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ハクオロ「最後の希望、『ガメラ』……」 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 : ◆M6R0eWkIpk [saga]:2012/11/17(土) 21:35:12.52 ID:wpf7ZtKIO

 皆さま、こんばんは……

 これからユズ…私がお話するのは、皆さまの生きている『現在』より、
 ずっとずっと、ず?っと『未来』のお話になります……

 皆さまが暮らす『ニホン』でしたか……?
 ごめんなさい、私には……よく判らなくて。

 そこで、私たちの御先祖さまは産まれたんだそうです……

 オンカミヤムカイ…私たちの宗教國家のことですけど……

 地下に住んでいた『オンヴィタイカヤン』さま達が、
 『大神(オンカミ)』さまの『でぃーえぬえー?』から御先祖さまを……


 ……ごめんなさい、皆さまが聞いたこと無いお名前ばっかりですね。

 皆さまに、できるだけ未来のことを知って貰いたくて…

 私はずーっと昔に何があったのか判りません。

 でも、私たち…『亜人』と言うのでしたか?……は大地に根付きました。

 産声をあげた時から、私達は躰に『自然の力』を持っていて、
 大地に、海に、森に、空に感謝して暮らしてきたんです……


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1353155712
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▼ 萠龍会 ▼ @ 2020/06/06(土) 16:28:38.26 ID:inmiqiqd0
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穂乃果「雨があがったら」 @ 2020/06/06(土) 16:13:29.98 ID:C64DeSw80
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1591427609/

VIP落ちた @ 2020/06/06(土) 13:16:44.58 ID:b/JHwZ200
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【モバマス】恋はストロベリームーン @ 2020/06/06(土) 10:43:55.99 ID:hHwqlfVDO
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【イナズマイレブンGOクロノ・ストーン】天馬「皆ともっと仲良くなりたい」【安価】 @ 2020/06/06(土) 09:57:57.66 ID:eJzzjP+H0
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【リトバス】理樹「ストーカーに狙われるようになった」 @ 2020/06/06(土) 01:34:01.19 ID:3998YRn80
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【イナイレ安価】クロス・オリオン @ 2020/06/06(土) 00:14:53.35 ID:EA/3YXpu0
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月を見るたび思い出す @ 2020/06/05(金) 22:46:05.37 ID:2b6aeKr40
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1591364765/

2 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/11/17(土) 21:35:48.32 ID:/hBE6VeC0
結局ユズハにしたのね
3 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/11/17(土) 21:37:26.78 ID:wpf7ZtKIO

 ……どうしましたか? お話はちゃんと聞いて欲しいです……

 
私の…『耳』が珍しいんですか?

“『動物』みたいな毛が生えてる?”

 それの何がおかしいんですか? ……『尻尾』?
 これも皆さまにとっては不思議なんですか?

 私たちには『動物みたいな耳と尻尾』があります……
 当たり前だと思ってました。

 ……あ、女の子の尻尾は、勝手に触っちゃだめです。

 エルルゥさまも、前にハクオロさまに触られたって言ってました。

 せっかくだから『私たち』のことをいっぱいいっぱい……

 ……え? だめなんですか? 残念です……
4 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/11/17(土) 21:39:42.90 ID:wpf7ZtKIO

 じゃあ、お話を続けますね……


 自分の躰や外にある『自然の力』を『法術』として使う……
 それが『オンカミヤリュー』の方々の技なんだそうです。

 だけど……その『力』の『ばらんす?』が、
 極一部で不安定になってしまったことから……

 あ……ユズハがお話ししていいのは、ここまででした……


 ここから先は──


        パッ!


ユズハ「『とーく』でやるみたいです……」

アルルゥ「ん! ユズっちやる?!」

エルルゥ「本編より先にオマケからスタート!?」

れぎおん『キューイッ!』
5 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/11/17(土) 21:44:24.23 ID:wpf7ZtKIO

 《オマケコーナー!》

《 ユズハとアルルゥ(+れぎおんちゃん)の小部屋 》


エルルゥ「……あれ? このコーナー、担当私だったような……」

アルルゥ「 く び 」

エルルゥ「ハグァッ!? そ、そんな『くり』みたいな言い方で……」

ユズハ「私、本編出れなくなっちゃいましたから……」

エルルゥ「……って! なんで私がクビなんですか!」


黒子「【カンペ】」


エルルゥ「何々……アナタ本編に出番があるし……ユズハに譲りなさいぃ?」

     「アルルゥにだってあるじゃないですか! しかも大役ですよ!?」


エルルゥ「ちょっとハクオロさん! 裏方に徹しないで何とか言って下さい!!」

黒子(ハクオロ)「……アルルゥには、れぎおんの通訳という仕事がある」

エルルゥ「映画じゃ意思疎通出来ないって言ってたでしょ!!」

黒子(ハクオロ)「でも…鳴くから大丈夫らしい……」

アルルゥ「あれやって?」


れぎおん『キューゥッ』


   ピ―――!


アルルゥ「おお?」パチパチ

エルルゥ「体長50cmでも、マイクロ波シェルを!? このコ、危ないです!」

アルルゥ「だいじょぶ、なかよし」

エルルゥ「何を考えてこんなSSになったんだか……」
6 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/11/17(土) 21:47:38.22 ID:wpf7ZtKIO

エルルゥ「……一段落つきましたので、始めましょう」

ユズハ「このSSは『平成ガメラシリーズ』と
   『うたわれるもの』のクロスSSです……」

エルルゥ「うたわれるものは、ゲーム・アニメの描写から
     『ハクオロ帰還後』という設定で話が進行します」

ユズハ「ガメラさんのほうは……秘密です。すぐに判りますから」

エルルゥ「SS本編だと少ない、うたわれコメディ分をオマケで補うって…」

アルルゥ「むぼー」

ユズハ「そもそも、私たちのお話を知らない方が多いんじゃ……」

エルルゥ「アニメが六年前……このやり取り、前にやった気が」

ユズハ「お時間が御座いましたら、
     『うたわれ』のあらすじを見て頂けたらと思います……」

黒子(ハクオロ)「【>>1の前作見て貰えたら嬉しい】」

エルルゥ「わぁー欲望だだ漏れ」
7 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/11/17(土) 21:49:10.00 ID:wpf7ZtKIO

ユズハ「この場に登場する皆さんをご紹介します……」


●ユズハ(うたわれるもの)

アニメ・ゲームのアフターなので……SS本編では既に……


ユズハ「お墓の中……です……」

一同「「「…………」」」

※だからオマケコーナーに出るんですよ


●アルルゥ(うたわれるもの)

動物と意思疏通出来る『森の母(ヤーナ・マゥナ)』という能力を持つ。
本編でも『あの大役』を任されている。


アルルゥ「つーやく」


●エルルゥ(うたわれるもの)

企画段階では司会の筈が、ユズハに出番を取られてアシスタントに。
薬師の女の子で、家事スキルが高い。うたわれるものメインヒロイン。

エルルゥ「うう……」
8 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/11/17(土) 21:53:35.47 ID:wpf7ZtKIO

●れぎおんちゃん(ガメラ2 レギオン襲来)

体長50cmのマザーレギオン。
どういうわけか、卵と種子がうたわれ世界の地球に落ちてきてしまった。
地球を覆う『マナ』が多かった為、躰が大きく育たなかったらしい。
このオマケコーナーのマスコット的存在。
たまに、スタジオからいなくなって何かしている。
ちなみに、ソルジャーレギオン(体長3mm)も射出可能。


れぎおん『クーゥィッ』

アルルゥ「れぎちゃん、つよい」


ユズハ「以上です……」
9 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/11/17(土) 21:54:45.15 ID:wpf7ZtKIO

エルルゥ「このコーナーでは……時を越え、
      ガメラ側からゲストをお迎えする時があります」

アルルゥ「今はやんないって」

ユズハ「次回のオマケには、あの男性を呼ぶそうです……」

    「あと……このままSS本編を投下いたします……」


エルルゥ「区切りが無い形で、投下するそうなのでご注意下さい」

アルルゥ「……見てね」

れぎおん『クーゥィィ!』

ユズハ「では……始まり始まりー……」
10 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/11/17(土) 21:57:09.94 ID:wpf7ZtKIO

──最初は、小さな異変だった──


「家畜がおらんこつなった??」


男「はいぃ。んだから衛士さんに『キママゥ』退治を頼もう思って」


キママゥとは……山や森、地下湖など、様々な所にする猿のような生物の事。
雑食性で群れを作って生きるこの生き物は、村の家畜や畑の食物を盗む。


「……あ、ノミが取れっばい」


男の話を聞きながら、衛士は自分の『尻尾』にいた小蟲を見つけ、潰す。


男「衛士さぁん! 引き受けてくだせぇよぉ!」


……この男にも『尻尾』がある。

……そして、耳はフサフサの毛で覆われている。



『獣の耳や尻尾』を有する『亜人』達が過ごす『この世界』の害獣、

 それがキママゥ。

11 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/11/17(土) 21:58:54.77 ID:wpf7ZtKIO

「あんねぇ、キママゥ退治ちゅうんは衛士の仕事じゃないの!」


男「だ、だけんど…東の『トゥスクル』ちゅう國は
  皇(オゥルォ)様が直々にキママゥを退治しとるて……」


そんな一年以上前の情報を言う田舎者丸出しの男の話を聞いているのは……
宗教國『オンカミヤムカイ』……の周辺にある小さな國の……衛士長補佐。


男「おねげえしますだ! 『ダイハクさん』!」

ダイハク「……はぁ」


『ダイハク』という、衛士にしては厳つく無い……男であった。
12 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/11/17(土) 22:01:09.75 ID:wpf7ZtKIO

 ……………………

ダイハク「はぁ?…なしてこげん事になるかぁー……」


……結局、ダイハクは面倒な仕事を引き受けた。

口ではああ言っていたが、
彼自身には人並みに正義感があった事も引き受けた理由であったし……
昔、キママゥに自分の臀部を噛まれたという……個人的な恨みがあった為でもある。


ダイハク「ほいで? こんあたりのキママゥは?」

村の者「もう少し進むと、ヤツラの縄張りだぁ」

    「雲が厚くて、早く暗くなりそだから、行くべ行くべ」


キママゥ退治──言葉にすると簡単なように思うかもしれない。
しかし、実際は違う。ほんの少し前まで、キママゥを撃退するのは難しかった。

キママゥは群れで集落を襲い、村人の虚を突いて食物を奪う。
驚いた村人が鍬や鎌等の武器を持って戦う体勢をとった時には……
キママゥ達は、既に自分達の縄張りである森に帰ってしまっている。
森の中は危険も多く、普通に追うだけではあの害獣を仕留められない。
13 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/11/17(土) 22:02:33.78 ID:wpf7ZtKIO

ダイハク「そだら、三つに分れて、追い込みますぅ!」

 「「「おお!」」」


ダイハクと集落の者達が行うのは、
八ヶ月ほど前に『トゥスクル』という國から伝わったキママゥ退治の方法だ。

人数の少ない一班が群れを大きな音で威嚇し、攻撃班の元へ送る。
攻撃班から逃げたキママゥも、逃走路で待ち受けていたもう一つの班で叩く。
キママゥに逃げる隙を与えない、二段構えの罠であった。

ダイハクは、太鼓(マヌイ)を打つ役として参加している。

……積極的にキママゥと接したくない彼にとって、うってつけの役割だった。


ダイハク(……情けなか、おいは臆病ばい)


そう思う彼だったが、仕事はこなす。
ダイハクは太鼓を強く叩き、森の静寂を破る。
14 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/11/17(土) 22:04:41.26 ID:wpf7ZtKIO

どんっ、どんっ、どんっ……


太鼓の音色が、森中に響き渡っていく。


ダイハク(…………?)


──だが、何も起こらない。


ダイハク(こげな音出したら、びっくらしてキママゥ以外にも――)


彼の考える通りである。
森の生物達が雷鳴のような異音に何の反応を示さないのはおかしい。
なのに、彼がいくら太鼓を打ち鳴らしても、獣達の動きは無かった。

まるで……『森の中に生物がいない』かのように。


   ボキッ!


ダイハク(……!?)


ダイハクは、ここで初めて『異常事態』に気が付く。

今、彼が踏んだのは──


ダイハク「ほ、ほ、ほ……骨ぇ!?」

肉を綺麗に削ぎ落とされた『獣の骨』だった。
15 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/11/17(土) 22:06:15.97 ID:wpf7ZtKIO

 ヒュォォ――


──それと同時に風向きが変わり、男の鼻が反応する。


ダイハク「――んがっ!?」


──『血』と『腐肉』の匂いに。


ダイハク「……うぷっ!?」


匂いは彼の前方から漂ってくる。
鼻をつまみながら、ダイハクは一歩ずつ前へ足を出した。
臆病な彼にしては、珍しい行動だったと言える。

──ダイハクの魂が『禍』に引き寄せられた……のかもしれない。


ダイハク「――!!」


勇気を出した男を待っていたのは……
16 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/11/17(土) 22:07:48.72 ID:wpf7ZtKIO





死体、死体、死体、死体、死体、死体、死体、死体、死体、死体、死体、死体、死体、死体、
死体、死体、死体、死体、死体、死体、死体、死体、死体、死体、死体、死体、死体、死体、
死体、死体、死体、死体、死体、死体、死体、死体、死体、死体、死体、死体、死体……


──内腑を『喰われ』血にまみれた大量の『食べ滓』


キママゥや家畜、森の生物の……骸(むくろ)だった。






17 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/11/17(土) 22:09:56.36 ID:wpf7ZtKIO

ダイハク「あ、あ、あああ……」


腰を抜かした彼の脳裏に浮かんだ のは『一年前』。
大國『クンネカムン』と連合軍の『大戦』の時。

『調停者』として強大な権力を持っていたオンカミヤムカイ。
その影響か、ダイハクのいた國は滅多な事がない限り安全であった。

……あの大戦で、オンカミヤムカイがクンネカムンに落とされるまでは。

幸運は、彼の國を襲ったのがクンネカムン左大将『ヒエン』の部隊だったこと。

抵抗する者以外を無闇に傷付けなかった武士(もののふ)の隊。
そんな部隊と戦を開始してから数分後には、兵士達は散り散りに逃走。

兵士達は『アヴ・カムゥ』という巨人……
クンネカムンの『力』に蹂躙されるのを恐れた。

勿論、ダイハクも必死に逃げ出した兵の一人である。

その時、ダイハクは『アヴ・カムゥ』の人智の及ばぬ力を目の当たりにした。

ただ腕を振るうだけで人が死に、刀も矢も通じない『破壊の権化』。


ダイハク「ひ、ひぃぇぇ!!」


ダイハクが今感じているのは、あの時と寸分違わない……



  ──『災厄の気配』──


18 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/11/17(土) 22:11:16.79 ID:wpf7ZtKIO





 『ギャオオオォォォォ――――!!!』





ダイハク「……!?」


腰を抜かしていた彼は、そのままの体勢で、雄叫びのした──空を見上げる。



19 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/11/17(土) 22:13:05.84 ID:wpf7ZtKIO


──それは、『鳥』のような影──



ダイハク「……っ!」



──姿だけで人を恐怖に震えさせる──

──彼の魂に、まとわりつくもの──




『ギャオォォォォオオォォォォ―――ッ!!!』




──『アヴ・カムゥ』程の『巨大な鳥』だった──




20 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/11/17(土) 22:15:00.35 ID:wpf7ZtKIO


――――――――――――――――――



    平成ガメラシリーズ
        ×
     うたわれるもの



   ガメラ ? 禍鳥神 復活 ?



 (スレタイ)

 ハクオロ「最後の希望、『ガメラ』……」


21 : [saga]:2012/11/17(土) 22:17:13.34 ID:wpf7ZtKIO

一人の若い男が小さな集落の道を、ウマ(ウォプタル)に乗って進んでいる。


「…………」


男の姿は辺境の村に似つかわしくない。
村の男衆はもっと畑作業や採集に適した服装をしているのに……
この若い男は『白銀の肩当て』を装備していた。

彼は村の者ではない。
見る者が見れば判る、その白く輝く鎧こそ……

この『ヤマユラの集落』を含む國、『トゥスクル』の『侍大将』の証である。


「…………今日こそは、良い返事を頂きますよ」


他のウマとは違う『白い相棒』を駆り、彼は『村唯一の薬師』の家へ向かった。

 ………………
 …………
 ……
22 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/11/17(土) 22:18:51.38 ID:wpf7ZtKIO

白の武士は目当ての家に到着する。


「さて、少々不躾ですが……」


扉の無い玄関口の前に立ち、彼は声を張り上げて……


「お早うございます。『エルルゥ』様」



中に居るであろう、薬師の女の名を呼ぶ。


「ベナウィさーん! ちょっと手伝ってくださーい!」


ベナウィ「……判りました。失礼します」


白の武士……『ベナウィ』はここに住まう女性の了解を得て、
扉の無い家の入口から、土間へと足を踏み入れる。
23 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/11/17(土) 22:20:42.28 ID:wpf7ZtKIO

ベナウィが中に入ると……


「とっと……っとっと……」


枯草のように僅かな茶を含んだ黒髪、
白地に落ち着いた赤の彩りをあしらった優しげな服。
女性……と言うにはまだ若い。寧ろ少女と言った方が良さそうな姿形……

そんな少女が、手に持った大量の洗濯物でフラついていた。


ベナウィ「……エルルゥ様、持ちますよ」


幾重にも積まれた服の束を、軽く抱えるベナウィ。


エルルゥ「ふ?…すみませんベナウィさん。あ、ソコに置いて下さい」


『エルルゥ』に従い、彼は指示された場所に服を下ろす。


エルルゥ「やっぱり、古い服は整理しないと駄目かな……」


どうやら少女は荷物の片付けをしていたらしい。


ベナウィ「……引っ越す予定でも?」


ベナウィは僅かな『期待』を込めて聞くが……


エルルゥ「い、いえいえ! そういうわけじゃないんですけど……」

     「ほら、『ハクオロさん』も帰って来ましたから……」
24 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/11/17(土) 22:23:28.24 ID:wpf7ZtKIO

彼は“そう都合よくはいきませんか”と思う。けれどもその落胆を顔に出さず、


ベナウィ「せ……ハクオロ様はどちらに?」


帰還した彼の『元主君』の居場所を訊ねる。


エルルゥ「今の時間は……西の畑に居ると思います」

ベナウィ「ありがとうございます。では」


エルルゥに一礼して、出入口に進むベナウィ。


エルルゥ「ベナウィさん、私からもハクオロさんを説得しますか?」


ベナウィ「……いえ、その必要はありません。
      今日は……『その件』ではありませんから」


鎧の擦れ合う音をさせながら、ベナウィは家を出た。


エルルゥ「……あれじゃない、話?」


首を傾げるエルルゥ。


エルルゥ「……まさか! ハクオロさんに女の子を宛てがって――」


ここに彼女の愛する男が居たら…“もう少し落ち着け”と言っていたろう。


エルルゥ「その女(ひと)から産まれた子どもを、皇(オゥルォ)に――!?」


……彼女の思考はいつも通りの運転であった。
25 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/11/17(土) 22:25:17.41 ID:wpf7ZtKIO
 ……………

