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文才ないけど小説かく 5 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします :2014/02/03(月) 18:12:49.26 ID:AYfuE7Ro0
ここはお題をもらって小説を書き、筆力を向上させるスレです。





◆お題を貰い、作品を完成させてから「投下します」と宣言した後、投下する。



◆投下の際、名前欄 に『タイトル(お題:○○) 現在レス数/総レス数』を記入。メール欄は無記入。

 (例 :『BNSK(お題:文才) 1/5』) ※タイトルは無くても構いません。

◆お題とタイトルを間違えないために、タイトルの有無に関わらず「お題:〜〜」という形式でお題を表記して下さい。

◆なお品評会の際は、お題がひとつならば、お題の表記は不要です。



※※※注意事項※※※

 容量は1レスは30行、1行は全角128文字まで(50字程度で改行してください)

 お題を貰っていない作品は、まとめサイトに掲載されない上に、基本スルーされます。



まとめサイト:各まとめ入口:http://www.bnsk.sakura.ne.jp/

まとめwiki:http://www.bnsk.sakura.ne.jp/wiki/

wiki内Q&A:http://www.bnsk.sakura.ne.jp/wiki/index.php?Q%A1%F5A



文才ないけど小説かく(実験)
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1327408977/

文才ないけど小説かく(実験)2
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1344782343/

文才ないけど小説かく(実験)3
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1357221991/

文才ないけど小説かく(実験)4
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1373526119/




SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1391418769
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もし、探しているスレッドがパートスレッドの場合は次スレが建ってるかもしれないですよ。

【鬼滅の刃】「桜と梅と」【ぎゆしの】 @ 2020/04/04(土) 14:00:20.39 ID:TJReGnPWO
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1585976420/

сталкерさんの集い @ 2020/04/04(土) 12:20:08.68 ID:MPCCGdeQ0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1585970408/

【デレマス】りあむ「マスクがなければ、息をしなければいいんだよ!」 @ 2020/04/04(土) 10:47:32.50 ID:/kZaN+CDO
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1585964852/

【決講】文香「超速…決闘…」 @ 2020/04/04(土) 08:30:17.91 ID:BsVd7L/aO
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1585956617/

モバP「マスク」 @ 2020/04/04(土) 06:55:57.04 ID:HrAyH0FSO
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1585950957/

「簡潔勇者」 @ 2020/04/03(金) 21:16:43.02 ID:TSYDxeWP0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1585916202/

男の子「やーいやーいブス女ブス女ー!笑」女の子「ぶち殺すぞゴミが」 @ 2020/04/03(金) 21:14:28.55 ID:+Z92kLaB0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1585916068/

大和亜季「頼子殿が死んだ目をしているであります」 @ 2020/04/03(金) 20:17:31.80 ID:USuIlgR40
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1585912651/

2 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします :2014/02/03(月) 18:13:46.67 ID:AYfuE7Ro0
▽書き手の方へ
・品評会作品、通常作を問わず、自身の作品はしたらばのまとめスレに転載をお願いします。
 スレが落ちやすいため、特に通常作はまとめスレへの転載がないと感想が付きづらいです。
 http://yy46.60.kg/test/read.cgi/bnsk/1309692934/
 作業量の軽減にご協力ください。
 感想が付いていない作品のURLを貼れば誰かが書いてくれるかも。

▽読み手の方へ
・感想は書き手側の意欲向上に繋がります。感想や批評はできれば書いてあげて下さい。

▽保守について
・創作に役立つ雑談や、「お題:保守」の通常作投下は大歓迎です。
・【!】お題:支援=ただ支援するのも何だから小説風に支援する=通常作扱いにはなりません。

▽その他
・作品投下時にトリップを付けておくと、wikiで「単語検索」を行えば自分の作品がすぐ抽出できます
・ただし、作品投下時以外のトリップは嫌われる傾向にありますのでご注意を

▲週末品評会
・毎週末に週末品評会なるものを開催しております。小説を書くのに慣れてきた方はどうぞご一読ください。
 wiki内週末品評会:http://www.bnsk.sakura.ne.jp/wiki/index.php?%BD%B5%CB%F6%C9%CA%C9%BE%B2%F1
 ※現在は人口減少のため、不定期に開催しております。スレ内をご確認ください。
3 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします :2014/02/03(月) 18:14:21.29 ID:AYfuE7Ro0
▽BNSKスレ、もしくはSS速報へ初めて来た書き手の方へ。
文章を投下する場合はメール欄に半角で 「saga」 (×sag「e」)と入力することをお勧めします。
※SS速報の仕様により、幾つかのワードにフィルターが掛けられ、[ピーーー]などと表示されるためです。



ドラ・えもん→ [たぬき]
新・一 → バーーーローー
デ・ブ → [ピザ]
死・ね → [ピーーー]
殺・す → [ピーーー]

もちろん「saga」と「sage」の併用も可能です。
4 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/02/03(月) 18:23:15.93 ID:AYfuE7Ro0
今回は(皆さんお気づきかも知れませんが)、スレタイから(実験)いう部分を抜きました。

最初は、vipで建てられていたスレをSS速報にて実験的に行うという目的のスレだったのですが、
既にここが本スレ(?)の様相を呈してきており、
かつ前スレのレスで要望の声があったため、(実験)の部分を取ってスレを建てさせていただきました。


或る意味では、作者たちの実験の場と言う意味で(実験)を残してもよかったかもしれませんが、
まあ今回のスレタイで(実験)を外すのも一つの実験ということで、皆さんの反応やレスを見たいと思います。

それではいつも通りに、お題を貰って書いちゃってください。
5 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/02/03(月) 19:29:35.73 ID:bZPOLZoYO
>>1

早速ですがお題下さい
6 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/02/03(月) 21:18:43.79 ID:xfYHfd8AO
>>1
スレ立て、テンプレお疲れさまです

>>5
天敵
7 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/02/03(月) 22:46:25.47 ID:RL9RykHo0
>>6
ありがとうございます!
8 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/02/03(月) 22:46:51.91 ID:RL9RykHo0
>>6
ありがとうございます!
9 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします :2014/02/04(火) 21:35:03.65 ID:/3aMN6MUo
スレ立てお疲れ様です
10 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/02/06(木) 00:21:28.77 ID:y349uQq80
人さえいれば新スレ記念に品評会ってのもアリかと思うんですけどね・・・
11 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/02/06(木) 01:32:00.44 ID:n8KrGl+AO
いや問題なのは品評会やれるくらいの人はいるが
それと参加者が合致しないという所だ
でもやっぱり根気よくVIPにスレ立てするしかない
出来れば通常作品を投下したりして

未だに「ここでやってたのか」という人が来るくらいだから
12 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/02/06(木) 15:40:43.95 ID:MDlOmIYDo
ぶんすかーって、未練たらたらな人多いぜ
特に昔常駐してた奴らは、たまに「そういえばあれどうなった?」って感じでggってたりすると思う
ただ、昔ほどの情熱は無いから、スレを盛り上げてやるぜ的なテンションには乏しい
たまに覗きに来て、品評会やってて、投稿作品が10作くらいあったら、来週は久々に書いてみっかってなる
それくらいの人は相当数いると思うけどね
13 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/02/06(木) 17:53:35.88 ID:Ehg5jhGJ0
>>12

>>ぶんすかーって、未練たらたらな人多いぜ
ブーメラン刺さってますよ。

だいたいスレが盛り上がってる時は、トリップをつけて書きまくってる人がいて、
その人がスレの勢いを伸ばして、皆が負けじと書き始めるみたいな感じだったからな。
最近はそのよく書いていた人も来ないし、新たにトリップ付けて書きまくってスレを盛り上げる人も居ないから、過疎気味。

今、品評会開いたらどうなるかっていうのは面白そうだけど、誰も書かなそうだよね。
14 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします :2014/02/06(木) 18:08:38.41 ID:K6oOUKxWo
一回やってみてもいいと思うけど
少なくとも>>10>>12は書くんだろうし
15 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/02/06(木) 18:41:36.03 ID:MDlOmIYDo
>>13
もちろん、俺も含めての話ね

品評会やってた頃って、vipにあったのに妙にルールがしっかりしてたというか、運営がきっちり仕事してた
仕切りがgdgdになったからってのも離れた理由としてあるんじゃない?
あと、やっぱりここでやってても人はこねーわな
当時は場所がvipだったし、興味本位で覗きにきてそのまま居つくやつも結構いたし
で、ある程度人目に付く場所で、上でも書かれてるけど酉付きが作品投稿して感想書いてみたいな
上手いこと循環してたよね
16 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/02/06(木) 21:04:23.73 ID:mnPt2WA2o
場所云々より、初見にわかりにくいんじゃないの
人は循環するもんなんだから、ずっといる人だけわかる、じゃ過疎るのは当然
17 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/02/06(木) 21:52:33.24 ID:Ehg5jhGJ0
>>16
そうなると、やり続けることに意義がある。ということになる。
まあ、でも確かに半年に一度程度の開催じゃ、雰囲気が伝わらないのもうなずける。

個人的には、一ヶ月に一度でも開催して、徐々に人を増やすのもアリな気はする。

参加する人が二人くらいでも、評価はしてもらえるんだし。
そもそもvipとは板の雰囲気が違うからvipの様にはならないと思うし。

でも、まあ>>15の言いたい事も分かるしなあ。


18 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/02/06(木) 22:29:23.34 ID:n8KrGl+AO
じゃあ過去はすっぱり切って、この板ならではの文才スレにしていく

という結論でいいのかな?
あくまで人の呼び込みの話ね
19 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/02/07(金) 12:04:22.49 ID:nQmWhBUm0
お題ください
20 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/02/07(金) 12:50:01.78 ID:tfxcAstXo
眼帯
21 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/02/13(木) 21:59:38.70 ID:P71JBaPU0
>>19
ありです
22 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします :2014/02/15(土) 00:08:48.43 ID:Qkv+9+1DO
品評会、やりませんか
23 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします :2014/02/15(土) 00:09:30.08 ID:1y4lIGJr0
おだうぃ
24 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/02/15(土) 00:10:16.74 ID:KRLskGtH0
>>23
まさかタクアン……?
25 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/02/15(土) 01:10:27.79 ID:tLpnvejAO
>>22
今は唐突にやろう、と言っても無理かと
26 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/02/15(土) 03:07:42.06 ID:BAtwftkVo
とにかくやってみてもいいんじゃない
27 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/02/15(土) 04:52:35.56 ID:tLpnvejAO
まず一週間くらいエントリー期間を設けるのはどうだろうか
28 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/02/15(土) 08:58:14.99 ID:u2Bhk7tU0
書きやすそうなお題なら一作品もなしということはないかもしれないね
29 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/02/15(土) 11:28:04.22 ID:Tc7KTahp0
>>27の言うように長めにエントリー期間を設けて、人集まるかどうか試すだけでもやってみるのはいいんじゃないかな
30 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします :2014/02/15(土) 13:56:53.88 ID:eF0JsesVo
問題は誰が書きやすそうなお題を決めるかだね
安価とかでいい?
31 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/02/15(土) 19:35:20.03 ID:yGETcxLS0
いいよ
32 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします :2014/02/16(日) 09:17:16.41 ID:vf/gCp1DO
では手っ取り早く>>32
33 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/02/16(日) 11:59:40.84 ID:LjYUHYnAO
確かに手っ取り早いな
34 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/02/16(日) 14:26:16.70 ID:YR6XTNmR0
これはツッコミ待ちなの??
35 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/02/16(日) 14:41:08.50 ID:LjYUHYnAO
それにしては間が長いわ

品評会お題>>38

エントリー期間は来週の日曜23:59まで
但し実験的なのでエントリー期間に関わらず参加は可とする
後の流れは同じ、という感じでいいのかな?
36 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/02/16(日) 15:06:57.59 ID:YR6XTNmR0
良いと思うよ。
37 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/02/16(日) 16:15:22.53 ID:BT2e7CcC0
38 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/02/16(日) 18:28:58.61 ID:vIK8tLrvo
取引
39 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/02/17(月) 23:06:03.68 ID:bw06xV870
お題ください
40 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/02/18(火) 00:27:25.29 ID:NZ4MHn5yo
>>39
挨拶
41 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/02/18(火) 00:29:09.19 ID:NZ4MHn5yo
>>38
品評会承知
42 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/02/18(火) 00:38:10.90 ID:F8VEEqxAO
品評会のお題>>38
【取引】に決まったので、参加可能な方は日曜日の23:59までに
参加しますと書き込んでください
43 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/02/18(火) 00:39:16.94 ID:F8VEEqxAO
品評会のお題>>38
【取引】に決まったので、参加可能な方は日曜日の23:59までに
参加しますと書き込んでください
44 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/02(日) 15:18:15.64 ID:YEH8tddLo
サーバーが復旧しましたね
45 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします :2014/03/02(日) 16:22:15.40 ID:BBw8cLFAO
やっとか
とりあえず通常作品の投下待ってるわ
46 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/02(日) 17:48:37.44 ID:UaGoOpzr0
鯖落ちの影響もあるし、品評会のエントリーは伸ばす方向でいいかな?
次の日曜くらいまででどうだろう?俺も目途がついたら参加表明しようと思う
47 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/02(日) 18:06:55.70 ID:YvbZ/G2J0
おけです
48 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/02(日) 19:19:25.60 ID:BBw8cLFAO
いいよー
皆鯖復旧気づくといいが
49 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/02(日) 19:42:42.76 ID:j9BU0F200
いいと思う

そういや、品評会の日程って今回いつだろ
来月初め?
50 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/02(日) 19:54:58.19 ID:BBw8cLFAO
それか月末締切とか?
どっちが時間取れるんだろうね
51 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/02(日) 20:41:44.54 ID:klnjjAeu0
お題ください
52 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/02(日) 21:54:44.77 ID:UaGoOpzr0
>>51
ビニール傘
53 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage saga]:2014/03/02(日) 22:40:45.75 ID:YEH8tddLo

2014年3月 品評会日程表

エントリー受付:〜 03/09 (日) 23:59
執筆期間:03/10 (月) 00:00 〜 03/26 (水) 23:59
投稿期間:03/27 (木) 00:00 〜 03/29 (土) 23:59
投票期間:03/30 (日) 00:00 〜 04/01 (火) 23:59
集計、発表:04/02 (水)


とりあえず作ってみました。
投稿と投票は土日を絡めた方がいいかなと思い、いつもより全体的に期間が短めですが
不都合があれば適宜変更してください。
54 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/02(日) 23:07:07.69 ID:BBw8cLFAO
うん、いいと思うよ
55 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/03(月) 00:23:23.93 ID:ZOA7w7Jt0
>>53
土日に絡めるの賛成
遅筆だから最後の追い込みが……
56 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします :2014/03/03(月) 08:15:52.80 ID:8MBcAt43o
なんで投稿期間も1週間にしないの?
57 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage saga]:2014/03/03(月) 15:05:22.65 ID:K8pweTih0
>>56
投稿する気のある人はたとえ期間が三日でも
投稿期間に間に合わせて執筆し、投稿するのではという判断です
執筆時間もエントリー期間含めると三週間ありますし
それに今までの流れをみる限り、
投稿期間が長いからといっても作品が集まるということがないようなので
もちろん一週間のほうがいいというのであれば
投稿期間に限らずどんどん変更していってください
みなさんの意見を尊重します
58 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/03(月) 15:19:21.99 ID:vh13RZvuo
品評会のお題は>>38で変更ないよね?
59 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/03(月) 16:40:44.49 ID:ICYo3erAO
お題は取引のままでいいんじゃない

投稿期間は変える必要はないね
60 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします :2014/03/03(月) 19:36:39.68 ID:8MBcAt43o
いや作品が集まる云々じゃなくて日曜日にしか投稿無理だわーとか言う人もいたりするかもしれなんだり
まあそんな事を心配するほど人がいないのでどうでもいい話だと思うけど
せっかく期間が長いんだからわざわざ短くする必要もない気がしただけ
投稿の数が少ない今の状況でVIPでも無い事を考えると分ける必要すらないとも思うけどね
色々言ってみたけどきっと書くこともないと思うのですんませんした!
61 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/03(月) 20:26:36.53 ID:ICYo3erAO
まあなんというか最後の一行ワロタ
62 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/04(火) 18:58:31.19 ID:+WhVDsfg0
BNSK復活してたのか,09年にVIP規制されてから知らなんだ
頑張ってくれ
63 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします :2014/03/04(火) 20:41:37.07 ID:tzTHwU/n0
よっしゃ品評会参加の踏ん切りついた
書けるかはわからんが頑張る

ちなみに酉つけたりした方がいいの?
64 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/04(火) 20:49:11.56 ID:KbshUBcr0
>>63
だね
65 : ◆veZn3UgYaDcq :2014/03/04(火) 21:31:30.44 ID:uH/wOaeU0
>>64
さんきゅー
66 : ◆Gr.Ti1RX5s [sage]:2014/03/04(火) 21:37:59.49 ID:cnwI6BSn0
ボンヤリとだけどネタ思いついたから書けそう
品評会参加します
67 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/04(火) 22:48:23.41 ID:+WhVDsfg0
軽めのお題ください
68 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/04(火) 22:51:02.23 ID:4HQ9zpWlO
>>67
風船
69 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/04(火) 22:53:01.43 ID:+WhVDsfg0
さんくす
70 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/04(火) 22:53:36.57 ID:+WhVDsfg0
さんくす
71 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします :2014/03/04(火) 23:43:05.16 ID:Fqi34+7Xo
ところでエントリー受付って何?
72 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/04(火) 23:44:52.25 ID:i6FNlqQ1o
重厚なお題下さい
73 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします :2014/03/04(火) 23:47:30.05 ID:Fqi34+7Xo
>>72
閉ざされた歴史
74 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/04(火) 23:49:30.58 ID:i6FNlqQ1o
>>73
ありがとうございます。

想像をかき立てますね。
75 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/05(水) 00:13:30.35 ID:V9Oc54wAO
>>71
このスレを読めば流れが分かる
76 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/05(水) 00:25:05.03 ID:nmrFA/ZB0
1600字書いたとこで絶望的につまんなくて悲しんでる
77 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/05(水) 01:23:32.43 ID:WydL4ySt0
書き直しても良いのよ?
78 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage saga]:2014/03/07(金) 17:50:35.66 ID:5hW7DeGAo

2014年3月 品評会

 お題:『取引』



 品評会日程

エントリー受付:〜 03/09 (日) 23:59
執筆期間:03/10 (月) 00:00 〜 03/26 (水) 23:59
投稿期間:03/27 (木) 00:00 〜 03/29 (土) 23:59
投票期間:03/30 (日) 00:00 〜 04/01 (火) 23:59
集計、発表:04/02 (水)

 ※不都合があれば適宜変更





 只今エントリー受付中です...

