忍「隠し事、しちゃってましたね……」 アリス「……シノ」

Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

564 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2015/04/20(月) 00:27:08.12 ID:KKTULAjW0



――商店街を抜けて


カレン「……ちょっと暗くなりマシタ」

アリス「ライトがなくなっちゃったね……」

忍「あの辺りは賑やかでしたから」

忍「――移動の間は、少し暗いままかもしれませんね」

カレン「シノ……ちょっと怖いデス」ギュッ

アリス「わ、私も……」ギュッ

忍「も、もう……二人とも」

忍(私も、ある意味怖いです……)


忍(両腕の感触が熱すぎて、私の脳がショートしないか、とか……)アセアセ



カレン「――ところで、シノ?」

忍「な、なんですか、カレン?」

カレン「自然公園、って言ってましたケド……」

アリス「そ、そこって何かあるのかな、って……」

忍「――」

忍「それは……ヒミツです」

カレン「Secret、デスカ?」

忍「はい」コクッ

アリス「ねぇ、シノ……教えてくれない?」

忍「アリスの頼みでもダメです」

忍(た、たとえ、上目遣いでも……)


カレン「――私にも、デスカ?」

忍「カレンの頼みでも……」

カレン「教えてくれたら――私」ウワメヅカイ

忍「!?」ビクッ

カレン「シノに……」

忍「……」

アリス「……カレン?」

カレン「――やっぱり、何でもないデス」

忍「――もう、カレン? 私をからかって……」

カレン「アレ?」

カレン「シノ、何だと思ったんデスカ?」ニヤニヤ

忍「……そ、それは」

カレン「?」キョトン

忍「い、いやらしい、こと、とか……」カァァ

カレン「……あ」

カレン「――シ、シノはHデス」プイッ

忍「カ、カレンこそ……」
565 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2015/04/20(月) 00:28:06.52 ID:KKTULAjW0
アリス(いや、どうしてからかったカレンが照れちゃうの……)

アリス(――私だって、ちょっと焦っちゃったけど)

カレン「アリスもHデス……」

アリス「うん、ちょっとビックリしちゃったし――って」ハッ

アリス「カ、カレン!」カァァ

カレン「顔、真っ赤デス」カァァ

アリス「そ、そっちだって……!」


忍「……ああ」

忍(ここに至って、ようやく私にも分かりました)

忍(落ち着かないのでしょう)

忍(だから、カレンは照れ隠しで人をからかうし、アリスも明らかに落ち着いてませんし……)


忍「……お二人とも」

カレン「シノ?」

アリス「どうかした?」

忍「――絶対に」

忍「離しません、から」

カレン「……あ」

アリス「シノ……」

忍「で、ですから――」


忍「き、緊張したらダメですからね?」モジモジ


カレン「……」

アリス「――もう」

アリス「シノ、声震えちゃってるよ?」

忍「そ、それは……」アセアセ

カレン「デモ」

カレン「シノの……大切なお相手の頼みなら仕方ありマセン」

アリス「期待してるよ?」

忍「……もう」

忍「お二人は――本当に」


忍(……可愛すぎます)タメイキ




――自然公園・入り口



忍「……着きました」

カレン「ここ、デスカ?」

アリス「静かだね……」

忍「ええ、自然公園ですし」

忍「……それでは、中に行きましょうか」

アリス「う、うん」
566 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2015/04/20(月) 00:28:40.48 ID:KKTULAjW0
カレン「――シノ? 何だか腕、熱くないデスカ?」

忍「そ、そんなことは……」アセアセ

カレン「照れてマス?」クスッ

忍「――カレンはイジワルです」

アリス「もう、カレン? あまりシノをいじめたら……」

カレン「? 大好きな人のことを心配するのは当たり前デス?」

アリス「そ、それは……そうだけど」

カレン「アリスも、もっと素直になりマショウ?」ニコッ

アリス「――カレンは素直すぎっ!」プイッ

忍(右腕にはカレンの肌が、左腕にはアリスの――)

忍(あれ? わ、私……ちゃんと目的地に辿りつけますよね?)カァァ



――中心地・噴水前



カレン「……あ」

アリス「ちょっと明るくなったね」

忍「はい」

カレン「綺麗、デス……」

アリス「噴水も、何だか……少し色合いが」

カレン「あっ……噴水から前に進んだ所ニ」

アリス「おっきなクリスマスツリー……ここにもあるんだ」

カレン「なんだか……街灯? みたいなものも、たくさん並んでマス……」


忍「――今日だけ特別の演出みたいですよ?」

アリス「……あ、やっぱり」

カレン「それも――その『魔法のノート』デスカ?」

忍「ええ……」コクッ


忍「お二人を幸せにする魔法が、たくさん載ってるノートです」


アリス「……わぁ」

カレン「シ、シノ――そういうコトハ」

忍「……ごめんなさい、実は私も、ちょっと恥ずかしいです」カァァ

忍「でも――」

忍「ずっとお二人に抱きつかれていると、感覚も……」

アリス「シ、シノったら……」

カレン「シノは照れ屋さんデス」

アリス「……今のカレンは、それを言っちゃいけないと思うよ」

カレン「そ、ソレハ……」アセアセ
567 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2015/04/20(月) 00:29:15.57 ID:KKTULAjW0
忍「――それでは、座りましょうか」

アリス(そう言うと、シノは噴水の縁に腰を下ろした)

アリス(それにつられて、私たちもすぐ隣に座る――)

忍「……7時まで、後10分」 チラッ

カレン「シノ?」

忍「お二人とも、お手洗いは大丈夫ですか?」

アリス「だ、大丈夫だよ?」ピクッ

カレン「シノ、何かあるデスカ?」ピクッ

忍「――言ったでしょう?」


忍「お二人に魔法をかける、と」ニコッ


アリス(そんなことを言うシノの顔は赤かったけど……)

カレン(なぜだか凄く頼りがいのある笑顔で――私たちを安心させてクレル……)


「あ、先客がいるね」「マジか……というか、三人?」
「友達かな? それじゃ、ちょっと遠くに――」


忍「……あ、あはは」アセアセ

アリス(い、一気に笑顔が崩れて……)

カレン(ある意味、いつも通りのシノに戻りマシタ……)

忍「や、やっぱり――ここに来る人も、いますね」

アリス「……ねぇ、シノ? その魔法って」

カレン「有名、なんデスカ?」

忍「……」



――というかこれ、こんなコラム的な書き方でいいのかな……――

――気づいた人勝ちだな、これ――



忍「――魔法ですからね」

忍「誰にでも知られているのは、らしくないでしょう?」

アリス「……そっか」

カレン「シノがそこまで言うのナラ……」

カレン「私たちは、それを楽しみにするだけ、デス」

アリス「う、うん……そうだね」

忍「あ、で、でも……そうかしこまらないでください」

忍(さっきから、いちいち格好つけようとするだけで照れてしまいそうなんですから……)カァァ



――7:00


忍「……時計が」

アリス「わっ、音楽……」

カレン「――クリスマス・ソング、デス」

忍「……わっ」

アリス「シノ……あっ」

カレン「――!」
568 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2015/04/20(月) 00:29:47.27 ID:KKTULAjW0
 ――私たちの目の前で、クリスマスツリーがまず点灯しました。
 そこから伸びるような形で、街灯の灯りが一気に点きます。
 私たちから少し距離を置いた所まで、その光は届きました……。


 一口に光といっても、ただ黄色いものだけではありません。
 赤、青……その他、色々な色合いで、私たちの前方を彩ります。
「すごーい」という声は、私たちの後ろにいるカップルの方のものでしょう。


 ……私のお相手たちは、というと。


「……キレイ」
「音楽も、いい味出してマス」


 その光に照らされる二人の金髪は、本当にキレイでした。
 いや――私は、この子たちが「金髪」というだけで、好きになったわけではありません。


「――あっ、色が変わったよ」


 左隣のアリスは、どこか恥ずかしそうな、けれど本当に楽しんでくれていそうでした。
 顔に手を当てて「嬉しい」という素振りを見せつける彼女を見ていると、私は愛しさでいっぱいになります。


「グレートデス! 気持ちいいデス!」


 右隣からはカレンの、本当に明るく、私たちをいつも楽しませてくれる声がします。
 その満面の笑顔は、油断すると照れそうになってしまう私を「楽しい」という気持ちに、一気に引き込んでくれるものでした。




(……キレイ、です)


 目の前の景色も。
 左隣の、何とも可愛らしい金髪少女も。
 右隣の、明るくて気持ちのいい金髪少女も。


 ――こんなに幸せで、いいんでしょうか?


「キレイだねー……」
「もう少し、近く寄ってみるか」
「賛成!」


 と、私が恍惚としていると、後ろから声がしました。
 私たちと一緒に、その光景を見ているカップルの声――
 その後で、私たちの前を二人の影が過ぎて行きました。





アリス「……行っちゃった」

カレン「これで――今、ここにいるノハ」チラッ

アリス「私たち、だけ……」チラッ

忍「二人とも……?」

忍(わ、私たちだけ……?)
569 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2015/04/20(月) 00:30:14.03 ID:KKTULAjW0
アリス「……ねぇ、シノ?」ズイッ

忍「は、はい」

カレン「今、私たち……トテモ」ズイッ

カレン「――そ、その」

カレン「コウフンを、デスネ……」カァァ

忍「」

アリス「カ、カレン……もう」

アリス「――私だって同じなんだから、落ち着いてよぉ」カァァ

忍「……あ、あの?」

カレン「し、仕方ないデス」

カレン「――こんな所を見せられたら……もう、それダケデ」

アリス「た、たしかに……仕方ないよね」

忍「え、え?」


カレン「――最初に謝ります、シノ。ゴメンナサイ」ペコリ

忍「カ、カレン……?」

アリス「……いいんだね、カレン?」

カレン「アリスも謝っておきマショウ!」

アリス「ご、ごめんね、シノ」ペコリ

忍「ア、アリスも……?」


アリス「――いっせーの」
カレン「セっ!」ピトッ



 ――瞬間、両頬に甘い感触が広がりました。
 とても柔らかく、気温の低さにも関わらず……何とも温かい感覚。 


 頬が一気に赤らみ、私の表情が音を立てるようにして崩れそうになります。
 以前にも感じた感触は――そういえば今日まで感じませんでしたね、なんて考えながら。
 そうやって冷静さを保とうとしながらも、私の頭に色々な感情が広がっていきます――



忍「……」

カレン「シノのほっぺた、冷たかったケド」

アリス「温かかったね……」

カレン「私の口唇、真っ赤デス」クスッ

アリス「もう、カレン。それは元から――なんて、そうじゃないよね」クスッ

カレン「アリスの口唇も、真っ赤――」


忍「……えいっ!」ダキッ

カレン「ワッ!?」ビクッ

アリス「わぁっ!?」ビクッ
570 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2015/04/20(月) 00:30:40.97 ID:KKTULAjW0
カレン(――シ、シノが)

アリス(だ、抱きしめ、て……?)

