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マミ「アバダケダブラ!」 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/14(金) 00:23:58.34 ID:G0BK9RvH0
 

 それは、私が11歳の誕生日を迎えた日の出来事。


マミ『ねえお母さん……やっぱり、今日のお出かけやめにしない?』

マミママ『? どうしたの? マミも今日のお出かけ楽しみにしてたじゃない』

マミ『……えっと、なんとなく……だけど。今日はあんまり外に出たくないなって』

マミママ『あら、体調でも悪いの?』

マミ『そういうわけじゃないけど……』

マミママ『……珍しいわね、マミが愚図るなんて。でも駄目よ、もうレストランも予約しちゃったし』

マミ『でも……テレビで最近、車の事故が多いって……』

マミママ『テレビ? そんなこと気にしてたの? 大丈夫よ、パパは安全運転してくれるから』

マミパパ『オーイ、何してるんだ。早くしろって』

マミママ『あ、ほら。パパもう車回しちゃってるじゃない。ね? プレゼント奮発してあげるから』

マミ『……うん、分かった』


 未来を予測することが出来ない限り、運命は変わらない。

 だからその日、私は家族を失った。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1355412238
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ぶらじる @ 2024/04/19(金) 19:24:04.53 ID:SNmmhSOho
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旅にでんちう @ 2024/04/17(水) 20:27:26.83 ID:/EdK+WCRO
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1713353246/

木曜の夜には誰もダイブせず @ 2024/04/17(水) 20:05:45.21 ID:iuZC4QbfO
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いろは「先輩、カフェがありますよ」【俺ガイル】 @ 2024/04/16(火) 23:54:11.88 ID:aOh6YfjJ0
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【MHW】古代樹の森で人間を拾ったんだが【SS】 @ 2024/04/16(火) 23:28:13.15 ID:dNS54ToO0
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こんな恋愛がしたい  安部菜々編 @ 2024/04/15(月) 21:12:49.25 ID:HdnryJIo0
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【安価・コンマ】力と魔法の支配する世界で【ファンタジー】Part2 @ 2024/04/14(日) 19:38:35.87 ID:kch9tJed0
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アテム「実践レベルのデッキ?」 @ 2024/04/14(日) 19:11:43.81 ID:Ix0pR4FB0
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2 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/14(金) 00:24:48.88 ID:G0BK9RvH0
 
 三日後、巴家葬儀場

マミ「……」

弔問客1「可哀想にねぇ……あの子でしょう? あの事故で一人だけ助かったっていうのは」

弔問客2「ええ、ご両親をいっぺんに亡くしてしまって……これからどうなるんでしょう」

弔問客1「そりゃ、一番近しい親族に引き取られるじゃないかしら?」

弔問客3「……いや、それがね? どうも身元の引き受けをどこの家も拒否してるらしいんだ」

弔問客1「え、どうして?」

弔問客3「気味が悪いからだよ。考えてもごらん? 玉突きに巻き込まれての大事故。
      おまけにガソリンに引火して車体は爆発炎上。死体は対面もできない有様。
      それなのに、同じ車に乗ってたあの子には傷一つ無いんだぜ?」

弔問客2「あっ……」

弔問客3「正直、僕が親族でも引き取るのは少し考えるね
      眉唾だけど、あの事故の原因はあの子が何かしたんじゃないかって――」

マミ「……」キッ

弔問客1「ちょっと、見られてるわよ」コソコソ

弔問客3「ん……さて、僕達はこの辺でお暇しようか
      ま、遺産はそれなりにあるらしいし、最終的には誰かがそれ目当てで受け入れてくれるかもね?」

3 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/14(金) 00:27:38.63 ID:G0BK9RvH0
 


マミ「……」


マミ(……気づいた時には病院のベッドの上だった)

マミ(お医者さんにお父さんとお母さんはもう死んじゃったって言われて)

マミ(親戚の人達は変なものを見る眼で私のことをみてきて)

マミ(何もかもが急すぎて……頭がいっぱいで……でも、ひとつだけ分かることがある)


マミ(私は……これから独りぼっちで生きていかなきゃならないんだ……)


 
4 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/14(金) 00:30:10.29 ID:1s9MbGXAO
マミーポッターか
5 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/14(金) 00:32:42.55 ID:G0BK9RvH0
 

 初めて"魔女"と出会ったのは、そんな後ろ暗い決意を私が決めていたときだった。

 四角い眼鏡にひっつめ髪。葬儀用の黒いドレスを着た、厳格そうなおばあさん。

 箒には乗っておらず、正面玄関から普通にやってきたけれど、その人は正真正銘の魔女だったのだ。


弔問客3「さて、せっかく久しぶりに集まったんだ。これから飲みにでも――」

老婦人「……――、――」ボソボソ

弔問客3(……足が!?)
      「あだっ!」バタン

弔問客1「ちょ、大丈夫? なんでこんな何にもないところで転ぶのよ……」

弔問客2「ほら、立てる?」

弔問客3「っ……変だな、急に足が痺れて……長く座ってたからかな……」

老婦人「……」
6 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/14(金) 00:34:19.27 ID:6gNAy2MSO
マミデモート卿か
7 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/14(金) 00:35:04.55 ID:G0BK9RvH0
 

老婦人「全く……やっぱりどこにでもああいう輩はいるのですね……これは……」ブツブツ

マミ(……誰かしら? 外国の人よね? 何で木の棒なんて持って……
   あ、こっちに来る……ど、どうしよう。外国語なんて分からないし……)

老婦人「……っと、失敬。貴女がマミ・トモエですね?
     その歳でこんな……大変だったでしょう。お悔やみ申し上げます」

マミ(助かったわ、日本語ね……)
  「あ、ありがとうございます。えーと……その、父か母の知り合いでしょうか?」

老婦人「いえ、残念ながら。この国はふくろう便が整備されてなくて……ああ、まあそれはともかく。
     本来なら三日前の誕生日、貴女が食事から帰ってきたらお会いする予定でした」


マクゴナガル「自己紹介がまだでしたね。私はミネルバ・マクゴナガル。
         イギリスのホグワーツという学校で教鞭を取っている者です」









マミ「きょうべ……?」

マクゴナガル「……つまり、学校の先生をやっているということです」
8 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/14(金) 00:36:08.36 ID:G0BK9RvH0
 

マミ「それで、その学校の先生がなんで私の両親に……?」

マクゴナガル「用があるのは貴女にです……正直、私もこんな事態になってしまって戸惑っているのですが――
         単刀直入にいいましょう。ミス・トモエ――貴女は魔女です」

マミ「……え? あの」

マクゴナガル「正確には魔女の素質がある、ということになります。
         私の勤めているホグワーツはそういう素質のある子を集めて教育を施す学校なのです」

マミ「……そんなこと言われても……」

マクゴナガル「……まあ、信じられないのも無理はありません。
         ですが事実です。そもそも貴女が例の交通事故から生き延びたのもそのお陰なのですから」

マミ「え……?」

マクゴナガル「生命の危機に瀕したとき、魔法の力が発揮されるというのは良くあるケースです。
         オーガスタ……私の知り合いの孫も、二階から突き落とされて資質に目覚めたといいますし」

マミ(それってどうなのかしら?)
9 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/14(金) 00:36:57.96 ID:G0BK9RvH0
 

マミ(いえ、それよりも……助かったのは私が魔女だから?)

マミ(それじゃあ私が独りぼっちになったのも……)


弔問客3『眉唾だけど、あの事故の原因はあの子が何かしたんじゃないかって――』


マミ「私の力が原因……?」

マクゴナガル「……その言葉が、いまの状況についてを問うているのなら。
         貴女だけが生き残ったことに関しては、確かに貴女の素質のせいということもできるでしょう」

マミ「……っ」ジワッ

マクゴナガル「ですが貴女の御両親が亡くなられたのは、貴女のせいではありません」


マクゴナガル「最初にどうしようもない不幸があり、貴女だけが偶然その不幸から逃げのびた。
         それだけのことです。貴女が不幸を呼び寄せたのではありませんよ」

マミ「……だけど」

マミ「だけど、それでも私が独りぼっちなのは変わりないじゃない……!」

マミ「パパもママも死んじゃって、周りの人はみんな私を気持ち悪がって!」


マミ「こんなの、死んだほうがましよぉ……!」


マクゴナガル「……それに関してですが、私から提案があります」

マクゴナガル「貴女はホグワーツに入学すべきです、ミス・トモエ」
10 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/14(金) 00:40:11.42 ID:G0BK9RvH0
 
マミ「……え?」

マクゴナガル「言ったでしょう。ホグワーツは魔法使いの学校で、貴女にはその資質があると」

マクゴナガル「……実を言うと、もう貴女に魔法界のことを教える気はなかったのです。
         このような大きな事故の直後。言っても、さらに貴女を混乱させるだけだと思っていました。
         ならばこのまま、慣れたマグルの――魔法の無い世界で暮らすのも悪くないのではないかと」

マクゴナガル「ですが貴女の周囲のマグルを見ていて気が変わりました。
         私はマグル――非魔法使いを特に差別するつもりはありませんが。
         しかしやはりというか、彼らと私たちは根本的に別の考え方をする生き物です」

マクゴナガル「彼らに"私たち"は理解できません。
         いまの貴女に必要なのは理解者と、それに囲まれた環境です。
         これは魔法使いではなく、一教育者としての意見ですがね」

マミ「……」

マクゴナガル「……ま、それでもすぐにこの場で決めろとはいいません
         始業式までにはまだ二ヶ月ほどあります。
         もし魔法を学ぶ気があるのなら、この手紙にサインして窓辺に置いておいてください」スッ

マミ「あっ、あの」

マクゴナガル「我々は貴女を歓迎しますよ、トモエ」パン!

マミ「き、消えた!?」
  (本当に……魔法使い? ホグワーツ……か)
11 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/14(金) 00:43:49.82 ID:G0BK9RvH0
 
 数日後、ダイアゴン横丁


マミ(……来ちゃった)

マミ(あの後、寝る前にサインした手紙をベランダに出しておいたら朝には消えてて。
   次の日の夕方、ベランダに知らない箱が置いてあったから触ったら……)

マミ(なんかぶわーってなって、気づいたらここに立ってたけど……
   どこかしら、ここ? 少なくとも日本じゃないわよね?
   周りで話してる人も、英語使ってるし……どうしよう不安になってきたわ)

???「……お前がマミ・トモエか?」

マミ「えっ、あ、はい。そうですけど」

???「だろうな。東洋人は珍しい。
     今回のポート・キーは時間指定されとらんから大分待つかとも思ったが……」ブツブツ

マミ「えーと……すみませんが、貴方は?」
12 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/14(金) 00:48:05.06 ID:G0BK9RvH0
 
フィルチ「……アーガス・フィルチだ。今日は私がお前の付き添いだ」

マミ「付き添いって……?」

フィルチ「手紙にサインをしたんだろう? だから入学にあたって必要なものを揃えにゃならん」

マミ「ノートとかですか?」

フィルチ「制服から何まで一式だ。そのマグル丸出しの格好でホグワーツを歩く気か? ええ?」

マミ「……」ムッ

フィルチ「……ふん。さて、まずはグリンゴッツだな。はぐれて面倒を増やすなよ」スタスタ

マミ「あ、ちょっ!」

フィルチ「……なんだ?」

マミ「私、外国のお金とか持ってないし……それに、通ってた学校の手続きだって……」

フィルチ「サインした時点で魔法が働くに決まってるだろうが。すでにお前は留学することになっている。
      金については、今からグリンゴッツに行くといっている」

マミ「グリンゴッツ?」

フィルチ「銀行だ! マグルの金をそこで換金できる。そんなことも知らんのか?」

マミ(……知るわけないじゃない)

フィルチ「……おっと、そうだ忘れるところだった。
      マクゴナガル副校長からこれを預かっている」ポイッ

マミ「これは……指輪?」スッ
  (あら、付けたら周りの声が日本語になった?)

フィルチ「コーユカオ・ツマ――マグルで言うホンヤクキという奴に近い道具だ」
     「付けてるとさっきまでの私みたいに違う言葉を理解し、話すことが出来る」
     「たまに酷い誤訳をするが、まあ愛嬌だと思え」

マミ「はあ」

フィルチ「さて、時間をとったな。さっさとグリンゴッツにいくぞ」
13 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/14(金) 00:52:27.86 ID:G0BK9RvH0
 
 数時間後


フィルチ「制服に教科書、杖に学用品……一通りは揃ったな」

マミ「そうですね……」
  (疲れた……この人、何かにつけて嫌味を言ってくるんだもの)
  (ぜんぜん歓迎ってムードじゃないわね……あれ、そういえば)

マミ「そういえばマクゴナガル先生はどうなさったんですか?」

フィルチ「なんだ? 私では不満か?」

マミ(不満だけど)

フィルチ「……あの人は副校長だからな。そうそう学校を空けるわけにもいかんのだ。
      とはいえ、極東の島国までトラブルを起こさずに行くのはそれなりに教養のある人物でないとならん。
      だからあの時は副校長が直々に足を運んだのだ。
      ハグリッドみたいなうすのろに勤まると思うか?」

マミ(ハグリッドって誰かしら?)
   「フィルチ……さんも、ホグワーツの先生なんですか?」

フィルチ「……ちっ、私は管理人だ。
      規則を破った生徒を捕まえたりするのが主な仕事でな。
      お前も入学後は精々お行儀良くして欲しいものだな、ええ?」

マミ「……」ムスッ


フィルチ「……あー、なんだ。副校長で思い出したが。
      そういえば、動物を一匹買うように頼まれてたな。
      すぐそこに店がある……ついてこい」

マミ「はあ」
  (学校の仕事なら、別に私が付き合う必要ないんじゃないかしら?)
14 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/14(金) 00:53:25.60 ID:6gNAy2MSO
フィルチが出るのは珍しいな…松岡さんは翻訳頑張ったじゃないっ
15 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/14(金) 00:55:14.19 ID:G0BK9RvH0
 
 魔法動物ペットショップ


マミ「凄い……見たことも無い動物がいっぱいいる」

フィルチ「ああ、その辺の動物はみても無駄だぞ。
      ホグワーツはペットを持ち込んでも良いことになってるが、種類は制限されてる。
      ふくろう、猫、ヒキガエルの内どれかから一匹だけだ」

マミ「カエルは嫌ですね」

フィルチ「初めて意見があったな、トモエ。確かにヒキガエルは流行遅れだ」

マミ(流行に関係なく嫌よ!)

フィルチ「するとふくろうか猫だが……猫だな。私のお勧めは猫だ。
      猫は良いぞぉ。賢いし、音を立てないからな。私もミセス・ノリスという猫を飼っているが……」

マミ「……あの」

フィルチ「ん、なんだ。決まったか?」

マミ「何で私が買う動物を決める流れになってるんですか?」

フィルチ「? おかしな奴だな。お前のペットなのだから当然だろう?」

マミ「私の? マクゴナガル先生のお使いじゃないんですか?」

フィルチ「だから、副校長がお前にプレゼントとして送ってくださるということだ。
      見た目通りの厳格な方だからな。自分の寮生でもないのにプレゼントするのは珍しいことだぞ」

マミ(……誕生日プレゼント、かしら。マクゴナガル先生……)

フィルチ「とにかく、そういうわけだ。あとはお前が選べばいい。
      まあ私のお勧めは猫だが……ん? 店主、この白いのは新種か?」

店主「ええそうですよ。最近捕まえたんです。珍しいですよ。
    なんといっても――」


QB「わけがわからないよ」

店主「喋りますからね」
16 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/14(金) 00:58:59.90 ID:G0BK9RvH0
 
QB「あ、そこの君! 君には素質がある。僕と契約して魔法少女になってよ!」

マミ「わあ、会話ができるんですか? 魔法界の猫って」

店主「いえいえ、意思疎通できる動物はいても、人語を話す動物はあまりいませんよ」

QB「僕は動物じゃないよ。それより契約しようよ! 僕と契約して友達に差をつけよう!」

フィルチ「ほう、自分を売り込むとは中々商売上手な猫だな」

QB「いや、だから僕は猫じゃなくて……」

店主「"シレンシオ"!(沈黙せよ)」

QB「むぐっ!? むぐむごむがっ」

店主「いや〜すみません。入荷したばかりで躾がなってなくて……どうですお安くしておきますよ?」
   (≪漏れ鍋≫の裏でゴミ漁りしてるとこを捕まえたはいいけど、正直猫かどうかよくわからんからなぁ)

フィルチ「ふむ、どうする? トモエ」
17 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/14(金) 01:03:52.44 ID:G0BK9RvH0
 
マミ「買います。おいくらですか?」

店主「毎度! 大勉強して5ガリオンってとこで」

QB「むぐーっ!?」

フィルチ「考えなしだな、トモエ。学生らしく、もっと頭を回して考えたらどうだ?」

マミ「あら、だって猫はフィルチさんのお勧めなんでしょう?」

フィルチ「……店主、ほら金だ」

店主「へい、丁度」

マミ「ふふ、名前は何にしようかしら。魔法の動物だものね。レビヤタン? スレイプニル? コシュタ・バワー?」

QB「ぷはっ。酷いな(センスが)。そもそも僕にはキュゥべえって名前が」

店主「シレンシオ!」

QB「むがあああああ!?」

フィルチ「……おい、店主。そこの猫用栄養ドリンクを貰おうか」

店主「へい、どうも。5本セットで3シックルです」

マミ「ああ、そういえばフィルチさんも猫を飼ってるんでしたっけ」

フィルチ「ああ、ミセス・ノリスという名前でな。規則を破った生徒を教えてくれる賢い奴さ」
     「っと、ほら、受け取れ」ポイッ

マミ「え? これ、フィルチさんの猫のじゃ……」

フィルチ「ふん。勘違いするなよ。私は猫が好きだからな。
      下手な世話をされて、猫を病気にさせたくないだけだ」

マミ「……分かりました。それじゃあ、大事に育てますね」ニコッ
18 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/14(金) 01:08:36.75 ID:G0BK9RvH0
 
フィルチ「――さて、それじゃあこれで買い物は終わりだな。
      最後にこれを渡すようにとの指示だ」

マミ「切符と……スニーカーと長靴が片足ずつ?」

フィルチ「靴の方はポート・キーだ。来るときに使っただろうが?
      長靴はこれから帰るのに使え。スニーカーは9/1の10:30、キングズ・クロスに飛ぶようにセットされている。
      きちんと支度を整えてから触れよ。一回限りの使い捨てだから戻ることは出来んぞ」

マミ「……便利ですね、魔法って」

フィルチ「そうだな、使いこなせりゃ便利だろうよ」チッ
     「本来ポータス(ポート・キー設置)の呪文はぽこぽこ使えんのだがな」
     「お前の為に副校長が尽力してくれたお陰だ。精々感謝するんだな」

マミ「ええ。もちろん」
   「マクゴナガル先生によろしくお伝えください」
   「それと、フィルチさんも。またホグワーツで」

フィルチ「ふん。会うのはお前さんが規則を破ったときだろうよ」
     「できれば、二度と顔をあわせたくないものだな?」
19 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/14(金) 01:11:11.23 ID:G0BK9RvH0
 
 9/1 キングズ・クロス9と4分の3番線 列車内


マミ「さて、列車に乗ったはいいけど……どの部屋もいっぱいね。困ったわ」フラフラ

QB「椅子自体は空いてるんだから、その辺の席に座らせてもらえばいいじゃないか、マミ」

マミ「だって知らない人ばかりだし……みんな魔法使いみたいだし……」
   「だいたいなんでこの国の電車は席が個室ごとに分かれてるのよ?」

QB「コンパートメント、という奴だね。まあ確かにマミの国ではあまりみないかな」
   「あと、傍から見たら君も十分魔女だよ」

マミ「格好だけよ。ローブと三角帽だけで魔法が使えれば苦労しないわ」

QB「だけど君はこれから一年間、その中で過ごすんだろう?」
   「ここで尻込みしてどうするんだい?」

マミ「学校に着いたらなんとかなるわよ……きっと自己紹介の時間とか、そんなのがあるでしょ」

QB「現実から眼を逸らさないで、マミ。問題は今だよ。まさか学校に着くまで立ちっぱなしでいる気かい?」

マミ「トイレとかあるんじゃないかしら……」

QB「駄目だこいつはやくなんとかしないと」
20 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/14(金) 01:15:26.21 ID:G0BK9RvH0
 
QB「あ、そうだ僕と契約すれば席くらいどうにでもなるよ? ついでに魔法少女にもなれるけど」

マミ「うふふ、ありがとうキュゥべえ」

QB「わー流されたー。じゃあ契約はいいからとりあえずケージから出して欲しいなぁ」
   「さっきから電車が揺れるたびにガンガンぶつかって痛いんだけど」

マミ「や。そんなこといってまた逃げ出そうとする気でしょ?」
   「逃げられたらマクゴナガル先生やフィルチさんになんて言えばいいかわからないもの」

QB「確かに最初の一週間は隙を見て逃げ出そうとしたけど」
   「もう諦めたよ。君、僕を追いかけるときはやたら俊敏なんだもの」
   「他の固体からもはぶられて、マミ専用みたいな扱いされてるし……」

マミ「ふーん……よく分からないけど……じゃ、出してあげる」
   「確かに猫専用のケージじゃなくて、昔飼ってたカブトムシ用の虫かごだと狭いものね」カパッ

QB「ひゃっほおおおおおお僕は自由だあああああああああああ!」ダッ
21 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/14(金) 01:19:02.61 ID:G0BK9RvH0

 
マミ「やっぱり逃げた! 待ちなさい! 次は金魚蜂に詰め込むわよ!?」

QB「待つもんか! ふふ、このまま適当なコンパートメントに逃げ込めばマミは手が――」

ヒキガエル「」パクッ

QB「きゅっぷい!?」

マミ「キュ、キュゥべえがヒキガエルに頭を飲み込まれた!?」

ヒキガエル「」モゴモゴ

QB「きゃー! やめてやめて! 君、食物連鎖を無視してる! ヒキガエルは猫に食べられる方だろう!?」
   「いや僕は猫じゃないけど、ってうわー凄い生あったかい……!」
   「助けてマミ! マミ助けて!」

マミ「ごめんなさい、キュゥべえ……属性相性的なアレで女の子はヒキガエルに勝てないの」
   「きちんとお墓は造ってあげる。墓標はアイスの棒でいいかしら?」

QB「ま、マミ! 僕が逃げたの根に持ってるね!?」
   「くっ、ならばロックだぜ! 誰にも頼らねえ! 僕の力だけで切り抜ける! 発現せよインキュベーターパワー!」
   「うぉおおおおおお! ――なにぃっ、対魔翌力が特Aクラスだと!?」

ヒキガエル「無駄だ、貴様の技は全て見切った」

QB「ヒキガエルの癖にぃぃいいいいいい! きゅっぷい! きゅっぷい!」ズルッ、ズルッ

丸顔「ヒキガエル……? それってもしかして」
   「! やっぱりトレバー! ここにいたのかい?」
22 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/14(金) 01:20:19.20 ID:BndWM6+4o
これは面白くなりそうだ…お辞儀するわ
23 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/12/14(金) 01:25:25.69 ID:G0BK9RvH0
 
トレバー「」スポン

QB「た、助かった……」

丸顔(うわなにこの猫べとべと……)
    「あ、ありがとう。このヒキガエル僕のなんだ。よく逃げだすんだよ……」

マミ「え、と。いいのよ。当然のことをしたまでだから」
   (実際、何もしてないし……)

丸顔「それでもありがとう……何かお礼をしたいけど、僕何も持ってないし……」
    「ん? あれ、君、なんでまだ荷物もってるの?」

マミ「えっ。あっ、これはその」

丸顔「あ、もしかしてコンパートメントがどこも一杯だったの?」
   「確かに知らない人がいると座りづらいよね」
   「僕も席にあぶれるの怖かったから、一番に電車に乗り込んだんだ」

QB「こいつは準備周到なマミだね……あ、痛い痛い!」
   「も、もう逃げないから僕をソックスに詰めようとするのは勘弁して欲しいなぁ!」
24 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/14(金) 01:28:15.29 ID:NsTMGGwC0
なんだ、トムをマミさんに置き換えただけの作品か
と思っていたらなんだこの展開

支援するしかないじゃない!
25 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/12/14(金) 01:28:23.65 ID:G0BK9RvH0

 
丸顔「……そうだ! 僕達のコンパートメントにおいでよ!」

マミ「い、いいの?」

丸顔「うん。四人掛けを二人で占領しちゃってるから……」
   「荷物をひとつの席においても、十分座れるよ」

マミ「それじゃあ……お言葉に甘えようかしら」

QB「良かったねマミ! 僕のお陰だね!」

マミ「えいっ」ぎゅっ

QB「きゅ!?」

ネビル「うん、もうひとりも新入生の女の子だから気が合うと思うよ」
    「僕の名前はネビル。ネビル・ロングボトム。よろしくね、えーと……」
26 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/12/14(金) 01:33:23.71 ID:G0BK9RvH0
 
 コンパートメント

ハーマイオニー「ふうん。じゃあマミも私と同じでマグル出身なのね?」

マミ「ええ、だから全然分からないことだらけで困ってたの……」

QB「分からないのはもっと人として根本的な部分じゃ……あー! 杖は駄目! 杖は駄目ー!」

ネビル「はは、僕は純血だけど分からないことなんかいっぱいあるし気にしない方が」

ハーマイオニー「でも教科書くらいは全部読んだでしょう?」
          「私は個人的に他にも何冊か魔法界の本を購読したけど……」

マミ「え、予習? だって書いてあることちんぷんかんぷんだったし……」

ネビル「仕方ないよ、習ってないもの。僕だってまだ呪文のひとつも――」

ハーマイオニー「そう? 簡単な呪文くらいならみんな上手くいったけど」
          「それに予習してないと授業についていけないんじゃない?」
          「ホグワーツって、最高の魔法学校だって聞いてるわ」

マミ「……」

ネビル「……」

ハーマイオニー「いまからでも遅くないわよ――ほら、魔法史なら歴史とそうかわらないし」
          「簡単な呪文のひとつくらいなら学校に着く前に覚えられるでしょ?」

ネビル(どうしよう。不安になってきた)

マミ(空気が重いわ……こ、こうなったら魔法学校用に暖めてきた冗談で空気を変えるしか……!)

QB(マミ、やめろ! それは死亡フラグだ!)
27 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/12/14(金) 01:40:31.65 ID:G0BK9RvH0
 
マミ「簡単な呪文ね……ひとつだけ知ってるわよ。あ、アブラカタブラ〜……とか」

ハーマイオニー「……」

ネビル「……」

マミ「あの……アブラ……カタブラ……」

ハーマイオニー「……」

ネビル「……」

マミ「……」

マミ(へ、変ね。普通の人出身なら笑いが取れると思ったんだけど)

QB(そのレベルでかい? やれやれ、ジョークなのかも怪しいレベルだよ)
   (そもそもアブラカタブラ=変な呪文っていう認識はマミの国以外でも通じるのかい?)

マミ(ああ、なるほど。そのせいね)
   (そう、ジェネレーションギャップならぬボーダーギャップ)
   (決して、私のセンスがアレだったわけではないのよ!)

QB(あ、しまった。マミに言い訳する理由を与えてしまった)
   (自分以外に理由を見つけると省みないから人間って性質わるいなぁ)

ハーマイオニー「……」
28 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/12/14(金) 01:45:09.54 ID:G0BK9RvH0
 
ハーマイオニー(今、この子はなんて言ったの……?)

ハーマイオニー(……いえ、聞き間違いではないわ。宣言するように二回も言ったもの)

ハーマイオニー(アバダ・ケダブラですって……!?)←聞き間違い

ハーマイオニー(闇の魔術でも三本の指に入る危険な魔法じゃない!)

ハーマイオニー(人に向かって唱えただけでアズカバン送り、終身刑になる最悪の呪文!)

ハーマイオニー(それを簡単な呪文……!? 大人の魔法使いでも一握りしか唱えられないのに!?)

ハーマイオニー(間違いないこの子は……)

ハーマイオニー(闇の魔法使いの家系……! たぶん例のあの人の隠し子とかそんな感じ……!)

ネビル(なんだろう。マグルのジョークかな? 笑ったほうがいいの?)チラッ

ハーマイオニー(ネビルも全力で賛同してくれてるわ!)
29 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/12/14(金) 01:51:21.16 ID:G0BK9RvH0
 
ハーマイオニー(さてそこでこの才女ハーマイオニーは考える……)

ハーマイオニー(これからの学園生活、どんな風にこの子と付き合っていくべきか……)

マミ「?」

ハーマイオニー(……って、あら? よく考えたらどうせ闇の魔法使いのこの子はスリザリン寮よね)

ハーマイオニー(対して眉目秀麗才色兼備、勇猛果敢な私はグリフィンドールかレイブンクロー)

ハーマイオニー(なーんだ、じゃあ別に気にすること無いじゃない。適当に合わせてましょ)

マミ(この沈黙が怖い……っ)ガクブル

ネビル(お腹空いたなぁ)

QB(こっちの女の子は魔法少女の才能ないね)

30 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/12/14(金) 01:55:16.76 ID:G0BK9RvH0
 
売り子「車内販売ですよー。冷たいカボチャジュースにお菓子はいかがですかー?」

ネビル「あっ……どうしようかな。ばあちゃんに無駄遣いはするなって言われてるし……」

マミ(お菓子……小学校の遠足で、クラスのみんなと分け合いっこしたわね)
   (この空気を払拭するチャンスかも)

マミ「すみません、見せてください」

売り子「はいどうぞ。お勧めは蛙チョコレートよ」

マミ(……ってよく考えたら魔法のお菓子なのよね、これ)
   (とんでもない味とかあるかも……少しずつ、色んなのを買えばいいかしら)

マミ「これとこれと……あ、新聞がある。じゃあこれもお願いします」
   (魔法使いの世界の事情とか、全然知らないし……)
31 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/12/14(金) 01:57:52.49 ID:G0BK9RvH0
 
ハーマイオニー「あら、新聞? そうね、確かに情報は大事だわ。おばさん、私にも一部ください」

ネビル「えーと……僕は……」

マミ「あの、ロングボトム君。良かったら食べる? 席に入れてくれたお礼に」

ネビル「え、いいの? わあ、ありがとう。じゃあ蛙チョコを貰うよ」

マミ「どうぞ。グレンジャーさんも良かったらどう?」

ハーマイオニー(一服盛るつもりね!?)
          「いえ、あの、その、私の両親が歯科医で、甘いものは止められてるの」

マミ「そう……」シュン

QB「そこで諦めるから駄目はマミなんだよ。ほら、これなんか甘くないよ」ポイッ

ハーマイオニー「ムガッ!? ちょ、なにを投げ込んで……」ゴックン

ネビル「あ、百味ビーンズだ。そ、そしてあの色は確か伝説のトロール味……!」

ハーマイオニー「いやああああ!? 噛まなかったから味わからなかったけどなんかいやあああ!?」

マミ「グ、グレンジャーさん! ほらかぼちゃジュースを……!」

QB(ハッカ風味だったんだけどなぁ)
32 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/12/14(金) 01:58:36.92 ID:G0BK9RvH0
 
ハーマイオニー「トロール…トロール…」ブツブツ

ネビル「あっ、くそ。またダブりだ。これでダンブルドアが三桁か……」

マミ(なんとか落ち着いたし、新聞でも読もうかしら)バサッ
   (読めるようにもなるなんて、翻訳機凄いわね……えーと、何々?)


(魔法省、また不祥事。高まるコーネリウス・ファッジリコールの声)
(グリンゴッツに強盗? 幸いにも被害はなし)
(生き残った男の子、ハリー・ポッター帰還)
(ワーロック法違反。危険生物の卵が帳簿と釣り合わず)
(賢者の石の創造者ニコラス・フラメル氏、死去)


マミ「……さっぱり分からないわ。指輪のお陰で、読めることは読めるけど」

QB「新聞から教養を得るためには、その前段階として最低限度の教養が必要だからね」
   「マミは魔法界のこと何にも知らないんだから当然だよ」

マミ「それもそうね。学校で勉強してからまた挑戦するわ」ゴソゴソ

ネビル「あ、そろそろ着くみたい。マミ、ハーマイオニー、用意したほうが良いよ」
33 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/12/14(金) 01:59:08.17 ID:G0BK9RvH0
眠い故にここまで
34 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/14(金) 02:19:05.44 ID:0uCsnkl+0
マミさん厨ニ病患者に認定されたか
それにしても期待感がぱない
35 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/14(金) 02:46:14.68 ID:rGYHD++0o

厨二どころか危険人物扱いだぜ……
ギャグを外しただけで終わるはずがどうしてこうなった
36 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/14(金) 07:55:49.15 ID:8y22mO2X0
>>1にお辞儀するのだ
37 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/14(金) 15:30:59.90 ID:pAjy+hh80

超期待
38 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/14(金) 17:09:19.20 ID:nizMWiXwo
ハリポタは全く知らないのでオリジナルと思って読むことにする


面白いな
39 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/15(土) 01:40:12.17 ID:Ja8u4/hL0
これは期待
40 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/15(土) 02:04:11.21 ID:Rq0V22a60
クビー・マミッターか
41 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/15(土) 08:42:39.88 ID:o/DZp78+o
なんとなくQBが出てきた時の安心感が半端なかった
42 : [sage saga]:2012/12/15(土) 09:30:56.35 ID:r666Whf50
ちなみに最終的にまどマギ寄りになるかも
投下
43 : [saga]:2012/12/15(土) 09:31:39.74 ID:r666Whf50
 
 ホグワーツ 大広間



ネビル「……で、さっきの大きい人が森番のハグリッド。真ん中に座ってるのがダンブルドア校長先生。
     その隣に座ってるのが――」

マミ「知ってるわ。マクゴナガル先生よね?」

ネビル「あれ? 知ってるんだ。そうだよ。僕のばあちゃんとは昔からの知り合いなんだ。
     うん、だからまあ、ちょっと僕、苦手なんだけど……」

マミ「ふふ。でもマクゴナガル先生って、とってもいい人よ?
   あ、あの端っこに座ってるの、フィルチさんよ。この学校の管理人さんなんですって」

ネビル「な、なんか物凄く意地の悪そうな顔してるけど……」

マミ「うーん。確かに優しい、とは言えないけど……えーと、その、極悪人ってほどじゃないわよ?
   キュゥべえに栄養ドリンク買ってくれたし」

QB「ああ、君が僕に無理矢理飲ましたアレ。あの飲み物、栄養価はバカみたいに高かったよ」

マミ「ねー?」

QB「言っておくけど、褒めてないからね。
   その謎栄養のせいで、三日間も僕の中のグリーフシードが暴れまわったんだから」

マミ「また訳のわからないこと言って……
   ……それにしても、ロングボトムくん。やっぱり魔法界出身だと色々知ってるのねぇ」

ネビル「そんな、僕なんか全然さ。ばあちゃんは僕をロングボトム家の恥さらしって呼んでるし」

マミ「でも私、本当になにも知らないし……グレンジャーさんの言うとおり、教科書読んでくれば良かったわ」

ネビル「たぶん彼女、僕より物知ってると思うな……教えてもらえるとよかったね」

QB「駅についた瞬間、ものすごい勢いで飛び出して行ったものねえ。あれはどうしたんだろう?」

マミ「さあ? お友達と約束でもしてたんじゃないかしら」
44 : [sage saga]:2012/12/15(土) 09:32:57.94 ID:r666Whf50
 
マクゴナガル「――さて、これから組み分けを行います。呼ばれた者から前に出て組み分けを受けてください」

マミ「組み分け……ね。さっき帽子が歌ってたけど、それぞれの寮で特色が違うみたいね?」

QB「グリフィンドールが勇敢で、ハッフルパフが努力家、レイブンクローが頭脳明晰、
   そしてスリザリンでは真の友情が手に入るって言ってたね」

マミ「え、そうだったかしら? じゃ、じゃあスリザリン――」

ネビル「やめときなよ! 『例のあの人』もそこの出身なんだよ?」

マミ「? 『あの人』ってどの人?」

ネビル「……あ、そっか。知らないんだった。うう、でも名前は言いたくないし……」

マクゴナガル「……ロングボトム・ネビル!」

ネビル「ああ、呼ばれちゃった……と、とにかくスリザリンはやめた方がいいよ!」

マミ「行っちゃった……どうしましょうか、キュゥべえ?」

QB「さあ? でも見てる限りでは、あの帽子が全部決めてるみたいだよ。
   そう気構える必要はないんじゃないかな?」

マミ「うーん……でも私、魔法界のこと何にも知らないからレイブンクローなんかにいれられちゃったら――」

ドラコ「こいつは驚いた! おい、聞いたかいクラッブ?
    スリザリンに入りたいとか言ってるからどんな奴かと見てみれば、なんとマグル出身ときた!
    ああ、全く。スクイブに長杖って言葉はこういう輩の為にあるんだろうな。だろう?」

クラッブ「それどんな意味? 知ってるか、ゴイル?」

ゴイル「いや全然。でも多分、食べ物じゃなさそうだってことは分かるぞ」

ドラコ「……ごほん! つまり身の程を知れってことさ。分かったかい?」

マミ「え、えっと、あの」オドオド
   (え、え? どういうこと? 私、なんか失礼なこといっちゃったのかしら)

ドラコ「スリザリンは純血主義だ。薄汚いマグルの血なんて、とんでもない」

マミ「……っ!」ジワッ
  (薄汚いって、そんな……酷い)

ドラコ「あらら、泣いちゃったよ。まったく、これだからマグル出身は。
    むしろ恥をかかないうちに教えてあげたんだから感謝してほしいくらいなんだけどね?」

マクゴナガル「……マルフォイ・ドラコ!」

ドラコ「おっと、僕の番か。ま、僕は偉大なるスリザリン寮で決まりだけどね」スタスタ

 スリザリーン!

QB「おや、本当にスリザリンだ。ふーん、なるほどねえ」

マミ「ぐすっ、ひっく」

QB「マミ、平気かい? 気にすることはないよ。スリザリン以外の寮になればいいじゃないか」

マミ「……ううん、違う、の。私、くやしく、て」ベソベソ

マミ(優しかったパパとママのことをあんな風に言われて……でも、何も言い返せないなんて)

QB「……マミ、君が望むなら、願い事で――」

マクゴナガル「……マミ! トモエ・マミ! 聞いているのですか! あなたの番です!」

マミ「あ、は、ひゃい!」グシグシ

QB「……タイミング悪いなぁ」ボソッ
45 : [sage saga]:2012/12/15(土) 09:33:40.80 ID:r666Whf50
 

マミ「……」ドキドキ

組み分け帽(ふーむ、難しい……非常に、難しい)

組み分け帽(勇敢ではない……とりたてて忍耐強くもない……知識に対する姿勢も並……かといって狡猾でもない……)

組み分け帽(真面目な性格のようだから、まあ普通ならハッフルパフなのだが……)


マミ(あっ、グレンジャーさんとロングボトムくんは赤色の垂れ幕のテーブルだ……)

マミ(やっぱり、知っているお友達の寮がいいな……さっきみたいなことが、またあったら……)グスッ


組み分け帽「……」

組み分け帽「グリフィンドール」
46 : [sage saga]:2012/12/15(土) 09:34:25.63 ID:r666Whf50
 
グリフィンドールのテーブル

ハーマイオニー(ふふふ! マミ・トモエ! ここでお別れよ!)

ハーマイオニー(やっぱり私はグリフィンドール! そして貴女はスリザリン!)

ハーマイオニー(貴女自身に恨みは無いけれど……貴女のアバダ・ケダブラがいけないのよ!)

組み分け帽「グリフィンドール」

ハーマイオニー「って、ええええええええええええええ!?」ガタッ

マミ「あっ、グレンジャーさん……その……よろしくね?」テレテレ
   (そんな、わざわざ立ち上がって喜んでくれるなんて……)

ハーマイオニー(何故!? そんな馬鹿な! 私の計画が崩れるなんて!?)
          (なんで闇の魔法使いの卵がグリフィンドール……はっ、もしかして錯乱の呪文!?)
          (そうよそれだわそうとしか考えられない! 先生たちにも気づかれずに魔法を使うなんて!)

ハーマイオニー(そしてわざわざグリフィンドールに入った理由はただひとつ……!)

ハーマイオニー(か、確実に私、目を付けられてる……! ケダブラされる!)ガタガタ

マミ「?」

ネビル「マミ! おめでとう! 一緒の寮だね。良かったよ、スリザリンじゃなくて……」

マミ「……ええ、本当にね」

ネビル「……揉めてたみたいだけど、マルフォイになんか言われたの?
     あそこ、ばあちゃんがいつもぼろくそに悪口言ってる家なんだ……」

マミ「……」ズーン

ネビル(やばいしくじった。わ、話題を変えないと)

ネビル「あ、あー、まあそれは置いておくとして、マミが来てくれて本当によかったよ。
     ハーマイオニーったら、さっきから僕が君と何を話してたのかしつこく聞いてきてさ」

マミ「え、本当?」チラッ

ハーマイオニー(やめて! やめて! 畜生この丸顔、いつか石にしてやるわ!)
47 : [sage saga]:2012/12/15(土) 09:35:11.29 ID:r666Whf50
 
マクゴナガル「――ポッター・ハリー!」

ザワザワ ハリー? ハリー・ポッター?

マミ「……あの、なんかざわついてるけど……いま呼ばれたあの子、有名人なの?」

ハーマイーニー(!? 話題変更のチャンス!)
         「ええ、そうよ。近代魔法史の本なんかにも出てるくらいなんだから」

マミ「……ってことは、芸能人とかじゃないわよね……うーん、物凄く頭が良いとか?」

ハーマイオニー「いいえ、違うわ。『例のあの人』を倒したのよ」

マミ「『例のあの人』……ロングボトムくんもさっき言ってたけど、それって誰なの?」

ハーマイオニー「あー、私はマグル出身だから平気なんだけど……」チラッ

ネビル「?」

ハーマイオニー「まあいっか。一回で覚えてね。
          ヴォルデモートの名前は、魔法界ではタブー視されてるから――」

ネビル「う、うわあああああ!」バ゙ターン!

ハーマイオニー「……こんな風に」
48 : [sage saga]:2012/12/15(土) 09:35:42.15 ID:r666Whf50
 


マミ「……なるほど。凄い悪い魔法使いだったのね。で、それをポッターくんが倒しちゃったと」

ハーマイオニー「正確には、彼が倒したって言っていいのか……その頃、彼はまだ一歳だった筈だし。
          でもとにかく、『あの人』は彼を殺し損ねて、それから姿を見せてないってことね」

マミ「凄いわね……」

ハーマイオニー「ええ、本当に。ハリーがグリフィンドールに決まった時の歓声、聞いたでしょ?
          本を読むと、『あの人』を倒したっていう事実の凄さがわかるけど――」

マミ「あ、あの、そっちじゃなくて、グレンジャーさんが」

ハーマイオニー「私? 私が、なに?」

マミ「その、いっぱい色んなこと知ってるんだなぁって。私と同じ普通の人出身なのに、凄いな、って」

ハーマイオニー「……! べ、べつにこれくらいどうってことないわ! 本の内容、ちょっと暗記しただけだもの!」

マミ「ううん。そういうことに一生懸命になれるなんて、本当にすごいと思うわ」

ハーマイオニー「そ、そうかしら? 当然のことだと思うけど」

マミ「ねえ、グレンジャーさん、これからもよければ私の知らないこととか、教えてくれないかしら……?」

ハーマイオニー「し、しかたないわね! 私が知ってることでよければ――」

ハーマイオニー(……って、思わず頷いちゃった! 駄目よ、マミは闇の魔法使い!)
          (きっと今も、無知を装ってこっちを油断させようと……!)

マミ「良かった! じゃあグレンジャーさん、これからよろしくね?」ニコッ

ハーマイオニー「え、ええ、よろしく……」
         (も、もう駄目だわ……完全にマミの術中に嵌ってしまった。なんて狡知!)ガクブル

ネビル(仲いいなぁ、この二人)
49 : [sage saga]:2012/12/15(土) 09:36:21.44 ID:r666Whf50
 
ニック「やあやあ、新入生の皆さん! 豪華な夕餉を楽しんでおられますかな?」ニュッ

マミ「っ!? ごほっ、ごほっ、つ、机から首が生えてきた!?」

ニック「ああ、驚かせてしまって申し訳ありません。えーと、確かミス・トモエ?」

QB「うん? 変な情報体だね。質量も熱量もゼロなのに、そこに存在してるなんて」

ニック「おやおや。はっは、これは賢い猫をお持ちでいらっしゃる」

QB「猫じゃないったら! インキュベーター! 僕達はエントロピー問題を解決する為、はるばる宇宙の彼方から――」

ネビル「マミ、大丈夫? ただのゴーストだよ」モグモグ

マミ「ゴ、ゴースト? お化けってこと?」ビクビク

ニック「おお、これは……新鮮な反応ですな。うむ、ゴースト冥利につきるというものです」

ハーマイオニー「ゴースト。実物は初めて見たけど、そんなに怖いものでもないじゃない」

ニック「ほほう、これでも?」グイッ ポロッ

ハーマイオニー「きゃっ!?」

マミ「〜〜〜っ!?」
   (く、首が取れちゃった!? あ、でも微妙に皮一枚で繋がって……)

ニック「このような風体ですので、"ほとんど首なしニック"と呼ばれることもありますが、
    呼ぶのでしたらニコラス・ド・ミムジー―ポーピントン卿と。
    グリフィンドールのゴーストですので、長い付き合いになるでしょうからな!」

QB「――絶望と希望の相転移――え? だって聞かれなかったから――」

50 : [sage saga]:2012/12/15(土) 09:37:23.41 ID:r666Whf50

 
ニック「さて、食事も途中のようですし、私はこれでおいとましましょう。
    グリフィンドールのみなさん、今年度こそ"寮対抗優勝カップ"の獲得を目指して頑張っていきましょうぞ!」

マミ「寮対抗? 運動会でもやるの?」

ハーマイオニー「違うわ。"ホグワーツの歴史"で読んだけど、授業の出来とか日ごろの素行とか、
          そういう細かい項目ごとに採点されるんですって。
          で、年度末にその得点が一番多かった寮の勝ち」

パーシー「うん。その通り。今年の一年生は有望そうだな」

マミ「あの、貴方は?」

パーシー「パーシー・ウィーズリー。グリフィンドールの監督生だ。今年の新入生の中には僕の弟がいてね。
      あそこののっぽの赤毛。ロナルドっていうんだけど、あいつはフレッドやジョージみたいにはならないで欲しいな……」

フレッド「俺たちがなんだって、パース?」

ジョージ「安心しろよ、可愛い可愛いロニー坊やの面倒は僕らが見てやるからさ」

フレッド「ああ。こパースみたいな石頭がこれ以上我がウィーズリー家に増えたらぞっとしないからな」

パーシー「お前たちはまたそうやって! 僕は監督生だぞ――」ドタバタ


ハーマイオニー「私、知ってるわ。今日の列車の中で、マミが私たちのコンパートメントに来る前に会ったの」


ロン「――」

ハリー「――」


マミ「ポッターくんと話してるわ。ずいぶん仲が良さそうだけど」

ハーマイオニー「列車でも仲良く話してたから、そこで仲良くなったんじゃない?」

マミ「あ、そうなんだ……え、えーと、私たちみたいね?」テレ

ハーマイオニー「え、ええ、そうね……あ、デザート! デザート食べましょう?」

マミ「あら? グレンジャーさん、甘いものはご両親に止められてるんじゃ――」

ハーマイオニー「う、うぐっ……」
          (ううっ、咄嗟についた嘘が首を絞めるなんて……)

マミ「……でも、今日くらいいいわよね? デザート、とても美味しそうだし。一緒に食べましょ?」

ハーマイオニー「え、ええ! ほら、マミ。トライフルって食べたことある?」

ハーマイオニー(私、これからまともに学校生活送れるのかしら……?)



 ハーマイオニーの予想通り、その後の学校生活は、彼女にとってとても辛いものとなった。
51 : [sage saga]:2012/12/15(土) 09:37:51.03 ID:r666Whf50
 

 グリフィンドール寮


マミ「あ、グレンジャーさん。ベッド、隣同士みたいね?」

ハーマイオニー「え、ええ。そうみたいね」

マミ「私……その、ひとりで寝るのが苦手で……良かったら寝るまでお話ししない?」

ハーマイオニー「もちろん! 貴女が寝るまでね!」
          (先に寝たら、寝てる間に呪いをかけられちゃう……!)



翌日


ハーマイオニー「……」ゲッソリ

ロン「なにあれ、ゾンビ?」

ハーマイオニー(マミが寝た後も、緊張で一睡も出来なかった……)
52 : [sage saga]:2012/12/15(土) 09:38:24.44 ID:r666Whf50
 
 魔法薬学 教室


マミ「えーと、これを煮てる間にこれをすり潰して……」ゴリゴリ

ラベンダー「じゃあ私、鍋の様子見てるわ。……にしても、マミって意外と手際いいのねー。
       本当にマグル出身?」

マミ「ふふ、ありがと。よくお母さんと一緒にお菓子作ってたりしてたから、そのお陰かも」

QB「……へえ。僕の知らない植物だ。この惑星のものは全部データベース化したと思ってたけど」



ハーマイオニー(何とか別の班になれたけど……離れてたら離れてたで怖いわね。
          なんていうか、お風呂で髪を洗ってる時に背後から感じる視線のような……)ガタガタ

スネイプ「ミス・グレンジャー。魔法薬の妙に怖気づいたか? 手が震えておるようだが」ポン

ハーマイオニー「っ、きゃあああああああああああ!?」バシャーン

スネイプ「うぉぉぉおおおお!? 熱ぃぃいいいいい! グリフィンドォォオオル! 10点っ! げんてぇぇえ……」



ジョージ「おい聞いたかフレッド。スネイプの野郎が新入生に医務室送りにされたらしいぞ」

フレッド「マジかよ!? そいつはぶっ飛びもんのニュースだ。
     その英雄、うちのパースと交換してくんねえかなぁ」
53 : [sage saga]:2012/12/15(土) 09:38:57.23 ID:r666Whf50
 
 ホグワーツ 裏庭



ドラコ「この穢れた血め! よくもスネイプ先生を塩掛けたナメクジみたいにしてくれたな!」

マミ「酷い……」ジワッ

ハーマイオニー(! ヤバイ! 呪いに巻き込まれる!?)
          「この腐れスリザリン! マミにちょっかいかけないで! オラァ!」バキッ

ドラコ「いや別にトモエに言ったんじゃなくてお前にげふぅ!?」

クラップ「魔法使いが素手で!?」

ゴイル「それもあんな正確に肝臓を打ち抜くなんて!」

マミ「グレンジャーさん……私なんかの為に……」キュン

ドラコ「くっ……さすがは穢れた血。杖より先に手が出るなんて」

ハーマイオニー「ドラァッ!」ボコォッ

ドラコ「フォイッ!?」

ゴイル「決まった! ハートブレイクショット!」

クラップ「これは立ち上がれない! フォイフォイダウーーーーン!」







ロン「あいつって真面目馬鹿だと思ってたけど、意外とクールだよな」


ハーマイオニー「フーッフーッ、シャーッ!」


ハリー「あれクールなの? どっちかっていうと熱暴走してるんじゃない?」




54 : [sage saga]:2012/12/15(土) 09:39:37.83 ID:r666Whf50

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 変身術 授業


マクゴナガル「さて、私が教えるのは変身術です。みなさん、杖を使う授業はこれが初めてででしたね?
         ですが変身術は魔法の中でももっとも難しい分野であり――」 

マミ(マクゴナガル先生の授業……! 魔法使うのは初めてだけど、絶対に成功させないと!)

マクゴナガル「――ではまず手始めに、マッチ棒を針に変身させて貰います。
         マッチが配られた者から始めるように」

QB「マミ、大丈夫かい?」

マミ「へ、へへへへへ平気よ! きょ、教科書は何回も見たんだから……!」ガチガチ

QB(駄目だこりゃ)

マミ「い、行くわよ……か、かかっ、カーコス・スペル!(針に変われ)」ポンッ










QB「……ねえ、マミ。僕にはどう見てもこれ、針じゃなくてちっちゃなミサイルにしか見えないんだけど」

マミ「……奇遇ね、キュゥべえ。私にもそうにしか見えないわ」

 バシュッ シュゥゥゥウウウウウウウ!

QB「……噴射口から、火を噴き始めたようだけど?」

マミ「……そうみたいね、キュゥべえ」

QB「……マミ、魔法を解いたら?」

マミ「……解き方はまだ、習ってないもの」

QB「……」

マミ「……」


 シュゥゥゥウウウウウウ! スリー、トゥー、ワン…


QB・マミ「せ、せんせぇぇぇえええ! マクゴナガル先生ーー!」


 ゼロゥ バシュウウウウウウウ!
55 : [sage saga]:2012/12/15(土) 09:43:39.19 ID:r666Whf50
 

マミ「……」ズーン

QB「マミ、そんなに気を落とさないで。ちょっと力を入れすぎちゃっただけじゃないか」




ラベンダー「凄い威力だったわね、あれ」ヒソヒソ

バーパティ「教室の壁に大穴が空いちゃったものね……」ヒソヒソ



ジョージ「よう、マミ! マクゴナガル女史が感服してたぜ。
      "こんな魔法はみたことない"って! まあ、ベッドの上でだけどさ」

フレッド「すげえよな、あれ。今度教えてくれよ、我らが自習の女神。
     フィリバスター花火と組み合わせりゃ、もっと面白いことになる気がするんだよなぁ」





ハーマイオニー(スネイプ先生に、マクゴナガル先生……
          や、やばいわ。着実にホグワーツの戦力を削りに来ている)ガタガタ

ハリー「彼女、物凄く震えてるね」

ロン「あの"みさいる"が顔を掠めたんだもんなぁ。そりゃトラウマもんだよ。
   なあハリー、さすがに同情するぜ。ちょっと励ましにいってやろうか?」

ハリー「だね。おーいハーマイオニー!」


 この日以来、ハーマイオニー・グレンジャーは二人の友人になった。

 共通の経験をすることで、互いを好きになる。そんな特別な経験があるものだ。
 
 ミサイルの恐怖を共にする。そんな経験も、まさしくそれだった。
56 : [sage saga]:2012/12/15(土) 09:44:27.02 ID:r666Whf50
 
 数ヶ月後 ホグワーツ廊下



マミ「……あのミサイル事件から二ヶ月弱。ようやくわかったわ。
   私、魔法の才能ないみたい……」

QB「そうかい? 君の魔法、凄いと思うけどなぁ」

マミ「呪文学では浮かす筈だった羽がフリトウィック先生の額に突き刺さるし、
   変身術では悉くミサイルやら榴弾やらに変わっちゃうし、
   闇の魔術に対する防衛術ではクィレル先生の頭に呪文が直撃して、
   この世のものとは思えない叫び声上げさせちゃうし……」

QB「あーあれは凄かったねえ。クィレル先生が錯乱して『お辞儀をするのだ!』って叫びだすし、
   ハリーは額の傷を抑えて倒れちゃうし」

マミ「そうよ……それで、ついたあだ名が……」



ミリセント「見て、グリフィンドールのぶっ壊し屋よ」クスクス

パンジー「次は何を壊すのかしら? まったくこれだからマグル出身は野蛮で困るわ」ヒソヒソ

ドラコ「ははっ、まったくその通りだね」

ハーマイオニー「無駄ぁッ!」ボゴオッ!

ドラコ「フォーーーーーーーーイ!?」グシャッ



マミ「同じ寮のみんなからも、ちょっと距離置かれ始めちゃってるし……
   普通に話してくれるの、もうグレンジャーさんくらいだもの……」

QB「そうでもないよ? あのウィーズリーの双子とか……ああいや、あれは面白がってるだけかな?」

マミ「練習しようにも、下手な場所でやったらまた粉々だし……」

QB「まあ、考えてても仕方ないよ。ほら、寮に戻ろうマミ? 夕飯も食べたし、あとは寝るだけだよ」

マミ「そうね……って、あら? あれは……」
57 : [sage saga]:2012/12/15(土) 09:44:58.27 ID:r666Whf50
 
フィルチ「……お前か、トモエ。何をしている? また何か壊したのか?」

マミ「……こんばんは、フィルチさん。その……いつもごめんなさい」

フィルチ「ふんっ。お前のおかげで、私はここ半年ほど休みなしだよ。
      片っ端から教室を吹き飛ばしおって。椅子と机の注文書を何回書いたか分からん。
      まったく、家具屋の回し者かというのだ、ええ?」

マミ「……私だって、別に壊したくて壊してるわけじゃ……」

フィルチ「それが私の仕事量に関係するのか? 壊してるのは事実だろうが。
      いや、悪意がない分性質が悪い。わざとやってるんであれば、逆さ吊りにしてるところさね……」

マミ「……っ」ジワッ

フィルチ「おやおや、泣くのか? そんな暇があったら、呪文のひとつでも練習したらどうだ?」

マミ「……練習したって、無駄です」

フィルチ「ああ?」

マミ「だって私、才能がないんです……スリザリンの人からはマグル生まれって馬鹿にされるし、
   実際、魔法は一回もまともに成功したことないし……」

フィルチ「……」

マミ「こんなことなら、私、ホグワーツになんてくるんじゃなかった――」

フィルチ「……っ! 黙って聞いてれば、トモエ――お前は本当に愚か者だな」グイッ

マミ「ふぇ? あの、フィルチさん、どこへ――?」

フィルチ「いいからついてこい!」スタスタ
58 : [sage saga]:2012/12/15(土) 09:45:33.20 ID:r666Whf50
 
フィルチ「全く、なんで私がお前の愚痴を聞かにゃならんのだ?
      管理人の私が、なんで生徒のお前の話を?」

マミ「あ、あの、気に障ったなら謝りますから――」

フィルチ「ああ本当だよ。腹立たしいにもほどがある。才能がないとか言ったな?
      ふん。全く、お前みたいな御嬢さんになにが分かるというのだ」

マミ「……っ、馬鹿に、しないでください! 私は、ずっと悩んで――」

フィルチ「たかだか数ヶ月だろうが? その程度で悩んだなどと、ちゃんちゃらおかしい」

マミ「……もう、いいです! 離してください! 離して――」



フィルチ「なあ、トモエ――本当に才能が無いということが、どういうことか分かるか?」



59 : [sage saga]:2012/12/15(土) 09:46:24.70 ID:r666Whf50
 
 ふと、時が止まったような感覚を覚える。

マミ「……え?」

 実際には、フィルチさんに引っ張られる私は歩き続けている。

 それなのに、そんな感覚を覚えたのはフィルチさんの声のせいだった。

 冷たい声。それはいつものねっとりした猫撫で声ではなく、酷く凍りついた印象を受ける声音。

フィルチ「マグルの生まれだからだとか、言い訳もできずに――
     それでも才能がないと思い知らされることが、どういうことかわかるか?」

マミ「あの……?」

フィルチ「毎回教室を吹っ飛ばしておいて、才能がないだ?
      ふん、才能がないというのは、杖を振っても火花すら出せない奴のことをいうんだ」

フィルチ「失敗できるだけいいだろうが。本当に才能が無い奴は、失敗することすらできん。
      成功させるための挑戦すらすることができんのだ。
      お前は、自分は惨めで可哀想な悲劇のヒロインだとでも思っているのかもしれんがな、トモエ」

 そうして唐突に、フィルチさんは廊下の壁際で立ち止まり、

フィルチ「――本当に才能の無い奴から見れば、今のお前は本当に腹正しく見えるだろうさ」

 廊下の壁に向かって、ノブを捻るような動作をして見せると、そのまま私ごと壁の中に溶けるように入り込んだ。

60 : [sage saga]:2012/12/15(土) 09:47:22.64 ID:r666Whf50
 
マミ「あの、ここは……?」

フィルチ「今は使われてない、隠し教室のひとつさ。ホグワーツにはこういう隠し部屋がうんとあってな」

マミ「なんで、ここに私を?」

フィルチ「毎回机と椅子を粉々にされても困るんだよ。ここには何もないし、壁も分厚い。
      扉も透明呪文で見えなくなってるから、誰かが入って来て巻き添えになることもない」

マミ「……?」

フィルチ「……ちっ。まだわからんのか。だから、好きなだけここで失敗してろ、と言ってるんだ」

マミ「……! フィルチさん!」

フィルチ「ただし! 寮の門限は守れよ? 私が見回りに来た時にまだいるようだったら、
      その時は地下牢に叩き込んでやるからな? いいな!?」

マミ「はい! ありがとうございます」

フィルチ「フン! 礼を言われる筋合いはない」
61 : [sage saga]:2012/12/15(土) 09:48:02.87 ID:r666Whf50
 
 ハロウィーン 大広間


マミ「わあ、素敵な飾り付けね、キュゥべえ! ほら、ジャック・オ・ランタンが空を飛んでる!」

QB「などと供述しており、警察は薬物の服用を疑って――」

マミ「ちょっと! 変なモノローグ挟むのやめてちょうだい!」

QB「まあ冗談はともかくとして、なかなか面白いね。
   あの蝙蝠の大群も、本物そっくりだけど本物じゃないだろうし」

マミ「確かに本物だと、さすがに衛生的ではないものね――って、あら?
   見て、クィレル先生が……」


クィレル「トロールが! トロールが地下室に!」


 トロール!? トロール ダッテ!?


ダンブルドア「静まれ! 静まれ! 監督生よ、それぞれの寮まで生徒を引率せよ!」

QB「……」
62 : [sage saga]:2012/12/15(土) 09:48:36.11 ID:r666Whf50
 
 グリフィンドール談話室


ジョージ「だけどトロールがどうやって入りこんだんだろうな?」

フレッド「さあな。もしかしてハグリッドが飼ってたのが逃げ出したのかもしれないけど」





マミ「トロールねえ。確かに、どうやってホグワーツに忍び込んだのかしら?
   ……あら? キュゥべえ? どこ行ったの?」

QB「マミ! 大変だ! ハーマイオニー達が!」

マミ「……え?」
63 : [sage saga]:2012/12/15(土) 09:49:08.79 ID:r666Whf50
 
 女子用トイレ


トロール「ブァァアアアアア!」


ハーマイオニー「だから言ったじゃない! トロールは危ないって!」

ロン「今更そんなこと言ってもしかたないだろ! 君だって強くは止めなかったじゃないか!」

ハリー「それにスネイプが禁じられた廊下の方に向かったのが気になるって、君も言ってたろ!」

ハーマイオニー「それはそうだけど! でもトロールは危ないから、見つけたらすぐ逃げるとも言ったでしょ!?
          ロン! それなのに貴方ったら!」

ロン「だって後ろ向いてたから、こん棒を浮かせて頭に落とせばやっつけられると思ったんだ!」

ハーマイオニー「見ればわかるでしょ! あれは山トロール! トロールの中じゃ一番頑丈なの!」

ロン「そんなのわかるもんか! 今度はもっと早く言ってくれ! あいつが殴られて怒りだす前に!」

ハリー「二人とも、言い争いしてる場合じゃないだろ――」


トロール「ブアアアアアアアア!」


ハーマイオニー「……っ、きゃああああああ!」



マミ「――フリペンド!(撃て!)」バシュッ



64 : [sage saga]:2012/12/15(土) 09:49:35.56 ID:r666Whf50
 
トロール「ブア?」ギロッ

マミ「っ、効いてないみたいね……でも注意は逸らせた!」


ハリー「彼女、ハーマイオニーの友達の……」

ロン「ああ、ぶっ壊し屋だ! あれ、でもいま、魔法が成功しなかった?」

ハーマイオニー「マミ!? なんでここに? はっ、ま、まさか私たちにトドメを刺そうと!?」

ロン「ハーマイオニー。前から気になってたけど、君のマミに対する被害妄想はどこから生まれたの?」

ハリー「マミ! どうしてこの場所が分かったの?」

マミ「QBが教えてくれたの! まったく無茶をするんだから!」

QB「いや、マミ。僕は契約をだね。魔法少女になれば、あの程度の怪物なんか――」

マミ「キュゥべえ! あなたは先生を呼んできて! 私が時間を稼ぐから!」

QB「いや、だから契約……はぁ、分かったよ」ピョイッ

65 : [sage saga]:2012/12/15(土) 09:50:27.24 ID:r666Whf50
 
ロン「無茶だ! そいつ、僕の渾身のこん棒落としでも駄目だったんだぞ!」

マミ「平気よ! 私だってこの数週間、ただ失敗してたわけじゃないもの……!」



QB『マミ。どうやら君は、得意な魔法と苦手な魔法がはっきり分かれてるみたいだね』

QB『多分、君の"素質"にも関わってるんだろうけど……
   うん、もしも君が魔法少女になったらきっと銃とか弓とかが武器になるんじゃないかな?』

QB『だから僕と契約しようよ! 願い事で頼めば、今日から君もダンブルドア級に――』



マミ「そう、全ての失敗は、いまこの瞬間、成功するために!」スッ

マミ「私の大切な友達を助ける為に、私は私の魔法を成功させる!」

ハーマイオニー「マミ……私、貴女のことを誤解してた――」

マミ「覚悟しなさい、この化け物!」バラッ


ロン「なにかばら撒いた? なんだあれ? ちっちゃい棒みたいな――」

ハリー「ああ、あれマッチだよ。ほら、談話室の暖炉に備え付けてある奴」

ハーマイオニー「……え? あの、ちょっとまって。マミ、分かってるわよね……?
          トロール挟んで反対側に私たちがいるってこと、ちゃんと考えてるわよね!?」


マミ「穿ちなさい! 我が魔弾の仔らよ! これが私の、全力全開!」


ロン「あー……駄目だよ。やっこさん、完全にトリップしちまってる」

ハリー「あー、ロン? 無駄かもしれないけど、とりあえず伏せてみようか?」

ロン「そうだな。ついでにお祈りもしとけば、少しはマシになるかもしれないし」

ハーマイオニー「マミ、ちょ、やめ――!」

マミ「――カーコス・スペル!(針に変われ)」ポポポポンッ!

 バシュウウウウウウウウウウウウウウ!
66 : [sage saga]:2012/12/15(土) 09:51:22.32 ID:r666Whf50
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マクゴナガル「……なるほど。それでこの惨状だと」

マミ「ごめんなさい! ごめんなさい! ごめんなさい!」ペコペコ

ロン「おったまげー……トロールがミンスパイの中身みたいになっちまったんだものなぁ」

ハリー「便器も全部吹っ飛んじゃったし……ハーマイオニー、大丈夫?」

ハーマイオニー「トロールはいやトロールはいやトロールはいや」ブツブツ

ロン「駄目だこりゃ。だから伏せろって言ったんだ」

ハリー「真正面からもろに浴びちゃったもんね。あー……"ミンスパイの中身"を」


マクゴナガル「とりあえず、グリフィンドールから15点減点。
         ポッター、ウィーズリー、グレンジャー。これで規則の大切さがわかりましたね?
         命があったのは本当に幸運でした」

ハリー「本当にね」

ロン「ああ。あんなに怖かったのはキャノンズが優勝した夢を見た時以来さ」

マクゴナガル「そしてマミ。殺されなかったのは運が良かっただけです。
         もしも貴女の身に何かあったら、私は亡くなった御両親にどう申し開きしろと?」

ハリー「……!」

マミ「ほ、本当にごめんなさい、マクゴナガル先生。私、全然考えなしで――」

マクゴナガル「……ですが、トロールを粉々にできる一年生は見たことがありません。
         特別に、20点あげましょう」

マミ「……え?」

マクゴナガル「できればこういう台詞は、授業中に言ってあげたかったのですが――」


マクゴナガル「――ええ、貴女は私の自慢の生徒ですよ、マミ」ニコリ


マミ「マクゴナガル先生――!」

マクゴナガル「ですがトイレを全損させたので、そこからマイナス5点。差引きゼロです」

マミ「」
67 : [sage saga]:2012/12/15(土) 09:51:59.77 ID:r666Whf50
 
マクゴナガル「以上。四人とも帰ってよろしい。ですが、その前に入浴するように」スタスタスタ

マミ「……うう、これで変な綽名からも脱却できると思ったのに」

マミ「あの……本当にごめんなさいね? 私、ちょっと力みすぎてたみたいで――」

ロン「ごめんなさいだって!?」

マミ「ひぅっ」ビクッ

ロン「ごめんなさいだって!? 君は最高だよ! なあ、ハリー! さっきの魔法、最高にクールじゃないか!」

ハリー「マミ、君は命の恩人だよ。うん、ただまあ、次の機会があるならもうミサイルはやめて欲しいけど」

マミ「ウィーズリーくん、ポッターくん……」

ロン「水臭いな! ロンでいいよ!」

ハリー「僕もハリーって呼んでよ。同じグリフィンドールの仲間じゃないか!」

マミ「……う、うん!」


 それ以来、巴マミは彼らの友人になった。
 共通の経験をすることで、互いを好きになる。そんな特別な経験があるものだ。
 

ハーマイオニー「トロールはいやトロールはいやトロールはいや」ブツブツ



 ただちょっと、"ミンスパイの中身"塗れになるというのはロマンチックじゃないけれども。


 
68 : [sage saga]:2012/12/15(土) 09:52:36.88 ID:r666Whf50
いったんおわり。次で賢者の石編はラスト
69 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/15(土) 09:55:03.10 ID:7FQngt97o

魔法使いになっても火力偏重なマミさんかわいい
そして>>1のIDが獣の数字おめ
70 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/15(土) 10:33:33.89 ID:BXjtwROB0
>>1におじぎをするのだ!!
71 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/15(土) 11:02:32.83 ID:tJ+B5Daj0
>組み分け帽「……」
>組み分け帽「グリフィンドール」

組み分け帽は空気読める良い子だw
72 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/15(土) 14:42:31.56 ID:8Aj7ss9bo
おつをするのだ!
73 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/15(土) 14:43:58.73 ID:nusvQi9Xo
俺でもわかる、とてもいいクロス
乙。大支援。
74 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/15(土) 15:56:07.09 ID:1TMN4iZyo
面白い
何処まで元ネタかは知らないけれど、それでも面白い
マミサイルすげぇ

75 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/15(土) 17:24:04.21 ID:kNTihWgt0
マミさんの魔法の本質って確かリボンだったはずだから結合とか繋げる系の魔法ならそのまま出来るはず

…そんな呪文あったっけ
76 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/15(土) 17:32:27.83 ID:Jxn8JI4mo
導入部分は結構違うよね
面白いです乙
77 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/15(土) 18:36:25.17 ID:62V2sm/AO
おお、内容ガラッと変えたのか
面白い、乙
78 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/15(土) 18:49:06.97 ID:9TFHWSP+0
乙。支援
79 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/15(土) 22:12:17.62 ID:Pjues9zf0
乙。すばらしい。
80 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/16(日) 09:14:40.20 ID:lPa9DNmPo
もしかしてちょっと前に本編の文章を改編して書いてて問題になった人?
81 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/17(月) 21:18:05.06 ID:r+nL//fb0
11歳のマミさんとかすばらしい
82 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/20(木) 22:57:42.98 ID:sA/zl/Yz0
まだか
83 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/21(金) 02:43:36.24 ID:4s3NFq94o
一週間も経ってないだろ、早漏め
84 : [sage saga]:2012/12/21(金) 20:32:40.70 ID:/m8MIGRY0
             ,-Y Yヽ |     / |  / l l |      l |ヽ_ |  l |
.              {  ( )ノ l     / l_/-- |ハ|    /TT ヽ  l l lリ
             \ し、jV   l |  ̄i /-‐ |      二リ_ i | | l
              乂ノヽ_}    l | x==サ=ァ       { b:l_j:} 〉i | l l‐- 、
              ,ヘ_ノf \   リ 〈 {C:し:::}        弋廴ソ リl /ハ、 /}      >>80 違います。そんな事件あったんですか……
          ,、_ノ   ノl l \ \ 乂-‐イ            リ  _// }          ていうか、まどマギとハリポタのクロスって
          f \  / \ゝヽ\\ ∞=@    ,    l ̄  彡{          以前にもあったんですね。
          l \  \<ニ‐`ニ\  ̄               ノー- ニイ i
             {  \_  ̄ ̄ フ f >         ー-‐ ´    <\ ̄ _ /  ノ
          / \     ーく\ } \ l>        ィ::|:.::.::.::.::.i//  へ_ 、   >>82 ごめんね。明日には投下するから、ごめんね。
.             .i\ / ̄ ー‐ ´\\   \ _ `   ´}/ ノ}:.::.::.::.::.::.:`\/  ̄ヽ:ヽ
          i ヽ ̄ニ―三}‐:.:.:.:\\ l/「ヽ |   /.::::/l{:.::.::.::.::.::.::.::.::.::.}    }:::}
              > `ー― /.:.:.:.:.:.:.:.:.:.: \\│ | |./.::::/: ::|:.::.::.::.::.::.::.::.://   //
         /,-‐ ´ ̄ フ:.:.:.:.:.:.:.:.: 〈 (\ | | _/: : : : |:.::.::.::.::.::.::./ノ     ´::\
.         /:::/   /.::.::.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:  } }}:::::| / , ___ヽ: : :│:.::.::.::.::.::.::.::.::.:::.::.:.::.::::.::.\
.       i::/    {.::.::.::.::.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.: 丿メ V/{ ′//⌒ヽ: : |:.::.::.::.::.::.::.::.:::.::.::.::.::.::.::.::.::. \
     .  i:{     }.:.::.::.::.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:( ノノ: :)∧   /⌒) : | ::.:::.::.::.::.::.::.::.:::.::.::.::.::..::.::.::.::..::..\
       `丶  / .::.::.::.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:}}:.:| : : : : .'.    く \: | ::.::.::.:.::.::.::.::.::.::.::.::.::.:.::.::.::.::.::.::.::.::..\
     .      ″.::.::.::.::.::. i.::.::.::.:ノノ .:| { : : : : 〉     )、_)| ::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.:;ノ..::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::..\
           jj .::.::.::.::.::.:: i.::.::.::.::.::.::.::| : : : rク    /. : : :│::.::.::rヘ.___,ノY{::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.:..`丶、
     .     〃.::.::.::.::.::.::.: ! ::.::.::.::.::.::.:| : : /{    /. : : : : | ::.::.: `}  }{ (::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.:.:..\
         /.::.::.::.::.::.::.::.::. :、:.::.::.::.::.::.:|: :/ : :\  /. : : : : : | ::.::. ノー[I-I]-ヘ:.:.ヘ::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::::.::.::.::.::.:.:..ヽ
     .   /.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.. ::.::.::.::.:: l:/ : : : : :∨} : : : : : : | ::.:: 乂  j{  ノ.::.::..\::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::::.::.::.::.::.::.::...
85 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/22(土) 22:46:48.39 ID:kwl3/B3s0
まだー?
86 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/23(日) 02:38:59.38 ID:RMFyZWKS0
きっとあれだ、>>1のいる地域ではまだ24時になっていないんだ。そうに違いない。
87 : [age]:2012/12/23(日) 15:58:10.38 ID:fefuj6bu0
服従の呪文をかけられていたようだ。起きたら日曜だった。

まじごめん。いまから投下します。
88 : [saga]:2012/12/23(日) 15:59:13.76 ID:fefuj6bu0
 
 グリフィンドール 談話室


ロン「……ってわけさ。これで大まかなルールは全部かな。
   実際にプレイするなら別だけど、観戦するには十分だと思う」

マミ「ええ、ありがとうロンくん。お陰でハリーくんの試合を見に行った時、
   何にも分からないって事態は回避できそうね」

QB「彼、シーカーってポジションに選ばれたんだっけ?
   規則を捻じ曲げてまで選ばれたんだから、きっと才能があったんだろうね」

マミ「そういえば箒で飛ぶ授業の時、凄い飛びっぷりだったような……
   あら? そういえばそのハリーくんは?」

ハーマイオニー「ハ、ハリーはスネイプ先生の所に行ったわ。
          私が貸してあげたクィディッチの本を没収されちゃったの」ビクッ

ロン「……ハーマイオニー。君ってばまだマミのこと――むがっ」

ハーマイオニー(しーっ! 染み付いちゃった習性は急に取れないの!
          そ、それに! マミはあの日、確かにアバダケダブラって……!)

ロン(絶対君の勘違いだと思うけどなぁ)
89 : [saga]:2012/12/23(日) 15:59:46.24 ID:fefuj6bu0
 
ハリー「"豚の鼻"! ――ロン! ハーマイオニー!」バタン!

ロン「噂をすれば、だ。ようハリー。本は取り戻してきたかい?」

ハリー「それどころじゃない。分かったんだ! スネイプはあの日"三頭犬"の――」

ハーマイオニー「っ!? ハリー、落ち着いて。駄目。ストップ!」チラッ

マミ「? どうしたの? "さんとうけん"って何かしら?」

ロン「いやあハハハ! 聞き間違いさ。さんとう、さとう……砂糖羽ペンだよ。ハリー、ほら、仕方ないな!」グイッ
   (馬鹿! "禁じられた廊下"に入っちゃったことは秘密だって、君が!)

ハリー(ごめん! でも大変なんだ。スネイプがあの犬の守ってるものを狙ってるんだよ!)

ロン「マジかよ!?」

マミ「?」

ハーマイオニー(ロン!)ギロッ

ロン「あ、え、うーん、そうか。そりゃ大変だな! じゃあ本を取り戻す作戦を立てようか。
   マミ、悪いね。ちょっと外すよ」

ハーマイオニー「あ、明日はクィディッチの試合もあるし、もう寝ないと!
          マミ、先に部屋に戻ってて? 私も歯を磨いたらすぐに行くから!」

マミ「う、うん。分かったわ。キュゥべえ、行きましょ?」ヒョイッ

90 : [saga]:2012/12/23(日) 16:00:14.76 ID:fefuj6bu0
 





ハリー「……。……。」

ロン「――。――!」

ハーマイオニー「〜〜〜〜〜!」



QB「……マミ。気づいてると思うけど、あの三人、君に隠し事をしてるみたいだよ?」

マミ「そうみたいね。別にいいけど」

QB「気にならないのかい? 僕のデータだと、君たちくらいの年の子は
   友達に仲間外れにされると疎外感で心がいっぱいになるとあるんだけど」

マミ「全く気にならないわけじゃないけど……意地悪してる雰囲気でもないしね」

QB「確かに。どちらかといえば、知られることを恐れているようだった」

マミ「グレンジャーさんはともかく、ハリーくんやロンくんは結構やんちゃなところがあるから……
   大方、なにか規則違反したのを隠してるとかじゃない?」

QB「そういえば、この前のトロール事件も規則違反っていえば規則違反だったか」

マミ「うん。だから……私を巻き込まないようにって、気を使ってくれてるんじゃないかしら?」
91 : [saga]:2012/12/23(日) 16:00:47.65 ID:fefuj6bu0
 
 グリフィンドール 女子寮


パーバティ「はぁい、マミ。お話は終わった?」

マミ「ええ。ロンくんにクィディッチのルールを教えて貰ってたの」

ラベンダー「あら、言ってくれれば私たちが教えたのに」

パーバティ「ねえ、マミ。この前のトロール、貴女が倒しちゃったって本当?」

マミ「う……もしかして、噂になってるのかしら?」

パーバティ「ええ! 一年生がトロールを魔法で粉々にしちゃったって話題でもちきりよ!」

マミ「あ、あのね。別に私、必死でやっちゃっただけで――」

ラベンダー「いいからいいから! ね、その時のこと詳しく教えて!」

マミ「……いいけど、あんまり他の人に言っちゃだめよ?」
92 : [saga]:2012/12/23(日) 16:01:13.65 ID:fefuj6bu0
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ラベンダー「……それでね、ホグズミードにはハニーデュークスっていうお菓子屋さんがあるの。
       品揃えはイギリスでも一番ね!」

マミ「素敵! 是非一度行ってみたいわ」

パーバティ「じゃあ今度のクリスマス休暇、一緒に行かない?
       学期内の週末に行けるようになるのは三年生からだけど、帰宅中なら大丈夫よ!
       パパとママに連れってて頼むから!」

マミ「……クリスマス、休暇」

パーバティ「? マミ?」

マミ「あ……ごめんなさい。ちょっと……私の家、遠いから。
   帰るのも大変だし、クリスマスはこっちで過ごすことになると思う」

ラベンダー「あ、そういえばマミって日本人だっけ。もしかしてふくろう便の範囲外?
       そうすると煙突飛行ネットも通ってないかー」

パーバティ「そっか、じゃあ仕方ないわね……」

マミ「うん。せっかく誘ってもらったのに、ごめんなさいね……」
93 : [saga]:2012/12/23(日) 16:02:04.32 ID:fefuj6bu0

 
マミ(……家に帰る、か。でも、帰ったところで……誰もいない)

マミ(マクゴナガル先生は正しかった。
   魔法というインパクトとまったく新しい環境での生活は、あの事故のことを少しだけ忘れさせてくれた)

マミ(でも……本当に忘れられたわけじゃない)

マミ(こうして一度落ち着いてしまってからだと、泣くことも難しい)


 自分にとって、クリスマスとは楽しいものだった。

 記憶が蘇る。証明を落としたダイニング。テーブルの上には丸いケーキ。ロウソクの火に、私と両親の影が揺れていた。

 でも、もうそんなクリスマスは過ごせない。


マミ(……これから、ずっと。私は……)
94 : [saga]:2012/12/23(日) 16:03:18.36 ID:fefuj6bu0
 
ラベンダー「――マミ、マミ? 聞いてる? もしかして眠くなっちゃった?」

マミ「あ、ええ。ごめんなさい。なんだったかしら?」

ラベンダー「だから、クリスマスの話よ!」

マミ「……あの、だからクリスマスはホグワーツで――」

ラベンダー「ああ、だいぶ前から聞いてなかったのね……仕方ないか。もうだいぶ遅いもんね」

パーバティ「あのね、マミ。じゃあクリスマスカードを送り合わない? ってさっきから話してたのよ」

マミ「クリスマス、カード……?」

パーバティ「あれ、知らない? マミの国はそういう習慣ないのかしら?」

ラベンダー「別に、直接会わなくてもクリスマスは祝えるでしょ? ホグワーツなら、ふくろう便も届くし」

マミ「……」

ラベンダー「マミ?」

パーバティ「どうしたの? 本格的に眠い?」

マミ「……ううん。大丈夫。大丈夫、だから」ニコッ

ラベンダー「本当? じゃ、今から私たちの住所言うから、メモして――」


 ――いまの貴女に必要なのは理解者と、それに囲まれた環境です――


マミ(……マクゴナガル先生、ありがとうございます)


 天国のお父さんとお母さんへ。

 私、友達ができました。
95 : [saga]:2012/12/23(日) 16:04:12.41 ID:fefuj6bu0
 
 図書室


ハーマイオニー(ニコラス・フラメル……この本にも載ってないわね。
          著名な魔法使いは、ほとんど網羅したと思うけど)ペラッ

ロン「教えてくれるかい、ハリー? 僕はあと何冊本を読めばいいんだ? もう一生分は読んじまったよ」

ハリー「僕もクィディッチの試合をやったのが遠い昔に思えてきたよ、ロン。まさに天国から地獄へ、だ」

ロン「地獄の獄卒だって、こんな拷問めいたことはやらせないと思うけどね」

ハーマイオニー「ああもう! あなた達、口を動かす前に手と目、そして頭の中身を動かしなさい!
          あの三頭犬が守ってるものは、ハグリッドがうっかり洩らしたニコラスって魔法使いが関係してるんだから!」

ハリー「分かってるよ。何にせよ、スネイプに取られるわけにはいかないからね。
     にしてもニコラスって名前……どっかで聞いた覚えがあるんだけどなぁ」

ロン「どうせなら、ハグリッドももっとうっかりしてくれてたら良かったのにな。
   ニコラス某が誰かとか、何を守ってくれてるのかとか教えてくれりゃ、こんな本の山に埋もれなくたっていいのに」

ハリー「あの犬、何を守ってるんだろうね」

ロン「さあ? スネイプが狙ってるんだから、厨房からくすねてきた骨ってことはないだろうけどな」

ハリー「それ以前に、あの犬の体格じゃキッチンに入れないだろうしね」

ハーマイオニー「だから! 真面目に! やりなさいってば!」

ハリー「分かってるよ。じゃあとりあえず、この本の山を片してくる」

ロン「僕も手伝うよ……さっきから司書のマダム・ピンスが睨んできてるし」ガタッ
96 : [saga]:2012/12/23(日) 16:05:34.72 ID:fefuj6bu0
 
ハーマイオニー「……ふぅ。とは言ったものの、さすがに行き詰ってきたのも確かね。
          二人に、ちょっと……ほんのちょびっと……厳しく言い過ぎたかしら?」ブツブツ

マミ「あっ、グレンジャーさん! ちょっといいかしら?」

ハーマイオニー「!? は、はぁい、マミ。どうしたのかしら。この机使う?」ガタッ

マミ「いや、机ならたくさん空いてるし……ひとつの机をひとりで占領する必要もないし」

ハーマイオニー「そ、そうよね。それで、何の用でございますか……?」

ハーマイオニー(やばい! 周りに誰もいない! ローン! ハリー! へるぷみー!)ガタガタ

マミ「くすっ。なぁに、その言葉遣い? まあいいけど、それでね、グレンジャーさん。
   ラベンダーさん達から聞いたんだけど、冬休みはおうちに帰るんでしょう?」

ハーマイオニー「え、ええ。ホグワーツのこと、家族にも報告したいし……」

マミ「うんうん。家族は大切にしないとね。それで、ちょっとお願いがあるんだけど――」

ハーマイオニー(マミのお願い? な、何かしら。――肝臓? 処女の肝臓が欲しいとか……?)

マミ「あのね、グレンジャーさんと、その、グレンジャーさんが良ければでいいんだけど……
   くっ、クリスマスカードとか良ければ交換しないかしら!?」

ハーマイオニー「……え。クリスマス、カード?」

マミ「う、うん。ほら私、イギリスってはじめてだから、こういう風習には疎いのだけど、
   でもその、送りあうって聞いて、それで……」

ハーマイオニー「……」

マミ「あの、急な話だし、もしも迷惑だったらいいのだけれど……」

ハーマイオニー「……はぁ」

マミ「あぅっ。溜息……呆れさせちゃったかしら?」

ハーマイオニー「そうね。私自身に呆れてるところよ」

マミ「?」

ハーマイオニー(ロンの言う通りね。なんでこんな良い子のこと、私は疑ってたのかしら……)

ハーマイオニー「それじゃ、カードを送らせてもらうわ。マミは学校に残るのよね?」

マミ「本当!? じゃ、私頑張ってカード書くから!」

ハーマイオニー「ふふっ。ええ、楽しみにしてるわ!」
97 : [saga]:2012/12/23(日) 16:06:50.67 ID:fefuj6bu0
 
マミ「じゃあグレンジャーさん。とりあえず貴女のおうちの住所を教えてほしいのだけれど」

ハーマイオニー「ええ。オックスフォードの――」











ハーマイオニー「……」

マミ「……? グレンジャーさん? 急に黙ってどうしたの?」

ハーマイオニー(待って……さっきマミはなんて言った……?)



マミ『うんうん。家族は大切にしないとね。それで、ちょっとお願いがあるんだけど――』

マミ『うんうん。家族は大切にしないとね』

マミ『"家族"は、大切にしないとねぇ?』(暗黒微笑)



ハーマイオニー(あ……危ないぃぃいいいい! こいつめっちゃ狙ってるわ!
          私の家族の命ぁ狙ってる! 住所知ってどうするつもり!?)

マミ「オックスフォード、の……それから?」チラ

ハーマイオニー(ひぃっ。催促してる! 早く言えって無言の要求されてる!
          あの眼は『言わねばその喉笛噛み千切るぞ!』って目だわ……!)ガクガク









ロン「はい、これハーマイオニーの住所」

マミ「あ、ありがとう……でもいいのかしら? 勝手にもらちゃって。
   それにグレンジャーさん、急に震えだして大丈夫……?」

ハリー「うん。あれはまあ、発作だよ。最近よくあるから、気にしないであげて」
98 : [saga]:2012/12/23(日) 16:07:38.68 ID:fefuj6bu0
 
 ――クリスマス休暇。


マミ「みんな実家に帰っちゃったし、お休み中は暇だわ……グレンジャーさんもいないし」

QB「なんか帰る時、物凄い喜んでたよね、彼女。ホームシックなのかな?」

マミ「さあ……にしても、本当に暇ね。宿題も終わっちゃたし」

QB「魔法の練習でもしたらどうだい? マミは実技が不手得のようだし」
  「筆記系とか、魔法薬は優等生のハーマイオニーに次ぐ出来だけどさ」

マミ「だって魔法薬って、レシピ通りに混ぜたり煮たりするだけだし……先生は怖くて苦手だけど」

QB「それができない人って結構いるもんだよ。
   マミはお菓子作りとかの才能があるかもしれないね」

マミ「お菓子作り……お母さんと昔やったきりだけど、夏休みに帰ったら試してみようかしら?
   自炊だって考えなきゃいけないし……」

QB「うん、いいと思うな――正直なところ、ここのご飯って不毛な味がするし」

マミ「イギリス料理……噂に違わぬ味だったわね。お菓子はおいしいんだけど」
99 : [saga]:2012/12/23(日) 16:09:30.11 ID:fefuj6bu0
 
QB「それはそうと、魔法の練習はどうするんだい?
  学期末に試験だってあるし、備えはしておいたほうがいいよ」

マミ「……そうね。あれ以来、得意な魔法は扱えるようになったんだけど……」

QB「君はノックバックジンクスみたいに、杖から"撃つ"魔法が得意みたいだね」

マミ「ええ。でも一年生の試験で、そんな物騒な呪文は出ないし……。
   そもそも、壊したりする魔法って実生活でそんなに役に立たないわよね?」

QB「石ころでも投げれば、同じ結果を得られるからね。
   こと破壊という点だけみれば、この星の近代兵器は中々に優れているし」

マミ「うーん。上達してないわけじゃない、と思うんだけど……
   マッチを針に変えるのだって、最近は上手くなってきたし」

QB「そうだね。ミサイルの先が、凄い鋭くなってきたから」

マミ「……ぶ、物体浮遊だって、水平に吹っ飛ばなくなってきたでしょ?」

QB「フィルチに教えて貰った"透明の教室"、天井が凹みまくったけどね」

マミ「箒を使って飛ぶ練習は――」

QB「箒……ああ、あれかい? 指先が触れた瞬間に地平線の向こうまで逃亡したやつ」

マミ「えいやっ」ギュッ

QB「きゅっ!?」

マミ 「こうなったら練習あるのみよ! やる前から諦めてたら何も出来ないわ!
   それに変身術で落第点なんか取ったら、マクゴナガル先生に顔向けできないもの!」ポイッ

QB「……じゃあ魔法でベッドを動かして模様替えでもしてみようか。
   幸いというかなんというか、君の部屋の同輩たちはみんな帰ってるし」

マミ「そうね。よーし物体浮遊は……うぃん・がーでぃあむ・れう゛ぃおーさ、ってキュゥべえ!
   透明の教室で練習するのよ! ここで失敗なんかしたら――」バシュッ

QB「ははは! 見たかマミ! 僕を"ぎゅっ"ってした罰だ――きゅっ!?」



 そしてベッドは燃え出した。
100 : [saga]:2012/12/23(日) 16:10:33.37 ID:fefuj6bu0
 
マクゴナガル「……まったく、練習熱心なのは結構ですが。
        危うく部屋が全焼するところでしたよ、トモエ?」

マミ「すみませんでした……」

マクゴナガル「まあ幸い誰も怪我はしなかったようですし……減点は勘弁してあげましょう」

QB「僕の尻尾の先が現在進行形で焦げてることはスルーかい?」メラメラ

マクゴナガル「このくらいの損傷なら魔法で直せますしね。レパロ!(直れ)」ポンッ

マミ「凄い! ベッドが一瞬で元通りに!」

QB「僕の尻尾……」パタパタ

マクゴナガル「貴女も練習すればこのくらい出来るようになります。練習は確かに大事です。
         しかし、朝から部屋に閉じこもってるのは不健康ですよ?
         談話室に行って御覧なさい。暇そうな生徒が何人かいましたから」

マミ「はい! ありがとうございました、マクゴナガル先生!」



 ちなみに天井に人の顔のような形をした焦げ跡が残っており、

ハーマイオニー「いやー! 顔が! 生首が私を俯瞰視点から!?」

 それを帰ってきたハーマイオニーが発見し、悪夢を見る羽目になるのはまた別の話である。
101 : [saga]:2012/12/23(日) 16:11:28.64 ID:fefuj6bu0
 
 談話室


マミ「やっぱりお休みだし、あんまり人はいないわね」

QB「でもマクゴナガル先生の言う通り、残ってるのは暇そうな人ばかりだよ。
    あ、ほら。暖炉の傍でチェスをやってるのって……」


ハリー「なんだこの駒! 全然言うこと聞かないぞ!」

ロン「マグルのチェスは駒が喋らないんだっけ? それって退屈そうだなぁ」


マミ「ああ、ハリーー君とロン君。あの二人も残ってたんだ……
   おはよう、二人とも。いい朝ね?」

ハリー「やあマミ、おはよう。今朝も寒いね」

ロン「もうクリスマスだもんな……それで、何か用かい?」

マミ「用ってわけじゃないけど、私のルームメイト、みんな帰っちゃたから暇なの」

ハリー「チェスでもする? 席を代わるよ。この駒、僕の言うこと全然聞かないんだ」

マミ「チェスのルール、よくわからないから……将棋とかなら少し分かるんだけど」

ロン「ショーギ? なにそれ?」

マミ「日本……私の国のチェスに似たゲームよ」

ロン「へえ、マミって日本人だったのか。そういえばどことなくハッフルパフのチョウと顔つきが似てるかも」

ハリー「日本っていえば、ダドリーが日本製のゲームを……」
102 : [saga]:2012/12/23(日) 16:14:07.79 ID:fefuj6bu0
 




ハリー「……あ、そうだ。ロン、ちょっと……」

ロン「ん? なんだよハリー。ちょっとごめんマミ」

マミ「あら、内緒話?」


ハリー(ニコラスのこと、マミにも聞いてみたらどうかな?)コソコソ

ロン(無駄じゃないか? ハーマイオニーも知らなかったんだぜ?)コソコソ

ハリー(でも彼女、魔法史の成績良いし……ビンズ先生の授業を真面目に聞いてる貴重な人類じゃないか)

ロン(でも僕達が『禁じられた廊下』のこと嗅ぎ回ってるの、あんまり知られるのは……)

ハリー(その辺は大丈夫じゃないかな。フラメルってだけじゃ分からないだろうし)

ロン(うーん、それもそうか。ま、あんまり期待はしてないけどね)


ハリー「じゃ、そういうわけで――ねえマミ、ニコラス・フラメルって人のこと何か知らない?」

マミ「ニコラス・フラメル? それって賢者の石を作った魔法使いでしょう?」
103 : [saga]:2012/12/23(日) 16:15:14.36 ID:fefuj6bu0

マミ「なんかあの二人、物凄い叫び声上げながら走って行っちゃったわね。喜んでたみたいだけど……」

QB「フクロウ小屋の方へ行ったみたいだ。誰かに手紙でも送るんじゃないかな。
   ……それにしても、マミ。いまさらだけど、君は成長したねえ」

マミ「? え、何が?」

QB「いや、人付き合いがさ。ホグワーツ特急で人見知りしてた頃とは見違えるようだよ」

マミ「ああ……それ」フゥ…ヤレヤレ

QB「あ、なんか軽くイラっときた」

マミ「そりゃあ半年も知らない場所で過ごせば人見知りくらい直るわよ。というか、直さないと生活できないもの」

QB「まあ、それもそうか。じゃあそれはまああの夏の日の幻影だったということにして」

マミ「ちょ。勝手に幻にしないで……主人の成長を喜びなさいよ、ペットらしく」

QB「話は変わるけど、ニコラス某のことは? なんで知ってたんだい?
   一年生の魔法史の授業じゃ出てこないし、教科書にも載ってないけど」

マミ「……まあいいわ。ニコラスさんのことは、ほら、あれよ。ホグワーツ特急の中で新聞買ったじゃない?
   あれに載ってたの。最近、ある程度魔法界のことも理解できたから読み返してたのよ」

QB「へえ。それはまた随分とタイムリーだったねぇ。
  発行の日付が一日でもずれてたら、マミはフラメルのこと知らなかったわけだし」
104 : [saga]:2012/12/23(日) 16:18:38.58 ID:fefuj6bu0
 
マミ「ええ。こんな偶然あるものなのね。
   ……でも、もう死んじゃった人に一体なんの用かしら?」

QB「ん、フラメル氏は故人なのかい?」

マミ「新聞にはそう書いてあったけど」

QB「ふぅん。じゃあなんだろうねぇ。とりあえず宿題関係じゃないのは確かだけど」

マミ「……ところで、QB」ジロッ

QB「ん? なんだい、マミ。そんな怖い顔しちゃって」

マミ「誤魔化そうとしても駄目。貴方でしょう、最近、私の教科書を引っ張り出してるの。
   ニコラスさんのこと、教科書に載ってないって断言したでしょ? 魔法史の教科書、貴方に見せたこと無いのに」

QB「ありゃ……口が滑ったな。ごめんよ、マミ。迷惑はかけないつもりだったんだけど」

マミ「ならせめて、元通りの順番に揃えて……いやその前に私に一声かければいいじゃない。
   大体、キュゥべえは魔法使えないのに何で教科書見るのよ? 授業も毎回ついてくるし……」

QB「……」



QB「――ま、新しい技術には誰だって興味が沸くさ」



.
105 : [saga]:2012/12/23(日) 16:19:30.14 ID:fefuj6bu0
 
 クリスマス 朝



マミ「……Zzzz」

QB「マミ、起きて。朝だよ?」

マミ「……ん。むゃ、お休みだし、あと五分……」

QB「君の言う朝の五分は一時間近いじゃないか。昨日、起こしてって言ったのは君だろう?
   ほら、届いてるよ。クリスマスカード」

マミ「!」ガバッ

QB「えーと。ラベンダーにパーバティ。これは……」

マミ「だ、だめよ! 私が最初に読むの!」

QB「やれやれ。やっと起きたか。ほら、どうぞ」

マミ「凄い! 絵が動いてる! きっと魔法のインクなのね……あ、こっちはきらきら光る!」

QB「凄いねぇ、どういう仕組みかさっぱり分からない。おや、これはハーマイオニーのか。
   ……意外に字が汚いね」

マミ「変ね? ノートは綺麗にとってるんだけど……まるで何かに怯えてガクガク震えながら描いたみたいね?」
106 : [saga]:2012/12/23(日) 16:23:17.66 ID:fefuj6bu0
 
マミ「うーん。こうして見ると、私の送ったクリスマスカードって地味だったかしら?」

QB「そうかい? 飛び出す仕掛けとか、凄い凝りようだったけど……」

マミ「うーん。でもねえ……あら? まだあるわね」

QB「うん? でも約束してたのは――」

マミ「ええ、ルームメイトの三人だけの筈……」ペラッ

QB「なんて書いてあるんだい?」

マミ「……これ、クリスマスカードじゃないみたい。宛名も書いてないし、誤配かしら?」

QB「見せて! もしかしたら僕宛かも!」

マミ「ふふ。でもこれ、暗号みたいよ? キュゥべえに分かるかしら」


『一つ目はケルベロス。音楽を聞かせること。
 二つ目は悪魔の罠。火をつけること。
 三つ目は空飛ぶ鍵。箒で飛んで掴むこと。
 四つ目はチェス。よく練習しておくこと。
 五つ目はトロール。対策を練っておくこと。
 六つ目は論理。前へ進みたいなら一番小さな瓶。戻りたいなら右端の瓶を』


QB「……さっぱりだ。何かのゲームの攻略法かな?」

マミ「やっぱり誤配かしら……? 悪戯にしては意味が分からないし」

QB「一応しまっておけば? もしかしたら君のルームメイトのかも」

マミ「そうね。そうしましょ」ゴソゴソ
107 : [saga]:2012/12/23(日) 16:25:22.84 ID:fefuj6bu0
 
 新学期 廊下


マミ「結局、ラベンダーさんのでもパーバティさんのでもなかったわね、このカード」ピラピラ

QB「そうだね。あとはハーマイオニーだけど……今日もダメだったのかい?」

マミ「そうなのよ。帰ってきてから、あの三人でずっと何かやってるみたいで。
   今日も授業が終わってすぐ、教室から飛び出していっちゃったの」

QB「話す機会がなかなかないねぇ。まあでも、向こうが聞いてこないんなら、彼女のでもないんじゃないかい?」

マミ「そうかもしれないけど……でも聞く前に捨てるわけにもいかないし」

QB「せめてどこにいるか分かればねえ」

マミ「そうねえ……って、あら?」ピラッ

QB「どうしたの、マミ?」

マミ「……ほら、これ見て」

QB「これって、あのカードだろう? もう見たけど……」

マミ「うん。だけど、ほら。カードのこの部分」


 "禁じられた森" "ハグリッドの小屋"


QB「……変だな。確かここ、前は何も書いてなかった気がするけど……」

マミ「見落としてたのかしら? それとも透明インクで書かれてたのが効果切れで出てきたとか?」

QB「分からないけど……とりあえず、これが宛名かな? マミ、届けに行ったら?」
108 : [saga]:2012/12/23(日) 16:27:05.05 ID:fefuj6bu0
 
 禁じられた森の外れ


マミ「確か、こっちの方だったと思うけど……」

QB「こっちには滅多に来ないからねえ。スプラウト先生の薬草学くらいで……
   って、マミ。あっちから来るのって」

マミ「……っ」

ドラコ「ん? なんだ、君か。こんな所に何の用だ?」

マミ「あ、あの、ちょっと、届け物……」

ドラコ「はっきり喋れよ。クィレルみたいにどもりやがって」

マミ「ぁう……」ジワ

QB「そういう君は、どうしてここに?」

ドラコ「はん。猫如きに話す義理はないね。ほら、邪魔だからさっさとどっか行けよ」

マミ「で、でも、私も用事が……」

ドラコ(……ちっ。ドラゴンを飼ってる証拠を掴めば、ポッター達を退学に追い込めるのに。
    仕方ない、強硬手段だ)

ドラコ「ロコモーター・モルティス(足縛り)!」ピシャッ!

マミ「っ! きゃっ!」

ドラコ「くそっ、避けたか。ほら、どっか行っちまえ! 次は当てるぞ!」

マミ「うう……」
109 : [saga]:2012/12/23(日) 16:28:07.48 ID:fefuj6bu0
 
ドラコ「警告はしたからな! エヴァーテ・スタティム(宙を舞え)!」パシーン!

マミ「きゃあ!」サッ

QB「マミ、肩に乗ってる僕のことも考え――きゅっぷううううううう!」ピューン!

マミ「キュゥべえ!? よ、よくもやったわね! フリペンド(撃て)!」バシュッ

ドラコ「痛っ! こいつ、僕に対してよくも――」

ハグリッド「お前さんら! いったいなにやっちょるんじゃ!」

ドラコ「……ちっ。覚えてろよ!」ダッ

マミ「た、助かった……」

ハグリッド「大丈夫か? マルフォイの仔倅め、まったく……ほら、もう遅え。寮に帰んな」

マミ「は、はい。ありがとうございました」ペコッ

ハグリッド「……行ったか」




ハリー「危なかったね、ハグリッド」ヒョイ

ロン「全くね。マミはともかく、マルフォイの奴に赤ちゃんドラゴンを見られてたら終わりだったよ」

ハグリッド「ああ。あのマミっちゅー娘っこには感謝しねえとな。悲鳴で気づかんかったら見られとったよ」

ハーマイオニー「とはいえ、何か対策を考えないと……それも急いで」

ロン「ああ、そうだな……そうだ、チャーリーに頼んで――」
110 : [saga]:2012/12/23(日) 16:28:51.18 ID:fefuj6bu0
 
 数週間後 大広間


マミ「んんー! 気持ちのいい朝ね、キュゥべえ!」

QB「そうだね。またクィディッチの試合でグリフィンドールが勝ったし。
   これで寮対抗杯もグリフィンドールがトップだ」

マミ「それもあるけど、ほら! 見てよキュゥべえ! とうとうやったわ!
   どう!? 前より針っぽい形でしょ?」
 
QB「……安定翼のないミサイルって、前より危険度は上がってるような」

マミ「あとは色と噴射口と中に詰まってる爆薬をなんとかすれば……」ブツブツ

QB「聞いてないね……ん?」

 ザワザワ ザワザワ

QB「マミ、マミ。見て、あそこ。凄い人だかりだ」

マミ「ん? あら、本当。どうしたのかしら。朝食の時間なのに……」

QB「あそこって、確か寮の点数が表示されてる場所だよね?」

マミ「そうよねぇ。なんであんなに集まって……」

ラベンダー「マミ! 大事件よ! グリフィンドールの点数が!」

マミ「……え?」




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111 : [saga]:2012/12/23(日) 16:29:46.67 ID:fefuj6bu0
 



「あのハリー・ポッターが校則違反を……」ヒソヒソ

「ロングボトム家も落ちたもんだ……」ヒソヒソ

「あの子の態度、前から気に入らなかったのよね……ちょっと勉強できるからって……」ヒソヒソ

「ひとり50点……全員分で150点もひかれた……」ヒソヒソ




QB「はあ。君たち人間の手の平返しの鮮やかさには惚れ惚れするよ。
  クィディッチで彼が活躍していた時はまるでヒーロー扱いだったのに」

マミ「そうよねぇ……グリフィンドールはともかく、他の寮の子達までハリー君達無視してるもの」

QB「タイミングが悪かったからね。嫌われ者のスリザリンが繰上げ一位になっちゃったからさ。
   ていうか、マミ。君はそういう感情はないのかい?」

マミ「グレンジャーさんもロングボトム君も、こっちで出来た私の最初のお友達だし……
   それに元々、寮対抗、って、そういう響きが何だか苦手だったのよ」

QB「まあ、日本的ではないかもね。でも郷に入っては郷に従えっていうのが君の国の格言にあったよ?
   おっと、君はもう従ってるのかな?」

マミ「……意地悪。私だって、別に無視したいわけじゃ……」

QB「君は人見知りが直って、そこそこ交友関係も広くなった
   パーバティにラベンダー……まあ普通に学校生活を送るのに支障が無い程度には関係を構築できた」

マミ「……」

QB「図らずしもマクゴナガルの言う通り――君は、魔法使いの友達を得ることができた」

マミ「……」

QB「それを壊すのが怖いんだろう?」

マミ「……そうよ。だって、仕方ないじゃない。もう、独りぼっちは嫌だもの……」

バーパティ「マミー? 授業遅れるわよー? ラベンダーが席とってくれてるけどー」

マミ「あ……う、うん。すぐ行くわ!」ダッ

QB「……ま、いいんだけどね。
  そんな泣きそうな顔をしてまでそっち側に居たいんなら、さ」
112 : [saga]:2012/12/23(日) 16:31:20.01 ID:fefuj6bu0
 
 学期末試験終了後。グリフィンドール談話室。


QB「お帰り、マミ。試験はどうだった? 今日は変身術と呪文学だったよね?」

マミ「……"可"ってところね」

QB「そうかい。落第点じゃなかっただけよかったじゃないか。
  で、具体的にはどんな感じだったの?」

マミ「呪文学ではパイナップルがブレイクダンスを踊り始めて、
   変身術では、一応ネズミを嗅ぎ煙草入れに変身させられたんだけど……超合金製だったの」

QB「……まあ、何も壊さなくて何よりだよ。他の科目は良くできたんだし、試験はパスできそうだね」

マミ「ええ。それにしても……」チラッ




ハリー「ヒソヒソ」

ロン「ボソボソ」

ハーマイオニー「コソコソ」




マミ「また、三人だけで固まってる……」

マミ(結局、あれ以来グレンジャーさん達とは話せてないのよね……もう、一年目も終わりなのに)

マミ(皆の態度も変わらないし……私から話しかけるのは……)

マミ(……臆病者ね、私。なんでグリフィンドールなんかに入れたんだろう――)
113 : [saga]:2012/12/23(日) 16:32:29.79 ID:fefuj6bu0
 
ネビル「マミ。あの、ちょっといいかな……?」

マミ「!? ろ、ロングボトム君……?」

ネビル「あ、あ! ご、ごめん、迷惑だったかな? うん、そうだよね。
     僕なんかと話してたら、君まで……」

マミ(……そういえば、あの三人は三人で固まってたけど……
   ロングボトム君は、あの三人とも距離を置いてたのよね……)

ネビル「あの、ごめん。僕行くね――」


マミ(ロングボトム君はあの日、一人ぼっちで途方にくれている私に声を掛けてくれた……)


マミ「――ま、まって!」



114 : [saga]:2012/12/23(日) 16:33:17.01 ID:fefuj6bu0

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 ――夜。 談話室。


ハーマイオニー「……よし、誰もいないわ」

ロン「ハリー、透明マントを出せよ」

ハリー「ああ。ヴォル――例のあの人が賢者の石を手に入れるのは、絶対に防がないと――」

ネビル「……君たち、また外に出るつもりなんだろ」

ロン「ネビル!?」

ハリー「いや、別になんでもないよ? ネビル、もう寝たら?」

ハーマイオニー(……ネビル、待ち構えてた?)

ネビル「外に出ちゃいけない。外に出たら、グリフィンドールはもっと大変なことになるんだ」

ハリー「ネビル、君には分からないだろうけど、これは――」

ネビル「絶対にここは通さない!」

ロン「ハーマイオニー、何とかしてくれ!」

ハーマイオニー「……ネビル、本当にごめんなさい。
          ペトリフィカス・トタルス――」




マミ「――うぃん・がーでぃあむ・れう゛ぃおーさ!」ボゥッ
115 : [saga]:2012/12/23(日) 16:34:21.68 ID:fefuj6bu0

 
ロン「うわっ! ソファが燃えた!?」


マミ「ああ、また失敗だわ……何がいけないのかしら。杖の振り方?」

ハーマイオニー「マミ!? 貴女も邪魔をする気!? くっ、やっぱり闇の魔法使い――」

ハリー「マミ、そこをどくんだ。僕たちはとても大事なことをやろうとしてるんだよ」

マミ「ハリー君……貴方がきっと、ふざけてるんじゃないってことは何となく分かる」

ロン「だったらどけよ!」

マミ「……ごめんなさい。だけど、私はロングボトム君の勇気に応えたいの」








〜数時間前〜


マミ『あの三人が、何か企んでる?』

ネビル『う、うん。多分……もうグリフィンドールは最下位だけど、これ以上点を減らしたくないんだ』

マミ『でも、もう最下位なら――』

ネビル『だって、これ以上彼らのせいで減点されたら、もう二度と彼らは許してもらえないと思う。
     いまならまだ来年度でいくらでも挽回できるよ。ハリーはシーカーだし、ハーマイオニーは頭が良い』

マミ『ロン君は?』

ネビル『……でも、ここで駄目押しに減点されたらもう駄目だ。ここが分水嶺なんだよ』

マミ『ねえ、ロン君は?』








マミ「ロングボトム君は、貴方達の為を思っていた。たった一人で、勇気を持って行動していた!」

マミ「ひとりぼっちの怖さも、辛さも! 私はよく知っている!」

マミ「だから、私はネビル君の味方をして、貴方達を止めるわ!」

ロン「分かった。オーケイ。つまり、力尽くで通れってことだね?」スッ

ハーマイーニー「……三対ニ。気は進まないけど、手は抜けないわよ」スッ

ハリー「ねえ、最後にお願いするけど、どいてくれない?」スッ

マミ「……」

ネビル「……」
116 : [saga]:2012/12/23(日) 16:35:19.37 ID:fefuj6bu0

 

マミ「やーめたっ」ポイッ

ネビル「ぼ、僕も。降参」ポイッ

ロン「……はぁっ!? 杖を捨てた!? なにそれ!?」

ネビル「だ、だって。呪いを掛け合うのも規則違反だし……」

マミ「グレンジャーさん相手じゃ、正直二人掛かりでも勝てそうに無いし……」

ハリー「冗談はやめてくれ! なら、なんでこんな――」

ハーマイオニー「……時間、稼ぎ? っ、不味い、もしかして――」

マミ「……"太った婦人"さんって、意外と足が早いのよ?
   そうね、先生の部屋に報告に行くまで――五分とかからないわ」ニコッ

ロン「どういうことだよ、おい!」

ハーマイオニー「……やられたわ。さっきの呪文で火事を起こされた時点でこっちの負けだった。
          "太った婦人"の肖像画に連絡させたのね。グリフィンドールの寮監まで――」





マクゴナガル「――さて、火事が起きたと叩き起こされてくれば、これはどういう事態でしょうか?」




117 : [saga]:2012/12/23(日) 16:36:08.19 ID:fefuj6bu0


ハリー「マクゴナガル先生! ヴォルデモートが! 例のあの人が『石』を盗もうと!」

マクゴナガル「ああ、ハリー。またその話ですか。心配はないと言ったはずですが」

ロン「でも、スネイプが! 『石』を守る仕掛けの秘密を全部――」

マクゴナガル「ですから、心配はないと」

ハーマイオニー「あの、先生。でも例のあの人が相手では――」

マクゴナガル「ええい、だまらっしゃい!」クワッ

ハリー・ロン・ハー子・ネビル・マミ「「「「「ひっ!?」」」」」



マクゴナガル「……こほん。いいですか、たとえ『名前を言ってはいけないあの人』が相手でも、『石』は安全です」

ハリー「でも、仕掛けの秘密が全部ばれてたら――」

マクゴナガル「……では有り得ない事ですが、百歩譲ってそれが真実だったとしましょう。
        ですが、それでもなお安全です。いえ、いまや完全な安全になったといいましょうか」

ハリー「先生、意味がよく――?」

マクゴナガル「貴方達の探偵ごっこにも、意味があったということですよ」





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118 : [saga]:2012/12/23(日) 16:37:22.08 ID:fefuj6bu0
 
 ホグワーツ地下


クィレル「……一体どうなっているんだ! 『石』は鏡の中にあるのか!?
      ご主人様、お助けを……」

ヴォルデモート『……まさか『みぞの鏡』を持ってくるとはな。あの老いぼれ爺め。
          仕方あるまい、その鏡ごと運び出すのだ』

クィレル「は、はい、ご主人様――」




ダンブルドア「……さて、そうはいかんよ」スッ

ヴォルデモート『っ、老いぼれが! クィレル、後ろだ――』

ダンブルドア「遅いわ。エクスペリアームズ(杖よ、落ちよ)!」バシュ

クィレル「ぐあっ!? しまった、杖が!」

ダンブルドア「やれやれ、間一髪というところじゃったか」

クィレル「くっ、早すぎる! お前は偽の手紙で魔法省に呼び出した筈――」

ダンブルドア「ああ。じゃがのう。勇気ある生徒が、手紙を送ってくれたんじゃ。
        そっちの手紙の方が、お前さんのより少しばかり早くわしの目に入ってな。
        勤勉な子じゃよ。短時間でフラメルのことにまで辿り着きおった!」

クィレル「ハリー・ポッターか……!」

ヴォルデモート『ハリー……! おおハリー! またも俺様の邪魔をするのか、あの小僧は!』

ダンブルドア「ヴォルデモート。貴様が殺したリリーとジェームズの息子は、立派に育っておるよ。
        良い仲間にも恵まれたようじゃしのぅ。彼を支える者と……諌める者とな」

ヴォルデモート『おのれえええええ……』

ダンブルドア「さて、賢者の石はこうしてわしのポケットの中にあるわけじゃが」ヒョイ

ダンブルドア「こんなものはもう、いらないのう――"レダクト"(砕け散れ)」



119 : [saga]:2012/12/23(日) 16:38:05.87 ID:fefuj6bu0
 
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 ホグワーツ特急


QB「――で、めでたしめでたしってわけだ」

マミ「そうでもないらしいけど。結局、"例のあの人"は逃げちゃったみたいだし」

QB「でも、寮対抗杯ではグリフィンドールが優勝しただろう?」

マミ「うん……校長先生が私達五人に40点ずつくれてね」

QB「お祭り騒ぎだったねえ。ハリー達は名誉挽回できたし、良いこと尽くめじゃないか」

マミ「……正直、私が40点貰って良いのかは疑問だけど。
   ロングボトム君に味方して、ポッター君たちの邪魔しただけだもの」

QB「まあ確かに。放っておいても、ダンブルドアが助けに入っただろうしね」

マミ「そうよねえ……」

QB「……でも、無意味ってわけじゃなさそうだよ?」

マミ「へ?」
120 : [saga]:2012/12/23(日) 16:39:23.51 ID:fefuj6bu0
 
ハリー「ああ居た! おーい、ロン! ここに居たよ!」ガラガラッ

マミ「ハリーくん? それにロンくんも」

ロン「やあマミ! あの後、僕らは質問攻めにされて君と話す機会がなかったからさ。
   こうして探し回ってたっていうわけ」

マミ「そう……それで、何の用かしら?」

ハリー「いや、まあ、ね。僕ら、なんか変な感じになっちゃってたろう?」

ロン「あの日の夜も、お互い杖を向け合って終わっちゃったしさ。
   これで夏休み挟んじゃったら、来年度から話し辛くなるし」

マミ「あ、あの時はその……ごめんなさい。あと、規則違反の時も……」

ハリー「あー、その話はお終いにしよう。それにさ、マミには感謝してるんだよ」

マミ「私に? なんで?」

ハリー「ニコラスのこと教えてくれたじゃないか。
     新学期前に分かってたから、だいぶ余裕をもって行動できたし」

ロン「ダンブルドアが間に合ったのもそのお陰だもんな。
   流石に"例のあの人"と直接対決なんてごめんだよ」

ハリー「それからさ、どうしても彼女がマミと話したいっていうから……
     ほら、ハーマイオニー。入っておいでよ」

ハーマイオニー「ちょ、ちょっと! 引っ張らないでってば!」

マミ「グレンジャーさん? 」
121 : [saga]:2012/12/23(日) 16:39:59.72 ID:fefuj6bu0

 
ハーマイオニー「は、はぁい。マミ。その……元気?」

マミ「え? ええ。元気だけど……」

ハーマイオニー「……」

マミ「……」

ハーマイオニー「……いい天気ね?」

マミ「そう、ね? うん、確かに快晴だけど……」

ハーマイオニー「……」

マミ「……?」



QB(彼女、どうしたんだい?)ヒソヒソ

ロン(いや多分、話し辛いんじゃないかなぁ。今までが今までだったし。
   それに彼女、完璧主義すぎて女の子の友達がいないんだよ……)

QB(ああ……なるほど。友好関係が狭く深くなんだ)

ハリー「ほら、ハーマイオニー……」


122 : [saga]:2012/12/23(日) 16:41:36.79 ID:fefuj6bu0

ハーマイオニー「〜〜〜! ま、マミっ!」

マミ「ひゃ、ひゃいっ?」

ハーマイオニー「私たちって! その、と、友達かしら!?」

マミ「えっ!?」

ハーマイオニー「えっ!? ち、違った!?」

マミ「いや、その。ええと、違っ、違くない! そうだったら嬉しいけど、えっと」

ハーマイオニー「……! じゃ、じゃあ、マミ! これ! これ、私の家の電話番号!」ピッ

マミ「え、う、うん。くれるの?」

ハーマイオニー「あげるの! 宿題で分からないところとかあったら、聞いて! 前みたいに!
          それと……いままで、ちょっと貴女のこと誤解してたの。でもこれからは……」

マミ「グレンジャーさん……」

ハーマイオニー「そ、その呼び方も! ハリー達だけずるいわ! わ、私もみんなみたいに呼んで頂戴!」

マミ「……分かったわ、グレンジャーさん――ううん」



マミ「来年からもよろしくね、ハーマイオニーさん!」




                                           賢者の石編 了





 
123 : [saga]:2012/12/23(日) 16:42:39.71 ID:fefuj6bu0
本日分終了。次回、秘密の部屋編
124 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/23(日) 16:43:31.94 ID:wIIyU5iA0
>>1
最終巻まで続く?
125 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/23(日) 16:43:33.52 ID:D1mj+QUIO
126 : [saga]:2012/12/23(日) 16:45:38.52 ID:fefuj6bu0
>>124
続カ−ヌ。ゴブレットまで
127 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/23(日) 16:48:21.37 ID:1D07/+bu0
この期にハリーポッターでも読むかな……
ハタチぐらいなのに今だハリーポッターをよく知らない人っているのかな……
128 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/23(日) 16:48:55.01 ID:D1mj+QUIO
不死鳥までしか見てないや
129 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/23(日) 17:01:04.26 ID:0S4XJHcho
GJなノーネ
130 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/23(日) 17:06:46.84 ID:4Ak+GMQH0
そういや双子のパドマの方って声ほむほむなんだよな
131 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/12/23(日) 17:21:03.39 ID:rCELL5OSO
>>127
今から読むならハリポタは正直アズカバンまでで十分だと思う


秘宝?そんなのなかったよ、うん
132 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/23(日) 17:37:14.65 ID:UGBR/TDAO
乙ん
クィレルが死なずに逃げおおせたってことは、
ラストバトルはヴォルデモートの部下達との総力戦になるのかな?
133 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/23(日) 18:31:38.19 ID:mZKPn4goo

マミさんが可愛いけど馴染んでるQBも可愛い
134 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/23(日) 21:55:24.91 ID:R28FvmEh0


ヴォルデモートとワルプルギスの夜のどちらが強いんだろう?
135 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/23(日) 22:08:01.47 ID:qfrEc+6vo
1乙ぅ、たのしいよ〜。

普及版の小説を何冊か買って途中までは読んだんだが、
三冊目まではたぶん読んだはずだけど記憶が...
それとも読み終えたのは二冊目までだったかなあ。

近所の本屋の閉店セールで残りの方もほとんど買ったのにぜんぜん読んでないや。

映画(DVD)は一話目しか見なかった。

たしか、1が賢者の石で2が秘密の部屋、3が囚人だっけ?
136 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/24(月) 07:40:32.40 ID:n/swpSt80
面白い。1ありがとう。

水を注すQBのようですまんが、
翻訳指輪よりも、マミが英語得意という設定の方が、原作改変が少なくて良かったかも。
翻訳指輪があるなら、オーネのフトワーシト(骨の太い人)やヴぉくが変な喋り方するわけないし、
日本にも魔法組織はあるのに英国まで行く理由は(物語の中的には)ないからね。
小言申し訳ない。
137 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/24(月) 11:14:06.65 ID:/O/D4+bq0

いいよ、面白いよ
138 : :2012/12/31(月) 07:14:10.06 ID:A8lMCTH+0
とーか。
139 : [saga]:2012/12/31(月) 07:15:30.00 ID:A8lMCTH+0
 ここまでのあらすじ!
                                ユルフワ
QB「やあ! 僕、キュゥべえ! 人気赤丸上昇中の諭弄不和系魔法の使者さ!」

QB「人気の秘訣は愛らしい外見! 仕草! 鳴き声!
   そしてどんな願いも叶えてあげる特殊能力!」キュップイ!

QB「もう、これは一家に一匹置きたくなるよね! わかるよー」

QB「でもね、残念ながら僕はもう他の子のところにいくことができないんだ」

QB「なんでかって? 愛くるしすぎるのが悪かったんだろうね。
   今、僕はとある女の子に監禁されているんだ」

QB「彼女の名は巴マミ。12歳の女の子だが、その残虐ぶりは悪魔超人に匹敵する」

QB「例を挙げればきりがなく。僕を虫かごに閉じ込めるわ、ソックスに詰めようとするわ、"ぎゅっ"ってするわ……」

QB「非道だよ!」ドンッ!

QB「知的生命体のやることとは思えないよ! 嗚呼、インキュベーターに人権はないのか!」

QB「そんな悪マミだが、彼女は今、イギリスにあるホグワーツという学校に通っているんだ」

QB「ホグワーツ魔法魔術学校――名前の通り、魔法使いが魔法を覚えるために通う学校だ」

QB「実に胡散臭いね? 僕も最初はそう思ったさ」

QB「でもエントロピーとか馬鹿馬鹿しくなるような現象が起こりまくりでね? もう僕の常識は完全に打ち砕かれたよ」

QB「杖のひと振りで無機に命を吹き込み、大鍋で煎じた薬は欠損した四肢すら一晩で再生させる」

QB「そしてマミにはその素質があったらしく、ほとんどスカウトみたいな形で入学することになったんだ」

QB「その直前に、色々とごたごたがあったみたいだけど――まあ、なんとか上手くやれているみたいだね」

QB「ところで、イギリスのパブリックスクールは9月に始まって6月に終わるんだ」

QB「つまり日本で言うところの夏休みが年度休みに当たる。当然、マミもその間は寮から家に戻っているわけで――」
140 : [saga]:2012/12/31(月) 07:19:24.76 ID:A8lMCTH+0
 
見滝原市 マンション


ミーンミンミンミーン……


マミ「――魔法薬のレポート終わりっ。これで宿題は全部ね」サラッ

マミ「それにしても羊皮紙……初めて触ったけど、意外と硬いのね。これ」

QB「マミー。出しておくれよマミー」ガタガタ

マミ「さて、お茶でも飲もうかしら……作り置きしてたアイスティーが冷蔵庫に……」ガパッ

QB「! ようやく出してくれる気になったんだね、マミ! よぅし、じゃあ僕はちょっと出かけて――」パタンッ

マミ「あら、残り一杯分ってところね……葉っぱもそろそろ買い出しに行かなきゃ……」

QB「マミー。出しておくれよマミー。冷蔵庫の中って暗いし変な匂いもするから嫌なんだよー」バンバン

マミ「だってあなた、私が宿題してる隙をみて逃げようとするんだもの。
   もう飼われて一年も経つんだから、そろそろ諦めなさい」

QB「それは人間の傲慢さだよマミー。小学生の頃からそんなに性格歪んじゃってどうするのさマミー」

マミ「……」(無視)

QB『マミー。外の空気が吸いたいよー』

マミ(こいつ直接脳内に……!)
141 : [saga]:2012/12/31(月) 07:21:39.88 ID:A8lMCTH+0
 
見滝原市 デパート


マミ「結局、連れてきたけど……今度逃げたら新学期までトランクの中に詰め込むわよ?」

QB「酷いなぁ。僕にだって散歩する権利くらいあると思うんだけど」

マミ「それはこれからの信頼関係の積み重ね次第ね……っと、この辺から人が多くなるから、あとはテレパシーね」

QB『了解。それじゃ、僕もマミ以外の人間には見えないようにしておくよ』

マミ『ええ、お願いね?』

マミ(……それにしてもテレパシーにカメレオン呪文……どれも一人前の魔法使いにしか使えない魔法よね)

マミ(もしかしてキュゥべえってただの猫じゃなくて……)

QB「……」

マミ(……何かの雑種なのかしら? デミガイズとかの……)
142 : [saga]:2012/12/31(月) 07:22:27.83 ID:A8lMCTH+0
 
QB『マミ、肉だ! 肉が安いよ! こっちの挽き肉! 今日はハンバーグにしよう!』バンバン

マミ『あっ、こらっ。駄目よ、棚の縁を走ったりしちゃ……ハンバーグねえ……
   でもその安売りのお肉、結構量があるわよ? ちょっと経済的じゃあ……』

QB『冷房ガンガンにかけてた子が経済的とか気にしちゃうの?』

マミ『う、うるさいわね! 仕方ないでしょ熱いんだから! キュゥべえは涼しかったからいいでしょうけど!』

QB『その涼しさって、僕が望んだものじゃなかったんだけど……』

マミ『……うーん。お肉って冷凍できたかしら? それならハンバーグも……』

QB『冷凍自体は問題はなかったと思うけど……でもさ、容量は問題かな。
   さっき見たけど、もう冷凍庫がかっちこっちの食材でいっぱいだったよ?』

マミ『キュゥべえってそんなに食べないし、1.5人分のご飯って作るの大変なのよ。
   どうしても余っちゃうんだもの……』

QB『まあ、マミもまだ自炊初めて一ヶ月だし……それは今後の課題にしようよ』

マミ『……そうね。そうしましょう。そういえば、今朝テレビでやってた占いでもハンバーグがラッキーフードだったし。
   じゃあ、今日はハンバーグよキュゥべえ!』

QB『ひゃっほう! それじゃ次は玉葱と――』
143 : [saga]:2012/12/31(月) 07:23:50.13 ID:A8lMCTH+0
 
店員「――ジャガイモが一点、人参が一点で、お会計3460円になります」

マミ「えーと、お財布……」ガサゴソ

店員(……最近この子、よくみるなぁ。いつも一人でカートを押して……親はなにしてるんだろ?)

