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新城直衛「正義の味方?」 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 : ◆1XmsYbpRzk :2012/11/26(月) 01:33:11.81 ID:xT30PnyB0
皇国の守護者とFateのSSです。
新城は原作9巻のあとに聖杯戦争に参加しているので、ネタバレにご容赦ください。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1353861191
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モバP「19歳になった橘ありすに勝てない」 @ 2020/05/31(日) 03:07:38.69 ID:zcfde6Ug0
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末原「こりゃもう終わりかなって思ったときからが勝負や!」漫「先輩……」 @ 2020/05/31(日) 02:36:46.86 ID:6LO6VK2u0
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「ねえ、大丈夫かい?」 @ 2020/05/31(日) 02:23:00.06 ID:uUnHeNjQ0
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【ガンダム】ウルフラム「安価とコンマで一年戦争(欧州戦線)」その7 @ 2020/05/30(土) 22:57:25.61 ID:Em98O5wC0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1590847045/

my vision was enhanced,ridden with anxiety,but i couldn’t sit quietly.  @ 2020/05/30(土) 22:29:56.09 ID:oV0bpsyDo
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サイト「愛してるよ、ルイズ」ルイズ「わ、私も、あんたのことを……」 @ 2020/05/30(土) 22:13:07.57 ID:A9YfU/XoO
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【安価・コンマ】僕「青春学園テニス部?」Part2 @ 2020/05/30(土) 19:43:50.77 ID:cmYaY3HpO
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2 : ◆1XmsYbpRzk :2012/11/26(月) 01:33:58.01 ID:xT30PnyB0
凛「それであんた、何者なの?」

新城「《皇国》陸軍中佐、新城直衛」

凛「クラスは?」

新城「なんだそれは」

凛「…」

凛(儀式は完璧だったはずなのに…)




少女の目の前に立つのは、軍人らしき服装に身を包んだ凶相の男だった。

少女は万能の願望機「聖杯」を巡る魔術師のバトルロイヤルに参加すべく、サーヴァントを呼び出そうとしたのだが――――

その呼びかけに応えたのは異世界の戦争狂とその愛猫――――剣牙虎。

第五次聖杯戦争、ここに開幕。
3 : ◆1XmsYbpRzk :2012/11/26(月) 01:34:52.70 ID:xT30PnyB0
凛「それで、あなたは何もわからないと?」

新城「気づいたら、君の家にいたというわけだ。内装から察するに、ここは《帝国》かアスローンか。とにかく僕の故国ではないな」

凛「ええっとね…」

新城「つまり僕はさらわれたということだな。まったく、《帝国》も暇なことだ」

凛「そうじゃなくて…」

新城「皇室魔導院は給料泥棒だな。ここまで深く間者を侵入させるとは。畜生、羽鳥め…」ブツブツ

凛「聞きなさいよ!!」

千早「っ!」ビクッ

凛「あんたね、ちょっとは立場をわきまえなさいよ!」

新城「ほう?」

凛「私はマスター、あんたはサーヴァント! あんたにわかりやすく言えば、主従の関係よ」

新城「なるほど。よくわかった。それで、君は僕と僕の猫を抑える術を持っているのか?」

凛「当たり前よっ。私は魔術…」

千早「グルルルッ」

凛「…」

忘れていた。
彼らは紛いなりにもサーヴァントなのだ。生前がどうであれ、今や聖杯の恩恵を受ける存在。
その力は絶対的である。
4 : ◆1XmsYbpRzk :2012/11/26(月) 01:35:44.38 ID:xT30PnyB0
新城「そんな事より、今は情報だ。ここはどこで何が起きている?」

凛「……理解できないからって、いきなり襲ってこないでよね」

凛は新城に、今起きていることを教える。
聖杯戦争。七人のマスターとサーヴァント。魔術、そして願望機――――。

新城「にわかには信じられないな」

凛「でしょうね」

新城「しかし、その聖杯というのは願いを持つ者を呼ぶという話だな。なるほどそれは…」

脳裏に浮かぶのは、憎き男とその男の凶刃に倒れた最愛の義姉。

新城「僕は存外に夢想家、というわけか」

凛「理解できないならそれでいいわ。街に出れば、無理矢理にでも納得しなきゃいけないもの」

新城「ここは《大協約》世界とは全く異なる世界、という話か」

凛「そうよ。とりあえず霊体化して、案内してあげる」

新城「僕は死んだ覚えはない」

凛「――――っえ?」

新城「死ぬほど怖い目には何度も遭ったけどね」

凛「なんて、イレギュラー……」
5 : ◆1XmsYbpRzk :2012/11/26(月) 01:36:46.22 ID:xT30PnyB0
凛は保護者にして聖杯戦争の管理者に連絡を取る。

凛「――――というわけなんだけど」

言峰『ふむ。それは確かに例外だな。本来ならば中立であるべきだが、とりあえず教会に来い』

凛「だから、霊体化出来ないんだって」

言峰『夜ならば人目も少ないだろう。なにも街へ繰り出せと言っているわけではない』

凛「うっ…じゃ、じゃあ。せめてこいつの服くらい用意しといて」

言峰『構わんが。一つ疑問がある』

凛「何よ?」

言峰『なぜ師父の服を使わんのだ?』

凛「ああ、それなら考えたんだけどね」

チラリ、と凛は自らのサーヴァントを見た。

凛「丈が合わないのよ」

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

新城「今のは導術か?」

凛「ああ、さっき聞いた《コウコク》とやらの? うーん、断定はできないけど違うと思うわ」

新城「魔術か……」

凛「電話使ったほうが早いんだけどね。あんたの世界には電気がまだないんだっけ?」

新城「残念というべきか、良かったというべきか。まだ実用化には程遠いな」

凛「まぁそれはおいといて。とにかく行くわよ!」
6 : ◆1XmsYbpRzk :2012/11/26(月) 01:38:11.12 ID:xT30PnyB0
電灯の少ない夜道を、少女と男と猛獣が歩く。

