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モバP「世界中にヒーローと侵略者が現れた世界で」 part9 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/02/01(土) 23:30:28.04 ID:gLjesAt+o
 それは、なんでもないようなとある日のこと。


 その日、とある遺跡から謎の石が発掘されました。
 時を同じくしてはるか昔に封印された邪悪なる意思が解放されてしまいました。

 それと同じ日に、宇宙から地球を侵略すべく異星人がやってきました。
 地球を守るべくやってきた宇宙の平和を守る異星人もやってきました。

 異世界から選ばれし戦士を求める使者がやってきました。
 悪のカリスマが世界征服をたくらみました。
 突然超能力に目覚めた人々が現れました。
 未来から過去を変えるためにやってきた戦士がいました。
 他にも隕石が降ってきたり、先祖から伝えられてきた業を目覚めさせた人がいたり。

 それから、それから――
 たくさんのヒーローと侵略者と、それに巻き込まれる人が現れました。

 その日から、ヒーローと侵略者と、正義の味方と悪者と。
 戦ったり、戦わなかったり、協力したり、足を引っ張ったり。

 ヒーローと侵略者がたくさんいる世界が普通になりました。


part1
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1371380011/


part2
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1371988572/


part3
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1372607434/


part4
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1373517140/


part5
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1374845516/



part6
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1376708094/



part7
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1379829326/



part8
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1384767152/

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1391265027
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【安価】 剣士「負けた方がなんでも言うこと聞くんだぞ」 魔法使い「いいですよ?」 @ 2019/09/17(火) 02:54:09.34 ID:GB4jOrPoo
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1568656449/

クロエ「てかアオイ遊び来ないねっつって。チエルが。ま、それだけなンだけど」 @ 2019/09/17(火) 01:49:58.84 ID:D6mV02AL0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1568652598/

田中摩美々「ふふー、こいですからぁ」 @ 2019/09/17(火) 00:12:30.20 ID:s17cG5ol0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1568646749/

神谷奈緒「フレンドライクミー」 @ 2019/09/16(月) 22:47:46.08 ID:ajLiiV4A0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1568641665/

掴んでみせます自分星 @ 2019/09/16(月) 21:38:54.20 ID:XPnNnq450
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1568637533/

久川凪・颯「「日曜日のギフト!」」 @ 2019/09/16(月) 20:25:35.84 ID:DVkEDVnMO
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1568633135/

スイレン「サトシ。いい加減働いて」サトシ「わかってるよ」 @ 2019/09/16(月) 20:01:41.14 ID:xjCkXT6gO
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1568631701/

【イナイレ】天馬「ふーん……」【安価】 @ 2019/09/16(月) 19:48:27.39 ID:JaZz9M800
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1568630907/

2 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/02/01(土) 23:31:54.38 ID:gLjesAt+o
・「アイドルマスターシンデレラガールズ」を元ネタにしたシェアワールドスレです。

  ・ざっくり言えば『超能力使えたり人間じゃなかったりしたら』の参加型スレ。
  ・一発ネタからシリアス長編までご自由にどうぞ。


・アイドルが宇宙人や人外の設定の場合もありますが、それは作者次第。


・投下したい人は捨てトリップでも構わないのでトリップ推奨。

  ・投下したいアイドルがいる場合、トリップ付きで誰を書くか宣言をしてください。
  ・予約時に @予約 トリップ にすると検索時に分かりやすい。
  ・宣言後、1週間以内に投下推奨。失踪した場合はまたそのアイドルがフリーになります。
  ・投下終了宣言もお忘れなく。途中で切れる時も言ってくれる嬉しいかなーって!
  ・既に書かれているアイドルを書く場合は予約不要。

・他の作者が書いた設定を引き継いで書くことを推奨。

・アイドルの重複はなし、既に書かれた設定で動かす事自体は可。

・次スレは>>980
    
モバP「世界中にヒーローと侵略者が現れた世界で」まとめ@wiki
www57.atwiki.jp
3 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/02/01(土) 23:33:09.98 ID:gLjesAt+o
☆このスレでよく出る共通ワード

『カース』
このスレの共通の雑魚敵。7つの大罪に対応した核を持った不定形の怪物。
自然発生したり、悪魔が使役したりする。

『カースドヒューマン』
カースの核に呪われた人間。対応した大罪によって性格が歪んでいるものもいる。

『七つの大罪』
魔界から脱走してきた悪魔たち。
それぞれ対応する罪と固有能力を持つ。『傲慢』と『怠惰』は退場済み

――――

☆現在進行中のイベント

『憤怒の街』
岡崎泰葉(憤怒のカースドヒューマン)が自身に取りついていた邪龍ティアマットにそそのかされ、とある街をカースによって完全に陸の孤島と化させた!
街の中は恐怖と理不尽な怒りに襲われ、多大な犠牲がでてしまっている。ヒーローたちは乗り込み、泰葉を撃破することができるのだろうか!?
はたして、邪龍ティアマットの真の目的とは!


『秋炎絢爛祭』
読書の秋、食欲の秋、スポーツの秋……秋は実りの季節。
学生たちにとっての実りといえば、そう青春!
街を丸ごと巻き込んだ大規模な学園祭、秋炎絢爛祭が華やかに始まった!
……しかし、その絢爛豪華なお祭り騒ぎの裏では謎の影が……?


モバP「世界中にヒーローと侵略者が現れた世界で」まとめ@wiki
http://www57.atwiki.jp/mobamasshare/pages/1.html
4 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/02/01(土) 23:34:17.99 ID:gLjesAt+o
すみません、残りレス数のこと考えてませんでした。

続きから投下します
5 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/02/01(土) 23:36:16.03 ID:gLjesAt+o

「……なにみく?こんな寒空の中、私一人買い物に行かせて……貴女はこたつで、安息を楽しむつもりだったのかしら?」

 半ば強引に連れ出されたことに文句を言うみくだったが、それをのあは隣のみくを横目でじろりと見つめる。

「うっ……ぐぬぬ、しょうがないにゃ……」

「わかればいいのよ。まぁでも……晩御飯の献立、貴女に委ねてもいいわ」

「え!ほんとにゃ?じゃ、じゃあハンバーグがいいにゃ!」

 不満の残るみくの表情だったが、のあの一言で引っくり返したかのように笑顔に変わる。
 そんな二人のやり取りが微笑ましくて、アーニャは少し笑った。

 そのアーニャが無意識にしていた、雪のように解けて消えてしまいそうな儚い笑顔をのあは見逃さなかった。

「……では、私は少し、先を急ぐので。ダスヴィダーニヤ……さようなら、また今度です」

 そう言ってアーニャは二人に背を向けて、再び足を進めようとする。

「……待ちなさい」
6 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/02/01(土) 23:36:54.22 ID:gLjesAt+o

 しかしその歩みはのあに肩を掴まれたことによって遮られる。
 そのまま強引にアーニャを振り向かせて、かわいらしい手袋に包まれたのあの両手によってアーニャの両頬は押さえつけられる。

「な!?なんですか、の……あ」

 のあはアーニャの顔を固定したまま、顔をずいと近づける。
 アーニャの眼前にはのあの顔が間近に迫り、その両目はアーニャの目を覗くようにぶれることはない。

「ど、どうしたのにゃのあチャン!?ひ、人前でそんなダイタンに……って、あれ?」

 みくから見ればのあが突然アーニャを引き止めて振り向きざまにキスしたように見える。
 しかしその顔が寸前で停止して間近で顔を観察していることにみくも気づいた。

「きゅ、急にいったいなんなんだにゃのあチャン?」

「ダー……まったくです。い、いったいどうしたんですか?のあ」

 アーニャに向けられるのあの視線。
 それは内面まで見透かされているようで、アーニャは居心地が悪かった。

「……違うわ。戻った……というより、やはり見えていない……のかしら?」
7 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/02/01(土) 23:37:38.74 ID:gLjesAt+o

 のあはアーニャの眼前そのままで呟く。

「?……なんのことですか?」

 アーニャにはその言葉の意味がよくわからない。
 のあはアーニャが状況を理解できていないまま、顔を放す。

「……ここでは少し、凍えるわ。どこか……暖かいところに行きましょう」

「で、でも私には、用事が」

 のあは別の場所へアーニャを連れていくことを提案するが、アーニャにはその意図が全く分からない。

「みく……暖かい場所、近くに何かない?」

「え?あ、ああうん……。エトランゼならここから近いにゃ」

 みくも状況についていけてないようだが、とりあえずのあに聞かれたとおり答える。

「じゃあ……そこへ行くわ。ここだとやはり、寒い」

「アドナーカ……、でも……」

「貴女の用事なんて……知らないわ。早く……行かないと」

「い、行かないと?」

「さささ寒くててて、わた私が、機能がががが、ここ凍えててて、動かななな」

「ああ!のあチャンが寒さのあまりに、壊れたテレビのようになってるにゃ!」

「と、とりあえず、エトランゼまで行きましょう!」

8 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/02/01(土) 23:38:28.89 ID:gLjesAt+o

***

「ただいまもどりましたー」

 ピィは手にコンビニの袋を携えてプロダクションの入り口から入ってくる。

「弁当はあったものを適当に選んできましたけどよかったですかね?」

 袋をプロダクションで待っていた者たちの前において、ピィは尋ねる。

「んー、チョイスはパッとしないけど悪くはないんじゃない?」

 目の前に置かれた袋の中身を周子は覗きながら言う。

「せっかくお前のために買ってきたのになんなんだその言いぐさは……」

「私はみなさんの分のお茶を淹れてきますね」

 周子の言い草にピィが不満を垂れる中、ちひろは立ち上がって給湯室の方へと向かう。

「ところでちひろさん、弁当代は経費で落ちますよね?」

 そんなちひろの背中にピィは声をかける。
 その質問に対してちひろは振り向いて不思議そうな顔をしている。
9 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/02/01(土) 23:39:23.55 ID:gLjesAt+o

「え?」

「……え?い、いや経費で……」

「落ちると思ってるんですか?」

「そんな殺生な!?」

 弁当代が経費で落ちないので、思わぬ出費に頭を痛める少々薄給のピィ。
 それを気にせず周子と未央は袋から弁当を取り出している。

「私これー♪」

「んじゃああたしはこれ貰っちゃおー」

 ピィの買ってきたコンビニ弁当を我先にと選び、ついてきた割り箸と共に手元に持ってくる。

「ピィさんも出費なんか深く考えないで食べよう!あんまり悩まず楽観的に、ね♪」

「ぐぅ……、まぁいいか」

 ピィも袋から弁当を取り出して、ソファーにこれ以上の人数は手狭なので自分の机へと持っていく。
 そして椅子に座ると、ピィの背後から手が伸びてきてお茶の入った湯飲みが置かれた。
10 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/02/01(土) 23:40:00.73 ID:gLjesAt+o

「どうも、ちひろさん」

「いえいえ」

 お盆に人数分のお茶を乗せて持ってきたちひろはそのままソファーへと座る。

「そう言えば楓さんは?」

 ピィは先ほどまでソファーで眠っていた楓の所在について聞く。

「ああ、仮眠室に運んでおきました。ここのままだと少し、楓さんにはうるさいかもしれませんからね」

 ちひろは仮眠室の方を指さしながらそう言う。

「そういえば、あの隊長が、というよりもデストロー……だっけ?

それがここに来ることさえできないとか言ってたけどどういうことなんだ?」

 ピィがコンビニに出かける前に未央がふとつぶやいた言葉。
 それを思い出したピィはその意味を尋ねた。

「んーとね、さっき話したけど『デストローは世界に介入できない』って言ったよね。

だったらこのプロダクションにも介入できるはずないじゃん」

 未央は当たり前のように言うが、他の3人はその意味がよくわからず、とりあえず首をかしげ箸を動かす。
11 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/02/01(土) 23:40:54.20 ID:gLjesAt+o

「ぐ、ぐぬぬ……じゃ、じゃあこの私の名を言ってみろう!」

「ジャ○?」

「違うわ!」

 なんだかよくわからない3人だったがしぶしぶ未央の言う通りにする。

「本田未央ちゃん」

「未央ちゃん」

「午前五時の女王?」

「ちがっ……違わないけどそうじゃないよ!それとピィさんそのメタ発言は屋上モノだよ!」

 未央はそう言って弁当を机の上に置いて立ち上がる。

「こうなったら……ウィング、オープン!」

 そんな掛け声と同時に、未央の背中から6枚の純白の翼が出現する。

「みなさんこれをお忘れかー!この私、可憐な女子高生である本田未央はこの世での姿!

そう、その正体は天使の中の天使、天使オブ天使、熾天使ラファエルとはこの私のことだ―!」

「未央ちゃんちょっと眩しいから羽仕舞ってくれない?」

「ああ、そういえばそんな設定もあったな」

「あ、このから揚げしゅーこがもーらい!」
12 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/02/01(土) 23:41:35.62 ID:gLjesAt+o

「反応薄くない!?

ピィさん設定とか言わないでよ!

それに周子さんそのから揚げ私のだよ!」

 机の上の弁当を急いで周子の手の届かないところへ移し、背の翼を仕舞う未央。
 そして無事であったご飯を一口口に入れて、咀嚼して飲み込む。

「んぐ……とにかく!私あのラファエルだよ!

世界的ネームバリューだってチョー高いんだからね!」

「まぁ確かにそうだな。それが何か関係があるのか?」

 未央は呼吸を落ち着かせて再びソファーに座りなおす。

「だってさ、この私ラファエルが降臨してるってだけでほとんど歴史的大ニュースのようなもんでしょ。

信心深い信者が知れば、このプロダクション自体潰して、強引にこの場所に教会立てたって普通不思議じゃない。

だから私が入り浸ってるこのプロダクションは、ある意味歴史的に、世界的に重要な場所のようなものだよね。

じゃあ当然、現在進行形で歴史の渦中であるこのプロダクションに、

デストローは壊すことはおろか、ここに訪問することはほぼ不可能ってことだよ」

 未央は箸にポテトサラダをつまんで、口へと運ぶ。
13 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/02/01(土) 23:42:42.63 ID:gLjesAt+o

「じゃ、じゃあどういうことだってばよ?」

「結局よくわからないってこと。

正直私も本物のデストローなんて見たことないし、今回のことも聞いただけ。

百聞は一見に如かず。

正直私だけで結論を出すのは正直厳しいわけですよ。

でも強いて言うなら、その隊長って人は実はデストローじゃないんじゃないの?」

「いや……あたしにはデストローがどうだこうだってのはわかんないけどさ、

あたしが400年前に出会った槍男は、そのデストローのように常識を無視していたし、世界からも無視されていたよ。

同様に、あの隊長とかいう男も雰囲気だけならよく似ているし、

そして何よりちゃんと常識を破っていたよ」

 未央のいぶかしむような発言に対するように周子は言う。

「あの男は、楓さんの攻撃をただの念動壁、サイコキネシスだけで防いでいた。

それはふつうありえないことだよ。

楓さんのあの能力は風の刃だとかのただの物理的な刃とは違う、次元の一つ上の力。

本来正攻法の防御不可なあれを防ぐいだのは、事実だからね」

 通常防御不可のあの力を、強引に直接的な方法で防いだのは事実。
 そこにルールを無視した痕跡があるのは確かだった。
14 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/02/01(土) 23:43:30.60 ID:gLjesAt+o

「ていうか、楓さんの能力ってそんなのだったのか?」

 ピィとちひろはこのことについては何も知らされておらず、今の情報は初めて知ったものだった。

「え?知らなかったの?」

「ま、まぁ多分楓さん自身も知らないことだし……。

ピィさん!ちひろさん!これは聞かなかったことで!」

 未央にこのことは口止めされる。

「な、なんでまた?」

「だってこれ以上楓さんに負担欠けるのはよくないでしょ」

「まぁ知らぬが仏ってやつだね。楓さんあの力に怯えてる節もあるから。

日常でちょっとしたことになら使えるけれど、人に向けて使うことを初めのころからかなり恐れてたからさ。

今回の暴走の件と、いくら自衛のためとはいえ能力を人に向けて使ったこと。

このこと覚えていたりすると、後のことが少し不安になるねー……」

 周子は、お茶を啜りながらそう言った。

「わ、わかりました……」

「ああ……わかったよ」

 二人は楓さんがこのプロダクションを訪れた時のことを思い出す。
 あの様子の楓さんを思い出せば、当然その力が思っていた以上に強力なものであるなんてことは言えないだろう。
 よって二人は黙秘することに承諾するしかなかった。
15 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/02/01(土) 23:44:14.17 ID:gLjesAt+o

「さて、話は戻るけどね。

周子さんの話を聞く限りだと、ちゃんとデストローとしての力は発動していた。

でも普通ならここに来られるはずがない。

この矛盾、どういうことなの?」

 空になった弁当のトレーを机の上に置いて、未央は腕を組んで難しそうな顔をする。

「実際、ここがそこまで歴史的重要な場所じゃない、とか?」

 ピィが根本的な未央の推定を否定してみるが、未央はそれに対して首を横に振る。

「それは、あり得ないよ!

私の存在の世界への影響力は十分だし、それに周子さんだってそれなりに高名な妖怪でしょ?

それでさらにこの場所の運命力の集約はされているはず。

さらに私は意図的にこの場所を非戦地帯にだって働きかけてたんだよ!」

「ん?どういうことですか?非戦地帯って?」

 ちひろが未央の発言に疑問を問いかける。

「さっきの運命力の話の通り、世界には流れがあるの。

だからなるべく私の天聖気とかを使ってこの周辺のちょっとした争いやいざこざを未然に防いでいたわけ。

そうやって小さな『平穏』の流れを作り出して、この場所自体に争いの起きにくい『流れ』を片手間に作ってたんだよ。

デストローも世界に干渉できないうえに、そんな流れも作ってたから手なんか出せないはずなんだけどなぁ……」
16 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/02/01(土) 23:45:22.91 ID:gLjesAt+o

 原点に返る不可解な点。
 さすがの未央でもこれに関してはさっぱりだった。

「結局あたしたちがあれこれ言おうと意味ないしどうでもいいんじゃない?

あの隊長の相手はアーニャがするんだし、ここに居たってできることなんて何にもないんだからさ」

 そこにこれまでの会話をすべて否定するような周子の言葉。
 周子はソファーに体重を預けて、目を瞑りながら言った。

「それよりも考えるのはこの後のことでしょ。

万が一アーニャが逃げ出したりしたら次狙われるのはあたしたちなんだよ。

今のうちに逃げる算段を考えた方がいいんじゃないの?」

 そっけない周子の言葉。
 ピィはその言い方にさすがに怒りを覚えたのか声を上げて反論する。

「周子!それはさすがに言い過ぎだ」

「でもほんとのところはどうなのさ。

ピィは腕吹っ飛ばされてるんだよ。

内心、あの男への恐怖は強いと思うけど……そこんところ、どうなの?」

 的確な周子の指摘
 それはピィにとっては図星であったし、きっと再び対峙することが有ったらきっと恐怖で体は振るえるだろう。
17 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/02/01(土) 23:47:15.95 ID:gLjesAt+o

「……たしかにそうかもしれない。

でも、それでも俺は逃げも隠れもするつもりはない。

アーニャを信じてるからな」

「それはアーニャが隊長に、逃げずに殺されに行くってことを?」

「違うよ。アーニャがあの隊長を倒して帰ってくるってことをさ。

昔も今も、俺の信じてるヒーローは、最後には必ず勝つんだからな」

 ピィは迷いなく、そう言う。
 そんなピィを見て、周子はあきれたように溜息を吐く。

「全くよくもそんなことを真顔で言えるね。

じゃあさ、未央とちひろさんはどうするの?」
18 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/02/01(土) 23:47:55.67 ID:gLjesAt+o

「わ、私はー……一応残るつもりですよ。私はここの事務員ですから、ここに居ることしかできないので」

「私はー……、んと……、さすがの私も、デストローを相手だと勝てないし……、

その上、超能力者だなんてもっと無理。

まだやるべきこといっぱいあるから、死ねないけどさ。

でも……ここで逃げたら女が廃る!ここに居るくらいしかできないけど、本田未央、ここに残留を希望します!」

 二人の意志を確認し、周子は少し笑う。

「全くほんとに、あきれる。

じゃああたしは帰るよ。お腹もいっぱいになったことだしね。ごちそうさま。

美玲と一緒に、暫くどこかに避難でもするよ」

 周子はそう言って、プロダクションの入り口の方へと歩いていく。

「周子」

 そんな周子の背にピィが名前を呼びかける。
 周子はそれでも振り向かない。

「お前はほんとにそれでいいのか?」

「いいわけないじゃん、馬鹿なの?

でもあたしは……振り向かないよ」

 結局本当に振り向かないまま周子は、プロダクションを後にした。
19 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/02/01(土) 23:48:42.97 ID:gLjesAt+o

***

「私をこの程度の冷気で、動けなくなると思ったの?

……さすがに私もそこまでポンコツではないわ」

 つい先ほどまで唇を蒼くして、口を震わしていたのあだったのだが、エトランゼに着いた途端嘘のようにその表情は元のものへと戻った。

「な……のあ、騙しましたね!私を、ここに連れてくるための演技だったのですか!?」

 みくと二人でのあを連れていかれるエイリアンのごとく引き摺ってエトランゼに連れてきたアーニャだったが、何事もなかったかのようにふるまうのあを見てそれがここに連れてくるための口実であったことにようやく気付く。

(まぁ……あの感じだとホントウに寒くてポンコツ化してた可能性もなくないけどにゃ……)

 みくは内心そんなことをを考えるが、のあが無表情のまま視線を向けてくる。

「みく……今何か失礼なことを考えていなかった?」

「そ、そんなことないにゃあ……」

 まるで心を見透かすような眼で見つめられて視線を逸らすみく。
 結局真相は闇に飲まれてしまった。

「とにかく二人とも座りなさい。

なんでも注文してもいいわ」
20 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/02/01(土) 23:49:27.49 ID:gLjesAt+o

 のあのその呼びかけにしぶしぶ二人とも、椅子に座る。
 3人が席に着いたのを確認したのか、チーフが近くに来た。

「まったく3人で押しかけてなんだっていうの?

幸い今はご主人様が少ないからよかったものの、ここは避寒地じゃないんだからね。

客としてきたんだから、ちゃんと何か注文してもらうよ」

 チーフは少し厄介者が来たかのような視線をしながら、3人の机の上にメニューを置く。

「……それくらい承知しているわ。

大丈夫、会計は全てみく持ちよ」

「なんでにゃあ!?

さっき『なんでも注文していい』って言ったののあチャンじゃないかにゃ!

なんでみくが払うことになってるにゃ!?」

「ああ、わかったよ。

まぁみく、払えなくてもちゃんとツケといてやるから安心しな」

「チーフも承知するんじゃないにゃ!」

「みく……すこしにゃあにゃあうるさいわ……。

ちゃんと他のお客さんもいるのだから、静かにしなさい」

「ひどくない!?」
21 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/02/01(土) 23:50:16.26 ID:gLjesAt+o

 ぶさくさ言いながらもみくはメニューを手に取る。
 それに対して、アーニャは席に座ってから一言も話していない。

「アーニャ、何か頼まないの?」

 のあは黙ったままのアーニャに問いかける。

「……のあ、私は食事に来たわけでも、漫才を見に来たわけでもありません。

あなたが、何か話があるらしいから……今はここに留まっているだけです。

嘘をついてまで、ここに私を連れてきたのです。

言いたいことがあるならば……できるだけ、早く頼みます」

 アーニャは表情を変えずに言う。
 無表情同士の視線の交差は、そこだけ室内の気温を氷点下まで下げているようであった。

「……何を焦っているかは知らないわ。

でも、そんな体調では話もままならないわ」

「シトー?……どういうことですか?

話をそらさないで」

 話の本題に入らないのあに少し苛立つように言うアーニャであったが、それを小さな音が遮る。
 それは、アーニャのお腹から響くものであった。

「昼は、食べてないのでしょう?

……食事くらいは、とっておくべきだわ。

あなたの目的である何かのためにも」

 アーニャはお腹を押さえて少し目を伏せる。

「ダー……わかりました」
22 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/02/01(土) 23:51:41.99 ID:gLjesAt+o

 これから挑む相手ならば万全でなければならない。アーニャは仕方なく自らの空腹に従う。

 その後は、のあとみくはすでに昼食を済ましていたので、ドリンクと軽食を頼んだ。
 そしてアーニャに食後のホットミルクが運ばれてきて、本来の話へと再び戻った。

「さて、空腹も満たされて少しは落ち着いたでしょう?

じゃあ……本来の話に戻りましょう」

「あいにくですが……私からは、話すことはありません。

二人がなにか気を回してくれたのはわかりますし……感謝はします。

……でも私は特には何もないです。

いつもどおりです」

「でも、それって自分で『今自分は何か問題を抱えています』って言ってるようなものにゃ。

みくはアーニャンとは友達だと思っているにゃ。

でもそう言うってことは、友達にも、話せないことなのかにゃ?」

 それに対してアーニャは沈黙。
 これに答えてしまえば、自分が問題を抱えていることを自分から肯定してしまうようなものだからだろう。
23 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/02/01(土) 23:52:28.34 ID:gLjesAt+o

「……別に話す必要はないわ。

話してくれないことは、友人として一抹の寂しさを感じるけれども、

それも何か意味があってのことだろうから」

 沈黙するアーニャに代わってのあが会話を引き継ぐ。
 のあは相変わらず、その静かな瞳でアーニャの両の眼の奥を覗き込もうとしていた。

「でも、私はさっきあなたに会って、感じたことがある。

これは……私の言葉。あなたが沈黙するというのなら、あなたに私の言葉を遮る権利はないわ」

 まる忠告のように聞こえるその言葉だったが、アーニャはそれにも答えない。

「私は……かつてあなたに『見えていない』と言ったことがある。

それはアーニャにとっての、『目的』というものが見えていなかったからよ。

自らの意志の所在を明らかにしないまま行動するということは……まっとうな人ではありえない。

地に足がついていないようなものよ」

 幼児ですら、自らの行動原理を持っているのにもかかわらず、かつてのアーニャにはそれがなかった。
 それでも、そんなアーニャはその後、自らの意志で『目的』を示すことができた。
 そんな精神的な成長を、アーニャは先のカースとの戦いの中で経験したのだ。
24 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/02/01(土) 23:53:08.85 ID:gLjesAt+o

「そう、あなたは見えている。

……今のアーニャ自身『目的』は見えているの。

でも、一つを見るというのは他を疎かにするということなのよ」

 のあの抽象的な言葉の意味をアーニャにはよくわからない。
 だがその一つ一つが、心のどこかに引っかかるような、不快感にも近い違和感を覚える。

「シトー……なんなんですか?わかりません、何を言いたいんですかのあは?」

 載積する理解できない言葉は、アーニャの頭をかき乱す。
 まるで図星を突かれるような、自らに突き刺さる言葉を的確に選んでくるのだ。

 まるで間違いを糾弾される子供の様で、それを認めたくなくてだだをこねる。
 そんな感じの苛立ちが目に見え始めても、のあは口を止めない。

「……これができない人は、いくらでもいる。

でもこれができないままというのは……ただ世の中が生き辛くなるだけなのよ。

あなたはここで一つ、理解しなければならない。

優しさの基準は、責任の基準は、あなた一人だけのものではないということを」

 しかし、まるで言葉を遮るように掌で机をたたきながらアーニャは立ち上がる。
25 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/02/01(土) 23:53:43.75 ID:gLjesAt+o

 その音で、すこしうとうとし始めていたみくはびくりと体を震わせて目を覚ました。

「な、なに?敵襲かにゃ?」

「ヴァズヴラシエーニェエ……帰ります」

 逃げ出すようにアーニャは机の傍らに丸められていた注文票を握りしめて、レジに持っていく。

 チーフがそれを受け取って、レジを打つことによって値段を映し出した。

「いいの?話の途中なのに」

 チーフはアーニャに尋ねるが、ばつの悪そうな顔をしたまま何も言わない。

「まぁ……ゆっくり考えればいいさ。多分、少しデリケートな問題だからね……。はい、アーニャの分は1200円」

 金額を言い、手のひらをアーニャの前に差し出すが、アーニャは動かない。
 少し怪訝な顔をするチーフだったが、アーニャがゆっくりと財布を取り出すと同時に口を開いた。

「……ここのバイト、やめます」

「……は?何言ってんの?」

 チーフのわれ関せずという表情は明確に疑問を抱いた顔に変わる。
26 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/02/01(土) 23:54:13.40 ID:gLjesAt+o

「……多分、もう帰ってこないかもしれないので」

 そう言って、ちょうど1200円をその掌に乗せて財布を閉じる。

 そして静かに、エトランゼの店の扉に手をかけた。

「ちょっと待て」

 扉を開く前に、少しドスの効いた声がアーニャの背に届く。
 そして肩を掴まれ、振り向かせられるとチーフの拳がアーニャの胸の前にあった。

「手のひら出して」

 アーニャはそれに従って掌をその拳の下で受け止めるように差し出すと、先ほど渡した1200円がアーニャの手の中に降ってきた。

「それは返す。それとみく、のあ、今日はアーニャのおごりだそうだ。よかったわね」

 その言葉にみくはぽかんとした表情を浮かべ、のあは少し笑う。

「チ、チーフ……これはどういう!?」
27 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/02/01(土) 23:54:58.97 ID:gLjesAt+o

「あいにくだが今日の代金は強制的にツケにしておくよ。

ちゃんと後日、働いて返す。いいね。

それとバイトを辞めるときはひと月前に事前に言っておくこと。

さらにそんな顔しながらこの店やめるなんて言うのはもってのほか。

わかった?」

 そしてアーニャが手にかけていた扉をチーフは開く。
 さらにその背中を蹴って、強引に外へと追い出した。

 アーニャを追い出した後、チーフは近くの椅子に座る。

「まったくあたしには何が何だかよくわかんないよ……。

ところで勝手に追い出しちゃったけど、のあはまだ話の途中だったけどよかったの?」

「……いいのよ。

どうせ私が口で言ったところで、何かが変わるわけではないわ。

アーニャ自身が、実際にそれを理解しない限りね」

 のあはそう言って、手元にあった冷めたコーヒーを啜る。

「とはいっても、なんだかのあチャン回りくどすぎだにゃ」

「あら……、じゃあどういえばよかったのかしら?」
28 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/02/01(土) 23:55:44.86 ID:gLjesAt+o

「うーんと……素直に『もっと周りを見渡せ』とでもいえばよかったんじゃないかにゃ?

……ふにゃあ」

 みくは一つあくびをして、眠たげな眼をこする。

「ふふ……まったく、自分のことを全く知らない私が人にこんな説教みたいな話をするなんて、

……少し、おかしいわね。

そういえば……私は初対面の人にたまに『ロボットみたいだ』って言われることがあるのだけれど、

……私って、機械なのかしら?」

「それは多分、あり得ないにゃあ。

だってそんなクールな顔して冷静なのに、意外とハートは熱いんだからにゃ」
29 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/02/01(土) 23:56:31.60 ID:gLjesAt+o

***

 エトランゼから寒空の下に追い出されたアーニャは再びその扉を開くことなく帰路へと向かう。
 正直ばつが悪いのでアーニャ自身もあの場に戻ろうという気は自然とおきなかった。

 相も変わらず、雪はひらひらと降り注ぐ。
 振っている雪の量も大したものではなく、このまま降り続いたとしても積もることはないだろう。

 この儚く、美しくもあるささやかな雪を見上げる人を道中何度かいたがそれもアーニャの視界には入らない。

 そしてアーニャは立ち止まることなく足を進める。
 これまでに嫌というほど雪を経験してきたアーニャにとって、日本では初めての雪でも特に感慨深いものはなかった。

 その後、暫く歩いてエトランゼでの体の熱もかなり冷えたところで、ようやく見慣れた屋根を視界に入れる。
 アーニャの歩幅は自然と広くなり、少し急ぎ足になりながら女子寮へとたどり着いた。

「あら?アーニャちゃんじゃないですか。おかえりなさい♪」

「こんにちは……。アナスタシアさん、お久しぶりですね」

 そんないつか見たことあるような組み合わせ。
 女子寮の階段下には、鷹富士茄子と鷺沢文香がいた。

「プリヴェート……茄子、文香」

 先ほどのあに引き止められたアーニャにとって階段前で立ちふさがるこの二人がとても高い壁に見える。
 アーニャはなるべく心中を悟られぬように、二人の間を抜けようとする。
30 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/02/01(土) 23:57:09.86 ID:gLjesAt+o

 何か引き止められるかと思っていたのだが、意外にすんなりと階段に足をかけることができた。
 そのままもう片方の足を踏み出し、階段を上がろうとする。

「アーニャちゃん」

 しかしやはり、引き止められる。
 優しい声色で名前を呼んだのは茄子。

 びくりと肩を小さく振るわせ、ゆっくりとアーニャは振り向く。
 そんなアーニャに茄子はにこりと微笑みかけてくる。

「きっとこれはあなたにとって、最大の試練になると思います。

でもね、アーニャちゃんなら大丈夫♪

だから私からはヒントを一つだけ。きっとアーニャちゃんもいろいろ迷っているけど思うけど、迷っているのはアーニャちゃんだけではないんですよ〜。

事の真相はそこにあるはずですから、あとはアーニャちゃんの頑張り次第ですね!

では、あなたに幸運があらんことを♪」

 そう言って茄子は小さく手を振る。
 そして背を向けて、そのまま管理人室の方へと行ってしまった。
31 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/02/01(土) 23:57:55.08 ID:gLjesAt+o

 残ったのは文香とアーニャだけ。
 文香は不思議そうな顔をしたまま茄子が言った方向に視線を追って行っていた。

「茄子さんの……今の言葉、どういうことなんでしょう?」

「……わかりません」

 実際アーニャにもよくわからなかった。
 もともと茄子は明るい人だが、何を考えているかわからない時も多々ある不思議な人だ。

 今の発言も、なぜかアーニャが置かれている状況を知った上での発言だということは理解できる。
 だがその内容はのあが言ったことと似ているようで、まるで違うことを話しているようだった。

 のあが指摘していたのは、アーニャからも自分自身のことだということはなんとなくわかった。
 それに対して茄子の言ったことは、別の誰かのことを言っているような、本当にヒントを言っているようなそんな不思議な感覚だった。

「ところで……初めて会った時のこと、覚えていますか?」

 結局茄子の言葉の意図はわからない。
 文香はここで話題を、数か月前にこの場所で会ったことについてに切り替える。

「ダー……ええ、覚えていますよ」

「シュレディンガーの猫の話をしたのを……覚えていますか?」

「ダー……なんとなく覚えています」

 アーニャはあの日のことを思い出す。
 箱の中の、生きていて死んでいる猫の話だ。
32 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/02/01(土) 23:58:49.31 ID:gLjesAt+o

「前の時には、話が逸れましたが……あれが量子論を代表する話となっています」

「たしか……そんなことを言っていた気がしますね」

「けれど、実際にはこの箱の中の猫の話は、量子論を批判するためのたとえ話だったんです……。

それがいつの間にか……量子論の代表のように扱われている。

なんというか……皮肉めいてますよね」

 文香は遠くの景色、雪が絶え間なく視線を横切る空をちらりと見て、そして一息吐く。
 白い吐息は空へと昇っていき、すぐに空気と同化した。

「コペンハーゲン解釈によって、重なり合った状態のとある粒子……。

毒ガス発生装置は……この粒子が存在するかしないかによって作動するかしないかが決まります。

そしてこの粒子は……不思議なことに、見るか、見ないかによって、そこにあるか、無いかが決まるんです……」

「有り無しなんて……見ることで変わらないでしょう。

だって、目で見なくともそこにあるものはある……、目で見えなくても存在するものだってあるのですから」
33 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/02/01(土) 23:59:31.74 ID:gLjesAt+o

「そこが、不思議なんです。

所詮私は……文学部なので詳しいことはわかりません。

簡単に、本に書いてあった受け売りです……。

でも……そこに二つの可能性があって、その自分が望む可能性を、自分の意志で引き寄せる。

あなたは前に……箱の中の猫を救うと、言いました。

そして……それは私にはできないことだと思っていました。

でも、ただ一歩……踏み出せばよかったんです。

ただ自分が望むように、見るだけでその猫を救うことはできたんです。

……そう思えるだけで、箱を開ける戸惑いは……軽くなりました」

 文香は微笑む。
 自分の悩んでいたことは、自分の意志でどうにでもなるということを知ったから。

「だから……これはちょっとした報告というか、意志表明です。

私は……もう少しだけ、前向きに事を、見ようと、考えようとします。

見方や考え方は、自由なのですから……それで世界が変わるなら、少しだけ」

 迷いが完全に消えたわけではない。
 でも、その迷いの先を見据えて、その澄んだ両目は前を向く。
34 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/02/02(日) 00:00:53.44 ID:SoFcRVSKo

「それでも……迷ったらどうするのですか?」

 ふと自然と、アーニャはそんなことを尋ねる。
 茄子に言われた『迷い』、のあの『見えている』ということ。

 その迷い猫は、その迷った時にはどこを見ればいいのか。
 それがわからなかった。

「……周囲の人が、何を見ているのかを知ることです。

そしてそれを鵜呑みにするんじゃなくて……そこから自分の見たいものを探すのが、いいんじゃないでしょうか?」

 文香はそう言うが、やはりアーニャにはよくわからなかった。

「では……もともとの用事は済んでいますし、私は帰りますね。

また私のいる古本屋に……遊びに来てください」

 そう言って文香はアーニャに背を向けて女子寮から離れていく。
 去りゆく文香の背中を見ながらアーニャは今日言われたことを反芻する。

 その乱雑な言葉の数々、きっと大切なものだとは思った。
 きっと必要なものだと思った。

 でも、やっぱりまだ理解はできなかった。





 
35 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/02/02(日) 00:02:08.18 ID:SoFcRVSKo




 部屋に戻れば、時計の針は午後4時を過ぎていた。
 目的地までは、1時間くらいで着く。

 もう迷うのは止め、思考を切り替える。
 晶葉特製の白い特殊コートの内側には様々なホルダーが付いている。

 そこと、ミリタリーベルトに、軍用ナイフと数発の非殺傷グレネードを装備。
 これで準備は万全とはいいがたいが、万策ではある。

 そしてふと思い返せば、まるで日本に来てからの自分の足跡をたどっていた一日だと気が付いた。
 ならば最後に戻るのは、当然あそこだとアーニャは考える。

「銀色(シェリエーブリェナエ)、

妖精(フィエー)、

雪豹(シニェジュヌィバールス)、

氷河(リエードニク)、

白猫(ビエーリコート)、

私のこれまでの15年……。

最後の清算に……行きましょう」

 その目はかつての軍人としての、殺し屋としての、人殺しとしての彼女であった感情を抑えた目に再び戻る。
 かつての名を背負い、かつての上司を殺すために名もなき少女は外への扉を開いた。




 
36 :@設定 ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/02/02(日) 00:03:35.81 ID:SoFcRVSKo


超能力

あの日以前から知られているもっともポピュラーな異能。
物を動かしたり、未来予知したり、透視したりと多岐にわたり、力の根源も様々なものがある。
『あの日』以来、ごく普通の一般人が超能力を使えるようになったという話は、そこまで珍しいものではない。
ただしほとんどの超能力者は大規模なことはできず、サイコキネシスならば人間程度の力しか出せない者がほとんどである。
日常の便利な道具か、忘年会での一発芸くらいにしか使えない者がほとんどである。

天界出版

天界にあるさまざまな宗教の神にも対応している天界大手の出版社。
ごく普通の娯楽本から神罰の指南書まで幅広いジャンルの本を取り扱っている。
ただしたまに眉唾物の情報の書かれた本もあるので注意は必要。
ちなみに最近の売れ行きの本は、『必勝!ドミニオン昇進試験完全攻略マニュアル』である。
37 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/02/02(日) 00:07:36.83 ID:SoFcRVSKo
以上です

スレ超えてしまいすみません

ピィ、ちひろさん、楓さん、周子、未央、のあさん、みくにゃん、茄子さん、文香さんお借りしました。

まだもうちょっと続きます
38 : ◆llXLnL0MGk [sage]:2014/02/02(日) 00:16:29.04 ID:VSfEW18AO
乙ー
こっちもいよいよ大詰めか……

スレまたぎは気にせんで下さいな
多分あの段階で用意しとかなかった自分も悪いので
39 : ◆AZRIyTG9aM [sage]:2014/02/02(日) 00:19:10.06 ID:e0YObN9PO
乙ー&スレ立て乙

隊長が世界に干渉されないチートとか………それなんて無理ゲ?
果たしてアーニャは勝てるのか?
40 : ◆zvY2y1UzWw [sage]:2014/02/02(日) 00:40:54.15 ID:dag4k79K0
乙乙です
隊長強い(確信)
なんか決戦ってかんじですな!アーニャがんばれ!
41 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/02/02(日) 15:54:22.74 ID:ONBr6z6Ro
おつー
『ルール破り』は隊長のことだったのか \やべぇ!/
42 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/02/03(月) 15:36:32.81 ID:A62o/6tRo
乙ですー
うん隊長やべえわwwwwwwww
勝てるのですかね、これは……続き待ってますー


では節分のお話、投下しますー

新スレなので、一応登場アイドル紹介的な

小日向美穂 … アイドルヒーローを目指す女子高生。持ってる刀を抜くとヒーロー「ひなたん星人」になる。
藤原肇    … 鬼の刀匠の孫娘。おじいちゃんの刀を配る為に人里にやってきた。小日向家に居候中。

では、投下ー
43 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/02/03(月) 15:37:07.01 ID:A62o/6tRo


2月某日


美穂「うぅ……まだ外は寒いね」

肇「ええ、今日は早くお家に帰りましょう」

肇「身体を冷やして風邪をひいてしまってはいけませんから」

美穂「そうだね、プロデューサーくんも待ってるだろうし」

美穂「急いでお家に帰ってお風呂に入って……その後はこたつで温まりながらみかん食べたいな」

肇「ふふっ、美穂さん途中から願望になってますよ」

美穂「えへへっ」


イワッシャー


肇「っ!?!」 バッ

美穂「?」

美穂「どうしたの、肇ちゃん?」

肇「い、いえその……アレが……」

美穂「?」


鰯頭「……イワッシャー」


美穂「えっとイワッシャー…じゃなくって柊鰯かな?」

美穂「そっか。今日は2月3日、節分だから飾ってるお宅もあるんだね」

美穂「あっ……」

肇「……」

美穂(もしかすると……今日は肇ちゃんにとって大変な日なのかも)
44 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/02/03(月) 15:38:10.96 ID:A62o/6tRo



鬼はーそとー! パラパラー

福はーうちー! パラパラー



美穂(節分…)

美穂(一般的には、季節の変わり目に生じる鬼を払うために、)

美穂(炒り豆を撒いたり食べたりする日本特有の行事です)


肇「毎年の事ではあるのですが……」

肇「鬼の血を引く私にとっては、恐ろしい風習ですね」

美穂「肇ちゃんも、やっぱりお豆苦手なのかな?」

肇「普通のお豆ならそんな事はないのですが」

肇「鬼を払うと言う思いの込められた物は……ちょっと痛いですね」

美穂「意外な弱点」

肇「何より心が傷つきます……」 ションボリ

美穂「うん、それは誰だってそうなんだろうけど……(狙って豆を投げつけられたら)」

肇「とにかく今日はいつも以上に、お外では角を隠すよう気をつけないといけませんね」

美穂「あっ、そうだよね」


美穂(……鬼の刀匠の孫娘である肇ちゃんの頭には、小さくて可愛い2本の鬼の角が生えています)

美穂(しかし、本人はそれを親しい人以外にはあまり見せようとしません)

美穂(以前、その理由を聞いてみたことがあります)
45 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/02/03(月) 15:39:02.42 ID:A62o/6tRo

――

――

回想


美穂「そう言えば、肇ちゃん。ほとんどいつも頭に手拭いを巻いてるよね」

肇「はい。……似合いませんか?」

美穂「ううん、似合ってるよ。可愛い花柄だし、肇ちゃんらしくていいと思う」

肇「ふふっ、ありがとうございます」

美穂「でもそれをつけてると、トレードマークの角が見えなくなっちゃわないかなって」

肇「そうですね。ですが、それでいいんです。これは角を隠すために巻いていますから」

肇「人の世に余計な混乱を持ち込まないためにも、”人と違う事をかくすために”です」

美穂「あっ、やっぱりそうだったんだ」

美穂「そうじゃないかなとは、なんとなく思ってたけど……うーん」

肇「……?美穂さん?」

美穂「あっ……えっとね、そこまでして隠さなくても平気じゃないかなって思って…」

美穂「回りを見たら、もっと変わってる…って言っちゃったら失礼だけど」

美穂「ちょっと人とは違った個性を持ってる人達も大勢いるんだし」

美穂「……気を悪くしちゃったらごめんね?」

肇「いえ、構いませんよ。美穂さんが言う事もよくわかりますから」
46 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/02/03(月) 15:39:55.40 ID:A62o/6tRo

肇「”あの日”を境に人の世の中は大きく変わったと聞いています」

肇「”あの日”から世界は、異世の住人が平然と道を歩いていても不思議ではないものになりましたから」

肇「例えば魔法使いさんであったり、カラクリ仕掛けのロボットさんであったり、獣人さんであったり」

肇「ふふっ、今ではちょっと人と違っているくらいは全然当たり前ですね」

美穂「うん。だからきっと肇ちゃんも角を隠したりしなくても大丈夫じゃないかなって、私は思ったんだけど」

肇「ええ、もちろん。美穂さん達のように……私の角の事も受け入れてくれる人達がいるのもよくわかっています」


肇「ですが、それでもやっぱり私は”鬼”なんです」

美穂「……肇ちゃん?」

肇「美穂さんは、私の……”鬼の角”を見てどう思いますか?」

美穂「えっと……可愛いと思うな」

肇「そうです、人は”鬼の角”を見て”怖い”と言うイメージを……」

肇「えっ」

美穂「あれ?えっと、小さくって可愛い角だと私は思うけど」

肇「……あ、あのっ……え、えっとからかわないでください。恥ずかしいです…」

美穂(……どうやら角を褒められるのはウィークポイントのようです)
47 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/02/03(月) 15:40:52.36 ID:A62o/6tRo

肇「と、とにかくですね」

肇「猫の耳や天使の翼なんかとは違って、鬼の角は人によってはあまり良い印象を受けないものなんです」

美穂「うーん……そうなのかな?」

美穂「でも……確かに。ちょっと悲しいけど、一般的には”鬼”と言えば悪さをするってイメージがあるもんね」

美穂「肇ちゃんと出会ってからは、そうじゃないってわかったけれど」

肇「悲しいですが……きっと、そう思われることは仕方ないことなんです」

美穂「……肇ちゃん?」

肇「そうですね……せっかくだから話しておきたいと思います」

肇「”鬼”の事について」


肇「……美穂さん、”妖”と言う存在は人の畏怖から生まれます」

美穂「畏怖から?」

肇「はい。畏怖と言うのは……そうですね、例えるなら”暗闇の夜道が怖い”と言ったような気持ちなどですね」

肇「”暗闇”は怖い。とても人が及ばないもの」

肇「だってそこには、人知を超える”何か”が居る気がするから……」

肇「……そうして畏れる思いは信仰へと繋がって、やがて人々のイメージは形になります」

肇「そして産まれるのが、”妖”なんです」


肇「……人が恐れを抱く対象は様々です」

肇「獣に対してであったり、炎に対してであったり、人形に対してであったり……」

肇「学校の階段に対してであったり、夜道の公衆電話に対してであったり、ビデオテープに対してであったり……」

肇「今も昔も、自然も文明も関わらず人は何にでも恐れを抱きます」

肇「だから、私たちの国には様々の種類の妖が存在しているんです」

美穂「そうだったんだ……なんだか関心しちゃうお話だね」
48 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/02/03(月) 15:42:05.27 ID:A62o/6tRo

美穂「でも、と言うことは……”妖”の一種である”鬼”も何かに対する畏怖から生まれたって事なのかな?」

肇「はい、その通りです。ずばり言ってしまいますと、」

肇「”鬼”は、”人の心、人の精神”に対する畏怖から生まれます」

美穂「……人の心に対する畏怖」

肇「人の思い、人の考え方、人の精神、それらが”とても人とは思えないものだ”と恐れを抱かれたとき、」

肇「そこに”鬼”が生まれるんです」

美穂「えっと……人の思いなのに、それが人とは思えないの?」

肇「そうですね。こう言うと、なんとなく変な話に聞こえるかもしれませんが」

肇「でも世の中では、普通にありえる事なんですよ」

肇「例えば、人を人と思わぬような残酷な行いをする人の事を」

肇「人は恐れて、”鬼畜”と呼んだりしますよね?」

美穂「あっ……そっか、なるほど」

美穂「残酷な事をしちゃうような心も人から生まれたものだけど……」

美穂「みんなそれを怖がるから……そこに鬼が生まれちゃうんだ」

肇「そう言うことです」

肇「もちろん、『残酷さ』ばかりが、恐れられる人の心と言う訳ではないのですけれどね」

肇「例えば、私のおじいちゃんは『刀に対する頑固なまでの情熱』を畏れられて鬼になったと聞いていますから」
49 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/02/03(月) 15:43:14.27 ID:A62o/6tRo

肇「ですが、多くの場合は人に畏れられるほどの思いは負に偏っています」

肇「結局のところ……”鬼”は”人から外れている者”の事ですから」

肇「”人から外れている者”には、人の常識がわかりません」

肇「だから人の常識に反した行いをする、つまり悪さをする……」


肇「こう言う訳ですから……鬼に対して、負のイメージが定着してしまうのも仕方ないことなんです」

美穂「……肇ちゃん」

美穂「ごめんね、えっと……辛い話をさせちゃって」

肇「いえ、美穂さんが謝るようなことではありませんよ」

肇「大切な事ですから、話しておく機会ができてよかったです」

美穂「……あのね、肇ちゃん」

美穂「私は、少なくとも肇ちゃんの事を”怖い”とは思わないからね?」

肇「……ふふっ、ありがとうございます」

肇「私は大丈夫です。美穂さんの様に、受け入れてくれる人もちゃんと居るのがわかっていますから」

美穂「……うんっ」
50 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/02/03(月) 15:44:17.39 ID:A62o/6tRo

――

――


美穂(以上が、回想です)

美穂(人から外れた人の思いから生まれる物、それが鬼)

美穂(獣人や天使が受け入れられる世の中になっても)

美穂(人から外れた存在であるところの鬼の事を、人はなかなか受け入れにくいのかもしれません)

美穂(だから肇ちゃんは、角を隠します)

美穂(……でもそれは寂しいな、せっかく可愛い角なのに)



鬼はーそとー! パラパラー

福はーうちー! パラパラー


肇「……」

美穂(うん……肇ちゃんの立場からしたら、これは堪えるよね……)

美穂(今年は、お家では豆まき無しかな?)

美穂(……)

美穂(でも……本当にそれが一番いいことなのかな……?)
51 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/02/03(月) 15:45:04.84 ID:A62o/6tRo

――


美穂「ただいまー」

肇「ただいま帰りました」

美穂母「おかえりー」

美穂母「早速だけど、美穂。肇ちゃん。」


美穂母「豆まきするわよ!」


肇「……えっ」

美穂「お母さん!?」
52 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/02/03(月) 15:45:31.29 ID:A62o/6tRo

母「大切な行事だから、ちゃんとやっておかないとね!」

母「今年も無病息災、家族の幸せを願ってね♪」

母「ほら、福豆。美穂も肇ちゃんもこれ持って」

母「プロデューサーくんはもう豆を撒く準備できてるわよ」

Pくん「もぐもぐ」

美穂「えっ、もう食べてるみたいだけど……」

美穂「ダメだよ、プロデューサーくん。豆を食べる数は年の数だけ……」

美穂「じゃなくって!お母さん、肇ちゃんは……」

母「肇ちゃんは福豆触れる?無理なら手袋があるけれど」

肇「えっ……えっと触るだけなら問題ありませんが……」

母「そう!じゃあ大丈夫ね!」


母「あ、そうそう。豆を撒くときの掛け声だけど、今年はこう」

母「福は内ー!鬼も内ー!」

美穂「!!」

肇「!!」
53 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/02/03(月) 15:46:39.48 ID:A62o/6tRo

美穂「お母さん……」

母「……うふふっ、私も今年は豆撒きするかどうか迷ったんだけどね」

母「やっぱり毎年の家族の行事を疎かにするわけにもいかないでしょ」

母「今年は家族も増えたんだから」

肇「家族……」

母「預かってる形だけど、この家に居るなら肇ちゃんも家族です」

母「だったら仲間はずれになんて出来ないでしょ?」

母「『福は内、鬼も内』、調べたらこう言う節分の掛け声もあるそうじゃない」

母「これなら、鬼の血を引く肇ちゃんも一緒にできるわよね?」

肇「は、はいっ!そのっ、ありがとうございます!」

美穂(仲間はずれにせず、一緒に……そうですその手がありました)


美穂「ふふっ、肇ちゃんっ!」

肇「美穂さん!豆撒き、一緒にやりましょう!」

美穂「うんっ!やろう、一緒に!」


美穂(人から外れた人の思いから生まれた存在、”鬼”)

美穂(受け入れる事は、なかなか出来ないのかもしれません)

美穂(ですが互いに寄り合う気持ちがあれば、)

美穂(共に大切な日々を過ごす事は、きっと難しい事ではないはずです)


福は内、鬼も内。


おしまい
54 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/02/03(月) 15:47:41.62 ID:A62o/6tRo



美穂「……」

肇「……」

Pくん「……」

美穂「……」 

肇「……」

Pくん「……」 

美穂「……」 もぐもぐ

肇「……」 もぐもぐ

Pくん「……」 もぐもぐ


美穂(ちなみに本日の夕飯は恵方巻でした)

美穂(今年の恵方は東北東よりやや右です)


おしまい
55 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/02/03(月) 15:48:10.72 ID:A62o/6tRo



我が国に昔から語り継がれる、人知を超える異端の者達。
多種居る妖怪の中でも、すこぶる力強く、人型である者が多い。
多くの妖は、天や自然や文明に対する畏怖を根源にするのに対して、
鬼は、人間の思いや精神に対する畏怖がその存在の根幹であると言われる。
そのため、常に人の隣に居て、人を脅かし、人を守ってきた。
人が鬼に変異する例も多く、神になろうとして失敗した者の成れの果てであったり、
多くの民から呪われたために、呪いに身を包まれて変質した人間であったり、
ただ悪事や禁忌とされる行いを働き続けた結果、いつの間にか姿かたちが変質して鬼になったものもいる。
このように畏怖されるほどの人間の感情と言うのは、多くの場合は負の感情であり、
そのため鬼達も負の存在に近く、負の力の扱いに長けている。
神の領域に近づくため、自ら鬼となった変わった者達も居たとか



と言う訳で、節分と鬼のお話でした。
負のエネルギーを扱える鬼は、カースドヒューマンに近い存在であったりするのかなと思います。
56 : ◆zvY2y1UzWw [sage]:2014/02/03(月) 16:17:49.07 ID:A0aXZgut0
乙です
そりゃこんな鬼なら内に招くよね

鬼になった人間もいる…ふむふむ
57 : ◆AZRIyTG9aM [sage]:2014/02/03(月) 16:18:44.55 ID:bhJamgkYO
乙ー

やだ。最後のモグモグカワイイ

角で色々悩んでるのか……
58 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga sage]:2014/02/04(火) 14:00:58.22 ID:vintP25bo
乙です。やっぱPくんめっちゃ可愛い(確信)

穂乃香の話を投下します。
59 : ◆tsGpSwX8mo [saga sage]:2014/02/04(火) 14:02:20.03 ID:vintP25bo
深い深い樹海の奥にある洞窟。そのなかにはとんでもないお宝が眠っている。しかし、その宝を守る番人が宝を死守しており、だれもお宝の内容を知らない……。

そんな伝説が世に知れ渡り十数年。宝の番人綾瀬穂乃香は洞窟の前で刀を振るっていた。

穂乃香の心中には数日前に来たあの男、そう言えば名前を聞いていなかったな、と思案する。

刀を振りながら物思いに更ける。

(私は、あの男に傷をつけることすら出来なかった……)

男のあの固い鎧を思いだし、倒すことが出来なかった悔しさに歯噛みする。腕には自信があったのだが……。

もしあの男が仲間を引き連れてやって来たら、次は勝てないだろう。
60 : ◆tsGpSwX8mo [saga sage]:2014/02/04(火) 14:03:03.99 ID:vintP25bo
その為に、今は修行中である。

刀を振る腕を止め、息を吸う。そして、刀を構えた。ただし、刃の反対側、峰を向けている。

「綾瀬流剣術………」

これは穂乃香の父が編みだし、そしてもっとも得意とした技であった。

「刀代無双!」

ブオォン!と風を切り降り下ろした刀が大木に直撃する。

大木はミシッと音をたてたが、倒れなかった。

綾瀬流剣術『刀代無双』とは、簡単にいってしまえば「物凄い峰打ち」である。穂乃香の父がかつて戦った相手が、とても強固な盾を持っていたのだが、それを打ち破るために編み出したのがこの『刀代無双』だ。

父曰く、「切れないなら砕いてしまえ」とのこと。それを聞いたまだ幼かった穂乃香は、幾らなんでもむちゃくちゃだろう、と思ったが、今その技の修行をしているのだから笑える話だ。
61 : ◆tsGpSwX8mo [saga sage]:2014/02/04(火) 14:03:44.67 ID:vintP25bo
(くっ……やはり私にはこの技の習得は無理なのか……?)

穂乃香は父と違い、細く、華奢であった。だから、力がない代わりに素早さを重視した戦い方をする。

穂乃香の父は豪腕の持ち主で、だからこそ『刀代無双』を使えたのだが……。

「はぁ……」

思わずため息をついた。頬を汗が伝うが、気にもしなかった。
62 : ◆tsGpSwX8mo [saga sage]:2014/02/04(火) 14:04:43.18 ID:vintP25bo
刀を鞘に納める穂乃香。休憩をしようとした、その瞬間、

「!」

穂乃香の顔めがけてナイフが飛んできた。すぐさま刀を抜き、弾き落とす。

弾き飛ばされたナイフは空中をくるくると回転し、地面に刺さった。

「………」

切り株の側に置いといた二本目の刀を持ち、ナイフが飛んできた方向に目を向ける。

「あちゃ〜弾かれちゃったか〜。ついてないな〜」

妙に間延びした声が聞こえた。声の主はナイフを拾い上げ、穂乃香に目を向ける。

「う〜ん、流石、宝の番人さんだ。巷で化け物と呼ばれるだけのことはあるね〜」

それは少女だった。年齢は穂乃香と同じか、年下。白いワンピースの上に左肩から右腰にかけて太いベルトが巻き付けられていた。透き通るような銀色の髪をツインテールにしている。右が赤、左が青のオッドアイが穂乃香を見つめる。
63 : ◆tsGpSwX8mo [saga sage]:2014/02/04(火) 14:05:24.50 ID:vintP25bo
「……」

黙ったままの穂乃香に向かって、少女は話しかける。

「あれぇ〜?なんで黙ってるの〜?」

首をかしげ、左手の人差し指でこめかみを指す。

穂乃香は、少女ののんびりとした雰囲気の裏に隠された強い殺気を感じた。

この少女は、間違いなくただ者ではない。ナイフを投げる距離まで近づいたのなら、穂乃香がその存在に気づかないはずがない。しかし、穂乃香は気づかなかった。
64 : ◆tsGpSwX8mo [saga sage]:2014/02/04(火) 14:06:05.95 ID:vintP25bo
「あなたは、何者ですか?」

刀を下ろすことはせず、少女に問う。

「ん〜、宝が隠されてる場所に来たら、やることはひとつだと思うんだけどな〜。まぁ、いいや。教えて上げる」

少女は左手の人差し指で、自分を指差し、言った。

「私の名前はシニストラだよ〜。よろしくね、番人さん」

そのまま人差し指を穂乃香の背後に向ける。

「で、番人さんの後ろにいるのが、私のお姉ちゃん、デストラだよ〜」

穂乃香の体に衝撃が走る。

弾かれたように後ろを振り向くと、そこには先程シニストラと名乗った少女と瓜二つの容姿の少女が、ナイフで穂乃香を向けていた。

大きく跳躍し避ける。

「………おい、シニストラ」

少女が、さっきまで穂乃香に話していた少女、シニストラに話しかける。
65 : ◆tsGpSwX8mo [saga sage]:2014/02/04(火) 14:06:57.02 ID:vintP25bo
少女、デストラはシニストラと同じく銀色の髪をツインテールにしており、白いワンピースを着ていたが、シニストラとは違いベルトを右肩から左腰に掛けて巻き付けていた。左が赤、右が青のオッドアイが、シニストラを睨み付ける。

「貴様が余計なことをするから仕留められなかっただろうが!」

デストラの怒鳴り声に動じることなく、シニストラは飄々とした態度で答えた。

「いいジャ〜ン。お姉ちゃん、強いんだし〜」

反省する気が0の妹を見て諦めたのか、ため息をつくデストラ。

「……はぁ。貴様のような馬鹿が私の妹……。認めたくない……」

「あはは♪それは残念だね、お姉ちゃん?」
66 : ◆tsGpSwX8mo [saga sage]:2014/02/04(火) 14:07:26.91 ID:vintP25bo
そんな二人のやり取りを、穂乃香は茫然としたようすで見ていた。

穂乃香は信じられなかった。自分の背後に音も気配もなく立った少女の存在が。

しかし、すぐに彼女は正気を取り戻した。

そして、

「綾瀬流剣術」

刀を構え、二人に突進した。先手必勝である。

「疾風怒刀!」
67 : ◆tsGpSwX8mo [saga sage]:2014/02/04(火) 14:07:56.01 ID:vintP25bo
しかし、

「おっと」

「ふん」

瓜二つの姉妹は、穂乃香の不可視の剣技『疾風怒刀』を、いとも簡単に避けた。

「番人さ〜ん、私たち今お話ししてたのに〜。邪魔するなんて、空気読んでよね?」

「はっ、会話ならこいつを殺した後でいくらでもできる」

「そだね」

左手にナイフを持ったシニストラと、右手にナイフを持ったデストラが、穂乃香に向かって来た。

「!!」

それは信じられないほどのスピードだった。下手すれば穂乃香よりも早い。

二人の猛攻を防ぐのに穂乃香は精一杯だった。

「ほらほらほらほら!」

「はははははははは!!!受けるのが精一杯か!」
68 : ◆tsGpSwX8mo [saga sage]:2014/02/04(火) 14:08:29.70 ID:vintP25bo
刀とナイフがぶつかり合い、火花が飛ぶ。

これは不味いと考えた穂乃香は、自分の早さを最大限に利用し、二人の背後に移動した。

そして、切る標的を失った二人の無防備な背中に『力戦奮刀』を繰り出し、

「っ!また!」

当たらなかった。二人が避けたのである。

「鬼さんこーちら♪」

「手のなる方へ!!」

穂乃香の左右を挟んだ二人の手に握られたナイフが、穂乃香の腕に突き刺さる。

「あぁ!!」

焼けるような痛みに思わず悲鳴を上げる。今までの敵は、殆んどが穂乃香に攻撃を当てることが出来なかった。だから、穂乃香は「傷を受ける」という経験を殆どしなかったのだ。

「あはははははは!!あぁ、だって〜!かっこ悪〜い」

シニストラの嘲笑が穂乃香の耳に届いた。

「ふふふふふふ、やはり宝の番人も、我らの敵ではなかったか」
69 : ◆tsGpSwX8mo [saga sage]:2014/02/04(火) 14:09:11.52 ID:vintP25bo
顔のすぐ近くでデストラの声が聞こえる。

そのとき穂乃香の髪が引っ張られ無理矢理に顔を上げさせられた。

「さて、こいつの首を切り落とすかな」

その瞳の冷たさにぞくりとした。その一方で、自分もこんな目をしていたのかな、と至極どうでもいい考えが頭を掠めた。

「ねぇねぇ、そんなよわっちいのなんかほっといてさ〜、早く宝を取りに行こうよ〜」

シニストラの気の抜けた声が穂乃香の耳に突き刺さった。

「自分は強い」という絶対的なプライドを打ち砕かれ、穂乃香の心の底から怒りがわいてきた。

「……ざ……な」

「ん?なんかいったか?雑魚」

「ふざけるなああああ!!!」

刺されて血がだらだらと流れる腕に力を込めて刀をふる。

デストラはそれを避けた。そして冷たい瞳で穂乃香を見つめる。

「ふん、まだ動けるか」

「弱いのに無理しちゃって〜。もういいじゃん、番人さんは十分頑張ったよ。もう諦めなよ」
70 : ◆tsGpSwX8mo [saga sage]:2014/02/04(火) 14:09:40.94 ID:vintP25bo
二人の言葉の一つ一つが、穂乃香の心に突き刺さる。二人の持つナイフよりするどく、穂乃香の心に深い傷をつける。

「私が、弱いだと?!宝を取りに行くだと!?私が、今までどんな気持ちで、宝を守ってきたと思っている!?」

血を吐くような叫び声。それは長年穂乃香の心のそこに蓄積していた憤怒の叫びだった。

しかし、デストラもシニストラも、穂乃香の叫びに臆することはなかった。

「知るか」

「そんなこと私たちの知ったことじゃないよ」

この言葉に穂乃香は完全にキレた。いつもの冷静さは影を潜め、二人に突進する。

「……ふん、そのまま抵抗しなければ見逃してやろうとも考えていたのだがな」

「お馬鹿さんだね〜♪」

穂乃香の二本の刀と、デストラとシニストラのナイフが交差する。
71 : ◆tsGpSwX8mo [saga sage]:2014/02/04(火) 14:10:49.47 ID:vintP25bo
パキイィン、と音を立てて折れたのは穂乃香の刀だった。

その時、穂乃香は見た。折れた刀の刀身が、やけにゆっくりと地面に落下するのを。

そして悟った。こいつらは私より素早いのではない、私が遅くなっていたのだ、と。

だから私より早く動けるし、『疾風怒刀』もよけれたのだ。

おそらく、どちらかが能力者なのだろう。それで私が二人に追い付けなかったのだ。

そんな穂乃香の思考は、次の瞬間放たれた二人の持つ刃に切られたことで闇に落ちた。
72 : ◆tsGpSwX8mo [saga sage]:2014/02/04(火) 14:11:15.45 ID:vintP25bo

ドサッ、と倒れる血まみれの番人。それを見下ろす二人の少女。

少女たちの体は返り血により真っ赤に染まっていた。

シニストラが、姉のデストラに顔を向ける。

同じくデストラも、妹のシニストラに顔を向けた。

二人は同時に口を開き、そして同時に言葉を発した。

「やったね♪」

「やったな」
73 : ◆tsGpSwX8mo [saga sage]:2014/02/04(火) 14:12:30.42 ID:vintP25bo
しかし、まだ喜んではいられない。洞窟に目を向けた。

「さて、後は宝を奪うだけだな」

その時、二人の脳内に埋め込まれた通信装置を通じて声が聞こえた。

《デストラ?シニストラ?二人とも無事?怪我はない?》

心底心配そうな声が、二人の頭に響く。

《心配ないよ、マーノ姉さん》

安心しろと言わんばかりの調子でデストラ。先程とはまるで違う別人のような優しい声だった。

《怪我はないよ〜、マーノ。だから安心してよ》

《よかった、私のために二人が怪我したらどうしようかと……》

《ははは、姉さんは心配性だな。私たち三人でいつも成功してきたじゃないか。今度も大丈夫だよ》

《それにマーノの加護もあったしね♪》

いま彼女たちと会話をしているもう一人の女性は、彼女たちの姉である。名はマーノといった。この洞窟から数メートル離れた場所にある木の影に凭れるようにして立っていた。

デストラとシニストラと同じく銀髪をツインテールにした、鮮やかな紫色の目の持ち主であった。

この三人の見た目がここまでそっくりなのは三人が三つ子の姉妹だからである。そして、フリーの傭兵でもある。

彼女も戦闘はできるが、今回はとある理由から援護に回ってほしいと二人の妹に言われて今回この場所で二人の援護をしていたのだ。そう、体感速度を遅くする能力は、彼女の持つ能力だったのだ。
74 : ◆tsGpSwX8mo [saga sage]:2014/02/04(火) 14:12:59.14 ID:vintP25bo
《じゃ、私たちが宝を持ってくるから、マーノはそこで待っててね〜》

《……その、ごめん》

妹たちに押し付けた事に罪悪感を感じ、謝ろうとしたマーノの声を、デストラの声が遮った。

《姉さん、どこに謝る必要がある?》

それに同調するようにシニストラ。

《そうだよ〜。マーノと、姉さんの幸せは私の幸せでもあるんだから》

《そうだ。姉さんとシニストラのの幸せは私の幸せ。私とシニストラの幸せは姉さんの幸せでもある。私たち三人は、三人で一人。ずっとそうだったろ?》
75 : ◆tsGpSwX8mo [saga sage]:2014/02/04(火) 14:14:12.15 ID:vintP25bo
三人に親はいない。自分の親がどんな人だったかは覚えていない。親もいなければ家もなかった。毎日毎日、餓えの苦しみに耐えてきた。

しかし寂しくはなかった。いつも姉妹と一緒にいたからだ。苦しみも、喜びも、分かち合って生きてきた。

フリーの傭兵になってからは、報酬で得た金で飢えに苦しむことは無くなった。それなりに幸せな日常を送っていた彼女たちだが、ある日長女のマーノが、依頼を受けて護衛した資産家の息子に求婚されたのだ。

マーノは喜んだ。そして、デストラとシニストラも喜んだ。しかし、マーノは不安でもあった。自分は、仕事とはいえ、人を何人も殺してきた。そして、資産家の息子はそれを知らない。知っているのはフリーの傭兵であるということだけだ。

そしてある日マーノはその事を打ち明けた。資産家の息子はそれを聞いて、嫌がる素振りは見せなかった。それどころか、「それでも愛してる」と、手を握ってくれた。何人も殺めてきた、この人殺しの手を、握って結婚しようといってくれた。
76 : ◆tsGpSwX8mo [saga sage]:2014/02/04(火) 14:15:24.03 ID:vintP25bo
三人は幸せの絶頂に至った。

しかし、すぐにそれは崩れ去った。

資産家の息子が襲われて病院に搬送されたと聞き、三人揃って病院に飛んできたマーノが見たのは、死人のような目で譫言のように「バアル・ペオル」と呟く資産家の息子の姿だった。

マーノは呆然としてて医者の話を聞いていなかったが、あとでデストラから聞いた話によると、資産家の息子は怠惰のカースドヒューマンにされ、このようなことになったこと、そして、彼の体内にある怠惰の核を摘出することは、資産家の全財産をつぎ込んでも難しいと。

しかし後日、医者の話を聞いたところによると、彼の怠惰の核は腎臓に寄生しており、摘出するのはまだ簡単な方であるとのこと。ただ、カースドヒューマンの核の摘出は前代未聞で、未知の領域であり、簡単であるといっても成功する確率は小数点以下である。と、医者はいっていた。
77 : ◆tsGpSwX8mo [saga sage]:2014/02/04(火) 14:15:51.62 ID:vintP25bo
しかし、それで諦める彼女たちではなかった。

その日から、どんな手を使ってても金を集めると決めた。それが今から五年前の一月一日であった。

そして、今日。ここに眠ると言われている宝を持ち帰れば、手術を受けられる。

そのために、彼女たちはここにいた。
78 : ◆tsGpSwX8mo [saga sage]:2014/02/04(火) 14:16:56.66 ID:vintP25bo
そして、場所は洞窟の中。

いままで誰も踏み込むことができなかった前人未到の洞窟のなかを、二人は緊張の面持ちで進む。

この先に、宝がある。私たちは、私は、幸せになれる。これまでずっと幸せになりたいと願ってきた。それを叶えるための第一歩だ。

しばらく進むと、奇妙なものが見えた。

それは薄汚れた黄色い三角錐だった。それが逆さまになって地面に突き刺さっている。

「……これが宝?」

いつもののんびりとした調子はなりをひそめ、シニストラはデストラに聞いた。

「……いや、宝ならもっと奥の方にあるんじゃないか?まだここは洞窟の中腹だ。それにこれはどうみたって宝じゃないだろう」

「……そだね。でも何もなかったらこれもって帰ろう?」

「馬鹿、何を言うか。宝はある、無くては困る」

二人は洞窟の奥に進んだ……。
79 : ◆tsGpSwX8mo [saga sage]:2014/02/04(火) 14:17:47.60 ID:vintP25bo
その頃、洞窟の前に倒れていた穂乃香にはまだ意識があった。

穂乃香は夢を見ていた。それは、走馬灯か、それとも悪夢か。恐らく後者だろう。

今まで自分が守るために殺してきた人々の顔が、浮かんでは消える。

穂乃香は心の奥底で、彼らを羨ましいと感じていた。使命に縛られた自分と違い、自由だった。だから、こんな場所までやって来て宝を奪うなどほざく余裕があるのだ。

命乞いをするのはまだ生きていたいと考えている証だ。穂乃香はもう、よくわからない宝を守ることに疲れていたのだ。

そして、命乞いをする人間を見るたびに、「自分には大切なものがあって、自由なのだ。お前とは違う」と言われてるような気がして、そのたびに怒りに任せて切り殺した。

最早、やってくる敵を殺して「自分は強い、負けない」と考える事が彼女の唯一のいきる意味となっていた。

しかし、それは先程すべて打ち砕かれた。

もう死にたかった。
80 : ◆tsGpSwX8mo [saga sage]:2014/02/04(火) 14:18:48.07 ID:vintP25bo
穂乃香の目に微かに涙が浮かび、流れ落ちた。

そのまま意識を手放そうとした、その時、

「諦めるには、まだ、早いんじゃないかな?」

声が聞こえた。デストラとシニストラの声ではない。まったく別の声だった。男とも女ともつかない奇妙な声が穂乃香の頭上から降ってくる。

「ほら、これを使いなよ」

目の前になにかが落ちた。それは四つのカースの核だった。そして、一つの装置。それはベルトの形状をした装置。

「これはカースドライバー。そして、カースの核だよ。もしあなたに素質があれば、それはあなたの体にぴったり馴染むはずさ」
81 : ◆tsGpSwX8mo [saga sage]:2014/02/04(火) 14:21:30.71 ID:h/ucGa/yo
穂乃香はゆっくりと、核のひとつを手に取った。

ついさっきまで死んでもいいと考えいたくせに、四つの核を見た瞬間、生きたいと強く願った。

核はするりと滑り込むように体に入った。他の三つも手に取る。同じように体に入り、そしてすぐに馴染んだ。

異様なほどに清々しい気分になった。

自分には声を掛けてきた何者かはすでにいなかったが、そんなことは気にしていない。

目の前に落ちている装置を手に取る。操作は聞いていないが、穂乃香にはそれをどう使うか手に取るようにわかった。

するすると腰に巻き付けられるベルト状の装置、カースドライバー。そして、地面に落ちていた四つの長方形のアイテム、カースキーをひとつ、カースドライバーに差し込むと、穂乃香の体は強固な鎧で包まれた。

そして、洞窟のなかに入った。

それを見つめる謎のせいぶつ。それは、緑色の体色をした、地球上に存在するどの生物にもにていない奇妙な生物だった。

その奇妙な生物が言った。

「ふふふ、おめでとう。今日から君はカースドライダー・シュラだ」

その声には喜びが混じっていた。
82 : ◆tsGpSwX8mo [saga sage]:2014/02/04(火) 14:22:02.10 ID:h/ucGa/yo
ざっざっざっざっ……。

足音が洞窟のなかで反響し大きな音をたてた。

「……以外と深い洞窟だね」

「あぁ、そうだな……」

ざっざっざっざっ……ざっざっざっざっ。

《……何かあったらすぐいってね》

マーノの声が響く。

《いいよ、気にしないで。たまには妹孝行させてよ》

いつもふざけているシニストラらしからぬ台詞である。

ざっざっざっざっ、ざっざっざっざっ……。

そのとき、デストラはピタリと足を止めた。明らかに警戒している。

「お姉ちゃん?どうしたの?」

シニストラが口を開くが、デストラは右手の人差し指を唇に当てた。

静かにしていると、シニストラにもデストラが警戒する理由がわかった。

ざっざっざっざっざっざっ…。

足音が、聞こえる。自分達はいま立ち止まっているのに、足音が聞こえるのだ。
83 : ◆tsGpSwX8mo [saga sage]:2014/02/04(火) 14:22:31.44 ID:h/ucGa/yo
「誰だ!」

足音のする方向に向けて声を出す。

そしてついにそれは姿を表した。

「……!」

鬼神のごとき風貌の鎧に声を失うデストラ。

「…………」

鎧は喋らない。

「……誰かはしらないけど、邪魔するなら殺すよ?こちとら割りと真面目なお使いにきてんだよ」

シニストラの声には怒気が含まれていた。

デストラも声を出さずにナイフを構える。
84 : ◆tsGpSwX8mo [saga sage]:2014/02/04(火) 14:23:18.88 ID:h/ucGa/yo
そして、脳内の通信機でマーノに声をかけた。

《マーノ、援護お願い》

《言われなくても》

通信機を通してマーノにも緊張が伝わっている。マーノの声も真剣そのものだった。

そのとき、はじめて鎧が声を出した。

「切れないなら、砕けばいい……」

「その声……!」

「番人か!なぜ生きてる」

しかし、二人の疑問に鎧、穂乃香は答えなかった。というか、返答するのが面倒だったので聞き流した。そして、穂乃香はもはや番人ではなかった。

「砕けないなら……」

その瞬間穂乃香、いや、カースドライダー・シュラの姿は消えた。

そして、シニストラがバラバラに切り刻まれた。血飛沫が、シュラの鎧とデストラの体を濡らす。断末魔すら上げられない、呆気ない最後だった。

数秒遅れて、シニストラが死んだという事実を認識し、

「シニストラアアアアアアアアアアア!!!」

《嫌あああああああああああ!!!》

マーノとデストラの叫び声がこだました。
85 : ◆tsGpSwX8mo [saga sage]:2014/02/04(火) 14:23:45.41 ID:h/ucGa/yo
すぐさまナイフを振るうデストラ。

「貴様あああ!よくもシニストラをおおおお!!」

しかしそこにはすでに穂乃香の姿はない。

背後に回ったシュラの振るう刀が、デストラの右腕を切り落とした。

「ぐ、ぐわあああああああぁ!!」

激痛に悶える。

「ぐ、ぐううぅ」

呻きながら思案した。

なぜだ、なぜマーノの能力が聞いてない……?

それは、カースドライダー・シュラのカースドキー、プライドライオンの特性である。プライドライオンには、自分を対象にした能力者の能力を無効にできるのだ。しかし、それをデストラは知らない。
86 : ◆tsGpSwX8mo [saga sage]:2014/02/04(火) 14:24:30.01 ID:h/ucGa/yo
「ふうぅ……ぐうぅうぅ!!」

シュラを睨み付け、そしてナイフを左手で持つ。

(なんだか知らないが、妹の仇はとらせてもらうぞ!)

そして跳躍し一気に肉薄した。

「死いいいねええええええええええええええええ!!!」

ガキイイン!と音をたてて直撃したナイフは、しかしあっさりと折れてしまった。枯れ葉のような音が洞窟内に響き渡る。

「………!」

そして、デストラは最後にマーノに伝えた。

《逃げろ》

本当はもっと色々と言いたかったのだが、それはシュラが許してくれなかった。

「砕けないなら…殺せばいい」

次の瞬間、シュラの持つ刀がデストラを貫いた。
87 : ◆tsGpSwX8mo [saga sage]:2014/02/04(火) 14:25:03.46 ID:h/ucGa/yo
「うわああああああ!!!」

妹たちの死を知り、マーノは一人絶望していた。

「うっ、うううぅ……」

鮮やかな紫色の瞳から涙がボロボロとこぼれ落ちていた。

「デストラ……シニストラ……。嫌よ、私は、皆で幸せになりたかったのに……これじゃ意味ないじゃない……!」

そして、マーノの声は次第に怒りが混じってきた。

「許せない……あの女!絶対に私の手で殺してやる!殺してやるううううぅ!」

しかし気づかない。彼女のすぐ背後にシュラが立っていたことを。

腰にさしたナイフを抜き取り、そして立ち上がる頃には、既にマーノの上半身と下半身は分断され真っ二つになっていた。

こうして三つ子の傭兵の不幸な人生はあっけなく幕を閉じたのだった。
88 : ◆tsGpSwX8mo [saga sage]:2014/02/04(火) 14:25:29.74 ID:h/ucGa/yo
そして、宝の番人の役目を放棄し、自らの欲望のためだけに生きると決めたカースドライダーシュラ、綾瀬穂乃香は、生い茂る樹海から姿を消した。
89 : ◆tsGpSwX8mo [saga sage]:2014/02/04(火) 14:31:12.13 ID:h/ucGa/yo
カースキー
 大罪と、それらに対応する動物や魔物の力が封じ込められた鍵。
 特殊なカースの核を加工して作られる。
 キーヘッドには様々な動物や魔物のレリーフが彫られている。
 カースキー単体ではただのアンティークキーでしかないが、カースドライバーに差し込むことで
 鍵に込められた呪いのエネルギーが解き放たれる。

カースドライバー
とある機関が発明した変身装置。しかし、その機関は現在存在しない。現在三つのカースドライバーが発明されている。

カースドライダー・シュラ
 穂乃香がカースドライバーで変身した姿。
 所持カースキーはプライドライオンキー、スロースベアーキー、エンヴィースネークキー、ラースドラゴンキー。
90 : ◆tsGpSwX8mo [saga sage]:2014/02/04(火) 14:32:12.90 ID:h/ucGa/yo
ハイブリッドカースドヒューマン

複数の核に寄生されたカースドヒューマン。
本来なら身体が拒絶反応を起こし、ただのカースへと成り果てるのだが…
稀に耐え切るモノがいる。
綾瀬穂乃香の場合は
押し付けられた運命に対する≪憤怒≫
日常や普通の生活へに対する≪嫉妬≫
番人の仕事をしたくないという≪怠惰≫
自身の強さに自信を持つ≪傲慢≫

の4つの核が体を蝕んでいる。

普段は憤怒と嫉妬と傲慢の3つの力を怠惰の力が抑えている。

が、戦闘に入ると感情の一つが解放され、それぞれに切り替えて行く。
91 : ◆tsGpSwX8mo [saga sage]:2014/02/04(火) 14:34:00.39 ID:h/ucGa/yo
投下終了です。ハイブリットカースドヒューマンとカースドライダー関連のネタはメタネタスレから拝借しました。ご協力ありがとうございました。

イベント
・穂乃香、番人やめるってよ

お目汚し失礼しました
92 : ◆zvY2y1UzWw [sage]:2014/02/04(火) 14:53:00.50 ID:5IyDQyXz0
乙です
心が豊かになった結果がこれだよ!
カースドライバーはこれからどうなるのやら
噛ませになった三つ子ェ
93 : ◆AZRIyTG9aM [sage]:2014/02/04(火) 18:19:21.64 ID:LPWW8zZOO
乙ー

三つ子ーっ!!!!!

よし、魂は影で回収させよう(おいっ

謎の声……いったいなにこりゃ太なんだ?
94 : ◆zvY2y1UzWw [sage saga]:2014/02/06(木) 19:50:38.80 ID:1mctWUjo0
学園祭投下、いっきまーす

一応、時系列はこう判断しています

一日目
夕方…カースの雨→アンチメガネカース放流&AMC誕生→白兎vs聖來さん
その後AMCがヒーローにメガネ嫌悪の洗脳をする事案が発生
深夜…奈緒ちゃん帰還

二日目
朝…朝の会議で映像を流す予定だったが、白兎襲撃でそれどころじゃなくなる

これから投下
95 : ◆zvY2y1UzWw [sage saga]:2014/02/06(木) 19:52:35.46 ID:1mctWUjo0
アイドルヒーロー同盟トップであるTPとAP、それに秘書が乗る車内は静かだった。

そこに、人工知能であるSPのボイスが、片耳の無線イヤホンから3人に送られてくる。

『TP様、提出された映像データに一度目を通して下さい』

「何の映像だ?」

『新種のカースの映像だそうです。会議の前に提出されましたが…申し訳ありません、それどころではなくなりましたので…』

TPのネクタイピンやAPのチョーカーや秘書の腕時計の中のマイクが音声を拾い、SPはその音声に反応して返答する。

合成音声との会話は滑らかで、まるでそこに居るようだ。

『勝手ながらこちらの映像は上層部メンバー全員に送信させていただきました。次回の会議の際に話し合う事になるかと』

「それは仕方のない事だ…見せなさい」

『かしこまりました』

車内のディスプレイに、AMCがヒーローを襲う映像が流れだした。
96 : ◆zvY2y1UzWw [sage saga]:2014/02/06(木) 19:54:38.46 ID:1mctWUjo0
子供の姿をしたカースだ。

黒い服、黒い髪、そして少しだけ黒い肌。

レンズの様な不気味な瞳はにっこりとしていれば見えない。

少年の姿、少女の姿のそれは、ヒーローに襲い掛かっていた。

それは常人ならば少し情に訴えかけてくるものがあった。
97 : ◆zvY2y1UzWw [sage saga]:2014/02/06(木) 19:56:04.42 ID:1mctWUjo0
「…子供型カースか…その姿で自爆とはなんとも気分が悪い」

『白に続き黒の核を持つカースです。会議中に襲撃した怪物の仲間と思わしき「黒」という名称と深くかかわっている筈です』

「ふむ…」

『また、これ以外にも目撃情報はあり、周辺の住民にこの子供に擬態したカースに警戒するよう呼びかけるつもりです。洗脳能力も持っているようですので』

「ああ、実行してくれ」

『お任せ下さい。それとTP様、要請が届いています』

「なにかね?」

『パップ様から秋炎絢爛祭にてライブを行うアイドルヒーローの増援要請が。既にクールP様からは二名を向かわせると連絡が入っておりますが…』

「…秋炎絢爛祭で被害が出たことはこちらも把握している。許可しよう。SP、念のため予定が空いている者をリストアップしなさい」

『了解しました』

今度はディスプレイに情報を映し出す。
98 : ◆zvY2y1UzWw [sage saga]:2014/02/06(木) 19:57:47.97 ID:1mctWUjo0
「…TP様、予定が空いている者はそれなりに居ますが、ここはやはり実力が信頼できるアイドルヒーローも送りましょう。

RISA含め、彼女達は新人です。学園祭に行く人々の安心を保証するにはやはり有名アイドルヒーローの存在が手っ取り早いかと」

「そうだな、『RISA』のライブゲスト扱いで、更に二名…『ラビッツムーン』『ナチュラルラヴァース』はどうだ?予定は…レッスンか」

秘書の助言を受け、増援兼ゲストとして登場するアイドルを提案する。

『その二人は暫くレッスンでしたが、キャンセル可能。ライブもかなり先ですし疲労しているわけでもありません。データ上は問題ないですね』

「その二人なら緊急ゲストでも十分に観客を満足させることが可能でしょう。RISA達とはタイプも違いますから、彼女を完全に喰う事もないでしょうし」

「よし、873プロダクションに連絡を取って、可能なら行くように言ってくれ。返事がNOだったら別のアイドルを考える」

『お任せ下さい、連絡は子機にやらせておきます』
99 : ◆zvY2y1UzWw [sage saga]:2014/02/06(木) 19:59:09.80 ID:1mctWUjo0
『…それともう一つお話が』

「ん?構わないが…」

『…例の海底都市の住人、ライラ様。クールP様のプロデュースによってアイドルヒーローとして所属しましたが…やはり不安要素です』

SPが語り出したのは、クールPにスカウトされた少女。ウェンディ族であるライラの事だった。

「異種族さえもアイドルヒーローとすれば懐の広さを見せることが出来る」などと言われ、上層部は言いくるめられたが、SPは意見があるようだった。

『可能性の話で申し訳ないですが…神の洪水計画を阻止するために海底都市の住人と戦う事になった時、彼女はどう動くのでしょうか。

彼女の技はお爺様直伝だと聞きました。そして彼女は修行の為に地上に来たと言っています。彼女は故郷から逃げて来たわけではありません。

…ライラ様が万が一あちらへ寝返った場合、アイドルヒーローの信用が傷つくだけではなく、その場の士気にも影響が出るでしょう』

「…なるほど、確かに全て筋が通っている…それで、その事について何か対策があるのか?」

『もちろんです』

「…物騒な事ではないだろうな?」

『ご安心を。海底都市からライラ様を寝取るだけです』

『ネトル!ネトル!』

APが抱えていたキンが言葉の意味も知らずに囃し立てる。

「…ねとる?」

「「!?」」

APはともかく、TPと秘書は動揺した。
100 : ◆zvY2y1UzWw [sage saga]:2014/02/06(木) 19:59:45.01 ID:1mctWUjo0
――――

海底『ライラ!俺の事が好きじゃなかったのかよ!』

ライラ『…』

地上『無様だなぁ、海底都市サン?ライラちゃんはお前なんかよりこっちが好きなんだってよ!』

海底『ち、違う!!そんな事あるわけが…!』

地上『ほ〜らライラちゃーん?アイスだよ〜』

ライラ『…』ピクッ

海底『ら、ライラ!それに釣られちゃだめだ!』

地上『他にもたくさん、ライラちゃんが好きな物をあげようかなぁ〜?おいしい物いっぱいだよー?』

ライラ『海底都市さん、私はもう…地上さんの事しか考えられないでございますよ…』

海底『な“ん”で“俺”じ“ゃ”ダ“メ”な“ん”だ“よ”ぉ“ぉ”ぉ“!!』

地上『どうだ悔しいかアハハハハハ…』

―――――
101 : ◆zvY2y1UzWw [sage saga]:2014/02/06(木) 20:00:56.57 ID:1mctWUjo0
「oh…」

秘書の脳裏に訳の分からない映像が流れてくる。

空気を察したのか、少し気まずそうなSPのボイスが流れてきた。

『…説明しましょう。要約すればAPに彼女の監視をしていただきます。しかし、彼女にはお付きのロボがいる為、自然な形で』

「どういうことだ?」

『友人ですよ、友人。既に友情が芽生えている者もいるようですが、APには監視をするために彼女の友人になってもらいます』

「っ!?」

「…こう言っては何だが…人には適材適所という物があるだろう…?」

「AP様はなんというか…友人関係を構築するのは難しいのでは…」

APは青天の霹靂を受け、TPと秘書は困惑の色を隠せない。
102 : ◆zvY2y1UzWw [sage saga]:2014/02/06(木) 20:01:57.53 ID:1mctWUjo0
『APが普段無口なのは改善すべきですから』

「…」

『AP…黙らないでください』

『ナオス!ナオス!』

「…」

APは視線を逸らそうとするがSPはこの場に居ないのでどうやっても視線を逸らせないので俯く。

しかし俯いても抱きかかえているキンが居たのでAPは諦めた。

『便宜上は世間知らずなライラ様の案内役…という形を取らせていただきます。女性同士ですのでライラ様とは比較的会話しやすいかと』

「…」

「そうか…」

『会話の際は自分が音声でサポートいたします。ライラ様には聞こえないでしょうし。そもそもAPがまともな話題を出せるとは思えませんし』

「そ、そうか…」

『もう少しコミュ障を治すというか、無口と威圧感を治すべきだと思うんですよ。TP様のボディガードとしても』

「ああ、私もわかります。AP様はもう少しコミュニケーションを取れるようになるべきです」

『秘書様の同意を得られて嬉しく思います』

「どうも」

『コミュショー!』

「こ、コミュ障………ま、マスター…」

「…確かに、若い女性同士で話せるようになってくれたら、私は嬉しく思う。もちろん戦闘とかそういうのではなく…こう、ヤングな感じの」

「マスター…!?」

APは四方から追い詰められつつあった。
103 : ◆zvY2y1UzWw [sage saga]:2014/02/06(木) 20:03:29.04 ID:1mctWUjo0
『スーツじゃなく、もっと女性らしい格好などもすべきかと』

「そうですね、ライラ様と一緒に買い物にでも行かせてはどうでしょうか」

「…そうだな、悪くない」

『オフクー!』

「あ、あの、皆さま、えっとあの…そこまで必要ですか…?」

『もちろん』

「…」

彼女の目からただでさえ少ないハイライトが失せた気がした。

心の底から「監視をするのは賛成だが、そんな風に友人を装う必要はないだろう」と、声に出して言いたかった。

『監視諦めますか?コミュ障止めますか?』

「………」

「…嫌か?」

「わ……わかりました。やります」

『その言葉が聞きたかった。…ライラ様監視を開始するのはクールP様にこの事を伝達した後になります。早くて明日からですね』

「…手早いな」

『この展開を予測していたので』

「あ、貴方って人は…」

『サイテー!クズー!』

『えっ』

こうして、ライラ監視計画兼、APコミュ障改善計画が動き出した。
104 : ◆zvY2y1UzWw [sage saga]:2014/02/06(木) 20:05:15.20 ID:1mctWUjo0
安部菜々と相葉夕美が所属する873プロダクションでは、TP直々に出された出動願いの件で二人が呼び出されていた。

「ええっ!同盟のトップから直々に秋炎絢爛祭のRISAちゃんのライブゲスト兼、増援要請ですか!?」

「す、すごい話…」

「ああ、こちらの事がちゃんと評価されているようだ。二人の意思も尊重したいから聞くが…受けるか?」

「もちろんです!学園祭って初めt…あわっ!えっとえっと…ウサミン星には学園祭が無いんですよ!JKなのに!」

「…ナナちゃんが受けるなら、私には断る理由はないかな?」

それぞれの返事を聞いて、満足そうに二人の担当Pは笑った。

「そうか、その返事が聞けて良かったよ。すぐにYESの返事を出そう。二人とも、ライブが始まる数時間前までは自由行動でいいからな」

「本当ですか!?」

「ああ、資料自体は来ているから、しっかり読んでくれ。俺は他の所にも用事があるからもう行くぞ。レッスンのキャンセルは向こうがしてくれるそうだ」

「「はいっ!」」

菜々はどこか嬉しそうだ。それを夕美はちゃんと察している。
105 : ◆zvY2y1UzWw [sage saga]:2014/02/06(木) 20:06:35.67 ID:1mctWUjo0
「…夕美ちゃん!」

「どうしたの、ナナちゃん?」

「どうしたもこうしたも!最近オフ少ないですし、オフ替わりみたいなものですよこれ!」

両手で夕美の手をぎゅっと握って、菜々は夕美に微笑んだ。

「楽しみましょうね!ナナ、リンゴ飴食べたいんですよ!思い出になる気がするんです!」

「思い出…そうだね、私も飴食べたいかも。飴細工ってすごいんでしょ?」

「はい!一度見たことありますけど、あれすごいんですよ!学園祭でやってるみたいですし、行ってみましょうよ!」

思い出。その言葉の裏に、夕美は菜々の思いを垣間見ていた。

(…帰っちゃうのかな。ウサミン星に…まだ、決意って程ではないけれど)

いつになるかもわからない。けれど、いつか確実に来るだろう。…菜々が地球を旅立つ日が。そう予感させた。

…嬉しそうなのに、どこか寂しそうだと思ったから。

アイドル活動は忙しくて、楽しい。けれど、こんな『JKらしい』思い出はもうあまり作れないだろうから。

手を握り返して、夕美は菜々と一緒に学園祭へ向かいだした。
106 : ◆zvY2y1UzWw [sage saga]:2014/02/06(木) 20:07:59.29 ID:1mctWUjo0
「クラリスお姉ちゃん、お祭り行ってくるー!リサお姉ちゃんのライブ見てくるねー!」

「はい、いってらっしゃい」

クラリスに手を振りながら、子供服とポシェットを付けて、ナニカは教会を飛び出した。

『…で、今日は主にアイドルヒーローのライブ見るのか』

「そうだよ、昨日はやってなかったの」

『ふーん』

今朝ちょっとアイドルヒーロー同盟のビルを襲ってきた白兎は、あまり面白くなさそうだ。

『つまり今日は混みそうダな、昨日みたいにいろいろ起きそうだ』

『いろいろ、か…』

「そんなにいっぱい事件なんてないって」

『人が多ければ動きやすいけど…事件なんてそこらじゅうにある物だぞ』

「そんなわけないってー」

のんきな事を言いながら、ナニカは学園祭に向かっていく。

色々考えない為には、楽しい事をするのが一番だから。
107 : ◆zvY2y1UzWw [sage saga]:2014/02/06(木) 20:08:40.17 ID:1mctWUjo0
「涼さん、今日も学園祭のライブやるんだよね?」

「まぁ毎日だな。光栄なことだよ本当に…昨日は大変だったけど」

出かける支度をする涼に、あずきが眠り草を持ちながら近づいてきた。

「…眠り草、今日は涼さんが持ってく?」

「えっ」

『えっ』

あずきの口から眠り草の声が漏れた。涼が驚いた事に眠り草が動揺したらしい。

「…昨日と同じでいいんじゃないか?ていうか妖刀とかマーサが食いつくからできるだけ止めておきたいんだけど」

「うーんと…涼さんが持っていた方がいい気がするの。なんとなく」

「なんとなく、ねぇ…」
108 : ◆zvY2y1UzWw [sage saga]:2014/02/06(木) 20:09:35.35 ID:1mctWUjo0
『拙者をつれていくでござるー』

「…」

『ごーざーるー』

「…」

『ミミミン!ミミミン!ウーサミン!』

「…」

『ピカピカ、ピッカ!』

「…」

『ホンキノセイノウハ、ジンルイヲリョウガシマス!』

「あー…!わかった、わかったからちょっと黙ってくれ」

『ハーイ』

「裏声止めろ」
109 : ◆zvY2y1UzWw [sage saga]:2014/02/06(木) 20:10:19.39 ID:1mctWUjo0
「あのな…持って行くとしてもな、浮くだろ。あずきが持っていると和服と刀だからコスプレとかなんかだと思ってくれるだろうけどさ…」

「えーでも、最近は刀を持っている女の子のヒーローが…」

『小春bゲフンゲフン…刀持ちの侵略者系乙女ヒーロー、ひなたん星人でござるな!』

「うんうん、そういう子もいるみたいだから大丈夫じゃない?」

眠り草的にはあまり荒事に絡みたくないので、傲慢な刀である小春日和の名前は一応伏せておく。

『(下手に名前出したらフラグ立っちゃうでござる。やばーい☆)』

「ちょっと待て…小春なんちゃらってなんだ」

『それは内緒にすべきだと拙者の勘が』

「つまり知っているのか…」
110 : ◆zvY2y1UzWw [sage saga]:2014/02/06(木) 20:10:58.28 ID:1mctWUjo0
「刀友達かな?」

「…どうなんだ?」

『ミンナニハ ナイショダヨ』

「裏声やめてよー!その声を出すことを強いられるアタシの身にもなってよーっ!もう!折るよ!」

『またまたーたとえあずき殿でも名刀である拙者を折る事など…』

「…一つ教えてやるけど、アレ見えるか?壁の傷跡」

台所の方を涼が指で示す。

『ん?あの台所の…天井から床まで伸びている傷跡でござるか?塞がってるでござるが…』

「そうだ。…あれやったの包丁持ったあずきだからな」

『アイエエエエエエ!?アズキ!?アズキナンデ!?』

「い、いえーい…ちなみに貫通したよ」

すこし気まずそうにあずきが続ける。
111 : ◆zvY2y1UzWw [sage saga]:2014/02/06(木) 20:11:49.19 ID:1mctWUjo0
「弁償代は…まぁ何とかなったし、直ったし、貫通した先が外でさらに言えば夏だったからまだよかったものの…隣と貫通したらどうしようかと」

「お隣って確か古賀さんだっけ?」

「そうそう」

ちなみにそのさらに隣にはマリナたちが住む部屋がある。

刀の所有者である涼は狙われている立場なのだが…今の所遭遇すらしていない。

『(折られる☆…やばーい☆バキバキすぅ?)』

遭遇していない事に多少は貢献している筈の眠り草は話を聞いていないようだ。おそらく、人間だったら顔面蒼白であろう。
112 : ◆zvY2y1UzWw [sage saga]:2014/02/06(木) 20:12:24.93 ID:1mctWUjo0
『涼殿!拙者あずき殿の周りでは暫くふざけないでござるぅ!!だから、今日くらいは連れて行って欲しいでござるー!!』

「お前、そこまで…」

「というか話がグルグルしているだけの様な気がするんだけど…」

『気のせい!』

「眠り草が話を逸らすからでしょーっ!もーっ!」

「…仕方ないな、今日くらい何とか持って行くよ」

『マジでござるか!?ひゃっほーう!』

「あずき、眠り草ってあずきを介さなければ黙ってるよな?」

「そうだね。…涼さんの頭の中に呼びかけてくるかもしれないけど」

「ああ…うるさくしないように命令でもした方がいいか?」

『黙ってる!拙者黙ってるから!なんか敵が来た時以外黙ってるから!』

「敵なんてカース以外居ないから大丈夫だろ…」

彼女は一応一般人だ。犯罪組織を敵にしているわけでもないし、罪を犯したわけでもない。

…ただの妖怪と同棲して、ついでに妖刀の持ち主に選ばれてしまっただけの女子大生だ。
113 : ◆zvY2y1UzWw [sage saga]:2014/02/06(木) 20:13:56.00 ID:1mctWUjo0
『(ここで拙者が狙われているとか今更言ったら十中八九折られるでござる…まぁそんな遭遇する事なんてないだろうし、来たら大体わかるし…)』

『(…ん?そもそも拙者折れるのでござろうか。うーん…面倒くさいからどうでもいいやー)』

あずきから手放された眠り草は、どこかどうでもよさげに思考する。

『(拙者は今の生活で満足だし、お祭りって美人多いし…それに金持ちとか偉そうなのって嫌いなんだよねー)』

『(…まあ、なんとかなるでござるね。多分)』
114 : ◆zvY2y1UzWw [sage saga]:2014/02/06(木) 20:14:59.49 ID:1mctWUjo0
涼が眠り草を入れた袋と、バッグを持つ。

「じゃあ、先に行ってるからな。仁奈ちゃんと歌鈴に迷惑かけるなよ?」

「わかってるよ!いってらっしゃーい!」

あずきは涼を手を振って見送った。

仁奈と歌鈴が来るまではまだ時間がある。それまで家の掃除でもしようかと、家に入りなおす。

すると入った瞬間、つけっぱなしだったテレビの画面が急に切り替わった。

『番組の途中ですが、ここでアイドルヒーロー同盟から臨時ニュースをお送りします』

「ん?」
115 : ◆zvY2y1UzWw [sage saga]:2014/02/06(木) 20:16:49.56 ID:1mctWUjo0
『以下のエリアにて、人間に擬態するカースが目撃されました。近隣の住民は警戒してください』

テロップと共に、画面には目撃情報があった場所周辺の地域の地図が表示されている。

『刺激せず、発見次第連絡をお願いします。また、擬態したカースだと言い張って他人を傷つける人間を発見した場合も通報をお願いします』

『また、表示されているエリア以外にも潜んでいる可能性はあります。どこに住んでいても警戒は怠らず、関わらないようにしてください』

「人間に化けるカースかぁ…それにしても最近は物騒だなー」

掃除を忘れ、戸棚からせんべいを取り出しながら、あずきは数回繰り返されたそのニュースを見ていた。
116 : ◆zvY2y1UzWw [sage saga]:2014/02/06(木) 20:18:55.01 ID:1mctWUjo0
以上です
学園祭二日目突☆入!
菜々さんと相葉ちゃんも行くことになりましたよ

イベント情報(二日目)
・安部菜々&相葉夕美も学園祭へ。RISAのライブのゲストとして登場する予定です。
・アイドルヒーロー同盟からAMCへの注意報が放送されました。しかしテレビや街頭モニターを見ていない場合、情報は伝わってない可能性が高いです。
・APとライラさんお友達計画(仮)始動…?
・本日、眠り草は涼さんが持っています
117 : ◆Nb6gZWlAdvRp :2014/02/06(木) 22:23:32.46 ID:rdZIToT6o


復帰がてらイベント関係無いG3の話を投下ー
時系列?学祭の後じゃないかな
118 : ◆Nb6gZWlAdvRp [sage saga]:2014/02/06(木) 22:24:24.02 ID:rdZIToT6o
その夜は、なぜか眠れなかった。
 目を閉じてもどこからか湧き上がってくる焦りが、あたしを現実につなぎ止める。
 1時間ほどベッドで横になっていたけれど、このままでは朝まで起きていることになりかねないと、諦めて体を起こす。

 台所に降りてホットミルクを飲んだけど、焦りは消えず、むしろ大きくなっていく。
 その感情に耐えられなくなって、あたしはパジャマのまま家から出た。



 家を出たあたしは足の向くままに歩き続け、気が付くとある場所にたどり着いていた。
 ――そこは、あたしたちが『わたし』になった場所だった。
 辺りを見ると二人もここに来ていた。
119 : ◆Nb6gZWlAdvRp [sage saga]:2014/02/06(木) 22:24:52.22 ID:rdZIToT6o
「あれ? 二人も来たんだ」

「うん、なんだか眠れなくて」

「あたしも、なんか『行かなきゃ』って感じがして」

『はぁい、お母様方こんばんは』

 二人と会話を始めた直後、頭の中に声が響く。
 聞き覚えのない声だったけど、なぜか自然とこれが『わたし』であることがわかった。

「あー、やっぱりAEがなんかしてたんだ」

『ええ、そろそろ外出しようと思って』

「わざわざ夜中に集めないでよ……」
120 : ◆Nb6gZWlAdvRp [sage saga]:2014/02/06(木) 22:25:39.37 ID:rdZIToT6o
 法子が一人で何か納得していたけど、あたしたちには何のことかさっぱり分からない。
 かな子と顔を見合わせ首を傾げたところで……腹痛があたしたちを襲った。

「ひ、ぎぃっ」

 突然のことにお腹を押さえて膝をつく。押さえた手に固くて尖ったものが当たっているのを感じてパジャマを捲ると、何かの――いや、あの日食べたいくつもの破片がお腹を突き破って出ていた。
 いくらかの出血と一緒に地面に落ちた破片から泥が吹き出し、移動していく。
 視線だけでそれを追うと、法子とかな子からも同様に破片が出てきたみたいで、三人分の破片が一ヶ所に集まると、泥の量が一気に増えて人ひとり分くらいの大きさになる。

『かな子お母様』

「うぅ……え、なに?」

『わたしの仔を頂戴』

「え、と……あ、あの核?」

『ええ、その通りよ。あるでしょう?』

 それに向かって、かな子がなぜか持ってきていたあの7色の核を出すと、核はひとりでに浮き上がってそれに飲み込まれていく。
 核を飲み込んだそれは2,3回脈打つと、女の人の姿になった。
 歳は20台半ばくらいかな、スラッと背が高めで、ウェーブのかかった茶髪が腰に届かない程度に伸びている。

 肌が泥だとか、真っ黒なんてこともなくて、整った顔もあってただの美人にしか見えない。
 顔の前で何度か試すように手を握ったり開いたりしたかと思うと、両手の間に白っぽい球体を生み出して……
121 : ◆Nb6gZWlAdvRp [sage saga]:2014/02/06(木) 22:26:05.76 ID:rdZIToT6o








――辺りが『清浄な光』に包まれた







122 : ◆Nb6gZWlAdvRp [sage saga]:2014/02/06(木) 22:26:49.93 ID:rdZIToT6o

「あづっあ!?」

 全身を弱火で炙られるような感覚にあたしたちは転げまわり、女の人は満足げに頷く。

『贅沢を言うとまだ不満な点はあるけども、まあ及第点ね』

『お母様方、これからわたしは出かけます』

『今しばらくの間はこれまで通りに過ごしても構わないわ』

『でも、いずれわたしのために動いてもらうことになるから覚えておいて』

 言うだけ言うと踵を返して立ち去ろうとしてしまう。

「ちょ、待って説明! 説明が足りない!」

 まだピリピリするのを我慢して、声を張り上げて呼び止める。

『あらみちるお母様、夜中に近所迷惑よ?』

『でも、まあ……確かにお母様方には色々と話しておくべきかしら?』

 そう言うと、お腹に指を沈めて左右に割り開く。
 そんなことしても泥くらいしか無いと思ったんだけど、予想に反してそこには……草原が広がっていた。
123 : ◆Nb6gZWlAdvRp [sage saga]:2014/02/06(木) 22:27:29.85 ID:rdZIToT6o
「……はい?」

 それをみたあたしたちは目が点になる。

『原罪の力で楽園……エデンの園を再現したの。わたしはここを命で満たしたいのよ』

『人に限らず、生き物は弱いわ。地上を埋め尽くす命のうち、どれだけが自らの重ねた罪と向き合って、背負っていけるというのかしら』

『だからこの楽園へ連れて行ってあげたいの』

『楽園のために原罪の力はほとんど使ってしまったけど、構わないわ』

『この楽園に行けばあらゆる罪から解放されて、解き放たれた罪をわたしが請け負うことでより大きな力が得られるのだもの』

『わたしはこの楽園で生きとし生けるものを包み込んで、導いて、神様に代わってしまおうと思うの』

 その後もあたしたちを置いてけぼりにして色々喋っていた筈だけど、それらはほとんど頭に入って来なかった。
 たしか最後のほうでやっとAE……Another Edenとか名乗ったっけ。それを聞いて法子が妙な顔をしたけど、なんだったんだろう。

――破片に突き破られたはずのお腹は、いつの間にか塞がっていた。
124 :設定 ◆Nb6gZWlAdvRp [sage saga]:2014/02/06(木) 22:31:59.57 ID:rdZIToT6o
 全てを喰らう者
 暴食のカース
 能力:天聖気を扱う・天聖気無効・他不明
 All Eater/Another Eden
 法子の中で自我を得た『わたし』の自称
 『わたし』を食べることで始まった三人への侵食は、『わたし』に自我が芽生えることで終わりを迎えた
 割とその場のノリで名乗る名前を変えるが、AEというイニシャルには拘りがあるらしい

 自らの自我と共に生まれた原罪の核を『わたしの仔』と呼ぶ

 原罪を取り込んで体内にエデンの園のレプリカを創り、そこにあらゆる命を取り込んで神になり替わろうとしている。
 彼女にとって食事とは「楽園へ命を導く行為」であるため「生きたまま丸呑み」を好み、暴食でありながら一般的な食事への関心は殆どない。
 偽物とはいえ楽園そのものを内包することで天聖気を扱う能力を得た。また、この能力は原罪由来で得た後天的なものであり、これとは別に先天的な能力を持つ。


G3について備考
・AEの核の破片はまだ一つ二つG3の体内に残ってます
・核がごっそり減ったので侵食は軽減された
・AEから力を貰ってるので天聖気への耐性(ダメージを軽減する程度)を得た
125 : ◆Nb6gZWlAdvRp [sage saga]:2014/02/06(木) 22:33:13.28 ID:rdZIToT6o
投下終わり

久々に書くとキャラが動かなくて投げ出したくなる不具合
126 : ◆AZRIyTG9aM [sage]:2014/02/06(木) 22:37:54.52 ID:nY8Wsk5jO
お二方乙ー

RISAのライブゲストでくるのか!
そして、秘書の妄想にワロタ
そして、涼さんフラグですよ!フラグ!