マミ「あ、あった!」カラン

店員「? お客様、何か落とされて――」

マミ「あっ、ああ、すみません! 大丈夫です!」

店員(木の棒? おもちゃか何かかな?)
144 : [saga]:2012/12/31(月) 07:25:30.70 ID:A8lMCTH+0
 
帰り道


マミ「……ふぅ。危なかったわ。火花とかでなくてよかった……」

QB「いまいち魔法の杖って仕組みが分からないからねぇ。たまに突っついたものが燃えたりするし」

マミ「ねえキュゥべえ。やっぱり杖は家に置いといたほうがいいんじゃないかしら?」

QB「別に僕は強制したわけじゃないよ。ただ可能性を提示しただけさ」

QB「もしも留守中に泥棒が入ってその杖を持っていかれちゃったら、大変なことになるだろう?」

QB「"未成年魔法使いの妥当な制限に関する法令"では、マグルに魔法のことがばれたら退学なんだから。
  教科書とかなら誤魔化せるけど、杖の中の魔法生物の一部は誤魔化せないからね」

マミ「そうだけど……持ち歩くのも十分危ないような……」

QB「あと、咄嗟の危険に対応するため、っていうのもある」

QB「同法令では、緊急事態に限って未成年魔法使いによる魔法の使用を認めてるしさ」

マミ「危険って……魔法が必要になるような危険なことって、見滝原じゃ起こらないわよ」

QB「……だから、あくまで"可能性"の話さ」
145 : [saga]:2012/12/31(月) 07:26:41.88 ID:A8lMCTH+0
 
マミ「まあいいけど……それより、帰ったら何しましょうか? お掃除も選択も終わっちゃったし……」

QB「お菓子作りは? この前のしっとりしたクッキーは美味しかったよ。もう作らないの?」

マミ「……体重計が……っ」ギリッ

QB「オーケイ。僕は何も聞かなかった。だろ? うーん、それじゃあ、ハーマイオニーに電話すれば?
   まあ、ここのところずっと毎日のようにかけてるけど……」

マミ「今の時間だと、向こうってまだ早朝なのよ……だからいつも掛けるのは夜にしてるでしょ?」

QB「じゃあもう打つ手なしじゃないか。ああ、いや待てよ? 君、こっちに友達いないの?」

マミ「……いないわけじゃないけど……つまり、前に通ってた学校の友達ね。
   でも正直、一年以上会ってないわけだし……それに、ちょっと会い辛いのよ」

マミ(お父さんとお母さんのお葬式の時に、何人かとは会ったけど……やっぱり上手くしゃべれなかったし)

QB「ふーん……でもそれだと、友達増やそうにも難しいね。どうだろう、マミ。
   願い事で友達を――」

マミ「そうだ、キュゥべえ。このところ、宿題に掛かりっきりで外に出てなかったし……
   ちょっとお散歩して帰りましょ?」

QB「……うん、分かってたよ」
146 : [saga]:2012/12/31(月) 07:27:31.86 ID:A8lMCTH+0
 
見滝原市 裏道


マミ「それにしても、一年も経つと結構変わってるものねー。
   あら、ここの区画、前はコンビニだったのに……次は何が建つのかしら?」

QB「この町、結構なスピードで発展してるみたいだね。その分、皺寄せがこういう末端に来てるみたいだけど」

マミ「しわよせ?」

QB「中央部の景観は配慮してるんだろうけど、こういう端の方までは手が回らないんだろう。
   結果として廃墟が増えたり、道が無駄に入り組んだりしちゃってるんだ」

マミ「そうなんだ……何か、悲しい話ね」

QB「……それはそうと、マミ。あんまり人通りのない道を通るのは感心しないな。危ないよ?」

マミ「でも、こういう道じゃないとキュゥべえとお話しできないし――テレパシーはちょっと苦手なの」

QB「……もう戻ろうか? 荷物も軽くはないだろう?」

マミ「いいの? キュゥべえ、外に出たかったんでしょ?」

QB「……ん。もう"十分"さ」

マミ「そう? 家ではあんなに外に出たがってたのに――」


ぐにゃり……


マミ「……え? 景色が、歪んで……」

QB「……」
147 : [saga]:2012/12/31(月) 07:28:47.21 ID:A8lMCTH+0

 
 視界が歪んで変化する。ただのさびれた路地裏から、吐き気や頭痛を覚えるような、醜悪な空間に。

マミ「……なに、これ」

 呟く。

マミ「……なに、これぇ……っ!」

 思わず、泣き言を漏らす。

マミ(ホグワーツで変なことに慣れたつもりだったけど……これは、違う)

 あの奇妙で、しかしどこか暖かみのある学校とは違い、
 目の前に広がるこの歪な光景は、ただひたすらに悪意を凝縮したかのような造形だった。

 屋外なのに、屋外だったはずなのに、頭上は天蓋で区切られている。

 酷く焼け焦げたような、そんな濁った黒色で染められたその天井からは、あらゆる処刑道具が吊るされていた。

 ギロチン、吊り縄、十字架。その他、若干12歳のマミには使い方すら想像できないものが多数。

 意味は分からない。だが、それでも分かることは。

マミ「に、逃げなきゃ……」

 逃げなければ、"良くないこと"が起こる――そんな予感だった。

 だから右手に下げていた買い物袋を地面に取り落とし、そのまま走り去ろうとして、

マミ「……キュゥべえ?」

 先ほどまで傍らを歩いていた、白い猫の不在に気づいた。

マミ「やだ……嘘でしょ、キュゥべえ……怒るわよ……?」

 フラッシュバックする。

マミ「ねえ、冗談はやめてよ……」 

 一年前の記憶が、戻ってくる。

マミ「もう、イジワルなんてしないから……」

 魔法界に行くことが決まっても、家には誰もいなくて。

 そんな孤独を癒してくれたのは、一体誰だったのか。

マミ「お願いだから……出てきてよぉ……!」
148 : [saga]:2012/12/31(月) 07:32:04.62 ID:A8lMCTH+0
 
 その時。じゃりっ、と炭を足で踏み崩すような音が、背後で響いた。

マミ「……っ、キュゥべえ?」

 希望と共に、振り返る。

 だがそこにいたのは、あの、愛らしい姿をした友人ではなく――

使い魔『――私は弱者。私は小さく、私は薄く、私は儚い』

マミ「ひっ……!?」

 奇妙な、怪物の姿。

 形は人に近い。幼児が黒い色の粘土で人形を拵えればこうもなるだろう。

 のっぺらとした相貌に、関節の曖昧な四肢。

 見ているだけで怖気を覚えるそれが、こちらに手を伸ばし、問いかけてくる。

使い魔『あなたは私は虐める? 弱い私をいじめる?』
149 : [saga]:2012/12/31(月) 07:33:38.85 ID:A8lMCTH+0
 
マミ(こ、言葉が通じる……? ――そうか、指輪!)

 言葉を翻訳する指輪。それはどうやら、この化け物にも有効らしい。

 ならば、話し合いができるかもしれない。指輪の翻訳は双方向。

 何とはなしにこちらからも手を差し伸べて、応じた。

マミ「い、いじめないわ! 仲良くしましょう?」

使い魔『……いじめない? 本当に?』

マミ「ええ、本当よ。それで、あなた、白い猫を見なかった? 大きな耳が特徴で――」

 だが怪物はマミの言葉を、ほとんど聞いていなかった。

使い魔『弱い私をいじめないあなたは、私よりも弱い』

 にたりと、気味の悪い笑みを漏らす。

使い魔『――私よりも弱いあなたは、久しぶりのご飯』

 悪意もあらわに、襲いかかって来て。

マミ「あ、う、い、や――」

 だから右手は、反射的に杖を引き抜き。

マミ「――フリペンド(撃て!)」

 放たれた光弾が、怪物を一撃で粉々にした。
150 : [saga]:2012/12/31(月) 07:34:21.89 ID:A8lMCTH+0
 
QB「……」タタッ

??「そこでストップだ」

QB「……」ピタッ

??「やれやれ、ようやく会話ができるね。女の子ひとりくらい、掻い潜って欲しかったけど」

QB「掻い潜ったからここにいるんだろう」

??「もっと早くにして欲しかったな。何せ、君とはテレパシーも記憶の共有も禁じられてるからね。
    だからこうして、直接会わねばならなかった」

??「僕も暇じゃないんだ。この町は魔女が多い。魔女が増えるだけじゃ、エネルギーは回収できないからね。
    優秀な魔法少女いれば別だけど……」

QB「……」

??「ま、過程の話をしても仕方ないか。それじゃ、報告を聞こう」

QB「……ああ。まず、僕が確認した"魔法"は――」


◇◇◇
151 : [saga]:2012/12/31(月) 07:35:41.90 ID:A8lMCTH+0
 
QB「――だいたい、こんなところだね。第一次報告は、これでおしまいだ」

??「第一次? ……ああ、そうか。記憶の同期ができないと面倒だな」

QB「? なにを言って――?」

??「君の廃棄が決定した。いや、正確には既に決定していたんだけど」

QB「……! なんっ、で!」

??「自覚はあるんだろう? 君は精神疾患を患ってる」

??「これまでは、異種のエネルギーに曝されたということからの暫定処置だったけど。
    でもここ数日、君を観察していて明らかな罹患が確認された。だから、廃棄だ」

QB「だけど、まだ――」


使い魔「――、――」


??「おっと、使い魔が来た。移動しながら話をしようか」

??「ここの魔女の使い魔は普通の人間にも負けるくらい弱いし、
    魔女自身も、使い魔に手出しをしない限り向こうから攻撃してくることはないが――」

??「使い魔に傷をつければ、本気で殺しにかかってくるからね」
152 : [saga]:2012/12/31(月) 07:37:02.92 ID:A8lMCTH+0
次回は秘密の部屋編だと言ったな? あれは嘘だ。
一旦投下終了。今日中にもっかい投下して夏休み編(1)を終了できたらいいなぁ
153 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/31(月) 08:58:38.25 ID:ycrAKC8f0
乙!
今度はまどまぎのターン
154 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/31(月) 10:20:13.30 ID:3WgVIjfk0
乙乙
155 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/31(月) 10:20:55.69 ID:HztKj2dIO
おつやでー
156 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/31(月) 18:43:03.29 ID:IbCO260zo
QBは誰と話しているんだ?続きを楽しみにしとく
157 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/01(火) 13:12:57.34 ID:w/Zx6dpno
そして明けましておめでとうございます
158 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/01(火) 14:18:42.69 ID:Cv8u833Fo
この調子だとダンブルドア過労死しちゃいそう
159 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/05(土) 20:32:36.50 ID:GjrJBULC0
乙でした
そして今更だけど明けましておめでとうございます

“ゴブレットまでしか書かない”の意味が分かりました>>1スゲー!
>>1におじぎをするのだ!!
160 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/05(土) 20:40:07.18 ID:vLPxsc+0o
そうか、マミは原作じゃ15歳だからか
161 : [saga]:2013/01/06(日) 18:53:48.48 ID:ryGoZWio0
とうかー
162 : [saga]:2013/01/06(日) 18:54:17.25 ID:ryGoZWio0

魔女の結界内部


マミ「はぁ……はぁ……いくら走っても出られないなんて……」


使い魔『ご飯! ご飯! ご飯!』ユラッ


マミ「っ――フリペンド!(撃て)」バシュッ!

使い魔『』グシャッ

マミ(おまけにこの変な怪物はいくらでも出てくるし、キュゥべえは見つからないし……)

マミ(……私の魔法でも何とか倒せるのが救いだけど……なんなのかしら、これ。
   どう考えても魔法生物だけど……)

マミ(でもこんなの、ホグワーツの図書館で読んだ図鑑にも載ってなかったし、
   そもそも危険な生き物って魔法省が生息地とかの管理をしてるはずよね?)

マミ(街中で人を襲うような魔法生物。危険度分類はXXXXX(最上級)か、
   私みたいな子供にも倒せるってことを考慮してもXXXXを下回るなんてことは……)

マミ(もしかして新種? レシフォールドなんかは本当にいるのか疑問視されてたっていうし)

マミ「……考えてても仕方ないか。まずはキュゥべえを探して、ここから出る方法を探さないと……」


 最初こそ、この空間の異常な雰囲気に飲まれパニックに陥ったが、今では冷静な思考ができるまでに落ち着いた。

 無尽蔵に湧く怪物は不気味ではあるが、簡単な呪文で追い払うことができたからだ。

 数体を難なく倒す内に、何とかなるのではないかという希望を抱き始めていた。
163 : [saga]:2013/01/06(日) 18:56:37.66 ID:ryGoZWio0

 だけど、それは間違いだったのだ。

マミ(……何かしら? 急に気温が上がって……)

 この結界に足を踏み込んでしまったのなら、急いで逃げるべきだった。
 
 使い魔を倒す前に、一目散に撤退するべきだった。

 ここの主は、己が使い魔を殺した相手を絶対に許さないのだから。

マミ「なに、あれ」

 前へと進む内に、辿り着いたのは大広間のような空間。

 その中心に、先ほどまでの怪物など可愛く思えるような、本物の化け物が。


164 : [saga]:2013/01/06(日) 18:58:40.71 ID:ryGoZWio0





 燃え尽きろ 烏有に帰せ 灰燼となれ

 我は審判 我は断罪 我は救済

 弱者の敵に、正義の裁きを。


魔女『――ゼンブ、燃エテシマエ』


 "La Pucelle d'Orlean"




165 : [saga]:2013/01/06(日) 18:59:38.69 ID:ryGoZWio0

マミ「ひっ……」

 その怪物と目が合う。瞬間、体は引きつり、思考は凍りついた。

 指輪の効果だろうか? あの怪物の思考が、手に取るように伝わってくる。


(よくも殺した)(弱きものを虐げた)(それは悪)(悪は処断されるべし)


 "それ"は怒っていた。目の前で行われた殺戮劇に義憤を燃やし――


(故に)(貴様は)(灰となれ)


 ――そして、その罪人を燃やし尽くしてしまおうと。


マミ「あ、ああ……フリ……ペンドっ!(撃て)」バシュッ

魔女『……』キン!

マミ「効いて……ない?」

魔女『罪状。殺人。判決。有罪。ヨッテ――』
166 : [saga]:2013/01/06(日) 19:02:27.69 ID:ryGoZWio0

魔女『――火刑ニ処ス』ゴウッ

マミ(……あ……炎、が)

 煌めく赤の閃光を、ただ呆然と見つめる。

 怪物が吐き出した巨大な炎は、それこそドラゴンの吐息にも匹敵するだろう。

 いかにホグワーツが魔法界で最も権威のある学校であったとしても、
 一年生が防ぎきれるようなものではない。

 そもそもマミは、実技においては並以下――トロールの時は不意打ちが成功しただけで、
 本来、怪物を真正面から退治できるような実力はないのだ。

 よって、この炎を防ぐことはできない。それだけが事実。

 そして、その事実を覆すことはなく。

 少女は炎に飲み込まれた。
167 : [saga]:2013/01/06(日) 19:08:04.95 ID:ryGoZWio0
 













杏子「おいおい。あんたも魔法少女なら、そこで諦めちゃ駄目でしょ――と!」ジャラッ














 
168 : [saga]:2013/01/06(日) 19:09:51.98 ID:ryGoZWio0

 ザシュッ!

魔女『ギャアアアアアアアア!』

マミ「……え、生き、てる? なんで……っ、鎖の、壁?」

杏子「大丈夫かい? あたし以外の魔法少女とは初めて会ったが……といっても、あたしは成り立てだけどさ」

マミ「あの、あなたは……?」

杏子「佐倉杏子。あんたの同類だよ」

マミ(同類――魔法使い? でも杖が……あの持ってる槍に仕込んであるのかしら?)

杏子(さぁて、グリーフシードはどこかな……?)キョロキョロ

魔女『……』ギロッ

マミ「っ、危ない、まだ生きて――!」

杏子「んなっ!?」

魔女『ガァッ!』ブンッ!

杏子「ぐぁっ!?」

杏子(畜生、油断した……! 足が使い物にならねえ……)ガクッ
169 : [saga]:2013/01/06(日) 19:11:40.27 ID:ryGoZWio0

魔女『死刑私刑死刑火刑死刑』ギチッ ギチッ

杏子(こいつ、強い。炎による遠距離攻撃も厄介だっていうのに、近接にも対応しやがる。
    加えてタフネスも一級品。その上、こっちは足をやられたとなると……)

マミ「あ、あの……佐倉、さん? 酷い怪我……」

杏子「ああ、ちょっと拙いね……ははっ、正義の味方を気取っといて、全く格好つかないったらありゃしない」

マミ「そんなこと――その怪我だって、私を庇って……」

魔女『執行執行施行死行執行』ジリジリ

杏子「っと、おしゃべりしてる時間もないか……なあ、あんた。悪いけど、ちょいと手伝ってもらうよ」

マミ「て、手伝う?」

杏子「ああ。あたしの足、見ての通りなんでね。逃げるのは無理だ。
    もう一撃かませば倒せる自信はあるんだけど、近づくのが難しい。
    そんな訳なんで、あいつの注意を少しだけ引き付けておいてくれ。障壁は張っとくからさ」

マミ「……動きを、止めればいいのね?」

杏子「ああ。できるかい?」

マミ「……自信はないけど、でもやるしかないんでしょう?」

杏子「そーゆーこと――んじゃ行くよ! 縛鎖結界!」ジャララッ
170 : [saga]:2013/01/06(日) 19:13:59.03 ID:ryGoZWio0

魔女『燃エロ燃エロ燃エロ燃エテ!』ゴォッ!

杏子「残念だけど通行止めさ!」ギィン!

マミ「っ、凄い炎、だけど……佐倉さんの魔法、完全にそれを食い止めてる……」

マミ(これなら落ち着いて……ノックバックジンクスの呪文は通じないから……)スッ

杏子(杖? これまたステレオタイプな……)

マミ「――タラントアレグラ!(踊れ)」バシュッ

魔女『ガァ!?』タンッ タンッ

杏子「うぉっ、あの巨体であんな軽快なタップを!? どんなエンターテイナーだよ!」

マミ(やった、成功した! 今回はブレイクダンスにならなかったわ!)

杏子(面白い魔法だな。踊らせる――相手に何かを強要するのか? 可愛い顔してえげつないねぇ)

マミ「佐倉さん、今よ!」

杏子「おうよ! これで――」ダッ

マミ「!? だ、駄目よ! そんな真正面から突っ込んじゃ――」

魔女『火刑ト――!』ゴォッ

杏子「……」ボウッ

マミ「あ、佐倉、さ――火に、飲ま……」
171 : [saga]:2013/01/06(日) 19:14:59.98 ID:ryGoZWio0

杏子「――残念だけどそっちは分身だよ!」ザクッ

魔女『ガッ、ア、アアアァァア……』シュゥゥウウウウ...

杏子「本物は背後からこっそりと、ってね――っと、グリーフシード見っけ」ヒョイッ

マミ「佐倉さん!」

杏子「おう、助かったよ。あんたがいなきゃ危なかった……どっか怪我してないかい?」

マミ「私は平気……それよりも、佐倉さんが」

杏子「ああ、あたしは……っ」ガクッ

マミ「佐倉さん!?」

杏子(やばいな、流石にもう誤魔化すのも限界か……治療魔法は専門じゃないし、完治にゃちょっと時間が……)

マミ「大変、手当てしないと……救急車……はダメよね……」

杏子「ああ、まあね……」

マミ(理由が説明できないし、魔法界のことがばれるかもしれないものね……)

杏子(怪しまれるし、家族には迷惑をかけたくないからね……)
172 : [saga]:2013/01/06(日) 19:15:27.55 ID:ryGoZWio0

パリーン


杏子(ちっ、結界が解けたか……このままじゃ人目についちまう)

マミ(景色が元通りに……? あ、買い物袋が落ちてる。だいぶ歩いたと思ったけど……)

杏子「なあ、悪いんだけど、肩貸してくれないかな。
   一緒に戦ったよしみで、どっか人目のつかないところまで付き合ってくれない?」

マミ「え……ええ、もちろん。それじゃ、私の家に……近くだし、裏道を通って行けば……」グイッ

杏子「っ……と、悪いね。そういえば、まだ名前を聞いてなかったな。あんた、名前は?」

マミ「マミよ。巴マミ。それじゃ、ちょっと頑張ってね」
173 : [saga]:2013/01/06(日) 19:16:37.04 ID:ryGoZWio0


マミの家


杏子「んぐ……美味いっ! このハンバーグ絶品だよ。マミ、あんた料理上手なんだな!」

マミ「ふふ、佐倉さんっていっぱい食べてくれるから嬉しいわ。これで冷凍庫もだいぶすっきりしたし……」

杏子「いや、こんな御馳走久しぶりだよ。あー、モモにも食わせてやりたいな……」

マミ「モモ? 妹さんかしら」

杏子「ああ。ちょっと歳が離れてるから、可愛い盛りでさ」

マミ「そう……それじゃ、ハンバーガーにでもして持って帰る? 残りのタネ、全部焼いちゃうから」

杏子「え、い、いやそれは悪いよ……マミの家族の分、なくなっちゃうじゃんか」

マミ「気にしないで。私、一人暮らしだから」

杏子「……ん、そうか。悪い」

杏子(聞いちゃ不味かったかな……貧乏でも家族がいるだけ、あたしは幸せかもな……)

174 : [saga]:2013/01/06(日) 19:17:50.78 ID:ryGoZWio0

杏子「ふぅー、食った食った。それにしても悪いね。
    傷を治す間匿ってもらった挙句、晩御飯まで食べさせて貰っちゃって」

マミ「気にしないで。命の恩人だもの」

杏子「やー、それはお互い様でしょ。あたし一人でも負けてただろうし……はー、やっぱ成りたては辛いね」

マミ「成りたて……? 佐倉さんも、最近魔法を覚えたの?」

杏子「ん? やっぱマミもか。そうだよ、大体一週間前くらいかな」

マミ「い、一週間!? それであんなにすごい魔法を……凄いわ、才能ね」

杏子「よ、よせやい。そんなに褒めたってなんもでないよ……ちなみにマミはどのくらい?」

マミ「わ、私? いいじゃない、別にそんなことは……あ、お茶。お茶淹れてくるわね?」スッ

杏子「え? あ、ああ。悪い」

マミ(ほとんど丸一年先輩なのに、あんな実力差があるってなんか恥ずかしい……)
175 : [saga]:2013/01/06(日) 19:18:18.14 ID:ryGoZWio0

杏子「んー。それにしても、この辺には私くらいしか魔法少女はいないと思ってたんだけど……」

マミ「ああ、私、一年のほとんどをイギリスで過ごしてるから……」

杏子「イギリス!? な、なんか凄いね。そうか、外国の……そっちってどんな感じなんだい?」

マミ「そうね、お菓子とかは美味しいわ……あと私の通ってる学校は自然がいっぱいあっていいところよ?」

杏子「いや、そうじゃなくて、縄張り争いとかさ」

マミ「争い? そうね、仲の悪い子同士だと、呪いを掛けあったりするのは日常茶飯事ね」

杏子「の、呪い!? 日常茶飯事って……流石は外国。過激なんだね」

マミ「ふふっ、大げさね。1000人近くもいれば、そりゃ喧嘩くらいするわよ」

杏子「千人もいんの!? どんだけ過密なんだよ!」ガクガク
176 : [saga]:2013/01/06(日) 19:21:34.15 ID:ryGoZWio0


杏子「決めた。あたしは今後一生日本から出ない」

マミ「えー……慣れればいいところよ?」

杏子「慣れる前に死んじゃうよ……マミが……いや、マミさんが恐ろしく見えてきたよ……」

マミ「……恐ろしいって言えば……さっきの怪物って……」

杏子「ん? ああ。ありゃあ強敵だったよな。私が狩ってきた中でも一番の大物だったよ」

マミ「狩ってきた中で、って……佐倉さん、今までもずっとあんなのを相手に……?」

杏子「えっ……そりゃそうだろう? 仕事みたいなもんなんだしさ」

マミ「仕事? その年齢でもう? 未成年なのに」

杏子「? 魔法少女なんだよな?」

マミ「? 魔法は使えるわよ?」

杏子「?」

マミ「?」
177 : [saga]:2013/01/06(日) 19:24:24.18 ID:ryGoZWio0


杏子「……まあいいや。ところでマミは留学してるんだよな? いつまでこっちにいるんだい?」

マミ「九月からまた新学期なの。あと一ヶ月、ってとこね」

杏子「へー。それじゃあさ、良かったらまた会おうぜ。今度はうちに来てくれよ。晩御飯、御馳走するからさ」

マミ「え……いいの?」

杏子「ああ。ひとりで食べるより、たくさんで食べた方がいいだろ?」

マミ「……それじゃ、今度機会があればお邪魔するわね?」

杏子「ああ。母さんにもいっておくからさ……うし、それじゃああたしはそろそろお暇するよ。
    父さんたちも心配するしさ。晩御飯、ごちそうさま。それじゃあまたな」

マミ「ええ。帰り道、気を付けてね」
178 : [saga]:2013/01/06(日) 19:25:09.19 ID:ryGoZWio0

マミ「ふふっ、あんなに喜んでもらえると、本当に作り甲斐があるわね。
   ……今度お邪魔する時は、お菓子を作っていこうかしら?」ガチャ

QB「やあマミ。遅くなってごめんね」

マミ「あ……キュゥべえ。そういえばすっかり忘れてた……無事だったのね、良かった……」

QB「……なにか腑に落ちないワードがあったような気がするけど……心配かけたたみたいだね」

マミ「ええ、だって急にいなくなるから……でもこうして帰って来てくれてよかったわ」

QB「まあ僕にも事情があってね……ところでマミ」

マミ「うん? なあに?」

QB「とってもいい匂いが充満してるけど……僕の分のハンバーグは?」

マミ「……あ」


 それから三日ほど、キュゥべえはヘソを曲げた。

179 : [saga]:2013/01/06(日) 19:25:37.06 ID:ryGoZWio0
投下終了。次回からホグワーツに戻ります
180 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/06(日) 19:27:38.08 ID:If1hOs370
乙!
181 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/06(日) 19:27:59.12 ID:wtbf3kpIO
乙ー

この話がかみ合ってそうでかみ合ってない会話好きだわwwww
182 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/06(日) 19:37:45.36 ID:xfCFnIpSO
183 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/06(日) 19:37:56.59 ID:2Aq5NoAeo
おつい
184 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/06(日) 19:42:11.26 ID:K9cYRHgB0
185 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/06(日) 20:56:02.96 ID:spqAiYBm0
QB「とってもいい匂いが充満してるけど……僕の分のハンバーグは?」
なるほど、カニクリームコロッケか
186 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/06(日) 21:24:18.44 ID:V0Fx1aOIO
おつおつ
187 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/07(月) 00:36:06.73 ID:NPnorupPo
しかしさっきの魔女の名前が無駄に大物だな……
まあもし本人ならワルプルギス級になりそうだし日本にいる訳ないから多分別人だろうけど
188 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/07(月) 01:21:07.90 ID:A9DKL89Po

QB生きてたか
とりあえずほっとした
189 : [saga]:2013/01/07(月) 19:35:55.07 ID:tu5V5NtP0
>>187
書き損ねてた。オリ魔女は考えるの面倒だったんで、魔女化スレから拝借しました。

とうかー
190 : [saga]:2013/01/07(月) 19:36:25.99 ID:tu5V5NtP0

 それから新学期が始まるまで、佐倉さんとの付き合いは続きました。


杏母「あら、巴さん。いらっしゃい」

マミ「お邪魔します。あの、これ、つまらないものですが……」

杏母「あらあら、いつも気を使わせちゃって悪いわねぇ。さ、上がって?
    いまお茶を淹れるから」

マミ「いえ、こちらこそ連日お邪魔してしまって……」

杏母「ふふ、いいのよ。杏子が誘ってるんでしょう? あの子、あんまり友達いなくて……
    モモも貴女に懐いてるし、これからも仲良くしてあげてね?」

杏子「母さん! いまなんかマミに余計なこと言ってなかった!?」ドタバタ

モモ「マミさん来たの!? お菓子も!?」ドタバタ

杏子「こらモモ! お前はまたそういう――」

マミ「ふふっ。モモちゃん? 今日はねぇ、杏ジャムのパウンドケーキを焼いてきたのよ?」

モモ「ケーキ!? ありがとうマミさん!」

杏子「ああもうこいつったら……とにかく上がってよ。父さんももうすぐ帰ってくるから――」
191 : [saga]:2013/01/07(月) 19:37:08.47 ID:tu5V5NtP0

 それは、とてもとても楽しい日々でした。

 家族の暖かさ――それは、ホグワーツで得た友達とはまた違う、とても尊いもの。



杏子「そういやマミは、もうすぐイギリスに行っちゃうんだっけ?」

マミ「ええ、帰ってくるのはまた一年後になるから……それまでは会えなくなっちゃうわね」

杏子「そっか。手紙とかは届くのかな。あんまり頻繁にやりとりはできないだろうけど……」

マミ「うーん。この辺ってふくろう便がまだ整備されてないでしょ? 愛知県とかは整備されてるけど……」

杏子(ふくろう便? なんだろう、外国のクロネコヤマトみたいなもんかな?)

マミ「また、一年後に会いましょう? 今度はお土産も買ってくるわ!」

杏子「ああ、楽しみにしてるよ。それじゃあまた――来年な」




 きっと、来年も――こんな幸せな空気が続くのだろうと、そう、私は思っていたのです。




.
192 : [saga]:2013/01/07(月) 19:37:50.33 ID:tu5V5NtP0

 ホグワーツ特急


マミ「さて、今年は誰もいないコンパートメントに一番乗りね」

QB「そんなことしなくても、ハーマイオニーとか、ラベンダーとかと一緒の席に座ればいいんじゃ……」

マミ「ホーム凄い混んでたし……探してる間に席が埋まって、結局見つからないとか嫌だし……」

QB「……まあ、いいけどさ。それにしても着くまで暇だね。しりとりでもする?」

マミ「それに関して抜かりはないわ。えーと……ほら、MDウォークマン!」

QB「おおっ」

マミ「ふふーん。これで退屈な時間とは無縁だわ。さて、それじゃあ再生っと」ポチッ

QB「僕にもイヤホン片方貸してよ、マミ」

マミ「……?」

QB「マミ? 音が出ないよ?」

マミ「変ね? 電池は入れてきたと思ったけど……壊れちゃったかしら?」ブンブン

QB「そんな粒入りの缶ジュースみたいに振っても直らないと思うよ」
193 : [saga]:2013/01/07(月) 19:39:17.65 ID:tu5V5NtP0

マミ「えー……どうしよう、これ高かったのに……」

QB「なら僕と契や――……」

マミ「? キュゥべえ?」

QB「いや、なんでもないよ。それよりどうする? しりとりする?」

マミ「何でしりとりにこだわるのよ。したいの? そうねぇ、それじゃあ読書でもして待ってるわ」ゴソゴソ

QB「? それって教科書だろう? 勉強熱心なのは感心だけど……」

マミ「これ、ただの教科書じゃないのよ? はい、キュゥべえにも貸してあげる。」

QB「……"泣き妖怪バンシーとのナウな休日"?」

マミ「ふふっ、あー素敵だわ。やっぱりロックハートは最高ね……」ペラッ

QB「マミ、これ教科書なのかい? どう見ても自伝にしか見えないんだけど」

マミ「ええ。これはね、ギルデロイ・ロックハートっていう最高にかっこいい魔法使いの体験記なのよ!」フンス

QB「ふぅん。でもこれ、教科書になるのかなぁ……?」

マミ「大丈夫よ! ああ、きっと今年の"闇の魔術に対する防衛術"の先生とは話が合うわ……!」
194 : [saga]:2013/01/07(月) 19:40:01.85 ID:tu5V5NtP0

売り子「車内販売ですよー」

マミ「ああロックハート……って、もう車内販売が回ってくる時間なのね。
   それじゃ、かぼちゃジュースとチョコレートを……」

QB「僕は、百味ビーンズが欲しい」

マミ「え? 嘘、キュゥべえあれが好きなの?」

QB「色んな味が楽しめていいじゃないか。味覚情報がぐんぐん貯まるよ?」

マミ「うぅー……全部食べるのよ? じゃあそれと、ついでに日刊預言者新聞を」

売り子「はい、毎度どうもー」ガラガラ

QB「おや、新聞を買うのかい?」

マミ「ええ。まあ、電話でハーマイオニーさんから魔法界の事情とかは聞いてるけど……
   やっぱり実際に見なきゃ分からないこともあるだろうし」バサッ

QB「ふぅん。じゃあ何か面白い記事があったら僕にも――」

マミ「!? きゅ、キュゥべえキュゥべえ! ちょっと、こ、これみて!」

QB「え、なんだいその剣幕。正直引く……えーと、これかな? "秘密の部屋、開かれる"――」

マミ「どこ読んでるの! ここ! ここよ!」

QB「何々、"ギルデロイ・ロックハート、ホグワーツの闇の魔術に対する防衛術教授職に就任"か……
   なるほど、教科書が彼の自伝だらけだったのはこれが原因か」

マミ「ああ、どうしましょう! 生のロックハートに会えるなんて! キュゥべえ、私、ヘアスタイルとか大丈夫?」グシャッ

QB「あ、新聞が……最高にキまってるよ、脳内麻薬で」
195 : [saga]:2013/01/07(月) 19:41:35.68 ID:tu5V5NtP0
ガラッ

ハーマイオニー「はぁい、ちょっと失礼……って、マミ! ここに乗ってたのね!」

マミ「ああ、ハーマイオニーさん! 久しぶり!」

ハーマイオニー「ええ、久しぶり。ところでハリーとロンを見なかった? 一緒の席に座ろうと思ってたんだけど……」

マミ「うーん。ごめんなさい、分からないわ……」

ハーマイオニー「そう……変ね? あとは監督生の車両だし……」

マミ「それよりハーマイオニーさん! サプライズなニュースがあるの! 今年の"防衛術"の先生って誰になったと思う!?」

ハーマイオニー「……ふふふ。当てて見せましょう。ロックハートよ! でしょ!?」

マミ「きゃあ! さすが師匠! 情報が早い!」

QB「師匠って?」

マミ「ロックハートのこと、ハーマイオニーさんから教えて貰ったから」

QB「マミに変なもの刷り込んだのはこの子か……毎日電話で何かを熱く語ってるから変だとは思ったんだ」

ハーマイオニー「ふふ、しかもそれだけじゃあないわよ……ほら、見て! じゃーん!
          ロックハートの直筆サインよ!」

マミ「う、嘘でしょ……!? 本当に直筆サイン!? どうやって……!?」

ハーマイオニー「この前、ダイアゴン横丁でサイン会やってたの!
          まあでも私のにサインした直後、ちょっと色々あったから素直には喜べないんだけど……」

マミ「う、うう。羨ましい……ね、ねえ、触ってもいいかしら?」

ハーマイオニー「ふふっ。少しだけよ?」

マミ「ああ、ああ……! サインの筆跡からすら彼の高貴な雰囲気が伝わってくるわ……!」

QB「……ああ、これはコンクリート味かぁ。百味ビーンズは美味しいなぁ……」モグモグ
196 : [saga]:2013/01/07(月) 19:43:03.12 ID:tu5V5NtP0

大広間 組み分け


マクゴナガル「……ジネブラ・モリー・ウィーズリー!」

組み分け帽子「グリフィンドール!」


マミ「あれがロンくんの妹さん? 赤毛がとってもチャーミングね」

ハーマイオニー「ええ。夏休み中に一回会ったけど、とっても良い子よ?
          ハリーの前だとちょっと引っ込み思案なとこはあるけど――はぁい、ジニー。おめでとう」

ジニー「ありがとうハーマイオニー。ねえ、ところでハリーを知らない? あとついでにロンも」

ハーマイオニー「私たちも探してるの。一緒に来たはずのジョージやフレッド達も知らないっていうし……」

ジニー「そうなの……そういえば、そっちの人は?」

マミ「こんにちは、ジニーさん。同じ寮の巴マミよ。これからよろしくね? で、こっちはペットのキュゥべえ」

QB「やあ、ジニー! 早速だけど、君には素質が――……いや、なんでもない。これからよろしくね!」

ジニー「わあ! 喋る猫なんて初めて見た! ねえマミ、撫でてもいい?」

マミ「ええ、いいわよ……それにしても本当にどこいっちゃったのかしら?」



リー「おい聞いたか!? ハリーとロンが空飛ぶ車で登校したらしいぞ!?」

フレッド「うお、それきっとパパの車だぜ!」

ジョージ「あんにゃろ、僕たちの先を越しやがった!」


マミ「!?」

ハーマイオニー「あの二人ったらまた馬鹿を……!」
197 : [saga]:2013/01/07(月) 19:43:46.81 ID:tu5V5NtP0


翌日 大広間 朝食


ハリー「やあ、ええと……おはよう」

ハーマイオニー「ふんっ。お・は・よ・う」ツーン

ロン「まだヘソ曲げてるのかい? だから別にわざとじゃないんだってば」

マミ「あら、ハリーくんにロンくん。おはよう。聞いたわよ?
   何でもホグワーツ特急に乗らないで、空飛ぶ車で校庭に突っ込んだって……」

ハーマイオニー「それで人気者になって喜んでるのよね?」

ロン「だから、別に喜んじゃいないさ。あれは事故だよ。なんでか駅に入れなくて、なあハリー?」

ハリー「うん。おまけに校庭の"暴れ柳"に殺されかけたし。マミからもハーマイオニーに口を添えてくれると――」

 バサバサバサッ

マミ「きゃっ! そ、そうか、朝食はふくろう便の時間でもあるのよね……すっかり忘れてたわ」

ロン「……おい、嘘だろ」ガタガタッ

ハリー「ロン? どうしたの?」

ロン「ママが、ママったら、僕に、僕に……」

ネビル「うわ、ロン。それって……"吼えメール"じゃないか」

マミ「吼えメール? ロングボトム君、それって何なの?」

ネビル「やあ、マミ。とりあえず耳を塞いでた方がいいよ……ロン、開けなよ」

ロン「ああ、神様……ええい、ままよ!」


 ビリッ






『ロナルドウィイイイイイイイイズリィイイイイイイイイイイイ!!!!!』







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198 : [saga]:2013/01/07(月) 19:45:12.19 ID:tu5V5NtP0
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薬草学


マミ『……凄まじかったわね。絶対衝撃波とか出てたと思うわ、アレ』

QB『ああ、僕なんか椅子から転げ落ちちゃったよ……
   しかもあれ、開けずに放置しておくともっとやばいらしいよ?』

マミ『どんな風になるのかしら……それはそれで興味があるわねっ、と』ズボッ

マンドレイク「〜〜〜〜〜〜!」

マミ『わっ、と、暴れないでってば……! キュゥべえ、教科書に植え替えのコツとか書いてない!?』

QB『えーとねー……ああ、撫ぜりゃーいいみたいだよ?』ペラッ

マミ『なるほど……にしても耳当てしてる時って、テレパシーが便利ね』ゴソゴソ

QB『このマンドレイク、今の状態でも鳴き声聞いたら気絶するんだっけ?
   ほんと、こっちの世界の植物は興味深いなぁ』

スプラウト「おや、手際がいいですね。グリフィンドールに3点あげましょう」
199 : [saga]:2013/01/07(月) 19:45:53.68 ID:tu5V5NtP0

昼食後


マミ「イギリス料理も、慣れてくるとさほど気にならなくなってくるわね」

QB「うん、慣れるのはいいことだ。変身術の授業もなかなか好調だったし」

マミ「好調って? 本当はコガネムシをボタンに変える筈だったんだけど、あれは……」

QB「いいじゃないか。去年はミサイルだったんだし、まだ火を噴くコガネムシの方が――
   ん? あそこの人だかりって……」



コリン「ハリー写真とらせて! ハリー写真とらせて!」

ハリー「いや、だからね……」



マミ「……新入生の子かしら。ハリーくんって本当に有名人なのねぇ」

QB「ヴォルデモートを倒したっていうのは、それだけ――」

ネビル「う、うわあああああああ」バターン

QB「あ、ごめんネビル。つまり、例のあの人がどれだけ恐ろしい存在だったか、ってことだね。
   倒した彼は、かなり英雄的な扱いをされてるんだよ」

マミ「ふぅーん……で、でも! 英雄的と言えば次の授業のロックハート先生だって凄いのよ?」

QB「……ま、それは次の授業で分かるだろうけどさ」
200 : [saga]:2013/01/07(月) 19:46:44.79 ID:tu5V5NtP0

闇の魔術に対する防衛術 授業


ロックハート「はろう☆ 自己紹介の必要は"まさか"あるとは思いませんが、一応形式ですのでね?
        ギルデロイ・ロックハート。勲三等マーリン勲章、防衛術連盟名誉会員、
        そして週魔女のチャーミングスマイル賞五回連続受賞! そして君たちの先生です!」キラッ



マミ「ああ、ロックハート先生……」

ハーマイオニー「素敵……」

ロン「聖マンゴに入院した方がいいんじゃないのか? 君たち」



ロックハート「まあこんな肩書きに意味はありませんよ、ええこれっぽっちも!
        なにせ、君たちはこれからの授業で私がどんな魔法使いか知るわけですし――」



ハリー「心底、知りたくないなぁ。っていうか既に透けて見えるっていうか……」

ハーマイオニー「ええ、そうね。ロックハート先生の授業、きっと最高のものになるに違いないわ……」

マミ「サイン、私もサイン貰おう……」

QB「駄目だこりゃ。完全に狂ってる」



ロックハート「それでは最初に、ちょっとしたペーパーテストをしましょうか。
        なーに! そう怯えることはありませんよ! 簡単な記憶力テストですから――」
201 : [saga]:2013/01/07(月) 19:47:21.39 ID:tu5V5NtP0

三十分後 採点中


ロックハート(ふんふん……やれやれ、酷い出来ですね。ホグワーツのレベルもたかが知れるというものです。
        私のひそかな大望とかはともかく、基本的な問題までできてないなんて……)

ロックハート(……ん? この二人は結構書き込んでありますね、どれどれ――)ペラッ



1 ギルデロイ・ロックハートの好きな色は?

ハーマイオニー『ライラック色。ただし"バンパイアとバッチリ船旅"の67項4行目において、マリンブルーについての言及がある。
          さらには147項14行目、血色の描写から考察するに、深層心理では朱色を好む傾向も――』

マミ『ライラック色です。でも"雪男とゆっくり一年"の情景描写から見るに、先生は白も好きなのではないでしょうか。
   これは"鬼婆とオツな休暇"に書いてある、目玉焼きの白身の食べ方にも表れて――』



ロックハート(……)

ロックハート(え、なんですか、これ)
202 : [saga]:2013/01/07(月) 19:48:16.08 ID:tu5V5NtP0

ロックハート(ウワ、残りの解答も全部びっちり書いてある……これはあれですね。いえ、私も売れっ子。分かってます。
        ファンの中には時たまこういう過激な子のもいるってことを)

ロックハート(ええ、送られてきたファンレターが奇妙に湿っていた挙句異臭を放っていたりなんて日常茶飯事。
        食べ物系の差し入れなんて怖くて食べたことはありません……)

ロックハート(握手会だって手のひらに"融解結合の呪い"を仕込んできた魔女は数知れず……)

ロックハート(ですが! それを乗り越えて! 私はスター街道を歩んでいる!)

ロックハート("スター"とは! 暗雲垂れ込める暗い空を、箒ひとつで進むことだ……
        そうして進んだ先で掴み取れる、ほんの一筋の光のことだ!)ドギャーン!

ロックハート(そんなこのギルデロイに、精神的動揺は決してない! と思っていただこうッ!)






ロックハート「ええええええ、えーとですねぇ、満点はふ、二人りりりり、で……」ガタガタ



ハリー「……なに書いたんだ、あの二人……」

ロン「見たくないような、見たいような……」

QB「お互いを高めあう。それが友情……」


マミ「やるわね、師匠……いえ、ハーマイオニーさん……」

ハーマイオニー「ふふ、貴女もとうとう一人前のロックハートフリークね、マミ……」
203 : [saga]:2013/01/07(月) 19:49:13.83 ID:tu5V5NtP0
一旦終了。次回投下未定につき
204 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/07(月) 19:50:22.26 ID:XT2933jCo
ロックハートが引く程wwwwww
205 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/07(月) 19:55:40.05 ID:090LMVf00
コンクリート味とかQBしか食べないだろうな
206 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/07(月) 20:03:58.80 ID:A9DKL89Po
ちょっと気になるコンクリート味
207 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/07(月) 20:22:46.72 ID:QBNi9xdJo
おつん
208 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/07(月) 21:09:04.28 ID:iQWj8vIro
ロックハートがまともに見えるだと…
209 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/08(火) 00:03:51.74 ID:kYVptLKGo
乙!
ドン引きガクブルのロックハートが新鮮でワロタwww
そうか、魔法でなんでもござれだからアレなファンの危険度もマグルの有名人の比じゃないのかww

百味ビーンズ、せめてもうちょい生き物が食べても大丈夫そうな味にしとこうぜ……腐葉土味とか
210 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/08(火) 01:28:33.70 ID:LsYP44tvo
べぇさんかわいい
211 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/20(日) 00:19:58.24 ID:wrRpbusuo
これ見始めてから色々ハリポタのSS読むようになったんだけどどれもこれもクオリティが高いのね
勿論これもだけど 何だかんだで愛されてるな
212 : [saga]:2013/01/24(木) 19:29:39.79 ID:xkFMgk9u0
とーかー
213 : [saga]:2013/01/24(木) 19:30:35.97 ID:xkFMgk9u0

数十分後


ロックハート「――きょ、今日の授業はここまで! 宿題として私の本の感想を書いてくること!」イソイソ

ハリー「これで終わりか……ただひたすらロックハートの本を読むだけの授業だった……」

ロン「これだったら図書室にでもいたほうがましさ。少なくとも、読みたい本を読めるからね」

ハリー「……読みたい本、あるの?」

ロン「……オーケイ。訂正する。少なくとも図書室は静かだからさ。あいつの声が聞こえなきゃ、なんでもいいよ」

ハーマイオニー「ああそんな、もう終わりなの……? このまま時が止まってしまえばいいのに……」

ロン「なんだよその拷問! まだトロールとフォークダンス踊る方がましさ! ――って、そういえばマミは?」

ハリー「あれ? 変だな、さっきまでハーマイオニーの隣に座ってたよね? ハーマイオニー、マミは……」

ハーマイオニー「ロックハート先生……Cool……」

ハリー「駄目だこりゃ。まあ、今日はこれで授業終わりだから」

ロン「ああ、夕飯には来るだろうし。じゃ、僕たちも寮に戻ろうか」
214 : [saga]:2013/01/24(木) 19:31:03.50 ID:xkFMgk9u0

ロックハートの部屋



ガチャッ


ロックハート「ふう……取り乱してしまいました。さすがはホグワーツ。一筋縄ではいきませんね」

マミ「ふふっ、そうですね。確かに私も初めて見たときは驚きました」


バタン


ロックハート「ですが、次からはこうはいきませんよ! このロックハートに二度目の失態はありません!」

マミ「ええ! というか先生、別に今日の授業も全然失敗とかじゃなくて、す、素敵でした、よ……?」

ロックハート「HAHAHA! そうですかそうでしょうとも! 私がやればバナナの皮を踏んで転んでも絵になりますよ!
        でもね、私の実力はあんなものじゃ――……」

マミ「……?」ニコニコ

ロックハート(う……うわあああああああああああ)ガタガタ
215 : [saga]:2013/01/24(木) 19:31:33.58 ID:xkFMgk9u0

ロックハート(なんかいる! 私の部屋に、なんか、いる! あの子ですよ名前は確かマミ・トモエ!)

ロックハート(何で! どうして!? ここに就職が決まってから、もう熱狂的ストーカーの類とは縁切りだと思ってたのに!)

ロックハート(だってホグワーツには外からの侵入を防ぐ魔法が張り巡らせてあるって――ああそういえばこの子生徒でした☆
        "外"からのじゃないですもんねそうですねインセクツ・イン・ザ・ライオンッ!)

ロックハート(い、いえ……落ち着け。落ち着きなさいギルデロイ・ロックハート。勲三等マーリン勲章。
        今の私は"先生"! そう先生です! 何を怯えることがありますか! 威風堂々と対応すればいいんです!)キリッ

マミ「? どうしたんです、先生? 杖を握りしめて、壁に掛けてあった絵画を盾みたいに構えつつ、
   衣装掛けにあったマントを体中に巻きつけて……ああ、でもそんな姿もどことなく高貴さが――」

ロックハート「き、気にしないでください! ところで、マミ! 何の用かな!?」

マミ「あ……わ、私の名前、覚えてくれた、なんて……」テレテレ

ロックハート「HAHA、そりゃあ先生ですから!」

ロックハート(要・注意な生徒の名前くらいは覚えますとも!)

ロックハート「それで? もうディナーの時間ですよ。いくら私に会いたいからって、いけない子ですねマミは!」

マミ「あ、あぅ。ごめんなさい……でも私、先生に質問がしたくて」

ロックハート「質問、ですか? 今日の授業のところで? どこか分からないところがありましたか?」
216 : [saga]:2013/01/24(木) 19:32:01.82 ID:xkFMgk9u0

マミ「いえ、ロックハート先生の授業はとっても素敵でした! 質問したいのは個人的なことで……」

ロックハート「んん? なんですか、なんでも聞いてごらんなさい! バン!と解決してみせましょう!」

マミ「ありがとうございます……それじゃあ」テクテク

 カチャンッ! シャッ!

ロックハート「……あー、マ、ミ? どうしてドアのカギを閉めて、カーテンを引くんでしょう?」

マミ「ふふ、だって、こうでもしないと……」


マミ「誰かに聞かれたら、困りますから」ニコッ


ロックハート「」
217 : [saga]:2013/01/24(木) 19:33:05.19 ID:xkFMgk9u0

ロックハート「いやあの待って。待ってください。よく考えましょう? 私とあなたは教師と生徒。でしょう?」

マミ「ええ。ですから、教えて貰おうと思って……色々と」ツカツカ

ロックハート「マミ! マミ! なんでそんなに近づいてくるんです!? お話しするだけならそこでいいでしょう!?」

マミ「いえ、誰にも聞かれたくない話なので、出来るだけ小声で……触れ合うほど近くで」

ロックハート「オブリビエ……ああっ、汗で滑って杖が落ちた!」ポロッ

マミ「あら、大丈夫ですか? ……はい、拾いましたよ」ヒョイ

ロックハート(ひぃ、杖を奪われた! も、もう駄目だ……マントが足に絡み付いて動けないし……)ガクガク

マミ「あの、先生……?」

ロックハート「ごめんなさいごめんなさい私はまだスターでいたいんですスキャンダルとかほんと勘弁して――」








マミ「あの、先生ならきっとご存知だと思うんですけど、普通の、えーと、マグルの街中に出てくるような、
   危険な魔法生物に心当たりは有りませんか?」

ロックハート「……はい?」
218 : [saga]:2013/01/24(木) 19:34:01.42 ID:xkFMgk9u0

マミ(私はあれから、見滝原で遭遇したあの怪物――
   佐倉さんと一緒に戦ったあの正体不明の怪物のことを、誰かに聞くことはしなかった)

マミ(一応、ホグワーツに戻ってから図書室で調べはしたのだけど、結局それらしいものは見つからなかった)

マミ(一番確実なのは佐倉さんに聞くことなのだろうけど……ホグワーツに戻ってしまった今では、帰るまで聞くことはできない)

マミ(だから私は考えたのだ。この学校で、一番危険な魔法生物に詳しいであろう――)

マミ(ロックハート先生に話を聞くことを! 魔法生物学は三年生からの科目で先生と面識ないし!)

マミ(決して、ロックハート先生のお部屋にお邪魔する口実ってわけじゃないんだから!)




ロックハート「ふむ。得物を奇妙な空間に隔離して、おまけに手下の怪物をたくさん連れてる魔法生物ですか……」

マミ「ええ、友達が襲われたらしくて……図鑑で調べたんですけど、分からないし」

マミ(私が襲われた、っていうと心配かけちゃうものね)

ロックハート「――なるほど! それはきっとゲルゲルムントゾウムシでしょう!」

マミ「む、むし? 虫なんですか、あれ? とても大きかったんですけど――いえ大きかったそうですけど」

ロックハート「ははん? いいですか、マミ。虫だっておっきい奴はおっきいんです。
        あれはだいぶ前ですが、私がアフリカの密林で――」



十五分経過



ロックハート「――そして、そこで私の呪文が炸裂し、みごと巨大女王蟻を倒した、というわけですよ!」

マミ「ああ素敵です。素敵ですロックハート先生!」ウットリ

ロックハート「当然です! ロックハートが素敵なのではなく、素敵なのがロックハートなのですから!
        まあそういうわけなので、そのお友達にはあんまり暗くてジメジメしたところには近づかないように、と伝えてくださいね」

マミ「はい! どうもありがとうございました! やっぱり先生は凄い魔法使いなんですね……!」

ロックハート「いやあ、はっは。それほどでも……ありますがねっ☆」キラッ
219 : [saga]:2013/01/24(木) 19:35:11.80 ID:xkFMgk9u0

ロックハート(これですよ これ!これこそ、このギルデロイ・ロックハートのイメージ!
        こういう役こそわたしのキャラクターです! ハハハハハハ !)

ロックハート(いかに狂的かつ強敵なファンであろうとも所詮は小娘。
        海千山千のこの私なら軽くあしらえるというものです!)

ロックハート「さて、マミ。このくらいでいいでしょう? そろそろ夕食の時間ですし、戻ったほうが――」

マミ「はい。あ、でも最後にもうひとつだけ」

ロックハート「おやおや、なんとも欲張りな子猫さんですね☆ さて、何がお望みですか?」

マミ「あの……サ、サインを頂けませんか? この教科書に……」

ロックハート「なるほど。でも今は一応、私は教師なのですがね? まあでも、仕方ありません!
        勉強熱心な生徒に、ご褒美としてあげるなら文句も出ないでしょう!」サラサラッ

マミ「わ、わあ! あ、ありがとうございます! 一生の宝物にしますね!」

ロックハート「ええ是非に。あなたのようにチャーミングな子に持ってもらえていれば私のサインも幸せでしょう!」

マミ「え、あ、そんな、チャーミングだなんて……」プシュー

ロックハート(ふふっ。容易い容易い! これでもう恐れるものは何も――)




ハーマイオニー『アーローホーモーラァアアアアアアアアアアアアア!!!!!!(開錠せよ)』ピシャーン!

    メキメキッ バギッ!


マミ「きゃあ! ドアが吹き飛んで……は、ハーマイオニーひゃんっ!?」ムニッ

ハーマイオニー「マーミー? 抜け駆けとはいーい度胸じゃなーい?」ギュゥゥッ

マミ「いひゃいいひゃい! ほ、ほっへを摘まないで! にゃんでここが……」

ハーマイオニー「あなたの猫に聞いたのよ!」

マミ(きゅ、キュゥべえ! 裏切り者ぉ……!)
220 : [saga]:2013/01/24(木) 19:36:25.12 ID:xkFMgk9u0

◇◇◇


QB「だって聞かれたんだもの……あ、ハリー。それ動かしたらチェックメイトされるよ」

ハリー「あ、本当だ。危ない危ない。じゃ、こっちのビショップを……キュゥべえと組むとロンともいい勝負になるね」

ロン「僕のスキャバーズよりよっぽど役に立つなキュゥべえ……あっ、ハリー。どう動かしてもあと五手以内に詰むよ、これ」


◇◇◇




ハーマイオニー「ほら! もう夕飯の時間なんだから行くわよマミ! 
          ロ、ロックハート先生、また今度、ゆっくり効く毒薬のことでお尋ねしたいことが――」

マミ「や、ごめん! ごめんなさいハーマイオニーさん! 今度は誘うから! だから耳を引っ張らないでぇ……!」


バタン!


ロックハート「……」


 その時、ロックハートは吹き飛んできたドアの下敷きになりながら思った。


ロックハート(やっぱり、あの二人怖い……!)ガクガク
221 : [saga]:2013/01/24(木) 19:37:06.70 ID:xkFMgk9u0

数日後 土曜日 グリフィンドール談話室



マミ「はー。お休みの日って素敵よね。
   こうして談話室でお茶を飲みながら、外の素晴らしい景色を眺めてるだけで癒されるわ……」

QB「ついでに朝寝坊もできるしね。マミったら涎たらしながら昼近くまで寝て――」

マミ「えいっ」ムギュッ

QB「きゅっ!?」


 ぱたん


ハリー「やあマミ……あれ、どうしたの? キュゥべえが潰れたシフォンケーキみたいになってるけど」

マミ「ちょっと天罰が下って……って、どうしたの? ハリーくんもロンくんも、何か暗い顔してるわね?
   クィデッチの練習に行ったんじゃなかったの?」

ロン「スリザリンの連中のせいで練習はできなかったんだ。最悪だよ……まあ多分、僕はナメクジの呪いのせいもあるんだけど……」

マミ「ナメクジの呪い? それって何――」

ロン「おえーっ」ボタボタ

マミ「あ、もういいわ。分かったから」

QB「凄いや、ロンの口から生命が誕生した! エントロピーを凌駕してる!」
222 : [saga]:2013/01/24(木) 19:37:38.34 ID:xkFMgk9u0

ハリー「クィデッチの練習ができなかったのもそうだけど……僕とロンは今夜、罰を受けることになったんだ。
     まったく、ついてないよ……」

マミ「罰?」

ハーマイオニー「ほら、この二人。空飛ぶ車で校庭に突っ込んだでしょ? その処罰よ」

ハリー「まあ、退学になるよりはましだけどさ。はぁー、でもロックハートのファンレターに宛名を書くなんて……」

マミ「ろ、ロックハート先生の!? ……ねえハリーくん、手伝ってあげましょうか?
   あ、もちろん、これは善意からの申し出で、決してやましいことはないのよ? ……ひゃぅ!?」ムイッ

ハーマイオニー「マーミー? 抜け駆けは無し、って言ったそばからこれかしら? いけないのはこの口かしら?」ギュッ

マミ「ひがう、ひがうのよ! これは条件反射的にゃあれで――」

ハーマイオニー「嘘おっしゃい! ……そういうわけで、ハリー? 手伝いには私が行くわ。
          ロックハート先生にはあなたから伝えて? あと透明マントも貸してくれると――むぅっ!?」グイッ

マミ「ひゃーまいおにーひゃんこそ、抜け駆けじゃないひょれは!」ギュゥッ

ハーマイオニー「離しなひゃいマミ! あにゃたはこの前行ったでひょう!?」ギュゥゥッ


         じたばた じたばた


ハリー「お昼ご飯食べにいこうか? キュゥべえ、おいで」

QB「ありがとう、ハリー。ああ、ロン? ナメクジが止まらないならほら、ビニール袋使うかい?」

ロン「ああ、これマグルの道具かい? どうも、使わせてもらうよ」
223 : [saga]:2013/01/24(木) 19:38:47.83 ID:xkFMgk9u0

夜 ロックハートの部屋


ロックハート「おお! これはアデラ・エインズワース! 最近よくファンレターをくれる子です!」サラサラ

ハリー「はぁ、そうですか」カリカリ

ロックハート「はっはっは、ハリー? 気のない返事をしても、君が有名人に憧れているのは分かりますよ? 
        確かに君も、ほんの少しばかり有名なようですが――」

ハリー「あ、マミだ」

ロックハート「!?」ビクッ

ハリー「――っと思ったら、違う宛名でした。マリーか……」

ロックハート「……ほっ」サラサラ

ハリー「……」カリカリ

ロックハート「……ハリー! そうだ、そういえば君がサイン入りの写真を配ってるとかいう噂を耳にしたのですがね?
        有名人の私が思うに、まだ君はその時期では――」

ハリー「ハーマイオニー?」

ロックハート「!?」キョロキョロ

ハリー「……がここにいれば、きっと宛名書きも早く終わるんだろうなぁ」

ロックハート「……呼んじゃだめですよ? あくまで、君の仕事なのですから」

ハリー「はい、分かってます」カリカリ

ロックハート「……」サラサラ

ハリー「……」カリカリ

ロックハート「……ハリー、そういえば――」

ハリー「マミ・グレンジャー!」

ロックハート「ひぃ!?」ガタッ

ハリー(便利だな、あの二人。ロックハート避け呪文と名付けよう)


??『――腹が減った。食い殺してやる――!』


ハリー「……! 先生、何か聞こえませんか!?」

ロックハート「え、何も聞こえませんよ? ははん、さては寝ぼけてますねハリー?
        もうこんな時間ですか。では、このくらいで終わりにしましょう」

ハリー(……ロックハートには聞こえてない? でも空耳にしてははっきりと……)
224 : [saga]:2013/01/24(木) 19:41:07.27 ID:xkFMgk9u0
10月半ば



マミ「キュゥべえキュゥべえ! 保健室のポンフリー先生が"元気爆発薬"をくれたわ!
   風邪の予防にとってもいいんですって!」

QB「へえ。そりゃよかったね。で、君はなんでそれを片手ににじり寄ってくるんだい?」

マミ「飲ませてあげるわ! 風邪ひいたら大変だし!」

QB「君が先にお飲みよ。僕は後でいいからさ」

マミ「そんな、遠慮しなくていいわよ――そして飲んだら私に味を教えてね?」グイグイ

QB「いやいや、そんな。マミに先に飲んでほしいな。飼い主の健康を、僕は一ペットとして祈っているよ」グイグイ

マミ「い・い・か・ら、飲みなさいよぉぉぉぉ……!」グググ!

QB「き・み・が、先に飲めよぉぉぉぉおおおお……!」グググ!


ジニー「はぁ……」テクテク


マミ「あっ、ジニーさん……どうしたのかしら。何か元気が無さそうね?」

QB「……マミ? 先輩として、ここはケアをしたほうがいいんじゃないかな?」

マミ「あら、そう? キュゥべえがそういうんじゃ、仕方ないわね……こんにちは、ジニーさん!」

QB「やあジニー! 調子はどうだい?」

ジニー「あ、マミに……キュゥべえ」

QB「おやおや? 声になんだか元気がないよ?」

マミ「あら、大変! もしかしたら風邪かもしれないわね?」

ジニー「いやあの、これは別に風邪とかじゃ――」

QB「そんな時はこれ! マダム・ポンフリー印の"元気爆発薬"!」

マミ「一口で元気百倍! さ、ジニーさん? 口を開けて?」
225 : [saga]:2013/01/24(木) 19:42:03.47 ID:xkFMgk9u0

ジニー「あの、本当に大丈夫だから……」

QB「……飲んでくれないのかい? ジニーの為に僕が用意したんだけど……」キュップーイ

ジニー「……えっ?」キュンッ

QB「ここのところ、元気が無かったみたいだからさ。せめて、薬でもと思って……」キラリン

QB「僕の薬を飲んで、健康になっておくれよ! そう思ってたんだけどな……」チラッ

ジニー「……飲む! 飲むわ! せっかくキュゥべえが用意してくれたんだもの!」

マミ(ジニーさんの猫好きを利用して……! キュゥべえ、恐ろしい子……!)

ジニー「じゃ、いただきます」ゴクッ


  ぼふん!


ジニー「……」シュゥゥウウウウ

マミ「……耳から煙が……」

QB「……味はどうだった、ジニー?」

ジニー「……先輩? 私が飲んだんだから、先輩とキュゥべえも飲むべきですよね?」ニッコリ

マミ「あ、ま、待って! 離せばわかるわ。ていうかなんで急に敬語に……ちょ、やめっ……!」

QB「ぼ、僕をいじめるのかいジニー? しないよね、猫好きだもんね、君……え、予防注射みたいなもんだって?
   いや待って、そこは口じゃ……」


  ぼふん! ぼふん!


.

ハリー「やあマミにキュゥべえ。どうしたの? 耳から煙を噴きだして……」

マミ「……気にしないで」モクモク

QB「なんだかこそばゆいね、これ」モクモク

ハリー「あー、まあいいけどさ。ところでちょっとお願いがあるんだけど――」



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226 : [saga]:2013/01/24(木) 19:42:57.42 ID:xkFMgk9u0


マミ「"絶命日パーティ"? ゴーストが自分の死んだ日を祝うの? それに、私を?」

ハリー「うん。ほとんど首なしニックが是非に、って。
     僕、この前彼に助けてもらったから断りきれなくて……」

マミ「それはいいけど……なんで私を?」

ハリー「ほら、僕たちが入学した時さ。君、ニックのことをすごく怖がってたろう?
     あの反応が良かったらしくて……なんかね? パーティでも怖がって欲しいんだって」

QB「ゴーストにとっては、怖がられることがひとつのステータスなのかな」

ハリー「そうみたい……で、どうかな。ハーマイオニーとロンも来るんだけど」

マミ「ハーマイオニーさんも……そうね、それじゃあ私も参加していい?
   絶命日パーティなんて、参加する機会もなかなか無さそうだし……」

ハリー「いいの? 同じ日にやるハロウィンパーティの方は、骸骨舞踏団とかが来るらしいけど……後悔しない?」

マミ「そっちも楽しそうだけど……でも、どんなパーティでもお友達と一緒ならきっと楽しいわよ。
   後悔なんて、あるわけないわ」
227 : [saga]:2013/01/24(木) 19:43:24.45 ID:xkFMgk9u0

10月31日 絶命日パーティ 帰り道


マミ「失敗した……」

ロン「いいよ、わざわざ言わなくて……みんな思ってるんだから」

QB「ゴーストってあんなにいっぱいいるんだねぇ。あれはあれで貴重な体験だと思うよ。
   まあ、マミはほとんど気絶してたから体験してないけど……」

マミ「非常識よ……目があった瞬間、みんな一斉に首を投げつけてくるんだもの……」ガタガタ

ロン「多分、あれじゃないかな? ニックが君に目を付けたみたいに、首狩りクラブの面々も雰囲気を察したんだと思うよ」

QB「狩りクラブの代表ゴースト、"彼女には才能がある。死ぬ時はぜひ斬首で"ってマミのこと絶賛してたけど、どうするマミ?」

マミ「ぜっっったいに嫌! ……へくちゅっ」

ハーマイオニー「大丈夫、マミ? 寒かったもの……ゴーストが集まると気温が下がるのね」ガチガチ

ハリー「それよりおなかが減ったよ……ゴースト用の料理って全部腐ってたりカビが生えてたりしたし……」

ロン「急げば、まだ大広間にデザートが残ってるかも……」



??『引き裂いてやる!』



ハリー「!? 今の声……あの時のだ。ロックハートの部屋で聞いた……」

ロン「ハリー? どうしたんだよ、一体」

ハーマイオニー「声……? 前に、あなたが聞いたっていう? 私たちには聞こえないけど……」

ハリー「しっ! 静かに……移動してる……こっちだ!」ダッ

マミ「あ、ちょ! 待ってってばハリーくん!」

QB「追いかけよう。何か様子が変だ」
228 : [saga]:2013/01/24(木) 19:44:10.59 ID:xkFMgk9u0

三階 廊下


ハリー「ここだ……声はここで途切れた……」

ハーマイオニー「……! 見て、あそこの壁!」


<秘密の部屋は開かれたり。継承者の敵よ、気をつけよ>


ロン「文字……? "秘密の部屋"って……」

QB「……それだけじゃないみたいだ」


ノリス「」


ロン「ミセス・ノリスだ! フィルチの飼い猫の――死んでるのか?」

マミ「そんな……酷い。なんで……」

ハーマイオニー「……とにかく、ここを離れましょう。あんまり他の人に見られるのは……」

ドラコ「――次はお前らの番だぞ、穢れた血め!」
229 : [saga]:2013/01/24(木) 19:44:39.10 ID:xkFMgk9u0

ハリー「マルフォイ!? どうして――そうか、パーティが終わったのか!」

ロン「……ってことは、当然こいつだけじゃなくて――」


     ガヤガヤ ガヤガヤ


「おい、どうした?」「ポッターだ」「ミセス・ノリスが死んでるぞ――?」

          
                      ざわざわ ざわざわ


フィルチ「なんだ――ミセス・ノリスがどうしたと?」

マミ「ふぃ、フィルチさん……」

フィルチ「なんだ、トモエか。一体これはなんの騒ぎ……」


ノリス「」


フィルチ「あ……ああ……! ミセス・ノリス! 誰だ! 誰がこんなことを!」

マミ「あの、これは――」

フィルチ「お前たちか! お前たちがミセス・ノリスを! 殺してやる! 私がお前たちを殺して――!」

マミ「……っ」ビクッ

ハリー「違います! 僕たちはただここに居合わせただけで――」

ダンブルドア「――静まれ! 生徒たちは各寮へ」

ハリー「ダンブルドア先生! 違うんです。これはあの――」

フィルチ「猫が! こいつらが私の猫を!」

ダンブルドア「アーガス、とにかく場を移そうぞ。居合わせた君らも、一緒においで。
       ああ、ドラコ。すまんがミネルバとセブルスを呼んできてくれんかね?」
230 : [saga]:2013/01/24(木) 19:45:08.67 ID:xkFMgk9u0

ロックハートの部屋


ダンブルドア「お邪魔してすまんのう、ギルデロイ。君の部屋が一番近かったでな」

ロックハート「いやそんな――校長を私の部屋にお招きするなど真に光栄……」チラッ

マミ・ハーマイオニー「?」

ロックハート「こ、光栄ですからね……! それよりも猫でしたか! 私が拝見しましょう!
       むむ、これは異形変身拷問の呪いですね……とても苦しんで死んだに違いありません」

フィルチ「ああ、ミセス・ノリス!」

ダンブルドア「ギルデロイ、ちょいと外れのようじゃのう。これは異形変身拷問ではないよ」

ロックハート「はっはっ、やはり校長は見抜かれていましたか! そう、これはアバダケダブラ――」

ダンブルドア「――でもないのう。そもそも死んでおらんのだし」

ロックハート「やはりそうでしたか! ええ、これは固まってるだけでしょう」


ハーマイオニー「凄いわ! ダンブルドア先生と互角に話しているなんて!」

マミ「さすがロックハート先生……」

ロン「おい、誰か耳かき持って来いよ。絶対この二人の耳の穴塞がってるから」

231 : [saga]:2013/01/24(木) 19:46:02.54 ID:xkFMgk9u0

フィルチ「じゃあミセス・ノリスは治るんですか!?」

ダンブルドア「ああ、スプラウト先生がマンドレイクを育てておられる。
        成長したら、すぐにでも解呪薬を作ってくれるじゃろう。のうセブルス?」

スネイプ「御命令とあらば――しかし校長? その前に犯人をみつけなくては……
      猫では証言ができないからして」

フィルチ「あいつらだ! ポッター達がやったんだ!」

マミ「そんな! フィルチさん、私たちは――」

フィルチ「うるさい! お前だって、魔法使いなんだろう! スクイブの私を馬鹿にしてるんだろう!
      同情などするべきではなかった! 貴様に、私の気持ちなど――!」

マミ「……っ」

マクゴナガル「アーガス、おやめなさい。この子たちにそんな真似はできませんよ。技術的にも、性根的にもね」

マミ「マクゴナガル先生……」

フィルチ「……」

スネイプ「ですが副校長。彼らが正直にすべてを話してるとは思えないのですが?
      ポッター、なぜあの時間にあの場所に? 他の生徒はハロウィンパーティに出ていたが?」

ハリー「僕たち、ニックに絶命日パーティに招待されて――」

スネイプ「では、その後にハロウィンパーティに来なかったのは?」

ハリー「それは……」

スネイプ「ふむ、話せない、と。……ご覧の通りです。ここは彼らが正直に話してくれるよう、処罰を与えては?
      たとえば、そう……クィデッチ・チームから外すなど」

マクゴナガル「それとこれとなんの関係が? 猫はブラッジャーに押しつぶされでもしてましたか?」ギロッ

ダンブルドア「よい、疑わしきは罰せずじゃ……今宵はこれで解散としよう」

232 : [saga]:2013/01/24(木) 19:46:32.73 ID:xkFMgk9u0

グリフィンドール談話室


ハリー「あの声のこと、話した方が良かったのかな……」

QB「どうだろう? 君以外には聞こえない声なんて証明しようがないし、あの場を混乱させるだけだと思うけど」

ロン「ああ。狂気の沙汰だよ。気味が悪いって、ハリーも思うだろう?」

ハリー「うん。それに、あの言葉――秘密の部屋って一体なんなんだろう……?」

ロン「うーん。昔聞いた覚えがあるような……」

ハーマイオニー「私も、何かで読んだ覚えがあるのよね……」

マミ「……」

ハリー「秘密の部屋に関しては、これ以上考えてても仕方ないか……。
     ……そういえば、ロン。フィルチのいってたスクイブってなに?」

ロン「ぷっ、くくっ……ああいや、別におかしいことじゃないんだけどさ。
   スクイブっていうのは、魔法使いの家の生まれなのに、魔力をもってない人のことなんだ」

マミ(……)


     『なあ、トモエ――本当に才能が無いということが、どういうことか分かるか?』


マミ(そうか、だからフィルチさんは、失敗ばかりの私に――)


ロン「でもこれでフィルチが僕たちに強く当たる理由が分かったよ。妬ましいんだろうね、ははは!」

マミ「――別に、笑うことじゃないでしょ」

ロン「うん? なんだって?」

マミ「……別に、なんでもないわ。おやすみ!」スタスタ

ロン「……なんであんなに怒ってるんだ、あいつ? そりゃ、ちょっとブラックな笑いだったけどさ」

ハリー「……ロン、君ってたまに地雷を思いっきり踏み抜くよね」

ハーマイオニー「……マミ」
233 : [saga]:2013/01/24(木) 19:47:22.29 ID:xkFMgk9u0

翌日


マミ「……」

QB(昨日からマミはずっとだんまりだ。あの三人組とも距離をおいて、ずっとひとりきりだし……
   ……ん、あれは?)

ジニー「……」スタスタ

QB(ジニーだ。相変わらず元気がないな。寒いし、こりゃ本格的に風邪かな?)ピョイッ

QB「やあジニー。元気してるかい?」

ジニー「ああ、キュゥべえ。今日は薬を持ってないみたいね?」

QB「もう懲りたよ。あの酷い味は猫栄養ドリンク以来だ……で、君の方はどうだい?
   調子が戻ってないみたいだけど」

ジニー「ええちょっと……ほら、ミセス・ノリスが……」

QB「ああ……」

ジニー「ロンは"あんなのいなくなった方がせいせいする"なんて言ってたけど、私……」

マミ「……そうよね。そんなの、許されるはずないわ」

ジニー「! マ、マミ! いたのね……」

マミ「ええ。ジニー。そうよ、フィルチさんの猫を石にするなんて……許せないわ」

QB「君、昨晩はだいぶ酷いこと言われてたじゃないか。それでもかい?」

マミ「誰だって、大切なものが奪われれば取り乱すに決まってるわよ……ええ、キュゥべえ、私は決めたわ」

QB「決めたって、一体何を?」

マミ「決まってるでしょう?」


マミ「この私が、フィルチさんの猫を石にした犯人を絶対に捕まえて見せるわ!」


ジニー「……」
234 : [saga]:2013/01/24(木) 19:47:48.96 ID:xkFMgk9u0
とうかしゅうりょー
235 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/24(木) 20:01:42.89 ID:Y5fP6jMr0
来てたか、乙
236 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/24(木) 21:55:00.91 ID:TkZECkuko
待ってたぜ!
237 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/24(木) 21:57:57.66 ID:RjcAbUhs0
238 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/24(木) 23:03:25.24 ID:aNLJTgeIO
おつおつ
239 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/25(金) 01:43:17.10 ID:4luao6WN0
乙でした
絶命日パーティってことは映画じゃなくて原作がベースか有り難い
となると調理室も……ウェヒヒヒヒ
240 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/25(金) 03:44:41.29 ID:CfEpPQ6x0
ちょっと待てマミはマグルの出だぞ……
241 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/25(金) 12:50:13.63 ID:uAsDNFEn0
マミさんに首なし狩りはトラウマものだろww
242 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/25(金) 15:29:02.27 ID:QQ12ZKUPo
「死ぬときはぜひ斬首で」ってフラグ建ててんじゃねぇよww
243 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/26(土) 12:15:54.99 ID:UiaiYqYIO
>>239
調理室ってなんだっけ
244 :239 [sage]:2013/01/26(土) 22:48:46.34 ID:TMC9227T0
>>243
調理室ってか厨房のこと
本編と結構な関わりを作るはずだったけど、映画では存在自体カットされてた
詳細はネタバレに繋がるから多く言えないけど、ハーマイオニーが青い子みたいになる場所でもある
245 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/27(日) 14:52:21.70 ID:gZkETKdbo
SPEWェ…
246 : :2013/02/05(火) 19:45:28.64 ID:ktpGB5m+0
書いて消して書いて消してを繰り返してちっとも進まぬ由々しき事態

もう、あれだね。とりあえず今日の21:00までに書きたいとこまで書けなかったら書けてる部分だけ投下しますわ
247 : :2013/02/05(火) 21:07:15.57 ID:ktpGB5m+0
なんか自分で締め切り設定したら筆が乗り出した。もうちょっとだけ書かせてください
248 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/05(火) 21:20:59.85 ID:DuW7CmNl0
がんばって
249 : [sage saga]:2013/02/05(火) 22:07:06.47 ID:ktpGB5m+0
スーパー筆乗りタイムが終了してしまった。よし、かけてないところは即興で投下しようそうしよう。
決して、ジョジョスレの投下を見守ってたら時が経つのを忘れたわけではないのですよ!
では投下ー。
250 : [sage saga]:2013/02/05(火) 22:09:35.91 ID:ktpGB5m+0

魔法史の授業


ビンズ「……であるからして、千年以上も昔にこのホグワーツを創立した四名、
    その中のひとりであるサラザール・スリザリンが他の創設者も知らぬ隠された部屋を作ったという話があるのです」

ビンズ「それが秘密の部屋、と呼ばれておるものの正体なわけですな。
     純血主義だったスリザリンが純血でない魔法使いを排除するための怪物を封じ込め、
     スリザリンの継承者だけがその怪物を解き放ち、操ることができるという」

ビンズ「無論、戯言であるわけですが。部屋などない。よって怪物もいない。
     歴代の校長や著名な魔法使いが調べても、その痕跡すら発見できなかったのですから」

ビンズ「さて、よろしければ歴史に戻ることにしましょう。馬鹿馬鹿しい作り話などではない、確固とした事実にね」


◇◇◇


QB『……なるほど。ビンズ先生の話で大体は分かったかな。つまりその秘密の部屋の怪物とやらが犯人というわけか。
   確かに、事件のあった廊下にも"秘密の部屋"という文字が書かれていたね』

マミ『……でも本当にそんな怪物が? 他の可能性もあるんじゃないかしら。
   例えば、そうね――スリザリンの生徒が呪いを掛けたとか』

QB『それは有り得ないんじゃないかな。生徒が掛けた呪いくらい、先生なら解けるだろう。
   マンドレイクを使った解呪薬でしか解けないっていうのは……』

マミ『……ヴォルデモートみたいに本当に強力な闇の魔法使いか、危険な魔法生物かってこと?』

QB『ああ……でも闇の魔法使いって線はないと思うな』

マミ『え、どうして? 実際、ヴォルデモートは去年ここに忍び込んだじゃない』

QB『ヴォルデモートは賢者の石を手に入れるって言う目的があっただろう?
   わざわざホグワーツに忍び込んで、やることが猫を石にするだけっていうのはいくらなんでも間抜けだ』

マミ『でも、これから生徒を襲うつもりかも……』

QB『なら最初から生徒を標的にすべきだよ。これからは警備も強化されるだろうし、生徒自身だって警戒するだろう。
   つまり猫が襲われたのは偶然だったんだ。その魔法生物は多分、生きてるものを全部標的にしちゃうんじゃないかな』
251 : [sage saga]:2013/02/05(火) 22:10:39.38 ID:ktpGB5m+0

マミ『……でも、ビンズ先生の話だと"怪物"は"継承者"に操られるんでしょう? 
   壁に文字が書いてあったから、人間が関わってるのは確かよね?』

QB『そこが分からないんだよなぁ。もちろん伝説を鵜呑みにする気はないけれど。
   いったんまとめてみようか。マミ、羊皮紙と羽ペンを借りるよ。現状、確実に分かってるのはこの二点だね』サラサラ


1.猫を石にしたのは何らかの魔法生物。

2.壁に文字が書いてあった→人間が関わっている。


QB『暫定的に、壁に文字を書いた人物を継承者。魔法生物を怪物と呼称しようか。で、こっちが推測』サラサラ


a.継承者は怪物と関わりがある?

b.怪物は継承者に操られている?


マミ『キュゥべえ、これaとbの違いってあるの? どっちも同じように見えるんだけど』

QB『ミセス・ノリスを襲ったっていう点がどうにも理解できないんだ。
   もしかすると継承者は怪物を解き放っただけで、操ることはできないのかもしれない』

マミ『そっか……でも怪物を操ってる人がいるかはともかく、危険な魔法生物がいるのは確かよね。
   その正体とか住処を突き止めて、先生方に報告すれば……』

QB『……マミ、本当に君ひとりでやる気かい? 怪物と遭遇してしまったらどうする?
   君はまだ二年生で、大した呪文も使えないんだよ?
   魔法生物の中には、一流の魔法使いが使うような魔法でさえ跳ね返してしまうようなのもいるのに』

マミ『……それでも、やらなきゃ。ここ最近のフィルチさんを見た?』

QB『明らかに憔悴してるね。通常の業務に加えて、猫の犯人捜しだ。このままだと倒れるんじゃないかな?』

マミ『そうよ……早く、犯人を、怪物を見つけなきゃ……』

QB『……でも、一人でやる必要はないと思うけどな。ハーマイオニーを誘ってみたらどうだい?
   彼女の知識量は、きっと役に立つと思うけど』

マミ『……嫌。だってきっと、ハーマイオニーさんはロン君たちと一緒に探そうとするもの』

QB『この前のロンの発言を気にしているのかい? 君もわかってると思うけど、フィルチは決して優しい職員ではないよ。
   多くの生徒に煙たがられるのも頷ける話だ』

マミ『分かってるわよ。ロンくんだって悪気があったわけじゃないって……でもそれなら、私がフィルチさんのことをどう思おうとも勝手でしょ?』

QB『まあ、君があくまでそういうなら僕も強くは言わないけどさ……それで、具体的にはどうするんだい?』
252 : [sage saga]:2013/02/05(火) 22:12:20.99 ID:ktpGB5m+0

夕食後 三階 廊下


マミ「というわけで、犯行現場にやってきたわけだけど」

QB「誰もいないね。まあ、あんな事件があった後だし……なんでここに来たんだい?」

マミ「犯人は犯行現場に戻るって、本に書いてあったもの!」ドヤッ

QB「その犯人に出会ったら、君も石像の仲間入りなわけだけど……」

マミ「虎穴に入らねば虎児を得ず、よ!」

QB「……まあ、犯行現場を調べなおすって言うのは悪くないと考えだけどね。
   とはいえ、何の変哲もない廊下だけど」

マミ「そう言われるとそうなのだけど……キュゥべえ、あなたは何か気づいたことってある?」

QB「そうだね……そういえばあの時は、床がびしょ濡れだった」

マミ「床が? そうだったかしら?」

QB「君はミセス・ノリスに注目していたから……でも確かに、結構な量の水が廊下にぶち撒かれていたよ。
   バケツ一杯じゃ足りないくらいだった。あれはどこから……?」

マミ「それって、あそこからじゃない?」


 "女子トイレ"


QB「ああなるほど、排水溝がつまりでもしたのかな? そういえば"故障中"って張り紙もされてるね」

マミ「あら、そういえばこのトイレって……」

QB「どうしたの、マミ?」

マミ「何だったかかしら……確か噂があって……三階のここのトイレは入っちゃ駄目とかいう……」

QB「故障中だからじゃないかい?」

マミ「そうだったかしら……まあいいわ。とにかく何か手がかりがあるかもしれないし、入ってみましょう」
253 : [sage saga]:2013/02/05(火) 22:14:22.10 ID:ktpGB5m+0

 女子トイレ


QB「うわ、ボロボロじゃないか……いつから故障中なんだろう、これ」

マミ「本当。これじゃ使えないわ……そういえばキュゥべえ。あなたってオスなの、メスなの?」

QB「えっ、いまさらそこ気にするのかい?」

マートル「……なによぅ。また誰か来たの? わたしを馬鹿にしに……」ヌゥッ

マミ「きゃっ!?」

QB「ゴーストだ。女の子の……ん? どこかでみたような……」

マートル「あんた達、わたしのこと知らないの? ……って、そういえばこのくるくる頭は見たことあるわね」

QB「ああ、思い出した。絶命日パーティの」

マートル「そうだ、首を投げつけられて気絶してた奴だ。なぁに、あんた怖がりなのぅ? にひひひっ」

マミ「こ、怖くなんてないわ! ちょっとびっくりしただけだもの!」

マートル「……へぇ。そう」スゥッ

QB「あ、床に潜っていっちゃった……」

マミ「き、気を悪くさせちゃったのかしら……?」

マートル「――ばぁぁあああああああ!」ブラーン

マミ「いやあああああああ!? 首が、天井から首が!?」

マートル「あははは! いーい怖がりっぷりじゃない? わたしより弱っちそうな奴は初めて見たわ」

QB「あんまりいじめないでやっておくれよ。マミはメンタル弱いんだから。ここ一年でだいぶ良くなったけど」
254 : [sage saga]:2013/02/05(火) 22:16:16.22 ID:ktpGB5m+0

マミ「はぁはぁ……も、もう。ほんとに驚いたわ……」

マートル「きしし」

QB「ニックがマミを絶命日に呼んだの、分かる気がするなぁ」

マートル「そぉねぇ。こんなビビり虫そうそういないわ」

マミ「べっ、別にビビり虫なんかじゃ!」

マートル「毎晩、あんたの部屋に出没してやってもいいのよ?」

マミ「ビビリ虫です……」グスッ

マートル「あー久しぶりに気分がいいわっ。死んでから初めてね……んで、あんたらわたしのトイレに何の用なの?
      悪いけどお腹がピンチっていうんなら別のところで……」

マミ「違うの。あのね、ハロウィンの日にここの前の廊下で猫が石にされて……」

マートル「ああ、あんたらもそれの犯人捜ししてるんだ?」

QB「ってことは、僕たちの他にも誰か来たのかい?」

マートル「えーえおいでなすったわよ。赤毛ののっぽと箒頭の出っ歯、あとクシャ髪の眼鏡が」

QB「……ハリー達かな。彼らはなんて?」

マートル「おかしなものを見なかったかって……
      その時も言ったけど、わたしはあの日、排水溝の中でずっと泣いてたからなーんも見てないわ」

マミ「そうなの……何か手がかりがあればと思ったんだけど」キョロキョロ

マートル「んー。手がかりは知らないけど、今は機嫌がいいから面白いこと教えてあげようか?」

マミ「面白いこと?」
255 : [sage saga]:2013/02/05(火) 22:17:08.74 ID:ktpGB5m+0

マートル「ゴーストが壁をすり抜けられるのは知ってるでしょ? 
      でもまあ、なんでもかんでもすり抜けられちゃあ困るから、魔法ですり抜けられないようにすることもできるわけよ」

QB「確かに。じゃないとゴーストが諜報役として跋扈することになりかねないしね」

マートル「そう。でもそんな魔法をいちいち掛けるのも面倒ってことで、重要な箇所にしか"ゴースト避け"はないの。
     だけどね、このトイレってなんでかゴースト避けの魔法がかかってるのよ」

QB「だけどさっき、君は床や天井をすり抜けたじゃないか」

マートル「トイレの一部に、ってこと。ほら、そこの手洗い台がそうよ。そこはわたしでもすり抜けられないの」

マミ(良く考えたら、トイレにゴースト避けが掛かってないのってプライバシー観点で致命的な気がするのだけど……)


 手洗い台


マミ「普通の洗面台みたいね……ん、この蛇口壊れてる」

マートル「そこ、ずっと壊れっぱなしよ。わたしがまだ生きてた頃から。修理もできないみたい」

マミ「うーん……特に変わったところはなさそうだけど……あっ、蛇の落書きがあるわ。
   ふふっ、何かこういうの見ると和むわね」

QB「……確かにこの手洗い台は気になるな。ゴースト避けなんて、洗面所に掛けても意味ないし。
   マミ、何種類か魔法を掛けてみよう。まずは開錠呪文から……」

マートル「ところで、あんたら平気なの? 
      最近このトイレの前、あの嫌われ者の用務員がずっとうろうろしてるんだけど」

マミ「……! フィルチさんが……」

QB「彼も僕らと同じ思考をしたんだろう。現状、ここくらいしか手がかりはないからね。
   僕らが入るときはいなかったけど、また戻ってくるかもしれない。もう就寝時間も近いし……」

マミ「……そうね、いったん離れましょうキュゥべえ。調べるのはまた今度よ。
   あの、またここに来てもいいかしら? ええと……」

マートル「マートルよ。あんたらはマミとキュゥべえっていったっけ?
      ま、わたしのこと馬鹿にしない奴なら別にいいわ。あんたらは、まあ……及第点ってとこね」
256 : [sage saga]:2013/02/05(火) 22:18:58.44 ID:ktpGB5m+0

グリフィンドール 女子寮


マミ「なんとか就寝時間に間に合ったわね……」

QB「明日からは、フィルチの隙を見てあのトイレのことを調べよう。少なくとも、他の手がかりがみつかるまでは――」


ガチャッ


パーバティ「Zzzzz.....」

ラベンダー「むにゃ……ビンキー……こっちおいで……」

マミ『……みんな寝てるみたい。キュゥべえ、しー、よ?』

QB『うん……だけどマミ、ひとつだけ間違ってる。寝てるのはみんなじゃないよ』

マミ『へ? それってどういう……』

ハーマイオニー「……お帰りなさい、マミ」

マミ「ハーマイオニーさん……」
257 : [sage saga]:2013/02/05(火) 22:21:19.49 ID:ktpGB5m+0

QB「僕は席を外すよ。終わったら呼んでね」タタッ

マミ「あっ、ちょ、キュゥべえ! ああ、行っちゃった……」

ハーマイオニー「……マミ、遅かったわね。どこに行ってたの?」

マミ「……別に。ちょっと図書室で調べものを……」

ハーマイオニー「そう……ねえ、マミ。この前ロンが言ってたこと。あれはね、別に――」

マミ「分かってる。分かってるわよ。気にしないで」

ハーマイオニー「……だったら、また明日から仲良くできるのかしら、私たち」

マミ「……それは」

ハーマイオニー「……あなた、秘密の部屋を――ううん、ミセス・ノリスのことを調べてるんじゃないの?」

マミ「……!」

ハーマイオニー「あなた、他の誰がフィルチの悪口を言っても、いつも曖昧に笑って流すだけだったから。
          もちろん私だって陰口には賛成できないけれど……
          ねえ、マミ。犯人捜しをしてるんだったら、私たちと――」

マミ「し、知らないわ! お休み!」ガバッ

ハーマイオニー「あっ、マミ! 話はまだ終わって――」

マミ「ぐー! ぐー!」

ハーマイオニー「……そう。ええ、そうですか分かったわ分かりましたとも!
          マミがそういうつもりならこっちだって考えがあるんですからね! ふんっ、お・や・す・み!」

マミ「……」

ハーマイオニー「……」




マミ(……怒らせちゃった)グスッ

ハーマイオニー(……やっちゃった)ハァ
258 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/02/05(火) 22:22:45.44 ID:ktpGB5m+0

数日後 闇の魔術に対する防衛術 授業


ロックハート「はい、それじゃ教科書のここからここまでノートに書き写して!
        おっと、読みふけって時間を忘れないように注意してくださいよ!」


ハーマイオニー「……」ガリガリガリ

ハリー「あー、ハーマイ、オニー? そんな力入れて書いたら、羽ペンが痛むと……」

ハーマイオニー「……っ!」キッ

ハリー「あーいや、なんでもないんだ。なんでもね……ロン、どうしよう。この後のあれ……」ヒソヒソ

ロン「なにがあったか知らないけど、この頃機嫌悪いもんなぁ……いざとなったら君が頼みに行けよ、ハリー」

ハリー「勘弁してよ、ただでさえロックハートは……」


ロックハート「さて、そろそろ皆さん写し終ったみたいですね! それじゃあこの部分の再現をしましょうか!
        栄えある相手役を務めるラッキーボーイは――ハリー! さあ、前においで!」


ハリー「ほら御指名だ。なんでかあいつ、僕を目の敵にしてるんだもの。
     今日やるのは……うわ、狼男だ。しかも地面に叩きつけられるとか書いてある……」

ロン「お気の毒様。あとで蛙チョコレートをあげるよ」

ハリー「割に合わないなぁ……でもやってくるよ。あいつをご機嫌にしとかないと、計画が上手くいかないし……」
259 : [sage saga]:2013/02/05(火) 22:24:32.63 ID:ktpGB5m+0

ロックハート「さあハリー! まずはこれを被ってください! じゃ、じゃーん! 狼男の毛皮!」

ハリー(……裏側にMade in Chinaのタグがあるのは黙っておこうか……)



マミ「……」

QB『……マミ、ごめんよ。二人きりで話せば、上手くいくかと思ったんだけど……』

マミ『何のことかしら。知らないわ』

QB『そんなこと言って、ハーマイオニーとあれから一言も口きいてないじゃ』

マミ『知らないわ』

QB『……話を変えようか。マートルのトイレのことだけど……結局、あれから一度も調べられてないね』

マミ『そうね。フィルチさん、ずっとあのトイレの周りにいるものね……』

QB『やっぱり、ここは同時多発テロしかないと思うんだ。僕が遠くで騒ぎを起こすから、その間にマミが……』

マミ『やったらしばらく餌抜きにするわよ、キュゥべえ。フィルチさん、本当に倒れちゃうわ』

QB『……じゃあどうするのさ。このままだと年が明けちゃうよ』

マミ『……ひとつだけ、方法があると思うの。次の土曜の……』


ジリリリリリ!


ロックハート「おっと、もう終わりですか。では皆さん、宿題を忘れないように!」


QB『……なるほど。確かにそれはいいアイディアだ。じゃ、それでいこう』

マミ「ええ、行くわよ、キュゥべえ。寮に戻って細かいところを煮詰めましょう」スタスタ


ロン「お、最後の奴も出て行った……マミか。そういえばあれから口きいてないなぁ。
   はぁ、まだ怒ってるのか……大丈夫かい、ハリー?」

ハリー「いたた。ロックハートの奴、本気で掴みかかるんだものなぁ……おっと、急がないとロックハートの奴までいっちゃう。
     ハーマイオニー、ほら、君がサインを貰ってくるんだろう?」

ハーマイオニー「……分かってるわよ。
          ロックハート先生! 私、図書館からこの本を借りたいんですけど、先生のサインが必要で――」
260 : [sage saga]:2013/02/05(火) 22:28:36.47 ID:ktpGB5m+0

土曜日 グリフィンドール寮談話室


ディーン「急げよネビル! もうすぐクィディッチの試合が始まっちまうぞ!」

シェーマス「っていうか先行ってるからな! 席くらいはとっておいてやるよ!」

ネビル「ああ、待って! 何で今日みたいな日に寝坊を……って、あれ? 暖炉の前に座ってるのは……」


マミ「……」カチャカチャ

ネビル「マミ、何やってるんだい、こんなところで……それなあに? なんかえらく複雑そうな装置だけど……」

マミ「あら、ロングボトムくん。これね、マグルの道具でMDプレイヤーっていうの。
   音を録音できる機能があって、今日の試合の実況を録音しようと思ったんだけど……
   壊れちゃってるみたいで、いま修理してるとこなの」

ネビル「ふぅん? でも急いだ方がいいよ、もうすぐホイッスルだし……」

マミ「ええ、時間ぎりぎりまで粘るけど、間に合わなかったら諦めて行くわ。
   ……ところで、ロングボトムくんはいいの? ゆっくりしてて」

ネビル「え。あ、そうだった! さ、先にいくね! マミ、君も急ぎなよ!」


QB「……よし、行ったね。マミ、ネビルで最後だ。もう僕らのほかは誰もいないよ」

マミ「そうね。それじゃあ早速……」ゴソゴソ
261 : [sage saga]:2013/02/05(火) 22:29:17.71 ID:ktpGB5m+0

クィデッチ競技場


ネビル「はぁはぁ、着いた! ああ、もう始まってる! ロン、試合はどうなってるの?」

ロン「いま始まったところ。ネビルか、遅かったね。トイレかい?」

ネビル「いや、寝坊して……あとマミと談話室で話してたら遅くなった」

ロン「マミ? マミもまだ来てないのか……」

ハーマイオニー「……ネビル、マミはどうしてまだ寮にいたの?」

ネビル「いや、なんかマグルの道具の、なんていったかな、えむでーふらいやー? が壊れたって……
     それでクィデッチの実況を録音したいんだって」

ハーマイオニー「え、えむでーふらいやー? なにそれ、未確認飛行物体?」

ネビル「飛んではなかったよ。えーと、四角くて、黒いヒモが伸びてて、これくらいのサイズで」

ハーマイオニー「ああ、MDウォークマンね。……じゃあそれ、修理しても無駄よ」

ネビル「え、なんでだい?」

ハーマイオニー「だってね、マグルの道具、特に機械製品は魔法力の強い場所だと――」

ロン「おい、見てくれ! あのブラッジャー様子が変だぞ!」

ハーマイオニー「え?」
262 : [sage saga]:2013/02/05(火) 22:30:43.76 ID:ktpGB5m+0

マートルのトイレ 手洗い台


マミ「うん、やっぱり誰もいない。クィデッチの時って、先生方もみんなそっちに行くものね」

QB「この日を調査に充てるのはいい考えだと思う……けど、君が延々とウォークマン弄ってたのには何の意味が?」

マミ「ほら、アリバイ工作って奴よ。何で来なかったの? って聞かれたら、ずっと修理してました、って言うの。
   ……にしてもこれ、本当に壊れちゃったのかしら? このっ、このっ」ポチッ ポチッ

QB「アリバイ工作って……そんなことしなくても、あの熱狂具合じゃ誰がいなかろうが気づかないと思うけど」

マミ「……こ、細かいことはいいでしょ、もうっ。さあ、調査開始よ!
   マートルさんもどっか行っちゃってるし、この隙にぱぱっとやちゃいましょ」

QB「うん、そうだね。じゃあまずは開錠呪文から……」



 数十分後



マミ「……開錠呪文も変身呪文も呪いもダメ、ね。私に使える呪文は、あらかた試したと思うんだけど……」

QB「ミサイルでも傷一つ付かないっていうのはおかしいね。なんでトイレにここまで過剰な防御を……」

マミ「……もうどうしようもないわね、これ。どうしましょうか、キュゥべえ?」

QB「そうだね。これ以上の調査は難しいし、この場所は保留にしようか。
  …… ただ、ひとつだけ分かったことがある」

マミ「えっと、何かしら?」

QB「このトイレの手洗い台は壊れてるってマートルが言ってたけど、それは間違いだ。
   ここまで頑丈に作られたものが壊れるなんてことありえない」

マミ「この洗面所は、最初から壊れてる風に造られたってこと?」

QB「いや、洗面所ですらない。その機能を最初から度外視されているのだから――」


QB「――これは、洗面台の形をした"何か"だろう」



.
263 : [sage saga]:2013/02/05(火) 22:32:15.80 ID:ktpGB5m+0

QB「……まあ、だからと言ってこれが"秘密の部屋"に関連してるか、っていったら別問題だけどね」

マミ「ええ、そうね……もう行きましょうか? クィデッチの試合もいつまで続くか分からないし」

QB「あのスポーツ、競技時間が決まってないんだっけ? 確か最短4秒弱で終わったとか……」

マミ「急ぎましょうか。さすがに4秒ってことはないだろうけど……」


???『……シューッ!』


マミ「? キュゥべえ、いま何か言った?」

QB「? いや? でも、僕にも聞こえたよ。空気が漏れるみたいな音だろう?
   扉の外――廊下から聞こえたように思うけど」

マミ「……って、大変じゃないそれ! もう試合が終わってたりしたら……」

QB「フィルチがまたこの辺に居座りだす可能性もあるね。マミ、声を潜めて、外の様子を窺おう」

マミ「ええ、分かったわ……」


???『シューッ! シューッ!』


マミ『……扉のすぐ傍にいるみたいね。近くから音が聞こえる。……いや、これは声、かしら。
   歯の隙間から、思いっきり空気を出してるみたいな……』

QB『フィルチじゃないのかな? なんだろう、ピーブズが悪戯でもして……ん?』ピチャ

QB(トイレの床が水浸しだ。浸水してる? でもマートルが帰ってきた訳でもないみたいだし……)

マミ「……」

QB(マミはまだ気づいてないな。靴を履いてるし、扉に耳をくっつけて聞き耳立ててるからか。
   まあ、その内気づくだろうけど。どんどん水位が上がって……待て)


QB(この水はどこから来てる? いや、それよりも……あの日も、ミセス・ノリスが石にされた日も!
   水が、このトイレから溢れてた!)


QB『マミ、危険だ! 今すぐこのトイレから……!』


???「シュッー!」
264 : [sage saga]:2013/02/05(火) 22:34:56.22 ID:ktpGB5m+0
さて、ここから即興になります。著しく投下速度が下がることが予想されますので、ここは俺に任せて先に寝るんだ!
あとなんだろ、今日はやったらめったら重いデスネ!
265 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/05(火) 22:36:41.42 ID:MdrtFV1No

書き込みにやたら時間がかかるとは思ってたが、俺だけじゃなかったのか
266 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/05(火) 22:40:04.51 ID:Gf70UYebo
リアタイ遭遇。
今日だけじゃなくて最近ずっと重いよ。
267 : [sage saga]:2013/02/05(火) 22:46:25.40 ID:ktpGB5m+0

 ばちゃん!


QB(背後から水音――まるで何かが水たまりの中に落ちてきたような。不味い!)

マミ『ちょっ、どうしたのキュゥべえ。そんな大声出しちゃ――きゃんっ!』ビチャッ

QB『逃げるんだ、マミ! 怪物だ! 多分、僕たちの背後にいる!』

マミ『えっ、嘘。怪物って……!』

QB『振り向いちゃ駄目だ! 刺激しないように、早くドアを開けて!』

マミ『わ、分かったわ……あ、あれ? なんで、これ』ガチャッ ガチャガチャッ

QB『マミ! どうしたの!?』

マミ「あ、開かない! 開かないの! ねえ、誰かいるんでしょう! 開けて! 開けてってば!」


???「……」


 ズルッ ズルッ 


マミ「ひっ!?」

QB(すぐ後ろから、何か重いものを引きずるような音が……もう、これは……)
268 : [sage saga]:2013/02/05(火) 23:31:37.96 ID:ktpGB5m+0

夜 医務室


ハリー「……よーし、大体事情は分かったよ、屋敷しもべ妖精のドビー。
     君がなんで夏休みに僕の家に来てデザートをひっくり返して、
     さらに汽車に乗れないように駅の柵を封鎖した挙句、
     今日のクィディッチの試合ではブラッジャーを狂わせて僕の右腕をへし折ったのか、っていう事情がね」

ドビー「ああ、ハリー・ポッターにこんな説明台詞を喋らせてしまうなんて! ドビーは悪い子! ドビーは悪い子!」ガンガン

ハリー「やめて! それで、ドビー。君はさっき言ったよね? 秘密の部屋が前にも開かれたって。
     それって秘密の部屋は本当にあって、今もまた開かれてるってことだよね?」

ドビー「ああ、お聞きにならないでください! ハリー・ポッター、ただ、貴方様に危険が迫っているのでございます。
    どうかお家に帰ってくださいませ! どうか!」

ハリー「君が何をしようと、僕は帰らないぞ、ドビー! 僕の親友にマグル生まれがいる。
     それを放っておいて帰るなんて――」

ドビー「ああ、なんという勇敢さ! さすがは例のあの人を打ち破ったハリー・ポッター……
    ですが、ですが、だからこそ貴方様は自分の身を……」


 カツン カツン……


ドビー「! ああ、ハリー・ポッター。どうか、お願いいたします。お家に帰ってくださいませ――」パチン!

ハリー(消えた……ああ、そうか。足音が……誰かが医務室に来る?)


 ガチャッ


マクゴナガル「ええ、そうです。試合中に下級生の女子何名かが、不思議な声が聞こえたと訴えて……」

ポンフリー「ここに運ぶのがこの時間になった理由は?」

マクゴナガル「生徒たちに無用な混乱をさせない為にと……それまでは、私の部屋に」


ハリー(……マクゴナガル先生と、ダンブルドア先生? なにを抱えて……?)


ダンブルドア「……症状は、ミセス・ノリスと同じようじゃのう」

マクゴナガル「ええ。アルバス、これは……」

ダンブルドア「秘密の部屋が、再び開かれたということじゃな」


ハリー(……! 誰だ? 誰が犠牲に――あれ、あの、髪型は……)


マクゴナガル「……ですが、一体誰が? 誰が、こんな惨いことを……」

ダンブルドア「問題は誰が、ではなく……どうやって、じゃよ」





ハリー「……マミ?」



.
269 : [sage saga]:2013/02/05(火) 23:36:21.28 ID:ktpGB5m+0
投下終了。即興とか>>1の遅筆じゃ無理だわ。

でもなんか締め切り設けると筆が乗るっぽいから、自主的に締め切りを設けようと思います。

安価↓で締め切り決定。無効は下にずらす感じで
1.毎日投下しろやオラァ!
2.せめて三日ごとに投下しろやオラァ!
3.最低でも週一で投下しろやオラァ!
4.スタープラチナ・ザ・ワールド
270 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/05(火) 23:41:46.24 ID:MdrtFV1No
うーん、3
あんまり無理してほしくないしな
271 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/06(水) 00:03:27.37 ID:Ii0upgTSo
自分で自分を強制するのはいいが
どうか義務感を抱かないでほしい

貴方は書きたいから書いてるんだから
272 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/06(水) 00:19:05.64 ID:cnwNBRmfo
うんうん
無理せず書いて欲しいな
でも早く続きが読みたいというジレンマ

とりあえず乙
273 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/06(水) 00:27:01.76 ID:2pVsMVSk0
4って何だ?知らぬ間に完結してるのかエタるのか
274 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/06(水) 00:49:48.87 ID:5bsWXNkoo
あんまり根詰めるより気楽に書いてくれた方がエタりにくくていいけどね、最低でも月一くらいで生存報告は欲しいけど
さて、このSSの主人公が石になった件
ここから誰視点で進むのだろうか……QB(急遽派遣の別個体)か原作組か
275 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/06(水) 00:54:21.03 ID:t+4DLj9co
>>274
>マクゴナガル「ええ、そうです。試合中に下級生の女子何名かが、不思議な声が聞こえたと訴えて……」

とあるから、多分QBは生きてるんじゃないか
276 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/06(水) 05:38:46.60 ID:HWZntWh0o
ああ、なるほど
無差別テレパシーで人呼んだのか
277 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/06(水) 13:10:05.24 ID:582FtM8e0
乙でした
ハーマイオニー→マミさんとか誰が予想できただろうか……
べぇさん頼もしすぎワロタ


3でお願いします
無理な場合は状況報告をして頂けると尚助かります
多少の追い込みは人を育てますが、過ぎた無茶は自滅につながるので程々に頑張ってください
278 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/06(水) 16:12:18.00 ID:uTrU4U5Go
>>277
原作でこの時運ばれたのはコリンじゃね?
279 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/06(水) 19:54:47.26 ID:xX3jBloR0
まさかの主人公退場。これからどうなる?
280 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/06(水) 20:19:16.50 ID:cnwNBRmfo
先に行っておく
予想は止そう
281 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/06(水) 20:47:07.25 ID:EAh6qR8eo
>>280
雪のせいか、今日は冷えるなぁ……

>>1
ゆっくり待ってるよ
282 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/07(木) 18:06:55.15 ID:0CPjeRne0

まさかマミさんとフィルチの組み合わせを好きになる日がくるとは…
283 :277 [sage]:2013/02/08(金) 02:23:27.66 ID:Fe0gQH870
>>278
……。

…………。

……………………。



わたしって、ホントばか……      パリィーン
284 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/09(土) 00:54:00.22 ID:qMC/Yzx4o
>>273
マミさん主観で目覚めるまで飛ばすんだろたぶん
285 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/09(土) 02:18:13.59 ID:U+mwjCzco
DQ5みたいなことに
286 :今日のバーーローー:蘭「何してるの?コナン君!」 [sage]:2013/02/09(土) 17:31:45.54 ID:mctisfJL0
キング・クリムゾン!!
287 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/16(土) 15:16:02.83 ID:E+1mWbOeo
生存報告だけでも…
288 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/18(月) 21:09:19.38 ID:h1jw0LVIO
>>1ー!!生きてるなら返事をしてくれー!!
289 : [sage saga]:2013/02/19(火) 19:37:16.44 ID:3mXioa2r0
すみません1です。一週間で投下するとか言ってこの様。笑ってくれよバーニィ。

ちょっと砂漠にアトランティスを探しに行ったり、風邪を引いたりしてたらこんなんなりました。

今日か明日に投下します。秘密の部屋編はあと2回の予定です。
290 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/19(火) 21:30:48.34 ID:qZU/gZUNo
よっしゃきたああああぁぁぁああああ!!
待ってるぞ!
291 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/20(水) 02:18:34.56 ID:JDtUud2No
乙!楽勝!
292 : [sage saga]:2013/02/20(水) 22:34:01.54 ID:WnbcDPm60
とうかー
293 : [sage saga]:2013/02/20(水) 22:34:29.85 ID:WnbcDPm60

数日後 グリフィンドール談話室



 ボソボソ ボソボソ


「やっぱり秘密の部屋が――」

「怪物――マグル生まれが狙われる――」

「マミ――彼女もやっぱりマグル出身だ――」

「フィルチの猫は――?」

「奴はスクイブだろう――」


                    ヒソヒソ ヒソヒソ


ハリー「……噂、広まってるね」

ロン「ああ。可哀想に、一年生なんかすっかり怯えちまってる。
   ひとりじゃトイレにもいけないって有様さ」

ハリー「そういえば、ジニーも一年生だったね。最近ただでさえ元気なかったし、様子どう?」

ロン「最悪だよ。君にまとわりついてたカメラ小僧がいたろ?」

ハリー「ああ、コリンね。彼がどうかしたの?」

ロン「そいつとジニー、妖精の呪文で班が一緒だったらしくてさ。
    事件のあった日、コリンも君のお見舞いに行こうと寮を抜け出そうとして――まあ、フィルチに捕まって戻されたんだけど。
    下手すりゃ怪物に襲われてたって喧伝してくれたみたいで、ジニーはすっかり怯えちまってる」

ハリー「今度会ったら言っておくよ。いたずらに不安を煽るなって」

ネビル「ハリー! ロン! 見てよこれ! この腐った玉葱には怪物を退ける効果があるんだって!
     怪物って怖いよねー! 他にも色々お守りを買い込んだんだけど――」

ハリー「よーしネビル。ダドリー直伝のチョークスリーパーをかけるからそこを動かないでくれよ」

294 : [sage saga]:2013/02/20(水) 22:42:17.06 ID:WnbcDPm60

 ガチャッ


ハーマイオニー「……おはよう、みんな」

ロン「あー、おはよう。ハーマイオニー、よく眠れたかい?」

ハーマイオニー「ええ、お陰様でね。どうにか調子は取り戻せたみたい」

ロン「無理はするなよ。事件の噂を聞いた時の君ったら、そりゃもう酷い……」

ハーマイオニー「……マミとは、その、ちょっと喧嘩しちゃってたから。
          最後に交わしたのがあんな言葉になっちゃうかもっていうのが嫌で……」

ロン「それに関しちゃ、僕だってそうだけどね……そういえば朗報だよ。マミに会いに行っていいってさ。
   なあ、これからお見舞いに行かないかい?
   おっと、君に拒否権はないぜ。僕としちゃ授業をさぼれる機会を逃したくはないからね」

ハーマイオニー「……あなたにしてはいい考えね、ロン。でも、授業には間に合わせるわよ。
          それとハリー、ええと、さっきから気になっていたのだけど、あなたは何故ネビルの頭を砕こうとしてるの?」

295 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/20(水) 22:43:59.87 ID:4qFLtySW0
キタ━(゚∀゚)━!!!!!
296 : [sage saga]:2013/02/20(水) 22:49:18.54 ID:WnbcDPm60

医務室


ポンフリー「面会、ですか。ええ、マクゴナガル先生から許可が出てますよ。
       ぜひ会ってあげなさい。きっと彼女も喜ぶでしょう」



ハリー「あのカーテンで仕切られた一角に、怪物の被害者がいるわけか……
    ってことはミセス・ノリスもベッドに寝かされてるのかな?」

ロン「流石に籠か何か用意してあるんじゃないか? 石になった猫一匹がベッド占拠してるってシュールだろ。
   あとネビル、その玉ねぎは捨ててこいよ。酷い匂いだぜ、それ」

ネビル「マミの枕元に置いてあげようと思って――」

ロン「彼女が起きときにはすっかり玉ねぎの臭いが染み込んじまってるだろうよ。それでもいいならやれば?」

ネビル「ならきっと、二度と怪物も近づかないね! 僕の分も置いていくよ」

ロン「おい馬鹿やめろ。ハリー、君のさっきの技でネビルの頭が大変なことになってるぞ何とかしてくれ」

ハリー「もう一回やれば治るかな?」

ハーマイオニー「あなた達、うるさいわよ。医務室ではお静かに。
          っと、このベッドね。カーテンを開けるから、男子はいったん後ろに下がってもらえる?
          ……マミ、開けるわよ」


 シャッ


ハーマイオニー「……はあい、マミ。その……久しぶりね」

マミ「……おはよう、ハーマイオニーさん」ナデナデ
297 : [sage saga]:2013/02/20(水) 22:52:37.56 ID:WnbcDPm60

マミ「……いま……何日かしら? 薬で眠っていたから、曜日が分からなくて」ナデナデ

ハーマイオニー「そんなに経ってないわ。あれから四日。今は水曜日。……調子はどう?」

マミ「ええ、もう大丈夫。眠ったら良くなったわ」ナデナデ

ハーマイオニー「……その、キュゥべえのことは、残念だったわ」

マミ「……残念? どうして? キュゥべえはここにきちんといるじゃない」ニッコリ

QB「――」

マミ「ふふ。キュゥべえったら、毛並がこんなに乱れちゃって……
   ……手ぐしだとあんまり直らないわね。ねえ、ハーマイオニーさん。櫛持ってる?」

ネビル「……」

ハーマイオニー「……っ、持って、ないの。ごめんなさいね」

マミ「あ……いいのよ、謝らなくても……そうだ、私もハーマイオニーさんに謝らなきゃいけなかったわね。
   この前はごめんなさい。私、意地になってて……フィルチさんには、色々と助けて貰ったから」

ハーマイオニー「……そう」

ロン「……あー、その件に関しちゃ僕も謝らないとだね。知らなかったとはいえ、ごめんよ」

マミ「……あら、ロンくん達も来てくれたの? ううん。いいのよ。
   フィルチさんが厳しいのも、好かれやすい人柄でないのも事実だものね。
   ふふっ、そういえばキュゥべえも同じこと言ってたっけ。ね、キュゥべえ?」ナデナデ

QB「――」

ネビル「……っ、悪い、けど。僕は、戻るね」ダッ

ハリー「……ネビル」

マミ「あら、用事でもあったのかしら? ……ああ、そういえば、もうすぐ授業じゃない。
   私も出たいのだけど、まだ駄目なんですって。もう、勉強が遅れちゃうわ」

ハーマイオニー「……私が、教えてあげる、から」

マミ「そう? ハーマイオニーさんが教えてくれるなら……ちょっとくらい遅れても大丈夫かしら。
   でも早く授業には出ないとね。じゃないと、折角、キュゥべえが守って、くれた、のに……あ」

ハーマイオニー「……マミ? どうしたの?」



マミ「ああ、あ、ああああああああああああああああ!」ガタガタ
298 : [sage saga]:2013/02/20(水) 23:01:55.27 ID:WnbcDPm60

ハーマイオニー「マミ!? マミ、しっかりして!」

ハリー「マダム・ポンフリーを呼んでくる!」ダッ


マミ「嫌! 嫌嫌嫌嫌! こないでぇっ! 怖い怖い怖い怖い! 助けてよぉっ! 誰か、誰か助けて!」ブルブル


ロン「落ち着いてってば! ここには怪物なんかいやしないよ!」

ハーマイオニー「マミ! 大丈夫よ! 私たちがついてるから!」ギュッ


マミ「キュゥべえ! キュゥべえはどこ!? いや! キュゥべえを連れて行かないで!」


ポンフリー「っ、これは……みなさん下がって! ドルミーテ!(眠れ)」バシュッ

マミ「ぁ……」パタッ

ハリー「……眠ったみたい」

ハーマイオニー「マミ……」

ポンフリー「……落ち着いたと思っていたのですが……
       皆さんショックでしょうが、ここは私に任せて。授業に出られますか?」

299 : [sage saga]:2013/02/20(水) 23:09:14.11 ID:WnbcDPm60

廊下


ハーマイオニー「……」

ロン「とてもじゃないけど、怪物のことなんて聞けなかったね。
   半笑いで、固まったキュゥべえをずっと撫でててさ。さすがに僕だって触れちゃいけないって分かったさ」

ハリー「うん……でも、最初に比べたらだいぶ落ち着いたと思うよ。
     あの夜、僕が見たときはもっと酷い取り乱しようだった」


◇◇◇

事件当日 医務室


ハリー(……マミ? それに、キュゥべえも。どっちも動かないけど……二人とも怪物に……?)

マミ「……ん、ぅ。わた、し……」

マクゴナガル「……! マミ、目を覚ましましたか」

マミ「マクゴナガル、先生……? あの、ここは……? 暗くて、よく……」

マクゴナガル「医務室です。貴女は女子トイレで倒れているのを発見されて……」

マミ「トイ、レ……ああ、そうだ、私、怪物に……! キュゥべえ!? 先生、キュゥべえは!?」

マクゴナガル「……マミ、落ち着いて聞いてください。キュゥべえは、ミセス・ノリスと同じく……」

マミ「あ……となりの、ベッド……」

QB「……」

マミ「い……や、そんな、キュゥべえ、私を庇って……」

マクゴナガル「落ち着きなさい、マミ。大丈夫です、マンドレイクさえ収穫できれば――」

マミ「キュゥべえ、キュゥべえ! そんな、嘘よ! だって、大丈夫だって! 大丈夫だっていってたじゃない!
   嘘つき! ねえ、目を覚まして! 起きてったら――!」

マクゴナガル「……っ」

ダンブルドア「……マダム・ポンフリーや。眠り薬を」

ポンフリー「はい……さあ、これを嗅いで。大丈夫、落ち着きますよ……」

マクゴナガル「ああ、アルバス。こんなことってあるでしょうか……この子は両親を失って、この猫だけが家族だったのに……
         いつだって一緒にいて、それがこんな……この子のために、私に何ができるのでしょう?」

ダンブルドア「大切な者を失った傷は、いかなる魔法でも癒せはせん。共にいてやることじゃ、ミネルバ。
        そして、さらなる犠牲者を出さぬためにもわしら教師が尽力せねばのう」

ハリー(……)

◇◇◇
300 : [sage saga]:2013/02/20(水) 23:11:26.60 ID:WnbcDPm60

ロン「……それにしても、これで襲われたのが三、石になったのは二人、いや二匹か。
   マミだけ助かったのはなんでだろう? キュゥべえが庇った? でも猫に威嚇されたくらいで怪物が怯むかな?」

ハリー「猫の鳴き声が嫌いな魔法生物なんじゃないかな。
     ほら、去年のフラッフィーもあんな成りして音楽が弱点だったし……」

ロン「でもそのキュゥべえはともかく、その前にミセス・ノリスも石にされてるわけだし……」

ハリー「ああ、そうか……」

ロン「まあ、ポリジュース薬が完成すればマルフォイの奴から聞き出せるけどさ。
   どうせあいつが犯人に違いないんだ。もちのロンで。だってあいつの家系を見てみろよ、親父からしてろくでもない……」

ハーマイオニー「……やめましょう」

ロン「? 今なんか言ったかい、ハーマイオニー?」

ハーマイオニー「ポリジュース薬を作るの、やっぱりやめましょう」

ロン「へぁ!? なんでさ! そもそもそれを提案したのは君だろ?」

ハリー「ロン……ちょっとちょっと」コソコソ

ロン「ん? なんだよハリー。だってさ、あの大釜を僕がどれだけ苦労してトイレに運んだか――」

ハリー(考えてもみなよ、ハーマイオニーだって一応女の子なわけだしさ。
     マミがあんな状態になってるのを見ちゃったら……)ヒソヒソ

ロン(ああ……確かに怖くなってもしかたないか。でもどうするのさ。マルフォイを放っておくのかい?)ヒソヒソ

ハリー(それは……)ヒソヒソ

ハーマイオニー「……あなた達、何を勘違いしてるのかしら?」

ハリー・ロン「……へ?」
301 : [sage saga]:2013/02/20(水) 23:15:22.25 ID:WnbcDPm60

放課後


ドラコ「はー、今日もようやく授業が終わったな」

 いま授業を終えて寮に帰ろうと速足している僕はホグワーツに通う純血な男の子。

 強いて違うところをあげるとすればその中でもかなりの名家の出であるってことかな。名前はドラコ・マルフォイ。

ドラコ「全く、無駄な時間だったと思わないか? あのギルデロイ・ロックハートとかいう屑はクビにするべきだよ。
    あの幼稚な授業内容を父上が見たらなんと仰られるか! お前らもそう思うだろ?」

ゴイル「ああ」

クラッブ「うん」

 こいつらはゴイルとクラッブ。僕の子分だ。馬鹿でトロくて顔も見れたもんじゃないけど、まあその分扱いやすくていい。

ドラコ「ふん! その癖、女子どもにはきゃーきゃー言われちゃって!
    全く、あの教師も教師だけど、女子も女子さ。見る目ってもんが全く養われてない。お前らもそう思うよな?」

ゴイル「ああ」

クラッブ「うん」

ドラコ「まあいいさ。どうせもうすぐ、秘密の部屋の怪物が――うん?」

女の子「あの、すいません……」

 ふと感じた気配に前を見やると、ひとりの女の子が佇んでいた。一年生だろうか? 見覚えはないが、結構可愛い顔立ちをしている。

 なにやら顔を赤らめてモジモジしているな――ははん? これはもしや……
302 : [sage saga]:2013/02/20(水) 23:20:57.10 ID:WnbcDPm60

女の子「あの、私、先輩のこと、一目見た時から……」

 ああやっぱり! 僕はなんて罪な男なんだろう。見覚えのない女の子さえ、僕の美貌の前にいちころだなんて。

ドラコ「はっはっは、全く急すぎて困るな。まあ、こんなところで立ち話もなんだ。そこらの空き教室ででも――」

女の子「あ、ドラコ先輩じゃなくて」

ドラコ「へ?」

 我ながら間の抜けた声を上げ、改めて女の子の熱っぽい視線を辿ると――おい、待て。

女の子「グレゴリー先輩……ちょっと二人きりでお話しできませんか? お菓子も用意してあるんです」

ゴイル「……!」

 おい! 嘘だろ!

 この女の子、目が悪いんじゃないのか! それとも悪いのは趣味か?

 なんてことを胸中で絶叫している内に、我が子分たるグレゴリー・ゴイルは、

ゴイル「……ふっ」

 と、何やら腹の立つ勝ち誇った笑みを浮かべながら、女の子と一緒に歩いて行きやがった。
303 : [sage saga]:2013/02/20(水) 23:23:25.17 ID:WnbcDPm60

ドラコ「……おい、クラッブ。ほっぺ」

クラッブ「うん」ガスッ

ドラコ「痛い! 違う! 僕のを叩くんじゃなくて、お前のを叩かせろって言ったんだ!」

 畜生、思いっきり叩きやがって。前から思ってたが、こいつ、実は僕のこと嫌いなんじゃなかろーか。

 しかしどうやら夢ではなさそうだ。

ドラコ「……驚いたね。あのゴイルを。あのゴイルをだぜ?
    あいつと一対一でお茶を飲みながらお話ししたいなんて奇特な奴がいるなんてな」

クラッブ「うん」

ドラコ「まあ、僕くらい寛容で人の上に立つ素養がある者からしてみれば、別に嫉妬なんかしないけどね。
    心から祝福するさ。なんせあいつの人生、ここが幸せの絶頂に違いない。あとは下り坂だ。だろう?」

クラッブ「うん」

ドラコ「よし! 寮に帰っておやつでも食べるか! 
     マルフォイ家御用達の、さっきの女が用意したとかいうお菓子よりも百倍は美味い菓子があるぞ。
     ゴイルはどうせ食ってくるんだろうし、残さなくていいぞ。ふたりで全部食っちまおう」

 そういうと、クラッブはニヤリとこちらに笑いかけてきた。

 うん。やはり部下には鞭ばかりではなく飴もやらなくては。決して、ご機嫌取りなんかじゃないぞ!

ドラコ「あーあ。ゴイルの奴は可哀想になぁ。あんなに美味い菓子が食えないなんてなぁ――ん?」
304 : [sage saga]:2013/02/20(水) 23:27:18.82 ID:WnbcDPm60

 そんなことを言いながら歩いてると、再び目の前に人影が。

女の子B「あの、私、先輩のこと、一目見た時から……」

 デジャヴ!

 僕は咄嗟に壁に肘を突き立て体をささえ、斜め45度の姿勢で女の子に流し目を送る。

ドラコ「はは、やれやれ。全く、参ったな。これから僕はティータイムと洒落こもうとしてたんだが。
    まあなんだ、よければ君も――」

女の子B「あ、マルフォイの馬鹿倅じゃなくて」

ドラコ「おい待て、いまこいつなんつった」

 僕が抗議しようとするも、新たに表れた女の子はクラッブの方に熱い視線を送り――って、ちょ、待ておい。

女の子「ヴィンセント先輩……ちょっと二人きりでお話しできませんか? お菓子も用意してあるんです」

 吐きやがった! なにやら聞き覚えのある台詞を!

クラッブ「……」

 そしてクラッブの方を見れば、迷うような視線を僕の方に送っている。

 いや許すわけないだろう! その女は、この僕を馬鹿呼ばわりしたんだぞ!