凛「それにしても…慣れないわね」

新城「剣牙虎は母性の強い動物だ。人間の子を守り育てたという例も――――」

凛「だとしても、ねぇ…」

巨大な牙は、安々と骨を砕くだろう。太い前足に殴られれば上半身は吹き飛んでしまうに違いない。
いくら魔術師といえど、そのような猛獣と一緒に歩くことなど非日常には変わりなかった。

凛「こんなのが戦争に使われていたなんてね……っあ、見えた。あそこが教会よ」

言峰「私が、言峰綺礼だ。よろしく新城中佐」

新城「ご厚意感謝します、言峰神父」

新城は軍服を脱ぎ、修道着に衣替えしていた。言峰のものではなく、教会にあったものだ。

言峰「本当は綺麗なものを用意したかったが、何分と時間がな」

新城「いえ、汚い服には慣れてますので。これで戦場に出れば将校ですよ」

凛「はいはい、そこまで! とにかく、私はこいつと聖杯戦争に参加すればいいのね?」

言峰「ああそうだ。イレギュラーだったにせよ、新城中佐が聖杯に選ばれた事には違いない」

凛「はぁ…先が思いやられるわ。それで、クラスは?」

言峰「ふむ、安直だがオフィサー(軍人)と言ったところか」

クラス:オフィサー 真名:新城直衛 属性:混沌・中庸
筋力:D 魔翌力:E 耐久:D 幸運:E 敏捷:D 宝具:?

戦闘続行:B 仕切り直し:B カリスマ:C 騎乗スキル:E 直感:C

千早
筋力:A 魔翌力:E 耐久:B 幸運:D 敏捷:B+

言峰「それでは、幸運を祈ろう」
7 : ◆1XmsYbpRzk :2012/11/26(月) 01:39:31.13 ID:xT30PnyB0
凛と新城は協会を後にした。
その帰り道――――。

新城「あの言峰という男」

凛「えっ?」

新城「なんなんだアイツ。何を考えている。わからない、糞っ」

新城は震えていた。この男は小心者なのだ。
臆病、とさえ言える。

凛「アイツは敵じゃないわ。言峰は教会から派遣されているだけで、実際に殺し合うのは魔術師同士なんだから」

新城「敵じゃない、敵じゃないか。それは素晴らしいな。それが本当なら」



――――教会 地下

言峰「……新城直衛」

ギルガメッシュ「どうした言峰。貴様が明確に行動を起こさんとは」

言峰「あの男の目は、何を見てきたというのだ。この世の混沌という混沌を詰め込んでおきながら、決して濁っていない」

ギルガメッシュ「簡単なことだ、言峰」

言峰「生まれついての異常者であると?」

ギルガメッシュ「そうだ。どうやら芽を出した箇所は違うようだが」

言峰「貴様はどう見た、英雄王」

ギルガメッシュ「気に食わんな。基準を全て己に託しておきながら、決して自分のためには動けないような雑種だ」

言峰「自分の為には、か」

その時、言峰は猛獣使いの傍らを歩く少女を思い出していた。
8 : ◆1XmsYbpRzk :2012/11/26(月) 01:41:14.64 ID:xT30PnyB0
新城「では、作戦を立案しよう」

遠坂邸に帰ってすぐに、新城は修道着を脱ぎ捨てて軍服姿に戻った。そして座ることなく、殺し合いについて話し始める。

凛「そのやる気はありがたいけど…今はまったく情報がないのよ?」

新城「馬鹿か君は。情報が無いならそれをどのように得るか、それを考えろ」

凛「それなら、やっぱり静観すべきじゃない?」

新城「それは素敵だ。もちろん敵が僕たちを見逃してくれるなら、だが」

凛「どういうことよ?」

新城「まず立地からして駄目だ。遠坂邸という時点で敵の標的になっているだろう」

新城「第二に、僕は霊体として活動できない。気配遮断もできない。ご覧の通り、千早の体は塹壕にでも隠さなければ用意に見つかる」

新城「そして、僕は弱い。これでは威力偵察も不可能だ」

新城「以上のことから、僕は他のマスターと協力するのがいいと思う」

凛「どうしてそうなるのよっ!?」

新城「同盟だよ、言うなれば。出来ないのなら、出来る奴にやってもらう。簡単な話だ」

凛「む、むう……でも、互いに殺し合うマスター同士がそう安々と信頼関係を築けるかしら?」

新城「問題ない。所詮は裏切る前提の信頼だ。情報を得られたその時点で同盟は解消すればいい」

凛「罠かもしれないじゃない」

新城「君の話では、三騎士というクラスは優遇されているらしいな。ならば簡単だ。それ以外の勢力と手を組む」

新城「利用し合っている間は、少なくとも殺しあわない程度には上手くいく。打倒セイバー、打倒アーチャーだとか言えばいいのだ」

新城「望ましいのはキャスターかアサシンだな」

凛「……あんたって、マシンガントークよね」

新城「その形容が僕の世界でも出来ていたら、今頃は光帯だって血に浸かっていた」
9 : ◆1XmsYbpRzk :2012/11/26(月) 01:44:16.67 ID:xT30PnyB0
今日の投下は以上です。はんば勢いで立てたスレですが、皇国SSの少ない中で戦争狂の皆様に楽しんでもらえれば幸いです。
10 : ◆1XmsYbpRzk [saga]:2012/11/26(月) 01:57:24.17 ID:xT30PnyB0
>>8訂正
×新城「第二に、僕は霊体として活動できない。気配遮断もできない。ご覧の通り、千早の体は塹壕にでも隠さなければ用意に見つかる」

