忍「隠し事、しちゃってましたね……」 アリス「……シノ」

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90 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2013/10/09(水) 02:30:38.74 ID:HJLwRldP0
綾「……アリスも気が気じゃないわね」

陽子「はぁ――こんな雨じゃジョギングも出来ない……そして、毎日学校……」ズーン

綾「別の意味で、気もそぞろね……」

陽子「――しかし、カレンも慣れたよなぁ」

綾「? あぁ、シノのこと?」


カレン「シノは本当に髪が綺麗デス……」ナデナデ

忍「さ、触ったらくすぐったいです……」

アリス「もう、カレン! シノの髪が崩れちゃうでしょ!」


陽子「ほら、もう――普通の付き合いだ」

綾「『女子』同士の?」

陽子「……そ、そこは、まぁ」

陽子「ほ、ほら。10人に訊いたら10人が『女の子』って応えると思うぞ?」

綾「……それは、そうだけど」

綾「本当に、慣れたのかしら?」

陽子「? どうして?」

綾「いや、なんとなく……だけど」




――高校付近の道




カレン「ところで、アリス? 髪のセットには何分ホド?」

アリス「カ、カレンこそ」

カレン「――ノーコメントデス」

アリス「ち、ちなみに、シノは今朝は0分だったよ!」

カレン「……Really?」ピクッ

アリス「ホントにホント」

忍「ああ――雨の中に、二人の金髪少女が……」エヘヘ


陽子「なぜ、シノを出して張り合うんだアリス……」

綾「まぁ、言いたくないこともあるわよねー……って」

綾「危ない、みんな!」

全員「!?」



キキーッ

バシャッ!



綾「……あぁ」

陽子「な、なんとか、避けられたな……」

カレン「スピード、出しすぎデス!」

アリス「もう、こんな雨の日なのに……」
91 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2013/10/09(水) 02:31:13.10 ID:HJLwRldP0
アリス「シノは大丈……夫……」

アリス「」

陽子「あっ」

綾「あら……」

カレン「……Oh」


忍「――ちょっと、遅かったみたいですね」ポタポタ

忍「あぁ、反射神経が足りませんでした……」ハァ

アリス「シ、シノが……」

陽子「うひゃー、こりゃずぶ濡れだ」

綾「……だ、大丈夫、シノ?」

忍「はい、ちょっと寒いだけです」

忍「でも、服は随分と濡れちゃいましたね……」

アリス「……あ」

アリス(シ、シノ……なんだか)

陽子「色々と、マズい格好だな……」

綾「特に、『女子』にとっては、その」

綾「――透けるっていうことは、なかなかの」

陽子「ああ……薄着の時期ってのが、災いしたな」


アリス(――ま、まともにシノを見れないよぉ)アセアセ

忍「アリスは、大丈夫でしたか?」

アリス「ひゃっ!?」ビクッ

アリス「わ、私は大丈夫だから! シ、シノ、今はダメ!」カァァ

忍「……?」


陽子「――そういえば」

綾「カレンは、どこに……?」

カレン「」

陽子「あ、固まってる」

綾「道理で、さっきから声がなかったわけね……」

カレン「――シ、シノが」

カレン「うう……」カァァ

陽子(さ、さっきまでの積極的なカレンはどこに……?)

綾(ほら、やっぱり慣れたわけじゃなさそう……)



――教室



忍「おはようございます」

女子「あぁ、おはよ……う……」

女子「」
92 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2013/10/09(水) 02:31:41.82 ID:HJLwRldP0
陽子「シ、シノ! 呑気に教室に入ってる場合じゃないって!」

綾「と、とにかく! その濡れたのを何とかしないと……」

忍「――あ」

忍「すみません、ちょっとボーッとしちゃってました」ペコッ

陽子「シノ、大丈夫なのか……?」

綾(まさか、さっきので風邪になったんじゃないでしょうね……)


アリス「あ、いた! 先生!」

カレン「……」

アリス「カレン! 固まってないで!」

カレン「――やっぱり、恥ずかしいデス」カァァ

アリス「もう!」


烏丸「あら、どうしたんですか……って!」

烏丸「大変! 大宮さん、その格好は……?」

忍「あ、先生。おはよう、ございます」

烏丸「――しかも、体調まで」

陽子「ああ、カラスちゃん。実は、さっきね……」

烏丸「そう、だったの――」

烏丸「いずれにしてもその格好じゃ危ないわ……とりあえず、更衣室、に」

忍「……?」キョトン

烏丸「――わ、私が見張っておくから、『女性用』の教員の更衣室を使って」


陽子(さすがカラスちゃん、話が分かる)グッ

綾(――けれど)

綾(今更ながら、シノって本当に『女の子』ね……透け具合といい、見えてるものまで)

カレン「あ、あぁ……もう見れまセン!」ブンブン

アリス「カ、カレン! 恥ずかしいのは私も一緒だよ!」アセアセ

綾(――あの二人が慌てるわけね)

陽子(付き合いが長い分、こういうことにも「慣れ」てしまったような気がするのがちょっと怖い……)ハァ



――その頃、教室



女子A「大宮さん、大丈夫かな……」

女子B「相当酷く濡れてたよね……」

女子A「――恥ずかしいだろうな」

女子B「――まったく」

男子A「……それは」

男子B「うーん……どう、なんだろうな?」
93 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2013/10/09(水) 02:32:16.48 ID:HJLwRldP0
女子A「? 何いってんの、二人とも?」

女子B「『女の子』は複雑なんだよ?」ジトッ

男子A「わ、悪い。なんでもない」

男子B「……ただ、大宮さんは」

男子AB「……」

女子AB「??」



――保健室



陽子(こうして、なんとかシノの着替えも終わり)

陽子(念の為に熱を測ったら、案の定……)

綾「――シノ、大丈夫?」

忍「うう……いきなりの風邪は、ちょっとキツいかもしれません」ケホケホ

アリス「シ、シノが……」


養護教諭「みんな、もう少しでHRよ?」

陽子「あ、そ、そういえば……そっか」



カレン「――わ、私、残るデス」

綾「カレン?」

陽子「おいおい、授業始まるんだぞ?」

アリス「じゅ、授業には出ないとだよ!」

カレン「……さっき、チラッと教室を覗いタラ」

カレン「一時間目は自習、って黒板二」

陽子「そ、そうなのか」

綾「それなら……」

アリス「……」

アリス「わ、私もっ!」

陽子「アリス、残念だけど私たちは授業!」

綾「それに、今日の宿題、アリス当てられてるでしょ?」

アリス「……うう、そうだったよ」


カレン「先生!」

養護教諭「……しょうがないわねぇ」

養護教諭「でも、我慢して?」

カレン「……!」
94 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2013/10/09(水) 02:32:56.04 ID:HJLwRldP0
養護教諭「いい? 大宮さんは風邪なの」

養護教諭「だから、うつっちゃう可能性だってあるのよ?」

カレン「で、でモ……!」

養護教諭「――大宮さん、もしも誰かにうつしたら、悲しむんじゃない?」

カレン「!」

養護教諭「――さ、教室に戻りなさい」

養護教諭「ごめんなさい、なんとかしてあげられたらとは思うのだけど……」

カレン「わかり、マシタ」


アリス「うう、シノー……」

陽子「さ、行くぞアリス」

カレン「……」

綾「失礼します」ペコリ

養護教諭「はい、またね」



――廊下



アリス「……シノ、心配だよぉ」

陽子「大丈夫だって、アリス」

綾「そうよ。シノ、ああ見えて頑丈なんだから」

カレン「……」

陽子「――カレン」

カレン「ハイ?」キョトン

陽子「どうして、残りたいって言ったんだ?」

カレン「……」


カレン「――シノが、心配だったからデス」

綾「……そうよね」

陽子「そう、だよね」

アリス「――カレン」

カレン「さ、帰って自習しないとデス!」

カレン「それでは、お先二!」ダッ

陽子「お、おい!?」


陽子「……一体、なんでいきなり」

綾「――もしかして、ね」

綾(なんとなく、カレンの横顔に理由はあるような気はする)

綾(恥ずかしさの中に、優しさがあるような――うん、まるで)


綾(……まさか、ね)



アリス「……シノ」キュッ
95 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2013/10/09(水) 02:34:52.17 ID:HJLwRldP0
ここまでになります。

冒頭に書いたように、とても長くなってしまい、冗長だったかもしれません……。
楽しんでいただけたら幸いです。
カレンの想いは、果たして……?

それでは。
暑かったり寒かったり安定しませんが、体調にお気をつけて。
96 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/10/09(水) 09:46:37.85 ID:BkoyfOcro
おつ!
こういう雰囲気のきんモザもいい感じ
97 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/10/09(水) 20:33:24.65 ID:hmSQ3UvGo
待ってました
98 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/10/09(水) 20:52:21.81 ID:5tTW3N5bO
続き楽しみにしてます
99 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/10/10(木) 00:45:05.75 ID:rnUvGxdEo
100 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2013/10/12(土) 02:02:45.40 ID:h1keRCWz0
今回はちょっと短めで。
アリスとシノのお話です。



――二ヶ月。

 この期間を長いとみるか短いとみるかは、人それぞれだろう。
 しかし今、ここで眠る英国少女にしてみたら、それは長いものだった。

 慣れない異国での生活は、本人の考える以上に心理的な負担がかかるものだ。
 幸い彼女の場合は、近くに頼れる和風少女が居るから、そうした負担も軽減されているが……。



 果たして、彼女が目を覚ます――











――大宮家・忍の部屋


アリス「……ふぁぁ」

アリス(朝、かぁ)

アリス(さ、顔を洗いに――あっ、そうそう)ピタッ

アリス(シノはちゃんと起きてるかなー、っと……)チラッ
101 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2013/10/12(土) 02:03:14.04 ID:h1keRCWz0
忍「――あ」


アリス「」


 ――差し込んだ陽に照らされる、白い肌。
 胸部は全く平らだけれど、それが逆に綺麗さを際立たせている。

 上半身裸の同居人は、その手をパジャマズボンに伸ばしていた。
 そんな隙間から、妙にお洒落な――


アリス(じゃ、なくてっ!)ブンブン


アリス「な、なに、を……」

忍「え、ええと……」

忍「お、おはようございます、アリス」

アリス「――な、何やってるの、シノ!」アセアセ


アリス「あ、朝は私が顔を洗いに行ってる間に着替える、って約束でしょ!?」

忍「……」

忍「ごめんなさい、寝ぼけちゃってたみたいです」

アリス「い、いいから、早く何か着てよぉ……」カァァ

忍「――ところで、アリス」

忍「今日は、こっちがいいですか? それとも……」スッ

アリス(寝ぼけ眼でシノは、私の前に二つの「モノ」を出した)

アリス(それぞれ、セットになっていて、どっちも膨らんでいる)

アリス(それは、多分……)


アリス「――な、何見せてるのぉ!?」ビクッ

忍「――あ」

忍「ご、ごめんなさい」ペコリ

忍「えへへ……」ニコニコ

アリス(だ、ダメ……寝ぼけてるんだ……!)ガーン


アリス「と、とにかく! 私、外に出るから!」

アリス「その間に着替えておくこと! いい!?」

忍「はぁい……」

アリス「――」バタン
102 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2013/10/12(土) 02:03:50.99 ID:h1keRCWz0



――廊下



アリス「……はぁぁ」タメイキ

アリス(あ、朝から目に毒だよ……)

アリス(相変わらず、何であんな真っ白で綺麗な肌で――)

アリス(下着もお洒落で……!?)


アリス「じゃ、じゃなくてっ!」ブンブン

アリス「……うう」

勇「朝から何事、アリス?」ガチャッ

アリス「ひゃっ!?」ビクンッ

アリス「あ、い、勇。おはよう」

勇「おはよ。でも、まぁ」

勇「随分と大きな声出してたわねぇ」クスッ

アリス「――ごめんなさい、起こしちゃった?」

勇「ううん、いいのよ」


勇「……やっぱり」

勇「一緒の部屋、大変?」

アリス「そ、それは、その……」

アリス「――今日は、シノが着替えちゃってて」

勇「ほほう……」


勇「で、アリスはシノの裸見ちゃったわけだ」ニヤニヤ

アリス「い、勇! 直接的すぎるよぉ……」

勇「――あの子の肌、凄い綺麗よねぇ」

アリス「……う」

勇「ホント、ヘタすると私より――」

アリス「……私は、シノを見る度に、女としての自信を無くしそうだよぉ」

勇「あら? アリスだって、十分に女よ?」

アリス「そ、そうかなぁ……」

勇「だって、『可愛い』じゃない」

アリス「……」

アリス「――それ、女らしさ?」ジーッ

勇「さ、そろそろご飯食べないと」

アリス「勇……」


勇「あ、そうそう」

勇「シノの下着も見ちゃったんだろうけど……」

勇「あの子のアレ、『女子用』だからね?」

アリス「……」
103 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2013/10/12(土) 02:04:27.55 ID:h1keRCWz0
勇「それじゃ、また後でねー」

アリス「……し」

アリス(知ってたよ……)

アリス(だ、だから、こんなに自信を失くしてるわけで……)

アリス(だって、あ、あんなによく似合うものを探すのが難しいのは、なにより「女」である私が――!)