ドラコ「クラッブ、ぶん殴れ!」

クラッブ「うん」ドゴォッ

ドラコ「ぐほぉっ!?」

 ち、違う、殴るのは僕じゃない。僕じゃないのに……

 なんて、床に転がって悶絶している僕を尻目に、我が部下たるヴィンセント・クラッブは、

ゴイル「……はっ」

 と、何やら腹の立つ勝ち誇った笑みを浮かべながら、女の子と一緒に歩いて行きやがった。
305 : [sage saga]:2013/02/20(水) 23:28:26.46 ID:WnbcDPm60

ドラコ「……畜生! なんだってんだ! 二人とも、どこの馬の骨とも分からん女にフォイフォイついていきやがって!
    それでも純血か! もうお菓子わけてやらんぞ!」プンプン

 ようやく立ち上がれる程度に回復して、僕を裏切った二人に対する悪罵の言葉を思いつく限り吐き出す。

 ああ、お腹がしくしくと痛む。これはクラッブの馬鹿力のせいだ。
 
 決して、僕を差し置いて、あの二人が女の子に声を掛けられてる状況が悲しいわけじゃない。悲しくないったらない。

ドラコ「ああくそ、目の前が霞んできた……泣いてるわけじゃない。泣いてなんかいないぞ……くそ……」

 そうして、ずりずりとみっともなく進む僕。その眼前に、今度はなんと、

ハリー「マルフォイ! ここにいたのか!」ボロッ

ロン「人の気も知らないで、のんきにたらたら歩きやがって!」ボロッ

ドラコ「ってなんだ、ポッターにウィーズリーか。くそ、とっと失せろ」

 泣きっ面に噛み付き妖精とはこのことだ。なんでこんな時に……

ドラコ「……って、なんでお前らそんなにボロボロなんだ?」

ハリー「僕たちは止めようとしたんだ。だってまだ前の計画の方が穏便だし――」

ロン「いや、説明はいいから早く逃げろ! 寮の中に入っちまえば何とか有耶無耶に――」

 なんだ? 何を言ってるんだこいつらは?

 でもなんだか様子が必死だし、冗談を言ってるようにも見えない。

ドラコ「な……なんだよ。ふん、お前らに言われなくたって、これから帰るところだったさ」

 なんにせよ気味が悪いので、僕は歩調を早めさっさとこの場を後に――











ハーマイオニー「アクシオ! マルフォイのマントよ、来い!」

ドラコ「ぐえっ!?」

ハリー「ああ、遅かった……」

 何やらポッターの奴が言ってた気がするが、気にする余裕なんかなかった。

 突如、マントが物凄い勢いで引っ張られ、抵抗もできずに僕を運び去っていく。

 っていうか、苦しい! 首にマントが絡まって、息が、意識が……

306 : [sage saga]:2013/02/20(水) 23:29:24.14 ID:WnbcDPm60

 そして、次に目を覚ました時にはどこかの空き教室の中だった。

 どこなんだ、ここは――そう思い、辺りを見回そうとしたところで、首が全く動かないことに気付く。

ハーマイオニー「あら、ようやくお目覚めかしら?」

ドラコ「っ、グレンジャー! お前の仕業か!?」

 見ると、そこにはあの糞生意気な、頭でっかちの穢れた血、ハーマイオニー・グレンジャーが僕を見下ろすように佇んでいた。

 どうやらこいつが、僕に"全身金縛りの呪い"か何かを掛けたらしい。

ドラコ「何の真似だ!」

ハーマイオニー「それは自分の胸に聞いてみたらどうかしら?」

ドラコ「何を言って……お、おい。なんだよ、えらく目がマジじゃないか」

 そう言えば……全身金縛りは、本来なら首から上も動かなくなる、つまり喋ることもできなくする呪文の筈だ。

 腹正しいが、グレンジャーの魔法の腕は学年でもトップクラスだ。

 こいつが呪文を間違えるとは思えない……とすると、わざわざ僕の首から上だけ動くようにしたということだ。

ドラコ「な、何だよ。なんか用があるなら言えよ!」

ハーマイオニー「最初はね? 私も穏便に済まそうと思ってたのよ?」

 僕を無視して、グレンジャーが喋りだす。微妙に焦点を結んでない瞳が異様に怖い。

ハーマイオニー「でも、ねえ? 薬ができるまで一ヶ月? は! ロンじゃないけど、あの時の私は何を悠長なことを言ってたのやら。
          手っ取り早く、マミが襲われる前に、こうしておくべきだったのよ」

ドラコ「と、トモエ? トモエがなんだよ?」

ハーマイオニー「あーあー。いいのよ、無理に話そうとしなくて。だって悪いじゃない?
          こんな、放課後の時間を提供してもらってるのに、タダで話してもらおうなんて」

ドラコ「僕は拉致されたんだぁ! お前に付き合うなんて一言も――」

 そんな僕の喚き声を無視して――グレンジャーの奴は何やら机の下からごそごそと荷物を取り出し始めた。
307 : [sage saga]:2013/02/20(水) 23:34:28.69 ID:WnbcDPm60

ハーマイオニー「色々、サービスしてあげるわ。ねえ、目は疲れてないかしら? 目薬は要らない?」

 そう言ってグレンジャーが取り出したのは、どう見てもレモンだ。半分にカットされていて、切り口から果汁が零れ落ちている。

ハーマイオニー「それとも、マッサージかしら? わたし、パパに上手だってよく褒められるのよ?」

 そんなセリフを吐きながら、しかしグレンジャーの手にあるのはどう見ても竹でできたノコギリだ。

 よし、なんかろくでもないことを考えているってことは分かった!

ドラコ「お、お前ぇ! お前、この僕にこんなことしてタダで済むと……
    そ、そうだ! すぐにゴイルやクラッブが気づいて……!」

ハーマイオニー「エレクト(立て)」

 またもやグレンジャーが僕の声を遮り、呪文を唱える。

 僕の体が浮き上がり、見えない十字架に貼り付けにされたように立たされると、そこには――

ドラコ「ゴイル! クラッブ!」

 先ほどまでの僕と同じように、床に突っ伏して死んだように動かない二人の姿が。

ハーマイオニー「簡単な眠り薬よ。ちょっと下級生の子に"お願い"して、あなたから引き離してくれるように頼んだの」

 嘘だ。ぼっちのこいつにお願いを聞いてくれるような下級生の友達なんかいるわけない。

 絶対、なんか陰険かつ魔法的な手段を使ったに違いないのだ。

ハーマイオニー「さ、頼みのお友達はみーんなお寝んねしてるわ。これでゆっくり"お話し"できそうね?」

ドラコ「お、お前ぇ……こんなことが許されると……あとでスネイプ先生に言って、退学に……」

ハーマイオニー「大丈夫よ。ばれなければ規則違反にはならないもの」

ドラコ「ど、どういう意味だ――」

 震える僕に対し、グレンジャーはにっこりと満面の笑みを浮かべ。

ハーマイオニー「――だってここから出る時、あなたが何か覚えてられるとは思えないもの」




廊下

ハリー「……」

ロン「……なあ、ハリー」

ハリー「なんだい、ロン」

ロン「頭がいい奴は、怒らせちゃ駄目だな」

ハリー「……そうだね。僕たちも気を付けないと」
308 : [sage saga]:2013/02/20(水) 23:36:13.49 ID:WnbcDPm60


医務室


マミ「……さて、と。あれだけやれば、ハーマイオニーさん達も怪物に関わろうとは思わない筈。
   医務室生活は何日か伸びちゃったけど、それだけの価値はあるわ」

マミ(キュゥべえ……これでいいのよね?)



◇◇◇

回想




 ズルッ ズルッ 


マミ「いやぁ……開けて、開けてよぅ……」ガチャガチャ

QB『……マミ、時間がない。落ち着いて聞いて』

マミ「キュゥべえ?」

QB『扉の外に居るのが"継承者"だろう……事件を嗅ぎまわってる僕らを始末しに来たんだ。
   ということは、継承者の正体は今日僕らがクィディッチの観戦に行かず、ここに来たことを知っている人物ということになる』

マミ『それって……』

QB『そう。おそらく、グリフィンドールの生徒だ。
   僕らが試合直前まで暖炉の前にいたことは、グリフィンドールの生徒なら誰もが知っている。外への通り道だからね』

マミ『そんな……私たちの寮に継承者が?』

QB『絶対じゃないけど、可能性は高い。少なくとも、次の捜査の指針にはなる』

マミ『……で、でも。私たちの後ろに、怪物が……っ』

QB『……大丈夫。マミ、安心して』

マミ『キュゥべえ? いったい何を……』

QB(怪物は、もう僕たちの数メートル後ろに迫っている……ただその動きは非常に緩慢だ)

QB(事情は知らないけど、継承者は迷っているんじゃないか? だとしたら――)



QB『誰か、助けてくれ! 三階のマートルのトイレだ! 怪物が現れた!』




???「――っ! シューッ シューッ」タッタッタッ


309 : [sage saga]:2013/02/20(水) 23:37:09.24 ID:WnbcDPm60

QB『……出力を絞らず、無差別、最大範囲のテレパシーで呼びかけを行った。
   この学校には素質のある子が多い。受け取った子が騒げば、さすがに教師陣も気づくだろう』

  ズルッ ズルッ……

マミ『おとが、遠のいて……た、助かった、の?』

QB『たぶんね』

マミ『……そ、う。よかっ……』パタッ ビチャン

QB『マミ!? ……ふぅ、気絶してるだけか。緊張が解けたせいかな』

QB(しかし、継承者が僕のテレパシーを感知して逃げ出したってことは、継承者は女生徒か。
   これで範囲はかなり絞り込めたな)

 ズルッ ズルッ……

QB(……あとは、怪物の方の正体か。どうも巣穴に戻るみたいだけど……
   やっぱりあの手洗い台が巣に通じる入り口だったんだな)

QB(確認しておこう。刺激しないように、ゆっくりと……床の水に映る影を、確認して……)



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━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

◇◇◇

マミ(犯人はグリフィンドールの生徒……ハーマイオニーさん達が犯人探しに関わっちゃうと、
   私みたいに、彼女たちもきっと狙われることになる)

マミ(だから――やっぱり、わたしひとりでやらないと)

マミ(怖くないと言ったら嘘になる。怪物がほんの数メートル後ろに来た時には、それこそパニックを起こしそうだった)

マミ(だけど……今は恐怖よりも、別の感情の方が強い)


QB「」






マミ「継承者さん――言っておくけど、私、とっても怒ってるのよ」
310 : [sage saga]:2013/02/20(水) 23:38:16.74 ID:WnbcDPm60

QB『……出力を絞らず、無差別、最大範囲のテレパシーで呼びかけを行った。
   この学校には素質のある子が多い。受け取った子が騒げば、さすがに教師陣も気づくだろう』

  ズルッ ズルッ……

マミ『おとが、遠のいて……た、助かった、の?』

QB『たぶんね』

マミ『……そ、う。よかっ……』パタッ ビチャン

QB『マミ!? ……ふぅ、気絶してるだけか。緊張が解けたせいかな』

QB(しかし、継承者が僕のテレパシーを感知して逃げ出したってことは、継承者は女生徒か。
   これで範囲はかなり絞り込めたな)

 ズルッ ズルッ……

QB(……あとは、怪物の方の正体か。どうも巣穴に戻るみたいだけど……
   やっぱりあの手洗い台が巣に通じる入り口だったんだな)

QB(確認しておこう。刺激しないように、ゆっくりと……床の水に映る影を、確認して……)



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
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━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

◇◇◇

マミ(犯人はグリフィンドールの生徒……ハーマイオニーさん達が犯人探しに関わっちゃうと、
   私みたいに、彼女たちもきっと狙われることになる)

マミ(だから――やっぱり、わたしひとりでやらないと)

マミ(怖くないと言ったら嘘になる。怪物がほんの数メートル後ろに来た時には、それこそパニックを起こしそうだった)

マミ(だけど……今は恐怖よりも、別の感情の方が強い)


QB「」






マミ「継承者さん――言っておくけど、私、とっても怒ってるのよ」
311 : [sage saga]:2013/02/20(水) 23:38:58.87 ID:WnbcDPm60
おわ。二重だよやっちまいやした

とりあえず投下終了
312 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/20(水) 23:42:24.69 ID:gByku6iIO
おつおつ
展開は知っているがwktkするな
313 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/20(水) 23:45:03.42 ID:zRLUSE5uo
おつでーす

ハリポタのこの後の展開を忘れたからwktkしてます(←読み返しとけよ、おい)
314 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/21(木) 00:26:54.55 ID:R6zUfbgAo
おお、来てましたか
楽しく読ませてもらってます
315 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/21(木) 01:23:09.52 ID:QgKqwIKmo
エレクト(勃て)でハーミーに搾り取られるところまで想像した
316 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/21(木) 01:26:48.94 ID:nP5NSTsL0

一瞬アッーな流れになるかと思ったがそんなことはなかった
317 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/21(木) 02:26:09.59 ID:WGWgoMZS0

sageたままの投下だから気付かなんだ

てか、ハリーがまどか並に空気でワロt……あれ?なんか空が光って(ry
318 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/21(木) 02:34:50.08 ID:94nYQHb+o

QBだけが石化したのか。これは予想外だった
319 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/21(木) 08:06:57.95 ID:5oP3K4UIO
マルフォイ「やめて!僕に乱暴する気だろ?エロ同人みたいに!エロ同人みたいに!」
320 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/21(木) 08:44:32.93 ID:FA8UgWyGo
うわぁ…… マルフォイくんの白イタチ全身金縛りの呪い状態ナリィ……
321 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/21(木) 18:03:40.92 ID:tHtCuLCzo
クラップとゴイルwwwwww
322 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/22(金) 02:32:01.98 ID:IgzubKqQo
メデューサだって鏡に写った姿はセーフなのに
像を見ただけでアウトとかマジチート
323 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/22(金) 04:35:08.35 ID:AcZjFa2Go
マミさんはやさしいなぁ!
324 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/03/03(日) 18:24:46.20 ID:lrVWxFJio
また冒険に出かけてるのかな?
325 :>>1 :2013/03/09(土) 05:03:34.35 ID:UZrS1Tgo0
これはな、ちゃうねん。

ウロボロスオーロラのせいやねん。

書ききったので、校正したら投下します。少なくとも本日中には
326 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/03/09(土) 06:31:43.12 ID:Qxh4RHv7o
うおお、投下まで全裸待機
327 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/03/09(土) 07:48:58.67 ID:qe8sQKP/0
まってるお
328 :>>1 :2013/03/09(土) 14:17:40.20 ID:UZrS1Tgo0
投下をしようそうしよう
329 :>>1 :2013/03/09(土) 14:19:59.49 ID:UZrS1Tgo0

数日後


ポンフリー「――脈拍、血圧、全て異常なし。これなら明日からは授業へ出るのも許可しましょう」

マミ「ありがとうございます」

ポンフリー「ですが! あくまでも一応、ということです。一日の最後には医務室によって、私の診察を受けること。
       しばらくはそうやって経過を見ましょう。大丈夫、すぐに元気になれますよ」

マミ「はい。分かりました」

ポンフリー「……辛かったら、いつでも相談しにきなさい。キュゥべえは、ミセス・ノリスの隣に寝かせておきますから。
       ああ、それと。マクゴナガル先生があなたを呼んでいましたよ。今日の放課後にでも行っておきなさい」

マミ「マクゴナガル先生が? 分かりました」
330 :>>1 [saga]:2013/03/09(土) 14:21:14.73 ID:UZrS1Tgo0

マクゴナガルの部屋


 カチャン

マクゴナガル「紅茶です。温まりますよ。さ、お飲みなさい」

マミ「は、はい。あの、いただきます――ん、美味しいです」

マクゴナガル「そうですか、それはよかった。やはり国が違えば、味覚も異なるでしょうから。
         マミは――あー、自宅でも紅茶を飲みますか?」

マミ「はい、母が好きだったので――あ、いえ。兎に角、よく飲みます」

マクゴナガル「……そうですか。何にせよ、折角英国にいるのですから、やはり本場のものを味わっておいて損はないでしょう」

マミ「ええ……」

マミ(……てっきり、怪物について聞かれるものだと思ってたけど……私、なんで呼ばれたのかしら?)

マクゴナガル「……なぜ、呼ばれたのか? という顔ですね」

マミ「あ、いえそのっ。べ、別にこうしてお話しするのが嫌ってわけじゃ――」

マクゴナガル「いえ、いいのです……そういえば、こうして貴女と一対一で話すのは初めてですね。
         もっとも、教師がひとりの生徒につきっきりになるという事態が珍しいものではあるのですが」

マミ「そうですね……前に一度、両親の葬儀の時にお話はしましたけど」

マクゴナガル「あの時は、ほとんどこちらの要求を一方的に伝えただけでしたから……。
         そうですね。本来なら、去年の内にこうした場を設けるべきだったのでしょう」

マミ「……?」

マクゴナガル「一年間、貴女のことを見てきました。頑張って勉強しているようですね。
         ……実技に関しては、好成績とは言いがたいですが」

マミ「あううぅ……」
331 :>>1 [saga]:2013/03/09(土) 14:22:19.10 ID:UZrS1Tgo0
マクゴナガル「まあ、それはこの際不問にしましょう。
         それよりも大事なのは、貴女がこの学校で上手くやれている、ということです」

マミ「上手く……やれていますか?」

マクゴナガル「ええ。友人にも恵まれ、傍から見ていても十分に学校生活を楽しんでいるように見えました。
         だから……いえ、言い訳になってしまいますね」

マミ「あの、意味が良く」

マクゴナガル「貴女は上手くやれていた。ならば、私が下手に干渉することはないと思っていました。
         貴女を、この世界に招き入れた責任を忘れて」

マミ「責任って、そんなことは……」

マクゴナガル「いえ、私にはそれがありました。貴女に対して、私はもっと責任を持っていなければならなかった。
         もっと貴女のことを気にかけて、相談にのってあげるべきでした」

マミ「相談、って……?」

マクゴナガル「何故、クィディッチの試合中に貴女があのトイレにいたのか――」

マミ「……!」

マクゴナガル「何か、理由があるのでしょう。もちろん話したくないのなら、無理をして話す必要はありません。
         ですが、もしも何か話したいことがあるのなら、遠慮せずに話してみなさい」

マミ「……」

マミ(私とキュゥべえが、怪物の犯人捜しをしていたこと――)

マミ(マートルのトイレに怪物の巣につながる入り口があるかもしれないこと――)

マミ(犯人はグリフィンドールの生徒かもしれないこと――)

マミ(話せば、きっと、マクゴナガル先生なら悪いようにはしない。絶対、私の力になってくれる――)

マミ(でも)

マミ「……ごめんなさい」

マクゴナガル「……そうですか。分かりました」
332 :>>1 [saga]:2013/03/09(土) 14:22:52.74 ID:UZrS1Tgo0
マミ「あ、あの! でも!」

マクゴナガル「? 何か?」

マミ「あの、私、ホグワーツに来れて良かったです。だから、連れてきてくれた先生には、その、感謝しています。
   覚えてないかもしれませんけど、去年のトロール事件の時、
   先生が私のことを自慢の生徒だって言ってくれてとても嬉しかったんです!」

マクゴガナル「……マミ」

マミ「だから、あの。全然、先生が責任とか感じることはなくて! その、私、先生のこと――」

マクゴナガル「……ふぅ。生徒に心配されるとは、私もまだまだ、アルバスには及ばないということですか」

マミ「そ、そんなことは!」

マクゴナガル「……私は、貴女に謝らなければいけないと思っていました。ですが、違うようですね。
         掛けるべき言葉は、こちらでした――ありがとう、マミ」

マミ「あ、いえ、そんな! こちら、こそ……ありがとう、ございます」

マクゴナガル「ですが、いつでも頼ってください。私は貴女の教師で、貴女は私の生徒なのですから。
         ……紅茶をもう一杯、いかがです?」

マミ「はい……いただきます」
333 :>>1 [saga]:2013/03/09(土) 14:23:21.07 ID:UZrS1Tgo0

グリフィンドール 女子寮 自室


ラベンダー「あ、マミ! もう大丈夫なの!?」

パーバティ「心配したんだから! 怪物に襲われたって聞いて――」

マミ「……ありがとう。でも、もう大丈夫。明日からは授業にも出られるわ」

ラベンダー「そうなんだ、良かった……ねえ、その、怪物のことについて聞いても平気?」

パーバティ「ちょっと、ラベンダー!」

ラベンダー「いいじゃない、ちょっと聞くくらい……パーバティだって気になるって言ってたじゃない」

パーバティ「それは、そうだけど……」

マミ「……ごめんなさい。気絶しちゃって、何も覚えてないの……私のこと、噂になってる?」

ラベンダー「ぶっちゃけ、あなたが襲われてすぐの頃はその話でもちきりだったわ」

パーバティ「今は落ち着いてるけど、授業に出始めたらまた再燃するかも……っていうか、絶対するわ」

マミ「……そう」

ラベンダー「大丈夫よ! もしも無神経に聞いてくるような奴がいたら、私達が守ってあげるわ!」

パーバティ「うん、ラベンダーは十秒前の自分の行動を思い出してみましょうか」

マミ「……くすっ。ありがとう、二人とも」
334 :>>1 [saga]:2013/03/09(土) 14:24:03.34 ID:UZrS1Tgo0

翌日 廊下


ハッフルパフ生「君、怪物に襲われたって本当――?」

グリフィンドール生「どんな奴だったの? 牙はあった? 爪は?」

レイブンクロー生「ねえあんた、しわしわ角スノーカック信じる?」

マミ「あのぅ、えーっと」

ラベンダー「はいどいてー。取材はマネージャー通してくださいねー」

パーバティ「全部お断りだけど。ほら、授業に遅れちゃう。ただでさえマミは実技があれだから成績もあれなのに……」

マミ「あれって何? ねえ、あれって何?」


ハッフルパフ生「ああ、行っちゃった……」

グリフィンドール生「いつも一緒にいた猫、いないね。やっぱり猫は助からなかったんだ」

レイブンクロー生「スノーカックはいるよ」


フィルチ「貴様ら! そこで集まって何をしている! もう授業が始まるぞ! 全員処罰してやろうか!」

ハッフルパフ生「うわあフィルチだ! 逃げろ!」ダッ

グリフィンドール生「おっと用事を思い出したー!」ダッ

レイブンクロー生「ふーんふーんんーふー」ダッ

フィルチ「全く……」


グリフィンドール生『いつも一緒にいた猫、いないね。やっぱり猫は助からなかったんだ』


フィルチ「……」
335 :>>1 [saga]:2013/03/09(土) 14:24:33.85 ID:UZrS1Tgo0

12月 玄関ホール


ハリー「はー、これからどうしようか。結局、マルフォイは白だったもんなぁ……」

ロン「ハーマイオニー曰く、ね。一体、どんな方法で吐かせたか知らないけど。
   ところで、そのハーマイオニーはまた例のあれかい?」

ハリー「ああ、教室に残って、マミに勉強を教えてるよ」

ロン「ここ最近ずっとだもんなぁ。まあ、仲直りできたのはいいことだけどさ。
   マミも授業にでるようになってからは前みたいに元気だし――」

ドラコ「やあ、ポッターとその腰巾着じゃないか」

ロン「うわ、湧いた」

ドラコ「人をボウフラみたいに言うのはやめて貰おうかウィーズリー。この礼儀知らずめ」

ハリー「礼儀は知ってるさ。それを払うべき人物と、そうでない奴もね」

ドラコ「黙れよポッター。いいか、我がマルフォイ家は純血の中でもそれはもう高潔な――」

ハーマイオニー「――高潔な、なに?」

ドラコ「ピィッ!?」ビクン

ハリー「あ、ハーマイオニーとマミ。もう勉強はいいのかい?」

マミ「ええ、お待たせしちゃってごめんね」

ハリー「気にしないで――ところでマルフォイ、何の話だったっけ?」

ドラコ「きょ、今日はこのくらいにしといてやる! じゃあな腐れグリフィンドールども!」ダッ

ロン「行っちゃった。あれ以来、ハーマイオニーの傍には絶対近寄らないもんなぁ、あいつ」

ハリー「楽でいいけど、張り合いがないよね。っていうか、マルフォイの奴、君に何されたか覚えてるんじゃないの?」

ハーマイオニー「あら、そんな筈ないわ……でももしかしたら無意識下でトラウマにはなってるかも。
          よく考えたら濡れ衣だったわけだし、か、可哀想なことしちゃったかしら?」

ハリー「いいと思うよ、マルフォイだし」

ロン「ああ、マルフォイだし」

マミ「あの、なんの話?」

ハリー「いや、別に何でも……ん? なんだろう? 掲示板の前に人だかりが……」
336 :>>1 [saga]:2013/03/09(土) 14:25:51.74 ID:UZrS1Tgo0

玄関ホール 掲示板前


シェーマス「やあハリー、今夜から『決闘クラブ』が始まるんだって」

マミ「決闘って、あの決闘?」

ロン「マグルの決闘がどんなものか知らないけど、まあ一対一で魔法を掛け合って勝負する奴さ」

ディーン「決闘の練習か……最近物騒だし、役に立つかな」

ロン「え? ディーン、きみ、怪物がきちんと決闘の作法を守るとでも思ってるの? ……いや、面白そうだけどさ」

ハリー「ロン、僕らも行ってみない? 僕、決闘ってみたことないし」

ハーマイオニー「私も。本でどんなものか読んだことはあるけど……」

マミ(決闘……怪物を相手にするのは別として、"継承者"と戦うには有効かしら?)

ロン「まあ確かに、学んでおいて損にはならないよな……でも誰が教えるんだろう?」

ハリー「誰でもいいさ、まともに教えられる先生なら……」

337 :>>1 [saga]:2013/03/09(土) 14:26:21.04 ID:UZrS1Tgo0

夜 大広間



ロックハート「やあ皆さんこんばんわ! 今夜から始まる決闘クラブ、顧問はこのギルデロイ・ロックハート!
        助手には魔法薬学のスネイプ先生をお呼びしました!」

スネイプ「……」


ロン「嘘だろおい。考え得る限り最悪の組み合わせだ!」

ハリー「僕もう帰りたくなってきた。少なくとも二度と来ない」

ハーマイオニー「ああ、嘘でしょ? まさかロックハート先生に直接手ほどきしてもらえるなんて!」

マミ「そうね! ロックハート先生なら最適だわ!」

ハリー「もう突っ込む気も起きないけど、君らのロックハートに対するその信頼はどこから来るの?」




ロックハート「さて、私たちがこれから模範演技を行います! ああ、大丈夫! 命に関わるような呪文は使いません!
        ですから皆さん、明日も魔法薬の授業はありますよ? 宿題はきちんとやるように!」

ロン「その論で行くと、防衛術は休講かな」

ハリー「命に関わるような呪文は使わないって……スネイプの奴、控えめに言っても"今すぐ殺してやる"って顔してるけど」

ロックハート「はいそれでは行きますよ、よーくご覧ください――3、2、1!」

スネイプ「クルーシ――エクスペリアームス!(武器よ去れ)」ガオン!

     グシャッ

ロックハート「」

ハリー「ウワ、ロックハートが潰れたカエルみたいに壁に張り付いてる……」

ロン「いまスネイプ、なんか別の呪文唱えようとしてなかった? ロックハートの奴、どんだけ遅いんだ……」

ハーマイオニー「そ、そんなわけないわ! ほら、ロックハート先生は直前にカウントしてたから!
          だからちょっと遅れちゃっただけよ! ねえマミ? ……マミ? 何してるの?」

マミ「え? べ、別に何でもないわ? 本当よ?」ビクッ
338 :>>1 [saga]:2013/03/09(土) 14:27:00.18 ID:UZrS1Tgo0

ロックハート「は、はい――げほっ、大丈夫。大丈夫です。毛ほども効いてません。
        今のが"武装解除"の呪文です。ご覧の通り、私は杖を失ったわけですね。あー、ところで私の杖はどこに……?」


ハーマイオニー「マミ! あなたはまた抜け駆けしようと! ほらよこしなさい!
          その杖は私が! ロックハート先生に! 届けに行ってあげるから!」

マミ「さ、先に拾ったのは私だもの! いくらハーマイオニーさんでも、こればっかりは……!」

ハーマイオニー「いーからよこしなさい! すぐさまよこしなさい! ほら、あれよ? 私たち友達じゃない?
          病み上がりの友達を心配する友達想いの私。ね? だからほら、杖から手を離して……!」グググ!

マミ「ご心配なく、もう健康ですから! でもそうね、リハビリは必要かも。だからほら、壇上まで歩いて行かなくちゃ……!」グググ!


            メキッメキッ、ミシッ


ロックハート(ノォオオオオオオウ!)ダッ


ハリー「凄いしなってる。そして不吉な音が」

ロン「折れちまえ。どうせ役に立たないんだから」
339 :>>1 [saga]:2013/03/09(土) 14:27:53.14 ID:UZrS1Tgo0

マミ「まさかわざわざ、ロックハート先生が取りに来てくれるなんて……」ポー

ハーマイオニー「触っちゃった触っちゃった! ロックハート先生の手に触っちゃった!
          もうこの手、洗わないわ!」

ロックハート「はー、はー……よし、私の杖は無事みたいですね……
        えー、話を戻しますが、武装解除呪文。確かに有効な術です、スネイプ先生。
        ですがそれ故に、見え透いた呪文でもあります。無論、私が使えば別ですが」

スネイプ「……ほう? つまり何を仰りたいのですかな?」

ロックハート「生徒に見せた方が教育的だと思ってあえて受けましたが、
        実際に決闘を行う機会があれば、別の呪文を選択するのがいいと思いますよ?
        いや、はっは! これは失礼。つい老婆心が!」

スネイプ「なるほど、なるほど。聞いたかね、諸君。ロックハート教授は中々決闘にお詳しいようだ」

ロックハート「いやいや、それほどでも。ははは、単に難事件を解決しまくって、それを本にしたのが全てベストセラーというだけで――」

スネイプ「では、もう二、三手、御教授願いましょうか? ……今度はもう少し非友好的な呪文にて」ギロッ

ロックハート「あ、は、ははは。いやですね、スネイプ先生。そんな怖い顔しちゃ、生徒が怯えてしまいます、よ?
        そ、それに今夜は生徒に教えるのが目的ですからね!」

スネイプ「ああ、それもそうですな。いや、まことに残念。では、凶悪な呪いは次の機会と致しましょう」

ロックハート「ええ、そうしま――え? 次? 次の機会ってなんです?」

スネイプ「ロックハート教授? 生徒に教えるのではないのか? もう夜も遅い。時間は限られているが?」

ロックハート「え、あ、はい。そうですね……では二人組を作って! 今の武装解除の術を練習しますからね!」



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340 :>>1 [saga]:2013/03/09(土) 14:28:27.87 ID:UZrS1Tgo0



スネイプ「――で、こうなったわけだが」





ハリー「うわ、足が勝手にクイック・ステップを……!」タタン タタン!

ドラコ「あははは! ぽ、ポッター! あはっ、お前、げほっ、げほっ、ひゃは!
    この僕に、く、くすぐり呪文を! うふふふ、やめっ。苦しい! はあははは!」

ハリー「なんだろう。僕の踊りを笑われてるみたいで甚だ不快だ」タンタン!


シェーマス「うう……光がぁ……人参の、クラゲ帝国……」

ロン「ごめん! ごめんよシェーマス! このボロ杖がいうことを聞かなくて……!」


ネビル「ははは、やるじゃないか、ジャスティン――」バタッ

ジャスティン「君も、ね。ネビル――」ドタッ


ミリセント「死ねぇ!」ギリギリ

ハーマイオニー「」ブクブクブク

マミ「も、もういいでしょ! 放して、ハーマイオニーさんを放してよぅ……!」ポカポカ

ラベンダー「マミ、それよりもあなたが吹っ飛ばしたクラッブが、その、息してないみたいなんだけど――」



スネイプ「フィニート・インカンターテム!(呪文よ終われ) ――さて、これはどうしたものですかな、ロックハート教授?」

ロックハート「杖を取り上げるだけだと言ったのに……
        ふむ、むしろ掛けられた呪文から身を守る方法を教えた方がいいようですね」
341 :>>1 [saga]:2013/03/09(土) 14:29:30.41 ID:UZrS1Tgo0

スネイプ「では模範演技をしましょうか? 我輩が呪いを掛けるからして、教授はそれを――」

ロックハート「は、ハリーとドラコ! 前に来て! 来てください! 二人にやってもらいましょうね!」

ハリー「そのままスネイプにぺちゃんこにされれば良かったのに……」

ドラコ「なんだ、怖いのか、ポッター?」

ハリー「ハーマイオニー、マルフォイがどうしても君と模範演技がしたいって――」

ドラコ「ひぃっ! は、早く壇上に行くぞ!」

ハリー「ちょ、引っ張るなよマルフォイ!」



ロックハート「いいですか、ハリー。これからドラコが呪文を唱えますから、君はそれを防ぐんです。
        防御の呪文は"ブロテコ・トラタム(方金の守り)"ですからね」

ハリー「その呪文、本当に合ってます?」

ロックハート「はは、不安ですか? 大丈夫、いざとなったら私がついてますから!」

ハリー(不安が一ミリもぬぐえない……)

ロックハート「ではいきましょう。3、2、1。はい!」

ドラコ「サーペンソーティア!(蛇出でよ)」バシュッ


蛇「にょろ――ん!」


マミ「お、大きな蛇ね……」ビクッ

ロン「蜘蛛じゃなくて良かったけど、ハリー大丈夫かな?」

ハーマイオニー「大丈夫よ、ロックハート先生がついてるもの!」

ロン「ハリーの奴、本当に大丈夫かな」
342 :>>1 [saga]:2013/03/09(土) 14:31:02.68 ID:UZrS1Tgo0
ハリー「う、わ。ブロテコ・トラタム! ――あ、やっぱり駄目だ。何も起こらない」

蛇「にょろにょろ」

ロックハート「おやおや、はっは! ちょっと難しい呪文でしたかね! でもご安心を、私が追い払ってあげましょう!
        えいやっ!」バシュッ

蛇「にょろー!?」ビュゥン!

ジャスティン「うわ、こっちにきた!」

蛇「……シャーーーーーッ!」

ジャスティン「しかも怒ってるぅぅぅうううう! 杖っ、杖っ (ポロッ) ああ落とした!?」

ロン「本当にロックハートは余計なことしかしないな!」

ハーマイオニー「で、でもほら、あれよ。緊急事態だったから!」

マミ「そ、そうよ。ほら、一応追い払うことには成功したわけだし」

ロン「言ってる場合か! 助けないと、でも僕がやるとシェーマスの二の舞になりそうだし――」

ハリー「……シューッ! シューッ!(手を出すな!)」

蛇「! ……にょろーん」

マミ「――!? 今のって……」
343 :>>1 [saga]:2013/03/09(土) 14:31:34.47 ID:UZrS1Tgo0


ざわざわ

「ポッターが、いま……?」

「ああ、聞いた。確かに聞いたぞ……」

「でも、ポッターが……?」

                   ざわざわ


ハリー「え? なに、この空気。ジャスティン、怪我は……」

ジャスティン「う、わ。く、来るな!」ダッ

ハリー「は? 助けてやったのに、なんだあの態度……ねえ、ロン」

ロン「ハリー。こっち来て……」グイッ

ハリー「わ、ちょ、引っ張らないで。何だよ、なんだっていうのさ?」

ハーマイオニー「いいから、ね? 場所を移しましょう」

ハリー「分かった。分かったけど……」スタスタ




マミ「……」

ラベンダー「驚いたわ。まさかハリーがパーセルマウスだなんて……」

マミ「パーセル、マウス? それって何なの?」

ラベンダー「あら、マミは知らないの? あのね、パーセルマウスっていうのは……」
344 :>>1 [saga]:2013/03/09(土) 14:32:03.98 ID:UZrS1Tgo0

夜 グリフィンドール女子寮


ラベンダー「Zzzzz...」

ハーマイオニー「Zzzzzz...」

マミ「……」



◇◇◇


ラベンダー「……それで、パーセルマウス、つまり、さっきみたいな蛇語を話せるのは、大抵が闇の魔法使いなの。
       あのサラザール・スリザリンもそうで、だからスリザリンは蛇が寮のマークでしょ?」


◇◇◇



マミ(……蛇語……闇の魔法使いの証?)


マミ(あの、独特の、息を歯の隙間から思いっきり吹くような音……)


◇◇◇

???『……シューッ!』


マミ「? キュゥべえ、いま何か言った?」

QB「? いや? でも、僕にも聞こえたよ。空気が漏れるみたいな音だろう?
   扉の外――廊下から聞こえたように思うけど」

◇◇◇



マミ(でも、そんな……まさか、ハリーくんが継承者なんて。大体、ハリーくんはあの時、クィディッチの試合に……)



◇◇◇

QB『そう。おそらく、グリフィンドールの生徒だ。
   僕らが試合直前まで暖炉の前にいたことは、グリフィンドールの生徒なら誰もが知っている。外への通り道だからね』

マミ『そんな……私たちの寮に継承者が?』

◇◇◇

ラベンダー「蛇語を話せる人って、滅多にいないのよ。凄く珍しいの。多分、ホグワーツにも彼以外はいないんじゃないかしら?」

◇◇◇


マミ(……駄目よ! 考えちゃダメ! ハリーくんのわけないんだから!)

マミ(……継承者が蛇語を話せるって話は、先生にすべきかしら。でも、そうしたらハリーくんはますます疑われる……)

マミ(……誰かに、相談したい。ハーマイオニーさんは……駄目。ハリーくんを疑わせるようなこと、させたくないし……
   頼れる、人……ハリーくんを犯人だって決めつけない人……そうだ、マクゴナガル先生なら!)
345 :>>1 [saga]:2013/03/09(土) 14:32:35.35 ID:UZrS1Tgo0

翌日 グリフィンドール談話室


びゅうううううう――


マミ「大吹雪ね……薬草学、中止になっちゃった」

マミ(時間だけあってもね……変身術は次の時間だし……マクゴナガル先生に早く相談したいのに)

マミ(……そうだ! 変身術の授業が終わってから相談しようと思ってたけど、早めに行って、授業の前に相談しよう!)

マミ「よーし、そうと決まったら善は急げ、よ!」

ハーマイオニー「あら、マミ、どこかに行くの? ……変身術の教科書? まだ時間があるけど」

マミ「ええと、ちょっとマクゴナガル先生に聞きたいことがあって」

ロン「あー、だったら、ちょっとお願いがあるんだけど。
   ハリーもいま外に出てるんだけど、教科書を置いて行っちゃって……
   会ったら、早めに戻るよう言っといてくれないかい? ちょっとほら、あいつ今参ってるからさ……」

マミ「ハリー、くん?」

ロン「君はあんな噂信じてやしないだろ? ま、会ったらでいいからさ」

マミ「う、うん。分かったわ」

346 :>>1 [saga]:2013/03/09(土) 14:33:03.50 ID:UZrS1Tgo0


廊下


マミ「……」スタスタ

マミ(私自身は……ハリーくんのこと、疑ってる?)

マミ(ハリーくんは、クィディッチの試合でアリバイがある……だから、絶対に犯人じゃない)

マミ(……それなら、さっきロンくんに言伝を頼まれたとき、躊躇っちゃったのは……)

 ドンッ

マミ「きゃんっ! あたた……お尻打っちゃった」

ハグリッド「大丈夫か? ちゃーんと前を見とらんと、あぶねーぞ」

マミ「あ、えーっとハグリッドさん。ごめんなさい、ぶつかっちゃって……」

ハグリッド「はっはっは! 別にお前さんみたいなちびすけがぶつかっても、痛くも痒くもねーさ。
       ん? ああ、お前さん、えーと。確かマミだったか? 去年は助かったぞ、ありがとうな」

マミ「去年? えーと、私、なにかしたかしら?」

ハグリッド「ほれ、あのノーバートの」

マミ「ノーバート」

ハグリッド「いや、だからドラゴンの赤ちゃんを――」

ハグリッド(って、そうだやっちまった! この娘っこはあのことを知らんのだった!
       最近よくハリー達と一緒にいるもんだからつい……!)

マミ「どら、ごん?」

ハグリッド「いやーあははは! 間違えた! 勘違いだった!
       ああほれ、いつまで尻もちついとんじゃ。立ち上がらんと尻が冷えるぞ。ほれ、掴まれ」スッ

マミ「ありがとう……ってきゃあ! に、ニワトリの死体!」ピョンッ

ハグリッド「おっとっと。そういやこれ持っとったなぁ。ま、そんだけ跳ねられるんだったら怪我はしてねーか」

マミ「ああうん、平気ですけど……そのニワトリ、どうするんですか?」

ハグリッド「狐か何かにやられたみたいでなぁ。もう二匹目だし、ダンブルドアに見て貰って、小屋の周りに魔法をかけにゃならん。
       そういや、さっきハリーにも同じ話をしたな。お前さんと言い奴さんといい、考え事しながら歩くのが流行ってるんかい?」

マミ「ハリーくん? 会ったんですか?」

ハグリッド「おう。さっき、あっちの方でな。なあ、お前さん、ハリー達と仲が良いみてえだし、ちいと気にかけてやってくれんか。
       どうもなんかあったみたいでな」

マミ「……分かりました」
347 :>>1 [saga]:2013/03/09(土) 14:33:44.79 ID:UZrS1Tgo0


マミ(……私、ハリーくんのこと――)

マミ(でも、そんな――ハリーくんのわけ)スタスタ

マミ「あら、あそこに立ってるのは……ねえ、ハリーくん! ロンくんが、教科書忘れてるって――」

ハリー「マ、ミ」

マミ「? どうしたの、酷い顔色だけど……っ!」


ニック「」

ジャスティン「」


マミ「あ、ああ、あ……キュゥべえと、同じ……ゴーストの、ニックまで……」

ハリー「違う。違うんだ、マミ。僕がやったんじゃ――」

マミ「……キャアアアアアアアアアアアアアアアアア!」
348 :>>1 [saga]:2013/03/09(土) 14:34:11.51 ID:UZrS1Tgo0



ピーブズ「おー ポッター やな奴だー♪ 生徒を殺して楽しいのかー♪」



     ざわざわざわ


「ポッターが!?」「やっぱりポッターか!」「またトモエを襲おうとしたんだ!」


                               ざわざわざわ


アーニー「現行犯だぞ! もう言い逃れはできないなポッター!」

マクゴナガル「おやめなさいマクラミン! ピーブズも! ……ポッター、おいでなさい」

ハリー「違います。先生、僕じゃない。僕、やってません――」

マクゴナガル「残念ですが、私の手には負えません……フリットウィック先生、シニストラ先生、ジャスティン達を医務室へ。
         トモエ、立てますか? 彼らと一緒に医務室へ……」

マミ「だ、大丈夫、です。授業には、出れます」

マクゴナガル「……そうですか。どのみち変身術は自習になるでしょうが、無理はしないことです。
         さあ、ポッター。校長室へ――」

マミ「あ、あの! マクゴナガル先生!」

マクゴナガル「何ですか、トモエ。やはりどこか――」

マミ「は、ハリーくんじゃ、ないと思います」
349 :>>1 [saga]:2013/03/09(土) 14:34:37.80 ID:UZrS1Tgo0

マミ(あ、あれ――? なんで私、こんなこと言って……?
   ハリーくんのこと、ちょっと疑ってた筈なのに……口が、勝手に)

マミ「だ、だって。私の時は、ハリーくんクィディッチの試合に出てたし――
   大声を上げちゃったけど、それだってびっくりしたからで、襲われたとかじゃありません」

マクゴナガル「……」

ハリー「マミ……」


     ざわざわざわ


「そういやそうだ」「アリバイはあるな」「誰だポッターが犯人だって言い出したの」


                               ざわざわざわ


アーニー「騙されるなみんな! きっと事前に、怪物に指示を出しておいたんだ!」

マミ「違うわ! だって――」

アーニー「だって、なに?」

マミ「あ……」

マミ(あの時、継承者がトレイのドアの前にいたことを私が知ってるのは、そいつの話す蛇語を聞いてたから)

マミ(蛇語のことをここで言ったら、ハリーくんはますます疑われちゃう――?)

アーニー「きっと君は混乱してるんだ――それに、ほら。ポッターが怖くてそんなこと言うのかもしれないけど、
      ここには先生もいるし、本当のことを言っても――」

マクゴナガル「お黙りなさいマクラミン!」

アーニー「ひっ!」ビクッ

マミ「ま、マクゴナガル先生――」

マクゴナガル「貴女の言い分は分かりました、トモエ。
         ですが、先ほども言った通り、もう私の裁量で扱える範囲を超えています」

マミ「そんな……」

マクゴナガル「……ですから、校長に伝えておきます。被害者からの意見は、一考すべきですから」

マミ「! あ、ありがとうございます!」

マクゴナガル「お礼をされる道理は有りません。当然のことだからやるまでです。
         さあ、行きますよポッター」
350 :>>1 [saga]:2013/03/09(土) 14:35:04.31 ID:UZrS1Tgo0

翌日 廊下


フレッド「さあさあどいたどいた! ハリー様のお通りだ! 目を合わせるな! みぃんな食われっちまうぞ!」

ジョージ「ひ、ひええええ〜。お助けくだせえ! 後生ですだ! 娘は! 娘だけは!」

パーシー「こら! また馬鹿やってるのかお前らは! 笑い事じゃないんだぞ!」

フレッド「でたなパーシー! グリフィンドールの怪物め!」

ジョージ「みんな、逃げろ! 奴の吐息を浴びた生けとし生けるものは全て、監督生にされちまう!」

フレッド「そいつはおっかない! 完全にスリザリンの怪物より格上だ!」

パーシー「これを見てもまだふざけてられるのか?」グイッ

ジニー「は、ハリーをいじめるの、やめて……」ジワッ

双子「「すいませんでした!」」ペコッ




ロン「やれやれ、パーシーは頭が固いなぁ。フレッド達が冗談でやってるって分からないかね」

ハーマイオニー「でも不謹慎には違いないでしょ。ハリー、平気?」

ハリー「まあ、あの二人は僕がスリザリンの継承者だなんて欠片も思ってないってことは伝わったよ」

ハーマイオニー「あの二人のほかにも、ハリーのこと信じてるって人、結構聞くわよ。
          そういえば、確かにマミの事件の時はクィディッチに出てたものね」

ロン「ダンブルドアもね。昨日君が校長室に呼ばれたって聞いた時はびっくりしたけど」

ハリー「ああ、ダンブルドアも僕じゃないって信じてくれてた……
     でも怪物が人を襲いまくってるって事実には変わりないんだよなぁ」
 
ロン「みーんなこぞってホグワーツ特急の予約入れてたよ。マルフォイは残るみたいだけど」

ハリー「純血だから襲われないって信じてるんだろうね」

ハーマイオニー「呑気なものよね。50年前、前回扉が開かれたときには、人がひとり死んでるって。
          その時の犯人は捕まって追放されたそうだけど。そう言ってたのは自分なのに」

ロン「吐かせた、の間違いだろ。しかもマルフォイは言ったこと覚えてないんだろうし」

ハーマイオニー「う、うるさいわね!」

ハリー「あいつとしちゃ、マグル生まれがどうなろうが知ったこっちゃないってとこだろうさ……
     そういえば、マミは? 昨日、僕が帰ってきてから姿が見えないけど」

ハーマイオニー「マダム・ポンフリーに連行されていったわ。一応、精神面のチェックとケアをするから、って」

ロン「本人は必要ないって抵抗してたけどね。でもまあ、よく考えたらマミって全部の事件現場に遭遇してるわけだし」

ハリー「そっか……昨日のお礼をしたかったんだけどな」
351 :>>1 [saga]:2013/03/09(土) 14:36:07.69 ID:UZrS1Tgo0

医務室



ポンフリー「今日は絶対安静です。絶対にベッドの上から出しませんからね!」

マミ「うう……大丈夫なのに……」

ポンフリー「聞く耳持ちません。患者本人が、病気に気付いていないというのはよくある話ですから。
       さて、私は所要があるので少し外しますが、外に出たらだめですよ?」

   バタン

マミ「……はぁ。暇になっちゃった。本でも持って来ればよかったわ……」

マミ(こうして時間があると、色々考えちゃうわね……そういえば、佐倉さんは元気かしら?)

マミ(もうすぐクリスマスだし、クリスマスカードの交換とかできたらいいのに……ふくろう便が見滝原に通ってたらなぁ)

マミ(煙突飛行ネットワークも圏外だから、キングズ・クロス駅に行くのにも、未だにポート・キーを使わなきゃだし……
   ポート・キーはマクゴナガル先生が送ってくれるけど、やっぱりご迷惑よね……魔法省にいちいち許可を取らないといけないし)

マミ(うー。パスポート取ろうにも、未成年は親の許可が必要なのよね……
   ていうか、さすがに子供一人で海外に行くとなると、さすがに何か問題になっちゃうわよね、きっと)

マミ(あーそういえばクリスマス、居残り組に丸つけなきゃ……あれっていつまでだったかしら?)

 パサッ

マミ「? 何かしら? ベッドから何か落ちて……これは紙切れ? なにかしら、文字が書いてある……?」


『今すぐ見滝原に帰れ。友達を失いたくなければ』


マミ「……っ!」ポイッ

マミ(いまのって……脅迫、状? いったい、誰が?)

マミ(いや……それより、いま、この医務室の中に、犯人がいる?)

マミ(……杖は、ある。出てきてみなさい。ロックハート先生直伝の武装解除呪文を叩き込んでやるんだから!)スッ

マミ「……」

マミ「……で、出てこないならこっちから行くわよ!」スタッ
352 :>>1 [saga]:2013/03/09(土) 14:36:33.74 ID:UZrS1Tgo0


  さっ

マミ「ベッドの下……いない」

 シャッ

マミ「怪物の犠牲になった人がいる区画……いない。キュゥべえ、見ててね。仇は取るわよ……」

 ガラガラッ

マミ「書類棚の中……いない」

 ぱかっ ぱかっ ぱかっ

マミ「薬瓶の中……いない」

 ひょいっ

マミ「スリッパの下……いない」

マミ「いない、いない、いない……うう、頭にきた!」ダン!

マミ「卑怯者! 出てきなさい! 言っておくけど、こ、怖くなんてないんだから! 私、強いんだから!」

マミ「出てきた瞬間! コテンパンにしてやるわ! そこ!? (サッ) そこね!? (サッ) それとも……そこか!?」バッ


ハリー「……」

ハーマイオニー「……マミィ」ジワッ


マミ「そこ……か……」
353 :>>1 [saga]:2013/03/09(土) 14:37:02.62 ID:UZrS1Tgo0
マミ「待って。違うの。そうじゃないの。みんな誤解してるわ。まずは話し合いましょう」

ハリー「いや、いいんだ。分かってるよ。ね? だからベッドに戻ろう?」

マミ「嘘よ。全然分かってない。そんな目してるもの」

ハリー「いいんだよ。もう休んでいいんだ……昨日はありがとう。本当、こんな状態で、僕のことを庇ってくれるなんて……」

マミ「こんな状態ってなに!? 私は正常よ! お願いだから話を聞いて――いや、気を付けて!
   医務室に継承者がいるの! 隙を見せたら攻撃してくるわ! 私達は、何者からかの魔法攻撃を受けている!」

ハーマイオニー「こんな、こんな風になるまで、辛い思いをしてるなんて……マミ!」ダキッ

ハリー「やめろ、ハーマイオニー! 刺激しちゃ駄目だ!」

マミ「ほらもう勘違いしてるぅぅぅううううううう!」

ハーマイオニー「私たち、友達でしょ! 辛いことがあったら相談してよ……!」

マミ「違うの! だってさっき、私の枕元に脅迫状が! ほら、そこに……あれ? ない!」

ハリー「いいんだ、君は疲れてるんだよ、マミ……ハーマイオニー、放して。ほら、彼女をベッドに」

ハーマイオニー「う、ん……ぐすっ。マミ。ほら、休みましょう?
          そして、見えちゃいけないものが見えなくなったら、また一緒に遊びましょうね――?」

マミ「幻覚扱いしないで! あったのよ、確かに! 見たんだもの!」

ハリー「ああ、あった。脅迫状はあった。ねえ、ハーマイオニー?」

ハーマイオニー「ええ、ぐすっ、私も、確かにっ、見た、わ。ぐすっ」

マミ「絶対信じてないでしょ! 物凄い優しい目でこっちを見てても騙されないわよ!」
354 :>>1 [saga]:2013/03/09(土) 14:37:39.02 ID:UZrS1Tgo0

ロン「おまたせ! マダム・ポンフリーを連れてきたよ!」ダッ

ハリー「! でかした、ロン! 先生、またマミが錯乱して!」

ポンフリー「ありがとうございます。ああ、こんな姿のお友達を見て……さぞ辛かったでしょう」

ハーマイオニー「私たちのことはいいですから、マミを! マミを助けてあげてください!」

マミ「違うの! 脅迫状が! 継承者がこの部屋の中に! 信じてったら!」

ロン「でもさ、マミ。スリッパの下を真面目に捜索するような人、君は信じられる?」

マミ「あ、う、それは、あの……だって、だってそんなノリだったんだもの! うがー!」

ロン「うわあ! 理性が!」

ハーマイオニー「マミ! あの頃の、私たちの知ってるマミに戻って……!」

ハリー「駄目だ、ハーマイオニー! いまのマミは正気じゃないんだから!」

ロン「抑えるぞ、ハリー! 君も手を貸せ!」

ハーマイオニー「マミー! マミー!」ジタバタ

ポンフリー「彼女を連れてさがってください! あとは私が!」

マミ「話を聞いてくれないなら、暴れるしかないじゃない――!」


 この後、クリスマス休暇が始まるまで、マミはベッドの住人だった。

355 :>>1 [saga]:2013/03/09(土) 14:38:21.13 ID:UZrS1Tgo0

新学期 放課後 グリフィンドール談話室


マミ「……複雑な気分だわ。今年はハリーくんとロンくんもクリスマスカードくれたけど、
   絶対お見舞い的な意味も含まれてるもの……」

マミ「でも、ロックハート先生がお見舞いカード送ってくれたのは素直に嬉しいわ!」


<ミス・トモエへ。ゆっくり、どうかゆっくり、静養してください。
 ほんともう、授業とかの心配はしないでいいですから! 宿題とかも、マミの分は量を少なくしたり、特別にしますから!
 ギルデロイ・ロックハートより>


マミ「そんな、私のこと、特別だなんて……きゃー!」ジタバタジタバタ

ハーマイオニー「う、羨ましくなんてないわ! 私も直筆サイン持ってるもの!」

マミ「でも、このカードにロックハート先生の使ってる香水が染み込ませてあるとしたらどうかしら……?」

ハーマイオニー「なん……ですって……?」



ロン「はい、チェック。あー、チェスも飽きたな」

ハリー「全勝してる側の君が言っていいセリフじゃないよね、それ。ああ、キュゥべえがいればなぁ。
    十回に一回は勝てる寸前までいくのに」

ロン「マンドレイクの成長は順調だっていうし、来年度にはまた会えるさ」

ハーマイオニー「ふぅ! 堪能したわ。一週間、サイン入り教科書のカバー交換は痛手だったけど……」

ハリー「ああ、お帰り。マミとの会話はもういいの?」

ハーマイオニー「終わったわ。マミ、ちょっと図書室に行くって言うから。
          っていうか、気づかなかったの? さっきマミ、肖像画から出て行ったじゃない」

ロン「うーん、なんでだろうね。
   もしかした最近、君らの会話の中に"ロックハート"って単語が出てきたら、
   外界からの情報を遮断するように努めてるからかもしれないね?」

ハーマイオニー「そんなんじゃ、防衛術の授業受けれないじゃない」

ハリー「有用な情報を聞けるんだったら、僕たちも考えを改めるさ」
356 :>>1 [saga]:2013/03/09(土) 14:38:58.03 ID:UZrS1Tgo0

三階 廊下 マートルのトイレ前


マミ「ふぅ……どうにか抜け出せたわ。これでまた調査ができる。
   クリスマス休暇中は、ハーマイオニーさんたちがずっと私のこと監視してたから何も調べられなかったもの」

マミ(と言っても、なにを調べたものかしら?
   怪物の巣はきっと、マートルさんのトイレにあるのでしょうけど……)

マミ(……あの手洗い台を、どうにかして壊せれば……)

マミ(そういえば、犯人が蛇語を喋ってたんだから、怪物の正体は蛇なのかしら?)

マミ(うう、考えがまとまらないわ。キュゥべえがいてくれたらなぁ……)

マミ「うーん……」スタスタ

 ツルッ! びちゃっ!

マミ「きゃあ! いたたた……もう、なにこれ! 廊下が水浸しじゃない!
   うう、下着までびしょ濡れ……着替えないと……」

マミ「……って、あれ? そういえば、ミセス・ノリスと私が襲われたあの時も水が……!
   水の出元は……やっぱり、マートルさんのトイレね」スッ
357 :>>1 [saga]:2013/03/09(土) 14:39:24.42 ID:UZrS1Tgo0


マートルのトイレ


 ガチャッ


マミ(慎重に……慎重に……怪物がいても、すぐに逃げるのよ……)

マミ(トイレの中には……うん、いないわね。手洗い台にも、異常なし)

マミ(あとは、個室の中……)

マミ「そこか! (がちゃっ) ……いないわね。次、そこぉっ! (がちゃっ) ……ここも、いない。なら、次っ!
   ローリング・ドア・オープン! (びちゃっ) 冷たい! 水が背中に!」ジタバタ!

マートル「……あんた、何やってんの?」

マミ「ま、マートルさん! 違うの、これは、違うの。そう、怖さを誤魔化すため、自分を鼓舞するためというか。
   あの、だからマダム・ポンフリーに通報とかは、ほんと勘弁してください……」

マートル「まあいいけどさ、別に……はあ、あんたの変な行動見てたら、泣いてるのが馬鹿馬鹿しくなったわ」

マミ「泣いてたの? ああ、だから床が水浸しなのね? でも、どうして?」

マートル「誰かが私に本を投げつけたのよ……ほら、その黒い革表紙の」

マミ「日記みたいね。ずいぶん古そうだけど……えーと、奥付けに出版された年が……今から50年前!?
   ほんと、年代ものね。中には何も書かれてないみたいだけど……あ、でも最初のページに名前だけ……T.M.リドル?」

マートル「その日記、できたらどっかに捨ててきてくれない? 私、これ以上見たくも、触りたくもないから」

マミ「持っていくのはいいけど、勝手に捨てるのは……でも、誰が投げたのかしら? 
   まさかこのリドルって人がまだ学校にいるわけもないし……うーん。まあ、元の持ち主に返せばいいわよね?
   図書室に生徒年鑑とかってあったかしら? 住所が分かれば、ふくろうで送れるし……」
358 :>>1 [saga]:2013/03/09(土) 14:39:51.04 ID:UZrS1Tgo0

図書室


マミ「T.M.リドル……T.M.リドル……うー、探すのも疲れてきた。
   これ、卒業生しか載ってないんだもの……リドルがいつ卒業したか分からないから、
   最低でも50年前の前後7年を探さなきゃいけないし……買ったのが在学中じゃないんなら、もっと範囲は広がるし……」

マミ「はぁ。本当なら、落とし物ってことでフィルチさんに届ければいいんでしょうけど……
   うう、でもあれ以来話しかけづらいし……」

ハリー「あ、マミだ。まだ図書室にいたんだ……」

ロン「理解できないなぁ。どうやったら本にそこまで熱中できるんだろ?」

マミ「あら、みんな。どうしたの?」

ハーマイオニー「どうしたのって、あのね、心配になって見に来たのよ。もう消灯時間も近いのに、全然帰ってこないんだもの。
          ただでさえ、最近は物騒なんだから」

マミ「え、嘘! もうそんな時間なの……うう、一日の最後を無駄にした気分だわ」

ハーマイオニー「無駄にした、って、何を読んでたの? ……卒業生の年鑑? なんでこんなものを?」

ロン「驚いたなぁ。君が読んでない本が存在したのかい、ハーマイオニー?」

ハーマイオニー「私だって、読む本くらい選ぶわ」

ハリー「選んであれなんだ……でも、本当にどうしてそんな本を?」

マミ「名前だけしか書いてない日記を拾ったんだけど……日付が50年前なの。住所が分かれば返せると思って」

ロン「おったまげー、凄いボランティア精神だな。僕だったらとっくに捨ててるね」

ハーマイオニー「マミの国ではそういうのが美徳だって、何かで読んだことがあるわ」

マミ「そういうのじゃないんだけど……あ、そうだ。ハリーくん達、これをフィルチさんに渡してきてくれる?」

ロン「本気で言ってるの? 僕、フィルチに会わない為だったら遠回りするのも辞さない……
   あー、その、別にフィルチのことをどうこう言ってるわけじゃなくてね? 相性が悪いって言うかさ」

マミ「別に気にしないから大丈夫よ……でもほんと、どうしましょう。捨てるのは論外だし……」

ハーマイオニー「ちなみに、なんて人の日記なの? 有名な人なら知ってるかも……」

マミ「T.M.リドルっていうんだけど」

ハーマイオニー「うーん、ごめんなさい。知らないわ」

ハリー「僕も。いやまあ、ハーマイオニーが知らないなら誰も知らないだろうけどさ」

マミ「ふふっ、そうね」

ロン「僕、知ってるけど」

マミ「!? ロンくんが!?」

ハーマイオニー「うそ、でしょ……ロンに負けた……?」

ハリー「あー、ロン? 別に見栄を張らなくても……」

ロン「よーし。全員そこに並べ。僕に対する認識を拳で入れ替えてやる」
359 :>>1 [saga]:2013/03/09(土) 14:40:23.46 ID:UZrS1Tgo0

ロン「って言っても、自慢できることでもないんだけどさ。前に罰当番で盾磨きさせられた時、
   そいつの名前の入った盾を一時間も磨く羽目になったんだよ。そりゃ覚えるってもんだろう?」

ハリー「あ、なんだ。納得した」

ハーマイオニー「良かった……一瞬、勉強する時間を三倍にしようかと思ったけど……寝る時間が無くなるもの」

マミ「世界の理の崩壊は防げたのね」

ロン「君ら、そんなに小突かれたいのかい? 泣きながらパンチするぞ、僕は。
   とにかく、そいつは50年前、5年生の時に特別功労賞を貰ってるんだ。なんでだかは書いてなかったけど」

マミ「50年前の5年生ってことは、卒業はそれから2年後……あった。トム・マールヴォロ・リドル。
   でも住所は書いてないわね……うー、ここまで来て手詰まりなんて……」

ハリー(ねえ、ハーマイオニー。もしかして……)ヒソヒソ

ハーマイオニー(ええ、私もそう思ってたとこ)ヒソヒソ

ロン(何の話だい? 僕にも教えてくれよ。何せ頭が悪いもんでね)ヒソヒソ

ハーマイオニー(リドルは50年前に功労賞を貰った。秘密の部屋は50年前に開かれた)

ハリー(そして秘密の部屋を開けた人物は、ホグワーツから追放された)

ロン(だから?)

ハーマイオニー(こう考えることはできない? リドルが秘密の部屋を開いた犯人を捕まえて、功労賞を貰った)

ハリー(そしてそれに関わることが、日記に書いてあるかもしれない)

ロン(あれ? もしかして、僕の方が記憶力いいのか? 名前しか書いてないって、さっきマミが言ってたけど)

ハーマイオニー(透明インクとかかもしれないじゃない!
          マミは50年前の情報を何も知らないから、あれをただの日記としか思ってない。
          多分、詳しく調べてはいない筈よ)

ロン(じゃ、ちょっと借りようか? ああでも、正直に話すのは不味いかな?)

ハリー(彼女の精神に負担を掛けるのは良くないね、確かに)

ロン(よし、ちょっと作り話でもするとしよう。なに、善意の嘘だもの。構うもんか)

ロン「あー? マミ、やっぱり僕がフィルチに渡してくるよ。やっぱりさ、こういう時は助け合いが大事だよね」

マミ「何を企んでいるの?」

ロン(おい! シンキングタイムゼロで見破られたぞ!?)

ハリー(馬鹿! ロンの馬鹿! いくらなんでもそれはないよ!)

ハーマイオニー(嘘をつくにしても、もっと分かりにくい嘘をつきなさい!)

マミ「……なーんてね。ありがとう、ロンくん。それじゃあお願いするわ」ヒョイッ

ハリー(最高だ、ロン。さすが僕の親友!)

ハーマイオニー(あなたを信じてたわ。愛してる!)

ロン(寮に戻ったら、こいつら絶対に殴ってやろう)

360 :>>1 [saga]:2013/03/09(土) 14:40:50.17 ID:UZrS1Tgo0

2月14日 朝 大広間前廊下


ハリー「はあ、眠い……昨日も遅くまでクィディッチの練習だったしなぁ。
     今年こそ優勝できそうだし、ウッドの意気込みも分かるんだけど」 

ハリー「それにしても、最近は平和だなぁ。あれ以降、怪物は誰も襲ってないし。
     結局、リドルの日記はハーマイオニーがいくら調べても二重の意味で白だったけど、平和なら別にいいや」

ハリー「さて、寝坊してちょっと遅れちゃったけど、まだ朝食には十分間に合うよな……」


  ガチャッ


ハリー「……部屋を間違えたみたいだ。それか、僕もマミみたいに幻覚がみえるようになったか」

ロン「どっちも外れだよ、ハリー。ここは大広間で、目の前のこれも現実さ」

ハリー「そこらじゅう有毒植物みたいなけばけばしい色の花で覆われて、天井からハートの紙ふぶきが降ってくるこれが?
     嘘だといってくれ。最初、ここがホグワーツかどうかさえ迷ったんだから。誰だ、こんな馬鹿なことやった奴は」

ロックハート「諸君! バレンタインおめでとう! 私のピンクのローブ、おしゃれでしょう?」

ロン「説明が必要かい?」

ハリー「いや、やっぱりいいや」

ハーマイオニー「ロックハート先生が! 納得の素敵な内装ね!」

マミ「凄い! 凄いわ! これがイギリス流のバレンタインなのね!」

ネビル「いや、ちょっとマミ? 違うよ? これはイギリスの名誉を掛けて言うけど、違うからね?
     ハリー、ロン。君たちからも何か言ってやってよ」

ハリー「今日の朝食、紙ふぶきで凄く食べにくいなぁ……」モグモグ

ロン「せめて食えるものを降らしてくれたらいいのにな。ミントの葉っぱとかさ」

ネビル「あ、駄目だ。聞いてない」
361 :>>1 [saga]:2013/03/09(土) 14:41:44.18 ID:UZrS1Tgo0

ロックハート「現時点で47人の方が私にバレンタインカードをくださいました! おっと、出遅れったって嘆く必要はありません!
        大切なのは、込められたハートですからねっ☆」パチッ

マミ「流石ロックハート先生。名台詞ね……」

ハーマイオニー「メモしておかないと……」

ネビル「ハリー、塩取ってもらっていい?」

ハリー「はい、ネビル。それ、ポリッジ? だったら熱いうちに刻みチーズ掛けると美味しいよ」

ロン「冷めたら蜂蜜垂らしてもいけるよな。ドライフルーツも悪かないけど」

ロックハート「さらに! 配達キューピットを用意しました! 彼らが今日一日、皆さんにカードを配達してくれます!
        配達してほしい人は、私の部屋の前にポストを設けたので――」

配達妖精「……」

ジョージ「うわ、なんだあれ。ぶっさいくな小人が仮装してやがる。どういうセンスしてやがんだ」

フレッド「多分、ロックハートが頭の中で飼ってる生き物だろ」

ジョージ「ああ、納得。頭の中に何が入ってるのか前から疑問だったけど、あれか。
      きっと餌は奴さんの脳みそだな」

フレッド「おいおい、それじゃあっという間に餓死しちまうだろ?」

ジョージ「それもそうか。HAHAHA――あれにカードを届けられるくらいなら自殺した方がましだな」


362 :>>1 [saga]:2013/03/09(土) 14:42:40.96 ID:UZrS1Tgo0

昼食後 廊下



配達妖精「ハリーポッター! あなたに愛のお届けデース☆」

ハリー「よりにもよって、人が大勢いるここで、来たか――ロン、杖を貸してくれ。一か八か投げつけてみよう」

ロン「それよりも逃げなよ。食い止めてあげるからさ」

配達妖精「OH、ノ〜ゥ! 逃げられたら、ワターシ、仕事まっとうできませ〜ん! 家族が飢え死にしマ〜ス!」

ハリー「キューピットのくせに、なんでそんな重たい設定抱え込んでるんだ君は」

ロン「いいからいけって!」

ハリー「ああ、ありがとう。それじゃあ――」クルッ

配達妖精「残像だ」ヒュイッ

ハリー「」

配達妖精「遅いな。あくびがあくびで殺せるほどスロゥリィだ――んーふーんー?
      まあドッチにしても、お届けするのは歌ですかーら、音速以上で逃げないと無駄デスけどネー?」

ハリー「じゃあ気絶してろ、このっ」ブンッ

配達妖精「けえっ!」カッ

 ビリビリッ 

ハリー「ふ、振り下ろした鞄が真っ二つに裂けた……」

配達妖精「これでよし……さ、歌いマース。よく、お聞きくだサーイ。
       ふーんふーんふふふーん……♪」

ハリー「ぜ、前奏から……!?」




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363 :>>1 [saga]:2013/03/09(土) 14:43:39.81 ID:UZrS1Tgo0

パーシー「さ、ほらほら! もう五分も前にベルは鳴ったぞ。散った散った!」

ハリー「パーシー……」

パーシー「お礼を言われるほどのことじゃないさ。僕は監督生だからね」

ハリー「いや、なんでその五分前に止めてくれなかったんだい?」

パーシー「さーて僕も授業だ。急がなきゃ――」スタスタ

ハリー「うう、見世物にされた……」

ロン「あれでいて、パーシーも恋に憧れる年頃なのかもな。
   にしても、独特の歌だったね。あのセンスはきっとジニーだな。奴さん、君のことじっと見てたし。
    鞄が破れるのを見たら、急に青ざめて逃げちまったけど」

ハリー「なんで?」

ロン「さあ? 自分の歌のせいで、君の鞄を破っちまったって思ったんじゃないか?
   それより、授業に行こうぜ。ほら、落ちた教科書拾うの手伝うから」

ハリー「ありがとう……うわ、インク壺が割れて教科書が全滅だ……」

ロン「ハーマイオニーなら、しみ抜き呪文とか使えるだろ。さ、行くぞ」

ハリー「うん……あれ、リドルの日記……」

ロン「君、まだそんなもの持ってたのか。とっくに捨てちまったと思ってたけど……それがどうかしたの?」

ハリー「ほら、これだけインクの被害が無い。綺麗なまんまだ」

ロン「偶然だろ? ほら、急ごうよ」

ハリー「うーん。本当に偶然かな、これ……?」
364 :>>1 [saga]:2013/03/09(土) 14:44:22.78 ID:UZrS1Tgo0
夜 グリフィンドール談話室



マミ「三年生からの選択科目ね……どうしようかしら?」

ハリー「さっきパーシーにアドバイス貰ったけど、まだ迷うなぁ。将来なりたい職業って言われても……」

マミ「そうよねぇ……私たちってまだ魔法界のこと、詳しいわけじゃないし」

ロン「まあ、そんなに気負わなくてもいいんじゃない? そういや、ハーマイオニーは?」

マミ「用紙が配られた瞬間、全部の科目に丸つけてたけど……」

ロン「……」

ハリー「……彼女、来年からロボットにでもなる気かな?
     宿題をこなそうとするだけで睡眠時間が消えると思うんだけど」

マミ「流石に、マクゴナガル先生が止めると思うわ……絶対履修できないもの」

ロン「どうかな。彼女、勉強に向ける情熱は人何倍? ってレベルだし。
   分身する魔法くらい使いだしかねないよ……よし。僕は決めた。
   占い学は何か名前からしてふにゃふにゃしてそうだし、魔法生物のケトルバーン先生はジョークが分かるって噂だ。これにしよう」

ハリー「凄い論理的な決め方だね。じゃ、僕も同じでいいや」

マミ「もう。二人とも、真面目にやらなきゃ駄目よ?」

ロン「君もハーマイオニーに毒されてきたかい?」

ハリー「……それじゃ、僕は部屋に戻るね」

ロン「もうかい? 早いね、どうしたの?」

ハリー「いや、ちょっとね……それじゃ」スタスタ

マミ「……うーん、将来か……そりゃ、魔法界の仕事に就くんだろうけど……」








グリフィンドール男子寮


ハリー「さて、誰もいない内にリドルの日記で実験だ。昼間、インクで汚れなかったのは偶然かな?」

ハリー「ページを開いて……僕はハリー・ポッターです、と」サラサラ

 シュゥゥ…

ハリー「……わーお。日記にインクが吸い込まれた。おまけに文字も浮かんできたぞ」

日記『こんにちは、ハリー・ポッター! 僕はトム・リドルです。この日記には僕の記憶が封じられており――』
365 :>>1 [saga]:2013/03/09(土) 14:45:28.71 ID:UZrS1Tgo0

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 ガチャ

ロン「あれ、ハリー。まだ寝てなかったのかい?」

ハリー「ハグリッドだ」

ロン「違うよ、僕はロナルド・ビリウス・ウィーズリー。確かに背は高いけど、ハグリッドほどじゃない
   ひょっとして寝ぼけてる?」

ハリー「秘密の部屋だよ! 50年前に秘密の部屋を開けたのは、ハグリッドだったんだ!」
366 :>>1 [saga]:2013/03/09(土) 14:45:59.50 ID:UZrS1Tgo0

翌日 グリフィンドール談話室


ロン「ハグリッドかぁ。確かになぁ。条件にあてはまるっちゃあそうだ。
   ホグワーツを追放されてるし、怪物がいるって聞いたら絶対探しにいくもの」

ハリー「で、その情熱で"部屋"を見つけたらこう思うだろうね。こんな狭いところに閉じ込められてるのは可哀想だ。
     ちょっくら散歩をさせてやろう――って。……でも、人に危害を加えるつもりはなかったんだろうなぁ」

ハーマイオニー「……ハグリッドに、全部聞いてみる?」

ロン「マジで言ってるのかい? やあハグリッド、今日もいい天気だね。
   ところであの毛むくじゃらで足がいっぱいある秘密の部屋の怪物って肉食? そう聞くつもりかい?」

ハーマイオニー「……次の事件が起きない限り、ハグリッドには何も聞かないことにしましょう」

ハリー「……こんなことになるんだったら、リドルの日記なんて捨てちゃえば良かったなぁ」ボソッ






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ハリー「で、そう言った日の放課後に日記が盗まれたわけだけど」

ネビル「部屋がぐちゃぐちゃだ! うわーん! 僕の羊皮紙セットどこ!?」

ロン「ネビル、羊皮紙だったら後で分けてあげるから、ちょっとここ頼むね」

ネビル「え? どこ行くの?」

ロン「先生に報告しに。ほら、行こうハリー……ハーマイオニーに相談だ」

367 :>>1 [saga]:2013/03/09(土) 14:46:45.35 ID:UZrS1Tgo0

図書室


ハーマイオニー「リドルの日記が盗まれたですって!?」

ハリー「しーっ! 声が大きいよ!」

ハーマイオニー「あ、ごめんなさい――で、でも、グリフィンドール生しか盗めない筈でしょ?」

ロン「そうだよなぁ……っていうか、誰がなんであんなボロイ日記を?」

ハーマイオニー「それは……リドルの日記が他人の手にあっちゃ不味い人が、ばれるのを防ぐためにでしょ?」

ロン「じゃあハグリッドが犯人ってわけ?」

ハーマイオニー「ハグリッドはグリフィンドールの寮に入れないから――
          やっぱり、犯人はハグリッドとは別人ってことにならない?」

ハリー「でも、リドルの日記はハグリッドが50年前の犯人だって――今回のとはまた別なのかな」


マミ「――リドルの日記、ってどういうことかしら?」


ハリー「あ、れ? マミ!? いつからそこに?」

マミ「ハーマイオニーさんの声が聞こえたから……で、リドルの日記ってどういうこと?
   あれ、フィルチさんに渡してくれたのよね?」

ロン「いや、つまりあれだよ。リドル――なぞなぞ(リドル)の本をだね」

マミ「……」

ロン「信じてくれよ。僕が嘘をつく男に見えるかい? フィルチにしっかり渡したさ!
    ああ、僕は助け合いが趣味だからね!」

マミ「おとなしく白状しないと、マッチをミサイルに変身させてぶっ放すわよ」

ロン「あれ?」

ハリー「ローン……」

ハーマイオニー「……どの道、確認されたらばれる話だもの。正直に話しましょう」
368 :>>1 [saga]:2013/03/09(土) 14:47:15.30 ID:UZrS1Tgo0

ハリー「……ってわけなんだ」

マミ「……ハグリッドさんが? そんな……」

ハーマイオニー「黙っててごめんなさい……」

ロン「いや、僕が提案したんだ。作り話して誤魔化そうって」

マミ「……ううん。だって、私の為を思って嘘をついたんでしょう? ありがとう」

ロン「そう言ってくれるとありがたいね」

マミ「……あと、私も謝らなきゃいけないことがあるの」

ハリー「え?」

マミ「ハリーくん達が話してくれたのに、私だけ話さないのはフェアじゃないから――
   あのね、私が襲われた時、実は――」
369 :>>1 [saga]:2013/03/09(土) 14:47:56.68 ID:UZrS1Tgo0


ハリー「犯人は僕と同じ蛇舌で、おまけに同じグリフィンドール寮か……」

ロン「逆に話さないでくれてて助かったよ。そんなの絶対ハリーが疑われるもの」

マミ「本当はマクゴナガル先生に相談しようと思ったんだけど……その直後に、ごたごたがあったから」

ハーマイオニー「マミ、犯人がパーセルマウスっていうのは確かなのね?」

マミ「ええ……あの独特の音だもの。間違える筈ないわ」

ロン「ってことは、やっぱり犯人はグリフィンドール生かな? 盗まれた日記のこともあるし」

ハリー「でも、蛇語を話せる人って滅多にいないんだろう?」

ロン「そこなんだよなぁ……でも可能性はゼロってわけじゃないし……」

マミ「結局、考えても手詰まりなのよね……」

ハーマイオニー「……」
370 :>>1 [saga]:2013/03/09(土) 14:48:31.01 ID:UZrS1Tgo0

クィデッチ試合日 大広間前 廊下


ハリー「絶好のクィディッチ日和だ……」ドンヨリ

ロン「言葉と顔が一致してないぞ」

ハーマイオニー「朝食、あまり食べてなかったものね」

マミ「具合でも悪いの?」

ハリー「いや、あの中に日記を盗んだ奴がいるかと思うと……」

ロン「おいおい頼むぜ。それも気になるけど、今は試合に集中しろ。もう骨なし腕はいやだろう?」

マミ「お腹が減ってたら力がでないわよ? いまから戻って、トーストでも齧ってくる?」

ハリー「いいよ……食欲ないし、無理に食べても吐きそうだ」


『今度は殺すぞ! ぐちゃぐちゃにして――』


ハリー「そんな風に脅されても食欲は――え?」

ハーマイオニー「え? どうしたの、ハリー?」

ハリー「あの声だ……また聞こえる……」

ロン「あの声って……君が前に言ってたやつか。相変わらず僕らには聞こえないけど」

ハーマイオニー「……待って」

ハリー「! ハーマイオニー! 聞こえたの!?」

ハーマイオニー「ううん。違うの。でも、図書室でマミの話を聞いてからちょっと考えてたことがあって――」

マミ「私の?」

ハーマイオニー「……ごめんなさい。ちょっと図書室にいかなくちゃ!」ダッ

ロン「おいちょっと待て試合はもう……行っちゃった」

ハリー「彼女、なにを調べに?」

ロン「さあね? 全く、図書室じゃクィディッチの試合はみられないんだぞ!」

ハリー「……もう声も聞こえない。行かなきゃ。時間だ」


371 :>>1 [saga]:2013/03/09(土) 14:49:03.81 ID:UZrS1Tgo0

クィデッチ競技場


リー『さあ始まります! グリフィンドールVSハッフルパフ! 司会はお馴染みのリー・ジョーダンでお送りします!』

リー『グリフィンドール勢は気合十分! キャプテンを務めるオリバー・ウッドは既にゴールの周りを飛び回りウォームアップに努めています!』

リー『一方、ハッフルパフはスクラムを組んで作戦会議中の模様。これは見ものです! 試合はどう転ぶのでしょうか!』

リー『さあ、いよいよ審判のマダム・フーチがボールを取り出しました! なお、今日はお目付け役のマクゴナガル女史が未だ現れません!
   このままいけば好き勝手に実況出来るぜ! さあさっさとホイッスルだ!』

マクゴナガル「ジョーダン。貴方とはいつか話し合う必要があるようですね」キーン

リー『あれ? マクゴナガル先生、いらっしゃったんですか? ていうか、なんでグラウンドに? そんなでっかいメガホンもって……』

マクゴナガル「こほん――この試合は中止です!!」

リー『え、そんな、なんで――ああ! ウッドがショックのあまり落ちた!』


ウッド「先生! どういうことですか! 試合中止って!」ボロッ

アリシア「なんであれで怪我してないのかしら」

マクゴナガル「全ての生徒は引率の先生の指示に従って寮に戻ること! ――それと、ポッター。私と一緒にいらっしゃい」

ハリー「僕だけ、ですか?」

マクゴナガル「できれば貴方の友達のウィーズリーも一緒の方が……」

ロン「先生! 試合中止ってどういう!? あとハリーをなんで連れて行くんです!?」

マミ「ぜぇ、はぁ……ロンくん、待って……」

マクゴナガル「……ウィーズリーも来ましたか。ですが、トモエ。貴女は来ない方がいいでしょう。さあ、寮に戻りなさい」

マミ「え……」

ハリー「ロンが良くてマミが駄目? なんでだろう?」

ロン「さあ? まさかいまさら空飛ぶ車の話でもないだろうし――」

マミ「……もしかして、また怪物が誰かを? それで、この二人ってことは――」

マクゴナガル「……」

ロン「え?」

ハリー「……それって」

マミ「私を心配してくれてるんですよね。ありがとうございます。
   でも……大丈夫です。絶対に、大丈夫ですから……」

マクゴナガル「……分かりました。良いでしょう、トモエもついてきなさい」
372 :>>1 [saga]:2013/03/09(土) 14:49:49.22 ID:UZrS1Tgo0

医務室


ハーマイオニー「」

レイブンクロー生「」


ロン「ハーマイオニー!」

ハリー「嘘だろ……数十分前まで、話してたのに……」

マミ「……っ」

マクゴナガル「二人は図書室の近くで発見されました。あなた達、これが何を意味するかわかりますか?
         二人が持っていたものです」スッ

ロン「……手鏡?」

ハリー「すみません、なんだか……」

マミ「……私、も」

マクゴナガル「……そうですか。三人とも、私が寮まで送りましょう」

マミ(……わたしの、せいだ)


『今すぐ見滝原に帰れ。友達を失いたくなければ』


マミ(あの脅迫状は、こういうことだったんだ)

マミ(全部、私が悪いんだ。私が、あれからも犯人を捜したから、ハーマイオニーさんが)

マミ(私が、私が、私が。私が、いなければ――)
373 :>>1 [saga]:2013/03/09(土) 14:50:16.33 ID:UZrS1Tgo0


マミ(――なんて、言うと思ったかしら?)




マミ(キュゥべえに加えて、グレンジャーさんまでも――彼女たちが何をしたって言うの!)

マミ(だからって私が悪いなんて思って尻込みしたら、それこそ犯人の思うつぼじゃない!)

マミ(もう、何も怖くない。だって、これ以上怒り様がないくらい怒ってるもの……!)

マミ(もう形振りなんか構っていられない)


マミ(継承者を捕まえてやる――どんなことをしても絶対に、捕まえてやるわ……!)

374 :>>1 [saga]:2013/03/09(土) 14:50:45.29 ID:UZrS1Tgo0

グリフィンドール寮


マクゴナガル「――以上が注意事項になります。非常に残念なことですが、犯人が捕まらなければ、学校は閉鎖されるかもしれません。
         犯人について何か心当たりがある生徒は、すぐに申し出てください」


 ざわざわざわ


マミ「……」


ハリー(マミ、やっぱりショックだったんだろうな。あれから、一言も口を利かないよ)ヒソヒソ

ロン(むしろ騒ぎ出さない分だけ気丈だと思うね、僕は。……ハグリッドに会いに行くかい?)ヒソヒソ

ハリー(ああ、今回の犯人がだれであれ、50年前にハグリッドは秘密の部屋を開いてるんだ。
     その方法さえ分かれば……僕の透明マントを使えば外に出られる)

ロン(ってことは、あとは結構のタイミングと――マミを誘うかどうか)

ハリー(……やめておこう。もう彼女はいっぱいいっぱいの筈だ)


◇◇◇


マミ(継承者が注目してるのは、私。だからこそ、あの脅迫状)

マミ(ハリーくん達は巻きこめない。一緒にいるだけで、標的にされるかもしれない)

マミ(マクゴナガル先生に相談を――でも、相談したらハリーくん達も巻き込む)

マミ(私ひとりでやるしか、ないんだ)
375 :>>1 [saga]:2013/03/09(土) 14:51:51.02 ID:UZrS1Tgo0

数日後 夜 ハグリッドの小屋


ガシャーン! バリーン! ドシャー!


ハグリッド「あ、ああ。わりいな、ちょいと手元が震えて……」

ハリー「ハグリッド。お茶はもういいから」

ロン「うん。っていうか、もうティーカップないし」

ハグリッド「すまんな」

ハリー「それでさ、ハグリッド。聞きにくい話なんだけど――」

 コンコン

ロン「やばっ――僕たちここにいちゃまずい!」

ハリー「透明マントを!」バサッ

ハグリッド「よし、隠れたな――誰だ!」

 ガチャッ

ダンブルドア「こんばんは、ハグリッド――良い夜とは、残念ながら言えんがのぅ」

ファッジ「やあハグリッド」

ロン(ファッジだ! 魔法省大臣! パパのボスだ!)

ハリー(静かに、ばれる!)



◇◇◇


グリフィンドール 女子寮


マミ「……」

ラベンダー「マミ……平気? 一緒に寝ない?」

マミ「……ありがとう。でも私、寝相悪いから」

ラベンダー「そんなの! マミが寝相悪いんだったら、パーバティなんかカタストロフィよ!」

パーバティ「意味わからないから……放っておいて欲しい時もあるわよ。ほら、寝ましょう?」

ラベンダー「マミ……その、いつでも言ってね?」

マミ「ええ。ありがとう、ラベンダーさん」ニコッ

マミ(まず、考えなきゃいけないのは……秘密の部屋、つまりあのトイレをどうやってこじ開けるかよね……)

マミ("ホグワーツの歴史"を図書室で借りて……いや、確かハーマイオニーさんが借りてたはず。
   ごめんね、ハーマイオニーさん。ちょっと借りるわね)ゴソゴソ
376 :>>1 [saga]:2013/03/09(土) 14:52:29.51 ID:UZrS1Tgo0

ハグリッドの小屋


ファッジ「分かってくれ、ハグリッド。魔法省も何かしたというポーズを見せないと――
     無論、君でないと分かればすぐに釈放する。十分な謝罪も」

ハグリッド「釈放って、お、俺をアズカバンにいれるってことか!?」

ダンブルドア「コーネリウス、ハグリッドではない。重ねて言うが」

ファッジ「しかしな、アルバス。かなりプレッシャーをかけられて……」

ハグリッド「どこのどいつにだ!」

ルシウス「――どいつ、とはご挨拶ですな、ハグリッド」

ロン(ルシウス・マルフォイ! パパの敵でマルフォイの親父だ!)

ハリー(知ってるよ。夏休みに会ったもの)

ハグリッド「俺の家に何しに来た!」

ルシウス「私が君の――あー、家、かね? この小屋が? 
      まあ、ここに来たのは非常に残念なお知らせを届けるためでね」

パサッ

ダンブルドア「……」

ルシウス「12名、つまりは全ての理事が署名している。
      "停職命令"だよ、アルバス・ダンブルドア校長殿?」


◇◇◇

グリフィンドール 女子寮


マミ(……さすがに、"秘密の部屋への入り方"なんて載ってないか。でも学校の構造はなんとなくわかった)

マミ(マートルのトイレに、太いパイプが繋がってる……怪物はきっとこれを伝って移動してるんじゃないかしら?)

マミ(怪物の正体は蛇――うん、確かにパイプを移動してても違和感はないわね)
377 :>>1 [saga]:2013/03/09(土) 14:53:33.14 ID:UZrS1Tgo0

ハグリッドの小屋 前


ルシウス「さて。では参りましょうか。校長?」

ファッジ「ルシウス。考え直してくれ――ダンブルドアが退任したら、ほかに誰が? 困る、絶対困る――」

ダンブルドア「よい。退けと言われれば退こう……じゃがな、ルシウス?」

ダンブルドア「わしが本当にこの学校を離れるのは、わしに忠実なものが一人もいなくなった時じゃ。
         ホグワーツは、助けを求めるものを決して見捨てはせん」

ルシウス「なるほど。ではその信念が、次の犠牲者の発生を防ぐことを祈りましょう……
      ほら、森番。貴様もさっさっと歩け、アズカバンまでの道をな」

ハグリッド「……真実がしりたきゃ、蜘蛛を追え」

ルシウス「?」

ハグリッド「俺の田舎に伝わる格言だ。よし、今いく……それと誰かファングに餌を。これも格言だ」

バタン

ロン「ダンブルドアが停職!? もう明日から怪物の天下じゃないか!」

ハリー「ハグリッド……蜘蛛を追え、か」


◇◇◇

グリフィンドール 女子寮


マミ(じゃあ、怪物の正体は?)

マミ(分かってるのは、蛇であること。被害者がみんな、石にされてること――)

マミ(これだけ分かれば、図書室で調べられるかも。明日、行ってみましょう)
378 :>>1 [saga]:2013/03/09(土) 14:54:01.36 ID:UZrS1Tgo0


翌日 夜 禁じられた森 奥地


シャキンシャキン! アラゴグ! アラゴグ!

ロン「いーち、にーぃ、さーん――あはは、数えきれないや」ガクガク

ハリー「いっぱい、でいいだろう。もう見渡す限り、馬みたいな大きさの蜘蛛だらけなんだから……」

ロン「ああもうハグリッドの奴! 何が蜘蛛を追え、だ! 追ってみたらとんでもないことに――」

アラゴグ「――ハグリッド、と言ったのか?」

ハリー「一番でっかい蜘蛛が……」

ロン「喋った……!」


◇◇◇


図書室 


マミ「さーて、何から調べようかしら……門限は事件のせいで短いから、厳選して調べないとすぐに時間がくるわ」

マミ「といっても、魔法生物の棚だけでいくつあるのかしら……気が遠くなってくるわね」


 コトン


マミ「……? 本が、落ちた? でも……誰も、いないわよね?」

マミ「……変なの。一応、元の場所に戻して――え? これって……」
379 :>>1 [saga]:2013/03/09(土) 14:55:31.26 ID:UZrS1Tgo0


禁じられた森


アラゴグ「わしはハグリッドの友人だ。ハグリッドの名誉を守る為、人を襲ったことはない。
      50年前の被害者はトイレで発見されたが、わしは自分が生まれた物置以外の光景を知らん」

ハリー「じゃ、じゃああなたは"部屋"の怪物じゃないんですか――」

アラゴグ「わしではない! その生き物の話を、わしらはしない!
      それは太古から存在する生き物だ! わしら蜘蛛の天敵だ! その生物の名を、口にすることはない!」


◇◇◇



図書室 


マミ「"バジリスク"! 毒蛇の王! "その視線に捉われたものは即死する"!」

マミ(これよ――これだわ。これが秘密の部屋の怪物の正体!)

マミ「でも、誰も死んでは……いえ、この理由はいいわ」

マミ「何か弱点……弱点は……"雄鶏が時をつくる音"。そういえば、ハグリッドのニワトリが殺されて……
   ああ、でもそれじゃ、ホグワーツの周りに雄鶏はいないってこと?」

マミ「他にめぼしい記述は……ない、みたいね。兎に角、一歩前進だわ。次は、どうにかして継承者の正体を……」

ピンス「まだ残っていた生徒が! 門限ですよ! 早く寮にお帰りなさい!」

マミ「っ……また、明日来てみましょう」
380 :>>1 [saga]:2013/03/09(土) 14:56:00.27 ID:UZrS1Tgo0


禁じられた森 外


ロン「はーはー……死ぬかと思った! 死ぬかと思ったよ!ハグリッドめ! なにが蜘蛛を追え、だ!
   野生化したパパの車が助けに来てくれなかったら、僕ら今頃蜘蛛の餌だったぞ!」

ハリー「アラゴグは自分の友達なら傷つけないと思ったんだよ」

ロン「無茶だろ! だってもうあからさまに『僕、人が主食でーす!』って怪物じゃないか!
    ああもう、踏んだり蹴ったりだよ! わざわざ退学になる危険まで冒して、分かったことってなに!?
    "禁じられた森には二度と入っちゃいけない"ってことだけだ!」

ハリー「もうひとつあるよ――ハグリッドは無実だった。リドルは間違っていたんだ」

ロン「でもそれって、リドルの日記から得た情報が当てにならなくなったってことだろ?
   じゃあ結局、一歩進んで一歩後退しただけじゃないか」

ハリー「……」

ロン「……いや、待てよ? アラゴグは死んだ女の子がどこで発見されたって言ってた?」

ハリー「……! もし、その女の子がゴーストになってたら……その場に、ずっと留まり続けたら……」

ロン・ハリー「「50年前の被害者って……嘆きのマートル!?」」
381 :>>1 [saga]:2013/03/09(土) 14:56:26.73 ID:UZrS1Tgo0


数日後 朝 大広間


マクゴナガル「皆さんに、良い知らせがあります」


「ダンブルドアが戻って!?」「スリザリンの継承者がついに!?」「期末テストが中止に!?」


マクゴナガル「スプラウト先生曰く、とうとうマンドレイクが収穫できるそうです!
         今夜にも石にされた人を蘇生できるでしょう!」


「ほ、本当ですか!?」「それじゃあ犯人逮捕もすぐ!」「しかし彼らが可哀想だ。テストは延期にすべきでは?」


マミ(……あれから全然手がかりは見つけられてないけど。キュゥべえに手伝ってもらえば、きっと)

ロン「やったなハリー! あれからずっとマートルのとこにいくチャンスがなかったけど、もうどうでもいいや!
   ハーマイオニーがぜーんぶ教えてくれるよきっと! ああでも待てよ、テスト三日前って知ったら精神崩壊が先かな?」

ハリー「声が大きいよ、ロン。まあでも、誰も歓声上げるのに忙しくて聞いてないけどさ」

ジニー「あのぅ、ハリー……」

ハリー「あれ、ジニー。どうしたの?」

ロン「ん? おお、どうした我が妹! 食えよ、ほら。お兄ちゃんがとってやろう!」

ジニー「……あの、ね。あたし、言わなきゃいけないことがあって……」

ロン「……飯を食いながら、って話でもなさそうだな。言えよ」

ジニー「……」

ハリー「もしかして……秘密の部屋に関すること? なにか、見たの? 教えて。絶対悪いようにはしないから」コソッ


ジニー「……! あの! あたし、秘密の!」


パーシー「秘密が――なんだって?」
382 :>>1 [saga]:2013/03/09(土) 14:57:29.52 ID:UZrS1Tgo0


ジニー「あ、あ、な、なんでもない! ごちそうさま!」

パーシー「ん? 走ると危ないよ、ジニー。はあ、やれやれ。腹ペコだ……」

ロン「おい! いまジニーが大切なことを話す途中だったんだぞ!」

パーシー「へえ、じゃあ後で僕が相談に乗ろうかな。どんなこと?」

ハリー「確か、秘密の何かを見たとか、どうとか――」

パーシー「ブーッ!」

ロン「うわ! 汚いな! おい監督生!」

パーシー「ごほっごほっ! ごめん……あー、でも、だね。いや、分かった。ジニーの相談には僕が乗ろう。
      ハリー、そこの皿を取ってくれ」

ハリー「ああ、うん……?」
383 :>>1 [saga]:2013/03/09(土) 14:57:56.82 ID:UZrS1Tgo0


廊下 ロックハート引率中


ロックハート「つまりですね、私は全て御見通しでした。ええ、もう犠牲者は出ません。それが重要です。
        正直、副校長がなぜこのような警戒態勢を続けるのか理解できませんね」

ハリー「その通りです先生!」

ロン「!? おいどうした。気でも狂ったか! だ、誰かマダム・ポンフリーを呼んでくれ――痛い! 足を踏むなよハリー!」

ロックハート「ありがとう、ハリー。この様な引率、無駄ですよ。もっと教育のために有意義に時間を使いたいものです」

ハリー「いや、実に全くその通り。じゃあ先生、引率はここまででどうでしょう。もう廊下をひとつ渡るだけですし」

ロックハート「ナイスアイデーア! いや、実は私もそう思っていたのです。ではこれにて失礼。
        大丈夫! 不安がることはありません! 危機は去ったのですから!」スタスタ

ロン「ははーん。なるほど、これが狙いか。てっきり君にハーマイオニーが乗り移ったのかと。
    で、どこに行くんだい?」

ハリー「マートルのところ。明日になれば全部分かるっていうけど、機会を逃す手はないだろ?」


マミ「……」スッ
384 :>>1 [saga]:2013/03/09(土) 14:58:28.63 ID:UZrS1Tgo0

廊下


マクゴナガル「なるほど……つまり貴方がたはこういうのですね?
         授業をさぼり、医務室に忍び込み、グレンジャーのお見舞いに行こうとした、と」

ロン(うわー……まさかマクゴナガル先生に捕まるなんて。最悪だ。退学も有り得るレベルだよこれ)

ハリー「そうなんです! 僕たち、ハーマイオニーに長いことあってないし、
     マンドレイクが取れるから、もう心配しないでって言いに行こうと……!」

ロン(しかもなんだい、その三文芝居。そんなんで、あのマクゴナガル先生が……)

マクゴナガル「そうでしょうとも……! 襲われた人たちの友達が、一番つらい思いをしてきたでしょう!
         私が許可します! 授業欠席とお見舞いの許可を!」

ロン(マジかよ)

ハリー(やっておいて何だけど、成功するなんて思ってなかった)

ハリー「じゃあ、先生。僕たちは、これで――」

マクゴナガル「無論、医務室までは私が同行します。よろしいですね」

ハリー・ロン「「え゛」」


◇◇◇


女子トイレ


 ジャーッ


マミ(助かったわ……まさかロックハート先生にトイレなんて言えないし……)

マミ(ちょっと遅刻しちゃったけど、トイレ行ってましたって言えば許してもらえるわよね……?)

マミ「急ぎましょう、えーと、魔法史の教室はここを曲がればすぐ……」


『ジネブラ・モリー・ウィーズリー。彼女の白骨は、永遠に秘密の部屋の一部となるだろう』


マミ「……え?」
385 :>>1 [saga]:2013/03/09(土) 14:58:55.44 ID:UZrS1Tgo0

医務室


ポンフリー「はあ、マクゴナガル先生が許可を? ならいいですが……石になった人に話しかけてもどうにもならないでしょうに」



ハーマイオニー「」

ロン「まさしくその通りだ。やあハーマイオニー! 心配するな、もうすぐ動けるようになるよ――おっと、これは枕か。
   喋らないし動かないからから区別がつかなかった……はぁ。ハーマイオニー、早く起きないかなぁ」

ハリー「……そういえば、ハーマイオニーは鏡を持ってたって言ってたよね。あれってどういう……?」

ロン「知るもんか。まあ明日になったら教えて貰えるけど……ん? ハリー。彼女、まだなんか持ってる」

ハリー「紙切れかな? よっ……と、取れた。えーと、何々……」


◇◇◇


マミ(これは、どういうこと……?)

マミ(壁一面に、文字が……ジニーさんが、秘密の部屋に誘拐された? なんで!? 彼女は純血でしょ!?)

マミ(……いえ、理由はともかく、一刻を争うわ――マンドレイク薬を待ってなんていられない)

カツカツカツ

マミ(! 誰か来た。先生よね、この時間だもの……逃げましょう。
   図書室に――早く、すぐに秘密の部屋の入り方を見つけないと――)タタタタッ


マクゴナガル「ぐすっ、私の寮は本当に友達想いの生徒でいっぱいです――……ん、壁に文字が……っ!
         ああ、なんてことでしょう……!」

386 :>>1 [saga]:2013/03/09(土) 14:59:39.28 ID:UZrS1Tgo0


職員室


ハリー「怪物の正体はバジリスク! 巨大な毒蛇だ! それで僕にしか声が聞こえなかったんだ!」

ロン「みんなが死ななかったのは、目を直接見てないから。ミセス・ノリスとキュゥべえは水に映った目を。
   ジャスティンはニック越しに。ニックはゴーストだから、二度は死ねない……
   答えに気付いたハーマイオニー達は、廊下の先を手鏡で確認しながら進んだに違いない!」

ハリー・ロン「「そういうわけなんです、先生!」」


シ〜ン


ロン「で、僕らが真相を伝えに来たのに、誰もいないってのはどういうわけ?
   もうとっくにベルが鳴る筈だろ?」

ハリー「さあ……」


マクゴナガル『生徒は全員、速やかに寮に戻りなさい! 教師は職員室へ、大至急お集まりください!』


ロン「うわ、びっくりした! なんだ、何か起こったのか?」

ハリー「……よし、隠れて話を聞こう。話すのはそれからだ。ほら、そこのロッカーに入って」


◇◇◇



図書室


マクゴナガル『生徒は全員、速やかに寮に戻りなさい! 教師は職員室へ、大至急お集まりください!』


ピンス「!? なにかあったんですかね……?」スタスタスタ

マミ「……行ったわね。よ〜し、片っ端から本を開いていくわよ……!」
387 :>>1 [saga]:2013/03/09(土) 15:00:16.47 ID:UZrS1Tgo0

職員室


マクゴナガル「……連れ去られた生徒の名は、ジニー・ウィーズリーです」


ハリー「……ロン」

ロン「やあハリー。どうやら僕の耳がおかしくなったらしいぞ! これもロックハートのせいだね。
   あいつの授業、前々から耳に有害だと思ってたんだ。君もそう思うだろ?」

ハリー「ロン」

ロン「なあ、僕の聞き間違いだろ? そうなんだろ? 頼むから、そうといってくれよ……」

マクゴナガル「全校生徒は、明日にでも全員帰宅させます。ホグワーツは、これで……」


 ばたん!


ロン「! ダンブルドアが帰ってきたのかな!?」

ロックハート「やあやあすいません。ついウトウトと――いや怪物捜索に必死で!」


「……アバダ」「待て。ここは磔呪文が正しい」「いや、服従の呪文で人に言えないような恥ずかしい恰好で……」


スネイプ「おやおや――怪物の捜索とは。まったく、情報が早いことですな?」

ロックハート「いやあははは。それほどでも――え、早い? 何がです?」
388 :>>1 [saga]:2013/03/09(土) 15:00:43.73 ID:UZrS1Tgo0

◇◇◇


図書室


マミ「……これも! これも! これも! もう! なんでないのよ! ここは図書室でしょ!?」

マミ「ジニーさんが死んじゃうかもしれないのよ!? なのに、何で……!」

マミ「……こ、こうなったらもう、使えない図書館に用はないわ!
   確かこの辺の壁にもマートルのトイレに続くパイプがあった筈!
   片っ端から爆破して、秘密の部屋に続いてないか確かめてやるんだから!」スッ


ことん ことん ことん


マミ「っ!? また、前みたいに本が落ちて……? 誰かいるの!?」


し〜ん


マミ「……いない、わよね。じゃあ、この本はいったい……?」スッ


『黒幕は、トム・マールヴォロ・リドル。その記憶が封じられた日記』


マミ「……なに、これ。こっちの、本は……」スッ


『秘密の部屋の入り口は、マートル・ヘンダーソンが死んだ三階の女子トイレの手洗い台。』



マミ「……こっち」


『開くために必要なのは合言葉。蛇の言葉で"開け"と唱えよ』


マミ(……これは、どういうこと? 誰がこんなことを?)

マミ(継承者の罠? ……ううん。疑ってる時間も惜しい!)

マミ「……パーセルマウス。ハリーくんなら、秘密の部屋に行けるわ」ダッ
389 :>>1 [saga]:2013/03/09(土) 15:01:10.48 ID:UZrS1Tgo0

職員室


スネイプ「さあ、あなたの出番ですよロックハート教授?」

スプラウト「我々教師一同、心から応援していますわ」

フリットウィック「無論、我々は足手まといでしょうから、ついてはいけませんが――」

スネイプ「なに、完全無敵のギルデロイ・ロックハートだ。単身で怪物退治くらいこなすだろう」

フリットウィック「いやはやまったく! そういえば昨晩もそんなことをいっていました!」

ロックハート「いや、あのですね。は、は。でも、だって」

マクゴナガル「なるほど……貴方の気持ちはよくわかりました」

ロックハート「わかっていただけます?」

マクゴナガル「ええ――オーキデウス!(花よ)」

ポンッ

マクゴナガル「はい、どうぞ。リコリスとフローリス・デイジーです。こんなものしか出立する英雄に手向けられませんが……」

ロックハート「え、は、どうも。え、本気で?」

マクゴナガル「どうぞ、行ってらっしゃいギルデロイ。絶対に、私達はあなたの邪魔はしませんから」

ロックハート「あ、ははは、は。みなさん、目がマジでいらっしゃる……へ、部屋に戻って準備をしてきます」

バタン

マクゴナガル「これで厄介者は消えました。さて、これからのことを詰めましょう」



◇◇◇


グリフィンドール 談話室


バタン!


マミ「……!」キョロキョロ

ネビル「マミ! どこに行ってたの、心配したんだよ――」

マミ「ハリーくんは?」

ネビル「え?」

マミ「ハリーくんはどこかって聞いたの! どこ!」

ネビル「え、あ、し、知らない。知らないよ! ハリーとロンも、魔法史の授業をさぼったんだ……」

マミ「っ、肝心な時に――って、私も人のこと言えないわね……部屋に戻るわ。
   ごめんね、ネビル。頭に血が上っちゃって」

ネビル「あ、ううん。別にいいけど……マミも、色々あって大変だろうし」
390 :>>1 [saga]:2013/03/09(土) 15:01:52.15 ID:UZrS1Tgo0

グリフィンドール女子寮


マミ「……時間が、時間がないのに! ハリーくん、早く戻ってきて……」

マミ「……いえ、待って。別にハリーくんじゃなくても、蛇語を話せる人がいれば……」

マミ「スリザリンにひとりくらいいないかしら――ああでも駄目ね。どっちにしても他の寮には入れないし」

マミ「もう! なんでこの指輪、あのゲルゲルムントゾウムシの言葉は分かったのに、蛇語は分からないのよ!」


ことん


マミ「……私のカバンから、本が落ちた? また? もしかして――!」バッ


『合言葉は、MDの中』


マミ「MD? 私の、MDプレイヤー? でもこれ、壊れて――」カチッ


ザッ、ザザザ――ブツッ


『……にしてもこれ、本当に壊れちゃったのかしら? このっ、このっ』

『アリバイ工作って……そんなことしなくても、あの熱狂具合じゃ誰がいなかろうが気づかないと思うけど』

『……こ、細かいことはいいでしょ、もうっ。さあ、調査開始よ!
 マートルさんもどっか行っちゃってるし、この隙にぱぱっとやちゃいましょ』

『うん、そうだね。じゃあまずは開錠呪文から……』




マミ「私と、キュゥべえの声? ……これ、あの日。私が襲われた時の!
   でも、壊れてたはずなのに、なんで――?」





『急ぎましょうか。さすがに4秒ってことはないだろうけど……』


『……シューッ!』


『? キュゥべえ、いま何か言った?』

『? いや? でも、僕にも聞こえたよ。空気が漏れるみたいな音だろう?
 扉の外――廊下から聞こえたように思うけど』




マミ「これ! この蛇語が、最初に聞こえた蛇語よ! じゃあきっとこれが秘密の部屋の入り口のカギ……」

マミ「……すぐに行きましょう! ジニーさん! 絶対に助けてあげるから!」ガチャッ


ことん


マミ「……また? でも、もう何も知りたいことは……」




『貴女が頼るべき人物と、その人物に掛けるべき言葉は――』




マミ「……え?」
391 :>>1 [saga]:2013/03/09(土) 15:02:35.21 ID:UZrS1Tgo0

グリフィンドール談話室


ネビル「あ、ハリー。さっきマミが探してたよ」

ハリー「……ふうん。で、そのマミは?」

ネビル「あれ? おかしいな、さっきまでいたんだけど……トイレかな?」

ハリー「じゃあ悪いけど、少し僕らを放っておいてくれ――きっと大した用じゃないさ」

ロン「……」

ネビル「ああ、うん……今、大変だもんね」チラッ



ジョージ「くそっ、見つからない――せめて、連れ込まれる前だったら――」

フレッド「……たられば言ってても仕方ないだろ……いたずら完了……くそ、何が完了だ」

パーシー「……父さん達には手紙を送った……すまない、僕は部屋にもどる……」



ロン「……ジニーは何か知ってたんだ。くそ、あの時ちゃんと話を聞いてたら!
   ハリー、なあ、僕はどうすればいい? 今からでも何かできることってあるか?」

ハリー「……ロックハートに会いに行こうか。あいつも、秘密の部屋を探さなきゃいけないだろうし」


◇◇◇


廊下


マミ「ロックハート先生」

ロックハート「ああ、マミか。どうしたんだい? ファンは大事にしたいんだが、いまはちょっと忙しくてね」

マミ「荷造りのですか?」

ロックハート「へ?」

マミ「隙あり。ステューピファイ!(麻痺せよ)」バシュッ

ロックハート「へぶっ!?」バタン

マミ「初めて使ったにしては上出来ね……こういう呪文ばっかり得意っていうのはアレだけど。
   さて、と。頼りにしてますからね、ロックハート先生……」


ずりずりずりずり.....
392 :>>1 [saga]:2013/03/09(土) 15:03:27.15 ID:UZrS1Tgo0

ロックハートの部屋



ハリー「あれ、いない? 何処にいったんだロックハート」

ロン「逃げた……訳じゃなさそうだな。荷物もそのまま残ってるし。案外真面目に探してるのか?」

ハリー「見つけたところで何ができるのか疑問だけど……ロックハートを探そう。
     どっちにしても、入り口は蛇語を使わなきゃ開けられないんだ……」


◇◇◇


マートルのトイレ


『……シューッ!(開け)』


ガコン ギギギギ…


マミ「流し台が沈んで、太いパイプが剥き出しに……これが秘密の部屋の入口ってわけね」

マートル「へえ、これこんな風になってたんだ。あたしを殺した奴もこの下にいるの?」

マミ「ええ、多分ね。心配してくれるの?」

マートル「あんたが死んでゴーストになったら、私の隣りのトイレに住まわせやってもいいわ。
      同じトイレは、もう予約があるから駄目だけど」

マミ「ふふ、大丈夫よ。ロックハート先生がいるもの」

マートル「頼りになるの、これ?」

ロックハート「」

マミ「さて、ロックハート先生をパイプに押し込まないと……うぃん・が〜でぃあむ――」

ロックハート「」

マミ「……失敗して燃えたりしたら嫌ね。別のにしましょう。リクタスセンプラ!(宙を舞え)」バシュッ


  ぴゅうぅうううん……がしゃこん! ずざざざざざ――……


マートル「ナイスシュート」

マミ「どうも。じゃあ、私もちょっと行ってくるわね!」ピョイッ
393 :>>1 [saga]:2013/03/09(土) 15:04:19.38 ID:UZrS1Tgo0

秘密の部屋



『……シューッ!(開け)』


ギィィイイイイイイ……


マミ「細長い部屋が、向こうに伸びてる……そして、突き当りに大きい像。何メートルあるのかしら?」

ロックハート「あのう、本当に大丈夫なんですかね?
        途中にあった抜け殻、あれ、一目じゃ大きさが分からいくらい大きかったんですが……」

マミ「大丈夫かって? そんなの、私が知るわけないじゃないですか」

ロックハート「そんな無責任な! マミ! 貴女が私をここに連れてきたんじゃありませんか!」

マミ「本当、私は何をしてるんだろう……こんな、伝説の秘密の部屋にまで来ちゃって……。
   ……でも、不思議とあの本のことは信用できるのよね。理屈じゃないけど……」

マミ(なんていうのかしら。凄い馴染みのある気配、とでもいうのかしら。
   知らない筈なのに、長い間ずっと一緒にいたような……)

ロックハート「あー! おしまいだー! 私の人生ここでエンドだ!
        いやだー! もっとやりたいことあったのに! うわあああああ!」

???「やれやれ、全く騒がしいことだ」

ロックハート「ひっ、お化け!?」

マミ「……っ、現れたわねトム・リドル!」
394 :>>1 [saga]:2013/03/09(土) 15:05:04.28 ID:UZrS1Tgo0

トム「おや、無様に喚いているにしては、僕が何者かを知っている……
   ふむ。まるで何も知らずにここに来たというわけでもないらしい」

マミ「あなたのやってることは、全部お見通しよ! さあ、その足元にいるジニーさんを返しなさい!
   その後で、キュゥべえとハーマイオニーさん、ミセス・ノリス。そしてその他諸々の仇を取らせてもらうわ!」

ジニー「……」

トム「キュゥべえ……なるほど、君はマミ・トモエというわけか」

マミ「ジニーさんから聞いたのね……」

トム「その通り。なるほど、日記のシステムも理解しているのか。
   そうだ、この小さな女の子は僕の日記に心を打ち明け、僕に魂を注ぎ込んだ。
   大半はハリー・ポッターのことだったがね。まあでも、君を襲った日には流石に君のことを書いていたけど」

マミ「襲った? 襲わせたの間違いでしょ?」

トム「半々、といったところかな。ジニーの心に、打倒継承者に燃える君を恐れる気持ちがあったのは確かだ。
   『トム、マミが犯人を捕まえるって言ってるの。ねえ、もしもやっぱり私が犯人だったらどうしよう?』
   だから僕は教えてあげた。消せばいいんだ、ってね」

マミ「残念ね。この通りぴんぴんしてるわ」

トム「確かに。僕からも質問しよう。あの君の傍にいたあの猫は何だ?
   ただの猫かとおもったが、強く、そして異質な魔法の力を秘めている……おかげで君どころか、猫まで殺し損ねた」

マミ「キュゥべえにそんな力が……?」
395 :>>1 [saga]:2013/03/09(土) 15:05:50.79 ID:UZrS1Tgo0

トム「知らないのか。まあ、いい。どの道、君らは前座に過ぎない。主賓が来るまでの暇つぶしだ」

マミ「主賓?」

トム「ハリー・ポッターさ。ここ数ヶ月、つまり彼が初めて僕に書き込んだ日から、僕は彼を狙っていた。
   穢れた血以上に殺しがいのある獲物だ。なにせ、この偉大なるヴォルデモート卿を打ち破ったのだから!」

マミ「この? ヴォルデモートとあなたに何の関係が……」

トム「まだ分からないのかい? 頭の血の巡りがいいのか悪いのか……」スイッ


Tom Marvolo Riddle


トム「汚らわしいマグルの名前など、僕は使わない」スッ


I am Lord Vordemort



マミ「! そういうこと、ね。いい趣味してるわ。未来のヴォルデモート卿」

トム「素直に褒め言葉と受け取っておくよ。さて、前菜の君をそろそろいただくとしようか。
   蛇はハリーに取っておく。穢れた血である君は、僕が直々に杖でお相手しよう。
   未だ本調子ではないが、君相手ならそれで十分だろう」スッ

マミ「ジニーさんの魂に、ジニーさんの杖。借り物だらけの存在で、よくも偉そうに。
   そりゃあ脅迫状なんていう卑怯な手段にでるのもわかるわ」

トム「? 何を言って――いや、いい。さあ、杖を構え、おじぎをしたまえ。
   決闘の作法は学んだのだろう?」

マミ「ふん――残念ね。あなたの相手は、私じゃないわ」

トム「なに?」

マミ「さあ、出番です! ロックハート先生!」バッ


ロックハート「開かない! 開かないぃぃいいいい! 来た時は開いたのに! 開けてぇええええええ!」ガンガンガン


トム「……あの、無様に逃げようとしている男か?」

マミ「せ、先生!? なにを逃げようとしてるんですか!」

ロックハート「だって死んじゃいますよ! あの闇の帝王ですよ!? 例のあの人になんか勝てるわけないぃ!」

マミ「先生なら勝てます! ほら、相手は16歳の若造ですよ!」

ロックハート「さっき私はそれより年下の君に気絶させられたんですが!? いやぁ、死ぬのいやあああああ!」

マミ「それはほら、不意打ちだったからですよ! きちんと真正面からやれば勝てます!」

トム「……茶番もここまでくると笑えないな」
396 :>>1 [saga]:2013/03/09(土) 15:07:16.74 ID:UZrS1Tgo0

マミ「どの道、ここまで来ちゃったら逃がしてくれませんよ、きっと。ほら、腹を括って」

ロックハート「ひぐっ、うぐっ」

マミ「はい、先生の杖です。ほら、しっかり握って……」

ロックハート「う、ううううううう! な、何でもするので、み、見逃してくれたりは……」

トム「君のような、魔法使いの面汚しのスクイブを僕が見逃すと思うのかい?」

マミ「スク、イブ?」

トム「そうだ。ジニーも書き込んでたさ。その男の授業の酷さについて。
   君は気づいてなかったのか? まさか、本の内容が本当だとでも?
   確かにリアリティはあったが、それだけだよ。どうみても内容と、その男の実力が釣り合っていない」

マミ「……」

ロックハート「……あ、あの? ひとつだけ、いいでございましょうか?」

トム「なんだ?」

ロックハート「いや、は、は。あの本の内容は、嘘なんかじゃないんですよ。
        ただ、その、ちょっとばかり、その功績を私がいただいているというわけでして……」

トム「……く、ははは! 聞いたかい? 君の頼りにしていた男は、ただの詐欺師だったというわけだ!」

ロックハート「……」

マミ「……そんな」

トム「さあ、お遊びはここまでだ。まずはそこのスクイブを殺し、そしてその次は君だ」

マミ「そんな、そんな――そんなこと、もう知ってるわよ」
397 :>>1 [saga]:2013/03/09(土) 15:07:47.54 ID:UZrS1Tgo0


トム「なんだと?」

ロックハート「詐欺行為をばらすぞ、って脅されてここまで連れてこられたんですよ、私は!
        こうして抜き差しならぬ状況になるまで杖まで取り上げられて、なんて可哀想な私!」

マミ「まあ、正確にはここにくる直前に知ったんですけどね。
   ちなみに掛けた言葉は"バンドンの泣き妖怪を追い払った魔女は兎口だったらしいですね?"です」

トム「……意図が、分からないな。なぜ、わざわざこのスクイブを連れてきた」

マミ「あら、まだ分からないんですか? もう私達、ヒントは十分あげたのに」

トム「……もはや問答をする気も失せた。その体に聞くまでだ――」

マミ「先生!」

ロックハート「ぅ……」
398 :>>1 [saga]:2013/03/09(土) 15:08:35.74 ID:UZrS1Tgo0


 ――忘却術、という呪文がある。

 それは人の記憶を自在に消す呪文。練達者が用いれば、記憶を操作するような真似も可能となる。

 マグルに自身の存在を秘匿している魔法使いにとって有用な呪文。だが、同時にそれは非常に高度な呪文でもあった。

 一度掛けた忘却術も、ふとした拍子に解けてしまうことがある。

 修正された記憶に違和感を覚える場所に被術者を置き続ければ、
 例えそれが魔法に対する抵抗の低いマグルだとしても、専門の部署の魔法使いが日に十数回は掛け直さねばならない。


 ――あるところに、ギルデロイ・ロックハートという詐欺師がいる。

 彼はほとんどスクイブだった。魔法の才能に恵まれず、ただ、スターになりたいという分不相応な夢を抱いていた。

 顔が良いだけの魔法使いなど、さほど売れるものでもない。だから彼は詐欺に手を出した。

 手法は単純。

 あまり世間に知られていない、偉業を成し遂げた魔法使い達を探し出し、仕事の手順を聞き出し、最後に忘却術を掛けて、手柄を自分のものにする。

 手法は単純――だが、簡単ではない。

 本にするには、つまらない仕事では売れない。誰もが感心する、一流の仕事でなければ。

 だから彼は探し出した。一流の魔法戦士を。一流の魔女を。

 そして――その一流の彼らに忘却術を、しかも二度と思い出せないレベルで掛けた。

 ギルデロイ・ロックハートは詐欺師である。魔法の腕は三流以下だろう。

 だがスターに固執する執念と、その執念を支える忘却術に関してだけは、彼は超一流だった。
399 :>>1 [saga]:2013/03/09(土) 15:10:18.73 ID:UZrS1Tgo0

トム「クルー――」

 トムが呪文を唱えだす。それを見てから、ロックハートは杖を抜いた。

 その動きはあまりにも滑らか。あの決闘クラブの夜の無様さが嘘のよう。

 ロックハートの心に焦りはない。何故なら、先に動きだしたトム・リドルよりも自分の方が速いと分かったからだ。

 それは、いつもこなす"仕事"のように。

 杖が複雑な軌道を一瞬で描き切り、呪文を生み出す舌は刹那より短い時間で回りきる。

ロックハート「オブリビエイト(忘れよ)」

 鋭い閃光が、トムの胸を射抜く。途端、トムの顔が驚愕に歪み、

トム「――!? 馬鹿、な――!」

 その体が、急速に薄れ始めた。

マミ「知ってるわよ。あなたはトムの"記憶"でしかない。忘却術は、記憶を消す魔法。あなたにはよく効くでしょう?」

トム「あ――消える――消えてしまう――この僕が、スクイブなんかに――?」

マミ「ああ、そうそう。言い忘れてたわ。さっき、あなたがその言葉を言った時、私、言い返そうと思ってたことがあるの」


マミ「――馬鹿にしないでちょうだい。私みたいな劣等生だって一生懸命なんだし、ひとつくらいいいところがあるんだから」
400 :>>1 [saga]:2013/03/09(土) 15:10:55.12 ID:UZrS1Tgo0

ロックハート「あ、ははは、勝った? 僕が、闇の帝王に? 例のあの人に勝った?」

マミ「そうですよ、ロックハート先生! 先生の勝ちです!」

ロックハート「え、や、はは! 当然です。あの……当然の、これ、当然です!」

マミ「先生?」

ロックハート「……ごほん! はははは、やりました! 私がスターです! あのハリー・ポッターを超えた!
        御覧なさい、傷一つ負わずに完全勝利です!
        マミ、いまなら特別に、新生・ギルデロイ・ロックハートのサインをあげましょう!」

ぺしっ

マミ「触らないでください、詐欺師さん」

ロックハート「……え?」

マミ「え、じゃないです! 詐欺師――詐欺師って! 酷いじゃない! 騙してたんですね!?」

ロックハート「え、あー、それは、まあ。でも、ほら。私みたいな劣等生も、一生懸命ですし?」

マミ「それとこれとは話が別です! 外に出たら、きちんと騙した人に謝らなきゃ駄目ですよ!?」

ロックハート「む、むむむ――ええい! 新生・ロックハートの門出を邪魔されると困ります!
        ちょっと記憶を失ってください! オブリビエイ――あれ、私の杖は?」

マミ「さっき、ぺしってやった時に奪っておきました」クルクル

ロックハート「そんな! じゃあ私のスター街道爆走譚は!?」

マミ「ないです」

ロックハート「うわああああああ! なんで私はこんなとこまでえええええええええ!」


ザザッ!


マミ「? あれ、ちょっと静かにしてくれませんか?」

ロックハート「はあ! 何でですか静かにしたら杖を返してくれますか!?」

マミ「いえ、いま、ラジオのノイズみたいな音が――」






トム「僕を――コケに――したな――!」ザッザッ、ザ―
401 :>>1 [saga]:2013/03/09(土) 15:11:36.89 ID:UZrS1Tgo0

マミ「! トム・リドル!? まだ生きてたの!?」

ロックハート「あわわわわ」

トム「消えゆく――途中さ――だけどね――」


トム「――闇の帝王がてめえらスクイブに一方的に良いようにされるなんて、有り得ちゃいけないんだよぉ!」


マミ「……っ、せ、先生、もう一度忘却術を!」

ロックハート「は、はい――って、マミ! 私の杖は貴女が!」


トム「させるワキャ、ねエダロォオオオオォォオオオオ!」

トム『スリザリンよ! ホグワーツ四強で最強の者よ! 我と話せ!』シューシュー!


 ガコン。シュルシュルシュル……


マミ「像の口から、何か出てきて……」

ロックハート「ひいいいい! なんですかあれ! 聞いてない、私は聞いてないですよ!?」

マミ「バジリスクです。目を見たら死にます!」

ロックハート「聞かなきゃよかったぁああああああああああああああああああ!」

トム「ひゃあああはっはっは! 僕も死ぬが、お前たちも死ね!
   この僕の敗北を知る者がいなくなれば、この屈辱はなかったことになる!」

トム『さあ――バジリスクよ、奴らを殺せ! その後は、ホグワーツの穢れた血どもを皆殺しにしろ!』シュー!

トム「は、は、は。お前らを殺すように命令した。お前らに命令は取り消せない――……」シュゥゥゥゥ

マミ「消えた……可哀想な、人……」

ロックハート「マミぃぃいいい! 来てます! これ絶対来てます! 目ぇつぶってるから分かりませんけど!」

バジリスク『シャアアアアアアアアア!』

マミ「……逃げましょう!」ダッ
402 :>>1 [saga]:2013/03/09(土) 15:12:34.07 ID:UZrS1Tgo0


ロックハート「マミ! 私の杖! 杖! 杖プリーズ! 緊急事態でしょうさすがに!」

マミ「あれに忘却術が通用すると思いますか!? 私達の使える呪文なんて絶対弾き返されますよ!
   それよりも、いまは少しでも距離を稼いで……あいたっ!? 何かにぶつかった!?」

ロックハート「そうです! そういえばこの部屋と外を繋ぐ扉は閉まってるんでした!」

マミ「目を瞑ってたからわからなかったわ……!」

ロックハート「マミ! 早く! あの"えむでーふらいやー"とかいうマグルの道具で扉を!」

マミ「えっと、蛇語――蛇語――これだっけ!?」カチッ


『ふーんふーんふふふーん……♪』


マミ「おっさんの鼻歌が入ってる!? こんなの入れた覚えないんだけど――」

ロックハート「マミ!? 遊んでいる場合じゃないでしょう!?」

マミ「だって目を瞑ってるから……!」

ロックハート「じゃあもう杖を返してくださいよ! せめてこの蛇がいるってことを忘れて安らかにへぶらっ!」

マミ「ロックハート先生!? いったい何」

 ヒュン! ベシ!

マミ(尻尾――!?)
  「きゃぁああああああああ――……!」
403 :>>1 [saga]:2013/03/09(土) 15:13:15.35 ID:UZrS1Tgo0

マミ「う、うう……良かった、生きてる……体も、あちこち痛いけど、動く……MDウォークマンは……?」

 カチャッ、ポロッ

マミ「あ、ははは。見事に粉々……」

シャアアアアア……!

マミ「見えないけど、かんっぺき目の前にいるわね、これ……
   どうしよう、目が合わなかったら、毒の牙で噛み付くとか本に書いてあったような……」

シャアアアアアアア! ズルッ ズルッ

マミ「近づいて、きてる……痛いのは、やだな……」

シャァァアアアアアーーーーーーー!

