘違いして暴走しているのか。

「くそぉ! 俺に彼女が居ないからってバカにしやがって! 俺だって本気だしたらなぁ、彼女ぐらい作れるんだぞ!?」
896 : ◆k4qYXRI5uY :2012/10/20(土) 01:09:03.15 ID:HeVeLoH20

「なに嘘ついてんの?」
「嘘ね」
「嘘でござるな」
「お、お兄さんに彼女? プフッ」
「ブフゥッ お、思わず噴出しちまったwwwwww」
「マネージャーさん、嘘はどろぼうのはじまり、ですよ?」
「きょうちゃんの冗談は何時も面白いね」

「すいませんっ!!! 嘘吐きましたぁ!!!!」

兄貴は膝をガクリとつくと、涙が廊下に数滴落ちたのだった。





   ・・・・







 二時間後。

まぁ兄貴の誤解は何とか解け、着物を着たあたしは皆と一緒に神社えと向かっていた。

ちなみにお父さんとお母さんは居ない。お母さん達はこの大人数を見ると、顔を顰めて兄貴にお金を渡して「私達は後で行くから、皆はゆっくりしてらっしゃい」と言った。まぁこの人数に大人が二人っていうのは流石に辛いのだろう。
言っては悪いが、おかげで楽しめる。

あたしは改めて並ぶ屋台を見回した。ソースの焼ける匂いと、砂糖の甘い匂い。そして人の群れが織り成す喧騒、笑い声。
嫌でも気分が高翌揚してくる。

「桐乃、何か食べたい物とかあるのか?」

目を輝かして見ていると、お腹が減ったと勘違いしたのか、兄貴が話しかけてきた。
家を出る時はそれほど減っていなかったのだが、今ではかなりの食欲が戻っている、これも屋台の魔法だろう。

あたしは軽く頷いて目前のフランクフルトの屋台を指差した。

「あたし、あれが食べたい!」
「おぉ、良いな。フランクフルトかぁ、久しぶりに食べるな。皆はどうする?」

兄貴が振り返って話しかける。
皆もお腹が空いてきたのだろう、屋台を見回していた顔をこちらに向けた。

「ふむ、フランクフルトでござるかぁ。それも良いでござるが、拙者としては屋台で最初に食べる物はやはりたこ焼きかと思われるのでござるが? 京介氏も如何でござるか?」
「なぁ!? ちょっとあんた!! 最初に誘ったのはあたしなんだから引っ込んでなさいよ!!」
897 : ◆k4qYXRI5uY :2012/10/20(土) 01:09:37.12 ID:HeVeLoH20

何故か逆に兄貴を誘い出したので、急いで止めに入る。
折角一緒にフランクフルトを食べれるのだ、邪魔をされてなるものか。

「ま、まぁまぁ、二つとも買って一緒に食べればいいじゃねぇか」

何かしら、危険な雰囲気を感じたのだろう。兄貴が話しを打ち切るように強引に話題を反らした。

「ふむ、それもそうでござるな。いやいや、失敬。拙者昔から祭にはそれ程来た事がござらんゆえ少々熱くなってしまったようでござる」
「へぇ、やっぱりお嬢様って理由で遊ばせてもらえなかったのか?」
「ふふふ、それはご想像にお任せするでござる。ささ、そんな事より早く買いに行きましょうぞ」

そう言ってどさくさに紛れて兄貴の手を取って屋台に向かう沙織。

「ちょっと待ちなさい!」

真っ先に反応する黒猫を皮切りに、全員が手繋ぎを妨害したのは言うまでもあるまい。

それから特に変わった事は無く、順調に屋台めぐりをする。フランクフルト、たこ焼き、焼きとうもろこし、イカ焼き、からあげ、その他諸々。
おかげでお腹は膨れて、もう食べ物は目に入らなかった。

それでも、それでもだ、何故こうも甘い物と言うのはこうもあたしを引き付けるのだろうか? 今日は流石に食べ過ぎたため、これ以上食べるのは流石にまずい。そんな事は分かっているのに、さっきから視界を掠める甘いお菓子が、匂いがあたしを誘惑するのだ。
お腹は一杯で、からあげやたこ焼きの誘惑なら平気なのに、甘いお菓子の誘惑は駄目なのだ。何故なのかは分からない。

りんご飴、ベビーカステラ、たい焼き、綿飴、クレープ。あぁ、どうしてこんなに食べたいわけ!?
あたしは現実から逃避するように頭を左右に振った。
それに対して兄貴が訝しげな視線をこちらに向けてくる。

するとどうだろうか、何か閃いたらしい。いきなり屋台に向かって駆け出したではないか。
あんだけ食べといてまだ食べたり無いというのか。

「はは、食いたいなら食いたいって言えよ。りんご飴だろ?」

人混みの中を掻き分けて買ってきてくれたようだ。

「べ、別に食べたかった訳じゃないけど、まぁ頑張って買ってきてくれたみたいだし食べてやってもいいかな」
「はいはい…」

兄貴は苦笑いを浮かべる。
だけど、思い出したようにニヤリと笑うと、急に顔を近づけてきた。
898 : ◆k4qYXRI5uY :2012/10/20(土) 01:10:19.28 ID:HeVeLoH20

「なぁ、桐乃」
「な、なによ」

兄貴の顔が急に近づいてきて、あたしは鼓動が早まるのを感じた。
顔が熱い。

「もう一つ別の飴も買ってきてんだけどさ、半分ずつ食べねぇ?」
「は、半分こ!?」

そ、それは結果的に間接キスになるんじゃ!?

「おう、食べた事無いし、食べてみたかったからこんなの買ってきちまった」

そう言うと兄貴は「にしし」と笑って背中からりんご飴より一回り小さい、赤い飴を取り出した。

「その名も、いちご飴!」

確かに。別段珍しくは無いけれど、やはりりんご飴の方が知名度が高いし大きかったのでそちらしか食べた事は無かった。なのでいちご飴は食べた事が無い。
だ、だから。そう、だから。あたしもきょ、興味があるから、そう、一度食べてみたいから。だから仕方なく、そう、し、ししし、仕方なく兄貴と間接キス!!!!!!。

「っておい桐乃!? 何でそんなにフラッフラになってんだ!?」
「う、うっさい!! 仕方なく、果てしなく遺憾だけど仕方なく半分こしてあげるから感謝しなさい!!!」
「お……おう?」

そう言って、フラフラする頭をなんとか働かして今からどうするべきかを考える。結論、今はとにかくりんご飴を半分消費する事に専念すべし。

「き、桐乃、本当に大丈夫か?」
「うるさい、あたしのどこが変だってのよ? 健康過ぎるぐらい健康だっての」
「いや、健康な人が足をフラフラさせて顔を真っ赤にながら一生懸命りんご飴を舐めるかと聞かれると、俺は楽勝で首を横に振るぞ?」
「もう、なんでも良いから早くあんたも飴食べなさいよ」

兄貴があたしを心配してくるが、構わず食べるのを促した。

「あ、あぁ、まぁそりゃ食うけどよ」

兄貴はそう言うと、いちご飴をパクリとくわえる。
ぶぅぅぅっ!!

あたしは思わず咽てしまった。
まさか舐めるのではなくくわえてくるとは、予想外すぎた。
899 : ◆k4qYXRI5uY :2012/10/20(土) 01:10:53.28 ID:HeVeLoH20

あたしの予想では半分を舐めて、飴の部分が薄くなってきたらいちごをかじるのかと思っていた。
それがどうだ、あたしの想像を良い意味で超えてくれたではないか。流石兄貴だ。

思わず出そうになる鼻血を我慢して、あたしは急いでりんご飴を消化しにかかった。
早く食べて、兄貴と間接キッスをきめるのだ。

「お、おいクソマネ、それ美味しそうだな、ちょっとくれよ!」
「ん? あぁ、俺は別に良いぞ。桐乃、お前も良いよな」
「はぁ!? ふざけんな! 兄貴が舐めたそのいちご飴はあたしの物!!」
「……? なんで俺が舐めたことを強調するんだ?」
「っっなんでもない!!」

加奈子のいきなりの行動に、思わず本音が口をついてしまった。
これだから油断できない。

「えぇ、良いじゃんべつに。ちょっと舐めるだけだって」

加奈子は口の端をニヤリと上げて、あたしを見てくる。
ギリッと歯軋りをすると、あたしは兄貴がもっているいちご飴をむりやりくわえて奪った。

「ぁぁあ!!」

加奈子がなにやら叫んでいるが、そんな事は気にしない。こちとらこのいちご飴の甘さに耐えるのに必死なのだ。
ぶっっ!!