忍「……アリスー?」

アリス「ひゃぁっ!?」ビクンッ

忍「お顔、洗いに行ったのでは?」

アリス「……い、勇に会って」

忍「お姉ちゃん、もう起きてるんですか!」パァァ

忍「それじゃ、朝ごはんです! さ、アリスも行きましょう!」

アリス「う、うん……」

アリス「……」


アリス(胸、どっちを詰めたんだろ?)

アリス(そ、それに、さっきの下着を付けて学校に行く、んだよね?)

アリス(――うう、頭がパンクしそうだよぉ)カァァ

忍「アリス? どうかしましたか?」キョトン

アリス「――シノのせいで」

アリス「身体が妙に熱いよ……」ハァ

忍「もしかして熱ですか!? それは大変です!」

忍「い、今、体温計を……」

アリス「だ、大丈夫だから!」

アリス(というより、シノを見るとどうしてもさっきの姿が思い浮かんで――)


アリス(あぁ、これじゃまるで、私が変態さんみたいじゃない!)アセアセ

忍「……ちょっと、ズレちゃいましたね」

アリス(そ、そういうこともしないでぇ……!)カァァ
104 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2013/10/12(土) 02:06:28.81 ID:h1keRCWz0
ここまで。

最近、カレンちゃんに色々な意味で振り回されているアリス中心の話でした。
実際、同性同士の共同生活だけでも大変なのに、それがこうもなってしまえば……
アリスの赤面率は増すばかりですね……。

それでは。
アニメが終わっても、こうしてSSを見てくださる皆様に感謝します。
105 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/10/12(土) 02:26:44.16 ID:nZPcvGWdo
このSS本当好き
106 : ◆jOsNS7W.Ovhu [sage]:2013/10/13(日) 02:40:47.48 ID:Woe7yKGf0
 ――梅雨が明けて、少し経つ。

 どんよりとした曇り空が、カラッとした晴天に変わった。
 学生たちにとって、梅雨明けというものは二重の意味で嬉しいものだ。

 一つは、なによりどんよりとした気分が晴れること。
 人によっては校庭で遊んだり、中庭で青春を謳歌することだろう。

 二つは――


「やっほー! ようやくカレンダーに、『赤』が蘇ったぞー!」
「……陽子、そればっかりね」


 と、猪熊陽子が代弁してくれている通りなので、割愛。


「とはいえ、気は抜けないんじゃない?」
「へ? なんのことだ?」

 この世の春とばかりにステップを踏む陽子の一方で、綾の声音は冷静だ。
 コホンと一息つくと、彼女は陽子の目をしっかりと見つめ、


「――期末試験、近づいてきたわよ……」
「私の春を返せぇー!」
「よ、陽子! い、いきなり近づかないで!」


 綾のすぐ近くまで、にじり寄る陽子。後退りしながら、顔を赤らめる綾。
 そんな二人の胸中に、芽生えた想いは一つ。


「「勉強、しなきゃ(しましょう)!」」




――昼休み・教室


忍「勉強会、ですか……」

綾「そう」

陽子「さすがに、ちょっと頑張らないとなー」

アリス「……陽子、成績良くなかったの?」

陽子「――ちゅ、中間のことは無かったことに……」

綾「現実から目を逸しちゃ、ダメよ?」

陽子「ぐっ……あ、綾、シビアなやつめ」



忍「わぁ、楽しそうですねぇ」ニコニコ

綾「――た、楽しそう?」

陽子「あー、シノは私以上に、真剣味が足りませんなぁ」

綾「……寧ろ、私はあの点数でここまでのほほんとしていられるシノが、羨ましくすらあるわ」ハァ

忍「?」キョトン


アリス「シ、シノはやれば出来るよっ!」アセアセ

陽子「え? アリスはシノのそんな姿を知ってるのか?」

アリス「……」

アリス「わ、私の『第六感』がそう言ってるの!」キリッ

綾(何故、スピリチュアルに……)

陽子(要は、「シノのことは私が誰よりも知ってる」と……やれやれ)
107 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2013/10/13(日) 02:43:29.06 ID:Woe7yKGf0
カレン「アリスッ!」ダキッ

アリス「わっ、カレン!」

カレン「んー、相変わらずちっこいデスねー」

アリス「……カ、カレンは大きくなりすぎ」

カレン「え、それはどーいう意味で、デスか?」

アリス「――い、言いたくないもん」

カレン「height or bust?」

アリス「……No Comment!」カァァ


陽子「いやー、さすが本場の英語は一味違うなぁ……」

綾「聞き取れなかったけど、アリスの表情からなんとなく分かるわね……」

忍「金髪少女の英語……なんて素敵な……!」パァァ

綾「あぁ、シノはどうあっても幸せなのね……」タメイキ


カレン「勉強会、デスか……」

綾「ええ、そうよ」

陽子「そういや、カレンの成績はどうなんだ?」

カレン「私ノ?」

カレン「ウーン……『ソゥソゥ』デスね」

綾「――あぁ、『So So』」

陽子「なんて意味だっけ……」

綾「陽子――あなた、本当に」ハァ

忍「うーん、カレンは『想像』以上に可愛いですねぇ……」

綾(すでにこの子は、一つ突き抜けているわ……!)ビクッ


カレン「私も参加してもいいデスか?」

陽子「勿論!」

綾「Of Course、よ」

アリス「カレンも……」

カレン「? アリス、どうしまシタ?」

アリス「う、ううん、なんでも……」

カレン「シノも来ますよネ?」

アリス「!」ハッ


忍「ええ、勿論です!」

忍「みんなで楽しく勉強しましょう!」

カレン「イエース!」

アリス「……」
108 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2013/10/13(日) 02:44:06.40 ID:Woe7yKGf0
陽子(なんだかなぁ……)

綾(傍から見てる分だと、どこか切なくなってくるわね……)

綾(でも、まぁ――)

アリス「もう、カレン! あまりシノに触っちゃダメだよ!」

カレン「アリスも触ればいいんデスよー」

忍「えへへー……」ポワポワ

アリス「……」

アリス「――わ、私は、カレンと違って大人だもん!」

カレン「……その、『大きさ』デ?」

アリス「」

アリス「どこが、かな?」ジッ

カレン「ご想像にお任せしマス!」

アリス「……むぅ」プクッ


陽子(触ってる、と言っても)

綾(カレンはシノの髪ばかりで)

綾(……身体と身体のスキンシップでわけじゃ、ないわね)

陽子(この前の雨の日のこと、まだ引きずってそうだなぁ……)


アリス「わ、私だって、いつか大きく……!」

忍「アリスはそのままで、十分すぎるほど可愛いですよー」

アリス「……」

アリス「シ、シノ……!」ダキッ

忍「アリス!」ダキッ


陽子(と、そんな考えも)

綾(この二人を見るだけで、消えちゃうわね……)




――後日・大宮家


綾「結局」

陽子「みんなの意見をつき合わせた結果」

カレン「シノの家になりマシタね……」


綾「ところで」

綾「私たち、もう少し待たないといけないのかしら?」

陽子「そうだなぁ……」

陽子「『色々』と、大変だろうし――」

カレン「何が、色々なんデス?」

綾「そ、それは……」カァァ

陽子「……」プイッ

カレン「??」
109 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2013/10/13(日) 02:44:53.28 ID:Woe7yKGf0
陽子「――なぁ、カレン」

カレン「ハイ?」

陽子「シノの部屋、あまり物色しないでおいた方がいいぞ?」

カレン「物色、デスか」

カレン「ハイ! 大丈夫デス!」

陽子「――それこそ、妙な『詰め物』とか、妙な『下着』とかが……」

カレン「」

綾「ちょ、ちょっと陽子! 言い過ぎよ!」

陽子「綾……カレンにこそ言っておくべきことだろ?」

綾「……そ、それは、そうだけど」


カレン「――ツメモノ」

カレン「――シタギ」

カレン「……」カァァァ

綾(ほら、言わんこっちゃない)

陽子(カレンは一旦スイッチ点くと、長いからなぁ……)


忍「みなさん、お待たせしましたー」

アリス「さ、どうぞ」

陽子「おう、オツカレさん!」

綾「お邪魔します」

カレン「……アリス?」

アリス「? どうしたの、カレン?」

カレン「――部屋の整理、付き合ってたデス?」

アリス「ちょ、ちょっとだけ、ね」

アリス(ちょっと、「踏み込んだ所」はシノ一人に任せちゃったけど……)

カレン「そう、デスか……」

カレン「……」タメイキ

忍「? カレン、どうかしました?」

カレン「――な、なんでもないデス!」ブンブン

カレン「……」カァァ

忍「??」キョトン

アリス「……カレン」



――大宮家・忍の部屋


陽子「さ、バンバン解こう!」

綾「へぇ、やる気満々なのね」

陽子「……今回のテストで成績落としたら」

陽子「なんだか、嫌な予感がして……」

綾「――まぁ、『追試』は嫌よねぇ」

陽子「ぐ、具体的に言わないでくれぇ……」ヘナヘナ
110 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2013/10/13(日) 02:45:48.15 ID:Woe7yKGf0
アリス「さ、シノはまず数学だね」

忍「はい」

カレン「いやいや、英語じゃないデス?」

忍「あ、そっちも……」

アリス「カ、カレン! シノは数学の方が悪いんだから、まずは――」

カレン「英語なら、私も教えられるデス。シノの味方になれマス」

忍「あぁ……それは」


アリス「数学!」

カレン「英語デス!」

二人「……」ムーッ

忍「あぁ……見つめ合う二人も可愛いですねぇ……」


陽子「いやぁ、モテるって大変なんだなぁ……」

綾「――」




――たしかに、私は女子からモテるけど――

――モテたって、私にとっては綾だけが!――




綾「なんて、ね」ハァ

陽子「……意味深な溜息つくの、やめようよ」ハァ



忍「……」カキカキ

カレン「シノ。そこは、形容詞だから名詞の前デス」

忍「――あ」

忍「ありがとうございます、カレン」ゴシゴシ

カレン「エヘヘ……」


アリス「――シ、シノ! そこスペルミスだよ!」

忍「あぁ、本当」

忍「ありがとうございます、アリス」

アリス「え、えへへ……」
111 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2013/10/13(日) 02:46:13.67 ID:Woe7yKGf0
カレン「――アリス、やりますネ」

アリス「カレンこそ」

アリス「――というより、カレンは別の科目、大丈夫なの?」

カレン「私デスか?」

カレン「今日は、シノのお手伝いに専念しマス!」

アリス「……そっか」


カレン「でも、ちょっと疲れたデス」

アリス「え、ええ!?」

カレン「シノ、ベッド借りてもいいデスか?」

忍「はい、どうぞカレン」

カレン「よっこらせ、ット」ポフッ

カレン「……寝心地いいデス」ウットリ

忍「ありがとうございます」


アリス「じゃ、じゃあ、続きやらないとだね!」

忍「そう、ですねぇ……」

忍「――私も、休みたくなっちゃいました、けど」

アリス「シノ! 集中だよ、集中!」

忍「うう……アリス先生は手厳しいですねぇ」


カレン「……」

カレン(気持ちいいデス……)

カレン(こうして転がってると、疲れが吹き飛んでいっちゃいマス)

カレン(――あ)

カレン(これって……)


カレン「シノの、匂い……?」ピクッ


カレン(……)アセアセ

カレン(――何を動揺してるのデスか)

カレン(友達のベッドなんて、誰でも借りマス)

カレン(あぁ、気持ちいいデス……いい匂いデス……)

カレン(――アレ?)
112 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2013/10/13(日) 02:46:51.78 ID:Woe7yKGf0



カレン(どうして、身体が火照ってるデスか……!?)カァァ



陽子「お、おい? なんかこの部屋、ちょっと暑くないか?」

綾「言われてみれば……」

綾「――なんとなく、原因はわかったような気もするけどね」

陽子「ん……ああ、そういう」

カレン(こ、これはただ休んでるダケ)

カレン(そう、だから、こうして熱くなるのはおかしくて、シノがいい匂いだからッテ、それは変わらなくて……)

陽子「シノー、クーラーの温度下げても大丈夫かー?」

忍「はい! 大丈夫ですよ」

綾「カレン……身体中、真赤ね」




――後日・試験返却日



忍「……あ」

アリス「凄いよ、シノ!」

アリス「英語も数学も、中間よりよくなってる!」

忍「ふふ、アリスたちのおかげです!」

アリス「良かったよぉ……」

忍「アリス!」ダキッ

アリス「シノ!」ダキッ



男子A(今までなら、女子同士のスキンシップだからってことで軽く見てたけど)

男子B(今となっては、なぁ……)

女子A「もう、鼻の下伸ばしちゃって……」

女子B「なんか複雑そうな顔してるよね……」
113 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2013/10/13(日) 02:47:17.90 ID:Woe7yKGf0
陽子「見ろ、綾!」

綾「あら、結構良くなってるわね……」

陽子「これで――これで、夏は自由だ!」

綾「そうね、これで夏休みが無事にやってくることになるわね」

綾「――カレンは、どうだったのかしら?」

陽子「ん、カレンか……」

陽子「――なんとなく、予想付くような気がするのは私だけかな?」

綾「安心して、陽子。多分、私も同じ――」




――別クラス



カレン「……」ズーン

女子A「あ、ねぇ九条さん」

カレン「……」

女子A「ちょっと見せっこしない?」

カレン「――ン」

カレン「いいデスよ」

女子A「わーい……って」

女子A「ご、ごめんなさい」

カレン「イエ……」


女子A(九条さん……道理で、沈んちゃってるわけだ)

女子A(うう、うかつだったなぁ……バカ、私のバカ!)