AEコワイ……
三人は果たしてどうなるのか?
127 : ◆zvY2y1UzWw [sage ]:2014/02/06(木) 22:48:33.66 ID:1mctWUjo0
乙です
AEがダブルネーミングだったとは…
楽園がなんか罠にしかみえない
128 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/02/06(木) 23:46:53.17 ID:DZPl2Mnfo
>>91
穂乃香さん…えげつない子になっちゃいまして…
これからどうなっちゃうのかな

>>116
菜々さんクルー
刀のコミュニティは基本問題児しか居なくてアレである

>>125
お久しぶりでー
また怖そうなのが出てきましたね。どこへお出かけするのだろう


皆さん乙です
ではでは投下しまー
129 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/02/06(木) 23:47:30.58 ID:DZPl2Mnfo


前回までのあらすじ


桃華「それじゃあ、わたくしはフェイフェイさんと出かけてきますので」

扉 ガチャ バタン


UB「やれやれ、お嬢様は本気で君の力を利用するつもりで居るらしい
   しかしそれは私たちにとって僥倖。君の力の有用性は私もよくわかって…

裏切り「今眠いからちょっと黙ってて」

UB「……(´・ω・`)」


桃華と『裏切り』の核
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1384767152/800-
130 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/02/06(木) 23:48:07.79 ID:DZPl2Mnfo


賑わう人々に華やぐ祭典。

その裏側で暗躍する者達がいる。



その内1人は、日の光も届かない真っ暗な影の中にて。



クールP「頼まれていた資料はこれでいいかい?」

チナミ「ええ、一通り目を通したけどなかなかね」

チナミ「流石は、同盟のプロデューサーヒーローと言ったところかしら」


悪業渦巻く魔界において、

さらに策謀の交錯する吸血鬼の大派閥”利用派”に属する二人の男女。

チナミとクールP、彼女達はとある資料の受け渡しをしていた。
131 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/02/06(木) 23:49:13.28 ID:DZPl2Mnfo

チナミ「手間を取らせたわね」

クールP「僕自身が動いたわけではないですから構いませんよ」

チナミ「あら、そうだったの?」

クールP「スカウト活動の一環のためだと言えば、」

クールP「その程度の資料は割と簡単に取り寄せられますから」

チナミ「ふーん」

チナミ「まあ、あなたの手で作られてないって言うのなら逆に信用できそうかしら」

クールP「おっと、随分と辛辣な評価だね。僕はそんなに信頼されてないのかな?」

お互いに言いあって、そしてクツクツと笑い合う。

チナミ「ふふっ、信頼ね」

クールP「ええ、信頼ですよ」

裏切り裏切られが日常茶飯事の魔界の出身。

それもお互いに”利用派”吸血鬼。

チナミ(そんなもの、存在するはずなんてないのにね)

吸血鬼の仲間。”利用派”の仲間。

仲間と言うのは彼女にとって、ただの利害の一致でしかなく、

お互いに利用し利用される関係の事を言う。

だから、彼女は目の前の男の能力は信用していても、

その内面を”信頼”などはしていない。

きっと目の前の男もそうなのだろうと、考えているし。

そもそもこの世界には、真の意味での”信頼関係”などは存在していないのだろうとチナミは考えるのだった。
132 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/02/06(木) 23:50:04.38 ID:DZPl2Mnfo


クールP「とりあえず、その資料の分のお代の請求はそのうちにさせていただきますよ」

チナミ「あら、エージェントと言う部隊の存在と、あの子がエージェントに所属してるって事を教えてあげたじゃない」

チナミ「その分でチャラでしょう?」

クールP「……相変らず図太いね」

チナミ「ふふん、お褒めの言葉ありがとう」

チナミ「だけど、あなたが動いて集めた情報って訳でもないんでしょ?」

チナミ「これで、チャラにしてあげるって言ってるんだから感謝して欲しいわよね」

クールP「……わかりました、ではそれはサービスと言う事にしておきましょう」

チナミ「うふふっ、助かるわ♪」

クールP「『秋炎絢爛祭』に集まる能力者たちの資料。せいぜい有効に使ってください」

チナミ「ええ、私の目的の為に利用させて貰うわよ」

クールP「それでは僕はこれで」

クールP「貴女のように美しい方と一緒に居て、誰かに誤解されてはいけませんから」

チナミ「その口の上手さが人気アイドルヒーローの秘訣なのかしらね。その甘い言葉に何人のファンが騙されたのかしら」

クールP「ふふっ、どうかな。せっかくですから貴女もアイドルはじめてみますか?」

チナミ「輝く舞台に立つのも悪くないかもね」

クールP「その時は、特別に僕がプロデュースしますよ」

チナミ「冗談」

それが最後と、女性が背中を向けると、

クールP「おや、残念」

男性もまた背を向けて、互いに光の射さない影の世界へと消えていくのだった。
133 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/02/06(木) 23:51:02.61 ID:DZPl2Mnfo

――


アイドルヒーロー同盟はいつでも人材を求めている。

その人材とは、侵略者にも打ち勝つ事の出来る強く正しく美しい者。

同盟のプロデューサーたちはそんな人材捜し求めているのだ。

それは当然、たくさんの人々の集まるこの学園祭においても。


チナミ「つまりこのリストに載る人間は、何か特別な力をはっきりと持つ人間」

チナミ「同盟のプロデューサーのお眼鏡にもかなう優れた能力者なんかよね」

チナミ「つまり、私の眷族に新しく迎える優れた人間を探すのにも、」

チナミ「このリストは役立ってくれるということ」

チナミ「そうねぇ、とりあえずこの中で私が今一番気に入ってるのはこの子かしら」


Name: 新田美波
Sex: 女性
Age: 19
Birth: 7月27日
Job: 学生
Height: 165cm
Weight: 45kg
……
……


チナミ「……なんだかやたら詳しいプロフィールね」

チナミ「同盟ってこんな事まで調べてるのかしら……ストーカーじみてるじゃない…こわっ」

チナミ「おほん……ま、そんな事よりもこの子について……」

チナミ「容姿端麗、頭脳明晰、文武両道、温和勤勉」

チナミ「なるほど、アイドルに仕立て上げるにはこれ以上ないってくらい逸材じゃない」

チナミ「ただこの子自身が能力者と言う訳では無いみたい、戦うところを目撃されてる訳でもなし」
134 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/02/06(木) 23:52:04.83 ID:DZPl2Mnfo


チナミ「だけど、そんなことより気になるのは彼女が連れているって言う銀色の蠍」

チナミ「・・・・・・クールの連れてるアラクネ・・・・・・だったかしら」

チナミ「と同じタイプの機械兵器か何かよね」

チナミ「なんだったかしら・・・・・・デウ?エク?」

チナミ「そう!エクス・マキナ!」


チナミが興味を持ったのは、ここ最近急激に増え始めた機械仕掛けの兵器たち。

いつ、だれが、どのような目的で作り出したのかもわかっていない正体不明の機械生命。


チナミ「派閥もサクライも『エクス・マキナ』の詳しい情報をほとんど持っていなかったはず」

チナミ「つまりこの子を操れたなら、彼らとの取引の材料にも使えると言う事」

チナミ「目撃情報から言えばこの子自身は戦いにはなれていない。与するのも容易なはずよね」

チナミ「……ふふふ、まず一人目は決まりね♪」

上機嫌に呟くと、手に持っていた紙束を魔法の炎で燃やし尽くす。

資料の内容はすべて覚えた。情報は頭の中に残っていればそれでいい。


「あっれ〜、お姉さん1人ぃ?こんな所でなにしてるの〜?」

チナミ「あら?」
135 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/02/06(木) 23:52:56.66 ID:DZPl2Mnfo

丁度その時、数人の奇抜なファッションをした若者達がチナミに声を掛けてきた。

「こんな人通りのない日陰で真っ黒な傘なんか差しちゃってさぁ?かわってるねぇ」

「……よく見たらさぁ、お姉さんすっごく美人じゃん?やっば!激マブっしょ?!」

「ねぇねぇ、良かったら俺らと遊んじゃわない?1人で居るよりきっと楽しいよ?」

どうやら、俗に言うところのナンパのようだ。

チナミ(……それにしたってなんだか時代に取り残されちゃってる感じの子達よね)

チナミ「まあ、丁度良かったわ」

「ん?あれれ?お姉さん意外とノリ気?」

「いいよいいよ!俺たち実はここの学生なんだよねぇ」

「案内なら任せなよ、イイトコ連れっててあげるからサッ」


チナミ「ええ、道案内よろしく頼むわね」

彼女の瞳が妖しく光った。

 
136 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/02/06(木) 23:53:50.49 ID:DZPl2Mnfo

―――

―――

―――


ドンッ

美波「きゃっ」

紗南「あっ、ごめんなさい……前ちゃんと見てなくて」

美波「ううん、いいのよ。そっちこそ怪我はないかな?」

紗南(綺麗な人)

紗南「え、えっと大丈夫です」

美波「そう?良かった!えっと…中学生の子かな?1人?もしかして迷子だったりとか?」

紗南「い、いえ!違います!そ、その……あ、あたしの事はお構いなく!」

美波「あっ、ちょっと」

紗南「ごめんなさいっ」


逃げるように紗南は、その場から足早に離れるのだった。
137 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/02/06(木) 23:54:54.83 ID:DZPl2Mnfo

紗南「……」

紗南「……はぁ」

廊下を歩きながら三好紗南は溜息をつく。


紗南「やっぱり簡単には馴染めないよね……」


教習棟の廊下を歩きながら、紗南は呟く。

紗南のクラスが学園祭で催すヒーローショーまでの僅かな休憩時間。

今頃、クラスメイト達は思い思いに友達と過ごしているのだろう。


一方で、紗南は1人であった。


その原因は、学校のサボりすぎである。

三好紗南には色々な事情があって、学校に登校できなかった期間が長い。

そしてその間に、紗南を置いてクラスのコミュニティは固く結束力のあるものとなっていたらしく……

何事も無かったかのように彼らの絆の間に割り込むことなど、簡単にはできないのだった。


紗南「うわぁ、もう!見事なまでにぼっちだー!」

大きな声で愚痴る少女の姿に奇異の目を向ける者も居たが、一瞬ちらりと目を向けただけでただ通り過ぎていく。

紗南「友達も、勉強も置いてけぼりなんて!それもこれも『怠惰』と『強欲』のせいだっ!くそーっ!」

確かに彼女が学校に通えなかった原因のほとんどは『怠惰』と『強欲』の悪魔のせいだが、

勉強をサボりがちなのは元からである。
138 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/02/06(木) 23:55:47.20 ID:DZPl2Mnfo


紗南「……はぁ」

紗南「……これが学園が舞台のゲームとかだったら」

紗南「クラスのまとめ役ーみたいな子が居て、なんとかしてくれたりするんだろうけど」

紗南のクラスにも、まとめ役と呼べるような、いつもクラスの中心となる人物はいる。

彼女は、まるでゲームに出てくる主人公のような少女。


紗南「南条光ちゃん……」

持ち前の明るさで周囲を照らしだす、光そのもののようなクラスメイト。


紗南「……なんか雰囲気変わってたよね」

紗南「前まであんなに、怖い目をしてたかな?」

紗南「あたし殺されるかと思っちゃったくらい……あはは、なんてね。そんな事あるわけないし」

冗談っぽく言ってみたが、疑念は晴れない。

やはりあの目は……何かが引っ掛かる。

今朝もクラスで顔を付き合わせたときに見せた、彼女の目。

その心の内に何か”よくないもの”を秘めているかのような目。


紗南「……敵意……なのかな」
139 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/02/06(木) 23:56:34.74 ID:DZPl2Mnfo

紗南「……ありえない……って言い切れないところが辛いところなんだよね」

紗南「学園祭、みんな頑張ってるのに1日目はあたし完全にサボっちゃったし」


学園祭1日目。

三好紗南は、サボった。


いや、「サボった」と言ったが、決してそれは『怠惰』の気持ちからではなく、

とある元ヒーローの活動の手伝いをしたかったために、1日目の参加を諦める事に決めたのだが。


紗南「それでも光ちゃんは”正義感”が強いから、やっぱりそう言うの許さない系ヒーローかなぁ」

紗南「まあ、それに関しては自業自得であたしが全面的に悪いんだけどね、うん……」


一応は、昨日の欠席も病欠と言うことになっている。

おかげで本日もまだ調子悪いような演技をする事になってしまい、それはそれで大変なのだが仕方ない。


紗南「だとしてもあんな目ができちゃう光ちゃんじゃなかったと思うけど……」


しかし、やはり引っ掛かる。

どうしても気になって、考え込んでしまうのだった。



ドンッ!

「きゃっ」

紗南「あっ!ごめんなさいっ」

考え事をしていた為に、また誰かにぶつかってしまった。
140 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/02/06(木) 23:57:38.40 ID:DZPl2Mnfo

「もう……」

ぶつかった相手は、紗南よりも小さく、綺麗な金髪で、お人形さんのような服を着ているが、

どこか印象が薄い眼鏡をかけた少女であった。


「……考え事もよろしいですけれど、歩くときはきちんと前を向くことですわ」

紗南「ご、ごめんなさい……」

「うふふっ、わかっていただければ結構ですわよ」

紗南(自分より年の低そうな子に説教されてしまった……)

紗南(て言うか……この声どこかで聞いたことがあるような?)


気のせいだろうか。記憶の片隅にこの少女の姿があるような気がした。


「どうかしましたの?」

紗南「う、ううんっ!なんでも!ほんとごめんね!それじゃあっ!」

なんとなく居たたまれなくなり、急いでその場を立ち去ることにする。


紗南「あ、そうだ。眼鏡はずした方がいいと思うよ」

紗南「ほら、眼鏡ってあまりいい印象無いからね!」

それだけ言い残して、紗南はその場を後にするのだった。
141 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/02/06(木) 23:58:29.97 ID:DZPl2Mnfo

――

――

――


桃華「……」

桃華「……まったく、あの程度の洗脳を受け入れてしまうなんて信じられませんわね」

マジックアイテムである『眼鏡』を掛けた事によって、その存在の印象が薄くなった少女が呟く。

世界に名だたる櫻井財閥のご令嬢にして、『強欲』を司る悪魔マンモンである少女は、

その正体を隠してこの学園祭に紛れていた。


桃華「紗南さんにはわたくしの所有物である自覚が足りないのかしら?」

菲菲「んー、しょうがないんじゃないカナー」

『眼鏡』を掛けた美しいお人形さんのような少女のその傍らには、

同じく『眼鏡』を掛けた中華風衣装に身を包む少女が1人。

傍から見れば、ちぐはぐでへんてこな2人であったが、

しかし幸いと言うべきか通りがかる人々は、彼女達の容姿を気にしない。

マジックアイテムの効果のおかげもあるが、何より学園祭の空気がそれを許している。

多少見てくれが変わっていても、コスプレだと思われる範囲であろう。
142 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/02/06(木) 23:59:37.27 ID:DZPl2Mnfo

菲菲「マンモンちゃんの”所有権の主張”なら、」

菲菲「確かにマンモンちゃんの所有物が、他の誰かの意のままに操られるのを防ぐことができるケド」

菲菲「眼鏡をよくないものと思わせるために蔓延してる風潮は、人から意志を奪うものとはちょっと違うからネー!」

計り知れぬ魔神は、容易く世間に浸透しつつある認識操作の性質を読み取り、

その暗示が三好紗南に通じてしまった訳を、事も無げに語る。

桃華「認識の付加は、意識の所有権云々以前の問題と言う事でしょうね。」

桃華「そんなことより……」

桃華「……」

そこまで言いかけて少女は急に、押し黙る。

桃華『……フェイフェイさん。わたくしの事はその名前で呼ばないでいただけますか』

そして口を開かないままに言葉を続けた。

『強欲の証』を通した、テレパシー。

初代『強欲』の悪魔と当代『強欲』の悪魔の間でのみ通じる脳内会話。


桃華『何度も言うようですけれど……本日はわたくし、お忍びで来てますから』

桃華『目立つような真似はしたくはありませんの』

余計な事は口に出すな。と言う事らしい。

菲菲『?……それじゃあなんて?』

桃華『桃華でよろしいですわ。櫻井桃華の名前も有名ではありますが、』

桃華『ありふれた名前でもありますから、どなたも気にも留めませんわよ』

桃華『少なくとも悪魔としての名前を出されるよりはずっとマシですから』

菲菲「桃華ちゃんだネっ!わかったヨっ!」

その事の重大さなどはどうでもいいのか、魔神はただ無邪気に答えた。
143 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/02/07(金) 00:00:29.13 ID:+fHfSRVso



菲菲「それにしても桃華ちゃんが、外出に付いて来てくれる気になってくれたのは意外だったヨー」

桃華「あら、わたくしだってお散歩は好きですのよ?」


人々が行き交う中、廊下を歩きながら2人の会話は続く。

正体を隠すための『眼鏡』を掛けているおかげで、2人の存在に対して気に留める者はほとんどいない。

時々、”植えつけられた『眼鏡』に対する憎悪”故か、訝しげな視線を向けるものも居たが、

それくらいの注目は、2人にとっては取るに足らないものだ。


菲菲「でも、最近はずっと部屋に籠りきりだったよネ?」

桃華「好きで籠ってるわけではありませんわよ」

桃華『ただ…神の目を避ける為には仕方ないのですわ』

桃華『それに当代大罪の悪魔であるわたくしは、現魔王の定めた制度によって指名手配に近い状態ではありますし……』

桃華「……本当に窮屈なことですわね」

菲菲『それについてはふぇいふぇいも同意するヨー、悪魔なのに悪魔の自由を縛るなんて魔王は変な事考えるネ?』

菲菲「まあ、奪われた自由は勝ち取ればいいんじゃないカナ?」

にやりと魔神は力強く笑う。

桃華「うふふふっ、元よりそのつもりですわ♪」

答えるように、『強欲』なる少女もご機嫌に笑った。
144 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/02/07(金) 00:02:38.53 ID:+fHfSRVso

菲菲「まあ、そんな事より今はお祭りダヨー!!」

菲菲「まずはどこに行こうカナ!どこに行こうカナ!?」

桃華「まったく……はしゃぎ過ぎではありませんの?」

菲菲「そんな事言っちゃってるけど、桃華ちゃんもうずうずしてるヨ?」

桃華「し、してませんわっ!」

菲菲「えぇ?そうカナー?」

桃華「……」

菲菲「?」

桃華(……まあ、久しぶりのお出かけですもの。少しくらい楽しんでも罰は当たりませんわよね?)

菲菲「桃華ちゃん?」

桃華「……うふっ♪フェイフェイさんも楽しむのは結構ですが、」

桃華『ちゃんと人間らしく振舞うのはお忘れなく』

菲菲「もちろん、わかってるヨ!」

桃華『力を行使するのは極力避けるようにするのもお願いしておきますわ』

菲菲「わかってるヨー!」

桃華『あと死神ちゃまも来ているようですから、関わらないようにお気をつけくださいね』

桃華『バレる事もないとは思いますが、その他の魔界関係者の存在にも気を配ってくださいまし』

桃華『それと財閥は敵が多いですから、不用意にお話に出すのも避けていただけるかしら』

桃華『同盟から来たヒーローが多く配置されているようですわね。彼らに怪しまれる行動も慎むよう頼んでおきますわ』

桃華『そうそう、眼鏡が嫌いなカースと言う妙な存在に絡まれることもあると思いますが、お気になさらないように』

桃華『それからそれから……』

菲菲「ちゅ、注文多くないカナ……?なんだかふぇいふぇいも自由を奪われてる気になってきたヨー……」
145 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/02/07(金) 00:03:35.44 ID:+fHfSRVso

――


菲菲「うーん、焼きそば美味いネー!」

桃華「そうやって食べる物なんですの……?でもこれでは下品では……」

菲菲「でも美味しいヨ?何事も挑戦してみるものダヨ!」

菲菲「ただ、ふぇいふぇいならもっと上手く作る自信が……ってアレ?」

菲菲『そう言えば、どうして桃華ちゃんは、死神ちゃんがこの学園祭に来てるってわかったのカナ?』

菲菲『……と言うか、さっき来たばかりなのに学園全体の事を把握しすぎじゃ?』

ベンチに座り、屋台で買った焼きそばを食べながら、

魔神はなんとなく気になったことを、隣で焼きそば相手に悪戦苦闘している相方に尋ねる。

桃華『あら、お忘れですの?』

桃華『わたくしの能力は”所有権の主張”ですわよ』

桃華『道行く方々の”記憶”すらもわたくしの”所有物”ですわ』

『強欲』の悪魔である彼女は、あらゆる物事の”所有権”を主張できる。

命であれ、物であれ、『記憶』であっても全てが彼女の支配下。

桃華『ここに居る方々は、1日目も参加されていた方が多いようですから』

桃華『彼らの記憶が把握する限りの1日目の様子であれば、わたくしもまた知る事ができますのよ』

菲菲「そう言えばそんな能力もあった気がするネ?」

桃華「その忘れっぽい性格はどうにかなりませんの……?」

菲菲「取るに足りない事はあんまり記憶してないヨ!」

桃華「自慢げに言うことではありませんわっ!」

桃華(いえ、仮にも大罪の悪魔の能力を取るに足りない事と言ってしまえるのは自慢になるのでしょうが……)
146 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/02/07(金) 00:04:30.12 ID:+fHfSRVso

――


桃華『記憶の所有権』

菲菲「もぐもぐ」

魔神はたこ焼きを頬張りながら、

隣で同じくたこ焼きを頬張る少女の話に耳を傾ける。

桃華『”他人の”記憶を、”わたくしの”記憶でもあると主張するだけの能力ですわ』

他人の記憶でありながら、それは彼女の記憶。

つまり彼女は好きな相手の記憶を閲覧することができる。

桃華『もちろん、真にわたくしのものとするならば、』

桃華『相手に向けて、”主張する”と言う手順を踏まなければいけませんけれど』

菲菲『”それはわたくしのものデスワ!”って感じダネ!』

桃華『……似てませんわ』

桃華『まあ、その手順も本当に力を持たない相手に対してはとことん省くことができますの』

桃華『それに今回は奪うわけではなく、横から閲覧させて頂いている程度』

桃華『これくらいならば、少し触れ合うだけでも充分に力を発揮できますのよ』

菲菲『そう言えば、さりげなくすれ違い様に通りすがりの人間に触ったりしてた気がするネ?』

桃華『うふ♪袖振り合うも多少の縁と言ったところですわね♪』

菲菲『……でもそれは力を持たない相手に対してだよネ?じゃあ例えばふぇいふぇいに対して力を使おうとしたら手順の省略はできないんダ?』

桃華『あら、フェイフェイさんが相手では、仮にどんな手順を踏んだとしても記憶を横から見させていただく事さえ不可能ですわよ』
147 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/02/07(金) 00:05:32.34 ID:+fHfSRVso

桃華『わたくしの能力は”魂の大きさ”…言わばレベルに左右されるものですから』

桃華『引力に例えるとわかりやすいかもしれませんわ』

桃華『月が地球に引っ張られるように、地球が太陽に引っ張られるように』

桃華『あらゆる所有権は大きいものにこそ追従するもの』

桃華『ですからわたくしは自分より大きいものからは、その所有権を奪えませんの』

菲菲『ふーん、この辺りを歩いてる取るに足りない人間の所有物は簡単に奪えても』

菲菲『悪魔クラスが相手になると難しくなるのカナ?』

桃華『そう言うことですわね、人間の能力者クラスが相手でも』

桃華『今の様にすれ違っただけで、と言う訳にもいきませんわ』


菲菲「なるほどー、弱いものいじめな能力ダネっ!」

桃華「うふふふっ、お褒めの言葉と受け取っておきますわ♪」

彼女の力は弱いもの相手には一方的な蹂躙を可能とする能力。

しかし、裏を返せば強いものに対しては為す術がない。
148 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/02/07(金) 00:06:39.90 ID:+fHfSRVso

――


そして、彼女の能力にはもう一つ弱点がある。


菲菲『それじゃあ、カース相手にはどうなのかな?』

桃華「……」

チュロスを片手に、何気なく尋ねた魔神の言葉、

同じくチュロスを手にもつ桃華の表情が一瞬強張る。

菲菲『やっぱりカースからは何も奪えないんダ?ううん、奪いたくないのカナ?』

桃華『……意外に核心を突きますわね』

桃華『ええ、その通りですわよ』


桃華『だって、”カースの穢れ”が”わたくしの穢れ”になるなんて耐えられませんもの♪』


彼女は、マイナスの所有権は主張しない。
149 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/02/07(金) 00:07:15.99 ID:+fHfSRVso

――

――


桃華「とにかく、今回のわたくしの目的を果たすために、この能力は鍵になりますわ」

先ほど購入したアイスクリームを食べ終えた、悪魔の少女は語る。

菲菲「えっ……?」

桃華「どうしましたの?とぼけた顔をしまして?」

菲菲「ううん、ちゃんと目的があったんダネ?」

桃華「当然ですわ!目的をなくしてわたくしが動くことなんてありえませんのよっ!」

少女は大仰な身振りも合わせて、華麗に言い放つ。

彼女は『強欲』を司る悪魔。ただ遊んでいるような振る舞いは見せつつも、

その心のうちはいつでも欲望に忠実かつ強かである。


桃華『例の失敗作の監視に付けていたエージェントが一人。この学園祭での連絡を最後に居なくなっていますの』

櫻井財閥の当主が飼う”エージェント”と呼ばれる特殊能力者機関の人員が1人、

この学園祭の中で任務遂行中に失踪した。

その任務は、財閥が行った実験で生まれたカースの監視任務であったが、

どうやら彼は、その任務を最後までやり遂げる事はできなかったようだ。

また、監視していたカースも何者かに倒されてしまっている。


菲菲『その失敗作のついでにヒーローに倒されたんじゃないのかな?』

桃華『どなたに負けたとしても……そして死んだにしても』

桃華『エージェントの中でも優秀な方が、ここまで何も無かったかのように消息を絶つなんてありえませんわ…』

桃華『何よりあの方は、戦線からの離脱に特化した能力を持っていましたもの』

桃華『そんな方が跡形も無く消されてしまう?一体どうやって?』

桃華『わたくしは、彼の所有者として、彼の最後を調べなくてはいけませんわ』
150 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/02/07(金) 00:08:32.44 ID:+fHfSRVso


菲菲『なるほど、つまり桃華ちゃんはその人がどこに行ったのかを探りたいんダネ?』

桃華『ええ、彼はともかく消失したカースの方に関しては必ず目撃者が居るはずですもの……』

桃華『今回、わたくしが来た目的はその目撃者達の記憶を探ること』

桃華「わたくしの所有物を奪った方々から……」

桃華「すべてを奪い返すためにですわよっ!」 ズバッ

菲菲「わあ!桃華ちゃんカッコイイヨー!」 パチパチ

桃華「うふっ♪」

桃華「さて、フェイフェイさん」

桃華「目撃者を探すためにも、わたくし達はこの学園をぐるりと回らなくてはいけませんわ」

桃華「こんなところでうかうかしてる場合ではありませんのよっ!」

菲菲「そうダネ!」

桃華「ふふっ、それでは次のお店に急ぎますわよっ!」

菲菲「ん?あれれ?」

桃華「どうしましたの?早くしませんとこの学園を回りきれませんわ」

菲菲(……やっぱり桃華ちゃんはしゃいでないカナ……?)


桃華「次はチョコバナナですのよー!うふふー♪」

菲菲「あ、待ってヨー!」


かくして、櫻井財閥は学園祭の裏側にて暗躍をはじめるのであった。


……暗躍するのだろうか?


おしまい
151 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/02/07(金) 00:09:39.21 ID:+fHfSRVso

◆方針

桃華 … 通りすがる人々の記憶を探りながら学園祭を満喫中
菲菲 … とりあえず学園祭を満喫中
チナミ … 眷族候補探し中
紗南 … 不憫

財閥が学園祭で動き始めたお話
ちゃまは久しぶりの外出で超はしゃいでます
ただ自分の欲望を満たすために一生懸命です
152 : ◆AZRIyTG9aM [sage]:2014/02/07(金) 00:32:17.79 ID:Aop/KJR+O
乙ー

チャラ男南無……

フェイフェイが他の旧七罪にあったときポロッと名前呼びしそうだなw
153 : ◆llXLnL0MGk [sage saga]:2014/02/13(木) 01:54:25.43 ID:T03rt9fi0
乙乙ー
悩む肇ちゃんに荒ぶる穂乃香さんに画策する同盟上層部にいつの間にかすげえ危険な涼さん(ご近所さん的な意味で)に
覚醒するAEに結果的に学園に集まりまくる櫻井関係者にワクワクがとまらんぜ!

学園祭二日目で投下します
例によって改訂版アイドル設定もあるよ!
154 : ◆llXLnL0MGk [sage saga]:2014/02/13(木) 01:55:23.82 ID:T03rt9fi0

クールP「待たせたね」

学園内、アイドルヒーロー同盟の控え室として使われている教室にクールPが戻ってきた。

ライラ「お帰りなさいでございます」

爛「どこ行ってたんだ?」

今教室の中にいるのは、爛とライラ、クールP。

そして、戦闘外殻カンタローとマキナ・アラクネだけである。

クールP「ちょっと、チナミさんに頼まれててね。渡す物があったのさ」

爛「ふーん」

爛は興味無さそうに、机の上に腰を下ろした。
155 : ◆llXLnL0MGk [sage saga]:2014/02/13(木) 01:56:32.98 ID:T03rt9fi0
クールP「そういえば、シャルクさんとガルブさんは? 姿が見えないけれど」

爛「さっきスタッフに連れてかれてたぞ。会場設営の準備と、整理券の配布だってよ」

クールP「そういう事か。……あの二人、案外早く同盟に馴染んだね」

顔写真入りの社員証を得意げにぶら下げる二人の姿を思い出し、クールPは思わず苦笑する。

クールP「……おや、電話が……はい、クールPです。……はい、はい……」

壁にもたれかかりながら、クールPは電話の応対を続けた。

クールP「……なるほど。了解です。……はい、明日からですね、分かりました、はい。では」

通話を終了させたクールPは、やれやれといった表情でライラ達の方へ歩いてきた。
156 : ◆llXLnL0MGk [sage saga]:2014/02/13(木) 01:57:41.16 ID:T03rt9fi0
爛「同盟か?」

クールP「うん。明日からライラに案内がつくんだってさ」

ライラ「案内ですか?」

クールP「そう。地上に来て右も左も分からないだろうライラの事を思って……らしいけど」

爛「んなモン、俺たちだけでも出来るだろうに…………アレか、そいつは建前か」

クールP「恐らくはね。未だにウェンディ族への不安要素が拭えなくて、案内という名目で監視を……そんな所じゃないかな」

爛「んだよ、かえって動きづらくなってんじゃねえか」

毒づく爛に、クールPは余裕の態度で返してみせる。

クールP「今は焦って動く時じゃないって事さ。海底都市とケリをつけてから、改めて動けばいい」

爛「それもそうか。何なら、ライラはその時引っ込めとくってのもアリだな」

クールP「そうだね。同郷の士と戦うのは、やっぱり気が引けるんじゃないかい?」

二人の視線と言葉を受け、ライラは難しそうに首を傾げる。

ライラ「うーむむ……でもライラさん、お仕事なら頑張りますですよ」

クールP「……そうかい? まあでも、無理しないでいいからね」

クールPはそう言ってライラの頭をさすさすと撫でてやる。
157 : ◆llXLnL0MGk [sage saga]:2014/02/13(木) 02:00:25.48 ID:T03rt9fi0
爛「……で、案内には誰が来んだ?」

クールP「APだよ」

爛「ウゲッ……あの番犬女か……」

APの名を聞き、爛が顔を曇らせた。

ライラ「APさんというのは、どういう方でございますか?」

クールP「分かりやすく言えば『同盟トップの忠犬』だね」

ライラ「忠犬ですか?」

爛「ああ。よーするに俺らが一番警戒してる相手だ」

顔をしかめたまま、爛が窓の外に目を向ける。

爛「同盟の敵になるヤツはとにかく叩きのめす、そんな奴だ」
158 : ◆llXLnL0MGk [sage saga]:2014/02/13(木) 02:07:18.96 ID:T03rt9fi0
クールP「でもまあ、これはある意味チャンスだよ」

爛「チャンスぅ?」

クールP「そう。ライラが彼女と友達になって懐柔すれば、僕らは更に動きやすくなる」

ライラ「よく分かりませんが、ライラさんに全てがかかっていますですか?」

クールP「そういうこと。よろしく頼むよ?」

ライラ「はい、頑張りますです」

ライラに微笑んで見せると、クールPは爛に向き直った。

クールP「さて、爛。ライラは衣装合わせとか色々あるけど、君は自由時間だ」

爛「おっ、気がきいてんな?」
159 : ◆llXLnL0MGk [sage saga]:2014/02/13(木) 02:09:48.77 ID:T03rt9fi0
クールP「午前のステージはRISAと……ああ、ラビッツムーンとナチュラルラヴァースも来るそうだ」

爛「へーえ、安部先輩と相葉先輩がねえ。ちょっと学園に同盟の戦力割きすぎじゃねえか?」

クールP「初日に結構な騒動があったからね。警戒してるのさ」

爛「ま、そういう事ならしゃあねえか。俺は十二時までに戻ってくりゃあいいな?」

壁の時計をちらりとみやった爛は、傍にあった変装用の帽子とサングラスを装着した。

クールP「うん、楽しんで来るといいよ。菜々君や夕美君にあったらよろしくね」

爛「あいよー」

こちらを向かずに手だけ振りながら、爛は教室を後にした。

クールP「さて、ライラは衣装合わせだよ。いくつか用意したけど、気に入ったのはあるかな?」

ライラ「そうでございますねー」

ライラはしばらく、並べられた衣装とのにらめっこを続けた。

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160 : ◆llXLnL0MGk [sage saga]:2014/02/13(木) 02:11:00.86 ID:T03rt9fi0
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エマ「おっちゃーん! コレ一個ちょーだい!」

マルメターノ「まいどあり!」

エマは屋台の男に小銭を手渡し、丸まったソーセージに豪快にかぶり付く。

エマ「うっまー!!」

サヤ「楽しそうねえ、エマったら」

マキノ「ええ、そうね。…………」

サヤへの返事もそこそこに、マキノは先ほどから周囲をせわしなく見回している。

サヤ「……どうかしたの?」
161 : ◆llXLnL0MGk [sage saga]:2014/02/13(木) 02:12:51.45 ID:T03rt9fi0
マキノ「みりあさん……今日は来ていないのかしら?」

サヤ「みりあ……ああ、昨日言ってた?」

エマ「もご、マリナさんが親代わりしてるって子だっけ?」

ソーセージをほお張ったまま、エマがこちらへ戻ってきた。

マキノ「飲み込みなさい。……ええ、そうよ。まあ、初日にあんな騒動に巻き込まれては……」

もうここには顔を出さないかもしれない。そう続けようとして、口をつぐむ。

彼女――赤城みりあは、脱走した親衛隊員マリナの重要な手掛かり。

それが潰えたなどと、自分から口に出すのは、どうしてもはばかられた。
162 : ◆llXLnL0MGk [sage saga]:2014/02/13(木) 02:14:10.99 ID:T03rt9fi0
エマ「んー。じゃあさ、あのマスク・ド・メガネってのを探したら?」

サヤ「あっ、そうねぇ。その子だったら来てるかも」

マスク・ド・メガネ――上条春菜。

眼鏡を愛し、眼鏡を護るべく、眼鏡と共に闘う眼鏡ヒーロー。

昨日、マキノはカースドヒューマンに襲撃されたところを、彼女に助けられた。

そしてその時、マキノは春菜に利用価値を見出していた。

マキノ「そうね……春菜さんなら、まだ来ている望みがあるかしら」

今のうちに積極的に接触し、協力的な態度をとっておけば、いずれ来たる時にこちらの要求を呑ませやすくなる。

マキノはそう考え、静かにうなずいた。
163 : ◆llXLnL0MGk [sage saga]:2014/02/13(木) 02:16:12.06 ID:T03rt9fi0
マキノ「……なら、今のうちに彼女に恩を売っておきましょうか」

サヤ「恩を?」

マキノ「ええ。二人とも、昨日の妙なカースを覚えているかしら」

エマ「ああ、昨日ぶっとばしたアイツらな!」

レンズのような形状の核を持ち、眼鏡への恨み言を口にする奇妙なカース。

眼鏡を恐れるナニカを思った黒兎が産み出した、アンチメガネカースだ。

マキノ「今朝の放送では、どうやら人型に化けた個体も現われたとか」

サヤ「そういえば、そんな臨時ニュースやってたわねえ」

マキノ「眼鏡を嫌うカース……少なからず、春菜さんとは敵対しているはずよ」

エマ「……あ、そっか! じゃあソイツらを倒しておけば……」

マキノ「ええ。多少なり春菜さんに恩を売れるのでは無いかしら」

マキノは微笑んで眼鏡をくい、と上げる。
164 : ◆llXLnL0MGk [sage saga]:2014/02/13(木) 02:17:26.75 ID:T03rt9fi0
サヤ「んふっ、なら善は急げね。手分けして例のカースを探しましょっか」

エマ「えっ、サヤもう体いいの?」

サヤ「ええ、カース相手なら多分ねぇ」

マキノ「オクトの調子もいい……分担する案に賛成ね。じゃあ、エマには学園内を探してもらおうかしら」

エマ「オッケー!」

マキノ「サヤは空から学園周辺を探索して。私は裏山を中心に学園の外を探すわ」

サヤ「分かったわぁ」

マキノ「13:00に一度中断して正門前で情報を交換しましょう。あと、危険を感じたらすぐに逃げること」

マキノが矢継ぎ早に繰り出す言葉に二人はただうなずく。
165 : ◆llXLnL0MGk [sage saga]:2014/02/13(木) 02:18:43.17 ID:T03rt9fi0
マキノ「春菜さんに会ったら私の友人だと言っておいて。これが写真よ」

マキノは二人に春菜の顔写真を手渡した。

サヤが地上のヒーロー資料を作る際に出た余りである。

エマ「おっし、やるよ! 行こっか、ルカ!」

『カララ』

地面からひょっこり顔を出すルカのヒレを一撫でし、エマの姿は人込みの中に消えていった。

サヤ「また後でね、マキノ。ペラちゃん、こっちよぉ」

『キリキリ』

サヤもまた、ペラを連れて人気の無い場所へと歩いていく。

マキノ「…………まあ、あと三日あるし、休暇はその時でいいわよね」

誰に向けて言うでもなく、マキノは自分にそう言い聞かせた。

マキノ「私たちも行くわよ、オクト」

『ゴロンゴロン』

光学迷彩を展開するオクトにそう言うと、マキノは裏山へ向けて歩を進めていった。

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166 : ◆llXLnL0MGk [sage saga]:2014/02/13(木) 02:19:57.10 ID:T03rt9fi0
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京華学院正面。

賑やかな雰囲気に似つかわしくない、黒服とサングラスで身を固めた者達が立っていた。

隊員A「隊長、やっぱり例の小人、この学園周辺に目撃情報が集中してるみたいです」

隊員C「『すずみやさん』……いるんですかね?」

隊長「探してみない事には分からんな。念の為に言っておくが、本来の目的は星花お嬢様だ。忘れるなよ」

隊員D「ええ。『すずみやさん』はあくまでも手掛かりの一つ、ですよね」

彼らは涼宮家総裁の指示で動く涼宮星花捜索隊。

現在は涼宮星花及び、星花に似た姿の小人――仮称『すずみやさん』の行方を追っている。
167 : ◆llXLnL0MGk [sage saga]:2014/02/13(木) 02:21:25.27 ID:T03rt9fi0
〔メイド喫茶エトランゼ ☆秋炎絢爛祭出張店☆〕

そう書かれた看板であった。

隊長「…………」

隊長はその看板を見つめたまま、しばし固まった。

隊長(……メイド、メイドか…………考えれば、お嬢様は長い家出生活で元の生活が少しだけ恋しくなっているかもしれない)

隊長(そう、多数のメイドや執事に囲まれていたあの日々が……)

隊長(つまり、それを紛らわす為に「もうまがい物のメイドでもいいや」と考えているかもしれん……)

隊長(すなわち……お嬢様がこのメイド喫茶に来ている可能性は決して低くない!)

隊長(そうと決まれば早速エトランゼへ行こう! 断じて私がちょっとお茶したいわけではないがな!)

自分の中で長い長い自分への言い訳を終えた隊長は、足早に歩き出した。
168 : ◆llXLnL0MGk [sage saga]:2014/02/13(木) 02:22:58.17 ID:T03rt9fi0
が、周りが見えていなかったのか、右から歩いてきた女性とぶつかってしまった。

隊長「おっと……すまない、少し考え事をしていて」

瞳子「いえ、こちらこそごめんなさい」

隊長「すまなかった。では、私は少し急ぐので」

そう言って隊長は早足でその場を後にした。

瞳子「あっ……行っちゃった。……にしても」

瞳子はポケットから学園の地図を取り出して広げ、上下左右にクルクル回しながら眺めた。

瞳子「一学園内なんて限られた範囲じゃあの機械も詳しく表示されないし……困ったわね」

現在瞳子は、櫻井財閥のエージェントとして『鬼神の七振り』を探してこの秋炎絢爛祭を訪れている。

が、京華学院の広さを正直なめていた瞳子は、あっという間に迷ってしまったのだ。

瞳子「……夏美ちゃんや美優やレナも誘えば良かったかしら……」

エージェントの仕事ということを隠していればそれも可能だったか、と瞳子は後悔する。

せめてエージェントの同僚が来てはいないだろうか、とも考える。

実際に紗南やチナミなど、何人かのエージェントは今学園にいるのだが……。

瞳子「そう簡単に会えたら、苦労は無いわよね……」
169 : ◆llXLnL0MGk [sage saga]:2014/02/13(木) 02:24:40.12 ID:T03rt9fi0
爛「そうだ、アレ知ってるか?」

瞳子「アレって……何を?」

包み紙をクシャクシャにまるめ、ゴミ箱に向けて放り投げてから爛は続けた。

爛「俺の担当プロデューサーから面白い話聞いてな。眼鏡大好きカースと眼鏡大嫌いカースが出てきたらしい」

瞳子「……また奇妙なのが出てきたわね」

爛「サク……あんま大っぴらに言うのはまずいな。アイツ、カースの核集めてたろ?」

瞳子「ええ、私とマリナが七振り探しと並行して集めているけど」

爛「そういう特殊なヤツの核はどうなのかねー、と思ってよ」

瞳子「そういうこと。情報をありがとう、見つけたら回収しておくわね」

爛「おう。…………あっ」
170 : ◆llXLnL0MGk [sage saga]:2014/02/13(木) 02:26:26.39 ID:T03rt9fi0
ふと視線を瞳子から外した爛が、突然瞳子の陰へと隠れた。

瞳子「……どうしたの?」

爛「…………プリンセスだ」

爛がゆっくりと指差した先に居たのは、幼い少女と少しチャラ着いた印象の少年。

コハル「人がいっぱいですね〜、プテ……えっと、翼おにいちゃん」

プテラ「はぐれちゃ駄目だよ、小春」

コハル「は〜い。そういえば、何で今日は翼おにいちゃんだけなんですか〜?」

プテラ「大牙(ティラノ)はここで今働いてるし、父さん(ブラキオ)は父さんで株? ってのやってるからね。
   よくわかんないけど、ちょっと目を離すだけで大損することもあるんだってさ」

コハル「よくわかんないです〜」

プテラ「うん、僕も。あと、ヒョウくんは目立ちすぎちゃうからね」

古の竜のプリンセス・コハル(偽名・古賀小春)と、その従者の一人であるプテラマーシャル(偽名・古賀翼)だ。

瞳子「あの子が、例のプリンセス? ……なんだかそんな感じはしないわね」

爛「人間の姿は見せた事ねえし変装もしてるが……一応離れっか。じゃあな」

瞳子「ええ、またね。…………」

帽子を目深に被り、その場を早足で離れる爛を見送った瞳子。

自分の状況が一切好転していない事に気付くのは、この五秒後の事である。

続く
171 :@設定 ◆llXLnL0MGk [sage saga]:2014/02/13(木) 02:29:07.46 ID:T03rt9fi0
・エマ(地上人名・仙崎恵磨)

職業(種族)
ウェンディ族

属性
装着系変身ヒール

能力
アビスマイル装着による物質潜航能力
優れた身体能力

詳細説明
海皇宮親衛隊の一員。
急逝した母の代わりに親衛隊に入ったので、一部の人間から「七光り」と陰口を叩かれている。
本人もそれを気にはしているものの、大声を張り上げて喋る事であえて考えないようにしている。
しかし、第三者の目が無い時には偶に弱音を吐いたりもする。
相棒のルカを身に纏い「アビスマイル」に変身する。

関連アイドル
ヨリコ(上司)
カイ(同僚)

関連設定
ウェンディ族
海底都市
戦闘外殻

・ルカ
エマの相棒である戦闘外殻。外見はギターを背負った金属製のイルカ。
元々はエマの母親の相棒で、ギターは後からつけられた。
エマの母親にあわせて穏やかな性格になった為、現在エマには少々振り回され気味。

・アビスマイル
エマがルカを身に纏いウェイクアップした姿。
元々は装着者の美しい歌声で周囲の機器や相手の神経を狂わせる戦闘外殻だった。
しかしエマとの相性は最悪で、急遽複数の音波兵器を装着する応急処置を施した。

・サウンドビット
背中に格納した六基のスピーカーユニットを射出し、相手に全方向から音波を浴びせる。

・ブレイクソウル
ギター型音波兵器で相手に音波をストレートにぶつける。

・デストラクションアッパー
ギター型音波兵器で発した音波をスピーカーユニットで増幅し、一気にぶつける大技。
172 :@設定 ◆llXLnL0MGk [sage saga]:2014/02/13(木) 02:30:35.56 ID:T03rt9fi0
・マキノ(地上人名・八神マキノ)

職業(種族)
ウェンディ族

属性
装着変身系ヒール

能力
優れた身体能力

詳細説明
海皇宮親衛隊の一員。
「自分の命より大事なのは海皇だけ」を信条に、危険ならすぐに撤退する。
その為、一部の人間から「臆病者」と陰口を叩かれているが、本人は一切気にしていない。
相棒であるオクトを身に纏い「アビストーカー」に変身する。

関連アイドル
ヨリコ(上司)
カイ(元同僚)

関連設定
ウェンディ族
海底都市
戦闘外殻

・オクト
マキノの相棒である戦闘外殻。姿は巨大な金属製ミズダコ。
普段何を考えているか、相棒のマキノでさえ分からなく不気味。

・アビストーカー
マキノがオクトを身に纏いウェイクアップした姿。
光学明細や煙幕を搭載し、隠密・諜報・暗殺を得意とする。

・アサシンテンタクル
背中から展開した触手に仕込んだ針で相手を刺し殺す。

・ブラックミスト
腹部から黒い煙幕を噴射して敵をかく乱する。

・スーサイドボンバー
ミサイルとして発射も可能な自爆用爆弾。
173 :@設定 ◆llXLnL0MGk [sage saga]:2014/02/13(木) 02:32:22.38 ID:T03rt9fi0
・ハナ
アイが受領した戦闘外殻。姿は大型の金属製モンハナシャコ。
完成したばかりなので自我はまだ完成しきっていない。
ウェイクアップしなくても相当の戦闘力を持つ。

・アビスグラップル
アイがハナを纏いウェイクアップした姿。
身体能力が全体的に底上げされ、特に拳を振るスピードは時として音速を超える。

・ナイフ
以前からアイが愛用していたナイフ。拳のスピードアップで殺傷力がオリハルコンを切り裂けるほどに増した。


・イベント追加情報
爛が変装して出店をまわっています。

○マキノが裏山中心にみりあ、春菜、アンチメガネ
○エマが学園内で春菜、アンチメガネ
○サヤが上空から春菜、アンチメガネ
○捜索隊が学園外で星花、すずみやさん
○捜索隊長がエトランゼ(出張店)へ向かいながら星花、すずみやさん
○瞳子が学園内で鬼神の七振り、メガネ、アンチメガネ
をそれぞれ探しています。

コハルとプテラが学園祭を訪れています。
174 : ◆llXLnL0MGk [sage saga]:2014/02/13(木) 02:36:00.69 ID:T03rt9fi0
以上です
我ながら色々探しすぎだ今回……

マルメターノ、かわしまさん、何人か名前だけお借りしました
175 : ◆AZRIyTG9aM [sage]:2014/02/13(木) 02:47:13.88 ID:AAcbE3vK0
乙ー

みんな暗躍しすぎ!
ところで>>168>>169の間ぬけてる?
176 : ◆llXLnL0MGk [sage saga]:2014/02/13(木) 08:56:16.87 ID:KMdKvqCR0
やらかした(絶望)
>>168>>169の間にこれ入ります↓

はあ、とため息をつく瞳子。

爛「……瞳子か?」

瞳子「へっ?」

突然、サングラスをかけた少女のような少年に後ろから話しかけられ、瞳子は思わず変な声を上げた。

瞳子「…………もしかして、ラプ……じゃない、爛?」

爛「当たり。どした、仕事か? 迷子か? 両方か?」

瞳子「……恥ずかしい話だけれど、両方よ」

瞳子は、同僚に会えた安堵と迷っている事を見透かされた羞恥のまじった複雑な表情を浮かべた。

瞳子「それより、爛はどうしてここに?」

爛「仕事だよ、アイドルヒーローの方だけどな。今は休憩中」

爛は言いながら手に持っていた食べかけのフライドチキンを骨ごと噛み千切る。

瞳子「そうだったの」

177 : ◆Nb6gZWlAdvRp :2014/02/13(木) 16:40:27.56 ID:5ZSo5F4DO
学園祭で短いの投下ー
178 : ◆Nb6gZWlAdvRp [sage saga]:2014/02/13(木) 16:41:28.33 ID:5ZSo5F4DO
 休憩時間の間にスタンプを埋めてしまおうと決めた美穂と肇の二人は、短時間で9ポイントを稼ぐべく高得点のスタンプを求めて学園内を回っていた。

美穂「たしかこの地区には3ポイントのスタンプを持った人が配置されてるはず……」

肇「あ、あれ……でしょうか」

 肇が指し示す方を確認すると、確かにスタンプカードを手にした人々が大行列を作っている。
 行列の向かう先を見ると休憩用の空きスペースに伸びているため、売店やトイレの行列というわけではないから、やっぱりこれはスタンプ待ちの列なのだろう。

美穂「これは……並んでる間に休憩終わっちゃうよね?」

肇「でしょうね……しかし、どうしてこんな行列ができるほどに賑わっているのでしょうか?」

美穂「確かに気になるかも……えっ」

 二人が列の伸びるその先、休憩所を覗くとそこには……
179 : ◆Nb6gZWlAdvRp [sage saga]:2014/02/13(木) 16:43:17.99 ID:5ZSo5F4DO
拓海「ラスト行くぞっ」

 カミカゼスーツのヘルメットだけを脱いだ拓海が居た。
 ピン、と拓海の右手から跳ね上げられたコインが失速し、やがて落下していくと……拓海の肩の辺りの高さでコインは忽然と姿を消し、代わりに握った拳が突き出される。

拓海「さあ、どっちだ」

金髪の少女「……ふぇ、フェイフェイさん」

中華服の少女「ンー、左手ダネ?」

拓海「当たりだ。ほら、スタンプ押すからカード出しな」

中華服「おねーさん結構速かったケド、あれじゃまだフェイフェイは騙せないヨー」

金髪「わたくしには全く見切れませんでしたの……」

中華服「桃華はもっと眼を鍛えるべきネー」

金髪「無理を言わないでくださいまし……」
180 : ◆Nb6gZWlAdvRp [sage saga]:2014/02/13(木) 16:44:17.48 ID:5ZSo5F4DO
 交流の一環で他校の生徒も番人をやるとは聞いていたが……

美穂(まさかアイドルヒーローが番人やってるなんて思わないよ……)

肇(拓海さん……大人の方が高校の出し物に参加してもよいのでしょうか……)

美穂「うう……できればお話とかしたいけど、時間無いし他のスタンプ探そうか」

肇「そうですね……移動しましょうか」

 二人は(特に美穂が)名残惜しそうにその場を後にした。

………………

…………

……
181 : ◆Nb6gZWlAdvRp [sage saga]:2014/02/13(木) 16:45:36.84 ID:5ZSo5F4DO
拓海「よーし次……お、久しぶりだな、憤怒の街以来か?」

友香「そう、なりますね。お久しぶりです拓海さん」

 行列を捌く拓海の前に現れたのは、以前憤怒の街で出会い、戦い、稽古し……そして共闘した少女だった。
 あの後何度か手合わせのために会おうとしたのだが、互いの都合がつかず今日まで再開が叶わなかった相手だ。
 自然と、拓海の顔に笑みが浮かぶ。

拓海「順番待ちの間で把握してると思うけど、一応ルールの説明するぞ」

拓海「アタシが跳ね上げたコインを左右どっちかの手でキャッチするから、どっちの手でとったか当ててもらう」

拓海「最大で5回やって、3回以上正解すればスタンプ3ポイントだ」

友香「分かりました」
182 : ◆Nb6gZWlAdvRp [sage saga]:2014/02/13(木) 16:46:24.58 ID:5ZSo5F4DO
拓海「じゃあ早速1回目いくぞ」

 宣言してコインを跳ね上げる。コインはやがて失速して落下を始め……

拓海「んなっ!?」

 目の高さまで落ちてきたところで友香が動いた。

友香「……右手、ですね」

拓海「……ちょっとこりゃズルいんじゃねーか?」

 拓海の左手は、友香が伸ばした右手を押さえており、右手で宙を握っている。
 確かに、この状況なら右手で確実だが……

友香「反則について何も言ってませんでしたよね?」

拓海「ぐっ……あー、くそ。正解でいい」

 苦々しげに右手を開くとコインが現れる。
183 : ◆Nb6gZWlAdvRp [sage saga]:2014/02/13(木) 16:47:09.92 ID:5ZSo5F4DO
拓海「2回目いくぞ」

友香「どうぞ」

 拓海の手からコインが離れ……直後に消える。

友香「!?」

拓海「『落ちてきたところをキャッチする』とは言ってないよな」

友香「うっ……ひ、左」

拓海「外れだ」

 右手を開いてコインを見せる。

拓海「3回目、いくぞ」

友香「……どうぞ」
184 : ◆Nb6gZWlAdvRp [sage saga]:2014/02/13(木) 16:47:59.69 ID:5ZSo5F4DO
 宣言はしたものの、一向にコインが浮き上がらない。
 二人は徐々に足を開いて腰を落とし、暫くしてようやくコインを跳ね上げると――




 二人の手が消えた。




 一部始終を見ていた客は後に語る。

「あの日あの時あの場所は、間違いなく戦場だった」

と――

おわり
185 : ◆Nb6gZWlAdvRp [sage saga]:2014/02/13(木) 16:48:53.07 ID:5ZSo5F4DO
拓海がスタンプの番人になったようです


美穂、肇、ちゃま、フェイフェイ、友香を借りました

本当はあいさんでやりたかったけどタイミング的に海底から引っ張ってくるの無理ゲーなんで友香を代役に立てた
186 : ◆AZRIyTG9aM [sage]:2014/02/13(木) 17:22:58.70 ID:0EB8jmcPO
乙ー

ナニコノムリゲ

というかハンターハンター思い出したwww
187 : ◆zvY2y1UzWw [sage]:2014/02/13(木) 18:06:54.63 ID:C01bFyu70
乙です

>>170
いろいろ動き出したみたいでわくわくすっぞ!
アンチメガネカース狙われすぎワロタ

>>185
ムリゲすぎじゃないですかーやだー
というか別ゲーはじまってるじゃないですかー
188 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/02/13(木) 18:55:54.60 ID:PRah6o3To
>>174
大勢集まってきて色んな思惑が交錯してる感がある、わくわく
瞳子さんは相変らず残念気味である、頑張れ瞳子さん

>>185
スタンプラリーにたくみんktkr、美穂組お嬢様組も動いてて歓喜
コインゲームは能力バトルである。VSあいさんとかものすごい事になりそうだ

お二方乙です!
189 : ◆llXLnL0MGk [sage]:2014/03/02(日) 16:05:33.20 ID:jtdOJliV0
復旧したので避難所投下分いきまー

・◆llXLnL0MGk当人
・◆Mq6wnrJFaM氏(旧・◆Nb6gZWlAdvRp氏)
・◆tsGpSwX8mo氏
以上の三名分でお送りします
190 : ◆llXLnL0MGk [sage saga]:2014/03/02(日) 16:07:00.01 ID:jtdOJliV0
・◆llXLnL0MGk当人分

肇「……ふう」

万年桜の下、肇は背負った荷物を下ろす。

肇「結構、減りましたね」

肇の祖父がこしらえた、カースの核を内蔵した妖刀『鬼神の七振り』。

肇の手で、あるいは肇の知らない所で、次々と持ち主が決まっていく。

日本一大食いな刀、『暴食』の「餓王丸」は、京の妖怪退治屋……脇山珠美へ。

日本一横暴な刀、『傲慢』の「小春日和」は、今は肇の友人となっているヒーローの少女……小日向美穂へ。

日本一欲張りな刀、『強欲』の「月灯」は、とある元アイドルヒーロー……水木聖來へ。

日本一自堕落な刀、『怠惰』の「逆刃刀・眠り草」は、付喪神の少女と同居する能力者の女性……松永涼へ。

いずれも、それぞれの持ち主によってその力を遺憾なく発揮している。

え、眠り草? ……うん、多分眠り草は眠り草なりに何かしらを発揮していると思われる。

未だ持ち主の現われない刀もあるが……。

肇「……でも、ようやく折り返し地点ですね」

にこっと微笑んで、肇はその場に腰を下ろした。

今日は勤め先であるメイド喫茶・エトランゼが休みであり、こうして散歩にやってきたわけである。

本当は美穂も誘いたかったのだが、あいにく友人である卯月や茜と予定が入っているという事だった。

それなら仕方ないと、一人で訪れたこの公園。

思えば、美穂と肇が最初に会ったのもこの場所だった。

お互いに初めて相手を見たのが寝顔という、奇妙な出会い方であった。

そんな事を考えていたら、だんだんとまぶたが重くなってくる。

万年桜の力なのか、この公園は一年中春先の昼下がりのような暖かい空気に包まれている。

肇「…………ふわぁ」

こんな絶好のお昼寝シチュエーションに耐えられるわけもなく、肇はあっさりその場で転寝をしてしまった。

その時にポケットから財布が転げ落ちたことなど、気付くはずも無く。

――――――――――――
――――――――
――――
191 : ◆llXLnL0MGk [sage saga]:2014/03/02(日) 16:09:12.94 ID:jtdOJliV0
――――
――――――――
――――――――――――

そしてこの公園に、もう一人訪れた者がいた。

アイ「……ここだけ暖かいな…………あの季節外れな桜の力かな?」

地下世界出身の傭兵アイと、彼女が連れる戦闘外殻のハナだ。

彼女がここを訪れた理由、それは……。

アイ「うん、ここなら近隣一帯を見渡せるな。さて…………」

周囲を見渡しながら、小高い丘を上っていくアイ。

平たく言ってしまえば、新居探しである。

アイは地上に活動拠点を持っていない。

今まではホテル暮らしで、カイ抹殺、及び奪還依頼を受けてからはたまに海底都市で寝床を提供されていた。

しかし、先日のタカラダ・トミゾの誘拐依頼。

あの一件で、ハナを常に連れるのはハナ自身にとって非常に危険であると考えた。

かと言って、ハナを預け、引き取りする為だけに海底都市と地上を往復するのも非効率的すぎる。

その為、依頼が無い時などにこうして、『ハナを安心して預けられる活動拠点』となりうる場所を探しているのだ。
192 : ◆llXLnL0MGk [sage saga]:2014/03/02(日) 16:11:41.80 ID:jtdOJliV0
アイ(……最初はただの道具としか思っていなかったが……ここまで情がうつるとは、自分でも驚きだね)

苦笑するアイは、やがて丘の頂上……万年桜の根元にたどり着いた。

アイ「おや?」

肇「すぅ……」

少女が一人、根元に座り込んで眠っている。

その足元に、彼女のものらしき財布が転げているのが見えた。

アイ「無用心な……」

アイはその財布を拾い上げ、一応彼女のものか確認する為に起こそうと肩に手を……。

アイ「む?」

その時、彼女の背中の荷物に気付いた。

アイ(模造刀……かな? ちょっと失礼……)

財布を彼女の膝上に置き、何かに促されるように内一本へと手を伸ばす。

手に取った刀の鞘には、茨の蔦が絡みついたような装飾が施されている。

少しだけ鞘から抜いてみると、まるで鋸のようなギザギザの刃が顔を覗かせた。

アイ(刃の色艶といい重量といい……模造刀では無いようだな)
193 : ◆llXLnL0MGk [sage saga]:2014/03/02(日) 16:15:07.72 ID:jtdOJliV0
??(そうよ)

アイ「ッ!?」

突然何者かから話しかけられ、アイは反射的に振り向いた。

しかし、そこには誰もいない。視線を落とせばハナがこちらを見上げるだけである。

『ギギン?』

アイ「……?」

怪訝そうに周りを見回し続けるアイ。しかし声の主の姿は見えず、声のみが聞こえてくる。

いや、聞こえるというよりは、脳に直接響いてくるような感じだ。

十代半ば頃の少女、といったような印象を受ける。

??(アタクシは正真正銘の真剣。模造刀なんかと一緒に……って、何をキョロキョロしてるの? ここよ、こ・こ)

この言葉で、アイは気付いた。

アイ(『アタクシは正真正銘の真剣』…………もしや、この刀が喋っているのか?)

??(ええ、そうよ)

アイ(驚いたな、長く傭兵をやってきたが、言葉を話す刀なんて物には初めて会ったよ)

アイは刀と脳内を通じて会話しながら、ゆっくりと刃を鞘に戻した。
194 : ◆llXLnL0MGk [sage saga]:2014/03/02(日) 16:17:34.30 ID:jtdOJliV0
茨姫(アタクシは茨姫っていうの。鬼才・藤原一心が魂を込めて作り上げた妖刀『鬼神の七振り』の一本よ)

アイ(鬼神の七振り? 君と似た物があと六本あるのかい?)

茨姫(ええ。アタクシは別名『日本一、嫉妬深い刀』っていうの)

アイ(妖刀……七……嫉妬……ははあ、大体分かった。君達はカースの……いや、呪いの力をその刀身に封じ込めているわけか)

茨姫(驚いた。それだけの情報であっという間に的中させちゃうなんて……アナタ賢いのね)

茨姫(それにすごく強そうだし……うふふ、気に入ったわ)

アイ(気に入った……とは?)

茨姫(アナタ、アタクシの持ち主になってちょうだいな)

アイ(私が……? いやしかし、君は本来彼女の物ではないのかい?)

アイが眠る少女の方をちらと横目で見やる。と、

肇「……あっ」

いつの間にか少女……肇は起きていて、こちらをじっと見つめていた。

肇「……よいしょ」

肇は財布をポケットに仕舞うと立ち上がり、こちらにゆっくり歩み寄ってきた。

アイ「あ、いやすまない。盗もうとしていたんじゃないんだ。ちょっと見せてもらっていただけで……」

アイの言い訳も聞かず、肇はなおもアイとの距離を詰め、茨姫の鞘をぎゅっと握った。
195 : ◆llXLnL0MGk [sage saga]:2014/03/02(日) 16:19:30.54 ID:jtdOJliV0
肇(……初めまして、藤原肇と申します)

アイ(えっ……あ、私はアイという。こっちは相棒のハナだ)

アイの脳内に、茨姫とは違う少女の声が響いてくる。

恐らくは、この肇という少女の声なのだろう。

肇(アイさん、ですね。茨姫と話されていたようでしたが……)

アイ(ああ。なんでも、私に持ち主になってほしい、と言うんだが……)

肇(そうなの?)

茨姫(ええ、そうよ。アタクシ、アイの事すごく気に入っちゃったの!)

肇(そう。……アイさん、茨姫の事を貰ってあげてくれませんか?)

アイ(……君は、この刀の製作者の家族なのだよね?)

肇(はい。藤原一心は私の祖父です)

アイ(いいのかい? 私は金で雇われる傭兵だ。依頼によっては、お祖父さんが打った大事な刀で悪事を働くかも……)

肇(大丈夫です。茨姫が気に入ったというのなら……あなたはきっと、根は優しい人なんでしょう)

アイ(…………っ、私が……かい?)

茨姫(ええ、アタクシ感じたの。アイの心の奥の奥、とても暖かかったから)

茨姫(きっと、とてもとても酷い事を頼まれたら、アイは難癖つけて断ると思うわ!)
196 : ◆llXLnL0MGk [sage saga]:2014/03/02(日) 16:20:57.17 ID:jtdOJliV0
アイ(…………買いかぶりすぎだよ、私は単なる傭兵。依頼を受ける基準は内容よりも報酬さ)

肇(いえ、そんな事はありません。鬼神の七振りは人間の感情を封じ込めて生まれた刀、人の心には敏感ですよ)

茨姫(眠り草ほどじゃないけど、アタクシも持ち主の心くらい見えるのよ?)

アイ(…………そうまで言うなら、受け取ろう。ただし、後悔する事になっても知らないよ?)

肇「ありがとうございます。ただ、後悔はしないと思います」

いつの間にか茨姫の鞘から手を離していた肇が、アイの前で初めてその口から言葉をつむいだ。

アイ「ふふ、なかなか言うじゃないか、肇君」

アイが微笑んで茨姫を腰のベルト穴に差した。

アイ「……そうだ、肇君。少しいいかな?」

肇「はい、なんでしょうか?」

アイ「この辺りに、その……何だ、セキュリティ的に信頼出来る宿泊所のような物を知らないかな?」

肇「……うーん、一応私のバイト先に、小さいけれど寝泊りするスペースがありますよ」

肇は少し考え込んでから発言した。

アイ「ほう、バイト先とは?」

肇「はい、エトランゼっていうメイド喫茶です」

アイ「め、メイド喫茶……?」

アイの脳裏に、メイド喫茶で働く自分の姿が浮かんだ。
197 : ◆llXLnL0MGk [sage saga]:2014/03/02(日) 16:22:16.44 ID:jtdOJliV0
〜〜

アイ『お帰りなさいませご主人様、ウフフッ☆』キャピッ

〜〜

アイ『アイぴょんはぁ、アンダーワールドからやってきた永遠の23歳なんでぇす♪』フリフリッ

〜〜

アイ『オムライスがもーっと美味しくなる魔法、かけちゃまーす(はぁと)』キュンキュンッ

〜〜

アイ『ハイご主人様、あーんミ★』アーン

〜〜

アイ『いってらっしゃいませ、アイはいつまでもお帰りをお待ちしておりますわ』メガネクイッ

〜〜
198 : ◆llXLnL0MGk [sage saga]:2014/03/02(日) 16:24:10.39 ID:jtdOJliV0
アイ「……も、申し訳ないが、そこは遠慮しようかな」

茨姫(あら、可愛いじゃない)

自分で言うのもなんだが、似合わなすぎる。

肇「そうですか……」

肇は少ししょんぼりした様子だ。

アイ「どうしたものか……」

二人が悩んでいると、遠くから肇に声をかける者がいた。

??「……ん? あれって…………おーい」

近寄ってきたのは、少し柄の悪そうな男。

アイは反射的に軽く身構えた。

肇「え……あ、あなたはあの時の……」

??「やっぱあん時のバンダナちゃんか。お陰で助かったぜ」

肇「いえ、お礼を言われる程の事はしていません」

П「そういや名前言ってなかったな。俺ぁПだ」

肇「そういえばそうですね。藤原肇です」

アイ「……肇君、彼は……?」

二人があまりにもにこやかに話しているので、アイは警戒を解いて肇に質問した。
199 : ◆llXLnL0MGk [sage saga]:2014/03/02(日) 16:26:03.82 ID:jtdOJliV0
肇「ええと、以前暴れていた、人の性格を反転させるカピバラ怪人の事はご存知ですか?」

アイ「ああ、話には聞いた事があるな」

宇宙からの刺客、ヘレンが送り出した二体の獣型怪人の片割れ、ハンテーン。

相棒のアバクーゾと共に好き勝手暴れていたが、最後は美穂――ひなたん星人の手によって討たれた。

その後、AIだけを抽出されて何処ぞの地底人が自動掃除機等に活用していることまでは、ごく一部の者しか知らないが。

肇「その騒ぎの時に、ちょっと縁がありまして」

アイ「そういうことか。私はアイだ、よろしく」

П「おう。改めて、俺はП。『女子寮』の管理人をやってる」

アイ「……女子寮?」

Пという男の言葉に、アイが食いついた。

アイ「質問させてもらうが、その女子寮とやら、セキュリティはいかほどかな?」

П「セキュリティ? ……あー、とりあえず神がいるな」

Пの脳裏に浮かぶのは、何故か自分の部屋で好き勝手しまくっている自称女神、鷹富士茄子の笑顔。

以前はよく怒りに任せて尻を引っ叩いたり抓ったりしていたが、最近は呆れてそんな気も起きない。

自然とため息が出そうになるが、ここは一応こらえる。
200 : ◆llXLnL0MGk [sage saga]:2014/03/02(日) 16:28:34.98 ID:jtdOJliV0
アイ「か、神…………まあ、こんな世界だから、そういう事も珍しくは無いか……無いのかな?」

肇「さ、さあ……どうなんでしょう?」

П「まあそんなわけで、セキュリティは万全……多分万全だ」

ほかに貧乏神とかもいたが、説明が面倒なんで省いておく。

アイ「ふむ……今部屋に空きは?」

П「ん、まだまだあるな。なんだ、入寮希望か?」

アイ「そうだね、入寮に制約などが無いのならお願いしたいけれど」

П「いいぜ。いくつか書いてもらうモンがあるから、ちょっと女子寮まで来てくれや」

そう言ってПは頭を掻きながら歩き出した。

アイ「了解した。……では肇君、茨姫をありがたくいただいていくよ」

アイは肇に小さく手を振り、Пの後についていった。

肇「はい。アイさんもお元気で」

肇もそれに手を振り返し、手元の荷物を見る。

また一本減り、更に軽くなった荷物。

それをしげしげと眺めていた肇は、やがてふふっと小さく微笑んだ。

――――――――――――
――――――――
――――
201 : ◆llXLnL0MGk [sage saga]:2014/03/02(日) 16:30:14.46 ID:jtdOJliV0
――――
――――――――
――――――――――――

数日後、とある廃工場。

黒服を着た異形の男達が、慌しく動き回っていた。

彼らは、宇宙の奴隷商人。この廃工場を拠点に、地球人を誘拐し続けていた。

そして、集まった地球人を今日、本星へ向けて出荷しようとしていたのだが……。

奴隷商人「急げ! 早く『商品』を運ぶんだ!」

奴隷商人「駄目だ! でけぇシャコに宇宙船のエンジンをやられた! もう飛べねぇ!!」

奴隷商人「な、何だと!?」

アイ「ふむ、ハナは上手くやったみたいだね」

奴隷商人「……!」

奴隷商人達の前に、茨姫を抜刀したアイが姿を現した。

奴隷商人「て、てめぇ……ヒーローか!?」

アイ「ふふ、ただの傭兵さ。ただとある資産家から『誘拐された娘を救出して欲しい』と頼まれただけの、ね」

アイが茨姫を一振りすると、茨姫の刃に付いていた血が一帯に飛び散った。

奴隷商人「ふ、ふざけやがっ……!?」

奴隷商人達が銃を構えるよりも早く、アイは茨姫を再び振るった。

茨姫の柄から生える蔦が鞭のように振るわれ、奴隷商人達の首を次々斬り落としていく。

特に表情を変える事も無く茨姫を鞘にしまうと柄の蔦が消え、茨姫の声が脳内に響いてきた。

茨姫(ね、ね、アイ。やっぱりアタクシが一番アイの役に立ってるでしょ?)

アイ(ふふ、それはどうかな。ハナもナイフも、私の大切な相棒だからね)

茨姫(もう、いぢわる。だったらアタクシ、もっと頑張ってアイの役に立っちゃうわ!)

アイ(頼りにしているよ、茨姫。さて、攫われたお嬢様を助けに……)

アイが廃工場の奥に歩を進めようとした時、後ろから三人分の足音が近づいてきた。

アイ「……誰かな?」
202 : ◆llXLnL0MGk [sage saga]:2014/03/02(日) 16:31:30.99 ID:jtdOJliV0
爛「全く知らねえってこたぁねえだろ? アイドルヒーローのラプターだ」

ライラ「同じくアビスカルでございますよー」

クールP「同じく、プロデューサーヒーローのクルエルハッターだよ」

振り向いたアイの前に立っていたのは、古賀爛――ラプトルバンディットとライラ、クールPだった。

アイ(……戦闘外殻?)

ライラの外見に少し引っかかったが、今はそれを気にしている場合ではない。

アイ「まあ、話には。で、ここに何の用かな? 奴隷商人ならたった今壊滅したよ」

アイはそう言って後方に倒れる首無しの死体達を指し示す。

クールP「なんだ、もう終わっていたのか。せっかくありさ先生にせっつかれて大急ぎで来たっていうのに」

クールPが帽子を目深に被りため息をつく。

ライラ「おお……生死体ははじめてでございます」

爛「そんなまじまじと見るモンでも……あん?」

ライラの頭をぺしぺしと叩いていた爛が、アイの腰に差してある刀を見つけた。

爛(あれは……)
203 : ◆llXLnL0MGk [sage saga]:2014/03/02(日) 16:32:33.30 ID:jtdOJliV0
アイ「私は傭兵でね。攫われた人々の解放を依頼されたのさ。まあ、これは同盟の手柄にしておいてあげるよ」

アイはくるりと踵を返し、改めて廃工場の奥へと歩いていった。

クールP「……僕達も行こう。今回の仕事は攫われた人々の解放までだからね」

クールPが早足でそれに続く。

ライラ「あっ、待ってほしいですよー」

ライラが駆け足でそれを追いかけた。

爛「…………」

爛はその場に立ち止まり、一人考えこんでいた。

爛(カースと似た気配の刀……アレがサクライの言ってやがった『鬼神の七振り』か?)

爛(随分ヤバそうなヤツが持ってやがんな……三人がかりでギリ勝てるか勝てねえか、ってトコか)

爛(傭兵ってんなら金を積みゃあ……いや、武器に拘るプロってのもいるしな……)

クールP「……? ラプター、行くよ?」

ライラ「急ぐですよー」

爛「お、おお。悪い悪いクルエル、スカル」

爛は二人に駆け寄りながら、考えに一つのけりをつけた。

爛(ま、七振りは俺の担当じゃねえし。メンドくせえから見つけなかった事にすっか)

続く
204 : ◆llXLnL0MGk [sage saga]:2014/03/02(日) 16:34:59.84 ID:jtdOJliV0
・茨姫
鬼神の七振りの一つで、『日本一嫉妬深い刀』
鞘には茨の蔦のような模様があしらわれている。
刀身は鋸のような細かい刃が無数についており、抜いた時だけ柄の先から伸縮自在の蔦が現れる。
自我を持ち、持ち主とのみ脳内を通じて会話出来る。
また自分の持ち主が他に多数の力を持っていると、
刀身の硬度や切れ味、蔦の射程などが上昇していく。
いばらきって言うと怒る。いばらぎって言っても怒る。

・イベント追加情報
アイが茨姫を受け取り、女子寮に入寮しました。

ラプター、クルエルハッター、アビスカルが奴隷商人を壊滅、人々を解放しました。
(表向きはそういう事になっています)


以上です
お借りだけで書くのは何か申し訳なく終了間際にうちのこをねじこむプレイング

肇、アイ、Пその他名前だけお借りしました
205 : ◆llXLnL0MGk [sage saga]:2014/03/02(日) 16:36:29.28 ID:jtdOJliV0
・◆Mq6wnrJFaM氏分

 少し離れたところで子供たちがはしゃいでいる。
 久しぶりに与えられた休暇、拓海は何をするでもなく辺りをぶらつき、目についた公園のベンチに腰を降ろしていた。
 いつカースが湧きだすともしれない物騒な世の中になってしまってはいたが、それでも目聡く平和な一時を見つけては遊ぶ子供を見ていると、自然と頬が緩む。

 そうしてしばらくぼうっとしていると、いつの間にやら隣に気配を感じた。

??「隣、いいかな?」

 返事を待たずに座った人物を一瞥すると、途端に拓海の表情は引き締まる。

拓海「げっ……生きてたのかよ、アイ」

アイ「酷い言い草だな、最後に会ってから一年と経ってないだろう」

拓海「てめえの職業考えろっての。で、今日は仕事は?」

アイ「もう少ししたらクライアントとの顔合わせだよ。それまで散策と洒落込んでいたら君を見かけたというわけだ」

拓海「もう普通に暮らしてりゃ一生分の蓄えはあるんじゃねーか? いつまで傭兵なんざ続けるんだよ」

アイ「さあ、どうだろうかな? 残高を気にしたことは無いからね。今の生き方が性に合っているし、五体満足なうちは続けるんじゃないかな」

拓海「アンタなら手足の1、2本くらい義肢にしてでも続けてそうなんだが」

アイ「ははっ、たしかにそうしてでも続けるかもしれないね」

拓海「物好きな奴だな」
206 : ◆llXLnL0MGk [sage saga]:2014/03/02(日) 16:38:05.34 ID:jtdOJliV0
アイ「借金してヒーローやってた人間には言われたくない言葉だね。そういう君はいつまで続けるんだい」

拓海「死ぬまで」

アイ「変わらないな」

拓海「変わらねーよ」

アイ「一匹狼はやめたのにかい?」

拓海「いや、それは事情がだな」

アイ「アイドルに怪我させたんだって? 君はそのうちやらかすと思っていたよ」

拓海「うっせ。そういやアンタは最近変わったこととかねーのかよ」

アイ「私かい? うーむ……ああ、そういえば最近ここらで活動する際の拠点を得たよ」

拓海「根無し草やめたのか、なんか意外だな」

アイ「私だって事情や心境が変わったりもするさ。……と、そろそろ頃合いかな、失礼させて貰うよ」

拓海「仕事は選べよ、あんま悪事に肩入れしてっと叩き潰すからな」

アイ「善処しよう、君と戦うのは骨が折れるからね」

拓海「どの口がほざきやがる……と、ちょっと待て」

アイ「ん、何かな?」

 立ち上がったアイを呼びとめ、何かを放る。
 受け取ってみると、それは500円硬貨だった。
207 : ◆llXLnL0MGk [sage saga]:2014/03/02(日) 16:39:36.70 ID:jtdOJliV0
拓海「いつかのコーヒー代、利子もつけとく」

アイ「おっと、これは嬉しい誤算というやつかな」

拓海「テメッ」

アイ「おお、こわいこわい。じゃあ、利子のお礼……というと妙な感じだが、一つ伝えておこうかな」

拓海「あん?」

アイ「実は最近海の底で警備の仕事をしていてね」

拓海「思いっきり敵対する気じゃねーか! ホントに骨折るぞ!?」

アイ「勘弁してくれ、仕事に障る」

拓海「ったく、覚悟しとけよ」

アイ「それは君の専売だろうに」

拓海「覚悟に特許なんざねーだろ」

アイ「それもそうだね。さて、今度こそ行かせてもらうよ」

拓海「次会ったら容赦しねーからな」

アイ「辛辣な知人だ」

拓海「悪事やめりゃこんなこといわねーよ」

アイ「無理な相談だな」

拓海「だろうな」

 アイが去っていくのを見届けた後、拓海はベンチにもたれかかる。

拓海「あー……なんか休みって気分じゃなくなっちまったし、帰って自主トレでもすっか」



 終わり
208 : ◆llXLnL0MGk [sage saga]:2014/03/02(日) 16:40:42.67 ID:jtdOJliV0
許可おりたら妄想が捗って結局本採用

書きあげてみると想定より仲良さそうな感じになっちゃったよ

というわけでアイさん借りました
アイさん人気だね
209 : ◆llXLnL0MGk [sage saga]:2014/03/02(日) 16:42:46.91 ID:jtdOJliV0
・◆tsGpSwX8mo氏分

暗い、暗い海底の底。肉眼で見えるものは何もなく、ただただ静かなこの海底に、いくつかの光が見えた。

それは、チョウチンアンコウを模したロボットから発せられる光だった。ざっと数えて5体はいるであろう。

その5体のロボットは何かを探すように海底をうろうろと動き回っていた。

その時、そのチョウチンアンコウ型ロボット、アングラとは明らかに別の機体が現れた。

刺々しい鎧に尾が生えた、まるで悪魔のような機械である。いや、この機械を、「機械」と呼ぶのは表現的に相応しくない。

これの名は、カースドアビス。海底都市の、新たな兵力である。
210 : ◆llXLnL0MGk [sage saga]:2014/03/02(日) 16:44:05.57 ID:jtdOJliV0
カースドアビス1号、アビスイービルは、アングラと同じく何かを探しているようだった。

虚ろな相貌が暗闇をにらむ。

そして、アングラのうち一体が、探し物を見つけ出した。

それを他の4機とアビスイービルにも伝える。

アングラ達の視線の先には、広大な海底遺跡があった。それも、ただの遺跡ではない。そこは、現在の海底都市を彷彿とさせる町のような遺跡だった。

ここはかつてアトランティスと呼ばれていた。今は海に沈んでいるが、昔はとても栄えた都市だったのだ。
211 : ◆llXLnL0MGk [sage saga]:2014/03/02(日) 16:45:38.11 ID:jtdOJliV0
アングラ達とアビスイービルは海底遺跡、アトランティスの内部に侵入しようとした。

しかし、突然、海底遺跡の内部から立ち上がる影が現れた。

それは銀色に輝く体を持った、戦闘外殻であった。

その名はアビスプラッシュ。この海底遺跡アトランティスの守護神である。

実のところ彼らの探し物とは、あのアビスプラッシュが守る秘宝なのだが……。

「グラー」

「グラァ!」

二体のアングラがアビスプラッシュに接近する。しかし、

「グ?!」

「グ/ラ/ァ!?」

アビスプラッシュの持つ槍によっていとも簡単に破壊されてしまう。
212 : ◆llXLnL0MGk [sage saga]:2014/03/02(日) 16:47:02.07 ID:jtdOJliV0
それを見て、アビスプラッシュに近づこうとするアビスイービル。

しかし、唐突に彼の脳内に埋め込まれた通信機に通信が入った。

撤退せよとのことである。

アビスイービルは残った3体のアングラを連れて、彼らの開発者のいる海底都市へと引き上げていった。
213 : ◆llXLnL0MGk [sage saga]:2014/03/02(日) 16:50:04.37 ID:jtdOJliV0
場所は代わり海底都市のドクターPの研究所。

彼は通信室のモニターに写し出された、遺跡とアビスプラッシュを見ていた。

「あら、2体やられちゃったわね」

その後ろで同じくモニターを眺めていた海竜の巫女。

「あぁ。あのロボット一体作るのにも金がかかるのによ。大損害だ、まったく」

ドクターPは吐き捨てるように言った。

しかし、彼はどうしても、あの海底遺跡に隠されている物がほしかったのだ。

「アビスプラッシュが守る秘宝、ヴリル……本当にあるのかしらね」

「なきゃ困るんだよ」

ヴリルとは、かつてアトランティスとして栄えていたあの海底遺跡に隠されていると言われているエネルギー物質のことである。

「あれさえあれば、戦闘外殻の能力を飛躍的に上げられる……」

ドクターPは玩具をねだる子供のような目で、言葉をはいた。

「でも今はアビスプラッシュが守ってて遺跡の中にはとても入れないんでしょう?」

「あぁ、問題はそこだ。……それにしても、アビスプラッシュ……無人で動ける戦闘外殻とは、是非捕獲して調べてみたい」

そう、あの戦闘外殻アビスプラッシュは中に人が入っていないのだ。なぜ無人で動けるのかは不明であるが。

「……そういえば無人の戦闘外殻といえば、アビスエンペラーが無人で動き出したそうじゃねえか、えぇ?」

それを聞くと巫女は苦々しげに顔をしかめてみせた。

「えぇ、そうよ。中には誰もいないはずなのに……おまけにあれは古の龍の魂がなければ動かない……」

ドクターPも顔をしかめた。

いや、ドクターPの場合は自分が興味を抱いていた戦闘外殻に逃げられたことが面白くないのだろう。
214 : ◆llXLnL0MGk [sage saga]:2014/03/02(日) 16:51:12.81 ID:jtdOJliV0
「ふん、なんにせよ早く見つけ出さねえとな」

「えぇ……」

海竜の巫女は苛立っていた。ただでさえ計画に狂いが出ているのに、これ以上何かあったら胃に穴が空きそうだ。

それに、この男も油断できない。もしかしたら不足の事態が起きて裏切るかも知れないのだ。

そこで、巫女はこの男の来歴を調べ弱味を握って、ドクターPが裏切らないよう手をうつことにしたのだった。

口を開く海竜の巫女。

「……あぁ、そういえば」

「あん?」
215 : ◆llXLnL0MGk [sage saga]:2014/03/02(日) 16:52:08.14 ID:jtdOJliV0
「あなた、エマの母親、ケイの事を知ってる?」

その名を聞いて反応するドクターP。

「あぁ。勿論だ」

「とても美しい歌声の持ち主だったそうね」

海竜の巫女は語り始めた。

「歌声だけじゃなく、人目見れば誰もが振り向くような美貌の持ち主であり、ヨリコ様からの信頼も厚かったとか」

ドクターPは名にも言わない。

「彼女とアビスマイルの相性は抜群であったそうね。親衛隊の中でもとても強い人だったとか」

「……」

やはり、何も言わない。
216 : ◆llXLnL0MGk [sage saga]:2014/03/02(日) 16:53:19.86 ID:jtdOJliV0
「でも、死んでしまったのよね」

続けてこういった。

「彼女を知る人から聞いたわ。あんなに元気だったのに突然死んでしまって」

ドクターPは無言である。いつもつけているホッケーマスクのせいで表情もわからない。

「一時期ケイは誰かに殺されたんだと言う噂もたったそうね」

海竜の巫女は言った。

「その噂は本当かもしれないわね。ねぇ、ひょっとして殺したのはあなたなんじゃないの?ドクターP」
217 : ◆llXLnL0MGk [sage saga]:2014/03/02(日) 16:54:22.54 ID:jtdOJliV0
「あぁそうだ」

ドクターPは否定しなかった。

「やっぱりね」

まるで世間話のようなやりとりだ。

ドクターPはマスクの下で低く笑った。

「くくくくく……。あいつは知ってしまったんだよ。戦闘外殻ヒュドラに使われている毒の秘密をよ…」

「それで口封じに?」

「あぁ」

そこでドクターPの笑い声は更に大きくなった。

「ふふふふふふふ!ひゃははははははは!!あの女の無様な死に顔!思い出すだけでも笑いが止まらねぇ!ぎゃはははははは!!」

ドクターPの笑い声はいつまでも響いた。

そして、唐突にその笑い声は止まる。

「わかってるだろうが……その事をばらすなよ?面倒なことになる」

海竜の巫女はニヤリと笑った。
218 : ◆llXLnL0MGk [sage saga]:2014/03/02(日) 16:55:28.23 ID:jtdOJliV0
アビスプラッシュ

鯨の戦闘外殻。
普通の戦闘外殻に比べ、一回り大きく、その身体は硬く、防御力も高い。
何より、その硬度を利用したタックルは破壊力バツグン。
また、右腕から圧縮された海水を放つことができる。

ヴリル

かつて古代に栄え、神の怒りにより沈められた王国≪アトランティス≫にあったとされるエネルギー物質。

アトランティスにあったとされるオリハルコン製の戦闘機の動力源として使用されていたといわれている。

オリハルコンの力を最大限に引き出し、無限の力を出すといわれている。

もし、これが現在で見つかり、戦闘外殻に使われたらどうなるか……それは誰もわからない。
219 : ◆llXLnL0MGk [sage saga]:2014/03/02(日) 16:56:52.64 ID:jtdOJliV0
ここまでです。

アビスプラッシュとヴリルはメタネタスレからお借りしました。ありがとうございました。

イベント情報
・アビスイービルの試験運用をしています
・エマママことケイを殺したのはドクターPのようです

お目汚し失礼します

#避難所分ここまで
220 : ◆Mq6wnrJFaM [sage]:2014/03/02(日) 18:16:22.95 ID:nGTjaAhDO
移行乙

ついでに酉チェック
221 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/03/07(金) 21:29:25.82 ID:bV/OCKiKo
多々買うことができるということはきっと幸せなことなのでしょう。
だから今回のあまりに早い登場も私はうれしいです。

     し あ わ せ


前回までのお話
前編 part8 >>440>>494
中編 part8 >>972〜part9 >>37

後編、つまり完結編です。
一番量が多くなってしまったので投下に少々時間がかかると思います。
222 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/03/07(金) 21:30:07.53 ID:bV/OCKiKo
「本当に待ちくたびれた。

やっと……来たか」

 灰色の廃墟群はすでに生活感を感じさせない。
 数か月前まで人が住み、生活していた建物はあの日、日常を壊されて以来時を止めたままである。
 憤怒の街はすでに過去のものとなったとしても、復旧の手はまだ完全には届き切らない。

 そんな無機質な情景の中、雪降る白雲の下、一人の男は微動だにせず待ち続けていた。
 無言で待ち続けていた男の胸中はわからない。

 当然、対峙したアナスタシアにもその男が何を考え、ここへ来たのかわかるわけがなかった。

「アビェシヤーニェ……約束通り、来ました」

 アーニャは男を睨み付けるように言う。
 覚悟は万全であり、その手はすでに腰のナイフに掛かっている。

「おいおい、確かに俺は待ちくたびれたとは言ったがな、まだ始めるつもりはない。

まだ17時50分だ。十分前行動は殊勝だが、あいにく約束は18時だ。

約束通り、な」

 男は高級そうなシルバーの腕時計を見ながら言う。

「それとも……待ちくたびれたのは俺だけじゃなくお前もか?

白猫(ビエーリコート)」

 意地悪く口角を上げながら男は笑う。
 しかし男の軽口に対してもアーニャは表情を変えない。
223 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/03/07(金) 21:30:39.21 ID:bV/OCKiKo

「……ニェート、いえ、私はあなたを、待ってなどいません。

出来ればあなたの顔は、見たくなかった。

ヤー……私は、昔とは違う。でも……過去からは逃げれないのだから」

「よくわかっているじゃないか。

いくら改心して堅気に戻ろうとも、積み上げた過去は決して消えない。

俺がお前を追ってここに来たように、過去はいつまでも追ってくるのさ。

いくら逃げてもいずれは追いつかれ、その業からは逃げられはしないんだよ」

「だから……私は来たのです。

ヴィー……あなたが、私を脅さなかったとしても……あなたが私の前に現れた時点で決まっていたのです。

自分の過去とは、遅かれ早かれ蹴りをつける。

これが……私への罰であり、越えねば前に進めぬ壁なのですから」

 アーニャは腰からナイフを引き抜く。
 そして体の前に突き出し、男の直線上を射抜くように構えた。
224 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/03/07(金) 21:31:22.16 ID:bV/OCKiKo


「Давайте положить конец.…… Командующий(終わらせましょう……隊長)」


 視線は凶器のごとく鋭く、その男、隊長に突き刺される。
 だが隊長はその視線に動じることなく、相も変わらず意地悪い笑みを浮かべたままである。

「だからまだ気が早いぞ白猫。

臨戦態勢で、その上その眼光で俺に向かってくることは結構なことだがまだ早い。

ミッションスタートは一八○○ジャストだ。

先走りは死を招く。教えたはずだがな」

 隊長はアーニャから視線を外し、周りを見渡す。
 周囲には相変わらず廃墟群しか存在しない。

 アーニャは隊長から目を離さず、隊長の話を聞こうともしない様子だ。
 それを気にせず隊長は喋りだす。

「こんなしけた場所だが、過去にはそれなり賑わいがあった場所だ。

かつては、人が笑い、泣き、生活した場所だった。

そして『憤怒の街』については俺も伝聞でしか知らない。

俺が知っているのは一人の少女の憤怒が、この街を地獄の赤で染め上げたことくらいだ。

お前はこのことを知っているのか?この街で、何が起きていたのかを?」
225 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/03/07(金) 21:32:00.12 ID:bV/OCKiKo

 隊長はこの街で何があったのかを、アーニャに問いかける。
 しかしアーニャは隊長の言ったことさえ知らなかった。

 結局憤怒の街の根本的な原因については公に語られることはなかった。
 一般に公開された情報によると、現れた巨大なカースが原因だとされており、当然渦中にいなかったアーニャは真実を知ることはない。

 ただし裏では憤怒の街の情報は多くはないが出回っており、それなりの価値で取引もされている。
 この荒廃した街でかつて何があったのかを知りたいと思うものは後を絶たない。

「ここ来る前に、知り合いの情報屋が話していた情報だ。

一人のカースドヒューマンの少女の孤独と悲嘆から生まれた憤怒は、街を包む赤き炎となり、それはこの街の住人を死色の赤で染め上げた。

彼女の悲しみは、結果として多くの人間の悲しみを生んだのさ」

 まるで物語を語るように隊長は話す。
 その瞳の中には、まるでこの街が炎に包まれていたころを映しているかのようである。

「とはいっても、実のところこれは情報屋が気まぐれに語った話だ。

所詮ロハ話、真相はあてにはならん。

まぁこの話をしてお前に反応がないってことは、ガセか、お前が本当に何も知らないってことなんだろうな」

「……それが、どうかしましたか?」

 かつて自分が何もできなかった街の話。
 少し前のアーニャなら気になることではあったが、今のアーニャにとってこんな世間話はどうでもよかった。
226 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/03/07(金) 21:32:40.63 ID:bV/OCKiKo

「いやなんだ……せっかくこんな名所に来たんだ。

その話くらいしておかないと、ここでおっ死んだ人間どもに申し訳ないだろう?

これからもっと壊すことになるんだからよ」

 隊長は両腕を広げ、周囲をひけらかすようにする。
 周囲は無残な過去の残骸しかない。

 それをさらに壊しつくすことになるのは隊長が一番よくわかっていた。
 そしてそれが楽しみでしょうがないような笑みを、相も変わらず隊長は続けている。

「ん……ふと思ったんだがな」

 しかし隊長は何か一つ思いついたのか、街に向けていた視線をアーニャに戻す。

「この街を無残にしたのは人間の争いだ。

実際したのかカースかもしれないが、それでも引き金を引いたのは一人の少女で、

それに立ち向かったのも、ほとんどはヒーローだ。

カースドヒューマンも、ヒーローも人間なのさ。

街の住人も人間だし、たとえ人間でなくとも、『ヒト』らしい感情は持っているものがほとんどだ」
227 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/03/07(金) 21:33:14.78 ID:bV/OCKiKo

「ダー……。

たしかにそうです。人同士が争うのは……悲しいですね」

 アーニャはこの街の惨状を思い出して、悲しそうな顔をする。
 それに対して、隊長も悲しそうな形口で続けた。

「そう。人が争うのは悲しい。

話し合う言葉があるのに、伝え合う心があるのに争うのはやはり悲しいだろう。

だが」

 ここで一息、隊長は話を途切れさす。

「俺はあいにく化物だ。

人間の形をしているが、誰もが俺を、『化物』と呼ぶ。

『化物』のように見る。

そして俺は『化物』のように殺すのさ。

そこに言葉は必要ない」
228 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/03/07(金) 21:34:01.48 ID:bV/OCKiKo

 問いかけるような視線をアーニャに向け、一言。



「じゃあ、俺に育てられてきたお前は『人間』か?

銀色(シェリエーブリェナエ)、

俺はお前に、心など持たせるように育ててきてはいない。

妖精(フィエー)、

俺は、お前を、お前たちを化物のように育ててきた。

雪豹(シニェジュヌィバールス)、

日本には『蛙の子は蛙』という言葉がある。

氷河(リエードニク)、

ならばこの俺(ばけもの)に育てられたお前たちも同様に『化物』ではないかと思うのだが、

白猫(ビエーリコート)、

お前は、それでも『人間』か?」



 
229 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/03/07(金) 21:34:43.89 ID:bV/OCKiKo

「ヤー……私は……私は……」

 ただでさえ不安定であったアーニャの心をその言葉は再び揺さぶる。

 自分の名前を知ったのは数か月前。
 『アナスタシア』が生まれたのはほんの数か月前だということは、それまでの彼女は何だったのか?

 そもそも、今の彼女もはたして『人間』と言えるのだろうか?

 目の前の敵に集中して強引に精神の安定を図っていたアーニャにとってこの問いかけは弱点のごとく精神にダイレクトに届いた。
 自身の存在を揺らがすこの言葉は、少女に動揺を与える。


「改めて問おう。

お前は『人間』か?それとも『化物』か?」

「ッ……わたしはっ!!」

 隊長の言葉を聞きたくないために、動揺を振り切るためにアーニャは飛び出す。
 構えたナイフを突き立てるべくまっすぐ隊長に突進する。

「迷うか?

だが『人間』ならば迷わんぞ。

ならばここからは『化物』同士の戦いだ。

遠慮も躊躇もいらない。死者への弔問も念仏も必要、無いってことだ!!!」
230 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/03/07(金) 21:35:20.10 ID:bV/OCKiKo

 ごうと隊長の周囲に吹き荒れる強風。
 念動力によって引き起こされたその風は、周囲の朽ちかけの廃墟を軋ませる。

 アーニャの突進の勢いはその風によって少し緩む。
 だがその程度で足は止まらない。隊長を貫くべくさらに進もうとする。

「!……ぐ、これは」

 しかし足は進まない。

 いや足は動く。だが体は宙に浮き、足は地に着かず地面を蹴ることができなかった。
 そして首が引っ張られるような痛み。

 そう、頭は隊長の『腕』によって掴まれ、宙づりの状態になっていた。

「時刻は一八○○を超えた。

作戦開始だ。白猫」

 そして隊長は開いた掌を、思い切り握りしめる。
 それに連動するように念動力の『手』も空気と一緒にアーニャの頭を握りつぶした。

 頭を失ったアーニャの体は、どさりと地に足を着け倒れ伏せる。
 隊長は窮屈そうに締めていたネクタイを緩め、アーニャに背を向けた。
231 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/03/07(金) 21:36:01.68 ID:bV/OCKiKo

「全くこの程度か?能力を過信しすぎるな行ったはずだ……が!」

 発言の途中、隊長は気づいたように言葉を止めて、念動力を纏わせた拳を振り向きざまにふるう。

 その拳とナイフはぶつかり合い、金属同士がぶつかり合うような乾いた音が響いた。

「ク サジェリエーニュ……あいにく、能力を過信させていただきました、よ」

 隊長の振り向いた先には、すでに頭部を復活させたアーニャがナイフを突き立てるべくそこにいた。

「やはり……十分お前も『化物』だな!」

 楽しそうな声で隊長は言うと、ナイフとぶつかり合っている拳を、力のままに振り抜こうとする。
 それに気づいたアーニャは、振り抜かれればナイフの方が持たないことがわかっているので、すぐに手を引く。

 隊長は、アーニャがナイフを引いた後でもそのまま腕を振り抜き、空を切る。
 その隙を見逃さずアーニャはナイフでがら空きの胸へ突き立てようとした。

 しかし当然それも隊長のもう片方の腕で弾かれ、さらに蹴りをアーニャに入れようとする。
 アーニャはそれをバックステップで回避、荒れ果てたアスファルトに着地後、勢いのまま数センチ滑り下がる。

「こいつなら……どうだ!」

 隊長も、バックステップ時の無防備な滞空時間を無駄にしようとはしない。
 再び出現させた念動力の『腕』はアーニャを掴もうと正面から迫りくる。
 その『手』は人一人を掴んで、握りつぶすには余裕なほどの大きさである。
232 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/03/07(金) 21:36:40.61 ID:bV/OCKiKo

「……くっ」

 その『腕』によってせり押された空気は圧力となってアーニャに降りかかる。
 着地後にのんびりとしていればすぐに『手』につかまり、再び体はひき肉と化すだろう。

 いくら回復能力があろうと回数は有限である。
 初めに頭を潰されたのも本来なら手痛いほどの力の消費であり、まだろくに隊長にダメージを与えられていないのにこれ以上大規模な回復を使うのはまずい。
 かといって、ここで下手な回避に出れば攻撃の機会はさらに絶望的なものとなる。

 故にアーニャは右方前に体制を低くしながらタックルするように転がり込む。
 これによって『腕』の範囲から回避しつつ隊長への距離を再び詰めることができた。

 そして隊長の方へと地面を蹴り、右手のナイフを振り下ろす。
 隊長はそれも念動力を纏わせた左腕で防いだ。

 しかしアーニャもそれは予想通りで、さらに左手で腰に携えていたもう一本のナイフを引き抜き、隊長を縦に一閃するように振り上げた。

「ぐっ!?」

 新たな凶刃に隊長はわずかに反応が遅れる。
 急いで空いていた右腕に反発力を纏わせ防御に出るが、腕の力の入れ方が足りず左のナイフの一閃は隊長の右腕を弾いた。
233 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/03/07(金) 21:37:31.30 ID:bV/OCKiKo

 アーニャはこの千載一遇のチャンスを見逃さない。
 両のナイフを交互に、フェイントを入れつつ何回も振るう。

「УУУрааааааааааааааааааааааааа!!!!!!」

 アーニャの鬼気迫る掛け声とともに、上下に、左右に、千変自在の太刀筋が隊長を襲う。
 隊長も両腕で全て防いではいるが、その場からじりじりと後退させられていた。

 だが隊長は、相も変わらず楽しそうな笑みは変えず、それでいてアーニャの様子を観察するような余裕を見せた目をしていた。

「白猫、覚えているか?

初めてナイフを使っての訓練のことを」

 諭すような口調で隊長は目の前のアーニャに話しかける。
 しかしアーニャはそれを無視して、ナイフを振るい続けた。

「お前が8歳のときの8月のことだ。

CQCの基礎を教え終わり、ナイフを使っての戦闘訓練が始まった。

隊の中でも、お前はもっともナイフの扱いが苦手だった気がするな。

だが最後には、きっちりとそのスキルを完全にものにして、挙句の果てにはCQCではトップクラスの実力を持つようになっていた」

 隊長は懐かしむような眼をして、目の前で必死にナイフを振るうアーニャを見る。
 その姿と、かつてナイフの扱いに四苦八苦していた銀色(シェリエーブリェナエ)の姿が重なっていた。

「そして今、その師である俺の前で、俺の教えた戦い方をしているわけだ」
234 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/03/07(金) 21:38:20.44 ID:bV/OCKiKo

 ここで懐かしむような隊長の表情は、再び意地の悪い笑みに戻る。


「そう、俺が編み出したロシア式CQCだ!

たしかに実践を経て、ある程度は自己流に改編はされている。

実に百点、いや百二十点の戦闘だ!

だがそれでも、俺のオリジナルは越えられない!

ロシア式CQCは俺が自分のため編み出したCQCを、一般人用にデチューンしたものだ!

真のロシア式CQC、否、『俺式CQC』は俺が使ってこその真価を発揮するのだからなあ!!」


 隊長はアーニャの両方のナイフを、体から外の方向に向けて勢いよく弾く。
 すでに酷使していたナイフの刃はその衝撃で中ほどから折れてしまった。

 一瞬にして2本とも折られてしまったナイフを見てアーニャは驚愕の表情をする。
 隊長はその間にも、腿を上げひび割れたアスファルトに脚を振り下ろした。

 その震脚は、朽ち果てる寸前であった舗装されたアスファルトの息の根を完全に絶つ。
 隊長を中心に地面は蜘蛛の巣上にひび割れ、陥没した。

 地面の陥没により一瞬の浮遊感を感じたアーニャはその間身動きが取れない。
 その隙に隊長は振り下ろした脚を軸として回し蹴りを決める。
 弾丸のごとくの加速の付いた足裏は、アーニャのわき腹に完全に突き刺さり全身の骨を軋ませるほどの衝撃を与えながら吹き飛ばした。

「……かはっ!」

 アーニャは背後のビルに衝突することによってようやく吹き飛ばされた勢いが止まる。
 吹き飛ばされた際に刃のないナイフは手放してしまい、両手は空のままビルの壁にもたれ掛る。
235 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/03/07(金) 21:39:44.50 ID:bV/OCKiKo

 全身のいたるところの骨が今の一撃で折れており、アーニャは急いでそれを回復させる。
 それでも気を失いそうな激痛はアーニャの体を蝕んでいた。

 だが隊長は休ませてはくれない。
 先ほどの場所から地面を蹴ってアーニャの方へと跳び蹴りをかましてくる。

 かなりの距離が隊長とアーニャの間にあったにもかかわらず、隊長はアーニャのかなり手前で跳んでいた。
 それなのにもかかわらず、念動力の加速によって戦闘機のごとく隊長の体は低空飛行をしながら、両足をそろえてドロップキックの体制へと移行しながら突っ込んでくる。

 その勢いは先ほどの念動力のブーストの無かった回し蹴りとは比べ物にならない。
 直撃すれば新幹線に衝突するのと同じように、体は木っ端みじんに吹き飛ぶだろう。

 ほとんど本能の赴くまま、アーニャは横に飛び退く。
 そしてほぼ間髪入れずに隊長のドロップキックはアーニャを受け止めたビルへ突き刺さりそのビルも波紋状のひびを刻み、粉々に倒壊させた。

「よく避けたな」

 ビルの倒壊による瓦礫が降り注ぐ中、隊長は横に向いた体を念動力で起こし、そのまま宙に浮遊する。
 恐ろしいのはその浮遊が一切テレキネシスを使ったものではなく、サイコキネシスによる力の放出だけによる微妙な力加減で保たれていることだ。

 飛び退いた際に倒れた体をゆっくりと起こし、隊長を見るアーニャ。
 隊長はそんな地面に這いつくばっているアーニャを見下している。

「どうした?これで終わりか、白猫?」

 挑発するようなニュアンスを含め、隊長は言う。
236 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/03/07(金) 21:40:22.52 ID:bV/OCKiKo

 だがその時、アーニャと隊長を分断するように大きめの瓦礫が落ちてくる。
 それを見たアーニャは全身に天聖気を巡らせて、体を強引に動かす。

 堕ちてくる途中のビル壁は一枚の壁のような形を保っており、それに飛び乗るようにアーニャは跳ぶ。
 隊長は油断していたため、緩慢だった動きから急に素早く動き出したアーニャに反応が遅れた。
 隊長からはアーニャが一瞬落ちゆくビル壁の陰になり見失う。
 そしてアーニャを影に残したビル壁は落下方向を変えて地面と平行に近いように隊長の方へと跳んできた。

 おそらくアーニャがその壁を蹴り、隊長の方へと飛ばしてきたのだろう。
 その証拠にアーニャは壁を飛ばした方向とは逆の、反発した方向にバックステップのように飛んで行っていた。

「小賢しい真似を……」

 つまらなそうに隊長は跳んできたビル壁に拳を一発を叩き込む。
 それだけでビル壁は粉々に砕け、隊長の視界を遮っていた障害は消えた。

 しかしそのビル壁の向こうには予想外のものがあった。

「なに!?」

 すでにピンの抜かれたグレネードがビル壁に隠れて投げこまれていたのだ。
 グレネードは弾けるように視界を潰すほどの光と爆音を発生させる。

「スタン、グレネードか!」
237 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/03/07(金) 21:41:10.56 ID:bV/OCKiKo

 その目の前にいた隊長はそれの影響が直撃した。
 目をふさぎ、念動力で鼓膜をガードしたが、それでもひと時、完全に視覚と聴覚は奪われる。

 ビルは完全に倒壊し、辺りに砂埃を上げる。
 それが視界の悪さに拍車をかけ、隊長の視野が完全に回復するまでかなりの時間を要してしまった。

「……逃げたか」

 すでに辺りには隊長以外の人影は居ない。
 アーニャはこの場から完全に離脱しており、隊長は目標を見失ったのである。

「全く今度は鬼ごっこか……。

まぁ多分完全には、逃げてはいないだろう。

この街のどこかにいるはず……」

 その時、隊長は言葉を途中で止めて頭を押さえる。
 先ほどまでの余裕そうな表情とは違い、不快感を覚えたような苦々しい表情である。

「くそ……羽虫が邪魔してくるか。

正直、俺の余裕はないんだけどな……」

 周囲に放出していた念動力を解除して浮遊していた状態から地に足を着ける。
 苦虫をかみつぶしたような顔をしながら、隊長は文明の光などない闇に沈みつつある憤怒の街の中を進んだ。

238 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/03/07(金) 21:41:50.08 ID:bV/OCKiKo






 不快感を露わにしながら歩き出した隊長の一方、アーニャも疲労感を顔に滲ませながら廃墟の中を進む。
 相も変わらず雪は降り続いており、先ほどまで熱を帯びていたアーニャの体をクールダウンさせていた。

「正面から……戦うのは、失敗だったかもしれません……」

 重い足取りでアーニャは歩きながら呟く。
 隊長の強さは自身がよく知っているはずなのに、正直に正面から挑んだのは今思い返せば失敗だっただろう。
 だがその一方で、あの男に不意打ちが通用するとも思えないというのも頭の中に残る。
 
 アーニャは一度立ち止まり、後ろを振り返る。
 ゴーストタウンと化したこの街で、この幅の広い道路を歩くのは今はアーニャだけだった。
 当然振り向いても人影はない。

「とりあえずは……一旦撒けましたか」

 訓練で夜目はそれなりに聞くので、薄暗い街の中でそれなりに遠くまで見渡すことができた。
 とりあえず視界には人影が見えないので、緊張を一度解いて一息吐く。

 とはいってもあの隊長なのでいつ急襲されてもおかしくないことは念頭に置いておく。
 このまま道の真ん中を歩いていては、隊長が本気で追ってこればすぐに見つかってしまう。
 故に近くの比較的崩壊の少ない廃ビルに一度身を隠すことにした。

「おじゃまします……とはいっても誰もいるはずが、ありませんね」

 アーニャはそんなこと独りごちる。
 だが当然返事は帰ってくるわけがないし、それくらいはアーニャもわかっていた。
239 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/03/07(金) 21:42:38.81 ID:bV/OCKiKo

 入ったビルの中はかつて何かのオフィスだったらしく、かつての面影をそれなりに残していた。
 しかし辺りはほこりにまみれ、小さな瓦礫の破片が散乱していて生活感は皆無である。

 アーニャはそのまま奥へと進み、階段を見つけると上の階へと昇っていく。
 そしてできるだけ上の階を目指すと、最終的に4階まで到達し、それより上は崩落が激しく進むのは危険であった。

「ここに、しましょう」

 アーニャは4階へ入り、先ほど自身が通ってきた道路を見渡せる部屋へと入る。
 中は上の階が崩壊しているおかげで、大きめの瓦礫が散乱しており、ところどころに潰れたデスクが目についた。

 そのまま窓際、とはいってもすでにガラスは全て砕けており窓と言えるのかは定かではないがそこまで近づく。
 そしてその窓の下の壁にもたれかかるように、アーニャは座りこんだ。

「……全く本当に、化物です」

 先ほどのこと思い出して苦々しい表情をするアーニャ。
 自分はほぼすべての力を出し切っていたというのに、隊長はまだ余裕だという感じであった。

 実際隊長は戦闘狂の節もあり、あえて自分が追い込まれる状況に持っていくことがある。
 今回もそう言うようなチャンスがあったにもかかわらず、結局隊長に傷一つ付けることがかなわなかったのだ。

  『勝つ』と覚悟を決めてきたのにこのざまで、アーニャは自分が情けなくなってくる。
 先手はとられまいと構えていたはずなのに、あの隊長の言葉に心をかき乱され、そして無様な醜態をさらした。
 だがまだ諦めるわけではない。
240 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/03/07(金) 21:43:30.41 ID:bV/OCKiKo

 初手は完全な敗北だが、まだ手がないわけではないのだ。
 今までならば敗色濃い場合引くこともできたが、今回に関しては引くことは絶対にできない。

 『殺す』か『殺されるか』の二択しかない白猫としての最終任務(ラストミッション)。
 あの男との因果はここで幕を引くという意志はアーニャにとっては決して揺るぐことはない。

「そのためには……あと何ができるか」

 アーニャはコートを広げて、残りの装備を確認する。
 一つ一つ取り出して床に置き、数を確かめる。

「ノース……ナイフはあと3本に、スタンは2個、スモークが4個ですか……」

 初めから思ってはいたことだが、隊長を相手にするには心もとない。
 それでもこの状況で取りうる最善をするために、床に並べた装備を再びコートと腰に戻すそうとする。

「あっ……アー」

 しかし最後の一個のスモークグレネードを取ろうとしたが、手からこぼれてしまう。
 そしてかつての惨劇によってこの建物も傾いていたのか、その傾斜に沿って筒状のスモークは転がっていく。

 アーニャはそれを追って行くと、一つの瓦礫の山にぶつかってスモークは動きを止める。
 それを拾おうと、アーニャは瓦礫の前でかがんで手を伸ばした。
241 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/03/07(金) 21:44:15.97 ID:bV/OCKiKo

「……これは」

 スモークグレネードに手を伸ばしていたのはアーニャだけではなかった。
 もう一つの手がグレネードの手前で止まっている。

「コーシチ……骨、ですか」

 アーニャのものではないもう一つの手は別にアーニャのグレネードに手を伸ばしていたわけではない。
 その手はすでに白骨化しており、もはや動くことはないのだから。

 目の前の瓦礫の下には、一つの白骨死体があった。
 おそらくかつての騒動の際に振ってきた瓦礫の下敷きになりそのまま事切れたのだろう。

 どうにかして這い出ようとしたのだろう。
 カーペット敷きの床にひっかき傷が残っている。
 だが手遅れであったことも伺える。
 カーペットには血痕が残っており、すでに乾いて赤黒くなっている染みがその死体の下に広がっている。

 『憤怒の街』の際にほとんどの死体は回収されたらしいが、それでもカースに取りこまれたりしたことによりすでに死体が存在しない場合もあった。
 故にそう言った者は行方不明者として扱われ、今も見つかっていない犠牲者は少なくないのだ。

 そしてこの死体も、捜索の目から外れてしまい数か月放置されたのだろう。
 今の今まで誰の目に触れることなく、きっと避難した他の会社の人々からも見捨てられ絶望しながら死んでいったのだと想像できた。

 アーニャは無言のままグレネードを拾ってコートの中に仕舞う。
 そして隊長を迎え撃つための準備をしようとして死体に背を向けた。
242 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/03/07(金) 21:45:00.54 ID:bV/OCKiKo




「……?」




 アーニャは何の疑問も抱かずに、グレネードを懐に入れた。
 そのことに、ふと違和感を覚えてしまったのだ。

「ヤー……私は、いま何を感じたのですか?」

 気が付いてしまっては取り返しがつかない。
 アーニャは死体を見ても『何も感じなかったこと』に気づいてしまったのだ。
 これまでなら微塵もそんなことに違和感を覚えなかっただろう。

 だが普通の暮らしをして、普通の価値観を知ってしまったアーニャはその重大な違和感に気づいてしまった。

「パツィエムー……どうして、私は死体を見ても、何も感じないのですか?」

 アーニャは振り返りその死体を再び見る。
 だが瓦礫の隙間から覗く死体の空っぽの目を見ても何も感じないのだ。

 憐憫も、哀悼も、悲哀も、恐怖も、憤怒も何も感じない。
 そこに人間一人分の骨、カルシウムの塊がある程度の感想しかないのだ。
243 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/03/07(金) 21:45:42.10 ID:bV/OCKiKo

「……うっ、くうぅぅ……」

 そんな自分に吐き気を覚える。
 ごく一般的な人間が感じる感情が欠落しているということ。

「まるで……『化物』じゃないですか……」

 隊長の言った心をかき乱したあの言葉。
 必死に無視して、気にしなかったのに、自覚してしまえば後には引けない。

 これまでの自分の、アナスタシアとしての自分を自分で否定してしまったようなものだ。
 せっかくまともになれたと思ったのに、結局何も変わらなかったという証拠である。

 アーニャは吐き気で口元を押さえ、ふらふらと瓦礫に背を預ける。
 隣には何も言わない死者。
 先ほどまで何も感じなかったそれが、まるで自分を『化物』だと糾弾してくるようにアーニャは感じてしまう。

「……はぁー……はぁー」

 息を深く吐いて、ざわつく心を落ち着ける。
 それでも吐き気は収まらないし、頭の中はぐらぐらするのだ。
 これまで後回しにしてきたツケだとでもいうのかというほどに、アーニャの精神状態は不安定であった。
244 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/03/07(金) 21:46:25.22 ID:bV/OCKiKo

「ツケ……といえば」

 ツケと言えば、エトランゼで強引にツケさせられたのを思い出す。
 それと同時にのあの、あの言葉も。

「カヴォータ……誰かに……相談できていたなら、少しは違ったのでしょうか?」

 この孤独な空間でアーニャは寂しさを感じる。
 だが自分一人でケリをつけるを息巻いてきたのに、そんな泣き言は言ってられなかった。

「そうです……。泣き言なんて言えない、悩みなんて悩んで、いられない」

 せめて、今の目的だけは、完遂せねばならない。
 プロダクションのことを思い出しながら、自分のすべきことのためゆっくりと立ち上がった。

 だが結局また後回しにしていることを、アーニャは気づかない。






 
245 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/03/07(金) 21:47:08.17 ID:bV/OCKiKo






「〜♪……〜〜♪〜♪」

 息吹を感じさせない静かな街の中に一つの鼻歌。
 隊長は足取り軽く、アーニャを探しながら歩いていた。

 一旦は見失ったが、少し歩きながら痕跡を探しているとある地点から明確な痕跡を見つけることができた。

「誘っているな」

 アーニャに痕跡を残さない術を教えたのは隊長だ。
 それが途中からあらかさまな痕跡を残し始めているということは、ほぼ確実に罠である。

「なら乗ってやらないと」

 そして隊長がたどり着いたのは、アーニャの入った廃ビルであった。
 比較的きれいに原形を保っているその建物を隊長は見上げる。

「オーケイ、どんな小細工を巡らしてるかは知らないが、ちゃんと正面から行ってやる」

 そのまま隊長はビルの中へ入っていく。

 
246 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/03/07(金) 21:47:48.91 ID:bV/OCKiKo


 わけがなかった。

「正面からは正面からだが、一階から順番に行くとは言ってねぇよな!

RPGのダンジョンじゃあねぇ。本丸目がけて正面突破だ!」

 隊長は膝を曲げて、跳躍する。
 念動力によって加速され、体は一気に最上階まで跳びあがった。

 最上階であった5階はほぼ崩落しているため、大体4階と5階の間くらいの位置で隊長は拳を振りかぶる。
 そしてその拳の一撃は、原形を保っていたビルの外壁を砕いて大穴を開けた。

 そして悠々と、その大穴からビルの内部へと侵入する。

「さーて、どこだ白猫?鬼ごっこは終わりにしようぜ」

 崩壊するビル壁は粉じんを上げて視界は良好ではない。
 隊長はまたそれが収まるまで待っているつもりだったがなぜか一向に収まる気配が見えなかった。

「これは……スモークか!」

 先ほどの粉じんに乗じてアーニャはスモークを投げ込んでいたのだ。
 埃っぽいコンクリの粉じんに混じって、白煙が隊長の視界を妨げる。
247 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/03/07(金) 21:48:32.68 ID:bV/OCKiKo

「ああくそ、仕方ない!」

 隊長はいらついた声を上げる。
 それと同時に周囲に発生させた念動力は視界を遮る白煙をすべて吹き飛ばした。

「小賢しい……真似を!」

 隊長の開けた視界が目にしたのは、瓦礫の散乱した薄暗いオフィス。
 その中にはアーニャの姿は見えない。

「どこに……」

 目を凝らして、アーニャの位置を特定しようとする隊長。
 しかしその隊長が捉えたのは、数刻前に目にした放射される光源である。

「またか!」

 それはさらに隊長の苛立ちを逆なでする。
 隊長の前方少し先に置かれたスタングレネードはワイヤーか何かが取り付けられており、遠隔でピンを抜かれたらしい。
 その円筒は閃光を発し、爆音を散乱させる。故に再び隊長は耳と目を保護する体制を取らざるを得ない。

 だが視界を潰された隊長は何かを感じる。
 それはほぼ本能に近いものであったが、躊躇なく念動力を纏わせた右腕を振るう。

 そしてそれは正解であり、その腕には何かを弾く感覚が残った。

「そこかぁああああ!!!」

 右方から接近した凶刃。
 その方向にアーニャがいると確信した隊長は回復しない二感にもかかわらず、攻撃を受けた方向に広げた掌を向ける。
 そして、圧縮。
248 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/03/07(金) 21:49:28.20 ID:bV/OCKiKo

 それだけで隊長の右手側にあるビル3階から屋上までごっそりと空気が圧縮される。
 同時にその部分のビルも圧縮され、ビルはそぎ落とされたように粉々の瓦礫と共に欠損した。

 結果として、大規模な欠落を起こしたビルは崩壊の音を立て始める。
 まだ五感すべて回復しない隊長だが、ビルが崩壊を起こし始めているのは気が付いた。







 だが、背後に迫るナイフの刃には気づかない。

 一つ下の階に潜んでいたアーニャは手持ちの軍用ワイヤーを使いトラップを作動させていた。
 罠というには稚拙なものではあったが、ビル内という乱雑な環境が不自然さを覆い隠していたのだ。

 とはいっても手持ちのワイヤーの長さでは限界があるため、初めのスモークは下の階から隙を見て投げ込んだもの。
 そしてスタンとナイフについてはワイヤーでピンを抜くだけの簡単な仕組みである。
 ナイフは独自に改造し、スペツナズナイフに近いものになっており、刃の部分が射出される。
 スタングレネードで感覚を奪えば、そのナイフが人が握っているものかどうかをかく乱させられる可能性が高くなる。

 罠は一階と四階にアーニャはしかけた。
 アーニャはもともと四階から入ってくるという予想をしていたのだ。
 そして見事に的中し、油断していた隊長は罠に掛かり隙も見せた。

 千載一遇の機会、アーニャは隊長が突入してくる際にあけた穴を利用して上の階へと上がり、隊長の背後を取る。
 手にはナイフ。それを突き立てればアーニャの勝利である。
249 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/03/07(金) 21:49:58.09 ID:bV/OCKiKo

(……これで)

 少しあっけなさも感じるほどの終わり。
 自らが望んだ結末であり、ようやく難儀な因果を断ち切ることができる。

(……これで)

 ここで隊長を殺せば万事解決である。
 プロダクションへの脅威はなくなるのだ。

『化物』

 誰かが囁く。

『きっと何も感じず殺せる。化物だから』

 きっとこれは事実だろう。
 今までのように、何事もなく、何も殺せず殺せる。
 アーニャ自身がそれを理解していた。
 だがそれを今までは気にしていなかったのに、気にし始めたからこんな声が聞こえるのだ。

『きっと殺せる。白猫なら殺せる』

 きっとこれは忠告だろうか。
 いや、きっと悲鳴なのだ。
250 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/03/07(金) 21:50:28.60 ID:bV/OCKiKo

『きっと殺せる。化物なら殺せる』

 日常に身を置き、気づく。
 人の命の重みを。

(……嫌です)

 そして日常との差に気づくのだ。
 人の命を、軽く奪えた自分との差を。
 命に対して感情を持たないというその差こそが、アーニャにとっての『人』と『化物』の差だ。

 アーニャには人の命の重さを度外視した殺ししかできない。
 だがそれは『化物』だ。
 日常の『人』ではない。

(この人は……殺さなくてはならない。でも殺すには……完全に、化物になるしかない)

 脳裏にちらつくのは、荒らされた事務所、傷ついたピィ、気絶した楓。
 そして残虐な笑みをするこの男。

(……やっぱり、殺さないと)

 走馬灯のごとく引き伸ばされていた時間は終わりを告げようとしている。
 アーニャは、グリップを握る手に力を入れる。

(……殺す、殺す殺す殺す殺す!)

