らき☆すたSSスレ 〜そろそろ二期の噂はでないのかね〜

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369 :七夕 1/4 [saga sage]:2014/07/06(日) 00:02:55.00 ID:jN24m8os0
 今日は街に出てお買い物。
外は梅雨で生憎の天気。こんな時は天気を気にしないデパートで買い物をするのが一番。
こなたお姉ちゃんは買い物を済ませて先に帰った。これだったらひよりちゃんやみなみちゃんと一緒に来た方が良かったかな……
なんて最初はそう思ったけどたまには一人で気兼ねなく、時間も気にしないで買い物をするのもたまには良いかな……
普段寄らないような店をちょっと覗いてみよう。

 少しアンティークっぽい装飾品店を見つけた。値段も手ごろで私でも買えそうな物がいくつもあった。
何気なく手を伸ばした。丁度その時同じ物を取ろうとしたのか他人の手が重なってしまった。
ゆたか「す、すみません……」
手を引っ込めて相手の方を向いた。
かがみ「ゆたかちゃん?」
ゆたか「か、かがみ先輩?」
そこに立っていたのはかがみ先輩だった。
かがみ「奇遇ね、一人でお買い物?」
ゆたか「はい……あ、いいえ、こなたお姉ちゃんと買い物に来たのですけど途中で別れて一人で買い物をしていました」
かがみ「こなたも来ていたのか……」
かがみ先輩は辺りを見回した。
ゆたか「お姉ちゃんはもう帰りました」
かがみ先輩は呆れるように溜め息をついた。
かがみ「あいつは目的を果たすと直ぐ帰るからな……」
ゆたか「かがみ先輩もお買い物ですか?」
かがみ「私? そうね、そんな所かしら……この店感じがいいから何気なく入ったのよ」
かがみ先輩は店の周りをゆっくりと見ました。
ゆたか「そうでしたか、失礼しました」
私は会釈をして店を出ようとした。
かがみ「待って、これから予定はあるの?」
店の入り口で私は立ち止まった。
ゆたか「いいえ、特にありませんけど」
かがみ「こんな所で会ったのも何かの縁、どう、この近くに美味しいスイーツの店知っているけど寄っていかない?」
かがみ先輩の誘いに断る理由はなかった。
ゆたか「はい」
かがみ「それじゃ行きましょ」


『七夕』


370 :七夕 2/4 [saga sage]:2014/07/06(日) 00:04:09.70 ID:jN24m8os0
かがみ「どう?」
ケーキを食べる私をじっと見るかがみ先輩。
ゆたか「……美味しいです……しつこくない甘さと程よい苦味がアクセントですね……」
にっこり微笑むかがみ先輩。
かがみ「でしょっ!!」
表情が少し誇らしげの様な気がした。
ゆたか「こんなに美味しいお店があったなんて……今度みなみちゃん達にも教えます」
かがみ先輩は大きく頷いた。
ゆたか「今日はお一人なのですか?」
かがみ「そうよ……」
ゆたか「つかさ先輩は……」
かがみ先輩は少しさみしそうな顔になった。
かがみ「そうね、確かに高校まではつかさとほとんど一緒に行動していた、でも、流石に大学と専門学校じゃ時間が合わないわよ……」
ゆたか「せっかくの日曜日なのに、残念ですね」
かがみ先輩は静かにコーヒーカップを口に運んだ。
かがみ「今までが上手く行き過ぎていた、それは分っているけど……慣れるのにはもう少し時間が必要かもね……」
ゆたか「いろいろ大変ですね」
かがみ先輩はコーヒーカップを置いた。
かがみ「ところでゆたかちゃんはどう、二年目高校生活は?」
ゆたか「クラス替えしても相変わらずのメンバーは変わらなかったので……」
かがみ「……凄いわね……私は結局つかさやこなた、みゆきと同じクラスには一度も慣れなかった」
そういえばつかさ先輩は小学校から一度も同じクラスになってないって言っていたのを思い出した。
ゆたか「で、でも卒業しても頻繁に会っているのだから凄いですよ」
かがみ「そういえば担任が黒井先生なんだって?」
話が変わってしまった。あまり触れて欲しくない話だったかな……
ゆたか「え、あ、はい、そうです、とっても厳しくて……厳しくて……」
かがみ「たまに遅刻寸前で教室に飛び込んでくる?」
私は黙って俯いた。
かがみ「ふ〜ん、図星みたいね……黒井先生はまだこなたと同じネットゲームしているのかしら……」
ゆたか「……お姉ちゃんは遅くまで起きているみたい」
かがみ先輩は溜め息をついた。
かがみ「やれやれ」
かがみ先輩は再びコーヒーカップを口に運んだ。私もその合間にケーキを食べた。
371 :七夕 3/4 [saga sage]:2014/07/06(日) 00:05:09.02 ID:jN24m8os0
 それから暫く私はみなみちゃんやひよりちゃんの話をした。
かがみ先輩はじっと私を見ている。
ゆたか「はい?」
かがみ「こうしてゆたかちゃんと二人で話すなんて初めてじゃない?」
ゆたか「……そいえば……かがみ先輩が居る時はいつかさ先輩かお姉ちゃんが居ましたね、私もみなみちゃん、ひよりちゃんが……」
かがみ「ゆたかちゃんから見て私はどう見える?」
ゆたか「どう見える……って?」
かがみ「皆と一緒だとギャーギャー言っているでしょ……知り合いは居ないから正直に」
こう言う時ってどう答えればいいのかな。
ゆたか「……とても頼りになるお姉さんって感じ……」
かがみ先輩は首を横に振った。
かがみ「そうじゃなくて……女性としてどう見える?」
ゆたか「女性として……」
私は言葉に詰まってしまった。どうしよう。何も答えられない。気を悪くしていまうかな……
かがみ先輩は溜め息をついた。
かがみ「ごめん……同性にこんな質問をしてもしょうがない……」
ゆたか「同性……気になる異性……誰か好きな人でも居るのですか?」
何気なく言った。だけどかがみ先輩の顔がみるみる真っ赤になって耳まで赤くなった。
かがみ「な、なに言っているのよ!!」
どうしよう、怒らせちゃった……
ゆたか「す、すみません……」
かがみ先輩は立ち上がるとそのまま化粧室の方に早歩きで向かった。

 かがみ先輩……
お姉ちゃんとかがみ先輩はいつも何か言い合っていてツンツンしている様な感じがしていた。
つかさ先輩や私達と一緒の時のかがみ先輩はいつも微笑んでいて良いお姉さんって感じ。
高良先輩とかがみ先輩が話している時は知的で凛として憧れの先輩って感じ。
日下部先輩や峰岸先輩と一緒の時のかがみ先輩はふざけ合って仲の良い友達って感じ。
さっき私と話していたかがみ先輩はそのどれとも違っていた……
化粧室からかがみ先輩が戻ってきた。ゆっくりと静かに歩いて来た。そして席に着いた。
かがみ「さっきはごめんね……」
普段のかがみ先輩に戻っている。
ゆたか「いいえ、私が唐突過ぎました……」
かがみ「……いや、ゆたかちゃんがそう言うのはある意味正しい……私ってこの歳になっても……浮いた話が一つも無いでしょ……女性としてどうなのかなって……」
ゆたか「そ、そうですか……私もそれは良く分かりません……普段そんな話あまりしませんし、お姉ちゃんだってそうだと思います……」
かがみ「そうよね、私達にはそんな話は似合わない……そうそう、気を取り直して何か注文しましょ、お詫びに私が奢るわよ」
かがみ先輩は店員を呼び二人分の注文をした。
似合わない……似合う似合わないは関係ないような気がした。
それにこんな話は今まで一度もした事がない。こんなチャンスはないかも。折角だから……
ゆたか「あ、あの、好きな人は居たのですか?」
かがみ「ぶっ!!」
飲みかけたコーヒーを噴出しそうになった。
かがみ「ちょっと……」
また顔が赤くなった。だけど赤くなったのは頬だけだった。
ゆたか「ついでって言ったら語弊があるかもしれませんけど……今までこんな話した事がないのでたまには良いかな……なんて……話したくなければ無理には……」
かがみ「ふぅ……」
かがみ先輩はナプキンで口を拭いた。そして私を見た。私もかがみ先輩を見た。
かがみ「たまには……こんな話をしてもいいか……」

372 :七夕 4/4 [saga sage]:2014/07/06(日) 00:06:24.06 ID:jN24m8os0
 かがみ先輩は頼んだスィーツが来てから話し始めた。
かがみ「あれは私が中学生の頃だった、好きな人が居た、ただ何となく漠然とだった……だけどすこしずつそれが本気になっていった……」
ゆたか「デートとかですか……?」
かがみ先輩は首を横に振った。
かがみ「まさか、教室で雑談するくらいだった……彼がどんな人だったなんて今でも分らない、俗に言う片思いよ……
    ただ想いだけが積もるだけ……何も出来なかった、ただ時間だけが過ぎていく……そして」
ゆたか「そして……?」
かがみ「卒業式の日、私は決めた、彼に想いを伝えようと……」
私は身を乗り出していた。
ゆたか「告白……ですね……」
かがみ「うんん、出来なかった……」
悲しそうな顔になるかがみ先輩。ふられちゃったのかな。
かがみ「告白……それどころか呼び止める事すら出来なかった……出来なかったのよ、何も……」
ゆたか「出来なかった……」
かがみ「そう……これで私の話はお仕舞い、ふふ、ばかばかしいでしょ……」
笑顔で話すかがみ先輩……でもそれは作り笑顔だって直ぐに分った。
その時、かがみ先輩の目から光る物が一筋……涙?
伝えられなかった想い……

 かがみ先輩はスイーツを食べ始めた。
かがみ「美味しい!! ゆたかちゃん、食べてみて、これおいしわよ……
ゆたか「は、はい……」
食べてみたけどあまり味は感じなかった。
短かったけどとっても感情が入っていて私の心に響いた。

かがみ「ぶぅ〜 食べた食べた、これだけ食べたのは久しぶり……」
食べ終わったかがみ先輩はさっきまでとは打って変わって晴れ晴れとした笑顔だった。
ゆたか「私もです……」
かがみ「なんか話したら胸の奥につっかえていた物が取れたようなきがした、もっと早く話しておけば良かった、実はゆたかちゃんに話したのが初めて、つかさにも話していない」
ゆたか「つかさ先輩にも……」
かがみ「さて、すっきりしたし、出ようか?」
ゆたか「え……は、はい……」
373 :七夕 5/4 [saga sage]:2014/07/06(日) 00:07:30.10 ID:jN24m8os0
 店を出るとかがみ先輩は空を見上げた。
かがみ「鬱陶しい天気ね……」
ゆたか「今日はご馳走様でした……すみません奢ってもらえるなんて」
かがみ「いいのよ、つまらない話に付き合ってくれたのだから」
ゆたか「つまらないなんてとんでもないです、その経験がいつかきっと役に立つと思います」
かがみ「……ふふ、そうなれば良いけどね、これからの予定は?」
ゆたか「特に無いです」
かがみ先輩は腕時計を見た。
かがみ「私はこれからつかさと会う約束をしているから帰るわ」
つかさ先輩か……
ゆたか「今度つかさ先輩に会ってさっきの質問をしたらどうなるかな……」
かがみ先輩には聞こえないと思っていたけどしっかり聞いていた。
かがみ「さぁね、私もそんあ質問をしたことないから分らない……」
ゆたか「あ、すみません独り言でした」
それでもかがみ先輩は話し続けた。
かがみ「私も興味あるわ、普通に考えて一人や二人、好きな人が居ても不思議じゃない、あとはどうしたか……」
ゆたか「告白していたりして……」
かがみ先輩はクスっと笑った。
かがみ「そうそう、ゆたかちゃん、貴女はどうなの?」
ゆたか「わ、私ですか!?」
なんだか急に身体が熱くなってきた。自分でも顔が赤くなるのが分るくらいだった。
かがみ「私に喋らせてゆたかちゃんは内緒なんてずるいぞ!」
笑いながら話すかがみ先輩。
かがみ「今度会ったら話してもらうわよ」
私もかがみ先輩と同じだった。何も出来なかった。その一言が出なかった。
再びかがみ先輩は空を見上げた。
かがみ「明日、晴れると良いわね」
ゆたか「そ、そうですね……」

 気付くともう駅の前に着いていた。
かがみ「途中まで一緒に行きましょ?」
ゆたか「あ、私、未だ買い物が終わっていないので……」
かがみ「そう……それじゃまたね」
ゆたか「はい……」
かがみ先輩は駅のホームへ消えて行った。

 本当は買い物なんて無かった。このままかがみ先輩と一緒に帰っても良かった。
だけど出来なかった。
言えなかった。かがみ先輩と同じでした……そのたった一言が言えなかった……
ずるい……笑って言っていたけど私にはとても辛かった……一緒になんか帰れない……
最初にこの話を持ち出したのは私なのに……
頭に冷たい物を感じた。雨が降ってきた。私は走って改札口へ移動した。
そして頬が濡れていた。これは雨じゃない……
かがみ先輩が店で流した涙の本当の意味が分ったような気がした。

私はしとしとと降る雨をぼんやりと眺めていた。
そういえばかがみ先輩はしきりに天気を気にしていたけど、どうしてだろう?
明日は月曜日で平日……なにかあったかな。
ふと周りを見回した。改札口の横に笹飾り……
明日は七夕……だから天気を気にしていたのか。かがみ先輩って伝説とか信じないと思っていたけど……
あれ……七夕……
思い出した。
……七夕はかがみ先輩の誕生日……
お姉ちゃんが買い物に私を誘ったのは……かがみ先輩とつかさ先輩にプレゼントを買うためだった?
そうと分れば私も二人に何か贈ろう。何がいいかな……
そうだ。
折り畳みの傘を差した。そして来た道を戻った。

 アンティーク風のお店。かがみ先輩と会った売り場へ向かった。
手にと取ろうと思っていた物はまだ置いてある。それは髪飾り。
かがみ先輩もつかさ先輩もリボンはもう似合わない。この髪飾りなら二人とも似合いそう。
私は二つの髪飾りを包んでもらった。

明日は私もお姉ちゃんと一緒に二人に会おう。それで今度こそちゃんと話そう。
私は心の中でそう誓った。


374 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga sage]:2014/07/06(日) 00:11:38.31 ID:jN24m8os0
以上です。 全部で5レスでした。

かがみとすかさの誕生日ネタです。
これで4作品目かな。同じ名前の作品がありますがこの作品とは何の関係もありません。

ゆたかメインは初めてかもしれない。
かがみとつかさ、どっちを出そうか悩みましたが今回はかがみを選びました。

すぐに纏めるので報告は避難所のみにします。
375 :たな☆ばた [sage]:2014/07/06(日) 06:48:22.31 ID:YwJEPO0Eo
 蒸し暑い初夏の夜。着信メロディが鳴る。
 今となっては、古くさいと言われる曲。自分にとっては、そんなに古いとは思ってはいないけれど。
 この曲を良く聴いていたあの頃と、現在との年月の隔たりを考えると、まあ、やっぱり世間的には古くさいのだろう。

 携帯端末――もう携帯電話などと呼ぶ人もいない――樹脂製の機械の画面をタッチして。
「はい、もしもし」
「あ、もしもし、おねえちゃん?」

 なつかしい、妹の声を私は聞く。

 産まれた頃から一緒だった双子の姉妹。
 進学して。就職して。結婚して。子供たちを産んで。
 幸運ながら、大過なく、姉妹揃ってそういう人並みの幸せを歩んでいる。

 ――おたがい、別々のばしょで。

 進学とか、就職とか、結婚のあいだには、引っ越しなんていうものがあったから。
 住む場所が変わる。遠くの場所へ移り住む。それもまた、よくある話しで。

「ひさしぶり、変わりない?」
「うん、なにもないよ、そっちは?」

 こっちも、なにもないよ。
 ――だったら、それはなにより。元気でいるのなら、なにも言うことはない。
376 :たな☆ばた [sage]:2014/07/06(日) 06:49:19.90 ID:YwJEPO0Eo

 お互いの、他愛のない近況報告。
 子供のころのように、長電話は、もうしなくなった私たち。
 ある程度、話しが区切れたら。
 もう家事や家族のこと、自分の居る家のことに意識が行ってしまう。

 お互い変わりなく元気なら、もうそれでいいと思えるのだから。
 だから、電話で話すことも、そんなに多くはなくなっている。

 今日。この日に、私に電話をかけている彼女の顔を思い浮かべる。

 てるてる坊主をつくったり。
 おひな様を飾ったり。
 月見団子をつくってみたり。
 クリスマスツリーを飾ってみたり。

 私たちの住む場処には、そういうお祭りごとや、おまじないごとをする機会が、一年のあいだにいくつかあって。

 そして今日も、そんな日だから。

 ――7月7日の、蒸し暑い初夏の日に、お互いの声を聞きたくなる。

 天の川の隔たりを越えて、いつか出会うふたりのお伽話というわけではないけれど。
 お互いの距離は離れていても。同じ空に浮かぶ天河を見上げて。

「プレゼント、ちゃんと届いてる?」
「うん、ありがとう。そっちには、届いてる?」
「うん、ちゃんと届いたよ、ありがとう」

 誕生日、おめでとう。
 距離を超えて。これまで生きてきた年月の道のりを噛みしめて。

 私たちは、またひとつ、歳をとってゆく。

 短冊には、ふつうに家族の幸せを願う一文を書いておいたけど。
 
 来年も、再来年も。
 変わりなく、歳をとってゆけますように。

 直接は書かない願い事を、天の川にたくして、私は彼女に語りかけた。

 じゃあ、またね。


 END.
377 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/07/06(日) 07:16:01.12 ID:YwJEPO0Eo
さすがにタイトルてきとー過ぎたので
タイトルは「7月7日の、蒸し暑い初夏の日に」
でお願いします
378 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga sage]:2014/07/06(日) 08:47:04.33 ID:jN24m8os0
>>377

纏めました。

やっと自分以外の作品を見た。
読ませていただきました。

感動かほのぼのか迷いますね。
短編ほのぼのに決めました。
「これじゃ嫌だ」であればご希望のカテゴリーをお知らせください。
379 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga]:2014/07/13(日) 16:15:00.99 ID:KUTQmI3w0
それでは「こなたの旅」の続きを投下します。
5レスくらい使用します。
380 :こなたの旅 27 1/5 [saga sage]:2014/07/13(日) 16:17:18.48 ID:KUTQmI3w0
27