カレン「……」

カレン(誰にも、言えマセン)

カレン(それこそ、アリスにダッテ)

カレン(……)


カレン(テストの間ずっと、シノの匂いが忘れられなかった、なんて)

カレン(そんな「匂い」が、やっぱりアリスのものとはチガって、余計に強く記憶に残っちゃった、ナンテ)

カレン(……テストの結果は、どうでもイイデスが)


カレン「……シノ」ボソッ

カレン(忘れられマセン……!)カァァ
114 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2013/10/13(日) 02:49:11.67 ID:Woe7yKGf0
ここまでになります。

今回はカレンちゃんメイン? でしたでしょうか。
本SSに限り、カレンちゃんの赤面率の高さはメーターを振り切れてると思います。

しかし書いてると、どうもパターンが固定化されてきた感があります。
このままマンネリ一直線にならなようにしないとですね。

それでは。
いつもありがとうございます。
115 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/10/13(日) 05:09:40.23 ID:D2AtKWFVo
やっぱいいねこれ
116 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2013/10/20(日) 01:59:16.16 ID:p7aBFeQ/0
お待たせしました。投下します。
今回は、本編の前座に当たります。
117 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2013/10/20(日) 01:59:57.40 ID:p7aBFeQ/0


 ――鐘の音が鳴り響く。


 はたと気が付き、早乙女教師は一旦、話を区切った。
 眼前に座る生徒たちの瞳が、鮮やかな光を灯したことをありありと感じ取ったからだ。

 コホンと、一息。
 そして、生徒たちの方へ、自分も満面の笑みを浮かべながら、告げる。


「……皆さん! 夏休みの始まりです!」
「うおおお!」


 その瞬間、教室は確かに揺れた。
 夏休み。この言葉を聞いて、浮足立たない生徒はいない。

「羽目を外しすぎないよう、楽しんで下さいね」

 と言い、一礼の後、早乙女教師は教室を静かに出て行った。


 ――テクテク。

 廊下を歩きながら、可愛い教え子たちの嬉しそうな表情を思い出し、笑みが漏れた。
 と、同時に。

「……私も、昔はあんな感じだったなぁ」

 愛しくもあり、切なくもあり――
118 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2013/10/20(日) 02:01:54.61 ID:p7aBFeQ/0



――未だざわめく教室



陽子「よっしゃ! 夏休みだ!」ガッツポーズ

綾「ある意味、一番ノリがいいのは早乙女先生だったわね……」

忍「ふふ、烏丸先生は可愛いですから」ニコニコ

アリス「――夏休み、かぁ」


カレン「Hey!」ガラッ

陽子「おっ、カレン!」

綾「なんとまあ、分かりやすいテンションの高さね」

忍「カレンー」ホワホワ

アリス「……あれ? カレン、その手に持ってるのって」

カレン「ハイ!」スッ


陽子「おお……これは」

綾「海、かしら?」

カレン「そうデス!」

カレン「この前、ハワイへ行った時、撮ってきた写真デス」フンス

アリス「うわあ、カレン楽しそう……」

忍「――金髪少女の、水着姿」パァァ

アリス「……むぅ」


アリス(よくよく見てみると)

アリス(カレンのスタイルは、いい)

アリス(ちゃんと胸もあるし、もちろん腰回りだって細い)

アリス(――シノは、「どっち」なんだろう?)チラッ


アリス「ねぇ、シノ? 私が水着を着たら……」

忍「アリスの水着、ですか?」

忍「――すごく、可愛いと思います!」ニコニコ

アリス「そうじゃなくてぇ……」

アリス(でも、何だか恥ずかしい質問だから、置いとこうかな……)
119 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2013/10/20(日) 02:04:02.21 ID:p7aBFeQ/0
カレン「シノは、大きいのと小さいの、どっちが好きデス?」

アリス(って、カレンー!?)アセアセ

忍「私、ですか……」

忍「――そうですね」

忍「どっちにも、どっちの良さがある、と思います!」ニコニコ

カレン「シノは優しいデス!」ニコニコ

忍(正直な話、金髪少女の水着姿というだけで、胸が高鳴ってしょうがありません……!)ハァハァ


カレン「……」ジーッ

アリス「……カレン、どうして私をそんなに見てるの?」

カレン「これからデース!」グッ

アリス「むぅ……」


陽子「はは、あの3人も相変わらずだなぁ……」

陽子「カレンもかなり慣れてきたみたいだし――って、おい? 綾?」

綾「……」

綾「私、カレンより高いわよね?」

陽子「身長? そりゃ、そうだろ」

綾「……ない、これはないわ」ワナワナ

陽子「あ、綾?」


綾「――はぁ」タメイキ

カレン「どうしたデスか、アヤヤ?」

綾「……」ジーッ

カレン「Oh?」


綾「――はぁ」

カレン「……アァ」ポンッ

カレン「アヤヤ! バストを気にすることありまセン!」グッ

綾「……とは、言ってもねぇ」チラッ

陽子「ん?」ピクッ

綾「――近くでいつも見せつけられてれば、嫌にもなってくるわね」

陽子「わ、私のせいなのか!?」ガーン
120 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2013/10/20(日) 02:05:38.26 ID:p7aBFeQ/0
カレン「と、いうワケデ」

カレン「今年の夏休みは、海へ行きまセンカ?」

陽子「海、海か……いいなぁ!」

忍「気持よさそうですねぇ……」パァァ


アリス「海……」ズーン

綾「海……」ズーン


カレン「――なにやら、二人は行きたくなさそうデス?」

陽子「ああ、理由は多分……」

忍「二人とも! 気にしなくても、楽しいですよ!」

二人「フォローになってない(よぉ)!」ガバッ



カレン「海がイヤなら……ホット・スプリング!」

アリス「温泉……?」

綾「また、妙な所をついてきたわね……」

陽子「温泉か――夏の温泉もいいかもなぁ」

忍「――温泉、ですか」


カレン「日本の温泉は、かなりイイと聞きマス!」

カレン「そこに行くことは、とても魅力あるデス!」キラキラ

綾「温泉、ねぇ……」

陽子「たしかに『いい』とはいえ、なぁ……」

アリス「温泉、良さそうだけど……二人とも、なんだか煮え切らないね?」

二人「いや、なんて言ったって……」チラッ

アリス「――!」ハッ
121 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2013/10/20(日) 02:07:48.84 ID:p7aBFeQ/0
忍「皆さんが温泉に行くのなら」

忍「私は、温泉の外でお待ちしてますね」

忍「ご一緒できないのが残念ですが……」


アリス「ご、ごめん、シノー!」ダキッ

忍「ア、アリス?」パチクリ

アリス「気づけなかったよ……」グスッ

アリス「うう、一番近くにいたのに……」

忍「――いいんですよ、アリス」ギュッ

アリス「シノぉ……」ギュッ


陽子「――アリスも、まだ甘いな」

綾「まぁ、シノも楽しそうだし――カレン?」

カレン「……」

カレン「――配慮が足りなかったデス」ズーン

陽子「ま、まぁまぁ、そう気にしないでって」

綾「シノなら大丈夫よ。あの子、昔からああいう優しい子だから」

カレン「――デモ」


カレン(アリスをからかってる時とは、チガウ)

カレン(シノがちょっとでも落ち込んだと思ったら、感じてしまうこのカンカク……)

カレン(――ムゥ)キュッ



忍「それなら!」ポンッ

忍「お泊り会はどうでしょう?」

アリス「お泊り会……?」

陽子「あぁ、休みの定番だな!」

綾「でも、誰の家に……?」


カレン「ウーン……私の家は厳しいかもしれまセン」

陽子「そっか」

カレン「ハイ」

カレン「7月から8月には、パパと仕事の付き合いがある人とのパーティーがありマス」

カレン「その準備も大変だから、私の家は無理みたいデス……」

綾「そ、そう、なの……」

陽子(なんて、お嬢様だ……!)
122 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2013/10/20(日) 02:08:59.77 ID:p7aBFeQ/0
綾「陽子は?」

陽子「あぁ、うちは――弟や妹がうるさいだろうし」

陽子「ちょっと厳しいかもだな……綾は?」

綾「わ、私は、その……」

綾「へ、部屋の整理が大変だから――」アセアセ

陽子「へぇ、意外だな。綾って、整理好きだと思ってた」

綾「ま、まぁ、ちょっとね……」

綾(家に沢山の人を呼ぶことが恥ずかしい、だなんて言えないわよね……)ハァ



陽子「と、なると」

綾「流れ的に……」

忍「私の家なら大歓迎です!」ニコニコ

アリス「いいの? イサミやママに許可をとらなくて……?」

忍「二人ならすぐに納得してくれます!」

アリス「シノがそう言うなら……」


陽子「それじゃ、シノの家で!」

綾「お泊り会か……なんか新鮮でいいわね」

カレン「……シノの家、デスカ」ボソッ

綾「カレン?」

カレン「い、いや! なんでもないデス!」ビクッ

カレン「楽しみデス」ニコニコ

綾「……」
123 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2013/10/20(日) 02:10:04.35 ID:p7aBFeQ/0
綾(カレン、大丈夫かしら……?)

陽子(確実に慣れてきたとはいえ、時々シノがからむと、一気に変わるからなぁ……)

綾(まぁ、カレンにとっても大きな一歩になるでしょ……)

陽子(そうだな――大丈夫だよな、うん)コクコク


アリス「……シノの家で、お泊り会」

アリス(シノの家に、人が沢山来る……)

アリス(なんだろう――ちょっと、胸がチクリとするよ)キュッ

アリス(……なんでだろ?)キョトン

忍「? どうしました、アリス?」

アリス「!」ビクッ

アリス「な、なんでもないよぉ!」カァァ

忍「??」


カレン「……」

カレン「楽しみ、デス」ボソッ

カレン「――」キュッ
124 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2013/10/20(日) 02:12:22.79 ID:p7aBFeQ/0
ここまでになります。

お泊り会という本編の前座でした。

さて、それぞれがそれぞれの想いを抱えて、いざ大宮家へ。
次回の構想はある程度できていますので、早めに投下できるかと。
ただ、予期せぬ仕事がある可能性もありますが……

それでは。
読んでて楽しい、という反応は非常に励みになります。自分も書いてて楽しいので。
ありがとうございます。
125 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/10/20(日) 02:13:39.87 ID:rR1+m8+Co

雰囲気好きよー
126 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/10/20(日) 04:09:55.43 ID:djHGA43qo
キャラの個性が出てていい感じ
127 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/10/20(日) 21:12:12.33 ID:zT2wNpmuo
まともなきんモザSSは非常にレア
128 : ◆jOsNS7W.Ovhu [sage saga]:2013/10/24(木) 00:46:59.38 ID:e87dEvRw0
ごめんなさい……ミスでした。

☓早乙女→○烏丸

誰だ、早乙女さんとやらは……

投下まで、もうしばらくお待ちください。
129 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/10/24(木) 11:21:51.94 ID:6013g+HGo
私待つわ
130 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/10/28(月) 15:11:40.16 ID:CJ0CmO9q0
週末更新なかったか…期待してまーつーわ
131 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2013/11/01(金) 01:29:20.54 ID:g6trURcC0
――シノの家に、泊マル。

 イギリスにいた頃、私とアリスは姉妹のようなものでシタ。
 同じ本を読み、同じ遊びをして、同じベッドで寝ることモ……。

 そうデス、考えてみれば当然デス。
 私たちは、「友達」だったのですカラ。

 だから、今回だって同じことデス。
 ハイスクールで出来た友達の家に、泊マル。
 それだけのコト――

「……なのに、どうシテ」

 私は、こんなにも落ち着かないのデショウ?