 現在のエントリー登録者
・◆veZn3UgYaDcq 氏
・◆Gr.Ti1RX5s 氏

 ※実験的なものなので参加表明に関わらず参加は可
79 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/07(金) 21:02:33.27 ID:crHP7lm5o
鯖復活したと思ったら、品評会やるのか
俺も参加しよかな
80 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/07(金) 21:49:32.92 ID:crHP7lm5o
ところで、レス数制限ってないの?
81 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/07(金) 22:34:30.29 ID:Zh6FCcGL0
>>80
ないね、今のところ
82 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/07(金) 22:49:06.83 ID:crHP7lm5o
>>81
ありがd
参加表明しなくても参加していいんだよね? 書けるかどうか分からんし
83 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします :2014/03/07(金) 23:54:31.83 ID:1nlycfDUo
今回は良いけど次回からはエントリーしないと参加できないってこと?
84 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/08(土) 00:51:31.09 ID:M8C9MO4AO
いや、とりあえず試験的なものだし
そもそも次回の品評会にもエントリーを設けるかどうかは分からないし
またそれは皆さんで決めればいい
85 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/09(日) 15:04:40.32 ID:hh6od4Gw0
エントリー期間、今日までか
86 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage saga]:2014/03/10(月) 00:06:15.50 ID:OFXzOBeSo

2014年3月 品評会

 お題:『取引』



エントリー受付終了しました。

 登録した方はもちろん、登録はしていないけれど参加しようと思っている方も含めて
 みなさん頑張ってください
87 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/10(月) 00:12:58.72 ID:3Edm+x2Ao
どのくらいの長さが読みやすいんだろう?
基本的に書く前に、どのくらいの長さの話書こうって決めてから書くから、レス制限なしだとちょっと迷う
オーソドックスに5レスとかがいいんかな
88 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/10(月) 00:21:29.16 ID:OFXzOBeSo
>>87
自分の場合は6レス越えてたらちょっと長いかなと感じるかな
ただ長くても引き込まれる作品なら気にならなくなるけどね
89 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします :2014/03/10(月) 22:44:12.08 ID:14PvB90b0
お題ください
90 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします :2014/03/10(月) 22:45:09.35 ID:14PvB90b0
お題ください
91 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします :2014/03/10(月) 22:47:35.87 ID:14PvB90b0
お題ください
92 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします :2014/03/10(月) 22:50:44.99 ID:14PvB90b0
連投ごめんなさい
93 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/10(月) 22:52:27.99 ID:kRnabpnm0
>>89-91
一つでいいよな?
「庭」なんてどうだろう
94 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/11(火) 02:47:28.59 ID:v03svTayo
ちょっと思いついたことがあるので書かせてほしい
以前、BNSKをまた盛り上げるにはみたいな話が出たことがあるよね
その流れからってわけじゃないと思うんだけど、今回久々に品評会が開かれることになって嬉しく思う

で、本題
このスレに新しく人を呼ぶためには、やっぱり宣伝が必要だと思う
ただ、昔のようにvipにスレを立てても、スレ自体を維持できないと思うし、創作文芸板みたいなギスギスしたところでやるのもちょっと違う気がする
そこでなんだけど、てきすとぽいってサイトがある
文章作品の募集や、感想投稿、票を投じるコンテスト等のイベント支援を行っているサイトらしい
ここ使って、BNSK品評会のイベントをやってみたらどうだろうか

正直、詳しく調べたわけじゃないからまだ何とも言えないけど、開催イベントに対する自由度は高そうだから、BNSK品評会ってことで宣伝しても差し障りは無いように見える
このサイトの利用者の数は知らないけど、小説投稿を行っている人間が集まるサイトだから、もしかしたらスレを知らない人間でも参加してくれるかもしれない
ツイッターと連携した宣伝もできるみたいだ

ただ、当然マイナスもある
外部サイトを使うと、いわゆる匿名掲示板を使った小説投稿っていう良さは損なわれてしまうかもしれない
スレの空気に合わない人が入ってくる可能性もあるし、忌憚ない感想を書けなくなる恐れもある
他にも俺が気付いてないマイナス部分もあると思う

そもそも、これは完全に俺個人の突発的な思い付きで、スレ住人に否定されるようなら強行するつもりは全くない
ただ、もしこのスレにまた活気が戻ったら嬉しいと思う人がいるのなら、時間があればでいいので、サイトの方を覗いて、意見をくれないだろうか?
一言「反対」だけでも、やる場合の条件等でも疑問でもいい
さらにいい場所があるなら、そこを提示してくれても構わない
仮にやるとなれば、言いだしっぺの俺が仕切るつもりではいる
一応、漠然とどうやってここと連携して運営するか、みたいのは頭にあるので、質問等があれば答えられる範囲で答える

何人いるか分からないけど、住人の方見ていたらレスポンスください
よろしくお願いします
95 : ◆BNSK.80yf2 [sage]:2014/03/11(火) 02:51:26.46 ID:v03svTayo
一応、証明のために酉付けておきます
何の反応も無いようなら、反対意見が多そうってことで断念するつもりでいます
品評会の日程も考慮して、10日ほどは待つつもり

スレ汚し失礼しました
96 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします :2014/03/11(火) 11:40:22.63 ID:nJjr/21Q0
>>93
さんくす
97 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/11(火) 16:49:12.60 ID:0eT1aKVz0
>>93
個人的には消極的な賛成。自分では積極的にやらないけれど、誰かがやるなら、まあいいんじゃないのかな、と言う立場です。

確かにさ、新しい人たちがここに入って来て、スレの空気自体が変わってしまうのではないかという危惧はあるけれども、
そもそも現時点で小説を書く人が全くいないんだから、新しい人が来て、新しいスレの空気を作り出して書く人が増えるのは、スレにとってもいいことなんじゃないかと思う。
そもそもこのスレにしたって、vipの時とは結構雰囲気が違うし、スレが続いていく中で優しい批評ばかりが出る時や、厳しい批評が溢れる時など、その時に常駐していた人によって雰囲気は水物みたいに変わるから、雰囲気が変わることに関してはあまり気にしない。このスレ自体が、そういう性質を持っているから。
せっかく品評会やるんなら、盛り上がった方がいいし、人を呼ぶのは個人的に反対しない。

もし誰かが、今までの雰囲気を守りたいって言うのならば、ちゃんと厳しい目線の批評や指摘を行いつつ、それが攻撃的になったり人格批判に繋がらないような、今までのBNSK批評スタイルを貫いて行けばいいと思う。そのBNSK的雰囲気が嫌な人は勝手に出ていくだろうし。まあ、それも今常駐して感想を書く人に寄るだろうけれどさ。


俺は、文才ないけど小説かく(実験)2あたりからトリップ付けて書き続けてた者だけど、スレを盛り上げるために何か行動をするのは、個人的には賛成だし悪い事じゃないと思うよ。今までだって、実験的にやってきたスレなわけだし。実験的に何かをするのは、批判されることではないと思う。
ただ、宣伝してみたところで、あんまり効果がない、或いは一時的な効果しかないっていう事には、なりやすいと思うけれど、無料で出来るコマーシャルと考えれば、悪くないのかもしれない。

まあ、他の人の意見も聞きながら考えてみてください。俺は、とりあえず最初に言ったよう、消極的な賛成という無責任な立場を取らせてもらいます。ごめんなさい。でも、面白そうだからやってみてもいいのよ。

98 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/11(火) 16:50:06.08 ID:0eT1aKVz0
ごめん、普通に安価ミスってた。

分かるとは思うんだけれど、一応>>94に宛てたレスってことで修正。
99 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/11(火) 22:05:24.12 ID:0LPl3qeH0
>>94
|・ω・)ノ賛成

スレを盛り上げるのに必要なのは宣伝や露出で、今はそれが圧倒的に足りてないと思う
それと、
1〜2か月に一度くらいの間隔で品評会をやり続けるか、
通常作品の投下が増えないと、新規の人の定着は難しいと思うから
しばらくはそこを念頭に入れて作品投下の強化をしておく必要もあるんじゃないかな

まあ、スレの雰囲気が変わるほど大勢ってのはそうそう来ないと思うから
ガンガンいろんなところで宣伝してみればいいとおも


100 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/11(火) 22:14:15.14 ID:uEIpJSGqo
小説投稿サイト列挙して出来そうなとこ探したらどうよ?
101 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/11(火) 22:41:51.47 ID:uCGCIBoAO
正直今も文才スレに残ってる人の中で、それ程保守的な人はいないと思う
不安はあるが全体的には賛成する
VIPにスレを立てていた時は、それがもう宣伝になっていたわけだしね

ただ俺らはともかく、新規さんにも極力戸惑うことがないよう
品評会等のテンプレの見直し、改善、誘導はきちんと煮詰めないといけないとは思う
極端な話、>>1嫁カス、では駄目なわけで
我慢強く毎度誰かが説明する必要はありそうだ
その負担を出来るだけ軽減するために最低限の見直しをしてから、宣伝に入るなら良いと思う
102 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします :2014/03/11(火) 22:54:55.33 ID:jOqqziVOo
このスレにこだわる必要があるのかい?
外に向いていくというならもう「てきすとぽい」なりなんなりで「BNSK杯」を開催するだけで良いんじゃないの?
そもそもよそのサイトなりでBNSKと同じことをやっているところはないの?
そこじゃだめなの?
結局何がしたいの?
小説書きたいのかだべりたいだけなのかBNSK残したいだけなのか
103 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/11(火) 23:50:33.33 ID:uCGCIBoAO
>>102
まず君はどうしたい?
また>>94の案に対して賛成なのか反対なのか、どちらでもないのか
104 : ◆BNSK.80yf2 [sage]:2014/03/11(火) 23:56:49.97 ID:v03svTayo
今帰宅した
思ったより、たくさんのレスがあって嬉しい
とりま、質問の形をとってる>>100>>102に答えるね

>>100
自分の知ってる小説投稿サイトは
自分の提示したてきすとぽいの他は、なろう、ごはん、ラ研くらいしかない
この3つではなくてきすとぽいを提示した理由は単純
その三つのサイトが、すでに確立されたコンテンツだからだね
>>102へのレスともちょっと被るんだけど、そこでやるのならもうBNSKでやる意味もないんじゃないかって思ったんだよ
つまり、BNSKの宣伝ではなく、小説の投稿がメインの目的になってしまうってこと
これなら別に、わざわざ品評会っていう形をとってやる必要もない、やりたい人が個人でやればいいって思ったんだ
んで、てきすとぽい以外に良さそうなサイトを知っている方がいたら、勿論教えてほしい
自分も物書きの端くれだし、BNSK差し引いても投稿サイト自体に興味があるからさ
あくまで、自分の知っている中では一番良さそうかなって思っただけだから、新しい方がよさそうなら当然そっちでやる方で考えるつもり

>>102
このスレにこだわる理由は、単に自分がこのスレが好きだからですね
よそのサイトでBNSKと似たようなことをやっているところがあったとして、そこでやれば? と言われても、それはBNSKじゃないからとしか答えられない
結論を言えば、小説書いたりだべったりをBNSKでやりたい、そのために思いついたことがあるからやってみたい、ってだけです

賛成意見、消極的賛成意見をくれた>>97 >>99 >>101もありがとう
105 : ◆BNSK.80yf2 [sage]:2014/03/12(水) 00:13:08.32 ID:ujmWgpMno
あと、昨夜書き込んでから思ったことがあるのでちょっと書きます
品評会を宣伝する以上、品評会が品評会の形を成しているかっていうのは重要だと思う
はっきりいってしまえば作品数の問題
当然、この宣伝云々を言い出した俺も参加するつもりだけど、もし書くのを迷ってる方がいたら是非前向きに考えてみてほしい
せっかく久々に品評会をやるんだから、よそのサイトに出張するにしろしないにしろ、出来るだけ賑わってほしいから
106 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/12(水) 00:46:52.23 ID:EbAubzso0
議論するのも、まあとても大事だとは思うけれど。でも要は小説書いて、ガンガン投稿してりゃ他人の小説の投稿も増えて、
循環的に人は来るわけなんだよね。
宣伝するのも大事だけどさ、それよりもスレに居る人が通常作どんどん投稿していくのも大事なんじゃないのと思う。

私は最近このスレで書いてないから、外野的な意見になっちゃうけれど、
とにかく皆が通常作を地道に一つずつ投稿していくのが何より大事だと思う。
そんなことわかってるって言われそうだけれど、なんか議論ばかりが増えて小説が一つも書かれていない現状が、
確かにこのスレの存在意義を曖昧にさせる気がする。
以前に何回か過疎った時に、小説の練習もかねてガンガン投稿していたら、批評してくれる人や書いてくれる人増えたわけだし。
だから、宣伝も大事だと思うけど、自身が作品を書いて投稿していくのも大事だと思う。それがスレを盛り上げるために一番大事な事だと思う。みんな分かってると思うけれど、マジレスになってしまうけれど。
誰かが投稿することによって、それで競争や、対抗心が生まれるんだし。

通常作があまりない中で、品評会やっても、せめて盛り上がるのはスレの最初だけだと思う。
前スレも前々スレもそうだったし。

今なにも投稿していない古参の自分が言っても説得力ないと思うけどさ。そして、偉そうな意見でごめんなさい。
一意見として、頭の片隅にでも入れて、受け取ってもらえればと思います。
スレ汚しすまん。

と言うか、黙って私も通常作投稿すればいいんだよな。
でも長編書いてて、なかなか書けないし。
真面目に長々と語ったわけだけれど、
結局、ごちゃごちゃ言わずにお前が投稿すればいいだろっていう、ブーメランが来ること必至ですね。はい……。

107 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/12(水) 09:53:22.49 ID:xf/R6k4U0
俺も宣伝には賛成。人が少ない中なんだから実験的にでも露出を増やすのはいいことなんじゃないかな
むしろ人が増えすぎて雰囲気が変わるとかより人数も含め大して変わらんって可能性の方が高そうな気がするんだ。>>94には悪いが
だからそこまでリスクに慎重にならずにやってみてから結果を見て考えるっていうのも手かな、と

あと、話は変わるが個人的には過度のsage進行もスレを目立たなくしてるんじゃないかと思う。
お題募集くらいでも上げていいんじゃないかな?
108 : ◆BNSK.80yf2 [sage]:2014/03/12(水) 10:36:32.21 ID:ujmWgpMno
>>106
通常作が増える、というか小説投稿そのものが増えるって確かに大事なことだ
というか、こういう宣伝っていうのは、あくまで投稿する人がいることが前提の話で、優先順位が違うんじゃね? と言われればその通りとしか言えない
ただ、こんなことを言ったら身も蓋もないけど、通常作って「投下を増やそう!」と呼びかけたところで、書く側がやる気にならないのなら増えないと思うんだ

自分はスレに常駐してた頃からほぼ通常作の投稿はしなかった
たまに書きたくなったら書くくらいで、ほとんど品評会目当てだった
何故って、やっぱり票っていう目に見える指標を使って競い合いが出来たから、勝ち負けが分かりやすかったんだよね
ここからは自分個人の考えになるけど、このスレで作品書く人が増えるには、やっぱり品評会が7割近いウェイトを占めてると思うんだ
宣伝しようって思ったのは、もちろん人が増えてくれるっていうこととは別に、新しい刺激が入って元からいる住人のモチベが上がるかもと考えたから
モチベーションがないと結局作品投稿って増えないと思うからさ
俺自身、>>22からの流れを見てモチベーション上がったしね

ただ、考え方として貴方の言っていることはすごく正しいし、俺の言ってることはすごく短絡的なのかもしれない
この辺も含めて、あと1週間ほどスレの様子をみて、外部出張するかどうかは決めようと思います
もしかしたら、そういうことをやるには時期尚早なのかもしれないので
勿論、よそへ行かない場合でも品評会には参加するつもりです
109 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします :2014/03/12(水) 11:01:39.77 ID:H+sbFPLJo
>>108
水を差すようで申し訳ないんだけど見なおしたらスレが5になってからひとつも作品がでてないのね。
もし一週間後にも同じ状況だったらたぶん宣伝して興味持った人が来てもわざわざ過去ログまでは見ないだろうし
ここはよくわからないからやめとこうってなるんじゃないだろうか。
宣伝には賛成なんだけどやるなら最低ひとつは通常作とその感想が出た後か、品評会終わってからがいいと思う
もっともこの一週間でそれがでたらなんの問題もないんだけど