 あれから半年以上が過ぎた……
元に戻った。かえでさんは出産が近いので相変わらずつかさが代わりを務めている。
それ以外は普段と全く変わらない生活……
いや変わった……
つかさ「こなちゃん」
仕事が終わり、私が更衣室に入るのを呼び止めた。珍しい。
こなた「ん、今日は早番だよ?」
私のタイムシフトを間違えた。そう思った。
つかさ「知ってる……」
私がそのまま更衣室に入るとつかさも後から直ぐに入ってきた。
こなた「どうしたのさっきから、何か用でもあるの?」
つかさ「う、うん……」
もじもじしてはっきりしない。私は構わず着替え始めた。
つかさ「こなちゃん……かえでさんの事黙っていたの……怒ってる?」
こなた「……ほぇ、もう半年も経つのに何を言ってるの?」
着替えながら聞き返した。
つかさ「最近のこなちゃん……少し変わったから……」
こなた「変わった?」
つかさ「う、うん……いつもの元気がないような気がして、それに何となく……そっけない様な……」
元気がない。そっけない……
こなた「そうかな、私は普段と何も変えていないけど……つかさの気のせいだよ」
つかさ「う、うん……ごめんね、邪魔しちゃって……」
つかさは部屋を出ようとした。
こなた「ちょっと待って」
着替え終わった私はつかさを呼び止めた。
つかさは振り返った。
こなた「もし、かえでさんと井上さん、二人同だったらどっちに薬を渡した?」
つかさ「えぇ??」
つかさは凄く困った顔をした。そして目を上下左右に動かしながら考えている。
つかさの反応はだいたい想像できた。それでもこんな質問をするのだから私ってそうとうSなのかもしれない。
こなた「別に考えなくてもいいじゃん、私なら迷うことなくかえでさんを選ぶよ」
つかさは悲しそうな顔をして俯いた。
こなた「優しいね、つかさは……井上さんは会ったことも話したこともない赤の他人、かえでさんを選んでも誰も文句は言わないよ」
つかさ「で、でも……」
こなた「そうだよ、つかさは内緒にしていた、だから私は神崎さんをみゆきさんの居る所に連れてこられた」
つかさがかえでさんの容態を話していたら私はどんな作戦をしていただろうか……きっともっと冷酷な……
そんな私の思惑とは裏腹に驚いた顔で私を見るつかさだった。
こなた「ほらほら、そう言う事だから私は全然怒っていない」
つかさ「うん……でも、なんだかこなちゃん……変わったよ」
変わったって何が変った?
こなた「それよりかえでさんが出産したら戻ってくるよ、つかさはどうするの?」
つかさ「私のお店に戻りたいけど……ひろしさんがお父さんの後を継ぎたいって……」
こなた「それならもうお店畳んじゃってこのままこの店に残ればいいじゃん?」
つかさ「そうしたいけど……かえでさんが……」
こなた「かえでさんが反対するわけないじゃん、もし反対したら、私も店を辞めちゃうって言うから」
つかさ「そ、そんな事して……大丈夫なの?」
こなた「そしたらつかさと二人で新たに店を出す……」
つかさはまた驚いた顔で私を見た。
こなた「……なんちゃってね、その時になったら考えればいいじゃん?」
つかさ「ふふ……そうだね……」
つかさが笑った。そういえば半年前からつかさが笑ったのをはじめて見たような気がした。
そして私も釣られるように笑った。
つかさ「そうそう、今日お姉ちゃんと会う約束してたでしょ?」
こなた「え???」
つかさ「先週の約束をすっぽかしたから注意するように言われたの」
すっかり忘れていた。
こなた「えへへ……ゲーセン寄ろうとしてたりして」
つかさ「今日は大丈夫だね!」
こなた「それじゃお先に!!」
つかさ「お疲れ様〜」
私は店を後にした。
381 :こなたの旅 27 2/5 [saga sage]:2014/07/13(日) 16:20:07.34 ID:KUTQmI3w0
 かがみの法律事務所……
先週もそういえば約束した場所はそこだった。いったいかがみは私に何の用があるのかな。つかさに確認させるほど大事な話なのだろうか。
約束だけして要点を言わないなんてかがみらしくない。
事務所に入るとかがみの事務室に通された。
通されたけどかがみの姿が見えない。椅子に座っても居ないし……
『ドカン!!』
もの凄い勢いでドアが開いた。顔半分が埋まるくらいの大量の書類を抱えてかがみが入ってきた。
かがみ「ちょっと、突っ立ってないで手伝え!!」
私は黙って半分くらいの書類を取った。かがみは自分の机に書類を置き、その上に残りの書類を積み重ねた。
かがみ「ふぅ〜」
かがみは自分の手で肩を揉みながら私をじっと見た。
『バシッ!!』
いきなり私の背中をひっぱ叩いた。
こなた「痛いよ!!」
かがみ「なにしけた顔してる、らしくないわよ!!」
こなた「らしくないって、私がどうしたららしくなるのさ!」
かがみは私を指差した。
かがみ「普段のあんたならそんな口答えしないわよ、動じないで「あ、そう?」なんて聞き流す」
……確かにそうかもしれない。
かがみ「そうね、この前のあんたのした事は元気だま作戦と違って数字では出てこない、人情に訴える作戦、しかも死体とは言え人間を一人傷つける……」
こなた「もうその話は止めて……」
かがみは言うのを止めた。だけど直ぐに話した。
かがみ「神崎さんを連れてきた時の勢いはどうした?」
こなた「……」
私は何も言えなかった。
かがみ「後悔しているのか……そんな感じね……」
こなた「今その作戦をしろって言われても、もう出来ない……」
かがみ「どう言う心境の変化があったか知らないけど、少し安心した」
かがみは笑顔で椅子に座った。そしてさっき持ってきた書類を一枚手に取って見た。
かがみ「あんたは貿易会社の情報をネット経由で暴露した、大手新聞社、雑誌会社、そして神崎あやめの働く出版社……だけどどれ一つとして動いた会社はなかった……そうよね?」
私は小さく頷いた。かがみは更にもう一枚書類を手に取った。
かがみ「動いたのは只一人、井上浩子さん……彼女が各界に働きかけて貿易会社の不正を告発した……そして今や何カ国も巻き込む国際問題にへと発展している……
    あんたの機転が功を奏した、やるじゃない」
こなた「それは……みゆきさんの秘薬が完成していたから、そうでなければ井上さんはそんな事できなかったよ」
かがみ「そうね……」
こなた「はは、これでみゆきさんは億万長者だよ、すごいね」
かがみは書類を置き立ち上がった。
かがみ「それがそうでもない」
こなた「そうでもないってどう言う事?」
私は耳を疑って聞き返した。
かがみ「薬は未完成品で製品として認められなかったそうよ、それでみゆきの研究チームは解散、研究員も解任された」
こなた「う、嘘……なんで?」
かがみ「みゆきが貿易会社に融資をしたのが発覚してね……」
まさか……なんで……理解出来ない。
こなた「……そんなの関係ないじゃん、それに融資したのは告発される前の話だよ……うんん、そんなのあの薬の価値と比べれば屁みないたもんだよ」
かがみ「そうね、屁みたいなもの、だけど世間は、社会はそう見なかったって事よ」
淡々と話すかがみを見て居ても立ってもいられなかった。
こなた「あの薬の効力はかがみが一番知ってるでしょ、かえでさんだって、お腹の赤ちゃんも、井上さんも救ったんだよ……」
かがみ「私の脳腫瘍を完治させた……凄い薬だわ、まさにお稲荷さんの知識と技術には敬服する以外にない」
こなた「……私だ……私がみゆきさんに融資なんかさせたから……」
かがみは首を横に振った。

382 :こなたの旅 27 3/5 [saga sage]:2014/07/13(日) 16:21:20.53 ID:KUTQmI3w0
かがみ「いや、こなたのせいじゃない、たまたま都合の良いネタがみゆきにあっただけ、例え融資をしなくても別の理由で同じ結果になっていた」
こなた「何で、どうして?……」
まったく理解ができなかった。
かがみ「早すぎたのよ……」
こなた「早すぎた?」
かがみ「あの薬は数世紀の時間を先取りしたような物、そんな物が出回ったらどうなる、現在流通している薬の7,8割がゴミになってしまう
    製薬業界は大混乱よ、人類にあの薬を受け入れる準備はまだなかった、それだけよ」
こなた「……それだけの理由で?」
かがみ「それだけの理由があれば充分なの、人類が選んだ選択よ」
こなた「私はそんなの選んでない……」
これが無意識の、自分の意思とは関係ない選択ってやつなのか、私達だけのちからじゃ止められない選択……
かがみ「ワールドホテルのけいこさんにしても、貿易会社の経営者にしてもそれを知っていたからお稲荷さんの知識を世に出すのに選別していたのよ、、
    人類が受けいれらるような基本的な知識だけを利用していた、だから同じようなデータになったのよ」
こなた「私には理解出来ないよ……」
かがみはまた椅子に座り書類を見だした。
かがみ「だから私は貿易会社の弁護を引き受ける事にした」
こなた「へ、どうして、あんな会社の弁護を?」
かがみ「こなたが消したデータ以外にまだお稲荷さんのデータを隠し持っている……それを全て消すため、弁護を引き受ければあの会社の情報を全て閲覧できる」
こなた「そんな事して大丈夫なの……」
かがみ「もちろんバレれれば私の弁護士としての生命は絶たれるわね、だからこなたを呼んだのよ、あんたなら分からないように消せるでしょ?」
こなた「出来るけど……どうしてそんな事を」
かがみ「私達姉妹の夫は全員お稲荷さん、夫はもう人間になっている、そして子供達も居る……私達家族を守る為よ……そんな理由じゃ納得できんか?」
こなた「うんん……そうじゃないけど……」
私はポケットからメモリー板を取り出した。かがみはそれを見た。
こなた「それじゃこれも要らないって事?」
かがみ「要らない……出来れば処分して欲しい、と言っても宇宙船の墜落に耐えて更に4万年も地中に埋まって
壊れないような物を処分なんてできない、だけどあんたが持っている分には
    私はなにも言わない、めぐみさんからもらったUSBメモリーも含めてね……」
私はメモリー板を仕舞った。
かがみ「それで、返事は、引き受けるの、引き受けないの?」
こなた「引き受けるよ……かがみが捕まる所なんて見たくないよ……」
かがみ「ありがとう……」
かがみの素直なお礼を見たのは初めてかもしれない。

Bかがみ「ところでこの地球にお稲荷さんは他に居ないのか?」
こなた「うん、メモリー板に反応があるのは神崎さんだけだよ」
かがみ「力を消す装置を使っているお稲荷さんがいたら分らないじゃない?」
こなた「うんん、狐に戻った時はあの装置は意味ないって言ってから、少なくとも現役のお稲荷さんは神崎さんだけだよ」
かがみ「そうなの……ちょっとは期待していたけど、やっぱり真奈美さんは……」
こなた「微かな希望を打ち砕く訳じゃないけど、つかさと神崎さんが握手をした時、神崎さんはつかさのイメージを見たって、特に首の傷が致命的だった」
かがみ「……あの時ね……装置のスイッチを入れるの忘れたって……お稲荷さんでも忘れる事あるのね……」
こなた「それじゃ用が済んだら帰るよ」
私は部屋を出ようとした。
かがみ「待て、相変わらず薄情だな……少しは付き合え」
こなた「いや、忙しそうだし……」
かがみ「今日の仕事は終わった」
かがみは書類を置いて立ち上がった。
こなた「い、いや、じゃなんでそんな大量の書類を……見る為じゃないの?」
かがみは笑いながら私よりも先に部屋を出た。

383 :こなたの旅 27 4/5 [saga sage]:2014/07/13(日) 16:22:31.89 ID:KUTQmI3w0
 かがみに連れられて居酒屋に来た。
居酒屋だけあってレストランかえでとは雰囲気がちがっていた。
かがみ「どうこの店、個室もあって雰囲気でるでしょ?」
こなた「う、うん……それより良いの、ワインもう2杯目だよ、酔い潰れても送ってあげないよ……」
かがみ「酔っている様に見えるか、まだ2杯しかでしょ!!」
いや、もう充分酔っている……
かがみ「そうそう、神崎あやめさんを殺したとされる殺し屋が捕まったわよ、国際手配されていてかなりの大物みたいね……決め手は神崎あやめの携帯電話……」
こなた「神崎さんの仲間も殺されたって言ってた」
かがみ「ふ〜ん」
かがみ目が細くなりにやけた。
こなた「な、なに、急にそんな顔して……気持ち悪いよ……」
かがみ「事務所に来てから神崎さん、神崎さんって、よくその話をするわね」
こなた「そんな話してないよ……」
かがみ「顔が赤くなっているじゃない、白状しなさいよ」
こなた「白状ってなに、お酒が入れば赤くなるよ……」
今日はやけに絡むな……
かがみはおつまみを一口食べた後私に近づいた。
かがみ「あれから何度も会ってるんでしょ?」
こなた「会ってるけど?」
かがみ「何処までいったのよ、」
こなた「何処までって……」
かがみは私の背中を叩いた。
かがみ「なに照れてるのよ、隠すような歳かよ、あんたが神崎さんを気にしているのはバレバレだ」
こなた「……」
そんな風に見えていたのか。だけど言っている事はだいたい合っていた。
かがみ「私は別に構わないと思う、お稲荷さんなら浮気は絶対にしないし」
こなた「いや、無理だよ……」
かがみ「何が無理なのよ!!」
かがみは迫ってきた。
こなた「冷酷であざとい……って」
かがみ「冷酷、あざとい……何よそれ?」
こなた「作戦をする時、神崎さんにそう言われた……好きとか嫌いとか以前の問題だよ……」
かがみは自分の席に戻りワインを飲み干した。
かがみ「あんたギャルゲーとかしている割にまったく分かってないわね、言葉通りの意味じゃないわよ」
言い方がカチンときた。私は立ち上がった。
こなた「もう帰る……」
かがみ「まぁ、待て、分らないなら教えてあげる、神崎さんはあんたの作戦に協力したでしょ……」
こなた「したよ……それがどうかしたの」
かがみは溜め息を付いた。
かがみ「これだけ言ってまだ分らないのか……鈍いわね……とにかく彼はまんざらでも無いって事よ、諦めるな」
こなた「諦める……何を?」
かがみは私をじっと見た。
かがみ「あんたを見ていると昔のつかさ……いや、ひよりを思い出す、まったく同じだ」
こなた「さっきから何言っているのか分らないよ……」
かがみ「だったら考えろ、気付いたら手遅れになるぞ」
こなた「かがみ……酔ってるよ……」
かがみ「うるさい、今日は最後まで付き合ってもらうわよ」
こなた「わかったよ……」
なんか非常にハイテンションのかがみだ。しょうがない今日は付き合うか……

384 :こなたの旅 27 5/5 [saga sage]:2014/07/13(日) 16:23:55.14 ID:KUTQmI3w0
 そういえばこうやって飲み会をするのは久しぶりかもしれない。
それもかがみと二人だけなんて学生時代まで遡らないとしていないかもしれない。
職場ではちょくちょくやっている。つかさやあやのは毎日のように会っているから気にもしていなかった。みゆきさんやみさきちにしてみれば一年に数回程度だ。
かがみにしてもつかさに比べれば少ない。時間が合わない。特に社会人になってからはその一言で会わなくなった。ゆたかやひより、みなみに関しても同じだ。
たまにはこんな時間が有ってもいいかな……
かがみ「みゆき……」
酔い潰れたかがみが寝言のように一言。みゆきさんの名を口にした。
もしかしたら薬が認められなかったのを一番悔しくおもっているのはかがみじゃないかな。現代の医学では治せない病気をたった一晩で完治したのを目の当たりにしている。
しかも自分の身体で……
だからこそみゆきさんもあの薬を再現しようと頑張ったのかもしれない。
今度みゆきさんと飲みにいくかな。

こなた「ここでいいよ、止まって」
車はゆっくりと止まった。
運転手「990円です……」
私は1000円を運転手に手渡した。
こなた「おつりはいいから」
私はかがみを肩に抱くとタクシーを降りた。
『ピンポーン』
呼び鈴を鳴らすとすぐに出てきた。
ひとし「泉さん……あ、かがみ、かがみじゃないか……」
私とかがみを見て少し驚いた顔をした。
こなた「よせば良いのに、飲みすぎちゃったみたいで……」
ひとしさんは呆れた顔でかがみを見たがすぐに近づいてかがみを抱き寄せた。
こなた「それじゃこれで……」
ひとし「介抱して疲れたでしょう、少し休んでいけばどうだい?」
こなた「でも、もう遅し迷惑でしょ?」
ひとし「子供達はもう寝てしまった、問題ない」
こなた「それじゃお言葉に甘えまして……」

385 :こなたの旅 27 6/5 [saga sage]:2014/07/13(日) 16:24:54.83 ID:KUTQmI3w0
 ひとしさんはかがみを今のソファーにそっと寝かすと毛布をかけてあげた。
ひとし「少しここで休ませる……お茶でいいかな?」
こなた「え、長居する気はないので……」
ひとし「来たばっかりでそれはないだろう」
ひとしさんは台所の方に向かいすぐに戻ってきた。ひとしさんは私にお茶お出すとかがみの方を向いて心配そうな顔になった。
ひとし「普段はこんなにハメを外す事はないんだけどな……」
こなた「まぁ、いろいろあったから……」
ひとしさんは私の方を見た。
ひとし「君の方がいろいろあっただろう、仲間が迷惑をかけたみたいだな、礼を言わないといけない」
仲間って神崎さんの事を言っているのかな。
こなた「うんん、それよりかがみがいろいろやらかそうとしてるけど、良いの?」
ひとし「……貿易会社の弁護の話か?」
私は頷いた。
ひとし「さすがかがみ第一の親友だな、話したのか……私は反対したのだが彼女がどうしてもって言うから根負けしてまったよ……」
こなた「反対したの?」
ひとし「ああ、第一危険すぎる、それに情報を消さなくとも大半の人間は真実とは見ないで自然に消されるもの……」
こなた「それじゃ何で……」
ひとし「それは君だよ、泉さんが行った一連の行動が彼女を動かしたみたいだな、「こなたには負けられない」……そう言っていた」
ひとしさんは再びかがみの方を向いた。
こなた「一つ聞いていいですか?」
ひとし「ん、どうぞ?」
ひとしさんはかがみの方を向いたまま答えた。
こなた「……かがみを何で好きになったの?」
ひとし「聞いていないのか?」
こなた「ひろしに護衛を頼まれて守っているうちに好きになったって……それくらいしか、かがみはそう言う話はあまりしないから……」
ひとしさんは私の方を向いた。
ひとし「そうだな、それで正解、ほぼ全てを話していると言って良い」
こなた「……かがみのどこが気に入ったの?」
ひとし「……急にそう聞かれてもね……」
ひとしさんは困った顔をした。話を変えよう。
こなた「故郷の星に帰りたくなかったの?」
ひとし「故郷か……故郷はこの地球だ、私はここで生まれてここで育った、真に故郷と呼べるのはけいこ、めぐみ、すすむくらいだろう」
こなた「神崎さんは?」
ひとし「……ああ、彼もそう、彼は1万年前、私達の集団から離れた……そう聞いている」
こなた「他に離れた人はいたの?」
ひとし「10名程同じ頃別れた、彼らは東に向かった、恐らくシベリアから北米を経て南米に行ったと思う、そこで知識を先住していた人類に教えたに違いない」
10名も南米に……でもメモリー板には何の反応も無かった。
こなた「で、でも」
ひとし「……そう、彼らはとっくに亡くなったみたいだな……私みたいに人間になったか、争いに巻き込まれたのか、自然災害だったか……今となっては知る事はできない」
こなた「ごめんなさい、変な事聞いちゃって」
ひとし「いや、別に構わない、すべて私の生まれる前の話だ、気にしていない、そう考えると神崎が生き残ったのは奇跡に近い、たった一人で……」
こなた「そうですね……」
かがみ「う〜ん……」
かがみが唸った。
こなた「あ、かがみが起きるとまた騒ぎ出すから帰ります」
ひとし「ふふ、そうだな」
ひとしさんは玄関の外まで見送ってくれた。

呼んだタクシーが目に前に止まった。
こなた「これで失礼します」
ひとし「そうそう、かがみの何処が好きになったって話だけど……理由は無い、ただ好きになった……」
こなた「ただ好きになった……それだけ?」
ひとし「言葉では形容しにくくてね、そう言うしかない……」
タクシーのドアが開いた。もっと聞きたかった。だけど……
こなた「それじゃ……」
私はタクシーに乗り込んだ。

 かがみが言っていた。神崎さんの話ばかりするって……ひとしさんと話したときも結局神崎さんの話しになってしまった。
何でだろう……
私がひよりと同じだって……
結局それもかがみから詳しく聞けなかった。
何だろう。この変な気持ちは……

つづく
386 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga sage]:2014/07/13(日) 16:26:55.55 ID:KUTQmI3w0
以上です。 全部で6レスでした。

行と文字数の制限が合わなくて使用レス数が合いません

またすぐに纏めるので避難所のみの報告とさせていただきます。
387 :かがみのSS講座 [saga sage]:2014/07/13(日) 22:26:56.50 ID:KUTQmI3w0
つかさ「う〜ん」
かがみ「どうしたのよ、思いつめちゃって……悩み事?」
つかさ「うんん、そうじゃなくって……小説を書こうかなって思って……」
かがみ「凄いじゃない、出来たら読ませてよ」
つかさ「う〜ん、まだ何も出来てなかったりして……」
かがみ「そうなの、でも考えているだけじゃ出来ないわよ、今何をしているのよ?」
つかさ「え、えっと、物語を、ストーリを大雑把に……」
かがみ「そうね、それも良いけど……ストーリを先に考えると詰まっちゃうわよ」
つさか「え、でも物語がないと何も進まない様な気がするけど……」
かがみ「そこそこ、そこが落とし穴なのよ、物語はどうやって進むの?」
つかさ「えっと、えっと、時間が進むから……」
かがみ「違う、物語は人が作るのよ、出会い、別れ、愛、憎悪、友情……etc.」
つかさ「人?」
かがみ「そうそう、だからストーリを作るんじゃ無くて登場人物、つまりキャラから作っちゃうのよ」
つかさ「キャラ?」
かがみ「好きな人、嫌いな人でもなんでも良いの、性格や特徴や背景を決めちゃうの、そうするとそのキャラが自然に物語を作ってくれる」
つかさ「え〜そうかな、難しいよ……」
かがみ「身近な人でも、既にある物語の登場人物でもいいわよ、特に既にある物語のキャラを使ってストーリを書くのをSS(サイドストーリ)
    って言うのよ」
つかさ「SS……」
かがみ「つかさが好きな漫画のキャラを自分の好きなように動かすのよ」
つかさ「えっと……なんとなく分かった」
かがみ「頑張れ、つかさ!」