○新城「第二に、僕は霊体として活動できない。気配遮断もできない。ご覧の通り、千早の体は塹壕にでも隠さなければ容易に見つかる」
11 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/11/26(月) 02:05:27.22 ID:kLyvExpLo
支援
12 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/11/26(月) 05:55:41.19 ID:9Tq7JFv+o
( ・∀・)イイ!!
13 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/26(月) 06:25:55.03 ID:EjyIk9zIO
期待してる
14 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/11/26(月) 06:32:39.25 ID:ow68U2Sy0
セリフ回しとかスゲぇそれっぽいね
三騎士以外と組むってのも珍しい展開だし楽しみ
15 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/11/26(月) 07:16:14.95 ID:BwLvFHOjo
期待
16 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/11/26(月) 23:05:41.69 ID:AThEpn9f0
皇国はコミックしか読んでないけど期待!

ところで関係ないけど、はんばじゃなくて半ばじゃないのかと思ってググってみたら
カイジネタスレのネタだったのね
17 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/26(月) 23:56:59.44 ID:NlEdkGd4o
ほう、これは興味深い。
さて、ちゃんと宣言通り三騎士以外と組みますようにっと。
18 : ◆1XmsYbpRzk [saga]:2012/11/28(水) 23:50:45.39 ID:2ApVfb4D0
お待たせしました、投下します
少しテンポが遅めですが、やっぱり冒頭もしっかり書きたいので、ご了承ください
19 : ◆1XmsYbpRzk [saga]:2012/11/28(水) 23:51:59.88 ID:2ApVfb4D0
翌日。

新城「学校には行くな」

凛「わかってるわよ」

新城「僕が学校について行くのは無理だからな」

凛「……でも、あんたが昨日言ってた同盟も、やっぱ他のマスターの情報が無きゃ無理な話よね」

新城「今思えば、無策に等しい机上の空論だった。それは確かだ」

新城「しかし君が学校に行くというのとは関係のない話だ」

凛「そうだけど……ちょっと前から、学校で嫌な感じが――――魔力のカスみたいなものを感じるのよ」

新城「それを先に言え。僕を馬鹿にしてるのか」

新城「令呪とやらを使えば、どこにいようと呼び出せるんだろう。ならば話は違う。例え会敵しても、千早に跨れば窮地から脱する事が出来る」

凛「あんたって、なんでそうも簡単に意見を変えられるのかしらね」

新城「僕は戦場で皇主陛下のご威光を必要としない。そういう話だ」

凛「本当、臆病なのね」

新城「僕からすれば、信仰なんてモノに身を捧げられるのは大した勇者だ。そして勇者は、勝手に死ぬ。こちらの迷惑も考えずに」
20 : ◆1XmsYbpRzk [saga]:2012/11/28(水) 23:52:37.80 ID:2ApVfb4D0
――――学校・屋上・夜

凛「さて、どうしようかしら」

凛「魔力は感じるけど、それ以上はわからないのよね……家から何か持ってきたほうがいいかも」

?「よお嬢ちゃん。たった一人でお散歩かい? 寂しいねぇ」

凛「!?っ…誰?」

視線が上を向く。空とコンクリートを隔てるフェンスの上に、凛の瞳は固定された。
そこにいたのは、青い男。そう、なんの形容もなく、青い男だった。
その双眸は痛いほど鮮やかな赤色。瞳は抑えきれないほどの獰猛さを備えた、ギラリとした光を放っている。その威容は、まさに――――――――

凛「――――――――サーヴァント」

英雄の、それであった。

圧倒的な塊としての魔力。類まれな素質を持つ凛だからこそ、その絶望は一層深刻なものと理解できた。
……とにかく、私一人では対抗できない。
突然の遭遇であっても、凛は冷静に対処する。魔術師として育てられた彼女は、状況と思考を切り離して行動する術を身につけていた。

?「ご名答だ、メイガスのお嬢ちゃん……ちょっくら、付き合ってもらおうか?」

凛「来なさい! 新城直衛!!!」

令呪が、光り輝く――――。それはまさに、闇夜を照らす光帯の輝き…!
21 : ◆1XmsYbpRzk [saga]:2012/11/28(水) 23:53:58.13 ID:2ApVfb4D0

――――昨夜

凛「じゃあオフィサー。私は寝るわよ」

新城「待て、遠坂」

凛「何よ?」

新城「僕のことは新城でいい。なんなら直衛でも。僕も遠坂と呼ぶから」

凛「オフィサーは嫌なわけ?」

新城「それしかないなら構わないが。生憎、名前以外のもので呼ばれるのも慣れている」

新城「だが出来ればそれは遠慮したい。《帝国》語で呼ばれているみたいでムズムズするのもあるし、なによりその曖昧さが気に食わない」

凛「あんたって、根っからのリアリストなのね……」

呆れたような目で新城を見てから、しかし次は笑顔になって凛は答えた。

凛「分かったわ。いきなり直衛も呼びにくいから、しばらくは新城さん…もおかしいわね。とにかく、名前で呼ぶことにする」

新城「ありがとう、遠坂」

凛「それはそれで余所余所しいわよ。私のことも、凛、でいいわ」

新城「機会があったら、その名で呼ぼう。おやすみなさい」

凛「ええ、おやすみ」
22 : ◆1XmsYbpRzk [saga]:2012/11/28(水) 23:54:29.12 ID:2ApVfb4D0

そして、場面は月夜の屋上に戻る。


凛の前に光の渦が現れると、その奥から猛獣の低い唸り声が木霊する。その声の主は、間違いなく――――

新城「行け、千早」

魔王の忠実なる下僕、暴虐を体現した魔獣。《皇国》の剣牙虎である!

