らき☆すたSSスレ 〜そろそろ二期の噂はでないのかね〜

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142 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2013/05/27(月) 22:06:03.27 ID:poQK37ra0
>>141
読まれていないのが分かった。
これでスッキリしたので続きを書かせてもらいます。
>>139で書いた通りで時間がかかりますのでご了承を。


まとめサイトの「つかさの一人旅」のコメントに「面白くない」
と書かれたのを切欠に続きを作ろうと思ったので最初からこのシリーズは面白くないのかもしれない。
天の邪鬼かなw

作品の投下やお題の提供、過去作品の感想などもお気軽に書き込んで下さい。

コンクールの主催者も募集しています。

以上
143 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2013/05/28(火) 20:01:35.80 ID:he4aJn/H0
今更感はあるのだが……
このサイトの避難所におすすめ推奨スレがあり、
「耳そうじ」
http://www34.atwiki.jp/luckystar-ss/pages/77.html
が二票入っています。
もし特段の反対がなければおすすめリストの中に加えたいと思うのですが
よろしいでしょうか?

週末まで特段の反対がなければ加えます。
沈黙も賛成とみなします。

この機会におすすめリストに加えたい作品がありましたらどうぞ。

管理者より


144 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2013/05/31(金) 23:11:50.49 ID:gcmDUFB10
それでは「こなたの旅」の続きを投下します。5レス使用します。
145 :こなたの旅7 1/5 [saga sage]:2013/05/31(金) 23:14:18.63 ID:gcmDUFB10
 私が私物を整理して店を出ようとした時だった。
かえで「あやのにアドバイスした様ね」
かえでさんが出口に居た。私を待っていたのだろうか。
こなた「アドバイスなのかなあれは……」
かえで「あやのは接客を全部こなたに任せてしまったからね、これで少しは気合をいれてくれると思う」
こなた「任せたのかな、私は結構面白かったかな」
かえで「トラブルを楽しんでいる……そういう所、ひよりに似ている、あんた気を付けなさい、余計なところまで首を突っ込むと怪我をするわよ」
こなた「ん〜今度はそんな簡単じゃなさそうだから余計な事をする余裕ないかも……」
かえで「そう願うわ……神崎あやめか……こなたを使うなんて、さっき貰った補償金は使わないつもりだから安心しなさい」
こなた「そうだよね、多すぎだよ、まさか本当に渡すとは思わなかった」
かえで「こなた、あんたは自分を知らなさ過ぎだ、それはつかさに似ている」
こなた「へ?」
かえでさんは溜め息をついた。
かえで「ふぅ、私も私なりに神崎さんの事をいろいろ調べたわ、かがみさんに聞いたり、彼女の記事を読んだりしたね……思っていたほど分らず屋でもなさそうね、
    道理を弁えている、私達の秘密を話しても大丈夫なような気がする」
こなた「……げんき玉作戦をちょっと話してしまったけど……信じてくれなかった……」
かえでさんは目を大きくして驚いた。
かえで「話した……そんな話しをしたって事は、今しようとしている事ってそれに関係しているのか?」
それは言えない……私は黙って俯いた。
かえで「……口止めされているみたいね、それ以上聞くのは止めるわ……彼女が信じないのは彼女の常識や固定観念が邪魔しているからかもしれない、こなたに大金を動かせる
    力は常識じゃ考えられない、多分お稲荷さんの話しをしても同じ、彼女は作り話と考える、それならそれで私達には好都合よ、無理に秘密にする必要はない」
こなた「……そう言われると少し気が楽になった」
かえで「さぁ、神埼さんが待っているわよ、一ヶ月間、私達の事は忘れなさい」
こなた「う、うん」
私は店を出た。

 駐車場に行く途中つかさの店の横を通る。なんでもなければ挨拶をしに店に入る。だけど……それは出来ない。今つかさに会ったら神崎さんの取材の事を話してしまいそうだから。
秘密、内緒……か、
つかさ「こなちゃん?」
こなた「ひぃ〜」
跳びあがって驚いた。
こなた「つ、つかさ、驚かさないで……ふぅ」
つかさ「え、普通に声を掛けただけど?」
不思議そうに首を傾げていた。
こなた「あ、そ、そうなの、で、でもね、後ろから急に声を掛けると驚くでしょ」
つかさ「ふふ、そうかも、ゴメンね」
まなみ「こんにちは〜」
直ぐ後ろにまなみちゃんが居た。
こなた「今日はまなみちゃんと、何かあったっけ?」
つかさ「うん、近々ピアノの発表会があってね、まなみは上がり性だから私の店のピアノで克服しようってみなみちゃんが……」
こなた「ふ〜ん、店のお客さんに聞かせてなるべく実際に近い状態で練習するって訳か」
私がまなみちゃんを見るとつかさの陰に隠れてしまう。あらら、普段はそんな子じゃないのに……この辺りはつかさの娘って感じがする。。
こなた「って、事はみなみも来るのかな?」
つかさ「うんそうだよ、こなちゃん、寄って行かない……あ、何か用事がありそう?」
私の姿を見てそう思ったのか。それもそのはず。私はスーツを着ているから。私は頷いた。
つかさ「それじゃ悪いね、まなみ、行こう、こなちゃんまたね」
つかさはまなみちゃんの手を引いた。私がまなみちゃんに手を振ると恥かしそうに小さく手を振った。
この件がなければ私はつかさの店に行っていたな……

146 :こなたの旅F 2/5 [saga sage]:2013/05/31(金) 23:15:57.21 ID:gcmDUFB10
 駐車場に着くと神崎さんが首を長くして待っていた。
あやめ「おそい!!……キー貸してくれるかな、私が運転するから」
こなた「私だって急ぐなら急ぐなりの運転できるけど……」
あやめ「泉さんには車で書いてもらいたい書類があるから、移動中に書いて」
こなた「書類?」
あやめ「履歴書、レストランかえでに就職する前の履歴を書いて欲しい」
神崎さんに車のキーを渡した。そして私は助手席に座った。。
あやめ「それじゃ行くよ」
神崎さんはゆっくりと車を走らせた。制限速度を守った模範的な運転だった。実はこれが結局一番早く着く、わかっているなこの人……
履歴書を書いている時だった。運転しながら話しかけてきた。
あやめ「駐車場に来る前、子連れの女性と話していたでしょ、随分親しそうだったけど誰なの?」
つかさと話していたのを見られていた。さすがにそつがない。
こなた「柊つかさ、高校時代からの親友」
なんの躊躇もなく答えた。かえでさんのアドバイスもあったかもしれない。それ以前につかさは私の友達だから……
あやめ「柊……つかさ……つかさ、貴女の店の隣にある洋菓子店の名前は確か……」
こなた「うん、洋菓子店つかさ、彼女が店主だよ」
あやめ「そ、そうだったの、私はてっきり店主は男性だとばかり思っていた、店の名と不一致でおかしいとは思っていたけど……」
こなた「彼はつかさの旦那でひろし」
神崎さんは暫く考え込んだ。
あやめ「最初あの店に行ったらやけに他人行儀だった、そんなに親しい仲なのに……不自然」
やっぱりこう来たか。いちいち勘が鋭いな。
こなた「そうそう、ひろしはその前まで私に無愛想だった、つかさがそれを注意したから、例え親しいくてもお客さんだよってね」
あやめ「ふふ、そ言う事なの、羨ましい、高校時代からの友人が近くに居て、店も競合していていいライバルじゃないの?」
こなた「まぁね、ちなみに副店長も高校時代の友達だよ」
あやめ「そうなの……」
何の疑いを抱いていない。自然な会話になった。実際に言っている事は本当だからかもしれない。かがみに嘘はつくなって言われたけどその通りだな。
 暫く履歴書を書いていて疑問が出てきた。
こなた「レストランかえでの私の履歴以外は何故空白なの、私の出身大学、生年月日、住所くらいなら調べられるんじゃないの?」
あやめ「私が他人のプライベートを調べる時はその人が大罪を犯したかその疑いがある人だけ、貴女はそんな疑いはない、自分のプライベートを覗かれるのは気持ち良いものじゃない、
    貴女もそう思うでしょ?」
こなた「う、うん、そうだね……履歴書全部書いたよ……」
あやめ「ありがとう、封筒に入れておいて……もう少しで着く、これから店の面接試験を受けてもらう、もちろん普段通りの泉さんで良い、結果は即日解るから、それとね……」
神崎さんは面接の中尉時点を話した。短期採用とは言えかえでさんの店以外で働くのはアルバイトの時以来になる。もちろん受かればの話しだけど。
 神崎さんは私を調べていないのに意外だと思った。この人は何でも徹底的に調べる人かと思ったけどプライベートに関しては慎重だった。
そういえば私がギャルゲーをしているのも否定していなかった。なんだかんだ言って私が彼女の言う事を聞いているのはそんな態度があったからかもしれない。
すると彼女はゆたかと私が従姉妹関係あるのを知らないのかもしれない。私を目当てに店に来た訳じゃないのか。
私の様な人を探していたのか。余計この記者が分からななった。
……でも悪い人じゃないってのは分かった。

147 :こなたの旅F 3/5 [saga sage]:2013/05/31(金) 23:17:04.43 ID:gcmDUFB10
 あれから一週間が経った。私は喫茶店のホール長をしている。
コスプレ喫茶と言っても店員がコスプレをしているだけで内容は普通の喫茶店だった。コスプレの内容は店員の趣味で自由に決めて良い。ただし、露出度の高いものは厳禁だ。
スタッフは私より若いのが殆ど。私は普段と同じようにしているつもりだったけどあっと言う間にホール長になってしまった。私自身も驚いてしまったほどだ。
正直言って面接試験で落とされると思っていたのに……
店で働くのは別にたいした事じゃなかった。それより難しいのがこのビルにあると言う貿易会社の資料室を探すこと。
このビルで働く人は全てIDカードを渡されて入退場を厳しくチェックされている。無闇に動き回れない。
幸いな事に私は材料の入庫管理も任されていたのでビルの倉庫までの通路なら何の制限もなく移動する事ができた。それでも各部屋の扉は部屋番号しか書いていないので
どんな部屋なのかは全く分からない。私が調べただけでも20の部屋があった。
私は自宅から通勤した。だってわざわざ一ヶ月のために引っ越したくなかったから。
神崎さんは近くビルの近くのホテルに泊まり私の報告を待っている。
仕事が終わると神崎さんの泊まっているホテルで待ち合わせをしている。報告のために。
彼女の部屋で作戦会議だ。
あやめ「番号だけの部屋が20……」
こなた「うん、扉の造りはみんな同じだし、中は覗けないし、もう調べようがないかな……」
あやめ「何言っているの、まだ一週間しか経っていないのに音を上げるのはまだ早い、それにこの期間でこれだけ調べられたのは評価に値する」
こなた「そうかな、部屋を数えただけなんだけど……」
神崎さんは腕を組んで考え込んだ。私は考えてもしょうがないのでテレビのスイッチを入れてテレビを見た。丁度夕方のアニメをやっていた。あ、懐かしいのをやっている。
暫くすると神崎さんはリモコンでテレビを消した。
こなた「あっ、いまいいところだったに〜」
あやめ「泉さん、部屋に出入りする人物の特徴とか分からない?」
私の言う事なんてまったく聞いていない。目を輝かせている。何か思いついたのかな。
こなた「特徴って?」
あやめ「例えば貴女みたいに作業服を着ているとか、スーツ姿だったとか」
こなた「……スーツ姿の人なら何箇所が出入りしているのを見かけたけど……」
『バン!!』
両手で机を叩くと身を乗り出して私に近づいた。
あやめ「それ、それ、それだ……凄いじゃない、もう絞り込めたじゃない」
こなた「へ、意味が分からない、教えて?」
あやめ「泉さんの用な従業員の控え室なら作業服や制服を着た人が出入りする、資料室ならホワイトカラーが多く出入りする、そう思わない?」
こなた「え、でもずっとその扉で張っていた訳じゃないし……それに作業服を着た人だって資料室に入るじゃん、掃除とか……メンテナンスとか……」
神崎さんは微笑んだ。
あやめ「そうそう、そうやって注意深く考えながら観察して、例えば防犯カメラの数が多い所とかね」
こなた「そんな事出来ないよ」
あやめ「その調子で今後ともお願いって事、わずかか一週間でここまで進展するとは思わなかった」
こなた「明日は休みだけど……」
あやめ「そうだった……明日は何も出来ない……」
神崎さんは立ち上がった。
こなた「どうするの?」
あやめ「明日はビルの周りを調べる……その前に下準備をする」
この人は休むことを知らないのかな。
こなた「そんな事しても何も分からないよ、それより違うことをしたら?」
あやめ「違うこと、違うことって何?」
こなた「例えば家に帰るとか、もう一週間帰っていないでしょ」
あやめ「一週間くらい帰らないなんてザラ、珍しくもない」
こなた「それなら尚更帰らなきゃ」
あやめ「だから、どうして」
なんだ分からないのかな。洞察力と観察力が凄いと思ったのに。こう言うのはさっぱりだな。
こなた「神崎さんのお母さん、正子さんが心配してる」
あやめ「な、何を言い出すと思えば……子供じゃあるまいし、そんなんでいちいち帰って……」
私はちょっと悲しい顔をして見せた。
あやめ「……分かった、分かったからそんな顔をしないで」
こなた「そうそう、そうこなくちゃ」
あやめ「そのセリフは……ふふ、やられた……」
私達は笑った。
あやめ「泉さんはどうするの」
こなた「私はちょっと用があるから」
あやめ「そう、それなら明後日、同じ時間にここで会いましょう」
こなた「うん」
 明日はみゆきさんと会う約束をしている。本当は神崎さんと一緒に正子さんに会いたかったけど……

148 :こなたの旅F 4/5 [saga sage]:2013/05/31(金) 23:18:40.35 ID:gcmDUFB10
 次の日、私はみゆきさんの家を訪ねた。みゆきさんは結婚しても実家から出ていない。つかさと同じように婿養子みたい。と言っても近藤と姓を変えている。
何でも研究所が近いからと言う理由で家を出ていない。夫婦二人で研究に没頭している。もちろんその研究はつかさが作った万能薬の再現。
みゆきさんと会うのはつかさの演奏会以来。何年ぶりにかな〜
久しぶりに電話をしたらすぐにOKを出してくれた。
みゆき「本当にひさしぶりですね、泉さんお変わり無いようですね」
こなた「みゆきさんこそ、全然変わっていないジャン」
私はみゆきさんのお腹をじっと見た。
みゆき「あ、あの、何か?」
こなた「赤ちゃんは未だなの?」
みゆきさんは首を横に振った。
こなた「研究も良いけど、たまには愛し合わないと……折角結婚したのに……」
みゆき「そうですね……でも、今までの苦労がそろそろ実が結びそうです」
こなた「もしかして、薬?」
みゆき「はい」
みゆきさんはにっこり微笑んだ。
こなた「凄い、いつ発表するの?」
みゆき「まだその段階ではないですけど……臨床試験とかいたしませんと……」
こなた「そうなんだ、ややこしいね」
みゆき「致し方ありません、それが現実です」
こなた「しかしつかさも罪だよ、作り方くらいメモっておけば良かったのにね」
みゆき「いいえ、つかささんはヒントを沢山頂きました……それにこれはお稲荷さんの知識、私達にとっては遥か未来の技術です、それを横取りするのですから……」
こなた「堅い事は言わない、言わない」
みゆきさんは笑いながら立ち上がった。
みゆき「所で、先日頼まれた件なのですが……」
こなた「どう、思い出せそう?」
私はみゆきさんに旧ワールドホテル本社ビルで資料室がありそうな場所がないかどうか前以て聞いていた。みゆきさんは以前あのビルに入ったことがある。
もちろんつかさやかえでさんもも入っている。つかさに聞くのも良いだろう。でもつかさは地図を読めるようにはなったけど一度や二度で場所を覚えられるまでには至っていない。
それにそんな質問をしたらつかさに取材の話しをしてしまいそうで恐かった。もちろんみゆきさんにも言ってしまうかもしれない。
只、みゆきさんは他の誰よりも口が堅い。それでみゆきさんを選んだ。
なんか私って二重スパイをしているみたい……お稲荷さんの秘密、げんき玉作戦、そして神崎さんの取材の秘密か、つかさと同じように旅をしたいなんて思っていたけど

149 :こなたの旅F 5/5 [saga sage]:2013/05/31(金) 23:22:22.36 ID:gcmDUFB10
Dこれじゃ冒険だな……
みゆき「……旧ワールドホテルの会長室くらいしか覚えていません……すみません」
会長室か、今はどんな部屋になっているのかな。もしかしたら……
こなた「うんん、謝らなくてもいいよ、10年以上前の事を思い出せなんてのが無茶だった……その会長室って何階なの?」
みゆき「……ごめんなさい……」
そうだよね。階数を覚えていたらもっと細かい所まで覚えているよね。
こなた「無理言っちゃったね、もういいや、折角久しぶりに会ったのだかからもっと楽しい話題にしよう」
みゆきさんは目を閉じて両手で頭を押さえて考えていた。
みゆき「ちょっと待って下さい……35……確か35階だったような気がします」
35階……働いている店のすぐ上、それによく通る階だ。これは調べてみる価値がありそう。
こなた「流石みゆきさん、ありがとう」
みゆきさんは私を不思議そうな顔をして見ていた。
みゆき「いったい何があったのですか、何故今になって旧ワールド本社ビルを調べているのですか?」
そう言われるとそうだ。どうやって言い訳するかな……考えているのになにも出てこない……これは予想できた事なのに、まったく……つくづくバカだな私って……
こなた「え、えっと、まぁ、なんて言うのか……ひよりが新しいネタをだね……」
ますますドツボにはまっていく……
みゆき「神崎あやめ記者と何か関係あるのですか?」
こなた「うぐ!!」
な、なぜ知っている。私は目を見開いて驚いた。
みゆき「……かがみさんから伺っています、取材に来られた様ですね」
かがみが教えたのか。
こなた「ご、ごめん……詳細は話せない……」
みゆき「話せない深い事情があるのですか……私に何か手伝いができれば良いのですが……」
こなた「あ、もう充分に役に立ったよ、うんうん、ありがとう……なんかお邪魔しちゃったからもう帰るね……」
私は帰りの支度をし始めた。
みゆき「待って下さい……」
帰り支度を止めた。
みゆき「今まで黙っていましたけど……そろそろ話しても良い頃だと思います」
急に厳しい顔つきになったみゆきさん。こんな表情を見るのは初めてだ。
こなた「急に改まってどうしたの?」
みゆき「旧ワールドホテル……今は貿易会社のビルになっています……数年前から私は独自に調べていました……どうも腑に落ちない点がありまして……」
こなた「腑に落ちない点?」
みゆきさんは立ち上がると本棚からファイルを取り出しA4サイズの紙を取り出し私に渡した。
そこには表が書いてある。これってどこかで見た事あるような……この数字は……数字自体は覚えていなけどなんとなく分かった。
こなた「貿易会社における過去十年間の特許取得数……」
みゆき「タイトルを書いて居ないのに……分かるのですか?」
こなた「あ……なんだろうね、今日はとっても勘がいいみたい……ははは」
まさか本当にその表だったとは。みゆきさんも神崎さんと同じように貿易会社を調べていたのか。何で?……
みゆき「その通りです……おかしいとは思いませんか、ワールドホテルと同じペースで特許を出し続けられるなんて……」
神崎さんと同じ所を調べている。みゆきさんは何故おかしいと思うのかな……さっぱりだ。
こなた「私に聞かれても……どこが変なの?」
みゆき「ワールドホテルはけいこさんがお稲荷さんの知識を小出しにして特許を得ていました……それと同じ事を貿易会社がしています」
こなた「貿易会社がお稲荷さんの知識を小出しに……って、え?」
みゆきさんは頷いた。
みゆき「貿易会社にお稲荷さんが居るとは思いませんか?」
こなた「ちょ、ちょっと待って、お稲荷さんは四人しか地球に居ないよ、まさか、あの四人があの会社に秘密を教えてるって言いたいの?」
みゆきさんは首を振った。
みゆき「いいえ、それは無いでしょう」
150 :こなたの旅F 6/5 [saga sage]:2013/05/31(金) 23:23:26.54 ID:gcmDUFB10
こなた「それじゃ五人目のお稲荷さんが居るって言いたいの、それはないよ、あの時私はめぐみさんに確認した、三人地球に残るって……パソコンにそう登録した
    最後に一人、ひろしが戻ってきて四人……残りの十六人はみんな故郷の星に帰った」
みゆき「……あの時の総数が間違えていたとしたらしたら、地球に二十一人のお稲荷さんが居たとしたら」
こなた「間違え?」
みゆきさんは頷いた。
みゆき「お稲荷さんは十数年前まで総数二十一人でした、つかささんが一人旅をする前までは……」
こなた「何が言いたいの、分からないよ、もったいぶらないで教えて」
みゆきさんはゆっくり口を開いた。
みゆき「真奈美さんです、真奈美さんが生きているのではないか、私はそう思っています、何らかの理由で彼女は貿易会社に囚われているのではないかと」
囚われている……神埼さんも同じ事を言っていた。
こなた「みゆきさん、推理が飛躍しすぎだよ、死んだ人を出したらだめだよ……」
みゆき「私もそう思います、でも本当に彼女は亡くなったのでしょうか、つかさんをはじめ誰一人彼女の遺体を見ていません、それにつかささんの財布に大切に仕舞ってあるあの
    葉っぱ……今でも術が施され衰えていません……私はそれをずっと頭の中で引っ掛かっていました」
こなた「で、でもね、ひろしはその真奈美さんの実の弟だよ、いくらなんでも生きていればその存在に気付くと思うけど……それにまなぶさんはつい最近までお稲荷さんだった、
    その力は現役そのもの、生きていれば分かりそうだけど……」
みゆき「そうですね……私もその矛盾がどうしても克服出来ません……私の心の中に生きていて欲しいと言う願望が抱いた空想にすぎないのかもしれません」
項垂れてしまった。
こなた「今の話しはつかさに絶対に言っちゃだめだよ、つかさは今でも真奈美が死んだのは自分のせいだと責めているから……
    話していい加減な期待をさせたらつかさが可愛そうだよ……結局死んでいるのが分かったら今度こそ再起不能になっちゃうかもしれない」
みゆき「は、はい……そうですね、確かにつかささんには酷な話しです……」
みゆきさんがまさか神崎さんと同じように貿易会社を調べていたなんて。それでほぼ同じような推理をしている。
貿易会社の特許の内容なんて私には難しすぎて分からない。でも、みゆきさんがお稲荷さんの知識と考えたのであれば……もしかしたら……真奈美じゃないとしても本当に
五人目のお稲荷さんが居るって事なのかな……私の見たあの狐に似た野良犬……これって偶然?
だとしたら何故ひろし達は気付かない。五人目のお稲荷さんが勘違いだとしたら、
お稲荷さんじゃないとしたら貿易会社に知識を提供している人って誰?
みゆき「どうか致しましたか?」
こなた「え、あ、ああ、なんでもない……」
私の足りない頭じゃ何も分からない……
みゆき「その件についてはもう少し深く調べてみます」
こなた「え、う、うん……」
私達はいったい何を調べようとしているのだろうか?

つつく
151 :こなたの旅F 6/5 [saga sage]:2013/05/31(金) 23:26:47.58 ID:gcmDUFB10
以上です。 予定レス数をオーバーしてしまいしまた。

次回は潜入取材後編です。

ペースが遅くてすみません。この先はまったく書いていないので(毎回だけど)
遅くなります。

152 :こなたの旅F 6/5 [saga sage]:2013/05/31(金) 23:42:25.16 ID:gcmDUFB10

此処までまとめた

前から宣言した「おすすめリスト」に「耳そうじ」を加えました。

追加要望は随時受け付けています。
153 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2013/05/31(金) 23:44:01.52 ID:gcmDUFB10
>>151-152
タイトル消すのを忘れました。
154 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/06/16(日) 07:48:50.44 ID:xTUnpMLR0
それでは「こなたの旅」の続きを投下します 5レスくらい使用します。
155 :こなたの旅G 1/5 [saga sage]:2013/06/16(日) 07:50:32.18 ID:xTUnpMLR0
G
 みゆきさんは死んだはずの真奈美と言い、神崎さんはもう地球に居ないけいこさんとめぐみさんだと言う。
貿易会社に知識を教えているのは一体誰なのだろう。二人の結論は違うもののお稲荷さんで共通している。神崎さんにいたってはお稲荷さんの存在を知らないのに。
二人が同じ結果を出したって事は……
五人目のお稲荷さん……もしかしたら本当に居るのかもしれない。
私もあの野良犬を見た時そう思った。まぁ、みゆきさんと神崎さんと比べれば説得力に欠けるかもしれないけど……現につかさに笑われちゃったし……それはさて置き……
ひろし達が何故気付かないのも置いておいて、取り敢えず五人目のお稲荷さんは居るのではないかと私は結論した。
神崎さんの取材は私にとっても重要になった。あの貿易会社は秘密がある、どうも胡散臭い。
取材をなんとしてでも成功させたいと思ったのであった。

 次の日、仕事を終えると神崎さんの泊まっているホテルに向かった。早速みゆきさんの思い出した会長室の話しをする。
あやめ「三十五階……」
私は頷いた。
あやめ「旧ワールドホテルの会長室が35階ってどうやって調べたの、ワールドホテルの時の見取り図はいくら探しても手に入らなかった」
どうやって……そう聞かれると言い難いな。
こなた「実際に中で働いていると分かることもあるんだよ」
神崎さんはじっと私を見る……この人に適当な返事をすると突っ込まれそうで恐い。かがみのツッコミと違ってカミソリみたいに尖っている。
あやめ「……昨日単独で調べたでしょ?」
そら来た、まったくその通りだから困ってしまう。
こなた「……う、うん……」
神崎さんの表情が険しくなった。やばい。
あやめ「私を母に会わせて置いて自分は一人で取材ですか……それを出し抜くって言うの」
こなた「別にそんなつもりは……」
あやめ「それに単独で行動して何かあったら私はあの店長に怒られてしまう、今度からは軽率な行動は止めて」
みゆきさんに会うのは別に危険な行動じゃないけど……でも、神崎さんから見ればそう見えてしまうのか……
こなた「分かった……ごめんなさい……」
神崎さんは一回溜め息を付いた。そしてニヤリと笑った。
あやめ「ふふ、凄い、凄いじゃない、私が何年も探している場所をたった一週間で探し当てるなんて、やっぱり私の目に狂いはなかった、よくやった泉さん」
こなた「え、でも、会長室が資料室になっている証拠はまだ何も……」
あやめ「いや、会長室が資料室になっている所までは私も突き止めていてね……そこまで見抜くなんて、取材の素質あるじゃない」
こなた「ぐ、偶然だよ……そう、全くの偶然……」
偶然にしては出来すぎている。この後の展開が恐い。
あやめ「さて、これからが本当の取材、私が部屋に潜入する機会を探して欲しい」
こなた「潜入してどうするの、もしかして何かを盗んだりするとか……」
あやめ「その言い方、人聞きが悪いよ」
神崎さんは鞄からUSBメモリーを取り出した。
あやめ「これでデータをコピーする」
こなた「それって、違法なんじゃないの?」
あやめ「取材の為なら少々の危険は覚悟の上、だから私がする」
この人……目的の為なら手段を選ばないタイプだ。ある意味ゆたかに似ている。それより神崎さんが心配だ。
こなた「……資料室のパソコンを使うのか……多分サーバーと直結しているからデータをコピーするのは簡単かもしれない、だけどね、あの手の施設は大抵履歴が残るように
    成っているから後でコピーしたのがバレちゃうよ」
神崎さんは私を不思議そうに見た。
あやめ「泉さん……ITに詳しいみたいね、見たところ理系じゃ無さそうなのに……どこでそんな知識を?」
う、しまった。やばい。
こなた「わ、私ってゲームが好きだから、それでね……」
あやめ「そう言えばそんな事言ってたっけ、実は私もゲームは好きでね……こういった知識は持っているから心配しないで、履歴を残さないで作業するくらいの事は出来る」
心配するのはそれだけじゃないけど……これ以上話すとやばそうだから止めておこう。
こなた「それなら良いけど……」
あやめ「それより、35階に行けそう?」
こなた「ん〜、今は無理っぽい、一般人は入れないしね、何かイベントとかあればそれに紛れて入れるかもしれないけど」
神崎さんは壁に貼ってあるカレンダーを見た。
あやめ「あと四週間でそんなイベントがあるかしら……」
こなた「分からないけど、あれだけ大きなビルなら一つや二つはありそう」
あやめ「それじゃ私もそれを探す、泉さんはビルの中で探して」
こなた「うん」
今日の打ち合わせは終り、私は帰り支度をした。
あやめ「ところで泉さんはギャルゲーの他にどんなゲームをするの?」
こなた「RPG、シューティング、格闘、オンライン……何でも……かな」
あやめ「……オンラインはやったことがない、あれは無駄に時間を使うでしょ?」
こなた「あれを無駄とか思ってちゃったらプレイ出来ないよ」
あやめ「ふふ、そうね……ゲームの他には何か趣味はあるの?」
あれ、何で私の個人的な事を聞いているのだろう。
こなた「……漫画も見るかな……」
あやめ「まさか、少年誌とか?」
こなた「……少年誌、少女マンガ、同人……何でも、ちなみにアニメもよく観る」
あやめ「……同じような好みだ、ギャルゲーを除いてね……」
それはそうだろうね、コミケに参加するくらいならそんな気はしていた。
でも……ひとつ聞きたい事があった。今後の神崎さんの行動にも関わる重要な事。
こなた「それはそうと……今回の取材が成功したら雑誌に載せる?」
あやめ「そんなの聞くまでもない、それが私の仕事」
そうだよね、でも、その言葉はあまり聞きたくなかった。
こなた「神崎さんが記者じゃなかったから、良い友達になれたかも……」
あやめ「え、それはどういう意味?」
神崎さんは目を丸くして驚いた。どう言う意味か……それは言えない。言えばこの取材はその場で終わってしまう。
こなた「それじゃ、帰るね、また」
あやめ「え、ええ、また明日……」

156 :こなたの旅G 2/5 [saga sage]:2013/06/16(日) 07:51:56.61 ID:xTUnpMLR0
 神崎さんじゃなくて私が資料室のパソコンを操作すれば難なくデータは手に入るだろう。だけど、そんな事をすれば私がITを使って巨額のお金を動かせるのが
彼女に分かってしまう。そうなったら、彼女は私をどう見るのだろう。この事を世間に公表しちゃうのかな。
そうなったら、私はどうなるのかな。逮捕されてしまうのかな……私のした事って正しかったのかな……
ふとゆたかが私にひよりの記憶を消した話しを思い出した。
机の奥に仕舞ったUSBメモリー……あの時以来触っていない。めぐみさんから貰ったものだ。
その気になれば公共機関データを改ざんしたりまったくでっち上げも作れたりする。ひろしに柊の姓を役所のデータに入れたのも私。
億万長者になれるし、誰かを陥れる事だってできる。その気になればだけど……
お稲荷さんの力か……ゾッとする。私達が安易に扱える代物じゃない。今頃になってその力の大きさに気付いてしまった。
ゆたかが眠れない日があるって言っていたけど。今、まさに私はその状態になっていた。

