忍「隠し事、しちゃってましたね……」 アリス「……シノ」

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2 :1 [saga]:2013/09/01(日) 04:39:08.49 ID:ECufGEjL0
「ハロー!」

「コニーチハー!」


「ハロー!!」

「コニーチハー!!」


 この日、イギリスのとある場所で現出した光景は、見た人の胸を打ったという。
 異なった言語を、お互いが送り合い、別れを告げる――
 言語の壁を飛び越えて、彼女たちは互いの心に、確かに近づいたのだ。


「……シノ」

 去っていく車を熱い視線をもって見送りながら、少女は静かに決意する。


「――いつか、私も」
3 :1 [saga]:2013/09/01(日) 04:39:41.09 ID:ECufGEjL0
――二年後


母「忍、忘れ物は大丈夫?」

忍「はい、大丈夫ですっ!」ニコッ

母「……行ってらっしゃい」

忍「はい、行ってきます!」ガチャッ


バタン・・・


母「……うーん」

勇「どうしたのお母さん?」

母「ああ、勇。いや……なんというか」


勇(なるほどね……)

勇「――シノなら、大丈夫でしょ」

母「ええ、そうなんだけど、そうなんだけど……!」

母「色々と惜しいな、って……」

勇(――それは、ちょっと同感かも)


――集合場所


忍「……はぁはぁ」

忍「ま、まだ誰も来てないみたいですね」

陽子「遅いぞ、シノー!」ガシッ

忍「ひゃぁっ!?」ビクッ


忍「よ、陽子ちゃん」

陽子「うーん……なんというか、あれだ」

陽子「――やっぱり、そのカッコなんだな」

忍「……はい」

忍「ま、まぁ……わ、私たちの通う高校は、校則ゆるいことで有名ですし」

陽子「……『私』?」ピクッ

忍「さ、さすがに高校生ですし!」

陽子「――おおう」クラッ

陽子(シノの高校生活は……もしかして、私たちにかかっているのか!?)アセアセ


綾「なに中途半端に重い表情してるのよ」

陽子「うわっ、あ、綾!?」ビクッ

忍「おはようございます、綾ちゃん」

綾「……お、おはようシノ」

綾「――ええと、その」

綾「に、似合ってる、わね」

忍「本当ですか! ありがとうございます!」
4 :1 [saga]:2013/09/01(日) 04:40:24.93 ID:ECufGEjL0
(↓小声)

陽子「……いいか、綾?」

綾「な、なによ?」

陽子「もしかしたら、私たちは、結構な責任を背負っているのかもしれない……」

綾「――わ、分かってるわよ」

陽子「まず、だ。シノの服装でおかしな所はないか?」

綾「……大丈夫じゃない。その――む、胸も」

陽子「ああ――中学の頃より、明らかにスキルアップしてるな……」

陽子「と、ともかく、何としてでもフォローするぞ! 友達として!」グッ

綾「ええっ!」グッ

(↑小声)


忍「もう、二人で何を内緒話してるんですか?」

陽子「い、いや、その」

綾「……シノ」ガシッ

忍「なんですか、綾ちゃん?」

綾「わ、私たちも頑張るから!」

綾「シ、シノも頑張るのよ!」

忍「……ああ」

忍「はい。大丈夫ですよ、綾ちゃん」

綾「……ふぅ」

陽子「――ありがとな、綾」

綾「べ、別に陽子のためじゃっ……!」

忍「二人とも、仲良しさんですねぇ」

綾「シ、シノまで!」



――高校


綾「……とりあえず」

陽子「三人とも、同じクラスだっていうのは救いだな」

綾「ええ」

綾「最初の1年間の振る舞いが問われている、と言っても過言ではないんだから……!」ゴゴゴゴ

陽子「――そう、だな」

忍「……ふふっ」ニコニコ


忍(私は、本当にいいお友達に囲まれてます)

忍(陽子ちゃんと綾ちゃん。この二人と、同じ高校で、同じ時を過ごせるなんて――)

忍(それに……)

忍「今日は、私のホームステイ先の子もやって来るそうですし」

陽子「……は?」ピタッ

忍「楽しくなりますねー……ふふっ」

綾「……はい?」ピタッ
5 :1 [saga]:2013/09/01(日) 04:41:03.23 ID:ECufGEjL0
陽子「ちょ、ちょっと待った!」

忍「? どうしたんです、陽子ちゃん?」

綾「ど、どうしたもこうしたもないわよっ!」

忍「あ、綾ちゃんまで……」

陽子「なんで、私たちに知らせてくれなかったんだ!」

忍「え……昨日、メールで送っておいたはずですけど――あっ」

忍「――ごめんなさい、送信失敗したまま寝てしまったみたいです」

綾「……あ、あはは」

綾「もう、シノらしいわねー」クスクス

陽子「おい、綾!? なんだその、この場にそぐわない菩薩顔は!?」

綾「あら、陽子? もう、そんなに騒いでもしょうがないじゃない……うふふ」ニコニコ

陽子「あ、綾が壊れた……!」


烏丸「皆さん、そろそろ教室に入ってくださーい」

陽子「あ、す、すみません」

綾「もう、忍ったら、おバカさん」コツン

忍「えへへ、綾ちゃん、つつかないで下さいよー」

陽子「二人とも、現実は待ってはくれないんだぞ……!」



――教室


(↓ヒソヒソ話)

綾(ど、どどどうするの陽子!? こ、このままじゃ――!)アセアセ

陽子(現実に戻ったら戻ったで、分かりやすいな綾は……)アキレ

綾(なんで陽子はそんなに落ち着いてるのよ!?)

陽子(そのセリフ、そっくりそのまま、さっきの綾に返すぞ!?)


烏丸「二人共ー? 初日から仲良いのはいいけど、話は聴いてくれると嬉しいな」

陽子「あ、す、すみません」

綾「ご、ごめんなさい」


(↓さらにトーン下げる)

陽子(ああ……忍から聞いた感じ、ホームステイ先の子は忍の『あれ』を知らないままだろう)

綾(それは、私も同感だわ)

陽子(そして、そのままここにやって来るということは……だ)

綾(――ゴクリ)
6 :1 [saga]:2013/09/01(日) 04:41:34.40 ID:ECufGEjL0
烏丸「さて、初日からですがっ!」

烏丸「今日は皆さんに、重大な発表がありますっ!」

女子「そ、それは?」

烏丸「な、なんとっ!」


烏丸「イギリスからはるばる、このクラスに転入生がやって来ましたー!」

全員「……え、えええええ!?」ザワッ


男子A「な、なぁ、フツー新学期初日から転入生来るか?」

男子B「……ま、まぁ、この学校ユルいからね」

男子A「――そ、それもそうか」

男子B「それでいいのかな……?」


陽子「くっ、この学校の風紀の緩さがここに来て仇となるとは……」

綾「と、ともあれ、もうこうなったら……覚悟を決めるしか!」



烏丸「それでは! カータレットさーん?」

アリス「ハイッ!」

全員「……おお!」



烏丸「それでは、自己紹介をお願いします!」

アリス「えと――は、初めまして! アリス・カータレットといいます!」

全員(……か、可愛い!)


アリス「イギリスからやって来ました! み、皆さん、よろしくお願いします!」

全員(……日本語うまっ!)



アリス「――あっ!」

陽子「!」

綾「!」

忍「……!」

アリス「シ……シノー!」ダッ

忍「――ア、アリス!」ダッ

全員(え、えええっ!?)


アリス「ずっと――ずっと、会いたかったよー!」ダキッ

忍「アリス……私も、会いたかったです」ダキッ

アリス「シノー!」クルクル

忍「アリスー!」クルクル
7 :1 [saga]:2013/09/01(日) 04:42:27.54 ID:ECufGEjL0
陽子「……だ、大丈夫、か?」

綾「と、とりあえず」

陽子「まぁ、クラス内はざわついているけど、それはいいとして」

綾「――あの子の様子、大丈夫よね?」






「……あれ?」


 その時、少女にとある疑念が芽生えた。
 おかしい。何かヘンだ。

 抱きついた時の感覚。
 ずっと会いたかったはずの人に会えたことは、何とも素晴らしい。
 しかし……しかしだ。

 少女は、目の前の光景を見た。
 2年前には平坦とも言えた「そこ」は、歳相応の成長を遂げていた(「自分と比べて、なんて大きい……」という感情は、今は措く)

 やはりヘンだ。
 この「部位」の感覚は……?

「ねぇ、シノ……?」
「なんですか、アリス?」


「――こ、この辺りの感触がなんか」






陽子「せ、先生!」ガタッ

烏丸「ひゃっ!?」

綾「も、もうそろそろ、HRも終わりの時間です!」ガタッ

綾「そ、そろそろ、号令をとった方がよろしいのでは?」

烏丸「……そ、それも、そうですねぇ」

烏丸「そ、それでは皆さん、き、起立!」




――休み時間


陽子「……や、やぁ、シノ!」

綾「へ、ヘロー、カータレットさん!」

陽子(綾……焦りのせいか、初対面の人ともこんなにあっさりと――)


忍「あ、陽子ちゃん、綾ちゃん!」

アリス「……ヨーコ? アヤ?」

陽子「あ、ああ。ええと……な、ないすとぅーみーとぅ?」

アリス「――Hello! Nice to meet you!」

陽子「うお!? 完璧な発音!」ビックリ
8 :1 [saga]:2013/09/01(日) 04:43:01.31 ID:ECufGEjL0
綾「と、ところで、シノ?」

忍「なんですか、綾ちゃん?」

綾「――こ、このカータレットさんが」

忍「はい。ホームステイ先の子です!」

アリス「シノー!」ダキッ

忍「アリス〜!」ダキッ

綾(――まずい!)

陽子(抱きついた!)


アリス「……」

アリス「えへへ」

忍「?」

アリス「シノ、やっぱり温かいや」

忍「……アリスも、お日様みたいに温かいです」

アリス「シノ――」

忍「アリス――」


綾「……だ、大丈夫みたいね?」ホッ

陽子「で、でも、さっきのは?」

アリス「……ねぇ、シノ?」

忍「はい、アリス?」


アリス「今日、シノのお家、行ってもダイジョウブ?」

陽子「!」

綾「!」

忍「……今日、来るんでしたね」

忍「ええ。ダイジョウブですよ!」

アリス「やったー!」

忍「わー!」


陽子「……急展開、ってやつ?」

綾「ええ――それも、限りなく危ない、わね」

二人「…………」
9 :1 [saga]:2013/09/01(日) 04:43:30.50 ID:ECufGEjL0
――すっとばして下校時刻


アリス「シノのお家は、どんな所なんだろうなー」

忍「アリスが気に入ってくれるといいですけど……」

アリス「ダイジョウブ! シノの所なら、どこだって幸せだよ!」

忍「ア、アリス〜!」ダキッ

アリス「シノ〜!」ダキッ


陽子(――通算・10回目くらいのやり取り)

綾(なし崩し的に、私たちも上がらせてもらうことにはなったけど)

陽子(状況、依然として悪し)

綾(一刻の予断も許さないわね……)



――大宮家

勇「あら、いらっしゃい」

陽子「勇姉!」

勇「あら、陽子ちゃん。こんにちは」

綾「……こ、こんにちは」

勇「あら、こちらは――」

陽子「ああ、綾だよ。私たちの友達の」

勇「あらあら……初めまして」

綾「は、初めまして!」


綾(す、凄まじい美人――!)

綾(だ、ダメよ綾! こ、ここで押し負けちゃ――!)

綾(し、忍のピンチを救うためにも!)

綾(……よ、陽子も見てるし!)ジーッ

陽子(何故、こっちに熱視線を送る、綾……)ビクッ
10 :1 [saga]:2013/09/01(日) 04:44:02.55 ID:ECufGEjL0
アリス「わー、シノのお家、広いねー」

忍「ふふっ、アリスのお家の方が大きいですよ」

アリス「もー、シノってば……」


陽子(って、おーい!)

綾「シ、シノ! な、なんで、アリスまで!」

勇「あら? もう挨拶済ませて、入ったわよ?」

陽子「い、勇姉……アバウトすぎだよ」


勇「お母さん出かけてるから」

勇「みんな、とりあえずリビングでお茶にでもする?」

陽子「そ、それいいな!」

綾「さ、賛成です!」

アリス「日本のお茶……飲みたいっ!」ワクワク

忍「……」


忍「あの、私ちょっと、部屋で支度してから行きますね」

陽子「!?」

綾「!?」

勇「……あら、そう」

勇「それじゃ、また後でね」

忍「はいっ」


陽子「」

綾「」

勇「……」

勇「――それじゃ、私たちはお茶にしましょうか」

アリス「お茶!」

陽子「……」

綾「……」

二人(な、なんてことに……!)



――大宮家・リビングルーム


勇「どう? 美味しい?」

アリス「うん、とっても!」

アリス「イサミ、すごく上手!」

勇「ふふ、ありがと」

陽子「……お、美味しいなー」

綾「そ、そうねー、このお茶菓子もまた」

アリス「……二人共、声震えてない?」

二人「そ、そんなことは!」
11 :1 [saga]:2013/09/01(日) 04:44:28.78 ID:ECufGEjL0
勇「……あ、そうだ」

勇「アリス。トイレはそこの突き当りだから」

勇「お茶飲むと、トイレ近くなっちゃうだろうから……気をつけてね?」

アリス「――あ」

アリス「うん。ありがとう」

陽子「……!」ハッ

アリス「じゃあ私、ちょっと行ってくるね」ガチャッ

勇「行ってらっしゃい」ヒラヒラ


綾「――ああ」

綾(こ、このままじゃ、もしかしたら――!)