「アタタタ……やはり私に肉体労働は無理かぁ?」

「一人で耕そうなんて、無茶なんだろうか……」


先程エルルゥが言っていた西の小さな畑で、一人の男が泣き言を呟いている。

男が着ているのは、白地で一部の生地を青く染められたの袴のような服。
辺境の集落に住まう者にしては、綺麗な仕立て具合であった。

とはいえ、彼が着ているその服は同じ名を持った村の男からの『御下がり』だったが。


ベナウィ「……手伝いましょうか」


「……要らん」


容姿端麗な武士……ベナウィの言葉は、その男に一蹴されてしまう。


ベナウィ「ご安心下さい『ハクオロ』様。いつもの話ではありません」


「……『城に戻れ』という話じゃない?」


ベナウィ「はい」


『ハクオロ』と、呼ばれた男は一瞬考え──


ハクオロ「良いだろう。話を聞いてやる」


かつての部下に、そう答えた。


ベナウィ「ありがとうございます、『聖上』」

ハクオロ「……私はこの國の皇(オゥルォ)じゃない」

     「『仮面皇』はあの日に行方不明になった。それで良いんだ」

26 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/11/17(土) 22:27:57.62 ID:wpf7ZtKIO
 ―――――――――

ベナウィとハクオロ。二人の会話があった数日前……
トゥスクルの西、遠く離れた國『オンカミヤムカイ』で、
この國の皇……『賢大僧正(オルヤンクル)』に『変わった報せ』がもたらされた。


「……巨大な『鳥』?」


「はい。私めには何のことやらサッパリで……」

「ムント、その…鳥を目撃したという方は?」

ムント「現在、学士が話を聞いております」


ムントと呼ばれた老齢の僧侶は、
自分の仕える
『若き賢大僧正』に、近隣國の異常事態を告げる。


「……その鳥が、森の生き物を襲ったのですか?」

ムント「確証はありませんな」

「調査隊を派遣する必要が……わたくしが行こうかしら」

ムント「姫様! 賢大僧正ともあろう御方がそのような――…あ」

「……ふふ、わたくしがムントのお叱りを受けるなんて」

ムント「ご、御無礼お許し下さい! 『ウルトリィ』様!」

ウルトリィ「良いのですよ。子どもの頃を思い出させて貰いましたから」


……慈愛に満ちた笑みを浮かべ、ウルトリィはムントを許す。

27 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/11/17(土) 22:29:36.48 ID:wpf7ZtKIO

金色に近い蜂蜜色の髪。肩を少し露出し、凶悪な胸を際立たせる白色の薄い僧衣。
蒼く美しい大きな瞳と、その背中には柔らかな『白翼』。

彼女こそが、翼を持つ者……『オンカミヤリュー族』の最高権力者『ウルトリィ』だ。


ウルト「……ムントの言う事も一理あります。
     今のわたくしは賢大僧正。気軽に他國へ…というわけにはいきません」

ムント「御判り頂けましたか」


ホッと胸を撫で下ろすムント。


ウルトリィ「……お話だけなら聞きにいきましょうか」


見る者全てを恋に落としそうな微笑みをして、ウルトリィは言う。


ムント「……それだけでしたら」


ウルトリィ「では、参りましょう」

      「……『カミュ』。話は聞いたでしょう?」
28 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/11/17(土) 22:31:51.01 ID:wpf7ZtKIO

ウルトリィが『何も無い空間』に呼び掛けると……


「……な?んだ。もうバレちゃった」


その空間から、『黒翼の娘』が現れる。


ムント「姫様!? 透明化の術を!」

「ムントには気付かれなかったのにな?」


ウルトリィ「わたくしには効きませんよ」


カミュ「う?ん、修行が足りないかぁ〜
…」


黒の翼と紺色の服、此方も豊満なボディライン。
銀色に輝く髪と、ウルトリィと同じ蒼玉の瞳。

……この少女が、ウルトリィの妹『カミュ』である。


カミュ「大きな鳥って、どれくらいなんだろうね! ムックルくらい?」

ウルトリィ「貴女も話を聞きたい?」

カミュ「いいの!」

ウルトリィ「駄目と言っても、ついて来るでしょうから」

ムント「オ、賢大僧正?…」

ウルトリィ「さ、行きますよ」

カミュ「は?い♪」


二人の皇女は、仲良く手を繋いで部屋を出ていった。
29 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/11/17(土) 22:39:17.86 ID:wpf7ZtKIO


オマケその壱

 《 ユズハとアルルゥの小部屋 〜その壱〜 》

ユズハ「改めまして今晩は。司会のユズハと申します……」

アルルゥ「アルルゥだよ〜」 フリフリ

ユズハ「このオマケは、SS本編内の細かな設定や
     ゲストの方々とのお話を楽しむ『まったり』コーナーです」

アルルゥ「まったり?」

ユズハ「本SSをご覧下さる皆さまの質問にも、こちらでお答えしますね……」


ユズハ「一点謝罪があります……。一部の文字が?マークになってしまっていました」

     「タイトル部分とカミュちゃんの台詞の『?』は、『〜』とお読み下さい……」
30 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/11/17(土) 22:42:23.54 ID:wpf7ZtKIO

ユズハ「それじゃあ、まずは……」

アルルゥ「『げすと』のとーじょー!」

ユズハ「はい。お呼びしましょう。『大迫警部』、どうぞ……」


大迫「警部じゃなか、警部補ばい。そいにしても……ここは何処ね?

ユズハ「初めまして。私はユズハと申します……」

大迫「あ、あなた? なして尻尾が生えとっけんね?」

アルルゥ「みんな、あるよ?」

大迫「いや〜……不思議なことはいっぱいあったけん。
    滅多なことじゃ驚かんつもりやったが……」
31 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/11/17(土) 22:44:17.64 ID:wpf7ZtKIO

ユズハ「大迫さまは、平成ガメラシリーズ全作に登場されたのですか?」

大迫「そうばい。オイの経歴は怪獣と共にあったとです……」

アルルゥ「いいこ、いいこ」 ナデナデ

大迫「こげん歳の離れた子に慰めらるっとは……」

ユズハ「一作目ではギャオス。二作目ではソルジャーレギオン、三作目にもギャオス……」

     「本当に……ご縁があるのですね……」


大迫「長崎から北海道、その後東京・渋谷で……はぁ」

ユズハ「怪獣……特にギャオスに翻弄された方です」

    「このSSでも、この方をモデルにした人物が登場します」


大迫「『ダイハク』んことですたいね」

ユズハ「お気付きの方も多いと思いますが……。
     警部補の苗字の読みを音読みにしただけです……」

ユズハ「他にも、ガメラ側の登場人物をもじった御名前が出てきますので……」

アルルゥ「当てるのもたのしい?」
32 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/11/17(土) 22:46:14.37 ID:wpf7ZtKIO

ユズハ「ダイハクさまの見た目は、犬っぽい耳と尻尾の一般兵士です」

大迫「顔ば同じね?」

アルルゥ「うん」

大迫「耳と尻尾で随分と可愛かなった。複雑な気持ちばい……」

ユズハ「あと語るなら……この『長崎弁』ですね……」

大迫「webで長崎弁の変換サイトば使っとっと」

ユズハ「間違えたらゴメンなさいと、>>1が言っております……」

アルルゥ「アルルゥもしゃべる! おと〜さん、すいとっ〜♪」


れぎおん『キィ――ィッン!』


大迫「うわあっ!? なしてここにレギオンが居るか!?」


れぎおん『クゥ――?』


アルルゥ「あなただれって言ってる」

大迫「…………」 バタッ

ユズハ「……気絶されてしまいました」

アルルゥ「じゃ、さきすすめよ?」

ユズハ「そうですね。そろそろ大迫さまにはお帰り頂きましょう。
     本日はありがとうございました」

アルルゥ「ばいばい」


大迫「……………………」


   フッ………
33 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/11/17(土) 22:47:55.82 ID:wpf7ZtKIO

ユズハ「最初の投下なのに、怪獣がまともに出てきませんでした……」

アルルゥ「えんしゅつえんしゅつ〜」

ユズハ「演出の一言で済ませて良いのでしょうか? ユズハには判りません……」


ユズハ「今回の投下以降は本編→オマケと進みます」

    「このようなSSですが、今後も宜しくお願いいたしますね……」


アルルゥ「ふていきこーしん」

ユズハ「一週間に一度は投下出来るよう、頑張らせます」

    「それでは皆さま……」


ユズハ・アルルゥ「「また次回〜」」
34 : ◆M6R0eWkIpk [saga]:2012/11/17(土) 22:51:09.04 ID:wpf7ZtKIO
よく見たら最初のレスにもミスが……
携帯電話をスマートフォンに替えた所為で、使い勝手が判らんとです。

色々ツッコミ所があるSSですが、よろしくお願いいたします。

では、失礼します。
35 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/11/17(土) 23:54:36.48 ID:Y8qslpb8o

ガメラSSってことで期待
ギャオスと初遭遇の緊迫感は映画1作目を思い出すわ

あと、文字コードの問題で「〜」は化けることがある
機種依存に近い問題だからあきらめるしかないかも
36 : ◆M6R0eWkIpk [saga]:2012/11/23(金) 21:30:19.71 ID:XFCiEs0IO
投下開始。
37 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/11/23(金) 21:33:23.36 ID:XFCiEs0IO

「ええと、荷物は……」


一人の女が本棚で囲まれた自身の研究室をどたばたと動いている。


「これに……これ。服も、もっと動きやすいのに……」


水色の僧衣を脱ぎ、下着だけになって『普段着』に着替えていく。
それは、普通のオンカミヤリュー族ならまず着ない、薄い灰色の作業服だった。

彼女にとって、この作業着は戦闘服のようなもの。
様々な所に布生地を張り付けて造った袋(※ポケット)があるので、
現地に向かって生き物を調査する場合には欠かす事が出来ない装備なのだ。

着替えを終え、彼女が筆や木簡を用意していると──

  とん とん

部屋の扉を叩く音がした。

38 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/11/23(金) 21:45:31.62 ID:XFCiEs0IO

「? どうぞー?」


“きっと、また僧侶達かしら”

彼女が何とか、南の小國から来た衛士の『ダイハク』から聞き出した──

『あの鳥』の話を、笑いに来たのかと。

そう、彼女は面倒そうな顔をして思った。


生物の中でも、特に自分たちと同じ『翼』を持つ『鳥』を研究する彼女にとって、
『アヴ・カムゥ』並みの大きさの『巨鳥』の話は好奇心を刺激するのに十分過ぎた。

ただ……他の僧侶達はそうでなく、
彼女がダイハクから聞いた話を酒の肴程度にしか思っておらず、
何度も話をさせられ、この若い学士は苛立っていた。


“またそんな奴等だったら、話をするのを断ろう”と扉を開けた瞬間……


   ガチャ…

ウルトリィ「失礼しますね」

カミュ「お邪魔します」


「ぶふっ!!!」


来客は……彼女達オンカミヤリューの皇と、その妹君。

思わぬ客人に吹き出したこの学士の女の名前は──


ウルトリィ「初めまして。『ミュマ』さん」

ミュマ「は、初めまして! 賢大僧正さま!」


『ミュマ』……彼女もまた、『鳥』との運命に翻弄された魂の持ち主である。
39 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/11/23(金) 22:00:06.54 ID:XFCiEs0IO
 …………


ミュマ「あの……何故わざわざ私のような……」

ウルトリィ「恐怖に震えるお客様を、夜分に起こすわけにはいきませんから」


あの衛士は、今もこの國に滞在している。
明日の調査に、ミュマは彼も同行させる予定だったが──


ウルトリィ「彼はもう少し休ませてあげて下さい」

ミュマ「……はい」


皇からの命令であれば、従わないわけにはいかない。

ウルトリィは元々医学士を志望していた才女である。
人の精神分野についても、他の僧侶や学士達以上に知識を持っていた。

──恐怖は、人を蝕む。

少し前まで、ウルトリィは過去の記憶が無いという恐怖を抱えた男の側にいた。

そんな人間に必要なのは、『暖かさ』。


ウルトリィ「心を癒す医学士の皆様を、彼の治療にあたらせています」

カミュ「そんな事しなくても、お姉様がギュッってしたら治るかもよ?」


……治りそうだから困る。ミュマはウルトリィの……を見て思う。


ウルトリィ「ミュマさん、調査は明日じゃないといけませんか?」

ミュマ「……できれば早い方が」

ウルトリィ「……明後日まで、待って頂きたいのです」

ミュマ「……何故でしょうか?」

ウルトリィ「その鳥が、キママゥや家畜を襲うなら……」


「『人』も襲う可能性があるのではないですか?」


ミュマ「……はい」


冷静になって考えると、ウルトリィの言う通り。
調査に行った者が襲われ、調査される対象になる──
その危険をミュマは頭の片隅に放置していたのだ。


ウルトリィ「明日、準備を整え、調査隊を結成します」

      「そして、明後日にわたくしの『知人』と合流後、出発して下さい」


ミュマ「ウルトリィ様の……『知人』ですか?」

カミュ「あ! そういえばあの『二人』が近くに来てるんだっけ」

ウルトリィ「わたくしの古い友達です。実力は保証しますよ」


ウルトリィは二人の事を思い出す。

『ギリヤギナ』の女と『エヴェンクルガ』の女。『力と技』の強き者達を──
40 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/11/23(金) 22:04:06.08 ID:XFCiEs0IO
 ―――――――――

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


──ソレは、海の底で『災いの影』に呼応する──


──『最後の闘い』から幾つの刻を過ごしたか、ソレ自身にもわからない──


──永い刻を眠り、あの時負った傷の大半は癒えた──



  ──ただ、治らぬのは──



──『邪神』との戦闘の最中、己の火球で焼き切った『右手』と──


──『災厄』の群により、潰された『左眼』──



  ──だが、支障は無い──



──片腕と片眼があれば、また『闘える』──



  ──ソレは目覚めた──


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
41 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/11/23(金) 22:06:21.47 ID:XFCiEs0IO
 ―――――――――


ハクオロ「……『鳥』、か」

ベナウィ「はい。『鳥』です」

エルルゥ「鳥って、外の鶏ですか?」

アルルゥ「鳥……おいしい」


時間は戻り、トゥスクル國。
彼等はハクオロ達の暮らす家で、茶をすすりながら話を始めていた。


ベナウィ「相変わらず、エルルゥ様のお茶は美味です」

エルルゥ「嬉しい事を言ってくれますね〜。お菓子もどうぞ」

ハクオロ「エルルゥ! それ私のオヤツ!」

エルルゥ「良いじゃないですか、お客様ですし」

ハクオロ「がーんだな……」

アルルゥ「くりだいふく……」


ベナウィ「アルルゥ様もお元気そうで」

アルルゥ「うん、アルルゥ元気!」


この少し舌っ足らずな女の子、見た目はエルルゥの格好によく似た紺色の衣、
後ろでふっくらと纏めた長髪で、髪色はエルルゥそっくりの明るい黒。

女の子の名は『アルルゥ』。名前から判るように、エルルゥの妹である。
42 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/11/23(金) 22:13:24.59 ID:XFCiEs0IO

エルルゥ「それで……その鳥って言うのは?」

ベナウィ「はい、今から詳しい話をします」


ベナウィは三人に向け、判りやすくこれまでの経緯を説明する。
彼が此所に来たのは、オンカミヤムカイからの依頼であり、
その『鳥』について、知っているかもしれない男……
『ハクオロ』に話を聞いてみて欲しいという事だった。


ベナウィ「文にある通りに予定が進んだなら……
      昨日、オンカミヤムカイが調査隊を派遣した筈なのです」

エルルゥ「昨日は……夕方地震がありましたね。お城の皆さんは平気でした?」

ベナウィ「問題はありません。兵士が一名、負傷しましたが」

ハクオロ「ん? 何故だ?」

ベナウィ「組手中に地震が起こり、驚いたクロウが手加減をし損ねた為です」

ハクオロ「……國を守る兵士がそんな事でどうする」


溜め息をつく、元皇。


ベナウィ「聖上がお戻りになれば、皆の士気も上がりましょう」
43 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/11/23(金) 22:20:37.92 ID:XFCiEs0IO

ハクオロ「……話を本題に戻せ」


茶を飲む客人の言を無視するハクオロ。


ベナウィ「承知しました。ハクオロ様、その『鳥』に覚えは?」

ハクオロ「……無い。情報が少なすぎる」

ベナウィ「……判りました。では此方を」

そう言うとベナウィは懐から、木簡を取り出した。

どうやら、彼の本題はこちららしい。


ハクオロ「……私に何をさせるつもりだ」

ベナウィ「明日から三日の移動期間の後、
      賢大僧正様がトゥスクルにいらっしゃいます」

エルルゥ「ウルトリィ様が?」

アルルゥ「カミュち〜もいる?」

ベナウィ「鳥の調査報告も、その時ついでにと」

ハクオロ「…………」

エルルゥ「ハクオロさん……」

アルルゥ「おと〜さん?」



ハクオロ「……はぁ、行けば良いんだな」



ベナウィ「ありがとうございます」

エルルゥ「お城かー……久し振りですね!」

アルルゥ「きゃっほ〜ぅ♪」

ハクオロ「二人とも、遊びに行くんじゃ――」

ベナウィ「ウルトリィ様がお越しになりましたら、お迎えに参りますので」


若い武士は足早に去った。


ハクオロ「『鳥』……か」



──舞台は整う。
44 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/11/23(金) 22:27:42.93 ID:XFCiEs0IO
 ―――――――――

『翌日』の昼頃、ハクオロ達三人は、
ベナウィの先導で『トゥスクル皇城』に到着した。


ベナウィ「既にウルトリィ様達はお待ちです」

ハクオロ「……何があった」


オンカミヤムカイとトゥスクル。早馬を休ませずとばして丸二日はかかる距離。
それとほぼ同じだけの時間で……一國の皇である賢大僧正(オルヤンクル)、
ウルトリィがやって来たというのは異常事態だ。


ベナウィ「……どうやらあまり良い報告では無いようです」

ハクオロ「…………そうか」


城の中に入り、四人が廊下を進むと……


「おろ〜〜! はくおろ〜〜!」


白く長い耳を垂らし、明るい朱の着物を纏う『娘』が、
ハクオロに抱き着いてくる。


ハクオロ「……『クーヤ』」

クーヤ「おろおろ〜♪」


「ク、クーヤさまぁ〜! あ…………」


クーヤと呼ばれる娘と似た造りの服を着た若い女が、
ハクオロの素顔を見て歩みを止める。


ハクオロ「『サクヤ』、足の具合はどうだ?」

サクヤ「ハクオロ様……」
45 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/11/23(金) 22:30:07.91 ID:XFCiEs0IO

