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御坂妹「アクセロリータ」一方通行「あァ!?」 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/11/19(月) 15:14:01.99 ID:Kslddrn30
【妄想注意】

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提督「霞との関係を秘密にしたい」 @ 2020/05/31(日) 05:28:30.22 ID:RjayCTzr0
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モバP「19歳になった橘ありすに勝てない」 @ 2020/05/31(日) 03:07:38.69 ID:zcfde6Ug0
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末原「こりゃもう終わりかなって思ったときからが勝負や!」漫「先輩……」 @ 2020/05/31(日) 02:36:46.86 ID:6LO6VK2u0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1590860206/

「ねえ、大丈夫かい?」 @ 2020/05/31(日) 02:23:00.06 ID:uUnHeNjQ0
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【ガンダム】ウルフラム「安価とコンマで一年戦争(欧州戦線)」その7 @ 2020/05/30(土) 22:57:25.61 ID:Em98O5wC0
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my vision was enhanced,ridden with anxiety,but i couldn’t sit quietly.  @ 2020/05/30(土) 22:29:56.09 ID:oV0bpsyDo
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サイト「愛してるよ、ルイズ」ルイズ「わ、私も、あんたのことを……」 @ 2020/05/30(土) 22:13:07.57 ID:A9YfU/XoO
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【安価・コンマ】僕「青春学園テニス部?」Part2 @ 2020/05/30(土) 19:43:50.77 ID:cmYaY3HpO
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2 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/11/19(月) 15:15:44.72 ID:Kslddrn30
「おや、アクセロリータではないですか」

「あァ!?」

―――全身の血管と内臓を根こそぎ爆破してやろうかと思った。









〜とある幼女の一方通行〜
3 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/19(月) 15:16:36.05 ID:8e3rhn/SO
そーいう意味か
4 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/11/19(月) 15:17:38.26 ID:Kslddrn30
一方通行(アクセラレータ)は激怒した。
必ず、かの邪智暴虐のクローンを除かなければならぬと決意した。

一方通行には人との付き合い方がわからぬ。一方通行は、学園都市最強の超能力者である。
能力開発の研究に協力し、『妹達(シスターズ)』と“遊んで”暮して来た。
けれども他人から馬鹿にされる事に対しては、人一倍に敏感であった。

夏も下旬に差し掛かった頃の、とある日の夕暮れ。
学園都市最強の能力者である一方通行は、いつものようにコンビニで大量の缶コーヒーを購入し、帰路に就いていた。
しかし、学生寮へと向かう途中で見知った顔を見つけ、何となく足を止めてしまった。

その人物は、一方通行が協力している研究機関の提案によって頻繁に行われている“お遊び”の相手であり、
学園都市に七人しかいないレベル5の中の第三位、『超電磁砲(レールガン)』御坂美琴のDNAマップを基に量産された軍用クローンである。

どうやら道路脇に打ち捨てられていたダンボールを凝視していたらしいクローン少女は、程なくして一方通行の存在に気が付いた。
そして一方通行の顔を認識するや否や、「おや、アクセロリータではないですか」とほざいたのだ。
5 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/11/19(月) 15:20:20.66 ID:Kslddrn30
「偶然ですね、とミサカは思わぬ遭遇に軽く驚きます」

「……オマエ、何だってこンな所でウロウロしてやがるンだ?今日の“お遊び”はお終いなンじゃないのかよ」

人をアクセロリータ呼ばわりしておいてぬけぬけと話すクローンを爆殺してやりたい衝動を何とか抑え、一方通行は頭の中で自らのスケジュールを反芻する。
一方通行は現在協力している研究機関の指示により、クローン達を使った“お遊び”に参加させられている。

これは様々な環境で昼夜問わず行われ、その割合は一方通行の日常生活のほとんどを占めているのだが、
流石に24時間ぶっ続けで“お遊び”を続行すれば一方通行に負担が掛かるため、一回ごとの合間にある程度のインターバルが設けられている。

既に本日最後の“お遊び”を終えた後であるため、これからの予定は何もないはずだ。。
となると、一方通行が目の前の少女と遭遇したのはまったくの偶然という事になるのだが……。

「ミサカは研修帰りなのでここで会ったのは偶然です、とミサカは説明します。ちなみにミサカの検体番号は10032号、担当は明日の午後八時三十分です、とミサカは補足します」

「そォかい」

どうやら残業の必要はなさそうだ、と一方通行は結論付ける。
ただでさえこの顔は見飽きていたところだ。せっかくの休息時間を潰してまで“お遊び”に興じるつもりは微塵もない。
ここで出会ったのはただの偶然。明日になれば嫌でも“同じ顔”を拝む事になるのだし、無視してそのまま帰ればいい。
いつもならそうしていただろう。

だが。
6 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/11/19(月) 15:22:33.67 ID:Kslddrn30
「まあそれはいいとして……だ」

「どうかしましたか、とミサカは首を傾げます」

「何が言いたいのかわかりませンって顔してンじゃねェよ!誰がアクセロリータだァ!?この場で血祭りにあげてやろうかァ!」

“自分の不名誉な渾名”を軽く受け流せるほど、一方通行は大人ではなかった。

夕暮れの街に、“子供特有のソプラノボイス”が響き渡る。

「あなたの外見にぴったりではありませんか、とミサカはこの渾名を命名した9982号にネットワークを介してサムズアップを送ります」

「よォし決定だ!その9982号とやらと二人まとめて愉快な死体(オブジェ)にしてやるよォ!!」

「世の中にはアルビノ少女に萌えるという人もいるようですよ、とミサカは先程通りかかった男子学生達の会話を思い出します」

「人の話を聞きやがれクソガキがァ!!」

アルビノ。
肌も髪も真っ白で、瞳は透明感のある赤色をしていることからそう言われる。

「クソガキとは失礼ですね、とミサカはむっとします。少なくともあなたに言われたくはありません、とミサカは言い返します」

「俺だって好きで小学生なンざやってンじゃねェよ!!」

全体的に整った顔立ちに、ややつり目がちな瞳。
身長は同年代の子供と比較しても小柄なほうで、10032号と名乗った少女よりも頭一つか二つ分ほど低い。
柔らかそうな白い髪は肩まで伸び、夕暮れの風に吹かれて受けてふわりと揺れる。

そう。

学園都市最強の超能力者は、齢9つの少女(ロリータ)なのだ。
7 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/11/19(月) 15:24:00.39 ID:Kslddrn30
「女の子があまり汚い言葉を使うんじゃありません、とミサカは心を鬼にしてアクセロリータを叱り付けます」

「……チッ、芳川と同じ事を言いやがる。オマエらは俺の母親かよ。それと、さりげなくアクセロリータを定着させようとするンじゃねェ」

ちなみに、芳川とは一方通行が協力している研究機関に所属する女性である。
『女の子は中身はともかく外見は磨くこと。でないと“養ってくれる男(かねづる)”を捕まえられないわよ』という名言を残した人物であり、何かと一方通行の世話を焼いてくる。

一方通行が現在着ている夏物のワンピースも、『あなたの服は全部駄目ね。ズボンばかりで女の子らしさがなさすぎるわ』という理由で私服を片っ端から没収され、替わりに芳川が買い与えた物だ。
一年中白衣で過ごしている人間に言われたくねェよ、と思ったのは記憶に新しい。

「クソ、また胃がムカムカしてきやがった……」

「おや。体調が悪いのですか、とミサカは問いかけます」

「あァそうだよ。主に誰かさん達のお陰でなァ」

言って、一方通行はワンピースのポケットから錠剤を取り出した。
第7学区の病院でカエル顔の医者から処方された胃薬である。
ちなみにこれを処方された際、カエル顔の医者は『君、そんなに若く見えるのに胃が悪いのかい?ひょっとして君もあの教員さんと同じ類の体質なのかな?』などと意味のわからない事を口走っていた。
8 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/11/19(月) 15:25:37.75 ID:Kslddrn30
ここ最近、一方通行はストレスが溜まっていた。原因は他でもない、目の前の軍用クローンにある。
大量生産されたクローン達の誰が言い出したのか(9982号と言われても一方通行にはピンとこない)、
一方通行の見た目と能力名をもじって『アクセロリータ』なる渾名で呼ばれるようになったのだ。

研究機関の趣向で“お遊び”に付き合わされるのはまだ我慢できる。
が、クローン達に自分の見た目を小馬鹿にされるのは気に食わない。好きでこんな外見をしているわけではないのだ。

自分の“奇抜な外見”を多少なりとも気にしている一方通行にとって、『アクセロリータ』という渾名は禁句に近い。
故に、“お遊び”の最中にその渾名を使ってきた者には、例外なく“報復”すると決めている。

……なのだが、当の元凶であるクローン達は物怖じする事なく呼んでくる。
そんな態度がまた、一方通行の胃に着実にダメージを与えてくるのだった。

「胃の調子が悪いのはコーヒーの飲みすぎでは?とミサカは普段の食生活を見直す事を勧めます」

「よくもまあそンな事言えたモンだなオイ。俺が胃薬の世話になり始めたのは間違いなくオマエらのせいだろォが」

「胃薬を服用しているのなら尚更カフェインはよくないのでは、とミサカはあなたの本末転倒な行動を指摘します」

「コーヒーでも飲ンでねェとイライラして血管が破裂しちまいそうなンだよ」

「その歳にして好物はブラックコーヒー。胃薬が常備品。こんなことで身体が持つのでしょうか、とミサカはアクセロリータの将来を心配します」

「クソがァ!オマエらの相手してたらストレス溜まって仕方ねェ!!」

「!!」

頭の血管が千切れんばかりの勢いで怒鳴り、憂さ晴らしとばかりに袋から缶コーヒーを取り出し、胃薬と一緒に流し込む。
ややカフェイン中毒の傾向がある一方通行にとって、コーヒーとは心に落ち着きを与えてくれる素敵な飲み物なのだ。
9 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/11/19(月) 15:28:07.91 ID:Kslddrn30
「……ハァ。イライラする時はコーヒーが一番だな」

好物を摂取することで、いくらか落ち着きを取り戻す一方通行。
ちなみに、そんな素敵な飲み物であるコーヒーが、一方では自らの胃にダメージを蓄積させているという事実には気が付いていない。

「ったく、オマエらの研修ってのは人をイライラさせる術でも教えてンのかよ。俺にも教えて欲しいモンだぜ」

「………」

少女は答えない。

「っつーかよォ、オマエはこンな所で何してたンだよ。一人で地面にしゃがみ込んでる不審者にしか見えねェンですけど?」

「………」

少女は答えない。

「……ン、何だこりゃ。ダンボールの中に何かいやがるな……捨て猫か何かか?」

「………」

少女は答えない。

「フン、やっぱり猫かよ。お約束だなァ?」

「………」

少女は答えない。

「捨て猫がかわいそォで放っておけませンでしたってかァ?オイオイ、オマエらそんなキャラじゃねェだろうがよ」

「………」

少女は答えない。

「人が散々怒鳴ってもケロっとした顔で受け流す連中がよォ、捨て猫に同情なンて似合わなさすぎだろォが」

「………」

少女は答え―――

「何か喋れよクソがァ!!」
10 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/11/19(月) 15:29:11.21 ID:Kslddrn30
さっきまでとは打って変わって無言を貫き通す少女に、とうとう一方通行のほうが耐え切れなくなり叫ぶ。
散々言いたい放題言っていた相手に総スルーされると、それはそれで腹が立つものなのだ。

ところが、当の10032号はというと、

「ストレス……。あなたにとってミサカとの会話はストレスになるのですか、とミサカはショックを隠し切れずに呟きます……」

先程の一方通行の発言がショックだったらしく、何やら落ち込んでいた。
放っておけば地面にしゃがみ込んで“の”の字でも書き始めそうな勢いで落ち込んでいた。

「は……?」

驚いたのは一方通行のほうだ。
10032号を始めとする量産型軍用クローン『妹達(シスターズ)』は、『超電磁砲』御坂美琴の体細胞から作り出されたクローンである。
単価にして18万。様々な薬品によって急速な成長を促すことで、ごく短期間でオリジナルである御坂美琴と同じ外見・肉体年齢を持つ人間を量産する事ができる。

反面、薬品で急速な成長を見せる身体面に対し、精神面は成長が追いつかない。
そこで、『学習装置(テスタメント)』と呼ばれる装置で技術や知識を脳に直接インストールする事により、精神面での経験不足を補っているのである。

とはいえ、『学習装置』によってインストールされた人格は所詮は間に合わせに過ぎず。
人間らしい感情はインストールされていないため、『妹達』に共通する特徴として“感情表現が乏しい”という点が挙げられる。
よって、彼女達との会話は必然的に淡々としたものとなってしまう。


―――はずなのだが。
11 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/11/19(月) 15:30:10.13 ID:Kslddrn30
「そう、ですよね。ミサカは所詮、出来損ないの乱造品に過ぎません。こんなミサカの相手をさせられたらストレスが溜まってしまいますよね、とミサカは現実を再確認しながら俯きます……」

「お、おい……」

いつもなら減らず口の一つでも返ってくるはずが、急にしおらしくなってしまった少女に、一方通行は調子を狂わされてしまう。

「あなたはミサカとは違い、れっきとした人間です。そんなあなたの相手はミサカでは所詮役者不足ということなのでしょうか、とミサカは落ち込みます……」

「べ、別にそこまで言ってねェだろォが……」

「気を使ってくれなくて結構です。ミサカにもそれくらいわかっています、とミサカは泣き出しそうになるのを堪えながら……」

「………」

少女は俯いたままだ。顔は前髪で隠れているため、どんな表情をしているのかはわからない。
だが、その声はどこか震えているように聞こえた。

「ミサカはお姉様を元に作られたクローンです。作り物の体に借り物の心。単価にして18万円。ボタン一つでいくらでも生産できる乱造品に過ぎません」

「………」

「……ですが、こんなミサカにも対等に話してくれるあなたには……、あなたにだけは……と、ミ、ミサカは……」

「オマエ……」
12 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/11/19(月) 15:32:06.42 ID:Kslddrn30
一体この状況は何なのだろうか、と一方通行は困惑する。
幸い、この場所は人通りが少ないが、傍から見れば“小学生の女の子が中学生の女の子を泣かせている”という奇妙な光景に見えるのだが、そんな事を気にしている余裕すらなかった。

一方通行はその生い立ち上、知り合いが極端に少ない。
一応小学校には通っているものの、ほとんど不登校状態のため、研究所の研究員以外と接する機会はほとんどなかった。
そのため、他者の感情の機敏というものに極端に疎い性格になってしまったのである。

だが、いくら人付き合いが少ない一方通行といえど、どうやら目の前の少女が泣いているらしい事はわかる。
この少女は日頃どれだけ罵声を浴びせても平気な顔をしている(むしろ人を怒らせたがっているようにすら見える)妹達の一人だ。
それがわかっているからこそ、一方通行も遠慮なく怒鳴る事ができるわけなのだが。

ところが、そのクローンであるはずの少女は、一方通行に怒鳴られるや否や泣き出してしまった。
もう何度も“顔を合わせて”きた相手ではあるが、こんな反応は初めてだった。

(何なンだよこの状況はよォ……。クローンどもには感情が無いンじゃねェのかよ)

“お遊び”が“実験”だった頃の、00001号と呼ばれた少女との会話を思い出してみる。
しかし、あれは一方通行が一方的に言葉を投げかけていただけで、とても会話と呼べるようなものではなかった。
彼女は感情があるような素振りを見せる事はなかったはずだ。

(大体おかしいンだよ。そもそも全員がこんな奴だったら、俺の胃が今まで無事なワケがねェ。こいつらの態度がおかしくなり始めたのはつい最近からだ)

そう。
『アクセロリータ』などという嫌がらせのような渾名を付けてきた9982号辺りから、クローン達の様子がおかしくなった気がする。

それまでは一方通行の独り言のようだった“会話”に、少しずつではあるが言葉を返すようになった。
『馬鹿』と言った事に対し、『馬鹿と言ったほうが馬鹿です』と減らず口を叩くようになった。
一方通行の“報復”を目の前にして、怯えるような仕草を見せるようになった。

そして今、目の前で肩を震わせながら俯いている。
13 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/11/19(月) 15:33:23.06 ID:Kslddrn30
(……要するに、こいつらは感情も学習したってワケか?……人間みてェに?)

頭の中で何度か現状と前例を反復した後、一方通行はそう結論付けた。

一方通行の言葉遣いは、お世辞にも褒められたものではない。
今までは周りが大人に囲まれていて、それも一方通行の“人格”より“能力”を重視するタイプの研究員ばかりだったため、いくら罵詈雑言を浴びせようと咎められる事はなかった。
もっとも、芳川ともう一人、帰国子女崩れの喋り方をする研究員の女だけは『もっと女の子らしい言葉遣いをしなさい』とよく言っていたものだが。

もし目の前の少女が、ひいては妹達全員が“人間らしい感情を学習した”のであれば。
この年頃の普通の少女のように、デリケートな感情を内包しているのであれば。

『クソが』
『[ピーーー]』
『おまえと話しているとストレスが溜まる』

などと言われたら、どんな気持ちになるだろうか?

(……ンだよ。何なンだよクソが。何でこンなに気分が悪ィンだよ。これじゃ俺が悪いみたいじゃねェかよ)

自分の言葉によって相手が泣いているという事に、一方通行は何ともいえない気分になっていた。

研究所で一度二度顔を合わせただけの有象無象とは違い、目の前の少女は数少ない“知り合い”とも呼べる存在だ。
人付き合いが極端に少ない一方通行にとって、“知り合いを泣かせる”というのは初めての体験なのだった。

(……いや。俺が悪い、のか……?)

普段接している研究員達には、道徳的な考えを持った人間は少ない。
そんな環境で育ってきた一方通行は、こういう時“どこがどう悪かったのか”という点を的確に見つける事ができない。

ただ。
目の前の少女が、自分の発言が原因で傷付いてしまったという事だけは何となくわかった。

そして、こういう時はどうすればいいのか。その程度なら、いくら一方通行といえど知っている。
14 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/11/19(月) 15:34:39.20 ID:Kslddrn30
「……オイ」

「………」

意を決して一方通行が声をかける。少女は俯いたままだ。

「………。わ、悪かっ―――」

た、と最後まで言い切る事はなかった。

「その表情いただき、とミサカはアクセロリータの貴重な表情を自らの脳内に保存します。ぱしゃり」

一方通行が言い終える前に、目の前の少女が何事もなかったように顔を上げ、そんな事を言ったからだ。
顔は涙で濡れてはいなかった。

「は……?ハァァァァァァ!?」

生まれて初めて人に謝ろうとしていた一方通行は、拍子抜けしたような声を出すのが精一杯だった。
妹達が感情に目覚めたと結論付けるまで、一人で思考のループに嵌りかけていたのは一体何だったのか。

「ミサカ達には感情データは入力されていません。それはあなたも御存知なのでは、とミサカは今更な疑問に対して一言で切り捨てます」

「ハァ!?だったらさっきのは何だったンですかァ!?」

「嘘泣きは女の専売特許です、とミサカは今流行の小悪魔系雑誌で覚えた知識を披露します。それにしても見事に騙されてくれました、とミサカは自らの悪女ぶりに自画自賛しつつ内心でほくそ笑みます」

「クソがァ!!絶対感情あるだろオマエ!!」
15 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/11/19(月) 15:35:54.00 ID:Kslddrn30
さっきまで一人で深刻になってしまった恥ずかしさも含め、日頃の五割増で怒りを露にする一方通行。
いつしか“小学生の女の子が中学生の女の子を泣かせている”という状況は
“一方通行が怒鳴り、少女がそれを受け流しつつからかう”といったいつもの光景に戻っていた。

「感情というものがどういったものなのかミサカには理解しかねます。ですが、あなたのそういう顔を見ると何故だか心が踊るような気がします、とミサカは雑誌に載っていた小悪魔系女子の表情を真似てみます。にやり」

「〜〜〜!!」

してやったり、といった表情を浮かべるクローン少女に、もはやイライラを通り越して声にならない一方通行。
何やら頭の血管がブチブチと音を立てているような錯覚すら覚える。

「ちなみに、さっきの表情はミサカの脳波を介してミサカネットワーク上に配信済みです、とミサカは事後報告します」

「!?」

「普段は強気な幼女が稀に見せる気弱な一面。これがギャップ萌え―――つまりは『ツンデレロリ』というものなのですね、とミサカは他の個体からの高評価に満足しながら一人頷きます」

「〜〜ッ!!ふっっっっっざけンじゃねェぞォォォ!!乱造品がァァァァァァァ!!!」

一方通行の絶叫が響き渡り、ダンボールの中の捨て猫がその声に驚いてびくりと震えた。

ちなみに『ミサカネットワーク』とはクローン人間特有の同一振幅脳波を利用した電磁的情報網のことであり、
目の前の少女のような『妹達』はこれを利用することによって意識を共有している。

つまり一方通行の“貴重な表情”は、二万人の妹達全員の目に留まってしまったのである。
16 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/11/19(月) 15:38:20.40 ID:Kslddrn30
―――翌日。

「……よォ。オマエが今回の相手ってことでいいンだよなァ?」

滅多に人目につかない路地裏で、二人の少女が対峙していた。

「その銃。今日の“お遊び”はサバイバルゲームですってかァ?イイねイイね最っ高だねェ……!」

声を投げかけたのは、髪や服装を始めとして全体的に真っ白な印象を受ける、小学校低学年程の少女。
片や、学園都市に七人しかいないレベル5の第三位、『超電磁砲(レールガン)』御坂美琴―――と、“まったく同じ容姿”の少女。

第三位にそっくりな少女の額には武骨な軍用ゴーグルがかけられており、その手にはオモチャの鉄砲のような銃が握られている。

『オモチャの兵隊(トイソルジャー)』

積層プラスチックを材質に使用し、形状にも戦闘機に見られるような機能美が備わっているため、
まるでオモチャの鉄砲にも見えることからそう呼ばれているアサルトライフルである。
赤外線により標的を補足し、 電子制御で『最も効率良く弾丸を当てるように』リアルタイムで弾道を調整する機能を持つ。

ただでさえ目立つ風貌の少女と、学園都市の人口230万人の中の第三位という異色の組み合わせ。
ここが人目に付かない路地裏でなければ、何事かと周囲の注目を集めているところだっただろう。
おまけに、二人の間にはまるで西部劇の決闘シーンのような、一触即発の雰囲気が漂っている。
17 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/11/19(月) 15:40:39.63 ID:Kslddrn30
「はい、ミサカの検体番号は10031号です、とミサカは返答します。念のため符丁(パス)を確認しますか?とミサカは問いかけます」

「符丁だァ?くく、そンなモンどうでもいいンだよ。オマエをぶっ潰せるなら何でもなァ」

機械的に問いかける少女に対し、白い少女は笑いを堪えるような声で返答する。
問いかけた少女が怪訝そうに眉を顰めるが、その様子がおかしいのか、白い少女は更に口角を吊り上げる。

可愛らしい外見にはそぐわない、引き裂くような、歪んだ笑顔。

「今日の俺は薬の飲みすぎで最っ高にキマっちまってるからよォ。手加減は期待されても無理そうなンだわ。悪ィなァ?」

「……確かに“あの顔”を二万人もの妹達に配信されたらヤケになる気持ちもわかります、とミサカは内心同情します。ですが下手人はこのミサカではなく10032号です、とミサカは―――」

「く、は、ひゃははははは!」

その言葉が“禁句”に触れたのか、今まで笑いを堪えていた白い少女が狂笑する。
無表情な少女は会話を諦め、無言で額にかかっていたゴーグルを装着し、手に持っていたアサルトライフルを構える。
18 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/11/19(月) 15:42:01.45 ID:Kslddrn30
白い少女の頭に銃の狙いを付ける。対する少女は完全なる丸腰。
だが、銃を向けられているにも関わらず、白い少女に怯む様子はまったくない。
それどころか、尚も狂ったように笑い続けている。

「―――午後五時三十分。これより第10031次実験を開始します、披検体アクセロリータは所定の位置に着いて待機してください、とミサカは伝令します」

「ひゃはは!ようやくお遊戯開始ってかァ!?待ちくたびれて気が狂っちまうところだったぜェ!!」

時刻は午後五時三十分。

「実験開始。ミサカは予め立案された作戦に従い、行動を開始します」

「オマエのお仲間のお陰で昨日からフラストレーション溜まって仕方ねェンだよ!お礼に天国への日帰り旅行をプレゼントしてやらァ!!」

白い少女が哂い、秘めたる力を解放する。
対するは、最新鋭兵器で武装した軍用クローンの少女。

「楽しい楽しいお遊びの時間だぜェ!乱造品がァ!!」

人気のない裏通りで、二人の少女が激突する。
19 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/11/19(月) 15:43:52.70 ID:Kslddrn30
【次回予告】


『絶対能力進化実験……!?』

『そう。第一位が私のクローンを二万回殺害することで、絶対能力者(レベル6)に進化するっていう計画よ』


―――絶対能力進化実験。二万人もの命を弄び、人間の尊厳を踏み躙る、悪夢のような実験。


『俺は今オマエの身体に、ひいては血液の流れに触れている。コイツを俺の能力で操作してやると……どうなっちまうでしょうかァ?』

『―――!!』

『ひゃはは!言ったよなァ!天国にイかせてやるってよォ!!』


―――白い悪魔の前に、成す術もなく倒れていく妹達。


『私一人の命で二万人が救われるのよ!?安い買い物じゃない!!』

『行かせねえ。二万人を救うために、お前一人が犠牲にならなきゃいけないだなんて。そんなクソッタレな幻想は、俺がぶち殺してやる!』


―――最強の名を冠した暴君に、たった一人で立ち向かう覚悟を決めた少女。


『アッハァ!お望み通りアイツらと同じ目に遭わせてやるよォ!被虐趣味のドMクン!』

『……許さねえ。お前だけは許さねえぞ、最強!!』


―――少女達を救うため、“あの男”が動き出す―――!
20 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/11/19(月) 15:45:06.46 ID:Kslddrn30
次回、とある幼女の一方通行

【絶対能力進化計画?】

科学と幼女が交差する時、物語は始まる―――
21 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/11/19(月) 15:49:29.48 ID:Kslddrn30
こんな感じで幼女通行
ペド条さんとの絡みがないと幼女成分が生かしきれてないなと反省
次こそは・・!
22 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/11/19(月) 17:42:52.90 ID:i6yChren0


9歳ってことは打ち止めに
妹扱いされるのね
23 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/11/19(月) 18:10:35.63 ID:q6nOMmK+0


小さい第一位たんペロペロ
24 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2012/11/19(月) 22:30:32.04 ID:pn6mXVu+o
最初、走れメロスでも見てるかと思った
25 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/19(月) 22:35:51.23 ID:JMydEWnSO

幼女通行期待!!
26 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage saga]:2012/11/19(月) 23:37:35.65 ID:aLEj2/o30
え、上条さんはアルビノ幼女(9才)をグーで殴るの!?
27 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/20(火) 00:11:23.49 ID:w3/02EQE0
>>1おつ
ペド条とかwwww期待
28 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/11/20(火) 03:07:45.63 ID:P1wVsaTNo
>>26
反射に守られてひ弱に育ってる上にこの年齢……万一殴る展開になったとしたら手加減しないとガチで死ぬな
29 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/11/20(火) 03:20:13.59 ID:9KBonvAjo
いくら上条さんでもそこは空気読むだろ・・・
と言いたいところだがアニェーゼくらいの年齢でも平気でぶん殴るからなあ
30 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/20(火) 09:31:43.74 ID:6ERRdnUXo
しかし上条さんは空気は読むけど、全力な男ですよ?ww
31 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/21(水) 16:04:16.24 ID:J4iSGxsIO
上条には小萌という大人子供が近くにいるから躊躇とかしなさそう
32 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/11/21(水) 23:28:59.31 ID:cKqmLWBNo
体張って助けたのにシスターズ全員からドン引きされる上条さん
33 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/11/22(木) 13:09:39.89 ID:z7fln/ad0
白い肌に白い髪。小柄な体格に、女の子らしい夏物のワンピース。
ほっそりとした両足には子供用のサンダルを履いている。
ややつり目がちの瞳は赤く、生まれつき体内に色素を持たない先天性白皮症(アルビノ)を思い起こさせる。

一見すると愛らしいともいえる外見。
しかし、その赤い双眸から放たれる眼光は鋭く、上条は相手がただの子供ではない事を再認識する。

(こいつが、こんな子供が、学園都市最強の超能力者……!)

放っておけば手が勝手に震えそうになるのを、両の拳を力強く握る事で無理矢理押さえ込む。
暫しの間こちらを睨み付けていた少女だったが、そんな上条の様子が面白いのか不敵に口角を吊り上げた。

「……へェ。オマエ、面白ェな」

無謀な挑戦に臨む人間を茶化すような、見下すような態度で。

「俺を学園都市最強と知った上で挑んでくるなンてさァ。身の程知らずもここまでくると表彰モンかもしれねェなァ?」

学園都市最強。
それは能力だけに留まらず、学園都市の人口230万人の中で最高の頭脳をも持つということだ。
そんな相手からしてみれば、上条のような一介の高校生など掃き捨てるほどいる有象無象の一人に過ぎない。

強者の余裕。
七人しかいない超能力者(レベル5)の第一位の手にかかれば、無能力者(レベル0)である上条がどれほど死力を尽くそうと、簡単に捻じ伏せられてしまうだろう。

だが、一方通行は知らない。

無能力者であるはずの上条当麻の右手には、神の奇跡すら打ち消す『幻想殺し(イマジンブレイカー)』が宿っていることを。






―――とある幼女の一方通行―――
34 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/11/22(木) 13:11:21.93 ID:z7fln/ad0
時は少し遡る。

人気のない裏路地を、中学生くらいの年頃の少女が走っていた。
肩口で切り揃えられた茶色い髪に、整った顔立ち。
学園都市屈指のお嬢様学校である常盤台中学校の夏物の制服を着た少女は、
七人しかいないレベル5の第三位、『超電磁砲(レールガン)』御坂美琴と“まったく同じ容姿”の少女である。

だが、額にかけられた武骨な軍用ゴーグルと、手に持ったアサルトライフル。
これらの存在が、周囲の人間の知る御坂美琴のイメージとはかけ離れた印象を与えている。

見る人が見れば別人だとわかるだろう。
男勝りで勝ち気な性として知られる御坂美琴本人とは違い、彼女の表情からは一切の感情が読み取れなかった。

それもそのはず。
彼女は御坂美琴本人ではなく、そのDNAマップを基に創り出された体細胞クローンなのである。
35 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/11/22(木) 13:12:32.13 ID:z7fln/ad0
『量産型能力者(レディオノイズ)計画』

レベル5を生み出す遺伝子配列のパターンを解明し、偶発的に生まれる超能力者を確実に発生させることを目的とした計画。
彼女達『妹達』は『超電磁砲』御坂美琴のDNAマップを基に創り出された量産軍用モデルのクローンであり、
能力開発を受けることでオリジナルと同じ超能力者(レベル5)となるはずだった。

しかし、この計画はあえなく失敗に終わる。

欠陥電気(レディオノイズ)。
クローン達に発現した能力は系統こそ御坂美琴と同じ電撃系能力であったものの、
その強度は異能力(レベル2)、もしくは強能力(レベル3)止まりが限界という欠落を抱えていた。

学園都市人口の六割方が無能力者(レベル0)であるという現実を見れば、例えレベル2〜3程度だとしても、人工的に創り出された能力者というのは貴重であるかもしれない。
だが、レベル5を量産することを目的とした同計画にとって、この結果は不本意極まりないものであった。

かくして計画は凍結され、研究所は即時閉鎖となった。

既に生み出されていた『妹達』は、後に“他の計画”に流用されることとなる。
36 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/11/22(木) 13:14:35.25 ID:z7fln/ad0
時刻は午後五時四十八分。
滅多に人が通ることのない裏路地は、表通りの喧騒とはかけ離れた静けさが漂っている。

その静寂を打ち破るように、子供特有のソプラノボイスが響き渡った。

「ひゃはは!どうしたどうしたどうしたよォ!武装した軍人サンが丸腰の一般人相手に逃げ腰になってンじゃねェぞ!」

「っ!!」

「ほらほら、その銃は飾りなンですかァ!?根性見せてヘッドショットでも決めてみやがれってンだよ!」

最新鋭の銃器で武装した『妹達』の少女。その少女を、丸腰の少女が圧倒していた。

白い肌に白い髪。透き通るような赤い瞳。
夏物の白いワンピースを着た、小学校低学年ほどの少女である。

学園都市に七人しかいないレベル5の第一位、一方通行。
その幼い風貌からは想像付かないが、これでも学園都市230万人の頂点に君臨する最強の超能力者だ。

その白い少女が、軍用クローンの少女を圧倒していた。

銃器で武装しているはずの少女が逃走し、白い少女が狂笑と共に追撃する。
見た目の情報は当てににならない、彼女が強大な力を持つ超能力者であるからこその光景である。

「くっ……!」

走っているうちに靴が片方脱げ、白いソックスが汚れるのにも構わず走り続けた。
片方だけ履いていても邪魔なだけだが、相手はもう片方の靴を脱ぎ捨てる暇すら与えてくれなかった。
逃げ惑う彼女を嘲笑うかのように、声は一定の距離を保ちながら着実に追跡してくるのだ。
37 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/11/22(木) 13:19:56.59 ID:z7fln/ad0
暫しの間逃げ続けた後、不意にクローンの少女は足を止めた。
これ以上終わりの見えない逃走劇を繰り広げても無駄だと判断したのだ。

いくら軍用モデルのクローン体であるとはいえ、基となった御坂美琴は身体面ではごく普通の女子中学生に過ぎない。
したがって、彼女とまったく同数値の身体特徴を持つ少女の身体は、一般の女子中学生レベルの体力しか持たないのだ。


消耗戦という条件は相手にとっても同じはずなのだが、どういうわけだかあちらは一向に疲れている様子を見せない。
常識で考えれば中学生よりも小学生のほうが体力的に劣っているはずが、背後から聞こえてくる笑い声は息一つ乱れていないのだ。
追われる者にとって、これ以上のプレッシャーはないだろう。

「―――っ!!」

ならばせめて反撃をと思い、手に持っていたアサルトライフルを構え、振り向き様に追跡者目掛けて発砲する。
ぱらぱらぱら、という安っぽい効果音と共に、銃口から無数の弾丸が射出される。
それは『オモチャの兵隊(トイソルジャー)』の弾道調整機能により追跡者を捉え、人体の急所へと的確に叩き込まれる。



―――はずだった。
38 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/11/22(木) 13:26:26.21 ID:z7fln/ad0
「ハ・ズ・レ」

パァン!という甲高い音が響いたかと思った瞬間、直撃寸前だった弾丸があらぬ方向へと弾かれた。
そのうちの一発がクローン少女の肩に当たり、びちゃりという音と共に、制服に赤い染みが広がっていく。

「ひゃはは!惜しかったなァ、いいセンいってたと思うぜェ?っつってもま、ただ撃っただけじゃ俺に届きゃしねェけどなァ」

あれだけの距離・時間を休まず追跡してきたにも関わらず、一方通行は涼しい声で告げる。
対する少女は疲労が限界に近付いており、既に肩で息をしている状態だ。

「さァて、お次は何を見せてくれるンですかァ?そろそろ鬼ごっこは飽きてきちまったンですけどォ?」

「……っ!」

一瞬の溜めの後、少女が一方通行に向けて掌を翳す。。
次の瞬間、少女の掌から発せられた青白い火花が一方通行に襲いかかった。
『欠陥電気』。出力はオリジナルである御坂美琴の1%にも満たない電撃能力であるが、直撃した人間の手足を一時的に麻痺させることくらいは可能である。

銃撃による起死回生の反撃が失敗に終わった今、相手が電撃で怯んだ隙に一度体勢を立て直そうと考えたのだが、

「オイオイ、学習しねェな。銃が駄目でも電気ならってかァ?そンなモン無駄に決まってンだろうが」

火花は一方通行に触れる寸前で、先の銃弾のように弾き飛ばされた。
どころか、電撃はまるでブーメランが持ち主の元へと戻るかのように、逆に少女へと襲いかかる。

「っ!?」

自らが生み出した電撃に撃ち抜かれた少女は、短い悲鳴と共に地面に倒れ伏した。
39 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/11/22(木) 13:29:47.84 ID:z7fln/ad0
「ゲームオーバーってかァ?」

コツコツという音が、ゆっくりと近付いてくる。
言う事を聞かない体に鞭を打ち何とか顔を持ち上げると、一方通行の履いている子供用サンダルが視界に入った。
少女の必死の抵抗も空しく、とうとう接近を許してしまったのだ。

赤い双眸が、路地裏の汚い地面に横たわる少女を見下ろす。
自らの放った電撃に貫かれ、身動きを取ることすらままならない少女を。

先程まで狂ったような笑いを浮かべていた一方通行だったが、今は打って変わって興醒めしたような目をしていた。

「……ハァ、あっけねェ。こっちは一切手出ししてないってのによォ」

小学生の少女には似つかわしくないチンピラのような口調が、子供特有のソプラノボイスで紡ぎ出される。
そんな外見と中身のギャップがまた、彼女の持つ異様な雰囲気を増長させている。

「ハーーーーァ。俺は期待してたンだぜ?散々人に生意気言ってくれた連中を思いっきりぶっ潰せるってよォ。それなのに何だァ?このザマは。期待外れすぎて死ンじまいそうなンですけどォ?」

長い長い溜息をつき、呆れたような口調で言う。
心底人を馬鹿にしたような態度だが、それに言い返すほどの気力すら少女には残っていなかった。
40 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/11/22(木) 13:34:50.58 ID:z7fln/ad0
一方通行からすれば、目の前の少女は『アクセロリータ』などというふざけた渾名をつけた連中の一人である。
前日遭遇し、一方通行の胃に深刻なダメージを与えた少女の検体番号は10032号。
彼女の担当は本日の午後八時三十分からであったため、予定前の“報復”は避けなければならなかった。

そのため、一方通行は湧き上がるストレスを張本人にぶつけることもできず、
ムシャクシャした気分のまま寮に戻り、深夜の居酒屋でヤケ酒する中年会社員の如く大量のブラックコーヒーを流し込んだ。

結果、胃の不調は更に深刻なものとなっていったのだが、それはそれとして。

目の前の少女は昨日の10032号と同じく、『妹達』の一員である。
つまり、一方通行にとっては自分に舐めた渾名をつけ、あまつさえ“あの顔”を見てほくそ笑んでいた相手に他ならない。

したがって、本日最初の“お遊び”の相手である少女に昨日の分までイライラをぶつけ、
必死に抵抗してきたところを完全に無力化し、絶望に打ちひしがれる姿を嘲笑ってやるつもりだったのだ。

要するに、盛大な八つ当たりである。

「ま、オマエらにしてはよくやったほうなンじゃねェの?俺は不完全燃焼だけどなァ」

うつ伏せに倒れた少女の肩をサンダルの爪先で小突きながら、白い少女が言う。
正直な話が期待外れではあったが、その分も含めてこの後の“本命”を嬲り倒してやろう。
そんなことを思いながら。
41 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/11/22(木) 13:38:14.35 ID:z7fln/ad0
「仕方ねェ。ちょっとばかし張り合いがなさすぎるンで、ここでオマエらに特別ヒントをくれてやるよ。一度しか言わないからよ〜く聞けよ?」