マミ「お父さん、お母さん、マクゴナガル先生。キュゥべえ、グレンジャーさん……ごめんなさい……」






ハリー『……手を出すな、去れ!』シューッ シュッー!
404 :>>1 [saga]:2013/03/09(土) 15:13:42.91 ID:UZrS1Tgo0


マミ(う……ううん? ここは……? なんだか、温かい……)

ロン「ん? あ、ハリー。起きたみたいだよ」

ハリー「マミ、大丈夫? いったんおろすね」

マミ「あ……私、ハリーくんに背負われて……? 他の人、ジニーさんとロックハート先生は……?」

ロン「ロックハートはローブを裂いて作った紐を使って、僕とハリーで引っ張ってる。
   で、ジニーは僕の背中さ」

ロックハート「」

ジニー「Zzzzz...」

ロン「ジニーは泣き疲れて眠っちゃった。大体の事情は聴いたよ。僕の妹を助けてくれて、ありがとう」

ハリー「体の具合はどう? どこか痛いとこない? 見た感じ、骨は折れてないみたいだけど」

マミ「平気。もう歩けるわ……私、なんで生きてるの? だって、バジリスクに襲われた筈――」

ロン「間一髪だったよ。なあ、ハリー?」

ハリー「うん。ぎりぎりだった。あと一秒遅ければ、制止も間に合わなかっただろうし。
     ああ、バジリスクには『もう誰が何しようが目を開くな攻撃するな動くな抵抗するな』って命令してきたよ」

ロン「ありゃあ、餓死するまで動かないね。何百年後かしらないけどさ」

マミ「命令……そうか、ハリーくんも蛇語使えるんだもんね。トムが消えたから、新しく命令できるように……」

ハリー「トムか……そういえば、一応拾ってきたんだけどこの日記帳はもう大丈夫なの?」

マミ「ええ……でも、詳しく話すと長くなるわ……私自身も、まだよくわからないところがあるし……」

ロン「僕らもロックハートを探して学校中走り回ったからくたくたさ。話はあとで聞こうか?」

マミ「ロックハート先生を? なんで? ……でも、そうね。後ででいいわよね」

ハリー「いや、ちょっとここで座って話そうか?」

ロン・マミ「「なんで?」」

ハリー「……あれを見てよ」


パイプ


ロン「……あー。なんかマートル曰く、マミが先に降りたっていうもんだから、後先考えず滑り降りちゃったけど……」

マミ「何百メートル――下手したら何キロってレベルだものね。私も、帰る時のことはなにも考えてなかったし……」

ハリー「休憩しよう……くたくただ」
405 :>>1 [saga]:2013/03/09(土) 15:14:11.53 ID:UZrS1Tgo0


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ハリー「そっか……マミはそういう風に行動してたのか」

マミ「なんだか、すれ違ってばっかりだったみたいね、私達」

ロン「お互い、気を遣い過ぎたんだよなぁ。
   じゃなきゃ、もっと早く、スマートに解決できたはずさ」

ハリー「来学期は、もう隠し事はなしでいようね?」

マミ「ふふ。そうね、変に遠慮しないのが、友達っていうものかもね」

ロン「あははは。じゃあ、遠慮せずいうけど……」


パイプ


ロン「誰か何とかしてくれ。もう腹ペコで喉乾いて死ぬ……」

ハリー「あれからどのくらい経った……?」

マミ「まだ、そんなに何時間も経ってない筈よ……ジニーさんも目を覚まさないし」

ジニー「Zzzzz....」

ロン「彼らは学校を守りました。そして事件を解決した英雄たちは、お礼も受け取らず何処かへと去って行ったのです――」

ハリー「やめてくれ! 縁起でもない!」

マミ「そんなの絶対おかしいわ!」

ロン「真面目にこのエンディングが近づいてきている気がする……もう僕、そこら辺の苔とかむしゃむしゃ食べそうだよ?」

406 :>>1 [saga]:2013/03/09(土) 15:14:37.80 ID:UZrS1Tgo0

不死鳥「――♪」

ロン「ん? なんだあれ? 音楽みたいな鳴き声に、真っ赤な翼、金色の尾羽……」

ハリー「不死鳥だ。フォークス! ダンブルドアのペットだよ!」

ロン「ってことは、助けか! さすがダンブルドア!」

マミ「よかった、助かったわ……」


ロックハート「うん? ううん? ここは……?」


ロン「あ、ロックハートも目を覚ましやがった。こいつ、タイミングいいなぁ」

ハリー「ここはどこ? ときたもんだ。僕たちが引きずってきてやったのに。
     私は誰? とか言い出さないよね? 頭とか打ってなきゃいいけど」

マミ「うふふ……でも、ロックハート先生も頑張ったんだもの」

ロン「確かにね。記憶に過ぎない、しかも完全じゃないとはいえ例のあの人をやっつけたんだもの」

ハリー「うん。その点だけは、ほんと凄いよね」

マミ「本当に。詐欺師なんかやめて、きちんと特技を活かして働けばいいのに」

ロン「確かに詐欺師みたいな奴だけど、実力はあるんだもんなぁ。なんだろ、マミとは逆で実技以外はダメなタイプとか?」
407 :>>1 [saga]:2013/03/09(土) 15:15:26.47 ID:UZrS1Tgo0

マミ「え? あれ? 話してなかった、かしら?」

ロン「聞いたよ? ロックハートがトムを忘却術でやっつけたんだろ?」

ハリー「あとは、マミと一緒にトムのとこまで行ったってことくらいしか……」

マミ「あー……疲れてて、重大な部分を話し損ねてたわね。まあいいわ、杖は取り上げてあるし――あれ、杖は?」

ロン「君の杖はそこにあるだろ?」

ハリー「ロックハートの杖は転がってたから、あいつのローブの中に入れといた」

マミ「え……?」チラッ

ロックハート「……」ニコッ

マミ「――! エクスペリ……!」バッ


ロックハート「オブリビエイト! 忘れよ!」ババッ


ハリー「え?」

ロン「は?」

マミ「ちょ」

ジニー「Zzzz.....ぅうん?」

不死鳥「♪?♪」


カッ!!!!!
408 :>>1 [saga]:2013/03/09(土) 15:16:19.26 ID:UZrS1Tgo0

マクゴナガルの部屋


ロックハート「――確かにトム・リドルは強敵でした。私の人生において2番目に強かった敵といえるでしょう。 
        まだ年若いとはいえ、ジニーの魂を吸い、さらに強大になった例のあの人はね……」
    

モリー「ああ、ジニー!」ワッ

アーサー「大丈夫だよ、モリーや。ほら、ジニーは無事だろう?」

ジニー「Zzzzz.....」


ロックハート「……そう! しかし、私の慧眼は見抜いた!
        奴はただの記憶に過ぎない! 真に有効な呪文はさきほど私が使ったパトロナース・チャームではなく、
        忘却術! それが正解なのだと!」


マクゴナガル「……」

スネイプ「……」ギリッ


ロックハート「悲鳴を上げて消えるトム! 『嫌だ――死にたくない――何故選ばれし純血の僕が!』 そこで私は言ったのです!」


ロックハート『純血だとか、マグル生まれだとか、どうでもいいことだ。誰だって努力をしているし、長所はある!
        それを忘れ、私の生徒たちを恐怖のどん底に落としいれた貴様に、掛ける情けなどない!』キラーン


マミ「かっこいい! さすがロックハート先生! ああ、ハーマイオニーさんもここに呼びたいわ……!」ピョンピョン

ロン「ほんっとーに僕ら、こいつに助けられたの?」

ハリー「なーんか納得できないよね」


ロックハート「すると奴は哀れっぽい懇願をやめて本性を現しました!」


トム『ぐっげっげっげっげ! ならば貴様も道連れよ! 今世紀最高の魔法使いを殺せるなら、闇の魔法使いとして本望だわ!
   出でよ、我が下僕! 奴を八つ裂きにするのだ!』


ロックハート「そうして姿を現したのは――なんと、毒蛇の王! 怪物の中の怪物、バジリスク!
        そう、それが秘密の部屋の怪物の正体だったのです!」
409 :>>1 [saga]:2013/03/09(土) 15:18:43.96 ID:UZrS1Tgo0

ロックハート「信じられないかもしれませんが、私は"目を瞑って"戦いました――
        敵の攻撃を地面の振動と風の動きで読み、牙の一撃をかろうじてよけ、そして――」


マミ「……」ゴクリ

モリー「……そして? そして、どうなったんですか?」


ロックハート「ふっ……今頃、奴は秘密の部屋の底で、永遠に御寝んねしてますよ……」フゥー…



マミ「……きゃーーーーー! 決まった! 凄い! 生ロックハート決め! 見ましたか、いまの見ましたか!?」

モリー「ええ見たわ! ああ、なんでここにカメラが無いの!?」

マミ「全くね! 世界の損失だわ!」

モリー「ああ、こんな素敵な子がいるなんて! いえ、名前だけは聞いてたけど、でももっと早く仲良くなりたかったわ!」

マミ「私もです、おばさま! ロックハートのファンに悪い人はいませんもの!」


アーサー「ロン、母さんを見ないでやってくれ。数年後、きっと自分で思い出してじたばたするだろうから……」

ロン「もうあの手合いには慣れたよ。この一年で……」


ロックハート「はっはっは――おーやおや、マクゴナガル先生にスネイプ先生! 
        どうしましたか生徒が助かったというのにしかめっ面しちゃって! 私の活躍に息を飲みましたか?
        私を快く送り出してくれたお二人には、ぜひ一番最初に聞かせてあげたいと思っていました!」

マクゴナガル「それは――あー――非常に――ありがたい――」ギリッ

スネイプ「……」ギリッ メキメキッ バキッ

ロックハート「んんんぅ? すねーいぷ先生! どうしました? 怖かったですか? いささかドラマチックに語りすぎましたかね?
        そういえばスネイプ先生は、探索を開始する直前の私になにか言葉を掛けてくれましたよね!
        えーと、確か……『なに、完全無敵のギルデロイ・ロックハートだ。単身で怪物退治くらいこなすだろう』でしったけ?」


マクゴナガル「よくもまあ、一語一語覚えている……」ボソッ


ロックハート「はっはっは――まったくもってその通り! 私が本気で動けば、怪物なんてちょちょいのちょい!
        いや流石、私が決闘クラブの助手に推薦しただけのことはある!
        見事な洞察力、というやつで・す・ね☆」バチコーン


スネイプ「……っっ!」ブシュー! バタン!


ハリー「スネイプが全身から血を吹いて倒れた!」

ロン「ひぇー……この世のものとは思えない表情をしてる。
   今のスネイプの真向かいに座るくらいなら、バジリスクとにらっめこした方がましだね僕は」
410 :>>1 [saga]:2013/03/09(土) 15:20:12.92 ID:UZrS1Tgo0


ダンブルドア「セブルスを医務室に。ミス・ウィーズリーも一緒にのう。処罰などせんよ。
         ヴォルデモート卿には、君よりも年上の魔法使いが幾人もたぶらかされてきた……」

アーサー「ああジニー! 良かったなぁ! さあ医務室に行って、ホットチョコでも飲もう!」

モリー「アーサー! ジニーはまだ寝てるんですよ! 静かに! ああ、それとロックハート先生」

ロックハート「はい? なんですか?」

モリー「この度は、本当に娘がお世話になりました――本当に、先生には感謝してもしきれませんわ!」

ロックハート「……」

モリー「あの、先生?」

ロックハート「え、あ――はは! 当然のことをしたまでですよ! なんせ私は、ロックハートですからね!」


ダンブルドア「……ふむ。さて、ミネルバ。厨房に連絡を頼む。祝宴じゃ、豪勢に、とな」

マクゴナガル「ええ、分かりました……」

ロックハート「私の席にはオグデンのオールド・ファイアを忘れずに、とも伝えておいてください!」

マクゴナガル「……ええ、分かりましたとも……!」


バタン
411 :>>1 [saga]:2013/03/09(土) 15:20:50.82 ID:UZrS1Tgo0

ダンブルドア「さて、ハリー、ロン、マミ。君たちの処罰についてじゃが」

ハリー「処罰、ですか?」

ロン「え? なんで?」

マミ「校則、100個くらい粉々にぶち破ってるものね……」

ロン「おい待て。君はいいけど、僕らはこれ以上校則違反したら……」

ダンブルドア「そうじゃのう。次に校則違反をした場合、君らは退学処分という話じゃったのう」

ハリー「」

ロン「」

マミ「ハリー……ロン……私、忘れないから――」

ダンブルドア「まあ、100個も校則を破ったら同じじゃがの」

マミ「」
412 :>>1 [saga]:2013/03/09(土) 15:21:18.04 ID:UZrS1Tgo0

ダンブルドア「……じゃが、誰にだって間違いはあ」

ロックハート「おっとお待ちください校長!」

ダンブルドア「ん? なんじゃ、ギルデロイ」

ロックハート「先ほどの話の通り、ハリーには部屋の入り口を開けるために手伝ってもらい、
        そしてロンとマミは、その友達が心配になってつい後をつけてしまっただけです!
        彼らの処罰は、この私にお任せ願えませんか?」

ハリー「え?」

ロン「ロックハートが?」

マミ「ロックハート先生……」

ダンブルドア「内容次第じゃな。言うてみい」

ロックハート「それでは……おっほん!」

ハリー「……」

ロン「……」

マミ「……」

ロックハート「……その友情と、私の手伝いという難しい仕事をこなしたので、グリフィンドールに一億点!
        どうですか!?」

ダンブルドア「無理じゃのう。得点計に砂が入りきらん」

ロックハート「では、入るだけ!」

ダンブルドア「それならまあ、いいかの」

マミ「きゃー! ロックハート先生、優しい!」

ロン「なんだかなぁ。まあこれでグリフィンドールは優勝だろうけど」

ハリー「素直に喜べないなぁ……」
413 :>>1 [saga]:2013/03/09(土) 15:21:43.64 ID:UZrS1Tgo0


ばたん!


ルシウス「何故! 理事が停職処分にしたのに! お戻りになったのか!?
      納得の行く説明をしていただけるのでしょうな!?」

ドビー「……」

ハリー「ドビー!?」

ダンブルドア「おお、ルシウス。説明か、よかろう。
        アーサーの娘が襲われたと聞いた君以外の理事全員が、わしにすぐ戻って欲しいと"何故か"頼んできてのう。
        おまけにその中の何人かは、君に脅されたと"何故か"考えているようでの」

ルシウス「なるほど! それで、犯人をもう捕まえたと!?」

ダンブルドア「捕まえたとも。ほれ、ここにいるギルデロイがな」

ロックハート「はっはっは。いやどうもどうも!」

ルシウス「誰が捕まえたとかはどうでもいい! で、犯人は誰なのかね?」

ダンブルドア「これも説明が必要かの?」

ルシウス「当然でしょう! 貴方は私に説明する義務がある!」

ダンブルドア「分かった。そこまで言うなら是非もない――最初から説明してやりなさい、ギルデロイ」

ロックハート「はい! 私にお任せあれ! そう、初めに事件の臭いを感じたのは、去年の夏。
        ダイアゴン横丁の書店でサイン会を開いた時でした……」

ルシウス「なんだこいつは!? ええい、うるさい! 私はダンブルドアに聞いて――」

ロックハート「まままま、まー! まあ待ってくださいここからがいいところ!
        そう、私はそこで彼と出会いました。それがそこにいるハリー・ポッター!
        そして、私とハリー。二つの伝説が相対するとき、物語は動き出したのです……」




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414 :>>1 [saga]:2013/03/09(土) 15:22:13.65 ID:UZrS1Tgo0

数十分後


ルシウス「……」ゲッソリ

ロックハート「その日、私の朝食はターンオーバーでした。一見、何の変哲もないその卵。
        ですが、その黄身のつぶれ具合から私は、その日の吉兆を見出したのです!」

マミ「占いまで出来るなんて――あ、そうだ! 私も来年からは数占いとってるんだった!
   お揃いだわ! ペアルックね!」

ロン「ハリー、今日の晩御飯は何だろうねえ」

ハリー「肉がいいなぁ……ああでも、もうなんでもいいや。今なら何でも美味しく食べられるよ」

ロックハート「――ここで重要なのは塩と胡椒の配分です! どちらが多すぎてもいけません!
        塩を入れすぎては味を殺し、胡椒が多くては風味を殺します! だから私は――」

ルシウス「もういい! もうたくさんだ!」

ロックハート「おや、では続きはまた今度ということで」

ルシウス「やめろ!」

マミ「あ、終わっちゃった……」シュン

ハリー「え、終わったの? あー長かった。新記録かな?」

ロン「授業以外ではそうかも」

ルシウス「お前ら、なんでそんな平気な顔ができる!?」

ハリー・ロン「「慣れです」」

マミ「愛です! あ、別に愛って言ってもどちらかというとLike寄りっていうか!」テレテレ
415 :>>1 [saga]:2013/03/09(土) 15:23:17.85 ID:UZrS1Tgo0

ダンブルドア「まあ、何じゃな。これに懲りたら、ヴォルデモート卿の学用品をばら撒くのはやめることじゃ。
        アーサーは怒っておるじゃろう。さよう、君の家の応接間の床下を調べるに違いない――」

ルシウス「な――! ちっ! 帰るぞ、ドビー!」ゲシッ

ドビー「は、はいご主人様――あうっ!」


ばたん!


ハリー「……ダンブルドア先生、その日記をマルフォイさんにお返ししても?」

ダンブルドア「ふむ。良いとも。ただし、要らないようだったらまた持ってきておくれ」

ハリー「はい!」

ロン「待って、ハリー! 僕も行くよ――」


バタン!


「マルフォイさん。僕、あなたにこれを渡しに来ました」

「……なんだ、この汚いのは! 靴下!? くそ、中は日記か。いらん! こんな汚いもの、持って帰れるか」

「おっと、じゃあ僕がこれはあとでダンブルドアに届けて、っと――ああ、そっちはいらないから、君が自由にしたら?」

「は、何を言って――?」

「……ご主人様がソックスを下さった。だから――だから――ドビーは自由だ死ね!」バチーン

「ぐあああああああああ!?」

「うわー、廊下の端まで飛んだ。鬱憤が溜まってたんだろうなぁ」

「屋敷しもべ妖精の魔法って凄いんだね。うちのグールお化けも何かできないかなぁ」

「そーれそれそれ! ドビーめが元ご主人様を玄関まで運びます!」パチーン パチーン
416 :>>1 [saga]:2013/03/09(土) 15:23:44.76 ID:UZrS1Tgo0


マミ「あわわわ。なんだか外が大変なことに!」

ダンブルドア「マミ、そろそろ止めてきて貰っていいかの?」

マミ「は、はい!」ダッ


ロックハート「では私は、パーティに出る準備を……」

ダンブルドア「おおう。ギルデロイ、すまんのう。疲れているだろうが、君にも一つだけ頼みがあるのじゃよ」

ロックハート「おや、そうですか? かのダンブルドアにそうまで頼られると、悪い気はしませんね。
        なんなりとお申し付けください!」

ダンブルドア「うむ、医務室に行ってきて欲しいのじゃ」

ロックハート「ふむふむ、医務室に行ってきて、何を?」

ダンブルドア「それを決めるのは、わしではない」

ロックハート「はい?」

ダンブルドア「自分で決めるのじゃ、ギルデロイ」
417 :>>1 [saga]:2013/03/09(土) 15:24:48.84 ID:UZrS1Tgo0


医務室


パーシー「ありがとうございます。僕の妹を助けてくれて、本当にありがとうございます!」

ロックハート「はっは! 朝飯前、というところです。私に掛かればね!」

ジョージ「ようロックハート先生! 聞いたぜ、ジニーを助けた際の活躍ぶりを!」

フレッド「ぶっちゃけスキャバーズレベルで無能だと思ってたけど、考えを改めたぜ!
     いやあスネイプもこんな顔で入院させちまうし、大したもんだ!」

ロックハート「ふふ、そうでしょうとも! サインは御入り用じゃないですか?」

ジャスティン「あの、事件をほとんど一人で解決したって聞いて……本当に、素敵だ!
        いま分かりました! ロックハート先生は魔法界のマジックなんですね……!」

ロックハート「いやー、はっはっは。それほどでも!」

ニック「いえいえ、謙遜も過ぎるとかえって嫌味ですぞ!
    バジリスクを単身で打倒した魔法使いなど、この私も見たことがありません!」

ロックハート「いや、まあ、はっは!」

ハーマイオニー「さすが、ロックハート先生ね! 私、信じてました!」

ロックハート「あー、本当ですか? それは嬉しいですね」

ハーマイオニー「ええ! ああ、それじゃあハリー達が待ってるので、これで!」

ロックハート「ははは、楽しんでおいでー」


ロックハート「……」
418 :>>1 [saga]:2013/03/09(土) 15:26:39.40 ID:UZrS1Tgo0

大広間



ジャスティン「ハリー、君を疑ってしまったことを許してほしい!」

アーニー「僕もだ、ハリー! すまなかった。この通りだ!」

ハリー「いいよ、分かってくれれば……さあ、一緒に御馳走を食べよう?」

ロン「君って奴は人が好いね。まあ、そこがハリーのいいところか」


マミ「キュゥべえ! 治ったのね。良かった……!」

QB「マミ! やったね! 事件を無事解決したんだ!」

マミ「いえ、解決したのはロックハート先生よ」

ハーマイオニー「そう、ロックハート先生だわ!」

マミ「ああ、ハーマイオニーさん! 元気になったのね、あのね、さっきマクゴナガル先生の部屋で、生ロックハート決めが……」



QB「ハリー! ロン! 久しぶり!」

ハリー「やあキュゥべえ! こっちにおいで。君にはまだそこまで耐性がない筈だ」

ロン「今日は夜通し騒ぐぞ! ロックハートの奴を忘れるくらいな!」

QB「苦労したんだね、二人とも……」
419 :>>1 [saga]:2013/03/09(土) 15:27:06.75 ID:UZrS1Tgo0

ハグリッド「ハリー、ロン! お前らが俺の無罪を証明してくれたと聞いて、俺ぁ、俺ぁ……!」

ロン「ハグリッド! 君には言いたいことが山ほどあるんだ! まあ座れよ!」

キュゥべえ「初めまして、ハグリッド! 僕はキュゥべえ!」

ハグリッド「お、おお。なんじゃこら、初めて見る猫だな――毒針とかもってるんか?」ワクワク

ロン「それだよ、それ! 今日こそは一言物申すぞ!」

ハリー「ロン、そりゃ無理ってもんだよ。ハグリッドがハグリッドである限りは」



「おいグリフィンドールの点数計が!」「うわあ見たことないくらいいっぱいいっぱいだ!」



ダンブルドア「あー、食べながらでいいので二言三言聞いてくれるかの。
        まずは嬉しいニュースから。予定されていた期末試験は、キャンセルとなった!」


「おおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

ハーマイオニー「そんなぁ……私、もう勉強しちゃったのに!」

ロン「なあ、嘘だといってくれよハーマイオニー」



ダンブルドア「あーそれでじゃのう、あまり嬉しくないニュースなんじゃが……
        ギルデロイ・ロックハート先生が、先ほど付で退職なされた」

420 :>>1 [saga]:2013/03/09(土) 15:27:42.24 ID:UZrS1Tgo0
マミ「えええええええ!?」

ハーマイオニー「嘘よ! 嘘でしょ!?」

ロン「は? なんでだ? あいつ、いつ調子こきながら大広間に入ってくるかと思ってたのに」

ハリー「ロックハートが、目立つチャンスをふいにするなんて……」


バターン!


スネイプ「それは本当ですか校長!」

ダンブルドア「おや、セブルス、入院してたと思ったがのう――さよう、ロックハート先生はお辞めになられた。
         なんでも、新しくやることができと言ってな。これでまた闇の魔術に対する防衛術の先生を探さねばならん、のう?」

スネイプ「ふ、ふはははは! そうですか、それは至極残念無念! ふーはっはっはっは!」キラッ

ロン「よっぽど嬉しいんだろうな……」

ハリー「スネイプ……泣いてる……?」

マミ「えー、そんなぁ……もう一回、お話が聞きたかったのに」

ハーマイオニー「マミはいいじゃない。一回聞けたんだもの」


ダンブルドア「……」










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421 :>>1 [saga]:2013/03/09(土) 15:28:13.59 ID:UZrS1Tgo0

校長室


ダンブルドア「やあギルデロイ、それで、決まったかの?」

ロックハート「……辞めます」

ダンブルドア「ほい、退職届。そこにサインだけすればいいようになっとるから」

ロックハート「どうも」サラサラ

ダンブルドア「……」

ロックハート「……校長は、全部見抜いておられたのですか?」

ダンブルドア「さて、のう。わしだって何でも知っとるわけじゃなし、全部は見抜けんさ。必要なことだけ、というとこかの」

ロックハート「……失礼します」

がちゃ ばたん

ダンブルドア「……」




ダブルドア「ホグワーツでは、助けを求めるものにはそれが与えられる――君も例外ではないのじゃ、ギルデロイ」
422 :>>1 [saga]:2013/03/09(土) 15:28:40.66 ID:UZrS1Tgo0

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夏休み 見滝原市 自宅


マミ「帰ってきたけど……やっぱり日本は熱いわね。溶ける……」

QB「冷房、冷房つけようよ、マミぃ……」

マミ「駄目よ……これからまだ暑くなるんだから……このくらいの気温、慣れないと……」

QB「なんで日本の夏はこんなに湿度が高いのさ……」

マミ「私に言われても……はあ、でも確かにイギリスの方が過ごしやすいわね。
   まあ、窓を開ければ少しは……」


 がらっ バサバサバサ!


マミ「きゃ、わ、っぷ! キュゥべえ鳥! 鳥が入ってきちゃった! 猫の出番よ!」

QB「仮に君が僕に望む役割を果たした場合、この場で鳥をバリボリ貪り食うわけだけど、それはいいの?」

マミ「けだもの! あっち行って!」

QB「君が言い出したんじゃないか……ん? マミ、その鳥……」

マミ「鳥が、何!? この、離れなさい!」ブンブン!

QB「いや、その鳥、フクロウだよ。しかも、手紙をくわえてる」

マミ「へ?」

423 :>>1 [saga]:2013/03/09(土) 15:29:29.41 ID:UZrS1Tgo0

フクロウ「ホゥー」ヒョイ

マミ「あ、ありがとう……え、何で? ふくろう便って、見滝原は範囲外でしょ?」

QB「その手紙、見てみれば? きちんと君宛になってるかい?」

マミ「マミ・トモエ様へ……私宛ね。差出人は……ギルデロイ・ロックハート!?
   ロックハート先生からだわ!」

QB「え? 彼は教職を辞任したはずだろう?」

マミ「でも、筆跡もロックハート先生のだし……とりあえず、読んでみるわね」ガサガサ

QB「ナチュラルに筆跡鑑定したね、君」

マミ「えーと、拝啓、親愛なるマミ・トモエ様へ……」




『突然のお手紙に貴女は驚いているかもしれませんね!

まあ、突然と言ったら私がホグワーツの先生を辞めるのも突然でしたが!

皆さん驚いているとは思います。あいさつも何も無しでしたからね。

こんな風に勝手に辞めた私ですが、マミだけには理由を知っておいて貰いたいという勝手な理由がありまして、こうして筆をとりました!』




マミ「きゅ、キュゥべえ! 私だけに、ですって! きゃー!きゃー!」バシバシ

QB「痛い痛い! やめて、僕をお餅にでもする気かい!?」
424 :>>1 [saga]:2013/03/09(土) 15:29:58.25 ID:UZrS1Tgo0

『えー……まあ一言でいうと、私はもっと上を目指せる人間だ! ということに気づいてしまったのです!

ギルデロイ・ロックハートは、ここで終わる器ではない! そう、私は思いました!』





QB「凄い天上天下唯我独尊な手紙だ……」

マミ「なるほど……確かにロックハート先生は、魔法界を束ねるに足る人材よね……」

QB(マミみたいのがいっぱいいるから、こういうのが出来上がるんだろうな……ん?)







『そう――偽りのスターなどではなく! 本当のスターになれる!

私は、そう思ったのです!』





マミ「え?」

QB「うん?」
425 :>>1 [saga]:2013/03/09(土) 15:30:51.27 ID:UZrS1Tgo0

『私の少年時代から青年時代に掛けては悲惨の一言です。

魔法の腕が致命的だったせいで、みんなにいじめられていました。

ちょうど、貴女と同じ寮のネビル・ロングボトムをスリザリン寮に放り込んだポジション、といえば分かりやすいでしょうか。

そんな過去の経験が、スター――すなわち、人々の中心に立ちたいという願望を形成したのでしょう

ですが、最近とある人に教えて貰ったのです。

自分の力で本当のスターになる、という行為の快感を!(まあ、その直後に詐欺師呼ばわりされましたが)』




マミ「酷いわ! ロックハート先生を詐欺師呼ばわりなんて!
   誰だか知らないけど、もしも会ったら私がやっつけってやるんだから!」

QB「いいから続き」



『それを知ってからというもの、それまでのちやほやされっぷりが、急につまらなく思えてきました。

味を占めた、というのでしょうか。

私は、もっと本当のスターとして輝きたい! そう思うようになったのです』
426 :>>1 [saga]:2013/03/09(土) 15:31:20.15 ID:UZrS1Tgo0

『教員をやめたのは、あそこにいたギルデロイ・ロックハートが偽りのスターだったから。

だから、もうあのホグワーツには戻りません。芸能活動もやめました。

これからは本当のスターを目指して努力しつつ、それを教えてくれた人の言う通り、

いままで迷惑を掛けた人達に、補償をして回ろうと思います』





マミ「キュゥべええええええええ! ロックハート先生がああああああ、芸能活動やめちゃうってええええええええ!」

QB「うわ、マジ泣きだよ……ぶっさ」ボソッ

マミ「えい!」ギュッ

QB「きゅっ!?」






『とりあえず手始めとして、マミの家をふくろう便の範囲内にしました。

今回の事件で魔法省にいくらか伝手ができたので、その恩恵です。

まあ、あるものは利用してなんぼですよねHAHAHA!

あと煙突飛行ネットワークも数日中には繋がります。そうしたら登録済みのトランクに入る携帯暖炉を送りますね。

では、またどこかで!

                                     ギルデロイ・ロックハートより

PS.次に会う時は、おそらく本物のスターになってるでしょう。

目が潰れないように、サングラスは必須ですよ☆』

427 :>>1 [saga]:2013/03/09(土) 15:31:58.32 ID:UZrS1Tgo0

マミ「よくわからないけど……ロックハート先生も、頑張ってるってことよね!」

QB「まあ、おおむねその通りでいいんじゃないかな」

マミ「よーし、なら私も頑張るわよ! ……えーと、とりあえず、ハーマイオニーさんとロンくんとハリーくん、
   ラベンダーさんとパーバティさん、あと佐倉さんにも手紙を書くわ!」

QB(何をすべきか思いつかなかったんだな)

マミ「よぉし、見てなさいよキュゥべえ。今日中に全部書いて見せるんだから!」


ばさばさばさ!


マミ「きゃあ! またフクロウが!」

QB「窓の外に郵便受けか何か作ったほうがいいかもね。で、今度は?」

マミ「小包ね、結構重い――あれ? 宛名が書いてないわ」ガサガサ

QB「怪しいね。爆弾とかじゃない?」

マミ「……」

QB「……」

マミ「キュゥべえ、私買い物に行くから、開けておいていいわよ――」

QB「一緒に死のうマミ!」ピョン!

マミ「きゃあ、ちょ、ちょっと。やめなさい。足にしがみついちゃダメ!」

QB「放さない! 放さないぞ、マミ! 死ぬときは一緒だ!」

マミ「そうじゃなくて、バランスが――あ」グラッ

QB「きゅ?」

バタン!
428 :>>1 [saga]:2013/03/09(土) 15:32:59.25 ID:UZrS1Tgo0


マミ「いたたた……もう! だから言ったじゃない! やめてって!」

QB「だって君が最初に僕を置いて逃げようと!」

マミ「〜♪」

QB「そんな口笛鳴らして"私、知りません"みたいな真似したって通じるもんか!」

マミ「……やるわね、キュゥべえ。」

QB「ほら、諦めて小包開けよう? っていうか、さっきの騒ぎで、ちょっと破れてるし……」

マミ「え、毒ガスとかだったらどうしよう……キュゥべえ、炭鉱のカナリアって知ってる?」

QB「やめろ」

マミ「ちょっとしたジョークなのに…… (ガサガサ) あら、これは……」

QB「見たことのあるパッケージだね」

マミ「猫用栄養ドリンク……手紙付きね」


『快気祝いだ。私の猫の分が余ったからやる』


QB「余り、というには何処もパッケージが破れてないよ? もとから6本入りだろう、これ?
   やれやれ、君たち人間はいつもそうだ。もっと正確な表現を心掛けてほしいよ」

マミ「……ふふっ、いいのよ、これはこれで」

QB「理解できないねぇ……」

マミ「手紙って素敵、ってことよ! さあ、私も書かなきゃ! あ、ついでにお菓子か何かプレゼントした方がいいかも!
   とりあえずは便箋とか材料とかの買いだしね。行くわよ、キュゥべえ!」



                                                          秘密の部屋編・了
429 :>>1 [saga]:2013/03/09(土) 15:35:02.76 ID:UZrS1Tgo0
投下終了。次回。夏休み編(2)を予定

二場面同時進行で場面転換させまくったら読みにくくなった。この手法は二度やらねえ
430 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/03/09(土) 15:37:31.48 ID:WbYx9E1Mo

まさかロックハートをちょっとカッコいいと思う日がくるとは思わなかった
431 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/03/09(土) 15:45:18.72 ID:uGOvdxIn0
乙、面白いなぁ
某ヒンヒンスレに勝るとも劣らない

特にロックハートの扱いが好きだった
432 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/03/09(土) 15:46:15.09 ID:IB3hzUfwo

フィルチとロックハート
この二人に好感を覚える日が来るとは…
433 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/03/09(土) 15:58:44.65 ID:+72y6C74o

まさかハリーたち抜きで切り抜けるとは

夏休み2は見滝原編なのかな?期待
434 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/03/09(土) 16:16:36.89 ID:cpkrWNVuo

意外なキャラにスポットがあたって嬉しいね
ロックハートが改心するとは・・・w
435 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/03/09(土) 16:36:00.65 ID:/4TT2SDBo
追い付いた!
ハリポタ知らないけど楽しめたぜ乙
436 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/03/09(土) 16:41:32.37 ID:HBVyLoBko
こんなにワクワクするなんて!
掛け合いが上手すぎて悶絶しそう
437 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/03/09(土) 16:54:10.84 ID:cl11nKeJo

ロックハートがかっこいいなんて……

というか決闘でも忘却術一本かければ勝ちじゃね?
ロックハート強くね?
438 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/03/09(土) 16:56:58.45 ID:FEFM6Rkdo
あのロックハート先生がなんか普通にカッコよくみえるぞ…
439 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/03/09(土) 17:35:16.51 ID:b0pa8mNo0

フィルチとロックハートの株が右上がりだわ
440 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/03/09(土) 17:39:22.95 ID:wghYvOsCo
お疲れ様でした。
441 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/03/09(土) 20:32:23.74 ID:Qxh4RHv7o
乙!最高すぎる!
ロックハートがマジモンになろうとしている……モノローグで鳥肌たったわ
てかコネクションが普通にパネェ、極東の島国に魔法界インフラ広げさせたとか既にとんでもない人物だ

しかし忘却術だけで分霊箱ちゃんと破壊できてるんだろうかね?
ロックハートの忘却術が規格外なのと日記の性質が噛み合ったんだろうけど、記憶が消えても魂はどうだろ
あれ破壊の条件すごい限られてたし(割と使い手が多いアバダケダブラで破壊できるのはアレだけど)
てか剣にバシリスクの毒が染み込んでないけど大丈夫なんだろうか
442 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/03/09(土) 22:06:21.49 ID:K7G/9IDro
乙 相変わらず面白かった
出来ればマミらせずに是非最後まで続きを読ませて欲しい
443 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/03/09(土) 22:48:08.40 ID:VIPw5Coe0

昔の記憶しか残ってなかったから倒し方とか忘れてたから面白かった
444 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/03/10(日) 00:57:59.29 ID:g3uE0cQ/0

まさかロックハートに好感持つ日が来るとは思わなかった
445 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/03/10(日) 01:20:31.84 ID:wpJpaFIHO
おつ
446 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/03/10(日) 01:28:38.32 ID:rOdwSuZSo
まどマギ本編設定がどう絡んでくるんだろうか
447 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/03/10(日) 02:28:32.46 ID:fDlBMkUAo
トムの日記は記憶、記憶には忘却、完璧過ぎる忘却術と言えばロックハート
この結びつけに感動して全身フォークス肌
きちんとロックハートが「このままじゃいけない」って改心して、健全な魔法使いの道を歩もうとしてる所にじんと来た
ダンブルドアの台詞といい原作の好きな所を落とさないでいてくれててすごく嬉しい

このロックハートは歴史に名前残してほしい
誰かが言ってたけど実力は特上なんだから。



ハニポと作者同じだと思うんだが、違うのかね
ジョークのセンスが似てるというか
448 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/03/10(日) 03:58:32.36 ID:2LCUAvoRo
ロンがマー髭を一度も言ってないしそれはありえないな
それにこれだけクオリティ高い作品、しかも長編を同時連載とかそうそう出来るもんじゃないわ
449 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/03/10(日) 13:00:06.39 ID:gUqZGBi5o
大体その人はいつも関西弁だろ
他スレの話は極力しない方がいいぞ
450 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/03/10(日) 13:08:54.48 ID:8iszVHJco
杏子ちゃん・・・
451 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/03/10(日) 13:17:34.58 ID:fDlBMkUAo
Ohソーリーもうしないよ悪かった
452 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/03/11(月) 22:55:27.79 ID:/VUK4+o80
 ロックハートを連れてきた時はどうするのかと思ったら
今回の日記に対してはまさしく天敵だったときには鳥肌物だった。
というかこの性能なら対人戦でも普通に怖い。
453 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/03/11(月) 23:30:22.81 ID:afz83ykBo
すべての記憶を永久的に失わせるってある意味命を奪わない死の呪文だよな
454 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/03/13(水) 20:53:23.40 ID:7DSvzM99o
そしてそれを恣意的に操り、なおかつ不可逆的であるときたもんだ


普通に怖いからな
455 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/03/13(水) 22:03:29.55 ID:cIZZQAMNo
でも、強い敵あいてだと、よほど不意を突かない限り防御されちゃうんじゃないの?
だからこそ、防御されないよう不意討ちするのが常だったんだよな?

強力な必殺技を一つだけ持ってるけど、それ以外は弱いってことか。



強力な必殺技を、創意工夫によって相手の防御をかいくぐりつつ使うって、むしろ主人公っぽいな。
456 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/03/15(金) 18:28:39.69 ID:bKtW5wpuo
本来の意味でのハッカーである
457 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/03/15(金) 21:02:40.12 ID:snXE2PBK0
1乙
amazing
458 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/03/16(土) 18:23:41.22 ID:i78TFlXz0
とても面白い
続き楽しみに待ってます支援

http://upup.bz/j/my60300vVKYtm6uyr5Afb1A.jpg
459 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/03/16(土) 18:31:32.64 ID:BhFYF6Npo
デストロイヤwwwwww
なにげに杖もドリル使用か
上手いけどdマミさんはもっとdふくよかな気がする
460 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/03/16(土) 20:33:07.35 ID:nIrv0zac0
まだマミさん13歳やで
461 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/03/16(土) 20:33:18.38 ID:b/VQXrAso
うますぎワロタ
金髪金目のせいで日本からの留学生というより現地の子だなww
462 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/03/16(土) 23:53:26.66 ID:By4KPY6lo
やべえうますぎ
指輪も書いてあるし、かなり完成度高いな
463 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/03/17(日) 00:34:23.11 ID:ZlQXbBpso
ホントだ、ってか翻訳指輪の設定忘れてたわww
464 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/03/17(日) 18:29:40.48 ID:jElBn1hpo
なんかペルソナに出てきそう
465 :>>1 [saga]:2013/03/17(日) 19:56:59.48 ID:dl3rWxXC0
>>458
うわああああああああああああ! 凄ぇ! すごいですー! もうそれかべがみになった

っていうか、え、なんですかこれは。指輪とか細けぇ! さらに壊し屋表記まであるだと……!?
こういうの描くのにどのくらい時間がかかるのだろう……もう>>458の方向に足向けて寝れませんわー無理だわー

……頑張って続き書こう。くそっ、ここ数日なにをしてたんだ俺は……!
少なくともこれが完結するまではもう二度と浮気しませんと誓いました、まる
466 :>>1 [saga sage]:2013/03/17(日) 20:00:08.97 ID:dl3rWxXC0
あまりの興奮ぶりにあげてしまった。ごめん。
とりあえず明日投下できるように頑張ります
467 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/03/17(日) 23:22:31.25 ID:/aSiCLPpO
楽しみにしてる
468 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/03/18(月) 02:06:29.46 ID:5NCpt9MU0
流石に忘却術でヴォルデの魂まで打ち負かすのは無理があると…最後まで読んでないなら知らんけど
469 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/03/18(月) 02:17:00.08 ID:VkN+Gdzs0
細けぇことはいいんだよキャラに萌えてんだから 邪魔すんな
470 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/03/18(月) 03:27:24.73 ID:M6klH90Xo
分霊箱そのものの破壊はできないかもしれないけど、全ての記憶を消せたならとりあえず何もできないただの日記にはなるだろうな
ただ、それで解決したと思って存在忘れると「あれ、分霊箱は全部壊したはずなのに!?」ってなりそうだが
471 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/03/18(月) 05:36:19.76 ID:PU+2Aenxo
マミさんというものがありながら浮気だなんで…
この>>1は鬼畜やで!
472 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/03/18(月) 06:04:06.98 ID:pLKJdc9L0
>>470
まさか同じ考えをしてる人に出会えようとは……
ホグワーツにはアレとあの人がいるからその心配はないでしょ
473 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/03/18(月) 14:49:21.47 ID:eYUebNA+o
ロックハートの扱いが最高でした。アズカバン編も楽しみだなあ
474 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/03/18(月) 15:01:16.15 ID:5NCpt9MU0
記憶の操作でヴォルデの魂自体はどうにもならんでしょ
それにキャラがどうって言ってももうマミさん要素ないし
何よりロックハートをこんな扱いにして他の人にいい目がないけど、主人公ロックハートだったの?
キモイ成り代わりだったりハリポタssってろくなのがないな
475 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/03/18(月) 15:08:35.41 ID:eQtU2Ifho
マミさんにマントが似合うと>>458のお蔭で気づいたわ
可愛いなあ
476 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/03/18(月) 15:46:23.13 ID:VkN+Gdzs0
ハリポタになんの恨みがあるんだ
477 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/03/18(月) 15:50:23.46 ID://pYzhuZo
逆だろ
ハリポタの原作主義者でしょ
まぁハニーポッターがやかましいのはわかる
478 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/03/18(月) 15:53:05.21 ID:Fu49DOxto
擁護するとかではなく、名指しで別のスレをディスるとかただのスレ違いだからお帰り下さい
479 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/03/18(月) 16:03:30.50 ID:M6klH90Xo
>>474
あんたハニーの所にも居たよな
改変を許せないならSSなんて見るべきじゃない

分霊箱=魂の欠片に関しては破壊できたという描写はSS中にはない
魂≠記憶なので、記憶が消されたからって魂まで消えるわけはないし
あとあんたヴォルデモートを神かなんかだと勘違いしてないか?
魔法使いとしての実力はダンブルドアよりもたぶん少し下だけど、禁じられている強力な闇の呪文を容赦なく使う
不死性は分霊箱によるもので、全て壊せば普通に死ぬ
まして、その魂の一部しか込められてない分霊箱から実体化した奴なんて別にそこまで強くないだろうぜ
480 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/03/18(月) 17:26:51.58 ID:pLKJdc9L0
 || ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄||
 || ○荒らしは放置が一番キライ。荒らしは常に誰かの反応を待っています。
 || ○重複スレには誘導リンクを貼って放置。ウザイと思ったらそのまま放置。
 || ○放置された荒らしは煽りや自作自演であなたのレスを誘います。
 ||  ノセられてレスしたらその時点であなたの負け。
 || ○反撃は荒らしの滋養にして栄養であり最も喜ぶことです。荒らしにエサを
 ||  与えないで下さい。                  Λ_Λ
 || ○枯死するまで孤独に暴れさせておいて   \ (゚ー゚*) キホン。
 ||  ゴミが溜まったら削除が一番です。       ⊂⊂ |
 ||___ ∧ ∧__∧ ∧__ ∧ ∧_      | ̄ ̄ ̄ ̄|
      (  ∧ ∧__ (   ∧ ∧__(   ∧ ∧     ̄ ̄ ̄
    〜(_(  ∧ ∧_ (  ∧ ∧_ (  ∧ ∧  は〜い、先生。
      〜(_(   ,,)〜(_(   ,,)〜(_(   ,,)
        〜(___ノ  〜(___ノ   〜(___ノ

481 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/03/18(月) 20:29:49.96 ID:Llx8wvqvo
>>458
素晴らしい。だがおっぱいが足りない。
80点
482 :>>1 [saga]:2013/03/18(月) 22:44:25.65 ID:Z6/BDJIP0
この前ネットサーフィンしてたら『魔のブラックホール大作戦』という文章が変なところで改行してて
『魔のブラックホール大作』に見えました。誰ですか魔のブラックホール大作って。

そんなわけで投下します。
483 :>>1 [saga]:2013/03/18(月) 22:45:32.05 ID:Z6/BDJIP0
夏休み 見滝原 自宅


 見滝原市の夏は、暑い――

 これは、ヒートアイランド現象により首都で発生した熱風が吹きこむことが原因である。

 その為、首都のある南の方角に向けて一心不乱に呪いの電波を飛ばすのは、夏の見滝原でよく見られる風物詩だ。

 ここ、とあるマンションの一室でも、それに近い光景が見られた。

 一見、そこは何の変哲もないマンションの一室に見える。部屋の中央で、轟々と火が燃え盛ってさえいなければ。

マミ「……」

 そんな炎の前に立ち尽くす、十代前半の女の子。

 彼女の名は巴マミ。ホグワーツに通う、魔法使いの卵である。

 魔法使い――

 箒で空を飛び、大鍋で怪しげな薬を製造し、杖を振るって異常な現象を起こす。そんな胡散臭い存在。

 いまも彼女は部屋のど真ん中で燃え盛る炎を見つめながら、まるで未開部族のシャーマンがそうするように、
 そわそわと一定のリズムで体を揺らしていた。

 その腕の中には、白い猫のような生き物が丸くなって抱えられている。

 生き物の名前はキュゥべえ。これから捧げられる生贄のようにも見えるが、一応はマミの大切なペットである。

マミ「遅いわね……キュゥべえ、ちょっと炎の中に放り込むから、向こう見てきてくれる?」

QB「いや、絶対焼け死ぬよ。まだ繋がってないし」

マミ「馬鹿! やる前から諦めないで!」

QB「やっちゃったら後悔もできなくなるから言ってるんだよ……ちょっとねえ、何で僕をゆっくり振り上げてるの?
   マミ! やめるんだ! 背中を逸らすのを今すぐやめて! ど、動物愛護団体が黙ってないぞ……!」

 と、そんな風に騒いでいると。

 それまでも激しく燃えていた炎が、さらに激しく燃え上がった。さらにその色も、赤からエメラルド・グリーンに変じる。

マミ「繋がったわ!」ポイッ

QB「ぷぎゅっ」

 歓声。そして潰れたような悲鳴。

 そんな声に導かれたように、緑色の炎の中から人影が飛び出してくる。

 ふわりと部屋の中に着地したその人物に、マミはにっこりと笑って、

マミ「いらっしゃい、ハーマイオニーさん!」

ハーマイオニー「ええ、一日お世話になるわね、マミ」
484 :>>1 [saga]:2013/03/18(月) 22:49:39.66 ID:Z6/BDJIP0

見滝原市 和風喫茶



ハーマイオニー「……ふぅ、涼しい! 日本の夏……噂には聞いてたけど、本当に蒸し暑いのね……」

QB「マミの部屋の中が死ぬほどむわっとしてたのは、マミがカーテンを閉め切ってたからだけどね」

マミ「だ、だってご近所さんに見られたら言い訳できないから……」

ハーマイオニー「あのね、マミ。煙突飛行する時火をつけるのは、入る側の暖炉だけでいいのよ?」

マミ「し、知らなかったんだもの! まだ煙突飛行をした経験もないし……」

ハーマイオニー「まあ私も今回が初めてだし、"漏れ鍋"の暖炉から飛ぶ時、近くの人から聞いただけなんだけど……
          マミも飛ぶときには気を付けた方がいいわ、煤を吸い込まないようにするのがコツですって。
          大体のことは、持ってきた煙突飛行粉(フルー・パウダー)についてる説明書に書いてあると思うけど」

マミ「ごめんなさい、わざわざ持ってきて貰っちゃって……」

ハーマイオニー「いいのよ。おかげでこうやって日本にもこれたし……
          そういえば知ってる? ロンも宝くじが当たって、エジプトに行くんですって」

マミ「初耳ね。そう、エジプト……いいなぁ、ピラミッドとか見てみたいわ。
   ハーマイオニーさんって、ロンくんとお手紙のやり取りとかよくするの?」

ハーマイオニー「そこそこね。ハリーは夏休みの間、ご家族にふくろうを使うの禁止されてるみたいだから……
          そういえばマミは夏休み、どこかへ行ったりしないの?」

マミ「夏休みはここで過ごすつもり。そもそも、一年のほとんどをイギリスで過ごしてるしね」

QB「それにしても、ロックハートも抜けてるよねぇ。暖炉だけ送って、肝心のフルー・パウダーを忘れるなんて」

マミ「こら、駄目でしょ、キュゥべえ? ロックハート先生にはただでさえお世話になってるのに!
   そんな、ご好意に甘えるような……好意……好意……えへへ」

ハーマイオニー「……マミやハリー、ましてやロンにまでプレゼントが送られてきてるのに、なんで私には……!」ギリッ

マミ「え、や、だからほら、怪物退治の時、危ない目に遭わせちゃったお詫びじゃないかしらっ。
   お詫びって言っても、ハリーくんはともかく、私とロンくんは勝手についていっちゃっただけらしいけど」

ハーマイオニー「あなた達、ショックで何も覚えてないのよね……うう、でも羨ましい……
          ロックハート先生、芸能活動もやめちゃうし、本は絶版になっちゃうし……」

マミ「ま、まあまあ! ほら、冷たいものでも注文しましょう? あ、メニュー読めないわよね。
   私の翻訳指輪貸してあげるわ!」

ハーマイオニー「え、これをはめるの? ……わあ! 日本語が読めるようになった!
          凄いわ! これならいろんな国の本が読める!」

マミ「ふふふ、ハーマイオニーさんらしいわね」

QB「道具の使い方ひとつとっても品性が表れるなぁ。
  何だっけ? 前に誰かさんは『これがあれば英検もTOEICも楽勝じゃない……!』とか言ってたけど」

マミ「すみませーん。煮えたぎった飴湯くださーい」
485 :>>1 [saga]:2013/03/18(月) 22:54:50.00 ID:Z6/BDJIP0

ハーマイオニー「……んっ、このアンミツっていうの凄く美味しいわ! マッチャも紅茶にない苦みが新鮮だし……
          これが"ワビサビ"というやつね!」

マミ「気に入ってもらえて良かったわ。紅茶やケーキは本場に敵わないだろうから、
   思い切って純和風で攻めてみたのだけど……」

QB「ここ数日、良いお店を探すって言って食べ歩き三昧だったもんねえ……
   店員が変な目で見てたよ。一見ひとりなのに二人分注文するから、"あらあら、見た目によらず大食漢ねえ"って」

マミ「な、な、な! キュゥべえが食べたいって言うから注文したんじゃない!」

QB「それは素直にありがたいけど、そういう風に見られてたものは仕方ないじゃないか。
   僕が悪いわけじゃないし……あー、クーラーの効いた場所で食べるお汁粉はまた格別だ」

マミ「きー! 飲み食いしたお菓子吐きなさい!」

ハーマイオニー「ふふ……相変わらず仲がいいのね。私もペットを買う時は猫にしようかしら?
          それに、ありがと。お店を探してくれたみたいで」

マミ「……どういたしまして」

QB「マミ、風邪かい? 顔が真っ赤だけ――きゅっ!?」

486 :>>1 [saga]:2013/03/18(月) 23:01:21.49 ID:Z6/BDJIP0
マミ「さて、お腹も膨れたことだし、これからどうしましょうか? ハーマイオニーさんはどこか行きたいとことかある?」

ハーマイオニー「うーん、そうね……来る前に、この辺のことは本で読んできたのだけど――」

QB「さすがだね、ハーマイオニー」

ハーマイオニー「ありがとう、キュゥべえ……でも、この辺りには魔法生物の群生地とかってないのよね。
          だから今までふくろう便とか煙突飛行ネットが通ってなかったんだし。
          河童とかは、もっと西の方に行かないといないみたい」

マミ「カッパ!? カッパって本当にいるの!?」

ハーマイオニー「いるわ。というか、日本が原産よ。来年度の授業で習うと思うわ……
          だから今回は魔法抜きで、マグル――普通の日本文化が見学できれば、って思うんだけど」

QB「うーん、でもそれだと見滝原は向かないかもね。ここって、かなり急速に発展してる街だから。
   寺とか神社とか、そういう"和風"な部分ってあんまりないと思うよ。もちろん、皆無じゃないだろうけど」

マミ「流石に、京都とか程じゃないわよね……ごめんね、ハーマイオニーさん」

ハーマイオニー「あら、どんな場所にだって、見るべきところはあるわ。
          むしろ有名なキョウトにない部分を見れるんだから、得ってものじゃない?」

マミ「ハーマイオニーさん……」

QB「彼女がそういうんだ。じゃあ、見滝原の中心部を見て周ろうか?
   かなり前衛的な都市構造だから、一日くらいなら見飽きるってこともないだろう」
487 :>>1 [saga]:2013/03/18(月) 23:07:08.68 ID:Z6/BDJIP0

ハーマイオニー「ミタキハラって、凄く未来的な建物が多いのに、緑も負けないくらい多いのね。
          ふふっ、ここの通りなんか、散歩コースに最適じゃない」

マミ「でしょう? 自慢の通りなのよ。この辺は夏でも涼しいし……」

QB「でも、無計画な緑化は後々の憂いに繋がるんだけどね」

マミ「え?」

ハーマイオニー「どういうこと?」

QB「例えばこの街路樹。今は植えられたばかりだからいいけど、このまま成長すると通行の妨げになる程大きくなるんだ。
   とりあえず植えればいい、って考えで、種類の選定が杜撰だったんだね。
   他にも災害時の救助活動とかには支障をきたすだろうし……そもそも枝が折れて落ちたりすると、それ自体危ない」

マミ「そ、そんなの枝を切っちゃえばいいのよ!」

QB「それをするのにもお金がかかる。最初から想定しておけば、税金を無駄にせず済んだのにね」

ハーマイオニー「なるほど……そこまで考えなきゃいけないのね」


◇◇◇


マミ「ここが、見滝原のちょうど中心。モール街なんかが立ち並んでて、ショッピングには不自由しないの」

ハーマイオニー「ほんと凄いわ! イギリスの本場モール街に勝るとも劣らないくらい!
          ショーウィンドゥを眺めてるだけで目移りしちゃいそう」

マミ「本場? モール街ってイギリス発祥の言葉なの?」

ハーマイオニー「発祥ってことはないでしょうけど、イギリスでモール街っていったら
          ロンドンにあるセントジェームズ公園の傍の通りを指すの。
          お店がたくさん並んでて、観光客もいっぱいいるわ。マミもロンドンにくることがあったら、ぜひ寄ってみて!」

マミ「ええ! もちろん――」

QB「まあ、イギリスのThe Mallはともかくとして、この見滝原は無計画な開発で歪が大きくなってるんだけどね。
   中心部から少し離れるとゴーストタウンみたいになってる場所もあるし。
   商圏がころころ変わるから、それで投資をしくじったって人もかなりいるはずだ」

マミ「え、あう……」

ハーマイオニー「……そうね。新しいものを取り入れるのはいいけど、古いものも大事にしないといけないわよね」


◇◇◇


ハーマイオニー「あの辺り、凄くいっぱい風車があるのね……なんの為かしら?」

マミ「えーっと……」

QB「風力発電の実験場さ。あくまで実験場だから、これだけで電力を賄えているわけじゃないけどね。
   そもそも風力発電自体が需要と供給の原則を満たしにくい発電方法ではあるんだけど」

ハーマイオニー「でも、こういう実験は大切だと思うわ。技術が発展して問題が解決されるかもしれないし、
          仮に失敗でもそこから得られるデータは無駄じゃないもの」

QB「その考え方も一理ある。僕からしてみると、酷く原始的で無駄が多いんだけどね」

マミ「……」
488 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/03/18(月) 23:10:34.80 ID:hx1Y4x+8o
これはウザい
489 :>>1 [saga]:2013/03/18(月) 23:11:05.39 ID:Z6/BDJIP0

QB「あそこのビル群は強度不足だ。もしも凄い嵐なんかが来たら、真ん中から――」

マミ「わ、わああああああーっ!」ガバッ

QB「きゃあ、マミがバグった! こ、これだから感情は精神疾患だっていうんだ!」

ハーマイオニー「違うのキュゥべえ! マミは去年の事件で心に傷を! ああ、どうしようマダム・ポンフリーがいらっしゃらないわ!
          そ、そうだ! 何かで読んだことがあるけど、日本ではこういう時黄色い救急車を呼ぶって!
          でも救急車って普通は黄色よね? まあとにかく、はやく999に電話を――」

マミ「違うわ! べ、別に錯乱したわけじゃないったら!」

ハーマイオニー「え、違うの? じゃあ、一体なんで……」

マミ「ぐすっ、だ、だって、キュゥべえとハーマイオニーさんが凄い難しい話してて……
   わ、私、全然ハーマイオニーさんの役に立ててないから――」

ハーマイオニー「マミ……」

ハーマイオニー(ほんとのこと言うと、これはこれで凄く勉強になるから、全然気にしなくていいのだけど……
          でもあれよね? それを言うのは野暮ってものよね?)

QB「マミ……」ポンポン

マミ「キュゥべえ……なぐさめてくれるの……?」

QB「君、凄く面倒くさい」

マミ「……え」

ハーマイオニー「ちょ、キュゥべえ!?」

QB「典型的な"面倒くさい女"じゃないか。OL50人にアンケートとったら嫌われてそうな感じの――」

マミ「う、うわああああああん!」ビシィッ

ハーマイオニー「ま、マミ! ちょっとこら、何で杖なんか持ち歩いて――しまいなさい! すぐにしまいなさい!
          こんなとこで魔法なんか使ったら大変なことになるわよ!」

マミ「は、放して! 刺し違えてでも、キュゥべえと決着つけてやるんだから……!」

QB「きゅぷぷぷぷぷぷぷぷぷ」

ハーマイオニー「もう、マミったら抑えて――キュゥべえが聞いたこともないような邪悪な笑いを!?」
490 :>>1 [saga]:2013/03/18(月) 23:15:44.97 ID:Z6/BDJIP0


マミ「――というわけで、これからは私がお勧めスポットを紹介するわ」

QB「わー。どんどんぱふぱふー」

マミ「なんか心底腹が立つリアクションだけど……いいわ。私だって、高尚な案内くらいできるんだから!
   吠え面かかせてあげる! キュゥべえなんて、にゃんにゃん鳴いてればいいのよ!」

ハーマイオニー(どうしよう、何か一年生の頃を思い出す不安さ加減なのだけど……)



◇◇◇



マミ「ここのお総菜屋さんはメンチカツがお勧めよ! 揚げたてを買おうとすると、こうして並ばなきゃいけないの!
   あ、おばさん! 三つ下さい! メンチカツ三つ! ソースも!」

ハーマイオニー「……美味しい! 揚げてあるのに全然油っこくないわ! それでいてジューシーだなんて!」

QB「なるほど、確かにこれは並ぶだけの価値があるね」



◇◇◇



マミ「このスーパーの駐車場敷地内にある焼き鳥屋さん、つくねが凄く美味しいのよ!
   つくねって言うのは、ええと、鶏肉のハンバーグってとこね。おじさん、2本下さい!」

ハーマイオニー「んー……確かに、この独特の香ばしいソースは食欲をそそるわね」

QB「素材の味を活かすには塩一択だね」



◇◇◇



マミ「ここのタイ焼き屋さんは、縁日でもないのにじゃんけんに勝つと一個おまけしてくれるのよ。
   じゃんけんぽん! 勝った! はい、ハーマイオニーさんの分。クリームでいいかしら?」

ハーマイオニー「……」モグモグ

QB「……」モグモグ
491 :>>1 [saga]:2013/03/18(月) 23:18:31.39 ID:Z6/BDJIP0

マミ「次。ここのケーキ屋さんはお店の中で食べることも――」

ハーマイオニー「……けぷっ。失礼。ストップ。ストップよ、マミ。落ち着いて」

マミ「? ケーキの気分じゃなかった? じゃあラーメンでも」

ハーマイオニー「あのね、そういうことじゃくて」

QB「マミ、君がさっきから案内してるの全部食べ物屋さんじゃないか。高尚(笑)な案内はどこに行っちゃったんだい?」

マミ「……あら? へ、変ね?」

QB「いいけどね。所詮はマミだし……でも女の子として恥ずかしくないのかな?
   ああ、これが色気より食い気って奴か。我が身を賭してことわざを教えてくれるなんて、ある意味高尚かも――」

マミ「こ、これはほんの小手調べよ! 腹が減っては戦は出来ぬっていうでしょ!?
   次こそ、凄いとこに案内してあげるから……!」

ハーマイオニー「マミ、無理しなくても……」

マミ「は、ハーマイオニーさんまで……うう、見てなさい! 本当に凄いところに連れて行くわよ!」
492 :>>1 [saga]:2013/03/18(月) 23:22:01.03 ID:Z6/BDJIP0

県庁前 県民広場


マミ「――そんなわけで、見なさい! あれが県庁よ!」

ハーマイオニー「……うん」

QB「……そうだね。県庁だね。大きいね」

マミ「……あ、あら? 何か期待してた反応と違う……
   ほら、政治の機能が集中してて、凄く難しい話し合いをしてる、高尚な場所で……」

QB「いいよ、マミ。僕が悪かった。人類が誕生してからの英知全てを詰め込んだ僕と、
   ただの女子中学生じゃあ勝負にならないことは自明の理だったのに」

マミ「な、何よ。それじゃあ私がキュゥべえに負けたみたいじゃない!」

QB「よく考えたら君、地元についての勉強って小学校でやってそれっきりだもんね……
   ほんと、僕が大人げなかったよ。ほら、帰ろう? ね? ケーキ食べるくらいなら付き合うから――」

マミ「……うぃ、うぃんがーでぃあむ……!」

ハーマイオニー「ああああ! ほ、ほら、マミ! なんかあっちの建物でイベントやってるみたいよ!
          私、あれが見てみたいわ! でも入り方とかよく分からないし、どうすればいいのかしら!?」

マミ「……! 本当!? それじゃ、入れるかどうかちょっと見てくるわ!」ダッ

ハーマイオニー「……ふぅ。なんとか凌げたけど……もう、キュゥべえ。なんであんな煽るようなこと言うのよ?」

QB「真面目に謝ったつもりなんだけどなぁ」

493 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/03/18(月) 23:22:13.22 ID:2GaCNL9aO
マミさん……( ´:ω:` )ブワァ
494 :>>1 [saga]:2013/03/18(月) 23:25:46.28 ID:Z6/BDJIP0
会館内


ハーマイオニー「へえ……外はシックなレンガ造りだったけど、中はそうでもないのね?」

QB「改修工事が行われたんだろう。外の様式を見る限り、昭和初期に造られたようだし」

マミ「お待たせ! 2階のホールで演奏会やってるみたい。入場料もいらないし、勝手に入れるみたいよ?」

ハーマイオニー「それじゃ行きましょうか。空調の効いてる場所で涼めるだけでもありがたいし」

QB「そうだね、早速――……」

マミ「? キュゥべえ、どうしたの?」

QB「あー……悪いけど、僕は少し外を歩いてくるよ。食べ過ぎたみたいだ」

マミ「え……ちょっと、大丈夫?」

QB「大したことないよ。ただクーラーでお腹が冷えると大変そうだから、外の木陰で休んでる。
   マミとハーマイオニーだけで行っておいで」

マミ「キュゥべえがそう言うなら……でも、駄目そうだったらテレパシーで伝えてね?」


495 :>>1 [saga]:2013/03/18(月) 23:26:39.40 ID:Z6/BDJIP0


2F ホール内


マミ「キュゥべえ、大丈夫かしら……でも、いつもあれくらい食べてるわよね……」ブツブツ

ハーマイオニー「……ふふっ」

マミ「あら、どうしたのハーマイオニーさん?」

ハーマイオニー「ごめんなさい。でも、さっきまで売り言葉に買い言葉で喧嘩してたのに、
          こうして別れた途端に心配しだすものだから、つい」

マミ「な! そ、それは、か、飼い主としての責任がね!?
   そ、そうよ! だってマクゴナガル先生からプレゼントしていただいたものだし――」

ハーマイオニー「ほら、ホールではお静かに? 次の演奏が始まるわよ?」

マミ「ううー……」


『続きまして、ヴァイオリン独奏。上条恭介さん。曲目は――』
496 :>>1 [saga]:2013/03/18(月) 23:29:13.63 ID:Z6/BDJIP0

演奏会終了後 2F ホール前



ガヤガヤガヤ ザワザワザワ


マミ「……うーん! 背筋が固まっちゃったわ。ずっとぴしっとした姿勢でいたから……」グイッ

ハーマイオニー「どの演奏者も真剣だったものね。音楽ってあまり聞かないけど、今日のは良かったわ。
          それに、私たちと同い年くらいの男の子がいてびっくりしちゃった」

マミ「あれは驚いたわねぇ……あの歳で、周りの大人とタメを張れるくらいの演奏をするんですもの」

ハーマイオニー「……そういえば、私達も浮いてたわね。周りの観客、みーんな大人ばっかりで」

マミ「ま、まあ土曜日とはいえ、日本の学校はまだ夏休みじゃないし……そもそも、休みの日に演奏会にくる子供って中々いないわよ。
   いるとしたら、それこそ関係者くらいじゃ――」



さやか「うわー、げぇじんさんだ。げぇじんさんだよ、まどか! 舶来ものだ!」

まどか「さ、さやかちゃんやめて! 恥ずかしいよ! さやかちゃんという存在そのものが!」

さやか「なんだよぅ、ちょっとした冗談じゃんか――あれ。まどか、今なんつった? 黙ってはいなかったよね?」

まどか「さーてーろーやーりー♪」

さやか「それで誤魔化せると思っているのか! うりゃー!」ガバッ

まどか「きゃ、ちょ、あははは! さやっ、やめっ! きゃははは!」
497 :>>1 [saga]:2013/03/18(月) 23:33:18.71 ID:Z6/BDJIP0

ハーマイオニー「あれも、関係者?」

マミ「あ、あはは……たぶん、そうじゃないかしら」

ハーマイオニー「それにしては、随分と落ち着きがないようだけど……というか、危ないわよ。
          あんな風に、人が大勢いるホールではしゃいだりしてたら――」


ドン!


聴客3「っと、悪いね」スタスタスタ

さやか「わっ、とっと! 危ねー。やー、悪い悪い。まどか、平気?」

まどか「さ、さやかちゃん! 足元――」

さやか「へっ?」


ぐらっ


さやか「わ、わ、わ!」

まどか「さやかちゃん!」

マミ(いけない。あのままだと階段に頭から――この高さから落ちたら……!)

ハーマイオニー「危な――」

マミ「っ」バッ


マミ「――ウィンガーディアム・レヴィオーサ!(浮遊せよ)」
498 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/03/18(月) 23:33:40.17 ID:xpgBUmwj0
凄いところ……ゲイバーか
499 :>>1 [saga]:2013/03/18(月) 23:33:58.64 ID:Z6/BDJIP0

ふわっ


さやか「く、ぬううううう! 落ちてたまるかぁ!」ジタバタ

ハーマイオニー「マミ!? あ、あなた何てことを……!」

マミ「い、いいから早く引き上げてきて!」

ハーマイオニー「……っ」ダッ


さやか「あ、何かいける! いけるぞ! 全く落ちる気配がない! 流石さやかちゃんトゥー!
     さあ頑張れさやかちゃんレッグ! お前の力を見せてみろ……!」


ぐいっ


さやか「あ、助かった。ありがとう、まどか――」

ハーマイオニー「これでよし。マミ!」ダッ

さやか「あれ、さっきの外人さん? ていうか無視? いやでも助けてくれたから無視じゃなくて……」ブツブツ

まどか「さやかちゃん! 良かった、落ちなくて……!」
500 :>>1 [saga]:2013/03/18(月) 23:34:46.11 ID:Z6/BDJIP0

ハーマイオニー「マミ! あなた、いま魔法を!」ヒソヒソ

マミ「と、咄嗟に動いちゃって……」

ハーマイオニー「咄嗟に動いちゃって――って、あなただって規則のことは知ってるでしょう!?
          幸い、あの子が自力で何とか耐えた形に見えたけど……ああ、どうしましょう。たぶん、すぐに――」


ひらっ


マミ「手紙……?」ガサガサ



『トモエ殿。

今日16:37分、貴女の住まい近郊にて『浮遊術』の使用が確認されました。

知っての通り、卒業前の未成年魔法使いは、学校の外での魔法使用を禁じられております。

今回は警告のみとなりますが、貴女が再び魔法を行使すれば、退校処分となる可能性があります。

規則を守り、正しく休暇を楽しまれますよう。

魔法省 魔法不適正使用取締局――』

501 :>>1 [saga]:2013/03/18(月) 23:36:49.66 ID:Z6/BDJIP0


マミ「あ、あはは。やっちゃったわ……」

ハーマイオニー「笑い事じゃないわ! あなた退学になるところだったのよ!
          そうしたら杖を折られちゃって、もう二度と魔法が使えなくなるんだから!」

マミ「で、でも今回は警告で済んだわけだし――」

ハーマイオニー「何甘いこと言ってるの! ハリーとロンに毒されたのかしら!? 
          きっとこれからはさらにチェックが厳しくなるわ! ああもう、ほら杖を持ち歩くの禁止よ! 貸しなさい私が持ってるから!」

マミ「うう、ハーマイオニーさん、怖い……」

ハーマイオニー「怒りもするわよ! そりゃ、マミのしたことは立派ですけどね、退学になったら元も子もないじゃない!
          まったく! 本当にマミはまったく!」


さやか「あ、あのぅ……ちょっといいですかね?」

ハーマイオニー「なに!? ……って、あら。さっきの」

さやか「いやー、あはは。助けて貰っちゃったみたいで。っていうか日本語上手っすね」

まどか「あ、あの! ありがとうございました! さやかちゃんを助けてくれて……」

ハーマイオニー「お礼なら、こっちのマミに言いなさい」

マミ「は、ハーマイオニーさん?」

さやか「へ? いやだって、助けてくれたのは……」

ハーマイオニー「……あなたが危なそうだって、マミが教えてくれたの。でなければきっと間に合わなかったわ」

さやか「あ、そういうことですか。じゃあえーと、マミさん? どうもありがとうございました!」

マミ「……ううん、どういたしまして。でも、気を付けてね? 階段の近くでふざけちゃ駄目よ」

さやか「はい、気を付けます……ところで、珍しいですね。そっちの外人さんもそうですけど、
     こんな小さな演奏会にわざわざくるなんて。出演者の知り合いとかですか?」
502 :>>1 [saga]:2013/03/18(月) 23:37:54.49 ID:Z6/BDJIP0
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さやか「へえー、外国の友達に観光案内を……」

まどか「凄いですね、マミさん。私たちの一個上なのに、留学だなんて……」

マミ「そんな、大したことないわ……お陰で、こっちにはあんまり知り合いもいないし」

さやか「でも明日はこっちの友達に会うんですよね。くぅー、羨ましいなぁ! まさに青春、って感じで!」

まどか「さやかちゃん、また変なこと言う……」

ハーマイオニー「驚いたといえば、さっきヴァイオリンを演奏してた男の子、サヤカの幼馴染って本当?
          結構タイプが違う気がするのだけど」

さやか「あれ、もしかしてさやかちゃんには高尚な音楽なんて似合いませんよー、って暗に言われてる?
     くっ、さすが外人。思ったことずばずば切り込んでくるね。まどか、こういうのなんていうんだっけ!?」

まどか「慧眼、っていうんだよ」

さやか「なるほど! お姉さん、あたしにクラシックが似合わないと思うとか、超慧眼っすね!
     ……まどか、本当にこれ合ってる?」

まどか「あははは……冗談はともかくとして、さやかちゃんは上条君と仲いいから、意外にクラシック詳しいんですよ」

さやか「冗談? いやその前に"意外に"とか言ったよねまどか?」

ハーマイオニー「なるほど、確かに意外だわ」

さやか「外人さんまで!? お前ら本当に慧眼ですね!?」

マミ「くすっ。いいコンビみたいね?」

さやか「まあ、まどかとも長いですからね……しかしあたしを癒してくれるのはマミさんのみだー!」ダキッ

マミ「きゃあ! ちょっと、また落ちそうになっちゃうわよ?」
503 :>>1 [saga]:2013/03/18(月) 23:38:35.78 ID:Z6/BDJIP0

仁美「さやかさーん! まどかさーん!」

さやか「お、仁美だ」

マミ「彼女も、お友達?」

さやか「ええまあ。恭介つながりで……今回の演奏会の開催元、仁美の家が関係してるみたいで、
     仁美のやつ、無理やり関係者席に座らされてたんですよ」

まどか「仁美ちゃんとも一緒に座りたかったなぁ……さやかちゃん、上条君以外の人の演奏の時寝ようとするんだもん」

ハーマイオニー「ふふ……それじゃあお友達も来たみたいだし、私達もお暇しましょうか?」

マミ「ええ、そうね……っていうか、もうこんな時間! 夕飯の買い物に行かないと!」

さやか「あー、恭介にも紹介しようと思ってたんすけど、でも手伝いがあるなら仕方ないっすよね。
     んじゃあ、またどっかで会うことがあれば!」

マミ「ええ、その時はよろしくね?」

504 :>>1 [saga]:2013/03/18(月) 23:41:19.60 ID:Z6/BDJIP0
仁美「はあ、全くお父様ったら、座る席くらい選ばせてくれても……
    お待たせして申し訳ありません、さやかさん、まどかさん」

さやか「いいっていいって! 仁美にも事情があるんだしさ! それに待ってる間も退屈じゃなかったし」

仁美「そうですか? それなら良かったですけど……そういえば、さっき別の方々とお話してましたわね?
    外国の方みたいでしたが、お知り合いですか?」

さやか「いや、さっき知り合いになったばっか」

まどか「マミさんとハーマイオニーさんっていうんだよ。イギリスの学校に通ってるんだって」

仁美「マミ……? それってもしかして、巴マミさんですか?」

さやか「うん、そうだけど――あれ、もしかして仁美の知り合い?」

仁美「いえ、ちょっとした事情があって、こちらが一方的に知っているだけです」

さやか「えー、気になるなぁ。教えてよ」

仁美「……あまり、気分のいい話ではありませんので」

さやか「え? それってどういう――」

まどか「ま、まあまあ! それよりほら、みんなで上条君に会いに行くんでしょ?」

仁美「あ、ごめんなさい。そのことなのですけど、批評のようなものがあって少し時間がかかると。
    終わったら、私の携帯に連絡がくるそうです」

さやか「マジですかー……それじゃあ、明日何して遊ぶか考えよう!」

まどか「もう! さやかちゃんったら遊ぶことばっかり! もうすぐ夏休みなんだから、いくらでも遊べるよ」

さやか「夏休みは宿題があるじゃんか! さっきのマミさんも宿題大変って言ってたし!
     まどかはあたしがイギリスに留学したらどうするつもり!?」

まどか「そんなの、とっても寂しいよ……」

さやか「まどかー!」ダキッ

まどか「もう、さやかちゃんったら……ちなみに、ねえ仁美ちゃん。
     さやかちゃんがイギリスに留学するような事態を心配する気持ち、なんていうんだっけ?」

仁美「杞憂、と申しますわ。昔の中国の国名である杞という字に、憂いと書きますの」

さやか「おお、字的に凄く心配されてる感が! そうだよね、あたしがイギリスに留学とか、凄い杞憂だよね!」

まどか(かわいい)

仁美(ぞくぞくしますわ)
505 :>>1 [saga]:2013/03/18(月) 23:42:52.51 ID:Z6/BDJIP0
さやか「いやー、でもさ。やっぱり留学はいいや。こっちの友達に会えなくなるもん。
     マミさんも、こっちに帰ってこれるのはこの二ヶ月だけって言ってたし」

まどか「そうだね……でも、向こうで友達を作れたら楽しそうだけど」

さやか「確かにねー。っていうか、マミさんって凄いグローバルな人だな。
     今日はイギリス人、明日は教会のシスターと遊ぶんでしょ? すっげえよほんと」

まどか「別にシスターとは言ってなかったけど……」

仁美「あの、シスターって……?」

さやか「あー、ごめんごめん。さっきマミさんと話してた中で出たんだよ。
     明日、知り合いの教会に遊びに行くって言って――」

仁美「……」

まどか「ひ、仁美ちゃん……?」

さやか「どしたのさ。そんな怖い顔しちゃって」

仁美「……さやかさん。覚えていらっしゃいませんか? 今年の初め、ニュースになった――」

さやか「へ? いや、お正月は特番ばっかみてたし……」

仁美「かなり大きく報道されたので、知らないということはないかと……」

まどか「……あ! も、もしかして……え、でも、そんな」

さやか「え、なんだよー。まどかと仁美ばっかりずるいぞ!」

まどか「ご、ごめんね……で、でもそんなのって……ねえ、仁美ちゃん。そうとは限らないんじゃ……」

仁美「見滝原近辺に、教会は一か所しかありませんわ」

まどか「そんな……」

さやか「あーもー! あたしにも教えろってばー!」

仁美「……さやかさん。とある教会を運営する一家が、無理心中したというニュースを聞いたことは?」

さやか「ああ、あのニュースか。それなら早く――え、待ってよ。ってことは、マミさんが遊びに行こうとしてる家って……」

仁美「……おそらくは」
506 :>>1 [saga]:2013/03/18(月) 23:44:59.12 ID:Z6/BDJIP0
さやか「で、でもさ! それなら家族が止めるでしょ! だってすっごいニュースだったじゃん!
     いやあたしは忘れてたけどさ、でも馬鹿さ加減においてあたしの右に出る者はいないよ!?」

まどか「そ、そうだよね……やっぱり、別の教会なんじゃ」

仁美「……先ほど、私は巴マミさんを一方的に知ってると言いましたが、それには事情がありますの」

さやか「……なにさ」

仁美「……数年前、見滝原で車の玉突き事故が起きました。
    ガソリンに連鎖的に引火したという酷い事故で……ですが一人だけ、その状況から無傷で助かった女の子が」

まどか「もしかして、その女の子が……」

仁美「……ええ。その後、小さいながらに外国の学校へ留学したと聞きいたので覚えていたのです。間違いはないでしょう」

さやか「で、でもさ、それとこれとなんの関係が――」

仁美「さやかさん。私は車の事故で、"一人だけ"助かったと言ったのですわ」

さやか「あ――も、もしかして、その時に家族が?」

まどか「そういえばマミさん、買い物に行くって……お手伝いじゃなかったんだ……」

さやか「う……わ、悪いこと言っちゃったかな」

まどか「知らなかったんだし、仕方ないよ……」

さやか「……」
507 :>>1 [saga]:2013/03/18(月) 23:46:01.30 ID:Z6/BDJIP0

夜 自宅 寝室


ハーマイオニー「ふう! お腹一杯……日本の料理は美味しいのね。それとも、マミの腕がいいのかしら?
          キュゥべえも喜んで食べてたし……」

マミ「ふふ、これでも帰ってる間は毎日自炊してるから、ちょっと自信あるのよ?
   さ、お風呂にも入って歯磨きもしたし、もう寝ましょうか?」

ハーマイオニー「……今更だけど、本当に泊まって良かったの? 迷惑じゃない?」

マミ「全然よ! わざわざイギリスから来てくれたんだし、おもてなしするのは当然だもの。
   ……それに、キュゥべえがいるけど、それでもひとりは寂しいの」

ハーマイオニー「こっちにお友達とかはいないの?」

マミ「ひとりだけ……でも、お手紙書いても返事がないのよねぇ……お土産の賞味期限も気になるし、明日伺うつもりだけど。
   日曜なら、ミサで教会の手伝いをしてる筈だから」

ハーマイオニー「ああ、昼間、サヤカ達との話で話題に出した……サクラだっけ?
          マグルの友達なら電話すればいいし、わざわざ手紙を書くってことは魔法使いなの?」

マミ「ええ、そうよ。そういえば美樹さん達と同じ歳だったかしら? だけど凄く強い魔法使いで、もう働いてるのよ。」

ハーマイオニー「へえ、それは凄いわね……あら? でも未成年の魔法使用は禁じられてる筈……」

マミ「……そういえば、そうね? でもお仕事してるんだし、特別に許可か何かがおりてるんじゃないかしら?」

ハーマイオニー「まあ、違法なことだったら魔法省が対処してる筈だものね……ちなみに、何の仕事をしてるの?」

マミ「佐倉さんは、ゲルゲルムントゾウムシハンターなの」

ハーマイオニー「……え?」

マミ「ゲルゲルムントゾウムシハンター」

ハーマイオニー「……寝ましょうか。マミ、疲れてるみたいだし」

マミ「そう? 確かに、今日はいっぱい歩いたけど……それじゃ、電気消すわね」
















数十分後



マミ「Zzzzz....」

ハーマイオニー「……眠れない。時差ボケね。ちょっと風にでも辺りに行きましょう」ムクリ
508 :>>1 [saga]:2013/03/18(月) 23:47:40.19 ID:Z6/BDJIP0
ベランダ


カラカラ

ハーマイオニー「ふう。流石に夜の風はまだ涼しいわね……マンションの上の階っていうのもあるんでしょうけど」

QB「やあ、ハーマイオニー。君も涼みに来たのかい?」

ハーマイオニー「あら、先客がいたのね。私はちょっと時差ボケでまだ眠くないだけ……」

QB「ああ、そうか。そうすると、明日は何時に向こうに戻るの?」

ハーマイオニー「こっちの時間で朝の6時に戻れば向こうは夜の9時よ。そこで寝なおすつもり。
          キュゥべえはいいの? 明日、遊びに行くんでしょう?」

QB「僕はついて行かないよ。今までも、そのマミの友達と会ったことはないからね」

ハーマイオニー「そうなの? 魔法使いだっていうから、てっきりキュゥべえのことも知ってるかと思ったわ」

QB「……僕としては、あんまりあの子と仲良くなってほしくはないんだけどね」

ハーマイオニー「……珍しいわね。キュゥべえがそういうこと言うなんて。
          なにか理由でもあるの?」

QB「いや……ただマミの友達には君やハリー達の方がいいだろうと思っただけさ」

ハーマイオニー「……そう言ってくれるのは嬉しいけど。
          私もこうして友達の家に泊まるのは初めての経験だし、マミとは友達でいたいと思うわ」


QB「……その言葉を信用していいのなら、ねえ、ハーマイオニー。
  できれば、ずっとマミの友達でいてやってくれないかな」
509 :>>1 [saga]:2013/03/18(月) 23:50:06.76 ID:Z6/BDJIP0

ハーマイオニー「それは、そのつもりだけど……どうしたの、急に?」

QB「……マミの両親のことは知ってるよね?」

ハーマイオニー「ええ、前に聞いたわ……」

QB「あの事故でマミは心に傷を負った。そりゃそうさ。当時、マミはたった11歳の女の子だったんだ。
   僕がペットとしてこの家に来たばかりの頃は酷いものだった。
   昼はまだしも、夜はね。もうどうしようもなかった。僕が傍にいて何か話してないと、ベッドの中にいることもできなかったくらいさ」

ハーマイオニー(そういえば一年生の頃、一人で寝るのが苦手って言ってたっけ……)

QB「これは僕の想像なんだけど、当時、マミの周りには頼れる大人が誰もいなかったんじゃないかな。
   マミがホグワーツに入学するにあたって、戸籍や学校関連の情報を魔法で改竄した。
   これはマミが知らない話だけど、その魔法はマミの戸籍を"マミがそう望むように"改竄したんだ」

ハーマイオニー「マミが、望むように?」

QB「そうだ。おかしいだろう? 普通なら、親族の誰かが親代わりになる筈なのに。
   なにがあったのかは知らないけど、マミにとって信頼できる親族というのは存在しなかったんだ。
   マクゴナガルやフィルチに懐いているのは、そんな時期に優しくしてくれた親族以外の大人だからだろう」

ハーマイオニー「……そういう言い方は、失礼だと思うわ」

QB「ああ、ごめんよ。とにかく、そういうわけでさ。マミには信頼できる人が極端に少ないんだ。
   特に、夏休み中はね。こっちには知り合いもいないから……」

ハーマイオニー「あなたがいるじゃない」

QB「僕はほら、いずれ猫の王国を拓き築くという野望があるからさ。
   きっと、ずっとは友達でいられない」

ハーマイオニー「……」

QB「頼むよ。あの通りの性格だから、傍に誰かがいないと不安なんだ。
   僕がこういうことを思うなんて、それこそ僕自身思ってもみなかったことだけど」

ハーマイオニー「……中に、戻るわ」

QB「……」

ハーマイオニー「あのね、キュゥべえ。そういう話はしないものよ。とくに友達になってくれ、なんて話はね」

QB「……悪かったよ。こういうことに関しては、まだ不得手なんだ」

ハーマイオニー「分かってくれたんならいいわ。だって失礼じゃない?
          それじゃあまるで、私がキュゥべえに言われてマミの友達をやるみたいだもの」

QB「……! じゃ、じゃあ」

ハーマイオニー「だから、言わないの。さ、戻りましょう、キュゥべえ。蚊に刺されちゃうわよ?」

QB「……」ペコリ
510 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/03/18(月) 23:51:03.68 ID:YWX4PHxH0
この世界のキュゥべえは別に宇宙人じゃないからイイヤツなのか?
511 :>>1 [saga]:2013/03/18(月) 23:51:28.22 ID:Z6/BDJIP0

翌日 早朝



マミ「忘れ物はない? お土産もった? ご両親によろしく伝えてね?」

ハーマイオニー「大丈夫よ。もう、マミったら心配性なんだから……
          そういえば来年度のホグズミード、マミはこれるの?」

マミ「許可証の話よね。大丈夫よ。年度末にマクゴナガル先生に相談したんだけど、特別に許可をくれるって。
   楽しみよね! ラベンダーさんに聞いたんだけど、ハニー・デュークスって凄いお菓子屋さんがあるんですって!」

ハーマイオニー「ふふ、それじゃあ来年度は一緒に行きましょう? ハリー達も――友達みんなでね」

マミ「ええ! 絶対にね!」

QB「……」

ハーマイオニー「それじゃあ、またね、マミ。新学期には、フランスのお土産話を期待しててね!」


ゴウッ!


マミ「行っちゃった……ハーマイオニーさん、これからまたフランスに行くんですって。素敵ね……」

QB「マミのことだから、フランス料理にばっかり注目してるんだろうけど……
   たぶんハーマイオニーは、フランスの魔法史に興味があるんだと思うよ」

マミ「わ、私だって、ナポレオンとかは知ってるもの!」

QB「はいはい。それで、ゆっくりしてていいのかい?
   ここから隣町までは距離があるし、ミサって朝早くやるんだろう? その寝癖頭で行く気かい?」

マミ「ふぇ!? ね、寝癖!? なんで教えてくれないのよ!」

QB「いま教えたじゃないか。ハーマイオニーのことを気にしてるんなら、どの道君より早く起きてたんだから無駄だよ」

マミ「うぅー……いいわ。それより早く支度しないと! キュゥべえ、クシ! クシはどこ!?」ドタバタ

QB「昨日、お風呂から出た後ハーマイオニーと一緒に居間で使っただろう?
   テーブルの下にでも落ちてるんじゃないの?」

マミ「あ、あった! あ、そうだお土産……蛙チョコの詰め合わせ! あ、あれ? どこにしまったかしら?
   キュゥべえー! キュゥべえー!」

QB(これだものなぁ……)
512 :>>1 [saga]:2013/03/18(月) 23:52:38.88 ID:Z6/BDJIP0

風見野 教会前


ガチャガチャ

マミ「……おかしいわね。扉が閉まってる……日曜はミサをしてる筈なのに……
   というか、敷地内の草も伸びてるし……引っ越し、とか?」

通行人A「あれー? そこの人、その教会に何か用事?」

通行人B「え、どうしたっすか兄貴」

通行人A「いや、なんかアイツがあの教会に入ろうとしてたから」

通行人B「え、マジっすかー……やめた方がいいっすよ、嬢ちゃん。
      肝試しかなんかの下見っすか?」

マミ「え、あの……え、肝試し?」

通行人B「あれ? 知らないっすか? じゃあなんで入ろうとしてたっすか」

マミ「あの、ここの教会の子と知り合いで」

通行人A「ここの教会の子……? あーするとあれかな、年齢的に杏子ちゃん?」

通行人B「え、兄貴何でそんなん知ってるっすか。ロリコンっすか?」

通行人A「いや、ほら、前に話したろ。なんかつい聞いちまう説法してる神父さんの話」

マミ「あ、あの」

通行人A「あー、ごめんごめん。で、知り合いは杏子ちゃんの方? ……あ、どっちでもいいか。
      なんせ一家四人、全員だもんなぁ」

マミ「あの、一体なんの話で」

通行人A「無理心中したんだよ、そこの一家」
513 :>>1 [saga]:2013/03/18(月) 23:54:17.72 ID:Z6/BDJIP0

通行人B「兄貴、いいんすか? あの子、絶対泣いてましたよ?」

通行人A「別に俺が心配してやる道理もねえだろ。女は甘やかすの禁物だよ。馬鹿ばっかりだし」

通行人B「はあ、まあいいっすけどね、別に……それよりも、兄貴。さっきの兄貴の話、間違ってますよ。
      無理心中したのは三人っす。四人じゃないっすよ」

通行人A「お前こそ情報がおせえんだよ。確かに死体は三人分だったが、血液は四種類あったって話だ」

通行人B「え、なんすかそれ。普通にホラーじゃないっすか」

通行人A「だからお前も肝試し云々言ってたと思ったんだが……まあいいや。ほれ、帰るぞ。講義あるし」

通行人B「卒業したら何になるっすかねえ。兄貴はホストとか向いてるかもしれませんけど」

通行人A「なんで大学出てまでホストに……」


サアアアアアア……


通行人A「あ? なんだ、これ? 景色が……」

通行人B「兄貴、なんか変っすよ! ほら、あっちに変な人形みたいな奴が!」

使い魔「Sie sind sehr dumm!」


514 :>>1 [saga]:2013/03/18(月) 23:55:13.47 ID:Z6/BDJIP0

マミ(嘘だ)


『また、一年後に会いましょう? 今度はお土産も買ってくるわ!』


マミ(だって、約束したじゃない)


『ああ、楽しみにしてるよ。それじゃあまた――来年な』


マミ(見滝原でできた、初めてのお友達だったのに――)



マミ「う……うぅ……ううううううう」

 気づいた時には、地面に座り込んで泣いていた。

 早朝ということもあって、人通りはない。だから、人目を憚らず泣いてしまえた。

マミ(佐倉さん……なんで)

 おじさんとおばさんはとても優しくて、モモちゃんは素直で可愛くて、そして佐倉さんは明るくいつも元気いっぱいで。

 教会の手伝いで遊ぶ暇はさほどなかったが、それでも、あの時間は私にとってかけがえのないものだったのに。

 ――そんな時間は、もう二度と戻ってこない。あの時と、同じように。

マミ「嫌だ……嫌よ……もう、そんなの……」

 こんな時、隣に誰もいないのが、酷く悲しくなる――

まどか「あー! いた! いたよ、さやかちゃん!」

さやか「本当だ! てかあれ泣いてない!? おーいマミさーん!」

マミ「……え? あ、れ、美樹さんに、鹿目さん? なんで、ここに……」

さやか「後でいくらでも説明しますから、ほら、立って! こんなとこで座り込んでちゃ不味いですって!」

まどか「マミさん、大丈夫ですか? ハンカチ使います?」

マミ「う、うん……ぐすっ、ありが、とう」
515 :>>1 [saga]:2013/03/18(月) 23:56:44.53 ID:Z6/BDJIP0

数時間後


マミ「……落ち着いたわ。恥ずかしいなぁ……一応、先輩なのに……駄目な子ね、私。
   それで、その……なんで、二人がここに?」

さやか「あーそのー……まあ、なんて言いますか。偶然、通りかかっただけというか……って通りませんよね」

マミ「さすがに、無理があるわよ」クスッ

まどか「あの、その様子だと、もうあの教会のことは……」

マミ「……ええ。知ってるわ。そうか、ニュースにもなったんだろうし、あなた達も知ってるわよね」

まどか「ごめんなさい! 私達、思い出したのマミさんと別れた後で……
     連絡先も知らなかったから、その、伝えることもできなくて……」

マミ「いえ、いいのよ。というか、昨日会ったばかりだもの……ここまで心配してくれるなんて、思ってなかったわ」

さやか「いやー発案者はまどかなんですけどね? マミさんとどうしても会いたいっていうもんだから」

まどか「さ、さやかちゃんだって反対しなかったじゃない」

さやか「"私……せめて近くに居てあげたい! 私にだって、それくらいできるもん!"」

まどか「わあああああああっー! さやかちゃんのアンパンマン! なんですぐそういうこと言っちゃうの!」

マミ「……ふ、ふふっ」

まどか「あ、ごめんなさいっ! うるさかったですか?」

さやか「うるさかったのはまどかだけどね」

まどか「も、もう! さやかちゃんは黙ってて!」

マミ「ううん、違うの。ただ、あなた達を見てたらおかしくって」

さやか「ほら、まどか。言われてるぞ」

まどか「マミさんはさやかちゃんの顔を見ていったんだよ?」

マミ「そういうところがね……ふふっ、ありがとう、二人とも」
516 :>>1 [saga]:2013/03/18(月) 23:57:13.00 ID:Z6/BDJIP0

まどか「あ、あのっ。今日は午後から、仁美ちゃんと一緒に遊ぶんです。
     その、よければマミさんも――」

マミ「……ごめんなさい。さすがに、今日はね」

まどか「あ、そ、そうですよね……すみません」

マミ「ううん。本当に、ありがとう。こんな、わざわざ探してくれまでして……とっても、嬉しかった。
   ……そうだ。はい、これ」

まどか「え、これ……?」

さやか「電話番号ですか? マミさん家の」

マミ「せっかく、こうして会えたんですもの……その、もうすぐそっちも夏休みでしょう?
   だからその、もしよければ、一緒に遊んだりできればなんて……」

まどか「……マミさん」

さやか「……」

マミ「あ、あの……ごめんなさい。図々しかったわよね。こんな、心配までして貰ったのに……」

さやか「……くっはー! なんだこれ! 妖精かなんかか!」ガバッ

マミ「きゃあ! ちょ、ちょっと、美樹さん!?」

さやか「いいっすよぉ! 全然ウェルカム! 夏休みは宿題とか忘れて遊びまくりましょうね!」

まどか「さ、さやかちゃん恥ずかしい。ほら離れて、離れてってば……!」
517 :>>1 [saga]:2013/03/18(月) 23:58:24.04 ID:Z6/BDJIP0
本日の投下は終了。駄目だ眠い死ぬ。
次回はたぶんアズカバン編に入ります。
518 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/03/19(火) 00:01:05.68 ID:ec6XFZfco

やっぱあの警告はそういう意味だったのかね
519 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/03/19(火) 00:24:26.41 ID:ATxGyjZ8O
おつ
520 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/03/19(火) 01:08:27.66 ID:m6ncO+ZCo
乙!
このQB絶対感情芽生えてるだろ……
宇宙の超技術の結晶だけど、魔法界で魔翌力に触れてたらなんか影響受けそうだし
>>518
『今すぐ見滝原へ帰れ。友達を失いたくなければ』
これは杏子の事で、QBがこっそり仕込んだとか?
というかあの一連のメッセージのネタバラシまだされてなかったよね
521 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/03/19(火) 01:16:11.28 ID:gwi4jTiho
>>520
151で、それらしいこと書いてあるだろ
感情がある&ネットワークから追放済み、じゃないの?
522 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/03/19(火) 01:35:40.18 ID:m6ncO+ZCo
前過ぎてすっかり忘れてたわ……
異種のエネルギーに晒されたから、ってやっぱり魔法界の魔翌力はインキュベーターに影響を与えてたのか
しかしメッセージの真偽はまだ不明だよね、当時QB石になってたし
523 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/03/19(火) 20:51:39.40 ID:sm4VDNVu0

べえさんがいい感じに保護者してて
まどさやがいい子で
マミさんとハー子さんがかわいかった!!

メッセージについては、手口からして容疑者の心当たりはあるのだが……
ま、楽しみに続きを待つとしようではありませんか
524 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/03/20(水) 23:56:04.24 ID:65Kdqb6/O


        も
        う
...       魔
...       女                           連  杏
...       化                           れ  子
−-.     し          , -'"  ̄ ` 丶、  /      て  ち
─--.   て         /         \|      き  ゃ
        る        /            |      て  ん
───  け       i   _ _     _ _   ヽ_    や
 ̄ ̄   ど      .| /二`     "二ヽ、 |  〉.    っ
       な  .   _|  _,ィiュミ   r_,ィiュミ  レ-|.    た
二二二  !      ヾ!   - ' r  `ヽ  ̄´  | ∧.   ぜ
──  ___      ゛!  〃  ^ ^  ヽ   l-/  〉
  ま             i   { ='"三二T冫  /´_ノ/\__
  さ  二ニ    _,ィヘ  ヽ ヾ== 彳   /:::/`ー- 、
  に     _, ィ´:::::/ l\ ト、 ー一 / /::/      \
  外     /  |::::::::: ̄ ̄ ̄::`ー=彳_∠ _      ヽ
  道   /   |::::::::::::::::::::::::::::(‥):::〈_      \       l
     r'"`丶、 |:::::::::/:::/::::´:::::::::::::::::(_      ト、      |
  / / `ー 、 \|::::/:::::/:::::::::::::::::::::::::::(_      \    \
525 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/03/22(金) 20:23:40.62 ID:iL10UV1Xo
面白い
526 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/03/22(金) 21:58:39.18 ID:i7GAVi6D0
今映画やっとるぞ
527 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/03/22(金) 22:28:21.95 ID:HbTo+tjAO
>>526
なんかあっちこっちカットされてるな…
元々長い映画だったから仕方ないか…
528 :>>1 [saga]:2013/03/24(日) 00:29:32.08 ID:sFGo1elk0
昔遊戯王に『密林の黒竜王』ってカードがあったんですが、そのフレーバーテキストに
密林に住んでて木をバリバリ食べるってあって「怖ー」とか思ってたんですが、よく考えたらこいつ草食です。

投下します
529 :>>1 [saga]:2013/03/24(日) 00:30:43.91 ID:sFGo1elk0

 それから、鹿目さん達の学校も夏休みに入って。


さやか「ほら、まどか、マミさーん。こっち、こっちですよー!」ダーッ

まどか「さ、さやかちゃん! プールサイドは走っちゃ駄目だってばぁ!
     ま、マミさん、さやかちゃんを止めないと……」

マミ「ふふ、全く。美樹さんったらはしゃいじゃって……そうね、行きましょう鹿目さん」


 彼女たちは、本当に良い子でした。


まどか「――美味しいです! これ、本当に手作りなんですか!?」

さやか「めちゃウマっすよー! スポンジがしっとりしていて、その、あれです……ダイヤモンド!」

マミ「だ、ダイヤモンド? その、無理にグルメリポーターみたいなこと言おうとしなくてもいいのよ、美樹さん」


 美樹さんは、落ち込む私を家から引っ張り出してくれて。

 鹿目さんは、そんな暴走気味の美樹さんを嗜めながら、私の手を優しく引いてくれて。

 知り合って間もない私を、彼女たちは心の底から気遣ってくれました。

 彼女たちと一緒に過ごす内、私は、段々と屈託なく笑えるようになっていき――

530 :>>1 [saga]:2013/03/24(日) 00:31:23.43 ID:sFGo1elk0

 だけど。


マミ「……」

QB「……マミ、またかい? もう一ヶ月も前のことだろうに」

マミ「まだ、たった一ヶ月よ……」ガサッ

QB「古新聞をいくつも掻き集めたところで、どうしようもないだろう。事実が変わることはないよ。
   君の知り合いだった一家の末路は、それに書いてある筈だ」

マミ「……だって、信じられない……また、来年、会おうね、って、ひっく、約束、してたのにぃ……」

QB「……」

QB(だから嫌だったんだ。遅かれ早かれ、こういう結果になることは分かっていた。
   魔法少女の"寿命"は短い。ずっと友達でいることなんて、できやしない)

マミ「……佐倉、さん……」

QB(……でも、僕も同罪かな。楽しそうに友達の家へ遊びに行くマミを、止めることができなかった。
   ――止めるべきだったんだ。なんで僕は止めなかった?)

QB「……マミ。何にしても、もう寝ないと。明日から新学期だろう?
   酷い顔でいったら、ハーマイオニーが心配するよ」

マミ「……分かった。おやすみなさい、キュゥべえ」

QB「……お休み、マミ」

QB(……虚勢を張れる程度には、回復したかな。新しくできたっていう友達のおかげだね。
   学校に行きさえすれば、過去のことを考えている暇もそうないだろう)

QB(……そのまま、忘れてくれればいいのだけど)
531 :>>1 [saga]:2013/03/24(日) 00:32:07.51 ID:sFGo1elk0

◇◇◇


 例えば、ある世界において。

 新米の魔法少女が、あるベテランの魔法少女に弟子入りを志願した。

 その新米には才能があり、また努力を怠らないひたむきさもあり、やがては師を超えるほどに成長した。


 IF。もしも。或いは。可能性として。


 その新米が、ベテランに弟子入りをしなかったらどうなるのだろうか。

 もしかしたら、あっけなく死んでいたかもしれない。

 或いは意外と長生きをして、やはり強力な魔法少女になるのかもしれない。

 師に従事しない方が彼女にとってプラスとなり、理不尽なシステムを破戒するほどの力を持つ可能性もあるだろう。

 ――いまとなっては全く意味のない、蛇足のような話ではあるが。 


◇◇◇
532 :>>1 [saga]:2013/03/24(日) 00:33:10.38 ID:sFGo1elk0

9/1 ホグワーツ特急 最後尾車両


マミ「一番乗り、っと」

QB「相変わらず、物凄い速さで乗り込むね君は。おまけに並ぶ人の少ないホーム端の最後尾車両って……
   ねえ、マミはその労力の対価に何を得ているの?」

マミ「何よ、別にいいでしょ。誰に迷惑を掛けるわけでもないし――」


ガラッ


???「Zzzzzzz....」

マミ「あ、ら? 変ね、ドアが開いた瞬間乗り込んだのに――もう先に人がいるわ。しかも大人の人よ、キュゥべえ」

QB「へえ。この列車に大人が乗ってるのは初めて見るね。新しく来る先生とかかな?」

マミ「ああ、防衛術の……でも大丈夫かしら? なんだか、酷く顔色が悪いようだけど……」

QB「歳の割に白髪混じりだし栄養状態も悪そうだね。でも正式に採用されたんだとしたら問題ないんじゃないかな。
   相応の力が無ければ教師になんて――そう簡単に――なれるものじゃ――……」

マミ「……なんでそこで言いよどむの?」

QB「いや、君に言っても無駄だし、やめておこう。それよりほら、早く座りなよ」

マミ「ううん。別のコンパートメントに移るわ。折角寝ているのを邪魔しちゃ悪いし――」

QB「本音は?」

マミ「……さすがに、その。知らない先生と二人きりっていうのは気まずいわよ」

QB「まあいいけどさ。でも、それなら早くした方がいいと思うよ。
   ホグワーツ特急って、あんまり席に余裕が――」


ざわざわざわ

「いえーいこのコンパートメント俺らが取ったー!」

「じゃあ私達はここ! ほらおいでよチョウ!」

「ああくそっ、もう一杯か……仕方ない先頭車両だ! ついてこい花火の中へ突っ込むぞ!」

                ざわざわざわ


マミ「……」

QB「……いまからどこかの席に入れて貰うかい?」

マミ「り、理不尽よ……理不尽だわ……」グスグス
533 :>>1 [saga]:2013/03/24(日) 00:33:55.67 ID:sFGo1elk0

ガラガラ


ハリー「あー駄目だ。どこもかしこもいっぱいだよ……もう最後尾じゃないか」

ロン「ここが駄目だったら分かれて座るしかないね。
   よかったなぁ、スキャバーズ。そしたらお前を付け狙うあの凶悪な猫とおさらば出来るぞ」

ハーマイオニー「なによ、クルックシャンクスはきっとスキャバーズと仲良くなりたいと思ってるわ。
          ねぇ、クルックシャンクス? 一緒に遊びたいのよねぇ?」

籠「フシャー! フシャー!」ガタガタ

ハーマイオニー「ほら"ボク、仲良くしたい! 早く出して!"って言ってるわ!」

ロン「どうかな。僕には"俺様は腹が減った。早く食わせろ!"って言ってるように聞こえるけど」

ハリー「まあまあ、二人ともその辺で――あれ、あそこで突っ立ってるのマミじゃないか」

ハーマイオニー「あら、本当だわ。どうしたのかしら、コンパートメントの前で……」

ロン「ちょうどいいや。あそこに入れて貰おう。おーい、マミ」

マミ「ああ、みんな! 良かったわ! 一緒にここに座らない?」

ハリー「いいの? ありがとう――って、あれ? 先客がいる。誰だろう、この人」

ハーマイオニー「ルーピン先生でしょ」

ロン「……ハーマイオニー、君って奴はとうとう本を読みつくしちまって、戸籍謄本とかにまで手を伸ばしたのかい?」

ハーマイオニー「違うわよ! 鞄に名前が書いてあるの。ほら、R・J・ルーピンって」

マミ「きっと新しい防衛術の先生よね、ってキュゥべえと話してたとこなの」

ロン「ふぅん……防衛術の先生ねえ。一昨年といい去年といい、呪われてるみたいに長くもたないけど。
   まあいいや。空いてるのここだけだし、さっさと荷物入れちゃおうか」
534 :>>1 [saga]:2013/03/24(日) 00:35:24.70 ID:sFGo1elk0

コンパートメント内


マミ「……シリウス・ブラック? 例のあの人の右腕だった闇の魔法使い? ひとつの呪文で十三人も殺した!?
   そんな危ない人が、ハリーくんを狙ってるの?」

ハリー「そうらしい。おじさん――ロンのパパに忠告されたんだ。気をつけろ、あと絶対に探したりするなって」

マミ「そんな人が脱獄したってことも知らなかったわ……」

ハーマイオニー「イギリスでは、マグルのニュースにも流れたのだけどね。マミ、日刊預言者新聞を定期購読したどうかしら?
          私は読んでるんだけど、すっごく為になるわよ」

ロン「そんな悪魔みたいな誘いはあとにしろよ。にしても、ブラックを探す? 有り得ないね。
   だってそんなの、自殺しに行くようなもんじゃないか。あのアズカバンから脱獄したんだぜ?」

ハリー「そうだよね。なんでおじさんはわざわざそんなことを……」

ハーマイオニー「きっと、心配なのよ。なんだかんだ言って、ハリーの周りはトラブル塗れだもの。
          さあクルックシャンクス、いまお外に出してあげますからねー?」シュルシュル

ロン「おいなに脈絡なく猫の入った籠のヒモ解こうとしてるんだ。やめろ!」ガシッ

ハーマイオニー「あ、ちょっと何するのよ!」

ロン「僕のネズミを助けようとしてるんだよ!」

マミ「あの、この二人どうかしたの?」

ハリー「うーん。ハーマイオニーが新しくペットを買ったんだけどさ……」

ハーマイオニー「そうだわ! マミにも見せようと思ってたの。私、猫を買ったのよ!
          待っててね、いま見せてあげるから……!」グググ

ロン「絶対に、出させるもんかぁ……!」グググ!

ハリー「ハーマイオニーの猫が、ロンのネズミを襲ってさ。で、それ以来こんな感じ」

ハーマイオニー「襲ったんじゃないったら! ちょっとはしゃいじゃっただけよ!」

ロン「ああ大はしゃぎだったさ。僕の頭の上で爪を立てながらタップダンスを踊ってくれたしね。
   見てよマミ、ここカサブタになってるだろ?」

マミ「うぇ? えーと……ああそうだ! 私、蛙チョコレート持ってるの。みんなで食べない?」ガサゴソ

ハリー(誤魔化した)
535 :>>1 [saga]:2013/03/24(日) 00:36:13.67 ID:sFGo1elk0

ロン「わーお。詰め合わせじゃないか。どうしたの、これ?」

マミ「……ん。ちょっとね。友達へのお土産だったんだけど、渡し損ねちゃって」

ハーマイオニー「貰っちゃっていいの?」

マミ「いいのよ。さすがに、来年まではとっておけないし……そういえばこれ、賞味期限とか大丈夫かしら?
   どこにも書いてないけど」

ロン「貸して……あー、平気平気。まだ元気にぴょんぴょん跳ねてるから」

マミ「そういう判別の仕方なの? ……じゃ、どうぞ召し上がれ」

ロン「あ、中に入ってるカード集めてる人いる? いなかったら僕に頂戴」

ハリー「懐かしいなぁ、最初のホグワーツ特急でもこれ買ったっけ……」

QB「僕にもひとつおくれよ」

ハーマイオニー「あら。駄目よ、キュゥべえ。猫がチョコレート食べたら死んじゃうわ」

QB「平気だよ。僕はただの猫じゃないから」

ロン「まあ喋るしな。別にチョコくらい平気だろ。ほら、キュゥべえ。
   ついでにスキャバーズにもやってみよう。おい、スキャバーズ。チョコ食うか?」

スキャバーズ「チチッ」カリカリ

マミ「ふうん。これがロンくんのネズミね……」

ロン「あれ? 見せたことなかったっけ? スキャバーズさ。
   ほんとはもっとぷくぷくしてたんだけど、エジプトに行ってから弱っちゃってて」

マミ「本当、可哀想に……ああ、指も一本欠けちゃってる。どうしたの、これ?」

ロン「分かんない。パーシーから貰った時にはもう無かった……っと、うぇー。カサンドラだ。僕この人のカードは山ほど持ってるんだけど」

ハーマイオニー「あら、それって占い学の教科書を著した人じゃない。とっても強力な予見者だったって――」

ロン「はいはい御高説どうも。で、教科書といえば怪物本、ありゃなんだろうね?」

ハーマイオニー「それに関しては、珍しくあなたと同意見ね」

マミ「怪物本? なにそれ?」

ハリー「ああ、マミは魔法生物飼育学を取ってないんだ」

マミ「ええ、私がとったのはマグル学と数占いだから……私、あんまり実技が得意じゃないし」

ハリー「まあ確かに、教材の魔法生物をいつぞやのトロールみたいにしちゃったら大惨事だしね」

ハーマイオニー「トロール!? どこ!?」ビクゥッ

QB「あ、まだあの時のトラウマが癒えてなかったんだ……」

ロン「っていうか、マミはマグルの出だろ? ハーマイオニーといい君といい、なんでマグル学をとるのさ」

ハーマイオニー「あら、魔法使い側からの視点でマグルの文化を見るのってとっても楽しいと思うわ。ねえ、マミ?」

マミ「え、ええ、そうね」

QB「え? マミは確か、"マグル学なら大して勉強しなくても点が取れるんじゃないかしら"って――」

マミ「えいやっ」ギュッ

QB「きゅっ!?」

マミ「も、もうキュゥべえったら、どうしたのかしらね――それで、怪物本って?」
536 :>>1 [saga]:2013/03/24(日) 00:37:46.62 ID:sFGo1elk0

ハリー「ああ、これだよ。教科書なんだ。はい」

マミ「"怪物的な怪物の本"? ベルトでぐるぐる巻きになってる以外は、普通の本に見えるけど」

QB「どの辺が怪物的なんだろう?」

ハリー「気を付けて。あと絶対ベルトは外しちゃ――」

マミ「ふぇっ?」シュルッ

怪物本「がー!」ピョン!


ガブッ


QB「きゅぴゅ!?」ジタバタ

マミ「きゅ、キュゥべえ! ちょ、こら、離しなさい! キュゥべえの頭を噛まないで!」グイッ

怪物本「がー! がー!」モグモグ

QB「いやぁあああ! 飲まれてる! 飲み込まれてる! え、なにこれ! どこに飲み込まれてるの僕!?」

ハリー「言わんこっちゃない! ロン、引きはがすから手を貸してくれ!」

537 :>>1 [saga]:2013/03/24(日) 00:39:06.39 ID:sFGo1elk0

QB「い、嫌だ。もう嫌だ。トレバーといい、魔法界のものは僕を捕食しようとしてくる」ガタガタ

マミ「ああ、キュゥべえにトラウマが……」

ロン「でも収穫もあったな。この怪物本、みんなで袋叩きにして上下関係を叩き込むと大人しくなるんだ」

ハリー「あとでみんなにも教えてあげよう。っと、ダンブルドアのカードだ。ロン、いる?」

ロン「貰っておく。誰かと交換できるかもしれない……」

ハーマイオニー「吟遊詩人ビードルですって。なんかキラキラ光ってて綺麗……これ、私が貰ってもいい?」

ロン「ビードル? 見せて……これ旧版じゃないか! 七枚しか刷られなかったっていう超レアカード……
    ぐっ、でも、カードは、開けた人のもの、だから……いいよ、もってけよ」

ハーマイオニー「あの、そんな噛みしめた唇から血が出るほど悔しそうにしなくても……いい、あげるわ。
          別にコレクションしてるわけじゃないし」

ロン「ほんと!? うわぁ、一生大切にするよ!」

マミ「私も開けてみましょう……って、あら? これもレアカード?」

ロン「見せて! ……ん、なんだこりゃ。印刷ミスかな?」

ハリー「真っ白な背景に、字だけ書いてある……"逃げる時に自分で切り落とした"? どういうこと?」

ハーマイオニー「カードの説明文だけ載っちゃったんじゃないかしら? 珍しいカードじゃなくて残念ね、ロン」

ロン「いや、これはこれで珍しいし――お菓子屋さんに行けば交換してもらえるかも。ハニーデュークスとか」

マミ「ハニーデュークス! 昔ラベンダーさんから聞いたわ。ホグズミードのお菓子屋さんよね?」

ロン「そうとも。ホグズミードの価値の半分はあそこに集約されてると思うね。ああ、楽しみだなぁ」

ハーマイオニー「お菓子のほかにもあるでしょ? イギリスで一番怖い"叫びの屋敷"とか――」

マミ「いろいろ見る場所がありそうね……ね、ハリーくん」

ハリー「ああ、うん。そうだね……できればお土産を買ってきてよ」

ロン「は? なに言ってんだ、ハリーも行くだろう?」

ハリー「バーノンおじさんがね、許可証にサインをくれなかったんだ。ほら、マージおばさんを膨らませちゃったから……」

ロン「うぇー。本当かい? そりゃ酷いな――もちろん、サインをくれなかったことがだけどね」

ハーマイオニー「そう、残念だわ……」
538 :>>1 [saga]:2013/03/24(日) 00:41:16.45 ID:sFGo1elk0

マミ「……あ! そうだ、ハリーくん! マクゴナガル先生に頼んだらどうかしら?」

ハリー「マクゴナガル先生に?」

ロン「おいおい、正気かい? あの厳しいマクゴナガル先生が特別扱いなんてしてくれるもんか。
   まだフレッド達に抜け道を聞く方が可能性はあるよ」

マミ「大丈夫よ。あのね、前年度の最後にマクゴナガル先生とお話ししたの。
   私、いま一人暮らしだから、誰にサインを貰えばいいでしょうか、って。
   そしたらね、サインをしてくれるって。きっと、一緒に行けばハリーくんの分も貰えるわ!」

ロン「マジかよ! 良かったな、ハリー! これで一緒にホグズミードに行けるぞ!」

ハリー「本当? ありがとう、マミ!」

ハーマイオニー「マクゴナガル先生がサインをくれるのなら、無事解決ね。良かったわ。
          ……ね、クルックシャンクス? ほら、ばんざーいして? ばんざーいって」

クルシャン「にゃー」ノビーン

ロン「……ああああ! そいつを出すなって言っただろ!? しまえ!」

クルシャン「ふぎゃーお!」バッ

ロン「わっ! こいつ、またスキャバーズを! 離れろ!」ブンブン

ハーマイオニー「やめて、ロン! いまのはあなたが悪いわ! 大声出すからびっくりしちゃったのよ!」


どったんばったん


マミ「あれがハーマイオニーさんの猫……え、えーと。オレンジ色の毛がふわふわしてて素敵ね?」

ハリー(そこしか褒めるとこが無かったんだね)

QB(潰れた饅頭みたいな顔に、ガニマタだもんねぇ)

クルシャン「ふぎゃ?」ジーッ

QB「ん? なんだい、僕の方をじっとみて……」

クルシャン「……ふしゃあああああ!」バッ

QB「わ、わあああああああ! こっちきたああああ! 食べられる!」ダッ

マミ「ちょっと、キュゥべえ! ……ああ、コンパートメントの外に行っちゃった」

ハーマイオニー「ふふ、同じ猫の友達ができて、嬉しくなっちゃのね」

ロン「なんだい、あの猫は共食いまでするのかい? まあとにかく、キュゥべえには悪いけど助かった……」
539 :>>1 [saga]:2013/03/24(日) 00:42:05.97 ID:sFGo1elk0

ガラッ


ドラコ「おいこら誰だ! この躾の悪い猫を放し飼いにしてる馬鹿は!? こいつ、僕の顔を引っ掻きやがったんだぞ!」

クルシャン「にゃー」ダラーン

ハリー「えらいぞ、よくやったクルックシャンクス」

ロン「お、なんだ。どんな奴にもひとつくらいは取り得があるもんだな」

QB「マミぃ! 怖かった! 怖かったよぅ! あいつ、僕の尻尾の付け根を執拗に狙ってきたんだ!」ダキッ

マミ「ああ、こんなに怯えちゃって……良かったわね、マルフォイくんが助けてくれて」

ドラコ「はっ、なんだ。誰かと思えばポッターと、その腰巾着ズじゃないか。
    お前らの猫か? はん、ぶっさいくな猫だねぇ。ウィーズリー、君のかい? 安物そうだし――」

ハーマイオニー「それ、私の猫だけど」

ドラコ「ひぃっ、グレンジャー!? い、いたのか……く、くそ。ビビるな僕……マルフォイ家に後退は許されない。
    こういう時は、手のひらに純血、純血、純血……ごくん。ふう、落ち着いた」

ロン「なんだそのおまじない。どう見ても魔法使いが頼るものじゃないけど」

ドラコ「ふんっ、魔法使いの面汚しのウィーズリーには分からないだろうな。
    これは父上から教えて頂いた、由緒ある精神統一法なのだ。参ったか!」

ロン「参ったよ。心の底から」

ドラコ「なんだ、馬鹿に物わかりがいいな。さあ、今日こそ決着をつけてやるぞグレンジャー。
    なんでか知らないけど、去年の後半くらいからお前を見ると動悸・息切れ・眩暈がするんだ。それを払拭して――」


バチン!


ドラコ「わ、わあああああ! 急に真っ暗に! ひ、卑怯だぞグレンジャー! まずはお辞儀をしろよ!
    畜生、ここは引いてやる! 行くぞ、ゴイル、クラッブ――あれ、ゴイル、クラッブ!? ぼ、僕を置いていくな!」

ハリー「あーあ。マルフォイ避け呪文も流石に一年経つと効果切れかぁ……」

ロン「まあ、人生そんなにいいことばっかりじゃないさ。
   それよりハーマイオニー。何も僕たちの視界まで真っ暗にするこたないだろ?」

ハーマイオニー「私、何もしてないわ。というか、私の視界も真っ暗だもの。ただ明かりが消えただけでしょ」

マミ「……ねえ、汽車が止まってるわ。音が聞こえない……」

QB「故障かな? ――あれ? ねえ、窓から外を見てご覧よ。前の方の車両に誰かが乗り込んでる」

ハリー「遅刻した子が乗ってきたとか?」

ロン「おいおい、そいつ一人のために特急を止めるかふつー?」

ハーマイオニー「私、一番前まで行って理由を聞いてくるわ――」

???「……いや、動かない方がいいな。ルーモス(光よ)」
540 :>>1 [saga]:2013/03/24(日) 00:42:41.90 ID:sFGo1elk0

ぱあぁぁぁぁ……


ルーピン「やれやれ、気持ちよく寝てたというのに」

ハリー「あの、えーと、ルーピン先生? これは一体――?」

ルーピン「おや、なぜ私の名前を? まさか顔を覚えて――いや、ああ。鞄を見たのかな?」

ハーマイオニー「はい、そうです――すみません。起こしてしまいましたか?」

ルーピン「いやでも起きるさ。奴らが同じ乗り物の中にいれば……」

ハリー「奴ら? 奴らっていったい――?」

 
 そして、その時。暗闇の中で、コンパートメントの扉がゆっくりと開いた。

 そこには人影があった。少なくとも、人に似た形をした影が。

 魔法の明かりに照らされてなお、それは影であり、陰であった。たとえ陽の光の下でさえ消えることはないだろう。

 黒い頭巾に覆われた頭部と思わしき器官からは、名状しがたい呼吸音のようなものが響いている。


マミ「な、んですか、これ……っ」

ルーピン「吸魂鬼(ディメンター)。アズカバンの看守だ」

吸魂鬼「こぉおおおおおおおおお……」

ロン「なんだこれ、寒い……」

ハーマイオニー「気持ちが、変に……ああ、なにこれ……」

ハリー「……」

マミ「――……」

マミ(あれ――なんだろう。意識、が……)
541 :>>1 [saga]:2013/03/24(日) 00:43:17.71 ID:sFGo1elk0
◇◇◇



 ――夢を見た。酷く、昔の夢だった。

 今よりもだいぶ小さな体躯の自分が、アスファルトの上に座り込んでいる。

 周囲には鉄くずが散乱していた。周囲は炎に撒かれていた。

 紅の照り返しが視界を染める中、それでも、視界にはっきりとした白色の物体が浮かんでいた。

 これは――猫、だろうか?