兎のような耳をした、二人の少女──クーヤとサクヤ。

一年前の大戦により、心を病んで『幼児退行』したクーヤと
両足の健を斬られ、ゆっくりと歩く事しか出来なくなったサクヤ。


ハクオロ「…………」


彼が城に戻りたがらなかった理由の一つ──

自分の『罪』が、形となって其所にあった。


エルルゥ「サクヤさん、こんにちは」


サクヤ「エルルゥ様も、アルルゥ様も!」

    「お城に戻ってきてくれたんですね!」


サクヤ「皇様が戻ってきたなら――」


ハクオロ「…………」


明るく笑うサクヤの顔を、ハクオロは直視出来ない。


ハクオロ「すまん、そうじゃないんだ……」


目を背けたまま、言えたのはたったそれだけの言葉。
46 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/11/23(金) 22:37:28.20 ID:XFCiEs0IO

サクヤ「え…………」

ハクオロ「……もう少し、あの集落でやるべき事があってな」


男の話は……場を繕う為の偽り。
後ろに控えるベナウィやエルルゥも、話を聞いて暗い表情になる。

廊下の空気が、停滞した。


サクヤ「あ……そ、そうですか。ご免なさい! 早とちりしちゃって!」


暗くなった雰囲気を、長耳の女性は懸命に明るくしようとする。

ただ……そんな空気を尻目に


アルルゥ「クーちゃん、遊ぶ〜♪」

クーヤ「あるるー♪ あそぶ〜♪」


子ども達は、庭へ繋がる通路へ駆け出した。


サクヤ「く、クーヤさま〜待ってぇ〜。ハクオロ様、失礼します!」


外へ向かったアルルゥとクーヤを追って、サクヤもこの場を後にした。


ハクオロ「…………」

エルルゥ「…………」

ベナウィ「……行きましょう」


ハクオロ「…………ああ」


三人は城の『朝堂』……皇の座らぬ謁見の場へと向かう。
47 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/11/23(金) 22:42:57.33 ID:XFCiEs0IO
 ………………

ハクオロ「…………」


彼は皇として城に戻る事を何度も考えていた。

だが、その度に一年と少し前の戦で眠りについた『大神』の言葉を思い出してしまう。


ハクオロ(私は……戻ってはならない)


彼はこの大陸を股に掛けた戦で、多くの『死』に直面した。


『この子達の…側にいてやっておくれ……』


アルルゥを庇い、凶刃に倒れた者──


『アンちゃん、負けんなよ』


命を棄てて、自分達に危機を知らせてくれた者──


『ハクオロ殿おおおお!! 後を頼みましたぞおおおお!!!』


友を止める為に、自分の命を捧げた者──


敵も味方も、数多くの命を彼は失ってきたのだ。



そして……それら全ては、彼の『存在』に端を発して……起こった事。


ハクオロ(…………)


あの時かけられた『神』の──いや、違う。

『自分自身』からの言葉に、彼は応えられていない。
48 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/11/23(金) 22:46:38.15 ID:XFCiEs0IO

彼は、今も『一年前の出来事』を夢に見る──


『――何故、子等に様々な技を教え導いた?』


 「『もう一人の私』よ、私は――」


『農・工・戦、本来なら長い月日をかけて覚える技を教え、どういう結果を招いた』

『確かに豊かになったろう。だが、汝を迎えてくれた者の末路はどうだ?』


 「それは……」


『守る為という詭弁で、どれだけの種を蹂躙した』

『汝と出会った為に、汝に導かれた為に、汝と対立した為に、どれだけの者が死んだ』


 「…………」


『汝は均衡を崩したのだ。その為にこの先、更なる戦乱が巻き起ころう』


ハクオロが皇の座に戻らぬ最大の理由は──



  ──『怖い』から



自分の持つ知識が、人々を悪い方向へ誘う……
そうしてしまう事を、彼は恐れている。
49 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/11/23(金) 22:49:33.85 ID:XFCiEs0IO

故に──


ハクオロ「……もう私は民を導く皇にならない」


二度と悲劇は繰り返さない。


……彼は


     ザッ…


ハクオロ「……此方からですまんな」


皇の居るべき天幕からで無く、
其処に居るであろう客人達と同じ入口から現れる。

『うたわれるもの』はいなくなった。


ハクオロは、只の『ハクオロ』として此処に来た。

50 : ◆M6R0eWkIpk [saga]:2012/11/23(金) 22:53:41.74 ID:XFCiEs0IO
今日はこれで投下完了。明日、もう少し書きます。
人間ドラマも怪獣映画……特にガメラの魅力だと思う。
では、失礼します。
51 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/11/24(土) 13:42:30.45 ID:74dGFxLuo

平成ガメラはGフォースみたいな超技術もなくて、
怪獣に翻弄されながらなんとか知恵を絞って対抗するって感じだよね
ハクオロたちならもう少し何かできそうかな
翼長10mでマッハで飛んで飛び道具まである人食い怪獣相手じゃ厳しいか
52 :HZAJcDxgsx [biuro@isoplus.pl]:2012/11/24(土) 15:17:00.83 ID:CB2WmaXD0
How could any of this be better sttaed? It couldn't.
53 : ◆M6R0eWkIpk [saga]:2012/11/24(土) 22:05:14.91 ID:ufkQmimIO

ハクオロ「……おいおい、この面子はなんだ?」


扉の無い入口に佇むハクオロは……一年前の城内を思い出す。

隣に立つエルルゥとベナウィ。
そして、彼等の前にいる『五人』。
ハクオロがまだこの國の皇であった時に出会い、絆を結んだ者達──

朝堂にいたのは──


ウルトリィ「お久し振りです、ハクオロ様」

カミュ「おじさま! 帰って一ヶ月経ったんだし、そろそろ遊びに来てよ!」


オンカミヤムカイから来た、二人の皇女。


「聖上ぉぉ! 何故、某に御帰りを教えて下さらなかったのですか!」


「……あら? わたし、貴女に言ってなかったかしら?」


「聞いてない! 聞いてないぞカルラ!
 一緒に戦場を渡り歩いていて、なんでお前は知っているんだあぁ〜!」


ハクオロ「『トウカ』、『カルラ』。息災か?」


トウカ「はい! 聖上も御元気そうで!」

カルラ「そう? あるじ様は、ちょっと顔色が悪くありません?」


ハクオロ「……気のせいだろう」


エヴェンクルガ族という…剣技に優れた少数部族の女『トウカ』と
大陸に生きる部族の中で、最も強い肉体を有するギリヤギナ族の女『カルラ』。

各國のいくさ場を渡り歩き、弱き者達を救う、高名な女剣士達。


「総大将! 酒、いつでも用意してますぜ!」


ハクオロ「『クロウ』か。そのうち一杯やろう」

クロウ「ういっス!」


浅黒い日焼けした肌に、肩だけ隠す臙脂色の外套。
ハクオロに呼ばれ、親指を立てて応えた男、『クロウ』。

トゥスクルの朝堂に、ハクオロの大切な者……家族達が会している。
54 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/11/24(土) 22:10:58.88 ID:ufkQmimIO

エルルゥ「皆さん、お久し振りです!」

ウルトリィ「エルルゥ様も……」


女性陣は女性陣で再会に喜び、会話に花を咲かせている。


ベナウィ「……もう少し、待つ必要がありそうですね」

ハクオロ「そうだな」


懐かしさに浸る八人。
ただ……この空間に、人影は『九人』。


「あ、あの……」


ハクオロ「はい?」


ハクオロが後ろを振り返ると……


ミュマ「私はどうしたら良いのでしょうか……」


オンカミヤムカイの学士も……所在無さげに立っていた。
55 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/11/24(土) 22:13:27.10 ID:ufkQmimIO
 ………………


ハクオロ「申し訳ない。ここにいる者達は顔見知りでして」

ミュマ「はあ……」

ベナウィ「貴女が文に書かれていた学士のミュマ様ですね」

ミュマ「はい。宜しくお願いします」


簡単な自己紹介を終え、九人は用意されていた座布団に座る。


ハクオロ「……さて。ウルト、報告を聞かせて貰うぞ。一体、何があった」

     「オンカミヤムカイからトゥスクル。一度も休まず、
      この國にやって来る程の報告とは……なんだ」


ウルトリィ「……話を聞いただけの、わたくしでは」

カルラ「わたしが説明いたしますわ」


ハクオロ「……お前の話だけでなく、別視点からの情報が欲しい。
      事実や、あった事だけを話してくれる――客観的な」


ミュマ「でしたら、私が補足しながら説明をいたします。皇様」


ハクオロ「……いや、私は皇ではない。……此方の話だ、説明を頼もう」

ミュマ「……? はい……」
56 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/11/24(土) 22:14:57.32 ID:ufkQmimIO
 ――
 ――――
 ――――――――


一昨日の昼を少し過ぎた頃、彼女達……ミュマ・カルラ・トウカ・カミュ、
そして術士数名で構成された『調査隊』は鳥の情報のあった小國に着いていた。


ミュマ「カミュ様、本当に宜しかったのですか?」

カミュ「え? だって大きな鳥さんでしょ?
     カミュだって見てみたいもん」

カルラ「……多分、もうその森にはいないと思いますけど」

トウカ「……我々は学士殿やカミュ殿の護衛役だ。何も無いならその方が良い」


調査隊が話に聞いた森へ入ると、その瞬間……


カミュ「ングッ!?」

ミュマ「……酷い匂い」


肉の腐った匂いと血の香りが漂う。
57 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/11/24(土) 22:16:55.16 ID:ufkQmimIO

ミュマ「御二人は平気なんですか?」

カルラ「……戦場も、こんなものでしたわ」

トウカ「良ければコチラの布を口元に。匂いを気にせず、動けますから」

ミュマ「ありがとうございます」

カミュ「……ご、ご免なさい。カミュこの先には……」


黒翼の少女の顔は青ざめている。

オンカミヤリューの中で、最も『始祖の血』を濃く受け継ぐ者とはいえ、
まだ若い娘に死の匂いは辛すぎる……とミュマは思う。

……まぁ、彼女の心配は『間違い』だが。


カルラ「……そうですわね」

トウカ「カミュ殿は……他の術士の皆様と待っていて下さい」


この二人は『本当の理由』を知っている。

カミュだけが持つ厄介な衝動。
これについては、後に語ろう──


ミュマ「え、あの……私達だけで……」

カルラ「平気平気〜」

トウカ「お任せ下され」


隊は二つに分かれ、女三人だけの組は森の奥へ進む。
58 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/11/24(土) 22:18:40.55 ID:ufkQmimIO

 《 幕間 黒翼の娘、そのココロの内に 》


(………………はぁ)

(他の人の前で、アレをやっちゃうわけにはいかないよね……)

(ここ一年は、平気だったけど……)

(おじさまが帰って来た頃位から、『渇き』がまた……)


『……御免なさい。私のせいで』


(う、ううん! ムツミのせいじゃないよ! 原因、判らないんでしょ?)


『……うん。前はお父様の血に強く反応しちゃったからだったけど』

『今は違うと思う……』


(何なんだろうね。大神様が目を覚ましたってわけじゃないし……)


『…………何か感じる』


  (えっ?)


『…………こっちの方に、少しずつ近付いてきてる』


(な、何が来てるの?)


『……凄く強い“力”』

『だけど……“優しい”力』


  (え、え?)


『火、土、風、水……』


(それって……)


『…………“マナ”?』
59 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/11/24(土) 22:21:00.59 ID:ufkQmimIO
 ―――――――――


カルラ「……随分と熱心に調べますのね」

ミュマ「学士ですから」


森の奥地に残っていた『食べ滓』を、ミュマは細かく調査している。


トウカ「やはり、腑は無いのですか?」

ミュマ「はい。肉を食らう生物は、最初に腐りやすい内臓を食べます」

カルラ「本当に、その……巨鳥が食べましたの?」

ミュマ「……鳥、或いはそれに近い生き物だと思います」

    「そこの『白い塊』を見て下さい」


死骸の調査を終え、三人は少し離れた場所にある塊へと足を運んだ。


トウカ「この白い塊は――」

ミュマ「鳥の『未消化物の塊』です。
     毛とか……骨とか、そういう物の」


トウカの疑問に答えると同時に、ミュマは布手袋をした右手を『塊』に突っ込んだ。
60 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/11/24(土) 22:23:43.20 ID:ufkQmimIO

   クチャ… グチュ……


カルラ(躊躇無くやりましたわね)


カルラのミュマへの評価は、森に来てから上がり続けている。

“学士なんて、頭でっかちの――”と思っていたカルラだが、
ミュマという学士については考えを改めた。

キママゥや家畜の死体を恐れる事無く検分するし、この塊にも物怖じしない。
その表情は真剣そのものであり、本気で仕事に取り組んでいる事が判る。


カルラ(あちらの男どもより、よっぽど役に立ちましたわ)


今のミュマは『気』の入った状態である。
カルラやトウカの場合、戦となれば『気』がのる。
ミュマは自分の知的興味を刺激されている時に力を発揮するのだろう。


  グチュ… グプッ


トウカ「……うぷっ」


……戦以外だと『うっかり侍』な相棒を見ながら、カルラは


カルラ「――気に入りましたわ♪」

ミュマ「何かありました?」

カルラ「いいえ。どうぞ続けてくださいな」


面白い遊び相手を見つけた子どものように笑った。


ミュマ「トウカさん。この辺り以外に死骸は見えませんか?」

トウカ「……東に骸がありまする」

ミュマ「では、もう少し見てみましょう」


再び三人は歩き出す。
61 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/11/24(土) 22:26:51.46 ID:ufkQmimIO
 ………………


ミュマ「……幾つか気になる事があります」


太陽が沈みゆく夕方。
途中ぽつりぽつりとある死骸や白い塊を調べつつ、
女達は森の奥、東の方角へ進んでいった。


トウカ「と、仰いますと?」

カルラ「貴女、まだ気がつきませんの?」

    「死骸が『少なく』なってるじゃないの」


ミュマ「カルラさんの仰るとおりです。代わりに、未消化物が増えています」

    「これが意味するのは――」


カルラ「――獲物を『丸飲み』している、でしょう?」

ミュマ「……はい」

トウカ「あっ、成程! 丸飲みしたら消化出来ない物が増え……」

    「丸……飲み?」


つまり、大型の餌を食べられるように──


ミュマ「……この惨状を引き起こした生物は、
     異常な早さで『成長』しています」


──『育った』のだ。


カルラ「ムックルがそうだったと、前にアルルゥから聞きましたっけ」

トウカ「ムックルがでありますか?」

ミュマ「その『ムックル』というのは?」

トウカ「某の妹分の……確か聖上は『ぺっと』と」

ミュマ「『ぺっと』?」


愛玩動物……正しい意味ではないだろう。


カルラ「用心棒?」

ミュマ「はぁ……」




同時刻。ヤマユラの集落で、
立派な体躯をした一匹の『白虎』が……


ムックル『……ヴォフッ!』


クシャミした。
62 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/11/24(土) 22:36:28.37 ID:ufkQmimIO

カルラ「他に気になる点はなんなのかしら?」

ミュマ「……御二人は、これが何か判りますか」


カルラ達に手袋を付けた自分の掌を見せる。


トウカ「女性の装身具ですな。これが如何なされ―― ……なっ!」

カルラ「流石にそこまで抜けてはいませんのね」


ミュマの掌の中にある装身具は、

──どろりとした白い液体にまみれている。


ミュマ「……先程調べた未消化物の塊から、見つかりました」


そうであって欲しくなかった。
そんな感情が学士から見て取れる。


「この惨状を起こした生物は……『人』を襲います」


災いは、復活した。
63 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/11/24(土) 22:45:39.34 ID:ufkQmimIO
―――――――――――――――――――――――


もうすぐ、夜が訪れる……

そんな世界が切り替わる刻の中、
厚い雲に隠れながら陸へ向かって降下する『鳥』がいる。

それは気流を産み、音を超えた速さで翔んでいく。

『雄』でありながら、『雌』。

躯の『成長』は星を覆う『マナ』に制限されたが、

『繁殖』は問題無い。


──雷鳴轟く雲中で、『五匹の鳥』は刻を待つ。



―――――――――――――――――――――――
64 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/11/24(土) 22:47:43.68 ID:ufkQmimIO

ほどなくして、彼女達三人は──

 くちゃり…  ごりぃ… 
   ごくん  ぺきっ…
 ちゃく ちゃっ…  ぶつぅ 
 ちかゃ くちゅ……
 ごと… めしゃり ぷつぷつ…
 くちゅぅ… はぐっ 


──『食事中』の『鳥』達を発見した。


カルラ「……あれが鳥ですって」

トウカ「……ミュマ殿。あのような」

ミュマ「……鳥じゃありません。羽毛がなく牙がある、あんな鳥はいません」


木陰や茂みに隠れた三人は、『三匹』の生物に見つからぬよう観察する。

ミュマが言うように、その生き物は羽毛や羽根を持たない。
洞窟に生息する小型哺乳類のような細身の躰と、折り畳まれた翼。
夕日に照らされる黒褐色の皮膚。血に濡れた翼爪。小さな骨ごと肉を喰らう牙。
頭部は『鏃』に似た歪な六角形の状であり、眼球の大部分は白い。

一目見ただけで、生物の持つ生存本能が危険を告げるだろう『攻撃的な姿』。

禍々しいという言葉では足りない。
アレは──『存在してはならぬモノ』だ。

そこまで言い切れるのには理由がある。


──三匹の『食事の内容』だ。

くちゃりくちゃりと、鼻先を突き立て、生物共が喰らっていたのは……


トウカ「じ、自分の『仲間』を!」


──同じ姿形を持つ、『同種の存在』であった。
65 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/11/24(土) 22:49:47.08 ID:ufkQmimIO
 ――――――――
 ――――
 ――


エルルゥ「と、『共食い』……」

ハクオロ「……なんて生物だ」

カルラ「そうね。鳥肌が立ちましたわ」

クロウ「本当かよ? その言いっぷり、
     そこまで怖ええモンじゃなかったように聞こえるぜ」

トウカ「いえ、流石の某もアレには戦慄を覚えました」

ハクオロ「感想は置いておけ。……その鳥の大きさはどれ位だった」

ミュマ「詳しくはまだ計測していませんが……
     躰の部分は大人の男性と同じか、やや小さい位でした」

ベナウィ「……? アヴ・カムゥ程という話ではなかったのですか」

ミュマ「はい。翼を広げた状態でも、そこまで巨大では……」

ハクオロ「……ミュマさん。貴女の口振りだと、
     その生物を『捕獲』したように聞こえるが」


カルラ「しましたわよ?」


ハクオロ「はっ?」


ミュマ「……話はまだ終わりません」
66 : ◆M6R0eWkIpk [saga]:2012/11/24(土) 22:52:19.61 ID:ufkQmimIO
ここで投下完了です。続きは来週。
67 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/11/25(日) 01:00:51.44 ID:R8me2aKLo

サンプル手に入れたか
68 : ◆M6R0eWkIpk [saga]:2012/12/01(土) 19:59:30.69 ID:VBScak+IO

 ――
 ――――
 ――――――


──状況は、一人の女の一言で一転した。


カルラ「はぁ〜い。こっちに美味しそうな女がいますわよ〜」



 『『『――キュォォ?』』』


三匹の食事場……森の中の拓けた地帯に向かって、
木陰に隠れていたカルラが声をかける。


トウカ「な、何をしているカルラぁぁ!!」

カルラ「何って……誘惑?」


当然、同じ場所で身を隠しているトウカに怒られるが…
そんな相棒の様子もどこ吹く風。
カルラは平然とトウカの問いに答えた。

69 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/01(土) 20:01:57.37 ID:VBScak+IO

トウカ「色仕掛けが通じる相手に見えるか!!」

カルラ「そうねぇ〜。色より、食でしょうね」

    「ホラ」


     『ケエェェェェォォォ!!』
   『キショォォォォッ!!』 
『ギャオオ――ッ!!』


獲物二人を前にして唸る三匹。


カルラ「刀を抜かないと、夕食にされちゃいますわよ〜」

トウカ「この……馬鹿ぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


トウカは仕方無く、カルラは意気揚々と『戦いやすい』異形共の餌場に足を進めた。



ミュマ(な、何をしてるのあの人達……)


茂みに隠れているミュマを放置し、戦鐘は鳴る。


『二人の女剣士』対『三匹の異形』の戦いが始まった。
70 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/01(土) 20:08:28.60 ID:VBScak+IO

 『キャオッ! キャオッォォォォッ!』


三匹の中で最も小型の一匹が翼を広げ、トウカに迫る。


トウカ「…………」


女は危険が近付きつつあるというのに……
腰の刀を『抜かず』、柄に手をかけるのみ。


 『シャォォォォ――!!』


低空飛行のまま、彼女に体当たりを食らわせようとする鳥だが……


トウカ「――見切った!」


    シャキィン!