やがて肩を小突くのにも飽きたのか、一方通行は笑いながら言う。

学園都市の能力開発を受けた人間には、原則として一人につき一つの能力しか発現することはない。
これは能力者達の誰しもが『自らの能力使用を前提とした独自の感覚』を持っているからであり、
この『自分だけの現実(パーソナルリアリティ)』によって、各々に発現する能力が決定付けられるからだ。

もしも『自分だけの現実』からかけ離れた力を振るおうとすれば、それは脳に多大な負荷を与えることになる。
複数の能力を操る『多重能力者(デュアルスキル)』という能力者の話もあるが、これは信憑性の薄い都市伝説の域を出ない。

したがって、『手から火を出すことができる』という認識を持つ者には水を扱うことはできないし、
『自分の姿を消すことができる』という認識を持つ者が火を扱うことはできない。
これはどんなに強大な能力を持つ者でも、例え七人しかいないレベル5であっても覆すことのできないルールなのだ。

そのため、能力者が自らの手の内を明かすということは、予め自分の装備を相手に掲示しているようなものである。
例え初めて相対する相手であっても、相手の装備がわかっているのであれば話は変わってくる。

銃を持っている相手に対して、防弾装備で身を固めるように。
ナイフを持っている相手に対して、遠距離から対応するように。

相手の攻撃手段を考慮し、戦いを有利に運べるように、予め対策を練ることは容易である。
能力者が自らの力を相手に教えるということは、つまりそういうことなのだ。
42 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/11/22(木) 13:53:19.29 ID:z7fln/ad0
だが。
一方通行はそんなリスクを背負う事など何でもないというように、自らの能力の詳細を語り始める。

「俺の能力は『向き(ベクトル)』変換。運動量・熱量・電気量。ありとあらゆる『向き』は、俺の皮膚に触れただけで思うがままってワケだ」

自分が不利になる可能性など気にも留めず、むしろどこか得意気にすら見えるその表情からは、自らの能力に対する絶対的な自信が見て取れた。

「さっきみてェに銃弾跳ね返したり電撃防いだりなンてのは、俺の能力の一端に過ぎねェ。デフォで設定してる『反射』が向かってくる物を自動で跳ね返しただけなンだわ」

ありとあらゆる物の『向き』を操作する。それは『力の流れ』も例外ではない。
例え刃物で切り付けようと、例え鋼鉄の鈍器で頭蓋骨が砕けるほどの衝撃を与えようと。
その衝撃―――ひいては力の流れに『向き』が存在する限り、それは一方通行に伝わる寸前で『反射』されてしまう。

「つまり……、あなたにはどんな攻撃も、通用しないと……?」

どんな兵器も、どんな攻撃も、この白い少女の柔肌に傷一つ付ける事はできない。
例え360度全方位を軍隊で取り囲み軍事兵器による全力の砲撃を浴びせたところで、眉一つ動かさずに『反射』されてしまうだろう。

あまりに理不尽。あまりに反則的。
そんな圧倒的な能力を持った相手に、最新鋭の銃器“如き”でどうしろというのか。

「そォいうこったァ!ひゃはは!そうそう、そういう顔が見たかったンだよ俺は!」

信じられないものを見るように呆然と呟く少女の様子が気に入ったのか、一方通行は引き裂いたような笑みを浮かべた。
43 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/11/22(木) 14:06:01.97 ID:z7fln/ad0
「っつっても、俺の能力にもいくつか穴はあるンだけどな。不愉快極まりないことに」

「!」

穴。
一見攻略不可能にみえるこの圧倒的な能力にも、何か弱点があるというのか。
クローン少女は一方通行の一字一句を慎重に聴き取り、ネットワークを介して他の『妹達』と情報を共有する。
ここで一方通行の能力に関する情報を得られれば、いずれ攻略するためのヒントとなるかもしれない。

しかし、

「ま、そこまで教えてやる義理はねェよなァ!残念ながらヒントはここまでだ!ひゃはははは!」

そんな少女のささやかな希望を、歪んだ笑みが塗り潰す。
一方通行は彼女の内心を理解していて、それでいて踏み躙るのが楽しくて仕方がないといった様子で笑い続けた。

「は、は、今の顔でちったァストレス解消になったわ。ありがとよ」

やがて笑い疲れた一方通行は、満足そうな顔で少女の眼前にしゃがみこんだ。
その愛らしい顔に、狂気の滲んだ笑顔を貼り付けて。

「楽しませてくれた礼だ。そろそろ楽にしてやるよ」

唇と唇が触れる寸前まで顔を近付け、指先で少女の肩に触れる。
先程『反射』された弾丸が当たり、制服のサマーセーターに赤い染みを作っているその部分に。
44 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/11/22(木) 14:15:57.39 ID:z7fln/ad0
「さァて、俺の能力については理解したよなァ?」

白い少女の吐息が顔に触れ、子供特有の甘い匂いが鼻につく。

「そこで問題です」

細く、白い指が肩に触れている。
強く抱き締めれば壊れてしまいそうな、そんな華奢な見た目とは裏腹に、触れただけで全てを破壊できる超能力者の指が。

「俺は今オマエの身体に、ひいては血液の流れに触れている」

まるで死刑宣告をするかのように、白い少女は告げる。

「コイツを俺の能力で操作してやると……どうなっちまうでしょうかァ?」

「―――!!」

「ひゃはは!言ったよなァ!天国にイかせてやるってよォ!!」

その瞬間。

今までに感じた事のない感覚が身体中を駆け巡り、少女の意識は途絶えた。
45 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/11/22(木) 14:18:51.68 ID:z7fln/ad0
――――――――――――――――――

(さァて。次の“お遊び”まで暫しの休憩といきますかァ)

携帯電話をワンピースのポケットにしまい、地面に横たわる少女を一瞥すると、一方通行は表通りへと出るために踵を返した。

彼女の能力によって“血液の流れ”を操作された少女は最初こそ激しく痙攣していたものの、今となってはピクリとも動かない。
裏路地の汚い地面を転げ回ったため、着ていた制服は薄汚れ、肩口には赤い染みが広がっている。
傍らには軍用のアサルトライフルが転がっており、滅多に人の通らない裏路地はさながら銃殺現場のようになっていた。

だが、一方通行はそんな惨状を気にする素振りも見せない。

どうせこの“お遊び”は一般人の目に入らないよう、関係者の手によって証拠隠滅されるのだ。
あの少女の“後始末”は他の『妹達』にでも任せておけばいいだろう。

(次は確か八時三十分だったか。ひゃは、ついに“本命”だなァ)

人気のない裏路地を出口に向かって歩きながら、一方通行はこの後のスケジュールを確認する。
八月二十一日、午後八時三十分。場所は第十七学区の操車場。
担当は“本命”である、検体番号10032号と名乗った少女。

(いいねいいね最っ高だねェ!俺を散々コケにしたアイツを、堂々と嬲ることが出来るってワケだ!)

あの憎たらしいクローンに会ったら、昨日の屈辱をどうやって返してやろうか。
そんな事を考えながら、表通りへと通じる道を歩いていく。
46 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/11/22(木) 14:27:40.90 ID:z7fln/ad0
ちょっと出かけるので一旦ここまで。

誤解されそうですが当SSはシリアスではないです

続きは夜にでも!
47 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/22(木) 14:30:05.22 ID:064dRcaSO
乙。これは上条さんが一発げんこつと説教をかまし、正しい道に戻して、一緒に暮らさなければならないな。

48 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/11/22(木) 14:33:10.53 ID:g2ZcJX9O0


小学生相手にも全力を出す
御坂さんや上条さんがみれるわけっすね
49 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/22(木) 16:34:00.68 ID:h87H+LCWo
十分シリアスだろwwww
50 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2012/11/22(木) 17:05:50.25 ID:IFZBrUXjo


一体どんなオチが待っていることやらwwwwww
51 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/11/22(木) 18:35:45.93 ID:BB/hDZz9o
普通にシリアスでワロタ
52 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/11/22(木) 20:04:10.78 ID:FTtdX1vT0
帰宅したので再開
53 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/11/22(木) 20:06:48.31 ID:FTtdX1vT0
人気のない裏路地とは打って変わり、表通りは多くの学生達で賑わっていた。
それもそのはず。学園都市は人口230万人のうち、その8割が学生である。
今は夏休み期間中であるため、街に住むほとんどの住人が長期休暇の真っ最中なのだ。

近くにあったコンビニで缶コーヒーを買い、適当な雑誌を立ち読みしながら時間を潰す。
目が痛くなるような彩色で『小悪魔sanagi』と書かれたその雑誌は、“如何にして男を手玉に取るか”という内容を重視しているようだ。

今まで碌に雑誌を読んだことがない一方通行は掲載されている内容に目を通しながら、

(『思わず男がグっとくる小悪魔的仕草』だァ?意味わかんねェ。っつーか何だコイツら、瞼にバランでも乗せてやがンのかァ?どこがいいンだこンなモン……)

まるで難解な暗号を解読する時のような顔をしていた。
いかに学園都市最強の頭脳といえど、小悪魔ギャルの美的感覚は理解に苦しむらしい。

一方、そんな一方通行のすぐ傍では、

(何なんだこの子供……?)

ギャル系雑誌を凝視しながら眉を顰めている白髪の少女を、コンビニの店員が不思議そう顔で眺めていた。
54 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/11/22(木) 20:14:35.19 ID:FTtdX1vT0
――――――――――――――――――

立ち読みを終えた一方通行が店から出た頃には、既に空は暗くなっていた。
時刻は午後八時十五分。“お遊び”の開始時刻が、あと十五分後に迫っている。
コンビニに入った時間が七時前だったはずなので、ゆうに一時間以上は立ち読みを続けていたことになる。

(雑誌ってのは意外と時間を潰せるモンなンだなァ)

単に目に付いた雑誌を適当に開いただけだったのだが、思いの他(理解に苦しむという意味で)興味を惹かれ、結局全部読んでしまったのだ。
結果として、思っていた以上に時間を消費してしまったのである。

余談だが、どうやら昨日のクローン少女が読んでいたのもこの雑誌だったらしく、
『男を落とす!小悪魔女子の嘘泣きテクニック』と銘打たれたコーナーを目にした時は思わず雑誌を破り捨てそうになった。

(それにしても、ついつい集中しすぎちまった。そろそろ操車場に向かわねェとな)

実は途中で何度か店員に注意されていたのだが、内容に集中するため余計な音を『反射』していた一方通行はそれに気付く事はなかった。
自分より年下の小学生に徹底的に無視され続けた店員はやがて注意する事を諦め、少し涙目になりながら事務所に引っ込んでいったという。

そんなわけで現在、操車場のある第十七学区へ向かっている最中である。
最悪、能力を使って近道でもするか、などと考えながら交差路へと出た一方通行は、

(―――ン?)

音の『反射』を切り忘れていたため、横から飛び出してきた人影への反応が遅れてしまった。

飛び出してきたのは、ツンツン頭の男子高校生だった。
55 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/11/22(木) 20:19:27.50 ID:FTtdX1vT0
一方通行の能力はベクトル変換である。

ありとあらゆる『向き』を操作するこの能力は、身体に触れたものの『衝撃の向き』すらも自在に操れる。
意識して能力を使用せずとも身体の表面は常に『反射』の膜で覆われているため、不意打ちや不慮の事故に遭ったところで何の問題もないのだ。

そんな絶対無敵の防壁を誇る少女は眼前に迫りくる人物に対し、

(御愁傷様。悪いのはオマエの前方不注意だからなァ)

避ける事すらしなかった。
どのみち相手が衝突した瞬間の『衝突時の衝撃』は『反射』され、彼女には傷一つ付かないのだ。

その分、相手は『一方通行に向かうはずだった衝撃』をも同時に受ける事となり、ダメージは倍となるのだが。
そんなものは碌に周りも見ずに走っていた相手が悪い、と切り捨てる。
自動車や自転車の衝突ならともかく、走って人とぶつかった程度で死にはしないだろう。

「―――!?―――!!」

飛び出してきた男子高校生が何かを叫ぶが、音の『反射』を切っていないため何を言っているのかわからなかった。
どうせ自分の事を棚に上げて『危ない!』とでも叫んでいるのだろう。

一方通行はやや呆れ気味な顔で、棒立ちのまま成り行きを見守った。
自分よりも一回りも二回りも体格のいい男子高校生が、一方通行と激突する。

その瞬間、一方通行は肩のあたりを“突き飛ばされた”。
56 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/11/22(木) 20:24:09.85 ID:FTtdX1vT0
(は―――?)

予想外の事態に反応が遅れ、ぽすんと尻餅をついてしまう。
全面衝突するよりは被害が小さいと思ったのか、男子高校生が一方通行を咄嗟に突き飛ばしたのだ。

無理に勢いを殺そうとしてつんのめったのか、さっきまで一方通行が立っていた位置にツンツン頭の男子高校生が派手に倒れ込んだ。
あれほど勢いよく激突していたらお互いただでは済まなかっただろう。
普通なら男子高校生の咄嗟の判断に感謝するところなのだが、

(コイツ……今、何しやがった?)

どんな衝撃も『反射』するはずの一方通行の身体が、“突き飛ばされた”。
銃弾だろうと核兵器だろうと『反射』する絶対無敵の防壁が、ただの男子高校生によって掻い潜られた。

その事実が、他のどんな事よりも一方通行を驚かせた。

「―――!―――――――――!」

能力を手にして以来初めての出来事に、一方通行は音の『反射』を切る事すら忘れて呆然としていた。
その様子をどう解釈したのか、男子高校生は慌てた顔で謝罪のジャスチャーを繰り返している。
恐らく『わ、悪い!ちょっと急いでたんだ!』などとお約束の言い訳を並べているのだろう。

「―――?――――」

(一体何だってンだ。能力者か?だが、俺の『反射』を無効化できる能力者なンて聞いた事ねェぞ)

『――――――、――――――――――――?――――――――?―――――――――――――――――――――――、―――――――――――――――――――。―――――――――――!――――――!』

「――!?おい、オマエ!待ちやがれ!」

自分の『反射』を掻い潜った不可解な現象について思考を巡らせていた一方通行だったが、
当事者である男子高校生は一方通行に怪我がない事を確認すると、そんな彼女を置いてどこかへと走り去ってしまった。
どうも何かに切羽詰ったような顔をしていたようだが、何か緊急の用事でもあったのだろうか。

「チッ、何だってンだ……」

尻餅をついたまま、男子高校生が走り去った方角をぼんやりと眺める。
それは一方通行がこれから向かう、第十七学区のある方角だった。
57 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/11/22(木) 20:33:55.30 ID:FTtdX1vT0
――――――――――――――――――

上条当麻は夜の街をひた走っていた。

『絶対能力進化実験……!?』

『そう。第一位が私のクローンを二万回殺害することで、絶対能力者(レベル6)に進化するっていう計画よ』

つい先程、鉄橋の上で少女と交わした会話を思い起こしながら。

『超電磁砲を128回殺せば一方通行は絶対能力者へと進化することができる。でも超電磁砲は128人も用意できない。だから』

『だからクローンを……二万人を、殺させようってのか!?』

絶対能力進化実験。

学園都市が誇る世界最強のコンピューター『樹形図の設計者(ツリーダイアグラム)』の演算結果によれば、
学園都市の第一位『一方通行』が第三位『超電磁砲』御坂美琴を128回殺害する事で、絶対能力者(レベル6)へと進化するという。

だが、当然ながら超電磁砲は128人も用意できない。

そこで先の『量産型能力者計画』で既に生み出されていたクローン『妹達』を流用し、二万通りの戦場・方法で殺害する。
それにより、超電磁砲を128回殺害するのと同じ結果を得られる――――というプランを、『樹形図の設計者』は導き出した。

しかし。

『樹形図の設計者はね、二週間ほど前に謎の攻撃で撃墜されてるのよ』

少女の話によれば、『樹形図の設計者』はとうの昔にその機能を停止していたらしい。
現在行われている実験は、過去の演算結果の延長上で行われているに過ぎない。

『だから今、私が一方通行と戦ってあっさり負ければ。“超電磁砲を128回殺害したところで、絶対能力者には到底届かない”と思わせる事ができれば』

『樹形図の設計者が機能していない以上、今から実験プランを計算し直す事はできない……。つまり、実験は凍結されるってわけか』

“御坂美琴には、例え128回殺したところで一方通行を絶対能力者へと進化させるほどの価値はない”。
計画に関わる全ての者にそう思わせることで、実験を止める。

『……お前、死ぬつもりなんだな』

『私一人の命で二万人が救われるのよ!?安い買い物じゃない!!もうこれしか道は残ってないのよ!!』

クローン達の基となったDNAマップの持ち主。常盤台中学校のエースにして、超能力者(レベル5)の序列三位。

『超電磁砲(レールガン)』御坂美琴。

たった14歳の少女が、死を決意していた。
58 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/11/22(木) 20:51:00.16 ID:FTtdX1vT0
実のところ、上条当麻は御坂美琴と長い付き合いがあるわけではない。
それどころか、つい先日“知り合った”ばかりの相手と言ってもいい。

上条当麻は記憶喪失なのだ。

とある少女を助けるために奮闘し、結果的に全ての記憶を失った“らしい”。
目が覚めた時には既に病院のベッドに寝かされており、経緯はおろか自分の名前すら思い出す事はできなかった。
そのため、自分が記憶喪失であるという事実ですら、主治医であるカエル似の医者からそう聞かされただけに過ぎない。

以来、周りには記憶喪失であるという事を隠しながら今日まで生きてきた。

どうやら『上条当麻』は御坂美琴と面識があったようだが、『今の上条当麻』にとっては昨日知り合ったばかりの中学生、といった認識しかない。

まだ知り合って日の浅い相手のために、学園都市最強の怪物と戦えるか。
普通の人間ならば、我が身可愛さに見て見ぬ振りをするところだろう。

―――だが。

(俺にあいつとの記憶が残ってないだとか、知り合って間もないだとか、そんなものはどうだっていい)

上条当麻は、目の前で起こっている悲劇を素通り出来るような人間ではなかった。

(御坂妹が殺されそうになってる。それを救うために、御坂が自分から死のうとしてる)

御坂妹。
量産型軍用クローン『妹達』の一人であり、美琴と知り合った日の帰り道、道路脇で捨て猫を眺めているところと偶然出会った。
見た目では御坂美琴本人と区別が付かないため、上条は自分が出会った少女を『御坂妹』と呼んでいる。

その御坂妹こそが、これから行われる実験のターゲットだというのだ。

(何の罪もない女の子が、クソッタレな連中のクソッタレな都合で食い物にされようとしてる)

上条当麻は夜の街を一心不乱に走り続ける。

(立ち上がる理由なんて、それだけで十分だろうが!!)

実験場―――

第十七学区、操車場へと。
59 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/11/22(木) 20:56:24.21 ID:FTtdX1vT0
――――――――――――――――――

「よォ、待たせちまったかァ?」

午後八時二十五分。第十七学区の操車場に、一方通行は辿り着いた。
途中、予想外のアクシデントによって時間をロスしてしまったため、能力を使って文字通り“飛んで”きたのだ。

「いいえ。実験開始まであと五分の猶予があります、とミサカは報告します」

「ハン、遅刻は免れたってワケか。―――ところで」

対するは量産型軍用クローン『妹達』の一員であり、昨日、一方通行の胃に多大なダメージを与えた張本人。

「オマエは検体番号10032号で合ってるンだよなァ?」

「はい、ミサカの検体番号は10032号です、とミサカは肯定します。そういうあなたはアクセロリータ本人で間違いないですか?とミサカは逆に問いかけます」

「この期に及ンでまだその名前で呼ぶとはなァ……覚悟は出来てるンだろうな?」

「“あの顔”は既にネットワークを介して全てのミサカが受信済みです、とミサカは思い残すことは何もないと腹を決めます」

「………」

検体番号10032号―――御坂妹である。
60 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/11/22(木) 21:04:32.45 ID:FTtdX1vT0
「いいぜェ……最っ高だよオマエは……!ぶっ潰し甲斐がありそうだァ……!」

「実験開始まで残りニ分です。何か確認事項はありますか?とミサカは問いかけます」

わなわなと震える一方通行に対して、御坂妹はあくまで無表情を崩さない。
どうもこの10032号は他の『妹達』と比べて一方通行をイラつかせる才能に富んでいるらしい。

「確認事項、確認事項ねェ。―――そうだ、いいこと思い出した。オマエにいいモン見せてやるよ」

そう言ってワンピースのポケットから携帯電話を取り出し、何らかのファイルを開いてから御坂妹に投げてよこした。
御坂妹は怪訝そうに眉を顰め、携帯電話の液晶画面を覗き込み―――

「一体何を……。―――!?」

そこに映し出されたものを見た途端、無表情だった御坂妹の瞳が驚愕に見開かれた。

「これは……」

「ひゃは!さっきの“お遊び”が思いの他早く終わっちまったンで、退屈凌ぎに記念撮影してみましたってなァ!」

御坂妹は暫くの間携帯電話を眺めていたが、やがてファイルを閉じ、そのまま一方通行へと投げ渡した。
一方通行はそれを片手で受け取り、悪戯が成功した子供のようにニヤニヤと笑った。
61 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/11/22(木) 21:11:16.02 ID:FTtdX1vT0
「……さァて、そろそろお遊戯の開始時間だな。余興は楽しんで頂けましたかァ?」

「現在時刻は午後八時二十九分四十五秒。間もなく第10032次実験を開始します。披検体アクセロ―――」

「それ以上言ったら本気で潰す」

「―――チッ。被検体一方通行は所定の位置に就いてください、とミサカは伝令します」

「オマエ今舌打ちしたよな?」

「気のせいでは?それよりさっさと所定の位置に就け、とミサカは機嫌の悪さを押し殺して催促します」

「隠す気ねェよなオマエ!?」

投げ返された携帯電話をポケットにしまい、一方通行は御坂妹から5mほど離れた地点に位置取った。
何やら怒られた気もするが、今はそれどころではないと思い直して。

「待ちに待った大本命の時間だからなァ。散々俺の胃を痛め付けてくれた分、たァっぷりお礼してやるぜェ?」

「―――午後八時三十分。これより第10032次実験を開始します」

「ひゃは!精々頑張ってくれよなァ、俺のストレス発散のためによォ!!」

無人の操車場が、戦場と化す。
62 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/11/22(木) 21:20:38.11 ID:FTtdX1vT0
――――――――――――――――――

上条が操車場の外周へ辿り着いた時、時刻は八時三十分をとうに過ぎていた。

既に戦闘が始まっているのか、金網越しに青白い光が暗闇を照らすように瞬いているのが見える。
同じ現象を、彼はここではない場所で何度か目にしていた。

御坂美琴。学園都市の電撃使いの中でも最強を誇る超能力者の少女。
確か彼女の体細胞クローンである『妹達』も、同じ電撃系の能力を所持していたはずだ。

(ということは……あそこか!!)

操車場の入口を探すのももどかしくなった上条は、かなりの高さがあるフェンスの金網を強引によじ登った。

一人の少女とその妹を助けるため、上条当麻は戦場へと足を踏み入れる。
63 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/11/22(木) 21:31:12.98 ID:FTtdX1vT0
――――――――――――――――――

「ひゃはは!ほらほら、愉快に無様に逃げ回りやがれェ!」

無人の操車場にソプラノボイスが響き渡り、それに応えるかのように青白い火花が舞う。
声を上げたのは学園都市最強の超能力者である白い少女、一方通行。
対するは、武骨な軍用ゴーグルを装着した中学生ほどの少女、御坂妹。白い少女の追撃から逃れつつ、隙を見ては青白い火花を放っている。

一方通行が距離を詰め、御坂妹が電撃を放ちながら距離を取る。
両者の距離は常に一定を保っており、一見膠着状態のようにも見える。

だが、逃げている側の御坂妹には余裕など持てるはずもない。
相手は一方通行。見た目は可愛らしい女の子そのものだが、こんな姿でも学園都市230万人の頂点に君臨する怪物なのだ。

その証拠に。

「さっきからしきりに電撃放ってるから何かと思えば、ひたすら空気を分解してますってかァ!?面白ェこと考えるじゃねェかよ!」

御坂妹の決死の作戦は、一方通行にあっさり感付かれてしまっているようだ。

一方通行の能力は自分が触れたものの『向き』を変換する能力である。
運動量・熱量・電気量。ありとあらゆるベクトルを自在に操る事で、例え核兵器が直撃しようが傷一つ付かない絶対無敵の防壁を誇る。
その小さな矮躯は常に『反射』の膜で覆われており、例え睡眠中に奇襲を仕掛けようと全ての攻撃は『反射』され、本来一方通行が負うはずだったダメージまでもが攻撃した者へと跳ね返るのだ。

まさに絶対無敵。故にこその最強。

だが、一見完璧に見えるこの能力にも“穴”があるらしい。
他でもない一方通行本人がそう言っていた。

だからこそ御坂妹は銃器で武装することもせず、一方通行の能力の“穴”を突くべく電撃を放ちながら逃げ回っていたのだ。
64 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/11/22(木) 21:39:30.76 ID:FTtdX1vT0
「この匂い、オゾンか。俺を酸欠状態に追い込ンで判定勝ちに持ち込もうって魂胆かァ?」

空気中の酸素は電気によって分解する事ができ、一度分解された酸素はオゾンを作り出す性質を持つ。
オゾンは酸素と違い有毒であるため、いくら吸い込んでも呼吸の助けにはならない。

いかに絶対無敵の防壁を誇る一方通行といえど、身体面そのものは一般の人間と何も変わらない。
つまり、自身の呼吸に必要な酸素まで『反射』しているというわけではないのだ。

先の実験で10031号が得た情報からその事を掴んだ御坂妹は、一方通行の周りの酸素を根こそぎ奪う事により、彼女を酸欠状態に追い込むという作戦を立てた。
幸い、今夜は風がない。
追いつかれないように一定の距離を保ち、電撃によって酸素を奪い続ければ御坂妹にも勝機は訪れる。

そんな作戦を密かに実行していたのだが、一方通行はそんな御坂妹の考えすらお見通しとでも言うかのようにあっさりと作戦内容を看破した。

「やけに抵抗しねェからビビっちまったのかと思ったが、そンな面白ェこと企んでやがったとはなァ!それでこそ潰し甲斐があるってモンだぜ乱造品!」

御坂妹の目論見を見破った今、一方通行にはわざわざそれに付き合う義務はない。
一旦オゾンの濃度が低い地点まで移動するか、風のベクトルを操って酸素を運んでくればいい。
それだけで御坂妹の作戦は失敗と終わる。

(でも駄目だ。それじゃつまンねェ。コイツの作戦に乗ってやった上で徹底的にぶち破る。そうじゃなきゃ面白くねェだろォが!!)

だが、一方通行は敢えて御坂妹を追い続ける事を選ぶ。
相手の企みを知った上で、それを正面から打ち破ることに喜びを覚える戦闘狂のように。

「っつっても俺も酸素奪われるとキツいンだよ。ちっとばかし本気で追わせて貰うぜェ!?」

タン、と一方通行の小さな足が地面を蹴る。
たったそれだけの動作で、一方通行の身体が砲弾のような勢いで御坂妹の真横へと躍り出た。

「っ!?」

「運動量のベクトルを変えてやればこンな事もできるんだよ。結構快適だぜェ?」

驚く御坂妹に対し、一方通行は再び地を蹴った。
地面に伝わるベクトルをどのように操ったのか、御坂妹の進行方向目掛けて地面に亀裂が走る。

「なっ―――」

一方通行の挙動に気を取られていた御坂妹は、亀裂に足をtられて前のめりに倒れ込んでしまった。
65 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/11/22(木) 21:42:04.05 ID:FTtdX1vT0
×足をtられて

○足をとられて

他にも誤字ってるかもしれないけど許して!
66 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/11/22(木) 21:47:58.12 ID:FTtdX1vT0
勢いよく倒れたため直ぐに起き上がれない御坂妹に、一方通行がのんびりとした歩調で近寄る。

「オマエらにしてはいい作戦だったンじゃねェの?ま、どうやらそれも終わりみたいだけどなァ」

「う……くっ……!」

「にしても、たったあれだけの情報でよく俺の『反射』の穴を突いた作戦を立てられたモンだ。二万人もいりゃ悪知恵の一つも働くってかァ?くく、俺もその辺踏まえて対応策を考えなきゃなンねェかもなァ。朝起きたら布団圧縮袋に詰め込まれててジ・エンドなンて事になったら笑えねェ」

そんな方法で学園都市最強が殺されたらいい笑い者だな、なんて事を考えながら御坂妹の正面へ回りこむ一方通行。
御坂妹は肘まで地面についたまま、頭だけを起こして一方通行を見上げる。
磨かれたルビーのように透き通る、真紅の瞳と目が合った。

「さてと。そンじゃまァ……オマエには昨日のお礼をしてやらねェとなァ?」

言って、ぽすん、と御坂妹の頭に手を置く。
触れただけで相手の“血液の流れ”すらも自在に操れる、魔手のような手を。

「っ!」

ここに至ってようやく恐怖を感じたのか、御坂妹の目が見開かれる。
そんな様子を見て、一方通行は引き裂いたような笑みを浮かべ、

「オマエにゃイライラさせられっ放しだったからな。精々無様に泣き叫ンで、俺を楽しませてくれよなァ?」

その能力を、発動し―――
67 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/11/22(木) 21:52:51.09 ID:FTtdX1vT0
「御坂妹から放れやがれ!!」

―――ようとした瞬間、無人のはずの操車場に少年の怒号が響き渡った。
68 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/11/22(木) 22:03:03.93 ID:FTtdX1vT0
「なっ、オマエ……!?」

一方通行の顔が、普段あまり見る事のない驚愕という表情に彩られた。

乱入してきたのは、ツンツン頭の男子高校生。
ここに来る途中の道で衝突しそうになり、どうやったのか一方通行の『反射』を掻い潜って彼女を突き飛ばした張本人だ。

ここに来る途中で起こった“予想外のアクシデント”を思い出し、驚きのまま乱入者の姿を見つめる一方通行。
だが、なにも驚いていたのは一方通行だけではなかった。

(あの子は、さっきの……?あいつが一方通行なのか!?)

倒れている御坂妹の姿を見て咄嗟に叫んだ上条だったが、その頭に手を置いている人物の姿を見て一瞬目を疑った。
それは、ここに来る途中の交差路でぶつかりそうになった小学校低学年ほどの少女だった。

実験を止めるために全力疾走していた上条は、脇道から歩いてきた少女に対してすぐに反応する事ができなかった。
そのため、ぶつかる寸前、咄嗟に“右手で”少女の肩を突き飛ばし、何とか全面衝突は免れたのだった。

『っていうか君、こんな時間にどうしたんだ?もしかして迷子?だったら向こうのほうで警備員(アンチスキル)が見回りしてたから、その人達に家まで連れて行ってもらうんだ。俺は急いでるからこれで!本当にごめん!』

そう言って操車場へと急いだ上条だったが、そこで別れたはずの少女こそが非道な実験の主要人物である一方通行本人だったのだ。

ちなみにその時、肝心の一方通行は音を『反射』していたため、上条の言葉は何一つ耳に入っていなかったりするのだが。
69 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/11/22(木) 22:09:25.31 ID:FTtdX1vT0
白い肌に白い髪。小柄な体格に、女の子らしい夏物のワンピース。
ほっそりとした両足には子供用のサンダルを履いている。
ややつり目がちの瞳は赤く、生まれつき体内に色素を持たない先天性白皮症(アルビノ)を思い起こさせる。

一見すると愛らしいともいえる外見。
しかし、その赤い双眸から放たれる眼光は鋭く、上条は相手がただの子供ではない事を再認識する。

(こいつが、こんな子供が、学園都市最強の超能力者……!)

放っておけば手が勝手に震えそうになるのを、両の拳を力強く握る事で無理矢理押さえ込む。
暫しの間こちらを睨み付けていた少女だったが、そんな上条の様子が面白いのか不敵に口角を吊り上げた。

「……へェ。オマエ、面白ェな」

無謀な挑戦に臨む人間を茶化すような、見下すような態度で。

「何しにここに来たのかは知らねェけどさァ、早急に消えたほうが身の為だぜ?ここはオマエみたいな一般人の立ち入る隙はねェンだよ。わかったらとっとと―――」

「ごちゃごちゃうるせえんだよ!御坂妹から離れろっつってんだろ、三下!!」

ニヤニヤと笑う一方通行の言葉を遮り、上条の怒号が響き渡る。
一方通行は相手の言葉の意味が理解できないといったような表情で上条の顔を見た。

「……オマエ、何言ってやがンだ?学園都市に七人しかいねェレベル5。その頂点に立つこの俺に向かって、三下?無知なのも大概にしねェと罪だぜ?」

一方通行はあくまで冷静に、聞き分けのない子供を諭すように言った。

そして、

「っつーかよォ、ミサカってのは確かコイツらの大元になった女の名前だよなァ。ってェ事はアレか、オマエは身内の女助けるために身の程も弁えず登場しちまったヒーローみてェなモンか。くく、だったら俺は悪の親玉ってトコかァ?ほンっと面白ェな」

まるで愉快なサプライズを楽しむかのように、一方通行は笑う。
70 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/11/22(木) 22:19:03.34 ID:FTtdX1vT0
「……あなたは何をしているのですか、とミサカは問いかけます」

まさに一方通行の餌食となる寸前だった御坂妹は、上条の姿を見て唖然とした声で呟く。

「あなたでは彼女に勝つ事はできません。なのに何故わざわざ喧嘩を売るような行動を取るのですか、とミサカは再度問いかけます」

御坂妹にとっても予想外の事態が、彼女の顔を驚きの色に染めていく。

「ミサカは実験プランに従って彼女の相手を務めていただけです。あなたが危険を犯してまで出てくる必要はありません、とミサカは―――」

「うるせえよ」

上条はそんな御坂妹の言葉を遮った。

「お前が創り出されたクローンだとか、代わりはいくらでもいるだとか、そんな事どうだっていい」

まるで物語に登場するヒーローが、絶体絶命のピンチを迎えたヒロインを前にした時のように、上条は叫ぶ。

「俺は“お前”を助けに来たんだ!クローンだろうが何だろうが、“お前”は世界に一人しかいねえだろうが!」
71 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/22(木) 22:22:29.45 ID:6CMV5sRDO
2万人全員生きてる時点で、シリアスな展開が思い浮かばない
72 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/11/22(木) 22:25:55.60 ID:FTtdX1vT0
ぱちぱちぱち、と拍手の音が聞こえた。
見れば一方通行が両手を鳴らし、上条を揶揄するかのように笑っている。

「御高説どォもアリガトウ。カッコイイなァオマエ。思わず惚れちまいそうだわ」

年端もいかない少女に心底馬鹿にしたような態度を取られるが、上条にはそんな事は気にしていられるほどの余裕はない。

「オマエ、ほんとカッコイイよ。俺を学園都市最強と知った上で挑んでくるなンてさァ。身の程知らずもここまでくると表彰モンかもしれねェなァ?」

学園都市最強。
それは能力だけに留まらず、学園都市の人口230万人の中で最高の頭脳をも持つということだ。
そんな相手からしてみれば、上条のような一介の高校生など掃き捨てるほどいる有象無象の一人に過ぎない。

強者の余裕。
七人しかいない超能力者(レベル5)の第一位の手にかかれば、無能力者(レベル0)である上条がどれほど死力を尽くそうと、簡単に捻じ伏せられてしまうだろう。

だが、一方通行は知らない。

無能力者であるはずの上条当麻の右手には、神の奇跡すら打ち消す『幻想殺し(イマジンブレイカー)』が宿っていることを。
73 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/11/22(木) 22:27:50.84 ID:Q120TXvT0
ふと思った
この流れだと木原くんもロリコンに…
74 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/22(木) 22:32:05.64 ID:5Rvdx61t0
これはむしろパパ条フラグ?
パパ条さん大好物です
75 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/11/22(木) 22:35:45.16 ID:FTtdX1vT0
(相手の能力がわからない以上、闇雲に突っ込んでもやられるだけだ)

上条は戦闘のプロではない。
仮に能力なしの喧嘩だとしても、一対一なら勝てるが一対二なら危うく、一対三なら迷わず逃げる程度の、人より多少喧嘩慣れしているといった程度の腕しかないのである。

そんな上条が学園都市最強の超能力者に真っ向から挑んだところで、勝算は絶望的だろう。

しかし。

(あいつは俺をただの無能力者だと思って油断してる。だったら)

両手を構え、戦闘態勢に移った上条を見ても、一方通行は尚も変わらずニヤニヤと笑っていた。
両手はだらりと垂れ下がったまま、構える素振りすら見せない。
まるで倒せるものなら倒してみろとでも言うかのように。

一方通行とて伊達に学園都市最強を名乗っているわけではない。
上条がどんな攻撃を繰り出そうと、それを無効化した上で瞬殺できる確固たる自信があるのだろう。

強者の余裕。

だが、その余裕にこそ付け入る隙がある。

(相手が俺を見下してるうちに。全力を出す前に、勝負を付ける―――!!)

右の拳を硬く握り締め、最強の能力者目掛けて全力で駆け出す。

無能力者の拳が、超能力者の顔面を捉える―――



―――かに見えた瞬間、上条の拳が空を切った。
76 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/11/22(木) 22:40:18.79 ID:FTtdX1vT0
「なっ―――!?」

驚いたのは上条だ。
上条の攻撃に対し避ける素振りすら見せなかった一方通行が、まるで地面に対して水平にスライドするように後方へと移動したのだ。

「驚くこたァねェだろ?爪先で地面を押す、その僅かな運動量のベクトルを“変えて”やれば、馬鹿みてェに足を動かさなくても移動くらいできンだよ」

全力で振るった拳を躱され、上条が前のめりにバランスを崩す。
上条としては相手が油断している間に先制攻撃をくらわせ、少しでも戦いを有利に運ぶつもりだったのだが、その突撃がかえって上条を窮地に立たせた。

「そォら、今度はこっちの番だァ!」

お返しとばかりに、一方通行の左腕が上条へと伸びる。
前方にバランスを崩した隙を狙い、直接上条の顔面を掴むように。

「こ……のっ!!」

上条は体勢を立て直す事を諦め、あえてそのまま倒れ込む事によって一方通行の魔手から逃れた。
倒れた上条の頭上すれすれを一方通行の細い腕が通り過ぎる。

「っらあああああ!」

逆に一方通行の懐へ飛び込む形となった上条は、肘から先の力だけで半身を起こし、クラウチングスタートのような前傾姿勢を取った。
そのまま両足で踏ん張り、前方目掛けてアッパーカットのように右腕を突き上げるようとする。

が、

「遅っせェ!そンなモン能力を使うまでもねェよ!」

先程のベクトル操作による水平移動は使わず、一方通行は自分の足を使って一歩後ろへ下がる。
それだけで上条のアッパーカットは狙いを逸れ、一方通行の顔面すれすれを通り過ぎる“はずだった”。


―――次の瞬間、一方通行の視界が白一色に埋め尽くされた。
77 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/11/22(木) 22:46:50.11 ID:FTtdX1vT0
―――話は唐突に変わるが、上条当麻は不幸な人間である。

一口に“不幸”といってもランクは小から大まであり、日常におけるちょっとした出来事を不幸と感じる者もあれば、それこそ人生を破綻させるほどの悲劇に見舞われる“不幸な人間”も世の中にはいるだろう。
とはいえ、そんな大きな“不幸”に見舞われる者などそうそういない。
テレビのドキュメンタリー番組ならともかく、大抵の人にとって“不幸”とは、ほとんどが前者のような些細な不運のことを指すだろう。

だが、上条当麻の場合は少し事情が異なっていた。

現金が一円もないというのにキャッシュカードを踏み壊す。
原因不明の停電によって冷蔵庫の中身が全滅。
授業をサボって保健室に行けばベッドでバカップルが発情中、逆上した男にぶん殴られ。
道を歩けば棒に当たるどころか居眠り運転に轢かれそうになり。

果ては、原因不明の記憶喪失まで。

小さなものから大きなものまで、それぞれ程度は異なれど“不幸”は何故か上条一人に集中して降りかかるのだ。
目が覚めた二週間前より昔の記憶を失っている上条であったが、記憶がなくても不幸体質は変わらなかった。
78 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/11/22(木) 22:51:21.05 ID:FTtdX1vT0
「ちょ―――」

「は―――?」

繰り返そう。上条当麻は不幸な人間である。
小さなものから大きなものまで、上条の日常生活は様々な“不幸”に溢れ返っているのだ。

「ミ、ミサカは目の前の光景が信じられずに自分の目を疑います。一体何が起こったのですか、とミサカは驚きつつも眼前の光景をネットワークに流し続けます」

呆気に取られた様子で沈黙する二名を差し置いて、傍で見ていた御坂妹が彼女らしくもなく興奮した口調で独り言を言う。
今まさに攻撃を繰り出していたはずの上条は、ポカンとした表情で口が半開きになっていた。

(いやいやちょっと待て。ここはシリアスな場面だと上条さんは思うのですよ。御坂妹を助けるために学園都市最強に挑んでる真っ最中だなんて、こんなシリアスな場面に決してギャグ要素などないはず―――!)