あ、鼻血出てきちゃった。







   ・・・・









900 : ◆k4qYXRI5uY :2012/10/20(土) 01:11:23.90 ID:HeVeLoH20

その後、俺達はスイートタイムを楽しみながら上へ上へと上がっていった。
まぁあの【飴事件】の後、一悶着も二悶着もあったのだがそれらは思い出すだけで頭痛がするので省略する。

人が込み合う中、俺達は何とか賽銭箱……の二十メートル手前ぐらいまで来た。のは良いのだが、そこから進む気配がいっこうに無い。
ごちゃごちゃと人にもまれながら待つ事、ゆうに15分。短いかと思うかもしれないが、この人混みの中の15分は異常に疲れるのだ。

実際、ブリジットちゃんは気分が悪くなり、今俺がおぶっている。

なにやら私達がおぶるから俺はおぶるな、という意見が出てきたが、ここは年長者、そして男である俺がやるしかあるまい。という事で俺がおぶっている。
それにしても顔が赤い。ブリジットちゃん、大丈夫なのだろうか? 心配だ。

「ふぅ、ほんとどうなってんだ? ちっとも進まねぇじゃねぇか」
「そうでござるなぁ、ここまで進まないのはいささか異常でござる」

沙織もちょっと困り顔で同意してくる。
まぁそんな事を言っててもしょうがねぇ、待つしか俺達に選択肢などないのだから。

なんて思いながら皆どだべっていると、どうしたことだろうか、いきなり列が移動しはじめた。
ただでさえすし詰め状態だった状況で、列が急に移動するとどうなるか、それは結果を見る前から明白だった。

それでもと、必死に一人の手を掴む。もう片方の手はブリジットちゃんを掴んでいるのに必死で無理だ。
パシッ、という効果音とともに掴んだその手を離すまいと必死に手繰り寄せて抱きしめる。

揉みくちゃにされながら波がさるのを待つ。ようやく波がさった時にはものの見事に皆とはぐれていた。
抱きしめていた加奈子と、背中のブリジットちゃん以外は。

「よぉ、大丈夫だったか?」
「お、おう」

俺はゆっくりと加奈子を放す。
加奈子はなにやらモジモジとしているが、今はそれどころではない。

「はぁ、ものの見事に皆とはぐれちまったな」

そう、皆の姿はこの場に見当たらない。
ほんと、一人たりとも。
901 : ◆k4qYXRI5uY :2012/10/20(土) 01:11:53.75 ID:HeVeLoH20

「……どうするよ」

俺が問いかけると、加奈子は赤い顔をブンブンと振って話しはじめる。

「ま、まぁどうするもこうするも、まずは携帯で皆に集合場所を連絡しておちあうってのが無難なんじゃねぇの?」
「……!!」

俺は思わず加奈子のデコに自分のデコを当てた。こいつがこんな的確な指示を出すなんて、なんかの病気か?

「っ、な、なにすんだ!?」
「いや、だってお前がこんな的確な指示だすなんてさぁ…、なんかの病気じゃねぇの?」
「じゃねぇよ!!」

デコをくっつけあいながら唾をとばしあう。
加奈子は喋っている間もどんどんと際限無く顔を赤くしていった。
ついに限界がきたのだろう、加奈子はリンゴの様になった顔を自分から離した。

「い、いつまでくっつけとくつもりだよ」
「おおう? わ、わりぃ、忘れてた」

俺は加奈子に指摘されて、今更ながら恥ずかしくなってくる。自分の顔が赤くなっていくのが分かった。

「ま、まぁとにかく連絡だな」

どちらにともなく互いにコクコクと頷きあい、俺はポケットから携帯を取り出した。
とりあえず冷静そうなあやせに連絡。沙織とどちらにしようか迷ったが俺の気分(ていうか趣味)的にあやせの方が良かったので先に連絡した。
すぐにつながりあやせの声が耳元のスピーカーから大音量で聞こえた。

「お、おおお、お兄さん!? 今どこですか!? 他の人といかがわしいことしてないですか!?」
「何故今そんな質問!? してるわけねぇだろ!」

思わず大声でつっこむ。
訂正、あやせは全く冷静じゃなかったようだ。

「本当ですか!? 大丈夫ですか!?」
「よし、OKだあやせ、一旦落ち着こう。はい、深呼吸。」
「すうー、はぁー…ふぅ、なんとか落ち着きましたぁ。ありがとうございます、お兄さん」
「いやいや、なんのなんの」
「よし、それでは再度聞きますね、お兄さん。…いかがわしいこと、していないですか?」
「俺どこまで信用無いの!?」
「今更そんな事聞く意味無いじゃないですか」

…そうですね。

「ま、まぁとにかく、集合する事が先決だ。」
「むぅ、まぁ…そうですね」
「よし、じゃぁ集合場所を言うからそこに集合な」
902 : ◆k4qYXRI5uY :2012/10/20(土) 01:12:29.76 ID:HeVeLoH20

俺はやっとそこまで話しが進んだところで、ある場所をあやせに伝えた。あそこなら、きっと誰も居ない。それに、とても分かりやすい。

「じゃ、そういうことで」

電話を切る。
他の皆にも例の場所を伝える。

「ふぅ、一通り伝えたかな」
「よっしゃ、そんじゃあたしらも行くか、クソマネ」
「おう、そうだな」



そう言って俺は煌びやかに光る祭の中心の寺を見る。賑やかに人でごったがえしているその姿はとても美しい。
だけど、俺はもう一つ、密かに光るその場所を知っていた。祭の光に隠れて、密かに光るその場所を。

昔、見つけたその場所。寺の奥の森の中。木が並ぶその中で、その木の周りだけポッカリと開いている。
とても、とても、寂しがりな木の居場所。

一人で行ったその場所を思い返しながら加奈子と歩いていると、あつらえたかのように雪が降り出す。
加奈子がはしゃいで小走りになる。

俺もつられて小走りになりながら森を歩いていく。
もうすぐ、あの場所に着く。

雪が振り出した今があいつ、寂しがりの木の見せ場だ。

「よし、もうすぐ到着だ」
「よっしゃ、早く行って一番乗りしようぜ!」

加奈子は俺の手を取ると、今度は全力で走り出した。

一歩、二歩、三歩、四歩、五歩、六歩、七歩、八歩、九歩……

木々が途切れることなく、続くその中、俺達が十歩目を踏み出した。
その瞬間、今まで続いていた木々が嘘のように無くなり、目の前が開けた。夜なのに眩しくて目を細める。

「うっわぁ」

加奈子の声が聞こえたと思うと、加奈子は手を離してはしゃぎだす。
903 : ◆k4qYXRI5uY :2012/10/20(土) 01:13:11.17 ID:HeVeLoH20

木々が途切れたその空間の中心には、枯れた木がある。特別なものはなにもない、ただの木が。
だけど誰の仕業か、その枯れた木にはとても地味なものが飾られていた。

ガラスの欠片。

それは夏には葉に阻まれて分からない、秋には紅葉に阻まれて分からない、春には桜に阻まれて分からない。
分かるのは、そう、冬の夜だけだ。

月を反射して雪とともにキラキラと煌く、祭の光の影に隠れた光。

俺も自然と笑みになって、加奈子の後につづいた。
そうしていると、いつのまにかどんどんと人数が増えていく。皆感嘆の声を上げながら集まってくる。

俺に加奈子にブリジット。

麻奈実

桐乃

あやせ

黒猫

沙織

去年はここに俺とお前しか居なかったのになぁ。

ガラスでキラキラと光る木に向かって一人話しかける。

これはお前が寂しいからか? ……だとしても、ありがとよ。
去年、あの寺の神さんよりお前に祈って良かったよ。だって、今年はこんなにも楽しい初詣が出来たんだから。

「なぁ皆、俺ここで祈ってくわ。以外とご利益あるんだぜこいつ」

なぁ、おい。今年はちょっと願いごとが違うけど、大丈夫だろ? ほとんどおんなじ願いなんだからよ。

「そうなの? じゃぁ私も一緒にお祈りするよきょうちゃん」
「あたしもそうする! これも何かの縁だしね それにもうあの人混みはこりごりだし」
「そうですね、あそこの神様も大変でしょうし私達はこちらでお祈りしましょうか」
「加奈子もそうすっか!」
「かなかなちゃんがそうするなら私もー!」
「ふむ、私は魔界の人間なんだけど、たまには祈ってみてもいいわね、叶わなくても願うことに意味があるでしょう?」
「はっはっは、それでは皆で願おうではござらんか!」

楽しいか? おい。 折角だからこんな思いを一度と言わないで何回も味わいたいだろ? 去年のような寂しい初詣は嫌だろう?
だったら叶えてくれよな。寂しがりの木さんよ。

皆は目を瞑り祈る。

【今年も皆と、仲良くできますように。】

皆は自分と同じことを皆で祈ったなどと知らずに、互いに恥ずかしげに笑いあったのだった。



fin
904 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/20(土) 08:58:18.50 ID:NAZntnk9o
905 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/20(土) 09:08:10.24 ID:dewbmbtio
乙!
俺妹らしいドタバタコメディ、良かったぜ!
906 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福島県) :2012/10/21(日) 02:48:38.37 ID:3d1ve+B/0
俺はちゃんと見てるよ!
お疲れ様、とっても良かったよ。
俺は読む専門だけど、盛り上げていけたらうれしいな
907 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/21(日) 03:00:13.31 ID:1+aZHpZGo
こっちで書いたSSを渋にもあげてるんだが、お気に入りに追加してくれてる人がちょっとずつでも増えると地味に嬉しい

人気ある人みたいにあげたらすぐに10超えるような作品じゃないけど、そういう人にブクマされてると感慨深い
908 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/21(日) 09:37:36.88 ID:r60SktLDO
>>907
渋ってなに?
909 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/21(日) 09:55:14.94 ID:wUt/l1dfo
pixiv
910 :桐乃にかわりましてあなたのあやせがお送りします [sage saga]:2012/10/21(日) 15:56:52.95 ID:bM5Frmw7o

あやせ「>>903さん、乙ですよ! これからも頑張って書いてくださいね!」

京介「……>>903さんって、あやせの知り合いなのか?」

あやせ「会ったことはないんですが、以前から書いてくださってる作者さんなんです」

京介「そういや、このスレが全盛期の時代からみると結構減ったよな」

あやせ「そんなことありません! みなさん書き溜めてるだけなんですから」

京介「あやせ……なんかいま、後に隠しただろ」

あやせ「こ、これは……その……今まで書いてくださった作者さんなんですが……」

京介「……みんな死んでんじゃねえか!」
911 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/23(火) 00:01:23.47 ID:FQ5Ph6DJo
ま た お 前 か
いや、良いんだけどね

ほんと、このスレって書き手減ったよな
俺も最後に書いてから結構経つし
912 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/23(火) 06:25:33.25 ID:mYLa7FtO0
>>911
じゃあ復帰して卓袱台
913 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/23(火) 18:19:25.30 ID:7SeJQWCOo
突然オタクに目覚めた桐乃が、聞きかじりのオタク知識をやたらとひけらかすストーリー

『俺の妹がこんなににわかなわけがない』

っていうSSを書こうかと思ったんだが断念した
914 : ◆k4qYXRI5uY :2012/10/24(水) 01:22:16.61 ID:hjqbnE7P0
暇だったので、パパッと書いてみた。

投下しておk?
おkなら合図よろ。
915 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(茨城県) [sage]:2012/10/24(水) 01:24:28.10 ID:NibS1L2wo
構わん見せてみよ
916 : ◆k4qYXRI5uY :2012/10/24(水) 01:33:12.55 ID:hjqbnE7P0
風鈴。









俺の部屋には、風鈴がある。夏になると涼しげな音を鳴らす、結構上等な風鈴が。
だが他の部屋には風鈴は無い。妹の部屋もリビングも親父やお袋の部屋にも、風鈴は、無い。

何故かって?