 鉄くずの上に腰を下ろしたその白い猫は、しきりにこちらに向かって話しかけているようだった。

白猫「――、――」

マミ(なに? 何を言ってるの――聞こえないわ)

 とても、声が遠い。あまりにも掠れていて、聞き取れない。

 仕方なく、じっと白猫の顔を見つめた。白い体毛に、紅玉のような目玉。

 ――その姿に見覚えがあるという事実を思い出す前に、意識は戻った。



◇◇◇
542 :>>1 [saga]:2013/03/24(日) 00:43:50.57 ID:sFGo1elk0

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マミ「う、ううん? あれ、猫は……?」

ハーマイオニー「マミ! 良かった、気づいたのね……猫? キュゥべえのこと? 聞こえてたの?」

マミ「え、と。分からない、私、どうしちゃったの……?」

ハーマイオニー「気を失っちゃってたのよ……あなたと、それにハリーも」

マミ「ハリーくんも?」

ハーマイオニー「ええ。いまそっちでロンが介抱してるわ……ああ、起きたみたい」

ハリー「……っ、何が起きたの? 叫んだだろう、誰か」

ロン「ああ……たぶんそりゃ、キュゥべえだよ。大丈夫かい、ハリー?」

マミ「キュゥべえ? キュゥべえが、どうしたの?」

ロン「君の猫は酷くうなされてたんだ。"取らないでくれ! 取らないでくれ!"って。うん、凄かった。物凄い鬼気迫る感じで」

マミ「そんな……キュゥべえ、大丈夫なの!? ――ぅ、ぁ」フラッ

ハーマイオニー「ああ、無理して起きちゃ駄目よ! ……キュゥべえなら、ほら。ここにいるわ。立てる、キュゥべえ?」

QB「……安静にしてなきゃ駄目だよ、マミ」ピョイッ

マミ「ああ、キュゥべえ……良かった、無事みたいね……」

QB「……取らないでくれ。僕はそう言ったのかい、ロン?」

ロン「うん? ああ、確かにそう聞こえたけど」

QB「そうか……そうなのか……」ブツブツ

ハリー「なんなんだ――結局、あれはなんだったんだ」

ルーピン「さっき言った通り、吸魂鬼さ。そこに居るだけで人に害を及ぼす生き物。友達には選びたくない連中だよ……」パキッ

ハリー「! 先生、あれは――僕、一体……」

ルーピン「話はあとだ。ほら、チョコレートをお食べ。吸魂鬼の後遺症には、これが一番の特効薬だ。
      私は少しここを離れるから、その間に食べておくんだよ」


ガラッ ピシャッ


ハリー「ねえ、あの後、何があったの? 気絶したのは僕とマミだけ?」

ハーマイオニー「ええ……二人とも、急に倒れて、痙攣し始めて……」

ロン「あれは――吸魂鬼はルーピン先生が追い払った。なんかの呪文を使ったみたい」

ハリー「そうか……ねえ、マミ。気絶してる時、何か叫び声を聞いた?」

マミ「……ううん。私、夢を見ていたみたい。変な夢だったわ……」

ハリー「そうか……なんで僕とマミだけ……?」

ロン「君らだけじゃないかもしれないぜ。他のコンパートメントでは、意外とみんな伸びちまってるかも……
   あんまり気にするなよ、ハリー」

543 :>>1 [saga]:2013/03/24(日) 00:45:10.40 ID:sFGo1elk0

ホグワーツ 大広間


ドラコ「……もう嫌だ。グレンジャーめグレンジャーめ……」ブツブツ

ロン「あれ、マルフォイの奴どうしたんだ? いつも以上に真っ青な顔で震えてら」

フレッド「ああ、あいつか。なんか知らないけど、真っ暗なホグワーツ特急の中を走り回っててさ」

ジョージ「で、笑えることにあの吸魂鬼と正面衝突。怒った吸魂鬼に先頭車両まで追っかけまわされたらしい」

ロン「うわー、そりゃご愁傷様。自業自得とはいえ、さすがに同情するよ」

フレッド「まあ、通りすがりの新しい先生に助けて貰ったみたいだけどな。……あれ、そういやロン。ハリーはどうした?
     一緒に乗っただろう、確か」

ロン「あー、ハリー達はさっき、マクゴナガル先生に呼ばれていったよ。僕だけ除け者さ」

ジョージ「へえ。ってことは、悪いことじゃなさそうだな。表彰でもされるのか?」

ロン「おい、僕だけ呼ばれなかったってことと何の関係があるんだよそれ」
544 :>>1 [saga]:2013/03/24(日) 00:45:48.10 ID:sFGo1elk0

マクゴナガルの部屋


マクゴナガル「さて、あなた達を呼んだのは、ルーピン先生からふくろう便を貰ったからです。
         ポッターとトモエは汽車の中で倒れたと連絡を受けています。ここでマダム・ポンフリーから診察を受けること」

ハリー「あの、倒れたのは僕たちだけですか?」

マクゴナガル「? ええ。少なくとも、ルーピン先生が見て周った限りではそうらしいですが」

ハリー「そうですか……」

マミ「……」

ハーマイオニー「ハリー、マミ……」

マクゴナガル「……心配することはありません。マダム・ポンフリーに見て貰えばすぐ良くなります。
         と、これは私が言うよりも、散々医務室のお世話になっているポッターのほうが詳しいでしょうが」

ハリー「先生、僕、大丈夫です。もうどこも悪くは――」


ガチャッ


ポンフリー「はいはい、患者はどちら――あら、またこの子? 新学期早々、今日はどうしたの」

マクゴナガル「ポッピー、吸魂鬼です。ポッターとトモエは、奴らの影響を受けて倒れました――」

ハリー「大丈夫です! もう、すっかり良くなりました! ねえ、マミ?」

マミ「え? え、ええ、そうね。確かに、ルーピン先生から貰ったチョコを食べたら、寒気はすっかり消えたけど――」

ポンフリー「おや、ほんとうに? ……なるほど、校長が強く推薦しただけのことはありますね。
       少なくとも、闇の魔術に対する防衛術の先生としての知識はあるみたい。
       確かに二人とも顔色もいいし、これなら宴会に出ても大丈夫でしょう」

マクゴナガル「ふむ……分かりました。では、ポッターとトモエは外で待っていなさい。
         グレンジャーは、少し私と話がありますので――」
545 :>>1 [saga]:2013/03/24(日) 00:46:28.07 ID:sFGo1elk0

大広間


ダンブルドア「さて、諸君。新学期おめでとう! だがまあ、最初に少しだけ面白くない話をせねばならん。
        ホグワーツは現在、吸魂鬼の警備を受け入れておる。魔法省たっての要望でのう……」

マミ「……あれと、ずっと一緒に過ごさなきゃいけないのかしら」

QB「まさか。外周の要所を固めてるだけだろう」

ダンブルドア「吸魂鬼は学校への入り口を全て封じておる。勝手に敷地内から出る生徒などおらんとは思うが、"一応"注意しておこう。
        奴らにはいかなる誤魔化しも通じん。錯乱呪文や透明マントを使っても無駄じゃ。
        話が通じる相手でもない。極力関わらんようにするのが一番良いというわけじゃ」

ハリー「……」

ロン「明らかに透明マントのくだりは僕たちに言ってるよなぁ。
   だーからさすがに出ないってば。ブラックが野放しなのに……」

ダンブルドア「さて、では次の明るいニュースに移ろうかの。今学期から、新しい先生を本校に迎えることとなった。
        それも、二人もじゃ」

ハーマイオニー「二人? ひとりはルーピン先生としても、もうひとりは……?」

ダンブルドア「まずはリーマス・ルーピン先生。闇の魔術に対する防衛術の、新しい担当を引き受けてくださった。
        そして、もう一人――前年度退職されたケトルバーン先生の後任として、
        森番のルビウス・ハグリッドが魔法生物飼育学の先生となってくださるそうじゃ」

ハリー「そうか! どうりであんな狂暴な本が教科書なわけだよ。ハグリッドが先生かぁ。どんな授業になるんだろう」

ロン「ああ、嬉しいけど、そこはちょっと不安だよな。まさかでっかい蜘蛛とか連れてこないだろうね……?」

ダンブルドア「さあ、これで話は終わりじゃ。お待ちかねの宴といこう――明日からの英気を養うためにも思う存分掻っ込むが良い!」
546 :>>1 [saga]:2013/03/24(日) 00:46:54.22 ID:sFGo1elk0

夜 グリフィンドール女子寮


ラベンダー「ねえ、新しい防衛術の、ルーピン先生だっけ。どう思う?」

パーバティ「うーん。言っちゃ悪いけど、ちょっと不安よね。ローブも継ぎはぎだらけだし、頼りなさそう」

ラベンダー「そうよねえ……まあ去年より悪いっていうんなら、それはそれで見てみたい気もするけど」

マミ「あら、ルーピン先生は結構凄い先生よ? マダム・ポンフリーが褒めてたし……
   それに、あの吸魂鬼を追い払ったんだもの」

ラベンダー「へえ、本当? 人は見かけによらないのかしら? まあ、授業を受けてみれば分かるけど」

パーバティ「あ、そうだ。授業で思い出しけど、マミ、約束よ。私たちは"占い学"で勉強した占いを教えるから、"数占い"はお願いね」

マミ「ええ、分かったわ。それじゃ、もう寝ましょうか。えーと、パジャマパジャマ……」

ラベンダー「……」

パーバティ「……」

マミ「? どうしたの、二人とも。まだ寝ないの?」

ラベンダー「……マミ。最後に会ってから、二ヶ月しかたってないわよね? 私、一年間遅刻した訳じゃないわよね?」

パーバティ「……その、成長したわよね。マミ」

マミ「そう? ああ、そういえば背は少し伸びたかも。ローブを新しく仕立て直さなきゃいけなかったし」

ラベンダー「ああ、背も伸びたの……視点が下がってたから、分からなかったわ」

パーバティ「日本人って、幼く見えるって聞いてたんだけど……いや、顔は童顔だけどね……」

マミ「?」
547 :>>1 [saga]:2013/03/24(日) 00:47:48.25 ID:sFGo1elk0

翌日 授業前 廊下


ハーマイオニー「さあ、今日から新しい授業が始まるわ! ああ、とっても楽しみ……」

ハリー「うん、まあいいけどさ。ちょっと落ち着こうか、ハーマイオニー」

ハーマイオニー「あら、どうしたのハリー? 忘れ物?」

ロン「忘れ物してるのは君だと思うなあ。時計は持ってる? 君の時間割、おかしいぜ。
   九時、つまりこれから"占い学"、同じ時間に"マグル学"、さらに同じ時間に"数占い学"!」

マミ「……ハーマイオニーさん。時間割を見直しましょう? ほら、とりあえずマグル学は私と同じ、別の曜日に――
   ああ、駄目ね。この時間にも三教科入ってる……」

QB「どうする気だい? もしかして、教室の後ろにビデオカメラでも設置しておくとか?」

ハーマイオニー「授業は直接受けなきゃ意味ないわ。それに、ホグワーツではそういう電化製品は使えないの。
          魔法力が強いとこでは、回路がしっちゃかめっちゃかになっちゃうんだから」

マミ「ああ、それで去年MDウォークマンが使えなかったのね……そういえばあれどこにやったのかしら……?」

ハリー「結局どうするのさ、ハーマイオニー。もしかして、分身の魔法を……?」

ハーマイオニー「さすがにそんな魔法は知らないし、使えないわ。まあ何とかなるわよ。
          さ、占い学に行きましょ。ああ、マミ。数占いに行くんだったら席を取っておいてくれる?」

マミ「え? う、うん。それは構わないけど――」

ロン「ほら、もう混乱してるじゃないか。占い学に行くんだったら、数占いの席なんて――」

ハーマイオニー「いいでしょ、別に! マクゴナガル先生とも相談済みなの。さ、ほら行くわよ!」
548 :>>1 [saga]:2013/03/24(日) 00:48:19.39 ID:sFGo1elk0

数占い 教室


マミ「うーん。一応、席は取っておいたけど……どうする気なのかしら、ハーマイオニーさん」

QB「まあマクゴナガル先生と相談したっていうなら何かしら手は考えてあるんだろう。
   たとえば、毎週違う授業を取って、残りは補習を受けるとか――」

ハーマイオニー「おまたせ。席を取っておいてくれたのね。ありがとう、マミ」

マミ「あ、あれ? ハーマイオニーさん、占い学にいったんじゃ――」

ハーマイオニー「あんな授業、クズよ。まったく時間を無駄にしたわ!
          取らなきゃよかった――いや、駄目ね。ちゃんと受けれる授業は受けなきゃ……」ブツブツ

マミ「え? え? だってまだ、占い学は始まってもないでしょう?」

ハーマイオニー「え? あ、ああ。そうね。でも、教科書を読んだら想像はつくもの。
          はー、お腹減ったわ。お昼ご飯はまだかしら?」

QB「なに言ってるんだい? ほんの数十分前に朝食を食べ終えたばかりじゃないか」

ハーマイオニー「あ。あー、その。私、朝はあんまり食べなかったから……。
          そ、それより、数占い学ね。楽しみだわ。最初はカバラ数秘術辺りから始まるのかしら?」

マミ「……どうなってるの?」

QB「さあ……?」
549 :>>1 [saga]:2013/03/24(日) 00:49:21.03 ID:sFGo1elk0

変身術 教室


ラベンダー「マミ、数占いはどうだった?」

マミ「ええ、とっても分かりやすかったし、今日は最初の授業だからって、簡単にできる占いを教えて貰えたの。
   よければあとで占わせてもらってもいい?」

ラベンダー「大歓迎よ! 私達の方はちょっと難しくて、まだ占えそうにないけど……」

パーバティ「そうね……でも、先生がとっても神秘的で、何でも的中させちゃうのよ! 
       ネビルがカップを割ることまで予言したんだから!」

ラベンダー「私達も、いつかあのくらい占いができたらなぁ……」

マミ「へえ、それは凄いわねぇ……でも、占い学に出てた人はみんな、とても暗い顔してるけど……」

ラベンダー「あー、それは、ね……」



ポンッ


マクゴナガル「今日はみなさん、集中力に欠けますね。動物もどき(アニメ―ガス)は、非常に習得の難しい魔法です。
         いま私が変身したように、特定の動物に自在に変身できるのは、世界広しといえども僅か七人だけですよ。
         無論、別に拍手喝采を強要しているわけではありませんが……」

ハーマイオニー「あのー、先生。確かに先生の変身は素晴らしかったですけど、でも、私たち、前の時間に占い学を受けて、
          それで……」

マクゴナガル「……ああ、納得しました。で、今年も誰かに死の予言を?」

ロン「へ? 今年もって……それじゃ、あのクラスの生徒は毎年誰か死んでるのか!?」

マクゴナガル「いいえ、ウィーズリー。占い学のシビル・トレローニー先生は毎年死の予言をして、それを全部外してきました。
         恒例行事のようなものです。悪趣味な――いや、失礼。とにかく、誰も死んだりはしません」

ハーマイオニー「ああ、ほらやっぱり。ね、あんなの適当言ってるだけよ」

ハリー「う、うん……」


マミ「そういうことなの。ハリーくんに死の予言が……」

パーバティ「ええ、死神犬(グリム)が憑りついてるって……」

マミ「死神犬?」

パーバティ「死の前兆よ。魔法使いの間では、ほんとにタブー視されてるくらい恐ろしいものなの」

マミ「そうなの……でも良かった。その予言は外れそうで」

ラベンダー「でも、ネビルのカップはどうなの? 全部の占いが外れてるってわけじゃないでしょう?」
550 :>>1 [saga]:2013/03/24(日) 00:50:04.07 ID:sFGo1elk0

昼食 大広間


ハーマイオニー「いいえ、全部でっちあげだわ。それらしいこと言ってるだけよ。
          だからロン、あなたも元気出しなさい。どーせインチキなんだから」

ロン「でも、死神犬だぜ? ハリー、まさか君、でっかくて黒い犬とか見てないよな?」

ハリー「……実は見たんだ。ダーズリーの家から飛び出した夜に」

ロン「」ガチャーン

パーシー「ロン! コップを落とすな! 中身が入ってたら大惨事だったぞ!」

ロン「それどころじゃないんだよパーシー! ああマジかよ。ハリー、本当に見たの!?」

ハーマイオニー「野良犬かなんかでしょ」

ロン「おいおい、どうやら君は事態の深刻さが分かってないみたいだな。死神犬といえば、最大の不吉の象徴なんだぜ?
   密室でスネイプがにこにこ笑いながら紅茶を勧めてきたりなんかしても、死神犬と比べりゃ可愛いと思えるくらいだ」

ハーマイオニー「どっちも現実には有り得ない、ってところは共通してるわね」

ロン「ここまで言ってもわからないのか! 死神犬は本当にやばいんだって!」

ハーマイオニー「大体死神犬がハリーに憑いてるってところからして、あの適当極まりない占いの産物でしょ?」

ロン「適当なもんか! 君には見えなかったんだろうけどね! トレローニー先生は、君に占い学の才能がないっていってたしさ!」

ハーマイオニー「……! 言ったわね! いいわ、それならもうずっと見えもしない未来を探してなさい!
          私はその間に、数占いできちんとした占いの方法を学ぶから!」スタスタスタ
551 :>>1 [saga]:2013/03/24(日) 00:51:03.18 ID:sFGo1elk0

ロン「ふん、意地っ張りめ。大体、まだあいつ数占いの授業なんて受けてないだろうに」

マミ「……ねえ、ハリーくん。ハーマイオニーさんは占い学を受けてたの?」

ハリー「うん? ああ、一緒に受けたよ。それでまあ、先生とちょっといざこざもあってさ……」

マミ「そうなの……変ね。その時間は、確かに私と数占いの授業を受けていたはずなんだけど……」

ハリー「え? 嘘だろ? だって確かにハーマイオニーは僕らと……」

QB「いや、でも僕も見たよ。そもそもマミはハーマイオニーと組で授業を受けたからね。間違いようがない。
   でも様子がおかしかったなぁ。急にお昼ご飯はまだ? とか言い出したりして」

ロン「どういうことだ? ……推論1、実はハーマイオニーは双子だった」

ハリー「有り得ないだろう、それは。というか、なんで二人で一人分の時間割を受けてるのさ」

ロン「ハーマイオニーの時間割は、軽く三人分くらいの量があるけどね……
   じゃあ、推論2、ハーマイオニーは夏休み、マミの家に遊びに行ったんだろう?」

マミ「ええ。お泊りなんかして、とっても楽しかったわ」

ロン「きっとそこで、ニンジャに弟子入りしたんだよ。知ってるよ、僕。パパの持ってた本に書いてあった。
   ニンジャって増殖するんだろう? それを利用したトリックさ」

マミ「分身の術のこと? 知らないけど、多分フィクションよ、それ」

ロン「じゃあもうこれしかないね。推論3。本の読み過ぎで、脳みそがもう一生分勉強したって勘違いしちゃったんじゃないかな。
   で、頭の中だけおばあちゃんになってボケちゃったとか」

ハーマイオニー「……」
552 :>>1 [saga]:2013/03/24(日) 00:51:33.16 ID:sFGo1elk0

ハリー「あー、ロン? もうその辺で……」

ロン「これならキュゥべえの言ってたお昼ご飯云々にも説明がつくぞ。
   マミさんや、ご飯はまだですかのう? って具合にさ! あははは」

ハーマイオニー「……ふーん」

ロン「あははは、は……あれ、なんでここに? 先に行ったはずじゃ……」

ハーマイオニー「鞄。忘れたから戻ってきたの」

ロン「あ、そ、そうなんだ……ぼ、僕が持って行ってあげようと思ってたんだ! うん、そうなんだよ!
   ああ、そうだ。次のクラスまで君の鞄持とうか? うん、そうしよう」

ハーマイオニー「あら、そう? お年寄りは大事にしてくれるってわけ?」

ロン「いやそんなことは――お、女の子には親切にしろって、ビルが言ってたんだ。
   さ、ほら。ハリー、一緒に――」

ハリー「僕、先に行って席を取ってるね」ダッ

ロン「ハリー!? 魔法生物学は屋外だから、席なんて――じゃ、じゃあマミ。
   ほら、ハーマイオニーとの夏の思い出とか、聞きたいかな」

マミ「ご、ごめんなさい。私、次の授業、別だから……行きましょう、キュゥべえ」ダッ

QB「ロン、いい言葉を教えてあげるよ。インガオウホウ。それじゃあね、きゅっぷい」

ロン「な、なんだよ、それ。はは、キュゥべえは難しいこというよね、ハーマイオニー」

ハーマイオニー「因果応報。原因は結果として相応に返ってくるって意味よ」

ロン「さ、さすがハーマイオニーだ! やっぱりさ、君みたいな頭の良い人って尊敬するよ――」

ハーマイオニー「そうよねぇ……おばあちゃんになるくらい勉強してるものねぇ……
          ところで、鞄はいいわ。私が持つから。あなたの分もね」

ロン「え、そりゃ悪いよ――というか、なんで?」

ハーマイオニー「あら、だって怪我人に荷物を持たせるのって、お年寄りに持たせるよりも可哀想じゃない?」

553 :>>1 [saga]:2013/03/24(日) 00:52:18.91 ID:sFGo1elk0

透明の部屋


マミ「……キュゥべえ、捕まえてきてくれたカエルはまだある?」

QB「うん。昨日が雨だったからね。湖の周りにいっぱい居たよ」

蛙「げこげこ」

マミ「よし、それじゃあ今度こそ……チーリング・チャーム!(元気呪文)」パシュッ

蛙「げこっ!?」バチッ

マミ「どうかしら? 成功したら、元気になって3メートルくらい飛び上がるはず……」

蛙「……これはこれはドン・ゲーロ様。まだ山は冬では?」

マミ「ああもう、また失敗……全然元気にならないわ。
   マグル学のお陰で空いた時間を、全部練習に費やしてるのに……」

QB「上達はしてるんじゃないかな。最初のほうのカエルは爆裂四散しちゃってたし」

マミ「三年生になってから、急に呪文が難しくなったわね……今年はハーマイオニーさんには頼れそうにないのに」

QB「それでも、去年まではこうやって個人練習で何とかなったんだ。今年もきっと大丈夫だよ」

マミ(そうかしら……去年は、もっとスムーズに上達していった気がするのだけど。
   ……ううん。きっと、私の努力が足りないだけよね。こうして練習用の部屋もあるんだし、頑張らないと……)

554 :>>1 [saga]:2013/03/24(日) 00:53:42.58 ID:sFGo1elk0

夕食 大広間


ガチャッ


マミ「はー、お腹減った。結局、呪文はひとつも上手くいかなかったけど……」

QB「なに、今日練習した呪文は、まだ授業で習ってないのを予習しただけだ。
   授業で先生にコツを教えて貰えば、きっと上手くいくよ」

マミ「……ありがとう、キュゥべえ。さ、ご飯にしましょうか。
   えーと、空いてる席は……ロングボトムくんの隣ね。ロングボトムくん、隣いいかしら?」

ネビル「ああ、マミ。どうぞ、今日はキドニーパイだよ」

マミ「ありがとう。確か、ミートパイの親戚みたいな奴だったかしら? 割と好きよ、これ。
   ……ネビルくん、食べないの? なんか、野菜ばっかり食べてる気もするけど」

QB「ダイエットかい? 食事制限は効果的ではあるけど、素人がやると危ないよ」

ネビル「違うよ。そのね、僕、さっき魔法生物飼育学の授業だったんだけど……」

マミ「ああ、ハグリッドさんが先生になったっていう……どうだった? 最初はどんな生き物を勉強したの?」

ネビル「やったのはヒッポグリフ。あの羽が生えてる馬と鷲の合いの子みたいな奴。
     本物を使ってね。僕はなかなか上手くいかなかったんだけど、ハリーは乗って空を飛んでたよ」

マミ「空を! 凄いじゃない。いいなぁ、私も乗ってみたいわ」

ネビル「お勧めはできないけどね。目とかめっちゃ怖いし……それに、マルフォイの奴が爪で切られて大怪我しちゃったんだよ。
     血がいっぱい出てさ……うう、思い出しちゃった。しばらく肉料理は食べられないや」

マミ「マルフォイくんが?」チラッ


ドラコ「ああ、痛むなぁ。本当に、酷い怪我なんだよ。食事にも不便だしね。
    まったく本当にあの森番はどうしようもない」


マミ「なんだ。わりと平気そうじゃない。包帯してる以外は、いつもと変わらないわよ。
   流石はマダム・ポンフリーね」

ネビル「怪我自体はね……でも、たぶんマルフォイのことだから大げさな騒ぎにすると思うよ。
     それに、一番心配なのはハグリッドかな。授業初日であんな事故があると……」

マミ「確かに、落ち込んでそうね……そういえば、ハグリッドさんとハリーくん達の姿が見えないわ。
   ハリーくん達、ハグリッドさんと仲良かったものね……お見舞いかしら?」
555 :>>1 [saga]:2013/03/24(日) 00:54:49.45 ID:sFGo1elk0

翌日 魔法薬学 教室


ドラコ「ほら、ウィーズリー。早く僕の材料を刻めよ。ああ、スネイプ先生。
    僕、この無花果の皮も剥けません――怪我のせいで」

スネイプ「確かに。ではポッター、君が手伝ってあげたまえ」

ハリー「……覚えてろ、マルフォイ」

ドラコ「ん? 何がだい? 僕はあのウスノロのせいで怪我をしたから、手伝ってもらわなきゃいけないんだよ。
    ほら、早く剥け。それが終わったらイモムシもな」

ロン「この野郎、大した怪我でもないくせに――」

ドラコ「大した怪我だよ。ハグリッドが先生をやめさせられるには十分だと思うねぇ……」

ハリー「やっぱりそれが目的か。ハグリッドはやめさせないぞ。この、どうしようもない、根性悪――」

スネイプ「ポッター、授業中だ。私語は慎め。グリフィンドールから5点減点」

ロン「マルフォイの奴は無視かよ! スリザリン贔屓め」



マミ「ああ、本当ね。全く、ハグリッドさんに何の恨みがあるのかしら?」

ネビル「だってマルフォイだもん。しょうがないよ……ねえ、マミ。ネズミの脾臓っていくつ入れればいいの?」

マミ「一個だけよ。そしたらよくかき混ぜて……そう。それでいいわ」

ネビル「ありがとう。マミと一緒の机で助かったよ。僕一人だったらどうなってたか……」

マミ「魔法薬は得意な方だから……それでもハーマイオニーさんには敵わないんだけどね。
   実技に関してはボロボロだし……次の授業が不安だわ」

ネビル「次は防衛術か……これも新しい先生だけど、何をやるのかな?」

556 :>>1 [saga]:2013/03/24(日) 00:55:41.93 ID:sFGo1elk0

闇の魔術に対する防衛術 


ルーピン「さて、今日は実地練習と行こうか。場所を移そう。杖だけ持って、私についてきてくれるかな」

ロン「実地練習? なんだろう。禁じられた森に行くっていうんだったら、僕は梃子でも動かないぞ」

ハーマイオニー「そんな危険なことはしないと思うわ、多分……」

マミ「うう、呪文で吹っ飛ばすだけなら何とかなるけど……」

ハリー「マミ、やめてくれよ。トロールの時、洗濯大変だったんだから」

ルーピン「さて、到着。目的地はここさ」

ハリー「職員室、ですか?」

ロン「スネイプを退治してくれるっていうんなら大歓迎だけど」

ルーピン「なるほど、そのアイディアは参考にしよう。さて、鍵を……ふむ。これは駄目だな。ピーブズ、いるんだろう?」

ピーブス「ようルーニ、ルーピン。相変わらず酷い面だ!」

ルーピン「その綽名で呼ばれるのは久しぶりだ。君も相変わらずのようだね。
      鍵穴に詰めたチューインガムは、授業の前に剥がしておいて欲しかったが」

ピーブズ「べー! だ」

ルーピン「そうかい。まあ君とは彼らほど相性が良くなかったし、期待はしていなかったさ――ワディワジ(逆詰め)」


パン!

ピーブズ「へびゃっ!」

シェーマス「うわ、チューインガムが飛び出してピーブズに直撃した!」

ディーン「先生、クール!」

ルーピン「どうも。さあ、中に入って授業を始めようか」


557 :>>1 [saga]:2013/03/24(日) 00:56:53.61 ID:sFGo1elk0

職員室


ルーピン「さて、職員室なんかで授業をするのは他でもない。この洋服ダンスの中に、ボガートが入りこんでね」

ハリー「ボガート? なにそれ、危ないものなの?」

洋服ダンス「ガタガタ!」

マミ「きゃあ、う、動いた……!」

ハーマイオニー「平気よ。ボガート、つまり形態模写妖怪は相手が一番怖いと思ってるものに変身するの。
          直接的に攻撃してくるわけじゃないから、そんなに危なくはないわ」

ルーピン「素晴らしい。パーフェクトな説明だ。その通り、ボガートは相手の怖いものに変身する。
      だがこうして、暗い所に入ってる時はまだ何にも変身していない。ボガートの真の姿は誰も知らないのさ」

ルーピン「さて、ここで問題だ。我々はこの時点で、ボガートに対して非常に有利な立場にいるわけだが、なぜか分かるかい?」

ハリー「……人がいっぱいいるから、なにに変身すべきかわからない?」

ルーピン「その通り。ボガートを相手にする時には、誰かと一緒にいるのが一番いい。ひとりで退治できるようになったら一人前だ。
      さて、退治の方法について話そう。呪文は簡単。"リディクラス(ばかばかしい)"。
      だが、ただこの呪文を唱えるだけじゃあ駄目だ。必要なのは、精神力と想像力でね……まずはそうだな、ネビル、おいで」

ネビル「ぼ、僕ですか?」

ルーピン「ああ、君に一番にやってもらおう。君が一番怖いと思うものは何かな?」

ネビル「……スネイプ先生」

ルーピン「ふむ。なるほどね。ロン、君の要望は早速叶えられそうだぞ。そうだな、じゃあネビル、こんなイメージはどうだろう……」



558 :>>1 [saga]:2013/03/24(日) 00:57:20.61 ID:sFGo1elk0

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ネビル「リディクラス!(ばかばかしい)」


パチン!

スネイプ in フリフリドレス「……」

ロン「ぷっ、あははは! 見ろよ、ハリー! あのスネイプがひっどい姿だ!」

ハリー「ああ、ここにコリンがいないのが悔やまれるね。写真を撮って日刊預言者新聞に投稿したい位だ」

ルーピン「よし、次! マミ! やってみて!」

マミ「は、はい――り、リディクラス!」


バギュッ メキッ ごごごご…


スネイプの残骸「……」

マミ「……あ、あら、変ね? ゲルゲルムントゾウムシになる筈だったんだけど……」

ルーピン「失敗か。単純に吹っ飛ばしただけだね。でもまあ、ボガートはまだ動けそうだな。パーバティ、次!
      マミ、君は最後にもう一度やるから、リラックスして、イメージをしっかり固めるんだ」

マミ「は、はい! イメージ、イメージ……」




559 :>>1 [saga]:2013/03/24(日) 00:57:54.65 ID:sFGo1elk0

パーバティ「リディクラス! ミイラ男なんて、自分の包帯で首を絞めちゃいなさい!」

パチン!

シェーマス「リディクラス! バンシーなんて、年がら年中叫んでれば喉を潰すよ!」

パチン!

ラベンダー「リディクラス! ネズミなんて、自分の尻尾を追い回してればいいのよ!」

パチン!

ディーン「リディクラス! じゃあハンドは、ネズミ捕りに捕まっちゃえ!」

パチン!

ロン「リディクラス! 去年はよくもやってくれたなアラゴグめ! ころころ転がってろよ!」

パチン!


ゴロゴロ

ロン「ハリー! そっちいったぞ!」

ハリー「分かった! リディ――」

ルーピン「おっと、こっちだ!」サッ

ハリー「え? ルーピン先生――?」


パチン!


ハーマイオニー「あら、何かしら、これ。銀色のボールがふわふわ浮かんで……?」

ルーピン「さあ、マミ! 最後だ! やっつけろ!」

マミ(落ち着いて。できる、出来るわ。全力で、やれば――)


マミ「――リディクラス!(ばかばかしい)」


バーン!
560 :>>1 [saga]:2013/03/24(日) 00:58:55.66 ID:sFGo1elk0

マミ「……」

ロン「……まね妖怪、跡形もなく消し飛んじゃったんだけど、これは成功なの?」

ルーピン「……うーん。まあ、ボガートはやっつけられたんだし、よしとしよう。
      よし、ボガートの相手をした生徒には5点。マミもね。ネビルは10点だ。最初によくやってくれた……」

マミ「結局、私だけ成功しなかったのね……」

QB「気を落とさないで、マミ。また練習すればいいさ」

ルーピン「それと、ハリーとハーマイオニーにも五点ずつ。質問に答えてくれたからね。
      さ、今日はこれでお終いだ。宿題はボガートについてのレポートだよ、忘れずにね」


わいわい    がやがや 

「おい、見たか僕のバンシー」「それを言うなら、私のミイラだって」「良い先生だな、本当に」

                                    わいわい がやがや


ハーマイオニー「確かに、良い授業だったわ。でも、私もボガートに当たりたかったんだけど……」

マミ「ご、ごめんなさい。私が消し飛ばしちゃったから……ハリーくんも、ごめんね」

ハリー「いや、いいんだ……というか、先生は僕にボガートを当たらせたくないみたいだった」

ロン「あの時、先生が君の前に割り込んだこと? 気のせいだろ、時間もなかったし、マミにやり直しさせる為じゃないのか?」

マミ「うう……本当にごめんなさい」

ハーマイオニー「マミも気にすることないわ。練習すれば、その内成功するわよ……」
561 :>>1 [saga]:2013/03/24(日) 00:59:27.20 ID:sFGo1elk0
投下は以上です。
562 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/03/24(日) 01:05:30.40 ID:wfW6Ng+xo

マミの引いたカード怖
563 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/03/24(日) 01:54:10.48 ID:4IaoXAln0

マミさんはこのころから部分的に急成長するわけですな!
564 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/03/24(日) 01:57:31.42 ID:rysRfymAO

ドン・ゲーロ懐かしい。次も楽しみにしてる。
565 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/03/24(日) 03:17:25.34 ID:cS3OFjoAO
誰が情報を送っているのか

奴しかいないが、この時期にはまだいないはず……
566 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/03/24(日) 08:34:38.58 ID:8U2cN3WAO
本編のマミさん相手だったら間違いなくボガートはシャルロッテに化けるんだろうな。
567 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/03/24(日) 09:48:25.58 ID:5a1Bh3Y3o
568 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/03/24(日) 10:21:02.41 ID:cOXMRiPeo
3年次ではマミさんのマミパイがたわわになっているんだね!!
569 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/03/24(日) 10:30:49.86 ID:8U2cN3WAO
>>563 >>568
たしかに映画の方でもこの作品から主要人物が一気に大人びたような感じがしたからね。
570 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/03/24(日) 15:01:36.29 ID:/LXzqa++o
ドン・ゲーロでワロタ
やはり壊し屋は健在か…
571 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/03/24(日) 17:26:20.98 ID:bccAgaXJ0
魔法少女がディメンターに襲われた場合はソウルジェムが急速に濁るのかな
572 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/03/24(日) 21:05:51.32 ID:XkaBF/p8o
>>571
よく考えると天敵だな
守護霊以外の攻撃効いたっけ
魔翌力が篭ってれば守護霊のように必殺にはならなくてもダメージはありそうだけども
573 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/03/24(日) 21:34:56.01 ID:BwuyJkpio
魔力回路が違うのだろうか
未契約でも魔法が使えるのは確かみたいだ

ドン・ゲーロってムジュラだったっけか
574 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/03/25(月) 02:47:21.86 ID:QLJ7/tPZ0
マミにフラグが立ちまくってるな
575 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/03/26(火) 11:22:33.99 ID:1G6FMisxo
魔法少女になってたらギーゼラに化ける感じかな
576 :>>1 [saga]:2013/03/30(土) 01:58:39.53 ID:8ngIvV6O0
ベラ姐「無限に広がる空間を直進するだけの死の呪文……そんなもの、当たるはずがない。
     玄人が撃ちゃ、話は別だけどね!」


投下します
577 :>>1 [saga]:2013/03/30(土) 02:00:18.21 ID:8ngIvV6O0

十月 グリフィンドール談話室 掲示板前


ざわざわざわざわ……


マミ「……よし、と。これで天文学の宿題は終わりね」

ロン「お、マジかい? じゃあちょっとだけ見せて――」

ハーマイオニー「ごほん!」

ロン「はいはい、分かったよ。自力でやらなけりゃ駄目だって言うんだろ。まったくお堅いよな」

マミ「ごめんね。でも、ハーマイオニーさんなんか私たちの三倍近い量の宿題をやってるんだから、頑張らなきゃ駄目よ?」

ロン「僕とハーマイオニーの頭の出来を一緒にしないでくれよ。彼女くらい頭が良かったら、僕だって喜んで宿題をやるさ」

ハーマイオニー「逆でしょ。宿題をきちんとやらなきゃ、成績は良くならないわよ」


ガタン


ハリー「はぁー、疲れた。外は寒いよ。凍えそうだ……」

ロン「お疲れさま。こっちきて座れよ。暖炉の傍取っといたからさ。クィデッチの練習はどう?」

ハリー「ウッドは今年が最後のチャンスだからね。凄い張り切ってる。もちろん僕らもさ。今年こそ優勝杯を掴むってね」

QB「去年はトーナメント自体が中止になっちゃったんだっけ? 一昨年は……」

ハリー「最後の試合が、ちょっとね。ほら、つまりなんというか、連携がさ……」

マミ(150点減点のせいで、ハリーくん達がずっと無視されてた時期だったものね……)
578 :>>1 [saga]:2013/03/30(土) 02:01:19.54 ID:8ngIvV6O0

ハリー「それよりみんなざわついてるけど、何かあったの?」

ロン「ああ、ほら。そこの掲示板。第一回目のホグズミード週末だってさ」

ハリー「へえ……ちょうどハロウィンの日か」

マミ「それじゃあ明日の変身術の授業が終わったら、マクゴナガル先生に許可を貰いに行きましょうか?」

ハリー「うん。一緒に行こう」

ハーマイオニー「許可がでるといいわね。一緒に行けるのを楽しみにしてるわ……あら、クルックシャンクス」

クルシャン「なーご」ピョン

ロン「うわ! 出た! しかも何か、でっかい蜘蛛を咥えてやがる!」

ハーマイオニー「ひとりで捕まえたの? 偉いわねぇ、クルックシャンクス」

ロン「そうだね。もうひとりで狩りができるんだから、野生に返してやったらどうかな?」

ハーマイオニー「なに馬鹿なこといってるの。クルックシャンクスは、頑張ったから褒めて貰いに来たのよ」

マミ「蜘蛛ね……魔法薬の材料で散々使ったから、すっかり平気になっちゃった自分が何だか嫌だわ」

QB「この前のカエルも平気だったしねぇ……ん、なんだい? クルックシャンクス」

クルシャン「……なー」ブチッ ズイッ

QB「蜘蛛を半分くれるの? でもなぁ……」

マミ「言っておくけど、それを食べたらもう同じベッドには入れないわよ」

ロン「キュゥべえ。それを咥えたりしたら、僕は二度と君を相手にチェスしないからな」

ハーマイオニー「まあ、クルックシャンクスはお友達想いなのね……いいじゃない、マミ、ロン。
          猫は虫を食べるものよ。ねえ、ハリー?」

ハリー「でもキュゥべえって、僕たちと同じもの食べてるし……」

QB「僕も蜘蛛はちょっと……気持ちだけ貰っておくよ」

クルシャン「……ふー」ジリッ

QB「え、なんで近寄ってくるの……な、なんか怖い! 目が怖い! なんでそんな舌なめずりとかして……マミ! マミ!」

クルシャン「ふぎゃーーーー!」

QB「わ、わああああっ!」ダッ

マミ「あ、キュゥべえ……まあいっか。このところ運動不足だったし、丁度いいでしょ」

ハーマイオニー「クルックシャンクスったらはしゃいじゃって……友達と遊べるのが、本当に嬉しいんだわ。
          随分長いことペットショップにいたんですもの。不思議よね、あんなに可愛いのに」

ロン「ほんと、どうしてだろうね? まあキュゥべえには悪いけど、スキャバーズが狙われなくて良かったよ。
   ま、今は僕の鞄の中で寝てるから安心だけどね……さて、そろそろ僕も寝るかな」
579 :>>1 [saga]:2013/03/30(土) 02:01:51.01 ID:8ngIvV6O0

ハリー「僕ももう寝たい……けど、天文学の宿題をやらなきゃ……」

ロン「僕のを写していいよ。ほら、それまで待ってるから」

ハーマイオニー「丸写し? 感心できないわね」

ロン「仕方ないだろ、ハリーはクィディッチの選手なんだ。君はグリフィンドールが優勝できなくてもいいのか?」

ハーマイオニー「それとこれとは別よ。何のために宿題をやるの?」

ロン「そりゃあ、宿題を忘れて罰当番とかを食らわないようにするためさ。ほら、ハリー写しちまえよ」

ハリー「うん……あ、キュゥべえとクルックシャンクスが戻ってきた」

QB「マミィィィイ! あの猫が! あの猫が僕の尻尾を!」ピョイッ

マミ「わ、ちょっと頭の上に飛び乗らないで! わぷっ、尻尾が、尻尾が顔に掛かってなにも見えないから!」フラフラ

ハリー「うわっ、マミ! そんな状態で立ち上がろうとしないで! 危なっ……!」


どんがらがっしゃーん


ロン「うーわ。大惨事だ。インク瓶だけは寸前に避難したけど……ハリー、マミ、平気かい?」

マミ「いたたた……へ、平気よ。ごめんね、誰か怪我とかしてない?」

ハリー「みんな無事だよ……キュゥべえがマミの下で潰れてる以外は」

マミ「あ、そうなの? なら良かったわ」

QB「よくなぃぃぃぃいいいいい……」

ハーマイオニー「キュゥべえ、平気? でも急に飛び乗ったりしたら危ないわよ?」

ロン「いや、元はといえば君の猫が原因だろ。そういやどこいった、あのオレンジ色の危険生物は?」

スキャバーズ「チチッ、チ――っ!」

クルシャン「シャアアアアアア!」

ロン「ああ! こいつ、またスキャバーズを追っかけて!」

ハリー「鞄が開いてる……クルックシャンクスが開けたのか?」

ハーマイオニー「まさか。ロンが閉め忘れてただけでしょ――クルックシャンクス! めっ!
          ほら、こっちにきなさい。カリカリがあるから。ね?」

ロン「そんな悠長なことやってる場合か! おい、誰かその猫公を捕まえろ! なんなら呪っちまってもいいから!」ダッ

ハーマイオニー「あっ! ちょっとロンなんてことを! させないわよ!」ダッ
580 :>>1 [saga]:2013/03/30(土) 02:02:40.59 ID:8ngIvV6O0

五分後


ロン「ぜぇ……ぜぇ……ふぅ、やっと捕まえた。スキャバーズ、ほら、もう安心だ……」

スキャバーズ「チチッ! チチチッ!」ブルブル

ハーマイオニー「はぁ……はぁ……クルックシャンクス、ほら、暴れないで、ったら!」

クルシャン「フシャー! フシャー!」ジタバタ

ロン「そいつを絶対離すなよ! 見ろ、スキャバーズはこんなに震えちまって!
    最近、全然餌も食べないんだぞ! そのケダモノのせいだ!」

ハーマイオニー「クルックシャンクスをそんな風に言わないで! なによ、猫はネズミを追いかけるものだわ!」

ロン「キュゥべえは一度もスキャバーズを追い回したことなんかないけどね! 飼い主ならちゃんと躾をしろよ!」

ハーマイオニー「それは、クルックシャンクスは最近買われたばっかりだから!」

ロン「それに、なんか変だぜそいつ! 騒ぎを起こして、その隙に僕の鞄を開けた!
   鞄の中にスキャバーズがいるって聞いてたんだ!」

ハーマイオニー「そんなことあるわけないでしょう? ロン、あなたむきになって――」

ロン「むきになってるのはどっちだよ! いいか、とにかくその猫畜生を二度とスキャバーズに近づけるなよ!」スタスタ

ハーマイオニー「ロン! 話を――ああ、もう! 男子寮に上がっちゃった……」

マミ「ああ、どうしよう……二人が喧嘩を……」オロオロ

ハリー「放っておいたら? 前からこんな感じだし、その内仲直りするよ」

マミ「そ、そうかしら……? でも、ロンくん本気で怒ってるみたい……」

ハリー「うーん。まあ、確かにちょっといつもより怒ってるかも……」
581 :>>1 [saga]:2013/03/30(土) 02:03:22.14 ID:8ngIvV6O0

翌日 薬草学


スプラウト「いいですか、この"花咲豆"は地面に触れた瞬間に発芽します。
       ですから、摘み取り作業をするときは絶対に下に落とさないように――」


ロン「……」ブチッ

ハーマイオニー「……」ブチッ

ハリー(まだ怒ってる……二人とも頑なに口を利こうとしない。ならなんで同じ班に……)



マミ(やっぱり向こうは険悪なムードね……ハリーくん、可哀想に……)

ラベンダー「……うう、ひっく、ぐすっ」

マミ「ふぇ!? ら、ラベンダーさん、どうしたの!? 指切っちゃったりした?」

ラベンダー「ちがっ、ひっく。ちが、うの。ただ、今朝の手紙、うぅ、思い出しちゃって……」

マミ「手紙?」

パーバティ「今朝、お家から届いたの。ビンキーが狐に殺されちゃったんですって……ラベンダー、平気?
       無理しなくていいわ。作業なら、私とマミでやっておくから」

マミ「ビンキーって、ラベンダーさんが可愛がってた兎よね……うん、ラベンダーさんは休んでて。
   ペットが死んじゃうのは辛いものね……ほら、ハンカチ使って」

ラベンダー「ぐすっ、ありがとう、二人とも……うう、でも、私のせいで。ビンキー……」

マミ「そんな、悪いのは狐でしょ? ラベンダーさんのせいじゃないわよ……」

ラベンダー「違う。違うの。私、防げたのよ。今日は十月十六日。前の授業の時、トレローニー先生が予言してたの!
       今日、私の恐れてることが起きるって!」

マミ「トレローニー先生って、占い学の……そんな、本当に……?」

ハーマイオニー「――話を聞いてたけど、ラベンダー。あなた、兎が殺されてしまうかもって思ってた?」
582 :>>1 [saga]:2013/03/30(土) 02:03:56.34 ID:8ngIvV6O0

ラベンダー「それは、そうよ。ぐすっ、だって、ビンキーは私の大切な家族だったんだもの」

ハーマイオニー「家族だからって、死ぬのを怖がることには繋がらないでしょう?
          たとえば兎がもうだいぶ歳を取っていたら別だけど、そうだった?」

ラベンダー「それは……ビンキーはまだ、子供だったけど……」

マミ「あ、あの、ハーマイオニーさん? いったい、何を――?」

ハーマイオニー「じゃあ、どうしてずっと死ぬ心配なんてするの?」

パーバティ「……」キッ

ハーマイオニー「論理的に考えて、あの占いが当たってる保証なんてないわ。
          手紙が今日来たってことは、兎はもっと前に死んだんでしょう?
          だいたい、恐れてることが起こるなんて大雑把すぎるのよ。毎日何かしら悪いことは起きるものだし――」

ラベンダー「うう、ぐすっ、わああああああん――!」

ハーマイオニー「え、ちょっと、なんでそんな泣くのよ――」アセアセ

パーバティ「ねえハーマイオニー、言い過ぎじゃない? そりゃあ、あなたがトレローニー先生を嫌いなのは知ってるけど。
       でも、ラベンダーは関係ないでしょう? なんでそんな責める風に言うの?」

ハーマイオニー「そんな! 私、別に責めてなんか……ねえ、マミ? 私、そんな酷い言い方だった?」

マミ「え、と……その、少し、言葉が直接的だったかしら?
   だってラベンダーさんは大切なペットが死んじゃって、泣いてたわけだし――」

ロン「ほっとけよ! そいつ、人のペットのことなんか、なーんとも思ってないんだから!」

ハーマイオニー「な……! ロン、あなた――」

スプラウト「はいはい! おしゃべりが過ぎますよ! 授業に集中して!」

ハーマイオニー「……」

ロン「……」

ラベンダー「ぐすっ、ぐすっ……」

パーバティ「ほら、ラベンダー、元気出して……」
583 :>>1 [saga]:2013/03/30(土) 02:05:52.35 ID:8ngIvV6O0

変身術 教室


マクゴナガル「――以上で今日の授業はおしまいです。宿題を忘れないこと。
        ああそれと皆さん、寮に戻る前にホグズミード行きの許可証を提出してください」

ロン「……」ガタッ

ハーマイオニー「……」ガタッ

ハリー(行ったか……だから、なんで喧嘩してるのに僕を挟んで隣に座るんだろう……」

マミ「きっと、お互い喧嘩してて不安なんでしょ。だから友達の傍に居たいのよ」

ハリー「うえ? もしかして僕、声に出してた?」

QB「ばっちりね。気をつけなよ、まあ、疲れるのもわかるけどさ」

ハリー「あの二人の喧嘩癖は本気でどうにかならないかなって、たまに思うよ……」

マミ「喧嘩するほど仲がいい、っていうけれど……毎回それの仲裁役じゃ大変かもね。
   ふふっ。でも二人もきっと、そんなハリーくんがいるから毎回喧嘩できるんでしょうけど」

ハリー「勘弁してほしいなぁ……それより、そろそろ行こうか? もうみんな渡し終ったみたいだし」

マミ「ええ、許可証は持ってる?」

ハリー「ああ、無記名のね。さて、僕のにもサインをくれればいいけど……」

マミ「私のにくれるんだから、きっと大丈夫よ――マクゴナガル先生!」

マクゴナガル「……ああ、マミ、ですか。そうですね、話さねばならないとは思っていましたが……」

マミ「? 何をです? あ、それより許可証のことなんですが、できれば私のと一緒に、ハリーくんのにも――」

マクゴナガル「すみませんが、サインはあげられません」

マミ「え……で、でも、私のにサインしてくださるなら、ハリーくんのにも――」

ハリー「あー……まあ、そういう可能性もあるって思ってたけどさ。
     残念だけど仕方ないよ。マミ、お土産をよろしく――」

マクゴナガル「……トモエの分も、サインはできないのです」

マミ「……え?」

ハリー「先生、どうしてですか? 僕はともかく、マミは去年、先生に許可をとったって……」

マクゴナガル「……その、大変申し訳なく思うのですが、状況が変わったのです。
         去年の時点では、確かに私が保護者代理としてサインを行うこともできたのですが……」

マミ「そんな……」

QB「もしかして、シリウス・ブラックのせいかな?」

マクゴナガル「その通りです。あれが野放しになっているということで、サインの徹底を図るようにということになりまして。
         トモエ、約束を破る形になって、本当に心苦しいのですが……」

マミ「……仕方、ないですよね。先生のせいじゃ、ないですし。分かりました。寮に戻ります……」

ハリー「マミ……」

マクゴナガル「……」

マクゴナガル(……ポッターと、一緒でなければ……いえ、彼女一人を特別扱いするわけにはいきませんね……)
584 :>>1 [saga]:2013/03/30(土) 02:06:39.94 ID:8ngIvV6O0

グリフィンドール寮 談話室


マミ「……」ズーン

ハリー「……」ズーン

ロン「あー、その……元気出せよ。来年は、きっと行けるし……同じ日には、ハロウィーンのパーティもあるじゃないか。
   去年は絶命日パーティで潰れちゃったし、きっと楽しいよ――」

ハーマイオニー「そうよ。それに、これで良かったのかも。ほら、ブラックはハリーを狙ってるわけだし。
          マクゴナガル先生が許可を出すなら、って思ってたけど、許可がでないんじゃやっぱり危ないってことだし……」

マミ「……ぬか喜びさせちゃってごめんね、ハリーくん」ズーン

ハリー「……いいよ。悪いのは、ブラックだし……」ズーン

ハーマイオニー「駄目ね、私たちの声が届いてないわ」

ロン「二人とも、楽しみにしてたもんなぁ――おい、パーシー!
    いつも自慢してる監督生の権限でどうにかなったりしないの、これ?」

パーシー「先生の許可が出ないんなら、いくら監督生だってどうしようも――ああ、いや、待てよ。
      待っててくれ。いいことを思いついた」

ロン「お、マジかよ!? 一ミリも期待してなかったけど――なんだろう、偽造許可証でも造ってくれるのかな?」

ハーマイオニー「あのパーシーが? フレッドとジョージが悪戯グッズを全部捨てることくらい有り得ないわ」


数十分後


パーシー「待たせたね。ほら、二人ともこれを読みたまえ」

ロン「なんだこの紙束、パーシーが書いたの?」

マミ「……ハニーデュークスのお勧めセレクト?」

ハリー「"叫びの屋敷"のベストスポット5?」

ハーマイオニー「あの、パーシー? なにかしら、これ」

パーシー「僕なりにホグズミードのことをまとめてみた。
      行けないなら、せめて雰囲気だけでも味わえればと思って――ああ、お礼はいいよ。
      下級生のことを慮るのも、監督生の義務だ。それじゃ」スタスタ

マミ「はにー、でゅーくす……おかし……」

ハリー「ゾンコの悪戯専門店……ああ……」

ロン「生殺しもいいとこじゃないか! 最低だ、パーシーの奴!」

ハーマイオニー「無駄に文章力高いのがまた……ハニーデュークスのお菓子のくだりなんか、
          読んでるだけでよだれが出てきそうよ、これ」
585 :>>1 [saga]:2013/03/30(土) 02:07:25.83 ID:8ngIvV6O0

翌日 ハロウィーン/ホグズミード週末 廊下


ハリー「……はぁ。みんな行っちゃったね。
    ロンとハーマイオニーは、お土産を持ってきてくれるって言ってたけど……」

マミ「これからどうしましょうか……ハロウィーンパーティが始まるまで、談話室でゲームでもしてる?」

ハリー「いや、さっきコリンがいた。多分、談話室に居る限りずっと付きまとってくると思う」

QB「じゃあ、図書館で勉強すれば?」

ハリー「本気で言ってるの? みんながホグズミードで遊んでる間に勉強なんてしたいと思う?」

マミ「流石に、ちょっとね……昨日の今日だし。魔法を練習する気にもなれないわ……」

QB「じゃあどうするのさ? このままずっと学校中歩き回ってるつもり?」

フィルチ「――何をしている、貴様ら?」

ハリー「あ」

マミ「……フィルチさん」

フィルチ「ホグズミードに行かず、こんなところで何を企んでる? 新しい悪戯の計画か?
      それとももう実行した後か?」

マミ「違いますよ。私達、許可がおりなかったんです」

フィルチ「なに、本当か? 私を謀ろうとしてるわけじゃあるまいな?
      ……なら、勉強でもしていたらどうだ。図書館にでもいけばよかろう」

マミ「だって、皆が遊んでるのに……」

フィルチ「学生の本分は勉強だろうが。それなのにお前らときたら悪戯だのなんだのと!
      ほら、さっさと行け! 私はこれからまた仕事なんだ。手間を掛けさせるんじゃない」

マミ「分かりました……それじゃ、フィルチさん。お仕事頑張ってくださいね」

フィルチ「ふん、お前に言われずとも分かっとるわ!」スタスタ

ハリー「……行ったか。マミはさ、よくフィルチとまともに話せるね」

マミ「言われてるほど酷い人じゃないわよ。まあ、確かに意地悪なとこもあるけど……さて、どうしましょうか?」

ルーピン「……おや? ハリーとマミじゃないか。どうしたね、デートにしては相応しくない場所だが……」

マミ「で、デートって……違います! わ、私たちはホグズミードの許可がおりなくて!」

QB「マミ、声が大きい。フィルチが戻ってくるよ」

ルーピン「ああ、なるほど……ふむ、それなら、どうだろう。私の部屋でお茶でも飲むかい?
      ついでに次の授業の話でもしていれば、フィルチさんもうるさくは言わないだろう」

586 :>>1 [saga]:2013/03/30(土) 02:08:19.11 ID:8ngIvV6O0

ルーピンの部屋


水魔「グゲゲゲゲ!」チャポン

ハリー「これ、次にやる生き物ですか?」

マミ「うう、気色悪い……細長い指が、虫の足みたいにうねうね動いて……」

ルーピン「水魔(グリンデロー)さ。まあ、その指に気を付ければ大したことはない……脆いしね。
      マミならいつも通り一撃で粉々にできるだろう」

マミ「ご、ごめんなさい……いつもいつも、教材の生き物を吹っ飛ばしちゃって……」

ルーピン「いいさ。どうせ経費で落ちるし……ハグリッドが残念がるくらいかな。
      それに、結果として防衛にはなってるわけだしね。まあ、変身術や呪文学もその調子だと困るだろうが……」

マミ「あうううう……」

ルーピン「……あの調子なのかい?」

ハリー「前から失敗することは結構あったけど、今年度になってからはさらにあれだよね」

QB「まあでも、みんな慣れてきたし、人的な被害はさほどでもないよね」

マミ「一応、練習はしているんですけど……」

ルーピン「ふむ、気にすることはない――と手放しに言うことはできないが、気にしすぎないようにね。
      ホグワーツに入学できたということは、それだけで何らかの才能がある証拠だ」

マミ「はい、ありがとうございます……」

ハリー「……」

ルーピン「さて、紅茶がはいったが――ハリー、どうにも浮かない顔をしているね。
      そんなにホグズミードに行けないのが残念かい?」

ハリー「いいえ――いや、もちろん残念ですけど、それとは別に、聞きたいことがあって……」

ルーピン「遠慮することはない。なんでも話してごらん」

ハリー「はい。あの、ボガートの授業の時のことなんですが……
     先生が、その、僕に順番を当てないないようにしたような気がして……」

マミ「そういえば、そんなこと言ってたわね……でもハリーくんの考えすぎよ、って」

ルーピン「いや、ハリーの言う通りだ。私はハリーがボガートと当たらないようにした……
      が、なるほど。ふむ。それで私が君のことを低く見ているのではないか、と悩んでいたのか。
      それは悪いことをしたね。だが、言わずとも分かるだろうと思っていて……」

ハリー「どうしてですか?」
587 :>>1 [saga]:2013/03/30(土) 02:08:57.86 ID:8ngIvV6O0

ルーピン「君と相対したボガートは、ヴォルデモート卿の姿になる。そう思ったのさ」

ハリー「……先生は、ヴォルデモートの名前をそのまま呼ぶんですね」

ルーピン「うん? ああ、例のあの人って呼び方かい。まあね、魔法使いの誰もが、奴の名前を口にできないわけじゃない。
      でも大多数の者は怖がっている。だからあの日、私は君にボガートを当てなかったんだ」

ハリー「……確かに、僕も最初はヴォルデモートのことを思い浮かべました。
     でも、すぐに別の――吸魂鬼のことが浮かんできて……」

マミ「吸魂鬼……あの、電車で私たちを襲った……」

ハリー「先生、そのことも聞きたかったんです。あの時、僕とマミだけが気絶してしまったのは――?」

ルーピン「……そもそも吸魂鬼、というのはだ。人から幸福を吸い取って生きている、この世で最も忌避すべき生き物だ。
      だから奴らと一緒に居続けると、幸せな感情をすっかり抜き取られてしまう」

QB「……」

ルーピン「そうやって全ての感情を抜き取られた後に残るのは絶望だけだ。
      吸魂鬼の影響が君たちに強く表れたのは、過去の経験に起因するものだろう。
      つまりそれだけ、君たちの過去に辛い経験があったということだ」

ハリー「それって、つまり……」

ルーピン「ハリーは言うまでもないね。君の最悪の経験は、
      それこそほとんど全ての魔法使いが、心の底から恐れている存在がもたらしたものだ……」

ハリー「ヴォルデモート……じゃああの時聞こえた叫び声は、僕の……」

マミ(……その論で行くと、あの時見た夢が、私の最悪の……?
   ほとんど覚えてないけれど、あの事故の夢だったような……)

ルーピン「……暗い話になってしまったかな。紅茶、おかわりは――」


ガチャッ


スネイプ「ルーピン、薬だ――ポッターが何故ここに?」

ルーピン「ああ、ちょっと授業の話をね。ありがとう。そこに置いといてくれ」

スネイプ「すぐに飲め。苦いから飲みたくないなどという泣き言は聞かん。飲み損ねて泣きを見るのは勝手だが」

ルーピン「分かった、分かりました……御心配どうも」

スネイプ「我が輩が心配しているのは別に貴様のことではなく――あー、ダンブルドアからの頼みであればこそ、だ。
      貴様が飲まず、我が輩の腕が疑われるのは不本意であるからして。では、確かに渡したぞ」


バタン


マミ「薬って――先生、御病気なんですか?」

ルーピン「ちょっとね。スネイプ先生にはいつも薬を調合して貰っていて――でも酷い味なんだよ、これ。ほら」

マミ「うわぁ……においも色も凄まじいですね」

QB「正直言うと、ドブみたい」

ルーピン「これから私が飲むっていうのに、嫌なたとえを――ん、ハリー? どうしたね。一口飲んでみるかい?」

588 :>>1 [saga]:2013/03/30(土) 02:10:36.93 ID:8ngIvV6O0

夕食後 グリフィンドール寮への廊下


ロン「で、ルーピン先生はそれ飲んじまったのかい? え、マジで?
   ハリー、なんで止めなかったんだよ。スネイプが防衛術の先生の座を狙ってるのは有名じゃないか」

ハリー「いやだって、止める間もなく飲み干しちゃったし……」

マミ「凄い勢いで一気飲みしてたもの……よっぽど酷い味だったに違いないわ」

ハーマイオニー「ルーピン先生、御病気だったのね。顔色が悪かったのもそういうわけだったのかしら」

ロン「スネイプに毒を盛られてるからじゃないの? じわじわ効くやつを少しずつ……」

マミ「さすがにスネイプ先生もそんなことしないわよ、きっと」

ハーマイオニー「やるにしても、マミ達の前ではやらないと思うわ」

ロン「どうかな、あの陰険野郎、いつかやりかねないと――」


ドン!


ロン「痛っ! おい、シェーマスなんでそんなとこで止まってるんだよ。
   これから僕たちは談話室でホグズミード土産を囲むんだから――って、この行列はどういうわけ?」

シェーマス「ああ、ロン。僕も分からない。さっきからずっと進まないんだけど」

ハリー「前の方、寮の入り口でつっかえてるみたい」

ロン「何だよ、みんな合言葉を忘れちまったのかい? ネビルでもあるまいし」

マミ「こんな時こそ、キュゥべえ。あなたの出番よ。前の様子を見てきて頂戴。さあ、ごー!」

QB「人使いが荒いなぁ……」ピョイッ

パーシー「何をしてるんだ? さあ、通して! 僕は首席で監督生だ!」ズカズカズカ キュップイ!

ロン「首席は関係ないだろ――あ、キュゥべえ踏まれた」

マミ「きゅ、キュゥべえーーーーーっ!」

ピーブズ「おやおやおや、なんだいなんだい。悲鳴が聞こえたから、また誰か切り刻まれたと思ったけれど。
      生徒諸君、こんなところでゆっくりしてていいのかな?」ヒョイッ

ハリー「うわ、ピーブズ! この面倒くさい時に……もしかしてこの行列も君の仕業?」

ピーブズ「いーやー? さすがにあんな真似はしないねえ。ひっどく残酷! ひっどく短気!
      あいつだって、昔は世話になっただろうに!」

ハーマイオニー「あいつ? 世話になったって――あなた、一体誰のことを言ってるの?」

ピーブズ「時の人さ! 時の人、時の人……時がたちすぎて、昔ほど洒落は通じなくなっちまったかもなぁ。
      いや、それとも昔からあんなもんだったか――」


パーシー「大変だ! "太った婦人"の肖像画が滅多切りに! 一体誰がこんな……」


ピーブズ「――あの、シリウス・ブラックは!」
589 :>>1 [saga]:2013/03/30(土) 02:12:01.62 ID:8ngIvV6O0

大広間


ダンブルドア「さて、申し訳ないがそういうわけじゃ。
         これから我々職員は全員でシリウス・ブラックの捜索に当たらねばならん。
         見張りには監督生が立ってくれる。安心して、ゆっくりおやすみ」


ざわざわ

「ブラックはどうやってホグワーツの中に――?」「姿現しじゃないかな?」「箒で飛んできたとか」

                                                  ざわざわ


ハーマイオニー「ああもう! ホグワーツでは姿現しは無理!
          空を飛んできたりなんかしたら吸魂鬼に見つかるわよ! 
          どうしても誰もこんな簡単なことが分からないわけ?」

ロン「君じゃないからだろ。それは何の本のどのページに書いてあったわけ?」

ハーマイオニー「ホグワーツの歴史、231ページ四行目の――」

ロン「おーけー聞いた僕が馬鹿だった。さ、寝ちまおうかハリー?」

マミ「ハーマイオニーさん、私達も寝ましょう……寝れないなら、枕を貸してあげるから」

QB「それって僕のことじゃないよね? 勘弁してよ、ただでさえ朝はマミのよだれまみれなのに――きゅっ!?」ギュッ

ハリー「……そういえばさ、ハロゥイーンって絶対になんかトラブルあるよね。
     去年はミセス・ノリスが怪物に襲われたし、一昨年はトロールが入りこんだし」

ロン「ああ、そういやそうだな……そういや、結局あのトロールはクィレルの奴がいれたんだっけ?
   待てよ? じゃあブラックも誰かが手引きして……」

ハーマイオニー「馬鹿なこと言わないでよ、ロン。誰がブラックなんかと内通するっていうの?」

ロン「マルフォイとかスネイプなら、ブラックとも仲良くやってけそうな気もするけど――」


パーシー「ほら、そこ! いつまでも話してないで寝ろ!」

590 :>>1 [saga]:2013/03/30(土) 02:13:06.16 ID:8ngIvV6O0

数日後 夕方 グリフィンドール寮 入り口前


カドガン卿「さあ名乗れ! この悪辣なる二連星め!
       邪悪なものはこのカドガン卿が一切の侵入を拒むであろう!」

ジョージ「うるっさいなあ、こいつ。阿呆みたいな合言葉ばっか考えるし……
      おい、パーシー。もっとまともな扉番はいなかったのかよ?」

パーシー「どの絵もこの仕事を嫌がったんだよ。太った婦人があまりにも惨い状態で……」

フレッド「驚いたな。監督生のパーシー様はまだ肖像画になってなかったのかい?」

パーシー「ああ、まだだ」

フレッド「……そうまではっきり断言されっちまうと、もう言葉もないね」

パーシー「そんなことより早く着替えを取ってこい。クィデッチの練習に行くんだろう?」

ジョージ「おっと、そうだった――"スカービー・カー、下賎な犬め"。ほら、さっさと開けろ」

カドガン卿「開けん!」

ジョージ「はぁ? なんでさ、合言葉は合ってるだろ?」

カドガン卿「今、変えたのだ! さあ我が輩が今朝朗読した4番目の――」


パカッ


マミ「よっこらしょ、っと――ああ、ごめんなさい。入るところだったかしら?」スタッ

フレッド「おお、ナイスタイミング――なあパーシー、もうこれ内側に屋敷しもべ妖精でも待機させといた方が早いぜ、絶対」

ジョージ「全くだ。ああ、マミ。悪いけど通してくれ。練習が始まっちまう――」ヒョイッ

QB「それなら急いだほうがいい。さっきウッドが『双子は何処だ!』って大声で叫びながら談話室を出てったから」

ジョージ「うわ、マジか。急ぐぞフレッド!」ダッ

フレッド「ああ。ウッドがカンカンになって頭の血管切る前にな」ダッ

パーシー「やれやれ。あいつらも、もっと時間に余裕をみて行動して欲しいものだ――で、マミ。君は何処へ?
      最近物騒だし、用もないのに出歩くのは……」

マミ「あの、私は……」


パカッ


ハーマイオニー「クルックシャンクスがいないの!」

パーシー「クル――なに?」

マミ「ハーマイオニーさんの猫が外に遊びに行ったきり、帰ってこないんです」

ハーマイオニー「心配だわ。頭の良い子だから、迷子になんかはなってないと思うけど……」

パーシー「ふむ――そういうことなら、まあいいだろう。あとさっき、合言葉が変わったよ。
      カドガン卿曰く、四番目の奴、だそうだ」

マミ「え……えーと……四番目……?」

QB「"イーブルナッツ、悪意の実"だよ。マミもネビルみたいに、合言葉をメモに書いて持ち歩いたら?」

マミ「いいわよ。キュゥべえが代わりに覚えてくれてるし……じゃ、ハーマイオニーさん。
   とりあえず、手分けして探しましょ?」

ハーマイオニー「ええ、ありがとう、マミ……ハリーはクィディッチの練習だし、ロンは手伝ってくれないしで困ってたの。
          それじゃ、お願いね」
591 :>>1 [saga]:2013/03/30(土) 02:13:43.70 ID:8ngIvV6O0

ホグワーツ 校庭端


マミ「……とはいっても、ホグワーツって凄い広いし……どうやって探しましょうか?」

QB「何にしても、急いだ方がいいかもね。ほら、天気も悪いし……雨が降りそうだよ」

マミ「最近、ずっとよね……もうすぐハリーくん達が試合するのに。
   あとキュゥべえ、重いから頭から降りていますぐに。ほら、抱っこしててあげるから」

QB「い、嫌だ! 毎回毎回あの猫、僕の尻尾を食い千切ろうとして! ひたすら尻尾の付け根を狙ってくるんだ!」

マミ「じゃあ、寮で待ってればよかったじゃない」

QB「そんなの、君がいない内にあの猫だけ戻ってきたらもっと怖いじゃないか!」

マミ「意気地なし……」

QB「あんなケダモノに追いかけられたら怖いに決まってる。
   正直、スキャバーズの気持ちも分かるよ。彼、人間みたいな魂してるし」

マミ「適当言わない。なんでそんなことキュゥべえに分かるのよ?」

QB「……マミには黙ってたけど、僕には隠された24の特殊能力があるんだ」

マミ「え、え、そうなの? ちょ、ちょっと気になるわね。違うのよ、別に、かっこいいとは思ってないけど。
   でも、ペットの特徴の把握は飼い主の義務だから――」

QB「……あ」

マミ「――そうね、それで契約を交わすと真の姿になって、封印の獣ケルベロスになるのよ。
   地獄の炎を吐いたり、空を飛んだりして――」

QB「マミ。ストップ。歩きも妄言もいったん止めて。僕にそんな機能ないし」

マミ「えぇ、期待させておいてそんな……なによ、もう」

QB「いや、この距離まで気づかなかったのもあれだけど、目の前」

マミ「目の前?」


黒犬「……」ジッ
592 :>>1 [saga]:2013/03/30(土) 02:15:46.97 ID:8ngIvV6O0

マミ「……あ、あわあわ……お、大きな犬が、じっとこっち見てる……!」

QB「うん、すっごい大きいね。アイリッシュ・ウルフハウンドみたい」

マミ「な、何よ、その怖そうな単語……」

QB「犬の種類だよ。名前通り、真正面からオオカミを食い殺せる犬なんだけど――」

マミ「っ!」クルッ

QB「おわっと! マミ、急に方向転換しないで! それに、基本的に犬は逃げるものを追うよ。
   こういう猟犬って時速60km以上で走れるんだけど、マミはそれより速いの?」

マミ「う、うう……私、ここで食べられちゃうんだ……短い人生だったわ……」

QB「やーい。さっきは人のこと意気地なし呼ばわりしてたくせにー」

マミ「……キュゥべえ。あなたさっきから、ずいぶん落ち着いてるわね。同じ猫にはビビりまくってるくせに。
   言っておくけど、いざとなったらあなたを生贄に捧げるわよ?」

QB「あのケダモノと僕を一緒にしないで欲しいなぁ。
   それに、平気だよ。目の前の彼の魂も人に近いから、きっと理性的だと思うな」

黒犬「……ハッハッハ」

マミ「……そういえばこの犬、さっきから行儀よく"お座り"の姿勢で動かないわね。
   それに、よく見たらずいぶん痩せてるし……毛並も悪いわ。栄養不足かしら。お腹減ってるの?」

黒犬「バウッ!!!!!」

マミ「きゃっ。な、鳴き声もダイナミックね……でも、そうなの。お腹減ってるの……
   えーと、何か持ってたかしら……」ゴソゴソ

黒犬「! ハッハッハ、チキワン!」

マミ「? 変な鳴き声ね? ……あ、チョコバーがあったわ。ロンくん達から貰ったお土産の残り……
   でも犬にチョコは駄目だから……」

黒犬「……クゥーンクゥーン」

マミ「……欲しいの? そ、そんなつぶらな瞳でこっちを見ないで……キュゥべえ、どうしましょう?」

QB「このくらいの大きさの犬なら、チョコバー1本くらいは平気だよ。
   本人が尻尾振ってまで食べたいって言ってるんだし、あげちゃえば?」

マミ「そう……それじゃ、あげるわ。きちんと包み紙を解いて……はい、どうぞ」

黒犬「むしゃむしゃむしゃ!」

マミ「わわ、凄い食べっぷり……よっぽどお腹減ってたのね。ふふ、一生懸命食べちゃって……
   こういうおっきい動物も、こうなると可愛いわね」

QB「……さっきは怖がって癖に、現金だなぁ」

マミ「あら、嫉妬?」

QB「……そんな感情は知らないね」プイッ
593 :>>1 [saga]:2013/03/30(土) 02:16:38.79 ID:8ngIvV6O0

黒犬「バウ!」

マミ「もう食べ終わったの? そうよね、あんな小さなチョコバーだものね……じゃあこれも半分あげるわ。
   ハーマイオニーさんがくれたクルックシャンクス捕獲用のジャーキーなんだけど、食べるかしら?」スッ

黒犬「ムシャムシャ! バウ! ぺろぺろぺろ!」

マミ「あははは! くすぐったいっ。な、舐めないでってば! 私の指はジャーキーじゃないったら! あはは!」

QB「よっぽどお腹減ってたんだろうなぁ……それはともかく、マミ、犬の口の中は雑菌だらけだからね。
   帰ったら手を洗うんだよ」

マミ「……ってそうだったわ。クルックシャンクスを探さないと……それじゃあバイバイ、犬さん。
   あんまりうろちょろしてちゃ駄目よ?」

黒犬「バウッ! バウッ!」グイッ

マミ「え、ちょ、わ! や、やめて! スカート引っ張らないで! もう餌はないったら!」

黒犬「ウゥゥウウウ! バウ!」クイッ

マミ「な、なに? ついて来いってこと? も、もしかして、やっぱり私を食べる気じゃ――わ、ひ、引っ張られる……!」


木の上

クルシャン「……シャーーーーーー!」バッ

マミ「きゃ!? う、上から何か落ちてきて……クルックシャンクス!? 木の上に居たの!?」

QB「わ、わあああああ! 猫だああああああ!」ダッ

マミ「あ、キュゥべえが地面に……そうか、クルックシャンクスに叩き落とされたのね……」

QB「こ、このっ! この犬! 猫とグルだったんだ! 初めからマミを木の下に誘導するつもりで!
   畜生、魂は人間に似てても、所詮はケダモノだよ! 信じた僕が馬鹿だった!」

マミ「もう、そんなわけないでしょう? 偶然よ、偶然」

QB「いーや違うね! その犬は、猫と何らかの悪魔的な取引をしたに違いない――」

クルシャン「ふぎゃーお!」ダッ

QB「わ、わ! こっちに来るんじゃない!」ダッ

マミ「あ、キュゥべえ、ナイスよ! そのままグリフィンドール寮まで誘導して!」ダッ

QB「そんな余裕あるもんかぁぁああああ……」


だだだだだ……


黒犬「……」
594 :>>1 [saga]:2013/03/30(土) 02:18:10.68 ID:8ngIvV6O0
投下終了。あと2回くらいで囚人編終わりにしたいです
595 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/03/30(土) 04:12:59.61 ID:6QqhNupn0
乙。ハリポタ読む気が無かった俺もそろそろ読んでもいいかなと思わせる良い販促SS
596 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/03/30(土) 07:20:21.76 ID:mWAf//Gjo
乙!原作とどう違ってくるか楽しみにしてる
597 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/03/30(土) 07:54:12.35 ID:7u87JvMd0

後二回くらい……だと……?
いくらなんでも早すぎる気がしてしょうがない

>>572
確かレシフォルードと同じで守護霊呪文以外有効なものは発見されていないはず
悟りを開くか守護霊呼べなきゃ確実にSGがGSになるな

>>595
炎のゴブレットあたりから映画化されなかった内容が増えてきてるから、全部読むのが面倒ならここらへんから読むのをお勧めする
598 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/03/30(土) 12:24:44.26 ID:ew/xX15AO
乙です
原作でのこの後の大きなイベントはハリーの守護霊&ファイアボルト取得とシリウスの過去を聞くのと逆転時計使用ぐらいかな?
そういえばファイアボルトの入手タイミングが原作と映画で大きく違ってたけど、どっち設定でいくんだろ?
599 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/03/30(土) 13:27:38.34 ID:ZReojF1oo
600 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/03/30(土) 16:29:41.12 ID:t9Ja7xyq0

しかしマミさんをなめたりスカートかじったりした駄犬さん許すまじ
601 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/03/30(土) 16:50:32.52 ID:BzslA/70o

俺も読み返そうかな
602 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/03/30(土) 20:14:00.05 ID:BQPwu5Kqo

押し倒して腰振りだしたら去勢する
603 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/03/30(土) 23:17:27.05 ID:sSrAGm2P0
この駄犬、マミさんをprprしやがった
ディメンターに引き渡そう
604 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/03/30(土) 23:19:26.38 ID:7a4JSTVC0
俺犬になってくる
605 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/03/31(日) 16:31:57.31 ID:Vv5Wwdgio
実はこのあたりから原作も映画も触れてないので
元からこういう話ですと言われたら納得してしまいそう
606 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/03/31(日) 23:51:30.96 ID:fZuFjtqu0
セクハラですよ おいたん
607 : [saga sage]:2013/04/04(木) 21:19:58.23 ID:VksaraI40
明日の夜くらいに投下できそうです
608 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/04/04(木) 22:23:00.26 ID:SJqrQfDCo
よっしゃ!
609 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/04/04(木) 22:24:56.32 ID:/teyx8gq0
遂に炎(ほむらではない)のゴブレットか
610 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/04/05(金) 21:36:31.57 ID:vX/Jm65Bo
>>609
その炎(ほむほむ)は盲点だった
つまり次でほむほむ登場でまどマギルート出現か…
611 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/04/05(金) 21:53:01.67 ID:I87zL9U/0
>>610
しかも炎のゴブレットに出て来る双子のパドマの片方はほむほむの中の人やで
612 : [saga sage]:2013/04/05(金) 22:39:57.11 ID:CiavE3VX0
投下。今回は短め。次回大量投下で囚人編終わらしたいヤック・デカルチャ
613 : [saga sage]:2013/04/05(金) 22:40:26.19 ID:CiavE3VX0

翌日 闇の魔術に対する防衛術 授業


ハーマイオニー「昨日はありがとうね、マミ。クルックシャンクスを見つけてくれて……」

マミ「ううん。いいのよ、そんな。大したことはしてないもの」

ハーマイオニー「でも、キュゥべえが……」チラッ

QB「きゅぷっ?」

マミ「……大丈夫よ。たぶんその内治るから」

ロン「キュゥべえの奴、可哀想に。言葉が喋れなくなっちまって……
   おいハーマイオニー。猫の躾くらいちゃんとやれよ。猫のキュゥべえでさえこれなら、僕のネズミはどうなる?」

ハーマイオニー「なによ。あれ以来、追いかけてないでしょ?」

ロン「追いかけられないようにしてるんだよ! ずっと寝室で休ませてるんだ!」

マミ「あ、あの、二人とも、喧嘩は……もうすぐ授業も始まるし……」

ハーマイオニー「……そういや、ルーピン先生遅いわね。いつもはベルが鳴る前に準備してるのに……」

ロン「ハリーがクィディッチの練習で遅れてるから、ありがたいっちゃありがたいけどね。
   でも心配だな。とうとうスネイプに毒殺されたちゃってたり――」

スネイプ「――我が輩が、なんだと? ウィーズリー」
614 : [saga sage]:2013/04/05(金) 22:41:51.21 ID:CiavE3VX0

スネイプ「ポッター、遅刻だ。グリフィンドール5点減点。座って教科書を出せ」

ハリー「……なんでスネイプが?」ガタッ

ロン「ルーピン先生、体調不良だってさ。でもよりによってスネイプに後釜を頼むことないよなぁ」

スネイプ「私語を慎めウィーズリー。さらに5点減点」

ロン「……これだもん」

スネイプ「さてさて……授業の記録もつけていないとは、ルーピン教授殿のだらしないことよ。
      まあ、いい。本日、諸君らに学んで頂くのは――人狼だ。教科書の394ページを開きたまえ」

ハーマイオニー「でも、先生。まだ人狼はやる予定じゃなくて……」

スネイプ「黙りたまえ、グレンジャー。我が輩がいつ君に意見を求めた。
      この授業を預かったのは我が輩であり、君ではない。
      さて、人狼の授業に移るが、人狼と狼の見分け方が分かる者は?」


しーん



スネイプ「ふむ、誰も分からない、と。やれやれ、ルーピン先生は何を教えていたのか……」

ハリー(仮に分かってても手を挙げたくないね)

ロン(同感。まああそこに一人、例外がいる見たいだけど)

ハーマイオニー「……」スッ

スネイプ「全く、呆れたものだ。三年生にもなって、人狼の見分け方も知らんとは」

ハーマイオニー「……っ! っ!」ブンブン

マミ「あのぅ、スネイプ先生。ハーマイオニーさんが手を挙げてますけど……」

スネイプ「黙れ、トモエ。他人のことをとやかく言えるのなら、君は見分け方がわかるのだろうな?」

マミ「え、あの、いいえ……」

スネイプ「ふむ、他人任せ、か。まったく、根性が悪いことよ」

マミ「……っ」
615 : [saga sage]:2013/04/05(金) 22:42:24.63 ID:CiavE3VX0

パーバティ「……先生。さっきもハーマイオニーが言いましたけど、私達、まだ狼人間までいっていません」

ラベンダー「そうです。そもそも今日やる予定だったのはヒンキーパンクで――」

スネイプ「自らの不勉強を棚に上げての発言に、グリフィンドールから10点減点。
      我が輩は"これから人狼をやる"と申し上げたはずだが?」

ラベンダー「……」

パーバティ「……」

スネイプ「さてさて、酷いものだ……我が輩の予想より、ルーピン先生の教え方は遥かに程度が低い。
      このクラスの学習の遅れに関しては、我が輩からしっかりと校長にお伝えして――」

ハーマイオニー「先生、狼人間は普通の狼と違って鼻面が――」

スネイプ「勝手にしゃしゃり出てきたのはこれで二度目だな。
      その鼻持ちならない知ったかぶりな態度で、さらに五点減点する」

ハーマイオニー「……っ」ジワッ

ロン「糞野郎」ボソッ

ハリー(ロン!)

スネイプ「……何か言ったか、ウィーズリー?」

ロン「いえ――ただ、答えて欲しくないのに質問するのって先生としてどうかな、って思っただけです」

ハーマイオニー「ロン……」

ネビル(凄い、ロン。とても僕には真似できない……)

シェーマス(ああ。凄いけど、言い過ぎだよなぁ。見ろよ、スネイプの顔……)

スネイプ「――処罰だ、ウィーズリー。その無礼な口のきき方を直さねば、今に後悔することになるだろうな」
616 : [saga sage]:2013/04/05(金) 22:43:00.73 ID:CiavE3VX0

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スネイプ「さて、授業は終了だ。各自、今日の授業内容のレポートを書いてくること。
      月曜までに羊皮紙二巻。忘れた者の数だけ5点減点する。以上」


バタン


ラベンダー「……最っ低! なによあの態度! なんであんなのが先生やってられるわけ?」

パーバティ「本当よね。ブラックにやられちゃえばいいのよ」

ロン「ああ。あいつの部屋に隠れてたらいいのに。こんどフレッド達に頼んで
   スネイプの部屋に"シリウス・ブラック様歓迎"ってプレートくっつけて貰おうか……」

ハリー「でも、何だか今日はいつも以上に荒れてたよね、スネイプの奴。
     ことあるごとにルーピン先生の悪口言ってたし……」

ハーマイオニー「何か恨みでもあるのかしら……」

マミ「さあ、それは分からないけど……でも、ロンくん凄かったわね。
   スネイプ先生に、あんなにはっきりと文句を言えるなんて」

ロン「お陰で僕はおまるの掃除だけどね……」

ハーマイオニー「……がとう」

ロン「うん? なんか言ったかい、ハーマイオニー?」

ハーマイオニー「……別に? 空耳じゃないかしら?」

QB「きゅっぷいぷい!」

マミ「え、照れてる? 誰が?」

ハーマイオニー「クルックシャーンクス!」

QB「ぴぃっ!?」

ロン「それにしてもケチがついたよなぁ。明日はクィディッチの試合だって言うのに。
   ハリー、気にせずに飛べよ。まあ、ハッフルパフなんて一捻りだろうけど」

ハリー「そうでもないらしいんだ。ディゴリーって新しいキャプテンがチームを編成し直して……」
617 : [saga sage]:2013/04/05(金) 22:43:56.57 ID:CiavE3VX0

翌日 クィディッチ競技場



ざああああああああああ!


マミ「ねえ――なんで――観客席に――屋根がついてないの――!?」

ロン「そんなの――ついてたら――試合が――見えないだろ――!」

マミ「こんな大嵐じゃ――どっちみち――なんにも――みえないわよ――!」

ロン「グリフィンドールが――50点くらい勝ってる――で、いまタイムアウト――
   ハーマイオニーが――ハリーの眼鏡を――」

マミ「なーにー!? ――聞こえない――!」


ざあああああああああああああああ!


ロン「――、――」

マミ「だから聞こえないって――っ、ごほ、ごほっ! あ、雨粒が喉に……!」

QB『無理に喋らないほうがいいよ、マミ。大人しくしていよう?』

マミ『ああ、キュゥべえ……テレパシーね。はあ、全く。こんな大嵐の日でも試合は中止にならないって……
   ハリーくん達、こんな中でよく飛べるわね……私は普通の時でも上手く飛べないのに……』
618 : [saga sage]:2013/04/05(金) 22:44:30.29 ID:CiavE3VX0


ざあああああああああ!


QB『箒に逃げられる方が多いもんね、君』

マミ『言わないで……それにしても、本当に酷い雨……びしょ濡れよ、もう。
   帰ったらマダム・ポンフリーの元気爆発薬飲まないと……』


ざあああああ……


QB『……確かに、寒い……というより、寒ぎないかい、これ?』ブルッ

マミ『……ねえ、キュゥべえ。変よ。雨の音が、急に、遠く……』

ロン「ハリーが――落ち――吸魂鬼――!」

マミ「……え? ロンくん、いま、なんて……あ、れは……」


吸魂鬼「………」


マミ「なんっ、で、学校の中、に……」フラッ

ロン「――ミ!? ――誰か――ダム・ポンフ――倒れ――!」


ざあああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!

619 : [saga sage]:2013/04/05(金) 22:45:07.87 ID:CiavE3VX0

◇◇◇



 今よりもだいぶ小さな体躯の自分/アスファルトの上/周囲には鉄くず/炎に撒かれ/

 視界にはっきりとした白色の猫/紅玉の双眸/×ュゥ×え/話しかけてくる/

Q×「×と×約して××少×にな×て――」

 遠い声/掠れた×/聞き取×ない声/

 背後には/両×の/死×が/散乱/


QB「――君が望めば、この運命だって変えられる」


 暗転。



◇◇◇
620 : [saga sage]:2013/04/05(金) 22:46:09.07 ID:CiavE3VX0

医務室


マミ「ここ、は……?」

ハーマイオニー「ああ、マミ! 起きたのね、良かった……私、私、あなたが倒れたって気づかなくて――」

ロン「しょうがないだろ。僕は隣だったから気づいただけ。誰だってハリーのほうに目が行ったさ。
   数十メートルも落ちたんだから……」

マミ「何が、起きたの……?」

QB「……吸魂鬼だよ。あいつらが来たんだ。それでハリーが箒から落ちて……」

マミ「……私も気絶しちゃったのね。ハリーくんは、平気なの……?」

ロン「あっちで寝てる……落ちたせいか、まだ起きないんだ。
   今はフレッドとかジョージとか、チームメイトが様子を見てるけど……」

ハーマイオニー「ハリー、大丈夫かしら……試合に負けたこと、気にしなければいいけど」

ロン「無理だろうな、それは……ほら、ハリーの箒も粉々だ。暴れ柳にぶつかって……」

QB「酷いね、柄まで真っ二つだ……もう直らないのかい?」

ロン「ああ。こうまで粉々だとな……仮に直ってもまっすぐ飛ばないよ。
   箒はクィディッチ選手の魂だぜ? ハリーは絶対落ち込むと思うな……」

マミ「……ありがとう、二人とも。私はもう大丈夫だから、ハリーくんについていてあげて」

ハーマイオニー「……分かったわ。でも、なにか必要なものとかあったら、遠慮なく声を掛けてね」

ロン「ああ、そうだ。マダム・ポンフリーが君が起きたら枕元のチョコを食べさせるようにって……
   はい、これ。じゃあ、ちゃんと食べとくんだよ……」

マミ「……」

QB「災難だったね、マミ。まさか吸魂鬼が入りこんでくるなんて……ダンブルドアが凄い怒ってたよ。
   それで、吸魂鬼はぜーんぶ吹っ飛んじゃった。あの時の迫力といったら、もう――」

マミ「ねえ、キュゥべえ」

QB「……うん、なんだい?」

マミ「……私とあなたが会ったのって、ペットショップの時が最初よね?」

QB「その筈だけど、急にどうしたの?」

マミ「……ううん。別に、なんでも……」

マミ(……夢の中で、キュゥべえに会ったような……それに、きっとあの夢は……)

621 : [saga sage]:2013/04/05(金) 22:46:50.86 ID:CiavE3VX0

翌日 夜 医務室


QB「Zzzzz....」

マミ(ふふっ。病人よりもよく寝ちゃって……ずっと、私に付き添ってくれてたものね。
   ありがとう、キュゥべえ……さて、私も寝ないと。明日には退院して、また授業だし……)

ハリー「……マミ、まだ起きてる?」

マミ「ハリーくん? ええ、起きてるけど……どうしたの? どこか痛む?」

ハリー「いや、そうじゃなくて……少し、話をしてもいいかな」

マミ「? ええ、いいけど……それじゃ仕切りのカーテンを開けるわね。えーと、杖は……」

ハリー「いや、僕がやるよ。マミがやるといつかみたいに燃えるかもしれないし……」


シャッ


マミ「もうっ、ハリーくんの意地悪……でも、まあそうね。私はあんまり魔法が得意じゃないし……
   それで? 勉強の相談なら、こんな私じゃなくてハーマイオニーさんに頼んだら?」

ハリー「はは、悪かったよ。でも、これはマミにしか聞けないことだから……
     マミなら、皆よりは分かってくれるかもしれない」

マミ「……冗談交じりで聴いていい話じゃないみたいね。分かったわ、話して。
   上手く答えられるかは分からないけど……それでも、私にできることがあるなら」
622 : [saga sage]:2013/04/05(金) 22:47:35.42 ID:CiavE3VX0

ハリー「ありがとう……その、聞きたいのは吸魂鬼のことなんだけど……」

マミ「……気絶するのが、私とハリーくんだけっていうことについて?」

ハリー「うん。前にルーピン先生が言ってたよね。僕とマミが気絶するのは、昔最悪の経験をしたからだって」

マミ「ええ。ハリーくんは、例のあの人に、その……」

ハリー「うん。父さんと母さんを……殺された。それも、僕の目の前で」

マミ「目の前で? 確かその時、ハリーくんは一歳だったって……覚えてるの?」

ハリー「いいや。でも、思い出したんだ。吸魂鬼は、最悪の経験だけを残すから……
     気絶するとき、僕を守ろうとする、母さんの声が聞こえるんだ――」

マミ「……」

ハリー「……その、辛かったから答えなくてもいいんだけど、マミも両親が……」

マミ「……ええ。亡くなってるわ。自動車事故でだけど。話したことあったかしら?」

ハリー「トロール事件の時……マクゴナガル先生が言ったのを覚えてたんだ。僕と一緒だ、と思って……」

マミ「……そう。あの時……」

ハリー「……マミは吸魂鬼が近くに来た時、何か聞こえる?」

マミ「私は――夢みたいなものを見るわ。たぶん、事故の時の。
   周りが自動車の残骸と炎に包まれていて……でも、あんまり思い出せなくて……」

ハリー「そっか……思い出さない方がいいと思う?」
623 : [saga sage]:2013/04/05(金) 22:48:37.77 ID:CiavE3VX0

マミ「……私は……きっと、思い出しくない。何か、とても嫌な予感がするの……
   あの夢をはっきりと最後まで見たら、私、とっても酷いことになるって……」

ハリー「……僕は、父さんと母さんの声を聞いたことがない。
     それで、吸魂鬼が近づいて来た時、嫌な気持ちになるけど……声を聞きたいって気持ちも、確かにあるんだ」

マミ「そう……ハリーくん、小っちゃい頃に御両親と死に別れてしまったんだものね。
   そういう点では、私の方が恵まれているのかも……」

ハリー「……」

マミ「……私は、ハリーくんと違って両親のことを覚えてるし、思い出もある……
   だから、完全にあなたの気持ちを理解できるわけじゃないけれど――」

ハリー「……けれど?」

マミ「……覚えているからこそ、思い出があるからこそ、辛くなる時もあるわ。
   だって、もう二人とも死んじゃっているんですもの……」

マミ「――二度と手に入らない幸福を知らされるのって、とても残酷じゃない?」

ハリー「……そうだね。きっと、そうだ。声を聞いたって、父さんも母さんも帰ってくるわけじゃない。
     ありがとう、マミ。少し楽になった」

マミ「ううん。私、偉そうなこと言っちゃって……もう寝ましょうか? 明日は授業だし」

ハリー「うん……お休み、マミ……」
624 : [saga sage]:2013/04/05(金) 22:49:10.22 ID:CiavE3VX0

数日後 闇の魔術に対する防衛術



ルーピン「さて、これで今日の授業はお終いだ! みんな、休んでしまってすまなかったね。
      スネイプ先生の出した宿題は、私のほうから話をつけておこう――」

ラベンダー「マミ、早く戻りましょう! 私達、紅茶占いはもう完璧なの!」

パーバティ「そうよ! マミの数占いと比べてみましょう!」

マミ「分かったわ。それじゃ、寮に戻って準備しないと――」


ロン「やれやれ。相変わらずあの二人はトレローニー先生の虜ーにーなってるな……
   紅茶占いなんて、茶色いふやけたものしか見えたことないよ」

ハーマイオニー「ほら、やっぱり占い学なんてそんなものでしょ?」

ロン「……いや、でも、僕がまだ未熟なだけかも……」

ハーマイオニー「それならきっと、ずっと未熟のままよ。さ、戻って宿題をすませないと。
          ハリー、私達も戻りましょう?」

ハリー「ごめん、僕ちょっと、ルーピン先生に用事があるから――」
625 : [saga sage]:2013/04/05(金) 22:49:40.12 ID:CiavE3VX0

ルーピンの部屋


ルーピン「吸魂鬼の追い払い方、か」

ハリー「ええ……先生が前に、汽車の中であいつを追い払ったって聞いて……」

ルーピン「ああ、確かにね。吸魂鬼に対する防衛法が無いわけじゃない……だが、非常に高度な魔法だ。
      習得も難しいし、仮に習得できたとしても、敵の数が増えれば防衛自体が難しい――」

ハリー「……」

ルーピン「――が、なるほど。もう覚悟をしてる、って顔だね」

ハリー「あいつらに近寄られるのはもう二度と御免です。だから、戦い方を知りたいんです」

ルーピン「……いいだろう。ただ、次の学期になってからになってしまうが。
      やれやれ、私も病気がなければな……」
626 : [saga sage]:2013/04/05(金) 22:50:12.41 ID:CiavE3VX0

学期末 ホグズミード週末


ロン「ハリー、またお土産いっぱい持ってくるからさ! 期待しててくれよ」

ハーマイオニー「ええ。あなたが好きだって言ってたムースチョコ、買えるだけ買ってくるわ!」

ハリー「うん、楽しみにしてるよ……はぁ、行っちゃった。今回はどうしようかなぁ……
     そういえば、マミはどこだろう? 朝から姿が見えないし」

フレッド「よう、ハリー! きょろきょろしちまって、何か探し物か?」

ジョージ「そんでもって、探してるのはホグズミード行きのチケットを持ったサンタクロースだったりしないか?」

ハリー「ああ、フレッドにジョージ……そんなサンタクロースがいるんなら、僕、頑張って仕留めるけど……」

フレッド「穏やかじゃないねえ。まあ、一人だけ置いてけぼりにされたら腐りたくなるのも分かるけどさ」

ジョージ「ハリー、そのサンタクロースは君の目の前にいるんだぜ? おっと、仕留めないでくれよ」

ハリー「? どういうこと?」

フレッド「ちょいと早いが、クリスマスプレゼントさ。それもとびっきりのな」

ジョージ「ああ。人にやっちまうのは惜しいが、"これ"を一番必要としてるのは君だろうからな」ガサッ


羊皮紙「」


ハリー「……なにこれ。古い羊皮紙? これがチケットなの?」

フレッド「ああ、どこへでもフリーパスさ!」

ジョージ「見てろよハリー――"我、ここに誓う。我、よからぬことを企む者なり"」トン


羊皮紙「」ムズムズ



『ムーニー、ワームテール、パッドフット、プロングズ。
 我ら悪戯坊主の味方が送る最高の品、"忍びの地図"』



ハリー「地図? 文字が浮かびあって……わーお、これ、ホグワーツの地図かい?
     知らない隠し通路がいくつも……しかも、この地図の上を動いてる名前って」

フレッド「その通り。誰がどこに居るかぜーんぶ表示されるってわけさ」

ジョージ「な? これを使えばホグズミードまでひとっ跳びでございってね。まあ、実際は少し歩くけどな。
     ほら、ここ。この通路を使え。他はフィルチが知ってたり、暴れ柳の真下だったりして駄目だ」

ハリー「凄い地図だね……」

フレッド「全くだ。ムーニー、ワームテール、パッドフット、プロングズ。彼らは天才だよ」

ジョージ「是非ともお会いしたいものだな。それじゃ、ハリー。楽しい週末を過ごしてくれたまえ」

フレッド「ああ、それと使ったら消しとけよ。杖で叩いて"いたずら完了"って言えば消えるからな。
     それではホグズミードで会おう」

ハリー「……よし、それじゃあ透明マントを取ってきて……マミも呼ぼうかな。行きたがってたし。
     マミは……へえ、こんなところに隠し部屋があったんだ……ん? 一緒にいるインキュベーターって誰だ?
     まあいいや、とりあえずいってみよう。"いたずら完了"っと」
627 : [saga sage]:2013/04/05(金) 22:50:48.59 ID:CiavE3VX0

透明の部屋


マミ「はぁ……はぁ……」

QB「マミ、少し休んだらどうだい? もう朝からずっとじゃないか。根を詰め過ぎると毒だよ」

マミ「分かってるけど……でも、一回も成功してないし……大丈夫。まだ、出来るわよ……」

QB「……」

QB(確かに体力はそれほど消耗してない……それよりも精神的な疲労が大きいのか。
   やっぱり、この魔法のシステムって……)

マミ「ほら、キュゥべえ。カエル。次の。早く並べて……」

QB「……分かったよ。でも、本当に無理はしないでおくれよ?」ヒョイッ

マミ「大丈夫……さあ、行くわよ……集中して……」


蛙「ゲコッ」


マミ「すぅー……はぁー……エンゴージオ!(肥大せよ)」ピカッ


蛙「……ゲコッ」ムクムク


マミ「……っ、やった! やったわ! 蛙がどんどん大きくなってる! 成功よ、キュゥべえ!」

QB「おめでとう、マミ! ほら、やっぱり練習すればできるようになるんだよ!」

マミ「ええ、そうね……本当に、良かった……」


蛙「ゲコ」ムクムクムクムクムクムク


QB「……あー、マミ? ちょっと力が入りすぎたかな? どこまで大きくしようとしたの?」

マミ「え? そんな、一回りくらい大きくなればと思って……」


蛙「ゲ コ ゲ コ」ムクムクムクムクムクムクムクムクムクムクムクムクムクムクムクムクムクムク

628 : [saga sage]:2013/04/05(金) 22:51:28.97 ID:CiavE3VX0

透明の部屋前 廊下


ハリー「えーと、地図だとこの辺だったんだけど……ドアが見えないのか。参ったな……」


バタン!


ハリー「うわ、急に壁が消えて……あ、マミ! ちょうど良かった。あのさ、ホグズミードに――」

マミ「し、閉めて! キュゥべえ、閉めて! ドア閉めて!」

QB「無茶言わないでくれよ! こんなの、もう――」

ハリー「え、どうしたの……うわ、なんだこれ! 部屋の入り口から、でっかい緑色の風船みたいなのが――」


蛙「ゲ コ ゲ コ ゲ コ ! 」


パァーーーーーーーーン! びちゃっ、びちゃびちゃびちゃっ



ハリー「あーあ、廊下が内臓塗れ……マミ、何をしてたの?」

マミ「魔法の練習……肥らせ呪文をカエルにかけたんだけど……はぁ、結局失敗ね。掃除しないと……」

ハリー「あー、いや。マミ。その前にちょっと聞いてよ。フレッドとジョージからさ、良いものを貰って――」

フィルチ「ああ! 貴様ら、何をやっている!」

ハリー「うわ、フィルチ……なんてタイミングで……」

マミ「ああ、フィルチさん。ごめんなさい……部屋の中で魔法の練習してたら、こんな風に……」

フィルチ「どんな失敗をしたらこうなるというんだ! まったく貴様は! 私を過労死させるつもりか!?」

マミ「ごめんなさい。ちゃんと掃除はしますから――スコージファイ!(清めよ)」


パァン!


QB「わぷっ! ぺっ、ぺっ、口の中に入った……」ショボン

フィルチ「やめろやめろ! 貴様がやっても肉片が飛び散るだけだ! モップを持ってきてやるから大人しく待ってろ!」

マミ「すみません……それで、ハリーくん、なにか用事だった?」

ハリー「あーいや、その……何でもないんだ。掃除、頑張ってね」

マミ「? うん、それじゃ、またね」

ハリー(……マミは来れそうにないな。悪いけど、誘うのは次の機会にしよう……)

629 : [saga sage]:2013/04/05(金) 22:53:09.21 ID:CiavE3VX0

ホグズミード パブ "三本の箒"


ハーマイオニー「呆れた! それでマミをほったらかしにして来ちゃったの?」

ロン「おいハーマイオニー、仕方ないだろ。マミは掃除で来れなかったんだから」

ハリー「フィルチの前で、地図のことを言うわけにもいかなかったし……」

ハーマイオニー「大体、許可証がないのに……ブラックがここに現れたらどうするつもり?」

ロン「毎晩吸魂鬼がパトロールしてるホグズミードに? 考えすぎさ。
   それに、せっかくのクリスマスなんだ。ハリーにも楽しむ権利はある筈だろ」

ハーマイオニー「それは……そうだけど、でも……」

ロン「マミにはハニーデュークスのお菓子をありったけ買ったしさ。それでいいじゃないか。
   ほら、バタービールで乾杯だ。メリークリスマス!」

ハリー「メリークリスマス!」

ハーマイオニー「もう……メリークリスマス」


チン!


ロン「ぷはっ! やっぱり美味いなぁ、これ。なあハリー、そう思うだろ?」

ハリー「うん、美味しい。それに、凄く温まる……いいなあ、これ。ホグワーツでも出ればいいのに……」

ロン「分かってないな、ハリー。ここで飲むから美味いんじゃないか」

ハーマイオニー「そんなこといって、ロンはマダム・ロスメルタが気になってるだけでしょ?」

ロン「ぶはっ、げほっげほっ! 違う! 確かにマダム・ロスメルタは綺麗だけど――」

ハリー「はは、ロン。顔が赤くなってるよ――」グビッ


ガチャッ


ハリー「ぶーーーーーーっ!」

ロン「……よーし、ハリー。僕の顔を冷ます為にやったんだっていうなら、表に出ろよ。
   口の中にいっぱい雪を詰めてやるから」ポタポタ

ハリー「げほっ、ち、違うってば。あれ、あれ!」
630 : [saga sage]:2013/04/05(金) 22:53:50.59 ID:CiavE3VX0

マクゴナガル「ギリーウォーター。シングルで」

ハグリッド「蜂蜜酒を暖めてくれ。そうさな、とりあえず4杯分くれや」

フリットウィック「私はいつもの奴を――大臣は何にしますか?」

ファッジ「ラム酒を貰おうかな……ホットバタードで」



ロン「げー! 先生たちがなんで……ああそうか、最後の週末だもんな、クソッ!」

ハーマイオニー「不味いわね。ハリー、透明マントをしっかり被って……」

ハリー「うん……持ってきて良かったよ、これ……」バサッ

ロン「机の下に入っとけ。ジョッキも、ほら……三人分あると不味い」

ハーマイオニー「一応、私達も隠れておきましょう……モビリアーブス(木よ動け)」


ガサッ


ハーマイオニー「これでクリスマスツリーの陰になったから、先生方からはこっちが見えない筈……
          でも、どれくらい居るつもりかしら? 夜になったら吸魂鬼が……」

ロン「いざとなったら透明マントで強行突破するしかないだろ。まあ、多分ばれないさ。
   にしても、魔法省大臣がわざわざ何の用だ?」
631 : [saga sage]:2013/04/05(金) 22:54:31.61 ID:CiavE3VX0

ロスメルタ「はい、ご注文の品ですわ」

ファッジ「やあ、ママさん。久しぶりだね、こっちにきて一緒に飲まないか?」

ロスメルタ「よろしいんですの? 光栄ですわ」

ファッジ「さ、ここにどうぞ――やれやれ、それにしてもようやく一息着けるな。
     あの吸魂鬼どもの相手は、酷く億劫になる……」

ロスメルタ「そんなものを私のパブに寄越したんですの? それも二回も」

マクゴナガル「この前は学校にまで入りこんで――」

フリットウィック「ハリー・ポッターは危うく墜落死するところでした!」

ファッジ「そう皆して私を責めんでくれ……仕方がない、用心のためだよ。シリウス・ブラックを捕まえる為にはね」

ロスメルタ「シリウス・ブラック……いまでも信じられませんわ。あのシリウスが、まさか闇の陣営になんて……」

ファッジ「ではこの話も知らんのだろうな。奴の犯した最悪の所業は」

ロスメルタ「最悪の……? 捕まった時の、あの事件よりも?」

マクゴナガル「ええ、その通りです……ホグワーツ時代、ブラックの一番の親友が誰だったか、覚えていますか?」

ロスメルタ「ええ、もちろんですわ! あの二人ときたら、いつも一緒で……愉快なことをたくさんしでかしましたわ。
       あのシリウス・ブラックと――ジェームズ・ポッターは!」



ハリー「……!」ガタッ

ロン「わ、馬鹿! 座ってろって!」

ハーマイオニー「ハリー、ばれちゃう、駄目!」



ハグリッド「ああ、あんの二人には手を焼かされたなぁ……禁じられた森に近づけないことに、俺ぁ半生を費やしたよ」

ファッジ「ブラックの最悪の所業とはね、ロスメルタ。そのジェームズ絡みなんだ。
     ブラックはジェームズが結婚するとき付添人を務めて、さらにはハリーの名付け親にまでなった!
     だというのに、ブラックはそのジェームズを裏切ったのさ……」


ハリー「……ブラックが、父さんを……」
632 : [saga sage]:2013/04/05(金) 22:57:58.81 ID:CiavE3VX0

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ロスメルタ「"忠誠の術"? その魔法をブラックが破ったから、ポッター夫妻はヴォルデモートに?」

ファッジ「ああ。それが一番助かる確率が高いとダンブルドアが判断したんだ。複雑な魔法なんだがね」

フリットウィック「情報を人間の中に封じ込める魔法です。その人間が自ら情報を漏らさない限り、
          どうやっても封じられた情報は――リリーとジェームズの居場所は見つからない」

ファッジ「だがブラックは"秘密の守人"――情報を自分の中に封じ込める役になってすぐ、
     ヴォルデモートに密告をした。一週間と経たないうちにね」

ハグリッド「それをあのくそったれの裏切り者が! ああ、俺が"秘密の守人"だったら!」

マクゴナガル「ハグリッド、声を落として!」

ロスメルタ「そうですわ、ハグリッド。それに、次の日には魔法省が追いつめて……」

ファッジ「……だったら良かったのだが、最初に奴を見つけたのはピーター・ペティグリューだった」

ロスメルタ「ペティグリュー……ジェームズとシリウスの後にくっついていたあの子が……?」

マクゴナガル「ええ、そうです……優等生とは言えませんでしたが、ジェームズ達と仲が良くて……」

ファッジ「その彼がブラックを追い、見つけ、そして……あの事件だ。返り討ちにあったんだよ。
     彼の死体は残らなかった。指一本以外はね」

ファッジ「ジェームズを裏切り、その親友までもを殺した。それがブラックの最悪の所業、という訳さ」


ハリー「……」

ロン「……」

ハーマイオニー「……」
633 : :2013/04/05(金) 22:59:09.96 ID:CiavE3VX0
今回分は以上です。短くてすみません。
634 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/04/06(土) 01:04:41.28 ID:ygPJcMmEo
635 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/04/06(土) 06:08:13.40 ID:bIlVF7JRo
636 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/04/06(土) 09:59:16.44 ID:7STnAfmTo
エンゴージオ!(爆発せよ)
637 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/04/06(土) 10:01:07.95 ID:Or48hMt4o
638 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/04/06(土) 20:35:26.63 ID:VkLXpVmIo
このスレのハリーとロンの絡み大好き
ロンの突っ込みがいちいち冴えていて
639 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/04/07(日) 04:53:55.25 ID:9nlVrDy2o
原作もハリーとロンのセリフってこんな感じなの?
640 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/04/07(日) 12:27:14.34 ID:45LLEqQQo
おったまげー!とか
マーリンの猿股!とか
もちのロンさ!とか
結構ロンはネタ要員
641 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/04/07(日) 12:53:34.06 ID:gcuCWWnJo
英語版は読んでないけど、
それは訳の問題では……?
642 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/04/07(日) 15:36:48.78 ID:m2fqbIjK0
おっと、ゆうこりんの悪口を言うのはそこまでだ
643 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/04/07(日) 16:55:36.68 ID:Dqus2suGo
マーリンの猿股はハーマイオニーじゃなかったか?
644 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/04/07(日) 20:54:56.13 ID:45LLEqQQo
名付け親のくだりとかな
645 :1 [sage]:2013/04/20(土) 01:00:39.01 ID:60SCgwtyo
生存報告。Windowsの自動更新に巻き込まれてメモ帳データ消失につき鬱。
646 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/04/20(土) 03:09:50.20 ID:Lau2nyoco
生存報告きたあああぁぁぁああああ!!!

のにそんなのってないよ
647 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/04/20(土) 17:21:26.39 ID:6h3NIu3J0
マジかよ……
気分入れ替えて、のんびり書き直してほしいぜ
まってるからさ!
648 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/04/21(日) 16:58:39.91 ID:hcH5AOvU0
生存報告乙。

ちょっと全世界の窓壊してくる
649 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/04/21(日) 19:16:26.53 ID:dhl2Q2+H0
トム・リドルに代筆させてくる
650 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/04/21(日) 21:18:50.48 ID:RU9LLxo90
>>645
レパロ
651 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/04/21(日) 22:07:08.84 ID:JLf8R6ILo
ビルゲイツ「アバダゲダブラ(電子)」
652 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/04/25(木) 17:14:14.74 ID:oPWUEQZy0
消失って……まさかアズカバンより先も消失したんですか!?
正直投げ出したくなるぐらい落ち込んでいるでしょうが、めげずに完結させてくださいお願いしますorz
653 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/04/26(金) 00:01:37.31 ID:c04e7NCWo
>>651
わろた

654 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/04/27(土) 02:22:33.56 ID:TZFcuuyc0
気を取り直して頑張って下さい支援
http://upup.bz/j/my79791iUtYtm6uyr5Afb1A.jpg

>>459,>>481
これぐらいやればご満足いただけるだろうか?
655 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/04/27(土) 02:25:49.80 ID:0CTIL4Lxo
(ボタンが弾け飛びそうだ!!)
も、もうちょっとグイッと胸張ってみようかマミさん!
656 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/04/28(日) 13:41:52.03 ID:Jta01Mf0o
>>654
2ヶ月でこんなんなったら嫉妬心すらわかないだろうな
657 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/04/28(日) 13:58:54.36 ID:EfY5lqyYo
魔法でも使ったんではと疑うな
658 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/04/28(日) 15:29:23.78 ID:Q5DgaTsf0
ほむらがいたら血の涙流してるな
659 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/04/29(月) 05:57:40.37 ID:8h47ybtko
???「くっ」
660 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/04/30(火) 22:46:50.21 ID:upwgp0NV0
支援したい
661 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/04/30(火) 22:47:16.69 ID:upwgp0NV0
支援したい
662 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/04/30(火) 23:06:21.47 ID:R8rhxIoO0
>>660
連投しちゃうのはまあしょうがない、反映が遅いと出来てないと勘違いするパターンは多いし。
そこまではまだいい、だが何故わざわざageたし。
おかげで>>1が復帰したと思っちゃったじゃないか。どうしてくれる。

今度からメ欄にsageを入れてくれ。冗談抜きでホント頼む。
663 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/04/30(火) 23:23:15.53 ID:8IEEPesi0
つまんないし打ちきりでいいよ
664 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/05/01(水) 04:35:30.80 ID:Wi3RVd8To
このマミさんと、周りの人間関係が凄く好きだ
ずっと待ってる
665 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/05/03(金) 23:07:51.13 ID:piG1KgCp0
支援絵に満足してエタったと絵師スレに書き込みがあったが


・・・まさかね(迫真)
666 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/05/03(金) 23:20:05.78 ID:VMyTUzDCo
二十日に書き溜め消失してるんだから時間かかってもおかしくないだろ
667 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/05/05(日) 04:21:57.22 ID:tTegsIHeO
でも早くマミさんに会いたいよ
668 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/05/07(火) 00:08:47.02 ID:eXByF2zH0
GW中はダメだったか……
この連休でリフレッシュしてくれてるといいんだけどな
669 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/05/07(火) 00:40:10.82 ID:E8OTV9gc0
なるほど、犬になれば幼女をなめても許されるのか……    ちょっとおいたんに噛まれてくる。
670 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/05/07(火) 01:04:01.82 ID:E8OTV9gc0
>>1に乙をするのだ

あまり急がなくていいから、最高のものを書き上げてくれ
671 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/05/09(木) 22:31:39.08 ID:ceIFzxwg0
ぬるぽ
672 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/05/11(土) 15:10:05.73 ID:idQlpKHEo
t
673 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/05/11(土) 15:31:32.23 ID:uNz1a8Two
>>669
お前さんは犬になった瞬間に理性が消し飛ぶから不許可だ

仮に戻れたとしても、どうせ犬状態の時の記憶も残らんレベルまで犬化するだろうしな
674 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/05/11(土) 22:07:21.94 ID:WqhEk4he0
>>673じゃあネズミとしてマミさんの谷間に入ってk 
675 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/05/11(土) 22:13:20.74 ID:WqhEk4he0
あぁ、あぁご主人様。私は何も。おやめ下さい ぎゃぁぁぁぁぁ腕がぁぁぁぁぁ
676 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/05/11(土) 22:22:59.68 ID:WqhEk4he0
>>1よ 俺のバジリスクも、もう限k あぁぁぁぁぁ残りのうでがぁぁぁぁぁちくしょぉぉぉぉぉ 
677 :>>1 :2013/05/12(日) 00:43:57.01 ID:uMDi0qg20
今からはじめます
678 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/05/12(日) 00:48:03.39 ID:WwfH4JsDO
はは、まさか
679 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/05/12(日) 00:49:49.04 ID:Oq36irj80
なんだと
680 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/05/12(日) 01:15:32.35 ID:15EO7x0k0
>>1の偽物か?それとも本物か?
681 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/05/12(日) 21:04:07.84 ID:uMDi0qg20
俺が思うに>>677は、偽物。理由は名前が1でなく>>1だから。ゆとり乙
682 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/05/12(日) 22:34:53.98 ID:j0bzEpvS0
>>681
>>328以降は別人だったのかよ(驚愕)
683 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/05/12(日) 22:36:34.11 ID:j0bzEpvS0
(あっ・・・ID)
684 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/05/12(日) 23:11:26.87 ID:YXVq3mhGo
せめてID変えろよ
685 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/05/12(日) 23:42:24.96 ID:Eob09MkJo
これが>>1を待ちわびるあまり精神に異常をきたした
ID:uMDi0qg20の起こした悲しい事件の顛末であった


ところで投下はまだかね
686 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/05/12(日) 23:58:49.80 ID:mML4vzDP0
今更な疑問なんだが何でマミさんと同じ魔法少女の杏子や素質のあるまどかやさやかには
ホグワーツの入校案内が届かなかったわけ?
687 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/05/13(月) 01:30:50.35 ID:lh6PgG1n0
マミさんは魔法使いの素質があって
尚且つ事故で発現したからじゃね?
688 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/05/13(月) 16:40:49.84 ID:KgD39JDZ0
>>681
ここまでブーメランだとなんか可哀そうに見えてくるんだが、そっとしといた方が良いか?

>>686
魔法少女の才能=魔法使いの才能とは限らんだろ
どっちの才能もレアなうえ今までQBが魔法界を知らなかったんだし、マミさんが史上初ってことでしょ
689 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/05/13(月) 18:56:25.00 ID:OAth30jIo
>>686
ハーマイオニーみたいに魔法使いの才能はあるのに魔法少女の才能がない例があるから
690 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/05/15(水) 21:47:10.00 ID:8pIjOLAa0
これまさか死の秘宝まで続くんか?
691 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/05/15(水) 21:53:44.19 ID:5myizsYpo
>>690
炎のゴブレットまでらしい
692 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/05/15(水) 21:55:30.70 ID:kTUiFb2Wo
ゴブレットの後ほむループかな
693 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/05/15(水) 23:08:05.23 ID:k0y92OnV0
まぁ、予想はやめようではありませんか
>>1がやりにくくなってはいけませぬからな

>>1はやく帰ってこないかな〜
694 :眞彌 :2013/05/17(金) 00:20:53.88 ID:/MilwNF+0
マミマミマミマミマミマミマミ
695 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/05/18(土) 19:54:40.45 ID:9RDFBDSr0
二週間ぶりに来たけどなんにもないじゃねーかw
696 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/05/19(日) 00:18:30.78 ID:PMU2rp4X0
何もないいまだからこそ、全ての人に届くと思う。みんなに届け                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                               ぬるぽ
697 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/05/19(日) 00:30:08.19 ID:RebWXze90
ガッ
698 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/05/19(日) 15:15:57.18 ID:IESGtLvto
t
699 : ◆jiLJfMMcjk [saga sage]:2013/05/23(木) 05:36:29.01 ID:dpvYtuCx0
>>1です。なんか心配おかけしてすみません。とりあえずトリつけてみます。
消失した部分を完全復元してから投下しようと思ってたんですが、
前の文章を思い出しながら描く作業って意外と心が折れそうになるので土曜の夜に復元できた分だけいったん投下します。


そして>>654すげえ! ありがとうございますありがとうございます。
キュゥべえそこかわれ。上から見おろしたいんだ。
700 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/05/23(木) 16:30:58.63 ID:thA9qCr8o
http://mogera.jp/gameplay?gid=gm0000000578
701 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/05/23(木) 16:31:28.52 ID:thA9qCr8o
すまん誤爆
702 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/05/23(木) 21:24:49.66 ID:gkq8R/vq0
良かった生きてた!!
楽しみに舞ってる!!
703 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/05/24(金) 20:55:55.29 ID:XnM9AODRo
めげずに頑張ってくれ
長期待
704 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/05/24(金) 21:19:46.50 ID:qvicQNoF0
>>1を待ってる間に、童貞卒業したったwww
705 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/05/24(金) 21:24:59.37 ID:4DQk0Yso0
お、帰ってきたか!
楽しみにしてるぜ!!
706 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/05/25(土) 19:36:33.44 ID:/IGjOtZ0O
まってる!
707 : ◆jiLJfMMcjk [saga sage]:2013/05/25(土) 23:44:52.69 ID:mIQJy+4r0
とうか・マギカ
708 : ◆jiLJfMMcjk [saga sage]:2013/05/25(土) 23:46:26.97 ID:mIQJy+4r0

クリスマス休暇 朝食


マミ「うう疲れた……結局昨日は一日中カエルの掃除……全身筋肉痛だわ……」モグモグ

QB「それでも朝からケチャップをたっぷり絞った卵を食べられるんだから、君もだいぶ図太くなったよね」

マミ「だから、慣れちゃったっていったじゃない……そういえば、朝食なのにハリーくん達がいないわね。
   あの三人も、クリスマス休暇はこっちに残る筈だけど」

QB「昨日から様子が変だったよねぇ。ロンとハーマイオニーがホグズミードから帰ってきてから、心ここにあらず、って感じで」

マミ「……風邪でも引いたのかしら? 心配だけど、私は魔法の練習しなきゃいけないし……
   この休み中に、呪文をひとつでも成功させないと……冗談抜きで進級が危ういわ」

QB「大丈夫だよ。一応、進歩の跡は……」

マミ「あなたはそういうけどね、キュゥべえ。私が今練習してる魔法って、10月に習ったやつよ?
   はぁ。結局、授業で先生にコツを聞いても上手くいかないし……ハーマイオニーさんに頼れたらなぁ……」

QB「ラベンダーやパーバティもいないしね。というか、今年のクリスマス休暇は残ってる子少ないなぁ。
   僕らとハリー達を除けば、えーと……全寮合わせて三人しか残ってないよ」

マミ「シリウス・ブラックのせいでしょ。ホグワーツの中に出たんだし……
   にしても確かに静か過ぎね、これは。傍から見ると、だだっ広い大広間でこの人数はシュールだわ」

QB「なんなら、お昼ご飯はサンドイッチでも詰めて、外で食べるのもいいんじゃない?」

マミ「嫌よ、寒いもの……でも、お散歩くらいだったらいいかもね。籠りっぱなしだと病気になりそうだし。
   午後になったら、少し外を歩きましょうか?」

QB「うん。それがいいよ。息抜きは大事さ」
709 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/05/25(土) 23:48:12.32 ID:mIQJy+4r0

図書室


ハリー「……」ペラッ

ロン(手放しじゃ喜べないけどさ。なんだっけ? マルフォイの腕を掻っ捌いたあのヒッポグリフの名前)ヒソヒソ

ハーマイオニー(バックビーク、でしょ。名前くらい覚えなさいよ。彼の為の弁護資料を探してるんだから。
          裁判で負けたら、殺されちゃうのよ。ハグリッドが大泣きしてたじゃない)ヒソヒソ

ロン(ああ、そいつだ。とにかくさ、そいつのお陰でハリーがブラックのこと忘れてくれたのは良かったよな。
    昨日の荒れっぷりったら、今すぐブラックを探しに行きかねないほどだったじゃないか)

ハーマイオニー(忘れたわけじゃないと思うわ……ハリーのお父様の仇みたいなものだもの。
          ハリーは優しいから、今は資料探しに没頭してるけど……)

ロン(なんだっていいよ、ハリーが無茶をしなければ……)

ハリー「……二人とも、どうかした?」

ロン「え? あーいや、別になんでも。ただこの挿絵が酷くてさ。ほら、見てみろよ。
    この事件で有罪になったヒッポグリフに、連中がなにをしたのか……」

ハリー「……うぇー。朝ご飯食べてなくて良かった……絶対に、バックビークは助けないと……」

ハーマイオニー(ナイスフォローよ、ロン。つまりまあ、あなたにしては)

ロン(一言多いんだよ、君は。でも、やっぱりハリー、元気ないな……。
    もうすぐクリスマスだし、なにかすっごいサプライズでもあればいいんだけど)
710 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/05/26(日) 00:09:15.49 ID:R+WWRmC50

午後 校庭


マミ「はぁ……一面雪景色ね。改めて見てみると、凄くいいとこだわ、ホグワーツって。
   昔の貴族が避暑地にしてるようなお城を、丸々学校にしちゃってるんですもの」

QB「創立された時代が時代だしねえ。
   大勢を収容する建物を造ろうとしたら自然とこういう風になったんじゃないかな?
   それに、授業に使う魔法生物のことを考えると、ある程度自然環境は整ってないといけないしね」

マミ「そっか。それもそうよね……はぁ。それにしても、やんなっちゃう。
   こーんな素敵な学習環境の中に居るっていうのに、結局、午前は一回も魔法が成功しなかったし……
   何か、だんだん魔法が下手になってる気がするわ」

QB「そんなことないさ。だって一、二年生の呪文は普通に使えるようになったし、今も使えるだろう?」

マミ「じゃ、才能の頭打ちってところかしらね……正直、来年以降は本当にどうなるか分からないわ、これじゃ」

QB「才能か……マミには才能、あると思うけどな」

マミ「……キュゥべえはなんでそう思うの?」

QB「あー、いや。なんていうか、勘、かな?」

マミ「……」

QB「あ、あ! でも、ほら! ルーピン先生だって言ってたじゃないか!
   ホグワーツに入学できるのは、一部の才能ある子だけだって!」

マミ「励ましてくれるのは嬉しいけど……ごめんね。いまはちょっと素直に喜べないわ」

QB「……」

QB(……確かに、マミは三年生の魔法をほとんど習得できてない。
   前年度までも実技に関しては決して好成績じゃなかったけど、今年はさらに輪を掛けて酷い)

QB(人並み以上に努力はしている筈なのにこれじゃ、心配しだすのも当然か)

QB(……でも、僕の予想が正しければ、マミは――)
711 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/05/26(日) 00:15:00.79 ID:R+WWRmC50

マミ「……って、やめやめ! 気分転換しに来たのに、これじゃ駄目よね。
   さ、散歩の続きをしましょ。今日は湖の方に行ってみましょうか」

QB「――うん、そうだね。でもマミ、気分転換って言うんなら、もうちょっと薄着になった方がしゃんとすると思うよ?」

マミ「薄着って。この寒いのに、そんなのするわけないじゃない」

QB「いや、だって、マミはちょっと着込み過ぎだよ。アンダーウェア重ね着しすぎてコートがパンパンになってるし、
   ニット帽とマフラーで顔は見えないし……なんかもう黒い雪だるまみたいだよ? ちょっと脱ぎなよ」

マミ「や。さむい」ガチガチ

QB「軟弱だなぁ」

マミ「……キュゥべえは素足で雪を踏んでてよく平気ね。寒くないの?」

QB「僕は全環境対応型だからね。まあ大体のところは平気だよ」

マミ「ふぅん……でも、風邪はひかないでね? あ、ホッカイロ使う? なんなら背中に括り付けてあげるけど」スッ

QB「いや火傷しちゃうし。というか、持ってきたのかい、それ?」

マミ「外で授業する時、寒いから……意外とラベンダーさんとかにも好評なのよ、これ」

QB「へえ。まあともかく、僕の心配はしないでいいよ。大抵のウィルスに対する免疫は持ってるし――ぴゃあ!?」ピョイッ

マミ「わっ、わっ。ちょっとキュゥべえ! 急に肩に飛び乗らないでって前にも言ったでしょ!? もう。やっぱり寒いの?
   しょうがないわねえ。はい、マフラー半分分けてあげるから、そんなに引っ付かないで――」

QB「違う! あれ、あれ!」


クルシャン「……」トコトコ


マミ「あら、クルックシャンクスじゃない。こんな寒い日にお散歩……? あら、何か咥えてるわね。手紙……かしら?
   お使い? でも、ハーマイオニーさんならふくろう小屋から学校のふくろうを使えるのに……」

QB「い、いいから! 早く逃げようマミ! またあいつが僕の尻尾を狙う前に!」

マミ「何か面白そうじゃない。ついてってみましょ」ザクザク

QB「えっ、えっ? 冗談だろうマミ!? やめろ、馬鹿な考えはやめるんだ! 早まるんじゃない!」

マミ「だったら降りて、そして一人で帰りなさい」

QB「ヤダよ! 怖いし! 分かってて言ってるだろう!?」
712 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/05/26(日) 00:22:41.45 ID:oTttcNM+o
待ってた!
713 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/05/26(日) 00:27:20.95 ID:cw+FbIHfo
キタアァアアァァァァ
待ってたぜ!本当に!
714 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/05/26(日) 01:36:25.02 ID:7tAJZ0WQO
乙!
待ちくたびれたぜ…!
715 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/05/26(日) 04:34:15.90 ID:ZyHmm0/Mo
>>344>>374>>152>>699>>392>>331>>678>>732>>324>>528>>57>>603>>139>>155>>615>>590>>683>>103>>404>>637
>>487>>326>>449>>548>>530>>444>>41>>36>>614>>481>>379>>238>>633>>328>>630>>214>>255>>611>>538>>33
>>390>>171>>73>>255>>11>>6>>357>>414>>642>>316>>151>>217>>15>>699>>747>>458>>739>>32>>322>>470>>410
>>352>>738>>439>>566>>243>>300>>353>>275>>218>>742>>446>>290>>246>>457>>296>>603>>121>>187>>169
>>404>>184>>220>>400>>641>>208>>431>>213>>678>>91>>22>>280>>78>>461>>95>>321>>10>>448>>595>>227
>>291>>517>>686>>748>>62>>538>>118>>249>>706>>388>>653>>139>>608>>302>>30>>65>>733>>242>>743>>74
>>272>>152>>724>>367>>472>>734>>64>>317>>210>>504>>608>>727>>439>>605>>38>>226>>722>>287>>182>>360
>>321>>217>>491>>351>>282>>474>>593>>274>>547>>107>>546>>699>>80>>163>>420>>63>>227>>737>>273>>730
>>249>>418>>448>>287>>644>>420>>574>>76>>29>>13>>397>>246>>503>>747>>527>>227>>589>>51>>23>>695
>>722>>25>>9>>392>>88>>236>>378>>361>>215>>221>>610>>633>>669>>147>>526>>338>>720>>601>>367>>732
>>612>>485>>244>>389>>711>>83>>439>>734>>28>>286>>705>>52>>295>>346>>140>>530>>724>>500>>744>>194
>>626>>113>>505>>402>>450>>475>>253>>67>>457>>500>>678>>192>>744>>316>>153>>76>>5>>136>>103>>290
>>155>>585>>437>>294>>364>>410>>44>>357>>604>>402>>233>>716>>157>>635>>416>>632>>137>>482>>339>>637
>>530>>630>>726>>682>>705>>731>>68>>58>>270>>158>>212>>105>>594>>506>>468>>254>>549>>75>>107>>201
>>73>>358>>192>>488>>239>>329>>220>>578>>215>>630>>357>>95>>605>>288>>50>>585>>355>>107>>105>>513
>>209>>357>>75>>676>>610>>623>>1>>717>>74>>308>>39>>431>>499>>527>>670>>78>>747>>497>>293>>626>>104
>>481>>391>>437>>315>>746>>544>>420>>509>>112>>628>>115>>187>>554>>725>>59>>554>>691>>133>>111>>730
>>610>>507>>483>>687>>503>>230>>230>>379>>333>>616>>109>>723>>302>>423>>719>>95>>93>>478>>207>>720
>>393>>524>>566>>452>>328>>507>>584>>439>>486>>397>>298>>242>>130>>235>>745>>359>>464>>373>>691
>>481>>664>>632>>154>>633>>727>>246>>360>>184>>216>>201>>577>>740>>17>>278>>317>>524>>112>>5>>260
>>303>>502>>638>>537>>496>>246>>251>>118>>187>>581>>599>>100>>463>>3>>732>>440>>249>>341>>623>>465
>>449>>454>>559>>727>>20>>332>>89>>25>>592>>597>>327>>343>>485>>114>>88>>731>>365>>206>>167>>195
>>267>>658>>57>>248>>347>>305>>589>>219>>19>>381>>668>>473>>189>>645>>493>>521>>733>>517>>362>>580
>>704>>315>>207>>42>>295>>571>>247>>462>>16>>301>>728>>673>>358>>226>>269>>663>>64>>488>>682>>444
716 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/05/26(日) 04:34:41.98 ID:ZyHmm0/Mo
>>35>>14>>259>>652>>299>>146>>402>>741>>93>>478>>549>>40>>750>>61>>131>>444>>368>>95>>611>>443>>130
>>653>>303>>94>>256>>114>>276>>78>>111>>77>>113>>125>>336>>15>>423>>481>>416>>413>>574>>144>>212
>>144>>273>>744>>587>>641>>89>>448>>334>>219>>307>>236>>521>>400>>492>>635>>676>>570>>745>>3>>682
>>339>>696>>541>>69>>362>>204>>643>>506>>416>>506>>649>>688>>500>>485>>578>>588>>183>>161>>56>>490
>>577>>140>>139>>461>>65>>708>>455>>68>>640>>573>>406>>586>>364>>475>>197>>567>>367>>702>>232>>122
>>170>>621>>336>>748>>459>>518>>158>>515>>258>>555>>341>>397>>693>>51>>462>>651>>506>>529>>540>>329
>>375>>692>>658>>572>>509>>274>>524>>741>>396>>374>>160>>267>>709>>158>>725>>477>>316>>489>>734
>>80>>380>>63>>131>>91>>713>>636>>619>>503>>214>>52>>127>>156>>710>>699>>664>>233>>472>>655>>628
>>65>>144>>54>>222>>119>>530>>537>>608>>513>>657>>687>>143>>719>>67>>233>>682>>702>>102>>434>>166
>>561>>322>>112>>509>>236>>345>>231>>140>>223>>326>>204>>366>>380>>425>>485>>159>>212>>342>>672
>>278>>64>>87>>345>>296>>18>>296>>398>>452>>462>>551>>263>>33>>662>>22>>268>>257>>252>>408>>479
>>611>>95>>207>>286>>579>>366>>497>>170>>287>>615>>448>>350>>701>>42>>646>>719>>338>>293>>421>>50
>>683>>82>>5>>705>>350>>262>>206>>8>>740>>34>>618>>85>>240>>154>>663>>606>>651>>83>>142>>515>>530
>>466>>572>>388>>435>>159>>680>>105>>208>>23>>38>>290>>28>>742>>640>>289>>198>>647>>279>>231>>515
>>471>>668>>276>>326>>568>>359>>468>>333>>139>>209>>48>>710>>596>>483>>118>>526>>587>>326>>549>>625
>>576>>616>>505>>114>>63>>401>>393>>294>>165>>5>>14>>83>>281>>340>>651>>639>>57>>233>>27>>266>>281
>>111>>13>>104>>637>>600>>430>>435>>474>>295>>260>>339>>49>>374>>402>>450>>16>>695>>614>>20>>709
>>300>>298>>597>>189>>354>>79>>215>>620>>360>>201>>730>>373>>305>>617>>222>>734>>301>>696>>278>>560
>>326>>184>>686>>25>>199>>631>>639>>219>>589>>585>>519>>137>>432>>707>>491>>511>>172>>360>>120>>372
>>492>>676>>206>>714>>659>>506>>659>>187>>316>>193>>513>>499>>129>>538>>698>>9>>426>>167>>598>>261
>>734>>693>>642>>474>>453>>63>>83>>572>>435>>422>>314>>361>>627>>277>>270>>382>>186>>456>>698>>379
>>446>>507>>5>>394>>516>>431>>560>>363>>692>>495>>347>>634>>387>>70>>336>>450>>153>>157>>134>>574
>>494>>450>>747>>13>>82>>183>>469>>29>>561>>686>>475>>318>>691>>119>>84>>371>>678>>446>>312>>423
>>195>>59>>112>>530>>508>>264>>687>>641>>88>>407>>385>>537>>404>>398>>619>>587>>116>>648>>397>>52
717 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/05/26(日) 04:35:07.98 ID:ZyHmm0/Mo
>>121>>246>>548>>598>>643>>408>>175>>479>>449>>202>>399>>59>>711>>520>>691>>637>>97>>245>>238>>90
>>194>>129>>690>>571>>163>>502>>713>>371>>670>>169>>491>>165>>717>>338>>57>>374>>512>>536>>72>>713
>>131>>674>>703>>71>>561>>50>>316>>48>>139>>635>>241>>268>>575>>62>>431>>326>>24>>51>>245>>192>>541
>>159>>129>>466>>532>>640>>252>>604>>603>>435>>734>>526>>388>>55>>336>>438>>370>>383>>576>>255>>624
>>79>>685>>525>>405>>708>>576>>650>>150>>366>>309>>308>>494>>25>>89>>384>>276>>693>>236>>710>>676
>>348>>730>>346>>35>>350>>729>>611>>604>>602>>704>>683>>536>>479>>337>>494>>304>>236>>643>>670>>545
>>413>>569>>289>>47>>94>>232>>282>>54>>158>>293>>401>>138>>639>>435>>487>>617>>296>>341>>469>>249
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720 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/05/26(日) 04:36:58.40 ID:ZyHmm0/Mo
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>>474>>522>>259>>579>>155>>144>>582>>309>>289>>79>>443>>598>>716>>186>>429>>223>>440>>65>>457>>499
>>51>>620>>523>>709>>667>>115>>385>>222>>365>>451>>696>>136>>710>>525>>291>>103>>357>>600>>392>>435
>>239>>400>>477>>667>>622>>167>>731>>329>>666>>167>>379>>535>>690>>338>>451>>54>>723>>673>>418>>423
>>554>>383>>393>>95>>486>>749>>694>>127>>433>>236>>365>>83>>712>>282>>705>>129>>263>>283>>44>>429
721 :寝落ちファック ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/05/26(日) 05:08:06.83 ID:R+WWRmC50

ホグワーツ敷地内 暴れ柳付近


クルシャン「……」テコテコ


マミ「こんなとこまで来ちゃったけど……どこに行くつもりかしら?
   てっきり、ハーマイオニーさんが誰か別の寮の子とかと文通でもしてるのかと思ったけど。ねえキュゥべえ?」

QB「猫は嫌だ猫は嫌だ」ガタガタ

マミ「んもうっ! しっかりしなさいってば。あなたも猫でしょう?」

QB「仮に猫だとしても、僕は猫という名の紳士だよ。あの猫は猛獣じゃないか!」

マミ「そんなこと――って、クルックシャンクスが近づいて行く、あの木って……」


暴れ柳「」ザワザワザワ


マミ「あれ、暴れ柳じゃない! 近づく生き物を無差別に殴るから近づいちゃいけないって!」

QB「え、それは本当かい!? よし、きゅっぷいされてしまえ!」

マミ「なに言ってるの! 早く助けないと――」


暴れ柳「……っ」ぶおんっ!