 ケータイを開いて確認してみれば、日付は夏休みに入ったばかりということを示してマス。
 そして、明日ハ――


「――モヤモヤしマス」




 ――と。

 そんな一人の英国少女を例外として、他の面々は特に変わりなく明日を楽しみにしていた。

「いやー、シノの家に泊まるの久しぶりだなー!」

 と、ある少女は浮き足立っており、

「……お泊り、か。なんだか、『友達』って感じ」

 と、友達の大切さを噛み締めている少女もいて――


「シノの家で、お泊り会……」

 おっと、この英国少女もまた例外のようで――







 ――当日・大宮家前





 陽子「……なんだか、久しぶりに来たような」

 綾「まあ、4月の頃は、主にシノ関係でゴタゴタがあったしね……」

 カレン「……ゴタゴタ」ハッ

 陽子「ん? どした、カレン?」

 カレン「あ、ああ、いや、ソノ!」アセアセ

 カレン「……No Problem、デス」カァァ

 綾(いや、その頬の赤みは『問題なし』じゃないわ……)
132 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2013/11/01(金) 01:31:24.40 ID:g6trURcC0
カレン「思エバ」

 カレン「あの時、シノの部屋に正体サレテ」

 カレン「……それ、カラ」

 カレン「……」カァァ

 綾「もう。陽子がおかしなこと言うから、カレンがおかしくなっちゃったじゃない」

 陽子「私のせいじゃないよな!? さっきまでの会話見なおしてみろ!」

 綾「……」



 ――陽子との会話といえば、初めて会った時のことは未だに……――


 綾「陽子が悪い」プイッ

 陽子「どうして、頬を染めるんだろうな……?」



 忍「皆さん、おまたせしました」ガチャッ

 アリス「……」カァァ

 陽子「おおー、お疲れさん!」

 綾(アリスのあの顔――整理、手伝わされたのね)

 カレン「? アリス、顔が『茹でダコ』みたいデス?」

 綾(こっちの英国少女は、日本文化にちゃっかり馴染んできてるし……)


 アリス「……そ、それは、その」

 忍「アリスは、私の部屋の整理をしてくれてたんです」

 忍「あと、洗濯なども――」

 アリス「も、もうその話は止めてぇ……」ブンブン

 忍「どうしてですか、アリス?」

 アリス「……」カァァ



 アリス(言えっこない)

 アリス(洗濯を畳んでいる時に、シノの下着と私の下着を比べて)

 アリス(溜息をついていた所を、ニヤニヤしたイサミに見られたことなんてぇ……!)

 勇「いやー、アリスのもアリスので、味があると思うよ?」

 アリス「そうは言っても、シノのアレはどう考えてもその辺の女子のレベルを超え……て?」

 アリス「」


 忍「あ、お姉ちゃん」

 勇「やっほー、みんな」

 陽子「イサ姉!」

 綾「お、お邪魔します!」

 カレン「……イサミ」
133 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2013/11/01(金) 01:32:07.89 ID:g6trURcC0
 アリス「……」

 勇「さ、みんな入って入って」

 勇「いやー、この子たちったら昨日から張り切っちゃって」

 勇「シノが服の整理する横で、アリスったらもう――」

 アリス「イ、イサミ!」アセアセ


 陽子(――相変わらず、イサ姉には誰も敵いそうにないな)

 綾(アリス……姉妹二人に弄られてれば、あんなに敏感な反応になるわけね……)


 カレン「……」カァァ

 カレン「アリス? 顔、赤いデスよ?」キョトン

 アリス「あ、カレン……もう、困っちゃうよ」

 アリス「全く、シノもイサミも、まった、く……」

 アリス「――あ」


 カレン「どうしたデス?」

 アリス「う、ううん、なんでもないよ」

 カレン「そうデスか?」

 カレン「とにかく、あまり顔を赤くするのは身体によくないデス! 注意しまショウ!」

 アリス「……カレン」


 アリス「――行っちゃった」

 アリス「……」

 アリス(まさか、気づいてない?)

 アリス(カレンの顔――ううん、あれはきっと暑さのせいだ)

 アリス(そうでないと、あの、カレンが――)


 アリス(あんな、どこまでも女の子らしい表情をするわけが、ないもん)キュッ



 ――忍の部屋


 忍「さ、どうぞ皆さん」

 陽子「うわっ、整った部屋だなぁ……」

 綾「陽子の部屋は――」

 陽子「うー……お、弟とか妹とかがだな」

 綾「なんだ、言い訳ね……」

 陽子「ドライな反応!」


 カレン「ヘェ……」

 カレン「私の部屋もこれくらい整えたいものデス」

 アリス「カレンって、そんなに散らかすタイプだっけ?」

 カレン「――最近は、チョット」

 アリス「?」
134 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2013/11/01(金) 01:32:46.89 ID:g6trURcC0
忍「でも、ほとんどはアリスのおかげでもあるんですよ」

 忍「顔を赤くしながら掃除をしてくれる金髪少女……」パァァ

 陽子(うーん……やっぱり、安定のシノだな)

 綾(というより、当然のようにアリスが『顔を赤くしたワケ』とかはスルーされるのね……)


 アリス「シノがどうかした?」

 カレン「!」

 カレン「い、いや、なんでもないデス!」

 アリス「そう……?」


 カレン(――どうして、私はこうなのでショウカ?)

 カレン(どうも、昨日からおかしいデス……)

 カレン(シノが気になる、のはたしかとはイエ)

 カレン(だからといって、部屋の掃除を疎かにする、ナンテ……)


 アリス(カレンはこう見えて、意外としっかりする所はしっかりしてる)

 アリス(そんなカレンが、部屋を散らかしちゃう、なんて……?)

 アリス(それに、さっきの視線――あれは、シノに向けられていた、よね?)

 アリス(……どういう、ことなんだろ?)


 陽子「……おい、シノ。非常に言い難いんだけど」

 忍「え? どうかしましたか、陽子ちゃん?」

 陽子「――これ」スッ

 忍「あっ……」


 綾「も、もう、シノ! なんでこういうモノを出したままにしちゃうのっ!」

 忍「ご、ごめんなさい!」

 忍「――ちょっと、最近フィット感が薄くなってきて」

 綾「か、解説しなくていいからっ!」カァァ


 陽子「うーむ……」ジーッ

 陽子(こうして見てみると、シノは本当にバランス考えるんだな……)

 陽子(特に、こう――自分の身体つきと胸のバランス、みたいなものを……)

 綾「って、なに陽子も真面目に見てるのよ!」

 陽子「……いやー、つい興味本位で」

 綾「もうっ……」プイッ
135 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2013/11/01(金) 01:33:34.71 ID:g6trURcC0
 アリス「――あぁ」

 アリス(何度間近で見ても、やっぱり慣れないよぉ……)

 カレン「……シノ、の、モノ」

 アリス(カレン……)

 カレン「――アリス、顔真赤デース」

 アリス「……カレン」

 カレン「わ、私! ちょっとお手洗い借りたいデス!」」

 忍「はい、どうぞカレン」

 カレン「サンクス!」


 アリス「……」

 アリス(言えそうにない)

 アリス(「それは、今のカレンにだけは言われたくないよ」なんて……)





 ――大宮家・リビング



 それから、しばらく時間が経った。
 その間も、主にシノの「道具」に関わるすったもんだがあったり、それに伴って各人の表情も変化した。

 とりわけ、二人の英国少女。
 彼女らは、その変化に何を感じただろうか――



 アリス「……ふぅ」

 忍「お腹いっぱいですねぇ……」

 陽子「美味しかったな、シノのお母さんの料理」

 綾「……陽子は、あれじゃ足りなかったんじゃない?」クスッ

 陽子「なっ、綾! 私はそんな大食いキャラじゃあ――」

 忍母「あらあら、陽子ちゃんはよく食べる子よ?」

 陽子「」

 陽子「お、おばさん……もう」カァァ

 勇「もう、お母さんったら。陽子ちゃんの赤面はレアなのよ?」

 忍母「あらあら、ごめんなさい」


 綾「……」

 綾(陽子って、あんな風に顔を赤らめるんだ……)

 綾(――ちょっと、得しちゃった)

 陽子「……おい、なんだ綾? その目は?」

 綾「なーんでも?」ニコニコ

 陽子「……」ハァ
136 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2013/11/01(金) 01:34:14.31 ID:g6trURcC0
 カレン「……I'm Full! 満腹デース」

 アリス「カレン、よく食べてたね」

 カレン「アリスももっと食べないと、色々大きくなれマセンヨ?」

 アリス「……『色々』って?」

 カレン「想像次第、デース!」

 アリス「――昔は、私のほうがお姉さんだったんだよ?」ジトッ

 カレン「それで、今ハ?」

 アリス「……カレンの、いじわる」プイッ

 カレン「アリス、可愛いデス」ナデナデ

 カレン「……」





 ――夕食が終わり

 しばらく、談笑の時間があった。

 テレビを点けて、適当にチャンネルを切り替えていたら
 高校生の女子グループが音楽をやっているアニメに遭遇し、ついつい見入ってしまったり。

 話し合いの結果、シノが一番先に入浴すると決まると、二人の英国少女が揃って顔を赤らめたり。


 そんな、楽しい時間はあっという間に過ぎてゆき――


 
 忍「それじゃ、そろそろ寝ましょうか?」

 陽子「えー、まだ早くないか?」

 綾「陽子はだらしないわね……早寝早起きは生活の基本よ?」

 陽子「うーん……たしかに、『寝る子は育つ』って言うしなぁ」

 綾「……」ジッ


 綾(寝る子は育つ、ね)

 綾(それじゃ夜が遅い陽子の、色々な所のその『成長』は)

 綾(なんなのかしらね……)

 陽子(綾の視線が重い、重いぞ……!)



 カレン「……そう、いえバ」

 カレン「寝る場所は、決めたデス?」

 忍「あっ、そういえば……」

 忍「アリスは、いつも通りで大丈夫でしょうけど……」
 
 陽子「それじゃ、私は一階に布団でも敷いて……」
137 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2013/11/01(金) 01:35:26.92 ID:g6trURcC0
 綾「――」

 綾「そ、それじゃあ私も、陽子と一緒に……」

 勇「ちょっといい、二人とも?」

 陽子「わっ、イサ姉!?」ビクッ

 綾「ど、どうしました?」ビクッ

 勇「――うちの部屋、空いてるわよ?」

 綾「……!」

 陽子「おー、いいなぁ、イサ姉の部屋!」

 陽子「それじゃ、行こうか!」

 勇「陽子ちゃんははっきりしてて良いわね……」

 綾「……あ、あの」

 綾「その……」モジモジ

 勇「――綾ちゃんも大歓迎よ?」

 綾「――あ」

 綾「ありがとう、ござい、ます……」

 勇「ふふっ」ニコッ


 陽子(あちゃー……綾は相変わらずだなぁ)

 陽子(まぁ、慣れない相手とは会話が成立しなかった頃に比べたら、ずっと進歩してるか……)

 綾「――陽子」キュッ

 陽子「うわっ!?」

 綾「一緒に、行くわよ……?」モジモジ

 陽子「あ、当たり前だろ!」

 陽子(こりゃ、守ってやらないとだなぁ……)


 忍「それじゃあ、私の部屋にはアリスと――」

 カレン「……」モジモジ

 忍「カレンも、どうぞ!」ニコニコ

 カレン「――私、モ」

 カレン「シノの、部屋二……?」

 忍「はいっ! 是非!」

 アリス「カレン、スペースは大丈夫だよ」

 カレン「……」


 カレン(落ち着くデス、私)

 カレン(何もおかしいことはありマセン。ただ、友達の部屋にお泊りするだけデス)

 カレン(アリスだっているじゃないデスカ)

 カレン(――シノ)

 忍「どうかしましたか、カレン?」

 カレン「い、いえ! なんでもない、デス……」

 カレン「……」

 アリス(――カレン)
138 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2013/11/01(金) 01:36:03.49 ID:g6trURcC0
 