忍「……まったく、お二人は」

忍「そうやって――私を困らせるんですから」カァァ

カレン「だ、だから、さっき……謝ッテ」

忍「謝ってもダメです!」ビシッ

アリス「……シノ」


忍「――ですから」アセアセ

忍「こ、これは……お仕置きです。バツです」ギュッ

アリス「バツ……」

カレン「おしお、き……」

忍「そうです――」


忍「ハ、ハグの刑、です……」カァァ


カレン(――今度、照れるノハ)

アリス(私たちの番、みたいだった)

カレン(シノの息遣い、肌の感触が私の中いっぱいに広がって……)

アリス(照れくさくなりそうになりながらも、何だか――愛しさでいっぱいで)


忍「――今度やったら、もっと凄い刑になりますからねっ!」


カレン(……モット)

アリス(凄い、刑――)



忍「だ、抱きつくだけじゃなくて……えっと、えっと――)アセアセ


二人(シノは、ちょっと可愛すぎ(デス)……)カァァ
571 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2015/04/20(月) 00:33:02.90 ID:KKTULAjW0
ここまでです。
「誰かどうにかしてくれ」と助けを求めながら、つらつらと書いていました。
しかし、これでも周りからは友人同士のスキンシップとすら思われそうな辺りが……。

久世橋先生を早く出したい、と書きながら、次回辺りじゃないとクリスマス回は、きっちり終われなさそうですね。
……ということは次回も砂糖が。

それでは。
572 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/04/20(月) 01:17:33.00 ID:nRjsyNKLO
オエー!(角砂糖)
573 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2015/05/08(金) 02:45:03.05 ID:lgwqkXIc0



――ファミリーレストラン


男子A「このチキン、美味いな……」パクパク

男子B「そうだな――美味い」パクパク

陽子「それじゃ私たち、このサラダ食べるよ」

綾「……い、いい、ですか?」モジモジ

男子A「あ、ああ。いいよ、全然」

男子B「いやー、二人のお陰で……ケーキが半額に」

陽子「――何だか、妙に引っかかるけどなぁ」

綾「よ、陽子。ほら、私たちも半額だし」

陽子「ん、そっか……このチーズケーキも、か」

綾「そ、そうよ。私のショートだって」


男子A「……まさか、猪熊たちが来るとは思わなかった」

陽子「こっちだって、まさか二人がいるなんて思ってなかったよ」タメイキ

男子B「いやいや、猪熊たちには感謝してるって」

陽子「――財布がピンチだった、とかだろ?」ジトッ

男子A「いや、それだけじゃなくて」

陽子「否定はしないんだな……」タメイキ

男子B「事実だからなぁ」

男子A「おかげで、男女割引セールに潜り込めたわけだし」

陽子「なんだかなー……」


綾「――あ、あの」

綾「ふ、二人は……ど、どうして、ここに?」

男子A「そりゃ――寂しいクリスマスを、せめて誰かと、って」

男子B「……やっぱり今年も、お前に相手は見つからなかったんだな」

男子A「そっちだってそうだろ」


陽子「そっかぁ……『そういう』仲だったんだなぁ」ニヤッ

男子A「おい、猪熊が明らかにからかってる」

男子B「気にすんな。きっと大宮さんたちがアレだから寂しくなって、ってことだろうから」

男子A「だよなぁ」

陽子「……!」プルプル

綾「よ、陽子。落ち着いて……」アセアセ


陽子「ああ、そうだよ」

陽子「シノたちがいないから、綾と一緒に……」

綾「わ、私は楽しいわよ?」チラッ

陽子「私だって楽しいよ」マガオ

綾「……も、もう、陽子ったら!」
574 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2015/05/08(金) 02:45:55.73 ID:lgwqkXIc0
陽子(そうさ、綾と二人だけっていうのも……そりゃ楽しいよ、勿論)

綾(――まったく、陽子ったら)

綾(前までの私ならとにかく……今の私が、あなたの微妙な違いに気づかないと思ったの?)

男子A「……何か、ヤブ蛇だったかな?」ヒソヒソ

男子B「ま、まぁ……何か楽しそうだし、いいんじゃないか?」ヒソヒソ


陽子「まったく……」

陽子「元々、二人とも――シノに、何を話したの?」

男子A「それは……ん?」

男子B「あ、こっちも……」

男子A「悪い、猪熊。ちょっと――」カチカチ

男子B「……そっか」カチカチ


陽子「――な、何かあったのか?」キョトン

男子A「いやいや」

男子B「……よかったな、ホント」

男子A「俺たちのダメージは、どんどんデカくなってる気もするけどな……」

陽子「??」


綾「――もし、かして」

綾「シ、シノ絡み、です、か?」モジモジ

男子A「小路さん……ま、まぁ」

男子B「ちょっと、いい知らせが――」



――少し遡って・喫茶店


カレン「……このケーキ、美味しいデス!」パクパク

アリス「うん。本当に……美味しいよ、シノ」パァァ

忍「そうですか。それは良かったです」

忍「――ちょっと、ビックリするような隠し味のお店も思いついたのですが」

アリス「わ、私は、そういうお店より……こういう方が」アセアセ

カレン「――か、辛子入りのケーキは、チョット」アセアセ

忍「……私、どういう風に見られてるんでしょうか」ズーン


忍「――ともあれ」

忍「喜んでもらえたようで何よりです」ニコッ

忍「……大好きなお二人に、できるだけ楽しいクリスマスを過ごせるように、と思ってましたから」

アリス「……も、もう、シノったら」カァァ

カレン「ホ、ホントに……ピンポイントで私たちを困らせマスね……」カァァ

忍「え? そう、でしょうか……」

忍「ただ――お二人が大好きってだけ、で」

アリス「……そ、そういう所がっ!」

カレン「シノ……あ、あまり人目がある所では、そういうコトは、デスね……」アセアセ

忍「ええ……?」
575 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2015/05/08(金) 02:46:33.40 ID:lgwqkXIc0
店員1「あ、あの、先輩……あそこのテーブル席の方たちって」

店員2「――可愛いわね。きっと、女子高生だと思うわ」

店員1「女子高生、かぁ……それじゃ、私より、ちょっと年下なのかな」

店員2「女子大生からしたら、もう『若い子』っていう感じね」アハハ

店員1「せ、先輩……目が笑ってません」ビクッ


店員1「それはともかく――」

店員1「あの三人って……ホントに女子高生、なんですよね?」

店員2「それはそうでしょう。最近の若い子は仲良しだから、ああいうことくらい――」



カレン「シノッ! アーン、デス!」

アリス「……わ、私も。ア、アーン?」

忍「……あ、あはは」

忍「まったく、モテちゃって困りますね……」カァァ


店員2「――あ、ああいうこと、くらい」ワナワナ

店員1「も、もしかして……あれは」



忍「……えいっ!」パクッ

アリス「わ、一緒に食べちゃった」

カレン「私とアリスの出したフォークが……一緒ニッ!」

忍「えへへ……」

店員2(――ちょ、ちょっとだけ、混ざっても)サッ

店員2「お、お客様? お飲み物のお代わりは、いかが――」


忍「――お二人のお気持ちは、一緒に頂かないと、ですから」

忍「それこそ……い、一応、婚約者、ですし」モジモジ

アリス「」

カレン「」


店員2「」

店員1「……え? な、なんて?」

店員2「な、なんでもなかった。うん!」

店員1「そ、そうですか……それにしても、あのテーブル席、凄い雰囲気が……」

店員2(そう、なんでもなかった、何も聞こえなかった……)ブツブツ

店員1(せ、先輩……?)ビクッ


アリス「……も、もう、シノったら」カァァ

カレン「さ、さすがに――私たちも、おかしくなりそうデス」カァァ

忍「え、そう、なんですか……?」

忍「私、お二人の親御さんが仰ったから――ほんの少し、覚悟を」

アリス「シノは極端すぎっ!」ビシッ

カレン「さっきまであんなに照れてたのに……張り切るときは張り切りすぎデスッ!」

忍「……うーん、自信なくしちゃいますねー」
576 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2015/05/08(金) 02:47:13.10 ID:lgwqkXIc0
アリス「大好きだよ、シノ」キュッ

カレン「愛してマス、シノ」キュッ

忍「――あ」

忍(お、お二人の腕が……私の腕に、絡まって……)カァァ

アリス(あ、やっぱり照れちゃった……)

カレン(良かったデス――何だか危なくなってきましたケド……しばらくは私とアリスがリードできそうデス)


店員2「――私、何だか色々と投げ出したくなってきちゃった」ズーン

店員1「せ、先輩……。私も同じだから言わないでくださいって」

店員2「さすがに……あれは見ててキツい」

店員1「ええ。私も、店長から頂けると言われていたケーキのおすそ分けを断っちゃいそうです」

店員2「――それくらいには」


忍「……う、上目遣いは、禁止です」

アリス「あっ……そっか。シノの弱点は、まだ」

カレン「アリス? シノより小さくて良かったデスね?」

アリス「カ、カレンだって――シノより5センチくらいは低いでしょ?」ジトッ

カレン「アリスは15センチ以上低いデス。だから……上目遣いも、凄い効果が」

アリス「カレン……もぉ」プイッ

忍「お、お二人ともやめて下さい……」カァァ


店員2「――私、ケーキいらないわ」ハァ

店員1「私もです、先輩。今、気持ちが固まりました……」ハァ



――それから


カレン「……何だか、店員さんたちの様子がおかしかった気がしマス」

アリス「もう、カレン? お店の人たちを悪く言うのは駄目なんだよ?」

カレン「アリス、わかってマス……でも、そうじゃナクテ」

忍「……」


忍(何となく、分かっちゃうこともあります)

忍(最初の雑貨屋の時は漠然としてましたが……結局、『そういうこと』なのだと)

忍(私たちが揃ってると、やっぱり……女子高生3人組、として映ってしまうんじゃないか、と)

忍「……」チラッ

カレン「何だか……おかしいのかな、とか気にナッテ」

カレン「って、イヤ! な、何でもないデス、シノ!」アセアセ

アリス「もう、カレンったら――わ、私も、ちょっと」

アリス「い、いや! そうじゃないよ、シノ!」アセアセ

忍(おもむろに私に顔を近づけてくる、二人の金髪少女……)

忍(やっぱり――何かしら、思う所があったのかもしれません)

忍(――ここは)
577 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2015/05/08(金) 02:48:24.17 ID:lgwqkXIc0
忍「……あ、あのっ!」

OL「は、はい?」ビクッ

忍「……こ、この、ケータイで」

忍「――私たちを、撮って頂けないでしょうか?」

アリス「シ、シノ!?」

カレン「……シノ」

OL「――ええ、いいわよ」


忍「二人とも? 私の両側に……いいですか?」

アリス「い、いいけど……シノ? 大丈夫なの?」

カレン「さっきまで、すっごく恥ずかしそうデシタ……」

忍「――いいんです、私の恥ずかしさなんて問題ないです」

忍「……それより」ジッ


忍「お二人が寂しい顔をしていることの方が、ずっとイヤです」


アリス「……あ」

カレン「……シノ」


OL「それじゃ、三人とも? いい?」

忍「あっ、よろしくお願いします、お姉さん」

OL「お、お姉さん……嬉しいわね、まったく」ニコニコ

OL「それじゃ――」

アリス(……さっきの、シノの顔)

カレン(普段からずっと思ってる可愛さと……そ、ソレと)

アリス(――カッコ良かった)カァァ

カレン(……これがシノ、デシタね)カァァ


忍「お願いします」ペコリ


アリス(――ああ、何だか)

カレン(自然と……頬が緩ンデ……)

アリス(隣にいるシノの、あまりの愛しさに)

カレン(隣にいるシノが、本当に頼りになって)


OL「――ピース!」

アリス(このまま……)

カレン(この時間が、終わらなければ……いい、ノニ)
578 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2015/05/08(金) 02:49:30.52 ID:lgwqkXIc0
――ファミリーレストラン


男子A「……三人とも、いい顔してるよな」

男子B「そうだな……あと、何というか」カァァ

男子A「――二人の顔が、凄く、その」カァァ

陽子「さっきから二人で何話してんの?」

綾「ちょ、よ、陽子!」

男子A「ああ、それは……その」

男子B「――ほら。これが三人の」


陽子「へぇ……ああ。シノとアリスとカレン、の……」ピクッ

綾「よ、陽子? 私も、ちょっと――い、い」ピクッ

男子A(言葉が途切れた……)

男子B(画面を凝視してるな……)

男子A(あ、顔が赤くなってきた、二人とも)

男子B(――きっと、俺たちもそう、なんだろうな)


陽子「――な」

陽子「何というか、えっと……」

綾「アレよね、そう……アレ」

陽子「ア、アレってなんだよ、綾?」

綾「そ、それは――」


綾「――もう」カァァ

陽子「普通の、カ、カップル、みたい、な……」カァァ

二人「……」モジモジ


男子A(――どうしよう。二人のおかげで)

男子B(むしろ、俺たちの方が……反応に困る感じに、なってきたぞ)




――その頃・電車内



忍「……」

アリス「……」

カレン「……」

忍(両手に花、ならぬ、両肩に金髪少女)

忍(お疲れなのか、座席に腰を下ろすとすぐに寝入ってしまいました)

忍(……すぐ近くに、お二人の顔があります)

忍(気のせいではないでしょうが、とてもいい香りがします――)


アリス「……シノ」

カレン「ん……シノ」
579 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2015/05/08(金) 02:50:15.14 ID:lgwqkXIc0
忍(――何故でしょう?)