一人と一匹が衝突──


 『キャオォォォォ――……オ?』


トウカ「…………」


          ──しなかった。
71 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/01(土) 20:11:40.37 ID:VBScak+IO

トウカ「これで飛べまい」


刀を納める時特有の…鞘と鐔のぶつかる音がして……


  ブシュウッ!!


その時初めて、異形の鳥は自身の右翼が『喪失した』という事実に気付く。


既に無い翼を羽ばたかせても、紅の空へは戻れない──

鳥は、森の豊かな大地に頭から滑り込んだ。


 『ギャァッ! ケョォォォォォ!!』


トウカ「……あの勢いで地に墜ち、まだ意識があるのか」


鳥はもう片方の翼でもがき苦しみながら、その場から離脱しようとする。


トウカ「ミュマ殿ー。これはどうなさいますかー?」


ミュマ(え? え? え?)


極普通の人間である彼女は状況を把握出来ない。


ミュマ「つ、捕まえてください!」


混乱した状況の中、なんとかミュマの口から出たのは『捕獲』依頼。
72 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/01(土) 20:14:04.17 ID:VBScak+IO

トウカ「――心得た!」


接近するトウカ。


 『ギャォオオッ!!』


迎え撃つ鳥。

広げた左翼を畳み、女に向け翼爪を振りかざすが……


トウカ「遅いっ!」


  ザシュゥッ!


 『――――キュァァァ』


   ドサッ…


意識を刈り取られ、異形の生物は草の上に横たわる。

痙攣して震える躰に、翼の付け根から胸にかけて、
トウカの付けた刀傷が生々しく残されたまま……
73 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/01(土) 20:27:58.77 ID:VBScak+IO

もし、この生物が人のように感情を表せたならば……
驚愕や混惑の表情をしていたろう。

それ程見事な、剣閃だった。


 『……!』 『ギャゥッ!!』


鳥も驚いてばかりはいない。
続けてもう一匹が再びトウカを狙い、翼を広げ……


カルラ「あら? こんなに良い女を放置するんですの?」


……ようとした瞬間、


   ブォンッ!


 ゴギィッ…ガガンッ!  ブシュゥゥゥゥ――ッ!!


頭蓋から地面にカルラの『鉄塊刀』が刺さり──


カルラ「石頭じゃありませんのね。『真っ二つ』になってしまいましたわ」


二匹目の異形は何も出来ず……
血を撒き散らすのオブジェの『材料』になった。
74 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/01(土) 20:33:31.11 ID:VBScak+IO

 『キ、キショォォォォッ!?』


……今の自分では敵わない。

鳥がそう思ったのかは判らないが……
最後の一匹は刀の届かぬ遥か上空へ逃亡する。


カルラ「逃げちゃいますわ〜。くぅ〜お酒美味し〜」


闘いの後なのに、腰に下げた徳利の酒を飲むカルラ。


トウカ「ミュマ殿、もう大丈夫でありまする」


ミュマ(な、なんなの このひとたち……)


ミュマの驚きは無理もない。
普通の人間ならば、あの生物に怖じ気づき、
何も出来ぬまま餌にされているだろう。
75 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/01(土) 20:43:34.63 ID:VBScak+IO

カルラとトウカは、ただの人間に在らず。

一振りで巨大な岩塊を砕き斬る鉄塊刀…『覇陣』を片手で扱うカルラと
風の力を宿す刀…『疾風』により、目にも留まらぬ高速斬撃を繰り出すトウカ。


トウカ「腕を上げたなカルラ」


二人はこれまで幾度となく死線を潜り抜けてきた……


カルラ「貴女もね」


この大陸における、最強の剣士達なのである。


カルラ「にしても……興醒めですわぁ〜。お酒はこんなに美味しいのに」

トウカ「酒の肴には……したくないな」


ミュマ「……言葉が出ないって、こういう事なんですね」


一瞬、緊張が緩んだが……



 『キョォォォォォ――――』
76 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/01(土) 20:49:50.73 ID:VBScak+IO

先程逃げた一匹が高空から甲高い声を発し、空気は凍る。


トウカ「戻ってきたか。降りてこい! 相手をしてやる!」


    ……ィィィィィィィィィィィィ


カルラ「? この『音』、いったい?」



 『ィィィィィィ――――』


異常に高い『音』が、異形の首から響いている。


ミュマ「何かやろうとしてるんでしょうか」


生物が放とうとしているのは不完全な『必殺技』。
『雛』の身では、制御不可能な破壊の光線。

……とはいえ、これを逆転の一手にしようとする策は正しい。

危険な人間達から、一切の攻撃を受けない『空』に来たのも正しい。
77 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/12/01(土) 20:54:22.55 ID:VBScak+IO



『空』は翼を持つ異形にとって、聖域だった。


太陽に照らされぬ、夜天。


その刻と場こそ、『鳥共』が何人にも侵されない、無敵の……











──『無敵』? それは違う──


──翼を持たずして、彼等の聖域を侵す存在は『いる』──
78 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/12/01(土) 20:57:40.30 ID:VBScak+IO





  ヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュ……


 『…………?』


生物は不可思議な音を聞いた。


カルラ「……何かしら、あの音」


カルラも同じ音を聞いた。


トウカ「……何か黒い点が」


トウカは飛んでくる『ソレ』を一瞬見た。


ミュマ「…………」


その時のミュマには……何も見えず、何も聞こえなかった。

しかし……魂がその存在を『感じとった』。



 『クオォォォォ――オオォォォ――ンォォォォ――――』


──傷付き、緑の血を流しながらも……『地球』を護る為に戦う存在を──



 『――キュォォォォォォッ!?』



  ズゥゥンッ… グラグラグラ…


トウカ「じ、地震!?」

カルラ「大きいですわ!」


ミュマ「あれは……」
79 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/01(土) 21:00:53.60 ID:VBScak+IO


 『コオォォォォ――オオォォォォォォォ――――!!』



 『キャオォォォォ! ギャォ――――


         ――ボォゥッ!


鳥は……自分の躰の四倍以上の『火球』に呑み込まれて、瞬間的に『蒸発』していく。


その火球は小高い山に命中し……

地形を壊す。

木々を燃やす。

大地の輪廻に生命を還す。


『地球を滅ぼすモノ』を消し去る為なら、その炎の先に何があろうと構わない。


 『クオォォォォ――オオォォォォォォォ――ン――――!!』


超古代文明により産み出された『巨大生物』。

旧き世を何度も救った『救世主』。

ソレは……今も昔もこう呼ばれる。


カルラ「……何ですの。アレは」


人が理解出来ない存在。


トウカ「怪しげな獣……」


同じ世界に生を受けた、人ならざる存在。


ミュマ「『怪獣』……」



──この日、『新人類』は初めて──


  ──『怪獣』を知った──
80 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/01(土) 21:02:27.69 ID:VBScak+IO
 ――――――――
 ――――
 ――


ハクオロ「……怪獣」

エルルゥ「かいじゅう……」


ミュマ「その…甲羅を持った怪獣は、『島』のようでした」

カルラ「だいたい、四十間(けん)位だったと思いますわ」

トウカ「オンカミヤムカイて戦った聖上の五倍――あ」


ハクオロ「――うっかりにも程がある。知らない者の前でそれを言うな」


トウカ「も、申し訳ありませぬ!!」

ミュマ「オンカミヤムカイで? 彼処に何が?」

ウルトリィ「……ミュマさん、貴女は知らなくて良い事です」

ミュマ「……賢大僧正様がそう仰るなら」


ベナウィ「『鳥』の次は『動く島』ですか」

クロウ「……あの日から、この世の箍が外れたって感じっすね」

ベナウィ「……箍が外れていようが、それを守るのが我々です」


ハクオロ「……続きを聞かせてくれ」


ミュマ「――はい」
81 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/01(土) 21:05:04.59 ID:VBScak+IO
 ――
 ――――
 ――――――――


『怪獣』は自分の放った炎の燃え広がる様を見ていた。

火炎の下にいた生命は止むを得ない『犠牲』。

禍の芽を潰す為……避けては通れない『代償』。


 『――――コォォ』


そして何処か別の場所へ向かい、歩む。


カルラ「……ねぇ、あの方角って」

トウカ「地図によると…集落があります!」

ミュマ「避難させないと!」


……三人は“今から行っても間に合わない”と思う。

アレが一歩を踏み出すだけで……
彼女達より、何倍も速く目的地へと到達するだろう。

それでも……走る。

自分達が行くことで、誰かを救えるのなら──
82 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/01(土) 21:08:17.01 ID:VBScak+IO

   ズゥウン!


 『――――クォォォ』


獣の片眼に集落が映る。

巨大な化け物がすぐ其処に迫っている状況だというのに、
集落に住まう者達は『動かない』。


 『コオオォォオオォォォ――』


森を駆け抜ける三人の女に、その村の惨状は判らない──

しかし、ソレには判る。


 『キュオオォォ――』 『ギャッ! ギャォ―』
 「た、助…」 『ケォォォォッ!』 くちゃ…
 『キィィッ!』 ぶちゅ 「マーマ、マーマ!」 『キシェェェ!』


生きたまま異形の雛に身を啄まれ、人々が喰われてゆく。

──其処はまさに『地獄』の在り様。


……この集落も『犠牲』だ。


 『ォォォォ――』


ソレは周囲の空気を吸い込み、自身の体内の炉を稼働させる。

腹部から胸、胸から喉。
ゆっくりと確実に口を目指し、炎は進み──


    ゴオウゥ!


二発目の『火球』が放たれた。

83 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/01(土) 21:12:48.05 ID:VBScak+IO
 ……………


カミュ「カルラ姉様! トウカ姉様!」

トウカ「カミュ殿!」

カミュ「あれは何!?

カルラ「わたし達にも判りませんわ!」


カルラとトウカは木々をかわして走りながら、
途中で合流したカミュとミュマは背中の翼で飛びながら

四人と他の僧兵達は、森を抜けた先にある集落を目指す。


ミュマ「カミュ様、お身体は――」

カミュ「そんなことを気にしてる場合じゃないよ!」


集落に近付く程、彼女等は炎の熱気を肌で感じる。


カミュ「ミュマさん! 私達は上に!」

ミュマ「か、かしこまりました!」


太陽が今にも沈みそうな朱と灰色が混じる曇天へと、
オンカミヤリュー(翼を持つ者)の二人は上昇し、


カミュ「――!!」   ミュマ「ひ、酷い……」


高所から集落のあった所を見下ろした……
84 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/01(土) 21:17:13.72 ID:VBScak+IO


  ボオォォォ―― ゴゥン!


其処に在ったのは、踊り続ける炎。

物も、者も、モノも、全てを燃料にして燃える紅。

世界に、怪獣達の目覚めを告げる、強烈な花火。


ミュマ「わ、私はカルラさん達と合流します!」

カミュ「……先に行ってて」

ミュマ「――はい」


ミュマを下にやり、カミュは……


カミュ「これ……こんなコトを引き起こしたアレのどこが『優しい』のっ!!」


己の内に在る『もの』に対し、感情をぶつける。


カミュ「……アナタは、何なの?」


 『コオォォォオオォォォ――』


閉ざした牙の隙間から、白い煙を吐く『怪獣』……

ソレと黒翼の娘は、陽が眠りにつくまで見詰め合った。
85 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/01(土) 21:26:27.14 ID:VBScak+IO

 ポツッ… サァァァ…


どんよりとした黒曇から、雨が降る。
闇を煌々と裂く赤火の勢いも、徐々に弱まってくるだろう。


カミュ『…………』


だが、銀髪の少女の……内にある炎は消えない。
いつの間にか、雨に濡れた娘の瞳は──
蒼玉から『紅玉』……血のような赤に変わっていた。


カミュ『……許さない』



 『ギャォォォォォオオオォォォォ―――ッ!!』



カミュ『 !? 』


雨雲の中から、何かの雄叫び。


そして──


 『キョォォォォォォォォォ――!!』


──『曲がらぬ雷』が落ちる。
86 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/01(土) 21:30:29.31 ID:VBScak+IO

カミュ『――あ』


──その真っ直ぐな線の先に、カミュがいる。


カミュ『……っ!』


 『――ォォクォォォォォッ!』


  ジジジジジジ……


カミュ『――え?』


雲間を貫く怪光線から、巨大な左腕が彼女を『守る』。


カミュ「な、なんで……」


緑の血を流し、痛みで呻く怪獣……
その光景を見て、カミュの思考は混乱した。


 『コオオォォォォゥゥゥ!!』


けれど、ソレが理由を語ることは無い。
87 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/01(土) 21:44:59.28 ID:VBScak+IO

雷が止んだ瞬間、獣は両の足を『甲羅』に引っ込めて、
空いた両孔から……力強く輝く蒼い炎を噴出する。


カミュ「ウワッ!?」


──『鳥』を倒す為に、『ソレ』が天空を侵略する──


頭と左腕、『肘から先の無い右腕』も甲羅にしまい、

四つの噴射孔全てから、同じ蒼の火炎が迸る。


 ヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュ…


──『ソレ』は『回転』した。


 ヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュ…


そして空へ── 頭上の雨雲に向かって飛び去っていった。


カミュ「…………」


多くの疑問を遺したまま……
88 : ◆M6R0eWkIpk [saga]:2012/12/01(土) 21:46:27.43 ID:VBScak+IO
投下完了。ではまた来週に。
89 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/01(土) 22:24:37.79 ID:Rm8Dh8abo

勾玉を持ってる巫女役がいないから完全に3の守護者モードなんだな
このままだとイリスが生まれてしまいそうだ
90 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/12/08(土) 01:58:46.45 ID:nd+kaKCE0
今、平成シリーズ見てるから非常にタイムリー
91 : ◆M6R0eWkIpk [saga]:2012/12/08(土) 20:56:08.68 ID:MxrBlNLIO

 《神の視点・壱》


世界が夜の帳に包まれていく。

日が沈んだ後に訪れる闇の時間は……


  ――バサッ バサァッ


『鳥』共の活動時間だ。


  『ケョォォォォォォ――』  『キャァァァァァァ――』


厚い雨雲の上、宙空を舞う五つの禍影。

見境なしに命を喰らう彼等だが、あの『天敵』を討つ為ならば協力する。
そんな性質があるのかもしれない。

先刻放った『曲がらぬ雷』から数十秒。
宣戦布告を受け取った彼等の敵は── 雲を突き抜けやって来た。
92 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/08(土) 20:57:53.59 ID:MxrBlNLIO

  ヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュ
  ヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュ…

吸入・圧縮した空気に体内炉心のエネルギーを吹き込み、燃焼。
その炎を甲羅の孔から噴流させ、巨獣は回りながら飛ぶ。

この姿が『ソレ』の第一飛行形態。


天を踊る翼を持った『禍達』に対するのは──

蒼白い業炎を纏う『回転円盤』。


『伍』対『壱』の空中決戦が、人の目の届かぬ雲上で再開した。
93 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/08(土) 21:02:34.76 ID:MxrBlNLIO

 『キュャォォォォ――!!』
      『ケェゥウゥォォォォゥ!!』

命の暖かさを感じない羽根無き翼を有す『鳥』……
その躯の大きさは、陸に居た『雛』より何倍も巨大であった。
世界に満ちる『マナ』の影響で昔程大きく成長出来ぬとはいえ、
円盤を包囲する鳥共の翼長は約30メートル。
『単為生殖』可能なほどには育っている。

最初の雛である彼等が産まれ落ちてから『約一週間』。
それだけの期間で、『自己以外を喰う』生き物がここまで発育するのだから、
鳥がこの世(ツァタリィル)にとって危険な存在であるのは明らかだ。


 『『『キョォォォォォォォォォ――――』』』


鳥達は高音の鳴き声と共に、己の『必殺技』を『円盤』に照射する。
94 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/08(土) 21:05:24.31 ID:MxrBlNLIO

音の持つ振動。これを自身の内に集め、
そのまま体内で異常共鳴させた音を放射、

狙った物体を瞬間的に『切断する』……


 ――ィィィィィィィィィィィィ!


──曲がらぬ雷の正体。『超音波メス』。


五匹の口腔から出でた『刃』は、回り続ける獣の甲羅に次々と命中する。

……しかし、甲羅には少し傷が付くだけ。

過去の闘いでも、鳥の刃が天敵の甲を貫いた事は無い。

甲羅の獣は襲い来る雷を物ともせず、先行する災厄の鳥へと距離を詰めていく。
95 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/08(土) 21:06:59.37 ID:MxrBlNLIO

一方、鳥達は回転して徐々に接近してくる敵に対し、
ある程度距離を取りながら尚も光線を浴びせ続ける。

四方八方から降り注ぐ『光の嵐』。

その光雨の中で、一本の刃が炎を噴く孔に当たり、
攻撃を受けた生物の……緑色の血液が空域一帯に散る。


 『クオオオォォォオオオォッ!』


巨獣が苦痛の声を上げて一瞬減速する。

体格差が大きい為、鳥達は敵に寄らず、
遠距離からじわじわと相手を弱めるつもりらしい。

比較的小柄な二匹が速度を落として敵の後方へ移動し、包囲網を作ろうとしている。
96 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/08(土) 21:09:30.69 ID:MxrBlNLIO

やはり『ソレ』が今までとっていた移動体勢では、
小回りのきく鳥共に有効打を与えられない。


だが甲羅の獣は── 『もう一つの空戦形態』を有している。


右の腕を失っているから、長時間は使えないが……

巨獣にも空を泳ぐ為の……『ヒレ』がある。


──全ての孔の……炎の噴射を停止──

──左腕と顔を出し、『高機動戦闘用』の姿に己を変えて──

──甲羅の後部孔から、火炎を再噴射──


 『――コオオオォォ!!』


背後を取ろうと追ってきた二匹の鳥だったが……
不意を突かれ、敵の近接攻撃の間合いに入り込んでしまった。

即ち、愚かな二匹を待っているのは──


 『グオォォォッ!』


鋼を引き裂く『ヒレ』と、二本の牙が飛び出た『顎』。

不可避の『死』だ。
97 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/08(土) 21:34:01.63 ID:MxrBlNLIO

  ザシュゥゥ! バクンッ!


