幼馴染「10年後の8月に・・・」

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1 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/12/16(月) 00:17:30.39 ID:z14BhHdk0


2013年  ー12月

prrrrrr...ピッ

男「おう、どした?」

友『よぉ!ちょっくら今暇か?』

男「内容による」

友『相変わらず正直だな。まぁいいや、明日合コンあんだけどさ、お前も来てくんね?』

男「行かない」

友『即答か。そう言わずにさー、会社の女達からお前を連れてくるように言われたんだよ!俺を助けると思って!頼む!』

男「無理。明日はあれがあれだから無理」

友『んだよつれねーなー...まぁ分かってたけどな、女性諸君には何とか言っとくか』

男「そうしてくれ.....すまんな」

友『気にすんな、俺が勝手に誘ったに過ぎん。....ところで一ついいか?』

男「お?やっと本題か?」

友『分かってたのかよ』

男「当たり前だ。何年の付き合いだと思ってる」

友『そりゃそっか。じゃあその付き合いの長い親友としてなんだが...怒んなよ?』

男「んだよ、そう簡単に怒んねーよ。何だ?」

友『いやー...あのさ..お前が彼女作んなかったり合コンに来なかったりすんのってさ...やっぱまだ幼馴染ちゃんのこと....』

男「......」

友『いや!何でもねー!変なこと聞いちまって悪かったな!また何かあったら誘うわ!じゃあな!』プッ..プーップーップー

男「...あぁ」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1387120650
2 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/12/16(月) 00:32:17.54 ID:rsh0IuC80
期待
3 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/12/16(月) 00:36:32.36 ID:Sw1U2WTa0

ピッ...

男「.....ベランダに出てタバコでも吸うか」

ガラガラッ..トントンスッ..シュボッ

男「ふーーーー....」

12月の夜はかなり冷える。それは都会であろうと田舎であろうと変わらない。
時計は既に12時を刺していた。
このマンションから見下ろせる町は未だに静まる気配を見せず、騒がしいネオンや鳴り止まぬ喧騒が耳を霞める。俺は都会のこの忙しない感覚が嫌いだ。仕事の都合でここに住んでいるが未だに慣れないものである。社会人とは疲れるもので、下げたくもない頭を下げ、したくもない仕事をし、無意味にただただ時間を消化する。家に帰れば一人でコンビニ弁当を貪り、マンネリ化したテレビ番組を適当に流す。そんな毎日を過ごしていた。

 《男君!コンビニのお弁当ではいけません!》


一人は慣れているはずなのにどこか寂しい。たまに檻の中にいるような気持ちになる。

男「......だぁーー!!ダメだダメだ!気が滅入ってしょうがねー!パソコンでもやるか!」

タバコの火を消し、部屋に戻る。比較的綺麗に整頓された部屋の一角にあるパソコンの前に座る。 

男「さて、暇だし掲示板でも見るか!」

男「んーーどれどれ?...お?“冬だからこそ夏を感じるスレ”?見てみるか」カチッ

そこには様々な夏をテーマにした写真や画像が張られていた。

 
4 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/12/16(月) 00:49:50.91 ID:apamwWvp0

男「....」

このような田舎の写真を眺めていると思い出す、俺が学生だった頃の情景。田舎のばあちゃん家で2人で暮らしていたあの家、学校帰りにいつも寄っていた駄菓子屋、暑い日に水を掛け合っていた公園の水飲み場、オオサンショウオがいる清流、腹が立つほどうるさいセミの鳴き声。今では失ってしまった物が記憶の中から掘りおこされる。
毎年楽しみにしていた夏祭り。いつも4人で遊んでいたあの頃、どんな時も俺の隣で抜けた顔でニコニコ微笑んでいたあいつ...、毎日がお祭り騒ぎで楽しかったあの夏...
そして...今はもう見ることの出来ない...あいつの笑顔...