偉そうにこんなこと言っといて人任せもあれなんでとりあえずお題下さい。
110 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/12(水) 12:31:25.81 ID:BCIPgLO3o
俺もそう思うよ。宣伝なんて元がしっかり機能していて初めて有効なんじゃないかな
>>109
お題『数学』
111 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/12(水) 16:24:36.16 ID:od/CEUfAO
どっちが、ではなくて
両方必要なんだけどね
112 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/12(水) 17:47:34.60 ID:EbAubzso0
>>108
ごめんなさい。私もあなたの意見を否定しているわけではないんです。だからそう言ってもらえると嬉しいです。
もちろん宣伝は大事だし、スレを盛り上げるために何かしようと言うあなたは立派だと思う。
個人的にあなたの意見に賛成です。宣伝は大事。
そして、出来れば小説も、気が向いたら短くても良いから投稿していこうよ、と言う事を言いたかった。

今のここって、トリップ付けて書き続けてる人には、お互い分かり合ってるからかそこそこ厳しい批評も出るけど、
新人さんにはかなり優しい批評が付くことが多いから、まあ臆せず、軽い気持ちで書いてほしいな、と。
私も書かれてたら感想書くし。厳しいこと言わないし(笑)

とりあえず誰かが書けば、それがきっかけとなって増えるような気がします。
もちろん、最近やってなかった品評会やるのも、良いことだと思う。どっちも大事。




113 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします :2014/03/12(水) 20:25:43.72 ID:M91hPhDYo
お題ください
114 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/12(水) 20:26:18.94 ID:s6lWiuwR0
>>113
記念日
115 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします :2014/03/12(水) 20:27:23.01 ID:M91hPhDYo
>>114
ありがとう
116 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/12(水) 21:35:34.23 ID:+KHuYplk0
お題いくつかください!
117 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/12(水) 21:43:45.11 ID:od/CEUfAO
>>116
持続勃起症
118 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします :2014/03/12(水) 22:05:06.77 ID:M91hPhDYo
>>116
露出狂
119 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/12(水) 22:56:02.47 ID:CozAM1aN0
>>116
ドロップキック
120 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします :2014/03/12(水) 23:44:49.03 ID:EbAubzso0
お題ください。
121 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/12(水) 23:46:38.85 ID:SW/EOtER0
>>120
この針は誰の物だ!
122 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/12(水) 23:49:37.52 ID:od/CEUfAO
>>120
写真判定
123 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします :2014/03/13(木) 02:49:36.10 ID:7U7u0FE3o
お題plz
2つくらい
124 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/13(木) 02:52:32.99 ID:mwxbRqv90
>>123
あれなんだっけ
125 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/13(木) 02:53:46.74 ID:/BHSsaik0
財布の中身
126 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/13(木) 02:55:40.71 ID:/BHSsaik0
そーりー>>123でございます

財布の中身
127 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/13(木) 03:05:20.67 ID:7U7u0FE3o
ありがとう
128 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/13(木) 03:36:34.64 ID:mvi7Kpvf0
>>117-119
ありがとうございます!
129 : ◆/xGGSe0F/E :2014/03/14(金) 00:15:50.46 ID:Wrv0xINX0
通常作投下します。
久しぶりです。あんまり長くないです。気軽に読んで、感想や批評をいただけたうれしいです。
130 :針(お題:この針は誰の物だ!)1/3  ◆/xGGSe0F/E :2014/03/14(金) 00:18:46.86 ID:Wrv0xINX0
「この針は誰のものだ」
 僕はそう言いながら、目の前に集まっているモンスターたちを見回した。僕が受け持つ二年四組のクラスは、一見すると
仲が良くて優等生が集まっているように見えるが、事実は全く違う。皆が皆、常に誰かを傷つけようと画策しており、腹の
中では化け物を飼っている生徒が多い。そんなの当たり前じゃないか、誰もが大きさに関係なく己の中に悪い感情やら悪意
やらを抱えているじゃないかと言う意見はもっともだが、しかし僕のクラスの生徒はそんな甘いものじゃない。彼らは隙あ
らば誰かを殺そうとしているのだ。誰かを殺してみたいと思っているのだ。実験的に、人間を殺してみたいと思っている、
無邪気な好奇心と言う名の大きな悪意を抱えた化け物たちが揃っているのだ。先月から不登校になっている山田と言う男子
生徒がいるのだが、彼はこのクラスの中でも地位が低く、多くの者にいじめられていた。悪意をぶつけられ、蔑まれ、スト
レス発散のはけ口として、彼はこのクラスの中に存在していた。彼へのいじめはだんだんエスカレートしていった。机の中
にカッターの刃がばら撒かれていたり、下駄箱に猫の屍骸が入っていたり、屋上から飛び降りさせられたりした後に、彼は
自分の身に巻き起こる不条理な環境に耐えられなくなって自殺した。享年十四歳。しかし、クラスメイト達は葬式で泣きは
したものの、誰一人として悲しんでいた奴はいない。次の日も平然と笑いながら学校に来て、山田の座っていた机を蹴飛ば
し、死んだ後も彼の尊厳を、生と死を、貶しめ続けていた。ひどく歪んでしまった中学生たち。それが僕の受け持つクラス
だった。そして次の標的は、どうやら僕になったようだった。教員歴五年の、まだまだ新人ともいえる僕を、彼らはずっと
嘲笑っていた。真面目に僕の授業など聴かず、僕の顔の醜さを嘲笑い、平気で暴力をふるい、僕が叱ったところで、彼らは
狂った親の後ろ盾を期待してPTAに訴えたり、僕が叱った部分だけを動画撮影して動画サイトにアップロードしたりして、僕
だけを悪者にしようとしている。僕は、どうすればいいのか分からなかった。中学生が、僕の目の前にいる大人とも子供と
もつかない思春期の人間たちが、こんな純粋な悪意を持って、歪んでいたなんて、僕は知らなかった。僕は毎日毎日、彼ら
に玩ばれながら、胃潰瘍になったり、不眠症になったりしながら、徐々に壊されていった。そんな折に、教室内にある僕の
机の椅子に、針が突き立てられて置かれていたのだ。もちろん僕は、そんな恐ろしいものが仕掛けられているとは想像もせ
ずに、安易に座ってしまい、そして尻に強く刺さった長さ七センチほどの針の鋭い痛みに、神経に電撃が走ったような鋭い
痛みに、声もなく蹲った。僕は彼らの仕掛けられた罠にひっかかってしまったのだと気が付いた。慌てて椅子を見てみれば、
椅子のクッション部分に何らかの方法で針が固定されていた。先端部分が天井に向かって真っ直ぐに伸びている。あんな恐
ろしいものが、僕の椅子に仕掛けられていたなんて。僕はもっと注意深く生きるべきなのだ。彼らはどんどん、僕に対する
密かな攻撃性を増している。僕の肉体を傷つけることを厭わなくなっている。そのうち、本当に僕は山田みたいに、精神を
病むか、彼らの罠にかかるかして、死んでしまうのではないだろうか。そう、山田を守れなかった僕が、己を守れるとは思
わない。すでに僕は、この生活に参り始めている。割と本気で辞職や求職を考え始めている。僕に味方はいない。この話を
したところで、誰も本気にはしない。いじめ問題など、学校からしたら面倒くさくて、発覚を信じたくないもののひとつな
のだ。上の人々は、いじめ問題などがあったとして、現場が何とかして耐えるか解決すればいいと本気で考えているのだ。
だから、僕にはもう、味方も助けもない。もちろん、僕がそう思いこんでいるだけで、何かしら解決策があったり、味方し
てくれるような人々がいるのかもしれないが、しかし、僕にはもう、それにたどり着く体力や、想像力なんかもわいて来ず、
ただひたすら痛みや攻撃を我慢しながら、何とか日々を消化していくことしか考えられなくなっている。それでも、僕は建前
として、あるいは最後の無力な抵抗として、死んでいないことを証明するために、こう言うのだ。
「この針は誰のものだ」
 しかし、それに答える者はいない。彼らは、ただ心の中で笑い続けているのだ。恐怖に怯え壊れていく僕の姿を笑い続けて
いるのだ。
131 :針(お題:この針は誰の物だ!)2/3  ◆/xGGSe0F/E :2014/03/14(金) 00:19:54.61 ID:Wrv0xINX0


 最近、先生の様子がおかしい。山田君が、家庭環境の原因で自殺した後から、先生はどんどん様子がおかしくなっていっ
てしまった。先生には元々、気弱な所があって、私たち生徒にも物事を強く言えずに、おどおどとしているところがあった
けれど、それでも優しく丁寧に教えてくれる先生だった。このクラスは元気な生徒が多くて、授業中も盛り上がったり騒い
だりして、先生の授業を中断してしまうことがあったけれど、先生は困ったような顔をしながら笑って、私たちを注意して
いた。しかし、最近はどうだろう。先生は、私たちを怖い目で見つめながら、ぶつぶつと不明瞭な言葉を呟き、クラス中を
睨みつける。その様子に私たちも、黙らざるを得ない。先生の目には隈が出来始めて、毎朝、お前らは人殺しだ、中学生は
歪み過ぎているという、先生自身が病んでいるような重い話を何分も語って、それから意味不明な事を話し続けるのだ。は
っきり言って、最近の先生は怖かった。一番怖かったのは、朝の小テストがあって、先生がプリントを配った後に己の席に
着いた時に、いきなり奇声を上げて飛び上がったことだ。私たち生徒は驚き、恐怖を感じ、皆が先生の様子を恐々と窺って
いた。先生は、ぶるぶると震えたかと思うと、急に叫びだし、怒り狂ったかのように、私たちを怒鳴った。
「この針は誰のものだ!」
 私たちは、先生が何を言っているのか分からなかった。皆が黙っていた。針とは何のことだろう。先生は、しかし怒鳴り
続ける。
「お前らが仕掛けたのは分かってるんだ。山田の時みたいに、俺を殺そうとしてるんだろ」
 先生はどうやら、私たちが山田君を自殺に追い込んだと思い込んでいるらしい。しかし、それは大きな勘違いだ。むしろ、
私たちと山田君は親友だった。山田君が死んだのは、父親の暴力が続き、夜ご飯すら食べさせてもらえずに、朝ごはんも食
べさせてもらえずに、母親にも蹴られ、人格を否定され続けたからだった。そんな彼を、最初は同情的に、私たちは仲間に
入れ、遊んでいたのだが、そのうち彼が学校に居る時にだけ、心からの笑顔をたまに見せるようになって、私たちは彼を心
から救いたいと思うようになった。しかし、中学生にできることはあまりなかった。もちろん、市や虐待相談所などに連絡
をしたこともあったのだが、それは逆効果だった。そういう人たちが家に訊ねて来ても、山田君の親は、その時だけ山田君
に優しく接し、後から、そんなものを呼んだことで山田君を罰し、一晩中裸で物置小屋に閉じ込めたりしたらしいのだ。私
たちは、ただ彼を苦しめただけだった。彼は言った。もういいよ、大人になるまで我慢してればいいんだ。それまで僕はな
んとか耐えながら生きるよ。だから、もう余計な事はしなくていいんだ。私たちは、その言葉を聞いて泣いた。無力な自分
たちに。不条理な世界に生きなければならない山田君に。救えもしない大人たちのひどさに。先生は、そんな山田君の境遇
に気づいているのか気づいていないのか、山田空に事情を訊ねたりしてはしていたのだが、結局何もしてくれなかった。それ
から山田君が自殺してしまい、先生は勝手に私たちに責任を押し付けて、自分は何もできなかったくせに勝手に狂った。私は
無力な大人を許せない。先生は、辞めればいいと思っていた。山田君の親も[ピーーー]ばいいと思っていた。


132 :針(お題:この針は誰の物だ!)3/3  ◆/xGGSe0F/E [saga]:2014/03/14(金) 00:21:02.50 ID:Wrv0xINX0

 十二月一日。たくさんの針をばら撒いて、生徒たちに怪我を負わせたとして、S県M市、I中学校の教諭、西宮洋(31)が
逮捕された。彼は「子供たちは歪んでいる。皆が人を殺そうとしていた。僕も針を使って殺されかけた。だから針がどんな
に恐ろしいものか教えたかった」と供述し、犯行を認めている。逮捕されるときに、教室中にばら撒かれた針を見て「この
針は誰のだ! この針は一体誰のなんだ!」と意味不明な叫びを繰り返し、生徒たちを怖がらせていたと、同僚の教師が語
っている。


 取調べと事情聴取を終えて、容疑者の西宮と、彼の生徒だった戸川奈津美の調書を見返しながら、誰が本当の事を言って
いるのだろうと、刑事である俺は考えた。もちろん、犯罪を犯した西宮が社会的にも一番悪いのだが、果たして彼は本当に
精神がおかしくなってあんなことをしてしまったのか、俺は懐疑的だった。戸川奈津美が言うことは全て本当なのか。西宮
の言ったことは全て戯言なのか。それが今一つ分からなかった。しかし、疑問に思ったところで、俺がそこまで詳しく調べ
ることはないだろう。俺たちはこんな小さな事件をいつまでも詳しく調べている時間など、全くと言っていいほどないのだ。
世間にはもっと凶悪な事件が溢れていて、それらの事件の解決を待っている人が大勢いる。俺はその人たちのために精力的
に動かなくてはならない。だから例え、戸川と言う生徒が嘘をついていたとしても、西宮が狂ってしまっただけだったとし
ても、俺はその後の彼らを救う力など持っていない。本当の意味で俺は人を救うことはできない。ただ、罪を罰するために、
犯罪行為を咎めるために、俺と言う人間はいるのだ。
 しかしながら、果たしていつからこんなに意味が分からない犯罪が増えてしまったのだろうと、俺は考える。俺が刑事に
なった十五年前は、もっとわかりやすかった。狂っている奴は突出して狂っていたし。想像力のない奴は、単純な犯罪で分
かりやすい動機で罪を犯していた。だが、現在は誰が狂っているのか、誰がおかしくなっているのか、犯人だけが悪いのか、
犯人を壊そうとしている存在、犯人を白日の下にさらして楽しんでいるような奴らがいるんじゃないかと、思い悩んでしま
う。今の犯罪と、犯罪が明らかになるまでの経緯が、俺には上手く掴めない。皆が犯罪者を見て楽しんでいるように感じて
しまう。もっと言ってしまえば、犯人を追い詰めるだけの環境があり、犯人の周りにいる悪い奴は、ただそいつを狂わせよ
うとしており、そいつらは罪に問われずに、社会にのうのうと生きているのだ。俺は正直に言って今の社会が怖い。決して、
悪いのは犯罪者だけではない。犯罪者を作ってしまう、歪んだ人々、無関心な人々も怖い。俺は、俺のやっていることが、
ただの清掃業者のように思えて仕方がない。罪を犯した奴を、片づけて、その場だけ綺麗に見せる。そんな、社会的都合の
良い清掃業者……。だが、そんな穿った考えを持ちすぎないようにと、俺は己に言い聞かせていた。考えすぎれば、自分も
歪んでしまう。社会や他人に意味を求めれば、自分自身も壊れてしまう。俺は、この歪んだ社会で、ただ己の役割を全うす
るためだけに生きているのだ。歪んだ人間を、牢屋に入れるためだけに。
俺は、ただ罪を犯した人間を罰するしかできない、無力な人間だ。
西宮が言った言葉が耳に残る。
「この針は誰のだ」
 社会の暗部に、一目では見えないような場所に仕掛けられた鋭い針に、いつの間にか傷つけられている人々が、少なからず生まれている。死角から刺され、決して他の人からは見えないような小さな針。誰の物でも無いその鋭い針は、いつか俺の椅子にも仕掛けられるのかもしれない。見えない様に。誰が仕掛けたか分からない様に。そして俺は叫ぶのだろう。この針は誰のものだ、と。
醜い姿を衆目に晒しながら。



133 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga]:2014/03/14(金) 00:26:38.63 ID:Wrv0xINX0
久しぶり過ぎて『saga』入れ忘れました。ええ、ごめんなさい。これから書く人たちは、悪い見本だと思って見てやってください。
初めて来た人のために一応説明しておきますと、メール欄に『saga』と入れないと、2レス目みたいにフィルターが掛かって
変な表示が出ちゃいます。[ピーーー]みたいな。

ちなみに2レス目の最後は『死ねばいいと思った』と書かれています。

以上。(眠たい頭で書いたのでミスたくさんあると思いますが、いつものことです、すみません)
134 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/14(金) 10:06:53.32 ID:SPrBBpVuo
>>133
悪いのは一体誰か? という問いを読者に投げかけながら、自分の無力さを自嘲気味に語る刑事の話
レスが変わるごとに疑似的に語り手が変化する1人称であり、また1人称小説であるが故に真実が何なのかは最後まで明かされない
彼らは自分の主張をするのみで、その中に真実へとたどり着くヒントは書かれていないからだ
これは別に、作者と語り手にとってどうでもいい話だから、そうしたのだと思う

>俺はその後の彼らを救う力など持っていない。本当の意味で俺は人を救うことはできない
>俺のやっていることが、ただの清掃業者のように思えて仕方がない

結局、ここを伝えるためのプロセスである
苛めによる自殺、ドメスティックバイオレンス、精神を病む教師、これらはテンプレートな社会問題の提示ではあるけれど、
見方を変えた時に繋がりを持つように作られている
秀逸な構成だと思った
ただ、個人的なことを言えば、刑事の主張がありきたり過ぎて面白くない
構成から考えれば、刑事の主張は読者に共感させたり、思考を促すように作られているべきだと思うのだけど、それが悪い方向に出ている
「うんうん、分かる分かる。そうだよね」ではなく「いや、分からなくはないけど、だから何?」という感じ
要は愚痴っぽいのだ
色々問題提示した挙句に、最後に延べられるのが愚痴ってなると、読後感が非常に悪い(嫌な気分になるというより、何も残らない)と思う
せっかく様々な社会問題を多角的に組み上げたのだから、そこからもう1歩踏み込んで問題の核心に迫ろうとする気概が語り手に欲しかった