251 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/03/07(金) 21:51:11.60 ID:bV/OCKiKo









 だがナイフは隊長の背の直前で止まった。

「アドナーカ……でも、『化物』は……嫌です」

 ここで自覚してかつてのごとく殺すことは、自分が『化物』であると認めること。
 自分で認めてしまえば、きっと自分は一生『化物』であるという予感がしたのだ。

 そうなったら自分は、この街で、日常で生きてはいけないのだろうとアーニャは考える。
 『人間』に混じって、『化物』は過ごせないから。

 それはアーニャには耐えられなかった。

「どうして、止めた」

 ナイフを握ったまま手を止めているアーニャを、いつの間にか振り返った隊長が見下ろす。

「どうして、止めたあああーーー!!!」

 嫌悪と激情が混じったような表情で隊長は叫ぶ。
 隊長の握った拳は、そのままアーニャの腹へと突き刺さる。
252 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/03/07(金) 21:51:44.57 ID:bV/OCKiKo
 息がつまり、苦悶の表情を浮かべながらアーニャは拳の勢いで吹き飛ばされる。
 背後にはビルの開いた大穴。

 アーニャはナイフを手放し、四階の高さからまっさかさまに落ち、体は下の道路に叩き付けられる。
 上がる土煙。その中のアーニャの顔は見えない。

「どうして、その手を、止めたんだ……」

 隊長は苦々しそうな、複雑な表情をしながら呟く。

「お前も、俺から、遠ざかるのか……」

 悲しそうな、寂しそうな瞳。
 まるで寂しがりの子供のような表情をしながら、崩れゆくビルから白煙を見下ろす隊長。

 そしてビルは崩れ、上がる土煙の中から隊長は歩いて出てくる。
 先ほどまでアーニャのいた場所には、一つの円筒状のスプレーのようなものだけ。

「スモークグレネード……また、逃げるか」

 隊長は空を見上げる。
 夜の闇の中、幽かに見える雲の動き。
 それと変わらずひらひらと降り続ける雪だけしか見えない。





 
253 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/03/07(金) 21:52:36.66 ID:bV/OCKiKo







 一つの廃墟の中、膝を抱える少女が一人。
 その影に先ほどまでの覇気は無く、小さく震えている。

「……もう、私は、殺せない」

 『人間』が『殺す』とき。
 それは罪を背負うことだ。
 その重石は一生背負う物であり、背負うには相応の覚悟がいる。

 『化物』が『殺す』とき。
 それは当たり前で、普通のこと。
 そこに責任も、後悔もない。
 死者への念仏も、弔問も必要ない。

 彼女、アナスタシアは『人間』として生まれてしまったのだ。
 もはや『化物』の殺しはできない。

「でも……隊長を、殺さないと、またみんなを、傷つけてしまう」

 今にも泣きだしそうな、かろうじて絞り出した声。
 この状況のアーニャには思いつかない。
254 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/03/07(金) 21:53:07.32 ID:bV/OCKiKo

「……いや、でも」

 だが一つだけ、手を思い出す。
 結局、隊長の目的はアーニャであることを思い出したからだ。
 そしてこれは初めから考え付いていた手段の一つである。

「ヤー……私が、隊長に、殺されれば……いいんです」

 隊長の目的である裏切り者の始末。
 それさえ完了すれば、きっと表の世界であるプロダクションに隊長は手を出さないであろう。

「これなら……きっと」

 だがそれは、アーニャ自身が犠牲になること。
 それをプロダクションの皆は許さないだろう。

「少なくとも……シューコは別かも、しれませんが……。

そう思うと、シューコには申し訳ないことを、したかもしれませんね……。

あのような、ことを言わせてしまったのですから」

 脳裏に浮かぶ、たった数か月の思い出。
 それは唯一アーニャが『人間』として生きた記憶。
255 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/03/07(金) 21:53:38.37 ID:bV/OCKiKo

 一抹のさみしさを感じるが、もはやこれ以外に術はないとアーニャは考える。
 殺せない今、自分が死ぬしかないのだから。

「ドー スヴェダーニェ……さよなら、みんな」

 『化物』の自分でも誰かのために死ねるのなら、まだ救われる。
 振るえは止まる。
 これが本当の終わり。今度こそ終止符を打つ。

 アーニャは新たに覚悟して、立ち上がった。




256 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/03/07(金) 21:54:22.89 ID:bV/OCKiKo




『あーあー……聞こえるかー?アーニャ』





 立ち上がったところで響く、謎の声。
 それはアーニャのすぐ後ろからか、隣からか発せられる。

「シトー?……なんですか、これ?」

 突如聞こえる声にアーニャは困惑する。
 しかもその声が聞いたことのある声ならばなおさらである。

『おお!よかった。ちゃんと聞こえているな』

「なぜ今、晶葉の声が聞こえているのですか……まさか」

257 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/03/07(金) 21:54:55.18 ID:bV/OCKiKo

 晶葉はふふんと鼻を鳴らしながら自信満々に言う。

『そうだ!実はそのコー「これが、『ソーマトー』と呼ばれるものですね!」

 アーニャは晶葉の言葉を遮り一人で納得する。

「ヤー……私も、ここまで未練があったわけですね……。でも私は、止まりません。イズヴィニーチェ……晶葉」

『待て待て!よくわからんが早まるな!これは走馬灯でも幻聴でもない!』

 アーニャの言葉に応えてきた声でようやく違和感に気づく。

「シトー?……じゃあどういうことですか?晶葉」

『こちらはプロダクションの事務所だ。そのコートに備えられている通信機を通じて今会話をしているのだよ』

 アーニャはその声が本物であると気づき、その言葉の音源である首元辺りを見る。
 そこには小さなスピーカーのようなものがコートに埋め込まれていた。
258 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/03/07(金) 21:55:56.68 ID:bV/OCKiKo

『前にそのコートは戦闘用の特製コートとして渡したが、意外に街が平和だったせいで機能の説明の機会を失っていたのだ』

 少し残念そうな口調で話す晶葉。だがその裏では話したくて仕方ないような感情が見え隠れしている。

『だがどうやら緊急事態らしいから手短に言わせてもらう。この龍崎博士と共同で作ったこのコートだがな。

形状記憶繊維という特別な素材が使われていて少しくらい傷ついてもしばらくすれば元に戻るのだ。

細胞分裂に似た再生方法だからもしかしたらアーニャの能力で再生が促進されるかもしれない。だから試してみてくれ。

ある程度の防弾性や、運動性は龍崎博士の保証付だ。期待してくれ。

それと私の開発した戦闘支援ブレインが搭載されている。

とはいってもこれはどこまで役に立つかはわからないし、まだ情報不足で機能として稼働するにはもう少しそれを着て動いてみてくれないと無理だろう。

さらにその他もろもろの細かな機能がある。

共同制作だが私の技術の結晶だ!うまく活用してくれたまえ』

 晶葉はひとしきり喋って、一息つく。

『あいにく今の状況はピィから聞いただけだ。どれほどの問題なのかも私にはわからない。

だが私にできることはこれだけだ。だから……。

だから、ちゃんと帰って来たまえ。

そのコートのデータも取りきれてないし、まだまだ試したい実験は残っているのだからな』

259 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/03/07(金) 21:56:41.74 ID:bV/OCKiKo

 晶葉の声からは自身の無力を嘆く心と、アーニャを信じる心が伝わってくる。
 その『帰ってこい』の言葉はアーニャの決心を揺るがす。

『じゃあ次は……って押すんじゃない!お、おいコラ……愛海どさくさに紛れて!』

 耳元でバタバタとせわしない騒音が聞こえる。
 それに混じって様々な声が聞こえてきた。



『うひひひ……せっかくみんな集まってるんだし、揉んどかないと損ってもんでしょ』
『ちょっと愛海ちゃん、今はそんなこと……。ひゃあ、今度は私!?』
『おい次のマイクはウチがもらうぞ!』
『せんせぇ、かおるも喋ってみてもいい?』
『あっ!アタシだってマイクで何か喋りたいワ!』
『結局今どういう状況なの?』
『まぁ……応援か、何かですかね?』
『聞こえるー?こちら未央ー。アーニャは元気かな?』



 声を聴く限りプロダクションに関わりのある者がほとんど集まっているようである。

「どうして……みんなプロダクションにいるのですか?」
260 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/03/07(金) 21:57:16.10 ID:bV/OCKiKo

『ああ……なんというかあの後、偶然みんな集まっちゃてな』

 そんなアーニャの疑問に答えるようにピィの声が聞こえてくる。

『事務所が荒れてた事情を話したら話したで、みんなアーニャが帰ってくるまでは帰らないとか、面白そうとか言って帰ってくれないんだよ。

全く……まいったまいった』

「そんな……隊長が怖くないのですか!?

ィエーシリェ……もし、隊長が今プロダクションに向かったら、みんな殺されてしまいます!」

 アーニャは逃げるように言うが、ピィは笑いながら言う。

『まぁ確かにその場合、他のみんなはともかく俺は確実に殺されるだろうな。

でもそんな場合はあり得ないよ』

「……どうして、ですか?」

『アーニャはちゃんと隊長に勝って帰ってくるからさ。

それにアーニャがヒーローやりたいって言い出したんだから、俺がヒーロー信じなくてどうするんだってな』

「そんな……ことで」
261 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/03/07(金) 21:58:19.28 ID:bV/OCKiKo

『俺はもともと小さい頃、テレビとかでヒーローとか主人公とかに憧れてたけどさ、

結局そう言う柄でもないし、力もないから諦めたんだよ。そして『あの日』以後も変わりなくな。

でもアーニャ、お前は違う。アーニャなら俺のなれなかったヒーローになれるから。

俺の憧れたヒーローなら、俺は絶対信じれるんだよ』

 ピィやちひろたちの全面的な信頼。
 でもさっきアーニャは『帰ってこれない』ことを決心したのだ。
 それはアーニャが皆を裏切ってしまったことになる。

「アドナーカ……でも、私は隊長を殺せない。

じゃあ、私が死ぬしか解決手段はありません……。

だから……帰ってくるなんて」

『アーニャ……別にヒーローは悪を殺すんじゃないんだ。

悪を懲らしめ、時に改心させるんだ。

時に殺すことになるかもしれないけど、それだけじゃない。

俺の知ってるヒーローは、悪に立ち向かい、悪を倒し、そして帰ってくる。

だからあの隊長の強面の顔面に一発拳入れてお帰り願え。

そうすれば万事解決だからさ』

 ピィの独自のヒーロー観と楽観的な考え。
 普通ならばそれで解決するなんて思うのは到底無理だろう。
 でも、
262 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/03/07(金) 21:58:52.77 ID:bV/OCKiKo

「それで……終わるのですか?」

『ああ、アーニャならできる。

それだけの力を持っているはずだから』

 自分が死ぬしかプロダクションを守るすべがないと思われていた状況の中のこの言葉。
 皆のアーニャの帰りを望む声と合わせると、こんな無謀な解決方法でもどうにかなりそうな気がしてくる。

『だから、帰って来いよ。アーニャ』

 考えは、変わる。

「……ダー、わかりました。

悪に立ち向かい、悪を倒し、帰ってくる。

ヒーローならば、できることですね」

 アーニャは再び前を向く。
 今度こそ、隊長との決着を付けに。
263 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/03/07(金) 21:59:31.92 ID:bV/OCKiKo

『おーい、くれぐれも無茶はするな「ガーガガー……」

あれ「ガー……」しがおかしくなってるな?

こしょ「ガー」か?』

 晶葉の声がノイズと共に聞こえてくる。
 やはり何度も衝撃を受けたせいで、通信機が故障したのだろう。

『まぁ「ピー」いさ。ちゃんと帰ってくるんだぞ「ガガーピーブツンッ」』

 その言葉を最後に通信は切れる。

「……自分の意志だけではだめでも、周りの声は可能性をくれる。

一人で背負わないで、誰かと相談すれば……手段はいくらでもあるのですね。のあ」

 もはやアーニャは一人ではない。
 手持ちの武装はもはや尽きてはいたが、それ以上の武器を手に入れたから。

「イェショー ニェムノーガ……もう少し、もう少しだけがんばりましょう……」




264 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/03/07(金) 22:00:11.53 ID:bV/OCKiKo







「また小細工でもしてくるのかと思ったが、素直に出てくるとはどういう作戦だ?」

「ニェート……いえ、特に作戦なんてないです」

「これはまた……俺を嘗めているのか?」

「まさか……あいにく私に、そんな余裕はありません。それに嘗めているのは……あなたでしょう?」

「……あいにく俺はいつも全力だ」

「……何を言ってるんですか隊長?あなたは、もっと……型破りで、常識はずれで、、意味不明です。

それだというのに……今日は随分型に収まっている、感じですね」

「ほざけ、それで手も足も出ないのはどっちだ」

「ダー……そうですね。まったく、その通りです」

「ふん……じゃあこれは白旗でも上げに来たってことか?」

「…………ニェート。私は……勝ちに来ました」

「……よくもまぁ、な。勝算は?」

「……勝ちは、勝ち取るものですよ」

「……上等だ!」
265 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/03/07(金) 22:01:14.64 ID:bV/OCKiKo

 その声を合図に、向かい合った二人は地を蹴り飛び出す。

「УУУУУраааааааааааааааааааааааааァァァァァァアアアア!!!!!!」

「オオオォォオオォォOOOOOOhhhhhhhhhhhRRRaaaaaaaaaaaaaaァァァァァァァアアアアア!!!!!!」

 感情籠った叫びと共に両者ともに突き出した拳は正面から激突し、衝撃で空気はうねる。

 しかし隊長の拳の方が数段威力は上であった。
 耐え切れずアーニャの腕は骨の折れる音を響かせながら後方に吹き飛ぶようにのけぞる。

 だがアーニャは意も介さず、すぐに隊長の懐へと潜り込む。
 空いていた拳をすぐさま隊長の体に打ち込もうとするが、隊長はすぐにそれを腕で防いだ。

 アーニャはそれも気にせず、吹き飛ばされた方の腕をすでに完治させており、それで再び一撃入れる。
 それも防がれてしまうが、気にしない。
 そのままアーニャは隊長の目の前でインファイトをする。

 だがそれをずっと許すほど隊長も甘くはない。
 隊長を中心に嵐のような衝撃波が発生、アーニャはそのまま押し戻される。
 それでもアーニャは止まらない。すぐに接近しようとする。
266 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/03/07(金) 22:01:51.39 ID:bV/OCKiKo

 隊長は念動力の『手』を出現させてアーニャを捉えようとするが、それも躱される。
 躱した低い体勢から、足払いをアーニャは繰り出すが隊長はその場で飛んで避けた。
 そして隊長は重力に加え、上からかかる力を自身に加えて落下速度を速める。

「……ぐぅ!?」

 それだけでアーニャの足払いしてきた脚に着地し、その脚を粉砕する。
 このままでは移動もままらない上、追撃されると更なる不利になってしまう。
 残った脚と両腕を使い一歩分、その場から飛び退いた。

 だが隊長は『手』を使ってアーニャを追い立てる。

「なっ……」

 このまま一歩だけの飛び退きでは確実に捉えられてしまう
 半ば強引にだが、地面に着いた両の腕をばねにして、着地は全く考慮せずにさらに後方へと跳ぶ。
 それによって、その『手』はぎりぎりアーニャに届くことはなかった。

「もう、一丁!」

 だがその『手』とは別に新たに出現した『手』がアーニャの全身を左方から捉える。
 全身にかかる圧迫感。そして次の瞬間には全身が丸めたチリ紙のごとく圧縮される感覚と共に視界が真っ暗になる。

 それでも悠長にしてはいられない。
 ほぼノータイムで全身を再生させる。
 大幅な力の消費は、アーニャの意識を暗転させようとするが、気合いで耐える。
 脳が揺さぶられるような不快感は残るが、それでも止まれない。
267 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/03/07(金) 22:02:27.02 ID:bV/OCKiKo

「……まだ、まだ!」

 その後も、何度も隊長に挑んでいく。
 全身を天聖気で強化し、傷ついたのならばすぐに回復。
 それでも、腕は吹き飛ばされ、脚は砕け、内臓さえも何度も潰される。

 そしてそのたび、意識が飛びそうになりながらも体を再生させる。
 頭は吹き飛ばされようとも、全身の半分以上が欠損しようと、いくら即死級の攻撃を受けたとしても。
 治して直して復活(なお)して、そして立ち向かう。

(まだいける……まだいける。

一撃入れるまでは、何度でも、何度でもやって見せる)

 すでにアーニャのこれまで考えられていた限界回復量をゆうに超えていた。
 それでも何度も、体を再生させて、変わらぬ闘志で向っていく。

(どうして、こいつは止まらない?)

 逆にアーニャを殺して壊して吹き飛ばすたびに困惑していくのは隊長であった。
 これまでのアーニャならばこのような不毛なことはしなかった。
 だがこの無意味で、無謀な突撃をアーニャが繰り返すたびに隊長の疑念は膨らんでいくのだ。
268 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/03/07(金) 22:03:07.98 ID:bV/OCKiKo

「お前は……何がしたい!?

こんなこと俺は教えていないぞ!お前はいったい何を見ている白猫!?」

「私は……あなたに勝って、帰るんです!」

 それでもいずれ限界は来る。
 挑むたびに傷つき、それを回復させるたびに思考にはもやがかかり、脳は熱を帯びていく。
 視界は徐々にぼやけ、平衡感覚さえもおぼつかない。

「ま……だ、まだ……いけ、ます」

 全身の服はボロボロであり、コートの再生に回す力など残っていない。
 それでも立ち上がり、ふらふらと隊長に向かっていく。

「お前は……」

 もはや隊長は力さえ使っていない。
 攻撃しようとするたび、それを避け、軽い蹴りで押し戻すだけだ。

「どうしてそこまで」

「ヒーロー……は、勝たなくちゃ、いけないんです」

 そしてなおも向かってくる。
 隊長はそれに対して『手』で押しつぶす。

 それだけでアーニャの全身の骨を砕き、絶命へと至らせる。
 そしてそれでも、自らの体を回復させる。もはや生き地獄とも言ってもいいほどの苦行を何度も行うのだ。
269 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/03/07(金) 22:04:01.01 ID:bV/OCKiKo






 もはや限界であった。
 体には痛みはなくとも、疲労感で体は全く動かない。
 力の消耗によって意識さえも手放しそうで、瞳を閉じたら深い眠りについてしまいそうなのを必死にこらえる。

(まだ……もう少し……それでも)

 だが一回、瞬きをしてしまう。
 その瞬きは一気にアーニャをまどろみの中へと引き込んだ。

(駄目……です)





270 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/03/07(金) 22:04:32.78 ID:bV/OCKiKo






「お疲れ様ね。アーニャ」

 そんなアーニャにふと聞こえてきた一つの声。
 その女性の声は聞いたことがないのに、なんだか懐かしい感じがする。

 そしてその声ではっとなったアーニャは眼を開けるとそこにはさっきまでいた廃墟群の只中ではなかった。
 穏やかな日差しが差し込む林の中であり、眼前には真っ白な教会が存在している。

 そしてその前に立つ女性が一人。
 美しい黒髪を伸ばした女性はアーニャの方を見ながら微笑んでいる。

「……ここは?」

 そんなアーニャの疑問に女性は答える。

「ここは……夢の中、とでも言えばいいかな?」
271 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/03/07(金) 22:05:20.42 ID:bV/OCKiKo

 その言葉にアーニャの混乱している頭は現在の現実での状況を思い出す。

「そうです!んっ……」

 隊長との戦いの最中であることを口に出そうとするが、いつの間にか目のすぐ前にいる女性の人差指に口を押えられる。

「別に慌てなくていいわ。

少しくらいゆっくりしても、ここでは問題ないのよ」

 女性は優しい口調で言う。
 なぜかアーニャはそれに納得してしまった。

 アーニャは落ち着いてきたのか周りも見渡す。
 自分の夢の中であるはずなのにこの場所に覚えはない。でもなぜか懐かしさは覚えるのだ。
 穏やかな時間が流れており、気を許してしまえばずっとここでのんびりしていても苦でもないような感じである

「じゃあ……何から話そうかな?」

 目の前の女性は人差指を口元に充てて考えるしぐさをする。
 アーニャはそんな女性に質問を投げかけてみた。

「ヴィー……あなたは、なんなんですか?」
272 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/03/07(金) 22:05:56.52 ID:bV/OCKiKo

「私?えーっと私はなんていうのかしら?

あなたの守護霊とでも言えばいいか……それかあなたの監視とでも言えばいいのかな?

まぁともかく、ずっとアーニャのことを見守ってきたの」

「ヤー……私、を?」

 アーニャのことをずっと見守ってきたということは、これまでのことを知っているということである。
 この女性がどこまで信用できるのかわからないのにアーニャはなぜかすんなりと受け入れることができた。

「そう、ずっと。

監視っていうのは、アーニャに力を与えた人、まぁぶっちゃけちゃえばとある神さまなんだけどね。

その人から頼まれたの。アーニャの監視を。

まぁ私としてもその方が都合がよかったからいいんだけどさ」

「か……かみさま?」

 突然の暴露にアーニャは頭がついていかない。
 それでも女性は気にせず話を続ける。
273 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/03/07(金) 22:06:31.98 ID:bV/OCKiKo

「ていうか私あの人にアーニャのことを任せたのに何なの?

変な育て方するし、アーニャが家出したかと思えばそれを追ってくるしわけわかんないわまったく……」

 女性はなぜか勝手に誰かにぷりぷり怒っている。

「ああ、ごめんねつい愚痴みたいになっちゃって。

それで今回はね、きっとあなたは私のこと多分はじめましてなんだけど、実は今日でお別れなの」

「ど、どうして……ですか?」

 そして突然の別れの話。
 アーニャの頭はさらに混乱する。

「もうあなたに、監視は必要ないってことよ。

あなたがもう監視なんてしなくても十分やっていけるってことがわかったからね。

だから私は、あなたの力をあなたにすべて渡して、さよならするの」
274 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/03/07(金) 22:07:11.70 ID:bV/OCKiKo

 アーニャにはその別れの言葉がなぜか悲しい。
 この女性とは初対面なのに、ずいぶん長い付き合いの人との別れのように、なぜか涙が出てきた。

「ルヴァーチ?なんで……涙が?」

 そんな様子を見た女性は腕でアーニャを抱きしめる。

「ごめんね……。私ももっと一緒に居られれば良かったんだけど、私にも行かなくちゃならないところがあるから。

でも大丈夫。あなたにはいっぱいのお友達が、いるでしょう?」

 女性はアーニャの目をまっすぐ見ながら言う。

「あなたのことを応援してくれる人もいるけど、あなたのことを心配する人もいるってことを忘れちゃだめよ。

今日みたいな無茶は、そんな人たちのためにもほどほどにしなさい。わかった?」

 アーニャはその言葉が心にすっと入ってくるのがわかる。
 そして無言で肯いた。
275 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/03/07(金) 22:07:46.43 ID:bV/OCKiKo

「よしっ!じゃあ行ってきなさい。

最後に、えーっと、ご飯はちゃんと食べるのよ。それから病気には気を付けること。

それからひとさまには迷惑をかけないことと……それからそれから」

「……もう少し、落ち着いて話したらどうですか?」

 何を言おうかあたふたしている女性に対して、苦笑しながらアーニャは言う。

「……そうね。もうあなたは子供じゃないんだからね」

 アーニャのその言葉を聞いて、落ち着いたのか女性は微笑む。

「じゃあ最後に、お使いを一つ。

隊長さんに、『ごめんなさい。あなたの想いには答えられません』って伝えて。

私には愛する夫も、子供もいますから」

 別れの時間が近いのか、周囲の風景が光に溶けていくのがわかる。
 女性は抱いた手をほどいて立ち上がる。
 アーニャもその女性のように立ち上がった。

「ダー……わかりました。伝えます」

 そしてアーニャは女性に背を向ける。

「これで、お別れね。

いってらっしゃい。私の愛しいアナスタシア」

 女性はそう言って手を振る。
 アーニャは振り返り、微笑みながら言う。

「行ってきます。ママ」



276 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/03/07(金) 22:08:26.55 ID:bV/OCKiKo







 隊長は目を瞑って眠るアーニャを少し離れた位置から見下ろしている。

「俺にはわからない……結局いつまでも、手は届かないのか?」

 ふとつぶやく、そんな言葉。
 隊長にとって、手に届く位置にいるはずのアーニャがなぜか遠い。

「……結局、あなたは、なんなのでしょう?」

 そんな隊長にふと掛かる声。
 その声を聴いた隊長は再び、意地の悪い笑みになる。いや、そんな笑みを取り繕う。

「なんだ。もうギブアップかと思ってたぞ。

まだ俺を楽しませてくれるのか?」

 アーニャはゆっくりと立ち上がって、その言葉に対して首を横にを振る。

「……これで、終わりにしましょう。……あなたも、わたしも」
277 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/03/07(金) 22:09:04.25 ID:bV/OCKiKo

 アーニャの手の甲から、ポタリポタリと落ちる血液。
 それは地面に落ちて小さな赤い染みを作る。

「終わりだぁ?

終わらねぇよこれは。俺と、お前の関係はな」

「ニェート……もう、終わらせないと、いけないのです」

 アーニャは自身の掌を眼前に持ってくる。
 その掌には、トランプのダイヤのような形の赤く塗りつぶされた傷口。
 それを握りしめ、瞳の矛先を隊長へと向ける。

「Давайте положить конец.…… Командующий(終わらせましょう……隊長)」
278 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/03/07(金) 22:10:28.26 ID:bV/OCKiKo

 アーニャを中心に、広がる光。
 全身からほとばしる天聖気は可視化できるほどの閃光を生み出す。
 体外へと放出された天聖気は翼のような形を作り、高密度のエネルギーとして天へと延びた。

「特徴的な傷口、そのあふれ出る天聖気……。

まさか聖痕?じゃあお前は聖人ってことか?」

 ここで隊長は初めて合点の合ったような顔をする。



「なるほど、能力の仕組みはそいつか。

”復活”の天聖気、そういうことか。

『復活の少女(アナスタシア)』!!!」



 かつて救世主(メシア)が起こした奇跡の一つ。
 死後の復活。生き返り。その奇跡が彼女の中で”天聖気”として循環している。
 だからこそ、死んでも復活する。死なない、ではなくそのたびに生き返っているのだ。

 かつて隊長は『聖人』を相手に戦ったことがあった。
 だからこそ、このことを知っていたし、『聖人』の『聖痕解放』の弱点も知っている。

「そんなとっておきがあるとは、驚きだ!」
279 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/03/07(金) 22:11:28.83 ID:bV/OCKiKo

 隊長は両の手に対応した『手』を作り出し、アーニャへと飛ばす。
 だがその『手』はアーニャの手前でバリアに弾かれるように、掻き消える。

「さすがだ!……だが」

「ヴィー……あなたは、いつまで続けるのですか?」

 その言葉を聞いて隊長は攻撃の手を止める。
 そしてふと周りを見渡してみた。

 アーニャの光は夜の闇を照らし、降りゆく粉雪は光を反射させて輝いている。

「これは……」

 まさにそれは地上に振りゆく星屑の様。
 隊長はそれの一つに手を伸ばして、握りしめる。
 その手の中には雪の冷たさだけでなく、なぜか暖かさも感じた。

 これまでどんなに手を伸ばしても届かなかった星々。
 それは自分には絶対に手の届かないもであると思っていた。
 だが今、それはこんなにも近くにある。


「星は……こんなにも近くにあったのか。手を伸ばせば……届くほどに」


 隊長はぽつりと呟く。
280 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/03/07(金) 22:12:25.60 ID:bV/OCKiKo

「隊長……あなたが、欲しかったものは……」

 アーニャの声を聞いて、隊長は、少しの間目を閉じる。

 そして目を開けてアーニャの方へと向く。
 その瞳に映るのは、アーニャの姿。
 それと、かつて手の届かなかったあの女性の像。

 二つは重なり合って、隊長の前に立っている。

「そうだな……終わらせよう」

 全てを悟ったような、隊長の声。

「お前に、俺はもう必要ない。……いや、お前にとって俺は不要なのだろう」

 この星屑振りゆくゴーストタウンに響く地響き。
 隊長の後方にあった、比較的大きめのビルディングは振動と共に宙へとせり上がっていく。

「だが、ここでお前を素直に帰してやるほど、俺は諦めはよくないんでな!」

 隊長の周囲を渦巻く念動力。
 それは力の行使の余波であり、それが及ぼす対象は別である。
 目視した限りかなりの高さがあったと思われるビルは隊長の頭上を加速しながら天へと昇っていく。
281 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/03/07(金) 22:13:06.39 ID:bV/OCKiKo

「卒業試験だ、アナスタシア。

今から俺はあのビルを空に打ち上げて、その後加速させながら落とす。

あの質量を相応の速度を持って墜落させれば、さながら大質量の隕石と同等だ。

被害はこの憤怒の街だけでは済まないだろうな」

 挑戦的な口調でつづける隊長。
 アーニャはそれを黙ってみている。

「このどうにかして防ぐことができれば、お前の勝ち。好きにするがいいさ。

だが防げなかったとき、お前はどうする?

お前は死なずとも、無関係の人間は大勢死ぬだろう。

俺はそれに対して心が痛むことはない。俺は化物だからな。

さぁなんとかしてみろヒーロー!俺という障害を、乗り越えて見せろ!

アナスタシア!」

 その言葉と同時に隊長の体はサイコキネシスによって浮かび上がる。
 さらに余波による、念動力の暴風は小さな瓦礫や砂を巻き込んで竜巻のように隊長の周りを回り始めた。
282 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/03/07(金) 22:14:31.38 ID:bV/OCKiKo

「カニェーシュナ……もちろん、全部守ります。

……あなたを超えて、私は前に進みます!」

 アーニャを包む天聖気はさらに輝きを増す。


「言っておくが、ビルが摩擦によって質量が減衰するなんて期待はするなよ。

俺は、徹底的に、常識を壊してやる」


「なら……私は、徹底的に、常識を、日常を守ります!」


 言葉の明確な対立。
 それを合図に、アーニャは地を蹴り、隊長へと突撃する。
283 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/03/07(金) 22:15:19.00 ID:bV/OCKiKo

 隊長は、大量の『手』を生み出しあらゆる方向から、アーニャを掴んで圧死させようとする。
 しかし翼のような天聖気の放出はブースターのような役割を果たし、その勢いだけで『手』の弾幕を突破した。

 それに対して隊長も動揺を見せることなく拳に念動力を纏わせてアーニャを迎え撃つ。
 向かい合う両者の拳の応酬はぶつかり合い、衝撃の余波を生む。
 しかしそれでもお互いに決定打は与えられず、拳の弾丸が数秒間行き交う。

「こいつは、どうだ!」

 その膠着状態を裂きに破ったのは隊長であった。
 一歩後ろに下がって、念動力で地面に舗装されていたアスファルトを強引に板のように引きはがす。
 アーニャを挟むように立ちあがった二枚の石版は加速してアーニャを挟み撃ちにする。

 アーニャは両手の平を広げた状態でを板に向けて差し出す。
 高密度の天聖気を纏った両腕は、二枚の石版に圧迫されることなく貫いた。

「囮だ馬鹿め!」

 二枚の石版を貫通した穴から見えたのはさらに巨大な壁。
 隊長は石版によってアーニャの視界をふさいだ後に、二つのビルを念動力で引っこ抜いて石版の陰にしながら、さらに挟み撃ちにするようにしてきたのだ。

「これ、でも、まだ!」

 アーニャはそれも先ほどと同様に防ごうとする。
 しかし今度の質量は先ほどの比ではない。
 アーニャの何千倍もの物量が両側から圧殺しようと迫ってくるのだ。

 いくら『聖痕解放』で大幅な身体上昇と運動量ブーストしようとこれはさすがに無理である。
 アーニャはその両側からの攻撃に耐えきれず、押しつぶされた。
284 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/03/07(金) 22:15:55.70 ID:bV/OCKiKo

 勢いよく加速してアーニャを潰して衝突したビル同士は、その衝撃で粉々に砕ける。
 だが隊長もこれで終わりだとは思っていない。

 きっとあの瓦礫の雨の中から体をすぐさま再生させてこっちに向かってくるだろう。

 だがここで隊長はほぼ本能で、しゃがみ込む。
 先ほどまで自身の頭のあった場所には人体を一閃せんとローリングソバットが過ぎていく。

「こちら、です!」

 いつの間にか隊長の背後に回っていたアーニャの蹴り。
 この瞬間移動に隊長は疑問で脳を埋め尽くされながらも、すぐさま『手』を出現させる。

 アーニャはそれにすぐに捕まって、圧掌によって潰される。

「いったいどこから?」

 隊長が忌々しげにそう呟いた時、視界の端に動く影。
 それに反応して何とか防御態勢をとるが、念動力を纏うのは間に合わず、腕に強烈な衝撃が走る。

 そこでようやく何が起きていたのははっきりした。
 隊長が振り向いて目にしたのは、体を再生させながら拳を振るうアーニャの姿だったからだ。

「くっ……そうか。周囲には散布した天聖気で充満しているからか……」

 アーニャが放出させている天聖気によって、周囲は”復活”の天聖気で充満していた。
 故に全身が潰されて死んだとしても、その範囲内ならば好きな場所に再び自分を復活できるということだ。
285 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/03/07(金) 22:16:33.96 ID:bV/OCKiKo

「ふざけて、やがる……」

「……あなたに、言われたくはないです」

「だが……死なせなけりゃ、それは使えない!」

 今度は隊長から接近しインファイトへと持ち込む。

「殺さない程度に、削ればいいだけだ!」

 お互いの正面からの打ち合いの中で、隊長は念動力の刃を発生させる。
 鋭利な刃ほどに念動力を圧縮して精錬すると空間が歪み視覚でとらえやすくなるという弱点はあるがこの際気にしない。
 小さな刃は、アーニャの四肢を切断しようと迫る。

「こん、な、ことで!」

 その不意打ちレベルで織り込んできたその攻撃をぎりぎりアーニャは避ける。
 しかしそれは、隙を生んでしまう。
 避けた際の体の移動によって隊長の拳がアーニャの右肩に直撃した。

「ぐぅう……ああ!」

 その一撃によって肩の骨が砕ける音と共に、後ろへと吹き飛ばされる。

「ようやく、しっかり当たったな」

 拳を振り抜いて、隊長は少し満足そうな顔で吹き飛んでいくアーニャを見ている。
 アーニャは、骨を再生させつつ仰向けで吹き飛んでいる状態から体制を整える。
 そして地に足を着けて、後方に滑りながらブレーキをかけて吹き飛ばされた衝撃を殺した。

「この程度では……終わりません」
286 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/03/07(金) 22:17:33.99 ID:bV/OCKiKo

「あいにく……時間切れだ、アナスタシア」

 隊長はすぐにも向ってこようとするアーニャを制止して、人差指を上へと向ける。
 それにつられて上を見れば、そこに何があるのか自ずとわかった。

「あれは……」

 雪雲に遮られ全貌はわからないものの、轟音と共に何かが飛来してきている。
 そしてこの状況で落ちてくるものはただ一つ。

「さっき打ち上げたビルはそのまま大気圏を突破した後に、十分な距離を稼いだ後に再び加速しながらこの地球に飛来する。

ごちゃごちゃした細かい理屈は無視させてもらうが、威力を落とすつもりはない。

あれだけの質量を、摩擦で減少させることなく充分な速度を持って衝突させるんだ。

充分、戦術核兵器並の破壊力はでるだろうな」

 接近してくる音は次第に大きくなり、空気は震える。

「もうここまで来てしまえば俺を止めても、あの隕石もどきは止まらない。

地表との衝突を待つだけ。

さぁどうする?アナスタシア。

残された選択肢は、あれをお前が止めるしかないぞ」
287 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/03/07(金) 22:18:07.24 ID:bV/OCKiKo

 隊長のその声と共に巨大な火球が雪雲を貫いてくる。
 その衝撃によって空を覆っていた雲は吹き飛ばされ霧散した。

「当然……止めます!」

 隊長から視線を外してすぐに近くにあった廃ビルへと走る。
 全身からの天聖気の放出によって加速していき、アーニャはそのビルの壁を垂直に駆け上がった。

 そして屋上までたどり着き、上空を見る。
 保護するための念動力と、摩擦による炎が混じり合うビルは隕石というよりも、もはやミサイルに近い。
 それは目前まで迫っており、もう一刻の猶予もない。

「アプサリユートナ……絶対に、絶対に止めて、みせます!」

 その迫りくる火球に向かい両手を差し出し広げる。
 背の光翼はさらに大きくなり、羽ばたくようにうねる。
 それと同時に両手からは膨大な閃光を生み出しながら天聖気が放出された。

 そして膨大な力同士は衝突して、拮抗する。
 アーニャが足を着けているビルの屋上は、その衝撃に耐えきれず亀裂が走った。

「く……ううう……あああ!!!」

 アーニャはそれでもなお、押され始めていることに気づく。
 もはや自身の限界くらいの天聖気を出力していたが、それでも受け切るには足りないのだ。
288 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/03/07(金) 22:18:53.17 ID:bV/OCKiKo

 アーニャの手に出ていた『聖痕』は腕全域をすでに侵食し、力を行使するたびに尋常ではない速さで傷は広がっていく。
 『聖痕』が全身に行き渡った時、それが完全な時間切れである。

「まだ……行ける。限界なんて……超える、ものですから!」

 それでも、さらに力を振り絞った。
 全身から放出される光は輝きを増し、夜の闇で包まれる憤怒の街を照らす。

 体の『聖痕』はさらに進み、その傷口はずきずきと痛みを発する。
 体中は痛みでいっぱいで、疲労した精神は警告として頭痛やめまいで現れる。

「アドナーカ……それでも、ここで、ここで守れずに、誰がヒーローですか!」

 これを止めなければ、多くの犠牲者が出るのだ。
 ヒーローとしての矜持としてこれを止めて、隊長に勝ち、アーニャは帰るのだ。
 帰りを待つ皆の元へと。




「うううぅらああああああぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」


 
289 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/03/07(金) 22:19:29.21 ID:bV/OCKiKo

 自身の力を出し切るための咆哮。
 巨大な閃光と共に、膨大な天聖気がエネルギーとして隕石と化したビルとぶつかり合う。
 それは墜落の威力を上回り、降りゆくビルは原形を保てず爆発させる。
 その際に太陽のごとくの爆風が憤怒の街の夜空に広がった。

 同時にアーニャの足場にしていたビルも耐えきれず崩壊を始める。
 天聖気の光とビルの爆光が収まるころにはそこら中に瓦礫の雨が降り始めた。

 アーニャの立っていたビルは崩れ去り、土煙を上げ中がどうなっているのかはわからない。

「やはり、防ぎ切ったか」

 隊長はアーニャが埋まっていると思われる土煙が上がるビルの倒壊跡をじっと見ている。
 その瞳の中に覇気はない。

「お前の勝ちだな。アナスタシア。

お前に俺は、必要ない」

 そして背を向けて、その場から去ろうと歩き出した。





 
290 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/03/07(金) 22:19:59.49 ID:bV/OCKiKo




 だがわずかに風を切る音に隊長はとっさに振り向く。

「これが……最後です!」

 そこには全身に『聖痕』が行き渡り、顔面まで血に濡らし、全身から血をまき散らしながらも、拳を振り上げたアーニャの姿だった。
 本来ならもはや限界。『聖痕』は全身に行き渡った時点で天聖気の供給はなくなり意識も保てるはずがないのだ。

 当然アーニャからは天聖気はほとんど感じられない。
 もはや力は出し切って完全に枯渇しているのが目に見えてわかる。

 それでも、アーニャは立ち上がり拳を振り上げる。

「一撃、入れて、終わり!」

 完全に不意を突かれた隊長は急いで防御態勢を取ろうとした。
 だがなぜか体は動かない。
 そのまま拳は隊長の頬に入り、アーニャはそれを今できる渾身の力で振り抜いた。
291 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/03/07(金) 22:20:44.14 ID:bV/OCKiKo

「ぐぅ、がはっ!」

 隊長はその衝撃で、叫び声を上げながら受け身も取れずにのけぞる。
 そして大の字の態勢で、空を見上げながらその場に倒れた。

 アーニャはそんな隊長を見下ろしながら、血濡れの顔で静かに言う。

「『ごめんなさい。あなたの想いには答えられません』……あなたへの、伝言です」

 その言葉を最後に、アーニャも糸が切れたようにぱたりと倒れた。
 それなのに隊長は、呆然としたまま空を見上げ続ける。

 空の雪雲はさっきの衝撃で散ってしまい、今見えるのは透き通る星空である。
 この街には今光がないので、街中で見るよりも星がよく見えた。

「まったく、最後に手痛い置き土産してきやがって……」

 隊長は夜空を望みながら呟く。
 脳裏に映るのは、あの女性と共に見たかつての星空。



292 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/03/07(金) 22:21:15.67 ID:bV/OCKiKo



――――――
――――――――
―――――――――――


 周囲には杉林で覆い尽くされている。
 地面はところどころに落ち葉の茶色が見えるがほとんどは雪によって白く染め上げられており、同様に木々も雪を被っている。

 そんな木々の間をある男は歩いていた。
 歩調は特に速くもなく、まるで当てがないように林の中を進んでいく。

 口から出た息は、外気に触れた瞬間白く染まる。
 それだけでこの場の寒さを物語る。

 男はふと、空を見上げる。
 薄い白い雲に覆われた空からは幽かに太陽が透けて見える。
 薄暗くはないが決して太陽ははっきりとは顔を見せない、そんな天気。
 まるで自らの目的をはっきりと持てない自分のようだと男は思った。

 そして再び歩き出す。
 ふらふらと、さながら幽鬼のように林の中を男は進んだ。
293 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/03/07(金) 22:21:46.82 ID:bV/OCKiKo

 そんなとき、ふと男の前方に開けた、広場のような場所を見つけた。
 そこにはさほど大きくない、それでも厳かな雰囲気は崩さない教会が見える。

 男はまるで引き寄せられるかのように、教会の方へと歩いていく。
 そして男は、近づいたことによって教会の壁にもたれかかる一つの人影を目にした。

 偶然、空を覆っていた白色の雲の間から太陽が一筋の光を差し込ませる。
 その光はその人影に当たるように差し込んだ。

 その人は光が周囲の雪に反射していたからかもしれないがキラキラと輝いて見える。
 男はその美しさに惹かれるように、ゆっくりと近づいていった。

 しかし、途中で枝を踏んだのかぱきりという音が鳴る。
 その音に気が付いたのかその人影、女性は男の方を向いた。

 女性は驚いた表情をしていたが、その音を鳴らした人物が人であることがわかると安心したかのように男に微笑みかけてくる。

「こんにちは。今日も寒いですね」

 その笑顔は男にとっては眩しくて見ていられないようなものであったのにもかかわらず、目を離すことができなかった。
294 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/03/07(金) 22:22:22.73 ID:bV/OCKiKo

***

 小さな一軒家の前の通りで男は、一人のコートのフードを深くかぶった別の男とすれ違う。
 そしてフードの男を去っていく。残った男の手のひらの中には一枚のメモ。

「二二○○任務開始……か」

 そこに書かれていたことを男は小さく読み上げる。

「あら、どうしたんです?

寒いのに、わざわざ外に出て。」

 背後の家から一人の女性が出てくる。
 それに気づいた男は慌ててメモをポケットにしまった。

「ああ……いえ、えーと……星を、見ていたんです」

 男は言い訳を適当に見繕って言う。
 少し不自然さが残っていたが、女性は気にしなかったようだ。
 そのまま女性は男の隣まで来る。

「ああ、確かにここら辺は都会に比べて、星がよく見えますからね」
295 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/03/07(金) 22:22:51.64 ID:bV/OCKiKo

「……ええ、そうですね。

あなたの方は、お子さんはいいのですか?」

「はい、主人が寝かしつけてくれてますので今は大丈夫です。

それにしてもジョンさんも大変ですね。バックパッカーで、北海道のこんな田舎まで来るなんて」

 女性はそう言った自由な旅に憧れているのか、少し目を輝かせながら言う。
 男はそれに苦笑しながら答えた。

「いえ……もう慣れっこなんで。

それにしても助かりましたよ。宿も見つからずに困っていたところに泊めていただけるなんて」

「困ったときはお互い様です。

あなたが作ってくれた料理、おいしかったですよ」

 女性は微笑みながら上目使いに言う。
 純粋な目で見られ男は少したじろぐが、その目を吸い込まれるように見つめる。

「いえ……僕は、まだまだですよ」
296 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/03/07(金) 22:23:19.58 ID:bV/OCKiKo

「謙遜しないでください。味にうるさい主人が絶賛していたんです。

私が嫉妬しちゃうくらいだわ」

 そんなことを言いながらも楽しそうな表情をする。
 彼女の笑顔を見て、これからすることを思い出して少し、悲しくなった。

「本当に、あなたと出会えてよかったわ。

あなたみたいな、とってもいい人に出会えて」

 女子は屈託のない笑顔を男に向けてくる。

「ええ……僕も、よかったです」

 はたしてその言葉は、会話をつなぐために言ったのか。
 いや、きっと今考えれば、あれは心からの本音だったのだろう。
297 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/03/07(金) 22:24:00.31 ID:bV/OCKiKo

***

 炎に包まれた教会の中、男と赤子を抱えた女性は向かい合う。
 すでに入り口は焼け落ちた柱によって塞がれていた。

「惜しいな。大したべっぴんさんだが、人妻とは……」

 男はできる限り無感情でそう言おうとする。

「本当に……あんたは、きれいだ」

 そんな男の呟きは燃え盛る炎の音にかき消される。
 女性は、もはや絶体絶命の状況だというのに、男に微笑んでいた。

「あなたの、あなたたちの目的はこの子でしょう?ならば頼みがあります」

 女性は男に依然柔らかい表情で言う。

「俺にそれを頼んで聞くと思っているのか?

お前の夫を殺し、この村さえも滅ぼした俺たちが最後の情けにお前の言うことを聞くとでも?」

 女性は抱いている赤子をぎゅっと抱きしめる。

「確かに、他の人たちは機械のように、冷徹な人ばかり。でもあなたは、きっと本当に優しい人なの」
298 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/03/07(金) 22:24:39.73 ID:bV/OCKiKo

「目の前で、お前の夫をミンチにした男にそれを言うか?あんたまるで聖女だよ。ほんとに聖女みたいだ。いらいらする」

 そんな男の言葉に対して、女性は微笑む。

「だって、あなたにしか頼めないでしょう?

わたしが望むのはこの子の幸せ。だからこの子を幸せに導いてあげて」

 女性はこんな状況でも静かに眠る赤子の顔を覗き込んだ。

「そしてできるなら、あなたにも幸せを……」

「……ふん、まぁ考えておいてやる」

 ぶっきらぼうに男は言う。だがその表情は炎の逆光によってよく見えない。
 その言葉に満足したのか自らの子を抱く腕を緩める。

「頼みますね。

この子の名は、アナスタシア」

 女性は腕の中の赤子をそっと男に差し出す。
 男は赤子を受け取って、その武骨な腕で抱いた。

「あなたなら大丈夫。

だってあなたは、いい人だもの」

 女性はその言葉を本当に輝くような笑顔で言う。

「俺は……」
299 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/03/07(金) 22:25:12.50 ID:bV/OCKiKo

 女性のその言葉に応えようと赤子を見ていた顔を上げる。
 だがその目に映るのは、焼け落ちた天井が、女性に今まさに落下せんという時だった。

「ありがとう」

 その言葉を残して、女性は炎に包まれ落ちてきた天井の下敷きになった。
 ずっと無表情だった男はそこで初めて、困惑のような、驚愕のような表情を浮かべた。

「任務……終了」

 男は感情を押し殺したような声で、その言葉を絞り出した。

――――――――――――
――――――――――
――――――――




 
300 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/03/07(金) 22:26:05.14 ID:bV/OCKiKo




 星空は依然変わりないのに、周囲は随分と変わった。
 結局隊長は、ずっと彼女の影を追い続けていたのだ。

「全く……。

子には振られ、親にも振られ、本当に散々だぜ……。

だが……なんだか、悪くない」

 隊長は星空を見上げながら、優しく微笑んだ。





 
301 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/03/07(金) 22:26:38.33 ID:bV/OCKiKo


 隊長はアーニャを背負いながら、静かな夜の街を歩く。
 アーニャの全身に回っていた『聖痕』による傷はすでに全て塞がっていた。
 憤怒の街とは違って、街灯に照らされており道は明るい。

「ようやく、終わったね」

 そんな帰り道の途中、一本の街灯の下で塩見周子は待っていた。

「なんだ女狐。こいつの迎えか?」

「まぁ……そんなところかな?」

 周子は耳と尾を出しており、いつでも臨戦態勢に入れることは伺える。
 だが殺気は発しておらず、あっけらかんとした態度であった。

「それにしてもよ、終始頭ン中のトラウマみたいな部分刺激してきたのはお前の仕業か?」

「あれ?気づいてた?

まぁちょっとしたそんな感じの妨害するしかアタシにはできなかったけどね」
302 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/03/07(金) 22:27:21.70 ID:bV/OCKiKo

 周子は二人が戦闘開始した直後から、遠隔で隊長に妨害を行ってきたのだ。

「全く……、ただでさえ脳内余裕なくて弱体化してたのにあれのせいで余計に脳みそが痛むんだよ……。

そのせいで最後一発貰っちまったしな」

「そう、アーニャの役に立てたのならそれはよかった」

 周子は満足そうにニヤリと笑う。
 それに対して隊長は苦い顔をするだけだった。

「ところであんたはどうして、『プロダクション』にたどり着けたの?

それについての疑問がまだ残ってるんだけど……」

 本来ならば『デストロー』が歴史に介入できないはずなのになぜか隊長は攻め入ることができた。
 それはなぜなのか。
303 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/03/07(金) 22:28:12.83 ID:bV/OCKiKo

「ああ……さっき言っただろ、脳内余裕ないって。

俺はずっと自分で自分のルールを無視し続けていただけさ。

『歴史に介入できない』っていう『デストロー』のルールをずっと破ってたんだよ。

だがこれは重大なルール違反だからな。まぁ俺そのものがルール違反のくせにそう言うのはおかしなことだが。

そのためにイルカみてーに脳内分割して、処理の半分以上をそれにずっと費やしてたんだよ。

言い訳みたいだがそのせいでめちゃくちゃ脳みそ使ってて本調子の20%も出せなかったのさ。

本来の俺なら日本を地図から消すくらい簡単にできるんだが、さすがに今の状態じゃああんた相手にするのも少し面倒そうだ」

 挑戦的な口調で隊長は言うが、周子はのらりくらりとその言葉をスルーする。

「そりゃ聞く限りほんとに勘弁だよ。

ところでその、『デストローのルール』を破ることっていつでもできるの?」

 ある意味気になるところはそれである。
 これがいつでも使えるならば、結局この男は脅威のままなのだから。
304 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/03/07(金) 22:29:06.31 ID:bV/OCKiKo

「いや……もう無理だ。

アナスタシアがいたから俺もこんな無茶ができたが、もう吹っ切れちまったしな。

今も、そしてこれからもそれをする意志は起きないだろうし、それを行使することもできないだろうさ。

これは俺のわがままだ。一度限りの表舞台。

あとは俺は裏方に徹するだけだ」

 それを聞いて周子は内心胸をなでおろす。
 本来運命とは巨大なものだ。いかに膨大な力を持っていても個人が簡単に自由にできる物じゃない。
 だからこそ、隊長の言葉は真実であることがわかる。

「それならよかったよ。

でも自覚はあったんだね。自分が『デストロー』だってこと。

『運命力』関連の異能は自覚がないことも多いはずなんだけど」

「ガキの頃からいろいろしてきたからな。

そのくせニュースにもなんないから自覚もするさ」

 やれやれと言ったように隊長は首を振る。
305 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/03/07(金) 22:29:44.98 ID:bV/OCKiKo

「まぁあれだけ派手に暴れても、周囲の街の人間誰一人気付かないんだから、『デストロー』ってのは大したもんだよ」

「まぁ今日ほどこの力を厄介に思った日はないけどな」

「でもそれだけする価値はあったということね」

「知るか。中途半端に苦労しただけだぜ」

「でもずいぶんと満足そうな顔してるじゃん」

「うるせえ。殺すぞ」

 隊長はじろりと周子をにらみながら背負っていたアーニャを降ろす。
 そのまま塀を背もたれにして眠っているアーニャを座らせた。

「だが多分あの中で俺の能力の恐ろしさについて一番知ってたのはお前じゃねえのか?

多分真っ先に逃げるんじゃないのかと思ったが、どうして残ってるんだよ」

 昼間の時点で周子は美玲と共に避難すると言っていた。
 だが今、周子はここに留まって隊長と向き合って会話しているのはどういうことなのか。
306 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/03/07(金) 22:30:23.70 ID:bV/OCKiKo

「まぁ避難しようとしたんだけどさ。

娘は『アーニャを置いて逃げるなんてできるか!ウチは残るぞ』って言って聞かないものだからさ。

しょうがないからプロダクションに残していったわけ」

 周子はそう言って笑っているが隊長は疑問に思う。

「お前みたいなやつの性格なら、娘だろうが置いて逃げそうな気がするんだがな?」

 そんな隊長の言葉に周子は目を丸くしてみた後、ため息を吐く。

「あんまり親を嘗めちゃあいけないよ。

娘が残るって言ってるのに、一人逃げられるわけない。

それにせめて娘には少しくらいかっこいいところ見せたいと思うのが親ってもんだよ」

「なるほど、それが……親ってものか」

 妙に納得したような言葉を残して隊長は周子に背を向ける。
307 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/03/07(金) 22:31:16.02 ID:bV/OCKiKo

「じゃあ俺はここらへんでさよならさせてもらう。

そこで寝てる小娘については、後は任せた」

「そう、これでまたこの街は平和になるね」

「まったくだな」

 憎まれ口を交わしながら、最後に隊長は振り向く。

「あいにく俺は子育て失敗した人間だ。

あんたは俺みたいになるんじゃねえぞ。俺のことは反面教師にでも思っとけ」

「言われなくとも、わかってるさ」

「それと、アナスタシアが起きたらこれを渡しておいてくれ」

 隊長はそう言ってボロボロになったスーツのポケットから一つの小さな記録媒体を取り出す。
 そして周子に向かって投げ、それは放物線を描きながら周子の手の中に納まった。

「これは?」

「15年前の任務資料だ。きっと知っておいた方がいいことが書かれているはずだ」

 それを聞いて周子は驚いたような顔をする。

「意外にあんた、いい人なんだね」

「ああ、よく言われるよ。

じゃあこれで正真正銘さよならだ。

もう二度と会うことは、無いだろうな。アナスタシアにもこれくらいは伝えておいてくれ」

 そして隊長は背後に向かって手を振りながら周子から離れていく。



 
308 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/03/07(金) 22:31:58.26 ID:bV/OCKiKo





 ふらふらと夜空を見上げながら隊長は歩く。
 周囲は住宅街の真っただ中で、人通りはまるでない。
 そしておもむろに、星空へと手を伸ばす。

「やっぱり手は届かねえな。

でも、ここから見えるだけでも十分か」

 機嫌がよさそうにニヤリと笑い、その大柄の男は一人夜の闇の中へと消えていった。






 
309 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/03/07(金) 22:32:35.79 ID:bV/OCKiKo

『本日の天気予報です。先日まで日本列島を覆っていた低気圧は北上を続け、全国的に晴れとなるでしょう』

「結局アーニャはすぐ行っちゃったわけですね。

なんだか少し急ぎすぎな気がしますけど」

「まぁ居ても立ってもいられなかったんでしょう。

多分すぐ帰ってくると思いますけどねー」

 プロダクションの中、ピィとちひろは相も変わらず自分のデスクに向かって自分の仕事を勤しんでいる。

「それにしても聞いてくださいよ!

プロダクションの口座にかなりの大金が振り込まれてたんですけど、やっぱりアーニャの隊長さんが振り込んだんですかね?

つ、使っても問題ないですよね。こんな事務所の修理代に使ってもおつりがくるぐらいの大金……。

ふふ、ふふふふ……。返してほしいって言っても、もう返しませんよ……」

「ちひろさん目の中お金のマークになってますよ」

「お、おやこれは失礼」

 ちひろが目をこすっているときに、ピィはふと窓の外を見る。
 空を見上げれば一筋の飛行機雲がかかっている。

 ピィはそれを一瞥し、指を組んで伸びをした。

310 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/03/07(金) 22:33:16.95 ID:bV/OCKiKo




 周囲には杉林で覆い尽くされている。
 地面は地面の茶色はほとんど見えないほど雪によって白く染め上げられており、同様に木々も雪を被っている。

 そんな木々の間をある少女は歩いていた。
 歩調は特に速くもなく、でもしっかりとした足取りで林の中を進んでいく。

 口から出た息は、外気に触れた瞬間白く染まる。
 それだけでこの場の寒さを物語った。

 少女はふと、空を見上げる。
 空は快晴。先日は雪がかなり降ったというのに今日は一変してすっきりとした空だ。

「……資料通りなら、この先ですね」

 そして再び歩き出す。
 まっすぐ、迷いなく少女は林の中を進んだ。

 そして、少女の前方に開けた、広場のような場所を見つけた。
 そこには忠行が敷き詰められているだけの広場、だがその中心は小さな丘のように盛り上がっているのが見える。

 少女はまるで引き寄せられるかのように、中心へと歩いていく。
 そしてしゃがみこんで、そこの雪を退けた。
311 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/03/07(金) 22:34:00.88 ID:bV/OCKiKo

「……これは」

 白色は残ってはいるが土によって茶色に汚れたもともと建物であっただろう瓦礫が山となっていた。
 そして少女はその瓦礫を退けていくと、とある錆びた金属が目に入る。

 それを完全に露出させると、それは少女の身の丈近い十字架であった。
 少女はそれを軽く撫で、目を閉じる。

「……ただいま」

 そして小さくつぶやく。

 少女は立ち上がり、満足したような表情で十字架に背を向ける。
 そのまま元来た道を少女はなぞるように歩き出した。

「……せっかく北海道まで、来たんです。

みんなにお土産でも買って、帰りましょう」



 
312 :@設定 ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/03/07(金) 22:34:44.00 ID:bV/OCKiKo
アナスタシア

職業 元ロシア特殊能力部隊隊員
属性 能力者
能力 ”復活”の天聖気、ロシア式CQC

詳細説明
言葉もしゃべれないほど幼いころからロシアの超能力者機関に拉致にされて育てられ、10歳より特殊能力部隊に入隊し、様々な任務をこなしてきた。
ロシアの孤島の任務の失敗で遠路はるばる日本まで漂流してくる。
いろいろあって特殊能力部隊をクビになったので、現在日本で女子寮に住んでいる。
あらゆる国の言葉をマスターしているが特に覚えが早かったのは日本語である。
しかしそれでもたまにロシア語は出てきてしまう。

『プロダクション』でヒーローをやっているがやはり同盟傘下ではないので知名度は低い。
メイド喫茶『エトランゼ』でバイトもしている。

ロシア式CQC
ロシアで生み出された超次元格闘術。これを編み出したのはアーニャの所属していた特殊能力部隊の隊長。
『P』隊長が自身の戦闘スタイルとして編み出したものを、普通の人間でも使えるように改変を加えたもの。
その強さはアーニャが回復は能力に頼ったもののカースを人間の力のみで倒すほど強力なものである。
おそロシア。

”復活”の天聖気
かつて救世主(メシア)が起こした奇跡の一つである死後の復活。生き返り。その奇跡が彼女の中で”天聖気”として循環している。『復活の少女(アナスタシア)』
かなり強力な力だが、固有能力である”復活”に力の大半が割かれているので天聖気としては基本能力による上昇幅は低い方で、纏うような使い方しかできない。
生き返らすということは死と隣り合わせであり、精神的にかなりの負担をかけるので、天聖気の枯渇以上に精神の消耗が大きい。
これまでの治療は細胞単位での”復活”をしている。
『聖人』として力を与えたのはとある主神である。


313 :@設定 ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/03/07(金) 22:35:29.08 ID:bV/OCKiKo


『天聖気』
天使や神聖な神さまが使う聖なる力であり、混じりけのない純粋な力。
魔力と根本的には同じだが、清らかな心の持ち主、または魔力濾過ができる場合にそれらをフィルターとして天聖気として蓄積される。
だだしそれとは別にエンジンのような出力機関が無いと、扱うには難度が高い。
・天聖気そのものが意味を持った力であり、その属性は個人によって違う。
・その属性によって、固有の能力を発揮する。
・『気』としての側面もあり、属性によって差はあるものの身体能力を向上できる。
・浄化の力があり、カースの核など魔的要素が強い部分を察知することができる。これも属性によって差がある。
・属性に依存するが、魔術のように『天聖術』を組むことができる。ただし扱うには相当の知識と技術、訓練が必要である。
『聖人』
力を与えた神と深くつながっている者。
基本的には普通の天聖気使いと差はないが、神から力を供給してもらうことができる『聖痕解放』が使える。
『聖痕解放』
力を与えた神と直接パイプをつなぐようなことであり、一時的に膨大な力を得ることができる。
繋がっている証として、個人差はあるが特徴的な傷、つまり『聖痕』が浮かび上がる。
しかし供給される膨大な天聖気は人間の身には余るため、体を崩壊させかねない。
『聖痕』はその目安のようなものでもあり、時間経過や膨大な天聖気を使うことで全身に広がり、回りきった時『聖痕解放』は強制解除される。
その後は気絶し、天聖気は空の状態になる。その際に失血死する可能性があるので注意が必要。
もう一度使うには、天聖気が回復しきった上で充分な休息が必要となる。

314 :@設定 ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/03/07(金) 22:36:04.96 ID:bV/OCKiKo

『P』隊長

職業 傭兵 元ロシア特殊能力部隊隊長
属性 超能力者
能力 サイコキネシス 『外法者』

詳細説明
傭兵であり、裏の世界で恐れられる舞台裏の征服者。
『外法者(デストロー)』の特性上歴史にならないので、流れる呼び名が定まらない。
例として、『コードネーム”P”』、『ハリケーン』、『局所天災』、『ルール破り』、『沈黙する全滅屋』、『眠らぬ黄昏』、『台無し男』、『盤を引っくり返す者』、『対面致死』、『正面から来る卑怯者』、『チートプレイヤー』、『理不尽傭兵』、『イレーザー』、『外側の殺し屋』、『アンフォーチュネイト』
15年前の任務の際にロシア政府から北海道での任務の依頼を受け、その直後に特殊能力部隊を設立して隊長となった。
隊長となった後もロシア政府だけでなく傭兵として様々な依頼を受けている。
ロシア政府としても飼いならせる存在ではないので内部の人間からも警戒されていた。

もともとロシア政府が拉致したアナスタシアの面倒を見るために部隊を設立。
そしてアナスタシアがいなくなった際に部隊の存在意義は失われたので自らの手で解散させた。
その際にロシア政府と揉めた結果、表立って語られていないが現在ロシア政府の内情はかなり悲惨なことになっている。
趣味は映画観賞。
315 :@設定 ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/03/07(金) 22:36:38.17 ID:bV/OCKiKo

『超能力』
最もポピュラーとされる異能であり、珍しくない程度の能力。
汎用性に富んでいて、使い方次第では日常生活の役に立つ。
念動力と言われるベクトル的な運動を起こすサイコキネシスと物を動かすテレキネシス、そのほかにも透視、予知、発火など多岐にわたる。

『外法者(Dest Law)』
血統とか、因果とか関係なくごく普通の一般家庭からでも突然生まれたりする怪物。
『運命力』が存在せず因果に縛られない存在で、『ルール』を無視できる。
欠点として世界に縛られない、つまり物語に関わることができない。
世界的に有名であったり、歴史に名を遺していたり、はたまたこれから世界にその存在を轟かせる人や、事柄には介入できない。世界に名を残せなず、強大な力を持っていてもモブにしかなれない。
歴史に介入できないということは無意識の嫌悪や時に強引な因果による妨害によって引き起こされる。
そしてその能力の性質上、自身がそれであると気づくことなく一生を終える場合も多い。

限界のない能力であり、『ルール』、『物理法則』だけでなく『制限』も破ることができる。
それによって自身の能力の限界『制限』を隊長は突破している。
能力の例として
・宇宙空間を装備なしでも自在に動ける。
・防御不能の攻撃でさえも防げる。
・物理的以外で即死する攻撃なども防げる。
・究極として『デストローのルール』そのものさえ破ることができる。
316 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/03/07(金) 22:37:15.33 ID:bV/OCKiKo


以上で終わりです。
プロダクションのメンバーお借りしました。

とりあえずアーニャ中心のお話はこれでひと段落です。
隊長については話の背景や名前くらいは出てきても表立って話に出ることはもうないでしょう。

317 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/03/07(金) 22:52:40.33 ID:rcHfb5DTo
アーニャぱねええ
戦闘のスケールの大きさに興奮してました
お疲れ様です
318 : ◆zvY2y1UzWw [sage]:2014/03/07(金) 23:26:03.51 ID:exQo+N490
乙です
アーニャと隊長さんのバトルが熱くて半端ない
プロダクションの雰囲気も本当にいい感じ
怪物と人間の差異も、ちょっと参考にしたいところ

というわけでこちらも投下
学園祭二日目ですよ
319 : ◆zvY2y1UzWw [saga]:2014/03/07(金) 23:31:51.79 ID:exQo+N490
とある場所。資料室の、本棚から、一冊のノートが落ちた。

それは地球の文化をまとめた物らしく、落ちたページには童謡が書かれていた。

『地球の童謡 ・非常に興味深い

男の子はなにで出来ている?
カエルとカタツムリ、そして子犬の尻尾
そんなものでできているのさ

女の子はなにで出来ている?
お砂糖とスパイス、それに素敵な物をたくさん
そんなものでできているのさ

男の人はなにで出来ている?
溜息と流し目、そして嘘の涙
そんなものでできているのさ

女の人はなにで出来ている?
リボンとレース、それに甘い顔
そんなものでできているのさ』

それなりに有名なマザーグースの詞。そこにノートの主は何か書き足していたようだ

『怪物はなにで出来ている?
・・・・・・、・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・』

一部が破けて、そこはもう読み取れない。

厳重に閉ざされた資料室で、落ちたノートはそのページを開いたまま、誰にも触れられないままでいた。
320 : ◆zvY2y1UzWw [saga]:2014/03/07(金) 23:33:32.38 ID:exQo+N490
裏山に一人、眼鏡をかけた女性が居た。

『だれかいますかー?いたー!』

その女性に、木の陰からひょこっと顔を出した小さな子供が駆け寄ってきた。

『ハロー?メガネのおねーさん、メガネはずそー?』

「…来たわね」

『?…ハロー?』

「あまり触らないでくれるかしら。オクト、光学迷彩解除」

『ゴロンゴロン』

触れようとしてきた子供の手を振り払い、女性は…マキノは近くで光学迷彩によって隠れていたオクトを呼び出す。

『…?』

「オリハルコン、セパレイション。…アビストーカー、ウェイクアップ」

戦闘外殻を纏ったマキノは、煙幕を噴射した。
321 : ◆zvY2y1UzWw [saga]:2014/03/07(金) 23:35:19.46 ID:exQo+N490
『あ、あわ…あ…れ?』

子供の姿をしたカースがそれに怯んだ隙を逃さず、マキノは触手の針を腹部に音も無く突き刺した。

触手の先端に突き刺されたまま、そのカースは悲鳴を上げ始めた。

『おろして!おろして!痛い!痛いよぉ!助けてぇ!!』

「核は…両目ね」

『や、やめて!やめろ!死にたくない!死ぬのは!』

「…カースが何を言っているのかしら」

マキノがその悲鳴を無視して核を破壊しようとした瞬間、周囲から他のアンチメガネカースが集まってきた。

『ヨバレテキマシタゾ、メガネシスベシ!』

『ナカマニナニシテンダ、コノメガネ!』

『同志ー!煙いっぱい、大丈夫?』

通常個体が二体、AMCが一体。裏山にはそれほどの数が居ないのだろうか?

その三体がそれぞれ核からレーザーを放ち、攻撃を始めた。

「なるほど…一撃で仕留めないと面倒ね」

煙幕を撒いて、光学迷彩を使用しても、下手な鉄砲数うちゃ当たるとも言う。

光を放つレーザーだからこそ回避はある程度容易だが、一体を攻撃するたびにこれが繰り返されるのはなかなか危険で面倒だ。
322 : ◆zvY2y1UzWw [saga]:2014/03/07(金) 23:38:13.10 ID:exQo+N490
『やだ!離して…あああああ!!』

「…!?」

乱入してきた三体に気を取られたその時、針に突き刺されたままのカースが前触れも無く、ボンッと音を立てて自爆した。

「自爆…」

『同志!メガネにやられた!?』

『メガネッコ、シスベシ!』

『メガネ、ハイジョ!』

その自爆によって、三体の方もヒートアップしているようだ。

「…」

三体が一気に煙幕の中のマキノに接近し、触手で攻撃をする。

…だが

『え?』『グオ…!?』『ガギャ…!?』

「あの程度の爆発で針は傷つかない…それにレーザー攻撃で既に核の場所は把握できていたのよ。隙を見せたわね」

その三体の核…合計四つに、四本の触手の先端の針が見事に突き刺さっていた。

「…まず4体。自爆までしてくるのは予想外ね」

カースが消滅したのを見届け、マキノは裏山を再び歩き始めた。
323 : ◆zvY2y1UzWw [saga]:2014/03/07(金) 23:39:29.12 ID:exQo+N490
――

様々な思惑が飛び交う学園祭。小さな怪物、ナニカは学園の中を歩いていた。

そんな中、黒兎と白兎が、ナニカに抱きかかえられながら地味にテレパシーで会話していた。

『っべーわーマジっべーわー』

『…真面目に話せよ、なにがヤバいんだ』

『んー…アンチメガネカースが狩られてるっぽイんだよね、誰かは分からないけど』

『アイドルヒーローかもしれないな』

『あーそうダね、あとフリーのヒーローとかかも。増えている場所も確認できるけど、消えているのはあんまりいい気分じゃないヤ』

黒兎はアンチメガネカース達の行動や状態はある程度認識できる。その力によって、手下がどんどん消えていると分かるのだ。

その原因の一つにマキノ達が居た。マスクドメガネに恩を売る為、彼女達はアンチメガネカース狩りを始めていた。

それによって、黒兎がヤバイと感じ始めていたのだ。
324 : ◆zvY2y1UzWw [saga]:2014/03/07(金) 23:40:54.76 ID:exQo+N490
『新作とか言っていたAMCもか?』

『いぇーす、普通の個体よりは被害は少ないけどサ、総数から見ればちょいとアタシの太い眉毛が垂れ下がるね。しょぼーんって』

『増やしすぎた弊害だな』

『返す言葉もナイなぁ、こっちは飛行機ジャックからの海外デビューまで皮算用していたのに…』

『ったく…海外デビューなんて考えていたのかこのバカは』

『あ、そレとAMCには自爆機能もあるからな、それも減ってる理由の一つだ』

『…なんでそんな事をさせるんだ?』

『変態ヲ焼くためだよ。最近物騒だかラね、子供相手に「孕ませたい」だのなんだの言う大人がいる時代だし』

『マジかよ世界終わってるな…って色欲に溺れればそうなるか』

『でもまさか変態以外への攻撃に自爆を使うとは思ってモいなかったよ。我が子が成長するのを見守る母親サンの気分?』
325 : ◆zvY2y1UzWw [saga]:2014/03/07(金) 23:44:10.81 ID:exQo+N490
自らが信じる事の為に自爆特攻。それはある意味狂信特有の攻撃でもあった。

黒兎としては、我が子とも言えるアンチメガネカースは存在するだけでいい。人々の意識に刷り込む『風潮』をまき散すことが存在意義なのだ。

人々の意識へ刷り込む力は、本来ならばメガネへの反逆だけに留まる力ではない。それは自らの手を汚さずに社会さえ覆せる力。

黒兎の頭の考える能力がイカレていなければ、恐ろしい事になっていただろう。

狂信の波動にやられ『同志』となった者達は、『同志』であるアンチメガネカースを攻撃できない。

ましてや『始祖』である黒兎に刃向うなど、別の強力な力で守られてなければ不可能だ。

いざとなればアンチメガネカースたちの性質を塗り替え、全て別の狂信のカースへ生まれ変わらせればいい。

そうすれば『アンチメガネ』の風潮は消え、別の風潮が生まれ、改めて人々に染み込み始めるだろう。

その個体の認識とのズレがあればあるほど風潮は染み込みにくい。逆に言えば、無ければ染み込みやすい。

例えばメガネへの嫌悪などは、元から興味が無かったり、メガネよりもコンタクト派であれば染み込みやすい。

個体の認識との『ズレ』が無ければ…常に意識しているような認識でなければ、それが現実とかけ離れていても風潮は生まれるのだ。

そしてその風潮のアンテナとして、狂信のカースは存在している。むしろ存在しているだけでいい。

…だが黒兎の予想以上に、狂信のカースは狂っていたようだ。派手に自爆攻撃まで始めるのは誤算だった。

だがイカレた黒兎はその誤算すら歓迎する。
326 : ◆zvY2y1UzWw [saga]:2014/03/07(金) 23:48:47.30 ID:exQo+N490
『止めさセる気なんて存在しない。自爆特攻されるような奴は所詮そういう奴ってこと。クズは制裁しないとね』

『んで、本来は何があったら自爆するのさ?』

『AMCの自爆は自分の意思もあるケド…恐怖を感じたらだ。「人間を模倣した感情」の一つ、恐怖がトリガーの一つだよ』

自爆のトリガーは二つあったのだ。一つは自らの意思、そして『恐怖』。

僅かながら人らしい仕草をするAMCは、恐怖という感情さえ感じる。それによって、恐怖が限界まで達した時、自爆するのだ。

模倣と言う事は、オリジナルが存在する。それは奈緒の記憶の奥底のトラウマだ。…そんな事だれも気付かないだろう。

痛みに泣き叫び、苦しみに怯え、死に恐怖を抱く。それが奥底で根付いている事に。

恐怖は恐ろしいトラウマと結びつき、AMCを発狂させる。…逆に言えば純粋な好意で触れ合えば。そういう事は起こらないのだろう。

その事は、黒兎さえ知らない。
327 : ◆zvY2y1UzWw [saga]:2014/03/07(金) 23:50:14.77 ID:exQo+N490
『まぁ、お化け屋敷で一斉爆破とか笑えないからある程度は個体でコントロールできるようにはしてたんだけドね』

『ふーん、なんかに利用しようかと思ったのに』

『…協力するカ?』

『いざという時は頼るかもな、頼るつもりはないけど』

『おっけ、把握した。何してるかはシランけど』

『…言えと?』

『別ニー?言わないと思うし』

『ご名答。言うつもりねぇわ』

『『…』』

呪いとしての『狂信』はその根底に『理想』を秘めている。

呪いとしての『正義』はその言葉に『狂気』を隠している。

お互いにどこか似た性質の呪いは確実な違いを持っていた。

「ふたりとも、どしたの?」

「「んー?」」

若干ピリピリした空気が流れるが、二人をわさわさと振り回すナニカが二人に声をかけたことで終わった。

「黒ちゃん、白ちゃん、あっちのお店みよー?」

「「あいよー」」

ぶらぶらと振り回されながら、二体はまた何か思考する。
328 : ◆zvY2y1UzWw [saga]:2014/03/07(金) 23:50:52.88 ID:exQo+N490


だれも見ていない静かな場所。中学生用の控室に一人、光がいた。

…いや、一人ではない。彼女の腕輪が変形し、ライトが姿を現す。

「光、随分と機嫌が悪いじゃないか、どうかしたのかい?」

「…ライト、そう見えた?」

「ああ、駄目じゃないか、正義のヒーローが不機嫌になっちゃ…せめて見ただけではわからないようにすべきだね。で、どうしたんだい?」

内容は分かっているのに、彼は光を煽る為に問う。
329 : ◆zvY2y1UzWw [saga]:2014/03/07(金) 23:52:38.18 ID:exQo+N490
「紗南が…えっと、よく病欠で休んでる子なんだけど…」

「その子が病欠と言いながらも実はサボりなんじゃないかって思っているのかい?」

「うん。紗南はゲームをよくやってるし…屋上でゲームばかりして勉強をしていない時もあったらしいんだ!見た人がいる!」

…それは彼女がベルフェゴールに体を奪われていた時の話ではあるが、光の正義感と疑いを加速させる最高で最悪の材料だった。

「なるほど、ゲームが好きすぎて秩序を乱す…悪い子って事だ。しかも前科がある」

「うん、クラスのみんなが迷惑してると思う」

「そうだね、確かに迷惑だ。今のまま放置するわけにはいかないね、秩序を乱しているのだから」

「…秩序」

「そう…紗南って子は『嘘つき』で、『自分勝手』…つまり世界を乱す小さな悪の一人…」

ニタリとライトが口を歪ませても、光は彼をしっかり見ていない。心ここにあらず、と言ったところか。

そもそも彼女の本来の心は既に殆ど正義の呪いによって歪まされてしまっている。
330 : ◆zvY2y1UzWw [saga]:2014/03/07(金) 23:53:47.92 ID:exQo+N490
「悪党…」

「そう!小さな悪は小さな英雄が倒さなくてはならない…そうは思わないかい?」

「…で、でも、紗南は…」

呪いに侵されていない理性が、ライトの囁きに逆らう。

(…おどろいた、催眠状態でまだ逆らうのか…強い。だけど…それだけに強い力を秘めている…!)

しかし、ライトはそれを嘲笑う様にその理性を壊しにかかった。

「何を言っているのさ…君は一般人だからって悪を放置するのかい?それとも、能力者じゃないからって理由で?」

「…それは」

「それは差別だよ。悪は全て平等に裁かれなくてはならない。殺人・テロ・窃盗・誘拐・暴力・隠蔽…全ては等しく悪なんだ」

ヒーローに頼る人が、ヒーローを愛する者が居ればいる程、正義の呪いは力を増していく。都合のいい考えの、呪いとしての正義が。

「しかも彼女ほどの小さな悪は、法によって裁かれることは絶対にない」

理想から力を得て、その理想を歪ませる。

呪いとしての正義が残すのは破滅のみ。正義の言葉は都合良く人の心へ入り込んでいく。
331 : ◆zvY2y1UzWw [saga]:2014/03/07(金) 23:55:53.32 ID:exQo+N490
「僕らは裁かなくてはならない。今は小さな悪しか裁けなくても、いずれ全てを裁くことが出来る…僕は君を小さな英雄で終わらせない」

ニマァ…と邪悪に微笑みながら、小動物の姿をした呪いの剣は囁く。

「裁き…?」

「そう、そうだ…君は秩序を乱す輩を裁き、世界を安定させる。そんな剣になればいい…」

小さな翼で飛び、光の肩に乗ると、猫のような手が頬を撫でる。赤い瞳を妖しく輝かせながら。

「英雄は、悪を断じる事を戸惑ってはいけない。君が知るヒーロー達だってそうじゃないか」

「あ、アタシは…」
332 : ◆zvY2y1UzWw [saga]:2014/03/07(金) 23:56:19.28 ID:exQo+N490
「だから…おや?」

控室に近づいてくる足音が、その言葉を止めた。

(…レイナ、だったっけ。気配は彼女の…なら、ほぼ確実にこの部屋に来るだろう)

足音が知っている人間のものだと判断すると、ライトは姿を腕輪へと変えた。

「…あ、あれ?ライト?どうしたんだ?」

光は途中からの記憶が曖昧になっていた。一種の催眠状態だったことが理由なのだろう。

その様子を全く気にせず、ライトは平気で嘘を吐く。

『ちょっと光はつかれているんじゃないかな?眠そうだったよ?…それに人が来る、僕は隠れなきゃいけないよ』

「そうかな…体力は自信あったんだけd…」

光が言葉を全て発する前に、扉がバンッと勢いよく開かれた。

扉を開いたのは、ライトの感じた通り、麗奈だった。
333 : ◆zvY2y1UzWw [saga]:2014/03/07(金) 23:57:22.17 ID:exQo+N490
「光!アンタいつまでここにいるのよ!」

「あっごめんごめん、忘れ物しちゃって…探すのに時間かかっちゃったんだ」

「…その腕輪でも探していたの?」

「そ、そうなんだ!あはは…じゃあアタシもう行くから!!」

「ちょ、ちょっと光!待ちなさいよー!!」

麗奈の制止などまるで聞かずに、光は伸ばした手をすり抜けて逃げるように遠くへ行ってしまった。

「…あいつ、嘘が下手すぎるわ。…正義のヒーローがなに嘘なんてついてんのよ。おかしいじゃない」

伸ばした手が届くはずも無く、麗奈はその手を寂しげに下ろした。
334 : ◆zvY2y1UzWw [saga]:2014/03/07(金) 23:58:51.57 ID:exQo+N490
(彼女の理性の抵抗があそこまでとはね、天使の力とやらの影響もあるのかな?)

ライトは光の理性と心の壊し方を念入りに考える。

(ああ、面倒だ…だけどまぁ、どうにかなるだろう)

正義の名のもとに、悪のレッテルを張られた者を殺す処刑人形。そんな存在を生み出すために、白い怪物は思考する。

(…女性、しかもこの年齢でこれほど素質のある素体は滅多に見つからないだろうから、慎重に行う必要がある。焦ってはいけない)

(まだ、時間はある…僕が失敗する事など許されないのだから)
335 : ◆zvY2y1UzWw [saga]:2014/03/07(金) 23:59:38.74 ID:exQo+N490


「みー!」

「みみー?」

「みっみ!」

ユズにより蘭子と昼子の監視、それと万が一ぷちどるに遭遇したら守るように命令されているぷちユズトリオが仲良く飛んでいた。

風と操作と回復の魔術を宿す3体は、命令通り『悪魔たちに見つからないように』こっそり飛び回っていた。

見つからないように、操作魔術の黒い鎌を持つぷちユズが隠蔽魔術を使い、今の所それは難なく成功している。

『〜♪』

『れでぃ』

「「「み?」」」

飛び回っていた3体は急停止する。近くの茂みの影から、銀色のユニコーンに乗ったぷちどるが飛び出してきたのだ。
336 : ◆zvY2y1UzWw [saga]:2014/03/08(土) 00:00:44.07 ID:pciwp3WK0
バイオリンの音色を奏でるその個体は、捜査隊から『すずみやさん』と仮称が付けられているぷちどる。そして相棒の『すーさん』だ。

3体は隠蔽魔術を消して、すずみやさんに近づいた。

3体に気付いたのか、すずみやさんを乗せたすーさんも一時停止した。

『れでぃ』

「みー?」

『…。〜〜♪』

「みみ、みぃ♪」

「み〜♪」

「みみっ♪」

『〜♪』

くるくると楽しそうに3体はすずみやさんとすーさんの頭上を旋回する。
337 : ◆zvY2y1UzWw [saga]:2014/03/08(土) 00:01:20.08 ID:pciwp3WK0
「みぃ!」

地面に降り立つと、一体がどこからかぷちどるサイズのバドミントンの羽を取り出した。

残りの二体も、鎌をバドミントンのラケットに変化させる。

「みー!」

『?』

『れでぃ』

「みっみっ!」コンッ

「みー♪」コンッ

二体が楽しそうにラリーを始める。

「みっみっ♪」パンパパンパン

そのラリーに合わせ、残りの一体が手拍子を始めた。

『! 〜♪〜♪』

そのリズムに合わせ、即興ですずみやさんがバイオリンを奏で始める。

「みっみみみっ♪」コンコン

「みみっ♪」コンコンッ

『〜♪』

建物と建物の間の物陰で、実に楽しそうな音が響いていた。
338 : ◆zvY2y1UzWw [saga]:2014/03/08(土) 00:01:57.30 ID:pciwp3WK0
ユズの命令もちょっと忘れ始めたその時、背後から誰かが接近してきた。

「すずみやさん!見つけたぞ!」

「!」

「「「み?」」」

それは涼宮星花捜索隊の一人だった。

『…〜〜♪』

『れでぃ』

すずみやさんはぷちユズトリオにぺこりと頭を下げると、バイオリンを奏でながらすーさんに乗り、そのまますーさんも駆けだす。

「あっ、待て!逃げるんじゃない!」

「みぃー!」

追いかける捜査隊員に、緑色の鎌を持つぷちユズが魔術で猛烈な風を浴びせた。

「何っ!?」

急に吹いてきた風に、彼は思わず動きを止めてしまう。
339 : ◆zvY2y1UzWw [saga]:2014/03/08(土) 00:03:33.07 ID:pciwp3WK0
「みみー!」

「ぐおっ!?」

さらに追い打ちをかけるように黒い鎌のぷちユズが近くにあったロープを操作して彼を転ばせる。

「みぃ!」

最後に白い鎌のぷちユズが念のために回復魔術をかけて、素早く距離を取る。

「うおっ!…こ、攻撃じゃない?」

「「「みみっみー!」」」

「…ってああっ!待てー!!何をしたー!?」

3体は姿を消して逃げるように飛び去った。ちなみに一体はあっかんべーをしていた。

「た、隊長に報告すべきだよな…」

一人残された隊員は、茫然とするしかなかったようだ。
340 : ◆zvY2y1UzWw [saga]:2014/03/08(土) 00:04:53.86 ID:pciwp3WK0
以上です
自分でぷちどるSSを書いて心を癒しに行くスタイル

マキノ、光、紗南、麗奈、すずみやさん&すーさん、捜索隊一名お借りしました
学園祭の波乱と混乱はどこまでTOKIMEKIエスカレートするんでしょうかねぇ…

情報
・アンチメガネ狩りは黒兎がある程度察知しているようです
・ライトによる南条光改造計画進行中!
・ぷちユズとすずみやさんが仲良しになったようです(ほっこり)
341 : ◆AZRIyTG9aM [sage]:2014/03/08(土) 01:11:37.54 ID:91Y2FkIa0
お二方乙ー

なにこれ最終回?的なバトルで燃えた。
アーニャカッコイイな。
そして、もうなにがなんだかわからないけど二人ともすごいのはわかった(小並感

ライトの暗躍怖いよー!
そして、最後のプチ達に癒された。

じゃあ、久しぶりに投下します!
342 : ◆AZRIyTG9aM [saga]:2014/03/08(土) 01:12:25.88 ID:91Y2FkIa0
学園の裏山

少し広くスペースがある場所。

オトハ「……海の不協和音が強まってる。まるで悲しむように助けを求めるように。強い意志を持つ音が正常に戻そうとしてるけど……無事であることを」

そこに、沢山の小鳥や子猫などの動物達に囲まれてる自然の大精霊・オトハが呟く。

オトハ「そして……ナチュルマリンから迷いと恐怖の音色が聞こえる。けど、その音色の原因を取り除くことは私にはできない。」

手にはハープを持ち、心地の良い音楽を奏でさせる。

その音色を聞き、動物達はまるで居心地がいいかのように、大人しく聴き入っていた。
343 : ◆AZRIyTG9aM [saga]:2014/03/08(土) 01:13:10.83 ID:91Y2FkIa0
オトハ「自身で答えを見つける。この試練を乗り越え、海の民とお互いの音色を奏でさせ、美しい旋律を産むことができるかもしれない。」

まるで、神話や物語を語る吟遊詩人のように彼女はハープを奏でさせながら語る。

誰に聞かせてる訳でもない。

ただ、彼女は願っているだけ。

平和を。

自然と人との共存を。

海に平穏あらんことを。
344 : ◆AZRIyTG9aM [saga]:2014/03/08(土) 01:14:21.74 ID:91Y2FkIa0
オトハ「………そして」

『zzZ…メガネはだめぇ』

『おねむの時間なのぉ…zZZ』

動物達が集まってる中で紛れこんでいる黒い子供達ーーーAMC。

彼らは憎きメガネをこの世から排除するために裏山に来ていて、たまたま見つけたオトハを反メガネ派にしようと近づいたのだ。

だが、彼らは彼女の奏でる音色により眠りについてしまったのだ。

自然の安らぎの力が宿った音が≪狂信≫を眠らせおとなしくさせいる。

オトハ「……歪んだ音色が世界の音を濁らせ不協和音を産もうとしている……」

ポロン♪とハープを奏で、彼女は眠るAMCを見る。

オトハ「平和の旋律がこの場に奏でられることを」

優しく微笑みながら、ハープの音色は広場に響いていた。
345 : ◆AZRIyTG9aM [saga]:2014/03/08(土) 01:15:00.97 ID:91Y2FkIa0
一方、学園のとある場所は凄く盛り上がっていた。

屋外にある休憩スペース。

そこで行われてるのはスタンプラリーのイベントの一つ。早食い大会。

ルールはいたって単純。制限時間内にスタンプの番人より早く食べ終わること。

だが、大きな皿に山盛りに盛られた和菓子の山は見る人によってはエレベストに見える程の量。

そして、それを食す大食いに自信のおる巨漢達。

「もう……ダメだ」バタッ

「俺の胃袋は……宇宙d」ドサッ

だが、そんな強者達がまた一人。また一人と椅子から転げ落ちるように倒れ伏す。
346 : ◆AZRIyTG9aM [saga]:2014/03/08(土) 01:15:50.03 ID:91Y2FkIa0
菜帆「幸せですね〜」

………ただ一人。番人…いや、≪悪魔≫を残して。

菜帆「美味しいですね〜♪おかわりお願いしま〜す♪」

『菜帆ちゃん。次の挑戦者が来るまでダメですよ〜?代わりにさっき買ってきてもらったタコ焼き食べましょ〜』

口から≪二つの声≫を出しながら、一日目と同じ露出の多い小悪魔な衣装を着ながら、タコ焼きに手を伸ばす女性。

ーーーまだ食うのかよ?

ーーーチャンスだろ?お前行けよ?

ーーーアホか!あの女10回以上挑戦を受けてるのに全部完食して合間に別の物食ってんのにペース落としてないんだぞ?

ーーーあ、ベルちゃんダヨー

ーーー私は何も見ていませんわ。行きましょう。フェイフェイさん

そんな野次馬の声を気にせずスタンプの番人は挑戦者を待つ。

悪魔を倒す救世主は現れるだろうか?
347 : ◆AZRIyTG9aM [saga]:2014/03/08(土) 01:17:30.00 ID:91Y2FkIa0
そして………その近くで。

加蓮「……いない。ここの場所じゃないのかな?」

≪ナニカ≫を探す少女。

加蓮「次はこっちにいこう」

彼女は果たして見つけられるだろうか?

加蓮「どこにいるの?■■ちゃん?」

自分が今言った名前もノイズが走ったようになっている少女を…

影はユラリと揺れている。

終わり
348 : ◆AZRIyTG9aM [saga]:2014/03/08(土) 01:21:14.69 ID:91Y2FkIa0
イベント情報追加

・乃々の覚醒のヒントらしき事をオトハさんが言ってます

・オトハさんが裏山でハープを奏でてるよ!その音色で動物達だけじゃなくAMCもおとなしくなってるよ!

・スタンプの番人・菜帆。和菓子の山早食いの挑戦者を待っている。勝ったらスタンプ5個分

・加蓮が■■を探してます。


以上です!

え?AMCが眠るのはおかしい?きっと自然の安らぎの力だよ(目逸らし

誰か番人を倒す挑戦者現れないかな?

声だけですがちゃまとフェイフェイお借りしました!
349 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/03/08(土) 09:41:26.46 ID:K5s6Gg4co
乙乙ー

>>340
紗南ちゃんのサボりは言い訳できないレベルである
レイナ様はやく覚醒して助けてあげて!

>>348
早食いは勝てる気がしないw
ですが肇ちゃん達が挑戦するかもー
350 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/08(土) 10:56:16.56 ID:ie+RX9ozo
おっつー!
投下ラッシュだ、ゆっくり読むぜ

楽しい話とシリアスと、なかなか続きが気になるところ
読み返してくる
351 : ◆zvY2y1UzWw [sage]:2014/03/08(土) 13:35:58.38 ID:pciwp3WK0
乙です
スタンプはムリゲーが多いにゃあ!
早食いで勝てる人が現れるのか…
AMCが寝ているのは模倣で済むよ!問題ないよ!もっと寝かせてもいいんだよ!
352 : ◆Mq6wnrJFaM [sage]:2014/03/08(土) 14:12:58.11 ID:XHLO8fRDO
おつー
アーニャは一気にスケールでかくなったなぁ
光はこの先どうなるやら

拓海のスタンプは1/2を3回当てるだけだから運と勘でクリアできるよ!ムリゲーじゃないよ!
353 : ◆cKpnvJgP32 [sage]:2014/03/08(土) 19:01:25.11 ID:O1H2kgL/o
皆さんおつー

>>316
はぇー……、読んでてすごい引きこまれる
言葉が出ない、ただただ圧倒された
素晴らしい感動巨編でした

アーニャの再生は不死身レベルだったかー
そして相変わらず隊長強い!
あれはしまむらさんの普通力も上回るんだろうか

>>340
光の明日はどっちだ!
多分それは麗奈様にかかってる!
……のかもしれない

麗奈サマー! はやくしろっ! 間にあわなくなってもしらんぞーーっ!

>>348
音葉さんは相変わらず麗しい
彼女のハープに合わせて藍子に歌ってもらいたい
きっと凄く癒やされるんだろうなー
ただしカースは死ぬ
354 : ◆llXLnL0MGk [sage saga]:2014/03/11(火) 00:40:10.00 ID:rx/oW7rJ0
乙乙
アーニャと隊長の決戦にはかなり惹かれる
いいなあ、こんな文書きたいなあ

マキノやすずみやさんや捜索隊拾ってくれて超嬉しい(歓喜)
光がヤバイー! はやくしろレイナサマー!!

森久保パワーアップフラグきましたねこれは
あと菜帆ちゃん勝てそうにないんですがそれは

雑談でさんざん募集したあの企画導入部、投下しちゃうよー!
時系列はアイさんが茨姫手に入れた以降。だから下手したら年またいでるね
355 : ◆llXLnL0MGk [sage saga]:2014/03/11(火) 00:42:10.61 ID:rx/oW7rJ0

アイドルヒーロー同盟事務所内部の社員食堂。

その一角に、パップ、シロクマP、クールP、黒衣Pの姿があった。

黒衣P「……そういえば、そろそろAHFの時期か」

シロクマP「ああ、確かにそうですね。洋子ちゃん、出るんですか?」

黒衣P「いや、洋子にはまだ経験を積ませるべきだと思ってる」

クールP「AHF……ですか。資料でだけなら知っています」

二人の会話に、箸を止めたクールPとパップが口を挟む。

クールP「正式名称を『オールヒーローズフロンティア』、四年に一度開催されるアイドルヒーロー同盟の祭典ですね」

パップ「ああ、予選を勝ち上がった8人プラス敗者復活4人のアイドルヒーローによるトーナメント戦だったか?」

シロクマP「ええ。お二人は前大会時はまだ所属していませんでしたね」

黒衣P「何でも今回は、同盟外のヒーローも参加可能になるそうだ。スカウト活動の補助らしいが」

黒衣Pは味噌スープを平らげ、トレイに茶碗を置いた。
356 : ◆llXLnL0MGk [sage saga]:2014/03/11(火) 00:43:25.02 ID:rx/oW7rJ0
シロクマP「そして参加者増加を考慮して、予選の前に書類審査と簡単な面接を行うそうなんです」

焼き魚の身を丁寧にほぐし、シロクマPは言葉を切って口に運んだ。

クールP「ああ、その辺りも拝見しました。確か、予選に参加できるのは25人でしたっけ」

クールPはサラダのプチトマトを指先で少し転がし、ヘタを摘んで喰らい付く。

パップ「25人……そっから本戦にいけるのが、敗者復活含めても12人だろ? 随分狭い門だな……」

パップは丼のうどんをすすってから軽く驚嘆する。

シロクマP「お二人は、どうされるんですか?」

パップ「うーん……梨沙も時子もまだド新人だからな……名を売るチャンスではあるか」

クールP「プロデューサーヒーローは……除外でしたね。なら爛とライラだけでも」

黒衣P「既にHPで告知はしてある。一般参加者がどれだけ集まるかも楽しみだな」

四人のプロデューサーが談笑を続ける中、時は過ぎていく……。

――――――――――――
――――――――
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357 : ◆llXLnL0MGk [sage saga]:2014/03/11(火) 00:44:25.72 ID:rx/oW7rJ0
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TV『オーゥルヒーローゥズ、フロンティーィアァッ!!』

TV『四年に一度のアイドルヒーローの祭典が、またやってきた!!』

TV『優勝賞金、一千万円!! さらに、今回から一般参加も解禁!!』

TV『前回王者、ラビッツムーンを破るのは……君だ!!』

TV『書類審査受付中!! 詳しくは、アイドルヒーロー同盟で検索!!』

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358 : ◆llXLnL0MGk [sage saga]:2014/03/11(火) 00:45:49.46 ID:rx/oW7rJ0
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――電気店前。

カイ「……一千万円!?」

『キキン!!』

星花「これは……参加しないテはありませんわ!」

ストラディバリ『レディ』

亜季「早速、書店で紙とペンを買ってこなくては!」

ヴーン ヴーン

あずき(……あずきでも出られるかな? 賞金とって、涼さんに恩返しなーんて……)

あずき(よし、決めた! 名づけて、賞金大作戦!!)

有香(……やはり拓海さんも出場されるんでしょうか。だとしたら……)

有香(お手合わせの絶好の機会、早速エントリーを!)


――女子寮。

加蓮「一千万円って……すごい額だよね。アイさん出ないの?」

アイ「ん、あいにく仕事が入っていてね。そろそろ時間か、出かけてくる」

加蓮「いってらっしゃーい」

加蓮(ちょっと出てみたいかも。正体隠せば、大丈夫……かな?)


――小日向家。

美穂「あ、あのアイドルヒーローの皆さんとお手合わせできるの!? スゴイ!」

肇「出場されるのでしたら応援しますよ、美穂さん」

美穂「あ、ありがとう肇ちゃん! 私、頑張る!!」

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359 : ◆llXLnL0MGk [sage saga]:2014/03/11(火) 00:46:50.00 ID:rx/oW7rJ0
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――カフェ・マルメターノ。

瞳子「賞金ねぇ……取れたら夏美ちゃん達と旅行にでも行こうかしら」

聖來「あ、瞳子さんも参加するんだ?」

瞳子「『も』って……聖來も?」

聖來「うん。ちょっと懐かしい顔に会えるかも、ってね」


巴「賞金はともかく、腕を磨くにはちょうど良さそうじゃな」

ほたる「うん、いい経験に……なる、よね」

乃々「じゃ、じゃあもりくぼは二人の応援に徹するんですけど……」

巴「いいや、こういうのはチームワークじゃ。乃々も出るぞ!」

乃々「むーりぃー……」


――カフェ・マルメターノ、地下。

夏樹「……いやまあ、確かに一番マシそうなのはアタシだろうけど……」

きらり「もうお名前考えたのー! 『パーボ・レアル』! うっきゃー! かっくいー☆」

奈緒「ここの営業が地味〜に右肩下がりらしくてさ、夏樹、頑張ってくれ」

李衣菜「大丈夫大丈夫。髪下ろせばバレないよ、多分」

夏樹「あー……もうしょうがねえなー……」

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360 : ◆llXLnL0MGk [sage saga]:2014/03/11(火) 00:48:00.15 ID:rx/oW7rJ0
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――プロダクション。

ちひろ「というわけで、アーニャちゃんが出場したいそうです」

アーニャ「ダー……賞金を取って、みんなに恩返ししたいです」

ピィ「まあ……スポーツ大会みたいなもんですから、そう危険はないでしょうけど」

ちひろ「アーニャちゃん! やるからには優勝目指して頑張ってね!」

アーニャ「チヒロさん、目がルーヴル(ロシア通貨)になってます」


――荒木家。

泉「……で、私がAHFに出ろって?」

比奈「頼めないっスかねえ? 賞金で職場改善を計りたいんスけど……新規でアシさん雇うとか」

泉「……いいけど、あんまり期待はしないでね?」

比奈「助かるっス!」

泉(……一応、変装とかした方がいいかな?)


――某オフィス。

男「……というわけで、ミス・東郷。我々の代表としてAHFに出場していただきたい」

アイ「構わないよ。報酬は優勝賞金の半額でいいね?」

男「は、半額ッ……!?」

アイ「実はよそからも同じ依頼を受けていてね。そちらの報酬が賞金の四割なんだ、これは困ったねぇ?」

男「ぐ、ぐうう……わ、分かりました。半額お支払いしましょう」

アイ「ふふ、毎度あり」

アイ(今回は、そうだな……簡単な偽名と、茨姫だけで大丈夫そうかな?)

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361 : ◆llXLnL0MGk [sage saga]:2014/03/11(火) 00:49:31.56 ID:rx/oW7rJ0
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――同盟事務所。

梨沙「結局、皆出るのね」

爛「いや、斉藤先輩が出ねえらしいぜ」

時子「関係ないわ。頂点に最も相応しいのはこの私だもの」

拓海「言っとくがお前ら、予選で落ちたりすんなよ?」

夕美「心配ご無用。ね、菜々ちゃん?」

菜々「もっちろんですよ! ナナ、連覇目指して頑張っちゃいまーす、ブイッ☆」

ライラ「となると、ナナさんは前回13歳で優勝したでございますか。お見事でございますねー」

菜々「……………………」

夕美「……………………」

拓海「……………………」

時子「……………………」

爛「……………………」

梨沙「……………………」

ライラ「?」

拓海「……ライラ。菜々の年齢の話は……今後NGな」

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362 : ◆llXLnL0MGk [sage saga]:2014/03/11(火) 00:50:28.69 ID:rx/oW7rJ0
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各所で、希望が、野心が芽生える。

住む家がほしい。

居候先に恩返ししたい。

憧れの人に会いたい。

修行をしたい。

隠れ家を守りたい。

ただ雇われて。

様々な思いを巻き込んで、今。

ヒーローの頂点を決める祭典が、幕を開ける。

続く
363 : ◆llXLnL0MGk [sage saga]:2014/03/11(火) 00:51:41.45 ID:rx/oW7rJ0
・オールヒーローズフロンティア(AHF)
四年に一度、アイドルヒーロー同盟主催で開催されるイベント。
知力体力時の運を競う予選を勝ち上がったアイドルヒーローによるトーナメント制の大会。
今回から同盟に所属していないヒーローも参加可能になった。
優勝者には多額の賞金(回によって若干変動あり)が贈られる。


・イベント追加情報
AHFのCMが流れはじめました。(参加者は既に決まってますごめんなさい)


以上です
いざ始めようとなったら予想以上の長丁場になりそう
ガンバリマス!(白目)

黒衣P、シロクマP、パップ、あずき、有香、加蓮、アイ、美穂、肇、聖來、
巴、ほたる、乃々、夏樹、きらり、李衣菜、奈緒、ちひろ、ピィ、アーニャ、
泉、比奈、梨沙、時子、拓海、夕美、菜々、名前だけ洋子お借りしました。
(大半は今後もお借りします)
364 : ◆Mq6wnrJFaM [sage]:2014/03/11(火) 08:26:40.98 ID:vBuGohfDO
おつー
結果が読めないから楽しみだ
365 : ◆AZRIyTG9aM [sage]:2014/03/11(火) 10:07:25.17 ID:cj5BeHLUO
乙ー

ナナさんwww前回の優勝者でしたかwww

なにはともあれ楽しみです
366 : ◆zvY2y1UzWw [sage]:2014/03/11(火) 10:31:59.33 ID:Jil7vYLd0
乙です
まさかの前回優勝者に吹かざるを得ない
どうなるのか、ものすごく楽しみ
367 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/03/11(火) 16:15:15.56 ID:3r5/yiyBo
おっつー

安定の菜々さん
果たしてどんな結果が出てくるか楽しみですねえ
368 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/11(火) 20:53:05.35 ID:g9CdoLBxo
おつおつ
さぁて期待かな
369 : ◆cKpnvJgP32 [sage]:2014/03/14(金) 02:29:42.22 ID:xiUXk64co
酔っ払いのノリで、ろくすっぽ推敲もしないまま
書き上がった勢いのまま投下
後は野となれ山となれ
370 :"P"roducer [sage]:2014/03/14(金) 02:30:10.16 ID:xiUXk64co
ピィ「いかん、飲み過ぎた……」

――基本的に、そう思った時にはもう色々と遅い。

――ぐらぐらと世界が揺れ、ただでさえぼやけた視界の焦点は定まらず、一箇所を見続けることすら困難だ。

――猛烈な吐き気が込み上げ、頭痛がぐわんぐわんと容赦なく苛み、

――『あぁ、これは明日まで残るな』と思うと更に憂鬱までが襲ってくる。

――足元が覚束ない。判断力が低下している。気分の昂ぶりと落ち込みの差が激しい。

――こんな状況だから酔っぱらいというのは何をしでかすのかわからない。自分自身でも。

――ただし、案外思考というのは冷静だったりするものだ。


――会計だってちゃんと済ませてから居酒屋を出たし――ちなみに次の日、

ぐしゃぐしゃになったお札が財布の中に乱暴に突っ込まれてたりする――、

――ひどく眠くて歩くことすら億劫だが、せめて家には帰らなければ、と。

――……そのくらいの常識というか良識くらいは残っているはずだと思うのだが、

――酔いつぶれたサラリーマンなんかが道端で眠りこけている姿を見るだに、

――ああ、酒というのは恐ろしいものだなと改めて感じる。

――あれはペースや量を間違えると圧倒的な力でもってこっちを屈服させにくるのだ。


ピィ「屈しニャい!!!」

――ほら、屋外なのに大声でこんな独り言とか叫んじゃう。

――酔っぱらいって嫌だねぇ、本当に。

ピィ「盛大なブーメラン」

――……虚しい。
371 :"P"roducer [sage]:2014/03/14(金) 02:30:36.60 ID:xiUXk64co
――明日は仕事が休みだ。

――ということで、たまには飲みにでも行こうと思い、

――……本当は誰かを誘おうともしたのだが、随分遅い時間まで残業していたため俺以外誰も居なかった、

――ので、結局一人で晩酌をすることになり、

――別段、そのことに関して特に不満なんかは無かったのだが、

――それとは別に色々と……、自身の現状に思うところがあって、ついつい深酒をしてしまった。

――その結果が……、

ピィ「どっかに一億円落ちて無ぇかなぁ〜!!」

――この面倒くさい酔っぱらいである。


ピィ「冷静に考えるとあれだよな」

ピィ「一億円とか何に使うんだろうな」

ピィ「一般ピーポーの俺なんかに高級志向とか無いし」

ピィ「今欲しい物だってたかだか数十万あれば全部揃えられるしなぁ」

ピィ「ただ一生遊んで暮らす、ってなると今度は一億じゃちょっと足らんなぁ」

ピィ「中途半端だな、一億円って」

――黙れ、お前に一億円の何がわかるんだ。

――……などと自身の発言に対して脳内でツッコミを入れ始めるようになると、

――いよいよ、ああ俺酔っ払ってるなぁ、なんてしみじみと自覚しだすのだが、

――依然、傍目からどのような奇異の視線を集めているか、なんてことにまでは考えが至らない。
372 :"P"roducer [sage]:2014/03/14(金) 02:31:02.33 ID:xiUXk64co
ピィ「あぁ、電話とかすりゃよかったかな」

ピィ「楓さんなら『一緒にお酒を飲みませんか』とか言えば来てくれたかもしれないし」

ピィ「もし楓さんと飲めてたら、今日だってだいぶ楽しかったろうになぁ」

ピィ「あの人は本当、美人だし、それでいて面白いし、お酒好きで、一緒に飲むには最高の相手なんだけどなぁ」

ピィ「無理を言ってでもお願いすればよかったなぁ〜」

ピィ「あぁ〜、素敵だなぁ〜楓さんは」

ピィ「焦がれるっ!! 結婚したいなぁ〜!!」


ピィ「あぁ、ちひろさんだって俺の帰る一時間前までは一緒にいたんだしなぁ」

ピィ「すぐに連絡すればどこかでお茶でも飲みながらのんびりしてたかもしれないんだよなぁ」

ピィ「ちひろさん!」

ピィ「ちひろさんとお酒!」

ピィ「飲みたかったなぁ!」

ピィ「やー、ちひろさんだってよくよく見れば綺麗な人だもんなぁ」

ピィ「スタイルもいいしなぁ」

ピィ「ちょっとお金にがめついけど、おっぱい大きいしなぁ」

ピィ「事あるごとにぷるんっぷるん揺らしてくるんだもんなぁ」

ピィ「揉みたい!(直球)」
373 :"P"roducer [sage]:2014/03/14(金) 02:31:28.91 ID:xiUXk64co
ピィ「藍子っ……」

ピィ「あぁぁぁあああ藍子ぉぉぉおおおぉぉぉ……!!」

ピィ「仕事終わりにもし事務所で飲んでたらさぁっ!! 藍子にさぁっ!!」

ピィ「藍子にお酒注いでもらいたいなぁああああああ……っっっ」

ピィ「その時の調子に合わせた丁度いい濃さのお酒を作ってくれるんだろうなぁ」

ピィ「『飲み過ぎたらダメですよっ!』ってうっすーいのを注いでくるんだろうなぁ」

ピィ「愛してるっっっ!!!」

ピィ「チューしたいよぉお!!」

ピィ「あっ、あいこっっ、藍子ぉぉぉおおおおおおお!!!!!」


ピィ「美玲いいぃぃぃぃぃ!!!!」

ピィ「どうせ周子に付き合わされてるんだろっ!!」

ピィ「酒飲みがどんだけ面倒くさいかわかってんだろおぉぉ!!」

ピィ「酔っぱらいとの付き合いを弁えた振る舞いをされたい!!」

ピィ「『まったく、今日だけだかんなっ!』って言われてぇえ!!」

ピィ「よしっ、今日だけ付き合えっ!!」

ピィ「俺と付き合ええええぇぇぇ!!!」

ピィ「美玲っ!」

ピィ「抱きしめたいなぁ! 美玲!!」
374 :"P"roducer [sage]:2014/03/14(金) 02:31:55.33 ID:xiUXk64co
ピィ「みっおぉおおお!! 未央ぉぉぉおおお!!!」

ピィ「天使だかなんだかしらんがな!! エロい体しやがって!!」

ピィ「15歳だと!!?」

ピィ「エロい!!(確信)」

ピィ「ナイスバディ!!」

ピィ「抱きたい!!(直球)」

ピィ「エロい!!(5秒ぶり2度目)」

ピィ「……あーっ! 未央はいい子だよなぁ」

ピィ「ぶっちゃけ……、好きだぜ!!」


ピィ「周子っ……、周子ぉ……っ!」

ピィ「いい女だお前は……」

ピィ「本当っ、なんだ、いい女……」

ピィ「それでいて悪女……、悪女だよお前はぁ……」

ピィ「でもなぁ、どうしようもなくそこに惹かれるんだ……、周子ォー!!」

ピィ「手に入れたいなぁ!」

ピィ「俺のものにしたくなるんだ!! 周子ぉぉおおお!!!」
375 :"P"roducer [sage]:2014/03/14(金) 02:32:22.10 ID:xiUXk64co
ピィ「アーニャッ!!」

ピィ「綺麗だなぁっ!! 惚れ惚れする!!」

ピィ「息を呑む程の白い肌!! 目を惹く美しさ!!」

ピィ「触りたい!!」

ピィ「あの肌に触りたいなぁー!!」

ピィ「撫で回したくなる!!」

ピィ「あ〜〜〜〜、にゃーーーーーーーーー!!!!!」


ピィ「紗理奈さんはもっと俺に優しくしてください(真顔)」

ピィ「俺のこと誘ってくるけど、絶対罠だもんなあれ……」

ピィ「近づいたら、バクッ! って食われる、きっと」

ピィ「……でも、エロいんだよなぁーー!」

ピィ「耐えるのが、しんどい!」

ピィ「負けそう」

ピィ「負けちゃおっかな?」

ピィ「負けちゃえー!」

ピィ「屈しニャい!!!(5分ぶり2度目)」
376 :"P"roducer [sage]:2014/03/14(金) 02:32:49.79 ID:xiUXk64co
ピィ「晶葉っ! 晶葉ァ!!」

ピィ「可愛い!」

ピィ「ジト目可愛い!」

ピィ「ツンツンされるのが癖になる!!」

ピィ「あのツインテぴこぴこさせたい!!」

ピィ「あと!」

ピィ「ぶっちゃけ!」

ピィ「ぶっちゃけ!!」

ピィ「……っ」

ピィ「――調教したい(マジなトーンで)」

ピィ「……」

ピィ「うん、まぁ……、さすがにそれは(アカン)」


ピィ「師匠……、師匠なぁ……」

ピィ「愛海なぁー」

ピィ「黙ってれば可愛いんだけどなぁ……」

ピィ「本当……」

ピィ「あと」

ピィ「揉んでいいのはッッ!!!」

ピィ「揉まれる覚悟のあるやつだけだぞッッッ!!!!!」

ピィ「愛海ぃぃぃいいいいいい!!!!!!」

ピィ「覚悟はいいか!! 俺はできてる!!!!」


ピィ「千枝ちゃん、薫ちゃん、メアリー!!」

ピィ「君たちも全然イケる(意味深)ぜ!!」

ピィ「お巡りさん!! 俺です!!!」
377 :"P"roducer [sage]:2014/03/14(金) 02:33:16.19 ID:xiUXk64co
――酔っぱらいの発言や回答などに正当性、合理性を求めてはいけない。

――論理的な思考とか、倫理観とか、思慮とか、配慮とか、遠慮とか、矜持とか、良心とか、恥とか、外聞とか、

――そういったフィルターは大体取っ払われていると思うといい。

――例えば『人類は地球の為に滅ぶべき種である』というような過激な思想を、僅かでも抱いたことのある人は少なくないだろう。

――が、それを真剣に語る人は少ない。

――思想、というか思考と発言の間に上記のフィルターが噛んでいる為である。

――――酔っぱらいにはそれが無いのだ。

――つまり、何というか、


――――ドン引きです……。


――いや、本当何だこのテンション。自分で自分の正気を疑うレベル。

――知り合いには絶対に見られたくない。

――というか知り合いじゃなくても見られたくない。
378 :"P"roducer [sage]:2014/03/14(金) 02:33:42.43 ID:xiUXk64co
――周りに誰も居ないよな?