男「っつ!くそッ!何だよこれ!余計に気持ちが下がったわ!夏の青空みたくブルーだわ!どーしてくれんだコノヤロー!!」

男がインターネットを閉じようとした時、奇妙な広告が目に入った。

男「ん?何だこりゃ?“現代社会に疲れたそこのあなた!楽しかったあの夏を取り戻しませんか?今なら抽選で一名様にあの夏をプレゼント!!”だぁ?」
 
5 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/12/16(月) 01:03:13.53 ID:ahb2RVIe0

男は広告を無視してパソコンを閉じようとする。
....あれからもう十年か

男「...ちょっと見るだけならいいよな?」

男がその広告をクリックる。
すると画面が変わり、文字が出てきた。

男「お?“おめでとうございます!あなたは見事抽選に当選しました!それではあの夏を取り戻しに行きましょう!キーワードは油揚げ”」

男「...何だこりゃ?ただのイタズラか...」

男が呟くと勝手に画面が変わり、一枚の写真が映し出された。一見するとただにベンチが写った写真である。ベンチの背もたれには有名なお菓子メーカーの名前が書かれていて、所々塗装が剥げている。
だが男は動揺していた。

男「...なんだ?...何だよこれ!?何でこの場所が!?」

そこはいつも学校帰りに男とあいつが一緒に座っていたベンチ。

男「なっ!うわっ!」

パソコンが光を放つ。

パサッ...

光が収まったとき、部屋に男はいなかった。
残されていたのは男のポケットに入っていたタバコとライター。
そしてパソコンの画面には“いってらっしゃい”の文字... 
6 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/12/16(月) 01:04:19.04 ID:ahb2RVIe0

こんな感じで行きます。
よろしゅう。
7 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/12/16(月) 01:06:04.09 ID:glQ0qxYio
乙です

期待
8 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/12/16(月) 01:44:52.23 ID:ltxwYN7BO
期待
9 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/12/16(月) 02:22:47.96 ID:YqywlW4E0

男は深い微睡み中にいた。
体が段々軽くなる。誰かが俺を呼んでいる。

   .....こ

あぁ、よく聞こえないが懐かしい声だ。
俺が一番落ち着く声、大好きだったあいつの声が聞こえる。

   .......とこ

おかしいな、あいつは10年前に死んだはずなのに。夢かな?夢でもいいか、あいつの声が聞こえるなら...

   男君!!」

おいおい。夢に中なのにやたらとはっきりした声だな。目も何だか眩しくなってきた。

??「男ぉ!」ビシャッ!

男「おうっぷ!!」ガバッ!

目が覚めると目の前にはどこまでも透き通る青空があった。どうやら水を掛けられたみたいだ。

??「おぉ?起きたか、男」

声のする方向に振り向くとそこには...

男「!?...友!?なんでここに!?」

友「はぁ?何でって、いつも通りに4人で帰ってる途中だろ」

いや、確かに目の前にいるのは友だが少し違う。明らかに若返っていて、しかも高校の制服を着ている。まるで10年前のように.... 

男「あっ!!俺確か...」

友「おぉ、思い出したか?お前、下校途中にいきなり倒れたんだよ。熱中症か?」

いや、違う。俺はついさっきまで家でパソコンを開いていたはずだ。そしてあの広告...まさか..

男「....なぁ友、今西暦何年だ?」

友「はぁ?いきなりどした?今年は2003年だろーが」

男「...やっぱり10年前に戻ってる...」

見ると自分自身も高校の制服に身を包んでいる。
俺は10年前の2003年の夏にタイムスリップしたようだ。
 
10 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/12/16(月) 02:37:46.41 ID:KvEcGLKO0

友「10年前?お前本当に大丈夫か?」

男「ん?あ、ああ。心配するな、大丈夫だ」

状況は把握した。とりあえず今は高校生の俺を演じなければならない。

??「おろ?男ぉ!起きたん?大丈夫ぅー?」

男「お前...幼友か!うわ、若ーー!!」

次に現れたのは幼友だった。

幼友「はい?どうしたの?頭沸騰しちゃったの?」

友「何かさっきからおかしいんだよ。大丈夫かな?」

おっとあぶねー。あんまり変なことは言えないな。つか..こいつら将来結婚すんだよな...そう考えると...

男「お前らお似合いだな」

友幼友「「!?」」

しまった!クレイモア踏んだ!

幼友「な、な、な、何言ってんのよ!!」ドゴォ!!

男「ゴフッ!」

友「ちょ!俺は関係nぐふぉ!!」ドスッ!

照れると人を攻撃するって...お前は大阪府民かよ

ドサッ!