こなた「ふぁ〜」
スタッフ「泉さんが仕事中に欠伸なんて……初めてみました、徹夜でもなされたのですか?」
こなた「え、ま、まぁね……最近眠れなくって……」
スタッフ「心配事でも?」
こなた「うんん、そんなんじゃないよ」
二週間目を超えると周りのスタッフも私に慣れてくる。私も慣れてくる。
日常会話も頻繁にするようになった。
さすがに資料室に潜入するのは難しい。大きなイベントを探しているが私が働いている間にはどうやら無さそう。作戦の立て直しが必要なのかもしれない。
丁度お昼ぐらいだろうか。数名のスタッフがコソコソしているのに気付いた。私がそこに近づいた。
こなた「どったの?」
スタッフ2「あの、あれを」
彼女が指差す方を向いた。店の入り口に一人佇んでいる。
長髪の髪を下ろしサングラスをかけている……
スタッフ3「怪しい……警備員……うんん、警察を呼ぼうかしら」
確かに怪しい。怪しいけど……あれは……かがみ、かがみじゃないか。
なんでこんな所に来ている。しかも一人で。挙動不審そのものじゃないか……辺りをきょろきょきょと見回している。
なんだあれは、あれで変装しているつもりなのか……やれやれ。
こなた「警察呼ぶのはまだ早い、私が対応するから……」
スタッフ達を別の仕事をさせておいて店の入り口に向かった。
こなた「よこそ……どうしましたか?」
かがみ「え、あ……」
私を見て硬直してしまった。私だと気付いていないみたいだ。コスプレをしているとは言え顔の方はほとんどいじっていないのに。相当テンパってるな……
こなた「ご来店ならどうぞ……」
私はドアを広く開けた。
かがみ「あ、ありがとう」
私はかがみを席に案内した。
こなた「ご注文が決まりましたら……」
かがみ「あ、アイスコーヒーを……」
あらら、ここのシステムを全然分かっていない。
こなた「……すぐに注文したらダメだよ、か・が・み」
かがみ「え?」
かがみは見上げて私の顔をじっと見た。
かがみ「こなた?」
かがみはサングラスを外した。
こなた「ふふ、それで変装したつもりなの、まったく……日本人がサングラスなんかしたら目立つに決まってるジャン?」
かがみ「う、うるさい……こなたこそなんでこんな所にいるのよ……」
小声で話すかがみ。やっぱりお忍びだったか。私も小声で話した。
こなた「話せば長くなるし、話せない……」
かがみ「……それなら放っておいてちょうだい……」
ここで長話をしているのも不自然だな。
こなた「はい、アイスコーヒーですね……」
かがみ「あ、待って……」
席を去ろうとするとまた小声で私を呼び止めた。私は立ち止まった。
かがみ「今日の夕方……空いている?」
こなた「うん……1時間くらいなら」
かがみ「昔あやのが働いていた喫茶店で待っているから……」
そういえばあやのもこのビルで働いていたっけ……すっかり忘れていた。
私は頷いて厨房に向かった。
ビルの内情ならみゆきさんじゃなくてあやのに聞いた方がよかったかな……ってか最初からあやのに潜入させれば良かったのでは……
否。
今更代われないよ。あやのは途中から入ってきた。それにお稲荷さんが関係しているし、やっぱり私がしないといけない。
それに神崎さんは指定をしたのは私なのだから私達から人員の変更なんて出来るわけがない。

157 :こなたの旅G 3/5 [saga sage]:2013/06/16(日) 07:53:04.04 ID:xTUnpMLR0
 仕事が終わりあやのの働いていたいたと言う喫茶店に向かった。
店に入るとかがみの居場所は直ぐに分かった。サングラスは外してあるけど服装は変えられないか。黒尽くめのスーツにネクタイ。どうみてもマトリ〇クスだ。
こなた「クスッ!!、お待たせ」
かがみの目の前で思わず吹いて笑った。
かがみ「な、なによ」
不機嫌な顔のかがみ。私は席に座った。
こなた「それって変装、仮装、それとも趣味なの?」
かがみ「……変装よ、完璧だと思ったのに……あのビルだと私は知られ過ぎているから……あまり派手な格好は出来ない」
充分派手だけどね……そんな時は普通私服の普段着でいいのに。
こなた「その知られすぎている所にわざわざ出向くって事は何かの調査なの、かがみって探偵もしてるんだ?」
かがみは首を横に振った。
かがみ「そんな事なんてしていない、みゆきに頼まれたのよ……調べて欲しいってね……」
こなた「みゆきさんの個人依頼か……」
かがみ「こなたこそなんであの店に居たのよ、見たところ従業員みたいだけど、かえでさんのレストランはどうした、さては大失敗をして解雇されたか」
そうかかがみはまだ知らないのか。てかこれは秘密作戦だ。でも解雇されたってのはちょっとね……
こなた「……ちょっと一ヶ月間くらい研修でね……」
かがみは私をじっと細目で見た。
かがみ「研修ね……それにしてははまっていた……まさか神埼あやめと関係あるんじゃないでしょうね!?」
ぐ、鋭いな……かがみもいい加減な返答は出来ない。
こなた「ないない、全くないよ、うんうん、研修、研修」
かがみは更に目を細めて疑いの眼(まなこ)で睨んだ。
かがみ「そうやって必死に否定するのが怪しい」
こなた「そ、そんな事よりもさ、久しぶりに逢ったんだし、もっと楽しい話しをいしうよ、この前会ったのはつかさの演奏会だったよね」
かがみ「え、もうそんなに経ったかしら……」
こう言う時は話題を変える。それしかない。
こなた「経ったよ、お互い会う機会が減ったよね」
急にかがみの表情が悲しくなってしまった。
かがみ「そうね、こなた、みゆき、あやの……みさお……ひより……ゆたかちゃん……そして……つかさ……」
こなた「え、つかさって、お互いの家はそんな遠くもないのに会ってないの?」
かがみ「結婚してから急にね……何故かしらね、それまでは目覚めてから寝るまで気付くといつも隣に居たのに……今じゃ理由がないと会いにいけない……
    それは両親や姉さん達も同じよ……まるで他人になってしまったみたい……今じゃつかさはこなたの方が会う機会は多いわよね」
こなた「そんなに考え込む事じゃないよ、お互い家庭を持てばそうなるのは当たり前じゃん、私だって引っ越していた時はお父さんと会えなかったし」
かがみ「こなたは単純で羨ましいわ……」
単純ね、でも、複雑の方が優れているとは限らない。
こなた「それじゃ単純になればいい、妹に会いに行くのに理由なんかいらない、ゆい姉さんだって今でも週に一回は遊びにくるよ、そんなに会う理由があるとは思えないけどね……」
かがみ「成実さん……そうなの……」
こなた「会わない日が長引くとそれだけ会い難くなるから、会いたいなら会いに行けばいいだけ」
かがみは狐に摘まれた様な顔をして私を見た。
かがみ「フッ……こなたにしては良い事言うわね……その通りかもしれない」
こなた「「しては」は余計だよ!」
かがみが笑った。そういえばこんな笑顔を見るのも久しぶりかもしれない。学生時代の記憶が蘇ってきた。
それからの私達は学生時代の話題に花が咲いた。

158 :こなたの旅G 4/5 [saga sage]:2013/06/16(日) 07:53:58.83 ID:xTUnpMLR0
 気付くとかがみに会ってから1時間が過ぎようとしていた。楽しい時間はあっと言う間に過ぎてしまうもの。神崎さんに報告する時間が近づいてきた。
こなた「ごめん、もうそろそろ時間……」
かがみ「本当だ、時間が経つのは早いわね……もう少し残れないの」
こなた「うん……」
かがみ「なによ、誰かと会う約束でも……あぁ、もしかして彼氏?」
こなた「いや、そんなんじゃない……」
かがみ「別に無理に否定なんかしなくても、恥かしがる歳でもないでしょうに……こなた、あんた結婚するきあるの?」
こなた「ん〜〜〜分かんない」
かがみは溜め息をついた。
かがみ「ふぅ、あんたねぇ、もう少し自分の将来の事を……」
話すのを止めて暫く私をみてから微笑んだ。
かがみ「まぁ、それで良いのかも知れない、こなたらしくて良いわ、私も夫と……ひとしと出会っていなかったら……そう思うとこなたを責められない、こればっかりは
    縁だからどうしようもないわ」
こなた「そう言ってくれると私も気が楽だよ……かがみは稲荷さんの旦那だもんね、凄い縁だよ、つかさがくれた縁だよね」
私は帰り支度をした。それをかがみはじっと見ていた。
かがみ「こなた……もう少し時間いい?」
こなた「なあに?」
私は支度をしながら話した。
かがみ「みゆきの話しは聞いたと思うけど、あんたはどう思う?」
私は帰り支度を止めた。
こなた「話しって、真奈美が生きているかもしれないって?」
かがみは頷いた。
かがみ「みゆきに見せてもらったデータを見て驚愕した、パターンがワールドホテル時代と全く同じなのよ、もう既にある物を順番に出しているとしか思えないほどよ、
    これはどう考えてもお稲荷さんじゃないと出来ない、私もそれはみゆきと一致した……だけど、真奈美さんが生きているとなると……分からないわ」
こなた「データについてはさっぱりだから答えられないけど、真奈美に関していえばもしかしたら……なんて思う事もできそうだよね……他にお稲荷さんが残っていなければだけどね、
    かがみの旦那さんには話したの?」
かがみ「話したけど……データを見ただけでは何とも言えないって……」
こなた「……だからかがみは調べているの?」
かがみは頷いた。
かがみ「そうよ、もし、万が一、真奈美さんだったら助けなければならないでしょ、うんん、例え別のお稲荷さんだったとしてもね、そうじゃないとけいこさん達が
    地球を去った意味がなくなるじゃない」
こなた「そうかもしれない、だけど今は何も分からないよ……」
……私達は同じ目的で貿易会社を調べている訳か……
かがみ「そうね、もう少し調べないといけない、でも、私ではこれ以上調べられないわ」
かがみは暗く沈んだ表情をした。
こなた「35階の資料室にその答えがありそうなんだけど……なかなかセキュリティが厳しくてね、あのビルで大きなイベントとかないかな?」
かがみは目を大きく広げて驚いた。
かがみ「あんた、一体何をしようとしているの……35階ってこなたが働いていた店のすぐ上じゃない……」
こなた「それで、イベントは在りそうなの?」
秘密だから言えない。分かって欲しい……かがみ……私は目で訴えた。
かがみ「……話せないのは訳ありのようね……良いわ、調べてあげる、その代わり、後でちゃんと話してもらうわよ」
こなた「ありがとう……」
かがみ「分かっても分からなくても毎日今と同じ時間でこの店で待っているわよ、それで良い?」
こなた「うん、それでいい、最後に変装するなら普段着でね」
かがみ「分かってるわよ、いちいち五月蝿い!!」
私は伝票と鞄を持った。
こなた「ふふ、今日は私の奢りだよ、それじゃ明日ね」
私は足早に店を出た。時間に遅れると神崎さんに怪しまれる。

159 :こなたの旅G 5/5 [saga sage]:2013/06/16(日) 07:55:04.87 ID:xTUnpMLR0
 D神崎さんを35階に入る方法……かがみやみゆきさんの知恵を借りても難しい、それよりも資料室にどうやって入るのか。こっちの方が10倍くらい難しい。
資料室の場所は直ぐに分かった。防犯カメラが3つもその部屋の扉に向けられている。それに特別なカードか何かがないと鍵を開けられないようだ。
こなた「大企業の秘密を知ろうなんて、やっぱり無理がありすぎ、私もこれ以上調べたらバレそう……今朝警備員に呼び取れられたから怪しい怪しまれているかも」
あやめ「もう少し……もう少しなの、35階にさえ行ければ……」
こなた「35階に入れても資料室にどうやって……?」
神崎さんは鞄からカードを取り出した。そして不敵な微笑を浮かべる。
あやめ「ふふ……資料室のカードキー……」
こなた「え?」
あやめ「このカードキーがあれば資料室のドアを開けてしかもセキュリティを解除できる、しかも防犯カメラも停止する」
こなた「そんな物を何時の間に?」
あやめ「もう数年前から手に入れてある、あとは潜入するだけ、場所もある程度までは分かっていた、あとは潜入方法を探していた……
    入るチャンスは一回きり、このキーを使えば泉さんがこの前言った通り履歴が残る、だから二回目はない……泉さんが怪しまれているならもう
    無理はしなくていい、これ以上調べる必要はないから、あとは私が何とかする、残りの日数はそのままあの店で働くのもよし、レストランかえでに戻るのもいい、好きにして」
あの店と資料室が近かったのは偶然じゃなかったのか。この人は数年前から資料室の場所を調べていた。何故、この人はここまでして調べようとしているのかな。
囚われている人を助けるためだけでこんなに時間とお金を掛けるなんて。プロの記者だから……それだけなのかな……
うんん、それはどうでもいい。私も知りたい。囚われているのがお稲荷さんかどうか。そしてその人が真奈美なのかどうか。やっぱりここで止めるなんて出来ない。
こなた「ここまで私を使っておいてそれはないよ、最後までやらせて」
あやめ「……でも危険な事はさせない約束だから」
こなた「それは神崎さんとかえで店長の約束でしょ、私は安全じゃないと嫌だなんて一言も言ってないよ、それにそのカードキーがあるならもう35階を調べる必要はないよね、
    部屋に入れるチャンスだけ探せば危険はないよ」
神崎さんは考え込んだ。
あやめ「……そうね、確かにそれだけ探すなら危険はない、当初の約束通りの期間は続ける」
こなた「うん、それでいい」

 残り一週間。
お店は休日。特に用がなければつかさの店にでも遊びに行くのだが、半月以上も店に出ないでいきなり訪ねたら理由を聞かれるに決まっている。
それにかえでさんが終わるまで来るなって言っていたっけ。
でも……休日とは言えソワソワして何も手につかない。漫画を読んでもすぐに飽きるし、ゲームをする気にもなれなかった。
かと言って取材の続きなんて出来るわけない。もうこのまま一週間が過ぎてしまうのだろうか。
『コンコン!』
ドアのノックする音。
こなた「ほーい?」
そうじろう「かがみさんがお見えだが……」
かがみが私に……わざわざ家に来るなんて。なんの用だろう。アポも取らないなんて珍しいな。
こなた「部屋に通してくれるかな」
そうじろう「分かった」
暫くするとまたノックの音が聞こえた。
こなた「開いてるよ」
勢い良くドアが開いた。
かがみ「おっス、こなた!」
なんだ、珍しくテンションが高い。
こなた「連絡くらいしてよ、もし出かけていたらどうするの」
かがみ「どうせ出かける気もないくせに」
高校時代のノリそのままだな……かがみは私の座っている椅子の前に座った。
かがみ「どうなの、こなた、進展はあったの?」
こなた「そんな事話せる訳ないじゃん……まったく、何しに来たの、冷やかしなら帰ってよ……」
かがみ「そうね、機密事項だったわね、それなら尚更ぞんざいな態度はできない」
こなた「え?」
私が少し驚いた顔をすると不敵な笑みを浮かべ鞄から何かを出した。
かがみ「あんたの働いている店の同じ階に本屋さんがあるでしょ、そこでサイン会があるのよ」
こなた「サイン会……そんなの聞いてない、誰のサイン会なの、よっぽどマイナーなんだろうね……」
かがみ「……貞子麻衣子って言っても分からない?」
こなた「さだこまいこ……それって、ゆたかとひよりのペンネームじゃ……も、もしかして……」
かがみ「ふふ、灯台下暗しってこの事ね……招待状が私に届いてね……会場を見てビックリした、あんたも招待状着てない?」
しまった。郵便物はノーチェックだ。机の横に積まれた郵便物をひっくり返して調べるとかがみの持っている物と同じ郵便が出てきた。
こなた「テヘッ!!」
舌を出しててへぺろをした。かがみは呆れた様に溜め息をつく。
かがみ「ふぅ……やっぱりこんな事だろうと思った、電話で教えても渡せないから来たのよ」
かがみは招待状を私に差し出した。
こなた「え、何?」
かがみ「何、じゃないわよ、使いなさいよ、どうせ裏で神崎あやめが居るのは分かってるから、こなた一人であの店に雇ってもらえるとは思えない、履歴書とかどうやって書いた?」
こなた「ぐっ!」
何も反論出来なかった。
かがみ「私も貿易会社に興味がある、きっと何か大きな陰謀があるに違いない、それにお稲荷さん……真奈美さんが絡んでいるとしたら見過ごせない、何か証拠を掴めば
    ひとしも動いてくれる、きっとすすむさんやまなぶさん……ひろしもね」
私は招待状を受け取った。
用を終えるとかがみは忙しそうに帰って行った。きっと仕事に子育てに忙しいのだろう……

 かがみが帰ると部屋はし〜んと静まり帰った。
招待状をじっと見た。神崎さんはゆたかを取材している。コミケで漫画を買うくらいなのに本屋さんでサイン会をするなんてすぐに調べられそうな気がするのに何故知らない?。
いや、ゆたかの事だから神崎さんに招待状を送ったかもしれない。郵便の消印は丁度二週間前になっている。神崎さんの家にも同じくらいの日に届いているに違いない。
神崎さんは家に帰っていない。だから知らないのかも。
すると神崎さんは正子さんに会っていない……嘘をついていたのか。どうして……。
こっちの方も問い質さないといけない。

つづく

160 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2013/06/16(日) 07:56:59.05 ID:xTUnpMLR0
以上です。

次回はどうなるのかな? 何も考えていない。

161 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2013/06/16(日) 08:02:51.03 ID:xTUnpMLR0

ここまで纏めた
162 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2013/06/23(日) 05:29:19.26 ID:FwNZN6xO0
保守
こなた「暇だね」
かがみ「そうね」
こなた「誰もこないね」
かがみ「そうね……」
こなた「静かだね……」
かがみ「……そうね」
こなた「あの、相槌ばかりしてないでたまには何か言ってよ」
かがみ「そうね……ん?」
こなた「ありゃらら、それだから誰も来なくなっちゃったんだよ」
かがみ「なんだと、全部私のせいかよ!!」
こなた「うん」」
かがみ「自分の事はたなにあげてなに言っているの」

保守でした。
163 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/06/29(土) 21:05:09.93 ID:yEHDPHfR0
それでは「こなたの旅」のつづきを投下します。

今回は4レス使用予定です。少し短めです。
164 :こなたの旅H 1/4 [saga sage]:2013/06/29(土) 21:07:11.41 ID:yEHDPHfR0
H
あやめ「サイン会……?」
私は大きく頷いた。神崎さんは何も言わず目を大きく見開いたまま招待状を見ていた。
こなた「開催日は私の雇用期限日と同じ、しかもその日は休日で事実上もうあの店とは縁が切れるから私も自由に動けるよ、35階の資料室まで案内してあげる」
『ヒュ〜♪』
神崎さんは口笛を吹いた。
あやめ「やるじゃない、私が見込んだ通りの仕事じゃない、非の打ち所がない、よくやってくれた」
こなた「……まだ終わっていないよ、それを言うなら全部終わってからにして……」
神崎さんは微笑んだ。
あやめ「ポーカーフェイスのその冷静さも良い、レストランのホールをさせるには勿体無いくらい」
これほど褒められるなんて。言われているこっちが恥かしくなるくらいだ。
さて、今度は私から言わせて貰うかかな。私はゆたかに聞いて裏をとった。やっぱりゆたかは招待状を神崎さんに送っていた。
こなた「貞子麻衣子ってそれほどマイナーな漫画家じゃないよ……なんで神崎あやめともあろう人が見落とすなんて……」
神崎さんの微笑が止まった。
あやめ「……まさかそんなイベントがあるとは思わなかったから……」
こなた「ところでこの三週間で三日の休暇があったけど、神崎さんちゃんと家に帰ってたの?」
あやめ「そ、それは……」
その先は何も言わない。この人って自分が責められると弱くなるタイプなのかな。言い訳が出来ないなんて……
こなた「私は言ったよね、帰ってねって……」
あやめ「あ、貴女には関係ない事でしょ、私が帰ろうが帰るまいが」
こなた「関係ないけど……私が何故帰って言ったか、その意味は分かったつもりでいたけど……どうして上京しないであんな遠くに住んでるの、
    お母さんを一人残せないからじゃないの、この取材ってお母さんをすっぽかしても良い程大事なの?」
神崎さんの体が震えはじめた。
あやめ「……さっきから母さん母さんって、いつから私の母は泉さんの母になった、一回しか会っていないくせに」
声を荒げて怒り始めた。
こなた「なんで嘘を付いたの、帰っていないならあの時そう言えば良かったのに……」
あやめ「はぁ、貴女からそんな台詞が出るとは思わなかった、嘘はそっちが先だったでしょ」
こなた「会ってから一度も嘘なんか付いていないもん」
あやめ「あんな大法螺吹いておいてよく言えたものね、それに何を根拠に私が帰っていないなんて言うの」
私も頭に血が上ってきた。
こなた「この招待状は神崎さんにも届いているはずだよ、二週間前、私が帰れって言った日だよ、帰っていれば気付いてた、私なんて必要なかった」
あやめ「……え、な、何故私に送られているなんて分かるの」
私は立ち上がった。
こなた「記者なんだから調べれば……もう知らない、あとは神崎さんで勝手にやって……さようなら……」
部屋を飛び出すように出た。

 あと少しだった。あと少しで一緒に資料室に潜入できたのに。
なぜあんなに怒ったのだろう。自分でも分からなかった。
私があの神社を寄付した本人だと気付いてくれなかったから。違う。気付いていないのは私にとっては好都合だよ。
神崎さんにお母さんがいるから羨ましかったから。違う。彼女も父親を早くから亡くしているから状況は似たようなもの。
帰ったなんて言わなければ私だってあんなに怒らなかった。
そういえば神崎さんも怒っていた。何故だろう……
もうそんなのどうでもいい。どうせあと三日でサイン会。
あの店も二日働けば契約が切れる。その後、彼女は勝手に潜入取材をする。
彼女の言うように潜入取材の手伝いを果たした。

165 :こなたの旅H 2/4 [saga sage]:2013/06/29(土) 21:08:04.82 ID:yEHDPHfR0
そうじろう「こなた、明日のサイン会は行くのか?」
最後の仕事を終え帰るとお父さんが私を待ちわびるかのように話しかけてきた。
こなた「サイン会?」
そうじろう「もう忘れたのか、ゆーちゃんが送ってくれた招待状だよ、まさかまだ見てないなんてないよな?」
かがみが教えてくれなかったらそうだったかもしれない。
こなた「う、うん、お父さんも貰ったんだ……招待状……」
そうじろう「ああ、二人の活躍を陰ながら見守ってきた、完成記念のサイン会となれば出席しないわけにはいかないだろう」
こなた「……でも、かがみは出席しないし、つかさやみゆきさんも行けるかどうか分からないよ」
そうじろう「そうだな、皆家庭を持って仕事もあるだろう、それはあの二人も承知していると思う、でも、それはそれ、こなたはどうなんだ?」
行く気はない。ゆたかやひよりには悪いけど行けない。明日行けば神崎さんと会うかもしれない。
それに、あれ以降彼女から連絡がない。私が途中で出て行ったからきっと私に愛想を尽かしたに違いない。
嘘つきで途中で約束、契約を放り投げたと思っている。うんん、実際にそうだったかもしれない。
こなた「……明日は行かない……」
そうじろう「顔色が悪いぞ、気分でも良くないのか?」
こなた「うんん、大丈夫、何でもない……」
そうじろう「そういえば最近帰りも遅かったな、ゆっくり休んでいなさい、私はゆいと行ってくる」
結い姉さんも行くのか……実の姉だし当たり前と言えば当たり前か。私が招待されているくらいなのだから。
こなた「ゆたかとひよりに謝っておいて……」
そうじろう「うむ」

 神崎さんはちゃんと35階に行けるのだろうか。私の案内がないと警備員に見つかっちゃうかもしれない。
それとも私が行ったら怒って追い返されるかな。それならそれで割り切られるから気が楽になる。
それにしても……
帰った帰らないであれほど言い合いになるなんて。つかさやかがみがみきさんと親しげにしている時だって羨ましいとは思ったけど二人にその事で言い争いなった事なんてなかったのに。
神崎親子……何だろう。何かが引っ掛かる……特に母親の正子さん。子供と同居しているのに何故あんなに淋しそうにしていたのだろう……
突然部屋の扉が開いた。
ゆい「やふ〜」
少し小さな声で入ってきた。お父さんに私が調子悪いと言われたのかもしれない。
こなた「いらっしゃい……」
ゆい「おやおや、寝ていなくていいのかな?」
少し心配そうな顔だった。
こなた「……なかなか眠れなくって……」
ゆい姉さんは手を私の額に触れた。
ゆい「う〜ん、熱がある訳でもなさそうだね……」
手を額に……ゆい姉さんにが私にそんな事をしたのは初めてかもしれない。
そうかゆい姉さんも子供が出来たからそんな動作が出てくるのかもしれない。
ゆい「もしかして恋の病なのかな」
こなた「……ちょっと、からかわないでよ!」
ちょっと怒ってみた。
ゆい「ふふ、まぁ、何にしても普段のこなたじゃないね、もしかして明日の事で悩んでる?」
こなた「まぁ……そんなところ、ゆたかやひよりとは全く関係ないけどね……」
ゆい姉さんも行く。となれば神崎さんは潜入取材で不法侵入……ゆい姉さんには見つかって欲しくない……
ゆい「どったの?」
私の表情に不思議そうに首を傾げるゆい姉さん。
こなた「うんん……なんでもない」
神崎さんを心配しているというのだろうか。まさか
どうして、もうどうなっても関係ないでしょ。だから……明日は行かないって決めたはずじゃなかったの。
ゆい「おっと、調子が悪いのにこんなに長居したらダメだよね、それじゃおやすみ……」
普段と違う私なのか。そのまま静かに部屋を出て行ってしまった。そして私は眠れぬ夜を過ごすのだった。

166 :こなたの旅H 3/4 [saga sage]:2013/06/29(土) 21:09:12.75 ID:yEHDPHfR0
 貿易会社本社ビル34階。開店前の書店。私は大幅に遅れて会場に入った。
会場には招待状で招かれた人達で賑わっていた。思ったより多くの人が居た。出版社の関係者やスポンサーや記者らしき人も見受けられる。
この中に神崎さんも居るのだろうか。この賑わいでは探すのは一苦労しそう。
こんな会に私なんかが呼ばれて良かったのだろうか。場違いなような気がした。会場の雰囲気に圧倒されて何から手をつけていいのか分からない。
「お姉ちゃん?」
後ろからゆたかの声がした。私は声のする方を向いた。ゆたかは私を見て驚いた顔をしていた。
こなた「いや〜大盛況だね、思ったよりゆたかの作品は人気あるんだね……見直したよ」
今度は心配そうな顔になるゆたかだった。
ゆたか「おじさんが調子悪いって言っていたけど……大丈夫なの?」
こなた「大丈夫だよ、一日寝たらすっかりしたから、それよりお父さん達は?」
ゆたか「ゆいお姉ちゃんと一緒に帰ったけど」
帰ったのか。何故かほっとしたような気がした。
こなた「それでひよりはどうしているの?」
ゆたかは会場の奥の方に顔を向けた。奥にひよりの姿が見えた。数人の女性と楽しげに会話をしている。あれは見た事ある顔だな……そうか陸桜の漫研部の面々だ。
成る程ね。ちょっと話してみようと思ったけど邪魔になるだけかな。
こなた「かがみは来られないよ、つかさは来てる?」
ゆたかは首を横に振った。
ゆたか「うんん、来られないって……あやのさんやかえでさんも……」
あらら、この調子だとみゆきさんやみさきちも期待できそうにないかも。
こなた「私はレストランかえでと陸桜の先輩代表になっちゃったかな」
ゆかた「……」
何も言い返さないゆたか。まずいなせっかくのサイン会なのに。
こなた「え、えっと、もう一人いたじゃない、みなみも呼んだでしょ?
ゆたか「うん、さっきまで居た」
こなた「それは良かった」
ゆたか「うんん、大半が来られないのは分かっていたから、それでもお姉ちゃん達が来てくれて嬉しい」
こなた「ところでもうサインはしなくていいの?」
ゆたか「うん、大方は終わったから小休止、だけど本番はこれからだし」
そう、本屋さんの開店と同時に一般のサイン会になる。私は時計を見た。開店10分前……そろそろ時間か。
本屋さんを出ようとした時、男性がゆたかに近づいた。二人は目を合わすと親しげに本屋さんの奥に向かって行った。そうか彼がゆたかの彼氏か……
確か編集担当とかって言っていたっけ。
おっと、見ている時間なんかない。
さて、これで私の知人は全て私から遠ざかった。チャンス……

 本屋さんを出るとこの階は静まり返っている。それもそのはずまだどの店も開店していない。
私は自分の働いていた店の前で立ち止まった。ここは35階へ続く階段に一番近い。もし神崎さんが来るならここを通るはず。
時計を見た。開店5分前……
一般客がビルの下で行列になっている。ひよりとゆたかはこれほどまでに人気がある漫画家になったのだと思い知らされる。
でもこれがチャンスなのだ。警備員はこの行列を整理するために本屋さんに集中するから上の階は無人状態になる。でもそれは開店から3分くらいの間だけ。
喫茶店で働いた時に得た情報だ。でもこれは神崎さんに言っていない。はたして彼女はこの時間を分かってくれるだろうか。
あの時喧嘩をしなければ打ち合わせをしてここで待ち合わせが出来たのに。電話や携帯でも教える事が出来た。でもしなかった……バカだな……私って……
私はこの潜入取材を成功させる気があるのかな……
時間が刻々と過ぎていく……彼女は来ない。もう先に上に行ったのか。それとも諦めて来なかったのか。
もう少しだったのに。もう少しで真奈美の謎が解けたかもしれないのに。
「い、泉さん……」
突然後ろから神崎さんの声がした。私は声の方を向いた。そこに神崎さんが立っていた。目立たないリクルートスーツに眼鏡をかけている。多分伊達眼鏡だろう。
それに加えてポニーテールにしている。
声を聞かなければ一目では彼女だと気が付かない。かがみもこのくらいの変装をして欲しいものだ。
神崎さんは私を見て驚いていた。来るとは思わなかったのだろう。
あやめ「……まさか来てくれるなんて、でも、何故、何故私に招待状が来ていたのを知っていたの、それにこの渡された招待状は小林かがみ宛、
    小林かがみと言えば小林法律事務所の腕利き弁護士じゃない、何故貴女がそれを持っているの……小林かがみとなんの関係があるの……」
私は時計を見た。開店3分前。今はその話しをしている暇はない。
こなた「こっちだよ……」
私は歩いて階段に向かった。数歩歩き出すと彼女もその後を付いてきた。

167 :こなたの旅H 4/4 [saga sage]:2013/06/29(土) 21:11:14.12 ID:yEHDPHfR0
 C開店1分前。
こなた「あの角を右に曲がればすぐ資料室だよ、監視カメラに気をつけてね」
あやめ「ここから先は私がする、ありがとう」
神崎さんは私の手をとってにっこりと微笑んだ。眼鏡を取ると曲がり角を見た。彼女の顔が一変して厳しくなった。そして角に向かって歩き出した。
曲がり角を曲がると彼女は見えなくなった。さて。私は戻るかな。

 何だろう。この胸騒ぎ……
階段を下りている途中だった。何か嫌な予感がする。
神崎さんはちゃんと資料を集められるのか……
パソコンの操作は大丈夫なのか……
警備員は本当に居ないのか……
監視カメラは本当に止まるのか……
私は立ち止まった。そして上の階を見上げた。
彼女なら問題なく出来るさ、それに彼女自ら自分だけでするって言った。私がしゃしゃり出て手伝ったら今度こそ怒られそう。
下の階を見て下りようとした。
………
だめだ。やっぱり気になってこれ以上下りられない。かがみが自分の招待状を渡してまでして協力してくれた。本当は来たかったに違いない。
それに別れ際のあの笑顔。喧嘩をした相手にあんな表情なんか出来ない。
もし、警備員に捕まればあの貿易会社の事だ。どんな仕打ちがまっているか分からない。警察沙汰になるならまだましかもしれない。
そんな事になれば神崎さんのお母さん、正子さんが……
放っておけない。怒られても構わない。私の予感が外れていればそれで良い。