――と、にわかに冷静になってきた頭をゆらゆらさせながら辺りを見回す。

ピィ「よし、大丈夫だな」

――もうだいぶ夜も更けてきたからか、幸い人影は見当たらなかった。

――まぁ、気づかぬうちに誰かに目撃されてたりする可能性とか、

――大声で喋ってたから、見られずとも近くの人にはあの気持ち悪い発言を聞かれてた可能性があるが。

――そこまではどうしようもない。


ピィ「まぁいっか、なんかどうでもいいや」

――多分明日にはどうでもよくないことになってるんだろうが、

――それは明日の俺に任せよう。
379 :"P"roducer [sage]:2014/03/14(金) 02:34:08.44 ID:xiUXk64co
ピィ「いやぁ、俺の周りには美少女がいっぱいいて楽しいなぁ」

ピィ「みんないい子だし、毎日彼女たちに会えるのが嬉しくてたまらないよ」

ピィ「あれ? 俺って幸せなんじゃね?」

ピィ「幸せやったー!」

ピィ「おすそ分けしたい!」

ピィ「おすそ分けしたいくらい幸せ!」

ピィ「よし、しよう! できないけど!」

ピィ「まぁ、仮にできるとしてー」

ピィ「誰にあげようかなぁ……」

ピィ「うーん」

ピィ「みんなだな、うん」

ピィ「みんなにあげたいなぁ、幸せ」

ピィ「俺の幸せみんなにあげたい!」
380 :"P"roducer [sage]:2014/03/14(金) 02:34:35.21 ID:xiUXk64co
ピィ「だってみんな頑張ってるもんなぁ」

ピィ「俺より年下の子の方が多いのに」

ピィ「能力があったり」

ピィ「戦える力があったり」

ピィ「悩みがあったり」

ピィ「みんなそれぞれ抱えてるんだもんなぁ」

ピィ「それでもみんな笑顔だもんなぁ」

ピィ「俺なんて全然頑張ってないからなぁ」

ピィ「……」


ピィ「あー」

ピィ「何やってんだろうな俺」

ピィ「こんなになるまで酒飲んでる場合じゃないだろ」

ピィ「他にやるべきことがあるだろうに」

ピィ「俺は俺の仕事をしなきゃ」

ピィ「俺の仕事……」

ピィ「俺の仕事は、みんなのことを……」

――そうだ、何で今日こんなに飲んでいたのか思い出した。

――ヤケ酒だったんだ。
381 :"P"roducer [sage]:2014/03/14(金) 02:35:01.78 ID:xiUXk64co
――俺はピィ。

――Pだ。

――プロデューサーだ。

――『プロダクション』のプロデューサーだ。

――『プロダクション』に所属するみんなのことをプロデュースするのが俺の仕事だ。

――俺の役目だ。


――だが、俺はその役目を果たせているんだろうか?
382 :"P"roducer [sage]:2014/03/14(金) 02:35:29.03 ID:xiUXk64co
女性「あら、あなた、こんなところで寝ていたら襲われちゃうわよ」

ピィ「……んが………」

――寝ていたつもりは無かったのだが、

――何かと考えすぎた末、……まぁお酒が入っていたこともあり、

――落ち込んで電柱のそばでへたり込んでいたところ、急に誰かから声を掛けられた。


――誰だろうか。

――見たところ、知り合いではない。

――妙齢の女性、といった表現が実に似合う人だ。

――艶やかな雰囲気を纏った、いかにも『オトナの女性』。

――俺よりもいくつかは歳上だろう。

――素直に綺麗だと思う。

――……そのあまりの凄艶さに圧倒されてしまう程に。


女性「男だからって油断しちゃダメよ?」

女性「特にあなたみたいな色男は……、ね。ふふっ」
383 :"P"roducer [sage]:2014/03/14(金) 02:35:55.42 ID:xiUXk64co
ピィ「ははは……、いやぁおねーさんみたいな人に襲ってもらえるなら大歓迎なんですけどねー」

――咄嗟に、冗談ともお世辞とも本音ともつかぬ軽口を叩いてしまった。


女性「あら、嬉しい事言ってくれるじゃない」

女性「……でも、あなた少し飲み過ぎね」

――そんなどうでもいい下らない発言に、彼女は真面目に付き合ってくれた。

女性「すぐそこに私の店があるから寄って行くといいわ」

女性「今閉めたところなんだけど水くらいなら出すわよ」
384 :"P"roducer [sage]:2014/03/14(金) 02:36:23.98 ID:xiUXk64co
――促されるまま、照明の落ちた店舗の中に足を踏み入れる。

――女性がパチンとスイッチを入れ、薄暗い明かりが店内を灯すと、

――そこには、オシャレな大人の雰囲気漂うバーが存在した。

女性「こういうのは初めてかしら?」

ピィ「……えぇ、まぁ」

女性「ふふ、素直でいいわね」

――二人きりとはいえ……、いや、だからこそか、

――少し、気後れしてしまう。

――彼女の言うとおり、バーという場所に来るのは初めての体験だった。


女性「そういえば自己紹介がまだだったわね」

礼子「私は望月礼子」

礼子「このバーのマスターをやっているわ」

礼子「といっても、今は殆ど別の子に任せているんだけどね」

――そう言って彼女、望月礼子さんは自己紹介をした。

礼子「ちなみに旧姓は高橋よ」

――……その情報は必要なのだろうか。
385 :"P"roducer [sage]:2014/03/14(金) 02:36:55.39 ID:xiUXk64co
礼子「下の子がまだ小さくてここには中々来れないのだけど」

礼子「それでも、やっぱり私の店だから、って」

礼子「せめて月一回とか二回くらい、顔を出す程度のことはしているの」

礼子「今日はたまたま、その日だったのだけれども」

礼子「……ふふ、巡り合わせというのはわからないものね」

――グラスに水を汲みながら、礼子さんが小さく笑う。


ピィ「下の子……、ってことは他にもお子さんが?」

礼子「ええ、ちょっと歳は離れてるんだけど、もう一人女の子が上にね」

――ずけずけと気になったことを質問する俺に対して、礼子さんは特に気にした様子もなく、

――……若干、心なしか少し思うところがあるような表情を浮かべたようだったが、

――しかし誇らしげな表情で、そう答えた。
386 :"P"roducer [sage]:2014/03/14(金) 02:37:21.95 ID:xiUXk64co
礼子「まだ下の子は、本当なら私が付きっきりで世話してあげなきゃいけないくらいの歳なんだけど」

礼子「それを上の子がね……」

礼子「『大丈夫、私がお世話をするから』って」

礼子「『お母さんはお仕事をしていいよ』って言ってくれるの」

礼子「ふふっ、……よく出来た子でしょ?」

礼子「自慢の娘なのよ」

礼子「私にはもったいないくらいに……、ね」

――……成る程、先ほどの神妙な表情にはそういった事情があったのか。

――と思うと、酒乱モードの俺はつい要らぬことを言ってしまいがちになるのだった。


ピィ「……もったいない、なんて事は無いと思いますよ」

礼子「あら、そうかしら?」

――礼子さんから水の入ったグラスを受け取り、それを一息に飲み干すとなおも俺は言葉を続けた。
387 :"P"roducer [sage]:2014/03/14(金) 02:37:48.07 ID:xiUXk64co
ピィ「お子さんの話をしてた時の礼子さんの顔を見ればよくわかります」

ピィ「その子をとても大切に想っているんだな、という事が」

ピィ「今ちょっとお話を聞いただけで、その子も凄くいい子だと感じました」

ピィ「お母さん思いと、お子さん思いで」

ピィ「素敵な親子じゃないですか」

ピィ「きっと礼子さんがお母さんとして理想的だからこそ」

ピィ「お子さんも立派に育ったんだと思います」

ピィ「もったいない、なんて言ったらそれこそもったいないですよ」

ピィ「だいたい、俺みたいな面倒くさい酔っぱらいを介抱してくれるような人が悪い人なわけ無いです」

――ああ、俺今ものすごく偉そうなことを言ってる。

――管を巻きながら他人の家庭事情に口を挟んで、なにやってんだ。

――でも、仕方ないじゃないか。

――少し話しただけで、彼女がとても魅力的な人だとわかってしまった。

――そんな人が自分を卑下するような事を言うんだ。

――「それは違う」と声をあげたくもなる。
388 :"P"roducer [sage]:2014/03/14(金) 02:38:13.86 ID:xiUXk64co
礼子「あなた……」

ピィ「……」

――いかん少しでしゃばりすぎた。

――いや、少しどころじゃないな。流石に気を悪くしただろうか?

礼子「思ってた以上に色男だったわね」

礼子「いい歳してちょっとときめいちゃったわ」

――どうやらそうではないらしい。

――余計なお世話だったろうかと心配していたが、ひとまず胸をなでおろす。


礼子「私が独り身だったらあなた、食べちゃってたかも」

ピィ「ハハハ……」

――食べられたかったなぁ。
389 :"P"roducer [sage]:2014/03/14(金) 02:38:39.96 ID:xiUXk64co
礼子「まぁ、そうね。『もったいない』は失言だったわ」

礼子「確かにちょっと私らしくなかったわね……、って」

礼子「初対面のあなたにこんなことを言っても仕方ないか」

――どうやら元気を取り戻したらしい礼子さんは、ゆっくり頷きつつ……。

礼子「お礼、という訳では無いのだけど」

礼子「今度は、……あなたのお話を聞かせてもらえるかしら?」

ピィ「……へ?」

――思わぬ興味を俺に対して示し、

――話は想定外の方向へ向かっていくのであった。
390 :"P"roducer [sage]:2014/03/14(金) 02:39:06.94 ID:xiUXk64co
礼子「見たところ、あなた……」

礼子「何か悩みを抱えているでしょう?」

礼子「隠していてもわかるわよ」

――ぐぬぬ……。

――これが年季の違い、というやつだろうか。

――……いや、それとも。

――彼女の視線から感じる、まるで心の内を見透かされているような……。

ピィ「ひょっとして、能力者……?」

礼子「ふふっ、たまに勘違いされるけど、答えはノーよ」

――違った。

――なんだか妙に恥ずかしい。


――つーか誰だ、俺に『能力者を見分ける才能がある』とか言ったのは。

――ああ、ちひろさんだ。あの守銭奴め。口からデマカセばかり言いおって

ちひろ『そんな設定(笑)もありましたね』

――黙れ俺の脳内ちひろ。揉むぞ。
391 :"P"roducer [sage]:2014/03/14(金) 02:39:33.28 ID:xiUXk64co
礼子「女の勘と年の功ってやつよ」

礼子「あとはまぁ、ケイケンの差かしらね」

礼子「もっとも、あんな顔してたら私じゃなくても気づくと思うけど」

――礼子さんは妖艶な微笑を浮かべながら、さっきの読心の手品を明かしてくれた。


礼子「さ、出してスッキリしちゃいましょう」

――悩みをですよね。

礼子「それとも、私にだけさせるのかしら?」

――相談をですよね。

礼子「一人でデキないのなら、私が手伝ってあげるわよ」

――解決をですよね。
392 :"P"roducer [sage]:2014/03/14(金) 02:39:59.58 ID:xiUXk64co
――実際、いくら冗談めかしてみたところで『悩みがある』ということに変わりはない。

――自分一人では解決できそうにない、というのも事実だ。

――それに、彼女の話を聞いてしまった手前、こっちも言わないとなんとなく不公平な気がする。

――というか、俺に悩みがある、と見抜いた上で先に自分の身の上話を切り出したということは、

――ひょっとすると、悩みを打ち明けやすくするための俺への配慮だったのだろうか。

――と思うと、この人になら相談してみてもいいかもしれないという気持ちが強くなってくる。

――ただの愚痴になってしまうかもしれないが、それでも聞いてもらいたい。


ピィ「俺は……」
393 :"P"roducer [sage]:2014/03/14(金) 02:40:25.73 ID:xiUXk64co
ピィ「詳しくは言えませんが、能力者と関わる仕事をしています」

ピィ「能力者は女性が殆どで、俺より年下の子も少なくありません」

ピィ「皆どこにでもいるような普通の――若干の例外はあれど、そんな子たちです」

ピィ「能力がある、という事を除けばですが」

ピィ「俺の仕事は、いわばそんな『普通の能力者』を支援することです」

礼子「素敵なお仕事じゃない」

ピィ「はい、俺もそう思います」

ピィ「ただ、だからこそ……」

――ぐっとこみ上げてくる感情を堪えながら。

ピィ「……俺はちゃんと、こなせているんだろうか。と」
394 :"P"roducer [sage]:2014/03/14(金) 02:41:00.47 ID:xiUXk64co
ピィ「俺には能力者の気持ちがわからないんです」

ピィ「いや、わからないって事は無いけれど」

ピィ「最終的な、本当の苦悩という部分……」

ピィ「そこを俺はわかってあげられない」

ピィ「何もしてあげられない」

ピィ「それが……、もどかしい」

――わかってあげられない、という思いは初めて楓さんに出会った時に抱いたものだ。

――念じただけで人を殺せる、というのはどういう感じなのだろうか、と。

――口が裂けても「その辛さ、わかります」とは言えなかった。

――今でもなんと言葉を掛けてあげればよかったのかわからない。


ピィ「もし俺にも特別な力があれば……」

――そう思わずにいられないことは、多々あった。

――辛い気持ちをわかってあげられるかもしれないのに。

――そして、

――――皆を守ってあげられるかもしれないのに。
395 :"P"roducer [sage]:2014/03/14(金) 02:41:27.15 ID:xiUXk64co
――何度無力感を味わったかしれない。

――楓さんのこともそうだが。

――『憤怒』の街の時も。

――『プロダクション』が襲われた時だって。

――俺は、ただ見ていることしかできなかった。


――目の前でアーニャが無残に捻り潰されても、俺には何もできなかった。

――死ななかったから良いという話ではない。

――俺は大切なものを守れなかった。

――悔しかった。

――悲しかった。

――また同じような事が起こったら……、

――と思うと、今度は恐ろしくなってくる。


――誰も失いたくない。

――だが俺には何の力も無い。

――俺は……。
396 :"P"roducer [sage]:2014/03/14(金) 02:41:58.76 ID:xiUXk64co
ピィ「……ダメだ、どうにも考えがまとまらない」

――酒のせいもあるのだろうが、感情がぐるぐると胸の中を渦巻いている。

――何に悩んでいたのか。

――どうすれば解決するのか。


――心のどこか奥底に、何だかんだ言ってヒーローへの憧れがあって、それを捨てきれていないのはわかる。

――誰かを守れる強い力が欲しいというのも本当だ。

――そして、それが叶わないという事も知っている。

――――だから、それは俺の役目じゃない。


――代わりに俺は皆に頼ることにしている。

――勝手にだが、アーニャに思いを託していたりもする。

――俺にできることは、そんな皆を支えてあげることだ。

ピィ「そう、俺はただ、今以上にもっと皆の力になりたいだけなんだ……」

――根幹にあるのは、とてもシンプルな気持ちだった。
397 :"P"roducer [sage]:2014/03/14(金) 02:42:27.17 ID:xiUXk64co
礼子「優しいのね」

――静かに俺の話を聞いてくれていた礼子さんが、口を開いた。


礼子「あなたの……、ってそういえば名前を聞いていなかったわね」

ピィ「……一応、ピィと名乗っています」

礼子「コードネームか何かかしら?」

ピィ「事情がありまして」

――まぁその『事情』とやらを、俺もよく知らないのだが。


礼子「そうね……」

礼子「ピィのさっきの言葉をそっくり返すようだけれど」

礼子「あなたが職場の皆を大切に想う気持ち、凄く伝わってきたわ」

礼子「だからこそ皆の為に、って意気込むのはわかるけど」

礼子「気持ちが先走っちゃってるわね」

――指先で何かをすくい、舐めとるという意味深なジェスチャーを交えながら、

――礼子さんは続ける。

礼子「思い詰めすぎよ」
398 :"P"roducer [sage]:2014/03/14(金) 02:42:58.00 ID:xiUXk64co
礼子「気負わなくても、ピィは今のままのピィでいればいいのよ」

礼子「あなたのような『真剣に自分に向かい合ってくれる人』がいるってだけで、」

礼子「その子たちはとても恵まれているし。きっと皆ピィを尊敬しているんじゃないかしら?」

――……そう、なんだろうか。


礼子「それでも納得いかない?」

礼子「――なら、そうね……」

礼子「ピィは、生きていく為に必要な事って何だと思う?」

ピィ「え?」

――唐突な質問に面食らってしまった。

――生きていく為に……?

ピィ「食事とか、睡眠とか……ってことですか?」

礼子「そうね」

礼子「じゃあ、それってどこでする事かしら?」

ピィ「……」

――礼子さんが何を言いたいのかわからない。

――この問答にどんな意味があるというのだろう。
399 :"P"roducer [sage]:2014/03/14(金) 02:43:23.68 ID:xiUXk64co
ピィ「基本的には、自宅で……だと思いますけど」

礼子「どこでもできる、とはいえ、やっぱりベストはそこよね」

礼子「あなたはそんな場所になればいいのよ」

ピィ「……はい?」

――今なんて?


礼子「能力を持った子が、周りと違うことに悩んだり」

礼子「ちょっとした迫害を受けたりする事があるのは知ってるわ」

礼子「こう見えて、職業柄色々な人と接してきたから」
400 :"P"roducer [sage]:2014/03/14(金) 02:43:52.43 ID:xiUXk64co
礼子「帰れる場所がある。心休まる場所がある。ゆっくり出来る場所がある」

礼子「何がなくとも、それさえあれば人はいくらだって頑張れる」

礼子「たった一言「おかえり」を言ってあげるだけでもいい」

礼子「それだけで、人は明日への活力を得られるものなのよ」

礼子「経験ないかしら?」

ピィ「どう、でしょう……」

礼子「ふふっ、気付いてないだけなのかもね、それが当たり前すぎて」

礼子「でも重要なことよ」

礼子「疲れてヘトヘトになって、帰り着いた場所に」

礼子「ただ「おかえりなさい」を言ってくれる人がいること」

礼子「それがどれほど心の支えになるかっていうこと」
401 :"P"roducer [sage]:2014/03/14(金) 02:44:26.63 ID:xiUXk64co
礼子「あなたが」

礼子「あなたの居る場所が」

礼子「そんな場所になればいいのよ」

ピィ「俺が……?」

――『プロダクション』みんなの『帰る場所』に……?


礼子「思うに、もう既になっていると睨んでいるんだけど」

礼子「だからこそ『今のままでいい』って、そう言ったのよ」

ピィ「……」


――仮に、

――もし、

――本当に、俺がいることで……。

――俺が……、ただいるだけで。

――皆の、心の支えに……

――なってあげられて……、いるのだとしたら……。

――それは……。

――俺に……とっても………。

――……どれほど、幸福な………。
402 :"P"roducer [sage]:2014/03/14(金) 02:44:59.92 ID:xiUXk64co
―――

――



志乃「お邪魔するわね」

周子「あー……、やっぱりいた」

――礼子の店に、新たに二人の客が訪れた。

礼子「あら、二人とも暫くぶりじゃない」

志乃「えぇ、久しぶりね」

周子「久しぶりー、っと……」

周子「本当は一杯やりたいところなんだけど」

周子「あたしはそっちの男に用があるんだよねぇ」

――周子は、カウンターで眠りこけているピィを見ると、

――苦笑いを浮かべ、そう言った。

礼子「あら周子、ピィと知り合いなの?」

周子「まぁね」

周子「ほら、ピィさーん、終電ですよー」

ピィ「……むにゃあ」

周子「ダメだこりゃ」
403 :"P"roducer [sage]:2014/03/14(金) 02:45:27.85 ID:xiUXk64co
ピィ「しゅーこかー……」

周子「はいはい、しゅーこさんですよ」

――ピィは礼子の話を聞き終わると、気が抜けたのか睡魔に白旗を揚げ、

――だらしなくその快楽に身を委ねてしまったのだった。

ピィ「おれのしゅうーこぉー」

周子「お酒に飲まれてるようじゃまだまだだね、あたしはそんなに安くないの」

ピィ「ほしぃ……」zzz

周子「ほら、肩かして、家まで送るから」

ピィ「ぐー……」


礼子「あらあら」

志乃「あらあら」

周子「変な邪推禁止!」
404 :"P"roducer [sage]:2014/03/14(金) 02:46:05.14 ID:xiUXk64co
周子『じゃ、この世話のやけるプロデューサーを送ってくから』

周子『もし帰ってきてまだ時間があったらその時に』


礼子「……って言ってたけど」

志乃「最近周子さんは彼にもお熱みたい」

志乃「まったく、何人好きな人が欲しいのかしら」

礼子「私も昔はよく彼女に言い寄られたわ」

礼子「懐かしいわね……」

志乃「彼にもあるのよ」

志乃「貴女のような素質が」

礼子「またその話?」

礼子「私にはそんなものは無いって言ってるのに」

志乃「それがあるのよ」

志乃「確かに能力ほど明確なものではないし」

志乃「見た目にわかるような物は何も無いけど」

志乃「でも、確実に……、ね」
405 :"P"roducer [sage]:2014/03/14(金) 02:46:33.29 ID:xiUXk64co
礼子「わからないわね」

志乃「永く生きていると、何となくだけどわかるようになってくるのよ」

志乃「周子さんは『カリスマ』とか言ってたかしら」

礼子「まぁ、話半分に聞いておくわ」

志乃「ふふ……、貴女のそういうところ、好きよ」

礼子「好き、って言われるのは悪くないわね」

志乃「ふふ……」

礼子「ふふっ……」
406 :"P"roducer [sage]:2014/03/14(金) 02:47:27.17 ID:xiUXk64co
志乃「私、貴女に会えて本当に良かったと思うわ」

礼子「なぁに急に?」

――志乃は、アルコールの注がれたグラスを礼子から受け取ると、

――唐突にそんなことを告げた。


志乃「私に人間の可能性を教えてくれたのは、当時、年端もいかない女の子達」

志乃「そして、そんな子たちにお節介を焼いてた一人の男性」

――懐かしむように、志乃が昔話を始める。

志乃「その後しばらく目的を失って、当てもなく彷徨っていた私に」

志乃「この星の娯楽を教えてくれて、更に交友関係を広めてくれたのが、怖ぁ〜い狐さん」

――言いながら、小さく身を震わせるような仕草を取り、杯に口を付ける。

志乃「人を慈しむ事、思いやる事、支えてあげる事」

志乃「それがどんなに幸せなことか教えてくれたのは、私の自慢の娘」

――ここではない、どこか遠く。

――恐らくはその娘、ほたるへ注がれる愛しさをグラスに向け、一気に飲み干す。

志乃「でもね、一番はこれ」

――最後に、中身の空になった盃を小さく掲げ、礼子を見やる。

志乃「お酒」

志乃「今や私の一部と言っても差し支えないわ」

志乃「貴女が教えてくれたものよ」
407 :"P"roducer [sage]:2014/03/14(金) 02:47:57.24 ID:xiUXk64co
――夜も更け、閉まったバーに二人。

――志乃と礼子。

――静かに語らい、優雅に談笑する。


――後に周子も加わり、女三人姦しく、それでいて大人の淑やかさで、

――明けるまでしっとりとした時間を過ごした。

――この日。

――悪事をもたらす超常の件数が極端に少なかった、ということが、

――彼女らの邂逅と深く関わっているかどうかは容易には知れない。
408 :"P"roducer [sage]:2014/03/14(金) 02:48:30.94 ID:xiUXk64co
『カリスマ』

能力者、非能力者問わず、強く人を引きつける魅力を持つ人間にあるとされる素質。
人をまとめ上げ、信服させる才能に長けた人。
多くの人を支え、多くの人に支えられる人。
具体的にどう、という基準は無いが、ある程度強い力を持った者にならひと目でわかるものらしい。

巨大な組織の長にはこの『カリスマ』が備わっている事が多い。
例えば『プロダクション』の社長とか、サクライとか、TPとか、オーバーロードとか、ヨリコとか。
多分みんな『カリスマ』持ち。

望月礼子は静かに暮らしたいらしく、バーのマスター程度で収まっているが、本来ならもっと大きな器を持っている。

ピィにも備わっている物だが、彼は晩成形のためその真価が発揮されるのは20年か30年は経験を積んだ後である。
しかし『プロダクション』の皆を強く信頼し、同じように信頼される様は、仮にも彼が『カリスマ』持ちであることの表れでもある。
409 :"P"roducer [sage]:2014/03/14(金) 02:48:59.57 ID:xiUXk64co
・以上です。

・志乃さん、周子をお借りしました。
若干、周子に関しては借りすぎてもはや借りパクの域だと感じる。

・そして勝手ながら礼子さんを拾わせて頂きました。
無能力者、非戦闘員、バーのマスターなどという設定を加えた上、
『カリスマ』持ちとかいう新たな設定を追加しました。

・『カリスマ』の設定に関しては
何も無いピィに、何かあげたかったっていうのもある。

・ウソみたいだろ。『プロダクション』襲撃前には既に書き始めてたんだぜ。これで……。
「年内に投下できればいいな……」とか。去年の末にのたまってたんだぜ……。
『ピィが礼子さんに悩みを聞いてもらう』というコンセプトは割りと以前からあったのだけど
「ピィの悩みって何よ?」という部分が難産難産アンド難産。
ついでに『プロダクション』襲撃事件があって、時系列をこれの前後どちらにしようか迷った部分も(責任転嫁)。

・他の人の書くピィがやたらイケメンだったりするのに対して
どうも俺が書くとヘタレになりがちなので、個人的な区切りというかケジメを付けるための回。
今後は多分、もう少し頼りがいのあるピィになる……、と思う。

・ピィは、バネPのようなイケメンな二枚目と、ぷちます!に代表されるような三枚目のPヘッド
……を足して2で割ったような性格をイメージしてます。あくまで個人的なイメージですが。
410 : ◆cKpnvJgP32 [sage]:2014/03/14(金) 03:10:24.61 ID:xiUXk64co
鳥を元に戻しておくれす
411 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/14(金) 07:06:15.55 ID:tpgQ6fXXo
おつれすよぉ〜
ピィおにぃちゃんはえらいれすねー
結構な話に絡んでくるし流石は原初のP枠よ
412 : ◆zvY2y1UzWw [sage]:2014/03/14(金) 09:51:09.73 ID:F6mRjbkp0
乙です
酔っぱらいシーンがカオスすぎてワロタ
そこからシリアスに来るなんて思ったなかったよ!

ピィはやっぱりいい意味で典型的Pだよね
普通の男性的部分はやはりピィが一番
413 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/14(金) 11:02:11.81 ID:ECsBlnJ/0
乙ー

まさかあの状況でシリアスに来るとは……とりあえず早苗さんコイツです
414 : ◆AZRIyTG9aM [sage]:2014/03/14(金) 11:02:48.26 ID:ECsBlnJ/0
酉つけわすれた
415 : ◆llXLnL0MGk [sage saga]:2014/03/16(日) 23:48:42.95 ID:KEkhj00w0
乙ー
前半の悪酔い吹いたww
ホントまさかシリアスな話になるとは……

個人的事情で一週間程度投下出来なくなりそうなので
AHFの参加者入場編だけ投下しまーす

三人ほどオリジナルキャラが出てきますがほぼ使い捨てです
416 : ◆llXLnL0MGk [sage saga]:2014/03/16(日) 23:50:35.83 ID:KEkhj00w0

――アイドルヒーロー同盟所有、特設スタジアム。

『さあ、いよいよ皆さんお待ちかね! 第三回、オールヒーローズフロンティア、いよいよ開幕ッです!!』

ワァァァァァァァァァァァァァァァァァ・・・

『アイドルヒーローで、あるいはフリーのヒーローで、またまたあるいは能力者一般人で、一番強いのは誰だ!?』

『その答えが、この大会で! 明らかになります!!』

J『実況はワタクシ! アイドルヒーロー同盟の名物キャスターこと、J! そして解説にはアイドルヒーロー応援委員の……』

亜里沙『ありさ先生と……』

ウサコ『ウサコがお越しウサ〜♪』

J『先生、ウサコちゃん。本日はよろしくお願いします』

亜里沙『はい、よろしくお願いしますね』
417 : ◆llXLnL0MGk [sage saga]:2014/03/16(日) 23:52:13.87 ID:KEkhj00w0
J『では早速ですが、300通を越える応募の中から、書類審査と面接を勝ち抜いた、25人の挑戦者に入場していただきましょう!』

ウサコ『1000通行かなかったウサ?』

J『き、きっと多くの人が怖くて二の足を踏んだんでしょう、多分! ではまず、我らがアイドルヒーロー達の入場です!』

プシーーーーーッ

J『エントリーNo.01! みんなの心にウサミンウェーブ! 貫禄の前回覇者、ラビッッツムーーーーン!!』

ラビッツ『ウッサミーン、きゃはっ☆』

ウッサミーン!!!

エントリーNo.01 貫禄の前回覇者
ラビッツムーン
所属:アイドルヒーロー同盟
体力:「…そ、それなりにあるとは思いますよ?」
知力:「結構物知りですよ!これでもちゃんとJKですし!」
賞金の使い道:「うーん…やっぱり、健康面をもっとちゃんとしたいなーって」

J『うわあ! 登場しただけでスゴイ熱気ですね!』

亜里沙『立ち振る舞いに余裕すら感じるわね、流石は前回優勝者ってところかしら?』

ウサコ『前回の年齢を問い詰めてはいけないウサ。いいウサね?』

J『アッハイ』
418 : ◆llXLnL0MGk [sage saga]:2014/03/16(日) 23:53:11.25 ID:KEkhj00w0
プシーーーーーッ

J『エントリーNo.02! 木々と歌い、花と踊る! 大自然の歌姫、ナチュラルッラヴァーーーース!!』

ナチュラル『頑張るよー!』

ウォォォォォォォ!!

エントリーNo.02 大自然の歌姫
ナチュラルラヴァース
所属:アイドルヒーロー同盟
体力:「うーん…そこそこ、かな?」
知力:「…植物の知識なら負けないよっ!」
賞金の使い道:「お金かぁ…貰ってから考えたいかも」

J『ああ、入場早々ラビッツムーンに駆け寄って……あ、これはハイタッチですね』

亜里沙『あの二人はプライベートでも仲が良いそうで。微笑ましいわねえ』

ウサコ『キマシな塔が建造されるウサー』

J『普通にお友達って見方しましょうよ』

プシーーーーーッ

J『エントリーNo.03! ファンより多い舎弟希望者! 鋼の特攻隊長、カミカゼェェェーーーーッ!!』

カミカゼ『余計なお世話だッ!!』

アネゴーーーーーッ!!

エントリーNo.03 鋼の特攻隊長
カミカゼ
所属:アイドルヒーロー同盟
体力:「無いと思うか?」
知力:「が、学校には行ってる」
賞金の使い道:「フリーの頃に作った借金があってな……」

J『入場一発目の雄たけび、気合充分ですね!』

ウサコ『気合っていうか苦情っていうか、ウサ』

亜里沙『でも、慕ってくれる人が多いのはいい事よ』
419 : ◆llXLnL0MGk [sage saga]:2014/03/16(日) 23:54:39.69 ID:KEkhj00w0
プシーーーーーッ

J『エントリーNo.04! 変なカースに襲われても俺は元気です! ヤイバーズのパワー担当、ヤイバァー・甲ォーーー!!』

甲『ッシャア!!』

イェエエエエエエエエ!!

エントリーNo.04 ヤイバーズのパワー担当
ヤイバー・甲
所属:アイドルヒーロー同盟
体力:「伊達にヤイバーズのパワー担当と言われてるわけじゃあねえ!」
知力:「そっちは相方にまかせっきりだな」
賞金の使い道:「ズバリ、ヤイバースーツのパワーアップとメガネの根絶だ!」

J『謎のカースに襲撃されてから治療に専念していたヤイバー・甲! 今ここに舞い戻りました!』

ウサコ『変な洗脳は解けてないウサ』

亜里沙『でも、それ以外は健康そのものね』

プシーーーーーッ

J『エントリーNo.05! ペンは剣よりミサイルより強し! ヤイバーズの頭脳、ヤイバァー・乙ゥーーー!!』

乙『リーダー大丈夫かよ……』

イェエエエエエエエエ!!

エントリーNo.05 ヤイバーズの頭脳
ヤイバー・乙
所属:アイドルヒーロー同盟
体力:「無いわけじゃないけど……リーダーと比べると流石に、な」
知力:「これでもヤイバーズの頭脳を自称してるんでな」
賞金の使い道:「リーダーを良い医者に診せてやりたい、マジで」

J『さあ、その知能でどんな戦いを見せてくれるのかヤイバー・乙!』

亜里沙『甲君を心配してるのが微笑ましいわねえ』

ウサコ『二人の担当Pは何故止めなかったウサ』
420 : ◆llXLnL0MGk [sage saga]:2014/03/16(日) 23:55:54.56 ID:KEkhj00w0
プシーーーーーッ

J『エントリーNo.06! アイドルヒーロー最年少! ゴースト・人・エクスマキナの三重奏(トリニティ)、RIィィーSAァーーー!!』

RISA『いくわよっ!!』

RISAァァァアァァアァ!!

エントリーNo.06 ゴースト・人・エクスマキナの三重奏
RISA
所属:アイドルヒーロー同盟
体力:「自信あるに決まってるじゃない!」
知力:「……死ぬ気で勉強してきたから大丈夫よ…」
賞金の使い道:「パ…ちょっ!なにするのよ!ロリコンヘンタイ!ちょっと!コアさんも邪魔しないで!!!」

J『さあ、最年少アイドルヒーローが相棒のコアさんと一緒に堂々の入場です!』

亜里沙『子供ゆえの未熟さもあるけれど……子供ゆえのフレッシュさに期待したいわねえ』

ウサコ『ちなみにインタビュー中に急用が入った結果こう↑なったウサ』

J『そうですね、急用です』

プシーーーーーッ

J『エントリーNo.07! 新ジャンル:男の娘アイドルの最高峰! プリティフェイスに潜む牙、ラプタァァァーーー!!』

ラプター『全員ブッ飛ばす!!』

ランチャアアアアアアアアアン!!

エントリーNo.07 プリティフェイスに潜む牙
ラプター
所属:アイドルヒーロー同盟
体力:「アイドルヒーローだよ?あるに決まって……え?キャラ作らなくていい?」
知力:「こう見えて、頭の回転は速い方だぜ?」
賞金の使い道:「あー……取ってから考えるわ」

J『体格に似合わずのっしのっしと入場してきましたねー』

ウサコ『肉食恐竜ウサ。ウサコの天敵ウサ』

亜里沙『男の子なのに男性ファンの方が多いのねえ』

ウサコ『男は所詮ガワばっか見てるウサ』
421 : ◆llXLnL0MGk [sage saga]:2014/03/16(日) 23:57:27.05 ID:KEkhj00w0
プシーーーーーッ

J『エントリーNo.08! 振るう拳はご飯の為に! 海底から来た大型新人、アビスカルゥゥーーー!!』

スカル『頑張りますよー』

ウォォォォォォォォォォ!!

エントリーNO.08 海底から来た大型新人
アビスカル
所属:アイドルヒーロー同盟
体力:「自信満々でございます」
知力:「お勉強中ですよ」
賞金の使い道:「アイスを沢山食べたいでございますですねー」

J『海底からやってきてなんやかんやでアイドルヒーローになったアビスカル! 期待が高まります!』

ウサコ『はしょりすぎウサ。全くわからないわ、だウサ』

亜里沙『鎧が自己修復するらしいから、長期戦には有利かしら』

プシーーーーーッ

J『エントリーNo.09! 全ての豚よ、私に跪け! 冷徹なる女王様、レポ・クラリアァァァーーー!!』

クラリア『ふふふ……』

オホーーーーーーーッ!!

エントリーNo.09 冷徹なる女王様
レポ・クラリア
所属:アイドルヒーロー同盟
体力:「私が他の者に劣るなどあり得ないわ!」
知力:「無知は罪よ。よく覚えておきなさい」
賞金の使い道:「この賞金を必要とするものたちの前で賞金を破り捨ててその反応を見たいわ!」

J『スゴイですね、言動挙動一つ一つがドSの塊ですよ』

ウサコ『ラプターと並んでファン層が歪んでるウサね』

亜里沙『賞金の使い道がものすごいわね。ちょっと優勝する様を見てみたいかも?』
422 : ◆llXLnL0MGk [sage saga]:2014/03/16(日) 23:59:02.89 ID:KEkhj00w0
J『……はい、アイドルヒーローからのエントリーは以上ですね』

ウサコ『え、9人しかいないウサ?』

J『はい。一般枠を広げた結果、こうなりました』

亜里沙「じゃあ、ここから先は一般枠の紹介ねえ」

J『そういうことになります。でははりきって参りましょう!』

プシーーーーーッ

J『エントリーNo.10! 宇宙管理局からの刺客! 万里を見透かす百目の女、パァーボ・レアルゥゥゥーーー!!』

レアル『いや、百もねえよ……つか刺客って』

ヒュウウウウ!!

エントリーNo.10 万里を見透かす百目の女
パーボ・レアル
所属:宇宙管理局
体力:「まぁ、人並み以上にはあるな」
知力:「…一般知識は問題ない、はず。あと音楽?特にロックなら負ける気がしないね!」
賞金の使い道:「半分は使うとして…半分は貯金しておきたいかな、将来の事とか考えてさ」

J『一般枠一人目は宇宙管理局からの参加です! なお、一般枠の中でも希望者は、本名等一切を伏せさせていただいております!』

ウサコ『百目ってなんだかおっかないウサ』

亜里沙『うーん、予選の活躍ぶりを見てみないと、まだちょっと評価できないわねえ』
423 : ◆llXLnL0MGk [sage saga]:2014/03/17(月) 00:00:31.50 ID:SsFY/23G0
プシーーーーーッ

J『エントリーNo.11! プロダクションを代表して出場! 闇夜に舞う白猫、アナスタシアァァァーーー!!』

アーニャ『アー、スターラッツァ……えと、頑張ります』

スペシーヴァアアアアア!!

エントリーNo.11 闇夜に舞う白猫
アナスタシア
所属:プロダクション
体力:「ダー……それなりに、自信のあるつもりです」
知力:「前職の時の知識はありますが、一般常識は少し、不安があります……」
賞金の使い道:「……生活費と、お世話になってるプロダクションに」

J『能力者支援団体プロダクションからロシアっ娘の参戦です!』

ウサコ『ぐぬぬ……ウサコに負けず劣らずの美少女ウサ……!』

亜里沙『身のこなし一つ一つに隙が見えなくて、期待できそうねえ』

プシーーーーーッ

J『エントリーNo.12! 歩く自然災害・オブ・大空! 心優しきハリケーン、ナチュルゥスカイィィィーーー!!』

スカイ『え、えと……が、がんばります……』

イェエエエエエエエ!!

エントリーNo.12 心優しきハリケーン
ナチュルスカイ
所属:ナチュルスター
体力:「えっと…自信はないです」
知力:「勉強は得意です…」
賞金の使い道:「しn……いつもお世話になってる義母さんに感謝の気持ちで渡します」

J『今回ナチュルスターは三人揃ってのエントリーとなります!』

亜里沙『フリーヒーローの中ではトップクラスの有名人ねえ』

ウサコ『良くも悪くも、ほんとに有名ウサ』
424 : ◆llXLnL0MGk [sage saga]:2014/03/17(月) 00:01:33.91 ID:SsFY/23G0
プシーーーーーッ

J『エントリーNo.13! 歩く自然災害・オブ・大海! 泣き虫大津波、ナチュルゥマリィィィーーーン!!』

マリン『うぅ……なんですかこの二つ名……いぢめですか……』

ムーリィィィィィィィィ!!

エントリーNo.13 泣き虫大津波
ナチュルマリン
所属:ナチュルスター
体力:「よく部活勧誘されてるですけど…変な期待はもたないでほしいんですけどぉ…」
知力:「悪くはないと思うんですけど…」
賞金の使い道:「そ、そんなことよりなんで登録されてるんですか?私は静かにひっそりと暮らしたいので、誰か代わりに出てくれませんか?賞金は全部あげますので……」

J『さあおずおずと入場してまいりました! そんな事を言ってももう手遅れだぞナチュルマリン!』

亜里沙『確か、癒しの術が使えるのよね。意外と長期戦向き?』

ウサコ『相手はジリ貧必至ウサ』

プシーーーーーッ

J『エントリーNo.14! 歩く自然災害・オブ・大地! 任侠大地震、ナチュルゥアァァァーーース!!』

アース『やるからには勝つけえのお!!』

ウオォォォォォォォォォォォ!!

エントリーNo.14 任侠大地震
ナチュルアース
所属:ナチュルスター
体力:「体力なら自信あるけえのう!ウチの若い衆にも負けないんじゃ!」
知力:「べ、勉強は苦手じゃ…」
賞金の使い道:「その時に考えてみるんじゃ!」

J『さあナチュルスター最後の一人が入場です! 果たしてスタジアムはいつまで保つのか!?』

ウサコ『不穏な事言うなウサ!』

亜里沙『この子の言葉の端々の方がよっぽど不穏なような?』
425 : ◆llXLnL0MGk [sage saga]:2014/03/17(月) 00:02:37.29 ID:SsFY/23G0
プシーーーーーッ

J『エントリーNo.15! 海底からの反逆者! 地を泳ぐ白銀の騎士、アビスッナイトォォォーーー!!』

ナイト『よっろしくー!』

オオオオオオオオオオオオ!!

エントリーNo.15 地を泳ぐ白銀の騎士
アビスナイト
所属:フルメタル・トレイターズ
体力:「筋力はまあまあ普通……足は速い方かな!」
知力:「……の、ノーコメントで」
賞金の使い道:「家に住みたいなあ」

J『憤怒の街事件近辺から活躍が始まった、フルメタル・トレイターズのリーダーが登場です!!』

亜里沙『武器が遠近に対応しているから、柔軟な戦いに期待できるわねえ』

ウサコ『ってか海底人二人目ウサ』

プシーーーーーッ

J『エントリーNo.16! 天空からの反逆者! ウェポンマスターサイボーグ、SCィィィー0ワーーーン!!』

01『参ります!』

ワァァァァァァァァァァァァ!!

エントリーNo.16 ウェポンマスターサイボーグ
SC-01
所属:フルメタル・トレイターズ
体力:「まあ、サイボーグなので自信はあります」
知力:「必要最低限の知識は持っているであります」
賞金の使い道:「家に住みたいです」

J『さあSC-01、相棒の小型戦闘機マイシスターと共に入場です!』

ウサコ『あの中銃器でいっぱいって何かおっかないウサ』

亜里沙『相手を殺しちゃいけないから、使える武器が限られちゃうわねえ。ちょっと不利かも』
426 : ◆llXLnL0MGk [sage saga]:2014/03/17(月) 00:03:56.76 ID:SsFY/23G0
プシーーーーーッ

J『エントリーNo.17! 地の果てからの反逆者! 艶やかに奏でる高貴な旋律、ノォーヴル・ディアブルゥゥーーー!!!』

ディアブル『ごきげんよう♪』

ヒョオオオオオオオオオオオ!!

エントリーNo.17 艶やかに奏でる高貴な旋律
ノーヴル・ディアブル
所属:フルメタル・トレイターズ
体力:「体力は自信がありません……」
知力:「こちらは、人並みだとは思いますわ」
賞金の使い道:「家に住みたいですわ」

J『さあ、こちらは使役する自動人形と共に入場してまいりました!』

亜里沙『まさに鉄壁のボディガードってところね』

ウサコ『っていうかフルメタルは賞金の使い道が切実すぎるウサ』

プシーーーーーッ

J『エントリーNo.18! あのセイラが帰ってきた! 不死鳥が如きカムバッカー、水木ィー聖來ァァーーー!!』

聖來『あはは……アイドルヒーローに復帰ってわけじゃないけどね』

セイラアアアアアアアアアアアアアアア!!

エントリーNo,18 不死鳥が如きカムバッカー
水木聖來
所属:フリー
体力:「結構自信ありかな、元アイドルヒーローだし、ダンスも得意だからね!」
知力:「まあまあそこそこには?わんこ関係の知識ならかなり……ん?必要ない?」
賞金の使い道:「いつも協力してくれる子達の餌代になるかなぁ」

J『元アイドルヒーロー水木聖來! こうして公の場で戦うのは久しぶりであります!』

ウサコ『懐かしいウサー』

亜里沙『腕が鈍っていないか、お手並み拝見ね』
427 : ◆llXLnL0MGk [sage saga]:2014/03/17(月) 00:05:45.96 ID:SsFY/23G0
プシーーーーーッ

J『エントリーNo.19! 目指せ、優勝大作戦! 物理的オカルトパワー、桜ァァァー餡ーーー!!』

桜餡『頑張っちゃうから!』

イェエエエエエエエエエエ!!

エントリーNo.19 物理的オカルトパワー
桜餡
所属:フリー
体力:「体力は結構自信あったりするよ!」
知力:「…がんばるよー」
賞金の使い道:「え、えっと居候先に…ね!」

J『ヒーローではないけれど、居候先のお姉さんに恩返ししたいという桜餡! その健気さが審査員のハートを射抜きました!』

亜里沙『資料には、妖力を使えるってあるわねえ』

ウサコ『妖怪と人間のハーフとかかもしれないウサ』

プシーーーーーッ

J『エントリーNo.20! 武器は、この身一つあればいい! アメイジング空手ガール、中野ォーーー有香ァァーーー!!』

有香『……押ォ忍ッ!!』

オオオオオオオオオッスウウ!!

エントリーNo.20 アメイジング空手ガール
中野有香
所属:フリー
体力:「押忍! 体力だけは誰にも負けないつもりです!」
知力:「勉強は……、苦手では無いですが」
賞金の使い道:「何か特訓が捗るような事に使えたら、って感じです」

J『幼い頃から空手を嗜み、更に能力まで得た中野有香! 文字通り丸腰で、どこまで勝ち進めるか!?』

亜里沙『こういうストレートな子って、個人的に応援したくなっちゃうわ』

ウサコ「中野……黒髪ツインテ……ウッ、頭がウサ……」

J『それ以上いけません!』
428 : ◆llXLnL0MGk [sage saga]:2014/03/17(月) 00:08:37.94 ID:SsFY/23G0
プシーーーーーッ

J『エントリーNo.21! 燃える鎌は断罪の証! ブランク無用のベテラン魔法少女、エンジェリィィック、ファイアァーーー!!』

ファイア『……すこし引っかかるわね』

ウオオォォォォォォォォォォ!!

エントリーNo.21 ブランク無用のベテラン魔法少女
エンジェリックファイア
所属:フリー
体力:「伊達に変身して戦っていないわ」
知力:「……ジャンルにもよるけれど、少し苦手かしら」
賞金の使い道:「友達と旅行にでも行きたいわ」

J『やってきましたエンジェリックファイア! 超余談ですが、今回出場選手では最年長の25歳です』

ウサコ『わざわざ何でそんな事言ったウサ! 言うウサ! 何故ウサ!』

亜里沙『でも場数を踏んだベテランは強いから、ある意味大事な情報ねえ』

プシーーーーーッ

J『エントリーNo.22! 私のプログラミングに狂いは無い! テクノロジーガール、オォーフィィーーース!!』

オーフィス『そんな事言ったこと無いけど……』

ウォォォォォォォォォォォォォ!!

エントリーNo.22 テクノロジーガール
オーフィス
所属:フリー
体力:「正直、自信はないかな……まっとうな手段なら、ね」
知力:「この時代の知識ならひととおり仕入れた……はず」
賞金の使い道:「生活費と、メンテナンス設備と……あと、他のアシ雇ってほしい」

J『普段は某漫画家のアシスタントをしているというオーフィス! 職場改善の為にと先生に泣きつかれたそうです!』

ウサコ『見た感じはフッツーの女の子ウサ』

亜里沙『左腕のキーボードが怪しいわねえ』
429 : ◆llXLnL0MGk [sage saga]:2014/03/17(月) 00:09:54.17 ID:SsFY/23G0
プシーーーーーッ

J『エントリーNo.23! 今やお茶の間の人気者! 愛と正義のはにかみ侵略者、ひなたァァん星人ーーー!!』

ひなたん『賞金は、丸ごとつるっと私のものひなた☆』

ヒナタアアアアアアアアン!!

エントリーNo.23 愛と正義のはにかみ侵略者
ひなたん星人
所属:フリー
体力:「エネルギーが続く限りは戦えるひなた☆」
知力:「えっ、知力ですか?自信はないですけれど……ヒーロー関係のクイズとかなら得意かもです」
賞金の使い道:「うーん…たくさんの小説を買うとか、あ…でも読む時間が……えっと、それじゃあプレゼント代って事で」

J『カピバラ怪人騒動で一躍有名人となったひなたん星人! 刀を振り回して堂々の入場です!』

亜里沙『以前に会った事があるけれど、ああ見えてすごく芯が強い子なのよね』

ウサコ『実はウサコ一番のごひいきヒーローウサ!』

プシーーーーーッ

J『エントリーNo.24! 依頼とあらば即・参上! クール&Coolな仕事人、マーセナリィィー・東郷ォーーー!!』

東郷『ふっ、よろしく頼むよ』

ホアァァァァァァァァァァァ!!

エントリーNo.24 クール&Coolな仕事人
マーセナリー・東郷
所属:フリー
体力:「そこそこ自信はあるよ。荒事には慣れているからね」
知識:「さあ、どうだろうね。一般教養程度なら心得ているが」
賞金の使い道:「無論興味は惹かれるが、今回私のやるべきことはそれではないのでね」

J『資料によればマーセナリー・東郷、某企業に依頼されて代理で出場した万屋とのことです』

亜里沙『スーツ姿にサングラスに日本刀……なんだか絵になるわねえ』

ウサコ『今回地味にポン刀使い多いウサ』
430 : ◆llXLnL0MGk [sage saga]:2014/03/17(月) 00:11:16.20 ID:SsFY/23G0
プシーーーーーッ

J『いよいよ最後! エントリーNo.25! 誰だ、一体何者だ!? 一切不明のアンノウン、カレェェンヴィィーーー!!』

カレンヴィー『……お、おー!』

ワアアアアアアアアアアア!!

エントリーNo.25 一切不明のアンノウン
カレンヴィー
所属:フリー
体力:「自信はないかな…昔から身体は弱かったし」
知力:「だ、大丈夫!九九はできるから!」
賞金の使い道:「特に使い道はないので、病院に寄付するかな?」

J『コンビニでバイトしている事以外頑なに喋ろうとしないカレンヴィー! 彼女は一体どこの誰なのか!?』

亜里沙『この子も普通の女の子に見えるけれど……?』

ウサコ『残念な子の香りがプンプンするウサ』

J『さあ! 予選への切符を勝ち取った25人のヒーローが今、この場に集合しました!』

ラビッツ「…………」

ナチュラル「…………」

カミカゼ「…………」

甲「…………」

乙「…………」
431 : ◆llXLnL0MGk [sage saga]:2014/03/17(月) 00:12:13.47 ID:SsFY/23G0
J『ここから本戦に勝ち進めるのは、わずかに8人!』

RISA「…………」

ラプター「…………」

スカル「…………」

クラリア「…………」

レアル「…………」

J『敗者復活枠を含めても、たった12人!』

アーニャ「…………」

スカイ「…………」

マリン「…………」

アース「…………」

ナイト「…………」
432 : ◆llXLnL0MGk [sage saga]:2014/03/17(月) 00:13:17.13 ID:SsFY/23G0
J『確立、5割以下! 半分以上が予選で敗退します!』

01「…………」

ディアブル「…………」

聖來「…………」

桜餡「…………」

有香「…………」

J『この狭き門をくぐりぬけ、本戦へ出場するのは誰なのか!?』

ファイア「…………」

オーフィス「…………」

ひなたん「…………」

東郷「…………」

カレンヴィー「…………」

J『ではいよいよ、予選…………!』

全員「…………」ゴクッ

J『……………………は、次回のお楽しみ!』

全員『ここで終わるんかい!?』

続く
433 : ◆llXLnL0MGk [sage saga]:2014/03/17(月) 00:20:10.77 ID:SsFY/23G0
はいここまで
みんなの二つ名考えるの楽しかった(恍惚)
もうAHF中はお借りの流れカットするよ!長いから!
434 : ◆cKpnvJgP32 [sage]:2014/03/17(月) 01:58:52.29 ID:BsTqcGdAo
あえて、以下のコピペを貼らせていただく
      r ‐、
      | ○ |         r‐‐、
     _,;ト - イ、      ∧l☆│∧   良い子の諸君!
    (⌒`    ⌒ヽ   /,、,,ト.-イ/,、 l  
    |ヽ   ~~⌒γ ⌒ ) r'⌒ `!´ `⌒) よく頭のおかしいライターやクリエイター気取りのバカが
   │ ヽー―'^ー-'  ( ⌒γ ⌒~~ / 「誰もやらなかった事に挑戦する」とほざくが
   │  〉    |│  |`ー^ー― r' |  大抵それは「先人が思いついたけどあえてやらなかった」ことだ
   │ /───| |  |/ |  l  ト、 |  王道が何故面白いか理解できない人間に面白い話は
   |  irー-、 ー ,} |    /     i    作れないぞ!
   | /   `X´ ヽ    /   入  |



Q.じゃあ王道って何だよ!?

A.こういうのだよ!!
……っていう典型だと思った

面白いし、わくわくする
早く続きが見たい。おう、あくしろよ(早漏)


・余談
『全選手入場!!』のコピペを思い出したのは俺だけじゃないはず
435 : ◆AZRIyTG9aM [sage]:2014/03/17(月) 02:33:52.65 ID:bonneUUc0
乙ー

やだ…RISAの二つ名カッコイイ。ナチュルスターそれぞれの二つ名もいいな。次からそれ使おうかな?(おいっ

そして、ヤイバー甲wwwお前かwww
436 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/17(月) 08:47:45.63 ID:/UP2DbTOo
おつおつ

ドキがムネムネする!つづきまってます
437 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/17(月) 09:02:06.52 ID:XZddEFKV0
乙です
まさかのヤイバー甲に不意打ちで笑った
二つ名良いなぁ…これからどうなるか楽しみ
438 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/03/17(月) 23:42:27.97 ID:G5uRscTlo
遅ればせながら乙乙ー

>>409
ピィちゃんは本当に幸せ者ですねぇ、リア充爆発すればいいのに
ヘタレなところもピィの魅力かなとも思います、爆発すればいいのに(二度目)

>>433
てんてーをヒーロー応援委員とか言う役職に就けておいてよかったと思った瞬間である
予選本選楽しみですねえ、次回以降も期待して待ってますー(ひなたん星人勝ちあがれ勝ちあがれ勝ちあがれ……)
439 : ◆zvY2y1UzWw [saga]:2014/03/20(木) 23:50:58.20 ID:P2AalGg60
学園祭時系列で投下しますですよ
440 : ◆zvY2y1UzWw [saga]:2014/03/20(木) 23:52:15.72 ID:P2AalGg60
「ふふんふんふんふっふ〜ん♪」

街が学園祭一色になっている。道行く人たちは殆どが学園祭目当てだ。

『国内最大規模の学園祭』という事もあり、わざわざ地方から来る人もかなりいるらしい。

しかも、あのアイドルヒーロー同盟のアイドルまで出演するのだ。マスコミも注目するし、ファンは大喜びで集まってくる。

秋炎絢爛祭は一種の経済効果まで起こしている学園祭なのだ。

「ふふんふふんふんふんふふ〜ん♪」

そんな中、カフェ・マルメターノは出張店も出すことなく通常通りの営業である。

きらりは開店前に鼻歌交じりでご機嫌そうに店の周囲の掃き掃除をしていた。

奈緒はまだ寝ているが取りあえず無事に帰ってきた。それが嬉しい。

「ふふんふふんふん♪」

「あっ…きらりさん?」

「にょ?…あーっ!千枝ちゃーん!お久しぶりだにぃ☆あいさつ代わりのはぐはぐー☆」

「わわわ…は、はい、お久しぶりです…きらりさん、あの…箒落としてますよ」

「あっ、お掃除しなきゃいけなかったにぃ!ごめんね箒さーん」

(び、びっくりしたぁ…)

きらりのいきなりのハグに驚きつつ、すぐに解放されて落ち着いたようだ。
441 : ◆zvY2y1UzWw [saga]:2014/03/20(木) 23:54:10.57 ID:P2AalGg60
「んーと、千枝ちゃんは…お祭に行く途中かな?」

「そうですよ、きらりさんはこのお店で働いていたんですか?」

「そーなの!ぱふぇがとーってもおいしーから、千枝ちゃんもいつか食べに来てー!あ!そーだ、これ邪魔にならないならどーぞぉ!」

きらりが制服であるエプロンのポケットから小さなチラシを取り出して千枝に渡した。

店の説明や地図に加えて『このチラシ一枚で1つのグループにドリンク一杯無料サービス』と書いてある。

「ええっと…このお店のチラシですか?」

「そーなの!し・か・も!サービス券にもなっちゃう☆これをねぇ、学園祭に行ったり〜学園祭から帰ってきた人たちに配るんだゆ!」

「カフェ・マルメターノ…このお店って学園祭にお店は出さないんですか?」

「それがね、きらりはお店出したいんだけどぉ…もう結構お店あるみたいだから、出さない方がいいってリーダーちゃんがぁ…」

「あ、そう言われると確かにカフェって結構あったような気がします…」

「けど!お店に人が来てくれるとやっぱりうれしーから、こーやってチラシを配るんだにぃ☆」

出張店として開いたり、学生が開いている店…それぞれ趣は違うがカフェ自体はそれなりにある。

それだけではなく、食べ物や飲み物を販売している店も考慮すると、比較的普通なカフェ・マルメターノは集客が望めないと考えられた。

それでも学園祭に集まる人の量は膨大で、なんとしても呼び込みたいのが本音である。

このチラシは主にこの店の前を通る人々が、学園祭の帰りに騒がしくない、落ち着ける空間を求めて入店するのを狙っているのだ。

「千枝ちゃんも、お友達とか、ご近所さんとか…いろんな人と一緒に来て来て!」

「ご近所…あっ、もう行かなきゃ!きらりさん、チラシ貰っておきますね!」

「うん!きらり、頑張るから、千枝ちゃんも頑張ってー☆」

「はい!」

ブンブンと手を振って、きらりは千枝を見送ると、再び鼻歌と共に掃除を再開した。
442 : ◆zvY2y1UzWw [saga]:2014/03/20(木) 23:55:10.37 ID:P2AalGg60


学園祭のスタンプラリーは、難易度が高い程スタンプの量が多い。

だが、逆に言えばポイントが少ないが難易度が低い場所も結構あるのだ。

時間がない人達は高ポイントを狙い、そうでなくても個性的な物が多い高難易度の物はそれなりに人気がある。

だが、時間に余裕もあり、それほどチャレンジャー精神や野次馬根性もない人々は、コツコツ低ポイントをこなしていたりもする。

そんな人がここにも…スタンプラリーの1ポイントのスタンプが押される場所で、3人の少女が1人を待っていた。

内容はあっち向いてホイ。簡単なはずなのだが先ほどからずっと終わる気配がない。

何故なら番人はジャンケンでずっと勝っているのだが、挑戦者があっち向いてホイの時に粘りに粘って決着がついていないのである。

挑戦者は金髪で猫耳の獣人の少女。待っている3人のうち、一人は緑色の少し大きな袋を持っていてた。

そう、彼女達はハリケーンガールズだ。
443 : ◆zvY2y1UzWw [saga]:2014/03/20(木) 23:56:58.73 ID:P2AalGg60
「ケイー、まだ終わんないのかよー」

「……スタンプと言えばマリパ3のストーリーモードよね」

「ケイー!マーサが変な事言いだしたから早くぅー!」

「ほんとゴメン!まだ負けてないから、諦められない!」

急かす後ろの3人に謝罪し、ケイは再び番人と向かい合う。

「じゃあいきますよー」

「はいはい!」

「「じゃんけんポン!」」

「「あっちむいてホイ!」」

「あー負けました〜」

「よっし!やっと勝てた〜ほら、スタンプちょーだい」

「はいどうぞ、1ポイントです」

「よーし、これで3ポイント!あと6ポイント!」

「ケイ…1ポイントで時間使いすぎよ」

「番人の男の子も少し困っていたみたいだよ?勝ってホッとしてたし」

「だってさぁ、ジャンケンで勝てないんだよ!あっち向いてホイの時に粘るしかないじゃん!?ジャンケンで勝てばあっち向いてホイでは勝てるし!」

「ケイは動体視力良いよな、だからか?」

「そう!本気出せばテレビがコマ送りに見えるの!…目が疲れるけどね」

猫の獣人であるケイは、動体視力にそれなりの自信があるようだ。
444 : ◆zvY2y1UzWw [saga]:2014/03/20(木) 23:59:55.59 ID:P2AalGg60
「…でも動体視力が良い割にはジャンケンには勝てないのね」

「いや、あれはどうしようもなくない?下手すると後出しになるし」

「そもそも、十数連敗くらいする方がすごいと思うよ」

「確率どこ行ったって感じだったよな」

「あのね…ジャンケンの時、ジャンケンをしない方の腕は宙に浮いている場合はパーとチョキの時、微妙に動くの。個人差はあるけど」

「え、何それ知らなかった!」

「おーマジだ、右腕でパーとかチョキを出すと微妙に左手が動くな」

「…次からは、ジャンケンでも無双が出来そう!」

「いや、腕隠されたらどうするんだよ」

「がんばる」

「獣人の動体視力の無駄遣い…かも」

「そういえば猫耳の女の子がメイドカフェにいたねー。あのメイドカフェ、噂だと種類豊富みたいだよ」

「メイドの種類が豊富なメイドカフェ…なんかすごいな。何がって言われても答えられそうにないけど」

「アタシは『にゃあにゃあ、にゃんにゃん❤』な〜んてしたくないけどね」

ケイが冗談交じりに上目遣いで猫のようにポーズしてみるも、すぐに本人が嫌そうな顔をして止めてしまった。

「うん、お前はそういう路線じゃないな。よーくわかる」

「ロックな猫と、メイドな猫、あなたはどっち?みたいな?セクシーなのキュートなのどっちが好きなの?なんちゃって〜」

「…ちょっと古いわね」

「え〜このネタ、アタシ達が小学校の…一年生ぐらいの時のでしょ?」

「十一年前じゃねーか!!」

「十分古いわね」

「えっ、古かった?」

不意に出てきた懐かしいネタに、4人は盛り上がる。
445 : ◆zvY2y1UzWw [saga]:2014/03/21(金) 00:01:28.10 ID:i+XDo28B0
「…じゅ、じゅういちねん、ですか」

「…ナナちゃーん?」

「なんでもないですよー、ほらなんでもなーい…」

「あっ…ほ、ほら、もうすぐ楽屋戻っておかないといけない時間だよ!落ち込んでないで行こっ?」

「そうでした!いけませんね、楽屋代わりの教室にもどりましょう…!」

その声に変装して通りかかった某ウサミン星人が反応したが、幸いにもそれはあまり注目を集めなかったようだ。
446 : ◆zvY2y1UzWw [saga]:2014/03/21(金) 00:03:03.88 ID:i+XDo28B0
今日のハリケーンガールズは…というか、メンバーのケイがスタンプ集めを楽しんでいた。

高得点の番人は、大抵は勝てる気がしないと判断し、地味にポイントを集める方針だ。

「あと6ポイントー…長いのか短いのかわかんないね」

「ケイの動体視力なら、あのカミカゼのコイントスもクリアできないか?3ポイントだしやってもいいと思うけど」

「いやー…できるかもしれないけどさ、あの女の子とカミカゼの激闘をちらっと見ちゃったら自信なくて」

あの激闘は、ハリケーンガールズも目撃していたのだ。…通り過ぎただけなので、結果は知らない。

「…あれは多分例外だろ。いけるって」

「そ、そうだよね!イケるよね!じゃあカミカゼがいたところまでいってみよー!」

「ねぇ、あそこ…5ポイントらしいけど…興味ない?」

「5ポイント!?」

「ほら、あそこ…人がいっぱい集まってるでしょ」

マーサが指で示した場所には、多くの見物人がいた。

「ああ、あそこか。人がやけに集まってるなぁと思ったらスタンプの番人だったのかよ」

「…見るだけ見て見ない?あれ観客の方が多いみたいだし」

「そーだね、見るだけ見て見よっか!」
447 : ◆zvY2y1UzWw [saga]:2014/03/21(金) 00:03:58.21 ID:i+XDo28B0
人ごみに近づいていくと、それはどうやら早食い大会のようだ。

挑戦者はだんだんペースが落ちていくと言うのに、番人の山盛りのお菓子はヒョイヒョイ消えていく。

「なにあれ…あの女の子一人で早食い大会?」

「…まさか、さすがに数回ごとに交代してるだろ…?」

涼のその言葉に、ギャラリーの一人が話しかけてきた。

「…お嬢ちゃん達、俺はさっきからずっと見てるけどよ、この子…ずっーと交代せずに食いまくってるんだよ」

「え、えー…」

「…それで、勝った人はいるのか?」

「今の所いねえな。大食いに自信があった男たちが挑んでも、勝ったやつは一人も見ていない。とにかく、挑もうなんて思わない方がいいぞ」

「うん、言われなくても挑む気になれないから…」

「だよな〜!」

そんなギャラリーの声を押しのけるように、一つの声が響いた。

「ふゥーハハハハハー!」

その声に、何故かギャラリーが道を開けるようにサーッと引いていく。

「アタシがこの5ポインんとに挑戦してやんよ!」

ドヤ顔で言い放ったのは黒髪に黒い肌、赤い瞳と太い眉。そして口元まで隠れる大きな黒いコート…怪しげな印象の少女だった。
448 : ◆zvY2y1UzWw [saga]:2014/03/21(金) 00:05:23.52 ID:i+XDo28B0
「ふふん。大食い、早食い…アタシも自信ある系女子なンだよね♪」

妙なイントネーションでそう言い放ったのは黒兎の人間体…外見年齢は奈緒に近い姿だ。

ふわふわとしたツインテールを兎の耳のように揺らしながら、コートを脱いで椅子に掛け、彼女は席に座った。

「あら〜次の挑戦者さんですか〜?女の子は珍しいですね〜」

『ちょっと待ってくださいね〜このソーセージを食べたらお相手しますので〜』

そう言いながら、小悪魔な衣装の少女と本格的に全身真っ黒な衣装の少女が皿に和菓子が盛られていくのをジッと見ている。

それが暴食の悪魔と狂信の長だというのは、殆どの者が知ることも無いだろう。

―…おい、大丈夫なのかあの子

―いやいや、止める暇が無かったんだよ!

―…意外と門番の子並に食える子なのかもしれん

―いやいや、そんなまさかぁ…

「…ルールの確認だけど、この和菓子を先に食べつくした方の勝ち…で、いいンだな?」

「そうですよ〜大食いじゃなくて早食いですから〜」

「おっけおっけ!こレくらい余裕だ♪」

『結構な自信がおありのようですね〜ワクワクします〜』

絶妙なバランスで山のように積まれた和菓子にキラキラギラギラと目を光らせる。
449 : ◆zvY2y1UzWw [saga]:2014/03/21(金) 00:06:02.39 ID:i+XDo28B0
そして開始のコールが響いた。

「「いただきまーす!」」

目撃者は証言した。『始まった瞬間、そこに居たのは二人の少女ではなく悪魔と魔獣だった。…怖かった。自分まで食われると思った。』と。
450 : ◆zvY2y1UzWw [saga]:2014/03/21(金) 00:08:10.23 ID:i+XDo28B0


5ポイントのスタンプが押された紙をポシェットに入れ、右手には白兎、左手には黒兎を持ち、ナニカがとてとて歩いていた。

「黒ちゃん頑張ったね、勝ったの嬉しいよ!」

「…もう一回やってイイ?」

「止めろ、これ以上目立つな。それにギリギリの勝利だったし…」

「ヘッ、判定勝ちでも最終的に勝てばよかろうなのダ!」

ドヤァ…とポーズを決めるが、ぬいぐるみなのでよく分からない。

「アタシも食べたかったなぁ、おまんじゅうとか…あっ、シュークリームが一番たべたい!」

「お前くらい小さいのがアレに勝てたら不自然だろ…そもそも黒が出るのすら反対だったんだ」

「なんでー?」

「目立つと後々支障が出るし、そもそも顔がアイツと同じだし…それにお前は加蓮に見つかってもいいのか?」

「!」

「あっ、その質問卑怯だゾ」

「アタシにだってやりたいことはあるんだ、そこんとこはっきりしてくれないと困る」

(アタシ的には消えてくれれば楽なんだけど、まだアタシはきっとナニカより弱いから)

言葉を選び、なるべくナニカが白兎の行動や言葉を気にしないように意思を伝える。
451 : ◆zvY2y1UzWw [saga]:2014/03/21(金) 00:10:04.15 ID:i+XDo28B0
「お姉ちゃんは…見つけてくれるなら、アタシはそれでいいよ。見つけてくれなくても、アタシはそれでいいよ。それが、一番だと思うの」

ナニカはもう、会うか会わないか決断できない。会いたい思いと、会ったら起きるかもしれない悲劇への恐れが拮抗しているから。

「もうアイツはどうでもいいと?」

「違う!違うの…」

「ハいはイ、やメヤめ!人生に必要なのはC調と遊ビ心だって誰かが言ってたと思うぞ!」

「誰だよそれ言ったの。どう考えてもただの遊び人じゃないか」

「まぁまァ、白はやりたいことあるなラ単独行動してればいいじゃん。仁加はアタシにまかせて、好きにしてればいいだろ」

「…そうさせてもらおうかな」

「白ちゃんまた行っちゃうの?」

「アイツは一人が好きなの、ほっといていいヨ」

白兎は黒兎の発言を肯定したが、心の中では計画の崩壊を心配している。

黒兎もそれを察しつつ、自分は特に計画なんて立ててない、基本その場のノリなので自分が楽しければそれでいいかと思っている。
452 : ◆zvY2y1UzWw [saga]:2014/03/21(金) 00:12:12.43 ID:i+XDo28B0
一日目同様に、一人になった白兎は思考する。

(不確定要素は排除するか訂正しなくてはならない。なら、アタシはどう動くべきか。力もまだ未完成なのだから、考えなくてはならない)

ライトによる浸食が思ったよりも進んでいない光、ナニカに『悪影響』を与える可能性がある加蓮。

両方とも下手に扱えばさらに状況が悪化する可能性すらある。

(気に食わないなぁ。どうしてこうも上手く事が運ばないのか…)

襲撃したアイドルヒーロー同盟に、そのきっかけとなった聖來。それらもある意味不確定要素だ。

(…不安定な世界は、こうも我々を苦しめる。それも悲しみ。規律に守られていない世界だから)

どれを利用し、どれを排除するか。そして今日も大なり小なり何か起きるであろうこの学園祭という混沌。

(今はまだ、全てを理解し観察しないといけない。参考にできそうな情報が少なすぎる。まずは…そうだな、ライトもいる事だし光からにしようか)

まるで機械の様に、あくまで冷静なつもりで白兎は判断する。

(あの女の周囲には、嫌な奴がいる気がする)

求めるのは知識と情報。足りないものはそれだけだと思っているから。
453 : ◆zvY2y1UzWw [saga]:2014/03/21(金) 00:14:48.70 ID:i+XDo28B0
知識と情報で己が満たされた時、完成すると白兎は確信している。

だが、そうなっても彼女が永遠に理解できない事がある。

『誰かを好きになる必要があるのか?誰かと友情を育む必要があるのか?誰かを尊敬する必要があるのか?』

白兎は理解できない。ありとあらゆる人格を含めた『自ら』を唯一の頂点に立つ者として造られたと確信しているから。

生殖行為をする必要も、群れを作る必要も無い存在。だから理解できない。他の命が『アイ』という物を持っている事を。

『憎しみ』や『怒り』、『妬み』や『欲』は持っていても、『アイ』だけは理解できない。まるで最初から欠けて造られたように。

多くの色が混じりあった黒の中に生まれた唯一の白は他と混じりあう事を知らない。

混じりあう事を知らない白は、ただ他の色を塗りつぶす。白は白としか交わることが出来ないから。

それは誰かによって生命の頂点に立つ為に造られた人格であり、永久に『少女』として幸せになることの無い欠陥人格である。
454 : ◆zvY2y1UzWw [sage]:2014/03/21(金) 00:17:26.45 ID:i+XDo28B0
以上です
ちょっとしたカフェの宣伝と悪魔VS野獣を衝動的に書いていた
彼女が黒の中の唯一の白である理由の話も今のうちに

情報
・カフェ・マルメターノ前では通行人にチラシを配っています。サービス券の期限は無いのでご自由にどうぞ。
・ナニカはもう彼女から隠れないし、逃げる気は無いようです。
・白兎単独行動中。光の周囲を観察する模様。
455 : ◆AZRIyTG9aM [sage]:2014/03/21(金) 01:04:16.11 ID:IquySTB10
乙ー

ナナさん!?何反応しちゃってるん!?

悪魔対魔獣はクロちゃんに軍杯が上がったかー
次は誰が挑戦に来るかな?

ヤバイ…書きたいネタがまた増えた。加蓮を早くナニカの元へ行かせないと(使命感

そして、シロちゃん…果たしてどうなるやら
456 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/03/21(金) 17:42:28.70 ID:DG328dxzo
乙乙ー
ナニカ組楽しそうで何より
何気に紗南ちゃん危うくなってる気がしますぞ
457 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/03/27(木) 00:02:54.70 ID:aLz/m9nzo
投下ー、投下しますー

魔法を使える女の子のお話を少々
458 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/03/27(木) 00:03:20.87 ID:aLz/m9nzo




それはとある冬の日のこと。それは寒い寒い日のことです。

小さな少女が1人、道を行く人たちに声を掛けていました。


「あのぉ……」

「……」

「……すみません」

「……」


女の子は一生懸命声を掛けますが、

通行人たちは見向きもしないか、一瞥もくれずに去っていきます。


「そこの人」

「……あ?」

「……ひっ、すすみません!な、なんでもないですっ!」

「……ちっ」


たまに反応してくれる人も居ましたが、結果は同じ事でした。


「……」

「……うぅ、寒いよぉ」

頭に大きなリボンをつけ、黒いローブを着込んだ少女は、

白い雪の降る空の下、一人ぼっちなのでした。
459 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/03/27(木) 00:04:18.77 ID:aLz/m9nzo


その女の子は魔法使いでした。

魔法使いと言っても御伽噺に出てくる様な華やかな魔法使いではありません。


「……”ほのおの魔法”とか使えたらよかったのになぁ」


呪文一つで、たちまち炎を生み出す。彼女はそんな魔法は使えませんでした。


「くしゅん……少しでもあたたかい場所を探さないと」


彼女に使えるのは”何かを探す魔法”。

尋ね人を探す魔法。失せ物を探す魔法。

探して見つける。ただそれだけ。とても地味な魔法でした。

460 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/03/27(木) 00:05:18.14 ID:aLz/m9nzo


「あたたかい場所を探す魔法は……」

女の子は懐から、袋を取り出し中を探ります。

そして何かの生き物の毛玉を見つけると、

両手で挟み込み、祈るように唱えました。


「えっとぉ……”暖かい場所を探してくださぁい”」

少女が言葉をつむぐと、スポンっ!とその手から毛玉が飛び出します。

それは微かに雪の積もる地面にふわりと着地すると、

まるで小さな生き物のように、ぴょこぴょこ跳ね回り、

そしてどこかへと向かい始めました。


「えへへ、これでだいじょーぶっ!えっへん!」

魔法の成功を確信し、女の子は胸を張ります。

毛玉に付いていけば、暖かい場所へと案内してくれるはずです。

ぴょんぴょん跳ねる毛玉を、とことこと付いていきます。
461 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/03/27(木) 00:06:00.24 ID:aLz/m9nzo

――


女の子は魔法使いのお家に生まれた子供でした。

お父さんも、お母さんも、お爺ちゃんも、お婆ちゃんも、

そのお爺ちゃんも、そのお婆ちゃんも、みんなみんな魔法使い。

そんなお家に生まれた子供でした。


家族はみんな口を揃えて言いました。

「お家の外は怖いから、外に出てはいけないよ」といいました。

女の子は、その言いつけを守って外に出ることはありませんでした。

だから女の子は、外の事をちっとも知りませんでした。


ある日、外の世界から白いお姉さんがやってきました。


そして女の子は知りました。

外の世界にも、素敵なものがたくさんあるのだと知りました。
462 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/03/27(木) 00:06:37.57 ID:aLz/m9nzo


それからそれから女の子はさらに知ってしまいます。

外の世界には、カッコいいヒーローが、かわいいヒロインが、

たくさん居て、それぞれ活躍しているのだと知りました。


特別な力を持って、ど派手に大活躍して、みんなに認められるヒーロー。

そんな存在に女の子は憧れたのでした。


「わたしもお家の外の世界にいってみたい!」

日に日に思いは募ります。



そしてある日の夜、女の子はお家を飛び出しました!


家族は追いかけては来ませんでした。やはり、外の世界は怖いのでしょう。

”お父さんやお母さんにもできないことができたんだ!”

それが自信に繋がりました。えっへんと女の子は胸を張ります。


そうして彼女の大冒険がはじまったのです。
463 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/03/27(木) 00:07:26.51 ID:aLz/m9nzo

――


「もぉお!ちがうぅ!」

女の子はぷくーっと膨れて怒ります。


彼女が追いかけていた毛玉は、すぐ近くにあった住宅地の民家の前で立ち止まり、

その身を縮こまらせて、スッとドアポストの隙間からその家の中へと入っていったのでした。


「うぅ……確かにあたたかい場所だけど……くしゅんっ!」


魔法の毛玉は、あたたかい場所を求めて、どこかのだれかが住む家へと入っていきました。

ですが、そこに少女が入る事はできません。

他人様のお家に勝手に入れば、怒られてしまうからです。


「またふり出しだよぉ……」


少女の嘆きを尻目に、しんしんと雪は降り続くのでした。


――

――
464 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/03/27(木) 00:08:23.73 ID:aLz/m9nzo

――

――


芽衣子「っと言う訳でっ!!」

芽衣子「お誕生日おめでとうっ!さくらちゃんっ!」

さくら「えっへっへー!ありがとうございまぁすっ!」

芽衣子「はいっ、恒例の財閥からの花束!」

さくら「ありがとうございま……おぉ、重いですっ」

芽衣子「……今回もまあ…お誕生日祝いしてくれる人は少ないけれど」

さくら「やっぱり皆さん、忙しいんでしょうかぁ?」


芽衣子「と言うより、現行の時系列よりもう結構時間が経っちゃってて……学園祭も今日から4〜6ヶ月ほど前の事だし……」

芽衣子「まあそんな感じだから……今現在もしっかり暇してそうな人が他に思い当たらないんだと思うな」

芽衣子「この頃にはエージェント抜けてる人も居ないとも限らないし」

さくら「芽衣子さんっ、すごいメタ発言ですよぉっ!」


芽衣子「まあまあそんな事より、今日はさくらちゃんのお祝いだよっ!」

芽衣子「来れない人たちの分も私がしっかりお祝いするからね!」

さくら「むむぅぅ……なんだか釈然としないところはありますけど……」

芽衣子「ほら桃のお誕生日ケーキも用意してるから、ねっ?」

さくら「……えへへー、まぁ、お誕生日だからいっかぁ♪」 

芽衣子(単純だけど、カワイイ)
465 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/03/27(木) 00:09:21.43 ID:aLz/m9nzo

芽衣子「私達からのお誕生日プレゼントはこれだよ♪はいっ!」

さくら「これはっ……!」

さくら「桜の飾りですか?」

芽衣子「そうっ!さくらちゃんピンクの物好きだったよね」

さくら「はいっ!大好きでぇすっ!えへへ」

さくら「でもこれ、何の飾りなんですか?髪飾り…?うーん」

芽衣子「それはね、杖の飾りだよ」

さくら「杖の……あっ!もしかして、『桜の杖』につける飾りですか?」

芽衣子「うん!身に付けるアクセサリーとかはさくらちゃんたくさん持ってたと思うけど」

芽衣子「『桜の杖』はシンプルな木の杖のままだったから、そっちに付けられる飾りは持ってないのかなって思ってね」

芽衣子「それもさくらちゃんの好きなピンクの飾りを選んでみたよ!……どうかな?」

さくら「芽衣子さん…」

さくら「あの!とっても!とーっても!嬉しいですっ!!」

さくら「本当に本当にありがとうございまぁすっ!!」

さくら「えへへー!」

芽衣子(うん、さくらちゃんはやっぱり満面の笑顔が一番カワイイ♪)
466 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/03/27(木) 00:10:12.69 ID:aLz/m9nzo


さくら「じゃーん!見てください芽衣子さん!」

桜の杖「…」 キラーン

芽衣子「おっ、早速つけたんだね」

さくら「かわいくなりましたよねぇ?」

芽衣子「うんうん、かわいいよー」

さくら「えっへっへー♪」

さくら「サクライさんにも自慢しますよぉ!」

芽衣子「そっかぁ、サクライさんも喜ぶんじゃないかなぁ」(あの人たぶんロリコンだし)

さくら「ですよねぇ!えへっ」

さくら「『桜の杖』は、サクライさんからのプレゼントでもあるので」

さくら「きっと喜んで貰えますよぉっ!」

芽衣子(純粋だなぁ……)

さくら「あ、そう言えば」

さくら「やっぱり花束の中に、サクライさんからのメッセージカードが入ってるんでしょうか?」

芽衣子「たぶん、入ってるんじゃないかな。私の時と一緒で」

さくら「えっとぉ……」

ゴソゴソ

さくら「ありましたっ!」

芽衣子「何が書いてるのかな?(ちょっと心配)」

さくら「さっそく見てみましょおっ!」

467 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/03/27(木) 00:11:01.60 ID:aLz/m9nzo

――

――


「花の種…」

雪の降る空の下。

女の子が毛玉の次に袋から取り出したのは、植物の種でした。


「お願いです、暖かい場所に連れて行ってくださぁい!」

毛玉の時と同じ様に祈りを込めて、魔法をかけます。


ふわりと、魔法の種は宙に浮かびます。


「お外に、あたたかい場所があれば……」


植物は暖かい空気と、土を好むもの。

これなら先ほどの毛玉の様に民家に入っていってしまう事は、たぶん無いはずです。


魔法の種は、少女の頭上をクルクルと回ると、

ゆっくりと、ある方向にむけて、動き始めました。

「!」


民家に入る様子はありません。

どうやら外にもあたたかい場所はあったようです。

「よぉしっ!」

少女は意気込んで、魔法の種を追いかけ始めます。
468 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/03/27(木) 00:12:03.04 ID:aLz/m9nzo

――


ところ代わって、

とある公園で、2人の男が話し合っていました。


「確かにこの枝は、昨日僕達が切り離したはずだったね」

「……ああ、間違いない。まったくもって摩訶不思議と言ったところか」


1人は、身形を整えたスーツ姿の若く見える金髪の男。

もう1人は、夜に溶ける黒いローブを着込み、大きな竜のお面を被った奇妙な男でした。


彼らの見上げる先には1本の、満開の桜の木。

とても、とても不思議な光景でした。

この日は、雪の振る寒い寒い日です。

他の木には、葉っぱ一つ残っていません。

それなのに、彼らの目の前にある1本の桜の木は、満開に咲き誇っているのでした。


「呪術師くん。君はどう考えるかな」

金髪の男が、竜のお面の男に問いかけます。

「我輩の目が確かなら、切り離した枝はまったく同一の物に見えるな」

「つまり?」

「……恐らくは時間が逆行しているのではないか?」
469 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/03/27(木) 00:12:55.19 ID:aLz/m9nzo

「ふむ……」

「この桜の木は、見ての通り

 花を吹き飛ばされても、枝を切られても、次の日には元通り。

 おそらくは進んだ時の流れと、同じだけ時の流れを逆行させる。

 そう言った類の呪いが掛かっているのではないか。」

「進む分だけ戻る。時の流れへの反抗か……しかし、どうして呪いと言いきれる?」

「ある地点からまったく進めなくなると言うのは、”祝福”ではなく”呪い”だろう?

 いわばこの木は、ただ一つ。世界から置いていかれている。

 この木自身はきっと何も知らない。時間を遡り続けるこの木は、記憶や思いを積み重ねることも無いのだから」

「……」

竜のお面を被った男の説明に、金髪の男は目を瞑って考え込んでしまいます。


「……『あの方』は世界の進展を好む。これでは望む物とは真逆だな」

「それは残念な事だな」
470 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/03/27(木) 00:13:40.35 ID:aLz/m9nzo

「……」

「だが、これはこれで使えることもあろう」

残念そうに頭を抱える金髪の男に、竜のお面の男は言います。


「この公園を包む春の如き気候は、間違いなくこの桜から発生しているもの。

 ”『満開』の桜”の持つ属性がそうさせているのだろうな。

 桜の木に掛けられているのは、”呪い”と呼べるものだが…

 同時にこれの及ぼす結果は一つの”奇跡”とも呼べる。」

「”奇跡”に転じる”呪い”……か」

「しかし……分からぬ事だらけであるのもまた事実ではある」

「そもそもこの”呪い”の始まりは何だったのか……かな?」

「ああ……とりあえず我輩としては……この木の枝や花を幾つか持ち帰って研究したいのだが」

「取り計らうよ。何か分かった事があれば教えてくれ。頼んだよ、呪術師くん」

「任された。サクライ殿」
471 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/03/27(木) 00:14:26.80 ID:aLz/m9nzo

「さて……?」

「ん……?」


話を終えた2人の元に、小さな光を纏った何かがふわふわと飛んできます。

それは、植物の種のようでした。


「……これは僕たちを狙った攻撃かな?」

「いや、……違うようだな」


「待ってぇぇ……」

光る種に送れて、小さな少女がよろよろと1人公園にやってきました。


「……人払いの術はかけたのだろう?」

「もちろん……だが、我輩の人払いの結界は、魔力を持たない人間の認識を多少誤魔化すだけのもの」

「つまり?」

「彼女はどうやら魔法使いのようだ。」

「ほう」

2人の興味が、やってきたばかりの小さな少女に注がれます。


「あ、この公園あたたかぁい……ほっ……あれ?」

女の子の方もまた、二人の男の視線に気づきました。
472 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/03/27(木) 00:15:27.01 ID:aLz/m9nzo


「……」

「……」

「あ、あの……」

魔法使いの女の子の前に立つのは、二人の男。

1人は奇妙な竜の仮面を被っているとてもあやしい男。

もう1人の金髪の男は身形は整っていましたが、その視線がとてもあやしい男でした。


「こんばんわ、小さなお嬢さん」

金髪の男から少女に声が掛けられました。

「こ、こんばんわ…」

「魔法使いの少女がどうして、こんな所に来たのかな?」

怯える少女に、男が尋ねます。

その顔には、ニッコリと笑顔が張り付いていました。

「あ、ああの……」

「ああ、そんなに怯えなくてもいい。僕は君に酷いことをするような人間ではないよ」

とても、とても優しい声で男は言います。
473 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/03/27(木) 00:16:29.83 ID:aLz/m9nzo

「……本当ですか?」

「もちろんだとも。君はきっと僕の敵ではない」

「?」

男のニヤついた口元から放たれる言葉の意味は、少女にはよくわかりませんでした。

「僕はサクライ。魔法使い君、君の名前を教えてくれるかな?」

「……さくらです。村松さくら」

「……そうか、さくら君。いい名前だ」

「えへへ」

なんだかわかりませんでしたが、とにかく褒められたようなので少女は笑います。


「ふふっ、僕達がこの場所で出会ったのは何かの縁かもしれないね」

「……?」

「おや?不思議そうな顔だね……?

 ……ああ、そうか。君はそこの花をまだ見ていなかったね

 なら、是非見ておくといい。悠久の時の呪いに囚われ…なお煌き咲き誇る、美しき花の姿を」


サクライと名乗った男が指差す方を見ると、

「わああっ!」

そこには雪の降る月夜に煌く、満開の桃色の華。


それは家を出て外の世界にやってきた魔法使いの少女が一番最初に見た、”素敵なもの”なのでした。

 
474 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/03/27(木) 00:17:29.56 ID:aLz/m9nzo

――


「はっはっは、そうか。さくら君はヒーロー達に憧れて家を出てきたのか

 なるほど、見かけによらずとても大胆で勇気のある行動だ」

「はいっ!外の世界には、カッコよくてカワイイヒーローがたくさん居るって聞いてましたからぁ!えへへ!」

「ああ、さくら君の言う通り。彼らの活躍こそまさしくこの時代の華だろう」

「ですよねぇっ!私もそんなそんな凄いヒーローみたいになりたくって!

 みんなに認められるカッコよくてカワイイ魔法使い!ちょーよくないですかっ?!」

「そうだね、素敵な目標だ」

「えっへっへー♪サクライさん話がわかるぅ♪」

すぐ傍にあったベンチに座って、さくらは自分の夢を話します。

いつの間にか、彼女のサクライに対する警戒はすっかり解かれていたのでした。


「しかし、その夢を叶えるのは……今の君には厳しいだろうね」

「えっ…?」
475 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/03/27(木) 00:18:19.58 ID:aLz/m9nzo

「君の扱う魔法は、おそらく戦闘向きではないね?」

「そ、そのぉ……」

「ははは、図星かな?さて、それではヒーローは務まらない。

 何より……君にはたった1人で生きていくことができるのかな?

 住む場所さえ無いのなら、夢を叶える以前に明日を食いつなぐ事さえ難しいよ」

「うぐぐぐぐ…………」

サクライと名乗った男の言う通りでした。

何の計画もなく飛び出てきたさくらには、お家も、お金も、知識も、何もありません。



「だから……君に必要なものは僕が用意しよう」

「えっ?」

彼はやはり、笑顔で言いました。

「住む家に、必要な資金、外で生きぬくための知識、魔術を学ぶ師……」

「ちょっと待てサクライ、最後のはもしや我輩のことではあるまいな?」

ずっと黙っていた竜のお面の男が口を挟みますが、サクライは無視して少女に語りかけます。


「それくらいのものなら財閥は簡単に用意できるさ」

「で、でも…」

「もちろん無理にとは言わないよ。

 だが、君さえよければ僕についてきて欲しい。さくら君」

「……」


「……あのっ、私はっ!」

それは少女が夢に近づくために、決意した瞬間でした。
476 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/03/27(木) 00:19:50.81 ID:aLz/m9nzo

――

――


さくら「えっとぉ」

さくら「『まずは誕生日おめでとう、さくら君』」

さくら「『さくら君の活躍は、どこに居ても僕の耳に入ってくる。本当によくやってくれていて感謝するよ』」

さくら「えっへっへー♪芽衣子さぁん!褒められてますよぉ!」

芽衣子「……そうだね」

芽衣子(どうしよう、チョロすぎて心配になってきちゃった……)

さくら「えっとぉ、『さくら君が外でちゃんと生活できていると聞いて、君のご両親もとても安心されているようだね』」

さくら「そっかぁ、お父さんとお母さんも……えへへー」

芽衣子「……?」

さくら「『後でご家族からの誕生日プレゼントも届くはずだから、受け取るといい』」

さくら「わぁっ!なんだろーっ!ちょー楽しみ!」

芽衣子「……」


芽衣子「……あれっ?」
477 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/03/27(木) 00:20:41.72 ID:aLz/m9nzo

芽衣子「あの、さくらちゃん?」

さくら「?、どうしました、芽衣子さん?」

芽衣子「さくらちゃんは家出中……なんだよね?」

さくら「そうですよぉ?」

芽衣子「それで……ご両親はさくらちゃんがここに居るの知ってるの?」

さくら「はい!手紙でやり取りもしてますし!」

芽衣子「て、手紙?……それは本物の?本当にご両親の書いた手紙?」

さくら「えっ?もちろんですよぉ!」

さくら「前にお家に帰ったときに、ちゃんと返事の手紙が届いたか確認もしましたしぃ!」

芽衣子「そっか、それなら……って、えっ??お、お家にも帰ってたの?」

さくら「はい!年末年始くらいはちゃんと実家に帰って」

さくら「ご家族に顔を見せておきなさいってサクライさんが言ってたのでぇ!」

芽衣子「……ぇぇぇ」

さくら「?」

芽衣子「もう一回だけ、確認するけど……家出中なんだよね?」

さくら「はいっ!」

芽衣子「……そっか。うん……わかった」

ピンポーン

さくら「あ、もしかしてお誕生日プレゼント届いたのかなぁ?ちょっと見てきます!」 トテトテトテ


芽衣子「……家出って何だろう」
478 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/03/27(木) 00:23:23.97 ID:aLz/m9nzo



さくら「えへへー♪やっぱりお家からでした!大きな箱が届きましたよぉ!」

芽衣子(普通に配達が届くなんて……この拠点の住所バレてるのかな?いや……もう私はツッコまないけどね)

芽衣子「……それにしても、なんだかものものしい箱だね」

さくら「早速開けてみましょお!パカッと!」


さくら「!!」

芽衣子「これはっ…!」

さくら「すごい!ちょーかわいい!!」

芽衣子「うん、さくらちゃんに似合いそうな服だね」

さくら「…………えへっ」

さくら「芽衣子さん、私のお家では衣装の贈り物はですね」

さくら「一人前の魔法使いに贈られるものなんですっ!」

芽衣子「……そっか、さくらちゃんの頑張り。本当に家族に認められてるんだね」

さくら「えっへへー♪」

さくら「今日の贈り物、本当に本当に嬉しかったです!」

芽衣子「ふふっ、良かったね、さくらちゃん!」

さくら「はぁい!」





芽衣子「でもさくらちゃんがこれを着て活躍するのは、ずっと先だろうね」

さくら「えっ」

芽衣子「ほら、現行の時系列が3月27日に追いつかないと」

さくら「……それより前に着たらダメですか?」

芽衣子「うん、ダメだよ?」

さくら「……ちょーっとくらいフライングして着ちゃってても」

芽衣子「ダメです」

さくら「細かい設定なんて無視したって

芽衣子「ダメ」



さくら「……そ、そんなぁああああああああ!」


おしまい
479 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/03/27(木) 00:24:37.54 ID:aLz/m9nzo

竜面の男

職業 妖術師 魔術師 エージェント 
属性 呪術使い
能力 妖術 魔術

大きな竜のお面を被った男。櫻井財閥の『エージェント』の1人。
『エージェント』の中では発言力の高い方であるらしく、サクライPとも対等であるかのように話す。
妖術と魔術の研究家。呪い(まじない)の探求者。
妖の身でも悪魔の身でも無いに関わらず、両方の術を学び取り入れ行使する。
人の身で両者の技術を高い精度で行使するために、肉体を大きく変形させているようだ。
財閥では悪魔研究部門の責任者でもあり、カースの研究や魔術使いの教育なども担当している。
さくらの魔術の師。彼女との師弟関係は意外と良好であったらしい。



『万年桜』 2

例え散っても萎れても、次の日には満開の花を咲かせ続ける桜の木。
とある呪術師は、木が経過した時間と同じだけ”時間を遡っている”と考えた。
云わば、この桜の木は時間が停止しているようなもの。
時の概念から切り離され、世界から切り離された存在であるらしい。
”不老不死”と言えば聞こえはいいが、それは記憶や思いを募らせることはできず、
周囲の変化にも気づかず、ただ同じ時を繰り返し続けているだけなのだろう。
櫻井財閥は、この木から枝や花を持ち帰る事はできた。
しかし、別たれた枝は”分身”と言う扱いであるようで、本物の枝が時の牢獄から脱する事はやはり無いらしい。
480 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/03/27(木) 00:25:56.80 ID:aLz/m9nzo
『ピンキッシュブライト』

さくらの誕生日にエージェントから贈られ、『桜の杖』に取り付けられた花飾り。桜の花がモチーフ。
ただの飾りではなく、『桜の杖』の力さらにを強化する力が備わっている。
『満開』の属性が強まり、さくらの放つ魔術は従来の倍以上の力を発揮するだろう。


『アデプトドレス』

さくらの誕生日に家族から贈られてきた一品。
さくらのために魔法を込めて織られた衣装で、どうやら彼女も一人前の魔法使いと認められたと言う事らしい。
ピンクを基調としていてでちょーかわいい服。
でも本筋のお話ではしばらく着られる事は無いはず。哀れ。
481 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/03/27(木) 00:27:05.81 ID:aLz/m9nzo

と言う訳で、さくらと桜とサクライのお話でした

3月27日は「桜の日」だそうです
そんな日なので万年桜の設定がちょいと重くなりました、何故か

そしてさくらの師である竜面の男、実はすごい裏設定がある……って事は全然なくて普通にモブいエージェントです。

さくらお誕生日おめでとー(でもパワーアップはしばらくお預け)
482 : ◆zvY2y1UzWw [sage]:2014/03/27(木) 00:35:48.06 ID:AXV0NQnp0
乙です
さくら誕生日おめでとー
家出ってなんだっけ?
そして財閥事情がメタすぎぃ!

時間が巻き戻るように呪われた不老不死の桜かぁ
なんだかちょっとホラーでファンタジー
483 : ◆AZRIyTG9aM [sage]:2014/03/27(木) 01:04:37.26 ID:i3qmdT/x0
乙ー
さくら誕生日おめでとー!そして、メタイ!!

どうしよう…サクライPがどう見てもロリコンにしか思えない…コレが先入観か(違う

時間が止まった桜か…なんかコワイね

あと、俺の知ってる家出となんか違う。家出とは一体……うごごご
484 : ◆Nb6gZWlAdvRp [sage saga]:2014/03/27(木) 10:34:11.55 ID:ecODpGINo
おつ
……家を出てる、家出だな!(錯乱)
485 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/27(木) 23:36:40.26 ID:fWL179Yyo
おつ
家にいない、つまり家出だな?
486 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/04/01(火) 23:57:17.07 ID:tXQcbOXlo
>>481 家出……確かに字面的には間違ってはいねーでごぜーますね……

さてエイプリルフールでしたがすごろく楽しいです

というわけでエイプリルフールの小ネタですが投下します
487 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/04/01(火) 23:58:20.29 ID:tXQcbOXlo
 こんな日が来ることをだれが予想していたであろうか?
 本来ならば春の陽気な日差しとさわやかな春風が吹き抜ける季節、それは『あの日』以前も以降も変わらないはずだったのだ。

 それがどうだろうか?
 俺の眼前に広がる景色は、崩落した建造物とあちらこちらで上がる火災。
 それを映したかのような赤い空。

 この世の終わりを彷彿とさせる情景を俺はただ茫然と見ていることしかできなかった。

 そして遠く向こうの空に見えるの巨大な影は、魔界から降臨した魔王らしい。
 巨大な悪魔の姿をした大魔王ブリュンヒルデは突如としてこの地上を破壊し始めた。

 すでに一晩の間で世界中は破壊しつくされ、かろうじて抵抗勢力が残っているのはこの日本だけらしい。
 その強大な魔王を倒すべく、ラビッツムーンをはじめとしたヒーローたちが奮闘を見せているが力尽きるのは時間の問題であろう。

 未央曰くあの存在は神でさえ、もはやどうにもならない者であるらしく、すでにこの世界は神からも見放されていた。

 そしてプロダクションの中でも戦える者は戦ったがすでにすでに力尽き、皆地に伏せていた。
488 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/04/01(火) 23:58:49.79 ID:tXQcbOXlo

「みなさん、しっかりしてください!」

 倒れ伏せるみんなを泣き出しそうな声で揺り動かすちひろさんが見える。
 俺は自身の無力さを感じながらただ立ち尽くすしかなかった。

 頼る神さえいなくなった世界にはもはや立っている者の方が少ない。
 GDFも完全に崩壊した。
 財閥や秘密結社、海底都市やアンダーワールドなどこれまでいがみ合っていた者たちが協力しても歯が立たなかった。
 そしてもうすぐ、最後の砦であったヒーローも力尽きるであろう。

 もはや希望はこの世界にない。
 俺もきっともうすぐ死ぬのだろう。
 もう、諦めるしかないのだ。
489 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/04/01(火) 23:59:25.89 ID:tXQcbOXlo

『諦めるのか?』

 ああそうだ。所詮俺は誰かを支えることしかできない裏方の人間。
 それ以外には何もできないし、あの魔王を何とかできるような能力もない。

『お前はそれで諦めるような男だったのか?』

 そうだ。俺はその程度の存在だ。
 あとはここで立ち尽くすしかないのだ。

『諦めるな!』

 さ、さっきから心に響くこの声は何だ?
490 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/04/02(水) 00:00:18.38 ID:VKO3ApKQo

『お前にはまだ力がある。お前が信じる力はお前の中に確実にあるのだ!』

 こ、この声は親父か!?

『お前はこれまでずっと助けられてきたのだろう?

だが今お前の助けを待っている人々がたくさんいるのだ!

解き放つのだ息子よ。己の中のプロデュース力を!』

 俺の中から力が湧いてくる。
 わかったよ親父。俺の力はこれだったんだな。

「いくぞ!みんなを助けに!」
491 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/04/02(水) 00:00:58.58 ID:VKO3ApKQo

「ピ、ピィさん?その力はいったい?」

「くっ、このマスク・ド・メガネの能力の一つ、メガネスカウターで測っているプロデュース力が上昇を続けている!?

10万……50万……1000万……測定不能ですって?

あの男の人……どこまで行くんですか……?」

「世界中の課金兵たちよ!俺に力を!

行くぞブリュンヒルデ!今からお前をプロデュースしてやる!

うおおおおおーーーーーーーーー!!!!!!!」







 
492 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/04/02(水) 00:01:38.24 ID:VKO3ApKQo








チュンチュン……チチチ

「ーーおおぉぉ……。朝か」

 俺は寝起きでぼやける目で時計を見る。
 時間は6時半ほど。

 そう言えば数週間前に一回実家に帰ったが相変わらず親父はテレビの前で横になりながら屁をこいていたのを思い出す。
 カレンダーを見れば昨日のうちに捲っておいて月が新しくなっていた。

「今日は4月1日……

なんだ

うそか

おっおっお……」

 そして俺は出勤時間ぎりぎりまで二度寝をするため布団に入った。

 
493 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/04/02(水) 00:03:54.60 ID:VKO3ApKQo
以上です。

エイプリルフールじゃなくてただの夢オチだとはゲフンゲフン……

ピィ、ちひろさん、マスクドメガネ
名前だけ菜々さんとブリュンヒルデお借りしました
494 : ◆zvY2y1UzWw [sage]:2014/04/02(水) 00:19:43.16 ID:oSTl+RV40
乙です
495 : ◆zvY2y1UzWw [sage]:2014/04/02(水) 00:20:31.11 ID:oSTl+RV40
あっミスった
乙です
夢落ちエイプリル
ピィさんのプロデュース力とは一体…
496 : ◆AZRIyTG9aM [sage]:2014/04/02(水) 00:58:22.89 ID:BOTj07bI0
乙ー

なんという夢……
497 : ◆cKpnvJgP32 [sage]:2014/04/02(水) 17:50:01.67 ID:kkawOvavo
皆さんおつー

>>454
文化祭の、人でごった返している感が出てていいね

千枝ちゃんのご近所……、あっ(察し) あっ(期待)

そして白いのも黒いのもなにやら物騒ですな

>>481
さくらちゃん誕生日おめ! (6日遅れ)
しかし本当に純粋な子だなぁ、チョロすぎて心配と言うめいこぅに同意見

サクライは金髪なのかーと思ったが、よく考えたらちゃまが金髪なんだから当然だよね
と今更ながら気づく

時系列に関しては、まぁ……
細かい事は気にしないでいいんじゃないかなーって(大雑把)

>>493
ハッピーエイプリルフール!
良かったじゃないか、いい夢見れたなピィ!

え、なに?
今後マジで新たな能力に目覚めて八面六臂の大活躍をする可能性?


        ,'        \   _..-‐i          /  そ 
.         ,' ..::::        i>イ-ュ .ノ            |  ん 
       ,'....:::.:::________ i、 T_ノ i             |  な 
      ,'-''"´r==-、__  `丶、  ,'     ,-――-、_.|  も 
       rヘ:::::/ ィ=rュ ゝソ r:::..ヾ<    /        l|  の  
      i ヘ ゙゙"、    ..::  /:rュ、ミ/   /   な     \
      i、ヽ,        、'‐ノ`  ト   /    い      .|フ r―
     ヾr-i     __..__ 、  ,'ノ   .|      よ      | ̄
     r-/ i    ゙、⌒゙^;  /    ヽ    :      |
     i:ヘ_  \      ̄  ./    <     .:     /
   /i.:::: `ー 、\ _.:::...._ /        \       /
__,-"/ /:::::...    `ヽ`ー‐"ノヽ        `ー――'
//、 | .|ミ      i  / ̄ /
i i ヘi! .| \::...    / /   /-、 ____
ヽi ヾ 丶 `   /  i_  /゙iヘ `ー-   `ヽ
498 : ◆cKpnvJgP32 [sage]:2014/04/02(水) 19:37:54.89 ID:kkawOvavo
ここで、唐突に思い浮かんだ小ネタを投下
499 : ◆cKpnvJgP32 [sage]:2014/04/02(水) 19:38:38.57 ID:kkawOvavo
ピィ「何故お金を取るのですか!?」

ちひろ「何ですか急に!」

――自身でも唐突だとは思うが、以前からの疑問を尋ねてみたくなった。

――ちひろさんが作るドリンクが有料な事についてだ。


ちひろ「はぁ……」

――ため息を付きながら、ちひろさんは空になったペットボトルを手にとると、

――ぐっ、と力を込めるような挙動を見せる。

――……と、みるみるうちにペットボトルの内側から液体が湧き出てきて、

――数秒も経たぬ間に容器を埋め尽くした。


――これこそが彼女の能力。

――『”瞬時に疲れを取り、元気を回復する液体”を作る』力。


――――今回の論点は、何故それが有料なのか、だ。

ちひろ「これは社長のアドバイスです」

――対して、ちひろさんは柄にも無く真面目に答えた。
500 : ◆cKpnvJgP32 [sage]:2014/04/02(水) 19:39:14.37 ID:kkawOvavo
ちひろ「どちらかと言えば、私もこの力を持て余していた口です」

ちひろ「それを社長に拾ってもらったんです」

――また社長か。

――思えば社長も不思議な人だ。


――なんといってもあの周子と既知の仲で。

――未央や紗理奈さんなどの実力者、

――……という実感はあまりわかないのだが、

――とはいえ、そんな二人にも一目置かれる存在だ。

――周子は『カリスマ』がどうとか言ってたか。

――とにかく、要はちょっと特別な人なのだそうだ。


――そんな社長が目をつけたのが、どうやらちひろさんらしい。

ちひろ「ピィさんもですけどね」

――……まぁ、その辺は話半分に聞いておこう。
501 : ◆cKpnvJgP32 [sage]:2014/04/02(水) 19:39:49.86 ID:kkawOvavo
ちひろ「……別に私は無料で提供してもいいんですよ」

ピィ「えっ!?」

ちひろ「なんですか!」

――き、驚天動地の事実だ……。


ちひろ「えぇっと……」

――ちひろさんが、手に持つペットボトルに詰まった液体を指して言う。

ちひろ「これは『とても素晴らしい』」

ちひろ「いえ、『とても凄まじい』飲料です」

ちひろ「飲めば、疲労回復、滋養強壮、精力増強」

ちひろ「あらゆる、病苦艱難を和らげる飲み物です」

――その効力は、俺もよく知るところである。


ちひろ「社長はこれを飲んで言ってくれました」

ちひろ「『素敵な力だ』と……」

――そう、あれはびっくりするほど疲れが取れるのだ。

ちひろ「ただし、『同時にこの力はいくらかの不利益を生む』とも言いました」
502 : ◆cKpnvJgP32 [sage]:2014/04/02(水) 19:40:46.02 ID:kkawOvavo
ちひろ「世の中に『栄養ドリンク』というものは数多く存在しますよね?」

ピィ「……えぇ」

――正直なところ、一つとしてその効能を感じたことは無いのだが……。


ちひろ「私のこの力は、その全てを凌駕します」

ちひろ「というか、ぶっちゃけその上を行ってます」

ちひろ「もし私が無償でこのドリンクを提供し出したら」

ちひろ「既存の栄養ドリンクがかなり割を食うことになります」

ピィ「確かに……」

――何となくではあるが、だんだん俺にも社長の意図が読めてきた。


ちひろ「この力、私にリスクは無いんですよ」

ちひろ「精製する際、別に疲れたりもしないし」

ちひろ「……まあ、知らないだけで実は寿命を縮めているとかじゃなければ」

――……何気に恐ろしいことを言う。

ちひろ「少し時間はかかるので量産は無理でも」

ちひろ「一日これに専念すれば、100本か200本は作れるんじゃないでしょうか?」

――それでも1本の効力を考えればとんでもない量だ。
503 : ◆cKpnvJgP32 [sage]:2014/04/02(水) 19:41:24.10 ID:kkawOvavo
ピィ「よく考えたらむしろ、法外な値段で売りつけてもいいレベルじゃ……」

ちひろ「それをしない私に感謝してくださいね」

――にっこりと可愛らしく微笑むその表情に、

――何故だろう、若干の恐怖を覚えるのは。


ちひろ「なにより『これにはお金を出すだけの価値がある』と社長が言ってくれたんです」

――もう一度、ちひろさんが今度は優しく微笑んで。

ちひろ「なので、気持ちばかりの100円を頂くことにしています」

――今思えば良心的なドリンクの価格。

――その値段の根拠を教えてくれた。

――なるほど。

――そうか、ただの銭ゲバじゃなかったのか。

――ちょっと反省だな。
504 : ◆cKpnvJgP32 [sage]:2014/04/02(水) 19:41:56.80 ID:kkawOvavo
ちひろ「だというのに巷では鬼だの悪魔だのちひろだの……」

ピィ「落ち着いてくださいちひろさん、ちひろまでは言ってません」

ちひろ「鬼や悪魔は言うんですか!!」

ちひろ「というか『ちひろまでは言ってません』ってなんですか!!」

ピィ「今度からは言わないようにしますから」

ちひろ「フォローの場所が違いませんか!?」

ピィ「天使!! 女神!! 藍子!!」

ちひろ「私は!?」

藍子(楽しそうだなぁ……)
505 : ◆cKpnvJgP32 [sage]:2014/04/02(水) 19:42:54.91 ID:kkawOvavo
・千川ちひろ

彼女の能力は『”瞬時に疲れを取り、元気を回復する液体”を作る』力。

液体は彼女の触れる『密閉された容器』の内側にしか精製することができない。

この際、容器の大小による精製時間の変化は無く、

500mlだろうと2Lだろうと等しく7秒程で満タンになる。

ただし、50ml以上の容器でなければ液体が湧いてこないという制限がある。

そしてその容量の多寡に関わらず、中身を全て飲み干すことで初めて効力を発揮する。
506 : ◆cKpnvJgP32 [sage]:2014/04/02(水) 19:43:48.18 ID:kkawOvavo
以上です。
やっつけ仕事な部分が多いので、グダグダ感が否めない。
『おまえは何を言ってるんだ』という理屈をゴリ押していくスタイル。

チッヒ何でお金取るのん?
という疑問にお答えするお話。
何かと腹黒扱いされるけど、いい人なんだよ!

・ちひろさんも社長に拾われたクチ
・ちひろさんがお金を取るのは社長のアドバイス
・ちひろさんの能力の詳細
……の3点の設定を思い付いたのでパパっと書き上げました。
507 : ◆AZRIyTG9aM [sage]:2014/04/02(水) 20:22:50.42 ID:cTMyLFJYO
乙ー

なんだ。やっぱりチヒロさんは天使だったか(ガチャガチャ

……あれ?けど、別のところでお金請求してたようn(ターン!
508 : ◆cKpnvJgP32 [sage]:2014/04/02(水) 21:23:36.63 ID:kkawOvavo
>>507
          { : : /: : : : : : : : : : : : : : :}  V: : : : : : : : :\ : :}
         /: :./: : : : :| : : : i}: : : : : : }   ∨:. : : : : : : : :.\}
.        〈: :}: : : : : :.j|:. : :.,j|: : : : ---- ミ∨: : : : : : :乂: : \
          ∨:. : :. : :斗: : 7 |: : : } :/     }:. : : : : : : : : :.丁
        /:.:{: : : :′| : / |: : /}/ _   :| : : : : : __: : {: :'
         {: :.{: : :.i| ノイ_ノ/   x≠ミ ノイ: ://´ィァY:∨
          乂:{: : :.i| x≠ミ         ノイ/ 〉-'/\',
            〉, : :小       ,              イ/
        /: :':.:.:.|圦                    {‐く、
          \:.': :| : :::.     r  ァ       {      <それはそれ、これはこれ
            }:.Ν: : :个            イ  {ァ、
.           八: : :ヽ ソ:〈   >    <   。si〔/∧
.            \ ⌒ヽノ   /{   。si〔    /∧
509 : ◆zvY2y1UzWw [sage]:2014/04/02(水) 22:23:04.88 ID:oSTl+RV40
乙です
ちひろさんは悪魔なんかじゃなかったんや!

…AAでシェアワ再現ワンチャンあるんじゃね?
510 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/04/03(木) 00:32:33.66 ID:mVMvEmUBo
>>506 おつです
つまりドリンクはちひろさんのたいえ(ry
ジョボボボボ

さてエイプリルフールネタ前に一つ書き上がってたのでそれを投下します。
ただし今回オリキャラがかなり前面に出てきてしまいますがご了承ください。
511 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/04/03(木) 00:33:42.96 ID:mVMvEmUBo
あと時系列は正月からしばらく後のことです
512 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/04/03(木) 00:34:09.81 ID:mVMvEmUBo
 よくわからない複雑な機械が敷き詰められた薄暗い室内で、白衣を着た研究員がせわしくなく動きまわっている。
 そんな部屋の中を一望できるような少し高くなっているところから、イルミナPは研究員らを椅子に座りながら見下ろしていた。

「よくもまぁせっせと働くものですよ。まぁここにいる私も人のことは言えませんが……」

 脳裏に過るのはいまだに炬燵でぬくぬくしているであろう唯と智絵里。
 そして傷は癒えても、いまだに疼く肋骨の痛み。

 あの後、検査したところ肋骨が数本ヒビが入っていることが判明した。
 なんだかんだで魔法などを駆使して完治させたものの、もはやイルミナPはあの場にいることは耐えられなかった。
 あれから暫く経過したがすでに完治しているはずの肋骨は思い返すだけで軋むように感じてしまう。

「まぁ……ヒビだけで済んだので良しとしますか……」

 イルミナPは少し青い顔をしながらそうつぶやく。
 今回語られることはないが、その表情から数々の事故があったことを物語っていた。
513 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/04/03(木) 00:34:46.07 ID:mVMvEmUBo

「イルミナP様、会議の準備ができました」

 そんなイルミナPの元に一人の研究員が話しかけてくる。

「ああ、すまないな。研究員のはずなのにこんな雑用まがいなことを頼んでしまって」

「はぁ……。でも研究もほとんど終わって、装置の安定調整や点検だけなんで今のところは暇なんですけどね」

「たしかに……そうなんだがな」

「というか去年って何かしましたっけ?」

 思い返せばイルミナティもずいぶんと息の長い組織である。
 そして近年の活動はいっそう活発になってきたのだが、それはあくまで内部での話であった。

 研究などはずいぶんと捗ってはいるが、外部に向けての活動はからっきしの状況であるといっても過言ではなかったのだ。

「ああ……いまだに『妖精の秘宝』は捕獲できていないし、『接点』の確保だってできていない。

唯はやる気はあるのに目的から脱線しがちだし、智絵里はそもそも放浪していて働かない……。

挙句の果てにはイルミナティは世界一の秘密結社と言ってもいいが、その威光に群がる金の亡者どもが多いせいで、一枚岩じゃない……。

去年こそチャンスはあったはずなのに……結局何一つ進展してないじゃないか」
514 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/04/03(木) 00:35:32.94 ID:mVMvEmUBo

 反省してみれば見えてくる組織としての粗。
 『境界崩し』実行への道のりはまだまだ遠いことが露見してしまう。

「まぁイルミナティの目的の全容を知っている者自体が少ないのも問題なんですけどね。

知ってるのは、あんた方化物トリオと我々イルミナP直属研究員、あとはその他ごく一部ってくらいでしょうし」

「なんかお前私の部下のくせに対応雑になってない?」

「気のせいですよー」

「……まぁいいさ。それも含めて、今年は活動的な計画もちょうど立ててあったしな」

 そんな自信ありげなイルミナPを見て、その研究員は目を見開いて驚いた顔をする。

「童貞は積極性が欠けるって聞きますけど、いったいどうしたんですかイルミナP様?