マミ(あ――駄目、間に合わない……)


クルシャン「ニャー」 ひょい、ぱしっ

暴れ柳「……」ピタッ


マミ「へ? 嘘、暴れ柳が大人しくなった……?」

QB「ああっ! 何をやってるんだ! 諦めるな! そこだ! 叩き潰せ――きゅっ!?」ギュッ

マミ「どうなってるのかしら。クルックシャンクスが何かしたみたいだけど……」


クルシャン「……」トテテテ


マミ「あ、木の根っこの下に入って行った……あそこに通路があるのね」スタスタ

QB「……マ、マミ。まさかついて行く気かい? また前みたいに待ち伏せされてたらどうするのさ」

マミ「でも、心配じゃない。危ないところに行ったりしたら……今なら暴れ柳も大人しいから、ついていけるわ」

QB「ねえ、帰ろうよ。マミがそこまで世話を焼く義理なんてないじゃないか」

マミ「お友達のペットの危機だもの。見過ごせないわ」
722 :寝落ちファック ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/05/26(日) 05:08:34.81 ID:R+WWRmC50

叫びの屋敷 内部


マミ「……けほっけほっ。凄い埃っぽい! ここ、一体どこかしら? 古いお屋敷の中みたいだけど……」

QB「長い間使われてないみたいだね。そこら中ボロボロだ。何かが暴れたみたい……」

マミ「な、なんか不気味な感じね。窓も、全部塞がれてるし……これじゃ外の様子も見えないわ。
   なんでホグワーツからこんなところに通路が繋がってるのかしら……?」

QB「暴れ柳を植える時に、気が付きそうなもんだけどね。それとも植えた後にできたのかな、この通路」

マミ「さあ……? それより、クルックシャンクスはどこに行ったのかしら。出口を探してみましょう」

QB「ねえ、マミ。もう戻ろうよ。あの通路、かなり長かったじゃないか。
   もしも校外にまできちゃってたら、罰則ものだよ」

マミ「うーん、そうね……でも、クルックシャンクスが心配だし。とりあえず外の様子を見て、それから考えましょう」

QB「お気楽だね……ばれたら困るのは君だよ? そこまでいうなら、僕は何も言わないけどさ」

マミ「もちろん、ばれないように気を付けはするわよ。さあ、出口をさがしましょ?」


ぎしっ


マミ「? キュゥべえ、いま何か変な音しなかった?」

QB「君が歩いた音じゃないのかい? そもそも僕、マフラーにくるまってるから外の音が聞こえ辛いんだよ。
   あとだんだん暑くなってきた」

マミ「じゃあ肩の上から降りればいいのに……まあいいわ。さ、行くわよ」
723 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/05/26(日) 05:09:55.30 ID:R+WWRmC50

叫びの屋敷 出口


マミ「ここね。扉は……まあ内側からなら鍵も開くわね。よし、っと。それじゃあ少しだけ開けて、外の様子を……」ギィィィ


わいわいがやがや


マミ「……このお屋敷、村の外れに建ってるみたいね。
   あの村、賑やかでみんな楽しそう……いるのは魔法使いだけみたい」

QB「ってことはここ、ホグズミードじゃないか。
  イギリスで完全にマグルがいない村はホグズミードだけだって聞いたよ」

マミ「じゃあここは例の"叫びの屋敷"ね。パーシーさんがくれたあの紙に書いてあったわ」

QB「誰もいない筈なのに不気味な声が聞こえてくるとかいうあれか……」

マミ(……あれ? ということは、この通路を使えばいつでもホグズミードに来れる……?)

QB「……」ジーッ

マミ「あ、あはは。いやね、キュゥべえ。校則を破る気なんてないわよ」

QB「僕は何も言ってないし、既にここに居る時点で校則違反だけどね」

マミ「だ、だって知らなかったんだもの……あ、クルックシャンクス!」


クルシャン「……」タタタ


マミ「ホグズミードに向かうみたいね……届け物かしら? でもそれならやっぱりフクロウを使えばいいし……」

QB「ねえ、もう引き返したら? 危なくないってことはもう分かっただろう?」

マミ「うーんでも、やっぱり気になるし……それに、ホグズミードもちょっとだけ見てみたいし……」

QB「……はぁ。分かったよ。でもここ、本来は立ち入り禁止みたいだよ? 誰かに見られたら不味いんじゃない?
   ここから村までは距離があるし、黒いコートは目立つよ」

マミ「うーん……あっ、それじゃ、魔法で色を白く変えるわ。それくらいなら、私にもできるし」

QB「なるほど、雪上迷彩か。よし、それで行こう。幸い、今のマミの恰好なら先生方に合っても一目じゃばれない。
   僕もこうして……マフラーに完全にくるまってれば、外からは分からないしね」

マミ「え、ええ……キュゥべえ、急に乗り気ね? どうしたの?」

QB「この前ロン達が持ってきてくれたお菓子、美味しかったからね。ねえマミ、僕、ぺろぺろ酸飴が欲しいなぁ」

マミ「もう、キュゥべえったら……分かったわよ。買ってあげる。でも、クルックシャンクスを追うのが先よ?」
724 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/05/26(日) 05:26:03.73 ID:R+WWRmC50

ホグズミード


クルシャン「……」スタスタ


からんからーん


マミ「……この建物に入って行ったわ。フクロウ事務所……つまり、郵便屋さんね。
   でもなんでわざわざホグズミードまで?」

QB「速達とかが必要だったんじゃないのかな。学校のフクロウって、そこまではやってくれないだろう?」

マミ「……確かにそうだけど……ハーマイオニーさんなら、きちんと余裕を持って行動するような……」

QB「緊急だったんじゃないかな? まあ、ここで考えてても分からないよ。なんならハーマイオニーに聞くかい?」

マミ「うーん……気にはなるけど、それだとホグズミードに来ちゃったことも言わないといけないし。
   ハーマイオニーさん、きっと怒るわよね? 前に街中で魔法を使っちゃったときも怒られたし……私が悪いんだけど」

QB「確かに今の彼女は何か抱え込んでるみたいだし、これ以上心配事を増やすのはよくないかな。
   それじゃあ、マミ」

マミ「ええ。どうせここまで来ちゃったんだし、ホグズミードを回ってみましょう!」




マミ「ハニーデュークス! 前に話を聞いた時から、一度来てみたかったの!」

QB「ほんとにお菓子だらけだね……へえ、こっちの棚は魔法のお菓子だ。
   食べると火を噴いたり、宙に浮かんだりするらしいよ」

マミ「面白そう……だけど、ちょっと怖いわね。キュゥべえ、食べてみてくれる?」

QB「嫌だよ。それより、百味ビーンズを買っていこう。ほら、量り売りしてくれるみたいだよ」





マミ「んぐっ、んぐっ……ふぅ! 三本の箒のバタービール、とっても美味しいわね。
   アツアツを呑まなきゃ駄目って言うから、今年度は飲めないかと思ってたけど……」

QB「僕にも、僕にも頂戴!」モゾモゾ

マミ「そんなに慌てなくても……はい、どうぞ」ズポッ

通行人(なんだあの布の雪だるま、バタービールの瓶を……ええええええ! 飲み口をマフラーに突っ込んだ!
     どう見てもそこは肩だろ! 酔っぱらいか?)

QB「ありがとう。んぐっ、んぐっ」

通行人(う、うわあああ! 肩から飲んでる! あれ絶対に人じゃないよ! なんかの魔法生物だよ!)





マミ「これがあの悪名高いゾンコの店ね……なんか入るのが怖いわ」

QB「まあ、ちょっと入って中を見るくらいなら大丈夫だよ。というか仮にもお店なんだし、危なくはないさ」

マミ「そ、そうよね! よーし、それじゃあ行くわよ……」


からんからーん ばくっ


ぎゃー



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725 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/05/26(日) 06:24:59.15 ID:R+WWRmC50

数時間後 叫びの屋敷


マミ「……ふぅ! 楽しかった! ゾンコのお店はびっくりしたけど」

QB「あれは驚いたよねえ。まさか作り物のおっきなカエルが襲いかかってくるなんて……」

マミ「頭を甘噛みされる程度で済んだけどね……さ、お土産も持ったし、帰りましょ」

QB「マミ、部屋に着くまで、お菓子の類はポケットから出しちゃ駄目だよ?」

マミ「分かってるわよ。ばれたら不味いものね……じゃ、帰りましょ。えーと、確かこっちに隠し通路が……」

QB「……あ」

マミ「? どうしたの、キュゥべえ?」

QB「……忘れてた。マミ、暴れ柳だ。あれからかなり時間が経ってる」

マミ「……あ」

QB「……とりあえず、根元まで行ってみよう。慎重にね」
726 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/05/26(日) 06:26:16.27 ID:R+WWRmC50
ス・マーヌ。これから出ねばならないのでいったん終了です
727 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/05/26(日) 07:13:04.52 ID:X7oFhrmDO
お疲れ様!

マミさんが魔法を使えなくなってきてる?
因果の関係かな?

期待
728 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/05/26(日) 07:16:36.42 ID:OWKEk7qHo

でもQBの言では才能が失われてるわけじゃないみたいだからな
魔法少女の適性と魔法使いの適性が相反するとか?
729 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/05/26(日) 09:42:18.70 ID:CbjdOuyAO
つまり乳や尻がデカくなるほど魔法が…
730 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/05/26(日) 09:44:24.56 ID:8Bpit0mjo
つまりハーマイオニーは貧乳チビ尻
731 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/05/26(日) 09:45:12.05 ID:OWKEk7qHo
>>730の部屋から絶叫が聞こえたんだが?
732 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/05/26(日) 13:09:16.38 ID:H7auR0xj0
投下きたあああ

機械的に復元しなかったのか
733 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/05/26(日) 18:28:37.38 ID:COx+zdJxo
>>642>>384>>47>>690>>749>>114>>774>>151>>705>>468>>101>>79>>9>>346>>772>>692>>301>>740>>799>>661
>>220>>707>>251>>202>>776>>442>>456>>53>>411>>715>>694>>794>>761>>584>>743>>75>>557>>93>>780>>224
>>58>>232>>540>>29>>123>>40>>768>>122>>700>>59>>341>>606>>310>>543>>582>>751>>198>>635>>362>>113
>>355>>73>>312>>297>>147>>68>>390>>127>>291>>583>>184>>522>>323>>213>>645>>362>>180>>767>>262>>239
>>67>>548>>50>>649>>499>>248>>483>>60>>360>>211>>415>>433>>522>>712>>580>>590>>301>>706>>80>>84>>89
>>407>>301>>447>>768>>481>>413>>229>>720>>721>>296>>468>>770>>145>>167>>218>>627>>226>>577>>38>>641
>>560>>553>>789>>349>>53>>694>>429>>137>>783>>230>>543>>284>>677>>511>>765>>290>>740>>684>>210>>236
>>179>>380>>518>>397>>206>>744>>173>>244>>584>>382>>3>>336>>371>>351>>389>>264>>779>>526>>247>>209
>>530>>86>>780>>494>>375>>719>>377>>584>>154>>729>>763>>533>>446>>359>>739>>389>>532>>182>>173>>114
>>509>>484>>535>>98>>748>>514>>623>>194>>723>>91>>723>>8>>70>>417>>383>>789>>794>>167>>142>>722
>>675>>367>>488>>614>>756>>220>>795>>128>>334>>179>>636>>17>>713>>733>>764>>427>>556>>158>>349>>647
>>357>>717>>497>>739>>705>>490>>105>>47>>411>>234>>721>>778>>722>>535>>733>>142>>529>>60>>475>>708
>>491>>620>>629>>455>>247>>384>>613>>596>>231>>693>>152>>147>>389>>91>>51>>78>>196>>98>>489>>429
>>466>>351>>553>>398>>492>>281>>458>>166>>188>>354>>657>>8>>182>>312>>255>>566>>124>>50>>796>>16
>>143>>405>>291>>194>>482>>487>>291>>171>>116>>309>>637>>466>>62>>235>>158>>343>>692>>324>>531>>246
>>539>>428>>492>>793>>194>>616>>42>>190>>631>>243>>332>>235>>534>>525>>717>>220>>16>>87>>335>>325
>>1>>386>>158>>158>>729>>49>>481>>459>>295>>661>>197>>722>>353>>190>>115>>168>>231>>304>>798>>474
>>233>>207>>361>>150>>427>>376>>237>>761>>700>>160>>761>>286>>317>>118>>214>>366>>599>>673>>660
>>69>>581>>12>>259>>696>>180>>489>>200>>177>>163>>35>>410>>369>>395>>559>>795>>771>>795>>756>>671
>>716>>156>>471>>34>>370>>36>>633>>243>>695>>293>>312>>476>>304>>570>>372>>483>>259>>571>>660>>421
>>270>>790>>200>>29>>785>>170>>23>>740>>41>>177>>656>>196>>648>>690>>566>>683>>522>>8>>577>>15>>319
>>318>>89>>624>>1>>347>>394>>661>>767>>200>>130>>757>>399>>158>>741>>569>>181>>680>>609>>358>>536
>>205>>425>>571>>88>>147>>579>>665>>161>>98>>117>>479>>186>>741>>479>>532>>335>>339>>499>>534>>469
>>132>>627>>395>>701>>7>>275>>510>>365>>10>>515>>570>>434>>285>>657>>581>>63>>521>>741>>161>>638
734 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/05/26(日) 18:29:12.92 ID:COx+zdJxo
>>92>>266>>251>>759>>550>>275>>266>>240>>154>>560>>251>>546>>516>>740>>252>>487>>269>>766>>547>>730
>>457>>202>>705>>108>>476>>445>>247>>677>>799>>502>>769>>264>>752>>728>>13>>226>>193>>253>>380>>753
>>125>>468>>442>>377>>154>>711>>342>>701>>641>>743>>358>>42>>647>>465>>518>>292>>711>>395>>291>>412
>>554>>363>>291>>567>>589>>484>>20>>168>>436>>522>>293>>104>>164>>669>>257>>74>>210>>157>>714>>153
>>756>>800>>179>>473>>292>>90>>67>>582>>501>>430>>336>>64>>721>>103>>653>>404>>122>>21>>40>>644
>>143>>7>>182>>399>>81>>392>>556>>795>>544>>270>>750>>544>>448>>423>>35>>538>>490>>616>>238>>120
>>302>>40>>254>>154>>443>>375>>175>>482>>218>>488>>625>>225>>669>>224>>305>>261>>779>>300>>4>>249
>>548>>697>>672>>582>>434>>362>>398>>672>>481>>549>>174>>520>>2>>328>>163>>376>>502>>645>>594>>189
>>18>>57>>692>>323>>318>>671>>622>>322>>120>>71>>69>>16>>743>>650>>450>>304>>248>>321>>784>>796
>>504>>798>>21>>667>>374>>522>>512>>167>>711>>181>>184>>768>>73>>507>>285>>744>>328>>606>>63>>398
>>79>>340>>524>>528>>644>>771>>48>>628>>767>>542>>332>>764>>563>>198>>338>>285>>710>>504>>195>>90
>>162>>163>>394>>446>>106>>721>>252>>168>>319>>125>>247>>659>>649>>774>>502>>620>>22>>329>>587>>564
>>551>>326>>58>>88>>610>>768>>591>>4>>58>>479>>166>>220>>72>>612>>325>>793>>63>>493>>311>>188>>739
>>36>>713>>671>>655>>735>>200>>441>>498>>60>>192>>23>>118>>279>>633>>86>>70>>637>>143>>548>>2>>362
>>614>>687>>612>>676>>379>>123>>63>>318>>292>>99>>231>>163>>754>>165>>363>>395>>663>>423>>586>>686
>>64>>518>>626>>133>>355>>768>>680>>356>>329>>499>>170>>215>>311>>45>>594>>434>>108>>112>>726>>206
>>88>>160>>507>>451>>554>>369>>74>>340>>254>>614>>403>>771>>439>>536>>325>>407>>416>>681>>735>>115
>>150>>425>>95>>744>>59>>203>>56>>784>>409>>397>>71>>568>>103>>522>>322>>472>>595>>661>>725>>408
>>696>>47>>799>>221>>453>>414>>102>>388>>529>>151>>538>>154>>246>>482>>212>>448>>537>>195>>56>>133
>>624>>236>>787>>145>>707>>582>>5>>632>>190>>268>>527>>236>>267>>747>>689>>680>>49>>277>>409>>200
>>562>>445>>495>>773>>93>>231>>167>>149>>364>>432>>772>>600>>419>>116>>507>>200>>121>>338>>389>>389
>>625>>655>>12>>513>>535>>60>>789>>143>>259>>2>>704>>704>>497>>677>>796>>728>>43>>144>>292>>475
>>91>>93>>232>>597>>292>>352>>135>>681>>741>>199>>505>>595>>211>>217>>330>>270>>205>>472>>528>>207
>>431>>704>>252>>427>>631>>295>>571>>122>>769>>686>>213>>61>>117>>9>>353>>469>>144>>233>>409>>342
735 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/05/26(日) 18:29:39.49 ID:COx+zdJxo
>>300>>492>>8>>233>>596>>10>>151>>171>>795>>265>>529>>136>>393>>271>>1>>90>>443>>586>>265>>320>>141
>>204>>87>>504>>263>>651>>34>>616>>84>>736>>115>>576>>743>>348>>371>>752>>498>>542>>747>>762>>271
>>354>>541>>83>>444>>184>>668>>709>>503>>9>>570>>707>>95>>274>>169>>746>>307>>785>>29>>243>>99>>605
>>446>>175>>137>>143>>717>>83>>105>>187>>165>>459>>728>>248>>102>>111>>115>>10>>614>>124>>580>>520
>>54>>689>>163>>361>>673>>192>>603>>772>>796>>788>>417>>171>>124>>560>>87>>207>>665>>274>>372>>323
>>619>>425>>312>>734>>435>>125>>57>>214>>645>>275>>268>>533>>438>>628>>406>>630>>430>>377>>625>>418
>>796>>542>>553>>82>>748>>417>>355>>320>>740>>556>>139>>364>>67>>72>>799>>192>>129>>212>>36>>404
>>569>>41>>307>>174>>670>>737>>550>>495>>354>>544>>491>>95>>296>>573>>43>>713>>128>>362>>652>>683
>>216>>749>>572>>214>>141>>701>>426>>176>>304>>105>>744>>344>>411>>117>>214>>348>>667>>709>>701
>>399>>795>>706>>171>>37>>619>>298>>399>>471>>181>>99>>687>>130>>670>>100>>270>>570>>526>>445>>74
>>389>>417>>242>>506>>631>>589>>372>>540>>489>>782>>139>>484>>688>>310>>521>>507>>608>>120>>177
>>218>>63>>117>>88>>163>>387>>658>>689>>32>>731>>519>>420>>347>>761>>125>>178>>549>>497>>717>>238
>>56>>722>>367>>365>>442>>73>>172>>561>>249>>159>>779>>312>>276>>66>>474>>662>>723>>362>>694>>653
>>313>>200>>41>>438>>378>>590>>134>>294>>27>>613>>350>>748>>179>>714>>390>>252>>85>>151>>500>>244
>>12>>519>>195>>485>>381>>118>>47>>274>>770>>128>>587>>170>>168>>224>>547>>758>>358>>41>>784>>171
>>732>>350>>303>>322>>601>>388>>473>>301>>631>>601>>312>>350>>796>>796>>730>>113>>43>>204>>83>>170
>>252>>338>>214>>799>>295>>571>>40>>279>>742>>429>>211>>291>>732>>532>>91>>319>>204>>391>>149>>5
>>498>>1>>698>>428>>113>>740>>631>>196>>110>>621>>448>>447>>34>>446>>741>>605>>485>>220>>546>>114
>>36>>45>>161>>126>>364>>365>>516>>513>>369>>418>>211>>369>>315>>638>>482>>254>>469>>677>>363>>289
>>10>>323>>770>>751>>127>>455>>170>>672>>568>>599>>708>>613>>759>>33>>177>>324>>549>>689>>692>>167
>>261>>481>>737>>742>>735>>405>>619>>298>>694>>143>>307>>217>>112>>257>>343>>566>>426>>215>>334
>>123>>147>>184>>155>>323>>507>>704>>211>>399>>70>>310>>659>>551>>246>>601>>485>>651>>419>>782>>544
>>289>>761>>673>>546>>303>>439>>172>>518>>773>>396>>640>>119>>579>>795>>441>>285>>699>>651>>683
>>160>>542>>519>>405>>342>>204>>256>>761>>186>>800>>522>>474>>760>>395>>219>>263>>33>>390>>780>>5
736 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/05/26(日) 18:30:12.85 ID:COx+zdJxo
>>504>>477>>695>>90>>661>>723>>670>>781>>208>>386>>289>>247>>765>>502>>331>>473>>165>>755>>331>>24
>>725>>118>>47>>111>>623>>41>>577>>280>>697>>57>>784>>373>>752>>73>>233>>675>>743>>214>>83>>328
>>329>>292>>204>>660>>765>>369>>614>>296>>392>>759>>220>>509>>5>>331>>332>>46>>107>>611>>742>>164
>>315>>115>>668>>548>>790>>610>>762>>72>>138>>464>>401>>430>>668>>260>>395>>237>>73>>690>>629>>32
>>338>>37>>439>>669>>82>>546>>480>>24>>709>>274>>339>>24>>141>>87>>13>>751>>48>>85>>88>>512>>486
>>379>>745>>112>>616>>18>>1>>444>>49>>110>>781>>86>>549>>649>>168>>294>>329>>192>>202>>602>>530
>>742>>617>>238>>692>>664>>323>>780>>376>>8>>497>>755>>752>>609>>570>>770>>610>>213>>19>>719>>193
>>467>>42>>271>>761>>370>>462>>162>>172>>192>>387>>113>>8>>624>>5>>672>>146>>785>>247>>153>>482
>>105>>290>>771>>75>>99>>183>>93>>18>>376>>196>>485>>418>>467>>445>>788>>128>>606>>159>>320>>193
>>327>>16>>276>>198>>162>>261>>445>>315>>742>>646>>420>>232>>617>>494>>330>>799>>586>>348>>375>>782
>>792>>448>>476>>779>>576>>282>>138>>95>>474>>408>>421>>490>>684>>619>>651>>144>>264>>166>>85>>110
>>317>>726>>279>>646>>725>>64>>193>>299>>45>>225>>291>>493>>700>>270>>268>>181>>407>>362>>654>>15
>>343>>699>>602>>194>>42>>65>>359>>127>>175>>144>>443>>100>>422>>289>>24>>485>>482>>323>>530>>706
>>223>>605>>83>>490>>786>>489>>52>>639>>504>>35>>181>>402>>636>>375>>444>>701>>733>>570>>75>>76
>>174>>498>>502>>198>>183>>183>>521>>712>>89>>334>>135>>693>>416>>624>>678>>105>>676>>517>>608>>710
>>209>>545>>272>>652>>446>>204>>422>>520>>280>>635>>694>>777>>336>>91>>160>>519>>611>>72>>607>>144
>>499>>560>>30>>377>>664>>705>>94>>471>>615>>791>>680>>360>>262>>532>>5>>466>>154>>524>>745>>789
>>722>>324>>508>>81>>42>>319>>152>>648>>463>>357>>347>>222>>387>>724>>85>>291>>17>>556>>105>>7>>436
>>269>>168>>468>>734>>322>>192>>678>>310>>608>>600>>633>>316>>680>>675>>634>>32>>523>>296>>389>>70
>>775>>794>>602>>266>>10>>358>>370>>17>>794>>34>>285>>161>>502>>218>>482>>693>>96>>792>>501>>696
>>16>>575>>499>>649>>607>>222>>145>>195>>291>>661>>170>>285>>463>>435>>295>>21>>5>>311>>14>>38>>596
>>540>>14>>657>>433>>110>>648>>133>>5>>472>>148>>580>>171>>797>>387>>392>>141>>581>>683>>2>>751
>>465>>385>>461>>485>>389>>772>>499>>427>>568>>673>>166>>582>>529>>598>>692>>377>>731>>696>>48>>79
>>218>>75>>62>>610>>216>>643>>492>>218>>593>>659>>683>>177>>320>>367>>566>>292>>66>>192>>59>>738
737 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/05/27(月) 17:10:33.85 ID:HVpUYa8AO
最近続いてるこの数字の羅列はなんだ?荒らし?
738 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/05/27(月) 18:30:47.10 ID:GUagf7oso
111 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage] 投稿日:2013/05/26(日) 20:12:56.61 ID:8Bpit0mjo
Jane使っているならあぼーん設定のNGExのNGWord欄に

(>|>|>)+([0-90-9]+(</a>)?(,|-|=|((<br>| | )*|[^<>]*?)(<a [^<>]+>)?(>|>|>)+)){5}
って書き込んでタイプを正規(含む)にすれば>>101-108まであぼーんできるはず
739 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/05/27(月) 18:31:26.57 ID:GUagf7oso
多分>>735辺りに大量のアンカーがあるからそれ用にね
740 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/06/01(土) 18:08:18.02 ID:x6x+mS2Po
まだ
741 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/06/02(日) 10:51:54.80 ID:klz7UsvGo
荒らされてるな……
742 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/06/02(日) 16:16:06.71 ID:h/X7SGhL0
データ復元完了。うひょーって叫んでもいいっすか。
校正して21時ごろに投下します
743 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/06/02(日) 16:17:27.56 ID:6iQL3+pAo
 *     +    巛 ヽ
            〒 !   +    。     +    。     *     。
      +    。  |  |
   *     +   / /   イヤッッホォォォオオォオウ!
       ∧_∧ / /
      (´∀` / / +    。     +    。   *     。
      ,-     f
      / ュヘ    | *     +    。     +   。 +
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        /    ! +    。     +    +     *
       ./  ,ヘ  |
 ガタン ||| j  / |  | |||
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744 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/06/02(日) 16:18:34.40 ID:+Pkq2gZNo
 *     +    巛 ヽ
            〒 !   +    。     +    。     *     。
      +    。  |  |
   *     +   / /   ウッヒョォォォォォォ!!!!
       ∧_∧ / /
      (´∀` / / +    。     +    。   *     。
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       ./  ,ヘ  |
 ガタン ||| j  / |  | |||
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745 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/06/02(日) 19:31:22.25 ID:y2ulwNTSo
まってた
746 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/06/02(日) 19:35:02.17 ID:fYPSZLFh0
                                          ___,,, ,,,, ,,,,,_
                                       ,r ´    ;   \
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┗┓┏┛┏━━┓┗┓┏┛┏━━┓┃ □ ┏┛  ┗━ l二入____ワ___.,ィ7´彡 ━━┛┏━┓
  ┗┛  ┗━━┛  ┗┛  ┗━━┛┗━━┛         辷彡┘ /{:::u::::} ヽ ゙辷ヨ      ┗━┛
                                    乂   /  介    }  乂
747 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/06/02(日) 19:39:40.88 ID:16HH7Agp0

 *     +    巛 ヽ
            〒 !   +    。     +    。     *     。
      +    。  |  |
   *     +   / /   ヒャッッハァァァアアア!!
       ∧_∧ / /
      (´∀` / / +    。     +    。   *     。
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 ガタン ||| j  / |  | |||
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748 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/06/02(日) 21:03:10.67 ID:h/X7SGhL0
投下します。
749 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/06/02(日) 21:04:52.40 ID:h/X7SGhL0

隠し通路 ホグワーツ側出口


暴れ柳「……」ブォンブォン


QB「……やっぱりだ。動き出してる。あの時は遠目だったから、詳しい止め方も分からない」

マミ「ど、どうしましょう、キュゥべえ。これじゃホグワーツに戻れないわ」

QB「この辺は滅多に人も近づかないしね……別の手を考えないと。
   ホグズミードから、普通にホグワーツに戻るのは? この際、校則違反を気にしてる場合じゃないだろう」

マミ「でも、ホグワーツとの境は吸魂鬼が警備してるって……」

QB「……話が通じる相手じゃないね。それじゃ、フクロウを飛ばすのは? あのフクロウ事務所から」

マミ「お金、全部使っちゃった……もともと、そんなに持ってなかったし……」

QB「最初はホグズミードに行くつもりじゃなかったしね……ごめんよ、マミ。僕が止めていれば……」

マミ「ううん。行くって言いだしたのは私だし……校則を破った罰ね、きっと」

マミ(……でも、本当にどうしよう。このままじゃ帰れない……皆に心配もかけちゃうし……)

???「……バウッ!」
750 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/06/02(日) 21:09:04.10 ID:h/X7SGhL0

マミ「きゃっ、わっ! な、なに!?」

QB「マミ、後ろだ。こいつは……」

黒犬「……」

マミ「ま、前に会ったあの黒い犬? どうしてここに……叫びの屋敷から来たの?」

黒犬「……」ダッ

マミ「あ、ま、待って! そっちは危ないの! 暴れ柳が――」


黒犬「……」ピトッ

暴れ柳「っ……」ビクッ シーン


マミ「ふぇ……? 暴れ柳が、大人しく……?」

QB「……あの時と同じだ。クルックシャンクスが止めた時と……マミ、とりあえずこの隙に」

マミ「え、ええ。そうね、外に出ましょう」
751 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/06/02(日) 21:11:44.90 ID:h/X7SGhL0

ホグワーツ敷地内


QB「はぁ。なんとか帰ってこれたね。一時はどうなることかと思ったけど……」

マミ「そ、そうね……うっ、ぐすっ、ひっく」

QB「ま、マミ? どうしたの。怪我でもしたかい?」

マミ「う、ううん、ちが、違うの。安心したら、急に、グスッ、涙が、止まらなくて」


黒犬「……」ペロッ


マミ「きゃっ……犬さん、慰めてくれてるの?」

黒犬「バウ」

マミ「そう……ありがとう。あなたのお陰で助かったわ。なにかお礼ができるといいんだけど……」ゴソゴソ

QB「僕もこの前あの猫をけしかけられた恨みはあるけど、水に流すことにするよ。
   マミ、お菓子、全部あげちゃったら? 相変わらずやせ細ってるみたいだし」

マミ「そうね。ガムとか、あんまりお腹に貯まらないものもあるけど……はい、どうぞ」

黒犬「! バウ!」ムシャムシャ

マミ「ふふ、凄い食べっぷりね……って、そうだ。私達もそろそろ行かないと、夕ご飯に間に合わないわ。
   それじゃ、バイバイ、犬さん。また機会があったら会いましょうね?」

黒犬「バウ!」
752 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/06/02(日) 21:12:20.32 ID:+Pkq2gZNo
おいたーん
753 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/06/02(日) 21:17:30.04 ID:h/X7SGhL0

クリスマス 朝 グリフィンドール談話室 


ハーマイオニー「うーん、そうね。確かにマミは実技が上手じゃないけど、それイコール才能がないってことじゃないと思うわ」

マミ「そうかしら? でも、全然魔法が上手くいかなくて……」

ハーマイオニー「上級生になって急に伸びたって人もいるし……魔法習得の適齢期に関しては、個人差があるのかもね。
          それに、才能がなかったらホグワーツには入れないわよ」

マミ「ルーピン先生やキュゥべえも同じことを言ってたけど……ねえ、本当に私に魔法使いとしての才能があると思う?」

ハーマイオニー「一定以上の魔法力を示さないと、ホグワーツからの入学推薦書はこないわ。
          私も昔から身の回りでおかしなことがたくさん起こってて、ホグワーツからの手紙が来て逆に納得したくらいよ。
          マミだってそうでしょ?」

マミ「そうね……私の場合、来たのは手紙じゃなくてマクゴナガル先生が直接だったけど。それも、入学の一ヶ月前に」

ハーマイオニー「? 随分急だったのね。先生が直接いらしたのはフクロウ便がまだ整備されてなかったからでしょうけど」

マミ「私、魔法使いの資質に目覚めたのが遅かったから……」

ハーマイオニー「まあ、何にしても才能がないなんて悲観する必要はないと思うわ。
          諦めず勉強を続けてれば、いずれ結果は出るわよ。それに、向き不向きは誰にでもあるしね。
          マミは座学で好成績を取ってるんだから、それでカバーできてるじゃない。総合成績で言えば、ロンよりよほど――」

ロン「僕がどうしたって? なんだってクリスマスの朝っぱらから成績の話なんかしてるんだよ、君らは」

ハーマイオニー「あら、おはよう、ロン。それにハリーも。メリークリスマス」

ハリー「メリークリスマス、ハーマイオニー、マミ!」

マミ「おはよう、二人とも……ハリーくん、何だか随分嬉しそうね。何かあったの?」

ロン「お、よくぞ聞いてくれたね、マミ! どっかの頭でっかちとは違ってみる目があるよ、ほんと」

ハーマイオニー「はいはい、悪うございました。それで、何があったの?」

ハリー「これだよ、この箒が届いたんだ」スッ
754 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/06/02(日) 21:20:21.60 ID:h/X7SGhL0

マミ「わあ、新しい箒ね? なんだかピカピカで綺麗……」

ロン「当り前さ! ファイアボルトだぜ。世界最高の箒さ。ワールドカップでプロが使うような箒さ!」

マミ「へえ……そう言われると、確かに何だか凄そうな……」

ハーマイオニー「ハリー、そんな高い箒を買ったの?」

ハリー「まさか。プレゼントだよ。今朝、枕元に置いてあったんだ」

ハーマイオニー「プレゼントって……あなたのおじさんから?」

ハリー「バーノンおじさんが? まさか! あの連中が僕に1ポンド以上の値段がするものを送ってくるもんか」

ロン「カードもついてないし、差出人不明なんだよなぁ。まあでも多分、ハリーのファンとかだろ、きっと」

ハーマイオニー「差出人不明の、超高級箒ね……」ブツブツ

ハリー「ああ、そうだ。これから試運転するんだけど、よかったら二人もくるかい?」

マミ「ほんと? そうね、確かにそんな放棄なら、一度くらい飛んでるところを見てみたいかも……」

ロン「僕は乗ってみたいなぁ。なあハリー、ちょっとだけ乗せてくれよ? な?」

ハーマイオニー「駄目よ! まだ駄目! その箒に乗るのはちょっと待って!」

ロン「は? なんでさ。いいだろ、ちょっとくらい。あ、もしかして君も乗りたいのかい?
   でもハリーが一番で、二番目は僕だ。予約済みだからな、ウン。君はその次だよ」

ハーマイオニー「そうじゃなくて、その箒の送り主が――」

クルシャン「ふぎゃーお!」バッ

ロン「うわっ、このクソ猫! どっから出てきやがった!」

ハーマイオニー「クルックシャンクス!? 部屋でキュゥべえと仲良く遊んでた筈なのに」

ロン「放せ! 放せったら! あっ、こら! 爪をたてるな! パジャマが破れちゃうだろ!」


びりびりびり!


スキャバーズ「チチチッ!」

ハリー「あ、ロンのポケットが破れて、中に居たスキャバーズが!」

クルシャン「フシャー!」ダッ

ロン「この猫畜生、またスキャバーズを! この、食らえ!」ブンッ

ハーマイオニー「ちょっとロン! クルックシャンクスを蹴ろうとしないで!」ガタッ

マミ「お、落ち着いて! とりあえず二匹とも捕まえないと!」

スキャバーズ「チチチチッ!」

クルシャン「シャァァアアアアー!」
755 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/06/02(日) 21:23:37.71 ID:h/X7SGhL0

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マミ「はあ、なんとかクルックシャンクスは部屋に連れて行ったけど……
   もう、キュゥべえ。あなたペットとしては先輩なんだから、きちんと見てあげてなきゃ駄目じゃない」

QB「む、無茶言わないでよ! あの猫と二人っきりにされて生きた心地がしなかったんだから!
   それに、あいつはロンの声が聞こえたらすぐに飛び出していったよ。止める暇もなかったさ」

マミ「そうなの……うーん、ハーマイオニーさんには悪いけど、
   どう見てもクルックシャンクスはロンくんのネズミを狙ってるわよね」

QB「忘れないでね。君の可愛いペットも狙われてるよ」

ハリー「でも、どう見てもスキャバーズの方が重傷だけどね」

マミ「ああ、ハリーくん……そっちはどう?」

ハリー「スキャバーズは部屋で休んでる。だいぶ弱ってるみたいだ。で、あの二人は……」


ロン「……ふんっ」


ハーマイオニー「……」プイッ


ハリー「あの調子。会話をするのも嫌って感じだ。ま、ああなったら放っとくのが一番だよ。
     二人とも、結局その内仲直りするさ」

マミ「慣れてるのね、ハリーくん……」

ハリー「あの二人の喧嘩癖はねぇ。一年生の頃からずっとだし。
     それより、はあ、ロンがあの調子じゃファイアボルトの試し乗りはおあずけかな」

QB「雪も降り始めたし、その方がいいかもね。でも、これからどうするの?」

マミ「あ、それじゃあハリーくん。私、これからまた魔法の練習するつもりなんだけど、付き合ってもらっていいかしら?」

ハリー「僕が? いいけど、ハーマイオニーみたいにアドバイスはできないよ?」

マミ「お手本を見せてくれるだけでいいのよ。簡単な奴を、少しだけ。ね? どうかしら」

ハリー「うーん。それじゃあ、ちょっとだけ。でもあんまり期待しないでよ?」
756 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/06/02(日) 21:26:45.49 ID:h/X7SGhL0

夜 夕食時 大広間前


マミ「ありがとう、ハリーくん。うん、肥らせ呪文、ちょっとだけコツを掴めた感じがするわ」

ハリー「僕はなーんにもしてないよ。マミが頑張っただけさ」

マミ「ふふ、ありがと。でも、これでようやくひとつ……はぁ、本当にテストが心配だわ……」

ハリー「マミって、確かに呪文は苦手みたいだね。でもまあ、得意不得意は誰にもあるしさ。
     僕だって箒に乗るのは好きだけど、変身呪文はからっきりだし」

マミ「うーん。撃ったり壊したりする呪文はそこそこ得意だけど……でも、それも大得意、ってほどじゃないのよね。
   あくまで他の魔法よりは使えるって程度で。私の得意な魔法ってあるのかしら?」

QB「……まあ、先のことを悩んでても仕方ないさ。それよりご飯だ。今日はクリスマスだから、御馳走が出るだろう?」

マミ「そういえばそうね。今日はどんなメニューかしら?」

ハリー「毎年、これが楽しみだもんなぁ。でも今年は居残りが少ないから、あんまり賑やかじゃなさそうだけど」


ガチャッ


ハリー「ああやっぱり、でもあの長テーブルにぽつぽつ座るよりはましかな」

マミ「今日は部屋の真ん中にテーブルがあるだけね。あ、先生方も今日は同じ席で食べるのかしら……?」

ロン「よう、遅かったじゃないか。どこ行ってたんだよ」

ハーマイオニー「まさかあの箒に乗ろうとしたんじゃないでしょうね?」

ハリー「違うよ。マミと魔法の練習してただけ」

マミ「私達が最後? すみません、遅くなってしまって」

ダンブルドア「メリー・クリスマス、ハリー、マミ。さ、お座り。なに、さほど待ってはおらんよ。さ、それでは頂こうかの」


バタン


シビル「こんばんわ、みなさん。メリークリスマス」

ダンブルドア「おお、シビル! これはお珍しい!」

マミ「……? ねえ、あの人誰? 見たことない先生だけど」コソコソ

ロン「ああ、そっか。ずっと自分の部屋に引きこもってるからね。占い学の先生だよ。シビル・トレローニー先生」

マミ「それって、確かハリーくんに死の予言をしたっていう……?」

ハーマイオニー「あんなの出鱈目よ。インチキ教師だわ」ボソボソ

シビル「ええ。いつも食事は一人で取りますが、今日は水晶玉を見ていたら……」ジーッ

マミ(……? 何かしら、テーブルを見渡して……?)

シビル「……こほん。ええ、水晶玉に、死の予兆が現れましたの! ここに来て得心いたしました。
    13人が同じ食卓を囲むなど、あまりに危険というものですわ。最初に席を立つ者には死が訪れましょう」

マクゴナガル「はぁ、それはどうも、シビル。ではどうぞ、お坐りください。料理が冷え切ってしまいますから」

ハーマイオニー「な〜にが"死の予兆"よ! テーブルの人数、ここにきて数えてたじゃないの!」ブツブツ

マミ「ねえ、本当に未来って見えるのかしら?
   ラベンダーさん達が言ってたけど、修行すれば水晶玉の中に未来が見えるって――」

ハーマイオニー「歴史上、予見者っていわれるような人物がいたことは確かだけど、あの先生がそうじゃないってことは確実よ!」

ダンブルドア「ほっほ。さ、それでは宴を始めようかの――うむ、このソーセージは絶品じゃな。どうかね、セブルス」
757 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/06/02(日) 21:30:40.19 ID:h/X7SGhL0

グリフィンドール 談話室


ロン「はー、食べた食べた。全く、クリスマスはこれの為に学校に残ってると言ってもいいね」

マミ「確かに、ちょっと食べ過ぎたかも……ふぅ、ソファに座ると楽だわ。このまま寝ちゃいそう」

QB「ちょっとマミ。僕をクッション代わりにするのはやめて欲しいんだけど」

マミ「だってキュゥべえの体って柔らかくて暖かくて、枕に最適なんだもの。ちょっとくらいいいでしょ?」

ハリー「ふー、やれやれ。箒磨きセット、やっと引っ張り出せたよ……あれ、ハーマイオニーは?」

ロン「さあ? なんか残ってマクゴナガル先生と話してたけど。それより、ファイアボルト持って来たのかい?」

ハリー「うん、手入れしようと思って……でもどこもピカピカで磨くところがないや」

ロン「今日はあいつのせいで乗れなかったからなぁ。なあハリー。明日こそ乗りに行こうな」


バタン


ロン「と、噂をすればか。やあハーマイオニー、なんだい、授業をもっと増やす相談でもしてたのかい?」クルッ

マクゴナガル「残念ですが、もっと現実的な心配ですよ、ウィーズリー」

ハリー「マクゴナガル先生? どうしてここに?」

マミ「む、むにゃ!? マクゴナガルせんせい!? 寝てません! ちゃんと聞いてました!」

QB「マミ、そういうなら涎を拭いて、ついでに僕を羽ペンみたいにこすり付けるのやめて」

マクゴナガル「……こほん。さて、ポッター。グレンジャーから聞いたのですが、なんでも貴方に箒が送られてきたとか」

ハリー「え、あ、はい。そうです。これ……」

マクゴナガル「ふーむ。本物のファイアボルト……カードも手紙もなし、と」

ロン「先生も箒を見に来たんですか?」

マクゴナガル「いいえ。さて、残念なお知らせですが、この箒は一時預からせてもらいます」

ハリー「へ?」

ロン「は?」

マクゴナガル「呪いが掛かっていないかどうか、分解して調べなくてはなりません。それまで飛ぶことは論外です。
         状況は追って知らせます。それでは」


バタン


ハリー「……」

ロン「……」

ハリー「……え、なに? なにが、どうなって」

ロン「ぶ、分解!? 分解するだって!? 世界最高の箒をばらばらに引きちぎるっていうのか!?
   どういうことだよ、おい。正気とは思えないぜ!」

ハーマイオニー「別に、引きちぎるわけじゃないでしょ。ただ調べるだけじゃない」

ロン「あっ、ハーマイオニー! どういうつもりだ! 一体全体、なんのつもりでマクゴナガルになんか言いつけた!」

ハーマイオニー「ねえ、ロン。考えてみて。
          この時期に、差出人不明の、それもとてつもない高級なプレゼントがハリーに届けられたのよ?」

ロン「だから、それがなんだっていうのさ! あれはね、君が想像もできないほど価値のある――」

ハーマイオニー「聞いてったら! 私、思ったの。マクゴナガル先生も同意見だった!
          あの箒は、シリウス・ブラックが送ったものかもしれないって!」

マミ「……え? なに、にゃにごとなの? 起きたばっかりで、状況が分からないんだけど」

QB「マミ。ここは少しだけ黙ってた方がいいよ」
758 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/06/02(日) 21:33:56.10 ID:h/X7SGhL0


新学期 闇の魔術に対する防衛術 授業後


ルーピン「ふーむ。それじゃ、木曜の夜、八時から魔法史の教室でだ。そこで対吸魂鬼向けの訓練をしよう」

ハリー「はい、分かりました。よろしくお願いします」

ロン「やったな。ハリー。これで次の試合は安心だ」


ハーマイオニー「……」スタスタ


マミ「あれ以来、三人の仲は険悪ね……冬休みの間も、新学期が始まってからも、ずーっと口をきいてないみたい」

QB「ハリーとロンはかなりのクィディッチ好きだし、ハーマイオニーも基本的に意地っ張りだからね。
   自分が正しいと思ってる内は絶対に頭を下げないし。緩衝剤になるハリーもあの調子じゃ、もうしばらくは続くんじゃないかな」

マミ「……とりあえず、ハーマイオニーさんを追いかけましょうか。ハリーくん達は二人だし、大丈夫でしょ」
759 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/06/02(日) 21:38:31.54 ID:h/X7SGhL0


ホグワーツ 廊下


マミ「ハーマイオニーさん!」

ハーマイオニー「あら、マミ。なにか用? 悪いけど、私次の授業の準備をしないといけないから、勉強の相談は――」

マミ「あーうん。えーと、用って程の用はないんだけど……でもハーマイオニーさん、本当にどうやってそんなたくさんの授業を受けてるの?
   全部の授業、皆勤だって聞いたけど」

ハーマイオニー「あー、まあ。それはいろいろとね。それより、ルーピン先生の顔色を見た? さらに具合が悪くなってるみたいじゃない?」

マミ「え、ええ、そうね。まだ調子が悪いのかしら……」

ハーマイオニー「うーん。どうかしら。もしかしたら、病気とかじゃなくて、別の理由かもしれないわよ?」

マミ「? それってどういう――?」

ハーマイオニー「あ、いけない! そろそろ行かなきゃ間に合わないわ。ごめんね、マミ。また後で」ダッ

マミ「ああ、ハーマイオニーさん……行っちゃった。大丈夫かしら。顔色の悪さで言ったら、ハーマイオニーさんもどっこいだったけど」

QB「確かに。彼女、どんな無茶をやってるんだろう。本当に分身でもしてるんじゃないだろうね」

マミ「流石にそれは……無いとも言い切れないのが怖いけど。でも、本当に大丈夫かしら……?」

760 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/06/02(日) 21:40:50.09 ID:h/X7SGhL0

木曜 夜 魔法史の教室


ハリー「エクスペクト・パトローナム!(守護霊よ来たれ)」シュウウウウ....

吸魂鬼「オオオオオオオオ……」

ハリー「っ、ぅ、意識が……」


『リリー! ハリーを連れて逃げろ! ここは僕が――』


吸魂鬼「シュゥゥゥウウウ――」

ルーピン「リディクラス!(馬鹿馬鹿しい)」パチン!

吸魂鬼ボガート「!?」ポンッ

ハリー「っ、はあ、はあ……」

ルーピン「よし、ハリー。上々だ。まね妖怪が化けた吸魂鬼相手に、
       たった一晩で、完璧じゃないにしてもパトロナースで対抗できるようになるなんて……」

ハリー「……父さんの声が聞こえた。ヴォルデモートに、ひとりで立ち向かおうとした父さんの声が……」

ルーピン「ジェームズの?」

ハリー「はい――え、あれ? 先生、僕の父さんのことを――?」

ルーピン「あ、ああ……そうだ。昔ね、同級生で友達だった」

ハリー「そうですか、父さんと……じゃあ、シリウス・ブラックのことも?」

ルーピン「……ああ、そうか。君も奴のことを知っているのだね。そうだな、私は知っていた。
      あるいは、知っていると思ってただけかもしれないが……」

ハリー「……先生、続きをやっても?」

ルーピン「いや、これくらいにしておこう。始める前にも行ったが、パトロナース・チャームは非常に高度な呪文だ。
      本来なら、三年生に教えるべき呪文ではないんだ。さあ、チョコをお食べ。そしてぐっすりお休み……」
761 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/06/02(日) 21:41:59.01 ID:h/X7SGhL0

二月 放課後 ホグワーツ 廊下


マミ「よっとっと……うー、さすがにこれだけの量を運ぶのは大変ね。ねえキュゥべえ、半分持ってくれないかしら」

QB「僕の積載量に期待し過ぎると、悲惨なことになると思うよ」

マミ「意地悪……と、わ、わ、わ! もう! 鞄を持ってくるべきだったわ!」


ロン「あれ、マミじゃないか。そんな大量の本を抱え込んで、書店でも開く気かい?」

ハリー「少し手伝おうか?」

マミ「ああ、二人とも。ありがとう……ふぅ。助かったわ。腕が引っこ抜けるかと思っちゃった」

ハリー「……ん? 君、ルーン文字なんか取ってたっけ?」

マミ「ああ、これ。ハーマイオニーさんのお手伝いよ。とんでもない量の宿題をやってるから、せめて本を運ぶくらいね」

ロン「ふーん。それにしても彼女、本当にどうやってこんだけの授業を受けてるんだろうなぁ」

マミ「そうよねぇ……って、あら。ハリーくん。その箒って……」

ハリー「ああ。調べ終わったって、さっき返してもらったんだ! 
     ねえ、マミ。僕たちこれからハーマイオニーと仲直りしなくちゃと思うんだけど、間に入ってくれる?」

マミ「ほんと!? もちろんOKよ! ハーマイオニーさん、最近ほんとに余裕無さそうで……
   って、あら? 談話室の入り口の前に、誰か……ロングボトムくん?」

カドガン卿「下がれ下がれ! 押し入ろうとする不逞の輩め! このカドガン卿がいる限り通さんぞ!」

ロン「おい、どうしたんだよネビル。君、合言葉をまた忘れちゃったのかい?」

ネビル「ああ、ロン。いや、今週分のはメモしておいたんだけど、いつのまにかなくなってて……」

マミ「それは大変ね……えーとキュゥべえ、今日のは何だっけ」

QB「"オヅボディキンズ"だよ。君もネビルのことを言えないね、マミ」
762 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/06/02(日) 21:45:30.07 ID:h/X7SGhL0

グリフィンドール談話室


シェーマス「うわ凄いや! 本物のファイアボルト!?」

ディーン「これアレだろ? 最新の、最高の箒って――」

ウッド「よしよしよしハリー! よくやった! これでグリフィンドールの優勝は決まったようなものだな!」


わいわいがやがや


ハリー「……ファイアボルトがここにある限り、ハーマイオニーとは話せそうにないね」

QB「凄い人気だ。まるで飴に群がる蟻だね」

マミ「ねえハリーくん。一度、部屋に置いてきたらどうかしら?」

ロン「あ、それなら僕が行くよ。ついでにスキャバーズの様子も見てこなきゃ。
   ほらほらどいたどいた! ファイアボルトのお通りだぞ! 傷一つ付けてみろ、弁償なんて出来やしないぞ!」ダッ

マミ「ふふ、あんなにはしゃいじゃって……それじゃ、私達は先に……ハーマイオニーさん、本、持って来たわよ」

ハーマイオニー「ああ、マミ。ありがとう。そこに積んでおいてくれる?」カリカリ

マミ「うん……あ、ハリーくん。そっちの本もお願い」

ハリー「うん、分かった……やあ、ハーマイオニー。僕もここ、座っていいかい?」

ハーマイオニー「……! ええ、別に構わないわ。ところで箒、返してもらえたみたいね」

ハリー「ああうん、危ないところはなかったってさ。安全だったって」

ハーマイオニー「まあ、それは良かったわね。でも、何かあるといけないと思ったから――」

マミ「ハーマイオニーさんは、ハリーくんのことを思って行動したんだものね」

ハリー「うん。分かってる。ありがとう、ハーマイオニー」

ハーマイオニー「お分かり頂けたなら幸いだわ。――その、私も、事前にハリー達に相談すれば良かったかもね」

ハリー「あはは、今度からそうしてくれると助かるよ」

マミ(よかった……これなら仲直りできそうね)

QB「……ところで、ロン遅いね。箒を置きに行っただけなのに……」


バタン!


ロン「おい! おい! あのクソ猫野郎はどこだ!?」

ハリー「ろ、ロン? どうしたのさ、一体? ……そのシーツは何?」

ロン「僕のシーツだ! そして見ろよ、ハーマイオニー! これ、なんに見える? ええ!?」

ハーマイオニー「え、えーと。何か、赤いシミが――」

ロン「血だよ! 僕のネズミの血だ! スキャバーズが部屋に居ない! それであいつの寝床の上に、これがあった!」ポイッ

マミ「これって……オレンジ色の毛……クルックシャンクスの?」

ハーマイオニー「ね、ねえ、ロン。頼むから落ち着いて――」

ロン「これが落ち着いてられるかよ! あの、あの猫公が、スキャバーズを食っちまったんだぞ!」
763 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/06/02(日) 21:46:50.15 ID:xvfEipKDO
おい、気のせいかも知れないが・・・
あのオッサン、マミに気があるんじゃあ?
764 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/06/02(日) 21:48:19.55 ID:h/X7SGhL0

翌日 グリフィンドール談話室


マミ「そっちはどう……?」

ハリー「駄目だね。すっかり頭に血が上ってるし、落ち込んでる。なんだかんだ言って、ロンはスキャバーズを可愛がってたし……
     ハーマイオニーの方は?」

マミ「似たようなものね。クルックシャンクスはスキャバーズを食べてないって言い張って、部屋に閉じこもってるわ」

ハリー「……マミ、正直、君はどう思う?」

マミ「……えーと、それは」

QB「あの凶悪な猫がスキャバーズを捕食したに違いないよ。いつかやると思ってたんだ」

マミ「キュゥべえったら! ……でも正直、そうね、あまりにも証拠が揃い過ぎてるし……」

ハリー「僕も同意見だけど……はぁ。せっかく仲直りできると思ったのに。さすがに今回のはね。
     いつもの喧嘩みたいに、その内元通りってわけにもいかないだろうなぁ……」

マミ「仲直りさせるにはどうしたらいいかしら……」

ハリー「ハーマイオニーが謝れば、ロンだってずっと意地張ってないだろうけど……難しいね」

マミ「うーん……とりあえず、ハーマイオニーさんには私が付いてるから、あなたはロンくんを見ててあげてくれる?」

ハリー「そうするよ。もうすぐレイブンクローとの試合だし、それでロンも元気が戻ればいいんだけど……」

マミ「……そういえば、前の試合は吸魂鬼のせいで負けちゃったのよね。まだ優勝って狙えるの?」

ハリー「なんとかね。残りの試合で、相応の点差をつけて勝てば」

マミ「そうなの! 良かった……ハリーくんならやれるわ。箒で飛ぶのすごい上手いもの」

ハリー「ファイアボルトもあるしね。あとは吸魂鬼がこなければ……でもそれもルーピン先生に対策を習ってるし、きっと大丈夫さ」

マミ「対策?」

ハリー「うん。パトロナース・チャームっていうんだけど……そうだ、マミも習いに来る? もう気絶しなくて済むようになるかもしれないよ」

マミ「ありがとう。でも、そこまで手が回らないわ。試験に向けて、一つでも呪文を覚えないと……」

ハリー「そっか……そうだね。それじゃあ、僕は行くよ。ハーマイオニーのこと、頼んだよ」

マミ「ええ。ハリーくんも頑張ってね」
765 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/06/02(日) 21:52:25.51 ID:h/X7SGhL0

数日後 クィディッチ競技場 グリフィンドール対レイブンクロー戦


リー『さあグリフィンドールが80点のリード! 圧倒的ですが、まだ油断は出来ません。
   レイブンクローのシーカー、チョウ・チャンは優秀な選手です。ですが、到底ファイアボルトの動きにはついていけないでしょう!
   彼女のコメット260とは、まさに月とすっぽんと言えるほどの開きがあります。ファイアボルトの加速度は――』

マクゴナガル『ジョーダン。ファイアボルトの解説はあとになさい!』


マミ「うーん。何度見ても凄いわね。どうやったらあんな風に飛べるのかしら? ねえ、ハーマイオニーさん」

ハーマイオニー「箒は持って生まれた才能が大部分みたいね。ハリーは最初から凄い飛べてたし。
          もちろんそこから練習しなきゃあんなに上手くは飛べないでしょうけど」ペラッ

マミ「……あの、ハーマイオニーさん? 試合見てる?」

ハーマイオニー「もちろんよ。えーと、いまグリフィンドールが80対0で勝ってるわね」ペラッ

マミ「だったら本は置いといたほうが……だいぶ周りから、その、見られてるっていうか」

ハーマイオニー「放っておいて。この本を週明けまでに読んでおかなきゃいけないの。あと500ページはあるのに!
          大丈夫、応援はしてるから。心の中で」

グリフィンドール生「……」ジトーッ

QB『マミ、どうして周りの生徒は僕らのことを睨んでるんだい? 同じ寮で、仲間みたいなもんだろう?』

マミ『そりゃあ応援席で本なんか読んでたら、水を差された気持ちになるでしょうし……』

QB『はあ。やっぱり感情って難しいなぁ。別に声を張り上げたところで能率が上がるわけでもないだろうに』

マミ『それこそ、気持ちの問題よ――あ、ハリーくんが急上昇した!』


リー『おおっと、ここでポッター選手が動きました! どうやらスニッチを見つけたようです!
   チョウ選手もそれを追って――あ! あれは何だ!?』


マミ「え、え? 何? 何か起きたの?」

QB「マミ、あそこだ! 競技場の入り口!」


吸魂鬼「………」


マミ「っ……吸、魂鬼! また出たの……!?」

QB「……? 変だな。感情エネルギーの流動が見られない。あれは――」

マミ「何度もやられっぱなしでたまるもんですか。インセンディオ!(燃えよ)」ブンッ


ハリー「エクスペクト・パトローナム!(守護霊よ来たれ)」シュゴウッ



吸魂鬼?「え、ちょ、ま。うわああああああああああ!」




めこっ……
766 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/06/02(日) 21:56:32.99 ID:h/X7SGhL0

試合後 グリフィンドール談話室


フレッド「やあ、凄いキャッチだったなハリー! ファイアボルトでの初陣は最高の勝利で決まったな!」

ハリー「ありがとうフレッド。でも、皆のお陰だよ」

ジョージ「謙遜すんなって! そら、お祝いだ! なんでもあるぞ、バタービールに、ハニーデュークスの菓子に……」

ケイティ「前から思ってたんだけど、あなた達ってどこからこういうの調達してくるわけ?」

フレッド「なに、ちょいと力を借りてるのさ。偉大なるいたずら小僧の先輩方のね」

ディーン「にしても、最後のあれは爽快だったなぁ!
      吸魂鬼の恰好したマルフォイ達が、火達磨になりながらハリーの呪文で蹴散らされたアレ!」

シェーマス「ああ、スリザリンから50点も引かれたしな! でもそういえば、最初にあいつら燃やしたのは誰なんだ?」


マミ「……こほん。ハリーくん、大人気ね。人だかりで声を掛けるのも難しそう」

QB「まあ、元よりシーカーは花形ポジションだしね。今回は箒のこともあるから、なおさらさ」

マミ「最後のキャッチ、ほとんど目で追えなかったものね……凄い箒だわ。私が乗ったら地面に墜落しそうだけど。
   ……ところで、ハーマイオニーさん。少し休憩しない?」

ハーマイオニー「悪いけど、本がまだ残ってるの。あと300ページ。これを今日明日で読まないと」

マミ「うーん。でも、お菓子くらい食べたら? 糖分を取った方が頭が働くって、前にテレビでやってたわよ?
   キャンディとかなら読みながら食べられるし、ね?」

ハーマイオニー「……そうね。それじゃあ少しだけ……」

マミ「ええ。あ、取ってきてあげるから待ってて」

ハーマイオニー「ごめんね、マミ。……その、ありがとう」
767 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/06/02(日) 22:01:34.99 ID:h/X7SGhL0

マミ「さて、と。お菓子は談話室中に飛び交ってるけど、どれにしましょうか」

QB「そういえば、結局ぺろぺろ酸飴は食べ損ねたんだよね。マミ、どっかに落ちてない?」

ロン「やめとけよ、キュゥべえ。僕、昔あれ食べて、舌に穴が開いたんだぞ」

マミ「あ、ロンくん……え、あれってそんな危険な食べ物だったの?」

ロン「まあ酸っぱくて美味いっちゃあ美味いんだけどさ。
   初心者には危険すぎるから、こっちのヌガーにしておきなよ」スッ

マミ「あ、ありがとう。じゃ、少し貰っていい?」

ロン「うん。どうせ買ってきたのはフレッド達だし……うん? ここで食べないのかい?」

マミ「ハーマイオニーさんに持って行ってあげようと思って」

ロン「……ふーん。ハーマイオニーにね。
   そういえばこのヌガー! 誰かさんの猫に食われたスキャバーズの大好物だったなぁ!」

マミ「ちょっと、ロンくん!?」


ハーマイオニー「……っ」ダッ


マミ「あ、ああ、ハーマイオニーさん……ちょっと、酷いわよ。なんであんな聞こえよがしにいうの?」

ロン「僕はペットを食われたんだぞ。それでいて、あいつは謝ろうともしないし。
    まさかマミもあの猫は僕のネズミを食ってなんかいないって言い張るんじゃないだろうね?」

マミ「それは……」

ロン「とにかく、向こうが謝るまで許すもんか。ふんっ」


マミ「……これは本格的に不味いわね。なんとか仲直りして貰わないと……
   ずっとこのままじゃ気まずいにも程があるわ」

QB「ハーマイオニーが謝ればそれで解決だろう?」

マミ「もう意地になってるし……いま下手に謝らせようとしても逆効果よ。しばらく様子見ね。
   今日はもうそっとしておいてあげましょう」
768 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/06/02(日) 22:04:41.10 ID:h/X7SGhL0

深夜 グリフィンドール女子寮


ラベンダー「……ょっと、ねえ、マミ! マミったら! 起きて!」

マミ「……ん、むにゃ? なあに、ラベンダーさん……まだ夜中じゃない」

ラベンダー「叫び声が聞こえたのよ。男子寮から……たぶん、ロンの声じゃないかと思うんだけど」

マミ「ロンくんが? 足でも攣ったんじゃないの?」

ラベンダー「いや、ほんと尋常じゃない声だったわよ。パーバティとハーマイオニーはもう起きて様子を見に行ったわ。
       私達も行ってみない?」

マミ「むぅ……もうちょっと寝てたいけど……でも気になるわね。談話室の方もざわついてるし……行ってみましょうか。
   よいしょっと」ギュムッ

QB「きゅぶ!?」

マミ「あ、キュゥべえ踏んだ」
769 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/06/02(日) 22:05:31.25 ID:h/X7SGhL0

グリフィンドール談話室


ざわざわ ざわざわ


マミ「ふぁ……ああ、もうみんな集まってるわね。そんなに大声だったの?」

ラベンダー「凄かったわよ。それで叩き起こされたんだから。というか、マミは良く寝てられたわね。
        寝る子は育つってほんとなのかしら……?」ブツブツ

マミ「? 何か言った? ……あ、真ん中にロンくんとマクゴナガル先生がいる」


ロン「本当なんです先生! ブラックが! シリウス・ブラックが僕の枕元に立ってたんです!」


「ブラック!?」「ブラックが寮の中に?」「マジかよ超やべえじゃん」


マクゴナガル「有り得ません、ウィーズリー。合言葉を知らなければ、肖像画は通れないのですから。
         カドガン卿、怪しい人物は誰も通してないでしょう?」

カドガン卿「然り! 我が輩がいる限り、不逞の輩は通さぬと約束しよう!
       今宵とてご婦人と、その少し前にヒゲだらけでナイフを持った身形の汚い男しか通しておりませぬ!」

マクゴナガル「ほら見たこ――待ってください。カドガン卿、誰を通したと言いました?」

カドガン卿「ナイフを振り回しながら口角泡を飛ばしつつ、まるでいましがた脱獄してきたかのような恰好の男なら通しましたぞ。
       きちんと合言葉のメモを持っていたので」

マミ「合言葉のメモ……? それって確かこの前、ロングボトムくんが……」

マクゴナガル「……ロングボトム、貴方ですか? 合言葉のメモを脱獄犯の手の届く場所に置いておいた馬鹿者は」

ネビル「」
770 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/06/02(日) 22:09:31.67 ID:h/X7SGhL0

数日後 夜 グリフィンドール談話室


マミ「結局、シリウス・ブラックはまた見つからなかったみたいね。
   でも、隠し通路に詳しいフィルチさんが探しても見つからないなんて……」

ハーマイオニー「透明マントでも持ってるのかもね……にしても、ロンが刺されなくて良かったわ。
          本人は呑気に英雄気取りしてるみたいだけど」カリカリ

マミ「……それはそうと、はい、これ。魔法史のレポートに使えそうな本、ここに纏めとくわね」

ハーマイオニー「助かるわ、マミ。でも、あなたは大丈夫なの? 魔法の練習は?」

マミ「大丈夫よ。練習もちゃんとしてるわ。それにどっちみち、レポートはやらなきゃいけないんだし」

ハーマイオニー「そう? でも、本当に感謝してるわ。
          魔法生物飼育学の資料探しも、マミは取ってないのに手伝ってもらっちゃったし……」

マミ「別にいいわよ。人に危害を加えた魔法生物が無罪になった判例を探すだけだったし。
    ……でも、魔法生物飼育学ってそういう法律関係のことも勉強するのね?」

ハーマイオニー「正確に言うと、あれは授業そのものには関係ないの。
          でも気にしないで。あんまり気持ちのいい話でもないし。手伝ってくれてありがとう」

マミ「私もハーマイオニーさんにはずっと助けられてきたから……にしても、今日は談話室に人が多いわね」

QB「あれのせいだよ。次のホグズミード週末のお知らせが掲示されてるから」

マミ「ああ、そういうこと……はあ。どうせ私には関係ないんだけど」

QB「ねえマミ、僕はどうしてもぺろぺろ酸飴が気になるんだけど」

マミ「そんなに? でもねえ……来年か、もしくはダイアゴン横丁で売ってれば買ってあげるわ」

QB「ハーマイオニー、今度行ったとき買ってきてくれないかい? お金はマミが出すよ」

マミ「こら! 人を使い走りみたいにするんじゃありません! ごめんね、ハーマイオニーさん。気にしないで」

ハーマイオニー「どの道、私は行かないわよ。レポートが押してるし」

マミ「そう。それじゃあ週末も一緒に宿題やりましょうか……あ、この辺の本返してきちゃうわね」ヒョイッ

ハーマイオニー「そんな、いいわよ。次に借りる時に一緒に返せば」

マミ「駄目よ。ハーマイオニーさんのベッドの周り、もう本だらけで足の踏み場もないじゃない。
   こういうのはマメに片付けなきゃいけません」

ハーマイオニー「はいはい、分かりましたよお母さん。それじゃあお願いするわ……ありがとうね、本当に」

マミ「ふふ、どういたしまして。ほら、キュゥべえ行くわよ。一冊くらい背中に乗っけなさい」ポン

QB「あっ、あっ、よりによって一番重い辞典を!」フラフラ


ガチャ バタン


ハーマイオニー「……マミったら、お節介焼きなんだから。一年生の頃から見ると、本当に自立したわよね、彼女。
          はあ。それに引き替え、私は相変わらずロンと喧嘩ばっかりだし……うん? あれって……」


ロン「ハリー、どうする? 次のホグズミード。ゾンコの店にはまだ行ってなかったろう?」

ハリー「うーん。そうだな。隠し通路はまだ使えるし……そうだマミはどうしよう? この前は誘えなかったけど……」

ロン「やめとこう。最近ハーマイオニーとよく一緒に居るし、ばれたら面倒だ――」

ハーマイオニー「……誰にばれたら面倒ですって?」

ロン「げっ」
771 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/06/02(日) 22:14:36.96 ID:h/X7SGhL0

ホグズミード週末 図書室


マミ「だからね、ロングボトムくん。生のニンニクなんか齧ったらお腹壊すわよ?
   やっぱり数珠にして首に巻くのが正解なんじゃないかしら」

ネビル「でも、僕のおじさんはニンニクを食べまくって吸血鬼から逃げ切ったって……」

マミ「スタミナ的な話なんじゃないの? とにかく、生のニンニクなんか食べちゃダメ。絶対胃を痛めるもの」

ネビル「うーん。それじゃあそういう方向でレポートを書くよ……マミとハーマイオニーがいて助かった。
     僕一人じゃ夜まで頑張っても完成しなかっただろうし」

マミ「こっちも薬草学の宿題を手伝ってもらったから、お相子よ。
   それにしても、ネビルくんもついてないわね。合言葉のメモを落とした罰で、ホグズミード行きを取り消されちゃうなんて」

ネビル「うーん。でも確かにあのメモはベッドの脇に置いておいたはずなんだけどなぁ……」

ハーマイオニー「きっとポケットに入れたのを忘れたとかでしょ。あなた、いつも忘れ物してるじゃない」

ネビル「そうかなぁ……」

マミ「……っとお終い! やっぱり三人でやると捗るわね。ハリーくんも誘おうと思ったんだけど……見つからないし」

ネビル「さっき会ったよ。スネイプ先生が来て、すぐにばらばらに逃げたけど」

ハーマイオニー「……大方、秘密の通路でも使って逃げ回ってるんでしょうよ。ふんっ」


バサバサバサッ


マミ「きゃあっ! な、なに!? ふくろう? 何でこんなところまで……」

ネビル「たぶん、速達だ。でも誰宛だろう。も、もしかして、婆ちゃんから吼えメールが……」

ハーマイオニー「違うわ。私宛ね……ハグリッドから? ……! ごめん、マミ、ネビル! ここを頼むわ!
          私、行かなきゃ!」ダッ

マミ「え、ハーマイオニーさん? ……凄い勢いで走って行っちゃった」

ネビル「どうしたんだろう。なんだか険しい顔をしてたけど」

マミ「あのハーマイオニーさんがレポートを放り出していくんですもの……何かよっぽどのことがあったに違いないわ。
   大丈夫かしら……」
772 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/06/02(日) 22:19:40.58 ID:h/X7SGhL0

夜 スネイプの部屋


スネイプ「さてさて、ポッター。とある善意の通報によると、なんでも君をホグズミードで見かけたとか」

ハリー(マルフォイだな。くそっ、あの時透明マントがずり落ちさえしなければ……)

スネイプ「無論、君のような"優良な"生徒がそんな退学相当の違反をするとも思えないが……いや、出るわ出るわ。
      君のポケットからやれゾンコの悪戯グッズだの、ハニーデュークスの菓子だの……」

ハリー「前に、友達に貰ったんです」

スネイプ「それでずっとポケットをパンパンにしてたといいうわけかね、ポッター?
      もっと詰め込むべきものがあると思うが……たとえば、常識など」

ハリー「……」

スネイプ「……うん? この羊皮紙の切れっぱしはなんだ?」


忍びの地図「」


ハリー「先生の言った通り、ただの羊皮紙の余りです」

スネイプ「なるほど、なるほど……ならば我が輩がどうしようと構わんな?
      リビア・ユア・シークレット!(汝の秘密を顕せ)」


忍びの地図「」スゥゥ....


スネイプ「おやおや、ただの羊皮紙のきれっぱしに、文字が現れ始めましたぞ、ポッター。
      さて、出てくるのは手紙か、それとも秘密の地図か……?」

ハリー「……!」ゴクリ


忍びの地図『私、ミスター・ムーニーと』『同じく、ミスター・プロングズ』『同様に、ミスター・パッドフット』『ミスター・ワームテール』

忍びの地図『我ら四名より、貴殿に御忠告申し上げる。
        今すぐ自分の足首を縄で縛って天井からぶら下がるのが、貴殿の人生において最良の選択である』

忍びの地図『パンツ丸出しでキーキー喚くと吉。さすればその脂っこいドロドロ頭も改善され』


スネイプ「」パシッ

ハリー(うわぁ。ざまあ見ろって言いたいけど、凄い殺気放ってる……)

スネイプ「よし……よし……ルゥウウウウウウウウウウピイイイイイイイイン! ルーピン! 出てこい、話がある!」
773 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/06/02(日) 22:24:57.77 ID:h/X7SGhL0

ポンッ


ルーピン「なんだい、セブルス。暖炉まで使って呼ぶなんて……やあハリー、こんばんわ」

スネイプ「呼んだのは我が輩だ。これを見ろ、ルーピン。ポッターが隠し持っていたものだ。
      闇の魔術に関わる代物のように見えるが、君の考えを聞きたい」

ルーピン「うん? これが、かい? ただの羊皮紙……にしては愉快な文言が浮かんでるな。
      まあ、ゾンコの悪戯グッズだろう。相手を罵倒する類の」

スネイプ「本気で言ってるのか? 我が輩はそうは思わん。
      むしろ、これは製作者から直接ポッターに渡されたものだと――」

ルーピン「まさか。ハリー、ここにある名前の内、どれでもいいから知ってるかい?」

ハリー「知りません。ひとりも」

スネイプ「では、誰から手に入れたと――」


バタン!


ロン「ぜぇー……はぁー……僕です! それは僕がハリーにあげたんです。だいぶ前に……」

ハリー「ロン!」

スネイプ「ウィーズリー、誰が入室を許可した――」

ルーピン「まあまあセブルス! これで一件落着というわけだ。
      それでも心配なら、これは私が預かるよ。それでいいだろう?」

スネイプ「……」

ルーピン「さあ、ハリー、ロン。おいで。もう夜も遅い。寮まで送ろう。最近は物騒だからね」
774 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/06/02(日) 22:28:19.26 ID:h/X7SGhL0

ホグワーツ 廊下


ルーピン「さて、二人とも。この地図だが、まともな方法で入手したものじゃないね?
      何年も前に、フィルチさんが没収したはずのものだ」

ハリー「先生、これが地図だって――?」

ルーピン「ああ、知ってる。どんな力を秘めているかもね。君達がこれを提出しなかったのは残念だ。
      これがどんなに危険なものか、分からないわけでもないだろう?」

ハリー「はい……」

ロン「すみません……僕が悪いんです。ハリーに行けって勧めて」

ハリー「いや、僕が行きたがったから――」

ルーピン「ストップ。そういうのは後にしなさい。とにかく、この地図は預からせてもらう。
      それと、外へ通じる隠し通路を使うのも禁止だ。いいね?」

ハリー「はい……あの、先生はこの地図のことをご存じだったみたいですけど、作った人のことも……?」

ルーピン「昔ね、会ったことがある。さあ、もう行きなさい。
      ハリー、御両親が自らを犠牲にして守った君自身と悪戯グッズ、どちらに価値があるのかよく考えてみることだ」
775 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/06/02(日) 22:28:52.95 ID:h/X7SGhL0

ロン「……寮に帰ろうか。ルーピン先生の言った通り、学校の中も安全じゃないし」

ハリー「うん……」

ロン「もう二度と危ないことはしちゃいけない。僕ら馬鹿だったよな……ん? あそこにいるのって……」

ハーマイオニー「……」

ハリー「ハーマイオニー……どうしたの? こんなところで」

ロン「僕らのことを、マクゴナガル先生に告げ口でもしてきたかい?」

ハーマイオニー「……これ。今日の昼に届いたの」

ハリー「手紙……ハグリッドから? 一体何が」ガサッ


『すまねえ、負けた。敗訴だ。ビーキーの処刑日はこれから決まる。いままでありがとうな』


ハリー「そんな……バックビークが処刑!? もう、どうしようもないのかい?」

ハーマイオニー「控訴はあるけど、意味はないと思う……マルフォイのお父さんが、圧力を掛けてて」

ロン「いいや、諦めないぞ」

ハーマイオニー「……ロン?」

ロン「ちょっと前、ハグリッドにも言われたんだ。僕ら、君にバックビークのことを任せきりで……
   でも今度はちゃんと僕らも手伝う。僕たちでバックビークを助けよう」

ハーマイオニー「……ああ、ロン! ありがとう!」

ロン「わっ、と! だ、抱き着くなよ! 君の悪い癖だぞ!」

ハーマイオニー「ロン、私、あなたに謝らなきゃって……スキャバーズのこと、本当に……」

ロン「あー、まあいいさ。うん。もう寿命だってペットショップの人も言ってたし。
   それに、今度はもっと役立つペットが手に入るかもしれないしさ」
776 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/06/02(日) 22:29:31.14 ID:h/X7SGhL0

翌日 呪文学


フリットウィック「今日はチーリング・チャーム(元気呪文)の練習をしますよ! さあ、ペアになって――」

マミ「……? ハリーくんたちが居ないわね。ハーマイオニーさんも……前の時間は魔法生物飼育学の筈だけど。
   ねえ、ロングボトムくん。あの三人、なにか当番でもやってるの?」

ネビル「さあ、特に無かったと思うけど……それより、マミ。ペア組んで貰っていいかい?」

マミ「ええ、こっちこそよろしくお願いね……うーん。また喧嘩してなければいいけど」

QB「うわあ、ネビル。お互い魔法を掛けあう授業でマミとペアを組むなんて、君は命知らずだね――きゅっ!?」

フリットウィック「トモエとロングボトムが組むのですか? なら一番前で――私の近くでお願いします」

QB「けほけほ……ほら! 先生も言ってるじゃないか。
   だいたい元気呪文ってあれだろう? 君が前カエルにかけて破裂させちゃった奴」

マミ「違うわよ。ほら、カエルがわけのわからないこと言いながらそこら中ぶんぶん飛び回った方の」

ネビル「ねえ、呪文掛けるの僕が先でいい?」


ガラッ


ハリー「すみません、遅れました」

ロン「ちょっと途中でトラブルがあって――」

フリットウィック「いいから、早く杖を出してペアになりなさい。二人いるし、丁度いいでしょう――
          ああ、ロングボトム! そんな杖の振り方でははじけ飛びますよ!」

マミ(二人だけ? うーん。ハーマイオニーさんとまだ仲直りできてないのかしら……)


ハリー「あれ、ハーマイオニーはどこ? さっきまで僕らの後ろを歩いてたよね?」

ロン「ああ、そう思ったけど……トイレかなんかじゃない?」
777 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/06/02(日) 22:37:40.30 ID:h/X7SGhL0

昼食 大広間


マミ「むぐむぐ……ん。ハーマイオニーさん、結局呪文学に来なかったわね。体調不良かしら?」

QB「まあ本来なら一度に複数の授業を履修できるわけないんだから、これが自然って言えば自然だけどね」

マミ「でも、いままでは一回も休まなかったし……ここにきて無理が祟ってなければいいけど」

QB「そんなに気になるなら、あの二人に聞いてみたらどうだい?」


ハリー「――、――」

ロン「……! ……」


マミ「ハリーくん達か……でも、さっきも一緒じゃなかったし、どうも仲直りしたって雰囲気でもないわね。
   藪を突いて蛇を出したくはないし……」

QB「じゃあ、明日にでもハーマイオニーに聞く?」

マミ「それもねえ……明日からイースター休暇でしょ? 試験前のお休みだから、たぶん余裕が……」


ハリー「ハーマイオニーはどこいったんだろう? 心配だな」

ロン「午後の授業の前に探してみよう。案外談話室で眠りこけてるかも……」
778 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/06/02(日) 22:38:54.14 ID:h/X7SGhL0


イースター休暇


シェーマス「勘弁してくれ! これが休暇!? まだ普通に授業があったほうがましさ! なんだいこの宿題の量は!」

ディーン「でもまあ、あれを見てたらまだましだって思えるよな……」チラッ


ハーマイオニー「……!」ガリガリガリガリガリ


マミ「……ハーマイオニーさん、鬼気迫る感じで勉強してるわね。見て、積み上げた本の高さ。崩れたら命に係わるレベルよ」

QB「殺気立ってるね。さすがに話しかけちゃ不味いってことは分かるよ……ロンとハリーは?」

マミ「ハリーくんはまたクィディッチの練習で忙しいみたい。決勝が近いから、猛特訓ですって。
   それプラス宿題だから、時間ないみたい」

ロン「ああ、そういえば次の試合で勝てば優勝なんだっけ?」

マミ「ええ。楽しみよね、数年ぶりの優勝になるかもって。
   で、ロンくんは……珍しく、って言ったら悪いけど、図書室に籠って勉強してるわ」

QB「へえ、ロンが? どうしたんだろう。箒から落ちて頭でも打ったのかな」

マミ「そういうこと言わないの……っていうか、私だって余裕なんかないわよ。座学はともかく、実技の練習しないと……
   ほら、いくわよキュゥべえ。まずはいつも通りカエル集めね。湖の水は冷たいけど、我慢するのよ」

QB「僕をルアー代わりにするの、やめて欲しいなぁ」

マミ「だって、何でか知らないけどカエルがあなたにやたら食いつくんだもの。美味しそうな臭いでも出してるんじゃないの?」



図書室


ロン「うーん。"ヒッポグリフの心理"……"ヒッポグリフの残忍性に関する研究"……
   はあ、まさか僕が図書室でひとり本を読むことになるなんてな。
   フレッドとジョージがいたらウィーズリーの恥さらしって言うだろうね、きっと」

ロン「……まあ、ハーマイオニーはひとりでやってたんだしな。さ、続き続きっと。えーと、この判例は……」

779 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/06/02(日) 22:39:54.85 ID:h/X7SGhL0


数週間後 クィディッチ競技場 グリフィンドール対スリザリン


リー『あ、あー! マルフォイの野郎、ハリーの箒を掴みやがった! この屑野郎が!』

マクゴナガル『このカス! 卑怯者、×××、(ピーー)!』


マミ「……ねえ、キュゥべえ。幻聴よね。マクゴナガル先生が、あんなこと仰るわけが……」

QB「現実をみなよ、マミ。それにマクゴナガル先生って、たまにアレなとこがあるよ」

マミ「……それにしても、ラフプレーの応酬ね。
   ぶつけちゃいけない人にブラッジャーをぶつけるわ、こん棒で殴りつけるわ……」

QB「それだけ必死なんだろう。この試合が校内ヒエラルキーの変化に大きな割合を占めて――」

マミ「……あ! ハリーくんがスニッチを見つけたみたい! で、でも相手の方が凄い近い! 間に合うかしら?」


ドラコ「はははっ! 貰ったぞポッター!」

ハリー(……まだだ。間に合う! 行け!)


リー『おおっと! ハリーが物凄い追い上げ! さすがファイアボルト! ですが――あー、くそ!
   僅かにマルフォイの野郎の方が早いか!?』


ハリー「負けてたまるか……こ、のっ!」バッ

ドラコ「へ? は、はあ!? 馬鹿かポッター! そんな無茶な姿勢で飛べると……」


リー『あーっと! ハリーが身を乗り出して……手を伸ばし……取った! 取りました!
   ハリーがスニッチを掴んだ! 最後はプレイヤースキルが勝敗を分けた! グリフィンドール、優勝です!』


わあああああああああああ!


マミ「……! やった! ハリーくんが勝ったわ! ねえキュゥべえ、見てる!?
   グリフィンドールが優勝ですって!」

QB「うん、見てたよ。良かったね、おめでとう」

マミ「……あんまり嬉しそうじゃないわね? もう。少しは喜びなさいよ」

QB「うーん。確かにお腹の底でむずむずするものはあるんだけど、まだよく分からないな。
   スポーツ観戦で興奮する感情は、もうちょっと学習してからじゃないと」

マミ「そうなの? 確かに猫の世界にスポーツはなさそうだけど……
   いつか一緒にテレビでオリンピックとか甲子園とか見て、盛り上がれたらいいわね」

QB(……まあでも、一時でもマミがあれのことを忘れられたのは良かったかな。
   でもすぐに思い出すことになるだろうけど、なんてったって、もうすぐ六月だし――)
780 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/06/02(日) 22:41:13.68 ID:h/X7SGhL0

五月下旬 試験間近 透明の部屋


マミ「うわああああん! チーリングチャーム!(元気呪文) テストゥードゥチャーム!(亀に変われ)
   スコージファイ(清めよ) あばだけだぶらああああああああああ!(死ね)」


バッシュン バッシュン


蛙1「最後まで気をぬくな。勝利によいしれた時こそスキが生じる」

蛙2「カメェェェッー!」

蛙3「おれは しょうきに もどった!」

蛙4「……」ペコリ


マミ「あああああ! まともに成功する呪文がひとつも成功しない呪文だわ!
   仰天セペデトの輝く七の月、上流での氾濫は下流に豊かな沃土を堆積させた――」ガルルル

QB「落ち着いて、マミ。なんかもう訳が分からないよ。あと唱えちゃいけない呪文唱えてなかった?」

マミ「これが落ち着けるわけないでしょ!? もう試験まで一週間もないのに!
    ああ呪文学と変身呪文が絶望的だわ!」

QB「まあ、何とかなるんじゃない? 一年生の頃のテストだって、わりと酷かったけど何とかパス出来たじゃないか」

マミ「今年は無理よぉおおおおおお……どうしましょうどうしましょう。落第の二文字が迫って来てるぅぅううううううううううううう!」

QB「んー、駄目だこりゃ。何言っても無駄だね。なるようにしかならないか」
781 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/06/02(日) 22:45:35.62 ID:h/X7SGhL0

グリフィンドール談話室


ハーマイオニー「そういえば、マミがどこにいるか知らない?
          最近話す機会がないし、私たちが仲直りしたって知らせてあげないと」

ハリー「いや、知らないよ。というか、君と同室だろう?」

ハーマイオニー「このところ朝早くからどっかに出かけてるみたいで……私も自分の勉強があるから、そうそう探し回れないし。
          夜も部屋に入ってくるなりベッドにばったりで……」

ロン「うーん。たぶんマミも魔法の練習してるんじゃない? 彼女、実技はネビルとどっこいだし。試験が終わったら話せばいいよ」

ハーマイオニー「ええ、そうね……そういえば、聞いた? バックビークの控訴、試験の最終日よ」

ハリー「聞いたよ。おまけに死刑執行人までついてくるって」

ロン「ふっざけてるよな! バックビークの為に僕らがどれだけ資料を探したと思ってるんだ! 絶対まともに審議させてやるぞ……」
782 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/06/02(日) 22:49:48.11 ID:h/X7SGhL0

6月 試験期間 グリフィンドール女子寮


がちゃ


QB「あ、おかえり。実技はどうだった?」

マミ「ううう、キュゥべえ〜。あうあうあうあうあうぅぅぅうう」

QB「あー、分かったよ。ほら、泣かないで。あと鼻水こすり付けるのやめて」

マミ「どうしよう……落第よぉ。亀に変える筈だったティーポットは注ぎ口と取っ手が引っ込むだけだったし、
   元気の出る呪文は掛けたダンゴムシが泣きながら辺りを転げまわって……」

QB「いまいちここのテストの採点基準が分からないんだよなぁ。それで、防衛術の方は?」

マミ「まだよ。私、順番最後だって。今まで習った魔法生物を使った障害物走みたいな感じのテストなの。
   それまで少しでも教科書とノートみて復習しようと思って……」

QB(ああ、障害を全部吹っ飛ばしちゃうだろうから……)

マミ「……なによ、その悟ったような顔。言っておくけど、授業と同じ失敗は繰り返さないわよ!
   ちゃーんと習った通りに障害を潜りぬけて見せるんですからね!」

783 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/06/02(日) 22:50:30.10 ID:h/X7SGhL0

闇の魔術に対する防衛術 試験場


グリンデロー「」

レッドキャップ「」

ヒンキーパンク「」


マミ「……う、うん! まあ突破出来たって事実が大切よ! 防衛術だもの。しっかり防衛しているわ!」

ルーピン(やっぱりこうなったか……本来は泥沼に誘い込むヒンキーパンクが出鱈目に逃げ回ってたからなぁ)


まね妖怪入りトランク「」ガタガタ


マミ「さて、最後はまね妖怪――ボガートね。そういえば結局、授業の時は私の一番怖いものに化けてないのよね、これ。
   えーと、イメージ、イメージ……ゲルゲルムントゾウムシ……大きな槍が刺さる……よし!」

トランク「」パカッ


ぽん!


マミ「さあ、現れたわね! だけどあの頃の私とは一味も二味も、って……あら? これって……?」


QB「やあ! 僕の名前はキュゥべえ! 僕と契約して、魔法少女になってよ!」


マミ「キュゥべえ? なんでボガートがキュゥべえに……?」

QB「願い事をひとつだけ叶えてあげるよ! さあ、言ってごらん!」

マミ「懐かしいわね。最近は言わなくなったけど、昔は口癖みたいに契約契約って……ま、いいわ。
   ボガートもたまには間違いをするってことよね……リディクラス!(馬鹿馬鹿しい)」

QB「君の素質なら、し」ポン!


白猫「にゃんにゃんにゃん!」

ルーピン「よし、オーケイ! 最後は上手く決められたぞ、マミ」

マミ「ふぅ。これで少しは実技もカバーできたかしら……?」

784 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/06/02(日) 22:55:09.14 ID:h/X7SGhL0

占い学 試験場前


ガタン


ハリー「おかえり、ロン。テストどうだった?」

ロン「いつも通りさ。いつも通りなーんも見えないから、いつも通りの不幸な予言をしてきたよ。
    そういうわけで来年あたり、世界規模の台風が地球を襲うことになったからよろしく」

ハリー「こんな試験で世界の命運を決められるのは嫌だなぁ」

ロン「まあ、君も適当にやればいいさ。これが最後の試験だし。
   不吉な予言なら何でも――マルフォイが慈善事業を始めるなんてどうだい?」

ハリー「確かにそれはぞっとしないね。黒猫に横切られるよりも最悪だ」

シビル「――次の方、どうぞ。ハリー・ポッター、そこにいるのでしょう?」

ロン「そりゃいるさ。順番決めたの先生じゃないか……じゃあ、ハリー」

ハリー「うん。終わったらハグリッドのところへ。玄関前で待っててくれ」

785 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/06/02(日) 22:56:40.51 ID:h/X7SGhL0

占い学 試験場


ハリー「あー――うーん――ヒッポグリフ――えーと、ヒッポグリフが」

シビル「死ぬところ? 首を切断され損ねて苦しみもがいてる? ハグリッドは泣いてるかしら?」

ハリー「いいえ! ――元気そうに飛び去るところです。自由に空を飛んでいます……」

シビル「……ふむ。まあいいでしょう。これがあなたのベストなのでしょうね。行ってよろしい」

ハリー(はぁ、終わった。分かっちゃいるけど悪趣味だよな、この先生)ガタッ


シビル【――ことは今夜起こる】


ハリー「……へ? 先生、なんです、その変な声……」


シビル【ことは今夜起こる。闇の帝王、その召使いは12年も自らを縛っていた鎖を今夜断ち切り、自由の身となるだろう】


ハリー「闇の、帝王? ヴォルデモート? それに、その召使いって……ブラックのことですか、先生?」


シビル【今夜だ。今夜その召使は、かつての主人の下に馳せ参ぜようとするだろう――】ガクン


シビル「……あらっ? ごめんあそばせ。ついウトウトと……うん? どうしました、そんな奇妙な顔をして」
786 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/06/02(日) 23:01:26.58 ID:h/X7SGhL0


ホグワーツ 玄関前


ロン「……」

ハーマイオニー「……」

ハリー「ごめん。おまたせ。聞いてよ、トレローニー先生が変に――いや、いつも以上に変になって」

ロン「……」

ハリー「どうしたの? そんな暗い顔で……っ! もしかして――」

ロン「ああ、控訴でも負けた。バックビークの処刑が決まったんだ。日没に処刑される……」

ハーマイオニー「ひどい裁判だったわ。やつら、最初から死刑見届け人としてファッジを呼んであるし……」

ロン「ああ、腐っても魔法省大臣を呼んでるんだ。最初から死刑にするつもりだったに違いないよ」

ハリー「そんな……なんとかしなきゃ。とにかくハグリッドのところにいこう。透明マントがあればなんとかなるよ」
787 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/06/02(日) 23:04:27.24 ID:h/X7SGhL0

グリフィンドール女子寮


QB「マミ、お腹減ったよ。夕ご飯食べに行こうよ」ユサユサ

マミ「ひとりで食べてきて……食欲がないわ。うう、変身術と呪文学……」

QB「もう過ぎたことじゃないか。そんな枕に顔を埋めてても事態は何も好転しないよ?」

マミ「……それは、そうだけど……」

QB「もっと建設的なこと考えようよ。その為には栄養が必要だ。さ、大広間に行こう?」

マミ「……建設的なことっていっても……もう学校も終わりだし……」ムクリ

QB「なんかやっておくこととかないのかい? 例えばマクゴナガル先生とフリットウィック先生に贈賄するとか」

マミ「ぞ、贈賄!? そんなこと出来るわけないでしょ! 全くもう……えーと、できることね……」

QB「別に気晴らしになれば何でもいいんじゃないかな。あの黒犬に餌でもあげにいく?」

マミ「まだホグワーツにいるのかしら……会おうと思って会える子じゃないしね。
   うー……あ! そうだわ、ハーマイオニーさんとロンくん、仲直りさせなきゃ!」

QB「ああ、そういえば。テストですっかり忘れてたね。でも時間も経ってるし、勝手に仲直りしてるかもよ?」

マミ「それならそれでいいじゃない。兎に角行ってみましょう。ここ最近は話す機会もなかったし、丁度いいわ」

QB「まあ確かにね。またハリーと組んでロンとチェスをやるのも悪くないかな。
   でも、どうやって仲直りさせるつもり?」

マミ「そこよねえ……二人のわだかまりを解くのに、私ができることって何かしら?」


 コトン


マミ「……あら? ブックスタンドから本が……」
788 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/06/02(日) 23:14:24.85 ID:h/X7SGhL0

夕方 ハグリッドの小屋 


ガチャーン!


ハグリッド「あ、ああ。またやっちまった。済まねえな、どうにも目が霞んじまって」

ロン「去年もこんなことやってた気がするなぁ。いいよ、ハグリッド。お茶なら僕たちが淹れるから、座ってなよ」

ハーマイオニー「私がやるわ。ハグリッド、お湯貰うわね」

ハグリッド「すまん……」

ハリー「ねえ、ハグリッド。何かできることはないかな。今からでも……例えば、ダンブルドアに頼むとか」

ハグリッド「ダンブルドアはもう十分やってくださった……だが委員会の連中がルシウス・マルフォイに脅されてな。
       あの方だって、なんでも思い通りにできるってわけじゃねえ」

ハーマイオニー「そうね。ダンブルドアは決して権力を振りかざすタイプじゃないわ」

ロン「そりゃそうだけどさ。それじゃあ八方ふさがりじゃないか。
   それとも今のうちに、外に繋いであるバックビークを逃がしちまうかい?」

ハーマイオニー「それをやったら、一番に疑われるのはハグリッドでしょ」

ハリー「……ハグリッド。せめて僕たちも最後まで一緒に――」

ハグリッド「ならん! それはならねえ。お前さんはこの時間外にいちゃいけねえし、ビーキーの最期を見せたくねえ……」

ロン「ううーん。どうにかならないかな。ねえ、ハーマイオニー。なんかいい考えは――」

ハーマイオニー「……スキャバーズ?」

ロン「は? 何を言ってるんだい。スキャバーズは消化されちまっただろ。仮に居てもあいつが何の役に立つって言うのさ」

ハーマイオニー「違うわ! ロン! 信じられない! スキャバーズがミルクの入れ物の中に! ほら!」ムンズ

スキャバーズ「ヂヂイイイイイイ!」ジタバタ

ロン「へぁ!? おいスキャバーズ。嘘だろ、本当にお前かい!? なんでハグリッドの小屋に――あいたっ! こら、暴れるなって!」

スキャバーズ「キィーーーー!」

ハリー「クルックシャンクスから逃げてここまで来たのかな?」

ハーマイオニー「良かった。生きてたのね、スキャバーズ……」

ロン「ああ、うん。どうやらあの猫公に食われたわけじゃなさそうだ……えーと、その、ごめん。僕の早とちりだった」

ハーマイオニー「いいのわよ。私だってクルックシャンクスが食べちゃったって思ってたし……」

ハグリッド「良かったなぁ……だけどもよ、そろそろ行かねえと不味いぞ」チラッ


ファッジ『――れが問題のヒッポグリフかね? ふむ。確かに目つきが恐ろしげだね』

ダンブルドア『ヒッポグリフとは総じて気高い生き物じゃよ、コーネリウス』

執行人『……』


ハーマイオニー「ダンブルドアとファッジ! それに死刑執行人も!」

ハリー「ねえハグリッド、やっぱり僕たちここにいて、ファッジにあの時のことをきちんと――」

ハグリッド「駄目だ、駄目だ! 行け、行ってくれ!
       それがビーキーの為だと思って……ほれ、裏口から、マントをしっかり被って……」

ハリー「ハグリッド……」
789 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/06/02(日) 23:20:03.63 ID:h/X7SGhL0

ホグワーツ敷地内 


 ザシュッ ドカッ


ハーマイオニー「……ッ!」ギュッ

ロン「……振り向いちゃ駄目だ。見える距離でもないけど、それでも」


ハグリッド『――、――!』


ハリー「ハグリッド……何を言ってるかは分からないけど、滅茶苦茶に叫んでる……」

ハーマイオニー「……酷い。本当に、酷いわ。なんでこんなこと……」

ロン「……行こう。とにかく、寮に戻らないと――」

スキャバーズ「……ぢぃ!」ガブッ

ロン「あいたっ! この馬鹿、噛みやがった! おいこら! ご主人様の顔を忘れたのか!?」

ハーマイオニー「ロン! 静かにして! ファッジ達が聞きつけてきたらどうするの!?」

ロン「んなこといったって、スキャバーズが暴れて――おいお前本当にスキャバーズなんだろうな!?
    実はそっくりなだけのネズミだったりしないか!? 大人しいのだけが取り柄だったのに――」

スキャバーズ「チチチ!」ピョン! ダッ

ハリー「あ、逃げた!」

ロン「おいどうしたんだよスキャバーズ! なんでそんなに――」


クルシャン「――フギャーオ!」ダッ


ロン「うわっ、あのクソ猫! そうか、やっぱりスキャバーズはあいつから逃げようと……おい待てよ!」ダッ

ハーマイオニー「ちょっと、クルックシャンクス! やめなさい! 駄目! スキャバーズを食べないで!」

ハリー「ああちょっと二人とも! マントから出ちゃ――って、もう遅いか。僕も追いかけないと」

790 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/06/02(日) 23:21:41.61 ID:h/X7SGhL0


ホグワーツ敷地内 暴れ柳付近


ロン「っとぉ! セーフ! 捕まえたぞ! 全く、わざわざ暴れ柳の方に逃げるこたないだろう?」

スキャバーズ「チチ! ヂィーーーー!」 ジタバタジタバタ

ハーマイオニー「はー……はー……や、やっと追いついた。スキャバーズは無事みたいね。
          クルックシャンクスは……?」

ロン「あれ? そういやどこいったあの猫。まあいいや、とにかくこれで帰れるぞ。
    ほら、もう二度と逃げられないようにファスナーの付いてるポケットにいれてやる……」

 ざっざっざ

ハリー「ああ、捕まったんだね。良かった。ほら、早くマントに入るんだ。
     もう日も落ちたし、ここに居るのを見られると――……」

ロン「ん? なんだよ、ハリー。そんな固まっちゃって。死神犬でも見たって面だぞ、縁起でもない」

ハリー「ロン、う、後ろ……」

ロン「うん? 後ろがどうかして――」クルリ


黒犬「……」


ロン「……あー、……ハロー?」

黒犬「……ヴヴゥゥウウ! バウッ!」ガブッ

ロン「ああああああああああああ! 何だこの馬鹿でかい犬! やめろ、離せよおい!」


黒犬「……」ダッ


 ズザザザザーーー!


ロン「わ、わわ! 待てよ! 僕をどこに連れて行くつもりだ! やめて、放して――!」


 ズルンッ


ハーマイオニー「ろ、ロンが大きな黒い犬に連れて行かれた!?」

ハリー「あの犬だ! 僕が前に見たグリム……どこへ行った? ルーモス!(光よ)」パァッ


暴れ柳「……」ブンブン!


ハーマイオニー「ハリー! 暴れ柳の下だわ! あそこある穴に入って行ったみたい!」

ハリー「よりにもよって、あの木の真下だって!? くそ、それでもどうにかして入らないと――」


クルシャン「……」タタタッ パシッ

暴れ柳「……」ピタッ


ハーマイオニー「クルックシャンクス!? 暴れ柳を止めた……? どうやって」

ハリー「……何なんだろう。スキャバーズをここに追い立てて、暴れ柳を静めて……なにか考えてるみたいだ。
     とにかく行こう。この隠し通路は、前に忍びの地図で見た。ホグズミードのどこかに繋がっている筈なんだ――」
791 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/06/02(日) 23:24:48.74 ID:h/X7SGhL0

叫びの屋敷 内部


ハリー「ロン! 無事かい、ロン!」

ハーマイオニー「ああ、ロン……酷い、足が折れてる。すぐに出ましょう。マダム・ポンフリーに見て貰わないと――」

ロン「っ、駄目だ。ハリー、逃げろ。罠だ、あの犬は、あいつは……"動物もどき"の」


シリウス「私というわけだ」

ハーマイオニー「……! ハリー、後ろ!」

ハリー「エクスペリ――」

シリウス「いいセンスだが、まだ遅いな。エクスペリアームス!(武器よ去れ)」


 ヒュン パシッ


シリウス「さて、これで君たちの杖は全て私の手の中……これでようやく落ち着いて話ができるというものだ」

ハーマイオニー「シリウス・ブラック……!」

ハリー「話? 話だって!? お前と話すことなんか何一つない! 僕の父さんを裏切って、殺した奴となんか!」

シリウス「否定はしないさ。君の両親を殺したのは、ヴォルデモートを除けば私と、そしてもう一人の……」


 バタン


ルーピン「シリウス。話が遠回しすぎて分かりにくいよ。昔から君は頭に血が上ると見境つかなくなる悪癖があるが」

ハリー「ルーピン先生……? どうしてここに。なんでブラックとそんな親しげに……?」

ハーマイオニー「……嘘、そんな……でも、やっぱりそういうことなの……?」

ロン「何だよ、痛みで頭が回らないんだ。さっさと言ってくれ」

ハーマイオニー「ルーピン先生が、ブラックの手引きをしてたんだわ……ルーピン先生は人狼なの!」

ロン「え。先生が、狼人間だって……? 嘘だろ、そんな危ないのを雇う筈……」

ルーピン「……ああ、ダンブルドアは私が教鞭をとるのを認めさせるために、多大な苦労をしてくださった。
      しかしよく気づいたね、ハーマイオニー」

ハーマイオニー「スネイプ先生の出したレポートで……先生が休むのが、満月の日に一致するって気づいて」

ルーピン「ふむ。君のレポートは読んだよ。素晴らしい出来だった……が、今回は百点をあげられないね。
      確かに私は狼人間だが、シリウスの手引きはしていない。会うのも十二年ぶりさ」

ハーマイオニー「……信じられないわ」

ルーピン「ハリー、君はどうだい? 私がシリウスの味方なら、君をどうこうする機会はいくらでもあっただろう?
      毎週のように、パトロナースチャームの練習をふたりでしていたんだから」

ハリー「……」

ロン「じゃあ、なんでここに……」

ルーピン「そうだな。全てを話すのは長くかかる……私もシリウスの事情を全て知っているわけではないしね」

シリウス「リーマス……私はもう我慢できそうにない。話すなら、早くしてくれ」

ルーピン「そうだな。ではてっとり早く、要点だけを話そう。
      私たちはジェームズを、ハリーの父親を裏切った魔法使いを始末するためにここにいる」

ハリー「だから、それはブラックが」

ルーピン「いいや、違うんだ。シリウスは自分にも責任があると思っているようだが。
      真の裏切り者の名はピーター・ペティグリュー――十二年間、ロンのネズミに化けていた"動物もどき"だ」
792 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/06/02(日) 23:27:34.00 ID:h/X7SGhL0

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ハリー「秘密の守り人は、ブラックじゃなくてペティグリューだった……それで、ペティグリューがヴォルデモートに密告を?」

シリウス「ああそうだ。私の判断ミスだ。ヴォルデモートをかく乱しようとしたのが、裏目にでた……すまない、ハリー。
      君の御両親の死の責任は、私にもある」

ハリー「……もしもその話が本当なら、悪いのはあなたじゃなくてペティグリューだ」

ハーマイオニー「そしてペティグリューはその罪をシリウスに擦り付けるために、あの事件を……
          呪いを掛けてマグルを吹き飛ばしたのはペティグリューの方だったのね。
          自分の指を切り落として、死んだふりまでして……」

ロン「そこから回りまわって、僕のペットになったってわけか。ハリーの傍に居て、いざとなったら例のあの人に差し出せるように。
   それをブラックは新聞の切り抜き――僕がエジプトに行った時の写真で知って、ルーピン先生は……」

ルーピン「ああ、そうだ。ジェームズとピーター、そして私たち四人で作った"忍びの地図"を使った。
      あれには名前が表示されるからね。犬に化けたブラックのも、ネズミに化けたあいつのも」

シリウス「だがリーマス。君が不用心にもその地図を部屋に置きっぱなしにしてきたせいで、予期せぬ珍客を招いてしまったな」ゲシッ


スネイプ「」


ルーピン「ふむ。そういえば脱狼薬を届けにきてくれるという話だったな。ころっと忘れていた」

ハリー「スネイプ……僕らの話を聞こうとしなかったから、咄嗟に呪文で昏倒させたけど……」

ハーマイオニー「あああ、先生を攻撃しちゃった……どうしよう。退学になるかしら」

ロン「今気にすることじゃないと思うけどなぁ……じゃあ寮の中に入ったのも、スキャバーズを探すために?」

シリウス「ああ。合言葉のメモは、この猫が盗ってきてくれた」

クルシャン「なー」ゴロゴロ

ハーマイオニー「クルックシャンクスが?」

シリウス「そうだ。この猫は非常に賢い。おそらく、何らかの魔法生物の血が混じっているのだろうが――
      ピーターの正体をすぐに見破り、私に協力もしてくれた。代償は払うことになったがね」

ハリー「代償?」

シリウス「うむ。その猫は、何と言ったか……白い奇妙な猫に求愛しているようでね。その手伝いをさせられた。
      無害で愉快な愛玩犬を装うのに、非常に苦労した……」

ロン「白い猫? ……ああ、キュゥべえか。なるほど、それで追いかけまわしてたんだな、あいつ」

ハーマイオニー「……でもクルックシャンクスって、オスなのだけど」

ハリー「え」
793 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/06/02(日) 23:31:07.47 ID:h/X7SGhL0


シリウス「……まあ、愛の形は人それぞれさ。話が逸れたな。そういうわけで、そのネズミを渡して欲しい」

ロン「……まだ、完全に信じたわけじゃない。スキャバーズがペティグリューじゃなかったらどうする?」

ルーピン「普通のネズミなら、傷つかない魔法を使うさ。さあ、貸して」

ロン「……」スッ

スキャバーズ「チチッ!? チチチ、チ――」


ルーピン「やるぞ、シリウス」

シリウス「ああ。3……2……1!」


 バーン!


スキャバーズ「ヂッ、ぎ、ぎぎぎぎ!」ムクムク

ハリー「……スキャバーズが、人の形に」

ルーピン「……やあ、ピーター。懐かしいね」

ピーター「あ、あの、その……な、懐かしき、わが友ら……」

シリウス「ああ。本当に、久しぶりで――そしてさようならだ、ピーター」

ハリー「……」
794 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/06/02(日) 23:31:15.54 ID:+Pkq2gZNo
   ∧∧
┌(┌ ^o^)┐
795 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/06/02(日) 23:33:06.46 ID:h/X7SGhL0

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ホグワーツ敷地内 暴れ柳付近


ルーピン「この暴れ柳もね、私が入学する際に植えられたんだ。
      昔は脱狼薬がなかったから、満月の晩はここを通って叫びの屋敷で過ごしたのさ」

ハーマイオニー「なるほど。それで叫びの屋敷の逸話が……」

ルーピン「ああ。ジェームズ達は、狼になった私と一緒に居る為に非合法な動物もどきにまでなってくれた……
      それが今回の事件に繋がるというのは、皮肉な話だが」

ロン「スキャバーズはただのネズミだってずっと思ってたよ。まさかあんな人間だったなんて……」

シリウス「……ところで、ハリー。本当にこいつを殺さなくて良かったのかね?」


ピーター「……」ブルブル


シリウス「こいつはリリーとジェームズを裏切った。そんな奴を前にして、君は殺意を抑えられるのか?」

ハリー「……憎いです。でも、それで父さんの親友だった人たちが殺人者になるのは、もっと嫌な気分になる……」

シリウス「ハリー……私を、まだジェームズの親友だと認めてくれるのかい?」

ハリー「だって、あなたは父さんを裏切ってないんでしょう?」

シリウス「……そうだ。友を裏切るくらいなら、死を選ぶさ。ピーターの奴も、そうだと思っていたんだがな……」

ピーター「……」
796 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/06/02(日) 23:35:36.05 ID:h/X7SGhL0


シリウス「……時に、ハリー。これからペティグリューを引き渡すわけだが、そうなると私に掛かった冤罪は無事晴れるわけだ」

ハリー「自由の身になるってことですよね」

シリウス「ああ、そうだ。もう味のしなくなったガムで食いつなぐなんて真似しないで済む――こほん。
      あー、それで、だ。君が私をジェームズの親友と認めてくれるなら……その、ジェームズとの約束を果たしたいと……」

ハリー「約束……ですか?」

シリウス「知ってるかもしれないが、私は君の後見人にあたる――ジェームズとリリーが決めたんだ。君の名も私が付けさせて貰った。
      もしも自分たちの身に何かあった時、ハリーの助けになって欲しいと――」

ハリー「……?」


シリウス「だから、つまりだ。うむ……君がもし……いや、もちろんそんなことないと思ってる。思ってるが……
      その、今の家族と、本当に君が良ければの話だが、今の家族とは別の、つまりは私と一緒に……」

ハリー「あなたと一緒に暮らすんですか? ダーズリー一家と別れて!?」

シリウス「あー! もちろんそんなことは有り得ないと思ってた! 思ってたさ!
      うん、だが、もしかしたらと、一応の可能性をね……」

ハリー「いや、違います! 僕、ダーズリーのとこなんかすぐ出たいです! 住む家はどこに!?
     いつくらいに引っ越せますか!?」

シリウス「は、ハリー。本当かい? 本当に、一緒に暮らしてくれるのかい?」

ハリー「もちろんです!」

シリウス「……そう、か。そうか! ははは! よし、それなら一刻も早くこいつを引き渡そう!
      ムーニー・リーマス! さあ行くぞ。どうした、そんなところで止まって。君が歩かないと……」

ルーピン「……あ、う。、が」

シリウス「……リーマス?」
797 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/06/02(日) 23:37:26.00 ID:h/X7SGhL0

ハーマイオニー「……! 大変! スネイプ先生が私達を追ってきたのって……」

ロン「なんだよ。ルーピン先生の部屋に忍びの地図があって、それを読んだからだろ?」

ハーマイオニー「その前! そもそもスネイプ先生がルーピン先生の部屋に行ったのは、人狼抑制の薬を届ける為でしょ!?」

ロン「じゃあ今夜はまだ薬を飲んでないってのか!? そうするとどうなる!?」

ハーマイオニー「狼人間は、満月の晩に変身して、近くにいる人間を無差別に襲うわ!」


ルーピン「がう、が、ああああああああああああああああああああああああ!」メキッメキッ


ハリー「ルーピン先生!」

シリウス「逃げろ! ここは私が抑える! 安心してくれ、学生時代に何度もやっていたことだ――」シュルシュル


人狼「――アォォオオオオオオオオオン!」

黒犬「ガァァァアアアアアアアアアアッ!」


ハーマイオニー「ああ、二人とも、戦いながら森の中へ……」

ハリー「ブラック……いや、シリウス……」



ロン「おい、呆けてる場合じゃないぞ! 奴が逃げる! ペティグリューが――うわっ!?」

ハーマイオニー「ロン!? あ、あ、そういえば、ルーピン先生がペティグリューの見張り役で……」

ハリー「っ、待て! 逃げるな! お前が逃げたら、シリウスは――」

ピーター「……さようなら。また会おうハリー」ニィ


 シュルルッ


スキャバーズ「チチチチッ!」ダッ

ハリー「くそ、待て! 逃がさないぞ!」

ハーマイオニー「駄目よハリー! いま森の中に行くのは危ないわ! それに、この暗さじゃネズミを見つけるのは……」

ハリー「でも! あいつを捕まえないと、シリウスが冤罪だって証明できない!」


 『ヴウウウウウ……! ォォオオオオオオン!』


ハリー「……っ、シリウスの声だ。苦しんでる……助けに行かなきゃ」フラッ

ハーマイオニー「ハリー! 駄目だったら! 危ないし――それに、シリウスも慣れてるから大丈夫だって言ってたでしょ!?」

ハリー「昔は、父さんやペティグリューもいた……だけど、いまはひとりなんだ! 助けが要る!」ダッ

ハーマイオニー「あ、ハリー! 駄目よ、戻って――!」

ハリー「君はそこでロンを見てやっててくれ! ペティグリューに何かされたみたいだ!」
798 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/06/02(日) 23:46:35.89 ID:h/X7SGhL0

ホグワーツ敷地内 湖畔


ハリー「……いた! シリウス!」

シリウス「……っ、あ、ハリー、か」

ハリー「大丈夫ですか? 怪我は!? 噛まれたんですか?」

シリウス「いいや、リーマスは、大丈夫。大丈夫、だが……逃げろ。あいつらがくる。あの、冷たい、氷のような……」

ハリー「シリウス? あいつらって――」


吸魂鬼「コォォオオオオオオオオオ――」


ハリー「吸魂鬼!? こんな時に……! でも、一匹くらいなら……っ」



吸魂鬼「――」

吸魂鬼「――」

吸魂鬼「――」



ハリー「そんな……空いっぱいに、飛びかって……」


吸魂鬼「……ずぉおおおおおおお」スゥ


ハリー「っ、あいつ、フードを……」


ルーピン『"吸魂鬼の口づけ"。奴らが頭巾を下ろす時は、それを執行するときだ。
      魂を奪い、人を人でなくしてしまう、最悪の――』


シリウス「ぅ……ぁ……」

ハリー「――嫌だ。僕は、シリウスと、暮らすんだ!」


ハリー「エクスペクト・パトローナム!(守護霊よ、来たれ)」シュゥウウウウ!
799 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/06/02(日) 23:52:27.39 ID:h/X7SGhL0


吸魂鬼「――」


ハリー「っ、エクスペクト・パトローナム!」


吸魂鬼「――」

吸魂鬼「――」


ハリー「……エクスペクト・パトローナム!」


吸魂鬼「――」

吸魂鬼「――」

吸魂鬼「――」




ハリー「エクスペクト、パトロー……!」




吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」吸魂鬼「――」
800 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/06/02(日) 23:56:41.55 ID:h/X7SGhL0
 









                   ???『――エクスペクト・パトローナム!(守護霊よ、来たれ)』









.
801 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/06/02(日) 23:58:26.14 ID:h/X7SGhL0

医務室


ロン「Zzzzz.....」

ハーマイオニー「……」

ハリー「……う、うん? ここは……」

ファッジ「目が覚めたか! ハリー! 良かった、危ないところだったんだよ。
      まさか吸魂鬼の連中、罪もない未成年の魔法使いにまで"キス"を執行しようとするとは……」

ハリー「……大臣!? 一体、なんでここに……いや、それよりもシリウスは……!?」

ファッジ「うん? ああ、安心したまえ。ブラックならスネイプ先生が捕まえてくれたよ。
     西塔の最上階にに閉じ込めたから、逃げることもできんさ。
     うむ。やはりスネイプ教授にはマーリン勲章を授与しなければ。ブラックにはもうじき、吸魂鬼が"キス"を施すだろう」

ハリー「……! 違うんです、大臣! ブラックは無実で、本当はピーター・ペティグリューが――」

ファッジ「……ううむ。やはり君の言う通りらしいなスネイプ。混乱しておる……ブラックめ、錯乱呪文をかけたな」

スネイプ「そうでしょうな、閣下。しかし、ポッターら三人にも落ち度は――」

ハリー「大臣、僕、混乱してなんか――」

ファッジ「まあまあ。ハリー、大丈夫。君には休養が必要なんだ。ゆっくりお休み。
     そしてスネイプ、今回は助かっただけでよしとしようじゃないか……それにしても、吸魂鬼はなぜ撤退したんだ?」

スネイプ「さあ、それに関しては我が輩も皆目見当が……」

ファッジ「まあ、連中の考えなんぞ分かりたくもないがね。さて、そろそろ病人を休ませてやろうじゃないか」

ハリー「待って、待ってください! 僕、本当に――」

ファッジ「なに、ハリー。ひと眠りすれば、気分も落ち着くさ」


 バタン


ハリー「ああ、そんな……どうしよう。このままじゃ、シリウスが……」

ダンブルドア「……さて、ハリー。二つの罪なき命を救うのに必要なのものは、なんだと思うかね?」

ハリー「……先生!? いつの間に」

ダンブルドア「時間がないからよくお聞き、ハリー。必要なのは……時間じゃ。グレンジャーの助けを借りるが良い」

ハリー「ハーマイオニーの……?」

ハーマイオニー「……」
802 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/06/03(月) 00:02:01.97 ID:dacbDBte0


夕刻 ハグリッドの小屋前 逆転時計使用後


ぐにゃあ


ハーマイオニー「……成功ね。きっかり三時間。時間が巻き戻ってるわ」

ハリー「逆転時計(タイム・ターナー)? 時間を巻き戻す時計? それが、君がたくさんの授業を受けられてた秘密なの?」

ハーマイオニー「ええ。かなり貴重なもので、マクゴナガル先生が魔法省にかけあってくださったの。
          ダンブルドアが言ってた"罪なき命を救うのには時間が必要"っていうのは、これのことだと思うわ」

ハリー「時間が必要……過去に戻って、何かを変えろってこと?」

ハーマイオニー「多分、そうね。でも誰にも見られちゃいけないし、凄く難しいことよ、これ。
          時間を変えようとした魔法使いが、何人もとんでもないことになってるの」

ハリー「つまり、いますぐハグリッドの家に飛び込んでペティグリューを思いっきり握り絞めるのはダメってこと?」

ハーマイオニー「そうね。誰にも見られちゃいけないんだから。でも、そうすると何をどうすればいいのかしら……?」

ハリー「……! 分かったぞ、ハーマイオニー! ダンブルドアが言ってたじゃないか、二つの罪なき者の命を救え、って!」
803 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/06/03(月) 00:03:08.90 ID:dacbDBte0

夜 ホグワーツ敷地内 森の中


バックビーク「ぐぎゃ?」

ハーマイオニー「なんとか成功したわね。繋がれてるところをファッジや執行人に見せた後助けたから、
          ハグリッドに疑いが掛かることはないと思うわ
          それにしても、ここからは上手くいくかしら?」

ハリー「大丈夫さ。シリウスが閉じ込められてるのは西塔の最上階だってファッジが言ってた。
     助けたバックビークに、シリウスを乗せて逃がせばいいんだ!」

ハーマイオニー「でも、そうすると後2時間は待たなくちゃ。シリウスが塔に入れられるのはその位の時間だし」

ハリー「うん……僕らが叫びの屋敷から戻ってきて、その後だ……」

ハーマイオニー「……ハリー。ひとつ聞いてもいい? あなた、シリウスを助けに行った後、大勢の吸魂鬼に囲まれたんでしょう?
          どうしてあなたとシリウスは助かったのかしら……?」

ハリー「……僕もよく覚えてない。だけど気を失う前、湖の向こうから白い光が飛んできて……」

ハーマイオニー「白い、光?」

ハリー「たぶん守護霊(パトロナース)だ。それも、本当に強力な。それしか吸魂鬼を追い払えるものはない。
     ……僕には、それを父さんが出したように見えた。もちろん気のせいだと思うけど……」

ハーマイオニー「……」

ハリー「……うん? ハーマイオニー、あれ……」


マミ「――、――」

QB「……。〜〜〜」


ハーマイオニー「え? ……あれって、マミ? こんな時間に何を……」

ハリー「手に何か持ってる……なんだろう。本みたいだけど」

ハーマイオニー「なんで? 夜中に外で読書なんて……本当にどうして……」

ハリー「……不味い。こっちにくるよ」

ハーマイオニー「下手に動くと見つかりそうね……息をひそめてやり過ごしましょう。幸い、時間はまだあるし……」
804 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/06/03(月) 00:04:30.80 ID:dacbDBte0

マミ「えーと……この辺でいいのかしら? ルーモス(光よ)……うん、やっぱりこの辺って書いてあるわね」

QB「ねえマミ。本当にそれ信用するわけ? 絶対怪しいと思うんだけど」

マミ「うーん。私もそう思うんだけど……だけど、何でか信用できるのよね。理屈じゃないけど……
   なんていうのかしら。凄い馴染みのある気配というか、長い間ずっと一緒にいるような……
   ……? あら、なんだか前にもこんなこと言った気が……」

QB「僕は聞いたことないけど。まあいいや。じゃあ手早く済ませようよ。先生に見つかったら不味いし。
   というか、誰に見られても社会的に不味いと思うけど」

マミ「そう? ちょっと格好よくない?」

QB「これを考えた人は、きっと趣味嗜好が君と同レベルなんだろうなぁ。んじゃ、やりなよ」

マミ「……オーケイ! それじゃあ速攻で片付けるわよ! ルーモス・マキシマ!(強き光よ)」

 

 そして 少女は踊りだす。



.
805 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/06/03(月) 00:05:25.02 ID:dacbDBte0

salti reali ≪真実へ踏み出そう≫


 魔法で作り出した即興の舞台照明の下で、少女はステップを踏む。


amari ce fati a la asta e stia ≪例え辛い運命が待っていようとも≫


 くるりと回って一回転。右の踵を対のそれに打ち付けてから一度、跳ねる。謎のエフェクトが闇夜を彩った。


salti reali ≪真実へ踏み出そう≫


 着地は軽やかに。そしてしめやかに。しかしそれは次の跳躍への布石。


vela li da fati a rea aria ≪運命を乗り越えるんだ≫


 二回目の跳躍。こんどは両膝を折り曲げてぴょこんとジャンプ。ふわりとあざとく制服のスカートが舞う。


fati reali a fati tuo settaria via, sol via≪本当の運命からあなたを遠ざけていた事に≫


 首を異様な角度に曲げながら、少女はその場でくるくると回る。無駄に回る。


vi se so-la (salti reale) salti reale ≪気付いたなら(真実へ踏み出そう)真実へ踏み出そう≫


 その角度はほんと、骨格的に不味いんじゃないか。そんなレベルで首を傾げながら、少女は回転の数を重ねる。 


salti reali ≪真実へ踏み出そう≫


 そうこうしている内に、回転の勢いが最高潮に達したらしい。首の角度も、遠心力が手伝ってさらにヤバイことになっている。


amari ce fati a rea aria ≪辛い運命を蹴散らして進もう≫


マミ「……ふっ!」

 そして、最後に。少女は回転を止め、スカートの裾を軽く摘まんで観客席に――まあつまりは彼女がそう想定している方向に――軽く一礼した。



ハリー「……」

ハーマイオニー「……」


ハリー・ハー子(なにこれ)
806 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/06/03(月) 00:06:32.25 ID:dacbDBte0

マミ「……ふぅ。なかなかいい運動になるわね、これ。これから毎日やってもいいかも」

QB「やめてよ。なんか呪われそうだし」

マミ「むっ。失礼ね! どこが呪われそうだっていうのよ。まるで白鳥のように優雅な舞だったじゃない!」

QB「僕にはトランス状態に入った未開部族のシャーマンにしかみえなかったけど……
   良かったね、ホグワーツにビデオカメラがなくて」

マミ「もう! いいですよーだ。所詮猫に人間の芸術は理解できないものね」

ハリー(僕猫だったんだ)

ハーマイオニー(その理屈で言うと、私は人間じゃないわね)

QB「はぁ、なんか無駄に疲れたけど……まだ終わりじゃないんだよね。えーと、あと何か所だっけ?」

マミ「5、6箇所だった筈よ。さ、あと1時間以内に終わらせなきゃいけないし、次のポイントに向かいましょ」

QB「帰りたいなあ、心底」


 ざっざっざ……


ハリー「……行ったね。あと五回も繰り返すつもりなのか……何だったの、今の?」

ハーマイオニー「えっ、そんな、私に聞かれても困るわ……というより、今のは現実の光景だったの……?」

ハリー「……見なかったことにしようか。うん、それがいいよ」

ハーマイオニー「そうね。ある春の日の幻影ということにしておきましょう」


 その後、ハリーは過去の自分を救うため、完全なパトロナースを造りだし、無事にブラックを助け出すことができた。
807 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/06/03(月) 00:08:01.41 ID:dacbDBte0

医務室


ダンブルドア「二人ともようやった。さ、鍵を閉めるから、中にお入り――」


 バタン ガチャ


ハリー「……っ、ぎりぎり、セーフ! なんとか間に合ったね」

ハーマイオニー「ええ……それにしても信じられないわ。あの守護霊を造り出したのがハリーだなんて……
          あれはとっても高度な魔法なのよ? それを……」

ハリー「未来の僕ができたんだから、今の僕にも出来るってことさ」

ハーマイオニー「……うー。時間のパラドックスについて考えると、頭が痛くなりそうね。とにかく疲れたわ。
          いまはゆっくり休んで……」


スネイプ『奴だ! ポッターがやったんだ! 私には分かるのです大臣!』

ファッジ『スネイプ、そんな世迷いごとを……ああ、ダンブルドア。彼らは医務室に?』

ダンブルドア『当然じゃろう。彼らには休息が必要なんじゃから。どうしたというんじゃ、セブルス?』


ハリー「……そういうわけにはいかないみたいだね」


 ガチャガチャガチャ! バタン!