「あっちぃ」

俺の部屋にクーラーが無いからさ。

前にお袋にクーラーを買ってくれと頼んだら、お袋は「はいはい、分かったわよ」と言って承諾した。その来週ぐらいにお袋はこの風鈴を買ってきた。
なにやらお袋が言うにはこれは職人さんのオーダーメイドらしく、一個5000円するらしい。

買ってくれた当初は「へぇ、結構綺麗じゃん」とか言いながら部屋に飾っていたのだが、いつまでたっても肝心のクーラーが俺の部屋に来ない。
どうなっているんだとお袋に聞くと、なにやら意味の分からないことをほざき始めた。

どうやらお袋はこの風鈴をクーラーがわりに買ってきやがってくださったようだ。

殴りかかりそうになる衝動をなんとか我慢し、落ち着いて対処しようとする。お袋が言うにはお金が無くて、今は買えないそうなのだ。ならば仕方ない、親父の給料日まで待とうではないか。親父の給料日まであと二週間だ、待てない期間では無い。
そうお袋に言うと、今度はどうだ、宇宙人語を喋り始めたではないか。

「今月の給料でも無理そうなの、ごめんね。ほら、だって家族で旅行に行くじゃない? だからちょっと無理かな」
「ふざけるなぁぁぁぁぁぁぁ!」

あぁ、叫んだ。叫んださ。
俺の部屋の猛暑の解消よりこの親は自分達の旅行を優先させやがったのだから。

でもいくら叫んでもここからは無駄だった。お袋に日本語では通じないのだ。
知らぬ間に有耶無耶にされ、今の現状にいたっている。

部屋の中はもう30度以上の気温だ。ベッドに寝た瞬間布団が暑くてまた起きる。無理に寝続けても最終的に布団が汗で濡れて気持ち悪くなって起きる。
リビングは桐乃の奴が占拠して使えない。桐乃の部屋に無断で入った日にゃその日が命日だ。
917 : ◆k4qYXRI5uY :2012/10/24(水) 01:33:42.09 ID:hjqbnE7P0

仕方ない、と麻奈実の家に行こうとすると、桐乃の奴が何故か知らんがキレだす。手に負えないとはこの事だ。
でも、限界だ。もう我慢なんてできねぇ。

こうなったら桐乃にバレないように出て行くしかあるまい。もしバレても知るか。これ以上我慢なんてできるかっての。

「よし、麻奈実ん家に行こう。絶対に涼しさを手に入れてやる。」

と、勢い良くベッドから起きると同時に桐乃が部屋に入って来た。

「………」
「どこに行こうってわけ?」

……キレてらっしゃる。
まさかこんなに早くに自分の行動を後悔するとは思わなんだぞ。

「いや、べつに?」
「どうせ地味子んとこにでも行こうとしてたんでしょ?」

誤魔化そうとするも、無駄だったようだ。一言で核心をついてきた。
だがこうなると俺も段々と冷静じゃなくなってくる。暑いせいで脳が茹だっていたことも原因の一つだろう。

「……そうだよ」

とうとう、俺はキレた。こんな理不尽があってなるものか。

「そうだよ、俺は麻奈実ん家に行こうとしてたよ、何か悪いか?」
「べっつにぃ? そんなに毎日イチャつきたいんだ、キッモ」
「ちげぇよ、お前俺の部屋に来た時なにも思わなかったのか? 俺はお前と違ってクーラーなんて上等なもんは部屋にねぇんだよ、だから涼みに行ってくるだけだっつの」

俺はそう一気にまくし立てると、桐乃の横を通って部屋を出ようとする。するとどうだろうか、桐乃の奴が鼻で笑ってきやがったではないか。
ムッとする。
振り返って桐乃を見ると、桐乃もこちらを見ていて目が合う。
918 : ◆k4qYXRI5uY :2012/10/24(水) 01:34:18.91 ID:hjqbnE7P0

「あんだよ?」
「あんたこんな気温で暑いとか言ってたわけ? あたしここに来ても全然暑くなんてないんですけど?」
「嘘ついてんじゃねぇよ、汗かいてんぞ」
「汗じゃないし、脳味噌溶けてんじゃないの?」

売り言葉に買い言葉、俺達は睨みあって言い合う。

「ふん、そこまで言うんだったら どんだけこのクソ暑い部屋で耐えれるか見せてもらおうじゃねぇか」
「はん、上等! 別にこんな暑さ何時間でも耐えれるっつの!」

最終的に、俺達は暑さ我慢大会をすることになったのだった。

……どうしてこうなった。






 ・・・・







……どうしてこうなったの?

あたしは兄貴がまた地味子の所に行こうとするからとめようとしただけなのに、なんでこんな目にあってるわけ?
顎先から滴る自分の汗を感じていると、思わず溜息をついてしまった。

「どうよ? 地獄がどんなか分かったか?」

兄貴があたしが溜息をつくと同時に話しかけてくる。

「べっつに? なんて事無いんだけど?」
919 : ◆k4qYXRI5uY :2012/10/24(水) 01:34:50.90 ID:hjqbnE7P0

互いに頬がヒクついているのを自覚しながらこんな事を言い合う。
もう互いに暑さが限界なのは分かっているのだ。
それを見越しながら互いに強がる。我ながらなんと馬鹿らしいことか。

ちょっと言い合うとまた互いに黙り込む。今涼しさを感じられるのは、たまに入ってくる風と扇風機と風鈴の音色ぐらいだからだ。

朦朧とする頭で風鈴の音だけ聞きながら過ごしていると、突然風が止み、風鈴の音も止まってしまった。
同時に耳に入ってくるのは暑苦しいせみの鳴き声だ。

ただでさえ暑いというのに、何が楽しくて蝉の鳴き声に集中しなくてはならないのか。

「兄貴、風鈴ならなくなっちゃったんですけど」
「あぁ、そうだな」

……暑い。なんていうか、気温がかなり増した気がする。
風鈴の効果を、失ってから知ってしまった。

あの音は、蝉の鳴き声とこの暑さを紛らわせてくれていたのだ。
喧嘩になるので首振りにしている扇風機も今では恨めしい。

「兄貴、風鈴、鳴らない」
「んな事分かってるっつの」

兄貴にもう一度言う。兄貴も風鈴が鳴らなくなってしかめっ面をしていた。
暑すぎて、あたしは喧嘩中だという事も忘れて兄貴に言った。

「なんとかしてよ」
「……お前、俺と喧嘩中って分かってる?」

ハッとするが、時既に遅し。
兄貴がこちらを呆れ顔で見ていた。

「……はぁ」

そんなあたしを見て、兄貴は溜息を吐き出す。
920 : ◆k4qYXRI5uY :2012/10/24(水) 01:35:20.17 ID:hjqbnE7P0

「わぁったよ」

そしておもむろに立ち上がって窓際に取り付けていた風鈴を取った。
そして机の上にある団扇も取ってくる。

「もってろ」
「うん……?」

なにをするのだろうと疑問に思っていたら、兄貴はあたしの隣にどすんと座って、しかめっ面をしながら団扇であたしを扇ぎだした。
ふわりと髪が舞う。

チリンチリン。

あたしの手の中で、兄貴の団扇に扇がれて風鈴が鳴る。

しかめっ面で扇ぎ続ける兄貴。
あたしは思わず笑みをこぼしそうになるのを堪えるのに必死だ。

こんなに暑い中、それに喧嘩中。それでも兄貴はあたしの言った事のために動いてくれる。

それがとても嬉しかった。
もう耐え切れなくて、あたしは笑みを浮かべてしまう。

「ふふっ」
「? どうしたよ」
「なんでもないっつの!」

兄貴が怪訝な顔をするも、あたしは笑い続ける。

この我慢大会がいつまで続くのかなんて知らない。けれどこんな状況も、悪くない。
そう考えてあたしはいっそう笑みを深くしたのだった。



その後。風鈴の涼しげな音色とともに、どこかの兄妹が仲直りをしたそうな。






fin
921 : ◆k4qYXRI5uY :2012/10/24(水) 01:36:59.71 ID:hjqbnE7P0
思いつくまま、自由に書いたらこんなに短くなってしまった…orz