千早「グアアアア!!!」

光から躍り出たのは3mを超える巨体。猛る凶獣はその巨大さからは考えられないような俊敏さで青い男に迫る。

?「クッ! 魔獣の類いか!?」

青い男――――そのサーヴァントは迫り来る剣牙虎に驚愕しながらも取り乱すことなく武器を手にする。
何もない虚空から取り出されたそれは、大柄なその男自身の背丈よりも長い細身の槍だった。過度な装飾は施されていないが、その真紅の槍が湛える魔力はやはり尋常ではない。

?「畜生如きがあっ!!」

触れただけで人間を砕く千早の前足を、槍で受け止める男。
しかし咄嗟のことで男はバランスを崩し、下へと落下する。それを追うように、千早も素早く外壁を駆け下りていった。

屋上に残されたのは、一人の魔女とその使い魔だけだ。

新城「さぁ戦争だぞ、凛」
23 : ◆1XmsYbpRzk [saga]:2012/11/28(水) 23:56:20.09 ID:2ApVfb4D0

新城は足を階段へと向ける。その歩みは悠然としていて、まるで将軍のような姿だ。

新城「僕たちも行くぞ。殺し合いだ、きっと酷いことになる。僕は殺し合いの手管に長けているから。まったく最低だ」

凛「急がなくていいの?」

新城「僕に飛び降りろ、と言っているのか?」

凛「あんたはサーヴァントなんだから、大丈夫でしょ」

新城「出来るかもしれないし、出来ないかもしれない。可能性はまったく、戦争では害悪でしかないよ、凛」

凛「うーん、そういうものかしら」

新城「僕がどんなに急ごうと、戦うのはどのみち千早だ。それに相手はランサーだろう。銃も持たない僕じゃあ間合いにすら入れない」

凛「全てはあの猫ちゃん次第、って訳ね」

新城「ああ。もちろん、千早が殺されれば、僕はどんな手段であろうと奴に後悔させてやるが」



そして二人は校庭にたどり着いた。
24 : ◆1XmsYbpRzk [saga]:2012/11/28(水) 23:57:10.02 ID:2ApVfb4D0

そこでは、魔槍を操る英雄と魔爪を振るう獣が、壮絶な戦いを繰り広げていた。
どちらもまだ、致命傷は負っていない。

ランサー「ちょこまかと!!」

千早「ガアアア!!!」

新城「ふむ。戦況は五分五分、といったところか」

遠くから、とはいっても危険の及ばない範囲でできる限り接近して、新城と凛は観戦している。
ランサーはそれに気づいて、新城に向かって怒鳴った。

ランサー「自ら戦わずそのようなところで……! 卑怯者め、恥を知れ猛獣使い!!」

新城「これは手痛いな。さすが英雄だ。正しいことを言う」

新城「だがやはり馬鹿だ、英雄という人種は。これは殺し合いだぞ? 言うに事欠いて、卑怯者とは……僕の部下なら即刻クビだな」

ランサー「貴様のようなものが、英霊だと!?」

新城「それについては僕も遺憾だ。英雄なんてものに祭り上げられて、心底まいってるよ」

ランサー「愚弄するか、猛獣使い!!」

しかし、千早と切り結びながら新城と会話するランサーの技能は超絶、と評してなお足らないものだ。
武芸を極めた英霊に対し、打撃力を持って脅威となる剣牙虎は、やや不利である。
こうしている間にも、千早の体にはカスリ傷が次第に増えてきていた。

その時である。
25 : ◆1XmsYbpRzk [saga]:2012/11/28(水) 23:58:47.63 ID:2ApVfb4D0

ランサー「誰だ!?」

人影。
魔術は隠匿されなければならない。ならば、その影はあってはならないものだった。何よりも、その影の抹消が優先される事態に陥ったのだ。

ランサー「ちっ。今日はここま……」

しかし、この男はそうは思わなかった。

新城「千早!!」

一瞬の隙を突く、新城の強い声。それと同時に彼は全力で駆け出していた。
走る。走る。
サーヴァントとして強化されていても、千早の疾走に比べると明らかに鈍足の部類に入る速度。しかし、それでも新城は走る。
すでに鋭剣は引き抜かれ、その鈍い光が揺れている。

たったコンマ何秒しか隙はなかった。しかし、確実に隙はあったのだ。ならば何を躊躇う必要があるのだろうか。新城直衛にとって、好機とは常に活用されなければならない。

     ―――― 突   撃 !! 

人獣一体となった刃が躍る。
26 : ◆1XmsYbpRzk [saga]:2012/11/29(木) 00:03:24.13 ID:bpMPoUMK0
投下は以上です。あまり進まず申し訳ありません。

>>14
佐藤御大の台詞回しは独特なので、結構苦労しながら考えています
そう言ってもらえて、とても嬉しいです

>>16
コミックスはとても良い出来だと思います。新城も、原作の描写に近いですし(笑)
ビジュアルはコミックス準拠で思い浮かべてください

>>17
この先どうなるかは、まだお楽しみですね
27 : ◆1XmsYbpRzk [saga]:2012/11/29(木) 00:05:54.26 ID:bpMPoUMK0