さっきまでの緊張感はどこへやら、上条の脳内は絶賛混乱中である。
視線は目の前の少女に釘付けになっている。

上条が放つアッパーカットを、一方通行がぎりぎりで躱すようにその身体を一歩後ろへずらした―――

と、その時。

“ここに来る前に負っていたダメージ”が尾を引いていた上条の、踏ん張っていた両足の力が少し緩んだ。
少女の顎先目掛けてアッパーカットを放った、まさにその瞬間に。

結果、上条は再び前方向へとつんのめり。
上条の狙いよりも前方へずれた拳は、“少女のワンピースの裾を引っ掛けたまま”上方へと突き上げられた。

次の瞬間、一方通行の視界が白一色に埋め尽くされた。
自らの着ているワンピース、その白い生地で。
79 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/22(木) 22:52:57.44 ID:5Rvdx61t0
まさかのスカートめくりww
80 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/11/22(木) 22:56:21.16 ID:BB/hDZz9o
クソワロタwwwwww
81 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/11/22(木) 22:58:03.96 ID:FTtdX1vT0
「ミ、ミサ、ミサカカカカはネットワークを介して他個体かかから雪崩れこここここんででくる莫大な情報量に処理が追いつk――――――」

何やらブツブツ言いながらフリーズしてしまった御坂妹。
そんな御坂妹の言葉すら、上条の耳には入ってこなかった。

少女の足元にしゃがみ込んでいた上条の視線が、無意識に上へと向かう。
ほっそりとした足。陶器のような白い肌には一点の汚れもない。
太腿の付け根には、肌の色と同じく純白の下着が姿を見せる。

そして。
上条の視線が更に上へと向かった先には。

雪原のように滑らかな白の中に、小さいながらも自己主張する薄桃色の突起が―――


「―――ッ!!舐めた真似してンじゃねェぞォォォォッ!!三下がァァァァァァァ!!!!」


直後。
正気を取り戻した一方通行が怒りに任せて大地を踏み、上条は大量の砂利と共に5mも吹き飛ばされた。
82 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/11/22(木) 23:03:47.74 ID:FTtdX1vT0
「ぐ、がぁ……。い、今のは上条さんだってわざとやったわけじゃ……」

積み上げられていたコンテナに背中から衝突し、肺の中の空気を奪われながらも一応弁解する上条。
『全力でアッパーカットしたつもりが全力で服を脱がしにかかってた』なんて、傍から見れば変態そのものだ。

しかし、そんな上条目掛けて一方通行が弾丸のような速度で突っ込んでくる。
一方通行の履いている子供用のサンダル。その足裏が上条の目に映る。

(飛び蹴りだと―――!?)

ただの子供の蹴りと侮ることなかれ。
いかに体格の小さな子供であれ、全体重を乗せた飛び蹴りは大の大人が受けても痛いものだ。

ましてやそれが、自身の運動量のベクトルを自在に操れる一方通行の蹴りとなれば、どれほどの威力があるかなど想像もつかない。

「うっ、おぉぉぉぉ!?」

上条は全身の力を振り絞り、必死の思いで身体を横へと逃がす。
ズガン!という轟音と共に、さっきまで上条の頭があった位置に大きな穴が空いた。
上条の全身に冷たい汗が流れていく。

(じょ、冗談じゃねぇ!あんな蹴りまともに食らったら潰れたトマトみたいになっちまう!)

しつこいようだがもう一度言おう。上条当麻は不幸な人間である。
『反射』によって“どんなに強風が吹こうと微動だにしない”ワンピースの裾を“不幸にも”めくってしまい、相手の逆鱗に触れてしまった。

「[ピーーー]!コロスコロスコロスコロスコロスコロスコロス―――!!!」

我を忘れた最強の怪物によって、上条当麻は蹂躙され続ける。
83 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/22(木) 23:08:25.81 ID:rWOkJnsDO
さすがは上条さんや!ワイらにやれないことを平然とやってのける!そこに痺れる憧れるゥゥゥ!!
84 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/11/22(木) 23:12:39.04 ID:FTtdX1vT0
――――――――――――――――――

(ミサカネットワーク、障害から復旧を確認。原因となったミサカ10032号の現在位置を検索―――成功。これより行動を開始します、とミサカ10039号は報告します)

(了解。ミサカも直ちに現場へ急行します、とミサカ13577号は応答しつつ自らも行動開始します)

(ミ、ミサカは遠慮しておきます、とミサカ19090号は―――ひゃうっ!?)

(いいから来いよ、とミサカ9982号はカマトトぶる19090号の首根っこをひっ掴み現場へと連行します)

(ミ、ミサカはカマトトぶってなどいません、とミサカ19090号は反論しながら解放を求めま―――きゅぅ)

(19090号、一体どうしたのですか?とミサカ10039号は問いかけます)

(もしや交通事故にでも遭ったのですか、とミサカ13577号は心配しつつ尋ねます)

(問題ありません、とミサカは応答します。19090号が抵抗したため能力を使って大人しくさせました、とミサカ9982号は現状報告します)

(心配して損しました、とミサカ10039号は冷たく言い放ちます)

(まあまあ、事故でなくてよかったではありませんか、とミサカ13577号は10039号を窘めます)

(失礼しました、とミサカは謝罪します。これより19090号と共に現場へ向かいます、とミサカ9982号は19090号を引き摺りながら移動を開始します)

(ミ……ミサカは本当に出歯亀の趣味は……。誰か助けてください、とミサカ19090号は他個体へ救援を求めます……)

――――――――――――――――――
85 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/11/22(木) 23:20:58.96 ID:FTtdX1vT0
――――――――――――――――――

「クッソが!ちょこまか逃げ回ってねェで潰れろっつってンだよ三下がァ!!」

「く、この……っ!」

「ちまちまちまちま逃げやがって、オマエはメタルスライムかっつうの!クリーンヒットくれてやるからいい加減大人しくしやがれってンだよ!!」

「無茶言うんじゃねぇ!!」

第十七学区、無人の操車場。
御坂妹を助けるために実験に乱入した上条だったが、学園都市最強の超能力者を本気にさせてしまい、なすがままに蹂躙されていた。

時折背後から飛んでくる石や金属片を避けながら、必死に逃げ続ける上条。
それを鬼のような形相で追撃する一方通行の頭からは、もはや手加減などという言葉は消え失せていた。

「無様にチキンプレイに走りやがって、最初の威勢はどうしたよォ!!そンなに逃げたきゃ手伝ってやろうかァ!?」

直後、強烈な追い風が上条を襲う。
全力疾走中の背中を後ろから思い切り押された上条は、風の勢いに呑まれて前方へと吹き飛ばされた。

「ひゃはは!何だ何だよ何ですかァそのザマは!愉快にケツ振って誘ってやがンのかァ!?生憎俺には突っ込ンでやるための棒は付いてねェけどなァ!これでもぶち込ンで満足してやがれ!!」

とても小学生の女の子から発せられているとは思えない下品な言葉が響くや否や、ヒュン、という風切り音が聞こえた。
前に飛び込むような形で吹き飛ばされた上条のすぐ背後に、鋼鉄のレールが何本も突き刺さる。

肝を冷やしながら地面に倒れ込んだ上条だったが、不意に目の前の地面が影で覆われた。
上条が頭上を見上げると、そこには宙に浮きながら巨大なコンテナを片手で軽々と持ち上げている一方通行の姿があった。
その背中には、巨大な竜巻のようなものが4つも接続されている。

「お次はコイツだァ!鞄に入れっ放しのサンドイッチみてェにしてやるよ!!」

怒号と共に、コンテナが上条目掛けて放り投げられた。
86 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/11/22(木) 23:25:20.42 ID:FTtdX1vT0
「う、おおおおおおおお―――――ッ!?」

咆哮を上げ、全身の力を振り絞って地面を転がる上条。
土まみれになにながらも何とか避けると、バガァン!という轟音と共にコンテナが破裂し、その中身が撒き散らされる。

コンテナの中身は、小麦粉の山だった。
高く積み上げられたコンテナに囲まれた空間を、白い粉末が霧のように覆う。

「……やっべェな。自分でやっといて言うのもなンだが、コイツはちっとばかし洒落にならねェ状況なンじゃねェの?」

一方通行は上条から5mほど離れた位置に降り立つと、この状況に思うところがあるのか、いくらか落ち着きを取り戻した様子で呟いた。

「何を……?」

「オマエも仮にも学生だろォが。粉塵爆発って言葉ぐれェ聞いた事あンだろ?」

「なッ!?」

急に大人しくなった一方通行を訝しげな目で見ていた上条だったが、一方通行が口にした物騒な単語にギクリと身を強張らせた。

粉塵爆発。
粉塵は非常に細かく、体積に対する表面積の占める割合がかなり大きいだけでなく、空気中に飛散すると周りに十分な酸素が存在することになる。
そのため、可燃性の粉が一定の濃度で漂っている環境でこれに火が付くと、周囲の粉塵と酸素を取り込みながら連鎖的に着火・ 燃焼していくという現象である。

炭鉱で採掘された石炭の微粉末によって起こる炭塵爆発がその代表例であるが、他にも小麦粉や砂糖、 コーンスターチの様な食品やアルミニウム粉末のような金属粉でも爆発を起こすことがあり、
この爆発によって穀物サイロや工場などの建造物が破壊または炎上する事故が起こるのである。

粉塵爆発は浮翌遊する粉塵の粒子間距離が開きすぎていると燃焼が伝播しないため、換気などで空気中に漂っている小麦粉を除去できればいいのだが、生憎と今夜は風がない。
そして今上条がいる空間は、高く積み上げられたコンテナに囲まれている。

つまり。

(ま、ずい。爆発する―――!?)

一方通行がその辺の金属片をコンテナに向かって勢いよく投げ付けでもすれば、金属物同士の衝突によって発生した火花により、辺り一体が巨大な爆弾と化してしまうのだ。
87 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/11/22(木) 23:28:28.57 ID:FTtdX1vT0
(逃げるか?いや、駄目だ……!)

すぐにでもこの場から離れたい衝動に駆られる上条だったが、すんでの所で思い留まる。
粉塵の届かない場所まで退避するという事はつまり、ほんの数m先にいる一方通行に背を向けなければならないという事だ。

運動量のベクトルを自在に操れる一方通行にとって、逃げる上条を追撃する事など造作もないだろう。下手に背中を見せるわけにはいかない。
かといって、この場に留まり続ければ粉塵爆発の餌食となる。

(くそっ、どうする!どうすればこの状況を挽回できる!?)

普通の人間であれば、自身も巻き込まれ兼ねない状況でわざわざ粉塵爆発を引き起こすような真似はしないだろう。
今は確かに戦いの最中ではあるが、それで自分が命を落としたら元も子もないからだ。

だが、目の前の相手は学園都市最強の超能力者。
上条の持つ一般常識などまるで通用しない相手なのだ。

(いっそ思い切って飛び込むか?……いや、それも駄目だ。あいつは“戦い慣れてる”。闇雲に突っ込んでいったところで勝てる相手じゃねえ……!)

あらゆる相手を一撃で倒し、どんな攻撃も『反射』してしまう超能力者。
“そんな強大な能力を持つ者が、喧嘩のやり方なんて知ってるはずがない”。
もしそんな“幸運”が本当にあれば、どれほどよかったか。
88 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/11/22(木) 23:35:14.53 ID:FTtdX1vT0
(最初の時、あいつは完全に油断していたはずだ)

戦闘開始の合図となった上条の先制攻撃。
一方通行は爪先で地面を押す僅かなベクトルを操作する事により、上条の一撃から難なく逃れた。

(だが、あいつは俺の攻撃をあっさり避けたどころか、俺が一番反応しにくい顔を狙って反撃してきた)

予想外の動きに翻弄されてバランスを崩した上条の、がら空きになった顔面を狙ってその魔手を伸ばしてきた。

(その次もだ。どこまで下がれば俺の攻撃が無効になるのか、あいつは的確に読んでいた)

何とか一方通行の攻撃を躱し、前のめりになりながらも繰り出したアッパーカット。
実際には予想外の“不幸”によって失敗に終わった攻撃だが、あの時、一方通行は明らかに上条の拳がぎりぎり当たらない範囲まで下がっていた。

上条の攻撃を的確に躱し、絶妙なタイミングでカウンターを狙う。
高校生である上条を相手にしてもまったく遅れを取らない。どころか逆に上条を翻弄し、手玉に取る。
とてもではないが、彼女と同年代の子供相手の喧嘩で身につく技術とは思えない。

(つまりこいつは自分より背丈のある相手との、それも接近戦での戦いに慣れてる―――!)

相手は身体強化系の能力者か、はたまた武装無能力集団(スキルアウト)か。
上条には知る由もないが、相手は単純な能力の強さだけでなく、喧嘩の心得もあるらしい。

上条は改めて、学園都市最強の超能力者の恐ろしさを実感していた。
89 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/11/22(木) 23:49:59.87 ID:FTtdX1vT0
「………」

しかし。

慎重に身構える上条に対し、一方通行は一向に攻撃を仕掛けてくる気配がない。
先程と同じ位置取りのまま、何かを待っているかのように立ち尽くしていた。

(何だ、次は何をするつもりなんだ―――?)

訝しむ上条だったが、

「なーにボサっと突っ立ってンだよ。俺の話、聞いてなかったンですかァ?」

「へ?」

「粉塵爆発の危険があるっつったろォが。なンでさっさと逃げ出さねェンだよ。オマエ、見たところ何の能力も持ってねェようだが、ひょっとして爆発食らって感じちゃうドMクンだったりするワケ?」

そんな上条の予想に反し、一方通行は呆れたような顔で言った。
上条だって離れられるものならとっくに離れて、爆発の及ばない位置まで移動したかった。
しかし、それだと背を向けた瞬間一方通行に狙い撃ちされるのが目に見えているめ、次の一手を決めあぐねていたのだが。

「おいおい勘弁してくれよ。俺にはオマエの被虐趣味に付き合ってやる義理はねェンだよ。そンなに死にたきゃどこか別の場所で勝手に[ピーーー]ってェの」

そんな上条の気も知らずに、一方通行は尚も呆れた顔で上条を見ている。
好き放題に言われるがままの上条だったが、それに言い返すほどの余裕もない。

と、上条の顔から心情を読み取ったのか、

「何だ何だよ何ですかァ?ひょっとしてオマエ、逃げ出した途端に俺が攻撃するンじゃないかとか思って警戒しちゃってる?駄目だなァ、全っ然駄目だ。そンな事だからオマエは三下なンだっつーの」

まるで上条の心の内を見透かしているかのように、それでいて尚且つ余裕を見せ付けるように一方通行は言う。

「この状況見てわっかンねェかなァ?俺がちっとばかし火花でも起こしてやれば、その瞬間ここら一帯は大爆発。もちろん俺は『反射』があるから傷一つ付かねェ。どういう事だかわかンねェのか?」

「………」

「終いだ。今日のところは見逃してやるっつってンだよ。オマエがあまりにもビビリなンで興醒めしちまった、逃げたきゃ逃げるンだな。もちろん背後から攻撃したりなンかしねェからよォ」

興味を失った玩具を見るような、どこか哀れむような目で上条を見る一方通行。
上条にとっては願ってもないチャンスと言ってもいい、この状況から生き延びるための選択肢を、白い少女は提示する。

しかし、それは同時に『御坂妹を見捨ててこの場から逃げ出す』ことを意味している。

「命拾いしたな、三下。ここまでやってよォくわかっただろ?オマエじゃ俺には届かねェ。死に物狂いで努力しようが、玉砕覚悟で特攻しようが、俺の『反射』はオマエには貫けねェ。俺に喧嘩売った事は大目に見てやるから、理解したならとっとと失せやがれ」

散々な言われようだが、その殆どが事実である。
年端もいかない少女にここまで言われれば、普通の男子高校生ならプライドはズタズタだろう。

―――だが。

「―――命拾い、だと?ふざけんじゃねえ―――」

上条当麻には、どうしても退けない理由があった。
90 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/11/22(木) 23:56:14.43 ID:FTtdX1vT0
「お前が今まであいつらにしてきた事―――忘れたとは言わせねぇぞ」

絶対能力進化実験。
前人未到の絶対能力者(レベル6)へと到達するため、二万人もの命を実験動物として扱う、人間の尊厳をことごとく踏み躙るかのような悪夢の実験。

そんな非人道的な実験を止めるため、上条はここまで来たのだ。

「二万人もの命をテメエらの勝手な都合で弄んで。御坂が―――まだ高校生にもなってない女の子が、死を覚悟しなきゃならないくらい追い詰めて」

自分一人が[ピーーー]ば彼女達は助かると、御坂美琴は言った。
そのために、絶対に勝てないとわかっている相手にたった一人で立ち向かおうとしていた。
誰に相談する事も、助けを求める事もできずに。

「そうやって他人を踏み躙って手に入れた能力に、何の価値があるってんだよ!!」

絶望的な状況に及び腰になっていた自身に渇を入れるように叫んだ上条は、両の拳を握り直す。
粉塵爆発“如き”に怯んでいるようでは、御坂姉妹は救えないのだから。
91 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/11/22(木) 23:59:13.71 ID:svSF/xTf0
幼女に向かって叫ぶ言葉じゃねぇw
92 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/11/23(金) 00:00:04.16 ID:cEz7UzVL0
書き溜めてた分が終わったので今日はここまで。
上条さんってこんなにクサい人でしたっけ…と我ながら思った。

なんか実験編ばっかりだらだら続いてごめん、思ったより話が進まなくて。
もう少しだけお付き合いください…!
93 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/23(金) 00:01:53.81 ID:Z3G6WofSO
94 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/23(金) 00:04:47.99 ID:IKkUH6Sg0
乙です
95 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/11/23(金) 00:04:57.23 ID:cEz7UzVL0
>>91
そういえば幼女通行のほうが御坂より年下なんだった…!
どうも自分の中では原作まんまの一方さんフェイスで小萌先生みたいな服着てるイメージになっちゃって、
幼女を相手にしてるっていうのを忘れそうになるのです…。
96 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/11/23(金) 00:09:00.20 ID:HFYAo69e0


スカートをめくり興奮した口調で
かたる上条さん

とりあえずよみかわさんよぶべ
97 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/11/23(金) 03:34:39.83 ID:RarbwO7so
作者が混乱してどうするんだww乙
幼女のワンピースめくり上げるとかサイズ的に付けてないだろうし色々見えちゃう!上条さんの変態!鬼畜!ww
98 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/23(金) 15:54:01.61 ID:+NiEk/dIO
これってオリジナルとクズ条が勘違いしてるってことでおk?
99 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/23(金) 16:04:22.29 ID:2YUw4V0PP
現状殺してんのか殺してないのかわからんぞ
過去の個体は9982しか出てきてないし遊びとか言ってる一方でトイソルジャーはマジモンだし重症は与えてる
実験が遊びに変わったとかいうのが盛大なネタバレポイントなんだろう
100 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/11/23(金) 17:06:47.39 ID:EtR+3Deao
ボコボコにしてる時点で説教だろ
101 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/23(金) 21:55:46.58 ID:fCA/5cDDO
>>99
二万人に配信してる件について
102 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/23(金) 22:40:40.75 ID:2YUw4V0PP
>>101
れ、冷蔵庫の中に脳が入ってる可能性を考慮したんだよ!
103 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/23(金) 23:06:41.10 ID:FOQ/gp4s0
幼女通行の携帯電話に何のファイルが入っていたのか気になってしょうがない。
104 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/11/23(金) 23:08:00.23 ID:RarbwO7so
色々伏線張ってるよね
天国への日帰り旅行とか二万人配信とか
105 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/23(金) 23:52:46.45 ID:fCA/5cDDO
>>103
アへ顔ダブルピースじゃね?
106 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/11/24(土) 00:25:05.37 ID:Stq01xFxo
ベクトル有情破顔拳という謎の必殺奥義が脳裏を掠めた
107 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/11/24(土) 13:10:26.72 ID:tGVg/Qtd0
――――――――――――――――――

御坂美琴が操車場へと辿り着いた時、そこにツンツン頭の男子高校生の姿はなかった。
所々レールが破壊されていたりと戦闘の跡があり、それは操車場の奥へと続いているようだ。

そして、美琴の視線の少し先、地面に亀裂が走っているあたりに自分とまったく同じ容姿の少女が倒れていた。
今回の実験ターゲット、検体番号10032号――――あの少年には御坂妹と呼ばれていた少女である。

そんな御坂妹は、倒れた体勢のまま何事かを呟いていた。

「―――ミサカネットワークの復旧を確認、キャパシティオーバーによる処理落ちは正常に回復しました、とミサカは自己確認します。各個体の現在位置情報を参照―――」

「ちょっとアンタ、無事なの!?」

「お姉様?何故ここにいるのですか?とミサカは予想外の邂逅に驚きながらも問いかけます」

暫くの間ボソボソと独り言を続けていた御坂妹だったが、美琴の姿を見て驚いたような様子で尋ねた。
この場にオリジナルである美琴が登場する事は、彼女にとっても予想外だったのだろう。

「アンタが今回の実験ターゲットだって事くらい、こっちだってわかってたのよ!だからアイツだって――――そうだ、アイツは!?アイツはどこ行ったの!?一方通行は!?」

「ミサカもこれから向かうところです、とミサカは―――お、お姉様、少し落ち着いてください」

御坂妹の問いかけに一言で返し、矢継ぎ早に質問を浴びせる美琴。
両肩を掴んでガクガク揺さぶってくる美琴に、御坂妹はたまらないといった様子で落ち着くよう促す。

「あの少年は奥へ行きました、とミサカは報告します。丁度よかった、お姉様も協力してください、とミサカは同行を求めます」

「やっぱりアイツは一人で戦ってるのね……。で、協力っていうのは?」

「はい、ミサカだけではあの二人を止める事は出来ませんので、とミサカは―――」

「ちょっと待って」

御坂妹の言葉を美琴が遮った。
何やら協力して欲しい事があるという御坂妹だが、その内容が聞き捨てならなかったのだ。

「アンタ今、あの二人を止めるって言ったわよね?私の聞き間違いじゃなく?」

「はい、ミサカはそう言いました、とミサカは肯定します」

「……どういうつもり?」

美琴の声が、低く、重いものへと変わる。
108 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/11/24(土) 13:11:35.91 ID:tGVg/Qtd0
「ですから今行われている戦闘を止めるためです、とミサカは再度説明します」

「止めるって……アイツはアンタのために戦ってるのよ!?それを―――」

「この戦闘行為は有益ではありません、とミサカはばっさり切り捨てます」

「アンタはッ!この期に及んで計画外戦闘は禁止とか、そんなつまらない冗談言うつもりなわけ!?」

あくまで無表情に告げる御坂妹に対し、ついに激昂した美琴。
御坂妹の襟首を掴み、引き寄せる。御坂妹はそれでも尚表情を崩さなかった。

以前、独力で計画を止めようと奔走してた頃。
実験現場に居合わせ、目の前でクローンの少女が“動かなく”なった瞬間を目撃した美琴は、怒りに任せて白い怪物へと挑みかかった事があった。

持てる力の全てを駆使して戦った美琴だったが、結果は惨敗。
切り札であるレールガンすら『反射』され、白い怪物に対し成す術もなく敗北する寸前だった。
そこに、計画外戦闘を中断させるべく他の『妹達』が現れたのだ。

「アンタは私にまた―――またあんな思いをしろって言うの!?」

確実に殺されるとわかっていても、計画に従い続けたクローンの少女達。
美琴は彼女達が殺されるのを黙って見ているしかなかった。

「もう嫌なのよ!私の目の前で誰かが殺されるなんて、それを黙って見ているなんて、そんなの―――!」

「失礼ですがお姉様、何か誤解なさっていませんか、とミサカは互いの認識に齟齬がある可能性を疑います」

「そんなのは―――って、へ?誤解?」

心中を吐露する美琴に対し、返ってきたのは予想外の言葉だった。
御坂妹の思わぬ反応に呆気に取られた美琴の、襟首を掴んでいた手の力が緩んだ。
109 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/11/24(土) 13:13:46.75 ID:tGVg/Qtd0
「え、ちょっと待って。誤解?私が?何に対して?」

「“ミサカ達が殺される”という部分に対してです、とミサカは指摘します」

「え、え?だ、だってアンタ、実験を続けるために殺されに行くつもりなんじゃ―――」

「ミサカは何も殺されに行くわけではありません、むしろミサカはお姉様の誤解に驚きました、とミサカは説明しつつ驚きを表します。そもそもこの実験は死傷者を出すようなものではありません、とミサカは補足説明します」

「はい―――?」

御坂妹の言葉に、美琴の思考回路がフリーズする。

この実験は死傷者を出すようなものではない、と御坂妹は言った。
ならば、今まで美琴が見てきたものは。
逃げ回る少女を、狂笑と共に追撃する白い怪物の姿は。
美琴の目の前で“動かなく”なった少女は。

あれらは一体、何だったというのか。

「ちょっと待ってよ……。私は絶対能力進化実験の計画書を読んだけど、あれには確かに二万人を殺害するって……」

自身の認識を一言で覆され、間の抜けたような声で呟く美琴。
そんな彼女に、

「それはミサカが説明します、とミサカは会話に割り込みます」

いつの間に会話を聞いていたのか、美琴の背後から少女の声が投げかけられた。
この場に自分以外の人間がいた事に驚いた美琴が振り返ると、そこにいたのは御坂妹と―――ひいては自身とまったく同じ容姿の少女。

肩口で切り揃えられた茶色い髪に、化粧はいらない程度に整った顔立ち。
スカート丈は膝よりも上。上半身には白いブラウスの上からサマーセーターを着込んでいる。
これは能力開発の名門校である常盤台中学の夏物の制服であり、美琴の現在の服装とも合致している。

だが、目の前の少女には美琴とも御坂妹とも違う所が一つだけあった。

それは、サマーセーターの脇に付けられたカエルの缶バッジ。
それは以前、美琴が初めて出会ったクローンの少女に付けてあげた物である。

目の前の少女がそれを持っているという事は。

この少女は。

「ア、アンタ、まさか―――」

「お久しぶりですお姉様、とミサカ9982号は再会の言葉を投げかけます」

検体番号9982号。

あの日、美琴の目の前で“動かなく”なったはずの少女が、そこにいた。
110 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/11/24(土) 13:17:29.62 ID:tGVg/Qtd0
×脇に

○端のほうに

脇にバッジつけてどうする……
111 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/24(土) 13:18:45.25 ID:nqtZqu9D0
脇わろたww
112 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/24(土) 13:19:44.02 ID:+vUVmOrSO
むしろ脇のがいいだろうが!訂正いらんだらうがぁあ
113 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/11/24(土) 13:19:45.59 ID:tGVg/Qtd0
――――――――――――――――――

少女が目を覚ますと、まず最初に白い天井が目に入った。
最後に見たのはビルの隙間から見える夕空だったため、意識を失っている間に別の場所まで運ばれたのだろう。

暫し身動ぎして身体の調子を確かめると、少女は一気に半身を起こした。
未だふわふわするような感覚が身体中に残っているものの、身体を問題なく動かせる程度には回復したようだ。

周りを見回す。

全体的に白を基調とした、少女にとっても見慣れた部屋である。
それは少女が日頃から何かとお世話になっている第七学区の病院、その個室の風景だった。

「あら、目が覚めたのね。気分はどうかしら」

不意に、誰かから声をかけられた。
見ると入口の脇にある面会者用の椅子に、一人の女性が腰掛けていた。

色の抜けたジーンズに、擦り切れたTシャツ。その上から白衣を羽織った姿の女性だった。
全体的に着古した感じのする服装だが、羽織っている白衣だけが新品のように輝いており、それが妙にちぐはぐな印象を与えている。

芳川桔梗。
遺伝子方面を専門とする研究者であり、その腕を買われて絶対能力進化実験への参加要請が来るほどの一流科学者である。

「身体面は問題ありません、とミサカは報告します。現在の時刻は何時ですか、とミサカは問いかけます」

「今日は八月二十一日。時刻は午後九時半ってところかしら。あなたが運ばれてきたのが六時半だったから、三時間ほど眠っていた事になるわね。長いお昼寝は気持ちよかったかしら?」

「現在時刻を確認。ミサカネットワークへの再接続を開始します―――」

少女が問うと、芳川はクスリと笑いながら答える。
彼女にとって例の“報復”によって気を失った少女が運び込まれてくる光景は、既に日常の一部と化していた。

「そろそろ今回の実験も終わる頃でしょうし、あなたが目を覚ました事をあの子にも知らせておかないとね」

そう言って芳川はジーンズのポケットから携帯電話を取り出し、

「一応確認しておくけど、あなたは10031号さんで間違いないのよね?」

「はい、ミサカの検体番号は10031号です、とミサカは肯定します」

「了解よ」

少女―――10031号の検体番号を確認した芳川は、暫くの間しきりに親指を動かした後、携帯電話をポケットにしまいこんだ。
どうやら誰かに送るためのメールを打ち込んでいたようだ。

「………」

「送信完了。さてと、後は10032号さんを回収するための班を―――あら?」
114 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/11/24(土) 13:21:15.98 ID:tGVg/Qtd0
と、今後のスケジュールを確認しようとした芳川だったが、不意に言葉を止めてベッドを見やった。
何やらベッドにいる少女の様子がおかしい事に気が付いたのだ。

「10031号さん?どうしたの?」

「………像データ………ミサ……号は興………に…が流………」

芳川の問いかけに、少女は応えない。
鼻と口を手で覆うようにして隠し、芳川に聞き取れない程の小さな声で何事かを呟いていた。

怪訝そうな顔をした芳川が少女の傍に近寄り、内容を聞き取ろうとする。
と、自らの顔を少女に近付けた芳川は、

「―――ッ!?」

少女の鼻と口を隠している手、その指の隙間から、白い手を汚していくように赤い液体が溢れ出してくるのを見てしまった。

「10031号さん!?一体どうしたの!?」

「のんびりしている場合ではありません、とミサカはすぐさま行動開始します」

「ちょ、ちょっと、どこに行くつもりなの!?すぐに先生を呼んでくるから大人しく寝てなさい!」

驚く芳川を余所目に、ベッドから抜け出そうとする少女。
赤い液体が制服のブラウスを汚すのにも構わずどこかへ行こうとする少女を、芳川が慌ててベッドに押さえつける。

「ミサカはあの映像の真偽を確かめるべく現場に急行しなければなりません、とミサカは制止を振り切ろうとします」

「何を言ってるのよあなたは!?そんなに血が流れてるのにどこへ行こうって言うの!」

「邪魔をしないでください、とミサカは必死に抵抗します―――!」

しきりにベッドから抜け出そうとする少女と、それを抑える芳川。
夜の病室で二人の攻防が続く。
115 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/11/24(土) 13:28:48.64 ID:tGVg/Qtd0
――――――――――――――――――

白い粉塵が霧のように夜空を覆い隠す中、操車場の片隅で二人の人間が対峙していた。

短い黒髪をツンツンに立たせた男子高校生、上条当麻。
対するは学園都市最強の超能力者、一方通行。

両者間の距離は5m。全力で走ればあっという間に詰められる距離だ。

「何、何ですかァ?この期に及ンでまだ俺と戦るつもりなのかよ。オマエはどンだけ命を粗末にしたいンだっつーの」

一方通行の圧倒的な力を目にしたにも関わらず、尚も戦意を漲らせる上条に対し、彼女は呆れ顔で吐き捨てた。

「そんなの知るか。お前がどれだけ強かろうが、俺がここに来た目的はただ一つだ」

しかし、上条は戦う姿勢を崩さない。
先程までの及び腰とは違い、迷いが吹っ切れたかのようにはっきりと言い放つ。

「お前を倒して御坂と御坂妹を救う。俺のやるべき事なんて、たったそれだけなんだよ!」

「アッハァ!吼えやがったな三下ァ!だったらお望み通りアイツらと同じ目に遭わせてやるよ、被虐趣味のドMクン!」

咆哮する上条に、挑発するような態度で笑う一方通行。
その言葉を聞いた瞬間、上条の中で何かが切れた音がした。

「―――許さねえ。お前だけは許さねえぞ、最強!!」

怒号を響かせ、一方通行目掛けて駆け出す上条。
掌に爪が刺さり、血が出るほど強く握った拳が、白い少女へと肉薄する。
116 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/24(土) 13:31:51.49 ID:bVcK2YtIO
安価スレじゃないのにゴキブリSOがいるぅ
117 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/11/24(土) 13:34:29.12 ID:tGVg/Qtd0
「だから遅せェっつってンだろォが!」

振るわれた拳から逃れるようにバックステップで距離を取り、お返しとばかりにがら空きの顔面を狙って左の掌を突き出す。
まるで映画のフィルムを最初から再生したかのように、初撃が失敗に終わった光景が繰り返される。

しかし、一方通行の掌が上条の顔面を捕らえる事はなかった。
上条が振り抜いた右拳を、裏拳の要領で反対側へ払ったからだ。

「な、にィ!?」

払われた右の拳は、何故か『反射』されずに一方通行の防壁を潜り抜けた。
上条の顔面を狙っていた一方通行の左手が、上条の手の甲に当たって大きく弾かれた。

勢いに負けて体勢を崩した一方通行は、逆に大きな隙を晒してしまう。

(そういえば、コイツはあの時も―――ッ!)

ここに来る途中、交差路でぶつかりそうになった時の事を思い出す。
目の前の男子高校生は、あの時も“右手で”一方通行を突き飛ばしたのだ。

(コイツの右手には、俺の能力すら打ち消す何かが―――!?)

一方通行は知らなかった。

無能力者であるはずの上条当麻の右手には、神の奇跡すら打ち消す『幻想殺し(イマジンブレイカー)』が宿っていることを。
118 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/11/24(土) 13:43:16.19 ID:tGVg/Qtd0
「歯を食いしばれよ、最強―――」

驚きに目を見開いた一方通行の眼前で、無能力者の拳が振りかぶられる。

「俺の最弱は、ちっとばっか響くぞ!!」

直後。

上条の全身全霊を込めた右拳が、一方通行の顔面を捉えた。
硬いハンマーで殴られたような衝撃が左頬から全身へと伝わり、白い少女は受身を取る事も出来ずに数mも吹き飛ばされ、そのまま動かなくなった。

殴られた拍子にポケットから飛び出したのか、一方通行の携帯電話が上条の足元に転がり落ちる。
核兵器すら『反射』するはずの絶対無敵の防壁は、無能力者の拳を阻む事はなかった。
119 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/24(土) 13:49:55.61 ID:kJHO0NzAO
あー、やっちまった…

まあ、命を奪わないまでも女の子に怪我させてたんだし…やっぱ顔パンはだめたわ。

しかし9982号の足はどうなってる?もげたまま?
120 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/11/24(土) 13:54:00.58 ID:tGVg/Qtd0
「か、勝った……のか……?」

全力の拳を振るい終えた上条は、荒い息を整えながら相手の動きに注視する。
上条から4,5mほど離れた位置に倒れた一方通行はどうやら気を失っているらしく、すぐに起き上がってくる気配はない。

「か、勝った……?これで御坂妹は助かったのか……?」

つい先程まで全身を支配していた緊張が一気にほぐれ、へなへなとその場に崩れ落ちる上条。
と、そんな上条の視線の先に一台の携帯電話が落ちている事に気が付いた。

ストラップの一つも付いていない真っ白な外装の携帯電話は、一方通行の数少ない持ち物である。
どうやら上条に殴り飛ばされた勢いでワンピースのポケットから転がり落ちたようだ。

何となくそれを眺めていた上条だったが、不意に目の前の携帯電話から甲高い電子音が鳴り響き、ビクリと身を震わせた。
どうやらメールの着信を知らせるアラートのようだ。
それを確認した上条は、恐る恐る携帯電話に手を伸ばす。

人のメールの内容を勝手に覗く事はプライバシーの侵害にあたるかもしれない。
だが、クローンの事といい今回の実験といい、もはやこの場において上条の一般常識は通用しない。

(何か、実験に関する手掛かりを得られるかもしれない)

そう思った上条は、携帯電話を操作して新着メールを開く。

(―――!?)

その内容は、
121 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/11/24(土) 13:57:42.81 ID:tGVg/Qtd0
From:芳川
Sub:報告
―――――――――――――――――――――
たった今、10031号さんが目を覚ましたわ。
あなたにしては大人気ない事をしたわね。また例の渾名で呼ばれたのかしら?
あなたが怒る気持ちもわかるけど、相手も同じ女の子なんだから程々にね?