陽子「……なぁ、勇姉?」

勇「ん? どうしたの、陽子ちゃん?」

陽子「もしかして、だけど」


陽子「アリスに、きっかけ作ったりした?」


綾「!」ハッ

勇「……」

勇「鋭いわね、陽子ちゃんは」

陽子「――勇姉、やっぱり」

勇「ねぇ、二人共? 綾ちゃんも」

綾「は、はいっ」

勇「……二人が、シノのために凄く頑張ってくれてるのは、よく知ってる」

二人「……」

勇「でも――」


勇「きっと、どこかで……歯車は回らないといけないと思うの」

陽子「……勇姉」

綾「――陽子」
12 :1 [saga]:2013/09/01(日) 04:45:11.84 ID:ECufGEjL0


 
 ――私は、一つの「禁」を破ってしまった。
 それは、「日本に来たら、決して嘘はつかない」ということ。

 日本人は、嘘が嫌いだ。
 だから、私はその「禁」を作った、のに――


「……シノ」


 吸い寄せられるように、脚は階段を昇る。
 一歩、一歩。
 トイレの場所を教えてもらいながら、私がやっていることは――


「シノ……」

 大好きな人の名前。
 それを何度も何度も紡ぎ出しながら、私は一つの扉の前に立つ。

 疑念は晴れてくれなかった。
 いや、むしろシノが好きだからこそ、その疑念は大きくなっていった。
 教室で、抱きついた時のシノ。
 その時の――感触は。

「――シノ?」

 コンコン、とノックする。
 本当は、ノックすらしたくなかった。
 すぐに入って……確かめたかった。
 それでも、私の中の理性はそれを押しとどめてくれた。

「……アリス」

 中から、シノの声がした。

「――いいですよ。入って、下さい」

 いつもと何ら変わらない、シノの口調。
 シノはどんな表情をしているのだろう……?
 心拍数が上がって仕方がない。
13 :1 [saga]:2013/09/01(日) 04:46:02.96 ID:ECufGEjL0



「……シノ!」

 バタン、と。
 大きな音を立てて、ドアは開いて、


 そして。


 目の前には、ベッド。
 その上にいる、大好きな人。
 会いたくて会いたくて、仕方がなかった人。

 その人は今、私の前で、私と真っ向から視線を交わす。

「……私、謝らないといけませんね」

 シノは、ちょっと照れくさそうに、そう言った。
 その顔も、愛しかった。

「――シノ」

 ベッドの上に転がっているのは、何だろう?
 おそらく――「詰め物」だろう。
 それは、多分、きっと……

「……ね、アリス?」

 さっきからシノは、脱いだ服を上半身に当てている。
 思考が暴走しているせいか、私はそんなことも考えられなかった。
 裸のシノが、目の前にいる。

 それ、なのに――


「――私のこと、嫌いになっちゃいましたか?」


 ハラリ、と。
 そんな音を立てて、服は静かにベッドの下に落ちる。
 つまり、私の目の前には、上半身裸のシノがいる――
14 :1 [saga]:2013/09/01(日) 04:46:59.49 ID:ECufGEjL0



「……シノ」

 
 目の前の光景に、必死に目の焦点を合わせる。
 春の陽光に照らし出され、シノの身体はとても綺麗だった。
 純白の肌は、陽子や綾と比べても遜色ないくらい……「女の子」らしかった。
 でも、ただ一点。


 胸部の膨らみは、そうそれこそ……
 私よりも、無かった――



「陽子ちゃんや綾ちゃんは、私のことをすごく頑張ってフォローしてくれました……でも」


 そこで、一呼吸置いて、


「『ボク』は、アリスに隠し事、したくなかったんです」


 そう言い切った目の前のシノは、どこか儚げで……とても綺麗で。


「……シノ」




 4月某日。日本でのホームステイ初日。
 天気は晴れ。部屋にはシノと私の二人きり。
 そんな、場所で。
 
 私は、大切な人のことを、知った――
15 :1 [saga]:2013/09/01(日) 04:51:06.36 ID:ECufGEjL0
ここまでになります。
SS速報では、これがきんいろモザイクの初SSになるんでしょうか?(違ったらごめんなさい……)

所々、設定が都合よく改変されてます。
始業式での再会とか、アリスからの手紙を読む下りのカットとか。あと、どこかコミュニケーションに積極的な綾とか。

きんいろモザイクの初期設定案を見ていたら、創作意欲が湧いてしまい、つい書いてしまった次第です。
百合が好きというファンの方、ごめんなさい……ただ、綾だけは平常運転(?)だったような。

それでは、この辺で。
続きをどう書くか、今思案中です……。
16 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/09/01(日) 05:44:48.49 ID:+dR500OAO
>>15
きんモザの初SSの「忍「私たちの願い事」」はここで書かれたよ。
昨日も陽綾のSSが完結したし、今もカレン×久世橋先生のスレがある。
17 :1 [saga]:2013/09/01(日) 16:59:40.47 ID:ECufGEjL0
――二人が出会って別れるまでに、抱いた想いに嘘はない。

 初めてアリス・カータレットが「少女」と接触した時、アリスはとても臆病だった。
 それが、異国の地で生活する「少女」に、どれだけ不安を与えただろうか。

 しかし、「少女」はそんなアリスの態度に気を害した風もなく、いやむしろ――

「――アリス! ハロー!」
「……コ、コニチハ!」

 ホームステイに来た「少女」のその柔らかな物腰に、アリスは心から安心し、大いに交流を楽しんだ。
 それが、アリスの心に、一つの「想い」を生ませる契機となった。


 そして、今。
 アリスは自身の頭の中で、その時の光景がクルクルと回っているような感覚に囚われていた。
 映画フィルムのごとく高スピードで回る、あのイギリスでの日々。

 何故、気付かなかったんだろう。
 あれからたった2年経っただけで、おおよその日本語は修得できたのに。
 そのフィルムの一部だけ、どうして今まで注目しなかったんだろう……?


「……アリス、イギリスはいい国ですね」

「――イ、イエス?」

「はい。『イエス』です!」



「いつか、アリスも日本に来てくれると、凄く嬉しいです」

「――ニポン?」

「……ええ、その時は」


「その時は、『ボク』がアリスと一緒にいますから……」



 改めて、思い出す。
 この1ページを、自分は都合よく記憶から排除してしまっていたのか……?

 そうだ、今なら分かるはずだ。
 少なくとも一般的な日本人なら、自分のことを「ウチ」とか「私」とか「あたし」とか言うはずなのに――

 「少女」は、「ボク」と呼んだではないか。

 ホームステイで触れ合った時間の中で、アリスが「少女」の一人称を聞いたのは、ほぼ全くなかった。
 触れ合っていく中で「少女」は、少し油断してしまったのかもしれない。
 そう言った後で、ハッと「少女」が口元を抑える光景も、脳内で鮮やかに蘇ったから――

 自分の親はどうだろうか? 父も母も、「少女」のことを知っていたのだろうか?
 今、それを確かめる術はない。
 だから――
18 :1 [saga]:2013/09/01(日) 17:00:46.24 ID:ECufGEjL0
アリス「……勇! お茶!」

勇「えー、また飲むの?」

勇「アリス、今夜はトイレで寝ることになっちゃうかもよー?」コポコポ

アリス「そ、そんなことはっ!」アセアセ

アリス「……ああ、日本茶美味しいですねー」ズズーッ

勇「あはは、アリスったら……」


勇(――ヤケ飲みにしても、どこかで区切りつけなさいね?)ヒソヒソ

アリス(……わ、分かってるもん!)ヒソヒソ


忍「ふふ、アリスはお茶が大好きですねぇ」

忍「私も、本場イギリスの紅茶が飲みたくなっちゃいました……」

アリス「――シノ」キュッ

アリス「そ、それなら、たしかお土産があったから!」

アリス「ね? あ、後で淹れてあげる!」

忍「わぁ、ありがとうございます」

忍「アリス〜!」ダキツキ

アリス「……あ」

アリス「――ご、ごめんなさい。わ、私、ちょっとトイレに!」ガタッ

忍「――あ」スカッ



勇「……ふむ」

勇「やっぱり、アリスも――『女の子』ねぇ」

忍「――『女の子』ですね」ハァ

勇「シノも、心は『女の子』なのにねぇ」

忍「……でも」

忍「やっぱり、壁ありますよね……」

勇「それはまぁ、しょうがないわね」

忍「――はぁぁ」タメイキ
19 :1 [saga]:2013/09/01(日) 17:01:37.95 ID:ECufGEjL0

――廊下


アリス「……」

アリス(――さっき)

アリス(私、シノの抱きつきから逃げちゃった)

アリス(……シノは、シノは)



――『ボク』はアリスに、隠し事、したくなかったんです。


アリス(……!)カァァ

アリス(あ、あの時のシノが綺麗だったとか、む、胸を除けば完全に『女の子』だったとか!)

アリス(そ、そういうことは、今はいいのっ!)ブンブン


母「あら、アリスちゃん? どうしたの?」

アリス「――わわっ!?」

母「随分と大きく身体を動かしてたような……」

アリス「ぜ、全然、なんでもないよ!」

母「そう……?」

母「――まぁ、『シノ、シノ』って声はちょっと漏れちゃってたから」

アリス「」

母「ありがとね、随分とあの子のことを慕ってくれてるみたいで」ニコニコ

アリス「……だって」

アリス「シノは、私の大切な――」

アリス「大切な、人だもん!」


母「……そうね」

母「ところで、アリスちゃん?」

アリス「な、なに?」

母「……今日から、家に来てくれるのは大歓迎なんだけど」

アリス「う、うん」


母「――寝床、どうする?」

アリス「……あ」



――夜も更けて


勇「……これでよし、と」バサッ

勇「こんな感じでいい?」トントン

アリス「う、うん」

アリス「――あ、あの」

アリス「に、日本のお布団、好きだから!」

勇「そうなの! それは良かった」

アリス「――ふふっ」
20 :1 [saga]:2013/09/01(日) 17:03:11.62 ID:ECufGEjL0
忍「お姉ちゃん、ちょっといいですか?」コンコン

勇「あ、シノ。どうぞ」

忍「はい……」ガチャッ

忍「――あ」

アリス「シ、シノ」

忍「……アリス」


忍「お姉ちゃんと一緒に寝るなんて、羨ましいです……」

アリス「……え?」

忍「私も昔は、よく一緒に寝てましたけど」

忍「お姉ちゃん、優しいから。きっと、アリスもよくしてもらえますよ」

アリス「シ、シノ……」

忍「ああ、そうだ。お姉ちゃん、ちょっと本を借りてもいいですか?」

勇「ええ。大丈夫よ」

忍「ありがとうございます!」

忍「それじゃ、また」ガチャッ

忍「――楽しんで下さいね、アリス」パタン


アリス「……」

勇「さて、シノとの挨拶も済んだところで」

勇「私たちも寝ましょうか、アリス?」

アリス「――」

勇「……」


勇「――シノ、全然胸ないでしょう?」

アリス「!?」ハッ

勇「パジャマ姿になっても、一見、女の子と変わりないのに」

勇「シノったら……」

アリス「……勇」


勇「ねぇ、アリス?」

アリス「……」

勇「たしかに私は、正真正銘の『女の子』よ」

アリス「……」

勇「胸だってちゃんとあるし、髪だって普通に長くしちゃう」

勇「たしかに、一緒の部屋で寝るのなら、普通は同性同士で寝るわね」

勇「――普通は」

アリス「……勇」
21 :1 [saga]:2013/09/01(日) 17:03:52.80 ID:ECufGEjL0
勇「アリス――私は大歓迎よ。あなたがこの家に来てくれたこと、シノとまた会って嬉しがってくれること」

勇「そして、この部屋で寝ることだって」

アリス「……」

勇「――でも」


勇「敢えて、訊くわ」

勇「本当に、それでいいの?」

アリス「……!」







 ――どうやら、私はアリスに距離を置かれてしまったらしいです。

「……ふぅ」

 ベッドに寝転がり天井を見つめて、私は今日のことを思い出します。
 高校生活が始まったこと、クラス分けで陽子ちゃんと綾ちゃんと一緒になったこと。
 そして――


 ――シノ〜!