男「っ、痛てぇーー」

幼友「あああ!ごめん!でも男がいきなり変なこと言うからいけないんじゃん!」

男「うっ、すみません」
 
男が殴られたお腹を擦っていると、後ろから声が聞こえた。

??「あ!男君!起きましたか!」



11 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/12/16(月) 02:50:52.72 ID:g+0PgZcb0

どんな音より落ち着く声。
俺の一番好きな、そして2度と聞くことが出来ないはずの声。
ゆっくりと後ろを振り返る。
そこには俺が世界で一番好きな人が立っていた。

男「.....幼...」

幼「どうしました?」

目の前には失ったはずの宝物。
俺は自分を押さえきれず、彼女に抱きついた。

男「幼ぁぁぁぁ!!!」ギュウゥゥゥ!!

幼「ひゃあ!どうしたんですか男君!いや、違うんですよ?嫌とかそういうんじゃなくて...二人の時にゆっくりしてほしいなーなんて...」

男「幼ぁ!幼ぁ!」グスッ

幼(男君...泣いてる)

幼「どうしました?幼はここに居ますよ?どこにも行きませんよー♪」ギュッ

はっ!しまった!あまりの嬉しさに我を忘れてしまっていた!誰か虫笛吹けよ。それか青き衣を身に纏えよ。

 
12 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/12/16(月) 03:00:10.21 ID:jhAVikXq0

幼「落ち着きましたか?」

男「おう、すまんないきなり」

俺は3分ほど泣いてから落ち着いた。

幼友「それで...いつまで抱き合ってるつもり?」

男「おっとそうだったな」パッ!

幼「...あっ」

幼友「幼も名残惜しそうにしないの!ったく明日から夏休みだからって浮かれちゃって、見せられるこっちの身にもなってよね!」

男「すまん、つい」

幼「ところで幼友ちゃん?そろそろ友君も起こしてあげないと」

すると幼友は急いで友に駆けつけた。友は先程喰らった掌低が効いたらしい。
どうでもいいが体がベトベトする。友の奴、ぽかり


13 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/12/16(月) 03:01:04.13 ID:jhAVikXq0
間違えました

友の奴、ポカリ掛けやがったな
14 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/12/16(月) 04:19:59.73 ID:/zrwtiCD0
激しく期待
15 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/12/16(月) 08:11:45.03 ID:dupjThh3o
友のやつは結婚してるのに合コン行こうとしたのか?
16 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/12/16(月) 10:04:32.28 ID:FT7tRlKmo
期待
なんかジワジワ来る
17 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/12/16(月) 11:15:22.81 ID:5pY6TY7x0

>>15友は男に新しい出逢いを与えようと思って合コンをセッティングした感じです。奥さん公認って事でおなしゃす!
18 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/12/16(月) 17:23:13.93 ID:5pY6TY7x0

友「いつつっ....何が起きたんだ?」

幼友「何でもないわよ。ところで男、もう大丈夫なの?」

幼「そうですよぉ!心配したんですからね!」

男「心配かけて悪かったな。もう大丈夫だ」ナデナデ

幼「ふぇ!?えへへ♪」

幼友「あのツンデレの男が普通にデレとるー!」

友「野郎のツンデレとか誰得だよって思っていたが...くっ!こっちの方がキツイぜ!」

幼「えへへ♪でも本当にどうしたんですか?」

男「いや、何でもないんだ...嫌か?」ナデナデ

幼「そんなわけないじゃないですか。幼は今とっても幸せですよー♪」ギュウ 

友幼友「「・・・」」
19 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/12/16(月) 17:42:07.23 ID:6wyjMklt0

友「はぁ...もうどうでもいいから帰ろうぜ」

幼友「同感。暑いし」

男「それもそうだな。幼、帰るぞ」

幼「はーい♪」

俺達4人は家路に進んだ。途中で友と幼友と別れて幼と二人のでの帰宅である。

幼「今日はどうします?神社によりますか?」

男「今日はいいんじゃないか?明日から夏休みなんだろ?」

幼「なんだろ?って、男君もそうじゃないですか。明日から毎日遊べますね♪」

そう言って、幼はニコニコと微笑む。
この感覚、懐かしいな。俺は小中高と、いつも幼と一緒に登下校を共にしていた。

幼「学校だとクラスが違うのでなかなか一緒になれませんからねー」

男「でも授業中以外の時はいつも一緒じゃないか」

確かそうだった気がする。10年前の事だが幼と過ごした日常はわりと覚えているものだ。

幼「むー、幼はもっと男君と一緒に居たいんですー」

ぷくっと膨れる幼。こいつやっぱ可愛いな。

20 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/12/16(月) 20:46:26.38 ID:y2Ddf0BTo
紫煙
21 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/12/16(月) 21:08:33.64 ID:cqLk7yCf0