一週間後

かがみ「出来た?」
つかさ「できた!!」
かがみ「どれどれ……かがみとみゆきが……####♡♡……むぅ……なによこれ、私とみゆき!!?」
つかさ「お姉ちゃんとゆきちゃんをモデルにしたら……こんなになっちゃった」
かがみ「こんなにって……それは百合って言ってね(まてよつかさがそんな事を知っているはず無い、っとなれば……)」
かがみ「私の他にだれか助言を受けた?」
つかさ「うん、こなちゃんとひよりちゃんに……続きが見たいって言うから考えていた所……」
かがみ「……あの二人、余計な事を……」
つかさ「お姉ちゃんの言うように自由に動かすと……」
かがみ「もう良い、やめい!! (あの二人只じゃおかない)」


こなた「うひ」
ひより「どうしました?」
こなた「い、いや、何か背筋がゾクゾクっと寒気が……」
ひより「夏風邪っスか……それよりつかさ先輩にあんな才能があるとは……」
こなた「そうでしょ、そうでしょ、私の目に狂いはないのだよ、あとはこれをひよりんが漫画にすれば……」
ひより「次回のコミケはいただきッス!!」
こなた「うんうん」
ひより「!!っひ!!」
こなた「どうした、やけに顔が青ざめてるね、ひよりんこそ夏風邪じゃない?」
ひより「う、後ろ……後ろ……」
こなた「うしろ?」
……
……
こなた「ひぃ〜か、かがみ、……何か御用でしょうか?」
かがみ「……つかさの書いた物よこしなさい!!」
こなた「あれは、も、持ってないよ……ね、ねぇひよりん?」
ひより「え、ええ、そ、その様な物は……」
かがみ『ギロリ』(ひよりを睨む眼)
ひより「あわわわ、すみませんここに有ります」
こなた「ば、ばか、そんなにあっさり……」
かがみ『ギロリ』(こなたを睨む眼)
こなた「……ごめんなさい……」

おわり
388 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga sage]:2014/07/13(日) 22:33:25.79 ID:KUTQmI3w0
ここまで纏めた。
389 :つかさのSS講座 [saga sage]:2014/07/24(木) 22:19:03.51 ID:R5VOOiG80
こなた「う〜ん」
つかさ「どうしたの、何か考え事?」
こなた「つかさか……いや、かがみがもうつかさにSSは書かせないって言うから自分で作ろうとおもったんだけど……」
つかさ「手伝えなくてごめんね、お姉ちゃんあんなに怒ったの初めて見た……」
こなた「キャラを最初に作るなんて言ってたけどさ、自由すぎてどう動かしていいのか分らないよ……」
つかさ「それはお姉ちゃんのアドバイスだけど……私はとっても参考になったよ」
こなた「キャラを自然になんか動かないよ……」
つかさ「ストーリを考えないと続かないと思うよ」
こなた「起承転結って言うやつでしょ……よけいに難しくなる……」
つかさ「難しくかんがえるから難しくなっちゃう、もっと簡単に、起承転結って四コマ漫画だよ」
こなた「四コマって……」
つかさ「どんな長い物語も作り方は四コマ漫画と同じ」
こなた「う〜ん、難しいよ、始まりをどうする、話を続けてどんでん返し……そしてラスト……」
つかさ「いっぺんに作ろうとするから混乱しちゃう、私の場合はね物語の最後の場面を思い浮かべるの……そうするとね、
    物語が自然と浮かんでくる、山の頂上を見ればあとは登るだけ、それにね物語がどんなに脱線しても最後が分ってるから
    ゴールに向かって行ける……道がゴールに向かっているからて迷子にならないんだよ」
こなた「起承転結の桔から考える……のか」
つかさ「私の場合だから参考にならないかな……たまに最後のつもりが作っていくうちにその先が思い付いたりするから……あまり良い方法じゃな
    いかも」
こなた「まぁ……やってみるよ」
つかさ「がんばって、こなちゃん!!」

ひより「最後を最初に考える????とんちみたいッス……」
こなた「うん、つかさがそう言ってた」
ひより「……もうこの漫画途中まで作ってしまいました……」
こなた「だからラストを考えるのだよ……ひよりはもう考えているよね?」
ひより「私は……ストーリはあまり意識しないッス、それに順序だてて作らないと分からなくなってしまいます」
こなた「だから詰まっちゃんだよ!!」
ひより「……先輩がこの出出し凄く良いって言うからこのネタに決めたじゃないっすか!!」
こなた「う〜ん……最初からやり直す?」
ひより「やり直すって、ネタはどこから持ってくるっスか?」
こなた「ひよりんは漫研の現役じゃん、そんなのいくらでもあるんじゃないの?」
ひより「い、いや、湯水のようには……」
こなた・ひより「……」
ひより「つかさ先輩に頼めませんか?」
こなた「かがみの目を盗むなんて出来っこない……」
こなた・ひより「どうしよう?」

390 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga sage]:2014/07/24(木) 22:20:09.96 ID:R5VOOiG80
以上です。

かがみとつかさのSS講座、どちらも実際に自分がSSを作る際の考え方をまとめたものです。
もちろんどちらも我流なので邪道です。
でも、この方法が何かのヒントになればと思い投下してみました。
もし、これで何かいいSSを思いついたらぜひ投下して下さい。

このあと直ぐに纏めます。
391 :こなたのSS講座 [saga sage]:2014/07/27(日) 12:42:32.39 ID:RVbFgh740
こなた「やっふ〜かがみん」
いつもの笑顔で挨拶するこなた。こなたは徐に私の前に一冊の薄い本を差し出した。
かがみ「何よ、いきなりそんな物持ってきて」
内容は大体分っている。どうせ百合やら薔薇の内容に決まっている。
こなた「これを今度にコミケに出そうと思うんだけど読んでみて」
かがみ「なんで私が読まないといけないのよ」
こなた「この前つかさに書かせたのを否定されちゃったからね、これなら納得できるかなって思って……」
かがみ「納得しなかったらどうするのよ」
こなた「今回のコミケは参加しない」
何時になく真剣に語るこなた。しかも参加しないと言い切るにはそれなりの自信があるに違いない。
かがみ「内容が同じでキャラだけ変えても直ぐに分るわよ」
警告のつもりだった。だけどこなたは臆することなく私の顔の前に本を差し出した。わたしはその本を受け取った。
こなた「私が下地を作ってひよりんが漫画にしたものだよ」

 私はページを捲った。
田村さんの書いた絵が特徴を捉えている。主人公はこなた自身の様だ。
こなた「かがみがつかさにアドバイスしたのと、つかさが私に助言してくれたのを参考にして最初から作り直したんだよ」
私はこなたが話しているのを尻目にページを捲り続けた。
こなた「でもね、気付いたんだ、やっぱりなんだかんだ言っても結局読み手がどう感じるかが問題だってね、だから
    一部のコアな読み手じゃなくてもっと色んな人に見てもらいたいって、そう思いながら考えて作った
    面白いものを読んでもらいってね……」
漫画で薄い本、読むのにさほど時間はかからない。本を閉じてこなたに差し出した。
こなた「ど、どう……?」
心配そうに私の顔を覗き込むこなた。
かがみ「売れるかどうかは分らないけどコミケに出しても良いわよ……」
こなた「本当!?」
驚いた顔で念を押すこなた。
かがみ「こんなんで嘘をついてどうする」
こなた「やったー!!!」
本を受け取ると大喜びで何度も飛び跳ねた。こんなこなたを見るのは初めてだ。
こなたは私に背を向けると扉に方に向かって叫んだ。
こなた「ひよりん、やった、やったよ」
ひより「やったー」
田村さんがドアから飛び出してきた。そして二人は両手を上げてハイタッチをした。
ひより「ありがとうございます」
田村さんは深深と頭を下げた。
二人は喜びながら部屋を出た。

 本の内容は至って単純。幼い頃母を亡くした少女の想いが綴られている……ただそれだけの内容だった。
だけど涙を堪えるのが辛かった。
こなた自身の体験だったのだろうか。半分作ったとしてもそれは想像できる。
母が健在な私では作り得ない作品だった。
今頃になって涙が頬を伝っていく。慌てて涙を拭った。
田村さんの画力のせい……
私のアドバイスのせい……
つかさの助言のせい……
違う。
本を読んでいる時、こなたが言ったのを思い出した。
面白いものを読んでもらいたい……

 私もそんな物を作ってみたくなった。絵には自信はないけど、文章なら……
私はペンを手に取りノートを開いた。
そして考えた。
面白いものを読んでもらいたい。

終わり。
392 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga sage]:2014/07/27(日) 12:43:38.45 ID:RVbFgh740
中途半端だったのしめてみました。完結です。

この後すぐに纏めます。
393 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/08/05(火) 18:48:04.32 ID:ie1qi3xSO
うおお…まだスレ生きてる…
394 :近況 [saga sage]:2014/08/05(火) 20:46:41.95 ID:Yim42x6Y0
>>393
生きていると言ってもほぼ独りでやっています。
作品がすっかり投下されなくなりました。

読んでいる人がいるかどうかも分りません(書き込みがないので)
しかしまとめサイトを見る限りゼロではなさそう。

コンクールは出来ない状態。

近況はこのくらいです。

395 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga]:2014/08/11(月) 12:25:47.38 ID:IxmzLI8u0
それでは「こなたの旅」の続きを投下します
5レスくらい使用します。
396 :こなたの旅 28 1/5 [saga sage]:2014/08/11(月) 12:27:20.04 ID:IxmzLI8u0
28

こなた「ふぁ〜」
大きな欠伸……これで何回目だろう。
 今日は休日。
暇と言えば暇だ。
今日のかがみの依頼は休み。それでもって裁判の準備で忙しいそうだ。
あんな会社の弁護なんて適当でいいじゃん。そう言ったら、決まったからには全力で弁護するなんて言うし。
仮に無罪になったらどうするって聞いた。そうしたら
かがみは無罪にはならないって言う。それじゃ全力で弁護と矛盾するじゃん。
かがみ曰く、弁護士は無罪にするのが仕事じゃない。適正な罰をうけさせるのが仕事だって。貿易会社はもう既に社会的制裁を受けているから弁護する必要があるって……
確かにもう企業としての貿易会社は潰れたも同然だけど……
難しくて分らないや。
あやめさんの友人、井上さんと争う形なってしまった。本来なら私達は井上さんを支持する立場だけど……複雑だよね。
 
あやのやつかさは出勤日、遊びに行けない……
なんで今日に限って休みが合わないのかな……
テレビもこの時間帯に面白いのは放送していない。
何もする事がない。こんな時は溜まった留守録のアニメを観るけど、そんな気にはなれない。
オンゲー・オフゲーもする気になれない。ベッドに寝てボーと天井を見ている。
そういえば本棚に未だ読んでいない漫画がたまっているのを思い出した……何故か読む気になれない。
 かがみと会ってから一週間、それなり私は考えた。
考えた。何を。かがみは面白半分に私をからかっているだけ。そうだよ。
でも……あの時のかがみはからかっている様には見えなかった。
私がひよりと同じだって。何処が、どうゆう風に?
そういえばひよりはあれから会っていない。会えばそことなく聞けもするけど……あまり聞きたくないかな……
それでもかがみ言いたい事は分かった。私が神崎さんを好きだって。そう言っているのは分る。
私が……神崎さんを、お稲荷さんを好きだって?
ばかみたい。
仮に私が好きだとしても……
『ピンポーン』
呼び鈴の音がした。品物が届いたかな、、いや、最近ネットショップで何も買っていない。回覧板か何かな……
私は徐に身体起こした。
『ピンポーン』
こなた「はいはい今行きますよ」
独り言をいいながら玄関に向かった。
397 :こなたの旅 28 2/5 [saga sage]:2014/08/11(月) 12:30:15.85 ID:IxmzLI8u0
 ドアを開けるとそこには……
ゆたか「こんにちは〜」
ゆたか「ゆーちゃん!!」
思わず昔の呼び名で呼んでしまった。
ゆたか「遊びにきたよ、いきなりで迷惑だったかな、急に時間が空いたから……」
こなた「うんん、そんな事ないよ、入って入って!!」
私は居間にゆたかを通した。
こなた「それにしても久しぶりだね」
ゆたか「うん、お姉ちゃんにお弁当を渡してから会っていないね」
こなた「あっ、そうそう、お弁当箱返さなきゃ!!」
ゆたか「うんん、あれは元々お姉ちゃんのもだから、私が卒業して此処を出る時間違えて持って行っちゃった」
立ち上がったけどゆたかがそう言うので直ぐに座った。
こなた「それにしても急だね、もう映画化の仕事は終わったの?」
ゆたか「うん、もう9割りくらい終わったから、昨日打ち上げして休暇をもらったの」
こなた「そなの、それならひよりも一緒に来ればよかったのに」
ゆたか「うんん、ひよりだけは今日も仕事、明日休みだって」
こなた「そうなんだ……」
ゆたかは辺りを見回した。
ゆたか「おじさんは?」
こなた「お父さん……お父さんは正子さんとお買い物に行ったよ」
ゆたか「正子さんと……」
こなた「ついでに映画も観るとか言ってたかな……」
ゆたかはにっこり微笑んだ。
ゆたか「ねぇ、これってデートじゃない?」
こなた「デートって、デート?」
ゆたかは何度も頷いた。
こなた「まさか、あの歳で?」
ゆたか「うんん、年齢なんか関係ないよ」
こなた「それはそうかもしれないけど……有り得ない……」
ゆたか「そうかな、そうでも無い様な、ゆいお姉ちゃんが言っていたけど、正子さんは不思議と懐かしい感じがするって……かなたおばさんに似ているって」
ゆい姉さんがそんな事言っていた?
確かにゆい姉さんは生前のお母さんに会っている。
こなた「でも、ゆい姉さんだって幼かったでしょ、そんなの覚えているかな?」
ゆたか「う〜ん、でもそう言ってたし、おじさんとそんな話しなかったの?」
こなた「そんな話なんかしない」
ゆたかはまた笑顔で話した。
ゆたか「でもこのまま仲が良ければ結婚だって、お姉ちゃん、新しいお母さんができるかも?」
私は笑った。
こなた「お父さんが正子さんと、あははは、まさか……それに今更お母さんなんて言われてもね……」
ゆたか「嬉しくないの?」
こなた「別に……」
嬉しいとか嬉しくないとか……でも、正子さんなら……なんて思ってみたりもする。
ゆたか「正子さんは何時まで此処に?」
こなた「新しい家も完成したし、来週には引っ越すかな……」
ゆたか「今まで一緒に暮らしているのに分らなかったの?」
こなた「……そこまで気にする余裕がなかったから」
ゆたかの顔が曇った。
ゆたか「ひよりから全部聞いたよ……いろいろあったって……」
こなた「そうだよ、いろいろあった……って、ひよりから聞いたの?」
ゆたか「うん」
話したのか。っと言ってもゆたかは知っても構わない。
ゆたか「みゆき先輩の話は……残念だったね」
ゆたかも知っていた。いや、これは結構大きく報道されたから普通なら気付くだろう。
こなた「お稲荷さんの知識を世に出すのが早すぎた、そうかがみが言ってた」
ゆたか「たかしさんがつかさ先輩のやさしさに最大限の礼を尽くしたのがあの薬、そうだとしたらあの薬は
お稲荷さんの知識の中でも特に高いものだったんだね」
こなた「それなら自分の物にしちゃえば良いのに、馬鹿だよ……」
ゆたかは呆れた私を諭すように放し始めた。
ゆたか「私も以前に調べた事があってね、お姉ちゃんは世界四大文明って知っている?」
こなた「そのくらいは、黄河、メソポタミア、インダス、エジプト……」
ゆたか「うん、それに中南米に栄えた文明……これも全部お稲荷さんが教えた知識が元になってる」
お稲荷さんは4万年前に地球に来た、それを考えれば想像できる。調べるまでも無い。
ゆたか「例えば……ピラミッドの建造方法は現代でも大きな謎の一つになってる、何千年も崩れない石の積み方は現代でもかなり難しい技術だって
    それを三つも造っているのに後世にその技術が伝わっていない……それに中米のマヤ文明に至っては高度な文字や天文学、
建築技術もあったのに全部放放棄したかのようにみんな忘れてしまった、それと同じ事がみゆき先輩にも起きた、私はそう考える」
こなた「……なんでそんなに沢山教えたのかな?」
ゆたか「メモリー板が見つからなかったから、人間に故郷までの通信をしてもらおうと思ったって言ってた……だけど、それも諦めたって」
こなた「誰がそんな話を?」
ゆたか「かがみ先輩とひとしさん」
こなた「ふ〜ん、でもゆたかに話して漫画のネタにされたらまずいんじゃないの?」
ゆたかは首を横に振った。
ゆたか「真実を知らない大多数のひとは只のネタだと思うから、だから私やひよりに話したと思う……逆に私達がネタにするから神話化される」
こなた「なんとなく分ったような気がした……」
昔話や神話をまさか本当だとは誰も思わないか……
ゆたか「かがみ先輩、お姉ちゃんの事すごく褒めてた、だから貿易会社の弁護を引き受けられたって」
かがみはそんな事までゆたかに話したのか。
こなた「私の作戦が中途半端だった、かがみがその穴埋めみたいな事をしている……」
ゆたか「だからお姉ちゃんも手伝ってるわけだね」
こなた「まぁね……」
398 :こなたの旅 28 3/5 [saga sage]:2014/08/11(月) 12:31:37.97 ID:IxmzLI8u0
 ゆたかが急に私を見て微笑んだ。
こなた「な、何……急に……」
ゆたか「ひとしさんに何故かがみ先輩を好きになったって質問したって?」
こなた「え?」
なんでゆたかがそんな話を知っている。ひとしさんが話した?
……違う、かがみだ。まさかあの時起きていた?
こなた「かがみから聞いたの?」
ゆたか「うん」
ゆたかは大きく頷いた。
かがみめ余計な事を……かがみはつかさよりお喋りなのか?
そういえばつかさとひろしの時もかがみはよく私にあれこれ話していたっけ……
かがみの場合は親しい人には表裏を見せない。それは恋愛にしても同じって訳か……
ゆたか「お姉ちゃん!!」
ゆたかの顔が真面目になった。私は返事を忘れてゆたかを見た。
ゆたか「神崎さんとよく会ってるって?」
こなた「……会ってる」
ゆたか「会って何をしてるの?」
こなた「……何をって……メモリー板の使い方を教えてもらってる……すすむさんが教えてくれないから……」
ゆたか「それはね、彼の立場を勘得ると、未婚の女性と何度も会えないから、いのりさんに気を使っているの」
そうだったのか。全く気にもしていなかった……
ゆたか「それでその後はどうしてるの?」
まるで尋問をうけているようだ……
こなた「どうしてるって……お腹が空くから食事したり、買い物したり……」
ゆたか「おじさんと正子さんと同じだよ、それってデートって言うの」
こなた「だから……そんなんじゃないよ……」
ゆたか「お姉ちゃん!!!」
さっきよりも私を呼ぶ声が力強くなった。
こなた「な、何……」
ゆたか「お姉ちゃんは神崎さんをどう思っているの?」
どう思っている?
ゆたか「べ、別に……」
ゆたか「好きなの、嫌いなの?」
好きか嫌いか……そう言われれば答えは決まっている。
ゆたか「お姉ちゃんが神崎さんをなんとも思っていなければ話しはこれで終わり、だけどお姉ちゃんのその表情はそうじゃないって言っている」
こなた「ふふ、どっちでもいいじゃん……もう関係ないし」
ゆたか「関係ない……関係ないってどういう意味?」
こなた「私がどっちでも意味ないって事だよ」
ゆたか「だからそれじゃ分らない!!」
いつもの笑顔のゆたかじゃない。なんでそんなに構ってくるかな。
こなた「神崎さんは私の他に好きな人が居るって意味だよ」
これは言いたくなかった。ゆたかがあまりにしつこいから勢いで言ってしまった。
ゆたか「他に好きな人……それは誰なの?」
こなた「……神崎さんは井上さんが好きなんだよ」
ゆたか「井上さんって、井上浩子さん?」
こなた「そうだよ、だから、もう良いでしょ、もうこの話は終わり!!」
私は立ち上がり自分の部屋に行こうとした。しかしゆたかも立ち上がり私の前に回りこんで立ちはだかった。
こなた「どいてよ……」
ゆたか「それは直接本人から聞いたの?」
こなた「だから……どいて……」
私はゆたかを睨みつけた。ゆたかはどこうとはしなかった。
こなた「……聞かなくても分るよ、神崎さんは井上さんを助けようと必死になってたからね……」
ゆたか「本人に聞いてもいないのに決め付けるなんて、それじゃダメだよ」
こなた「聞く……聞くって神崎さんに井上さんが好きなのなんて聞けるわけないじゃん」
ゆたかは激しく首を横に振った。
ゆたか「ちがう、ちがう、そうじゃなくて、お姉ちゃんの気持ちを話すの」
こなた「私の……気持ち?」
ゆたかは頷いた。
ゆたか「相手がどう思っているなんて関係ない、まず自分の気持ちを言わなきゃ何も始まらないよ」
……ゆたかってこんなに積極的だったかな?
こなた「……話すって……そんなの言えないよ……」
ゆたか「……それは分る、すっごく分る……だから敢えて言うの、そうじゃないと手遅れになる、ひよりの様に……」
かがみも同じような事を言っていた。
こなた「ひよりがどうしたのさ?」
ゆたか「ひよりはまなぶさんが好きだった、だけどその気持ちを話すのが遅れて結果的にまつりさんに先を越された」
かがみが言いたかったのはその事なのかな……
こなた「だけど井上さんと私じゃ……比べたら私の方が……悪いに決まって……」
ゆたか「それを決めるのは神崎さんでしょ、お姉ちゃんじゃない、言うのは簡単だよ、言えないなら握手でもすれば嫌でも相手に伝わる、
    だってお稲荷さんだもんね、それともメモリー板を使う?、それってお稲荷さんの力を超えられるって聞いたよ」
こなた「もういいよ、ゆうちゃん……言いたい事は分かったから……」
ゆたか「本当?」
こなた「うんうん」
ここは嘘でも言っておこう。そうじゃないと永遠に説教されそうだ。
ゆたかは体を移動させて通りを空けてくれた。これで自分の部屋にいけるけどゆたかもこれ以上追求しそうにないので
戻って居間の椅子に座った。ゆたかも私の後に付いてきた。
そして椅子に座った。その時だった。左手の薬指に光る物を見つけた。
399 :こなたの旅 28 4/5 [saga sage]:2014/08/11(月) 12:32:52.15 ID:IxmzLI8u0
こなた「それは?」
ゆたかは私の視線を追って自分の左手を見た。
ゆたか「これ?」
ゆたかはにっこり笑い左手の甲を私に見せた。薬指に指輪がはまっている。
こなた「それってもしかして……」
ゆたかは頷いた。
ゆたか「婚約指輪……」
こなた「やったじゃん、マネージャさんとか言ってた人?、……あれ、他の人は?」
ゆたか「両親やゆいお姉ちゃん、おじさんにも言っていない、身内ではおねえちゃんが最初だよ」
こなた「結婚式には必ず行くから」
ゆたか「式は当分お預け……かな、でも籍は入れるつもり……」
こなた「おめでとう……」
ゆたか「ありがとう」
こなた「ひよりより先立ったね」
ゆたか「うんん、ひよりの方が先だったりして……」
私は驚いて席を立った。
こなた「本当に?」
ゆたか「今日仕事って言うのは嘘で本当は結婚届を出しに行って……あっ!! これは内緒だよ」
ゆたかは慌てて口に人差し指を差し出してポーズを取った。
こなた「分ってるって、何れバレるだろうけど、それまで黙ってるよ」
ゆたか「ありがとう」
こなた「それにしてもダブルなんて……学生時代からは想像もつかない……」
ゆたか「そうかな……確かに最初はひよりは私とみなみの出会いから親友になるまでの過程を漫画のネタにしようと……
    うんん、実際にネタにしていた、ひよりはそういった想像力は凄いと思う、だけど一つ一つが断片的だから私が
    それを繋げて一つの物語にする、だから私達は二人で一人分の仕事をしている……半人前かも……」
こなた「いやいや、それで映画化できるほどの作品ができるのだから一人前だよ」
ゆたか「これもお稲荷さんのお陰だよ」
こなた「お陰って……唐突に……」
ゆたか「お稲荷さんの存在が私達の想像力を膨らませたのは確かだから……」
こなた「それならつかさがその最初の切欠を作ったようなもんだよ」
ゆたかは遠目になって上を向いた。
ゆたか「もし、宇宙船が事故を起こさなかったらお稲荷さんは4万年も地球に居なかった、きっと調べ終わったら帰ったよね?」
こなた「そうだろうね、元々のお稲荷さんの体は地球に合わなかったみたいだし……」
ゆたか「そう考えると私達とお稲荷さんが出会うって凄いことだよ、無数にある星の中から地球を見つけただけでも奇跡だよ、
それに宇宙の歴史を一年にすると人間の歴史なんて数秒にもならないって言うでしょ、その数秒の中で他の星の人間と出会えるなんて……」
こなた「まぁ、そうだね」
ゆたか「だからお姉ちゃんもその出会いを大事にね」
こなた「まぁ……そうする……」
なんだかゆたかに言い包まれた感じがしてならない。
それでも嫌な気はしなかった。