他にも、支援・期待して下さった皆様、ありがとうございます
こちらも書くモチベーションが上がるので、気になることがございましたらレスをして下されば幸いです
出来るだけレスは返すようにしたいです
28 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/11/29(木) 07:55:05.75 ID:NdjNvfNy0
このシーンで攻撃仕掛けるあたり流石は新城さん
29 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/11/29(木) 08:56:28.93 ID:WvfSPHLQ0
これは期待
アーチャーと話があいそうで、でも決定的な部分で相入れない感じかな
30 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/11/29(木) 13:14:10.66 ID:pNj79MZOo
こいつは素敵だ、面白くなってきた
31 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2012/11/29(木) 18:51:10.27 ID:7CrcYR8AO
キリツグとじゃなくて凛とか
期待
32 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/30(金) 00:08:35.33 ID:eYpRpuHIO
生前散々怪物殺しまくったランサーはそういうの狩るのが得意だからな
33 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/03(月) 22:23:45.29 ID:w+dY798Wo
( ^ω^)おもすれー
34 : ◆1XmsYbpRzk [saga]:2012/12/16(日) 22:25:50.85 ID:ugYQlzwp0
遅くなりましたが、やっと一段落つきました。お待たせして申し訳ありません。
次から投下します
35 : ◆1XmsYbpRzk [saga]:2012/12/16(日) 22:26:25.13 ID:ugYQlzwp0

鈍足の新城が、ランサーに飛びかかるまでおよそ一秒。ランサーがそれに対応するには十分すぎる時間だった。
しかし、この時ばかりはそうはいかない。
意識が戦闘から逸れていたところに、不意をうって凶暴な爪を振り下ろしてきた魔獣。その対応に追われ、さしもの英雄にも一瞬の、どうしようもない隙が生まれてしまったのだ。

新城「っ!」

声を出さず、しかし裂帛の気合を入れ、新城は軍刀をランサーめがけて一閃する!

ランサー「うおおおおお!!!!」

ランサーはこのような絶対の窮地に追い込まれながらも、培われた実力と経験から咄嗟に上体をそらし直撃を避ける。

二人の間には赤い軌跡が描かれた――――。

一瞬の静寂はすぐさま消え去り、硬直していたランサーは残る力を振り絞って地面を蹴り、一気に距離を取る。
彼の胴には、致命傷とまではいかないが、横に深く刻まれた刀傷があった。片膝をつき、赤い魔槍を杖がわりにして荒い息をつくランサー。新城との距離はおよそ30mほどか。
これは絶好の機会である。

新城「千早!!」

しかし、この男はそうは思わなかった。
従える魔獣に跨ると、彼は一目散にマスターの下に駆け寄る。

新城「乗るんだ、凛。この状況から離脱する」
36 : ◆1XmsYbpRzk [saga]:2012/12/16(日) 22:27:27.69 ID:ugYQlzwp0

凛「な、何言ってるのよ!? あとひと押しじゃない!」

新城「相手は歴戦の勇士だぞ? 一太刀浴びせられただけでも十分だ。僕は死にたくない」

凛「さっきは嬉々として突撃してたわよね!?」

新城「可能性は害悪だと言ったはずだ。僕は確実に一撃を加えると判断できたからこそ危険を冒した。しかし今は、『倒せるかもしれない』というあやふやな判断しかできない」

新城「戦争はそういうものではない。確実性の上に成り立つ。それでも、予測不可能なことが起きてしまう。ならば僕は、せめて確実な方を取ろうと思うのだが」

凛「ぐっ……」

戦争のプロである新城の言葉は、それを全く知らない凛に反論できる余地すらない。
いや、現実にはその考え方は間違っているのかもしれない。だが、だからといって経験則を蔑ろにできるほど、凛は勇者ではなかった。

新城「さぁ乗れ、凛。奴の息がもどる前に」

ランサー「待ちやがれ!!」

凛「!!」

いまだ腰を落としたまま、ランサーは猛獣のような瞳をギラつかせて叫ぶ。
それを見て新城は、自分の判断が間違っていなかったことを確信した。仮にあのまま戦闘を続行していたら、あの男の逆襲に遭っていただろう。

ランサー「貴様、ライダーか。英霊の面汚しめ」

新城「なんと言われようと、僕は構わない」

ランサー「なぜ、この機に攻撃してこない? 勇猛は欠片もないのか!」

新城「僕は弱い。これは分かりきっていることだ。勇猛が白痴と変わらないのならば、僕は遠慮する。勝手に戦い死んでくれたまえ、英雄」

ランサー「最後まで卑しい男よ! ふん、次にあった時はその心臓、もらいうける!!」

そう言い残し、ランサーはそのまま風のように消え去った。恐ろしいほどの瞬足である。
37 : ◆1XmsYbpRzk [saga]:2012/12/16(日) 22:28:16.00 ID:ugYQlzwp0

新城「大した生命力だな、あの男」

《帝国》の、尊敬すべきあの騎兵将校でもこうはいくまい、と新城は遠い目をした。千早はそんな飼い主を見て、何を考えてるの?と言いたげにグルル、と喉を鳴らした。

凛「いけない!」

新城「いきなりどうした、凛」

凛「あのサーヴァント――――恐らくはランサー――――奴はさっきの人影を追ったのよ!」

新城「ああ、魔術は秘匿されなければならない、だったか」

凛「殺されるわ!」

息巻く凛をよそ目に、新城は冷たい口調で切り替えした。

新城「それが?」

凛「それが、って……アンタ!!」

新城「もう一度、あの男と戦うのは御免だ。そうまでして助ける必要はないよ、凛」

凛「ああ、もう!! 確かにそうね、そうだわ。でも、それとこれとは違うのよ!!」

新城「……凛、君は」

新城はその時、誰を思い浮かべたのか。
虜にしたあの勝気な姫君か、凛とした個人副官か。それとも、北嶺の戦場でこそばゆい抵抗をしてくれたあの少尉か――――。
とにかく新城はこの時、判断を間違った。