突っ込みたいところは多々あるだろうがスルーよろ
922 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(茨城県) [sage]:2012/10/24(水) 01:38:11.09 ID:NibS1L2wo
乙〜
こいつ……どうあっても思考が女のところにいきやがる
涼みたきゃ図書館なりなんなりあるというのに
923 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/10/24(水) 09:23:53.39 ID:O31naqlDO
>>921
乙。
シチュ見て思い出した。
昔書いたやつの焼き増しだけど、こんなのはどうだい?
924 : ◆odaAq0EgoE [sage]:2012/10/24(水) 09:26:29.03 ID:O31naqlDO
今年の夏すっげー暑い・・・。
まだ6月入って少しなのに、真夏日だよこれ・・・。
じっとしてても汗だくになるよ・・なのに・・・。

「なんでくっついてるんだお前?」
「ん?」

ベッドに横になってる俺の背中から抱きついていた桐乃が、めんどくさそーに声を出した。

『暑いんです!』

今日は土曜日。
折角の休みだから家で惰眠を貪ろうとしたら、あまりの暑さにそれを断念した。
そこで場所変えとばかりに桐乃の部屋に転がり込んだのだが・・・。

「まさかエアコンが壊れてるとは・・・」
「なんのことよ?」
「いや、だから」

ガバッと起き上がりつつ、俺は額に浮かんだ汗をぬぐった。

「暑いだろ?」
「まーね」
「じゃあなんでくっつくんだお前は?」
「そりゃぁ・・・ねぇ」

いきなり右手で頭を押さえられ、そのまま、またベッドに寝倒される。
そして今度は正面から抱きしめられた。

「なーっ!?あーつーいーつってんだ!!」
「うるっさいわねー・・・窓から風が入ってくるでしょ?」
「これ風じゃなくて熱風だぞ!?」
「風にはかわらないでしょ?ったく細かいんだから」

それでもギャイギャイと文句を言ってると、抱きしめていた手がぱっと離された。
驚いて桐乃を見ると、

「うるさい」

いきなりくちづけで口を塞がれた。

「んーっ!んーーっ!!」

抵抗しようとしたが、既に手は押さえ込まれていて、なすがままに口中を嬲られる。
俺の弱いところを知っているキスは強烈で、クチュクチュと音が洩れるたびに、ビクンビクンと体が反応してしまう。
数分後に開放されたとき・・・俺は息も絶え絶えにぐったりとしていた。

「おとなしくなった?」 「な・・・なに・・すんだお前・・・」

暑い中酸欠にされ、頭の中がボーっとする。
そんな俺をニヤニヤしながら、桐乃はもう一度抱きしめた。

「おとなしくしてないと、もーっと凄いことするよ?」
「・・・」

その脅しが効いた。
俺はもはや抵抗する気力もなく、ぐったりとして桐乃の腕の中に納まったのだった。
そんな俺を見て、桐乃ははニンマリと相好を崩しながら、抱く腕に力を込めた。
925 : ◆odaAq0EgoE [sage]:2012/10/24(水) 09:27:25.36 ID:O31naqlDO

「・・・暑いー・・・」

それでもそういう俺に桐乃が呆れたような顔を見せる。

「あーもう、しかたないなあ・・・」

呆れたように呟いて、桐乃は右手だけ俺から離すと、なにやら枕元に手を伸ばして何かをイジッた。
ピッピッと、機械音が聞こえてきて、それからブオーッとコンプレッサーの回る音が低く響いた。
幾ばくも経たないうちに、冷たい風がひんやりと体を撫でていく。
あまりの心地好さに、俺は小さく溜息を吐いた。
あー気持ちええ・・・ええっ!?
思わずガバッと起き上がる。
驚愕と共に。

「ちょ・・っと待て・・・桐乃?」
「ん?なに?」
「・・・エアコン・・・壊れてるんじゃ?」
「ああ。あれ、嘘」
「はあ!?」

あっけらかんと言う目の前の妹に、俺は思いっきり素っ頓狂な声をあげた。

「あたしエアコンて苦手なの。冷えすぎると関節痛いんだよね」

デリケートだから。
そしてニッコリ笑ったりして。

「でも、暑い中抱き合うってのもなかなかいいもんだよね?互いの汗が混ざり合うっていうの?京介の匂いが・・・あれ?京介?どうかした?」

気がつけば、俺は俯いたままプルプルと体を震わせていた。
そんな俺を、ひょいっと桐乃が覗き込む。

「泣いてんの?」
「泣くか!この・・・このド・変態っ!!」
「うん。だから?」
「・・・」

窓から差し込む日差しは強く、午後に差し掛かってもまだまだ暑くなりそうだった。
そんなある休日の昼下がり。

END
926 : ◆k4qYXRI5uY :2012/10/24(水) 10:15:17.55 ID:hjqbnE7P0
乙。
乙なのだが、こんな形で投下するとは…。
こんな形で投下されるとどうしても自分の文才の無さが分かってしまうではないか…orz

だが面白かったので許す。
927 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/24(水) 11:13:37.86 ID:vpg2GDoMo
928 : ◆odaAq0EgoE [sage]:2012/10/24(水) 13:43:01.82 ID:O31naqlDO
>>926
そーゆーなよ。
5年以上も前に書いたやつの焼き増しだし。
徒然書いたあんたの方がよほどスゲーよ。
929 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/24(水) 14:09:18.53 ID:JhggGbUw0
>>914 >>928
乙乙! このまま廃れるのかと思っていた矢先に良い流れ サンクス!
930 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/24(水) 19:09:49.67 ID:ILNExETIO
>>914>>923も乙!
京介の部屋でツンツンの桐乃と、桐乃の部屋でデレデレの桐乃と、いい感じに対比になってて面白かったww
931 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/25(木) 12:33:45.06 ID:OSLPB+L8o
風鈴で\5,000とかwwwwww
支那製の扇風機でもホムセンで\3,000出しゃ買えるしwwwwwwwwwwww
932 : ◆k4qYXRI5uY :2012/10/25(木) 14:51:11.69 ID:hMSv33P70
いや、オーダーメイドって書いてあるだろ?
職人さんが作ったやつなら、軽く1万越えのやつもあるし、さらに描写してたと思うが、京介は扇風機は持ってる。

扇風機二台はいらないだろjk
933 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/10/25(木) 15:12:37.38 ID:bStfwrTko
>>932
ドンマイ、あやせに50万の純銀の手錠を買わせて不評を買った俺wwには
ちゃんと理解できてて、>>931の笑いのツボが理解できんかった
無形文化財の職人作とかまさに五千円級の高級品を無駄に愛息用に選ぶ
(しかしクーラーは買わないww)佳乃さんの脳内とか、
ちゃんと毎食作るがカレー三昧、息子の試験勉強への変な鞭の入れ方
とかと絡めて考えると、その性格は妙に面白いww
数ヶ月で発火回収広告が出てもおかしくない廉価品を安易に選ぶよか
よっぽどしっかりした母親してるという一面もあるし、原作準拠の
ホームコメディとして良質のSSと思ったよ、次もお願い。


ところで誰か風呂敷のたたみ方教えてくらはい
934 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/26(金) 20:49:30.34 ID:qwCGokz1o
>>933
1.風呂敷の四隅のひとつと、その対角線上のもう一方の四隅をつまみ上げます
2.このとき、風呂敷のちょうど中心にあやせが座っているか確認してください
3.あやせのつむじの真上で軽く結び目を作ります
4.残りの四隅も同じようにして、つむじの上で結び目を作れば出来上がりです

ってな、……あー、SSのネタがなーんも思いつかん
935 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/27(土) 00:52:46.19 ID:2pJWzR/Vo
正直、原作があの展開だとネタに困るんだよなー

冒頭だけ書いて放置してるあやせエロSSも前々回の引きから京介と付き合い始めたって設定にしようとしてたんだけどね
あの展開じゃ作者は明言してないけど、桐乃か地味子以外はアウトとしか思えなくてネタ潰しされた感がしなくもない

俺妹Pみたいに派生ルート扱いもできなくはないけど、なんとなくそれは気が乗らない
936 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/27(土) 01:02:02.26 ID:CR8IYS7DO
>>935
わかるなぁ…。
いっそ桐乃無双にしちまえたらいいんだけど、日向とかあるからなぁ俺…。
937 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/27(土) 08:26:26.43 ID:PXoMuf+b0
恋人の可能性あるのは普通に考えて麻奈実か黒猫
そしてSSは原作に無いからこそ近親ルートとか書く事が出来るんだから
別に何の問題もない筈
最初から妄想みたいな話が多いんだし遠慮なく書けよ

938 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/27(土) 09:48:23.02 ID:CR8IYS7DO
>>937
いやそうじゃねーんだ。
なんつーのかな、あの展開を読んじまった所為で、妄想し辛くなっちまったんだ。
あんたのゆー通り、SSは妄想の産物だろ?
その生産過程が、11巻で根こそぎ奪われちまったんだよな。
939 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/27(土) 10:36:03.37 ID:84ESG6Qc0
7巻発売後〜8巻ネタバレ直前の時期が
一番SS多かったのもそういう事だろうな

妄想しやすい原作の状況
940 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/27(土) 12:01:33.70 ID:lalXWFV4o
「俺妹」は、巻を追うごとに沙織とか麻奈実とかのサブキャラの扱いが雑になっていったし
もしイラストやアニメがなかったら、ストーリーだけではたしてここまで人気が出たんだろうかって気もする
9巻以降原作本がどの程度売れたかは判らんけど、途中で離脱した人もいるんじゃないかね

たとえばだが、「とらドラ!」なんてのはすべての登場人物が全編にわたってストーリーに絡んでくるし
サブキャラ一人ひとりが魅力的で、みんな傷つきながらもどこか報われるみたいで読後感がいい