スネイプ「ハルゥィイイイイイイイイイポッタアアアアアアア! 貴様が! 貴様がブラックを!」

ハリー「な、なんです、スネイプ先生? どうして急にそんな――」

スネイプ「黙れ! そのような演技で騙される我が輩ではない!
      貴様がブラックを逃がしたのだろう! さあ! 吐け! 奴はどこだ!」

ハリー「ええ! ブラックが、逃げた? 本当にですか?」

スネイプ「白々しい! ええい埒が明かん! 大臣! 真実薬の使用許可を!」

ファッジ「出せるわけないだろう! 罪人相手でもないのに!」

スネイプ「いーやこやつは大罪人です我が輩には分かるのです! こいつは! もうほんとにこいつは!」

ダンブルドア「まあまあ、セブルス。もういいじゃろう。
         この子たちはずっとこの部屋にいたのだし、ドアには外からカギがかかる。
         のう? どうやったらここから動かずにブラックを逃がすことができるというのじゃ? ご説明願いたいの?」


スネイプ「っ! っ! っ! ……これにて失礼します!」


 バタン!


ファッジ「何だね、あの男は。左巻きの一言だ。ダンブルドア、不祥事には気を付けてくれよ」

ダンブルドア「そうじゃのう。お互いに気をつけねばの」

ファッジ「ああ、言わんでくれ……またブラックを取り逃がしたのだぞ! しかも私がいるこの日に!
     新聞はお祭り騒ぎだろう……ダンブルドア、なにかいい知恵は無いものかね?」

ダンブルドア「そうじゃのう。とりあえず、あの吸魂鬼どもを早いとこアズカバンに引き上げてじゃな」
808 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/06/03(月) 00:09:44.13 ID:dacbDBte0


 バタン


マミ「失礼します、ロンくんとハーマイオニーさんがここにいるって聞いて……
   あら、校長先生……と、お客様? すみません、お邪魔でしたか?」

ファッジ「うん? なんだね、ハリーの友達かね? 
     初めまして、御嬢さん。私はコーネリウス・ファッジ。一応魔法省の大臣をやっているんだが」

マミ「ええ!? ま、魔法省大臣!? し、失礼しました。ええと、本日はお日柄もよく――」

QB「いや、別によくないし。なんだい、君はスピーチでもする気かい?」

ダンブルドア「マミ。お見舞いかね? じゃがきっと、マダム・ポンフリーが許してくれんじゃろう。
        一言かけるくらいにして、続きは明日にするが良い」

マミ「あ、はい。すみません……えーと、でもロンくんはまだ寝てるから……あ、ハーマイオニーさん!」

ハーマイオニー「な、何かしら?」ビクッ

ハーマイオニー(例の踊りがちらついて仕方ないわ……)

マミ「えーと、あのね。もう心配しないでいいわよ! クルックシャンクスは、スキャバーズを食べてなんかいなかったの!」

ハーマイオニー「え、あ、そうね。あいつはハグリッドの小屋に隠れてたんだし――」

ハーマイオニー(……って、あれ? なんでマミがそのことを知って……?)

マミ「それでね、さっききっちり捕まえておいたから! これでロンくんとも仲直りできるはずよ! ほら!」


スキャバーズ in ガラス瓶「チチチチチチ!?」ジタバタジタバタ


ハーマイオニー「……へ?」

ハリー「は?」

ダンブルドア「……ほう?」



マミ「うん、言いたかったのはそれだけ。ほんとは、なんでそんな怪我してるのかとかも聞きたかったんだけど……
   まあ、それは明日でもいいわよね。それじゃ、おやすみなさい」クルッ

ハリー「……ま、待って! ちょっと待ってくれマミ!」
809 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/06/03(月) 00:13:11.48 ID:dacbDBte0

ファッジ「信じられん……それでは、さっきまでハリーが言っていたことが本当だというのか。
     ペティグリューが真の犯人で、ブラックが冤罪? 馬鹿な……」

ダンブルドア「じゃが、どうもそれが事実のようじゃのう。セブルスの"真実薬"の効果はわしが保障しよう」


ピーター「怖かった。仕方なかったんだ。闇の帝王の前に、逆らえる筈なんて」ブツブツブツ


ファッジ「……これはもう、私の理解の範疇を超えているよ、ダンブルドア。どうすればいいんだ。
     これでは魔法省はまんまと欺かれ続けた笑いものだ!」

ダンブルドア「ふむ。コーネリウスや、確かに魔法省は欺かれていたが、しかしじゃ。
        その冤罪を晴らしたのがお前さんということになれば、冤罪の責任は当時の魔法大臣に求められるじゃろう」

ファッジ「な、なるほど! 確かに……うむ。ではそのように手筈を整えなくては……」

ダンブルドア「すぐに会見を開き、真実を伝え、逃亡したブラックを呼び戻すがいい。
        早ければ早いほどいいじゃろう」

ファッジ「ああ。そうさせてもらうよ。急がねば……フクロウを少し借りさせてくれ」

ダンブルドア「好きなだけ使うが良い」


バタン


QB「……」

マミ「えーと、あのう。これは一体どういう……」

ダンブルドア「ふむ。説明してやりたいが、もう今宵は遅い。ハリー達も休まねばならんしのぅ。
         とりあえず、今日のところは寮にお戻り」

マミ「は、はい……失礼します。それじゃハリーくん、ハーマイオニーさん、また明日ね」

ハリー「え、あ、うん……その、また明日」

ハーマイオニー「正直、分からないことだらけだわ。明日、話を聞かせてね、マミ」


バタン


マミ「……何が起こったの? 私、ただ二人を仲直りさせようとしただけなのよ?
   それが大臣は出てくるし、スキャバーズは人間になるし……」

QB「僕だって予想外だよ。しかし、あれが魔法省大臣、魔法界のトップか……」

マミ「なんだか、その……こういうのは何だけど、大臣って感じじゃないわよね?
   ちょっと気弱そうって言うか……」

QB「そうかい? 彼は為政者として、極めて理想的な素質を持ってると思うよ」

マミ「? そうなの?」

QB「ああ。ま、それもあと2、3年も保てば御の字だろうけどね。
   さ、マミ。寮に戻ろう。僕はもう疲れたよ」

マミ「私だって疲れたわよ。たくさん踊ったし、罠も仕掛けたんだもの」
810 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/06/03(月) 00:16:10.20 ID:dacbDBte0

翌日 ホグワーツ 透明の部屋


マミ「えーと、とりあえずここなら誰かに聞かれる心配はないと思うけど……
   何から話せばいいのかしら。そっちの事情は、大体ハーマイオニーさんに聞いたけど」

ハーマイオニー「とりあえず、どうやってペティグリューを捕まえたのか知りたいわ。
          あの日、マミはどこで何をしてたの?」

マミ「えーっと……どこから話せばいいかしら。あのね、ロンくんとハーマイオニーさん、喧嘩してたでしょ?
   だから、どうにかして仲直りしてもらいたくて……それで、その方法を考えてたらこの本が落ちてきたの」

ロン「落ちてきた? 空からかい?」

マミ「ううん。ベッドのわきにあるブックスタンドから……でも、この本に見覚えはなくて……」

ハリー「何て書いてあるの? 見せて――」ペラッ


『スキャバーズは生きている。捕まえたいなら、この位置に罠を張り、さらにこの六つの位置で踊ること』


ロン「ご丁寧に図解付きか……にしても、踊る? なんで踊らなきゃいけないのさ? 呪いの儀式か何か?」

ハリー(ロン。あれを実際見た立場からすると、その発言は笑えないよ)

ハーマイオニー「貸して……うーん。ペティグリューが逃げた位置がここで、こっちに向かって走って行ったから……
          多分、踊れっていうのは足跡をつけるのが目的なんだと思う」

ハリー「足跡?」

ハーマイオニー「そう。逃げる側の立場からすれば、新しい足跡がたくさんある場所は避けるでしょ?
          ネズミならなおさらね。 この配置を見ると、ペティグリューを罠のところまで追い込むようになってるわ」

マミ「ああ、言われてみれば……その時は考えもしなかったけど」

QB「マミ、楽しそうに踊ってたもんね」

ロン「いや、でもおかしいだろ。こんなの、ペティグリューがどこからどうやって逃げるか、
   最初から分かってでもいなきゃ考えられないじゃないか」

QB「確かに。罠だって底の深い瓶を埋めただけだし、例え誘導されてもそこに上手く落ちる保証なんてないからね」

ロン「な? その現場を見ていて、時間を巻き戻せるっていうなら別だけどさ。ああいや、馬鹿な考えってのは分かってるけど」

ハリー「……」

ロン「うん? どうしたんだよハリー?」

ハーマイオニー「……詳しくは話せないんだけど、時間を巻き戻す手段が無いわけじゃないわ」

ロン「うぇ!? マジかよ、適当に言ってみただけなのに」

マミ「本当なの? そんな凄い魔法があるなんて……」

ハーマイオニー「でも、そんなに便利なものじゃないの。
          自在に過去を変えられるわけでもないし、今回の本みたいなことには使えないわ」

QB「そもそも、本当に時間操作なんて途方もない魔法が関わっているのかな?
   この本も、可能性は低いけどただの偶然ってことは……」

ハーマイオニー「考えにくいけど……でも、そうね。判断するための材料が少なすぎるわ。
          せめてもうひとつくらい、何かあるといいんだけど……」

ハリー「マミ、何か無いかい?」

マミ「え、急に言われても……うーん……あ! もしかしたら、あれも……ちょっと待ってて!」
811 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/06/03(月) 00:20:07.49 ID:dacbDBte0

マミ「これ。私には意味が分からなかったんだけど……」

ロン「なんだいそれ? カードみたいに見えるけど」

マミ「一年生のクリスマスに送られてきたの。誤配かもと思ったから、捨てずにとっておいたんだけど……」

ハリー「見せて……ねえ、二人とも、これの一番初めって!」


『一つ目はケルベロス。音楽を聞かせること。
 二つ目は悪魔の罠。火をつけること。
 三つ目は空飛ぶ鍵。箒で飛んで掴むこと。
 四つ目はチェス。よく練習しておくこと。
 五つ目はトロール。対策を練っておくこと。
 六つ目は論理。前へ進みたいなら一番小さな瓶。戻りたいなら右端の瓶を』


ロン「ケルベロス……フラッフィーだ! あの三頭犬!」

ハーマイオニー「音楽を聞かせること……フラッフィーへの対策ね。じゃあ、残りも……?」

マミ「あの、どういうこと?」

ハリー「ほら、僕ら一年生の頃、賢者の石を守りに行こうとしてたろ?
     たぶんこれに書いてあるのは、賢者の石を守る仕掛けのリストなんだ」

マミ「ええ!? そんな、とっても大事なものじゃない!」

ハーマイオニー「そうね。だからきっと誤配じゃないわ。これはマミ宛に届けられたのよ」

マミ「でも、なんのために……」

ロン「……そういや、カードで思い出したけど……」ゴソゴソ

ハリー「どうしたんだい、ロン? それは……蛙チョコのカード?」

ロン「ほら、ホグワーツ特急の中で、マミに蛙チョコもらったろ。あの印刷ミスのカードさ。
    結局ホグズミードでも交換してもらえなかったから、ポケットにいれっぱなしだったんだけど……
    見てみろよ、その文面。今読むと意味が分からないか?」

ハリー「……"逃げる時に自分で切り落とした"……これ、ペティグリューのことじゃないか!」

マミ「じゃああの時から、このメッセージを送ってくる人はペティグリューのことを知ってた……?」

ハーマイオニー「……これで、ほとんど確定ね。どこの誰かは知らないけど、マミに対してメッセージを送ってる人物がいる。
          そして十中八九、その人はまるで"未来を見てきたかのような"情報を持ってるのよ」

マミ「でも……何のために? 何が目的で?」

QB「一連のメッセージを見る限り、マミに敵意は持っていないみたいだけど……」

ハーマイオニー「そうね。共通してるのは、その年に起こる大きな事件についての情報を送ってくる、ということかしら。
          その人物は、事件をなるべく穏便な形で解決させたいのかもしれないわ」

ロン「でも、それにしちゃあやり方が雑じゃないかい? 賢者の石の時はクィレルが黒幕だって一言書きゃ良いし、
   今回だってペティグリューのことを書けばよかっただろ?」

ハリー「それに、去年の"秘密の部屋"に関するメッセージは送られてきてないよ?」

ハーマイオニー「去年の事件は、ほら。ロックハート先生がひとりで全部解決したでしょ? 
          "送り主"が未来の情報を持っているなら、そのことを知ってたんじゃないかしら」

ハーマイオニー「それとロンの意見だけど、確かに解決させるのが目的なら、やり方が雑ではあるわね……
          これは推測に過ぎないけど、もしかしたら何か制限があるのかもしれないわ」

マミ「制限?」

ハーマイオニー「あんまり正解に近すぎる情報は送れないとか、送れるタイミングが決まってるとか……」

QB「……これ以上は考えても仕方ないね。とにかく、今すぐに害がでるわけでもないんだ。
   今後、もしもメッセージがきたらその時にまた考えよう」
812 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/06/03(月) 00:21:38.83 ID:dacbDBte0

数日後 年度最終日 ルーピンの部屋


ルーピン「やあ、ハリー。丁度君が来るのが見えていたよ。忍びの地図でね。
      これは君に渡しておこう。私はもう先生じゃないから、良心が咎めることもない」

ハリー「……やっぱり、お辞めになるっていう話は本当なんですか?」

ルーピン「ああ。誰かが、私が狼人間だということについて口を滑らしたというのもあるが……
      それが無くても、多分やめていたよ。薬を飲み忘れて、君たちを襲おうとしたのは事実だ」

ハリー「そんなこと……」

ルーピン「……なに、そんな暗い顔をすることはないさ! 転職は慣れているし……それに、私は君という生徒を持てて誇らしいよ。
      シリウスの冤罪も、きちんと晴らすことができたしね」

ハリー「それは……でも、僕の力じゃ……」

ルーピン「今回のことは誰一人欠けても成功しなかっただろう。もちろん、君もね。
      とにかく、君は無実の者を救ったんだ。それは誇ってあげなさい。じゃないとシリウスが泣くだろうから」

ハリー「……はい!」
813 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/06/03(月) 00:23:14.78 ID:dacbDBte0

マクゴナガルの部屋


マクゴナガル「さて、呼ばれた理由は何となく分かっていると思いますが、今回の試験のことです」

マミ「は、はい……」

マクゴナガル「……単刀直入に言えば、変身術と呪文学に関しては落第点ですね。
         今期ではほぼ最低といっていいでしょう」

マミ「……」

マクゴナガル「この点数では、4年生への昇級も不可扱いです。いくら座学が好成績とはいえ、実技がそれに追いついていないのでは」

マミ「そ、そんな――」

マクゴナガル「……ですが。この成績が、怠慢によるものでないということは知っています」

マミ「え? あ、あのぅ……?」

マクゴナガル「管理人のフィルチさんから、会う度に貴女に関する苦情を告げられていますので。
         やれ、門限ぎりぎりまで練習しているだの、潰したカエルの破片で部屋が汚れて敵わんだの……」

マミ「え、そ、そんな。ちゃんと掃除はして――」

マクゴナガル「まあ、それはともかく。貴女の努力を認めるという形で、今回はぎりぎりの"可"扱いとします。
         フリットウィック先生ともすでに相談済みですので、心配はいりません」

マミ「じゃ、じゃあ、4年生にはなれるってことですか? ありがとうございます、マクゴナガル先生!」

マクゴナガル「お礼を言われることではありません。貴女がきちんと努力をしていたから、その分を加味しただけです。
         あくまで公正に、です。
         ……ですからこの調子だと、さすがに5年生への進級は難しいと言わざるを得ません」

マミ「あ、ぅ……」

マクゴナガル「……そんな情けない顔しないでよろしい。マミ、貴女が努力家であることはきちんと知っています。
         まだ芽は出ていないかもしれませんが、いずれそれも報われるでしょう。
         マミ、貴女は素晴らしい魔女になる。私が保証しますよ」

マミ「……ありがとう、っございます」ジワッ

マクゴナガル「……こほん。さ、お行きなさい。そろそろホグワーツ特急がでる時間です」
814 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/06/03(月) 00:25:09.15 ID:dacbDBte0

ホグワーツ特急 ホーム


ハリー「……あ、ロン! こっち、こっちだよ!」

ロン「ハリー、お待たせ! いや、参ったよ。途中でトランクをぶちまけちゃってさ」

ハーマイオニー「もう! ぎりぎりになって支度するからそういうことになるのよ?」

ロン「はいはい、申し訳ございません。さ、乗ろうぜ――って、うん? ハリー、その犬って……」

黒犬「ハッハッハ」

ロン「こいつ、シリウsむごっ」

ハリー「しーっ! 新聞に冤罪だって載ったとはいえ、さすがにまだ不味い!
     うん、そうなんだ。これから魔法省に行って冤罪だったっていう補償の手続きをするんだけど……」

ハーマイオニー「わざわざ姿現しできないホグワーツまで戻ってきて、ハリーと同じ特急で行くってこと?
          はあ。なんていうか……子煩悩って、後見人にも当てはまる言葉だったかしら?」

ハリー「ちなみに、バックビークはシリウスの家で飼うんだって」

ロン「ふぅん……そういやハリー。君、今年からシリウスの家に引っ越すのかい」

黒犬「……!」ブンブン

ハリー「そのつもりだけど……結局、手続きが終わってからの話だからね。
     シリウスが話したら、ダンブルドアは何でか良い顔をしなかったらしいし……」

ロン「そうなの? あのマグルの家にいるより100倍は幸福だってわかりそうなもんだけどなぁ。
    それじゃ、さっさとコンパートメントを取りに行こうよ」

ハリー「うん、そうだね――って、あれ? あっちから来るのは……」

マミ「あら、ハリーくん。その犬……」

ハリー「マミ! 先に出たとばっかり思ってたけど……」

マミ「ちょっとマクゴナガル先生に呼び出されてて……それよりもその犬、ハリーくんのなの?」

黒犬「……」

ハーマイオニー(……そういえば、シリウスが動物もどきだってことは話したけど、何に変身するかは言ってなかったわね)

ハリー「いや、違うよ。これはね――」

マミ「もう、きちんと躾けないと駄目よ? その子、やたらと私のこと舐めてきてくすぐったかったんだから」

ハリー「――え」

黒犬「……!?」

ロン「……」

ハーマイオニー「……」

マミ「スカートは脱げる寸前まで引っ張られるし……顔も舐められたわね、そういえば。その時は慰めてくれたんでしょうけど……。
   まあとにかく、気を付けなきゃ。その犬大きいから、怖がる子もいるでしょうし――と、そろそろ時間ね。
   キュゥべえが席を取ってる筈だから、私行くわ。それじゃあね」スタスタスタ

ハリー「……」

黒犬「……」


 ポンッ


シリウス「違うんだ。ハリー、聞いてくれ。ほら、動物の姿になると思考が人間的ではなくなってだね。
      あまりに空腹の時に餌を貰ったものだから、つい犬っぽいお礼の仕方を……
      や、やめろ……やめてくれ……! そんな目で私を見ないでくれ……!」

ハリー「…………」
815 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/06/03(月) 00:27:35.68 ID:dacbDBte0

ホグワーツ特急 コンパートメント


QB「今年も色々あったね」

マミ「そうね……っていうか、ホグワーツって毎年事件が起こってる気がするわ」

QB「まあ魔法界全体の治安が不安定ってこともあるんだろう。ヴォルデモートがいなくなったのはたかだか十数年前だし、
   ホグワーツで起きた事件は全部ヴォルデモート絡みだしね」

マミ「来年は穏便に過ごせるかしら……」

QB「さあ、どうだろう。例の"送り主"の件もある。何事もないっていうのは、あまり考えられないかな」

マミ「やっぱりそうかしら……」

マミ(未来の情報を送ってくる"送り主"……か。もし、もしも本当にそんな人がいて、時間を移動して情報を集められるなら――)

QB「……ところでマミ、さすがに初夏だし暑いよ。少し窓を開けてくれないかい?」

マミ「え? あ、うん。分かったわ……でも、落ちたりしないでよ?」


ガラッ


マミ「んっ――気持ちいわね。イギリスの風は、何となく日本のよりさらさらしてる感じがするわ」

QB「君、本当にそんな風に感じてるの? 格好つけてるだけじゃなくて?」

マミ「う、うるさいわね! なによ、いいじゃないちょっとくらい――」


 ヒュウウ――パサッ


マミ「わ、わぷっ! な、なに。窓から紙屑が入ってきたの?」

QB「あはは。やっぱりかっこつかない――うん? マミ、その紙、何か書いてあるよ」

マミ「……もう、前の車両の誰かが捨てたのかしら? 嫌ね。えーと、何々……」ガサッ



『佐倉杏子は生きている』



マミ「……え?」



                                                          アズカバンの囚人編・了
816 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/06/03(月) 00:29:01.48 ID:dacbDBte0
投下終了。ありがとうございました
817 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/06/03(月) 00:31:10.95 ID:HouE3WHJo
乙です
818 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/06/03(月) 00:37:38.96 ID:Ny1P6ZKy0
乙!


誰だ?
819 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/06/03(月) 00:56:21.16 ID:uRvDLOw0o

ああ やはりあの人なのか・・・
820 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/06/03(月) 01:03:28.60 ID:pFSplIyAo

ピーター捕まったら今後の話がかなり変わってきそうだな…
伏線も気になるところ
821 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/06/03(月) 01:04:43.14 ID:3BDgpE4ro


未来予知でまどマギというとあの子しか思い浮かばない…
822 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/06/03(月) 01:08:36.52 ID:aCH3E33DO
マギカちゃんか
823 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/06/03(月) 01:52:54.00 ID:Hx6/ToO8o

時系列は同じでもいろいろ変わったな
この引きということは次はまた見滝原編なんだろうか
824 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/06/03(月) 01:56:54.66 ID:YVP+rBuv0
やばいな、謎が謎を呼んで続きが気になって仕方ない……
鼠を捕まえて物語はどう動くのか?
奴はこの件にどう絡んでいるのか?
感情が芽生えたQBはどうなるのか?
そして、願わくば最終回はマミさんが主人公として覚醒してくれんことを

…あ、別にゴブレットが最終回じゃなくても一向に構わないよ?
825 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/06/03(月) 01:57:30.09 ID:zG9Nb/Ilo

毎度のことながら素晴らしいSSでした。

やはりロンの予言は当たるんだなww
そしてボガートQBは何を言おうとしたのか……
マミさんが聞きたくない言葉なんだろうけど
826 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/06/03(月) 02:34:43.72 ID:ROeC3Fp10
世界的な台風って完全にあれだもんな
827 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/06/03(月) 08:29:13.97 ID:pak+PyQDO
ネクスト・マミッ☆・ヒント!!

「地球規模の台風」

「時間跳躍」

「シリウスは巨乳好き」
次回まで全裸待機!!
828 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/06/03(月) 08:53:00.00 ID:q8vuybVAO
未来予知じゃなくて時間移動って見ているってことは
本編の方なのかな
外伝の方はこういうことしないイメージだし
829 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/06/03(月) 09:42:15.47 ID:JR2Q778MO
おつ
めっちゃ面白い
830 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/06/03(月) 10:43:52.71 ID:LBXJhUGU0
結局マミさんは保護者不在だからホグズミード行けないままなんだね
原作だとシリウスがハリーの名付け親だから大丈夫だったがマミさんには遠縁の親戚しかおらんし卒業するまで
ホグズミード行けない事になるんか?
831 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/06/03(月) 11:10:46.71 ID:hihDmSYwo
ピーター捕まえるといういい仕事したし特例で許可貰えてもいい気がするなー
832 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/06/03(月) 12:13:39.13 ID:3D18U3bz0
今更>>1の伏線に気づくという・・・
833 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/06/03(月) 12:29:57.23 ID:/VZGPfgj0
シリウス問題片付いたからマクゴナガル先生に許可もらえるんじゃね。
834 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/06/03(月) 12:33:31.55 ID:WLF4ElD40
トムリドルさんのしゃべり方はとにかくラップ調っすよね
835 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/06/03(月) 12:49:07.37 ID:LBXJhUGU0
ピーターいないと炎のゴブレットで俺様はどうやって復活すんだろうか?
836 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/06/03(月) 12:55:11.62 ID:1iczfcQe0
クソみたいな改悪……
837 :金田一バーロー [saga]:2013/06/03(月) 13:09:26.76 ID:pak+PyQDO
>>833
はけど

*炎ゴブが最後と言ってたことから個人的に予想

・杏子ちゃんが魔法界を知る→その後入学
・例のあの人がワルプルギスと合体して復活
・デスイーター達を杏子、もしくは契約したマミがフルボッコ
・QBがクルシャンとゴールイン
・マミ退学、留年
・ほむらは俺の嫁
838 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/06/03(月) 13:12:55.71 ID:UQsx7Ga3o
展開予想とかすんなよks
しても書き込むな
839 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/06/03(月) 13:24:09.46 ID:3D18U3bz0
アンチの所業だから放っておけ
840 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/06/03(月) 15:56:04.04 ID:LBXJhUGU0
>832
今更気づいたが賢者の石編じゃせっかくほむ…じゃなく謎の人物が
ヒント出したのにマミさん台無しにしてんだよな
ここにきて漸く伏線が立ったわけか
841 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/06/03(月) 22:08:49.82 ID:wdZjQLo5o
やっと追いついた
面白い
842 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/06/03(月) 23:09:01.62 ID:RE7MREx0o
クロスなんだしこのくらい改変しててもいいんじゃない?
乙乙。こういう予想外のオチがついてくるから楽しくて仕方がない
843 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/06/04(火) 02:44:36.24 ID:AJ5g/ApBo

QBとマミさんの絡みがすごく好き
844 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/06/04(火) 20:06:48.39 ID:ukbyO2xAO
追いついた
凄いなこれ
845 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/06/04(火) 20:25:18.38 ID:xxSexSE7o
フィルチのツンデレっぷりに頬が緩んだ
あとシリウスの株が妙な所でダダ下がりしてワロタ
846 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/06/04(火) 22:11:06.20 ID:5PFAYoOCo
847 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/06/05(水) 06:47:25.46 ID:6ffggXVDO
1がマクロス好きなのはわかった
848 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/06/05(水) 13:53:56.39 ID:cDggi+YO0
ハリポタがそこまで好きじゃないのもわかった
849 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/06/08(土) 04:16:21.31 ID:O8Uz347s0
やっと追いついたよ

凄いな、ほんと凄いな>>1
面白い!続きが楽しみすぎる


あとこれくらい変わらないとマミさんを絡ませてる意味ないだろ
850 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/06/08(土) 23:40:39.89 ID:ZJuXnCae0
この調子だと見滝原編やって次スレかな?
851 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/06/09(日) 23:57:28.67 ID:5mtJFo6uo
852 : ◆jiLJfMMcjk [sage]:2013/06/10(月) 22:31:11.37 ID:s4cEiWrY0
校正が、完了次第、投下します。(字余り)
853 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/06/10(月) 22:36:46.05 ID:UnTGAShHo
待ってました!マジで!
854 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/06/10(月) 22:46:28.94 ID:kyLbMJAJo
ソウルジェムが一気に金色の光を放つようになった
855 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/06/10(月) 23:11:09.91 ID:s4cEiWrY0
おじいちゃんは言っていた……いくら校正を重ねたところで、誤字脱字はなくならないと。
投下します
856 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/06/10(月) 23:11:40.84 ID:s4cEiWrY0
 


『佐倉杏子は生きている』



『会いたいのなら、夏休み初日に行動すべし』



『まず、見滝原の駅から○○時にでる一番線の電車に乗ること』





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857 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/06/10(月) 23:12:12.65 ID:s4cEiWrY0

7月 夏休み初日 見滝原市 駅


マミ「……」

QB「……マミ、本当に行くのかい? 考え直した方がいい。
   彼女が亡くなったっていうのは、もう一年前に新聞やインターネットで散々確認しただろう?」

マミ「……でも、私の目で見たわけじゃないわ。それに、佐倉さんは魔法使いだもの。
   もしかしたら……」

QB「誰かもわからない"送り主"のことを信じ過ぎていやしないかい?
   もしかしたら、闇の魔法使いかもしれないよ? マミを罠に嵌めようとしているのかも――」

マミ「私に対して敵意を持っていないようだ、っていったのはキュゥべえじゃない」

QB「……それは、でも……あくまでも推測にすぎないんだよ。こうして油断させるのが目的だったのかもしれない。
   とにかく、一度家に帰って考え直してみないかい?」

マミ「碌に魔法が使えない私を油断させるためだけにあんなメッセージを送る? そんなわけないでしょう。
   ねえ、キュゥべえ。あなたちょっと変じゃない? まるで、私と佐倉さんを会わせたくないみたいな……」

QB「そ――そんなことは、ない、けど。ただ、僕は、君が心配で……」


『一番線、電車が参ります。白線の内側までお下がりください――』


マミ「……来たわ。この電車ね。乗るわよ、キュゥべえ」

QB「……」
858 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/06/10(月) 23:12:41.42 ID:s4cEiWrY0

電車内


マミ「さて、電車には乗れたけど……あの紙には、電車に乗るところまでしか書いてなかったわね。
   佐倉さんは、この電車に乗ってるのかしら……? 先頭車両から順番に見ていきましょう」

QB「……せめて、ハーマイオニー達に連絡すべきじゃないかな? メッセージが来たら話し合おうって言ってただろ?」

マミ「佐倉さんに関しては私の問題。それに、どのみち指定された時間が急すぎて間に合わないわよ」

QB「それは……そうだけど……」

マミ「……それにしても"送り主"は私に何をさせたいのかしら? そもそも、何で私なの?
   事件を解決させたいなら、もっと適任者がいるじゃない。魔法の腕だったらハーマイオニーさんが一番だし……
   それに佐倉さんを助けるのは、ホグワーツに関係ないわよね?」

QB「……考えられるのは、ホグワーツで起こる事件の解決よりも、君自身の方に重要度を置いているってことだ」

マミ「私、自身?」

QB「つまり"送り主"の目的は事件の解決じゃなくて、君の保護――いや違うな。
   大雑把に言ってしまえば、君の役に立つことを目的にしているんだ。もちろん、ただの推測だけどね」

マミ「……確かに佐倉さんの場所を教えてくれたり、ハーマイオニーさん達の喧嘩を止める方法を伝えてくれているけど……
   でも、それこそ何で? "送り主"さんは、どうして私を助けようとしてくれてるの?」

QB「分からないよ。それに、あくまで可能性の話だ。
   今のところそう見えるってだけで、本当はもっと別の理由や法則で動いてるのかもしれない」

マミ「……とにかく、今は佐倉さんを探しましょう」

QB「……」
859 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/06/10(月) 23:13:07.54 ID:s4cEiWrY0

十数分後 電車内


マミ「一番後ろの車両まで見たけど……どこにもいないわね。混んでるわけでもないから、見逃すとも思えないし……」

QB「……もしかしたら、僕らが車両を移動している間に、すでに探した車両に乗り込んで、もう降りてしまったのかもしれないよ。
  一度、電車を降りてみたらどうだい?」

マミ「……でも……もしかしたらこれから乗ってくるのかも……」


『次はー、○○駅、○○駅に――』


QB「ほら、ちょうど駅に着くみたいだし。何か飲み物でも買って、頭を休めたほうがいい。
   外は夏の日差しで暑いし、駅まで来るのに汗もかいただろう?」

マミ「……でも、あの紙には途中で降りろなんてて書いてなかったし――」


『○○駅――ザザッ、子に会い、――ザザッ』


マミ「あら、電車のアナウンスが……故障かしら? ね、キュゥべえ」

QB「? 何を言っているんだい?」

マミ「え、だから、ほら。アナウンスに雑音が混じって……」

QB「……そうかな? 僕には正常に聞こえるけど……」

マミ「そんな、だってこんなはっきり――え?」


他の乗客「……」


マミ(他の人も、反応してない……? ざわめきもしないなんて……)

QB「マミ? いったいどうしたって言うんだい?」


『――佐倉杏子に会いたければ、次の駅で降りて、西口の改札からでること、ザッ』

『――○○駅に止まります。お出口は左側。降りる際は足元に気を付けて――』


マミ「……キュゥべえ、次の駅で降りるわよ」

QB「え、あ、うん! それがいいよ。やっぱり休憩は大事だし、その方がいい考えも浮かぶって……
   ……マミ? どうかしたのかい?」
860 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/06/10(月) 23:13:52.47 ID:s4cEiWrY0

○○駅 西口改札


QB「君にしか聞こえないアナウンス? 確かに、僕には全く聞こえなかったけど……
   でも、それはちょっと変だね」

マミ「変かしら? キュゥべえだってテレパシー使えるじゃない」

QB「僕が変だと思うのは、なんでわざわざ電車のアナウンスって形で君に知らせたかってところだよ。
   テレパシーが使えるならテレパシーでいいし、いつもみたいに紙の媒体で伝えてもいいじゃないか」

マミ「それは……伝わればなんでもよかったんじゃないの?」

QB「手間が多すぎるんだよ。わざわざ君以外の対象には聞こえないように細工までするなんて…… 
   いったい、何の目的で……?」

マミ「……考えてても仕方ないわ。それより、指示通りに改札を出たけど……佐倉さん、いないわね」

QB「なかなか栄えてる街みたいだ。人通りが多い。見滝原よりは劣るけど、大きな建物も多いし」

マミ「この街に佐倉さんがいるとして、どうやって探せばいいのかしら……?」

QB「君たちはこういう時、交番という施設を利用するんだろう? ちょうどそこにあるし、聞いてみたら?」

マミ「あのねぇキュゥべえ。いくら警察でも、なんでもやってくれるってわけじゃ……」

QB「そうなの? でもさっきからあそこにいる人がすっごいこっち見てるから……」

マミ「え?」

警官「あー、君。学生だろう? 学校はどうしたのかな?」

マミ「え、あの。いまは夏休みで――」

警官「今は七月の頭だよ? ずいぶん早い夏休みだねぇ?」

マミ(あ……そうか、こっちの夏休みはまだ半月も先で……)

警官「どこの学校かな? とりあえず、話はそこの交番で聞こうか?」


861 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/06/10(月) 23:14:30.27 ID:s4cEiWrY0

交番


警官「……あー、はい。確かにそちらに在籍していると。わかりました、それでは……」ガチャン

マミ(……昔、普通の人の世界で通学の証明とかが必要な時はここに掛けなさい、って教えてもらった電話番号だけど……
   どこに繋がったのかしら、あれ)

警官「いや、手間をかけて悪かったね。その歳で留学とは偉いもんだ。うちのバカ娘にも見習わせたいくらいだよ」

マミ「いえ、そんな……あの、もう行っても?」

警官「ん? ああ、悪かったね。しかし、ここらも最近は治安が悪くてね。暗くなる前に家に戻りなさい」

マミ「は、はい。それじゃあ……」

QB『マミ、終わったのかい?』

マミ『ええ、予想以上に長引いちゃった……職務質問って初めて受けたけど、面倒くさいのね。
   クーラーも効き過ぎて冷えちゃったし――』

マミ「は、は……くしゅんっ」ブルッ

警官「大丈夫かい? ……ポケットティッシュで良かったら使うといい、ほら」

マミ「ありがとうございます……」

警官「さっきそこで配ってたやつだけどね。まだ封は開けてないから、汚くはないよ」

マミ「はあ。それは――……! すみません! このティッシュを配ってたそこって、そこの駅前のことですか!?」

警官「あ、ああ。そうだが……なんだね、急に?」

マミ(このティッシュの裏に挟んである広告……)



『交番を出て、最初に目に入った路地を直感で進め』

『その先に、佐倉杏子は居る』
862 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/06/10(月) 23:14:58.35 ID:s4cEiWrY0

路地裏


マミ「……結局、駅前で配ってたティッシュの方は普通の広告しか入ってなかったわね。
   私がくしゃみをすることまで見越して、あの警察の人にだけメッセージ入りのティッシュを……?」

QB「ハーマイオニーの予想通り、未来の情報を入手できる力があるのなら、それも不可能じゃないだろう。
  ただ、やっぱり電車のアナウンスみたいにまどろっこしい手段だけど……」

マミ「それに、なんだかメッセージも曖昧じゃない? 私の直感って……この路地、分岐がいっぱいあるし。
   未来のことがわかるって言っても、私がどう思うかまではわからないでしょう?」

QB「? どういうことだい?」

マミ「……例えば"送り主"が未来に行ける魔法を使えて、私の行動を全部知ってるとするわよね?
   でも、送り主が見た未来の私は右の道を選んでいたとしても、もしかしたら今の私は左の道を選ぶかもしれないじゃない」

QB「ああ、そういう……でも、それはどうかな。そもそも"送り主"がメッセージを送ってきたから、君はここにいるんじゃないか」

マミ「え? それこそどういうこと?」

QB「今日この時間、君がこうしてこの路地を歩いているのは、送り主からのメッセージに従っているせいだろう?
   そのメッセージを作成するには、未来を覗く力で予めこういう行動をしている君を観測することが必要だよね?」

マミ「……そうね。私がこういう行動をしていない限り、メッセージは作ることも送ることもできないし……」

QB「でも、君が佐倉杏子を探してこの街に来たのはそもそもメッセージのせいだ。
   つまり送り主が"佐倉杏子を探して路地裏を歩く巴マミ"を事前に観測するためには、さらにその事前の君にメッセージを送る必要がある。
   でもそのメッセージを送るためには君がメッセージに従って行動したという事実が必要で、その為には更に前にメッセージを……」

マミ「え、えーと……」

QB「つまり、この時点でタイムパラドックスが生じているわけだ。最初に君にメッセージを送れる"送り主"というのがいないわけだから。
   このパラドックスを解消するためには、時間という概念の認識を変える必要がある。
   例えば、時間は線ではなく立体であり、上面を通って過去を改変できるものとするという考え方だ。
   これならタイムパラドックスは存在しなくなる。道筋が変化するだけで、辿り着く結果は変わらなくなるからね」

マミ「あ、あの、キュゥべえ、ちょっと待っ……」

QB「未来というのが過去を積み重ねた結果なのではなく、過去と未来は同時に存在するものだと考えればいい。
   その中で僕らの主観意識は常に現在を進んでいくわけだけど、仮にタイムトラベラーがいるとすれば、
   彼ないし彼女は、主観意識の時間軸を自由に選択できる、つまり都合のいい過去未来を選択できるというわけだ。
   ただこの考え方にも欠点はあって、トラベラー同士の主観意識が交差した場合に問題が起きる。
   つまりタイムトラベラーが同時に複数いた場合、主観未来の混合や制限、予期しない変化が発生して――」

マミ「……」プシュー

QB「――って、ああ、ごめんよ。つまり、考えてもあんまり意味はないってことさ。
   僕らは未来を見られないんだし、時間がどういう構造になっているかなんていうのは机上の空論でしかない。
   確実に言えることは、今のところそのメッセージの信頼度は低くない、ということだけかな」

マミ「……それって結局、"送り主"が私の思考までは読み取れないっていう疑問の答えになってないんじゃないかしら?」

QB「なってるよ。君のこの行動はある主観未来において、既に確定したものだっていうことになるから」

マミ「つまり?」

QB「簡単にいうなら――どう足掻こうがメッセージには逆らえない。メッセージの内容を覆すことは出来ない。そういうことになる」

マミ「……なんだか、その、凄い怖い方向に話が進んでない?」

QB「別に心配することじゃないさ。言っただろう? 机上の空論だって。そういう風に考えることもできるって話だよ」

マミ(……でも、もしかしたら、メッセージを受け取った時、私が覚える奇妙な信頼感と確信は……)

QB「……それにしても、ずいぶん歩いたね。駅からも離れて、段々寂れた感じになってきたし……」

マミ「あんまり、綺麗な道じゃないわね……あちこちにゴミが落ちてるし、人もほとんど通らないし……」


「……」タタッ


マミ「……! いま、路地の先に誰か……待って!」ダッ

QB「マミ? ちょっと、置いて行かないで――」

863 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/06/10(月) 23:15:51.99 ID:s4cEiWrY0

『おいおい。あんたも魔法少女なら、そこで諦めちゃ駄目でしょ――と!』


マミ(佐倉さん――)


『へー。それじゃあさ、良かったらまた会おうぜ。今度はうちに来てくれよ。晩御飯、御馳走するからさ』

『え……いいの?』

『ああ。ひとりで食べるより、たくさんで食べた方がいいだろ?』


マミ(佐倉さん)


『ああ、楽しみにしてるよ。それじゃあまた――来年な』


マミ(佐倉さん……!)


 過去の思い出が、次々と脳裏をよぎる。

 佐倉杏子。あの事故に遭ってから、見滝原で出来た最初のお友達。

 その彼女に、また会えるかもしれない。そんな期待を胸にして、私は走り、


???「……っらぁ!」ブンッ

マミ「――え?」


 ――そして次の瞬間、後頭部に走った衝撃によって視界が歪んだ。

864 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/06/10(月) 23:16:36.67 ID:s4cEiWrY0

マミ(あ、れ……変、ね。佐倉さんを、追いかけてた筈なのに……)


不良1「っひょー! えらく可愛い子じゃん!」

不良2「なぁんでまたこんなところに来てんだろうな……俺ら的には大歓迎だけどサ」

不良3「おい、もたもたしてんな! さっさと詰めちまえ!」ガバッ


マミ(体、動かない……どこに連れてくの……? 誰……?)


警官『ん? ああ、悪かったね。しかし、ここらも最近は治安が悪くてね。暗くなる前に見滝原に戻りなさい』


マミ(あ……そっか、あの警察の人の言ってた……)


不良1「お、すっげー体してんのな! たっのしみー!」

不良3「運べっつってんだろ! おい、車は回してあんだろな!?」

不良2「ん。この路地の出口にぴったし」


マミ(杖……魔法……声、出さなきゃ。でも……)


マミ「ぁ、ぁ、ぅ……」

不良1「んっだよ騒ぐなよ。まあ俺らのホームで好きなだけ騒がしてやっからさ――」


???「……だったら、さっさとアンタらのいう家とやらに帰んなよ」
865 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/06/10(月) 23:17:12.34 ID:s4cEiWrY0

不良2「……なんだ? 女の子? この子の友達かなんか?」

不良3「……ちっ。ひとりでうろちょろしてる鴨だと思ったんだけどな」

不良1「かまやしねえよ。ついでにぼこって、一緒に詰め込んじまえばよ――おらっ!」ブンッ


???「遅っせえ」ヒョイッ


 ゴリッ


不良1「んなっ――あ、あががぁ!?」

不良3「お、おい!? 急にうずくまって……な、何しやがった!」


???「顎を外しただけだよ。ほら、さっさと病院にでもなんでも連れってってやんな」


不良3「……く、糞が!」

不良2「ほら、立てよ……」

不良1「がぁっ! ぁ、あおあ……」


 タッタッタ……


マミ(……行った。助かった? 誰? 誰が……視界が、だんだん定まって……)


???「ったく、無駄なことに力使っちまった……もうあんま余裕ないってのに。
     ああああ! それもこんなところに一人で来るこの馬鹿の――」

マミ「……佐倉、さん?」

杏子「ああ? アンタ、なんであたしの……っ、もしかして、マミ、か?」

866 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/06/10(月) 23:17:43.15 ID:s4cEiWrY0


マミ「佐倉さん!」ガバッ

杏子「……寄んな!」

マミ「――え?」

杏子「あ、いや――その、ほら、あたし、服とかちょっと汚れちゃってるしさ……」

マミ(佐倉さん……そういえば、髪もぼさぼさで、服もあちこちほつれてる……それに、痩せた?
   ううん、やつれてるって言った方が……)

杏子「……にしても、こんなところで会うなんてね。もう会うこともないと思ってたのに。
    まあ、もう分かっただろ? ここは危ないよ。ほら、さっさと行った行った!」

マミ「――佐倉さん。私、あなたを探してたの」

杏子「……」

マミ「良かった……生きてたのね、佐倉さん……私、本当に心配して……」

杏子「っ、知って、るんだな……あたしの家族のこと」

マミ「……その、新聞に書いてあったことくらいだけど……私、その時はまだ向こうにいたから……
   ごめんなさい、何の助けにもなれなくて」

杏子「……別に、マミが謝ることじゃないだろ。それにどうせ、アンタがいても変わらなかったさ」

マミ「……」

杏子「だからそんな顔すんなって……悪いのはあたしなんだ。あたしが、もっと強ければ……」

マミ「そんな、それこそ佐倉さんのせいなんかじゃ――」

杏子「いいや、あたしのせいさ……親父はね、魔女にやられたんだ」





マミ「魔女? それって、闇の魔法使いってこと?」

杏子「……は?」
867 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/06/10(月) 23:18:37.98 ID:s4cEiWrY0

杏子「いや、魔女は魔女だよ。マミも向こうで狩ってるだろ?」

マミ「か、狩る? なんで狩るのよ。私、ただの学生だし……先生に魔女はいるけど、でも狩るなんて」

杏子「魔女の先生だぁ!? おい、どういうことだよ? さっきから話が全然――っ」フラッ

マミ「! 佐倉さんっ」ダキッ

杏子「……っ、は、だから行けって言ったんだ。情けない姿見せちまった……
    ここんとこ、まともな生活してねえし……はは、人って結構生きてられんのな」

マミ「笑い事じゃないわ。すぐに病院に――」

QB「……いや、病院に連れて行っても無駄だろう」

マミ「キュゥべえ!? ようやく追いついて――無駄って、どういうこと?」

杏子「よぉ、ここんとこご無沙汰だったじゃんかよ……ま、最近はまともに魔女も狩れないしな。
    グリーフシードもねえし、用無しってわけか」

マミ「ご無沙汰、って……? 佐倉さん、キュゥべえと会うのは初めての筈じゃ……」

杏子「ほんとに話が噛み合わないのな。最初に契約した時、会ってるに決まってるだろ?」

マミ「契約?」

杏子「……おい、マミ。あんた魔法少女、なんだよな?」

マミ「そうよ。魔女の卵。佐倉さんもでしょう?」

杏子「ああ!? あんなもんの卵になった覚えは――」

QB「言い争ってる場合かい? 佐倉杏子、ソウルジェムを見せてくれ」

杏子「……ほらよ。もう魔法は使えそうにねえけどな」ポイッ

マミ(ソウルジェム……? 魔法が使えなくなる? いえ、それよりも、キュゥべえ、佐倉さんと話が通じて……)

QB(……不味いな。濁りきってる。グリーフシードに変化するまでの猶予は、長く見積もっても一日かそこら……
   肉体の衰弱を魔力で補っていたのか。これじゃあ魔法を使わなくても濁りが早い。
   それにもう出会ってしまったのなら、マミと佐倉杏子を引き離すことも出来ない……)

マミ「ね、ねえ、キュゥべえ。なにがどうなってるの? そのソウルジェムって一体――」

QB「話は後だ。マミ、彼女を助けたいのなら、僕の言う通りに行動してくれ」

マミ「……あとで、話してくれるのね?」

QB「――ああ、必ず、ね」

マミ「……キュゥべえを信じるわ。どうすればいいの?」

QB「とりあえずは見滝原に戻ろう。あそこは魔女が生まれやすい」

マミ「分かったわ。ほら、佐倉さん。肩につかまって……」

杏子「いや、あたしは行くなんて一言も――」

マミ「いいから! ほら!」グイッ

杏子「……っ! 好きにしろよ、もう……」

杏子(……見滝原、か。もう、風見野の方へ帰ることはないと思ってたんだけどな……)
868 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/06/10(月) 23:19:04.60 ID:s4cEiWrY0

電車内


杏子「ふぅ……ああ、久しぶりに空調の効いてるところに入ったな……」

マミ「ほら、座って――平日の昼間だから、空いてて良かった……」

杏子「……ああ。じゃあ、ほら。あたしは大丈夫だから、マミはちょっとあっち行ってろよ」

マミ「そんな、いいじゃない。久しぶりに会ったんだから。つれなくしないでよ、もう」

杏子「いや、そういうんじゃなくてさ。あたしと一緒にいると、マミまで……」


「やだ、なにあれ。きたなーいwwww」

「ジョーシキないよねーwwwwあんなカッコで電車に乗るとかさーwwww」


マミ「あ……」

杏子「……ほら、な? 見滝原に着いたらちゃんと降りるから、別の車両にでも……」ジワ....

QB(不味い。ソウルジェムの濁りが加速してる。このままじゃ最悪、この電車の中で……)

QB『マミ、別の車両に移るなら、彼女も一緒に――』


マミ「ちょっと! なんなんですか、さっきからこっち見てひそひそひそひそ!」キッ

杏子「!?」


「え、あ、なんなの、こいつ?」

「べつにあたしら、悪いことなんてなんにも」


マミ「聞こえてないとでも思ったの!? 彼女は私の友達なの! なにか文句があるなら言ってみなさいよ!」


「……ちっ。なんだってのよ。いこ」スタスタ

「最悪ー。マジきもいよねー」スタスタ


マミ「……ふぅっ。さ、佐倉さん。疲れてるみたいだし、なんだったら寝ちゃってもいいわよ。
   ずっと隣に座って、見滝原に着いたら起こしてあげるから」

杏子「あ、うん……あの、ありがと……」

マミ「いいのよ、別に。あんな人達、気にすることないわ」

杏子(……しばらく見ない間に、マミの奴ずいぶん強くなったんだな……)


869 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/06/10(月) 23:19:45.14 ID:s4cEiWrY0

マミ「さて……キュゥべえ、見滝原に着いたら、私はどうすればいいの?」

QB「……まず、魔女の結界を探す必要がある」

マミ「魔女の……?」

QB「君が言うところの、なんたらかんたらゾウムシのことだよ。そいつを倒して、グリーフシードを手に入れないと」

マミ「……それがあれば、佐倉さんは助かるのね?」

杏子「助かるっちゃあ、まあ助かるかな。元手が無けりゃ魔女も狩れないしね。
    ……それにしても、何にも知らないんだな、マミ。あんた一体……?」

QB「話は後だ。とにかく、一刻も早く魔女の結界を見つけないと……
   ……でも、困ったな。僕の持ってるデータは数年前のものだ。とすると結界の位置は変わってるだろうし……」

マミ「その結界って、普通の方法じゃ探せないの?」

QB「難しいな。仮にマミがそういう魔法を使えたとしても、結界の位置を探るのは無理だろう。
   佐倉杏子の魔法もいまは当てにできないし、かといって、なにか良い方法があるかっていうと……」

杏子「……魔女の結界だったら、ひとつだけ心当たりがあるよ」

QB「本当かい? できれば、長い期間存在している魔女が好ましいんだ。
   統計上、その方がグリーフシードを孕んでいる確率が高いからね」

杏子「……十分だろうよ。一年以上も生きてるし、あたしが知ってるだけで三人も食いやがった奴だ」

マミ「それって……?」

杏子「さっきもちょっと言ったけどさ。世間では無理心中ってことになってるあれ、本当は違うんだよ。
    父さんも、母さんも、モモも――あの魔女に殺されたんだ」
870 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/06/10(月) 23:20:24.92 ID:s4cEiWrY0

杏子「あたしの願いは、父さんの話をみんなに聞いて欲しいってことだった。
   上手く行ってると、そう思ってたよ。でも、今考えると実際はどうだったんだか……」

杏子「魔女の口づけを受けやすいのは、心にストレスやなんかを溜め込んでる奴だ。
    そういう意味じゃ、父さんも不自然に感じてたのかもな……急にみんなが話を聞きに来るようになったんだ。
    あたしの願いは、所詮子供の浅知恵だった」

杏子「気づいた時には、父さんは魔女に口づけを受けて、結界の中に母さんとモモを連れ込んでた。
    あたしは何とかその魔女を倒そうとしたんだけど……駄目だった。ずたぼろの返り討ちさ。
    それで――あたしの家族は"手遅れ"になった」

杏子「あたしは逃げた。その場にいることができなかった。だって、そうだろう? 全部あたしのせいだ。
   親父が魔女に魅入られたのも、魔女を倒してみんなを守れなかったのも!
   全部全部、あたしが馬鹿で弱くて何にもできなかったせいだ!」

杏子「……あとは言わなくてもわかるか。こんなナリになるような生活をして、魔女を我武者羅に狩って……
    でも、どうしてもあの魔女だけは倒すことができなかった……」



風見野 教会前


マミ「ここは……佐倉さんの」

杏子「笑える話だよね。神の家が、今や魔女の巣ってわけさ」

マミ「……なら、それも今日までよ」

杏子「……あの魔女は強いよ。デカくて馬鹿力、そのくせスピードもある。おまけに刺そうが斬ろうがすぐさま回復しやがる。
    グリーフシード一個じゃ、正直割に合わない相手さ。それでも手を貸してくれる?」

マミ「……その怪物が、モモちゃんや佐倉さんの御両親の仇なら、私にも怒る権利はあるわ」

杏子「……ありがとな、マミ」

QB「佐倉杏子、さっきも言ったけど、もう一度確認しておくよ。魔法少女の力を使っていいのは一度だけ。
   武器を生成して振るうにしても魔法を使うにしても、絶対にワンアクション以上はしないでくれ」

杏子「分かったよ。ったく、魔法が使えなくなるまでぶっ放してやろうと思ったのに……
    理由はあとでちゃんと説明してくれるんだろうね?」

QB「……ああ。絶対にね」
871 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/06/10(月) 23:21:35.18 ID:s4cEiWrY0

魔女の結界


魔女「キャハハハハ!」


マミ「っ、確かに凄い大きさね……牛の頭に、大きな斧。さしずめミノタウロスといったところかしら?」

杏子「悪いな、マミ。アンタにほとんど任せっきりになっちゃうけど……」

マミ「大丈夫。これでも私、二年前より成長してるんだから!」

QB「マミ、遠慮することはない。結界の中の出来事は魔法省も観測できない筈だ。
   思いっきり魔法を使って大丈夫だよ」

マミ「もとより、そのつもり――さあ、いくわよ! インセンディオ!(燃えよ)」


 ゴォッ!


魔女「キャハ? キャハハハハ!」ダンッ

杏子「っ、効いてないぞ……突っ込んでくる!」

マミ「大丈夫、予想通りよ。あの怪物、遠くからは攻撃できないんでしょう?」

マミ「だったらまずは近づけて――避けられない距離で! ロコモーター・モルティス!(足縛り)」バシュッ

魔女「キャ!?」ズザザッ

杏子「っ、お……転んだ。もがいて……足がぴったりくっついて、動けなくなったのか?」

魔女「キャハッ、キャハッ!」グググ....

QB「でも、無理やり力尽くで拘束を解こうとしてる……長くは持たないよ、マミ!」
872 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/06/10(月) 23:22:58.36 ID:s4cEiWrY0

マミ「カーコス・スペル!(針に変われ)」バシュッ

杏子「瓦礫が……小さいミサイルに!? なんでもありかよマミの魔法!」

マミ「使える呪文の中だと、これが一番威力があるんだけど……どこまで通じるかしら、ね!」


 バシュッ バシュッ バシュッ ガガガガガ!


魔女「キャアアアアァァァ……」

マミ「……見て! 体が、半分以上砕けてる!」

杏子「まだだ! あいつはあれくらいじゃくたばらないよ! もっとひどい状態から再生したこともある!」


魔女「……ァァァァアアアアアアア! キャハッ!」シュウウウウ


マミ「っ、確かに、だんだん砕けた部分が元に……なら、何度でも」

QB「――!? マミ、後ろだ!」

マミ「え――?」クルッ


魔女2「キャッハア!」ブンッ


マミ(な――同じ魔女がもう一体!? 駄目、呪文が間に合わな……)

杏子「通さないよ! 縛鎖結界!」ジャララララ!


 ガキィン!


魔女2「キャハッ!」

マミ「……エヴァーテ・スタティム!(宙を舞え)」バシュッ

魔女2「ァキャキャーーー!?」ヒューン

マミ「……相手が大きすぎて、あんまり飛ばなかったわね……! 助かったわ、佐倉さん!」

杏子「ああ、だけどあいつのあれは何なんだ? あたしも初めて見る……」

QB「分裂……? それとも複数いるタイプの魔女か?」
873 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/06/10(月) 23:24:14.94 ID:s4cEiWrY0

杏子「……悪いけど、次は防げそうにない。魔力を使い切るつもりでやってもね」

QB「絶対にそんなことはしないでくれ、佐倉杏子」

杏子「魔力を使い切ると何が起きるか知らないけど、どの道このままじゃ潰されて終わりだよ?」


魔女1「キャハハハ!」シュウウウ.....

魔女2「……キャハ!」ムクッ


杏子「再生も終わりかけて、2体ともそろそろ攻撃準備完了って感じだ。マミの魔法じゃ、一度に2体は相手に出来ないだろ?」

マミ「……悔しいけど、ね。盾の呪文は、まだ練習中だし……そもそもあんな一撃を防げるかどうか」

杏子「この数秒で何とか仕留めなきゃこっちがやられる――くそっ、せめて魔力がありゃ幻惑魔法で逃げられるのに……」

マミ「……幻惑魔法? それって、確か昔佐倉さんが使った……」

杏子「ああ。そういえば、あの時もあれが決め手だったっけ。それがどうかした?」

マミ「……あの怪物、変だと思わない? 体が半分に欠けても平気で、分裂もして……それってまるで」

杏子「……幻惑? あいつも幻惑の魔法を使う魔女だっていうのか?」

QB「可能性はあるね。確かにあの強さは異常だ。でも、だとしたらどうする気だい?」

マミ「あれが、もしも本体じゃないのなら――」


魔女1・2「――きゃははは!」ダッ


杏子「……やばい! 両側から同時に飛びかかってきた!」

マミ(両方とも本体じゃなくて……ただの自衛の手段、武器に過ぎないとしたら……)



マミ「――エクスペリアームス!(武器よ去れ)」
874 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/06/10(月) 23:25:04.41 ID:s4cEiWrY0

魔女1「きゃh」シュンッ


 ガランッ!


杏子「魔女の身体が消えて、斧だけが……? でも、反対側からはもう一匹が……いない?
    片方だけにしか魔法を当ててないのに……?」

マミ「……やっぱり! あの魔女、体は全部最初から偽物なんだわ!
   本体は残ったあれ――あのおっきな斧なのよ!」


斧の魔女「キャハハ!」


杏子「……そっか。あたしとおんなじ……だからここに来たのか?
    全く、幻惑使いが騙されちゃあ笑い話にもなりゃしない――でも、それも終わりだ」


斧の魔女「キャハハハハハ……」


杏子「マミ、頼むよ。やってくれ。その内、また幻惑を造って襲ってくるだろうしさ」

マミ「え、ええ……でも、いいの? あれは、佐倉さんの……」

杏子「……自分の手で仇を討ちたいって気持ちは、そりゃあるさ。でも……」チラッ

マミ「?」

杏子「……アンタ、怒ってくれただろ? あたしの家族の為にさ。なら、一緒だ。家族みたいなもんさ。
   "全てを分かち合えなければ、家族とは言えず"……父さんの説法の一節だよ。これくらいしか覚えてやしないけどさ」

マミ「佐倉さん……」

杏子「……やっちまえ、マミ!」

マミ「……ええ! レダクト!(砕け散れ)」


斧の魔女「キャ? キャアアアアアア!?」ピキッ パキッ


 パキィィィィイイン……


杏子(……終わったよ。父さん、母さん、モモ……)
875 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/06/10(月) 23:25:31.70 ID:s4cEiWrY0

 シュウウウウウウウ


マミ「ソウルジェムの濁りが、どんどん吸い取られて……これで魔法が使えるようになるの?」

杏子「ああ。もうこの穢れを吸い取ったグリーフシードは使えないけどね。で、こうなったら……ほらよ、キュゥべえ」

QB「きゅっぷい」パクン

マミ「せ、背中から食べた……? キュゥべえ、そんなもの食べて平気なの? あの怪物の卵なんでしょう?」

杏子「平気だよ。こいつらの仕事みたいなもんなんだしな」

マミ「……」

杏子「……さて、教えて貰おうか。アンタだけがあたしとマミ、両方の事情に通じてるみたいだしね」

QB「……ああ、分かった。でも、とりあえず場所を移して――」


???「おや、魔女が消えたと思ったら……杏子、君か。どうやら持ち直したらしいね。おめでとう」


マミ「え……? この、声……」

QB「……」


QB2「うん? おかしいな、この地区は僕の担当の筈……おや、廃棄個体じゃないか。
    驚いたよ。まだ稼働していたんだね。そう長くはもたないと思ったけど……」


マミ「キュゥべえが、もう一匹……!?」

杏子「……あたしも並んでるのを見るのは初めてだね。でも、そっか。
    世界中に魔法少女がいるなら、確かに複数いる方が自然か」


QB2「まあ、そうだね。といっても、そこの廃棄個体は既にその役目から外されているけれど」


マミ「廃棄、個体……? 私のキュゥべえのこと?」


QB2「君は……ああ、報告にあった突然変異体のひとつか」

マミ「突然変異、って――」

QB2「ふぅん……とはいえ、魔法少女の素質もかなり持ってるみたいだね。どうだろう。僕と契約して――」

QB「――やめろ」

マミ「キュゥべえ?」


QB2「おや、邪魔するのかい? やれやれ、これだから精神疾患患者は……
    いくら廃棄された個体とはいえ、僕らの持つ使命の重大さは分かっている筈だけどね」

QB「そんなもの、どうだっていい。ただ、マミを魔法少女にするのは認められない」

QB2「……まあいいさ。変異体との接触は危険だし。どの道、この辺りの魔女はまた杏子が狩ってくれるだろうしね。
   それじゃあ杏子、使用済みのグリーフシードがあればいつでも呼んでくれ」




マミ「行っちゃった……キュゥべえ、どういうことなの?
   あのキュゥべえは、あなたと同じ種類の猫……ってわけでもなさそうだけど」

QB「……僕は猫じゃない。正式な名称は、インキュベーター。
   契約によって魔法少女を生み出し、そこから発生するエネルギーを回収するためにこの星へきたんだ」
876 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/06/10(月) 23:27:48.95 ID:s4cEiWrY0

見滝原 自宅


マミ「感情エネルギーに、魔法少女システム……?」

杏子「そんなもんの為に、アタシらをゾンビもどきに――いや、化け物に変えたってのか!?」

QB「……否定はしないよ。宇宙の熱的死を防ぐために、僕らの種族は君たち人類に目をつけた。
   その過程で生まれたのが魔法少女システムだ。エネルギーを集める方法は三つ」

QB「一つ目は、魔法少女の契約を交わすこと。魂を抽出してソウルジェムに変換する際にもエネルギーが発生する。
   このエネルギーを利用して、僕らは君たちの願いを叶え、ソウルジェム変換の際に僕らから失われたエネルギーも補填する」

QB「二つ目は、使用済みのグリーフシードを吸収すること。魔法少女が魔法を使う際に使用してるのは正の感情エネルギーだ。
   その反作用として相転移した負のエネルギーも収集している。あまり効率が良いとはいえないけどね」

QB「そして三つ目。本命は……ソウルジェムが濁りきり、魔法少女が魔女へと成長する際に生まれる、莫大なエネルギーだ」

マミ「人が、あの怪物に……?」

QB「……そうさ。それが魔法少女システムの核だ。僕らはそうして、有史以前から君たちの歴史に干渉してきた。
   より効率よく感情の相転移が発生するよう、文明の発展を助長すらして――」

杏子「テメエ、よくもぬけぬけと……!」グイッ

QB「ぐっ……」

マミ「佐倉さん!? キュゥべえを……!」

杏子「こいつのせいだろうが! 全部こいつらの都合じゃねえか!
    魔女が生まれたのも、そのせいで人が死ぬのも! こいつらのマッチポンプの結果じゃねえかよ!
    テメエら、あたしたちのことを家畜とでも思ってんのか!?」

QB「い、以前の僕なら……つまり、普通のインキュベーターなら……そうだ。
   言葉尻はどう繕おうと、それと似た認識であったことは否めない」

杏子「なら教えてやるよ、家畜だって時には飼い主を絞め殺す時があるってこと――」

マミ「やめて! 佐倉さん、キュゥべえを放して!」

杏子「マミ……」

マミ「……キュゥべえ、答えて。あなた、確かに最初の頃は契約して欲しいって言っていた……
   けれど、最近では全然言わなくなったわよね? それはどうして?」
877 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/06/10(月) 23:30:45.14 ID:s4cEiWrY0

QB「……さっきのインキュベーターが言っていただろう? 僕は廃棄された個体なんだ」

マミ「それって、具体的にはどういうことなの?」

QB「僕らが、なぜ君たち人類に目を付けたか――それは、インキュベーターが感情を持たないからだ。
   僕らの星では、感情というのは極稀に見られる精神疾患でしかなかった。これでは感情エネルギーを回収できない。
   それに、僕らとしても感情というのは集団の統率を乱す厄介なものだという認識しかなかった」

マミ「……」

QB「でもある時を境に、僕という個体に感情が生まれてしまった。
   マミ、君と出会ったのはダイアゴン横丁のペットショップでだったね?」

マミ「え、ええ……あの店主さん、キュゥべえが新種の猫だって言って……」

QB「僕は本来、イギリスのロンドン地区を担当している個体だった。
   だがある時偶然、奇妙なエネルギーの反応を見つけたんだ」

杏子「それって、マミ達の言う"魔法使い"って奴か?」

QB「その通りさ。多分、未熟な魔法使いが何かをやらかしたんだろう。
   それまで、僕らインキュベーターは魔法界の存在にまったく気づかなかったし、おそらく向こうもこっちに気づいていない」

マミ「だけど、キュゥべえは気づいた」

QB「そうだ。そこでインキュベーターの出した結論は"調査"であり、最寄りの僕がその役目に抜擢された。
   結果的に失敗したんだけどね。遮蔽フィールドが上手く働かなかったんだ。今考えると、それも当然なんだけど。
   結局、僕は魔法で捕まって、未知のエネルギーを浴びたということで、インキュベーターのネットワークからも隔離された」

マミ「それが原因で感情が……?」

QB「おそらく、切っ掛けはそれだろう。彼らの魔法には、対象に感情を形成させる効果があるのかもしれない。
   それから一年間、僕はホグワーツで魔法界の文化や技術を学んだけど、結局、次の夏には"廃棄"――
   記憶共有ネットワークからの永久追放が決定された」

杏子「……それでか? 魔法少女の契約を仄めかさなくなったって言うのは、
   アンタがインキュベーターでなくなったからってだけ? はん! それまで散々人を化け物に変えておいて、
   いざ自分が群れから弾き出されたら何にもできないってわけ?」

QB「……」

マミ「……それは、多分違うんじゃないかしら」
878 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/06/10(月) 23:31:42.35 ID:s4cEiWrY0

杏子「違う? なにが違うって言うのさ」

マミ「さっきのキュゥべえ……その、インキュベーター? が言ってたけど、
   彼らにとって、エネルギーの回収は大切なことなんでしょう?
   なら、仲間外れにされたってその目的は変わらない筈よね? それとも、もう契約は出来ないの?」

QB「……契約のシステムは、個体そのものに搭載されている。当然、僕にもだ。
   通常のインキュベーターが効率を重視して素質のある二次性徴期の少女としか契約しないことを考えると、
  それを無視できる僕の方が、契約できる対象に関しては幅広いともいえる」

杏子「なら、なんでだよ。なんでアンタは契約しようとしない?」

QB「……僕にも、よく分からないんだ。でも、マミとは絶対に契約をしたくない。
   マミだけじゃない。僕らに関わりのある人間なら、誰だってそうなんだ……魔法少女にはしたくない」

杏子「……」

マミ「……佐倉さん、キュゥべえを放してあげて」

杏子「マミはこいつらを許すっていうのか? こいつらがしてきたことは聞いただろう?」

マミ「確かに"インキュベーター"がしてきたことは悪いことだと思う……
   私は当事者じゃないけれど、佐倉さんが"魔女"になるのは嫌だもの」

QB「……」

マミ「でも、"キュゥべえ"は……少なくとも、いまはもう違う。
   佐倉さんを魔女にしない為に頑張ってくれたし、なによりずっと私と一緒に居て、支え続けてくれている……」

杏子「……」

QB「マミ……」

マミ「佐倉さん。キュゥべえは私の"家族"よ。そして、全てを分かち合えなければ、家族とは言えないんでしょう?」

杏子「……」

マミ「もしも佐倉さんがキュゥべえを許せないって言うのなら、私もあなたの怒りを受け止めるわ。
   私はキュゥべえを守りたい。だから――」

杏子「えい」


 ドスッ
879 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/06/10(月) 23:35:19.08 ID:s4cEiWrY0

マミ「さ、佐倉……ひゃんっ!?」ビクッ

杏子「なんだよ、大げさだな。ちょっと腹を突いただけだろ。
    ……にしても、だらしないねえ。もうちょっと腹筋つけたら?」ムニムニ

マミ「ちょっ、や、めっ――なにするの、もう!」バッ

杏子「……ふん。まあ、これくらいで許してやるさ。マミの頼みだしな。
    安心しな。もう誰とも契約しないってんなら、別にやっちまおうなんて思わないよ」

QB「……佐倉杏子、君はそれでいいのかい?」

杏子「……まあ、あたしが助かったのもアンタのお陰だしね。
    マミは魔法少女のこと、な〜んにも知らなかったみたいだし……」

マミ「う……思いっきりすれ違いしちゃってたもんね……
   佐倉さんの家に遊びに行く時は、魔法関連の話題はだせなかったし……」

杏子「ああ……そういや、キュゥべえ。さっきの奴、マミのことを変な風に呼んでなかった?
    えーと、なんだったっけ……」

マミ「突然変異、だったかしら? それって、たぶん魔法使いのことよね? どういうことなの?」

QB「……これは僕の推測だけど、魔法使いって言うのは魔法少女の亜種なんだと思う」

マミ「魔法少女の……?」

QB「ああ。僕らが有史以前から君たちの歴史に干渉してきたっていうのは覚えてるかい?
   そうして見てきた人類の進化の過程で、あんな超自然的な力をもつような存在が発生するとはとても思えない」

QB「おそらく、魔法少女の突然変異なんだろう。基本的に魔法少女の平均寿命は短いけれど、
   中には成人して、子を成すものがいなかったわけでもない。
   魔力を帯びた体で妊娠すれば、胎児にその影響が出る可能性はある」

マミ「それで生まれたのが、魔法使い……?」

QB「多分ね。魔法少女と魔法使い、両者の魔法を使うプロセスは似すぎているんだ。
   どっちも同じ、感情や精神のエネルギーを変換して超常現象を起こしている」

杏子「それじゃ、あたしもマミみたいな魔法が使えるの?」

QB「いや。突然変異の過程で、必要な素質は別のものになったんだろう。
   君みたいに魔法少女としての素質だけしか持っていない子の方が圧倒的に多い。
   もっとも、変異体――魔法使いの方は、同時に魔法少女の素質を持ってる子も多いみたいだけど」

マミ「どうして?」

QB「基本的に、魔法使いの素質は遺伝で継承されていくものだから、かな。
   分化したとはいえ、魔法使いは魔法少女に近しい。だから両方の素質を持つこともよくあるんだろう。
   反対に、魔法少女の素質は血筋に影響されない。するのかもしれないけど、魔法少女が出産することはほぼないからね。
   だから魔法少女自体は世代を重ねることがほとんどなく、突然変異のしようがない」

杏子「しゅ、出産って……おい。おい!」バシバシ

マミ「い、痛い痛い! やめて佐倉さん! ……えーと、つまり優性遺伝子とか劣性遺伝子とか、そんな感じってこと?」

QB「正確には違うけど、ニュアンスとしてはそう受け止めてもらって構わないよ」

杏子「……にしても、聞いた話だと魔法界ってのはずいぶんでっかい組織みたいだけど、
    アンタらはずっとそれに気づいてなかったわけ?」

QB「もしかしたら、魔法少女と混同していた可能性もある。
   初期の頃は、それこそ二次性徴期の少女に限らず片っ端から契約していたからね」

マミ「魔法史の授業では、昔は魔法使いもこっち側に混じって生活してたって……
   それを誤認してたってこと?」

QB「魔法少女の祈りや願いは、時として人類を次のステージへと導いてきたと今まで僕らは認識していた。
   だけど、もしかしたらその内のいくらかは魔法使いの手によるものなのかもしれないね」
880 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/06/10(月) 23:37:48.80 ID:s4cEiWrY0

杏子「……まあ、話は分かったよ。んじゃ、そろそろあたしは行くね」スクッ

マミ「そう? それじゃあ一緒に買い物に行きましょう。帰ってきたばっかりで、冷蔵庫の中身が空っぽなのよね」

杏子「は……? なんであたしが買い物に付き合わなきゃならないのさ」

マミ「あ、それもそうね。まずはお風呂に入って、ついでに着替えないと。
   私の服、貸してあげるわね。サイズは、まあ……とりあえず入ればいっか。
   どうせ新しくいくつか買わなきゃだし、その時ついでに――」

杏子「待て待て待て待て! だから、どうしてあたしがそこまで世話に――」


マミ「どうしてもなにも、佐倉さんは今日からここで暮らすんだから」


杏子「……はぁ!? なんで! き、聞いてないよそんなの!」

マミ「言ってないわね、そういえば。でも、別にいいでしょう? もう私達、家族なんだし」

杏子「いや、あれは物の弾みで……お、おい、キュゥべえ!」

QB「うん、なんだい?」

杏子『テレパシーで話すぞ……どうしたんだよ、マミ。ここまで強引な奴だったか?』

QB『……あのね、杏子。マミは君の家族の不幸を知ってから、物凄く君に執着してたんだ。
   事件のことが載った古新聞やら古雑誌やらをそこら中から掻き集めてくるし、毎晩泣き通しだったし……』

杏子『……そ、そうなのか? だってあたしら、一ヶ月ちょいくらいの付き合いだったんだぞ?』

QB『マミにとっては、それ以上の関係だったんだろう。その君がこうして無事でいると分かったら……ね?
   もともと、彼女は世話焼きな面が強いし……』

杏子『……や、そりゃ、あたしだってマミとまた会えたのは嬉しいし、ほとんど唯一の友達だけどさ……
    でも、だからってそこまで世話になるわけには……』

QB『……ちなみに、杏子』

杏子『あん?』

QB『たぶん君は知らなかったんだろうけど、マミもテレパシーは使えるよ』シラッ

杏子「……え? え!?」

マミ「――佐倉さん!」ダキッ

杏子「わぷっ!? むー! むー!」ジタバタ

マミ「そんな、一番の友達だなんて……でも嬉しい! 私も佐倉さんは大切なお友達よ!
   とにかく落ち着く先が見つかるまででも――ううん!
   ずっと一緒だって構わないわ! だって私達、もう家族なんですもの!」

杏子『放せ! 放せ! おい、この……キュゥべえ! なんでそれを先に言わないのさ!』

QB「聞かれなかったし……諦めなよ、杏子。無理に逃げ出しでもしたら、ミザリーみたいな展開になると思うよ。
   それもアニーが勝利して終わる結末で」

マミ「えへへ、佐倉さん♪ 佐倉さん♪」ギュウウウ

杏子『ミザリー!? なんだよそれ――あああああ! 分かった! 分かったからとにかく放せー!』
881 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/06/10(月) 23:40:41.41 ID:s4cEiWrY0


 ガチャッ


さやか「ちぃーっす! さやかちゃんでーす! 学校終わったから遊びに来ましたー!
     いやーマミさんの帰る日を私達、心待ちにしてたんですよ!
     鍵開いてたし、何か中から声がしたからつい必殺"サプライズ・お邪魔します"しちゃいました……け、ど……」

杏子「むー! むー!」

杏子(だ、誰だ!? い、いやこの際誰でもいい! こいつ何とかしてくれ!)

マミ「――♪」ギュウウウ


さやか「……」

さやか(な、なんだこいつ? なんでマミさんとあんな情熱的な熱いホットな抱擁を……)


 ドタドタドタ


まどか「も、もう! 駄目だよ、さやかちゃん! 勝手に入ったら! めっ!
     うちのタツヤだって、最近はきちんとノックができるように――
     って、なんでさやかちゃん、手のひらで目隠しするの? これじゃ何にも見えないよ?」

さやか「見るな! まどかにはまだ早い! それよりイギリスって、そういうのOKな国だったっけ!?」

まどか「え? そういうのってどういうの? もー! 見せてくれないと何にも分からないよ!」

さやか「いいの! そのままのまどかでいて! そ、それじゃあ後は、アダルティーな二人に任せて……」

杏子「……ぷはっ! 待てこら! マミの知り合いなんだろ!? 行くんならこいつを引きはがしてから行け!」

さやか「りゃ、略奪愛!? そういう特殊な性癖はちょっと……!」

杏子「見滝原には馬鹿しかいないのかよ、おい!?」

まどか「え、誰? 誰、この声? 今、さやかちゃんが罵倒された気がする……!」

さやか「んー? なんであたし限定なのかなー? おかしーなー?
     背後を取ってるあたしの方が有利だって、お馬鹿なまどかちゃんには分からないのかなー?」ギュウウウウウ

まどか「いたたたた!? や、やめてよ、さやかちゃん! 目をぎゅってしちゃダメ!
     こんなの、さやかちゃんだってしたくない筈だよ……!」

杏子「ああああああああああああ! 馬鹿が増えた! 畜生やってらんねー!」

マミ「佐倉さぁん……♪」
882 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/06/10(月) 23:41:46.63 ID:s4cEiWrY0
今日の分は以上です。次回からゴブレット編に入る予定
883 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/06/10(月) 23:42:20.70 ID:kyLbMJAJo
このままワルプルまで行くのかと思ったらまさかのほのぼのパートwwwwwwwwwwwwwwww
癒された〜
884 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/06/10(月) 23:45:43.93 ID:OXUDgtxL0
荵吶〒縺呎代′蜷
885 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/06/10(月) 23:47:38.48 ID:tpzExfr10
未来からの送り主ってほむ…かと思ってたけどもしかして織莉子?
886 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/06/10(月) 23:51:00.85 ID:E2l3qZKPo
乙〜
織莉子ちゃん登場なるか
887 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/06/10(月) 23:51:03.49 ID:UnTGAShHo
これは素晴らしい
足縛り→針ミサイルはなんとなくティロフィナーレを彷彿とさせる

巨人に失神呪文が効きにくいように、魔女にも魔法耐性があったりするのかな?
888 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/06/10(月) 23:57:20.85 ID:bHpquSg8O
おつ 面白かった
889 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/06/11(火) 00:17:07.84 ID:/z7N1a/DO
面白い
890 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/06/11(火) 01:10:59.65 ID:pkqHpcUao

魔法少女と魔法使いをそう絡めたか
891 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/06/11(火) 01:19:01.50 ID:euaunKFv0
乙!
良いねえ

感情の芽生えたQBと普通のQBとの対面がなんか凄く新鮮だった

あと俺もマミさんのお腹むにむにしt
892 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/06/11(火) 03:56:00.55 ID:uin4Em/zo
893 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/06/11(火) 09:00:35.46 ID:sUwVVJiDO
>>1

おばあちゃんが言っていた、良い料理は待ってる時間すらも幸せな気持ちにさせてくれるってな。

焦らず自分のペースで頑張ってください。

894 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/06/11(火) 09:10:56.52 ID:gDOC5epl0
ラップ喋りのトムリドル!
895 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/06/11(火) 09:34:43.49 ID:jJg+pnsE0
炎ゴブ編は杏子ちゃんもマミさんと一緒にホグワーツに行くんかな?
896 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/06/11(火) 12:13:30.91 ID:xmdiCpbAO
ペット粋はすでに埋まってるだろ
897 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/06/11(火) 14:36:45.15 ID:owotKrHxo
かつて奥さまは魔法少女が実在したのか
898 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/06/11(火) 16:07:10.02 ID:xmdiCpbAO
>>897
魔法少女は何歳になっても魔法少女だろ!!!
899 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/06/11(火) 16:49:28.77 ID:voiMOv5/0
>>897
えいえんのじゅうななさいだからな
900 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/06/11(火) 17:11:24.35 ID:xSrRYPcHO
あれ、ホグワーツの4年生が日本の中学三年生だよね?
ゴブレットいったら、ワルプル通り過ぎちゃわない?
901 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/06/11(火) 18:33:19.18 ID:Bs3koNSjo
じゅうななさいの身体は少女とはいえない
じゅうごさい以上はアウト
902 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/06/11(火) 19:38:50.29 ID:wppQ7ZgSo
中学生はBBA
903 : ◆jiLJfMMcjk [sage]:2013/06/11(火) 19:54:55.98 ID:VEWqWtnd0
>>894
なんでラップなのかしばらく考えて、こういう結論に達した


◇◇◇


あるウィーズリー家の末っ子が、ホグワーツ入学の為の買い物をしてる時、
「ほら――お前のだ。君の御両親ではこれが精一杯だろう」
と、小悪党に謎の日記帳を押し付けられた。
入学からしばらくして、日記が喋りかけてきた。
末っ子はびっくりしたが、それから日記とお喋りするようになった。
すると、だんだん日記中のトム・リドルも懐いてきて「ジニー! ジニー!」と応えてくれた
末っ子は「ポケットに入る友達ができたみたい!」と喜んでいたが、
だんだん、まるで夢遊病のように記憶がはっきりしなくなってきたので、怖くなってきた。
そうして末っ子が震えていると、日記の中からトム・リドルの声がする

「ジニー! ジニー!」
末っ子は答えた。
「トム! きっとみんなを襲ってるのは私なんだわ!」
最初のうちは答えていた。
けれどしかし、トム・リドルの声はなんどもなんども呼んでくる。
「ジニー! ジニー!」
やがて、末っ子は耐えきれなくなって叫んだ。
「うっせえ! さっさと私とハリーをくっつけろや!」
すると、日記の中から蛇の形相をしたトム・リドルが現れ、「ハリーはどこだぁ!」と叫んだ


すると突然、まばゆいばかりのルーモス光よが飛び出したトム・リドルを映し出す
「HA-RI-は」「どこだ!」ステージにトム・リドルの声が響く
詰め掛けた死喰い人はトム・リドルの久々のステージに期待で爆発しそうだ
今晩も伝説の詠唱が聴ける。ロンドン生まれ孤児院育ち。本物のアバダケダブラが聴けるのだ
キャップを斜めに被りオーバーサイズのTシャツをきたスネイプがターンテーブルをいじりながら目でトム・リドルに合図する
重たいサウンドがソノーラス(響け)から広がる。ショウの始まりだ
「 ここでTOUJO! 僕がTEIO! 蛇のGYOUSO! 俺様SANJYO! 
 違法なEISYO! 魂MAISO! 日記から僕が呼ぶGENCHO!
 (ドゥ〜ン ドゥンドゥンドゥ〜ン キュワキャキャキャッキャキュワキャ!)
 純血減少! 穢れ血上昇! 嫌われて大変! トイレにボットン!
 冷たい世間を駆け抜けるぜ箒! マグル贔屓どもを呪文で放棄!
 どこだPO-TTA-未来のMONDAI! そんな毎日記憶なSONZAI!
 SAY HO!(FOI!) SAY HO HO HO HO!」
スネイプのプレイも好調だ。死喰い人の熱狂はこわいくらいだ。
まだ、俺様達の時代は終わっていない、そんなメッセージがトム・リドルの口から飛び出していく
本物の闇の魔法使いが、ここにあるのだ。



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改変し終わったあとググったらわかったけど、役者さんネタだったのね
書き溜めに戻ります
904 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/06/11(火) 20:36:04.63 ID:7FWv1pR0o
何書いてんだよwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
905 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/06/11(火) 23:02:37.33 ID:XsHJyETB0

ラップワロタwwwwww
906 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/06/11(火) 23:05:13.59 ID:7EPtZZiYo
FOI!じゃねえよwwwwwwwwww
907 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/06/15(土) 00:51:33.88 ID:RoS7wXAco
これが本物のアバダケダブラ…!
908 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/06/15(土) 01:25:00.17 ID:rpprIz8do
スネイプ何してんwwwwww
909 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/06/16(日) 06:33:34.72 ID:rHSM7KRDO
>>903

おいバタービール吹いたじゃねーかww
910 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/06/16(日) 08:28:12.75 ID:srRRDuyn0
アバダケダブラのラップ……
アバラップか
911 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/06/16(日) 12:31:24.59 ID:MuZJ3woUo
ワロタwwwwww
912 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/06/19(水) 07:35:33.98 ID:2lk/DgVAO
魔法少女☆マミ☆も良い
だが魔女っ娘マミちゃんはもっと良い
913 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/07/01(月) 15:16:17.60 ID:rOBVB60q0
ゴブレット編楽しみ
914 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/07/02(火) 19:46:27.20 ID:YmDb/ZUDO
ラップから2週間経ったが……

本場の死の呪文喰らった?
915 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/03(水) 18:34:17.75 ID:3+o/+gtH0
楽しみにしてるわ
916 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/07/03(水) 21:44:23.81 ID:VhfD2e/60
切りが悪いかもしれんから次スレ立てても良いかもね
917 : ◆jiLJfMMcjk [sage]:2013/07/04(木) 03:02:49.57 ID:0gckZWHD0
校正完了次第、投下。
時間が時間なのでリアタイで見てる人はいないと思うけど、長いので今日は寝て、後日読むことをお勧めします。
918 : ◆jiLJfMMcjk [sage]:2013/07/04(木) 04:32:07.74 ID:0gckZWHD0
次スレ立ててきました。

マミ「クルーシオ!」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1372879800/

とりあえず出来る限りこっちでやって、続きを新スレに投下する感じで。
919 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/07/04(木) 04:33:00.42 ID:0gckZWHD0

                 / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                 |  でもさやかちゃん、マミさんとは違ってこっちはえらい貧相だよ。
                 |
                 |  同じものを食べてもあのスタイルは無理だよ。所詮は泡沫の夢だよ。
       、  iヽ,_,、     \
     _!シ</ |  ̄`ヽ、    ̄|/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
      /    `リ   ,!、l |`
      ,      .|.   !l!l! l|
      |    |l| _l. | |〈
        ! |   ||( ,| |'''' `!
      !ヘ   lノ`ヽ | っ/
        \/ r'--.!|-! ´                         、
          /´ `ヽ、〉,、  ,r_- 、             ,─‐、 | /__
           /ノ    |::ゞ! ,/ ,ソ`              |ィ'"´ ̄``ヽ  /   て
            |l -ー- ノ:イ|'/ .`シ、              / /  .ハ   ∨ヽ    そ
           |ヽ   / i|ヽ/!. /               |/`|/、/ Y/ ハ .|
          | |   |  |.  /´          __  _ノ(___) (___)リ、l .}
           | |   |  | /           <     ̄ (""r──、".r'' ./
            | |.  |. .|_/            /     ィ─‐--、─'ニ'_,ノ
           !.|.  | _ i            /__ _〈___{__}_ノヽ
         / .|_ __|. `'ヘ           '"   /  ノ     /\ .\

投下開始
920 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/07/04(木) 04:33:33.96 ID:0gckZWHD0


 ――賑やかで、とても楽しい夏休みが始まります。




さやか「マミさんマミさーん! 混ぜるのってこれくらいでいいですかー?」

マミ「えーと、どれどれ……うーん、もうちょっと混ぜた方がいいわね。全体的に白っぽくなるまでお願いできる?」

さやか「うぃっす! ほらほら、まどかもファイト! そんなんじゃ美味しいケーキにならないぞ!」

まどか「うぇ〜……もう腕が痛いよぉ……」

さやか「だらしないなぁ。まどかのパパさんは料理上手なのに。
     お菓子のひとつも作れなきゃ仁美みたいにモテないよ。ラブレター欲しいんでしょ!?」

まどか「そ、そんな大きな声で言わないでよ……っ」

杏子「……」カシャ....カシャ....

さやか「……で、杏子はいつまで粉振るってるわけ?
     火薬じゃないんだから、そんなおっかなびっくりやんなくたっていいでしょうに」

杏子「う、うるさい! まともな菓子作りなんて初めてなんだから集中させろって!」

マミ「ま、まあ丁寧に振るってくれれば、その分ダマになりにくくなるし……」

杏子「だよな!? ほら見ろ、さやか。あたしは間違ってないぞ!」

さやか「じゃあ三日くらいずっと振るい続けてればいいさ!」

杏子「舐めんな! 今日の夜には振り終わってるよ! 舐めんな!」

マミ「も、もうちょっと早く終わらしてくれると嬉しいかな?」

まどか「そういうさやかちゃんは、お菓子作りの経験あるの?」

さやか「いや、ないけど。でもまだ混ぜるだけだし、こんなの簡単だい!
     うりゃうりゃうりゃうりゃ!」ガッシャガッシャ

まどか「ちょっと、わっ! さやかちゃん、そんなに乱暴にやったら飛び散っ……」

さやか「うりゃりゃりゃー――あっ」ツルッ


 べちゃっ


マミ「……」ポタ.....ポタ.....

まどか「あ、ま、マミさん……! 酷い、材料の入ったボウルが、まるでヘルメットみたいに……!」

さやか「あ、あわわわわ……!」

杏子「テメエ、食い物を粗末に……!」

マミ「……」ポンッ

杏子「なんだよマミ、いまからこいつに食い物の大切さを……はっ!」

マミ「……」ゴゴゴゴ

さやか「ひ、ヒィ……っ!」

まどか「マミさんのオーラが膨れ上がっていく……!?」

杏子(あ……有り得ねえ……っ! 幾多の魔女をぶっ倒してきたあたしが、ビビってるだと……!?
    いまのマミは普通じゃない……! さやかの奴はもう"生きて"ねえ!
    "生かされてる"! マミに、この世界に……! もう自分の肺で呼吸もできねえ有様……!)

マミ「美樹さぁん……?」

さやか「ほ……本当の自分を忘れるな! 本当のマミさんは心の中にいる! 肉体はただの肉体だ!
     ちょっと砂糖バターまみれになっちゃいましたけど――あ、ちょ、やめっ! やめてください!
     すいません! マジすいませんっした! だから卵黄は! 卵黄刷毛だけはなにとぞ……!」
921 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/07/04(木) 04:33:59.71 ID:0gckZWHD0

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 チーン!


まどか「あ、焼きあがったみたい! ……うーん、甘くていいにおーい……」

杏子「早く出そう! てかもう出していいか!?」

マミ「えーと、ちょっと待って……うん、中まで焼きあがってるみたいだし、大丈夫よ。
   熱いから気を付けてね。はい、キッチンミトン」

さやか「おいおい、大丈夫かーきょーこー? 落ち着きがないなぁ。見てて不安だよ。
     なんならこのさやかちゃんが代わってやってもいいぞよ!」

マミ「美樹さん」ニッコリ

さやか「はい!」

マミ「座ってなさい」

さやか「はい!」


杏子「よっ……と。おー、色合いは地味だけど美味そうだな」

まどか「ダンディーケーキ、っていうんだよね。イギリスのお菓子の……」

さやか「それじゃ、さっそく切り分けましょう! ここは刃物が似合うさやかちゃんが!」ギラリ

マミ「あ、待って。これって、ここから数日寝かせないと駄目なのよ」

さやか「え!? じゃあ今日は食べれないってことですか!? そんな、酷いですよ!
     ここまできて生殺しじゃないですか!」

マミ「美樹さんがひっくり返したタネが、すぐに食べれるパウンドケーキの分だったのよ?」ニッコリ

さやか「すんませんでした!」

まどか「さやかちゃーん……」

杏子「テメエ……」

さやか「う……だ、だから反省してるって、ほんと……」

マミ「……ふふっ。意地悪はここまでにして、お茶にしましょうか。
   余った分のタネで、カップケーキを焼いておいたの」

杏子「あ、なんだよ。もうネタバラシしちまうのか」

まどか「いひひひ。さやかちゃんもきちんと反省してるみたいだし、ね?」

さやか「え……え!? そうだったの? も、もうみんな人が悪いなぁ!
      あ、それじゃあお茶はあたしが淹れますよ!」ガタッ

杏子「座ってろ。さやか」

まどか「さやかちゃん、お座り」

マミ「美樹さん、座ってなさい」

さやか「……はい」
922 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/07/04(木) 04:35:02.52 ID:0gckZWHD0

さやか「んー! 美味い! やっぱマミさんのお菓子はめちゃ美味っすね!」

まどか「ほんと。ふわふわしてて、口の中でとろけるみたい」フニャー

マミ「そんな、大げさよ。レシピさえあれば、誰だって作れるわ」

杏子「いやーどうだろうね。特に今回焼いたやつは、別々にタネを作って焼いたし……
    さやかのやつとか食えんのかぁ?」

さやか「んなっ! 失礼しちゃうねほんと! 杏子、あんた本当にマミさんの従妹なの?
     性格が180度くらい違うじゃん。そんなんで一緒に住むとか平気なわけ?」

杏子(そりゃ本当は赤の他人だしなぁ)

マミ「まあまあ……大丈夫よ。あのケーキ、そんなに難しくないもの。後で包むから、お家で家族の人と食べてね?」

さやか「ごっつぁんです! ……にしても、マミさんは二つ焼いてましたよね、ケーキ。杏子の分と合わせると三つ……
     その量二人で食べるんですか? なるほど、だからそんなナイスバディに……」

まどか「でも、さやかちゃん。ほら……」チラッ

杏子「なんだよ、まどか。あたしに何か言いたいことでもあんのか、ああん?」

まどか「ななな、なんでもないよ!」

さやか(完全にチンピラだ!)

マミ「冗談は置いておいて……私が焼いたのは友達に送るのよ。このケーキってすごく日持ちするから」

まどか「もしかして誕生日とかですか?」

さやか「あっ、馬鹿! まどか!」

まどか「え? あっ……う、うひひひひひ」

マミ「? それもあるけど……その子から手紙が来たの。なんでも、飢え死にさせられそうだとか……」

まどか「そ、それは流石に冗談じゃ……?」

マミ「どうかしら? まあ何にしてもお誕生日だったから。
   こうやってみんなでお菓子作りもしてみたかったから、ちょうどいいかなって」

杏子「ま、そいつのお陰でこうして美味いもんが食えるんだから感謝しないとな」モグモグ

さやか「ふーん……ところでそれって、向こうの友達ですよね?
     わざわざイギリスにまで、それも手作りのケーキを送るなんて……もしかして彼氏とかですか!?」

マミ「ぶふっ!? こほっ、こほっ。み、美樹さん、何を……」

さやか「そ、その焦り様……まさか本当に!? あたし達のマミさんに彼氏が!?」

まどか「ええええええ!? そんな――で、でも、確かにマミさんは綺麗だし、スタイルもいいし……」

マミ「違っ……違うったら! ハリーくんは、別の寮のシーk……えーと、女子バスの代表選手が好きって噂で!」

さやか「へー、ハリーっていうんですね、その人。カッコいいんですか?」

マミ「だから違うのよ、違うんだってば本当に!」

杏子「そこまで否定しなくてもいいだろうに……んじゃ、マミは好きな奴とかいないのか?」

マミ「……うーん……そう言われると、確かに……友達として中の良い男の子はいるけど、かっ、彼氏とかは考えたことないわね。
   まほ――勉強で忙しいっていうのもあるんでしょうけど」

さやか「なぁ〜んだ。つまんないの」

杏子「そういうさやかはどうなんだよ? 好きな奴とかいないの?」
923 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/07/04(木) 04:35:28.71 ID:0gckZWHD0

さやか「あ、あたしぃ!?」

マミ「そういえば、上条くん、だったかしら? 幼馴染の彼とはどうなって――」

さやか「や、やだなぁマミさん! 恭介の奴とはそれこそ幼馴染ってだけですよぉ! ね、まどか!」

まどか「上条君とさやかちゃん、凄く仲がいいんですよ。とってもお似合いかな、って」

さやか「まどかぁぁあああああああああ!?」

杏子「んだよ、自分のことは棚に上げて他人ばっかり囃したてやがって。ひゅーひゅー!」

マミ「ひゅ、ひゅーひゅ、ぅう……」

さやか「きょ、杏子め……! マミさんも恥ずかしいんなら無理に乗らんでください!」

まどか「それでですね、この前なんか放課後の教室で、なんとひとつのイヤホンを二人で――」

さやか「うぉぉぉおおおお! 一番の敵はあんたかまどかーーーー!」

マミ「こ、こほん。それじゃ、二人の相性とか占ってあげましょうか?」

まどか「え!? マミさん占いとかできるんですか!?」

マミ「ええ、向こうで流行ってるの」

杏子(お、おい。ちょっとマミ。向こうって、まさか魔法か? 使っちゃ不味いんだろ?)

マミ(平気よ。これは杖を使わない、テレビでやってる朝の占いの延長みたいなものだから)

まどか「さやかちゃん! やってもらおうよ!」

さやか「え、別にいいし? 恭介のことなんかなんとも思ってないし? 占いとかも信じてねーし?」

まどか「あちゃー……完全に意地になっちゃってるよー……。
     ところでマミさん、それってどんな占いなんですか? 誕生日とかで占うとか?」

マミ「そうね、そんな感じ。名前や生年月日を決められた数字に置き換えて……」

まどか「あ、それじゃ私を占ってもらってください。もちろん好きな人との相性占いで!」

さやか「はい!? なにそれ初耳だよ!? まどか、いつの間に……」

杏子「へえ、やるじゃん。ちんちくりんのくせに」

マミ「いいわ。それじゃあまず、名前と生年月日を教えて貰っていいかしら?」

さやか(まどかの好きな人……誰なんだろう……)ワクワク

まどか「はい! 私の名前は美樹さやか! 相手の名前は上条恭介くん! 誕生日は――」

さやか「へえ、あんたもさやかっていうんだ――って、んなわけないでしょうが! ちょっとまどか何やって」

 がしっ

さやか「なっ……杏子!? は、放せぇ……!」

杏子「やりな。こいつはあたしが引き受ける」

さやか「くっ、この馬鹿力……ま、マミさんは違いますよね? こんな悪ふざけ、許しませんよね?」

マミ「ついでにデートの日取りとかも占ってみましょうか?」

まどか「あ、それなら夏休み明けに、さやかちゃんと上条君、東京の方のコンサートに行くらしいんですけど――」

さやか「マミさん!? そんな、なんで――あ、もしかしてまだケーキのタネぶっかけたこと怒ってます!?
     ねえ、ちょっと、あっ、そんなイイ笑顔で淡々と占いを……」
924 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/07/04(木) 04:35:54.26 ID:0gckZWHD0

QB「もぐもぐ。ああまったく。あの二人がいると僕は外に出てなきゃいけないから大変だよ」モグモグ

杏子「いいだろ、半日外に出てるくらい。お陰でそうやってケーキ食えたんだからさぁ。つーかお前、よく食うのな。
    どこに入っていくんだよ、その量」

マミ「キュゥべえって意外にたくさん食べるのよね……それだけ食べても太らないって、羨ましいわ、ほんと」

QB「んぐ……きゅっぷい。本来なら、食物の摂取はそんなに重要じゃないんだけどね。
   使用済みのグリーフシードから回収できるエネルギーの一部を、活動用の動力に回せるから」

杏子「グリーフシードを? そんなに栄養あんのか、あれ?」

QB「栄養、という表現は正確じゃないけど……感情の力っていうのはエネルギーとして理想的なんだ。
   ジェムの穢れは魔法の反作用だけど、そこから回収できるエネルギーは魔法によって発生した総熱量よりも多くなる」

杏子「……? なに言ってんだこいつ。分かるか、マミ?」

マミ「え? えーっと……結局たくさん栄養があるってことでいいのよね?」

QB「……もうそれでいいよ。間違いではないしね――ごちそうさま、マミ」

マミ「お粗末様。じゃ、これ洗っちゃうわね?」

杏子「あ、それならあたしがやるよ。マミは座ってな」ヒョイッ

マミ「あら、本当? ありがとう、佐倉さん」

杏子「気にすんなって。母さんの手伝いはよくしてたし、その……」

マミ「……どうしたの?」

杏子「いっ、いや。なんでもない。とにかく、ぱぱっと洗ってきちまうからさ」
925 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/07/04(木) 04:36:22.56 ID:0gckZWHD0

マミ「それじゃあ洗い物は佐倉さんに任せて……宿題でもしようかしら?
   えーと、トランクは……鹿目さん達がくるから、押し入れの奥にしまいこんじゃったのよね」

QB「見られると不味いからね。魔法界のことも、あとできれば魔法少女のことも彼女たちには知らせない方がいいだろう」

マミ「……あの二人にも魔法少女の素質があるなんてね。でも、キュゥべえ。それなら早い内に伝えた方がいいんじゃない?
   もしもインキュベーターと契約しちゃったりしたら……」

QB「それも対策のひとつではあるけど、今は下手に興味を持たせない方がいいと思う。
   "二人とも、魔法少女としての素質は並だからね"。僕ら――いや、インキュベーターが契約を持ちかけない可能性もある」

マミ「そうなの? 私にも声をかけてきたし、てっきり契約できる子には片っ端から話を持ちかけるものだと……」

QB「基本的には、そうだね。インキュベーターは契約を躊躇わないだろう。
   そもそも、そういう風に造られてるしね」

マミ「造られてるって、そんな何かの製品みたいに……」

QB「いや、実際にそうだよ。なるほど、製品というのは上手い喩えだ」

マミ「……え?」

QB「魔法少女システムを搭載して、グリーフシードの取り込みまで出来る生物が自然発生する筈ないだろう?
   僕らは大昔――システムを構築した当時に、自らの身体に手を加えたんだ。この姿形も本来のモノではないし」

マミ「――ちょっと待って。なんだか気軽に、物凄いことを聞いてる気がするんだけど……」

QB「そうかい? 確かに元々はこうした個としての認識も薄かったからね。
   感情を得た現在でもなお、僕と君の認識にちょっとずれがあるのは当然なのかもしれないけど」

マミ「ちょっとってレベルじゃないわよ……」

QB「まあ、とにかくインキュベーターは基本的に契約の為だけに存在しているってことだ。
   だから基本的に、素質のある子に契約を求められればそれを拒めない。
   もしもまどか達が、魔法少女の運命を背負ってなお、叶えたいと思う願いを持っていれば――」

マミ「……それを止める方法はない。なら、下手に魔法少女のことを教えない方がいい、か。
   でもキュゥべえ、それならインキュベーターが契約を持ちかけないっていうのは?」

QB「現在、この辺り一帯は杏子の縄張りだ。彼女は魔法少女の中でも非常に優秀な部類に入る。
   フィジカル的にも、メンタル的にもね。現存する魔法少女の中でもトップクラスだろう。
   だから将来的に――言い方は悪いけど――彼女が生産する使用済みグリーフシードは莫大な数になる」

マミ「……そっか。それで得られるエネルギーの量が、鹿目さん達との契約で得られる量を超える見込みなら――」

QB「わざわざ不確定要素をこの地域に撒く必要はない。仮に杏子が、その……魔法少女を続けられなくなっても、
   その時改めて彼女たちに契約を持ちかければいいしね。だからあと数年は猶予がある」

マミ「……確かに今のところ、二人にインキュベーターは近づいてないわよね」

QB「ああ。もっとも、だからといって完全に安心できないのも確かだ。
   これはあまり例がない話だけど、素質の大きさが変化してしまう可能性もゼロじゃない」

マミ「素質の、変化――?」

QB「そう。契約と魔女になることで得られるエネルギーの量は、その子の素質の大きさに比例するんだ。
   もしも何かのきっかけで二人の素質が大きくなることがあれば、インキュベーターは契約を持ちかけるかもしれない」

マミ「……そもそも、魔法少女の素質って具体的になんなの? 私にもあるのよね、確か」

QB「一言で言い表すのは無理だ。様々な要因が絡み合ってるからね。
   ただ、その中でも大きなウェイトを占めているのはその子の抱える因果の量だろう」

マミ「因果……?」

QB「何をし、何を成すことができるか。つまりは、どれだけ世界に干渉できるか、ということだ。
   この因果の量って言うのは生まれた時から決まっているもので、滅多なことじゃ変化はしない」

マミ「でも例外もあるんでしょ? さっきの言い方からすると」

QB「他者の因果律に干渉する類の奇蹟を契約の際に望めば、あるいは……というところかな。
   もっとも、因果にまで影響を及ぼすほどの大きな干渉は、契約者にもかなりの素質が求められる。
   マミもかなり素質があるほうだとは思うけど、因果律そのものに干渉するような願いは叶えられないだろう」
926 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/07/04(木) 04:36:49.74 ID:0gckZWHD0

マミ「……」

QB「……まあ色々言ったけど、要はそれほど心配しないでもいい、ってことさ。杏子だって気を配ってくれるしね。
   だからそんな顔をしないで――ああ、そうだ。素質の話ついでに、明るい話題にも触れようか」

マミ「明るい話題?」

QB「そうだ。前に、君には魔法の――魔法使いの才能がある筈だっていったのは覚えてるかい?
   魔法少女の話に関連するからあの時は言えなかったけど、いまなら話せる」

マミ「クリスマス休暇の時の話よね……あれって、失敗ばっかりしてた私を励ますための方便じゃなかったの?」

QB「違うよ。さっきも言った通り、マミの魔法少女としての素質は優れている。
   つまり内包する因果の量も大きいってことだ。それは即ち、世界に干渉できる割合が他者と比べて多い――
   魔法界で相応に活躍できるということにはならないかな?」

マミ「……それは……でも……」

QB「他にもある。マミは撃ったり壊したりする魔法が得意だろう? それはマミの魔法少女としての特性にひっぱられた結果だ。
   魔法少女の能力は願いの影響を多分に受けるけど、そうじゃない部分もある。
   例えば杏子だったら、幻惑の魔法は祈りから生まれたものだけど、その武器である槍は彼女自身の持つ特性だ」

マミ「……私だったら、武器は銃とか弓になるってこと? でもそれって結局、私の才能っていうのは壊したりするだけで、
   他の魔法は今以上のものにはならないってことじゃないかしら」

QB「前にも言ったけど、魔法少女と魔法使い、両者の素質は似て非なるものだ。
   片方が片方に影響を与える程度には近いけど、それでも両者の間は断絶している」

QB「ルーピン先生も言っていたけど、ホグワーツは相応の才能が無ければ入れない魔法界の名門校だ。
   なら、彼らが見出した"魔法使いとしての才能"がマミには備わっている筈だろう?
   壊すのが得意なのはマミの魔法少女としての特性で、魔法使いとしての才能とは無関係だ」

マミ「私の、魔法使いとしての才能……?」

QB「それがなんなのかまでは分からないけどね。でもきっと、いつかは花開く才能なんだと思うよ。
   だからこそ、君は多くの因果を秘めている――世界に大きく羽ばたくことのできる才能を持っているんだ」

マミ「……うーん。結局、よくわからないけど……」

QB「……」

マミ「……でも、ありがとう。お陰で、少しだけ気が楽になった気がする」

QB「良かった。それなら僕も話した甲斐があったというものだ」

杏子「皿洗い終わったぞーっと……って、なんだこの雰囲気?」

927 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/07/04(木) 04:37:17.42 ID:0gckZWHD0

数日後 魔女の結界


魔女「ガルルルルルゥ!」ダッ

杏子「へっ。狼型の魔女か。確かに素早いけどなぁ……これならどうだ!」


  カッ!


杏子「「あたしが二人っ!」」

魔女「!?」ピタッ

杏子『うしっ、迷って足が止まった! マミ、今だ!』

マミ「ペトリフィカス・トタルス!(石になれ)」

魔女「が、う、う、う……!?」ギシッ

マミ「……完全には止まらない、か。うーん。この呪文も、そこそこ使えるようになったとは思うんだけど……」

QB「魔女を構成する負のエネルギーは、魔法使いの魔法と相克関係にあるからね。
   ある程度の減退は仕方がないよ……と、杏子がとどめをさしたみたいだ」

杏子「おっす、お疲れ。援護サンキュな」

マミ「佐倉さんも、お疲れ様。グリーフシードは?」

杏子「ばっちりさ。あたしらのコンビ、結構いい感じかもしれないよ。
    あたしが魔女をちょっと足止めすりゃ、マミの魔法で拘束できる。そしたらあとはトドメを差すだけ。
    結果的に魔力の節約にもなるし、この分ならグリーフシードの貯金もできそうだ」

マミ「そう……なら、出来るだけ夏休みの間に貯めておきましょう。
   まだ一ヶ月半くらいあるし、それだけあればかなりの数になるわよね?」

杏子「……でもさ、いいの? マミだって宿題とか、自分の予定もあるだろうし……
    向こうの友達に、なんだったか、スポーツの観戦に誘われたんだろ?」

マミ「気にしないで。九月になればまた会えるし、それに……えーと、ほら。
   結界の中だと魔法使い放題だから、実技の練習にもなるし、ね?」

杏子「……悪いね、ほんと」

マミ「もう! だから気にしないでいいの! それに、休みの間は佐倉さんに家のこと全部任せるんだから、大変よ?
   家事で忙しくて、魔女退治の時間もなくなっちゃうかも」

杏子「――はっ! それくらいお茶の子さいさいだよ。
    帰ってきたら、見てろ。マミがやるよりきれいに掃除しといてやるよ」

マミ「ふふっ、期待しておくわ……それじゃ結界も消えたし、そろそろ帰りましょうか?」

杏子「ああ――あ、そうだ。マミ、醤油が切れてたから、買い足さないと」

マミ「え? そうだったかしら……それじゃあ、一緒にお買いもの、行きましょ?」

杏子「あー、悪いんだけど、ちょっと今日は見たいテレビがあってさ……
    悪い! 先に帰らしてくんないかな?」

マミ「テレビ? ……もう、仕方ないわね。それじゃ、貸しひとつよ? 今度は佐倉さんに、うんと重いもの頼んじゃうんだから」

杏子「あはは、お手柔らかにお願いするよ、と――んじゃ、あとでな!」ダッ

マミ「……ふふ、ああやってたまに我が侭を言ってくれると嬉しくなるわね。
   佐倉さん、ようやく遠慮がなくなってきてくれたのかしら?」

QB「さて、どうだろうね」

マミ「? なにか含むような物言いね……まあ、いいわ。それより早くお醤油買って帰りましょうか」
928 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/07/04(木) 04:39:00.18 ID:0gckZWHD0

自宅 玄関前


マミ「はあ、遅くなっちゃった……佐倉さん、お腹減らしてないかしら?
   いまからご飯の支度してると遅くなっちゃうわね……有り合わせでいい? キュゥべえ」

QB「……ん。今日は僕、夕飯はいいや」

マミ「……珍しいわね、キュゥべえがそんなこというなんて……あ、グリーフシードを食べたから?」

QB「そういうんじゃないけど……とにかく、今日は僕、外に居るよ。君は気にせず中に入ってくれ」

マミ「……いいけど。お腹減ったら、ちゃんと帰ってくるのよ?」


 ガチャッ


マミ「ただい――あら、真っ暗……佐倉さん、どこかに出かけたのかしら……?
   えーと、電気のスイッチ……変ね、つかない。ブレーカーが落ちたの?」パチッパチッ

マミ「えーと、ブレーカーは確か、居間の――」


 パァン! パァン! パァンッ!!


マミ「ひゃうっ!? え、なに? なにこれ!?」


 パチッ


マミ「あ、電気が――え?」


「マミさん! お誕生日、おめでとうございまーす!」


マミ「え――鹿目さん? 美樹さん、佐倉さんも……」


さやか「ふぅーははははははぁ! サプライズ大・成・功!」

まどか「えへへ。驚かせちゃってごめんなさい」

杏子「……ま、そーいうこと。騙して悪いけど、準備する時間が欲しかったもんだからさ」

マミ「飾りつけに、ケーキまで……そっか、今日、私の誕生日だったっけ……」

さやか「杏子から聞いたんですよ、マミさんの誕生日。去年はお祝いできなくてすみません」

マミ「え、でも佐倉さんに言ったこと……あ」

マミ『……キュゥべえ、あなたが一枚噛んでるわね。玄関前の変な言動はそれで――』

QB『……さて、なんのことだい? ところで僕はいま散歩で忙しいから、テレパシー切るよ』

マミ『あ、ちょっと――!』ブツッ

杏子「まあまあ、細かいことはいいじゃねえか。それよりほら、こっち来て座れよ。
    ろうそくに火、点けるからさ」

まどか「先に点けておいてもロマンチックだと思ったんですけど、あんまり遅いとろうそく全部溶けちゃうから……」

さやか「ささ、どうぞVIP席へ。このケーキ、杏子がほとんど一人で作ったんですよ。
     だからまあ、その、あれです。味は期待しないでやってくださいね?」

杏子「んだとコラ――」

マミ「佐倉さん、が?」

杏子「え? ああ、うん――金も、プレゼントできるものも無いからさ。
    まあ、一応教えて貰った通り、上手くいったと思うから……」

まどか「杏子ちゃん、とっても張り切ってたもんねぇ」

杏子「んなっ――べ、別に普通だろ! あたしも食うんだし、不味いもの作ってもしかたないじゃんか!」
929 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/07/04(木) 04:39:59.89 ID:0gckZWHD0

まどか「いひひひ。そんなわけなんです。あ、ほらほら、座ってください」

マミ「え――あ、うん」

さやか「はい、それじゃあ火を点けて――ハッピーバースデイ・トゥーユー♪ さん、はい!」

まどか「はっぴっばーすでい、とぅーゆー♪ はっぴばーすでいでぃあマミさーん♪」

杏子「ハッピーバースデイ・トゥーユー――ほら、マミ。ろうそくを吹き消して……」

マミ「……うっ、えぐっ」グスッ

さやか「うぇ!? ま、マミさん? なんで泣いて――びっくりさせ過ぎちゃいました?」

杏子「ま、マミ、聞いてくれ! クラッカーはさやかの奴が持ってきて――」

まどか「私は止めたんですけど、さやかちゃんがどうしてもって――」

さやか「待て待て待て待て! あんたらも乗り気だったでしょうが!」

マミ「ううん、ちが、違う、の。私、だって、」


 もう二度と、こんな誕生日は過ごせないと思っていた。

 自分の家で、ケーキを囲んで、バースデイソングを歌ってもらえる。

 そんな普通の誕生日は、あの事故からこっち、ずっと期待していなかった。

 魔法界で出来た友達達とはまた違う、過去にあった普通の、だが得難い日常。





マミ「……ありがとう。私、ずっと、こんな風に皆で楽しく過ごしていきたい!
   いつまで経っても、ずーっと! ずーっと……」






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930 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/07/04(木) 04:40:31.58 ID:0gckZWHD0
 








『――そんなささやかな彼女の願いは、当然の如く叶わなかった』








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931 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/07/04(木) 04:41:07.08 ID:0gckZWHD0

"いつか" "どこか"


 ……なるほど。突然変異体――報告にあったものとは違うようだ。

 意図的に、低く評価したものを伝えられていたのか……?

 やれやれ、これだから感情というものは厄介だ。

 身内だったものを疑心暗鬼に"疑う"なんて行為、僕らには縁がないからね。

 しかし、それなら何らかの対策を講じる必要はあるか――

 下手をすれば、魔法少女システムそのものが崩壊しかねない。



Incubator「それなら一番いいのは――彼らが絶滅してくれることだよね」








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932 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/07/04(木) 04:41:50.75 ID:0gckZWHD0

"いつか" "どこか"


 闇はいつだってある。珍しいものではない。それが如何に巨大なものでも、闇自体は有り触れたものだ。過剰に恐れる必要はない。

 だけど、それを束ねることができる者がいるというのなら、それはとてもとても恐ろしいモノだろう。

 それは確かに存在していた。闇を集め、支配下に置き、それを濃くする者。

 それ自体が底知れぬ深き暗闇でありながら、全ての暗黒の上位に立つ者。即ち――闇の王(ダーク・ロード)。

クィレル「あああああああァァァアアアアアアアアアアアッ!?」

 埃の積もった汚らしい床の上で、一人の男が絶叫しながらのた打ち回っている。

 クィリナス・クィレル。かつてホグワーツで闇の魔術に対する防衛術の教授職にあった彼は、しかし、いまもなお闇に屈服し続けていた。

クィレル「あ、あ、あ……お許しください……お許しください、御主人様。どうか、この哀れな下僕に、お慈悲を――」

 クィレルの卑屈な視線の先にあるのは人影だった。クィレルに痛みを与えている、その当人。

 だがそれでもなお、クィレルの視線に含まれる成分には、畏れと、そして明らかな敬意があった。

ヴォルデモート「慈悲? 慈悲だと? 自らの愚かさを棚に上げて、慈悲が欲しいと抜かすか?」

 ――偉大なる闇の魔法使い、ヴォルデモート。

 それは己の二本の足で地面に立ち、己の腕にローブを通し、己の手でかつて失った杖の代わりとなる、新たな杖を握りしめていた。

 ハリー・ポッターに滅ぼされた、かつての姿――それを完全に取り戻していた。

 その蛇のような視線が、クィレルを射竦める。

クィレル「そ、そのようなことは――」 

ヴォルデモート「この俺様に、汚らしい虚言を吐きかけるか。跪け――クルーシオ!(苦しめ)」

クィレル「ヒギッ――ああああああああああ!」

 再びもだえ苦しむクィレルを見ながら、それで多少は溜飲が下ったとでもいうように、
 闇の帝王は部屋の中で唯一埃をかぶっていない家具である、ソファに腰を預けた。

ヴォルデモート「貴様がもっと使える奴であれば、俺様はこのような昔の力と姿ではなく、完全なる不死を手に入れていたのだ。
          賢者の石さえあれば――」

クィレル「も、申し訳ありません――私は、愚かな若輩で――」

ヴォルデモート「そうだな。クィリナス。愚かで弱いクィリナス・クィレル……だが、お前は忠実だ」

 それまでの態度とは一転して、ヴォルデモートは含むように笑いながら、掲げていた杖を下ろした。

ヴォルデモート「それだけがお前の取り得よ。愚かすぎて、裏切るということも知らん――褒めているのだ、クィリナス。
          バーサ・ジョーキンズを捕え興味深い情報を聞き出せたのも、
          その血からこうして俺様の元の肉体を作り出せたのも、貴様の献身あればのこと……」

クィレル「も――もったいないお言葉……」

ヴォルデモート「もったいない? ああ、違うなクィリナス。ヴォルデモート卿は、仕える者には応える……
          だからこそ、余命幾ばくもないお前を我が秘法で救った。そうであろうが?」

クィレル「は、はい――ご主人様は、私を助けてくださいました!」

 それが心底誇りであるというように、クィレルは胸を張る。

 もっとも、それは誤りだ。霞のような存在だったかつてのヴォルデモートが憑りついた生命は、急速に衰弱する。

 ホグワーツから逃げおおせた後、クィレルが死にかけたのもそれが原因だった。

 これはただのマッチポンプに過ぎない。それに気づきもしない愚かな部下に、ヴォルデモートは嘲笑に近い微笑みを浮かべた。
933 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/07/04(木) 04:42:31.54 ID:0gckZWHD0

ヴォルデモート「そうであろう? お前の働きは見事だ――いまも逃げ隠れしている、かつての部下どもに比べればな。
          だが、もうすぐだ。もうすぐお前以上に忠実で優秀な部下が、ハリー・ポッターを連れて参上する……」

クィレル「……ご主人様、ひとつお尋ねしてもよろしいでしょうか?」

 痛みが引き、どうにか呼吸も整えたクィレルが首を傾げた。

クィレル「ご主人様は、その、以前――ハリー・ポッター、あの小僧めに……」

ヴォルデモート「怯えることはない。クィリナス。そう、俺様は奴に呪いを跳ね返され、見る影もないほど凋落した。
          それは事実だ。だが、それがどうした?」

クィレル「は、はい――その、愚かな私には分からないのです。偉大なご主人様の力が、ただの赤子に通じなかった訳が……」

ヴォルデモート「ふむ……なるほど。お前にしては賢い考えだ。確かに、主の力が赤子以下ともなれば不安にもなろう……」

クィレル「ご、ご主人様! 決してそのような――」

ヴォルデモート「ああー……分かっておる。お前の忠誠を疑うほど、俺様も耄碌はしていない。
          そしてその問いには、お前の忠誠に報いるなら、こう答えるべきだろうな」


ヴォルデモート「――分からぬ、と」


クィレル「ご……ご主人様にもお分かりにならないので?」

ヴォルデモート「ああ、そうだ。己を繕うために嘘はつかぬ……あの小僧めが我が呪法から逃れた手法を特定することは叶わんだ。
          あと一度、直に接触すれば別だろうがな――」

 しかしだ、とヴォルデモートは言葉を続ける。

ヴォルデモート「完全な特定はできぬが……ある程度の予想はついている。おそらく、何らかの旧き魔法だろう。
          それがあの小僧を守護している……そしてその類の魔法は、経年による劣化を防げぬ。
          遅くとも奴が成人になる頃には解けてしまうだろうよ……」


ヴォルデモート「それに、守護の正体が分からぬのも我が部下がハリー・ポッターをここに連れて来るまでよ。
          今度は呪いを跳ね返されるような真似はすまい――じっくりと、確実に殺そう。
          そしてその暁には、かつての死喰い人どもを従え、魔法界を席巻するのだ……」


 やがて来るその甘美な時を予想し、ヴォルデモートはくつくつと笑った。
934 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/07/04(木) 04:43:58.97 ID:0gckZWHD0

 ――全ての運命はヴォルデモートの味方をした。

 "本来"この時点で、ヴォルデモートは、ハリー・ポッターに刻まれた犠牲の印の意味に気づいている筈だった。

 自己犠牲による守護の魔法。それはかつての凋落の原因と、ハリー・ポッターに触れられぬという屈辱を闇の王の心に刻印する筈だった。

 そして、ヴォルデモートはその二つを克服するために、ハリーの血を己の身体に取り入れる。

 それはヴォルデモートの敗北を意味する。守護の魔法を体に取り入れれば、確かにハリーに触れることはできるだろう。

 だが同時に、自身が生きている限り、決してハリーを殺すこともできなくなるのだから。

 しかし、それは起こらない。三年前、まだハリーが一年生の時、ホグワーツの地下で直に接触する機会が得られなかったからだ。


 かつてヴォルデモートが使用していた愛杖は、凋落の現場にいた、ピーター・ペティグリューがその在り処を知っている。

 だが、ペティグリューはいまやアズカバンの中。その在り処を聞き出すことは不可能だ。

 そして、それもヴォルデモートの勝利を後押しする――ハリーとヴォルデモートの杖は兄弟杖であり、
 互いに向け合ったとき、相手に対して正常に作用しなくなる。つまり、この杖の存在もハリーを守るものであった。

 その杖が失われた今、ヴォルデモートは、ハリーに対して正常に死の呪いを掛けることのできる新たな杖を手に入れた。


 最後にハリー・ポッターを守護するのは、かつて赤子だったころの彼に刻みつけられた、ヴォルデモート自身の魂。その欠片。

 だが、それとて完璧な守護ではない。闇の帝王の死の呪いを一度受ければ、容易く破壊されてしまうだろう。


 そう――いまや、ハリー・ポッターは、ヴォルデモートに対する無敵さを失っていた。

 数年後、ハリーを守る犠牲の印が効果を失った後、死の呪いを二度掛ければ、それでハリー・ポッターを完全に殺すことができる。


 無論、ヴォルデモートはその事実を知らない。だが知らずとも、運命はそのように動き始めている。

 廃墟の中で、ヴォルデモートは笑い続ける。やがてくる勝利に。死をも飛び越えるであろう己の栄光に。

 ――だが、その笑いがふと、途切れた。

ヴォルデモート(……なんだ?)

 訝しみ、ヴォルデモートは立ち上がる。

 何者かに、己の名を呼ばれた気がしたのだ――
935 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/07/04(木) 04:44:28.07 ID:0gckZWHD0

"いつか" "どこか"


 "それ"は、怒りと怨嗟を抱きかかえたまま、深い暗闇の底に沈んでいた。

 "それ"は魂だった。おぞましい呪法で分割された、邪悪なる生命の楔。

 "それ"にはかつて、もっときちんとした記憶があった。昏い感情があった。狡猾な思考力があった。

 だが、その大部分は失われていた。強力な忘却術によって、魂と一緒に封じられた、当時の自分のほとんどを削ぎ落とされていた。

 "それ"の名前は、トム・マールヴォロ・リドルという――

(憎い。憎い。憎い憎い憎いにくいにくいニクイニクイニクイ――)

 "それ"からは最早、狡猾な策を練ることの出来る頭脳も、人を誑かす弁舌の才能も失われていた。

 あるのはただ、自分をこうまで辱めた存在に対する恨みの感情だけ。 

(スクイブが、出来損ない如きが、僕に、もっとも偉大な魔法使いであるヴォルデモート卿に、)

 辛酸を、舐めさせた。

 ――認められない。

 そんなものは嘘だ。嘘にしてしまいたい。スリザリンの継承者たる自分が出来損ないに負けるなど、あってはならない。

 だけど、今の自分にはその為に必要な力がない。

 記憶も、思考力も、その大部分が奪われた。

 この日記に残っているのは、その残り滓だ。復讐心と、力への渇望。

 それだけがあのスクイブの忘却術から逃れて、いまもなおトム・リドルという人格を辛うじて成立させている――

(くそくそくそくそくそ! 力が欲しい。もう一度、昔と同じだけの力があれば、もう二度とスクイブに後れを取るなんてことは)

『……力を取り戻したい。それが君の願いかい?』

(――!? 誰だ!)