 アリスと、再会したこと。

「そろそろ、寝ましょうか」

 そう独りごちて、私は置きあがりました。
 部屋のドアの近くにある電灯のスイッチを切るために。


「……アリス」

 それなのに、何故でしょうか。
 ベッドからドアまでのほんの僅かな距離が、酷く遠く感じてしまうのは。
 こんなに、足取りが重いのは。

「……はぁ」

 おかしいですね。
 「こういう風」になってから、大抵のことは解決してきました。
 それも、大体は陽子ちゃんと綾ちゃんという心強い友達のおかげで。

 ああ、それなのに。

「――解決、出来るかなぁ」

 この、チクリとする胸の痛みは……。


 さて、ようやくスイッチに辿り着きました。
 これを押して、後はベッドに戻るだけ。
 眠りに入るのが早い私は、明日までの数時間を、そこで過ごします。

 当然、一人で。
 そう、いつも通りです。
 お姉ちゃんと寝ていた頃ならいざ知らず、私だってもう――「お姉さん」です。
 だから……だから。
22 :1 [saga]:2013/09/01(日) 17:04:57.47 ID:ECufGEjL0
「シノ!」

「――アリス?」

 私は、目をパチクリとさせてしまいました。
 スイッチに指をかけた私は、その姿勢のまま、突然の「闖入者」に呆然の体です。
 そこには、金髪少女がいました。
 もちろん、雑誌の切り抜きの金髪少女とは、一味も二味も違います。

 だって、アリスは――

「……シノ!」
「へ?」

 ついついそんな感慨に耽っていると、アリスは私にズイッと近づいてきました。
 すぐ近くに、アリスの顔があります。
 その目はどこか、潤んでいるようにも見えて――

「――泣いてた、の?」
「アリス?」

 いやいや、むしろ泣いていたのはアリスでは、と返そうとしたところで気づいてしまいます。
 アリスの目が潤んでいるように見えたのは、もしかすると……

「……ちょっと、目にゴミが入っただけですよ」
「嘘。それ、よくある言い訳だって、勉強したもん」

 アリスには、全くごまかしがききません。
 自分の手で目に触れてみれば――ははあ、なるほど。

「ちょっと、塩辛そうな水ですね」
「――シノ!」

 私が手で目を擦り、顔を上げると――






 ……私は、何をしているんだろう?
 気づいたら、シノに深く抱きついていた。

 どこか冷静な私の頭は、顔が触れている箇所の平坦っぷりに気づいてしまう。
 そうだ、胸板こそ柔らかいけれど――シノは。

「ア、アリス……?」

 その声に、ハッとする。
 顔を上げれば、そこにはシノの顔があった。
 2年前より、ちょっとだけ伸びた髪。
 大きな目も優しそうな顔つきも、あの時と全く変わらない。

「――わ、私は」

 再び抱きつく時、少しためらった。
 そして、そんな自分がちょっと嫌いになりそうになる。

 けれど、今は――


 シノが、泣いてる。


「……シノと、一緒に、いたい」

 再び抱きついた私は、一つ一つ区切るように、言葉を重ねる。

「でも、でもですよ」

 するとシノは、いつものほんわかとした口調を少し崩しながら、私に言葉を返す。

「私、は……私は」


「――本当の『女の子』じゃ、ありません」


 知っていた。
 そんなことは承知の上で、私はこうしてシノに抱きついている。
23 :1 [saga]:2013/09/01(日) 17:05:29.31 ID:ECufGEjL0

「だから……アリスが嫌、なら」
「私は、何も――」

 なのに、どうして――
 どうしてシノは、そんなに気を遣うの……!

 大きく息を吸って、私は言う。

「……勇! 布団、持ってきて!」






勇「はいはーい」

忍「……お、お姉ちゃん!?」

勇「よっ、と――とりあえず、ここに敷いておくわねー」トントン

アリス「ありがとう、勇」

忍「ちょ、ちょっと、お姉ちゃん!?」アセアセ

勇「――お母さんにも、一応言ってきたわ」

忍「……!」ハッ

勇「忍、さっき言ってたよね? 『私はもう、お姉さんだから』って」

忍「――」

勇「だったら」


勇「――ここで一緒に寝て、『何か』起こさないという意志が必要になるの」


忍「……」

忍「起こす、わけ」

忍「ないですっ」

勇「――ふむ、よろしい」


勇「それじゃ、そろそろ私は行くから」

アリス「あ、あの、勇……」

勇「――アリス」

勇「おやすみなさい」ガチャッ

アリス「――あ」

アリス「お、おやすみなさい!」

勇「ふふ、じゃあねー」パタン
24 :1 [saga]:2013/09/01(日) 17:06:18.68 ID:ECufGEjL0
――その後

忍「そ、それじゃ」

忍「電気、消しますね」

アリス「う、うん」

忍「……それじゃ」カチッ

忍「おやすみなさい」トコトコ

アリス「――お、おやすみシノ」


アリス「……」

忍「……」

アリス「……」

忍「……」


アリス「――シノ、起きてる?」パチッ

忍「――私、すぐ寝ちゃうはずなんですけどねぇ」パチッ

アリス「……眠れそう?」

忍「大丈夫ですよー」ニコニコ

忍「ただ、今日はちょっと――」


忍「アリスが来てくれて、嬉しくなりすぎちゃったみたいです」エヘヘ


アリス「……」

アリス「それじゃ、私もシノと一緒にいられて、舞い上がっちゃってるみたい」

忍「ふふ、私たちお揃いですね」ニコッ

アリス「うん、お揃い」ニコッ
25 :1 [saga]:2013/09/01(日) 17:09:05.22 ID:ECufGEjL0
忍「……」

アリス「……」

忍「――アリス?」

アリス「な、なぁに?」ピクッ

忍「明日、着替える時は、言って下さいね」

アリス「……!」ハッ

忍「私、その時は廊下に出ますから」

忍「――もう、アリスも私も、『お姉さん』ですからね」

アリス「……」

アリス「本当に」

アリス「そう、だね」キュッ

忍「はい」

アリス「……シノ、さっきはごめんなさい」

忍「へ?」

アリス「その――リビングで、かわしちゃって」

忍「……ああ」

忍「大丈夫ですよ、特に怪我とかはありませんでしたし」

アリス「そ、そういう問題じゃなくて!」ブンブン

忍「――それに」


忍「さっき、アリスは来てくれました」


アリス「……」

忍「それでもう、大満足です」

アリス「――シノ」

忍「さぁ、そろそろ寝ましょう」

忍「――遅刻したら、叱られちゃいますから」

アリス「……うん」


アリス「おやすみ、シノ」ニコッ

忍「おやすみなさい、アリス」ニコッ



 ――こうして、大宮家の夜は更けてゆく。
 秘密を知った少女と、自らそれを明かした「少女」。
 そんな「少女」の家族や友人等を巻き込んで――


 明日から、学校生活の幕が上がる。



――同時刻

「……」

「――えと、初めましてデス!」

「……ふぅ」


「ニホンゴ、難しいネー」
26 :1 [saga]:2013/09/01(日) 17:13:07.42 ID:ECufGEjL0
ここまでになります。

陽子や綾の出番は、次に譲るとして、忍とアリスに焦点を当てた話です。
最後に現れたキャラは果たして……いやもう、隠すつもりは全くありませんが。
ちなみに、彼女は勉強をしていると思って下さい(描写を入れ忘れました)。

きんいろモザイクらしからぬ特殊なSSですが、どうぞよろしくおねがいします。



>>16
調査不足でした……ご指摘、ありがとうございます。
27 :1 [saga]:2013/09/02(月) 00:03:52.45 ID:tRznb54J0
 〜幕間〜


 ――帰り道。


 大宮家にて、アリス・カータレットと大宮忍が決定的な状況に直面している時。
 猪熊陽子と小路綾は、帰途についていた。

 二人も残っていたい気持ちはやまやまではあったが、忍の姉である大宮勇に押し切られた格好だ。
 いつものように二人で道を歩きながら、陽子はどこか拍子抜けといった表情を、綾は見るからに焦りの表情を
 それぞれ浮かべていた――



綾「――ね、ねぇ、シノ大丈夫かしら?」アセアセ

陽子「……」

綾「わ、私たちが最初に思い描いてた大まかな計画が」

綾「なんだか、最初から無かったことになっちゃいそう……」

陽子「――綾」


陽子「気づいてないのか知らないけど、さっきからその話題ループしてるぞ?」アキレ

綾「……え?」

陽子「まったく」

陽子「綾は、本当にシノが心配なんだな」

綾「――だって」

綾「中学の頃、初めて声をかけてくれた相手だし……」

綾「それに、今は友達じゃない。助けるのは当たり前よ」

陽子「――へぇ」

綾(初めて声をかけてくれたのは……今、目の前にいるのもそうなんだけどね)ジーッ

陽子(おおう、綾の視線がまた――)ビクッ


綾「――結局」

綾「体よく、追い出されちゃったみたいな感じね」

陽子「ああ、そうだな……」


勇『――だから』

勇『今日のところは、もう二人だけにしておいてあげたいんだけど……』

勇『二人共、それでいいかな?』



陽子「――勇姉の考え」

陽子「間違えて、ないのかな?」

綾「……そもそも、私たちが慎重すぎるのかもしれないって思ってきたわ」

綾「高校に上がったからって、気合を入れすぎるのも良くないかもしれないし……」

陽子「ああ――」
28 :1 [saga]:2013/09/02(月) 00:04:40.50 ID:tRznb54J0
陽子「……ところで、綾?」

綾「なによ?」

陽子「偶然に乗っかって、私たちにも出来ることがありそうだぞ」

綾「……どういうこと?」

陽子「――カラスちゃん!」


烏丸「あら……うちのクラスの、ええと」

陽子「猪熊です」

綾「こ、小路です」ペコリ

烏丸「こんにちは、二人共」

烏丸「今、帰りなの?」

陽子「ん……」

綾「――先生、ちょっといいですか?」

烏丸「……?」


陽子「――単刀直入にいくけど」

綾「先生……シノ――大宮さんのこと、ご存知ですか?」

烏丸「――大宮忍さんね」

二人「……」

烏丸「知っているわ、あの子のことは」

烏丸「正直、なかなか信じられないけれど……」

陽子「だよねぇ……」

綾「あれで、『女子』じゃないとか……」

烏丸「――まぁ、色んな子がいるからね」

二人(……なんて理解者!)ジーン


烏丸「でも、ちょっとした悩みはあるの」

綾「と、いうと?」

烏丸「二人は、大宮さんと同じ中学だったのね?」

陽子「それは、まぁ……」

烏丸「――直接的な言い方になっちゃうんだけど」

烏丸「ほら、体育とかトイレとか、水泳とか……」

二人「」


烏丸「大宮さんは、どうやってきたのかなー、なんて……」

烏丸「ば、場合によっては、個人的に彼j……大宮さんとお話しすることも考えてるんだけど」
29 :1 [saga]:2013/09/02(月) 00:05:16.41 ID:tRznb54J0
綾「――よ、陽子、お願い」グイグイ

陽子「い、いや、正直、私だって恥ずかしいよ」グイグイ

綾「私は、もっと恥ずかしいわ! だって、じょ、女子だし……」カァァ

陽子「こ、こんな時だけ女らしさを武器にすんな!」カァァ

綾「陽子、適任」グイッ

陽子「綾、逃げんな」グイッ

綾「というより、初めからこういう話をするために先生を呼び止めたんでしょ?」

陽子「――いやぁ、いざ話すとなると照れちゃってさぁ」エヘヘ

綾「ヘタレね」ジトッ

陽子「綾には言われたくないぞ……?」ジトッ



烏丸(……二人共、仲良しねぇ)クスッ


烏丸「まぁ、なんにせよ」

烏丸「――ほら、意外とこういうのって、上手くいくと思いますし」

陽子「どういうこと?」

綾「で、でも、楽観的にすぎるのは危険じゃあ……?」

烏丸「――たしかにそうかもしれないけれど」


烏丸「あまり気を張りすぎると、逆に大宮さんのためにならないかもしれないな、って」

二人「……!」


陽子(――もしかして、勇姉は)

綾(遠回しに、ちょっと私たちを諌めていた……?)

烏丸「でも、安心しました」

烏丸「大宮さんに、こんないいお友達がいるのなら」

烏丸「――間違いなく、大丈夫だって確信できるから」

陽子「カ、カラスちゃん……」ジーン

綾「せ、先生……」ジーン






――その頃


「……」

「――ここが」

「明日から通う、学校デスカー」

「……」


「いいコト、いっぱいあるといいですネー」
30 :1 [saga]:2013/09/02(月) 00:06:40.41 ID:tRznb54J0
その頃の綾と陽子と、烏丸先生の話でした。

さて、三人の信頼関係が着実に築かれていく一方、校舎の前に佇む少女はどう動くか――
全く考えていないので、これからじっくり模索していきたいと思います。

それでは。
ようやく復活したので、投下させて頂きました。
31 :以下、新鯖からお送りいたします [sage]:2013/09/02(月) 08:14:37.50 ID:WlSr9aw8o
おつー
金モザはアニメしかしらないんだけど、没案なんてあったのね
このシノはGIDなのかな?
原作没案でも性同一性障害なのか単なる男の娘なのか
32 :1 [saga]:2013/09/03(火) 03:47:55.54 ID:BWQtBJ+K0
>>31
いわゆる、「男の娘」って感じです。
ちょっと描写にムラがあるせいで、どうにもシリアスに寄りすぎるきらいがありますが、GIDのような問題を扱う話ではありません。というか、それじゃ重すぎて書いてる方も気が滅入ってしまいそうですし……。







――ほら、またこの光景。

 視界いっぱいに広がる、草木の緑。
 ドアの近くに佇み優しい表情を浮かべる、大好きな父と母。
 草原を走り回る愛犬と、それを追う――私たち。


「……アリスは、お人形さんみたいですね」

 そう、ここでシノがこう言うんだ。
 木陰に背を預けながら、二人で話す一時に。
 包み込むような優しい笑顔で、私に語りかけてくる。

「ふふ、お人形さんみたいで、とても可愛いです」
「――シ、シノだって可愛いよっ!」

 シノが私を褒めてくれればくれるほど、私の顔の赤みも増していく。
 だから、私はいつも照れ隠しをするんだ。

「シノみたいな女の子、なかなかいないよ……」
「――女の子、ですか」

 何故かここで、シノはいつもどこか複雑そうな表情をする。
 当時の私は、そんなシノはどこか儚げで、より魅力を感じたから気に留めなかったけれど。

「……わ、私っ!」

 そんなシノを見ていると辛抱たまらなくなって、私は更に言葉を続ける。

「シノに、また――会いたいからっ!」

 もうすぐ、日本に帰ってしまう、私の大好きなシノに。
 一気に、言葉を畳み掛ける。


「いつか、日本で――シノと、一緒に……!」



 そこで、記憶は途切れる。
 その時、私はどんな言葉を続けたのか。
 そして、シノは――どんな……
33 :1 [saga]:2013/09/03(火) 03:48:39.86 ID:BWQtBJ+K0
 ――朝