ゆたか「おじさん……遅いね……」
確かに遅い。もうとっくに帰ってきても言い時間だった。
ゆたか「せっかく報告しようかと思ったのに……」
左手の指輪を見ながら呟くゆたか……
こなた「いや、お父さんより両親が先じゃない?」
ゆたか「そうかもしれないけど、高校三年間も居させてもらっているから……」
ゆたかは立ち上がり帰り支度を始めた。
ゆたか「叔父さんを元気付けようと思ったけど、それも必要ないみたいだし、むしろそれが必要なのはお姉ちゃん……かな」
こなた「それは余計なお世話だよ」
ゆたかは笑いながら玄関に歩いて言った。
ゆたか「そうそう、さっきお姉ちゃんが言った事、あれは少し違うと思うよ」
こなた「さっき言った事、何?」
ゆたか「神崎さんが井上さんを好きだったって言ったでしょ」
こなた「そうだけど……」
ゆたか「神崎さんは約束を守るために井上さんを助けようとした、私はそう思う」
こなた「約束……誰と?」
ゆたかは溜め息を付いた。
ゆたか「だから……うんん確証はないから言えない、お姉ちゃん自身が確かめて……それに諦めたらおわりだから」
こなた「う、うん……」
ゆたか「それじゃ、おやすみなさい」
こなた「おやすみ……」
ゆたかは玄関を出た。
ゆたかは何を言いたかったのだろう。
私は首を傾げた。
400 :こなたの旅 28 5/5 [saga sage]:2014/08/11(月) 12:34:09.37 ID:IxmzLI8u0
 もう日が替わる時間だ……お父さん遅いな。
正子さんがこの家に来る事になって直ぐだったかな。世間体が悪いって事で結局正子さんは近所のアパートを借りて住む事になった。
でも直ぐにお父さんとよく会うようになった。
ちょくちょく家に来て掃除とかお父さんの世話をやくようになった。
ゆい姉さんもよく遊びに来るからそんな二人の姿を見てお母さんに似ているなんて思ったに違いない。
私の休日は仕事の時が多いし時間も不定期……
そういえば二人が会っている所を見たことがない。いったいどんな話をしていたのだろう。
まさか本当に二人は……
その時、玄関に人の気配がした。
そうじろう「ただいま」
帰ってきた。私は自分の部屋に忍び足で向かった。
そうじろう「こなた〜」
私を呼んでいる。私はパソコンのスイッチを入れ、ヘッドホンを付けた。
暫くするとドアをノックする音が聞こえた。私は気付かない振りをした。
ドアを開ける気配がした。私はそこで初めて気付いた振りをする。
こなた「あ、お父さんお帰り……」
わざとらしくヘッドホンを外した。でもお父さんはそれに気付かない。そればかりか何か思い詰めた顔をしている。
そうじろう「こなた、折り入って話がある……」
こなた「どうしたの、改まちゃって?」
まさか……ゆたかの言う通りに……?
私は座ったままお父さんの顔を見上げた。
そうじろう「こなたももう大人だ、私の言う事は理解できると思う……後は許してくれるかどうかが……」
こなた「前置きは良いから何なの?、こっちはゲームの真っ最中だから……」
ゲームなんかしてもいないのに白々しい……
そうじろう「そ、そうか、そうだな……」
それでもお父さんは激しく動揺していた。これはマジな話に違いない。そう確信した。
そうじろう「お父さんは……」
お父さんは緊張している。こんなお父さんを見たのは初めてだ。
自然に私も体全身に力が入ってきた。手に持っているヘッドホンを強く握っているのが自分で分った。
そうじろう「お父さんは、正子さん……神崎正子さんににプロポーズをした……」
何とななくそれは分っていた。だけど改めてそう聞かれると、どう対応していいのか分らない。
なんて言ったら良いのか……


つづく
401 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga sage]:2014/08/11(月) 12:35:07.16 ID:IxmzLI8u0
以上です。

この後直ぐに纏めます。
402 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) :2014/08/16(土) 18:36:42.54 ID:60EY4dCO0
面白い
403 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga sage]:2014/08/17(日) 16:37:23.40 ID:0xsBuS3H0
>>402
これは「こなたの旅」の事を言っているのか。
それともこのサイト全体(まとめサイト?)の事を言っているのか。
どちらにしても嬉しいです。
今後ともよろしくお願いします。
404 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga sage]:2014/09/03(水) 01:16:15.65 ID:PrxMTcjf0
保守
405 :まだ書いてない [saga sage]:2014/09/11(木) 21:23:40.50 ID:RqFM4vEx0
「こなたの旅」の作者です。
本来ならつづきを出したいところですが
忙しくてなかなか書けません。
もし待っている人がいるなら、少し時間をください。

保守兼、お知らせでした。
406 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/09/24(水) 20:54:45.97 ID:czL8chPy0
まだ?
407 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga sage]:2014/09/25(木) 21:27:27.32 ID:ttpyUtgT0
まだです
408 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga sage]:2014/09/27(土) 17:38:11.18 ID:t1XiuLFM0
>>405
やっと書き始めました。
もう少し時間がかかりそうです。
確約はできませんが近々投下できそう

初めて催促のコメが入った。
読んでくれている人が居て嬉しいです。
最初の「つかさの一人旅」が反応薄かったので
その続きともなるとほぼ読まれないと覚悟はしていました。
409 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga]:2014/10/01(水) 00:00:01.72 ID:62i2Kr2B0
それでは「こなたの旅」の続きを投下します。
今回は4レスくらい使用します。
410 :こなたの旅 29 1/4 [saga sage]:2014/10/01(水) 00:02:32.59 ID:QttFb6XO0
29

 お父さんは何て言った?
ヘッドホンが壊れるくらいの力が入っていた。私はヘッドホンを机の上に置いた。
こなた「ふふ、お父さん……エープリルフールはもうとっくに過ぎたよ……そういえばずいぶん前にも似た様な嘘を……」
そうじろう「嘘じゃない……これは本当の話……」
私の話に割り込むように話してきた。
……嘘じゃない……
お父さんの顔は真剣そのものだった。
こなた「そ、それで相手は……?」
そうじろう「受けてくれなければこなたに話さない」
なんだろうこの気持ちは……
私は立ち上がると部屋を出た。
そうじろう「何処へいく……まだ話は終わっていない……」
私は制止を無視して歩いた。お父さんが後から付いてくるのが分る。
そして……お母さんの位牌の前で立ち止まった。
そうじろう「こなた……」
お父さんもすぐ後ろで止まった。
若い頃……生前のお母さんの写真……にっこり微笑んでいる。
こなた「……正子さんってお母さんに似ている……そうゆい姉さんが言ってたみたいだね……」
私はお母さんの写真を見ながら話した。
もちろん容姿はぜんぜん似ていない。似ているのは内面的な事を言っているに違いない。
そうじろう「……それを何処で?」
こなた「つい一時間くらい前までゆたかが遊びに来ていたから……」
そうじろう「そ、そうか、ゆーちゃんから聞いたのか……」
おとうさんは私の前に移動すると座り位牌に手を合わせた。
そうじろう「こなたが神崎さんの母親を連れてきた来た時正直驚いた……知るはずも無いかなたの面影を感じて俺に合わせたのかと思った」
こなた「そんなの知らない……家を焼かれてしまったから呼んだだけ、私の友達の母親だから」
そうじろう「知らなかったのか……これも何かの縁なのかもしれない……」
こなた「もしかしてお母さんの代わりで?」
お父さんは振り返って私を見た。
そうじろう「違う、違うぞこなた、それは断じてない、かなたの代わりではない、神崎正子、一人の女性として愛しているから……決して代わりではない」
愛している……か、例え娘にでもそんなに簡単にはっきり言えるなんて……
そうじろう「お母さんを……かなたを裏切ったと言いたいのか?」
裏切り……お母さんはどう思っているのだろう……亡くなっているから聞けるはず無いもない。
それなら正子さんの亡くなった旦那さんはどうなの……?
あやめさんならどうした?
皆聞けない。
そうじろう「……こなた、これは浮気でも裏切りでもない、分って欲しい」
聞けないなら生きている人で決めるしかない。
私はどう思う……
お父さんのあの真剣な態度、正子さんは受けたって言っていた。
そうじろう「こなた……」
お父さんは涙目になっているた。
こなた「……正子さんは?」
そうじろう「アパートに送って来た」
そうなのか……お父さんは私が許すかどうか試しているのか……
私の意見なんてどうでも良いのに……
こなた「正子さんが受け入れたのならもう私の出る幕はないよ、早く家に連れてきて一緒に住んだら?」
そうじろう「い、いや……あやめさんの喪が明けてから……それに妹のゆきにも相談した、やはり娘の意見も聞かないとな……」
あやめさんは本当は5年前に亡くなっている。喪がどうのこうのは当てはまらない。
って言う事は……正子さんはお稲荷さんの話をしていないのか……
今まで娘の私が話をしていないくらいだから話せないかもしれない。
そうじろう「こなた?」
お父さんは驚いた顔をした。
でも……今はその時じゃないみたい。
こなた「ん?」
そうじろう「も、もしかして、私達を許してくれるのか?」
こなた「さっきそう言わなかった?」
お父さんは私の右手を両手で握った。
そうじろう「ありがとう、ありがとう……」
ありがとう、おとうさんは何度もそう言った。
こんなに動揺したお父さんを見るのは初めてだ。
こなた「お父さんと正子さんが結婚したら……あやめさんとは姉妹ってことになるね……」
そうじろう「……歳は同だったな……誕生日は5月1日だそうだ、彼女はこなたの姉になる……本当に残念だった、
      お父さんの所に取材に来たのは代理だったが、とても楽しい子だった……」
そう、本当は井上さんが取材に来る筈だった。急病であやめさんが代わりを引き受けた。それはまなみちゃんの演奏会の時も……
こなた「それじゃ正子さんに挨拶しに行かないと……」
そうじろう「い、いや、それはもう少しまってくれ……」
こなた「どうして、私が許したならもう何も阻む者は居ないよ?」
そうじろう「時間を見ろ、もう遅い」
こなた「それじゃ明日だね、私は早番だから夕方には帰れる、どうせ家に呼ぶんでしょ?」
そうじろう「そ、そうだが……」
こなた「それじゃ決まりだね……それにしてもどうやって正子さんを落としたの、口説いたとか?」
そうじろう「こ、こら、人聞きの悪いこと言うな、別に口説いてなんかいない、ただ自然に……」
お父さんの顔が赤くなっている……これはいじり甲斐があるってもんだ。
こなた「確かに……確かにゆいの言うとおりかなたの面影があった……しかしそれだけではプロポーズなんかしない……」
411 :こなたの旅 29 2/4 [saga sage]:2014/10/01(水) 00:04:03.05 ID:QttFb6XO0
 その後、おとうさんは正子さんと出会った時からプロポーズするまでの話をし始めた。
他人にまったく躊躇することなく、それも嬉しそうに話している。
そう、まるでお母さんの話を私に聞かせているいる時のお父さんとまったく同じだった。
それに引き換え私は……
つかさやかがみだって、いや、私以外の皆もそうやっていた。
お父さんを見ていてなんだか勇気が沸いてきた。
そうさ、簡単だ。選んでボタンを押すだけ。いつも私がゲームでやってきたじゃないか。
そうじろう「こ、こなた」
突然微笑んだ私にお父さんは話を止めた。
こなた「うん?」
そうじろう「あやめさんの件については本当に残念という他はない、だがこなた……彼女はそうとう危険な取材もしていたそうじゃないか、
      いままでよくこなたが巻き込まれなかったのが不思議なくらいだ」
いや、思いっきり巻き込まれている。二回の潜入取材、メモリー板、いのりさんの参加、みゆきさんの薬、かがみの弁護……
私の周辺も巻き込んで大騒ぎになった。
大騒ぎになったけど……何故か嫌な感じはしなかった。
そうじろう「わ、悪かった、彼女はこなたの親友だったな、悪く言うつもりはなかった」
こなた「お父さん、あやめさんの取材を受けたでしょ……」
そうじろう「そうだった、彼女と会っていなければこなたが正子さんを招こうと提案しても賛成はしなかった」
お父さんは不思議そうに私を見た。
こなた「ん?」
そうじろう「い、いや、何ていうのか、あやめさんとこなたはどうして出会ったのかって……どう見ても接点がみつからんのだよ」
接点……
こなた「片や出版社随一の記者、片やしがないレストランのホール長、まぁどう見ても接点なんかないよね……」
そうじろう「い、いや、皮肉と捉えないでくれ、ただ純粋にどう出会ったか聞きたかっただけで……」
慌てて言い訳をするお父さん。
接点、それは一言で言えばお稲荷さん。もっと限定的にいえば私のげんき玉作戦、それらをあやめさんは追っていくうちに私に出会った。
ある意味出会いべくして出会った……これって運命ってやつなのかな。
つかさが一人旅に出ていなければ、私もレストランで働くこともなかった。
それじゃ何をしていた?
ふふ、ニートになっていたかな……
そうじろう「こ、こなた?」
不思議そうに私を見るお父さん。はたしてお稲荷さんの話をした時、お父さんはどんな反応をするのだろう。
素直に受け入れてくれるのか。みさきちみたいに鼻で笑ってネタで終わってしまうのか……
そうじろう「……すまない、今はそんな話をするべきではなった、こなたが話す気になったら……それでいい」
そうじゃない、そうじゃないけど……今はそれで良いのかもしれない。
お父さんは部屋を出ようとした。
こなた「お父さん」
お父さんは立ち止まり振り向いた。
そうじろう「ん?」
こなた「結婚……おめでとう」
そうじろう「あ、ありがとう」
照れくさそうに小走りに自分の書斎に行ってしまった。

こなた「ふぅ〜」
溜め息を一回。
お母さんの写真を見た。
お父さんはお母さんにもあんな風に告白したのかな……
それにしても私って……どうして言えないのかな。
倒産はさりげなく言っていた。
私が女性でお父さんが男性だから

……いや、性別なんて関係ない。
好きなら好きって言えばいいだけじゃん。
そうだよ、普段ゲームでやっているようにカーソルで選んでエンターキーを押すだけ……簡単じゃないか。
なんか勇気が湧いてきた。
今度の休みの時神崎さんと会う。丁度メモリー板の使い方も一段落しそうだし。するならその時だ。
こなた「お父さんが出来たなら私にだって出来るよね」
お母さんの写真に向かってそう呟いて部屋を出た。


412 :こなたの旅 29 3/4 [saga sage]:2014/10/01(水) 00:05:15.58 ID:QttFb6XO0
こなた「こうでしょ?」
つかさがひろしと一時別れた時に見たと言う光の幻想をイメージした。
もちろん実際に見たわけじゃない。あくまでイメージ。
足元がぼんやりと光りだした。
そして床も光りだす……
神崎「ほぅ、もう会得したか……これで私の教える事は全てだ」
理屈は詳しく知らないけど大気のエネルギーを制御する技術らしい。

 時間が経つのは早い。気付けばもうその時が来てしまった。
ここは柊家が管理する神社の倉庫裏。メモリー板の使い方を教えてもらうって言ったらつかさが此処を教えてくれた。
私も長年この神社に出入りしてきたけど初めて知った所だった。
ここには神社関係者以外滅多に人が来ない。メモリー板の使い方をレクチャーしてもらうには打ってつけの場所。