私は走って階段を駆け上った。そして神崎さんと別れた場所を過ぎ曲がり角を曲がった。扉は開けられたままになっていて静かだった。カードキーが正常に働いたみたい。
私はそのまま資料室に入った。神崎さんがパソコンの画面で何かを操作している。後ろを向いているのでどんな事をしているのか分からない。
入ってすぐに神崎さんは私に気付いたのか後ろを向いて私を見た。神崎さんの顔色が真っ青になっていた。
あやめ「ど、どうしよう」
かなり動揺している。
こなた「どうしたの?」
私は神崎さんの側に駆け寄ってパソコンの画面を見た。
「warning」
画面に大きくそう書かれていた。そして画面が赤く変色している。これは……
咄嗟にポケットからUSBメモリーを取り出しパソコンに挿した。「warning」画面がそのままの状態で止まった。
神崎さんは私を見た。
あやめ「な、何をしたの?」
こなた「パソコンの動作を一時的に止めた」
このUSBメモリーはめぐみさんがくれたもの。めぐみさんの作ったハッキングプログラムが入っている。私はそのままキーボードを打ち始めた。
あやめ「操作なんかして大丈夫なの?」
こなた「パソコンを完全にハッキングして外部から一度遮断して隔離するよ、そうじゃないと多分警備会社に連絡が行っちゃうかもしれないからね」
使う気はなかった。だけどあの状況では使うしかなかった。
私の悪い予感が当たっていた。それにUSBメモリーを持ってきておいてよかった。
10年ぶりに使うめぐみさんのプログラム。でも体が操作をまだ覚えていた。
こなた「完全にこのパソコンは私の手中に入ったよ……それで、どのフォルダーをコピーするの?」
あやめ「え、あ、えっと……」
神崎さんに言われる通りのフォルダーをUSBメモリーにコピーした。
 私は時計を見た。開店時間を1分過ぎていた。あと2分か……
こなた「このビルの管理サーバーにアクセスしてと……やっぱり防犯カメラはこのサーバーに一回記録される仕組みなっているね……
さっきのワーニングでカメラが起動したかもしれないから念のため今から3分前の画像データを消去するから、
    それからこれから3分間電源を切ってこのビルを停電にして、その隙にここから逃げよう」
あやめ「そのパソコンはどうなるの、ハッキングなんかしたらバレてしまう」
こなた「大丈夫、このUSBメモリーを抜けば履歴もなにも残らない」
あやめ「あ、貴女……プロのハッカーなの……いや、プロでもそんな事は出来ない……泉さん、貴女は何者なの……」
残り1分……
こなた「時間がないよ、行こう!!」
携帯電話を取り出し明りを付けた。そしてUSBメモリーを抜いた。部屋の照明が切れて停電になった。しかしパソコンの電源は入ったまま再起動になった。
やっぱりUPS機能が付いていた。
私は立ち上がり照明を部屋の出口に向けた。
こなた「行こう」
あやめ「あ、待って」
神崎さんは鞄からハンカチを取るとキーボードを拭きはじめた。指紋を消しているのか。まだ起動中だから問題ない。私は照明を神崎さんの手元に向けた。
拭き終わると神崎さんは私の後に付いた。
こなた「非常口から出て下に降りよう、走るよ」
あやめ「うん」
携帯の照明を頼りに非常口を出て下の階34階に下りた。

こなた「神崎さんはそのまま非常階段で下まで下りて、私はこのままサイン会に紛れて出るから」
神崎さんはじっと私を見ている。
あやめ「神社の寄贈は匿名で、しかもネット経由だったって聞いていた……泉さん……まさか、もしかして本当に……」
さすがにあそこまでネタバレしたら分かってしまうか。
こなた「……だから言ったじゃん、嘘はついてないって……」
あやめ「泉さん……私……」
こなた「時間がないよ、データは明日神崎さんに家で渡すから、それで良いでしょ」
あやめ「う、うん……明日の夕方で…」
神崎さんは何を言おうとしたのかな……それは明日分かるか……

168 :こなたの旅H 5/4 [saga sage]:2013/06/29(土) 21:12:15.07 ID:yEHDPHfR0

 私達は別れた。神崎さんはそのまま非常階段で下りて行った。私は34階の非常口からビルに入った。
私がビルに入ると同時にビルの照明がついた。間に合った。
辺りは停電のせいでざわついていた。さてとこの隙に帰ろう。
「泉さん、泉さんじゃない!!」
後ろから突然私を呼び止める声。聞き覚えがある。私は後ろを振り向いた。そこにはコスプレ喫茶の店長が立っていた。
店長「泉さん、事務所まで来て欲しい」
え、なんで。もう喫茶店の契約期間は終わったし給料ももらったから私になんか用はないはず。
ま、まさか。35階に行ったのがバレたのか。
下手に断ると余計に怪しまれそうだ。私は店長の言う通りにするしかなかった。

つづく
169 :こなたの旅H 5/4 [saga sage]:2013/06/29(土) 21:14:15.64 ID:yEHDPHfR0
以上です。

4レス目が容量をオーバーしてしまい5レスになりました。

いきなり声を掛けられたこなた。どうなってしまうでしょうか。

次回ご期待下さい。
170 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2013/06/29(土) 21:19:35.27 ID:yEHDPHfR0


ここまで纏めた。

171 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2013/07/07(日) 17:19:36.51 ID:g2/NkRKX0
作品投下します。

2レスほど使用します。
172 :双子の誕生日2 [saga sage]:2013/07/07(日) 17:22:34.87 ID:g2/NkRKX0

 梅雨も本格的なはずなのに雨ひとつ降らない今日この頃。
みゆき「誕生日のプレゼント、ですか?」
こなた「うん、もうそろそろかがみとつかさの誕生日でしょ、個人であれこれ悩むより二人共同で選べばいいかなと思って」
みゆき「そうですね、それも良いかもしれません」
こなた「それで、みゆきさんはもう宛てはあるの?」
みゆきさんは下を向いた。
みゆき「それが……なかなか思い当たるものがないのです」
こなた「そうだね、もう高校時代から何度も渡しているからネタ切れっぽいかな」
みゆき「なにか、年齢に相応しいものがあればいいのすが……泉さんは何かありますか?」
あらら、全部みゆきさんに振っちゃおうと思ったけど、さすがにそれは出来ないか……
こなた「年齢に相応しいものね〜もうなんだかんだで二十歳だからね……大人のもの……ん〜」
そう簡単に出るわけはない。そうでなければみゆきさんと共同なんてしなくてもよい。
こなた「二十歳になった祝いも兼ねてお酒を贈るのはどう、たとえば洋酒、ぶどう酒なんか」
みゆき「お酒ですか……」
みゆきさんの顔が曇った。
こなた「何か問題でもある?」
みゆき「い、いえ、別にありません、お酒を贈るのは祝い事で普通にしますから問題はないと思います」
こなた「それじゃ決定だね、さっそく何にするかお店に行こう」
みゆき「はい」

 っと思って店に来たのはいいけど。あまりにも種類が沢山ありすぎて何にするか決められなかった。
こなた「う〜ん、どれにするかな、みゆきさん、かがみとつかさがどんなお酒が好きなのか分かる?」
みゆき「いいえ分かりません、それにお二人はまだ法律的には未だ飲めませんので好みはまだ無いと思いますが……」
こなた「ねぇ、このお酒は?」
適当に取った瓶をみゆきさんに見せた。
みゆき「すみません、私も10月までは二十歳ではありません、飲めませんので……分かりません」
こなた「そうだったね、でもさ、もう利き酒くらいならしてもいいんじゃないの」
みゆき「すみませんそれも出来ません」
こなた「みゆきさんは真面目だね……」
みゆき「すみません、何にするかが一番悩むと思ったので……その、は別の物にしませんか……」
これ以上無理強いできないか、するともう既に二十歳を過ぎた私が利き酒をするしかないか。
こなた「すみません〜このお酒試飲できますか?」
店員に声をかけて小さなグラスを借りて試飲した。
こなた「ん〜すこし匂いがきついかも〜」
店員「それならばこれはいかがでしょうか?」
店員は店の奥の方から赤ワインを持って来た。グラスに少々ついでくれた。
こなた「ちょっと甘すぎない?」
店員「それではこちらはどうですか」
……
……

 誕生日当日、柊家。
かがみ「それで、店のど真ん中でへべれけになって倒れたのか……」
みゆきさんは頷いた。
こなた「いやぁ、もう最後の方は何がなんだか分からなくなっちゃって、気が付いたら家の居間のソファーで寝てた」
つかさ「大変だったね、でも、どうやって帰ったの?」
かがみ「それは全部みゆきが介抱してくれたってことでしょ、やれやれ、全く、なにをしに行ったのか」
みゆきさんは鞄から二つの箱を取り出した。そしてかがみとつかさに箱を渡した。
みゆき「かがみさん、つかささん、私と泉さんからの誕生日プレゼントです」
こなた「ハッピーバースデー、かがみ、つかさ」
つかさ「この箱って、もしかして……お酒?」
みゆき「はい」
かがみ「……みゆきありがとう」
つかさ「ゆきちゃん、こなちゃん、ありがとう」
こなた「かがみ、私にお礼は……」
かがみはみゆきさんと楽しげに話し始めてしまった。
つかさ「折角だからこのお酒今ここで開けちゃおうよ、おつまみ作ってくるから」
こなた「やめた方がいいよ」
つかさ「どうして?」
こなた「みゆきさんはまだ飲めないから」
つかさ「あっ、そうだった」
みゆき「かまいません、どうぞ」
かがみ「飲めなくとも乾杯くらいはできるでしょ」
みゆき「は、はい」
つかさの作ったおつまみと共に私達はプレゼントのお酒で乾杯した。

173 :双子の誕生日2 2/2 [saga sage]:2013/07/07(日) 17:23:42.86 ID:g2/NkRKX0
みゆき「すみませんでした」
帰り道の途中、みゆきさんが突然謝りだした。
こなた「どうしたの急に?」
みゆき「泉さんが酔いつぶれた話しはするべきではありませんでした、それに……あの時私も試飲していればあの様な事はおきませんでした」
こなた「別に良いよそんなの気にしなくて」
みゆき「かがみさんのお礼がなかったものですから、、私のせいで……」
みゆきさんは申し訳無さそうに頭を低く下げた。
こなた「あれ、あれはその逆だよ、かがみは素直じゃないから照れ隠しで言わなかっただけだよ」
みゆき「そうでしょうか?」
こなた「はいはい、もうその話はおしまい、頭を上げてよ、二人ともプレゼント気に入ったみたいだし、大成功って事でおしまいにしよ」
みゆき「は、はい……」
こなた「これからお酒とは長い付き合いになるからお互いに気をつけようね」
みゆき「泉さん、かがみさんとつかささんはさっきのが初めてのお酒だったのでしょうか?」
こなた「どうだろうね、神社は行事とかで何かとお酒が付きまとうから二人にとっては身近な物だけど、あれが初めてかどうかは分からないね」
みゆき「お二人ともほんのり顔が赤く、とても艶やかで大人になった……そう思いませんでしたか」
こなた「ん〜そう言われるとそうだったかな」
みゆき「……試飲の時の泉さんも素晴らしかったです」
こなた「そ、そうかな……」
みゆき「あ、すみません、帰りが遅くなってしまいます、急ぎましょう」
みゆきさんは駅に向かって早歩きで歩き始めた。

 つかさとかがみが大人に見えたってみゆきさんは言った。お酒が二人を大人にしたのかな……分からないや。でも……
みゆきさんの誕生日に何を贈るか、もう決まったよ。




174 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2013/07/07(日) 17:25:45.19 ID:g2/NkRKX0
以上です。

つかさとかがみの誕生日ネタは3つ目になります。

誰も書きそうになかったので出ないネタを絞って書きました。

175 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2013/07/07(日) 17:51:07.23 ID:g2/NkRKX0

ここまでまとめた
176 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2013/07/10(水) 20:29:55.55 ID:H4+RYPH30
それでは「こなたの旅」の続きを投下します

6レスくらい使用します。
177 :こなたの旅I 1/6 [saga sage]:2013/07/10(水) 20:31:49.01 ID:H4+RYPH30
I

こなた「今日は休業日のはずだけど……どうして?」
事務所に通された私は早速質問もぶつけた。
店長は鞄から色紙を出した。
こなた「サ、サイン会?」
店長「そうよ、特別招待された人も居たみたいだけど、私は漏れちゃってね、一番に並んだった訳、サインをもらったと同時にあの停電でしょ、嫌になるわ、泉さんは
   非常階段を使ったみたいだけど、他にも何人か非常階段から出た人が居たからそれで正解だったかもね」
こなた「え、え、そ、そうでしょ、そう思ったんですよ、はははは」
これは笑って誤魔化すしかない。どうやら35階の行ったのはバレていないようだ。張り詰めた緊張が一気に解けた。
店長「泉さんもサイン会が目当てだったんじゃないの、その状況じゃサインもらえなかったでしょ?」
こなた「え、ええ、そうですね」
店長はしばらく考え込んだ。
店長「お店に飾る分と自分の部屋にと思って二つ書いてもらったけど……自分の部屋は今度の機会かな、泉さんにあげるわ」
こなた「ど、どうも」
サインは家に帰ればいくつも持っている……と言っても断れる状況じゃない。そのまま色紙を貰った。
こなた「と、ところで、私を呼んだのは何の用ですか?」
店長の顔が真剣になった。
店長「昨日、私は留守で貴女に会えなかったから話せなかったけど、この店を辞めてどうするの、レストランかえでに戻るのかしら」
こなた「そのつもりですけど……それが何か?」
店長「……どう、このままこの店で働く気はない、貴女とならうまくやっていけそう、近々二号店を出す予定なの、その立ち上げを手伝ってもらいたい、
   それで、ゆくゆくはそこの店長を任せてもいいと思ってる」
こなた「え……?」
これってもしかして、誘われている?
こなた「無理ですよ、店長なんて……」
店長「貴女の仕事ぶりは見させてもらった、レストランで随分鍛えられたみたいね、見事だった、私は見ていないけど黒ずくめの恐いお姉さんにも眉一つ変えないで冷静に
   対処したって聞いたわよ」
黒ずくめの恐いお姉さん……かがみの事を言っているのか。かがみのバカ……
こなた「あれは……恰好だけで恐くもなんでもないです、ただのお客さんだったので……」
知り合いだなんて恥かしくて言えない。
店長「無用なトラブルを回避するのも必要な事……話しを戻すわよ、レストランの時の倍の給料でどう?」
倍って……普通に働いていただけなのに。気に入られてしまったようだ。でも私の答えはもう決まっている。
こなた「約束は一ヶ月なので……」
店長は溜め息を付いた。
店長「ふぅ〜たった一ヶ月だけ私の店に来させるなんて、貴女の店長は私に見せびらかしたかったのかしらね……でも、即答したのなら私も諦めがついたわ、時間を取らせたわね、
   一ヶ月間ありがとう、向こうでも頑張って」
こなた「は、はい……」
店長と堅い握手をした。

 かえでさん以外の人に認められたって事か。悪い気がしなかった。いや、むしろ嬉しいくらい。神崎さんにげんき玉作戦を知られていなければもっと嬉しかったかもしれない。
彼女は記者、だから私の正体が分かれば記事に書くかもしれない。そうなれば……私、警察に捕まっちゃうのかな……どうしよう。
何も思い浮かばない。データと引き換えに記事を書かないように交渉するのも手かもしれない。だけど……そんな事できるかな。自信がない。

178 :こなたの旅I 2/6 [saga sage]:2013/07/10(水) 20:33:31.77 ID:H4+RYPH30
 このまま家に帰っても良かった。だけどいつの間にか私はレストランかえでの目の前に立っていた。一ヶ月ぶりだ。
従業員用の出入り口から入って事務室へ向かった。そして扉を開けた。
かえで「こなた、こなたじゃない、今日までが契約日じゃなかったの、タイミング悪かったわねあやのは休みよ」
数年会っていないかの様な喜びようだった。
こなた「そうだったけど、今日は休業日だったから……」
かえで「そうだったの……ん?」
かえでさんは私の顔をみて首を傾げた。
こなた「あの、二日くらい休暇をくれませんか……」
かえで「二日……それは別に構わないけど、二日と言わず一週間くらい休んだら、慣れない仕事で疲れたでしょ?」
神崎さんの家にデータを持って行かないといけない。でも休みはそんなに要らない。
こなた「いいえ、二日でいいです……それじゃ……」
私は部屋を出ようとした。
かえで「ちょっと待ちなさい、どうしたのよ、元気ないわね……」
こなた「いつもと同じだと思うけど?」
かえで「ふ〜ん、さては向こうの店長から残って欲しいなんて言われたとか?」
こなた「え?」
かえでさんは微笑んだ。
かえで「図星みたいね、それは私も予想してた……」
こなた「予想してたって?」
かえで「そう言う事よ……」
こなた「そう言う事って?」
かえでさんは立ち上がった。
かえで「もうそろろろ店長になってもいい頃だと思っていた……」
こなた「へ、わ、私が、嘘でしょ?」
かえでさんは自分のお腹を片手で触った。
かえで「私は生まれ故郷に帰ろうと思ってね……赤ちゃんも出来たことだし」
こなた「ちょ、いきなり何をいっているの、分からないよ……」
かえで「やっぱりこの町は私には賑やか過ぎるわ、生まれ故郷でゆったりするのが性に合っていると思って、生まれ来る子供の為にも……」
こなた「今更そんな事言って、子供が出来たって……つかさだって子供が居るのに店長してるじゃん」
かえで「私はつかさほど強くない、こなたが嫌ならあやのを店長にすれば良い、彼女もその力はある、いっその事つかさを誘ってみたらどう、きっと戻って来てくれるわよ」
こなた「レストランかえでだから店長はかえでさんじゃないとダメだよ……帰るって……どうして……いきなりそんな事言われても……」
かえでさんは私をじっと見ていた。
かえで「いつも無表情で何も動じないと思っていたけど……あんたの今にも泣き出しそうな顔初めて見たわ……バカね、あんたがそんなんでどうするの、
    あやのやつかさにどうやって言えばいいの……」
かえでさんも悲しい表情になった。これって、どうやって取り繕うか……こうゆうのは苦手だよ……どうしよう。
こなた「私……げんき玉作戦の事……バレちゃった……」
何をやっているのかな、このタイミングでこんな事を言うなんて……でも他に何か別の言葉が思い浮かばなかった。
かえで「神崎あやめに?」
こなた「うん……私はもう此処に居られないかも……」
かえでさんは笑った。
かえで「どうして」
こなた「私の事を記事にされたら……」
かえで「そんな事をするような人ならその辺にいる普通の記者と変わらない最低だわ、それにそんな記者ならこなたを取材の協力なんか行かせない……」
こなた「で、でも……」
私は不安そうな表情を見せた。かえでさんの笑みが止まった。
かえで「そうね、私の見込み違いもあるかも……そうだったら私にはどうする事もできない、かがみさんに相談すると良いわ、今つかさの店に居るわよ、こなたが向こうに行ってから
頻繁に来るようになったわ」
頻繁にって。まさかこの前私の言ったのをそのまま実行しているなんて事はないよね。
こなた「そうする……」
私は振り返って部屋を出ようとした。
かえで「さっきの話しは皆には言わないで、私から皆に言いたいから……」
こなた「うん……でもね、皆はきっと私以上に悲しむよ、特につかさはね……」
かえで「……」
かえでさんは何も言い返してこなかった。
かえでさんは初めに私に言って反応を見たかったのか。無表情って……いきなり帰るって言えばいくら私だってあんな反応するに決まっている。
笑って「帰ればいいじゃん」なんて言うとでも思ったのかな……勝手すぎるよ……
私はそのまま何も言わず事務室を出た。そして更衣室にに入り用を済ませてからレストランを出た。

179 :こなたの旅I 3/6 [saga sage]:2013/07/10(水) 20:34:25.96 ID:H4+RYPH30
 レストランを出るとつかさの店からピアノの音が微かに聞こえる。つかさが弾いているのか。いや、いつも弾いている曲じゃない。そうか、みなみの定期演奏会だ。
みなみも来ているみたいだ。
 店の扉を開けた途端迫力のあるピアノの音が飛び込んで来た。真っ先にピアノを見た。ピアノを弾いているのはつかさでもみなみでもなかった。まなみちゃんだった。
聞いたことがない曲だ。でも凄いのは分かる。コントローラのボタンを連打しているみたい、うんん、まるで右手と左手が競争しているように鍵盤を縦横無尽に駆け回っている。
店の奥に行くのを忘れて聴き入っていた。
「ラフマニノフ習曲集音の絵、作品39第6番:イ短調……」
小声で私の耳元に囁く。振り向くとみなみだった。
こなた「すごいね……」
私も小声で囁いた。曲は3分もかからないで終わった。
「パチパチパチ」
来店のお客さんから拍手喝采の嵐だった。まなみちゃんは立ち上がり一礼すると厨房の方に小走りに走って行った。つかさの所に行ったのかな。
こなた「さっきの凄いの、ら、らふま……の練習曲?」
みなみ「うん……あれは私も弾けない難曲……」
こなた「弾けないって、それじゃどうやって教えたの?」
みなみ「教えていない、楽譜を見て弾いた」
こなた「楽譜を、見ただけで?」
みなみは頷いた。
みなみ「楽譜見ただけで演奏なら私は驚かない……まなみちゃんはそれだけじゃない、あの曲のサブタイトルは赤頭巾ちゃんと狼……タイトルも彼女はしらないはずなのに、曲の
    イメージを完全に理解して演奏している」
赤頭巾ちゃんと狼の追いかけっこ……確かにそんな感じの曲だった。
こなた「それって凄いの?」
みなみは頷いた。
みなみ「店の客を見て、ケーキやスィーツを食べに来た人達の殆どの食事を止めて演奏を聴いていた」
確かにその通りだ。客と言う客は皆聴き入っていたようだ。曲が終わった今は皆普通にお茶やコーヒーを飲みながら食べている。
みなみ「私のレベルを超えてしまった、もう彼女を教えられない、もしかしたらショパンコンクールやチャイコフスキーコンクールで上位が狙えるかも」
こなた「ん〜〜」
有名な作曲家の名前が付いているコンクールなのだからさぞかし由緒あるコンクールだと思うけど……
こなた「そんな大袈裟なのが必要なの?」
みなみ「分からない、まなみちゃんに聞かないと」
こなた「聞かないと言ってもさ、まなみちゃんはまだ小学生だよ」
みなみ「確かにそうだけど……今度の演奏会でスカウトが放っておかないと思う」
こなた「まぁ、ピアノで食べていけるくらいの実力はありそうなのは分かった、でもそれは演奏会が終わってから心配しようよ」
みなみは笑った。
みなみ「そうだった、気が早過ぎかもしれない……それでは失礼します」
みなみは厨房の方に向かって行った。きっとつかさやまなみちゃんの所に行ったに違いない。
ピアノも勉強もちょっと桁外れな子だな……まなみちゃん……

180 :こなたの旅I 4/6 [saga sage]:2013/07/10(水) 20:37:35.24 ID:H4+RYPH30
 つかさはまなみちゃんの事をちゃんと分かっているのかな。何を思って何を考えているのか……ん?
ふと店の奥を見るとかがみが座っているのが目に入った。
そうそう。今はそんな事を考えている暇はなかった。かがみの所に向かおうとした時、丁度かがみと目が合った。かがみは自分の座っている向かい側の席を指差した。
私はその席に座った。
こなた「やふ〜」
かがみ「こなた、さっきのまなみちゃんの演奏聴いた?」
こなた「うん、ラフマノフノフの練習曲」
かがみ「それを言うならラフマニノフでしょ」
こなた「知ってるの?」
かがみ「作曲者は有名じゃない、でもあの曲は初めて聴いたわ、あれは練習曲なのか、凄い緊張感があったわね、子供の演奏じゃなかった」
かがみは暫く考え込んだまま黙ってしまった。
こなた「どうしたの?」
かがみ「以前こなたが言ってたじゃない、まなみちゃんはお稲荷さんの力を受け継いだんじゃないかって、なんか私もそんな気がしてきたわ
……柊家にあそまでの音楽の才能のある人なんか居ない」
こなた「そうでしょ」
私は何度も頷いた。
かがみ「でもね……お稲荷さんの故郷では音楽を楽しむ文化がないのよ……」
こなた「そうなの? でもつかさがいつも演奏している曲はけいこさんが好きだった曲じゃないの?」
かがみ「それはけいこさんが地球に来てからの話しだから……」
自然とお稲荷さんの話しになる。それもそうだよ、かがみの旦那はお稲荷さんなのだから。
こなた「そのお稲荷さんの故郷って何処にあるの?」
かがみ「ひとしから聞いたけどこの天の川銀河だそうよ、私達地球のあるのオリオン腕から銀河の中心を挟んで向こう側の腕の中、丁度反対側らしい、でもね、
その中心は星やガスが密集しているから地球からは観測できない……ちょっと残念ね……」
こなた「ふ〜ん」
かがみ「ふ〜んって、ちゃんと分かってるの?」
こなた「何となく……」
まるでSFみたいなだな、でもこれって現実なのだよね……それなのに違和感ないな……傍から私達の会話を聞くと
SF映画の会話をしていると思われそうだ……そういやかがみはSFなんかのラノベとかよく読んでいたっけな。だからかな。
ゲームや漫画で宇宙人なんかはよくあるシチュエーションだからね……私もすんなり受け入れられる。
でも……それが普通の人なら。神崎さんならどうだろう。
宇宙人と聞いただけでSFやオカルト扱いされるのが落ちだよ。かがみやかえでさん達が理解してくれているのはラッキーだったのかもしれない。
それとも私達が宇宙人を理解できるレベルになってきているって事なのかな……違うのかな。分からなくなって来ちゃった。
こなた「はぁ〜」
かがみ「なによ、溜め息をするなんて、らしくないわね」
こなた「いろいろ考える事ができてね……」
かがみ「……こなたがそんな台詞を言うようになるなんて、時間が経つのが早いわね」
むむ、私を子供扱いしている。昔なら言い返してやるのだが。今はそんな気はない。
こなた「かがみ、もし……もしも、げんき玉作戦が世間にバレちゃったら……私ってどんな罪になるの?」
かがみ「はぁ、なにをいきなり……」
呆れた顔で私を見るがすぐに私が何故そんな質問をしたのか分かったようだ。表情が驚きの顔に変わった。
かがみ「まさかあんた、神崎あやめに知られてしまった……の?」
私は黙って頷いた。
かがみ「いったいどうして、分かってしまった?」
潜入取材は内緒だった。どうやって説明するかな。
こなた「……神崎さんを助けるために……パソコンをハッキングしていろいろ操作したから……」
これが私の精一杯の表現だった。
かがみ「ハッキング……やっぱり、潜入取材をしたな」
こなた「う、うんん、そんなんじゃなくて……」
やばい、もうバレちゃってる。でも、かがみには嘘はつけないか。オロオロして何もできない。そんな私を尻目にかがみはクスリと微笑んだ。
かがみ「安心しなさい、十中八九神崎は記事になんかしない」
こなた「な、なんで、彼女はあの神社を寄付した人を探していたから……もうだめだよ、おしまいだよ……」
更にかがみは笑った。
かがみ「ふふ、いつものこなたらしくないわよ、彼女は潜入取材をした、それはそれでかなりの罪になるわ、こなたを記事にすれば彼女にもその疑いが掛かる
    リスクを背負う事になるわよ、それに、協力してくれた人を売るような卑怯な事をするような人とは思えない」
会ってもいない神崎さんをそこまで自信ありげに話すなんて。かがみはそうとう彼女を調べたみたい。
かがみ「それにネット犯罪は立証が難しいからこなたが捕まるとは思えない……万が一捕まったとしても、この私が全力で弁護してあげる」
こなた「……なぜ私をそこまで……」
かがみ「めぐみさんの知識、技術……それをこなたは受け継いだ、それを使ってつかさを救ってくれた……自分の危険を顧みずにね……それが理由、なによそれだけじゃ不満なの?」
こなた「かがみ……」
かがみ「法律は人を裁くものではなく守るもの、私はそう信じている」
何でだろう、何かよく分からないけど目から涙が出てきた。
かがみ「まだ泣くのは早いわよ、神崎あやめの本当の目的を知るまではね……」
まるでつかさに言い聞かせるかのような言い方に私は我に返った。
こなた「そう言えば招待状なんだけど、あれがかがみ宛てだったのを神崎さんは気付いてしまったよ……」
かがみ「……いいのよ、むしろ気付いて欲しかった、これで私が一枚噛んでいるのが分かったはず」
こなた「え?」
かがみ「こなたばっかりに無茶はさせないわよ、お稲荷さんの事は私達の事でもあるのだから」
それを聞いて何か大きな錘が取れたような気がした。
神崎さんは他人には話すなと言った。だけど……確かにお稲荷さんはかがみ達にとっては家族と同じ。いや、家族なのだから。私は二重スパイって言われても構わない。
私は財布からSDカードを取り出しかがみに渡した。
かがみ「これは?」
こなた「貿易会社の資料室のパソコンからコピーしたデータだよ」
そう、USBメモリーからコピーした。私のノートパソコンを使うためにかえでさんの店に先に寄った。
かがみ「……データを分析するならこなたの方がいいと思うけど……」
こなた「データはコンピュータ関係じゃなさそう、アルファベットの羅列で訳が解らなかった、知っている単語が一つもなかったから英語じゃなさそう」
かがみ「そう……それじゃ預かっておくわ、みゆきにも見せるわ、丁度これから会う約束をしているから」
こなた「あっ、二つだけ注意して、このデータを開く時は必ず通信出来ないようにして、LANケーブルを抜くこと…」
かがみ「ワイヤレス通信も切っておくわ」
181 :こなたの旅I 5/6 [saga sage]:2013/07/10(水) 20:38:50.22 ID:H4+RYPH30
こなた「うん、そうして……それから一度使ったパソコンはもう仕事や私用で使わないでね」
かがみ「専用パソコンを用意すればいいのか、分かった」
急いでデータをコピーしただけだから何が仕込まれているか分からない。
かがみはSDカードを財布に仕舞った。