 ――勇の部屋


 勇「よいしょ、っと」

 勇「二人の布団、この辺でいいかしら?」

 陽子「ありがと、イサ姉!」

 勇「ふふ、ありがとう陽子ちゃん」

 綾「……」

 綾「あ、ありがとう、ございます……」

 勇「……」

 勇「それじゃ、綾ちゃんがここで、陽子ちゃんがあっちで」

 陽子「うん、分かった!」

 綾「え……え?」アセアセ

 勇「綾ちゃん、モテモテね? 私と陽子ちゃんに挟まれるなんて」

 綾「は、挟まれるなんて……そんなっ!」

 陽子「おー、綾がハーレム? シノとアリスたちみたいな?」

 綾「よ、陽子もおかしなこと言わないでぇ!」カァァ

 勇「ふふっ……」



 ――忍の部屋


 忍「……それじゃ、カレンはこっちで」

 カレン「ハ、ハイッ!」

 アリス「……」

 アリス「シノ、カレンはここじゃちょっとシノから遠いんじゃないかな?」

 カレン「……!」

 アリス「た、ただでさえ、シノの部屋には、その――いろんな『モノ』があるわけだし」

 忍「それもそうですね……」


 忍「それじゃ、カレンはここで!」

 カレン「――ハ、ハイ……」

 カレン(ここ――シノが近いデス)

 カレン(アア……)

 アリス(――カレン)

 アリス(モヤモヤしてるなら、ちょっとくらいはっきりさせたほうがいいかもね)
139 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2013/11/01(金) 01:37:46.94 ID:g6trURcC0
 




 それから、時間が経って――



 ――勇の部屋


 陽子「……」スースー

 勇「あら、陽子ちゃん。意外と早く寝ちゃったわね」

 綾「……」

 綾「よ、陽子は、ちょっと疲れてたみたいです」

 綾「あ、朝に、ランニングしてきた、って言ってましたし」

 勇「ふーん……」ニコニコ

 綾「……」



 綾(陽子のバカバカ!)

 綾(い、勇さんと二人きりでどんなことを話せばいいのかわからないじゃない!)

 勇「……綾ちゃん」

 綾「は、はいっ!?」

 勇「髪下ろすと印象変わるのねぇ……可愛いわ、そっちも」

 綾「あ、ありがとう、ございます……」


 勇「――ね?」

 綾「はい……?」

 勇「陽子ちゃんとは、どうなの?」
 
 綾「」


 綾(お、落ち着きなさい小路綾)

 綾(何を言われたの、今? 陽子と私が、どうって……?)カァァ

 綾「わ、私と陽子は、ですね! べ、別に、その――」

 綾「お、おかしなことはなく、いえ、むしろ、普通過ぎるくらいといいますか……うう」

 勇「――いい友達なのねぇ」

 綾「そう、それです!」コクコクッ

 勇「ふふっ……」

 勇(物凄く顔が赤くなってることは言わないでおきましょうか)


 勇「陽子ちゃんはね」

 綾「……?」

 勇「とても、可愛い子よ」

 綾「はい?」

 勇「小さい頃からよく一緒にいてね」

 勇「シノともよく遊んでくれて……」

 綾「……」
140 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2013/11/01(金) 01:38:42.15 ID:g6trURcC0
 勇「だから」

 勇「――綾ちゃんも、そんな風に思ってくれてたら」

 勇「私も、きっと陽子ちゃんも嬉しいだろうなぁって」

 勇「なんて、ね」

 綾「……」


 綾「あ、当たり前、です」

 綾「よ、陽子は――色々と困ったところもあるけど」

 綾「……いい、友達です」

 勇「ありがとうね、綾ちゃん」


 勇「――さて、それじゃそろそろ寝ましょうか?」

 綾「――あ」

 綾「は、はい」

 綾「お、おやすみ、なさい……」

 勇「はい、おやすみ」


 綾「……」スースー

 勇(――まったく)

 勇(どうして、シノの周りにはこんな可愛い子ばかり集まるのかしらねぇ……)クスクス

 勇(――さてさて、シノの部屋はどうなってることでしょう)



 ――忍の部屋


 忍「……」

 忍「――ん」モゾッ

 カレン「……」

 カレン(眠れマセン……!)アセアセ

 カレン(すぐ近くで、シノが寝息を立てている、それだけナノ二!)

 カレン(うう……)カァァ


 
 アリス「――カレン?」

 カレン「!」

 カレン「ア、アリス……?」

 アリス「大丈夫? さっきからうんうん唸ってるけど?」

 カレン「だ、大丈夫デス!」

 カレン「け、決して、シノの寝息ガ――」

 アリス「シノの……なに?」

 カレン「――あ」

 カレン「な、なんでもありマセン!」

 アリス「……」
141 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2013/11/01(金) 01:39:20.69 ID:g6trURcC0
 アリス「――カレンは」

 カレン「?」

 アリス「シノのこと、『好き』なんだね」

 カレン「……」

 カレン「――ハイ、そうなのかもしれマセン」

 アリス「そう、だよね……」


 アリス「――シノ、可愛いもんね」

 カレン「ハイ……」

 カレン「正直、高校のどんな女子よりも可愛いデス」

 アリス「同意するよ……同時に、何故か虚しくもなるけど」ハァ

 カレン「ハイ……」ハァ


 アリス「――カレン」

 カレン「……アリス?」

 アリス「私も――」

 アリス「シノが、『好き』だよ」

 カレン「……」

 カレン「分かってマス」


 カレン「――アリスは可愛いカラ」

 カレン「きっと、もっと好かれるデス」

 アリス「カレンだって、すごく可愛いよ」

 アリス「――今だって」

 カレン「……見ないで下サイ」カァァ

 アリス「せっかく可愛いのに……」
142 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2013/11/01(金) 01:40:10.07 ID:g6trURcC0
 カレン「――アリス」

 アリス「なぁに?」

 カレン「私、日本に来て良かったデス」

 カレン「アリスに会えて、シノとも出会えて……陽子やアヤヤみたいないい子にも会えテ」

 アリス「カレン……」

 カレン「なんだか――」


 カレン「毎日がキラキラ、輝いてるみたいデス……」



 ――そう言うと、満足したようにカレンは寝息を立て始めた。

 私はそのあまりの寝付きの良さに驚きながら、布団に潜り込んだ。
 
 こうして、カレンと話しあえて良かった、と素直にそう思う。


 「――温かい」

 たしかに、カレンがシノに『好き』といったのは、ちょっと動揺した。
 何故かわからないけど、たしかに。

 けれど。

 それを上回るくらいに、嬉しかった。
 カレンは、日本での生活を心から楽しんでることが、恥ずかしそうな声音からひしひしと伝わってきたから――


 「さぁ」


 寝よう。

 そして、また明日も――「おはよう」って言おう。

 何もない毎日が、こんなに楽しくなるなんて、思わなかった、なぁ――










 忍「……」パチッ

 忍「――『好き』?」キョトン

 忍「私は、二人とも好きですよー……」エヘヘ

 忍「……」スースー
143 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2013/11/01(金) 01:44:06.98 ID:g6trURcC0
>>132
☓正体→○招待でした。

ここまでになります。
とても長くなってしまいましたね……

英国少女二人の会話により、ついに核心に迫ったか……と言いながら、次回からまたいつも通りの日常が始まる予定です。
好き、と「好き」は、何か違うと思うタイプらしいですね(意味不明)

色々と情報を入れ過ぎたので、読みにくかったかもしれません。
楽しんでいただけたら、非常に嬉しいです。

それでは。
もう放送が終わってから1ヶ月ほど経つんですね……。
144 :sage :2013/11/01(金) 02:15:33.29 ID:qqA2TQpx0
続きキマシタワーお疲れ様です。
読みながらニヨニヨしてしまう…次回も期待してまーす
145 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/11/01(金) 07:29:48.43 ID:Slgl14SCo

待っててよかった…
146 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/11/01(金) 12:35:21.71 ID:0rQGtXelO
もう1ヶ月なのか...
ともあれ、乙
147 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/11/01(金) 21:46:48.18 ID:h1JyrG2fo
148 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/11/01(金) 22:53:09.72 ID:xHAMSD5/o
まだかなまだかな
149 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2013/11/03(日) 01:34:22.03 ID:Q794O+aP0
 ――ここは、どこでしょう?
 
 私は、草原に佇んでいます。
 綺麗な草木が辺り一面を覆うこの場所は――


「……あれ、は」

 目を凝らすと、二つの人影が見えました。
 二人は、私の方へ向かって走っているようです。
 揺らめく二つの金色は、私の目も、心も捉えて離しません。

 
「……!」
「――!」

 二人は、何かを叫んでいるようですが、残念なことにその声は私には届きません。
 とても可愛らしい声なだけに、意味がわからないことがとても残念です。
 それにしても……ああ、なんて綺麗な金髪――


 気がつくと、目の前の光景がちょっとだけ変わっていました。
 私は、草原に寝かされています。
 というより、押し倒されている、という方が正しいでしょうか。

 上にいるのは――なんということでしょう。

「……シノ!」
「――シノ!」

 ここが、天国なのでしょうか。
 私の上にいるのは、なんと先ほどの二人の金髪少女。
 吹き抜ける風が二人の綺麗な髪をはためかせ、幻想的な一瞬を見せつけます。

「……ああ、そうですか」

 つい、独りごちてしまいます。
 私は、この二人が――



「好き、なんですね……」
「――シ、シノ?」
150 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2013/11/03(日) 01:35:06.33 ID:Q794O+aP0



――大宮家・忍の部屋


忍「……あ」

カレン「ど、どうした、デスカ……?」アセアセ

カレン「顔、真っ赤デス」

忍「――あれ?」キョトン

忍「草木は? 風は……どこに?」

カレン「何、言ってるデス?」

忍「――あ、でも」


ギュッ!


カレン「」

カレン「シ、シノ……い、一体、ナニを?」

忍「えへへー」スリスリ

忍「金色は、ここにありました……」

カレン「シノ、くすぐったいデス……あの、ソノ」

カレン(あ、朝から一体、ナニがどうなってるデスカ!?)アセアセ


カレン「シ、シノ……!」

忍「――あ、そうでした」

忍「着替え、なくてはいけませんね……」

カレン「!?」

忍「……よいしょ、っと」プチッ

カレン(シ、シノ……む、胸元が、見えちゃってマス……!)

カレン(――以前、一度見たことありますが、本当に平らデス――)

カレン(じゃ、なくテ! こ、このままじゃ……このまま、ジャ)ブンブン


アリス「……うーん」

アリス「――ふぅ、今日もいい天気」

アリス「さて、二人、は……」チラッ

アリス「」


カレン「ア、アリス! た、助けるデス!」アセアセ

アリス「……シノが、カレンの、上に、乗って」ブツブツ

カレン「は、早くシテ!」カァァ

アリス「そっか、シノはそういう――」ハッ

アリス「ご、ごめんカレン! シノ、また寝ぼけてるでしょ!」グイッ

忍「……あ」
151 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2013/11/03(日) 01:35:37.63 ID:Q794O+aP0
忍「えへへ、ごめんなさい」ニコニコ

アリス「――はぁ」

アリス(……って、また胸元はだけてる!?)