忍(前までなら絶対に赤面したシチュエーションなのに、今はどこか冷静です)

忍(さっきの撮影の時に感じた……守らないと、という感覚)

忍(――まったく、この二人と一緒にいると、楽しさと愛しさでいっぱいになって困ってしまいますね)




――そうか……結婚、するつもりはないか――



忍「」

アリス「シノー……」

カレン「シノー……」

忍「あ、あわわ……」カァァ

忍(カ、カレンのお父さん! なんてタイミングで……!)

忍(ああ、いけません――油断してました)

忍(け、け、結婚……この、お二人と……ああ)モジモジ


忍「やっぱり私、まだまだですね……」タメイキ
580 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2015/05/08(金) 02:53:10.25 ID:lgwqkXIc0
ここまでです。
これにてクリスマス・イブの話は終了の予定です。
次回は、もしかしたら年明けになるかもしれませんし、それを飛ばして始業式辺りになるかもしれません。

油断大敵というお話でした。
ちょっと油断すると、すぐに赤面材料がやってくるというもので……結局、この三人で誰がリード出来るかというのもないのかもしれません。

それでは。
砂糖成分は次回で薄まるか、はたまた……
581 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/05/08(金) 07:51:50.36 ID:wJq4GmXG0
男子が普通に馴染んでる
582 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/05/08(金) 07:52:04.33 ID:1vhMhEfS0
男子が普通に馴染んでる
583 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/05/08(金) 09:53:12.37 ID:UYFyoVNOO
おつ!
584 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/05/08(金) 10:51:30.63 ID:23rI+CPpO

4人組もイブを楽しめてるようで何よりだぜ
585 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2015/05/16(土) 23:32:44.94 ID:UuPrnmza0



――年明け・神社


綾「……遅いわね」

陽子「おっす、綾」

綾「……まったく、いつも通り遅刻ね」タメイキ

陽子「ほ、他の三人の方が……」アセアセ

綾「――それは、そうだけど」

綾「ほら。あの三人は、ちょっと……」

陽子「――そりゃまぁ、そうだけどさ」

陽子「はぁ……まさか、シノがハーレムとは」

綾「そ、そういう誤解を招きそうなこと言わないのっ」アセアセ


綾「……というか」チラッ

陽子「ん? どうかした?」キョトン

綾「まさか――晴れ着とは思わなかったわ」

陽子「あ、綾……私、そこまでオシャレに縁がないと思ってたのか?」

綾「いや……ちょっと意外で」

綾「見とれちゃった」

陽子「え?」キョトン

綾「――あ」ハッ


綾(な、何を言ってるの、私……!)アセアセ

綾(今までなら、こんなこと絶対に言わなかったのに……)カァァ

綾(去年一年で色々と変わったとは思ったけど……まさか、こんな所まで)

陽子「綾も似合ってるよ」ニコッ

綾「……!」

陽子「綾らしい晴れ着だなぁ、って」

綾「あ、ありがとう」カァァ

綾「……それを言うなら、陽子も陽子らしくて、いいと思うわよ」

陽子「――やっぱり、変わったね。綾は」クスッ

綾「そ、そんなことは!」

陽子「うん、よかった」

陽子「……私一人じゃ、きっとシノたちを支えてあげられないからさ」

綾「……あ」

綾「そう、よね……」
586 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2015/05/16(土) 23:33:30.04 ID:UuPrnmza0
陽子「――結局」

陽子「私たちのケータイにも画像が送られてから、シノとは話せなかったな」

綾「し、仕方ないわよ、陽子。普通は冬休みに、毎日のように会えっこないんだから」

陽子「それはそうだけど……シノたちは、ちょっと違うだろ?」

綾「……そうね」

綾「早ければ――もしかしたら、今年の4月には、もう」

陽子「こ、怖いこと言うなってば……」

綾「よ、陽子だって、同じこと考えてるんでしょう?」

陽子「そ、それは、まぁ……」

綾「――シノが、イギリスに行っちゃってるかも」タメイキ

陽子「さすがに考えるなぁ……そうなっちゃうんだとしたら」タメイキ


カレン「アヤヤ、ヨウコ! アケオメデース!」

陽子「カ、カレン!?」

綾「あ、あけましておめでとう……」

カレン「ハイ! 嬉しいデス!」

カレン「――冬休みから、お二人には会えませんでしたカラ」

綾「……風のうわさで」

綾「カレンとアリスが――ご実家に連絡をしてると聞いてたから」

カレン「……やっぱり、知ってたデスね」

陽子「まぁ――さすがに、込み入った話だからな」

陽子「私も、カレンたちには連絡しづらかったんだよ」

カレン「そうデシタか……」


アリス「アヤー、ヨウコー! あけましておめでとー!」

忍「お二人とも、あけましておめでとうございます」

陽子「お、おう、二人とも……」

綾「あけましておめでとう……」

アリス「? 二人とも、どうかした?」

忍「どうかしましたか?」

陽子(アリスの晴れ着も、シノの晴れ着も可愛いのはいいとして)

綾(そもそもシノの場合、袴じゃなくて私たちと同じなのに……ちょっと自信をなくしちゃうのもいいとして)


忍「――お二人とも、ちょっと」ズイッ

陽子「シ、シノ?」

綾「ど、どうかした?」

忍「……私」

忍「高校までは、お二人と一緒ですよ?」

陽子「……あ」
587 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2015/05/16(土) 23:34:14.77 ID:UuPrnmza0
忍「――クリスマスから今まで」

忍「このことで、私も色々と大変でした」

忍「なるべく早く、お二人と一緒にイギリスに行ったほうが――とも考えましたけど」

忍「それでも、高校まではここにいたいって思いました」

綾「……シノ」

忍「ごめんなさい。連絡は、ここでしようって決めてたので……ご心配をおかけしてしまいました」

陽子「いやいや、別に大丈夫だって……」

綾「大丈夫よ、シノ。あなたがどんな道に進んでも……」

綾「私たちはずっと、あなたのお友達、だから」

忍「陽子ちゃん、綾ちゃん……本当に嬉しいです」ニコッ


カレン「そうデス、みなサン!」

アリス「私たち、少なくとも高校までは一緒だよ?」

陽子「……二人とも」

綾「何だか、安心しちゃうわね、こういうの……」

忍「よかったですっ」ニコッ



――境内


忍「――とはいえ」

アリス「ひ、人、多いよぉ……」

カレン「凄い人波デス……」

陽子「いやぁ、まぁ……元旦だし、な」

綾「仕方ないわよね」

忍「――お二人とも、落ち着いてますね」

陽子「ま、まぁ、それは……」

綾「さっきのシノたちの話を聞いて……ちょっと、力抜けちゃって」

陽子「あ、でも! 私、みんなが結婚するなら、おうえ――」

綾「よ、陽子!? 声、声!」アセアセ

陽子「……ご、ごめん」ハッ

忍「可愛いですよ、陽子ちゃん」クスッ

陽子「シ、シノ!」カァァ


アリス「……三人とも、仲良しさんだね」ニコッ

カレン「――三人は親友デスから」ニコッ




――お参り後



陽子「……ふぅ、疲れた」

綾「何をお願いしたの、陽子?」

陽子「いや、それは……」

陽子「家族が、幸せに、って――」

綾「……そう」
588 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2015/05/16(土) 23:34:53.87 ID:UuPrnmza0
綾「私は、『シノたちが幸せに暮らせるように』って」

陽子「……そ、そっか」

綾「それじゃ、改めて。陽子は?」

陽子「――わ、私も同じだよ!」

陽子「『シノとアリスとかレンが、幸せに過ごせるように』って!」カァァ

綾「はい、ありがとね」クスッ

陽子「……わ、私をいじめて、楽しいか?」

綾「いや、むしろ嬉しいわ」

綾「――陽子もちゃんと、シノたちを見守ってくれるのなら、私も心強いから」

陽子「あ、綾……」タメイキ


カレン「――なんというか」

カレン「アヤがヨウコを赤くしてマス……」

アリス「うーん……何だか新鮮だね」

忍「ふふっ。綾ちゃんも陽子ちゃんも、お互いのことが大好きですから」

アリス「――シノは、何てお願いしたの?」

カレン「何をお願いしたデス?」

忍「……そ、それは」アセアセ

忍「お二人と同じ、ですよ?」

カレン「はぐらかされマシタ……」

アリス「シノも『私たちがずっと一緒にいられますように』って?」

忍「は、恥ずかしいです……」カァァ



――絵馬書き



忍「せっかくですし、書きませんか?」

陽子「そうだなぁ……へぇ、色々書かれてる――」

陽子「あっ」

綾「あら?」



『自分の知り合いの人たちがみんな幸せになってほしい』

『たしかに彼女は欲しいけど、それよりも↑と同じ』



陽子(名前……これってやっぱり)

綾「あの二人よね、きっと……」

忍「――わ、ほんとです」


陽子「……まったく」ハァ

綾「シノたちには幸せになってもらわないとね」

忍「……そうですね」

アリス「――ちょっと照れちゃうね、これ」

カレン「へ? このお二人、知り合いなんデスカ?」

陽子「ん。まぁ、ちょっと、ね……」
589 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2015/05/16(土) 23:36:40.80 ID:UuPrnmza0



――帰り道


陽子(結局……)

綾(図らずもみんなが「シノたちが幸せになれますように』なんてことを書いて)

陽子(私は照れるばっかりだ、まったく……)


忍「ね、陽子ちゃん、綾ちゃん?」

陽子「ど、どうかした、シノ?」

綾「シノ?」

忍「その――ですね」

忍「今日の晴れ着、似合ってました?」

陽子「――あれ? 言ってなかったっけ?」

綾「てっきり、言ったものだと……」

忍「もう、お二人とも? 言ってませんでした」プクーッ

忍「私、ちょっと気にしてたんですよ?」チラッ


綾「で、でも……」

綾「シノにはもう、アリスたちが――」

忍「綾ちゃん? あの二人と綾ちゃんたちは違います」

陽子「……シノ」

忍「陽子ちゃん、どう思います?」

陽子「――すごく、似合ってるよ。特にえーと……そのかんざしとか」

綾「ああ。特に、この帯がいいわね。いつものシノっぽいけど、ちょっとばかり派手というか」

忍「……ありがとうございます、お二人とも」ニコッ
590 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2015/05/16(土) 23:38:30.10 ID:UuPrnmza0
忍「――陽子ちゃんたち、ちょっといいですか?」ズイッ

陽子「ど、どうかした?」

綾「な、なぁに、シノ?」

忍「お二人とも」


忍「私に遠慮、しないでくださいね?」


陽子「!」ハッ

綾「!」ハッ

忍「たしかに私は、あのお二人とずっと一緒にいますけど」

忍「……それでもお二人は、私の『親友』です」

忍「それは、決して変わりません」

綾「……シノったら」

陽子「はぁ――まったく」

陽子「何だかんだで、いつも引っ張られてばっかりだなぁ……」

忍「わ、私は、そんな……」カァァ

陽子(嘘つけ……)