10031号さんの身体に目立った異常はないみたいだけど、念のため今晩は病院に泊まらせるわ。
あなたも実験が終わったら寄り道せずに帰りなさい。





【追伸】
これから10032号さんの回収班を手配するわ。
現場の証拠隠滅はいつも通り行うから安心してちょうだい。
122 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/11/24(土) 14:05:23.53 ID:tGVg/Qtd0
「―――は?」

メールの内容に目を通した上条は、ポカンとした顔で呟いた。
内容から察するに差出人は実験関係者のようだが、そこに書かれている内容は上条が予想もしていない事だった。

「10031号って、あの裏路地で殺されてた子だよな?あの子が、目を覚ました……?」

昨日、上条が偶然遭遇した実験の現場を思い出す。

ところどころ真っ赤な液体で汚れたビルの壁面。
ビルとビルの間、裏通りの狭い空間に倒れ、ピクリとも動かない少女。
肩口には赤い染みが広がっており、汚い地面を転がり回ったのだろう、常盤台中学の夏服の至る所が薄汚れていた。

さながら銃殺現場のような現場を目撃してしまった上条は、その事を切っ掛けとして実験の存在を知ったのだ。

しかし。

「生き、てる……?じゃあ、御坂が言ってた実験ってのは……?」

二万人の『妹達』を殺害する事により、一方通行は絶対能力者へと進化する。
その非人道的な実験を止めるために、上条はここまで来たのではなかったのか。

「あいつが、あの子を殺し損なった……?いや、そんなヘマをするような奴には見えなかった。それに、このメール……」

ちょっとした“不幸”によって一方通行の逆鱗に触れた上条は、その恐ろしさを身をもって知っていた。
あの怪物の手にかかれば、一人の人間を殺害する事など造作もないだろう。

そんな学園都市最強の怪物が、“標的を殺し損ねた”なんてミスを犯すだろうか。
自らが強大な力を得るための実験のターゲットならば、確実に仕留めなければいけないはずなのに。

それに、メールの内容も引っ掛かった。
メールには“また”と書いてある。つまりこういった事は日常茶飯事であるということだ。
芳川という人物が何者なのか上条にはわからないが、ターゲットを確実に殺害しなければならない実験内容に関する報告で、こんなにあっさりと生存を報告するものだろうか。
123 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/11/24(土) 14:13:25.95 ID:tGVg/Qtd0
「何だ……?何かが、食い違ってる……」

メール一通で今までの認識を覆され、神妙な顔で考え込んでしまう。
上条の中からは、とうに勝利の余韻は消え失せていた。

更なる情報を得ようと携帯電話を操作する。
不慣れな機種の携帯電話を手探りで操作する上条だったが、ふと一つの動画ファイルが目に留まった。

「―――!?これは、『妹達』か!?」

最近使用されたファイルの履歴。
その中にあった動画ファイルのサムネイルに、見慣れた茶髪の少女が映っていた。

上条は恐る恐る、動画ファイルを再生した。

すると―――
124 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/11/24(土) 14:26:43.04 ID:tGVg/Qtd0
――――――――――――――――――

『ひゃはは!言ったよなァ!天国にイかせてやるってよォ!!』

『―――ッ!?な、こ、これは―――ひゃぅ!?』

『ひゃは!オマエの“血液の流れ”のベクトルを操作して、全身の血流を最っ高の状態にしてやってンだよ。気分はどうですかァ?』

『ミ、ミサカは、生まれて初めての感覚に戸惑―――ひんっ!?』

『ほらほら、この程度でヨガってンじゃねェぞ?本番はこれからなンだからなァ!』

『な――っ!これ以上、何を―――』

『この状態でオマエの生体電気のベクトルを操って知覚を刺激してやると……どうなっちまうでしょうかァ!?』

『ま、まさか……。―――ッ!?ひぃっ!?』

『アッハァ!気分はどうですかァ!?気持ちよすぎて天国までイっちまいそうだろォ!!』

『ミ、ミサカは……ミサカは……!』

『学園都市最強直々の全身マッサージだァ!愉快に無様にヨガりやがれェ!!』

『み、みさかはこんな……ひぅっ!』

『そういや言い忘れてたが、オマエの姿は動画で撮影してるからなァ?』

『なっ……!?』

『後でオマエのお仲間にたァっぷり見せ付けてやるよ。俺に散々恥かかせたように、オマエも無様なヨガり顔晒しやがれェ!!』

『や、やめ、撮らないでくださ―――ひゃあああああん!?』

――――――――――――――――――
125 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/24(土) 14:28:44.80 ID:nqtZqu9D0
あらww怪我してなかったwwww
いや、でも銃弾の反射が…いやまだわからんww
126 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/24(土) 14:31:28.60 ID:+vUVmOrSO
なん……だと……


その動画くれ
127 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/11/24(土) 14:32:14.43 ID:tGVg/Qtd0
ぽたり、と水滴の滴る音が聞こえた。
その音で我に返った上条は、音の発生元が自らの鼻からである事に気が付いた。
見れば、無意識に鼻をぬぐった上条の手が真っ赤に染まっていた。

鼻血である。

見知った顔の少女と瓜二つな女の子が画面の中で繰り広げる痴態に、上条の身体が勝手に反応を示したのだ。

「こ、これは一体……何だってんだ……?」

ごくり、と無意識に唾を飲み込んだ。
少女のあられもない姿を食い入るように見つめながら、上条は思う。

俺たちはとんでもない思い違いをしていたのかもしれない、と。
128 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/11/24(土) 14:33:56.32 ID:tGVg/Qtd0
ちと短いですが今日はここまで。
散々引っ張っといて今更なようですが当SSはシリアスではありません。

あとはラストまで書き溜めてから投稿します!
129 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/24(土) 14:36:06.23 ID:gLWSlUsCo


上条ェ・・・
130 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/24(土) 14:37:19.37 ID:+vUVmOrSO
乙!舞ってる!
131 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(鳥取県) [sage]:2012/11/24(土) 15:06:41.00 ID:oscjhaipo

このウニはもう調理してやって構いませんよね?
132 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/24(土) 17:30:55.54 ID:vICTDT9IO
この一方通行殴ったって知ったら木原が飛んでくるんじゃねぇか?
133 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/11/24(土) 20:09:20.64 ID:4W2YYO4J0


上条さん不幸エンド決定かぁ
134 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(沖縄県) [sage saga]:2012/11/24(土) 21:33:28.43 ID:WdhQyADq0
木ィ〜原くゥン&猟犬部隊のフルメンバーvs上条さんのフラグ確定ですかぁ〜?

さぁ 狩 り の 時 間 だ ぜ ! !
135 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/11/24(土) 21:51:37.47 ID:Stq01xFxo
おつ、やはりベクトル有情破顔拳だったか……
てかとりあえずセロリを病院に運べ、ヘタすると一足先にチョーカーが必要になるぞwww
136 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/26(月) 15:10:22.22 ID:4hw5TZ7ao
これはひどい 上条さんが
137 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/26(月) 16:20:55.92 ID:q6WzwqzFo
スレタイで「またロリコン扱いのセロリネタかよ」と思ってスルーしかけたが
まさかこうくるとは 乙!
138 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/11/27(火) 01:40:03.30 ID:SYJzI4G2o
アクセラロ合子が上条にフラグさえ立てられなきゃいいや

139 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage saga]:2012/11/27(火) 13:06:54.15 ID:dVmPMFSo0
――――――――――――――――――

第七学区の病院には、『冥土帰し(ヘヴンキャンセラー)』の異名を持つ医者がいる。
どんな病気・負傷であっても決して患者を見捨てず、あらゆる手段を用いて治療してしまうというその医者は、現在まで行ってきた手術の全てを成功させてきたという。
彼の手にかかれば寿命すら克服できるのでは、といった噂まで立つほどである。

「―――で、その子がワンピースを捲られている光景がネットワーク上に流れてて、それを見た君はいてもたってもいられなくなったというわけだね?」

そんな冥土返し―――――カエル顔の医者が緊急コールを受けて病室を訪れると、そこでは血まみれになりながら暴れる少女とそれを押し留める白衣の女性という、ある種のホラーを感じさせる光景が繰り広げられていた。
ベッドのシーツを血まみれにしながら暴れる二人をひとまず仲裁し、現在事情聴取の真っ最中なのである。

「……その通りです、とミサカは不貞腐れながらも肯定します」

あらかた事情を聞き終えたカエル顔の医者に、争っていたうちの一人である少女―――ミサカ10031号が不機嫌そうな声で答えた。

「うん、まあ。君も多感な年頃だ、衝動のままに突っ走りたくなる時もあるだろう」

ただ、とカエル顔の医者は続けた。

「その子の下着姿を見て鼻血を出すほど興奮してしまうというのはどうかと思うけどね?」

言って、目の前の少女を見やる。
常盤台中学屈指の超能力者、御坂美琴とまったく同じ容姿をした少女。
だが、着ていたブラウスは血にまみれ、鼻にはティッシュが詰め込まれている。
オリジナルと同じく化粧がいらない程度に整った顔は、赤く染まりつつあるティッシュによって台無しになっていた。

美琴本人が見たら名誉のために粛清されてもおかしくない程の醜態である。

「出血の原因はミサカにもわかりかねます、とミサカは心中を吐露します」

「ふむ?」

少女の話によるとこうだ。

病室で目を覚ました彼女は、意識を失っていた事によって接続が切れていた脳波ネットワークに再接続した。
すると、そこには他個体からの莫大な量の情報量が。
何事かと思った彼女が騒動の中心となっていた情報にアクセスすると、そこにはある女の子が盛大にワンピースを捲られ、下着はおろか上半身まで丸出しにされた瞬間の映像があった。

その映像を見た瞬間、彼女の中で何かが弾けたような気がした。
陶器のように滑らかな白い肌を食い入るように眺めているうち、いつしか鼻の奥から熱い液体が流れ出し、制服のブラウスを汚していた。

鼻血である。

そして、“何となく気になる”相手のあられもない姿を目にした彼女は、流血もそのままに病院から抜け出して現場に駆け付けようとしたのだという。
140 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/11/27(火) 13:08:41.22 ID:dVmPMFSo0
話を聞いたカエル顔の医者は、やれやれといった様子で首を横に振った。

「何となく気になる、ねえ。どうも君達は毎度毎度その子をわざと怒らせようとしているみたいだけど、それも関係してるのかな?」

「……それは、9982号が」

「9982号さんかい?そういえば、こうやってここに運ばれてきたのは彼女が最初だったね?」

一週間ほど前、カエル顔の医者の前に一人の少女が運ばれてきた。
検体番号9982号。少女は意識を失い、ぐったりとした状態で他の『妹達』に担がれていた。
頬は紅潮し、しきりにうわ言で『み、みさかは……みさかはあの感覚がくせになりそうです……』などと呟いていたのは記憶に新しい。

それ以降、何故か『小悪魔sanagi』なるギャル系女子御用達の雑誌を真剣な表情で読み、相手を手玉に取る仕草や言動を研究したり、
実験担当の個体が何かを期待するような面持ちを見せたりと、『妹達』に目に見える変化があった。

そして、その日を境に、9982号と同じような状態で運ばれてくる少女が後を絶たなくなったのだ。

「ふむ。つまり君達はわざと相手を怒らせる事で、自分も9982号さんと同じ事をされるかもしれないと思ったわけだね?むしろそれを期待していたのかな?」

「……ミサカには9982号が何をされたのか確かめる義務がありましたから。誤解のないよう言っておきますが決して期待などしていません、とミサカはあらぬ疑いを否定します」

不貞腐れたように顔を背ける少女だったが、その頬に僅かに朱が差しているように見えるのは気のせいではないだろう。
そんな少女の様子に気付いているカエル顔の医者は、あえて意地悪そうな声で、

「まあ、君の本心は僕にはわからないけどね?ただ、あまりそういう事ばかりしていると相手に嫌われてしまうよ?」

「―――!?ミ、ミサカは単なる実験の相手ですから好きだの嫌いだのといった感情には興味ありませんそもそもミサカ達には感情はインストールされていないはずであってミサカがあの子を好きだという話には何の根拠も――――」

軽く鎌を掛けたつもりが予想以上に取り乱した少女を見て、カエル顔の医者は思う。

これは相手も大変だな、と。
141 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/11/27(火) 13:11:23.66 ID:dVmPMFSo0
「ところで、前から気になっていたんだけどね?君達の言う“実験”というのは、どういった事をしているんだい?」

「―――であるからしてミサカは決してあの子の事が気になるから意地悪してるわけではなく実験にやる気を出して貰うために自分から汚れ役を買って出ただけであって―――」

「……芳川さん?」

「……仕方ないわね、説明するわ。本当なら関係者以外には話すべきではないんでしょうけど、あなたには世話になっているしね。……でも、面白くもない話よ?」

完全に自分の世界に入ってしまった少女はさて置いて、カエル顔の医者は以前からの疑問を改めて尋ねる。
少女の鼻血が付着して血みどろになった白衣を見て独り嘆いていた芳川だったが、やがて諦めたのだろう、白衣を脱ぎ捨てると質問への回答を語り始めた。

「あなたも知ってると思うけど、この子達は『量産型能力者計画』によって生み出されたクローン体よ」

「ふむ、それは以前聞いたね?確かその計画は凍結されたんだろう?」

「そう。この子達の持つ能力はオリジナルの1%にも満たない……その、欠陥品だったから」

欠陥品、と口に出した時の芳川の顔は、どこか後ろめたさを感じているようなものだった。
カエル顔の医者はあえてそれには触れず、話の続きを促す。

「それで、既に生み出されていた『妹達』を流用して実行されようとしていたのが、『絶対能力進化実験』よ。これについても知ってると思うけど」

「……二万人の『妹達』を殺害する事で、絶対能力者を生み出そうという計画だね。医者を生業としている僕としては、上から許可が下りたとはいえ決して許されたものではないと思うんだがね」

『絶対能力進化実験』という単語を聞いたカエル顔の医者の口調が、真剣なものへと変わる。
『冥土返し』の異名を持つ程の凄腕を持ち、患者の命を救うためなら何でもする事を信条としている彼としては、クローンとはいえ二万人もの命を弄ぶ実験は許しがたいものであった。

「絶対能力進化実験は、各分野の一線級科学者を投入していたわ。遺伝子方面を専門としていたわたしに、生物学的精神医学の専門である布束砥信。そして、量産型能力者計画の発案者である天井亜雄」

研究者という職に一度でも身を置いた事のある人間であれば、それがどれほど豪勢なメンバーであるかわかるだろう。
142 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/11/27(火) 13:12:13.80 ID:dVmPMFSo0
「でも。絶対能力進化実験は、実験開始後間もなくして凍結される事となったわ」

「うん?それほどまでに大掛かりな実験が、そんなにあっさりと中止になるものなのかい?」

「中止せざるを得なくなったのよ。他でもない、あの子の手によってね」

あの子というのは第一位の事だろう、とカエル顔の医者は一人の少女の姿を思い浮かべる。

同年代の子供と比べて小柄な体躯。
綿のように白い髪に、陶器のように滑らかな白い肌。
瞳は磨かれたルビーのように赤く、透き通るような透明感を持つ。

学園都市に七人しかいない超能力者の序列第一位。
本名不明。周囲からはその能力名と同じ『一方通行』の名で呼ばれている。

「実験はあの子なくして始まらない。第一位であるあの子が二万人を殺害して初めて成功となるのだから」

「ふむ。だが、それが開始後間もなく凍結となったという事は―――」

「ええ。実験は失敗。あの子が選んだ結果よ」
143 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/11/27(火) 13:14:33.05 ID:dVmPMFSo0
絶対能力進化実験。
自らの能力の更に高みを目指せると聞かされていた一方通行は、半信半疑ながらも計画へ参加した。

自身の持つ、強すぎる能力。
触れただけで相手を死に至らしめる事の出来る、毒手のような手。
爆発だろうと核兵器だろうと、あらゆる攻撃そのものを『反射』する絶対無敵の防壁。

だが、強すぎる力は時として無用な争いを生む。

『学園都市最強の超能力者を倒せば、事実上最強の名を得られる』
『最強の能力者を使った実験で功績を上げれば、研究者として名を挙げる事が出来る』

そういった私欲にまみれた人間に、幼い少女は幾度も狙われ続けた。
無論、彼女の能力をもってすればそのような連中に遅れを取る事はあり得ない。

だが。

自身の能力を巡って人が争い、傷付いていく。
未だ10にも満たない少女にとって、自身を取り巻く環境はあまりにも過酷だった。

そんな悪循環に晒され続けた少女は、争いをなくす方法を自分なりに考えた末に、ある結論を導き出す。

それは、戦おうという意志さえ奪うほどの絶対的な力を手にすること。

自らの持つ能力を更に昇華させ、『あいつには挑むだけ無駄だ』と思わせる事が出来れば。
『この力を利用しようと考えれば、それだけで身を滅ぼす』という認識を、全ての人間に植え付ける事が出来れば。

自分の能力によって、誰かが傷付く事はなくなるのではないか。

幼い心にそんな考えを抱き、少女は絶対能力進化実験へと身を投じたのだった。


しかし―――


「あの子は実験の内容を、二万人の相手と戦う“だけ”としか聞かされていなかった。相手を殺害しなければならないと聞けば、最初から参加を拒んだでしょうから」

「だから、実験が始まるまで本当の事は隠していたわけだね?」

「そう。もっとも、詳細を黙っていた事は私も後から知ったのだけど」

今更そんな事を言っても言い訳にもならないけどね、と芳川は自嘲気味に続ける。
カエル顔の医者は、そんな芳川の独白を黙って聞いていた。

「……最初の実験は、あの子が何もする事もなく決着が付いたそうよ。放たれた銃弾を『反射』して、全て逸らした。たったそれだけでね」
144 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/11/27(火) 13:16:08.48 ID:dVmPMFSo0
――――――――――――――――――

『ンだよ、立ってるだけで終わっちまったぞ?こンなン二万回繰り返した所で本当にレベル6になンかなれンのかァ?』

とある研究所の一室。
四方を壁に囲まれた実験スペースの中に、二人の少女が対峙していた。

白い少女。学園都市最強の超能力者、一方通行。
片や、第三位『超電磁砲』御坂美琴の体細胞クローン『妹達』の一員、検体番号00001号。

二万人のクローン相手に“戦う”事により、絶対能力者へと進化する事が出来る。
そう、聞かされていたのだが。

『オマエ、本当にもう終わりなのかよ?他に奥の手とか隠し持ってたりしねェのか?』

実験開始の合図と同時に発砲してきた少女に、一方通行は何をしたわけでもない。

一方通行の身体は、常に『反射』の膜で覆われている。
これは呼吸に必要な酸素などの最低限必要な物を除き、自身にとって有害な物を自動で『反射』する絶対無敵の防壁だ。

つまり、ただの銃撃など一方通行にとっては恐るるに値しない。
放っておいても『反射』によって傷一つ付く事はないのだから。

最初こそ執拗に攻撃を繰り返していた少女だったが、どうやっても一方通行の『反射』を打ち破る事が出来ないと悟ったのか、やがて床へと崩れ落ちた。
持てる力の全てをもってしても通用しないという絶望的な状況で、抵抗する気力すらもなくなったかのように。

『……まァ、あれだな。不完全燃焼なのは否めねェが、こンな簡単な事でレベル6になれるンなら―――』

『まだ実験は終わりではないぞ、一方通行』

『―――あァ?』

協力してやってもいい、と続けようとした一方通行の言葉を、スピーカーから流れた音声が遮った。
少し聞いただけでも尊大そうな性格が窺えるその声は、研究員の男のものだ。
145 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/11/27(火) 13:18:52.73 ID:dVmPMFSo0
『お前がターゲットに止めを刺して初めて最初の実験は終了する。単に無力化しただけでは実験とは言えん』

『……は?オマエ、何言ってンだ?止めを刺すって言ったら、コイツをぶっ殺すって事だろォが。話が違げェぞ』

研究員の言葉に対し、唖然とした表情になる一方通行。
事前に説明された内容では、二万人と戦う“だけ”としか聞いていなかった。
相手の命を奪う事までは想定していなかったのだ。

『おや、そうだったかね?それは失礼した。それでは、改めて言おう』

そんな一方通行にしれっと返し、研究員の男は続ける。
まるで一方通行の事はは実験道具に過ぎないというような、冷徹な言葉で。

『目の前の標的を殺せ、一方通行。お前が二万人を殺害する事によって、初めてレベル6は誕生する』

『―――ッ!!』

淡々と告げられた言葉に、一方通行は絶句する。
スピーカー越しに命令した研究員の男は、人の命を何とも思っていなかった。

『なに、気に留める事はない。目の前の相手は人の形をしてはいるが、我々と同じ人間ではない』

『―――』

一方通行は無言のまま、目の前の少女を見た。
彼我の力量の違いを目の当たりにし、床に手と膝を付き、無力感に打ちひしがれている少女を。

『相手は薬品と蛋白質で合成された―――』

『―――』

一方通行は自身がこの実験に参加するに至った、争いをなくすための方法として自ら導き出した結論を思い浮かべた。

この実験に参加した目的。
戦おうという意志さえ奪うほどの、絶対的な力を手にすること。
それ程の圧倒的な力を手に入れる事で、自身の能力によって人を傷付ける事はなくなる。

『―――ただの実験動物なのだから』

そう、思ったのだ。
146 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/11/27(火) 13:22:33.81 ID:dVmPMFSo0
『―――く』

『?』

―――だが。

仮に、戦おうという意志さえ奪うほどの絶対的な力を手に入れたとして。
それを目の当たりにした人間は皆、目の前の少女と同じような表情をするのだろうか。

『く、くく―――』

『一方通行?どうかしたかね?』

嫌だな、と一方通行は思った。

絶対的な力を手に入れるという自身の目的のために、二万人を“殺害”する。
目の前にいる少女と同じ顔を、二万人もの人間を、息の根を止めて無に還す。

そんな事をすれば。

『く、くは、ひゃははははっ!!』

『―――!?』

それは、私利私欲の為に彼女を利用しようとした人間達とどう違うというのか。
147 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/11/27(火) 13:24:50.23 ID:dVmPMFSo0
直後。

一方通行の狂笑に呼応するかのように、実験スペースの床や壁に亀裂が走る。
亀裂は一方通行を中心に広がり続け、あっという間に実験スペースの天井まで到達した。
二階からガラス越しに実験スペースを見下ろしていた研究員は、慌てて制止を呼びかけようとする。

が、もう遅い。

研究員が声を発するよりも早く、一方通行が防弾ガラスを易々と突き破り、管制室へと突入していた。
慌てて逃げようとする研究員の襟首を掴み、顔に吐息がかかるほど近くまで引き寄せる。

『ア、一方通行……?こんな事をすれば実験は破綻してしまう……!絶対能力者になれなくなるぞ……!』

『実験が破綻する?絶対能力者になれなくなるだァ?舐めた事言ってンじゃねェぞ、クソ野郎が。俺を誰だと思ってやがる?』

みっともなく命乞いをするかのように言葉を並べる研究員を、一方通行は一言で切り捨てた。

『俺は学園都市最強の超能力者、七人しかいねェレベル5の第一位、一方通行だ』

他の職員達が逃げ惑うのを余所目に、目の前の相手に向かって宣言するように、一方通行は言う。

『オマエのお陰で決心が付いたよ、クソ野郎。俺はオマエみてェなクソッタレどもの力なンざ借りなくても、俺の力だけで更なる高みを目指してやる』

一人で悩んでいるうちに甘言に惑わされ、非人道的な計画に加担しそうになった自分自身を叱咤するように。

『コイツらが実験動物に過ぎねェってンなら、俺が全員救ってやる!こンなクソッタレな実験に頼るくらいなら、レベル6なンざクソくらえってンだよ!!』


研究員が意識を失う直前に見たのは、白い少女の背中から噴き出した、黒い翼のようなものだったという。


―――かくして、絶対能力進化実験は、被検体一方通行の暴走を受け研究所が壊滅した事により半永久的に凍結される事となる。
148 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/11/27(火) 13:26:53.73 ID:dVmPMFSo0
――――――――――――――――――

「ふむ。あの子が研究所を壊滅させた事で、実験続行は不可能と判断されたわけだね?」

「ええ。結局その『黒い翼』に関してはわからず終いだったけど、極度の興奮状態によって能力が暴走した―――ということになっているわ。もっとも、どんな科学法則を使えばそんな現象が起きるのか見当も付かないけれど」

「黒い翼、か……」

カエル顔の医者の脳裏に、かつて彼が命を救った一人の男の姿がよぎった。


「……それで、たまたま現場に居合わせていなかったわたしは、あの子とあの子が救った『妹達』の世話役を買って出たというわけよ」

「ふむ?君も彼女からすれば“クソッタレども”の一員だったんじゃないのかい?」

「もちろん、あの子も最初は断ったわ。『妹達』に延命処置を行う必要があると知って渋々承諾したといったところね」

御坂美琴のDNAマップを用いて生み出された体細胞クローン、軍用モデル『妹達』
元は量産型能力者計画によって生み出されていた少女達だったが、計画が失敗に終わり絶対能力進化実験へと流用された際、二万回の実験に合わせて製造ペースを早める必要があった。

そのため、ほとんどの『妹達』の身体には成長を早める各種薬品やホルモン剤が使用されている。
治療によってそれらを除去しない限り、彼女達は通常の人間よりも遥かに短命となってしまう。
一方通行が『妹達』を救うには、彼女達の調整を行える人材が必要だったのだ。
149 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/11/27(火) 13:29:24.94 ID:dVmPMFSo0
「都合のいい事を言うかもしれないけれどね。わたしは、あの子がこの結果を選んだ事にほっとしているの。だって、そうでしょう?わたし達大人の勝手な都合で、あんな小さな女の子を殺人鬼に仕立て上げるところだったんだから」

「………」

「―――わたしはね。本当はこんな研究者なんかじゃなくて、学校の先生になりたかった。自分の損得なんかよりも子供の事を最優先に考えて、ただひたすら誰かのために奔走できるような、そんな優しい先生になりたかった。結局、わたしみたいに甘いだけの人間には優しい先生なんて似合わない。そう思って自分から断念したけれどね」

芳川桔梗という人間は、常にリスクとチャンスを天秤にかける傾向がある。
例え自分の選択によって誰かを救える可能性があったとしても、それを選択するよりも前に、自らの損得を頭で計算してしまうのだ。

そうやってリスクよりもチャンスを選択する事で、芳川桔梗という人間は研究者として功績を上げてきた。
だが、そういった思考パターンを嫌っていたのは、他でもない芳川自身だったのだ。

「きっと、まだ未練が残っていたのでしょうね。わたしは一度でいいから甘いのではなく優しい事をしてみたかった。だから―――」

「―――だから、あの子達の面倒を見ようと思ったわけだね。せめてもの罪滅ぼしとして」

「ええ。本当なら計画が立ち上がった段階で反対するべきだったのに、それをしなかった。あの子からすれば、そんなわたしが今更何を言うんだって感じでしょうけれど」

カエル顔の医者は、それ以上何も言わなかった。

彼にはわかっている。
例え実験が失敗に終わったとしても、一方通行の持つ力は人が持つには重過ぎる。

その身一つで他者を容易く傷付ける事のできる力。
その気になれば国一つ滅ぼせるといっても過言ではない、強大な力。

そんな絶大な力を持つには、一方通行という少女はあまりにも幼すぎた。

―――だが。

だからこそ、と芳川は続ける。

「わたしは、あの実験に憤る事のできるあの子の優しさを信じたい。もしもあの子の力を利用しようとする者が現れたなら、そんな人間からあの子達を守るのがわたしの役目。わたしが憧れていた“優しい先生”なら、きっとそうするだろうから」

そう言った芳川の顔には、彼女には似合わない“優しい”表情が浮かんでいた。
150 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/11/27(火) 13:31:57.61 ID:dVmPMFSo0
「……ふむ。実験が中止になった経緯はわかった。君があの子達を引き取った理由もね。ただ、それなら今行われている“実験”とは何なんだい?」

カエル顔の医者はもっとも気になっていた疑問を投げかけた。
絶対能力進化計画が凍結されたとなれば、一方通行と『妹達』が現在取っている行動には何の意味があるのだろうか、と。

「わたしも本当ならあの子達を自由にさせてあげたかったんだけど、なかなかそうもいかなくてね。建前でもいいから“実験”を継続しなくてはならなかったのよ」

芳川が言うには、研究所を壊滅させた件を受け、一方通行という少女は一部から非常に危険視されているらしい。
彼らにとって一方通行という少女は『いつ暴走し、自分達に牙を剥くかわからない相手』なのだ。
自分達の安全を確保する為ならば、幼い少女を殺害する事すらも辞さないだろう。

そこで芳川は、“絶対能力進化実験に使われるはずだった『妹達』を流用し、一方通行の能力を制御する実験を行う”という建前を用意する事により、彼女の身柄を自身の下に置く事に成功した。
彼らからすれば、一方通行の能力を制御する事ができるならそれに超した事はない。
制御実験中に万が一また暴走する事があっても、相手が『妹達』ならば替えは効くため、死亡しても問題ないと判断したのだろう。

「もっとも、形だけでも“実験が行われている”と思わせなければならなかったから、あの子達には一応戦う振りをしてもらっているけれどね」

そのため、一方通行は連日『妹達』を相手に“実験のフリ”をさせられているのだ。

実験場として用意したポイントに一方通行が出向き、調整待ちの『妹達』が順次相手を務める。
『妹達』にはペイント弾を発射できるように改造を加え殺傷能力を奪った銃器で武装させ、一方通行が彼女達を気絶させた後、他の『妹達』の手によって回収。
芳川が研究所で延命処置を施し、調整が終わった『妹達』はカエル顔の医者の伝手を使い、秘密裏に学園都市を脱出する―――といった流れだ。

ちなみに、一方通行本人は“実験”に対し『こンなモンはガキのお遊びだろォが』と吐き捨てているのだが、『妹達』は何故だか毎回気合を入れて“実験”に望んでいる。
それはある日一方通行が漏らした『万が一俺に勝てたら何でも言う事聞いてやるよ』という言葉を受けてのやる気なのだが、芳川達には知る由もない。

何はともあれ。
実験によって殺害されるはずだった二万人の『妹達』は、誰一人殺される事なく生きている。
151 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/11/27(火) 13:33:24.56 ID:dVmPMFSo0
「結局、あの子は笑顔で人を殺す事の出来るような人間じゃなかった。周囲を取り巻く環境が特殊だったから心配していたけれど、それも杞憂だったというわけね」

「……そうだね。しかし、あの天井亜雄がよくそれを許したね?」

天井亜雄。
元々は量産型能力者計画を進めていた研究者だったが、計画が凍結された事により借金に塗れていた所を辛うじて絶対能力進化実験に拾われた男である。
『妹達』に関する各種実験にはこの男が深く関係しており、絶対能力進化実験が凍結されると決定した際も最後まで意を唱えていた。

「彼の性格からして、実験が凍結されたらヤケを起こして一人で暴走しかねないと思うんだけどね?」

彼はスキルだけを見れば一流の科学者だが、人格はとても褒められた物ではない。
自身の利益のためならば、他人を食い物にする事に躊躇のない人間なのである。

ただでさえ借金だらけの身の上で、やっとの思いで身を寄せた計画が開始されて間もなく凍結ともなれば。
逆上した天井亜雄は、血迷った挙句の破壊工作に乗り出しても何らおかしくない。

「わたしがあの子達の身柄を引き取ると言った時、もちろん天井亜雄は反対したわ」

でも、と芳川は続けた。

「よほど自分の失敗を帳消しにしたかったんでしょうけど、それが裏目に出たわね。あの子に無理にでも実験を続行させようとした挙句、その事が“ある研究者”の逆鱗に触れてしまったの」

「研究者、かい?」

「ええ。あの子の能力開発を担当した最初の研究者、木原数多。彼はあの子を溺愛していてね……」

木原数多。
一方通行の能力開発担当官だったが、ある事情から猟犬部隊(ハウンドドッグ)と呼ばれる特殊部隊に異動となった研究者である。

絶対能力進化実験の存在を知り、あまつさえ実験の続行を強要している事を知った木原は、即座に天井亜雄の元へと乗り込み、彼を病院送りになるまで殴り倒したらしい。
何でも『俺の許可なくあのガキに馬鹿げた真似させてんじゃねえ!!人殺しなんかさせたらあのガキの天使みてえな顔が穢れるだろうが!!』などと意味のわかない事を叫んでいたとか。

ちなみに、一方通行の持つ各種戦闘技術も『悪い虫が付かないように』と木原が教え込んだものである。
万が一にも能力が使えない状況で大人相手にでも対抗できるよう、ありとあらゆる護身術を叩き込まれているのだ。

「それはまた……随分とバイオレンスな保護者だね?」

話を聞いたカエル顔の医者は、どこか引き攣ったような顔をしていた。
これには芳川も苦笑いである。

「たまに、こっそりと実験の様子を見に行ったりもしているみたいよ。場所は教えていないはずなのに、どこから嗅ぎ付けてくるのやら……」
152 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/11/27(火) 13:35:17.21 ID:dVmPMFSo0
――――――――――――――――――

「おいおいおいおい……。クローンどもが一斉にどこかへ向かってるから何事かと思えば、こりゃどういう状況だぁ?」

不意に背後から声をかけられ、上条はギクリとして振り返った。
見れば、無人のはずの操車場にいつの間にか長身の男が立っていた。

短く刈り上げた金髪に、顔の半分を覆うほどの刺青。
白衣を羽織っている事から研究職の人間であると窺えるが、研究員には似つかわしくない刺青の存在もあり、さながらヤのつく自営業の方々を連想させる風貌である。

「ガキが気絶してるみたいだが、テメエがやった……ってわけじゃないだろうな。このガキの『反射』はテメエみてえな一介の高校生にどうこうできるモンじゃねぇし」

「な……、誰だ……?」

戸惑う上条を余所目に、倒れた一方通行へと近寄る研究者の男。
白い少女のすぐ傍まで到達した途端、男の顔がだらしなく緩んだ。

「相変わらず愛くるしい姿してやがるなぁ、俺のガキは!惚れちまいそうだぜぇ、一方通行!っつーかもう惚れてるぜぇ!!」

ギャハハハハ!と高笑いする男の姿を見て、上条は思った。
この人は駄目な大人だ、と。

そんな上条の心情など知った事ではないとばかりに、男は白衣から携帯電話を取り出すと、

「いやあ。実を言うと前から寝顔の写真が欲しくてたまらなかった訳よ。そりゃ昔は研究対象だったし、何より本人が嫌がるから踏みとどまってたけどよぉ。やっぱあの時盗撮してでもきちんと撮っておくべきだったんだよなぁ。あー失敗だ。あっはっは、何やってんだかなぁ俺」

言いながら、携帯の写真撮影モードで白い少女の姿を何枚も撮影し始めた。
世の中には特殊な性癖を持つ人間が大勢いるが、この男もその一人なのだろうか、と上条は戦慄を覚えたところで、ふと引っかかる事があった。

「……今、『俺のガキ』とか『研究対象』とか言ってたよな……?って事は、あんたも実験の関係者なのか?っていうか、アクセラレータって……?」

どうやら二万人を“殺害する”という内容は上条達の誤解のようだったが、こうして人目につかない環境を用意し、何らかの実験を行っていた事に違いはない。
得体の知れない(しかも変態かもしれない)相手に不用意に関わるのは危険だが、こうして目の前に関係者が現れた以上、頭の中で渦巻いていた疑問を投げかけるまたとない機会でもある。

「教えてくれ!実験ってのは一体何なんだ!二万人を殺害する事でレベル6に進化する為のものじゃないのか!?」

「あ?どうしてテメエがそんな事知ってやがんだよ。こりゃ口封じが必要かなぁ?」

さらりと恐ろしい事を言う男だったが、口封じを実行に移すつもりはないらしく、面倒臭そうに頭を掻いた。

「っつーかよぉ、テメエの言う“二万人を殺害する実験”ってのは、絶対能力進化実験の事だよなぁ?」

絶対能力進化実験。
あの悪夢のような実験の名前を出したという事は、やはりこの男も関係者なのだろう。

一気に警戒心を募らせる上条に対し、研究者の男は何でもないといった風に、上条にとって衝撃的な一言を放つ。

「そんな馬鹿げた実験は、このガキが自らぶっ潰して即終了したよ。テメエは一体いつの話をしてるんだっつーの」

「―――え?」
153 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/11/27(火) 13:37:46.23 ID:dVmPMFSo0
――――――――――――――――――

「―――という訳で、ミサカはあの日以降、調整のため研究所から出る事が出来ませんでした。ご心配おかけして申し訳ありません、とミサカ9982号はお姉様にあらぬ誤解をさせてしまった事に対して謝罪します」

「な、な、な―――」

衝撃的すぎる事実を淡々と述べる9982号に、美琴は全身の力が抜けてその場にへなへなと座り込んでしまった。
美琴が自ら命を捨ててでも守ろうとしていたクローン達は、とうの昔に救われていたらしい。
他でもない、憎い敵だと思っていた少女の手によって。

今までの認識を唐突に覆され、素直に喜んでいいのかどうか複雑な心境の美琴だったが、

「―――って、やばい!じゃあアイツが今戦ってるのって全く意味ないじゃない!」

自分の為に最強の怪物と戦う決意をしてくれた少年の事を思い出し、慌てて立ち上がる。

「そ、その事なのですが……」

そんな美琴に、他とは少し様子の違う、どこかオドオドとした声がかけられた。
ミサカ19090号。9982号に首根っこを掴まれ、引きずられるように操車場まで連行されてきた少女である。

「きゅ、9982号は気付いていなかったようですが……ここに来る途中、黒いワンボックスカーがミサカ達を尾行するように走っていました、とミサカ9982号は報告します」

「な―――っ!?何故それを早く言わないのですか、とミサカ9982号は19090号の失態を咎めます!」

「ミ、ミサカは何度も言おうとしましたが、9982号が―――」

「??」

何やら慌て出すクローン達に、美琴は頭の上にクエスチョンマークを浮かべた。
御坂妹はそんな美琴の手を取り、急かすように言う。

「急ぎましょうお姉様。あの少年の命が心配です、とミサカはお姉様を急かします」

「ちょ、命って!?」

「事情は後で説明します、今は急ぎましょう、とミサカはお姉様の手を取って目的地へと駆け出します」

「え、ちょ、ちょっと、何なのよー!?」

突然どこかへと向かって走り出すクローン少女に、訳のわからないまま引き摺られていく美琴。
その隣では19090号と呼ばれた少女が9982号に首根っこを掴まれ、同じように引き摺られていた。
154 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/11/27(火) 13:38:48.85 ID:dVmPMFSo0
――――――――――――――――――

上条当麻は開いた口が塞がらなかった。
研究者の男の話によれば、自分達が命懸けで止めようとした実験は既に凍結されているらしい。
現在行われている“実験”は、白い少女の保護者にあたる人物が、彼女と『妹達』を守る為に用意した建前に過ぎなかったというのだ。

実験が行われていないならば。
上条は、一体何の為にここまで来たのだろうか。
命懸けで白い少女を殴り飛ばした事には、何の意味もなかったという事になるのだから。

「そんな……じゃあ俺は、何の意味もなくその子を……」

「あ?テメエ、このガキに何か―――」

思わず漏らしてしまった上条の呟きに、男が反応した。
言葉の意味を探ろうとした男は、気絶している少女の顔がよく見えるように顔を近付けて、

「―――っんだこりゃあ!?ぶん殴られた痕があるじゃねぇか!!」

少女の顔を見るや否や、絶叫を上げた。
高いコンテナに囲まれた空間に、男の叫び声が木霊する。

「嘘だろ……俺の、俺のガキの天使みてぇな顔に、き、傷が………」

まるで信じられないものを見るかのように、わなわなと震える顔面刺青の男。
その様子を見ていた上条の脳裏に、嫌な予感がよぎった。
155 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/11/27(火) 13:39:51.18 ID:dVmPMFSo0
上条当麻は不幸な人間である。

現金が一円もないというのにキャッシュカードを踏み壊す。
原因不明の停電によって冷蔵庫の中身が全滅。
授業をサボって保健室に行けばベッドでバカップルが発情中、逆上した男にぶん殴られ。
道を歩けば棒に当たるどころか居眠り運転に轢かれそうになり。

果ては、原因不明の記憶喪失まで。

小さなものから大きなものまで、上条の日常生活は様々な“不幸”に溢れ返っている。
そのため、上条の身体は自身に降りかかる“不幸”の気配に敏感に反応するのだ。

そんな、ある意味“不幸レーダー”とも呼べる上条の本能が、『ここは逃げろ』と叫んでいる。

学園都市最強を誇る超能力者を、ただの無能力者が倒してしまった。
知らなかったとはいえ、何の罪もない女の子を殴り飛ばしてしまった。

傍から見れば上条の方がよっぽど悪人である。

(あの男がどういった立場なのかはわからないけど、この状況はまずい!)