アリス「と、とにかく! ちょっと廊下に出て、着替えて!」カァァ

忍「ええー……」

忍「――私、もっと二人と一緒に」キュッ

二人「……え(ハイ)?」

忍「でも、まずは着替えないとですよね」

忍「また、後で……ふふふ」ガチャッ



バタン・・・



カレン「……」

アリス「――カレン?」

カレン「ア、アリス? ちょっと目が怖いデス……」

アリス「シノと、何があったの?」ジーッ


カレン「……朝、起きたら、デスネ」

アリス「うん」

カレン「シノが、私に抱きついてきたデス」

アリス「うん……」

アリス「え?」ピクッ

カレン「何かうわ言のようなことを言いナガラ」

カレン「私に頬を、すり寄せテ……そ、それ、デ」カァァ

アリス「……」

カレン「『金色』がどうとか、草木とか風だとか……アリス?」

アリス「……」


アリス(実は、昨日私がカレンと話して、さぁ寝ようと思った時)

アリス(シノの所から何か聞こえた、気がしたんだ)

アリス(……好き)

アリス(そんな言葉だった、ような気がして……それで)


カレン「あぁ、どうしまショウ……?」

カレン(赤みがとれてくれマセン!)カァァ

アリス「……カレン」

カレン「アリス……」
152 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2013/11/03(日) 01:36:10.82 ID:Q794O+aP0
カレン「シノは、どうしちゃったデスカ……?」

アリス「――多分、なんだけど」

カレン「ハイ」

アリス「シノは、シノは……」


アリス「私とカレンのことが好きになっちゃったんだと、思うの――」カァァ



――数分後


忍「……」ガチャッ

カレン「あ、シノ。お帰りデス」

アリス「もう、シノってば……反省してる?」

忍「――」


忍「ご、ごめんなさい!」カァァ

カレン「わっ、シノ!?」ビクッ

アリス「……もう、寝ぼけた後はいつもこうなんだから」

アリス(――でも)

アリス(今日は、いつもよりずっと――)


忍「……カレン」

カレン「は、ハイ!」

忍「私のこと――嫌いになっちゃいましたか?」ウルウル

カレン「……ハイ?」


アリス(破壊力が、ありすぎだよっ!)カァァ


忍「私――昨日、気づいちゃったんです」

カレン「そ、それは、どういう……?」

アリス「――シノ」

忍「……」


忍「二人のことが、好き、だってことに」


カレン「……」

アリス「……」
153 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2013/11/03(日) 01:36:36.58 ID:Q794O+aP0
カレン「――シノ」

忍「は、はい!」

カレン「――私たちも」

アリス「シノのこと、『好き』だよ……」

忍「……」

忍「二人ともっ!」ダキッ

二人「わっ!?」


忍「えへへ……金髪少女、温かいです」スリスリ

カレン「い、いきなり抱きつかれたら……こ、困りマス……」

アリス「――シノも温かいよ」

忍「アリス、ありがとうございます……」

忍「えへへ……」

二人「……」



アリス(うーん……)

アリス(シノの好き、と、私たちの『好き』)

アリス(きっと、同じようで、ちょっと違う――いや、好きだってことに変わりはないし)グルグル


忍「アリスー……」

アリス「きゃっ!」


アリス(シノにこうやって抱きつかれると、凄く気持ちいいし……)


カレン(シノ……いきなり、どうしたデス?)

カレン(いつもこうしてスキンシップとることはありますが――今日はちょっと、情熱的というカ)

カレン(一体、どうしテ?)


忍「カレンの髪、サラサラですねぇ……」

カレン「シ、シノ! そ、そこ、くすぐったいデス……」ピクッ


カレン(デモ)

カレン(――今は、このままでも)ギュッ
154 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2013/11/03(日) 01:37:29.27 ID:Q794O+aP0
カレン「――シノ」

忍「は、はい!」

カレン「――私たちも」

アリス「シノのこと、『好き』だよ……」

忍「……」

忍「二人ともっ!」ダキッ

二人「わっ!?」


忍「えへへ……金髪少女、温かいです」スリスリ

カレン「い、いきなり抱きつかれたら……こ、困りマス……」

アリス「――シノも温かいよ」

忍「アリス、ありがとうございます……」

忍「えへへ……」

二人「……」



アリス(うーん……)

アリス(シノの好き、と、私たちの『好き』)

アリス(きっと、同じようで、ちょっと違う――いや、好きだってことに変わりはないし)グルグル


忍「アリスー……」

アリス「きゃっ!」


アリス(シノにこうやって抱きつかれると、凄く気持ちいいし……)


カレン(シノ……いきなり、どうしたデス?)

カレン(いつもこうしてスキンシップとることはありますが――今日はちょっと、情熱的というカ)

カレン(一体、どうしテ?)


忍「カレンの髪、サラサラですねぇ……」

カレン「シ、シノ! そ、そこ、くすぐったいデス……」ピクッ


カレン(デモ)

カレン(――今は、このままでも)ギュッ
155 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2013/11/03(日) 01:38:13.40 ID:Q794O+aP0
>>153>>154 
連投してしまいました。






――大宮家・廊下


>シノモアリスモ、ダイスキデス!

>チョッ、シノ! ソコハ・・・

>モウ、カレンバッカリ! シノ、コッチモ・・・



勇「……」

勇「――まったく、もう」タメイキ

勇(なんというか……来るべき時が来た、というか)

勇(……シノは、ねぇ)


勇「好きと『好き』……つまり」

勇(それが恋愛感情なのか、純粋な好きという感覚なのか――それが、分かってないのよね……)
156 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2013/11/03(日) 01:40:33.86 ID:Q794O+aP0
ここまでになります。

次回からいつも通りになると書きましたが、実際には普段通りの日常が少し変わってしまいましたね……
当初の予定から、かなり外れてしまいましたが、書いてみたくなったもので。
果たして、受け入れられるのやら……

今後、こうして恋愛色強めになる、ということはないですが
シノの二人に対する想いははっきりさせておきたかったので、今回はこうした話になりました。
楽しんでいただけれたら、幸いです。

それでは。
のんのんびよりが、今期の癒やし枠ですね……。
157 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/11/03(日) 07:45:31.09 ID:XRnBeU7lo
158 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/11/03(日) 08:40:17.10 ID:4RYbCtbro
お主も難民の一人か•••乙
159 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2013/11/07(木) 02:37:10.09 ID:3TNGlILN0
――大宮勇が自分の部屋から出て目にした光景は、半ば予想していたとはいえ、なかなかにショッキングなものだった。


忍「……お二人とも」

忍「ずっと、一緒にいましょうね……」ギュッ

アリス「も、勿論だよ、シノ!」コクコクッ

カレン「……シノが、こんな近く二」アセアセ


勇(……さて)

勇(とても微笑ましい光景ではあるけど――考えていかないといけないわね)


勇(今後、シノがどうやって過ごしていくか……ほんの少しでも)



と、実姉がいもう……『弟』のためを思って考えていた頃。



――勇の部屋


陽子「……」スースー

綾「――ん」

綾「朝……あれ、勇さんは?」

綾「ま、いっか――」フニッ

綾「……なに、今のは」


陽子「――んん」ピクン


綾「」

綾「……」フニフニ

陽子「ん――ぁ」ピクピク

綾「――!」ハッ


綾(落ち着きなさい、小路綾)

綾(状況を冷静に確認するのよ……さて、私の布団に陽子が寝ている理由は――)

綾(――冷静に考えられるわけ、ないじゃない!)カァァ


綾(ってことは、さっきの感触は――!)

綾(……凄く、柔らかかったわね)シミジミ

綾(じゃ、なくて! ああ、もうっ……)ブンブン
160 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2013/11/07(木) 02:37:47.08 ID:3TNGlILN0
陽子「……ん、綾?」

綾「ひゃぁっ!?」ビクッ

陽子「な、なんだよ――朝から」

綾「あ、朝から、積極的なのはどっちよ!?」アセアセ

陽子「……あ」

陽子「悪い、寝ぼけて綾の布団に入り込んじゃってたんだな」

綾「も、もうっ……!」プイッ


陽子「ところで」

綾「な、なに?」

陽子「積極的って、どういう意味で?」

綾「……」

綾「――知らないわよ! 陽子のバカ!」カァァ

陽子「え、ええ……?」


綾(――良かった)

綾(いや、私の今の体温からすれば、一概に良いとも言えないけど)

綾(……どうやら、気付かれていないみたいね)


陽子「あ、そういえばさ、綾?」

綾「なに、陽子?」

陽子「――何か、朝から違和感があって」

綾「……どこに?」

陽子「いや――何だか、胸の辺りg」

綾「き、気のせいよ! そうに決まってるわ!」ズイッ

陽子「そ、そっかぁ……?」

陽子「いや――やっぱり、下着付けて寝るべきだったかなぁ、と」

綾「……」


綾(そうね、そうよね)

綾(大きい人って、そうする傾向あるものね)

綾(良かった、陽子は私がしたことに――)ペタペタ

綾(……おかしい、なんで悲しくなってくるんだろう?)ウルッ


陽子「ところで、綾?」

綾「なに?」

陽子「――イサ姉、どこ行ったんだろう?」

綾「……さっき、考えてたわ」

綾(陽子のせいで、完全に吹き飛んでしまっていたけど)
161 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2013/11/07(木) 02:38:21.59 ID:3TNGlILN0


――廊下


陽子「とりあえず、廊下に出れば」

綾「何かは見つかるでしょうね――って、陽子! ズボン!」

陽子「なんだよ、ズボンって……あっ」

陽子「……」ゴソゴソ

陽子「――サンキュ」カァァ

綾(あぁ、もう! どうしてそこで顔を赤らめるのよ!)

綾(別に、「ズボンから下着がちょっとだけはみ出て、柄まで見えそうになってた」なんて言ってないのに!)カァァ

陽子(……気をつけないと、なぁ)タメイキ



――忍の部屋前


陽子「なんだかんだで、シノの部屋」

綾「――シノ?」コンコン

勇「はーい?」

綾「……シノ、随分と大人びた声になったわね?」

陽子「綾――ボケなのか? ボケなんだよな?」アキレ


勇「はい、どうぞ。二人とも」

綾「あ、ありがとうございま……す……」

陽子「――綾? どうした……ん……だ」



忍「――んー」

忍「お二人とも、いい匂いです」スーッ

アリス「だ、だから――シノ、恥ずかしいし」

カレン「くすぐったいデス……」カァァ


忍「もう」

忍「――三人で、お風呂入れたら、ですね」

アリス「な、何言ってるの!?」ハッ

カレン「そ、それは無理デス! impossible!」ブンブン

忍「……はぁ」

忍「こういう時だけ、『身体』がちょっとだけ憎らしいです……」キュッ

アリス(シノ――なんて表情を)

カレン(……起きてから、体温がおかしいデス!)カァァ
162 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2013/11/07(木) 02:38:58.58 ID:3TNGlILN0
忍「……ええと?」

陽子「イサ姉――あれは?」

勇「それが、ねぇ」

勇「私が入ってきたことにも気付かないで、さっきからずーっとああしてるのよ」

陽子「おお……もう」


綾「――で、でも、それって」

勇「なぁに、綾ちゃん?」

綾「シ、シノが、その」

綾「……二人のことを、『好き』になってしまった、とか?」

勇「――多分、ね」


陽子「シノ……」

陽子(いつかこうなる時が来るとは思っていた……!)

陽子(幸い、色恋沙汰でシノがおかしなことに巻き込まれたりはしなかったけど――まさか)


忍「うーん……二人とも、微妙に髪質が違うんですねぇ……」ナデナデ

アリス「だ、だから、くすぐったいよぉ……」カァァ

カレン「――シ、シノ、そこ、はァ」ピクッ


陽子(――英国少女が、その鍵を握っていたとは、なぁ)



――その後。

状況が落ち着いた辺りで、シノのお母さんの振る舞った手料理をご馳走になり、お泊り会は解散の運びとなった。

私と陽子の間で色々なことが――じゃなくて!
シノとアリスとカレンという三人少女の関係が、大きく発展を遂げた、そんなお泊り会だった。

……その発展が、おかしな事態を招かなければいいのだけど。
163 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2013/11/07(木) 02:39:39.45 ID:3TNGlILN0
忍「……えへへ」ニコニコ

アリス「シノ、凄く嬉しそうだね……」

忍「だって!」

忍「私がいて、アリスがいて、カレンがいて――」

忍「……考えるだけで、ドキドキしてしまうんです!」エヘヘ

アリス「そ、そっか。良かったね」

アリス(嬉しがってるシノを見るのは、凄く嬉しい……んだけど)


忍「アリスはいつも会えますから、それはとても歓迎すべきことなのですが」

忍「カレンも、いつでも会えたらいいですねぇ……」シミジミ


アリス(――ちょっとだけ、複雑だよ、シノ)キュッ



――帰り道



カレン「……」トコトコ

カレン「――I miss you」ボソッ

カレン「また、すぐに会えますよネ……シノ?」
164 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2013/11/07(木) 02:41:08.14 ID:3TNGlILN0
お泊り会編、これにておしまい。

シノが何かと暴走してばかりいたように思いますが……結局、シノとアリスとカレンの三人はどうなっていくのでしょうか?
自分も今後、どう書いていけばいいのか、迷うばかりです。

それでは。
165 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/11/07(木) 07:46:53.73 ID:X0nIzb8Po
166 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/11/07(木) 16:31:46.19 ID:aUNh/W8yo
おもしろいなあ
167 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2013/11/11(月) 01:52:35.90 ID:S2zVCSa60
投下します。

今回、全体が地の文なので、読みにくいかもしれません。ご容赦下さい。
168 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2013/11/11(月) 01:53:44.85 ID:S2zVCSa60
 大宮家での「お泊り会」が終わり、五人の少女はそれぞれの生活に戻っていった。