綾(シノは本当に――底が知れないんだから。もう)



アリス「ねぇ、カレン? 私たち卒業しちゃったら、ホントに」

カレン「場合によっては、イギリスに帰らないといけないかもデス」

アリス「そ、そっか……」

カレン「きっと――シノも嫌がらないと思いマスし」

アリス「だよね、きっと――」

カレン「……大丈夫デス、あの三人は」

カレン「『無敵』デス、きっと――」ニコッ

アリス「だよね、カレン……」ニコッ
591 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2015/05/16(土) 23:41:36.61 ID:UuPrnmza0
ここまでです。

シノにとってはみんな大切で、もしも遠く離れることになってもその気持ちは変わらない、みたいな話でした。
このSSの帰着点は決まっていませんし、どうなるかは自分自身も分かりませんが……。
クリスマスの後、元旦のお話でした。
次回は新学期で、もしかしたら脇役たちが目立つ話になるかもしれません。
久世橋先生も登場予定です。

それでは。
気づけば二期も半分って……怖いですね。
592 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2015/05/24(日) 18:49:12.37 ID:RwbU9xFX0



――中庭


カレン「……シノの膝って、何だか柔らかいデス」スリスリ

忍「そ、そうですか、カレン?」モジモジ

アリス「カレン! そろそろ私の番――」

カレン「アリス、もう少し延長お願いしマス」

アリス「延長、三回目!」プンスカ


陽子「……なぁ、綾?」

綾「なに、陽子?」

陽子「なんていうか、さ――」

陽子「三人がこうなってくれて良かったって、それはホントに思うんだけど……」チラッ

綾「――まあ複雑、よね」

陽子「分かってくれるか……」

綾「もちろん……」

綾「シノたちのお友達でしょう? 私たちは」ニコッ

陽子「――ちょっと前から、綾がどんどん私より先に行っちゃった気がするよ」ハァ

綾「そ、それは言い過ぎ」アセアセ




――中庭から少し離れて・渡り廊下



男子A「……なぁ」

男子B「なんだ?」

男子A「やっぱり……『噂』っていうのも、理由があるんだな」

男子B「……俺たちには『噂』ってよりも」

男子A「ま、まぁ……」

委員長「噂、ね。私も聞いてるけど……」

男子A「あ、委員長」


委員長「まあ」

委員長「あれを見る限り、火のないところに煙は立たない、ってことでしょうね」タメイキ

男子B「――知ってるのか?」

委員長「いや、何となくよ」

委員長「……それより」


?「――あ、あれが」

?「だ、男子生徒……なのよね?」


委員長「私には、向こうの方が気になるわ」

男子A「……ああ」ハァ

男子B「――なんだかなぁ」ハァ
593 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2015/05/24(日) 18:50:35.26 ID:RwbU9xFX0
委員長「――こんにちは、久世橋先生」

久世橋「!?」ビクッ

男子A「こんちは、クッシーちゃん」

男子B「……大宮さんが気になる?」

久世橋「あ、あなたたち……」

久世橋「そ、そうじゃなくて――えっと」

久世橋「……場所を、移しましょう」コホン




――生徒指導室



久世橋「……どうぞ」ガラッ

委員長「お邪魔します」ペコリ

男子AB「お邪魔しまーす」ペコリ


男子A「……何だか妙に懐かしいな」

男子B「いや――そんなに前でもないだろ」

委員長「そうよ。初めて私たちが久世橋先生に呼ばれてから……」

久世橋「あ、あまり、そういう話をしないで」モジモジ

久世橋「……実は、ちょっと恥ずかしいんだから」カァァ

男子A「――でも」

男子B「クッシーちゃんって意外と近づきやすいってことが分かって、ちょっと嬉しかった」

久世橋「――!」ハッ

委員長「……まったく、あなたたちは」プイッ


委員長「ところで、久世橋先生? どうして、またここに?」

久世橋「……え、えっと、それは」

久世橋「大宮忍、さんのことで、ちょっと」モジモジ

男子A「――学祭の後も、だったっけ」

男子B「クッシーちゃんって、心配性なんだな」

久世橋「も、もしも私が、かの――『彼』の担任になったら、と思うと」

委員長「……まだ、大宮さんと直接に会われてないんですか?」

久世橋「……ま、まぁ」


久世橋「私、九条さんたちのクラスの家庭科担当だから」

久世橋「ちょっと――『噂』が聞こえてきたりしちゃうから」

男子A「……噂」

男子B「やっぱり――あれ、だよな」

久世橋「……それで」

久世橋「私もちょっと、気になってたんだけど」

久世橋「私の担当するクラスの子の中でも、色々と不安定そうな子がいて」

男子A「……不安定」

男子B「それって、クッシーちゃん? 噂が……」

委員長「噂が関係してるんですか?」

久世橋「――ま、まぁ、そうかもしれないわ」
594 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2015/05/24(日) 18:52:35.59 ID:RwbU9xFX0
久世橋「だから……今日、ここに連れてきた理由は」

久世橋「あなたたちに、そういう子たちを助けて欲しくて……」

久世橋「このままだと、私もちょっとやりにくいし――何より、その子たちが可哀想だから」

男子A「……そ、それは、いいけど」

男子B「知り合いじゃなかったら、なぁ……」

委員長「それは同感ね。なかなか難しいかも……」

久世橋「そ、そうよね」

久世橋「念のため……名前は」




――生徒指導室前・廊下



三人「失礼しました」ペコリ

久世橋「ありがとうね」

久世橋「……出来れば、お願いね?」チラッ

男子A「は、はい」

男子B「――まあ何となく、アイツかもなぁ、とは思ってたけど」

委員長「ピンポイントでしたから、少し行ってみますね」

久世橋「ありがとう」ニコッ

男子A「――クッシーちゃん」

男子B「来年、俺たちの担任になってくれたらいいなって……」

久世橋「……そ、それは」アセアセ

委員長「それでは失礼します、久世橋先生」ペコリ


久世橋「――ああ」タメイキ

久世橋(学園祭の後で初めてあの子たちに会った時に)

久世橋(もう少し、威厳を保てれば……)

久世橋(いや、もしかしたらこっちの方が――)アセアセ




――再び・中庭前の廊下



?「……」ジーッ



カレン「シノ? アリスと私、どっちが気持ちいいデス?」

アリス「カレン!?」ビクッ

忍「……どっちも、ですよ」ニコッ

忍「ですから――二人とも、膝に頭を乗せても……」

アリス「カレンっ、私、左膝!」

カレン「それじゃ私は、ちょっとズレて右膝を――」

アリス「――シノの膝、気持ちいい」

カレン「右膝もいいデスよ、アリス」

忍「……」ニコニコ
595 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2015/05/24(日) 18:53:46.78 ID:RwbU9xFX0
忍(促して何ですけど……)

忍(――私、本当に、大丈夫なのでしょうか?)カァァ


陽子「……シノも大変そうだなぁ」ハァ

綾「陽子の方が色々と大変そうだけど?」チラッ

陽子「――綾」

綾「冗談よ」



?「……はぁ」

?「カレンちゃん――やっぱり、噂は」


男子A「松原」

穂乃花「わっ!?」ビクッ

男子B「やっぱり、か」

委員長「思った通り、だったわね」

穂乃花「さ、三人とも……」アセアセ


男子A「前から」

男子B「九条さんたちのこと気にしてたよな、たしか」

穂乃花「そ、それは……」カァァ

委員長「学園祭が終わってから、気落ちしてることが多かったし」

穂乃花「――い、委員長」

委員長「もう? 中学の頃とは違うでしょう?」

穂乃花「そ、それは――」


?「あ。また穂乃花をいじめてる!」スタスタ


委員長「……ああ、日暮さん。こんにちは」

穂乃花「か、香奈ちゃん……!」

香奈「もう……いつも、穂乃花を困らせて」ジトッ

男子A「いや、違うって日暮。むしろ……」

男子B「困らせてるのは俺たちじゃなくて……」

香奈「――いいよ。言いたいことは分かるから」

香奈「ね、穂乃花?」ニコッ

穂乃花「……ま、まぁ」

香奈「私、穂乃花のことなら、いろんなこと知ってるし」ダキッ

穂乃花「か、香奈ちゃん……!」カァァ


香奈「――たしかに」

香奈「噂では、うちのクラスの九条さんと……大宮さん、が。その」 モジモジ

穂乃花「……わ、私も」

委員長「噂は他クラスにまで広まってる……いえ。むしろ、九条さんのクラスだから」フムフム

香奈「ねぇ、委員長? 委員長はもっと色々知ってるんじゃないの」

委員長「わ、私はもう、日暮さんの委員長でも――まあ、それはいいわ」コホン

委員長「たしかに、松原さんと日暮さんよりは知ってるかもしれないけど……それより」
596 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2015/05/24(日) 18:56:13.84 ID:RwbU9xFX0
香奈「――この二人の方が知ってる、ってこと?」

男子A「……噂については、本当だよ」

香奈「……ホント?」ジッ

男子B「ホント」

香奈「……そっか」タメイキ

穂乃花「や、やっぱり、そうだったんだ……」タメイキ


香奈「いや、まぁ」

香奈「ほら。学祭で九条さんの相手の様子から、何となく思ってたんだ」

香奈「ああ。やっぱりあの二人……いや。あの三人は、ってさ」

穂乃花「そっか。カレンちゃん……あの二人と」

男子A「……松原」

男子B(やっぱり、何か寂しそうだな……)

委員長(一学期の頃とか「転校生の子がね、可愛いの!」なんて言ってたから……)


香奈「……大丈夫だよ、穂乃花」ギュッ

穂乃花「か、香奈ちゃん?」ビクッ

香奈「穂乃花のことなら、全部……じゃなくて」

香奈「色んなことはわかってるつもりだから、ね?」

穂乃花「……三学期に入ってから」

穂乃花「もうすぐ――香奈ちゃんやカレンちゃんたちと別々になっちゃうかも、って……」

香奈「クラスが違ったって、私たちは一緒だから。部活だって同じだし……」

香奈「……それって、むしろ」チラッ

穂乃花「う、うん……」

香奈「――そっか」

香奈「九条さんと離れちゃうの、キツい?」

穂乃花「……そ、そう、かも」

香奈「そっかぁ……ああ」タメイキ


男子A(――松原だけじゃなくて)

男子B(日暮も複雑そうだな……)

委員長(中学の頃から親友だったもんね……二人とも)

香奈「――なに、三人とも?」ジトッ

男子A「い、いや」

男子B「なんでも」

委員長「……日暮さん、大丈夫よ」

香奈「はぁ……信じていいのかな」ハァ

穂乃花「だ、大丈夫だよ、香奈ちゃん」アセアセ
597 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2015/05/24(日) 18:59:10.72 ID:RwbU9xFX0
穂乃花「……ね?」

男子A「ん?」

穂乃花「カレンちゃんは、つまり……」

穂乃花「その――あ、あの『男の子』と、もう一人の金髪の子と」

穂乃花「一緒、ってこと、だよね?」

男子B「……ああ。クリスマスのデートも、、ちょっとだけ手伝ったから」

穂乃花「そっか……」


穂乃花「――って! ク、クリスマスデート!?」カァァ

香奈「デ、デート……って。聞いてないけど」アセアセ

男子A「そりゃ、俺たちが話してないし」

委員長「私も年明けになってから伝えられたから、無理もないわね……」

香奈「あんたたちホントに、えっと……大宮さんが気に入ってるんだね」アキレ

男子A「……そりゃ、な」

男子B「同性だから」

委員長「――ということにしておいてくれる、日暮さん?」

香奈「……息、合ってるね」ニヤッ

委員長「それはないわね」

男子B「そうじゃないな」

男子A「それは違う」

穂乃花「わっ、ホントに息が合ってる……」


男子A「……松原」

穂乃花「な、なに?」ピクッ

男子B「クッシーちゃん……久世橋先生が、心配してたから」

穂乃花「く、久世橋先生が?」アセアセ

香奈「――クッシーちゃんって」

委員長「日暮さんはまだ、本当の久世橋先生を知らないのね……」

香奈「……委員長は知ってるの?」

委員長「まあ、ね……」

委員長(生徒の私から見てもとても可愛い先生って――)