あと、内容から考えればこの改行はわざとなんだろうけど、みっちり文字が詰まっていて若干読みづらかった
言っても仕方のないことだけど、こういう作品は縦書きの方が相応しいと思った。
以上です
135 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/14(金) 12:27:05.49 ID:pVY5PAud0
ワイiPhone、読めず無事死亡
136 :(お題:記念日) 0/2 :2014/03/15(土) 23:30:43.54 ID:Oa8eawEuo
通常作投下します。
お題は『記念日』で2レスです。
137 :(お題:記念日) 1/2 :2014/03/15(土) 23:31:29.95 ID:Oa8eawEuo
 僕に初めての彼女が出来たのは高校一年の終わりだった。
 入学式で隣になったのを皮切りに、クラスでの委員や体育祭や文化祭、その他の行事などなど、何かと一緒に
なることが多く、冬が終わる頃にはしっかりと彼女の事を意識するようになっていた。
 けれども告白するだけの勇気を持ち合わせていなかった僕は、クリスマスや正月を彼女がいったいどう過ごし
たかに悶々としながら三学期を迎えた。そしてやはりというかなんというか、行事ごとで彼女と行動を共にする
ことが多く、『これはもう運命だな』などと確信していた。
 しかし僕の思いを言葉にするだけの勇気はやっぱり持っていないので、何事もなく終業式を終えて一年が終了
した。と思ったその時、突然に彼女から声をかけられ、思いを告げられた。まさに青天の霹靂というか、『やは
り運命だったか』と感じずにはいられなかった。
 二年生になっても彼女とは同じクラスで、学校でもそれ以外でも彼女と一緒にいる時間が多くなった。そうす
る内に気づいたことがひとつあった。彼女は記念日を大事にするのだ。僕と付き合い始めた記念日とか、初めて
デートした記念日とか。それくらいなら世の初々しいカップルの多くが気に留めているものだろう。けれど彼女
の記念日はもっと多かった。機会があって見せてもらった手帳には、びっしりと記念日が書かれていたのだ。一
年の始まりは去年の入学式の日。僕と出会った記念日だそうだ。その後も、図書委員になったとか、初めて電話
で話したとか、隣の席になったとか、僕との記念日がびっしりと。正直、かなり引いた。
「サラダ記念日って知ってる?」
「去年、授業で習ったよね。俵万智だっけ?」
「そう」
「それがどうしたの?」
 彼女はきょとんとしている。
「あれって「『この味がいいね』と君が言ったから七月六日はサラダ記念日」って詩なんだけど」
「うん。さすがにその記念日はちょっと無理があると思うけどね」
 そうでもないと思うけど、という言葉は胸の奥にそっとしまっておいた。
「……確かにね。まあ、それはとりあえずおいといて。あれって、恋はどんな些細なことでも記念日にしてしま
うって意味なんだよね、確か」
「ふーん」
 あー、自覚はないのか。
「でもね、僕はこう思うんだ。恋って確かに毎日を記念日に変えてしまうけど、毎日が記念日になったら、それ
はもう特別じゃないんじゃないかって」
「……」
138 :(お題:記念日) 2/2 :2014/03/15(土) 23:32:19.37 ID:Oa8eawEuo
「普通の日があって、だからこそ記念日が特別になると思うんだ。だからさ、あんまり記念日にこだわらなくて
も良いんじゃないかな?」
「……私、なんだか舞い上がってたのかな。初めて好きな人が出来たから、あなたに関わるすべてがなんだか特
別に見えて……。でも、それは別に特別じゃないんだよね。恋って普通のことを特別に変えるけど、でもその特
別を普通に出来るのが恋人同士なんだね」
「……あ、そうだね。うん。特別なことが普通なんだよ。普通の毎日が特別で、でもその特別は普通のことなん
だよ」
 彼女の言葉に、僕はまさに目からうろこが落ちた思いだった。
「恋人同士って、すごい事だね」
 彼女が微笑む。
「うん。すごいね」
 僕も微笑み返す。
「今日は恋人同士を改めて理解した日として、大事にしなくちゃね」
「……うん、そうだね」
 屈託のない彼女の笑顔に、僕はそう返すのがやっとだった。
                            
おわり
139 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします :2014/03/15(土) 23:34:48.73 ID:Oa8eawEuo
なんだかもうひどい。
すみませんでした。
でも何年振りだかに物を書いた。
ちょっと楽しかった。

お題をください。
140 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/15(土) 23:37:16.13 ID:4leF4/rho
ファーストキス
141 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/15(土) 23:39:41.89 ID:Qr8KqofSo
私にもお題をお恵み下さいな、なんか書いてみたい
それとも感想書いてからでなければ、それはお恵みいただけないのかしら
142 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/15(土) 23:42:01.81 ID:4leF4/rho




そんなルールはありません
143 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします :2014/03/15(土) 23:42:06.28 ID:Oa8eawEuo
>>140
ありがとう

>>141
絶叫
144 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/15(土) 23:57:09.43 ID:TmZL9pLt0
>>131
読みました。人の評論をするほどの実力はないが一応感想を。
文章も上手いし、各章でそれぞれ語り手がいて、という構成も上手いと思った。
>>134の言っていることはもっともだと思うし、確かにここからいくらでも「踏み込む」ことはできそうな気がするんだよな
別の生徒の声を書くとか、女子生徒の言うことにも嘘臭さを入れるとか、そういう踏み込み方はあるかな、と思った
とはいえ別に今の形式で悪いわけではないんだろうな。あとはボリューム感の問題というか、短編としてはあれでまとめて正解かもしれない
いずれにせよ俺はいい小説だと思った。

>>138
文章自体は全然違和感ないし、綺麗だと思った。
ただ、短いこともあるけど、内容として何を言いたかったの?ってことは疑問に残るかな。
酔った状態で読んでるので、ちゃんとメッセージを読み取れてないだけかもしれないけどww


145 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/16(日) 00:24:32.90 ID:XXi3sE1fo
>>138
この小説は、個人的に恋愛小説ではないと思う。
あくまで自分の見解だが、恋愛小説とは主要キャラ(特に主人公)がとった行動が、二人の恋愛関係に変化をもたらすものを言うと思うからだ。
この小説において、主人公はヒロインに惚れこそすれ、一切行動は起こしていない。ヒロインの告白を受け入れただけだ。
さらに、二人の会話の中で、恋愛関係それ自体に変化は起こっていない。
正確には、二人が

>特別なことが普通なんだよ。普通の毎日が特別で、でもその特別は普通のことなんだよ

この結論に至ったところで、恐らく微妙な変化が起きているのだと思う。
けれど作者はあえてこの変化を否定する。

>今日は恋人同士を改めて理解した日として、大事にしなくちゃね

ふりだしに戻る、である。
では、この小説が恋愛小説でないとするなら、一体何になるのだろうか?
自分はキャラ小説であると思う。
俵万智の有名な詩を引用し、ちょっとした出来事を記念日としてしまうほど彼のことを特別だと感じる彼女は、とても魅力的だ。
逆説的に言えば、恋愛関係であるという設定は、この彼女の特徴を描くためには必要不可欠なのだ。
加えるなら、恋愛関係であること、その証明に彼女のとる行動、掛け合いの中で至る結論、そしてオチ、
全てが、彼女を魅力的なキャラクター足らしめるために使われている。
その結果、彼女はとても可愛いキャラになっていると思う。

自分が、この作品に対して感じた問題点は一つだけ。
キャラ小説であるとするなら、彼女を魅力的に描くために必要な部分以外は極力そぎ落とすべきだと思う。
冒頭の10行、彼女と出会ってから付き合うようになるまでの過程の部分。
ぶっちゃけこれいらないと思う。僕の彼女は変わっている、の一文で済んでしまうことだからだ。
逆に、出会いから描くのなら、主人公は彼女と仲良くなるために行動すべきだと思うし、そうなるとキャラ小説ではなく恋愛小説を目指すべきだと思う。
以上です
146 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga sage]:2014/03/16(日) 18:28:17.68 ID:IC3t/zD70
>>138


>>……あ、そうだね。うん。特別なことが普通なんだよ。普通の毎日が特別で、でもその特別は普通のことなんだよ

 こういう普通なら口にできないことを、恥ずかしいと思ってしまうことを、ストレートに書いて伝えられるところが小説の良さだと思う。あくまで個人の感想になるけれど、小説に作者の感情やメッセージなどが感じられない作品は、読んでいてどうにも真に迫ってこない。その点で言えば自分の伝えたいことをストレートに書き出したこの小説は、技術的云々は置いておいても僕はとても好きだし、作者の企んだ小説としては成功していると思う。無責任にそう思う。
あとは、そのメッセージにどれだけ説得力を持たせられるかが鍵だ。ドラマティックに展開して、それぞれの要素に何かしら読者をひきつけるような設定やら、物語性を付与して、彼らの生活にも何かしらのちょっとした障害があって、そしてふとした時に、上で引用したメッセージに二人が気付く。ありふれた手法だけれど、そうなればもっと読み手の心に迫って響くし、言葉に説得力が現れるのだと思う。なんて事は、もちろん作者も分かっているのだろうし、要は好きなように小説を書いて、どんどん上手くなっていけばいいのだ。なんだか上から目線のメッセージなってしまったけれど、恋愛にストレートな小説って、技術が付いてしまうと、臆病になって書けないものだし、こういう素直な小説を書けるって、とてもいいものだと思う。真っ直ぐな衝動って大事。青春の素晴らしさを伝えようとするのも、変に奇をてらってなくていい。

>>でも何年振りだかに物を書いた。
>>ちょっと楽しかった。

それが一番大切だと思うし、その言葉を読んでこちらもちょっと嬉しくなった。
文章も特別に変な所がないし、テーマもしっかりとお題に添っているし、自分の書きたいことを書けたんだろうなと言う感想を僕は持ちました。久しぶりに書いたんだから、技術なんて関係ないよ。楽しめればいいんだ。その初期衝動って、エネルギーってすごく大事。
147 : ◆BNSK.80yf2 [sage]:2014/03/18(火) 02:36:50.61 ID:120rfCBSo
えーと、今回品評会を行うに辺り他サイトで宣伝をすることを提案した者です
その節はいろんな意見、ありがとうございました
一応、今までスレ覗いてたけど、レス付く様子もなくなってしまったし、通常作も2作投下されて感想もつきました
なので、ここらでやるかやらないかを決めたいと思います
どうやって決めるか悩んだんだけど、今回は率直にアンケートで決めようと思います
つきましては、協力出来る方はお願いしたい


ttp://enq-maker.com/e7mHPTW


ここで、答えられるようになってます
締め切りは21日の夜で、その時点で集計します
見てもらえれば分かると思うけど、一応内容をこちらにも書いておきます

Q.貴方は今回の品評会に参加しますか? また、品評会を外部サイトで宣伝することに賛成ですか?

A1.品評会には参加するつもりだし、宣伝にも賛成だ
A2.品評会には参加するつもりだが、宣伝には反対だ
A3.品評会に参加するつもりはないが、宣伝には賛成だ
A4.品評会に参加するつもりはないし、宣伝にも反対だ

同一IPからの回答は弾く仕様にしてあるので、回答出来るのは一人1回まで
同じIPの人が複数いる可能性もあるけど、今回はあえて考えない方向でいきます
結果をどう判断するかなんだけど、ここは自分が仕切る都合上、勝手に決めさせてもらいます

投票者の80%以上が賛成、且つ参加するつもりがある人間が5人以上いた場合に、自分が他サイトに宣伝に向かいます
残念ながら、それ以外の場合は今回は見送ろうと思っています
何故8割かっていうと、単に投票者が5人以上いる気がしなかったからww 10人以上答えてくれる人がいるなら9割にしたんだけどね
参加予定者5名以上っていうのは、最低限そのくらい参加者がいないと、そもそも品評会の体を成さないと思うからです
他の方も言っていたけど、誰も参加しない状態で宣伝だけしたって、何の意味も無いしね
すでに自分の票はA1に投票しました
出来る限り、多くの方の投票を待ってます

何か質問等ありましたら、遠慮なくどうぞ
長文失礼しました
148 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/19(水) 17:05:09.50 ID:C5zOApNX0
それぞれいろいろな考え方はあると思うんだけど、勝手に自己責任で宣伝すればいいのにって思っちゃう。
宣伝するまでに臆病になりすぎじゃない? 多数決で票を得られなきゃ宣伝しないってのは、ある意味で無責任だと思うよ。
宣伝するから人が集まるって考えもあるんだし、そこまでごちゃごちゃ考えんとやってみればいいのに。
誰も反対してる人いないんだから。
149 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/19(水) 17:10:47.36 ID:4Oqg8DeAO
確かに、ごちゃごちゃ言わんと宣伝したらいいのに
と言うだけの無責任もありますしね
150 :(お題:庭)0/3 :2014/03/19(水) 22:17:16.13 ID:LtADAfnv0
通常作投下します
お題は庭です
151 :(お題:庭)1/3 :2014/03/19(水) 22:17:56.90 ID:LtADAfnv0
隣の家の主人が行方不明になった。
荷物が動いた形跡もなく、あたかも寝ている状態で忽然と消えてしまっていたような状態で警察もとうとうさじを投げているほどだった。
うわさによると、小さい子供がその家の庭に入っていて、誰かがその子を怒鳴っていたらしい。
主人は一人暮らしだったので、おそらく彼がやったのだろう。
しかし彼は子供好きで有名な人だった。
彼以外にもこの町の多くの人が次々といなくなり、毎日マスコミが町中に押し寄せてきた。

そんなある日のことだった。
目が覚めると、私は知らない場所にいた。
とりあえず知っている道を探そうとすると、回りの建物が嫌に大きくなったように思える。
ふとカーブミラーを見て思わず自分の目を疑った。
そこには小さな子供が映っていたのだった。

それでもひたすら、半ば走るように進んでいくと、ようやく見知った場所に出た。
ビルの間をくぐっていくと、毎日慣れ親しんだ庭に出た。
嬉しくて嬉しくて涙が出そうになるのをこらえながら立っていると、耳をつんざく様な怒鳴り声が響いた。
152 :(お題:庭)2/2 :2014/03/19(水) 22:18:59.94 ID:LtADAfnv0
すみません2で足りました


そこでなにをしている!
さっさと出て行け!
私も負けじと怒鳴り返す。
ここは私の家だ!
おまえこそでていけ!
声ははなはだ小さく、怒鳴り声より大きく劣っていたが。
なんどもなんどもしつこいほどに。


目が覚めると、私の部屋のベッドの上にいた。
台所では妻が朝食を作っていてくれたので、
手早く顔を洗ってダイニングに行った。
153 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/19(水) 23:11:27.24 ID:y4gl9Sz10
>>147
一応投票はしたが、俺も決を採るとかせずに宣伝してもいいと思うぞ

>>152
まず、「あたかも寝ている状態で忽然と消えてしまっていたような状態で」の”状態で”かぶりとかはさすがに気になるかな
冒頭の6行はちょっと混乱させられるというか、もうちょっと分かりやすく推敲できるように思える
「それでもひたすら、半ば走るように進んでいくと、ようやく見知った場所に出た。
ビルの間をくぐっていくと、毎日慣れ親しんだ庭に出た。」らへんも(わざとかもしれないが)時系列がおかしいというか、
走るように進んでいき→ビルの間をくぐっていくと→見知った→慣れ親しんだ庭に出た
という意味にとればいいのかな?
仮にこの「夢」を部分だけあやふやな記述にするというなら、余計前後の文章はきっちりさせないといけない気がする
154 : ◆BNSK.80yf2 [sage]:2014/03/20(木) 02:05:04.59 ID:44jaZH6do
>>148>>153
決を採ることにした理由は二つあります
まず、自己責任で好きにやればいいということなんですが、そもそも匿名掲示板である以上、責任の取りようがないということ
勝手にやって批判があった時に、こちらはその批判に対して何も出来ないわけです
だから、前もって伝えておくことで、一応の義務を果たすべきだと思ったからというのが一つ

もう一つは、こちらの理由がメインなんだけども、こっちに投下された小説を他サイトに転載する可能性があるということ
こちらは宣伝云々じゃなく、嫌がる人は当然いるだろうと思ったんですよね
だからこういうのを企画した時点で、前もってやるかやらないかは聞いておくのは絶対必要だと思いました

あと、そもそも俺は上でも書いた通り、宣伝して新規を呼ぶことのみがメインの目的じゃなかったんです
何かしらイベントをやることで、今いる住人のモチベが上がったらいいなっていう気持ちもすごくありました
もちろん新しい人がこれを機に増えたらめちゃくちゃ嬉しいですけどね
だからこそ、スレ住人の意見を大事にしたいなって思ったんです