新城「マスターの命令なら仕方ない。そういう風に出来ている。僕は軍人《オフィサー》だから」
38 : ◆1XmsYbpRzk [saga]:2012/12/16(日) 22:28:46.84 ID:ugYQlzwp0

しかし、駆けつけたところで既に事は起きてしまっていた。
制服を着た青年が、その心臓を抉られていたのだ。もう助かりようはない。なんてことはない、よくあることだ。五体満足で死ねただけ幸運ではないか。
新城は率直にそう思った。
しかし、その主人である少女にはそう思えなかった。

凛「なんでコイツが……!!」

新城「恋仲か?」

凛「違うわよ!! ――――ああ、知ってる。これが最悪ってヤツね」

随分可愛い「最悪」じゃないか、とは言わなかった。新城は、そういう男だ。自らの価値観を他人に押し付けない。しかし、何者にも強制されない。ひとつの例外を除いて。

新城「それで、どうする?」

凛「どうも何も、助けるわよ」

凛は赤いペンダントを取り出す。魔の眷属となった新城には、それがどれほどの魔力を湛えているのかはすぐに分かった。

なにやら魔術が発動したのは理解できる。何が起きるのかも想像できる。しかしその理屈を新城は予想できない。しかし、魔術とは決して理不尽なものではないと直感した。
あのペンダントの魔力を引き換えに、彼は助かるのだ。凛が何年間もかけて魔力を貯めたその時間ごと、引換にして。

儀式自体は短時間で終わった。
さきほどまで虫の息だった青年は、いまだ脆弱であるが確かな息をしている。

凛「終わったわ。帰るわよ」

新城「了解」

魔獣が、清廉とした少女と卑小な男を乗せて烈風のごとくその場を去った。
39 : ◆1XmsYbpRzk [saga]:2012/12/16(日) 22:30:57.84 ID:ugYQlzwp0
たった4レス…ごめんなさい、今回は以上です。
公私ともに、ちょっと忙しいので…ホント申し訳ありません。

次の投下では、凛サイドからの目線なのでセイバーの登場シーンは省かせてもらいます。
40 : ◆1XmsYbpRzk [saga]:2012/12/16(日) 22:39:41.91 ID:ugYQlzwp0
>>28
そうですね
目撃者がいたからと戦闘をやめるシーンを見て、「ぶっちゃけ新城なら突撃するよね」って考えてできたSSですから(笑)

>>29
たぶん、そうでしょうね
決定的に相容れない存在だと思います。新城の基準は多分、大局的なものじゃなくあくまで個人としてものなので

>>30
でた、佐藤節!

>>31
それも面白いと思います
でもその二人だと変なふうに意気投合して、変なタイミングで仲違いしそうで怖い(笑)
これが完結したら、書いてみたい気もします

>>32
千早のステータスを高くしすぎたかも、と思ったんですが、英霊達には生前の技術があるので、ステータスを逆にうまく使えたかな、と
多分、タイマンで真剣勝負ならどの英霊にも勝てないと思います

>>33
ありがとうございます。これからも頑張ります
41 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/17(月) 09:52:48.61 ID:7UJ0+kzOo
おつ
42 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/04(金) 15:51:28.13 ID:pAugthQt0
まだなのか・・・・・・?
43 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/05(土) 05:12:10.36 ID:Qz19rF8AO
千早にのる凛を想像したらなんか異様に程なごんだ
44 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/05(土) 13:14:33.63 ID:v5AYw6Wq0
クーフーリンみたいな真っ当な英霊って基本的に怪物殺しの逸話がありふれてるもんなぁ
神代に近いほど人外殺しに優れていて、現代に近いほど人殺しに優れるイメージ
45 : ◆1XmsYbpRzk [saga]:2013/01/07(月) 23:55:18.56 ID:WfsBKCZR0
なんとか、ちょっと進みました。
投下します。
46 : ◆1XmsYbpRzk [saga]:2013/01/07(月) 23:55:50.11 ID:WfsBKCZR0

凛がそれを思ったのは、遠坂邸についてすぐのことだった。
助けた少年の安否である。息を吹き返したのは新城もともに確認したし、魔術も完璧に成功した手応えがある。さして、気にかかるような問題点もない。
だからこそ、凛は気になった。
なにせ彼女の横には、完璧に完璧を期した上で発生したイレギュラーがいるからだ。

凛「ねぇ、直衛」

少女から出た言葉を、従者である軍人はすぐに了承した。いやに素直である。
りんも少し不気味に思ったが、変にこじれるのも面倒だと思うと、すぐさま新城とともに千早に飛び乗った。

それが、数分前のことである。

いま、二人と一匹は少年の家を目指し猛スピードで進んでいた。
47 : ◆1XmsYbpRzk [saga]:2013/01/07(月) 23:56:52.34 ID:WfsBKCZR0

凛「嫌な予感がするわ」

新城「予感だと?」

凛「何よ、馬鹿にする気?」

地面を黒い砲弾のように疾駆する千早に跨りながら、二人は普通に会話していた。
どうやら千早はなんらかの恩恵を聖杯から受けているようで、その詳細まではわからなかったが、彼女に跨るものには風よけに近い保護を受けるという効果があるらしい。