男子A「九条さんは、松原と一緒で嬉しいと思うし」

男子B「そりゃまあ……付き合ってるのは、あの二人、だけど」

男子B「松原が遠慮する必要はないと思う」

穂乃花「……ホント、かな?」

男子A「それは、えっと……九条さん? と直接会ってみてから、だと思う」

男子B「大丈夫だよ、きっと」

穂乃花「――そうだったら、嬉しいな」

香奈「そうそう。穂乃花は心配しすぎなんだって」

香奈「大丈夫、私は最後まで一緒だから」ギュッ

穂乃花「か、香奈ちゃん……ありがと」ニコッ

男子A(――日暮)

男子B(そっか、コイツは……)

委員長(何というか、思ったより色々と大変になりそうね。2年からは)
598 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2015/05/24(日) 19:00:26.51 ID:RwbU9xFX0



――数分後・中庭前廊下


香奈「――何だか、あの三人が気になっちゃった」

穂乃花「香奈ちゃん?」

香奈「――全部、わかってるんだから、みたいな」

香奈「ああ、何だか……ちょっとムカッと」


?「二人とも、先生が呼んでたよ」


香奈「……あ」ピクッ

穂乃花「あ」

男子「? どうかした?」キョトン

香奈「――ねぇ?」

男子「な、何だ?」

穂乃花「そ、その……噂、知ってる?」モジモジ

男子「噂……あ」

男子「九条さんたち、か……」


男子「うん。知ってる」

男子「……あの三人のこと?」

香奈「そう、だね……」

穂乃花「知ってるんだ、やっぱり……」


香奈「どう思うかなって」

男子「……うーん」

男子「そりゃまぁ――俺は九条さんに告白したわけだし」

男子「色々あるけど……それでも、幸せになってほしいかなって」

穂乃花「そ、そっか……」

香奈「本気?」

男子「……日暮は怖いな」タメイキ

男子「いや、でも――それは本気だよ」ニコッ

男子「だって……三人でいる時の九条さん、凄く楽しそうだから」

香奈「――それは」

穂乃花「ホントに、ね……」
599 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2015/05/24(日) 19:01:24.37 ID:RwbU9xFX0



――教室


男子A「……大宮さん」

忍「あ……」ピクッ

男子B「噂、知って――いや。最近、どう?」

忍「――最近、ですか」

委員長「ええ。順調かな、って……」


忍「――ありがとうございます、皆さん」ペコリ

忍「私は、えっと……皆さんのおかげで、あの二人と、その」

忍「このような関係に、なれましたから」

男子A「そ、そっか……」カァァ

男子B「そりゃよかった――うわ、何か照れくさい」カァァ

委員長「あ、あなたね……」カァァ

男子A「委員長も顔、ちょっと赤くないか?」

委員長「――そっちだって」

男子A「うわ、そっか……」


忍「……ふふ」クスッ

忍「ありがとうございます、本当に――」ニコニコ
600 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2015/05/24(日) 19:04:16.25 ID:RwbU9xFX0
ここまでになります。
思ってたよりも随分長くなってしまいました。

補足すると、香奈と穂乃花と委員長たち三人は中学時代の同級生です。
穂乃花がカレンを気にしているのは原作通りかもしれませんが、その他の設定はこちらで付け加えさせて頂きました。

次回の予定は、ホワイトデーです。
それで、1年次のイベントはおしまいとなる予定です。
……オチが不明のまま進んでいくことに不安を覚えますが、何とかなると思いたいですね。

それでは。
601 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/05/25(月) 08:06:45.83 ID:0NJf7YCl0
卒業からその後まで書いてほしいとは思ってるが原作がそこまで進まないだろうから無理かな?
602 : ◆jOsNS7W.Ovhu [sage]:2015/05/30(土) 22:40:22.98 ID:osi/cxWg0
>>601
着地点が見当たらないので、なかなか迷ってます
そもそも着地点を考えたことがなかったもので
卒業以降は何となく案にはありますが、2年次を書くことすら多分出来ないかもしれないと思っているので……


次はホワイトデーと書きましたが、実際はバレンタインになるかもしれません

ところでIFストーリーを書くかもしれないのですけど、どうでしょうか?
その場合、このスレでIFだけで分けて書くのも何だかなぁ、と思っています
603 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2015/05/30(土) 22:45:27.23 ID:osi/cxWg0
IFネタとして考えているのは

・陽子が忍と結ばれた場合、というルート
・嘘つきブラザーズの一方が、誰かにいろいろな意味で興味をもつ話
・アリス、カレンルート(今まさに書いている話)の、あり得たかもしれないバッドエンドルート

もしかしたらこういったIFストーリーを書くことがあるかもしれません
その場合はスレッドを分けたほうが良いのでしょうか?
604 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/05/31(日) 10:34:10.91 ID:xitpmoKC0
ここでいいと思うよ
605 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/06/01(月) 08:19:21.31 ID:dY7++HWH0
ifルートもいいな

badだと救いようのない鬱展開が…
606 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/06/09(火) 08:03:53.55 ID:/0EiQzAG0
ここは意表をついて忍×穂乃花という可能性はありでせうか?
607 : ◆jOsNS7W.Ovhu [sage]:2015/06/25(木) 00:15:27.99 ID:Flbolr3A0
ごめんなさい。
なかなか展開が難しく、停滞してしまってます。


一応、大まかな展開は浮かんでいるので、何とか形にできると思っています。
次回は、バレンタインの予定です。
2期も終わってしまいましたね……こっちも、早くしないとですね。
608 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/28(日) 20:02:57.68 ID:JOtrvH4n0
HAHAHA2期が終わったなんて面白いジョークだな
609 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/06/29(月) 02:41:47.38 ID:oybtl+mvo
は?なに言ってだよ?
冗談だろ?HAHAHA
610 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/07/03(金) 08:35:29.76 ID:iazHlW6pO
いやー今回のハローきんモザも面白かった
次回は久世橋先生回だから期待してる

このSSの続きも期待してます!
611 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2015/07/17(金) 23:00:03.18 ID:KOkyHw5G0
――私の目の前が、金色に染まりました。


 彼女は頭を枕に載せ、その長い金髪が私のベッドの上を支配していました。
 さっきまでの悪戯っぽい表情は、なりを潜め、今では戸惑っているような恥ずかしがっているような
 そんな風でした。


「……シノ」


 果たして、彼女が口を開きます。
 その声も、さっきまでの明るい調子から、か細く恥ずかしそうなものに変わっていました。
 私は、彼女の顔の両脇に手を当てながら、ジッと見つめていました。


「――ヤッパリ、シノも男の子、デス?」


 その言葉に、ハッとしてしまいます。
 顔を真っ赤に染め上げながら、彼女――カレンは、私からついと視線を逸らしました。
 私の目と鼻の先には、カレンの整った顔があって。
 ……いけません。


(こんな体勢のまま理性が壊れては……!)


 きっと、私の顔もカレンと同じようなものだったと思います。
 今更ながら、私も顔の熱さを自覚してしまいました。


 ――そもそも、どうしてこうなったのでしょうか。
 色々とあったような気はするのですが……いえ。そのことは、今思い出しても仕方ないのかもしれません。
 とにかく、この体勢はマズいというのは、さすがの私にだって分かりました。
 まだ、「そういうこと」を意識していなかった頃の私でさえ、アリスと今みたいな体勢になったことは記憶にないですし……。


 有り体に言えば、私は……カレンを押し倒している、ことになるのでしょう。
 カレンの息遣いが本当によく分かる距離にまで、私と彼女の顔は近づいていました。
 きっと、私の息遣いも同じで――それ、なのに。
612 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2015/07/17(金) 23:01:07.17 ID:KOkyHw5G0
「――シ、シノ。そろそろ、アリスが帰ってきちゃうと思いマス」


 そうです。カレンの言う通りです。
 カレンは頑張って笑おうとしながら、あまり上手く出来ない様子でした。
 無理もない、と思いました。
 ……この状況では、私も上手く笑える気がしません。


「そ、そうですね……ごめんなさい。カレン」
「い、いいんデス。私も、どこうとしないのが悪いデスし」


 言いながら、やはり私たちは動けないままでした。
 身体が硬直したように、言うことを聞いてくれません。
 それはきっと、カレンも同じなのかもしれません。


 ――トントン。
 部屋の外から、音が聞こえました。
 普段、私が聞き慣れているその音は――


「……ア、アリスが」
「帰ってきちゃう、デス……」


 そう言って、私とカレンは見つめ合います。
 どうすればいいのか分からないまま、私たちはただ、お互いの顔を覗き込みます。


 ――どうして、こうなったのでしょうか。
 カレンの顔を見て、アリスの表情も思い浮かべながら、私は思い出そうとします。


 今日という日を作った、きっかけになった出来事を。
 そして、色んな人たちの様子なども、一緒に思い浮かべながら――







 一旦、ここまでです。
 プロローグ的な何かで、次から本編です。
613 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/07/17(金) 23:02:43.39 ID:NR9OeCuzo
久々だな
614 : ◆jOsNS7W.Ovhu [sage]:2015/08/12(水) 01:03:20.01 ID:QoF0KUzt0
すみません、もう少しかかりそうです
バレンタイン編で色んな事を描きたいのですが、アイデアが煮詰まってしまってます
穂乃花たちの出番も増えると思います
615 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/08/12(水) 01:50:31.15 ID:hjButgyCo
気長に待ってます
ちなみに ×煮詰まる ○行き詰まる
616 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/08/20(木) 22:41:07.39 ID:Ymk5p5Foo
待ってる
>>603だけど、陽綾も書いてくれたらいいなー…なんて(小声
617 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2015/09/15(火) 18:45:41.26 ID:iD7Y/scb0
少しずつ投下していきたいと思います。

>>615
ご指摘、ありがとうございます。
そうでしたね……。

>>616
一応、それっぽいサイドストーリーは考えているので、いずれ形に出来ればと思います。
618 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2015/09/15(火) 18:46:25.52 ID:iD7Y/scb0


『2月14日 〜バレンタインデー〜』


――猪熊家


陽子「1、2、3……」

陽子「うん。足りてるな」

陽子(いやー、しかし……やっぱり慣れるもんだなぁ)

陽子(最初の頃とか全部グチャグチャに崩れちゃってたのに)


「……あっ、チョコ」

「わっ、美味しそう……」


陽子「――おっ」

陽子「二人とも、おはよ」ニコッ

空太「陽子お姉ちゃん、おはよ」

美月「おはよ」
619 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2015/09/15(火) 18:47:03.28 ID:iD7Y/scb0
空太「それ、昨日……」

美月「私たちに食べさせてくれた、よね?」

陽子「うん。おかげで助かったよ」

陽子「味とか酷かったら、誰にも渡せないし……」

空太「美味しかったよね? 美月」チラッ

美月「う、うん……」チラッ

陽子「おー、そっか! ありがとな」


空太(――いつもなら「美味しくなかった」とか言って、からかっちゃうけど)ヒソヒソ

美月(何だか最近、陽子お姉ちゃん、元気ないような気がするから)ヒソヒソ

空太(あんまり、ショックな嘘つけなくなっちゃったよね)

空太(……やっぱり、美月もそう思ってたんだ)

美月(うん。心配……)


陽子「二人とも、内緒話かー?」

空太「ち、違うって」カァァ

美月「よ、陽子お姉ちゃん……」カァァ

陽子「もうっ。二人とも、可愛いなぁ」クスッ
620 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2015/09/15(火) 19:21:12.69 ID:iD7Y/scb0