まさか……ついに卒業したんですか?」

「……お前ケンカ売ってんのか?」

「滅相もないですよー」

「……ともかく、今からイルミナティ議会を始める」
515 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/04/03(木) 00:36:03.99 ID:mVMvEmUBo

 イルミナPはそう言って席を立ちあがり、近くにある『通信会議室』と書かれた扉の方へ向かっていく。

「ああ……やっぱり卒業してないんですね」

 そんな研究員の声を無視して、イルミナPは扉へ近づく。
 それは自動扉になっていたため、反応して横にスライドして室内への道を開けた。
 中は明りが存在せず、真っ暗である。
 にもかかわらずイルミナPは迷いなく、その中へと入っていった。

 そして天井に備え付けられた照明が光を放つことによって、その室内の全容がはっきりする。
 壁面にはモニターとスピーカーが大量に埋め込まれており、大量のテレビによって壁が構成されているような室内。
 モニターの中には、影になっていてはっきりとは見えないが人影が一画面につき一人づつ映っている。

 画面越しではあるが、その大量の人影からの視線が部屋中央に立つイルミナPに集中しているようであった。

「さて、今回の会議を始めましょうか」
516 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/04/03(木) 00:36:55.99 ID:mVMvEmUBo


***



 東京湾が埋立てられ経済特区ネオトーキョーができた後も、元々の都心は衰退したわけではない。
 かつてに比べれば人通りも少なくなったのかもしれないが、それでもずっと若者を引き付けてきたこの街の活気は単純な見た目では衰えてはいなかった。

 ネオトーキョーは金の臭いや、最新技術による人類の最先端という威光は存在している。
 だがその無機質な街は、ただの遊びを求める若者にとっては心地のいい場所ではなかったのかもしれない。

 故に身近な娯楽などはこれまで通りの東京に集まり、若者たちはそれに引き付けられるように集い、人の波を作るのだ。

「I didn't mean to hurt you〜♪」

 そんなこの通りの脇には整列させたように所狭しと若者を引き付けるような店が立ち並ぶ。
 道は人は流動的に流動的に流れ、その中で立ち止まって派手な格好の店員や、陽気な外国人が自分の店へと客を呼び込もうとしていた。

「I sorry that I made you cry〜♪I didn't want to hurt you〜♪」

 通りの半ばには円形にくりぬかれたように開けた広場となっており中央には小奇麗な噴水が決して広くはないこの広場を占拠していた。
 そして通りの上流と下流の流れが交差するように広場で人のうねりを作っていた。

 そんな噴水の縁に座る一人の少女。
 まるで絵本の中にでてくるようなふりふりのゴシックドレスを身に包んだ少女は機嫌のよさそうに歌を口ずさむ。
 その少女の存在は異質であったものの、奇抜な者も珍しくはないこの通りでは、通行人にとってはちらりと目を引く程度で特別気にするものでもなかった。
517 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/04/03(木) 00:37:43.74 ID:mVMvEmUBo

「I'm just a jealous guy〜♪」

 ちょうど太陽は彼女の真上に位置しており、その長い髪の毛が陰になって少女の表情は読み取ることができない。
 そんな少女が傍らの小さなポリ袋を物色して何かを取り出す。

 平たい紙袋から取り出したのは、この通りで流行っている大きめのクッキーだった。
 少女はそれを両手で持って、眼前でしばらく眺める。
 そしてその小さな口で、ぱくりと一口。
 しばらく口を上下に動かした後、チロリと舌を出して口の周りに付いたクッキーのかすを舐めとった。

「甘くておいしい。嫉妬しちゃうくらい甘いわぁー」

 少女の呟きは周囲の賑わいによって誰にも聞かれることはなかった。
 当然先ほどまでの口ずさむ歌声も、よっぽど近づかなければ聞こえないほどである。

「ここでゆっくり観光もいいけど、そろそろ探さないとねぇー」

 手元のクッキーを少し急いで口へと運ぶ。
 そしてリスのように口に溜め込んだ後に、こくんと喉を通って行った。
518 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/04/03(木) 00:38:27.54 ID:mVMvEmUBo

 少女が手に持っていたクッキーの入った紙袋をクシャリと雑に丸めて、入っていた袋に入れる。
 するとその少女を囲むように影が取り巻いて視界を暗くする。

 少女がその影の方を向けば、いつの間にか軽薄そうな男3人に囲まれていた。

「ねぇカノジョ。今一人?」

「よければ今から俺たちと遊びに行かない?」

「ところでそのカッコ何?コスプレ?」

 そんなテンプレセリフを吐いてくるナンパ男3人組を少女は噴水の縁に座ったまま見上げる。
 下心丸出しの下品な笑みを浮かべる男たちだったが、見上げた少女の瞳を見て少し後悔しそうになる。

「ん?どうしたのぉ?」

 ぱっちりと開かれた丸い瞳はまるで西洋人形のような愛らしさを感じさせるものである。
 しかしその眼光は泥を溶かした水のように濁っていて底を伺い知ることができない。

「お誘いは嬉しいけどぉー、私は少し用事があるのぉ」

 吸い込まれてしまいそうな瞳を見て一瞬たじろぐ3人だったが、なかなか愛らしい見た目をした少女である。
 ここで引くのは少々もったいない気がした。
519 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/04/03(木) 00:39:07.06 ID:mVMvEmUBo

「こ、こいつ少しやべえかもしれないけどこのまま行くか?」

「いや、メンヘラ女だったとしても適当にヤリ棄てちまえばいいだろ」

 少女の濁った瞳の前で、3人は小声で作戦会議をする。
 その様子は少女に丸見えだったが、内容までは聞かれていないだろう。
 そして結論としてそのままナンパを続行することにしたのだ。

 彼らにとって『少々頭のおかしい』女性と関わったことがないわけではないので今まで通りの対処法で問題ないと判断したのだ。
 それにこういった女は押しに弱いことが多い事も彼らは知っていた。

「そんな用事放っといてさ、俺たちと遊んだ方が楽しいよ」

「そうそう、楽しいところ連れて行ってあげるよ」

「で、でもぉー」

 一応困ったような返事をする少女だったがその表情はまんざらでもなさそうである。
 そしてにこりを口角を上げる。

 濁った瞳と相まってその狂気じみた笑みにナンパ男3人はすこし不穏な予感はしたが、この様子ならばあと一押しでこの少女は誘いに乗るだろうと判断。
 男たちはそのまま気にせず押していくことにする。
520 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/04/03(木) 00:40:01.43 ID:mVMvEmUBo

「さぁ、一緒に行こうぜ」

 一人が強引に少女の腕を掴んで引っ張ろうとする。
 だが少女はその引っ張った男の目を覗き込むように、笑みを伴ってじろりと見上げるのだ。

「あぁ、そんな強引さもいいですわぁ。本当に、嫉妬しちゃうぐらいにいいわぁ」

「ヒ、ヒッ……」

 そんな狂気を間近で向けられた男は思わずその握った腕を話してしまう。
 少女はその掴まれていた部分を名残惜しそうにもう片方の腕で撫でた。

「お、おい。いったいどうしたんだ?」


「おおーっと。待たせたっすね」

 狼狽する男たちであったが、そんな中に混ざるように一つの声がかけられる。

「いやー悪かったっすね遅れちゃって。時間もないしさっさと行くっすよ」

 突如現れた短髪の女は男たちを無視して、中心の少女の腕を引く。
 突然の乱入者にナンパ男は一瞬呆然と立ち尽くしていたが、少女が手を引かれて連れて行こうとするのを見てようやく我に返った。

「お、おいちょっと待てよ。その女は俺たちが目を付けてたんだ!勝手に連れてくんじゃねぇ!」
521 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/04/03(木) 00:40:33.76 ID:mVMvEmUBo

 男の一人が逃がさまいとドレスの少女の腕を掴もうとする。

「悪いっすけどアタシら急いでるんで、サヨナラ!」

「待てコラ!ってああ?」

 男が腕を掴もうと踏み出した脚は、なぜかコンクリの地面に沈んでいく。
 それどころか3人とも、急に浮遊感に襲われて背中に衝撃が走った。
 そして3人仲良く落とし穴の底で青空を見上げていたのだ。

「な、なんじゃこりゃ!?あのアマ何しやがった?」

 急いでナンパ男はその穴から這い出るが、そこにはすでに二人の姿はない。
 周りを見渡せばこの様子を携帯電話で写真を撮る人々と、自身の落ちた落書きのような落とし穴だけだった。




 
522 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/04/03(木) 00:41:06.05 ID:mVMvEmUBo




 少女の手を引いて駆け足であの場を離れた女は、この通りを出た辺りで立ち止まる。

「これくらい離れれば、もう追ってこないっすね」

 少し息を整えながら短髪の女は腕を引いて連れてきた少女の方を振り向く。
 なされるがままに連れてこられた少女は、状況が理解できていないのか少し落ち着きなさそうに周りをキョロキョロしていた。

「なんだか絡まれていたようだったんで、ついあのチンピラ連中撒いちゃったっすけどもしかして迷惑だったすか?」

 こちらの方を見ていない少女の顔を見ながら短髪の女は確認を取る。
 かけられた声によってようやく状況を理解したのか、少女は女の方を見てにこりと笑う。

「いえ、助かりましたよぉ。私も用事があったのでぇ、ちょっと困ってたんですぅー」

 気の抜けるような間延びした声で礼を言う少女。
523 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/04/03(木) 00:41:52.64 ID:mVMvEmUBo

「そうっすか。ならよかったっす」

 少女にとって女の行動は迷惑でなかったことを知り、安心したように女も笑う。

「さっき引っ張ってもらった時ぃ、あなたとってもかっこよかったですよぉ」

「それは照れるっすね」

 女は照れ臭そうに頭を掻く。

「えぇ、嫉妬しちゃうくらい、かっこよかったですよぉ」

「なんだか不思議な喋り方するっすね。なんだかアーティスティックっす」

「えへへ、そうですかぁ?」

「ええ、そうっすよぉ」

 女の方もわざと少女の喋り方を真似する。
 少女はそれに少し照れくさそうに笑った。
524 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/04/03(木) 00:42:28.99 ID:mVMvEmUBo

「ま、真似しないでくださいよぉー。あ、せっかくですからぁ、何かお礼をしなければならないですねぇ」

 思い出したように手をたたいた少女は、肩に掛けてあった小さなポシェットを小さな手で開いて覗き込む。

「いや、礼には及ばないっすよ。困ったときは助け合うものっすからね」

 しかし女は少女の申し出を丁重に断った。

「でもぉ……」

「んー……ならまた今度、アタシの絵を見に来てもらってもいいっすか?」

「絵……ですかぁ?」

 少女は不思議そうな顔をする。

「そうっす。キミもこれから用事があるみたいだし、アタシも用事があるから今からは無理だけど機会があればアタシの絵を見に来てほしいっす。

アタシはこの辺でストリートアート描いてるっすから、少し探せばきっとすぐ見つかると思うっすよ」

 女のその言葉に興味を持ったのか、三割増しの笑顔で少女は笑う。
525 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/04/03(木) 00:42:56.83 ID:mVMvEmUBo

「ストリートアート……。嫉妬しちゃうほど、興味がありますぅー」

「なんか不思議な言い回しっすね。よし、約束っすよ」

「うん、約束ねぇー」

 女が約束のしるしに手を差し出すと、少女はそれを両手でぎゅっと握りしめた。

「そう言えば、自己紹介がまだだったっすね。アタシは吉岡沙紀っていうモノっす。

よろしくっすね」

「えーっと、私はね」
526 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/04/03(木) 00:43:40.77 ID:mVMvEmUBo

***

「イルミナティの諸君。ごきげんようです。

大勢で顔を合わせるのは、数年前の会議を最後でしたっけ?

あの時は画面越しではなく実際に会うことができましたけど、あれ以降はそう言うわけにもいかなくなってしまいましたしね。

今回はこんな形の手狭な会議で申し訳ない」

『前置きはいい。統括司令殿よ。

だいたいあの『サクライ』に一杯喰わされた件は、貴様のミスではないか』

「それについては、釈明の余地もありません。

ですがあの失敗は、停滞していた我々にとっては決して悪くない失敗。

『サクライ』は確かに忌々しいですが、そういった意味では感謝をしていますよ」

『ふん、調子のいいことを……。

そう言うからには、あの失敗を取り戻す算段があるということなのだろう?』
527 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/04/03(木) 00:44:27.16 ID:mVMvEmUBo

「当然です」

『そう言ってはいるが、ずっとこれまで何の動きもなかったではないか!

その間にも『サクライ』だけでなく他の様々な組織も精力的に活動しているというのに、イルミナティは息をひそめたままだ!

言っておくが私はこの組織と共倒れする気はさらさらないぞ!』

『おい、少し黙っていろ若造が!』

「いえ、お気になさらず。

確かに我々イルミナティは『あの日』以降も息をひそめたまま、一般的には『過去の組織』のように振る舞ってきました。

まぁ『サクライ』あたりはそうは思っていないかもしれませんが、あくまでこれまでのは準備期間です。

計画を実行、とまでいきませんけどそろそろ我々も動き出すことにします」

『それは、本当か?』

「あなた方に嘘をついても私に得などありません。

私はあなた方を利用し、あなた方もイルミナティを利用しているんです。

そんな信頼を、裏切ったりはしませんよ」
528 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/04/03(木) 00:45:06.46 ID:mVMvEmUBo

『よくも言う。そうだ、確かに私はこの組織を利用している。

いや、利用せざるを得ないのだ。今のこの世界でこれまで通りやっていくのにはな』

「よくわかっていますね。

実際『できる』者ならば、こんな組織に頼らずとも自らの力で動くことができるのですから。

『サクライ』のように独力のみであそこまで財閥を大きくした者もいます。

それと同じように考え『あの日』以降にイルミナティの力の衰えを感じて、組織を去っていくものもいました。

だがあなた方は決して組織に残ったことが失敗ではない。

あなた方が『神』に至る日も、もう十分目の届く範囲内です」

『ふん……期待はしていい、ということだな?』

「ええ、もちろん」

『当然だ。金は出してやってるのだからな。

だが動き出すとは言ったが、具体的には何をするというのだ?』

「まずは『混沌』を起爆させます。

手始めはせいぜい小競り合いですが、種火は大きくしていくものですから」
529 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/04/03(木) 00:45:52.86 ID:mVMvEmUBo

***

「私の名前はぁ、インヴィディアって言うのぉ」

「なるほど、インヴィディアちゃんっすね。変わってるけど、なかなかかっこいい名前じゃないっすか」

「そう?照れるぅー」

 沙紀は少女、インヴィディアの笑顔を見ていて時間がかなり過ぎ去っていることにようやく気付いた。
 腕に巻かれた時計を見れば、かなりの時間が経過している。

「おおっと、アタシも用事があったのでした。ではまた会おうっすヴィディアちゃん!」

「あ、そうだぁー。最後に一ついぃー?」

「ん?なんっすか?」

 インヴィディアに背を向けて立ち去ろうとする沙紀は再び振り向く。
530 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/04/03(木) 00:46:33.10 ID:mVMvEmUBo


「エンヴィーって人に会いたいんだけどぉ、知ってますぅ?」


 沙紀にはあいにくその言葉には心当たりがなかった。
 そんな変わった名前の人がいれば忘れることはないので、確実に記憶にないだろう。

「すまないけど、知らないっすね。アタシの友人にも聞いてみるっすからもしもまた会った時にも見つかってなければ、情報があればその時教えるっすよ」

「そうなのぉ。ありがとう。それじゃあねぇー」

 小さな手を頭の上に上げて手を振るインヴィディア。
 沙紀はそれに答えるように手を振りながら駆け足で走り出した。

「それじゃあっすよ。それとイブキすまんっす。ちょっと遅れるっすよー!」
531 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/04/03(木) 00:47:06.91 ID:mVMvEmUBo

***

「イルミナP様会議お疲れ様ですー」

 会議室から出てきたイルミナPを出迎えたのは生意気な研究員であった。

「まったく、使える人間も多いが、金しか持っていない無能も多いからその相手をするのは疲れるよ」

「それにしても連中、いまだに自分たちが神になれるって信じてるんですかね?」

 研究員は外のコーヒーショップで買ってきたコーヒーをイルミナPの机に置く。
 イルミナPはその机の前に座って、コーヒーを手に取って働く研究員を見下ろした。

「そりゃそうだ。そんな見返りでもなければこの組織にいる意味なんてほとんどないでしょう。

まったく嘘をつくのは心苦しいなー」

「心にもないことを……。

だいたいさっきの会議中にも『嘘をついても得はない』キリッって言ってたのによくもまぁ」

「知るかよそんなこと。

まぁ私たちも利用する側なのだからアドバンテージは握っておかねばならないですしね」
532 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/04/03(木) 00:48:11.20 ID:mVMvEmUBo

「そうっすねー。

スポンサー様の金がなくちゃ給料も入ってこないですし」

 研究員はちゃっかり買ってあった自分の分のコーヒーを口に持っていく。
 イルミナPはそれを横目に見て何か言いたそうにしたが、そのまま心にとどめておくことにした。

「ところで会議で『種火』って言ってましたけど、いったい何したんです?」

「ああ、そろそろカオススポットの土壌作りでもしようと思いましてね。

先兵として『火蜥蜴(サラマンドラ)』を送り込みました。それとギルティ・トーチを一体」

 それを聞いた研究員は少し不安な顔をする。

「大丈夫っすか?手始めなのにその人選」

「種火としてはぴったりだろう?

それにあいつはカースドヒューマンだからずっと組織に繋ぎ止めておくのは厳しい。

ならばさっさと使ってしまった方がいいでしょう。帰ってこなくても問題ない駒、ですから」

「なんかそれ聞くとあの小娘が少し気の毒ですよ」

「まぁ今あの娘がご執心の『エンヴィー』をエサに使えばもう少し使えるかもしれませんけどね。

同じカースドヒューマン同士、何か感じる者でもあったんですかね?」

 イルミナPはそんな疑問を口にするが、研究員の方も首をかしげるだけである。

「さぁ?あのガキが何考えてるのかは僕にはわからないですけどね。

まぁともかく派手に暴れてもらえるならそれでいいんじゃないんっすか」
533 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/04/03(木) 00:48:50.43 ID:mVMvEmUBo

***

 あの通りからはさほど遠くない駅前の広場。
 そこの花壇の傍らの小さくインヴィディアは座っていた。

 口にはロリポップを銜えて上を見れば、大きめの駅と周囲にそびえる高いビル。そしてその間を縫うように見える青空だけだ。

「ちょっと探してみたけどぉ、結局見つからないわぁ。エンヴィー……」

 口に銜えていたロリポップを取り出し、残念そうにため息をつくインヴィディア。
 すっかり意気消沈してしまったのか先ほどまでの笑顔はすでに無かった。

『どうしたというのだ、小娘よ。ずいぶんと情けない顔をしているが?』

 そんなインヴィディアに話しかける低い声。
 地の底から響くような声はどこから発せられているのかわからない。

「トーチの分際で余計なこと言わないのぉー。どうせあなたには私の気持ちなんてわからないんだからぁー」

 発信源の不明な声に対してもインヴィディアは気にせずに答える。
 そして手に持ったマーブル色のロリポップを軽く振る。
534 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/04/03(木) 00:49:29.31 ID:mVMvEmUBo

『ふん、貴様のような小娘の考えなど高尚な吾輩にはわからんのは当然だ』

「身の自由がきかないのに高尚だなんてずいぶんな言いぐさだわぁー」

 低い声はそんなインヴィディアの言葉に忌々しそうに返す。

『吾輩もこんな首輪なんぞなければ好きにしておるわ。

ともかく、貴様はその『エンヴィー』とかいう者をまだ探すのか?』

「いんやぁー。愛しの『エンヴィー』探しはとりあえず仕事を終わらせてからにするぅー」

 低い声の疑問に対して、うって変わって楽しそうに応えるインヴィディア。
 手に持っていたロリポップを銜えなおし、座っていた花壇の縁から立ち上がる。

『だろうな。吾輩の封を開いたのだ。

どうせここいらで仕掛けるのだろう?』

「うん。○○駅で好きに暴れまわれっていうのがぁ、今回のお仕事だからねぇー」

『見たところここは××駅のようだが?』

「細かぁいことは気にしなぁーい」
535 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/04/03(木) 00:50:11.84 ID:mVMvEmUBo

 インヴィディアは広場の中心まで歩いていく。
 そして中心で立ち止まったインヴィディアはその濁った瞳でやはり楽しそうに周りを見渡すのだ。

 そんな様子を行き交う人々は気にも留めずに、各々の目的のために歩を進めている。
 インヴィディアの少し不可解な様子に誰も気に留めようともしていなかった。

『吾輩も、下賤な人間どもに吾輩の圧倒的な力を見せつけるのは嫌いではないからな。

あやつらの言いなりというのは少々癪に障るが、ここは吾輩も好きにやらせてもらおう』

「なんだかんだ言ってもぉー、あなたも乗り気だねぇ」

 インヴィディアは上品にゴシックドレスのスカートを少し持ち上げる。
 その芝居がかった動きと共にスカートの中から黒い影がいくつも落ちてきた。

「わたしはこの街大好きだわぁ。

便利で、物にあふれていて、それでいてとても綺麗。住んでる人も生き生きとしていてぇ、とても楽しそうだわぁ。

ほんと、嫉妬しちゃうくらい、大好きだわぁ」
536 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/04/03(木) 00:50:45.82 ID:mVMvEmUBo

 恍惚の表情でインヴィディアは誰に言い聞かせるわけでもなく喋る。
 スカートの中から出てきたのは、黒い蜥蜴であった。黒い泥で出来た蜥蜴。

 その蜥蜴たちはヒタヒタとインヴィディアの周りから散っていく。
 そしてその駅周辺のいたるところに張り付いた蜥蜴たちはまるで何かを待つようにその位置でじっと待つ。

「そんな私の嫉妬の炎がぁ、私の心と体を燃やすのよぉ。

とっても苦しいけどぉ、とっても気持ちいいのよぉ。

そうなるとね、私の大好きなものもぉ、その炎でその炎で燃やしたくなっちゃうのぉ」

 ニヤリと凶悪な笑顔を浮かべたインヴィディアはその大きな瞳をさらに大きく開く。
 すると彼女の体から紫の炎が噴き出した。

「Fireぁー」
537 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/04/03(木) 00:51:19.82 ID:mVMvEmUBo

 そんな間の抜けるような声を合図に、散った蜥蜴が閃光を放つ。

 ボンッ!

 巨大な爆発音とともに散った蜥蜴たちは周囲の建物と共に自爆を始めた。
 あちこちで上がる炎と煙、それと爆発に巻き込まれた者たちの悲鳴や叫びが辺りに響く。

「やっぱりこんな風景が一番好きだわぁー。

私の嫉妬の炎が周りを包んでぇ、私と同じになる瞬間がぁ一番なのぉ」

 平和な駅前は一瞬で地獄絵図へと変貌する。
 突然の爆破テロに人々は逃げ惑うだけだった。

『吾輩を作った者が貴様のことを『火蜥蜴(サラマンドラ)』と呼んでいたがなるほどな。

合点がいった』

「私はその呼び方あんまり好きじゃないんだけどねぇー。

私の名前は『羨望(インヴィディア)』よぉー」

 話している間にも新たな蜥蜴のカースは誕生し、自爆を繰り返す。
 この状況が続けばここら辺一帯が焦土と化すのは時間の問題だろう。
538 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/04/03(木) 00:51:49.20 ID:mVMvEmUBo

『吾輩もそろそろ動かせてもらおう。

貴様ばかり楽むのは癪だからな』

「そぉう?」

 インヴィディアは口に銜えていたロリポップを取り出して宙に放り投げる。
 するとそのロリポップから泥が流れ出すように出現し、一つの形をとった。

『やはり吾輩はこの高貴な姿でなくてはな』

 その姿は炎馬であった。
 たてがみは黄色と紫の炎が靡き、体躯は漆黒の泥で構成されていた。

「あなたもその姿、かっこいいわぁ。嫉妬しちゃうくらいねぇー」

『当然だ。吾輩の高貴なる姿をその目に焼き付けておくがいい。

だが言っておくが貴様と協力する気はないぞ。吾輩は好き勝手にやらせてもらう』
539 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/04/03(木) 00:52:30.21 ID:mVMvEmUBo

「わかってるわぁー。

お互いに適当にぃ、滅ぼしてぇ、お仕事を終わらせましょぉー」

”ヒヒヒィィーーーン!!!”

 炎馬は前足を上げていななきを響かせる。
 晴天はいつの間にか漆黒の雲に包まれており、いななきを合図にポツリポツリと黒い雨を降らせはじめる。

 黒い雨の水たまりから新たなカースが誕生し、獲物を追って進軍を開始した。

「そうだぁー。頼まれていたことを忘れていたわぁー。

イルミナPさんからぁー、宣戦布告の合図を任されていたのぉ。

誰も聞いてないだろうけどぉー、このインヴィディアがひとこと言わせていただきまぁーす。

『私たちイルミナティー。世界を泥水のごとくの混沌にぃー』

こんな感じかなぁ?」

 インヴィディアのその宣言は誰にも届いていなかったが、それと同時に新たな爆発が漆黒の狼煙を上げた。


 
540 :@設定 ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/04/03(木) 00:53:19.30 ID:mVMvEmUBo

インヴィディア
イルミナティに所属する嫉妬のカースドヒューマン。『火蜥蜴(サラマンドラ)』とも呼ばれる。
ヨーロッパの片田舎で死にかけていたところをイルミナティに保護されたため、その恩でイルミナティに協力している。
ただしインヴィディアの興味も他のことに移り始めいつ勝手な行動を起こすかわからなくなってきたので、切り捨てても問題ない戦力として、先兵で日本へ投入された。
燃え盛る嫉妬の炎が身を焦がすのを快楽として感じるという変わった精神構造を持っている。
そしてその嫉妬の炎を自在に操ったり、炎を封じ込めた蜥蜴のカースを爆弾として利用することができる。(トーチの炎とは全くの別物である)
最近は日本のエンヴィーにご執心で、勝手に改心したエンヴィーに嫉妬しながらも愛情を抱いている。

ギルティトーチ
違う属性のカースがまじりあうことでその感情波の位相差によって感情のエネルギーが増幅される。
その余剰のエネルギーは炎となって放出され空へと昇り、雨雲となってカースの雨を降らす。
その炎を纏う姿が松明の様であることから、ギルティトーチと名づけられた。通称『トーチ』
普通のカースよりも高い知性を持ち、流ちょうに話すことができる。
基本的にカースと同じく自らの感情のままに行動するが、イルミナティは『制御棒』を付けることでそれをコントロールしている。

炎馬のギルティトーチ
『傲慢』と『嫉妬』のギルティトーチ。黒いギャロップ
火を纏う馬の姿をしており、自由がきかないのに苛立っているものの、イルミナティの指示の通りに人間を襲うことに躊躇はない。
その姿のごとく素早く、炎で幻影を生み出すなど様々な攻撃を仕掛けてくる。
541 : ◆EBFgUqOyPQ [saga sage]:2014/04/03(木) 00:54:25.25 ID:mVMvEmUBo

以上です。
吉岡沙紀ちゃんと名前だけサクライお借りしました。

イベント情報
・嫉妬のカースドヒューマン『インヴィディア』とギルティ・トーチがとある駅前で破壊工作を始めました。
・目標2体は基本的には別行動です。
・周囲はカース爆弾による爆発と大量に出現するカースによって混乱しています。

中ボスイベント的なのを想定しているのでトーチも、インヴィディアもロストしても何しても自由です。
少々オリキャラ色が強くなってしまいましたが、展開が自由にできる敵となるとこうなってしまいました。
542 : ◆zvY2y1UzWw [sage]:2014/04/03(木) 01:08:42.34 ID:s0pEtKT40
乙です

かれえええええええええええん!
加蓮はなんか良からぬものを引き寄せる体質なんです?

中ボス二体かー
お正月後の時系列だけどちょっと手出ししたい衝動
543 : ◆AZRIyTG9aM [sage]:2014/04/03(木) 01:10:17.67 ID:a9QV9wZQ0
乙ー

イルミナティ本格始動か

そして、インヴィディアは加蓮目当て…だと?それはそれで面白そうな。だがテロか…加蓮突撃させようかな?けど、まだ学園祭の書き終わってない…
インヴィディアはエンヴィーが改心したの知ってるってことは加蓮=エンヴィーも知ってる感じかな?
あと何故かナニカとインヴィディアで加蓮争奪戦というものが脳裏に過った…

それにしても何故か「リア充爆発しろー!」が脳裏に過った。
544 : ◆cKpnvJgP32 [sage]:2014/04/03(木) 01:57:25.79 ID:K8YLmc9Do
おつー

イルミナティの隠し球キター
まったく恐ろしい子を飼いならしていたものですな
しっかし物騒な世の中だ……

こう考えるとほぼ個人の手によって引き起こされた憤怒の街が
いかに大規模なテロだったかと思い知らされる
……まぁ、あれはバックで憤怒P称するティアマットとかいう超弩級の悪党が手を引いていたからだけども
545 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/04/03(木) 16:45:37.83 ID:2zUdnpKbo
おっつおっつです

>>493
なんだ嘘かー
しかし嘘でもピィちゃんは主人公が似合う

>>506
ピィ「天使!! 女神!! 藍子!!」
もう結婚しちゃえばいいのに
ちひろさんの能力、仙豆製造みたいなものですね。地味に超便利。超お得。

>>541
またとんでもないことになってきたぜ
にしてもイルミナティとサクライは何があったんでしょうね?




546 :そろそろ黒川さんの存在がヤバイ [sage]:2014/04/07(月) 22:46:46.22 ID:uPFq+NeGO
嫉妬…カースドヒューマン…
あれ?誰か居たような…
547 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [sage]:2014/04/07(月) 23:05:12.89 ID:RxzHu80r0
エンヴィーって名乗ったのは現在残念なあの子だけだから…(震え声)
548 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/04/08(火) 23:40:34.45 ID:sCMWYn0Oo
なんかギリギリで投下しまー
549 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/04/08(火) 23:41:04.76 ID:sCMWYn0Oo



とても静かな夜。

美しき彼女の庭園を彩る華達も寝静まる夜の事。

彼女のために用意された屋敷の中、彼女のためだけに用意された寝室で、

煌びやかで愛らしい桃色のネグリジェに身を包む少女は、絢爛な天蓋に囲われた寝台に1人座り、

眠い目を擦り、約束の時間が来るのを待っていた。

今日、一日の事を振り返りながら――


「今年も……素敵な、本当に素敵なお誕生日会でしたわ」

世界に名だたる財閥のご令嬢、その誕生を祝う記念パーティーは、本日華やかに行われた。

昨今きな臭い情勢などを踏まえ、来賓はごくごく選ばれた者だけに限り、密やかに行われた誕生会ではあったが……

その分、気を使うことは少なく、落ち着いた気持ちで祝いの席を過ごすことができたと思う。

「……お父様もあんなにお喜びになって」

クスクスと笑いながらその時の様子を思い返す。

最初こそ主催者として誰にも恥じぬ完璧な振る舞いをしていた彼であったが、

余興として上映された娘の成長記録の映像には、流石に感涙せずにはいられなかったようだ。

「ウフッ♪普段は見られない顔もたくさん見れましたわ」

いつもはまるで、心を細かく刻んでそれを切り貼りしたように、

要らない物は省いて、必要な感情だけを表に被り、その本音をはぐらかしてしまう彼女の父であったが、

この日ばかりは、ほんの少しは……彼の純粋な心の一面に触れられた気がする。
550 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/04/08(火) 23:42:23.53 ID:sCMWYn0Oo

「お父様も……心から楽しまれていたのでしょうか」

財閥の頂点に立つ彼には、今日の祝いの席でさえ、その立場が付いて回る。

だから、パーティーをただ和やかな気持ちで過ごすことは難しかったのかもしれない。

けれど彼も、自身と同じ気持ちを共有していて欲しいと少女は願う。

「……愛されてますわよね、わたくしは……きっと」

少女は、今その手の内にある幸せを抱きしめるように呟いた。


「……もうすぐ12時になりますわね」

寝台の傍にある銀細工の時計の針は2本とも、その頂上を目指し駆け上がろうとしていた。

「……日付が変わる時間が来れば、魔法がとけると言ったところでしょうか?」

「うふふっ、まるで童話のお姫様みたいですのね」

時が来れば、与えられた”彼女だけの一日”はおしまい。

それが、少女と悪魔の約束なのだから。


エメラルドの瞳が見つめる先、時を告げる2つの針が交差する。

「……」

少女の目蓋が重くなり、スッと瞳は閉じられて……


―――

――――――

―――――――――

――――――――――――
551 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/04/08(火) 23:43:05.77 ID:sCMWYn0Oo





まどろみの中、彼女が目を開くと、

そこは太陽の光に溢れる美しい庭の中。

緑の草木が美しく栄え、芳しい花の香り漂う庭。

見渡すばかりに晴れ渡る青空に、聞こえる鳥達の歌声。


気がつけば、そんな庭園を一望できるテラスに設けられたテーブルの一席に、少女は座らせられていた。


「……いつ見ても、綺麗な場所ですわ」

ここに来るのは初めてではない。むしろ、彼女にとっては見慣れたとさえ言ってもいい。


『ここは貴女の心の内の一風景』

彼女の小さな呟きに答えるように、向かい合う席に座るもう1人の少女が口を開く。


『人の記憶とは、美化されるものですから……貴女が美しいと思うのは、当然のことですわ』

薔薇の様に赤いドレスを着た、少女と瓜二つの悪魔はそう述べた。

『強欲』の悪魔・マンモンは、いつものように気品に満ち溢れた姿で、落ち着き払いそこに居るのだった。

彼女は傍らにあったティーポットを手に持ち、テーブルの上の2杯のカップに熱い液体を注ぐ。

その一挙一動、全てが優雅。思わず万民が見惚れてしまうほどであろう。

『それでは紅茶でもいかが?』

彼女の小さな手から、可愛らしいカップが桃華に手渡される。

「ええ、いただきますわ」

少女は差し出された紅茶を受け取り、口をつけた。

「……おいしい」

香りも味も一級品。そのように感じるのは、やはりこれも美化された少女の記憶の所有物だからだろうか。

552 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/04/08(火) 23:44:24.18 ID:sCMWYn0Oo


少女がこの心の内側の世界にやってくるのは、何度目になるかはわからない。

ただ深い眠りの中に堕ちて見る夢の様に、ここは居心地がよくとても安らぐ場所だった。

向かいに座る悪魔も、この穏やかな気持ちを共有しているのだろうか。


『心配しなくとも、あなたの心はわたくしの心』

『ここが心安らぐ場所であるのは、わたくしも同じですわ』

桃華が尋ねる前に、悪魔は答える。

声に出さずとも、少女の思いを察したらしい。

それもそうですわよね。と、少女はくすりと笑う。

彼女達は一心同体。

同じ顔で紅茶を飲む悪魔に、櫻井桃華の事が分からないはずがない。

彼女もまた同じく、”櫻井桃華”に違いないのだから。
553 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/04/08(火) 23:45:11.40 ID:sCMWYn0Oo

「ですが、わたくしはマンモンではありませんわ」

『ええ、そう。それが”わたくし”と『わたくし』の違い』


今よりずっと前に、少女は悪魔と契約を交わした。

契約を交わしたと言っても、悪魔側が一方的に言い分を通し、勝手な取り決めの元にその魂を繋いだだけなので、

厳密には契約と呼ぶことさえできず、口約束にも似た正当性のまったくないものなのだが。

しかしその約束によって、少女にも利益が無かった訳ではなく、

第一、悪魔との契約の正当性など、どこの誰が保障しているものなのかもわかるはずもないので、

その契約が正しかったかどうかなどは、お互いにとってお茶請けにもならない題目の1つでしかない。


とにかく、その時の取り決めで、

少女はその魂の半分以上を悪魔に明け渡し、代わりにささやかな願いを叶えた。

得た物の価値を正確な天秤にかけたならば、あまりに比重が悪魔側に傾いていると言える。


しかし、魂を明け渡した少女自身はその事を後悔などはしていない。

願いは確かに叶った。そして、誰かから見ればもしかするととてもくだらないかもしれないそれは、

少女にとっては、全てを明け渡してでも叶えたかった願いなのだから。


ともあれ少女の向かいに座るのは、そのような経緯で『強欲《マンモン》』となった自身の魂。
554 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/04/08(火) 23:46:37.39 ID:sCMWYn0Oo

心の中の、2人の少女はお互いに櫻井桃華。

けれど、強欲の悪魔『マンモン』は片方だけ。


『マンモン』であり櫻井桃華である少女には、もう1人の少女の事がよく分かる。

櫻井桃華でしか無い少女には、『悪魔』の事は、分からない。


「だから、わたくしは貴女の事を……もっと知りたいといつも思っているのですわよ?」

出来れば『彼女』の事を知りたいと思い、少女は向かいに座る『悪魔』に微笑んで見せるが、

『ウフっ♪やめておきなさいな、悪魔の心を除き見ようとすれば、その精神を完全に壊してしまう事になりますわ』

『悪魔』も同じ顔で同じように微笑んではぐらかすのであった。


「もう、笑って本心を隠そうとするのは、マンモンさんもお父様と一緒ですわねっ」

『あら、レディーは秘密が多いものですのよ?それに笑顔は高貴なる者の勤めですわ』

「むぅ……ですが、一方的にわたくしの事ばかり知られているのは不公平ですの」

『わたくし達の関係は元より不公平……いえ、この世界の全ては公平ではありませんの。

 ですが……平らな世界では無いからこそ、人はより高みを目指すことができるのでしょうね』

拗ねて見せても、『悪魔』にはやはり効果はないらしい。

この場所で2人でお茶をする時、少女はあの手この手で彼女の本心を引き出そうとするが、いつもなかなか上手くはいかないのだった。
555 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/04/08(火) 23:47:38.69 ID:sCMWYn0Oo


「……」

『♪』

頭を捻って次の手を考える桃華。

その様子を見て、悪魔はくすくすと笑う。

毎度のやり取りであり、笑われるたびに少女はほんの少し面白くない気持ちになる。

けれど、それは居心地の悪いものではなく、嫌いなやり取りではなかった。

とは言え、なかなか彼女の本心を掴む糸口が見つけ出せないのはやはりつまらない。


「……そうですわ、マンモンさん」

なんとか彼女の鼻を明かす方法を……と、考えているうちに、ふと少女は思い立った。

『あら?改まりましてどうしましたの?』

「お誕生日プレゼント、ありがとうございましたわ」

『……』

彼女への『悪魔』からの贈り物。

そのお礼がまだだったと、思い出したのだった。

「今日と言う1日を”わたくし”に過ごさせてもらって、とても、感謝していますのよ」

『何かと思えば……その事ですの』

笑顔で礼を言った少女から、悪魔は視線を外す。
556 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/04/08(火) 23:49:06.10 ID:sCMWYn0Oo

以前に、少女と悪魔は一つの約束事をしていた。

彼女の誕生日。その日の午前0時から、明くる日の午前0時まで。

その間だけは、『マンモン』ではなく、ただの”櫻井桃華”として過ごしたい。

桃華が言いだしたわけではないのだが、言わずとも『悪魔』は察し、それを叶えた。

そこには、『悪魔』側にはまったく利益がない。

『強欲の悪魔マンモン』の名を知る者が聞けば、

天地がひっくり返ったのでは?あるいは怪人ハンテーンにやられてしまったのか?

と騒いでしまうほどに、『強欲』なる悪魔らしからぬ行為であった。

とは言え、実際は騒ぐものなどいるはずもない。

この約束が滞りなく果たされたことを知る者はこの場に居る2人と、残りは彼女の父しか居ないし、

時に『強欲』の悪魔も優しさを見せることを知っている彼女達にとっては、特別に不思議過ぎる話ではないのである。
557 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/04/08(火) 23:50:15.76 ID:sCMWYn0Oo


『気にすることなんてありませんわよ』

少女の礼の言葉に対して、悪魔は淡々と言葉を返した。

『ここのところ……気を揉む案件に、『わたくし』は頭を悩ませ心を割いてばかりでしたから』

『今日一日くらいは、心の内に籠っているのもよい休暇だったと思っていますわ』

『それに、何より』

『貴女はわたくしですもの』

『貴女の幸福はわたくしのもの』

『貴女が幸福を感じているのならば』

『うふふっ、わたくしもやはり幸せなのですから』

『悪魔』は、とても幸せそうに笑って言った。


「……」

櫻井桃華は、おそらくは誰よりもこの『悪魔』の性格を理解していた。

もちろん『マンモン』自身ではないから、その全てがちゃんとわかるわけではないのだが、

それでもこうして何度もやり取りをしたことで、彼女がどんな『悪魔』であるかをよく知っていた。

『強欲』で、我侭で、優雅で、大胆で、臆病で、弱くて、ほんの少しだけ優しい。そんな『彼女』を見てきた。


だが、それでも、『悪魔』の心の内まで見抜けるわけではない。

だからその言葉の嘘をすっぱりと見抜けるわけではない。

だけど、ただ、なんとなく、

今の言葉もやはり本心ではないような気がしたのだった。
558 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/04/08(火) 23:53:38.02 ID:sCMWYn0Oo

「……」

『うふふ♪』

本心ではない……気がする。

気がしたというだけで、もしかすると気のせいかもしれない。

そのくらい何の根拠もない引っ掛かり。

さて、聞きだすべきか。せざるべきか。

こんな少女のもやもやした思いでさえも『悪魔』には手に取るようにわかっているはずだ。

だって『彼女』も、少女と同じく櫻井桃華なのだから。


「マンモンさんは……」

櫻井桃華の幸福を、確かに彼女は知っていて共有する事はできているだろう。

だが、『彼女』は本当に……

『どうしましたの?おっしゃりたい事があるならば、最後まで声に出しなさいな』

「……」



「いえ……」

「マンモンさんにはお誕生日はありますの?」

『あら?変えましたわね』

悪魔の言うとおり、少女は質問を変えた、それも当然お見通し。
559 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/04/08(火) 23:57:54.01 ID:sCMWYn0Oo
「……わたくしだけお誕生日プレゼントを貰うのは不公平だとは思いませんか?」

「それにほら、今日という1日を”わたくし”だけが過ごしたのなら……」

「マンモンさんは祝われてはいないのではありませんの?」

彼女の誕生日。その日の午前0時から、明くる日の午前0時まで。

その間、『強欲《マンモン》』はと言えば、ずっとこの場所、櫻井桃華の心の奥底に居たのだから、

『彼女』が祝いの言葉を貰ってはいないと言う考えは、概ね正しい。


『……ふぅ、だから言いましたわ』

『わたくし達の関係は不公平なものなのですから、そんな事で気に病むことはありませんわよ』

『それに何度も言いますが、貴女のものはわたくしのもの。貴女が祝いの言葉を受け取ったのならわたくしも……』

また、彼女は誤魔化そうとしている。

また、”櫻井桃華”に話を摩り替えようとしている。

そうはさせてはなるものか。

「わたくしではなくっ!『あなた』の事が聞きたいのですわっ!」

だから、少女は声を出した。

『!』

声を張り上げた少女の叫びに、『悪魔』が思わずたじろぐ。
560 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/04/08(火) 23:58:48.79 ID:sCMWYn0Oo

「っ……はしたなく声をあげてしまって申し訳ありませんわ……ですが」

『もう……どうして貴女の方が泣きそうになっていますの』

「っ!……マンモンさんが悪いのですわっ」

少女はギュッと目を瞑り、『彼女』から顔を背ける。

『ウフフッ♪ええ、悪いですわよ。だってわたくしは悪魔ですもの♪』

今にも泣きそうな震える声を聞いてでさえ、『悪魔』はとてもおかしそうに笑うのだった。

「……」

だから少女も期待はしていなかった。



『生憎、産まれた日の事は覚えてはいませんわね』

「!!」

少女の質問に、誤魔化しではない答えが返って来る事を。
561 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/04/08(火) 23:59:41.12 ID:sCMWYn0Oo

「覚えては…いませんの?」

『ええ、わたくしの産まれた頃の魔界は、それはもう混沌としていましたから』

顔を背けていた少女は振り向いて、『彼女』の顔を見た。

『悪魔』は、すまし顔で、庭園の遠くの方を見つめている。

遠い、遠い昔の事を振り返っているのだろう。


『わたくしが産まれた頃、魔界は魔族と竜族との戦争の真っ只中』

『……わたくしはあの頃に産まれた他の悪魔達の多くがそうであったように』

『産まれ落ちた時から、道端のゴミも同然でしたわ』

「えっ……」

『戦乱の最中、未熟で弱い悪魔には当然ですが真っ当に生きる権利なんてものはありませんでしたから』

『混沌とした魔界では、親の顔なんて知らなくても普通のこと。だから、その誕生を祝う者なんているはずもなく』

『誰も覚えているはずなんてありませんのよ、ゴミの誕生日なんて』

『産まれた日なんてものはわたくしには存在しませんの』

『いつの間にか、ゴミ捨て場で死肉を漁る雛烏がそこに居た。ただそれだけでしたから』

「……」

その生い立ちを語る間も『彼女』は優雅に、笑っていた。
562 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/04/09(水) 00:01:45.25 ID:BtYwDsSYo

「そう……でしたの」

『あらあら……自分から聞き出したのに、なんて顔してますの』

少女の視界が薄くぼやける。

感情が抑えきれず、言われたとおりに酷い顔をしているのだろう事はわかっていた。

『変に同情なんてしなくていいですわよ、かつてのわたくしの境遇などは何処の世界にでもありふれたものなのですから』

「ええ……同情なんてしてしまえばマンモンさんに失礼ですものね」

悲しさを押し殺すように少女は強く微笑んだ。

『……わかっていればよろしいですわ』

その顔からまた視線を外し、『悪魔』はそっけなく返事をする。

「……」

『……』


『(……まったく余計な話をしてしまいましたわね)』

ここまで話すつもりはなかった。

少女の質問に対して、『悪魔』はいつものようにのらりくらりと適当にはぐらかすつもりだったのだが、

今日に限っては、少女の様子にどこかやり難さを感じてしまったために、

つい、らしからず過去を語るような事をしてしまった。

『(……まあいいですわ。このような気分になることもたまにはあるでしょう)』

『(それに、この話はこれでおしまいでしょうから)』

このような話を聞いてしまえば、少女もこれ以上おいそれとは『悪魔』の事情に深く踏み込もうとはしないだろう。

別に、『悪魔』の方も人間・櫻井桃華とのほんの少し煩わしい会話を嫌ってはいなかったのだが、

今回ばかりは、”話すほうも、聞くほうも辛いことだ。”などと、少女が勘違いして、

あれこれ聞き出そうとするのを控えてくれればいいと『悪魔』は考えていた。
563 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/04/09(水) 00:03:40.28 ID:BtYwDsSYo





「……それでは、お誕生日のお話はひとまず置いておいて……」

「魔界に居たころのマンモンさんは心からの贈り物を受け取ったことはありますの?」

しかし『悪魔』考えたようには事は運ばず。

『はあ……櫻井桃華。『わたくし』の話はさきほどの質問で終わりではありませんの?』

少女のあまりの切り替えの早さに、呆れたように『悪魔』は口をこぼした。

先ほどのような話を聞いてなお、『マンモン』自身の話をやめさせてくれる気は少女にはなかったらしい。

「いいではありませんのっ!わたくしは貴女の事をもっと知りたいのですわ!」

「もちろん、マンモンさんが本当に気が進まないお話ならわたくしもお聞きはしませんが」

「別に、そうではないのでしょう?」

「今日に限って話してくれたと言う事は、きっとそう言うことなのですわ♪」

先ほどまでの涙目はどこへやら。にこにこと少女は笑う。

随分と都合よく解釈してくれたものだ。

中途半端に出自について話してしまったのは、彼女にはどうやら逆効果だったようである。

『……はあ、あなたもよろしい根性をしてますわよね……うふふ♪まあ、そんなところも気に入ってはいるのですが』

愚痴りながらも、『悪魔』は楽しそうに笑った。
564 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/04/09(水) 00:05:08.72 ID:BtYwDsSYo


『心からの贈り物を受け取ったことがあるかでしたわね?』

「ええ、もちろんマンモンさんが奪ったものではなく……ちゃんとした贈り物ですわよ?」

『念を押さなくてもわかっていますわよ』

『強欲』の悪魔の力は所有権の支配。

あらゆる物を、『自分のもの』としてしまう凶悪なる奪取の力。

本気を出せば、”誰かの”心でさえも『自分の』心に変えてしまえるのだから、

彼女がその気になれば、他者にその全てを捧げさせることもできるだろう。

しかし少女が聞きたいのは、そのような方法で手にした物品の話ではない。

奪い取った物ではない、『マンモン』に贈られた純粋な贈り物の話を少女は聞きたいのだ。


『……わたくしも”大罪の悪魔”と言う立場に伸上るまでに、ご贈答の類は多く頂きましたが……』

『その中にも少なからず……打算も裏も無い贈り物も……なくはなかったと、記憶していますわ』

「そうですの……それなら、少し安心しましたわ♪」

曖昧で適当な『悪魔』の答えだったが、それを聞いて少女は安心したと顔をほころばせる。

『……何がですの?』

「贈り物をくださる方が居るのでしたら、つまりマンモンさんにも、ちゃんと味方が居たと言う事でしょう?」

『…………さあ、どうだったでしょうね』

「それくらいなら、はぐらかしてもわかりますわよ♪」

『…………』

やはり、どうにも今日はやり難い。と『悪魔』は頭を抱える。

いつもならば『悪魔』側が手玉に取っているはずなのだが、今宵は珍しく主導権を握られているようであった。
565 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/04/09(水) 00:08:54.84 ID:BtYwDsSYo


「では……マンモンさんがいただいた最初の贈り物を、わたくしが当てて見せましょうか?」

不意に少女が、提案した。

『…………そんな物がわかりますの?』

最初の贈り物。『悪魔』がはじめてもらったもの。

わかりようもないだろう。

少女は、『悪魔』の生きてきた世界を知らないし、生きてきた時代を知らない。

マンモンが彼女に話したこともないし、

そもそも『悪魔』自身、最初の贈り物なんて覚えてはいないのだから。


「うふふっ♪ええ、きっと間違いありませんわ」

『……聞かせてみなさいな』

しかし、妙に自信のありそうな少女の物言いに『悪魔』の興味が引かれる。


「……」

少しだけもったいつけてから、彼女は答える。

「”名前”ではありませんか?」

『……あら』

「当りでしょう?うふふっ♪」

我が意を得たりと少女は得意げに胸を張った。
566 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/04/09(水) 00:09:51.73 ID:BtYwDsSYo


「名前は……この国では多くの人たちが産まれた日に貰うものですわ」

「最初に貰うもの。大切な人に贈られる大切なもの」

「そんな素敵なものだから……マンモンさんの場合もきっと祝福に満ちたものだったと……わたくしは思いますのよ」

少女は自身の答えをそのように補足した。

なるほど。彼女の考えは、きっと人間達の間では正しいことなのだろう。

『あなたの言う通り……少なくとも、この国の多数の人間に限ってはそうなのでしょう』

『ですが櫻井桃華、『わたくし』が名前を頂いた経緯も同じくそうだったと言える根拠が弱いではなくて?』

だが、少女の考えは、杓子定規に悪魔にも通じる考えではない。

『名付けは……例えば”病気”や”災厄”のように恐怖する対象にも、呪うべき対象にだって行われるのですから』

むしろ、悪魔の名づけはそのような例の方が多いだろう。

『なのにどうして貴女は、『わたくし』が祝福されて名前を頂いたと思えるのかしら?』

だから、少女の妙な自信の裏打ちが『彼女』には気になった。


「そうですわね……そのように推測した手がかりもちゃんとあるにはあるのですが」

「……一番の根拠はやはり」

『やはり?』

「乙女の勘ですわね♪」

あっさりした理由であった。

『……ふふっ、そうですの。それならば仕方ありませんわね』

苦笑いがもれる。勘が根拠であるとはお粗末な話であったが、

しかしそれが外れてはいなかったのだから『悪魔』も笑うしかない。
567 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/04/09(水) 00:11:04.80 ID:BtYwDsSYo

『少し悔しいですが、貴女の想像通り……思い返せばわたくしの名前もまた……親愛なる方からの頂き物でしたわ』

「まあ♪」

『悪魔』の口から出た”親愛なる”と言う言葉に少女は驚き、興味を持つ。

「マンモンさんのおっしゃる親愛なる方と言うのは、どんなお方でしたの?」

わくわくした様子を隠さずに少女は尋ねた。


『……秘密ですわ♪』

「あら……それは教えていただけませんのね……」

『うふふっ♪レディーにはどうしても秘密にしておきたい過去の1つや2つありますのよ』

『知りたいなら、当ててみなさい。乙女の勘で』

皮肉っぽく『悪魔』はニヤつく。

「……もう……流石にそこまではわかるはずありませんわ」

『ふふふ♪』

残念そうに口を尖らせる少女の横顔を眺めて、『悪魔』はやはり愉快そうに笑うのだった。
568 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/04/09(水) 00:14:49.11 ID:BtYwDsSYo
―― 櫻井桃華、貴女の言うとおり

―― ゴミでしかなかった『わたくし』を拾ってくださり、育ててくださったあの方は

―― 確かに『わたくし』の味方で、『わたくし』を祝福してくださっていたのでしょう


―― ですが……


―― それ故に、あの方は……”先代強欲の悪魔”はその命を落すことになったのですわ

―― 『わたくし』を愛したが故に、『わたくし』に嵌められ、『わたくし』の罠に掛かり、『わたくし』の策に敗れた……


―― 先代は『わたくし』の味方でしたが、『わたくし』にとっては先代は敵でしたから

―― あの方を蹴落とさなければ、今の立場を……欲しかった物を手に入れられなかったのですもの


―― 今でも……思い返せますわ。『わたくし』に敗北し全てを奪われた先代の最後の凍りついた顔

―― そして……最後の言葉も


《 お前はそれで    か? 》
569 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/04/09(水) 00:15:36.04 ID:BtYwDsSYo



「では最後に、マンモンさんは今”幸せ”ですか?」

『……ふぅっ……なんですの、もう……。さっきは躊躇っていらしたのに、結局それも聞いてしまいますのね』

さきほど少女が躊躇い、変えてしまった質問。

それが、いまさら飛んできたので『悪魔』も戸惑う。

「うふ♪申し訳ありませんわ。ですが、やはりどうしても……聞いておきたかったものですから」

「今ならば、ちゃんと答えていただけそうですもの」

『……』

曇りの無いエメラルドの瞳がまっすぐと『悪魔』を見つめていた。

疑いの無い瞳。本当に話して貰えると思っているのだろう。やはり今日は喋りすぎていただろうか。
570 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/04/09(水) 00:16:49.90 ID:BtYwDsSYo


「……桃華はきっと幸福ですわ。たくさん愛してもらえて幸せですのよ♪」

「だから……わたくしは、『わたくし』にも幸せであって欲しいと思いますの」

『……”あって欲しい”ですか』

「ええ、”欲しい”ですわ♪うふふっ♪マンモンさんの影響か、わたくしもとても欲張りになってしまいましたわね」

にこやかに少女は言った。

『悪魔』には、少女の質問すべてに答える義理は無い。

だから、『悪魔』にはその質問から逃げることは容易ではあった。

容易なはずであったが、しかし……

『答えるまで、しつこく聞いてきそうですわね?』

「ええ、もちろんですわ♪」

その瞳から逃げるのは、とても難しい事でもあるような気がした。

『……なら仕方ありませんわね』

だから、意を決して悪魔は答える。

『幸せかどうか……難しい質問ですわ……』

「……」

『だって、もしかすると『わたくし』は』

『ずっと幸せになんてなれないのかもしれないのですから』
571 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/04/09(水) 00:17:43.82 ID:BtYwDsSYo


『櫻井桃華、『わたくし』は『強欲』ですわ』

『例え……幸せを感じられたとしても、すぐに足りなくなってしまいますの』

悪魔は語る。その心の内を。

『何を手に入れたとしても……欲望が尽きることは無く……』

『欲しかった玩具は……手に入れたそばから、まるで灰の様に変わってしまい指の間から零れ落ちていきますわ』

ふと、彼女達の庭を照らす日の光が覆い隠され空が曇り始めた。

気がつけば、鳥達の声はもう聞こえない。

庭を彩る緑は次々と枯れ朽ちて、花々はハラリと萎れ散ってしまう。

『時間の経過とともに、何もかもが物足りなくなってしまう』

『これが『わたくし』の絶望』

荒廃した園で、『悪魔』は語る。

「……」

少女は、黙って『悪魔』の言葉に耳を傾け続ける。
572 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/04/09(水) 00:18:49.13 ID:BtYwDsSYo


『……永久なる幸福』

『究極的に言わせていただくなら、わたくしの目的はそれですわ』

野心の炎に満ちた瞳が、庭園のずっと先を見据える。

だが、その瞳の奥の暗闇はどこか危うげで悲しい。


『決して風化はせず、されども不変でもなく』

『そのような世界の全てに、ずっとずっと『わたくし』を満たして続けて欲しい』

抑えきれない『欲望』を恒久的に満たしてくれる世界。

『強欲』はただそれを強く望む。


『……そう願うことが、悪いことですの?……望んでしまうことが、ダメな事?』

『ただ幸せになりたいと思うことが、罪と呼ばれるものでしょうか?』

生れ落ちてから、彼女はずっと貪欲に幸せを求めていた。

ずっとずっと、尽きることの無い幸せを。
573 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/04/09(水) 00:19:41.66 ID:BtYwDsSYo


「……いいえ、マンモンさん」

『悪魔』の言葉をずっと黙って聞いていた少女が口を開く。


「幸福になりたいと願うことは誰にでも許された権利ですわ」

「たとえそれを神様がお許しになられず、悪や罪とされるのだったとしても」

「わたくしは、その願いを心から祝福しますわ」

少女は、優しい声で、優しい瞳で、その願いを肯定した。

「マンモンさん、どうか貴女も幸せになってくださいまし」

「それが、わたくしの……桃華の願いですわ」

『……』

『……たまになら、本心からの言葉をつむいでも良いでしょう』

『本当に感謝していますわよ、櫻井桃華』

『悪魔』は目を閉じて、小さな声で呟いた。
574 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/04/09(水) 00:21:02.38 ID:BtYwDsSYo


「うふっ♪それはわたくしの台詞ですわよ」

「お父様のこと、本当に感謝しているのですからね」

しっかりとその小さな声を聞き遂げた少女も、『悪魔』に対して同じく礼を返す。

「マンモンさん、これからもお父様の夢のお手伝いを……よろしくおねがいしますわね」

『ええ……もちろんですわ』

「以前みたいに勝手に居なくなろうとしたら、嫌ですわよ?」

『うふふ、肝に銘じておきましょう』

心の内の世界で2人の少女はお互いに、ただただ笑い合った。


『ではそろそろ……『わたくし』は目覚めるとしますわ』

「ええ、それではマンモンさん。またこの場所でお会いいたしましょう」

「次の機会には、もう少しゆったりとお話ができればいいですわね?」

『それも構いませんが、この次の時には今日の様に質問攻めはご勘弁くださいまし』

「あら、残念ですがその約束はできませんわ♪」

『もう……充分ではありませんでしたの?本当に欲張りですわね』

「ふふっ、誰のせいでしょう?」

『……さあ、誰だったのかしら』


クスクスと笑う少女を背に、やはり笑いながら『悪魔』は席から立ち上がり、高く空を見上げた。
575 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/04/09(水) 00:22:08.98 ID:BtYwDsSYo

――――――――――――

―――――――――

――――――

―――


少女の瞳が再び、開かれた。

エメラルドの瞳には、暗い野心の炎が灯っている。

その目の見つめる先、銀細工の針が新しい時を刻み始めていた。


ネグリジェに身を包む少女は、寝台から立ち上がり、

天蓋の布をすり抜けて、部屋に備え付けられた窓へと向かう。


カーテンを少しだけ捲り、外を覗いた。

窓からは、寝静まる庭園を見渡すことができた。

そして、庭園の先にはずっとずっと世界が広がっているのだろう。


「……ふふっ」

眼下に広がる世界を見下ろし、彼女は今日も笑う。

「いずれ世界の全ては、わたくしのものですわ」


おしまい
576 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/04/09(水) 00:23:05.05 ID:BtYwDsSYo
マンモンちゃまと誕生日のお話でした
彼女にも色々あるようです

日付変わっちゃいましたけど桃華、誕生日おめでとー
577 : ◆zvY2y1UzWw [sage]:2014/04/09(水) 08:06:55.60 ID:qarC9p2u0
乙です
マンモンは本当にマンモンちゃまなんだなぁ
過去も気になる所
578 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/09(水) 11:20:22.94 ID:SNSjv1kd0


ちゃま!お誕生日おめでとう!
果たしてマンモンはどんな結末を迎えるのだろうか
579 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/09(水) 13:00:23.74 ID:RUwkMm/Po
おつおつ!
sage進行だから気づかなかったが結構進んでるのぅ……

ちゃまの満たされたい欲望…どうしても不吉な影がチラチラ見える
ヘレンさんが似たこと言ってたし組めばいいんじゃないかな。ギャグ補正入れば幸せにだってなれるよ
580 : ◆zvY2y1UzWw [saga]:2014/04/11(金) 22:18:26.96 ID:hsEhjG7J0
本筋にそこまで絡まないけど学園祭二日目の時系列で投下
ついでに書き方を台本形式に戻してみるテスト
581 : ◆zvY2y1UzWw [saga]:2014/04/11(金) 22:20:41.44 ID:hsEhjG7J0
―学園祭があるこの期間は、意外と人気が少ない場所が多いようです。

―だから街では妙な事が起きてもそれほど騒ぎにならない事も。

―おや?どうやらなにか変な生き物がいるようですね。

―のっしのっしと歩く頭身の低い生き物は…どうやらぷちどるのようです。

??「…なぁー」

??「にょわ?」

??「なーお…」

―なんと人間ぐらいの大きさのぷちどるの上に、虎耳のぷちどるが乗っています。

―とても大きなぷちどるの名前は『きらきら』、虎耳のぷちどるの名前は『かみゃ』といいます。

かみゃ「なっなっ、なーお!」

―かみゃは大きなきらきらに乗せられて、目立つのが恥ずかしいようですね。

きらきら「はぴはぴ!」

かみゃ「ばかぁ!!」ジタバタ

―…どうやら降りようとしてもすぐに頭の上に戻されてしまうようです。
582 : ◆zvY2y1UzWw [saga]:2014/04/11(金) 22:22:13.24 ID:hsEhjG7J0
―それを遠巻きに見ている通行人A…いえ、通行人ではなく奈緒がいました。

奈緒(あれ…きらり?いや頭身がおかしいから別人か。…それにしてもデカいな、アレってきらりと同じくらいじゃないか?」

奈緒(…やっと潜入任務終わって休み貰ったからアニメでも借りて見ようと思ったのに…アレ、危険生物じゃないよな?)

―危険生物なら放置するわけにもいかず、じっと見る事しか出来ない状況に。

―他の通り過ぎる人々は普通に珍しいものを見た感じで、立ち止まる人は殆どいません。

奈緒(着ぐるみ?ぬいぐるみ?…いや、あれは生き物だよなぁ…上のちっちゃいのはあたしに似ている気がするのはなんでだろう)

奈緒(さて…さっきから上のが怒っているだけで暴れたりする様子はないけど…夏樹達に連絡すべきか?)

かみゃ「!」

奈緒「ん?」

―…目と目が合いました。
583 : ◆zvY2y1UzWw [saga]:2014/04/11(金) 22:23:47.72 ID:hsEhjG7J0
かみゃ「なっ!」スタッ

きらきら「にょ?」

かみゃ「な!」トトトト

―かみゃがきらきらの頭から腕をすり抜けるように降りて、奈緒に駆け寄ります。

奈緒「…な、なんだよ、あたしに用か?」

かみゃ「んな、なーお!」

奈緒「え、なんか他人のような気がしない?それはあたしも思ったけどさぁ…」

かみゃ「なーお、んなー」

奈緒「かみゃ…って名前なのか?」

かみゃ「みゃお!」

奈緒「そっか、あたしは奈緒。で、そっちのデカいのは?」

―奈緒に指で示されたきらきらは嬉しそうに駆け寄ります。

奈緒(ち、近寄ると思ってたよりデカイ…)

きらきら「にぃにぃ☆」

奈緒「きらきら…ますますきらりっぽいなー。デカすぎて妙な威圧感あるけど…危険じゃなさそうだし」

きらきら「はぴはぴ!」

かみゃ「なぁ!」
584 : ◆zvY2y1UzWw [saga]:2014/04/11(金) 22:24:58.74 ID:hsEhjG7J0
奈緒「そういえばお前らは、あたしの事怖くないのか?」

かみゃ「なーお」

奈緒「なんか感じるけど怖くない?…みくみたいな事言うんだな」

きらきら「にょにょわ!」

奈緒「そういうもんなのか?」

かみゃ「な!」

きらきら「にぃ!」

奈緒「よく分かんないなー…自分で自分の事が分からないのは…やっぱり変なのかな」ナデナデ

かみゃ「…んなぁー」

奈緒「かみゃは毛がふわふわしてるなぁ…えへへ、あったかい…」ナデナデ

かみゃ「みゃ、みゃ〜あ…」ゴロゴロ

奈緒「ん…撫でられるの好きか?」

かみゃ「んなっ!なっ!なーっ!ばかぁ!」ポカポカ

奈緒「あはは、ごめんごめん」

きらきら「はぴはぴ!」

奈緒「はっ、はぁ?あたしも可愛いって…な、何言ってるんだよ!ばかっ!」

かみゃ「ばかぁ!」

きらきら「にょわわー☆」
585 : ◆zvY2y1UzWw [saga]:2014/04/11(金) 22:27:56.76 ID:hsEhjG7J0
奈緒「今の…誰も見てないよな…。ところでかみゃときらきらはどこから来たんだ?」

かみゃ「なー」

奈緒「わかんないのか…」

―ぷちどるたちはユズに作られた魔道生物です。

―でもぷちどるたちの殆どはそんな事知りません。本能のままに、気ままに生きています。

かみゃ「んなー」

きらきら「にぃ」

奈緒「だからいろいろな所を歩いてるのか…大変だな、お前たちも」ナデナデ

かみゃ「んなー…」ゴロゴロ

きらきら「にょわ!」

奈緒「きらきらも撫でて欲しいのか?…デカいからちょっとしゃがんで…そうそう」ナデナデ

きらきら「はっぴはっぴ☆」

奈緒「うちで引き取りたいけどなぁ…連れて帰っていいのかなぁ…どーしよ」
586 : ◆zvY2y1UzWw [saga]:2014/04/11(金) 22:29:14.49 ID:hsEhjG7J0
きらきら「にょわ…にょーわ!」

―その時、急にきらきらが上を手で示しました

―…どうやら何か伝えたいようです

奈緒「えっ、上から来るぞ?なにが…あっ!?」

??「――ねぇぇぇぇええええええええ!!?」

―上から何か落ちてきて…

―そのまま頭へゴチン!

??「ぐふっ…」

かみゃ「んな”あっ!?」

―なんと、運悪くかみゃの頭にぶつかってしまいました!
587 : ◆zvY2y1UzWw [saga]:2014/04/11(金) 22:29:51.48 ID:hsEhjG7J0
奈緒「げっ、ホントに上から来た!?…えーっと大丈夫か?」

かみゃ「な、なぁ…」

??「ね、ねぇ…」

―二匹とも倒れたまま虚ろな目で宙に手を伸ばし…

かみゃ「な、みゃ…ごふっ」ガクッ

??「ふ…ふふ…ぐふっ」ガクッ

―力尽きてしまいました

奈緒「…えっ…え?」
588 : ◆zvY2y1UzWw [saga]:2014/04/11(金) 22:30:43.94 ID:hsEhjG7J0
きらきら「にぃにぃ!にょわ!にょわー!」

奈緒「…は?水かけろって?こんな時に何言って…」

?「…ちょっといいかな」

奈緒「え?」

?「よっと」

―いきなり来た少女は、混乱している奈緒に返事もせずペットボトルの水を倒れた二匹にかけました。

かみゃ「なーお!」

??「ふふっ♪」

きらきら「はぴはぴ☆」

奈緒「…なん…だと?」
589 : ◆zvY2y1UzWw [saga]:2014/04/11(金) 22:32:35.16 ID:hsEhjG7J0
?「もう、どうしてほうじょーさんは出かける度にこうなるのかな…3時間も帰って来ないから探してみればこうなって…」

ほうじょーさん「?」

?「…水持ってきててよかったよ。今の虎耳の小人とか、ほかの人を巻き込んだら大変なんだから…」

かみゃ「なっ!なーお!」ペシペシ

?「えっ何?なんか気に障った?」

かみゃ「んなー、なーお!」

奈緒「…『猫じゃない、虎だ』だってさ」

かみゃ「なっ!」コクコク

?「もしかして、その言葉がわかるの?」

奈緒「あ…普通は分からないのか、そっか…」

きらきら「にぃ?」ポンポン

凛「なんかショック受けてるけど…とりあえず、私は凛。今落ちてきた小人…ほうじょーさんを探してたんだ。散歩に出る度に帰って来ないから」

ほうじょーさん「ふふっ♪」

凛「もう、妹も心配してたよ?」

ほうじょーさん「にかー」
590 : ◆zvY2y1UzWw [saga]:2014/04/11(金) 22:34:21.35 ID:hsEhjG7J0
凛「…そういえばそのねk…虎耳の小人、妹にそっくりだよね。正直あの二匹の方が姉妹っぽいと思うんだけど」

ほうじょーさん「…にかー」

奈緒「へぇ、この…えっと、ほうじょーさんって妹がいるのか。かみゃに似てるのか?」

凛「うん、ほうじょーさんの妹…みたいな子がいるんだ。でもなんかあの虎耳の子…かみゃのほうが似てると思う。特に眉毛」

かみゃ「なー!?」

凛「だって虎耳なくして一回り小さくすれば完全にあの子だし。あ…ちょっと待って、アンタも似てるよ。眉毛がそっくり」

奈緒「眉毛眉毛言うなっての!…ああ、そういえば名乗ってなかったな、あたし奈緒。で、その虎耳がかみゃ、大きいのがきらきらだ」

ほうじょーさん「…かみゃ!きら!」

かみゃ「なー!」

きらきら「にょわー!」

奈緒「仲良くなったか、よかったなー」

かみゃ「な!」

きらきら「はぴはぴ☆」

ほうじょーさん「ふふっ♪なお!りん!」

凛「いつの間にか名前言えるようになってる…あ、その大きいのも同じ種族なの?」

奈緒「知らないけど…そうなんじゃないか?頭身とかは同じだし」

凛「だってあの小人から見ればきらきらは10倍近くもある巨人みたいなものなんだよ?」

奈緒「まぁ…デカいよなぁ」

凛「…私達基準でも十分大きいしね。この子達相手に見上げる構図になるとは思ってなかったよ。知り合いの方が大きいとは思うけど」
591 : ◆zvY2y1UzWw [saga]:2014/04/11(金) 22:35:33.17 ID:hsEhjG7J0
きらきら「…にぃ、にぃ!」

奈緒「えっ水?今度は何だよ?」

きらきら「にょーにょ!」

奈緒「ふんふん…凛、水ってまだあるか?」

凛「うん、あるけど…使うの?」

奈緒「きらきらがかけて欲しいみたいなんだ」

凛「かければいいんだね、わかった」

―凛は言われた通りにきらきらに残った水をかけてみました

―するとどうでしょう、みるみるうちにきらきらは普通のぷちどるの倍のサイズまで小さくなったのです!

凛「…なんで?」

きらきら「にょわ、にぃ!」

奈緒「戻るときはお湯をかければいい?ら○まじゃねーか!」

かみゃ「なっ!」

凛「ホント、よく言葉がわかるよね」

奈緒「…多分、そういう能力っていうか、体質っていうか…気にしないでほしいな」

凛「気になるけど、そう言うなら…あっ、ほうじょーさん、妹が来たよ」

奈緒「ん?」

―奈緒が凛の視線を追うと、確かに声が聞こえてきます
592 : ◆zvY2y1UzWw [saga]:2014/04/11(金) 22:36:20.90 ID:hsEhjG7J0
こにか「おねえええええ!おねええええええ!」ダダダダダダ

ほうじょーさん「にかー!」

こにか「おねー!おねー!!」ギュー

ほうじょーさん「ふふっ」

かみゃ「なー?」

ほうじょーさん「にかー!」ニコニコ

―かみゃがこにかの事を尋ね、ほうじょーさんが説明しています

こにか「…おねー?」

ほうじょーさん「かみゃ!きらー!」

かみゃ「なーお!」

きらきら「にょわ☆」

こにか「なーの?きーの?」

ほうじょーさん「…ねぇ!にか、かみゃ、ふふっ♪」

―…ほうじょーさんは、こにかとかみゃの二人がそっくりだと言っているようですね
593 : ◆zvY2y1UzWw [saga]:2014/04/11(金) 22:37:19.93 ID:hsEhjG7J0
こにか「!…やーの!の!の!」シャー!

かみゃ「んなっ!?…なーお!なぁ!」シャー!

ほうじょーさん「…にか?かみゃ?…ね、ねぇ?」オロオロ

きらきら「むぇー?」

―こにかはどうやらかみゃの事が気に入らない様子。そしてかみゃもいきなり威嚇されて怒っているようです

―ほうじょーさんときらきらは困惑するばかり…

奈緒「…どうしてこうなった」

凛「もしかして、修羅場?」

奈緒「これが修羅場なのか…」
594 : ◆zvY2y1UzWw [saga]:2014/04/11(金) 22:38:11.21 ID:hsEhjG7J0
こにか「やーの!やーのぉ!!」ポカポカ

かみゃ「みゃ!なぁーお!!」ポカポカ

奈緒「…ちょっと止めてくる」

凛「大丈夫なの?」

奈緒「大丈夫だろ、多分…それに、怪我でもしたら可哀想だしさ」

かみゃ「ばかっ!!」ポカッ

こにか「ばーの!!」ポカッ

奈緒「ほら、二人ともちょっと落ち着けって…」

かみゃ「んみゃああ!!」ガブッ

こにか「みゃーの!!」ガブッ

奈緒「あだっ!?」

―気が立っている二匹の間に手を伸ばした奈緒に、なんと二匹は思い切り噛みついてきました!

奈緒「このっ!畜生、思ったより痛いな!」

凛「ちょ、ちょっと、大丈夫じゃ無さげだよ!?」

奈緒「この程度心配すんな!…同時に噛みついてきやがってこの…!地味に仲良いなお前ら!」

かみゃ&こにか「!!」パッ

―仲が良いと言われたのが嫌だったのか、かみゃもこにかも同時に口を開け、奈緒の腕から離れました。
595 : ◆zvY2y1UzWw [saga]:2014/04/11(金) 22:39:49.86 ID:hsEhjG7J0
奈緒「…まったく…喧嘩すんなよ、ほうじょーさんもきらきらも困ってるだろ?」

ほうじょーさん「なおー…」オロオロ

きらきら「にぃ…」

かみゃ「なー…」ショボン

こにか「…ふぇ、ふぇ…うぇぇぇん!!」

奈緒「泣くなって、ほうじょーさんは別にお前と姉妹じゃないなんて言ってないだろー?」

こにか「だーの、おねー、にーの…。…かーの、みゃーの、ちーの、おねー…」グスン

奈緒「あー…かみゃと姉妹になったらもう自分はほうじょーさんの妹じゃないって?」

こにか「そーの」コクン

凛(…よく分かるなぁ)

奈緒「心配するなって、本当にそれが心配ならほうじょーさん本人に聞けばいいだろ?まずはかみゃに謝ってからな」

こにか「…の」ペコリ

かみゃ「な、みゃお」ウンウン

―かみゃは許してくれるようですね

きらきら「にょわにょわ☆」

こにか「おねー!!」トトトトト

ほうじょーさん「にかー!!」テテテテテ

こにか「おねー!」ギュー

奈緒「よかったよかった」ウンウン

凛(訳が分からない)

―…めでたしめでたし、なのでしょうか…?
596 : ◆zvY2y1UzWw [saga]:2014/04/11(金) 22:41:12.53 ID:hsEhjG7J0
凛「…ところで噛まれた腕、平気?」

奈緒「あ、うん、大丈夫だよ」

凛「でも、多分そんな事は無いと思うけど、未知のウイルスとか持っている可能性も微妙にあるし…噛まれたところ、みせてよ」

奈緒「だ、だ、大丈夫だから!見せる程じゃないって!痛くなかったしさ!」

凛「…さっき思いきり『痛い』って言ったよね」

奈緒「あっ」

凛「腕、隠さないで見せてよ。…もしかして、左腕のギプスの下もなにかあるんじゃ…」

奈緒「あ…あーっ!あたしもう行かなきゃ行けない用事があったんだよなぁー!!…ってことで。じゃあな!!」

―凛が腕に手を伸ばした瞬間、奈緒はパッと距離をとってすぐさま逃げ出してしまいました。

―とにかく速く、飛ぶように去って行った奈緒を、凛は茫然と見ているだけでした。
597 : ◆zvY2y1UzWw [saga]:2014/04/11(金) 22:42:58.70 ID:hsEhjG7J0
凛「…あっ、逃げられた…そんなに見られたくない理由でもあったのかな…?」

かみゃ「なーお」

凛「この二匹は…奈緒の小人ってわけじゃないよね」

かみゃ「んな」コクリ

きらきら「にぃにぃ」コクコク

凛「…ウサミミの所に連れて行っても問題ないよね?」

ほうじょーさん「うさ!かみゃ、きら?」

こにか「かーの?」

凛「うん、二匹増えたところで別に問題ないよね。あそこ結構広いし。それに人数が増えれば、ほうじょーさんも外出控えてくれるかもだし」

ほうじょーさん「ふふっ♪」

凛「…控える気はないんだね。ともかく、これで6匹目…いや7?冷蔵庫にたまに出てくるイヴさんに似たのはカウント…しなくていいか。よし、みんな帰るよ」

かみゃ「なーお!」

こにか「はーの!」

きらきら「おにゃーしゃー☆」

ほうじょーさん「ねぇ♪」

―この後、散歩に出かけたほうじょーさんをこにかと迎えに行ったはずが、さらに謎生物を自ら2匹も連れてきた凛にウサミンPが頭を抱えるのは別のお話。
598 :@設定 ◆zvY2y1UzWw [saga]:2014/04/11(金) 22:46:03.45 ID:hsEhjG7J0
かみゃ
神谷奈緒に似たとっても照れ屋さんなぷちどる。鳴き声は『ばかっ!』『なーお』『んなー』。たまに『な』が『みゃ』になるようだ。
虎の耳と尻尾を持っている。猫と言うと怒る。でも撫でられるのは大好き。
割と虎らしく、食べる時等は肉食系。高いところによくいる。
基本的に飛ばないがたまに黒い翼や生物を出しているところが目撃されている。冬毛は通常の倍くらいもふもふしているらしい。

きらきら
諸星きらりに似たとっても大きなぷちどる。鳴き声は『にょわ』『にぃ』『はぴはぴ☆』等。
いつもは180cmくらいの大きさで、本人は自覚していないが妙な威圧感を放っている。
水をかけると普通のぷちどるの倍くらいの大きさまで小さくなる。お湯をかけると戻る。
大きいときは頭の上にほかのぷちどるを乗せるのが大好き。
かわいいものが大好きで、本当に気に入ったものは寝床まで連れていく習性がある。
滅多にしないが自分や仲間に危機が迫ると目からきらりんビームを放つ。
599 : ◆zvY2y1UzWw [saga]:2014/04/11(金) 22:48:04.73 ID:hsEhjG7J0
以上です
ぷちます!!放送記念だったりしなかったり
ほうじょーさん墜落の原因?多分カラスにでも突かれたんじゃないですかね…(適当)

情報
・ウサミンPの宇宙船にぷちどるが二匹追加されました
・頭をぶつけた衝撃か、ほうじょーさんが『にかー』以外にも二文字まで名前を言えるようになりました
600 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/11(金) 23:12:45.87 ID:qLZdDvPsO
乙ー

やったねウサミミ!ぷちどるが増えるよ!

カワイイな…
601 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/12(土) 14:21:27.75 ID:QoDaObAho
おつおつ
ぷちは勝手に増やしていいんだけっけ
602 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [sage ]:2014/04/12(土) 14:50:54.02 ID:dQY70rVF0
ぷちは増やし放題ですぜ
基本的に一人一体だけど
603 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/04/12(土) 18:53:07.14 ID:HmDx8LY1o
おっつん

和やかな空気にほっこり
604 : ◆3QM4YFmpGw [saga]:2014/04/14(月) 21:42:39.44 ID:W5RNIWI00
皆々様乙乙ー

いやあ、XP終了は強敵でしたね(白目)
そんなわけでAHF第一予選始めます
よければヒーロー達と一緒に挑戦してみてください
一応まとめとか各設定とか読んでれば解ける……はず
605 : ◆3QM4YFmpGw [saga sage]:2014/04/14(月) 21:43:50.74 ID:W5RNIWI00

J『なにやらステージ上で選手たちの雑談が始まっていますねー』

亜里沙『Jさんの前回の引きで、緊張感が壊されちゃったんじゃないかしら』

ウサコ『災い転じて福となしたウサ?』

〜〜〜〜

聖來「や、美穂ちゃんも出てたんだね。悪いけど一回刀しまってもらっていいかな?」

ひなたん「分かったナリ。……あ、せ、聖來さん! お久しぶりです!」カチャン

聖來「うん、久しぶり。美穂ちゃんが参加するのはちょっと意外だったかも」

美穂「え、えっと……アイドルヒーローの皆さんをお手合わせ出来ると思うと、いてもたってもいられず……」

聖來「ふふ、そっか。言っとくけど、当たっても手加減はしないからね?」

美穂「! の、望むところですっ!」

聖來「うん、いい目してるね。お互い頑張ろうね」

美穂「はいっ!」

東郷「失礼。君達のその刀……もしかして鬼神の七振りかな?」

聖來「マーセナリーさん……七振りの事知って……って、それ……」

東郷「ああ、私も一振りいただいていてね。『日本一、嫉妬深い刀』の茨姫さ」

美穂「わあ、綺麗……」

東郷「良ければ、七振りの持ち主同士少し話さないか?」

聖來「うん、私はいいよ」

美穂「は、はい! 是非!」

聖來(思わぬところで一本見つけちゃった。参加して正解だったかな♪)

〜〜

ラプター「……アイツだ、ファイア」

ファイア「あれが、鬼神の七振り……」

ラプター「大会中は奪えねえが……持ち主の顔覚えるだけでも今後の助けになる」

ファイア「そうね。……ところで、あなたのお連れは?」

ラプター「へ? ……あっ、いつの間にかあっち行ってやがる!」
606 : ◆3QM4YFmpGw [saga sage]:2014/04/14(月) 21:46:44.16 ID:W5RNIWI00
ナイト「ライラちゃん久しぶりだねー!」

スカル「カ……おっとと、ナイトさんもお久しぶりでございます」

ナイト「貰った参加者リストにアビスカルって書いてあったから、まさか隊長が!? なんて思ったけど……」

スカル「今は修行中なのでございます。シャルクやガルブも一緒ですよー」

ナイト「そっかそっかー。じゃ、お互い頑張ろうね!」

スカル「もちろんでございますですよー」

〜〜

ディアブル「カミカゼさん、有香さん。お久しぶりですわ」

カミカゼ「ん? おお、お前か。ずいぶん思い切った変装だな」

有香「みちがえるようですよ、えっと……ディアブルさん」

01「どうもどうも、憤怒の街ではディアブルがお世話になったとか。改めて、SC-01であります」

カミカゼ「ああ、あん時に空から援護してくれてたのはアンタだったのか」

有香「お陰で助かりましたよ」

01「いえいえ。……バーニングダンサー殿とエボニーコロモ殿はいないようですな。お礼を言いたかったのですが……」

乙「ま、その内会えるんじゃね? な、リーダー……リーダー?」

甲「……そのゴーグルとペルソナ、メガネっぽいな……」

01「へ?」

乙「あ、ご、ごめん! ちょっとリーダー今メガネアレルギーでさ……!」

ディアブル「そ、それは……お大事に……?」
607 : ◆3QM4YFmpGw [saga sage]:2014/04/14(月) 21:48:51.94 ID:W5RNIWI00
レアル「……なあ、あんた」

カレンヴィー「ん?」

レアル「……加蓮だろ」ボソボソ

カレンヴィー「え、な、な、何の事かなぁ〜?」

レアル「……アタシだ、夏樹だよ」ボソボソ

カレンヴィー「え……えええっ!? 夏モガモガ」

レアル「馬鹿! 声がデカイ!」

カレンヴィー「ご、ごめん……」

レアル「全く……何でここにいるんだ?」

カレンヴィー「えっと…………好奇心?」

レアル「…………はぁー……とりあえず、あんまりグチャグチャになったりするなよ?」

カレンヴィー「わ、分かってるよそれくらい!」ムスッ

〜〜

RISA「……」

クラリア「何をキョロキョロしているの? 今回の優勝者ならここよ」

RISA「ちっがうわよ! ……パパ、やっぱり来てるわけないよね……」

ラビッツ「梨沙ちゃんのお父さん、忙しいんですか?」

RISA「うん、すっごく……」

ナチュラル「でも、せっかく娘が頑張るんだから、ちょっとくらい見にきてもいいのに」

RISA「…………」

クラリア「なら、あなたが輝いてパパを振り向かせてみれば?」

RISA「えっ……」

ラビッツ「と、時子ちゃ、さんが……」

ナチュラル「まともそうなことを……」

クラリア「決勝で私に敗れることで、大きな輝きを放てばいいのよ」

RISA「やっぱりそんなこったろうと思ったわよバカ!!」
608 : ◆3QM4YFmpGw [saga sage]:2014/04/14(月) 21:52:04.41 ID:W5RNIWI00
マリン「うう……エンヴィーっぽい人とか親衛隊っぽい人とか強そうすぎる人とかいっぱいで……」

アース「腕が鳴るのう!」

マリン「胃がキリキリ鳴ってるんですけど……」

スカイ「ま、まあまあ。せっかく出たんだし、頑張ろう? ね?」

マリン「……ちょ、ちょっとだけ。ちょっとだけなら……がんばりますけど……」

スカイ「うん、頑張ろう」

アース「さ、ウチの相手は誰じゃ!?」

マリン「……まだ本戦始まってないですけど……」

〜〜

桜餡「…………」キョロキョロ

アーニャ「…………」キョロキョロ

オーフィス「あー……二人も、話せる相手いなくて余ってる感じ?」

桜餡「あ、うん……お恥ずかしながらね」

アーニャ「バイト仲間がいるんですが……話し込んでいて」

オーフィス「ああ……ねえ、良かったら大会の間だけでも友達にならない?」

桜餡「おお、いいねそういうの!」

アーニャ「ダー、賛成です」

オーフィス「決まりだね。私、本名は泉っていうの」ヒソヒソ

桜餡「あずきだよ、よろしくね」ヒソヒソ

アーニャ「気軽に、アーニャと呼んでください」ヒソヒソ
609 : ◆3QM4YFmpGw [saga sage]:2014/04/14(月) 21:54:13.87 ID:W5RNIWI00
J『さあ、雑談はその辺りでおしまいにしていただきましょう!』

亜里沙『長いこと放ってたわねえ』

ウサコ『あわや放送事故ウサ』

アース『お、いよいよか!』

ナイト『ドンと来ーい!』

レアル『さあて……』

J『ただいまより、第一予選を開始します! 第一予選の内容は…………』

オーフィス『……』

東郷『……』

カレンヴィー『……』

J『……………………知力を競う、二択クイズです!!』

桜餡『……ク?』

有香『イ?』

ひなたん『ズ……?』

亜里沙『みなさん、足元をごらんくださーい♪』

甲『足元……おわっ、いつの間にかでっかく《A》と《○》が表示されてるぞ!?』

ラプター『こっち側は《B》と《×》だな……二択って、こういうことか?』

J『そう、これから正面の大ディスプレイに問題が表示されるので、正解だと思うほうへ移動して下さい!』

J『全10問で、シンキングタイムは一問10秒! 一問正解で10pt獲得できまーす!』

J『そして全問終了時のポイントを持ったまま、第二次予選に移動します! では、そろそろ始めますよ!』

ラビッツ『……!』
610 : ◆3QM4YFmpGw [saga sage]:2014/04/14(月) 21:55:40.03 ID:W5RNIWI00
J『画面の前の皆さんも、一緒にお考え下さいね。それでは第一問!』

J《市内に存在する国内最大規模の大学院、京華学院。その敷地面積は東京ドーム約いくつ分?》

J《A:三つ分。B:四つ分。さあ、シンキングタイムスタートです!》

カレンヴィー『え、え、ええっ?』

アーニャ『トウキョウドーム……?』

ファイア『考えてる時間は無いわね。直感で……』

オーフィス(確か、データが……って、カンニングはまずいよね)

J『……はい、そこまでー!』

A:ラビッツ、ナチュラル、甲、RISA、アーニャ、スカイ、アース、01、聖來、桜餡、ファイア、カレンヴィー

B:カミカゼ、乙、ラプター、スカル、クラリア、レアル、マリン、ナイト、ディアブル、有香、オーフィス、ひなたん、東郷

J『結果はこうなりました』

亜里沙『ほぼ五分ねえ』

01『あ、あれ? お二人はそっちでありますか?』

ナイト『うん、なんとなくだけど……』

J『では、正解発表です! 正解は…………』
611 : ◆3QM4YFmpGw [saga sage]:2014/04/14(月) 21:57:21.04 ID:W5RNIWI00





                      『B!』

カミカゼ『っおし!』

乙『ほら、言ったろリーダー』

RISA『え!? そんなにあった!?』

聖來『あちゃー、しくじった……』

J『正解者に10pt加算されます!』

10pt:カミカゼ
  :乙
  :ラプター
  :スカル
  :クラリア
  :レアル
  :マリン
  :ナイト
  :ディアブル
  :有香
  :オーフィス
  :ひなたん
  :東郷
――――――――
00pt:ラビッツ
  :ナチュラル
  :甲
  :RISA
  :アーニャ
  :スカイ
  :アース
  :01
  :聖來
  :桜餡
  :ファイア
  :カレンヴィー
612 : ◆3QM4YFmpGw [saga sage]:2014/04/14(月) 21:58:59.13 ID:W5RNIWI00
J『さあ、次々参りましょう第二問!』

J《アイドルヒーロー同盟に所属するメカニック、原田美世の愛車である超☆特殊装甲車》

J《その最高速度は、150km/hである。○か、×か!?》

ひなたん『えっと……あ、そうなりそうなり』

桜餡『んー……?』

ラビッツ『どっちかなー……』

有香『恐らく……』

J『そこまでー!』

○:甲、乙、RISA、スカル、クオリア、アーニャ、スカイ、マリン、ナイト、01、有香、オーフィス、東郷、カレンヴィー

×:ラビッツ、ナチュラル、カミカゼ、ラプター、レアル、アース、ディアブル、聖來、桜餡、ファイア、ひなたん

J『若干○が多いでしょうか』

亜里沙『そのくらい出してほしい、という願望込みかしらねえ』

スカイ『多分、それくらい……』

カミカゼ『へへっ……』

J『さあ、正解は……』
613 : ◆3QM4YFmpGw [saga sage]:2014/04/14(月) 22:00:20.75 ID:W5RNIWI00





                      『×!』

J『本当の速度は、ご本人に答えていただきましょう! 原田美世さん、どうぞ!』

美世『本当は170km/h! ずっとずっと速いんだよー!』

J『はい、というわけで美世さんにお越しいただきました。美世さん、ありがとうございました』

美世『いえいえ、こちらこそ』

東郷『設問より遅いパターンじゃなく速いパターンだったか……』

J『正解者に10pt!』

20pt:カミカゼ
  :ラプター
  :レアル
  :ディアブル
  :ひなたん
――――――――
10pt:ラビッツ
  :ナチュラル
  :乙
  :スカル
  :クラリア
  :マリン
  :アース
  :ナイト
  :聖來
  :桜餡
  :有香
  :ファイア
  :オーフィス
  :東郷
――――――――
00pt:甲
  :RISA
  :アーニャ
  :スカイ
  :01
  :カレンヴィー
614 : ◆3QM4YFmpGw [saga sage]:2014/04/14(月) 22:01:58.67 ID:W5RNIWI00
J『ドンドンいきましょう第三問!』

J《古くから日本の行く末を守ってきた四つの家系、四代名家。相原、榊原、西園寺、涼宮》

J《この内、軍事を司るのは? A:相原。B:榊原。さあ移動してください!》

RISA『えっと……え? こっち?』

レアル『確か、こっちだよな……』

ナイト『…………やっば……』

アース『……こっちじゃな!』

J『そこまで!』

A:ラビッツ、ナチュラル、甲、乙、RISA、ラプター、クラリア、レアル、スカイ、マリン、アース、01、ディアブル、
:有香、オーフィス、ひなたん、東郷

B:カミカゼ、スカル、アーニャ、ナイト、桜餡、ファイア、カレンヴィー

J『Aがかなり多いですね』

ウサコ『ぶっちゃけサービス問題ウサ』

ファイア(……政治とか経済とか、昔っから苦手なのよね……)

J『正解はこちら!』
615 : ◆3QM4YFmpGw [saga sage]:2014/04/14(月) 22:03:22.60 ID:W5RNIWI00





                      『A!』

RISA『やった初得点!』

ラビッツ『ベアー檄でしたっけ? 懐かし……うぉっほん!!』

J『榊原は教育です。ちなみに、西園寺が経済で涼宮が政治ですね』

ナイト『二人ともごめん……もう片方が涼宮なら分かったんだけど……』

ディアブル『い、いえ、お気になさらず……』

J『正解者に10pt!』

30pt:ラプター
  :レアル
  :ディアブル
  :ひなたん
――――――――
20pt:ラビッツ
  :ナチュラル
  :カミカゼ
  :乙
  :クラリア
  :マリン
  :アース
  :聖來
  :オーフィス
  :東郷
――――――――
10pt:甲
  :RISA
  :スカル
  :スカイ
  :ナイト
  :01
  :桜餡
  :有香
  :ファイア
――――――――
00pt:アーニャ
  :カレンヴィー
616 : ◆3QM4YFmpGw [saga sage]:2014/04/14(月) 22:04:40.19 ID:W5RNIWI00
J『ラプター、パーボ・レアル、ノーヴル・ディアブル、ひなたん星人は現在パーフェクトですね』

亜里沙『他のみんなも頑張ってね〜♪』

J『続いて第四問!』

J《現在GDFの主戦力でもある、カースの泥の中でも推進力が減退しない特殊な銃弾》

J《その銃弾の名前は、『13.3mmウサミン弾』である。○か、×か!?》

乙『えー、そこまではわかんねえな……』

ラプター『……こりゃ勘だな』

アーニャ『……銃なら、ワカルワ、です』

カレンヴィー『うーん……?』

J『はいそこまでー!』

○:ラビッツ、ナチュラル、乙、RISA、ラプター、アース、ナイト、ディアブル、ファイア、オーフィス、ひなたん

×:カミカゼ、甲、スカル、クラリア、レアル、アーニャ、スカイ、マリン、01、聖來、桜餡、有香、東郷、カレンヴィー

J『微妙に×が多いですね』

ウサコ『本職GDFかよっぽどの武器マニアじゃなきゃ分かんないウサ』

甲『相棒が向こういくとすげえ不安だ……』

J『正解はこちら!』
617 : ◆3QM4YFmpGw [saga sage]:2014/04/14(月) 22:05:57.71 ID:W5RNIWI00





                      『×!』

J『正しくは『12.7mmウサミン弾』でした』

桜餡『直感大的中ー!』

クラリア『また一歩頂点に近づいたわね』

ナチュラル(既に一問落としてるのは……黙ってた方がいいのかな?)

オーフィス『ああ、直径が違ったんだ……』

J『正解者に10pt!』

40pt:レアル
――――――――
30pt:カミカゼ
  :ラプター
  :クラリア
  :マリン
  :ディアブル
  :聖來
  :ひなたん
  :東郷
――――――――
20pt:ラビッツ
  :ナチュラル
  :甲
  :乙
  :スカル
  :スカイ
  :アース
  :01
  :桜餡
  :有香
  :オーフィス
――――――――
10pt:RISA
  :アーニャ
  :ナイト
  :ファイア
  :カレンヴィー
618 : ◆3QM4YFmpGw [saga sage]:2014/04/14(月) 22:07:44.49 ID:W5RNIWI00
J『さあ、ここでパーボ・レアルが単独首位に躍り出ました!』

オォォー

レアル『な、なんか照れるな……』

ラプター『……ウサミン弾なのに間違えてんのか?』

ラビッツ『そんな事言われても!』

J『さあ、折り返し地点の第五問!』

J《市内に存在する、カフェ・マルメターノ。こちらは夜、不定期に別の顔を見せますが……》

J《その別の顔とは一体何? A:ワインバー。B:賭場》

レアル(何この個人的サービス問題)

ファイア『ようやくはっきり分かる問題が……』

スカイ『こ、子供には縁遠すぎる問題じゃないですか?』

RISA『そうよね、設問担当何考えてんのかしら……』

J『そこまでー!』

A:ラビッツ、ナチュラル、カミカゼ、RISA、クラリア、レアル、スカイ、マリン、ディアブル、聖來、有香、ファイア、東郷

B:甲、乙、ラプター、スカル、アーニャ、アース、ナイト、01、桜餡、オーフィス、ひなたん、カレンヴィー

J『分かれましたねー』

亜里沙『子供組は本当に悩んでいたわねえ』

スカル『……ところでトバって何ですか?』

アース『マジか』

ひなたん『マジひなた?』

J『正解は……』
619 : ◆3QM4YFmpGw [saga sage]:2014/04/14(月) 22:08:42.41 ID:W5RNIWI00





                      『A!』

J『ちなみに、この番組はカフェ・マルメターノその他諸々の提供でお送りしておりまーす』

東郷『大人の事情炸裂だね』

聖來『何かモヤモヤしちゃうね』

J『正解者に10pt!』

50pt:レアル
――――――――
40pt:カミカゼ
  :クラリア
  :マリン
  :ディアブル
  :聖來
  :東郷
――――――――
30pt:ラビッツ
  :ナチュラル
  :ラプター
  :スカイ
  :有香
  :ひなたん
――――――――
20pt:甲
  :乙
  :RISA
  :スカル
  :アース
  :01
  :桜餡
  :ファイア
  :オーフィス
――――――――
10pt:アーニャ
  :ナイト
  :カレンヴィー
620 : ◆3QM4YFmpGw [saga sage]:2014/04/14(月) 22:10:24.67 ID:W5RNIWI00
J『依然パーボ・レアルが首位独走! 彼女を止めるヒーローはいるのか!?』

ナイト『ヤバイヤバイヤバイヤバイ……』

アーニャ『少し、まずいです……』

カレンヴィー『つ、次は正解しなきゃ……』

J『頑張って下さい! では第六問!』

J《アイドルヒーロー同盟とも協力関係にある何でも屋、イヴ非日常相談所》

J《所長、イヴ・サンタクロースのペットであるトナカイの名前はブリッツェンである。○か×か!?》

桜餡『む、無駄に響きがかっこいい……』

東郷『トナカイか……ふむ……』

アース(……チャンス問題じゃな!)

J『そこまでっ!』

○:ラビッツ、ナチュラル、乙、RISA、ラプター、アーニャ、スカイ、マリン、アース、桜餡、有香、カレンヴィー

×:カミカゼ、甲、スカル、クラリア、レアル、ナイト、01、ディアブル、聖來、ファイア、オーフィス、ひなたん、東郷

J『ちょっと面白い形になりましたねー、ナチュルスターが全員○でフルメタル・トレイターズが全員×です』

ウサコ『ナチュルスターの方はスゴイ自信ありげウサー』

J『正解は……』
621 : ◆3QM4YFmpGw [saga sage]:2014/04/14(月) 22:12:00.55 ID:W5RNIWI00





                      『○!』

J『ちなみに、ブリッツェンとはドイツ語で『雷』という意味です』

甲『トナカイの名前にするような単語じゃねえだろ!』

ひなたん『そうナリ! 断固抗議するひなた!』

オーフィス『それ、飼い主に言ったほうが……多分無駄そうだけど』

J『正解者に10pt!』

50pt:レアル
  :マリン
――――――――
40pt:ラビッツ
  :ナチュラル
  :カミカゼ
  :ラプター
  :クラリア
  :スカイ
  :ディアブル
  :聖來
  :有香
  :東郷
――――――――
30pt:乙
  :RISA
  :アース
  :桜餡
  :ひなたん
――――――――
20pt:甲
  :スカル
  :アーニャ
  :01
  :ファイア
  :オーフィス
  :カレンヴィー
――――――――
10pt:ナイト
622 : ◆3QM4YFmpGw [saga sage]:2014/04/14(月) 22:13:24.02 ID:W5RNIWI00
J『さあ! ナチュルマリンがパーボ・レアルに肩を並べたぁ!!』

ウォオー

マリン『えぅ……あんまり目立ちたくないんですけど……』

J『そして単独最下位のアビスナイト、まだまだチャンスはあります!』

ナイト『わざわざ言うなし!』

J『参りましょう第七問!』

J《秋炎絢爛際辺りから目撃例が出始めた、海底都市の戦闘外殻とはまた違った特性を持つ金属生命体、エクス・マキナ》

J《彼らが武器に変形した状態の名は? A:アームズ形態。B:ガイスト形態》

RISA(サービス問題いただき!)

東郷(……そういえば、美波君が蠍を連れていたな)

スカル『RISAさんについていきますです』

桜餡『……よし、こっち!』

J『そこまで!』

A:カミカゼ、甲、乙、レアル、スカイ、マリン、01、有香、ファイア、ひなたん、カレンヴィー

B:ラビッツ、ナチュラル、RISA、ラプター、スカル、クラリア、アーニャ、アース、ナイト、ディアブル、聖來、桜餡、
:オーフィス、東郷

J『かなりB寄りですね』

亜里沙『というか、一人現在進行形でエクス・マキナを連れてる子がいるのよねえ』

カレンヴィー『え? あ、本当だ!』

01『しまった……完全に見逃していたであります……!』

J『まあそんなわけで正解発表といきましょう!』
623 : ◆3QM4YFmpGw [saga sage]:2014/04/14(月) 22:14:36.63 ID:W5RNIWI00





                      『B!』

カミカゼ『ちくしょう、凡ミスだ……』

レアル『入場アナウンスちゃんと聞いとけばよかったな……』

有香『緊張でそれどころではありませんでした……』

ウサコ『A側が凹みに凹みまくってるウサ』

J『それはさておき正解者に10pt!』

50pt:ラビッツ
  :ナチュラル
  :ラプター
  :クラリア
  :レアル
  :マリン
  :ディアブル
  :聖來
  :東郷
――――――――
40pt:カミカゼ
  :RISA
  :スカイ
  :アース
  :桜餡
  :有香
――――――――
30pt:乙
  :スカル
  :アーニャ
  :オーフィス
  :ひなたん
――――――――
20pt:甲
  :ナイト
  :01
  :ファイア
  :カレンヴィー
624 : ◆3QM4YFmpGw [saga sage]:2014/04/14(月) 22:16:20.46 ID:W5RNIWI00
J『さあ、上位陣が混沌としてまいりました!』

ウサコ『そういえば、さっきからラビッツムーンとナチュラルラヴァースはずっと一緒に移動してるウサ』

亜里沙『本当に仲良しさんなのねえ』

J『では参りましょう第八問! いえ、第8問!』

ウサコ『何故言い直したウサ?』

J『八ではなく、8に相応しい問題をご用意しました!』

J《眼鏡を護り眼鏡を広める眼鏡ヒーロー、マスク・ド・メガネが持つ、88の眼鏡奥義。その中に、》

J《『メガネアイドルとしてデビューした後に引退し、優秀なメガネプロデューサーになる』というものがある。○か×か!?》

全員(…………いや、知らん…………)

甲『眼鏡、だぁ……!?』

J『さあ、全員よく分からずウロウロしております! ヤイバー・甲のみイライラしております!』

ウサコ『やめたれウサ』

J『はい。そこまでー!』

○:ラビッツ、カミカゼ、乙、スカル、レアル、アーニャ、スカイ、01、ディアブル、桜餡、有香、ファイア、カレンヴィー

×:ナチュラル、甲、RISA、ラプター、クラリア、マリン、アース、ナイト、聖來、オーフィス、ひなたん、東郷

J『おおっと! 問題のよく分からなさに、ラビッツムーンとナチュラルラヴァースの意見が初めて別れたぁ!!』

ナチュラル『いやもうこんなの分からないよ……』

聖來『っていうかこれはもう技なの……?』

J『正解はー……』
625 : ◆3QM4YFmpGw [saga sage]:2014/04/14(月) 22:17:39.39 ID:W5RNIWI00





                      『○!』

全員『あるんかい!!』

亜里沙『あら、みんなの心が一つに』

東郷『そんないいもんじゃないぞ……』

乙『リーダー、落ち着け! な!?』

J『正解者に10pt!』

60pt:ラビッツ
  :レアル
  :ディアブル
――――――――
50pt:ナチュラル
  :カミカゼ
  :ラプター
  :クラリア
  :スカイ
  :マリン
  :聖來
  :桜餡
  :有香
  :東郷
――――――――
40pt:乙
  :RISA
  :スカル
  :アーニャ
  :アース
――――――――
30pt:01
  :ファイア
  :オーフィス
  :ひなたん
  :カレンヴィー
――――――――
20pt:甲
  :ナイト
626 : ◆3QM4YFmpGw [saga sage]:2014/04/14(月) 22:19:07.27 ID:W5RNIWI00
J『ラビッツムーン、パーボ・レアル、ノーヴル・ディアブルが頭一つ抜け出たー!!』

ラビッツ『ぶっちゃけ勘でしたけどね……』

レアル『勘以外無理だろ、今の……』

ディアブル『というか、マスク・ド・メガネさんという方をご存知の方、ここに今いらっしゃらないのでは……』

J『続いて第九問!』

J《現在女子高生を中心に人気の屋台、通称マルメターノおじさん。その屋台のマスコットキャラの名前は?》

J《A:かわしまさん。B:わかるわさん。さあ移動してください!》

レアル(屋台までは、流石にな……)

ディアブル(そういえば、一度見かけた事が……)

ひなたん(これは分かったひなた!)

J『そこまで!』

A:ラビッツ、ナチュラル、カミカゼ、RISA、アーニャ、スカイ、マリン、アース、ディアブル、桜餡、ひなたん、カレンヴィー

B:甲、乙、ラプター、スカル、クラリア、レアル、ナイト、01、聖來、有香、ファイア、オーフィス、東郷

J『結果はこのようになりました』

聖來『確か一度だけ見た時、わかるわ、って鳴いてたような……』

オーフィス『うん、確かにそう鳴いてた』

桜餡『えっ……まさかミスった……?』

J『正解はこちら!』
627 : ◆3QM4YFmpGw [saga sage]:2014/04/14(月) 22:20:11.15 ID:W5RNIWI00





                      『A!』

亜里沙『鳴き声は『わかるわ』だけど、名前はあくまでかわしまさんなのね』

ウサコ『可愛さ的にウサコのライバルウサ』

アース(しかしホントに川島先生によく似とるの……)

クラリア『センスがなってないわね。私ならわかるわさんと名づけたわ』

J『正解者に10pt!』

70pt:ラビッツ
  :ディアブル
――――――――
60pt:ナチュラル
  :カミカゼ
  :レアル
  :スカイ
  :マリン
  :桜餡
――――――――
50pt:RISA
  :ラプター
  :クラリア
  :アーニャ
  :アース
  :聖來
  :有香
  :東郷
――――――――
40pt:乙
  :スカル
  :ひなたん
  :カレンヴィー
――――――――
30pt:01
  :ファイア
  :オーフィス
――――――――
20pt:甲
  :ナイト
628 : ◆3QM4YFmpGw [saga sage]:2014/04/14(月) 22:21:34.53 ID:W5RNIWI00
J『さあ、いよいよ最終問題ですが……スペシャルターイム!!』

アーニャ『!?』

J『最終問題はなんと! 正解すると倍の20pt!!』

甲『おおっ!』

J『しかーし! 不正解だと逆に-20ptになってしまいます!!』

マリン『ぅえっ……』

カレンヴィー『テレビでよくあるやつだ』

オーフィス『これもテレビだけどね』

J『では、問題です!!』

J《海底都市所属の戦闘用アンドロイドの名前は、『イワッシャー』である。○か、×か?》

全員『…………えっ?』

J『さあ、お考えください!』
629 : ◆3QM4YFmpGw [saga sage]:2014/04/14(月) 22:23:34.84 ID:W5RNIWI00
ラビッツ(……○ですよね? ライラちゃんが連れてる、あれのことですよね? うん、○です!)

ナチュラル(シャルクさんとガルブさんが名乗ってたもんね、『カスタムイワッシャー』って。○だ)

カミカゼ(引っ掛けか? にしちゃあ引っ掛ける要素が無い……まっすぐ○いっとくか)

甲(……一回闘ったが、『イワッシャー!』って言ってたよな。○!)

乙(これで得点二倍って、ちょっと美味しすぎるよな……まあ、○でいいだろ)

RISA(海底人二人とも○行ってるし、○よね、うん)

ラプター(なんだこりゃ? 設問ミスか……ま、ありがたく20ptいただくが。○だ、○)

ライラ(分かる問題でよかったです。○でございますね)

クラリア(大衆を同じ道を選ぶのは癪だけれど……真実が○である以上仕方ないわね)

レアル(そりゃ○……って待て、戦闘用? ……LPさんが安斎探偵事務所で取ってきた資料には…………あっ!!)

アーニャ(イ、ワッシャー……きっと、○です。……多分)

スカイ(○……だよね? イワシみたいな形してたし……)

マリン(わ、わざと間違えて予選落ちとか……でも、こんな問題でわざと間違える度胸無いんですけど……)

アース(名前は知らんが、確かに『イッシャー』とか『ワシャー』とか言うとったの。○じゃな!)

ナイト(○、○! 良かったぁ、0ptだけは避けられた〜)

01(ふふ、とんだサービス問題でありますな。ずばり、○であります!)

ディアブル(流石に皆さん○に移動していますわね……これではスペシャルタイムの意味が無いような……?)

聖來(あー、あれね。マリナさんに話聞いてて良かった。○だよね)

桜餡(んー……わかんないけど、みんな○に行ってるから○だよね、多分)

有香(修行のために何度か戦いましたが……鳴き声から推測するに○でしょう!)

ファイア(運がいいわ、最後の最後で楽な問題に当たるなんて。○ね)

オーフィス(海底都市出身者が二人とも○に移動してる……○で間違い無さそうだね)

ひなたん(あのイワシさんとはさんざん戦ったナリ。○で間違いないひなた!)

東郷(少し簡単すぎる気も……考えすぎか。遭遇しない者にとっては分からない問題だからね。○だ)

カレンヴィー(分かんないなあ……みんな○に移動してるけど…………あれ、夏樹?)

J『はい、そこまでー……っと、おお、これは!?』
630 : ◆3QM4YFmpGw [saga sage]:2014/04/14(月) 22:25:07.72 ID:W5RNIWI00
○:ラビッツ、ナチュラル、カミカゼ、甲、乙、RISA、ラプター、スカル、クラリア、アーニャ、スカイ、マリン、アース、
 :ナイト、01、ディアブル、聖來、桜餡、有香、ファイア、オーフィス、ひなたん、東郷

×:レアル、カレンヴィー

J『未だかつて無い別れ方だ! パーボ・レアルとカレンヴィーを除いて、全員が○ッ!!』

ザワザワザワザワ

カミカゼ(夏樹あの馬鹿ッ! まさか知らねえのか!?)

ナイト(えっと、これで星花が二位……賞金ゲットにグッと近づいたね!)

カレンヴィー「ね、ねえ夏樹……」ヒソヒソ

レアル『………………』

J『……では! 泣いても笑っても最後の正解発表です!』

ラビッツ『…………』

甲『…………』

アース『…………』

オーフィス『…………』

J『正解は……』
631 : ◆3QM4YFmpGw [saga sage]:2014/04/14(月) 22:26:08.54 ID:W5RNIWI00





                      『×!』

ナイト『…………へっ?』

桜餡『あ、あれ……?』

ラプター『……ア、アポ……?』

カレンヴィー『…………え、え、ええっ!?』

レアル『ふぅ……正解だったか』

カミカゼ『お、おいちょっと待て! どういうことだ!?』

クラリア『納得行く理由を答えてみなさい』

J『では解説は、アイドルヒーロー同盟事務員である、シャルクさんにお願いします!』

シャルク『どうも、ごしょうかいにあずかりました、シャルクともうします』

J『では、解説を』

シャルク『はい。たしかに、わたしやガルブらのそうしょうはイワッシャーです』

聖來『だったら……』

シャルク『しかし。イワッシャーはほんらいせんとうようではなく、ちあんいじようのアンドロイドなのです』

有香『な、なんと!? 治安維持!?』

東郷『アリなのか、それ……?』

シャルク『アリです』

ナチュラル『そ、そんなあ……』

01『しかしそうなると……確かに×が正解になります……ぐぬぬ』
632 : ◆3QM4YFmpGw [saga sage]:2014/04/14(月) 22:27:03.59 ID:W5RNIWI00
J『はい、というわけで正解者に20pt! そして不正解者に-20ptいっきにどうぞ!!』

80pt:レアル
――――――――
60pt:カレンヴィー
――――――――
50pt:ラビッツ
  :ディアブル
――――――――
40pt:ナチュラル
  :カミカゼ
  :スカイ
  :マリン
  :桜餡
――――――――
30pt:RISA
  :ラプター
  :クラリア
  :アーニャ
  :アース
  :聖來
  :有香
  :東郷
――――――――
20pt:乙
  :スカル
  :ひなたん
――――――――
10pt:01
  :ファイア
  :オーフィス
――――――――
00pt:甲
  :ナイト
633 : ◆3QM4YFmpGw [saga sage]:2014/04/14(月) 22:28:08.55 ID:W5RNIWI00
J『最終結果はこうなりました!』

甲・ナイト『『いやああああああああああ!!』』

ウサコ『0ptの慟哭が響くウサ』

01『お、落ち着くでありますナイト! まだ第二予選があります!』

乙『そうそう! だから慌てんなってリーダー!』

J『その通り! 第二予選が終わるまではまだ分かりません! アビスナイトが本戦出場してパーボ・レアルが予選落ち!!
 ……なーんてこともまだ十二分にありえます!』

RISA『面白いじゃない!』

クラリア『そう来なくてはね』

ひなたん『燃えてきたひなた!』

ラビッツ『挽回しますよー!』

J『皆さん気合充分ですね! ある一名を除いて!』

マリン『うぅ……逃げられるものなら逃げたいんですけど……』

東郷『ここまで来てしまったんだから、もう腹を括りたまえよ君も』

J『それでは、早速第二予選と参りましょう! 皆さん、前方をご覧下さい!!』

ギィィィィ

全員『!!』

続く
634 : ◆3QM4YFmpGw [saga sage]:2014/04/14(月) 22:30:26.04 ID:W5RNIWI00
以上、二次予選に続く

言い忘れましたが酉変更した元・◆llXLnL0MGkでしたー
635 : ◆zvY2y1UzWw [sage ]:2014/04/14(月) 22:33:32.05 ID:3Ob5ouxN0
乙です
いま、我が子を見守る親の気持ち…(多分)
夏樹の予想以上の的中率にちょっといま感動してる

ちなみにシンキングタイムのセリフはは見ないように解いてたら最後に見事に引っかかって50ポイントでしたよぉ!
636 : ◆AZRIyTG9aM [sage]:2014/04/14(月) 22:35:16.65 ID:z37zUW56O
乙ー

ところどころ問題で吹くwww

カレンヴィーまさかの予選2位wwwなつきちすげぇwww

ナイトと甲……がんばれ!そしてもりくぼぉ!逃げるなぁ!

637 : ◆Mq6wnrJFaM [sage saga]:2014/04/14(月) 22:41:34.69 ID:MiXJKY80o
おつ

バカってわけではないはずだけど、カミカゼが上から数えた方が早い位置に居るとは思わなんだ……ww
638 : ◆6osdZ663So [sage]:2014/04/15(火) 00:54:42.89 ID:asWJwG70o
乙ですー
クイズほとんどわからないわだったわ…
勘で考えざるをえず
美穂ちゃんも調子良くなさそうです応援しなきゃ
639 : ◆zvY2y1UzWw [sage ]:2014/04/15(火) 19:38:57.61 ID:b1gnELZX0
夕美ちゃんの誕生日ですよ、誕生日!
って事で投下
640 : ◆zvY2y1UzWw [saga sage]:2014/04/15(火) 19:39:50.86 ID:b1gnELZX0
某日、某会場

サイリウムを持った人々が、今か今かとその時を待ち構えている。

ざわざわと、ざわざわと…落ち着きなく。

そこに、そのざわめきを完全に停止させる声が響いた。

菜々「会場に来ていただいたファンのみなさーん!!ちゃーんと、後ろの人まで、みえてますからねー!!」

「「「「「「「オオオオオオオオオオォォォ!!」」」」」」」

ざわめきは歓声に変わり、桃色の光を放つサイリウムで客席は染まる。

大人気アイドルヒーロー、ラビッツムーンこと安部菜々がステージの真ん中へ立ち、観客に手を振る。

菜々「みなさん、すごい歓声ですね〜!!けど、今回の主役はナナじゃないんですからね!間違えないように!」

菜々「ではでは!今日の『相葉夕美・誕生日記念ライブ』!主役に登場してもらいましょう!!夕美ちゃーん!!」

「「「「「「「「夕美ちゃぁぁぁぁぁぁん!!」」」」」」」」

ピンクのサイリウムはひっこめられ、今度はオレンジと緑色の二色の光が観客席を染めた。
641 : ◆zvY2y1UzWw [saga sage]:2014/04/15(火) 19:41:36.67 ID:b1gnELZX0
夕美「みんなー!今日のライブに来てくれて、ありがとーっ!誕生日をナナちゃんや、ファンのみんなと一緒に迎えられて、とっても嬉しいなっ!」

緑色の蝶の羽をきらめかせながら、アイドルヒーローのナチュラルラヴァースこと、相葉夕美が天井から降りてきた。

「「「「「「「「ワァァァァァァァッ!!」」」」」」」」

――せっかくの誕生日ライブなのに正式にはユニットではない菜々も一緒でいいのか?