「俺妹」のように極端な信者があらわれてくると、ごく普通に楽しんでいた読者は興ざめするんじゃね
原作者に脅迫メール出して逮捕されたあいつは今頃なにやってるんだろう
941 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/27(土) 12:56:18.62 ID:czDFFLz/P
あまりに偏ったキャラの扱いしてたしなあ
キャラの使い方が上手くないのかもな
魅力はあっても出番が少ないキャラもざらだし
人気やキャラの扱いやすさに傾倒しすぎたゆえの弊害かもね

離脱ってかよくわからん変貌したやつとかはいるみたいだけどな
話の引っ張り方が酷いせいで色々問題も起きたし
942 : ◆odaAq0EgoE [sage]:2012/10/27(土) 13:11:09.32 ID:CR8IYS7DO
>>940>>941
part.13まできといて、今更何言ってんだよとww
今が妄想しにくいだけで、完結したらいくらでも妄想できるんだっつの。
そのあとスピンオフでも出してくれりゃ、万々歳だしな。
作品批判なんざお門違いだ。
俺は、俺妹が好きだからSS書いてきたんだっつの。
943 : ◆k4qYXRI5uY :2012/10/27(土) 17:27:30.29 ID:Qu2aH0yt0
940も941も俺妹好きだからここに来てるんだろうし、まぁ、仲良くしようぜww

ところで、投下していい?
このまま議論続けるなら俺も参加して一花咲かすけど。
944 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/27(土) 18:21:45.68 ID:lalXWFV4o
17:27:30.29から50分経過か……。な、人が少なすぎて笑っちゃうだろ

>このまま議論続けるなら俺も参加して一花咲かすけど。

土曜だし、無礼講でいいならそれもまた一興かと

945 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/27(土) 18:23:18.43 ID:JPBu7at00
妄想しづらい → 書きづらい ってのが議論の発端みたいだし
投下してもらえるなら、うれしい限り
946 : ◆k4qYXRI5uY :2012/10/27(土) 18:24:43.01 ID:Qu2aH0yt0
まぁ確かに人少なすぎてワロタww
もう本当に廃れたなぁ、もうpert13なのにどうしてこうなった…。
原作が好き嫌い分かれる展開になったせいだろうか?

昔はもっと、こう、なんていうかさぁ。
活気があったのになぁ。
947 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/27(土) 18:35:01.74 ID:lalXWFV4o
たしかに昔はもっと活気があった
以前はスレの残りが50を切るころになると、投下すんのも躊躇しなかったか?
流れが速くてすぐに次スレになっちまってさ。おい! 俺のSSはもう過去ログ行きかよって

ラー油買って来るわ
948 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/27(土) 18:38:09.82 ID:qli0U9bqo
アニメ2期で少しは戻るんじゃね
949 : ◆k4qYXRI5uY :2012/10/27(土) 18:43:15.85 ID:Qu2aH0yt0
俺の予想では望み薄。
アニメの二期は結構前から言われてたのに今はこのザマだからね。

まぁアニメの二期で全盛期のようになることを祈っているよ。

それでは、嬉しいといってくれる人もいるので、短文だけど投下。
950 : ◆k4qYXRI5uY :2012/10/27(土) 18:44:38.68 ID:Qu2aH0yt0
妹の特権




妹というのは、結構有利だ。
あたしには出来て、皆にはできないことが結構ある。

一つ。

兄貴にひっつける。
どんな時でも、どんな状況でも。

抱きつかれた本人の兄貴も、嫌な顔をしながらも決して拒否はしない。ちょっと顔を赤くしながら溜息をついて「しょうがねぇな」と言って許してくれる。
あたしは嬉しくなってもっと力を込める。兄貴はちょっと笑って、ちょっとだけ抱きしめ返してくれる。

そしてまた嬉しくなる。

ループ。ループ。

これは、妹の特権。


二つ。

一緒に寝れる。
性的な意味では無いのだが、睡眠的な意味では一緒に寝れる。

布団に潜り込むと、兄貴はやっぱり嫌な顔をする。だけど追い出す事は無い。それどころか、たまに扉を開けると、布団を自分で開いて招き入れてくれる。
兄貴の体温で温まった布団は、とても暖かくて良い匂いがする。自分の布団で寝るより、深く眠れる。
寝たふりをしていると、あたしが風邪引かないように、自分の分の布団を差し出してまであたしに掛けてくれる。

兄貴の優しさと、匂いと、暖かさに包まれて眠れる。

多分、これも妹の特権。


三つ。

兄貴に命令できる。

どんな命令でも、兄貴が断った事は…たまにしか無い。

キス。頬にだけど、してくれた。
兄貴の唇は、男のくせにとても柔らかくて、気持ちよかった。
今度またやってもらおう。

ハグ。皆の前では恥ずかしがってやってくれないけど、二人の時はやってくれる。
ここでは、兄貴に男を感じる。固く、厚い胸板。広い肩幅、身長。
だけど、やっぱり兄貴は兄貴で、暖かい体温に優しい抱きしめかた。優しさを感じて思わず目を瞑ると、兄貴の心臓の鼓動は想像以上に早くなっていて、それに嬉しくなる。

荷物持ち。

こんな言い方しか出来ないけど、これはデートのこと。
嫌な顔を、しているがとても目が優しい兄貴。そんな兄貴を連れまわしながらあたしの服を選んでもらう。センスが無い、そう言って今度は二人で選ぶ。
ついでに兄貴の服を選んで、買ってあげる。兄貴は恥ずかしげに頬をかきながら、「サンキューな」と言ってくる。あたしも照れ隠しをしながら、そっけなく「べっつに」と答える。
そんなやりとりも楽しい、特別な日。

そして選んであげた服を、兄貴はよく着てくれる。そんなところも大好きで、特権その一を乱用する。

これは、微妙なのが嫌だけど、多分あたしが一番命令してるから。
妹の特権。
951 : ◆k4qYXRI5uY :2012/10/27(土) 18:45:17.51 ID:Qu2aH0yt0


四つ。

世話を焼いてもらえる。

どんな時でも、どんな場所でも、兄貴は私を助けてくれる。

お弁当を忘れたときでも、兄貴は恥ずかしながらもあたしの教室まで持ってきてくれる。自分の休み時間を削って、汗だくになりながらも走ってきてくれる。
そんな時の兄貴は、シャツが透けたりして、とってもエロい。だから、兄貴のそんな姿を見られたくないから、すぐに追い返してしまう。自己嫌悪に陥って、家に恐る恐る帰る。でも、兄貴はいつもどおりで、優しくて、抱きしめる。

友達と喧嘩したときも、兄貴は自分を悪役にしてまであたしとの仲を取り持ってくれる。
あたしはとても嬉しい気持ちと、嫌な気持ちがこみ上げて来る。だって兄貴は嘘をつくのが下手だから、大概友達にバレる。そして兄貴を見る友達の視線が、ピンク色に変わる。
あたしの為に頑張ってくれるのは、とても嬉しい。けど、こうやって女を垂らしこむのはたまに傷。

勉強が分からないときでも、兄貴は自分が分からなくても、わざわざ調べてまで教えてくれる。どんだけかかっても、調べて教えてくれる。
あたしのためなら、どんな手間だっていとわずにやってくれる兄貴が、とっても好き。
大好き。







でも、そんな特権が一杯あっても、駄目なところが一つある。

【結婚できない】

これだ、妹には、兄貴と結婚できないという…いらないオプションがついてくるのだ。

でも、兄貴をあたしの物にするためなら、あたしは何でも出来る。お父さんやお母さんがあたしから兄貴を奪うなら、あたしは家出をして兄貴を攫ってでも抵抗する。できる。
本当にそんな気がする。

だから、あたしはこの法律を変えるために、政治家になることに決めた。
18禁もついでに無くそう。

待っててね、兄貴!




妹日記。第198章、236ページより抜粋。







fin
952 : ◆k4qYXRI5uY :2012/10/27(土) 18:48:51.18 ID:Qu2aH0yt0
もう最近ではプロットを立てて本格的に書く事も無くなってきたなぁ。
これも殆ど即興物だし。

製作時間は初の十分だす。

多分このスレで書く最後の作品。次スレが立つまでは皆が投下するのを待つ事に専念することにする。
953 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2012/10/27(土) 19:53:48.30 ID:gz2Kq/oEo
良いなこれ
954 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/27(土) 20:19:29.11 ID:5YWiHvfno
乙。
桐乃が可愛くて、でも切ないな。
それで終わらせないところも桐乃らしくていいね。
955 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/27(土) 22:18:28.87 ID:URHxwbuko
乙です
俺は自分は書けないけど、みんなが書いたのをすごく読んでるよ
何回も読み返してるし、行き帰りの電車でも読んでる
だから書いてもらえると嬉しいな
956 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/27(土) 22:46:39.37 ID:lalXWFV4o
>>952
乙です。この様子ならPart.14もありだね

>>955
自分は書けないけどなんて言わないでよ。SS書き始めると、きっと病み付きになると思うよ
地の文が苦手とかだったら、先ずは台本形式で書いてみたら?
投下してレスがもらえたときの気分は、書いたもんにしかわからないかも
957 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/28(日) 01:03:32.29 ID:kj9p0giQo
SS読んでるとな、このSSおもしれーなって気に入った作品を読み返すんだよ
そのうちそういう作品が増えてな、俺もこういう発想力があったらな、とかこういう話を書いてみたいと思い出すようになってな?
そして実際にネタを考えて走り書き程度でもメモってだな、そのメモを元に肉付けしたり中身を膨らませるんだよ
ほら、SS書いてるだろ?
958 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/28(日) 01:06:23.21 ID:kj9p0giQo
言っとくけどこれ実体験だからな
初めて書いたSSが自己評価よりも良くて、上手いオチが思い浮かばなくて、調子乗って個別スレ立てて書き直したのは良い思い出
959 : ◆odaAq0EgoE [sage]:2012/10/28(日) 02:58:27.45 ID:VoHeYYYDO
>>943
だぁなぁ。
わざわざ書き込むっつーのはそーゆーことだよな。
すまん。
あんたの作品好きだぜ。
桐乃の可愛さ凶悪過ぎだろww

さて俺も書くとすっか。
レス貰えたときの嬉しさ求めによww
>>129の続き。
960 : ◆odaAq0EgoE [sage]:2012/10/28(日) 03:01:07.25 ID:VoHeYYYDO

「あ、そーだ」
「ん?どした?」
「はい。高坂くんコレ!」

ある日の家庭教師のあと、日向が嬉しそうに俺の目の前に、なにやら可愛らしくラッピングされた箱を差し出してきた。
・・・また眼鏡とかか?