――集合場所


綾「……」

綾(今年も、この日が来たのね)

綾(いつも、そうだけど……何となく落ち着かない感じ)

綾(まぁ……「これ」の交換とかは楽しいけど)

綾(去年は、特に色んなことがありすぎた気がして……たとえば)


陽子「おはよ、綾っ! 一人だけ?」

綾「あっ。おはよう、陽子」

綾(たとえば……この子の調子とか)


陽子「えっと……ハッピーバレンタイン、綾」ニコッ

綾「ハッピーバレンタイン、陽子」ニコッ

綾「……最初の頃に比べると、随分上手くなったわね」

陽子「そ、そうかな。ありがと」

陽子「昨日、皆で作ってからさ。一人でも作ってみたりして」

綾「へぇ……人って変わるのね」

陽子「最初の頃はグチャグチャだったからな……作ろうとしても」

綾「ええ。……そういえば」

綾「『チョコ交換』も、もう4回目になるのね」

陽子「そうそう。綾が転校してきた年から始めたんだよね」

綾「ええ、そうだったわね」


綾「たしか、しのが最初に言い出して」

陽子「そうそう。『綾ちゃんも乙女ですし、今度のバレンタインはみんなでチョコを交換しませんか』だったっけ?」

綾「よ、よく覚えてるわね……」

陽子「いや、あまりにも意味が分からなくて……」

綾「え、ええ……まぁ、おかげで」

陽子「何だか楽しくなってるから続いてるんだよね」

綾「そうね。それはその通りだと思うわ」
621 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2015/09/15(火) 19:21:48.25 ID:iD7Y/scb0
綾「――ところで」

綾「しのたち、遅くないかしら?」

陽子「そ、そうだな……どうしたんだろ?」

綾「考えてみたら、陽子が私の次っていうのが早すぎるのね」

陽子「わ、私、そんな遅れてばっかりだっけ……?」

綾「ええ」

陽子「即答っ!?」ガーン


綾「……まぁ、まだ時間はあるし」

陽子「待ってよっか」

綾「そうね……」


忍「ご、ごめんなさい、お二人ともっ!」

アリス「お、遅れちゃったよぉ……」

カレン「ごめんナサイッ!」


陽子「……って、言ってる内に」

綾「ええ。来たみたいね」




陽子「――まぁ。時間には、まだ間に合うし」

綾「大丈夫よ、みんな……でも」

綾「あなたたちが遅れるなんて珍しいわね……陽子は、ともかく」

陽子「あ、綾ぁ……」

忍「す、すみません……今朝になって」

アリス「う、うん。もっと良いチョコ、作れないかなって」

カレン「ヨーコとアヤヤに渡すのに、失礼な物は作れないと思いマシタ……」
622 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2015/09/15(火) 19:22:14.63 ID:iD7Y/scb0
陽子「……み、みんな」

綾「あ、ありがたいけど……そ、そんなに気合入れてもらって何だか悪いわね」

忍「いえ、そんなことはありません。綾ちゃん」

綾「……え?」


忍「私たち、凄く感謝してます」

忍「去年、陽子ちゃんと綾ちゃんが……その」

忍「わ、私たちのことを応援してくれなかったら……ひょっとして」

アリス「う、うん。もしかして、って思っちゃうよ」

カレン「ハイ! だから、本気で作りマシタッ!」


陽子「――!」ピクッ

綾「あ、あなたたち……」

陽子「い、いや……凄く嬉しいけど」

綾「ええ、そうね。……そういうことなら」

陽子「うん。もらおっか」

陽子「嬉しいな、ホント」ニコッ

綾「……陽子」チラッ

陽子「ん? どうかした?」

綾「いえ……何でもないわ」

陽子「綾?」キョトン
623 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2015/09/15(火) 19:26:49.67 ID:iD7Y/scb0
一旦、ここまでです。
表記を原作に合わせました(シノ→しの、陽子、綾→ヨーコ、アヤ等)。

時間を置いて今日中に、もう少し書き進められればと思います。
遅筆で申し訳ありません……。
624 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/09/15(火) 20:46:48.13 ID:qSAcLc9uo
まだやってたのか、不快だな!本当に
625 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/09/15(火) 20:51:02.30 ID:90jYoWrJo
終わりにしろ
626 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2015/09/16(水) 01:10:58.20 ID:W1ZontJA0


――昇降口


忍「……それでは、改めて」

アリス「アヤ、ヨーコ! ハッピーバレンタイン!」

カレン「ハッピーバレンタインデスッ!」

忍「ハッピーバレンタインです。陽子ちゃん、綾ちゃん」


綾「み、みんな、ありがとう」

陽子「た、たしかに……気合、入ってるな」

綾「ええ……ラッピングとかも凄く綺麗ね」

カレン「本気で作りマシタッ!」

アリス「うんっ。……私もカレンも、お菓子作りとか苦手だったけど」

忍「私、今まで陽子ちゃんと綾ちゃんとチョコを作ってきたことを、二人に教えました」

忍「おかげで、何とか上手く作れたんだと思います」

陽子「しの……」

綾「そうね……たしかに」

綾「何度も練習すれば上手くなるっていうのは……あなたが、よく知ってるものね?」チラッ

陽子「そ、それは……そう、だな。うん」


綾「……た、たしかに」

陽子「これ、凄く綺麗だよね……」

綾「ええ。頑張らないと、こういうのは出来ないと思うわ」

カレン「さすが、アヤヤデスッ!」ニコッ

アリス「ありがとね。私たちも、ヨーコとアヤがくれたチョコ、大事に食べるねっ」ニコッ

忍「気に入って頂けて嬉しいです。陽子ちゃん、綾ちゃん」


綾「……しのも最初は、なかなか上手に作れなかったけど」

綾「やっぱり、慣れるのね」

忍「はいっ。綾ちゃんが、私と陽子ちゃんに教えてくれましたから」

陽子「だよね、やっぱり」

綾「ま、まぁ、そうだけど……それからは、あなたたちの頑張りだって思うわ」

カレン「……やっぱり、シノは」

アリス「うん。ヨーコとアヤが一緒にいるから強いんだね」

綾「あ、あなたたち……」

陽子「そ、そうだよ。ほとんどチョコの作り方を教えてくれたのは、綾で」

綾「よ、陽子……そ、そういう意味じゃないと思うわ」カァァ
627 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2015/09/16(水) 01:43:49.40 ID:W1ZontJA0


――2年A組


陽子「あっ……これ。美味いな」

綾「え、ええ……これはビックリしちゃうかも」

忍「陽子ちゃん、綾ちゃん……」

忍「あ、ありがとうございます」

陽子「し、しの……えっと」

綾「しのが上手になったのは知ってるつもりよ……中1の頃と比べたら」

忍「そうですよね……あの時は、綾ちゃんだけが凄く上手でしたから」

綾「し、しのっ!」


カレン「アヤヤ? 照れちゃってマス?」

綾「べ、別に、そういうわけじゃっ!」

アリス「もうっ、カレン。あまり、綾をからかったらダメだよ?」

アリス「アヤ? そろそろ、C組に行こ――」


ガラッ


男子A「……あぁ」

男子B「この日はキツイな……ホントに」


忍「……あっ」

陽子「!」

綾「……え?」


男子A「……なんていうか」

男子A「こういう、格差ってのが分かりやすい日は……キツいよな」

男子B「……そんなこと言ってるけど、お前ももらってるのは知ってるけどな」

男子A「そ、それ言ったら、お前もだろ?」


忍「……あ、あの」

忍「私、ちょっと行ってきます」

綾「し、しの?」

陽子「……そうだな」

陽子「え、えっと……私も、ちょっと行ってくるね」

綾「よ、陽子も?」
628 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2015/09/16(水) 01:45:42.63 ID:W1ZontJA0
忍「――おはようございますっ」

男子A「お、大宮さん? ……お、おはよ」

男子B「おはよ。……って、猪熊も?」」

陽子「お、おはよ。……悪かったな」

男子B「いや別に、そういうわけじゃ」

男子A「え、えっと……どうかしたのか?」


忍「はい」

忍「こちらですけど……受け取って頂けますか?」スッ

男子A「……これって」

男子B「チョコ……?」」

忍「はい」

忍「去年から今まで、お二人には本当にお世話になりましたから」

忍「良かったらですが……」


男子A「……そっか」

男子B「そういうことなら……ありがとな。大宮さん」

忍「は、はいっ!」

男子A「え、えっと……」

男子B「何か相談とかあったら……いつでも付き合うから」

忍「――あ、ありがとうございます」ペコリッ


男子A「……え、えっと」

男子B「何というか……ビックリしたな」

陽子「だよね。私もビックリしたし」

男子A「……い、猪熊」

男子B「ど、どうかしたのか?」

陽子「い、いや……別に、何でもないんだけど」

陽子「……こ、これ、あげるよ」スッ

男子A「……!」

男子B「チョ、チョコだよな、これ?」

陽子「な、なに? 私がチョコあげたらダメなの?」

男子A「いや、そういうわけじゃないけど」

男子B「何だか意外だったからな。つい」

陽子「あ、あのなぁ……」
629 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2015/09/16(水) 01:46:37.30 ID:W1ZontJA0
とりあえず、ここまでです。
穂乃花たちも登場予定です。

それでは。
630 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/09/18(金) 08:26:02.45 ID:dBe/wkkP0
おつ
頑張って
631 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/09/18(金) 09:38:57.19 ID:qtnP2vSao
苦しめ・・・お前らも
632 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/09/25(金) 15:15:42.29 ID:ShGj9PMC0
このSSは俺の生きがい
633 : ◆jOsNS7W.Ovhu [sage saga]:2015/09/30(水) 23:20:35.95 ID:Bc+4k5Eq0
>>627
アリス「アヤ? そろそろ、C組に行こ――」
色々間違ってるので、この文は無かったということでお願いします。



陽子「えっと、二人にはしのたちのことで色々と世話かけちゃったし」

陽子「い、一応、お礼のつもりだったんだけど……」

男子A「いや、ありがとな。猪熊」

男子B「俺も。ただ、別に世話かけられたとかそういうんじゃないぞ?」

男子A「助けたいから助けただけだしな」

忍「……お二人とも」

陽子「そ、そっか」

陽子「まぁ、気が向いたら食べてよ」

男子A「おう」

男子B「わかった。それじゃ、今日の昼飯はチョコだな」

男子A「そうだな」

陽子「昼ご飯にするんだ……」


男子A「――あのさ、猪熊?」

陽子「な、なに?」

男子B「えっと……」チラッ

忍「?」キョトン

男子A「い、いや。大宮さんには渡したのかなって」

陽子「……え?」

男子B「チョコのことだ。色々、調子悪そうだったから……」

陽子「い、いや。何でそんなこと気にするんだ?」

男子A「そ、それは……」

男子B「まぁ……」

忍「陽子ちゃん?」

陽子「あ、あのなぁ……」


陽子「私、別にしのと、そういうのじゃないからっ」

忍「……!」


男子A「……あっ」

男子B「わ、悪い。変なこと、聞いちゃったな」

陽子「……あ」

陽子「い、いや。いきなり大声出して、ごめん」

忍「……陽子ちゃん」

陽子「え、えっと……」
634 : ◆jOsNS7W.Ovhu [sage saga]:2015/09/30(水) 23:23:11.74 ID:Bc+4k5Eq0