新城「馬鹿になどしない。そういった不確定なものこそ、戦場では思わぬ逆襲をしてくることもある」

凛「そういうもの、なのかしらね?――――それにしても千早は疾いわ、もうこんなところまで」

新城「元々は野生動物で、竹林を縫うように走る肉食獣が剣牙虎だからな。行軍の際は猫の消耗を避けるため、滅多に使えないが」

凛「サーヴァントさまさま、ってところかしら」

新城「今の千早にとって、人間二人分の荷物など薄い羽織みたいなものだからね」

新城は気づく。自分の口調が定まっていないことに。
確かにそれはそうだ。凛とは主従の関係ではあるが、しかし上官と部下という関係でもない。軍隊言葉でも話し言葉でもない相手。
新城は無性に、いらついていた。彼女を自分の友人の範疇に含めるのかどうか、そのような思案をしている自分自身にである。
48 : ◆1XmsYbpRzk [saga]:2013/01/07(月) 23:57:39.76 ID:WfsBKCZR0

凛「どうしたのよ、直衛」

新城「いや、なんでもない」

新城はその思考を封印する。機械的に答えた。

新城「あとどのくらいだ?」

凛「ええっと、あんたの知ってる目盛りに合わせると……!!!」

突如として、凛の背筋が粟立つ!
これは規格外の魔力の奔流。間違いなくサーヴァントのものである。

凛「これ、バリバリに戦闘してるじゃない……!」

新城「なるほど、凛は千早の鼻より索敵に優れているようだ」

凛「喜んでいいのかしら」

新城「当然だ。まるで人間らしくない」

凛「……とにかく、アンタと漫才してる暇はないわ。急いで」

新城「なぜ急ぐ必要が?」

凛「魔力は、彼の家の方から発生してるのよ!」
49 : ◆1XmsYbpRzk [saga]:2013/01/07(月) 23:58:31.64 ID:WfsBKCZR0

白銀の甲冑と青い肉体が対峙している。
互いに互いを認め合うほど、両者の戦闘技術は高い次元で拮抗していた。

ランサー「貴様、剣士だな?」

???「さぁな。槍かもしれんし、斧かもしれんぞ?」

ランサー「ぬかせ、セイバー」

セイバー、と呼ばれたサーヴァントの声はどこまでも澄んでいて、ガラスの月のように青い瞳は確かな闘志を秘めている。
まるで、伝説に謳われる女神のようだ。

二人の緊張が次第に高まっていく。
特にランサーの方には、今までの戦闘をかき消すような魔力が禍々しい槍へと洪水のように流れ込んでいる。
言わずともわかる。これこそ、サーヴァント最大の絶技にして切り札、「宝具」。その解放の前触れだ。
50 : ◆1XmsYbpRzk [saga]:2013/01/07(月) 23:59:22.05 ID:WfsBKCZR0

誰ひとり、一言足りとも発せない。緊張感が現実に対して重さすら持ち始めたその時である。
月を背にした小柄な男が、塀の上に立っていた。

?「それが君のワイルドカード、というわけだ」

ランサー「っっっ!? 何やつだ!!!」

新城「そっちもサーヴァント、あちらもサーヴァント。そして僕も。まったく胸糞が悪い」

ランサー「貴様は……!?」

新城「まったくもって分が悪いよ、凛」

誰もが注意を上に向けているその時、正面の門から突如として魔獣は躍り出た。
51 : ◆1XmsYbpRzk [saga]:2013/01/08(火) 00:00:16.35 ID:C4AUUwhZ0

時刻は遡る。

少年の家に着いたとき、事態は既に切迫していた。
サーヴァントは互いに距離をとっており、必殺の範囲ではなかった。しかし、ランサーの構えと尋常ではない魔力がその距離を埋めようとしている、まさにその瞬間である。

凛「まずいわ……!」

凛はまだ事態を把握できていない。ランサーと対峙するサーヴァントが何者なのか、なぜ彼の家にいるのか。少ない事実から自体を憶測する。
蘇った彼を再殺すべくランサーがやってきたことはわかる。
ではあのサーヴァントはそれを狙って待ち構えていたのか。いやそれは考えにくい。
ここに偶然居合わせたのか? それこそ都合が良すぎる。
何故、もう一体のサーヴァントがいるのかはこの際関係ない。問題は、何故戦闘に突入したのかだ。理由は限られている。
おそらく、あの少年を助けるべく戦っているのだ――――!
ならば、ここであのサーヴァントがランサーに倒されるのは不利っ!!

理屈をこね回した凛が出した結論は、なんてことはない、あの少年を助けたいという純粋な思いだった。
52 : ◆1XmsYbpRzk [saga]:2013/01/08(火) 00:01:02.83 ID:C4AUUwhZ0

凛「くっ」

間に合うかどうか。凛は子供が銃を真似るように手を突き出して、人差し指をランサーに向ける。ガンド、と呼ばれる初歩の魔術であった。

新城「待て、凛。何をする気だ?」

凛「どうもこうも、止めるのよ!!」

新城「宝具の開放をか? それは得策じゃない」

凛「どういうこと!?」

新城「興奮するな。ここでアイツの宝具を見ておけば、僕たちはあれだけ欲しかった情報を手に入れられるんだ」

凛「……!」

新城「あのサーヴァントには、人柱になってもらう。ああ、まさに英雄じゃないか」

凛「それでいいの?」

新城「もちろん僕は……」

新城は凛の瞳を見る。それは懇願の光ではない。強い眼差しだ。
あの少年を助けるには、ランサーを止めるしかない。
だから助けて、という願いではなく。
だから助けましょう、という思い。
このように空想的な善は、新城にとって黄金にまみれた吐瀉物に過ぎない。しかし――――。
53 : ◆1XmsYbpRzk [saga]:2013/01/08(火) 00:01:47.79 ID:C4AUUwhZ0