まなみ「あ、かがみ叔母さんとこなたお姉ちゃんだ」
かがみとの話が一段落した時だった。厨房から出てきたまなみちゃんが私達に気付いた。まなみちゃんは嬉しそうに私達に近づいてきた。それからみなみも少し遅れて出てきた。
こなた「やふ〜、まなみちゃん、さっきの演奏凄かったね」
まなみ「え、聴いちゃったの?」
こなた「うん、聴いちゃった」
かがみ「私も聴いた、今度の演奏会楽しみにしているわよ」
急に顔が赤くなって何も言わなくなってしまった。さっきまであんなに堂々と演奏していたのに。知り合いが居ると緊張するタイプなのかな。
つかさ「こなちゃん!!」
まなみちゃんを呼ぶつもりだったのだろうか。コック姿のつかさが厨房から出てきた。私の顔を見るなりまるで何年も会っていないような勢いで飛んできた。
つかさ「どうして一ヶ月も来なかったの?」
神崎さんの話しはまだつかさに話さない方がいいかもしれない。もし話すならかがみやかえでさんがとっくに話している筈だ。
こなた「ちょっと研修に行っていて……なかなか帰る機会がなくって」
かがみ「こなた曰く……会いたい時に会うのが心情だそうだ、理由なんて要らないってね、つまり一ヶ月間会いたくなかったって事だろ、薄情ななつだな」
こなた「ちょ、か、かがみ、それは……」
あの時言ったのをそんな言い方されたら……いや、そうか。かがみは私のした事ををつかさに隠す為に……かがみに合すか。
こなた「だからこうして来たんじゃないの、会いたくなかったら来るわけないじゃん、それよりかがみさ、少し太くなったんじゃない?」
かがみの眉がピクリと動いた。
こなた「かがみはつかさの所に来過ぎじゃないの、ケーキとか食べまくっていない?」
かがみ「洋菓子店でお菓子を食べないで何をするのよ」
こなた「あらら、開き直っちゃったよ」
かがみの座っているテーブルに置いてあるお土産用の箱を私は見逃さなかった。
こなた「1、2、3、4……あれ、数が多くない?」
かがみ「みゆきのお土産と家族の分よ……」
こなた「本当に? 全部かがみのじゃないの?」
かがみ「う、うるさいわね、どっちでも良いでしょ」
私とかがみのやり取りを見てまなみちゃんが笑い始めた。そして、少し怒り気味だったつかさも笑った。
みなみ「懐かしい雰囲気……思い出しますね、あの頃の時代を……」
私とかがみは顔を見合わせた。まったくそう言う意識はなかった。私はただかがみに合わせただけだった。
それが高校時代によくやっていたのと同じような調子になってしまうなんて。
つかさ「はは、そうだね、なんか懐かしいね……お姉ちゃんとこなちゃん、もうそんな事しないと思ってた、またあの頃に戻りたいね……」
さっきまでグズっていたつかさが笑っている……
かがみ「つかさ、こなたに何か言いたいんじゃなかったっけ?」
つかさは上を向いて暫く考えた。
つかさ「ん〜〜無事に帰って来たし、もういいや……こちゃん、今度からちゃんと連絡して」
こなた「う、うん……」
かがみは私にウインクをした。なるほど。つかさを誤魔化したのか……確かに私だけだと誤魔化し切れなかったかもしれない。
たった一ヶ月来なかっただけでつかさはあの様になってしまう。かえでさんはつかさに何て言うのだろう……
みなみ「それじゃまなみちゃん、続きは私の家で練習しよう」
まなみ「うん……」
つかさ「みなみちゃん、お願いしますね……」
みなみとまなみちゃんは店を出ようとしている。そうだ。試してみるか。
こなた「まなみちゃん、さっきの練習曲もう一度聴きたいな……」
まなみちゃんを呼び止めた。個室で練習しても上がり症は治らない。まなみちゃんは立ち止まって振り向いた。表情を見る限りさっきの時のような覇気はなかった。
こなた「まなみちゃん、私とゲームしていた時を思い出して……」
まなみ「ゲーム?」
こなた「そうだよ、私が居てもちゃんと操作していたじゃん、ピアノもそれと同じだよ……」
まなみちゃんはピアノをじっと見つめた。
まなみ「やってみる……」
まなみちゃんはゆっくりピアノに向かってそっと席についた。大きく深呼吸をすると両手を鍵盤に置いてゆっくり目を閉じた。
私達も店の客も皆まなみちゃんに注目している。緊迫した沈黙が暫く続いた……
まなみちゃんは目を閉じたまま突然ピアノを弾き始めた。
最初に聴いた時よりも激しく、そして繊細だった……我を忘れて無我夢中って感じだな。
さて……どうもクラッシックは私の性に合わない。神崎さんの約束もあるし店を出るか。私が席を立っても皆はそれに気付かない。まなみちゃんの演奏に釘付けになっている。
邪魔にならないようにそっと店を出た。
182 :こなたの旅I 6/6 [saga sage]:2013/07/10(水) 20:39:42.46 ID:H4+RYPH30
 店を出てもピアノの音が漏れている。さっきの練習曲は終わったのに。そのまま別の曲を弾いているようだ。通り掛りの人も数人足を止めてピアノの音に耳を傾け居る。
確かにみなみの言う通りかもしれない。音楽で人の足を止めるなんて並の腕じゃ無理だ……
ピアノの音を背にして駐車場に向かった。
「ゲームとピアノを結びつけるなんて、やるじゃない」
駐車場に着き車のドアを開けようとした時だった。後ろから声を掛けられた。私は振り向いた。
こなた「かがみ……いいの、まなみちゃんの演奏を聴かなくて」
かがみ「つかさとみなみが居るから良いでしょ、私もどっちかって言うとクラッシックは苦手でね……」
こなた「そうなんだ……」
私は車のドアを開けた。
かがみ「神崎あやめにさっきのデータを渡しに行くのか?」
私は頷いた。
かがみ「彼女と私達、どちらが先に分析できるか競争になるかもね……」
競争か……かがみと神崎さんが会ったらどうなるかな……そういえばかえでさんとかがみが最初に会ったらいきなり喧嘩したっけ。でもあの時のかがみは呪われていて普通じゃなかった。
神崎さんもかがみの事を知っている感じだった。記者と弁護士だと立場によっては対立しちゃうかもしれない……
つかさと神崎さんはどうだろう。つかさの天然が炸裂したらどんな反応するのか少し興味がある……
いや、こんな事を考えるはまだ早いか。
こなた「私……これからどうすれば良いかな?」
かがみ「無責任な事は言えないわね、だから敢えて言う、私にも分からない」
こなた「ちょ……」
かがみ「だからこなたの思うようにしなさい、その結果がどうなっても誰も文句は言わないわよ、うんん、言わせはしない」
かがみが初めて私に全てを任せてくれた……
こなた「ふふ、まなみちゃんじゃないけど、少し自信が出てきた」
かがみ「それそれ、そうでないとこなたじゃない」
私は車に乗り込んだ。
こなた「それじゃちょこっと行ってくる」
かがみ「さっさと片付けて来なさい」
私は車を出した。

データを渡せば神崎さんの手伝いは全て終わる
……終わるのかな
何かもっと大きな何かが待っているような気がする。その何かが分からない。もしかしたら神崎さんはそれを知ろうとしているのかもしれない。
それは何だろう。私もそれを知りたい。
私は神崎さんに会いに行く。その何かを知るために。


つづく
183 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2013/07/10(水) 20:41:32.01 ID:H4+RYPH30

以上です。




この後すぐまとめるので まとめ報告は省略します。
184 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2013/07/15(月) 21:26:21.94 ID:AiDLb0Nc0
それでは「こなたの旅」の続きを投下します。

5レス位使用します。
185 :こなたの旅 J 1/5 [saga ]:2013/07/15(月) 21:28:27.31 ID:AiDLb0Nc0
J

 次の日のお昼過ぎ……私は神社の前に車を停めた。
神崎さんは夕方って言っていた。随分早く着いてしまった。サービスエリアでもう少し時間を潰してくればよかったかな。
この前の時みたいに待っている必要はない。もうさっさとデータを渡しちゃおう。
このやり場のない気持ちでずっといるのは耐えられない。神崎さんがこれからどんな態度に出るのか……白黒つけてやる。
私は再び車を走らせ神崎宅を目指した。
この前来た時と同じ場所に駐車して車を降りた。そして神崎さんの玄関前に立った。
呼び鈴が押し難い……何故、約束の時間より早いから。データを渡して彼女の態度が豹変するのが恐いから……
やっぱり時間まで待とうかな。いや、もうここまで来て戻るなんて。
「はぁ〜」
溜め息が出た。
私の秘密がバレた。神崎さんは私を記事にするのだろうか。いっその事あの時何もしないで帰っちゃえばよかったかな。
いや、神崎さんを助けないであのまま見捨てて私だけ逃げるなんて出来なかった。
記事にするとかしないとかそんな事を考えていなった。そうだよ逆に考えていたら助けられない。つかさがお稲荷さんを助けた時もそんな感じだったのだろうか。
つかさはあれこれ深く考えないからなぁ……
とか言っているけどこの私だって深く考えている訳じゃない。つかさと似たり寄ったりだ。でも、つかさはお稲荷さんと仲良くなったからある意味つかさの方が上かな……
それに引き換え私なんか……
人差し指が呼び鈴のボタンの前で止まったままだ。かがみに励まされてここまで来たのに……
「あの、何かご用ですか?」
こなた「ふぇ?」
声のする方を向くと正子さん?
正子「貴女は……確か泉さん?」
こなた「は、はい……この前は失礼しました……」
正子さんか。レジ袋を持っている。買い物の帰りだったみたい。
正子「娘に、あやめに用ですか? さっきまで一緒だったのですが生憎別れてしまいまして……夕方頃までは戻らないと思いますけど」
そう、約束は夕方だった……
こなた「そうですよね、約束もその頃だったもので……ちょっと早過ぎました、出直します……」
車を停めてあった場所に向かおうとした。
正子「折角遠い所から来たのですから時間まで上がって待って下さいな」
私は立ち止まった。
こなた「いや、悪いですよ、お邪魔になるかと……」
正子「まぁ、そう言わずに、どうぞ」
正子さんはドアを開けてにっこり微笑んだ。
こなた「……お邪魔します……」
正子さんの笑顔に吸い込まれるように家に入った。
 あの笑顔には逆らえない。つかさやかがみのお母さん、みきさんにしてもそう、みゆきさんのお母さん、ゆかりさんはいつも笑顔だった。
神崎さんのお母さんも同じだった。
……母……か。
186 :こなたの旅 J 2/5 [saga sage]:2013/07/15(月) 21:29:24.66 ID:AiDLb0Nc0
正子「ごめんないね、こんなものしか無くって……」
こなた「お構いなく……」
正子さんはお茶とお茶菓子を私の前に置いた。
正子「丁度一ヶ月くらい前かしら、貴女がここに来たのは」
正子さんは私の目の前に座った。
こなた「そ、そうですね、そのくらいになります」
もう一ヶ月経つのか。潜入取材が終わったからそのくらいの期間は経っている。
正子「あやめもそのくらい仕事で空けていましてね、もしかしてご一緒でしたか?」
こなた「え、ええ、そうですね、半分くらいは一緒でした」
正子「あやめはいろいろなお友達を連れてきますけど、学生時代からの友人の様み見える」
そうか、取材とかでいろいろな人を連れてくるのか。私もその中の一人。
こなた「そうですか、私って童顔だから……身体も小さいし」
正子「ごめんなさい、私はそんな意味で言ったのでは……」
卑屈になったのが悪かった。話が途切れてしまった。初対面の人と話すのは難しいな。正子さんは二回目だけど。同じようなものか。
正子「あやめと今日はお仕事の約束ですか?」
こなた「は、はい……」
正子「そうですか……」
話題を作らないと……そう思えば思うほど何も話題が出てこない。焦るばかりだった。
正子「一昨日、慌てて帰ってくるなり「私宛の郵便はどこ」って問い詰められて、泉さんが出したものではなかったのですか?」
こなた「郵便……いいえ、私は出していません」
正子「良かった、それなら安心」
サイン会の招待状を探しにきたのかな。そうか。神崎さんは私に言われて一度帰ったのか。それでサイン会の招待状を見つけたのか。
こなた「すみません、それで、それより前は帰ってこなかったのですか?」
正子さんは頷いた。
正子「一度も連絡もしないで、酷いでしょ?」
帰っていなかった。まさかとは思ったけど彼女は本当に帰っていなかったのか。一人で貿易会社を調べて居たのだろうか。
お母さんに連絡もしないで一体何を調べていたのか。いや、どんな大事な取材か知らないけどお母さんを放って置いて良いなんてないよ……
こなた「そんなに一人が良いなら引っ越せば良いのに……」
正子「そうね……本当はそれが一番良いのかもしれない、でもあやめは分かれて暮らすなんて一言も言わない、なんだかんだ言ってまだ親離れできていないのかもしれない、
   そう言う私も子離れ出来ていないのかも……」
こなた「ははは、実は私もまだお父さんと一緒に暮らしていたりして……」
正子「そうでしたか……こんな可愛い娘さんが居たら手放したくなるのも分かります」
こなた「はは、もう可愛いなんて言われる歳じゃ……それはないと思うけど………」
正子さんは照れている私を見て笑っていた。
こなた「あやめさんって子供の頃はどんな子だったの?」
正子さんは遠い目で私の向こう側を見た。
正子「そうね……学校から帰ってくると直ぐに遊びに出かけて、夕方になるまで帰ってこなかったかった……」
こなた「それって、遊びが仕事になっただだけで今と同じじゃないですか」
正子さんは笑った。
正子「ふふ、そうかもしれない……あの子は昔からそうだった、何にでも興味を持って……それでいて正義感は人一倍だった、
   いじめられっ子を庇って男の子と喧嘩もしたくらいだった」
こなた「へぇ…」
正子「それでもやっぱり女の子、半べそで帰ってきた……それでも男の子の方に怪我をさせたみたいで、後で学校に呼び出された……」
こなた「あらら……男勝りだったんだね……」
私はただ正子さんに合わせているだけでいい。それだけで話がどんどん進んでいった。
正子「曲がった事が嫌いだった、それでも女の子らしい所もあってね……あれは小学校に入学する少し前だったかしら……
   怪我をした狐を大事そうに抱えてきて、助けたいって……」
狐……怪我をした狐だって……私は身を乗り出した。正子さんは私の反応を見て嬉しかったのだろう、話しを続けた。
正子「野生の動物は無理だよって何度も言い聞かせても聞かなくってね、勝手にしなさいって怒った……だけどあやめは諦めないで看病したみたいね……
   一週間くらいでその狐は元気になってあやめのあげた餌なら食べるくらいまで懐いた……真奈美なんて名前をつけたくらいだからあやめもよっぽど気に入ったみただった」
こなた「ま、真奈美!?」
正子「え、ええ、そうですけど、何か?」
こなた「な、何でもありません、それで、その狐はその後どうしたの?」
傷付いた狐……真奈美……そして、神社のすぐ近くの家……これは偶然じゃない。その狐は、真奈美は……つかさを助けたあの真奈美に違いない。
正子「どんなに馴れても野生の動物は飼えない……別れの日が来ました、丁度あやめが小学校に入学する日だったかしら、狐を山に帰す時……あの子の悲しい顔が今でも忘れなれない
   まるで親友と別れる様だった……」
親友……彼女は狐の正体を、お稲荷さんの秘密を知っているのか。
神社とこんなに近い家だだから。たとえ別れたとしても再会できる機会は幾らでもあるよね
だとしたら……
まさか神崎さんがしようとしている事は。貿易会社に囚われている真奈美を助ける為。これはみゆきさんの推理と一致している……
真奈美は生きているのか……そういえば神崎さんと私達は少しちぐはぐだった。それは私達と同じように彼女にも秘密があるから。
共通の秘密ならもう隠す必要はない。真奈美を助けるなら皆で協力しないと。私達が今まで彼女に秘密にしていたのも無意味だ。
もしかして今一番必要なのは神崎さんとつかさを逢わす事なのかもしれない……
正子「どうかしましたか?」
こなた「え、い、いいえ、何でもありません、あやめさんに早く会いたくなりまして……」
正子「私のお話が役にたったのかしら……」
こなた「なりました、すっごく、あやめさんの事が分かりました」
正子「そうですか、泉さんのその、喜ぶ顔が見られてよかった……」
その後は私の話しを正子さんにした。高校時代、大学時代、もちろんつかさやかがみ、かえでさんの話しもした。
でも、お稲荷さんの話しと潜入取材の話しは出来なかった。

187 :こなたの旅 J 3/5 [saga sage]:2013/07/15(月) 21:30:23.83 ID:AiDLb0Nc0
 夢中で話したせいか時間はあっと言う間に過ぎた。
正子「もうそろそろ帰ってきてもいい頃なのに……なにやっているのか、あの子ったら……」
日は西に傾いてそろそろ夕方だ。だけど彼女は帰ってこない。
正子「しょうがない」
正子さんは立ち上がり携帯電話を手にした。電話をするのか。
こなた「あ、もしかしてあやめさんに連絡を?」
正子さんは頷いた。
こなた「私、そろそろ行かないと、長い間お邪魔しました」
正子「え、で、でも、まだあやめは帰ってきていない、約束は?」
こなた「大丈夫です、彼女に会いに行きますので……当てがあるから連絡しなくてもいいです」
正子「そ、そうですか……」
連絡する必要はない。神崎さんは待っているに違いない。あの場所で……それに確かめたい。もし私の、うんん、みゆきさんの推理が正しければ
彼女はあの場所にいるに違いない。あの神社に……
私は帰り支度をした。
正子「……娘を……あやめをお願いします……」
こなた「え、それってまるで嫁に出すみたいな言い方ですよね……私、一応女なんですけど……」
正子「あらやだ、私ったら……」
私達は笑った。
正子「ふふ、泉さんはあやめと幼馴染みたいですね、どうかあやめの力になってやって下さい」
こなた「どうかな〜 力になってもらいたいのは私の方かもしれない」
正子さんは笑顔で私を見送ってくれた。

 車を走らせて5分も掛からない場所……神社の入り口。
駐車スペースには神崎さんのバイクが停めてあった。間違いない彼女は神社に居る。バイクのすぐ横に車を停めた。
私は入り口に入り階段を登った。
 つかさと真奈美の話で私は疑問に思っていた事が一つだけあった。それは誰にも言っていない。私だけの疑問として仕舞っていた。
それは真奈美が何故つかさを殺すのを躊躇ったのか。止めたのか。それがどうしても分からなかった。
真奈美は人間嫌いだった。それがたった一晩宿屋で一緒の部屋で過ごしただけで心変わりが起きるなんて、いくらつかさが誰でも仲良くなれるって言っても時間が短すぎる。
私が捻くれた考えだった。そう思った時もあったし、誰かに話せばそう言われるだけ。だけど心の奥では釈然としなかった。
そして、正子さんの話しを聞いてそれが解けた。
幼い頃の神崎さんが真奈美を助けたなら真奈美のつかさに対する行動が全て納得できる。だから会いたい。神崎さんに……
それを確かめたい。
頂上に向かう私の足が自然と速くなっていった。

こなた「はぁ、はぁ、はぁ」
 頂上に着くと息が切れていた。ちょっと飛ばしすぎたが……あれ?
周りを見渡しても彼女の姿が見受けられない。確かお弁当を食べていた時はこの辺りで景色を見ていたのに……
私が階段を登って来たのは神崎さんには見えていたはず。って事は……
なるほどね、この前と同じように私を驚かすつもりだな。そう何度も同じ手に引っ掛かるほど間抜けではないのだよ。この神社で隠れるとしたら森に入った奥だけ。
私だってこの神社には何度も来ているからそのくらいは解る。よ〜し。逆に驚かしてやる。
木の陰に隠れながら森の奥へと足を進めた。中は薄暗くてよく解らない。
森の中……そこはひろしとかがみが言い合いをして私が飛び込んで行った場所だった。あの時、確かにお稲荷さんは嫌いだった……嫌いだったけど
今は特にそんな感情はないかな……そういえばみゆきさんも最初は……
『わー!!!』
こなた「ひぃ〜」
後ろから突然の声にビックリして振り向こうとして足がもつれて尻餅をついてしまった。
あやめ「ふふ、私を驚かすつもりだったでしょ……それにね森の奥には行ったらダメだから、昔からの言い伝え」
私は立ち上がりお尻についた土埃を掃った。それを確認すると神崎さんは階段の方に向かって行った。私も暫くして彼女の後に付いて行った。
木の陰に隠れていたのか。そういえば私も木の陰に隠れてつかさを見張ったのを思い出した。
あの時はもう少しでキスシーンを見られる所だったけどひろしに気付かれて……あれ……
この神社に……こんなに思い出があったなんて……

188 :こなたの旅 J 4/5 [saga sage]:2013/07/15(月) 21:33:09.47 ID:AiDLb0Nc0
神崎さんはこの前の時と同じ場所で町の景色を眺めていた。私は更に彼女に近づいた。
あやめ「この景色を今でもこうして見られるのは泉さん、貴女のおかげだったなんて……私は……」
これって、ビルで別れ際の時に言い掛けたのを言うつもりなのかな。私は何もしないでそれを待った。
あやめ「私は……貴女を見掛けだけで判断してしまった、「そんな事なんか出来るはずない」……そう思っていた、真実を見抜けなかった、
    曇った目では真実は見抜けない、記者失格ね……それに私は貴女を危険に曝してしまった……」
こなた「まぁ、誰も私がそんなのを出来るなんて思わないから、気にする必要なんかないよ……」
あやめ「……今の所潜入されたって報道はない、いや、停電の話しすら出ていない、きっと只の事故として処理された、完璧じゃない、どこでそんな技術を……」
ここで誤魔化しても意味ないかな。
こなた「木村めぐみ……さんから教えてもらった、あのUSBメモリーはめぐみさんから貰ったもの、もちろん中身の構造なんか全く分からない、でもそれを使う事はできる」
車の構造は知らなくても運転は出来る。それと同じようなものかもしれない。
私は財布からSDカードを取り出し神崎さんに差し出した。
あやめ「木村……めぐみ……」
神崎さんはSDカードを受け取とった。
あやめ「小林かがみ……貞子Y麻衣子、小早川ゆたか……貞子H麻衣子、田村ひより……この三人の共通点、調べてすぐに分かった、陸桜学園の卒業生……もしかして泉さん?」
こなた「ビンゴ、私も陸桜学園出身……でも今頃になってそんなのを調べるなんて……本当にプライベートは調べないないみたいだね……」
あやめ「それが私のポリシーだから、小早川さんは以前取材した事がある……ふふ、それにしてもどこにどんな接点が出来るなんて分からないものね……」
神崎さんは苦笑いをした。
こなた「これでミッション終了だね、結構楽しかった、こんなのはレストランで働いていたら味わえなかったよ」
あやめ「いや、まだ終わっていない、教えて、どうやってこの神社を寄付した、そして資金は?」
身を乗り出しで来た。これは記者としての好奇心なのか。それとも個人的に聞きたいのか。
こなた「話す前に……条件がある」
あやめ「条件って?」
こなた「私の事を記事にしないって約束して……」
あやめ「そうか、以前私はそんな話しをした……まさか貴女がその本人とは思わなかったから興味を持ってもらうように話しただけ、約束する、記事にはしない」
あっさり約束をしてくれた。かえでさんやかがみの言う通りだった。でも、……疑ってもどうしようもないか。彼女を信じるしかない。
こなた「げんき玉作戦、私はそう名付けた」
あやめ「げんき玉……それって〇〇〇〇ボールで、生き物の元気を少しずつもらって大きな力にする技……」
こなた「当たり、その通りだよ、お金の取引に出る端数を切り取ってスイス銀行に貯めていく」
あやめ「なるほどね、取られた本人はそれに気付かない……取られた量は少なくなくても塵も積もれば山となる……まさにげんき玉そのものじゃない、もしかして私も
    取られたのかしら……」
こなた「さぁね、取られたかもしれない、私自身も取られたかもね」
神崎さんは私の目を見て話し始めた。
あやめ「巨大な力に立ち向かい泉さんはこの神社を守った……誰の為にそんな事を」
こなた「誰の為にって……誰だろう……つかさの為かな」
あやめ「つかさ……あの洋菓子店の店長の?」
こなた「うん」
あやめ「私、闘う女性は好きだな……」
真顔で何を言ってるの……この人。まさか……
こなた「へ、な、なにをいきなり、私はそんな気なんか全くありませんよ……」
神崎さんは笑った。
あやめ「何勘違いしてるの、強い物に立ち向かっていく女性の事を言っている、泉さんはまさにその通りじゃない」
こなた「別に私は戦士とかじゃないけど……」
神崎さんは私に背を向けて景色を見出した。
あやめ「さて、これでスッキリした、泉さんの手伝いも全て終わり、もうこれで貴女は自由だから、もう私に関わらなくて済む」
こなた「関わらなくて済むって?」
あやめ「もう二度と会う事はないでしょうね、短い間だったけどありがとう」
な、何だって、そんなのってないよ、一方的すぎる。
こなた「ちょっと待った、まだ私の話しは終わっていないよ」
あやめ「これから先は私の仕事だから……これ以上貴女を巻き込みたくない」
こなた「もう充分巻き込んでいるよ……」
あやめ「泉さんを危険な目に遭わせたのは悪かった、店長さんにも謝っておいて、さようなら」
自分の話しはしないつもりなのか。そっちがその気なら私にも考えがあるよ。
神崎さんは階段を下りようとした。
こなた「さっき渡したSDカード、データを圧縮して保存していてね、その圧縮方法が特殊で私が持っているUSBメモリーが無いと解凍できないよ」
神崎さんの足が止まった。
こなた「無理に解凍しようものならたちまち自己破壊するようになってる……」
神崎さんは私の所に戻ってきた。
あやめ「とう言うつもり、私を脅そうなんて……」
こなた「もう、騙し合いはやめようよ」
あやめ「騙し合い?」
こなた「そうだよ、私も全てを話している訳じゃない、神崎さん、貴女もね」
あやめ「何を言っているのか分からない……」
さて、今までずっと神崎さんのペースだったけど今度からは私のターンだからね。

189 :こなたの旅 J 5/5 [saga sage]:2013/07/15(月) 21:35:58.05 ID:AiDLb0Nc0
 夕日が差し込んで来た。もうそろそろ日が沈む。私はこの町の風景を初めてこの神社から眺めていた。
あやめ「データを加工するなんて卑怯じゃない、それに騙し合いって……私にそんな疾しいことなんか無い」
神崎さんがあんなにムキになっているのをはじめて見た。卑怯は合っているかもしれない。私はデータを人質にとったのだから。
こなた「木村めぐみ……この名前を出した、神崎さんはその後全くこの事について何も聞いてこなかったけど、行方を追っていたんじゃないの?」
あやめ「そうだけど……」
言葉が詰まっている。やっぱり、隠しているな。それなら……
こなた「柊けいこ、木村あやめはもう何処にも居ないよ」
あやめ「何処にも居ないって、それは亡くなったって意味?」
こなた「少なくとも地球には居ないって意味」
あやめ「な、そんな冗談に付き合って居られない、それより早く解凍する方法を教えて」
神崎さんの声が荒げてきた。
こなた「神崎さんが幼少の頃、一匹の傷付いた狐を拾ったでしょ?」
あやめ「突然何を言っているの、そんなの全く何の関係もない話しを……」
さて、次の話しを聞いてどんな反応をするかな。
こなた「正子さんから聞いた、その狐の名前は真奈美って名付けたんだってね、でも、その狐は最初から真奈美って名前だった……ちがう?」
あやめ「え、あ、う……」
何も反論してこない。そうか。私の勘が当たったみたいだ。
こなた「もし、その狐が真奈美なら私達にもとっても重要な事なんだけどね」
神崎さんは一歩後ろに下がった。そして口を開けて驚きの表情をしていいる。
あやめ「ま、まさか、貴女……その狐の正体を知っているの?」
神崎さんは私達と同じだ。もうそれは疑いの余地はない。
こなた「神崎さんは何て呼んでるのか知らないけど私達はお稲荷さんって呼んでる、知っているかもしれないけどUSBメモリーをくれためぐみさんもそう、けいこさんもね」
あやめ「ま、まさか、私の他にそれを知っている人が居たなんて……」
神崎さんはその場にしゃがみ込んでしまった。
こなた「悪いけど、神崎さんのデータをコピーさせてもらったから、私達にも必要なデータみたいだからね」
あやめ「いくら泉さんでもあのデータを解析なんか出来ない……待って、私達、さっき、達って言ってたでしょ?」
こなた「うん、少なくとも神崎さんが知っている私の知人は皆関係者だよ、勿論かがみ、ゆたか、ひよりもね」
神崎さんはゆっくりと立ち上がった。
あやめ「……これは偶然なの……まさか、私はその秘密を知っている人を探していた訳じゃない、いや、誰も知らないと思っていた」
こなた「どうだろうね、同じ秘密を持っているから自然と繋がったんじゃないの?」
あやめ「それで、貴方達は真奈美さんとどんな関係があるの?」
その話をするのははめんどくさいな。それにもうすぐ真っ暗になっちゃう。
こなた「私は直接そのお稲荷さんには会っていない……そうだね、つかさに会って直接聞くといいよ」
あやめ「つかさ……あの店長に、どうして?」
こなた「彼女が全ての始まりだから」
あやめ「え?」
私は階段の手摺にハンカチを巻いてその上に腰を下ろした。
こなた「下で待ってるよ〜」
そのまま体重を手摺に預けた。滑ってどんどん加速していく。バランスを取りながら下がっていく。
私は休み時間とか暇を見つけて貿易会社のビルの階段で練習した。慣れれば簡単だった。

 神社の入り口に着いて自分の車の近くで待っていると神崎さんが私と同じように手摺を滑って降りてきた。見事に着地すると私の所に歩いて来た。
あやめ「やられた、この下り方が出来るなんて」
こなた「悔しいじゃん、リベンジだよ、リ・ベ・ン・ジ」
神崎さんは笑った。
あやめ「ふふ、分かった、そのつかささんに会いましょう、話しはそれからみたいね」
こなた「うん」
あやめ「その前にこれだけは教えて、柊けいこ会長と木村めぐみが地球に居ないって言ったけど……それはどう言う意味?」
これは言っても良いかな
こなた「お稲荷さんは殆ど故郷の星に帰った、宇宙船が迎えにきてね……どんな方法か分からないけど二人も連れて帰った、だからこの神社にお稲荷さんは居ないよ」
あやめ「帰った……そ、そんな……どうして……」
とても悲しそうな表情。意外な反応だった。
こなた「お稲荷さん個人個人で理由は違うと思うけど……あの二人は……今までの人間の仕打ちを見れば分かると思うけど……」
神崎さんは悲しみを振り払う様に笑顔になった。
あやめ「そう……今日は泊まっていきなさいよ、今から帰ったら日が変わってしまうでしょ、それに母が狐の話しをするなんて、そうとう気に入られたみたいね」
こなた「サービスエリアで泊まろうと思ったけど……お邪魔しちゃうよ?」
あやめ「ぜひそうして」

 私は一番遠ざけていたつかさに神崎さんを会わそうとしている。本当にこれでいいのか。もっと彼女を調べてからでも……
そう思ったりもしたけど。もう決めてしまった事だ。それに神崎さんはお稲荷さんを知っている。そしてつかさと同じように狐を助けている。
きっと私達の仲間になってくれる。そうすればあのデータだって直ぐに分かるに違いない。そう思ってそれに懸けた。
でもさっきのあの悲しい顔は何だろう。あまりに悲しそうだから聞けなかったけど……けいこさんとめぐみさんを知っているいるのかな。
神崎あやめ……まだ何か秘密があるのか。つかさと会って真奈美の話しを聞いて彼女はどうするのかな。
分からない。ただ期待と不安だけが交差するだけだった。



つづく
190 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2013/07/15(月) 21:38:36.96 ID:AiDLb0Nc0
以上です。

一応作者的には重要な場面なので短いけど投下しました。

次の展開を楽しみにして下さい。

この後直ぐにまとめるので報告は省略します。
191 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/07/21(日) 20:04:26.52 ID:UWhGMsza0
それでは「こなたの旅」の続きを投下します。
6レスくらい使用します。
192 :こなたの旅K 1/6 [saga sage]:2013/07/21(日) 20:06:01.83 ID:UWhGMsza0
K