――ファンに聞けばこう答えるだろう

――『菜々ちゃんさんは夕美ちゃんが自ら呼んでいるから問題ないんですよ』

――『というかむしろ何でユニットじゃないんですかね』

観客の上を旋回し、夕美はゆっくりと舞い降りる。

ステージに足をつけた瞬間に、イントロが流れ始めた。

夕美「じゃあ、さっそく一曲目!曲名は――」
642 : ◆zvY2y1UzWw [saga sage]:2014/04/15(火) 19:43:36.42 ID:b1gnELZX0
―――ライブ終了後、プロダクション経営女子寮・菜々の部屋

やっとライブも終わって、いろんな事を終わらせ、帰ってきたのは夜遅くだった。

菜々はベッドに座って、横に座った夕美を労わる。

菜々「ふぅ…夕美ちゃんの誕生日ライブ、盛り上がってよかったですね!」

夕美「うん、ファンのみんなも楽しそうだったね♪…でも…もう結構遅い時間だね…楽しかったのに、もうすぐ今日も終わっちゃう」

菜々「もう夜遅い時間ですねー…夕方からのライブでしたし、仕方ないことだとは思いますけど」

夕美「カースとかが近くに出なかっただけ運が良いのかな?誕生日プレゼントも今日は忙しくて殆どもらえてないなぁ…」

夕美「あっ、でもプロデューサーさんからケーキ貰っちゃった♪いい人だよね!今から食べる?」

菜々「い、いまからはちょっとキツイですね…そうそう、しっかりナナからもプレゼント、あるんですよ!」

夕美「ほんと!?…わぁ!ナナちゃんのプレゼント、待ってたんだよ!」

菜々「えへへ、そこまで楽しみでしたか?期待に応えられるのか、ちょっと不安ですけど…はい、プレゼントです!」

菜々が手渡したのは可愛らしくラッピングされた箱。そこそこの重量で、中身がアクセサリーなどではないと、夕美は直感した。
643 : ◆zvY2y1UzWw [saga sage]:2014/04/15(火) 19:45:58.63 ID:b1gnELZX0
夕美「…今ここで開けてみてもいいかな?」

クリスマスに枕元のプレゼントを見つけた子供のように、期待に満ちた表情で夕美は尋ねる。

菜々「もっちろんです!ささ、どうぞ一思いにババーンと!」

夕美「ばばーん…?えっと、待ってね。まずは包装を剥がさないと…」

菜々「あう、うっかりしてました…てへ☆」テヘペロ

夕美(ちょっと古い気がするけど、そんな事より菜々ちゃんかわいい)

リボンを解き、可愛らしいウサギが描かれた包装紙のセロハンテープを包装紙が破けないように丁寧に剥がす。

包装紙の中にはシンプルな茶色い箱。その蓋に手をそえる。…ちょっとした緊張か、思わず口から息が漏れる。

夕美「…じゃあ、ばばーんと開けちゃうね!」

宣言通りにババーンと開けると、綿に包まれたリスのぬいぐるみが中に入っていた。

オレンジ色のドレスに、シロツメクサの花冠。尻尾には赤いリボンが結ばれている。

菜々「お花とか、アクセサリーもいいかなっって考えたんですけど…これを見たら絶対夕美ちゃんに買わなきゃ!って思って…」

夕美「…」

夕美はそのぬいぐるみを箱の中から取り出して、ギュッと抱いてみた。

夕美「すごい、ふかふかでもふもふしてる…」モフモフモフモフ

菜々「でしょう!ドレスとか抜きでも、このぬいぐるみ単体でかなり高評価なモノなんですよ!菜々も前から気になってたんですっ」
644 : ◆zvY2y1UzWw [saga sage]:2014/04/15(火) 19:47:51.39 ID:b1gnELZX0
夕美「…このリボンも?」

尻尾の赤いリボンには、緑の糸で「YUMI」とちょっと歪んだ形で刺繍されていた。

菜々「えっと、それはナナが自分でやってみたんです。全部買ったものっていうのも夕美ちゃんに失礼な気がして…ヘン、でしたか?それともやっぱり蛇足?」

夕美「…ううん、じゃあこの子は世界で1つだけの、ナナちゃんがくれた私だけのぬいぐるみだね!」

菜々「そ、そうですよ!オンリーワン!ナンバーワンよりオンリーワンです!」

夕美「それにとってもかわいい…。ナナちゃんも、この子も…とってもかわいいよっ♪」

菜々「夕美ちゃんの誕生日なのに菜々が褒められてしまってるんですけど!?」

夕美「あっ…うーん、それじゃあ、ナナちゃんが私を褒めてみればいいんじゃないかな?」

菜々「その発想はありませんでした…!こほん、ぬいぐるみ抱っこしている夕美ちゃん、とーってもかわいいですよ!」

夕美「ホント?」

菜々「はいっ!ライブの時も、アイドルヒーローの時も…夕美ちゃんは頑張ってて、菜々も頑張ろうって気持ちになれます!」

夕美「菜々ちゃん、なんか恥ずかしくなってきた…えへへ」

菜々「…でもステージの上の夕美ちゃん、本当に楽しそうですよ?いつも、いつでも…」

夕美「ふふっ、前もそんな事言ってたよね。そんなに印象的?」

菜々「当たり前じゃないですか、ファンのみんなもきっとそう思ってますよ?」
645 : ◆zvY2y1UzWw [saga sage]:2014/04/15(火) 19:48:54.56 ID:b1gnELZX0
夕美「…」

あの日の前も、あの日の後も、精霊としての能力はほぼ隠しながら生きてきた。時々現れる植物を傷つける存在を懲らしめる程度で。

一般的な少女フリをしながら、自然の声を聞いて生きていた。

植物が自分の恋人だから。恋人さえいれば十分だと思っていた。友人などいなかった。

いつかこの星を植物で覆い尽くすから。…それでも当時から音楽や踊ることは好きだった。

生活に必要なお金は、ダンスを仕事にすることで細々と稼いでいた。

菜々との出会いは本当に偶然だったはずだ。あの時の自分はあるアイドルのバックダンサーで、菜々は観客だった。

菜々は何故か自分の事をよく覚えていた。本人は『今まで見たどんな人よりも、楽しそうだったから』と言っていたけど。

偶然お互いが戦えることを知って、お互いが異星の者だと知って、そして二人で踊り始めて、今のプロダクションにスカウトされた。

そして、菜々は友達の居なかった自分の親友になってくれた。
646 : ◆zvY2y1UzWw [saga sage]:2014/04/15(火) 19:50:02.98 ID:b1gnELZX0
『世界樹様、どうして私は人と同じ姿なのかな?他にも人みたいな子はいるけど、あの子は鳥の姿、あの子は葉の姿なのに…』

『ユミ、それは考えてはいけない。生まれた時からそう決まっていたんだ』

『決まっていた?』

『ユミ、お前は仕事をしていなさい。思考するのは自由だ。だがタブーもこの世にはある』

『…はい、世界樹様』
647 : ◆zvY2y1UzWw [saga sage]:2014/04/15(火) 19:51:16.54 ID:b1gnELZX0
…たまに自分の事がわからなくなる。何がしたいのか、何をすべきなのか。そして何が正しいのか、何が間違いなのか。

だから何故自分は人に似た姿で生まれてしまったのだろうと、思ってしまったことが何度かある。

だから自分で考え方を変えてみた。植物も、星も、世界樹も関係ない、『大精霊ユミ』ではない『相葉夕美』として、思考してみた。

『恋人たち』も、友達も、仲間も、大切。自分の歌で、自分の踊りで、喜んでくれるファンも…大切だ。

みんながいれば、植物も、生き物も…共生できる。そう『相葉夕美』は信じているのだ。…立場も目的も忘れた自分は。

少しだけ、夢見がちかもしれないけれど、信じている。

自分が人と似ているのは、心が似ているから?

本当の理由は知らないけれど、そう考えるといくらか気分は安らいだ。

悩むのも、苦しいのも、人と同じなら…一人ぼっちじゃないから。

誰かを愛おしく思うのも、音に身を任せて踊るのも…しっかりとした自分の思いだと信じられるから。

自分は、自分だ。

この星の担当は自分。なら、この星を守るのも…おかしくはない。それに、まだ時間はいくらでもある。

…自分に時間はあっても、彼女には無いのだろうけど。
648 : ◆zvY2y1UzWw [saga sage]:2014/04/15(火) 19:52:05.53 ID:b1gnELZX0
夕美「…ナナちゃん、ちょっと疲れちゃった。ケーキはこの部屋の冷蔵庫に入れたし、明日食べようかなぁ」

菜々「ふふっ、今日の夕美ちゃんはいつもより甘えん坊ですねぇ…」

夕美「そう言わないでよ、今日くらいいいでしょ?」

まるで子供を見守る母親か祖母のように菜々は膝に寝転んできた夕美の頭を撫でる。

菜々「今日はライブがあって無理でしたけど…明日は事務所の皆もお祝いしてくれると思いますよ♪」

夕美「そっか、それも楽しみだなぁ♪…それに、菜々ちゃんの誕生日だって丁度一か月後なんだよ?嬉しいなぁ…」

ポンッと音を立てて、夕美は省エネモードな小さい姿へ変わった。

僅かなエネルギーで人とほぼ同じ機能を使うにはこの体系が理想的なのだ。ぷちどると姿が似ているのは、そんなところが関係しているのだろう。

そのままぎゅっと抱き着いた。…その頭に小さな花が咲いていた。

菜々「…この花、勿忘草ですね?」

花に触れないように、優しく頭を撫でる。

菜々「この花は…夕美ちゃんとナナ、ふたりのおそろいの誕生花ですね。花言葉は…『真実の愛』。それに…『忘れないで』」

少しだけ…撫でる手も、唇も動きを止める。

菜々「…忘れませんよ、ナナは、夕美ちゃんの親友ですもん。ずっとお友達ですよ。…なーんて」

口にはせずに「嗚呼、でも」と唇だけが紡ぐ。それを夕美はしっかり感じていた。

ウサミン星の話は、菜々は夕美はまだ知らないと思っている。だから、苦しんでいるのかもしれない。

小さな夕美は、撫でる菜々の手を、静かに撫でる。
649 : ◆zvY2y1UzWw [saga sage]:2014/04/15(火) 19:52:33.95 ID:b1gnELZX0
夕美「忘れないよ、何年たっても。悩んでいるなら悩んでいいよ、納得できるまで」

ポンッと再び人の姿になって、真正面から夕美は菜々を見つめる。

夕美「私は、ナナちゃんの味方だよ。遠く離れても、近くに居ても」

菜々はその真剣な表情に少しだけ緊張し、その言葉にどこか安堵していた。

夕美は菜々の横に座り直して、何事も無かったようにぎゅっとリスのぬいぐるみを抱きしめる。

夕美「…この子、大切にするからね!じゃあおやすみなさい!」

菜々「…はいっ!おやすみなさい、夕美ちゃん!」

安定しているようで、どこか危うい二人の関係。

ずっと一人でいた為に、人との距離感なんて分からない夕美は、初めて仲良くなった菜々の近くに居ようとする。

長寿の菜々は常に人と一定の距離をとっていた。だからこそ、他の人以上に近くに居ようとする夕美に、少し特別な感情を抱いている。

その状態をお互いに分からずに、今の距離を保とうとして…でもそれを状況が許さない。

ウサミン星最大の問題は、彼女達にとっても最大の問題である。
650 : ◆zvY2y1UzWw [saga sage]:2014/04/15(火) 19:55:18.81 ID:b1gnELZX0
以上です
相葉ちゃん誕生日じゃー!!めでたい!!

いつまでもウジウジする菜々さんと、多分いろいろあった夕美ちゃんの話になりました
いつの間に百合っぽくなったのか、それは自分にもわからない。

ウジウジ菜々さんが故郷に帰る選択肢は取り合えずいろんな事件が落ち着いたらなのかなぁとは考えている感じではあるのですが…
651 : ◆3QM4YFmpGw [sage]:2014/04/15(火) 20:34:26.55 ID:IsCOdwoAO
おっつおっつ夕美ちゃんおめでとう!

百合ですか? 大好物です(真顔)
652 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/15(火) 20:44:55.40 ID:yf8FbWPDO
おつ
夕美ちゃんおめでとう!
653 : ◆AZRIyTG9aM [sage]:2014/04/15(火) 21:05:55.83 ID:onQv5cqEO
乙ー

誕生日おめでとー

果たして二人はどうなるやら
654 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/04/16(水) 17:45:58.90 ID:UZIa/2ovo
乙ん

百合だぁあ!
女の子同士の触れ合いはなんだかぐっと来る物があります
……あれ、女の子同士でいいのかな?(年齢的に)
655 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/04/16(水) 17:46:38.57 ID:UZIa/2ovo
おっと言い忘れ
遅ればせながら夕美ちゃん誕生日おめでとー
656 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/16(水) 21:17:53.65 ID:0XJWPhM6o
乙乙!

問題が存外難しい……2回戦も待ってる
そして夕美ちゃんおめでとう!3桁歳と4桁以上歳だから年の差カップルだね!!
657 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [sage]:2014/04/24(木) 11:57:26.17 ID:bXV337QS0
やっと……追いついた……乙乙
658 : ◆zvY2y1UzWw [saga]:2014/04/24(木) 21:26:08.79 ID:q0gh+9tE0
>>657
追いつき乙です、大変だったでしょうに…

投下します
憤怒の街、ついに最終局面へ
659 : ◆zvY2y1UzWw [saga]:2014/04/24(木) 21:27:56.42 ID:q0gh+9tE0
魔力と瘴気に満ち、まともな人間はすぐに逃げたくなる…半壊した体育館はそんな状況だ。

幾度となく内部で発せられた炎によってそこはとにかく暑く、居るだけでスタミナが削られていく。

愛梨「泰葉ちゃん…!」

泰葉「うるさいウルサイうるさいっ!!ちょこまか動くのだけは得意なんですねっ!!」

愛梨への殺意は泰葉の逆鱗そのものだったのだろうか、もはや愛梨に名を呼ばれる事すら怒りの燃料となっていた。

愛梨は泰葉の異形と化した腕の攻撃や黒い炎を回避し、風の刃や槍で攻める事を繰り返しているが、力のぶつかり合いでは勝てず、手数で攻めても威力が足りない。

愛梨の攻撃は傷を負わせるどころか掠り傷になっているのかさえ怪しい。一方泰葉の攻撃は回廊で回避しようとした愛梨にも当たり、確実に不利だ。

愛梨の肌を流れていく汗は、暑さからなのか、それとも状況に焦っているからなのか、本人にも分からない。

…だが、泰葉は苛立っていた。攻撃を当てられるはずの自分が確実に有利であるのに、愛梨に致命傷を与えられてないのだ。
660 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/24(木) 21:28:51.27 ID:xWvOJShDO
いつの間にかこんなpartになってる……すごい(最後に読んだの学祭?での加蓮とリサの説明だけどpart何かわからぬ)
661 : ◆zvY2y1UzWw [saga]:2014/04/24(木) 21:30:10.80 ID:q0gh+9tE0
泰葉「いい加減に消えてくれませんか!?」

異形の右腕を振り下ろし、振り回し、瘴気と魔力が混合された黒い炎で追い詰める。

それでもしぶとく愛梨はそれを避け、当たっても掠り傷か軽傷で済む程度に済ませている。

…いや、済ませているというよりは、何とか回避していると言ったところか。

それでも、攻撃が通じないこの状況でも、あきらめずにチャンスを探っているのだ。

その心に苛立ち、怒り、泰葉の心は深く濃く、憤怒の色に染まっていく。
662 : ◆zvY2y1UzWw [saga]:2014/04/24(木) 21:32:42.43 ID:q0gh+9tE0
『『ハアアアッ!!』』

洋子「近づけないよ!」

赤い炎が、彼女を殺そうと攻撃してくる泰葉の分身を焼き尽くす。

炎を操るバーニングダンサーも、傷を負った状態でありながらも分身を赤い炎によって全く寄せ付けないようにしていた。

『ムカつくんですよォォ…!!』

洋子「っ!?」

しかし万全の状態ではないために生まれた炎の隙間を、分身の一体が見抜くと飛びかかってきた。思わず洋子は目を閉じる。

―パンッ!パンッ!

『…エ?な、に?』

洋子「…まさか!?」

だが、その分身は二つの弾丸によってはじけ飛んだ。

黒衣P「洋子!」

エボニーコロモが二丁の銃でその分身を倒したのだ。

洋子「プロデューサー!来てくれたんですか…!」

黒衣P「ああ、だが悪い意味で予想以上だ…お前もボロボロじゃないか」

洋子「私よりも…この分身の本体のカースドヒューマンと戦っている愛梨ちゃんが…」

黒衣P「愛梨…?なっ、あれは…十時愛梨…!?」

プロデューサーである彼は、もちろん知っていた。例のカースドヒューマンと交戦中の少女が、元トップアイドルである事を。
663 : ◆zvY2y1UzWw [saga]:2014/04/24(木) 21:33:33.88 ID:q0gh+9tE0
黒衣P「何故彼女が…ああ、だが今はそれよりもこの状況をどうするかだ…」

洋子を見れば傷以外にも火傷まで負っている。彼としては早く病院へ送りたいが、分身はこちらを狙っていた。

『ずいぶんと仲良さげで、腹が立ちますよ…!!』

消えては生まれ、消えては生まれ、分身は終わることなく湧いてくる。

黒衣Pはそれらを格闘技でしのぐが、そう長くは持たなそうだ。

彼が銃から放った弾が、分身には当たらずに別の者に当たってしまう。

狙ったのか、焦ってしまった故の偶然なのか、それは全く分からない。だが確かに当たった。

本体である泰葉の、異形の右腕に。
664 : ◆zvY2y1UzWw [saga]:2014/04/24(木) 21:35:13.11 ID:q0gh+9tE0
竜の腕であるその腕には、殆ど効果など無いはずのその銃弾。

泰葉「っ…」

愛梨「!」

しかし当たった事によって泰葉の意識は一瞬ではあったが僅かに発砲した黒衣Pに向けられた。

そしてずっとチャンスを待っていた愛梨はその隙を逃さなかった。

轟々と風が渦巻く。

泰葉「しまっ――!」

愛梨「はあああああああああっ!!!」

今までで一番力を込めた風の槍を生み出し、泰葉の右腕に突き刺す。それは竜の腕を貫き、ダメージを与えた。

泰葉「ぐ…あああ…!」

愛梨「…やっぱり、その腕…」

激痛によって腕の力が抜け、泰葉は思わずうずくまる。…彼女の感じる腕の痛みが、その異形が確かに彼女の物であることを証明していた。
665 : ◆zvY2y1UzWw [saga]:2014/04/24(木) 21:37:34.95 ID:q0gh+9tE0
愛梨は自分が攻撃したことで血が流れている、竜の腕そのものになった泰葉の腕に思わず視線を向ける。

泰葉「どうして、どうしてっ…!!私の心配をするんですか!!」

愛梨が泰葉に向ける瞳は、明らかに心配しているという思いを伝えている。だが、それは泰葉の怒りをさらに大きくさせる。

憤怒P「おやおやぁ?追い詰められちゃってるね〜や・す・は…ちゅわぁ〜ん?クククク…ケケケケケ…」

そこに憤怒Pが現れた。場違いなほどに砕けた口調と、ニヤニヤした笑みと共に。

それと同時に、ピタリと泰葉も分身も動きを止め、彼に怒りの視線を投げる。
666 : ◆zvY2y1UzWw [saga]:2014/04/24(木) 21:39:19.81 ID:q0gh+9tE0
愛梨「…貴方は泰葉ちゃんの…!?」

憤怒P「いーや違うぜ?知り合いっぽいけど知り合いじゃないんだよなぁ〜。ま、どうでもいいか」

その姿を愛梨は知っていた。だがその問いかけを憤怒Pは全く相手にしない。

泰葉「…貴方は出てこないでください」

憤怒P「そんな事言える状況かぁ?泰葉ちゃんよぉ…ちょーっとは強くなったと思ったのにこのザマでさぁ〜もう一周回って笑いが止まんねぇわ!!ケケケケケケケ!!」

泰葉「…っ…黙れっ!黙れぇっ!!」

分かりやすい程に安易な挑発。それにさえも泰葉は怒り、彼に腕を振り下ろす。

憤怒P「なぁに?逆切れかな?それともストレスだったりして!キヒャヒャヒャ!!」

その攻撃をいともたやすく避け、彼は高らかに笑う。

憤怒P「弱い、弱いねぇ泰葉ちゃん…とぉーっても弱い!だからボロボロになっちゃうし!殺したい奴は殺せない!!マヌケなお人形だよ!!」
667 : ◆zvY2y1UzWw [saga]:2014/04/24(木) 21:40:13.56 ID:q0gh+9tE0
泰葉「………」

プツリ、切れた。

それはもうすでに切れていたと思っていた、堪忍袋の緒だろうか。

…それとも、それすら超えた、超えてはいけないラインだったのかもしれない。

目の前の色彩が反転したような、妙な錯覚が襲い掛かった。

泰葉(あんな芸能界も、ウザったい目の前の男も、殺したくてたまらないあの女も、計画を邪魔するヒーロー達も…)

泰葉「…ウザい」

愛梨「…泰葉ちゃん?」

ぽつりと、泰葉が口を動かした。

泰葉「ウザいウザいウザい…」

強大な力が欲しい。何もかも消してしまえるくらいの力が。

棒立ちのまま、泰葉は繰り返しその言葉を呟き続ける。

その言葉はまるで呪詛のように、周囲の瘴気で汚染された魔力を動かした。

泰葉を中心に渦巻く様に、力が集まっていく。分身も形を失い、泥となって泰葉の元へ流れていく。
668 : ◆zvY2y1UzWw [saga]:2014/04/24(木) 21:41:38.21 ID:q0gh+9tE0
愛梨「これって…!?」

憤怒P「おおっと、邪魔しない方が身の為だぜぇ?」

憤怒Pが風の刃で集まる泥を妨害しようとした愛梨の前に立ちふさがり、紫色のガスを愛梨の周囲に出現させる。

愛梨「っ…!」

そのガスは風によって霧散し、愛梨がそれを吸う事は無かったが、瘴気やカースは体育館の外からもどんどん集まり始めていた。

憤怒P「チッ、防いだか…まぁいい、この様子は特等席で見てようかねぇ?あの蛇龍のエネルギーは吸収できないようだが…これなら十分足りる!!」

愛梨「ど、どこに行くつもりですかっ!」

憤怒P「クキキキキ…アヒャヒャヒャヒャ…!」

愛梨の風の攻撃が当たる寸前で、憤怒Pは下衆な笑みを浮かべたままどこかへと消えてしまった。

愛梨「そんな…」
669 : ◆zvY2y1UzWw [saga]:2014/04/24(木) 21:43:31.93 ID:q0gh+9tE0
愛梨「…」

洋子「愛梨ちゃん!」

愛梨「あっ…」

黒衣P「ここにいるのは危険だ、君も早く避難した方がいい!」

洋子「ただでさえボロボロなのにカース達がなだれ込んできてるから、この体育館もちょっとヤバイ感じよ!」

傷だらけの洋子と彼女を背負う黒衣Pが、茫然とする愛梨のもとへ駆けつけ、避難を促した。

愛梨「で、でも泰葉ちゃんが…きゃあっ!」

それを躊躇する愛梨の真後ろに、体育館の天井の一部が落下してきたのだ。

黒衣P「本格的にヤバイな、逃げるぞ!洋子はしっかり捕まっててくれ!」

洋子「う、うん!」

愛梨「…はい」

洋子を背負いつつ、愛梨を抱え、黒衣Pは体育館から脱出した。

――
670 : ◆zvY2y1UzWw [saga]:2014/04/24(木) 21:44:46.41 ID:q0gh+9tE0
――街・通路

学校の外、そこにも異変は起き始めていた。

『イカセネ!イカセネェ!』

『コロスコロスゥ…!』

学校への道のりで、怠惰のカースが杏を上に乗せたまま、憤怒のカースの攻撃を回避していた。

杏「うぅ…妨害が多すぎる…杏、こいつら以外にボディーガードが欲しいよ…一人くらいあの時来てもらえばよかったかな…」

そんな事を言いながらも、配下のカースに乗りながら、杏は必死に泰葉の元へ向かっていた。

街に入ってからピンポイントで湧いてくる憤怒のカースをやり過ごしたり戦ったりしているうちに、時間が経過しすぎてしまっていたのだ。

杏「ちくしょーあの男…」

確かに進んではいるし、翼蛇龍も街の外で討伐された。

それでも、自分が泰葉の元へ行けないのでは意味がない。

杏「…!」

歯がゆさを感じたその時、ゾワッと、『よくないモノ』が風のように過ぎ去っていく感覚を味わった。
671 : ◆zvY2y1UzWw [saga]:2014/04/24(木) 21:45:17.62 ID:q0gh+9tE0
杏「…これ、泰葉の力なの…?」

おそらくそれは憤怒の力。きっと泰葉が何かを呼び寄せているのだろう。

『…』ピタリ

杏「ん…なんだ?」

憤怒のカースが動きを止めた。

『…』ズズズ

今まで襲ってきたのが嘘のように急に大人しくなり、移動を始めたのだ。

杏「…え、え?」

茫然とする杏を尻目に、どこからか湧いてきたカース達も、その力に導かれるように動き出した。

杏「ちょ…ちょっと!行くな、行くなってば!」

杏を妨害することも無く、完全に無視したまま、ただひたすら力の元へ向かう。

杏「これってまさか…合体とかするんじゃ…っ!!」

カース達が集まっていく、泰葉の元へ。

カースドヒューマンの元へ、たくさんの呪いが集まっていく。

杏「あーもう!!…すぐに行こう、妨害がないのはラッキーなんだ!!全速前進!!」

杏を運ぶ怠惰のカースを全速力で動かし、杏は泰葉の元へ今まで以上のスピードで向かいだした。

――
672 : ◆zvY2y1UzWw [saga]:2014/04/24(木) 21:46:48.84 ID:q0gh+9tE0
――校庭

夕美「…街の瘴気が、動き出した?」

みく「うにゃあ!?カース達がみくをスルーしてどんどん向こうに行っちゃうにゃあ!!」

のあ「状況が変わったようね…少しでも行くのを阻止するわよ」

みく「わ、わかったにゃあ!」

夕美「そうだね、嫌な予感がする…!」

半壊した体育館の外のカース達が、その力の流れに従う様に、体育館へなだれ込んでいく。

街中から…360度から集ってくるカースを、3人だけでは止める事もままならない。

菜々「…もしかして街の全カースが、こちらへ…いえ、あの体育館へ…!?」

なんとか十分なほどに体力を回復できた菜々は、屋上からそれが見えた。

街のあらゆる道を通り、カースが『そこ』へ集まろうとしている。

亜季「もしや、カースが集まり始めた?…これは一体…?」

上空にいる亜季も、もちろん今の状況を認識している。

あちこちに発生し、暴れていたカースが、突如一カ所に向かって移動を始めたのだ、異常だとすぐにわかる。

亜季「…とにかく、阻止した方が良さげですな…っ!!」

今彼女にできるのは、その進行を阻止する為に引き金を引く事だった。

――
673 : ◆zvY2y1UzWw [saga]:2014/04/24(木) 21:48:24.14 ID:q0gh+9tE0
――街・道路

キバ「…この異常な憤怒の力…ティアマットめ、ここまでするか…!!」

地下から上ってきたキバも、尋常ではない憤怒の気配に憤怒P…ティアマットが何を起こしたのか、大体を察した。

街の機能を停止させていた瘴気すら集め、カースを一カ所に集める。…どう転んでもいい結果になるはずがない。

翼を展開し、とにかく速く移動しようとキバは焦る。

そこへバイクに跨った拓海と有香、そして宙を駆ける琴歌が横に追いついた。

キバ「む…?」

拓海「おい、アンタもあっちに向かってるのか!?」

キバ「そうだが…その様子だと君たちも向かうようだね。このカースの向かう方へ」

琴歌「ええ…カースはどうしてしまったのでしょう、こちらへ攻撃しようともせずに、ひたすらあちらへ向かっています」

有香「この街のカースが一カ所に集まれば…何が起きるか全くわかりませんね」

拓海「だが、碌な事にならないのだけは確かだろうな…!…アタシは拓海、アイドルヒーローのカミカゼだ。一緒に行くなら名乗っておくぜ」

琴歌「そうですね…私は西園寺琴歌と申します」

有香「あ、あたしは有香です!」

キバ「わかった、私の事はキバと呼んでくれ」

4人は高速で向かう。カース達が集まる場所…平和だったときは学校だったその場所へ。

――
674 : ◆zvY2y1UzWw [saga]:2014/04/24(木) 21:49:53.79 ID:q0gh+9tE0
――体育館

…そして、誰も居なくなりほぼ全壊した体育館の中で一人、泰葉は集まってくるカース達の中心にいた。

むせかえるような濃い瘴気と、膨大な魔力。それらがカースと共に集まってくる。

泥のようなカースが集まり、沼となり…いくつもの赤い核が融解し、泰葉を包むように新たな球状の核へ生まれ変わっていく。

泥はその核を宙へ押し上げギリギリ形を残していた体育館を完全に破壊しながらどんどん明確な形へと生まれ変わり、大きくなっていく。

強靭な翼、地を踏みしめる二本の足、そして一振りで周囲を破壊する大きな尾。

体育館の近くにあった校舎も破壊しながら、それはさらに大きくなり続ける。

口からは黒い炎が僅かに漏れ、目は怒りの色に…真っ赤に燃えている。

頭部に核が埋め込まれているのが見えるが、大きすぎて地上からはなかなか分からない。

その核…歪で頑丈な球体の中で体育座りをする泰葉は自分を見失い、瞳は虚ろに開かれている。

…岡崎泰葉はもう自分が何に怒っていたのかさえ忘れてしまうほどに、怒りに囚われ、狂い始めていた。

泰葉「ムカつく、ウザい、うるさい、気持ち悪い、苦しめ、壊れろ、消えろ、死ね…」

怒りのままに、呼吸をするように対象を忘れてしまった怒りの言葉を呟き続ける。

それが自分の怒りなのか、他の誰かの怒りなのかさえ分からないまま、彼女はただ怒りの言葉を呟き続ける。

感情に飲まれ我を忘れたカースドヒューマンを核にして、強靭な肉体を得た憤怒のカース。それは黒いドラゴンの姿をしていた。
675 : ◆zvY2y1UzWw [saga]:2014/04/24(木) 21:51:04.66 ID:q0gh+9tE0
憤怒P「プロデュース大成功!パーフェクトじゃねぇか!よかったなぁ!ケケケケケケケケケケ!!ヒャヒャヒャヒャ!!」

狂ったようにその様子を憤怒Pは見ていた。学校が良く見えるビルの屋上から。

憤怒P「ハッピーバースデー、大きくなれよぉ…憤怒の王!!まさにこの街の怒りの結晶だなぁ!!」

『グオオオ…グアアアアアアアアアアアアア!!!!』

未だ大きくなり続けながら、憤怒の王は咆哮した。

思わず耳を塞ぎたくなるほどの大きな咆哮。それはあまりにも強い憤怒のカースの産声だった。
676 : ◆zvY2y1UzWw [saga]:2014/04/24(木) 21:52:53.39 ID:q0gh+9tE0
――郊外

郊外の、ナチュルスターが雨を降らせている場所…そこでも異変を感じる者はいた。

あの後、応急処置程度のメンテナンスは済ませた夏樹達は、少なくなったとはいえまだ湧いてくるカースを倒していた。

今の程度ならベテラン魔法少女と共同で防衛と休憩を交代しながらでも十分だ。休憩を交えることで、安定して活動している。

未だに眠り続ける奈緒と加蓮は雨に濡れないように木の下に寝かせたままではあるが。

きらり「むぇ…」

李衣菜「きらり?どうかしたの?」

きらり「街のモヤモヤ、全部集まって…グルルって感じがすぅ…」

夏樹「モヤモヤ、か…っ!!?」

彼女のの『目』はそれを見付けた。大きな黒いドラゴンが、今まさに咆哮した瞬間を。

夏樹「…だりー、あれが見えるか?」

夏樹の示す方向に、確かに憤怒の王の頭部が見えた。

李衣菜「なんとか。…あのドラゴンってカースだよね…?きらり、あれがモヤモヤでグルル?」

きらり「そうなの!あれ、あれ…みんなのムカムカって気持ち…それにモヤモヤがわしゃーってなって…でも…」

きらり「ここを守るのがきらり達のお仕事だから。あっちのみんなを信じてるから…!」

夏樹「…だな、あたし達はいざって時の待機も兼ねたサポート、そして拓海達を信じるだけだ。絶対に倒せるってさ」

李衣菜「そうだね、守る事も大事だよね。この雨が無くなったら…もっとヤバい事になるはずだもん」

その近くで眠り続けている奈緒と加蓮は、眠りながらも静かにその握りている手を…さらに強く、確かに握り合っていた。

――
677 : ◆zvY2y1UzWw [saga]:2014/04/24(木) 21:55:11.39 ID:q0gh+9tE0
――校庭

校庭にいた3人は、体育館に向かうカースを妨害することも上手く行かず、現れた憤怒の王から距離をとるために全力で走り出した。

みく「ぎにゃあああああ!?こ、これデカすぎじゃない!?愛梨チャンは!?」

のあ「…あの子は無事なはずよ。落ち着きなさい、この状況は不利…ここは一時撤退、校門の外まで走るわよ」

夕美「待って、学校が…!!菜々ちゃん!菜々ちゃんはっ!?」

みく「にゃにゃっ!そっちも落ち着くにゃ!きっと無事なはず…!」

屋上にいた菜々を心配し少しばかり取り乱す夕美を、みくがなだめようとしたその瞬間、上から声が聞こえてきた。

菜々「無事でーす!!」

みく「え、早くない?」

声のした方向を見てみれば…そこには飛行していた亜季に救出された菜々が抱えられていた。
678 : ◆zvY2y1UzWw [saga]:2014/04/24(木) 21:56:11.27 ID:q0gh+9tE0
菜々「心配かけてごめんなさい、夕美ちゃん!そこのお二人も!!」

亜季に地上に下ろしてもらい、その亜季にも頭を下げる。

菜々「亜季ちゃんも本当にありがとうございます…助かりました」

亜季「いえいえ、当然の事をしたまでであります!」

夕美「菜々ちゃん!!よかった、無事だったんだ!えっと…亜季ちゃん、ありがとう!」

のあ「…体力は大丈夫なのね?」

菜々「もうバッチリ、充電完了って感じです!」

みく「それなら安心にゃ!」

走りながら状況を確認しつつ、全員で校門から飛び出し、憤怒の王の死角へと隠れる。

憤怒の王は未だに大きくなる最中であるようで、その場からは今の所動く様子はない。

亜季「…しかし、あのデカブツ…かなりの戦闘力を持っているようですな…まだ大きくなっています」

みく「大きすぎて、もはや何かの冗談の類にみえるにゃ…」

夕美「あの力、この人数で相手にするのはキツイよ…この雨の中でもあれなら、本格的に動き出したら…」

菜々「…カミカゼは、まだ修理終わってないんでしょうか…ん?」

その言葉に答えるように、その場にバイクの音が聞こえてきた。
679 : ◆zvY2y1UzWw [saga]:2014/04/24(木) 21:56:52.85 ID:q0gh+9tE0
拓海「ギリギリ、間に合って…るのか?これは…」

夕美「拓海ちゃん!やっと来てくれたんだ!」

拓海「すまねぇ、待たせちまったな!あれが親玉か…!!」

今は殆ど動かず、しかし着々と大きくなっていく憤怒の王は、確かな威圧感を放っていた。

有香「この位置からでも十分なほどに迫力がありますね…」

キバ「…憤怒の竜型カース、か。これを世に解き放ってどうするつもりなんだ…」

亜季「琴歌殿、再び共に戦う事になりましたな」

琴歌「亜季さんも一緒に戦ってくださるのですね!…ところで着地して大丈夫なのですか?確か機械の調子が…」

亜季「ええ、そうだったのですが、機械の調子があのデカブツが出現してから戻ったようで…こうして地上に降り立てています」

憤怒の王には街の機械を狂わせた瘴気や魔力が全て注ぎ込まれたのだ。だから今、亜季は安心して地に降り立てる。

菜々「一気に増えましたね、心強いです…」

夕美「…えっと、これで1,2,3…9人だね」
680 : ◆zvY2y1UzWw [saga]:2014/04/24(木) 21:57:24.82 ID:q0gh+9tE0


??「待ってください!!」


681 : ◆zvY2y1UzWw [saga]:2014/04/24(木) 21:58:52.27 ID:q0gh+9tE0
全員が振り向けば、黒衣Pに救出される形で体育館から脱出できた愛梨が立っていた。

黒衣P「…本当にここに残って戦うんだな?」

愛梨「…もちろんです。私はまだ戦えます…!」

黒衣Pが愛梨を地面へおろすと同時に、みくとのあが駆け寄る。

みく「愛梨チャン!無事でよかったにゃ!」

のあ「…そうね」

菜々(えっ!?愛梨ちゃん!?どうして…い、いえ、今はそんな話は後にすべきですね…)

夕美(引退したのは覚えてるけど…うん、まさかここで会うなんて思ってなかったよ…あまり騒がない方がよさそうだね)

やはり元トップアイドルという事を思い出してしまう人は少なからずいるが、それを口にすることはない。

愛梨はこれから戦う9人に、真っ直ぐな瞳でしっかりと宣言した。

愛梨「1人追加してください…私も、戦います」
682 : ◆zvY2y1UzWw [saga]:2014/04/24(木) 22:00:37.01 ID:q0gh+9tE0
洋子「…ゴメンね、アイドルヒーローが3人もいるところ悪いけど…私はちょっと撤退しなきゃダメみたい」

黒衣P「洋子は自分がすぐに病院へ連れていく。…戦力になれなくてすまない」

拓海「気にするな、ここからの戦いはアタシ達にまかせろ!」

『グオオオオオオオオオオオオオオオ!!ガアアアアアアアアアアアアア!!』

みく「ふにゃあ!?」

菜々「わわっ!!」

拓海が二人に答えた直後、再び憤怒の王の怒りの方向が響き渡った。さらに建物を破壊する音まで聞こえてくる。

夕美「…相手の方は、もう準備が終わっちゃったみたいだね」

菜々「黒衣Pさんはナナたちのことは気にせず早く病院へ!」

黒衣P「…すまない、頼んだぞ!」

拓海「ああ…言っただろ、任せろってな!!」

みく「もう…やってやるにゃ!みくのワイルドキャットなパワーみせつけちゃうにゃあ!」

有香「…時は来ました…!」

キバ「本格的に大暴れを始めたな、我々も行かねばならない時が来たようだ」

亜季「もう時間は無いようですね…連携などはもはやフィーリングになるかもしれません」

のあ「そうね…こうして話している間に…別の場所へ行かれたら、それこそあらゆる事が無駄になる…」

琴歌「終わらせなくてはなりません、あのカースの暴動も、この街の悲劇も」

愛梨「そうだね…終わらせなきゃ」
683 : ◆zvY2y1UzWw [saga]:2014/04/24(木) 22:01:18.89 ID:q0gh+9tE0
今、ここに10人が集った。それぞれの意思は別々で、戦う理由さえも違う。この事件が無ければ、出会う事すら難しい者達もいる。

その10人は今、一つの強大な怪物を倒すためにその怪物に向かって一歩、歩み出した。

それは駆け出すための一歩だったのかもしれない、それは飛び立つための一歩だったのかもしれない。

歩幅も一歩に込めた力も、なにもかも違うが…その一歩だけは、10人同時に踏み出していた。
684 : ◆zvY2y1UzWw [saga]:2014/04/24(木) 22:01:48.15 ID:q0gh+9tE0
集った10人から少し離れた位置で、杏は彼女の名を呼んだ。

杏「泰葉…泰葉ぁ…!!」

強大なドラゴンの咆哮は、確かにその耳に届いていた。

少しだけ、悲しみの悲鳴を含んでいる、そう杏は感じた。

杏「いま、助けるから…!!」

配下のカースも全力で働く。友の為に、まだ彼女は動き続けている。
685 :@設定 ◆zvY2y1UzWw [saga]:2014/04/24(木) 22:04:14.67 ID:q0gh+9tE0
・憤怒の王
怒りの感情に飲まれ、我を失った岡崎泰葉を核に取り込んで、サタンの魔力と大量の瘴気を吸収して生まれた巨大なドラゴン型カース。
動くもの、音を出すもの、邪魔なもの…全てに怒り、破壊しようとする、破壊衝動の塊。
そのパワーと大きさは翼蛇竜以上で、カース弾以外にも瘴気を含んだ黒い炎か魔力による吹雪を口から放射する。
鱗は非常に固く、泰葉を閉じ込めている核はそれ以上に固い。再生力も翼蛇竜には劣るが普通のカースよりは高い。
憤怒のカースが周囲に出現しても憤怒の王に破壊されるか取り込まれてしまう為、配下のカースは存在しない。

・核の中の泰葉
怒りの感情に飲まれ、我を失ったカースドヒューマン。彼女に憤怒のエネルギーが注ぎ込まれ、そのエネルギーが憤怒の王を動かしている。
膨大なエネルギーを吸収した結果、大きな核の中で座りながら怒りの言葉を吐き続けている。
ただ全てにイラついて仕方ない。破壊の衝動に抵抗することも無い。
絶望と怒りに溺れた彼女に、救いを与える者は誰だろうか…
686 : ◆zvY2y1UzWw [saga sage]:2014/04/24(木) 22:06:03.86 ID:q0gh+9tE0
みなさん、憤怒の街、ファイナルパートですよファイナル!
憤怒Pのセリフ超難しいの

イベント情報
・街の中学校にて憤怒の王出現。10名が交戦を開始しました。
・黒衣Pは洋子を背負って病院へ向かいました。
・杏は戦場のすぐ近くまで来ている模様、戦闘には参加できるか不明。
・街の瘴気が全て憤怒の王に注ぎ込まれ、街の機械が正常に作動し始めたようです。

>>660
たしかpart7だったはず
687 : ◆AZRIyTG9aM [sage]:2014/04/24(木) 22:14:24.74 ID:fgFD//1RO
乙ー

いよいよ最終決戦……
果たして先輩を救えるか?とときんと杏がキーパーソンかな?
688 : ◆Mq6wnrJFaM [sage]:2014/04/24(木) 22:21:45.36 ID:n79t02tDO
おっつおっつ
さてはてどんな結末を迎えることになるやら
689 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/24(木) 22:26:37.55 ID:bXV337QSo
乙乙。
みんな幸せになりますように
690 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/25(金) 00:04:05.82 ID:MO2h1RJao
おつなの
691 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/04/25(金) 00:06:57.07 ID:qshZisD5o
乙です
本当に本当のクライマックスですねえ、熱い展開でいいです
特に杏ちゃんの全速前進熱いです、
彼女のためにもどうか先輩助かって欲しいもの
692 : ◆BPxI0ldYJ. [sage]:2014/04/26(土) 14:32:48.81 ID:/lSoZeg70
飛鳥ちゃん投下したいけどもう登場してる?
Wiki流し読みしたぐらいだからちょっと自信がない
693 : ◆tsGpSwX8mo [sage]:2014/04/26(土) 14:41:14.18 ID:/VIbYN+Mo
>>692
まだですよ
694 : ◆BPxI0ldYJ. [sage]:2014/04/26(土) 15:30:32.36 ID:/lSoZeg70
良かった、ちょっくら書き溜め作ってくる
695 : ◆BPxI0ldYJ. [saga]:2014/04/26(土) 18:30:35.90 ID:/lSoZeg70
 今日も空は澄み渡り、街角の商店街はそれなり賑わっている。今日もどこかで世界の命運が左右されていようと、彼等にとっては対岸の火事でしかなく。
 日常になりつつある非常事態をニュースや新聞で知り、やはり記憶の底に仕舞い込んでしまう。

 それは彼女──二宮飛鳥においても同様であり、財布の重みをポケットに確かめながら今日も足繁くいつもの店に通う。

「お嬢ちゃんも好きだね」

 最近見かける短めの金髪とちょっぴりパンクな服装に、屈託のない笑顔を見せる店主。

「ええ」

 短い返事と五百円玉に乗せてこちらも笑みを返す。

 五百円玉の対価として握られているのは一つの鯛焼きと幾ばくかのお釣り。

「まいど────!」

 そしていつものように彼女を笑顔で送ろうとして、果たせなかった。

 見開かれた瞳の先には、光を吸い込んでしまいそうなどす黒い泥がゆっくりと形を成していく。
 あの日を皮切りに現れた異形の内、最もポピュラーとされる怪物。人の欲を食らい、取り込み、その源とする怪物、カース。
 不定形の巨体にどこか淫らな雰囲気を湛え、それは現れた。

 人々はすぐさま近くの建物に逃げ込み、次々とシャッターが下がっていく。カースの出現から数ヶ月、その対処ももう慣れたものだ。
 あとは近場のヒーローの到着を待てば、被害は器物破損と数人の怪我を出すだけで済むだろう。

 だが一人、二宮飛鳥は立ち尽くしていた。
 荒げる声も物ともせずに、絡みつくような恐怖をすり抜けるように、受け流すように。

「早く逃げろぉ!」

 時既に遅し。
 逃避すらしない少女の肢体は色欲のカースの持つ泥の触手に絡め取られた。
696 : ◆BPxI0ldYJ. [saga]:2014/04/26(土) 18:33:24.05 ID:/lSoZeg70
「イイコトシマショ……」

 その醜態から発せられるに相応しい声が周囲に響く。
 不気味なぬめりで表面を満たし、ぬらぬらと不気味な光沢を放つ触手が蠢く。
 眼前にそれが迫ろうと、少女はその表情を崩さなかった。ただ黒い泥を俯瞰し、まるで画面の向こうの出来事を観るように無関心にも見えたかも知れない。

 一本の触手の先が割れ、更に醜い姿を見せる。
 まるで吸い付くように見た目麗しい肉体を捉えると───


 ───するり。
 少女の体が抜け落ちた。
 残ったのは地に立つ少女、空を弄ぶ触手。
 そして彼女もまた”異能”の者であるという事実。

  周囲の理解を取り残し、少女は静かに、不敵に笑った。

「───色欲。最も原初的な本能、本能を律するが故に忌み嫌われる原罪……」

 影を踏むような足取りで怪物の周囲を彷徨きながら、ぽつりぽつりと呟く。

「なるほど、なるほど……そういうのも面白いとは思うけど……でもそれじゃあ面白くない」

 うねる触手が再び迫る。

 やはりそれは空を切り、少女の体は何時の間にか怪物の背後。

「今のボクは気分が良いから、これだけで相手をしてあげよう」

 地面から黒い霧のようなものが吸い上げられるように少女の手元へ。
 握る程度の持ち手に同じような大きさの刃で形取られたそれは、ナイフと呼ぶべきか。

 ようやく居場所を捉えた怪物を後目、少女は細い腕を振るい空中に落書きをするような手軽さで不定形の泥を掻く。

 直後、周囲から無数の黒い弾丸が飛び、触手を引き裂いて建物の壁に突き刺さる。

「意表を突かれたかい?卑怯だと思うかい?ごめんね、でも嘘はついちゃいない」

 弾丸の正体が全てナイフであったと気付いたのはそれから何秒後の出来事であったか。
697 :0083 [saga]:2014/04/26(土) 18:35:00.65 ID:/lSoZeg70



 建物の奥から、影が一つ飛び出した。
 比較的小柄な体躯、太陽を照り返すメタリックなアーマー。
 我等が誇るこの街のヒーローだ。

「君は何者だい?」

 縛り上げられたカースを背景にした問に、我等のヒーローは”正義の味方だ”といつもの返事を返した。

「…本当に正義の味方を名乗れるのかい?」

 相変わらずの表情と、相変わらずの足取りで一歩一歩にじりよる。

「正義なんてのはただの主張でしかない」

「キミの言う正義はどう頑張ったってキミのエゴさ」

「悪が可哀想だとは思ったことは無いかい?彼等にもきっと正義があった」

「………ボクをイタい奴だと思ったかい?きっとそれは間違って無いよ」

 ヒーローの目と鼻の先で立ち止まり、不意に邪悪な笑みを浮かべる。

「それでもキミが正義の味方を名乗るなら」

 両手を大きく開くと、その背中から黒い翼が伸びる。
 空中に飛び上がりそのまま雁字搦めにされたカースに近寄り───

「ボクは悪魔と名乗っておこう」

 ──その核を素手で抉り出した。

「ボクはアスカ、二宮飛鳥……次会う時は敵か味方か───どっちだろうね?」
698 : ◆BPxI0ldYJ. [saga]:2014/04/26(土) 18:37:26.38 ID:/lSoZeg70
職業:自称悪魔

属性:悪役寄りダークヒーロー

能力:瞬間移動、影から色々作る

詳細設定:悪魔を自称する十四歳、種族から言えばれっきとした人間。カースの核を素手で触れる、制限付きの瞬間移動、影から武器を作り出すなど一応異能の力を使える。カースの核の収集、カースドヒューマンの調査(出来れば誘拐)をしているが、気まぐれでヒーローに喧嘩を売ったり共闘してみたり割とフリーダム。
699 : ◆BPxI0ldYJ. [sage]:2014/04/26(土) 18:42:24.94 ID:/lSoZeg70
 他の人のヒーロー使おうとして結局それっぽいモブにしてしまうチキン。

 飛鳥ちゃんはどっちかと言えばこういう役回りの方が似合ってるよね。ね?
700 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/26(土) 18:57:57.93 ID:N1WYFyhJo
よっしゃ遊撃手ポジだ!

……今の光あたりに同じこといったら抹殺スイッチはいりそうだったしいいんじゃないかな
クールキャラもかわいそうなキャラもいけそう
701 : ◆zvY2y1UzWw [sage ]:2014/04/26(土) 19:01:13.41 ID:lEHAdVNV0
乙です
まさかの〔自称・悪魔〕…ww
黒い翼まで自分の能力で…これぞまさしくTHE・痛い奴に違いない
カースドヒューマンの誘拐かぁ…誰かしら誘拐されちゃったりするかもなんです?
702 : ◆6osdZ663So [sage]:2014/04/26(土) 19:24:13.70 ID:zYMyHMguo
乙ー
さすが飛鳥ちゃん安定の痛い14歳

キャラ同士の絡みがシェアワの醍醐味だと思うので
良ければ色んな子に絡んでやってくだせえ遠慮せずにー
703 : ◆AZRIyTG9aM [sage]:2014/04/26(土) 19:25:04.96 ID:Jn+TOWVuO
乙ー

自称・悪魔wwwこいうの好き

カースドヒューマンはお持ち帰り〜されるのか。胸熱
704 : ◆BPxI0ldYJ. [sage]:2014/04/26(土) 19:56:57.59 ID:/lSoZeg70
>>702それこそ>>700の言うようにモブヒーローが光だって事にしちゃえばもう一ドラマかけるんだけどね、設定はいろいろ意識した所があるし。

やってもいいんならやるけど、キャラの交戦はいろいろリスキーなのよね
705 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/26(土) 20:03:21.09 ID:8VDcCPvfo
そう、今はまだこのメタリックモブ君が今後のターニングポイントとなる人物だとは、想像もしていなかったのである
訳:今後、この人が実はアイドルだったって設定にもできるよ。
706 : ◆AZRIyTG9aM [sage]:2014/04/27(日) 00:42:22.46 ID:U/BegzaK0
学園祭二日目で投下します
707 : ◆AZRIyTG9aM [saga]:2014/04/27(日) 00:43:01.80 ID:U/BegzaK0
ーーー夢。そう。それは夢。

ーーー小さくなったことも。黒い影に追いかけられたことも。雪に埋れたことも。裸を見られたことも。全部…夢。

『ごめんなさい』

ーーーううん。夢じゃない。これは本当のことで、私が見てる夢は夢じゃない。

ーーーなんでか、知らないけどわかるよ?

ーーーだから、そんな顔しないで?

ーーー■■ちゃん…私…わかってるから……私は……………

ーーー

ーー

708 : ◆AZRIyTG9aM [saga]:2014/04/27(日) 00:44:22.35 ID:U/BegzaK0
「はぁ…はぁ…はぁ……」

脳裏に過る映像と思考に、学園祭で混雑する人混みの中、北条加蓮は息を絶え絶えにしながら、ベンチに座り込んでいた。

「……うん。少し思い出したかも…」

完全ではないが、彼女は思い出していた。

祟り場で起こったあの時のこと、毎晩夢でであった寂しがり屋の少女の事、夢で出会ってた子達のこと、そこから聴いた見た奈緒の事。

全部……全部……

そう、そして残酷な真実も…………
709 : ◆AZRIyTG9aM [saga]:2014/04/27(日) 00:44:56.82 ID:U/BegzaK0
「そっか……私は死ねないんだ…」

自分がもう人ではない事を。死ねない身体になっている事を。奈緒の一部になっていることを……

よく考えてみれば、そうである。憤怒の街のとき、死んでもおかしくはない傷を負っていた筈なのに、いつの間にか治っていた。

あの時は、疑問には思っていたが、考えないようにしていた。

だが、思い出したが為に理解してしまった。

普通なら発狂してしまう真実に……
710 : ◆AZRIyTG9aM [saga]:2014/04/27(日) 00:46:00.63 ID:U/BegzaK0
「……よかった」

だが、彼女の口から出た言葉は発狂した言葉でも、怒りの言葉でもなく、心から安心したような言葉だった。

何故?

「奈緒も…■■ちゃんも私がいれば独りにはならないんだ…」

……それは孤独を知っていたから、優しい彼女だから言える言葉だった。

エンヴィーであった時の贖罪の気持ちもあるかもしれない。けど、それは彼女の本心だ。

「それなら、早く■■ちゃんを見つけないと……」

そう言って歩き出そうと、立ち上がろうとした。

だが、立ち上がれなかった。
711 : ◆AZRIyTG9aM [saga]:2014/04/27(日) 00:46:44.39 ID:U/BegzaK0
「……あ……れ?…」

思うように立ち上がれず、加蓮は疑問の声を漏らす。

その顔には疲労が見える。

ズキズキと痛みだす頭。時折起こる目眩。

それの原因は、加蓮にはわからない。

『(……無理させすぎちゃったかな?)』

だが、彼女の《影》はわかっていた。原因は自分にあると…

記憶操作による記憶削除。それを干渉し、無理矢理に徐々に思い出させていたのだから……
712 : ◆AZRIyTG9aM [saga]:2014/04/27(日) 00:47:44.85 ID:U/BegzaK0
『(だけど…このままじゃダメなんでしょ?≪私≫?自分と重ね合わせたあの子を見捨てたくないんだよね?だから、≪アタシ≫はそれを手伝う)』

なんとか立ち上がって、フラフラと歩きだす加蓮の影は静かに揺れる。

『(悪霊の一種だった≪私達≫を≪アタシ≫にしてくれた。だから、コレはせめての御礼)』

……そう。この≪影≫は祟り場の時、加蓮を追いかけていたあの≪影≫である。

本来なら、死神により消滅させられていた……筈だった。

しかし、加蓮の魂を一時的に吸収していたが為に、彼女の一部となってしまっていたのだ。

だが、どうしてか加蓮に干渉できたり、独立した動きができたりとしている。なにより加蓮の本体(?)である奈緒ではなく、≪加蓮≫の一部になっている。

その為、今は奈緒と独立している≪■■■≫にも、奈緒の中にいる≪わたしたち≫にも認識はされていない。

イレギュラーである加蓮から産まれたイレギュラー。

そもそも影本人にもなんで自分がこうなっているのかも、余りわかってはいない。

果たして、コレはどういうことなのだろうか?

まるで≪悪戯≫のような、この≪イレギュラー≫は……
713 : ◆AZRIyTG9aM [saga]:2014/04/27(日) 00:48:59.66 ID:U/BegzaK0
「あっ……」

フラリフラリと倒れそうなその身体を必死に耐えながら、歩く彼女の目線は、≪独りの少女≫を見つけた。

「■■…ちゃん…」

見覚えのある後ろ姿。間違いない。

そう思い、名前を呼ぼうとするも、名前が言えない。

「■■……ちゃん……」

彼女に行われた記憶操作の呪縛が、彼女と加蓮を合わせないようにしようと、最後の抵抗をしてくる。

言おうとした名前にノイズが走り、少女の名前が頭から出てこない。

そうこうしてると、少女の姿が人混みに消えて行ってしまう。

もし、ここで見逃してしまったら二度と彼女に会えない気がする。

走って追いかけようにも、足に力が入らず、歩くので精一杯。
714 : ◆AZRIyTG9aM [saga]:2014/04/27(日) 00:50:20.43 ID:U/BegzaK0
「やだ…」

このチャンスを逃したら、あの少女はまた独りぼっちになってしまう。

ダメ……そんなのはダメだ。

独りぼっちの寂しさは自分がよく知っている。ましてや彼女は自分が気づかなかったらずっと独りだった彼女をまた孤独にさせるなんて……

「■■ちゃんっ!…■■ちゃんっ!!!」

なのに名前が出てこない。なんで出てこない。

心が折れそうになってしまう。

悔しい……悔しい……なんで言えないの?私は……私は……

自分の無力さに心が折れかけてしまう。

このまま、また会えなくなってしまうのか?
715 : ◆AZRIyTG9aM [saga]:2014/04/27(日) 00:51:17.57 ID:U/BegzaK0


−−

ーーー

−−−−

−−−夢を見た。

−−−暗い…暗い…一面真っ黒な場所。

(あれ?これって確か……)

−−−−そこに一人の小さな女の子が泣いている。

(そうだ。これは……)

「どうしたの?何処か痛いの?お姉ちゃんに話してみて?」

(■■ちゃんと初めて会った……)

−−−−優しく声をかけると、女の子は顔を上げて………

(忘れるわけないよ。■加ちゃんと初めて会った。大事な……大事な記憶……)

(だから……)

−−−−

ーーー

ーー

716 : ◆AZRIyTG9aM [saga]:2014/04/27(日) 00:52:00.72 ID:U/BegzaK0






「行かないで!!!!仁加ちゃん!!!!!!!!」





717 : ◆AZRIyTG9aM [saga]:2014/04/27(日) 00:53:19.93 ID:U/BegzaK0
仁加「………えっ?」

加蓮の叫び声に、少女ーーー仁加は、彼女の方を向いてしまう。

仁加「加蓮……お姉ちゃん……?」

驚いたように、嬉しそうに、困惑したように、なんとも言えない表情で、恐る恐る声をだす。

フラリフラリと近づく、加蓮のその表情は疲れきってはいるが安心したような表情をしていた。

加蓮「……仁加ちゃん……探したよ?」

仁加「か、加蓮お姉ちゃん……あの…その………」

記憶を消したはずなのに、自分の名前を覚えていた。それどころか自分を探していた事を察した仁加は嬉しかったが、怖かった。

怒られるんじゃないか。嫌われるんじゃないか。会う覚悟はしていたはずなのに、いざ加蓮と会うとなると何を言っていいのかわからない。

何より、覚えているってことは、彼女は自分が人間じゃなくなってるってことを知ってしまってる可能性がある。

だから、怖かった。

だが、仁加はなんて言っていいのかわからない。

「ごめんなさい」と言えばいい事なんだろうが、今の彼女には≪それ≫を言うことができない。

そんな仁加をしりめに、加蓮は彼女に近づき………

加蓮「ごめんね……仁加ちゃん……ごめんね…」

涙を流しながら、彼女を優しく抱きしめた。
718 : ◆AZRIyTG9aM [saga]:2014/04/27(日) 00:54:27.25 ID:U/BegzaK0
仁加「…………えっ?」

二度目の驚きと困惑がこめられた言葉が漏れる。

加蓮「仁加ちゃん…に…また寂しい思いさせちゃって……ごめんね。私の為に記憶を消してくれたんでしょ?…けど、そのせいで独りぼっちにさせちゃって……ごめんね…ごめんねっ……」

困惑する仁加を優しく抱きしめながら、加蓮は疲れと罪悪感で声を震わせていた。

呼吸もどこか苦しそうだ。

仁加「か、加蓮お姉ちゃんは悪くないよ!悪いのは…」

『アタシ』とは言えなかった。罪悪感が欠除した彼女にその言葉が言えなかった。白兎の仕業により「ごめんなさい」を言えなくなった彼女に、たったそれだけのことが言えない。

だから、仁加は困惑する事しかできなかった。
719 : ◆AZRIyTG9aM [saga]:2014/04/27(日) 00:55:49.98 ID:U/BegzaK0
加蓮「……ねえ。仁加ちゃん」

仁加「……なぁに?加蓮お姉ちゃん?」

加蓮は自分の顔を仁加の正面にむけ、優しく声をかける。

加蓮「約束するよ?……私は…仁加ちゃんと……ずっと……一緒にいてあげる。………また仁加ちゃんが何処か行っても……私は必ず……仁加ちゃんを見つけるよ?………仁加ちゃんと色んな所見て回って……遊んで……友達……いっぱい作って………楽しい事……いっぱいしよう?」

仁加「お姉ちゃん……」

声も何処か弱々しくなりながらも、加蓮は仁加の事を思い、これからのことに夢を描き、優しく微笑んでいた。

加蓮「……まずは今日…一緒に…このお祭………見てm」

「まわろう?」と言おうとしたその時、加蓮の意識は途切れ、身体から力が抜けた。
720 : ◆AZRIyTG9aM [saga]:2014/04/27(日) 00:56:55.21 ID:U/BegzaK0
仁加「……お姉ちゃん?お姉ちゃん!?加蓮お姉ちゃん!?しっかりして!?加蓮お姉ちゃん!!!」

突然、崩れた加蓮を支えながら、必死に加蓮に声をかけた。

『オい、落ち着つきナ?ナニカ』

そんな様子を見て、今まで黙っていた黒兎がナニカに声をかける。

仁加「だって!黒ちゃん!加蓮お姉ちゃんが!!」

『だから、落ち着けヨ?寝てるだけダゾ?』

仁加「………えっ?」

黒兎の冷静な一言により、仁加は某然とした。

よく耳をすませば、加蓮から気持ち良さそうな寝息が聞こえる。

まあ、冷静に考えれば死ねないのだから当然だ。

仁加「よかった……」

『ホラほら、安心してナイで、加蓮を運ぶゾ?ここじゃそのウチ目立つから』

仁加「うん」

安心してる仁加に、黒兎は人の姿になり加蓮を近くのベンチまで運ぼうとする。
721 : ◆AZRIyTG9aM [saga]:2014/04/27(日) 00:58:08.93 ID:U/BegzaK0
『(だけどドウイウ事だ?加蓮の言葉からして全て思い出してる感じダガ、記憶操作で消した記憶がこんな早く戻るのか?)』

加蓮を仁加と一緒に運ぼうとしながら、黒兎は考えた。

加蓮は仁加を見て思い出したわけではなく、明らかに思い出してたから必死に仁加を探していたことを……

『(誰かガ加蓮に干渉した?なんの為に?)』

果たしてそれは誰なのか、今の黒兎にはわからない。

加蓮の影が静かに揺らいでいる事も……

そして、加蓮が再び目覚めた時にナニカはいるのか?

それは、ナニカしだいだろう。


終わり
722 : ◆AZRIyTG9aM [saga]:2014/04/27(日) 01:00:34.27 ID:U/BegzaK0
以上です。

ナニカと黒ちゃんお借りしました!

追加

・加蓮は全てを思い出しました。

・加蓮の影は≪影≫でした。敵か?味方か?

・加蓮はナニカと再会できました。果たして二人の運命は?


ところどころ変なところあるかもしれませんが、許してください…
黒兎の口調あってるか不安です

シリアスはやっぱり難しい…

そして、加蓮の台詞に死亡フラグが沢山立つのはどうして?
723 : ◆BPxI0ldYJ. [saga]:2014/04/27(日) 07:44:29.04 ID:C9QYXVaI0
飛鳥ちゃんの背景投下する


 壊れた蛍光灯の頼りない光。打ちっぱなしのコンクリート、むせかえる異臭。

 試験管に入れられた肉体。ろくな衣服さえ着せられず、色とりどりの内容液の中無理矢理に命を繋ぎ止められた肉体。
 おおよそ人道的な雰囲気の感じられないそれを、二宮飛鳥はただただ眺めた。
 怒りを覚えるでもなく、感傷に浸るでもなく、愉悦を感じるでもなく、ただただ眺めた。

「……今日のアイツははずれだったな……」

 そのまま闇に溶けてしまいそうな声で嘯く。吐き捨てるような低音は言葉通りの感情を伝える。

「……あれぐらいでたじろいで、結局正義を貫くことさえしなかった」

「その程度の、薄っぺらい正義だった……」

 足音も立てずに、ひっそりと試験管に近寄る。

「あれじゃあダメだ……足りない…何もかも」


「正義の味方……」

「ボクは悪魔を名乗った。人を攫った……」

「早く現れてくれよ……」
    おうじさま
「ボクの正義の味方……」

「ああ…早くボクを……」

 火照った体を冷やすように試験管に張り付く。容器を伝い自分の鼓動が聞こえる。冷えた試験管は自分の興奮をおさめるように熱を吸い取っていった。


「帰っていたのか……飛鳥……」

 低い声が背中を貫いた。
 それは闇の中に浮かぶ巨漢から発せられる物である事は明らかであり、他に候補は居なかった。

「今日の収穫だよ」

 巨漢の足元から黒い手が伸び、数個の歪な球体が闇に煌めく。男はそれを意外がるまでもなく受け取り、懐にしまい込んだ。

「……カースドヒューマンは、いないのか」

「無茶を言わないでくれ…あれは数からして少ないし、持ってくるのは結構疲れるんだ」

「……疲れる?ふん、その実力でよく言う…」

「血袋は重いのさ」

「それに彼等、結構に強固なコミュニケーションを築くらしい、下手を撃てば藪蛇だね」

「逃げるのは得意だろう」

「安心して鯛焼きが買えなくなるのは、嫌だね」

「………まあいい、これからも期待するぞ……」

 それだけ言い残し男は消え、少女も同様に。
 その場から音が消え、熱が消え、動くことのない試験管だけが存在するのみになった。
724 :@設定◇ ◆BPxI0ldYJ. [sage]:2014/04/27(日) 07:58:56.40 ID:C9QYXVaI0
名称:強欲P

職業:研究者?飛鳥の上司ポジ

属性:強欲のカースドヒューマン

能力:?

詳細:飛鳥にカースの核の収集、カースドヒューマンの調査、誘拐を指示する張本人。憤怒の街事件に際してカース、カースドヒューマンの持つ力に強い興味を持ち、その研究の過程で自らもカースドヒューマンとなる。根底を成す行動原理そのものにつけ込まれたため侵食が早い、が、やってることは以前と全く変わっていない。

※飛鳥はヒーローに接触する過程で正義の味方足りうる人物を個人的に探しているようです?
725 : ◆BPxI0ldYJ. [sage]:2014/04/27(日) 08:03:53.27 ID:C9QYXVaI0
簡単に飛鳥ちゃんとその周辺をば。
もしも誘拐されたらあんまりよろしくないよって意思表示でもある。
726 : ◆zvY2y1UzWw [sage]:2014/04/27(日) 08:20:43.45 ID:T5SzO/oZ0
お二方乙です
>>722
加蓮再会ヤッター!
不死は受け入れたか…今後が気になるところ
黒兎の口調はぶっちゃけ適当でm(ry

>>725
これはヤバいやつだわ…強欲Pにイケナイ事されるやつだわ
王子様求める飛鳥ちゃんカワイイ
727 : ◆3QM4YFmpGw [saga sage]:2014/04/27(日) 11:48:06.33 ID:JjMliB3I0
乙おっつー

いよいよ憤怒の王登場か!
先輩に救いあらんことを……

ああ、自称悪魔が異様にそれっぽい……w
色々引っ掻き回し要員っぽくてオラワクワクすっぞ!

ついに加蓮と仁加再会か、めでたいのう!
今後のことはひとまず置いといて宴じゃ宴じゃあー!

AHF第二予選投下
ついでにミスが複数あった>>154から>>170までを再投下します
728 : ◆3QM4YFmpGw [saga sage]:2014/04/27(日) 11:49:19.21 ID:JjMliB3I0

――食堂。

パップ(何で北条加蓮が出場してるんだよ!? 素性を隠してるからいいようなものを……)

クールP「パップさんどうかしました? カレンヴィーのプロフィール凝視して」

パップ「あっ、い、いやいや何でも!?」

パップ(まあ、どうせAHFが終われば北条加蓮が同盟と関わる事はあるまい。ここはさっさと予選落ちする事を願うしか……)

クールP「? それにしても、スカウトしたい人材でいっぱいですね今回は。正統派美少女って感じのオーフィスに
    女性人気を狙えそうなマーセナリー・東郷、落ち着いた大人の雰囲気をかもし出すエンジェリックファイア……」

クールP(っと、彼女と水木聖來は確か爛の同僚だっけ。そんなに沢山のスパイは要らないよね、サクライさんも)

パップ「そ、そうだな! 宇宙管理局に所属してなければ、俺もパーボ・レアルあたりをスカウトしたかったが……」

クールP「あとは、儚げな空気を纏ってるカレンヴィーなんかも捨てがたいですね」

パップ(それだけはマジでやめてくれ!!)

クールP「っと、第二予選が始まるみたいですよ」

パップ(北条加蓮落ちろ北条加蓮落ちろ北条加蓮落ちろ北条加蓮落ちろせめて梨沙に正体バレるな…………)

パップ(あ…………あと梨沙と時子が失言しませんように……)

――――――――――――
――――――――
――――
729 : ◆3QM4YFmpGw [saga sage]:2014/04/27(日) 11:50:07.27 ID:JjMliB3I0
――――
――――――――
――――――――――――

――会場。

ギィィィィィィ

桜餡『な、何々この音!?』

レアル『あ、アレだ! 目の前のシャッターが開いてる!』

オーフィス『待って。後ろのシャッターも開いてるけど』

ナチュラル『な、何が始まるの?』

ひなたん『第三次……』

アーニャ『第二予選……です』

ひなたん『……ネタ潰しナリ……』

J『第二予選はズバリ、レースです!』

クラリア『レース……?』

J『コースはスタジアムを出て、規定のルートを一周してスタジアムに戻ってくる計15km!』

J『途中の障害を掻い潜り、ゴールした先着10人に100pt! 11位以下は0ptとなります!』

ラビッツ『11位以下0pt……これはキツイですね……』

アース『って、障害もあるんか……』

亜里沙『例えばアビスナイトの場合は……』

亜里沙『まず、自分が10位以内にゴールする』

ウサコ『そして、残りの9人がヤイバー・甲、エンジェリックファイア、オーフィス、SC-01、アビスカル、ひなたん星人、
   ヤイバー・乙、RISA、アナスタシアとなった場合は……』

ウサコ『本戦出場が可能になるウサ〜』

ナイト『自分が頑張るだけじゃ駄目なのね……』
730 : ◆3QM4YFmpGw [saga sage]:2014/04/27(日) 11:51:00.22 ID:JjMliB3I0
J『各人、自分が最も速く移動出来る手段で構いません!』

カミカゼ『へぇ……』

ディアブル『うふふ……』

レアル(穴でワープは……流石に反則か?)

J『ただし、飛行による移動は高度5mまでとなり、それをオーバーした場合は失格! 第二予選は0ptとなります!』

スカイ『き、気をつけないと……』

01『そうですな、私などただでさえpt低いのに……』

カレンヴィー(私も気をつけなきゃ……)

J『さあ間もなくスタートです!』

J『3……2……1……』

J『スターーーーーーート!!!』

ズォッ

ナチュラル『きゃあっ!?』

有香『うっ……!?』

J『おぉーっと! どうしたことだ!? 開始と同時に選手全員が地面に突っ伏したぁー!!』

ウサコ『いや、一人立ってるウサ!』

J『あっ、あれは……』
731 : ◆3QM4YFmpGw [saga sage]:2014/04/27(日) 11:52:05.05 ID:JjMliB3I0
クラリア『ふふふ……』

J『レポ・クラリア! レポ・クラリアだぁー!!』

RISA『ちょっ、あンた……!』

亜里沙『重力操作。レポ・クラリアの能力の一つね。それで他の参加者を抑え付ける、と』

レアル(…………おい、アビスナイト。ちょっと手伝え。ゴニョゴニョゴニョ……)

ナイト(え? うん、うん……うん、了解!)

クラリア『そもそも、貴女たちが私と肩を並べる事自体が恐れ多いことなのよ。そうして這いつくばっているのがお似合いね』

マリン『り、りふじんなんですけど……』

スカル『でも、あの技は自分の周りにしか効かないです。だから離れれば……』

ラプター『アホ! 追い抜くにはまたアイツに近づく必要があるだろ……っく!』

聖來『何、それッ……軽く詰んでるじゃん……ん? ねえ……なんか足りなく、ない?』

甲『え? ……あれ? パーボ・レアルどこいった?』

ファイア『アビスナイトもいないようだけど……』

乙『…………おい、前!!』

クラリア『前……? ッ!?』

ナイト『はーい♪』

レアル『へへっ』

J『な、なんとぉー!? いつの間にかアビスナイトとパーボ・レアルが出口の手前まで移動していたー!!』

ウサコ『アビスナイトは物体潜航能力を持ってるウサ。きっと床に潜って重力をやり過ごしたウサね』

亜里沙『あ、資料届きました? えーと、パーボ・レアルは空間と空間を《穴》で繋げる能力があるそうよ』
732 : ◆3QM4YFmpGw [saga sage]:2014/04/27(日) 11:53:10.78 ID:JjMliB3I0
レアル『よし、次はアイツの気を逸らす!』

ナイト『了解! シャークバレット!!』

クラリア『チッ!』

J『そして二人ともレポ・クラリアへ発砲ー!! レポ・クラリアこれをなんとか回避します!』

東郷『ん……体が動く。彼女の集中が途切れた為か、よし!』

カミカゼ『行くぜ!!』

ディアブル『ユニコーンモードへ!』

ストラディバリ『レディ』

J『パーボ・レアルとアビスナイトはそのまま出口へ消えてゆきます! 後を追うはマーセナリー・東郷、カミカゼ、ノーヴル・ディアブル!!』

亜里沙『鎧と自動人形をそれぞれバイクとユニコーンへ。つまりは高速移動形態に変形させたわね』

ウサコ『ってか二人の発砲は不問ウサ?』

J『えー……ルール上、選手への攻撃、妨害は反則に含まれません! というかレポ・クラリアが不問でしたし!』

有香『ッ、出遅れました!』

ラビッツ『差を埋めますよ! ウサミン人間大砲!!』

アーニャ『……!』

ラプター『どけどけぇっ!!』

甲『お前がどけ男女!!』

スカル『急ぎますです』

J『中野有香、アナスタシア、ラプター、ヤイバー・甲、アビスカルがそれに続く! ラビッツムーンは自らを砲弾に見立てた超加速だぁ!!』

ナチュラル『とぉっ!』

スカイ『はっ!』

01『ブーストッ!!』

カレンヴィー『やっ!』

クラリア『ふふふふふ……小細工は無用と言うわけね、面白いわ』

J『ナチュラルラヴァース、ナチュルスカイ、SC-01、カレンヴィー、レポ・クラリアが空を飛んで続きます!』

亜里沙『蝶の羽に機械の羽に黒い羽……飛び方一つで個性が出るわね』

アース『急ぐぞ!』

マリン『は、はい……!』

聖來『やっぱ先頭グループ速いなぁ……』

ひなたん『サラマンダーよりずっとひなた!』

RISA『あーもう! 前が邪魔!』

J『ナチュルアース、ナチュルマリン、水木聖來、ひなたん星人、RISAもドームの外へ出ました!』

乙『りっ、リーダー……飛ばしすぎっ……!』

オーフィス『……やっぱり体力面は不利かぁ……』

桜餡『飛ぶより走った方が速いもん!』

ファイア(……切り札は温存ね)

J『最後のヤイバー・乙、オーフィス、桜餡、エンジェリックファイアがドームを出ました!』

J『ここから先は、スタジアム中央の天井からぶら下がる四面モニターで中継いたします!!』

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――――――――
――――
733 : ◆3QM4YFmpGw [saga sage]:2014/04/27(日) 11:54:47.33 ID:JjMliB3I0
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J『さあ、先頭はパーボ・レアルとアビスナイト! そこへマーセナリー・東郷とカミカゼ、ノーヴル・ディアブルがすぐさま追いつく!!』

カミカゼ『ぶっちぎるぜ!!』

ナイト『負けないから!』

東郷『……むっ?』

ディアブル『東郷さん? ……あれは……皆さん、前方に何かが!』

レアル『あれって……GDFの機動隊か?』

隊員『先頭グループ補足!』

志保『トリモチ弾、準備良し! 死にゃあしないからバンバン撃ちまくって大丈夫よー!』

詩織『日ごろの鬱憤を、弾丸に込めて……』

椿『よーし……一斉射!!』

ドバババババババババババババババババ

レアル『う、撃ってきた!? クソッ!』

東郷『実弾では無い……うわっ!?』ベチャッ

東郷『これは……トリモチか……!?』

J『その通ーり! 第一の妨害はDGF協力による、特製トリモチ弾の雨だーーーー!!』

東郷『う、動けない……!』グネー
734 : ◆3QM4YFmpGw [saga sage]:2014/04/27(日) 11:55:42.47 ID:JjMliB3I0
レアル『あんなモン当たったら洒落になんねえぞ!』シュッ

ディアブル『クッ、オーラバレット!!』ババババ

カミカゼ『ぉ危なっ!!』ギュオゥン

ナイト『うぉぉっ!?』ベチャチャッ

J『パーボ・レアルは穴でトリモチ弾をどこかへ転送したー!!』

ウサコ『明らかにアビスナイトにクリーンヒットウサ』

レアル『あっ、悪い! わざとじゃないから!』

ナイト『ちょっとぉ!?』ネバー

J『そして後発グループにもトリモチ弾が襲い掛かるー!!』

アーニャ『シトー!?』ビチャッ

甲『ぎゃあ!!』ベチョッ

スカル『あう……』ビチョッ

ラプター『あっぶね……』スカッ

有香『トリモチなど、この拳一つで撥ね返します!!』バシッバシッバシッ

ラビッツ『夕美ちゃん、そっちにもいきましたよ!』スカスカスカッ

ナチュラル『うわわわっ、何!?』ヒョイヒョイッ

スカイ『ひえ!?』スカッ

01『どおおお!?』ベタベタベター

カレンヴィー『おもちっ!?』ベチョン

クラリア『無粋ね……!』ベチッ
735 : ◆3QM4YFmpGw [saga sage]:2014/04/27(日) 11:56:49.46 ID:JjMliB3I0
J『さあ、先頭グループが戸惑っている間に後発グループが次々追いついてきたー!!』

亜里沙『そして後発グループもトリモチの餌食になっちゃってるわね』

ウサコ『あっという間に団子状態ウサ』

オーフィス『カット、カット、カット……』ヒュッヒュッヒュッ

桜餡『ひゃあっ!?』ベチャッ

ひなたん『ひなたんバリアー(物理)ひなた!!』ズバババババッ

マリン『み、水よ! 力を貸して!』ブシューッ

J『おぉーっと、ここでナチュルマリンが水流の反動を利用してトリモチゾーンを見事脱出ぅー!』

アース『おお、やるのう! よし、ウチもはぶっ!?』ベチベチンッ

カミカゼ『負けるか、トバすぜぇっ!!』ヴォンヴォンヴォォーン

ディアブル『こちらこそっ!!』ガガッ

RISA『軽い軽いッ』ヒュッヒュッ

聖來『おっとと、危ない危ない』ヒョイッ

乙『ヤイバー・スパーク!! かわせねえなら迎撃するのさ!!』バチバチバチバチッ

ファイア『ええ、斬り燃やすのが楽でいいわ……!』ゾンッ

J『さあ、次々とトリモチゾーンを抜けていく! 先頭はナチュルマリン! 続くはカミカゼとノーヴル・ディアブルだあ!!』

亜里沙『その後ろをパーボ・レアルとラプター……あら、ナチュルスカイが追い上げてきてるわね』

ウサコ『ナチュラルラヴァースとラビッツムーンも近づいてきたウサ』

カミカゼ『逃がすかぁ!』

ラプター『おらおらおらぁ!』

マリン『ひっ、こ、怖いんですけど……』

J『さあ、ナチュルマリンを先頭とするトップグループが今、最初の角を曲がります!!』

??『『バン』『バン』『バン』!』ドーンドーンドーン

ディアブル『きゃっ……!?』

スカイ『び、ビームが……降ってきた……?』

レアル『上空、誰かいるぞ!』
736 : ◆3QM4YFmpGw [saga sage]:2014/04/27(日) 11:57:47.94 ID:JjMliB3I0
みりあ『あはははっ♪ 『バン』『バン』!』ドーンドーン

ラビッツ『ひゃああ!?』

ナチュラル『な、何なのあの子!?』

J『ここで第二の妨害! 一般人協力者による、上空ビーム攻撃だぁー!!』

みりあ『(当たらないように、邪魔する感じで撃ちまくればいいんだよねっ)『バン』『バン』『バン』!』ドーンドーンドーン

ひなたん『な、何事ナリ!?』

RISA『ちょっ、なんの冗談よ!?』

聖來『うっひゃあ、またスゴイ事なってるね』

オーフィス『うわっ? ……飛んでるんだ』

J『後発グループも追いついたー! さあ、このビーム乱射の中をくぐりぬける事は出来るのかー!』

ウサコ『ちなみに、一般人協力者のM.Aさんには後で謝礼と粗品を贈呈するウサー』

桜餡『やっと追いついたー……って何これ!?』

アーニャ『っぐ……!?』

みりあ『あっ』

J『おおっとお! 一般人協力者のM.Aさんのビームがアナスタシアの肩を掠めたぁー!!』

オーフィス『アーニャっ!? ……ガラじゃないけど、ちょっとだけ怒ったよ…………ペーストッ』ババババババッ

みりあ『へっ? うわわわわわっ!!?』ベチャベチャベチャベチャッ

J『なんとオーフィス、先ほど切り取ったトリモチ弾を一般人協力者のM.Aさんへ向けて発射したー!!』

ウサコ『ああっ、一般人協力者のM.Aさんが落下してくるウサ!』
737 : ◆3QM4YFmpGw [saga sage]:2014/04/27(日) 11:58:46.34 ID:JjMliB3I0
みりあ『きゃああ〜〜〜〜〜〜〜〜!?』ヒュルルルルルルルルル

カレンヴィー『はあ、やっと追いついt……』

ファイア『どうにか切り抜けt……』

みりあ『ぎゃんっ!!』ドサッ

カレンヴィー『ごふっ!?』

ファイア『おぶっ!?』

J『おおおおおっとおお!! 角を曲がってきたカレンヴィーとエンジェリックファイアがクッションの役目を果たしたー!!
 無傷! 一般人協力者のM.Aさんは無傷です!!』

ナイト『うわ、痛そ…………』

東郷『少し遅れたのが幸いしたね……』

クラリア『運が無かったわね』

J『そんな二人を尻目にトリモチエリアを突破した参加者達が次々と走り抜けていく!』

01『あ、あれ……ファイア殿? ……ちょっと、ファイア殿? ファイア殿!?』

アース『お、おい! カレンヴィーも息しとらんぞ!!』

乙『お、俺に任せろ! ヤイバー・スパークを最小出力で撃てば電気ショックに……』

甲『任せたぞ相棒! 俺は代わりにゴールへ急ぐ!!』

スカル『おー、お二人におくやみ申し上げますです』

有香『は、早い早い! まだ死んでませんから、生きてますから!!』

J『SC-01、ナチュルアース、ヤイバー・乙は二人の治療のために足を止めたようです! 至急救護班を向かわせます!』

亜里沙『あらあら、大波乱ねえ』

ウサコ『ここで現在順位をおさらいするウサー』

01位:ナチュルマリン
02位:カミカゼ
03位:ノーヴル・ディアブル
04位:ナチュルスカイ
05位:パーボ・レアル
06位:ラプター
07位:ラビッツムーン
08位:ナチュラルラヴァース
09位:ひなたん星人
10位:RISA
――――――――――――
11位:水木聖來
12位:オーフィス
13位:桜餡
14位:マーセナリー・東郷
15位:アビスナイト
16位:レポ・クラリア
17位:アナスタシア
18位:ヤイバー・甲
19位:中野有香
20位:アビスカル
21位:SC-01
21位:ナチュルアース
21位:ヤイバー・乙

リタイヤ:カレンヴィー
リタイヤ:エンジェリックファイア

J『これは大波乱! 第一予選で二位だったカレンヴィーが、予期せぬハプニングでリタイヤだぁー!!』

亜里沙『残ったメンバーも、まだまだ何があるか分からないわね』
738 : ◆3QM4YFmpGw [saga sage]:2014/04/27(日) 11:59:47.53 ID:JjMliB3I0
J『おおっとぉ!! 先頭グループに動きがあったようです!!』

ディアブル『きゃあっ!? ……これは……』ビュン

スカイ『氷塊……ってまさか!?』ビュビュン

イヴ『氷よ、集まり寄りて塊になれ〜、それそれぇっ♪』カキーン カキーン

J『第三の妨害は、イヴ非日常相談所所長イヴ・サンタクロースによる氷塊千本ノックだぁ!!』

マリン『(氷塊ノック→親衛隊強襲以来→もりくぼが友達襲った→超☆トラウマ←今ここ)ひぃぃぃぃ!?』

ウサコ『ナチュルマリンがよく分からないパニックを起こしてるウサー!?』

レアル『うわわっ!? 穴だけじゃ捌ききれねえなこの量……』ヒュンヒュン

ナイト『へへっ、こういう時は……それっ!』トプン

J『アビスナイトが地面に潜ったー! これで氷塊攻撃をやり過ごすつもりかー!!』

ラプター『その手があったか! スカル……って、まだ来てねえのかよ!?』スカッ

RISA『ちょっ、一人で撃てる量じゃないでしょコレぇ!?』スカッ

オーフィス『はい、カットカットカット……』ヒュッヒュッヒュッ

ひなたん『必殺! ラブリージャスティスひなたんホームラン返しナリッ!!』グワァラゴワガキーン

ウサコ『東方でドドンパチな弾幕を一人で張れるイヴ所長、しかも病み上がり……恐ろしい子ウサ!』

ナイト『ふっふっふ……お先に失礼ぃ〜♪』

亜里沙『あら、渋滞の隙を突いてアビスナイトが浮いてきたわね』

ナイト『とにかく今は一位を目指す! そうでなきゃ予選通過できないもんね!!』

カミカゼ『くっそ、待ちやがれ!』

東郷『……隙が見えた、今だ!』

J『アビスナイト独走ー!! それをカミカゼとマーセナリー・東郷が追……おや? コース上に誰かいますよ?』

??『…………』

ナイト『? ちょっと君ー、危ないよー?』

??『……綾瀬流……』チャッ

ナイト『へっ?』
739 : ◆3QM4YFmpGw [saga sage]:2014/04/27(日) 12:00:44.47 ID:JjMliB3I0


??『……疾風怒刀』ザザザザザザザザザザッ


ナイト『きゃああああああああっ!!??』ドシャアッ

カミカゼ『なにっ!?』

J『……い、一体何が起こったのでしょう!? 謎の人物とすれ違った瞬間、アビスナイトが満身創痍となって地に伏したぁー!?』

東郷(何者か知らないが、なんという太刀捌きだ……一瞬で戦闘外殻を半壊させてしまうとは……!)

??(この鎧……以前戦った棘の男の物と同種……まあ、強度は遠く及ばないようですけど……)

カミカゼ『なんなんだテメェは!? 何が目的だ!!』

シュラ『……名前は、カースドライダー・シュラ。目的は……そうですね、言ってみれば、この力を試してみたい、といったところでしょうか?』

ディアブル『カッ……ナイトさん!? ……あなた、わたくしの仲間に何をしたのです!?』

シュラ『腕試しです。ここに集まるヒーローたちの中でも、彼女はなかなか上位に位置する実力のようだったので』

カミカゼ『気に食わねえ……! レースの前にテメェをぶっ飛ばす! 転し……』

シュラ『綾瀬流、刀代無双』

カミカゼ『がはっ……!?』ドゴォッ

ディアブル『カミカゼさんッ!?』

シュラ『隙だらけです』

ディアブル『ぅがっ……っは……!?』ゴッ

シュラ『……やはり彼女には拳で十分でしたね』
740 : ◆3QM4YFmpGw [saga sage]:2014/04/27(日) 12:01:34.51 ID:JjMliB3I0
J『……………………な、なんということでしょう…………突然の乱入者、カースドライダー・シュラ……』

J『何の苦戦も無く……カミカゼとノーヴル・ディアブルまでも討ち倒してしまいました……!!』

東郷『……なかなか無粋な事をしてくれるね、だが……ッ!!』ダッ

シュラ『速い、ですが……甘いです』スゥッ・・・

東郷『なにっ!?』

シュラ『今です。疾風怒刀』

東郷『ぐあああああああああっ!??』ガガガガガガガガガガガガガガッ

茨姫(アイッ!!)

シュラ『ご心配なく、全て峰打ちです。が、パッと見にも全身に強い打撲……暫くは動かないほうがいいですね』

マリン『ひぇっ……な、なんですかこの地獄絵図……』

レアル『これ全部、あいつ一人がやったってのか……!?』

シュラ『……やはりこの鎧は体によくなじみます。今回はこんなものでしょう。では、またいつかお会いするかもしれませんね』シュダッ

ナチュラル『はっ、速い……なんなの、あの人……』

ラビッツ『そ、それよりも四人を!』

J『だ、大至急救護班を!!』

ラプター『んならレース再開だな。お先に!』

レアル『あっ、あんにゃろう! 待て!!』

ナチュラル『油断も好きもありゃしない!』

ラビッツ『待ちなさーい!!』
741 : ◆3QM4YFmpGw [saga sage]:2014/04/27(日) 12:02:37.15 ID:JjMliB3I0
マリン『え、えっと、えっと……』

スカイ『急がないと……!』

ひなたん『おっかない人だったひなた……』

聖來『帰った今がチャンスだねっ』

桜餡『ようし、追い上げた!』

ディアブル『ぐっ、ストラディバリ…………動けません、か……』ヨロ・・・

ストラディバリ『……レディ』

ディアブル『分かりました……ここで、待っていて下さい……』フラ・・・

マリン『ちょ、ちょっと……そんな傷で動いたら大変なんですけど……私と一緒にリタイヤしましょうよ……ね……?』

ディアブル『ナチュルマリンさん……申し訳ありませんが、それは出来ません』フラフラ・・・

マリン『何でですか……ディアブルさんはもう十分頑張ったじゃないですか……今リタイヤしても、きっと仲間の人たちも怒ったりしませんよ……』

ディアブル『わたくしは……お二人に償いをしなくてはいけないのです』

マリン『償い……?』

ディアブル『わたくしは、ある事情から素顔を隠しています。それで足がつくのを避ける為に、ホテル等の宿泊施設を利用出来ないのです……』

マリン『…………』

ディアブル『わたくし一人なら構いませんが、それにお二人を……ナイトさんと01さんを巻き込んでしまいました……わたくしの、勝手な都合で……』

マリン『…………』

ディアブル『なので、この賞金をとり、少しでもお二人に償いとご恩返しを…………』
742 : ◆3QM4YFmpGw [saga sage]:2014/04/27(日) 12:03:23.01 ID:JjMliB3I0
マリン『……分かりました。もう止めません。でも……』ポワァ

ディアブル『あっ、傷が……ナチュルマリンさん……?』

マリン『い、一緒に行かせてもらいます……ぼろぼろで、見てられないことには変わらないですし……』

ディアブル『…………ありがとうございます』

マリン『……お礼を言うのは、こっちのほうです』

J『ノーヴル・ディアブル、ナチュルマリンの助けを得て再び歩き出しました! 他のヒーロー達も続々氷塊ゾーンを突破していきます!!』

ウサコ『もう一度順位をおさらいするウサ』

01位:ラプター
02位:パーボ・レアル
03位:ナチュラル・ラヴァース
04位:ラビッツムーン
05位:ナチュルスカイ
06位:ひなたん星人
07位:水木聖來
08位:桜餡
09位:ノーヴル・ディアブル
09位:ナチュルマリン
――――――――――――
11位:オーフィス
12位:RISA
13位:中野有香
14位:ヤイバー・甲
15位:レポ・クラリア
16位:アナスタシア
17位:SC-01
18位:ナチュルアース
19位:アビスカル
20位:ヤイバー・乙

リタイヤ:カレンヴィー
リタイヤ:エンジェリックファイア
リタイヤ:アビスナイト
リタイヤ:カミカゼ
リタイヤ:マーセナリー・東郷

J『しかしこれは本当に大波乱ですね、まさかリタイヤが五人とは!』

亜里沙『ええ、ほとんどハプニングですけどねえ』

ウサコ『アビスナイト達のもとにも救護班が急行中なのでごあんしんくださいウサ』
743 : ◆3QM4YFmpGw [saga sage]:2014/04/27(日) 12:04:23.22 ID:JjMliB3I0
J『さあ、そろそろ先頭グループが最後の妨害に差し掛かる頃です!!』

ラプター『へへっ、この調子なら一位いただ……』

??『妨害ロボ、電磁砲発射だ!!』

ロボ『ガピー』バチバチッ

ラプター『うおおっ!? な、なんだ!?』

J『最後の妨害はプロダクションより、妨害ロボの多目的砲撃だぁー!!』

晶葉『ふふん、私プラス龍崎博士……ダブル天才の科学力の結晶を見せてやる! ロボ、煙幕ミサイル!!』

ロボ『ガガガー』ズドドドド

スカイ『きゃうっ!? けほっ、けほっ、けむい……!』ボフン

晶葉『続けて電磁砲!!』

ロボ『ピピー』バチバチッ

レアル『危ねぇ……!? しまった、カスったから義肢の調子が……!』

晶葉『強化繊維ネット!!』バシュッ

ひなたん『わぶっ!? ……んぐぐ、き、斬れないナリ……!』

ラビッツ『今です! ウサミン人間大砲パート2!!』

ナチュラル『続くよっ!!』
744 : ◆3QM4YFmpGw [saga sage]:2014/04/27(日) 12:05:30.30 ID:JjMliB3I0
晶葉『抜かれたか! 構わん、煙幕ミサイル連続発射!!』ズドドドド

ディアブル『避けきれない……!?』

マリン『ディアブルさん掴まって…………水よ、力を貸してっ!!』シュゴォーッ

J『またしてもナチュルマリンの水流ジェットによる強行突破が炸裂したぁー!!』

RISA『わわわっ、ミサイルがこっち来る!?』

オーフィス『なら……ペースト!』ドドドドドドドドド

J『オーフィスがカットした氷塊でミサイルを迎撃したー!!』

ウサコ『煙幕がそこらじゅうに広がっていくウサ』

有香『……見えました!』

亜里沙『有香ちゃんが煙幕の切れ目を駆け抜けたわ!』

ラプター『くっそ、だいぶ出遅れた!』

レアル『ちくしょう、こうなりゃ気合だ!!』

聖來『おっと、負けないわよ!』

晶葉『ロボ、ワイヤー分銅で相手を捉えろ!!』

ロボ『プッピガン』ドッ

レアル『やばっ……ぅおっ!?』ヨロッ

聖來『きゃああ!?』ガシャッ

J『ああーっと! パーボ・レアルがよろけ、背後の水木聖來にワイヤー分銅が直撃ー! 雁字搦めだー!!』

レアル『義肢の調子悪くなったのが好転したか……悪く思わないでくれよ、わざとじゃないんで!』

聖來『ちょ、ちょっとぉ!!』
745 : ◆3QM4YFmpGw [saga sage]:2014/04/27(日) 12:06:41.70 ID:JjMliB3I0
桜餡『あ、あれ……こっちには何も飛んでこない……えへへ、ラッキー♪』

甲『……こうなったら! ヤイバー・フルパワー!!』ギュイイイイイイイ

J『おおっと! ヤイバー・甲のあの構えはまさか!!』

甲『ヤイバー・バーストォ!!』ドッゴォ

クラリア『くっ……!?』

アーニャ『爆発……!?』

桜餡『ふぎゃー!?』

J『出たぁー!! 手のひらに精製した火球を一気に爆発させる必殺技、ヤイバー・バーストだぁー!!』

亜里沙『ナチュルマリン同様、推進力にして突進したようね』

ウサコ『あっ、前を走ってた桜餡も爆風で吹っ飛ばされてるウサ』

晶葉『抜けたやつは気にするな、ロボ! 残った連中に集中砲火!』

ロボ『ピッピガピー』バチバチバチバチッ

スカル『あふっ……び、ビリビリでございます……』

乙『へへっ、悪いな! こちとら「とくせい:ひらいしん」なんでな!!』バチーン

アース『地よ、力を貸せぇっ!!』ゴゴゴォッ

J『ナチュルアース、隆起した地面を足場に大ジャンプだー!!』

01『やむを得ないか……マイシスター! 鉄板をヤツにぶち当てるであります!!』

ヴーン ヴーン ブォン

晶葉『な、なにっ!? ロボ、強化繊維ネットで食い止めろ!!』

ロボ『ピガ・ガガーレ』 バシュッ

晶葉『ふう、危ない危ない……』
746 : ◆3QM4YFmpGw [saga sage]:2014/04/27(日) 12:07:39.22 ID:JjMliB3I0
J『さあ、全員最後の妨害を脱しました! おおっと、そしてゴール前! 早くも一位の姿が見えてきました! 一位でゴールしたのは……!』

ラビッツ『っゴーーーーール!!』

ナチュラル『よっし!』

ワァァァァァァァァァァァ・・・

J『ラビッツムーンとナチュラルラヴァースのワンツーフィニッシュだぁー!! 会場に惜しみない拍手が鳴り響く!!』

マリン『も、もう……諦めるのは……むー、りぃー…………』

ディアブル『はっ、はっ……なんとか、ゴール出来ましたわ……』

有香『押忍! 自分は本戦に残れたでしょうか!?』

J『続けてナチュルマリンとノーヴル・ディアブルがゴール! 直後に中野有香も滑り込みました!』

ラプター『チッ、中間一位だったのによ……ま、10位以内だしいっか』

桜餡『ば、爆風で飛ばされて怪我の功名大作戦〜……なんちゃって……』

ひなたん『い、一時はどうなる事かと思ったナリ……』

甲『最善は尽くした! あとは10位次第か……』

J『少し遅れてラプターと桜餡、ひなたん星人とヤイバー・甲もゴールしました! これで得点枠はあと一つ!!』

亜里沙『そういえば、さっきからパーボ・レアルの動きがぎこちないわねえ』

レアル『くっそ……義肢が、重い……!!』

J『ズルズルと順位が落ちて現在10位! 11位のSC-01が背後に迫る! これはマズ……ん? ……な……何だあれはぁ!?』

亜里沙『コースの後方から、何かが物凄いスピードで迫ってくる……?』

ウサコ『あ、あれは……!』
747 : ◆3QM4YFmpGw [saga sage]:2014/04/27(日) 12:08:49.14 ID:JjMliB3I0


カレンヴィー『うおおおおおおっ!!』

ファイア『まだ負けていないわっ!!』

ナイト『あれっくらいの怪我でぇ!!』

カミカゼ『寝てられるかよぉぉっ!!』

東郷『勝負は、まだここからだっ!!』

J『な、なんとぉ!! リタイヤしたはずのカレンヴィー、エンジェリックファイア、アビスナイト、カミカゼ、マーセナリー・東郷だあ!?』

亜里沙『救護班が搬送したハズだけれど……』

カミカゼ『あんなモン、無理やり振り切った!』

カレンヴィー『ここにいる五人みんな、リタイヤを撤回します!』

東郷『こうやって走れている、問題は無いだろう』

ウサコ『む、無茶苦茶ウサ……』

晶葉『その意気や良し! ロボ、全身全霊で相手してやれ、全弾一斉発射だ!!』

ロボ『ガガッピーピー』ドガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガッッッ

ナイト『邪っ魔ぁぁぁああああああ!!』ガィン

ファイア『ファイアズムサイズ・リフレクト!!』バシッバシッ

晶葉『ば、馬鹿な! 全て弾き返しただと!?』

カレンヴィー『今だっ!』

ファイア『負けないわ!』

J『五人とも最後の妨害を瞬く間に突破ぁ!! 更に他参加者をゴボウ抜きだー!!』

乙『うおっ!?』

アーニャ『速い……』

聖來『よしっ、やっとほどけた!』
748 : ◆3QM4YFmpGw [saga sage]:2014/04/27(日) 12:10:01.24 ID:JjMliB3I0
カミカゼ『どけどけどけどけぇぇぇぇ!!』

東郷『道を開けてもらおう、茨姫っ!』ヒュパッ

クラリア『ック……鞭……?』ビシィッ

スカル『いたっ……』ビシィッ

アース『厄介な……!』ビシィッ

ナイト『ごめんね、01! お先にぃっ!』

01『おおっと……ふふっ、健闘を祈るでありますよ、ナイト!』

J『さあ、五人がパーボ・レアルに迫る! パーボ・レアル逃げ切れるか!?』

レアル『……クッソ、気合だ、気合!!』

亜里沙『根性で速度を取り戻したわねえ』

ウサコ『それでも五人の方がまだまだ速いウサ! ゴールまであとわずかだウサ!!』

ファイア『切り札を切る時が来たわ……メルティングブースターァ!!』ヒュボッ

東郷『ッ!? 炎による急加速! 負けるか、茨姫!!』シュルッ

カレンヴィー『またあの鞭! だったら……てやああっ!!』ジャキッ

カミカゼ『何だ、腕が長槍に!? くっそ!!』ヴゥン

ナイト『え、えっと、えっと……ああもう! あたし特に無い!!』バタバタ

レアル『チッ、イチかバチか! 動いてくれ、ジェット!!』ガチャッ

J『六人ほぼ横一線!! そして、そのままゴォーーーーーーーール!!』

ウサコ『ほとんど同時ウサ! これはどうなるウサ!?』

J『っと、その前に! SC-01、ナチュルアース、ナチュルスカイ、RISA、水木聖來、レポ・クラリア、アナスタシア、オーフィス、アビスカル、ヤイバー・乙が次々ゴールです!!』

亜里沙『……はい、はい……えー、先ほどのゴール。ビデオ判定の結果をスクリーンに映すそうよ』

ナイト『!』

カミカゼ『…………』

J『では、参りましょう! 10番目にゴールラインをくぐったのは…………!?』

東郷『…………』

ファイア『…………』

レアル『…………』

カレンヴィー『……!』
749 : ◆3QM4YFmpGw [saga sage]:2014/04/27(日) 12:11:41.79 ID:JjMliB3I0


J『パーボ・レアル! パーボ・レアルの右手だぁー!!』

ウォオオオオオオオオオオオオオオオオ・・・

J『直後にカミカゼ、カレンヴィー、マーセナリー・東郷、エンジェリックファイア、アビスナイトの順に続きました!!』

レアル『ぎ、ギリギリだった……』

J『では、改めて順位を発表します!』

01位:+100pt:ラビッツムーン
02位:+100pt:ナチュラルラヴァース
03位:+100pt:ナチュルマリン
04位:+100pt:ノーヴル・ディアブル
05位:+100pt:中野有香
06位:+100pt:ラプター
07位:+100pt:桜餡
08位:+100pt:ひなたん星人
09位:+100pt:ヤイバー・甲
10位:+100pt:パーボ・レアル
――――――――――――
11位:+000pt:カミカゼ
12位:+000pt:カレンヴィー
13位:+000pt:マーセナリー・東郷
14位:+000pt:エンジェリックファイア
15位:+000pt:アビスナイト
16位:+000pt:SC-01
17位:+000pt:ナチュルアース
18位:+000pt:ナチュルスカイ
19位:+000pt:RISA
20位:+000pt:水木聖來
21位:+000pt:レポ・クラリア
22位:+000pt:アナスタシア
23位:+000pt:オーフィス
24位:+000pt:アビスカル
25位:+000pt:ヤイバー・乙

J『第一予選での得点にこの得点が加算され、上位8人が本戦に出場できます!』

ラビッツ『…………』

マリン『…………』

アース『…………』
750 : ◆3QM4YFmpGw [saga sage]:2014/04/27(日) 12:13:14.06 ID:JjMliB3I0
J『では……発表します!!』




01位:180pt:パーボ・レアル
02位:150pt:ラビッツムーン
02位:150pt:ノーヴル・ディアブル
04位:140pt:ナチュラルラヴァース
04位:140pt:ナチュルマリン
04位:140pt:桜餡
07位:130pt:ラプター
07位:130pt:中野有香
――――――――――――
09位:120pt:ひなたん星人
10位:100pt:ヤイバー・甲
11位:060pt:カレンヴィー
12位:040pt:カミカゼ
12位:040pt:ナチュルスカイ
14位:030pt:RISA
14位:030pt:レポ・クラリア
14位:030pt:アナスタシア
14位:030pt:ナチュルアース
14位:030pt:水木聖來
14位:030pt:マーセナリー・東郷
20位:020pt:ヤイバー・乙
20位:020pt:アビスカル
22位:010pt:SC-01
22位:010pt:エンジェリックファイア
22位:010pt:オーフィス
25位:000pt:アビスナイト

J『本戦進出は、パーボ・レアル、ラビッツムーン、ノーヴル・ディアブル、ナチュラルラヴァース、ナチュルマリン、桜餡、ラプター、中野有香の8人です!!』

ワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!

桜餡『やったぁー!!』

ラプター『ま、こんなもんだろうよ』

ラビッツ『連覇狙っちゃいますよー!』
751 : ◆3QM4YFmpGw [saga sage]:2014/04/27(日) 12:14:20.48 ID:JjMliB3I0
J『それ以外の方は敗者復活に移りますが……カレンヴィーやカミカゼは、その、大丈夫ですか? 辞退も出来ますが……』

東郷『ふっ、愚問だね。参加に決まっているだろう』

ファイア『あの程度の痛みなんて、どうってことないわ』

J『……分かりました。では敗者復活戦会場行きのバスが表に……』

クラリア『待ちなさい』

J『はい?』

クラリア『私は辞退するわ』

J『え……ええっ!?』

クラリア『敗者復活……そんなお零れで得た玉座など、この私に相応しいはずが無いでしょう?』

ウサコ『超絶独自理論ウサ……』

クラリア『そういうわけだから、私はこれで失礼するわ』カツッカツッカツッ・・・

J『……え、えー……はい。では、レポ・クラリアは敗者復活不参加で敗退ということで……皆さん、バスに乗って下さい』

スカイ『ず、ずいぶんぶっ飛んだ人ですね』

RISA『アイツらしいっちゃらしいけど』

聖來『ま、ライバルが減ったって考えればラッキーかな?』

ひなたん『ここで一発逆転ナリ!』

ナイト『0ptから敗者復活の座を射止めたらすっごいカッコイイよねー……よしっ!』

オーフィス『二人ともすごい燃えてるなあ』

乙『ちっくしょ、このままじゃヤイバーズの頭脳(笑)扱いだ……ん、リーダー?』

甲『ああ、やっぱダメだ。客席にチラチラ見える眼鏡がすげえ気にかかる……』

J『選手たちが移動中の間、客席の皆さんにはちょっとした余興をご覧いただきまーす!』

続く
752 : ◆3QM4YFmpGw [saga sage]:2014/04/27(日) 12:18:09.29 ID:JjMliB3I0
AHFはここまで
アミダでカミカゼと東郷、更にクラリアが敗者復活戦行きになって
「いやどないすんねんこの二人予選落ちとか…………あっ、ティンと来た! 穂乃香さんに暴れてもらおか!」
「一人くらい敗者復活辞退させるか……よしアミダで……まさかの時子様。あっでも……いけるやん!」
そんな思考回路の結果こうなった、反省はしている

次は再投下分ー
753 : ◆3QM4YFmpGw [saga sage]:2014/04/27(日) 12:19:42.63 ID:JjMliB3I0

クールP「待たせたね」

学園内、アイドルヒーロー同盟の控え室として使われている教室にクールPが戻ってきた。

ライラ「お帰りなさいでございます」

爛「どこ行ってたんだ?」

今教室の中にいるのは、爛とライラ、クールP。

そして、戦闘外殻カンタローとマキナ・アラクネだけである。

クールP「ちょっと、チナミさんに頼まれててね。渡す物があったのさ」

爛「ふーん」

爛は興味無さそうに、机の上に腰を下ろした。クールP「そういえば、シャルクさんとガルブさんは? 姿が見えないけれど」

爛「さっきスタッフに連れてかれてたぞ。会場設営の準備と、整理券の配布だってよ」

クールP「そういう事か。……あの二人、案外早く同盟に馴染んだね」

顔写真入りの社員証を得意げにぶら下げる二人の姿を思い出し、クールPは思わず苦笑する。

クールP「……おや、電話が……はい、クールPです。……はい、はい……」

壁にもたれかかりながら、クールPは電話の応対を続けた。

クールP「……なるほど。了解です。……はい、明日からですね、分かりました、はい。では」

通話を終了させたクールPは、やれやれといった表情でライラ達の方へ歩いてきた。

754 : ◆3QM4YFmpGw [saga sage]:2014/04/27(日) 12:21:01.72 ID:JjMliB3I0
爛「同盟か?」

クールP「うん。明日からライラに案内がつくんだってさ」

ライラ「案内ですか?」

クールP「そう。地上に来て右も左も分からないだろうライラの事を思って……らしいけど」

爛「んなモン、俺たちだけでも出来るだろうに…………アレか、そいつは建前か」

クールP「恐らくはね。未だにウェンディ族への不安要素が拭えなくて、案内という名目で監視を……そんな所じゃないかな」

爛「んだよ、かえって動きづらくなってんじゃねえか」

毒づく爛に、クールPは余裕の態度で返してみせる。

クールP「今は焦って動く時じゃないって事さ。海底都市とケリをつけてから、改めて動けばいい」

爛「それもそうか。何なら、ライラはその時引っ込めとくってのもアリだな」

クールP「そうだね。同郷の士と戦うのは、やっぱり気が引けるんじゃないかい?」

二人の視線と言葉を受け、ライラは難しそうに首を傾げる。

ライラ「うーむむ……でもライラさん、お仕事なら頑張りますですよ」

クールP「……そうかい? まあでも、無理しないでいいからね」

クールPはそう言ってライラの頭をさすさすと撫でてやる。
755 : ◆3QM4YFmpGw [saga sage]:2014/04/27(日) 12:22:05.05 ID:JjMliB3I0
爛「……で、案内には誰が来んだ?」

クールP「APだよ」

爛「ウゲッ……あの番犬女か……」

APの名を聞き、爛が顔を曇らせた。

ライラ「APさんというのは、どういう方でございますか?」

クールP「分かりやすく言えば『同盟トップの忠犬』だね」

ライラ「忠犬ですか?」

爛「ああ。よーするに俺らが一番警戒してる相手だ」

顔をしかめたまま、爛が窓の外に目を向ける。

爛「同盟の敵になるヤツはとにかく叩きのめす、そんな奴だ」

クールP「でもまあ、これはある意味チャンスだよ」

爛「チャンスぅ?」

クールP「そう。ライラが彼女と友達になって懐柔すれば、僕らは更に動きやすくなる」

ライラ「よく分かりませんが、ライラさんに全てがかかっていますですか?」

クールP「そういうこと。よろしく頼むよ?」

ライラ「はい、頑張りますです」

ライラに微笑んで見せると、クールPは爛に向き直った。

クールP「さて、爛。ライラは衣装合わせとか色々あるけど、君は自由時間だ」

爛「おっ、気がきいてんな?」
756 : ◆3QM4YFmpGw [saga sage]:2014/04/27(日) 12:22:56.76 ID:JjMliB3I0
クールP「午前のステージはRISAと……ああ、ラビッツムーンとナチュラルラヴァースも来るそうだ」

爛「へーえ、安部先輩と相葉先輩がねえ。ちょっと学園に同盟の戦力割きすぎじゃねえか?」

クールP「初日に結構な騒動があったからね。警戒してるのさ」

爛「ま、そういう事ならしゃあねえか。俺は十二時までに戻ってくりゃあいいな?」

壁の時計をちらりとみやった爛は、傍にあった変装用の帽子とサングラスを装着した。

クールP「うん、楽しんで来るといいよ。菜々君や夕美君にあったらよろしくね」

爛「あいよー」

こちらを向かずに手だけ振りながら、爛は教室を後にした。

クールP「さて、ライラは衣装合わせだよ。いくつか用意したけど、気に入ったのはあるかな?」

ライラ「そうでございますねー」

ライラはしばらく、並べられた衣装とのにらめっこを続けた。

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757 : ◆3QM4YFmpGw [saga sage]:2014/04/27(日) 12:24:04.91 ID:JjMliB3I0
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エマ「おっちゃーん! コレ一個ちょーだい!」

マルメターノ「まいどあり!」

エマは屋台の男に小銭を手渡し、丸まったソーセージに豪快にかぶり付く。

エマ「うっまー!!」

サヤ「楽しそうねえ、エマったら」

マキノ「ええ、そうね。…………」

サヤへの返事もそこそこに、マキノは先ほどから周囲をせわしなく見回している。

サヤ「……どうかしたの?」

マキノ「みりあさん……今日は来ていないのかしら?」

サヤ「みりあ……ああ、昨日言ってた?」

エマ「もご、マリナさんが親代わりしてるって子だっけ?」

ソーセージをほお張ったまま、エマがこちらへ戻ってきた。

マキノ「飲み込みなさい。……ええ、そうよ。まあ、初日にあんな騒動に巻き込まれては……」

もうここには顔を出さないかもしれない。そう続けようとして、口をつぐむ。

彼女――赤城みりあは、脱走した親衛隊員マリナの重要な手掛かり。

それが潰えたなどと、自分から口に出すのは、どうしてもはばかられた。
758 : ◆3QM4YFmpGw [saga sage]:2014/04/27(日) 12:25:28.68 ID:JjMliB3I0
エマ「んー。じゃあさ、あのマスク・ド・メガネってのを探したら?」

サヤ「あっ、そうねぇ。その子だったら来てるかも」

マスク・ド・メガネ――上条春菜。

眼鏡を愛し、眼鏡を護るべく、眼鏡と共に闘う眼鏡ヒーロー。

昨日、マキノはカースドヒューマンに襲撃されたところを、彼女に助けられた。

そしてその時、マキノは春菜に利用価値を見出していた。

マキノ「そうね……春菜さんなら、まだ来ている望みがあるかしら」

今のうちに積極的に接触し、協力的な態度をとっておけば、いずれ来たる時にこちらの要求を呑ませやすくなる。

マキノはそう考え、静かにうなずいた。

マキノ「……なら、今のうちに彼女に恩を売っておきましょうか」

サヤ「恩を?」

マキノ「ええ。二人とも、昨日の妙なカースを覚えているかしら」

エマ「ああ、昨日ぶっとばしたアイツらな!」

レンズのような形状の核を持ち、眼鏡への恨み言を口にする奇妙なカース。

眼鏡を恐れるナニカを思った黒兎が産み出した、アンチメガネカースだ。

マキノ「今朝の放送では、どうやら人型に化けた個体も現われたとか」

サヤ「そういえば、そんな臨時ニュースやってたわねえ」

マキノ「眼鏡を嫌うカース……少なからず、春菜さんとは敵対しているはずよ」

エマ「……あ、そっか! じゃあソイツらを倒しておけば……」

マキノ「ええ。多少なり春菜さんに恩を売れるのでは無いかしら」

マキノは微笑んで眼鏡をくい、と上げる。
759 : ◆3QM4YFmpGw [saga sage]:2014/04/27(日) 12:26:27.84 ID:JjMliB3I0
サヤ「んふっ、なら善は急げね。手分けして例のカースを探しましょっか」

エマ「えっ、サヤもう体いいの?」

サヤ「ええ、カース相手なら多分ねぇ」

マキノ「オクトの調子もいい……分担する案に賛成ね。じゃあ、エマには学園内を探してもらおうかしら」

エマ「オッケー!」

マキノ「サヤは空から学園周辺を探索して。私は裏山を中心に学園の外を探すわ」

サヤ「分かったわぁ」

マキノ「13:00に一度中断して正門前で情報を交換しましょう。あと、危険を感じたらすぐに逃げること」

マキノが矢継ぎ早に繰り出す言葉に二人はただうなずく。

マキノ「春菜さんに会ったら私の友人だと言っておいて。これが写真よ」

マキノは二人に春菜の顔写真を手渡した。

サヤが地上のヒーロー資料を作る際に出た余りである。

エマ「おっし、やるよ! 行こっか、ルカ!」

『カララ』

地面からひょっこり顔を出すルカのヒレを一撫でし、エマの姿は人込みの中に消えていった。

サヤ「また後でね、マキノ。ペラちゃん、こっちよぉ」

『キリキリ』

サヤもまた、ペラを連れて人気の無い場所へと歩いていく。

マキノ「…………まあ、あと三日あるし、休暇はその時でいいわよね」

誰に向けて言うでもなく、マキノは自分にそう言い聞かせた。

マキノ「私たちも行くわよ、オクト」

『ゴロンゴロン』

光学迷彩を展開するオクトにそう言うと、マキノは裏山へ向けて歩を進めていった。

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760 : ◆3QM4YFmpGw [saga sage]:2014/04/27(日) 12:27:36.63 ID:JjMliB3I0
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京華学院正面。

賑やかな雰囲気に似つかわしくない、黒服とサングラスで身を固めた者達が立っていた。

隊員A「隊長、やっぱり例の小人、この学園周辺に目撃情報が集中してるみたいです」

隊員C「『すずみやさん』……いるんですかね?」

隊長「探してみない事には分からんな。念の為に言っておくが、本来の目的は星花お嬢様だ。忘れるなよ」

隊員D「ええ。『すずみやさん』はあくまでも手掛かりの一つ、ですよね」

彼らは涼宮家総裁の指示で動く涼宮星花捜索隊。

現在は涼宮星花及び、星花に似た姿の小人――仮称『すずみやさん』の行方を追っている。

隊員B「すみません、こいつと似たような小人で、こう、白いドレスを着たのを見ませんでしたか?」

マルメターノ「うーん、ドレスのは見てないな」

かわしまさん『わからないわ』

隊員B「そうですか……すみません、お邪魔しました。……うーん、手掛かりになると思ったんすけどねえ」

一人の隊員が、隊長である女性の下へ戻ってきて頭を掻く。

隊長「……学園内は私が見よう。お前らは外を探せ」

隊員「「「「了解しました!」」」」

四人の隊員達はビッと敬礼し、駆け足で正門から出て行った。

隊長(……さて、まずは校舎の中を探すか……ん?)