委員長「おはよう。猪熊さん。大宮さん」


男子A「あっ」

男子B「委員長……」

忍「お、おはようございます」

陽子「あ、ああ。おはよ」

忍「そうですっ。委員長に渡したいものが……」スッ

陽子「あっ、わ、私も」スッ

委員長「あら? ……チョコ?」キョトン

忍「はいっ。委員長にも、たくさんお世話になりましたから」

陽子「私も。お礼だと思ってくれる?」

委員長「……あなたたちは優しいのね」クスッ

委員長「わかったわ。ひと月後、お返しするわね」

忍「ふふっ、ありがとうございます」

男子A「あっ、お、俺たちも」

男子B「ひと月後、お返しするから」

陽子「……べ、別に、そんなの」

男子A「まぁ、お礼だと思ってくれって」

男子B「気が向いたら、猪熊も受け取ってくれ」

陽子「わ、わかったよ……」

陽子「――それじゃ、しの。そろそろ戻ろっか」

忍「あっ、はい。……それでは、失礼しますっ」

男子A「お、おう」

男子B「それじゃな」


委員長「――あのね」

委員長「あなたたち、少し行き過ぎじゃない?」

男子A「……聞こえてたのか」

委員長「だから、私が割り込んだのよ。昔から、お節介焼きな所は変わらないんだから」

男子B「やっぱり、やり過ぎだったか……」

委員長「猪熊さんがどこか調子が悪そうなことは、私も分かってるつもりよ」

委員長「ただ、それでも猪熊さんは元気そうに振る舞おうとしてるはず。だから、そこを突っ込むのはダメだと思うわ」

男子A「うっ」

男子B「言われてみれば、そうだな……」

委員長「まぁ、今日みたいな日は複雑になっちゃうかもね。……ほら、たとえば」
635 : ◆jOsNS7W.Ovhu [sage saga]:2015/09/30(水) 23:25:43.31 ID:Bc+4k5Eq0


香奈「あっ、いたいたっ!」

穂乃花「お、おはよう」


委員長「――わかるでしょ?」

男子A「……そうだったな」

男子B「猪熊だけじゃないんだよな……」

香奈「なに、ブツブツ言ってるの?」ジトッ

男子A「いや。何でもない」

男子B「今日も日暮と松原は一緒なんだな、って話」

香奈「……何か、今更って感じだね」

穂乃花「か、香奈ちゃんったら……もう」

穂乃花「――あっ!」


――


綾「……陽子、大丈夫?」

陽子「な、何が?」

綾「やっぱり、少し落ち込んじゃってるような気が……」

陽子「あ、綾まで……そういうんじゃないってば」

忍「……」

アリス「ヨーコ……」

カレン「何か大変そうデス……」


――


穂乃花「……カレンちゃん」

香奈「あっ、ホントだ。よく、ここに来てるんだよね」

穂乃花「う、うん……」

穂乃花「だよね。よく、あの子たちと一緒に……」

香奈「穂乃花?」

男子A「……え、えっと」

男子B「ま、松原たちは何か用があったんじゃないのか?」

委員長「……その手にあるのって」


香奈「あっ、そうそう。はい、義理チョコ」スッ

穂乃花「あっ、うん。私も」スッ

男子A「……今年もくれるのか?」

香奈「まぁ、一応ね。付き合いみたいなのも長い気がしないでもないし」

男子B「かなり遠回しな言い方だな……」

穂乃花「もう、香奈ちゃんったら……みんなとの付き合いも、やっぱり長いから」

香奈「まぁ、私と穂乃花ほどじゃないけどねー」ダキッ

穂乃花「か、香奈ちゃん……」カァァ
636 : ◆jOsNS7W.Ovhu [sage saga]:2015/09/30(水) 23:27:48.97 ID:Bc+4k5Eq0
委員長「……私までもらっちゃっていいの?」

香奈「いいのいいの。……だって」

穂乃花「委員長も持ってるんじゃない?」

委員長「……やっぱり気づかれちゃったわね。はい、どうぞ」スッ

香奈「ありがとっ」

穂乃花「委員長のチョコ、苦味が効いてて美味しいよね」ニコッ

香奈「そうそう。いかにも委員長って感じで」クスッ

委員長「あ、あなたたち……」

委員長「そうそう。はい、二人にも一応」スッ

男子A「……委員長もくれるのか」

委員長「まぁ、何となくこの日になると作っちゃうしね」

男子B「……ありがとな」

委員長「まぁ、ひと月後のお返し……期待しないで待ってるから」

香奈「お返し何かなー、楽しみだね。穂乃花」ニコッ

穂乃花「も、もう、香奈ちゃんったら……」チラッ


男子A(……さっきから)

男子B(松原……明らかに、チラチラと向こうを見てる)

委員長(やっぱり……そういうこと、よね)

委員長「二人とも。ちょっと離れましょうか」

男子A「え? ……あっ、そっか」

男子B「そうだな。松原、日暮、また後で」

香奈「え? 何で?」

穂乃花「ど、どうして――」


カレン「――あっ!」

カレン「ホノカーッ!」

穂乃花「わっ!? カ、カレンちゃん」

香奈「おお、凄いスピード……」

カレン「私、ホノカたちに渡したいものありマス!」

カレン「ハッピーバレンタインデスッ!」スッ

穂乃花「……え?」

穂乃花「カ、カレンちゃん? 私にくれるの?」

カレン「もちろんデスッ! 友達デスし」

穂乃花「あ、ありがと……嬉しいよ」ニコッ

カレン「ハイッ! 私もデスッ!」ニコッ
637 : ◆jOsNS7W.Ovhu [sage saga]:2015/09/30(水) 23:29:17.79 ID:Bc+4k5Eq0
香奈「……そっか。カレン、穂乃花にも」

カレン「カナの分もありマス!」スッ

香奈「わっ。ありがと」

香奈「でも、ごめん。まさかくれるとは思わなかったから、お返しが」

カレン「気にしないでくだサイ! 美味しく食べてくれれば、それがお返しデス!」

香奈「ありがと。でも、ひと月後に何かお返しするね」

カレン「本当デスカ? ありがとうございマス!」

穂乃花「……あっ」

穂乃花「わ、私も、お返しは……」

カレン「大丈夫デス! ホノカも美味しく食べてくれればそれでいいデス!」

穂乃花「そ、そういうわけには……」

穂乃花「わ、私も、ひと月後にお返しするね」

カレン「ありがとうございマス! 嬉しいデス!」ニコッ

穂乃花「う、うん……」


カレン「それじゃ、戻りマスねっ」

カレン「また、クラスで会いマショウ!」

穂乃花「う、うん……またね」

香奈「うん。また後でね」

穂乃花「……」

穂乃花「はぁ……」

香奈「穂乃花?」

穂乃花「う、ううん。何でもないよ」

香奈「……?」キョトン


男子A「……終わったか」

男子B「何だ。あの子、二人にも作ってくれてたんだな」

香奈「……何かビックリ」

香奈「あんなに気が利くなんて思ってなかったから」

穂乃花「カ、カレンちゃんは気が利くよっ」ズイッ

香奈「……穂乃花?」

穂乃花「あっ……ご、ごめん」カァァ

香奈「い、いや。謝らなくていいって」

委員長「……松原さん」
638 : ◆jOsNS7W.Ovhu [sage saga]:2015/09/30(水) 23:32:29.29 ID:Bc+4k5Eq0
一旦、ここまでです。思う所があったのでsage進行にしました。
もう少し、バレンタイン編は続きそうです。
バレンタイン編が終わったら、陽子と綾だけの話を予定しています。

それでは。
読んで下さっている方、いつもありがとうございます。
639 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/10/02(金) 08:09:51.08 ID:mAjMHy4q0
あまり目立たない方がスレが荒れなくていいかもね
640 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/10/02(金) 08:21:41.63 ID:Hwb+pD/O0
乙です
陽子と綾の話楽しみです
641 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/10/09(金) 15:41:11.06 ID:S6gs++Q9O
つまんね
642 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/10/09(金) 17:05:57.93 ID:Ai7qCOj30
まだやってたんだこの[田島「チ○コ破裂するっ!」]
643 : ◆jOsNS7W.Ovhu [sage saga]:2015/11/07(土) 16:37:23.47 ID:m8fNyzCo0


――授業中


陽子「……」

――私、別にしのと、そういうのじゃないからっ

陽子(……そういえば)

陽子(私、こういうこと何度か言ってたんだよね)

陽子(そうだよ。だってさ、しのは私の大事な幼なじみで親友で……)


――高校まではお二人と一緒ですよ?

陽子(……卒業したら)

陽子(しのはイギリスに行っちゃうかも、なんだよね)

陽子(何か軽く考えてたけど、その時……私、どんな気持ちなんだろ?)

陽子(私としのは、ずっと親友でそれは変わらないはず)


陽子(……何だろ? このモヤモヤした感じ?)

陽子(さっき、あの二人に大きな声を出しちゃったから? ……いや、多分違う)

陽子(きっと、もっと前からずっとこんな感じだったんだ――)


陽子(私が……しのに、アリスとカレンみたいな気持ちを持ってるんじゃないか、って)


陽子(それは、文化祭前に一回「無し」だって思ったのに、それからもずっとよく分からない感覚で残り続けて)

陽子(そうだよ。もっと早く、そう認められたらまだ良かった。……でも)

陽子(しのは、あの二人と一緒に……って。わ、私、何考えてるんだ?)

陽子(だ、だから私は! しのは大事だけど、そういう目で見たことなんて……ない、のに)


綾「……」

綾(陽子、さっきから落ち着きなさそう……)

綾(いつも授業中なら居眠りするか早弁したりするのに、今日はずっと頭を抱えているわね)

忍「……陽子ちゃん」

綾(あっ、しのの声。そうよね、心配よね)

アリス「……ヨーコ」

綾(アリスも心配そうだし。うーん)


綾(思ってたより、陽子は色々タイヘンみたいね……)
644 : ◆jOsNS7W.Ovhu [sage saga]:2015/11/07(土) 16:38:43.23 ID:m8fNyzCo0


――昼休み・生徒指導室


男子A「……美味いな、これ」

男子B「だな。さすがクッシーちゃん」

久世橋「べ、別に、それほどでも……」

委員長「美味しいです。でも、いいんですか?」

委員長「生徒指導室でチョコをごちそうされるのって……」

久世橋「……先生方や他の生徒には内緒でお願いしますね?」

久世橋「生徒では、あなたたち以外には渡してませんし。バレたら、贔屓してしまってることになってしまいますから」

男子A「……俺たち、クッシーちゃんにそんな色々したっけ?」

久世橋「わ、私が直接お話し出来ない子たちと話してくれたでしょう?」

男子B「もう、俺からしたらクッシーちゃんが厳しいとか全然思えないけどな……」

委員長「それは同感ね。……松原さんや日暮さんは違うみたいだけど」

久世橋「……松原さん、ですか」

委員長「先生?」


久世橋「いえ。先ほどの家庭科の授業で」

久世橋「その子、とても浮かない顔をしていたもので心配だったんです」

男子A「……声、掛けてあげたら良かったのに」

久世橋「そ、それもしようと思ったのですが……」

久世橋「よろしければ、松原さんのことを気にかけてあげてくれませんか?」

男子B「言われなくても」

委員長「もう私たちも、心配してます」

久世橋「そうだったんですか。それでは、お願いします」

男子A「クッシーちゃんのお願いなら全然構わないけど」

男子B「たまにはクッシーちゃんからも言ってあげた方がいいと思うけどな」

久世橋「……ど、努力します」

委員長「もう、先生ったら。……それでは、ごちそうさまでした」
645 : ◆jOsNS7W.Ovhu [sage saga]:2015/11/07(土) 16:39:23.38 ID:m8fNyzCo0


――廊下


男子A「……あっ、いた」

男子B「すぐだったな」

穂乃花「あっ、三人とも。どうかした?」

委員長「いや。何かあるってわけじゃないんだけど」

委員長「松原さん、何か悩み事とかない?」

穂乃花「……え?」

男子A「何か落ち着きないし」

穂乃花「そ、それは、えっと……」


香奈「あっ! また穂乃花を困らせてる!」

男子B「……お前、いつもそう言ってるな」

香奈「だって穂乃花は私の大事な相方なんだから」

男子A「相方……」

香奈「何か文句ある?」

男子A「いや、ないって。……そっか」


穂乃花「あ、あはは。……あっ、カレンちゃん」

香奈「え? あっ、ホントだ」

穂乃花「……みんなと一緒だね」

香奈「仲良しそうだよね、ホントに」

穂乃花「うん」


委員長「……」

委員長(さっき、九条さんからチョコをもらってた時の松原さん)

委員長(思い出すと、何となく違和感があったような……)

委員長(私の想像が正しければ、もしかして――)
646 : ◆jOsNS7W.Ovhu [sage saga]:2015/11/07(土) 16:41:03.09 ID:m8fNyzCo0
男子A「……もしかしてさ、松原?」

穂乃花「な、なに?」

男子B「あの子に渡したいものでもあるんじゃないか?」

穂乃花「そ、そんなことは」

委員長(二人も感づいてたのね……)

香奈「……」

委員長(あら? 日暮さん?)