哀れな一匹は左のヒレで躰を斜めに両断。
もう一匹は頭ごと上半身を噛み砕かれ、二匹は短い生涯を終える羽目になった。


 『コオオォォォ――オオォォォォォォ――……』


迫り来る二匹を片付けた怪獣は


 『ケヤォォォォ――!』   『カァァァ――――ッ!』
        『ギャオォォォオォ――!』


己の前方を飛ぶ三匹を睨みつける。


 『ォォォォォォ――――』


……ドッグファイトはこれからが本番だ。

自由になった巨獣の頭部が深く息を吸い、的を定めると……
体内の炉から生じた超高温の炎が束ねられていく。

地球を脅かす存在にのみ向けられる力──


                         ゴォォォッ!!


反撃の『プラズマ火球』が、黒き災いの翼へ放たれた。
98 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/08(土) 21:51:46.22 ID:MxrBlNLIO
 ――――――――――

 《幕間・『憎悪するもの』》


オンカミヤムカイの地下深くにある『聖地』で、『   』は孵った。

過去の『   』と違い、明確な目的を持たず。

進化の極致へ至ることが、敗れた『オリジナル』の目的だったかもしれない。

けれど、その目的は阻まれた。

自分たちを倒す為に産まれた『対抗兵器』によって。


今、かつての人類が消えた世界に……

滅んだ筈の『   』は甦ってしまった。


闘争の本能が内に潜む『設計図』に呼び起こされる。



  ……『力が欲しい』。

  遺伝子に刻み込まれた『天敵』を殺せるだけの力が。

  それを得る術(すべ)はある。


『   』は自分の入っていた石の卵から……


  ずるり… ずずず…


数本の手で一つの『勾玉』を取り出す。
99 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/08(土) 21:58:02.86 ID:MxrBlNLIO

『種』としては遥か昔に敗北した。だから『   』は此処にいる。


   ワタシハ ………ヲ ユルサナイ


最初に芽生えた感情は……『憎悪』。


  ……チカラガホシイ


邪魔な肉塊を掃除しながら、『   』は思う。


  ──『再戦』をしよう──


オリジナルの代役として、『    』は『融合対象』を求めて動きだす。

辺りに散らばる赤い肉塊……旧い人間を吸収し、腹拵えを済ませ……

『名を持たぬモノ』が『同種』を操り、闇に再臨した。


……これは『鳥』と人が戦った日の『三日前』の出来事。


……そしてその三日後に、『   』は『目標』と『同化対象』を見つけた。


 『……ォォォォォ』


地球を守護する『怪獣』と


「…………」


炎に照らされ、妖しく輝く銀の髪を持つ若い娘──
神封じの『大罪』を背負った黒翼の少女を。
100 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/08(土) 21:59:38.50 ID:MxrBlNLIO
 ――――――――


カミュ「集落はどう!?」


カルラ「……すぐ近くに川があるけど…手遅れですわね」

トウカ「……無念」

ミュマ「…………」


……あの巨大生物の火球で、村の全てが激しく燃え上がっていた。

十にも満たない人数で、対処出来る被害ではない。
それにこの火勢では……『生存者』はいないだろう。


ミュマ「……戻りましょう」

カミュ「で、でももしかしたら……」

カルラ「火の勢いが弱まるまでは近付けないの」

    「それに……此処だけではすまないかもしれませんわ」


カミュ「え?」

トウカ「鳥に巨獣、どちらも危険な存在でありましょう」

    「……今はオンカミヤムカイに戻り、賢大僧正殿の助力を求めるべきです」


カミュ「……そうだね」
101 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/08(土) 22:01:29.50 ID:MxrBlNLIO

ミュマ「あの生物も詳しく調べて頂く必要があります」

    「トウカさんが仕留めた生物……多分生きているはずですから」


カミュ「……わかった。僧兵たちはカルラ姉様について『生き物』の回収を」

    「私たちは一足早くオンカミヤムカイに戻ります。
     水と風の術士を連れて来て、火事被害を最小限に留めましょう……」


この場に居る者達で、指揮権限を持つカミュが指揮を取る。


カルラ「さっ、行きますわよ」

僧兵「「「ははっ!」」」



カミュ「…………ん」

                              キラッ


カルラ達を見送ったカミュの瞳に、『何か』の光が映る。


トウカ「カミュ殿? 如何なされた?」

カミュ「何か……あの辺で光ったような……」

    「ちょっと見てくる」 バサッ…
102 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/08(土) 22:03:51.88 ID:MxrBlNLIO

カミュが歩を進めた先は……石だらけの川原。


カミュ「水面が映した月の光だったのかな……?」


                             ポォッ


カミュ「……? なんだろコレ。さっきの光はコレかな?」


少女は『深碧』に煌めく小さな『石』を拾う。


カミュ「…………あったかい」

    「でも、こんな石見たことないや。翡翠とも違うし……」


   『……それに似た波動を、あっちからも感じる』


カミュ「あっちって?」


   『この川の北の方角』

   『あの“島”みたいに大きな生き物がいたあたり』


カミュ「わかった。行こっ『ムツミ』」


   『うん』



この娘…カミュが『ムツミ』と呼ぶのは、
自分の中にいる『もう一人の人格』。
一年と少し前から、躰を共有するようになった『最初の人』。

カミュの躰を『憑代』にして、
意図的に魂の輪廻を繰り返した『超常の存在』である。
103 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/08(土) 22:06:01.33 ID:MxrBlNLIO
 ――――――――
 ――――
 ――


ハクオロ「ふむ……その『石』とやらがコレか」


九人の眼が『二つの石』に注がれる。


一つ目はカミュが最初に見つけた石。

──鈍く澱んだ、黒の石。


二つ目は『怪獣』によって踏み潰された跡地に在った石。

──深い色合いの琥珀石。


トウカ「どっちも細工されているようであります」

ベナウィ「そうですね。村人の装飾品だったのでは?」


ミュマ「私は……どうもそう思えないんです」

ウルトリィ「わたくしも同じ意見です。何かを……感じてしまって」

      「特にこちらの、琥珀色をした物から」


カミュ「う〜ん……カミュは黒いほうに何かピーンと来るんだよね」


ハクオロ「オンカミヤムカイの巫(カムナギ)、
      自然の神と交信するウルトリィに……」

     「『あの神』と人を結ぶ者である……カミュがそう言うなら……」


ハクオロ「この二つの『勾玉』は、何か特別な物なんだろう」
104 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/08(土) 22:08:05.04 ID:MxrBlNLIO

アルルゥ「まがたま〜?」


青い衣の女の子がハクオロの横に顔を出す。


エルルゥ「アルルゥ! クーヤさん達は?」

アルルゥ「おひるねだって」


遊び相手がいなくなり、アルルゥは構って貰いにきたようだ。
ハクオロの膝に頭を乗せ、彼が髪の毛を『撫でる』のを待っている。


ハクオロ「よしよし。いい子だから、話の邪魔をしないでおくれ。
      私達は大事な話をしているところだからね」

アルルゥ「は〜い」


と言いながらアルルゥの頭をしっかり撫でてやるのがハクオロという男である。


エルルゥに言わせれば、


エルルゥ「ハクオロさんはいつもアルルゥに甘いんですよ!」


……だ、そうで。


ハクオロ「あ、いや、その……」

エルルゥ「むぅ〜〜」


思い切りハクオロを睨み付けるエルルゥ。


ミュマ「あ、あの……」

カルラ「いつもの事ですから」

クロウ「流したほうがラクですぜ。今の姐さんは止まらねぇから」

ミュマ「は、はぁ……」
105 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/08(土) 22:12:04.17 ID:MxrBlNLIO

エルルゥ「最近、夜も冷たいのは……
      もしかして子どもにしか興味がないから!?」

ハクオロ「何でそうなるッ!」

エルルゥ「ハッ! じゃあまさか…隠れて別の人と浮気!!」

ハクオロ「してない! してませんからっ!」


ウルトリィ「あら、エルルゥ様で御満足出来ないのでしたら……」

カミュ「カミュ達で癒してあげよっか〜?」

カルラ「常世(コトゥアハムル)に導いて差し上げますわ〜」

トウカ「せ、聖上……某にも……////」



ミュマ「な、何ですかこの状況!?」

ベナウィ「おや、ご存知ありませんか。トゥスクルの皇の二つ名を」

ミュマ「……あっ! 『キママゥ皇』と『好色皇』!」

    「何人も美しい側室を侍らせたあげく、
      國で色街を運営したというあの!!」


ハクオロ「違うっ! いや、確かに後者はそうだが!」


一年以上前に作った『旗』はまだ生きているらしい。

……結局、話は一時間ほど後になってから再開された。
106 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/08(土) 22:14:38.52 ID:MxrBlNLIO
 ――――――


ハクオロ「えー…イテテ…… 兎に角、その巨大生物についてだが──」


嫉妬深い少女に顔を引っ掻かれたらしく、ハクオロの頬には爪痕が残っていた。


ウルトリィ「賢大僧正として、大陸の國々にお触れを出しております」

      「三日後、オンカミヤムカイにて『緊急会合』を開催します…と」


ベナウィ「その令は他國へ発したのですか?」

ウルトリィ「ええ。『わたくし達がトゥスクルに出発したら発令せよ』
       ……と言っておきましたから、既に遠國は動いているでしょう」


ベナウィ「この國には伝わっておりませんでしたが?」

ウルトリィ「訪問ついでに御報告をと思いましたので」


ハクオロ「……ウルト。こ狡くなったな」

ウルトリィ「……何故そう思われましたか?」

ハクオロ「お前は……私をその会合に出そうとしている」

     「このトゥスクルの代表、皇(オゥルォ)としてな」


ウルトリィ「いいえ。そんなことはありませんよ」


ウルトリィは笑みを崩さない。
107 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/08(土) 22:17:29.46 ID:MxrBlNLIO

ハクオロ「……そのような所が狡くなったと言うんだ」

     「今だから言っておこう。ウルトリィ、お前は嘘を吐く時――」


ハクオロ「必ず腕を組むんだ」

ウルトリィ「――っ!」


腕を組むという動作は不安の表れ。
育ちの良い皇女であるウルトリィは、基本的に嘘が下手なのだ。
現在は國皇の地位にある為、以前に比べて嘘も吐き慣れてきたが……
この國に戻り、少し気が緩んでしまっていたようだ。


ハクオロ「國と國との交渉事に油断は禁物だ。気をつけておけ」

ウルトリィ「……はい」

クロウ「総大将、会合に出る気は無いんですかい」


ハクオロ「……今回は非常事態だ」


カルラ「じゃあ……」


ハクオロ「ウマを用意してくれ。私達は一度村に帰る。
      エルルゥ・アルルゥ。荷を用意しに──」


エルルゥ「必要な物は全部持ってきましたよ」


ハクオロ「……全く、君には勝てんな。ベナウィ、ウマは要らない。
      今晩だけ皇城の空いている部屋を借りるぞ」

ベナウィ「書斎も寝室も用意出来ております」


ハクオロ「……言っておくが、今回だけだぞ」


トウカ「聖上ぉぉぉ……」


ハクオロ「……数日間だが、またよろしく頼む」


──役者が揃ってきた。

108 : ◆M6R0eWkIpk [saga]:2012/12/08(土) 22:22:36.94 ID:MxrBlNLIO
今日はここまでです。
可愛いあのコが復活。名前はまだない。
では失礼します。
109 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/12/08(土) 23:56:51.53 ID:nd+kaKCE0
次回楽しみにしてます
110 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/08(土) 23:59:08.03 ID:Q+AP7NPIo

やはり来たか……!
111 : ◆M6R0eWkIpk [saga sage]:2012/12/22(土) 21:19:28.13 ID:CwgQpxZIO

 《 幕間・各々の一夜 》


ウルトリィ「……けほっ」


咳の後、寝床の中からゆっくりと起きるウルトリィ。


ウルトリィ「転移をあれほど使うのは―― 無茶でしたか」


オンカミヤムカイからトゥスクル、
遠く離れた國に可能な限り速く着く為、彼女がとった手段は──

地脈の流れにそって瞬間移動をする『転移術』、
この奇跡に近い所業の『連続行使』だった。


ウルト「う……今は……夜でしたか……」

    「皆様と別れた後、そのまま……」


 「あら、目が覚めましたの?」


ウルトリィ「カルラ……貴女が布団を?」

カルラ「ええ」 コクリ
112 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/12/22(土) 21:22:52.94 ID:CwgQpxZIO

カルラ「よく寝てましたわね」

    「あれだけ難しい術を使えば、こうなる事位判っていたでしょうけど」


カルラ「賢大僧正の貴女が……そこまでする必要は無かったんじゃなくて?」


ウルトリィ「そう……だったかしら」

カルラ「――巫女(カムナギ)として、何かを感じたの?」

ウルトリィ「…………逆なの」

カルラ「…………逆?」


ウルトリィ「――何も聴こえなかったのです」

      「火も、土も、風も、水も―― わたくしに答えませんでした」


カルラ「……これからどうなるのかしらね」


ウルトリィ「…………天と地とが背き合う。滅びるかもしれない」


カルラ「え?」

ウルトリィ「平穏に見えた世界に…… 危機が迫っている……」

      「こんなふうに思ってしまうのは何故でしょう……」
113 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/12/22(土) 21:24:45.20 ID:CwgQpxZIO
 ――――――――――――

ベナウィ「…………」


トゥスクルの侍大将であるベナウィだが、
皇不在の現在は國の政務も執り行っている。
なので、彼の仕事が終わるのは月が高く昇る頃だ。


ベナウィ「ここまでとしましょう」


何年も前から城の重要な仕事もこなしてきた彼は、
仕えるべき君主のいない今の状況にも対応してきた。

しかし──


ベナウィ「私がよくても、下が……」


皇が行方知れずとなった事で、兵士や文官達の士気が低下。
政務のほうでも、前とは比べ物にならない程、書類事務が減ったにもかかわらず……
『噂』の所為で人手が足らず、文官の育成に力を注げない状態が続いている。
114 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2012/12/22(土) 21:29:05.34 ID:CwgQpxZIO

ベナウィ「……聖上に嫌がらせをし過ぎましたか」


町に流れる噂とは──

皇城に仕えると、毎晩遅くまで働かされる。
山のような木簡が次から次へと目の前に積まれ、過労で倒れる。
働き過ぎて死んだ女官が、夜すすり泣く声が聞こえる。
仕事を抜け出すと、『泥田坊』が襲って来る……等


ベナウィ「……はぁ」


 「失礼しやす」

クロウ「大将、お疲れさんです」


入室してきたのは、ベナウィ直属の部下。トゥスクル騎兵衆副長のクロウ。


ベナウィ「別に疲れてはいません」

クロウ「そうっすか。それで用ってのはなんです?」


この体格の良い武人は、ベナウィに呼ばれて此処に来たらしい。
115 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/12/22(土) 21:34:15.41 ID:CwgQpxZIO

ベナウィ「……クロウ、明日から城を頼みます」

クロウ「うえっ!?」

ベナウィ「私はハクオロ様について、オンカミヤムカイまで向かいますから」


あのベナウィから城を任すと言われる……その意味は……


クロウ「た、大将…… 俺、書類仕事は苦手で……」

ベナウィ「いい加減覚えなさい」


明日以降の政事を片付けろという、
頭を使う事が苦手なクロウにとって、最悪の命令。


クロウ「そ、そう言われやしても……」

ベナウィ「『あの男』もいない現在、この國を良き國にするには、
      我々が身を粉にして動かねばなりません」

クロウ「あの男……ああ、若大将っすか」

ベナウィ「全く、何処で何をしているのやら……」


二人は、旅に出たきりの『もう一人の皇候補』を思い起こした。
116 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2012/12/22(土) 21:37:25.77 ID:CwgQpxZIO
 ―――――――――

同時刻、平原で──


「へっくしゅいッ!!」

「……風邪でもひいたか?」


黒い外套を被り、躰の殆どを夜の闇に溶けこませた男がくしゃみをした。


「……月か」


男は顔を上げ、明るく輝く空の星々を堪能する。


「兄者は……月を好んでいたな」

「お前も月は好きかい?」

「フッ……寝ているか」


 「「若様。ガショウ様がお呼びです」」


「……? 何用だ?」


 「「『手が空いたから、稽古をつけよ』と」」


「――判った。今行こう」

「お前達、この子を頼むぞ」


 「「はいっ!」」


オンカミヤムカイへの長旅に向け、多くの者が動き出す。
117 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2012/12/22(土) 21:42:31.76 ID:CwgQpxZIO
 ―――――――――


エルルゥ「良かったんですか? 私もこの部屋に来て……」

ハクオロ「一人でいると、色々思い出してしまうからな……」


彼等が充てがわれたこの部屋は、『皇の寝室』。
ハクオロとエルルゥ、二人にとって……大切な思い出のある部屋だった。


エルルゥ「やっぱり……昔の事を思い出して、辛いんですね」

ハクオロ「……いや、そうじゃない」

エルルゥ「えっ?」

ハクオロ「ここにいると、決心が鈍りそうになるんだ」

     「悲しい事もあったが……それ以上に楽しい日々が甦ってしまう」


ハクオロ「『家族』と過ごした暖かな日常が……な」

     「私がそんな毎日を生きては、これまで殺してきた者達に――」
118 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/12/22(土) 21:44:47.69 ID:CwgQpxZIO

エルルゥ「ハクオロさん!!」

ハクオロ「ど、どうしたエルルゥ。急に大声を上げないでくれ」


エルルゥ「ハクオロさんは……もう『神様』じゃないんですよ?
      だから……そんな言い方しないで下さい……」

エルルゥ「過去を忘れてって言うんじゃないんです。立ち向かって欲しいんです……」

     「私も……ハクオロさんと一緒に、前へ進みますから――」


ハクオロ「――ありがとう」


  ──だけど、この罪の意識は……君に背負わせたくない。


男は思う。ずっと昔、大切な娘を預かった『義父』の事を……
ヒトの身で人を創り、生命を冒涜し続け苦悩した哀れな研究者を……


  今なら判ります。ミズシマさん。貴方の恐れていた事が……

  自分も貴方同様、人々を弄んだ存在です。

  ただ……自分は再びこの世に戻ってしまいました。

  これまでの……殆ど全ての記憶を保持したまま。

  そんな自分が皇の椅子に座ったら……
  今この星に住まう者達を『神』であった時と同じように……
119 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/12/22(土) 21:49:14.79 ID:CwgQpxZIO

エルルゥ「……ハクオロさん」

ハクオロ「あ、ああ。なんだい?」

エルルゥ「――えいっ!」


       ぽふっ…ぎゆっ


ハクオロ「おわっと!? え、エルルゥ?」

エルルゥ「えへへ……私から抱きついちゃいました」

     「あまり、思い詰めないで下さいね……」


ハクオロ「……努力する」 ぎゅぅ


二人は互いを抱き締め合う。


エルルゥ「あったかいです……」

ハクオロ「エルルゥ…… 君も暖かい。いい香りだ」

エルルゥ「ハクオロさんも……土の香りです……」

ハクオロ「……土の香りか」

エルルゥ「私の香りは、なんですか?」


ハクオロ「薬草の――…… 違うな、なんと言うか……単語が出ない」

     「だけど、いい香りなんだよ」


彼女と共に在ること。
それは、贖罪の日々を生きる男の、ささやかな幸せの時。
120 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2012/12/22(土) 21:57:44.38 ID:CwgQpxZIO

ハクオロの胸から少女が離れ、じっと彼の顔を見詰める。
とろんとしたエルルゥの瞳に、男は吸い込まれそうだ。


エルルゥ「……私の唇に『きす』を下さい」

ハクオロ「私の教えた旧い言葉を……」

エルルゥ「覚えました。いっぱい、いっぱ〜い!」


可愛らしい笑顔が、ハクオロの欲望のタガを外す。


ハクオロ「ふっ……じゃあ…………んっ」

エルルゥ「あんっ…………むっ……………ふぅ………」


ゆっくりと男の手が女の服の中に──


「わわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわ!」


    カッシャーン!