こなた「ほい、これでよしっと……ちょっとフォルダー開いてみようか」
あやめ「お願い……」
神社から神崎家に移った私達は神崎さんの部屋でデータの解凍をした。彼女はこの為に専用パソコンを用意していた。彼女にかがみの時の様な忠告は不要みたい。
私はフォルダーをクリックしようとした。
あやめ「待って」
私は手を止めた。
こなた「なに?」
あやめ「泉さん、こんなに早く解凍して良いの?」
こなた「え、それってどう言う事?」
神崎さんの言っている意味が分からなかった。手順で何か間違っているとも思えない。
あやめ「私がいつ約束を破って泉さんを記事にするか、そう思わないの……軽々しく人を信じるものじゃない……」
なんだその事か。
こなた「早いかな、もう神崎さんとは一ヶ月の付き合いだし、それに傷付いた狐を救ったし……お稲荷さんの秘密も知っているからね、もう仲間だよ、
    それに約束破る人が態々そんなの言うわけないじゃん」
あやめ「……おめでたい思考だな……今時珍しい……」
こなた「そうかな、でも、そう言うのって神崎さんが一番嫌いなんじゃないの?」
私はそのままフォルダーをクリックした……アルファベットの羅列……コピーする時ちょっと見たのと同じようなデータ。まったく意味が分からない。
神崎さんはじっとデータを見ている。見ていると言うより……目で字を追っている。もしかして読んでいる?
こなた「何か分かるの?」
あやめ「……これは、ラテン語みたいね……」
こなた「ら、ラテン語?」
あやめ「ふ〜ん……それにしても少し古い……ちょっと時間がかかりそう」
こなた「あ、あの、ラテン度って?」
あやめ「古代ローマ人が使っていた言語」
古代ローマって何時の話しなの。全く分からない。もう少し黒井先生の授業を聞いていればよかった。
こなた「うげ、そんなのを読めるの?」
あやめ「……辞書があればだけど」
こなた「そんなの近所の本屋さんじゃ売ってないよ……」
でも見ただけでラテン語だって分かるのは凄い。もしかしたらみゆきさんと同じくらいの頭脳があるかも。
あやめ「そうね、あとでゆっくり解読してみる」
こなた「神崎さん、いったいこのデータって何?」
神崎さんはディスプレーの電源を切ると立ち上がった。
あやめ「泉さん、お稲荷さんの話しは母には言わないで欲しい」
こなた「え、う、うん、別に言われなくてもそうするつもりだけど」
あやめ「それを聞いて安心した、夕ご飯の手伝いをしているから少し待ってて」
神崎さんはそのまま部屋を出て行った。何かはぐらかされたな。教えてくれなかった。
 ふと壁に貼ってある色紙を見つけた。これは貞子麻衣子のサイン……それも新しい。
なんだ神崎さん、ちゃっかりサイン貰っているじゃないか。
神崎さんの部屋を見回した……そのサイン意外は特に何もない。飾り気もあまりない。女の子部屋って感じはしないな。まだかがみの方が女の子らしい部屋かもしれない。
まぁ私も人の事は言えないか。本棚には専門書がずらりと並んでいる。
コミケに参加しているから薄い本があるかも……彼女の趣味が分かるかもしれない。本棚に手を伸ばした。だけど直ぐに手が止まった。
だめだめ、やめた。人の部屋を勝手に物色するのは止めよう。
私におめでたい思考だなんて言って置いて神崎さんだって他人を自分に部屋に一人だけにして無用心だよ。それとも私を信頼してくれたのかな。
まさか私を試しているって事は……
慌てて部屋を見回した……隠しカメラみたいな物は見えない。もっとも隠してあったとしてもすぐに見つかるような位置には置いていないだろうね……
それとも神崎さんのポリシーとやらが私にも移ってしまったかな。多分今までの私なら躊躇無く本棚を物色していた。
神崎さんか……かえでさんから策士と言われて、かがみからは弱気を助け強きを挫くなんて言われて……それでもって潜入取材。
私が居なかったら確実に捕まっていた。そこまでしてかえでさんは何をしようとしているのか。
幼少時代は活発な女の子。そして狐、お稲荷さんとの出逢い。いったいどんなタイミングで真奈美は神崎さんに正体を明かしたのかな。
かえで「食事が出来たから来て〜」
台所の方から声が聞こえる。
こなた「ほ〜い、今行くよ〜」
まだまだ私は彼女を知らなさ過ぎる。さてこれから少しでもそれが分かるかな。
私は神崎さんの部屋を出た。

193 :こなたの旅K 2/6 [saga sage]:2013/07/21(日) 20:07:09.52 ID:UWhGMsza0
あやめ「ちょっと……母さん、そんな事まで話したの……」
子供時代の話しを聞いたと言うと神崎さんは不快な顔をして正子さんに話した。
正子「何言ってるの、そんな事くらいで……」
食事は終わってもお喋りは続く。女三人寄れば姦しいってやつかもしれない。自分の家でもここまでお喋りに夢中にはなれなかった。
あやめ「なんかしっくり来ない……泉さんの幼少のはなしが聞きたい」
こなた「ん〜それは内緒」
あやめ「なにそれ、お母さんに話せて私には話せないって……それなら、泉さんのお父さんに聞かないと」
こなた「……お父さんに会うって……あまり推奨できないけど……」
あやめ「何言ってるの、私の母には散々会っているくせに、不公平だ」
こなた「……散々って、これで二回目なんですけど……」
あやめ「二回も会えば充分じゃない、私なんか……」
こなた「私なんか?」
あやめ「い、いいえ、なんでもない……」
私が聞き直すと慌てて訂正した。何だろう。正子さんが居間の置時計を見た。
正子「もうこんな時間、片付けしないと、あやめは泉さんの相手をして」
あやめ「あ、う、うん……」
正子さんは台所に向かった。それを確認すると台所に聞こえないほどの声の大きさで神崎さんが話しだした。
あやめ「明日は何時に出るの?」
私も神崎さんの声の大きさに合わせた。
こなた「日が昇った頃かな」
あやめ「それで、柊つかささんにいつ会わせてくれるの?」
こなた「う〜ん、明日って言っても向こうにも都合があるだろうからね、神崎さんは?」
神崎さんは自分の部屋の方を見た。
あやめ「私はもう少しあのデータを解析したい」
調べるって資料がなくて調べられるのかな。まぁ、データに関して言えばまったく私はお手上げだ。もうお任せするしかない。
そういえばつかさの店は毎週水曜が定休日だったな。
こなた「確証はないけど、今度の水曜日はどうかな、つかさの店が休みの日だよ、私も早出の日だから夕方なら時間空くよ」
神崎さんは手帳を出して広げた。スケジュールでも見ているのだろうか。
あやめ「私は構わない、あとは柊さん次第ね」
こなた「早速帰ったら聞いてみるよ、変更があるようなら連絡するから」
あやめ「そうね……そういえば貴女の電話番号聞いていなかった、良かったら教えてくれる」
こなた「あらら、そうだったね、メンドクサイから携帯から電話するから」
私が携帯電話を操作しているのを見ながら彼女は話し始めた。
あやめ「泉さん、貴女って面倒な事は全部他人任せ……それでいて重要な場面では先頭を切って走り出す……」
私は手を止めた。
こなた「へ?何それ?」
あやめ「一ヶ月泉さんと接しての率直な感想よ」
感想か……他の皆からもそう思われているのかな。
こなた「神崎さんは……私から見るといまいち分からない、記者の仕事が邪魔してるのかな、捕らえどころがなくって」
あやめ「別に構える必要なんかない、そうだったしょ?」
こなた「ふふ、そうかも、でもね、かえでさんなんか「策士」なんて言って警戒しているけどね」
あやめ「彼女あは最初から私を警戒していた、記者として行くべきじゃなかったのかもしれない」
こなた「でも、記者じゃないと取材出来ないよ、かえでさんああ見えても忙しい人だから」
あやめ「……」
神崎さんは何も言わなかった。
こなた「送っておいたよ」
神崎さんは携帯電話を確認した。
あやめ「OK、ありがとう、お風呂が沸いているから、それから隣の部屋に布団を敷いておいたから」
こなた「どうも」
あやめ「帰る時、多分母はまだ寝ていると思う、私は多分起きていると思うけどそのまま帰っちゃって良いから、それとも朝食食べてから帰る?」
こなた「いいよ、サービスエリアで済ませるから、データの解析でもしていて」
あやめ「そうさせて頂く」
こなた「実はね、こっちにもブレーン役の知り合いが居てね、もしかしたら神崎さんよりも先に解析しちゃうかもしれないよ」
あやめ「ブレーン役って……貴女って思っていたより顔が広いようね、是非その人も会ってみたい」
こなた「その人も普段忙しいからね、一応誘ってみるよ」
あやめ「もしかして、げんき玉作戦ってその人の考案なの?」
こなた「うんん、あの人はそう言う洒落っ気はないから」
あやめ「誰にも気付かれず、そして誰も傷つけず……その考え方が気に入った、全てにそうありたいものね」
こなた「難しい話は分からないよ」
あやめ「ふふ、そうかもね、貴女はアニメやゲームの話しをするのが似合ってる」
その後は、その通りにゲームやアニメや漫画の話しで盛り上がった。
194 :こなたの旅K 3/6 [saga sage]:2013/07/21(日) 20:08:06.32 ID:UWhGMsza0
 次の日、神崎家を出て直接つかさの店に立ち寄った。時間は丁度お昼を過ぎたくらいだった。つかさの店はお昼の時間はさほど混まないから丁度良いかもしれない。
つかさの店の扉を開けた。
つかさ「いらっしゃいませ……あれ、こなちゃん」
つかさは私をカウンターに案内した。ここならつかさは作業しながら話せる。
こなた「どうも〜あれ、いつもひろしが出迎えるのに?」
そういえばこの前もひろしが居なかったな。
つかさ「う、うん、ひろしさんはお父さんと一緒に神主のお仕事を手伝っているから……」
こなた「もしかして家業を継ぐの?」
つかさ「お父さんはその気満々みたい、本当に継ぐなら神道の学校に行かないと神主になれないけどね」
こなた「それで、本人はどんな感じなの?」
つかさ「どうかな〜、なんだか少しその気になっているみたい」
お稲荷さんが神主か……それも悪くないかも。心の中ですこし笑った。
こなた「でもひろしが家業と継いだらこの店はどうなの、仕込みとか買出しとか大変になるでしょ、アルバイトさんも余計に雇わないといけないよね?」
つかさ「そうだけど、ひろしさんじゃないと出来ない仕事もあるから……」
さすが夫婦って所かな、ひろしって頼りにされているな。
こなた「それなら私の所に戻ってきちゃえば、スィーツの部門はまだ担当固定されていないし、スィーツ以外の料理だって出来るよ」
つかさ「え、ほんとに!?」
つかさは作業を止めてカウンターから身を乗り出してきた。驚きと喜びの表情だった。だけど直ぐに不安そうな顔になった。
つかさ「だけど、かえでさんが何て言うか……今頃になって戻るなんて……」
こなた「かえでさんなら心配ないよ……実はねかえで……あっ」
しまった。この話は止められていたのを忘れていた。やばい。
つかさ「実は?」
つかさが首を傾げた。
こなた「あえ、じ、実は私もつかさに戻ってきて欲しいな〜なんて思っていたから、もしつかさがその気なら私からも頼んであげる、きっとあやのも賛成してくれるよ」
つかさ「ありがとう、こなちゃん、でもまだ決まっていないから、そうなったらお願いするかも」
ふぅ、危うかった。なんだかんだ言って私もつかさと同じだな。秘密を守るなんて出来そうにない。
こなた「まかせたまへ〜」
つかさは笑顔で作業に戻った。そして私に軽食とコーヒーとケーキを用意してくれた。
つかさのあの様子だとかえでさんはまだ話していない。私はかえでさんに酷な事を言ってしまったかな。
こなた「今日はみなみの演奏はないの?」
つかさ「うん、まなみの強化練習でお休み」
こなた「へぇ、それで演奏会って何時なの?」
つかさ「再来週の日曜日だよ、こなちゃんも時間があったら聴きに来てね」
つかさは演奏会のパンフレット兼チケットを差し出した。私はそれを受け取った。
こなた「みなみが凄くまなみちゃんを買っていたけど、スカウトが来るとか、自分を超えたからもう教えられないとか言ってた」
つかさ「そういえばお姉ちゃんも驚いていた」
こなた「私もそう思うよ、あの練習曲が頭の中で今でも響いているくらいだから」
つかさ「ありがとう、」
つかさはそのまま厨房の奥に行こうとした。
こなた「もし、スカウトが来たらどうするの」
つかさの足が止まった。
つかさ「どうするのって?」
こなた「みなみが手に負えないくらいだから、もしかしたら本場に留学とかもあるかもしれないよ」
つかさ「留学って……どこに?」
こなた「分からないけど、クラッシックだと本場はどこだろう」
つかさ「その時になってみないと分からない……それにまなみはまだ一人じゃ何も出来ないし」
こなた「あ、つかさのその台詞、それは私がみなみに言った事だった、ごめん余計な話しだった忘れて」
不安を煽っただけだったか。余計な話しは止めて本題に入るかな。
こなた「そのままで聞いて、今日来たのはね、つかさに会わせたい人がいるからなんだ」
つかさ「え、私に、誰なの?」
こなた「記者の神埼あやめさんって人」
つかさは奥からカウンターに戻ってきた。
つかさ「記者……もしかしてこの前言っていた記者さん?」
こなた「そうだよ」
つかさ「私にインタビューでもするの、それともお店の紹介の取材なの?……私はそう言うの断ってるから……」
そうだった。記者を言うのは余計だった。どうも私って余計な事を言うな……
こなた「うんん、そうじゃない、記者としてじゃなくて、神崎あやめさんとしてつかさに会わせたい」
つかさ「そうなんだ、それなら、こなちゃんがそう言うなら会うよ」
さすがつかさだ、話が早い。
こなた「今度の水曜日ってお休みだよね、夕方は空いているかな?」
つかさ「うん、空いているよ……お客さんなら家より此処がいいかも、お料理も出せるし、お話も出来るし」
この店か。貸し切りと同じようなものか。その方が気兼ねなく話せるかも。
こなた「ついでって言ったらあれだけど、みゆきさんもも会わせたいからもしかしたら来るかも」
つかさ「本当に、嬉しいな、ゆきちゃん最近会っていないから……それならお姉ちゃんは呼ばなくて良いの?」
かがみか……かがみも関係者だよな。でもまったく考えていなかった。確かにみゆきさんに会わせておいてかがみを会わせない理由はないよね。
そこに気付くのはさすが妹と言うべきなのか。
こなた「かがみも呼ぶよ」
つかさ「わ〜なんだか凄く楽しくなりそう、楽しみだな〜♪」
鼻歌を歌いながら作業をし出した。何時に無く体が軽そうにテキパキと動いている。
つかさ「ところで何で神崎さんって人を私に会わせたいの?」
狐……いや、お稲荷さん、いや、真奈美の話は彼女が来てからの方がいいかもしれない。
こなた「それはお楽しみだよ」
つかさ「お楽しみ……そういえばこなちゃんから私に紹介なんて初めてかも、きっと良い人だね」
良い人か……つかさはかがみに私を紹介した時もそう言っていたってかがみが教えてくれたっけな。つかさは全く変わっていないな。
でも気付けば私より先に結婚して子供までいるから驚きだ。
 
195 :こなたの旅K 4/6 [saga sage]:2013/07/21(日) 20:09:03.19 ID:UWhGMsza0
 つかさが出してくれた料理を食べ終わった頃、続々とお客さんが入ってきた。用も済んだ事だし帰るかな。
こなた「ご馳走様、そろそろ帰るね、御代は此処に置いておくよ」
つかさ「あ、御代はいいのに……」
こなた「私もお客様だよ」
つかさ「ありがとうございました、またのお越しを……」
ふふ、つかさからそんな言葉を聞くなんて初めてだ。そこに一人のお客さんがつかさに寄ってきた。
お客「今日はピアノの演奏はないのかい?」
つかさ「すみません、今日はお休みです」
お客「それは残念、最近演奏している子供は貴女のお子さん?」
つかさ「はい、そうですけど?」
お客「素晴らしい演奏だった、将来が楽しみですな」
つかさ「ありがとうございます……良かったらどうぞ」
お客さんは演奏会のパンフレットを受け取るとそのままテーブル席に向かって行った。つかさはお客さんの注文を受けて忙くなった。私はそのまま店を出た。
隣にレストランかえでが見える……顔を出してみようかな。
明日からあの店で仕事か……面倒くさいな。
帰ろう……

 その水曜日が来た。
みゆきさんは仕事の関係でどうしても来られないと返事がきた。
かがみ「まさか神埼あやめを本当につかさに会わせるなんて」
かがみは二つ返事で返事が来た。私の思惑とは全く逆になった。しかも駐車場でばったりかがみと会うなんて。私はそこまで勘は冴えているわけじゃないからしょうがないか。
かがみ「向こうで神崎あやめと何を話したのよ?」
そして。この駐車場で会うのも何かの導きなのか。それともただの偶然なのか。駐車場に忘れ物を取りに来ただけなのに……
こなた「神崎さんは幼少の頃、傷付いた狐を助けてね、その狐の名前が真奈美と言うそうな」
かがみ「な、何だって!?」
驚くかがみ。本当は言うつもりは無かった。どうせつかさと神崎さんが会えば分かる事。
こなた「神崎さんの母親から聞いた話」
かがみ「真奈美って、まさか、嘘でしょ、すると神崎あやめって……」
こなた「そうだよ、彼女は狐の正体を知ってる、それでお稲荷さんの存在も知ってる」
つかさと神崎さんが会えばつかさが動揺してしまって何も話せないかもしれない。だからかがみには前もって話す必要がある。でも電話では話せなかった。
駐車場でかがみに会ったのはまるでそのチャンスを与えてくれたかの様だ。
かがみ「それじゃ貿易会社からもってきたあのデータって?」
こなた「多分それに関係する事だとは思うけど、神崎さんは教えてくれない、だけどつかさと会えばもしかしたら……」
かがみ「そ、そうね、確かにつかさの話しを聞けば彼女にとっても衝撃的なはず……分かった、私に出来る事なら協力する……」
かがみは直ぐにこの状況がどんな物なのか理解した。
こなた「みゆきさんが来られなかったのはちょっと痛いかな」
かがみ「みゆきも誘ったのか、仕事じゃしょうがないわよ、何か大きな山場に来たって言っていた……でもデータはとても興味深いって言っていたから」
こなた「ちゃんと渡したんだね、安心した」
かがみ「それよりかえでさんはちゃんと誘ったんでしょうね、彼女もつかさを理解している一人よ」
こなた「うんん、誘っていない……」
かがみ「何故よ、私やみゆきを誘っておいてあんなに近くに居るかえでさんを呼ばないなんて……」
かえでさんは妊娠しているから……と言えば済む話だけど。言えない。
そんな私の心境を知ってか知らずかかがみはそれ以上私を追及しなかった。
かがみ「つかさの店に行くわよ」
こなた「うん……」

196 :こなたの旅K 5/6 [saga sage]:2013/07/21(日) 20:10:01.35 ID:UWhGMsza0
 つかさの店の扉には定休日の看板が立て掛けられている。でも店の奥に灯りが見える。もうつかさが来ているのか。約束の時間はまだ随分先なのに。
かがみは扉を開けて店の中に入った。私はその後に続いた。
かがみ「入るわよ、つかさこんなに早くから来て……」
つかさ「あ、お姉ちゃん……こなちゃんも、いらっしゃい」
こなた「うぃ〜す」
つかさ「初めて会う人だからおもてなししないといけないでしょ、だから準備をしていたの」
かがみ「お持て成しって、まだどんな人かも分からないのに、つかさ、あんたは「疑い」って言葉をしらないのか……」
こなた「そう言うかがみだって私を絶対に記事にしないって言ってたじゃん、」
かがみの言う通りだった。神崎さんは記事にしないって言った。こうして見るとつかさにしろかがみにしろ本質的には同じなのかもしれない。この件で初めてそれが解った。
つかさ「こなちゃんの記事って何?」
こなた・かがみ「何でもないよ」
つかさ「ふ〜ん?」
つかさはちょっと首をかしげたけど直ぐに料理に夢中になった。
かがみは溜め息を付くと適当なテーブル席にに腰を下ろした。私もかがみと同じテーブルに座った。かがみは店内をぐるっと見回した。
かがみ「お客さんが居ないお店って言うのも静かで悪くないわね……」
こなた「かがみはお客さんとしてしか店に入っていないからそう思うだろうね、私は開店前、閉店後も店に居るからこんな状況はよくあるよ……
    でも、かがみがそう言うとそんな気がして来たよ、良くも悪くも思った事なんか無かったのに」
かがみ「私とこなたは業種が全く違うから、感覚が違うだけなのかもね……つかさとこなたは同じ業種だから私が新鮮に思った事でも当たり前だったりする訳よね」
こなた「私はあまりかがみの業種にお世話になりたくないよ……」
かがみは笑った。
かがみ「ふふ、飲食業と弁護士じゃ客の質が違いすぎる、でもね、正直言ってこなたとひよりが一緒に仕事をしていたら私の客になっていたと思う、
    ゆたかちゃんとひよりだから出来た仕事なのかもしれない」
こなた「はい、その点につきましては反省しております……」
かがみ「本当か?」
かがみは私の目を真剣な顔でみた。
かがみ「いや、やっぱりあんた達にはもう少し監視が必要ね、顔にそう書いてある」
こなた「え?」
自分の顔を両手で触った。
かがみ「あははは、何マジに成ってるのよ、ばっかじゃないの」
こなた「うぐ!」
かがみはたまにこんな事するよな……こんな時にしなくてもいいのに……
つかさ「お姉ちゃん、こなちゃん、ちょっと手伝って〜」
こなた・かがみ「ほ〜い」
私とかがみはつかさの作った料理をテーブルに運んだ。
つかさ「これでヨシ!!」
テーブルには色取り取りの料理が並んでいる。
こなた「ちょっと、つかさ……これ、作りすぎじゃない?」
かがみ「神崎あやめを入れても四人、余るわね」
つかさ「多かったかな?」
こなた「まぁ、余ったのはかがみが全部片付けてくれるから心配ないよ」
つかさ「そうだね、お願いね、お姉ちゃん」
かがみ「お願いって……二十代ならまだしも、幾らなんでも無理よ」
こなた「へぇ、若い頃なら問題なかったんだ?」
かがみ「こんな時に何を言っている」
マジになるかがみ、さっきのお返しだよ。
こなた「余ったらレストランのスタッフ呼んで食べてもらおう」
つかさ「あ、それが良いね」
かがみ「……最初からそうすれば良いだろう……」

197 :こなたの旅K 6/6 [saga sage]:2013/07/21(日) 20:11:04.60 ID:UWhGMsza0
 約束の時間近くなった頃だった。窓越しから一台のオートバイが駐車場に向かうのが見えた。
こなた「お、お客さんが来たようだよ」
かがみとつかさが私の目線を追って窓の外を見た。
かがみ・つかさ「どこ?」
こなた「ほら、大型バイクに乗っている人」
私は指を挿して見せた。
かがみ「大型なんて洒落たもの乗っているわね……神崎あやめか……面白そうな人ね」
つかさ「え、え、どこ、どこ?」
こなた「もう駐車場の方に行っちゃったよ」
つかさ「え〜」
つかさは見逃したか。まぁお約束と言えばお約束だね……
こなた「そろそろ彼女が来るよ、つかさ、準備して」
つかさ「準備って、もう食事の用意は出来ているよ」
こなた「いや、そっちじゃなくて、心の準備だよ」
つかさ「え、そ、そんな事言われると緊張しちゃう」
こなた「いや、別に構える必要なんかないよ、普段のつかさのままで、普通に接すればいいから」
つかさ「うん、それなら出来る」
かがみは食事が用意されているテーブルより後ろに下がり椅子に座った。かがみは様子見って所だろうか。それに主役はあくまでつかさだからそれでいい。
つかさに彼女がお稲荷さんの事を知っているのは教えていない。つかさはそれでいい。予備知識なんか要らない。
つかさはそうやって乗り越えてきた。それに期待する。

 駐車場の方から神崎さんがこっちに向かってきた。ジーパンに皮ジャン姿だ。ヘルメットは取ってある。彼女は店の入り口前で皮ジャンを脱いだ。
定休日の看板があるせいなのか暫く彼女は入り口で何もしないできょろきょろとしていた。つかさがゆっくりと扉を開けた。
つかさ「い、いらっしゃい、こなちゃん……泉さんから聞きました、神崎さんですね……どうぞ」
あやめ「失礼します」
つかさは神崎さんを通した。
こなた「いらっしゃい待っていたよ、こちらが話していた柊つかさ」
二人は軽く会釈をした。
こなた「そんでもって、向こうに座っているのが小林かがみ」
かがみは立ち上がりその場で礼をしてすぐ座った。
あやめ「小林……かがみ……」
神崎さんはかがみをじっと見ていた。
つかさ「あ、あの、始めまして、柊つかさです、記者さんって聞いていますけど」
神崎さんは微笑んだ
あやめ「神崎あやめです、〇〇の記者をしています……」
つかさが手を神崎さんの前に出した。握手のつもりだろう。神崎さんも手を前に出して二人は握手をした。
つかさ「よろしくお願い……う」
ん、つかさの表情が変わった。握手した途端なんか急に苦しそうになった。どうした?
神崎さんの表情もなんかおかしい。無表情に握手した手をじっと見ている。つかさが腕を動かしている。引いている様に見えた。
つかさ「あ、あの……手が……い、痛い!!」
つかさが叫んだ。神崎さんはそれに反応して手を放した。つかさは握手されていた手を痛そうに擦っていた。神崎さんは思いっきり握っていたのか。緊張でもしていたのかな。
なんか変だ。ここは私が入って雰囲気を和らげるか。そう思った矢先だった。神崎さんはおもむろにポケットから何かを出した。
それは……ボイスレコーダだ。
神崎さんはボイスレコーダを操作しだした。そしてつかさの前に向けた。ば、ばかな。神崎さんはつかさを取材するのか。なぜ……私がそれを止めようとした時だった。
私よりも先にかがみがつかさの前に立った。
かがみ「神崎さん、どう言うつもり」
つかさ「お姉ちゃん?」
かがみの声に驚いたのか神崎さんは慌ててボイスレコーダをポケットに仕舞った。だけどもうそれは遅かった。かがみの表情は怒りに満ちていた。
あやめ「これは……ち、違う」
かがみ「何が違う、あんたさっきつかさを取材しようとしていたでしょ、許可も取らないで何様のつもり」
神崎さんは黙って何も言わない。
かがみ「ボイスレコーダの電源入ったままじゃない、帰って…」
つかさ「お姉ちゃん、ちょっと……」
かがみは扉を指差した。
かがみ「帰れ!!」
凄い……あんなに怒っているかがみを見たのは初めてだ。私もつかさも今のかがみを止められない。
神崎さんは手を擦るつかさを暫く見ると脱いでいた皮ジャンを羽織ると店を出て行った。
つかさ「お姉ちゃん……どうして?」
かがみ「あんたは少し黙っていなさい」
かがみは興奮状態だ。今は何を言ってもだめだろう。
 何故。ボイスレコーダを使うなら此処に来る前に操作しておけば気付かれない。それが分からないような人じゃないのに。
まるでわざとしたようだ。わざと……意図的に……どうして。聞かないと。
まだ間に合うかな。
私は店を飛び出し全速力で駐車場に向かった。

 
つづく


198 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2013/07/21(日) 20:11:49.85 ID:UWhGMsza0
以上です。

この後すぐにまとめるので報告は省略します。
199 :なんかテキストが見つかったので供養(続き無し) [sage]:2013/08/06(火) 22:11:32.15 ID:MxroFafO0
「ええっ、ゆきちゃん痴漢に遭ったの!?」
「つ、つかささん声が大きいですっ!」

 昼休みの中庭、お弁当の包みを開けずに抱きかかえたまま、登校途中の電車内で痴漢された事を告白するみゆき。
 午前中みゆきの様子がおかしいことにこなたが気付き、その理由を問いただした結果がこの答えだった。
 他人に聞かれたくない、といつものB組の教室ではなく中庭まで出向いてきたのも納得できる。
 そう思いながら、かがみは卑劣な行為に及んだ男へ嫌悪感を示し眉をしかめた。

「駅員に突き出さなかったの?あー……混んでて犯人がわからなかった?」
「はい、それもありますが……なにより、その……いきなりだったので混乱してしまって……」

 歯切れの悪い返事をするみゆきに、かがみとつかさは『無理もない』と同情するが、こなただけは少しだけ難しい顔をしながらみゆきを見つめ続けている。

「……んー……みゆきさん、痴漢っていうけどナニされたの?」
「ちょ、こなた、あんたねぇ!やな事思い出させるような真似を……」
「痴漢ってのはすごいデリケートな問題なんだよ、かがみ。
女にとってだけじゃなくて、真っ当に生きようとしてる男にとってもね?
痴漢冤罪のドラマだか映画だか、やってなかったっけ?つかさとか見てないかな?」
「あ、うん、見た見た。すごい辛そうだったよ男の人。職を無くして、友達も離れてって感じで……」

 珍しく真面目な顔で正論を言うこなたを前にして、かがみは『うぐ』と言葉を詰まらせる。

「みゆきさんが男を陥れるなんて可能性はゼロだけどさ、勘違い、不可抗力って可能性はあるんだよ。
痴漢された〜って通報するのは恥ずかしいの我慢するだけで済むけど、もしそれで無実の人が捕まったら人生オワタなんだよね。
たとえ無実を証明しても手に入るのは『勘違いでした☆』っていう手遅れのお墨付きだけ。
だから、慎重になるにこした事はないってこと」

 そこまで言い切って一息つくこなた。
 それを感嘆の目で見つめるつかさに、なんだかとても悔しそうなかがみ。
 みゆきは、頬こそ赤いままだがその言葉に頷いていた。

「それにしても、こなたがここまで物事をしっかり考えられるヤツだとは思わなかったわ……」
「いやほら、ウチにはいつそんな感じでしょっぴかれるかわかんない人が一人いるからネ。
ちょっと調べておいたのさ」
「あー……すごい失礼だけど深く納得してしまったわ」

 雰囲気を和らげいつも通りの猫口に戻ったこなたの説明に、かがみは疲れたようにため息をついた。
200 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/08/07(水) 21:07:20.53 ID:qZn9ISFb0
>>199
乙です。

「柊かがみ法律事務所」のネタみたいですね。

この手のネタの続きは自分では書けそうにない。

まとめはもう暫く様子を見ます。

201 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/14(水) 13:51:41.01 ID:eUjWtErL0
それで「こなたの旅」の続きを投下します。

5レスくらい使用します。
202 :こなたの旅L 1/5 [saga sage]:2013/08/14(水) 13:53:07.88 ID:eUjWtErL0
L