忍「――ん」パチッ

忍「……」ノビー

忍「朝、ですかぁ……」ファァ


忍「――はぁ」

忍「あ、そうだ」

忍「早くしないと、陽子ちゃんたちとの待ち合わせが……」

忍「準備しなくちゃ、ですねぇ……」プチプチ

忍「……」ゴソゴソ


アリス(シノ……シノ)

アリス(日本に来て、シノと会えて)

アリス(それなのに……それなのに)

アリス(何か、忘れてるような、気がするんだよ……)


アリス「――シノっ!」ガバッ

アリス「……あ」

アリス(そうか、私、シノのお部屋で……)チラッ

アリス(――シノ、まだ寝てるのか、な……!!?)ビクッ





 左方向を見て、アリスは瞠目した。
 そこにあったのは、自分の声に驚いてか、少し目をパチパチとさせるシノの姿。
 差し込んでくる朝の光は、そんなシノの肌の白さを一層際立たせる。

 ――不覚にも、アリスは見とれてしまった。
 上半身裸のシノは、まるで和風少女の完成形みたいで。
 ベッドの上に散らばっている様々な「グッズ」も、視界に入りながらアリスはシノの美しさに見惚れてしまっていた。

 そう、だから……シノの姿の「意味」に気づいた時、アリスは余計に恥ずかしさを覚えることになる。





アリス「……」

アリス「あわ、あわわ……」

アリス(シノが、シノが……は、裸で……!)カァァァ

忍「あ、アリスー。おはようございますー」ヒラヒラ

アリス(シ、シノ、まさか寝ぼけてる?)

忍「もぅ、アリス遅起きさんですねぇ」

忍「私、先に着替えちゃいますよー……」スッ

アリス(シ、シノが、ズボンに手を――!?」
34 :1 [saga]:2013/09/03(火) 03:49:46.42 ID:BWQtBJ+K0
アリス「ひっ……」

アリス「きゃぁぁぁぁ!」ドタタタッ

忍「……!」ハッ

忍「ア、アリス!? ど、どうしたんですか!?」アセアセ

アリス「シノの、バカ! バカ!」

忍「アリス、一体どうし――あっ」

忍「……ま、まさか」


アリス「もういい! わ、私! 廊下で着替えるからぁ!」ガチャッ

忍「ちょ、ちょっと! ろ、廊下って、それじゃあ!」バタン

忍「――行っちゃいました」ハァ


勇『ちょ、ちょっと、アリス!? な、なにしてるの!』

アリス『だって、だってシノがぁ……』グスッ

勇『シノが……』

勇『――なるほど、なんとなく把握したわ』

勇『とりあえず、廊下じゃマズいから、私の部屋に来なさい』

アリス『――うう、勇ぃ』

勇『シノ。ちょっと後で、お話しね』


忍「あわわ……」

忍「――お姉ちゃんと『お話』することに、なっちゃいました」

忍「ともあれ」ゴソッ

忍「まずは、今日どういう準備をしましょうか……これはここに詰めて、そして――」ブツブツ



――集合場所


忍「……二人共、おはようございますー」フラフラ

陽子「お、おお、シノ……」

綾「な、なんだか、随分やつれてない?」

忍「あ、あはは……」

アリス「……」ツーン

陽子「そして、アリスは」

綾「『ツーン』って感じね……」


陽子「――え、昨日」

綾「同じ部屋で、寝たの……?」キョトン

忍「はい」

忍「いや、最初はちょっと……ということで、お姉ちゃんの部屋の予定でした」

陽子「まぁ、勇姉が適任だよなぁ」

綾「――でも、アリスが選んだのよね?」

アリス「わ、私は、シノと一緒にいたかったわけじゃ――」アセアセ

アリス「……あることにはあるけど」プイッ
35 :1 [saga]:2013/09/03(火) 03:50:35.74 ID:BWQtBJ+K0
陽子「おいおい……」

綾「アリスったら、さっきからどこか素直じゃないわねぇ」

アリス「だ、だってだって!」

アリス「シ、シノが『約束』破るからぁ」カァァ

忍「うう……か、勝手に着替えたのは謝ったじゃないですかぁ」

陽子「……へ?」

綾「――ん?」


アリス「で、でもでも!」

アリス「シノの裸のせいで、私は朝から大迷惑だよ!」

忍「え……私の裸、ダメでしたか?」

アリス「そ、そういう表情しないでっ!」アセアセ

アリス「――だって」

アリス「シノの裸、綺麗すぎて……頭から」

アリス「じゃなくてっ! わ、私の居る所で着替えないって、シノから言ったんじゃない!」

忍「うう……それは謝ります」

忍「というわけで、今度からアリスの居る所では裸にならないようにします!」

アリス「そ、それは当たり前だよお!」ガーン


陽子「……なんていうか、なぁ」

綾「アリスは怒ってるようでいて、顔は別の意味で真っ赤だし」

陽子「シノも謝ってるようで、アリスの反応を楽しんでそうで」

二人(いいコンビ、なのかなぁ(なのかしら)?)




綾「しかし、実際の所、二人一緒の部屋でなんて大丈夫なのかしら?」

陽子「そりゃまぁ――普通は、ないだろうけど」

綾「まぁ『普通』は、ね」

綾「――それじゃ、私と陽子が一緒に寝るのは、普通よね?」チラッ

陽子「ん? そりゃまぁ、そうなんじゃないのか?」

綾「……」



――よ、陽子の身体が綺麗過ぎるのが悪いっ!


――分かった分かった! これから、綾の前じゃ裸にならないようにするよっ!



綾「――!」カァァァ

陽子「おーい、綾ー? 顔、真っ赤だぞー?」

綾「べ、別に、陽子の裸なんてどうでもいいわよ!」

陽子「いや、なんだよいきなり!? ていうか、恥ずかしいよ!」ビクッ
36 :1 [saga]:2013/09/03(火) 03:52:25.90 ID:BWQtBJ+K0
ここまでです。

今回も彼女の登場にはなりませんでしたが、次回辺りには登場するかと。
もうすぐきんいろモザイクの放送も終わりますね。
最後まで、楽しみたいものです。

今後、色々と不自然な展開になりそうですが、それでも付き合っていただければ、と。

それでは。
37 :以下、新鯖からお送りいたします [sage]:2013/09/03(火) 04:28:04.23 ID:TKNXqgX+o
おつー、半裸のシノに慌てるアリスかわいい

確かにGIDを題材に扱うのはちょっと重いかww
ややシリアスな雰囲気を感じたからそうなのかなーとちょっと思っただけです
真剣に自分の性と向き合うような真面目な話にもちょっと期待してたけど、気楽なイチャラブも好きなので問題なし!
38 :1 [saga]:2013/09/06(金) 03:26:02.27 ID:vI+XRiGI0
 ――幼い頃に交わした、「約束」。

 それを守るために、私ははるばるこの地に来た。
 元々、パパが日本人だったため、日本へ来る度にどこか懐かしさを覚えたものだ。

 今、私はそんな「第二の故郷」で、とある人物を待ちぶせしている。
 もうそろそろ、見えてくる、はず。

「……あ」

 来た。
 三人の女子に囲まれ、私の大切な幼なじみが。

 昔、私よりも高かった身長は、今では10p超の差がついている。
 ついでに胸も……うーん、あの子の姿はどう見ても「エレメンタリースクール」にピッタリなのに……。

 さて、行こう。
 声をかけて、驚かせてやるんだ。

 と、息を巻いて向かった矢先――


「そういえば、この辺りで金髪少女見たなぁ……」
39 : ◆OtZIp/YaIxCt [saga]:2013/09/06(金) 03:26:54.78 ID:vI+XRiGI0
――朝・いつもの駅前


 忍「そ、それは本当ですか、陽子ちゃん!?」ズイッ

 陽子「シ、シノ、顔近いって……」

 綾「こ、こらシノ! よ、陽子が困ってるでしょ!」アセアセ

 忍「あ、す、すみません……えへへ」

 陽子「ふぅ――全く、シノは金髪少女の話題になると、眼の色が変わるんだから」アキレ

 綾(……陽子の顔、ちょっと照れてる?)チラッ

 綾「よ、陽子のエッチ……」プイッ

 陽子「は?」キョトン


 アリス「金髪少女――」

 アリス(ってことは、私と同じ……)チラッ

 忍「?」キョトン

 アリス(――シノ)

 
 アリス(大宮家のお世話になるようになって、早数日)

 アリス(初日といい初夜といい、とんでもなく驚いたし、正直、まだ戸惑っちゃうけど……)

 アリス(――それでも)


 アリス「シノには、私がいるからね……!」グッ

 忍「ええ、アリスッ!」グッ

 陽子(な、なにやら熱い雰囲気だ……)

 綾(いや、熱いのはアリス一人だけだと思うけどね……)


 陽子「ああ、そうそう。そういえば」

 陽子「この前見た金髪少女も、こんな感じだったなぁ」ポンッ

 陽子「ほら、さらさらした長いロングヘアーに、ユニオンジャックのパーカー!」

 陽子「そして――」

 綾「って、陽子!? いきなり女の子と、ふ、不純よ!」

 忍「陽子ちゃん、知らない女の子捕まえて……」

 陽子「え……い、意外と堪える反応するな、君たち」


 アリス「……あれ、カレン?」

 少女「――あっ!」ピクッ

 カレン「アリスー!!」

 アリス「カレン!」

 忍「わぁ、よく見たら、すっごく可愛いです!」

 綾「え、英国少女、よね? そのパーカー的に」

 陽子「……はは、不審者か」ズーン

 綾「陽子――そろそろ立ち直って」
40 :以下、新鯖からお送りいたします [sage]:2013/09/06(金) 03:27:07.22 ID:+4y6TVIbo
ktkr
41 : ◆OtZIp/YaIxCt [saga]:2013/09/06(金) 03:27:42.60 ID:vI+XRiGI0
 忍「き、金髪……!」

 忍(アリスとはまた違った感じの……)

 忍(タレ目なアリスと、ツリ目なカレン……あぁ、どっちも捨てがたい……!)ハァハァ

 綾「ね、ねぇ、シノの顔が凄いことに……」

 陽子「ああ――まさに、シノにとっての『ハーレム』なんだろうさ」


 カレン「改めまして! 九条カレンと申すデス!」

 陽子「え、『九条』?」

 綾「ってことは――日本人とのハーフ、かしら?」

 カレン「ハイッ!」

 カレン「遠くイギリスから、アリスを追ってやって来マシタッ!」

 陽子「おお、アリスモテモテだな!」

 忍「き、金髪ぅ……」エヘヘ

 陽子(モ、モテすぎるのも、心配だな……)ハハハ


 陽子「――あれ、その制服?」

 綾「うちの、よね?」

 カレン「ハイ! 今日から、転校シマスッ!」

 二人「えええっ!?」

 綾「ああ……金髪が二人……アリスとカレン」

 アリス「……」

 カレン「――アリス、どーしたデスカ?」

 アリス「べ、別になんでも」

 カレン「フーン……」


 カレン「アリスー!」ダキッ

 アリス「ひゃっ!? カ、カレン!?」

 カレン「フフッ、相変わらずちっこいデース!」

 アリス「む、昔は私のが大きかったよっ!」

 カレン「昔は昔、今は今、デス!」

 アリス「むー……」


 陽子「おお、あれが……」

 綾「英国流の挨拶、かしら?」

 綾「……」

 綾(ということは、国が違ったら――)


 ――陽子、久々のハグ!

 ――おお、綾。久しぶりだなぁ


 綾(なんて、ことにも……)チラチラ

 陽子(最近、綾の様子がおかしいと思うのは、気のせいじゃあるまい――)
42 : ◆OtZIp/YaIxCt [saga]:2013/09/06(金) 03:28:42.33 ID:vI+XRiGI0
カレン「あっ!」

 忍「ああ、カレン……金髪……」

 カレン「――シノ!」

 忍「え?」

 忍「わ、私の名前、知ってるんですか?」

 カレン「ハイ!」

 カレン「アリスがよく、話してマシタ!」

 忍「わぁ……!」

 カレン「シノー!」ダキッ

 忍「カレンー!」ダキッ


 陽子「!」

 綾「!」

 アリス「……あ!!」








 ……ん?