ハクオロ「…………どうやら」

エルルゥ「…………邪魔が入りましたね」



トウカ「し、しまった…… つ、つい驚いて剣士の魂である脇差を……
     御側付として任務を果たすべく、聖上の寝殿に……と思ったら……」

トウカ「そ、某としたことがっ!!」


エルルゥ「―――最期の言葉はそれだけですか?」


トウカ「  」


……覗きは、ほどほどに。
121 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2012/12/22(土) 21:59:28.12 ID:CwgQpxZIO
 ――――――――――


アルルゥ「く〜ちゃん、寝たぁ?」

カミュ「そうみたいだね。気持ち良さそうな寝顔」

クーヤ「すぅ……すぅ……」


二人の娘……アルルゥとカミュが線の細いシャクコポルの女の子の寝姿を眺めている。


サクヤ「お二人ともありがとうございました。
     クーヤ様ったら、お昼寝から起きたらすぐに……
    『あるぅーとかみゅと遊ぶ』って興奮しちゃいまして……」


サクヤが持ってきた盆から、二人にお茶を差し出す。


カミュ「ありがとうございます、サクヤさん」

アルルゥ「ありがと」

サクヤ「いえいえ。あたしには……これ位のことしか出来ませんから」

    「お二人みたいに、クーヤ様と遊んであげられないので……」
122 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/12/22(土) 22:08:12.40 ID:CwgQpxZIO

カミュ「……ねぇサクヤさん。その足、治したくないの?
     オンカミヤムカイに来てくれれば……」

サクヤ「……治したくないと言えば、嘘になります。
     でも、この足は……おじいちゃんやハクオロ様との繋がりの証です」

サクヤ「だから……今は……」

カミュ「……そっか。クーちゃんの事もあるもんね」

アルルゥ「アルルゥのことは?」

サクヤ「アルルゥ様やカミュ様……皆さんと出会えたきっかけでもありますよ」

    「クンネカムンに居たら……きっと今みたいに暮らせてなかったと思いますし」


クーヤとサクヤは、一年前の大戦で全土統一を成し遂げようとした、ひとつの國……

クンネカムンの『若き皇』とその付き人であった。

皇たらんと小さな躰で様々な事を背負い、大事な家臣を亡くし、心を壊したクーヤ。
クンネカムンの暴走を止める為、『ある武士』の忠義の印として、
足の健を切り、トゥスクルの人質となったサクヤ。

あの戦は、彼女達の精神と肉体を深く傷付けてしまったのだ。
123 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/12/22(土) 22:10:55.98 ID:CwgQpxZIO

……しかし、当事者であるサクヤはこれで良かったと思う。


サクヤ(クンネカムンに帰ったら、クーヤ様を『傀儡にしよう』
     とする人達が現れるかもしれない……)


トゥスクルに庇護されている今の平穏を……失くしたくない。
それが、サクヤの小さな望みであり、願い。


サクヤ(クーヤ様から離れて、動くなんてできない。
     だからってクーヤ様と外に出るのは……)


現在、クンネカムン皇は『戦死』したと多くの國や人々の間で囁かれている。
その娘が……事も有ろうに宗教対立のあるオンカミヤムカイで見つかったとしたら……

再び、無駄な血が流れる危険がある。


カミュ「サクヤさん?」

サクヤ「あ、ゴメンなさい。ちょっと考え事を……」
124 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/12/22(土) 22:12:48.10 ID:CwgQpxZIO

カミュ「クーちゃんも寝たし、サクヤさんも寝て下さい。お盆や湯呑は片付けます」

サクヤ「い、いいですって! オンカミヤムカイの皇女様にそんなことさせられませんっ」

カミュ「ここに居る間は身分なんて関係ないって〜」


盆の引っ張りあいをする、カミュとサクヤ。


サクヤ「だ〜め〜で〜す〜……よっ!」


         グイッ


カミュ「おわっ? とっとっ…………」


     ココンッ! コロコロ…


アルルゥ「お?」

カミュ「いっけない! 落としちゃった」

サクヤ「なんですか?」

カミュ「『勾玉』ってモノみたい。おじさまが言ってた。
     カミュの服の物入れに入れといたんだっけ」

サクヤ「あわわわわ……大事な物になんてことを……」

カミュ「う〜ん。大事かはわかんないけど、そのままっていうのも……」

アルルゥ「ひも通す」

カミュ「あ! それいいね! ちょうどいい穴があるし……」
125 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/12/22(土) 22:14:25.23 ID:CwgQpxZIO

サクヤ「紐でしたら……二本ありますよ。じゃあ……その勾玉をお借りして……」

    「こーして、ああして……よっと。それで……うんうん」


サクヤ「はい。首飾りの出来上がり〜。どうぞ」

カミュ「わぁ…… ありがとー! もう一個あるから、そっちもお願いしていい?」

サクヤ「どんと来〜い」


……二つの勾玉はどちらも首飾りになる。


カミュ「アルちゃん、こっちのあげる」


カミュが差し出したのは、琥珀色の勾玉。
その簡素な装身具をアルルゥの首にかける。


アルルゥ「いーの?」

カミュ「うん。お揃いお揃い」


喋りながらカミュは、自分の首にも黒の勾玉のついた飾りをかけた。


アルルゥ「ん〜」

カミュ「アルちゃんも女の子なんだし、こういうのつけたらいいのに」

アルルゥ「今つけた」

カミュ「そ、そうじゃなくて……」

サクヤ「お二人とも、よく似合ってますよ」


──双つの『交信装置』が、巫女の下に渡る。
126 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/12/22(土) 22:17:15.05 ID:CwgQpxZIO
 ――――――――――


ミュマ「あの翼のある生物…… それに、アレ……」


皇城の一室を借りたミュマは、自身が目撃した二種類の生物を思い浮かべる。


ミュマ(…………あんな動物見たことない。なのに――)

    (――私は『知っている』)


運命の糸が、ミュマとあの生物達を結び付けている……とは聡明な彼女にも判らない。

ミュマは──幼い頃から『鳥類』に惹かれていた。
きっかけとなったのは、この大陸に数ある種族の中でも、
オンカミヤリュー族しか持たない『翼』。
自分と同じ羽根を持っているのは『鳥達』だけ…… なんでだろう?
白い翼で飛行の練習をする時、幼いミュマはいつもそう考えていた。
127 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/12/22(土) 22:21:41.75 ID:CwgQpxZIO

成長した彼女は、幼少期から持っていた疑問を解く為、
オンカミヤムカイで僧としての課程を終えた後も、学士として学び、自分達の源とは何かを調べ始めた。

そして、世界の不思議を垣間見ることができた。


……人々の耳や尻尾は、全て母親と同じものになる。


彼女と同期の学士からは、当たり前じゃないかと一笑された事実。
ミュマは『コレ』に着目した。

母からのみ子に遺され、伝えられる『何か』……
父親からも、僅かながら継がれる『何か』……
様々な種族を調べ、『血』とも異なる何らかの要素が関わっている……と仮説を立てた。

ミュマは、自身を取り巻く世界の真実に近付いていると、感じていた。

真実が判れば、幼い頃からの疑問も解けるかもしれない。


ミュマ「…………」


彼女は知らない。自分の問いに答えられる存在が、この城内に居ることを。
128 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/12/22(土) 22:23:07.35 ID:CwgQpxZIO
 ――――――――――


「ふう……流石に師匠の稽古は躰に堪える」


「ガショウ様、失礼します」


「……おい、もう少し皇らしく言葉を偉そうにしないか」


「……隣を失礼するよ。ガショウ君」


「うむ、それで良い。ネチっこい感じが顔に合っておる」

「それでこそ、余の『影武者』だ」


「…………はぁ」


男と『女』が喋っているここは…… 数ヶ月前、
トゥスクルの西……かつて『シケリペチム』と呼ばれた大國の一部から興った國。


「新たな國皇が『女』だとばれるわけにもいかんだろ」


「だからといって私のような…… 貴女様がお顔を隠されれば……」


「あのクンネカムンの女皇は外套で顔を隠していたそうじゃ」

「同じ手を使っては、他國の皇共に気付かれるかもしれん」

「まだこの國は幼い。小競り合い程度なら兎も角、同規模以上の國との戦はマズい」

「故に余は、お主の侍女として会合に潜り込む」


「……畏まりました」
129 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/12/22(土) 22:27:23.42 ID:CwgQpxZIO
 ――――――――――


「あーっ! 何回同じことを言えば良かですか!!」


オンカミヤムカイでも、男達の話声が部屋に響いていた。

一人は……


ダイハク「だからぁ! 見たんですって! あのアヴ・カムゥ並の鳥をぉ!」


『鳥』の最初の目撃者……ダイハク。


「へぇ、あんなに大きな鳥ねえ…… 面白い」


ダイハクに対峙しているのは、オンカミヤムカイの『異端者』。
この男は翼を持つオンカミヤリュー族ではない。ただし『学士』ではある。
統計学や風水など、様々な学問で優れた説を唱える『天才』。


 「ふふふ……」


常に微笑を絶やさず、左腕を右肘の支えとして組み、
右腕を縦にした状態で、その右手を自分の口や頬に触れさせている。


ダイハク「な、何か気味の悪い方で……」


 「ふふ、よく言われます」


男にしては珍しい『長髪』を弄りながら、彼はダイハクの小声に答えた。


ダイハク「…………あんた、名は」


 「ああ、言ってませんでしたっけ」


タラク「タラクと言います。初めまして、ダイハクさん」


『鳥』と『甲羅』。
二種の獣に『縁』を持つ者達。

彼等が出会う刻は近い。
130 : ◆M6R0eWkIpk [saga]:2012/12/22(土) 22:34:47.48 ID:CwgQpxZIO
投下完了。先週は御免なさい……。

以下は余談。
ジョジョオールスターズに沢城さん(徐倫役)だと……!?
ジョルノは浪川さんだし、うたわれメイン声優の内二人が
ジョースターの血統を演じるなんてッ! 素敵ッ!!
131 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/23(日) 02:37:36.51 ID:mZKPn4goo

確かにあの設定はギャオスやガメラと類似してるな
因縁を感じる
132 : ◆M6R0eWkIpk [sage]:2013/01/05(土) 21:42:32.03 ID:aphAQKUIO
謹賀新年!
投下ペースが落ちていますが、のんびり書いていきます。
133 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/05(土) 21:45:12.33 ID:aphAQKUIO

 チュン…… チュン……


エルルゥ「……ん。朝ぁ……」


夜が明け、部屋に陽光が注がれていく。


エルルゥ「ふわぁ……あれ? はくおろさんはぁ?」


 「おっ、起きたか。おはよう」


寝ぼけ眼のエルルゥの耳に、一夜を共にした男の声がする。


エルルゥ「はくおろさ……………… !?」


ぼやけていた目の焦点が定まり、寝間着姿の娘は『異常』に気付いた。


 「…………?」


彼女の前で荷を整理している男は……


 「……変な顔になっているぞ?」


 ──『白い仮面』を着けていた。
134 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2013/01/05(土) 21:47:43.14 ID:aphAQKUIO

エルルゥ「え、え? なんでっ!?」 ダッ ガサゴソ…


慌てたエルルゥは、自分がいつも使っている『薬箱』の一番下の引出しを開け、
隠し持っていた『あれ』がそこにあるか否かを確認した。


エルルゥ「…………あ、ある? え? え??」 


ハクオロ「……ああ、成る程。すまんすまん、この仮面は『偽物』だ」

     「君が起きる少し前に、ベナウィが持ってきてな」


仮面を外し、少女に語りかけるハクオロ。


ハクオロ「憶えてないか? 城下で祭があった時の……」

エルルゥ「……ああ! あの時の!」

ハクオロ「事情も事情だし、一応用意しておいたらしい。
      君を驚かせようと思ったから……着けてみたんだが」

エルルゥ「び、びっくりしますって……」
135 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/05(土) 21:49:45.14 ID:aphAQKUIO

ただ……彼女は驚きながらも


エルルゥ(悪戯でもハクオロさんがあの仮面を着けられるなら、
      前みたいにみんなで笑える日も近いかもしれません……)


……とも思っていた。

一年前まで、ハクオロは白い骨のような仮面を着けているのが当たり前だった。
そうじゃなくなったのは……あの日、『大封印(オン・リィヤーク)』が完成し、二人が別れた──


エルルゥ「あ……そう言えば、アルルゥは……?」

ハクオロ「昨夜はカミュと一緒に寝たそうだ。
      君が寝入った後、ウルトが伝えに来たよ」

エルルゥ「そうでしたか。なら良かった」

ハクオロ「さて、君も着替えて支度をしてくれ。朝食の後、出発だ」

エルルゥ「はい!」


エルルゥを部屋に残し、ハクオロは階段を下る。


ハクオロ(…………)


先程のエルルゥの様子を記憶し、彼は食事の場へと向かった。
136 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/05(土) 21:51:43.89 ID:aphAQKUIO
 ――――――――――


ハクオロ「……うん、出発する者は、こんなものか」

ベナウィ「ありがとう御座います」


一同が集う朝餉の席で、ハクオロとベナウィはオンカミヤムカイに発つ者を選出する。


ハクオロ「ウルト・カミュ・カルラ・ミュマ。この四名は当然か」

     「ベナウィ、お前は……」


ベナウィ「勿論、同行させて頂きます」

ハクオロ「……城はいいのか?」

ベナウィ「クロウに留守を任せますので」

クロウ「ま、仕方ねえっす。早く帰ってきて下さい」

ハクオロ「何故トウカを外した?」

ベナウィ「他國の権力者が集まる会に、アレを出席させるおつもりですか」

     「それに、トウカ本人の体調が優れない様子でしたので」


その頃、城内の一室で……


トウカ「ゴメンナサイ、ゴメンナサイ、ゴメンナサイ、ゴメンナサイ……」 フルフル


何かに怯え、布団に潜ったまま出てこない女がいた。
137 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/05(土) 21:54:54.42 ID:aphAQKUIO

ハクオロ「……あとは、エルルゥとアルルゥだが」


エルルゥ「当然、ついていきますよ」

アルルゥ「あふふぅもいふぅ」 モキュ ゴクン

エルルゥ「アルルゥ! 口に物を入れて喋らないのっ!」

アルルゥ「う〜〜……」


ベナウィ「如何されますか」

ハクオロ「……私があの子達を止められると思うか?」

ベナウィ「いいえ」 キッパリ

ハクオロ(……即答ですか) がくっ
138 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/05(土) 21:57:00.46 ID:aphAQKUIO

ミュマ(……ここ、本当に皇城?)