幼「じゃあまた明日ね」

男「おう、じゃあな」

俺と幼の家は隣同士だ。
俺の両親は子供の時事故で他界しており、
俺この母方のばあちゃんの家で二人暮らしを送っていた。ちなみに元の世界でもばあちゃんは元気である。
にしても田舎の家って何でこんなに広いのかね。玄関前にはばあちゃんの軽トラが止まっていた。

男「ただいまー」ガラガラ

家の鍵は空いていたがどうやら留守のようだ。昔は何も思わなかったが、随分と無用心だな玄関の鍵くらいかけろよ。まぁこの辺りの家はほとんどそんな感じだし、ぶっちゃけ玄関に鍵かけたとしても裏口の扉にはそもそも鍵がねーし。

居間に入ると置き手紙があった。

男「んーなになに?“今日から三日間、猪狩に山にこもってくる。飯は幼ちゃんのお母さんに頼んでおいたからお世話になりなさい。PS.何かあったら無線入れなさい。周波数は31.4です”」

...相変わらず、っつーか今も未来もかわんねーなばあちゃんは。

俺のばあちゃんはなかなか珍しい女性のマタギだ。この頃はよくばあちゃんが狩ってきた猪とか鹿を幼と食ってたなー。

22 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/12/16(月) 22:19:49.18 ID:Sw1U2WTa0

男「さてと...状況を整理するか」

俺は自分の部屋に入り、鞄を置いた。
寝っ転がると畳のいぐさの匂いが鼻をくすぐる。

男「はぁ.. やっぱ落ち着くな」

俺は久しぶりに田舎特有のゆっくりと流れる時間を体で感じていた。この家にはクーラが無いので窓を全開にし、蚊取り線香を徳用のデカイ缶から一巻き取り出す。

男「豚はなかったっけな...この金具で我慢するか」

蚊取り豚が無かったので蚊取り線香に付属しているT時の金具に蛇の目の部分を突き刺し、下に皿をしく。ライターが見当たらなかったので近くにあったガスバーナーで火を着けた。 

男「これで良し....さてと」

天井の染みをぼんやり眺めながら思考を巡らす。
23 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/12/16(月) 22:43:47.03 ID:u/4Sc8a10

まず第一に、俺は元々2013年の冬を過ごしていたはずだ。んで友から電話きてタバコ吸ってパソコン見てたんだよな..
そこで見つけたあの広告....“あの夏を取り戻しに行きましょう”....そしてあのベンチの写真

気づいた時には10年前の夏にほっぽり出されたっつー訳だ。 
俺と友はこの時17歳、幼と幼友はまだ16歳で全員高校2年か。

つまり今は俺と幼の最後の夏の年っつー事か...
俺は壁に掛かっているカレンダーを見る。

男「今日が7月23日...終業式の日で明日から夏休み..8月26日が幼の誕生日で27日が...」

男はギリッと歯を食いしばった。
2003年8月27日.....幼の命日である。

男「...あの時はこうなるなんて思っていなかったな」

くそッ!
当時何も出来なかった自分に腹が立つ。
理不尽な死を迎えた幼。
幼が段々と冷たくなっていくのを、血が流れ声が小さくなっていくのを黙って見ることしか出来なかった10年前の自分...
だけど...だけど今は違う!

男「あの広告...夏を取り戻すか..」

フッと笑う。

男「上等だ、何だか分からんが感謝するぜ。お望み通り取り戻してやるよ。10年後の8月も幼と一緒に夏を過ごす為にな!」  

24 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/12/17(火) 00:57:13.32 ID:KUFTlcLh0

男「とは言ったものの、どーすっかなー」

幼が死ぬのは8月27日だ。要するにその日だけ気を付ければいいのだろうか?それとも別に運命を変える方法があるのだろうか。
何かが頭に引っ掛かる。
何かを忘れている気がする。

男「....駄目だぁ!頭がぐちゃぐちゃじゃい!」

男は息を吐き、考える事をやめた。



窓から風が入る。
風鈴の音が脳に響き、蚊取り線香の煙が揺れる。

男「....やっぱいいもんだな」

社会人になってから感じたことのない解放感が体をくすぐる。ここには無くした物が、無くしてから大切だと気付いた日常がある。

男「...当面はこの夏を楽しもうかな」

そんな気持ちになってくる。
学校は半日で終わったようで、時刻はまだ午後の1時である。窓から見える青空はどこまでも澄んでいて、なおかつ力強くその蒼さを主張している。