目の前の男の背中はわなわなと震え続けている。
まるで大事にしていた宝物に傷を付けられ、怒りに身を震わせているように。
そんな状態では、上条がどんなに事情を説明しようと見苦しい言い訳としか受け取ってくれないだろう。

弁解するにしても謝罪するにしても、まずはこの場を乗り切り、ほとぼりが冷めるのを待たなければ。
そう思った上条は、そろりそろりと忍び足でこの場を立ち去ろうとする。

「おいコラ。勝手に逃げようとしてんじゃねぇぞ、クソガキ」


―――が、男のドスの効いた声で制止され、上条の逃走劇は開始後0.1秒で終わりを迎えた。
156 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/11/27(火) 13:40:46.35 ID:dVmPMFSo0
ゆらり、と。
幽鬼のような動きで振り返った男の顔は、阿修羅像のような怒りの形相を浮かべていた。

今まさに最初の一歩を踏み出そうとしていた上条は、蛇に睨まれた蛙のように身動きが取れなくなってしまう。

「あ、あの、一応これには事情がですね……」

全身にだらだらと冷たい汗が流れ始め、思わず弁解しようと口を開いた上条だったが、それが仇となってしまう。
怒れる男は上条のどんなに小さな言葉も聞き逃さなかった。

「おいテメエ。今“事情”っつったか?ってぇ事はアレだよな。俺の可愛い可愛いガキの顔をぶん殴りやがったのはテメエだって事だよなぁ?」

しまった、と上条は思った。
事情を全く把握していない人間にとって、今の上条の言葉は『自分がやりました』と告白するようなものだ。

が、今更後悔しても遅い。
浮かべた表情から上条が犯人と断定したのだろう、男は両手の骨をボキボキと鳴らしながら、上条にとっての死刑宣告を容赦なく告げる。

「どうやって『反射』を無効化したのかは知らねぇが、俺の大事なガキに手ぇ出したんだ。覚悟は出来てんだろうなぁ、クソガキぃ!!」

「ちょ、ちょっと待――っ!不幸だあああああああ!?」

有無を言わさず迫り来る男に命の危険を感じ、持てる力の全てを振り絞って逃走する上条。

住人のほとんどが寝静まる時間帯の学園都市。
中でも特に人目に付かない夜の操車場で、命懸けの鬼ごっこが始まった。
157 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/11/27(火) 13:43:08.56 ID:dVmPMFSo0
――――――――――――――――――

「―――で?結局とうまは何の罪もない女の子を勘違いでボッコボコにして、おまけにその子の親御さんに自分もボッコボコにされて帰ってきたわけだよね?ねぇとうま、何か私に言いたい事は?」

翌日。

第七学区のとある病院の一室で、上条当麻は床に正座させられていた。
隣には能力開発の名門・常盤台中学校の夏服を着た少女が、これまた正座させられている。

「たんぱつもたんぱつだよ。とうまに間違った事を教えて。何でもっとちゃんと調べなかったのかな」

「返す言葉もないわ……」

上条の隣で正座させられている少女は、常盤台中学校のエースであり、七人のレベル5の序列第三位である超能力者の少女。
『超電磁砲』御坂美琴である。
自らの思い違いによって上条の身を危険に晒してしまった彼女は、悲痛な面持ちで佇んでいた。

「ま、まあ、御坂は勘違いしてただけなんだし、許してやれよ。なっ、インデックス」

「とうまは黙ってて!大体、どんな事情があれ女の子の顔を容赦なく殴るなんてどうかしてるかも!顔は女の子の命なんだよ!傷でも残ったら責任取れるの!?」

「……仰る通りでございます」

ほとんどが事実であるため、返す言葉もなくなってしまう上条。
相手の剣幕に押される形で押し黙ってしまう。

上条と美琴を叱り付けている少女の名前は、インデックスという。

明らかに偽名だとわかる名前を持つ英国人の少女は、とある事件から“記憶を無くす前の上条”が命懸けで助け出した相手であり、その事件が切っ掛けで上条は記憶を失った―――と、医者から聞かされている。
以来、この少女は上条の部屋に居候しているのだ。

白い生地に金色の刺繍が施され、ティーカップのような印象を与える修道服、という奇抜な服装の少女は、パンパンに顔を腫らして帰宅した上条を見るなり悲鳴を上げた。
そして事情を聞くなり、その表情が徐々に心配そうな顔から呆れ顔へと変わり、事の発端である御坂美琴も含めて相手に謝罪させようと、白い少女のいる病室へと二人を連行してきた次第である。

「……もォいいっつってンだろォが」

そんな三人の様子に不貞腐れたような声を上げたのは、左頬に大きな湿布を貼った白髪赤目の少女。
学園都市最強の超能力者である少女、一方通行である。

目の前の無能力者に殴られて気を失っていた一方通行は、“バイオレンスな保護者”によってこの病院まで担ぎ込まれてきたのだ。
ちなみに、自称保護者であるその男は『オイ医者ぁ!ガキの顔に傷一つでも残してみやがれ!猟犬部隊総出でこの病院ぶっ潰してやるからなぁ!!』などと騒いだ為、カエル顔の医者と芳川によって“丁重に”お帰り頂いた。

「っつーか、木原の野郎は保護者なンかじゃねェっつってンだろォが。能力開発の時からベタベタベタベタしてきやがって、気色悪りィったらねェンだよ」

「まあまあ、その辺にしておきなさいな。あんな人でもあなたの事を思って行動してくれてる事に変わりはないんだから。………多分」

フォローになっているのかなっていないのか微妙な窘め方をするこの女性は、現在白い少女の保護者に近い立ち位置にある研究者、芳川桔梗である。
色の抜けたジーンズに擦り切れたTシャツ。お気に入りの白衣は“とある事故”によって血まみれになってしまった為、今は着ていない。
クリーニングに出しても落ちるかどうかわからない為、新調する事も検討中である。

「……そンなこと知るか、クソが」

ぷい、とそっぽを向く一方通行に、芳川は素直になれない我が子を見るように微笑んだ。
158 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/11/27(火) 13:46:00.89 ID:dVmPMFSo0
「……アンタはそう言うけど、それじゃ私の気が済まないのよ」

そんな一方通行に、正座させられている美琴から声がかけられる。
今まで絶対能力進化実験が続いていると思い込んでいた為、それを中止に追い込んだのが他でもない一方通行であると知った知り、美琴としては複雑な心境であった。

「私、アンタの事を誤解してた。自分の利益の為にあんな実験に手を出して、あの子達を虫ケラのように殺し続けて。それでいて平気な顔で笑っていられるような、最低な人間だと思ってた」

俯いたまま、美琴は言った。

それは誇張でも何でもなく、紛れもない事実だ。
美琴にとって目の前の少女は、人の命を何とも思っていない悪党だったのだから。

そう、つい先日までは。

「だから、ごめんなさい……。謝って済むような事じゃないけど、それでも―――」

「……ハーーーーァ。常盤台の超電磁砲なンて大層な通り名で呼ばれてるからどンな奴かと思えば、そンな下らねェ事でウジウジ言ってるような三下だったとはなァ」

「な――っ!?」

自分にできる最大限の誠意を込めた謝罪を遮られ、あまつさえ“三下”などと呼ばれた美琴は、思わず顔を上げた。
本来、彼女は勝ち気な性格であるため、罵られる事に対する耐性があまりないのだ。

「別にわざわざ謝るような事じゃねェよ。俺だって一度は計画に加担したンだ。それがあまりにも下らねェ内容だったからぶっ潰した、ただそれだけだ」

「………。でも―――」

事も無げに言う一方通行だが、そんな簡単に済む話ではない事くらい美琴にもわかっている。

自らの持つ強すぎる力。
それが他人を傷付ける事を嫌い、自分の力が争いを生む事を由としなかった彼女が望んで止まなかった、更なる力。

絶対能力者。前人未到のレベル6。
その力を手に入れる事は、彼女にとって一つの夢だったはずだ。

だが。
彼女は夢も立場をもかなぐり捨て、二万人のクローン達を救う事を選択した。
大人の勝手な都合で“実験動物”として生み出された命のために、絶対能力者という夢を自ら切り捨てたのだ。

それは幼い少女にとって、どれほどの決意が必要な選択だっただろうか。

「でも、それでも私は―――」

いっそ罵ってくれればいいのに、と美琴は思った。
そんな一世一代の選択をした少女の事を、美琴はずっと悪党だと思っていたのだから。
159 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/11/27(火) 13:48:01.17 ID:dVmPMFSo0
「私は私を許せな――――いひゃっ!?」

美琴は最後まで言い切る事は出来ず、途中で舌を噛んでしまった。
尚も謝罪の姿勢を崩さない美琴の頭目掛けて、一方通行のチョップが炸裂したのだ。

「オラ、これで許してやるよ。わかったらいつまでも人の病室でウジウジしてンじゃねェ。終いにゃ追い出すぞ三下」

「ちょ、ちょっとぉ!こっちは真剣だってのに!」

「あーハイハイわかってますよォ。そンじゃちょっくら飲み物でも買ってきてくンねェ?それでチャラって事でいいよなァ」

「もう、わかったわよ―――!!」

それでもまだ不満そうな美琴に対し、一方通行は追い出すように手をひらひらと振った。

いくらか腑に落ちないが、ここで更に謝り続ける事は逆に相手の気持ちを無駄にしてしまうだろう。
そう思った美琴は、言われた通りに階下の自販機まで飲み物を調達しに行く事にした。

結局、一方通行という少女はこういう人間なのだ。
160 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/11/27(火) 13:49:50.94 ID:dVmPMFSo0
「―――そンで?オマエはいつまでここにいるつもりなンですか、三下ァ?」

「は、はいっ!?上条さんですか!?」

「他に誰がいンだよ……」

美琴が出て行ったのを確認した一方通行は、正座させられていた二人のうちのもう一人に声をかけた。
一方通行の顔面を躊躇なく殴り、病院送りにした張本人。
ツンツン頭の男子高校生、上条当麻である。

未だにインデックスからあれこれクドクドと説教を受けていた上条は、声をかけられた瞬間ビシィッ!と背筋を伸ばした。
立派に調教済みである。
どうやらこのインデックスという少女、男を尻に敷く才能があるらしい。

「オマエも超電磁砲みてェにウジウジ謝罪並べるつもりじゃねェよなァ?俺はそういうのは嫌いなンだよ、面倒臭せェ」

どうやら殴った事に対する謝罪は受け取って貰えそうになかった。

だが、罪のない女の子を全力で殴り飛ばしてしまったのだ。
上条とてそのまま引き下がるわけにもいかず、尚も食い下がる―――のだったが。

「で、でも俺、お前のスカート捲ったり色々しちまっ―――」

「それは思い出させンじゃねェよ三下ァ!!」

「は、はいぃっ!すいませんでしたぁ!!」

色々と思い出したくもない出来事を思い出させられ、思わず目の前のツンツン頭を黙らせる一方通行。
事故だったとはいえ生まれて初めて男に裸を見られ、手加減も忘れて本気でこの男を殺す為に暴れ回った事は、一方通行にとって忘れてしまいたい記憶となっていた。

対する上条は両の掌をつき、身体を前に倒して頭を床に擦り付けた。
ジャパニーズが誇る最強の謝罪体勢。つまり土下座である。
161 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/11/27(火) 13:50:55.48 ID:dVmPMFSo0
「………………」

と、そんな上条は、何やら強烈な殺気のようなものを感じて頭を上げた。

発生源は、ベッドの上の白い少女ではなかった。

「……とーうーまー?」

ティーカップのような白い修道服を身に纏った英国人の少女が、射殺すような目で上条を睨み付けていた。
上条の不幸レーダーともいえる本能が、『こいつは学園都市最強の超能力者なんかよりもずっと危険な相手だ』と訴えかける。

「あのー……インデックスさん……?」

本能的に命の危険を察知した上条の脳裏に、今までの思い出が走馬灯のように流れ――――――てはこなかった。
それもそのはず。上条当麻は記憶喪失なのだから。

「とうま」

精神的な恐怖からくる冷や汗で全身を濡らす上条に、英国シスターはにっこりと満面の笑みを見せ、

「一体この子に何をしたのかなぁ―――!?」

「のわあああああ!?」

叫んだと同時に、上条のツンツン頭目掛けて思いっきり噛り付いた。

「とうまはこの子を殴っただけじゃ飽き足らず、アレコレ不埒な行為を働いたわけ!?しかもこんな小さな子相手に!?いくらとうまでも許せないかも!!」

「ちょ、ちが、インデックス、少し話を―――」

「うるさいんだよ、女の敵っ!この子に謝って!!」

「し、死ぬ!ホントに死ぬって!インデックスさん!!」

狭い病室の床で、頭を噛み付かれたままのた打ち回る上条。
そんな様子を見て、一方通行は小さく溜息をついた。
162 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/11/27(火) 13:52:27.70 ID:dVmPMFSo0
「ンだよ、人の病室でギャーギャー騒ぎやがって。五月蝿くてかなわねェ」

「でも、こういうのも悪くはない……でしょ?」

「……フン。まァ、そういう事にしといてやるよ」

芳川の言葉に対し吐き捨てた一方通行だったが、何故だか悪い気はしなかった。
思えば『妹達』や芳川以外の人間で、何の打算も持たずに彼女と接してきた人間は久しぶりだ。

「あ、そーだ。ねぇ、ケイタイデンワーの番号教えて?退院したらとうまが迷惑かけたお詫びもしたいし!」

ふと、噛み付くのをやめた英国人の少女は、そう言って修道服の内側から携帯電話を取り出した。
単純に通話のみを目的とした、小学生の親などが子供に持たせるタイプの0円携帯だ。

「えーっと、確かここをこうして……」

「……貸せ。遅すぎて見てらンねェ」

まだ操作に慣れていないのか、たどたどしい手付きで指先を動かす少女から、一方通行は携帯電話を奪い取った。
登録名は入力せずに番号だけを登録し、突き返すように少女に手渡す。

「ありがとっ!」

これでオトモダチだね、と少女は笑った。
そんな二人の様子を見て、上条と芳川が微笑む。

誰もが恐れる怪物を相手に無邪気な笑顔を向けてくる少女。
何故だか、悪い気はしなかった。
163 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/11/27(火) 13:53:29.91 ID:dVmPMFSo0
と、その時。

「ちょっと待った、とミサカはぽっと出の修道女に待ったをかけます」

不意に横開きの扉が開かれ、『妹達』の少女が乱入してきた。
一足先に同じ病院に運び込まれていた、ミサカ10031号である。

「ミサカを差し置いてこの子と友達になろうなど百年早いわ、とミサカ10031号は新参者を牽制します」

「なっ!?私はケイタイデンワーの番号教えてもらったもん!私とこの子は“まぶだち”なんだよ!!」

「!?そんな馬鹿な、とミサカは新参者に出し抜かれた悔しさを露にします」

無い胸を張って宣言する修道服の少女に、何やらガックリといった様子で項垂れる『妹達』の少女。
と、そんな彼女の背後から、

「お待ちなさい、とミサカ10039号は自らの存在をアピールします」

「友達と聞いてミサカ達の事を忘れてもらっては困ります、とミサカ13577号は携帯電話を片手に期待の眼差しを向けます」

「ミ、ミサカもいいですか、とミサカ19090号は恐る恐る携帯電話を取り出します」

「ここはイカした渾名を命名したミサカが一番乗りでしょう、とミサカ9982号は自分に優先権がある事をアピールしつつ赤外線モードを起動します」

「べ、別にミサカはアンタと番号交換したって嬉しくなんかないんだからねっ、とミサカ10032号は流行りのツンデレスタイルを取り入れたアピールを試みます」

何人もの『妹達』の少女達が、一斉に病室へと雪崩れ込んだ。
全員が全員携帯電話を持ち、何やら期待するような眼差しを向けてくる。

「あらあら、人気者ね?」

ファンに囲まれた芸能人のような状態の一方通行に、芳川が笑いかける。

「ンだよ。揃いも揃って友達友達って、ガキじゃあるまいし。大体、誰かと仲良くお友達なンて俺には似合わねェだろォが」

「おや。ミサカ達はとっくにあなたのお友達のつもりでしたよ、とミサカは正直な気持ちを告白します」

「……フン」

そっぽを向いた少女の白い頬には、殴られたものとは違う赤みが差していた。
164 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/11/27(火) 13:57:04.87 ID:dVmPMFSo0
――――――――――――――――――

後日、とある学生寮の一室。
上条当麻の部屋のど真ん中に、学園都市最強の白い少女が居座っていた。

「あのー、一方通行さん?あなたは何故ここにいるんでせうか?」

明らかに不機嫌そうな少女に対し、おっかなびっくり尋ねる上条。
10にも満たない少女相手に高校生の男子が下手に出ているという、何ともシュールな光景である。

「っていうか、インターフォンがあるんだからそっちを使って欲しかったのですが……」

病室での騒動から数日が過ぎた頃。
上条はいつものようにインデックスに食べさせる為の食事を用意していた。
と、料理中の上条の耳に、誰かが玄関のドアをノックする音が聞こえてきた。
かと思った次の瞬間、鉄の扉が轟音と共に盛大に吹き飛ばされ、この少女がズカズカと上がり込んできたのだ。

「俺だって好きでこンな狭い部屋にいるンじゃねェよ。そもそもオマエが悪いンだろォが」

一方通行は愛らしい顔をぶすっとした表情に歪め、ぶっきらぼうに返した。
165 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/11/27(火) 13:57:46.01 ID:dVmPMFSo0
なんでも上条が一方通行を倒してしまったため、建前での“実験”は必要なくなったらしい。
あれは一方通行の持つ力が危険視されていたからこその建前であり、彼女が“ただの無能力者”に敗北した今となっては、“危険な能力を制御する為の実験”を続ける意味はないのだそうだ。

一方通行からすれば、上条の勘違いによって結果的には煩わしい“お遊び”を続ける必要はなくなった―――のだが。

「今度は逆に、オマエを倒せば事実上学園都市最強になれるだとか下らねェ事を考える連中が出てきたンだそォだ」

“学園都市最強を倒した無能力者”に勝てば、それは間接的に学園都市最強の超能力者よりも強いという事になる。
上条が一方通行を倒してしまった事により、一部にそんな噂が広まっているらしい。

学園都市最強の超能力者を相手にするのは無謀でも、それを倒した無能力者が相手ならば勝算はあると思ったのだろう。
多くの不良やスキルアウト達が血眼になって上条の存在を探しているのだとか。

「ま、マジですか……。右手の力があるとはいえ、上条さんは単なる一般人だってのに……」

上条の右手には神の加護すらも打ち消す『幻想殺し』が宿っているが、それは単に“右手で触れた異能の力を打ち消す”だけのものでしかない。
右手以外に当たれば普通にダメージを受けるし、そもそもが無能力者の集団であるスキルアウト相手では、右手の力も全く役に立たないのだ。

それでも武術の心得でもあれば何とかあしらえるかもしれないが、上条は単なる一介の高校生に過ぎない。
一対一なら勝てるが一対二なら危うく、一対三なら迷わず逃げる程度の腕前しかないのだ。
集団で襲い掛かってくる相手に対し、上条は対抗する手段を何も持っていなかった。
166 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/11/27(火) 14:01:01.68 ID:dVmPMFSo0
「そンなわけで、こっちも寮の部屋荒らされたりしてるし、オマエの護衛も兼ねてほとぼりが冷めるまで帰ってくるなって言われてンだよ」

「……誰に?」

「芳川に決まってンだろォが。別にあいつの研究所に寝泊りしてもいいンだが、木原の野郎がなァ……」

木原。

一方通行が苦手な“保護者”の名前を出した瞬間、上条はビクリと身を震わせた。
つい先日、あの“バイオレンスな保護者”を相手に命懸けの鬼ごっこに興じたばかりなのだ。

このツンツン頭の男子高校生の下で世話になれと言われた時、もちろん一方通行は拒否した。

だが、

『ハァ!?なンで俺があの三下に厄介になンなきゃいけないンですかァ!?』

『別にここに泊まってもいいけど……。ここの場所は木原数多も知っているから、あなたが来ていないかどうか定期的にチェックしているみたいよ?』

『芳川、俺がいない間ガキどもを頼ンだぞ』

こんな会話があった事により、『木原よりは三下のほうがマシ』という結論に至ったというわけである。
上条はインデックスとも同居中のため、日頃から同じくらいの年頃の娘と暮らしているなら、万が一にも一方通行相手に間違いを犯す事はないだろう―――という判断らしい。

(そういえば、昨日芳川さんから電話があった時、しきりに『あの子の事をよろしくね』とか言ってたなぁ……)

また居候が増えるのか、と吹き飛ばされた玄関ドアの事も含めて(主に家計に関して)頭を抱える上条。

「とうまとうま!この子の歓迎会も兼ねて今日の夜ご飯は豪華なお肉が食べたいかも!」

と、そんな上条に、居候その一であるインデックスがどさくさに紛れて(家系的に)厳しい要求を突き付けてきた。
その半分ほどは自己の欲望が混ざっているのではないか、と上条は疑いの眼差しを向ける。
この食欲にまみれた暴食シスターさんは、日頃から何かと豪勢な食事を要求してくるのだ。

「……ま、いいか。インデックスも懐いてるみたいだし」

自分より年下の子供、それも同じ女の子の話し相手ができた事もあり、本日のインデックスはいたくご機嫌である。
この分なら上条の学校が始まった後も退屈せずに済むだろう。
167 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/11/27(火) 14:03:18.55 ID:dVmPMFSo0
そう思った上条は、本日付けで居候そのニとなった少女に向かって、

「それじゃまあ。これからよろしくな、アクセロリータ」

「―――ハァ!?」

にこやかに笑いかけたつもりだったのだが、言われた少女の顔が凍りつく。

「ん、どうした、アクセロリ―――ぐえっ!?」

そして、何故か相手に襟首を掴まれた。
上条を睨み付ける少女のこめかみに、ビキビキと青筋が浮かんでいるように見えるのは気のせいだろうか。

「オマエ、そのつまンねェ挑発は誰の入れ知恵ですかァ?」

「ちょ、挑発!?だってお前の能力名は『一方通行(アクセロリータ)』なんだろ!?」

「ふっっっざけンじゃねェ!!俺の能力は『一方通行(アクセラレータ)』だ!」

「え、だ、だって御坂がそう言ってたし。それに『妹達』だってアクセロリータって―――」

「あンのクソオリジナルと乱造品どもがァァァァ!!」

知らず知らずに墓穴を掘ったのか、上条が弁解すればするほど襟首にかかる力が強くなっていく。
上条としては堪ったものではないが、能力ではなく単純な腕力で掴まれているため、右手の幻想殺しでもどうする事も出来ないのだ。

上条が『アクセロリータ』という名称を知ったのは、御坂美琴から実験内容を聞かされた時である。
美琴の部屋で発見した計画書には『一方通行』とだけ書いており、振り仮名(ルビ)は振られていなかったため、上条はそれが一方通行の能力名だと思っていたのだ。

ちなみに、美琴も同じ理由で『アクセロリータ』が正式な能力名だと思い込んでいるのだが、上条には知る由も無かった。
168 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/11/27(火) 14:04:47.68 ID:dVmPMFSo0
「とりあえず――――死体決定だ三下ァァァ!!」

「のわああああ!?不幸だああああああああああ!!」


とある学生寮の一室に、不幸な男子高校生の悲鳴が響き渡った。














【絶対能力進化実験?】end

to be continued...?
169 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/11/27(火) 14:11:22.65 ID:dVmPMFSo0
投稿遅くなりましたがひとまず終了。
木原くンがロリコンなのは途中でばれちゃってたので、散々待たせといて予想通りかよ!って思うかもしれないけど許して…!
170 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/11/27(火) 14:13:37.27 ID:SM/v0w330

上条さんがマトモなままで安心したよ。セロリとインちゃんの白白コンビはかわいさ爆発なんだよ!
171 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/11/27(火) 14:25:14.90 ID:dVmPMFSo0
【おまけ】


『海!海!!海なんだよっ!!!』

『うるっせェ!海如きではしゃいでンじゃねェぞクソガキィ!!』

『ふーんだ!あくせられーたより私のほうが年上だもん!ガキはそっちなんだよ!』

『ンだとォ!?』


“学園都市最強を倒した無能力者を倒せば、事実上最強になれる”。
不良達の間でまことしやかに噂されている話により、無能力者である上条当麻の身の回りには物騒な雰囲気が漂っていた。

そんなある日、『ほとぼりが冷めるまで学園都市の外に行っていろ』という通達を受け、どういうわけだか学園都市の外へと追いやられた上条。
居候二人を連れ、なんやかんやで海辺の民宿へとやってきたのだ。


―――しかし。


『おーい、インデックスー』

『あァ!?俺のどこをどう見ればあのクソシスターと間違えンだよ三下ァ!』

『え……インデックスさん?何で一方通行の物真似なんかしてるんだ?』


学園都市を離れ、束の間の休息を楽しんでいたはずの上条の身に、不可思議な現象が襲い掛かる―――!



『う、嘘だろ……嘘だと言ってくれよ……!』

『あらあら。当麻さん的には久しぶりに会うお母さん相手に緊張しちゃったのかしら?』

『何で、何でお前がここにいるんだよ――――――木原ぁぁぁ!!』









次回、とある幼女の一方通行

【幼女落し(ロリータフォール)】

バカンスと幼女が交差する時、物語は始まる―――?
172 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/27(火) 14:28:08.64 ID:qKfIoTdco
乙。
次回が楽しみです
173 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/11/27(火) 14:28:36.10 ID:dVmPMFSo0
これで本当におしまい。
幼女落し編は時間があれば書くかも。

みなさんありがとうございました!
174 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/27(火) 14:39:17.47 ID:ZauUu/Eeo
かけよかいてくださいよ(土下座)

乙です。面白かったです
175 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/27(火) 17:12:23.13 ID:Tc7kRQjDO
書いてくれ!俺達のために書いてくれ!!
176 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/11/27(火) 17:54:01.40 ID:lm9FFRfh0


インさん最強だなやはり

続けるにしても違うのするにしても期待してる
177 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(広島県) [sage]:2012/11/27(火) 18:39:47.02 ID:4PlIiluTo

アクセロリータはマジで天使だったな
白白コンビのかわいさは異常
178 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/27(火) 18:49:43.22 ID:gpUsItNSO
乙!!おもしろかった!!
幼女たまらんでぇ
179 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/27(火) 21:18:20.42 ID:8JR6mo960
幼女通行にもしっかりフラグを立ててしまう安心の上条さんクオリティ。
180 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/27(火) 21:51:30.56 ID:T3+eqVIIO
この上条とはくっつかせたくない…
181 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/28(水) 11:28:18.21 ID:KnnRluPg0
なんか最後のほう上条さんに話の流れ食われてたな。
一方通行メインだと思ってたから残念だった。結局上条かよ、って。
というか結局ロ合子の顔殴ってるしここの上条は支持できない。倒れたロ合子ほっといてほとぼり覚めるまで逃げようとか考えるクズ条だし。

話自体は面白いから続きは読みたいけどエンジェルフォール再構成だとまた話の主軸にウニ頭が出しゃばってくるんだよなぁ。
インちゃん、妹達、オリジナルとの絡み希望。(あと芳川と木原)
ウニはいらん。
182 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2012/11/28(水) 13:22:21.28 ID:EyNPrZe+o
じゃあ見なけりゃいいんじゃね?
183 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/11/28(水) 14:06:24.54 ID:1bx1FAZ2o
木原がブチ切れてて話聞いてくれそうにないから落ち着くまで退こうとしただけじゃないのか
そんなにクズってほどでもないような
184 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/28(水) 16:48:20.66 ID:in/Eede5P
ここは女の子を殴ったら絶対悪という考え方の人が多いインターネッツなんだよ
185 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(滋賀県) [sage]:2012/11/28(水) 23:22:45.56 ID:mxwTtUMj0
別に逃げて良くないか?逃げないと木原君に殺されかねないし、後で謝れば良い。
大体上条さん地味に自分から頭突っ込んだとはいえ今回は騙された被害者だよね?
騙されて女の子を殴って罪悪感に苛まれ木原君に顔面の形が変わるまで殴られ、
禁書目録に噛まれて……踏んだり蹴ったりだよね。この上条さん、記憶喪失のせいで人生経験薄いし。

大体さね、計画が本当かどうか美琴が一方通行本人に
落ち着いて聞いていればそれで済んだ可能性も有った。
何故殺したの一言を言えば「は?殺してねーし」と返ってきただろう。
禁書目録の言った通りちゃんと調べれば回避出来た筈。

そもそも打った後に優しくするのってそれはジゴロの手口だからね?
そっちの方が悪くないか?一方通行の服を剥ぎそうになったのは許せんが。
186 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/28(水) 23:27:48.55 ID:3icQFEAgo
長文レスはやめとけ
187 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage saga]:2012/11/28(水) 23:38:40.97 ID:HhW8HCrxo
禁書好きなら、キャラへの好き嫌いは無しにしようぜ。
188 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/28(水) 23:55:27.70 ID:uk3lMn7no
どっかで誰かが言ってたなぁ
ファンが空白部分を悪い方向に妄想してるみたいなこと

どーでもいいんだよ
189 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga sage]:2012/11/29(木) 00:38:28.74 ID:ltLV+dEt0
空気を読まずに実験編以降の人物設定とか投下しちゃう。


【一方通行】

読み方は『アクセラレータ』。本名不明。周囲の人間からは能力名で呼ばれる。
齢9つにして学園都市230万人中最高の頭脳を誇るスーパーお子様。七人しかいない超能力者(レベル5)の第一位。
木原数多直伝の各種戦闘技術を持っていたりもする。

肩まで伸びた白い髪に、陶器のように滑らかな白い肌。透明感のある赤い瞳が特徴。
これは自身の能力によって紫外線などの外部刺激を常に『反射』しているからで、身体が色素を必要としていない為。
体格は同年代の子供に比べてやや小柄。

服装は白を基調としたものを好んで着ている。
かつての私服はボーイッシュなものが多かったが、あまりにも女の子らしさがないため芳川に全て没収された。
現在は芳川が買い与えたブランド子供服のワンピースを愛用中。靴は子供用のサンダルを履いていることが多い。
自身の幼い容姿を本人も多少気にしており、彼女を『アクセロリータ』呼ばわりした者にはもれなく天国への日帰り旅行が待っている。

その奇抜な容姿・強すぎる能力から、同年代の子供から爪弾きにされてきた過去を持つ。
そのため、小学校には籍はあるもののほとんど通っておらず、事実上の不登校状態。

かつて絶対能力進化実験を自ら潰し、二万人の『妹達』を実験動物という立場から解放した。
その事もあり、『妹達』に懐かれている。
……のだが、彼女達には会う度に振り回されてばかりいる。

ブラックコーヒーの飲みすぎと『妹達』に会う度からかわれているイライラから、この歳にして胃痛持ち。
カエル顔の医者から処方された胃薬を常に持ち歩いている。

『妹達』の事を『乱造品』呼ばわりする事が多いが、これは本心からの言葉ではなく、所謂照れ隠しのようなもの。
自分に対して打算抜きで接してくれる彼女達の事は何だかんだで悪く思っていない。

最近、とある出来事から友達が増えた。
現在その友達と共にとある男子高校生の家に居候中。



【上条当麻】

触れただけで神の加護すらも打ち消す事のできる特殊な右手『幻想殺し』を持つ男子高校生。
これはありとあらゆる異能の力を消滅させるが、代償として自身の幸運なども打ち消しているらしい。
そのため、異常なまでの不幸体質を持つ。

短い黒髪をツンツンに立たせたウニのような髪型が特徴。
基本的に放課後でも制服姿で過ごしている事が多い。

とある事件から一人の少女を救った際、原因不明の記憶喪失を患う事となる。
が、周囲の人間には記憶喪失である事を隠して生活している。

正義感が強く、困っている人を見たら放っておけない性格。
人助けのためなら相手が10にも満たない幼女だろうが構わずに顔面を殴り飛ばす。

が、最近それが原因で痛い目を見たため、相手が女性の場合は加減する事も覚えた様子。

現在、居候の少女二人と共に生活中。
暴食シスターと最強のお子様という錚々たるメンツに囲まれ、主に家計的な意味で頭を抱える日々が続く。



【禁書目録】

正式名称は『Index-Librorum-Prohibitorum』。通称インデックス。
とある事情から上条の家に居候している少女。明らかに偽名だが、周囲の人間はさほど気にしていない様子。

白い肌に長い銀髪、緑色の瞳を持つ見た目14か15歳くらいの少女。実年齢不詳。
白い生地に金色の刺繍が施された、ティーカップのような印象の修道服を常に着込んでいる。
何故か至る所を安全ピンで留めている為、飛行機に乗る際は毎回金属探知機のお世話になるとか。

小柄な体躯に似合わず、上条家の家計を(主に食費方面で)圧迫し続ける暴食シスターさん。
その無邪気な性格から、基本的に他人を遠ざけるタイプの一方通行ともすぐに打ち解けた。

一方通行と知り合う以前は自分よりも年下の知り合いがいなかった為、彼女の事は何だかんだで気に入ってる様子。
インデックスとしては自分が年上だという事もありお姉さんぶりたいのだが、相手は学園都市最高の頭脳を持つため空回りに終わる事が多い。

周囲からは『幼稚な姉としっかり者の妹』というイメージを抱かれているとかいないとか。
190 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga sage]:2012/11/29(木) 00:41:08.60 ID:ltLV+dEt0
【妹達】

学園都市の超能力者の第三位、御坂美琴のDNAマップを用いて生み出された体細胞クローンの少女達。
元は『人工的に超能力者を量産する』というコンセプトで生み出された量産型軍用モデル『妹達(シスターズ)』。その数にして二万人を誇る。

肩口で切り揃えられた茶髪に、化粧はいらない程度に整った顔。能力開発の名門校である常盤台中学校の制服を着込んでいる。
姿形だけは御坂美琴と瓜二つだが、性格は本人とは正反対である。

かつて一方通行によって絶対能力進化実験から救い出され、二万人のうち半数ほどは学園都市を脱出済み。
カエル顔の医者の伝手を使い、世界各地に散らばっている。

クローン人間特有の同一脳波を用いて電磁的なネットワークを構成しており、それによって知識や記憶などの情報を共有している。
つまり一人が見聞きした事柄は二万人全員に伝達される。
一見すると軍事価値のありそうなシステムだが、最近は一方通行絡みの情報ばかり飛び交っており、平和ボケした使い方しかされていない。

自分達を実験動物という立場から救ってくれた一方通行の事を憎からず思っている様子。
会う度に彼女の事をからかっているが、それは可愛い子ほどいじめたくなるという心理からきているもの。
普段強気な少女がふとした瞬間に見せる気弱な一面が堪らないんだとか。
誰かが彼女の貴重な表情を目に納めた瞬間、世界中の『妹達』が同時にニヤニヤし始めるらしい。

現在確認されている学園都市残留組は9982号、10031号、10032号(御坂妹)、10039号、13577号、19090号の六人。
9982号はとっくに調整も終わっているのだが、お姉さま(美琴)と一方通行のいる街を離れたくないという本人の希望により残留中。

『妹達』は基本的に一方通行の事を命の恩人かつからかいがいのある友達だと思っているが、
10031号と19090号だけは彼女に対して本気だという噂もあるとか。



【御坂美琴】

能力開発の名門校である常盤台中学校に通う少女。
『超電磁砲(レールガン)』の異名を持つ超能力者(レベル5)の第三位。

ある日偶然『妹達』の一員であるミサカ9982号と出会ってしまい、絶対能力進化実験の存在を知る。
かつて『筋ジストロフィーの治療法を研究するため』という名目に騙されてDNAマップを提供してしまい、
その事が量産型能力者計画、更には絶対能力進化実験を引き起こしてしまったと自身を責めていた。

当初は自身のクローンである『妹達』に対して悪印象を持っていたが、僅かな時間とはいえ9982号と行動を共にするうち、認識を改めた。
実験の存在を知った後、9982号が一方通行(のベクトルマッサージ)によって殺害(気絶)されたのを目の当たりにし、怒りに任せて交戦。
切り札であるレールガンすらも『反射』され絶体絶命かと思われたが、その場に現れた他の『妹達』によって戦闘は中断された。

戦闘中は碌に会話もなかったため、その時の一方通行は美琴の事を『妹達』の一員だと思っていたとか。
また、『妹達』もオリジナルである美琴が何故乱入してきたのか理解していなかった。

後に誤解は解けたものの、一方通行を悪党だと思い込んでいた事に対して多少の負い目を感じている。
が、当の一方通行本人が全く気にしていないため、彼女に対して複雑な心情を抱く。

『妹達』や実験に関して思い悩んでいたため暗い言動が目立っていたが、本来は勝ち気で明るい性格。
中学生にもなってゲコ太グッズ収集が趣味という子供じみた一面も持つ。
191 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga sage]:2012/11/29(木) 00:45:38.51 ID:ltLV+dEt0
【芳川桔梗】

遺伝子関連の研究を専門とする科学者。
かつてはその腕を買われて絶対能力進化実験に参加要請がくる程の研究者だったが、
一方通行が実験を潰した事を受け、彼女の力を利用しようとする大人達から彼女と『妹達』を守る事を誓う。
現在、学園都市残留組の『妹達』の世話をしながら暮らしている。

一方通行と『妹達』の事を我が子のように思っており、女の子らしくない服装や言葉遣いには手厳しい意見を述べる。
現在一方通行が所持している服は全て芳川が買い与えたものであり、これは言葉遣いが駄目ならせめて服だけでもという考えから。

彼女が残した名言に『女の子は中身はともかく外見は磨くこと。でないと“養ってくれる男(かねづる)”を捕まえられないわよ』というものがある。
しかし当の芳川本人が『二十代後半・独身・彼氏なし』のトリプルパンチであり、
おまけに色の抜けたジーンズに擦り切れたTシャツ、上から白衣という服装を好んでいるため、あまり信用されていない。



【木原数多】

短く刈り上げた金髪に顔面刺青という、さながらヤのつく自営業の方々を彷彿とさせる風貌の男。
一方通行の能力開発を手がけた最初の研究者だが、とある事情から『猟犬部隊(ハウンドドッグ)』と呼ばれる特殊部隊に異動となった。

一方通行の事を溺愛しており、携帯電話の画像フォルダは彼女の(隠し撮り)写真で埋め尽くされている。
能力開発担当から外れた後もこっそり様子を見に行ったり、芳川の研究所に出入りしていないか定期的にチェックしている模様。
また、彼女に『悪い虫がつかないように』という理由でありとあらゆる護身術を叩き込んだ張本人でもある。

現在、一方通行の『反射』を無効化する特殊な体術を(主にスキンシップのために)研究中だとか。



【カエル顔の医者】

どんな病気や怪我でも決して患者を見捨てず、あらゆる手段を用いて治療してしまう事から『冥土帰し(ヘヴンキャンセラー)』の異名を持つ医師。
顔がカエルに似ているため、美琴からは『リアルゲコ太』と密かに呼ばれている。

一方通行と芳川に協力し、調整を終えた『妹達』を学園都市外へ脱出させる手引きをしていた。
ナース萌えらしいが、最近では『妹達』×一方通行も悪くないと思っているとか。
192 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga sage]:2012/11/29(木) 00:52:07.53 ID:ltLV+dEt0
当SSの登場人物はこんな感じでお送りしております。