 私は走っている。私は間違えたのか。つかさを会わしちゃいけなかったのか。かがみにお稲荷さんの話しをしちゃいけなかったのか。分からない。
つかさと神崎さんはまだ挨拶しかしていない。何も話していないじゃないか。そもそもかがみがあんなに怒るなんて……どうして。
分からない事だらけだ。だから逃げるように店を出た神崎さんを呼び止めないと。駐車場について二輪専用の駐車スペースを見た。
居た!
バイクに跨ってヘルメットを着けようとしている。
こなた「神崎さ〜ん!!」
私は叫んだ。ヘルメットを着けようとする神崎さんの手が止まった。待ってくれそうだ。私はスピードを上げて彼女に近づいた。
こなた「はぁ、はぁ、はぁ」
あやめ「泉さん、貴女って走るのが好きね……これで何度目かしら……」
微笑んで冗談を言う。でもその冗談に対応出来るほど余裕はない。
こなた「ど、どうして……」
息が切れてこれしか言えなかった。神崎さんは店の方を見ながら話した。
あやめ「この私が何も言い返せなかった……生死を潜り抜けたような凄まじい気迫、並の人が出来るものじゃない……柊つかさは彼女にとってどれほど大切なのか、二人の関係は?」
かがみは実際に二度も死にそうになっている。それに弁護士の職業のせいもあるかもしれない。私は呼吸を整えた。
こなた「かがみの旧姓は柊だよ、つかさの双子の姉、つかさがかがみをお姉ちゃんって言っていたの聞こえなかった?」
神崎さんは首を横に振った。
あやめ「あまりの気迫でそこまで気を配る余裕がなかった……双子の姉妹……全然似ていないじゃない、二卵性かしら……」
こなた「そんな事より何故商売道具なんか出したの、もしかしてわざとやったでしょ?」
あやめ「ふふ、そう見える?」
こなた「……まさか、本当にわざとなの」
微笑んだまま何も言わない。私もかがみと同じように頭に血が上ってきた。
こなた「ば、バカにするな〜、私が何でつかさに会わそうとしたか分かっているの、つかさは、つかさはね……」
頭に血が上ってなかなか先が言えない。
あやめ「もう私にはこれ以上関わらないで」
『ヴォン!!』
キーを入れてバイクのエンジンをかけた。
関わるなって、ここまで私を巻き込んでおいてそれはないよ。
こなた「……私達と一緒じゃダメなの、お稲荷さんの秘密を知っている同士じゃん?」
あやめ「これは私の問題だから」
こなた「卑怯だ、ここまで私に協力させておいて……」
「神崎さ〜ん、こなちゃ〜ん!!」
駐車場の入り口からつかさが走って来た。
こなた「一緒に戻ろう、謝ればかがみだって許してくれるよ」
あやめ「それじゃ、さようなら」
『ヴォン、ヴォン!!』
神崎さんはヘルメットを被った。慌てたのか長髪がはみ出ている。アクセルを全開にして私の前から飛ぶように走り去った。
何だろう。つかさを避けるようにも見えたけど……
つかさが私の所に来た時には既に神崎さんの姿はなかった。バイクのエンジン音が微かに残って聞こえるだけだった。

203 :こなたの旅L 2/5 [saga sage]:2013/08/14(水) 13:54:14.90 ID:eUjWtErL0
つかさ「神崎さん帰っちゃったの?」
こなた「うん」
悲しそうな顔で駐車場の外をみるつかさ。
こなた「つかさ、手は大丈夫なの、すごく苦しそうだったけど」
つかさ「う、うん、すっごい力で握られちゃって……男の人かと思うぐらいだった、でも、もう痛みは消えたから」
つかさは私の目の前に握られた手を見せた。少し赤くなっている。
つかさ「私……何か神崎さんに気に障る事したのかな……」
つかさは俯いてしまった。
こなた「別に気にすることじゃないよ……それよりかがみは?」
つかさ「なんか急にしょぼんってなっちゃって……」
感情に身を任せた反動でしょげちゃったかな。
こなた「取り敢えず店にもどう」
私は歩き始めた。
つかさ「待って……何かおかしいよ、お姉ちゃん、あんなに怒った姿をみたの初めて、神崎さんも何もしないで帰っちゃうし……こなちゃん、何か知っているの?」
いくら鈍感なつかさでも気付いたか。もう隠してもしょうがない。
こなた「神崎さんはお稲荷さんを知っている……」
つかさ「え?」
つかさは立ち止まった。私も止まった。
こなた「神崎さんが幼少の頃傷付いた真奈美を助けた」
つかさ「そ、それで?」
こなた「……それしか知らない、神崎さんはそれ以上教えてくれない、だからつかさに会わせようとしたのだけど……開けてみれば大失敗……余計こじれちゃった」
つかさ「まなちゃんと逢った人が私意外に居たんだ……神埼あやめ……さん、まなちゃんの事聞きたかったな……」
私はつかさを見て驚いた。もっと悲しむと思った。真奈美の死を思い出して泣いてしまうのかと思った。
でもそれは間違いだった。つかさはもう真奈美の死を受け入れていた。つかさの安らかな笑顔を見て確信した。
それならもうこの話しをしても構わない。
こなた「それからね、これは憶測だけど、もしかしたら真奈美は生きているかもしれない……」
つかさ「ふふ、こなちゃんったら、こんな時に冗談なんか」
こなた「いや、これはみゆきさんが言った事だよ……」
つかさ「ゆきちゃんが……ほ、本当に?」
こなた「うん、そして神崎さんもそれについて何か知っているような気がするんだ」
つかさ「知っている……」
こなた「そう、そしてその鍵になるのが貿易会社から盗んだデータ、今、みゆきさんに解析してもらってる」
つかさ「盗んだって……ダメだよそんな事しちゃ」
こなた「もうしちゃったからね、この前一ヶ月の研修ってやつがね、実は神崎さんと貿易会社で潜入取材をした、そこの資料室からデータをコピーした」
つかさ「私が知らない間に……そんな事を……」
こなた「ごめん、真奈美の話は嫌がると思って伏せたんだよ……まだ憶測だけの話しで、間違っていたらつかさが傷付くと思って……」
つかさ「……生きていたら嬉しい……例えそれが間違っていても、生きているって思える時間があるから、それでもやっぱり嬉しいよ」
……涙ひとつ溢していない。それどころか昔を懐かしんでいるように見える。
葉っぱを見て泣いていたつかさ。私がちょっと詰め寄っただけで泣いてしまうつかさ。でもそれは弱さじゃなかった。
かえでさんの言っていたつかさの強さってこの事を言っているのか。
つかさはもう完全に真奈美の死を乗り越えていたのか。
それにつかさの口の軽さなんて私とあまり大差なんかなかった。いや、意識しても隠せなかった分私の方が酷いかもしれない。
神崎さんに最初に逢うべきだったのはつかさだった。
私は神崎さんと駆け引きだけで乗り過ごそうとしていただけだった。ゲームをしていたに過ぎなかった。
だから神崎さんは真実を話してくれなかった……
つかさ「どうしたの、こなちゃん?」
こなた「つかさには敵わないや……」
つかさ「え、何が?」
こなた「笑顔だけで私の考え方を変えてしまったから」
真奈美が一晩でつかさを殺すのを止めた理由が今分かった。そういえばゆたかとひよりはつかさが凄いって何度も言っていたっけな。
今頃になってそれが分かるなんて。共同生活までした事があるって言うのに……
つかさ「……わかんないよ」
分からなくていい。それがつかさだから。
こなた「さて、店に戻ろう、かがみが待ってる」
つかさ「うん」
私達は店に向かって歩き始めた。
つかさ「ねぇ、神崎さんってどんな人、握手しただけだからまったく分からない」
こなた「どんな人か……一ヶ月くらい見てきたけど、仕事の為なら何でもするような人かな……でも……」
つかさ「でも、良い人なんだね」
良い人か……
こなた「なんで分かるの?」
つかさ「こなちゃんの友人だからね」
こなた「友達だって、彼女が?」
つかさ「だって、お姉ちゃんに追い出された神崎さんを追いかけたでしょ、呼び止めに行ったんじゃないの?」
こなた「呼び止めに行った訳じゃないよ」
つかさ「それじゃ何しに行ったの?」
こなた「わざと私達を怒らせるような事をしたから、その訳を知りたかった」
つかさ「それで、教えてくれたの?」
こなた「つかさが来たら逃げるように帰った」
つかさ「私、嫌われちゃったかな……」
こなた「あれじゃ逆に私達に嫌われようとしているみたいだ」
つかさ「記者さんって難しいね……」
それから店に着くまでつかさは考え込んで何も話さなかった。

204 :こなたの旅L 3/5 [saga sage]:2013/08/14(水) 13:57:31.68 ID:eUjWtErL0
 店に戻ると椅子に座って項垂れているかがみの姿があった。
かがみ「つかさ、こなた……ごめん……台無しにしてしまった」
つかさは心配そうな顔でかがみの側に寄り添った。
こなた「謝らなくてもいいよ、かがみが出なかったから程度の違いはあったかもしれないけど私も同じ事をしていたから」
つかさ「恐くて何もできなかったよ……まつりお姉ちゃんと喧嘩していてもあんなに恐くなかったのに……」
かがみ「……そう、そんなだったの……そんなに怒っていた?」
こなた「まぁ、ボイスレコーダーを出されちゃね」
かがみ「ボイスレコーダー、違う、それだけならあんな事はしなかった、つかさが苦痛の表情をしているのに彼女は握手を止めようとはしなかった……だから思わず飛び出した
    その後後は何を言っているのか自分でもあまり覚えていない……」
そうか。だから私よりも先にかがみが飛び出したのか。これは身内と友人の感性の違いなのか……
つかさ「もう手は大丈夫だから……」
つかさは握られていた手を握ったり開いたりしてかがみに見せた。赤くなっていた所も殆ど分からなくなる位に元に戻っていた。
かがみ「そう……それは良かった……」
かがみはほっと一息つくと立ち上がり私の方を見た。
かがみ「それで、神崎を追い掛けて何か分かったのか?」
こなた「ん〜、肯定も否定もしなかったけど……私の感じではわざとボイスレコーダーを出したみたい……」
かがみ「ふふ、だとしたら私はまんまと彼女の策にはまったってことなのか……こなたに神崎がなぜそんな事をするのか心当たりはあるのか?」
こなた「分からないけど……何度もこれからは私の仕事だって言っていたね」
かがみ「私達が居たら邪魔だって事なのか、こなたを散々引っ張りだしておいて……」
こなた「でも分からないのはあのデータを私が持っているに返せって一度も言わなかった、何故だろうね」
かがみ「それはデータなんてどうせ解析も分析も出来ないだろうって思っているのよ、頭に来るわ……完全に私達に対する挑戦だ」
つかさ「データっていったい何のことなの?」
私はつかさに何て言うのか迷っていると……
かがみ「もう秘密にしても意味はない、神崎とこなたが共同であの貿易会社の秘密データをPCから抜き取った」
つかさ「抜き取ったって……盗んだって事なの?」
つかさは私の方に向いて心配そうな顔になった。
こなた「盗む……人聞きが悪いけど……合ってる」
つかさ「そ、そんな事して大丈夫なの?」
更に心配そうな顔になるつかさ。返答に困った。
かがみ「今の所他人びバレた形跡はないわね」
つかさ「どうしてそんな危険は事をしたの……」
こなた「それは……」
私がまごまごしていると……
かがみ「真奈美さんが生きている証拠を探すためらしい……こんな事をしても無駄だとは思うけど……みゆきも罪な事をするわ」
つかさ「まなちゃんが……生きている、さっきもそれ言っていたよね、それって本当なの、ねぇ、こなちゃん!?」
つかさは私に詰め寄った。
こなた「分からない……」
かがみはつかさが用意した料理が置かれているテーブル席に腰を下ろした。
かがみ「みゆきも全く根拠がないなら私達にこんな話しを持ちかけてくるはずはない、それにみゆきやこなたとは違った意味で私はこのデータに興味があるわ、
    私もこのデータの解析をしてみる」
つかさ「お姉ちゃん」
こなた「かがみ……」
かがみ「だって悔しいじゃない、このまま神崎の策におめおめとはまっているのは……それにこなたをコケにして、つかさも傷つけた、挙げ句の果てに私達が解析できないと思っている、
こうなったらあのデータは絶対に解析してやる、解析してやるんだから!!」
かがみは目の前の料理を食べ始めた。自棄食いだな……これは。
つかさ「でも……私がこなちゃんを追いかけた時、神崎さんとこなちゃんが駐車場で何か話していたけど、言い争いをしている様に見えなかった……」
こなた「一ヶ月も一緒に仕事をすれば情も湧いてくるよ……私達と一緒にって言ったけど……ダメだった」
かがみ「モグモグ、神崎は群れるのが嫌いなようね、彼女の仕事ぶりからもそれが伺える……こなた、もう彼女と一緒に何かするのは諦めた方がいい」
こなた「でも……神崎さんはあのデータの解析の方法を知っているみたいだったから、先を越されちゃうよ」
かがみは食べるのを止めた。
205 :こなたの旅L 4/5 [saga sage]:2013/08/14(水) 13:59:53.15 ID:eUjWtErL0
かがみ「この前みゆきにデータを持っていったら早速パソコンを立ち上げて中身を見た、こなたの言っていた謎も直ぐに解けた、あの文字の羅列はラテン語よ、
    それもかなり初期のものらしい、それに粗方の内容も分かった、どこかの場所を説明している文だってね……みゆきは何時になく目を輝かせていたわ、
それにあのデータは英文もかなりある、そっちの方は私でも翻訳出来る……これでも神崎に引けを取ると?」
神崎さんはラテン語って言っていた。みゆきさんはそれ以上に内容にまで踏み込んでいる。かがみが手伝えば神崎さんより早く分かるかもしれない。
こなた「いいえ、引けを取っていません……そのままお続けください……」
かがみは気を良くしたのか食べるペースがまた上がった。
つかさ「私も……何か手伝える事はないの……」
かがみは何も言わず黙々と食べていた。つかさはしばらくかがみを見ていたけど返答してもらえそうにないと思ったのか今度は私の顔を見た。
つかさにはやってもらう事がある。これはつかさにしか出来ない。
こなた「あるある、つかさにはもう一度神崎さんに会ってもらわないと」
かがみは食べるのを止めた。
かがみ「……それは止めた方がいい、さっきの状況を見れば明らかだ」
そう、普通は誰もがそう思う。私も少し前ならかがみと同じだった。
こなた「つかさは駐車場に来たのは神崎さんに会いたかったからでしょ?」
つかさ「う、うん……まなちゃんの生前の話が聞きたくって……」
かがみ「あんな酷い目に遭わされてもなのか?」
つかさ「うん、私が痛いって言ったら直ぐに放してくれたからきっと大丈夫だよ」
かがみ「ふぅ、あんたはね少しは疑うって事を覚えた方が良いわ……」
こなた「うんん、あの人は駆け引きじゃなく真正面から行った方が良い、私はそう思う」
かがみ「真正面ってどう言う意味よ?」
かがみは首を傾げた。
こなた「つかさだよ、つかさ、裏も表もなくいつでも真正面だった、だから真奈美もひろしもつかさが好きになった、もう一回会う価値はあるよ」
かがみはしばらく考え込んだ。
かがみ「こなたがそう言うなら、一ヶ月神埼を見てそう言うなら……ただし、さっきみないな事があったら今度こそ許さない」
つかさ「何かよく分からないけど……やってみる」
つかさは両手を握って張り切っている。いいぞその調子だ。
かがみ「意気込みはいいけど、今日の明日って訳にもいかないでしょ」
つかさ「そ、そっか、どうしよう?」
こなた「それならまなみちゃんの演奏会が終わったら神崎さんに連絡とってみるよ、それならどう?」
つかさ「そうだね、その後の方がいいかも」
かがみ「後はあんた達に任せるわよ……」
つかさの表情を見て安心したのか今まで通りのかがみに戻ったようだ。かがみは再び料理を食べ出した。

206 :こなたの旅L 5/5 [saga sage]:2013/08/14(水) 14:02:33.10 ID:eUjWtErL0
こなた「かがみ、自棄食いはそこまでだよ」
かがみは自分の分の料理を殆ど食べ終えた所でナイフとフォークを置いた。
かがみ「別に自棄になってないわよ、丁度お腹一杯になった、ご馳走さま」
こなた「かがみでお腹一杯じゃ私とつかさじゃ食べきれないよ、それに神崎さんの分もあるし」
つかさ「ちょっと作りすぎたかな……」
こなた「まぁ、このまま残すのも勿体無いから私の店のスタッフ連れてくるよ、賄いを作る手間が省けて喜んでくれるよきっと」
つかさ「お願い〜」
こなた「まぁ、この時間は向こうも忙しいから何人来られるか分からないけどね……」
私はレストランかえでに向かった。

 やっぱり私の思った通りディナータイムなので来たのはかえでさんとあやのだけだった。
かえで「こりゃまたシコタマ作ったわね……」
あやの「……何かのパーティでもしていたの、誰かの誕生日だったっけ?」
テーブルに並べられた料理を見てあぜんとする二人だった。
つかさ「誰かの誕生日じゃないけど、食べて行って」
私達は料理を食べ始めた。かがみも料理に手を出そうとした。
こなた「ちょっと、さっき一杯食べたでしょ……」
かがみ「なによ、別に良いじゃない、減るもんじゃなし」
こなた「いやいや、減るでしょ……」
かがみのテンションが高くなった。つかさが思ったよりもダメージがなかったからかもしれない。
でも、つかさが追いかけてくるとは思わなかった。そのつかさに謝罪の一言も言わないで逃げるように去った神崎さん。分からない……
つかさ「かえでさん、どうしたの?」
皆でわいわい食べている中、かえでさんだけが何もしないでテーブルの外で立っていた。
かえで「え、あ、別に何でもない……」
つかさ「ねぇ、かえでさんの好きな茄子の料理も作ったから食べて」
つかさは茄子料理を小皿に取ってかえでさんに差し出した。
かえで「あ、ありがとう……うっ!!」
急に口を手で押さえて苦しそうに屈んだ……
つかさ「か、かえでさん、どうしたの?」
かえで「ちょっと臭いがきつくて……」
つかさ「え、そうかな、普段と同じ味付けなんだけど……おかしいな……」
つかさは茄子料理を食べながらかえでさんをじっと見た。そして一瞬目を大きく日宅と一歩下がって小皿をテーブルに置き、しゃがんでかえでさんと同じ目線になった。
つかさ「……もしかして……悪阻じゃ?」
かがみ・あやの「えっ!?」
つかさの言葉に私達はかえでさんの方を向いた。かえでさんは慌てて立ち上がった。
さすがに経験者には隠し切れないか。
かえで「ちょ、ちょっと調子が悪いだけ、さて……店に戻らないと」
つかさ「あ、かえでさん、待って」
つかさとかえでさんは店を出て行った。
私は溜め息をついた。かがみとあやのはそんな私を見ていた。
かがみ「少しも動揺しないなんて……知っていたのか?」
こなた「うん」
あやの「なんで黙っていたの?」
こなた「本人から止められたから……」
かがみ「止めるって、止める必要なんかないじゃない、結婚したんだし妊娠したくらい隠すことじゃない、いや、むしろ祝うべきでしょ」
こなた「ん〜妊娠自体を内緒にとは言っていないんだけどね……」
かがみ「はぁ、じゃ何を内緒にしているのよ?」
こなた「だから……内緒なの」
かがみが首を傾げているとあやのが席を立った。
あやの「私もかえでさんの所に行く……」
足早に店を出て行った。
207 :こなたの旅L 6/5 [saga sage]:2013/08/14(水) 14:04:40.06 ID:eUjWtErL0
 かがみは窓からあやのがレストランに入って行くのを確認した。
かがみ「……さて、私達二人きりになった、話してくれるわよね?」
私は話すのを躊躇った。
かがみ「私はあのレストランともこの洋菓子店とも利害関係のない部外者、しいて言えばつかさと姉妹関係であるだけ」
こなた「で、でも……」
かがみは真面目な顔になった。
かがみ「ここたがそこまで隠すなんて、かえでさんとの約束を優先したのか、それも良いかもしれない」
かがみは腕時計を見ると立ち上がった。
かがみ「……さっきのかえでさんの行動を見て思ったのだけど、つかさと握手をした時力いっぱいつかさの手を握ったのと似ているんじゃないかって」
こなた「似ているって?」
かがみ「かえでさんはつかさに真実を話すのを隠す為に誤魔化した、神崎もそれと同じって事よ」
こなた「誤魔化すって、つかさに隠すような事なんかないよ、初めて会うのだしさ……」
かがみは首を横に振った。
かがみ「神崎とつかさは以前会っているような気がする」
こなた「え、だってつかさが知っていたら私達がしていた事が無意味じゃん?」
かがみ「会うって言っても神崎の一方的な出会いかもしれない、例えばレストランが引っ越す前ならどう、彼女が客として入る可能性は?」
確かに彼女の実家とレストランが在った場所とはそんなに離れていない。
こなた「それはあるけど……でもそれで手を強く握る意味が分らない」
かがみ「そうね、かえでさんは悪阻の症状が出たから分かった、神崎は一体何故力いっぱい握ったのか、病気じゃなさそうだけど……それが分からない……ごめん、
私はもう時間だ、帰るわよ、皆によろしく言っておいて、そして、つかさの会合の邪魔をしてごめん……」
何故か凄い説得力だった。かがみの弁護士としての観察なのか推理なのか……かえでさんと神崎さんを比べるなんて……
かがみは店の扉に手を掛けた。
こなた「かえでさん……店を辞めて田舎に戻って……そう言っていた……」
かがみは扉を開けるのを止めた。
かがみ「……あの店を手放すって、店はどうするのよ?」
こなた「私かあやのに店長になれって……」
かがみは私に近寄り両手で私の肩を握った。
かがみ「凄いじゃない、かえでさんに実力を認められたのよ」
こなた「うんん、断った……そしたらあやのでもつかさでも良いなて言っちゃってさ……」
かがみは両手を放した。
かがみ「バカね、そう言う時はいやでも引き受けるのよ」
こなた「だってレストランかえででしょ、店長が変わったら可笑しいじゃん」
かがみは笑った。
かがみ「ふふふ、それなら店名を変えれば済むじゃない……ふふふ、でも、こなたらしい」
私は少し不機嫌な顔にした。私の顔を見てかがみは笑うのを止めた。
かがみ「分かっているわよ、かえでさんが居なくなるのが淋しいんでしょ」
こなた「え、べ、別にそんなんじゃ……」
かがみ「こなたがツンデレにならなくていいから、素直になりなさいよ」
まさか、かがみから言われるとは思わなかった。
こなた「う、うん」
かがみは窓からレストランの方を見た。
かがみ「だったら素直にそう言いなさいよ、つかさなら形振り構わず言っている……今頃、もう言っているかもね」
こなた「でも……」
私が言おうとするとかがみは割り込んで続きを言わせなかった。
かがみ「この店の留守番するくらいの時間ならまだあるわよ、行きなさいよ、丁度つかさとあやのも行っているし絶好の機会じゃない、それでもダメなら諦めなさい」
私が行くとつかさの店が留守になる。私はそう言うとしていた。ここはかがみに甘えるとしよう。
こなた「……それじゃ……行ってくる」
かがみ「私からも一言、かえでさんの料理が食べられなくなるのはとても耐え難いって……そう伝えて」
こなた「うん」
私はレストランに向かった。

208 :こなたの旅L 7/5 [saga sage]:2013/08/14(水) 14:05:31.85 ID:eUjWtErL0
 従業員用の出入り口から直接事務室に入った。そこにかえでさんは居た。かえでさんは椅子に座りそれを囲うようにつかさとあやのが立っていた。私はそこに割り込むように立った。
かえで「……何よ、三人とも雁首揃えて……」
あやの「さっきの、つかさちゃんの言っていたの本当なんですか?」
あやのが詰め寄った。
かえでさんは私の顔を見た。私は首を横に振った。
かえで「そうね、もう黙っていても無意味だ……そう、つかさの言う通り、私は妊娠している」
あやの「それで、泉ちゃんに何を内緒してって言ったのですか?」
かえで「……そうね、この機会に言うべきなのかもしれない」
かえでさんは一呼吸置いてから話し始めた。
かえで「私は店長を辞めて田舎に戻ろうと思うの、そこで小さな洋菓子店でもってね……」
あやの「ちょ、ちょっと待って下さい、店長を辞めるって……この店はどうするの、料理の味は、新しいメニューは……まだなだしなきゃいけない事がいっぱいあります、
    それに、店長の料理を目当てにくるお客さんも沢山います……」
かえで「ここ一年位、私が直接厨房で腕を振るっていない、専ら事務の仕事をしていた、私の技術、味は全て貴女達が引き継いでいる、新メニューも私は一切口出ししていない、
    貴方達だけで充分この店をやっていける、そう思った」
あやの「……赤ちゃんが出来たからからですか……」
かえで「いや、常々そう思っていた、妊娠はその切欠に過ぎない」
あやのは俯いた。私が潜入取材に行くときの姿と同じだ。
あやの「で、でも、私達だけじゃ……」
かえで「そうかしら、こなたは私以外の第三者にその力を認められた、神崎と言う記者にね、それに、あやのもこなたが居ない間の仕事の穴埋めも完璧だった、言う事はない」
私の力を認めた神崎さんか……記者嫌いのかえでさんが何故私に神崎さんの手伝いをさせたのか分かったような気がする。
かえでさんはつかさの方を向いた。
かえで「どう、つかさ、これを期に戻ってみたらどう、三人でこのレストランをもっと発展させてみる気はない、ここに高校時代からの友人が二人もいるし気兼ねなく仕事ができるわよ」
つかさは何も言わずかえでさんを見ている。やっぱり何も言えないか。しょうがない私が代弁するかな……そう思った時だった。
つかさ「私もね、赤ちゃんが出来た頃、お店を閉めようかな……なんて思ってた……不安で……恐くて……今のかえでさんの気持ち、すっごく分かるよ、だけどね、
    子供が生まれて、まなみが生まれてからはそんな気持ちは何処かに飛んで言ったよ、かえでさん、今はただ赤ちゃんを産むことだけを考えて、生まれたらまた考えが
    変わるかもしれないし、そうやって悩んだりすると身体に障るし、赤ちゃんにもよくないから」
それは私が代弁しようとしていた内容とは全く違っていた。
かえで「つかさ、私……私……」
かえでさんは今にも泣き出しそうなになった。
つかさ「だから、そんな顔になったらダメ……そんなかえでさんの顔は似合わないから……あっ、お店が留守になっちゃった、戻らなきゃ、また来るからね」
つかさは急いで自分の店に戻って行った。あやのはつかさが見えなくなるまでその姿を見ていた。
あやの「……つかさちゃん、やっぱりお母さんだね……かえでさん、さっきの話しは保留でお願いします……私も仕事に戻らなきゃ」
あやのも事務室を出て行った。私とかえでさんだけが事務室に残った。
こなた「……やられた、つかさがあんな事言うなんて……驚きだ、、かがみもそこまでは見抜けなかったか」
かえで「……母は強しって所ね……こなた、これから毎日は店に来られないかもしらないから、その時は頼むわよ」
こなた「はい! それは分かっております」
敬礼をしてウインクをした。
かえで「……確かにまだ決めるのは早いかもね……さて、こなた、向こうの料理の始末、私は行けないから行って来なさい、私の代わりに誰かスタッフを行かせるから」
こなた「ん〜それは必要なかも」
かえで「なんで、まだ随分料理が残っていたわよ?」
こなた「かがみが留守番をしているからね、あれは猫に鰹節の番をさせるようなものだよ」
かえで「ふふ、まさか」
そのまさかだった。私がつかさの店に戻った時にはかがみが全ての料理を食べ終えていた。

つづく
209 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2013/08/14(水) 14:08:31.05 ID:eUjWtErL0
以上です

頭の中ではもうラストまで出来ているのに……

頭の中のイメージを文章にするのに苦労しています。



この後すぐにまとめるのでまとめは報告は避難所のみにします。

210 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2013/08/14(水) 22:38:04.45 ID:eUjWtErL0
「つかさのネタノート」の作者です。
まとめサイトでの感想ありがとうございます。
本スレを見てくれているかどうかはわかりませんが御礼をさせていただきます。
感想を書いてくれるのは嬉しいものです。関係ない人にはウザいだけかもしれませんがあまりにも嬉しいので1レスを使いました。

 かなり前にわざわざ感想ページにも書いてくれた人も居たのでこの場をかりて今更ながらお礼をさせて戴きます。
ハルヒの消失と比べているみたいですが自分はハルヒの消失をアニメも原作も見ていません。
ハルヒは2006年のアニメを見た位しか知りません。
「消失」と題名がから察するに共通する所があったのかもしれませんね。
逆にハルヒの消失を見ていたらこの作品は作らなかったかもしれない。


 何分物語を文章にするようになったのが最近なのでかなり下手なのはご了承下さい。
誤字脱字も多くて読みにくいかもしれません。それでも読んでくれる人がいたら幸いです。
これからもちまちまと書かさせていただきます。

以上です。








211 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2013/09/01(日) 13:59:40.41 ID:YemeJceD0
それでは「こなたの旅」の続きを投下します。

予定では7レスくらい使用します。
212 :こなたの旅M [saga ]:2013/09/01(日) 14:03:49.51 ID:YemeJceD0
M

 あれから数週間が経った。かがみは私の店にもつかさの店にも来なくなった。仕事が終わるとみゆきさんと礼のデータ解析をしているらしい。
私も手伝いたいところ、つかさもそう言っていた。だけど、行っても足手まといどころか邪魔になるだけだろう。ここはじっとかがみ達の報告を待つしかない。
こうしている間にも神崎さんもデータ解析をしているに違いない。私はメールや電話で連絡を取ろうとしたけど音信不通。潜入取材の時に泊まっていたホテルにも居ないようだ。
私達から逃げるように居なくなった神崎あやめ……何故私達を避けているのだろう。
いったい彼女の目的は何だろう。何をするにしても複数の方が効率は良い。この私が分かるくらいだから神崎さんだってそのくらい分かるはずなのに。
こなた「ふぅ〜」
あやの「珍しい、泉ちゃんが溜め息なんて……」
こなた「まぁ、いろいろありましてね、こんな私でも悩みの一つや二つはあるのですよ」
あやの「もしかして、かえでさんが店長を辞めるって言った件?」
こなた「そんなのもあったね……」
あやの「あれ、それじゃなかったの?」
不思議そうに首を傾げるあやの。
こなた「確かにそれもあるけど、つかさがかえでさんを励ましたおかげで現状維持はしているね、だけど、出産した後はどうなるか分からないよ」
あやの「そうね、でも、こればっかりは私達がどうこう出来るものじゃないでしょ、かえでさんの考えもあるし」
かえでさんの考えか。
こなた「ところでかえでさんの旦那さんは会ったことあるの?」
あやの「うん、何度か」
こなた「しかし、この店の関係者でもない人のによく結婚まで漕ぎつけたものだね、かえでさんが結婚するって言うまでまったく知らなかった」
あやの「何でも専門学校時代の知り合いだったって、在学中は特に恋人同士ってわけじゃなかったって言っていたけど……何が切欠になるか分からないね」
こなた「切欠ね……」
あやの「泉ちゃんだって何が切欠でそうなるか分からないよ」
こなた「そうかな〜」
『パンパン』
突然手を打つ音がした。音のする方を見るとかえでさんが立っていた。
かえで「はいはい、無駄な話しは止めて用のない人は帰宅しなさい」
私は早番で帰り支度をしている途中だった。
こなた「もうタイムカードは押したから大丈夫ですよ、私達の話し、聞いていました?」
かえで「話し?」
聞いていなかったみたい。さっき入ってきたばかりなのか。
あやの「そうそう、かえでさんの旦那さんの話し」
かえで「えっ?」
こなた「かえでさんからあまりその話し聞いてないから」
かえで「べ、別に私的な事を話す必要なんかないじゃない」
私は人差し指を立てた。
こなた「ちっ、ちっ、ちっ、分かってないな、かえでさん、そう言う話が一番面白いんだよ」
かえで「面白い?」
こなた「うん、例えば何回目のデートで愛し合ったとか、週に何回愛し合っているとか」
『バン!!』
激しく壁を叩くかえでさん。
かえで「下らないこと言ってないでさっさと帰りなさい!!」
こなた「ひぃ〜こわいよ〜かがみより恐いよ〜」
私は鞄を持って事務室の扉を開いた。
こなた「それではお先に失礼しま〜す」
かえで「待ちなさい」
かえでさんがマジな顔になった。
こなた「あ、あれは冗談ですから、冗談、はは、元気な赤ちゃんが生まれると良いですね」
慌てて取り繕うが表情は変わらなかった。
かえで「神崎さんはお稲荷さんを知っていたらしいわね、しかも真奈美とも知り合いみたいじゃない」
こなた「え、あ……な、なんでそれを」
かえで「つかさとかがみさんから聞いた、何故私に話してくれなかった、私を軽く見ないで欲しい」
こなた「いや、普通なら話していたけど……なんて言うのか、ほ、ほら、妊娠しているでしょ?」
かえで「私の身体を気遣ってと言いたいのか、余計なお世話よ、お稲荷さんの真実を知っている人間は一握り、知っているだけでなく理解しているのはもっと少ない、
    あやのは理解者の一人、だけど、こなたの親友に全く理解できない人が居たわよね……確かみさおさんだったかしら」
こなた「みさきちは最初から物分りは良くない方だからしょうがないよ、今でも彼女は私達の話しをフィクションだと思ってるから」
みさきちは全く私やつかさの話しを信じてくれなかった。あやのが言ってもダメだから諦めていた。
かえでさんは首を横に振った。
かえで「物分り良し悪しや知識の量などは関係ない、お稲荷さんのを現実のものとして受け入れられるかどうかが問題、私達の様なのは特別で
    むしろみさおさんの様なのが世間一般の標準的な反応なの、神崎さんがお稲荷さんを受け入れているのなら数少ない協力者になるはず」
かえでさんは神崎さんをつかさに会わせるのを黙っていたのを怒っているようだ。
こなた「かえでさんなら仲間にできたの」
かえでさんはまた首を横に振った。
かえで「つかさの手を強く握ってかがみさんを怒らせた、私も彼女が何を考えているのか全く分からない、多分あの時居ても何も出来なかった、
だけど、私も理解者の一人だから、それだけは忘れないで」
こなた「う、うん」
かがみもそう言っていたっけ。
あやの「それなら私も同じ、私にも話して欲しかった……」
そういえばそうだった。あの時声をかたのがつかさ、みゆきさんだけだった。つかさの一言でかがみを追加した。
こなた「あれは私の思い付きだったから、あまり深い意味は無くって……本当はつかさだけの予定だった」
あやの「そうだったの……でも、でもかえでさんと同じで私が居てもあまり効果はなかったかもね、みさちゃんをお稲荷さんの仲間に出来ないのだから」
あやのは少し苦笑いになった。
こなた「まぁ、もう終わった事だし、これからは皆にも協力してもらうようにするよ、二人ともありがとう」
二人は大きく頷いた。
かえで・あやの「お疲れ様〜」
 店を出ると直ぐ隣につかさの店……入り口には定休日の看板が立て掛けられていた。今日は水曜か……そういえばもうすぐまなみちゃんの演奏会か。
きっとみなみとの練習につきあっているに違いない。つかさの家に遊びに行くのも止めるかな。たまには何処にも寄らずに真っ直ぐ帰ろう。