「えーと・・・日向ちゃん、なにこれ?」

受け取りつつ俺は当然の疑問を口にする。
プレゼントにしちゃ、俺の誕生日は疾うに過ぎているしな。
なにより前例が前例だしな。

「なにって、チョコレートだよ?」

さも当然とばかりに日向が言ってきた。
言われて、ああと頷く。
そういや桐乃や黒猫もなんかくれてたな。
嫌味と共に。

『あんたバレンタインチョコなんて一つも貰えないでしょ?だ、だからあたしが恵んであげるっつの!』
『か、勘違いしないことね?これは儀式の一つなの。私がより一つ上の存在に成るための。光栄に思いなさい?この私に協力できることを』

・・・いやまあ・・・嬉しかったけどね?
961 : ◆odaAq0EgoE [sage]:2012/10/28(日) 03:02:43.48 ID:VoHeYYYDO

「ほら、告白したわけだし、こーゆーイベントも着々とこなしていかないと」

少し照れ臭そうに言う日向。
俺はその姿に・・・ちょ、ちょっとだけ、ちょっとだけだぞ!?見とれながら言葉を返す。

「・・・OKしたおぼえはないぞ?」
「いーんだって。女の子は好きな人に贈れればそれで」

へへっと頬を赤らめて言う日向は、本当に可愛くて。

「・・・ありがと、な」

俺は思わず目を逸らしながらお礼を言った。
それが気になったんだろう。

「ん?なに嬉しくない?」

日向の顔が、少しばかり曇ったように見えたんだ。
慌てて言葉を繋げた。

「んなことねーよ!・・・ただ、日向ちゃんに悪いなって思ってさ」
「なんで?他の娘からも貰ってるから?」

なぜ知ってる!?
じゃねーよ!!

「ちげーよ!大体あいつらのは義理チョコだ!日向ちゃんのとは比べ・・・あっ!」
「・・・いやー、さすがに照れるよ今の?」

気がつけば、日向はどこか居心地悪そうに真っ赤な顔で苦笑を浮かべてた。

「わ、わりっ!」

うわあ今俺スッゲー顔真っ赤だ絶対!
小学生女子に、めちゃくちゃ恥かしいこと言っちまった!
でもなぁ・・・本音なんだよな、自分でも驚くほどに。

「そーじゃなくて・・・こんな宙ぶらりんなままなのに、こーゆーことして貰って、そんで素直に嬉しいとか思っちまうことが失礼っつーか・・・」
「まじめだねー高坂くんは」

照れながらも、嬉しそうに言う日向。
その姿は本当に可愛くて。

「性格だからな」

知らず俺も微笑んでいた。
・・・なんだろうなこれ?
なんかすごく照れ臭くて、その実、物凄く楽しい。
これって本当になんなん・・・。

「ま、そんなとこも好きなんだけどねー」
「んなっ!?」

日向の一言に、あっという間に思考が打ち切られる。
962 : ◆odaAq0EgoE [sage]:2012/10/28(日) 03:03:40.10 ID:VoHeYYYDO

だからそーゆーことをさらっと言わないで下さい!
明らかにからかわれてるよ俺!!
でも、な・・・。
それが嫌じゃない俺は確かにいて。

「・・・」
「高坂くん?」

不意に黙ってしまった俺に、日向は首を傾げて覗きこんでくる。
はは。相も変わらず可愛いなお前。

「日向ちゃん」
「ん?なに?」

俺の言葉に素直に答える日向。
オーケィ。覚悟はすでに決めたぜ。

「お返しは期待していいぞ」
「へ?・・・貰えるの?」

しかし日向の言葉に俺は全力でズッこけた。
うおおいっ!?

「どーいう意味だ!?貰うだけ貰って返さねーとか、俺お前の中で何設定なんだよ!?」
「貢がせるだけ貢がせてポイッとしちゃう鬼畜兄貴?」
「予想の遥か上の低評価きたー!!」
「・・・ルリ姉のことがねーやっぱ決め手だよねー」
「あれは俺が振られたんだよ!?てゆーかしれっと生傷抉ってくんじゃねー!!」
「あははは冗談冗談」

ケラケラと楽しそうに笑う日向。
おおい。
ヒデーこと言っておいて、その態度はどーなんだ?・・・ぷ。くく。
しかし俺は内心でひどく嬉しかった。
つまりこいつにとっちゃ、俺はひどいこと言っても大丈夫。
そこまで心許せる相手ってことだろ?
なら喜びしかねーだろーが。

「・・・お前の冗談は地味に俺の心を削ってくるよな・・・」

でもそんなことはおくびにも出さず、俺は大仰にため息をついてみせる。

「生きてればいいことあるよ。元気出しなって」
「お前が元気なくさせたんですけどねえぇ・・・?」
「あっははごっめんねー」

ばーか。
謝る必要なんかねーよ。
・・・覚悟しろよ?

「ならよ」
「ん?」

先の笑いの余韻か、目元の涙を拭っている日向。
俺はゆっくりと日向に近づくと・・・優しく胸のなかに抱き締めた。
963 : ◆odaAq0EgoE [sage]:2012/10/28(日) 03:05:34.26 ID:VoHeYYYDO

「・・・へっ!?」

一瞬後に驚いた声をあげる日向。
はは。ざまあみろ。

「なっ!?なななここここ高坂くんっ!?」
「んー?なんだー?」
「な、なんだーってなんだっ!?いいい今、あたし抱き締められちゃってんだけど!?」
「あー、そーだなー」

面白いように動揺してるなこいつ。
顔を見るのも楽しそうだが・・・今は、この感触を楽しもう。

「そーだなじゃないって!!な、なにしてんの!?」
「お前抱き締めてる」
「い、いやそれは現在進行形でわかってるっての!!な、なんでこんなんをしてんのかを・・・」
「お返し」
「お返し!?ってわけわかんない・・・って・・・え?」

そこまで言って日向は顔を俺に向けてきた。
その目をまっすぐに見つめながら、俺はニッコリと微笑んだ。

「お返し。バレンタインの」
「・・・このハグが?」

少し不安そうに言ったその唇を唇で塞ぐ。
数秒後、顔を離した時には日向は涙目になっていた。
わかってる。
ちゃんと言葉にしてやるから心配すんな。

「好きだよ日向ちゃん」

わかりやすく二回に分けてやる。

「だから、俺をやるよ」

そうだ、もういい。
俺はようやく自分の気持ちに素直になった。
この小さな愛しい存在に。

「因みに返品は不可だ」

なんたってロリコンに目覚めさせたのはお前なんだからな?

「責任とれよ?」
「それ・・・女の子の台詞・・・」

ぽろぽろと、涙を零しながら笑う日向を見ながら、俺はこんな風に思った。

『俺がこんなにロリコンなわけ・・・でいいやもう』

「日向ちゃん」
「・・・なに?」
「つきあってください」
「!?・・・はい・・・」

こうして俺たちは恋人同士になった。

END
964 : ◆6U1bthnhy6 [sage]:2012/10/28(日) 03:08:07.98 ID:VoHeYYYDO
以上です。
ああ・・・久々に書き下ろすとやっぱ楽しいなぁww
965 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/28(日) 10:43:09.77 ID:K5x4B9olo
乙!
この京介に一言言いたい。



`_
966 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/28(日) 15:33:40.80 ID:Z+PTg9j40
旅行で3日家を空けてたら連続投下されていてワロタ
ホントにみんな乙
なんだかんだ言って小気味良い秀作がちゃんと投下されるからこのスレ好きだ
967 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/28(日) 15:50:50.33 ID:fCi7+7VQo
prpr
968 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/29(月) 00:50:23.94 ID:bVqwQvnFo
>>956>>957
ありがとう。まずは書いてみる事だね。よし!