 この感じは、なんだろう?
 何かがおかしい。

 改めて、シノの胸の中で、彼女の佇まいを思い起こしてみる。
 うん、どこからどうみても女子。そして、和服が似合いそうな、和風美少女。
 ……だったら、なおさら。

 「――シ、シノ?」
43 : ◆OtZIp/YaIxCt [saga]:2013/09/06(金) 03:29:09.46 ID:vI+XRiGI0
 陽子「さ、さぁさぁ二人とも!」

 カレン「!」

 綾「そ、そろそろ学校に行かなきゃ!」

 綾「ち、遅刻しちゃうわよ……!」

 カレン「……」

 カレン「そ、そーデスネッ!」

 カレン「い、いきマショ!」

 アリス「……カレン」


 忍「――やっぱり、ですか」

 アリス「し、シノ?」

 忍「うーん……どうなりますかねぇ?」

 アリス「……」

 アリス(シノ――さっきの緩みきった顔つきとは、全く違う)

 アリス(そういう表情をする必要が……シノにはあったんだろうね)

 アリス(私と、再会したときも――)キュッ
44 : ◆OtZIp/YaIxCt [saga]:2013/09/06(金) 03:29:45.55 ID:vI+XRiGI0
――通学路


 カレン「……」

 カレン(何かがおかしいデス)

 カレン(そう、さっきシノとハグしたトキ)

 カレン(――何かが、足りない、ようナ)

 カレン(それこそ、ペッタンコなアリスはおイトイテモ)

 カレン(それとはまた違う、ナニか……)


 陽子「カ、カレンがさっきから考えこんでるな」

 綾「危ない兆候のような気もするけど……」

 陽子「まぁ、綾。勇姉もああ言ってたことだし――」

 綾「ええ……気を張りすぎることはない、わね」


 忍「……」テクテク

 アリス「……」トコトコ

 アリス(さっきから、心なし)

 アリス(シノの表情がシリアスだよぉ……)

 アリス(――カレン、「気づいちゃった」かなぁ?)アセアセ

 忍「……」ジッ


 カレン「……マサカ」

 カレン(まさか、ネ……)

 カレン(――そう、だとシタラ)


 カレン「……なんだか、恥ずかしいデース」

 忍「せ、赤面する金髪少女……!」ハァハァ

 アリス(あ、いつものシノだ……)ホッ
45 : ◆OtZIp/YaIxCt [saga]:2013/09/06(金) 03:31:24.28 ID:vI+XRiGI0
今回は、ここまで。

最後のアリスは安心してるけどそれでいいんでしょうかね……?
今回はカレンとの出会いのお話でした。さて、カレンは果たして……?

それでは。
読んでくださる方に心からの感謝を。
46 :以下、新鯖からお送りいたします [sage]:2013/09/06(金) 09:34:47.90 ID:mmUUkNMSo
そんな、まさか……乙!

しかし金髪フェチな女装男と文字で表すとなかなかに危ない人に見えてしまうな
47 : [saga]:2013/09/09(月) 00:17:14.88 ID:xsNE2Y0O0
――廊下

「……」

うん、やっぱりおかしい。
さっきの感触は、なんといっても。
私自身、胸にパッドを当てることに抵抗がないおかげか、さっきのシノとの抱擁には――

 大いに疑問を抱いた、と言わざるをえマセン……!

「ムゥ……」

 しかも、あの大きさ。
 シノの体格からしたら、もう少し小さくたって――!
 これじゃ、私の自信が、ちょっとなくなりマース……。

「お、おい、転校生が自分の胸をツツいて物憂げ顔だぞ……?」
「うーん――何か、彼女にも思う所があるんじゃないかな?」
「……はぁ。アンタたち、鼻の下伸ばしすぎ」


「――あ、着きましたネ」



――忍のクラス



カレン「タノモー!」ガラッ

陽子「おう、カレン」

綾「どうしたの、私たちのクラスに用事?」

カレン「ハイ!」トコトコ

カレン「ヨーコやアヤヤもいますし!」

綾「だ、だから、私は『アヤ』!」

陽子「いーじゃん、アヤヤ可愛いし」

綾「……」ハッ

綾「陽子が、そう言うなら」プイッ

陽子「?」


カレン「トコロデ」

カレン「シノは、どこにいますカ?」

綾「――アヤヤ、か……うふふ」ニコニコ

カレン「アヤヤ?」

綾「――!」ハッ

陽子「シノなら、そこの前の方の席にいるんじゃないかなぁ……あ、いたっ」

カレン「ヨーコ、ありがとデスー!」


綾「……」ズーン

陽子「――おい、『アヤヤ』?」

綾「も、もう……」ガタッ

綾「『アヤヤ』禁止ー!」ダダダッ

陽子「ええ……」
48 : [saga]:2013/09/09(月) 00:18:13.77 ID:xsNE2Y0O0
カレン「シノ、こんにちはデス!」

忍「――あ、カレン」ニコッ

アリス「カレン!」

カレン「アリスも、デスー!」ダキッ

アリス「ひゃぁ!? か、カレン、くすぐったいよぉ」

カレン「……」

アリス「?」

カレン「――やっぱり」フニフニ

アリス「え、え?」

アリス(な、なんで私の胸の方に視線が……?)

アリス(あ、あと、なんだかほんのちょっとだけ鼻で笑われた、ような……?)ハッ

カレン「ところで、シノ?」

アリス(しかもスルー!?)ガーン



カレン「……」ジーッ

忍「? どうしました、カレン?」

アリス(ああ、今度はシノの胸を――!)

アリス(カ、カレン! そ、そこは、私の場所――じゃなくてっ!)カァァ


カレン「――うん、やっぱり」

カレン「シノ!」ズイッ

忍「ひゃっ!? な、なんですか、カレン?」ビクッ

カレン「……」

忍「?」


カレン(どこからどう見ても、可愛い女の子デス……)

カレン(こけしのような黒髪も似あってますし、落ち着きもアル)

カレン(――じゃあ、さっきのは?)


陽子「よ、よう、カレン」

カレン「――あ、ヨーコ」

綾「そ、そろそろ授業始まっちゃうわよ?」

綾「自分のクラス、戻ったほうがいいんじゃない?」

カレン「……」

カレン「わかりマシタ。ソレデハッ!」ダダダッ

陽子「――アリスに続き」

綾「――二人目、ね」

忍「……カレン、可愛かったですー」エヘヘ

アリス「……シノ」ムッ
49 : [saga]:2013/09/09(月) 00:18:41.91 ID:xsNE2Y0O0
カレン「シノ、こんにちはデス!」

忍「――あ、カレン」ニコッ

アリス「カレン!」

カレン「アリスも、デスー!」ダキッ

アリス「ひゃぁ!? か、カレン、くすぐったいよぉ」

カレン「……」

アリス「?」

カレン「――やっぱり」フニフニ

アリス「え、え?」

アリス(な、なんで私の胸の方に視線が……?)

アリス(あ、あと、なんだかほんのちょっとだけ鼻で笑われた、ような……?)ハッ

カレン「ところで、シノ?」

アリス(しかもスルー!?)ガーン



カレン「……」ジーッ

忍「? どうしました、カレン?」

アリス(ああ、今度はシノの胸を――!)

アリス(カ、カレン! そ、そこは、私の場所――じゃなくてっ!)カァァ


カレン「――うん、やっぱり」

カレン「シノ!」ズイッ

忍「ひゃっ!? な、なんですか、カレン?」ビクッ

カレン「……」

忍「?」


カレン(どこからどう見ても、可愛い女の子デス……)

カレン(こけしのような黒髪も似あってますし、落ち着きもアル)

カレン(――じゃあ、さっきのは?)


陽子「よ、よう、カレン」

カレン「――あ、ヨーコ」

綾「そ、そろそろ授業始まっちゃうわよ?」

綾「自分のクラス、戻ったほうがいいんじゃない?」

カレン「……」

カレン「わかりマシタ。ソレデハッ!」ダダダッ

陽子「――アリスに続き」

綾「――二人目、ね」

忍「……カレン、可愛かったですー」エヘヘ

アリス「……シノ」ムッ
50 : [saga]:2013/09/09(月) 00:20:00.14 ID:xsNE2Y0O0
>>48 >>49 内容重複。ごめんなさい。

――次の休み時間


アリス「……カ、カレン」

カレン「OH?」

カレン「アリス……どうしたデス?」

アリス「そ、その」

アリス「――カレンに、お話ししたいことが、あって」

カレン「……」

カレン「実は、私も――」

アリス「カレン――!」

カレン「そこで、なんデスガ……」


――大宮家


勇「――はい、カレンちゃん」

カレン「おおー、ジャパニーズ・ワガシッ!」

勇「ふふ、お口に合うといいんだけど……」

カレン「とってもおいしいデース! Delicious!」グッ

勇「良かったよかった」

忍「……」

アリス「シ、シノ?」

忍「――アリス」

忍「カレンだけ、私の家に誘った、ということは」

アリス「……う、うん」

アリス「ま、前に陽子から聞いたんだけど、シノ――まだ、クラスの人たちには」

忍「ええ……『中学の頃のような』ことは、まだしていません、ね」

アリス「――カレンには、早い所」

忍「明らかにしておいたほうがいい、ですよねぇ……」

カレン「二人トモー? 何をコソコソ話してるデスカー?」

アリス「カ、カレンッ!」

忍「――あの、カレン」

カレン「ンー?」

忍「……後で、私の部屋に来て頂けますか?」

カレン「……」

カレン「Yes,Of Course!」グッ

アリス「――シノ、いいんだね?」

忍「……何度やっても、慣れませんけど、ね」

アリス(――シノ、顔赤くしちゃって)

アリス(わ、私が精一杯フォローしないと、だね!)

勇「……ふふ」

勇(うーん、私の出番は必要なし、かな?)
51 : [saga]:2013/09/09(月) 00:20:52.51 ID:xsNE2Y0O0


――忍の部屋


カレン「おじゃまシマース!」ガチャッ

カレン「へぇ、ここがシノの部屋ですカー」ジーッ

アリス「も、もう、カレン! そんなにジロジロ見ちゃダメだよ!」

忍「あはは、いいですよ、アリス」

忍「――カレン」プチプチ

カレン「?」

カレン「……シノ、どーして服を脱いでるですカ?」

忍「――私とカレンが」プチプチ

カレン「……!」

忍「本当の、『お友達』になれるようにする、ためにです」スルッ

カレン「シ、シノ……! ま、まさか、それは――」


ストン・・・


カレン「……」

忍「……」

カレン(きれいな肌、デース)

カレン(なんというか、人形以上に人形らしいというか……それくらいにきめ細やかな肌デス)

カレン(――しかシ)

カレン(……ベッドの横に積まれた『モノ』は、一体)

アリス「ふぁぁ……」クラッ

アリス(シノ――相変わらず、綺麗だよぉ)カァァ

アリス(でも、でも……『女の子』じゃない、なんてぇ……!)ブンブン


カレン(このアリスの反応)

カレン(……シノ、やはり)


忍「――カレン?」

カレン「――シノ。おっぱい、ないんデス?」

忍「あはは」ニコニコ

忍「昔、小学生の頃は、陽子ちゃんと一緒だと思ってたんですよ?」

忍「でも陽子ちゃんったら、今はあんなにおっきくなっちゃって――」

カレン「……そう、なんですカー」
52 : [saga]:2013/09/09(月) 00:21:20.07 ID:xsNE2Y0O0
カレン「なんと! 大宮忍は――『男の子』だった、トハッ!」

忍「……ごめんなさい、カレン」

カレン「な、なんのことですカ?」アセアセ

忍「私、さっきカレンに抱きついちゃってもらいました」

忍「その時、凄く嬉しかったです。ただ――」

忍「……私が、『女の子』じゃないって、知らなかった、ですよね?」

カレン「そ、それは、マァ」

カレン「正直、そこらの女の子より『女の子』らしいモン」

忍「――だから」

カレン「あ、謝らなくて大丈夫デス!」

忍「……あ」

カレン「わ、私も、嫌じゃ全然なかったデスッ!」

カレン「た、ただ……!」

カレン「――パパ以外の男の人とハグするのなんて、初めてだった、カラ……」カァァ

忍「カ、カレン……」


忍「カレンー!」ダキッ

カレン「キャッ!?」ビクッ

カレン「シ、シノ! わ、私、心の準備というモノ、できてナイ、デスッ!」

忍「……嫌、ですか?」

カレン「そ、そうじゃなくテー……あぁ、モォ」カァァ

アリス「……」

アリス(シノが! アリスに! 抱きついた!)アセアセ

アリス(……ううう)

アリス(次は、私が……!)ズイッ

アリス(でも)


アリス「そういえば、私もパパ以外の男の人とハグしたこと、なかったよぉ……」カァァ



――廊下



勇「……」

勇「――恋敵登場、かしらね?」

勇「しかしまぁ、この子たちがフツーのラブコメみたいな展開になるとは、到底思えないけれど」


勇「まったく、可愛い子たちなんだから……」クスッ
53 : [saga]:2013/09/09(月) 00:22:20.01 ID:xsNE2Y0O0
今回はここまでです。

さて、カレンに身バレし、次なるシノたちの進む道は――
しかし、シノが服を脱ぐシーンは、書いててちょっとクルものがあることを認めざるを得ない……!