>多数決で票を得られなきゃ宣伝しないってのは無責任
えーと、これは「せっかく企画したのに、結局やらねーのかよ。ぬか喜びさせやがって」っていうことだろうか
だとしたら申し訳ないとしか言えない
でも、仮に反対する潜在意見があったとして、強行して後から批判を受けることの方がリスクとしては絶対的に上だったと思うんです
仮にやらないことになったら、言うだけ言って結局やらないのかと失望させてしまうかもしれないけど、そこは理解してほしい
あと、やっぱり俺自身の打算もあります
せっかく企画して、品評会参加者全然おらず、宣伝にも何もなりませんでしたっていうんじゃ心が折れちゃうよww
だから、確証とまではいかなくても、ある程度の安心は欲しかったんです
じゃないと、行動にも移れないんです、チキンなもので(´・ω・`)
155 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/20(木) 02:18:57.33 ID:44jaZH6do
>>151
えーと、よく分からなかった……かな
どこからどこまでが『私』の夢の話なのだろうか
隣の家の主人と怒鳴り合いをしていた子供っていうのは、子供になってしまった主人本人だったのか、
それとも子供になった『私』がその主人と怒鳴り合いをしたのか
つじつまを考えると多分前者だと思うんだけれども
夢オチを使う場合「ああ、何だ夢だったのか。よかったよかった」と思わせるか「え、どこまでが夢でどこからが現実なの? こえー」と思わせるか
「夢かよww しょーもなww」と思わせるか
いずれにしろ、夢オチであると分かった時点で、読者に何か感想を抱かせる落とし方をしてほしいかなって思う
最初にも書いたけど、よく分かんない話でした
ただ、奇妙に歪んだ空気は好きです
156 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします :2014/03/20(木) 07:31:27.38 ID:yZKWDzPW0
お題ください
157 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/20(木) 08:46:25.42 ID:coyPjw8d0
>>156
悪夢
158 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/20(木) 09:08:08.49 ID:Cr9+gwP2o
お題ください、挑戦してみる
159 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/20(木) 09:13:19.00 ID:faZ0UxJAO
足音
160 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします :2014/03/20(木) 21:32:23.30 ID:yZKWDzPW0
ここって一度あげた小説を他の場所で公開してもいいの?
161 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/20(木) 21:51:46.89 ID:pR5FLhWq0
自由ですよ
162 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします :2014/03/20(木) 22:54:53.78 ID:yZKWDzPW0
ありがとうございます
163 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/21(金) 15:07:23.64 ID:MkCfW7/M0
久々のBNSKというか文章書くの久しぶり
リハビリにお題くだしあ
164 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/21(金) 15:08:42.19 ID:aqXfORN+o
165 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/21(金) 15:14:13.43 ID:MkCfW7/M0
サンクス
166 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/21(金) 18:27:14.33 ID:bpOlb38Ko
お題が欲しい ので ください
167 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします :2014/03/21(金) 18:28:20.16 ID:dCrnWSOpo
いたずら
168 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/21(金) 18:50:19.29 ID:bpOlb38Ko
把握
169 : ◆BNSK.80yf2 [sage]:2014/03/22(土) 04:17:40.12 ID:59aqOKP6o
帰宅して結果見ようと思ったらメンテ中で見れない(´・ω・`)
集計、ちょっと待ってね
170 : ◆BNSK.80yf2 [sage]:2014/03/22(土) 09:01:05.40 ID:59aqOKP6o
アンケートの結果、やることになりました。
協力してくださった方ありがとうございます。
てか、9票も集まるなんて思ってなかった。
結構人いたんですね、びっくりしました。
強制は出来ませんが、参加するに票を入れてくれた方、出来れば参加してください(´・ω・`)
さて、ちょっと大急ぎ出張先のサイトを調べてこようと思います。
171 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/22(土) 10:54:56.28 ID:fQ7cf1Qoo
久々に覗くと、何か新しい流れが。

お題ちょうだいな
172 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/22(土) 10:56:14.74 ID:nAeOxWaU0
魔王
173 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/22(土) 17:06:26.05 ID:ceYnSxrz0
アンケートに9票集まるということはそのくらいの人数常駐者がいるということか
そのうえで新参の俺が1つグチを言うなら、投下された作品に対する批評する人が少ない気がする
作品が出たら読んで感想を書くというのがないと、スレ自体も盛り上がらないんじゃないかな
俺も大して建設的なことは言えないにせよ、なるべく感想書くようにするので、皆さんも極力感想書いてほしい
174 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/22(土) 18:57:17.73 ID:fQ7cf1Qoo
>>172
遅くなったけど把握
175 : ◆BNSK.80yf2 [sage]:2014/03/22(土) 23:16:54.00 ID:59aqOKP6o
こちらの掲示板のURLの掲載許可が下りました。
なので、イベントは問題なく行えそうです。
ここで、皆様に相談なのですが、投票期間を少し伸ばすことになっても構わないでしょうか?
流石に、イベントを行って、投票期間が2日というのは厳しいと思うので
個人的には、日程を

執筆期間:03/10 (月) 00:00 〜 03/26 (水) 23:59
投稿期間:03/27 (木) 00:00 〜 03/31 (土) 23:59
投票期間:04/01 (日) 00:00 〜 04/05 (火) 23:59
集計発表4/6

このくらいにしていただけるとありがたいです。
もし都合が悪い方が多いようなら、>>78のままイベントページを作ってこようと思います
もし無理なようなら、
176 : ◆BNSK.80yf2 [sage]:2014/03/22(土) 23:17:56.22 ID:59aqOKP6o
コピペミス
最後の行は気にしないでください(´・ω・`)
177 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/23(日) 11:43:42.06 ID:aIbAp8pY0
>>175
おk
確かに投票期間は短い気がしてた
178 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします :2014/03/23(日) 12:22:50.91 ID:+4eYfjGIo
いまから宣伝するなら次回にしたら?
参加しようと思っても期間が短すぎるし
逆に元のままにして今回は見てもらう程度で、次回に参加してもらう
というより投稿と投票って一週間あったほうが良いと思うけど
179 : ◆BNSK.80yf2 [sage]:2014/03/23(日) 13:44:39.23 ID:7NKpQwdpo
>>178
そもそも、次の品評会があるのかっていうことと、来月は仕事忙しくなっちゃうから出来ないんです
180 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/23(日) 14:37:23.72 ID:bk0GnICn0
鉄は熱いうちに打て、だと思う
181 : ◆BNSK.80yf2 [sage]:2014/03/23(日) 18:02:18.22 ID:7NKpQwdpo
ttp://text-poi.net/trial/vote/46/summary.html

イベントページをお試し公開しました。
何か気になったところ、変更した方がよさそうなところあったらレスください
182 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします :2014/03/23(日) 18:30:25.96 ID:i92z5xSMo
とりあえずお疲れ様でした
183 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/23(日) 18:53:17.53 ID:tCIT9b+s0
お題ください!
184 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/23(日) 19:02:15.94 ID:MzpugABiO
自分もお題下さいです!
185 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/23(日) 19:08:41.48 ID:Ee1f1JrG0
>>183
勝利
>>184
決別
186 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/23(日) 19:35:13.36 ID:WVjfOJfAO
>>181
色々とお疲れさまでした
187 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/23(日) 19:49:57.20 ID:faGBl/Mx0
>>158
ありがとう!
188 : ◆BNSK.80yf2 [sage]:2014/03/23(日) 23:26:50.72 ID:7NKpQwdpo
自分は今日はもう寝るので、もし手が空いていて目を通してくれた方がいらしたら、意見等いただけると幸いです。
明日の夜には本投稿しようと思うので、何かあればそれまでにお願いします。
189 : ◆BNSK.80yf2 [sage]:2014/03/25(火) 01:43:52.45 ID:ExF8p9HBo
ttp://text-poi.net/vote/57/

本投稿しました
190 : ◆BNSK.80yf2 [sage]:2014/03/25(火) 01:44:40.93 ID:ExF8p9HBo
ttp://text-poi.net/vote/57/

本投稿しました
191 : ◆BNSK.80yf2 [sage]:2014/03/25(火) 01:46:34.86 ID:ExF8p9HBo
ttp://text-poi.net/vote/57/


本投稿しました!
自分もそろそろ品評会作品書きあげないとなぁ(´・ω・`)
192 : ◆BNSK.80yf2 [sage]:2014/03/25(火) 01:47:03.27 ID:ExF8p9HBo
ttp://text-poi.net/vote/57/


本投稿しました!
自分もそろそろ品評会作品書きあげないとなぁ(´・ω・`)
193 : ◆BNSK.80yf2 [sage]:2014/03/25(火) 01:47:32.11 ID:ExF8p9HBo
ttp://text-poi.net/vote/57/


本投稿しました!
自分もそろそろ品評会作品書きあげないとなぁ(´・ω・`)
194 : ◆BNSK.80yf2 [sage]:2014/03/25(火) 01:48:00.30 ID:ExF8p9HBo
ttp://text-poi.net/vote/57/


本投稿しました!
自分もそろそろ品評会作品書きあげないとなぁ(´・ω・`)
195 : ◆BNSK.80yf2 [sage]:2014/03/25(火) 01:49:27.89 ID:ExF8p9HBo
うわ、ごめんなさい
書き込み反映されなくて、えらいことに
196 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/26(水) 01:35:37.71 ID:gQHNh65po
お題plz
197 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/26(水) 01:39:53.91 ID:VROagHPAO
>>196
カメレオン
198 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/26(水) 01:41:16.34 ID:gQHNh65po
ありがとう
199 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします :2014/03/26(水) 21:15:27.24 ID:28BY6NaN0
数年ぶりにBNSKを見つけてしまった私にお題下さい
200 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします :2014/03/26(水) 21:16:02.06 ID:28BY6NaN0
数年ぶりにBNSKを見つけてしまった私にお題下さい
201 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします :2014/03/26(水) 21:19:47.17 ID:a5xw654io
>>199
特別
202 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします :2014/03/26(水) 21:21:17.43 ID:28BY6NaN0
>>201
ありがとう
203 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします :2014/03/26(水) 23:30:05.77 ID:a5xw654io
お題ください
204 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/26(水) 23:31:09.28 ID:mD+2iDwn0
>>203
大魔王
書けたら教えてね
205 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします :2014/03/26(水) 23:31:12.05 ID:nuS4zHIp0
>>203
狂った日
206 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします :2014/03/26(水) 23:31:58.60 ID:a5xw654io
>>204
>>205
おや二つもありがとうございます
207 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/27(木) 16:02:15.52 ID:SdGGk/+Io
地味に品評会始まってるね
208 :(お題:大魔王) 0/3 :2014/03/28(金) 23:37:24.74 ID:OT8l5kRvo
通常作投下します。
お題は大魔王です。
3レスいただきます。
209 :(お題:大魔王) 1/3 :2014/03/28(金) 23:38:16.92 ID:OT8l5kRvo
 四月から社会人になる為、一人暮らしを始めるにあたって荷物の整理を行っていた私は、押入れの奥から小学
校の思い出の数々を見つけ出した。
 その内のひとつ、小学一年生の時の文集を手に取る。そこには将来の夢や学校が楽しい事や、お父さんやお母
さんの事が書かれていた。懐かしく目を細めながら、私は何を書いていただろうかとページをめくっていると、
ひとりの男の子の作文が目に留まった。

しょうらいのゆめ
                           いちねんさんくみ      ながみねたろう

 ぼくのゆめはだいまおうになることです。
 だいまおうはとてもつよくて、あいてをにがしません。
 ぶかもたくさんいるし、とってもえらいのです。
 だからぼくはだいまおうになりたいのです。
 そしてゆうしゃをぎゃくにやっつけるのです。
 だってゆうしゃはひとのいえにかってにはいったり、たんすからおかねをとったりしているのです。
 だからぼくはゆうしゃをやっつけるために、だいまおうになるのです。
 ぜったいなるぞ!!

 そう言えばこんな子いたなーと、うっすらと思い出した。悪の親玉を目指すこの子は当時、からかわれたりし
ていたはずだ。まあ、それもやむなしだろう。小学一年生でこの発言はちょっと特殊すぎる。けれどかと言って、
ひどく苛められていたという事もなかったはずだ。私たちの時代はとても平和で、みんな仲良くしていたものだ。
けれどこの子一緒だったのは中学までで、高校は私が女子高に行ったのでそれ以降は会っていないし、消息も知
らない。もっとも、男子の多くはそうなのだけれど。……ながみね君も、大きくなってこんな事を書いたのを恥ず
かしがっているのだろうか、そんな事を考えて文集を眺めていると、スマートフォンが小さな電子音を鳴らした。
 確認すると、幼馴染の裕子から『なにしてるの?』というLINEのメッセージが届いていた。
 私が『一人暮らしに向けて荷物の整理中』と返すと、すぐに『「いるもの」「いらないもの」だね』と返事が来
た。最近裕子は、昔のバラエティ番組を良く見ているらしい。これもその中に出てくるらしい。
『懐かしいの見つけた。小学一年の文集』
『うわー懐かしい! あたしどんなこと書いてたっけ?』
 聞かれたので、私は裕子の作文を探して返事をする。
210 :(お題:大魔王) 2/3 :2014/03/28(金) 23:38:42.84 ID:OT8l5kRvo
『裕子は「お嫁さん」になりたいって書いてる。ちゃんと叶ってるじゃん』
 彼女は、二十歳のときに子供が出来て早々に結婚してしまっていた。旦那とは今も仲良くやっている。
『さすがあたし。葉子の方は? なんて書いてた?』
 尋ねられて、私は返事をせずにごまかした。
『私の事はいいじゃない。それよりさ、ながみね君って覚えてる?』
『あー、永峰ね、覚えてるよ。どうかした?』
『彼ね、将来は大魔王になりたいって書いてあったの。なれたのかなーと思って』
『確か二年前は魔将軍になったって言ってたよ』
 ……………………。
 はい?
『魔将軍ってなに!?』
『なにって、魔の将軍でしょ? なかなか大変だったみたいだよ。あれ? 葉子は成人式行ってなかったっけ?』
 どうやら成人式の時にながみね君の現況を知ったらしい。そう。私は翌日が第二外国語の試験だったため、泣
く泣く成人式を見送ったのだ。こんなことなら行っておけば良かった。
『魔将軍って、魔物になっちゃったの?』
『ううん。普通だったよ。スーツがあんまり似合ってなかった』
『そうなんだ』
『高校入ってしばらくして魔王軍にスカウトされたらしいよ。で、しばらくは兵士だったけど、なんか大きな戦
争があって上の方がバタバタと死んだらしくて、永峰君にもチャンスが回ってきたって言ってた』
『……そうなんだ』
『十代で魔将軍ってそれまでにも数人しかいないらしくて、将来を嘱望されてるんだって。女の子たちも何人か
はチェック入れてたみたいだよ』
 ……わけがわからない。
 私が大学に通ってる間に世界は魔物に支配されたのだろうか? 魔王軍での出世が好条件ってどういうことだ。
というか魔王軍って何だ。いや、魔王って誰だ。
『今はまだ魔将軍だけど、必ず魔王になって、いつか絶対大魔王になるって言ってたよ』
 ……なれるんだ、大魔王。
『どこまでがホントの話なの?』
『なにが?』
『魔王とかって話』
211 :(お題:大魔王) 3/3 :2014/03/28(金) 23:39:15.70 ID:OT8l5kRvo
『全部ホントだよ?』
『……魔王ってどこにいるの?』
『さあ? やっぱり知られてると倒しに来る人とか出てくるから、どこにいるとかは秘密なんじゃない?』
 ……魔将軍は秘密じゃなくていいのだろうか。
『……ありがと。荷物整理の続きを再開するわ』
 私はそうメッセージを送って、スマートフォンをスリープ状態にした。
 メッセージの着信を知らせる電子音が鳴ったけど、きっと友子なので無視した。
 そうか、大魔王ってなれるんだ。
 ……だったら、私の夢も叶うのかな?
 やっぱりもう遅いのかな。さすがに遅すぎるよね。
 でも、今、この年で一度思ってしまったら、それはもう捨てることは出来ないよね?
 だから、私も目指してみようかな……!