>>960
日向ちゃんかわいすぎww
桐乃厨だけど日向ちゃんシリーズは楽しめる不思議!
969 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/29(月) 17:25:40.05 ID:m8eDf4pI0
970 : ◆odaAq0EgoE [sage]:2012/10/29(月) 21:26:54.44 ID:wmH14wqDO
>>969
早すぎじゃね?ww

いやしかし眠い目擦りながら、勢いだけでSS書くもんじゃねーな;
次の日自分で読んで、あまりの拙さに顔から火が出た(苦笑)
そんな駄作にもレスつけてくれるあんたたちが大好きだww
ありがとう。次は頑張る。
971 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/29(月) 23:12:09.54 ID:qK51TNgo0
>>970
何言ってんだよ
おまいのSSは駄作なんかじゃねぇよ
これからも無理の無い範囲で俺たちをたのしませろください
972 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/30(火) 20:57:03.96 ID:8nlfihEto
おまわりさんあいつです。
973 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/30(火) 22:30:16.87 ID:D3rz+tUp0
>>972 何?
974 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/31(水) 12:51:17.26 ID:oskEcZeq0
あと26レス誰か景気良く埋めてくれないか?
975 : ◆odaAq0EgoE [sage]:2012/11/01(木) 08:27:46.98 ID:RxTmF7EDO
>>972
俺を通報すんじゃねーよww

>>974
景気よくとはいかねーが、以前>>839にエロは無理でもパロは上手いなとか言われて、したらパロのスペシャリストになったろかい!と思ったときに思い付いたやつ、次レスより投下。
976 : ◆odaAq0EgoE [sage saga]:2012/11/01(木) 08:29:42.79 ID:RxTmF7EDO

「いってて!いってーよっ!桐乃っ!!」
「うるっさいなー、いま技の練習してんだから我慢しなさいよ」

・・・現在の俺たちの状況を説明しよう。
俺、高坂京介は自室のベッドで昼寝をしていた。
突然走った激痛により目覚める俺。
寝相は悪くないはずだが、今日に限ってうつ伏せになってると自覚。
事態を把握すべく起き上がろうとするが、腰辺りに何やらプニプニとしたものが乗っかっていて身動きとれず。
そうして俺の両腕は、何かに手首をつかまれたまま、背中側から頭の方に押されていて・・・逆関節のようなことをされている。
ようするに、だ。

「ふざけんな!メチャクチャいてーんだぞテメエ!!」

ってことだ。

『パロスペシャルをやってみた』
977 : ◆odaAq0EgoE [sage saga]:2012/11/01(木) 08:31:16.41 ID:RxTmF7EDO

「もーうるさいってーの。そんなの当り前じゃん痛くしてるんだから」
「当たり前じゃねーよ!そもそもなんでこんな事されてんの俺!?」
「あ、これパロスペシャルって言うんだよ?」
「知ってるよ!こんな事ってのは技名じゃねえ!!何のためにこんなことされてんのかってことだっ!!」
「そりゃまあ・・・来たるべき大会のため?」
「どこの超人タッグトーナメントに出るつもりだよお前!?そんなん、黒猫と邪気眼ドッキングの練習でもして・・・いててててっ!!もげるもげるっ!!」
「・・・あいつを邪気眼って言うな・・・」
「どの面下げてお前がキレれんのそれっ!?」

その後も10分ほどゴチャゴチャあって、やっと解放された俺だった。

「いってー・・・お前マジこれ血管切れたぞ・・・?」

俺は両肩をさすり揉みつつ、自分の体を探ってみる。
幸い筋は違えてないものの、細かい血管の何本かは切れたようだ。
腕の痺れが痛みと一緒になってまとわりついている。

「だーから、調子に乗りすぎたってゆってんじゃん」
のわりにゃ、全く悪びれる様子がねーなお前・・・。

「・・・真摯なる謝罪とかはないんですかねえ?桐乃さん・・・?」
「うえ」

うおい。
俺の言葉に、心底嫌そうに顔をゆがめる桐乃。
・・・殴っていいですよね、俺?
978 : ◆odaAq0EgoE [sage saga]:2012/11/01(木) 08:32:54.53 ID:RxTmF7EDO

「お前な・・・」
「んー・・・」

気がつけば、桐乃は右手の人差し指を顎に当てながら、なにやら唸っている。

「なに考え込んでんのお前?」
「いや。謝らずにあんたに責任取る方法」
「そこまで嫌なんだ!?」
「うん」

真顔で言いやがったよこいつ!

「あ」

すると桐乃は、とてもいい名案を思いついたように満面の笑みを浮かべると、俺に向かってこう言いだした。

「あんたも同じことすりゃいいじゃん!」
「は?」

言ってることが呑み込めず、マヌケな返答をする俺を尻目に、

「はい」

ポスン、と桐乃は俺のベッドに寝っころがってしまった。
仰向けに。

「・・・なにしてんのお前?」
「だから技を受ける準備」
「・・・俺、パロスペシャルかけんの?お前に?」
「さっきからそう言ってんじゃん」
「・・・なんで仰向けなわけ?」
「え?だってうつ伏せだと痛いじゃん」

これだと肩関節可動域だし。

「お前さっきまさにそれを俺にかけてやがりましたよね?」
「うるっさいなー・・・で?どーすんの?やるの?やらないの?」

なんでお前が半ギレになってんだよっ!?

「あーはいはい!やるよ!やってやりますよ!」

言いながら俺はベッドへよじ登り、桐乃の腰の辺りを立て膝で跨いだ。

「うお・・・」

思わず呻いたのは許してくれ。
だってよこの体勢から見下ろす光景・・・ヤバすぎるぞ?
979 : ◆odaAq0EgoE [sage saga]:2012/11/01(木) 08:34:15.86 ID:RxTmF7EDO

「あ、う・・・」
「・・・なにやってんの?・・・はい」

俺が二の句を継げないでいると、桐乃が両手を差し出してきた。
うお、待て!ちょっと待てっ!!
俺は必死に心の中で言い募った。
なんだその、『さあおいで?』的な仕草は!?
ヤバさが格段に上がっちまったじゃねーか!

「なにやってんの?早く」
「い、いやちょっと待て・・・やっぱいいわ。もういい・・・」
「はあ!?あたしがここまでお膳立てしてあげてるのにここでやめるとか有り得なくない!?」

そのお膳立てが格段にヤバいんだっつーの!!

「いやお前・・・」
「あーもうめんどくさい!ほらっ!!」

言いながら桐乃は俺の手首をつかんで持ち上げた。

「ほらあたしの手首掴んで!」
「あ、お、おう?」

いきなりの事で頭のまわらない俺は言われるがままに桐乃の手首を掴む。

「よし。じゃいくよ?」
「へ?」

なにが、と言う 暇もなくいきなり桐乃の手が万歳をするかのように上に・・・俺からすると前方へと倒していく。

「わわっ!」

思わず手首をつかむ手に力を込める俺。
細ぇっ!なんだこの華奢な感触は!?
折れるんじゃねーのコレ!?
しかしそんなことはなく、必然的に桐乃の手首を握っていた俺は、そのままの勢いで前方へと引っ張られ・・・。

「・・・おおぅ」

気が付けば・・・桐乃に覆い被さるような格好になっていた。
『最高に最悪』な、ヤバい格好にな・・・。
980 : ◆odaAq0EgoE [sage saga]:2012/11/01(木) 08:36:03.70 ID:RxTmF7EDO

「・・・」
「・・・なに?」

・・・なに?じゃねーよ。

「・・・どくぞ?」
「ダメ」
「ダメじゃねー。手、離せ」
「やだ」
「桐乃」
「やだ」

くそぉ、またかっ!!
俺は一つ、大きくため息をついた。
最近よくあるのだが、この様に、桐乃が端的な物言いになることがままある。
そのときの桐乃は、理性や理論などどこ吹く風。
鉄壁の理不尽さを纏ったお姫様になる。
基よりの理不尽さなど比べるべくもないほどに。

「あーそうかい・・・」
「?」
「・・・好きにしろ」

早々に両手を上げた俺に、桐乃は、それはそれは嬉しそうな笑顔を浮かべたりして。
バカ野郎。
可愛いからやめろってんだ・・・。
981 : ◆odaAq0EgoE [sage]:2012/11/01(木) 08:37:36.06 ID:RxTmF7EDO

「・・・んで?こっからどーすんだ?」

超至近距離にある桐乃の顔を見つめながら言ってやる。

「・・・」
「・・・」
「・・・ん」
「っ!?んなっ!?」

しばらく見つめてたと思ったら、とんでもねーことしやがったよこの妹!!

「おまっ!き、キスしやがったな!?」
「うん」

うん。じゃねーっ!!

「お前な!世の中には、して良いことと悪いことがあってな、今のは「ヨーロッパじゃ挨拶だよ?」
「あきらかに・・・あ?・・・え?」
「挨拶」

言われた言葉に一瞬頭が真っ白になる。
挨拶?
ん?んん?
・・・確かに欧米じゃ、親愛の情としてキスは挨拶の一つ・・・だよな?
あれ?
でもあれって頬じゃ・・・?

「・・・挨拶のキスは頬じゃなかったか?」
「それは他人にも、でしょ?家族・・・特に兄妹は、仲良くしなきゃいけないから」

口なの。
桐乃の、一点の曇りもない、まっすぐな瞳で見つめながらの言葉に、俺は・・・。

「・・・なるほど」

と、至極あっさり納得したのだった。
ああ。
あとで死ぬほど落ち込んださ。
自分の流されやすさ加減に・・・。
982 : ◆odaAq0EgoE [sage saga]:2012/11/01(木) 08:38:07.82 ID:RxTmF7EDO

「わかったならもーいっかい」

言い様、目の前で桐乃が、んっ、と目を瞑り顎をそらした
・・・俺からもしろってかい・・・。

「・・・挨拶なら一回で良いんじゃねーの?」
「こないだ映画見たでしょ?お互いに返してたよね?」
「・・・」

ええ。してました。
けど、

「・・・あれって恋人同士でしたよね?」
「細かい」
「かなり大きいと思いますけど?」
「・・・ん」
「おもくそスルーかよ!?」

スゲーなお前!!

「ん」
「・・・」
「ん」
「・・・」
「ん〜〜〜っ」
「・・・あーもうっ!!わーったよっ!!」

やけくそだこの野郎!
あとで殴りかかったりすんじゃねーぞ!?

「ん」
「・・・はぁ・・・」
「・・・これでいいか?」「・・・うん。・・・えへへ」

照れ笑いなんだろうか?
微笑みを浮かべた桐乃は、不意に俺の頭を抱き締めた。
あー!!なんだこの居たたまれなさ!?