部外者のミュマにとって、彼等が揃った食事風景は新鮮過ぎた。

配下に頭が上がらない皇(オゥルォ)



ハクオロ「……相変わらず、私に厳しいな」

ベナウィ「そんな事はありません」


朝から酒を浴びるように飲む女。


カルラ「はぁ…… やっぱり、この國の酒が一番おいしいですわ」


大の男とおかずを奪い合う子ども達。


クロウ「あっ! そいつは俺の!」

カミュ「早い者勝ち〜♪」

アルルゥ「んぐ……っくん」


櫃(ひつ)の前に立ち、構える皇(?)
の后。


エルルゥ「おかわりありますからねー」


オマケに……オンカミヤムカイの賢大僧正まで……


ウルトリィ「ハクオロ様、汁物はどうなさいますか?」

ハクオロ「頂こう」

ウルトリィ「はい、じゃあ少しお待ち下さいね」

ハクオロ「ふー……これで汁問題は解決」


ミュマ(何なの、この人達……)

ベナウィ「これが何時もの光景ですので、御理解下さいませ」

ミュマ「は、はぁ…………」
139 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2013/01/05(土) 21:59:33.69 ID:aphAQKUIO
 ――――――――――

 《幕間・怪獣たちの朝》


数日前の空戦の結果… 鳥共は最初の雛のうち、三匹を敵に殺された。

生き残った二匹は、各々が別の場所にその巨躯を隠し、餌を探し求める。

この鳥は──自然を、生態系を、マナを乱す。

故に、一箇所に留まらず、『渡り』をせねば……
あの『敵』に居所がばれ、焼き尽くされてしまうだろう。


 『キィュオオオォォォォ――……』


それに……この生物は『光』に弱い。
太陽が大地を照らす間は、まともに行動すら出来ない。

このままでは、日光にも、奴にも勝てない。

もっと、育たねばならぬ……


こうして鳥は『マナの薄い地』を目指し、地を這うことにした……
140 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/05(土) 22:05:35.50 ID:aphAQKUIO
 …………………………


『   』が身を隠し、育つ場所として、『オンカミヤムカイ』は最適だった。

比較的広い國であるにも関わらず、皇都は巨大な窪みの中にあり、
厄介な法術使いはそこに隔離されたような状態。
都から少々離れるだけで、餌の宝庫……緑深き森に入り込めた。

そして、青々と茂る植物が小さな躰を隠し、獲物を襲いやすくしてくれる。


    ズプッ! ジュル…ジュル…


『   』の頭部には、口に該当する器官は存在しない。

光の反射をしない、黒灰色の甲羅から伸びる『触手』が餌の体液を吸収する。

『   』の幸運は二つある。

オンカミヤムカイが『比較的マナの薄い地』だった事。
これにより、『   』はある程度までは単体でも成長が出来る。

もう一つは…… 『   』の遺伝子を保存していた『ヒト』の思い付き。

『   』は本来ならば持ち得ない力を『ある実験体のDNA』から手に入れていた。


──下位存在である、あの『鳥』を統率する能力。


それ故、『   』は黒曜石の羽根を有す娘を狙う。

『母』の血を。最も神に近い『造られたもの』の遺伝子を求めて……
141 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2013/01/05(土) 22:07:21.16 ID:aphAQKUIO
 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


孤独な闘いを終え、ソレは海の底に帰ってきた。

躯のあちこちに怪光線で付けられ、切り裂かれた傷。
痛々しいその痕からは、血が止まらない。

片目と片腕の無い状態で、よく鳥の猛攻を耐えたものだ。

けれど、あの戦闘は……堪えたのだろう。
その巨大生物は自らの傷を癒す為に、付近のエネルギーを集め始める。

瞳を瞼で覆い、ソレは次の闘いに備えて……眠りについた。


一人の娘もまた…… 時を同じくして……
142 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2013/01/05(土) 22:09:45.30 ID:aphAQKUIO
 ――――――――――


ハクオロ「よし。出るぞ」


男の掛け声に合わせ、城の正門が開かれた。


サクヤ「ハクオロ様、いってらっしゃいませ」

クーヤ「…………」


サクヤがウトウトと眠そうなクーヤを支え、八人の見送りをする。


ベナウィ「しっかりと政務に励むよう」

クロウ「う、ういっす……」


他に見送りに来たのは、顔がひきつっているクロウに、


トウカ「や、やはり某もお伴を……」

エルルゥ「…………」

トウカ「ひ、ひいっ!?」 ビクゥッ


自分より一回り小さなエルルゥの『凄み』に気圧されるトウカ。


ウルトリィ「ウマ(ウォプタル)には慣れましたか?」

ミュマ「はい。問題ありません」

カルラ「堅いですわよ。気取らず気取らず」

ミュマ「賢大僧正様に不遜な態度を取れるわけないでしょう!」


と言いつつ、ミュマも段々とトゥスクル一行の毒に侵されてきたよう。
賢大僧正の友であるカルラとのやり取りに、遠慮が無くなってきた。
143 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2013/01/05(土) 22:11:17.88 ID:aphAQKUIO

カミュ「ムックルとガチャタラ! 久しぶりっ! 元気だった?」

ムックル『ぐおっ!』  ガチャタラ『クルルッ!』

アルルゥ「元気だって」


アルルゥには『森の母』と呼ばれる『不思議な能力』がある。
命ある動物と『会話・交流』する事が出来るという謎の力。


ハクオロ(…………)


ハクオロは、その力が彼女の先祖から伝わったものと知っている。
今回の旅にアルルゥを同行させる事にしたのも、これが理由だ。


ハクオロ(アルルゥなら、その捕まえた『鳥』と話せる可能性がある)


ミュマ達に鳥について聞かされた時から、彼はそう考えていた。

能力があるならそれを利用する── 民を導く皇としての思考。

しかし、同時に


ハクオロ(……危険な存在に、あの子を近付けることになる)


自分の大切な家族を、危難に巻き込んでしまう──とも思う。

心の奥に迷いを抱えながら、ハクオロは……
動物達とはしゃぎ回る、アルルゥとカミュを見守っていた。
144 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2013/01/05(土) 22:14:27.44 ID:aphAQKUIO
 ――――――――――

ハクオロ達がトゥスクルを発ってから二日後──


ハクオロ「……着いたな」


この大陸に住まう人々の大多数が信仰する宗教……
『ウィツァルネミテア』の総本山、『オンカミヤムカイ』に彼等は到着した。


カルラ「……二回目ですわね」

ハクオロ「お前達と来たのは、だがな」

ミュマ「以前にも私共の國に?」

エルルゥ「……はい」

ウルトリィ「……会合は城の上階で行われます」

ベナウィ「城? ……ああ。宗廟はまだ」

カミュ「うん。直してる最中なんだ」

ミュマ「一年前の大戦で、宗廟は大穴が開けられるなど、酷く壊されました。
     私は前賢大僧正の指示に従い、避難していたので詳しい事は判りませ――」



アルルゥ「おとーさんがこわした」



ハクオロ「ブホッ!?」

ミュマ「えっ?」
145 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2013/01/05(土) 22:15:55.89 ID:aphAQKUIO

エルルゥ「ア、アルルゥ? 嘘は言っちゃダメよ〜」

ミュマ「皇様は、先の戦でクンネカムンを破った方なんですよね?
     そんな方が宗廟を壊したって……」

ウルトリィ「あの、時間も余りありませんので中に……」


話を逸らそうとするウルトリィ。


カミュ「アルちゃんの言ってることも、間違ってはないんだよね……」


ミュマに聞こえない位の小声で友達の発言を肯定するカミュ。


カルラ「あれから一年以上経ったのね」

ベナウィ「様々な國が興り、亡んだ一年間でした」


ミュマを除いた七人は、『同じ秘密』を共有している。
この世界の成り立ちに関わる『神話』と『創生』の真実を──
146 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2013/01/05(土) 22:17:41.75 ID:aphAQKUIO
 ――――――――――


カルラ「………………ねえ、ウルト」

ウルトリィ「はい。何でしょう」

カルラ「貴女……『カルラゥアツゥレイ』にも令を出しましたの?」

ウルトリィ「ええ」

カルラ「あそこで犬みたいに尻尾を振ってるのは」

ウルトリィ「カルラゥアツゥレイの皇、デリホウライ様です」


デリホウライ「…………」


   ぴたんぴたんぴたんぴたんぴたん…


隣に座る他國の皇が“うざったい”としかめっ面をするが……


デリホウライ「……何か言いたいことでもあるのか?」

他國の皇「い、いいえ! 滅相もない!」


『ギリヤギナ族』の男に睨まれては、注意出来るはずもない。
147 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2013/01/05(土) 22:19:31.00 ID:aphAQKUIO

彼……デリホウライは、トゥスクルの南方にあるカルラゥアツゥレイの皇。
そして、朱を基調とした服の色や濃紺色の髪色が、
議決権を持たない傍聴者……我々で言う『オブザーバー』のカルラと瓜二つ。


カルラ(……あまりこっちを見るんじゃありませんの)


彼の國『カルラゥアツゥレイ』は……生き別れた『姉の名前』から取られている。

もうお判りだろう。カルラとデリホウライは『姉弟』だ。
一年と少し前、カルラゥアツゥレイ建國にトゥスクルが影ながら助力。
その時、姉と弟は一度再会したが……
以後、カルラが会う気にならなかった為に、全く顔を合わせていなかった。


デリホウライ(姉さん! ああ……こんな所で出会えるなんて!)


それが……このような形でまみえる事になったのだから、尾も振るだろう。


カルラ「……いつになったら始まるのかしら?」

ウルトリィ「ハクオロ様がいらしてませんから……」


運命の時が訪れるのは、もうすぐだ。
148 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2013/01/05(土) 22:21:15.28 ID:aphAQKUIO
 ――――――――――

二十五國の代表者がピリピリとした空気を醸し出す中──


  「私が最後かな?」


一人の元皇(オゥルォ)が、緊張に包まれた会議場に姿を見せる。


ウルトリィ「お待ちしておりました。トゥスクル代表」


一瞬、ざわめく皇達。

この國の名は大陸全土が知っている。

一年前、この大陸には『三大強國』が存在していた。

大陸中央に位置する軍事國家『シケリペチム』。
大陸の西を支配する『ノセチェシカ』と『クンネカムン』。

三國の武力による均衡が形成されていた時に──

彗星のごとく現れたのが『トゥスクル』という小さな國であった。
149 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2013/01/05(土) 22:24:53.45 ID:aphAQKUIO

「トゥスクルというと……皇が行方不明となっていたはず」
「てっきりあの侍大将が出てくるものと思っていたが……」
「あれは……何者だ?」


その新興國は、建國から半年経たぬ内にシケリペチムを。
大戦時に叛クンネカムンの中心國となって、クンネカムンを滅ぼした。


??「現在、最も全土支配に近い國と言われているそうですね」


  「ご安心を。私共はそのようなつもりはありません」


最後に議場の扉を開けた男は席に着き、対面にいる皇の言葉に答える。


??「ノセチェシカを吸収し、全土支配を目論んだ
    クンネカムンと同じ轍は踏まないと仰るのですかな?」


  「いえいえ。そう言った意味ではありませんよ。
   他國へ此方から攻め入る気は無いという意味です」


??「……ほぅ。この場で國の代表からそのような言葉を聞くとは思ってなかったよ」


  「無益な血を流したくは無いですから」


??「無益か。君達の國なら、土地があれば幾らでも益を生み出せると思うが?」
150 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/05(土) 22:29:07.38 ID:aphAQKUIO

  「……どういう意味でしょう?」


??「我々の國はトゥスクルの西、旧シケリペチム領に建國したのでね」

   「近隣の強國の情報は、優先して手に入れている」


??「君の國、トゥスクルは確か……肥料というものを作り、
    農作物を安定して作り出せるよう、政をしたそうじゃないか」


  「ええ」


??「隣國に戦を仕掛け、勝つ。その後、
    掌握した國や地域で農作物を作らせ、自國で安く買いたたく……」

   「その他にも多種多様な事が出来るだろう」


??「トゥスクル國ならそれが可能なのだから、警戒していてね」


  「……行動と可能性は違いますよ」


??「それもそうだ。しかし、皇でも無い者の口から出た言葉が信用に値するかな?
   私達は君の名も地位も知らない。
   その言が真に國の判断なのか、判断出来ないのだよ」


  「……ふむ。出来れば着けたくなかったが」

  「着けないと信用されないなら……仕方ない」
151 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/05(土) 22:32:49.60 ID:aphAQKUIO

        カチャ…


??「……ほう」


ハクオロ「この仮面を着けても、まだ私が『皇』で無いと?」


??「君が……行方不明となっていた『仮面皇・ハクオロ』か」

ハクオロ「ええ。初めまして……失礼、名をお聞かせ願えますかな」

ガショウ「『ガショウ』だ。なんとも愉快な自己紹介になったようだな」

ハクオロ「顔を隠す為の仮面が、身分を明かす手段になるとは考えていなかった」

ガショウ「賢大僧正、この者がトゥスクルの皇で間違いありませんな」

ウルトリィ「はい。此方がトゥスクル代表・ハクオロ皇です」

ガショウ「これで他國の皇達も納得したろう。当然、私もね」 ニヤリ


ハクオロ(……この男、会議前に私を牽制してきたか)

     (また同時に、他國の皇達へ自分のアピールまで……)


ハクオロ(一筋縄ではいかん相手だ。『生物』に関して、意見が対立しなければよいが)
152 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/05(土) 22:34:37.07 ID:aphAQKUIO

二國による会議の前哨戦が終わり、ウルトリィが口を開く。


ウルトリィ「では、これより会合を開始――」


彼女が開催の言葉を言いきらない内に──


?「失礼。この会合、僕も参加を希望します」


乱入者が登場した。


ウルトリィ「……タラク。貴方は一介の学士に――」

ハクオロ(――あの耳!?)


ハクオロが見たのは、タラクと呼ばれた男の……
長髪を突き抜け、天を指す白い耳。


タラク「ふふ、賢大僧正様。こちらの木簡を御覧下さい」


男は議台に立つウルトリィに、一巻きの木簡を差し出した。


ウルトリィ「……貴方が、『クンネカムン自治区』の者として参加をすると?」


タラク「はい。 『シャクコポル族』の一員としてね」



「「「………………!!」」」



……会合が始まる。
153 : ◆M6R0eWkIpk [saga]:2013/01/05(土) 22:40:18.78 ID:aphAQKUIO
本日の投下は完了。
ここまで出てきたキャラはガメラ側の登場人物をもじった名になっとっと。
顔もそのまま。違いは種族の特徴くらい。
しかし…… あの顔でウサギ耳は……
154 : ◆M6R0eWkIpk [saga sage]:2013/01/14(月) 22:11:06.13 ID:m6MTaolIO

ウルトリィ「それでは会合を開始いたします」


賢大僧正の挨拶から、会は動き出す。


ウルト「今、ここに居られる皆様方は、未だ続く戦乱の世の中で、
     比較的安定して民を治める國々の代表であらせられます」

ウルト「ですので、先程 御二方の話されたような
     戦争を前提とした会話は謹んで頂けますよう、お願い申し上げます」


ベナウィ「怒られましたね」

ハクオロ「戦を起こさぬよう働きかける……調停者として当然だろう」


この会議場にいるのは、全部で二十六國の皇や重臣達。
それに加え、進行のウルトリィ。識者としてカルラ・ミュマ。
最後に入ってきた『タラク』という男は、傍聴として参加するようだ。
155 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2013/01/14(月) 22:13:27.01 ID:m6MTaolIO

ハクオロ(ウルトも指導者として腕を上げたな。
      さっきまでの張り詰めた空気を、若干だが緩めた)


ウルトリィ「それでは、従者の方にお渡しした木簡を御覧下さいませ」


    カチャカチャ…


デリホウライ「……『巨大生物対策』?」

モブ皇A「これはいったい?」


ウルト「つい先日、南の小國にてこれまで確認された事のない生物が発見されました」

    「本日皆様には、この書にある『二種の生物』についての
      審議・検討をして頂く事を一番の主題とさせて頂きます」


モブ皇B「わざわざ皇を招いて、獣への対処だと? 笑わせる」

モブ皇C「害獣の駆除なら、そこにいる仮面の皇に任せましょうか」


  ハハハハハハ…


ハクオロ「……事はそう簡単にいきません」

ガショウ「ほう。どういう意味かね」


ウルトリィ「……ムント、壇上に遠見の鏡を」

ムント「かしこまりました」 ペコリ
156 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2013/01/14(月) 22:19:20.86 ID:m6MTaolIO

法術によって遠くを見通す丸鏡が、ウルトリィの背後に設置された。


ウルト「ありがとう。今から皆様に見て頂くのは、
     その『生物』の被害にあった集落の現在の様子です」


そう言うと彼女は、術を発動する為、歌うように祝詞を唱えた。

 ユラリ…… ポゥッ……

鏡面が水面のように波紋に揺れ、白く輝くと……
オンカミヤムカイから離れた土地の状況が映し出されていく。


モブ皇D「……? 賢大僧正殿、失礼ですが集落はどちらに?」


しかし……映るのは焼け焦げた木々や大地のみ。


ウルトリィ「今、映っている『何も無い場所』が数日前まで『集落』でした」


ウルトリィの発言で、席に着く者は皆騒然とする。


ウルト「集落は生物の吐き出した火炎で燃やし尽くされ、
     周辺の森林にも延焼被害が出ておりました」

    「わたくしの横に座っているのが、一部始終を目撃した御二人です」


ウルト「皆様方の疑問等にお答えする為、招集いたしました」


ウルトリィが横のカルラとミュマに視線を向けると、
二人は立ち上って会場にいる皇達へ一礼をする。
157 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2013/01/14(月) 22:21:13.15 ID:m6MTaolIO

すると、一人が手を上げ、ウルトリィに発言の許可を求めた。


ウルトリィ「ガショウ皇、どうぞ」

ガショウ「先程、二種の生物という御言葉を聞きましたが……
      惨状を起こしたのは……資料にある『鳥』と『甲羅』のどちらかね」

ミュマ「『甲羅』の生物です。詳しい姿形は、三つ目の木簡を御覧下さい」


ミュマの答えに従い、皇達は追加の書を広げた。


モブ皇E「……約四十間!? なんだその化け物は!!」

モブ皇F「山のように巨大な生物か……」

デリホウライ「しかし……」

ウルトリィ「はい。判っているのは躰の大きさと火を吹く事。
       翼を持たないにもかかわらず、飛行する事だけです」
158 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2013/01/14(月) 22:23:35.07 ID:m6MTaolIO

タラク「ふーん、つまり殆ど何も判ってないってわけですか」

モブ皇B「……貴様、何様のつもりだ。仮にもオンカミヤムカイの学士であろう。
      自身の皇である賢大僧正殿に向かってその言い様、無礼にも程がある」

タラク「ふふ。さっき自分でその賢大僧正殿を馬鹿にしてたのに、人には注意するんですね」

モブ皇B「……『穴人』が余を愚弄するか!」


  ガタッ! 


ハクオロ(!? いかんっ!)
159 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2013/01/14(月) 22:38:47.62 ID:m6MTaolIO

  ヒュッ! ピタッ!