213 :こなたの旅M 2/7 [saga sage]:2013/09/01(日) 14:04:51.66 ID:YemeJceD0
 A未だ空は薄暗く日の光が少し残っている。こんなに早く帰るのは久しぶりかもしれない。仕事が早く終わってもゲーマーズとかに行っちゃうからね
家の玄関の扉を開けた。
こなた「ただい……ん?」
『わはははは〜』
開けると同時に笑い声が私の耳に飛び込んできた。お父さんの声だ。お父さんはテレビとかで大笑いするような人じゃない。ゆい姉さんかゆたかでも遊びに来たのかな。
声のする居間の方に向かった。そして居間に入った。
そうじろう「おかえり、こなたか、今日は早いな」
お父さんの正面に座っている人……あれ……ば、ばかな。
そうじろう「おっと紹介が遅れた、娘のこなたです」
あやめ「お邪魔して……あ、ああ〜」
そうじろう「お、おや?」
そこに居たのは神崎あやめだった。神崎さんと目が合うと二人とも硬直したように動作が止まった。
そうじろう「何かありましたかな……」
お父さんは私と神崎さんを交互に見ながら戸惑ってしまった。神崎さんは自分の腕時計を見た。
あやめ「も、もうこんな時間……長居をしてしまいました、今日はこのくらいにします……ありがとう御座いました」
神崎さんは慌ててテーブルの中央に置いてあったボイスレコーダーを仕舞うと立ち上がった。
そうじろう「そうですか、お構いもしませんで……」
あやめ「失礼しました」
神崎さんは私をすり抜けて玄関の方に出て行った。
そうじろう「こなた、挨拶はどうした……おい?」
お父さんが何か言っているけど何も聞こえない。
何のために私の家に……ボイスレコーダーを使っていたって事は……取材……何の?
もう彼女に振り回されるのは沢山だ。考えても意味がない。直接聞くしかない。私は振り返り神崎さんを追った。
そうじろう「こなた?」
お父さんの呼びかけを他所に居間を出た。
神崎さんは玄関で靴を履いていた。
こなた「ちょっと待って」
靴を履き終えると私を見た。そして微笑んだ。
あやめ「……泉さんのお父さんだったの、苗字が同じだったね、泉さんと同じような所が沢山あった、とても面白い人だった、これで私も貴女の父親に会ってお相子になった」
またそんな事を言って誤魔化す。
こなた「今度はなんの取材なの、もう私は関係無いんじゃないの、どうして……」
あやめ「……同僚が急病になってね……私はその代理で来たにすぎない、もともと編集部にあった取材だった、まさかこの家が泉さんの家だったなんて……」
こなた「取材って、お父さんの取材?、この前の取材とは関係無いの?」
神崎さんは頷いた。これは全くの偶然だったのか。そのまま神崎さんの言葉を信じるとして、それならこうして再会できたは千載一遇のチャンスだ。
こなた「教えて、何でつかさの手を強く握ったの、ボイスレコーダーを出したの?」
神崎さんは溜め息をついた。
あやめ「二人には謝っておいて……」
こなた「謝るなら自分で謝ってよ……」
神崎さんは黙ってしまった。
こなた「どうして黙ってるの……何で教えてくれないの、お稲荷さんの関係なら私達だって……協力できるし、協力してもらいたい」
神崎さんは玄関の扉を向き私に背中を見せた。
あやめ「ふふ、私はあの時、捕まっている筈だった……」
こなた「捕まるって……潜入した時の話し?」
あやめ「そう、まさか貴女がお稲荷さんのハッキング技術を継承しているとはね……しかも助けに来るなんて、これで私の計画はやり直しになった、これも何かの運命かしらね」
こなた「でも、私が来た時、神崎さんは怯えていたよ……」
あやめ「……それは私の覚悟が足りなかったから……」
こなた「覚悟って……そこまでして何をしようとしているの」
神崎さんは扉に手を掛けた。
あやめ「知りたければあのデータを調べなさい……どうせ何も分からないだろうけどね……もう行かないと……」
こなた「ちょっとまだ話が……」
私が言おうとすると扉を開けて出て行ってしまった。
この前の様な駆け引きは止めて自分の気持ちをストレートに話したつもりだった。それでも彼女は真実を話してくれない。
このまま追いかけてもこれ以上の話しは聞けないような気がした。

214 :こなたの旅M 3/7 [saga sage]:2013/09/01(日) 14:06:00.94 ID:YemeJceD0
そうじろう「こなた、神崎さんと知り合いなのか」
玄関にお父さんが来た。
こなた「まぁね、お店の常連客だった人だよ」
そうじろう「お稲荷さんだのデータだのってやけに深刻そうな話をしていたみたいだけど、何なんだ?」
お父さんにはまだお稲荷さんの話しはしていない。話して理解してくれるだろうか。みさきちみたいになる可能性もあるしあやのみたいになる可能性もある。
かえでさんが言っているようにこれは知識の量とか理解力とかは関係ないお父さんがお稲荷さんを受け入れられるかどうか。ただそれだけなんだ。
こなた「お父さんには関係ない事だよ」
そうじろう「そうか、話せない事ならそれもいい」
あまり興味がないのかすぐに引き下がった。でもそれでいいのかもしれない。
お父さんがもし、お稲荷さんを受け入れなかったら。そう思うと話せない。
こなた「それより何の取材なの、売れない作家さんなのにさ」
そうじろう「お、言ってくれるじゃないか、これでも食べていけるくらいは稼いでいるんだぞ」
こなた「私を大学まで育ててくれたしね……」
実際作家だけで食べていけるのだからそれなりの実力があるのは理解出来る。
そうじろう「まぁ、の作品に関しての取材だそうだ、出版社からも許可が出ているから私も受けたのだけど……三日の予定で今日はその二日目だった」
二日目、って事は昨日も来ていたのか。寄り道をしていたら今日も会えなかった。明日から遅番になるから今日しか会えるチャンスがなかったのか。
そうじろう「取材と言っても半分以上が雑談で終わってしまったけどな」
こなた「雑談って……そういえば私が帰って来た時笑っていたけど?」
そうじろう「ああ、話が面白くてね、彼女はコミケに参加しているそうだ、それから話がそっちの方に流れてしまった」
こなた「彼女はゲームも好きだよ」
そうじろう「そうなんだよ、ゲームだけじゃなくガ〇ダムも好きでね、しかもファースト、これは貴重すぎてたまらないじゃないか、知り合いならなぜもっと早く紹介してくれなかった!」
興奮するお父さん。確かに私意外でこんな話が出来るのは彼女しかいないかもしれない。
こなた「私だって知り合ってまだ二ヶ月目だよ、それに彼女は忙しいからね……」
そうじろう「明日が楽しみだ」
そう言うと居間の方に向かって行った。
こなた「ふぅ〜」
溜め息が出た。やれやれお父さんがすっかり気に入ってしまった。
いや、まて、確か神崎さんのお母さんも私を気に入ったなんて神崎さんが言っていた。まさか本当に取材を理由に仕返しをしたのじゃないだろうか。
そんな風に思えるような事も帰りがけに言っていたし……
そうじろう「お〜い、こなた、夕食の準備を手伝ってくれ」
こなた「ほ〜い」
まぁいいや。今度は危害を加えたわけじゃないし……

 それから、まなみちゃんの演奏会の当日が来た。
クラッシックにはそんなに興味ないし、多分まなみちゃんの演奏意外は居眠りをしてしまうかもしれない。それでも何故か会場に来てしまった。
会場には意外と沢山の客が来ている。会場入り口で入場の列に並んで順番を待っていた。
私の順番が来てチケットを係員に渡した。
スタッフ「……演奏者のご関係の方ですね?」
こなた「え、まぁ、知り合いなので……」
スタッフ「それでは特別席へどうぞ、そから演奏10分前までなら控え室へも行けますので……」
係員はチケットの半券とプログラムを私に渡した。私はそれをを受け取って会場の中に入った。

215 :こなたの旅M 4/7 [saga sage]:2013/09/01(日) 14:06:57.71 ID:YemeJceD0
特別席は最前列の数段か……私の席はA―12……あ、あった。
席を見つけて座った。辺りを見回した。特別席に座っているのは私だけだった。ちょっと来るのが早すぎたかな。それとも控え室に居るのだろうか。
もしかしたらかがみやみゆきさんも来ているかも。つかさはこのチケットを店で配っていたしね。
ここでボーっとしても暇なだけだちょっと控え室を覗いてみるかな。私は席を立ち控え室に向かった。
あれ、おかしいな〜
案内の地図にはこの辺りに控え室があるはずだけど。私は辺りをきょろきょろと見回した。でもそれらしい部屋は無かった。
もしかしたら東西を逆に見たのかもしれない。元の場所に戻ってみるかな。
「神崎さん〜」
私の後ろから男性の声がした。神崎だって、まさか。
私は声のする方に振り向いた。二十代前半くらいの男性が小走りに私の方に向かってきた。
男性「神崎さん〜」
間違いないこの男性が神崎さんと言っている。ってことは……ゆっくりまた振り返った。少し先に長髪の女性の後姿が見えた。間違いない神崎さんだ。まずい振り向かれたら
私が居るのが分かってしまう。咄嗟に建物の柱の陰に身を隠した。男性は私を通り越して長髪の女性の方に走っていく。
男性「神崎さん、こっち、聞こえています?」
長髪の女性が男性の声に気付いて振り返った。顔が見えた。間違いない神崎あやめだ。あの男性が居なかったら彼女と鉢合わせになっていた。
あやめ「坂田さん、そんなに大声を出さなくても聞こえているよ」
あの男性は坂田って言うのか。誰だろう。神崎さんとどんな関係があるのかな。それに彼女が何故この会場に来ているのか。
坂田「そっちは違いますよ、逆方向、控え室はこっちですよ」
あやめ「そっちだったの、どうりで部屋がないはずだ」
坂田「インタビューはあと一人だけですよね」
神崎さんは頷いた。
坂田「演奏までまだまだありますからそこの喫茶店で休憩しませんか?」
男性が見ている方を見ると喫茶店があった。神崎さんは暫く喫茶店を見ると、
あやめ「それじゃ少し休もうか」
神崎さんと坂田は喫茶店に入っていった。どうも気になるな。見つからない様に私も入って見よう。

 二人が喫茶店に入って数分してから私は喫茶店に入った。この喫茶店はセルフサービスの店だ。席は自由に決められる。適当な飲み物を頼むと二人の座る席の横に
気付かれないように座った。
坂田「井上さんの代理お疲れ様です」
向こうの声も聞こえる。これはもしかしたら神崎さんの秘密が分かるかもしれない。私は聞き耳を立てた。
あやめ「彼女が病気じゃどうしようもない」
坂田「病状はどうなんですか、確か神崎さんと同期でしたよね」
あやめ「今日、精密検査をするって言っていた、今の時点ではなんとも言えない」
坂田「そうですか……ところで、井上さんの文化部の仕事はどうですか、神崎さんだと物足りないんじゃないですか?」
あやめ「物足りない?」
坂田「そうですよ、アーティストや作家さんの取材、時には今日みたいにお子様の取材ですよ、政治家や企業の不正を調べている方が神崎さんらしいと思って」
井上って人の代理で来ているのか。そういえばお父さんの時もそう言っていた。するとお父さんの時も今日も神崎さんの意思で来た訳じゃなかったのか。全くの偶然だった。
あやめ「ふふ、私はそんな大それた仕事なんかしたくなかった、井上さんの様な仕事の方が好き」
さかた「へぇ〜そうは見えないな〜」
坂田は手に持っていた物をテーブルに置いた。それはカメラだった。かなり高級そうなデジタルカメラだ。もしかしたら坂田はカメラマン?
あやめ「ところで次のインタビューは誰なの?」
坂田「えっと〜」
坂田は鞄から紙を出して見た。
坂田「最後の演奏者で柊まなみちゃんですね……」
あやめ「柊……まなみ……ですって?」
柊まなみ……これからまなみちゃんの所に行こうとしていたのか。
坂田は持っていた紙を神崎さんに渡した。
坂田「小学三年生の女の子、初演だそうですよ、子供の初演にしては遅い方だとは思いますけど……なんでも今回の演奏会で最注目の子だそうです」
へぇ、やっぱりまなみちゃんは注目されているのか。ちょっと嬉しかったりするな。
神崎さんは渡された紙をじっと見ていた。
坂田「あれ、その子知っているのですか?」
あやめ「え、あ、いや、知っているだけで直接会ったわけじゃない……」
神崎さんは紙を坂田に返した。
坂田「演奏曲は……ショパンの舟歌だ、うぁ〜」
坂田は感嘆の声を上げた。
あやめ「その曲って難しいの、私は音楽に疎いから分からない」
坂田「これをデビューでやるなんて……技術はもちろん表現力も試される大作ですよ……小学生がどんな演奏するのか楽しみだな」
神崎さんはテーブルに置いていあるコーヒーを飲み干した。
あやめ「最後まで居るつもりはない」
神崎さんは立ち上がった。
坂田「え、折角来たのに聴いていかないの、それで記事なんか書けるのですか?」
あやめ「行くよ!」
神崎さんは喫茶店を出た。
坂田「あ、ああ、ちょっと待ってくださいよ〜」
坂田はテーブルに置いてあったカメラを大事そうに抱えると神崎さんの後を追った。私も少し時間を空けてから店を出た。

216 :こなたの旅M 5/7 [saga sage]:2013/09/01(日) 14:08:24.12 ID:YemeJceD0
 D神崎さんは井上さんの代わりにこの取材をしているのか。お父さんのもそうだった。神崎さんは嘘を付いていなかった。
井上さんって……神崎さんと同期って言っていたけど、仕事を代わりにするくらいだから親しい仲なのかもしれない。病気か……
坂田「す、すみません、ちょっとトイレに行きたくなったのですが……」
申し訳なさそうに神崎さんに言った。神崎さんは立ち止まった。
あやめ「しょうがない、行って来なさい、先にインタビューは進めているから、適当に来て写真を撮って」
坂田「はい……」
坂田は神崎さんと別れてトイレに向かった。そして神崎さんはそのまま歩き出した。私も神崎さんとの間隔を空けて付いて行った。
しばらく歩くと係員が立っている区域に入った。神崎さんは手帳の様な者を係員に見せている。許可証なのかな……
係員は神崎さんを通した。私は……暫く時間を置いて係員の所に向かった。
係員「何か御用ですか?」
どうする……そうだ。チケットの半券があった。私は半券を係員に見せた。
係員「どうぞ」
私はそのまま通路の奥に入った。
神崎さんは柊まなみと書かれた控え室の前に立ち止まった。私も壁際に立ち止まり神崎さんから見えないようにした。
『コンコン』
神崎さんはドアをノックした。
「はい、どうぞ」
部屋の中から声がした。この声はつかさだ。神崎さんはゆっくりドアを開けた。
つかさ「か、神崎さん?」
ドア越しから分かるほど目を大きく見開いて驚いているつかさが見える。
あやめ「柊さん……」
神崎さんも立ち止まりドアを開けたままの状態になっている。これなら二人の状況が分かる。私には好都合だ。
つかさは直ぐに普通の表情に戻り腕を神崎さんの前に出した。握手か……
神崎さんは立ったまま動こうとしなかった。するとつかさはにっこり微笑んで一歩前に出た。
つかさ「この前のやり直し」
つかさは神崎さんの目の前に手を出した。
あやめ「……ば、バカな、何も聞かずに何故そんな事が出来る、また同じ事をしたらどうするの」
つかさは首を横に振った。
つかさ「二度もそんな事はしないでしょ、だってまなちゃんを助けた人だもん」
あやめ「まなちゃん、まなちゃんって真奈美の事?」
つかさは頷いた。
つかさ「うん、それで、私はまなちゃんに助けられた……まなちゃんと会っている人がひろしさんの他に居たなんて、とっても嬉しくて……」
あやめ「ひろし……さん?」
つかさ「うん、私の夫で、まなちゃんの弟だよ……」
つかさの目が潤んでいる。真奈美を知っている人に出逢えてよっぽど嬉しいのだろう。神崎さんの手が自然に前に出てつかさと握手をした。
結局私もかがみも必要なかった。つかさと神崎さんだけで良かった。
私は余計な事をして遠回りをさせてしまった。この二人は逢うべきして逢ったんだ。
あやめ「ちょっと待って、貴女に子供が……まなみちゃんが居るってことはそのひろしってお稲荷さんは……」
つかさ「うん、人間になった、実はね私の三人のお姉ちゃんの旦那さんもね……」
神崎さんは両手をつかさの前に出してつかさを止めた
あやめ「そこまで……こんな所で話すような内容じゃない……」
つかさ「で、でも……」
あやめ「なるほどね、泉さんが私に柊さんを会わせたくなかった様ね、その意味が分かった……柊さん、もうその話は止めましょう」
つかさ「もっと、まなちゃんの事……聞きたい……」
217 :こなたの旅M 6/7 [saga sage]:2013/09/01(日) 14:09:16.71 ID:YemeJceD0
神崎さんは首を横に振った。
あやめ「今は出来ない、私は記者として此処にいるの、分かって……」
つかさ「……で、でも……」
坂田「神崎さん〜」
坂田が戻ってきたみたいだ。小走りに部屋に向かっている。私に気付かずそのまま素通りした。
あやめ「ほらほら、何も知らない人達に聞かれたら不味いでしょ、私と同行しているカメラマンの坂田って言う人だから私に合わせて」
つかさ「あ、う、うん……」
坂田「すみません遅れまして、あ、あれ……?」
坂田は左右きょろきょろと見回している。
坂田「柊まなみちゃんは……?」
坂田はカメラを握りいつでも撮れるような体勢になった。
あやめ「私もさっき来たばかりだから」
神崎さんはつかさをつんつん突いた。
つかさ「え、あ、ああ、先生と奥の部屋で練習中です……」
先生……みなみも来ているのか。教え子の初舞台だから当然と言えば当然か。
坂田「最終調整って訳ですね、撮影したのですがよろしいですか?」
あやめ「私もインタビューをしたい、時間は取らせません」
つかさは暫く考えた。
つかさ「まなみは……娘はちょっと上がり性なので、カメラとか向けられると戸惑ってしまうかも……」
坂田はカメラを仕舞った。
坂田「……どうします神崎さん、後一人だけなんですけどね……」
あやめ「……それなら演奏の後ならどうかしら?」
つかさ「それなら問題ないかも」
坂田「あれ、神崎さん、柊ちゃんの演奏は最後ですよ、そこまで残らないってさっき言っていたような……」
あやめ「坂田、井上から何を学んだ、相手に合わすのもの時には必要だ、特に子供はね」
神崎さんは坂田を嗜めるとつかさの方を向いた。
あやめ「どうせなら完璧な状態で演奏してもらいたいから……それじゃ演奏が終わったら此処で会いましょう」
つかさ「あっ……それなら特別席が空いているので……お姉ちゃんとゆきちゃんの分」
つかさは半券を二枚神崎さんに渡した。
あやめ「あら、お姉さんは来られないの?」
つかさは頷いた。
あやめ「それは残念、謝りたかった……また機会を改めましょう、それでは」
神崎さんは会釈すると部屋を出た。そして扉を閉めた。
坂田「謝るって何です、それにお姉さんって……あの人と知り合いだったのですか?」
あやめ「まぁね……」
坂田「まぁねって……知り合いならそう言ってくれればよかったのに……」
二人は私の隠れている壁を通り過ぎて行った。二人は話しているせいなのだろうか、私には気付いていない。
二人の気配が消えるのを確認して控え室の前に移動した。

218 :こなたの旅M 7/7 [saga sage]:2013/09/01(日) 14:10:17.31 ID:YemeJceD0
『コンコン』
つかさ「は〜い、どうぞ」
私は扉を開けた。
つかさ「こなちゃん、来てくれたんだ!!」
こなた「やふ〜つかさ、暇だから来たよ」
つかさは私の手と取ると跳びあがって喜んだ。
つかさ「こなちゃん、さっきね神崎さんが来てね……」
早速さっき起きたばかりの出来事を私に楽しげに話しだした。秘密とか内緒とかそう言うのはつかさには関係ない。楽しい出来事があれば直ぐに誰かに話したがる。
そう、それがつかさ。
つかさ「どうしたの、こなちゃん?」
私は笑った。
こなた「神崎さんと仲良くなれたみたいだね」
つかさ「うん!」
あの時怒った自分がバカバカしく感じてきた。つかさは一人で真奈美に出逢って親友になった。そしてその弟のひろしと結婚までしている。私はそれに少ししか関わっていない。
ひろし言うように最初からつかさを参加させていればよかった。つかさの笑顔を見てそれを確信した。
こなた「それじゃ私は客席の方に行くね」
つかさ「え、まだ来たばかりなのに、まなみやみなみちゃんに会ったら、もう少しで来ると思うし」
こなた「うんん、神崎さんにの言うように演奏直前で上がり症が再発したら困るでしょ、演奏会が終わったら来るよ」
つかさ「そ、そうだね……こなちゃんの言う通りだね、またね」
こなた「また〜」
私は控え室を出た。部屋を出る直前のつかさの淋しそうな表情が印象に残った。それは私が直ぐに部屋を出たからじゃない。きっとかがみやみゆきさんが来なかったからだ。
私はかがみ達がこなった理由を知っている。直接聞いたわけじゃないけど分かる。

 私が席に戻ると、その隣の席に神崎さんが座っていた。本来ならそこにかがみかみゆきさんが座る席。今までの私なら一般席に移動するところだけどそのまま自分の席に座った。
これはつかさがくれたチャンスだ。
こなた「ちわ〜」
あやめ「泉さん……帽子を被っていたから声を掛けられるまで気付かなかった……こんにちは……」
目を大きく見開いて驚く神崎さん。
こなた「つかさの娘が参加している演奏会だから私が来ても不思議じゃないでしょ、お父さんの時と同じだよ」
あやめ「そ、そうだけど……」
そこで透かさず質問。
こなた「所でカメラマンの坂田さんはどうしたの、またトイレでも行った?」
あやめ「う、な、何故坂田を知っている?」
神崎さんは立ち上がった。
こなた「いやね、私も道を間違えて喫茶店の方に向かって歩いていたら神崎さんを見かけてね、ちょっと様子を見させてもらった」
神崎さんは呼吸を整えるとまた席に座った。
あやめ「……全く気付かなかった……貴女、探偵のセンスがあるのかもね……坂田はこの会場の写真を撮りに行っている……」
ってことは当分ここには来ないな。それならお稲荷さんの話しも出来る。
こなた「それは神崎さんが教えてくれた事だよ、それよりさ、つかさと会って分かったでしょ、もう神崎さんと私達は運命共同体みたいなももだって、
    こうして神崎さんの同僚の井上さんの病気の代理の仕事で私達に関わっているのも偶然じゃないと思う……それで……井上さんの病気って重いの?」
神崎さんは溜め息をついた。
あやめ「会った事もない人なのに心配までされるなんて……それにしても柊さんの関係者はまなみちゃんの先生と泉さんしか来ていないじゃない、それで運命共同体なんて……可笑しい」
神崎さんはさら苦笑いをした。
こなた「かがみやみゆきさんが来ないのは神崎さんのせいだよ」
あやめ「何故、私は何もしていない」
少し怒り気味の口調だった。
こなた「何も教えてくれないからだよ、かがみなんかムキになってデータを解析している、だから来られない」
あやめ「あのデータは解析できるはずはない、諦めなさい」
こなた「どうかな〜 神崎さんは何処まで調べたかは知らないけど、あのラテン語のデータ、あれは何処かの場所を説明している文だってかがみが言っていたけどどうなの?」
神崎さんはまた立ち上がった。そして私を見下ろした。
あやめ「……驚いた……貴女にはいろいろ驚ろかさせられる……データを渡さなければ良かった」
こなた「もう遅いよ、どうせ分かっちゃうなら秘密にする必要なんかないじゃん?」
あやめ「どうせ分かるも物……どうせ分かるものなら私が教える必要はない」
こなた「あらら、意外と強情さんだね、一人よりも私達と一緒の方が良いと思っただけなのに」
あやめ「もうその話はお仕舞い」
まだ話したい事があるのに。更に話しをしようとした時だった。
坂田「神崎さん〜」
あの声は……坂田か。もう戻ってきたのか。
あやめ「貴女に協力をさせたのが間違いだった……」
神崎さんは小さな声でそう呟いた。
こなた「え?」
坂田が神崎さんの隣の席に近づいた。神崎さんは立ったまま神崎さんが来るまで待っていた。
あやめ「随分早いかったじゃない、もう撮影は終わったの?」
坂田「はい、おかげさまで……」
坂田は私が居るのに気が付いた。私の方を見た。そして席に着くと神崎さんの方を見た。
坂田「お知り合いで?」
あやめ「そう」
坂田は私に一礼をした。そして私も会釈した。確かにもうこれ以上話はできそうにない。
坂田「もうそろそろ最初のプログラムの時間ですよ」
気付くと辺りには観客が大勢席に座っていた。そして数段後ろの席にはいのりさん、まつりさんの姿もあった。
神崎さんは席に着いた。もう神崎さんと話しはできそうにない。
かと言っていのりさん達と会って話しをするには時間が短すぎる。これから最後のまなみちゃんの演奏の順番がくるまで退屈な時間になりそうだ……

データの内容が分かったから会いたいとかがみから連絡が来たのは演奏会から丁度一ヵ月後だった。

つづく
219 :こなたの旅M 7/7 [saga sage]:2013/09/01(日) 14:13:22.13 ID:YemeJceD0
以上です。

投下が不定期になってしまいます。

まぁ、全く反応がないので読んでいる人は皆無でしょうからこっちのペースで書かせてもらいます。

恒例によりまとめ報告は避難所のみとさせていただきます。
220 :以下、新鯖からお送りいたします :2013/09/04(水) 01:12:33.93 ID:05vmBxE80
時間系列がわからない〜
『つかさの旅の終わり』から『こなたの旅』読んだら若干話が……
221 :こなたの旅M 7/7 [saga sage]:2013/09/04(水) 20:40:48.18 ID:uvV2X8y50
>>220

時間系列的には「つかさの旅の終わり」の続編です。

物語の順番は「つかさの旅」のページ http://www34.atwiki.jp/luckystar-ss/pages/1784.html

を見ると分かると思います。


「つかさの旅の終わり」ではつかさが妊娠した所で終わっている。そこから約十年後の話です。

「こなたの旅」は番外編の「ひよりの旅」の続きでもあるのでそっちも読んでみて下さい。

これからの話しは「ひよりの旅」の内容にも触れていく予定ですのでよろしくです。


正直長編を書くのは初めてなので正確な時系列と言う意味ではずれてしまっているのかもしれません。

すみません。



作者より
222 :以下、新鯖からお送りいたします [saga sage]:2013/09/04(水) 21:14:05.42 ID:uvV2X8y50
>>221

追記
「こなたの旅」は「ひよりの旅」の内容に既に触れています。

こなたがひよりとゆたかに会う場面は「ひよりの旅」を読んでいないと分からないですね。

223 :東京オリンピック [sage saga]:2013/09/08(日) 17:13:24.12 ID:rX+Om7H80
かがみ「2020年のオリンピックが東京に決まったわね」
つかさ「そうみたいだね」
こなた「え〜決まっちゃったの」
つかさ「え、こなちゃんは喜ばないの、一生に何度もある事じゃないよ?」
こなた「だって、これから日本には解決しなきゃいけない問題がいくつもあるでしょ」
かがみ「……その問題を言ってみなさい」
こなた「えっと、えっと、えっと……」
かがみ「どうせアニメ番組が削られるからそんな事言ってるんでしょ?」
こなた「うぐ!!」
かがみ「まったく……」
224 :球磨川『陵桜学園…?』 :2013/09/08(日) 20:48:45.13 ID:u9c3n+WX0
球磨川『僕は悪くない』
225 :球磨川『陵桜学園…?』 :2013/09/08(日) 20:59:00.20 ID:u9c3n+WX0
早朝HR
黒井「おーっし!今日は転校生を紹介すんぞー!」

つかさ「こなちゃん、転校生だって」
こなた「どんな人が来るんだろ?フラグたつかなぁ〜♪」

黒井「入ってきていいで〜」
       ガララッ
球磨川『はじめまして、週刊少年ジャンプから引っ越して来ました!よろしく仲良くしてください。』

クラス中………プッ…クスクス…ナンダヨソレッ

球磨川『笑うな』
球磨川の放った螺子がクラスのみんなを貫く。

球磨川『人の冗談を笑うなんて、人間として、生き物として最低だぞ。』
226 :東京オリンピック [saga]:2013/09/15(日) 12:58:56.32 ID:6uUv7Tdz0
それでは「こなたの旅」の続きを投下します。8レスくらい使用します。
227 :こなたの旅N 1/8 [saga sage]:2013/09/15(日) 13:00:36.23 ID:6uUv7Tdz0
N ここから「ひよりの旅」の登場人物が登場します。「ひよりの旅」を読んでいない人は読んでから続きを読む事をお奨めします。