それでは。
54 :以下、新鯖からお送りいたします [sage]:2013/09/09(月) 07:57:04.99 ID:3Swivtn8o

細かいけどもカレンに!じゃね?
55 :以下、新鯖からお送りいたします [sage]:2013/09/18(水) 08:22:54.53 ID:8KZPzFoxo
続きはまだかね
56 :1 [sage]:2013/09/18(水) 12:47:53.31 ID:uKAPD8KP0
ごめんなさい、遅れてます。
今夜、投下予定です。
もし立て込んだりして出来なかったら、申し訳ありません。
57 :1 [sage]:2013/09/18(水) 12:48:20.10 ID:uKAPD8KP0
>>54
ご指摘、ありがとうございます。
58 :以下、新鯖からお送りいたします [sage]:2013/09/18(水) 21:22:06.90 ID:A4N7Mrd4o
期待
59 :以下、新鯖からお送りいたします [sage]:2013/09/18(水) 22:11:04.66 ID:DoFE31LLo
頑張れ〜
60 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2013/09/18(水) 23:23:28.22 ID:uKAPD8KP0
 ――ちょっと昔の話をしてみよう。

 そういえば、あの姉妹――おっと――「姉弟」とは、随分と長い付き合いになる。
 小学1年生の頃に初めてその子と会った時、まだ小さかった私は目をパチパチとさせたっけ。

「陽子ちゃん、よろしくお願いしますね」
「おう、シノ! よろしくな!」

 でも、その時はまだ「ちょっとした」違和感に気付かなくて。
 だから、シノと触れ合っていく中で――

 まさか、「そういうこと」だとは思わなかったわけで――


 きっかけは、渡り廊下。
 たしか、4月の中頃だったような気がする。
 シノと出会ってから、日がまだまだ浅い頃だ。

「――あれ、陽子ちゃん?」
「よう、シノ」
「どうしたんですか? ここは、お兄さんやお姉さん達のクラスしかありませんよ?」

 つまり、上級生のフロアだと言いたいんだろう。

「あー、いやまぁ……なんとなく?」

 まあ私は、本当に理由もなくただぶらついていただけ。
 だから、寧ろシノがなんでここにいるのか気になった。

「そーいうシノは、どうしてここにいるのさー」
「あ、それは……」


「シノ!」

 交わされる会話は、突如途切れる。
 シノが、誰かに抱きつかれたせいだ。
 その人は、当時は小学3年生だったはずだけど……もうすでに、どこか上級生っぽくもある人だった。
 何より、凄く綺麗だった。

「……あれ?」

 つい、見惚れてしまっていた。
 おっと、油断した。
 近くには、そんな美人の顔がある。
61 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2013/09/18(水) 23:24:03.39 ID:uKAPD8KP0
「こ、こんにちは」
「あら、こんにちは――ねぇ、シノ?」
「なんですか、『お姉ちゃん』?」

 なるほど、この人はシノのお姉さんだったのか。
 合点した私は、「似てるようで似てない――『姉妹』だなぁ」と心のなかで思う。
 ……うん、この頃までは知らなかったんだな。

「この子……シノのお友達?」

 そんな、美人さんの問いかけに、


「はい! 陽子ちゃんは『ボク』のお友達です!」


 世界が、揺れた。
 まだまだ小さかった当時の私も、なんだか急に立っている場所がわからなくなった記憶がある。

 目の前にいるシノは、短めのおかっぱ頭に、大きな目(ただ、お姉さんと違ってタレ目)。
 どこから、どう見ても――


「な、なぁ、シノ?」
「――あっ!」
「あーあ、もしかして……今、バレちゃったの、シノ?」
「……うう」


 4月の中頃。
 私たちはそうして、後に公然となる秘密の共有者となった――



「……ってわけなんだ」
「なんだか、妙に勇さんに対する評価が高いわね……」
「どうした、綾?」
「な、なんでもないわよっ!」

 時は移って、現在。
 私と綾は帰り道で、そんな話をしていた。
 今頃、シノの家にはカレンが行って――

「それで、どうしてこの話を?」
「いや……たしかまだ、綾に言ってなかったよね、って思って」
「――まぁ、たしかに初耳かもだけど」

 そう言うと、綾は居住まいを正して、

「どうして、今?」
「……分かるだろ、綾?」

 私は一呼吸置いて、

「アリスに続き、カレンにもシノの『秘密』は明かされるはず」
「それはもう、確定事項でしょうね」
「……だったら、尚更」


「私が、一番信頼する『友達』に、全てを打ち明けときたいって思うじゃん」


「……は、はぁ!?」

 そんな風に言うと、何故か目の前の綾が爆発しそうな表情をとる。
 爆発しそうな……うん、つまり、とっても赤い顔になる。
62 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2013/09/18(水) 23:24:37.80 ID:uKAPD8KP0
「な、何をいきなり……」
「いや、たしかにこの話をしても、今更大した変化もないだろうけど」

 私は、そこでしっかりと綾を見つめる。

「――それでも」
「まったく、陽子ったら」

 少し赤みが引いた顔を、いたずらっぽく緩めて、言う。


「今更私が、あなたやシノから離れるとでも?」
「……まるで、綾に付き合ってきたのが私やシノみたいな言い草だなぁ」
「むっ……」

 そうそう、そんな感じがいい。
 ちょっと雰囲気が堅くなってきた感じもあったし、少し綾をからかうことで立て直し。
 まぁ、そこが私のダメな所でもあるんだろうけれど……ともあれ。

 明日から、どうなることやら――










 ――翌日・集合場所

忍「……おはようございます!」

陽子「おっす、シノ」

綾「お、おはよう、シノ」

綾「そ、それで昨日は……」

アリス「あ、綾! わ、私たち、別に何にもなかったよ!」ブンブン

綾「――え? いや、カレンのことなんだけど……」

アリス「」


陽子「……アリス、何を早とちりしてそうなったんだ?」

アリス「き、聞かないでよぉ」カァァ

忍「はい。アリスは昨日も今日も可愛いですよ」

アリス「……シ、シノー」キラキラ

陽子「――まぁ、この二人はもういいか」

綾「というより」

綾(アリス……実際、シノの「性」について、どう思ってるのかしら?)

綾(――まぁ)


アリス「シノに会えて良かったよー!」ダキッ

忍「アリスー!」ダキッ

綾(……なんともなさそう?)
63 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2013/09/18(水) 23:25:04.92 ID:uKAPD8KP0
陽子(いや、よく見ろ綾)

綾(な、なによ?)

陽子(――アリスの、手)

綾(……!)

陽子(シノの腰回りに、ちゃんと付いてない)

綾(……あぁ、やっぱりまだ)


カレン「お、オハヨーゴザイマス……!」ハァハァ

綾「あ、カレン」

陽子「おっす」

カレン「……」ドキドキ

陽子「? どした?」


忍「カレンー!」

アリス「シ、シノ!?」ガーン

カレン「……シ、シノ」ビクッ

忍「昨日は、ぐっすり眠れましたか?」

忍「日本の生活に、早く慣れるといいですねー」

アリス「シノ……それ私には、言わなかった台詞」ウルッ

陽子(うわぁ……あれは)

綾(アリス――疲れちゃいそうな性格してるわねぇ)


カレン「……ア、アノ」

忍「さぁ、学校生活二日目です!」

忍「カレンのクラスにも、遊びに行きたいですねぇ」

カレン「シ、シノ……ええと」モジモジ

忍「はい?」

カレン「……」


カレン「い、一回ダケ」

カレン「――ギュッと、シテ?」ポッ

アリス「……!!?」

陽子(うおおお!?)

綾(え、なにこの展開は……!)
64 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2013/09/18(水) 23:25:31.53 ID:uKAPD8KP0
忍「……」

忍「はい、わかりました」

カレン「……」ドキドキ

忍「――カレン」ギュッ

カレン「!」ビクッ

忍「……さらさらの、金髪」

忍「綺麗ですねぇ……」

カレン「……」


カレン「も、もう、イイ!」バッ

忍「え?」

カレン「……」

カレン「わ、私! さ、先に行きマス!」

忍「ちょ、ちょっとカレン!?」

アリス「……」

アリス(カレンが、シノに……ギュッと)

アリス(シノが、カレンを……ギュッと)

陽子「……なぁ、私はカレンよりむしろ」

綾「アリス――健気な子」

陽子(健気、というより、なんだかなぁ……)




――ちょっと離れて




カレン「……」ハァハァ

カレン「――ド、ドキドキ、しまシタ」

カレン(ま、まさか、異を決してやってみたことがこんなニモ)

カレン(……シノに、抱かれたダケで)

カレン(身体が、ギュンと、火照ッテ)

カレン(――あれで、どうシテ)


カレン「……『Man』なんですカァ」カァァ
65 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2013/09/18(水) 23:27:03.60 ID:uKAPD8KP0
ここまでです。
トリップつけました。

互いに気持ちを結び合う陽子と綾。
気持ちを結ぼうとして引いたカレン。
さて、二人の英国少女はいかに和風少女と気持ちを結ぶのか……。

というまとめっぽいことを書いても、結果的には赤面するカレンちゃんが書きたかっただけかもしれません。
楽しかったです。

それでは。
66 :以下、新鯖からお送りいたします [sage]:2013/09/19(木) 00:06:23.32 ID:biS4mguro
続きはいつ頃?
67 : ◆jOsNS7W.Ovhu [sage]:2013/09/19(木) 00:18:59.73 ID:FT9VxJ1h0
>>66
実生活が色々と立て込んできたので……少し、遅れるかもしれません。
68 :以下、新鯖からお送りいたします [sage]:2013/09/19(木) 03:23:33.12 ID:hNZ0VpW4o
この雰囲気、いいね!
69 :以下、新鯖からお送りいたします [sage]:2013/09/20(金) 01:04:41.78 ID:5ZuumXnmo
続きが早くみたいな
70 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2013/10/02(水) 01:39:42.88 ID:bmlU0LP20
 ――4月下旬。

 大宮忍たちが高校に入学して、早1ヶ月が過ぎようとしている。
 この間に、アリス・カータレットが忍に会うためにイギリスから来日したり、九条カレンがそんなアリスを追って忍たちと知り合ったり……
 と、過ぎた時間の短さに比して、非常に濃い日々を送っていた。

 さて、そんな面々の調子はどうだろうか。

 大宮忍は、そんな2人の英国少女に会えたことで、頬を緩めることがとても多く非常に満足な毎日である。
 アリス・カータレットは、そんな忍と会えてとても嬉しく思う一方で……一抹の想いもまた、抱えていた。
 九条カレンは、アリスと同じような想いの感じ方に、彼女よりも敏感であった。

 猪熊陽子は、そんな3人(主に忍だが)を心配しつつ、楽しみながら見守っている。
 小路綾は、陽子と同様ではあるが、心配の比重が多いように見受けられる。


 さて、このようにそれぞれ捉え方は違えど、概ね満足な日常を送っている中で――


「……なぁ、今のって」
「うーん……」


 ちょっとした、「予兆」も表れてきていた。
71 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2013/10/02(水) 01:40:17.67 ID:bmlU0LP20
 ――廊下



 男子A「……最近は、転校生ブームなのか?」

 男子B「なんだ、いきなり。何かの漫画の影響か?」

 男子A「何言ってんだ。うちの学校のことに決まってるだろ」

 男子B「――あぁ、なるほど」


 男子B「うちには、アリス――さん?――がいて」

 男子A「別のクラスには、九条さんという人も来たらしい」

 男子B「……ああ、時々うちのクラスに来てる」

 男子A「そう、あのユニオンジャックのパーカーの――」

 男子B「え、あれユニオンジャックとかいうかっこいい名前だったのか?」

 男子A「……ほんのちょっとでもいいから、イギリスのことは知っておくべきだろ」

 男子B「??」


 男子A「でも、こんなにイギリスから転校生が来てると――」

 男子B「いいじゃん、外国人と仲良くなれるし」

 男子A「単純なヤツだな……まぁ、それでいいんだろうけど――わっ!?」

 忍「ひゃっ!?」



 ドンッ!



 男子A「だ、大丈夫か?」

 忍「は、はい。ご、ごめんなさい」アセアセ

 男子B「――あぁ、大宮さんか」

 忍「えへへ、慌てちゃってました」

 男子A「そか。俺は大丈夫だから」

 忍「良かったです」

 忍「それでは、また」ペコリ

 男子B「じゃーなー」
72 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2013/10/02(水) 01:40:42.31 ID:bmlU0LP20
 男子A「ああ、ビックリした」

 男子B「意外と慌てることもあるんだな、あいつ」

 男子A「そう……だ、な」ピクッ

 男子B「どうした?」

 男子A「――俺達って今」

 男子B「トイレに行く途中だろ?」

 男子A「……大宮さんは、今」

 男子B「え、あいつなら教室に戻る途中だろ?」

 男子A「――気付かないのか?」チラッ

 男子B「えっ……」チラッ

 男子B「あっ!」ハッ



『男子トイレ』



 二人「」

 男子A「ま、まさか、なぁ」

 男子B「な、なぁ?」

 二人「……」



 ――教室



 陽子「……と、いうわけで」

 綾「何が、『と、いうわけで』なのよ」

 陽子「わ、分かってるだろ?」

 綾「それは、まぁ」

 忍「え、お二人とも、どうかしたんですか?」

 アリス「ふ、二人とも、ちょっと顔が真剣だよ……」

 陽子「――シノ」

 忍「は、はい」

 綾「中学生の頃のこと、覚えてるわよね?」

 忍「……中学生、ですか」

 忍「あぁ、アリスの所へ行きましたねぇ」キラキラ

 アリス「私が、シノと会った時……!」キラキラ

 陽子「じゃ、なくてだな……」ハァ
73 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2013/10/02(水) 01:41:24.93 ID:bmlU0LP20
 陽子「その――シノの、あの」