モブ皇B「…………え」


ハクオロが危険を察知した瞬間、彼の首元に、鈍く輝く『刃』が突き付けられた。


侍従の女「…………」 スッ


ガショウ「ああ、失礼したね。私の側付は少々『荒っぽい』。謝罪する」

     「しかし、差別的な発言はよくない。今回の会合とは関係ない話だしね」


タラクに侮辱された皇が席を立った瞬間、
濃紺色に近い黒、首の付近で結んだ長髪の『女』が……
懐に隠した『小刀』を抜いていた。


ウルトリィ「……ガショウ皇、三度目はありません」

ガショウ「申し訳ない。戻りなさい」


侍従の女「…………」


身だけを隠す黒の外套を翻し、女はガショウと呼ばれる男の元へ戻る。


ウルトリィ「タラクもです。無意味な挑発は控えなさい」

タラク「かしこまりました。賢大僧正様。以後気をつけます」


壇上のウルトリィに向かい、タラクは深々と御辞儀をした。


ハクオロ「……穏便には進まんか」

ベナウィ「現在の情勢は大時化の海のようなもの。こうなるのも必然かと」


ハクオロ「…………そうか」

    (しかし、あの側付の女……かなりの使い手だ)
160 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/14(月) 22:40:49.24 ID:m6MTaolIO
 ――――――――――


ハクオロ「ふう……やれやれ」 ハァ…

エルルゥ「ハクオロさん、お疲れ様です。会合はどうでしたか?」

ハクオロ「色々と揉め事があってな。一時休憩となった」

ベナウィ「一刻の後、再開するそうです」


議の会場とは別の棟に用意された一室で、ハクオロは茶をすすりながら休む。


ハクオロ「……今のところ、話題は『怪獣』のほうで持ち切りだ」


これまでの会議の経緯を簡潔にまとめ始めていく。


ハクオロ「突然現れ、怪鳥や集落を焼き消し……そして去っていった」

     「常識の外にいる存在を相手にするのは、初めてでは無いが……」


ベナウィ「行動原理が判りませんね」
161 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/14(月) 22:44:38.51 ID:m6MTaolIO

ハクオロ「それに、こんな状況だというのに皇達の足並みが揃わない」

     「なるべく早く、どのような対応を取るか考えねばならないのに……」


エルルゥ「……ハクオロさんが眠られてた間、
      トゥスクル以外では小さな争いがあったみたいですから……」

ハクオロ「…………私の所為か」

エルルゥ「! 違います! 貴方の所為じゃありません!!」

     「ちょっとだけ、私達の心が弱いだけなんです……」

     「みんな、戦いなんて本当はしたくないはずなんです……」


俯くエルルゥを見て、ハクオロは己の行いを悔む。


ハクオロ(……『分身』に言われたことが、現実になってしまった)


 『汝は均衡を崩したのだ──』


ハクオロ(──今の私には止められない)


國や種族の溝は深い。今の人々は、『生物』に対抗し得るのだろうか──
162 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/14(月) 22:47:22.69 ID:m6MTaolIO

    コン コン


エルルゥ「はーい? どうぞー。……誰かしら?」


   カチャッ…


トゥスクルの皇の控え室に来たのは……



侍従の女「……失礼します」



会場であの大立ち回りを見せた、あの女。


ベナウィ「……何用ですか」

侍従の女「皇がハクオロ皇と話がしたいと」


……危険な香りの漂う、誘い。


ハクオロ「私だけか?」

侍従の女「…………いえ。そうは言っておりませんでした」

ハクオロ「なら、このベナウィを付けていくが……よろしいかな」

侍従の女「……私に決定権はありませんので、御自由に。では、十分後に外の庭で」


言うべきことのみを伝え、女は去っていく。
163 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/14(月) 22:49:25.19 ID:m6MTaolIO

エルルゥ「い、いいんですか? 他の國の皇様と勝手に話して……」

ハクオロ「会合は、議場よりその『外の出来事』で結果が決まるものだ。
      彼方の意見を聞ける、好機だと思うぞ」


ベナウィ「鬼が出るか、蛇が出るかは判りませんが」

ハクオロ「どちらにせよ、向こうの手札を少しでも見れるなら良いだろう」

ハクオロ「それに……あの女の『声』が気になってな」

エルルゥ「声……ですか?」 キョトン

ハクオロ(……あの娘の声に、似ていた)


  あの女の声は…… 今は亡き『あの娘』を思い出す……
164 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/14(月) 22:50:55.09 ID:m6MTaolIO
   ―――――――――

 《 幕間 白虎、吠える 》


アルルゥ「ひま〜」

カミュ「そうだねぇ〜」

ムックル『キュフ〜ン』  ガチャタラ『ルルル……』


アルルゥとカミュ、それとお供の二匹は森近くの木陰で寄り添っていた。


カミュ「お姉様ったら、『貴女達は外で遊んでなさい』なんて……」

アルルゥ「んー…… でも、アルルゥたち 行ったらジャマ」


ムックルの暖かい毛皮を枕にして、仰向けになったアルルゥは、
友達の不満そうな膨れ顔を見上げながら答える。
165 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/14(月) 22:52:13.90 ID:m6MTaolIO

カミュ「カミュだって、ずっと子どもじゃないのにな…… 過保護だよ」

アルルゥ「『かほご』って、なぁに?」

カミュ「あー……なんて言うか…… 心配し過ぎ? うーん……」

アルルゥ「しんぱい?」

カミュ「……まぁ、前に比べたらマシになったのかな?
     それでも、一人で危ない事はしないようにって言われてるけど」

アルルゥ「おとーさんもおねーちゃんも言う」

     「『アルルゥのことがだいじだからしんぱいする』って言ってた」

アルルゥ「アルルゥもだいじなら、カミュち〜もだいじ」

カミュ「……アルちゃんって結構大人だよね」

アルルゥ「う?」


まだまだ大人の庇護が必要な子ども達だが、少しずつ心も躰も育っているようだ。
166 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/14(月) 22:53:42.05 ID:m6MTaolIO

カミュ「ふわぁあぁ……眠くなってきちゃった」

アルルゥ「おひるね、する?」

カミュ「そーだね…… じゃあ、ムックルに……」


アルルゥの左に座り、翼が邪魔にならないよう畳んでから、
カミュもムックルを枕にし、横向きに寝転がった。


カミュ「ふぁ…………」

アルルゥ「すぅ…………」


少女達の微笑ましい光景。





 『……………………』




それを瞳無き眼で狙う、『なにか』。
167 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/14(月) 22:55:06.54 ID:m6MTaolIO

ムックル『グルルルル……』  ガチャタラ『キュウッ!?』


寝具代わりになっていた虎が、異変を感知し起き上がる。


カミュ「あたっ!?」

アルルゥ「ん〜? ムックル、どした?」


ムックル『ゴゥオオオオォォォ!!』


彼女等から見て、南の茂みに向かい、ムックルは威嚇をおこなう。


 『……………………』


隠れている『なにか』は、警告に対し──


  シュパッ! ビュンッ!


鞭のように撓る、『二本の触手』を繰り出す事で応じた。
168 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/14(月) 22:56:23.66 ID:m6MTaolIO
 ――――――――――


ハクオロ「お待たせした」

ガショウ「わざわざお呼びしてすまんね」


会合が行われている建造物の外で、男達がまみえる。


ハクオロ「御用件を伺っても宜しいですかな?」

ガショウ「大した事では無いのだが…… 私にとっては重要な事でね」

ハクオロ「用は手短にお願い頂きたいものです」

ガショウ「では世間話は抜きにして……」 パンッ!


     スッ…

侍従の女「…………」

ガショウ「貴方が真の『ハクオロ皇』か、試させて頂こう」


何処からかあの女がハクオロの前に現れ、『変わった形状の槍』を構えた。
169 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/14(月) 22:58:49.84 ID:m6MTaolIO

ハクオロ「――ベナウィ」

ベナウィ「はっ」 ザッ!


後ろに控えていた白の侍大将……ベナウィも、己の槍を正面の敵に向ける。


ハクオロ「この男が私に仕えている……というのも証拠のつもりだが」


ガショウ「……私もそう思う。しかし――」


侍従の女「……………………」 ジリ…


ガショウ「……納得出来ないらしくてね」


ハクオロ「……引く気は無いか」


侍従の女「はい」


ハクオロ「私は今『武器』を持っていない。
      だからこのベナウィが相手をするが構わないか?」


侍従の女「三國に名が聞こえる程の槍の名手『ベナウィ』。相手に不足は無い」
170 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/14(月) 23:00:33.25 ID:m6MTaolIO

ベナウィ「『蛇矛』……それが貴女の?」 チャキッ


侍従の女「如何にも。我の矛だ」 ヒュオン パサッ…


女が外套で隠した躰を陽の目に晒す。


ベナウィ「! その鎧……」


矛を振る女の装備は、一般的兵士の着ける簡素な物より防御に秀でた『胴』のある鎧。


女「会の場で言ったであろう。旧シケリペチムから興った國と」

  「この造りをした甲に見覚えがあるのも当然」


喋りながらも、女の動作に隙は無い。


女「くくく……見せて貰うぞ。お主の槍技!」


ベナウィ「……行きます!」


滅びた大國……シケリペチムの遺児と眠る大國……トゥスクルの侍大将。

両者の思惑や刃が、争う者を変えて火花を散らす──
171 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/14(月) 23:01:12.59 ID:m6MTaolIO
今日はここまでです。ではまたー
172 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/17(木) 01:25:07.79 ID:yqTYZTz0o

巫女のところに来たか
173 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/03(日) 16:34:51.29 ID:4KBm04rko
二月だぞー
174 : ◆M6R0eWkIpk [sage]:2013/02/10(日) 13:52:19.38 ID:3UY2DlyIO
約一月……。少々忙しくSSを書けない状況が続いておりました。
お待たせして申し訳ありません。とりあえず、一本投下します。
175 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/02/10(日) 13:54:22.71 ID:3UY2DlyIO

ハクオロ「ほう、貴方は皇では無いのですか」


     ガキィッ!


男「……はい。騙した事、お詫び申し上げます」


     ギギギ…


ハクオロ「そして、今ベナウィと戦っているのが――」


     ズザァッ! ヒュン!


男「我が國の皇、ガショウ様でございます」


     シャッ! キィンッ!


ハクオロ「それにしても、なかなかの使い手だ」


ガショウ(本物)「見事な技よ! 余の攻撃を容易くいなすとはな!」

ベナウィ「……仕合いの途中で口を開くのは感心しません」


横薙ぎに迫る蛇矛の刃を、ベナウィは自身の槍……『烈破槍』の柄で受け流し──


ベナウィ「はあっ!」 ビュン


すかさず刺突。


ガショウ「おっと!」 ザッ


軽やかな身のこなしで、それを躱し、距離をとる女。
176 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/02/10(日) 13:56:47.87 ID:3UY2DlyIO

ベナウィ「女性の細身で鎧を着ながら、よくそのような真似が出来ますね」

ガショウ「この甲は薄いのでな。動きの邪魔にはならん。
      しかしベナウィよ。先程、主は仕合いの最中に
      無駄な語り合いは要らぬと言った筈だが?」


ベナウィ「語り合いではありません。単なる賞賛です。それに……」


ゆっくりと槍を回し、止める。ベナウィが攻めに転じる際の予備動作。


ベナウィ「私にとっては『仕合い』と言うより……『稽古』ですので」


ガショウ「ほほう、私の槍捌きは児戯だと申すか?」 ブンッ!


矛を『ベナウィと同じように構え』、ガショウも突撃姿勢になる。


ベナウィ「――はあっ!!」  ガショウ「――てりゃあっ!!」


『同じ時』に地を跳び、『同じ瞬間』……両者の槍が金属音特有の軋みをあげた。
177 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2013/02/10(日) 13:59:04.71 ID:3UY2DlyIO

――――ガギィッッ!



ガショウ「――ぐっ!?」

ベナウィ「…………」 ピタリ


だが、弾き飛んだのはガショウの矛のみ。
ベナウィの槍は女皇の顔に突きつけられた。


ハクオロ「……何故あの女はベナウィと同じ動作を?」

男「あの方は……一度見た動きを模倣する事が出来るのです。
   いつもなら、敵に押し負けるなんて無い筈ですが……」

ハクオロ「模倣は……相手の動揺を誘う分には良い手だろう。
      ただ、それがあのベナウィに通じるかと言われたら……」


彼はベナウィが動揺する所を見た事がない。
常に冷静沈着、冗談も真顔で言い放つ男……


ハクオロ(いかんいかん。そんな事より……)


それ以上記憶を引き出すのを止め、視線を二人に戻すと……


ベナウィ「……良いですか。蛇矛と槍では扱いに違いがあります」

     「どちらも、刺突を主とした武装と言えますが……」 カチャ…カチャ…


ハクオロが見たのは、白き侍大将が構えを解いて、弾いた矛を拾いに行く場面だった。
178 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2013/02/10(日) 14:01:53.27 ID:3UY2DlyIO

ベナウィ「ちょっとお借りします。よっ……」


     トン トン


ベナウィ「今、私の槍と貴女の矛を地面に立てました。この二本の違いが判りますか?」

ガショウ「………………?」

ベナウィ「……聖上、この二本を見比べてどう思いますか?」


ハクオロ「矛の方が若干穂先が長いな。あと、全体の長さが同じ位だ」


ベナウィ「そう。矛は槍より穂先が長い―― これが大きな違いです」

ガショウ「長い方が敵に刺しやすいではないか!」

ベナウィ「確かにそうでしょう。蛇矛は敵を突き刺した後、
      傷口を大きく広げ、回復を遅らせる武器ですから」

     「しかし……『突き』主体の攻め方をするなら、槍に軍配が上がります」


従来の矛から穂先を短くし、余分な刃を落として軽量化。
間合いを維持する為に柄を長くした物……これが槍という道具なのだ。
179 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2013/02/10(日) 14:04:14.45 ID:3UY2DlyIO

ベナウィ「その矛は、貴女に合っていない……
      いえ、私の真似をするには適さないと言った方が正しい」


光るものはある。しかし、経験が足りない。
歴戦の武人であるベナウィとは格が違う。


ベナウィ「我流にしてはよく磨かれた槍術ですよ。途中までは悪くありませんでした」

ガショウ「…………ならば何故負ける」

ベナウィ「最初のように、薙ぎや突きを交ぜた技の組立てなら、
      蛇矛ならではの戦い方を出来たと思います」

     「私の槍も他の物と違い、敵を斬る為の刃や、
      相手の武器などを引っ掛ける鉤がありますし……」


天賦の才を持ちながら、基礎訓練を怠らず、
最も自身に合う槍の形状を模索し、何年も研鑽を重ねた男と……


ガショウ「…………」


相手の攻め方を数分見ただけで真似する、この女では……

『重み』が違う。


ベナウィ「私の物真似をしたのが、貴女の敗因です。
      小細工なぞせず、基本の戦法に帰っていれば、もう少し戦えてましたよ」


二人を隔てたのは── 努力の壁。そして、積み重ねた年月の壁。
180 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2013/02/10(日) 14:05:55.38 ID:3UY2DlyIO

ベナウィ「要は……自身の武器の特性を活かし、戦えるよう精進せよ……と言う事です」

ガショウ「…………」


濃緑に近い黒髪をした女は、何も言わない。


ベナウィ「負けを認めてくれますか」

ガショウ「…………黙っておればいい気になりおって」


寧ろ……『キレた』。


ガショウ「主に合わせるのはやめだ。ここからは――」 スッ

   パチリ ガチャ…

女は鎧甲を全て外し、腰に差した『剣』を鞘から抜くと……

   ……シャキン

『雌雄一対の剣』が陽の下へと晒された。


ガショウ「私の得物でお相手しよう!」

ベナウィ「双剣……」

ガショウ「師匠から教わり、鍛えた技倆! 見せてやる!!」





   バゴオォッ!! メキメキ… ズゥゥン!


ハクオロ「な……なんだ!?」
181 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2013/02/10(日) 14:07:56.83 ID:3UY2DlyIO

『ヴオオォォォォォォォォォォォォ――ッ!!』

「ムックル! いけっ!!」


ベナウィ「この鳴き声は……ムックルの」


     ズンッ!


ムックル『ガアアッ!!』  アルルゥ「そこ!」


   ガブッ!

        ブチブチ…ブツッ!


  『――――――――!!』


ガショウ「は……ハアッ?」


突如、森から現れた白虎と子ども達に、四人は硬直する。


ハクオロ「アルルゥ、カミュ! 何があった!!」

アルルゥ「カミュちー! 苦しいって!」

カミュ「う…………熱い…… 熱いよ……」


胸元にある『勾玉』を握りしめ、うなされるカミュ。


ハクオロ「しっかりしろ!」


ハクオロはムックルの背からカミュを自らの腕の中に抱く。
182 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2013/02/10(日) 14:09:23.39 ID:3UY2DlyIO

ベナウィ「アルルゥ様、ムックルの咥えている……『あれ』は?」


牙に食い千切られた『触手』を見て、ベナウィが問うも……


アルルゥ「わかんない…… でも、あれが来て カミュちー ヘンになった!」


事情が掴めない。


     ずずず… ずずず…


樹々の陰から……『何か』が蠢く音がする。


ハクオロ「…………気をつけろ」

ムックル『グルルルル……』



  『…………………………』



そして、彼等は……



   ──『怪物』を目撃した──
183 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2013/02/10(日) 14:11:17.88 ID:3UY2DlyIO

ガショウ「あれが――報告された『鳥』か?」

ハクオロ「…………そうは見えん」


森の陰の中にいる所為で、はっきりとした像は結ばれていない。
その『何か』の体長は人の約二〜三倍の大きさ、
自分で直立しているが、脚に該当する部分は見られなかった。


ベナウィ「あれは……腕だったのでしょうか」


海に生きる多腕の軟体動物に近い、腕部。
よく目を凝らすと、『異生物の躰』と思われた部分の殆どは……


アルルゥ「うねうねしてる」


細長い触手で構成されているようだ。


ハクオロ「アルルゥ。あれと話せたか?」

アルルゥ「…………怖い」


よく見ると、アルルゥの身は小刻みに震えている。
本能のまま、アレを忌避し、必死で逃げて来たからか──


ガショウ「……来るぞ」


    シャッ! ザザザ…
184 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/02/10(日) 14:13:36.10 ID:3UY2DlyIO

彼等に襲いかかる触手は── 十本以上。
地を這い、木を避け、空を切り…… 迫る。


ガショウ「ハアアアアッ!」 ガキンッ

ベナウィ「てやっ!!」 ブン ガガッ

アルルゥ「ひっかけ!」 ムックル『ガアアアアアアッ!!』


戦う術のある三人は対応出来ているが……


男「わ、私は戦いに向かないのだ……」

ハクオロ「私もだ!」

カミュ「はあ……はあ……」


武器を持たない二人……カミュを背負ったハクオロと影武者の男は
逃げる事に専念し、触手の攻撃をなんとか躱している。


ハクオロ(くっ……何故だ? 私を狙う触手が多い!?
      それに――他の者達と目的が違う気がする?)


『何か』の伸ばした手腕が逃げるハクオロとカミュを追う。


ハクオロ(ベナウィやアルルゥには触手の先端にある爪を刺そうとしているのに……)

     (私達に関しては……『捕獲』しようとしている?)


走り続けるハクオロに一番近い蛇状の魔手から爪は出ていない。


けれども──

    ガッ! ギュルル


ハクオロ「 ! しまっ――!」


彼が思考していた空白の間に、触手がハクオロの脚を掴み、巻き付いた。
185 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/02/10(日) 14:19:55.05 ID:3UY2DlyIO

ハクオロ「ぬわあああっ!?」


更にハクオロの下肢に絡み、体幹へとまとわりつく粘液にまみれた触手共。


ハクオロ(このままではっ――)



 「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!」


森の中から、雄叫びと共に


   バシッ! パァン! ザクゥッ


斬る……いや、『斬り叩く』ような打音。
仮面の男に伸びた触手を打ち断つ得物……


ハクオロ「――鉄の……扇」


陽光を受け、鈍く光っていたのは、見覚えのある『鉄扇』。

一年前、ハクオロがトゥスクル國と共に『ある男』に委ねた物だ。


「兄者を傷付けるモノは…… このオレが許さん!!」


後ろ姿は変わっていない。
けれど、漂う風格が違う。

一年の放浪を経て── また一人、ハクオロの家族が集う。

その男の名は──


ハクオロ「『オボロ』!!」


オボロ「待ってたぞ兄者!!」


ハクオロとオボロ、『義兄弟の絆』は復活した。
186 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/02/10(日) 14:21:30.18 ID:3UY2DlyIO
短いけどここまで。
また次週来れるよう頑張ります。
187 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/14(木) 01:18:18.62 ID:WMcxlq1Fo
来てた、乙
188 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/03/05(火) 11:50:30.23 ID:lpEJ8SpEo
次週っていつだよ
189 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/04/04(木) 23:01:03.09 ID:MHxt5vAjo
>>1はマナが足りなくて眠りについてしまったのか?
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