御使堕し編は構成考えるのと御使堕しの仕様がよくわからないのとでちょいと時間かかりそうです。
193 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/11/29(木) 03:08:58.32 ID:T1UyZ3tjo
おつ、シスターズからの上条の評価が気になるww
すれ違いざまにビリッとしてやろうくらいは考える奴が結構いそうだ
194 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/29(木) 08:41:40.44 ID:Hq3DOahDO
逆にスカートめくりが見れたから感謝するかもしれん
195 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2012/11/29(木) 11:11:11.63 ID:jAfIkB6AO
描写を見るに桜色のぽっちり二つまでばっちり見えてそうだしな
196 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/11/30(金) 11:56:07.46 ID:O6iAH86N0
八月二十五日。
夏も終盤だというのにもかかわらず、学園都市はむせかえるような猛暑に見舞われていた。

現在時刻は午後一時。昼下がりの商店街はまさに炎天下のピーク真っ只中である。
総人口の八割が学生である学園都市では、こんな日はよほどの物好きでもない限りは冷房の効いた部屋で涼んでいる人間のほうが多い事だろう。
何しろ今は夏の長期休暇期間中であり、更には学生の宿命ともいえる夏休みの宿題の提出日が一週間後に迫っているのだから。

「あ、あつい……日本の夏は厳しすぎるんだよ……」

そんな中、商店街を二人の子供が並んで歩いていた。

一人は年の頃が14〜15くらいに見える、銀色の髪に緑の瞳を持った英国人の少女だった。
白い生地に金色の刺繍が施されたティーカップのような印象を受ける修道服という、日本の街中では目立って仕方ない装いをしている。

彼女の名は『Index-Librorum-Prohibitorum』。通称インデックス。
とある男子高校生の家に居候中の少女である。

肌の露出を極力抑えるようにデザインされている修道服は、お世辞にもこの季節に適した服装であるとはいえず、見ているほうが暑苦しくなってくる。
着ている本人も辛いのか、先程からしきりに弱音を吐いていた。

「ンだよ、情けねェ。ガキってのは炎天下でも元気に遊びまわるモンじゃねェのかよ」

そんなインデックスを冷たくあしらうのは、白い髪に白い肌、赤い瞳という、これまた奇抜な容姿の少女だった。
こちらは夏物の白いワンピースに子供用のサンダルと、いかにも夏らしい服装だ。
猛暑日にもかかわらず涼しげな顔で歩いており、そのきめ細やかな肌には汗一つ掻いていない。

「うー、あくせられーたはずるいかも!自分だけ『反射』に閉じこもって!この国ではそういうのを“ヒキコ=モリー”って言うんだよ!」

「それを言うなら引き篭もりだ。っつーか、俺はこうして外に出てるだろォが。引き篭もりってのは家から一歩も出ねェ奴の事を言うンだよ」

人の気も知らずに簡単に言う少女にインデックスが食って掛かるが、当の本人は何食わぬ顔で歩き続ける。
能力によって太陽熱も紫外線も『反射』しているこの少女は、真冬だろうが炎天下だろうが、熱や冷気などの外部刺激を『反射』する事で常に快適な環境を保っているのだ。

少女の名は一方通行。もちろん本名ではない。
学園都市に七人しかいない超能力者(レベル5)の第一位である彼女の本名を知る者は誰もおらず、周囲の人間からはその能力名で呼ばれている。
その可憐な姿に似合わず、齢9つにして学園都市230万人の頂点に君臨する最強のお子様である。
197 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/11/30(金) 11:56:42.89 ID:O6iAH86N0
「あ、あれ?それじゃあとうまは?とうまは“ヒキコ=モリー”なの?」

「まァ、ここ何日かの状態だけを言うンならそうなるな」

「た、大変かも!とうまが“ヒキコ=モリー”になったら家庭が崩壊しちゃうんだよ!」

恐らくテレビで引き篭もり関連のドキュメンタリー番組でも観たのだろう。一方通行の言葉にインデックスが慌て出す。

『とうま』というのは彼女達が居候している部屋の主であるツンツン頭が特徴の男子高校生、上条当麻の事である。

彼は数日前の八月二十一日、ひょんな事から学園都市最強を誇る一方通行を病院送りにしてしまった。
その事が原因で“最強の超能力者を倒した無能力者を倒せば、事実上最強になれる”という噂が不良達の間に流れてしまい、現在、街中の不良や『武装無能力集団(スキルアウト)』からその身を狙われているのだ。

別に上条の顔が割れているわけでも、学園都市にいる無能力者が上条だけというわけでもないのだが、彼らはそれらしき者を探すために片っ端から『人間狩り』を行っているというのだから堪ったものではない。
特にスキルアウトは構成員のほぼ全員が無能力者であるため、彼らの間で内輪揉めまで起こっているという話もある。

(別に三下がどォなろうが知った事じゃねェンだが、後で芳川に文句言われンのも面倒臭せェからなァ)

一方通行は現在、インデックスと共に上条当麻の部屋に居候中である。
これは現在彼女の保護者的な立場にいる研究者、芳川桔梗の提案だ。

そもそも上条が一方通行と戦い、結果的に倒す事となった切っ掛けは、『一方通行が非道的な実験に協力している』という誤解からきたものだった。
不本意だったとはいえ、この状況を作り出した要因には彼女も一枚噛んでいるのだ。

“無能力者に敗北した”ことにより、一方通行自身も不在の間に部屋を荒らされたりと、不良達から何かと狙われる立場にあった。
そのため、『ほとぼりが冷めるまで“お友達”の家に泊まってきなさい』という保護者命令により、半ば強制的に上条の家に追いやられたのだ。

ちなみに、これには無能力者である上条当麻の護衛という意味も含まれていたりする。
『それに彼、何の能力も持っていないみたいだから。いざとなったらあなたが守ってあげるのよ?』という事らしいが、9歳の少女に15歳の男子高校生のお守りをしろというのも如何なものだろうか。

(っつってもまァ、このクソシスターだけじゃ買い物も碌に出来ねェだろうし、結局俺が行くしかねェってワケだ)

そんなわけで、家主である上条当麻に外出禁止を言い渡し、居候その一である英国少女と共に夕飯の材料を買出しに来た帰り道なのである。
198 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/11/30(金) 11:57:16.13 ID:O6iAH86N0
猛暑の中、買い物袋を片手に居候先までの帰路を歩く。
その間、隣を歩く少女は尚も変わらず弱音を吐いていた。

「うー……こんな暑い日は海水浴にでも行きたいかも……」

「オマエ、ニュース観てなかったのかよ。今年は巨大クラゲが大量発生中って言ってただろォが」

「あぅ……」

インデックスのささやかな望みを、一方通行がばっさり切り捨てる。
何でも今年の夏は太平洋沿岸で巨大クラゲの大発生が観測されており、観光用ビーチなどの客足はゼロに等しいのだとか。

「そもそも、学園都市を出るには色々面倒臭せェ手続きが必要なンだよ。保証人も必要になるしなァ」

学園都市内で行われている能力開発などの技術流出を防ぐため、この街を出るにはそれ相応の手続きが必要となる。
三枚の申請書類にサインをし、保証人を用意した上で、血液中に極小の発信機(ナノデバイス)を注入する―――といった、非常に面倒な手順を踏まなければならないのだ。

仮に海水浴に行くとした場合、一方通行の保証人は芳川で問題ないだろう。
だが、この本名・年齢共に不詳の英国シスターというあからさまに怪しい少女の保証人など、一体どこの誰に務まるだろうか。

そもそも、このシスターは学園都市在住者の証であるIDを持っているのだろうか。

と、一方通行はそこまで考え、

(……面倒臭せェ。大体、夏休み終盤になってから旅行なンざ行くような物好きはいねェだろ)

面倒になり考えを放棄した。
一方通行は子供ながらにして学園都市最高の頭脳を持っているが、興味のない事に頭を使うのは好きじゃないのだ。
199 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/11/30(金) 11:58:05.42 ID:O6iAH86N0
「ただいまー」

「………」

「ほら、あくせられーたもただいまって言わなきゃだめなんだよ」

「チッ……、……タダイマ」

それから十分ほど歩き、一方通行は居候先である上条当麻の部屋へと戻ってきた。
無言で中に入ろうとした所をインデックスに咎められ、無愛想に形だけの挨拶をする。

どうもこのインデックスという少女、何かとお姉さんぶりたい年頃らしく、一方通行の素行に対してアレコレ口出ししてくる事が多い。
以前の一方通行なら無視するなり言い返すなりしていたはずだが、この無邪気な少女相手ではそれも気が引ける。
そういうわけで、彼女にしては珍しい事に、大人しく少女の命に従っているのだ。

「おう、おかえり。悪いな、買い物まで行かせちまって」

部屋の奥から少年の声が二人を出迎えた。
この部屋の主である男子高校生、上条当麻のものである。

「ふふん、こんな小さな子を一人でお使いになんか行かせられないからね!子供の面倒を見るのはお姉さんである私のつとめなんだよ!」

「……おいクソガキ。会計済ませたってのに菓子コーナーで散々駄々こねてたのはどこのどいつだァ?」

「ぎくっ!?」

一方通行に指摘され、ギクリと身を震わせるインデックス。
彼女としては『ポテトチップスいちごおでん風味』なる新発売のお菓子を食べてみたかったのだが、白い少女に修道服の首根っこを掴まれ強制的にスーパーの外へ連行されたため、泣く泣く断念したのだ。

常日頃から家計に頭を悩ませている少年にこの事が知れれば、お得意のお説教が待っていることだろう。

「と、とうま……?」

「あれ、ここにもないぞ……どこにあるんだよ……」

そんなインデックスは恐る恐る少年の様子を見るが、当の上条は部屋の奥でゴソゴソと何かを探しており、それどころではないようだった。
200 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/11/30(金) 11:59:11.88 ID:O6iAH86N0
「何してンだ、三下」

怪訝に思った一方通行が声をかけると、上条は探し物を中断して顔を上げた。

ほんの20分ほど留守にしていただけだというのに、その間に部屋中が散らかされている。
よほど重要な探し物なのだろうか、と一方通行が思ったところで、

「あー……。なんか俺、明日から暫く学園都市の外に行かなきゃならなくなった」

だからIDを探してたんだ、と上条は続けた。

「……ハァ?」

予想外の答えに、一方通行の口から間の抜けた声が漏れた。

どうやら“よほどの物好き”は、一方通行のごく身近にいたらしい。
201 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/11/30(金) 12:00:41.37 ID:O6iAH86N0
とりあえず短いですがここまで。
202 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/11/30(金) 12:10:24.29 ID:fHcF2OP70
y6y6y5
203 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/30(金) 13:52:15.26 ID:+zJ/ia5Jo
204 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/11/30(金) 17:45:44.59 ID:3x/I/n4x0


続編がんばれぃ

205 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/30(金) 20:06:09.12 ID:e8d3CTEW0
> 一方通行自身も不在の間に部屋を荒らされたりと
留守にしている間に下着が無くなっているんですねわかります。
ええすごくよくわかりますとも。
206 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/11/30(金) 20:17:33.50 ID:oKrJ6DJzo
つまり不良やスキルアウトはロリコンの集まりということですね
207 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/01(土) 21:13:28.13 ID:wxCQacJh0
おい、そんな変な事を言ったら……
妹達の一部が薄い本を書くかもしれないだろう!?
208 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/02(日) 15:58:52.79 ID:g1sN0Y8xo
その薄い本とやら今月末にでも出るのかい?
全力で買わせていただくけど。
209 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/02(日) 18:47:21.50 ID:TgEr9llmo
キャパシティダウン使われて不良達にいいようにされちゃう最強の幼女か・・・
210 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/02(日) 22:56:43.41 ID:N+3i+lyDO
>>1乙!相変わらず面白いな気体

>>209ゴクリ…
211 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/03(月) 00:47:08.31 ID:nPqZqLXn0
――――――――――――――――――

第七学区にある大型ショッピングセンター『セブンスミスト』。
主に洋服などを多く取り扱っているこの店は、それなりの品質の物をそれなりの価格で提供しており、一言で言えば『普通』の品揃えである。
特にブランド品などを扱っているわけでもないため、お洒落に拘る人であればデパート等に行ったほうがいいだろう。

しかし、学園都市はその名の通り人口の八割が学生である。
研究の報酬金などが望める一部の高位能力者を除き、一般の学生は金銭面に余裕のない人間がほとんどなのだ。
そのため、この場所はお金のない学生達にとって定番のお買い物スポットとなっている。

「……で?なンだってこンな時期にわざわざ海なンだよ」

店内を歩く一方通行は、隣を歩く無能力者の少年に不機嫌そうな声をかけた。
彼女としてはわざわざ外に出るつもりはなかったのだが、この少年を一人で出歩かせて『人間狩り』の餌食になられても困るため、同行せざるを得なかったのだ。

「俺も驚いたよ。何でもお偉いさん直々の命令だとかで、拒否権はないんだとさ。まだ宿題も終わってないってのに、不幸だ……」

一方通行から冷ややかな視線を浴びせられ、上条はげんなりとした様子で項垂れた。

どうやら“よほどの物好き”こと上条当麻は、これ以上混乱が広まるのを防ぐため、厄介払いされるかのように学園都市外への旅行を命じられたらしい。
行き先は神奈川県にある海の家『わだつみ』だそうだが、先程一方通行が言った通り、今年は巨大クラゲ発生の影響で客足はゼロ。
そこはかとなく悪意を感じるチョイスなのだが、上層部命令ということもあり、有無を言わさず追い出される事となってしまったのだ。

そんなわけで、昼食を手早く済ませた後、旅行の支度をするべくセブンスミストへとやって来たのだ。
もちろんインデックスも一緒である。
212 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/03(月) 00:50:23.55 ID:nPqZqLXn0
「とうまとうま!あっちに水着コーナーがあるんだよ!」

「おー、そんじゃ適当に見繕うか」

旅行と聞いてテンションが上がったのか、インデックスはめっぽうご機嫌である。
シスターとはいえ年頃の女の子ということもあり、ショッピング自体も好きなのかもしれない。

「ほら、あくせられーたも早く早く!」

「ったく、はしゃいでンじゃねェよクソガキ」

無邪気にはしゃぐインデックスに急かされるように、水着コーナーへと向かう。
大型店舗だけあって多くの商品を取り扱っており、競泳水着からビキニまで多種多様な水着が並んでいる。

(……別に悪い事をしてるわけじゃないんだけど、女物のコーナーって何となく落ち着かないんだよなぁ)

セブンスミストは貧乏学生御用達のお買い物スポットであるが、その品揃えの傾向は女性用の服などに多く偏っている。
もちろん男物もあるにはあるのだが、やはり男子よりも女子のほうがファッション好きが多いという事もあり、女性用コーナーに比べて男性用コーナーの面積はだいぶ小さい。
したがって、水着コーナーで取り扱っている商品もほとんどが女性用であるため、男子高校生である上条は何となく居心地の悪さを感じてしまうのであった。

「ねぇとうま、これなんかどうかな?」

「そうだなー。あっちに試着室があるみたいだから、一応サイズとか確認しとけ」

「わかったんだよ!」

どうやら気に入った物があったのか、水着を持って試着室に向かうインデックス。
本来の目的は上条の旅行の支度だったのだが、いつの間にやら彼女の水着選びへとシフトしていた。

(まあいいか。インデックスにとっていい思い出にもなるだろうし)

実はこの英国シスター、とある事情によって一年より前の記憶を失っている。
その一年の間にどんな暮らしをしていたのかは知らないが、カエル顔の医者から聞いた話によると、とても平穏とは言い難い生活だったようだ。
当然、暢気に旅行なんて行ってる場合ではなかっただろう。

つまり、記憶のない彼女にとっては“誰かと海水浴に行く”というのは初めての経験ということになる。
一緒に暮らしている上条としても、この無邪気な少女にはなるべくいい思い出を作ってあげたいという気持ちがあった。
213 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/03(月) 00:53:47.87 ID:nPqZqLXn0
「ったく、なンだってガキの水着選びなンざ付き合わなきゃならねェンだよ」

そんな上条に、一方通行はぶっきらぼうな声を向ける。
極めて特殊な環境で育ってきた彼女にとって、“仲良くお買い物”などという雰囲気はどうにも性に合わないのだ。

「まあまあ、そう言うなって。お前も好きなの選んでいいんだぞ?」

「……クソが。俺が水着なンか着て波打ち際ではしゃいでるようなキャラに見えンのかよ」

一方通行は能力に目覚めてから今に至るまで、様々な研究機関を転々としてきた。
そのほとんどの期間を能力開発に費やしてきたため、学園都市から出た事は全くないといっても過言ではない。

当然、海水浴に行った経験などあるはずもなく。
ましてや同じくらいの子供のように波打ち際ではしゃぎまわるなど、自分でも想像がつかない。

いや、それ以前に。
そもそも水着すら生まれてから一度も着た事がないような気がする。

「そうかー?お前、見た目だけなら可愛い女の子だし、こういうのも似合うんじゃないか?」

そんな一方通行の心情を知ってか知らずか、上条はそんな事を言いながら適当な水着を取り出した。
薄いピンクの生地をベースに小さな花柄の模様が描かれ、フリルがたっぷりとついた子供用の水着である。

「んー、やっぱり似合うな。色が白い人にはピンクが似合うっていうけど、これはなかなか悪くないんじゃないか?」

一方通行の服に重なるように水着を持ち、何やらアレコレ検証し始める上条。
彼女の肩がわなわなと震えている事には気が付いていない。

「ちょっとフリルが多すぎるような気もするけど、最近の子供用水着ってのはなかなかお洒落な―――」

「三下ァァァァ!!よっぽど死にたいらしいなァ!!」

「ちょ、一方通行さん!?何を怒っていらっしゃるのでせうか!?」

人の気も知らずに勝手に盛り上がる上条に、一方通行のイライラが爆発した。
芳川に私服を没収されるまでボーイッシュな服装を好んでいた彼女には、フリルつきの水着など耐えられるわけがないのだ。
214 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/03(月) 00:54:19.55 ID:nPqZqLXn0
「カ、カミやん……?」

と、そんな上条と一方通行の背後から、男の声がかけられた。
恐る恐るといった様子のその声は、テノール歌手も真っ青な超低音ボイスである。

上条は記憶喪失であるため三週間より前の記憶はないが、その声には嫌というほど聞き覚えがあった。
それも夏休みの日課となっている補習の中で、だ。

つまり。
背後にいる人物は、上条にとってごく身近な人間である。

「………」

ギギギ、と錆付いた音が鳴りそうな動きで上条は振り向いた。

声の主は、上条の予想通りの人物だった。

前述した通りの野太い声に、180cmを軽く超える長身。
明らかに染めているであろう髪は青く、両耳のピアスが激しく自己主張している。

毎日のように補習を受けているが、それは担任(合法ロリ)に叱られたいがためにあえて成績を落としているらしい。

現在は学生寮ではなくパン屋に下宿中。
パン屋の制服がメイド服に酷似しているからという、下心丸出しの理由から。

どうやら記憶を失う以前からの友人のようだが、上条は数回会っただけで彼の性格を理解していた。
すなわち、真性の馬鹿である、と。

「カミやん……」

そんな馬鹿こと青髪ピアスは、子供用の水着を持った上条をかわいそうな人でも見るかのような目で見ていた。

「……確かに僕は言うたよ?目の前に突然アルビノ幼女が現れたら全力でお持ち帰りしたいって。言うたけど、カミやん……人として越えちゃいけない一線ってあるやろ……?」

その態度は普段の彼のものとは違い、どこか余所余所しい。
何となく先が読めた上条だったが、青髪ピアスは言葉を止めない。

「カミやん、誘拐は流石にあかんて!!」

「ちげえぇぇぇぇぇよ馬鹿っ!!」

予想通りの反応を示した青髪ピアスの同級生に、上条は思わず叫んだ。
215 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/03(月) 01:00:54.16 ID:nPqZqLXn0
今日はここまで。
こんなにスローペースなのに乙くれてありがとう!

前回は途中から上条さんに持ってかれたっていうのは自分でも思ったので、今回はなるべく幼女通行視点になるようにしてみます。

あと、今更なんだけどIDって身分証みたいにカード形式ってわけじゃないんですね。
なんか頭の中でパスポートとごっちゃになってて、上条さんが「IDを探してたんだ」とか意味不明な事言っっちゃってるけど見逃してやってください…。
216 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/03(月) 01:44:18.32 ID:8tNzX1SSO
乙セラロリータ
217 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/03(月) 03:21:32.37 ID:CEJenzsWo
乙!
まさかの青ピ登場w
218 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/03(月) 07:09:10.98 ID:uTAp9okq0


さあ青ピさんのショータイムの
お時間ですね
219 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/03(月) 13:23:59.28 ID:8CaFA2Zwo
警備員さんこいつです
220 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/04(火) 09:56:06.24 ID:l7H6juowo
警備員さん俺です
221 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/04(火) 18:01:26.30 ID:PP4F393Vo
もう少し経てば打ち止めも増えるんだよな
はからずも父親になった上条さんが男に戻れるのは
222 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/04(火) 18:41:20.77 ID:7C5JCDnBo
>>221
……十人くらいに増えた打ち止め想像しちまったじゃねえか
223 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/06(木) 16:07:14.54 ID:wX6kreySO
なにそれ一人下さい
224 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/12/10(月) 00:07:32.98 ID:SMI98DKI0


ちょっと木原くんに一方通行くださいってお願いしてくる
225 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/10(月) 00:41:38.17 ID:7+9C+8C/0
>>224
無茶しやがって…
226 :名無しNIPPER [sage]:2012/12/10(月) 01:02:13.33 ID:pYu85BjAO
追いついたー、乙
あくせろりたんかわゆす
227 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/10(月) 13:09:49.73 ID:dydCR8WIO
上条が出てきてから糞になったな
228 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/10(月) 15:00:25.44 ID:IFF/8ntH0
>>224
じゃあ、俺は一方通行に木原くんくださいって言ってくる
229 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/10(月) 17:01:55.18 ID:WSHkDJRSO
>>228

では残った百合子は貰っていきますね
230 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/11(火) 15:49:53.10 ID:IbG3WZRIO
なんかこのスレから失踪者続出してるみたいだな。

ちょっと木原くンにアクセロリータの隠し撮り動画をうっt グシャッ
231 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/13(木) 19:34:26.92 ID:4cA7rxlq0
ヤバすぎだろこのスレ…

よし ここはおいらが
おや?だれが来たようだ
232 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2012/12/14(金) 14:09:35.56 ID:whtofW320
風邪こじらせてずっと寝込んでました……申し訳ない

書き溜めできなかったので今日はちょっと無理ですが、少しずつ投下再開します
233 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/15(土) 00:16:42.17 ID:5rboXJFDO
お大事に
無理すんなよ
234 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/12/19(水) 23:43:34.57 ID:vCBFZf8n0
これ、最初のほうって走れメロス?
235 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/20(木) 12:41:10.22 ID:CDexLDlR0
――――――――――――――――――

「ハァ……」

冷房の効いた店内から外へと出た一方通行は、疲れたように溜息をついた。
店の外は相変わらずの炎天下だが、常に『反射』によって守られている彼女には関係のないことだった。

適当に座れる場所を探し、店頭に設置されたベンチに腰を下ろした。

「あの青髪野郎といい木原といい、なンだって俺の周りにはイカれた連中しかいねェんだ……」

あの後の会話を思い出し、再び溜息ひとつ。

両手の指を組み、額に押し付けるようにしてがっくりと項垂れる。
その姿は長年勤めていた会社をある日突然リストラされ、職安付近の公園で途方に暮れながら鳩に餌をやっている中年男性のようなオーラを放っていた。
236 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/20(木) 12:42:21.60 ID:CDexLDlR0
――――――――――――――――――

『だってカミやん、この子に『水着買うてあげるから一緒に海行かへん?』とか言うてたんちゃうん?ボクはてっきりカミやんが人の道を踏み外してもうたんかと……』

『行くには行くけどそういうのじゃねぇ!っていうか小萌先生の住所まで把握してるお前にだけは言われたくねぇよ!このロリコンマゾストーカーが!』

『ひどっ!?ボクはあくまで純粋に萌えを追求しとるだけやで!それに小萌先生は合法ロリだから問題ないんや!っていうか海に行く事は否定しないんかいな! ―――あ、もしかしてこの子も実はこれで成人済みとかいうオチだったりするん?せやったらカミやんなんか放っといてボクとお茶でもせえへん?損はさせへんよ?』

『いきなり口説いてんじゃねぇよ!お前幼女なら誰でもいいんじゃねぇか!』

『カミやん、それは違うで!ボクぁ幼女は大好きやけど犯罪には手を出さないって誓っとる!でもこの子が合法ロリだというのなら話は別や!頼む、結婚してくれ!!』

『このペド野郎が!!こいつはそんなんじゃねぇよ!見た目通りの年齢だ!』

『ってことはやっぱり違法ロリかいな!見損なったでカミやん!幼女は愛でるものであって手を出すものとはちゃうんやで!』

『だから違―――』

『とうま、どうかな――――って、きゃあああああっ!?』

『うおっ!?インデックス!?』

『こ、この子はこの前のシスターちゃんやないか!?しかも一緒に水着買いにくるってどこのリア充カップルやねん!カミやん、やっぱり―――』

『違うっつってんだろうが!!』

――――――――――――――――――
237 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/20(木) 12:44:21.79 ID:CDexLDlR0
突如現れた青髪ピアスの巨漢に幼女誘拐犯疑惑をかけられ、全力で否定する上条。
ぎゃーぎゃーと騒ぎ合う馬鹿二人に加え、更衣室から出てきた水着姿のインデックスが、予想外の人間がいた事に対して悲鳴を上げる―――

そんな混沌とした状況に耐え切れなくなり、周囲への迷惑極まりない三人組を放置して一人で外へと避難してきたのだった。
心なしか、最近穏やかになっていた胃痛が再発しそうな気がする。

「こんな所で何をしているのですか、とミサカはその歳にして人生に疲れ切った顔をしているアクセロリータの将来を不安に思いつつ尋ねます」

「………」

と、そんな一方通行に追い討ちをかけるかのように、彼女にとって嫌というほど聞き覚えのある声がかけられた。

無言のまま視線だけを上げると、学園都市でも5本の指に入るほどの名門校、常盤台中学校の夏服であるサマーセーターが目に入った。
セーターの端にはカエルのキャラクターが描かれた缶バッジが付けられている。
明らかに幼児向けに作られたであろうそのキャラクターは、どう考えても中学生が身に付けるような物ではないのだが、ここまで堂々とされると逆に突っ込む気力も失せてしまう。

「おや、聞こえていないのですか?それとも聞こえてて無視しているのでしょうか、とミサカは返事がない事を訝しみながら再度尋ねます」

「よくわかってンじゃねェか。無視してンだよ無視」

顔を上げる事はせず、相手を見ないまま返す一方通行。
わざわざ相手を確認するまでもない。彼女をこの不名誉な渾名で呼ぶ存在など、『妹達』以外に誰もいないのだから。

いつもなら彼女をアクセロリータ呼ばわりした人間には報復の一つでもしてやるところなのだが、今はそんな気も起きなかった。
さっきの青髪ピアスの男といい、自称保護者の木原数多といい、“本物の変態”を相手にすると気力をごっそりと削がれてしまうのだ。
238 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/20(木) 12:45:57.65 ID:CDexLDlR0
それに一方通行自身、いい加減にこのパターンは読めてきていた。
彼女たち『妹達』は、一方通行を怒らせる事を明らかに楽しんでいる。

どうせギャル系雑誌に書かれた『小悪魔的テクニック』とやらを実践するつもりなのだろう。
一方通行が怒ったり困ったりといった顔を見せた瞬間、その映像をミサカネットワーク上に流して二万人全員で楽しんでいるのだ。

一方通行は決して我慢強い性格とはいえないが、ここで振り回されたら相手の思う壺だという事は前回の件で学習済みだ。
ここは冷静を貫き通すのが最善の策だという事くらいわかっている。

「何やら元気がないようですね、とミサカはアクセロリータの身を案じます」

「色々あって疲れてンだよ。あとアクセロリータって呼ぶンじゃねェ」

全身の血管と内臓を爆破してやりたい衝動を抑え、あくまで冷静を貫き通す。
相手を困らせて楽しむような人間には、『何をやっても堪えない』と思わせるのが一番効果的なのだ。

「色々ですか。どうやら一人のようですが、あの男は一緒ではないのですか、とミサカはアクセロリータを殴った憎き相手の顔を思い出しながら尋ねます」

「あいつらなら店ン中にいる。あンな変態どもと一緒にされたら堪らねェから俺だけ一足先に出てきたンだよ」

冷静、冷静に。それが最善の策だという事くらいわかっている。

わかって―――

「変態……?もしやあの男に何かされたのですか、とミサカはアクセロリータの貞操を心配―――」

「オマエの検体番号は何号だァ!?墓にはしっかり刻ンでおいてやるから安心してくたばりやがれェ!!」

「いつも通りのアクセロリータでした、とミサカは胸を撫で下ろします」

―――いたのだが、少女が無表情な顔でとんでもない事を言い出した為、結局声を荒げてしまった。

一方通行は決して我慢強い性格とはいえないのだ。
239 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/20(木) 13:02:59.10 ID:CDexLDlR0
ちょいと短いですがここまで。
青ピの口調がよくわからない……。

ちなみにベンチに座ってる一方さんはこんな感じのイメージでお願いします。



. .: : : : : : : : :: :::: :: :: : :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
    . . : : : :: : : :: : ::: :: : :::: :: ::: ::: ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
   . . .... ..: : :: :: ::: :::::: :::::::::::: : :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
        Λ_Λ . . . .: : : ::: : :: ::::::::: ::::::::::::::::::::::::::
       /:彡ミ゛ヽ;)ー、 . ::: : :: ::::::::: :::::::::::::::::::::::::::::
      / :::/:: ヽ、ヽ、 ::i . .:: :.: ::: . :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
      / :::/;;:   ヽ ヽ ::l . :. :. .:: : :: :: :::::::: : ::::::::::::::::::
 ̄ ̄ ̄(_,ノ  ̄ ̄ ̄ヽ、_ノ ̄ ̄ ̄ 
240 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/20(木) 13:44:17.53 ID:eti7GLbDO
乙!

確かに幼女の出していい雰囲気じゃねぇwwwwww
241 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/20(木) 15:18:57.62 ID:znzCotDh0


まだだ。青ピさんの本気はこんなもんじゃないはずですよと
242 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/21(金) 00:37:15.14 ID:7//13g+Go
やっぱ上条さん妹達には嫌われてるんだなwww
まあ男女平等パンチしちゃったから仕方ないな
243 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/29(土) 14:11:39.27 ID:kmEody7to
おつやでー
244 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/30(日) 14:02:09.89 ID:exvRhkgn0
「っつーか、オマエはこんな真昼間からうろうろしてていいのかよ。誰かに見られても知らねェぞ」

「周囲には双子として認識されるようですので問題ありません、とミサカは回答します。実際、ミサカとお姉さまが初めて出会った時もそうでした、とミサカは補足説明します」

「そォかい」

目の前の少女がオリジナルである御坂美琴本人を知る人間に遭遇してしまうと色々と面倒な事になると思ったのだが、どうやら杞憂であったらしい。
幸い、同性の一卵性双生児自体はそう珍しいものではない。
万が一誰かに声をかけられたとしても、双子の妹として話を通してしまえば問題ないのだそうだ。

「ところで、あなたは何故そのように疲れ果てた顔をしているのですか、とミサカは今度ばかりは本当に心配しながら尋ねます」

「やっぱりおちょくってやがったンだな、オマエ」

口では『身を案じます』などと言っていたものの、案の定自分をからかっていたらしい。
そんなクローンの少女に、一方通行は半分諦めたように溜息をついた。

『アクセロリータ』などという不名誉極まりない渾名を付けられたあの日から、『妹達』はどこか生き生きとした様子で彼女にちょっかいを出してくるようになったのだ。
彼女達の言葉のどこからが冗談でどこからが本気なのか、人付き合いに疎い一方通行は振り回されるばかりなのである。

あの実験が開始された直後の―――それこそ人形のように無感情な“実験動物”ではなくなったのは喜ばしい事だが、人をおちょくって遊ぶのが趣味というのは如何なものか。
245 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/30(日) 14:04:25.70 ID:exvRhkgn0
「……三下の野郎が“お遊び”をぶち壊しにしたせいで、街中の馬鹿どもが“人間狩り”なンていうクソつまらねェ真似をしてるのは知ってンだろ。ちっとばかし事態が大きくなりすぎちまったンで、上層部が噂を揉み消すまでの間は“外”に行ってるように言われたンだとよ」

「要は厄介払いですね、とミサカは一人納得します。いい気味です、とミサカは憎き男の顔を思い出しながら内心でほくそ笑みます」

「まァその通りなンだけどな」

はっきりと言い放った少女に、一方通行はやや呆れ顔で同意する。

どうも例の一件以来、『妹達』の少女達は上条当麻という人間を快く思っていないらしい。
その原因は上条が一方通行の顔面を思いっ切り殴り飛ばした事にある。

誤解だったとはいえ年端もいかない少女の顔面を全力で殴り飛ばし、あまつさえ(偶然ではあるものの)少女のワンピースを―――

そんな暴挙に出た上条当麻という男は、『妹達』にとってある意味仇敵のような存在になっていた。
10032号―――上条が御坂妹と呼んでいる個体は『誤解だったとはいえ、ミサカ達の事を想って戦ってくれた事に変わりはありません』と言って彼を責める事はなかったが、その他大半の個体からの評判はあまりよろしくない。
当の一方通行本人はさほど気にしていないのだが、『妹達』の少女達は相当根に持っているようなのだ。

余談だが、上条当麻は一部の個体から『彼女を殴った事を簡単に許すつもりはないが、また“あれ”を見せてくれるのであれば考えなくもない』とのお言葉を頂いている。
“あれ”というのが何なのかは一方通行本人の名誉の為に伏せておくが。
246 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/30(日) 14:06:01.91 ID:exvRhkgn0
「まあいいでしょう。あの男がどうなろうとミサカの知った事ではありません、とミサカは冷酷に言い放ちます」

「……何で隣に座るンですかァ?」

どうやら本当にどうでもいいらしく、冷たく言い放って話題を終了させるクローンの少女。
言いながら、何故か一方通行の隣に腰を降ろしてきた。

「細かい事を気にしていては大きくなれませんよ、とミサカは忠告しつつ距離を詰めます」

「オイ、引っ付くな!そンなに密着する必要ねェだろォが!」

「と言いつつも『反射』はしないのですね、ういやつめ、とミサカは素直になれないツンデレなアクセロリータを抱き締めます」

「なンでそうなるンだよ!離しやがれェェェ!!」

迷惑な顔で暴れる一方通行の身体に手を回し、真正面から抱き締めるクローンの少女。
怪我をさせるわけにもいかないので『反射』を切っているのだが、こんな真夏日に思いっ切り抱き付かれたら暑苦しくて堪ったものではない。

能力を使わない範囲で抵抗する一方通行を余所目に、クローンの少女は相変わらずの無表情―――しかしどこか楽しそうな顔でじゃれ続ける。
製造段階では必要最低限の知識しか持たされていなかった『妹達』だが、どうやらスキンシップの手段を覚えたらしい。



―――後日。

『常盤台の超電磁砲が嫌がる幼女に無理矢理抱き付いてニヤニヤしていた』という噂がどこからともなく出回り、事情を察した美琴が頭を抱える事となるのだが、それはまた別のお話。
247 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/30(日) 14:32:19.24 ID:AR7uXaK60


あれってあれですか

ぉいらもみたいっす
248 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/30(日) 14:33:43.47 ID:BiT3azdDo
乙!
幼女の顔面に全力の鉄拳を数回のパン(ひょっとしたら胸まで)チラ実行で許すことを考えてやらんでもないとか妹達欲望に忠実すぎるwww
最大の被害者にメリットがないどころか追い打ちをかけるような内容なのがまたアレだ
249 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/30(日) 15:18:41.85 ID:YTVVPnLe0
一方通行が可愛すぎて妹達の大半が20000号になりつつあるwwwwwwwwww
250 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/30(日) 18:43:26.27 ID:8McGUByJo
他の妹達ですらこの有様、つまり20000号なんかはもう…
251 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/30(日) 22:07:39.34 ID:WWs+vmI5o
だめだ変態しかいねえ・・・
252 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/31(月) 09:38:10.87 ID:c9Z48M6DO
変態が1人いたら、20003人いると思え
253 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/31(月) 09:40:43.98 ID:t1ekDpCDO
>>250
そりゃァおまえアレだ、愉快に素敵にセロリータにキマッてンだろォ。
254 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/31(月) 12:49:05.69 ID:VKmkXN4N0
――――――――――――――――――

「―――せやからボクは思うねん!そろそろボクの元にもヒロインが現れていい頃なんやないかと!ある日ベランダに出たら天界から修行の為にやってきた見習い天使の女の子が引っ掛かっとるなんて展開になったら最高やん!?」

「そんな都合よく女の子が降ってくるわけないだろうが!いい加減現実見ろよお前!」

「ねぇ、とうま」

「カミやん、それは持ってる者の余裕ってもんやで!何だってカミやんばっかり銀髪英国シスターさんやらアルビノ俺っ娘幼女にフラグが建つねん!そろそろボクの方に来てもいい頃合やろ!?」

「とうま」

「知るかそんなもん!大体こいつらはそんなんじゃないって言ってるだろうが!お前と一緒にするんじゃねぇよペド野郎!」

「だからボクは幼女は大好きやけど合意の上でしか手は出さへんって言うとるやろ!」

「合意の上でも相手が幼女なら犯罪だろうが!さっきと言ってる事が違うじゃねぇか!」

「とーうーまー」

「それは違うでカミやん!お互い合意の上ならそこには愛がある!それを国が勝手に犯罪として扱っているだけなんや!つまり合意はノーカン!」

「いや、いかにも正論みたいに言っても犯罪は犯罪だからな!?薄々思ってたけどお前ってほんとに―――」

「とうまってばあああああ!」

「―――って、インデックスさん!?何故そんなに犬歯を剥き出しにしていらっしゃるのでせうか!?」

「あの子、いないよ?」

「……え?」

――――――――――――――――――
255 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/31(月) 12:50:31.97 ID:VKmkXN4N0
――――――――――――――――――

「……額が痛いです、とミサカは訴えます」

「知るか。言っても聞かないオマエが悪い」

結局、がっちりと両腕で固定されている状態から自力での脱出は不可能と諦め、能力を使ってクローンの少女を引き剥がした。
今は二人並んでベンチに座っている状態である。

クローンの少女は隣に座る一方通行を見ながら額を両手でさすっている。
能力を使った一方通行に力ずくで引き剥がされた後、お返しとばかりにゴーグルを外され、額にデコピンをお見舞いされたのだ。

「額が痛いです、とミサカは再度訴えます」

「こうでもしないとオマエは離れなかっただろォが。自業自得だ」

隣に座る少女が送ってくる恨めしそうな視線を、一方通行は無視する事にした。
どうせ口で何を言っても聞く耳を持たないのだ。
これ以上『妹達』の少女達に好き勝手させない為にも、少しくらい痛い目に遭わせたほうがいいだろう。