こなた「光だけじゃなくて熱も制御できるんでしょ?」
神崎さんは頷いた。
神崎「その気になれば爆発で辺りを吹き飛ばし一面焼け野原にさえ出来る、そして一瞬で周りを凍結することだってね」
こなた「凄いね……お稲荷さんってこのメモリー板の能力が使えるんでしょ?」
私はポケットからメモリー板を取り出した。
神崎「ああ、使えるがメモリー板ほど強力ではない……」
こなた「ふ〜ん、貿易会社ってこのメモリー板の本当の能力をしらなかったんだね、知っていたらあんな遣い方しなかったよね」
神崎「そうだな、メモリー板の情報を解析していけば何れ気付いたかもしれないがな」
私はメモリー板をじっと見た。
神崎「その技術はほんの基本にすぎない、どうだ今の人類ではとうて成しえない力を手にした感想は、地球を支配出来る力を得たんだ」
私は笑った。
こなた「ふふ、中二病じゃあるまいし……そんなの興味ないよ……うちのレストランのイベントの時とかのイルミネーションに使えそうだね」
神崎さんも笑った。
神崎「そう言う遣い方もあったか……ふふ」
あれ、これって、なんか良い雰囲気じゃない?
これってフラグが立った?
チャンス?
なんだかドキドキしてきた。
そういえば告白なんて……初めて?
うぁ、この歳になって初めて、おかしいかな……
神崎「一つ聞きたい事がある」
こなた「は、はぃ!!?」
突然の質問に声が上擦ってしまった。
神崎「メモリー板の使い方を得て何をするつもりなんだ、野心か野望か……さっきの話からするとそんな風にも思えない、真意を聞きたくてね」
真意か……
こなた「そう言うのって教える前に聞かない?」
私の質問返しに神崎さんは苦笑いをした。
神崎「……そうだな、そうかもしれない、何に使おうと君の自由、誰も君を阻むものは居ない、私でさえも」
それならどうして私に教えたのか聞きたいくらいだった。
こなた「メモリー板の持ち主としてはどんなものなのかちゃんと知っておきたかったから……答えになってるかな?」
神崎さんは頷いた。
神崎「それで、それを知った感想はどうだ?」
また難しい質問を……みゆきさんを連れてきたいくらいだ。
こなた「変身、つかさの見た光の幻想、かがみの呪いと病気を治した薬、金縛りの術に催眠術……深い原理は分らないけど、それが魔法じゃないってのが分ったよ、
    うんん、多分教えてもらう前から分っていた、だけどこれだけ進んだ現代でもお稲荷さんの知識と技術はやっぱり魔法なんだなと思った、
    これだけチートな物をつかったら反則だよ」
神崎「それで?」
まだ続きをききたそうだ。もうないのに……
こなた「……だからこのメモリー板はここに在ってはいけないんじゃなかったって、でも私はそれを持っている、私達以外の人がそれを知ったらきっと
    欲しがるよね、貿易会社みたいに、でもさ貿易会社って特別な会社じゃないよ、普通の人が経営して普通の人が働いていた普通の会社……
    私も普通の人間、私はこのメモリー板をずっと隠していく自信がない、例え隠しきれたとしても私が死んだらどうなるかな……
そう思うと誰にも渡せなくなっちゃう」
神崎「そうか……それで?」
私の言いたい事を分っているみたいだった。
こなた「貿易会社の裁判が終わったらこのメモリー板を壊そうと思ってる」
神崎「壊すのか……本当にそれでいいのか、そうしたらもう魔法はつかえなくなるぞ」
こなた「もう充分に教えてもらった、太古の時代からお稲荷さんから教えてもらった知識と技術を使って今の暮らしができているし、
    なによりかがみの病気を治してくれたのが一番嬉しかった……」
神崎さんは立ち上がった。
神崎「壊すか……賢明な判断だ」
まだ私の話は終わっていない。
こなた「それにね……」
神崎「まだあるのか?」
こなた「それに……あやめさんと逢わせてくれたらもう充分……お稲荷さんじゃないと出来ないよね」
神崎さんは寂しそうな顔になった。
神崎「私が会わせたのははい、彼女が、あやめ自身がそうさせたにすぎない、彼女の意思がなければそうはならなかった……」
こなた「それでもお稲荷さんじゃなきゃ出来なかった」
神崎さんは苦笑いをしながら帰り私宅をしだした。

413 :こなたの旅 29 4/4 [saga sage]:2014/10/01(水) 00:06:32.80 ID:QttFb6XO0
さて……もうそろそろ時間だ。もう心の準備は出来ている。
あとは言うだけ。
神崎さんが帰りの支度をしている。言うなら今だ。
こなた「あ、あの〜」
神崎さんが支度を止めてこっちを向いた。
神崎「泉さん、メモリー板を壊す前にして欲しいことがある」
こなた「え、え、あ、な、何ですか?」
私の声が小さくて聞こえなかったのか突然の事で言葉が詰まった。
神崎「母星との交信がしたい」
こなた「あ、それなら……」
私はメモリー板を神崎さんに渡そうとした。
神崎「いや、壊す直前でいい」
神崎さんはメモリー板を受け取ろうとはしなかった。
こなた「直前って?」
神崎「私の目的は終わった、もうこの地球にいる理由がなくなった」
え、どう言うことなの。ちょっと……
こなた「無くなった……って?」
神崎「そう、無くなった、私は故郷に帰る」
ちょっ、帰るって。そんな話は聞いていない。
こなた「地球ってやっぱり人間が居て住みにくいのかな……」
神崎「住み難い、いや、もう故郷より長く此処に居る、狐に変身してしまうのを除けば快適に近い、どんなに鍛えても必ず狐の姿になってしまう期間ができてしまう、
   そんな私を助けてくれたのも人間だった」
それじゃ帰る必要なんかないじゃないか。
こなた「もしかして故郷に危機が来ていて大変だから?」
神崎「そういえば先に帰った仲間の中にはそれで帰った者もいたそうだな、それに、その危機は私が一人帰ったところでどうにか出来る問題ではないらしい」
こなた「それじゃ何で?」
神崎「あやめとの約束が終わった……」
こなた「あやめさんとの約束?」
約束って、いつ、どんな約束を。
神崎「そう、井上浩子と神崎正子をよろしく頼む……それが彼女の死に際の私へのメッセージだった」
こなた「えっ!?」
神崎「もちろんあやめはもう瀕死で言葉すら発する事はできなかった、彼女の記憶をトレースすした時に彼女の意思が私にそう伝えた」
あやめさんとの約束。違う……それじゃ違うじゃないか。
こなた「そ、それじゃ井上さんの病気を治そうとしたのは……?」
神崎「あやめとの約束を果たす為」
まさか、これってゆたかが言っていた約束した相手って……
それに言葉を交わした約束じゃない。あやめさんの意識の中のメッセージを勝手に約束にしている。
うそ、それって、まさか……
こなた「あやめさんと神崎さんって……?」
神崎「私は神崎あやめを愛していた」

 その時私の頭は真っ白になった。

神崎「此処には彼女の思い出がありすぎる……ここに残っていても辛いだけだ……」
神崎さんはあやめさんを好きだった……
私ってどんだけニブチンなの。
こなた「井上さんを必死に救おうとしていたからてっきり井上さんを……」
神崎「彼女とは直接会っていない、もちろん神崎あやめとしては会っていたが彼女には特別な感情はない、それがどうかしたのか?」
こなた「え、い、いや、な、なんでもない、何でもないよ……」
神崎さんが好きなのが井上さんからあやめさんになっただけ。何ら問題はない。そうだよ。全く問題なんか無い。
神崎「井上さんには私の話は伏せていて欲しい、あくまで神崎あやめは半年前に亡くなった、そうでなければ約束の意味が無くなってしまう」
こなた「そうだよね、うんうん、意味はないね……そ、そうだ、帰るならこのメモリー板もそのまま持って帰ってもらえればわざわざ壊す必要なんかないじゃん?」
え……私って何を言っている?
違うよ。私はそんなのを言いたいんじゃなくて……。
神崎「……なるほど、確かに壊す必要はないな……それにそれの方がより安全」
こなた「つかさもけいこさんに会いたがっていたから交信するならつかさも一緒でいかな、もう二度と通信なんか出来そうにないし」
どうして……喉元まで出掛かっているのに言えない。
言えないよ。
神崎「私に許可を取るまでも無いだろう」
こなた「はは、そうだよね、私がすればいい……」

 それから街に出て食事をして別れた。
何を話したのかはっきり覚えていない。
そして私は言おうとしていた言葉を一言も言う事が出来なかった。


つづく
414 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga sage]:2014/10/01(水) 00:08:08.54 ID:QttFb6XO0
以上です。

期間が開いた割には短いです。

どうも忙しくてなかなか集中できません。
415 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga sage]:2014/10/01(水) 00:12:02.12 ID:QttFb6XO0


ここまで纏めた。
416 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [age]:2014/10/16(木) 23:33:27.64 ID:8lfmC7gN0
まだ?
417 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga sage]:2014/10/18(土) 10:38:13.83 ID:6cEZQB1j0
ちゃんと作っているので大丈夫です。

気長にお待ちください。
418 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga]:2014/10/19(日) 14:12:41.96 ID:/g8JMpBR0
それでは「こなたの旅」の続きを投下します。

今回は4レスくらい使用します。
419 :こなたの旅30 1/4 [saga sage]:2014/10/19(日) 14:15:15.54 ID:/g8JMpBR0
30

『カタカタ』
静寂した部屋にキーボードを叩く音だけが響く……
『ギャチャ!!』
ドアを開ける音がした。それでも私は作業を止めなかった。
かがみ「お! ちゃんとやってるわね、感心、感心」
私は振り向きもせずモニターを見ていた。
かがみ「もう家にきてからかれこれ2時間も……、小休止しなさい、お茶とお茶菓子持ってきたわよ」
ここはかがみの法律事務所の別室。私はここに来てはかがみの依頼を履行していた。
モニターの机とは別の私の後ろにあるテーブルにお皿を置く音がした。
こなた「別に疲れていないから……」
かがみ「まぁ、こなたにしならゲームをやっている時間と比べて2時間はたいした事はないかもしれないけど、根を詰めると体に毒よ」
いつになく優しい声のかがみ。普段の私なら「気持ち悪い」って言っている……だけどそんな気分ではなかった。
諦めて部屋を出るかと思ったけど椅子を動かす音が聞こえた。かがみは座ってお茶をすすりだした様だ。
確かにただモニターに向かっていても面白くない。
私は作業しながら話した。
こなた「裁判はいつ終わるの?」
かがみ「……なにしろ企業が相手だから時間はかかるのは確かよ、だから少しくらい休んでも一向に差し支えない」
こなた「かがみの依頼はもう少しで終わるよ、だからもう少しやっていくよ」
かがみ「ちょっ!! 私の見立てではあと1年はかかる作業よ……それもメモリー板の力ってやつなのか?」
かがみは相当驚いている。声を聞いてだけで分る。
こなた「そんな所……」
かがみ「それにしても早すぎるわよ」
こなた「早いに越したことはないでしょ、裁判が終わったらもう作業は出来なくなるんでしょ?」
かがみ「……それはそうだけど……」
かがみは黙ってしまった。またキーボードを叩く音が響く。
かがみ「あ、そうそう、知っているかもしれないけどあやめさんを殺した犯人が捕まったわよ、容疑はもちろんあやめさんの殺害」
一瞬手が止まった。
かがみ「なんだ、知らなかったのか?」
こなた「ふ〜ん、捕まったんだ……」
かがみ「なによその気の無い返事は……」
私は再び手を動かし始めた。かがみはそのまま話を続けた。
かがみ「出国する寸前で押さえたそうよ、決め手があやめさんが使っていた携帯電話」
また手が止まってしまった。
かがみ「あんたの機転で殺し屋が捕まったのよ、やるじゃない」
こなた「別に……」
かがみの溜め息が聞こえた。
かがみ「そうそう、ヨーロッパを中心に活動していた職業としての殺し屋よ、日本では一人だけみたいだけど、
分っているだけで10人以上の要人を手に掛けていた様ね、きっとその中に神崎さんの友人含まれているわね……」
私はかがみの話を聞きながら手を動かした。
かがみ「どうあがいても彼の極刑は免れない」
こなた「そんなの自業自得」
かがみ「そう、自業自得、この日本の裁判で判決が出ても犯人引渡し条約があるからその国々で同じような裁判をする事になるわね、
恐らく彼が生きている内には終わらないわよ、事実上の終身刑のようなものになる、これも言い換えれば因果応報ってやつ」
こなた「因果応報ね……」
かがみ「なによ言い直して、言いたい事があるなら言いなさい」
こなた「けいこさんやつかさはお稲荷さんと人間が共存できるようにしようとした」
かがみ「失敗しちゃったけどね……」
こなた「……そして今度はお稲荷さんの記録を全て消そうとしている……そんでもってその両方に私は関わっている……これって良い事なの、悪い事なの?」
かがみ「ふ〜ん、こなたもいろいろ考えるようになったわね、偉い偉い」
こなた「ふざけないでよ!!」
かがみ「ごめん……」
このあとかがみは暫くなにも話さなかった。答えを考えていたのだろうか。
420 :こなたの旅30 2/4 [saga sage]:2014/10/19(日) 14:16:44.26 ID:/g8JMpBR0
かがみ「善悪なんて立場や状況で変わってしまう、絶対的なものじゃない、まぁ普通に私達の立場を考えれば人間を基準に考えるわね、
    つかさやけいこさんがしようとしていたのは紛れも無く良いこと、おそらく殆どの人に異論はないでしょうね、
    でも失敗した、だから今の私の行動がある、
    私はこれで良いと思っている、もともとこれは私が考えた事、こなたはそれに従っただけ、こなたは悪いと思っているわけ?」
こなた「うんん、悪いと思ったら手伝わない、だけど……」
かがみ「お稲荷さんの知識を勝手に消して良いのかって言うんでしょ、そう、そうよね、私もそれで助かった、それがあれば助かった命が幾つあるか、
    でも、貿易会社の件もある、彼らはそれを武器に利用しようとした、実際に作って使用した記録もあるわよ、それで奪われた命がいくつあるのか、
    差し引きゼロって言い方もあるかもしれない、でも命はそう言うものじゃない、
    お稲荷さんの知識ってそう言う物、お稲荷さん達は故郷でそういった知識を得てはその諸刃の剣に悩みながら克服してきた、
    そのプロセスを飛ばして得た知識は使いこなせない、それが私の結論、だからお稲荷さんの知識を消す必要があるのよ……
    まぁ、人間も自分自身の知識を使いこなしているかと言えば疑わしいけどね」
私は画面に向かって作業を続けた。
かがみ「ちょっと、人が一所懸命に話している間くらいは手を休ませなさい!!」
こなた「立て込んだ作業があって……もうちょっとだから……」
かがみ「あんたのそう言う所、全く変わっていない!!」
かがみのさっきの説明。私でも納得ができるものだった。
それに引き換え私が神崎さんにした話ときたら……全然説得力がない。ダメじゃん。
かがみみたいに頭の回転が早くて活舌だったら……
かがみ「それでこなた、折角使い方を会得して早々すまないけど、メモリー板はこの案件が解決したら……」
こなた「壊すって言いたいんでしょ?」
かがみ「えぉ!?」
意外だったのかかがみが言葉を詰まらせた。
こなた「さっきの話を聞けば分るよ、そんなに驚かなくても……」
かがみ「そ、それなら話は早いわ……壊してくれる?」
こなた「壊すのはそんなに難しくないよ、『壊れろ』って命令するだけ、だけどね残っている燃料が暴走してちょっとした爆発をするかもしれない」
かがみ「ちょっとした爆発?」
こなた「うん、たいした事じゃない、竜巻が来た位の被害だから」
かがみ「竜巻って……おい、尋常じゃないじゃない……」
こなた「うん、だから壊すのは止めて持って行ってもらう話になったから心配しなくていいよ……それにめぐみさんからもらったUSBメモリーも
    同じ燃料が使われているみたいだから一緒に持って行ってもらうから」
かがみ「……なんだもうそんな事まで考えていたのか、流石ね……っておい!!」
いつものかがみの突っ込みが始まるか……
かがみ「持って行ってもらうって何処に誰が持っていくのよ?」
その突っ込みも流石だよ。
こなた「神崎さんだよ、お稲荷さんの故郷に持って帰っるって、母星と連絡して迎いに来てもらう……」
かがみ「あぁ、なんだそう言う事なの」
こなた「うん、そう言う事……」
かがみが話さなくなったと思ったら直ぐに話し出した。
かがみ「……帰る、帰るって言ったわよね?」
こなた「うん、言ったけど……」
かがみ「帰るって、あんた、こんな所でパソコン操作していていいのか?」
こなた「……私がどうこう出来る問題じゃないし……」
かがみが私の近くに歩いてくる気配を感じた。
かがみ「出来る出来ないの問題じゃないでしょ、あんた神崎さんの事が好きじゃないのか、止めないのか……」
こなた「神崎さんはあやめさんが好きだったって……止められないよ……」
後ろから両肩を掴まれ座ったまま椅子を回された。私はかがみの正面を向いた状態になった。これじゃパソコンの操作が出来ない。
私は腰に力をいれて元に位置に回転させようとしたけどかがみが私の両肩を押さえているから動かない。
かがみは私の目を睨んだ。私は目を逸らした。
かがみ「帰る意味が分っているのか、彼の故郷がどのくらい遠いか分っているのか」
私は何も答えなかった。
かがみ「何か言いなさいよ……少なくともこなたの方から一生掛かっても会いに行けない距離……」
こなた「……そんなの知っている……」
かがみ「だったら何故……あやめさんに遠慮しているのか、彼女はもう居ない、遠慮なんか必要ないじゃない、引き止めなさいよ、
まだ告白もしていないのか、それとも神崎さんなんか好きでもなんでもないのか、二度と逢えなくなるのよ、
さようならで終わりでいいのか?」
執拗に責めて来るかがみ。最後のさようならで終わりでいいのか……
そう言われたら急に目頭が熱くなった。かがみがそれに気付いた。
かがみ「こなた……あんた……」
両肩から腕を放した。
こなた「引き止めるなんて……言えなかったよ……」
かがみ「言えなかった……」
こなた「好き……なんて……引き止めるにはそれを言わないとダメでしょ……だから」