歩き出す隊長の目に、ある物が飛び込んできた。
761 : ◆3QM4YFmpGw [saga sage]:2014/04/27(日) 12:28:45.05 ID:JjMliB3I0
〔メイド喫茶エトランゼ ☆秋炎絢爛祭出張店☆〕

そう書かれた看板であった。

隊長「…………」

隊長はその看板を見つめたまま、しばし固まった。

隊長(……メイド、メイドか…………考えれば、お嬢様は長い家出生活で元の生活が少しだけ恋しくなっているかもしれない)

隊長(そう、多数のメイドや執事に囲まれていたあの日々が……)

隊長(つまり、それを紛らわす為に「もうまがい物のメイドでもいいや」と考えているかもしれん……)

隊長(すなわち……お嬢様がこのメイド喫茶に来ている可能性は決して低くない!)

隊長(そうと決まれば早速エトランゼへ行こう! 断じて私がちょっとお茶したいわけではないがな!)

自分の中で長い長い自分への言い訳を終えた隊長は、足早に歩き出した。

が、周りが見えていなかったのか、右から歩いてきた女性とぶつかってしまった。

隊長「おっと……すまない、少し考え事をしていて」

瞳子「いえ、こちらこそごめんなさい」

隊長「すまなかった。では、私は少し急ぐので」

そう言って隊長は早足でその場を後にした。

瞳子「あっ……行っちゃった。……にしても」

瞳子はポケットから学園の地図を取り出して広げ、上下左右にクルクル回しながら眺めた。

瞳子「一学園内なんて限られた範囲じゃあの機械も詳しく表示されないし……困ったわね」

現在瞳子は、櫻井財閥のエージェントとして『鬼神の七振り』を探してこの秋炎絢爛祭を訪れている。

が、京華学院の広さを正直なめていた瞳子は、あっという間に迷ってしまったのだ。

瞳子「……夏美ちゃんや美優やレナも誘えば良かったかしら……」

エージェントの仕事ということを隠していればそれも可能だったか、と瞳子は後悔する。

せめてエージェントの同僚が来てはいないだろうか、とも考える。

実際に紗南やチナミなど、何人かのエージェントは今学園にいるのだが……。

瞳子「そう簡単に会えたら、苦労は無いわよね……」
762 : ◆3QM4YFmpGw [saga sage]:2014/04/27(日) 12:30:45.34 ID:JjMliB3I0
はあ、とため息をつく瞳子。

爛「……瞳子か?」

瞳子「へっ?」

突然、サングラスをかけた少女のような少年に後ろから話しかけられ、瞳子は思わず変な声を上げた。

瞳子「…………もしかして、ラプ……じゃない、爛?」

爛「当たり。どした、仕事か? 迷子か? 両方か?」

瞳子「……恥ずかしい話だけれど、両方よ」

瞳子は、同僚に会えた安堵と迷っている事を見透かされた羞恥のまじった複雑な表情を浮かべた。

瞳子「それより、爛はどうしてここに?」

爛「仕事だよ、アイドルヒーローの方だけどな。今は休憩中」

爛は言いながら手に持っていた食べかけのフライドチキンを骨ごと噛み千切る。

瞳子「そうだったの」

爛「そうだ、アレ知ってるか?」

瞳子「アレって……何を?」

包み紙をクシャクシャにまるめ、ゴミ箱に向けて放り投げてから爛は続けた。

爛「俺の担当プロデューサーから面白い話聞いてな。眼鏡大好きカースと眼鏡大嫌いカースが出てきたらしい」

瞳子「……また奇妙なのが出てきたわね」

爛「サク……あんま大っぴらに言うのはまずいな。アイツ、カースの核集めてたろ?」

瞳子「ええ、私とマリナが七振り探しと並行して集めているけど」

爛「そういう特殊なヤツの核はどうなのかねー、と思ってよ」

瞳子「そういうこと。情報をありがとう、見つけたら回収しておくわね」

爛「おう。…………あっ」
763 : ◆3QM4YFmpGw [saga sage]:2014/04/27(日) 12:31:47.24 ID:JjMliB3I0
ふと視線を瞳子から外した爛が、突然瞳子の陰へと隠れた。

瞳子「……どうしたの?」

爛「…………プリンセスだ」

爛がゆっくりと指差した先に居たのは、幼い少女と少しチャラ着いた印象の少年。

コハル「人がいっぱいですね〜、プテ……えっと、翼おにいちゃん」

プテラ「はぐれちゃ駄目だよ、小春」

コハル「は〜い。そういえば、何で今日は翼おにいちゃんだけなんですか〜?」

プテラ「大牙(ティラノ)はここで今働いてるし、父さん(ブラキオ)は父さんで株? ってのやってるからね。
   よくわかんないけど、ちょっと目を離すだけで大損することもあるんだってさ」

コハル「よくわかんないです〜」

プテラ「うん、僕も。あと、ヒョウくんは目立ちすぎちゃうからね」

古の竜のプリンセス・コハル(偽名・古賀小春)と、その従者の一人であるプテラマーシャル(偽名・古賀翼)だ。

瞳子「あの子が、例のプリンセス? ……なんだかそんな感じはしないわね」

爛「人間の姿は見せた事ねえし変装もしてるが……一応離れっか。じゃあな」

瞳子「ええ、またね。…………」

帽子を目深に被り、その場を早足で離れる爛を見送った瞳子。

自分の状況が一切好転していない事に気付くのは、この五秒後の事である。

続く
764 : ◆3QM4YFmpGw [saga sage]:2014/04/27(日) 12:32:45.29 ID:JjMliB3I0
以上です
更新と見直しは大事よね、わかるわ(白目)
765 : ◆tsGpSwX8mo [sage]:2014/04/27(日) 12:34:49.08 ID:QBNDvKWno
乙です。負けても安定の時子さま、そこに痺れる憧れるぅ!穂乃香ちゃん……自分で設定かいといてなんだがえぐい性格になっちゃって
766 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/04/27(日) 12:45:51.09 ID:kxJE8PJ3o
皆さん乙です、
おおう……続々投下ラッシュと言った感じで……


>>722
加蓮ちゃんすごく健気だ…良いお話でした
しかし2人はこれからどうなってしまうのか
台詞の端々が死亡フラグでも、不死身なので一安心ですね!

>>725
ついに七罪Pの2人目が来たか
これは傲慢P嫉妬P怠惰P色欲P暴食Pが次々とでてくるふらぐ!
飛鳥ちゃんも重いもの背負ってそうですが、どうなるかなあ

>>752
AHFは毎回この人数動かすのが本当大変だと思う(小並感)お疲れ様です
妨害アリアリのレースは見ていて楽しいネタ満載でしたね。
その中でも一番思ったのは、「カレンなんですぐ死んでしまうん……?」でした


それでは、AHFでは敗者復活戦に望みが掛かった若干二名によるお話投下しますー
767 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/04/27(日) 12:46:57.72 ID:kxJE8PJ3o


768 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/04/27(日) 12:47:37.51 ID:kxJE8PJ3o



4月下旬、桜の花はほとんど散って、

わずかに残った薄桃色が、緑の中に消えていく頃。

ただその公園の中心にある1本の桜だけは、やはり満開のままでした。


聖來「ワン、ツー!ワン、ツー!」

美穂「はぁっ…はぁっ…!」


咲き誇る『万年桜』の下で、掛け声に合わせて身体を動かすのは夢見る少女、小日向美穂。

息も切らしながらも、隣で踊るコーチの動きに一生懸命合わせて動く。


聖來「はいっ!ワンモア!」

美穂「え゙っ!(わ、ワンモア!?)………は、はいっ!…はぁっ!はぁっ!」


タッタカ、トット!タン、タン、タン!

セーラのダンスレッスンはまだまだ続く!

とにかくリズムに合わせて、ステップ&ダンス!
769 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/04/27(日) 12:48:29.62 ID:kxJE8PJ3o

……



聖來「オッケー、ここまでっ!」

美穂「……はっ……はいっ…ぜぇ…ぜぇ…」

美穂(何回ワンモアしたっけ……数えてません……)

聖來「はぁっ!爽快っ!いい汗かいたねーっ!はいタオル」

美穂「あ……ありがと……ございま……ぜぇ……ぜぇ……」

聖來「美穂ちゃんも、初めての頃に比べてだいぶいい感じになってきたよっ!」

美穂「そっ……そうで……しょうか……ぜぇ……ぜぇ」

聖來「……」

美穂「ぜぇ……ぜぇ……」

聖來「あー……とりあえず休憩しよっか?」

美穂「ぜぇ……は、はい……ぜぇ……そ…そう…します……」

ぐったりと、近くのベンチに寄り掛かるように座り込む少女。

頭上のアホ毛もどこか力なく倒れこんでいた。
770 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/04/27(日) 12:50:05.94 ID:kxJE8PJ3o

――

――

聖來「はいこれ、スタミナドリンク」

美穂「ありがとうございます……ごくごくっ……ぷはっ……ふぅ」


公園のベンチに並んで座り、手渡された栄養ドリンクを飲んでようやく一息。

フリーのヒーロー水木聖來と出会ってから、

美穂は時々この公園でダンスレッスンのコーチして貰っていた。

聖來の仕事の都合もあるため、彼女に師事して貰えるレッスンの日は不定期であったが、

聖來は二週間以上、日と日の間を空けたことはない。

美穂「……いつも忙しいのに、コーチありがとうございます。セイラさん」

聖來「ん?ふふっ、なぁに?改まっちゃってさ」

聖來「アタシはやりたい事やってるだけだから、そんなの気にしなくていいよ」

聖來はいつも優しい笑顔で少女の成長を見守ってくれている。

レッスンの時に怒ったりすることもあまりない……ただ……


聖來「ところで落ち着いた?もう大丈夫かな?」

美穂「はいっ、おかげさまで……すっかり」

聖來「そっか、それじゃあ……ワンモア?」

美穂「えっ、わ、ワンモア!?!」

彼女のレッスン内容自体は本格的かつ激しいもので、

何度コーチを受けても、そのの厳しさに美穂はなかなか慣れないのだった。

美穂(や、やっぱり今回も……明日の筋肉痛は避けられないかも……)

美穂(ワンモアがトラウマになりかけになってます……)
771 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/04/27(日) 12:51:32.78 ID:kxJE8PJ3o

聖來「あははっ!冗談冗談……もう美穂ちゃん疲労困憊って感じだしね」

美穂「す、すみません……」

聖來「ううん、こっちこそごめんね。身体動かすの楽しくなっちゃって……つい激しくやっちゃった」

憧れの先輩ヒーローは、少し恥ずかしそうに頬を掻いて笑う。

美穂(本当にダンス好きなんだなあ……)

聖來「でも美穂ちゃん、今日のダンスレッスンは今までで一番よかったよ!」

美穂「ほ、本当ですかっ?良かった……そう言ってもらえると嬉しいです」

元アイドルヒーローからのお褒めの言葉。嬉しくって少女ははにかんで笑う。

聖來「うんうん、前に指摘したところも完璧に直ってたし……」

美穂「お家でも肇ちゃんやプロデューサーくんに見てもらいながら、少し練習していましたので……えへへ」

聖來「そっかそっか!うんうん、美穂ちゃんはやる気もばっちりだし……」


聖來「だから後は……体力かな?」

美穂「あ……あはは……お恥ずかしい」

痛いところを指摘されて、美穂は笑って誤魔化すのだった。
772 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/04/27(日) 12:53:22.18 ID:kxJE8PJ3o

美穂「うぅ……こんな事なら以前からもう少し身体を動かすようにしておけば良かったです」

美穂「普段、暇があるときはお布団の中で小説を読んでるかお昼寝って感じで……」

聖來「インドア派だ?」

美穂「はい……ぐうの音も出ないほどにインドア派です……」

少女はこれまでの休日の過ごし方を振り返って、少し嘆いた。

聖來「あははっ、まあそう言う休日の過ごし方も悪くないよ。もちろん体力はつけた方がいいけれど……」

聖來「それにね、アイドルのキャラクターとしてはいいと思うよ?お昼寝が好きって親しみやすくって」

美穂「……アイドルとしてのキャラクターですか?」

聖來「そ、結構重要だよ」

聖來「美穂ちゃんはDaやPaみたいにアクティブな感じじゃなくって……Vii寄りのCu極振りって感じかな」

美穂「?……えっと…?」

聖來の使った言葉の意味が分からず、美穂は首を傾げた。

聖來「あっ、CuやViって言うのは指標みたいなものね」

聖來「Cu(キュート)にCo(クール)にPa(パッション)」

聖來「それにVi(Visual)、Da(Dance)、Vo(Vocal)」

聖來「それぞれのアイドルがどんなアイドルなのか、分かりやすく言い表せるカテゴリ分けみたいな感じ」

聖來「アイドルヒーローもアイドルと同じで、そんな風な分け方されることもあるんだよね」

聖來「ちなみに、アタシはCoでDaって言われたりするよ!」


美穂「あ、それは知ってます」

聖來「」 ズコッ
773 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/04/27(日) 12:54:24.10 ID:kxJE8PJ3o

聖來「……それもそっか、アイドルヒーローのプロフィール調べたらこの事も書いてある資料とかあるもんね」

聖來「アイドルヒーロー好きの美穂ちゃんなら知ってて当然だったや」

美穂「えっと、その……私はきょくふり…?の方を知らなくって……」

聖來「あー、そっちかあ。ゲーム用語らしいよ。知り合いに使う子が居てさ。ついアタシも使っちゃった」

( 紗南「もちろん、あたしの仕業です!」 ドヤッ )


聖來「Cu極振り、簡単に言えば美穂ちゃんはすっごくすっごく可愛い子ってところかな」

美穂「えっ…すごくかわ……う、うぅ……あ、あの…す、すっごくすっごく恥ずかしくなってきました」

肩に掛けていたタオルを手に取り、少女は赤くなった顔を埋めてしまう。

聖來「ふふっ、恥ずかしがることないじゃない?女の子なんだし可愛いって嬉しくない?」

美穂「で、でも……」

少女は顔を隠したタオルをちょっとだけずらして、

遠慮しがちに目元だけをだし、聖來の方をちらりと見るのだった。

聖來(その仕種からして可愛いって……これはもう才能だよね)

目の前の少女の愛らしさに、思わずその頭に手が伸びてしまう聖來。

ぽんっと優しく手を置いてゆっくりと左右に動かす。

美穂「えっ!ええっ!?せ、セイラさん!?」

聖來「よしよーし」 ナデリナデリ

美穂「う、うぅう、い、犬じゃないですよ〜っ!」

聖來「あははっ」

楽しそうに少女の頭を撫でる先輩ヒーロー。

美穂は耳まで真っ赤にして抗議しているが、手は膝の上に降ろされている。

どうやら少女も案外、まんざらでもない気持ちのようなのであった。
774 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/04/27(日) 12:56:45.30 ID:kxJE8PJ3o

しばらくそんな風に遊んでいたが、

ふと、聖來の手がピタリと止まる。

美穂「?」

聖來「ねえ、美穂ちゃん」

聖來「美穂ちゃんは、これからどんな風になりたい?」

優しい微笑を浮かべたまま聖來は少女と向き合う。

美穂「これから……ですか?」

聖來「そう、これから…。未来の事」

聖來「どんなアイドルになりたいのかな?」

聖來「どんなヒーローになりたいのかな?」

美穂「……」

公園に漂う空気と同じくして、おだやかで温かい目線。

それでいて真摯な瞳を向けて、聖來は美穂の未来の行く先を尋ねた。
775 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/04/27(日) 12:58:13.97 ID:kxJE8PJ3o

美穂「……心からの笑顔を届けて、みんなを笑顔にできるアイドルに……」

美穂「そして、たくさんの人たちの笑顔を守れるヒーローに」

美穂「私は、なりたいです」

恥ずかしがり屋の少女が、恥ずかしがらずにちゃんと答える。

これまでヒーローとしてそれなりに活躍してきた事でついた自信が、少女の言葉を後押ししてくれていた。

だから少女は恥ずかしがらない。自分の理想を、なりたい自分を、目の前の憧れの人に語ることを。

美穂「菜々ちゃんみたいに眩しくてキラキラしてるアイドルに、聖來さんみたいに優しくてカッコイイヒーローに」

美穂「なれたらいいなって……えへへ、なんてもしかすると私には大きすぎる夢かもしれませんけれど」

でも少しだけ謙遜して控えめに笑う。

目指し始めた頃より自信はついたけれど、それでもまだまだひよっこ……

ずっと先を歩く彼女達にすぐに追いつけるとは思えはしない。

聖來「ううん、そんな事無いよ」

聖來「美穂ちゃんならきっと素敵なアイドルヒーローになれるとアタシは思う」

聖來「だから……頑張って欲しいな。できればアタシの時よりもずっとずっと輝いて欲しい」

美穂「セイラさんよりも……?」

聖來「うん」

美穂「……はいっ、やれるだけやってみようと思います」

聖來「ふふっ、ありがとう。美穂ちゃん」

少女の返事を聞いて、聖來は頭においていた手を放す。

美穂「あ…」

ちょっとだけ名残惜しそうに美穂はその手を見つめるのだった。
776 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/04/27(日) 12:59:39.46 ID:kxJE8PJ3o

聖來「……」

美穂「……」

そんなやり取りを終えてしばらく、空を見上げてぼーっとする2人。


温かい風が公園を通り抜けると、薄ピンクの花びらがはらりと散る。

『万年桜』の公園は、他の場所よりもずっと長く桜の花びらが残っている。


『万年桜』自体はもちろん年中満開なのだが、それだけでなく公園全体が長い期間桜の花びらを残し続けるのだ。

中央に咲き続ける花の美しさにつられて、他の桜達も懸命に咲き誇ろうと頑張っているのだろうか。

花の色が緑に消えていくこの時期でも、まだまだこの公園を彩る色は薄いピンクの色が優勢である。


しかし、それでも桜は散っていく。時間は経過するものだし、季節は変わる。

どこまで行っても、時の流れとは無常である。


美穂(……セイラさんよりも輝けるアイドルヒーローに……かあ……なれるのかな?)


儚く舞う桜の花を眺めながら、少女は、テレビの向こうで舞い続けていた犬好きのアイドルヒーローの事を思い出していた。

当時、人気のアイドルヒーロー。なんと言っても彼女のダンスパフォーマンスは派手でカッコよかった。


そう言えば、テレビで見ていた頃も彼女のまねっこをしてみた覚えが少女にはあった。

あの時は、あんな動きはまったく出来る気はしなかったが。

美穂(あの時できなかった事も、今は少しだけど出来てるんだよね)

今日は息も絶え絶えであったが、彼女のダンスになんとかついていけていたはずだ。

美穂(そう思えば、ちょっとでも近づけてるのかな)

憧れの1人である彼女との距離が小さくなってるのだと思うと、少女はなんだか嬉しくなった。
777 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/04/27(日) 13:01:36.33 ID:kxJE8PJ3o

さて。アイドルとしての水木聖來もカッコよかったが、

けれど彼女はどちらかと言えばヒーローとしての人気の方が高かったように思う。


悪を挫いて、弱きを助ける。彼女はそんなとても理想的なアイドルヒーローだった。

お供の動物たちを従えて、互いに助け合って、敵に立ち向かう。

時にはみんなが驚くような無茶もしていたけれど、最後には仲間達と揃って必ずカメラに向けて笑顔を見せる。

その笑顔はとても輝いていたように思う。

美穂(……そう言えば、あの頃の動物たちは元気にしてるのかな?)

特に、いつも彼女の隣に居た大型犬。

あの子は今も元気なのだろうか。なんとなく気になったので尋ねてみた。


聖來「ん?うちのわんこ?元気だよすっごく」

美穂「そうでしたか」

聖來「この前も、散歩中に見つけた『にかー』って鳴く謎の生き物を元気に追いかけ回してたしね」

美穂「ふふっ、ちょっと安心しました」

謎の生き物の事はよくわからないが、元気そうで何よりである。

聖來「まあその後、逆に怒った謎の生き物のお友達に追いかけ回されてたけどね」

聖來「『くーの!くーの!』って噛みつかれてたっけ。あははっ」

美穂「えっ、大丈夫だったんですかそれ」

聖來「元気に走り回るわんこって可愛いよね♪」

聖來はそんな事をのほほんと答えたから、まあきっと無事だったのだろう。

たぶんだけど、命からがら。
778 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/04/27(日) 13:02:46.19 ID:kxJE8PJ3o

美穂「……」

美穂(……話を聞けば聞くほどに……考えれば考えるほどにわからないなあ)

美穂(セイラさんが……アイドルヒーローをやめちゃった理由)

聖來「それにしても……この公園の風は本当にあたたかいね」


元アイドルヒーロー水木聖來。

「元」と付くように、彼女はいつだったかアイドルヒーローをやめてしまった。

人気の波に乗ってたころだったので、テレビの前で応援していた美穂は残念に思った覚えがある。

きっと美穂のほかにも、やめて欲しくない人たちは多かったはずだ。


美穂(どうしてやめっちゃったのかなあ……)

聖來「今日はこんなに天気が良かったし、せっかくだからわんこも連れて来てあげたらよかったかも」

美穂(アイドルヒーローが嫌になっちゃった、って事はないよね)


今はフリーのヒーローに転身した彼女。

しかし、相変らずダンスは好きであるようだし、ヒーローとしての活躍も時々耳にする。

それに、こうして美穂の夢も応援してくれているのだから、

アイドルヒーローの事が嫌になったなんて事はきっとないだろう。
779 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/04/27(日) 13:03:46.28 ID:kxJE8PJ3o

美穂(……も、もしかして人間関係が嫌になっちゃったとか?)

聖來「今くらいの時間帯なら人も少ないみたいだからアタシも人の目を気にせず済むし、良いお散歩になると思うんだよね」

以前、学園祭にて

アイドルヒーロー同盟に所属するプロデューサー、シロクマPから聞いた話を美穂は思い出す。


( シロクマP「……わたしはさ、セイラちゃんのプロデューサーだったって聞いてるかな?」 )

( シロクマP「恥ずかしい話、彼女がやめちゃったからさ」 )

( シロクマP「わたしの評価結構…いやかなり下がったんだよね」 )

( シロクマP「ふふっ、恨んでるとかはもちろん無いけれど」 )

( シロクマP「ちょっと複雑な気分だったから、それが顔に出ちゃったのかな?」 )


美穂「……」

美穂(シロクマさんと……険悪な関係……だったとか?)

想像するのはプロデューサーとの関係の悪化。

美穂(……ううん、違うよね)

美穂(シロクマさんと複雑な関係になったのは……セイラさんがやめちゃってからの話)

美穂(だから、セイラさんがやめる理由にはならないし)

聖來に対して複雑な感情を抱くようになったのは、

「彼女がアイドルヒーローをやめちゃったから」と、シロクマPは言っていた。

関係の悪化が理由とするなら、前後が逆になってしまう。
780 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/04/27(日) 13:05:12.61 ID:kxJE8PJ3o

美穂(それに、何より……)

さらに、もう少しだけ過去のことを美穂は思い出す。


( シロクマP「セイラちゃんからさ。珍しく相談されちゃってね。」 )

( シロクマP「可愛い後輩のヒーローを助けてあげて欲しいってさ。」 )

( シロクマP「そう言うわけで、わたし達はやってきたんだ。」 )


美穂(あの時、私は聖來さんが呼んだシロクマさんに助けられたんだから)

美穂(今だって、2人は険悪な関係なんかじゃないよね)

去年の夏休み明けのあの日、

水木聖來は、美穂のピンチをシロクマPに相談していたはずだ。

それなら、2人には今もなお確かな信頼関係があるはずだろうと美穂は考えた。


美穂ちゃーん

美穂(うーん……やっぱり人間関係が原因でもないのかな…………)

おーい

美穂(だとすると……何が理由なんだろ……)

聞こえてないのかな……?

美穂(どうして聖來さんは……)



聖來「 ふ ぅ 〜 」

美穂「はぅっ!?!」

突然の耳元への生ぬるい刺激に、美穂はびくっと飛び上がってしまう。
781 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/04/27(日) 13:06:04.42 ID:kxJE8PJ3o

聖來「あははははっ」

美穂「せ、聖來さんっ!?も、もー!お、驚かさないでくださいよー!」

吃驚した少女の様子を見て、おかしそうに笑う聖來。

悪戯が成功して喜ぶ子供のようである。

聖來「ごめんね、美穂ちゃん喋りかけても反応なかったから、つい…ね♪」

美穂「えっ……あっ、す、すみませんっ!」

考え事に集中しすぎていたために、美穂は聖來の言葉をずっとスルーしてしまっていたらしい。

とても失礼な事をしていたと気づいて、美穂はすぐに謝る。

聖來「ううん、気づいてくれたからいいよ。それに可愛い反応だったしね」

美穂「あ、あぅ……」

でも幾ら話しかけても気づかないからって、耳に息を吹きかけるのはどうだろう。

美穂自身も悪いため、顔を赤くするだけで抗議することはできなかったが。

聖來「ふふふ、それにしても本当に集中してたね。いったい何を考えてたのかな?」

美穂「え、えっと……」

聖來「それとももしかして、目を開けたまま寝ちゃってたとか?」

美穂「そ、そんなところです……」

まさか、貴方がアイドルヒーローをやめた理由が気になって仕方ないんです!とも言えず、

とりあえず彼女の言葉に同意するかのようなあやふやな返事をするのだった。
782 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/04/27(日) 13:07:00.45 ID:kxJE8PJ3o

美穂(セイラさんがアイドルヒーローをやめちゃった理由)

美穂(セイラさん自身に聞ければいいんだけれど……)

美穂(たぶん聞いたらダメなことだよね…?どんな事情があったかも分からないし……)

水木聖來がアイドルヒーローをやめた事情。

少女には、それがあまり踏み込みすぎてはよくない問題である気がしていた。


美穂は、チラリと横を見て、隣に座る聖來の顔を覗き込もうとする。

聖來「ん?何かな?」

すると、目がぴったりと合った。

どうやら向こうもこちらの様子を伺っていたらしい。

美穂「え、えっと……!」

なんとなくばつが悪くなり、美穂はふいっと目をそらしてしまう。

聖來「アタシに聞きたいこと?」

美穂「そ、そうなんですけれど……」

自身の挙動の意味を、すっかりと当てられてしまい少女は内心焦る。
783 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/04/27(日) 13:08:08.91 ID:kxJE8PJ3o

「そうじゃない」と嘘をついていればよかったのだが……根が正直(?)なもので、ついつい本当の事を言ってしまった。

聖來「そっか、美穂ちゃんはそんなに悩んでアタシに何を聞きたいのかな?」

とても悪戯っぽい目つきで先輩ヒーローは少女を見つめている。

美穂(ど、どうしようかな……な、何を聞けば……)

こうなってしまえば何も聞かない訳にもいかない。

いっそ思いきって、知りたい事を聞いてしまおうか。


美穂(はっ!そうだ!)

しかしその時、少女は閃く。

美穂は閃いた言葉をそのまま口にすることにした。


美穂「せ、聖來さんはどうして」
784 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/04/27(日) 13:08:59.86 ID:kxJE8PJ3o

美穂「アイドルヒーローに……なろうと思ったんですか!?」

聖來「……ああ、それかー」

美穂の質問に、聖來は少しだけ意外そうな顔をした。


美穂(セイラさんがアイドルヒーローをやめちゃった理由は聞けなくても……)

美穂(逆に……セイラさんがアイドルヒーローになろうと思った理由なら……聞けるはず!)

前者は後ろ向きなお話になりそうであったが、

後者ならば聞いても特に問題はないはず。

それに、始めた理由を聞けば辞めた理由のヒントにもなるかもしれないと美穂は思った。


聖來「それが美穂ちゃんが聞きたいこと?」

美穂「はいっ!」

大きく返事を返す。まったくの嘘ではない。

少女の疑問の根本は、「憧れの人の事が知りたい」であり、

結局のところ彼女の話を聞けるなら、始めた理由も辞めた理由も同じくらいに知りたい事なのであった。


聖來「……美穂ちゃんのこれからの活動の参考になる……かはわからないけど、話してもいいかな」

美穂「! ぜ、是非っ!」

そして、彼女の口から語られる。


聖來「アタシがアイドルヒーローになろうと思った理由、それはね……」

美穂「……(ごくり)」

歌って踊って戦える女の子の憧れにして、

この時代における人々の希望の象徴たるアイドルヒーロー

そんな存在に彼女がなろうと思った理由とは……
785 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/04/27(日) 13:10:22.05 ID:kxJE8PJ3o



聖來「……なんでだっけ」

美穂「」 ズコー!


少女は派手にずっこけた。


聖來「あはははははっ」

美穂「も、もおっ!セイラさんっ!」

聖來「ごめんごめん!でも本当に、それくらい大した理由じゃなかったんだよ」

聖來「なんとなく自分の体質を持て余してて」

聖來「なんとなくプロデューサーさんにスカウトされて」

聖來「なんとなく始めちゃいました。みたいなね?」

美穂「そんな、冷やし中華始めましたみたいな……」

本当の本当に大した理由はなかったらしい。

少女は理由について変に期待していたせいか、

その単純明快さにあっけにとられてしまっていた。


聖來「まあ、憧れや信念みたいなものはなかったかな」

聖來「ただ……強いて言うなら」

目を瞑り、ほんの数秒だけ考えてから

彼女は顔を上げて答えた。


聖來「『アタシにはそう言う生き方ができる』って示されたから」
786 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/04/27(日) 13:12:01.83 ID:kxJE8PJ3o

美穂「生き方……」

聖來「そうそう。プロデューサーさん……シロクマさんにね」

聖來「『君、アイドルヒーローとかやってみない?』って」

美穂「……普通のスカウト台詞っぽいですね?」

聖來「うん、普通のスカウトだったよ」

彼女がアイドルヒーローになったのは、シロクマPからのお誘いがあってのこと。

しかし熱烈な説得などではなく、まるでごくあっさりとした提案のようであったらしい。


聖來「でも話を聞いてみてね」

聖來「アタシにもそう言う生き方ができるのかなって」

聖來「いやむしろ、そこにはアタシにしかできない生き方があるのかもって思ってさ」

聖來「じゃあ、なっちゃおう♪ってね」

美穂「……思いっきりいいですね」

聖來「ふふっ、よく言われるよ」

クールに見えるけれど、内に秘める情熱は人一倍。

どこまでも挑戦的で、自由で、そのうえ大胆。

それが彼女、水木聖來の魅力なのだろう。
787 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/04/27(日) 13:13:34.71 ID:kxJE8PJ3o

聖來「フリーのヒーローに転身したのも同じ理由だよ」

美穂「えっ」

驚く美穂に対して、さらに彼女は話を続ける。

聖來「アタシには、そう言う生き方もできると思った」

聖來「フリーのヒーローとしてのアタシにしかできない事もあると思ったんだ」

聖來「だから思いきってアイドルヒーローやめちゃったんだよね」

聖來「で、はじめてみれば案外こっちの方が性分にあってたりしてっ!」

ここまで話されて、美穂も気づく。

美穂「も、もしかしてセイラさん……」

聖來「ふふっ。美穂ちゃんが本当に聞きたかったのはこっちでしょ?」

美穂「わ、わかってましたっ!?」

聖來の何を気にして少女が考え事をしていたのかは、本人にはとっくにバレバレだったらしい。

美穂「す、すみません!余計な詮索しちゃったみたいで……」

美穂「あっ、でもアイドルヒーローになった理由を聞きたかったのも本当でっ!」

聖來「謝ることなんてないよ、不思議に思うのが普通だしね」

焦る美穂に対して、聖來はただ優しく微笑むのだった。
788 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/04/27(日) 13:15:40.74 ID:kxJE8PJ3o

聖來「……ねえ、美穂ちゃん」

美穂「は、はい!なんでしょう?」

真剣な声で呼びかけられるものだから、ついつい畏まってしまう。

聖來「ふふっ、もっと肩の力抜いて聞いてくれればいいよ」

美穂「え、えっと……ふぅー………はいっ」

聖來「うん♪」

少女が息を吐いて、リラックスしたのを確認すると、

先輩ヒーローはぽつぽつと話し始めた。


聖來「今アタシは……セーラには、セーラにしかできない生き方があるかもって話をしたけどさ」

聖來「せっかくだから美穂ちゃんにも……美穂ちゃんにしかできない生き方を見つけてほしいかな」

美穂「……私にしかできない生き方」

聖來「そうっ。美穂ちゃんにしかできない生き方ね」

先輩ヒーローは、どこか楽しげに語る。
789 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/04/27(日) 13:16:42.44 ID:kxJE8PJ3o

聖來「ふふっ、アタシに憧れて目指してくれるのはとっても嬉しいんだけれど」

聖來「アタシは、美穂ちゃんには美穂ちゃんの輝き方があると思うんだ」

美穂「セイラさんとは違う、菜々ちゃんとも違う……私の輝き方って事ですか?」

聖來「そういうこと♪」

聖來「ゆっくりでもいいから、それを見つけて……できれば進み続けて欲しいかな」

聖來「きっと……いや絶対その先には、最高に気持ちいい景色が広がってるはずだからねっ!」

そう言って、彼女は力強く微笑んだ。

元アイドルヒーロー水木聖來。

頭に「元」と付くように、アイドルヒーローと言う肩書きが今はもう無いのだとしても、

少女には、彼女の笑顔が今もまだ輝いて見えたのだった。

美穂「……はいっ!」

美穂「セイラさん。ありがとうございますっ!」
790 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/04/27(日) 13:18:45.51 ID:kxJE8PJ3o

――

――

――


聖來「さてさて、もうこんな時間か。結構話し込んじゃったね」

取り出した携帯を見て、聖來は時刻を確認する。

美穂「あ、あれ?も、もうそんな時間なんですか?」

同じく時刻を確認して、少女も驚く。

何故かその声は少しだけ上擦っている。

どうやら自分が思っていたよりも時間が経過していた事にようやく気づいて、

何かに焦り始めたようだが……。


聖來「この後の予定はどうだったけな……あ、それより先にシャワー浴びておきたいよね」

美穂「そ、そうですね……けっ、結構、あ…汗かいちゃいましたから」

携帯を操作しながら、画面に映る本日のスケジュールを確認していた聖來は、

隣で露骨にそわそわし始めた少女の様子に気づかない。

少女の様子は何かのタイミングをはかっているようであり、なかなか踏ん切りがつかないようにも見える。


聖來「それじゃあ今日は、このくらいで解散にしよっか」

結局、聖來は、美穂の不可解な仕種には気づかないまま…

すくりとベンチから立ち上がった。


聖來「美穂ちゃん、また

美穂「あっ!あああのっ!!」

聖來「?」

聖來の別れの言葉を、ほぼ同時に立ち上がった少女はなんとか遮った。
791 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/04/27(日) 13:20:15.68 ID:kxJE8PJ3o

聖來「えっ、どうしたの美穂ちゃん?」

美穂「そ、そそそのですねっ……えええっとっ!」

急にしどろもどろである。

どうやら彼女の緊張癖が遺憾なく発揮されているようであった。

聖來「?」

しかし、どうしてこのタイミングなのだろう。

その理由が聖來には思い当たらないのだった。

とは言え、答えはすぐに明らかになったのだが。


美穂「ここっこれっ!!!」

直立の姿勢から腰を30度ほど前方に曲げて、腕は前方に。

掌を軽く握りこみ、両手の親指と人差し指で小さな袋を掴んで真っ直ぐと突き出す少女。

聖來(……ラブレター渡す姿勢だ、これ)

顔を赤くしてギュッと目を瞑って、ぷるぷる震えてるものだから余計にそう見えてしまう。

聖來「美穂ちゃん、これは?」

美穂「おっ、お、お……!」

美穂「お誕生日っプレゼントですっ!!」

美穂「セイラさんっ!お誕生日おめでとうございますっ!」
792 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/04/27(日) 13:24:39.58 ID:kxJE8PJ3o

聖來「……あっ」

言われてから気づく。4月27日。

そう言えば今日は、自分の誕生日だったと。

聖來(当日まで気づかないなんて……ここの所忙しかったからかなあ……)

彼女自身このタイミングまで全くその事に気づいておらず、

予想外のサプライズとなった事に、なんだか愉快でおかしな気持ちとなった。

聖來「そっか。美穂ちゃん!ありがとう!嬉しいよ」

美穂「はいっ!えへへ……」

聖來が笑顔でプレゼントを受け取ると、少女は顔を綻ばせて笑った。

憧れの人にプレゼントを渡せた喜びで、緊張もとれたのだろう。


聖來「ふふっ、それにしても本当に驚いちゃった」

聖來「美穂ちゃん、まるでラブレターでも渡すみたいだったからさ」

美穂「えっ!ら、らららっ!ラブっ?!」

美穂「ちっ、ちち違います!そう言う事じゃなくってっ!」

美穂「あっ、で、でも!セイラさんの事嫌いって事でもなくって!」

美穂「って!な、なな何言ってるんだろう私……っ!そ、そうじゃなくって…!そのっ!」

聖來「うふふ」

あまりの恥ずかしさのせいか、少女の顔は本日一番真っ赤である。


美穂「あ、あのっ!わ、私、か、かか帰りますねっ!ぷ、プレゼントも渡せたのでっ!」

美穂「そ、それじゃあセイラさんっ!!ま、またっ!!」

聖來「うん、またねっ!」


小日向美穂はプレゼントを渡すと去っていった…

(……小日向美穂との距離が少し近づいた気がした。)


聖來(なんてね)
793 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/04/27(日) 13:28:49.95 ID:kxJE8PJ3o


――


美穂の居なくなった公園で、

聖來は、貰った可愛らしい小袋を開ける。


聖來「あっ、わんこだ」

出てきたのは、ビーズで出来たエメラルド色のわんこ。

手作りのキーホルダーであるらしい。


聖來「ふふっ、可愛い。キーポーチにでも付けようかな」

とりあえず贈られたわんこの処遇は、使用頻度の多い私物につけておく事となった。

これを見るたび、彼女は可愛い後輩の顔を思い出すことになりそうだ。


聖來「……」

聖來「……アタシには、そう言う生き方もできると思った」

聖來「それは嘘じゃないよ。美穂ちゃん」

聖來「だけど、本当の事でもない」

それはただの独り言。

ビーズの子犬を見つめて、誰に聞かれるわけでもない言葉を呟く。


聖來「美穂ちゃん、恥ずかしがり屋のアナタにならもしかしたらわかっちゃうかもね」

聖來「ふふっ、むしろ却ってわからないかな?」

聖來「だって……アタシがアイドルヒーローを辞めた本当の理由はね……」


聖來「選ぶだけしか出来ないアタシが……アイドルヒーローを名乗って……希望の象徴だなんて持て囃されるのが」

聖來「”恥ずかしくなった”からなんだから」


元アイドルヒーローの独り言は、舞い散る花びらと共に風の中に消えていった。


おしまい

794 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/04/27(日) 13:29:51.39 ID:kxJE8PJ3o


と言う訳で、一応セーラさんの誕生日のお話。

地味にぼかした事 … 美穂がこの時期に新人アイドルヒーローになってるかどうか

一応この時期に美穂がアイドルヒーローになってても
新人アイドルヒーローがトップを目指して頑張ってるで話は通るはず、たぶん
むしろこの時期に聖來さんが美穂とこの関係をちゃんと維持できてるかの方が不安だったりします
(と言うか設定の掘り下げを誕生日時系列でやらなくていいよなあ、毎度の事ですが)

改めて、セーラさん誕生日おめでとー
795 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/27(日) 13:35:31.53 ID:SjTDiBBCo
おつおっつー。乙が追っつかない。ふふっ
そしておめでとー
796 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/27(日) 13:39:30.61 ID:AKOaIQHro
投下ラッシュにくらくらっしゅるかんじですね!(ドヤッ
おつおつー
797 : ◆zvY2y1UzWw [sage]:2014/04/27(日) 13:44:43.42 ID:vCFxHqlD0
乙です乙です
>>752
なんか自分が設定考えた面子が全員予選突破してて嬉しい
自分も「なんで加蓮すぐ死んでしまうん…?」とは思った、いい意味で
あとこれだけは言いたい…なつきちイケメン(真剣)

>>794
お誕生日おめですー
微笑ましいやら不穏やら…あとわんこよく逃げ切ったなw
ん?誕生日は伏線とか書く日でしょ?(すっとぼけ)
798 : ◆AZRIyTG9aM [sage]:2014/04/27(日) 14:18:21.12 ID:0SKjf+YPO
御三方乙ですー

強欲P…果たしてどのように動くのか楽しみです
飛鳥を救うヒーローは現れるのか?

もりくぼぉー!!予選通過したぞー!逃げられないぞー!!
そして、加蓮が死ぬのは恒例になってきたw
乱入した綾瀬さん凄いイキイキしてる

セイラさん誕生日おめでとー!
そして、わんこwwwほうじょうさんは餌じゃないよw
799 : ◆BPxI0ldYJ. [saga]:2014/04/29(火) 20:18:49.50 ID:X6vkkdZi0
 今その街は年に一度の活気に溢れている。
 数え切れぬ学生が中心となり、数え切れぬ程考え、悩み、数え、挑戦し、妥協し、作り、叫び、歌い、喜び、楽しみ、街のすべてを巻き込んでのお祭り騒ぎを演出する。
 闇夜に包まれればそれらは表面的に静まるが、その裏では次の日への準備が人知れず行われ、日が照り出せばまた活動を開始する。
 幾千もの人々が街を蠕動し巡り続けるその様は、或いは生き物の様に見えたかも知れない。

 秋炎絢爛祭。
 今その街は年に一度の活気に包まれている。

 だが光あるところに影があるように、燃えるような熱気の中にもやはり静寂は存在する。
 ある建物の屋上。隠れようのない日に晒されようと、そこは確かに──活気という光に対する──影だった。普段誰も立ち寄らなければ、今日という日なら尚更なのであろう。
 影を操り、自らを悪魔と定義する少女はそこでそんな事をぼんやりと考えていた。
 当然、誰が認識するという事はない。
 尤も、それは目立たない場所だからというよりは、彼女自身が”自らを日の当たらぬ影”とするとする事で認識から逃れていることが大きいのであるが。

 一つ大きな欠伸をする。
 このまま静かに日向ぼっこをしていたいとも考えたが、ここにはそんな事をしに来たのではないだろうと、思考が怠惰を一蹴する。
 枕にしていた腕を立ち上がるための杖に変え、浮遊感に苛まれながら重い腰を上げた。
800 : ◆BPxI0ldYJ. [saga]:2014/04/29(火) 20:20:16.04 ID:X6vkkdZi0
「どれどれ……」

 街を見渡す。音が聞こえずとも喧騒が聞こえる錯覚を覚えるほど、わかりやすいほどに熱の溢れる街だ。

 目を閉じて、一つ息を吸い、ゆっくり吐く。
 そして閉じた瞼を開くと、彼女の目には違う景色が映った。
 品定めをする細い瞳。色の違う彼女だけの世界。
 彼女の目には人の心の影が見えた。それはさながらサーモグラフィーのように。
 正のエネルギーが溢れる街。されど雰囲気に簡単に呑まれるほど人の心は易しくない。
 彼女が注視するのは罪。人が知を持つ以前から存在し、人が知を持ったが故に否定される罪。

「選り取り見取り……かな」

 眠気からか、どこか甘さを感じさせる声で呟く。

「嫉妬の脱け殻……罪を宿す刀……怠惰の忘れ物……」

 確認するように、射止めるようにぽつりぽつり。

「狂信の僕……なんだ、これ、……いがみ合う……眼鏡?」

「興味深いけど……何が罪なんだ?」

 時々、例外も見つけながら。

「暴食、怠惰、欺瞞、強欲……悪魔ってのはフットワークが軽いのか……」

「……興味深いけど、ちょっと危険が過ぎるかな」

「……ああでも、弱ってる?……ふむ、保留かな」

 そうして見る内、目を引く物があった。

「……強いな……これも欺瞞………」

「違う。……それじゃあ何だ……」

 影と呼ぶには。罪と呼ぶにはあまりに眩しくひたむきで。
 そして危うく、暗く、やはり影であり罪。
 人の心に矛盾という物はない。それは重々承知している。しているが、それはあまりに歪で、まるで植え付けられたらような。彼女の目から見ても異様。
 何だろう、これは。………
801 : ◆BPxI0ldYJ. [saga]:2014/04/29(火) 20:21:52.81 ID:X6vkkdZi0
「…………ふ、……ふふっ…」

 暫し思案し、一つの答えを紡ぎ出した。

「……は、はは……はははっ!」

 口端を不気味に歪め、高揚が笑い声になって溢れ出る。
 下品だと知りながら舌なめずりを止められなかった。

「………興味深いね……面白い」

 それは。

「前向きに輝く欺瞞」

 それは、罪と呼ぶにはあまりにひたむきで、影と呼ぶにはあまりに眩しく。
 されど、善と呼ぶにはあまりに歪で、光を呼ぶにはあまりに暗く。

「……後ろ向きで、危うく、歪で、影を落とす……」

 それは。



「…………正義」

「ふははっ!……」

 高揚の残滓はやがてそれに収まらず、狂気を帯びて明確な笑い声へと変貌する。

「面白い、どんな人生を歩んだらあんなものが出来上がる?」

「何年を生きた?……ああ直接お目にかかれないのがもどかしい」

「ただの実験体としても強力だろうね」
           おうじさま
「使い方次第ではボクの正義の味方にも……」


「はははっ…揺さぶってやろうか?壊してやろうか」

「導いてやるか?育ててやるか?放っておいても面白くなりそうだ……!」

「くく……でもそれじゃあ面白くない、一目会いたいな……」

 少女は一人企む。
 もはやそれが何に依るものかは関係なかった。
 例えそれが植え付けられた独善だろうと、行く末が正義の処刑人形だろうと。
802 : ◆BPxI0ldYJ. [saga]:2014/04/29(火) 20:22:53.70 ID:X6vkkdZi0






「待っててくれよ……くくく……」





803 : ◆BPxI0ldYJ. [saga]:2014/04/29(火) 20:24:16.62 ID:X6vkkdZi0




 彼女は自分に正直な人間であるという自負がある。
 だから赴くままに悪魔を名乗り、周囲の目を省みなかった結果中二病だとも言われた。
 そんな彼女が衝動を我慢できるはずも無く、影を這い光に出た。隔絶された静寂から有象無象が混ざり合う喧騒へと。
 静かな屋上を降り、騒がしい祭へと。
 様々な物が目に入った。匂いがした。気分が上がるのを感じた。

 そして彼女は今。





 コルク銃を構えている。
 ついでに言えばちょっと口がイカ臭い。

 もう一度言う。
 彼女は自分に正直な人間であるという自負がある。

 途中カミカゼを見かけたから後で喧嘩を売ってやろうかと思った。そうでなくても結構ヒーローが居た。段々楽しみは後にとっておくものだと思えてきた。目玉焼きトーストの黄身は残す派だった。
804 : ◆BPxI0ldYJ. [saga]:2014/04/29(火) 20:25:31.85 ID:X6vkkdZi0
 緊張を感じることもなく、引き金を引く。

「あれっ」

 弾が出なかった。

「そこ、引いてないよ」

「あっ」

 見ると、銃身の側面にある棒──名前は知らない──が引かれていなかったようで、少し恥をかいてしまった。
 気を取り直し、引き金を引く。
 思ったより大きい発射音に身を竦ませる。
 そんな情けない様子を後目にコルクは緩い放物線を描き、お菓子の山を切り崩す。二つほど落ちた。

 ちょっとした満足感と共にお菓子を受け取る。

 さて、次は何を狙おうか。
 屋台なんてそんなもんだろうが、特に考えがあったわけじゃないので、コルクを持て余した。
 そうだ、ちょっと欲張ってみよう。思い、写真立てを狙ってみる事にする。

 撃つ。
 外れる。

 流石に連続では中らないか。理解しつつも、少し落ち込んだ。

 すると、同じ目標にコルクが飛び。

「……コルクは…勝手が違いますね……」

 清涼で儚げな呟きが鼓膜を震わした。

 見れば、日本人離れした白い肌、ビー玉を思わせる青い瞳、人目を引く銀髪。当たり体に言って美少女。その特徴はロシア人を想起させた。
 ただもっと気になったのがその体制だった。
 体は低く構えられ、銃身は脇で固められ、肘で支えられる。反動を嫌ってか、顔を押し付けて銃身を押さえつけていた。
 まるでスナイパーを思わせ、ぶっちゃけ変だった。

(成る程、それなら安定するね)

 体制を低く、脇を固め、肘で支え、顔で押さえる。
 背後がどよめいたが、二人とも気にしなかった。
805 : ◆BPxI0ldYJ. [saga]:2014/04/29(火) 20:27:27.78 ID:X6vkkdZi0
「……見様見真似にしては……良い筋ですね……」

「ですが……」

 発射音が響き、コルクが飛ぶ。
 やはり緩い放物線を描いたそれは、写真立ての斜め上を命中する。

 その先の言葉は続かなかった。
 だけど、『銃はこう撃つもの』だとか『あなたに真似できますか』とか口外に言っているような気がした。
 少なくとも横顔はそう言っていた。

 二宮飛鳥は少しカチンと来た。
 思えば策略であったかも知れないが、それは意外な結果をもたらす。
 二つ目の発射音が続く。

「む………」

「ふ………」

 静かに口角を吊り上げる。

 ビギナーズラックと言うべきか。
 コルクは写真立ての芯に中り、その体を大きく後退させる。

 銀髪の少女の表情が変わる。その目はすっと細められ、彼女が本気になったことを周囲に伝える。

「………言葉は不要」

「………ダー」

 気が付けば周囲から音が消えていた。二人の少女の放つ異様な圧に圧されてのことだ。
 二人はそれすらも気に留めない。
 そこにあるのは意地とプライド。
 耳をすませば鼓動が聞こえる。不思議と落ち着いていて、互いの集中を高める。
 ふわりと秋の風が吹き、金と銀の髪が揺れる。およそ一メートルの空間に不可視の火花が確かに散った。
 静寂が支配する数秒間。

 それを破ったのは、重なった発射音だった。
 互いの思いを乗せたコルクが飛ぶ。
 それらは吸い寄せられるよう獲物へ弧を描き───


 ───叩き落とす。
806 : ◆BPxI0ldYJ. [saga]:2014/04/29(火) 20:28:18.42 ID:X6vkkdZi0
「ん……」

「む……」

 お互いの顔を見合わせる。彼女等はそこで初めて互いの顔を知る。

「……………」

「……………」

 互いの目を射止め、互いを縫い付ける。

 静寂、再び。

 そして、それを破るのは───

「……譲るよ」

 二宮飛鳥。

「景品の一つに拘るほど小さい人間じゃないつもりさ」

 銀髪の間で、眉間がピクリと動く。

「……いいですよ、私の方が”大人”みたいですから」

 澄まし顔の上で薄い笑顔が硬直した。

「だ、だったら子供に見栄を張らせてやるのが大人じゃないかな」

 一歳差でしかないという事を彼女等は知らない。

「私はあんなもの必要ありませんから」

「奇遇だね」

 火花、再び。

「…………」

「……………」

「……、……」

「「……………」」



「あの」

「「なんですか」」

「後ろ詰まってるんですけど」


「「……………」」


「「すみません」」
807 : ◆BPxI0ldYJ. [sage]:2014/04/29(火) 20:31:52.10 ID:X6vkkdZi0
色々突貫工事だから描写に穴があっても知らん。無いといいな。
飛鳥ちゃんの能力は説明のし忘れてたもんを無理矢理ぶっこんだ。

808 : ◆AZRIyTG9aM [sage]:2014/04/29(火) 20:40:10.28 ID:lSMqlyr4O
乙ー

なるほど。探査能力みたいのをもってるのか
そしてメガネに吹いたw
アーニャなにしてるww

加蓮は嫉妬の脱け殻か。その中身がトンデモナイものという…
809 : ◆zvY2y1UzWw [sage ]:2014/04/29(火) 22:02:06.02 ID:uwdpooPx0
乙です
810 : ◆zvY2y1UzWw [sage ]:2014/04/29(火) 22:05:11.48 ID:uwdpooPx0
ふぎゃー!誤送信…

乙です
狙われたナンジョルノ(またはライト)、これからどうなるんだ…
しかし子供っぽい一面にほのぼのとした気持ちになった

狂信はともかくメガネは何かって?あれは罪を超越した概念だから(悟り)
811 : ◆3QM4YFmpGw [saga]:2014/05/06(火) 00:10:52.54 ID:nfzkpLR+0
乙乙ん
遅れたけど聖來さんおめでとう!
不穏だけど子供っぽい飛鳥ちゃん可愛い、可愛い(真顔)

憤怒の街投下しまー!
812 : ◆3QM4YFmpGw [saga]:2014/05/06(火) 00:11:53.04 ID:nfzkpLR+0

憤怒の街郊外の小高い丘。

ナチュルスター防衛を続ける魔法少女達の目にも、ソレは映った。

カインド「……ッ!?」

咆哮を上げる、黒い竜の頭。

カースドヒューマン岡崎泰葉を核とした、『憤怒の王』である。

グレイス「ちょっと、なんの冗談よアレ……」

店長「見たところ、敵の親玉のようだな」

ファイア「……多分だけど、街中のカースが合体でもしてるんじゃないかしら?」

瞳子のその発言を裏付けるかのように、カース達は一目散に街の中央部へと向かっていく。

里美「ほわあ、だからカースが減ってるんでしょうか〜?」

裕美「そうみたい、ですね……」

カインド「……だとしたら、あの竜はまだまだ強くなっていく……?」

グレイス「ちょっと、それってかなりマズいんじゃない!?」

憤怒の王を中心に、爆風や飛び交う影が見える。

おそらくは、誰かが戦っているのだろう。

しかし、どうも楽勝というわけではなさそうだ。

今でさえそうなのだ。ここへ街中のカースが集まり、更に融合していったら……。
813 : ◆3QM4YFmpGw [saga]:2014/05/06(火) 00:12:36.56 ID:nfzkpLR+0
ファイア「なら、私がカースを減らしてくるわ」

グレイス「瞳子!?」

瞳子が一歩前へ出る。

ファイア「あまり戦力を割くわけにも行かないでしょう? それに、単独行動は慣れているもの」

そう言って瞳子は鎌を肩に担いでくすっと笑った。

カインド「瞳子ちゃん……」

ファイア「あの子達のことも気にかかるしね」

カインド「あの子たち?」

ファイア「ここに来る前に知り合った子達でね、フルメタル・トレイターズっていうの」

グレイス「フルメタル、ね……」

鎌を一振りし、構えなおす瞳子。

ファイア「じゃあ、あなた達はここをお願いね」

言うが早いか、瞳子はそのまま丘を駆け下りていった。

グレイス「……相変わらずせっかちよね」

レナが溜息をついて苦笑する。

裕美「瞳子さんが抜けた穴は、私たちでカバーします!」

里美「私たちも頑張りますよ〜、ね、くとさん」

くとさん『○』

里美の言葉にくとさんが応える。

店長「気を引き締めていくぞ。こっちに来るカースだってゼロじゃないんだ」

カインド「ええ……いきましょう!」

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814 : ◆3QM4YFmpGw [saga]:2014/05/06(火) 00:13:32.38 ID:nfzkpLR+0
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病院。

美世を連れた星花が帰還していた。

星花「……では、マリナさんは海底都市の地上侵攻についてはご存知無いのですね?」

マリナ「そーねえ。今の海皇って物凄いタカ派なのかしら……?」

みりあ「ねえ、星花さんはどうしてここまで来たの?」

考え込むマリナに割り込んで、みりあが星花に質問した。

すると、星花は少しだけ俯いて答えた。

星花「……この街の惨状が耳に入り、居ても立ってもいられなくなったのです」

若神P「正義感が強いんだね」

星花「いえ、そんなこと……ただ、一人の人間として……この一件の黒幕に、憤っているだけですわ」

マリナ「憤り、ねえ」

星花「わたくしは、この黒幕を生涯許すことはないでしょう。多くの命を悪戯に奪った、黒幕を……!」

ドレスの裾を掴む星花の手に、グッと力がこもる。

ふと、星花は顔を上げる。

若神P「……!?」

一瞬、星花の瞳が濁った深紅に染まったように見えた。

少したじろぐ若神Pだったが、次の瞬間には、星花の瞳は宝石のような薄紫色に戻っていた。

星花「あら? どうかされましたか?」

若神P「い、いやいや、何でもないよ」
815 : ◆3QM4YFmpGw [saga]:2014/05/06(火) 00:14:24.52 ID:nfzkpLR+0
若神P(……気のせいかな?)

若神Pが小首を傾げた、その時。

『グオオオ…グアアアアアアアアアアアアア!!!!』

突然、大きな咆哮が響いた。

ネネ「ひっ!?」

イヴ「今のは……」

マリナ「と、とにかく様子を見に行きましょう!」

ネネ、星花、イヴ、マリナが病院の外に出る。と、

マリナ「あ、あら……?」

ちょうどその目の前を、大量のカースが素通りしていった。

星花「……襲って、来ないのでしょうか……?」

ネネ「今の声は…………っ!? 皆さん、あれを!!」

イヴ「……!」

ネネが指差した先には、巨大な竜……憤怒の王の姿があった。

星花「あれは、一体……」

??「ファイアズムサイズ……ブーメランッ!!」

星花の言葉を遮って、回転する炎の鎌がカースの体を次々と引き裂いていった。

マリナ「おわっ!? な、何よ物騒ね!」

星花「今の攻撃は……」

回転して戻ってくる鎌を受け止めた人物の姿を見て、星花は歓喜の声をあげた。
816 : ◆3QM4YFmpGw [saga]:2014/05/06(火) 00:15:01.84 ID:nfzkpLR+0
星花「瞳子さん!」

瞳子「また会ったわね。……無事、というわけでは無さそうだけど」

星花の足首に巻かれた布には、まだ血が滲んでいる。

星花「……お恥ずかしながら、少し無茶を……」

イヴ「星花ちゃんの知り合いだったんですね〜」

星花「ええ、街の外で少し」

瞳子「ちょうど知り合いに会えて良かったわ。ちょっと手伝ってもらえないかしら」

星花「手伝う?」

瞳子「ええ。あれ、見えるでしょ?」

そう言って瞳子は憤怒の王を指差す。

マリナ「どう見ても親玉よね、アレ」

瞳子「でしょうね。それで見たところ、街中のカースがあれに融合しているようなの」

ネネ「そんな……今でもあんな威圧感なのに、まだ強くなるんですか!?」

イヴ「……誰か、今あそこで戦ってるみたいですね〜。もしかして、星花ちゃんのお友達も……?」

イヴが、憤怒の王周辺に舞う影や爆炎をじっと見据える。

その表情には、いつもののんきな色は見えない。
817 : ◆3QM4YFmpGw [saga]:2014/05/06(火) 00:15:51.82 ID:nfzkpLR+0
星花「カイさん……亜季さん……」

瞳子「で、それを阻止するために私はここに来たわけ。手伝ってもらえるかしら」

星花「……はい。もちろんです!」

マリナ「あたしでよければ、力になるわ。マリナよ、よろしく」

瞳子「ありがとう。私は瞳子よ」

二人が軽い握手を交わす。

イヴ「私は病院に残りますね〜。カース以外の敵が来るかもしれませんから〜」

マリナ「お願いね、イヴちゃん。みりあちゃんやみんなをよろしく」

瞳子「私は東にまわるわ。マリナは西を、星花ちゃんはこのまま南を頼めるかしら」

星花「はい!」

ネネ「けがをしたら、無理せずに戻ってきてくださいね」

マリナ「任せなさいって。行くわよトビー! オリハルコン、セパレイション!! アビストラトス、ウェイクアップ!!」

オリハルコンの鎧を纏ったマリナが西の空へと飛び立っていった。

瞳子「じゃあ、またあとで」

瞳子も、倒壊したビルの隙間を駆け抜けていく。

星花「……では、参りましょう。ストラディバリ!」

ストラディバリ『レディ』

ユニコーン形態に変形したストラディバリの背に乗った星花は、カースを討つべく駆け出した。

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818 : ◆3QM4YFmpGw [saga]:2014/05/06(火) 00:17:08.39 ID:nfzkpLR+0
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そして、その光景を物陰から観察する二人がいた。

芽衣子「……見た? さくらちゃん」

さくら「はい、バッチリでぇす!」

並木芽衣子と村松さくら、櫻井財閥のエージェントである。

芽衣子「強そうなフリーのヒーローが三人も……しかも真ん中にいたのは……」

さくら「端末取り出しポパピプペ〜……はい、出ました! 失踪中の涼宮星花に間違いありません!」

涼宮財閥の一人娘が突然の失踪……本来一般人には到底知りえない情報である。

そう、「一般人」には。

芽衣子「やっぱりねー……サクライさん、ちょっと気にかけてたよね」

さくら「『涼宮の娘、か……手中に収めれば色々と使えそうだね』……って言ってました!」

芽衣子「ふふ、あんまり似てないね」

突然櫻井財閥頭首サクライPのモノマネをしたさくらに、芽衣子は思わず苦笑する。

芽衣子「まあとにかく、あの三人はキープ。後で情報集めて、あわよくばエージェントにスカウトしちゃったりして」

さくら「せんりょくぞーきょーですね!」

芽衣子「まあそのあたりはサクライさん次第だけどね。さ、お仕事再開しようか」

さくら「了解でぇす! カースが減ったぶん、ペースアップしちゃいますよぉ!」

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819 : ◆3QM4YFmpGw [saga]:2014/05/06(火) 00:17:48.66 ID:nfzkpLR+0
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そして、地下水道内のカースプラント。

カイ「ぜぇっ……はぁっ……」

より正確に言えば、カースプラント『跡地』に、カイは座り込んでいた。

カースも、コマンドカースも、繭も全て破壊している。

カイ「もう、増えない……かな?」

周囲を軽く見渡し、カイは立ち上がる。

カイ「一応、地下水道をぱーって見て回るか……」

カイは駆け足でプラントを後にした。
820 : ◆3QM4YFmpGw [saga]:2014/05/06(火) 00:18:40.23 ID:nfzkpLR+0
〜〜

カイ「……いない、ね」

カイはカースの残党を探すが、不自然なほどにその姿が見当たらない。

カイ「なんか地上も騒がしいし……助けに行った方がいいのかな?」

地上の轟音を気にしながらも歩を進めるカイが、ある物を見つけた。

カイ「あれっ、この大穴……どこかに通じてる。……お邪魔しまーす」

穴を潜った先は、どうやら音楽ホールのようだった。

カイ「地下にあるんだ……そうだ、誰か避難してるかも」

カイが正面の扉を開けてホールに入る、と。

カイ「!?」

なんと、巨大な蛇のカースがこちらに背を向けて佇んでいた。

カースの視線の先には、ステージに立つ一人の女性。

カイ「危ない、伏せてっ! シャーク・インパクトォッ!!」

言うが早いか、カイは飛び上がってカースへ砲撃した。

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821 : ◆3QM4YFmpGw [saga]:2014/05/06(火) 00:19:30.01 ID:nfzkpLR+0
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……忌々しい。

この感覚……どうやら私の生み出した蛇龍が殺されたらしい。

恐らくは、地上で好き勝手暴れまわっているヒーロー達だろう。

我が子を殺されたにも等しい怒りが、私の胸を満たしていく。

だが……。

問題ない。『第二子』がたった今産まれた。

もう少しここで瘴気を吸えば、立派な蛇龍に覚醒してくれることだろう。

最初の蛇龍で疲弊しきったヒーロー程度ならば、この蛇龍でも充分倒せるはずだ。

それまでは安静に、可愛い可愛い我が子……

??「危ない、伏せてっ! シャーク・インパクトォッ!!」

っ!?

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822 : ◆3QM4YFmpGw [saga]:2014/05/06(火) 00:20:16.55 ID:nfzkpLR+0
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産まれて間もない新たな蛇龍は、カイに核を一撃で破壊されてその生を終えた。

千秋「…………」

カイ「危なかったねー、大丈夫?」

茫然と立ち尽くす千秋に駆け寄るカイ。

千秋「……え、ええ」

カイ「逃げ遅れちゃったの?」

千秋「まあ、そんなところね」

我が子を殺された怒りを噛み殺し、千秋は澄ました様子で対応する。

まさか「よくも私の蛇龍を!」などと怒鳴って掴み掛るわけにもいくまい。

今は適当に話を合わせておくのが得策だろう。

カイ「だったら、あたしが外まで連れてってあげるよ!」

千秋「……なら、お願いするわ」

カイ「うん、ついて来て!」

千秋の手を取り、カイは音楽ホールを後にした。

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823 : ◆3QM4YFmpGw [saga]:2014/05/06(火) 00:21:13.49 ID:nfzkpLR+0
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カイ「こっちこっち。あたしこっちから地下に入ったから、逆に行けば……」

日菜子「あら、カイさん」

ある程度進んだところで、カイ達は日菜子に遭遇した。

カイ「あ、日菜子ちゃん。どうしたの?」

日菜子「ええ、どうやら日菜子のお目当てが消えてしまったようで……そちらの方は?」

カイ「ああ、さっき保護した人」

千秋「……どうも」

千秋は小さく頭を下げる。

日菜子「そうでしたかぁ。……ところでカイさん。ちょっと日菜子を手伝ってくれませんかぁ?」

カイ「ん、なあに?」

日菜子「ここより更に深い地下に……どうも良くない気配がするんですよねぇ」

日菜子は手に持った剣で地面をツンツンと突いて溜息をもらした。

カイ「それを探ってほしいってわけね。いいよ! あ、でも……」

カイはふと千秋に振り向く。

千秋「ああ、私なら平気よ。こう見えて逃げ足には自信があるし、何より普通の人間じゃあないもの」

嘘は言っていない。

カイ「ああ、能力者なんだね。……じゃあ安心かな、ごめんね!」

カイはそう言ってくるりと踵を返す。
824 : ◆3QM4YFmpGw [saga]:2014/05/06(火) 00:21:55.50 ID:nfzkpLR+0
カイ「あ。ねえ日菜子ちゃん。その地下って、ここの真下?」

日菜子「うーん……そうですねえ、ほとんど真下ですねぇ」

カイ「オッケー! じゃ、下がっててー」

カイは大きく息を吸ってガントレットを床に向けた。

日菜子「へっ……?」

千秋「ちょっと……まさか」

カイ「シャーク・インパクトォォッ!!」

カイの砲撃が床を次々と突き破っていく。

砲撃が終了する頃には、床にぽっかりと大穴が開いていた。

カイ「ふうっ……はい、ショートカット」

日菜子「む、無茶しますねぇ……まあ、手間が省けていいですけど」

さすがの日菜子も顔が引きつっているようだ。

カイ「じゃあ、そういうわけで。あなたも気をつけてね!」

日菜子「ご縁があったら、またお会いしましょうねぇ」

カイと日菜子が大穴の中へと消えていく。

千秋「…………一応、避難しようかしら」

再び静寂が戻った地下水道の中に、千秋の靴音だけが響いていた。

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825 : ◆3QM4YFmpGw [saga]:2014/05/06(火) 00:22:37.52 ID:nfzkpLR+0
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地下水道最奥部。

瑞樹「……」

≪殺人≫の核を回収した川島瑞樹――レヴィアタンの前に、一筋の太い光が降り注いだ。

瑞樹「……」

動じることなく、眉をぴくりと吊り上げて数歩後ろに下がる。

瑞樹「…………」

やがて、二人分の人影が上から降ってきた。

日菜子「着きましたねぇ」

カイ「ね。……って、アンタ誰?」

カイの瞳が、眼前の瑞樹の姿を捉える。

瑞樹「名乗る義理は無いわ」

日菜子「……少なくともただの人間では無いですねぇ。カースの核を素手で握りしめているんですから」

カイ「カースの核って……見たことない色だけど?」

本来カースの核とは、赤、桃、黄、紫、緑、藍、金のいずれかの色をしている。

だが、瑞樹が手に持つ核か赤と紫の不気味なマーブル模様だ。

日菜子「ちょっと突飛な考えですけど……憤怒と嫉妬の合体、ですかねぇ」

瑞樹「…………」
826 : ◆3QM4YFmpGw [saga]:2014/05/06(火) 00:23:16.14 ID:nfzkpLR+0
瑞樹は何も語らない。

日菜子「考えられるのは、あなたは憤怒か嫉妬、或いは両方のカースドヒューマン……」

カイ「じゃなきゃ…………悪魔?」

瑞樹「うふふふ……ご想像にお任せするわ」

瑞樹は口元に手を当て、くすっと笑った。

日菜子「まあどの道…………その危険そうな核は、ここで壊しておいた方が良さそうですねぇ……」

日菜子の顔から、いつもの『にやけ』が消えた。

次の瞬間、どこからともなく表れた無数の剣が日菜子の周囲を旋回する。

カイ「そうだね。アームズチェンジ、ソーシャークアームズ!」

カイがガントレットを変形させる。

瑞樹(分身の報告にあった、親衛隊の裏切者ね……興味はあるけれど、今はそれどころじゃないわ)

瑞樹が指をパキンと鳴らすと、周囲に瑞樹そっくりの人影が無数に出現した。

カイ「んなっ……!?」

日菜子「分身……ですか」

瑞樹「あなたたち、自分の使命……わかるわよね?」

瑞樹「本体であるあなたが離脱するまでの時間稼ぎね、わかるわ」

瑞樹「わかるわ」

瑞樹「わかるわ」

瑞樹「わかるわ」

瑞樹「わかるわ」

瑞樹「わかるわ」

瑞樹「わかるわ」

瑞樹「わかるわ」

瑞樹「わかるわ」
827 : ◆3QM4YFmpGw [saga]:2014/05/06(火) 00:24:12.74 ID:nfzkpLR+0
一糸乱れぬ「わかるわ」の大合唱に、瑞樹は口元をニタァと歪める。

瑞樹「ええ、お願いね」

カイ「ま、待てっ!」

次の瞬間、核を握った瑞樹本体の姿は一瞬にして消え去った。

カイ「ちくしょう、逃がした!」

瑞樹「私たちと遊んでもらうわ」

瑞樹『〜〜〜〜〜〜〜』

瑞樹「暴風よ! 大いなる我が力に従い、全てを薙ぎ払う驚異で、死神の鎌の如く、我が敵を斬り裂け! サイクロンスライサー!!」

瑞樹「暴風よ!」

瑞樹『〜〜〜〜〜〜〜』

瑞樹『〜〜〜〜〜〜〜』

瑞樹「暴風よ!」

瑞樹「暴風よ!」

瑞樹『〜〜〜〜〜〜〜』

瑞樹「暴風よ!」

瑞樹「暴風よ!」

日菜子「カイさんっ!」

カイ「うん!」

迫りくる黒炎の渦と暴風の凶刃をバックステップで回避し、二人は態勢を整える。

日菜子「簡単には帰してもらえそうもないですねぇ……まあ、それはそれで燃えますけど、むふふ♪」

カイ「そうだねえ、元親衛隊として、コピーなんかに負けるわけにゃいかないなっ!!」

『深き者と共生する姫』と、『深淵の騎士』。

『嫉妬の海龍』を相手取る二人の戦いが、始まった。

続く
828 : ◆3QM4YFmpGw [saga]:2014/05/06(火) 00:25:09.05 ID:nfzkpLR+0
・イベント追加情報
瞳子が街西部、マリナが街東部、星花が街南部のカースを殲滅しています

芽衣子とさくらが星花、瞳子、マリナを目撃しました

カイがカースプラントを完全破壊、街中のカース数が目に見えて減少しはじめました

千秋が憤怒の街から脱出しました

瑞樹(レヴィアタン)が≪殺人≫の核と共に憤怒の街から脱出しました

カイと日菜子がMZK48(分身瑞樹)と戦っています


以上です
VS憤怒の王のお膳立てアーンド千秋さんを動かすの巻
美優、レナ、店長、里美、裕美、ネネ、イヴ、芽衣子、さくら、千秋、日菜子、瑞樹お借りしました
829 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/05/06(火) 00:28:09.37 ID:2S9nf9JDO
830 : ◆zvY2y1UzWw [sage ]:2014/05/06(火) 00:33:02.01 ID:vriqXj7q0
乙です
マジでラストスパートなの、自分も頑張るの…(白目)
あとMZK48はいろいろと卑怯ですよ川島さん
831 : ◆AZRIyTG9aM [sage]:2014/05/06(火) 00:40:07.86 ID:07k+TW3w0
乙ー

MZK48で笑ってしまったw
地下もクライマックス頑張ってください!
832 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/05/06(火) 04:00:27.30 ID:C3rWK2D+o
ずるいわ
833 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/05/07(水) 16:38:35.92 ID:3k57tLMPO
ブラックリバーさん(本編に)復活おめー
834 : ◆qTYZo4mo6E [sage]:2014/05/07(水) 21:36:00.20 ID:bWEPgQVOo
おつー。たくさんの分身だと、一人違うことを言ってたりしないか探してしまいます
そして青木慶ことルーキートレーナーさん予約いたします。自分を追い詰めていくスタイル
週末までには投下できたらいいなあ
835 : ◆zvY2y1UzWw [saga]:2014/05/07(水) 23:10:15.67 ID:7bMNKq0V0
憤怒の王戦投下
ラストですよ、ラスト!
836 : ◆zvY2y1UzWw [saga]:2014/05/07(水) 23:11:54.44 ID:7bMNKq0V0
『ギャアアアアオ!!グオオオオオオオオオオ!!』

憤怒の王はいきなり視界に入ってきた10人の姿をみるなり、口からいくつものカース弾を吐き出した。

みく「んもー!いきなりなんてひどいにゃ!」

拓海「初っ端から飛ばしてやがるな!」

有香「この程度なら問題ありません!」

それぞれが撃ち落とし、防ぎ、躱し、それぞれの得意な射程や位置へ移動する。

飛びだした亜季がスナイパーライフルで頭部に見える赤い核に銃弾を撃ち込むが、まるで効果が無い。

琴歌「…あの頭の赤いのが核なのでしょうか?」

亜季「ライフルが効かない程頑丈な核…露骨にわかる場所にあるものの…近寄りにくく、攻撃し辛い場所ですな。それに内部に何か見えるような…?」

夕美「とにかく、あれを破壊しないと終わらないよ。これがきっと最後…壊せないならみんなの援護をするよ!頑張らなきゃっ!」

殆どのカースは既に憤怒の王へ集い、向かう途中のカースは多くが狩られ、プラントも破壊されてはいるが…未だに向かってくるカースはいる。

琴歌「はいっ!できる限りの全てを行います!」

亜季「確かに、これ以上デカくなってしまうのは阻止すべきであります!」

空中に飛び出したのは3人。その3人は核の位置と、その核の内部の『何か』を確認すると別々の場所へと散る。

植物が、爆風が、旋風の様な銀の光がカースを葬った。
837 : ◆zvY2y1UzWw [saga]:2014/05/07(水) 23:12:54.83 ID:7bMNKq0V0
『グオオオオオ!!』

カース弾では埒が明かないと判断したのか、憤怒の王はドシンドシンとその足で踏み出し、襲い掛かる。

それと同時に尾を振り回し、後ろ側からは殆ど近寄れそうもない。

しかし正面からではカース弾が降り注ぎ、防いでいるうちに別方向へ既に攻撃を始めてしまう。

菜々「っあぁ!?」

地上のメンバーはその尾と足からなるべく離れようと動くが、菜々が逃げ遅れた。振り回された尾の先端が、ガードも間に合わなかった菜々を吹き飛ばす。

拓海「菜々っ!?」

夕美「菜々ちゃんっ!」

夕美が慌てて吹き飛んだ方向へ大量の植物を生み出しクッションにして、瓦礫への衝突は防いだが、ダメージは完全にないわけではない。

拓海が駆け寄って行くのを見て、ようやく夕美はある程度落ち着き、憤怒の王に向かいなおす。

みく「ゆ、夕美チャン後ろぉぉ!!」

『グルウウウウウウウウウウウウウ!!』

夕美「あっ…!」
838 : ◆zvY2y1UzWw [saga]:2014/05/07(水) 23:14:24.30 ID:7bMNKq0V0
憤怒の王は夕美の気が逸れてしまったその隙を逃してはいなかった。その腕で夕美を捕まえ、少しずつ力を加えていく。

夕美「っ…はなし、て…!」

菜々「うそ、夕美ちゃ、ん…!!ナナのせいで…!」

拓海「無理に動くな!」

菜々「ナナは、大丈夫です…!でも…!」

琴歌「今助けますっ!」

亜季「夕美殿っ!」

その瞬間、憤怒の王がニタリと笑ったように愛梨は感じた。同時に嫌な予感が襲い掛かる。

愛梨「…!何か、してきます!」

その言葉と同時に憤怒の王は翼を激しく動かし、突風を引き起こした。

琴歌「きゃああああああっ!!」

亜季「ぐっ、しまった…!!」

夕美を助けるべく近寄った琴歌と亜季がその突風によって地面へと叩き付けるように吹き飛ばされた。

みく「っ…大丈夫かにゃ、琴歌チャン…?」

琴歌「す、すみません…助かりました」

有香「大丈夫ですか!?」

亜季「自分は問題はないであります…が、夕美殿は…」

吹き飛ばされた位置の近くにいたメンバーが受け止める。

だが、憤怒の王の翼が動くたびに、翼の周囲に暴力的なほどの風が巻き起こっていた。
839 : ◆zvY2y1UzWw [saga]:2014/05/07(水) 23:15:11.49 ID:7bMNKq0V0
のあとキバが風を巻き起こし唸る憤怒の王に隙を見せまいと、ホイールローラーと滑空により一気に足元へ接近する。

のあ「…同時に、いけるかしら?」

キバ「こちらが合わせる、タイミングは任せよう」

のあ「承知したわ、同系統の武器なら…タイミングも合わせやすいでしょう!」

どちらも腕にパイルバンカーを構え、左足が地面に下ろされたその瞬間に飛び込むと同時に叩き込み、ほぼ同地点に杭が撃ち込まれる。

『グオォォォ…!!』

固い鱗にヒビが入り、憤怒の王は思わず一度動きを止める。

自らにダメージを与えた足元の二人に向かって、怒りの炎を吐こうと息を吸い込んだ。
840 : ◆zvY2y1UzWw [saga]:2014/05/07(水) 23:17:14.32 ID:7bMNKq0V0
拓海「菜々っ!!思い切り…ぶっ飛ばせっ!!」

菜々「い、行きます!ウサミン人間大砲・カミカゼ特攻!!」

拓海「どらあああああ!!」

その灼熱の炎が吐かれるよりも早く、動けない菜々の能力で生み出された大砲によって突撃してきた拓海の拳がそのヒビに叩き込まれた。

『ギアアアアアアアアア!?グアアア…!』

吸い込んだ炎が上手く吐けず、ひびはさらに大きくなり、憤怒の王はバランスを崩すと同時に思わず手から夕美を開放してしまう。

夕美は解放されたと同時に全力で逃げ出し、慌てて地面に着地する。

『グオオオオオオオオオオオオオオオオ!!』

翼を羽ばたかせ宙に浮かぶことによってバランスを取り戻し、足が再生すると同時に着地して大きく咆哮した。

のあ「…再生が早いわね。ここは一旦下がるわ…あなたは?」

キバ「そうだな…前線に居させてもらおう」

のあ「わかったわ…っ!」

『ヒュグウウウウウオオオオオオオ!』

のあが憤怒の王から離れた位置へ移動する。怒り狂った憤怒の王は逃すまいとのあに向かって吹雪を吐く。

キバ「させるか…『〜〜、〜!!』」

だがその吹雪にキバの青い炎がぶつけられ、大量の水蒸気と肌寒い冷気だけがその場に散った。

キバ「早く行くんだ!」

のあ「感謝するわ…!」
841 : ◆zvY2y1UzWw [saga]:2014/05/07(水) 23:18:59.70 ID:7bMNKq0V0
そして見事に憤怒の王の腕から逃げ出して着地した夕美に、愛梨が駆け寄った。

愛梨「夕美ちゃん、大丈夫?怪我とかは…」

夕美「…うん、ちょっと左の腕が折れたかも。さっきから動かないんだ…痛いし」

愛梨「え、ええっ!?」

夕美の腕を見れば、確かに左の腕は重力に従いぶらぶらとしている。脂汗は流れているものの、比較的平気そうな夕美はどうみても異常である。

夕美にとってこの体は作り物。また作り直せば腕も元通りだ。だから自分の怪我で必要以上に焦ったりはしない。

だが今作り直すのは少し難しい状況だ。だから誤魔化しの為の言葉を並べる。

夕美「あっ…心配しないで、能力で戻せるから…今はあいつに仕掛けるよっ!愛梨ちゃん、手伝って!」

地に夕美が右手をかざすと、巨大なタンポポが地面から現れる。

巨大タンポポはみるみるうちに綿毛の状態へ成長し、その綿毛を見てすぐに愛梨は自分がすべきことを理解した。

愛梨「…わかりました!」

愛梨が巻き起こす風が憤怒の王へ向けて大量の綿毛を飛ばす。

憤怒の王に種が触れた瞬間、その種は全く別の植物へ生まれかわり、蔦となって憤怒の王を拘束した。

『ガアアアアアア!!!ギャオオオオオオオオオオ!!』

しかしその蔦で動きを止められたのはほんの僅かな時間であり、すぐにそれは引きちぎられてしまう。

愛梨「強い…」

夕美「そんな…まだ足りないの…?」
842 : ◆zvY2y1UzWw [saga]:2014/05/07(水) 23:22:28.73 ID:7bMNKq0V0
拓海「注意がそれただけでも十分だ!有香!」

全力で有香が拓海の元へ駆けてくる。

有香「行きますよっ!」

同時に地面を蹴り、拳を握った。

拓海「おらあああっ!」

有香「はああああっ!」

拓海と有香が同時に憤怒の王の腹にその拳を叩きこんだ。

『ギャアアアアアルウウウウウウウウウウウウ!!!』

キバ「炎が来る、下がりたまえ!『冷気よ、大いなる我が力に従い、音すら凍らせるその身で我が平穏を奪う愚か者を永久の眠りへ送り込め!ヘルブリザード!』」

拓海「すまねぇ!」

憤怒の王は口の中で渦巻く黒い炎を飛び込んできた二人に向かって放射するが、キバが吹雪をぶつけ、その隙に二人は下がる。

キバ「…ぐっ…なんて威力だ…これ程とは…」

しかし、憤怒の王の炎は今のキバに完全に抑えらえるものではない。

憤怒の王はキバの行動を嘲笑うかのように戦場である校庭全体を焼き尽くす為に長い首を振るう。

魔術で発生した吹雪の量を超える黒い炎が地を走る。熱と炎が校庭中に広がった。

木は燃え、熱風がその炎の残酷な威力を物語る。
843 : ◆zvY2y1UzWw [saga]:2014/05/07(水) 23:23:40.56 ID:7bMNKq0V0
愛梨「この炎…!」

亜季「総員、退避か防御を!マイシスター、鉄板を!」

みく「この炎、ヤバいにゃあ!?」

菜々「う、ウサミンシールド!」

キバ「っ…!」

触れてしまえば瘴気をその身に取り込むことになる。

ある者は飛び、ある者は走り、ある者は防御し、その炎から逃れようとする。

最前線のキバがその身に降りかかる熱を覚悟したが、その熱が大きな黒い塊によって防がれた。

炎を後ろに行かせないように、どこからか現れた黒い塊が盾となったのだ。

他のメンバーも庇うように、広い範囲に大量に広がっている。

…そして、その黒い塊は。

愛梨「…まさか、これはカース?」

杏「ご名答ー…杏も役に立てるみたいだね」

その声に振り返れば校門から少し入った位置に、小柄な少女…怠惰のカースドヒューマン、杏が立っていた。
844 : ◆zvY2y1UzWw [saga]:2014/05/07(水) 23:26:02.88 ID:7bMNKq0V0
その姿に思わず拓海は反応する。泰葉と一度戦ったとき、彼女を庇い自分の一撃を喰らったカースドヒューマンが目の前にいたのだから。

拓海「お前はあの時の…!?…何の真似だ、あの時は仲間のカースドヒューマンを庇って、今度はアタシ達を助けて…」

杏「…杏が動いた理由は、一つだよ」

杏はその思いを隠さない。真っ直ぐに問いかけた拓海の目を見る。

杏「…泰葉は友達なんだっ!杏は友達を助けたいだけなんだ…。あのドラゴンは泰葉なんでしょ、だから…止めたい…!」

愛梨「!」

拓海「そうか、カースドヒューマン同士で…お前、その言葉…本気なんだな」

杏「本気だよ、それに『縄で縛ってでも連れて帰る』って約束したんだ…!ヒーローでもなんでも利用してやる、協力もする…だから手伝ってよ…」

半泣きになりながら杏は懇願する。怠惰の呪いをその身に宿しても、友達を思う思いがその身を動かしている。

愛梨「ねぇ、杏ちゃん?本当に…泰葉ちゃんのお友達なの?」

杏「うん、ずっと一緒に暮らしてたんだ…泰葉があの男に利用されてこんなことになっちゃったけど…本当はこんな事しなくたって幸せだった筈なんだ!」

愛梨「あの男…やっぱりあの人が…」

愛梨も体育館で見た、恐ろしさまで感じる程の下衆さを感じさせるあの男の気味が悪い声が脳内で再生される。

泰葉を利用して、街を壊滅させた元凶。泰葉の心に付けこみ、憤怒の王に仕立て上げた張本人。

愛梨(あの人が泰葉ちゃんを…)
845 : ◆zvY2y1UzWw [saga]:2014/05/07(水) 23:27:14.28 ID:7bMNKq0V0
杏「ヒーロー、杏を泰葉の近くまで連れてってよ…!泰葉がすごく苦しそうなんだ、ドラゴンの声に乗って泰葉が苦しんでるって伝わってくるんだ…」

杏は憤怒の王の頭を指で示す。心の底からの懇願と共に。

たくさんの人を死なせた彼女が世間から許されない事も知っている。ヒーローが彼女を許すはずが無い事も知っている。

だけど、彼女を救う事は憤怒の王の突破につながるはずだ。だから杏は取引をする。

夕美「頭…って事は核?確かに中に何か見えたけど…」

菜々「き、危険ですよ!頭まで近寄ったら、また炎が…それに、近くまで行けてもすぐに振り落されてしまいます!」

拓海「菜々、ちょっと待ってくれ。…杏、それが…お前の覚悟なんだな?」

杏「うん、今の杏は何でもできる、やってやる!」

拓海「…その覚悟、気に入った!…夕美、愛梨…ちょっとでいい、アイツの動きを止めれるか?」

愛梨「動きを?」

拓海「具体的には…頭を動かせなくしてほしい、無茶振りかもしれねぇけど…できるか?あと菜々はこっちと一緒に動いてくれ」

菜々「分かりました!ナナ、微力ながらお供します!…夕美ちゃんは、どうですか?できそうですか?」

夕美「うーん……愛梨ちゃん、ちょっといい?思いついたことがあるの…」

愛梨「うん、私は何をすればいいの?」

菜々「は、早い!さすが夕美ちゃん!」

夕美「…成功するかは分からないよ。それなりの効果はあるとは思うけど…」

菜々「大丈夫です、信じてますから!」

夕美「…ありがとう、ナナちゃん」

愛梨「じゃあ、作戦開始ですね!」

愛梨が回廊を使いその場から消える。

杏「炎の威力がどんどん無くなってる!そろそろ消えるよ!」

拓海「すまねぇな!菜々、いくぞ!」

菜々「はいっ!」

菜々の返事と同時に炎の勢いがなくなった。

杏を背負って拓海と菜々は下がり、他のメンバーは怠惰の盾が消えると同時にアクションを起こした。
846 : ◆zvY2y1UzWw [saga]:2014/05/07(水) 23:29:00.80 ID:7bMNKq0V0
杏が稼いだ時間は十分すぎた。それぞれがその時間を無駄に使うことも無かった。

だからこそ、十分な動きができる。

亜季「こんどはこちらの反撃でありますな…!!二連装超大型ビームキャノン砲…フルパワーシュートォッ!!!」

のあ「…続くわ…!」

亜季のビームキャノンが翼膜を打ち抜き、のあのコロナ・グレネードランチャーがそれに続く様に下顎の付近を爆破する。

『!?シュウウウウウウウウウ!!』

翼を動かしても風は全く巻き起こらず、爆破の衝撃により顎を再生しなくては口も開けない。

怒りの声は声にならず、シューシューという音になるだけ。故に憤怒の王はその足と尾で接近する者を殺す為に暴れまわる。

自身の体をこうも壊してくれた『二匹のムシケラ』に向かい、その巨体に合わない速さで接近を始める。

その憤怒の王の体にしがみつき、身軽にその体をよじ登った者がいた。…みくだ。

みく「うにゃああああっ!気合い、気合いにゃあああっ!!みくの役目、果たすにゃ!」

どうしてここまでうまく行動できるのか、それはあの僅かな時間に理由があった。

愛梨はあの僅かな時間の間に回廊を使い、驚くほどのスピードでメンバーに作戦を伝えて回ったのだ。

炎を防ぐためにある程度の人数で集まっていたのもそれを可能にした。

みくの役目はかなり危険だ。だがみくは逃げなかった、自分にできるならと友の提案を受け入れた。

頭部の核のすぐ近くまであっという間に登り、その腕の爪がギラリと光った。

みく「窮猫、竜を引っ掻くにゃあっ!!」

どんな生物でも鍛える事の出来ない目…憤怒の王の右目に鋭い爪が傷をつける。ピタリ、と憤怒の王は足を動かすのを止めた。
847 : ◆zvY2y1UzWw [saga]:2014/05/07(水) 23:30:29.53 ID:7bMNKq0V0
『シュウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ!!』

みく「みゃああああっ!!」

首を振り回し、みくを頭部から無理やり落とす。

みくは猫の獣人の身体能力をフルに生かして見事に着地するが、真上に憤怒の王の尾があった。

みく「…!」

足を動かすよりも、その尾は早かった。みくにはその尾が振り下ろされる光景がスローモーションで見えた。

…そして地を裂いて現れたいくつもの植物の『牙』。それが尾に生き物のように喰らいつき、起動を逸らした。

夕美「遅いよ…でもいいタイミングで来てくれたねっ!!」

その尾に地から飛び出して喰らいついたのは夕美の使役する肉食植物だ。

みくを庇う形で飛び出したそれは尾に吹き飛ばされたが、次々に街中に配置されていた肉食植物が集まってきて足や尾に食らいつく。

みく「っはぁ!死ぬかとおもったにゃ…時間稼ぎおわりっ!あとはまかせたにゃっ!!」

みくはその隙を見逃さず、全力で駆けた。

夕美「後はまかせて…『生まれ変われ』っ!」

夕美はその食らいついた肉食動物を巨大な白い花へ生まれ変わらせる。

喰らいついていたそれは憤怒の王のエネルギーを根から吸い取る花になり、花びらがだんだんと赤に染まっていく。

愛梨「続きます!」

間髪入れずに愛梨が竜巻を発生させた。憤怒の王を中心に巻き起こる竜巻は、やがて絡みついていた花を散らし、その花びらが竜巻に巻き込まれる。

『グオオオオオオオオオオ!!』

白が赤に変わる途中の色…桃色の花吹雪の中、やっとのことで顎を回復した憤怒の王は吠える。

口には黒い炎が集まっているのが遠目からでもはっきりとわかった。
848 : ◆zvY2y1UzWw [saga]:2014/05/07(水) 23:32:18.58 ID:7bMNKq0V0
琴歌「これで終わりではありませんっ!!」

琴歌は大きな桃色の花びらに紛れるように、竜巻の中を駆けていた。竜巻に乗った彼女は、いつもよりも何倍も早く、風よりも速い。

琴歌「たぁぁぁっ!!」

その勢いのまま銀色の光となって突撃し、二つの銀色の足が思い切り憤怒の王に足跡をつけた。

『ゴアッ…!?』

踏みつける時に巻き込まれた花びらが憤怒の王の肉体に食い込み、まるで押し花のようだ。

腹部に食い込むほどの勢いで蹴られた憤怒の王はその炎を上空に吐いてしまう。

夕美「チャンスだよっ!!」

憤怒の王に絡みついていた花が散った植物が更に姿を変え、先ほどよりもより強く、より多くの蔦が巻き付いた。

口も腕も翼も首も、蔦が拘束する。

キバ「これが最後だ!『冷気よ、大いなる我が力に従い、音すら凍らせるその身で我が平穏を奪う愚か者を永久の眠りへ送り込め!ヘルブリザード!』」

その無防備な憤怒の王に、キバが吹雪の魔術を叩きこんでその体をさらに凍らせ、動きを完全に停止させた。
849 : ◆zvY2y1UzWw [saga]:2014/05/07(水) 23:33:31.12 ID:7bMNKq0V0
菜々「動きが止まりました!すぐに標準を合わせます!」

拓海「よし、来い!!杏、覚悟はいいな!?」

杏「…どんと来い!」

その声と同時に少々荒っぽく大砲の標準が憤怒の王の頭部に向けられる。

菜々「行きます!ウサミン人間大砲!!」

打ち出された拓海と杏が一直線に頭部まで発射される。

拓海「ぐっ…!」

杏「よしっ…ここまで来れた…!」

核の付近で拓海が憤怒の王の体を掴んで強引に停止する。

目の前には半分ほどが憤怒の王に埋まっている大きな赤い核。

泰葉『何故、どうして、イラつく、ムカつく、消えろ、邪魔…』

その中の憤怒のカースドヒューマン、岡崎泰葉が俯いて座ったままボソボソと言葉を吐き続けていた。
850 : ◆zvY2y1UzWw [saga]:2014/05/07(水) 23:35:30.09 ID:7bMNKq0V0
拓海「っ…!?」

全力で拓海が拳を叩き付ける。…だが、あまりにもそれは固かった。

拓海「…固いってレベルじゃねぇぞこの核…!」

何度核に拳を打ち付けても、憤怒の王の鱗よりも遥かに固いその核はビクともしない。

拓海「やっぱり一筋縄には行かねぇか…」

杏「核を露出させているのは隠す必要がないからなんだね…」

核はカースの全てだ。破壊されればどんなに強力なカースも一撃で葬られる。逆に言えば破壊されなければ永遠に残り続ける。

対応した感情のエネルギーがある限り無限に湧く泥はその核を守る為の盾であり、その核の感情どおりに動く肉体である。

時に鋼より固くなる泥と比べれば核は脆く、殆どのヒーローがカースとの戦闘する時には『いかに泥を突破し核を破壊するか』が重要であった。

だがこの憤怒の王は違う。核が異様に固い。それこそ肉体であるドラゴンの鱗よりも。

破壊できるほどの力が無い限り、この憤怒の王は永遠に彼女からエネルギーを吸い続け、永遠に生き続けるのだろう。
851 : ◆zvY2y1UzWw [saga]:2014/05/07(水) 23:36:04.67 ID:7bMNKq0V0
杏が核に近づき、泰葉に呼びかける。

杏「…泰葉、泰葉はそれでいいの?…このままじゃ本当にアイツの思い通りじゃんか…っ!」

―この音は、なんだろうか?

杏の声に反応して、泰葉の沈んでいた意識が僅かに浮上した。

泰葉『…』

泰葉は動かない。彼女の言葉の変わりと言わんばかりに、核周辺の泥が腕のような形となって襲い掛かる。

杏「泰葉っ!?」

拓海「危ねぇ!」

拓海がそれを振り払い、殴り壊し、杏を守る。

拓海「お前…!ダチがここまで来てるんだぞ!?お前を心配して!お前を助けたくて!!自分がやっている事が分かってるのか!!?」

杏「…カミカゼ」

―音…じゃない。声が、聞こえる

―…うるさい

泰葉『ダマレ、黙れ…』

怒りに飲まれた彼女は、自分を揺るがしかねない言葉を聞こうとしない。聞きたくない。
852 : ◆zvY2y1UzWw [saga]:2014/05/07(水) 23:37:34.99 ID:7bMNKq0V0
拓海「聞こえてるみてぇだな…いいか、アタシはお前の事はよく知らねぇ!!でも、お前はこんな事がやりたかったのか!?」

―説教なんて聞きたくない、私の事を知らない善人ぶったお前らなんかに何が分かる…

泰葉『ウルサイ、煩い…』

拓海「人を殺して!街を壊して!挙句の果てにお前を思って攻撃を庇っちまうようなダチまで傷つけようとして!!」

拓海の言葉に合わせるように、杏は絶叫した。

杏「…泰葉!杏は、杏は!!泰葉が居なきゃ嫌なんだよおおっ!!」

―っ!

―この言葉をこれ以上聞いてはいけない…!

泰葉『黙れぇぇぇぇぇ!!』

『ゴオオオオオオオオオオオオオッ!!』

泰葉の叫びと同時に憤怒の王が氷と蔦の拘束を打ち破った。
853 : ◆zvY2y1UzWw [saga]:2014/05/07(水) 23:38:21.41 ID:7bMNKq0V0
拓海「杏、アタシに掴まってろ!できる限り声をかけ続けろ!」

杏「し、死んでもやめるもんか!」

激しく動く頭部に掴まり続けるのは非常に危険だ。

だが、その状況が拓海の『覚悟』を一層強くさせる。

泰葉『消えろ、消えろ、いなくなれ』

―学校より高いこの高度から、思いきり叩き付けたら死んでくれるだろうか、死ななかったら踏み殺してやろうか。

―私は世界に証明しなければいけない。私が…人形じゃない事を

―私は止まれない。この怒りを、世界に見せつけなければいけない

―私は認められたい。目の前の奴らにも、竜族にも魔族にもあの男にもあの人にも

―だから、捨てたの。友達なんて

泰葉『さよなら、死んで』

『グルウウウウウウゥ!』

憤怒の王が振り落そうと激しく頭を振る。右に左に上に下に。

どんなにパワーがあっても、長くは耐えられないだろう。下で待機しているメンバーもどこに落ちるか分からず動けない。

――ザザッ

―…?

…邪魔者の死を確信した泰葉の思考の中にノイズが走った。

――『貴女の友達は貴女を人形だと思ってたの!?』

泰葉『!?』

―誰だ、誰だ、誰の声だ…!?
854 : ◆zvY2y1UzWw [saga]:2014/05/07(水) 23:40:24.36 ID:7bMNKq0V0
正体不明のアンノウンの言葉が、拓海と杏の言葉で揺れていた心をさらに揺さぶる。

それは彼女の分身が聞いた言葉。嫉妬の呪いをその身に宿していたカースドヒューマンが、妬みと共に発した言葉。

…言葉を聞いた分身は消滅した筈だった。核は壊れ、この憤怒の王を構成する泥の一部にすらなってない筈だった。

では何故聞こえるのだろうか。答えは…瘴気だ。泰葉の怒り、街の人々の怒り…瘴気はそんな感情のエネルギーに汚染されている。

それを全て吸収した憤怒の王は、その怒りの感情を泰葉にまとめて送り込み、泰葉の発するエネルギーとして吸収していた。

その中の…全体から見ればとても小さな怒り。友人の居ない生活を知る嫉妬カースドヒューマンが、『友を捨てた』と聞いて嫉妬し…怒った。

――『友達がいるのに、それを捨ててまで人形じゃないと証明する?恵まれてカースドヒューマンでも幸せを掴み取ってるのに、その幸せを捨てる?それで怒りを世界にぶつけて呪いを振りまいて、自分を証明する?』

――『ふざけないで!!妬ましい!!』

その『怒り』も泰葉の中のエネルギーとして存在していたのだ。

…そしてその怒りの声は、杏や拓海の言葉を…友の声をキーワードとしたように泰葉の中ではじけた。

彼女に向けられた怒りの言葉が。
855 : ◆zvY2y1UzWw [saga]:2014/05/07(水) 23:41:18.49 ID:7bMNKq0V0
―違う、あの二人は…あの二人と一緒にいる時は、怒りを鎮める事も出来た。

―だって、あの二人は私を仲間だと、友達だと…

虚ろになっていた瞳に光が宿る。

奇跡が、起きた。

―私は…!

俯いていた顔を上げ、核の中から外を見た。

杏「…!」

泰葉「…杏さん」

力尽くで憤怒の王に掴まり続ける拓海と、その彼女に必死にしがみつく杏。

杏は泰葉が顔を上げたのを見て、少しだけ笑顔になる。

泰葉「…バカじゃないですか、こんなところまで…本当に…」

自分の異形の右腕を見て、今更悲しくなってきた。

―こんな事になってしまった、こんな事をしてしまった自分は、杏が迎えに来る程に価値があるの…?

―自分を庇った杏を殴ったヒーローにまで頼って、迎えに来てくれた。…ああ、それを喜んでいいんでしょうか…?

怒りの感情エネルギーが激減し、憤怒の王は動きを止める。
856 : ◆zvY2y1UzWw [saga]:2014/05/07(水) 23:45:07.37 ID:7bMNKq0V0
だが、『憤怒の王』は怒りから覚めた『エネルギー源』を許しはしなかった。

泰葉「…!」

核の内部に泥が溢れ、泰葉を再び怒りの感情に溺れさせようとする。

それは足掻きだった。憤怒の王が永久に怒り、暴れるための足掻き。

キバ「…あと少しだ、このまま一気に終わらせろ!」

僅かながら未だに外から集まろうとして来るカースも速度を上げ始め、他のメンバーはそのカースを倒し続けている。

泰葉「やめてっ…!」

憤怒の王の動きは止まったものの、やはり核を破壊できなければ終わらない。

拓海「…正気に戻ったみてぇだな…!」

杏「カミカゼ、お願いだよ!泰葉はこのままじゃまた…!」

拓海「ああ、分かってる!あとは核をぶっ壊すだけだ!!」

そう、あとは壊すだけだ。

杏「…くそぉ!あと少しなのに!」

拓海が何度も何度も拳を打ち付けても、今まで誕生したカースで最も固い核を持つ憤怒の王の核はヒビすら入らない。

泰葉は必死に手足を動かす。自分を捕えようとする泥から逃げるために足掻く。

泰葉「私は…私は…」

泰葉(これを終わらせるために、力を合わせることが出来る!!)

拓海が拳を構えるのを見て、同じように異形の右腕を構える。

拓海「!…いいぜ、同時にっ!!」

泰葉「私は自分の意思で…生きる!!」

内側と外側…両面からの怪力が、核を打ち砕いた。
857 : ◆zvY2y1UzWw [saga]:2014/05/07(水) 23:48:30.46 ID:7bMNKq0V0
泰葉「ハアッ…ハアッ…」

息も絶え絶えになりながら、核から泰葉が脱出した。

だが泰葉が核から出ようとしたその瞬間、内部から泥が溢れて襲い掛かってきた。

泰葉「うそ…でしょ…?」

拓海「ぐっ…まだ足掻くのかコイツ…!?」

未だに生きようと足掻く憤怒の王…消滅寸前となり泰葉を捕えようとする泥の動きが更に活発化したのだろう。拓海すら引きずり込み、取り込もうとしている。

杏「させるかあっ!」

拓海にしがみついていた杏が、ヒビ割れた核の中に泰葉たちが取り込まれる前に飛び込んだ。

泰葉「え…?」

泥は満足そうに杏を取り込むと、核を泥で覆い隠した。

泰葉「杏さんっ!?杏さんっ!?」

拓海「…落ち着け!お前が飛び込むのは危険だ!」

泰葉「でも杏さんが…!」

パリンと、ガラスが砕けるような音が響いた。

『グ…アァァ?』

核を覆っていた泥がはじけ、憤怒の王の肉体として形を作っていた泥も消滅し始めている。

泥のとれた核を見れば核全体にひびが入り、完全に崩壊を始めた。

杏はその崩壊した核から完全に疲労した表情で這い出て来た。

杏「…へへっ」

…杏は自らの体質変化能力によって自らの核の罪の属性を偽装し、泥に杏を『憤怒のカースドヒューマン』と錯覚させ、自分を命令取り込むように命令した。

憤怒のカースドヒューマンと錯覚させても杏自身から憤怒の王を動かせる程の怒りのエネルギーは吸収できない。

逆に怠惰のエネルギーを送り込まれ…憤怒の王は核に取り込んだ杏の力によって自滅したのだ。

杏「…ざまぁみろ、杏が止めを刺してやったぞ…!」

きっと遠くから見ているであろう憤怒Pに、聞こえてはいないだろうがそう言わずにはいられなかった。
858 : ◆zvY2y1UzWw [saga]:2014/05/07(水) 23:49:50.99 ID:7bMNKq0V0
崩壊する憤怒の王の肉体から、拓海達が落ちていく。

キバ「…『〜〜〜、〜〜』『〜〜〜、〜〜』」

キバが巻き起こした風が頭部にいた3人を地上へゆっくりおろし、一同はやっと終わったことを確信した。

安堵の雰囲気が場を包み込む。

だが、その油断した隙を杏は見逃さず、泰葉の腕を掴むと怠惰のカースを生み出し、全速力で逃亡してしまった。

杏「ありがと、ヒーロー。多分悪さはしないから…ゴメン!」

拓海「あ?…ああっ!?」

有香「しまった!?」

杏「逃げるよっ!」

泰葉「…は、はい!」

追いかけようとしたが、目の前に大量の怠惰と憤怒のカースが現れて妨害する。

攻撃よりも先に核が砕け自滅したことから、攻撃の意思はない妨害だったのだろう。

愛梨「ま、待って泰葉ちゃん!まだ行かないで…!」

みく「愛梨チャン、追いかけるにゃ!」

のあ「今なら、追いつく可能性はあるわ…」

愛梨「うん!」

愛梨達3人は杏と泰葉を追いかけ、飛び出した。

拓海「畜生…油断した!よく考えりゃ逃げる気マンマンだったじゃねーかアイツ!」

有香「と、とにかく追いかけましょう!」

拓海「ああ!」

拓海もカミカゼのスーツをバイクに変形させ有香にヘルメットを渡して乗せ、その後を追う。

琴歌「私も…!」

亜季「空から追うであります!」

亜季や琴歌も空中から追いかけた。

菜々「とととと逃亡ですか!?どうしましょう!どうしましょう!?」

夕美「…いたた、終わったと思ったら痛いの自覚しちゃったよ…ナナちゃんも結構つらいでしょ、追いかけて体壊さないようにしよう?」

慌てて追いかけようとした菜々を、夕美が若干の演技を絡めて制止する。杏の気持ちが夕美にはそれなりに分かる…友達を守りたいだけなのだろうと。
859 : ◆zvY2y1UzWw [saga]:2014/05/07(水) 23:52:03.30 ID:7bMNKq0V0
菜々「…そうですね。…でもどうしましょう、同盟になんて報告すれば…」

夕美「うーん…取りあえずこの街のカースの親玉は倒したけど、原因には逃げられたって素直に報告するしかないね…」

菜々(あれ?あの子は黒幕じゃないみたいだし…あれ?…伝える情報がおかしいような…)

夕美(気のせいだよ)

菜々(脳内に直接はやめてくださいよ…心臓に悪いですから)

夕美「…うん、ごめんね?というより、私達は黒幕の事を知らないから…下手に黒幕がいるって言わない方がいいと思うんだ」

菜々「ああ、そういえば見た気になっていましたけど会っていませんよね…洋子さん達は会ったのでしょうか…」

夕美「…どうなんだろうね…うん、腕の修復おわりっ!」

菜々「作り直しですか?」

夕美「そうそう、今のうちにね…」

そんな感じで暫く話していると、空中を飛んでいた亜季と琴歌が戻ってきた。

夕美「…あれ、もう捕まえたの?」

琴歌「それが…どうやら、大きな穴から地下通路へ逃げたみたいで…見失ってしまいました」

亜季「地下の通路は無数に穴が開いている状態。…しかも穴から入った場所はかなり崩壊していたので、どの道を行ったのかさえ分からず…」

琴歌「愛梨さん達はもう先に行ってしまい…彼女達も見失ってしまいました」

穴とはプラントがあった場所の事だ。そこから杏と泰葉は地下へと逃亡し、現在も逃走を続けているようだ。
860 : ◆zvY2y1UzWw [saga]:2014/05/07(水) 23:55:33.43 ID:7bMNKq0V0
琴歌「ですが拓海さんが外の方々に連絡をしたところ、これからGDFの方々が地下から街の外部への出入り口を封鎖するそうですわ」

亜季「…封鎖が間に合えばいいのですが」

菜々「じゃあ地下はGDFに頑張ってもらうしかないですね…」

夕美「そ、そっか…穴だらけだよね、地下…」

夕美の肉食植物も地下を移動し穴を開けたはずだ。地下通路は迷路のように複雑に入り組んでしまっているだろう。

菜々「あれ、キバさんは何をしてるんですか?」

菜々が思い出したように先程から一言も話さなかったキバに意識を向けた。

キバ「…ああ、ちょっとした後処理だ」

キバは二つの風を起こしていた。一つは3人を受け止め…もう一つが憤怒の王から散った瘴気とサタンの魔力を一カ所に集めていた。

それらを全て取り込む。きっとサタンの魔力はこれで全てというわけではないのだろう。

夕美(…瘴気を取り込んだ?この人…普通の人間じゃないみたいだね)

キバ「…これで終わり、という訳にはいかないようだ」

少し考え、今校庭にいるメンバーに向き直る。

キバ「…共に戦ってくれた君達に伝えておいたほうがいい情報がある。…この事件、確かに黒幕は存在する」

菜々「…!」

夕美「…」

キバ「奴は私の知り合いで…一度死んだはずの存在。悪霊のようなものだ。今回の事件、奴の下衆な企みの産物だろう」

琴歌「悪霊だなんて…」

亜季「その悪霊と、知り合いでありますか…」

キバ「ああ…ティアマットに気を付けろ。私は奴を倒せなかった…いつか再び現れるはずだ。人の心を踏みにじるような企みと共に」

そう言って悔しそうに拳を握りしめる。それと同時に竜の翼がキバの背に生えた。

キバ「…彼女は、奴に心と人生を狂わされた。私はそう思ってるよ、どんなに彼女とその周囲に原因があろうとも」

キバ「私はもう行かなくてはならない。これ以上の情報は…伝えて良いのか分からないんだ、すまない」

風と共に飛び去っていくキバを、誰も止めることはできなかった。

菜々「…ティアマット、ですか」

夕美「名前を聞けたのは収穫…かもね」

キバが消えた空を見上げるバイクの音が近づいてくる。

精霊の雨を降らせていた雲が消え、綺麗な夕日が街をオレンジ色に染める。

すっきりしない気分と嫌な予感を引きずりなからも、憤怒に包まれた街は怒りではなく静寂に包まれた。
861 : ◆zvY2y1UzWw [saga]:2014/05/07(水) 23:56:40.06 ID:7bMNKq0V0
イベント情報
・憤怒の街イベント終了!(この話の時系列で書くのは問題ありません)
・杏は泰葉を連れて地下通路経由で逃亡。恐らく無事に逃亡に成功した模様。
・愛梨達は泰葉を追いましたが…追いついたかは不明
・泰葉の右腕は竜の異形のままになっています。
・キバがサタンの魔力の一部を取り戻しました。
・ティアマットという名前が一部の人物に伝わりました。(名前を聞いた4名経由で広まっても問題ないです)

以上です!戦闘上手くけないにぃ(白目)
憤怒の王が強く書けたのかだけが心配…憤怒の王の強さは核の固さだけど内側と外側からはどうしようも無かったね!って事で…
それと同時にいろいろぶん投げておきました

憤怒の街イベントはこれにて完結、という形になります!お疲れ様でした!
…これで先輩たちもこの後の時系列に参加できるね
862 : ◆AZRIyTG9aM [sage]:2014/05/08(木) 00:02:59.90 ID:txMG8L4bO
乙ー乙ー

まさかの加蓮の活躍!だが、本人気づかない

よし、コレで加蓮の友達百人作戦で先輩に突撃できるぞ

それにしても……ティアマットは今後どうするのかね?
863 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/05/08(木) 00:06:39.56 ID:ApVuYkzDO
乙!
だがティアマットはこれで諦めるようなヤツじゃない!
まだまだ波乱の予感がするぜ!
864 : ◆Mq6wnrJFaM [sage]:2014/05/08(木) 01:39:54.85 ID:COWZOKaDO
おつ

思いの外拓海の出番多くて嬉しい
865 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/05/08(木) 08:41:43.35 ID:PN2KpoVko
皆さん乙です

>>807
何気に飛鳥の能力凄いです、彼女が正義に対してどう動くのか楽しみであったり
そして良いシリアスブレイク。なんですこの2人可愛いんですけど

>>828
ラスボス戦の裏側ですねえ。ここでの伏線が今後にどう繋がっていくか
色々あったけどMZK48が全部持っていったわ、ズルイわ

>>834
楽しみに待ってますよwkwk

>>861
ついに憤怒の街ラスボス撃破ですね、長かった『憤怒の街』もようやく終わり……
いやいやまだ終わっちゃいませんよ、kwsmnもいますし
なにより黒幕を倒すまでが遠足ですからね。奴を倒すまで因縁は続くんだっ!
ところで先輩も解放されたし、先輩に戟王丸渡したいなあ……うずうず



あ、投下します
>>541からのイベントお借りです
お正月過ぎ時系列ですねえ
ではでは投下ー
866 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/05/08(木) 08:43:11.56 ID:PN2KpoVko



867 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/05/08(木) 08:43:57.84 ID:PN2KpoVko






「た、助けてっ!!助けてくれっ!」

「やめろっ!こっちに来るなっ!」

突如として炎に包まれた駅前広場。

ほんの数分前までは、いつものように平和な時を過ごしていた人々が逃げ惑う。

黒色の蜥蜴が爆裂し、地面から湧き出る怪物が次々と抵抗する術のない人間達を襲う。


「ひぃっ!!放せっ!頼むっ!放してくれ!」

逃げ惑う人々の中の一人が今、一匹の蜥蜴に捕まった。

抵抗し引き離そうとするが、がっちりと得物の手足に爪を食い込ませ尻尾を絡める蜥蜴は少しも怯む様子は無い。

「嫌だぁっ!!嫌だっ!!」

哀れ。こうなれば最後。

蜥蜴の自爆に至近距離で巻き込まれ、数秒後には彼は木っ端微塵であろう。

「助けてぇっ!!誰かっ!!」

喉の奥から振り絞った叫びも、逃げ惑う人々には届かない。

必死で手を伸ばす彼の手を掴むものなどいるはずがない。

誰だって、巻き添えにはなりたくないのだ。


「捕まって!早く!」

「!」

そんな彼に、誰かを手を差し伸べた。

最悪の状況に一筋の光明、彼はそれに縋る。


次の瞬間、彼の身体は消失した。
868 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/05/08(木) 08:44:44.06 ID:PN2KpoVko

『?』


その場所に残されたのは一匹の蜥蜴。

蜥蜴がその爆発に巻き込もうとした人間は、文字通りこの場所から消えてしまったのだ。

―― 一体どこへ消えてしまったのか?