「額が痛いです、とミサカは再三に渡って訴えます」

「………」

「額が痛いです、痣になっているかもしれません、とミサカは―――――」

「あーうるせェ!はいはい俺が悪かったですよォ!」

―――と、思っていたのだが。
少女があまりにもしつこいので、結局は一方通行が先に折れるのであった。

一方通行にとっては悲しい事に、こういった光景も日常茶飯事になりつつある。
256 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/31(月) 12:52:29.75 ID:VKmkXN4N0
「で、俺にどうしろってンですかァ?なンでも言う事聞いてやりますよォ」

先に折れた一方通行は、投げ遣りな態度でクローンの少女に尋ねた。
この少女の言いなりになるのは納得がいかないが、あのままいつまでも粘られても面倒な為、相手の気の済むようにさせてやるのが一番手っ取り早いと判断したのだ。

「額に痣が出来ていないか確認してください、とミサカは要求します」

クローンの少女はそう言って、両手で前髪をかき上げて額を露出させた。
相変わらず無表情のままな少女だが、一瞬ニヤリと笑ったように見えたのは気のせいだろうか。

「別に痣が出来るほど強くはやってねェだろォが」

「表面上は大丈夫かもしれませんが、内出血しているかもしれません、とミサカは額の痛みを訴えます」

「………」

「痣というのは内出血が原因で出来るものがほとんどであり、数時間後に発生するものも―――」

「……言いたい事はよォくわかった」

要するに、能力を使って内出血の有無を調べろという事らしい。

一方通行の能力は『ベクトル変換』。
運動量・熱量・電気量をはじめとした、ありとあらゆる力の流れ―――その『向き(ベクトル)』を操作する能力である。

無論、人体の中を流れる『血液の流れ』も例外ではない。
“実験”の際には彼女をアクセロリータ呼ばわりした個体に対し、『全身の血流を操作して未知の感覚を味わわせる』といった“報復”も行っていた。
この能力を使って『血液の流れ』を感じ取れば、内出血の有無を調べる事など造作もないだろう。

更に言えば、『全身に流れる血液の流れを逆流させ、血管と内臓を爆破する』といった事も可能ではあるのだが、彼女は好き好んで人殺しをしたいとは思わない為、実際にそういった使い方をしようとは思わない。
257 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/31(月) 12:54:11.86 ID:VKmkXN4N0
「ではお願いします、とミサカは額を近付けます」

「チッ、さっさと終わらせ―――ってオイ!」

「? どうかしましたか、とミサカは尋ねます」

「近けェンだよ!指で触れるだけで十分だろォが!」

ずい、と唐突に顔を近付けてきたクローンの少女に、一方通行は思わず後ずさる。
これからキスでもされるのではないかというほど顔を近付けられれば、誰だってそうするだろう。

そんな一方通行の様子を見て、少女は何がいけないのかわからないといった様子で首を傾げた。
先の抱擁といい、どうもこの個体はスキンシップが過剰気味である。

「ったく、驚かせやがって……。そンじゃやるぞ?」

「………」

「……なンだよ」

気を取り直して指先で額に触れようとする一方通行だったが、少女が何か言いたさそうにしているのを見て手を止めた。
表情は相変わらずだが、何やらむくれているような雰囲気を醸し出している。

「……額と額でお願いします、とミサカは要求します」

「ハァ?」

何か不満があるのか、と一方通行が聞くよりも早く、少女の方から要求を口にしてきた。
予想外の答えに思わず間の抜けた声を上げてしまう。

額と額、というのはつまり。
よく少女漫画などで熱を測る時にやる、ああいう行為の事を言っているのだろうか。
258 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/31(月) 12:56:10.25 ID:VKmkXN4N0
「親しい者同士ではこうして体調を測るものだと、19090号の持っていた漫画に載っていました、とミサカは補足説明します」

「冗談じゃねェ!なンで俺がそンな真似しなきゃならねェンだよ!そういうのは漫画の中の話だろォが!」

「それでもミサカはあなたにやって欲しいのです、とミサカは再度要求します」

さらりと恥ずかしい事を要求してくる少女を一方通行は流石に拒否するが、相手はそれを認める気はないらしい。
一方通行のベクトル操作は皮膚に触れてさえいればどこにでも適応されるのだ。わざわざ額同士を押し付ける必要はどこにもない。
何が楽しくて白昼堂々、それもこんなに人目に付きやすい場所でそのような行為をしなければならないのか。

そもそも額と額をくっ付けるというのは熱が出た時に行う方法なのだが、やや混乱気味の一方通行はその事に気が付いていない。

「では今度こそお願いします、とミサカは再び額を近付けます」

「断る」

「何でも言う事を聞くと言いました、とミサカはここぞとばかりに揚げ足を取ります」

「……クソッタレが。やればいいンだろ、やれば」

どうやら先程の投げ遣りな態度が裏目に出たらしい。
完全に拒否権を失った一方通行は諦めたように大きな溜息をつき、自らの額を少女の額に押し付けた。
259 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/31(月) 12:58:01.48 ID:VKmkXN4N0
「んっ……」

「変な声出すンじゃねェよ」

この猛暑日だというのにも関わらず、クローンの少女は汗ひとつ掻いている様子はなかった。
相手に触れる為に『反射』を切っている一方通行の額に、ひんやりとした肌の感触が伝わってくる。

「ったく……さっさと終わらせンぞ」

能力を発動し、触れた部分から相手の『血液の流れ』を正確に感じ取る。
本当に内出血を起こしている部分があれば、『血液の流れ』にも異常が出るはずだ。

体内に流れる体液の流れすらも把握するこの能力を以ってすれば、その身ひとつで医療用検査機器の代わりをする事すら可能なのだ。

「……終了っとォ。内出血を起こしてる箇所はゼロ。痣になる心配はありませンってなァ」

ほんの十数秒ほどで全身の血液の流れを掌握し、ついでに身体中を隅々まで調べてみたが、どこにも異常は見当たらなかった。

「終わったぞ。とっとと離れろ」

「……もう少し」

「あァ?」

「もう少しだけこのままでいたいです、とミサカはあなたの要求を拒否します」

「………」

もはや役目は終わったとばかりに額を離そうとする一方通行を、少女の声が押し止めた。
心なしか、その声は普段のものと様子が違うような気がする。
260 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/31(月) 12:59:16.98 ID:VKmkXN4N0
「……八月二十一日、あなたがあの男に敗北した事によって、ミサカ達は実験を行う必要はなくなりました」

「そうだな。俺も“お遊び”の為にわざわざ出歩く必要はなくなった」

額を付けた姿勢のまま暫く黙っていた少女だったが、やがて独白するかのように口を開いた。

八月二十一日。
学園都市最強の超能力者が、無能力者に敗北を喫した日である。
あの日を境に建前で用意された“実験”は意味を成さなくなり、現在は行われていない。

「事実、ここ数日の間ミサカ達はあなたと会っていません」

「まァ、俺も三下の家にいたからな」

「寂しいです」

「……は?」

「寂しいです、とミサカは再度繰り返します」

あなたをあの男に奪われたような気がします、と少女は続けた。

確かに上条当麻が現れてから、一方通行の生活は急変した。
“実験”がなくなり、毎日のように顔を合わせていた『妹達』と一度も会わない日が増えた。

一方通行が現在、上条当麻の部屋に居候中であるという事も理由の一つだろう。
研究所には芳川がいる為、わざわざ自分から顔を出す事もしなかったのだ。
261 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/31(月) 13:02:12.78 ID:VKmkXN4N0
「ミサカ達に感情データはインストールされていません。ですが、あなたと会えない日が続くと胸のあたりがモヤモヤします」

「………」

「芳川に聞いたところ、これが『寂しい』という気持ちであると知りました。ミサカはあなたに会えなくて寂しかったのです、とミサカは心中を吐露します」


『寂しい』。
実験に不要な感情を徹底的に廃しているはずの少女が、そう思ったのだという。

考えてもみれば当然の事だ。
彼女達『妹達』はクローン人間であるとはいえ、脳や身体の構造は普通の人間のそれと何ら変わりはない。

会話が出来る知能を持ち、誰かとコミュニケーションを取れる以上。
例えデータとして入力されていなくても、後から自分で『寂しい』といった感情を学習する事だって出来るはずなのだ。

先程の過剰なスキンシップも、要はそういう事なのだろう。
会いたかった相手に触れる事で、『寂しい気持ち』を少しでも埋めようとしたのだ。

「ですから、これはミサカ達を放っておいたあなたへの罰です、とミサカは今しばらくこのままでいる事を要求します」

「……好きにしろ。どうせ俺に拒否権はねェンだろ」

額を押し付けたまま動こうとしない少女を、力ずくで退ける事はしなかった。
262 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/31(月) 13:03:03.01 ID:VKmkXN4N0
――――――――――――――――――

一方その頃。
そんな少女二人の様子を、少し離れた場所から覗き見ている三人組の姿があった。

「こ、これは一体どういうことや!?こんな所でアルビノ幼女と常盤台のお嬢様がユリユリしとる!?」

一人は身長180cmをゆうに越える巨漢。
明らかに染めているであろう髪は青く、両耳のピアスが激しく自己主張している。

「こ、これがまいかの言ってた禁断のラブ……!なんかすごいかも……!」

もう一人は、白い生地に金色の刺繍が施されたティーカップのような印象の修道服という、現代の日本では目立って仕方ない装いの少女。
何やら思うところがあるらしく、二人の様子に釘付けになっている。

そして、最後の最後の一人は―――

「何してんだ、あいつら……」

短い黒髪をツンツンに立たせた男子高校生、上条当麻。
まるでキスでもするのではないかというほど顔を近付けている二人の様子を見ながら、口と鼻を両手で覆い隠している。

「ちょ、カミやん!?鼻血鼻血!」

青髪ピアスがそんな上条の異変に気付き、慌てて指摘する。
口と鼻を覆った上条の指の隙間からは、赤い液体が零れ落ちようとしていた。

「……とうま?」

「ち、ちが、これはだな―――!」

一変、殺気を醸し出してくるインデックスに、上条は慌てて弁解しようとする。

八月二十一日。
何とか一方通行を下した上条は、彼女の携帯電話に保存されたとある動画を目にしていた。

その動画に登場していたのが他でもない、『妹達』の少女と一方通行だったのである。
目の前で顔を近付け合う二人の様子を見た瞬間、あの映像が上条の脳裏で鮮明に再生されてしまったのだ。

結果、思い出し鼻血という何とも無様な醜態を晒してしまったわけである。
263 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/31(月) 13:04:04.63 ID:VKmkXN4N0
「そっか……とうまは鼻血を出すほどこういうのが大好きなんだね……」

「ち、違うんだインデックス!この鼻血は決して御坂妹のエロい顔を思い出しちまったとかそういうのじゃなくて!」

「エロい顔!?エロい顔って言った!?それってどういう意味!?」

殺気を漲らせるインデックスに弁解するつもりが、思わず墓穴を掘ってしまった上条。
聞き捨てならない発言をした上条に修道服の少女が詰め寄る。

「とうま、怒らないから正直に話して?とうまはクールビューティに何をしたのかな?」

怒らないからと言ってはいるが、その様は誰がどう見ても怒っている者のそれだった。
顔は笑顔のはずなのに、目だけが笑っていないのだ。
ゴゴゴゴゴ、という擬音すら聞こえてくるような気がする。

「いやその、インデックスさん!?わたくしめは決してあなたの想像しているようなやましい事はしていませんとのことよ!?」

「――っ!?わ、私は変な事なんか想像してないもんっ!とうまのすけべ!!」

「どわあああああ!?」

苦し紛れの言葉が逆効果となり、顔を真っ赤にしたインデックスに噛り付かれる上条。
ちなみにこの後、騒ぎすぎて一方通行に気付かれ、三人揃って怒れる超能力者からの逃走劇を繰り広げる事となるのであった。
264 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/31(月) 13:16:45.63 ID:VKmkXN4N0
ここまで。

妹達が予想以上に変態になってしまった気がする……!
265 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/31(月) 13:40:14.39 ID:fOga+82M0

妹達より上条さんの方が心配だ
266 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/31(月) 13:50:27.60 ID:/3ZEyNX2o

変態がちょっと増えただけだ、問題ない
267 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/31(月) 13:57:01.71 ID:No8GiY3s0


打ち止めさんならきっと
なんとかしてくれるよ(棒
268 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/31(月) 17:38:20.52 ID:cO5juKnAO
あくまで上条さんは妹達のトロ顔思い出して鼻血出してるからな。少しはマシ、か?
269 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/31(月) 19:28:39.45 ID:x1CtuuOR0
この一方通行なら可愛さで世界征服できそうな気がする
270 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/31(月) 20:33:08.83 ID:cO5juKnAO
あくまで上条さんは妹達のトロ顔思い出して鼻血出してるからな。少しはマシ、か?
271 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/31(月) 21:15:10.60 ID:JZZpfbVgo
乙キマシ


御坂&御坂妹2万&打ち止めのおまけにアクセロリータがついてくるとか黒子大勝利
272 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/31(月) 23:16:33.60 ID:oS9EBjeJo
キマシタワー
273 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/01(火) 16:50:25.20 ID:esEg4s3DO
キマシタワー
何これみんな天使(野郎を除く)
274 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/01(火) 18:37:25.69 ID:tIXmRAcRo
>>273
ていとくんもマジ天使やぞ
275 :連投 [sage]:2013/01/01(火) 19:22:59.69 ID:nRHlffZxo
>>274
しかも、多分自覚あるとか言っちゃうぞ
276 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/06(日) 18:25:10.92 ID:o1GxZsIv0
――――――――――――――――――

神奈川県の某海岸に存在する海の家『わだつみ』。
背が高くやや無愛想な店主と、その息子の二人で切り盛りしている民宿である。

玄関を出るとすぐ目の前が観光用のビーチという、なかなかの立地条件に恵まれたこの宿は、例年であればこの時期でも観光客で賑わっているはずだった。
しかし、生憎と今年は巨大クラゲが大量発生したというニュースを受け、上条達の他に宿泊している客は皆無のようだ。
事実上の貸切状態である。

「うぬぬ……」

そんな民宿の一室―――旅行中の宿泊スペースとして割り当てられた部屋で、上条当麻は座卓に向かって神妙な面持ちをしていた。
彼の視線の先には、数学計算問題集や古文などといった、世間一般の学生であれば必ず一度は目を通すであろうテキスト類が山積みにされている。

「だあー……何で上条さんは“外”に来てまでこんな事をしているのでせうか……」

暫しの間テキストを睨み続けていた上条だったが、やがて脱力したように表情を崩し、どかりと畳に寝転んだ。

件の青髪ピアスのような友人がいる事から察しが付く通り、上条当麻という人間はお世辞にも勤勉な性格とは言い難い。
にも関わらず、こうして旅行先でまで問題集と睨めっこをしているのには、『夏休みの宿題の存在を今の今まで忘れていた』という理由があった。

八月二十六日。
タクシーに乗って学園都市を出た上条御一行は、ゲートを通過する際に多少のトラブルはあったものの、何とか指定された民宿まで辿り着いた。

最初こそ『何が楽しくて巨大クラゲ大発生中の海に行かなきゃならんのだ』と思っていた上条だったが、インデックスの楽しそうな顔を見ているうちにそんな気分は消えていた。
理由はどうあれ、滅多に出てこられない学園都市の外までわざわざやって来たのだ。どうせ旅行するなら楽しい方がいいに決まっている。
せめてこの少女にとっていい思い出となる旅行にしよう。

そう思った矢先、夏休みの宿題という最強最悪の敵の存在を思い出してしまい、今に至るという訳である。
277 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/06(日) 18:41:53.17 ID:o1GxZsIv0
「情けねェなァ……ホント情けねェ」

上条の対面に腰を降ろした一方通行は、一向に空欄が埋まる気配のない問題集と上条の顔を交互に眺め、呆れ顔で呟いた。
この白い少女は現在上条の部屋に居候中であり、家主である上条が強制的に学園都市から追い出された際、なし崩し的に同行する事となってしまったのである。

本来、学園都市側は内部の技術が漏洩する事を危険視している為、学生が外出するとなるとあまりいい顔をしない。
中でも一方通行のような超能力者(レベル5)ともなれば、学園都市が行っている能力開発技術の結晶とも呼べる存在である。そう簡単に外出許可が下りるはずはない。

と、一方通行本人も思っていたのだが。
実際に駄目元で外出許可を申請したところ、どういう訳かすんなりOKサインが出てしまったのだ。

恐らく、もう一人の当事者である一方通行もまとめて“外”に出しておけば、情報規制が楽になると考えたのだろう。
どうせ許可が下りるはずもないと高をくくっていた一方通行は、半ば強制的に今回の旅行に同行させられる事となったのである。

「こンなギリギリまで一つも手付けてねェオマエが悪いンだろォが。小学生かよ」

「うう、旅行先でまで学生というしがらみに縛られなきゃならないなんて……不幸だ……」

「っつーか、こンな簡単な問題に梃子摺ってンじゃねェよ。こンなモン全部合わせて30分もありゃ終わるだろォが」

「普通の学生はそうはいかないんですっ!!」

上条の苦労も知らずにさも簡単に言ってのけた少女は、退屈そうな顔で問題集の頁を流し読みしている。

自分より6つも年上の上条を小馬鹿にしている少女だが、それもそのはず。
彼女はこれで学園都市最高の演算能力を持つ超能力者であり、その頭脳は演算に限らず、一般的な高校生など遠く及ばない量の知識を有している。
学園都市最高の頭脳を持つ少女にとっては、上条が苦戦している問題集など片手間で解けるレベルに過ぎないのである。
278 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/06(日) 18:49:03.62 ID:o1GxZsIv0
そんな上条と一方通行の座る座卓の隣、そこそこ年季の入っているであろう畳の上に、白い修道服を着た少女がうつ伏せに寝そべっていた。

「とーうーまー!早く遊びたいー!」

修道服の少女―――インデックスは寝そべったまま顔だけを上条の方へと向け、恨めしそうな目でこちらを見つめている。

先日、自分も旅行に行く気満々で水着を選んでいたこの少女だったが、本来学園都市の人間でない彼女は当然ながらIDを持っていなかった。
上条がそれに気付いた頃には時既に遅く、旅行支度も終わり、タクシーを呼んでいざ出発という段階にまで事は進んでいた。

もちろん、『悪い、やっぱりおまえだけ留守番だ』などと今更言えるはずもない。
何とかこの少女も一緒に連れて行こうと考えた上条は、事情を知らないインデックスをタクシーの後部座席の下へ押し込み、何とかばれないように密出国を試みる事にしたのである。

作戦そのものはゲートに設置された熱源感知システムによって失敗に終わったものの、特に騒ぎになるような事はなかった。
どういう訳かインデックスには『臨時発行(ゲスト)ID』が登録されていたらしく、ナノデバイスさえ注入すれば外出もできるらしい。
一体誰が臨時発行IDを登録したのか疑問に思った上条だったが、そのIDによってインデックスもゲートを通過できた為、結果オーライだと思う事にした。

こうして、無事に三人とも海の家『わだつみ』へと向かった―――のだったが、こんな時ですら上条は『不幸』であるらしい。
学園都市を出て十分も経たないうちに、道中の何気ない会話から夏休みの宿題の存在を思い出してしまったのだ。

夏休みの期間は曜日の関係で多少ずれ込む事はあるが、基本的に八月三十一日までというのが原則だ。
そして、現在の日付は八月二十六日。夏休み終了まであと五日である。

何故かシスターの少女を自宅に匿う事になったり、原因不明の記憶喪失になったり、クローンの少女達を救う為(勘違い)に、学園都市最強の超能力者に戦いを挑んだり―――
そんなドラマチックかつアクロバティックな毎日を過ごしていた上条当麻が、夏休みの宿題なんてものをやっているはずもない。
学生寮の自室に設置された机の上には、全く手を付けていない宿題が山積みになっていた。

仕方ないので一度学園都市へと引き返し、宿題に必要なテキストや問題集を鞄に詰め込み、再度海の家へと向かったのだ。

当然ながら、宿題が終わるまでは遊ぶ事など出来るはずもなく。
民宿に着くなり宿題と格闘を始めた上条に付き合わされる形となったインデックスは、現在、暇を持て余してご機嫌斜めという訳である。
279 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/06(日) 19:48:59.71 ID:FFX/y33/0
「悪い、インデックス。俺は宿題終わらせてからじゃないと遊べないから、お前達二人で行って来てくれ」

「えー!?」

「仕方ないだろ?」

インデックスが不満そうな声を上げるが、上条とて好きで旅行中にまで勉強している訳ではない。
彼女は一年より前の記憶を持たない為、これが初めての旅行となるのだが、それは記憶喪失である上条にとっても同じ事だ。
記憶を無くしてから初めての経験となる旅行で、こんな不幸が待っているとは思いもしなかったのだ。

「いいもん!あくせられーたと二人で遊んでくるもん!」

「さり気なく俺まで数に入れるンじゃねェよ。行くなら一人で行きやがれ」

「あくせられーたまで!?」

ならば二人で、と一方通行を連れて海に繰り出そうとしたインデックスだが、自分より年下の少女にばっさりと切り捨てられてしまった。
年齢的にいえば一方通行がはしゃいでいる方が自然な光景なのだが、当の白い少女はというと、子供の相手を面倒臭がって日曜の朝からゴロゴロしている父親のような雰囲気を醸し出している。

「やだやだ!せっかくの旅行なのに一人で遊ぶなんてやだー!!」

「うるせェぞクソガキ。人の耳元で騒ぐンじゃねェ」

「だって!とうまもあくせられーたも遊んでくれないんだもん!私一人で遊んだってつまんな――――――」

尚も騒ぐインデックスの言葉が中途半端に途切れ、それっきり一方通行の耳には何の音も聞こえなくなった。
何と言われようと海に行く気はさらさらない為、全ての音を『反射』してインデックスの言葉を遮断したのである。
280 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/06(日) 19:55:07.91 ID:FFX/y33/0
「――――!―――――――――――!――――――!!」

(しっかし、こンな簡単な問題も解けねェのか。落ちこぼれ扱いされても無理はねェな)

恐らくまだ耳元で何かと訴えているであろうインデックスの存在を無視して、手元に置かれた問題集を眺める。
一方通行の目には簡単に見えて仕方ない計算問題が、この無能力者の少年にはかなりの苦行であるらしい。

問題のレベルだけでいえば“外”の高校で習うのと同等の内容なのだが、学園都市は人口の8割が学生で、尚且つその全員が脳開発カリキュラムを受けている街である。
能力者が能力を使用する際、その制御には自らの頭脳による演算が必要不可欠である。

通常、能力のレベルが上がるに伴って計算式も複雑になっていく為、能力者達はそれに比例するように必要な知識や演算能力を養っていく。
従って、必然的に能力者は人より優れた頭脳を持つ者が多いのである。

故に、学園都市に在住する学生にとって“外”の授業内容と同等の問題など、何の造作もなく解けるはずなのだ―――

―――が、上条のような無能力者にとってはそうもいかないらしい。
現に、開かれたままの問題集の空欄は一向に埋まる気配がない。
281 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/06(日) 20:09:53.21 ID:5885Zn440
と、そんな時。

(ン?)

頬杖をついて問題集に視線を落としていた一方通行は、空いている方の手を誰かに掴まれた感触によって意識を引き戻された。
思わず顔を向けると、そこには一方通行の左手に重ねるように右手を置いた上条当麻の姿があった。

何やら申し訳なさそうな顔をした上条は、一方通行に向かって勢いよく頭を下げた。

「すまん、一方通行!」

「……あ?っつーか何で―――」

音の『反射』が解除されたのか、と問おうとした瞬間、

「あくせられーたああああああああ!!!」

「〜〜〜ッ!?」

ほとんど意識を向けていなかった耳元から大音量を浴びせられ、声にならない悲鳴を上げた。

一方通行は忘れかけていたのだが、この“無能力者”の右手には神の加護すらも打ち消す『幻想殺し』が宿っているのだ。
282 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/06(日) 20:14:11.15 ID:5885Zn440
ちょっと修正。

その制御には自らの頭脳による演算が必要不可欠である。



その制御には自らの頭脳による演算が必要不可欠だ。
283 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/06(日) 20:18:17.31 ID:5885Zn440
というわけで今日はここまでー。

相変わらず投下遅くて申し訳ない。
284 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/06(日) 20:38:58.13 ID:2SDYWYfD0


美琴さんをよぶんだよ上条さん。

彼女なら手伝ってくれる 
285 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/06(日) 20:42:49.54 ID:2Aq5NoAeo
おつー
286 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/08(火) 02:18:20.10 ID:iaeYy0KL0
一番年下(実年齢なら妹達のほうが下だが)のはずの一方通行が一番年上に見える・・・
妹達、インデックス、上条と、周りのメンバーが手のかかる子ばかりだからかな。
287 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/08(火) 11:06:25.97 ID:pAgCylVfo
きっと頭がよすぎるのが悪いんだよ!
決してロリババアまっしぐらなわけじゃないよ!
288 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/09(水) 21:01:04.34 ID:8K1S47x60
ロリババアと聞いて、上条さんのクラスの副担任としてやってくる一方通行が脳裏に浮かんだ。
289 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/10(木) 19:36:46.93 ID:bAuDaF/F0
>>288

おっと小萌てんてーの悪口は
そこまでやで
290 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/11(金) 07:11:09.58 ID:pT/gZMb/0
やっと追いついたぁ
291 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/12(土) 13:57:24.12 ID:n1XnNR9h0
――――――――――――――――――

おにーちゃーん、おっきろー!という女の子の甘い声が隣の部屋から聞こえてくる。

「……ン……あ……?」

その声で、一方通行は目を覚ました。
いつもなら『反射』によって全ての音を遮り、静寂の中(あくまで自分のみであるが)で睡眠を貪っているところなのだが、先日の無視で臍を曲げたインデックスから『旅行中は能力禁止』を言い渡された為、紫外線などの必要最低限の要素を除いた『反射』をカットしている。
それ故に、薄っぺらい壁越しに聞こえてきたミルキーボイスは否応なく一方通行の意識を覚醒させた。

八月二十八日、朝。
この海の家『わだつみ』に来てから三日目の朝である。

初日にインデックスの機嫌を損ねる原因となった上条の宿題は、一方通行が手伝った事によって何とか片が付いた。
それでも結構な時間がかかってしまい初日は結局遊べず終いとなってしまったインデックスだが、翌日は好きなだけ付き合うという約束をする事によって機嫌を直し、特に問題もなく初日は終わった。

二日目―――昨日は散々インデックスに付き合わされ、一日中遊んで遊んで遊び倒した。
昼過ぎには上条の両親も合流し、夜は食卓を囲んで他愛のない話をしたりと、至って平和な旅行風景といえる光景だった。

そして各々部屋に戻り。
旅行で上がったテンションもあって元気の有り余るインデックスとは対照的に、一方通行は死んだように眠りに就き、三日目の朝―――今に至るという訳である。

「……ねみィ……」

寝起きでぼさぼさの長い髪を無造作に掻き、時計を探す。
慣れない時間に起床させられたせいで思考が上手く回らない。

時刻は午前八時を少し回ったところだった。
普通の人間の感覚では少し寝坊といったところだが、一方通行にとってはまだまだ起きるには早い時間だ。
おまけに昨日の疲れもある。

せめてあと二時間は寝ようと思い、もう一度布団に潜り込もうとして、

「……ン?おにいちゃン?」

そこで一方通行は違和感に気付いた。
果たして自分の周りに“お兄ちゃん”などという呼び方をされている人間はいただろうか。

「アクセ―――じゃない、桔梗!?その口調は一体何の冗談だよ!?」

「……は?」

続いて聞こえてきた少年の声に、一方通行は今度こそ間の抜けた声を出した。
隣の部屋から自分の名前(という事になっている)を呼ぶ声が聞こえてきたからだ。
292 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/12(土) 13:57:50.58 ID:n1XnNR9h0
一方通行が部屋を覗くと、そこには何やら取り乱した様子の少年―――上条当麻と、彼より少し年下であろう少女が言い争っていた。

「くそっ、こんなに鳥肌が……っつーかこれは何のどっきりなんでせうか!?」

「おにーちゃん、さっきから何言ってるの?」

「何言ってるのはこっちの台詞ですっ!何だよその口調!いつものチンピラ口調はどうしたんだよ!?」

「チンピラってなによー!?私そんな口調で喋ったことないもん!」

「だからその“私”ってのが似合ってねーんだよ!ゾっとするわ!!」

「なにおう!?」

どうも何かが噛み合っていない事を言い争い、二人でぎゃーぎゃーと騒いでいた。
というよりも、上条が少女に対して一方的に難癖つけているといったところか。

今さっき眠りから覚めたばかりの一方通行は、いまいち事態が理解できずに部屋の入口で棒立ちになってしまう。

「あ、ねぇねぇ!あの子ってもしかしておじさん達が言ってた子!?やだ、かわいー!」

と、そんな一方通行の姿に気付いた少女が上条に問いかけた。
どうやら上条の部屋に入ってくる前に両親と話をして、同行者二名について多少は聞いているらしい。

入口側に背を向けていた上条は、少女の指し示す方向に顔を向け―――

「あぁ、おはようインデックス。まだ遊びに行くにはちょっと早いぞ?」

「……ハァ?」

何やら寝ぼけた事を言い出すのであった。
293 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/12(土) 13:58:52.71 ID:n1XnNR9h0
一方通行は怪訝そうな目で上条を見やる。
自分の聞き間違いでなければ、今この少年は彼女の事を『インデックス』と呼んだ。

「……オマエ、何言ってンだ?ついに頭ン中までレベル0になっちまったかァ?」

「そうだよ、おにーちゃん。私もおじさん達から聞いてるもん。この子は桔梗ちゃんでしょ?」

「いや、だから桔梗はお前だろ!?インデックスも何でそんな喋り方してるんだ!?」

「あァ!?俺のどこをどう見ればあのクソシスターと間違えンだよ三下ァ!」

最初はタチの悪い冗談かと思ったが、どうやらこの少年は本気で言っているらしい。

一方通行とインデックス。
銀髪緑眼の英国人と白髪赤眼の日本人という、共に日本という国では見慣れない容姿をしているという点では共通しているものの、二人を見間違える要素はどこにもないはずだ。

そして、目の前の少女―――恐らく、今朝合流する予定と聞かされていた従妹だろう―――を桔梗と呼んだ。

桔梗というのは言うまでもなく、現在一方通行の保護者的な立場にある研究者、芳川の名前である。

学園都市最強の超能力者である彼女の本名を知る者はいないといわれている。
それは上条とて例外ではないのだが、両親に紹介する際に不審がられるのを避ける為、彼女にとって身近な女性である芳川の名前を拝借しているのだ。
もちろん一方通行にもちゃんとした本名はあるのだが、本人は『忘れた』の一点張りである。
294 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/12(土) 13:59:32.58 ID:n1XnNR9h0
そんな時だった。

「もー、朝から何騒いでるの?うるさくて眠れないんだよ……」

上条の大声で目を覚ましたらしい当のインデックスが、寝ぼけ眼を擦りながら部屋に入ってきた。
旅行中であってもシスターという本業を忘れてはいないらしく、いつもの安全ピンだらけの修道服に身を包んでいる。

「というか、さっきから私の名前呼んでたけど何か用なのかな?呼ぶなら壁越しじゃなくて普通に呼んで欲しいかも」

「あ……ああ……?」

「あ、あくせら―――じゃなかった、ききょうもおはよう。後でまた海に行こうね。言っとくけど、今日も力は使っちゃだめだからね?」

「チッ……、ンな事言われなくてもわかってらァ」

一方通行が面倒臭そうに舌打ちするが、インデックスはさほど気にしていない。
悪態をつきながらも何だかんだと付き合ってくれる為、彼女はこの少女の事がお気に入りなのだ。

「あの、インデックスさんだよね?」

「うん?」

「うわー!おにーちゃん、ほんとに外国の人と知り合いなんだ!」

と、二人の遣り取りを眺めていた少女が何やら感激した様子で目をキラキラと輝かせている。

「私、おにーちゃんの従妹の竜神乙姫です。おじさん達から話は聞いてます。短い間だけどよろしくね!」

「おとひめだね。覚えたんだよ!」

「うわうわ、日本語ペラペラじゃん!すごーい!!」

「ふふん、これくらい当然なんだよ!」

どうやら外国人―――それも自分と歳の近い少女と会うのは初めてらしく、たちまちヒートアップする乙姫。
インデックスも満更ではないらしく、無い胸を得意気に張っている。

この様子では今日も疲れる一日になりそうだ、と一方通行は溜息をつこうとして―――

「あぁ……あ……ああ……」

「……三下ァ?」

ふと、上条の様子がおかしい事に気が付いた。
この少年、何故かインデックスが登場してから一言も言葉を発していない。
295 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/12(土) 14:00:06.24 ID:n1XnNR9h0
と、次の瞬間、

「何してんだこの変態がああああああ!!」

「!?」

「ちょ、おにいちゃん!?」

「とうま!?」

今まで呆然とした様子でインデックスの姿を見ていた上条が、突如として咆哮を上げた。
突然の出来事に驚く一方通行と乙姫の間を物凄いスピードですり抜け、インデックスの胸倉を掴む。

「と、とうま、何するの!?苦しいんだよ!!」

「うるせぇこの変態ジジイ!いい年こいてなんつー格好してやがるんだ!?いくら命の恩人とはいえ見過ごせねぇぞ!!」

「ちょ、ちょっとおにーちゃん!?何してんの!?」

「お前も変にキャラ作ろうとしてんじゃねぇ!どいつもこいつもドッキリにしては悪趣味すぎんだろうが!!」

「と、とうまがおかしくなったんだよー!?」

「うるせぇ!!」

インデックスの修道服を掴んでガクガク揺さぶる上条と、慌てて止めに入る乙姫。
昨日までは至って平和な旅行だったはずが、今朝はどうも様子がおかしい。

そんな三人の様子をを眺めて、一方通行は、

(救急車、呼ンだ方がいいのか……?)