「だー!痛えよ桐乃!あと当たってる!」
「いーよー。シスコン兄貴には(喜)でしょー?」

よくねーよ!!
なのになんで俺は・・・くそっ!!

「意味わかんねーこと言うな!それに『パロスペシャル』どこいった!?」
「そんなん」
「ん?」

その時の桐乃は、本当に幸せそうに微笑んで言った。

「あんたがあたしの『特別な癒し』だから無問題」
「はぁ!?・・・『スペシャル』が『特別』ってのはわかるが、パロ?・・・癒しってのは・・・?」
「あとでググれ」

そう言って、桐乃はもう一度俺に唇を重ねた。

END
983 : ◆odaAq0EgoE [sage]:2012/11/01(木) 08:39:37.48 ID:RxTmF7EDO
以上です。

984 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/11/01(木) 08:44:03.87 ID:3Fqo/PxUo
乙です!
流石パロのスペシャリスト
985 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/11/01(木) 09:58:02.39 ID:COnNqh9So
>>983


次スレよろしく
986 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/01(木) 19:33:54.39 ID:JQTaEfk30
>>983
乙乙!
>>974>>839も俺だけどやっぱおまいさんスゲーわwww
次スレも期待してるぜ
987 : ◆odaAq0EgoE [sage]:2012/11/01(木) 21:29:28.25 ID:RxTmF7EDO
>>986
お誉めに預かり恐極ww

したら次スレ建ててくれねーか?
俺、携帯な上に建て方解らんww
988 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/01(木) 21:55:01.64 ID:Q7EtrJOMo
現行の関連スレって

○【俺の妹】高坂京介は落ち着かない
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1296372251/
○沙織「京介先輩」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1305915497/
〇京介「ポケモン?」あやせ「はい」桐乃「その4!」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1333506723/
〇【俺妹】高坂家に親戚の幼女がやってきた
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1351436829/

くらい?
これ以上なければ深夜になる前に建てるけど
989 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/01(木) 22:09:03.96 ID:JQTaEfk30
>>988
頼む
俺も建て方解らんのだ
スマソ
990 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/01(木) 22:18:24.31 ID:Q7EtrJOMo
ほい

俺の妹がこんなに可愛いわけがないSSスレ Part.14
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1351775844/
991 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/01(木) 22:40:57.12 ID:JQTaEfk30
>>990
サンクス
しかし関連スレも減ったね
人気絶頂でdat落ちしたスレも多いし
992 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/01(木) 22:51:24.54 ID:Q7EtrJOMo
願いなんかはまさにそうだよな
続いて欲しかったけど、忙しかったからか作者行方不明のままだからな
993 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/01(木) 23:11:38.42 ID:I65uuHnAO
埋めネタを書こうとジタバタしてるうちに埋まりそう

>>990

994 : ◆odaAq0EgoE [sage]:2012/11/02(金) 00:45:00.74 ID:Qf+ETlZDO
んじゃ、愚にもつかないことで埋めていこうかねww

>>965
書かなかったけど、最初この米の意味がわからなくてさ、理解したときビール吹き出したww
今さらだが返せww

あと、誰かパロはググってくれたのかね?ww
995 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/02(金) 01:47:39.56 ID:eVKNJ6VAo
パロでggったらアザラシロボなんてのが出てきたぞ
996 : ◆odaAq0EgoE [sage]:2012/11/02(金) 01:59:10.05 ID:Qf+ETlZDO
>>995
それだww
パロ=癒しってわかったとき、今回のパロスペシャルが完成したよのさww
997 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/02(金) 02:00:07.72 ID:7vI2ZR7Wo

4レス分SS書いたから埋めます
998 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/11/02(金) 02:03:06.08 ID:7vI2ZR7Wo

十一月に入って最初の金曜日、なんの前触れもなくあやせが俺んちにやって来た。
俺が二階の窓から見ているとも知らず、あやせは玄関のチャイムも鳴らさずに裏庭へまわったんだ。
一体なにをしに来たんだか知らねえけど、どう見てもあやせの様子はただごとじゃない。
俺は部屋を飛び出し、階段を駆け下り、あやせに気付かれないよう慎重に玄関のドアを開けて外へ出た。

家の壁に身を隠して様子を窺うと、なにやらあやせがスコップで庭を掘ってるじゃねえか。
他人の家までやって来て、わざわざ落とし穴を掘るヤツなんかいるわけがない。
生ごみ用の穴? それもねえな。

「おい! そんなとこ掘ってなにを考えてんだおまえは!」

「……」

「あやせ! 俺が訊いてんのに無視するんじゃねえよ、ったく」

「見てわからないんですか? 穴を掘ってるのに決まってるじゃないですか」

なんなのこの言い草。そんなの見りゃあ俺にだってわかるっての。
俺が訊いてんのは、なんであやせが俺んちの裏庭で穴を掘ってるかってことだろうが。
もともと頭のおかしなヤツだったけど、とうとうここまできちまったのかよ。

あやせがなにを考えてんだかわからねえが、勝手に穴なんか掘らせるわけにはいかない。
もし親父にこんなところを見られたらただじゃすまねえし、下手すりゃ俺がやらせてるって勘違いするだろう。

「なあ、よくわからねえけど、とにかく俺んちの裏庭で穴を掘るのはやめてくれ」

「なんでですか? わたしが穴を掘ったら、お兄さんが困るとでも言うんですか?」

「困るんだよ! こんなとこ親父に見られてみろよ、俺が怒られるに決まってんだろうが」
999 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/11/02(金) 02:03:40.50 ID:7vI2ZR7Wo

「お兄さんが怒られて済むならそれでいいじゃないですか」

「おまえが言ってること、俺にはさっぱりわからねえんだけど……」

「つまりこういうことです。……お兄さんが怒られても、わたしにはまったく関係がないっていうことです」

ふざけるのも大概にしろと怒鳴りたいところだが、スコップを手にしたあやせに迂闊なことはいえない。
下手すりゃそのスコップで殴られ、あやせが今掘っている穴がそのまま俺の墓穴にならないともかぎらねえ。
こういうときは俺が大人になるというか、下手に出るしかあるまい。

「なにがあったか知らねえけど、あやせは今、穴を掘りたくてしかたがねえんだよな?」

「別に、わたしはそんなこと一言も言ってませんけど」

俺の訊き方がまずかったんだろうか? 会話がまるっきり成立しやしねえ。
まあ、あやせに関して言えばこんなもんかもしれねえけど、とにかく穴が掘りたいわけじゃねえようだ。
じゃあ一体なんなんだってことになるが。

「あやせ、すまなかった。俺の言い方がまずかったみたいだな」

「そうですね。言いたいことがあるのならはっきりと仰ってください」

「……あやせがなんで穴を掘ってるのか俺にはわからないんで、申し訳ないが理由を教えてくれねえか?」

「初めからそう言えばいいんですよ」

「ああそうかよ! そりゃあどういたしまして、俺は馬鹿だからな」
1000 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/11/02(金) 02:04:41.80 ID:7vI2ZR7Wo

「穴があったら誰でも埋めたくなるんじゃないですか? たとえば、クロスワードパズルとか」

「クロスワードパズルと地面に掘った穴じゃかなり違う気もすっけど、あやせが言いたいことはわかるよ」

あやせは口元に笑みを浮かべて、俺の顔を見ながら小さく頷いた。
俺があやせに同意したからかどうかはわからんが、あやせが穴を掘るのを止めてくれたのは確かだ。

「だったら、埋めてください。お兄さんの手で」

あやせが勝手に掘った穴を、なんで俺が埋めなきゃならねえんだよ。
この理不尽な言い草に再び怒りがこみ上げてくるが、ここで俺が怒ったら元も子もねえ。
俺は作り笑いを浮かべてあやせからスコップを受け取ると、穴の横にできた土の小山を突き崩し始めた。

「お兄さん、楽しいですか?」

「別に楽しくなんかねえけど、親父が帰ってくる前に埋めとかねえとまずいんだよ」

「なんだか、穴を埋めてるお兄さんって、少しだけカッコイイですよ」

「そうかよ。……ったく、一体おまえはなにをしに俺んちに来たんだよ」

「お兄さんに埋めて欲しかったんです」

「だから埋めてんだろうが」

「違いますよ。……わたしが本当に埋めて欲しいのは穴なんかじゃなくて、このスレなんです」


おしまい(3レス分に急遽調整した)
1001 :1001 :Over 1000 Thread
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オプティマス司令官のかっこいいから次回作のTF4で新規リーダークラスお願いします!!と同時にDXクラスのシールはやめて欲しい束のすれ @ 2012/11/02(金) 01:32:42.59 ID:RqO5NHHzo
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てーきゅうの新庄かなえがミルキィのシャロの延長上としてのロリかわいさをもつアホキャラでかなりの高得点 @ 2012/11/02(金) 01:08:15.61 ID:zf+HAiiqo
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安価で色々うpするよー @ 2012/11/02(金) 01:04:41.31 ID:e8Lc3vk6o
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【Fate】やる夫で聖杯戦争 @ 2012/11/02(金) 00:44:08.95 ID:upkN08h/o
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上条「俺が安価を愛するように、安価も俺を愛するべきだよな」 @ 2012/11/02(金) 00:39:12.95 ID:W9t5Jepc0
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女教頭「新たな企画書です」爺校長「ss高等学校?」 @ 2012/11/02(金) 00:26:53.11 ID:B1JKDpLi0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1351783612/

男「童貞を捨てたいです博士」博士「うむ、わかった」 @ 2012/11/02(金) 00:17:06.10 ID:qhjcUDGDO
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とある任侠の兄貴目録 @ 2012/11/02(金) 00:16:34.85 ID:/OZ/5FQH0
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