 帰途につく中で、小路綾は猪熊陽子に顔を赤らめることが多かった。
 恐らく、その日の朝の一件が尾を引いていたのだろう。
 そんな綾に、陽子は呆れながらも優しく接していたのはいつもの通り。

 九条カレンは、どこか足運びが覚束なかった。
 途中でピタッと止まったかと思うと、次の瞬間にはテクテクと歩き出し、また止まる。
 そして、止まるとすぐにカァッと顔を赤らめる。その繰り返し。
 彼女にとっても、大宮忍の部屋での出来事が影響していることは疑いない。

 そして――


「……シノは、ずるいよ」
「アリス? どうしたんですか?」


 客人が帰り、大宮家にもまた、いつもの風景が見られるようになった。
 忍は、居候の少女の言葉を聞き、キョトンとした表情を浮かべてみせる。
 見れば、アリスは忍のベッドで枕を抱え、そこに顔の一部をうずめていた。
 「なんて可愛らしい」と、忍は心の中で思う。

「だって……だって」


 アリスは、何かを言おうと身体を振ってみせるが、何も言葉が見つからない。
 何かを訴えたい。けれど、その「何か」を、どう言葉に乗せるか。
169 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2013/11/11(月) 01:55:06.25 ID:S2zVCSa60
「――いきなり、あんな」


 大胆なこと、と言い終わる前に、近くに体温を感じた。


「落ち着いて下さい、アリス」
「……シノのせいで、全く落ち着けないよ」


 今朝方と同じように抱きしめられ、アリスは顔を赤らめながら訴えた。
 そんな彼女を、忍は愛おしそうに撫でた。


「私、アリスと会えて、本当に良かったです」
「わ、私も、だけど……」


 アリスはふと、今朝の風景を思い返してしまった。
 あの時の、大宮勇の言葉。


 ――少し、考えないといけないわね――


 こう呟いた勇は、どこか困ったように、それでいてとても愛しそうだった。


「――シノは」
「はい?」
「シノは……本当に」


 アリスはそこで、ギュッと抱きしめ返しながら、


「女の子じゃ、ないんだよね……?」


 おかしなことを言ってしまった、と思う。
 今まで、何度も見てきたではないか。
 平坦な胸、そこへの詰め物、そしてそして――

 数え上げればキリがないそんな確かな根拠を
 しかしアリスはどこかで認めるのを拒んでしまっていたように思う。

 だって――
 今、自分を撫で回す手のひらは、こんなに綺麗で、男性特有の無骨さなど全くない。
 その端正さは、女性の自分から見ても嫉妬しまうほどに完成されている。

 それに、髪だってそうだ。
 忍はよく、自分の髪を撫でては称賛する。
 けれど、忍自身の髪も、女性が自信を無くしてしまうくらい整っていることも、アリスはよく知っていた。


 アリスは――おそらく、カレンも――恐れていた。

 大宮忍は、男性である。
 
 この確かな事実を認めることを、自分はどこかで拒んでいる。
170 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2013/11/11(月) 01:56:07.94 ID:S2zVCSa60
「――アリスは、おかしな事を言いますね」


 忍は、アリスの発言を意に介した風もなく、一旦アリスから腕を離した。
 そして、アリスの前に周りこんで、座り込む。


「そうですよ、確かに私は――」


 そこで、一旦区切り、


「『ボク』は、男です」


 それはいつか、アリスの故郷で言った一人称。
 あの時、忍はハッとして口を塞いでしまった。
 けれど、今はもう――


「……そうですね、たしかにアリスと会う時までは」


 忍は、どこか懐かしそうに、言葉を紡いでいく。
 その仕草もまた、どこまでも女性らしい。


「こうして、自分のことで悩むことだって――あったかも、しれません」


 似合いませんよね、と忍はアリスに微笑んでみせた。


「その度に、陽子ちゃんや綾ちゃんに心配してもらって」


 楽しそうに言葉を続ける忍の表情からは、いつかの憂いなど窺えなかった。


「――アリスと、こうしてまた会えて」


 再び、忍は静かにアリスを抱き寄せる。


「それだけで、なんて嬉しいか……」
「……もう、シノってば」


 アリスは、顔を赤らめながら、笑った。
 何だか、迷っている自分が恥ずかしくなってしまう。


 ここにいる忍は、たしかに――



 ――ハロー!――

 ――コニーチハー!――


 心を触れ合わせた、大切な相手なのだから。

 性別がどちらであろうと、それはたしかに――



「シノは、シノだもんね」


 それだけで、十分ではないか――
171 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2013/11/11(月) 01:58:12.28 ID:S2zVCSa60
「――もう、二人ともお熱いんだから」

 廊下にて、私――大宮勇は呟く。
 扉を開けると、シノとアリスが抱き合っていた。
 まるで、世界に二人だけしかいないような、おとぎ話のごとき空間。
 声をかけようとしたけれど、つい扉を閉めてしまうほどには、触れてはいけないオーラが漂っていた。


「はぁ……これからのことで、ちょっと話したかったんだけどなぁ」


 私は、溜息をつく。
 シノが、アリスやカレンちゃんとの親交を重ねることに、私は全く異存はない。
 というよりも、いも――『きょうだい』の幸せを祈ることは、当然だし。


「けれど――」


 どう、伝えるべきなのだろう?
 それとも、私が心配しすぎなのだろうか。

 社会的に見たら、男性が女性二人と過度なスキンシップを重ねているようだし。
 いや、シノのことがより明るみに出ると……

 こんな、あの子たちの幸せな関係に、障害が現れたら――


「……なんて、杞憂に終わるだろうけれど」


 こんな、愚にもつかない思考をグルグルとさせて、良いことなんてないだろう。
「悩みの9割は、現実には起きない」と、偉い人も言ってたような気がするし。



「――ま、いっか」


 いずれ、軽いノリで持ちかけてみよう。
 こんなに改まって、話しても、


「なんといっても、楽しくない」


 それが、何よりも大切だろうし――
172 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2013/11/11(月) 01:59:04.70 ID:S2zVCSa60

 ――その夜。


「ハァ……」


 リビングで、私は溜息をついてしまいマシタ。
 ケータイの画面を見ながら、私は今日のことを思い返しては、熱くなりマス。


「――風邪、じゃないノニ」


 夏風邪はタチが悪いと聞きますが、それ以上に今の私はおかしい、ようナ……


「カレン、どうしたんだい?」
「あ……パパ」


 そんなことをしていると、後ろからパパに声をかけられマシタ。
 私はチラッとケータイを見て、


「――私、なんだかおかしい気がシテ」
「どうしたんだろう……もしかして、その携帯電話に、なにか?」


 さすが、パパ。私のちょっとした挙動に、敏感に反応しマシタ。


「少し、見せてもらっても、いいかな?」
「ハイ――」


 私は、ケータイをパパに渡しマス。
 さっきから見ていた画像は、そのままにシテ――


「……これは、集合写真かな?」


 その通りデス。
 シノのお家で撮った、みんな揃っての集合写真。
 私やアリス、アヤヤといった面々は顔を赤らめているのが見て取れマス。


「ほほう、仲良いことは良きこと、か、な――?」


 パパは、画面を食い入るように見つめマシタ。
 何かに、気付いたのでショウカ……?」


「――失礼かもしれないんだが、カレン?」


 パパは、目をパチパチとさせナガラ――


「……この子は、もしかして」


 気づいて、しまったようデス。
 いや――もしかしたら、どこかで私はそれを望んでいたのかもしれマセン。


「まさか――」


 ああ、パパが……

 言って、しまいそうデス――
 

「シノ――」


 私は、今ここにはいない「友人」の顔を思い出し、胸がキュッとなってしまったのデシタ。
173 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2013/11/11(月) 02:01:14.86 ID:S2zVCSa60
ここまでです。

たしか、カレンは自分のマンションを所有してそこに住んでいたような気がしますが、このSSでは同居している設定と
思って下さい。それとも勘違いだったかな……。

前回で「お泊り会」が事実上終わりましたが、今回はそのまとめとも言える回だったと思います。
心情描写に文章を割きたかったのは、そのためです。

さて、九条家に何やら動きがありそうですが……それはまた、次回以降に。


それでは。
読んでくださる人に、感謝です。
174 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/11/11(月) 02:07:06.47 ID:ll8ld6kN0
うおお…いいところで止まった…!
更新乙ですーカレン可愛すぎてもう…続きも楽しみデス…
175 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/11/11(月) 02:36:27.93 ID:RCa4D7zko
家族でマンションに住んでるんじゃないの?
176 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/11/12(火) 13:54:07.66 ID:xGZ9c/j3o
まあ、カレンが独り暮らしとか考えられないし
177 : ◆OtZIp/YaIxCt [saga]:2013/11/14(木) 01:44:51.92 ID:t9zNEIK+0
投下します。ただ、今回もまた地の文で、かなり幕間的な要素が強いので、楽しんで頂けるかどうか――





 ――聞いたことが、ある。


 私は、「あの時」のことを思い返していた。
 あの日……カータレット氏はえらくご機嫌で、私はそんな彼女に尋ねた。


「どうしたんだい、えらく機嫌がいいけれど」
「えぇ、実はね……」


 聞けば、今日は日本からホームステイに来る子がいるそうな。
 なるほど、そういうイベントがあれば心も躍るわけだ。
 

「へぇ、それはいいねぇ」
「でしょう? けれど――」


 どうやら、娘――アリスちゃんは乗り気じゃないとか。
 私は頭のなかで、まだ小さな彼女の姿を思い浮かべた。
 ……たしかに、飼い犬に寄り添い、縮こまっている姿が絵になりそうだ。


「まあ、アリスちゃんも変わると思うよ?」
「まぁ、どうして」
「だって――カータレットさんが呼ぶ人が、悪い人なわけがないからね」
「もう……」


 少し照れた彼女を見て私は、よりその考えを強めたものだ。




 ――数日後



「やぁ、カータレットさん」
「……あ、こんにちは


 暇が出来たので、カータレット家を訪れた私に
 いつものようにカータレット夫人が挨拶をしてくれた。
 しかし、どこか様子がおかしい……ような。


「何かあった?」
「ええ――まぁ、ね」


 彼女は意味深な言葉を紡ぎ、ぼんやりと外を見つめた。


「そういえば、ホームステイに来た子は?」
「今は、アリスと街に出てるわ。帰りは遅くなりそうね……」


 遠い目をしたままの彼女を見て、一つの考えが浮かんだ。
 ――あまり、想像したくはないものではあったけれど。


「もしかして……ホームステイに来た子が、問題を?」
「――そういう、わけじゃ」


 そう言って、スッと目を伏せる彼女を見て、私は何かを感じ取った。
 ホームステイに来た子は、いわゆる問題児的な子じゃない。
 だと、したら……
178 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2013/11/14(木) 01:46:22.45 ID:t9zNEIK+0
トリップをちょっとまちがえてました。






「その子が、なにか」
「――そうね」

 すると、カータレット夫人は立ち上がり、やおら引き出しを開けたかと思うと
 何かを取り出し、テーブルに戻ってきた。
 見るに、写真だと推察する。

「九条さんなら、いいわ」
「……そう、言ってもらえるなら」

 見れば――予想通りと言うべきか――そこには、アリスともう一人が写っていた。
 顔立ちから見て、東洋人だろう。
 自らも日本人である私は、写真の中の人物を日本人と推測した。

「ほぉ、可愛い子だね……少し経てば、正統派の大和撫子にでもなりそうだ」
「ナデシコ……? どういう意味なのかはよくわからないけれど」

 コホンと一息つき、カータレット夫人は写真の中の日本人少女を指さす。

「貴方は、この子をどう思う?」
「さっき言った通り、大和撫子……つまり、日本的美人になりそうだ、と」
「――そう、そうよね」

 そう、彼女は意味深な表情を浮かべてみせた。
 どういうことなのか、私にはなおも分からない。

「……見ちゃった、の」
「見ちゃった? 一体何を?」

 単刀直入な私の質問に、カータレット夫人は一度目を瞑り
 覚悟をしたかのように見開いて、言った。


「間違いで、その子と脱衣所で遭遇しちゃって」
「うん」
「――その」


「胸がね、全く平坦で……」




 ――九条さんは、帰っていった。
 とても複雑そうな難しい表情を浮かべながら。
 無理もない、と思う。
 私にとっても、また……
179 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2013/11/14(木) 01:47:46.69 ID:t9zNEIK+0
「――ママ?」


 ハッとする。
 見れば、そこにはアリスとシノがいた。
 二人ともキョトンとした表情で、私を見ている。


「おかえりなさい、二人とも」


 笑顔を浮かべて、私は二人を頭を撫でる。
 そうされながら、笑顔を見せる二人は――


「……さ、もうそろそろ夕食ね」


 とても、愛しい。
 それは、本当だ。
 アリスは言うに及ばず――もちろん。


「シノ。イギリスの街は、どうだった?」
「はい! 凄く楽しかったです」


 皆さん優しくて、後、アリスが色々と案内してくれて……あと、後は――!