新城(くそったれ。なんでこうなるんだ。僕は。僕の小ささがよくわかってしまう。くそ、手が震えてきやがる。噛み殺せ)

何度目のため息だろうか。新城は意を決した。
所詮、ここでの戦いは《皇国》も《帝国》もない、新城直衛という個人にとっては死すらないような幻想に過ぎないのだ、と言い聞かす。

新城「凛はここにいろ。僕と千早で何とかする」

凛「え……でも」

新城「マスターに死なれては僕も消えしまう」

新城「そして、これは僕の戦争だ」
54 : ◆1XmsYbpRzk [saga]:2013/01/08(火) 00:03:05.44 ID:C4AUUwhZ0

それまでの空気を破壊し、進撃する魔獣・千早。咆哮と共に駆け出した巨体にはどれだけの破壊力があるのか、見当もつかない。

ランサー「忌々しい魔描め!!」

それまでの構えを解くと、千早の突進を軽やかな跳躍で躱す。そのまま屋敷の屋根に飛び乗ると、憎悪と侮蔑のこもった目を新城に向けた。

ランサー「一度ならず二度までも……。――――はぁ、興が削がれたぜ」

槍を肩に回し、先ほどとは全く違った、緊張感のない声が漏れる。

ランサー「セイバー! この戦いは預けたぞ! そして猛獣使い、いやライダー。貴様は我が魔槍によって必ず滅ぼす。てめぇは許せねぇ」

新城「オフィサーだ」

ランサー「なに?」

新城「オフィサーのサーヴァント、新城直衛」

ランサー「……ふん」

ランサーは音もなく夜へ消える。千早はただ闇を睨んで唸っている。
55 : ◆1XmsYbpRzk [saga]:2013/01/08(火) 00:03:53.43 ID:C4AUUwhZ0

???「なっ…まてランサー! 騎士の戦いに背を向けるのか!!」

吠えたのはサーヴァントだった。そして答えたのも、またサーヴァントであった。

新城「手負いの相手に正々堂々と殺し合いを求めるのが騎士か。さすが英雄だ」

???「き、貴様!」

凛「やめなさいよ直衛!!」

新城「これは失敬。ただ素敵な戦争の手並みだと思ってね」

???「貴様、殺人狂のたぐいか」

新城「うん。そうだろうな。人殺しは大好きだ。戦争の次に」

弛緩した空気が再び緊張していく。まさか、助けに入るつもりが一触即発の事態に陥るとは、凛も予想できるはずがなかった。

凛「直衛、やめて。そっちも剣を収めなさいよ、マスターはどうしたの?」

???「……確かに、さきほど助けられたのは事実だ。そちらにその気がないのなら、この場はひこう」

凛「ええ、全くないわよそんなの。そうよね、直衛?」

新城「僕自身が何かを決めることはないよ、凛」

凛「……」

凛(なんとか、丸く収まった……)

安堵して胸をなでおろす。恐らくは最優のサーヴァントであるセイバーと事を構えるのは絶対に避けたかった。
56 : ◆1XmsYbpRzk [saga]:2013/01/08(火) 00:04:53.49 ID:C4AUUwhZ0

凛「で、あなたはセイバー?」

???「名乗られたのであっては、応えなければ騎士の沽券に関わる。その通りだメイガス。私はセイバーのサーヴァントだ」

凛「そ。じゃあセイバー、あなたのマスターは?」

セイバー「それは……」

???「おおーい」

凛「……まさか」

セイバー「彼が私のマスターだが、どうした?」

新城「……可能性とは、本当に害悪だな」

衛宮士郎「なにが、どうなってるんだ?」
57 : ◆1XmsYbpRzk [saga]:2013/01/08(火) 00:07:36.66 ID:C4AUUwhZ0
今回の投下は以上です。やっと、原作主人公の登場までこれました……。
これからは四苦八苦して先の展開を考えていく感じですね。大まかなキーポイントはいくつかありますが、やっぱり更新速度は遅いと思います。
本当に申し訳ありません。
58 : ◆1XmsYbpRzk [saga]:2013/01/08(火) 00:13:18.12 ID:C4AUUwhZ0
>>41
ありがとうございます。これからも頑張ります。

>>42
遅筆で本当に申し訳ありません……。猪口教官とハイキングしてきますね

>>43
本来は剣牙虎に跨って移動なんて出来ない感じですが、ほんとにサーヴァントさまさまです。
マジ聖杯便利……

>>44
確かに、メインは怪物退治ですよね、英雄は。
まぁ戦争で息を引き取ってしまう英雄も多いので何とも言えませんが。
現代だとやはり、山本五十六が死後「軍神」になったりといったケースでしょうか。
59 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/08(火) 01:37:04.82 ID:Qz6pTk620

今気付いたけど、直衛も千早も魔翌力Eってことはメドゥーサだけは相手にしたくないな
60 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/17(木) 03:00:45.97 ID:BedP/Zjxo
このssも要因となって先日漫画と原作小説買い揃えた、今読んでる途中
それとは別にして、乙
61 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/27(日) 16:42:34.31 ID:VUnDzWygo
面白いな
続きは来ないのか?
62 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/03(日) 09:01:52.88 ID:XGeGDQ4vo
乙乙
これはwwktkだなー
63 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/05(火) 22:43:42.42 ID:nKHF2eUP0
なにこれ
超面白い
64 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/06(水) 03:27:03.40 ID:7YAuCdojo
言い回しと考え方がいかにも新城で素敵だ
65 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/02/16(土) 04:49:32.26 ID:L5cN+rLKo
続き期待
66 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/25(月) 11:00:38.60 ID:xj8sfevyo
マダー?
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