クーラはないがとても気持ちがいい。
都会のコンクリートジャングルでは決して味わう事が出来ない夏の姿。
男は段々と瞼が重くなっていくのを感じた。

フッと視界が途切れる瞬間に何かが見えた。
それは窓の向こうからこちらを覗いていた。

男「........キツネ」


25 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/12/17(火) 01:23:05.17 ID:PPsroyGy0

ーーーーーーー

どれ程寝ていたのだろうか、男が目を覚ます。
時計の針はもう5時を指していた。

男「..ふぁーーあ....結構寝ちまったな」

男が大きくあくびをし、起き上がろうとすると何かが右腕を掴んでいた。

男「あれ?何で幼がここにいんの?つーか何で一緒に寝てんの?」

男の右腕には幼が抱きつき、気持ち良さそうに寝ていた。
おーおー、こいつも大胆だなぁおい、襲ってやろうかな。 
でも幼馴染って何故かそういう対象には見れないんだよねー。なんつーか...汚したくない、守ってあげたいっつー感じだな。
とにかく起こすか。

男は寝ている幼のほっぺをつつく。

男「おーい、幼。おきろー」ツンツン

しばらくつつくと幼がうっすらと目を開けた。

幼「ふぁー.....あれ男君?何でここに?」ゴシゴシ

男「ここは俺んちだ。お前が何故か寝てたんだよ」

幼「あれー?......」

こいつまだ寝ぼけてんな。

男「.....何か用事があんじゃねーのか?」

幼「ん?んーーーー......あぁ!そうだった!」

どうやらやっとお目覚めらしい。おはようございます。

幼「あわわ!もう5時じゃないですか!」

男「いつから居たんだよ」

幼「ふぇ?えーっと、2時位かな?」

男「わりと序盤だな。で、何か用?」

幼「そうでした。今日から三日間は男君のおばあちゃんが留守だと聞いたもので」

男「まぁな。何かお前のかーちゃんに話つけといたらしいぞ?」

幼「その通りなのですが今日は幼のお母さんも町の集会でいないのです」

男「あぁ、祭りの話し合いか。毎年ご苦労だな」

幼「はい。なので今日の男君の晩御飯は幼が作るのです!」デデン!

幼はない胸を張った。
んー...Bだな。

男「そいつぁありがてーな。久しぶりにお前の手料理が食えるのか」

ざっと10年ぶりかな?

幼「任せて下さい!そういうことなので男君!一緒に買い物に行きましょう!」

   
26 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/12/17(火) 01:42:35.42 ID:X3EDBxaQ0

男「それで俺を呼びに来たのか」

幼「はい♪本当は無線で知らせたかったのですが、男君がスイッチを入れてなかったもので」

そうだった。俺と幼はお互いの連絡手段として、無線機を利用していたのだ。小さいが10キロまでならカバーできる。高校の入学祝いにばあちゃんが買ってくれた。

男「あぁごめんごめん。わざわざありがとな」ナデナデ

幼「えへへ♪むふー」ギュッ

男「相変わらず幼は甘えん坊だな」ギュッ、ナデナデ 

幼「男君にしか甘えないもーん♪ほれほれ」ぐりぐり

男「顔を擦り付けんなっつーの。寝汗かいてっから臭いぞ?」

幼「そうかな?幼はこの男君の匂い好きだよ?安心できる」スーッ

おい、そんな可愛い顔でこっち見んな。
どうにかなっちゃうでしょーが、俺が!
つーかめちゃくちゃいい匂いするんだけど。ほのかに汗の匂いもするし。あれ?俺ってもしかして変態なの?ショック!
つか、そろそろ離れてくんないとマジでヤバい。

男「そっ、そろそろいいだろ」パッ!

幼「えー!もっとー!」

男「うっさいわ、もう終わり!買い物いくぞ!」 

幼「むー、ケチ」

しゃーないやろ。男は辛いんです。俺の寅さんがオランジーナしちゃうんです。何言ってんの?
27 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [sage]:2013/12/19(木) 16:52:41.57 ID:8fDZrsgw0
>>1
乙です。タイトルでシークレットベースとあの花が出てきた・・・
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