穂乃花「べ、別に、そんなことないよ」

穂乃花「ありがとね、心配してくれて。でも、私は大丈夫――」

男子A「今日って日だけは後悔しないでほしいし」

穂乃花「!」

男子B「だな。俺たちにくれたのより、よっぽど本気で作ったんじゃないか?」

穂乃花「……」

委員長「すぐ近くまで来てるし、行ってきたら?」

穂乃花「……」



穂乃花「う、うん」

穂乃花「それじゃ、そうしよっかな」

香奈「……穂乃花」

穂乃花「い、行ってくるね」

香奈「うん。行ってらっしゃい」

穂乃花「うん!」


男子A「……やっぱり、そうだったんだな」

香奈「まあ、私も何となく気づいてたけどね」

男子B「そりゃまあ、日暮の方が松原とは距離近いしな」

香奈「……でもさー」

香奈「まさか、あんたたちがそこまで穂乃花の背中を押すとは思わなかったかも」

委員長「……日暮さん」

香奈「でも、そっちのが普通なのかな」


香奈「――あれ?」

香奈「それじゃどうして、私……あの子にもっと強く勧めてあげなかったんだろ?」

男子A「……日暮」

香奈「うーん、分かんないなぁ……」

香奈「別に、あの子が誰にチョコをあげてもいいのに」

男子B(……これって)

委員長(思っていたより複雑になってそうね……日暮さんと松原さん)
647 : ◆jOsNS7W.Ovhu [sage saga]:2015/11/07(土) 16:42:12.61 ID:m8fNyzCo0
ここまでです。
次回は放課後のつもりです。
648 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/11/08(日) 16:43:27.41 ID:wBr3UHHao
乙でした
649 : ◆jOsNS7W.Ovhu [sage saga]:2015/11/21(土) 14:35:11.07 ID:xVtDSrud0
諸事情で入院することになりました
1ヶ月ほど書き込みできないかもしれません
ごめんなさい
650 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/11/24(火) 07:52:41.69 ID:RFYu/1i/0
楽しみにしていたきんモザSS二つとも更新停止か…
向こうのスレの酉も見て同じ作者さんだと初めて気付いた

まぁお大事にしてください
651 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/12/23(水) 20:56:57.01 ID:voxHR+qtO
652 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/06(水) 00:59:40.73 ID:SetUyjORo
まってるよ
653 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/01/28(木) 16:46:37.48 ID:3h0CGbbsO
654 : ◆jOsNS7W.Ovhu [sage]:2016/02/24(水) 21:17:44.47 ID:qgFYMd2BO
すみません難航しています
もう少しで何とかしたいですね……
655 : ◆jOsNS7W.Ovhu [sage saga]:2016/03/21(月) 20:41:46.55 ID:nOpzhme8O


――放課後


忍「……陽子ちゃん」

陽子「な、なんだ、しの?」

忍「何かあったのでは?」

陽子「そ、それは……な、何でもないよ」

忍「ホントですか? 嘘じゃないですか?」

陽子「……う、嘘なんて」


綾(――放課後)

綾(しのは真っ先に陽子に向かっていって……問い詰めていた)

綾(といっても、詰問とは違う。明らかに心配そうな声音だった)


アリス「……ヨーコ、調子悪そうだもんね」

綾「アリス……そうね」

アリス「うーん、どうしたら元気出るんだろ……?」

綾「……」
656 : ◆jOsNS7W.Ovhu [sage saga]:2016/03/21(月) 20:42:22.98 ID:nOpzhme8O
綾「――あー、陽子?」

陽子「あ、綾?」

綾「えっと……今日の放課後、私と帰らない?」

陽子「……え?」

綾「し、しのたちは、その……ほら。一緒にいたいだろうし」

陽子「……」

陽子「そ、そうだな。うん」

綾「ね?」


綾「と、いうわけで」

綾「しの。もうすぐカレンも来ると思うし……アリスも連れて一緒に帰ってあげたら?」

忍「綾ちゃん……そうします」

忍「ありがとうございます」ペコリ

綾「そんな、お礼なんて言わなくていいのよ」


忍「それじゃ、帰りましょうか、アリス。カレン」

カレン「ハイ! 帰りマショウ!」

アリス「って、いつの間に!? カレン、速すぎ!」

カレン「私はジェット機みたいなものだと思ってくだサイ!」

カレン「それに……今日は特別な日、デスし」

アリス「そ、それは……えっと」
657 : ◆jOsNS7W.Ovhu [sage saga]:2016/03/21(月) 20:43:14.85 ID:nOpzhme8O
綾「それじゃね、カレン」

カレン「アヤヤ……ヨーコと一緒に帰るデス?」

陽子「ま、まぁな。……そっちも楽しんでくれ」

カレン「ハイ! ……ヨーコ、ちょっと」

陽子「な、何?」

カレン「……何かあったら、いつでも話してくだサイ」

陽子「カ、カレン……」

カレン「それじゃ、またデス!」


陽子「――行っちゃったな」

綾「ええ……行っちゃったわね」

綾「……」

陽子「あ、綾……何か言ってくれって」

綾「え? ストレートに言っちゃっていいの?」

陽子「うっ……そ、それは」

綾「……ねえ、陽子?」


綾「歩きながら、話さない?」


――


忍「陽子ちゃんたち、大丈夫でしょうか……?」

アリス「だ、大丈夫だよ! ヨーコなら!」

カレン「そうデス! アヤヤも付いてマスし」

忍「そう、ですね……信じましょうか」

忍「……陽子ちゃん」

カレン「シノ!」

忍「カ、カレン?」

カレン「ヨーコの親友のシノが心配するのは当たり前デスけど」

カレン「ヨーコは……『強い』子だと思いマス」

忍「……」


忍「そう、ですね……」

忍「それでは、信じましょうか。……陽子ちゃんと綾ちゃんを」

アリス「そうだよ、シノ!」

カレン「ハイ! ……それじゃ、行きマショウか」

アリス「うん!」


アリス「シノの――私たちの家に!」
658 : ◆jOsNS7W.Ovhu [sage saga]:2016/03/21(月) 20:58:49.46 ID:nOpzhme8O


――忍の部屋


忍「……チョコでいっぱいですね」

アリス「そうだね。ヨーコやアヤのもあるし……」

カレン「それに――私たちからシノへの特別なケーキもありマス!」

忍「ふ、二人とも……あまり言われたら照れてしまいます」カァァ

アリス「照れるシノも可愛いよ!」

忍「もう、アリスったら……」

アリス「待っててね? 今、紅茶淹れてきてあげるから」

忍「あっ、それなら私も……」

カレン「それじゃ私は、シノの部屋でもあさってマショウか?」

忍「カ、カレン!」

アリス「もう、カレンったら……それじゃ、行ってくるね」


カレン「……え、Hな本とかはなさそうデスね」カァァ

忍「か、顔真っ赤にして言わないでください」

カレン「……ホントは、シノと二人きりになりたかったりしたんデス」

忍「え……?」

カレン「たしかに、シノ、アリス、私の『三人でひとつ』なのは、その通りデス」

カレン「デモ……アリスは一緒のクラスなのに私だけ不公平だと思っちゃったりもするんデス」

忍「カレン……」
659 : ◆jOsNS7W.Ovhu [sage saga]:2016/03/21(月) 20:59:48.42 ID:nOpzhme8O
カレン「――シノは、どうデス?」

忍「そ、それは……えっと」

カレン「私は今、この時間もいいと思いマス」

カレン「デモ、アリスが戻ってきたら……また元に戻りマス」

忍「……」

カレン「シノ……」

忍(ベッドに腰掛けながら、カレンは続けました)

忍(ちょっぴり上目遣いをしながら、そう語りかける彼女に私は――)


忍「……え?」

忍(気づいたら、カレンは軽く私のシャツの袖を引っ張って)

忍(私は、カレンを押し倒してしまっていました――)


カレン「……ワッ」

カレン「シノったら、ダイタンデスね……」カァァ

忍「カ、カレンのせいでしょう?」

カレン「私はジョーダンのつもりデシタ」

カレン「……どうしてどかないデス?」

忍「そ、それは……」

カレン「もしかして――」


カレン「シノも……やっぱり『男の子』だったデス?」
660 : ◆jOsNS7W.Ovhu [sage saga]:2016/03/21(月) 21:00:55.91 ID:nOpzhme8O
忍「……それ、は」

カレン「私もアリスも」

カレン「きっと――『その先』を待っているんだと思いマス」

忍「!」

カレン「分かりマスか?」

忍「……」

カレン「……いいんデスか? ほら、アリスが階段を上がってくる音がしマス」

カレン「このままの体勢だと……アリスのことだからヤキモチ焼いちゃいマス」

忍「……カレン」

カレン「それとも――」


カレン「そのまま、勢いで……な、なんて、考えてマセン、か?」カァァ


忍「……」

忍(静かに、私はそこからどきました)

忍(そして、元通り座ります。傍らには、ベッドに寝転ぶカレンの姿がありました)


カレン「……考えてなさそう、デスね」

忍「……私、いえ、私たちは」

忍「まだ、早いと思います」

カレン「私もアリスも、そこまで気が長い方じゃないかもしれマセンけど?」

忍「……カレンはイジワルですね」

カレン「クリスマス、バレンタイン、そして……次はホワイトデーデスね」

カレン「シノは……どんなお返しをくれるんデショウか?」

忍「……それ、は」


アリス「お、お待たせー!」

アリス「ああ、疲れた。……あれ、カレン? 寝ちゃってるの?」

カレン「ええ。急に熱が出てしまったモノで……」

アリス「ええっ!? だ、大丈夫……って、シノ?」

忍「な、なんですか?」

アリス「え、えっと……」


アリス「どうして……顔、真っ赤なの?」

忍「……そ、それは、その」カァァ
661 : ◆jOsNS7W.Ovhu [sage saga]:2016/03/21(月) 21:02:02.50 ID:nOpzhme8O
一旦ここまでです。
次は陽子と綾のパートを書こうと思います。
本当に遅れ遅れで申し訳ありません……。
662 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/03/21(月) 21:42:32.66 ID:qkDbiqIlo
663 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/03/21(月) 22:48:48.13 ID:TmvT6lIv0
乙!
お帰りなさい!
681.14 KB Speed:0.1   VIP Service SS速報VIP 更新 専用ブラウザ 検索 全部 前100 次100 最新50 続きを読む
名前: E-mail(省略可)

256ビットSSL暗号化送信っぽいです 最大6000バイト 最大85行
画像アップロードに対応中!(http://fsmから始まるひらめアップローダからの画像URLがサムネイルで表示されるようになります)


スポンサードリンク


Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

荒巻@中の人 ★ VIP(Powered By VIP Service) read.cgi ver 2013/10/12 prev 2011/01/08 (Base By http://www.toshinari.net/ @Thanks!)
respop.js ver 01.0.4.0 2010/02/10 (by fla@Thanks!)