421 :こなたの旅30 3/4 [saga sage]:2014/10/19(日) 14:17:55.77 ID:/g8JMpBR0
かがみ「やっと言ったわね……その涙で判った……本気のようね」
そうかもしれない。この言葉を言うのは他人には初めてかもしれない。
かがみ「……でもそれは私にではなく神崎さんに言えばよかったのに……」
でもそれが本人ではくかがみに言うなんて……
こなた「……ボタンを押すだけだと思った……只それだけの簡単なものだと思ってた……でも本人が目の前に居ると……つかさみたいに出来なかった」
かがみが私から離れて席に戻った。
かがみ「……あんたもしかして告白しようとしていたの?」
私は黙って頷いた。
かがみ「つかさは自分の気持ちを後先考えずに直ぐに表に出すのよ、論外よ……
すごい、凄いわよ、こなた、しようとしただけでも凄いわ……私はそうしようとすら出来なかった……」
こなた「えっ!?」
私は始めてかがみの方を向いた。
かがみに嘲笑されるのかとおもった。思いっきり弄られるのかと思った。
かがみ「そうよね、言えるはずないわよ、言ったらどうなるのか、嫌われたどうしよう、冗談だろって言われるかもしれない、頭の中が
    ネガティブでいっぱいになっちゃうのよね……分るわ、私もそうだったからよくわかるわよ、うんん、今もそうだから」
まるで私と同じように俯いているかがみの姿がそこにあった。
こなた「今もそうって……結婚して子供までいるのに……」
かがみ「……彼……ひとしから私に近づいてきた、私は何もしていないのよ……」
こなた「何もしていないって?」
私が聞き返すとかがみはゆっくり顔を持ち上げて私を見た。
かがみ「大学時代、彼から声をかけて来たのよ、その内容までは覚えていない、他愛ない事だった……
    でも彼は次第に私の心の中が判っているような行動をし始めるのよ……将来の夢、好きな食べ物、場所……次第に彼に惹かれたわ
    そして気が付けば私の彼の腕に抱かれていた……もし彼が本気じゃなかったら……私は……私は……」
今まで一度も聞いたたことの無い恋愛の話をしている。あのかがみが……
かがみ「……だから私は一度も彼に……好きとか、愛しているなんて一度も言った事はない……」
こなた「でもさ……ひとしさんはお稲荷……」
かがみは腕を私の前に出して手を広げた。
かがみ「お稲荷さんだから私の心を読み取るって言いたいんでしょ?」
私は頷いた。
かがみ「ひとしがお稲荷さんだと知ったのはまなみちゃんが生まれてからなのよ……それまで私はずっと人間として彼と接していた……
    普通じゃとっくに愛想尽かれていたわよ……私は運が良かっただけ……」
かがみが恥ずかしがりやなのは知っていた。だけどここまでだったなんて……
だけど私はかがみとほぼ同じかそれ以上に奥手だ。
かがみはやもめの私をあまり弄らなかったのはその為だったのか……
かがみは立ち上がった。
かがみ「そうよ、神崎さんもお稲荷さんじゃない、こなたの心は分っている筈よ、それなのに帰るだなんて……もしかしたらあやめさんに遠慮しているのは
    むしろ神崎さんの方かもしれない……こなた、まだ諦めるは早いわよ!!」
かがみは再び私に近づいた。
こなた「早いって言われても……どうすれば……」
かがみ「まずははっきりとあんたの意思を伝えるのよ」
こなた「……でも……」
かがみ「わかってる、分っているわよ、それができていれば悩んでいない、いいわ私も一緒に考えるから諦めるなよ!!」
かがみは私の肩を何度か叩いた。
こなた「う、うん……」
私は椅子を回転させてパソコンの作業に戻ろうとした。
かがみ「待ちなさい」
半回転したくらいで動きを止めた。
こなた「な、なに??」
かがみ「こなた、あんたに会わせたい人がいる、今度の休日は空けておきなさいよ」
こなた「会わせたい人……誰、私の知っている人?」
かがみ「それは内緒、いろいろ勘ぐられたくないからな、只言えることは私があんたにひとしの話を出来たのはその人のおかげだと思っている」
確かに今のかがみはさっきまでとは違っていた。カウンセリングみたいなものなのかな……
こなた「空けるのはいいけど……その分作業が遅れるけどいいの?」
かがみ「別に構わない、裁判は遅れているし、それに裁判が長引いた方が良いでしょ、別れる日が延びるわよ、それに対策だって念入りにできるし」
かがみは微笑みながらウィンクをした。
こなた「え、あっ、そ、そうだね……」
もうかがみの対策は始まっているようだ。かがみがこんなに頼もしく見えたのは初めてだった。
かがみ「それじゃ、約束を忘れるなよ、あんたよくすっぽかすからな」
こなた「はは、そうだね……」
かがみ「お、今日初めて笑ったな、そうそう、それで良いのよ」
こなた「でもさ……なんで私が神崎さんを好きだって分ったの? お稲荷さんでもないのに」
かがみ「はぁ!?」
かがみは一瞬驚いた顔をして笑い出した。
かがみ「ははは、あんた、黙っていれば分からないと思ってたの、ほんとこなたって相変わらず鈍いわね……あの時神崎さんを連れてきた来た時点で
    分ったわよ、あんたが良く言うフラグってやつをビンビン立てていたわよ、多分あの時居た人の殆どがそう思ったわよ」
こなた「はは、そう、フラグね……はは自分の事だと分らないね……ははは」
私達は笑った……
422 :こなたの旅30 4/4 [saga sage]:2014/10/19(日) 14:18:56.35 ID:/g8JMpBR0
かがみ「ポチっ!!」
『カチッ!!』
こなた「あっ!!」
突然かがみはパソコンの電源ボタンを押して強制終了させた。
こなた「ちょっ、かがみ〜今日の作業未の分のデータみんな消えちゃったよ!!」
半分起こり気味で言うとかがみは笑いながら話した。
かがみ「今日の仕事は終わりよ」
こなた「終わりって……今日の作業でどれほど手間が掛かったか分るの?」
かがみは私の話を聞こうとせずこそこそと何かの支度をし始めた。
かがみ「こなた、出かけるわよ支度しなさい」
こなた「出かけるって……何処に?」
かがみ「こんな時は飲むに限る……っと言ってもこなたはそう言うのは苦手だったわよね……ゲームセンターならどう?」
こなた「……そんな気分じゃない……」
かがみ「なに言ってるのよ、昔、私がそう言っても無理矢理に連れて行ったでしょ」
それって高校時代の話なのか……
こなた「誰かを連れ立って行く歳じゃないし……」
かがみ「そんなの気にした事ないくせに」
かがみは私の腕を掴み引っ張った。私はは渋々立った。
こなた「分ったよ……ちょっと準備するから待って」
かがみ「ふふ、ゲーセンなんて行くの久しぶりね、行っておくけど子供を相手に鍛えたから以前の様にはいかないからな!!」
なんかすっごく息巻いているし……
私がかがみを呆然と見ていると。
かがみ「どうしたの、行くの、行かないの?」
こなた「行くけど……」
かがみ「行くけど何よ?」
こなた「仕事を中断してまで何で私に構ってくれるのかなって……」
かがみ「なに水臭いこと言っているのよ、私とこなたの仲じゃない、そんなの気にするな」
こなた「う、うん」
私は周りの書類を片付けだした。かがみはもう準備が出来たのか部屋の扉の前で私を待っている。
かがみ「こなた、支度しながらでいいから聞いて、私達はお稲荷さんの痕跡を消そうとしている、だけどねどうしても消せない物があってね」
こなた「突然何を言い出すと思ったら……その消せない物って何?」
かがみ「私よ」
こなた「かがみが、何で?」
かがみ「私は現代の医学では治せない病気に掛かった、でもお稲荷さんの秘薬で治った」
こなた「そうだけどそれがどうかしたの?」
かがみ「よく考えてみて、私は今此処に居ない筈の人間なの、こなたとこうして話している筈はない、つまり私がこうして生きているのは
    お稲荷さんが居たから……」
こなた「分り易いね、その通りだけど、まさかかがみを消すわけにはいかないよ……」
かがみ「そう、だから私の言動すべてがお稲荷さんの知識がもたらした結果そのものになるのよ、良い事、悪い事、その全てがね」
こなた「……そうだとしたら、かえでさんや井上さん、みゆきさんの臨床試験で助かった人もそうなるよ……」
かがみ「そうね、だけど私がその最初の人……だから私はなるべく良いことをしようと思って……」
こなた「メンドクサイじゃん、そんなの、今まで通りのかがみで良いんじゃない、命が助かって良かった位で思っていれば、一人で背負う必要なんかないよ」
かがみ「メンドクサイっておま……」
こなた「はいはい、準備できたよ、行こうよ、見せてもらおうか子供と鍛えた実力とやらを」
かがみ「何よその言い方……何かのネタか?」
こなた「え、知らないの、これね……」
かがみ「分った、分った、語りだすと長いから行こう」
私達は部屋を出た。

今日は全てを忘れられそうだ。
昔に戻って遊びまくろう。


つつく
423 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga sage]:2014/10/19(日) 14:23:05.11 ID:/g8JMpBR0
以上です。

今回はこなたとかがみのやり取りのみです。

基本的に日曜や休日に書き込むのが多いと思います。

投下を待っている人が居たとしたらそれを参考にして下さい。

本当はもっと投下してくれる人が居れば待つ必要もないのでしょうが

ご了承下さい。

いつものようにこのあと直ぐに纏めます。
424 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/10/28(火) 02:03:24.22 ID:DfNwEoJSO
twitterとかpixivやればいいのに
スレの宣伝も出来るだろうし(ここは2ch外部板だから転載禁じゃないはず
425 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) :2014/10/28(火) 22:23:47.53 ID:kJ6dZuTI0
>>424
ご助言ありがとうございます。
pixivってイラストなんかを投稿するサイトだよね?
SSも投下できるの?
らきすたでもOKなのかな?

このサイトの作品を載せるって意味でいいのかな?
載せるとしたら多分自分の作品になると思うけど(他の人だと許可を取りにくいから)

例えばID:bz0WGlY0氏の作品集から何かしらの作品を投下したしとして
読んでくれるだろうか
どのくらいのレベルか分らないし(自分の作品)
宣伝になるのだろうか?
426 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [sage]:2014/11/03(月) 10:12:43.17 ID:85lYJcEe0
pixivについてはもう少し考えます。
427 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga]:2014/11/23(日) 14:22:57.32 ID:R0qhAASd0
それでは「こなたの旅」の続きを投下します。

6レスくらい使用します。
428 :こなたの旅 31 1/6 [saga sage]:2014/11/23(日) 14:24:26.32 ID:R0qhAASd0
31

 今日は休日。かがみと約束した日。珍しく出かける準備をを終えて迎えにくるのをまつばかり。
私にかがみに旦那さんの話をする事が出来たっていったいなにが切欠なのだろうか。
私に会わせたい人。かがみのあの言い方だと私の知っている人。
やっぱり筆頭に上がるのがつかさかな……
現につかさは告白を誰の力を借りずにしている。
でも改めて会ったとして私が変わるはずない。変わるならとっくに変わっている。
つかさは職場で毎日のように会っているし……今更っ感じだよね……
かがみはつかさと会わせて私にどうしろって言うのだろうか。
分らない。
考えれば考えるほど分らなくなる。
それともひよりとかゆたかだとしたら……
ひよりやゆたかがいのりさんやまつりさんとどんなやり取りをしたのか少し興味はあるけど私の場合と
状況が違うと思うし参考になるかな……
結局今日までこんな事ばっかり考えて過ごしてしまった……

『ピンポーン』
呼び鈴の音。時計を見ると約束の時間ピッタリ。かがみに違いない。
私は玄関に向かって扉を開けた。
かがみ「オッス、こなた!!」
そこには私服姿のかがみが立っていた。私服か。そういえば最近見てなかったな、かがみの私服姿。
かがみはジロジロ私を見回した。
かがみ「出かける準備はできていそうね、行きましょ」
かがみは玄関の前に停めてある車に乗り込んだ。かがみは車できたのか。私は玄関を出てかがみの車の助手席に乗った。
かがみは私がシートベルトを付けるのを確認すると車を走らせた。
かがみ「この前は何勝したかしら……」
こなた「ほえ?」
少し考えたけどこの前、ゲーセンに行った時の話しをしているに違いない。
こなた「64戦32勝32敗……」
かがみ「どうよ、以前の私と違うでしょ?」
こなた「確かに違うけど……バージョンが上がっていたし操作性が以前のと違っていて……」
かがみ「おいおい言い訳かよ、こなたらしくない、私が強くなったって認めなさいよ」
そう言えばあれからゲーセンでかがみと格ゲーで弊店まで対戦していたっけな……
こなた「かがみが強くなったって言うより私が弱くなった……最近ゲームしてなかったし……」
かがみ「そう言うのを負け惜しみって言うのよ……」
確かにその通りかもしれない……
こなた「それより誰に会わすの、何処に行くつもりなの、内緒にするもんだからそればっかり考えて寝不足気味、もう教えてもらってもいいよね」
かがみ「寝不足って……そこまで考え込むなよ、まぁその気持ちも分らなくもないけど、ここまで来たら会うまで待ちなさい」
最後まで内緒か。
こなた「まさかつかさって落ちじゃない、言っておくけどつかさとは毎日会っているし昨日だって……」
かがみ「さぁどうかしら、でも改めて会うと違った見方も出来るわよ」
その言い方だとやっぱりつかさか……
なんだか考えて損した気分だ。つかさに会うのになんでこんな回りくどい事をしなきゃいけないのか理解に苦しむ。

429 :こなたの旅 31 2/6 [saga sage]:2014/11/23(日) 14:25:47.19 ID:R0qhAASd0
 車の外を見ると見慣れた風景……
車は止まった。
そこはレストランかえでの駐車場だった。
かがみ「着いたわよ」
こなた「着いたって……レストランかえでだよ」
かがみは車から降りた。これじゃ話が出来ないので私も車から降りた。
私が降りるのを確認するとかがみは車のキーをロックした。
こなた「ちょっと、折角の休みなのにわざわざ何で……」
かがみ「行くわよ」
かがみは私の話しを聞かず歩き出した。
こなた「やっぱりつかさなのか……もういいや、私帰る……」
かがみは立ち止まった。
かがみ「ここまで来て帰る訳?」
こなた「ここまでって……いつも居る場所だよ、それにつかさになら毎日のように会ってる」
かがみ「それがどうかしたか」
こなた「どうしたもこうしたもないよ、誰かと思って夜も眠れなかったのに……」
かがみは溜め息をついた。
かがみ「ふぅ……だから名前を言わなかったの、こうなるのは分っていた」
こなた「つかさは凄いのは分かるけど私はつかさの真似なんか出来ない」
かがみ「だからこうして……」
なんだから頭に血が上ってきた。
こなた「もういいや……」
私は帰り道に体を向けた。
かがみ「こなた」
呼び止めるかがみ。だけどもう聞く耳はもてない。私は走り出した。
かがみ「こなた、待ちなさい!!」
何時になく大きな声だった。それでいてキンキン高い声ではなくむしろ低く唸った様な重い声だった。
その威圧感のせいか思わず立ち止まってしまった。
かがみ「帰るのはいいけどその後、あんた、ちゃんと彼に言えるの?」
何も言えなかった。それを見兼ねたのかかがみは話し始めた。
かがみ「何も変わっていない、きっと結果は同じよ、その時には永遠の別れしかない……確かに会わせたい人と会っても変わらないかもしれない
    でもね、両想いでも添い遂げられない話は珍しくも無いのよ、まして片想いなら尚更、会ってみる価値はあると思う、
    別に気に入らなければその場で帰ってもいい、途中で止めてもいい、退屈だったら寝ても構わない」
こなた「ダメで元々って事?……」
かがみ「ぶっちゃけて言えばその通り、だけど全くの勝算が無い訳じゃないのよ、私は彼に告白できたのだから」
こなた「えっ」
私は車から降りてはじめてかがみの顔を見た。
かがみは私と目が合うとにっこり微笑んだ。
かがみ「ふふ、やっとその気になったからしら……」
こなた「告白って……何時?」
かがみ「あの時、ゲーセンから帰った時よ……私は始めて彼に、ひとしに私の気持ちを伝えた……」
かがみが……告白した?
かがみ「どう、会ってみたくなったでしょ?」
かがみは私に近づき鼻を指で突いた。私は思わず鼻を押さえた。
こなた「でも……つかさに会っても……」
かがみ「誰がつかさだって言った?」
こなた「……つかさじゃないの?」
かがみ「此処で四の五の言っても始まらない、行きましょ、彼が待っているから」
こなた「……彼……彼って、男性なの?」
かがみ「さぁね、でもあんたも以前会った事がある人」
以前会った事がある男性……全く検討が付かない。誰だろう……
それを聞こうとした時、かがみは歩き出し駐車場から出ようとしていた。
かがみがもったいぶるから……行かないといけなくなっちゃじゃないか。
私はかがみの後を追った。

430 :こなたの旅 31 3/6 [saga sage]:2014/11/23(日) 14:26:53.18 ID:R0qhAASd0
 かがみに追いつこうとした時だった。かがみはレストランかえでの入り口を素通りした。
こなた「かがみ、通り過ぎちゃったよ……」
私が呼び止めてもかがみは歩き続けた。
こなた「いったい何処へ連れて行く気なの?」
かがみ「すぐそこよ……もう見えてきたわよ」
こなた「え、そこって……」
かがみの見る方を見るとそこはつかさの洋菓子店……かがみはその玄関前で立ち止まった。
かがみ「着いたわよ」
こなた「着いたって……今は休業中……」
かがみはドアに手をかけて扉を開けた。
こなた「う、そ……何で?」
かがみ「入るわよ」
こなた「え、あ、うん……」
店の中に入ると奥に人の気配がした。つかさかな……
かがみ「オッス!!」
つかさ「あ、お姉ちゃん、こなちゃん、待ってたよ」
かがみ「悪いわね、準備させちゃって」
つかさ「うんん、それよりこなちゃん、来てくれたんだね」
つかさは笑顔で私の方を向いた。
こなた「う、うん……それより店は……レストランは大丈夫なの?」
つかさ「店の鍵をあけたのとちょっと掃除しただけだから問題ないよ」
つかさは鍵をかがみに渡した。
かがみ「終わったら返すわよ」
つかさ「うん、後はお願い」
つかさは私の方を見た。
つかさ「こなちゃん、がんばって!!」
そう言うと小走りにレストランの方に戻って行った。
つかさは私が何故此処に来たのか知っているのだろうか……
もしかしたらかがみから聞いたのかもしれない。私からは一切話していないのだから。
かがみは自分の腕時計を見た。
かがみ「ちょっと早かったかな……」
そう言うとキッチンに向かい薬缶に水を入れて火にかけた。
かがみ「お茶を入れるから手伝って」
こなた「う、うん……」
私もキッチンに入った。
431 :こなたの旅 31 4/6 [saga sage]:2014/11/23(日) 14:28:05.23 ID:R0qhAASd0
 お茶の準備が終わった頃だった。玄関に人の気配を感じた。
かがみ「あ、来たわね」
かがみが玄関に向かった。
みなみ「こんにちは」
こなた「み、みなみ……??」
かがみ「時間どおりね、今日はよろしくお願いするわ」
みなみ「はい……」
いったいどう言う事なのか理解できない。
かがみとみなみは打ち合わせしたかの様な会話をしている。みなみは私がいるのに気がついた。
私と目が合うと会釈をした。
かがみ「あれ、一緒じゃなかったの?」
みなみ「あ、いけない……」
みなみは慌てて玄関を開けた。玄関から入ってきた小さな陰……
ま、まなみちゃん?
まなみちゃんがコソコソと小さい体を余計に小さくさせて入ってきた。
かがみ「まなみちゃん、今日はありがとう」
まなみちゃんは顔を赤らめて黙って頷いた。
こなた「何……何なの……分らないよ?」
かがみ「まなみちゃん、準備お願いね」
まなみ「はい……」
小さな声で返事をするとピアノ方に向かって歩いた。
こなた「ちょっと、かがみいったい何をするつもりなの、教えてよ……」
みなみ「かがみ先輩……まだ何も教えていなかったのですか?」
かがみ「そうよ、話したら絶対に来ないからな」
こなた「……な、何で?」
かがみ「今日はまなみちゃんのピアノの演奏を聴いてもらう……」
こなた「ええ??」
いったい何を言い出すかと思ったら演奏会って……
こなた「……誰かに会わせてくれるんじゃなかったの?」
かがみ「会わすわよ、みなみ……」
かがみはみなみの方を向いて頷いた。みなみも頷いて返した。
みなみ「これからラフマニノフ前奏曲作品23−4の演奏会を行います」
こなた「演奏会……話が違う……」
かがみ「こうしないと来ないからな、よもや帰るなんて言わないわよね」
かがみは演奏の準備をしているまなみちゃんの方を向いてから私を見て睨んだ。
私もまなみちゃんを見た。ピアノの前に座り静かに目を瞑って精神統一をしていた。
これで帰ったらまなみちゃんは……
こなた「……かがみのいじわる……」
かがみ「そうそう、それでよし、でも約束は守っているわよ、セルゲイ・ラフマニノフにこなたを会わせる」
こなた「らふま……のふ……って知らないよ……そんな人」
みなみ「以前ここでまなみちゃんが演奏した曲……覚えていません?」
以前ここで……
考えた、以前此処で……そういば何か演奏していたっけ。
確か……凄く忙しそうな曲だった……
こなた「もしかしてあかずきんちゃんと狼の曲、練習曲とか言ってた?」
みなみは頷いた。
かがみ「覚えているじゃない、でも今回はその曲の事は忘れて」
こなた「……忘れてって……私に音楽、クラッシックなんか聞かせたって何も起きないよ……」
かがみ「そう構えるな、素直に聴けばいいだけよ」
こなた「素直にって……難しいよ」
かがみ「そう私だってクラッシックはそんなに聴く方じゃない、でもねまなみちゃんの演奏を聴いて変わった、それを
    こなたにも体験して欲しい」
こなた「そんな事言われても……」
みなみ「誰かがこんな事を言っていました、人が生まれて最初にする遊びは何かと……それは、絵を描く、踊る、歌う……
    でも周りの影響で次第に描かなくなり、踊らなくなって、歌わなくなる」
かがみ「つまり音楽は人間の根源にある感情表現なのよ、これはお稲荷さんには無いもの、それを使わない手はないわよ、
    こなたにだって分る」
こなた「そうかな……」
「こんにちは……」
玄関の方から声がした。
かがみ「どうぞ、待っていたわよ」
あの声は……声のする方を向いた。かえでさん……
かえで「久しぶりね……全く、一度も見舞いに来なかったのはあんただけだったわ」
こなた「え、あ、お久しぶりっス……」
かがみ「こなたはそんな奴よ」
かえで「知ってる!!」
こなた「い、いや、本当はお見舞いに行くつもりで……でもね」
かえで「もういい、あんたの言い訳は長くてたまらないわ」
かがみ「そう、その通り!!」
かがみとかえでさんが大笑いした。
むぅ、まったくもって何も言えない。
かがみ「もうお身体はいいのですか?」
かえで「つかさの薬のおかげで母子とも健康そのものよ」
かがみ「それは良かった」
かえでさんはピアノの近くの席に座った。
かえで「まなみちゃん、今日はよろしくね」
まなみちゃんは小さく頷いた。
確かにまなみちゃんの手前ここで帰るのはまずいな。何とか寝ないで済めば良いけど……
432 :こなたの旅 31 5/6 [saga sage]:2014/11/23(日) 14:29:27.59 ID:R0qhAASd0
 覚悟を決めてはかえでさんの隣に座った……
そういえばかえでさんはどうして此処に来たのだろう。まなみちゃんの演奏会を聞きに来た。
ただそれだけなのかな。
かえでさんは多趣味だから音楽鑑賞くらいはしているだろうし、何かの楽器を演奏していても不思議じゃない。
かえで「何かしら?」
私と目が合った。
『いったい何で来たの?』
普段ならそう聞いていた。だけど何故か声が出なかった。
こなた「い、いえ……何でも」
かえで「ふふ、あんたらしくないわね、はっきり言いなさいよ」
私は黙って俯いた。かえでさんはクスリと笑うとピアノの方を向いた。
かえで「まなみちゃん、何時でもいいわよ」
まなみ「はい」