しょうらいのゆめ
                           いちねんさんくみ      ふくながようこ

 わたしのゆめはまほうしょうじょになることです

                        ―完―
212 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします :2014/03/28(金) 23:39:41.78 ID:OT8l5kRvo
以上でした。
おやすみなさい。
213 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/29(土) 00:48:05.99 ID:3/PqjdY/0
上のお題出したものです
書いてくれてありがとう
俺は馬鹿だから批評とか出来ないけど、なんか永峰を応援したくなった(小並感)
214 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/29(土) 03:26:33.82 ID:YkU6G382o
品評会作品が書きあがらNEEEEEEEEEEEEEE

>>211
なんとも荒唐無稽な話で、面白かった
現実の中で、誰が言っていることが常識なのか、非常識なのかすら分からない
そして、正気を保っていると思われる主人公すら、その非常識を正しいと受け入れてしまう
まさにカオス
わけが分からないよ!
ただ、オチがちょっと残念かな
なんか、非常識の中では常識的というか、あまりにも普通過ぎる夢で肩すかしを食らってしまった
215 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/29(土) 11:38:25.73 ID:ekLhPcqL0
>>211
小1の女の子が「魔法少女」って言うかな?「魔法使い」じゃないかな?と思ったというのはまあいいとして。
良いと思った。>>214が言うようにオチが弱いかもしれないけど、逆に見れば綺麗にまとまっているとも取れると思う。
こういう不可思議な設定を消化せずに謎のまま残すっていうのは、短編小説だからこそという感じがして好きだ。
216 : ◆veZn3UgYaDcq [sage]:2014/03/29(土) 11:58:28.69 ID:ekLhPcqL0
品評会作品(4レス)投下します。
217 :ストック・マーケット 1/4  ◆veZn3UgYaDcq [saga]:2014/03/29(土) 12:01:53.56 ID:ekLhPcqL0
 だいぶ昔の話になるが、初めて学校で「株」について習ったとき、俺はずいぶん混乱したことを覚えてい
る。決して内容が難しかったからではない。むしろその逆―俺にとっては当たり前すぎる内容だったから
だ。会社の価値が株価という形で上下するなどということは、人間の価値の決まり方と全く同じじゃない
か。そう思ったが、世間一般ではそうは思われていないようだ。
 人の「株価」が見えるのは、どうやら俺だけらしい。

 俺、北岡直樹が人の「株価」が分かるのは子供の時からずっとだった。誰かを見ていたり、その人のことを
考えていたりすると、なんとなく数字が浮かんでくる。それがその人の「株価」である。誉められるようなこ
とをすれば株価は上がり、まさに「株が上がった」ことが分かるのだ。そのことには幼少期から気づいていた
ような記憶がある。また、株を「買う」ことで他人を評価したり持ち上げたりできるし、もちろん買った株を
「売る」こともできると、ある時から分かってきた。もちろん自分の今の株価だって分かる。この能力で、俺
は今まで人間関係を上手く保つことに使ってきた。誰だ誰をどう思っているか、というような具体的なことま
では分からなくとも、相手の価値や自分への周りの評価がストレートに分かれば上手く立ち回れる。もっと
も、人を数字で判断する癖のついた俺には、愛だの友情だのいうような感情はやや希薄だったかもしれない。
とはいえ、気のおけない友達もいるし、子供こそまだいないが結婚もしている。妻への愛情が株価とは関係な
いとも確信している。

「最近、帰り遅いよね」
 妻の佳織が口を開く。棘の無い言い方から、別に怒っているというわけではないようだ。
「ちょっと、仕事でさ。企画のコンペが近くて」
「ふうん」
 共働きだが、佳織は普通のOLではなく図書館の司書だ。いまいちこういった会社の話は伝わりづらいこと
がある。それに、お互い普段からさほど仕事の話はしない。あえて干渉しないほうが良いというのが俺たちの
共通認識だった。
「直樹、いつごろまで忙しいの」
「来月の頭までくらいかな。それさえ終われば結構余裕あると思うけど」
「そっか」
218 :ストック・マーケット 2/4  ◆veZn3UgYaDcq [saga]:2014/03/29(土) 12:03:34.77 ID:ekLhPcqL0
 俺が忙しかったのは、単純に企画会議の準備のためだけではなかった。今回のコンペティションの相手は、
1年後輩の藤林という男である。初めて会った時からいけ好かない奴という印象であったが、佳織とは藤林を
介して知り合ったこともあり何となく付き合いは続けていた。だが、藤林の狡猾さ、女性への態度、そして俺
を含む周りの人間への陰口―そういった要素全てが鼻についた。そして、先日藤林が不正に関わっているとい
う噂を聞き、彼への不信感が決定的になるとともに、邪な考えが首をもたげてきた。
 人の株価をどの程度操作できるのか?
 ずっと気になりつつも、実践するのは倫理的に許されないように思えていたことだ。どうせ不正が明るみに
出れば、藤林の株は下がる。ならば多少は俺が人為的に介入しても問題はなかろう。俺が考えているのは、サ
ブプライム問題の時に投資家達が行ったように、藤林の「株」を俺が大量に空売りすることで、株価を急落さ
せられるのではないか?ということだ。あるいは空売り後、不正が明るみになれば差益を受けられるかもしれ
ない。もっとも、この利益とやらが何なのか、俺には分からないのだが。
 計画はコンペ前日。奴を売り、最後に不正を告発する。そのための準備を怠るわけにはいかない。

 コンペティションの前日、俺は温めてきた計画を実行に移した。とはいえ、具体的に行動する必要はまだ
ない。藤林を思い浮かべると、彼の株価が漠然と浮かび上がってくる。そして、藤林を「売る」イメージを持
つ。それだけで売買取引は完了だ。大量に藤林が「売られて」いくさまは、俺にある種の優越感を感じさせた。
しかし、ある時から異変に気付いた。藤林の株価がほとんど変化していない。まるで誰かが大量に藤林を「買
って」いるような感覚が得られた。あの野郎、どこでそんなに評価されているんだ?そう思いながらふと自分
のことを考えると、愕然とさせられた。
 俺の株価が急落している。
 これといって、近頃問題を起こすなんてことは特になかったはずだ。しかし、これほど急激に株価が下がる
なんて、中学時代に優等生のクラスメイトが放火未遂を行ったときくらいしか見たことがない。俺が高校受験
で第1志望に落ちた時も、部活の大会でミスをしたときも、これほど株価が下がったことはなかった。今まで
に感じたことがないような焦りの中、最後の切り札―藤林の不正の証拠となる書類を取り出した。
 それを見て、俺はさらに愕然とした。確かに藤林の名前が書かれていたはずのその書類に、何故か俺の名前が
印刷されている。しかし、鍵付きの引き出しに閉まってあった書類をすり替えるなんてできるのだろうか?しか
も取引先の捺印までそっくりな書類を用意するなんて……。俺の混乱した頭は、この書類のために自分の株価が
暴落したのだとは考えることができなかった。むしろ、株価が下がったせいで、俺の置かれた状況が悪化したか
のように思ってしまった。
219 :ストック・マーケット 3/4  ◆veZn3UgYaDcq [saga]:2014/03/29(土) 12:04:31.98 ID:ekLhPcqL0
 コンペにはあっさり負けた。こんな精神状態でまともなプレゼンができるわけもないし、上司たちも俺を見
ただけで顔をしかめているような感覚があった。被害妄想かもしれないが、株価の低い人間がこういう扱いを
受けるのは、俺から見れば世の常だ。自分のデスクでうなだれながら、あの名前の入れ替わった書類について
ぼんやりと考えていた。
「トレーディングは難しいでしょう」
 後ろから藤林の声がした。
「トレーディング?」
「ええ。北岡さん、株の取引、やってますよね?」
「株?……いいや?」
「とぼけなくていいですよ。北岡さんの株もずいぶん下がってしまいましたね」
 そう言われて、ようやく藤林が何のことを言っているのかが理解できた。こいつは「人の」株取引の話をし
ているのだ。しかし、俺以外が、どうしてそのことを知っている?隣りを同僚が何食わぬ顔で通り過ぎていった。
確かにこの会話を聞いただけでは、藤林が皮肉を言っただけに聞こえるもんな、と頭の片隅で考えていた。
「そりゃあ、お前にコンペで負けたわけだ。周りの評価だって少しは下がるさ」
「少し、ならそうかもしれませんけれど」
 藤林の声が僅かに鋭くなったように感じた。こいつは確かに俺の「株価」が暴落したことを知っている。い
や、もしかすると、それ以上に―
「まさか、お前……?」
「僕一人でそんなことができると思いますか?B・N・Fみたいな個人投資家が『この市場』にも存在するとい
 うなら別ですけど、人に人を売り買いするのは限界があります。元々北岡さんを『買っていた』のなら別で
 すがね」
「どういうことだ?協力者でもいるというのか?」
「そう推論するのが自然でしょう」
「誰だ」
「誰だと思います?」
「さあ……」
「……このままいくと上場廃止は免れないでしょうね」
220 :ストック・マーケット 4/4  ◆veZn3UgYaDcq [saga]:2014/03/29(土) 12:05:15.87 ID:ekLhPcqL0
 まるで独り言のように藤林がつぶやいた。上場廃止。通常の株式市場ならその意味は分かるが、俺という人
間が「上場廃止」されるとはどういう意味なのか、見当もつかない。いや、見当をつけることが恐ろしすぎる、
といったほうが正確だろうか。脳が考えることを拒否していた。全身の震えが止まらない。
 藤林の口角が僅かに上がったのが見えた。きっと邪悪な表情をしているのだろう―その予想は確認しなかっ
た。目を見ることさえ怖かった。
「不正の件、大変ですね。株価が下がって、北岡さんも辛いことが増えるでしょう」
 何気ない一言が、俺に確信を与えた。周りの評価が下がったから株価が下がったのではない。株が下がった
 ことで俺を取り巻く世界が変わったのだ。
「どうします?私に助けを乞うこともできますが」
「助け?」
「交換条件を持ちかける、と言い換えてもいいでしょうか。あるいは、人を陥れようとしたその悪意の償い、
 と呼んでも構いません。そうですね、まずは協力者が誰なのか、ということですが、もう察しは付いている
 んじゃないですか」
「……まさかとは思うが、佳織、か」
「当たりです。まあ、一番北岡さんの株を持っている人物ですから、大量に売ることも可能なわけです」
 ということは、佳織は俺を裏切り、藤林と結託して破滅に追い込もうとしたということだ。俺が空売りした
藤林の株を、佳織は俺を売った資金によって買い支える。まるで経済小説のようなシナリオだ。それが何を意
味するのか?藤林は俺にどんな取引をさせようとしているのか?無論、それは単なる株式市場に介した取引よ
りも何か血生臭いものであるだろう。俺はきつく目を閉じた。
「それでですね、北岡さん、あなたの株を釣り上げて差し上げる条件として―」
221 : ◆veZn3UgYaDcq [sage]:2014/03/29(土) 12:06:19.03 ID:ekLhPcqL0
以上です。
222 : ◆Gr.Ti1RX5s [sage]:2014/03/29(土) 12:42:19.08 ID:+olEuWCM0
品評会作品(6レス)投下します。
223 :不等価交換 1/6 ◆Gr.Ti1RX5s [sage saga]:2014/03/29(土) 12:44:59.48 ID:+olEuWCM0
 瞼をゆっくりと上げると、闇に沈み込んだ天井が目に付いた。板張り、だろうか。浮かび上がる継ぎ目とは対照的に、
木目は煤に黒ずんで姿を隠していた。十分に暖まるとは思えない煉瓦造りの小さな暖炉。外から入り込んでくる朱色を帯
びた薄い明かりに照らし出された箪笥や机を見ながら段々と視線を下ろしていくと、床一面に描かれた魔法陣の外側、殺
風景な家の片隅に、案外にも若い男が立っていて驚きを覚えた。
「お前か、私を喚んだのは」
 喜びに満ちた瞳で見上げてくる男に、哀れみを込めて声をかけた。
「俺だ」
 言葉少なに、けれども熱の籠もった視線と共に男が答える。その期待に満ちた様子に溜め息を堪えながら足下の魔法陣
を見やった。そこには一字たりとも綴りの誤りなく、自分の名前が書かれていた。
 暇を持て余した悪魔を呼び出す為ではなく、望みの悪魔を呼び出す為の陣だ。
「残念だったな。お前は喚び出す相手を間違えた」
「……いや」
「あの方と私は名は似ているが、全く別の存在だ。あの方は確かに存在しているが、召還に応じることはまずないから、
喚び直そうとしても無駄だがな。まあ、この文字を理解していたら誤りなどしなかっただろうが……」
 わずかに興奮の色が褪せた表情をした男に笑いかけながら言葉を続ける。あの御方のお陰でいくらか美味しい思いをし
てきた。高位のあの御方ほどではないがそれなりに力はある。
 一般的なというにはどこか暗い陰を纏った男から感じる、強い欲求に笑みがこぼれそうだった。欲望が混じりがなく純
粋で一途であるほど、代価となる報酬は純度を増して蕩けるような味になる。
「私がお前の願いを叶えようか。まずは聞こう。悪魔に縋るほどの何を抱えている?」
 寛大な振りをして強引に話を進める。
 まずは契約を結ばなければいけない。望みを叶えた場合、代価は必ず払われなければならない。正当なる取引は、取り
決められた条件が遂行された場合にのみ完了したと認められる。
 怯えさえ欠片もなく、熱を宿した瞳と向かい合う。
「俺は……」
 言いかけた男が言葉を切り、瞼を伏せて足下を向いた。
「なにが望みだ。悪魔を喚び出し、何もない、というわけではないだろう?」
「……昔、幼い頃に、一瞬の一時を共にした相手がいる。楽しいことなど何もない愛想としがらみばかりの人生に、十に
もならないながらに嫌気がさし、屋敷の裏庭から生垣を抜けたときのことだ」
「その相手と会いたいのか」
 そんな些細な願いなのか。呆気のない内容に落胆した。これでは魂を要求することは難しいだろう。
224 :不等価交換 2/6 ◆Gr.Ti1RX5s [sage saga]:2014/03/29(土) 12:46:12.14 ID:+olEuWCM0
 一つの欲の気配しか見せない男。その魂に未練を感じながら、冷静になるように家の中を見渡す。屋敷とはとても言え
ない庶民の家。ベッドと箪笥、机以外には書物さえろくにない、埃っぽくも思える生活感の薄い空間。
「会うことが願いなのではない。あの子に俺をあの時の相手だと認識してもらい、名を呼んでもらいたいんだ」
「あの子、とやらがもうこの世にはいなかった場合は? 思うような存在にはなっていなかった場合も、その瞬間に罵倒
された場合も、願いは叶えたとして代価は払ってもらうが、文句は言わないな?」
 遠回しに尋ねる。まあ、魂までは無理でも美味しい思いは何か出来るだろう。
 契約の不備による破棄を防ぐために、考えられる可能性を提示する。既に輪廻の輪に乗っている可能性も否めない。
「この世にいない場合は、出来る限りを尽くしてもらいたい。どんな存在になったとしてもあの子はあの子だ。死して人
外の物になっていても、輪廻の壷に入っていなければ此の世と彼の世の何処かには存在しているのだろう」
「ほう。嘘偽りばかりとされる書物も是とするのか」
「ああ」
「願いの代価として何を差し出す」
「魂だ」
 男の顔を見る。火の灯されていない薄暗い空間で見やったその表情は、至極真面目で、願いは既に叶ったとでも言うよ
うに満ち足りていた。
「生憎、俺は俺自身しか持ち合わせていない」
「是、としよう。もしあの子とやらが私の力よりも上の存在となっていた場合、そのときはその願いを叶えることは不可
能だ。聖職者である場合も難しい。そのときは契約を互いに無効とする。それでも良いか」
「良い」
 ああ、こんな話が有っていいのだろうか。震えそうになる声を必死で押さえ込み、今にも溢れそうになる欲望の器に蓋
をする。
 珍しいほど、欲に対して愚直でそして欲の浅い男に出会えたのだろうか。それとも愚かな男なのだろうか。この契約な
らば、決して損はしない。いや、無駄な時間となってしまうことはあるにせよ、何もかもが有利だ。
 これが若さなのだろう。この男は、遠い幻のような過去に出会ったあの子とやらのために、全てを投げ出そうというの
だ。これが、愛なのだろうか。恋情などという瞬間的で不確かな物に己さえ省みず悪魔に捧げられてしまう衝動。愚かだ。
 いや、冷静にならなければならない。
 蕩けそうなほどの欲に染まった男から視線を外し、すっかり闇へと落ち込んだ外の景色へと目を向ける。
 この男が悪魔殺しの可能性はないのだろうか。しかし聖の気配はかすかにさえ感じはしない。同族の気配もない。もし
残酷な性質の上級悪魔だったとしても、この内容だったら私に害を与えることは出来ないだろう。余りに力量差が大きい
場合、魂を喰らう際に力を吸収しきれず命を失うかもしれないが。そもそも、魂の欠片を失った悪魔の方も消えない傷が
225 :不等価交換 3/6 ◆Gr.Ti1RX5s [sage saga]:2014/03/29(土) 12:47:23.15 ID:+olEuWCM0
残るのだから、その線はまずあり得ない。己よりも下位の悪魔に、という汚名を一生背負うことになるのだ。
 プライドの高い悪魔にとって死よりも恐ろしい屈辱。私も、昔では考えられないくらいに自己愛が強くなった。
「では、あの子とやらにお前のことを思い出させ、名を呼ばせる。私がこの契約を果たすことは不可能だと判断した場合、
双方契約の鎖から解き放たれ全てが無効となる。私がこの願いを叶えた場合は」
「ああ。代価として俺の魂を食らってくれ」
「よかろう」
 男に向かって手を伸ばす。冷たい月明かりに浮かび上がっていた精悍な顔が、空中に生じた魔法陣の青白い光を受けて
陰を濃くした。円や記号が幾重にも重なり複雑な模様を生み出し、外側の二重の円に沿うように文字が入り込んで契約の
言葉を刻む。
「契約者、お前の名は」
「ヴァイデル・クロッシェン」
「ヴァイデル。お前の願いは、代行者に聞き入れられた」
 魔法陣に男の名前と自分の名前を刻み込む。一層強く、眩しいくらいの輝きを放ちながら、揺らめいた陣は同じ姿を留
めたまま二つに分裂し、男と私の胸へとそれぞれ融け込んでいった。これで、この甘美な欲望の塊は私の物だ。 
 弾力のある塊を喰いちぎり、溢れ出す濃厚で芳醇な気を口にする瞬間を思い出す。広がる甘みを帯びた香り。のどを潤
し胃へと落ち体の底から満たされていく至福の時。これほどの純粋な欲だ。きっと、今までに口にした何よりも勝る味を
しているはずだ。
 興奮に震える体を抱きしめる。幸せを噛み締めるような表情で胸を押さえる男を見やった。
 気が早い人間だ。最も、失せ物探しなど悪魔にとっては造作もない事だから、間違いではない。
 契約は代価を要求し、合意を以て締結される。悪魔の契約は取引だ。契約者は代価を払わなければいけない。
「それで、あの子とはどんな人間だ」
 そして、代行者として悪魔は必ず契約者の願いを叶えなければならない。
「俺が昔住んでいた屋敷に通いで来ていた使用人の子供だ。人手不足のときには手伝いもしていたな。リズ、という愛称
で呼ばれていた。歳は同じくらいだったと思う」
「リズ、か」
 ありふれた愛称だ。私も同じように呼ばれていた。もう何十年も、いや、百年以上昔の事だが。
「避暑の為の屋敷だったから、一夏を過ごす間だけの滞在だった。最も、父が政争に負けて没落するまでだがな」
 語りながら男が蝋燭に火を灯し、一人分の食事でも置けば場所がなくなりそうな机に置く。柔らかな光が家の中を照ら
しだして壁に男の影を映した。揺れ動く影を視界の片隅に見ながら、そういえばと男の案外にも品のある静かな動作に納
得がいった。このようなありふれた家に住んでいる人間が、小難しい言葉で書かれているはずの魔術書を読めた理由も。
226 :不等価交換 4/6 ◆Gr.Ti1RX5s [sage saga]:2014/03/29(土) 12:49:41.34 ID:+olEuWCM0
「それで、没落してからは会えなくなったのだな。リズに」
「そうだ」
「そういえば先ほど、十歳にもならない頃、といっていたな。ということは十年以上前のことか。なんとも一途なことだ」
「仕方がない」
 ベッドに座り込んだ男は、口の端を少しあげてこちらを見つめてきた。視線が絡む。細められた目にはネットリとした
暗い熱が宿っていた。
 昔の主人に覚えていてもらえることは光栄だろう。しかし、悪魔まで呼ぶような男に執着されるとは同情する。静かに
身振り少なく思考を巡らせる目の前の男は名を呼ばれるだけで満足するようには到底見えなかった。名と居場所を知られ
たリズはどれほど求められ追いつめられるのだろうか。この男の魂を喰らうのを待って、様子を見たいような気もする。
 場合によっては、リズもまた私の契約者になるだろう。
 うっそりと笑みを刻む。
「では、リズを探そうか。使い魔がお前の記憶に触れるがいいな?」
「ああ」
 使い魔を呼び出す。手の上に現れた蝙蝠は小さな体を震わせ、私の指に足でしがみつきぶら下がった。蝋燭の明かりを
受けて影に彩られた男の顔を、使い魔は見透かすように静かな瞳で見始めた。
 男が陶酔したような表情を深める。小柄な獣はいつまでも記憶を探り続けていた。
 いつもより記憶の探索時間が長い。使い魔に声をかけようとすると、黒真珠のような一対の瞳と目があった。ようやく
終わったのか。
 リズを探しに行くよう促す。けれども、小首を傾げた蝙蝠は指を離れず、不思議そうに見上げてくるだけだった。
「リズと会ったのは、この王都より北の地、馬車で一週間かかるガーラという地だった」
 いつにない使い魔の様子を窺っていると、男がぽつりと語り始めた。
 ガーラ。懐かしい地名にわずかな郷愁を覚える。そういえば、父母が使えていた主は、なんという家名だっただろうか。
遠い記憶は朧気で、よみがえってはこなかった。
 優秀な使用人になるために隣町へ修行に行き、帰って来ようとしたころにはその家は途絶えてしまっていた。結局、正
式に使用人として仕えることはなかったから、父母の話してくれた思い出話だけがあの方々に対する記憶だったと思う。
「リズを知った次の夏も、その次も、声をかける事が出来ずに無為に過ごしてしまった。リズは乳母でも執事でもなんで
もない使用人の子だったからな。けれど、リズを屋敷で見かけなくなったときに酷く後悔し、父上があの領土を手放すこ
とになった頃には奥手だった自分に怒りを覚えて政敵も自分も家族もあらゆるものが恨みの対象になった」
「そうか」
「必ずリズを手に入れる。機会はもう逃さない。あのとき、そう、決心した」
227 :不等価交換 5/6 ◆Gr.Ti1RX5s [sage saga]:2014/03/29(土) 12:51:12.15 ID:+olEuWCM0
 男が立ち上がる。見つめてくる瞳は強く熱を孕み、まるで愛しい者を見るかのようだ。
「リズ。君を見つけることが出来たとき、俺は運命の神に例えようもないほど感謝した」
 ゆっくりとした足取りで目の前に迫った男の手が頬に触れる。動くことが出来ず、愛でるように優しく肌の上を滑るす
べらかな感触を感じた。
 馬鹿な。
「まさ、か……」
「成人後流行病で死んだ俺は、気がついた時には人外の存在となっていた。死してようやく家に縛られない身となり、リ
ズを探し始め、何十年と見つけることが出来ず諦めかけていたのだけれど」
 両頬に手が添えられて顔が固定される。喜色に満ちた表情を浮かべる男は、そういえば、遠く記憶に残るあの方に似た
雰囲気が有るような気がする。あの、儚い日々を共に過ごした、屋敷の主人のご子息に。
 次第に記憶が鮮明によみがえる。そう、確かにこの方だ。絵姿で見た屋敷の主人によく似ている。あの日々の面影があ
る。どこかで術が展開されている気配を感じながら、しかし打ち消すことは出来なかった。抵抗することが出来なかった。
幼心に感じたこの方こそが主であるという思いは、望みがついえた絶望にも長きに渡る年月にも、消えずに残っていたの
だろうか。
「ご、子息様……、ヴァイ………」
 声が震える。覗き込んでくる顔を見上げながら、柔らかな木陰で教えていただいた名前だけが心中で響きわたっていた。
「リズ。俺達は既に契約の鎖に結ばれている。選べ。俺の名を呼ばずに永遠に契約に結ばれ続けるか、名を呼び魂を喰ら
い、上位の力に潰される前に隷属の鎖に縛られるか」
 選べ。圧倒的な力の籠もった声に晒される。
 何を選べというのか。どちらにしても、主と共にいる選択肢しか残されていない。隷属の鎖から解放された瞬間、主か
らの力の供給が途絶えて私は本来の運命通りに消滅する。契約の鎖は絶対であり、代行者と契約者が全てを履行するまで
消えることはない。
 リズは私だ。私が私の力を越えることはなく、そして私はリズを見つけてしまった。契約は破棄条件を満たすことが出
来ない場所まで進んでしまった。
「わたし、は……」
 真っ直ぐに刺さるような瞳から視線を逸らすことは出来ず、よみがえってしまった幼き日の思いは、ここ百年で感じた
ことのない、あらがうことの出来ないような何かがあった。
 そう、選べることはただ一つだ。
 この方の名を呼ぶことが出来る未来か、拙い反抗として決して名を呼ぶことのない未来だ。その、どちらか一つだ。
「わたし、は」
228 :不等価交換 6/6 ◆Gr.Ti1RX5s [sage saga]:2014/03/29(土) 12:52:20.44 ID:+olEuWCM0
 主の笑みが深まる。その背後に、蝋燭の火を受けてぼんやりと浮かび上がる大きな刃があるような気がした。
 ああ、今の主は。
 悪魔にも力を気付かれずに近づくことの出来る存在。我々と同じく闇の配下として生きる者であり、そして同時に別の
理に支配された種族。
 万人に等しく終焉を突きつける執行者。
「……さま、……ィデル、さ、ま」
 悪魔という種族は、欲望に敏感だ。特に、純度が高く強い欲望に。対価を得るためには他者の欲望を満たさなければい
けない。他者の望みに敏感でなければ、そうそうに味わうことなど出来ない。
 そして、他者だけではない。己の欲求に対しても非常に正直だ。なぜかは知らない。しかし、それが、悪魔という生き
物だ。
「ヴァイデル、さま。ヴァイデルさま、ヴァイデル様……」
 私と主との間に青白い光が生まれる。契約の時に互いに刻み込まれた魔法陣が展開された。その中心に、主へと細い糸
でつながった光の玉が姿を現した。目が、眩みそうだ。月よりも沈みゆく太陽よりも強く輝く、主の全て。聖職者の白い
衣よりも白く美しいこれを、この汚れた身で触れても良いのだろうか。この、全ての根源を。
 葛藤が胸を苛む。けれども、欲望が抑えきれない。
 主の顔を見上げる。許すようにゆっくりと頷くそのようすにただ喜びが胸を詰まらせ、見下ろした場所に浮かぶ光球を
手で包みこみ抱きよせた。口付けをし弾力のある魂に牙を立てる。口に広がる芳醇な味わい。臓の奥がざわつく。
 果たして私の一番の望みは、この主に仕えることなのだろうか。それとも、甘美な魂を味わうことだったのだろうか。
 背中にのばされた腕に引き寄せられ、砕けそうになる腰と震える体を支えられながら、墜ちていく意識の片隅に主と色
が交わっていく気配を感じた。
229 : ◆Gr.Ti1RX5s [sage]:2014/03/29(土) 12:54:25.54 ID:+olEuWCM0
以上です
230 : ◆BNSK.80yf2 [sage]:2014/03/30(日) 08:55:52.58 ID:ByfSpCXMo
投下乙です 企画サイトの方に転載しますねー
231 : ◆BNSK.80yf2 [sage]:2014/03/30(日) 09:39:13.24 ID:ByfSpCXMo
転載しました
ttp://text-poi.net/vote/57/2/
ttp://text-poi.net/vote/57/3/