蜥蜴にもし思考する時間があれば、そのように考えたことだろう。

彼が消えて間もなく、蜥蜴の頭上に幾つもの剣が突き刺さる。

黒い頭が拉げて、辺りにその体液を撒き散らし、

その体内で消えた剣とともに、蜥蜴の体は消失したのだった――
869 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/05/08(木) 08:45:20.88 ID:PN2KpoVko


――


――



駅前広場を見渡せる、とあるビルの屋上。

その場所に立つ、人影が4つ。

男女混合で並び立つ大人と子供、背格好に共通点はない。

もし一般市民が彼らの姿を見たとしても、

彼らがどのような関係のグループなのか皆目見当もつけられない事だろう。


しかし、その中にいる1人の男の顔を見たならば、おそらくは誰もが驚いたはずだ。



黒いスーツに身を包み、少し癖のある金髪と虚空を見据える様な深緑の瞳が印象的な、

涼やかで整った顔立ち故に実年齢よりも若く見えるその男。


サクライP「ほらね、やはり来てよかっただろう?」

超巨大財閥の頂点に君臨する男がそこには居た。


さて、彼がこの場所に陣取っているのはどうしてか。

眼下で巻き起こる災禍を事前に察知したためだ。
870 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/05/08(木) 08:46:14.97 ID:PN2KpoVko

竜面「……よく、この時間この場所で起きる事件の事を勘付けたものだな」

竜面「それとも知っていたのか?」

当然の疑問を傍に控えていた竜面の男が尋ねる。

何しろ彼を含むサクライの私兵『エージェント』は、

この場所がまだ平和な駅前通りであった時から目の前の男に招集されていたのだから。

呼び出しの理由も知らされず来てみれば、起きたのは平和な街並みには似つかわしくない爆破テロ。

あまりのタイミングの良さ。誰もが不思議に思わないはずが無い。

サクライP「いや、知らなかったさ」

竜面の疑問に男はケロリと答える。

サクライP「未来に何が起きるのか……”本来ならば”誰にもわかるはずがない」

当然、未来の出来事なのだから彼も含めて誰もが知る事などできるはずが無い。

しかし、彼はそこに”本来ならば”と皮肉な言葉を添えた。

その言葉の意味に面を被った男も勘付く。

竜面「ああ……予知能力者でもいたなら話は別だな」

サクライP「そう言うことだね」
871 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/05/08(木) 08:47:13.15 ID:PN2KpoVko

竜面「しかしサクライ殿は予知能力者、『アカシックレコードの読み手』を手にするのに随分苦心していたはずだが?」

アカシックレコードの読み手。

未来の情報を――いや、未来だけに留まらず現在、過去、未来すべての情報を読み取ることの出来る限りなく全知に近い存在。

予知能力などと言う次元には収まらない。およそ情報獲得の分野では最高峰たる能力者。

櫻井財閥は彼女の存在を知り、しばらく彼女の取得の為に追っ手を放っていたのだが……

竜面「未来の情報を知ることの出来る能力者を捕まえ従えさせることなど不可能だ。ソレが自ら望まぬ限りな」

結局、アカシックレコードの読み手を捕獲する作戦は失敗に終わり、財閥は手痛い大打撃を受けた過去が残っただけであった。

この場で語る竜面の男もその作戦に参加していたが、彼もまた当時酷い目に合わされた者の1人であった。

サクライP「まあ、神に手を打たれたとあっては……アレに関しての取得は一時、諦めざるをえないさ」

竜面「アレでない……とするのならば一体何を使った?」

予測不可能なこの事件。予知の類の力を使わなければ察知することなどできるはずもない。

しかし、現に男はこの場所に居るのだ。何かしらの未来を知る手段に頼ったのは間違いない。


竜面「アレ以外にも、”未来の情報”を獲得できる者の話を我が輩は聞いていない」

財閥の中に未来の情報を獲得できる能力者が居ると言う話を彼は聞いたことも無い。

いや、もしかすると彼が知らず、サクライPだけが知る『エージェント』の中にはその類の能力者も居るのかもしれないが……


サクライP「なに、カラクリは難しくはないさ」

サクライP「過去多くの支配者達が頼ってきたものに、僕も頼ってみただけのことだよ」

竜面の男の疑問に答えながら、サクライPは懐から1枚の紙切れを取り出した。

竜面「カード……?タロットカードか……!」

そして、その紙切れの正体を知った竜面の男は、サクライPに情報をもたらした者の正体にも気づく。
872 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/05/08(木) 08:47:39.88 ID:PN2KpoVko

竜面「まさか、この時代に本物が生き残っていると?それは驚いたな……」

未来を知ることのできる能力者ではなく、

世界の命運を探ることのできる者――『占い師』と呼ばれる存在。

サクライPはその力に頼って、この事件の発生を察知したのであった。

竜面「だが、占い師どもこそ……運命を知らせる相手を慎重に選ぶだろう」

竜面「既に多くの人間の運命をその手に握るサクライ殿を占うとは思えんが……?」

占い師と言う存在は、特に情報を知らせる相手を選ぶ。

運命の行末を探り、それを知らせることは時に運命を捻じ曲げることに繋がる。

その危険性を熟知していればこそ、櫻井のように巨大かつ大きな力を持つ存在に簡単に情報を伝えようとはしないだろう。


サクライP「まあ、そうだね。実際に僕自身が占ってもらった……と言う訳では無いんだ」

サクライP「都合よく運命を変える事ができるのは、運命を知るものと知らされたものの特権だからね」

運命の分岐。選択の権利だけは誰にでもあるが、

その選択の内、少しでも良い方を選ぶことができるのは先の答えを知る事ができたものだけである。


サクライP「けれど、どうだろう?」

サクライP「もし……多くの人間が運命を知って、運命を変えようと動いたならば……」

サクライP「それを観測することは難しくないと思わないかな?」

財閥の頂点、かつて世界を動かすことのできた男が不敵に笑う。
873 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/05/08(木) 08:48:05.54 ID:PN2KpoVko

サクライP「この事件は……それこそ多くの人々の運命の分岐点となるだろうね」

サクライP「もし、彼らが運命を知る事ができたならば……どんな行動を取るだろう?」

竜面「……触らぬ神に祟りなし。我輩ならば悪運を避けようとするだろうな」

サクライP「そう。それが最善……なら、実際に知る事ができた者達の行動を監視してさえいれば」

サクライP「この日、この場所で何かが起こることくらいはわかると思わないかい?」

竜面「……なるほど、占いの利用者達の動きを監視していたか」

サクライP「そう言うことさ」

サクライP「彼女は人気の占い師だからね」

サクライP「彼女の店を利用して、この日この場所を避けるように予定を変えた人間は随分と多かったよ」

竜面「悪趣味な事だな」

それが此度、突如として起きた気紛れのような事件に、彼が同盟やGDFよりも先んじて動けた種。

世間で暮らす多くの人々の動きさえ監視して把握する巨大財閥の力を使った裏技であった。


さくら「サクライさんっ!」

さて、彼らのすぐ近くで魔法陣を展開していた少女が声をあげた。
874 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/05/08(木) 08:48:55.51 ID:PN2KpoVko

さくら「ばっちり見つけましたよぉ!」

少女の回りに浮遊するのは、幾つもの黒い文字。

その中の1つを指差し、少女は得意満面に胸を張る。

竜面「ほう……いつもよりずっと早いリーディングであったな。魔法の時間と場所を狭い範囲で指定したおかげか」

さくら「えっへっへー!私が本気だしちゃえばこんなもんですよぉっ!」

目的達成の速さを褒められた少女は得意げに胸を張った。

サクライP「読み上げてくれるかい」

さくら「はぁい!えっとー」


さくら「『だれもきいてないだろうけどぉー』」

さくら「『このいんび……』……い、いんゔぃ?」

さくら「ええっと…『……いんゔぃでぃあがひとこといわせていただきまぁーす』」

さくら「『わたしたちいるみなてぃー……せかいをどろみずのごとくのこんとんにぃー』」


さくら「……だそうですっ!」 ドヤッ

サクライP「……なるほど、色々と合点が行ったよ」

魔法使いの少女が、口跡探知魔法を使い拾い上げた言葉。

それを聞いて、男の表情が変わる。

普段、笑顔以外の表情を出さない彼にしては珍しく、露骨に苦々しい顔をしていた。
875 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/05/08(木) 08:50:01.73 ID:PN2KpoVko

竜面「……久しく聞くな。本当に奴らなのか?」

竜の面を被った男がいぶかしんだ。

――『イルミナティ』

世界の裏側でさえ知るものしか知らない、存在するかも怪しいとされるある組織の呼称。

今回の事件の、おそらく首謀者たる人物の言葉の中にその組織の名前があったのだ。


竜面「今更になって奴らが活動をはじめたと?」

とは言え、それが本物だとは思いにくい。

世界の動きを監視する財閥の中に居た彼でさえ、久しく聞かなかったその組織の名。

長い期間動かなかった組織。もはや活動停止の可能性さえあると考えていたそれ。

化石の名前を聞いて今になってそれが本当に復活したのだ、とは竜面の男は思えなかった。

サクライP「過去に衰えてしまった……とされている組織の名を騙る意味なんてないさ」

サクライP「それに、呪術師くんならわかるだろう?」

サクライP「今、下で暴れまわるカース達の特異な性質にね」

竜面「…………確かに。並みの術師や悪魔の元ではアレは産まれぬか」

明確な悪意のもとに、人々を巻き込み爆裂する呪いの蜥蜴。

そして、疾駆する幻馬に誘われるが如く今も空から振り落ちる泥の雨。

竜面「言葉の真偽は差し置いても、事実存在する凶悪に制御された呪い……」

竜面「呪いを生業とする我輩としては……是非持ち帰って研究したいものだな」

ぼそりと、呪術師はその欲望を漏らした。
876 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/05/08(木) 08:50:37.69 ID:PN2KpoVko

サクライP「さて……紗南くん、解析は終わりそうかな?」

紗南「……んー……もうちょっと掛かりそう」

サクライが声を掛けると、

彼らのやや後方にて眉に皺を寄せてゲーム画面に集中していた少女が顔をあげて答えた。

三好紗南はその能力を使い、此度の事件の首謀者の情報を洗い出そうと尽力していたのだった。


紗南「やっぱこれだけ距離があると……ムズゲーだなぁ」

三好紗南の情報獲得。

彼女の視界内に存在するものから洗いざらいの情報を抜き取る能力であったが、

距離があればあるほど精度が落ちてしまうようであった。

それはそうだろう。

距離があると言う事は、それだけ視覚に入ってしまう情報が多くなり、その中から欲しい情報を選び取る事は難しくなるし、

同時に死角に入ってしまう情報も多くなり、対象が障害物の影に隠れてしまえば得られる情報が急激に減ってしまうのだから。

怠惰の悪魔ベルフェゴールであれば、一度に入ってくる大量の情報の処理をスパコンよりも素早く行うことが出来たが、

ただの人間の少女である紗南の脳はそれに追いつきはしない。

なので情報の獲得に時間が掛かってしまうのは仕方の無いことであった。


紗南「だけど……ここまで情報獲得しにくいのも変なんだよね」

紗南「特に馬の方なんて、明らかにこっちから見えてるはずのに……情報ほとんど手に入らなくって……」

サクライP「……見えてるはずなのに……か」

紗南「もうっ!わっけわかんないっ!」

紗南「うーん……接近できればいいんだろうけど……危険すぎるよねぇ……」

さくら「お師匠さんの貼った結界の外の安全は保障できませんからねぇ」

竜面「いや、我輩の結界内の安全もまったく保障するものではないが」

さくら「ええぇっ!?!」
877 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/05/08(木) 08:51:07.89 ID:PN2KpoVko


紗南「……サクライさん。下の人達さ、大丈夫なのかな?」

心配そうに表情を曇らせた少女が、目の前に悠然と佇む男に尋ねた。

さくら「大丈夫ですよぉ!聖來さんも芽衣子さんも救援活動手伝ってますしぃ!」

尋ねられたサクライPより先に、あっけらかんと魔法使いの少女が答える。

サクライP「ああ。そこまで心配せずとも、ヒーロー達もじきに駆けつけるさ」

少女の答えに、彼も同意する。

サクライP「僕たち人間は、あの忌々しい過去を」

サクライP「『憤怒の街』の一件を忘れたわけじゃない」

紗南「……」

さくら「……」

2人の少女が黙り込んでしまった。

彼女達はかつてあの町に乗り込んだ事があるからだ。

思い起こされる凄惨な現場の記憶。


大量発生したカースによって、街1つが選挙され……

世界の多くの人々が絶望する事となったあの事件。
878 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/05/08(木) 08:51:40.89 ID:PN2KpoVko

サクライP「解決こそしたが、多くの犠牲者を出してしまったあの事件から」

サクライP「僕たちは反省し、教訓を得たはずだ」

サクライP「そう、同じ間違いは二度と犯さない」

男が力強く発した言葉は、あの絶望を経験した人々の思いの代弁。

サクライP「同盟やGDFは元より、多くの組織がカースの脅威を改めて認識した今では」

サクライP「この事件も、すぐに解決できるよ」

さくら「で、ですよねぇっ!」

紗南「……うん」

サクライPの言葉に少女達は強く頷く。

あの時、絶望の淵から立ち上がったヒーロー達をはじめ、人間達もみな成長したはずだ。

突如として起きてしまったこの事件……だけれど、ヒーロー達は必ず駆けつけ被害が広がる前に食い止めることだろう。

膨れ上がるのは呪いばかりではない。


希望もまた、確かに大きく育っているのだ。




竜面「しかし、だからこそ解せぬのだろう」

竜面の男が口を挟んだ。

サクライP「それは……『イルミナティ』がこの事件を起こした目的がかな?」

竜面「然り」

その大きな手で竜を象った仮面を押さえて、男は考え込んでいた。
879 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/05/08(木) 08:52:18.54 ID:PN2KpoVko


紗南「サクライさん。そのさ……『いるみなてぃ』ってなんなの?」

少女が素朴な疑問を男に尋ねる。

サクライP「『イルミナティ』、世界の裏側に存在する組織の一つさ」

その疑問に男は静かに答えた。

サクライP「簡単に言えば、馬鹿げたことに世界征服を企む秘密結社と言ったところかな」

自分の事は棚に上げ、馬鹿げたことだと一笑する男。

紗南「ふーん、今時は珍しくないタイプの組織だよね」

さくら「要するに悪い人達の集まりって事ですよね!」

うんうんと納得したように頷く魔法使いの少女。

なお、自分も悪い人達の集まりの中に居るとはあまり認識してはいないらしい。

竜面(ひどいブーメラン大会だな……)


サクライP「しかし、彼らは凡百の……所謂、悪の組織とは違う」

サクライP「僕が知る限り、『イルミナティ』はこの世界で最も”常識外れ”な組織だ」

苦笑交じりに彼は語る。

紗南「常識外れ……」

さくら「……道路で煙草をポイ捨てしちゃうとか……不良って事ですか?」

サクライP「さくら君……常識外れと言うのは、人道的に常識が無いと言う事ではなくてね……」

サクライP「……奴らは底抜けに計り知れない、恐るべき脅威の存在だと言う事だよ」

紗南「……」

世界の支配者に最も近かった男が”底抜けに””計り知れない””恐るべき””脅威”と評する存在。

紗南はなんとなくであったが、その存在の尋常ではないおぞましさを理解した。
880 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/05/08(木) 08:53:16.94 ID:PN2KpoVko

竜面「我輩の疑念は、その恐るべき脅威が……どうしてこの程度の騒ぎを起こしたのかだ」

呪術師が話を戻す。彼の頭を悩ますのはこの騒ぎの規模。

世間を混乱させる事はできても、決して大きすぎはしない破壊工作の意味への疑問。

さくら「えっとぉ……よくわからないですけど、普通のテロじゃないんですかぁ?」

紗南「普通のテロって言い方はないよね?」

サクライP「さくら君。テロリズムはただ暴れたくてやってるわけじゃない」

サクライP「そこには思想があり、訴えかけたい言葉があるからこその暴力だ」

サクライP「騒ぎの裏には思想があって、必ず目的がある」

サクライP「そうだね……それを知るために、僕は君たちをこの場所に連れてきたと言ってもいい」

騒ぎの収束は放って置いてもGDFと同盟が完遂するだろう。

財閥に所属する部隊にも、彼らに何らかの協力をさせる予定である。

先んじて、下では既に『エージェント』達が動き、避難活動の誘導を行っていた。

だから、事件の解決自体は財閥のトップが出張る必要のない話なのだ。

それでも財閥の頂点に立つ彼が、今もなおこの場所に立つ理由は1つである。

サクライP「この機会に、あの穴熊の尻尾を捕まえられればいいのだけどね」
881 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/05/08(木) 08:54:01.46 ID:PN2KpoVko

サクライP「ところで呪術師君はどう考えているのかな?」

男はすました笑顔で、傍に控える呪術師に尋ねた。

竜面「……潜伏していた組織が突如として引いた引き金、告知とも取れる宣戦布告の言葉」

竜面「しかし、規模は……新聞の一面記事を飾れはするだろうが、甚大すぎはしない」

話を振られた男は、推測し結論を出す。

竜面「撒き餌ではないのか」

竜面「集まってくるヒーローや、あるいはサクライ殿……貴方を釣るための」

サクライP「なるほど。可能性としてはなくはない」

その答えを聞いてニヤリとサクライPは笑った。

紗南「釣るって……この騒ぎにみんなが集まってくるのを待ってるってこと?」

サクライP「そう言うことだね」

紗南「……もし目的がサクライさんだとしたら……サクライさんがノコノコとここに居るのってまずくないの?」

サクライP「はははっ!紗南君の言うとおり失敗だったかな?」

紗南(えぇぇ……)

少女の指摘に対して、男は大きく笑った。

その様子に紗南はなんだか呆れてしまう。
882 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/05/08(木) 08:54:35.33 ID:PN2KpoVko

サクライP「まあ、仮にそうであったとしても……今はすぐ近くに芽衣子君が居てくれている」

サクライP「何か起きた時は、僕は緊急で移動できるさ」

瞬間的な移動を可能とする並木芽衣子の力なら、

この場所から離れることも容易であるし、遠くで何か起きた場合でもすぐに赴くことが出来る。

サクライP「それに万一、僕がどうしても動けない自体に陥ったとしても……その場合は代わりに『あの方』が動くからね」

紗南、さくら(……?)

竜面「……」

少女2人には、ニヤつく男が信頼する『あの方』については思い至らなかったようであった。

サクライP「何より僕はね、”これ”の目的が釣りのようなものだとは考えていない」

竜面「ほう……その心は?」

サクライP「これは開幕の狼煙」

サクライP「つまりは――」


ドォンッ ―― !!


―― すぐ近くで爆音が鳴った。

竜面「むっ?」

さくら「ひっ!?」

紗南「し、下から!?な、なんか来てるよっ!?」

サクライP「やれやれ、無粋な来客のようだ」


―― 眼下を覗き見れば、

―― 一匹の巨大な蜥蜴が、

―― 彼らの立つビルを昇ろうとしていた
883 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/05/08(木) 08:55:14.93 ID:PN2KpoVko


―――


―――



襲い来る影を振り切りながら疾駆するのは1人のヒーロー。

聖來「よいしょっと」

『ガァァアッ!?』

彼女が両の手に持つ妖刀「小春日和」と「桜花夜話」の刃が、泥の塊に一薙ぎに刻まれてその核を破壊する。

舞い踊るような彼女の剣撃に次々とカースが切り伏され消失するが、

『ゲヘヘヘ』

『ウィヒヒヒヒ』

すぐにその欠員を補充するように地面から黒色の泥が沸いてくる。


聖來「うじゃうじゃうじゃうじゃ……きりがないね」

1匹倒せば2匹が忍び寄り、2匹倒せば4匹が湧き上がる。

雨から産まれるカースは比較的弱めの固体であるが、

そんな事が救いにもならないほど、際限ないその数に参ってしまう。
884 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/05/08(木) 08:55:58.59 ID:PN2KpoVko

聖來「……雨を引き起こしている本体を倒さないとか」

次々と沸いてくるカースの発生を止めるには、

その発生源となる本体を見つけ出して、それを叩くしか無いだろう。


芽衣子「連絡では、この雨は走り回る馬が原因じゃないかって話だったね」

聖來「わわっ、芽衣子さん!」

芽衣子「あっ、驚かせちゃった?ごめんねっ」

突然の背後からの同僚の登場に、思わずびっくりしてしまう聖來。

並木芽衣子の移動能力は文字通りに瞬間的である。

そのため、背後に現われるとあらかじめわかっていたとしても、ついつい驚いてしまうのだった。

聖來「い、いいんだけどね。それよりさっきの人大丈夫だった?」

芽衣子「うん。もちろん、怪我は少しも無し!ちゃんと救助できましたっ」

尋ねられた芽衣子は、えへっと笑った。

櫻井財閥に所属する『エージェント』の2人。

しかし今回は、2人とも表向きの立場。

すなわち『フリーのヒーロー』と『財閥の救護班』としての任務である。

それぞれの立場で、逃げ惑う人々の避難の誘導を行うのが、招集された彼女達に与えられたお仕事であった。
885 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/05/08(木) 08:56:37.05 ID:PN2KpoVko

芽衣子「それにしても……たくさん集めたねえ」

聖來「あははっ、まあね……」

雨で新たに沸いてくるカースも多いが、それだけではなく

聖來の周りには明らかに周囲から集まってきているカースが多い。


聖來「熱い視線を向けてくれるのはいいけど、なんだかモテちゃうって辛いのかもね」

水木聖來の『カリスマ』は、人外を惹き付けてしまう力。

いつも掛けている制御装置代わりのサングラスも外して、

その力を少しも抑えず発揮している今は、低級カースでさえも集めてしまっているようだ。

彼女達の四方八方を囲むカースの群れ。

背中合わせに立つ2人に向かって、じりじりと近づいて来ている。


芽衣子「あはは、確かにこんなに迫られても困っちゃうよね」

芽衣子「それじゃあ、逃げちゃおっか」

聖來「だねっ」

並木芽衣子の瞬間旅行。

”人間とその手荷物だけ”を迅速に好きな場所に運べるのがその力。

一斉に飛び掛ってきたカースの群れの中心から、

パッと2人は姿を消した。

集まる泥の中心点に残されていたのは、十数本のナイフ。

次の瞬間、殺到したカースの群れによってそのナイフが破壊されて、


辺りが弾け飛んだ。
886 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/05/08(木) 08:57:15.56 ID:PN2KpoVko

――


ドォオオオン!



聖來「……」

芽衣子「……」

先ほどの場所から、少しだけ離れた位置でその爆発を見届ける聖來と芽衣子。

おそらく集まったカースはその核ごと爆散したことだろう。


聖來「……あー……や、やりすぎちゃった……かな……?」

芽衣子「な、なんとかなるよ……たぶん」

芽衣子「け、建造物の修復に関しては財閥がお金を出してくれるってサクライさん言ってたし」

聖來「か、カースをあちこちで暴れさせちゃったら大変だし……人命優先だよね、人命優先」

芽衣子「うんうん」


カースを集めて、まとめて一掃すると言う大雑把な作戦。

聖來の持つ妖刀『月灯』の力で、”事前に『ナイフ』に変えていた爆弾”の威力は想定以上であったようだ。



『ほう……たかだが人間風情が随分と好き勝手にやってくれているではないか』


聖來、芽衣子「!?」


突然の声に慌てて振り向いてみれば、

彼女達の後方に、炎の鬣を靡かせる漆黒の馬が存在していた。
887 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/05/08(木) 08:57:53.72 ID:PN2KpoVko



『吾輩の高貴なる姿、逃げ惑う低俗なる人間どもに見せてやろうとしたのだが……余計な事をしてくれたな』


地が唸るような声が辺りに響く。

どうやらその声の主は、今目の前に存在しているらしい。


芽衣子「……馬が喋ってる」

聖來「芽衣子さん、突っ込みどころたぶんそこじゃない」


突然現われた一体の炎馬。

偶然の遭遇と言う訳ではなく、おそらくそれは2人の活動を察知してやって来たのだろう。

艶のある漆黒の毛並み。

美しく靡く2色の炎。

逞しき4脚を軽やかに踏みしめて、

パカリ。パカリ。と足音を慣らしながら

それはゆっくりと…こちらに近づいてきていた。
888 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/05/08(木) 08:58:28.30 ID:PN2KpoVko

聖來「紗南ちゃんからの情報の一致」

聖來「今回の騒ぎの原因の1つは、貴方だね」

事前に仲間の少女から送られて来ていた情報と照らし合わせた彼女は、

徐々に近づいてきている漆黒の馬に、声を掛けてみる。


『……下等生物風情が、吾輩の素晴らしき行軍を、たかが”騒ぎ”であると評するか』

『よほど身の程を知らぬのか、あるいはこの偉容を理解できぬ程に愚かなのか』

『どちらにしても、哀れであり不遜な事だ』

聖來「……」


あまりにも無遠慮な文句が返ってきた。

彼女達の前に現われた呪いの黒馬。

知性的ではあったが、決して理性的ではないらしい。

言葉は通じていても、話の通じる相手ではなさそうだ。
889 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/05/08(木) 08:59:20.16 ID:PN2KpoVko


『塵芥にも劣る人間どもを、1匹とて偉大なる吾輩は逃すつもりはない』

鼻息を荒くしながら、呪いの炎馬は依然ゆっくりと……こちらに歩を進めている。


『その愚かなるこうべを吾輩の逞しきこの脚で蹂躙せねば、気が済まぬのだ』

荒ぶる炎が、よりいっそうと燃え上がり、パカリ、パカリと強くその脚を鳴らす。


聖來(芽衣子さんっ)

芽衣子(うんっ)

2人はアイコンタクトを送りあう。

そして並木芽衣子は、パッとその場から姿を消した。

水木聖來だけが1人、この場に残る。


『逃がすつもりはないと吾輩は言った』

『例え能力を使い万里先に逃げていたのだとしても……吾輩は必ずそれに追いつき燃やし尽くすぞ』

聖來「そ。だけど、まずは貴方の相手はアタシだよ」

『まさか万象を頴脱するこの吾輩に、貴様一匹で立ち向かうつもりか』

聖來「そのまさか、と言ったら?」

『笑止千万』

その歯を剥きだしにして、嘲笑うような声で炎馬は答えた。
890 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/05/08(木) 09:00:59.60 ID:PN2KpoVko


パカリ。パカリ。パカリ。

足音のリズムが早くなった。

しかしあくまで少しずつ、ジリジリと炎馬は聖來との距離をつめてくる。


聖來(……馬型のカース。カースの能力はその造形に左右される)

聖來(となると……その速度と脚に要注意かな)


聖來は両の手に2本の美しき刀を構えて向き合い、

斜め後ろの方向に後退しながら、相手を観察しつつ攻撃を仕掛ける適切な距離とタイミングを測る。


聖來(それで、纏っている炎……色は黄色と紫……『傲慢』と『嫉妬』のカースの色だね)

聖來(なるほど外部に放出されるほどのエネルギーが周囲に影響を与えて……この雨や周囲のカースを生み出してるってところかな)


外部に視覚化されるほどに強烈な負のエネルギーの放出。

特に『傲慢』の黄色の炎は、彼女を慕う小日向美穂が時々纏う黄色のオーラの揺らめきと似ていた。

そのために聖來は、炎馬と対峙しただけでその性質をある程度見抜くことができていた。


聖來(後は核の位置さえ見抜けば……戦いやすいんだけどな)

カースとの戦いで最も重要なのが、弱点となる核の位置。

今回の敵は、見た目からその位置を推測できない。

果たして胴体の内にあるのか、それとも頭部にあるのか。

パカリ。……パカリ。パカリ。

聖來「?」

鳴り響く足音に聖來が違和感を覚えた。


聖來(足音が……ずれ込んだ?)
891 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/05/08(木) 09:02:24.70 ID:PN2KpoVko



『ところで、聡明なる吾輩は先ほどから気になっていたのだが……』

炎馬がぼそりぼそりで呟く。

パカリ……パカリパカリ。……パカリ。


聖來(なに……?この音の違和感は……)

しかし彼女がその違和感の正体に気づく前に


パカリ……パカ

『頭が高くはないか?下賎の猿風情がっ!』

聖來「えっ!!」

気づけば炎馬はすぐ目の前に。

あり得ないほど瞬く間に接近されていた。


聖來(そんなっ!?一瞬で近づかれたっ!?)

それだけ炎馬の移動速度が速かった?

いや違う。まるで近づかれたのではなく、”既に近づかれていた”ような感覚。


馬の前脚が、彼女の頭上から大きく振り下ろされて、

聖來「っ!!!!」

聖來の身体は、大きく後方へと吹き飛んだ。
892 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/05/08(木) 09:03:36.47 ID:PN2KpoVko


―――


―――


―――



ドンッ!!

ドンッ!!

ドドンッ!!


突然現われた巨大な蜥蜴の影は、

地響きの様な爆音を鳴らしながら、

ビルの外壁を恐るべき速度で爆進し、昇り上がってきている。


サクライP「まさに、爆進だな」


ドンッ! ドンッ!

足を打ち付けるたびに、その肉体は爆裂しビルの外壁を破壊して、

その場を炎上させると再び足を踏みしめて破壊を繰り返す。

爆破の規模はそれほど大きくは無く、ビルを倒壊させる事は無いだろうが、

大蜥蜴は、その爆破によって生じる推進力を利用して、図体の大きさに似合わぬ躍進を可能としていた。



さくら「こ、ここっち来てますよぅっ!?さ、紗南ちゃんっ!情報っ!情報っ!」

紗南「ちょっ、ちょっと待って!向こうの情報獲得に集中してたから急にはっ……」


急な襲撃に対応するため魔法使いの少女が、その場に居るもう1人の少女を急かすが、

紗南は先ほどまで別の敵を情報を洗っていたのだから、すぐにはその対象を変えることは出来ない。


ドンッ!ドンッ!ドンっ!

その間にも大蜥蜴は凄まじい速度で、彼らのすぐ近くの階まで迫っていた。


竜面「『愚かなる汝の影は、大いなる我が力に従い暗黒の呪縛へと縛られん……シャドウバインド!』」


呪術師が唱え終えると、大蜥蜴の張り付く壁や窓に黒く渦巻く染みが幾つも現われる。

そしてその渦の内側から何十…いや、何百ものドス黒い人の手のようなものが現れた。

一瞬で生え出た黒い手達は、大蜥蜴の身体へとガッチリと絡みつき、瞬く間にその動きを束縛する。
893 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/05/08(木) 09:04:22.86 ID:PN2KpoVko



ギチギチと皮が擦れるような音がなる。


大蜥蜴の進撃を、暗黒から伸びた手がどうにか縛り止めようとしている音だ。

しかし、蜥蜴はなおも食いつくように屋上を目指して歩を進める。


さくら「と、止まってないですよぉっ!?」

竜面「『止まれ』『逃れることは出来ず』『ただ縛られよ』」


魔術に対しての追加の詠唱。竜面の男が唱え続ける度に、召喚された手はその拘束を強めるが、

大蜥蜴もさしもので、その足が完全に停止することはなかった。


竜面「我が輩の束縛式でさえも止めきれぬか……ますます欲しいな」

さくら「い、言ってる場合じゃないですってばぁっ?!」

サクライP「紗南君、弱点はわかるか?」

紗南「……あの蜥蜴の中身、嫉妬の炎で溢れてる」

束縛の術式によって、蜥蜴の爆進が弱まっている間に、

紗南は『情報獲得』を使い、迫る怪物のその中身を調べあげていた。


竜面「なるほど、その炎こそがエンジンと言う訳か」

紗南「火を…火を鎮めることができたらっ!」

さくら「み、水とかですか……?」

サクライP「……」

サクライP「……都合が良い事に、すぐそこに貯水タンクがあるね」

ビルの屋上に設置されていた大きな貯水タンクを見上げるサクライP。

サクライP「大量の水を用意することはひとまず可能だろう」
894 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/05/08(木) 09:05:49.71 ID:PN2KpoVko


サクライP「だけど、嫉妬の炎がただの水で消えるのかな?」

爆炎の大蜥蜴の体内で燃え上がっているのは大罪の炎。

ただ水をぶっ掛けて、それを消化する事はまずできないだろう。

竜面「……魔術で強力な鎮火の属性を付加すればあるいは」

サクライP「できるかい?」

竜面「……だが、束縛式を使用している最中ではな……」

竜面「今の我が輩では瞬時に用意できる魔力の量が足りないだろう」

サクライPの質問に竜面は首を振って答えた。

紗南「じゃあさくらさんが魔術を使えば……?」

さくら「えっ!?」

急にお鉢が回ってきて魔法使いの少女は驚く。

竜面「さくらではまるっきりダメだな、前提としての魔術の技巧がもうまったく追いついていない」

さくら「ええっ、酷いっ!!」

しかし即答で否定されてしまうのだった。酷評付きで。

竜面「こうなれば手は一つしかないだろう……」


竜面「さくら、あれを使うぞ」

さくら「……えっ」
895 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/05/08(木) 09:07:26.41 ID:PN2KpoVko



―――



―――
896 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/05/08(木) 09:09:20.65 ID:PN2KpoVko




すみません
半端なところなのですがちょいとここで区切ります。
用事が出来てしまい外出することとなったので……続きは今日中に
897 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/05/08(木) 13:20:03.48 ID:2LpK5BB+o
帰宅なう
>>894から続きますー
898 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/05/08(木) 13:20:45.13 ID:2LpK5BB+o





―――



―――
899 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/05/08(木) 13:21:31.14 ID:2LpK5BB+o

―――



―――




後方へと吹き飛んだ聖來の身体は、地面をごろごろと転がって、

やがて、先ほどの位置から数m程離れた所でピタリと止まる。

聖來「……」


聖來「……いたたた」

そして、彼女はすくりと起き上がった。

痛がってこそいたがその身体には、掠り傷1つ無い。


『……小癪な』

その様子を見て、苛立つ炎馬が呟く。

その足元には、紅色に染まる1枚の盾と、ボロボロになった大きなクッションが落ちていた。


聖來「うん、間一髪…なんとか助かったかな……」

代わりに聖來の両手には、先ほどまで持っていたはずの二本の刀が無い。

聖來は、物に”刃の幻影”を被せる妖刀『月灯』の力を使って、

かつて吸血鬼との戦闘の際に拝借していた超☆レア装備の盾『紅月の盾』と、

財閥特注の『衝撃緩和クッション』、それぞれに”刀の幻影”を被せていたのだ。


炎馬の攻撃を防いだ”刀の幻影”が破壊された事で、その中身が即座に露出して、

自動防御能力を持つ盾がその蹴撃を防ぎ、さらに緩和クッションが衝撃をほとんど相殺していた。

同時に聖來自身も後方に跳ぶ事で、攻撃の脅威からはほぼ無傷で逃れる事ができていたのだった。

900 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/05/08(木) 13:22:20.94 ID:2LpK5BB+o


『だが、つまらん手品だ……出来たことと言えば吾輩の贈る死の瞬間をほんの一時先送りにしただけ……至極無駄な事だ』

炎馬の言うとおり。

聖來は、恐るべき蹴撃から確かに無傷で生き延びた。

ただし、その両手からは武器は失われている。持っていた武器を即座に防具に変じさせ、離脱の際に手放したためだ。

頼みの防具を捨てた今、次回の攻撃は防げない。

代わりの武器や防具を取り出したとしても同じ事。何故ならばその数には限りがある。

限界がある以上、同じ作業の繰り返しで彼女の策は尽きるだろう。それでは結局先延ばしに過ぎない。

そもそも、種が割れているのだから同じ手を食うつもりも炎馬にはなかったが。


聖來「そうかな?無駄なことなんてないんじゃない?」

しかし、この不利な状況においても聖來はニヤリと笑った。

聖來「だって、手品の種ならこっちもわかったからね」

『……』

不敵に笑うヒーローを、炎馬は黙って睨みつける。
901 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/05/08(木) 13:23:06.57 ID:2LpK5BB+o


聖來「陽炎とか蜃気楼とか……これらは大気中の温度差によって光が屈折する現象なんだけど」

聖來「あなたの炎は、似たようなこれと現象を引き起こしてるみたいだね」

聖來「見えてるものをまるで幻惑するようにズラしてる」

聖來「だから本当にズレてたのは足音じゃなくって視覚情報の方だった」

聖來(通りで紗南ちゃんが情報獲得に苦労してたわけだよ)

見えている物からあらゆる情報を掻っ攫う三好紗南の『情報獲得』。

しかし、真実を見据えていなければ、その力は十全には発揮されない。

実体の無い幻影から、抜き取れる情報も同じく実体を持ちはしないのだ。

聖來(でも、それがヒントになった)

聖來「今、見えてる姿は実体を持たない」

聖來「一度のやり取りでそれが分かっただけでも充分な成果じゃないかな」

彼女の希望に満ちた瞳が、深い漆黒の渦巻く瞳を見つめ返していた。


『それが無駄だと言っている』

地の底から響くような声が、不快感を露にしながら答えた。
902 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/05/08(木) 13:23:45.15 ID:2LpK5BB+o

聖來「……」

『生意気にも思い上がった劣等種族が、この程度で吾輩の力の一端でも知ったつもりか?』

『勘違い甚だしくも滑稽であり、もはや怒りさえも沸かぬ』

『なにより……』

炎馬が大地を一際強く蹴った。

それに呼応するように地面に黒い波紋が生まれ……

そして、脅威的な数の泥の異形が形作られる。


『崇高なる吾輩は、これ以上貴様の遊びに付き合うつもりはないのでな』

『一分一厘にも満たぬ矮小な頭を振り絞った所で、この数の差は覆せないだろう?』

聖來の周囲は、あっと言う間にカースに囲まれた。

聖來「あはは……参っちゃうね、普段戦ってるカースよりずっと合理的だ」

『侮辱であるぞ。高貴なる吾輩を感情に縛られ喚くだけしか能の無い連中と同列に語るな』
903 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/05/08(木) 13:24:40.72 ID:2LpK5BB+o

聖來「……」

聖來「……確かにアタシ1人じゃこの数の差は覆せないかな」

周囲をカースに取り囲まれた聖來は、どこかわざとらしく頭を抑えて言った。

『では尻尾を巻いて逃げるか?先ほどの女を呼び寄せればこの数に囲まれていても逃げられるのだろう?』

嫌みったらしい笑いを含んだような声が、聖來に返される。

聖來「逃げないよ。逃げたらここに残った意味がない……だからその誘いにはのらない」

『ふん。ならば貴様は潔く死を選ぶか?』

聖來「ううん、そのつもりもない。まだ全然絶望してないからね」

『ほう?』

彼女の言葉に、嘘はなかった。

武器はその手になく、周囲を呪いに囲まれてなお、その顔は希望に満ちていた。
904 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/05/08(木) 13:25:28.41 ID:2LpK5BB+o



聖來「だってさ……」


その時、上空から飛来してくる影が1つ。

『……まさか』

ダン!ダダン!

銃声が響き、聖來の周りを囲むカース達に弾丸が次々と打ち込まれる。

ギュルルルン!

それとほぼ同時に、横から現われた黒く燃え上がる鎌がカース達を両断しながら炎馬へと差し迫った。

『くっ!』

高速で回転する炎の鎌のギロチンを、炎馬はわずかに後退して回避する。


聖來「アタシ達は1人じゃないっ!」

そうして出来上がった隙に、聖來は懐からホイッスルを取り出した。

ピィイッ――!と甲高い音が辺りに響き渡る。
905 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/05/08(木) 13:26:25.06 ID:2LpK5BB+o

ホイッスルの音に反応してだろうか。地の彼方から、幾つもの獣の影が現われた。

先頭に走るのは茶色い毛並みの一頭の狩猟犬。

その後ろに続くのは、様々な品種の犬たち。

彼らはあっと言う間に長い距離を走り抜けて、それぞれ果敢にもカースの群れへと飛び掛っていく。


聖來「形勢逆転……とまでは言えないだろうけれど、これならどうかな?」

1対多の状況。確かにこれはどうにもならない。

どれだけ聖來がカースとの戦闘に慣れていたとしても、1人ではその数の差を覆せはしないだろう。

しかし多対多の状況。つまり彼女にも味方が居るならば話は別だ。

たとえ、敵のカース達の方が数は多かったとしても、

それらは所詮、感情のままに暴れるだけの寄せ集めの大群。

相手取るこちらが連携の質で勝っていたならば、必ず勝利を掴むことができる。


『貴様は囮だったか……はじめからっ!吾輩を誘い込むための!』

聖來「まあね、体質的にどうしてもアタシは目立っちゃうし」

聖來「その上あえて目立つ活動をしたんだから、必ずそっちから来てくれると思ってたよ」

この雨を降らせる元凶への接触。それが聖來にサクライPから課せられていた任務。

囮と言う役割を演じる為に、人外を引き寄せる聖來の『カリスマ』は非常に役に立った。

聖來「まあもう少しあなたの手の内を暴いてから……2人には出てきてもらうつもりだったんだけどね」

『笑えんな……吾輩に手綱でも付けていたつもりか獣使いっ!』

誘い込まれていた事を知り、炎馬は憤怒にわななく。


ダンッ

と、その首筋を上空からの弾丸が掠めた。

『小賢しいっ!!』

苛立つ炎馬が空に向けて叫んだ。
906 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/05/08(木) 13:27:55.16 ID:2LpK5BB+o


マリナ「ほら、ほら!」

カースが沸き犇く地上よりもやや上方から、アビストラトスのハンドガンが撃ちこまれる。

空中からの精密な射撃。地上に生まれたばかりのカース達は為す術なく正確に核を打ち貫かれて次々と倒される。


『不届き者めがっ!高貴なる吾輩を見下ろす蛮行が許されると思っているのかっ!!』

怒りの文句とともに、炎馬の周囲に炎の球体が発生した。その数、七つ。

炎馬が嘶き合図をすると、火球がアビストラトスの存在する空中に向けて同時に発射された。


マリナ「あららっ、とっても熱いパッションね」

まるで空を滑るように動き、その火球の軌道からスルリと外れるアビストラトス。

しかし、火球達は進行方向を大きく曲げて彼女を執念深く追いかける。

マリナ「へえ」

ならば、と少しだけ宙を泳ぐ速度を上げるマリナ。だが火球の方もエンジンが掛かったように加速する。

マリナ「なるほど、悪くない波じゃない♪だけど…お姉さんに届くのかしらっ!」

七つの火球は上下左右、あらゆる方向からマリナを狙って追尾する。

だがしかし、空中を縦横無尽に泳ぐアビストラトスに迫れる熱は1つもなかった。

空はアビストラトスのテリトリー。鳥でさえ彼女の速度に追いつくことはできない。

それでも火球たちは、健気にも彼女に誘われるがままに追いかけ続けるが……

アビストラトスが、ビルの合間を素早く縫うように泳げば、

その華麗なターンに合わせて進行方向を変える事ままならず、ビルにぶつかった火球たちはしめやかに爆散した。

907 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/05/08(木) 13:29:37.90 ID:2LpK5BB+o

『ちぃっ!』

放った火球がアビストラトスに迫れなかった事を視認した炎馬が舌を打つ。

瞳子「よそ見してる余裕があるのかしら?」

『ぬっ!』

炎馬が横を振り向けば、アビストラトスに続くもう1人の援軍がそこに。

大鎌を振り上げたエンジェリックファイアがすぐ傍まで距離を詰めていた。

どうやら、呼び出したカースの群れのほとんどは彼女の鎌に焼かれて消滅してしまったらしい。

歴戦の魔法少女。例えブランクがあっても、雑魚の掃討ぐらいお手の物。

瞳子「はぁっ!」

振り下ろされる黒い旋風の炎は、多くのカースを巻き込んで蹴散らす。

新たに呪いが沸こうと関係ない。1匹沸いたら2匹を打倒し、2匹沸いたら5匹を滅殺。

あれほど犇いていたカースの群れも、ほんのわずかな時間で彼女に半数近くが蹴散らされていた。

瞳子「まったく……これだけの数のカースの壁は流石に驚異的だわ、近づくのも一苦労ね」

瞳子「だけど、その壁に守られてる貴方の逃げ場も同時に無くしてるんじゃないのかしらっ!」

周囲のカース達を次々と葬りさり、汚泥の海に一筋の道を切り開いた彼女の大鎌が大きく横薙ぎに振り下ろされた。

燃える黒き一閃が呪いの泥に守られる炎馬の首元へと迫る。
908 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/05/08(木) 13:31:21.84 ID:2LpK5BB+o

『ふん!くだらんっ!その程度の攻撃、吾輩には止まってさえ見えるぞ』

炎馬は、大鎌が振り下ろされるよりも早く後方に飛び下がって、その一閃を鮮やかに回避する。

その際、着地点に居たカースを2、3匹ほど踏み付けその核を破壊したが、足元には目もくれはしない。

瞳子「……容赦ないのね、一応は仲間じゃないのかしら」

その様子をみて、瞳子は呆れて呟く。

『笑止。吾輩にとってこいつらは道具だ。吾輩の崇高さを知らしめるための道具でしか無い!』

『役に立たぬ道具を踏み付け、脚蹴りにすることの何がおかしい?』

それは、攻撃から逃れる為に仲間を犠牲にしたことに何の感情も抱いていないようであった。

悪びれることなど当然なく、傲慢な態度を崩しはしない。


聖來「それじゃあ貴方は1人で戦ってるって事だね」

炎馬の言葉に、返事をしたのは聖來であった。

聖來「どれだけカースを呼び寄せようと、それが貴方の道具でしか無いなら」

聖來「1人だけで戦ってるのと一緒だよ」

『当然だ。群れる必要があるのは雑魚達だけだろう』

『独立不羈なるこの吾輩は唯一頂上に君臨しているっ!群れることなどあるはずがないっ』

『もっとも、貴様のような何かに縋らなければ生きる事さえままならぬ弱者には、高貴なる吾輩の主義を理解できないだろうがな』

聖來「……」

聖來「あっはっは、確かに……アタシは弱いよ」

”弱者”と罵られた元アイドルヒーローは、ただ苦笑する。
909 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/05/08(木) 13:33:02.55 ID:2LpK5BB+o

聖來「今までずっとヒーローとして活動してきたけどさ……はっきり言ってアタシ1人で出来たことなんて何一つなかったね」

聖來「でも、だからかな」

聖來「1人じゃない内は負ける気がしない」

彼女が懐から取り出した一本のナイフ。

その”刃の形をした幻想”を砕いて、内側から現れた黄金の刀を右手に持つ。

『月灯』。この世で最も強欲な、夢幻の刃。

「わんっ!」

聖來が『月灯』を取り出したのと同時に、

”ナイフ”を咥えた犬達が瞳子の切り開いた道を駆けはじめた。

910 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/05/08(木) 13:34:17.34 ID:2LpK5BB+o

彼らの行く手を、生き残っていたカース達が阻もうと襲い来るが、

ダンッ!ダダンッ!

マリナ「そうは、させないわよ」

上空からの銃弾が、彼らの行く手を防ごうとする邪魔者達を正確に射抜き仕留める。

緩まった呪いの泥の陣を、犬達はうまく連携しながら掻い潜り、それぞれが配置へと向かう。


そして、

ピピィイッ――!と鳴らされた聖來の号令と共に、

配置に着いた犬達が一斉に跳躍し、空中でその首を大きく縦に振るった。

彼らの咥えていたナイフが、汚泥の中心にいる炎馬に向けて弾丸の様に放たれる。


『……馬鹿にしているのか、この程度の数の攻撃が何の脅威になる』

炎馬を囲うように放たれたナイフの投擲であったが、

数も威力も、自分を脅かすにはまるで足りないものだと炎馬は判断する。

すかさず迎撃のために火球を作り出そうとして……

――いや、待て

すぐに思いとどまった。
911 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/05/08(木) 13:37:21.14 ID:2LpK5BB+o

炎馬は先ほどの光景を思い出す。

破壊された刀から飛び出た、盾と緩急材が炎馬の襲撃を食い止めた場面。

――破壊される事で意味をなす刃。

――もしこの攻撃が、吾輩の迎撃を誘っているのだとするなら…

作りかけていた火球を消散させる。

相手の策にわざわざ乗る必要は毛頭無い。

この程度の数のナイフならば、もし避けきれず当ったとしても大ダメージを受けることはない。

『……迎撃の必要さえない』



聖來「と、思ってくれたのかな?」

聖來「だけどね。『月灯』の作り出した幻影の刃は、全部アタシの任意破壊が可能だよっ!」

聖來が指を鳴らせば、炎馬に迫るナイフが全て砕け散った。


『なにっ!』

その内側から現われたのは――何かがぎっちり詰まった袋

現われた袋はいきなりビリッと裂けて、その内側からさらに大量の小石が零れ落ちる。
912 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/05/08(木) 13:38:27.95 ID:2LpK5BB+o

聖來「『月灯』っ!!」

聖來が手に持つ黄金の刀を大きく振るうと、

中空にばら撒かれた小石が七色の光に包まれて……”刀”へと姿を変えた。

たった数本のナイフが、気づけば幾百もの刀に。

刀の雨が、漆黒の炎馬を取り囲むように降り注ぐ。

『…………ちぃっ』

覆せないのはやはり数の差か。

これらを避けるにしても防ぐにしても……攻撃の量が多すぎる。

前後左右を囲むように放たれた刀の雨を跳躍して避けることはできず、


炎馬の身体は串刺しに……


はならなかった。

聖來「っ!」

突如として、炎馬の体が煙の様に霧散した。

百の刀は、目標を傷つけることなく地面に転げ落ちる。


『甘すぎるぞ、獣使いぃっ!』

同時に、刀の雨が降り注いだ地点より、数mほどズレた地点に炎馬が現われた。

幻影使い。その姿は蜃気楼の如く、実体を捉えることはできない。

『くだらんっ!どれだけ群れようと所詮は愚図の集まりっ!』

『その程度の浅い策が、偉大なる吾輩に届くと本気で思っていたかっ!!』
913 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/05/08(木) 13:40:42.31 ID:2LpK5BB+o


瞳子「ええ、だから今届かせるわ」

『なにっ!?』

炎馬の現れた地点、そのすぐ真後ろには大鎌を振り上げた瞳子の姿。

『貴様何故っ!!』

瞳子「丸分かりだったのよ、蜃気楼みたいにズラされていた貴方が本当に居る位置が……」

振り下ろされた凶刃が、炎馬の身体を縦に真っ二つに裂いた。

『がっ――』

瞳子「……グッバイ」

どさりと、呪いの炎馬の身体が左右に倒れる。

棚引く紫と黄色の炎は、切り口から新たに生まれた漆黒の炎に瞬く間に飲まれていった。


聖來「……『月灯』はね、刃の輝きを映し取って、刃の輝きを映し出す刀」

聖來「だから……『月灯』の輝きが届かない位置の物体には、当然だけど幻想を被せることができないんだ」

『――――』

両断された炎馬の足元には、幾つかの石ころが転がっていた。
914 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/05/08(木) 13:41:53.09 ID:2LpK5BB+o


聖來は犬たちに命令し、炎馬の周囲に石ころをばらまいて、

さらに『月灯』の力を使い、それらの石に”幻影の刀”を被せた。

ほとんどの石ころは、これによって刀に変じたが、

しかし――”光の屈折のために、『月灯』の輝きが届かず刀に変わらなかった石ころ”が幾つか存在していたのだ。


それらの石ころが存在する位置から、瞳子は炎馬の本来の位置を瞬時に割り出して、

見事に大鎌の一撃を届かせることに成功したのであった。


『――――』

黒い炎に燃え上がる炎馬の身体はやがて崩れて、地面に溶ける様に消えていった。


聖來「……」

その様子を聖來は少し悲しげな目で見つめていた。

聖來「終わったのかな……」

瞳子「……」


瞳子「いえ、まだみたいよ」

聖來「えっ」

瞳子「……」

瞳子「雨が止んでないわ」

聖來「っ!!」


炎馬が倒れてなお、汚泥の雨は降り続いていた。
915 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/05/08(木) 13:43:11.87 ID:2LpK5BB+o

―――


―――



大蜥蜴の進撃は止まらない。

どころか、進撃を押さえつけるために闇から伸びた手が、炎上する巨体に次々と千切り飛ばされていく。

それは何度も手足を強く打ち付けて爆発を引き起こし、

闇の手の拘束にも打ち勝てる推進力を得て、器用にビルの外壁をよじ登り続けた。


そして、その怪物は、ついに屋上のへりを掴んで顔を出す。

人1人を丸呑みできそうな巨大な蜥蜴が、燃え盛りながら4人の前に姿を出した。

 
  『 ガ ア ア ア ァ ア ア ! !』


そいつは咆哮しながら炎に包まれたその腕を、目の前に悠然と立つ男へと伸ばす。

しかし、その脅威を目の前にしておきながら、男の表情にはニヤケ面が浮かんでいた。



  『合唱魔術の発動を宣言する!』

2人の魔術師が、差し迫る大蜥蜴の前に立ち塞がり宣言した。

「母なる水よ!大いなる我が力に従い、燃え上がる炎を静寂の底へと沈めよ!」
「母なる水よ!大いなる私の力に従い、燃え上がる炎を静寂の底へと沈めよ!」

「「アクアクレイドル!!」」

響く魔術師達の言霊に反応して、壊された貯水槽から屋上に漏れ出ていた水に優しい光が灯る。

916 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/05/08(木) 13:44:30.34 ID:2LpK5BB+o


『 ガ ァ  ッ ッ!?』

そして、魔法に掛かった大量の水が一気に宙へと持ち上がり、燃え上がる巨大な蜥蜴を包み込んだ。

水の籠に囚われた蜥蜴は、自由を奪われもがいている。

さくらと竜面、2人の魔術師の本領発揮。

桜の杖によって増幅されたさくらの魔力の渦を、竜面の男が細かく制御しサポートする。

これによって、

嫉妬の炎を静寂の水底に鎮める合唱魔術『アクアクレイドル』が完成……


竜面「さくらぁっ!!!」

さくら「ご、ごめんなさいっ!」


完成してはいなかった。
917 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/05/08(木) 13:45:22.15 ID:2LpK5BB+o


紗南「え?な、なに?どういうこと?」

紗南「魔法、ちゃんと発動してるよね?」

2人の詠唱の結果、大蜥蜴は大量の水で作られた揺り籠に包まれている。

紗南から見れば、その魔術は成功したようにしか見えていなかった。


『ガガ?』

が、数秒すれば揺り籠の一部が綻んで、水の拘束は弾け散ってしまった。

浮き上がっていた怪物の身体が、檻から解放される。


紗南「……えっ」

さくら「また一人称間違えちゃいましたー♪てへっ☆」

紗南「てへっ☆じゃないぃっ!!」

どうやら、詠唱のミスによって魔術は完全には成功していなかったらしい。

竜面「さくら……普段の魔術は『桜の杖』で増幅されるおかげもあって少しくらい適当でも発動するのだろうが、
   合唱魔術はそうもいかんっ……デリケートな魔術なのだっ、お互いの息をぴったり合わせて
   初めて完成する魔術っ……だと言うのに詠唱を間違えてどうするっ……そもそもいつもの魔術の時でもだな」 クドクド

さくら「あわわっ、ごめんなさいごめんなさいっ」

紗南「今はお説教してる場合でもないでしょっ!?!」


『 ガ  ァ ァァァッ!!』

自身を縛る力を全て振り切った嫉妬の怪物が再び暴れ始めた。

外に洩れる炎こそ消えていたが、その内部には嫉妬の炎が今もなお狂うように燃えている。

大蜥蜴は再び4人に向けて、灼熱の如き威圧感を放ちながら襲い来る。


さくら・紗南「ひぃっ!」
918 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/05/08(木) 13:47:10.27 ID:2LpK5BB+o



サクライP「いやいや良くやってくれたよ、さくら君。それに呪術師君」


さて、そう言った彼の手にはいつの間にか1本の剣が握られていた。

透き通る蒼色の刀身に金の装飾、そして宝石の飾り。

それはまるで過去の英雄が手にしていたかのような、神秘的な色を秘めた剣。


紗南「えっ、な、なにそれ…何処から取り出したの」

さくら「と言うより…サクライさん戦えるんですかぁ!?」

『 グルルル ル ァ ア ア アア!!!!』

紗南「うわぁあ!」
さくら「きゃぁあ!」


龍が如き咆哮に、怯える少女達。

彼女達を守るように男は前に出ると、怪物を見据えて剣を構える。


サクライP「さて、来るか怪物?お前の相手は僕がしよう」

彼はいつものように、ニヤりと笑った。


『ゥゥウウルルルル!!』

男の挑発に答えるように、怪物は真っ直ぐと彼に向けて爆進を開始する。

ちっぽけな人間を薙ぎ潰すため、その漆黒の巨体をしなやかに奮い、

そして体内で荒れ狂う衝動をその腕に込めて、目の前に立つ邪魔者へと叩きつけようとする。

『 ル  ァ  ア アア ア アアッ!!』

触れるもの全てを爆散させる怪物の左腕の一撃。
919 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/05/08(木) 13:48:17.34 ID:2LpK5BB+o



サクライP「水よ、僕に従え」


その言葉に呼応して、

鎮火の属性を付加された水達が、彼の持つ剣の刀身へと集まる。

蒼き刀身は、水のベールを帯びてさらに神秘を増し、

そして、

サクライP「ふんっ!」

襲い来る烈火の爪先に対して、

男が剣の切っ先を突き合わさるように蒼き水の刀身を振り放てば――

その触れあった点から、

怪物の左腕が、大きく粉砕されて、水しぶきと共に弾けた。

『ァアアッ!?!』

まさかの反撃によって、左腕を失った怪物が怯む。
920 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/05/08(木) 13:49:33.50 ID:2LpK5BB+o


その隙を逃さず、男は巨大な蜥蜴の懐へと潜り込み、

サクライP「はぁっ!」

すかさずその胸倉へと神秘の剣の一撃を突き放った。


『――ァ』


漆黒の巨躯が、散り散りとなって崩壊する。

大蜥蜴の肉体の大部分が、その蒼き剣のたったの一撃によって砕け散ったのだ。

わずかに残った肉片から嫉妬の炎が洩れだし、辺りを焼き尽くそうとしたが、


「「アクアクレイドル!!」」

2人の魔術師が再度放った魔術によって、それらは沈静の水に包まれて……外部に燃え移ることはなく、鎮火した。

やがて怪物の肉片も燃えカスの様に崩れ去り、ビルの屋上に溢れる水に流され、散っていく。


4人を襲った脅威は、瞬く間に討ち払われたのだった。
921 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/05/08(木) 13:51:00.45 ID:2LpK5BB+o


さくら「ふ、ふぅ……め、めんもく……やくじょ……ですよねぇ?」

今度こそ魔術の成功を見届けて、少女は自信なく呟く。

竜面「帰ったら魔術の特訓だがな」

さくら「そんなぁ……さくらはもうヘトヘトですよぉ……しゅん……」

竜面の男の厳しい一言に、力が抜けたように少女は座り込むのだった。


サクライP「はははっ、強くなれるチャンスだと思えばいいさ。さくら君」

サクライP「失敗は次の成功の糧にすれば良い」

怪物退治を終えた男が振り向いて少女に慰めの一言をかける。

その手元には既に先ほどまで振るっていた剣は無い。

紗南「あれ……?サクライさん、さっきの剣は?」

サクライP「昔、僕が手に入れたかつて英雄が使っていたとされる怪物退治の剣さ。こう言うときには役に立つ」

紗南「……そうなんだ」

少女は聞きたかった事はそこではなく、どこから取り出してどこに仕舞ったのかだったのだが。

教えてもらえそうになさそうなので、適当に納得しておく。

紗南(まあ勇者っぽくってカッコよかったけどね……あ、サクライさんじゃなくって剣の話ね)


サクライP「さてと……ん?通信か、向こうも何かあったかな」

懐から取り出した通信端末の受信を確認し、彼は通信を開始した。

『こちらセイラ――”依頼主”さん応答願います』

サクライP「何かあったのかな、”ヒーロー”くん」

『実は―――』
922 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/05/08(木) 13:52:39.69 ID:2LpK5BB+o


―――


―――



雨から湧き出る呪いを狩りながら、

聖來は、その手に持つ端末で”依頼主”との通信を続ける。


『そうか、逃げられたか』

連絡先の男は残念そうに呟いた。

聖來「……相手は馬型のカース。属性は傲慢と嫉妬」

聖來「核を確認した訳じゃないけど、外部に吹き出てる負のエネルギーの色から間違いないと思う」

見たこと、聞いたこと。伝えられる限りの情報を聖來は”依頼主”へと伝える。

聖來「確認できた限りの能力は……」

聖來「1、泥状のカースを生み出す 2、自分の姿が映る位置をずらす」

聖來「3、火球を生み出して操る ってところ。あと、すっごくお喋り」 

『なるほど、通りでこちらの情報取得がうまくいかなかったわけだ』

聖來「…………ただ……逃げられた時に使われた能力はちょっと分からなかった」

聖來「身体が真っ二つになって、全身燃え上がったのを見たはずなんだけどね……」

瞳子「手ごたえは間違いなくあったわ。あの泥は実体を持っていたはずよ…」

聖來の近くで、同じくカースと戦っていた瞳子が同意する。

『……おそらくは幻影による身代わりかな』

聖來「確証はないんだけど、たぶんね」

聖來「とりあえず今はわんこ達に匂いを追ってもらいつつ、上空から仲間に捜索して貰ってるんだけど」

地上では犬達が匂いを追って、上空からはアビストラトスが馬の姿を探しているが……

現在のところ、手がかりらしき物も見つかってはいない。

『わかった、こちらも魔法使いくんに捜索させよう』

聖來「よろしくね」

923 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/05/08(木) 13:54:11.29 ID:2LpK5BB+o



―――


―――


サクライP「……君のもたらした情報は、後から来るヒーロー達にも伝わるように取計らっておくよ」

サクライP「引き続き、君の活躍を期待している。ヒーロー君」

そう言って、彼は通信を終えた。


サクライP「……そう言うわけだ、さくら君」

さくら「はぁーい!了解です!」

魔法使いの少女は元気よく返事をして、新たに探知魔法の準備を始める。


竜面「我輩が考えるに……」

竜面「大罪の中でも”嫉妬”と言うのは最も厄介な属性だ」

呪いを生業とする男は淡々と語る。

竜面「奴らは追い詰めれば追い詰めるほどに、その呪いを膨れ上がらせる」

紗南「……HPが減れば減るほど、予想もできない新しい攻撃パターンが増える……みたいな?」

竜面「然りだ。話に聞く炎馬も、そしてこの蜥蜴を操っている者も……一筋縄ではいかんだろうなあ」

紗南「うげぇ……」

竜面の話を聞いた紗南は、とても苦い顔をした。


竜面「で、どうするのだ?サクライ殿?」

サクライP「……もうしばらくは……様子を見ているさ」

サクライP「イルミナティ、これまで表には出てこなかった彼らが蓄え続けてきた研究の成果と」

サクライP「そして……かつて経験した絶望に対抗するため、ヒーロー達が練磨してきた力の真価を」

サクライP「僕は特等席から見物させて貰うとしよう」


深緑の瞳が、ビルの真下の災禍を見据える。

野心に燃える彼の見つめる先には果たして…。


おしまい
924 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/05/08(木) 13:55:57.57 ID:2LpK5BB+o


『大蜥蜴』

インヴィディアによって作られた炎を内包する蜥蜴が集まり融合、巨大化したもの。
身体を爆発させながら暴れ狂う。炎上する巨体はとにかく強靭。
内部は嫉妬の炎で溢れていて、それを破壊力や推進力の強化に利用している。
また危機に陥ると大爆発の危険アリ。鎮火の属性が弱点。


『束縛式』

竜面さんが使う術式理論。簡単に言えば『束縛形の魔術』と『束縛系の妖術』を組み合わせて同時に使っているらしい。
『束縛』は、妖術と魔術で方向性が似ている術が多くあるカテゴリであり、その類似性を利用して重ねがけしているようだ。
2つのエネルギーが絡み合う術であるために、捕縛されてしまうと簡単には逃れられない。
ただし、使用者側も2つのエネルギーを同時に行使しないといけないのでコントロールが難しく長時間の足止めには向かない。


『追加詠唱』

魔術師の基本スキル。完成した魔術に追加の詠唱を施す事で術の性能をより強化する。
「魔術は詠唱すればするほど魔術の性能が向上する」とか言う、魔術師にあるまじき脳筋理論の産物。

925 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/05/08(木) 13:57:41.93 ID:2LpK5BB+o


『サクライコレクション』

あの日以来、櫻井財閥が人を使い金を掛けて集めたレアアイテムの数々。
見ていて壮観な程にもの凄いアイテムが盛りだくさんだが、実用的な物はそれほど多くなく、
8割ほどはお嬢様専用の玩具で、ただの遊び道具である。


『セイヴザプリンセス』

かつて英雄が持っていたと言われる聖剣で、現在はサクライコレクションの1つ。
どこかのダンジョンの奥底に眠っていたものを財閥が回収した。
コレクションの中では実用的な方なので、サクライPは好んで持ち出す事が多い。
聖剣であるため、怪物にカテゴリされる存在に対しての特攻効果を持つ他、
周囲に存在する神秘を刀身に取り込んで、その性質を纏うことが可能。
また装備者が行動が英雄的である場合にその能力は増す。
具体的には、「人類の敵を討つ」「敵が装備者より強い怪物である」
「誰かを守る為に使われる」「守る対象が女の子である」など。
……か弱い女子供を守ると言う行為が、英雄的だと判断されるのだが、
持つ者次第ではその意味合いが少し異なるように見えてしまうのは玉に瑕。

926 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/05/08(木) 13:59:11.32 ID:2LpK5BB+o


イベント情報

・芽衣子さんが避難活動を先導しています。
・聖來、瞳子、マリナがギルティ・トーチと交戦し、逃げられました。現在捜索中です。
・サクライPと一部エージェントが近くで観戦しています。(邪魔そうなら追い払ってもいいですよ)


誘われたらのこのこ出てくるサクライスタイル。実に現場主義である。
戦闘スタイルが剣なのは、サクライの戦い方が主人公っぽいと意外性がありそうだからとか。

エージェント勢ぞろい。一度やりたかった事です。
ただ爛ちゃんは来るならきっとアイドルヒーロー達と来た方がいいからお呼ばれなし。
なおチナミさんは普通にお留守番。

あとサクライと聖來さんの追いかけっこは、この時系列では解決しています(その辺りはまた書くかと)
927 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/05/08(木) 14:00:18.81 ID:2LpK5BB+o
おっとっと、マリナさん瞳子さん炎馬のギルティトーチお借りしましたー
928 : ◆AZRIyTG9aM [sage]:2014/05/08(木) 14:18:21.08 ID:Pl5qf5m6O
乙ー

サクライPやはり強かったか
チームワークの勝利っていいね
だけど…剣の能力ェ…

よーし、加蓮vsインちゃん早く完成させよー
929 : ◆zvY2y1UzWw [sage ]:2014/05/08(木) 17:05:59.98 ID:LdFPouvJ0
乙です
サクライP強い
エージェントも強い
そして馬も強い
とにかく強いと思いました(小並感)

さくらの詠唱の一人称が違う事がここに来て問題になったのは笑ったww
…エージェント追っ払っていいのか、うっひょー
930 : ◆3QM4YFmpGw [sage saga]:2014/05/08(木) 20:57:48.33 ID:klr6Y5lm0
乙乙
亜季といいマリナといい瞳子といい他人の書いた手持ちがカッコよすぎてエンヴィー化しそう(白目)

流行に乗ってインヴィディア時系列を投下するよー!
931 : ◆3QM4YFmpGw [sage saga]:2014/05/08(木) 20:59:12.77 ID:klr6Y5lm0

突然の爆発。

カイ「な、なに!?」

亜季「駅前の方ですな……よもやカースが!?」

星花「よくない気配がします、行きましょう!」

爆音に気付いたフルメタル・トレイターズは、現場へ急行しようとした。

しかし。

??「ヘーイ!」

三人「!?」

三人の前に、突如巨大な宇宙船が降り立ってきた。

カイ「な、何これ……」

ヘレン「私よ」

カイ「いや、誰だよ」

宇宙船から姿を現したのは、宇宙レベルことヘレンだ。

ヘレン「今日は新作の性能テストにきたのよ。出しなさい」

マシン『イエス、マム』

宇宙船から二つの影が射出され、カイ達の目の前に着地した。
932 : ◆3QM4YFmpGw [sage saga]:2014/05/08(木) 21:00:22.26 ID:klr6Y5lm0
ヘレン「紹介するわ、水産業破壊怪人トアーミー」

トアーミー『トアーッ!!』

ヘレンに紹介されたトアーミーは、投網のマントを翻して決めポーズをとる。

カイ「す、水産業破壊……? 何それ?」

ヘレン「そして、暴食怪人アクジキング」

アクジキング『ジキジキジキ!』

アクジキングは体の三割はありそうな大口を開けて、独特の声で笑った。

カイ「聞けよ」

亜季「……って、これを何で私達に差し向けるのでありますか!?」

ヘレン「あなたたちが私の視界に無断で侵入したから。つまり、そういうこと」

亜季「ま、全く理解出来ない……」

ヘレン「理解せずともいいわ。さあ、暴れなさい。トアーミー、アクジキング」

トアーミー『ご期待ください!』

カイ「喋った!?」

アクジキング『ジキジキジキジキ!!』

ヘレン「良い返事ね……出しなさい」

マシン『イエス、マム』

ヘレンは宇宙船の中に引っ込み、宇宙船もそのままどこかへ飛んで行ってしまった。
933 : ◆3QM4YFmpGw [sage saga]:2014/05/08(木) 21:01:31.86 ID:klr6Y5lm0
星花「仕方ありません、行きましょう、ストラディバリ!」

ストラディバリ『レディ』

星花がペルソナを装着して姿を変える。

ヒーロー『ノーヴル・ディアブル』の誕生である。

亜季「足止めを食らっている暇は……、チッ! SC-01、バトルターン!!」

カイ「あたしたちも行くよ、ホージロー! オリハルコン、セパレイション!!」

続いて亜季とカイも変身する。

カイ「アビスナイト、ウェイクアァ……」

トアーミー『トアーッ!!』

カイ「ップゥ!?」

名乗りの隙を突いて、トアーミーが浮き型鉄球をカイの腹に叩きつけた。

カイ「こんのっ……ヒーローの名乗りは終わるまで待つのがお約束でしょ!?」

トアーミー『二夜連続』

カイ「何がだっ!!」

カイが反撃の拳をトアーミーの顔面に叩き込む。
934 : ◆3QM4YFmpGw [sage saga]:2014/05/08(木) 21:02:26.40 ID:klr6Y5lm0
亜季「私はこちらを! マイシスター!!」

マイシスターにガトリングガンを投下させた亜季は、受け取るや否やアクジキングに向けてそれを乱射した。

アクジキング『!!』

それを見たアクジキングは逃げるどころか、大口を開けて銃弾を待ち構えた。そして、

アクジキング『ジキジキジキジキジキジキジキジキ!!』

その大口で、飛んでくる弾丸を全て飲み込んでしまった。

アクジキング『……ジキジキ!』

亜季「なっ……これは長期戦になりそうですな…………ディアブル!」

星花「は、はいっ! 今援護を……」

亜季「いえ。ディアブルは先に現場へ向かってほしいであります」

星花「え……」

カイ「相手は二人! ここはあたしと01でなんとかするからさ、ディアブルは駅前に急いで!」

トアーミーと取っ組み合うカイが、首だけこちらに向けた。

星花「01さん、ナイトさん…………分かりました、お先に失礼いたします。ストラディバリ!」

ストラディバリ『レディ』

星花の号令でストラディバリはユニコーン形態へ変形し、星花を背に乗せて駆け出した。

亜季「頼みます! さて……ならば近接戦はいかがですかな!」

亜季がビームソードを構える。

アクジキング『ジキジキジキ!』

対抗してアクジキングが取り出したのは、先割れスプーンを模した大きな矛。

亜季「ほう……参ります!!」

――――――――――――
――――――――
――――
935 : ◆3QM4YFmpGw [sage saga]:2014/05/08(木) 21:04:21.34 ID:klr6Y5lm0
――――
――――――――
――――――――――――

星花「こ、これは……」

駅前に到着した星花は思わず言葉を失った。

見渡す限りの瓦礫、倒れこむ人々、所々に燃える紫色の炎……。

そして、それらの中心に立つ一人の少女。

彼女が上機嫌にステップを踏み、ゴシックドレスのフリルがふわりと揺れる。

この惨状の中で鼻歌まで歌える……少なくとも、ただの少女でない事は明白だ。

インヴィディア「フフフーン……あらぁー?」

ふと、少女――がインヴィディアこちらに振り向く。

インヴィディア「あなた、どちら様ぁ? おかしな恰好して」

星花「お、おかしな……っ、わ、わたくしはノーヴル・ディアブル! フルメタル・トレイターズのメンバーです!」

その言葉を受け、しばし黙って星花を見つめていたインヴィディアだったが、やがてぷっと吹き出すように口を開いた。

インヴィディア「ぷぷぷっ、おかしいの。じゃああなたはヒーローだとでも言うのかしらぁー?」

星花「……何か問題がございますか?」

インヴィディア「だってあなた、担当っていうか、部門っていうか、ジャンルっていうか……」
936 : ◆3QM4YFmpGw [sage saga]:2014/05/08(木) 21:05:49.03 ID:klr6Y5lm0
インヴィディア「それは別としても、私のお仲間みたいなものじゃない。それがヒーローなんて、笑っちゃうわぁ」

星花「ッ!?」

インヴィディアの言葉。

前半はよく分からなかったが、後半ははっきりと理解できた。

『わたくし』と『この少女』が、お仲間みたいなもの……?

――ドクン ドクン

星花「……ッ馬鹿にしないでください!!」

激昂した星花が叫ぶ。

――ドクン ドクン

星花「わたくしと貴女は違います!! わたくしは貴女のように、無暗に人を殺めたりはいたしません!!」

インヴィディア「うーん……そういう意味じゃないのよぉ? 要するに」

星花「黙りなさい!! わたくしは貴女を許しません!! ストラディバリ、オーラロケットパンチ!!」

ストラディバリ『レディ』

人型に変形したストラディバリがロケットパンチを発射した。

インヴィディア「お話は最後まで聞きなさいよぉ、むぅー」

インヴィディアはぷくっと頬を膨らませた。そして、

インヴィディア「fireぁー」

その口から紫色の火球を一つ吐き出した。

二つは両者の中間ほどで正面から衝突、火球は消滅し、ロケットパンチは推進力を失いその場に落下した。

星花「くっ!!」

インヴィディア「そうねぇー、ちょっとだけ暇つぶしに付き合ってもらおうかしらぁー」

インヴィディアがくすくすと笑う度、口の端から紫の炎がちらと燃えた。

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937 : ◆3QM4YFmpGw [sage saga]:2014/05/08(木) 21:06:35.47 ID:klr6Y5lm0
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トアーミー『獲ったどー!!』

カイ「くうっ!」

トアーミーの銛を、カイはすんでのところで回避する。

亜季「でやぁっ!!」

アクジキング『ジキッ!?』

亜季がビームソードでアクジキングの矛を斬る。

亜季「その首、もらったであります!!」

ビームソードを構えなおし、ブーストで一気に距離を詰める。

アクジキング『ジッ、ジキジキジキジキ!!』

殺されまいとするアクジキングは、今までに食った弾丸をまとめて吐き出した。

亜季「ッ、マイシスター!」

マイシスターから投下された鉄板でそれを防ぐ。そして、

亜季「せやあっ!!」

アクジキング『ジッ……!?』

死角から飛び出し、アクジキングの首を刎ねた。

亜季が反転してビームソードをしまうと、その背で大爆発。
938 : ◆3QM4YFmpGw [sage saga]:2014/05/08(木) 21:07:36.11 ID:klr6Y5lm0
トアーミー『トアーッ!!』

カイ「うぎゃっ! な、何これ……重い……!!」

トアーミーの特殊な投網に囚われたカイは、脱出できずにもがいていた。

トアーミー『制作快調』

それにじりじりと近づきながら、トアーミーは釣竿を模したサーベルをふりかざした。

亜季「しまっ……ナイト!!」

カイ「……ッ!!」

パキィン

亜季「…………!?」

カイ「…………!?」

トアーミー『トア……!?』

振り下ろされる寸前、トアーミーのサーベルは軽快な音と共に砕け散った。

??「ったく、今日は久しぶりにオフだったっつーのによぉ」

気付けば、サーベルの破片を握った人影がそこに立っていた。
939 : ◆3QM4YFmpGw [sage saga]:2014/05/08(木) 21:08:22.07 ID:klr6Y5lm0
爛「生きてっか、アビスナイト?」

アイドルヒーロー兼サクライのエージェント、ラプターこと古賀爛、改め古の竜ラプトルバンディットだ。

しかし説明長いなコイツ。

カイ「ラプター!」

爛「おらよっ」

爛の鉤爪の一振りで、トアーミーの投網が引き裂かれた。

カイ「よっと……ありがと! AHF以来だね!」

爛「まーな。コイツ何なんだ? 見た事ねえタイプだけどよ」

亜季「宇宙船に乗っていた、謎の女が置いていったであります。こんなことをしている場合では……!」

亜季がぐっと歯噛みする。

爛「なんだ、お前ら急ぎか?」

カイ「うん! せ……ディアブルが今一人で危険なトコ行ってて、早く合流しないと……」

爛「あー、そういや姿見えねえな。……んじゃ、お前らそっち行っていいぞ」

爛がふうっと息を吐いて軽く構える。

爛「コイツは俺が軽くノシとくからよ」

亜季「い、いいのでありますか?」

爛「ま、腐ってもアイドルヒーローだからな。人助けくらいするっての」

亜季「恩に着ます! ナイト、急ぎましょう!!」

カイ「うん! ありがと、ラプター!」

カイと亜季は爛に一礼し、星花と合流すべくその場を去った。
940 : ◆3QM4YFmpGw [sage saga]:2014/05/08(木) 21:09:29.60 ID:klr6Y5lm0
爛「さーて、サバオリにしてやんぜ漁師野郎っ!」

挨拶代わりにと腹へ強烈な一撃を見舞う。

トアーミー『トアッ!?』

トアーミーは派手に吹き飛び、3m先に背中から着地した。

爛「技がトリッキーなだけでスペックは大した事ねーな……トドメだ」

爛は近くの尖った瓦礫を拾ってトアーミーに向けて駆け出す。そして、

爛「死ぃねぇぇぇっ!!」

その瓦礫を思いっきりトアーミーの胸に突き刺し、更に。

爛「どらぁっ!!」

踵落としで更に深くまで打ち込んだ。

トアーミー『トアッ…………マグロ』

そして、一拍置いて大爆発。

爛「……あーあ、折角のオフがパーだぜ」

念の為、と普段ラプター用の仮面を持ち歩いていたのは無駄ではなかったようだ。

爛「さっさと帰って昼寝……ん? 何だこの雨……」

今になって気づいたが、先ほどから降っていた黒い泥の雨。

それは地面に落ちると、カースとなって動き始めた。

『ネタマシイイイイイイ』

『ネタマシイイイイイイ』

『ネタマシイイイイイイ』

『タアマシイイイイイイ』

爛「……マジかよ……くっそ、休日返上かよっ!!」

吐き捨てて爛はカースの群れに飛び掛かった。

……その光景を、ビルの上から眺めていた影が一つ。

メモリック『……記録完了』

彼の名は記録怪人メモリック。ヘレンが生み出した怪人の一人だ。

メモリック『トアーミー、アクジキング、共に改良の余地大幅にあり』

彼の任務は、ヘレン製怪人達の作戦や行動データを記録し、ヘレンに提出する事。

戦闘能力は皆無だが、彼の持ち帰ったデータは怪人の強化や再生に大いに役立つ。

メモリック『マム、記録が完了しました。これより帰投します』 

母船に通信を入れたメモリックは、ワープでその場から消えた。

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941 : ◆3QM4YFmpGw [sage saga]:2014/05/08(木) 21:10:17.08 ID:klr6Y5lm0
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――――――――――――

星花「オーラボムッ!!」

ストラディバリ『レディ』

オーラの砲弾が、泥の蜥蜴を次々焼き払っていく。

インヴィディア「うわぁ、嫉妬しちゃうくらい強いのねぇー」

インヴィディアはくすくすと笑い、指先から小さな火球を三つ飛ばした。

星花「効きません!! ストラディバリ、オーラブレードッ!! オーラドリルパンチッ!!」

ストラディバリ『レディ』

星花「合わせ技ですわ! ドリルブレード、パーンチッ!!」

オーラの刃を纏った拳が、回転しながらインヴィディアに突き進む。

インヴィディア「あらぁ、これは相殺できないかもぉー」

ゾンッ

二つのドリルブレードパンチが、インヴィディアの体を穿った。

星花「…………!」
942 : ◆3QM4YFmpGw [sage saga]:2014/05/08(木) 21:11:19.74 ID:klr6Y5lm0
しかし、

インヴィディア「あらあらぁ、どこを見てるのぉ?」

星花「ッ!?」

振り向くと、確かに今倒したはずのインヴィディアが立っていた。

星花「では、こちらは……!?」

正面にいたインヴィディアが、音を立てて燃え上がり始めた。

そして、あっという間に紫色の炎となって消えた。

星花「……分身……!?」

インヴィディア「そういうことぉー。……うーん、なんだか飽きちゃったわぁ」

インヴィディアはひょいと飛び上がり、近くのビルの屋上に着地した。

星花「まっ、待ちなさい!!」

インヴィディア「一応名乗ろうかしらぁー。私は、イルミナティのインヴィディアっていうのぉー」

インヴィディア「また遊びましょうねぇー、お仲間さん」
943 : ◆3QM4YFmpGw [sage saga]:2014/05/08(木) 21:12:03.03 ID:klr6Y5lm0
そう言ってインヴィディアはビルからビルへと飛び移り、どこかへと行ってしまった。

星花「なっ……………………わ、わたくしは……」

虚空を見つめてわなわなと震える星花。そこに、

亜季「あ、いました!」

カイ「ディアブルー! 無事ー!?」

カイと亜季が到着した。

亜季「……ひどい有様ですな。……ディアブル?」

カイ「ディアブル? ねえ、聞いてる?」

二人の呼びかけにも、星花は応じない。

やがて、顔を上げ……
944 : ◆3QM4YFmpGw [sage saga]:2014/05/08(木) 21:13:08.21 ID:klr6Y5lm0


星花「わたくしはぁっ!! 貴女のお仲間などではありませんっ!! 取り消しなさい!! 今すぐにぃぃっ!!」


狂ったような大声をあげ、どこかへ走り出そうとした。

カイ「ひゃあっ!? ちょっ、落ち着いてよディアブル!!」

星花「待ちなさいッ!! わたくしと戦いなさいッ!! インヴィディアァァアッ!!」

カイが慌てて取り押さえるも、逆にズルズルと引きずられてしまう。

カイ「ぜっ、01! お願い、手伝って!」

亜季「この暴れよう、正気を失っている……? ……ならば、致し方ありませんか」

星花「放して下さいカイさん!! 奴を!! インヴィディアを追わせて下さいッ!!」

亜季は拳銃を取り出すと、砲身の部分をギュッと握った。

亜季「すみませんっ……!」

そして、拳銃のグリップで星花の後頭部を思いっきり殴りつけた。

星花「ぁっ…………」

結果星花は意識を失い、その場にうつ伏せで倒れこんだ。
945 : ◆3QM4YFmpGw [sage saga]:2014/05/08(木) 21:14:02.27 ID:klr6Y5lm0
カイ「…………せい、か……?」

亜季「気を、失わせただけであります……目が覚めた時には、正気に戻っている事を祈りましょう……」

カイ「……うん、そうだね…………」

カイは星花の体をゆっくり抱き上げ、ぎゅっと抱きしめた。

カイ「早く目を覚ましてね、星花…………」

亜季「……さあ、怪我をされた方々の移送をしなくては! 星花を頼みます」

カイ「うん、分かった」

亜季は近辺で一番重傷そうな人間に駆け寄り、彼をそっと抱き上げて空を飛んで行った。

カイ「…………星花、どうしちゃったんだろ……?」

何気なく、彼女のペルソナに手をかける。

カイ「ひっ!?」

カイは驚いて思わず星花から手を放してしまった。

地面に投げ出された星花の体。

その瞳は、本来の宝石のような淡い紫色ではなく、毒々しく濁った深紅に満ちている。

カイ「……星花…………!?」
946 : ◆3QM4YFmpGw [sage saga]:2014/05/08(木) 21:14:47.75 ID:klr6Y5lm0


――ウウン


――ダイブ、憤怒ヲ喰ッタ


――悪魔モ天使モ誤魔化セタ


――縮ンデヤリスゴシタノハ正解ダッタナ


――タダ、マダ足リナイ


――モウ一度、アソコニ行ケレバ


――コノ体ヲ完全ニ支配スルマデニ成長デキル


――憤怒ニ満チタ、アノ最高ノ餌場ニ……


続く
947 : ◆3QM4YFmpGw [sage saga]:2014/05/08(木) 21:15:47.43 ID:klr6Y5lm0
・トアーミー
ヘレン製水産業破壊怪人。
「各地で魚を乱獲して各港町や漁村に壊滅的打撃を与える」というジュラル的遠回し作戦の為に生み出された。
釣竿型サーベル、銛、浮き型鉄球の他、相手の動きを封じる特殊な投網を放つ。

・アクジキング
ヘレン製暴食怪人。
「とにかく食物を荒らしまくって食卓を壊滅させる」というジュラル的遠回し作戦の為に生み出された。
あらゆる物を食べて吐き出す大口と、先割れスプーン型の矛で戦う。

・メモリック
ヘレン製記録怪人。
「各怪人達が戦ったデータをヘレンに提出する」という任務を受けており、本人の戦闘力は皆無。
映画館のカメラ男が白い長ランを着たような姿。

・イベント追加情報
爛(ラプター)がカースの群れ相手に戦っています

メモリックがヘレンにトアーミーとアクジキングの戦闘データを提出しました
今後遭遇するヘレン怪人が全体的に強化されている可能性があります

インヴィディアが「別の駅前」へ移動しました

亜季が怪我人を最寄りの病院へ移送しています

カイが眠り続ける星花についています

星花の中になんかいます
948 : ◆3QM4YFmpGw [sage saga]:2014/05/08(木) 21:17:12.33 ID:klr6Y5lm0
以上です
うん、なんかもう星花崩しすぎてる……もういっそ突き抜けちゃえ(白目)
エージェントがこんなに参加するんなら、爛ちゃんもぶっこむしかないじゃない!
メモリックの存在はこう、
「トアーミーとアクジキングと戦いたい方はご自由に。ただし強化されてるがな!」
って感じで

ヘレン、マシン、インヴィディアお借りしました
949 : ◆AZRIyTG9aM [sage]:2014/05/08(木) 21:22:18.22 ID:Pl5qf5m6O
乙ー

最初のヘレンさんに全て持ってかれたwww
インちゃんマジ強い
そして、星花に不穏な気配が…
950 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/05/08(木) 21:27:40.74 ID:2LpK5BB+o
ヘレンさんは何しても面白……宇宙レベル
爛ちゃんも来たし、これでエージェントのお留守番組はチナミさんだけか…(ぼっち……?)
星花さんの様子も不穏である。不穏な事だらけじゃないかシェアワ!

乙でしたー
951 : ◆zvY2y1UzWw [sage ]:2014/05/08(木) 21:58:25.67 ID:LdFPouvJ0
乙です
ヘレンさんの怪人、ご期待ください(キリッ)
憤怒の核はどうなってしまうんでしょう、ご期待ください

不穏に定評のあるシェアワ、ほのぼのはどこですか…いえぼののではなく…
952 : ◆3QM4YFmpGw [sage saga]:2014/05/08(木) 22:28:58.26 ID:klr6Y5lm0
この段階で950かあ
前スレみたいな事あるかもだし、今のうちに次スレ立てといた方がいいかな?
953 : ◆zvY2y1UzWw [sage ]:2014/05/08(木) 22:51:55.55 ID:LdFPouvJ0
どうだろうねー立てた方が無難かな?スレ消費スピードがわかんないけど…
954 : ◆3QM4YFmpGw [sage saga]:2014/05/08(木) 23:05:13.22 ID:klr6Y5lm0
ほいじゃ念の為に立ててくる

現在進行中イベントから憤怒の街削除&AHF追加でいいかな

『オールヒーローズフロンティア(AHF)』
賞金一千万円を賭けて、25人のヒーロー達が激突!
宇宙人も恐竜も海底人も悪魔も未来人も魔法少女も大集合!
賞金を勝ち取るのは……誰だ!
955 : ◆3QM4YFmpGw [sage]:2014/05/08(木) 23:42:12.51 ID:klr6Y5lm0
ごめん、なんか失敗した……
誰か頼める?
956 : ◆AZRIyTG9aM [sage]:2014/05/08(木) 23:44:35.51 ID:Pl5qf5m6O
ここにちゃんと立ってますよ?
http://ex14.vip2ch.com/test/mread.cgi/news4ssnip/1399559644/
957 : ◆zvY2y1UzWw [sage]:2014/05/08(木) 23:44:57.44 ID:LdFPouvJ0
じゃあちょっとやってみる
958 : ◆zvY2y1UzWw [sage]:2014/05/08(木) 23:45:30.95 ID:LdFPouvJ0
>>956
しむらー!番号!番号!
959 : ◆AZRIyTG9aM [sage]:2014/05/08(木) 23:46:48.77 ID:Pl5qf5m6O
あ、スレタイか。今気づきました

立て直すのもあれですし、もうそこで大丈夫じゃないですかね?
960 : ◆AZRIyTG9aM [sage]:2014/05/08(木) 23:47:59.65 ID:Pl5qf5m6O
あ、立て直すのか…すいません…
961 : ◆zvY2y1UzWw [sage saga]:2014/05/08(木) 23:55:57.74 ID:LdFPouvJ0
part10
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1399560633/
立て直してきました
962 : ◆3QM4YFmpGw [sage]:2014/05/08(木) 23:58:18.62 ID:klr6Y5lm0
ありがとうごぜーます!
963 : ◆AZRIyTG9aM [sage]:2014/05/09(金) 00:03:14.35 ID:x/0oADOYO
スレ立て乙です!
964 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/05/09(金) 00:16:46.86 ID:ppPWrB+Ho
>>961
乙です、とうとう2桁スレか…


次スレも立ちましたところで
投下させていただきますー

シリアスもいいけど、ほのぼのもね!
と言う事で学園祭時系列のお話をー
965 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/05/09(金) 00:17:18.74 ID:ppPWrB+Ho

前回までのあらすじ


肇「高校生の皆さんが催しているスタンプラリー……」

肇「9ポイント分のスタンプを集めれば豪華景品が貰えるんですよね」

肇「何をもらえるのか、美穂さんは知ってますか?」

美穂「色々あるみたいだけど……私も全部は把握してないかな」

Pくん「まぁ?」


美穂と肇とプロデューサーくん
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1384767152/924-

966 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/05/09(金) 00:18:05.73 ID:ppPWrB+Ho



卯月「はい!それじゃあスタンプ1つ押しますねー♪」

肇「お願いします」 ペコリ


ポンッと卯月の持つスタンプが一度押されて、

肇の持つスタンプカードにまた1つ、可愛いスタンプが増えたのでした。


肇「これで残りは6つですねっ」

卯月「短時間で3ポイントも集めちゃうなんてすごいですっ!」

美穂「うんっ!本当にすごいよ、肇ちゃん!」

Pくん「マッ!」

肇「ふふっ、3人ともありがとうございます」


本日、学園祭のスタンプラリーイベントに参加している肇と美穂。(あと謎のくまのぬいぐるみのプロデューサーくん)

2人と1匹(?)は広い学園を回りながら、1ポイントスタンプを持つ人達3人(卯月ちゃんも含みます)と出会い、

現在、3ポイント分のスタンプを集めていたのでした。
967 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/05/09(金) 00:18:49.44 ID:ppPWrB+Ho

肇「ですが、私の休憩時間も残り半分ほどです……このままでは9ポイント集めるのは間に合いませんね」

肇「やはり、高得点スタンプを持っている『番人』の方との対決は不可欠でしょうか」

卯月「あっ、それなら美穂ちゃんに挑……」

美穂「う、卯月ちゃんっ!」

卯月が何か言いかけたのを美穂が遮り、

顔を近づけ小さな声でひそひそと話しはじめました。

美穂(わ私っ、今日はお休み中と言うかっ!そのっ!) ヒソヒソ

卯月(あれっ、そうでしたっけ?えへへー) ヒソヒソ


肇「……」

肇(美穂さん、内緒話のようですが聞こえています……)

まあ、彼女には丸ぎこえだったのですが。

肇(……うーん、たぶん話の流れからすると……美穂さんも高得点スタンプ持ちの『番人』の役だったのかな)

肇(でも、今は私に付き合ってもらってるから挑めないよね)
968 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/05/09(金) 00:19:40.56 ID:ppPWrB+Ho

美穂「う、卯月ちゃんっ、ほ、他には、この近くに『番人』は居るの?」

卯月「えっと……この近くだと」

露骨に焦りながら話を変えるために美穂が尋ねると、

卯月は、目を瞑り、考え込む仕種をしました。


卯月「あっ!そうです!」

そしてお次はポンっと手を叩き、思いついた仕種。

卯月「今の時間なら休憩スペースに菜帆ちゃんが居たはずですっ!」

肇「なほ……さん?」

卯月「はいっ!海老原菜帆ちゃん!(どやっ)」

美穂(……どうしてどや顔?)

969 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/05/09(金) 00:21:20.69 ID:ppPWrB+Ho

――

――


肇「高得点スタンプの番人、海老原菜帆さんでしたね。貴重な情報でした」

美穂「卯月ちゃん、すごく社交的だから、他校の子ともすぐに仲良くなれちゃって」」

美穂「きっとその子とも友達になったと思うんだけど……いったいどんな子なんだろう?」

肇「えっと、卯月さんは確か……」


( 卯月「菜帆ちゃんですか?そうですね……」

( 卯月「食べる事が好きで、おっとりした感じの……普通の女の子ですっ」 )


肇「……と言っていましたね」

美穂「卯月ちゃんが言うならたぶん普通なはずだけど……たぶん」

肇「どんな方かは、行ってみればわかるはずです」

美穂「……そうだね、確かすぐ近くの屋外休憩スペースだっけ?」

肇「早速向かいましょうか」

美穂「うんっ!」

Pくん「マっ!」
970 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/05/09(金) 00:22:36.86 ID:ppPWrB+Ho

――

――


++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
しし‐るいるい【死屍累累】
 
[ト・タル][文][形動タリ] 
たくさんの死体が折り重なって倒れており、非常にむごたらしいさま。
++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

美穂「by g○○辞書です」



「……もう……食え……ねえ」

「…………あくまだ……和菓子のあくま……」

「あんこは……いやだ……あんこはもう……」

「むりぽ……」


菜穂「もぐもぐ、ごくっ……これも美味しかったですね〜♪」

『ごちそうさまでした〜♪あ、次の挑戦者の方いますか〜?』



肇、美穂「……」

休憩スペースを訪れた2人の目に飛び込んで来たのは、

志半ばにして、腹膨れ倒れた猛者の死体の山と、

その中央に君臨するぷにょほわの女帝でした。


肇「まさに死屍累々と言った感じですね……」

美穂「普通の女の子って一体……」
971 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/05/09(金) 00:23:26.62 ID:ppPWrB+Ho

菜穂「……あれれ?あの〜?次の挑戦者の方〜?」

『うーん?流石にもういませんかね〜?』


――「……おい、挑戦者居ないのかよ?」

――「無理だよ……京華学園甘党四天王がやられたんだぞ……」

――「な、なに?!京華学園甘党四天王がっ!?」

――「そんな……もう……この学園はお終いだ……」

――「くそっ!あの悪魔に次々と和菓子が食われるのを……俺たちは指を咥えて見ているしかできないのかっ!」


美穂(なんだかものすごい事になってる雰囲気……)

肇「……早食い勝負、なるほど、これに勝てれば5ポイントなんですね」

美穂「えっ……!は、肇ちゃんもしかして挑戦するつもりなの?!」

肇「コイントスの時とは違って順番待ちはなさそうです」

肇「すぐにでも挑戦できるのなら、時間の少ない私たちにはこの催しはぴったりかと」

肇「時間制限もあるようですから、大きくタイムロスをする事もないでしょうし」

美穂「で、でも……この勝負はちょっと勝てないんじゃないかな……」

美穂「ここは引いて……別の『番人』の人を探したほうが……」

美穂「プロデューサーくんもそう思うよね?」

背中に引っ付いていたはずの小さな熊に声を掛ける美穂だったが、

美穂「ってあれ?プロデューサーくん……?」

お探しの熊は既にそこには居らず、
972 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/05/09(金) 00:24:28.71 ID:ppPWrB+Ho

Pくん「マぁぁ♪」

菜帆「あら〜?」

『おやおや〜?かわいい小熊さんですねえ〜?』

Pくん「まっ♪まっ♪」

ぷにょふわ女帝の見つめる先、

そこには倒れ伏した挑戦者達の残した和菓子をキラキラした目で見つめる小さな熊がいました。


美穂「!?プロデューサーくん!食べられちゃうよっ!」(※食べられません)


菜帆「あれ?そこに居るのはひなたん星人さんじゃないですか〜、お久しぶりですね〜」

美穂「えっ」


ざわっ!


その女帝の一言で、周囲の注目が美穂に集まる。
973 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/05/09(金) 00:25:10.03 ID:ppPWrB+Ho

――「何だって!?ひなたん星人!今ひなたん星人って言ったのか!?」

――「ひなたん星人って……最近地元で噂になってるヒーローの?」

――「えっ、ヒーロー来てんの?サイン貰っちゃってもいいのかな〜」


美穂「あっ、あわわっ!あのっ!そそそのっ!今はそのっ!」


――「もしかして……ひなたん星人が次の挑戦者?」

菜帆「え?そうなんですか〜?」

『もしかして強敵の登場ですかね〜?』


美穂「ええぇっ!い、いえっ!そそんなっ!わ、私はっ!」

美穂(ど、どどどどどどうしよう!)

なぜか挑戦者にされそうな雰囲気になっていた。

急な展開についていけずに美穂は焦る。


「いいえ、今回の美穂さんは応援ですよ」

菜帆、美穂「!」

そんな美穂の窮地を救う、少女の一声。


肇「この勝負、挑戦するのは私です!」


美穂「肇ちゃんっ!」
974 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/05/09(金) 00:26:00.87 ID:ppPWrB+Ho

――「……女の子?あの子が挑戦するのか?」

――「見た感じ、そんなに食べそうには見えないが……」


肇「お久しぶりですね、菜帆さん」

菜帆「はい、お久しぶりですね〜」

早食い勝負の『番人』の前に立ち、恭しくお辞儀をする肇。

対する菜帆もニコニコと挨拶をする。


美穂「え、えっと……2人は知り合い?」

菜帆「あれ?ひなたん星人さんは覚えてませんか?」

『祟り場の舞台、とても素敵でしたよ〜』

美穂「えっ、祟り場……あっ!」

祟り場と聞いて、やっと少女はティンと来る。

美穂「あ、あの時の!なんだか凄そうな集まりの中に居た!」

菜帆「はい〜、海老原菜帆です〜」

『暴食を司る悪魔ベルゼブブです〜』

美穂「あっ、こ、小日向美穂ですっ!……すみませんっ、すぐに思い出せなくってっ」

美穂「その……あの時、祟り場に居た人とこんな所で偶然出会うなんて思ってなくて……」

菜帆「いえいえ〜、気にしないでください〜」

美穂「そう言っていただけるなら…………あと悪魔って?」

『あ、それもあんまり気にしないでください〜』

美穂(えっ、すっごく気になる)

菜帆「うふふ〜」『うふふ〜』 ニコニコ

美穂(と言うか……菜帆ちゃんから声が2つ聞こえるような……?)

美穂(……亜里沙先生みたいな例もあるし……深く突っ込まない方がいいのかな)
975 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/05/09(金) 00:27:01.83 ID:ppPWrB+Ho


『それよりも菜帆ちゃん。どうやら肇ちゃんが挑戦してくれるみたいですよ〜』

菜帆「みたいですね〜。私が『番人』を勤める…」

菜帆「『この早食い対決にっ!』」


肇「はい、是非とも。お相手願いたく思います」


鬼の少女と和菓子の女帝、一見穏やかな少女達。

しかし2人の目には闘志が宿り、交わす視線の間には電流が走るっ!


美穂「は、肇ちゃん。本当に大丈夫なの?」

傍らにそびえる死体の山に目を向け、肇を心配する美穂。

当然だろう。どう見てもこの早食い勝負、普通ならば勝ち目はない。

肇「きっと大丈夫ですよ」

しかし肇、涼しい顔でそう答える。
976 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/05/09(金) 00:28:01.44 ID:ppPWrB+Ho

美穂「で、でもこれだけの死体の数だよ……」

美穂「それだけ菜帆ちゃんに挑んだ男の人たちが蹴散らされてるってことで……」

――「いや、死んではいないけどな」

美穂「すすすみませんっ、つい……」

美穂「あのっ、この勝負って勝てた人は今まで居るんですか?」

美穂は、ギャラリーの中に居た男にこれまでの勝敗の模様を尋ねる。

――「……さっきな……一度だけ勝てた奴を見たよ」

――「化け物みたいな……そう化け物みたいな女の子だった……」


肇「ほら、美穂さん。女の子でも勝てるんですよ」

美穂「肇ちゃん、ちゃんと聞いてた?女の子につく形容じゃなかったよ?」


肇「ふふっ、本当に大丈夫ですよ。美穂さん」

肇「私も考えなしと言う訳ではなく、ちゃんと勝算もありますからっ」

美穂「えっ?」

美穂の心配に反して、やはり肇は自信を持ったようすで答えるのだった。
977 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/05/09(金) 00:29:04.84 ID:ppPWrB+Ho

――

――


『では〜改めまして、ルールの説明です』

『目の前のお皿に置かれた和菓子を制限時間内に食べきってくださいね〜』

菜帆「『番人』の私より先に食べ終われたら5ポイント差し上げます〜」

『シンプルで簡単なルールですね〜』


美穂「か、簡単って……あ、あれを全部食べるんだよね?」

それを見た瞬間、死体の山がどうやって築き上がったかを美穂は理解する。


それはまるで和菓子のチョモランマ。

餡子の暗雲を突き抜けて、そびえ立つ砂糖細工の塔。

色彩豊かな飴の散らばる寒天の大海、そこに潜むは主たる真っ白な大魚(鯛焼き)。

若草の草原を駆ける団子の大家族。餡蜜の香り漂う丘には羊羹の館。

それはもはや一皿に表現された芸術的楽園模様。

だが、とても……とてもじゃないが人間の胃袋に納まる量ではない。


美穂「……見てるだけでお腹一杯に」

Pくん「マぁぁ♪」

見た目の甘さに、美穂の傍の小熊はよだれを垂らすが、

この勝負は、その見た目の様には甘くはない。

美穂「肇ちゃん……」

ギャラリーに混じり美穂は、挑戦者席に座る肇の様子を伺う。


肇「……」

彼女はやはり、とても落ち着いた様子でそこに座っていた。


――レディー

そして、開始のコールが鳴り響く。

菜帆、肇「「いただきますっ!」」
978 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/05/09(金) 00:30:27.76 ID:ppPWrB+Ho

コールと同時に女帝の手が動き、

菜帆「もぐもぐもぐもぐ」

そして、口が動くっ!!


美穂「っ!!は、速いっ!!」

――「ああ、とても10皿以上あの山を完食した人間の早さじゃねえ」

――「少しもペースが落ちねえんだ、普通は満腹感や飽きだとかで速度が落ちるって言うのに」

――「『そんなに食べるはずが無い』『あの速度を維持できるわけがない』」

――「そう言って、帰ってこなかったフードファイターは少なくないぜ」


見る見るうちに皿に積み上げられた甘味が消化されていく。

そう、まさに消化!手に取られた甘味は瞬時に口に取り込まれ、女帝の胃袋へと消えていくのだっ!

菜帆「おいしい♪」

『ですね〜♪』

しかもそれでいてちゃんと味わっているらしい。

女帝の舌はっ胃袋はっ!喰らう喜びを少したりも逃さないっ!!



――「おいっ、挑戦者の女の子がっ!」

美穂「はっ!」

思わず女帝の気迫に気を取られてしまい、挑戦者側の席に座る少女の様子を伺っていなかった。


美穂「肇ちゃんっ!!」


果たして、鬼の少女は――――っ!!
979 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/05/09(金) 00:31:28.00 ID:ppPWrB+Ho


肇「もぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐ」


――「はっ速ぇぇえ!」

――「ど、どう言うことだ!?『番人』にも引けをとらない速度だぞっ!!」

菜帆(!!)


挑戦者側に座る鬼の少女もまた!

女帝と同じく、切り崩すように甘味の山をたいらげていく。

その速度!ぷにょふわ女帝にさえもまったく劣らないっ!!


――「っ!!まるで女帝が二人居る見てえだっ!!」

――「でもなんだこの不思議な感じは……」

――「うまく説明できねえが……とにかく見ていて不思議な感覚があるぜっ」

美穂(……)


ギャラリーは気づかなかったが、

ただ1人挑戦者の友人である少女が、不思議の正体を知っていた。


美穂(肇ちゃん……菜帆ちゃんと同じ速さで食べることができてる……)

美穂(そう、鏡写しみたいに正確にっ!同じ速さっ!)

美穂(そんな事ができる方法を私は知っているっ!)

美穂(『鬼心伝心』!!)
980 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/05/09(金) 00:32:21.91 ID:ppPWrB+Ho

肇(早食いと言うのは、突き詰めれば技術の勝負です)

肇(如何に、目の前のお皿の上に立ちはだかる山を切り崩すか)

肇(菜帆さん、今日10皿以上はこれを平らげたあなたはその方法をよく知っているはずです)

肇(そして『鬼心伝心』は、そんな菜帆さんの心・技・体の動きをそのまま写し取る妖術)

肇(つまり……)


肇「もぐもぐもぐっ!」

肇(菜帆さんがぷにょふわのもちもちなら、私もぷにょふわのもちもちと言う事ですっ!)

……それなんか違う。

あと食べながら言ってもあまりカッコつかない。


菜帆「もぐもぐっ!」

『驚きですね〜』

とは言え、自身とまったく同じ速度で食べ続ける事のできる肇の様子に、

立ち塞がる『番人』もいささか驚いたようであった。
981 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/05/09(金) 00:33:16.50 ID:ppPWrB+Ho

――「まったく互角の勝負になってやがるっ……!」


『鬼心伝心』を発動中の肇の技量は、確かに菜帆とまったく同等。

確かに互角と言える。


――「けどよ、『番人』と同じ速度で食えたとしても……同じだけ食えるとは限らないよなぁ」

――「ああ、そうだ。実際に、番人より速く食ってた奴は居たけど……」

――「途中で和菓子の山を食うこと自体が辛くなったのかギブしていたしな」

――「先に”満腹”になっちまったらやっぱり負けだぜ?」


美穂(ううん、違う。肇ちゃんは満腹にはならない)

美穂(妖術は妖力……体内のエネルギーを使うからっ……)

美穂(肇ちゃんはいつも妖術を使った後はお腹を空かせてるっ)


肇(『鬼心伝心』を使い続けている限り、私はお腹一杯にはならないっ)

肇(そして、この和菓子に飽きることもないっ)

肇(だって『鬼心伝心』は技術だけでなく、心を通い合わせる妖術っ!)

肇「もぐもぐっっ!」

肇(菜帆さんっ、あなたの心が”食べる事に飽きる”なんて事あり得ないですよねっ!)

妖術『鬼心伝心』は、心を通じ合わせるための力。

その力によって肇も、菜帆と同じく和菓子を愛する心を得ている。

故に彼女も、和菓子を食べ飽きることは決してない!


菜帆「っ!もぐもぐもっ!」

『なるほど〜、これは強敵ですね〜』
982 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/05/09(金) 00:34:27.99 ID:ppPWrB+Ho


――「……挑戦者の女の子ペース落ちねえな」

――「ああ、むしろペースが上がってるくらいだぜ」

――「だが、加速してるのは『番人』側も一緒だ」

――「こりゃ完全に互角だな……」

――「ならひょっとすると……ひょっとするかもしれないな」


加速する『番人』の食欲にさえも、まったく引けを取らない挑戦者の様子にギャラリーも沸く。

女帝と鬼の少女、2人の皿の上の甘味は次々と姿を消していき、

残りはもう最初にあった量の1/5にも満たない……ここからはラストスパート……!

菜帆「もぐもぐもぐもぐ!」

肇「ぐもぐもぐもぐも!」


美穂(……勝てる)

美穂「これなら勝てるかも!」

Pくん「マッ!!」

実力も速度も拮抗しているならば、どちらが勝ってもおかしくはない。

むしろこの頃には、これまでの疲労が残っているだろう番人側が少し不利かもしれないなんて美穂は思っていた。


美穂「肇ちゃんっ!頑張って!!」

Pくん「マッマー!」

しかし、美穂は重大な事を見落としている。

他ならぬ彼女自身が、かつて「鬼心伝心」で同等の実力を発揮した肇を打ち破った事を。
983 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/05/09(金) 00:36:33.57 ID:ppPWrB+Ho


菜帆「もっぐもぐもぐも(流石ですね〜)」

『ここまで追い詰められたのは初めて……あっ、いえ二回目でした〜ふふふっ』

肇「もぐもぐもっ!(私を応援してくれる人がいますから……必ず勝って見せます!)」


皿に残る和菓子は、お互い後数口程度。

勝負の結果は、あと数秒ほどで決まる。


菜帆「もぐもぐもっ(その心意気いいですねえ〜)」

『だからこそ、残念ですね〜』

肇「……ぐもっ(何が……ですか?)」


菜帆「もぐん(決まってるじゃないですか〜)」
984 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/05/09(金) 00:37:56.89 ID:ppPWrB+Ho


菜帆「 もぐりん!! (私が勝っちゃうことがですよ!!)」

肇「!!!」


次の瞬間、ぷにょふわ女帝の発したオーラに

その場に居た全ての者が――飲まれる!!!

そのオーラの正体は……食欲!!圧倒的な食欲!!!

もはや彼女の胃袋は、皿の上の山のみならず、

この場に存在する全ての……いや、世界中の……

いや!宇宙中の食べ物をその胃袋に収めんとするかのような!

まさにブラックホールの如き食欲の発する気迫!!!


菜帆「ふぅ、ごちそうさまです〜」

肇「なっ!」

鬼の少女が気がつけば、女帝の前の和菓子は全てなくなっていた。

そして肇の皿の上には……


まだ手付かずのお饅頭が一つ。



―― ……っ!勝負あり!!
985 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/05/09(金) 00:38:45.09 ID:ppPWrB+Ho


――

――


肇「負けてしまいましたね」

美穂「うん……」

Pくん「マァ……」


早食い勝負に負けて、屋外休憩スペースを出てきた2人と1匹(?)。

肇の手には、スタンプの1つ増えたカードが1枚。

敗北したけれど「制限時間内の完食はした」と言う事で、

菜帆さんの好意で、おまけで1ポイントだけスタンプを貰えたのでした。


肇「敗因はやはり、気持ちでしょうね」

肇「和菓子への愛の強さ、それを私が真似できたとしても……」

肇「菜帆さんは、食べてる内にもっともっと好きになれている」

肇「ふふっ、素敵ですね。どんな時でも食事自体を楽しむ心意気」

肇「私は勝ち負けに拘って、そこに気を向けられてなかったかも」

美穂「……う、うーん」

美穂(あの気迫はそんな良い感じのお話の結果じゃなくって……)

美穂(もうちょっと恐ろしい何かの表れだった気がするけれど……)

具体的には食物連鎖の頂点たる捕食者のそれ。

美穂(まあ、戦った2人にしか分からない世界って言うのもあるよね)

とりあえず、そんな風に納得しておくことにした。
986 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/05/09(金) 00:40:10.02 ID:ppPWrB+Ho

美穂「とにかく、これで合計4ポイント」

肇「はい。私は残りは5ポイント分のスタンプを集める必要があります」

肇「そして、休憩時間の方は……残り半分を切ってますね」

美穂「うん……」

残り5ポイント。奇しくも早食い勝負の勝利報酬と同数。

つまり先ほどのような戦いに挑まなければ、間に合わないと言う事で。

先行きが不安である。


肇「だけど、今の私は絶好調ですよ!美穂さん!」

美穂「えっ」

肇「ふふっ、勝負にこそ負けましたけれど……たくさん和菓子を頂きましたからっ」

肇「先ほどまでとは違って、お腹一杯です。ですから今は妖力も漲っています…!」

美穂「あ、そっか」

鬼の少女、肇の妖力はなぜかお腹の減り具合とほぼ直結しているので、

たくさん和菓子を食べてお腹一杯の今は、絶好調と言う訳です。
987 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/05/09(金) 00:41:22.93 ID:ppPWrB+Ho

肇「この状態ならば、他の『番人』さんとの勝負には勝ちにいけるかもしれません」


例えば先ほどの勝負で『鬼心伝心』を使ったように、

妖術を十全に使えるならば、この後のスタンプ集めはスムーズに進められるかもしれない。ちょっとズルいけれど。


肇「ですからまだまだ諦めるには早いですよ、美穂さん」

美穂「……うんっ!そうだよね!」

美穂「私も精一杯応援するからね!肇ちゃんっ!」

肇の意気込みを聞いて、美穂もまた奮起する。

肇「はいっ!美穂さんに応援して頂けるなら百人力です!」

Pくん「マッ!!」

美穂「あっ、プロデューサーくんも応援してくれるみたい」

美穂の背中に張り付いている小さな白熊も、声援(?)を贈っています。

肇「ふふっ、ありがとう。プロデューサーくん」

Pくん「マァ♪」


肇「それでは美穂さん……次の『番人』を探しましょうか!」

美穂「うん!」


と言う訳で、肇と美穂。

今回は、和菓子の女帝・海老原菜帆に挑みましたが、

2人のスタンプラリーは、まだもう少し続くようです。


おしまい
988 : ◆6osdZ663So [sage saga]:2014/05/09(金) 00:42:38.08 ID:ppPWrB+Ho

以上です、『鬼心伝心』の使い勝手の良さよ

菜帆、卯月、お借りしましたー

 
989 : ◆zvY2y1UzWw [sage]:2014/05/09(金) 00:49:35.23 ID:8vnsTlkk0
乙です
普通とはいったい…うごご
鬼心伝心は確かに使い勝手いいかも
ギャラリーもノリがいいなww

なお、黒兎はどうやって勝ったかというと単純に髪の毛(触手)でも掴んで手だけ以上の高スピードで食ってたという…確かに化け物だわ
黒兎「ウまうま♪」モグモグモグモグヒョイヒョイヒョイヒョイ
990 : ◆AZRIyTG9aM [sage]:2014/05/09(金) 01:01:31.41 ID:sVtzCc3t0
乙ー

普通……普通?普通ってなんだろう?俺が知ってる普通は普通じゃないのかもしれない……うごごご

それにしても、みんなノリノリである

果たして、二人は他の番人を倒すことができるのか?
991 : ◆zvY2y1UzWw [sage]:2014/05/09(金) 08:04:03.16 ID:8vnsTlkk0
というか後は埋めかな?
992 : ◆3QM4YFmpGw [sage]:2014/05/09(金) 08:14:14.89 ID:25gwZZkAO
穴掘って埋めちまいますぅ!
993 : ◆3QM4YFmpGw [sage]:2014/05/09(金) 08:16:42.43 ID:25gwZZkAO
あ、忘れてた危ない危ない
乙ん

ベルゼバブに迫るとは…鬼心伝心の万能性よ
994 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/05/09(金) 20:30:51.39 ID:nCfoFrTf0
うめうめ

そういえば頻出ワードも更新すべきかもね
995 : ◆qTYZo4mo6E [sage]:2014/05/09(金) 23:25:41.09 ID:SEPCxgYLo
うめうめこうめ
そろ、そろ、投下、出来、そう
996 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [sage saga]:2014/05/09(金) 23:59:10.09 ID:8vnsTlkk0
―それは突然の事だった

沙織「…」

凛「…沙織?どうしたの、様子が…」

沙織「…キヒッ」

―それは目に見えない恐怖

マキノ「…アラ?マダ生キテタノ?…悪イ子ネ、一緒ニシアワセニ…ナリマショウ?」

エマ「…や、やだ、こっちに来るなぁぁぁぁ!!!!」

―それは確かに近づいてくる

メアリー「さりな…ドウシテコウナッチャッタノ…?コウシタカッタ訳ジャナイノニ…」

サリナ「メアリー、今助けるからね…!」

―それはまるでフィクション世界のような…

小梅「…ゾ、ゾンビ系の、パニックホラーみたい…で、でもこれは…」

アイ「今の状況は確かに映画の様だよ…!だがこんなホラー映画は勘弁願いたかったがね!」

加蓮「バリケードがもう限界みたい…!!来るよ!!」

―それは精神を蝕む恐ろしいウイルス

美穂「ひなたん星人じゃなかったら即死だったひなた…」

―それは偽りの幸福に溺れさせる幻惑

クラリス「アアッ!!今ノ私ハ幸福デス!!何ヲシテイタ時ヨリモ満タサレテイマス!!」

神父「…っ!こうなる事だけは嫌だった!!」

―それは生きる者全ての敵

李衣菜「この資料…ゾンビウイルス…ち、治療法は…?…太陽?」

夏樹「…だりー、一緒ニ幸セニナロウ、今あたしハ凄ク幸セダ…」

李衣菜「…ごめんね、ウイルス感染はできない体だから。今のなつきちとは一緒に幸せになれない」

―夜と雲が明けるまでの地獄の中で、生き残れ

劇場版「世界中にヒーローと侵略者が現れた世界で」
≪外伝・世界中ノひーろー&侵略者VSぞんび≫

入場者プレゼントには『暗闇で目が光る!ゾンビアイドルストラップ!』(バージョン違い含め約200種類)
997 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/05/10(土) 05:32:05.83 ID:Tz/huG7AO
>>996
何これ見たい

ストラップ約200種ってこれPポジの皆さんも入ってませんかねぇ…
998 : ◆mtvycQN0i6 [sage]:2014/05/10(土) 09:47:36.45 ID:akDjzIQwo
チケット200枚っていくらかなあ
999 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/05/10(土) 21:00:16.17 ID:TKXMYGRDO
>>998
俺の地元では割引使うと1枚1,000円で買えたはずだから200枚買うと20万円
1000 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/05/10(土) 21:15:33.67 ID:Tz/huG7AO
>>1000なら全員TSイベント発生
1001 :1001 :Over 1000 Thread
              /\
            /:::::/
     ,. - 、 /:::::/     . 、
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