 綾「身体のこと、でしょ?」

 忍「え、私、健康ですよ?」キョトン

 アリス「シノ……綾が言いたいのは、そういうことじゃないと思うよ?」

 忍「――冗談です」


 忍「ええ、覚えてますよ」

 陽子「……」

 忍「でも、皆さんとても優しかったですし」

 忍「いい人たちでしたねぇ……」

 綾「シノ……」


 陽子「――傍から聞くに」

 陽子「シノは、『どっち』なんだと」

 綾「そう、言われてることもあるらしいのよ」

 忍「そうですかー」

 綾「って、随分と軽いのね……」

 忍「ええ、だって……」

 忍「安心してますから」ニコッ

 陽子「安心……?」

 アリス「シノ……?」



ガラッ



 男子AB「――あ」

 忍「あっ!」ガタッ

 忍「お二人とも、先程はごめんなさいでした」ペコリ

 男子A「い、いや、別になんともなかったし」

 男子B「む、むしろ……いや、なんでもない」

 忍「それは良かったです!」

 男子A「――大宮、さん」

 忍「はい?」キョトン

 男子B「――応援、するよ」

 忍「……!」

 忍「ありがとうございます!」ニコッ
74 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2013/10/02(水) 01:41:53.46 ID:bmlU0LP20
陽子「……おお」

 綾「よ、よくあんな普通に男子と話せるわね」

 陽子「いや、そこじゃないよ!」

 アリス「シ、シノが……男の子と……」アワワ

 陽子「いや、そっちでもないよ!」

 忍「ただいまです」

 陽子「なんというか」

 綾「心配、するまでもなかった、ってことかしら?」

 アリス「わ、私は心配だよぉ」ウルッ

 陽子「アリス、それは違うんだよ」


 陽子「ともあれ、シノ」

 陽子「――さっき、トイレに行くと席を立った時、あの二人とすれ違ったんだな?」

 忍「はい」

 忍「私、慌ててたのでぶつかってしまって……」

 陽子「そうか……それで、あの二人は」

 綾「『察した』のかしら」

 アリス「シノが――その――」

 アリス「……私たちと『同じ』じゃない、ことに?」

 陽子「――かもな」


 忍「それでも」

 忍「あのお二人は、分かってくれたようですし」

 忍「――大丈夫ですよ、アリス!」ニコニコ

 アリス「シ、シノぉ……」ウルウル
75 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2013/10/02(水) 01:42:20.67 ID:bmlU0LP20

 綾「……ま、大丈夫みたいね」

 陽子「まぁ、なんだかんだで中学の時も――」



『いやまぁ、なんというか……面白いこともあるよね』

『いいじゃん、そういうのも!』

『大宮さん、それなのに髪サラサラなんだ……羨ましー』



 陽子「――私たちはホント、周りの人に恵まれてるなぁ」

 綾「感謝しないとね」

 忍「はいっ!」

 アリス「……」

 アリス(そうだよね――シノは、『違う』んだよね)

 アリス(最初、私がシノに会いたかった理由は……)

 アリス(今と、なっては――)キュッ




 男子A「――あれで、あの容姿で……」

 男子B「あの可愛さで、か――凄いな」

 男子A「……だよな、うん」
76 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2013/10/02(水) 01:44:02.01 ID:bmlU0LP20
ここまでです。

今回はカレンちゃん登場なしでした。次回、出る予定です。

きんモザの世界観なら、優しさで解決することも多いんだろうなー、と。
実際、原先生が最初期案で描いたらどうなっていたのか、非常に気になります。

次回は、赤面率が上昇する……かも。
それでは。
77 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/10/02(水) 03:43:27.12 ID:x7VE4nLko
この男子…素質があるな…
78 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/10/02(水) 07:37:05.58 ID:aT62C/CCo
79 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2013/10/03(木) 09:50:52.07 ID:CWy0c2Sh0
 ――最近、うちの高校にも「ブーム」が来ているらしい。

 さっき、廊下ですれ違った二人の男子も、そんなことを言っていた。
 なるほど、彼らのクラスにもまた、イギリスからの転校生がいるらしい。
 そして……

「ハァ……」

 さっきから、私の近くで溜息を漏らす子も、イギリスからの転校生。
 そんな彼女は、どうも朝から様子がおかしい。

「あ、あの……?」
「――」

 ムクリ。
 あ、身体を起こした。
 しかし、こうして改めて見ると、やっぱり日本人とは違う。
 サラサラの金髪も、パーカーの着こなし方も……といっても、ハーフらしいけれど。

「お尋ねしても、よろしいデスカ……?」
「はい?」
「May I ask you a question……?」
「うわ、やっぱり英語上手いね」

 さて、そんな彼女の「お尋ねしたいこと」とは何なのだろう。
 これまでの様子を勘案して、思い浮かぶことといえば――

「……まさか、とは思うんだけど」
「ハイ」
「――『恋煩い』じゃあないよね?」
「!」

 まぁ、冗談のつもり。
 フツーに考えれば、転校して間もないこの時期に誰かに一目惚れって――どんな漫画やアニメなんだか。
 ……冗談、だよ?


「……」
「恋煩い……」
「Love sickness……?」
(聞いたことのない英語だ……)


 私がこう言うと目の前の彼女は、先ほどとはまた違った意味でおかしくなった。
 さっきまでが「静」な不調といえば、今は「動」の不調。
 いきなり顔を赤らめて、オロオロするばかりなのだった。


「……あー、なんというか、藪蛇?」

 この場合、使い方が正しいのか知らないけど。

「そ、そんなことありまセン!」

 あ、いきなりムキになった。

「と、とにかく! た、確かめに行ってきマス!」

 と同時に、バタバタと教室を出て行ってしまう始末。
 廊下に消えゆく彼女を見て、私も溜息を一つ。

「……ありゃ、重症ね」
80 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2013/10/03(木) 09:51:24.70 ID:CWy0c2Sh0
 

――教室


忍「はぁ……陽に照らされる金髪少女も素敵です」ウットリ

アリス「シ、シノ? 目がちょっと怖いよ?」ビクッ

忍「いえいえー」

アリス「……もぅ」クスッ


陽子「――相変わらずの光景だなぁ」

綾「もう慣れたものね……今までシノは雑誌の女の子に対して呟いてたけど」

陽子「もう直接の対象が近くにいるからな……道理で、蕩け度が増してるわけだ……」



ガラッ



カレン「……」

陽子「あ、カレンだ」

綾「な、何だか、ちょっと様子がおかしいわね」

陽子「……言われてみれば」

カレン「――ヘイ、ヨーコ、アヤヤ!」ニコッ

陽子「あ、笑った」

綾「だから、私は『アヤ』なのに……」


陽子「どうしたんだ?」

カレン「What? なんデスカ?」キョトン

陽子「いや、その――」

綾「さっき、ちょっと表情が硬かったように見えて……」

カレン「心配いりマセン! ダイジョブデス!」エヘヘ

綾「そ、そう?」

陽子「……そ、そっか」

カレン「――ところで」チラッ


忍「この髪も、サラサラですねぇ……」ナデナデ

アリス「く、くすぐったいよぉ……」

忍「アリスは、本当に可愛いです……」

アリス「――シノは、ズルいよ」カァァ


カレン「……」

陽子(あ、表情が)

綾(少しずつ、さっきみたいに……)
81 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2013/10/03(木) 09:51:56.88 ID:CWy0c2Sh0
カレン「ヘイ、二人とも」

忍「あ、カレン!」

アリス「カレン、どうしたの?」

カレン「――その」

カレン「私も、髪には自身あるデス」エヘン

アリス「……!」


カレン「シノ、触ってもいいデスよ?」チラチラ

アリス「だ、ダm」

忍「はい! ありがとうございます!」ナデナデ

アリス「」


忍「いやー」

忍「カレンの髪も、サラサラで綺麗ですねぇ……」ウットリ

カレン「……」

カレン(うん、大丈夫デス)

カレン(顔が赤くなってる感じもなく、胸が高鳴ってるわけでもナイ)

カレン(――やっぱり、LoveSicknessなんてありえまセン!)

カレン(そ、そもそも、シノは……私たちとは、ちがッテ)


忍「……んー」ポフッ

カレン「!?」

アリス「!!?」

カレン「……シノ、なにしてるデスカ?」

忍「カレンの髪……香りもいいですねぇ」

アリス「シ、シノが……!」

陽子「髪に顔を埋めて――!」

綾「……」



陽子『綾の髪、なっがいなー、サラサラしてる』

綾『あ、もう、陽子ったら!』



綾「……」ジーッ

陽子「――なにか?」

綾「な、なんでもないわよ!」プイッ

陽子(慣れたとはいえ、時々綾が怖いよ……)
82 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2013/10/03(木) 09:52:23.95 ID:CWy0c2Sh0
カレン「シ、シノ……あの、デスね」

忍「……」

カレン「く、くすぐったい、デスし、そ、それに……」

カレン「――うう」

アリス(カレン……顔が真っ赤だ)

アリス(――シノもシノで、いつまでカレンの髪に顔を)

アリス(むぅ……)


忍「――ふぅ、満足です」

忍「ありがとうございます、カレン」

カレン「よ、You are welcome……どういたしまして、デス」

忍「わ、カレン……英語、上手ですねぇ」ニコニコ

カレン「……そ、そんな、コトは」アセアセ

陽子(慣れないことされたせいか、カレンの反応が敏感だな……)

綾(そして、それを見るアリスの健気でいじましい瞳ときたら……)


カレン「……」

カレン「シノ」

忍「はい?」

カレン「――」

カレン「やっぱり、なんでもないデス」

忍「そうですか」

忍「いつでもなんでも、言ってくださいね」

カレン「……」

カレン「そういうとこ、ズルいと思いマス」カァァ

忍「??」

アリス(――カレン)

アリス(まさか……まさか、だよね?)

カレン「――そろそろ、戻りマス」

忍「あ、そうですか。それではまた後で会いましょう!」

カレン「……ハイ」



ガラッ



アリス「……」

アリス(カレンが――カレンが)

アリス(おかしいよぉ……!)ガーン


陽子「――ありゃ、かなり」

綾「ええ、何だかすごかったわね」
83 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2013/10/03(木) 09:52:54.18 ID:CWy0c2Sh0

 
――あ、帰ってきた。

 教室に脚を踏み入れた彼女は、なるほどどこか様子がおかしい。
 具体的には、さっきよりも顔の赤みは増し、足取りもおぼつかなく、なにより――


「お帰り……ところで、どうしたのその髪?」

 彼女の自慢であろう髪の形が、崩れていた。
 何故だろう、手入れを欠かすことなどなかっただろうに。

「――このままで、いいデス」
「そう?」

 やっぱりよくわからない。


 ただ、言えることはありそう。

「どう、九条さん?」
「――何が、デス?」


「Love sickness」
「!」
「実際には、どうだったのかなー、って」
「……」

 彼女が教室を去ってから電子辞書で調べた言葉。
 それを投げたら、彼女は押し黙ってしまった。

 下を見る彼女は、何を思っているんだろう。
 私は、追及しないことに決めた。


 しかし、まぁ。

(最近の、イギリス人は進んでるのかなぁ……?)


 日本では『草食系』なんてのも現れてるのに、彼女ときたら――


(……そういうのじゃ、ありまセン)

(私が、シノに感じてるのは――もっと、そう、もっと別ノ)

(……何か、なんデスが)
84 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2013/10/03(木) 09:54:45.66 ID:CWy0c2Sh0
ここまでです。

予告通り、赤面率高めでした。
果たして、カレンがシノに思う所はなんなのでしょうか……自分で書いていても、どう表現すればいいのやら。

読んでくださる方、ありがとうございます。
それでは。


あ、ちなみに、カレンと話している女子生徒は、ほのかちゃん(?)とは別と考えていただいて構いません。
85 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/10/03(木) 20:00:26.47 ID:MEFF3Bv6o
86 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/10/08(火) 02:46:34.61 ID:mtQCrED/o
乙です
87 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2013/10/09(水) 02:28:53.62 ID:HJLwRldP0
つらつらと書いていたら、とても長くなってしまいました。
ゆっくりと投下していきます。





 ――人の想いに関わらず、時は過ぎゆく。

 いつしかカラッとした陽気はどこかへ行ってしまい、蒸し暑い時期がやって来た。
 湿気は多く、紫陽花こそ綺麗であるものの、人々の気分は一様に重くなる――梅雨の到来だ。
 とりわけ、梅雨の時期の6月というものは、例外なく学生が最も気落ちする月でもある。

 すなわち――


「……あれ、おかしいな。何度見ても、カレンダーに『赤』がないぞ?」
「陽子――いくら見ても『赤』は浮かんでこないわよ……」


 こんな時期。



――朝・大宮家



忍「それじゃ、行ってきます!」ガチャッ

アリス「いってきまーす!」

母「はいはい、行ってらっしゃい」



バタン・・・



母「……」

母「二ヶ月、か――」

勇「どうしたの、遠い目しちゃって?」

母「勇……」


母「ううん、ちょっと考えただけ」

母「あの子――忍は、高校生活を充実させられてるのね、って」

勇「それは、まぁ」

勇「――この前、クラスの男の子と何かあったみたいだけど」

母「……え?」ピクッ

勇「もしかして、ね……」

母「……」
88 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2013/10/09(水) 02:29:24.04 ID:HJLwRldP0
母「――勇。あの子は、おとk」

勇「ああ、そういえばね。アメリカで同性婚が出来るようになったとか」

勇「今朝、ニュースでやってたよ」

母「……」

母「――ああ」フラッ

母「それは……あの子も幸せになれるのね」

勇「ごめん、ちょっと冗談が過ぎたかも」


母「え?」

勇「ホントは、ただ男の子に……その」

勇「まぁ、そりゃそうなるよね……」

母「――感付かれた、とか?」

勇「という話を、この前シノが楽しそうにしてくれたわ」

母「そう……」ハァ


母「――あの子は、そうね」

母「心配することなんて、ないのね……」

勇「そうそう」

母「……ところで、勇?」

勇「なぁに?」

母「あなた、学校は?」

勇「……」


勇「私、今日は撮影だったような、そんな気がするんだ……」エヘヘ

母「さぁ、早く制服に着替えなさい」



――通学路



忍「……今日も、凄い雨ですねぇ」トコトコ

アリス「そうだねー」トコトコ

アリス「こういう天気だと、髪のお手入れが大変だよ」

忍「アリスはいつも鏡とにらめっこしてますからね」

アリス「……」

アリス(そういえば、シノがそういうことしてるの見たことないような……)

アリス(――あれ? それなのに、シノってこんなに綺麗な髪なの?)