続いて、向こうのサイトに投稿された作品をこちらに転載します
232 :【品評会】 ホープ・ノーマル  1/3 [sage]:2014/03/30(日) 09:42:01.78 ID:ByfSpCXMo
「なんでこんな世の中なんだろうな」
 僕と彼はテレビを見ていた。そのとき、彼が突然怒った風にそう言ったのだ。
「なにが?」僕はよくわからなかったので彼に尋ねる。
「お前はなにも思わなかったのか?」
「なにかは思ったと思うけれど、君のように怒りは覚えなかった」
 テレビの中では最近、実用化されてきた魔法について特集していた。出生前診断の医療魔法。つま
り、生まれつき魔法を持っているか、それとも魔法を使うことのできない人間か、その判断を行う魔
法ができたということだった。
 現代、多くの人間は魔法を使うことができる。ただその能力には才能の問題もあったし、千人に一
人程度、魔法を使えない人間が生まれてくる。これは現代の医療では解決ができない問題であった。
魔法が使える人間が独力することで、力をある程度伸ばすことはできる。けれど、元からその能力が
少しもない人間は伸ばしようがない。
 これは大きな問題だった。世の中は魔法を使える普通の人間に最適化されて作られている。学校の
授業だって、働く大人たちだって、どこでも魔法は必要なのだ。
 だからこそ、その大きな問題を早く認識するために、出生前診断が行われるということだった。こ
の診断が行われる段階では、既に中絶可能期間を超えているため、産まないという選択肢はない。た
だ、今後に備えるための情報収集のひとつということだ。
 その上で、僕らが見ていたテレビの中では、出生前診断の魔法の結果、魔法を『使える』人間であ
ると診断を受けた妊婦さんが「よかった……」と泣き崩れていた。
「なんであんなに泣かなくちゃいけない? どうして魔法の有無でそんなにプレッシャーがかかる世
の中なんだ? そんな社会がイヤになる」
「つまり君はやさしいんだ」
 僕は言った。彼はめんくらったような顔を見せる。
「魔法を使えない人間だって魔法を使える人間と同じように幸せになれるのならばプレッシャーを感
じないはずだって、魔法を使える者の上から目線」
 僕のトゲのある言葉に彼が戸惑いの後、怒りを見せる。
「幸せとはなんだろうね」
 僕は言う。
233 :【品評会】 ホープ・ノーマル  2/3 [sage]:2014/03/30(日) 09:43:10.49 ID:ByfSpCXMo
「たしかに現在、魔法を使える普通の人間とそうでない人間の平均収入には差が大きくある。魔法を
使えない人間は、政府からの補助や、法律によって規定された助けを得て就労していることが多い。
現在の仕組みではそれは仕方のないことだよね。能力に差があるのだから」
 彼が怒りつつもうなずいた。
「じゃあ、お金を多くあげればいいのだろうか」僕は目を瞑る。「仕事が劣っていても魔法を使える
人間と同じだけの給料をあげる? それとももっと多くのお金をあげてみる? 考えてみて、もし君
が魔法を使えない人間だったら、それで幸せになれたのだろうか」
 彼は否定も肯定もしない。
 考えている。迷っている。
 それだけ善良で、悪い人ではないということ。
 現在の社会の仕組み上、生きていく上である程度の金銭が必要なことは確かである。また、金銭を
使用することである程度の欲求を満たすことが可能であることも確かだ。だからある程度のお金が得
られるようにすることは間違っていない。だけどそれは今の社会だってできていて、では今の社会に
問題があるのならば、より与えれば幸せなのかということになる。
 答えはたぶん違うだろう。
 あればあるだけうれしいことに違いはない。だけど、あのテレビの中の母親が流した涙は、たった
それだけのことを恐れて流したわけではないんじゃないかな、と僕は思う。
「お金ではなく差別の問題だ、という考えもある」僕は彼が言うだろうセリフをつぶやいた。「たし
かに論外な酷い差別もあるだろう。それはなくすべきだと思う。だけど、違うということはなくする
ことができない」
 その違いがわかるだろうか。
「お金の問題も解決したとしよう。酷い差別もなく、また周りの設備も同じように使えるように魔法
が進歩したとしよう。そんな世界は一応ゆっくりとではあるけれど近づいてきている。だけど、そん
な世界が来たとしても、もし僕が魔法を使えないなら嘆くだろう、と思う」
 僕はただ正面を見すえて言った。
「なんで僕は魔法を使えないんだろうって」
 それは甘えなのだろうか。普通の人と同じ、普通の暮らしができる社会ができたのなら、もう魔法
が使えないなんて生きていく上で差のないことは我慢しなければいけないのだろうか。
「君は言ったね」
 僕は彼を見る。
234 :【品評会】 ホープ・ノーマル 3/3 [sage]:2014/03/30(日) 09:44:12.89 ID:ByfSpCXMo
「なんで魔法の有無で、そこでまプレッシャーを受けなければいけないのかと。そんな社会はイヤだ
と。社会にまだ問題が多く残っていることは否定しない。解決すればプレッシャーをいくらか減らす
ことはできるだろう。だけど、君はノーマルだからわかっていないことがある。ノーマルでないとい
うことはいつまで経っても、どんなに社会がよくなっても、心に傷が残るんだ」
 僕はずっと彼の目を見続けている。
「悩んだことはない?」
 彼は不思議そうな顔をする。
「子供の頃、ほんの小さなことができなくて、なのに友達はできていて、なんでじぶんはできないの
だろうか、と思ったこと。僕はいくらでもある。それは他人や大人になった僕からすれば馬鹿にする
ような小さくてどうでもいい悩みだと思うよ。でも悩んだんだ。傷ついたんだ」
 なんだろう。やっと僕自身がどう思ったのかに気づけてきた。
「君の言葉が間違いかどうかや、僕の考えた今の言葉たちがあっているかどうかは決められないけれ
ど」
 僕は彼に言うべき言葉を頭の中で並べて、組み上げて、それから空に放した。
「プレッシャーを与えるような社会がイヤだという、そんなやさしさに、僕はとても怒りを覚えた」
 親はただ子供に幸せになってほしいと祈っただけなのだから。
 その愛情が誤りを導くことが多々あろうと。
「魔法がこの世になかったとしても、僕らはきっと悩んでいただろうね」
 僕は表情を崩して微笑んだ。 
235 : ◆BNSK.80yf2 [sage]:2014/03/30(日) 09:44:40.44 ID:ByfSpCXMo
以上です
236 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/31(月) 00:08:24.72 ID:iP9wWNEG0
>>235
転載乙です
てきすとぽいの方でも既に↑を含め2作品が投稿されてますし、この宣伝は今のところいい形で進んでる気がします
投票なんかも盛り上がるといいなあ、と個人的には思ったり
237 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/31(月) 12:34:53.44 ID:peTvHpgVo
品評会作品投下します


尺とか考えずに、好き勝手に書いた。
後悔はしていない。
いや嘘。してるかも

多分13レス
238 :時計仕掛けのローレライ 1/13  ◆50ONQ3LN72 [sage]:2014/03/31(月) 12:38:20.74 ID:peTvHpgVo
 毎年この時期になると、街のすぐ横を流れる大河から、濃い霧があふれ出す。 
綿を伸ばしたように、うすく広がって街の上を覆いながら、しかし綿ではない証拠に絶えず動き続けている。
 丘の上からは、いくつも小さな隙間が見えた。
 そこから目に入るのは、所狭しと並べられた赤レンガの三角屋根だ。しかし、霧の中へと一歩踏み込んで
しまえば、対照的に白を基調とした、しっくい塗りの街並みが広がる。
 整備された石畳の道の中央には、間を空けて椿の植え込みが並んでいる。夜には、その縁に腰掛けて愛を
語る若者たちの姿を見ることが出来るだろう。
 だが、今は朝だ。
 パン工房の薪の音を除けば、通りは静けさに満ちていた。
 と、不意に工房の二階にある出窓が音を立てて開かれる。
 顔を出したのは年の頃十をいくつか越した辺りの少女だった。
 少女は小さな体をめいっぱい乗り出し、辺りを見渡した。そして、通りの南からゆっくり近づいてくる小
さな影を見つけると、その顔がまるで宝物でも掘り当てたかのように華やいだ。
 急いで首を引っ込めると、家の中から何やら巻き上げられた大きな布の束を手に取る。
 そして、小さな影が曲がり角から数えてちょうど三つ目の植え込みを超えたところで、手に持った布を重
さに任せて広げた。
――ルカおはよう!
 彼女の日課だ。
 小さな影の正体は、ブカブカの古めかしいコートを羽織り、分厚いスケッチブックを抱えた少年だった。
 彼は自分の名前の書かれた垂れ幕に、両手を大きく振って応える。
「おはよう、ルカ」
 垂れ幕を懸命に振る娘の姿に苦笑しながら、パン工房の主人が店先から顔を出した。
 ルカはその挨拶に少し遅れて気づいてから、手に持ったスケッチブックをめくる。
――おはようございます。アリーナおばさん
「持っていきな」
 そう言って差し出される湯気の立った丸い紙の塊。ルカはそれを遠慮がちに受け取ると、スケッチブック
の真新しいページに、耳の間に挟んでいたパステルを走らせる。
――いつもありがとうございます
「いいってことさ」
 ルカは深々と頭を下げると、もう一度出窓に向かって手を振ってから歩き始めた。
239 :時計仕掛けのローレライ 2/13  ◆50ONQ3LN72 [sage]:2014/03/31(月) 12:40:15.28 ID:peTvHpgVo
 耳が聞こえない代わりに、ルカには不思議な力がある。
五つの時に親を事故で亡くし、孤児となったルカを引き取ったのは、時計職人のアレサンドという男だった。
彼は街でも有数の腕利きだったが、仕事にはとても厳しく、おまけに偏屈だ。弟子を一度ほめる間に百度そ
の頬を叩くと言われた男だった。
そうして弟子が皆出て行ってしまったので、代わりに幼子に自分の技術を教え込もうとしたのである。
当然、周囲の大人達は心配したが、それをよそに二人の生活は大変うまくいった。
ルカの力のおかげで、だ。
アレサンドが十度頬を叩くまでにルカは初めての時計を組み上げた。その懐中時計はとても出来が良く、六
年経った今でも数秒と狂いを見せていない。
「ルカ。俺はたまに、歯車の奏でる音が、実はお前には聞こえているんじゃないかと思うことがあるよ」
 アレサンドは、ルカが五つ目の時計を組み上げた時に、そう微笑んで頭を撫でた。
 けれど、この時本当にルカには聞こえていたのだ。いや、見えていた。
 耳の聞こえない優しい少年に授けられた力。
 彼は、音を見ることが出来た。
 