 一生懸命に、とても楽しそうに話すシノ。
 その姿を見て、「愛しい」という感情を持たないわけがない。
 ……ただ。


「そう、それは良かったわね」


 シノ。
 日本から来た、可愛いホームステイのお客さん。
 娘のアリスと仲良く、とても楽しそうにしてくれて――


「いっぱい、イギリスを味わってね」


 そんな、シノは……


「はい! ぜひとも!」


 ……「どっち」なんて。

 些細なことのように思える、けれど――


(とりあえず、アリスには言わないでおきましょう……)
180 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2013/11/14(木) 01:48:44.83 ID:t9zNEIK+0
(とりあえず、カレンには教えないでおこう……)


 車を走らせながら、私は決めた。
 カレンはホームステイ先の子と会ったことはないはずだ。
 今は――「こういうこと」は言わないでおいたほうが良いだろう、と感じたのだ。


(――アリスちゃん)


 写真のアリスちゃんは、どこか照れたような表情を浮かべていて――
 その対象が果たして、「同姓」か「異性」かで、意味合いも変わってくる、だろう。


(いつか――)


 向き合う時が来るのかもしれない、と私は予感した。






 ――それから、少し経って。


「お、おじさん!」

 我が家に、アリスちゃんがやって来た。
 真剣な表情で、私に近寄ってきたと思うと――


「私に、日本語を教えて下さい!」


 これが、一つの転機。
 この時私は、「予感」が「確信」に変わったことを、実感した――
181 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2013/11/14(木) 01:50:44.14 ID:t9zNEIK+0
一旦、ここまでにします。
前述したように「幕間」という感じの話なので、楽しんで頂けたかどうか……

ここで書きたかったのは、アリスのお母さんは決してシノのことを色眼鏡で見たりはしなかった、ということ。
そして、カレンのお父さんは、前々からこうなることを予感していたということ。
以上、2点でした。

こんなお話だったので、次回は早めに投下する予定です。
それでは。
182 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/11/16(土) 08:39:12.48 ID:wAesu+B0o
乙です
183 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2013/11/17(日) 01:40:45.43 ID:5cAWbn0F0



――その日



忍「あれ……?」キョトン

アリス「どうしたの、シノ?」

忍「ああ、アリス――今日も可愛いですねぇ」ダキッ

アリス「も、もう、シノ!」

アリス「だ、抱きつくのは後にして、質問に応えて!」アセアセ

忍「うう……最近、アリスがつれません」

アリス「……」


アリス(そう何度も抱きつかれて)

アリス(甘い声出されながら頭を撫でられるのなんて――)

アリス(……中毒になっちゃったら、困るじゃない)カァァ

忍(まぁ、このアリスの恥ずかしそうな表情だけで大満足ですけどねぇ……)エヘヘ


忍「ええ、実は……」スッ

アリス「――メール?」

忍「はい」

忍「えと……アリスの所にも来てないですか?」

アリス「私――あっ」ポチポチ

アリス「来てる、一通」

忍「そうですか……それで、送り主は?」

アリス「――カレン」

忍「私も、です」


アリス「でも、どうして突然?」

忍「さぁ――それはよく、分かりませんが」

忍「中身を見る限り、何かの遊びのお誘いみたいですね」

アリス「あ、ホントだ――なになに」



『山、行きマショウ! 海がダメなら、山デス!』



アリス「……山、行きたいんだね、カレン」

忍「まぁ――海となると、色々と残念ですからね」

アリス「……」

アリス(そっか、シノは――)

アリス(そ、それに正直――私も、多分、アヤも)ペタペタ

忍「……どうしたんです、アリス? ちょっと悲しそうです」

アリス「――シノは、気にしなくていいんだもんね」ズーン
184 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2013/11/17(日) 01:41:43.70 ID:5cAWbn0F0
忍「――あぁ」

忍「私は、アリスのような小さいのも好きですよ?」

アリス「……!?」カァァ

アリス「シ、シノは直接的すぎっ!」

忍「うーん……本音なんですけどねぇ」

アリス(も、もう……!)プイッ




――同時刻



陽子「あ、メールだ」

綾「私にも」

陽子「……カレンから?」

綾「――ええと」

綾「『山へいきましょう』ってことで、いいのかしら?」

陽子「そう、なるな」


陽子「そういえば、夏休みに入る前」

陽子「『海はヤダ!』って声が、かなり大きかったよな?」ジッ

綾「……陽子、その視線はなに?」ジトッ

陽子「気にするもんでもないのに、なぁ」

綾「――陽子には、わからないわよ」プイッ

陽子「そっかぁ?」

陽子「私は、綾の胸、可愛いと思うけどなぁ……」

綾「な、なな……!」カァァ

綾「よ、陽子のエッチ! 変態!」プイッ

陽子「うわぁ――ムキになっちゃったよ」

綾(バカ、バカ……!)




――同時刻




カレン「……それじゃ」

カレン「パパ、お願いしマス」

カレン父「うん、分かった」

カレン父「山までの足は、任せてくれ」

カレン「心強いデス……」
185 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2013/11/17(日) 01:42:23.82 ID:5cAWbn0F0
カレン父「それで、カレン?」

カレン「ハ、ハイ?」

カレン父「――『あの子』も、来るんだよね?」

カレン「……Of Course」

カレン父「うん、分かった」


カレン「あ、あの……パパ?」

カレン父「なに、心配することじゃないって」

カレン父「……」

カレン父(ただ、カレンが「その子」に対して)

カレン父(何か、特別な感情をもってそうなことは否めない……)

カレン父(――親として、私はどう思ってるんだろう?)




そんなこんなで日は流れ。
各人の予定のすり合わせが行われた結果――


「その日」は、意外と早く訪れることとなった。




――待ち合わせ場所



忍「おまたせしましたー!」

アリス「お、おまたせー!」

陽子「よっ、二人とも!」

綾「もう、ちょっと遅れ、て――」

綾「……シノ、あなたそのカッコは」

陽子「――うひゃぁ」

忍「そ、そんなに見られると照れちゃいます」テレテレ

アリス「シノ……二人は、そういう目で見てるんじゃないと思うよ?」


陽子「なぁ、綾? 今って夏だよな」

綾「それは、夏よ。ただ――」

陽子「……目の前にいるシノは、どこの季節に?」

綾「それ以前に、ここは日本よね……?」


忍「うう……陽子ちゃんと綾ちゃんがいじめますー」グスッ

アリス「だ、大丈夫だよシノ! 私はシノの味方だからね!」

忍「……アリス」

忍「アリスは、似合ってると思いますか?」
186 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2013/11/17(日) 01:43:11.88 ID:5cAWbn0F0
アリス「……」

アリス「に、似合ってるに決まってるよぉ」

忍(ちょっと目を逸らしましたね……)ハァ


綾「そういえば、今日の主催者は……」

陽子「カレンか。そういえば、ちょっとおそ――」

陽子「……」

綾「どうしたの?」

陽子「いや、あれ――」

綾「……あっ!」


カレン「みなサーン!」

アリス「カ、カレン!?」ビクッ

忍「す、凄く大きな車ですね……」

カレン「パパが頑張ったデス!」

綾「す、凄いわね……」

陽子「なんというか――お嬢様だったんだなぁ」





 ――着いた。


 運転席から、私はカレンの友達を見下ろした。
 皆、歳相応に可愛らしい子たちだった。なにより、良い子そうだ。
 私は、胸を撫で下ろす。
 父親たるもの、娘が心配なのは古今東西変わらない。

 ……ただ。


「わぁ、凄いです!」
「シノー!」


 窓からカレンは、「その子」に向かって手を振った。
 なるほど、たしかに可愛らしい。
 イギリスに来た頃から数年経ち、より「女の子」らしさに磨きをかけている……。


「……パパ?」


 ハッとした。
 見れば、カレンは少し不安げな表情を浮かべている。
 恐らく、私から「彼」への視線を感じ取ったのだろう。


「大丈夫だよ、カレン」


 私は娘に微笑みながら、


「――ちょっと、気になっただけだから」


 車を、停めた。
187 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2013/11/17(日) 01:43:54.40 ID:5cAWbn0F0



――数分後


陽子「いやー、改めて凄いなこの車……」ジーッ

綾「陽子。あんまりジロジロしちゃ――」

陽子「うわっ、こんなところに引き出しが!」パカッ

綾「ああもう、言ったそばから!」


アリス「ふふっ、陽子は元気だねぇ」

忍「そうですねぇ……」

カレン「……」

忍「? カレン、どうかしましたか?」

カレン「な、なんでもないデス」

カレン「今日は、楽しみまショウ!」

忍「はいっ!」


アリス「……」

アリス(そういえば)

アリス(さっき車に乗る時、カレンのお父さん――)

アリス(少し、複雑そうな表情をしてた、ような……)




――さらに数分後



カレン「着いたデース!」

陽子「おおっ、これは……!」

綾「綺麗な所ねぇ」

忍「ふふ、車じゃないと、こういった所までは来られませんからね」

アリス「川、かぁ……」


アリス(意外と、水着で泳いでも楽しそう……)

アリス(――ダメダメ! 水着のことを考えただけで、悲しい気分になるのは)

カレン「アリス、大丈夫デス!」

アリス「カ、カレン!?」ビクッ

カレン「――アリスのママが、『アレ』ナラ」

カレン「娘のアリスにだって受け継がれるはずデス!」
188 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2013/11/17(日) 01:44:29.08 ID:5cAWbn0F0
アリス「……カレン、どういう意味かな?」ジトッ

カレン「タダ」

カレン「ちょっと時期は、もうオソ――」

アリス「カレンッ!」プンスカ


忍「ふふ、仲良しさんですねぇ……」

忍(金髪少女と綺麗な川、という光景もいいですね――)エヘヘ

カレン父「……」

忍「あ、カレンのお父さん」

カレン父「――今日は、楽しんでほしいな」

忍「はい! ありがとうございます!」ニコッ

カレン父「……」


カレン「――」

アリス「カレン?」

カレン「――シノッ!」ダキッ

忍「ひゃっ!?」

カレン父「!」


カレン「ふふ、シノー? 油断大敵、デス!」

忍「ちょ、カ、カレン……くすぐったいですってばー」

カレン「相変わらず、綺麗な肌デス……」ナデナデ

カレン「嫉妬しマス」

忍「カ、カレンだって、お人形さんのように綺麗じゃないですかー」

カレン「……」

カレン「も、もう、シノ!」カァァ



アリス「……ああ」

アリス(「お人形さんのように」って、その言葉は私に言ってくれてたのに……)

アリス(カレンに取られちゃったよぉ……)

アリス(――あれ?)

カレン父「……」

アリス「あ、あの……おじさん?」
189 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2013/11/17(日) 01:45:09.42 ID:5cAWbn0F0
カレン父「!?」ハッ

カレン父「あ、ああ、ごめんアリスちゃん」

アリス「どうしたの……あっ」

アリス「シノが気になるの?」

カレン父「……」

カレン父「ま、まぁね」

アリス「……?」




 ――少なからず、動揺した。

 カレンが、私の目の前で抱きついた時。
 私は、たしかに心が揺れるのを感じた。

 しかし――実際に間近で見れば見るほど信じられない。


「もう、カレン……くすぐったいですよぉ」
「ふふっ、シノは可愛いデス……」


 娘のスキンシップを受け、浮かべる表情といい仕草といい。
 完璧に、女性のそれではないか。


「――カータレットさん」

 呟いたのは、彼女の名前。
 遠い異国の友人と、私は芯から心を通わせたように思う。
 自分の娘と「あの子」のふれあいを見れば、それは混乱するだろう――






――それから




綾「ちょ、ちょっと陽子、危ないってば……」

陽子「大丈夫だって――よっ、と!」

陽子「ほら、綾もおいでよ」

綾「こ、怖いわよ……」

陽子「大丈夫だって」

陽子「私がいるんだから、こんな石ころへっちゃらだよ」

綾「……」


綾(――私がいるんだから、か)

綾(こんな岩場を、よくもまぁ)

綾(こういうことを、無意識に言ってるんだから……)

綾「何だろう、癪だわ」

陽子「癪なのはいいけど、転ぶなよー?」

綾「わ、分かってるわよ!」
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