 私はつかさの店の扉を開けた。
こなた「おひさ〜」
つかさ「こなちゃん!!」
まるで数年会っていないような嬉しそうな声で出迎えるつかさ。
つかさと会うのは一ヶ月ぶりだろうか。職場がこんなに近いのに不思議なものだ。会おうとしないと会えないなんて。
かえでさんの体調が良くないのでその分忙しくなったせいなのかもしれない。
 今日は水曜日。つかさの店はお休みだ。かがみは店を待ち合わせ場所に指定した。かがみは既に居た。テーブルに座り軽食を食べている。つかさの店では出していない料理だった。
かがみは私に気が付かず夢中で食べている。かがみの姿がほっそりと見えた。あの大食いのかがみなのに……
つかさ「お姉ちゃん、こなちゃんが来たよ」
かがみ「ん?」
かがみは食べるのを止めて私の方を向いた。その顔を見ると目に隈ができている。頬も少し削げ落ちているような気がする。
かがみ「早いわね……ってすぐ隣だから当たり前か……」
こなた「な、なに……少しやつれた?」
かがみは溜め息をついた。
かがみ「あんたがもってきた宿題のせいよ……流石に疲れたわ……」
こなた「かがみがそんなにするなんて、よっぽどなんだね……」
かがみ「いや、6割以上はみゆきがした……ラテン語に歴史、地理に……物理学、工学まで幅広い知識が必要だった、この短期間でできたのはみゆきが居たおかげ」
こなた「ん〜、難しい事はいいから、結果だけ教えてよ」
かがみは不敵な笑みを浮かべた。
かがみ「待ちなさい、皆が集まるまで」
こなた「みんな?」
かがみ「そうよ、お稲荷さんを知っている人は全て呼んだ、皆に聞いてほしい」
お稲荷さんを知っている人……あのデータってどんな内容なのだろう。
つかさ「ところで神崎さんは来てくれるの?」
こなた「分からない……」
電子メール、手紙、電話、いろいろなツールで連絡を試みたけど返事は貰えなかった。直接家に行ければよかったけど、その時間が取れなかった。
かがみ「分からないって、何よ、あいつから吹っかけて来たのよ、張本人が来ないでどうするのよ!!」
悔しそうにするかがみと残念そうな表情のつかさが対照的だった。私自身も来て欲しかった。
「こんにちは……」
いのりさん、まつりさんが入ってきた。
つかさ「あ、いらっしゃい……」
まつり「大事な話があるって言うから来たよ」
身内にも内容をまだ話していないのか。まつりさんといのりさんか。この二人はたまに店に来てくれるけど、学生時代から話したりはしていないな……
かがみ「すすむさんとまなぶさんはどうしたの、彼らにも来てって言ったはずだけど」
いのり「来るけど少し遅れるかも……」
お稲荷さん、いや、元お稲荷さんも呼んでいるのか。って事は結構大勢になるかも。
いのりさんが私が居るのに気が付いた。
いのり「こんにちは、久しぶり……泉さんだったかな、まなみちゃんの演奏会依頼ね」
こなた「こんちは〜、どうもです」
つかさが店の奥から雑誌を持って来た。
つかさ「ねぇ、見て見て、まなみの演奏が記事になっているよ」
まつり「あぁ、そういえば、あの時の女性記者とカメラマンが取材に来ていた」
つかさはいのりさんに雑誌を渡した。その雑誌は来月号の見出しになっていた。
いのり「これって、わざわざ出版社から先行で送ってきたみたいね……」
つかさ「神崎さんが直接送ってくれたみたい……だから来てくれると思ったのに……」
まつり「え、あの記者と知り合いなの?」
つかさ「う、うん……」
いのり「へぇ、つかさって意外と顔がひろいんだ……演奏が終わってから取材だって二人が入ってきた、そう言えばあのカメラマン、まなみちゃんの演奏を絶賛していたのを覚えている」
そう、あの坂田ってカメラマンが取材の終始神崎さんと一緒に居たから立て込んだ話が出来なかった。だから私は途中で帰ってしまったので演奏後の取材の話しは知らない。
かがみ「お父さんとお母さんも来てくれたみたいね……来なかったのは私だけだった、ごめん」
つかさ「うんん、気にしていないから……」
気にしていないか……つかさはそんな風に言えるようになったのか。
こなた「あれ、ご両親、特別席には居なかったけど?」
つかさ「あまり前の席だとまなみに気付かれちゃうって、一般席に移動したって言ってた」
いのり「あった、あった、まなみちゃんの記事があったよ」
雑誌を開いたまま私達にそのページを見せた。まなみちゃんの姿が写った写真が掲載されている。あのカメラマンが撮ったものだ。
恥かしそうにはにかむ姿がまなみちゃんの特徴を捉えている。さすがプロのカメラマンって所かな。
いのりさんは雑誌を自分の方に向けた。
いのり「どれどれ……」
いのりさんはまなみちゃんの記事を読み出した。
228 :こなたの旅N 2/8 [saga sage]:2013/09/15(日) 13:01:52.40 ID:6uUv7Tdz0
いのり「舟歌、私自身その曲を聴くのは初めてだった、ショパンと言えば、子犬のワルツ、幻想即興曲、雨だれ、別れの曲、彼の残した曲は数知れないがこの曲を思い浮かべる人も
少なくないだろう、私はこの演奏を聴いてそう思った、
恥かしそうにピアノの前に座る柊まなみ、あどけない小学三年生、しかし鍵盤に手をかざすと表情が豹変した、
出だしの重い音の向こうから聞こえる舟歌のリズム、船出をする喜び、そして出発地を離れる不安と淋しさ、そして到着への期待と希望が次第に膨らんでいく様子が私の心に
染み渡ってきた、この子は一度船旅を経験した事があるのではないか、そう思わせる程の説得力があった演奏だった……」
いのりさんは雑誌を閉じた。
いのり「凄いじゃない、大絶賛だよ、こんなに褒められるなんて滅多にないよ」
まつり「そういえば周りで涙を流している人も居たよね」
こなた「へぇ、そんな演奏だったんだ?」
かがみ「へぇって、あんたも会場に行ったんじゃないの?」
こなた「えっと、最後の演奏だったもので……すっかり夢の世界に……」
かがみ「あんたは何しに行ったんだ!!」
皆は笑った。私も笑った。
「こんにちは」
みゆきさんが入ってきた。さて、そろそろ本題に入りそうだ。

229 :こなたの旅N 3/8 [saga sage]:2013/09/15(日) 13:03:08.51 ID:6uUv7Tdz0
 みゆきさんが来ると続々とかがみの呼んだ人達が入ってきた。最終的に
かがみ、つかさ、みゆきさん、あやの、いのりさん、まつりさん、ゆたか、ひより、みなみ、かえでさん、そして、ひろし、ひとしさん、すすむさん、まなぶさんの四人の元お稲荷さん
が集まった。
集合時間が過ぎても神崎さんが来る気配は感じられない。
かがみ「時間を過ぎたから始めさせてもらう、神崎さんにはどうしても来て欲しかったけどね……しょうがない、みゆき、後は頼むわよ」
みゆき「はい」
みゆきさんはピアノの前に立った。それを囲むように皆が座った。
みゆき「皆さん、お集まり頂きありがとうございます、貿易会社から入手したデータを解析しましたので皆さんのご意見を賜りたいと思います……それでは最初に、
    すすむさん、オーストリア北部の山岳地帯と聞いて何か思い出しませんか?」
私達はすすむさんの方を向いた。すすむさんは目を閉じた。
すすむ「あれは……忘れるはずもない、我々が最初に訪れた土地だ……」
ひより「え、最初に訪れたって……四万年前でしょ……それに船が故障したって……」
すすむ「そうだ、本来ならもっと南のアフリカ大陸辺りを目指したのだがね……」
そうか、確かすすむさんはけいこさんと同じくお稲荷さんがこの地球に来てからずっと生きていたって言ってたっけ。
みゆき「やはりそうでしたか、データの中にラテン語で書かれた文章がありました、それには「遥か昔に空から訪問者が訪れた」と書かれていました、事情を知らない人ならば
    これはただのおとぎ話や伝説で片付けられたかもしれません、でも私は直ぐに解りました、お稲荷さん達の宇宙船だったのではないかと」
すすむ「当時は氷河期で雪と氷だけの土地だった、お前達の先祖は少し攻撃的だったからネアンデルタールの人々の集落に身を寄せた、彼等は私達を温かく受け入れてくれた」
みゆき「……彼等は間もなく滅びたようですが?」
すすむ「彼等の頭脳は人類より発達していた、しかし声帯が人類ほど発達していなかったので意思の伝達が不自由だった、そのために次第に人類に追い詰められた」
みゆき「興味深い話ですね……それは後で聞きます……話を元に戻します」
つかさがつんつんと私の背中を突いた。私がつかさの近くに寄ると耳元でつかさが囁いた。
つかさ「ゆきちゃんとすすむさんの会話の意味がわかんないよ、声帯がどうのこうのってどうして?」
私も小声は話す。
こなた「ん〜、言葉が話せないと困るって事じゃないの、身振り手振りだけじゃ相手に伝わらないからね……」
つかさは首を傾げてしまった。私もこれ以上の説明は出来なかった。
みゆき「文章は続きます、「その地で彼等は呪いを施した、決して地を掘ってはならぬ」と、これはもしかして宇宙船の残骸を発見されない為の忠告ですか?」
すすむ「そう、放射性物質があった、それに我々の技術をされたくなかった、当時の人類では全く理解は出来ない物だったがね、言い伝えだけが残ったのだろう」
みゆき「……この文献の通り、約40年前、遺跡が発見されました、そのスポンサーが貿易会社です、今でも発掘は続いていて、その発掘品の殆どはシークレットで
殆ど公開されていません、全ては謎です……結論から先に申し上げると、貿易会社は既にお稲荷さんの存在に気付いていると思います」
すすむ「……その可能性はあるが……現代でも我々の技術を分析はできまい、船は完全に破損してしまった、
残った装置も殆どが有機物質から構成されているものだ、とっくに土に還っている」
みゆき「これは何ですか?」
みゆきさんは一枚の写真を私達に見せた。それはガラスの様な、水晶の様な透明な板が写っている。
みゆき「これもデータの中にあった写真です、遺跡の一部だと思われますが?」
すすむ「……メモリー」
こなた「メモリーってpcで使うような?」
すすむ「そうだ……」
ひより「お稲荷さんって知識は忘れないって言ってなかった、そんなもの要らないような気がするけど?」
すすむ「人間になって知識は一割も覚えていない……この地球の様に知的生命体との接触を想定して我々の知識と歴史を記録した物だ、しかし未だ読めないだろう」
みゆき「それではこれはどうですか?」
みゆきさんは更にもう一枚の写真を出した。そこには見た事もない文字がぎっしり書いた紙が写っている。
すすむ「それは我々が使っていた言語だ……まさかあのメモリーの中身を読み取ったのか、ふふ、まだ忘れていない、読めるぞ、核融合における基本技術が書かれている」
みゆき「この言語は私にもさっぱり解読できませんでした、しかし貿易会社は40年も秘密でこれらを研究しています……それがどう言う意味が分かりますか?」
皆は黙って何も言わない。私も分からない。つかさがまた私の背中を突っつく。
つかさ「私何を言っているのかさっぱり、こなちゃん分かる?」
こなた「ん〜、どうやら貿易会社がお稲荷さんの秘術を盗んでいるみたい……」
つかさ「ふ〜ん?」
分かっていない様だ。
すすむ「貿易会社が我々の技術を使って儲けている、と言いたいのか?」
みゆき「そうです……」
すすむさんは笑った。
すすむ「なら放って置けば良い、我々の技術や知識は何れ人類も自ら得るだろう、知りたい者にはくれてやれ」
みゆき「いいえ、それならば一企業が独占しては……これは全世界に公開されるべきです」
みゆきさんとすすむさんの口論が始まった。私には難しくて分からなかった。多分つかさも分からないだろう。他の人達はどうだろう。みんな呆然と二人を見ているだけだな。
でも……この二人の口論。何れ分かるなら教える。教えないって話しだ。何処かで同じような……
そうだ。私と神崎さんだ。神崎さんがまなみちゃんの演奏会で言っていた……

230 :こなたの旅N 4/8 [saga sage]:2013/09/15(日) 13:04:40.69 ID:6uUv7Tdz0
かえで「二人とももう止めなさい」
かえでさんの言葉で二人の口論は止まった。
かえで「もうそれは終わった話よ、それはけいこさんがしようとした事じゃないの、結果がどうなったか……分かるでしょ?」
みゆき「……はいそうでした」
すすむ「……そうだったな……」
かえでさんは立ち上がった。
かえで「問題は貿易会社ね、みゆきさんの話しを聞くとけいこさんの正体をお稲荷さんって分かっていた様な気がする、つかさ覚えていない?」
つかさ「ふえ?」
いきなり振られてつかさは困惑してオロオロしている。私も話しに付いていけないのだからつかさも同じだろう。
かえで「まだレストランが引越しする少し前、二人で神社の頂上に登ったでしょ、二人で登るなんて何度もないから覚えている、そこの木の陰に黒ずくめの男が隠れていたでしょ、
つかさは観光客だなんて言っていたけどね」
つかさは頭を抱えて考え込んだ。
つかさ「あっ!!」
つかさはピンと立ち上がった。
かえで「思い出した?」
つかさ「うん……あの人って観光客じゃないの?」
かえで「あれが観光客だもんですか、貿易会社の差し金よ、あの神社がお稲荷さんの住処だったのを調べていたにちがいないわ」
かがみ「そんな事があったなんて知らなかった」
かえで「私も当時はそこまで根深いとは思わなかったからあまり気に留めておかなかった……国の権力を使ってけいこさんを拘束するなんて、フェアーじゃない」
ひとしさんがいきなり立ち上がった。
ひとし「話はそれで終わりか、4万年前の遺跡を掘り返しただけ、可愛いものじゃないか、もう私達には関係ない、」
かがみ「可愛い……それだけなら私は貴方達を呼ばないわよ」
ひとし「それじゃ何だって言うんだ……」
かえで「こらこら、夫婦喧嘩はやめなさい」
かがみが言い返そうとした時、良いタイミングでかえでさんが割り込んだ。
かえで「かがみさん、続きを聞かせて」
かがみ「は、はい……データの中に貿易会社の取引先の情報があって、その中に国際的に取引を中止されている国の名前が幾つもある、それだけじゃない、
    その取引の商品がこれ」
かがみは紙を鞄から出した。英語で書いている表だけど読めない。
ひとし「……兵器か……素粒子銃、レーザー砲……なんだこれは、こんな物今の時代に不釣合いな兵器だな」
かがみ「実験装置として売っている……密輸が発覚しただけでも企業の存亡に関わる大スキャンダルよ」
ひより「もしかして神崎って記者はそれを調べるために?」
かがみ「記者としてはそうかもしれない、でも、彼女もお稲荷さんの存在を知っている、しかも真奈美さんをね」
ひより「どう言う事です?」
かがみが話そうとした時だった。
ゆたか「その前に聞きたい事が……」
かがみ「どうぞ」
ゆたかはかがみではなくすすむさんの方を向いた。
ゆたか「お稲荷さんの知識で武器を作れるの、宇宙は戦争もできないほど過酷だって、そう言ったのは嘘だったの?」
すすむ「嘘じゃない……」
ゆかた「それじゃどうして武器が作れるの……」
ひろし「お前達も経験しているはずだ、火薬は爆弾にもなれば花火にもなる、簡単な事だよ」
ゆたか「私達次第って事……かがみさんごめんなさい、続きを話して下さい」
どうしたのかな、ムキになって
……ゆたかはすすむさんが好きだった……からかな。女心って分からないな……って私も女か。
かがみ「それはみゆきから話すわ」
みゆき「板に記録されている文字は標語文字ですよね?」
こなた「ひょうごもじ?」
みゆき「漢字の様に一つの文字で意味を成すものです」
すすむ「そう、私達が古代に使っていた文字を敢えて選んだ、無闇に解読されないように」
みゆき「貿易会社でもおそらく解読できていないでしょう、そのはずなのにこうしてお稲荷さんの知識を利用した兵器が作られている、膨大な量の文から必要な部分だけを選んで」
ひとし「誰かが翻訳をしている……」
みゆき「そうです、私の推測ですがその人が真奈美さんではないかと……」
つかさ「ま、まなちゃん……」
ひろし「姉が生きている、ばかな……」
ひろしは立ち上がった。
ひろし「生きているならとっくに僕が気付いている、それに翻訳する必要なんかない、メモリーの知識は脳の中に入っているのだから」
みゆき「真奈美さんが人間になっていたとしたらどうですか、人間になると使わない記憶は自然と消えていきます、すすむさんはさっきそう言いましたね」
ひろしは黙って立ち尽くしている。
かがみ「みゆきの推理に説得力あってね……私は支持するわ、おそらく真奈美さんは強制的に翻訳させられている、」
231 :こなたの旅N 5/8 [saga sage]:2013/09/15(日) 13:06:08.72 ID:6uUv7Tdz0
これがかがみとみゆきさんが分析した結果か……
ひとし「しかし……あくまで推測だ、証拠がない」
つかさ「でもお稲荷さんの文字が読める人が居るんでしょ、それじゃお稲荷さんしか居ない」
ひとしさんはつかさに何も言わなかった。単純、単純で何の捻りもない素直な答え。だからひとしさんは反論できない。
みゆき「……貿易会社本社25階、遺跡保管庫にメモリーの本体が保管されています……泉さんから頂いたデータから得た情報で、真奈美さんが居るとしたらその辺りのはずです」
25階……25階って確か……
ひとし「……真奈美ではないにしても仲間がいる可能性があるのか……」
すすむ「だとしたらこのまま何もしない選択はない」
まなぶ「仲間が囚われているのなら助けないと……」
まなぶさんが立ち上がった。
まなぶ「でも……けいこさんが、あのけいこさんが何も出来ずに捕まってしまった、すすむよりも永く人間と暮らして人間の鼓動は把握しているはずのけいこさんがね、甘く見ない方
    がいい、今度私達が捕まったら助ける方法はない、故郷から助けも呼べない、失敗は許されないぞ」
かがみ「確かにあの時、裏で何か大きな権力が動いていたのは感じていた、それが……あの貿易会社、素人集団の私達が対抗できるかしら……」
みゆき「しかし、泉さんはデータを無事に取ってきました……出来ませんか?」
みゆきさんは私の方を見た。
こなた「それは神崎さんが居たからだよ……それにあのビルの25階は貿易会社直営の銀行があるだけだよ、そこはデータを取った資料室とは比べ物にならない警備だね」
みゆき「銀行……」
あやの「そうそう、思い出した、あのビルで働いている時、25階の銀行は特別だったね、専門の警備会社が警備していて会員制の銀行だから一般人は入れやしない」
まなぶ「……なるほど簡単ではなさそうだ……」
232 :こなたの旅N 6/8 [saga sage]:2013/09/15(日) 13:07:23.39 ID:6uUv7Tdz0
まつり「ちょっとちょっと、なに、もう潜入する気満々じゃない!!」
突然まつりさんが立ち上がった。
まつり「もうまなぶはお稲荷さんじゃない、人間なの、そこに居る三人もそう、いくらお稲荷さんの知識を悪用されているって、もう4万年前の遺跡を勝手に掘り起こして
    いるだけじゃない、そんなのはもう時効、私達がそんな危険なことまでして守るものじゃないよ、後は専門家に任せればいい」
専門家……適任がいる。神崎さん……
みゆき「し、しかし……お稲荷さんが囚われています」
いのり「けいこさん達を助けるような訳にはいかないのは確か、下手な事をすれば私達の命もも、囚われているお稲荷さんの命だって取られてしまうかもしれない、
    兵器を作って密輸するような死の商人だったら何をするか分からない、法律なんか平気で無視するに決まっている、うんん、もう破っているじゃない」
いのりさんも立ち上がった。
いのり「悪いけどこれ以上の話には付き合えない」
まつり「同じく」
そして二人はそれぞれの旦那の方を向いた。すすむさんとまなぶさんは首を横に振った。
すすむ「悪いが話しだけは最後まで聞く」
いのりさんはかがみの方を向いた。
いのり「かがみ、いったいどうゆうつもりなの、一体何をしようとしてるの、大企業、いや、今や貿易会社は今や大国と対等に渡り合っている、一個人が喧嘩売ってただで済むとおもう」
かがみ「……別に喧嘩なんかするつもりは……でもね、私も法律を齧った端くれ、こんな大罪を黙って見逃すつもりはない」
いのり「それならかがみ一人ですればいいじゃない、私達を巻き込まないで!」
かがみ「巻き込まないって、姉さん、私達はそのお稲荷さんと一緒になった、彼等の運命や背負っているものも一緒なの」
いのり「私はそんなものまで背負った覚えはない、行くよ!まつり」
まつり「う、うん……」
いのりさんはまつりさんを引っ張りながら店を出て行った。
つかさ「お姉ちゃん……」
かがみ「あんなの放っておけばいいのよ!」
怒るかがみに心配そうに二人が出て行った出入り口を見つめるつかさ……対照的だな……
かえで「ちょっと待って、話しを進める前にハッキリしておきましょ」
かがみ「な、何をです?」
かえで「いのりさんやまつりさんの言い分は間違っていない、彼女はお稲荷さんと一緒になった訳じゃない、人間のすすむさん、まなぶさんと一緒になった、それはかがみさん、
つかさも同じ、違うかしら?」
つかさ「うん」
かがみ「それは……」
自信を持って頷くつかさに少し戸惑い気味のかがみだった。
かえで「これからの話しはすごく危険な話し、下手をすれば誰かが罪を犯すかもしれないし命を落とすかも知らない、いのりさん達は夫にそんな危険な事をして欲しくないだけよ、
    だから出て行った、それは私達も同じ、これは強制でもなければ義務でもない、協力するもしないも自由……退出するならどうぞ」
うぁ〜これはある意味いろいろフラグが立ちそうなイベントだ。私はどうする……
233 :こなたの旅N 7/8 [saga sage]:2013/09/15(日) 13:08:34.44 ID:6uUv7Tdz0
ここまで来て続きを見ないのは勿体無い。それに半分は私のせいでもあるからね。
見た所誰も動きそうにない。これで決まりかな……
ひろし「それじゃ出て行くのは君だ、田中かえで……」
ひろしがそんな事を言うなんて……そういえばかえでさんを苦手だって言っていたっけ。いままでお返しかな……
かえで「何故」
ひろし「随分お腹が大きくなってきているじゃないか」
かえで「私が妊婦だから……そう言うなら見損なわないで、生まれてくる子の為にも私は此処に残る」
ひろし「おめでたいやつだな……」
かえで「な、何ですって、何がおめでたい!!」
その時だった。私はデジャブを感じる。何だろう……そうだ。
私を見下したような言い方だった。
「おめでたい」……あの言い方、イントネーション、間合い……あの時の神埼さんと全く同じだ。
ひろし「生まれてくる子の為なら尚更こんな所に居るな……子がいなければ話して聞かせる事もできないじゃないか」
どこかの方言なのか。偶然に同じなんて……
かえで「それなら貴方だって同じじゃない、子供が居るでしょ」
つかさ「ふふふ……」
突然つかさが笑った。
かえで「な、何が可笑しいのよ……」
つかさ「やっぱり姉弟だね……私もねまなちゃんから言われちゃった、「おめでたい」って、ひろしさんも良く言うよね……まなちゃんを思い出しちゃった」
え……そ、そんなバカな、ひろしと真奈美が同じ言い方をしていた?
つかさ「まなみはもう小学生だし自分の足で歩けるよ、でもねお腹の中の赤ちゃんはお母さんから出られない、だから危険な事をしたらダメなの……それに、
    かえでさんの顔色があまり良くない……早く帰った方がいいかも?」
かえでさんはお腹を手で触った。
みゆき「つかささんの言う通りです、帰って休まれた方がいいと思います……」
かえでさんはゆっくり立ち上がった。
かえで「ごめん……つかさ……こんな時に力になれなくて……」
つかさは首を横に振った。
かがみ「姉さん達のフォローをしてくれてありがとう……」
かえで「うんん、でも、これだけは言っておく、無茶だけはしないで……私が言う事じゃないか……」
かえでさんは苦笑いをしながら店を出て行った。

234 :こなたの旅N 8/8 [saga sage]:2013/09/15(日) 13:09:38.59 ID:6uUv7Tdz0
 つかさが言った言葉が頭から離れない。「おめでたい」……
ひろしと真奈美が同じ言い方をしていた。そして神崎さんも……この事から言えるのは只一つ。
ひろし「姉が囚われているかもしれない、これだけでも充分貿易会社を調べる価値はある、それに加えて我々の知識が悪用されているとなれば尚更だ、しかし問題は神崎あやめの
    本当の目的だ、密輸を暴いて名を上げるためか、それとも囚われた人物を救おうとしているのか、それとも、その両方なのか」
かがみ「その二つとも違うかもしれない……本来なら此処に来て居なければならない人よ、データの提供者本人なのだから……」
そうだよ、いえる事は一つ、神崎あやめは真奈美……
つかさ「こなちゃんも私も何度も連絡したけど来てくれなかった…ねぇ、こなちゃんそうだよね」
お弁当を横取りされた時、彼女はお弁当を作ったゆたかの心を見抜いていた、あれは神崎さんの千里眼だと思ったけど違う、あれはやっぱりお稲荷さんの力だった。
つかさ「こなちゃん?」
間違いない。神崎さんは真奈美が化けた人だった。だからつかさと握手した時、つかさに正体を知られるのを恐れて力いっぱい握った。
つかさ「こなちゃん、聞いてる?」
全てが説明つくじゃないか……いや一つ疑問が残る。問題はひろしが何故それに気付いていないのか。
いや、そんなのはどうでもいい。もう一回神崎さんに会えば分かる。
かがみ「おい、こなた!!」
こなた「ひぃ!!」
かがみの大声で私は我に返った。
つかさ「どうしたの、ボーっとしちゃって?」
こなた「へ、私に何か御用ですか?」
かがみ「御用じゃないでしょ、さっきからつかさが呼んでいたのが聞こえなかったか……まったく、どうせアニメの事とか考えていたんでしょ……」
こなた「え、ちが……」
まて、この話しをした所で笑われるに決まっている。決め手が「おめでたい」じゃ「おめでたい」って言われるに決まっている。
こなた「へへへ、ばれちゃった……」
かがみ「やれやれ……」
溜め息をつくかがみ。
つかさ「神崎さん……来てくれなかった」
つかさの一言で今まで何を話していたのかが想像ついた。
こなた「ああ、彼女はデータ自体を渡したくなかったみたいだった、それとお稲荷さんの秘密を知っているとは思わなかったみたいだしね、とても危険な事をしようとしているのだけ
    は分かったよ」
すすむ「なんとか神崎を私達の前に連れてこられるか、そうでないとこれからの行動が決められない」
こなた「う〜ん」
私は腕を組んで考えた。
ひとし「来ないなら来ないで我々だけで行動するしかないだろう、その時は泉さんの力を借りる事になるだろうがね」
みゆきさんは鞄からA4サイズのファイルを私に渡した。
みゆき「データを分析した詳細が書かれています、これを神崎さんに渡してください、きっと私達に協力してくると思います」
こなた「へ、私が渡すの?」
かがみ「当たり前だ、一番彼女と接触しているのがこなたのだから、それに仲も悪くはないでしょ?」
こなた「それはそうだけど……」
そうか、このデータを利用すれば神崎さんに会える。神崎さんはまだ完全にデータを分析し切れていない。そうに違いない。
こなた「分かった、やってみる」

 こうして私は神崎さんの家に直接A4ファイルを渡しに向かうのだった。
彼女はお稲荷さんなのか。真奈美なのか。もう誤魔化しも駆け引きも要らない。



つづく
235 :以下、新鯖からお送りいたします [saga sage]:2013/09/15(日) 13:14:03.58 ID:6uUv7Tdz0
以上です。

「ひよりの旅」を読んでも時間系列が分からない人がいるのであれば「こなたの旅」が終わった時点で修正します。

それまではこのまま続きを書いていきます。

読んでくれている人が居るのは驚きと嬉しさでいっぱいです。


236 :東京オリンピック2 [saga sage]:2013/09/15(日) 17:06:16.31 ID:6uUv7Tdz0
こなた「う〜ん」
つかさ「どうしたの、こなちゃん?」
こなた「う〜ん、東京オリンピックがね〜」
かがみ「まだまだ先の事なのにまだアニメ番組の心配しているのか」
こなた「うんん、それはね……我慢できるんだけど……もっと重大な心配があるんだよ」
つかさ「もっと重大な心配って何?」
こなた「競技会場のひとつに東京ビックサイトが選ばれていてね……」
つかさ「ビックサイト……も、もしかして」
こなた「夏コミが開催できないかもしれないの……」
つかさ「オリンピックの年は中止だね……(これで手伝いに行かなくてすむかも)」
かがみ「つかさ、喜ぶのは早いぞ、すでに招致活動しているらしい」
こなた「え、本当?」
つかさ「え〜」
かがみ(喜ぶこなたに落ち込むつかさ……やれやれ、もういい加減私達姉妹に手伝わせるのは止めて欲しい)


237 :球磨川『陵桜学園…?』 :2013/09/15(日) 20:04:58.48 ID:OBcGfild0
球磨川『1レスだけで終わると思った?僕に文才が無いから長編なんて書かないと思った?おおよそただの一発ネタで幕を閉じると思った?』

球磨川『甘ぇよ!!』

球磨川『…が、その甘さ。嫌いじゃあないぜ。』

球磨川『というわけで!堂々の第二弾!「星屑にうごめく敗北の星」間もなくスタート!………………いや、まてよ。らきすたファンで僕こと球磨川禊の事知っている人が少なそうだしやめようかな?』
238 :東京オリンピック3 [saga sage]:2013/09/15(日) 20:47:19.51 ID:6uUv7Tdz0
こなた「う〜ん」
かがみ「いいかげんにもう諦めろ、オリンピックの年くらい日本を応援しなさいよ」
こなた「うんん、そうじゃなくって、日本の文化が……否定されるなんて悔しいと思わない?」
かがみ「唐突になにを……」
こなた「秋葉原浄化計画と称して萌え文化がなくなるかもしれないんだよ、大変なんだよ」
かがみ「安心しなさい、あんたの様な人が居る限り滅びることはないから」
こなた「……なんだろう、これって褒められてるの、貶されてるの?」
かがみ「ふぅ〜 つかさ帰るわよ」
239 :以下、新鯖からお送りいたします [saga sage]:2013/09/15(日) 21:18:03.22 ID:6uUv7Tdz0
>>237
乙です
クロスオーバーでも構いません。どんどん投下して下さい。
過疎ってますので大歓迎です。
240 :球磨川『陵桜学園…?』 :2013/09/15(日) 22:11:51.11 ID:OBcGfild0
球磨川『仕方ねぇなぁ>>239ちゃん、君には「負けた」ぜ……』

球磨川『ところで君は僕を知ってるのかい?』
241 :球磨川『陵桜学園…?』 :2013/09/15(日) 22:28:25.50 ID:OBcGfild0
星屑にうごめく敗北の星 ep,1

こなた「ヤッホー、転校生くん。さっきの手品はどうやったの?」

私は、休み時間に恐る恐る謎の転校生に声をかけた。

彼はまるで澄んだ川のように濁っておらず、しかし負の側面を集約したような雰囲気を漂わせていて。

教室に入って早々、クラスの人全員を螺子伏せるという手品をみせた……

だからこそ、本当に恐る恐る話し掛けた。

球磨川『……………』ジーッ

こなた「……」

球磨川『……………』ブワッ!

こなた「!?ちっ、ちょっと!どどどどうしたの!?」

彼は私の顔を見るなり急に泣き出した。

球磨川『いやぁゴメンゴメン、生まれて初めて女の子から話しかけられたモンだから嬉しくって』

こなた「ずいぶんと暗い青春を歩んでたんだね……」

例の嘘っぽい、作りものみたいな口調で笑えない苦労を語る彼に 私は思わずそうツッコンだ。 

続く……
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