433 :こなたの旅 31 6/6 [saga sage]:2014/11/23(日) 14:31:04.38 ID:R0qhAASd0
 まなみちゃんはゆっくりと両手を鍵盤に向けた。
ラフマニノフ前奏曲作品23−4、みなみはそう言っていた。
曲は静かにゆっくりと始まった。
この前聴いた曲とは全く違っている。ゆっくりとそして美しいメロディ……
曲は同じフレーズを繰り返しながら次第に音が力強くなっていく……まるで内に秘めた想いを何度も確かめながら膨らませていくような感じ……
そしてより力強くなりピアノ全体が震えるほど部屋全体が反響した、
そのままサビを聴かせて盛り上がると思った……でも違った。
短いフレーズが何度も続く。高音で終わってまた同じフレーズの繰り返し……
何だろう……これ……
続きが聴きたいのに繰り返す……もどかしい……先があるのに弾けないみたいじゃないか。
……まるであの時の私と同じ……
何度も言おうとしたけど言えなかったあの時の私……
そして曲はそのまま静かに終わってしまった……
434 :こなたの旅 31 7/6 [saga sage]:2014/11/23(日) 14:32:22.06 ID:R0qhAASd0
かえでさんは立ちあがっって大きな拍手をした。
かえで「素晴らしかった」
まなみちゃんは席を立つと私達に向かってお辞儀をした。
かえで「まなみちゃんの気持ちを素直に表したわね」
そう言うと私の方を向いた。
かえで「こなた、この後私の事務室に来なさい」
こなた「えっ?」
かえで「仕事の話じゃないから安心しなさい」
そしてかえでさんは店を出た。
かがみ「ありがとうまなみちゃん」
まなみちゃんはかがみのそばに寄った。そしてかがみは私に店の鍵を手渡した。
かがみ「後の戸締りよろしく!」
こなた「よろしくって……」
かがみ「あんたが何を感じたのか知らないけど私はこの曲で勇気を貰ったのよ……クラッシックなんか聴く機会なんて殆ど無いのに……
    まなみちゃんがピアノを始めたのはつかさの影響よね、そのつかさはけいこさんの影響をうけた……音楽を知らないはずのお稲荷さんが
    私達をラフマニノフに会わせてくれたのよ、何か感慨深いとは思わない?」
こなた「……」
私は何も分らない……
かがみはそんな私を見て微笑んだ。
かがみ「……それじゃ帰ろうか……まなみちゃん、」
まなみ「うん」
二人は店を出て行った。
かがみは私達二人のためだけにまなみちゃんを呼んだのだろうか?
あれこれ考えているうちに店に居るのはみなみと私の二人だけになってしまった。

 みなみはゆっくりピアノの椅子に座った。
みなみ「まなみちゃんの演奏で何を感じましたか?」
みなみはピアノを背にして私を見ている。立とうとしない私を促しているかな。
こなた「……何ていうのかもどかしかった……ためらっているみたい……もしかしてあの曲のタイトルってためらい?」
みなみは首を横に振った。
みなみ「あの曲にタイトルはありません作品23の4番……」
こなた「番号だけって、この前の練習曲にはあかずきんちゃんとかタイトルついてたじゃん?」
みなみ「彼、ラフマニノフは曲に表題をつけるのを嫌がりました、自分の作った曲を聴いてどう感じるのかは聴き手に任せたいと言う考だそうです、
    表題を付けるとそれに執着してしまい聴き手の自由な感性を妨げる……あの練習曲のタイトルは別の人が付けたそうです、
    ですから泉さんがためらいと感じたのならそれはためらいです、例え迷い、別れ、別な物に感じても間違えではないです」
こなた「だからかがみは何も言わないで私をここに呼んだ?」
みなみ「そうですね……」
みなみはピアノの方に向きを変えて微笑んだ。
みなみ「でも……泉さんが「ためらい」と言ったのは嬉しかった、まなみちゃんはおそらくそれを意識して弾いたと思う」
こなた「それってどう言う事?」
みなみ「……来週、まなみちゃんの編入試験があって、それに向かって幾つか曲を選んでいましたけど…さんtね」
こなた「編入って、もしかしてスカウトされたから?」
みなみは頷いた。
こなた「試験があるんだ、そのまますんなりっていかないの?」
みなみ「教授は頑張ってくれました、でもまなみちゃんは大きなコンクールや試験を受けていないので学校側から試験を合格しないと許可出来ないって……」
こなた「実績か……それでまなみちゃんは編入する気になったんだね」
みなみは首を横に振った。
みなみ「まだまなみちゃんから正式に受けるとは聞いていない……」
こなた「それはそうだよ、慣れた学校を離れるのはね、そこには友達だって居るだろうし別れるのは……」
その時気付いた。まなみちゃんはためらっている。その想いをさっきの曲に込めていた……
分る、分るよ。まなみちゃん。
小学3年で別の学校。新しい学校でうまくやっていけるのか。そもそも試験で合格するのか。期待と不安……想像するのには容易すぎる。
それを分らせたのはあの曲……
みなみ「それでこの演奏会で泉さん達が何かを感じたのなら、この曲を試験で演奏するようにまなみちゃんに言おうと、そう私は決めた……
    それが私の出来る最後の仕事……」
悲しそうにピアノを見つめるみなみ……
こなた「きっと合格すると思うよ、少なくとも私はあの演奏に感動したから」
みなみ「そうですか……それをまなみちゃんが聞いたらきっと試験を受ける気になってくれるかもしれない……」
みなみはピアノの鍵盤にそっと手を添えている。
こなた「もう一回あの曲聴きたいな……」
みなみ「え?」
こなた「弾けるんでしょ?」
みなみ「でも……まなみちゃんほど上手くは……」
こなた「それでも聴きたい……」
みなみは深く座りなおした。そして弾き始めた。
そして分った。みなみもまたためらっていたんだなって……

ラフマニノフの調べは部屋いっぱいに静かに、美しく響き渡った。
今は何も考えずただその調べに酔いしれた。

つづく
435 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga sage]:2014/11/23(日) 14:34:24.53 ID:R0qhAASd0
以上です。 全部で7レスでした。

ラフマニノフ前奏曲23の4番。
こなたの心境をみごとに表現していると思い採用しました。
ソースはネットにあると思うので是非聴いてみて下さい。
自分の下手な表現より聴いた方がより分ると思います。

この後すぐに纏めます。
まとめではページを更新して「ページ7」にするつもりです。
436 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga sage]:2014/12/06(土) 08:52:08.70 ID:ykYipwgU0
「つかさのネタノート」の作者です。
先月久々にまとめサイトに書き込みがあったと思ったら自分の作品で驚いた。
4年位前の作品なので半分忘れていました。
でもかなり苦労して書いた記憶があります。

誰か漫画にしてみませんか?
なんてね、自分に絵心があれば描いちゃうんですけどね。
437 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga sage]:2014/12/08(月) 19:58:40.34 ID:k6kLpwfF0
とうとう読んでくれている人も居なくなってきたみたい。

更新が遅すぎたかな。

438 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2014/12/20(土) 22:19:06.43 ID:Sr4Z8mrv0
まとめサイトでコメントをよく書いてくれていたチャムチロさん。
最近書き込みが無くなったけどこのサイトの作品を一通り読んでしまったのかな。
自分の作品にも何作かコメントを入れてくれていたのでいろいろと参考になったしモチベーションも上がった。
スレを見ているかどうかはわかりませんが。どうもありがとう。
439 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2014/12/29(月) 10:54:34.54 ID:Nt1VXdG/0
「つかさのネタノート」をpixivに投下してみました。
もし良かったらどうぞ
http://www.pixiv.net/novel/show.php?id=4721863

「こなたの旅」の続きは作成中ですのでもうしらばくお待ち下さい。
440 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [age]:2014/12/31(水) 19:18:09.72 ID:G3HxGJBSO
保守
441 :謹賀新年 [saga sage]:2015/01/01(木) 02:29:42.39 ID:dKyIPDXH0
こなた「あけおめことよろ」
かがみ「あけましておめどうございます」
かがみ「……」
こなた「どったの?」
かがみ「あんた去年も同じ事言っていたよな、挨拶なんだから略すなよ!」
こなた「まぁまぁ一年の計は元旦にありって言うじゃん」
かがみ「それは全く関係ないだろ!」
こなた「元日早々からそんなに怒っているとろくな事ないよ」
かがみ「怒らせてるのはこなただ!!」

つかさ「去年も同じ様な展開になった様な気がするけど……」
みゆき「気を取り直して……それでは私達もご挨拶をいたしましょう」
つかさ・みゆき「あけましておめでとうございます」


っと言う事で今年もよろしくお願いします。
442 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/01/02(金) 14:36:46.36 ID:C5m941lV0
それでは「こなたの旅」の続きを投下します。
9レスくらい使用します。
443 :こなたの旅 32 1/9 [saga sage]:2015/01/02(金) 14:38:14.94 ID:C5m941lV0

32、

 演奏が終わるとみなみは溜め息をついた。
みなみ「ふぅ〜」
こなた「すごく良かったよ」
みやみ「ありがとう……」
私の言葉を受けてみなみの表情は嬉しいようには見えなかった。
こなた「やっぱり躊躇ってるんだ?」
みなみ「はい……」
こなた「まなみちゃんの事で?」
みなみ「編入が決まれば私の手を離れてしまう」
こなた「別に良いんじゃないの、まなみちゃん学校の授業がつまらないとか言っていたし」
みなみは更に顔が曇った。
みなみ「それは私も聞いていた、だけど……授業と生活ではまた違うもの」
授業と生活……
こなた「それって学校の友達……かな?」
みなみ「小学生の行動範囲は狭いもの、学校が違えばそれは別れを意味する……」
こなた「別れ……」
まなみちゃんの演奏といいみなみの演奏といい……同じ想いなのか……
こなた「そういえば私は転校した事なかったかな、別れといえば小中高大の卒業くらい……それにこうして卒業後も皆と会えるし……泣いちゃうほどの別れなんて」
みなみ「それは私も同じ……彼女の気持ちや想いを考えると……」
こなた「それがさっきの演奏に込められているとしたら……」
暫く私達は何も話さなかった。話せなかった。
444 :こなたの旅 32 2/9 [saga sage]:2015/01/02(金) 14:39:25.14 ID:C5m941lV0
 黙っていてもどうにもならないので店の片付けをし始めた。みなみはピアノの前に座ったまま話し出した。
みなみ「私は酷い事をしてしまったかもしれない、あの曲を試験の課題に選んでしまうなんて……」
私は片づけをしながら話した。
こなた「みなみが選んだの?」
みなみ「彼女と練習中に急用ができて暫く席を空けた、そして戻ってくる部屋からピアノの音が……教えてもいないあの曲が聞こえた、
    そのピアノの音色に私の心を貫いた……」
こなた「まなみちゃんがためらえばためらう程あの曲が映えるって訳ね……凄いじゃん、自分の感情を音楽で表現できるなんて、受かったも同然だよ」
みなみ「でもこれがまなみちゃんの為になるのか、まなみちゃんの本心はどうなのか……」
こなた「……そんなのは受かってから決めれば良いじゃん、編入が決まってからや〜めたでも良いんでしょ?」
みなみ「え?」
みなみは頭を上げて私の方を向いた。
こなた「ダメなの?」
作業を止めてみなみの方を向いた。
みなみ「……教授や学校関係者のご尽力を無にしてしまう……大変非礼で……」
こなた「それで良いジャン、どうせ子供だし、大人が謝ればいい事だし、その位でまなみちゃんの実力が下がるわけない、うんうん」
私は片づけをまた続けた。
みなみはゆっくり席を立つと私の横に来て洗った食器を拭き始めた。
みなみ「手伝います……」
こなた「どうも〜」
暫くするとみなみはクスクスと笑い始めた。
こなた「どったの?」
みなみ「い、いえ……別に」
こなた「別にって……思い出し笑いなんてやらしい〜」
みなみ「その様なものでは……」
こなた「それじゃ何で隠すの?」
ちょっとからかった感じで質問してみた。みなみは真面目な顔に戻った。
みなみ「さっきの泉先輩の話……」
こなた「私の話?」
みなみ「ええ……あんな助言が出来るのに……」
こなた「助言が出来るのに、何?」
みなみは言うのを少し躊躇ったのか少し間が空いた。
みなみ「あんな助言が出来るなら此処に来なくても……告白できたのでは?」
こなた「ほ、ほぇ、ど、どこでそんな話しを?」
みなみ「え、えっと、それは……」
言い難いのか、もう誰かは考えなくても判る。
こなた「かがみ、かがみだな!!」
みなみは黙って頷いた。
こなた「……まったく、かがみはつかさより性質(タチ)が悪い……」
みなみ「……素晴らしいと思います、そして、成功をいのっています……」
こなた「あ、ありがとう……」
こう言われるとそう言うしかないじゃないか……
445 :こなたの旅 32 3/9 [saga sage]:2015/01/02(金) 14:40:29.62 ID:C5m941lV0
 そしてほぼ片づけが終わった頃。
こなた「捗ったね、手伝いありがとう」
みなみ「いいえ……」
私は店を出る支度をしようとした。しかしみなみはキッチンから出ようとはしなかった。
私は立ち止まりみなみの方を向いた。
みなみ「ゆたかからは止めたれていたけど……話さないといけない……」
こなた「え、どうしたの、急に改まって……」
みなみの顔がさっきよりも引き締まっている。
こなた「な、なにかな……」
みなみ「ひよりは……」
ひより……この名前が今出るとは思わなかった。
みなみ「ひよりは泉先輩が窮地におちいっているのは自分のせいだと責めている……」
こなた「責めているって……なんかやらかしたっけ……」
そういえばあの件以来、貿易会社潜入してから一度も会っていない。
みなみ「泉先輩に無責任な推理を話してしまって、それが泉先輩を傷つけてしまった」
無責任な推理って……
まさかメモリー板を運ぶときにひよりが言っていた。
こなた「まさか、神崎さんの正体は真奈美さんじゃないとか言ってたやつ?」
みなみ「はい……」
私は笑った。
こなた「はは、なに言っているの、そんなの関係ない、ひよりが言わなくても私は……」
みなみ「そう私もひよりに言った……だけどひよりはそうは思っていない」
ひよりが一度も私に会わないのは仕事や結婚だけの理由ではなかったか……ひよりらしくもない。
こなた「分った、この件が片付いたら話すよ」
みなみ「片付いたら?」
こなた「そうそう、今会ってもどうにもならないしね、結果はどうであれまず私が決めないと先に進まないよね」
みなみ「……やっぱり話してよかった……」
こなた「まなみちゃんの演奏のおかげかも」
確かにあの曲を聴いてからなにかが変わったような気がする。
みなみはキッチンから離れ店を出る準備をした。
みなみ「家まで送りますけど……」
こなた「いや、かえでさんに呼ばれているしね」
みなみ「帰りの足は?」
こなた「そういえば早番だったけな、つかさにでも送ってもらうからご心配なく、ところでかえでさんは何でこの演奏会に参加したの?」
みなみ「すみません……それは聞いていません」
なるほど、本人に直接きかないと。
こなた「今日はありがと」
みなみ「私はこのまま帰ります」
こなた「おつかれさん」
みなみは店を出た。この店に入って来た時の表情とはちがって足取りが軽やかになっているように見えた。
さてと、私も店を出るかな。
全ての戸締りをして店を出た。
446 :こなたの旅 32 4/9 [saga sage]:2015/01/02(金) 14:41:22.35 ID:C5m941lV0
 みなみは言った。そう、その通り、私はとっくに告白をしている筈だった。
何故出来なかった。
かがみの言うような恥ずかしさが全く無かったと言えばそうでもない。それに彼の反応が怖かったのも事実かもしれない。
だけど……それだけで言えなかったのか……
あれ?
そもそも私は誰かに告白なんかした事あったっけな……
……
なんて考えているうちにレストランかえでに着いてしまった。