アリス(それに――なにより、シノは)


忍「? どうしたんですか、アリス?」

アリス「……女であることに、自信を無くしちゃいそうだよ」ズーン

忍「??」キョトン
89 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2013/10/09(水) 02:30:04.14 ID:HJLwRldP0



――集合場所



綾「おはよう、シノ、アリス」

忍「あっ、綾ちゃん! おはようございます!」

アリス「……おはよう」ズーン

陽子「……おう、おはよー」ズーン

綾「――アリス、随分とブルーね」

忍「陽子ちゃんもです……」


綾「ははぁ、髪の手入れ、と」

アリス「うう……」ハァ

綾「それは、まぁ」

忍「はい?」

綾「――いい、アリス? シノはね、色々と『特別』なの」

綾「いちいち比べると、かなり胸がズシッとなっちゃうわよ……はぁ」タメイキ

アリス「……綾、ありがとう」

忍「私、『特別』なんかじゃないですよー」


綾「でも、まぁ……」

陽子「……な、なんだよ?」

綾「アリスの落ち込みの理由に比べて、陽子ったら子供っぽいのね」クスッ

陽子「う、うっさいなぁ! 私みたいに思ってる、全国の高校生に謝れ!」

綾「開き直り方もまた、なんというか……」

陽子「うう……」

陽子「ど、どうせ、私は手入れなんて殆どしてないよ!」

綾「……」



――もう、陽子ったら、ドライヤーかけて寝ないとダメでしょ?――

――いいって、だって毎朝こうして綾がセットしてくれるし――



綾「――アリね」グッ

陽子「多分、ナシだ」アキレ



忍「そういえば、カレンはまだ――」

カレン「ここにいるデス!」ダキッ

忍「わっ!?」

カレン「シノ、グッドモーニング!」

忍「ぬ、濡れちゃいます……カレン」

アリス「――む」
90 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2013/10/09(水) 02:30:38.74 ID:HJLwRldP0
綾「……アリスも気が気じゃないわね」

陽子「はぁ――こんな雨じゃジョギングも出来ない……そして、毎日学校……」ズーン

綾「別の意味で、気もそぞろね……」

陽子「――しかし、カレンも慣れたよなぁ」

綾「? あぁ、シノのこと?」


カレン「シノは本当に髪が綺麗デス……」ナデナデ

忍「さ、触ったらくすぐったいです……」

アリス「もう、カレン! シノの髪が崩れちゃうでしょ!」


陽子「ほら、もう――普通の付き合いだ」

綾「『女子』同士の?」

陽子「……そ、そこは、まぁ」

陽子「ほ、ほら。10人に訊いたら10人が『女の子』って応えると思うぞ?」

綾「……それは、そうだけど」

綾「本当に、慣れたのかしら?」

陽子「? どうして?」

綾「いや、なんとなく……だけど」




――高校付近の道




カレン「ところで、アリス? 髪のセットには何分ホド?」

アリス「カ、カレンこそ」

カレン「――ノーコメントデス」

アリス「ち、ちなみに、シノは今朝は0分だったよ!」

カレン「……Really?」ピクッ

アリス「ホントにホント」

忍「ああ――雨の中に、二人の金髪少女が……」エヘヘ


陽子「なぜ、シノを出して張り合うんだアリス……」

綾「まぁ、言いたくないこともあるわよねー……って」

綾「危ない、みんな!」

全員「!?」



キキーッ

バシャッ!



綾「……あぁ」

陽子「な、なんとか、避けられたな……」

カレン「スピード、出しすぎデス!」

アリス「もう、こんな雨の日なのに……」
91 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2013/10/09(水) 02:31:13.10 ID:HJLwRldP0
アリス「シノは大丈……夫……」

アリス「」

陽子「あっ」

綾「あら……」

カレン「……Oh」


忍「――ちょっと、遅かったみたいですね」ポタポタ

忍「あぁ、反射神経が足りませんでした……」ハァ

アリス「シ、シノが……」

陽子「うひゃー、こりゃずぶ濡れだ」

綾「……だ、大丈夫、シノ?」

忍「はい、ちょっと寒いだけです」

忍「でも、服は随分と濡れちゃいましたね……」

アリス「……あ」

アリス(シ、シノ……なんだか)

陽子「色々と、マズい格好だな……」

綾「特に、『女子』にとっては、その」

綾「――透けるっていうことは、なかなかの」

陽子「ああ……薄着の時期ってのが、災いしたな」


アリス(――ま、まともにシノを見れないよぉ)アセアセ

忍「アリスは、大丈夫でしたか?」

アリス「ひゃっ!?」ビクッ

アリス「わ、私は大丈夫だから! シ、シノ、今はダメ!」カァァ

忍「……?」


陽子「――そういえば」

綾「カレンは、どこに……?」

カレン「」

陽子「あ、固まってる」

綾「道理で、さっきから声がなかったわけね……」

カレン「――シ、シノが」

カレン「うう……」カァァ

陽子(さ、さっきまでの積極的なカレンはどこに……?)

綾(ほら、やっぱり慣れたわけじゃなさそう……)



――教室



忍「おはようございます」

女子「あぁ、おはよ……う……」

女子「」
92 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2013/10/09(水) 02:31:41.82 ID:HJLwRldP0
陽子「シ、シノ! 呑気に教室に入ってる場合じゃないって!」

綾「と、とにかく! その濡れたのを何とかしないと……」

忍「――あ」

忍「すみません、ちょっとボーッとしちゃってました」ペコッ

陽子「シノ、大丈夫なのか……?」

綾(まさか、さっきので風邪になったんじゃないでしょうね……)


アリス「あ、いた! 先生!」

カレン「……」

アリス「カレン! 固まってないで!」

カレン「――やっぱり、恥ずかしいデス」カァァ

アリス「もう!」


烏丸「あら、どうしたんですか……って!」

烏丸「大変! 大宮さん、その格好は……?」

忍「あ、先生。おはよう、ございます」

烏丸「――しかも、体調まで」

陽子「ああ、カラスちゃん。実は、さっきね……」

烏丸「そう、だったの――」

烏丸「いずれにしてもその格好じゃ危ないわ……とりあえず、更衣室、に」

忍「……?」キョトン

烏丸「――わ、私が見張っておくから、『女性用』の教員の更衣室を使って」


陽子(さすがカラスちゃん、話が分かる)グッ

綾(――けれど)

綾(今更ながら、シノって本当に『女の子』ね……透け具合といい、見えてるものまで)

カレン「あ、あぁ……もう見れまセン!」ブンブン

アリス「カ、カレン! 恥ずかしいのは私も一緒だよ!」アセアセ

綾(――あの二人が慌てるわけね)

陽子(付き合いが長い分、こういうことにも「慣れ」てしまったような気がするのがちょっと怖い……)ハァ



――その頃、教室



女子A「大宮さん、大丈夫かな……」

女子B「相当酷く濡れてたよね……」

女子A「――恥ずかしいだろうな」

女子B「――まったく」

男子A「……それは」

男子B「うーん……どう、なんだろうな?」
93 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2013/10/09(水) 02:32:16.48 ID:HJLwRldP0
女子A「? 何いってんの、二人とも?」

女子B「『女の子』は複雑なんだよ?」ジトッ

男子A「わ、悪い。なんでもない」

男子B「……ただ、大宮さんは」

男子AB「……」

女子AB「??」



――保健室



陽子(こうして、なんとかシノの着替えも終わり)

陽子(念の為に熱を測ったら、案の定……)

綾「――シノ、大丈夫?」

忍「うう……いきなりの風邪は、ちょっとキツいかもしれません」ケホケホ

アリス「シ、シノが……」


養護教諭「みんな、もう少しでHRよ?」

陽子「あ、そ、そういえば……そっか」



カレン「――わ、私、残るデス」

綾「カレン?」

陽子「おいおい、授業始まるんだぞ?」

アリス「じゅ、授業には出ないとだよ!」

カレン「……さっき、チラッと教室を覗いタラ」

カレン「一時間目は自習、って黒板二」

陽子「そ、そうなのか」

綾「それなら……」

アリス「……」

アリス「わ、私もっ!」

陽子「アリス、残念だけど私たちは授業!」

綾「それに、今日の宿題、アリス当てられてるでしょ?」

アリス「……うう、そうだったよ」


カレン「先生!」

養護教諭「……しょうがないわねぇ」

養護教諭「でも、我慢して?」

カレン「……!」
94 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2013/10/09(水) 02:32:56.04 ID:HJLwRldP0
養護教諭「いい? 大宮さんは風邪なの」

養護教諭「だから、うつっちゃう可能性だってあるのよ?」

カレン「で、でモ……!」

養護教諭「――大宮さん、もしも誰かにうつしたら、悲しむんじゃない?」

カレン「!」

養護教諭「――さ、教室に戻りなさい」

養護教諭「ごめんなさい、なんとかしてあげられたらとは思うのだけど……」

カレン「わかり、マシタ」


アリス「うう、シノー……」

陽子「さ、行くぞアリス」

カレン「……」

綾「失礼します」ペコリ

養護教諭「はい、またね」



――廊下



アリス「……シノ、心配だよぉ」

陽子「大丈夫だって、アリス」

綾「そうよ。シノ、ああ見えて頑丈なんだから」

カレン「……」

陽子「――カレン」

カレン「ハイ?」キョトン

陽子「どうして、残りたいって言ったんだ?」

カレン「……」


カレン「――シノが、心配だったからデス」

綾「……そうよね」

陽子「そう、だよね」

アリス「――カレン」

カレン「さ、帰って自習しないとデス!」

カレン「それでは、お先二!」ダッ

陽子「お、おい!?」


陽子「……一体、なんでいきなり」

綾「――もしかして、ね」

綾(なんとなく、カレンの横顔に理由はあるような気はする)

綾(恥ずかしさの中に、優しさがあるような――うん、まるで)


綾(……まさか、ね)



アリス「……シノ」キュッ
95 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2013/10/09(水) 02:34:52.17 ID:HJLwRldP0
ここまでになります。

冒頭に書いたように、とても長くなってしまい、冗長だったかもしれません……。
楽しんでいただけたら幸いです。
カレンの想いは、果たして……?

それでは。
暑かったり寒かったり安定しませんが、体調にお気をつけて。
96 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/10/09(水) 09:46:37.85 ID:BkoyfOcro
おつ!
こういう雰囲気のきんモザもいい感じ
97 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/10/09(水) 20:33:24.65 ID:hmSQ3UvGo
待ってました
98 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/10/09(水) 20:52:21.81 ID:5tTW3N5bO
続き楽しみにしてます
99 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/10/10(木) 00:45:05.75 ID:rnUvGxdEo
100 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2013/10/12(土) 02:02:45.40 ID:h1keRCWz0
今回はちょっと短めで。
アリスとシノのお話です。



――二ヶ月。

 この期間を長いとみるか短いとみるかは、人それぞれだろう。
 しかし今、ここで眠る英国少女にしてみたら、それは長いものだった。

 慣れない異国での生活は、本人の考える以上に心理的な負担がかかるものだ。
 幸い彼女の場合は、近くに頼れる和風少女が居るから、そうした負担も軽減されているが……。



 果たして、彼女が目を覚ます――











――大宮家・忍の部屋


アリス「……ふぁぁ」

アリス(朝、かぁ)

アリス(さ、顔を洗いに――あっ、そうそう)ピタッ

アリス(シノはちゃんと起きてるかなー、っと……)チラッ
101 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2013/10/12(土) 02:03:14.04 ID:h1keRCWz0
忍「――あ」


アリス「」


 ――差し込んだ陽に照らされる、白い肌。
 胸部は全く平らだけれど、それが逆に綺麗さを際立たせている。

 上半身裸の同居人は、その手をパジャマズボンに伸ばしていた。
 そんな隙間から、妙にお洒落な――


アリス(じゃ、なくてっ!)ブンブン


アリス「な、なに、を……」

忍「え、ええと……」

忍「お、おはようございます、アリス」

アリス「――な、何やってるの、シノ!」アセアセ


アリス「あ、朝は私が顔を洗いに行ってる間に着替える、って約束でしょ!?」

忍「……」

忍「ごめんなさい、寝ぼけちゃってたみたいです」

アリス「い、いいから、早く何か着てよぉ……」カァァ

忍「――ところで、アリス」

忍「今日は、こっちがいいですか? それとも……」スッ

アリス(寝ぼけ眼でシノは、私の前に二つの「モノ」を出した)

アリス(それぞれ、セットになっていて、どっちも膨らんでいる)

アリス(それは、多分……)


アリス「――な、何見せてるのぉ!?」ビクッ

忍「――あ」

忍「ご、ごめんなさい」ペコリ

忍「えへへ……」ニコニコ

アリス(だ、ダメ……寝ぼけてるんだ……!)ガーン


アリス「と、とにかく! 私、外に出るから!」

アリス「その間に着替えておくこと! いい!?」

忍「はぁい……」

アリス「――」バタン
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