本格的に上条の頭がおかしくなってしまったものと思い、119番にコールするかどうかを真剣に悩んでいた。
上条がこうなった原因はわからないが、冥土帰し―――第七学区の病院に勤める凄腕の医者ならば何とかしてくれるはずだと思いながら。
296 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/12(土) 14:27:31.14 ID:z4bAc++P0
×学園都市最強の超能力者である彼女の本名を知る者はいないといわれている。



○学園都市最強の超能力者である一方通行の本名を知る者はいないといわれている。


芳川さんが最強の超能力者みたいな言い方になっちゃったのでちょっと修正。
297 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/12(土) 16:01:30.52 ID:Z1bBuw8do
テラカオスw
一方さんもエンゼルフォールくらっちゃったか…
298 :sage :2013/01/12(土) 16:10:30.09 ID:k/9bo9RA0
乙です
今回は短かったなぁ
299 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/12(土) 18:08:58.94 ID:xj5DrwHZo


インデックスは誰と入れ替わってるんだwww
300 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/13(日) 02:41:01.87 ID:RikMi2vG0
ジジイと呼ばれる年齢で上条にとって命の恩人となると一人しか該当者は居ないだろうね。
301 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/13(日) 19:59:39.03 ID:xH5pOH0S0
原作小説では青髪ピアスが白ワンピースの水着を着てた(誰得のおぞましい挿絵つき)わけだが
このSSでは小太りハゲのジジイが・・・


うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁうげェェェェェェェェェェェ
302 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/13(日) 21:28:54.82 ID:fxQ9R5650
それだけじゃ済まんぞ。
>>171の予告から推測すると
あのボディペイント的なビキニを顔面刺青オヤジが……

ぎゃあああああああああああああああああああああああああ
303 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/13(日) 23:20:47.86 ID:jutEJv2C0
「こら当麻。朝から大声出したら迷惑がかかるだろ―――って、何やってるんだお前は!?」

上条がインデックスの胸倉を掴んでガクガクと揺さぶっていると、騒ぎを聞きつけた彼の父親が廊下から姿を見せた。
無精ヒゲの生えた顎を撫でながら現れた父親は、朝っぱらから年下の少女に暴力紛いの行為を働いている息子を見るなり血相を変えて部屋に飛び込んだ。

上条刀夜。
上条当麻の父親であり、普段は外資系企業に勤める営業マンである。
年齢は三十代半ばといったところで、顔立ちはやはり当麻とどこか似ているように見える。

「離せ父さん!俺はこの変態ジジイを一発ぶん殴ってやらなきゃ気が済まねぇ!!」

「落ち着け当麻!女の子相手に暴力はいけないぞ!」

「アンタはこれが女の子に見えるのかよ!?どっからどう見てもカエル顔のジジイだろうが!!」

「何を言ってるんだお前は!?」

年下の少女をジジイ呼ばわりした挙句に暴力を振るおうとする上条を、刀夜が後ろから羽交い絞めにして何とか動きを封じた。
離せこの野郎!と腕の中でもがく息子をひたすら押さえ付ける。

「とうま……?」

刀夜が息子を押さえた事でようやく解放されたインデックスだったが、どうやら状況が全く理解できないらしく、畳に投げ出された体勢のまま呆然とした表情を作っていた。
寝起きに顔を合わせるなり何故か暴力を振るわれ、あまつさえカエル顔のジジイ呼ばわりである。
このわけのわからない事態に、インデックスの状況把握能力は完全にキャパシティオーバーしていた。
304 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/13(日) 23:22:56.10 ID:jutEJv2C0
「あらあら。当麻さんは朝から元気が有り余ってるのね」

「!?」

と、不意に部屋の入口から聞こえてきた声に、上条はビクリと身を震わせた。
恐る恐るそちらに顔を向けると、薄手の長い半袖ワンピースにカーディガンを羽織り、白い鍔広帽子を被った人物が顔を覗かせている。

「母さん、聞いてくれよ。当麻ときたら女の子に向かってジジイだなんて言うんだよ」

「あら、あらあら。当麻さん的は好きな女の子をいじめたくなる年頃なのかしら」

ゆったりとした口調で話すこの人物の名は上条詩菜。上条刀夜の妻にして、上条当麻の母親である。
どこか世間知らずのお嬢様のような雰囲気を醸し出しているこの母親は、刀夜の言葉の意味を理解しているのかしていないのか、にっこりと微笑んだまま息子の姿を見ていた。

「う、嘘だろ……嘘だと言ってくれよ……!」

「当麻!?お前、酷い汗だぞ!?」

そんな母親の微笑みを直視した上条は、何故か脂汗をかきながらわなわなと震えはじめた。
よくよく見ると顔色も悪く、膝はガクガクと揺れている。

「おい当麻!どこか具合でも悪いのか!?」

「嘘だろ……何で……何で……」

流石に不審に思った刀夜が声をかけるが、上条には聞こえていないようだった。
目の前にいる自分の母親を凝視しながら、うわ言のように呟いている。

「何で、何でお前がここにいるんだよ――――――木原ぁぁぁ!!」

次の瞬間、上条当麻は部屋の入口に立っていた詩菜を押し退け、ドタドタと音を響かせながら全力疾走で廊下を走り去った。
残された一方通行とインデックス、刀夜と乙姫は、ポカンとした表情で部屋の入口を眺めている。

「あらあら。当麻さんは盗んだバイクで走り出したくなる年頃なのね」

そんな中、詩菜だけがのんびりとした口調で呟いた。
どうもこの女性、周りと感覚が少しズレているらしい。
305 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/13(日) 23:28:22.79 ID:jutEJv2C0
――――――――――――――――――

一方通行は苛立っていた。
苛立ちの理由は他でもない、あの無能力者の少年である。

昨日までは至って普通に旅行を楽しんでいたはずが、どうも今朝から上条の様子がおかしい。
何度も人の事をインデックスと呼び間違え、尚且つ当のインデックス本人にはやけに冷たく当たるのだ。

しかも上条の奇行はそれだけに留まらなかった。

この海の家『わだつみ』の経営者である親子の姿を見るなり『小萌先生にアウレオルス!?こんな所で何やってるんだ!?』などと叫び出したり。

たまたま付けたテレビ番組に出演していた海パン一丁のお笑い芸人を見て、『み、みさかいもうと……何でそんな格好でテレビに……うぐっ』などと呻きながら鼻血を噴き出し、それを見た乙姫が『おじさん!おにーちゃんが男の人の裸見て鼻血出した!!』と騒いだり。

廊下でばったり出くわした詩菜の顔を見るや否や、『ひぃぃぃ!?ごめんなさいごめんなさい!!』などと謝罪の言葉を並べながら真っ青な顔で逃げ出したり(ちなみに詩菜は『あらあら。当麻さんは色々と難しい年頃なのね』とやはりズレた感想を述べており、さほど気にしている様子はない)と。


結局、それはこうして皆で海に出てきた今となっても改善される様子はなかった。
その証拠に、砂浜にしゃがみ込んだ一方通行の目の前には、錯乱した上条によって首まで砂に埋められたインデックスの姿があった。
306 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/13(日) 23:32:31.15 ID:jutEJv2C0
「ききょう……助けてほしいかも……」

まるで蟻地獄にはまった蟻のような姿のインデックスは、一方通行の姿を見つけると弱々しい声で助けを求めてくる。
首元まで砂に埋められている為、全身が圧迫されて喋るだけでも苦しいようだ。

「……ハァ。目ェ閉じて息止めてろ。口も開けンなよ」

インデックスが言われた通りに目を閉じたのを確認すると、一方通行は溜息を吐きながら砂浜に手を下ろした。
そのまま、トン、と掌で軽く砂を叩く。
たったそれだけの動作で、インデックスを囲んでいる砂が盛大に巻き散らされた。
立ち込める砂埃が晴れた後には、インデックスを中心に綺麗な円形が描かれ、大きな穴となっていた。

「ぺっぺっ。うう、助かったんだよ……」

「助けてやったンだから礼くらい言え」

「うん、ありがとね……」

運動量のベクトルを操作して片手で穴から引き上げてやると、全身砂まみれになったインデックスは口に入った砂を吐き出しながら一方通行の隣に座り込んだ。
いつもなら言い返してくるはずの悪態にも無反応なあたり、どうやら相当参っているらしい。

「……チッ」

いつもはうるさく感じていたが、すっかり元気をなくしてしまったインデックスの姿を見ると何となく調子が狂う。

舌打ちしつつも少女の肩に手を置き、全身に纏わりついた砂を『反射』の要領で払い落としてやる。
水着の生地が見えなくなる程の砂にまみれていた少女は、ほんの一瞬で小奇麗な姿へと生まれ変わった。

特に意味のある行為ではないが、それで少しでも少女の気が晴れればと思ったのだ。
307 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/13(日) 23:34:59.09 ID:jutEJv2C0
「っつーかよォ、あの馬鹿は何やって―――」

「う、うわあああああああああっ!?」

「……またかよ」

一方通行が喋り終えるよりも早く、少し離れた場所から事の元凶である少年の叫び声が聞こえてきた。

「き、き、きは、らっ……!なん、何だよこれぇぇぇっ!!」

「あら、あらあら。当麻さん的には母さんのセンスが許せないのね」

「こら当麻、母さん哀しそうな顔してるだろ!というか木原って誰だ!?」

「変態が……!この変態どもがぁぁぁ……!!」

今度は何事だ、と苛立ちながらもそちらを向くと、自分は海に入るつもりはないのか、朝食の時と同じ服装をした上条刀夜の姿があった。
その隣には何やら過激すぎるデザインの水着に身を包んだ詩菜がおり、傍では母親の水着姿を見た上条が顔面蒼白になっている。

確かに詩菜の水着は青少年には刺激の強すぎるデザインだが、あれほど必死の形相で叫び、あまつさえ変態呼ばわりされる程ではないだろう。
おまけにさっきから何故か自分の母親を木原呼ばわりしているのだが、どこをどう見ればあの顔面刺青男と見間違えるというのだろうか。

「……本格的に黄色い救急車が必要かもしれねェな」

どうやら脳の機能に重大な齟齬をきたしているらしい上条の姿を見て、一方通行は胃痛が再発する気配を感じるのであった。
308 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/13(日) 23:43:15.85 ID:jutEJv2C0
とりあえずここまでー。

なかなか書き溜める時間がないので短くなってしまってごめんなさい。

かわりに少しずつペースを早くできたらいいなと思ってます。
309 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/13(日) 23:49:45.01 ID:Lh5+qHS4o
おつー
せめて見た目がまともなアクセロリータに相談しろよww
310 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/13(日) 23:55:22.36 ID:v9PAVZ7Zo
藤原声で脳内再生したらきもすぎワロタwwwwww
311 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/14(月) 00:41:47.64 ID:3BRTjSjp0
上条さん個人に対してだけバゲージシティ以上の悪夢が展開されとるなwwww
312 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/14(月) 22:04:12.89 ID:DCSunY2p0
>>311お前のおかげで詩菜さんが病理さんと入れ替わってるところ想像して幸せになれた
313 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/14(月) 23:06:51.26 ID:hAe2GZJjo
しかし現実は数多である
314 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/16(水) 08:30:11.11 ID:DM9ILDu5o
しかも過激すぎる水着着用中
315 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/18(金) 19:22:01.88 ID:rag6VJ6Q0
はやく………続きを……
316 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/18(金) 20:56:07.80 ID:Zs6mSJsho
催促するほど間開いてないだろ
317 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/19(土) 23:45:18.15 ID:V3u94R+H0
舞ってますゥ⋆
318 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/21(月) 14:19:43.17 ID:rx2kcYNQ0
――――――――――――――――――

人間とはどんなことにもすぐ慣れる動物である、という言葉を残した偉人は誰であったか。

例えば、自分の知らない世界を初めて垣間見た時。
それがいい意味であれ悪い意味であれ、人間がその時感じる衝撃や感動は言葉にし難い程のものがあるだろう。

だが、その衝撃や感動、あるいは違和感などといった感情は、何度も回数を重ねる事によって自然と薄れていくものだ。
良くも悪くも、人間という生き物は『慣れる』事によって器用に順応してしまうのである。

そして、それは当然ながら上条当麻の奇行にも当て嵌まる。

「うーむ、昼食の時間になっても戻ってこないか。どうやら今日の当麻は一段と反抗期らしいなあ」

「あらあら。当麻さんは思春期真っ盛りですものね。ところで木原さんってどなたの事なのかしら?」

「きっととうまがおかしくなったのはヒキコ=モリーのせいなんだよ!これは家庭崩壊の兆しかも!あれは『カテーナイボーリョク』なんだよ!」

「え、おにーちゃん引き篭もりなの!?部屋に篭って一日中美少女ゲームとかやっちゃうの!?」

「………」

一方通行は目の前で繰り広げられる会話を聞きながら、『慣れる』という事の恐ろしさを改めて実感していた。

最初こそ様子のおかしい上条に対して怪訝な目を向けていた周囲の人間も、こう何度も繰り返されるといい加減耐性が付いてきたらしく、いちいち心配する必要はないと判断したようだ。
今では上条の奇行は『思春期特有のよくわからない衝動に突き動かされた結果の行動』という認識に落ち着いてしまっていた。

有無を言わさず砂に埋められ精神的に参っていたはずのインデックスですら、『上条がおかしくなったのは最近の引き篭もり生活の所為だろう』という結論に至ったようで、今更ながら理不尽な暴力に対する怒りを露にしている。
あの狼狽ぶりはそれどころのレベルじゃないだろうと一方通行は思うのだが、この能天気な会話を聞いていると、真剣に考えている自分の方がおかしいのではないかという気がしてくる。
故に無駄な横槍を入れる事もせず、先程から聞きに徹しているというわけである。

ちなみに周囲から思春期真っ盛りのかわいそうな子認定された当の上条当麻はというと、散々母親を変態呼ばわりした後に何処かへと姿を眩ませていた。
それでも気にせずに上条抜きで海を満喫しているあたり、周りはすっかり“慣れて”しまったようだ。
319 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/21(月) 14:22:24.75 ID:rx2kcYNQ0
やや大きめなビーチパラソルの下でそんな会話をした後、もう一遊びしに行こうとインデックスや乙姫が立ち上がった時、不意に詩菜が口を開いた。

「あらあら。ところで、桔梗さんは海には入らないのかしら?」

その言葉を聞いた瞬間、一方通行はピクリと僅かに身動ぎした。
悪戯を隠し通そうとした子供が親に勘付かれた時のような、触れて欲しくない事柄に触れられてしまった時の反応だ。

「別に―――」

「そういえばずっと上着着たままだよね。せっかく下は水着なんだから脱げばいいのに!」

「言われてみれば昨日もTシャツ脱がなかったんだよ!」

「………」

何かを言いかけたところで乙姫によって先手を打たれてしまい、更にインデックスの追撃も加わった事によって言い逃れできなくなってしまう。

現在一方通行が着ているのは、いつもの白いワンピース――――ではない。
薄いピンクの生地をベースに小さな花柄の模様が描かれ、フリルがたっぷりとついた子供用の水着。その上から白い生地に灰色のラインが描かれたTシャツを着込んでいる。
Tシャツのサイズが大きいため、一方通行が着ている水着は外からは見えないようになっていた。

海の家『わだつみ』に到着してから二日目の朝。
初日を夏休みの宿題で丸一日潰してしまった埋め合わせとして、上条と一方通行はインデックスに好きなだけ付き合うという約束をしていた。
当然のように海に入って遊ぼうと言い出したインデックスに対し、水着を持っていないという理由で体よく断ろうとした一方通行だった―――のだが。

『お客さん宛てに荷物が届いてますよ』

『へ?俺に?』

狙ったのではないかという程の絶妙なタイミングで、上条宛てに荷物が届いた。
送り主の名前は芳川桔梗。一方通行の保護者的な立場にある研究者の女性である。

芳川の名前を見た瞬間何だか嫌な予感がした一方通行は、咄嗟に風のベクトルを操って荷物をどこぞへと吹き飛ばしてやろうとしたのだが、上条の『幻想殺し』によって阻まれ失敗。
尚も暴れようとする一方通行を上条が押さえつけ、インデックスが荷物を開封すると、中には一方通行の着替え一式、それと子供用の水着が一着。
更には『どうせあなたは水着なんて持って行かないでしょうから、私の方で用意しておいたわ。ちゃんと着てくれないと悲しむわよ?』と芳川の字で書かれた手紙も同封されていた。

その水着が、奇しくもセブンスミストで上条が手に取った水着と同じデザインだったというわけである。
320 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/21(月) 14:24:15.44 ID:rx2kcYNQ0
――――――――――――――――――

「きゃー!何これかわいー!後で写メ撮っていい!?」

「うんうん!とっても似合ってるかも!」

「………」

数分後。
そこには乙姫とインデックスによってTシャツを剥ぎ取られ、水着姿となった一方通行の姿があった。

彼女の雪のような白い肌に、水着のパステルピンクがよく生える。
透き通るような赤い瞳と、絹糸のように艶やかな白い髪。
つり目がちだが整った顔立ちも相まって、その容姿からは常人離れした愛くるしさを感じさせていた。

もっとも、当の本人はそんな周囲の評価を気にしている余裕などない。

(クソッタレが……!芳川殺す……!)

ここにはいない保護者のしたり顔を思い浮かべ、羞恥で紅潮した顔を俯かせながらわなわなと震えていた。
ここに『妹達』が一人たりともいなくてよかった、と思いながら。




一方通行は知らない。

こうして束の間の平和を享受している間にも、自身に忍び寄る影がある事を。
321 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/21(月) 14:26:45.47 ID:rx2kcYNQ0
――――――――――――――――――

「……ふ、ふふ」

とある研究所の一室。
そこは窓も扉も閉め切り、カーテンすら閉じた密閉空間だった。

「ふふ、ふふふふ……」

外からの光を遮断し、電気すら付けていない暗闇の中、モニターが発する光だけが少女の顔を不気味に照らし出していた。
完全に外から切り離された空間となった部屋で、少女はだらしなく緩んだ表情を取り繕う事もしない。

その目は、ただ一点―――モニターに映る映像だけを見つめていた。

『―――す!帰っ――絶対―――殺―!』

モニターに映る人物が、紅潮した顔で何かを叫んでいる。
その様子を見て、少女“達”は更に顔をだらしないものへと変えていく。

「あの男と旅行に行くと聞かされ、一時は悲しみに明け暮れるところでしたが……まさかこんな物があるとは。流石は学園都市といったところでしょうか」

モニターから一瞬たりとも目を離さずに、少女の一人が口を開いた。

『T:MQ(タイプ:モスキート)』。
現在、モニター流れている映像をリアルタイムで撮影している機材の名称である。

蚊を模した極小の昆虫型ロボットで、蚊のように飛行して対象にとりつき、口の針からナノデバイスを注入することで対象の無力化を行う。
ナノデバイスを注入された対象は患部が腫れ上がり、高熱を発して行動不能に陥る―――というのが本来の使い道だ。

とはいえ、少女達にはモニターに映る人物を傷付けるつもりは微塵もない。
そのため現在はカメラ・マイク機能を主として使用中である。

もっとも。
あの男が何かおかしな動きを見せた時は、容赦なく本来の機能を使うと決めているのだが。
322 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/21(月) 14:27:48.15 ID:rx2kcYNQ0
――――――――――――――――――

『……今、なんと?』

『だから、夏休みが終わるまで“外”に行くそうよ。昨日あの子から連絡があったわ』

先日、彼女があの男と旅行に行ったと聞かされた時は耳を疑った。
だが、彼女達が住処としている研究所の主・芳川の話によると、既に上層部から外出許可は出ており、今頃はあの男と共に“外”の民宿にいる頃だという。

『なぜ、何故ミサカ達を差し置いて“あの男”なのですか……』

『あくせろりーたのばか!ばかばかばか!とみさかは――――』

少女達は荒れるに荒れ、一部ではヤケ酒(芳川がこっそり研究所に持ち込んだ高級酒)に走る者までいた程だ。


―――そんな時。


『おーおー、荒れてんなあ』


彼女達の前に、悪魔が現れた。
323 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/21(月) 14:28:52.68 ID:rx2kcYNQ0
『何しに来たのですか、とミサカは敵意を露にします』

『あ?何だよ冷てえなあ。こっちはテメエらが落ち込んでるんじゃないかと思って来てやったってのによ』

『……用がないのならさっさと帰ってください、とミサカは辛辣に言い放ちます』

誤解のないよう言っておくが、少女達とこの男は特別仲が悪いわけではない。
“あの子”に対して過保護すぎるきらいはあるが、この男はこの男なりに“あの子”に愛情を注いでいるのを知っているからだ。
一部の、“あの子”に対して過剰なまでの感情を抱いている個体とは意気投合していたりもする。

だが、この状況から言えば間が悪い事この上ない。
今の少女達はかつてないほどに虫の居所が悪いのだ。この男の軽薄そうな声を聞くだけでも、胸の奥のもやもやしたものが爆発しそうになる。

『おーおー、酷い言い草だねえ。せっかくテメエらにとって有益な情報を持ってきたってのによ』

『………?』

しかし。
言われた側の男はさほど気にした様子もなく、相変わらずの軽薄そうな声で言った。

『ここからでもあのガキの様子を見る事ができる―――って言ったらどうする?』

『っ!?』

わかりやすく反応する少女達を見て、男は笑う。
笑って、告げる。

『その代わり、ちっとばかし頼みがあんだよなあ―――』

彼女達にとっての、悪魔の囁きを。
324 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/21(月) 14:30:32.00 ID:rx2kcYNQ0
――――――――――――――――――

そこからの行動は早かった。

悪魔との取引を承諾した少女達は、早速作戦の要となる芳川に話を付ける事にした。

方法は至って単純だ。

唯一“あの子”の行き先を知る芳川に、着替えを送るという口実で荷物を送らせる。
そして荷物をまとめる際、男から譲り受けた『T:MQ』をこっそりと荷物に紛れ込ませたのだ。

そして、悪魔との交換条件―――“あの子”の水着姿を撮影すべく、こうしてモニターの前に張り付いているというわけである。


「ふ、ふふ……もうだめです、とミサカは……きゅぅ」

「10031号!?10031号、しっかりしてください!とミサカ13577号は10031号を揺さぶりながらも画面を凝視します!」

「くっ、10031号には刺激が強すぎましたか……!ですがミサカはまだいけます、とミサカ10032号は―――」

「あくせろりーたのばか!ばか!みさかもいきたかった!」

「19090号はまだお酒が抜けていないのですか、とミサカ10032号は呆れ顔で溜息をつきます」

「―――っ!?対象が移動を開始!移動先には―――あの男がいます!とミサカ9982号は報告します!」

「!?」



一方通行は知らない。自分の目の届かない場所で起こっている事を。

だが、世の中には知らないほうが幸せな事もある。
325 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/21(月) 14:32:51.42 ID:rx2kcYNQ0
× ですがミサカはまだいけます、とミサカ10032号は―――


○ ですがミサカはまだいけます、とミサカ10039号は―――


またやっちゃった。
妹達が出てくると個体番号いつも間違える……!
326 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/21(月) 14:36:32.50 ID:rx2kcYNQ0
というわけでここまで。

書いてから思ったけどこれじゃ妹達ただの変態じゃないか
327 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/21(月) 16:29:03.14 ID:dGWR5FBIO
だがそれがいい
328 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/21(月) 20:51:12.88 ID:7WwcZdZOo
妹達が楽しそうで何よりです
329 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/21(月) 22:20:56.42 ID:fiTUYVF4o
妹達ぶれないな
330 :sage [sage]:2013/01/23(水) 13:52:22.80 ID:UqvZp6Pm0
はじめてリアルに進行してるSS読んでる
応援してます!
331 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/23(水) 21:32:48.66 ID:ZqYv0yuN0
頑張って!
332 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/23(水) 21:43:03.81 ID:vSOd1NiB0
妹達とはいい酒が飲めそうだぜ
333 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/27(日) 20:09:45.10 ID:+iXFNAyG0
続きはぁ?
334 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/31(木) 00:05:40.28 ID:l6aMl3GA0
私待ってる
335 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/02(土) 17:01:22.99 ID:D4tDxOE40
このスレもなんか急に書き込まなくなって
気づいたら 。。。
なんてことにならないことを願ってる
336 :1 [sage saga]:2013/02/05(火) 11:43:56.51 ID:GGTCnGuW0
ごめんねほんとごめんね。
ペース早くしたいとか言いつつ忙しくて放置しちゃってました。

明後日やっと休みなので投下できると思います!
337 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/05(火) 12:40:45.29 ID:xc5CcCKIO
舞ってた
338 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/05(火) 17:49:29.83 ID:jwMU5CAuo
待ってて良かった
339 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/02/07(木) 13:53:54.96 ID:UNcFsYiK0
――――――――――――――――――

午後八時。
夕食の時間になってようやく戻ってきた息子を加え、海の家の一階で丸テーブルを囲むように上条一家は座っていた。
勿論、そこには今回の旅行の同行者である少女二名に加え、上条の従妹である竜神乙姫の姿もある。

と、ここまでは朝食の時の光景と何ら変わりはない。
だが、夜の食卓風景には朝食の時とは決定的に違う部分があった。

「……で?これはどういう状況なンですかァ?」

「えーっと、これには深ーい事情がありまして……」

「それを説明しろっつってンだろォが」

「は、はい……」

一方通行から射抜くような視線を浴びせられ、上条は彼女の顔を直視できないでいた。
その視線に籠められた尋常ではない量の殺気に当てられ、全身に冷たい汗が流れていく。

何も知らない者が見れば、年下の女の子相手に何を下手に出ているのかと思うかもしれない。
だが、その女の子が持つ力を知っている上条にとって、彼女の機嫌を損ねるという事は自らの身の危険に直結している。
故に口答えする事もできず、ただただ相手を刺激しないよう慎重に言葉を選んでいるのだった。
340 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/02/07(木) 14:15:44.64 ID:UNcFsYiK0
「まあまあ、当麻の友達ということなら私は構わないさ。人数は多いほうが楽しいだろう?」

「あらあら。当麻さんは尻に敷かれるタイプなのかしら?」

そんな上条の様子が見るに堪えなかったのか、刀夜が仲裁に入る。
詩菜は相変わらずズレた事を言っているが、いちいち突っ込んでいたらキリがないという事はこの数時間で学習済みだ。

(……チッ)

一方通行は声には出さず、内心で舌打ちする。
新たに食卓に加わった“二人”に対して、息子の友人ならばと快く食卓に同席させてくれた。
家族旅行に初対面の人間を同席させる事に嫌な顔一つしないことから、この夫妻はなかなかに懐の広い人間らしい。

もっとも、初対面の人間という点は一方通行やインデックスにも当て嵌まる。
むしろ付き合いの長さで言えば、“上条の同級生”である彼らの方がよほど長いといえるだろう。

(クソッタレが。わかってンだよ、余計な事言わねェで黙ってりゃいいって事くらい)

確かに、ここで食って掛かったところで場の雰囲気を悪くするだけだ。
一方通行とてわざわざ居心地の悪い思いをしたくはない。

したくはない、のだが。
341 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/02/07(木) 14:25:01.39 ID:UNcFsYiK0
「何でオマエがここにいンだよ……!」

したくはないのだが、どうしても言わずにはいられなかった。
目の前の人物の存在をスルーできるほど、一方通行は我慢強くはない。

何故なら。
本来であればこんな場所で見るはずもない―――見たくもない顔が、目の前にいるのだから。

「え、ボクのこと知ってるん?どこかで会ったっけ?」

「服屋で会っただろォが。忘れたとは言わせねェぞ」

「……なーんて、冗談冗談。ちゃーんと覚えとるよ?久しぶりやねー」

「まだ三日しか経ってねェよ……」

世界三大テノールもびっくりな超低音ボイスで紡がれる胡散臭い関西弁を聞きながら、一方通行はうんざりとした表情を浮かべた。

明らかに染めているであろう青髪に、自己主張の激しいピアス。
つい先日遭遇したばかりの“本物の変態”が、何故かこの海の家『わだつみ』にいるのであった。
342 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/02/07(木) 14:38:12.20 ID:UNcFsYiK0
「すまないが、その言葉遣いを何とかしてくれないか」

「あァ?」

と、そんな一方通行にもう一人の“友人”が声をかけてきた。
食卓についてから一言も言葉を発していない人物だったが、どうやら一方通行の口調が気になるらしく、眉間に皺を寄せてこちらを見ている。

「君は女の子だろう。あまり品のない言葉遣いをするべきではない」

「ンなモン知るかよ。俺がどンな言葉遣いをしようと勝手だろォが」

「だからその『俺』というのをやめろと言っている!その顔で品のない言葉遣いをするんじゃない!」

「一人でキレてンじゃねェよ。何なンだっつーの」

妙に食って掛かってくる男に、一方通行は面倒臭そうに顔を顰めた。
ぼさぼさの茶髪に鼻ピアスといういかにも不良といった容貌の少年だが、見た目に反して言葉遣いには五月蝿いらしい。
おまけに妙に大人びた口調で話すという、色々とちぐはぐな印象を受ける少年だ。

「っつーかオマエの口調の方がよっぽど似合ってねェンだよ。その三下面で丁寧な言葉遣いされると気色悪いったらありゃしねェ。その辺のチンピラに胡麻摺ってンのがお似合いだぜ」

「くっ……!僕は好きでこんな姿をしているわけではない……っ!」

「そりゃ御愁傷様。恨むなら小物くせェ顔に生まれちまった自分を恨むンだなァ」

「〜〜〜!!」

当然、そんな人間が口の悪さで一方通行に勝てるはずもなく。
もはや怒りを通り越して言葉にならないのか、少年は真っ赤な顔で口をパクパクとさせた。

『三つ子の魂百まで』とはよくいったもので、幼い頃の性格や気性は年をとっても変わらない物だ。
そして、幼い子供は親の言動・行動から様々な事を学習する。それは学園都市最強の超能力者といえども例外ではない。
彼女の(自称)育ての親である木原数多がああなのだから、女の子らしい言葉遣いなど出来るはずもないのだ。
343 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/02/07(木) 14:51:08.46 ID:UNcFsYiK0
「で?オマエは何で“外”にいるンだよ」

返す言葉を探して口をパクつかせる少年を余所目に、一方通行は青髪ピアスへと向き直り、もっともな疑問を口にする。

「ん〜?そりゃあボクだって旅行の一つや二つくらいしたくなる時もあるよ?」

一方通行のもっともな疑問に対しもっともな答えを返す青髪ピアスだが、学園都市に住む者にとってはそう簡単に実行できるものではない。
外出するのに許可が必要なはずの学園都市外に、それもピンポイントで一方通行達の前に姿を現せた。
上条の友人であるとはいえ、いくら何でも出来すぎている。

「しらばってくれンじゃ―――」

「だって仕方ないやろ!?ボクぁ思春期真っ盛りの高校生男子なんやで!いつもいつもカミやんばっかりハーレム構築しとるけど、ボクだって君みたいな銀髪ちゃんやら義妹メイドやらに囲まれてキャッキャウフフしたいねん!一夏のアバンチュールを求めて海に繰り出す事の何が悪いんや!?」

「………。もォいい……」

これ以上追求するとなると胃がもたないと悟った一方通行は、片手で頭を押さえながら席を立った。
何を聞いてもこの調子で返されたのでは堪ったものではない。好き好んで自らの胃に負担をかけるような趣味はないのだ。

「あれ、あく―――ききょう、どこ行くの?」

「部屋に忘れモンだ」

インデックスの質問に口から出任せを言って、一方通行は廊下へと出て行った。
344 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2013/02/07(木) 15:11:13.59 ID:UNcFsYiK0
途中だけどちょっと出かけてきます
345 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/07(木) 18:15:30.65 ID:1xyYK10W0
いってら

青ピさんの活躍はこれからだぜ

と思う
346 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/07(木) 19:34:22.68 ID:SG1LHShyo
ねーちんからしたらインデックスがぐれたように見えてるんだなwwww
347 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/07(木) 20:07:43.14 ID:7qn2ldy2o
あれ、青ピは本人?
348 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/02/07(木) 21:19:48.00 ID:xiUqkBG+0
――――――――――――――――――

忘れ物をしたとインデックスには言ったが、勿論それは嘘だ。
そもそも一方通行は今回の旅行に乗り気ではなかったため、着替えなどの必要最低限の物以外は何一つ持ってきてはいない。

一人部屋に戻り、既に敷いてあった布団に寝転がる。
長い年月の経過によって薄汚れた天井をぼんやりと眺めながら、思考だけを加速させていく。

何故嘘を吐いてまで強引に部屋を出てきたかといえば、それは件の“友人”にきな臭いものを感じたからに他ならない。

(“外”にいる事に関してはまだ説明が付く。一緒にいた野郎も、見た目と口調が不釣合いって事を除けば何て事はねェ)

“偶然”旅行に行こうと外出許可を貰っていたところで、“偶然”上条達と行き先が同じだった。
もしくは、事前に上条から旅行の行き先を聞かされていて、友人同士という事で同じ行き先を選んだか。
どちらにしても無理矢理なこじ付けだが、“外”にいる理由としては考えられなくもない。

だが、しかし。

(何だ……?何が引っ掛かってやがるンだ?)

あの二人の態度。今朝からの上条の態度。
それらに共通した、何か引っ掛かりのようなものを感じる。
349 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/02/07(木) 22:01:04.53 ID:xiUqkBG+0
とはいえ。

違和感があると一言で言っても、その原因を特定するには至らなかった。
上条は何かを知っていそうな様子だったが、いくら睨みを利かせても口を割りそうにはない。

かといって“友人”に話を聞こうものなら、あの男の変態トークが炸裂するだろう。
そんな状態でいくら粘ったところで、先に一方通行の胃が駄目になってしまいそうだ。

自分が考えすぎているだけで、本当に単なる偶然だったのかもしれない。
そもそも、二人のうちの一人は一方通行も知っている顔(忘れたくても忘れられない)なのだ。

あの男の変態具合も胡散臭い関西弁も、ほんの数日前に嫌というほど味わっている。
先の会話における言葉の一つ一つにも、特別おかしな所はなかった―――はずなのだが。

何かが、引っ掛かる。

(……チッ。深読みしすぎだ、クソッタレが)

些細な違和感一つに敏感になっている自分に、やや自嘲気味な感想を漏らす。

かつての量産型能力者計画に、絶対能力進化実験。
それらの計画に深く関わる事となった一方通行は、ほんの一端に過ぎないとはいえ学園都市の“闇”を垣間見た。

利用できるものは全て利用し、疑わしいものは全て疑う。
騙し騙され。利用し利用され。殺し殺され。
そんな“ケダモノのルール”が、当たり前のように罷り通る世界。

彼女は、そんな世界から『妹達』を救い出す道を選んだ。

それ故に、だろうか。
ほんの小さな引っ掛かりですら、疑わずにはいられない。疑わなければ足を掬われる。
そんな思考が、一方通行の中にいつの間にか根付いてしまっていた。
350 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/08(金) 00:10:22.49 ID:Z+4uNuRw0
このエンゼルフォールは

一方通行 → インデックス
インデックス → カエル顔の医者
上条詩菜 → 木原数多
竜神乙姫 → 一方通行
ステイル → 浜面仕上
??? → 青髪ピアス

となっているのか?
351 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/08(金) 00:46:15.84 ID:fKJ87YgDO
土御門がなってそう
青のキャラよく知ってるし
352 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/08(金) 08:16:15.63 ID:tjAEQ3yIO
おつー
353 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/02/08(金) 09:39:19.09 ID:U+XDeC9m0
(だが、俺はアイツを知っている)

姿形は三日前と変わらない。本物の馬鹿だという点も同じく。

(『肉体変化』だとしても、わざわざ奴に化けてまで接触してくる理由がねェ)

学園都市には『肉体変化(メタモルフォーゼ)』という、自分の外見そのものを変化させる能力を持つ者がいる。
流石に遺伝子レベルでの変化は不可能なものの、能力によって姿形を相手に似せる事くらいは出来るのだ。

だが、『肉体変化』は学園都市でも2、3人しかいない程の希少な能力だ。
一方通行には『肉体変化』の能力を持つ知り合いはおらず、それは上条にとっても同じ事。

そんな希少な能力者が、わざわざ外出許可を取ってまでこちらに接触してくる理由がない。

ただし。

唯一、考えられるとするならば。
“こちら”に接触する理由はなくとも、“あちら”絡みだとすれば。


それは―――


(……クソッタレが)

未だまとまり切らない思考を半ば強引にシャットダウンし、枕元に置いていた携帯電話を手に取る。
そのまま連絡先リストを開き、一番上に登録されている人物へとコールする。
354 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/02/08(金) 10:04:04.89 ID:U+XDeC9m0
程なくして電話は繋がった。

『あなたからかけてくるなんて珍しいわね。わたしが恋しくなったのかしら?』

『ふざけた事言ってるとオマエの研究所ごと葬るぞ』

『あら怖い』

電話口の向こうから、からかうような声で応答したのは芳川桔梗。
現在一方通行の保護者的な立場にいる研究者であり、この旅行中に限り名前を拝借している人物でもある。

大の大人ですら恐れる最強の超能力者相手に軽口を叩けるのは保護者だからこそだろう。

『おい芳川、単刀直入に聞くぞ。そっちに何も変わった事はねェな?』

『“そっち”というのはわたしに対して?それともあの子達に対して?』

『アイツらも“含めて”、だ』

『……そう。ふふ……』

暗に自分の身を案じてくれている事を感じ、芳川はクスリと笑みを零した。

あの子が守ると決めたのは『妹達』で、自分は彼女達を無残に殺す為の実験に加担していた、いわば仇敵にも近い存在だ。
事実、『妹達』の調整役を申し出た際も、ほんの少し言葉を誤れば容赦なく殺されていただろう。

所詮はギブアンドテイクのドライな関係。
表面上はどう取り繕おうと、内心いくら恨まれていても仕方ない。
そう思っていたのだ。

だが。
どうやらこの子が守る対象には、自分の事も含まれているらしい。

そんな些細な事が、どうしようもなく嬉しかった。
355 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/02/08(金) 10:25:14.99 ID:U+XDeC9m0
『安心して、ここには誰も来ていないわ。木原数多を除けばね』

『……そォかい』

木原数多の名前を聞いた途端、一方通行のテンションがガクリと下がった。
上層部や暗部の介入がないのは喜ばしい事ではあるが、自分の留守中にあの男が立ち寄ったと聞いただけでも気分が滅入る。

おまけに最近では一部の『妹達』とも異様に仲が良く、二人でこちらをチラチラ見ながら何事かを話し合う光景も目にしている。
何を話していたのかは知らないが、『妹達』と木原の組み合わせを考えれば碌でもない事であるのは確かだろう。

だが。
相手が木原数多であるからこそ、警戒する必要はないと思う。思えてしまう。

『ハァ……』

そんな自分自身に対し、溜息ひとつ。
違和感一つにあれほど敏感になっていたというのに、あの“自称”保護者に対しては警戒心が緩みすぎている。

『まあ、こっちは特に何事もないわよ。あなたに置いて行かれたことで、あの子達がヤケを起こしてた以外は』

『ンなこと言われてもどうしろってンですかァ?』

『簡単よ。あなたから直接あの子達に声を聞かせてあげればいい、ただそれだけよ』

要するに、こちらから『妹達』に連絡を入れろという事らしい。
356 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/02/08(金) 10:37:44.34 ID:U+XDeC9m0
置いて行かれたと言われても、一方通行だって好きでこんな時期に旅行に来ているわけではない。
そんな事でヤケを起こされたところで、こちらが謝る必要はどこにもないだろう。

そもそも芳川を通じて『妹達』の安否確認は出来ている。
ならば、わざわざ直接連絡を入れる必要はあるのか。

『………』

そこまで考えて。
ふと、一週間ほど前に病室で言われた言葉が頭を過ぎった。


―――ミサカ達はとっくにあなたのお友達のつもりでしたよ。


友達。
“普通の人間”であれば、誰しも必ず一人は持っているもの。
かつて一方通行が手を伸ばし、それでも届かず、絶対的な力を渇望するようになった切欠ともいえる存在。

友達など自分には一生無縁であると、そう思っていた。
だが、そんな思い込みは、あの時のあの言葉によっていとも簡単に覆された。

だからこそ。

『……クソッタレ。面倒臭せェな、“友達”ってのは』

ポツリと洩らし、芳川との通話を切った。

そのまま連絡先リストをスクロールさせ、“友達”の番号を探し出す。
幸いなことに、あの場にいた全員と連絡先の交換は(半ば強引に)済ませてある。

とりあえず、一番最初に目に留まった名前にコールしてみよう。
彼女達が喜びそうな話題など皆目見当もつかないが、声を聞かせるだけでもいいというのなら。

そう思いながら、一方通行は通話ボタンに指を伸ばす―――
357 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/02/08(金) 10:52:38.33 ID:U+XDeC9m0
――――――――――――――――――

『通話ボタンを押したのを確認!間もなくきます、とミサカ9982号は報告します!』

『あの子が真っ先に連絡するのは誰なんですか、とミサカ10032号は携帯電話のマナーモードを解除しつつ期待に胸を膨らませます』

『そんなものはこのミサカに決まってます、とミサカ10039号はこれ見よがしに着信音量をMAXまで引き上げます』

『ふんだ!どうせみさかじゃないんでしょ!あくせろりーたのばか!』

『19090号。これ以上飲んだら身体が持ちませんよ、とミサカ13577号は19090号の手から酒瓶をひったくります』

『こうやってお酒とギャンブルしか生き甲斐のないダメ人間になってしまうのね、ってミサカはミサカは19090号に哀れみの視線を送ってみたり』

『まったくです、とミサカ10032号は呆れながらも同意し……ます……?って―――』


『『『『『『上位個体!?』』』』』』
358 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/02/08(金) 11:04:21.44 ID:U+XDeC9m0
『いえーい!ミサカを差し置いてこんな面白そうなことしてるなんて許さないぜ!ってミサカはミサカはみんなのお楽しみに颯爽と乱入してみたり!』

『また培養器から勝手に出てきたのですか、とミサカ10032号は呆れます』

『だってだって。みんながネットワーク上で楽しそうにしてるのにミサカだけ除け者なんだもん、ってミサカはミサカは頬を膨らませながら拗ねてみたり』

『その仕草は一部の性癖を持つ者以外には殺意の対象となりますよ。ついでに言うと邪魔なので黙っててください、とミサカ10039号は辛辣に言い放ちます』

『ひ、ひどい……この人上位個体を敬う気が全くないよ、ってミサカはミサカは生意気な部下に悩まされる上司のような気分。あなたもそう思うでしょ、ってミサカはミサカは―――』

『どうでもいいので静かにして頂けませんか、とミサカ10031号は上位個体に冷たい眼差しを送ります』

『がーん!』

『そんなっ、ことよりっ!19090号をっ、何とかっ、してくだっ、さいと、ミサカっ13577号はっ―――!』

『かえしてください!かえしてよ!かえせ!!』



『やれやれ、とミサカ9982号は溜息をつきながら―――っ!?』







『きたっ!!とミサカ――――号は―――!!』



359 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/02/08(金) 11:08:19.65 ID:U+XDeC9m0
こうして、一方通行の“友達”は至って平穏な日々を送っているのだった。

『……携帯電話持ってない、ってミサカはミサカは涙目になってみたり……』

ちなみにこの上位個体。
後に起こったとある事件の鍵となる人物なのだが、それはまた別のお話。
360 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/02/08(金) 11:18:56.52 ID:U+XDeC9m0
とりあえずここまでー。
361 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/08(金) 12:47:25.42 ID:tjAEQ3yIO
かわいい(迫真)

おつ
362 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/08(金) 17:42:30.02 ID:Vo4nWukG0
楽しみだぜっ
363 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/08(金) 17:48:46.61 ID:3ez3+c8/0


結局何号だったんだろぅ

364 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/08(金) 19:14:07.16 ID:Cth75B4vo


セロリいい子だなあ
365 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/08(金) 21:33:58.28 ID:R8MM3YGS0
> ボクだって君みたいな銀髪ちゃんやら義妹メイドやらに囲まれてキャッキャウフフしたいねん!

一方通行に向かって「白髪」じゃなく「銀髪」と言ってるってことは、魔術にかかってないのか?
366 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/09(土) 15:12:46.60 ID:o9TOR004o
>>365
かかっているからインデックスに見えるんじゃ?
367 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/09(土) 18:21:28.68 ID:tSElYwKjo
エンゼルフォールは認識そのものを歪めるからかかってたら一方通行に見えてるはず
368 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/10(日) 04:13:38.76 ID:yrw/dGlSO
刀夜さんがエンゼルフォール発動したのは間違いないだろうから、青ピは>>351が言ってたみたいにつっちーかな?
理由は展開予想になるから書かんけどステイルがいるってことは多分そうだろうし
369 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/03/05(火) 23:46:52.31 ID:0jWN6NzG0
続きまだかな……
370 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/03/08(金) 18:21:24.67 ID:vBQvI8B50
追い付いた
371 :りすす :2013/03/27(水) 17:58:08.80 ID:dlPHm7XX0
続きがない(´;ω;`)
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