つかさ「いらっしゃい……あれ、こなちゃん」
店に入るとつかさがホールをしていた。つかさが接客をしていたなんて……
こなた「はいこれ」
私はつかさの店の鍵を渡した。つかさは鍵を受け取った。
こなた「帰りに私を家まで送ってくれないかな……」
つかさ「うん」
こなた「どうも……ところでかえでさんは?」
つかさ「事務所にいるよ」
私はそのまま事務所に向かった。
つかさ「こなちゃん」
こなた「ん?」
立ち止まって振り向いた。
つかさ「えっと……」
客「すみません〜」
つかさ「あっ……あとでね」
つかさは慌しくお客さんの所へと向かった。
この状況じゃ話すのは無理だよ。
さとて、こっちも呼ばれているし行こう。
447 :こなたの旅 32 5/9 [saga sage]:2015/01/02(金) 14:42:47.07 ID:C5m941lV0
こなた「はいりますよ〜」
事務室のドアを開けた。
かえでさんは事務机に座ってなにやら作業をしていた。後ろを向いているので詳しくは見えなかった。
完全に部屋に入りドアを閉めるとかえでさんは座ったまま椅子を回転させて私の方を向いた。
そして私をじっと見た。
かえで「全く、よりによってこなた、あんたまでお稲荷さんなのか、つかさといい……」
そんな話をしているって事は、経緯をつかさかかがみから聞いたに違いない。
更にかえでさんは私をじっと見る。
かえで「こなたの勤務態度から見て、老若男女のお客様の受け答え、男性スタッフに対する反応、どれも分け隔てなくこなしている、
    それに学生時代も男子生徒と普通に会話していたってつかさが言っていた、当時のつかさはそんなこなたを羨ましがっていたそうだ……
    とても告白できないような人には見えないが……」
そう……私もそう思っていた。
こなた「好きとか嫌いとかそんな感情がなければ誰とでも話せるよ」
かえで「ほぅ、好きでも嫌いでもなければね……」
そう思っていたから直ぐに言えると思っていた。だけどいざ言おうとすると声が出なかった……
こなた「……実際、好きな人の前では全く話していなかったし……声もかけられなかった」
かえで「それは学生時代の話か、初恋?」
こなた「う、うん……」
中学生時代を思い出した。確かに好きだった記憶がある。けど結局何一つ話せなかった……
かえで「まぁ、それは理解出来ない訳じゃないけどね……」
かえでさんは立ち上がった。
かえで「それより、何故彼なの、何故好きになった、少なくともこなた、うんんあんただけじゃない、私達を翻弄して、
こなたを2回も潜入取材させえて、挙句の果てには命の危険にさえ遭った、憎む事はあっても好きになるなんて……」
こなた「……それは神崎さんじゃなくてあやめさんがやった事だから」
かえで「あやめさんって……神崎が化けていただけじゃない……」
こなた「彼女が生きていたらきっと同じ結果になっていたと思うよ……」
かえで「成るほどね……分ったわ」
かえでさんは腕組みをして頷いた。
こなた「成るほどって?」
かえで「あんたが告白出来ない理由が分ったわ、あやめ、神崎あやめのせいだ」
こなた「あやめさん……?」
かえで「あんたはあやめさんと争うのが嫌なんでしょ?」
こなた「争うって?」
かえで「恋敵って言ったら分る?」
こなた「え、あ、何でそれを……」
かえで「かがみさんから聞いたわよ」
……またかがみか……もう私のプライベートは無いのも同じだ……
かえで「折角出逢って友達になったと思ったらもうとっくに亡くなっていて、しかも恋のライバルになってしまった
    それがこなたを躊躇わせている……違う?」
こなた「違うって言われても……分んないよ」
かえで「自分自身で自覚していないだけよ……質問を変える、やめさんが生きていたとしたら何もしないで諦められたか?」
あやめさんが生きていたら……考えた事もなかった。
こなた「生きていたら……とてもじゃないけど彼女と争って勝てる気がしない、無理ゲーだよ……」
かえで「無理ゲーね……もし神崎さんが化けたあやめさんが本物と変わらないとして……私の目からはこなたは良い線行ってるわよ、悲観するな」
こなた「慰めてくれなくても……やり手の記者とレストラン店員じゃ……」
かえで「慰めているつもりはないわよ、私は私なりに客観的に言っているつもりだけど」
こなた「でも……」
『バン!!』
かえでさんは私の背中を叩いた。
こなた「ぐへ、い、痛いよ……」
背中を擦ろうとしたけど両手が背中に届かない。
かえで「焦れったいわね、こなた、あんたはあやめさんには無いものを持っているじゃない」
こなた「……私が何を持っているって……?」
かえで「こなたは生きている、それは何より強い武器じゃない」
こなた「生きている……」
かえでさんは大きく頷いた。
かえで「亡くなった人には思い出しかない、思い出でしか逢う事ができない、でもあんたはこれから思い出をつくれる」
こなた「思い出……」
お父さんと正子さんはそれで……
私は何か後ろめたさみたいなものが無かったのか、それが気になっていた。
それはそのまま私とあやめさんにもって……そう思っていた。
だけどお父さんと正子さんはそうじゃない。かえでさんの言葉と同じだったとしたら……
かえで「心の奥に仕舞っておくって方法もあるけど……それはこなたらしくない、告白しちゃいなさいよ、その後は……そうね、
    自棄酒、自棄食いの付き合いくらいはしてあげるわ、もちろんこなたのおごりでね」
こなた「……失敗前提で話すのかな……」
かえで「ふふ、その方が気は楽じゃない?」
かえでさんは笑った。
確かにそう考えると少し気が楽になったような……
448 :こなたの旅 32 6/9 [saga sage]:2015/01/02(金) 14:44:07.47 ID:C5m941lV0
かえで「どうだ、ゲームより面白いでしょ?」
こなた「ちょ、これはゲームじゃないよ」
かえで「ほぅほぅ、こなたからそんな言葉が出るとは思わなかったわ」
こなた「私だってゲームと現実の区別くらいはできる」
かえで「それでよし、私からはもう何も言う事はない、後は好きになさい」
かえでさんは席に座ると回転させて事務仕事に戻った。
こなた「……そういえば、聞きたい事が……」
かえで「なに?」
こなた「なんでまなみちゃんの演奏を聴きにきたの?」
かえでさんの作業が止まった。
かえで「……これは……仕事の話になる、こなたは休日でしょ、仕事の話は嫌でしょ?」
こなた「確かに嫌だけど、ここはもう仕事場だし、こんな所に呼んでおいてそれはないよ」
かえで「……そうね、確かに……そう」
言いたくないのか、かえでさんもまた何かに躊躇っていたっているって事なのかな。
こなた「話せないなら無理には……」
かえで「ごめんなさい……近いうちに話す」
かえでさんが謝るなんてめずらしい。これ以上聞いてもしょうがないか。
こなた「それじゃつかさの仕事が終わるまで更衣室で待ってます」
私が事務室を出ようとした。
かえで「待ちなさい」
こなた「はい?」
かえで「まなみちゃんの演奏……どうだった?」
こなた「どうだったって……とっても良かった」
かえで「今時小学生でも難曲をスラスラ演奏するのは珍しくも無い、だけど彼女は、かえでちゃんが他とちがうのは
    叙情的な表現まで出来ている……あの曲を彼女なりに理解して更に感情も込めるなんてプロのピアニストでも難しいわよ」
こなた「きっと先生が、みなみの教え方が上手かったんだよ」
かえで「そうね先生の指導がよかったかもしれない……だけどこなた、あんた演奏が終わってから何もしないでボーとしていたじゃない?」
こなた「ボーとしていた?」
かえでさんは椅子を回転させて私の方を向いた。
かえで「演奏が終わって感動したなら拍手をするのが礼儀でしょ……」
こなた「あ、それは……あまりにもまなみちゃんの演奏が凄くて……」
かえで「まなみちゃんこなたを見ながら悲しそうにしていたわよ」
しまった……確かに私は拍手をしていなかった。
こなた「ど、どうしよう」
かえで「……どうしようって私に聞くな……つかさと帰るならやる事があるでしょ?」
こなた「まなみちゃんに会いに行く」
かえで「それで良い、同じ想いがあるならお互いに通じるものがあるかもね」
こなた「サンキュ、かえでさん」
かえで「いいえ……行ってきなさい」

 確かにかえでさんの言うとおりだ。あやめさんはもう5年も前に亡くなっている。
それに私は私、あやめさんの代わりじゃない……
449 :こなたの旅 32 7/9 [saga sage]:2015/01/02(金) 14:45:33.72 ID:C5m941lV0
 時間的にどのくらいだっただろうか。スマホのゲームで暇つぶしをしていたせいかかもしれない。
つかさの勤務時間が終わり私はつかさの車の前に居た。
つかさ「おまたせ〜」
つかさは車のキーを取り出した。
こなた「つかさ……ちょっといいかな、私の家に送る前にまなみちゃんに会いたいんだけど……」
つかさ「別にいいけど……どうして?」
こなた「い、いや……なんて言うのか、拍手を忘れちゃってね」
つかさ「拍手を……忘れた?」
つかさは首を傾げた。
こなた「かえでさんが感動したら拍手しなきゃだめって言うから、会ってちゃんと拍手しないとね」
つかさ「そうなんだ〜」
つかさは車のドアを開けようとしたけど止めて私の方を向いた。
つかS「まなみ……編入したらどうなるかな……」
珍しくつかさが凄く悩んだ顔をしている。
こなた「……まだ試験に合格していないんでしょ、まぁ素人の私が凄いって思えるくらいだから合格はするとは思うけどね」
つかさ「まなみも悩んでいるみたいで……私、どうしようかなって……」
こなた「母親が困っちゃ子供はもっと困っちゃうんじゃないの?」
つかさ「そうだけど……」
こなた「ひろしはどう言っているの?」
つかさ「まなみの好きなようにすれば良いって……」
まぁそれはそうだなその通り。
つかさ「だけどまだ小学生なのにそんな事決められるのかなって、私が小学生の頃なんて……」
こなた「私がその頃はゲームばっかりしてたかな……」
そう考えるとまなみちゃんに決めさすのは酷かもしれない。
こなた「こうしててもどういようもないじゃん、行こうよ、会って話してみればいいと思うよ」
つかさ「う、うんそうだね」
つかさは車のドアを開けた。

 つかさの車は動き出した。
もうつかさの運転には慣れてしまった。ゆい姉さんの運転だと思えばどうって事はない。
……
見慣れた町並み……通り過ぎる景色。
何度も何日も……何年もこうしてきたけど……
そういえば私はつかさに一度も聞いていなかった事があった。
つかさも自分からは話そうとしない。だから聞かなかった。
違う、聞けなかった……聞く事ができなかった。だけど今なら……
こなた「つかさ……ひろしに告白したよね……どうやって告白したの……」
文章にしたらたった一行で済むような事なのに……
つかさ「え、え……こ、告白……」
急にどもってしまった。顔も少し赤くなっているみたいだった。
こなた「……今更照れる事なの、もう済んだ事なのに?」
つかさ「そんなの言ったって、恥ずかしいよ……」
こなた「そんなに恥ずかしくてよく告白できたね?」
つかさ「え、だって……」
そう、私はその理由が聞きたい。私はつかさをじっと見てつかさの答えを待った。
つかさ「だって、好きだから……」
こなた「好きだから?」
つかさ「うん!!」
こなた「それだけ?」
つかさ「えっ、他に何か必要なの?」
驚いた顔のつかさ。
逆に質問されてしまった。他に何が必要なのか……
私が何も言えないのを心配したのか私よりも先につかさが放し始めた。
つかさ「すっごく恥ずかしかった、だけどそれより私の想いを伝えたかったから……
    こなちゃん、神崎さんが好きなんだよね?」
こなた「え、あっ……う、うん……」
つかさ「それで神崎さんはかんざきあやめさんがすきだったんだよね?」
こなた「……う、うん……」
つかさ「私……こなちゃんだったとしてもやっぱり神崎さんに言うと思う……」
こなた「私から言えばつかさは勇者そののだよ……真似できそうにないよ」
つかさ「だったら勇者になっちゃえば?」
こなた「……はは、つかさは単純でいいよ」
……こんな話、今までした事がなかった。
もっと早くしていればもうちょっと勇気が上がったかもしれない。
確かにあの音楽を聴いていなかったらこんな話すら出来なかった。
つかさ「私、ひろしさんと一緒になるなんて考えてもなかった、こなちゃんに助けられたしね……」
でも告白をしなかったらつかさはひろしと一緒にはなれなかった。
こなた「ふふ……そうか、なるほど……」
つかさ「こなちゃん?」
こなた「こんどはつかさが私を助けてくれるかもね」
つかさ「え、もしかして告白する気になったの?」
こなた「……出来るかどうかは分らないけど……やってみる」
つかさ「すごい、すごい、がんばってね」
さて、そうとなったらまなみちゃんの件を片付けないと。
そんな私の思いを知ってか知らずかつかさはアクセルを強く踏んだ。
450 :こなたの旅 32 8/9 [saga sage]:2015/01/02(金) 14:47:14.41 ID:C5m941lV0
つかさ「ただいま〜」
つかさの家に着いた。まずはつかさが家の中に入った。しばらくするとつかさが玄関から出てきて私を家に入れた。
こなた「おじゃましま……ってかがみ?」
玄関の中に入るとかがみが立っていた。
かがみ「来たわね、来たってことはまなみちゃんに会いに来た、ちがう?」
こなた「その通りだけど……まなみちゃんは?」
かがみは階段の方を向いた。
かがみ「私がここに住んでいた時の部屋にいるわよ、夕食を過ぎても出てこないのよ……」
つかさ「こなちゃん……」
かがみ「こなた……」
心配そうに私を見るつかさ。少し怒っている様にも見えるかがみ。
こなた「分ってる、つかさ……かがみ」
思っていたより深刻なようだ。私は階段を上がった。かがみの部屋改めまなみちゃんの部屋の前に立った。
『コンコン』
ノックをしたけど反応がない。構わずゆっくりと扉を開けた。
こなた「こなただよ……入っていいかな?」
机に座っているまなみちゃん。ゆっくりこっちを見ると黙って頷いた。
私は一歩部屋に入って扉をゆっくり閉めた。
まなみちゃんの表情が沈んでいる。この重い雰囲気……
さて、どうしたものかな……
考えても何も出てきやしない。
ここは思った通り、感じた事を言うしかないか。
こなた「さっきやった演奏会……今更なんだけど……ごめんね拍手できなくて……」
まなみは私を見た。
まなみ「……演奏、ダメだった……から」
やばい、やっぱりそう思われている。
こなた「うんん、違う、本当に拍手出来なかった、あまりに凄い演奏だったから……出来なかった……」
まなみちゃんは疑いの眼で私を見ている。どうしよう……
こんな時は……言い訳になるかもしれないけどやるしかない。
私はまなみちゃんに近づいた。
こなた「隣……座っていいかな?」
まなみ「う、うん……」
私は隣に座った。こんな状況じゃなければゲームでもしている所
……まてよ、ゲームか
こなた「編入試験受けるんだってね?」
まなみ「う、うん……」
こなた「今の学校から離れるのは嫌なの?」
まなみちゃんは何も言わなかった。
こなた「まなみちゃん、ピアノはすきなの?」
まなみちゃんはなんで今更そんな事を聞くのみたいな驚いた顔をした。
こなた「演奏会とかとっても緊張しているし、つかさとかから無理矢理習わされたとかはないの?」
まなみちゃんは激しく首を横に振った。
なるほどね……
それならもう私からは何も言う必要はない。
こなた「実はね、今ゲームをしていてね……そのラスボスが強いのなんのって」
まなみ「げーむ、なんのゲーム?」
こなた「オリジナルロールプレイング」
まなみ「お姉ちゃんでも倒せないの?」
こなた「何も出来なくて逃げて帰ったくらいだからね……」
何も出来なかった。そのラスボスの名はためらい。
まなみ「すごく強いんだね……」
こなた「そう、強い、今まで戦ってきたラスボスのどれより強い……だけどね、
    さっきのまなみちゃんの曲を聴いたらね……勇気が出てきて中ボスを2体もやっつけたよ」
そう、かえでさんとつかさに聞けない質問をする事ができた。
まなみ「ほ、本当?」
まなみちゃんが少し笑った。
こなた「うんうん、本当、あともう少しなんだよね……あともう少しでラスボスを倒せそう、
もう一度あの曲を聴いたら倒せそうだよ」
まなみちゃんは立ち上がった。
まなみ「それじゃ聴かせてあげる……えっと、えっと……良いよって言ったらピアノの部屋に来て」
こなた「うん、よろしく」
まなみちゃんは小走りに部屋を出て行った。

451 :こなたの旅 32 9/9 [saga sage]:2015/01/02(金) 14:48:21.67 ID:C5m941lV0
 少し時間を置いて部屋を出た。
かがみ「やるじゃない、見直したわよ、こなたの今の状況をゲームに例えるなんて、
    それならまなみちゃんでも理解できる」
階段を上り切った所につかさとかがみが居た。
こなた「え、聞いてたの……趣味悪いよ……」
かがみ「素直に喜びなさいよ、私がこなたを褒めるなんて滅多にない事」
こなた「そうだね……ねぇ、かがみ」
かがみ「何よ」
こなた「この前言ってた作戦……考えてくれてるかな?」
かがみ「……なによ急に……それは考えているわよ」
こなた「それじゃ私に聞かせて、その作戦」
かがみ「こなた……あんた、裁判は当分終わらない、まだ時間はあるけどいいのか?」
こなた「まなみちゃんとの話しを聞いていたなら分るでしょ、もう少しなんだ、だから
    気が変わらない今のうちに白黒はっきりさせたいから……」
かがみ「そう、それなら……」
まなみ「良いよ〜来て」
奥の方からまなみちゃんの声がする。
こなた「その前に勇気をもろらってこないとね……」
かがみ「そうね……いってきな」
つかさ「ピアノの部屋はまつりお姉ちゃんが使っていた部屋だから」
こなた「ありがとう」
さて、行こう、私の最大作戦の始まりだ。


つづく
452 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2015/01/02(金) 14:52:47.87 ID:C5m941lV0
以上です。

次の投下で多分終了となります。
少し時間を下さい。多分春までには投下できると思います。
本当は去年で完結するつもりでしたが遅筆ですみませんでした。


pixivの件はこのスレの宣伝のつもりで投下しましたが今の所反応はありません。
しばらく様子を見て反応が無いようならpixivの作品は消す予定です。

この後すぐに纏めます。
453 :保守 [saga]:2015/01/17(土) 22:03:37.20 ID:kIebeLB/0
保守です。

書き込みが無い なので書き込みます。

感想等は抜きにして、「つかさの旅」シリーズを全部読んでくれている人はいるのかな?
全部と言っても完結したわけじゃないけど……
居るのかどうかだけ知りたいです。
ちなみに居ても居なくても書き続けますけどね。


ちなみに何かお題があれば作ってみてもいいですよ。
今の所参加者は一人だけですけどねw
454 :保守 保守 [saga sage]:2015/02/01(日) 23:39:18.60 ID:wi9fNth30
つかさ「どうしたの?」
こなた「いやね、このサイトを宣伝しようと思ってね……」
つかさ「そうだよね、最近誰も来ていないもんね」
こなた「そうでしょ、いくらなんでも寂しいからね……」
つかさ「それで、どうやって宣伝するの?」
こなた「このサイトの作品を宣伝に使って呼び込む」
つかさ「え、このサイトの……勝手に使っていいの?」
こなた「それは大丈夫、私の作品を使うから誰も文句は言わないと思う」
つかさ「それなら安心だね……それで効果は?」
こなた「ん……もう一ヶ月くらい経つけどわかんない、まとめのサイトでアクセス数を見ていると若干増えた?????」
つかさ「それならもっと作品を出してみたら?」
こなた「数じゃないような気はするけど……」
つかさ「他の作品は、こなちゃんいくつも出しているでしょ?」
こなた「どうかな、自分の作品の中でもアクセス数が多い方のを選んだのだけど……」
つかさ「適当にだしたんじゃないんだね……いろいろ考えているんだね……」
こなた「もう少し様子をみるか」
つかさ「そうだね」

宣伝の効果はまだわかりません。

保守でした。
455 :節分 [saga sage]:2015/02/03(火) 21:38:44.22 ID:C2UtSWWk0
つかさ「あっ!!」
こなた「どったの?」
つかさ「豆まき用の豆を買うのをわすれてた」
こなた「ん〜ほら、丁度そこに売ってるじゃん」
つかさ「ほんとだ……えっとどれにしよっかな〜」
こなた「ん、なんでそれに?」
つかさ「豆がいっぱいあるからだけど?」
こなた「ふ〜ん、つかさの家じゃちゃんと豆まきするんだね」
つかさ「え、こなちゃんはしないの?」
こなた「後片付けが大変じゃん、タンスの裏にでも入ったら取るの苦労するよ」
つかさ「そうだよね〜」
こなた「ねね、豆まきで鬼は誰がやるの?」
つかさ「おに?」
こなた「あああ、言わなくても判るよ、かがみしかいない」
つかさ「お、お姉ちゃん??」
こなた「そそ、あのツインテールはどう見ても角を隠すためのカモフラージュだよね
    それにツンデレにツインテールが多いのは鬼が潜在意識にあるって説が……???つかさ聞いてる?」
つかさ「う、後ろ……」
こなた「うしろ……うげ……」
かがみ「潜在意識がどうしたって?」
こなた「……鬼だ逃げろ!!」
かがみ「コラ、逃げるなってもう居ないし……全く油断も隙もありゃしないわ」

456 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2015/02/06(金) 21:26:31.83 ID:3o5GIWJR0
避難所が停止されました。
今の所不便はないのでこのままにいたします。
457 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2015/02/08(日) 21:20:04.17 ID:GYe47cgu0
ここまで纏めた

まとめを避難所に報告しなかったから
停止になってしまったようです。
458 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2015/02/13(金) 23:26:19.93 ID:PiiUov7x0
鬱・悲劇系がかなり読まれている。
需要があるわりには作品数が少ない。
っと言っても自分自身もこのジャンルは一作も作っていない。
書いていると自分自身が鬱になりそうで作れない。

459 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2015/02/21(土) 20:23:00.20 ID:ujHdA9SU0
まとめサイトの
「作者別作品」の利用ルールを変更しました。
利用し易くしたつもりです。
460 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2015/03/01(日) 17:38:04.14 ID:mA+4OjlO0
保守
461 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [age]:2015/03/03(火) 08:16:59.31 ID:OTuc29UH0
462 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2015/03/08(日) 20:18:55.41 ID:xiAKYQ4t0
保守です。

このサイトの宣伝でpixivにまとめサイトの「卒業」を投下しました。
自分の作品はこれ以上投下しないつもりです。

投下しても良いって人がいましたらよろしくです。
463 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2015/03/25(水) 21:49:48.47 ID:sN6uUazg0
保守
464 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2015/03/30(月) 18:21:18.04 ID:bT5qy34n0
pixivの宣伝効果について

 書き手も読み手も増えていないようです。
 pixivに投下した作品自体もあまり読まれていないようですね。
 このサイトはらき☆すたを知っているか好きな人が来るが、
 pixivはらき☆すたを必ずしも知っている人だけとは限らない。
 それに、イラストについてプロレベルの作品が投下されているくらいなので
 同様に小説もかなりレベルが高いのかもしれない。
  自分みたいに素人で、しかも片手間で書いているような作品は無視されてしまうのかもしれませんね。

 宣伝はこのまま放っておきます。誰かが読んでくれる可能性が少しでも増えるのを期待します。

 「こなたの旅」は書いているのですがもしかしたらまだ終わらないかもしれません。
 待っている人も居ないようなのでゆっくり書きますよ(笑)

以上保守兼お知らせ



 
465 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [age]:2015/04/10(金) 20:19:44.87 ID:jGKWyb2SO
466 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/04/16(木) 23:29:12.87 ID:k0Qy1ckh0
何かお題があれば書き込んでください。

少し気分転換をしたい。
467 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/04/17(金) 20:16:03.22 ID:xpned+KK0
街頭インタビュー
これなら鬱系に……ならんやろ……
468 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/04/22(水) 21:23:32.39 ID:C4eF5yA40
街頭インタビュー 

難しいですね。

時間がかかるかも知れませんが考えてみましょう
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