 自分しかいない筈の暗闇の中に、だが確かに自分以外の声が響き渡る。

『僕が誰かなんていうのは、君にとって些細な問題の筈だ。
 大切なのは、君には願いがあって、僕にはそれを叶える力があるということだ』

(力――)

 それは魅力的な言葉だった。ずっと求めていた言葉だった。

 本来の彼なら、その言葉を怪しんだだろう。声の主を疑っただろう。

 だが今の彼には、そんな余裕も、そして思考力も残されていなかった。

(取り戻せるのか?)

『君が願えば、そうだ。君はかつての力を取り戻せる。僕にはその願いを叶える用意がある。
 君には魂と意思がある。最低限そのふたつが揃っていれば、契約には十分だ』

(ならば――)

 迷うことは、ない。


(叶えろ。僕に力を寄越せ。かつての記憶を、力を僕に与えろ)


『いいだろう。合意の下、確かに契約は成立した。その願いを叶えよう、トム・リドル。
 君の祈りは、エントロピーを――』
936 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/07/04(木) 04:44:55.54 ID:0gckZWHD0
 






 そうして――巴マミの人生において、もっとも幸福だった夏休みは終わりを告げた。









.
937 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/07/04(木) 04:45:21.29 ID:0gckZWHD0

9/1 新学期 キングズ・クロス駅 9と4分の3番線


 ざわざわ ざわざわ


マミ「はぁ。佐倉さん、大丈夫かしら? ふくろう便の使い方は教えたから、もしもの時は手紙をくれるでしょうけど……」

QB「君、家を出てからこっち、そればっかりじゃないか。
   杏子を信用しなよ。彼女、家事に関してはかなり上達しただろう?」

マミ「そうじゃなくて……魔法少女のことよ。魔女にやられたりしないか、心配で……」

QB「その為に夏休み中、グリーフシードを集めてまわったんじゃないか。あれだけあれば魔法も使い放題だ。
   杏子みたいに強力な魔法少女なら、まず普通の魔女には負けないだろう」

マミ「……それなら、少しは安心できるけど……」

QB「というか、安心できなかったらどうするさ。学校を休んで杏子とずっと一緒にいる気かい?
   それは杏子も望まないし、それこそ彼女の精神衛生によくないよ」

マミ「う……」

QB「君が世話焼きしいなのは知ってるけど、でも相手に頼ることも覚えなくちゃ。
   そうでなきゃ、お互い対等な関係を築くなんてことは――」

マミ「わ、分かった! 分かったから! ……はあ。確かに、これからまた学校だしね。
   下手をすると5年生に進級できないかもしれないんだから、気合を入れないと……」

QB「その意気さ。それに、クリスマス休暇には帰れるしね。それまでの辛抱だよ、マミ」

マミ「ええ、そうね……あ、ホグワーツ特急、きたみたい。よぉし、それじゃあ気合を入れて、さあ、一番に乗り込むわよ!」

QB「……この癖は相変わらずなんだ。はあ、前途多難だなぁ……」
938 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/07/04(木) 04:46:21.84 ID:0gckZWHD0

ホグワーツ 大広間前


ハーマイオニー「マミ! こっち、こっちよ!」ピョンピョン

マミ「ハーマイオニーさん、それに皆も! 久しぶりね。元気だった?」

ロン「見ての通りさ。全身ずぶ濡れで寒いし、腹ペコで今にも死にそうってとこ」

ハリー「外、酷い雨だったもんね……ああ、そうだ。マミ、夏休みにケーキ送ってくれてありがとう。
     お陰で飢え死にせずに済んだし、それに美味しかった。マミ、料理上手なんだね」

マミ「そう? 良かった……初めて作るレシピだったから、少し心配だったのだけど」

ハーマイオニー「謙遜することはないわ。マミの料理の腕は十分、自慢していいと思うわよ。
          前に泊まった時御馳走になったご飯も美味しかったし」

ロン「へえ。てことはこの面子でマミの料理食べてないのは僕だけか。じゃあ来年何か持ってきてよ。
    ほんと、腹ペコで料理が出る前に机や皿を齧りかねないよ、今の僕は」

マミ「ふふ、それじゃあ、来年はクッキーか何か作ってこようかしら?
   それはそうと、夏休みにクィディッチのワールドカップを見に行ったんでしょう? どうだったの?」

ロン「それはもう、凄かったさ! お祭りみたいな騒ぎで、お店も凄く出てて……
   一言じゃ言い表せないなぁ。君もくりゃ良かったのに」

ハリー「何より、試合の内容が最高だった。ビクトール・クラムっていうシーカーが凄いんだ。
     あんなに自由に空を飛ぶ人、僕、見たことない――」

ロン「ああ! 凄かったよなぁ。ほら、これ。クラムの人形買ったんだけど、見る?」

クラム人形「……」ギロリ

マミ「わあ、自分で動くのね、この人形……」

QB「夜中に起きた時、枕元に立ってたりしたらホラーだよね、これ」

ハーマイオニー「そうね、素晴らしかったわ……ところで、マミ。新聞は取ってないの?
          ワールドカップの会場で事件が起きたの、もしかして知らない?」

マミ「え、事件って……? なにか危ないことでも起きたの?」

ハーマイオニー「本当に知らないのね……ねえ、やっぱりあなたも日刊預言者新聞を取るべきよ。
          ほんと、いろんなことが書いてあってタメになるし――」

ハリー「あのね、仮面を被った馬鹿な魔法使いの集団が暴れまわったんだよ。僕らの目の前でね。
     他にも色々あったけど……例のあの人の印とか……」

マミ「そんなことが……みんな無事で良かったわね……」

ロン「あの仮面集団の中に、絶対マルフォイの親父がいたぜ。賭けてもいいね。
    まあ、そんな気味の悪い話はやめようぜ。新年度そうそうからさ。もっと明るいニュースにしよう。
    例えば魔法省に就職したパーシーが、どれだけ大鍋の底に魅了されたかとか」

ハーマイオニー「気味の悪い話って、とっても重大なことじゃない、ロン!
          パーシーには失礼だけど、正直、お鍋の底がどれだけ厚いかよりは知っておいた方がいいわ」

ロン「そうかい? パーシーの気合の入れようを見る限り、鍋のせいで世界が滅ぶとしか思えないけどね」

ハーマイオニー「嫌よ、そんな世界……ところで、何だか列の進みが遅いわね。何かトラブルでも――」
939 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/07/04(木) 04:46:55.52 ID:0gckZWHD0


「きゃー!」「やめろ! ただでさえ濡れ鼠なのに――うわー!」「逃げろ逃げろ! いつも以上に荒れてるぞ!」


マミ「え、何!? なんだか、前の方から悲鳴が――キュゥべえ、ごー!」

QB「嫌だよ! 前にも似たようなことやって踏みつぶされたじゃないか!」

ハリー「天井付近から、何かが――ピーブズ!」


ピーブズ「ひゃははは! なぁにがパーティだ! 御馳走だ!
      みーんな濡れっちまえ! おらああああああああああ!」


 ぱしゃーん! ぱしゃーん!


ロン「あんにゃろ、水風船で爆撃してやがる! どっからあんなもの調達してきたんだ!」

QB「フィルチの部屋にある没収品の棚とかじゃない?」

ハーマイオニー「言ってる場合!? とにかく、早く大広間に――」


ピーブズ「ほーらほーら、こっちの水は甘いぞぉぉおおおお!」ブンッ


マミ「わわっ、こっちに――フリペンド!(撃て)」パンッ
940 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/07/04(木) 04:47:26.07 ID:0gckZWHD0

 バシャーン!


ピーブズ「ぶへっ!」

マミ「わぷっ!」


ロン「ああ、相打ちだ。そりゃ水の詰まった風船に呪いを撃ちこんだらこうなるよね。
    浮遊呪文とかにしときゃ良かったのに」

ハリー「間に合って、しかも直撃させただけ凄いと思うけど……マミってあんなに杖捌き上手だったっけ」

QB(……夏休み中、ひたすら実戦訓練してたようなものだしね)

ハーマイオニー「ちょっと、びしょ濡れじゃない。大丈夫?」

マミ「うー……なにこの水、べとべとする……」ポタポタ

ロン「この甘い臭いは……砂糖水みたいだね。ご愁傷様。まあ、ピーブズのやることだ。
   臭い液とかじゃなかった分だけ幸運かもしれないけど」

マミ「顔洗いたい……服も着替えたい……乾いたらもっとべたべたしそう……」

QB「とりあえずタオルで拭いたら? トランクの中に入れて来たろう、確か」

マミ「そうね。えーっと、結構奥の方に……」パカッ

ピーブズ「……おい小娘ぇ」ニュッ

マミ「ひゃっ!?」

ハーマイオニー「ピーブズ! これ以上なにかやるようなら先生を呼ぶわよ!」

ピーブズ「なーんにもしないよ! ほら、仲直りだ!」スッ

マミ「え? え?」

ピーブズ「なんだよ。最近の学生は礼儀も習ってないのか?」

ハリー「手を出して……握手?」

ロン「おったまげー……あのピーブズがあんな友好的な態度を……」

マミ「あ、あの、えーと、それじゃあ、その……」スッ

ピーブズ「ああ、これで仲直りだ。目が覚めたよ。正義の心に目覚めた。もう悪いポルターガイストじゃ――」


 バシャーン!


マミ「ひゃぷっ!?」

ピーブズ「なわけないだろバァァアアアアアカ! あーはっはっはっは――!」ヒューン

ハーマイオニー「あ、こらっ、ピーブズ! 待ちなさい! マクゴナガル先生に言いつけてやるんだから――!」

ハリー「うわー……トランクの中に水爆弾を投げ込んでいったよ。おまけに、やっぱり中は砂糖水だ」

ロン「中身、全滅だね。まあ、変だとは思ったんだ。
   ピーブズが敬意を払うのって、スリザリンの血みどろ男爵くらいだし……マミ、平気?」
941 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/07/04(木) 04:48:30.12 ID:0gckZWHD0

大広間


マミ「へっくしゅ! うう……寒い。バタービール飲みたい……」

ハーマイオニー「大丈夫? ほら、タオルでよく頭を拭いて……あと魔法でグラスに火を入れたから、これでも抱えてなさい」

マミ「ああ、あったかい……ありがとう、ハーマイオニーさん」

ハリー「にしても、ピーブズの奴、今日はちょっと度が過ぎてやしないかい?」

ロン「確かにな。先生呼ぶぞって脅せば、大抵は捨て台詞吐きながらどっかいくのに」

ニック「ああ、それはですね」ニュッ

マミ「ひゃう!?」ツルッ

QB「……っと、ぎりぎりセーフだね。マミ、火の入ったグラスを落とすなんて、小火でも出す気かい?」

マミ「ああ、ありがとうキュゥべえ……ニックさんも、テーブルから首出すのはいい加減に……」

ロン「そろそろ慣れなよ、君も」

ニック「いや、申し訳ない。新入生以外で私を怖がってくれる生徒は少なくて……こほん。
     それよりピーブズですがね、少し前に、この祝宴に顔を出したいと駄々をこねまして」

ハリー「ああ、納得。その許可が出なくて荒れてたんだ」

ニック「然り。血まみれ男爵が譲りませんで……あれも男爵には逆らえませんからな」

マミ「それで私は砂糖水塗れってことね……
   はぁ、まあずっと恨んでても仕方ないし、とりあえずご飯でも食べて気持ちを切り替えましょ」ガチャ
942 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/07/04(木) 04:48:56.66 ID:0gckZWHD0

ハーマイオニー「そうね。ほら、ポタージュでも飲めば、体も温まるし――」

ニック「その料理が出るだけでも幸運だったのですよ。ピーブズは厨房でも大暴れしましてね。
     屋敷しもべ妖精達がすっかり怯えてしまって――」

ハーマイオニー「……屋敷しもべ妖精?」スッ


マミ「あ、ハーマイオニーさん、それ私のスープ皿……か、顔が怖い……
   い、いいわ。スープ皿くらい……私、パイを食べてるから……」


ハーマイオニー「ニック、ホグワーツにも屋敷しもべ妖精がいるの?」

ニック「ええ。というか、英国で最も多くのしもべ妖精が働いている場所ですよ、ここは。
     自身の存在を、仕えるべき皆さんに気づかせない、とても質のいい屋敷しもべが大勢いて――」

ハーマイオニー「仕えるべき? そんな、彼らを奴隷みたいに――」スッ


マミ「あっ、あっ、私のミートパイが……ね、ねえ、ハーマイオニーさん。食べないなら、それ返して――何でもないわ。
   うん、お茶。お茶とか飲んでた方が、体も温まるし……」


ニック「彼らは屋敷しもべですからして。奴隷と違うのは、彼らが心からそれを望んでいるということですな」

ハーマイオニー「それじゃ、なに? 本当に彼らは奴隷みたいに働かされているってこと?」スッ


マミ「……お茶のカップまで……ちょっと、ねえ。ハーマイオニーさん、いい加減に」

ハーマイオニー「――奴隷労働よ!」ガタッ

マミ「きゃんっ!」

ハーマイオニー「ねえマミ、マミなら分かってくれるわよね!?
          ここにいる方々は、ちっちゃな彼らを足蹴にして働かせることになーんの疑問も持っていないようだけど!」

マミ「え、えーと、その……とりあえず、お皿を返してくれると……」

ハーマイオニー「お皿? そうね、こんな皿突っ返してやりましょう! ハンストよ、マミ!」



QB「彼女、どうしたの?」

ハリー「あー、まあ、例のクィディッチ・ワールドカップの時に色々あってさ。
     それ以来、屋敷しもべ妖精のことになるとあんな感じで……」

QB「屋敷しもべ……確か、大きな屋敷に住みついて、そこの家主の為に働いてくれる魔法生物のことだっけ?」

ロン「そ。連中は好きで働いてるんだ。ハンストしたって、屋敷しもべ妖精が給料を欲しがるようにはならない。
   そういう生き物なんだよ、屋敷しもべって」
943 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/07/04(木) 04:49:24.77 ID:0gckZWHD0

ダンブルドア「さて、デザートも平らげたところで、そろそろ今年度の話をしようかの」

ハーマイオニー「……ふんっ」

マミ(食べ損ねた……)グゥー

ダンブルドア「細々とした規則の追加はおいおいするとして、とりあえず大きなニュースは二つじゃ。
        まず、闇の魔術に対する防衛術の、新しい先生のことじゃが――ふむ。少しばかり到着が遅れているようじゃのう」

ハリー「そういえば、先生たちの席に空席があるね」

ロン「とうとう防衛術の先生になるって人がいなくなったのかと思ってたよ。誰がやったって一年以上続かないんだもの。
   呪われてるってもっぱらの噂だぜ」

ハリー「でも、そしたらスネイプが立候補するよ、きっと」

ロン「あー、そっか……案外、続かないのはスネイプの呪いかもな。
    去年のルーピン先生だって、あいつが口を『滑らした』せいで辞めることになったんだし」

ハリー「だとしたら、今年の先生はスネイプに呪詛返し出来るくらい強烈なのを頼みたいね――」


 ギィィィイイイ……


マミ「大広間の扉が開いた? 誰かが、入って……っ!」

ダンブルドア「やあ、アラスター。丁度いま、君の話をしていたところでの」

ムーディ「……」
944 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/07/04(木) 04:49:53.87 ID:0gckZWHD0

ダンブルドア「紹介しよう。ムーディ先生じゃ。今年度いっぱい、闇の魔術に対する防衛術の教授職を引き受けてくださった」

ハリー「ムーディって……マッド-アイ・ムーディ!? ロン、それって君のパパが今朝助けに行った……」

ロン「ああうん、きっとそうだ。自宅の庭に入ってきた誰かに、大砲みたいなゴミバケツをけしかけたって。
    ジョージはただの狂人だって言ってたけど、なるほど、あの顔をみたら納得だね」

マミ「顔中傷だらけで、足は義足だし……目も片方は義眼よね。大きさが左右で不揃いだもの。
   ハリーくん達はあの人のこと知ってるの?」

ハリー「うん。昔、凄腕の闇祓い――ええと、闇の魔法使いを捕まえる役職だったんだって。
     アズカバンの独房の半分を埋めたとかなんとか……」

ロン「でも今はもう耄碌して、そこら中に見える幻覚相手に呪いを掛けまくる危険人物だとも聞いたよ。
    ハリー、君が強烈な先生が欲しいなんていうから!」

マミ「そ、そんなに怖い先生なの?」

ハーマイオニー「流石に、噂に尾ひれがついてると思うわ。だってそんな危ない人、ダンブルドアが雇うわけ」


ダンブルドア「ささ、ムーディ。嵐の中大変じゃっただろう。お茶をどうかね? 蜂蜜を垂らすと身体がよく温まる――」

ムーディ「ステューピファイ!(麻痺せよ)」


 ズバーン!


ハーマイオニー「」

ロン「えーと、危ない人がなんだって、ハーマイオニー?」

ハリー「ダンブルドアに、攻撃した……」

マクゴナガル「ムーディ! 一体何を」

ムーディ「ふむ。こやつがダンブルドアなら、わしが自分で安全を確認したもの以外は飲食せんと知っている筈なのでな。
      形式として尋ねただけかもしれんが、何にせよ気絶させてから調べた方が安全だ」

ダンブルドア「おや、それでは大人しく気絶していた方がよかったかの?」

ムーディ「いや、いまのを無言呪文で防げるのはお前くらいのものだろうよ。
      死喰い人の残党どもが、ダンブルドアに化けてわしを殺そうとしている、という疑いは晴れた」

マミ「……私、今年の防衛術、大丈夫かしら?  単位貰えるといいけど……」

ロン「単位だって? 授業が終わった時、五体満足だったら御の字だろうさ」
945 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/07/04(木) 04:50:25.36 ID:0gckZWHD0

ダンブルドア「さて、話を戻そうかの。二つ目のニュースじゃが、これは更に光栄なことじゃ。
        ここ百年以上行われていない、素晴らしく心躍るイベントを、我が校の主催で行うことになった」

ダンブルドア「今年度、我らがホグワーツにおいて、三大魔法学校対抗試合を行うことをここに宣言する!」


 ざわざわ ざわざわ


フレッド「おいおいおい! マジかマジかマジか! そりゃ光栄なんてもんじゃないぜ。超光栄だ!」

ジョージ「冗談なんて言いませんよね校長!」

ダンブルドア「無論、冗談ではないよ。十月の終わりには参加校であるボーバトンとダームストラングも到着するしのう。
        そう、三大魔法学校対抗試合――トライ・ウィザード・トーナメント!
         三つの学校からそれぞれひとり選出された代表選手が、三つの種目で競い合う親善試合じゃ」

ダンブルドア「かつては五年ごとに行われていたのじゃが、競技中に夥しい死者が出てからは、
        今日に至るまで再開の目途が立たなかったのじゃよ。
         しかし此度、魔法省の全面協力もあり、久方ぶりの開催に漕ぎ着けたというわけじゃ」

ハーマイオニー「夥しい死者……?」

マミ「……親善試合なのに?」

ロン「ちょっとくらいスリルがないとつまらないじゃないか。
    それに、再開するっていうんだから、きっと安全対策もばっちりだよ」

ダンブルドア「では具体的なエントリーの話に移るが、選手に立候補する者には年齢制限が設けられる。
       選考の日、つまりハロウィーンじゃが、その日に17歳以上である生徒のみが、立候補の権利を得るというわけじゃな」


ジョージ「……マジかよ。俺たち、半年もすりゃ17なんだぜ? それでも参加できないってか」

フレッド「諦めるもんか。絶対に出し抜いてやる……」


ハリー「フレッド達、なんか企んでる顔してるね……」

ロン「そりゃ、あの二人だったら絶対に出ようとするだろうさ。
   何かいい方法が見つかったら、僕もエントリーしてみようかな……」


ダンブルドア「予め言っておくが、選手を決める審査員は公明正大じゃ。
        騙そうとして、無駄な時間を過ごさないように、と忠告しておこうかの。
        さて、それでは次に――」



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946 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/07/04(木) 04:50:58.96 ID:0gckZWHD0

夕食後 グリフィンドール女子寮


パーバティ「賞金一千ガリオンかぁ……確かに魅力的ではあるけれど、私達4年生には無理よね。
       そもそも参加できないし」

ラベンダー「マミ、あなた出てみたら? 大抵の魔法生物なら吹っ飛ばせちゃうんじゃないの?」

マミ「ラベンダーさん、私をなんだと思って――た、確かに失敗して何かを壊しちゃったりすることは多いけど……
   でも無理よ。仮に年齢制限がなかったとしても、他の魔法はからっきしだもの」

パーバティ「具体的にどんな競技で争うのかは分からないものね……あ、そうだ。
        ねえ、ハーマイオニー。あなたなら、昔どんな競技が行われたか知って――」

ハーマイオニー「奴隷労働……奴隷労働……解放戦線……」ブツブツ

パーバティ「……あー……ごめんなさい、なんでもないわ。そっとしておいた方が良さそうね」

ラベンダー「寮に戻ってきてからずっとこの調子だもの。ねえ、彼女、何かあったの?」

マミ「さあ……どうも、屋敷しもべ妖精に関係があるみたいだけど、詳しくは……」

QB「夏休み中に、彼女の価値観を変えるような出来事があったみたいだよ。ハリーが言ってた」

ラベンダー「ふーん……まあなんでもいいけど。私たちは観客として楽しみましょ。
       それより、そう、夏休みよ! マミ、なにか面白いことあった?」

マミ「そうね、とっても楽しかったわ。ずっと探してた、昔のお友達と会えて……」

ラベンダー「ずっと探してた……? もしかして、その友達って男の子だったり?」

マミ「ち、違うわよ! 女の子! 全く、美樹さんもブラウンさんも、何で全部そういう方向に……!」

ラベンダー「なぁんだ。マミもようやく色気づいたのかと思ったのに……」

パーバティ「体の方はあなたよりも成熟してるけどね、ラベンダー」

ラベンダー「いや、だって――あれは反則でしょ?」

マミ「? あの、なんのこと?」

ラベンダー「ああ、いいのよ。マミはそのままでいて……それより寒くない? 良かったら私の分の毛布も使う?」

マミ「大丈夫よ、湯たんぽもあるし、キュゥべえ抱いて寝るから……明日になれば、洗濯した着替えも乾くし」

パーバティ「全滅だったものね、マミのトランクの中身……卸したてのドレスローブも台無しだったし」

マミ「ああ、クリスマスの日にダンスパーティがあるっていう……でも今年のクリスマス休暇は家に帰るつもりだったし……」

ラベンダー「……パーティを放って家に帰る? マミ、やっぱりあなた彼氏が――」

マミ「いないったら」

パーバティ「残念ね。マミのダンスパートナーを募ったら、引く手数多だと思うのだけど」

ラベンダー「まだ先のことだけど、帰ってきたらどんなパーティだったかは教えてあげるわね」

マミ「ええ。それじゃ、お休み……ほら、キュゥべえ。こっちきなさい」

QB「いいけど……寝返りうって潰さないでおくれよ?」
947 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/07/04(木) 04:51:42.09 ID:0gckZWHD0

翌朝


ラベンダー「Zzzz....」

パーバティ「むにゃ……むぅ……」


QB「」

マミ「キュゥべえ……ごめんなさい。でも、しょうがなかったの。だって寒かったんだもの。
   そりゃあ抱きしめる腕にも力が入って当然ってものよね。でしょ?」

QB「」

マミ「反論がないってことは、同意してくれたってことよね。
   とりあえず復活するまでクルックシャンクスに面倒見ておいて貰いましょう」

クルシャン「にゃーお」ジュルリ

マミ「お願いね……さ、着替え着替え。いつまでもこのままじゃ、風邪ひいちゃうし……
   って、あら? 洗濯物が全部畳んでおいてある。これも屋敷しもべ妖精の……?」

ハーマイオニー「ええ、そうよ。彼らが夜中に置いて行ったんだわ」

マミ「あ、ハーマイオニーさん。おはよう、早いのね? ……いや、ちょっと待って。
   目が赤い……もしかして、寝てないの?」

ハーマイオニー「彼らが仕事をするのは、主に夜中だって聞いたから……でもお陰で、直接目にすることができたわ!
          彼らは人目につかないところで強制的に働かされてるのよ。誰にも認められず!
          およそ、文化的な社会で許されることだとは思えないわ! 奴隷労働! マミもそう思うわよね!?」

マミ「え? えーと……そう、ね? でも、あの、そしたらその後寝れば良かったんじゃ……」

ハーマイオニー「……それは……そうだけど。でもね、その……」

 ぐぅ〜

ハーマイオニー「……」

マミ「……ああ、やっぱり……私もお腹減って起きちゃったんだもの。
   ねえ、ハーマイオニーさん。やっぱりご飯を食べないっていうのは無茶だと思うわ」

ハーマイオニー「……ええ、そうね。確かにそうだわ。菜食主義者が牛肉を食べなくても、屠殺される牛が減るわけじゃないし。
          だからね、私は一晩考えたのよ、マミ」

マミ「?」

ハーマイオニー「必要なのは、もっと抜本的な活動なの。まずは周囲の目から変えていかないと……
          マミ、さっきあなた、私の意見に賛同してくれるっていったわよね?」

マミ「え? あー……言った、かしら? お腹が減ってて、ちょっと記憶が」

ハーマイオニー「……」ジーッ

マミ「あの、そのぅ……」

ハーマイオニー「……言ったわよね?」ニッコリ

マミ「……は、はい、言いました……」
948 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/07/04(木) 04:52:09.91 ID:0gckZWHD0

数日後 グリフィンドール談話室


ロン「……で、この反吐(スピュー)って書いてあるバッジがどうしたって?
   スリザリンの連中にくっつけてまわるっていうんなら手伝わないこともないけど」

ハーマイオニー「続けて読まないで! S・P・E・W! エスピーイーダブリュー!
          しもべ妖精福祉振興協会の略! なんだったら正式名称の方で呼んでもいいわ!」

ロン「遠慮しとくよ、舌を噛みそうだし……にしても、そのなんたら協会って聞いたことないなぁ。ハリー、君は?」

ハリー「初耳だよ。まあ、僕はラジオも新聞もとってないから、当たり前だけど」

ハーマイオニー「大丈夫! 知らなくても不安になることないわ! だってついさっき、私が発足したんですもの」

ロン「へえ、そうかい。じゃあ君が会長なんだね。いきなり大出世じゃないか。きっとパーシーも羨むだろうさ」

ハリー「っていうか、他にもメンバーっているの?」

ハーマイオニー「まだ五人よ。これから増やしていくつもり。がんばりましょうね?」

ハリー「……もしかして、それって僕たちも数に入ってるんじゃ」

ハーマイオニー「? 当り前じゃない。だからバッジあげたでしょ?」

ロン「驚いたな――いや、勝手にメンバーに入れられてることもそうだけど、
   僕らの他にも入った奴がいるらしいってことにね」

ハーマイオニー「残りの二人はマミとキュゥべえよ。快く入会してくれたわ。ほら、いまもあそこで看板持って立ってるでしょ?」


マミ「……うぅ」グスッ

『しもべ妖精への虐待を阻止しましょう! 彼らは"人たる存在"と定義すべきである!
 賛同してくれる方はハーマイオニー・グレンジャー迄 ※入会金、2シックルより』


ハーマイオニー「精力的に活動に取り組んでくれて、会長として非常に鼻が高いわ。
          まあでも、普通に考えれば当たり前なのよ。彼らを無休無給で働かせるなんて言語道断――」

ロン「"快く"、"精力的"にねぇ……僕にはそう見えないけどなぁ」

ハリー「ねえ、看板に描いてある……えーと……あの絵は何?」

ハーマイオニー「何って、見ての通りよ。つまり"権利を求める屋敷しもべ妖精の図"ね」

ロン「ああ、あれしもべ妖精だったのかい。僕ぁてっきり"入会しないとこの怪物をけしかけます"って脅しなのかと」

ハリー「……とりあえず、苦しんでますっていうのはよく伝わってくる絵だと思うよ。
     あれを見て入会してきた人がいたら、絶対関わり合いになりたくないけど」

QB「いや、そんなに悪いことばかりでもないんだよ」ピョイッ

ロン「ああ、キュゥべえ。君もあの看板の小さいの背負ってるのか。で、悪いことばっかじゃないって?」

QB「うん。これを背負ってると、あの猫が怯えて近づいてこないんだ」

クルシャン「フーーーーーッ!」

ハリー「うわあ、凄い威嚇してる……バッジよりも、こっちをお守りとして売った方がいいんじゃない?」

ロン「ナイスアイディア。吸血鬼も近寄らなそうだもんな」

ハーマイオニー「あなた達、私の看板に文句があるならはっきり言いなさい!」
949 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/07/04(木) 04:52:40.40 ID:0gckZWHD0

昼食後 玄関ホール


ハーマイオニー「ですから、私たちは彼らに感謝すべきなのです!
          小さな彼らは毎晩、私たちのベッドを整え、校舎の隅々まで掃除してくれています!
          しもべ妖精解放には、皆さんの力が――」

マミ「……バッジ、買ってくださーい……」ボソボソ

ハーマイオニー「聞こえないわよ、マミ!」

マミ「うううううう! ご協力お願いしまーす! バッジのお金はポスター作りなどに使う予定で――!」


「なんだあれ」「しもべはしもべだろ」「ていうか、なんだあの看板……」「看板が怖い!」「見るな、呪われるぞ――」


ロン「おーおー、頑張ってるなぁ。完全に見世物になってるけど」

ハリー「マミも大変だね。もう半泣きでやけくそじゃないか」

ロン「彼女もそろそろ断るってことを覚えた方がいいな。じゃないとハーマイオニーとは付き合ってられないよ」

ハリー「ハーマイオニー、一度こうと決めたら中々曲げないからね……
     僕らも手伝った方がいいかな? あとで嫌味のひとつでも言われかねないし」

ロン「ひとつで済めばいいけどな。ま、大丈夫だろ。なにせ広報のマミと違って、僕は会計らしいし。
   あのバッジを買おうなんていう奇妙な輩が現れなければ、仕事はないも同然さ」

ハリー「書記の僕はどうすればいいと思う?」

ロン「今年の終わりまでの日記を用意して、全部のページに"今日も売れませんでした"って書いとけば?
   確かシェーマスが自動羽ペン持ってたから借りに行こうか」

ハリー「いい考えかもね……って、ロン。見て、マルフォイの奴!」
950 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/07/04(木) 04:53:06.65 ID:0gckZWHD0

ドラコ「おやおや、何をやってるかと思えば、グレンジャー。同類相憐れむって奴かな?
    君ときたら、前まで僕の家にいたしもべに顔がそっくりだからねぇ。もしかしたら親戚かい?」

ハーマイオニー「邪魔するならどこかに行って貰える?
          あなたに可哀想な彼らのことを理解できるとは思えないし、目も悪いようだしね」

ドラコ「ふん、頭でっかちが。先生に贔屓されてちょっといい成績を取ってるからって生意気なんだよ、知ったかぶり。
    それと、その不気味な看板をこっちに向けるな!」

ハーマイオニー「不気味? 本格的に目が節穴のようね。この可愛い小人妖精のどこが不気味なのよ!」

マミ「そ、そうよ。この看板、私とハーマイオニーさんが一生懸命作ったんだから! ぶ、不気味なわけ……」

ドラコ「じゃあトモエは何で頑なに看板を視界に入れようとしないんだよ! しばらくにらめっこしてみろ!」

ハーマイオニー「看板を見て彼らの窮状を知るべきなのは、私たち以外のみんなよ! マミはもう十分に知ってるからいいの!
          しもべ妖精解放の為なら、彼女は尻尾爆発スクリュートの潜む湖にダイブすることも厭わないわ!」

マミ「え? あ、あの、尻尾爆発スクリュートって、何――?」

ドラコ「言ったなグレンジャー!? 見てろ、次の魔法生物学の時間に一匹ちょろまかして持ってきてやる!
    全身刺されまくって、噛み千切られるがいいさ!」

マミ「刺すの!? 噛むの!?」

ハーマイオニー「望むところよ! 彼女の熱意は、スクリュートの尻尾から出る火花よりも熱いわ!
          それより、あれを持ってくるっていうんなら精々あなたの方こそ毒にやられないことね!」

マミ「火を噴く挙句、毒も持ってるのね……!?」

ハーマイオニー「大丈夫よ、マミ。多分、今のサイズなら即死はしない筈――むぐっ!?」

ロン「落ち着けよ、ハーマイオニー。頭に血が上ってるぞ」

ハリー「こんな奴相手にすることないよ。さ、行こう。次は防衛術の授業だ」

マミ「ああ、ハリーくん、ロンくん……助かった……」

ハーマイオニー「むー! むー!」

ドラコ「おいおい、逃げるのかい? 友達思いなことで……いや、君たちもしもべ妖精思いなのかな?
    特にウィーズリー、君の家族はしもべの着てる服が羨ましく思えるような恰好しかできないだろうしね」

ロン「……っ」

ハリー「黙れ、マルフォイ。お前の家族なんか、スクリュートそっくりじゃないか」

ドラコ「……なんだと?」ピクッ

ハリー「いや、スクリュート以下かな。あれはまだ門番くらいにならなるだろうけど、君の家族はそうじゃないだろうし。
     周りに害をまき散らすだけだ。君はそれの二乗だけどね」

ドラコ「……父上と母上を、侮辱するな、ポッター……!」

ハリー「先に侮辱したのはどっちだ? されて嫌なことはするもんじゃない。ほら、行こう、ロン――」クルッ

ドラコ「……」スッ


 ばーん!


ハリー「っ! こいつ、後ろから!」

ドラコ「ちっ、外したか。なら、次の呪いを……!」
951 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/07/04(木) 04:53:34.93 ID:0gckZWHD0

ムーディ「……若造、そいつは卑怯な行為だ」


 ばーん!


ドラコ「へ!? うわああああああああ!」ポンッ

ハリー「マルフォイが……」

ロン「イタチになっちまった!」

白鼬「チチチチッ!? チチッ!」

ムーディ「背後から襲うなんてのはな、まともな奴のやることじゃあない。
      お前も魔法使いの端くれなら正面から杖で挑め。こんな風にな。ディセンド(落ちろ)」

白鼬「ヂィ――っ!?」ビッタンビッタン

ムーディ「痛いか? 苦しいか? 卑怯者にはふさわしい結果だが、嫌なもんだろう?
      いいか、こんなこと、二度とやるんじゃない……」

ハーマイオニー「……マルフォイが、なんども跳ねて……」

マミ「さ、さすがに止めた方がいいんじゃ……」

マクゴナガル「――ムーディ! あなたは一体何をなさっているのですか!?」

マミ「ああ、マクゴナガル先生!」

ムーディ「躾だ。愚か者の餓鬼にはこいつが一番効く」

マクゴナガル「では、それは生徒なのですか……? なんてことを! フィニート!(終われ)」


 ぽんっ


ドラコ「うう……」

マクゴナガル「変身術を懲罰に使うなんて! ムーディ、そんなこと、本校では絶対に有り得てはならないことです!
         その件については、赴任初日にダンブルドアが再三お話しした筈ですが?」

ムーディ「ふむ。そんな話も聞いた気がするな。分かった。こやつの寮監に話をすればいいのだろう?
      ほら、立て、小僧」

ドラコ「……っ」

マクゴナガル「……ムーディ。ドラコはスリザリンの寮生です。ですので、これ以上は私から言うべきではないでしょう。
         ですが、覚えておいてください。"もしも"私の、グリフィンドールの寮生に同じことをすれば――」

ムーディ「すれば?」

マクゴナガル「次にイタチになって跳ねまわるのは貴方の方でしょうね、ムーディ。
         貴方の杖捌きが、私より数段上だったとしてもです」

ムーディ「……ふん、分かったさ。そう凄むな。
      わしとて、あのミネルバ・マクゴナガルより数段上などと自惚れるつもりはないよ」

マクゴナガル「……分かってくださればいいのです。教師同士で争うことの愚かしさは、私も理解していますから。
         さ、皆さんは次の授業へ向かいなさい。見世物ではありませんよ!」


ロン「……おっどろきー。マッド-アイ・ムーディの噂は聞いてたけど、マジでありゃマッドだな。
    あんな形相のマクゴナガル先生に睨まれたら、僕なら即・土下座するね」

ハリー「挑発しといてなんだけど、まさかあそこまでやるとは思わなかったよ……」

ロン「ああ。でも最高の光景だったよな。マルフォイがまるでクァッフルみたいに弾みまくってさ」

ハーマイオニー「お気楽なご意見をお持ちのようだけど、次はあの先生の授業だって分かってるのかしら?」

ロン「……あー、まあ。大丈夫さ。だってマクゴナガル先生がもうやるなって釘を刺してたし……
    大丈夫だよね?」

ハーマイオニー「知らないわよ。でもまあ、下手に攻撃するようなそぶりを見せなければ多分……」

マミ「じゃ、じゃあ、もしも魔法を失敗して、爆発させたりしちゃったら――」ガタガタ

ハリー「大丈夫だよ。それに、ほら。最初から実技をやるなんて限らないじゃないか」
952 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/07/04(木) 04:54:10.13 ID:0gckZWHD0

闇の魔術に対する防衛術 教室


ムーディ「教科書はしまえ。そんな物は使わん」

マミ「」ガタガタ

ハーマイオニー「平気よ、マミ。平気だってば! ほら、ちゃんと鞄に教科書をしまいなさい!」

マミ「て、手が震えて留め口が……」

ムーディ「ふん。トモエ、とか言ったな? お前のことは前任のルーピン先生や、他の先生方からも聞いておる」

マミ「ひゃ、ひゃい!」

ムーディ「……そう震えるな。別に、わしはお前らを粉々にするためにきたわけじゃない。
      教える為に来たんだ。別に失敗したからといって杖で罰するような真似はせんさ」ニィッ

マミ(あ――わ、笑った?)

ムーディ「闇の魔術に対するもっとも基本的な防衛の方法は、闇を過剰に恐れんようにするということだ。
      恐れるな。恐怖は隙となり闇につけこまれ、簡単な呪文でさえ唱えられんようになる。
      今のお前のようにだ、トモエ」

マミ「は、――はい。分かりました……」ビクビク

ムーディ「……ふむ、なるほどな。さて、本題に入るぞ。さっきも言ったが、闇への恐れを無くすには、闇を知ることだ。
      真っ暗な中を歩くにしても、その道をよく知っとれば何かにぶつかることもない。
      もっとも、闇の魔法使いの馬鹿どもは知っとるつもりになって、その道の深みに嵌るのだがな」

ムーディ「いいか。これからわしが教えるのは闇の魔術の深奥だ。敵が繰り出すであろう手練手管だ。
      だが心に刻め。闇を知り、闇への恐怖を無くしても、決して闇を侮ってはならん。
      油断大敵! まさにそうだ。闇を知り尽くしても、奴らが危険なことには変わりない……」

ネビル「……」ゴクリ

ロン(……やっぱ本職は迫力が違うな)

ハリー(誰も話してないや……流石にムーディの前では内職する気にもならないだろうけど)
953 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/07/04(木) 04:54:38.32 ID:0gckZWHD0


ムーディ「さて、魔法界では、人に向けて使用するだけで厳罰に処される呪文が三つある。
      分かるものはいるか? ――よし、ウィーズリー答えてみろ」

ロン「え、えーと……確か、"服従の呪文"?」

ムーディ「正解だ。そいつは最も厄介な呪文だ。ある意味では、他の二つの呪文よりもな。
      実演してやろう。見たい者は近くに寄れ」コトン


クモ「……」カサカサ


ロン「うぇー! 瓶詰のクモじゃないか!」

ムーディ「クモが嫌いかウィーズリー? 安心しろ、別にお前を襲ったりはせん――少なくとも、これからはな」


ムーディ「インペリオ!(服従せよ)」


クモ「……!」ピョコッ


ハリー「……クモが! クモが二足歩行してる!」

ムーディ「歩くだけじゃないぞ。ほら、タップダンスだ! ワルツ、ブルース、タンゴ!」

クモ「Hei! HO! HO! HO!」

ロン「凄いや! 普段からこれだけ愉快な奴なら、僕だって嫌ったりしないのに」

ムーディ「その言葉は、そのまま自分に帰ってくるぞウィーズリー。
      わしがお前らに同じことをしても、まだ愉快愉快と言っていられるか?」

ロン「え、いや、それは……」

ムーディ「服従の呪文! こいつの一番厄介なところは、だ。
      本当にこの呪文で動かされているのか、それともそうでないのかの判別ができんということにある」

ハリー「判別できない……?」

ムーディ「そうだ。真実薬に自白呪文、その他あらゆる方法を用いても、"服従"させられていたかどうかは分からん。
      何故なら、この呪文は被術者に"本心からそうしたい"と思わせる呪文だからだ」

ムーディ「他人に自分の全てを握られるということが、どれほど恐ろしいことか!
      こいつと戦うのは一苦労だぞ。その方法もいずれ教えるがな。座れ、ウィーズリー」

ロン「……」ガタッ
954 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/07/04(木) 04:55:06.20 ID:0gckZWHD0

ムーディ「さて、次だ。他のふたつを知っとるものは?」

ネビル「……」スッ

マミ「……ロングボトムくん?」

ムーディ「ロングボトム? ……なるほど。では、ロングボトム。答えて見せろ」

ネビル「……ひとつだけ――"磔の呪文"」

ムーディ「……そうだ、"磔の呪文"。服従の呪文が最も厄介な魔法なら、こいつは最も残酷な魔法だ」


ムーディ「さて、今度は見やすいように大きくするぞ。エンゴージオ!(肥大せよ)」


クモ「……」ムクムク


ロン「勘弁してくれ……!」ガタッ

ムーディ「目を逸らすなウィーズリー! 他の者もだ! しっかりと刻み付けろ!」
      

ムーディ「クルーシオ!(苦しめ)」


クモ「――キィイイイイイイイイイイイイイ!」


ハリー「っ! クモが、鳴いた……? いや、机を思いっきり引っ掻いてるのか……」

ロン「み、見たくない……けど……」

ネビル「っ、っ、っ!」

マミ「……ロングボトムくん? ねえ、どうしたの!? ロングボトムくん!」

ハーマイオニー「っ、やめて! もう、やめてください!」


ムーディ「……レデュシオ(縮め)。クモを使ったのは、奴らに声帯がないからだ。
      悲鳴をあげる生物にこの呪文を使うと、慣れん者はしばらく悪夢に悩まされることになる」

ネビル「っ、はぁっ……」ガタッ

マミ「ロングボトムくん、大丈夫? 酷い顔色……」

ムーディ「目を逸らさなかったな、ロングボトム。素晴らしい……才能だ。グリフィンドールに相応しいな。
      磔の呪文! こいつは苦痛だけを相手に与える。肉体を傷つけず、精神だけを蝕む呪文だ」

ネビル「……」ギリッ
955 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/07/04(木) 04:55:37.42 ID:0gckZWHD0

ムーディ「さて、最後だ。最後の呪文は何だ?」


ラベンダー「……」

シェーマス「……」


ムーディ「誰も手を挙げんか? ならば――グレンジャー! 答えろ!」

ハーマイオニー「あっ……アバダ・ケダブラ、です」

ムーディ「その通り。こいつは厄介だとか残酷だとか、そういう次元にある呪文ではない。
      最悪。そうとしか言いようのない呪文だ。少し、離れろ……」


ムーディ「――アバダ・ケダブラ!(死ね)」


 カッ!


クモ「……!……」ビクンッ

マミ「……死んで、る? 傷口も、なにもないのに……」

ハリー「――! 今の、緑色の閃光は……」

ムーディ「死だ。この呪文が与えるのは、絶対の死……反対呪文は存在しない。つまりは魔法で防ぐことはできない。
      わしだろうがダンブルドアだろうが、この呪いを浴びれば死ぬ」


ムーディ「この呪文から逃げ延びた者は、世界でたったひとりだけ……そうだな、ええ? ハリー・ポッター」

ハリー「……」

ムーディ「良い目をしている。恐れを知りながら、しかし恐れに屈さぬという目だ。
      さて、授業に戻るぞ。以上の三つを"許されざる呪文"という。こいつを使うのは闇の魔法使いか、
      もしくは凶悪な闇の魔法使い相手になら、七面倒くさい手続きを踏んだ上で許可されることもある……」




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956 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/07/04(木) 04:56:07.43 ID:0gckZWHD0

闇の魔術に対する防衛術 終了後 廊下



「見たか、あのクモ」「すっげえ呪いだ。初めて見た」「やばいな。やばいくらい、クールだ――」


ハリー「……確かに凄いけど、あんまり楽しい授業ってわけじゃなかったね」

マミ「同感よ……まだ、鳥肌がおさまらないもの」

ロン「でもまあ、分かってたことだろ? ルーピン先生みたいな楽しい授業をするって面じゃないよ、あれ」

ハーマイオニー「……それでも、あんなになるなんて思わなかったわ」

ロン「? 何のことだい?」

ハーマイオニー「ネビルよ。ほら、あそこ……」

ネビル「……」ボーッ

ハリー「何だろう? ずっと壁の方を向いたまま、動きもしない……」

マミ「……ロングボトムくん、大丈夫?」

ネビル「……ああ、マミに……ハリー、ロン、ハーマイオニー。楽しかったね」

ロン「楽しかった? おいおい、どうみてもそんな顔してないぜ。真っ青じゃないか」

ネビル「え、そうかな? ああ、えーと、じゃあ、美味しかった? 違うな、えーと
     ああ、うん、分かってるんだ。分かってる。違うよね。違う、絶対」

ハリー「……重症みたいだ」

マミ「……マダム・ポンフリーのところに連れて行った方がいいと思う?」

ハーマイオニー「そうね。それがいいかもしれないわ――」


ムーディ「――その必要はないさ。そいつは、どうやら芯が強い」


ハリー「……ムーディ、先生……」

ハーマイオニー「……何か御用ですか?」

ムーディ「そう睨むな。別にトドメを刺しにきたというわけじゃない……
      なあ、ロングボトム。わしの部屋に来んか? 茶でも飲もうじゃないか」

ネビル「え、あ、う。ふた、りで?」チラッ

ムーディ「ああ、そうだ。お前の好きそうな本が何冊かある……」

ネビル「あの、本なら、ハーマイオニー、とか」チラッ

ハーマイオニー「……」

ムーディ「わしはお前に言ってるのだがな、ロングボトム。
      スプラウト先生が、お前は薬草学が非常によくできていると言っていた……」

ネビル「……」チラッ

マミ「……あ、あの。先生、私も、一緒に行っても……」

ハーマイオニー「マミ」

マミ「だ、だって、いまのロングボトムくん、ひとりには――」

ムーディ「ふむ。トモエか。構わんさ――ただし、お前がそれを本心から言っているのならな」

マミ「……それって、どういう……」
957 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/07/04(木) 04:56:36.21 ID:0gckZWHD0

ムーディ「お前の本質の話だ、トモエ。一目見ればわかる。お前の心には恐れがある……心の底から、誰よりも恐れている。
      お前が夜道を歩けるように見えるのは、実はより大きな恐れから逃げ出して、我武者羅に走っているだけにすぎん」

マミ「っ! 私は、ただ、ロングボトムくんが、心配でっ」

ムーディ「それだ。それだよ。お前がもっとも目を背けているモノはそれだ。
      嫌われたくない、失いたくない。結果的に八方美人。誰にも彼にもいい顔をしようとする」

ムーディ「芯では勇敢なロングボトムやポッターとは真逆だ。お前の芯は自立できていない」


ムーディ「――臆病者だ。お前は孤独を恐れている」


マミ「――あ、え? だって、そんな……」

ネビル「……先生! 行きましょう! 僕、先生のいう本が見たいです!」

ハリー「……ネビル」

ネビル「平気だよ。うん、平気だ。ごめん、君たちはマミを見ててあげて……」

ムーディ「それでこそ、だ。よし、来いロングボトム……」

ハーマイオニー「……」キッ

ムーディ「残酷、かね? だがいずれは知らねばならん……闇と出会ってからでは遅いのだ。
      知らぬふりをしているのは、そいつ自身の為にならん……いずれ、喉元を刺す」


ハリー「……マミ、大丈夫?」

マミ「あ、あの、ね? 違うの、私。私、は」

ハーマイオニー「平気よ、マミ。大丈夫、落ち着いて……」

ロン「気にすることないさ! やっぱりムーディは狂ってるんだよ……うん。そうに違いない。
    確かにそりゃ、ちょっとおっかないけどさ、本当、意味のある言葉なんかじゃ――」

マミ「……ごめん、なさい……私、先に寮に帰るわね……」

ハーマイオニー「……マミ」

ハリー「しばらくそっとしておいてあげよう……それが一番いいよ」

958 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/07/04(木) 04:57:03.95 ID:0gckZWHD0

グリフィンドール女子寮


QB「お帰り、マミ……どうしたの? 顔色が悪いみたいだけど」

マミ「……」ギュッ

QB「わっ、ぷ。苦しいよ、マミ。もう少し緩めて……マミ? 寒いのかい?」

マミ『……ごめんね。少しだけ、こうさせていて……』

QB「……」

マミ(……ムーディ先生の言ってたこと……多分、間違ってない)

マミ(嫌われるのが怖い。独りぼっちになるのが怖い。だから私は、周りの人に合わせてきた……)



 一年生の時、ネビル・ロングボトムに協力したのは。
 この学校で一番最初に声を掛けてくれた友達を失いたくなかったからだ。


 二年生の時、"継承者"を探そうとしたのは、キュゥべえやハーマイオニーなど、親しい友達を奪われたくなかったから。


 三年生の時、門限を破ってまでスキャバーズを捕まえたのは二人の喧嘩を終わらせる為。


 怪しい情報に縋ってまで佐倉杏子を探そうとしたのは言わずもがな。

  
 人の為に、といえば聞こえはいい。まるで奉仕する聖女のよう。

 大事なものを守るために、と書けば字面はいい。まるで正義のヒーローのよう。

 だけど、違うのだ。その下には全ていやらしい打算がある。



マミ(私の行動は、全部それから派生している――私、臆病者だ……)
959 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/07/04(木) 04:57:31.38 ID:0gckZWHD0

10/30 18:00 ホグワーツ 校舎前


 ざわざわ ざわざわ


マミ「……」ボーッ

ハーマイオニー「マミったら、またぼんやりしてる……あれからずっとあんな調子ね」

ロン「ああ、授業の失敗もいつにも増して酷いしな。ムーディの服従の呪文の時なんか、制服の――」

ハーマイオニー「ロン! 教室の外であの授業のことを口しちゃダメ!」

ロン「おっと――ああ、うん。分かってるさ。
   でもさ、マミがああなったのって、ムーディが何か訳の分からないこと言ったからだろ?」

ハーマイオニー「……訳が分からないのは、私たちがマミじゃないからよ」

ロン「えーと、ごめん。分かりやすく言ってくれるかい?」

ハーマイオニー「たぶん、マミにとっては心当たりがあることだったんでしょう。ムーディの"眼"は確かだわ。
          その証拠に、ほら、ネビルはあれからあんな感じでしょ?」


ネビル「それでね、ハリー。ムーディ先生に借りた本が凄いんだよ。水棲の魔法植物がね……」

ハリー「あー、うん。そうか、それは良かったね、ネビル」


ロン「キラッキラしてるな、ネビルの奴」

ハーマイオニー「ええ。ムーディは教師としても優秀よ。ネビルの自信を上手く引き出してるわ」

ロン「じゃ、なんでマミはああなっちまったのさ?」

ハーマイオニー「……教える側として優れているってことは、欠点を見抜くのも上手いってことよ。
          もしもムーディが指摘したのがマミの悪いとこなら、流石にすぐには受け入れられないでしょう?」

ロン「えーと、八方美人っていってたっけ? まあ、そう言われればそうかも。
   ええかっこしいっていうか、人付き合いで損するタイプだよ。まともだったら反吐の宣伝なんかしないし――」

ハーマイオニー「……」ギロッ

ロン「……あー、なんでも、ない」

ハーマイオニー「ふんっ。とにかく、今のマミに必要なのは時間よ。
           こういう時は、何も言わずにただ傍にいるのが一番いいの」

ロン「それも何かの本に書いてあったのかい?」

ハーマイオニー「? よくわかったわね?」

ロン「そりゃあね……でも、僕が思うに必要なのは楽しいイベントだと思うな。
   気分転換になるような、最高にご機嫌な奴さ……"これ"がそうなればいいんだけど」

ハーマイオニー「そうね。確かに、他の魔法学校なんてなかなかお目に掛かれないもの。
          特にこれから来る二校は、徹底した秘密主義って話だし――」


「おい、なんだあれ……?」「空から、何か……」「湖からも何か出てくるぞ!」


マミ「空飛ぶ馬車に……大きな船?」

ダンブルドア「――うむ。ボーバトンにダームストラング、双方ともに時間通りのご到着、というところかのう」
960 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/07/04(木) 04:57:59.15 ID:0gckZWHD0

大広間


ダンブルドア「それでは紹介しよう。T.W.T(トライウィザード・トーナメント)を共に競い合う、
        ボーバトン魔法アカデミーのマダム・マクシームと、ダームストラング専門学校のカルカロフ校長じゃ」

マクシーム「どぉーも。ごしょうかいに、あずかりまーした。オリンペ・マクシームいいまーす」

カルカロフ「イゴール・カルカロフだ。フェアなプレイになるよう期待する」


ハリー「うわー。ボーバトンの校長、女の人なのにハグリッドくらい身長があるよ……それに、変な喋り方」

ハーマイオニー「フランス訛りね。ということは、ボーバトンはフランスのどこかにあるんだわ……」

マミ「? 喋り方、変かしら? 普通に聞こえるのだけど……」

ハリー「え? 嘘だろう。なんか変に間延びしてたり、途切れたりするじゃないか」

ハーマイオニー「マミは翻訳指輪してるからでしょ。その指輪、大抵の言語に対応してみたいだし」

ハリー「じゃあボーバトンの人も同じの付ければいいのに」

ハーマイオニー「たまに正確じゃない訳をしたりするのよ。"ス"なのに"ズ"になってたり」

マミ「え? なんのこと?」

ハーマイオニー「118の――まあ、いいわ。それにしても、見てよ。ボーバトンの生徒」


ボーバトン生「さむぅーいです、ね」「ほーんと、ひえきってまぁす」


ハーマイオニー「厭味ったらしいわね。そんなに寒いならマントを羽織ってきなさいよ。
          この時期のイギリスが寒いなんてこと、事前に調べられるでしょうに!」

ロン「ボーバトンなんてどうでもいいよ! それより、見て! スリザリンのテーブル! ダームストラングの生徒!」


クラム「……」


ロン「クラムだ! ワールドカップで見ただろう? 最高のシーカー! まさかまだ学生だったなんて!
    ああ、サイン欲しいなぁ。誰か羽ペン持ってない? いや、この際文字が書ければなんでもいいよ」

マミ「ああ、あれが例の……」

ロン「そうだ! みんな、一緒にクラムにサインを貰いに行かないか?
   ついでにスリザリンのテーブルから引きはがしてこっちに――」

ハーマイオニー「まだ説明の途中じゃない! 座ってなさい!」
961 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/07/04(木) 04:58:32.34 ID:0gckZWHD0

ダンブルドア「――そしてT.W.Tの開催にあたって、多大な貢献をされたお二人。
        国際魔法協力部のバーミテウス・クラウチ氏に、魔法ゲーム・スポーツ部のルード・バグマン氏じゃ」

クラウチ「……」

バグマン「いやあ、はっは! どうもどうも――おいバーティ、もうちょっと愛想よくだな……」

クラウチ「……」

バグマン「これだものな! もともと明るい奴じゃなかったが、ここ最近はとみに――ああ、すまん。続けてくれ」

ダンブルドア「ほっほ。すまんの。さて、それではお待ちかねの代表選手の選抜方法じゃが――
        フィルチさん、箱をここに」

フィルチ「……」カタッ

ロン「うわー、見てよハリー! あの箱、宝石付きだ! 売ったらいくらくらいになるかな……」

ハリー「うん……でも、なんで箱なんか?」

ダンブルドア「競い合う三人の代表選手……先のお二方が定めた三つの課題に挑む権利があるもの決定するのは、、
        これなる公平無私の選定人……"炎のゴブレット"じゃ」


 ギィ……


ハーマイオニー「箱が、開いて……中に入ってるのは」

マミ「……普通の、木でできたゴブレット? 別に、どうってことのない物に見えるけど――」


 ボッ!


マミ「きゃっ! ご、ゴブレットから、青い火が……」

QB「なるほど。それで炎のゴブレットか。どういう仕組みなのかな」

ダンブルドア「挑みたい者はこのゴブレットの中に、名前と所属校を書いた羊皮紙を入れるのじゃ。
         期限はこれより24時間以内。明日のこの時間に、ゴブレットは選定を終える。
         このゴブレットは玄関ホールに置いておくでのう」
962 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/07/04(木) 04:59:53.46 ID:0gckZWHD0

ダンブルドア「最後に、軽々しく名前を入れることのないよう。選ばれたが最後、棄権は出来ん。
        ゴブレットに選ばれるということは、魔法契約によって拘束されるということじゃ。
        また、既定の年齢に満たぬ者が血迷わぬように、周囲に"年齢線"を引いておく」

フレッド「年齢線! よっしゃ、それならいくらでも手はあるな」

ジョージ「ああ――そうだ、君も来るかい、ハリー。一緒に入れに行くか?」

フレッド「グリフィンドールのぶっ壊し屋もどうだい? マミ・ザ・デストロイヤー。
     最近は大人しくなったって評判だから、ここらで一発でっかい花火をさ」

マミ「待って、何その名前。デストロイヤーって……私、陰でそんな風に呼ばれてたの……?」

ジョージ「ファンクラブもあるぜ。授業を自習にしてくれるって評判で――」

ハーマイオニー「ちょっと! そんな危ないものにハリーとマミを巻き込まないで!
          ただでさえ私たちは決められた年齢に達してないのよ!?」

ロン「そうだよ。っていうか、まず弟の僕を誘えって」

ジョージ「ロニー坊やが? そいつは悪い冗談だ。お前が出場してバラバラにされたら、僕らもママに殺されっちまう」

フレッド「それにゴブレットに年齢が分かるもんかよ、ハーマイオニー。
      ああ、でもマミが名前入れるなら、ゴブレットは壊さないでくれよ?」

マミ「こ、壊しません! それに参加もしない! なによデストロイヤーって!」ブンッ

ジョージ「おっと――はっは、そんだけ元気がありゃ優勝も狙えるだろうに。じゃあハリーは?」

ハリー「僕は……うーん、そりゃ、出てみたいって気持ちが無いわけじゃないけど……」

ハーマイオニー「ハリー!?」

ハリー「いや、もちろん冗談だよ。本当に参加するつもりは……」

フレッド「まあとにかく、明日の朝玄関ホールに来いよ。それまでには準備もしとくからさ」

ジョージ「よーし。まずはスネイプんとこの薬品棚から材料をちょろまかして……」

ハーマイオニー「ああもう! あの二人ったら、規則をなんだと思ってるのかしら!」

ロン「フィルチの戯言。そんなとこだろ」

マミ「ふふ、でも楽しそうでいいじゃない」ニコッ

ハーマイオニー(あ……久しぶりに笑ったわね、マミ。
          あの二人、もしかして最近彼女が落ち込んでることに気づいて……?)


 ぱーん!


「うわー! また双子がやらかしたぞ!」「クソ爆弾だ! スネイプの部屋の前が汚物塗れに!」


ハーマイオニー「……考え過ぎかしら」
963 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/07/04(木) 05:00:22.51 ID:0gckZWHD0

ロン「それより、はやくダームストラングのとこに行こうよ! クラムのサインを貰い損ねちまう!」

ハリー「あ、ちょっと――ロン、前!」

ロン「へ?」


 ドンッ


ロン「あたっ! ちくしょう、誰だ! クラムへの道を塞ぐ奴にはパンチも――」

フラー「……」ハラリ

ロン「辞さな――あ、う」

マミ「マフラーが解けて……わあ、凄い美人……ボーバトンの人よね、あれ」

ハーマイオニー「……」

ロン「……あ、あの、その、すみ、すみみみ! すみませんでした! お怪我は!?
   ああ、服にほこりが――僕、払います!」

フラー「……結構、でーす」スタスタ

ロン「ああ、行っちゃった……声まで綺麗だ……もしかしてヴィーラじゃ」ブツブツ

マミ「……ロンくん? ねえ、おーい。ロンくーん?」

ハリー「駄目だ、帰ってこない。ひっぱたけば正気に戻るかな?」

ハーマイオニー「……っ!」バキッ

ロン「」

マミ「あ、ああ、ロンくん……気絶しちゃった」

ハリー「凄いな、一撃か」

ハーマイオニー「ふんっ、さっきよりはまともな状態に近づいたでしょ!」
964 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/07/04(木) 05:01:22.29 ID:0gckZWHD0

翌日 ハロウィーン 朝 玄関ホール


 ざわざわ ざわざわ


ロン「ねえ、ハリー。僕、昨日の夜から記憶がないんだけど……首もしこたま痛いし」

ハリー「寝違えたんじゃない? あんまり気にすることないよ」

ロン「そうかなぁ……にしても、結構集まってるな。半分以上は野次馬だけど」

ハーマイオニー「もうみんな名前を入れたのかしら……?」

ハリー「夜とかに入れにきた人もいるんじゃないかなぁ。
     皆の前で入れて、ゴブレットに拒否されたりしたら嫌だもの。僕ならそうするよ」

マミ「……校長先生の言った通り、年齢線が書いてあるわ。
   えーと、指定した年齢じゃない人が入ると発動する罠みたいな奴よね、確か」

QB「それじゃあ、フクロウに頼んで入れて貰ったりすれば?」

ハーマイオニー「ダンブルドアは魔法契約って言ってたもの。本人の手で直接入れないと駄目なんじゃないかしら?」

ロン「代表がフクロウとかになっちゃったら笑えないしね」

フレッド「なあに、そんな心配はしなくていいさ。俺たちが入れるんだからな」

ハリー「フレッド! ジョージ! 準備は出来たの?」

ジョージ「ばっちりさ。完璧だと思うね。ハリー、僕らが成功したら後に続けよ」

ハーマイオニー「ふん! ダンブルドアがこんなズルを想定してない筈ないわ!」

フレッド「それじゃ、上手く行きましたらご喝采だ。よし、まずは……アクシオ! ゴブレットよ、こい!」


炎のゴブレット「……」シーン


マミ「今、何をしたの?」

ハーマイオニー「"呼び寄せ呪文"よ。ゴブレットを手元に引き寄せようとしたのね――失敗したみたいだけど」

ジョージ「なあにまだ小手試しさ。ゴブレットの方に呪文が通じないなら、この羊皮紙を……飛べっ」


炎のゴブレット「……」

 ボッ! ジュッ


ロン「うわっ、炎で焼かれた!」

ハリー「あれじゃあ、羊皮紙を入れられないんじゃ……」

ハーマイオニー「だから、直接手で入れないと駄目なのよ。
          魔法とか、あまつさえ手で投げるとかじゃ絶対に選ばれないわ」

フレッド「おーけーおーけー。ここまでは予想通りさ。んじゃ、大本命。
     昨日、ちょっくら盗み――おっと、廊下に落ちてた材料で作った"老け薬"でござーい!」

マミ「老け薬って、飲むと歳をとるの? ……女の子の天敵みたいな薬ね」

ジョージ「ま、用法用量に気を付けて飲めば大丈夫さ。僕らは一滴でいい」ゴクン

フレッド「ほら、ハリー。余りはやるよ――君なら5、6滴ってところかな」ゴクン

ハリー「あ、ありがとう」

ハーマイオニー「ハリー、飲まない方がいいわよ。どうせ失敗するもの」

フレッド「さあいくぜ、ジョージ!」ダッ

ジョージ「おう! いざ栄光を我らの手に!」ダッ
965 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/07/04(木) 05:02:35.15 ID:0gckZWHD0

ハグリッドの小屋


ハリー「……で、二人は年齢線に弾かれて、ヒゲもじゃになっちゃったんだ」

ロン「面白かったよ。ダンブルドアがやりそうな、笑えるトラップさ」

ハグリッド「ああ、あのお方はジョークもよく分かってらっしゃるさ。うん。
       ……ところで、そっちの娘っこ、えーと、マミはいったいどうした?」

マミ「吸盤が、吸盤が……」ガタガタ

QB「なんかね、来る途中で大きなエビの出来損ないみたいな怪物に襲われて……」

ハーマイオニー「スクリュートよ、ハグリッド。一匹箱から逃げ出してたわ。私が叩き戻しておいたけど」

ハグリッド「おお、あいつらか! きっと初めて見る生徒だから、遊んで欲しかったんだな。
       見たか? 元気に育っとったろ?」

ロン「ああ、一メートル近くなってたのを見た時には死を覚悟したよ。何を餌にしたの? 人の肝臓と生き血?」

ハグリッド「なーんでも食うぞ! 好き嫌いはせん。可愛い奴らだ」

マミ「いやあああああ……」ガタガタ

ハリー「……人間は食べないって否定してほしかったなぁ」

ハーマイオニー「こほん。それより、ハグリッド。私達、しもべ妖精の地位を向上させる活動をしているのだけど――」





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966 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/07/04(木) 05:03:08.32 ID:0gckZWHD0

ロン「はい、チェックメイト――ああ、だんだん外が暗くなり始めたなぁ」

ハリー「そろそろ戻らないと。代表選手の発表が始まっちゃうよ」

マミ「そうね。あの、ハーマイオニーさん、そういうわけだから、そろそろ……」


ハーマイオニー「屋敷しもべ妖精達がそういう認識なのは、魔法使いが圧政をしいているからだわ!
          まずは彼らに、自由の味を知って貰わないと!」

ハグリッド「だからな、ハーマイオニー。そりゃお節介ちゅうもんだ。世話をするのは連中の本能だからな。
       無理に仕事を奪えば、それこそ嘆き悲しむぞ」

ハーマイオニー「そんなの、やってみなくちゃ分からないじゃない――」


ロン「駄目だなありゃ。置いて行っちまおうか?」

マミ「流石に、それは……」

ハリー「でも遅れたくはないし……今夜はハロウィーンだし、きっと御馳走だよ」


コンコン


マクシーム「あぐりっど、いまーすか?」

ハリー「え? この声、ボーバトンの……」

ハグリッド「!」ガタッ

ハーマイオニー「ハグリッド? まだ議論は終わって――」

ハグリッド「あ、あー。すまんが、これで終わりだ――お前たちもそろそろ戻らねえと。
       俺も支度があるし――」ガサゴソ

ロン「支度? ……なにそれ、もしかして背広かい?
   今までパーティの時にだってそんなもの着てこなかったじゃないか」

ハリー「それに、その瓶は? 蓋が閉まってるのに、凄い臭いが……」

ハグリッド「コロンだ。さ、ほら、行った行った! 早くしねえと始まっちまうぞ!」

ハーマイオニー「……仕方ないわね。行きましょ?」

マミ「え、えーと。それじゃあ、お邪魔しました。お昼ご飯、美味しかったです」

ロン「ああ、隠し味に正体不明の鍵爪も入ってたしね」
967 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/07/04(木) 05:03:46.83 ID:0gckZWHD0

大広間


ハリー「ハグリッド、変だったね。マダム・マクシームと付き合ってるのかな?」

ロン「ある意味、お似合いだね。それに手も早い――でもハグリッドにそんな甲斐性あるかなぁ?」

マミ「でも、敵対校同士での恋愛って、ちょっと素敵じゃないかしら?」

ロン「……変なのは君もか。どうしたらあれがロマンチックに見えるのさ」

ハーマイオニー「しっ! 静かに。ダンブルドアが立ち上がったわ」


ダンブルドア「さて、ゴブレットの選定もどうやら終わったようじゃ。これより、代表選手の発表を行う。
        名前を呼ばれた者は前に出て、隣の部屋へ移るように」


ロン「いよいよだ、誰かな――?」

ハリー「グリフィンドールではアンジェリーナが入れたらしいよ……あ、見て。ゴブレットの炎が……」


炎のゴブレット「――」 ボッ


マミ「紙が吐き出された……あれが代表選手の?」

ダンブルドア「うむ。まずはダームストラングの代表選手――ビクトール・クラム!」

クラム「……」

カルカロフ「よしっ!」

ロン「やっぱり! そうだよな、分かってたさ!」

ハーマイオニー「ロン、あなたホグワーツ生でしょうに」


炎のゴブレット「――」 ボッ


ダンブルドア「二人目――ボーバトン代表、フラー・デラクール!」

フラー「……」

ロン「あっ、あっ。ハリーあの人だ! うわー、やっぱり、とっても、綺麗だ……
    ホグワーツにはいないよな、ああいう子……芋ばっかりさ!」

マミ「……ハーマイオニーさん?」

ハーマイオニー「ええ。ひっぱたきましょう」

ハリー「僕も手伝うよ」


炎のゴブレット「――」 ボッ


ダンブルドア「最後に、ホグワーツの代表は……セドリック・ディゴリー!」

ハッフルパフ生「わあああああああ! ディゴリーだ! ディゴリーが選ばれた!」

ディゴリー「……」ニコッ

マミ「えーと確か、去年、ハリーくんとクィディッチで戦った……」

ハリー「うん。ハッフルパフのシーカーだ」

ハーマイオニー「そう! だった! わね! 監督生! みたいだし!」ギリギリ

ロン「ギブ! ギブ!」
968 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/07/04(木) 05:04:24.24 ID:0gckZWHD0

ロン「ごほっ、ごほっ。あー、酷い目にあった。
   でも、うちからはディゴリーかぁ。勝ち目ないよ。だってクラムはプロの選手だもの」

ハーマイオニー「ロンったら! 別に箒でレースするわけじゃないでしょうに!」

マミ「グリフィンドールじゃなかったのは残念だけど、同じホグワーツの仲間だもの。頑張って優勝して欲しいわ」

ハリー「そうだね……うん。確かに色々と思うとこはあるけど、セドリックには頑張って――」

ダンブルドア「さあ、これで代表選手は決まった。選ばれなかった生徒たちも、代表選手への声援を――」


炎のゴブレット「――」 ボッ


ロン「うん? おい、あれ見ろよ。ゴブレットの炎がまた……」

マミ「……さっきみたいに、燃え上がってる」

ハーマイオニー「そんな、代表選手は三人の筈でしょ? それがなんで……」


ダンブルドア「……」パシッ


ダンブルドア「――ハリー・ポッター」


ハリー「……え?」
969 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/07/04(木) 05:04:58.42 ID:0gckZWHD0

 ざわざわ ざわざわ


「ハリーが? どうやって年齢線を――」「また規則違反?」「すげえ! さっすがハリーだ!」


マミ「ハリーくん、隣の部屋に行っちゃったわね……でも、なんでゴブレットからハリーくんの名前が……」

ロン「そんなの! あいつが入れたからに決まってるじゃないか!」

マミ「きゃっ、ろ、ロンくん……?」

ハーマイオニー「どうしたのよ、ロン。そんな大声で怒鳴って……」

ロン「だってハリーの奴、僕らにも内緒にしてたんだぜ? せめて僕には教えてくれていいだろうに!」

ハーマイオニー「ロン、ハリーは入れてないと思うわ。あの顔を見た? とても混乱してたじゃない」

ロン「だったら誰が入れたっていうのさ! 本人が入れないといけないっていったのは君だろう!」

ハーマイオニー「それは――他にも手段があるのかもしれないわ。強力な闇の魔術とか……」

マミ「ねえ、ロンくん。とにかく落ち着いて……戻ってきてからハリーくんに聞けばいいじゃない。
   ね? ハリーくんがそんなズルするわけ……」

ロン「ハリーがズルするわけない? はっ! 僕ら、これまで散々規則を破ってきたじゃないか!
   それとも、いつでもハリーだけは正しいって訳かい?」

マミ「そ、そういうわけじゃ……」

ハーマイオニー「ロン、マミに当たるのはよしなさい! 見苦しいわ!」

ロン「うるさいな! 知ったかぶりとええかっこしいは黙ってろよ!」

マミ「……っ!」

ハーマイオニー「ロン! あなた、なんてこと――」

ロン「……ふん!」ガタッ

ハーマイオニー「ああ、行っちゃった……マミ、気にすることないわ。ロンはハリーに嫉妬してるのよ。
          冷静じゃないだけで、本心からあんなこと思ってるわけじゃ――」

マミ「……う、うん。大丈夫。平気、気にしてなんか、ないわ」
970 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/07/04(木) 05:05:27.66 ID:0gckZWHD0

グリフィンドール女子寮


QB「ふぅん。そういう訳か。それでいま談話室はあんなどんちゃん騒ぎなんだ」

ハーマイオニー「ええ。そりゃあ、グリフィンドールから代表選手が出たのは喜ばしいことなんでしょうけど」

QB「君たちは行かないのかい? また双子辺りが食べ物とか調達してると思うけど」

マミ「……あんまり、あの中には居たくないの」

ハーマイオニー「右に同じ。ハリーに話を聞きたいけど、たぶんあの騒ぎじゃ無理だし……明日聞くわ」

QB「君らがそう言うんなら、無理強いはしないけどね。でも……どうしてだろう?」

ハーマイオニー「どうしてって、なにが?」

QB「ああ、仮にハリーがゴブレットに名前を入れてないとしてさ。なら、誰かが代わりに入れたってことだろう?
   それになんのメリットがあるんだろうって思ったんだ」

マミ「例えば、グリフィンドールからも代表選手を出したかったとか……」

QB「なら、別の上級生にすればいい。ハリーの成績は確かに上の方だけど、それもこの学年での話だ。
   上級生の方がたくさん呪文を知ってるし、同じ学年でもハーマイオニーの方が成績は上だろう?」

マミ「じゃあ、一体どうして……」

QB「うーん、例えば、そうだな……この試合って、とっても危険なんだろう?」

ハーマイオニー「ええ、そうね。調べたけど、参加者の半分以上は亡くなってるみたい」

マミ「そんなに……?」

QB「なら当然、実力が見合わない生徒が参加すれば、死んでしまう確率は高くなるわけだよね」

ハーマイオニー「ハリーを殺すために誰かが入れたってこと!?」

マミ「そんな……一体誰が……」


ガチャ


ラベンダー「はー、楽しかった! ハリーが優勝してくれるといいわね!」

パーバティ「あら、マミにハーマイオニー。あなたたち、ここにいたの? 談話室にくればよかったのに」

マミ「う、うん……ちょっと食べ過ぎて胸焼けしちゃって。もう休むわ。ね、ハーマイオニーさん?」

ハーマイオニー「ええ、そうね……それじゃ、また"明日"」

ラベンダー「そう? それじゃ、お休み」
971 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/07/04(木) 05:06:11.68 ID:0gckZWHD0

マミ『……キュゥべえ、さっきの話、本当?』

QB『もちろん推測に過ぎないけど……でも、他の考えが浮かばないのも確かだ』

マミ『……』

QB『……もしも本当に誰かがハリーを殺そうとしているとしたら。
   君が調べてみる価値はあるよ。そんなに気になるんならね』

マミ『私、が? どういう意味?』

QB『"送り主"だよ。情報を送ってくる条件は未だに不明だけど、夏休みの件を見るに君の行動が関わってるのは確かだ』

マミ『送り主……ね』

QB『もちろん、確実性はないからね。ただ、悩んでいるよりは行動した方が気も紛れるだろう?』

マミ『……でも……それは……』


 "――臆病者だ。お前は孤独を恐れている"


 "うるさいな! 知ったかぶりとええかっこしいは黙ってろよ!"


マミ(友達を仲直りさせたいっていうのは……悪いことじゃない筈よね?)

マミ(でも、それが……私の自分勝手な思いの押しつけなら……)

マミ『……しばらく考えてみるわ。すぐには、ちょっと……』

QB『……』
972 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/07/04(木) 05:06:42.65 ID:0gckZWHD0

翌日 朝 ホグワーツ敷地内 湖畔


ハリー「……んぐ。トーストありがとう。助かったよ、ハーマイオニー。それに、マミも。
     食堂にはいきたくなかったからさ……」

マミ「やっぱり、ロンくんと喧嘩を……?」

ハリー「昨日ね。散々疑われたよ。もうあいつなんか知るもんか……」

ハーマイオニー「でも、もう一度話して見るべきだと思うわ。ロンだってきっと分かってくれるわよ」

ハリー「冗談じゃないね。誰があんな分からず屋と――皆も皆さ。誰も僕の話を聞こうとしない。
     僕が入れたんじゃないって、君たちだけでも信じてくれたのはありがたいよ、本当」

QB「でも、誰が入れたんだろうね。可能性が高いのは、やっぱりハリーを傷つけようとしてる人だと思うけど」

ハリー「ああ、ムーディも昨日、そう言ってた……なんか自意識過剰みたいで、誰にも言ってないけどさ」

ハーマイオニー「でも、それを知らせるべき人はいると思うわ」

ハリー「誰? ダンブルドア? もう知ってるよ、昨日、ムーディがそう言った時に居たし……」

ハーマイオニー「違うわ、シリウスよ。
          どうせ代表選手のことは新聞なんかに載るだろうし、あなたから伝えた方がいいわ」

マミ「シリウス……? 誰かしら、それ」

QB「もしかして、シリウス・ブラックのことかい? そういえば冤罪だったって……ハリーの知り合いなの?」

ハーマイオニー「……そういえば、マミ達にシリウスのこと話すタイミング無かったわね」

ハーマイオニー(帰りの特急の中では、マミの顔を舐めた件でいきなり家庭崩壊の危機だったし……)

ハリー「親戚――みたいな関係かな。この夏は結局、法律の手続きでいっぱいいっぱいだったけど、
     来年からは一緒に住めるんだ、きっと……」

マミ「家族――そう、良かったわね、ハリーくん」

ハリー「あ……ごめん! マミの前で、こんな話を――」

マミ「え? ……あ、ううん! いいのよ別に! それに、家族なら私にも出来たもの! 夏休みにね!」

ハリー「え、家族ができたって……えーと、その、おめでとう?」

ハーマイオニー「ま、マミ!? そんなの聞いてないわ! 誰よ! いったどこの誰!?」

マミ「? ……! ああ、もう! なんで皆してそういう風に――違うわ! 女の子!」

ハリー「ああ、なんだ。そうなの」

ハーマイオニー「そ、そんな――」

マミ「……ハーマイオニーさん?」

ハーマイオニー「そりゃ、基本的には自由だと思うし、そういうことで差別する気はないけど――
          で、でも、やっぱり同性愛は不毛だと思うの!」

マミ「ハーマイオニーさん!?」
973 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/07/04(木) 05:07:24.60 ID:0gckZWHD0

ハーマイオニー「……こほん。何だ、そういう訳ならはっきりそう言えばいいのよ。
          無駄に取り乱しちゃったじゃない」

マミ「私が悪かったの……?」

ハリー「僕はすぐに分かったけど」

ハーマイオニー「ごほん! と、とにかく、ハリーはシリウスに手紙を出すべきよ!
          彼は優秀な魔法使いだし、ハリーの為ならきっと的確なアドバイスをくれるわ」

ハリー「うーん……そうだね。シリウスに相談してみるよ。
     いまはロンドンに住んでるから、返事もすぐだろうし――」

ドラコ「――おやおや、代表選手がこんなところで何の相談だい、ポッター。
    カンニングの算段か?」

ハーマイオニー「……マルフォイ」

ハリー「朝からうんざりだよ。ひとりで何の用さ。いつもの金魚の糞はどうした?」

ドラコ「……どうでもいいだろ、そんなこと! 別に、連中が朝食のテーブルから離れなかったわけじゃないぞ!」

QB「離れなかったんだ」

マミ「……そういえば、この前のイタチ騒ぎの時もあの二人いなかったけど……確か、昼食直後だったわね、あの時も」

ハリー「とうとう食事以下にまで落ちぶれたのかい、君」

ドラコ「ぐっ……お前こそ! 穢れた血を二人も侍らせて王様気分かい? さすが、代表選手さまさまだね。
    サインを貰っていいかな? どうせもうすぐ死んじゃうんだしさ」

ハリー「……おい、マルフォイ。二人をその呼び方で呼ぶな」スッ

ドラコ「面白い。今度はあのムーディもいないぞ、弱虫ポッター」スッ

ハーマイオニー「ちょっと! 二人とも、杖をしまいなさい!」

マミ「危ない! ハーマイオニーさん、間に入っちゃ――」

ハリー「ファーナンキュラス!(鼻呪い)」

ドラコ「デンソージオ!(歯呪い)」
974 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/07/04(木) 05:07:59.55 ID:0gckZWHD0

 バチン!


ハーマイオニー「!? ――っ!」

マミ「は、ハーマイオニーさんに、片方の呪いが……」

ドラコ「あははは! こりゃ傑作だ! まあ、そんなに変わらないんじゃないかい?
    もとからビーバーみたいな前歯だったわけだし――」

QB「ハリー、今なら隙だらけだよ」

ハリー「エヴァーテ・スタティム!(宙を舞え)」バチッ

ドラコ「フォーイ!?」


 ざっぷーん


ドラコ「うわあああ! イカが! 大イカが! や、やめろ、触手は、あっ!」

マミ「すぐに医務室に行かないと――はい、マントを頭から羽織って……」

ハリー「大丈夫、マダム・ポンフリーならすぐに治してくれるさ……」

ハーマイオニー「……っ」コクコク


ドラコ「おい、僕を置いて行くな! 助けろ! 助けてください!
    うわっ、なんだこいつら……水中人? え? 顔色が悪いから仲間にしてやる!?
    や、やめろ、水中に引きずり込もうとするな……!」

975 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/07/04(木) 05:08:40.55 ID:0gckZWHD0

数週間後 ホグズミード週末 ホグズミード


マミ「わあ、ホグズミード! こうやって真正面から入るのは初めて!」

ハリー「? それだと君、真正面からじゃない所からなら入ったことがあるって風に聞こえるけど……」

マミ「え? あ、あー……こ、言葉の綾よ! ねえ、キュゥべえ? 入ってないわよね、私達」

QB「……ウン、ソウダネ」

ハリー「まあいいけどさ。あ、三本の箒はこっちだよ。シリウスとの待ち合わせ場所の……」

マミ「……? ハリーくん、よく知ってるわね? ホグズミードに来るのは初めての筈じゃ……?」

ハリー「え、あー――マップをね、事前に見たんだよ。ねえ、ハーマイオニー?」

ハーマイオニー「……はあ。そうね、そういうことにしておいてあげる。
          それより、良かったわね、マミ。今年は代理のサインがおりて」

マミ「ええ。シリウスさんの冤罪が晴れたから……マクゴナガル先生には感謝しないと」

ハーマイオニー「……ところで、ハリー。そろそろ透明マントを脱いだら?
          マミがいるから、おかしな目で見られてはいないけど……」

ハリー「嫌だよ。言っただろ? ロンに会いたくないんだ」

ハーマイオニー「はあ……いい加減に、一度話してみなさいよ。ロンがいなくて寂しいくせに」

ハリー「寂しくなんか……ないさ。そりゃ、クィディッチの話をしたり、馬鹿話をしたりするのには、あれだけど……」

マミ「……重症じゃない」
976 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/07/04(木) 05:09:11.17 ID:0gckZWHD0

ハリー「どっちにしても、あんまり僕は顔を出さない方がいい。周りを見てみなよ。
     ハッフルパフの連中がつけてるバッジ……」


『セドリック・ディゴリーを応援しよう』


ハリー「分かるだろ? あの連中、僕を見かけたらどんな反応をするか……」

QB「ハッフルパフは、あんまり目立った成績がないからね。
  セドリックが代表選手に選ばれた喜びに、水を差されたように感じたんだろう」

ハリー「僕が入れたんじゃないのに……おまけに、とどめは例の新聞だ。
     リーター・スキーターとかいう記者の……」

マミ「ああ、この前、ハリーくんが取材を受けたっていう……」

ハリー「一ミリも反映されてないけどね。好き勝手書かれて、本当に迷惑だよ……」

ハーマイオニー「はあ……分かったわ。でも"三本の箒"に入ったらさすがに脱ぎなさいよ。
          シリウスとマント越しに話をするつもり?」

ハリー「分かったよ……あ、あそこにいるのは……!」


ロン「……だからさ、ハリーが正直に教えてくれれば、それで済む話なんだ。
   親友の僕にも教えてくれないなんて、そんな話あるかい?」

フレッド「知らねえけど。でも、奴さん本当に入れてないのかもしれないぜ?」

ジョージ「俺らにも無理だったもんなぁ。そもそも、四人目が選ばれるなんてのも変な話だ」

ロン「そりゃ……そうだけどさ」

フレッド「ハリーを殺したい誰かが入れた、なんて噂もあるくらいだぜ? 
     まあ、グリフィンドールから代表選手がでたのは嬉しいから、ハリーには頑張ってほしいけどな」

ジョージ「ロニー、お前さんも意地張ってないで、さっさと仲直りしたらどうだい?」

ロン「……嫌だね! ハリーが正直に言ったら仲直りしてやってもいいけどさ!」


ハーマイオニー「あー、ハリー? ロンは意地になってるから……」

マミ「そ、そうよ。だから、あんまり気にしないで……」

ハリー「……別に気にしてないさ、あんな奴。行こう」


977 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/07/04(木) 05:09:56.57 ID:0gckZWHD0

三本の箒


シリウス「やあ、ハリー! それにその友達も。こっちだ――さあ、椅子をどうぞ」

ハリー「シリウス……えーと、久しぶり、ですね」

シリウス「なんだ、堅苦しいぞ、ハリー! もう家族なんだから敬語なんていらないさ」

ハリー「分かってはいるんだけど……なかなかね。夏休みも会えなかったし……」

シリウス「ああ、それは悪かった……だが、冤罪を晴らす手続きが妙に手間取ってね――」

マミ(この人が、シリウス・ブラック……前に新聞に載ってた怖い写真とは全然違う……)

シリウス「おや、君は――久しぶりだね。その節はどうも。助かったよ」

マミ「え? あの、すみません。どこかでお会いしましたか……?」

シリウス「うん? どこって――あ」

ハリー「……」ジッ

ハーマイオニー「……はぁ」

シリウス「あー! いや! 私の勘違いだった! ハリー達はいつも三人組だったものだから、ついね!」

QB「あれ。そういえばこの人の魂の形、どこかで――」

シリウス「外は寒かっただろう! なにか暖かい者でも奢ろうじゃないか!
      ロメルスタ! バタービールを五つ! ひとつは冷まして、猫用の皿に注いでくれ!」

QB「僕の分も?」

マミ「え、そんな。悪いです。初対面の方に……」

シリウス「なに、構わないさ。ハリーを支えてくれている友達への、ささやかな恩返しだよ。
      ……そういえば、あの子はどうした? ウィーズリー家の……」

ハリー「知らない」

ハーマイオニー「もう、ハリーったら……二人とも、ちょっと喧嘩中なんです」

シリウス「む。そうか、去年、足を折ってしまったお詫びにフクロウを持って来たんだが……
      なるほど、それで透明マントなんか被ってきたんだな?」

ハリー「……」

シリウス「なに、喧嘩をしない友達なんかいないさ。私とジェームズも大喧嘩したことは一度や二度じゃないしね」

ハリー「……父さんとも?」

シリウス「ああ。まあ、それはおいおい話すとして……それなら、あんまり人の多いとこには居にくいかな?
      ロメルスタ! すまないが、奥の部屋を貸してもらえるかい?」

ロメルスタ「まあ、仕方ないですわね。シリウスの社会復帰祝いということで、特別に」

シリウス「恩に着るよ。ついでに何か食べる物も頼む」

マミ「……うーん。大人、って感じね。マダム・ロメルスタと話すのも、凄い様になってるし……」

ハーマイオニー「そうね。ハリーのことになると、ちょっとタガが外れるみたいだけど」
978 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/07/04(木) 05:11:08.67 ID:0gckZWHD0

シリウス「さて、手紙は読ませてもらった――確かに、ムーディの言うことには一理ある」

ハリー「それじゃあ、やっぱり誰かが僕を……?」

シリウス「そうだな。事故に見せかけて始末しようとするなら、まずまずいい方法だと言わざるを得ない。
      おまけに、一番怪しいのがゴブレットの近くにいるときた」

ハーマイオニー「怪しい奴?」

シリウス「カルカロフさ。奴は昔、死喰い人だった。ヴォルデモートの部下さ。
      アズカバンに叩きこまれたんだが、司法取引してすぐに出獄したんだ」

マミ「カルカロフ……ダームストラングの校長ね」

ハリー「あの人が――? でも、なんで今更?」

シリウス「ふむ……ここからは推測になるがね。最近、どうも死喰い人の活動が盛んになっている。
      更に魔法省のとある職員が、ヴォルデモートが最後に居たという場所で行方不明にもなった。
      このことから、ヴォルデモートがT.W.Tのことを知っていた可能性がある」

QB「つまり、ヴォルデモートがハリーを殺そうとして、カルカロフに命令した?」

シリウス「可能性としては有り得る話だ。もっともカルカロフは多くの仲間を売ったから、闇の陣営には恨まれている。
      そんな男をヴォルデモートが信用するかどうかは疑問だが……」

マミ「少なくとも、注意だけはしてた方がいいってことですよね」

シリウス「そうだな……だが、もっとも注意すべきはT.W.Tの課題だ。
      名前を入れたのが誰にせよ、ハリーを狙っているには違いない。
      ハリー、第一の課題はもう分かっているのかい?」

ハリー「具体的なことは、何も……勇気を試す課題ってだけで」

マミ「勇気を試す……まね妖怪の群れの中に突っ込むとか?」

シリウス「いや、そんなものじゃないだろう。ここに来る前に少し調べてきたがね、T.W.Tははっきり言って危険だ。
      本当に死者が多い……むしろ死者が出るのを前提にしている節すら……」
979 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/07/04(木) 05:11:38.68 ID:0gckZWHD0

ハリー「……」

シリウス「あ、いや。大丈夫だ、ハリー。私が付いている。今年度はここに滞在するつもりだし――
      私が言いたいのは、だ。課題の内容を事前に調べた方がいい、ということだよ」

ハーマイオニー「それって、カンニングなんじゃ?」

シリウス「カンニングも伝統的かつ常習的に行われてるなら試験の内さ。情報収集というね。
      それに賭けてもいいが、カルカロフは課題の内容を知れば自分の生徒に漏らすだろう」

ハリー「……うーん……でも、どうやって調べたら……」

シリウス「ふむ。こればっかりは私にもな……とりあえず、ダームストラングとボーバトンの動きに注意することだ。
      連中はおそらく、すでに情報収集を始めてるだろう」

ハリー「分かりました。それじゃあ、僕たちはそろそろ……」

マミ「……ハリーくん、もう少し時間をずらした方がいいんじゃない?
   まだ、外はホグワーツの学生でいっぱいだし……」

ハリー「でも、透明マントがあるから――」

マミ「ぶつかったりしたら大変じゃない。ただでさえ変な目で見られてるのに」

ハリー「……うーん。そうか。確かにね。それじゃ、もう少しここにいようか?」

マミ「うん。でも、私とハーマイオニーさんはちょっと学校に用事があるから……先に戻ってるわね」

QB「え? そんな話――きゅっ!?」

ハーマイオニー「……! そういえば、そうね。忘れてたわ。
          でもハリー、あなたも図書館で一緒に本を読みたいっていうなら――」

ハリー「遠慮しておく。僕はここでシリウスと話してるよ」

マミ「ええ、それじゃ、また学校で会いましょう? バタービール、御馳走様でした」


 ガチャ バタン


ハーマイオニー「……なかなか粋なことをするじゃない、マミったら」

マミ「だって、せっかく会えたんですもの。夏休みはあんまり話す機会もなかったみたいだし、ね?」

QB「ああ、そういう……なら、確かに二人きりにしてあげた方がいいかもね」

ハーマイオニー「そうね。それじゃ、私たちはハニーデュークスにでも行きましょうか?
          私は図書館でもいけどね」

マミ「お菓子にしましょう。私、一度誰かとゆっくりあそこを見てまわりたかったの!」
980 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/07/04(木) 05:12:07.69 ID:0gckZWHD0

シリウス「……ハリー、君はいい友達を持ったみたいだ。大事にするんだよ。
      生涯付き合える友人は、得難い宝だからね」

ハリー「友達……そういえば、さっき父さんと喧嘩したことがあるって――」

シリウス「うん? ああ、まあね。仲は良かったが、些細なことが原因で喧嘩することはあった。
      その度にリーマスが間に入って取り成してくれたものだ……」

ハリー「……そういう時は、どうやって仲直りをすれば……?」

シリウス「……ロンの話か。そうだな、私から見て、君たちは非常に仲が良く見える。
      私とジェームズも喧嘩した時はお互いの顔など二度と見たくないと思ったが、結局は仲直りできた。
      その時に、何か特別なことをしたという記憶はないな」

ハリー「特別なことはしなかった……?」

シリウス「互いにほとぼりが冷めて、仲直りがしたいと思えるようになれば自然と機会は来るものさ。
      ハリー、君もそうだろう? 彼と仲直りしたいと思ってるんじゃないかな?」

ハリー「僕は……別に。ただ、ロンが僕の言うことを信じてくれれば……また……」

シリウス「条件付きでも、仲直りしたいと思っているのなら友情は終わっていないのさ。
      心配することはない――といっても、つい心を締め付けてしまうのが友達同士の喧嘩というものだが」

ハリー「……」


『……嫌だね! ハリーが正直に言ったら仲直りしてやってもいいけどさ!』


シリウス「ま、私からアドバイスできるのはこんなところだね。
      とにかく、心配しすぎて体調を崩したりしないようにするのが第一だ」

ハリー「……分かりました。なんとかやってみます」

シリウス「その意気だ、ハリー……なに、君はジェームズの息子だ。必ず仲直りできるさ……
      ああ、そういえば言い忘れていたな。ハリー、来年のことだがね。私の家に引っ越しする手筈だが――」
981 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/07/04(木) 05:12:35.34 ID:0gckZWHD0

 ガチャッ


ハグリッド「すまねえ、ここにハリーがいるってムーディが――し、シリウス!?」

ハリー「ハグリッド?」

シリウス「ハグリッド! やあ、ハグリッドじゃないか! 懐かしいな。
     最後に会ったのは、あのバイクを貸して以来だから――十数年振りってところかな?
     そうだ。あのバイク、まだあるかい? できれば返して欲しいんだが……」

ハグリッド「あ――シリウス。俺ぁ、俺ぁ……」ポロポロ

ハリー「ハグリッド……泣いてる?」

シリウス「おいおい、どうしたハグリッド。久しぶりの再会に感動してくれたのかい?
      それともあれか? 私のバイクを壊したか? まあ十年以上前のだし、それなら仕方ない――」

ハグリッド「違え、そうじゃねえ! シリウス、俺を殴れ! 殴ってくれ!」

シリウス「……穏やかじゃないな。どうしたというんだ、一体?」

ハグリッド「お、俺は、お前さんを疑ってた! お前さんが例のあの人に、ジェームズ達の居場所を漏らしたんだと……
       お前さんは無実だったのに! 無実の罪を着せられる辛さは、俺だってよく知っちょったのに!」

ハリー「……ハグリッド」

ハグリッド「俺を殴ってくれ! さもなきゃ、お前さんに会わせる顔がねえ――」

シリウス「……逆の立場だったら、私も君を疑っていたさ。
     そして、今の君のように泣きながら謝るなんてことはしなかっただろう……頭をあげてくれ、ハグリッド」

ハグリッド「だ、だけどもよぉ……」

シリウス「大体ね、君を殴ったら、私の手の方がイカれてしまうさ。
      だから、どうしても気が晴れないというんなら、そうだな――ここで一杯、付き合ってくれ。
      それでお互い手打ちにしようじゃないか」

ハグリッド「シリウス……ぐすっ、ああ、分かった。
      ロメルスタのママさんに、一番上等な奴を出してもらってくらぁ」

ハリー「待って、ハグリッド。飲む前に、なんでここに来たのか教えてよ。
     酔っぱらって伝え忘れる前にさ」

ハグリッド「おっと、いけねえ……なあハリー。今晩、俺の小屋に来いや。"マント"を着てな」

ハリー「え? それって一体……」

ハグリッド「まあいいから、いいから――おうい! ロメルスタのママさんよ! とびっきり上等の酒をくれ!」
982 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/07/04(木) 05:14:03.76 ID:0gckZWHD0

翌日 暴れ柳下 地下通路


マミ「ドラゴン!? ドラゴンって、あのドラゴン!?」

QB「マミ、声が大きいよ。まあ、誰も聞いてないとは思うけどさ」

マミ「あ、ごめんなさい――でも、ドラゴンでしょ? 魔法生物の中でも、トップクラスに危険な……本当なの?」

ハリー「うん。昨日の晩、僕見たんだ。ハグリッドが教えてくれて……
     選手はひとりにつき一頭割り当てられてて、そいつを出し抜かなきゃいけない」

ハーマイオニー「しかも、それをボーバトンもダームストラングも知ってる……知らないのはセドリックだけね」

ハリー「僕、セドリックにも教えようと思う……だって、それがフェアってもんだろう?」

シリウス「いいぞ、ハリー。素晴らしいスポーツマンシップだ。私も鼻が高い……
      にしても、ドラゴンとはね。提案したのはバグマンだろうな。いかにも奴好みの派手さではある」

ハリー「うん……あれを見て、正直逃げ出したくなったもの。
    僕に死んでほしい奴がこの試合にエントリーさせたって意味がようやく心の底から理解できた……」

QB「ドラゴンって、そんなに危険な生物なのかい?」

ハーマイオニー「ええ。種類によって差はあるけど、成体なら全長は10メートル以上にもなるわ。
          おまけに凶暴で、飼い慣らすことはまず不可能といっていいの」

シリウス「さらに、連中の鱗は大抵の呪文を弾き返す……個人の魔法は通じないと言っていい。
      腕利きの魔法使い半ダースが連携で掛かって、ようやく動きを封じられる、といったところだ」

ハリー「……」

マミ「あの、それってどうすれば……」

シリウス「倒す、のは無理だろう。そもそもそこまでは期待してない筈だ。
      出し抜くというのは隙を作れ、ということかもしれない。それなら……」

ハリー「何か方法があるの?」

シリウス「クァンジャン・クタビアイティス(結膜炎呪い)だ。ドラゴンの弱点は鱗に覆われていない目なのさ。
      そこを攻撃して視覚を封じるのが一番いいと思う。幸い、習得もそこまで難しくないしね」

マミ「……強大な敵を、小さな弱点を突いて撃破する。凄く試練っぽいわ!
   良かったわね、ハリーくん! シリウスさんがいてくれたおかげで、第一の課題はクリアできそうじゃない!」

QB「でもさ、目の見えなくなった凶暴な生物って、滅茶苦茶に暴れると思うんだけど……」

ハリー「……あー」

ハーマイオニー「……確かにね。あの巨体がしっちゃかめっちゃかに暴れたら、それだけで危険だわ」

シリウス「だが、これ以上の策を私は思いつかない。
      ドラゴンの鱗を貫通するような呪文は、そのほとんどが危険な闇の魔術だし……」

マミ「じゃあ眠り薬とかは? 神話では、ドラゴン退治って眠ってる隙に倒すのが定石じゃない」

ハリー「持ち込めるのは杖だけなんだ。それに、どうやってドラゴンに飲ませるのさ?」

マミ「うーん、そっか……」

シリウス「……とにかく、時間もない。私も他の手を考えるから、ハリーは結膜炎の呪いを練習しておくんだ」
983 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/07/04(木) 05:14:38.75 ID:0gckZWHD0

ホグワーツ 廊下


ハーマイオニー「それじゃあ、私とハリーは結膜炎の呪いを練習をしてるから……」

マミ「私も手伝えればいいんだけど……ごめんね。多分、酷いことになると思うから」

QB「課題の前に怪我なんかしちゃったら冗談にもならないしね」

ハリー「気持ちだけで十分だよ。ありがとう、マミ。それじゃ」スタスタ

マミ「……はあ。私も魔法が上手く使えたらなぁ。やっぱり今年も、ちっとも魔法は上手くならないし。
   これじゃ五年生への進級も……」

QB「それは後で考えよう。今の精神状態じゃ魔法の練習も上手く行かないだろうし、マミは宿題でも片付けてれば?」

マミ「そうね……そうしましょうか」

ムーディ「――トモエ。仲間の二人は空き教室か?」

マミ「! む、ムーディ先生……」

ムーディ「ふむ。結膜炎の呪いか……確かに、そいつならドラゴンにも通用するな。
      悪くない。ふむ、確かに悪くはない……」

QB『不味いよ、マミ。さっきの話聞かれてたみたい』

マミ「ああああああ! あの! ドラゴン!? ドラゴンってなんのことです!?
   だってドラゴンなんているわけないじゃないですかホグワーツに!」

ムーディ「……それで隠してるつもりか? なに、別に事前に課題を知っていることを咎めるつもりはない。
      カンニングは昔からずっとあった行為だからな」

マミ「あ……そ、そうなんですか」

ムーディ「油断大敵! わしがそうやってお前さんの自白を待っていたらどうするつもりだ!?」

マミ「えええええ!? そ、そんな……」

ムーディ「……まあ、いいさ。それよりポッターだが、結膜炎の呪いでは成功する確率は低いだろうな」

マミ「……え?」

ムーディ「簡単なことだ。結膜炎の呪いで、ドラゴンは暴れる……
      その隙に出し抜くつもりだろうが、ポッターにはそれが難しいのだ」

マミ「……ハリーくん"には"?」

ムーディ「さよう。ビクトールやセドリックになら可能だろうが。ポッターはあの二人に比べて体格が悪い。
      純粋に身体能力が足りんのだよ。潰されて終いだろうな」

マミ「身体能力って――だってハリーくんはクィディッチの寮代表選手で」

ムーディ「箒に乗るのと、地べたを走り回るのは違う……確かにポッターは箒に乗るのは上手いだろうがな。
      だが、ドラゴンの懐に足で飛び込むのは無謀だ」

マミ「そんな……それじゃ、ハリーくんは……」

ムーディ「……わしは手助けはせん。だが、無暗に生徒を死なせたいわけでもない。
      いまわしが言ったことを、そっくりそのままポッターとグレンジャーに伝えるが良い。別の道を探せ、とな」
984 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/07/04(木) 05:15:06.49 ID:0gckZWHD0

ホグワーツ 透明の教室


マミ「……ってことなんだけど」

ハリー「そうか。ムーディ先生が……あの人が言うんじゃ本当だろうなぁ。
     結膜炎の呪い、結構上手く行きそうだったんだけど……」

QB「どうするんだい? 早く別の方法を見つけないと、練習する時間も……」

マミ「もう一回、シリウスさんに会いに行くのはどうかしら?」

ハーマイオニー「……」

ハリー「ハーマイオニー、君はなにか考えが……?」

ハーマイオニー「……地面はダメ……ハリーは、箒で飛ぶのが上手い……持ち込みは杖だけ……」ブツブツ

ハリー「……ハーマイオニー?」

マミ「どうしたの?」

ハーマイオニー「――もしかしたら、いい方法が浮かんだかもしれないわ」
985 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/07/04(木) 05:15:57.15 ID:0gckZWHD0

 二日後 第一の課題 会場 観客席


 ざわざわ ざわざわ


マミ「つ、ついに本番ね……ハリーくん、大丈夫かしら」

QB「必要な呪文は習得できたんだ。あとはハリー次第だろう」

ハーマイオニー「大丈夫……きっと、大丈夫よ。とにかく、いまは席に座りましょう」

マミ「えーと、開いてる席、空いてる席……あ」

ロン「あ――」

ハーマイオニー「はあい、ロン。隣、空いてるなら座ってもいいかしら?」

ロン「……見ての通り空席だよ。どうぞ」

ハーマイオニー「そう、どうもありがとう……ほら、マミ。座りましょう?」

マミ「ええ……ありがとう、ロンくん」

ロン「別に、君たちの為に取っておいたわけじゃないから……お礼を言われる筋合いもないよ」

QB「ロン、もう課題の内容は発表されたのかい?」

ロン「いいや、これからだ。バグマンが、さっき選手のテント――ほら、あそこ――に入って、
   課題の順番を決めるクジを引かせに行った。たぶん、帰ってきてからじゃないかな」

マミ「そうなの……ハリーくん、心配ね。大丈夫かしら……」

ロン「大丈夫だろ。今年は安全が配慮されてるって言ってたし……」

ハーマイオニー「それは年齢制限を設けたことでしょう? なら、ハリーは安全じゃないわ」

ロン「どうかな――ほら、バグマンが出てきた。きっと大したことない課題だよ」

バグマン「ソノーラス!(響け)――さあ、紳士淑女の諸君! 長らくお待たせした!
      さて、記念すべきT.W.T、第一の課題は――」


 バサッ


ドラゴン「グルルルゥウウウウ……」


バグマン「なんと! ドラゴンだぁ!」

ロン「――はああああああああああああああああ!?」ガタッ
986 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/07/04(木) 05:16:44.08 ID:0gckZWHD0

「ど、ドラゴン!? マジモノのドラゴンだ!」「どこから運んできたんだ!?」「おい、観客席もやばいんじゃないか?」


バグマン「第一の課題は、このドラゴンが守る金の卵を、どうにかして掻っ攫うこと!
      手段は問いません! ただし持ち込みは杖一本のみ! 果たして選手達はどう立ち向かうのか!」

マミ「あ、あれがドラゴン……実物を見ると、凄い迫力……」

ロン「言ってる場合かよ! おい、よりにもよってドラゴンだ!? んなもん学生にやらせる課題じゃないよ!」

ハーマイオニー「……そうね。しかもよりによって、営巣中の雌ドラゴンだわ」

ロン「な、なんだい、それ。ドラゴンはドラゴンだろう?」

ハーマイオニー「どんな動物でも、子を守る時期の雌は凶暴よ。ましてドラゴンなら……」

マミ「そ、そんな……ねえ、ハリーくん、本当に大丈夫なのかしら?」

ロン「そ、そうだよ! あんなのに当たったら、いくらなんでもハリーが死んじまう!
   僕、止めてくる! 馬鹿な真似はやめろって――」

ハーマイオニー「馬鹿なのはあなたよ、ロン。忘れたの? ハリーはもう棄権できないの。
          魔法契約を破ったら、ドラゴンの鼻をくすぐるより悲惨な目に遭うんだから」

ロン「そんな――だって、こんな危ない競技だなんて――僕、知らなかった……」

ハーマイオニー「……とにかく、ここまで来たらあとはもう応援するしかないわ。
          一応、対策はしたけど、結果は天のみぞ知るってところね」
987 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/07/04(木) 05:17:44.63 ID:0gckZWHD0

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バグマン「さあ! いよいよラストです! これまでの三人の選手も素晴らしいプレーを見せてくれました。
      彼にも期待しましょう! ラストはこの人、ハリー・ポッター!」


ハリー「……」


ロン「ああ、ハリー……ドラゴンと比べると凄く小っちゃく見える……丸呑みにされちまうよ!」

マミ「み、見るのも怖い……けど、見なきゃ……」

QB「今はまだ大丈夫だ。これまでの試合を見る限り、営巣中のドラゴンは滅多に卵から離れないみたいだし……」

ハーマイオニー「ハリー、頑張って! あなたならきっとできるわ!」


ハリー「――アクシオ! ファイアボルト!」


バグマン「おおっとこれは――呼び寄せ呪文だ! その手があったか!
      呼び寄せたのは箒です! 彼は最高の乗り手だと聞いております――素晴らしい機転だ!」

ロン「そ、そうか! 箒に乗ったハリーなら卵を掠め取れる! なんてったってグリフィンドールのシーカーだもんな!
   スニッチに比べたら、あの卵なんてデカいし動かないしで楽勝さ!」

QB「でも、ビーターよりドラゴンの方が鉄壁の守備だと思うよ」

ロン「あはは、キュゥべえ。君はハリーとファイアボルトを甘く見過ぎ――」



ドラゴン「グルアアアアアアアアアアアア!」

ハリー「っ!」


バグマン「あーっと! 尻尾が直撃――い、いや、掠めた! 危ない! 危なかった!
      あれを避けるとはさすがだ! うむ、素晴らしい飛びっぷりです!」

ロン「ハリィイイイイイイイイ! 死ぬな! 躱せ! 躱してくれ!」

マミ「あ、血が、血が一杯……」

ハーマイオニー「もっと上よ! 上に引き付けて……!」
988 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/07/04(木) 05:18:48.93 ID:0gckZWHD0


ハリー「……フリペンド!(撃て)」バシュッ


バグマン「ここで反撃! ノックバックジンクスだ! だがその程度の呪文ではドラゴンには通じない!
      かえって怒らせるだけだ! これはマイナスか――い、いや! 何かの作戦かもしれないな!」

ロン「あああああもおおおおお! 何やってるんだよハリー! 焦るな! いつもの君はどうした!
    隙を狙って急降下だ! それ!」

マミ「怖い怖い怖い……!」

ハーマイオニー「いえ、作戦通りよ! ほら、ドラゴンが!」


ドラゴン「ガアアアアアア!」バサッ


バグマン「飛んだぁあああああ! ドラゴンが飛びました!
      どうやら攻撃されたことで、卵を守るために外敵を排除しに動いたようです!
      さあ、デッドレースが始まる! ドラゴンが火を噴き――ナイス回避! 避けます!」

ロン「ああああ! やばいやばいやばい! これやばいんじゃないの!?」

マミ「……っ」

バグマン「先ほどの攻撃はこれを狙ったものか! なるほど! 確かにドラゴンは卵から離れました!
      しかし、ドラゴンも敵が回り込むことは許さない! ポッター君が巣に向かうことを阻むように飛ぶ!
      また火を吐いた――これまた躱した! だがこのままだとジリ貧だ!」

ロン「ハリー……!」

マミ「凄い、ドラゴンの火を躱しながら、上昇してる……」

ハーマイオニー「そこよ! ハリー! やりなさい!」


ハリー「……よし、作戦通り。高度は稼げた。当たってよ――クァンジャン・クタビアイティス!(結膜炎呪い)」


 バシュッ


ドラゴン「!? ギャオオオオオオオン!?」グラッ


バグマン「あー、あれは……高すぎてよくわかりませんが……誰か万眼鏡を寄越せ!
      ――拡大、再生……結膜炎の呪いだ! ドラゴンに対して定石ともいえる効果的な一手!
      ですが、なぜそれなら最初から――いや、まさかこれは!?」


ドラゴン「アアアアアアアアアアアア!?」


バグマン「落ちた! 身をくねらせながら、ドラゴンが落ちていきます! なるほど、これを狙ったか!
      ドラゴンの攻撃を躱して空を飛べるほどの箒乗りにしかできない、まさにファインプレー!
      そして、墜落するドラゴンの運命は……」


 ズウウウン!


ドラゴン「……」


バグマン「……素晴らしい! 気絶だ! ドラゴンを倒した! ポッター君がドラゴンを倒しました!
      まさかドラゴンを掻い潜るのみか、倒してしまう選手が出るとは! これは満点以外有り得ない!
      そしていま、悠々と卵をキャッチした――!」

ロン「よっしゃああああああ! 見やがれ! なにがドラゴンだ! これがハリーの実力だ!」

マミ「お、終わった? ハリーくん、大丈夫?」

QB「うん、いま着地して、救護のテントに入って行ったよ」

ハーマイオニー「良かった……怪我も大したことないみたいだし、これで……」

ロン「テントに行こう! ハリーに会いに行かなきゃ!」ダッ

マミ「あ、ちょっと待って! 待ってったら――!」
989 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/07/04(木) 05:20:03.51 ID:0gckZWHD0

救護テント


ハーマイオニー「ハリー、やったわね! 素晴らしかったわ! 本当に、すごい!」

マミ「ねえ、怪我は大丈夫? 包帯巻いてあるみたいだけど……」

ハリー「マダム・ポンフリーのお陰で、もう痛くもないさ。それより――」

ロン「……」

ハリー「……ロン」

ロン「ハリー、僕、僕――こんな危ないなんて知らなかった。名前を入れた奴は、絶対に君を殺そうとしてると思う」

マミ「……!」

ハリー「……ようやく気づいたってわけ?」

ロン「……うん。だいぶかかっちまったけど」

ハリー「長すぎるよ……」

ロン「……」

ハーマイオニー「……」

マミ「……」

ハリー「だから、まあ――今度また喧嘩したら、もっと早く仲直りできるようにしようよ。お互いにね」

ロン「……ハリー! 本当に、君が助かってよかった!」

ハーマイオニー「……もう! 男の子って、なんでこんなに馬鹿なのかしら! 意地っ張り!」

ロン「ああ、ハーマイオニーに、マミも! 僕ったらひどいこと言っちまって――」

QB(ハーマイオニーが言えたことじゃないと思うなぁ……)

ハーマイオニー「ねえ、マミ? そう思うでしょ……マミ? どうしたの?」

マミ「……う、ううん。安心したら、なんだか膝が震えちゃって……」

ロン「そりゃあ、あんな試合だったもの! 僕も試合中は怖くて何度目を瞑りそうになったか!」

マミ「う、うん……それも、あるけど……」

マミ(実際に見て、言葉だけじゃなく、本当に理解できた……この試合は、本当に危ないんだ。
   さっきロンくんが言った通り、誰かが、本当に、ハリーくんを殺そうとしてる……)

マミ(一体"誰"が? "どうやって"? "何の目的で"――?)



 パ サ ッ



ロン「? マミ、なんか落としたよ……なんだい、これ。羊皮紙のきれっぱし?」

マミ「え? 私、そんなもの持ってたかしら……?」
990 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/07/04(木) 05:21:03.90 ID:0gckZWHD0

「……マジかい、これ。信じられないよ。だって、あいつが……」

「でも、理屈は合う……と思うわ。シリウスの話にも符合するところがあるし……」

「それに、これの情報はいままで正確だった。今回だけ間違いを送る意味ってあるかな?」

「そりゃそうだけどさ。じゃ、どうする? まさか真正面から聞くかい?
 小さく折りたたまれて弁当箱に詰められるのがオチさ」

「確かにね……私達四人がかりでも無理でしょうし……特に私なんか、周りを巻き込みそうだし……」

「誰かに協力を求めるのはどうかな?」

「駄目ね。信じて貰えないと思う。差出人不明の情報なんかじゃなく、もっと確実性のあるものじゃなければ……」

「……ひとつだけ、考えがあるよ。あのね――」

「――なるほど! そりゃいいアイディアだ! それなら丸わかりだもんな!」

「あ、あの、それって一体――」

「そっか、君は知らなかったっけ。あのね、ハリーのお父さんが――ああ、駄目じゃないか!
 これを説得に使ったら、終わった後で取り上げられちまうよ!」

「……そうか。確かに、そうだね」

「でも、緊急事態なんだし――」

「おいおい、これは形見みたいなもんなんだぞ! それを取りあげられるって、どうだい?」

「それは――そうだけど。じゃあどうするのよ?」

「……これを使って説得出来て、なおかつ没収しない人間を探せばいいんじゃないかな?」

「そんな都合のいい人、いるのかしら……?」

「……いる! 三人だけいるよ!」
991 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/07/04(木) 05:21:34.34 ID:0gckZWHD0

第一の課題後 夕食 大広間


ダンブルドア「さて、まずは無事に第一の試練が終わったことを喜ぼう!
        選手諸君は英気を養い、次の試合に備えるべし!
        その他の諸君も、今日は随分と肝を冷やしたことじゃろう。同じく、英気を養うためにも――」


ダンブルドア「思いっきり、掻っ込め!」


 ざわざわ ざわざわ


ネビル「凄いよね! ハリー! あのクラムと同点で一位だよ!」

シェーマス「カルカロフの糞野郎があんな点数を出して無けりゃあ一位だったぜ、絶対!」

ハリー「あはは、ありがとう――ごめん。僕ちょっと、ムーディのところに行って来なきゃ……」ガタッ

ディーン「ムーディ? なんでだよ、このお祭り騒ぎの中、なんでわざわざ気分を落ち込ませに行くんだ?」 

シェーマス「さあな……なあ、ロンは何か知って……あれ、ロンがいないぞ?」

ネビル「……そういえば、ハーマイオニーとマミもいないや。どうしたんだろう。ハリーが一位なのに……」
992 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/07/04(木) 05:22:32.29 ID:0gckZWHD0

ムーディ「……」グビッ

ハリー「ムーディ先生! 僕、僕、一位で――」

ムーディ「……む。ポッターか。確かにめでたいが、なぜそれをわざわざ言いに来た?」

ハリー「先生のお陰です。僕、先生のアドバイスがあったから――」

ムーディ「アドバイス? 知らんな。わしはお前には無理だと言ったんだ。それを克服したのはお前の努力だよ、ポッター」

ハリー「それでも、ありがとうございます。僕、将来は闇祓いを目指そうかと……」

ムーディ「ふぅむ……例の授業で、もっとも厄介な呪文に抵抗できたのはお前だけだったしな。
      素質はあるだろう、確かに……だが、わしにそれを言ってもコネにはならんぞ?」

ハリー「いえ、他にも先生に聞きたいことがあって――その、先生がいつも持ってる酒瓶」

ムーディ「これか? これがどうした?」

ハリー「はい。一体、何が入っているのかな、と思って……」

ムーディ「……」

ハリー「――よければ、少し貰えませんか? ほんの一口分だけでいいので」

ムーディ「……ふぅむ。ポッター……」


ムーディ「それを断れば、もしやお前の後ろに透明になって隠れている三人が襲いかかってくるわけじゃあるまいな?」


ハリー「……ばれた!」


 バサッ


ロン「レラシオ!(放せ)」

ハーマイオニー「ペトリフィカス・トタルス!(石になれ)」

マミ「ステューピファイ!(麻痺せよ)」

ハリー「エクスペリアームス!(武器よ去れ)」


 パン! パン! パン! パン!

993 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/07/04(木) 05:23:11.25 ID:0gckZWHD0

ムーディ「……」


マミ「――きゃっ!?」ドサッ

ロン「杖が……透明マントも無駄かよ!」

ハリー「でも、呪文を唱えてもいないのに?」

ハーマイオニー「……! 無言呪文! それで、四種類の魔法全てに反対呪文を……!?」


 ざわざわ ざわざわ


ダンブルドア「……」

マクゴナガル「何事です! 四人とも! 教師に杖を向けるなど――」

ムーディ「何だ貴様ら! 敵か! 敵だな! ならば記憶を失うがいい! オブリビエ――」

マクゴナガル「!? ムーディ、やめ――」


ジョージ「エイビス!(鳥よ)」

フレッド「オパグノ!(襲え)」


 バサバサバサ!


ネビル「うわっ! 鳥が!? 鳥の群れが、ムーディ目掛けて――」



ムーディ「エバネスコ!(消えよ)」


 パン!


ジョージ「……分かってたけど、足元にも及ばないってショックだな」

フレッド「まあしょうがないだろ、あのムーディ相手だし」

ムーディ「貴様らもか! 一体何人いるというのだ!? まとめて吹き飛ばしてくれる――」


シリウス「――なに、これで最後さ」
994 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/07/04(木) 05:24:30.63 ID:0gckZWHD0

ムーディ「……! シリウス・ブラック! 貴様、いつの間に!」

シリウス「お前の目が全てを見通すといっても、一度に見れるのは一か所だけだろう!?」

ムーディ「……! 餓鬼は全部囮か!」

シリウス「アクシオ! 酒瓶よ、来い!」

ムーディ(反対呪文が――くっ、間に合わん!)

シリウス「と、ナイスキャッチ。これを……ああ、そこの君。ちょっと失礼」

ネビル「え? え? なんでここにシリウス・ブラックが――むぐっ!?」ガポッ

シリウス「安心しろ。毒は入ってない――むしろ、もっとおぞましいものだが」トクトク

ネビル「……ごくん! あ、の、飲んじゃった……なんだこれ、煮すぎたキャベツみたいな……」

スネイプ「……! もしや、あれは……」

ネビル「……え、なんか、体の奥が熱く……」


 シュウウウウ!


シェーマス「ね、ネビルが……」

ディーン「ムーディになっちまった!?」

ネビル=ムーディ「う、うわっ! 足がない! ば、バランスが!」ヨロッ
995 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/07/04(木) 05:25:06.59 ID:0gckZWHD0

シリウス「ポリジュース薬だ。他人に変身できる……さて、ムーディ。こんなものを飲んでいるあなたは一体"誰"だ?」


「お、おい。どういうことだよ」「わけが分からない……」「ムーディが……ムーディじゃない?」


ムーディ「……」

マクゴナガル「ムーディ、これは一体……?」

ムーディ「……」チラッ

ハリー「……!」

ムーディ「……アバダ・ケダブ――!」バッ

マクゴナガル「――エクスペリアームス!(武器よ去れ)」


 バシュッ!


ムーディ「――ガハッ!」

マクゴナガル「……言った筈です。私の生徒に手を出せば、次に弾むのは貴方だと」
996 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/07/04(木) 05:26:09.79 ID:0gckZWHD0

カルカロフ「だ、ダンブルドア! これはいったいどういうことだ! こいつ、いま、死の呪いを――」

マクシーム「せつめーい、を、おねーがいしまーす!」

バグマン「ムーディ……とうとう完全に頭がイカレたのか? そして、なんでここにシリウス・ブラックが?
      いや、そもそも生徒の方が先に攻撃を……」

クラウチ「……」

ダンブルドア「……ミネルバ、済まぬがこの場を頼む。セブルス、一番強い真実薬をムーディに。
         尋問せよ。そやつは本物のムーディではない」

マクゴナガル「分かりました、アルバス」

スネイプ「……了解しました」

ダンブルドア「尋問が終わるまで、この大広間から誰も出してはならぬ――
         さて、襲撃に加担したものは隣の教室に来てもらおうかの。色々と聞きたいことがあるでな」

ハリー「……なんとか上手く行ったね」

ハーマイオニー「ああ、ハリー。最後にムーディがあなたに死の呪いを掛けようとしたとき、もう駄目かと――」

ロン「七人がかりでぎりぎりか……危なかったよなぁ」

ハリー「フレッド、ジョージ。協力してくれてありがとう――」

フレッド「なあに。僕らは信じるべきものを知ってるからね。」

ジョージ「ああ。ムーニー、ワームテール、パッドフット、プロングズをな」

シリウス「……直接そう言われると照れるな。まあ、我らが"地図"は完璧だからね。
      奴の"本名"を映し出すくらい朝飯前さ」

QB『……さて、これからが大変だよ。例の"送り主"のこと、信じて貰えればいいけど』

マミ『……ええ。でも、きっと大丈夫よ』
997 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/07/04(木) 05:26:41.62 ID:0gckZWHD0

"いつか" 見滝原



 ――繰り返す。私は何度だって繰り返す。


 目が覚める。いつもの病院のベッドの上。

 暁美ほむらの胸中を満たすのは、また駄目だったという悔恨と、今度こそという希望。

(まどか――今度こそ、絶対に貴女を救って見せる)

 さあ、行動を開始しよう。全ては鹿目まどかとの約束を果たすために。


998 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/07/04(木) 05:27:12.64 ID:0gckZWHD0

◇◇◇


 暁美ほむらは魔法少女である。

 契約の願いは、鹿目まどかとの出会いをやり直すこと。固有魔法は時間操作。

 まどかをインキュベーターと契約させないために、無事にワルプルギスの夜を超えさせるために。

 暁美ほむらは、同じ一ヶ月を幾重にも繰り返している。

 百を数え、千を超え、万を踏破し、億を歩む。

 既に最初の記憶は錆色の彼方。それでも、鹿目まどかを守るという一点。その一点だけは曇らない。

 そうして、彼女は再びループに挑む。


◇◇◇
999 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/07/04(木) 05:27:42.25 ID:0gckZWHD0

 カオス理論。バタフライエフェクト。

 風が吹けば桶屋が儲かるという言葉と同じ理屈で、小さな要因が予想だにしない巨大な結果を招く現象。

 だが幾度もループを繰り返せば、ある程度は結果に対する要因を把握することもできる。


ほむら「……これで、美国織莉子の件はクリア」


 無事に不法侵入と器物破損をやり遂げ、私は背後の高級住宅を振り返る。

 美国議員に通じる、とある男――どんな関係だったかは忘れてしまったが、まあ、どうでもいい。

 重要なのは、その男の家の寝室に、三日三晩連続で豚の血をぶち撒けると、美国織莉子は契約しないという点だ。

 何故そうなるのか――その理由も、これまたどうでもい。とにかくこれで美国織莉子がまどかを殺そうとすることはないのだから。

 結果的にこの家の男はノイローゼで入院するし、呉キリカは寂しい中学校生活を送ることになるだろうが、構わない。

 まどかとの約束を果たす為なら、他人のことなどどうでもいい。

 ノイローゼになろうが、入院しようが、その果てに自殺を試みようが、私の知ったことではない。


 それからも、私は次々と障害を排除していった。

 ループを繰り返すうちに判明した、まどかが契約してしまう要因の排除。

 さらにはまどかに近づく、インキュベーターの排除。

 もはやほぼ定石通りとなっている最適行動を取りながら、私は、僅かな違和感に顔をしかめた。


ほむら(……魔女の結界の位置が……違う?)


 私はグリーフシードを孕んでいる魔女をリストアップし、その魔女だけを効率的に狩るようにしていた。

 だが、今回のループに置いては、そのリストが役に立たないのだ。

 結界の位置や中にいる魔女が違ったり、果てはリストに符合する魔女でもグリーフシードを落とさないことがある。


ほむら(……これも、何らかの要因から発生したバタフライエフェクト?)


 とりあえず、その日までの行動を全てメモに書きだす。

 もしも次回以降のループで同じ現象が起きるなら、その原因を特定しなければならない。

 無論、このループで終わりになるのが、一番良いのだが。
1000 : ◆jiLJfMMcjk [saga]:2013/07/04(木) 05:28:11.52 ID:0gckZWHD0

 次に違和感を覚えたのは、見滝原中学校に編入した時だった。

 この編入は、自然と日中の半分以上をまどかの監視に利用できるので、逃す手はない。


ほむら「暁美ほむらです」


 教壇の前に立ち、簡潔な自己紹介を済ませる。

 代わり映えのしない、なんの変哲もないクラス。確認の意味で、私はまどかをその視界に収め……


ほむら「……!?」


 その背後に座る人物を見て、思わず息を呑む。


さやか「……ね、ねえ。あの転校生、恭介のことめっちゃ睨んでない? なんかした?
     トーストくわえて捨て身タックルとかしてない?」

恭介「え、いや――そんな覚えはないけど」

ほむら(上条、恭介――?)


 馬鹿な、と思う。

 彼は本来、交通事故に遭い、全治半年以上の怪我を負って入院している筈だった。

 そのせいで美樹さやかが契約してしまうことが多々あり、結果としてまどかを巻き込んでしまう要因にもなっていたのだ。

 だが、それが何故……?
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      'イ::`:::lヘハヽ.__´/  ヽ_    j___!________|___!__j   .ノヘ.____
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