 元気な声、落ち込んだ声、川のせせらぎに、そよ風が若葉を叩く音、あらゆる音色がルカの周りを包んでいた。
 例えば、年老いて長く歩くことが億劫になったアレサンドに代わり、街の中央に建つ大聖堂……その時計塔
の整備はルカの日課だ。
 彼は毎朝、時計塔まで行くと歯車を一つ一つ丁寧に調べ、油を差している。この時、調子の悪い歯車は気味
の悪い色で染まるので、ルカにはすぐに見つけることが出来たのだ。
 ルカはそうやって、この街の時間を守ってきた。
 整備を終えると、時計塔を誇らしげに見上げてから、ブドウ畑を越えて街を見渡せる丘へと登る。
 そして、アリーナおばさんから受け取った焼き立てのパンを齧るのである。
 心地よいそよ風に身を任せながら、丘へと寝そべるこの時間を、ルカは何よりも愛していた。
――今日もここはとてもきれいな色でいっぱいだ
 この日も、ルカは仕事を終えて丘のへ来ていた。
 目を瞑り、陽光を肌で感じる。朝はまだ肌寒いが、日が天頂に近づくにつれ霧も晴れる。
 ルカはコートを脱ぎ捨ててその上に横たわり、思い切り伸びをした。
 そして目を開いた瞬間、ルカの目に見覚えのないものが飛び込んできたのである。
「……?」
240 :時計仕掛けのローレライ 3/13  ◆50ONQ3LN72 [sage]:2014/03/31(月) 12:41:51.10 ID:peTvHpgVo
 それは真っ黒な塊だった。
 ルカから少し離れたところで、街を見下ろすようにぽつんと一つ、そこにあった。
 まず、ルカはそれが大きな石だろうか、と考えた。
 その正体が実は人間だと、それも自分と年頃の同じ子供だと彼が気づいたのは、その塊がちょうど膝を抱
えた自分と同じ位の大きさで、しかも小刻みに震えていたからだ。
 それは、立てた膝に顔をうずめ、声を出さないように嗚咽していた。
何故この子はこんな色をしているのだろう?
 ルカは不思議に思った。だから、そっとスケッチブックを取り出すと、パステルを握る。
 真っ白な画用紙に緑の曲線を描き、その向こうに見える赤い屋根と、太陽が跳ね返る水面の様子を描き出
す。
 一生懸命に指を滑らせていると、彼に気づいたのか黒い影は顔を上げる。
 ルカはその様子をちらりと横目で確認した後、悪戯っぽい笑みを浮かべて、さらに書く速度を上げる。
 絵は瞬く間に完成した。
 ばりばりと、乾いた音を立ててスケッチブックからその絵は切り離される。
 ルカはそれを黒い塊にそっと差し出した。
――あげる
優しい微笑みに親しみを込めて。黒い塊は、よく見ると少女のようだった。
 彼女は怯えるリスのように一旦後ずさった後、恐る恐る近づいてきた。
 そして、その絵を受け取ると、じっと見つめる。
「きれいな絵……」
言葉の内容まではルカには分からない。けれど、彼女の声もまた、ルカには真っ黒に染まって見えた。
――あなたの名前は?
 スケッチブックの四枚目、挨拶の次のページをめくって見せる。
 それを読むと、ためらいがちに彼女の口から黒が漏れ出すのをルカは見た。そして次の瞬間、少女は背を
向けてあっという間に走り去っていった。 
 
 結局その後二回ほど、こちらの姿を見ただけで逃げられてしまったので、ルカが少女の名前を知る頃には、
一週間が過ぎていた。
 この日、時計塔で歯の欠けた小さな歯車を一つ交換したルカは、少し疲れていた。
 丘の上に着くと、少女の姿はない。
241 :時計仕掛けのローレライ 4/13  ◆50ONQ3LN72 [sage]:2014/03/31(月) 12:43:03.16 ID:peTvHpgVo
 ルカはいつも通り、コートを広げてその上に横になる。いつもと違ったのは、その日の陽光が余りにも心地
良すぎたことだ。ルカはいつの間にか浅い眠りに落ちていた。
 ふと、耳元で何かが動く気配がした。薄目を開けてみると、黒い塊……例の少女がすぐ傍で背を向けて、
ごそごそと何かを弄っている。
「綺麗な絵がいっぱい……」
 少女はルカのスケッチブックを見ていたのだ。ルカは少女に気づかれないようにそっと起き上がると、ゆ
っくり大回りをしながら少女の前に回った。
 絵を見るのに夢中で気づく様子はない。
 ルカは意を決すると、少女の手をぎゅっと掴む。
「きゃっ!」
 少女は慌ててその手を振りほどこうとする。ルカは少女が痛がらないように、けれど離さないようにしっ
かりとその手を握りながら、スケッチブックをめくっていく。
 おはよう、こんにちは、ありがとう、そして四ページ目。
――あなたの名前は何ですか?
 やがて、暴れ疲れてルカの手を解こうとするのを諦める頃、少女はやっとそのページに書いてある言葉に
気が付いた。
 ルカの顔を不思議そうに見た後、おずおずとその口から黒い音が零れる。
 それが名前であろうことが分かったので、ルカはほんの少し苦笑する。
 そして、一度自分を指さしてから、ゆっくりと少女の掌に指を滑らせた。
――ぼくはルカ、きみは?
 少女はしばらく何かを考えていたが、やがてやっと気づいたようだった。
 その細く美しい指で、ルカの手の甲に
――わたしはリタ
 やっと名前がきけた。ルカはそのことに喜びを感じながら、スケッチブックをめくる。
 しばらく探した後で、やっとお目当てのページを見つけると、それをリタに見せてはにかんだ。
――良い名前だね

 リタという黒い少女は、二週間ほど前にこの街にやってきたらしい。
 スケッチブックを挟んでの会話は、お互いのことを知るのに少しだけ多くの時間を要した。
242 :時計仕掛けのローレライ 5/13  ◆50ONQ3LN72 [sage]:2014/03/31(月) 12:43:43.52 ID:peTvHpgVo
 彼女が親を亡くし、親戚の家に住んでいることを知ると、ルカは自分にも親がおらず、親代わりの時計職
人と一緒に暮らしていることを伝えた。
 リタは「お揃いだね」と少し寂しそうに微笑んだ。
 リタと話していると、ルカの時間は駆け足で過ぎていく。気が付くと暮れかけた陽が西の空を赤く焼いて
いた。
 ルカはスケッチブックに「またここで会える?」と書いた。
 リタはルカの耳に挟んであるパステルをそっと抜くと、すぐ下に「多分」と書く。
 その文字を見た瞬間、ルカの心には今まで感じたことの無い色の爆発が起きる。
 リタが家路についた時、ルカは彼女の背中がブドウ畑の向こう側に消えて見えなくなるまで、その場を離
れなかった。

 二人はすぐに仲良くなった。引っ越してきたばかりのリタには友達がおらず、ルカも耳が聞こえないので
、中々友達と遊ぶ機会がなかったからだ。
 ルカは彼女にいくつも質問をし、時計の直し方を教え、絵を描いてあげた。
 代わりにリタは今までに集めた綺麗な石を見せ、ルカの頬にキスをした。
そうしてリタと仲良くなるにつれ、ルカはあることに気が付く。
 丘の上でルカと会う時、時折リタは膝を抱えて泣いていることがあるのだ。
 ルカにはそれが不思議で仕方がなかった。
――なぜ、泣いているの?
 ルカが尋ねても、リタはごめんね、と首を振るだけだった。
――いじめられるの?
――ちがうの。わたしが悪いの
 何度きいても返ってくる答えは同じだった。だから、ルカは思い切って、自分の力のことを話してみるこ
とにした。
――リタ、誰にも秘密だよ? 実はぼくは、音の色が見えるんだ
――音の色?
――うん。ぼくは耳が聞こえないけど、例えば誰かが何かをしゃべった時、それが色になって見えるんだよ
 ルカは一生懸命説明する。始めは半信半疑だったリタも、次第にルカの言うことを信じるようになった。
――例えば、そよ風の音はどんな色?
――そよ風はね、若草色だよ。そして雨が降ると青が少し混ざって、とてもきれいな碧色になるんだ
243 :時計仕掛けのローレライ 6/13  ◆50ONQ3LN72 [sage]:2014/03/31(月) 12:46:06.20 ID:peTvHpgVo
――じゃあ、時計の音は?
――少しさびた鉄の色だよ。良い時計であればあるほど、光沢があるんだ。
 リタはルカにいろんな質問を投げかけた。ルカはそれに、パステルを交えて答えていく。
 そして、きく物がなくなってしまった時、リタはとても迷うように小さな文字で尋ねた。
――わたしの声ってどんな色?

 ルカは、彼女の姿が真っ黒な理由は、彼女が泣いていることと関係があるのではないか、と考えていた。
だから、黙っているわけにはいかなかった。
――落ち着いて聞いてね。きみはね、まっ黒なんだ。声だけじゃない、ぼくの目にはきみは姿かたち全てが
、まっ黒に見えてしまうんだよ
「まっ黒……?」
 リタはルカの言葉にぽろぽろと涙を流した。ルカはそんな彼女を力いっぱい抱きしめる。
 離せば逃げてしまいそうな気がして。
 ルカの望みはリタを傷つけることではなかったのだから。
 一しきり泣いた後で、リタは腫れた目をこすりながら、スケッチブックに文字を書き始めた。
――わたしが泣いているのはね。家の中でしゃべると怒られるからなの
――怒られる? なぜ?
――わたしは歌がとっても好きだったの。でもある日、わたしの歌を聞いた人が、気を失って川へ落ちてし
まったの
――歌のせいで?
 リタは寂しそうに頷いた。
――お父さまに言われたの。わたしの歌は人の心を狂わせるから、人前で歌ってはいけないって
――そんなこと、あるの?
 ルカにはとても信じられなかった。けれど、リタの瞳に宿る暗い光はとても真剣で嘘をついているように
はとても見えない。
――お父さまが亡くなってから、わたしは我慢できずに一度だけ歌ってしまったことがあるの。そうしたら
、教会の窓ふきをしていたおじさんが、落ちて足を折ってしまった
――わたしは歌うのが大好きだったのよ? 歌を聞いてもらうのも大好きだった。でも、これではっきりし
たわ。わたしの声は悪魔の声なの。もうこんな声、なくなっちゃえばいいのに
 リタの目に再び涙がこみあげる。
244 :時計仕掛けのローレライ 7/13  ◆50ONQ3LN72 [sage]:2014/03/31(月) 12:49:10.55 ID:peTvHpgVo
 ルカは悲嘆にくれる彼女を見据えながら、意を決したように指を走らせる。
――ねぇ、リタ。歌ってみてくれない? 今、ここで
「……! いやよ! 絶対にいや! 何故そんなこと!?」
――この丘の上なら、街には聞こえないよ。そしてぼくにも聞こえない。でも、ぼくはきみの歌を見ること
ができる。ぼくは見てみたいんだ。きみの歌うところを。
――だめ。何があるか分からないもの。だって、まっ黒なんでしょ? 見ただけでルカの目がつぶれてしま
うかもしれないじゃない
 
――それくらいじゃつぶれないよ。歌ってくれるまで、ぼくはここを動かないからね
 リタは真っ直なルカの瞳に、肩を落として項垂れる。
――ルカ。おねがい。わたしはもう誰も傷つけたくない。大好きな友達ならなおさら
――だめ。大好きだからこそ、聞きたいんだ
 ルカとリタは無言で見つめ合う。二人の間を、穏やかな風が吹き抜けた。
 やがて、リタは根負けしたように溜息を吐いた。
――おかしくなったらすぐに止めてよ?
――うん、分かった
 ルカは、草の上にあぐらをかく。その瞳は期待に満ちてきらきらしている。
 リタは、躊躇しながらも目をつむり、胸の前で祈るように両手の指を絡ませた。

 アで始まる歌。彼女の口からそっと漏れたのはドの音だ。
 別に珍しい歌ではない。パン屋もパンを焼きながら口ずさむような、花屋も花に水をやりながら口ずさむ
ようなありふれた歌……それがリタの口から紡がれる。
 その瞬間
――えっ!
 ルカはあまりの出来事に、思わず目を見開いた。
 リタを包んでいた黒。それが、次第にほどかれるように彼女の体を離れ、極彩色の輝きを放ち始めたのだ。
 ルカはその時、初めてはっきりとリタの姿をその目に捉えることができた。
 亜麻色のウェーブがかかった髪、頬にうっすらと浮かぶそばかす、透き通るような青い瞳に、小さな口。白
いワンピースを着ていることすら、今の今まで彼は知らなかった。
245 :時計仕掛けのローレライ 8/13  ◆50ONQ3LN72 [sage]:2014/03/31(月) 12:50:38.59 ID:peTvHpgVo
 そして、リタの体を離れた音色達は、時に情熱的な赤、時に静かな青、時に雄大な緑と、その姿を変えな
がら、二人の周りで螺旋を描く。
――すごい
 ルカはまるで虹だ、と思った。自分たちは今、太陽の光の中にいるのだ、と。
 やがて歌が終わり、リタが目を開く。
 その姿は元の、黒い塊へと戻っていた。
 しばらく恍惚の中にあったルカは、ややあって掌が破れんばかりの拍手を送った。
 興奮冷めやらぬままに、スケッチブックを取り出す。
――リタが黒く見えたわけが分かったよ! きみの体にはとてもたくさんの音色がつまっているんだ。それ
が混ざって黒くなってしまっていたんだよ!
――たくさんの色?
――そう。赤、青、黄色、緑に紫。いろんな色が混ざり合うと黒くなっちゃうだろう? それが、きみが歌
った瞬間に、いっせいに爆発したんだ!
 ルカはリタの手を握る。その顔は少し熱を帯びて火照っている。
――分かるかい? リタ。きみの歌が人を傷つけるんじゃない。きみの歌がきれいだから、みんな好きにな
ってぼーっと引き寄せられちゃうだけなんだよ! リタの歌は悪魔の歌なんかじゃない! おひさまの歌、
天使の歌なんだ!
 ルカは自分の思っていることを上手く伝えられないことにもどかしさを覚え、頭を抱える。
 スケッチブックを書いては破り、また書いては破りを繰り返す。
 リタは、ルカがそんな風に一生懸命になってくれることが嬉しくてたまらなかった。今まで好きなのに憎
くてどうしようもなかった自分の歌を、許してもらえたような気がしたのだ。
 リタはルカの手からそっとパステルを奪うと、真新しいページに一言。ありがとう、と書く。
 ルカが弾かれたように顔を上げると、リタの黒く覆われながらも微笑む顔がはっきりと見えた。
 自分の小さな体から、溢れだしそうになる喜びを感じて抑えられなかったルカは、その日珍しく家へと走っ
て帰った

 次の日の朝、ルカがいつものように大通りを丘の上に向かって歩いていた時だ。
「ルカ!」
 赤い声で彼を呼ぶ者があった。
246 :時計仕掛けのローレライ 9/13  ◆50ONQ3LN72 [sage]:2014/03/31(月) 12:51:46.03 ID:peTvHpgVo
――おはよう、ヒルダ
 このページはルカが最もよく使う内の一枚だった。情熱に満ちた彼女の声と同様に、赤いパステルで書い
てある。
 栗色の長い髪に大きめの赤いリボンが良く似合うパン工房の一人娘だ。
 ヒルダは、ルカと話す時のために持っている紙の束を取り出すと、鉛筆で文字を書く。
――また、丘に行くの?
 ルカはとても嬉しそうに頷く。その顔を見て、ヒルダは面白くなさそうに口をへの字に曲げる。
――最近、ずーっと丘にいるよね
――あそこで、新しく友達になった子が待ってるんだ
――もう、行くのは止めなさい
 ルカは不思議そうに首を傾げる。
――なぜ?
――知らないの? あの子は魔女なのよ。昨日、となり街から遊びにきたおじさんに聞いたの
――魔女?
 両手を広げて通せんぼをするヒルダに、ルカは訝しげに眉根を寄せる。
――そう、魔女。あの子が歌で、たくさんの人が呪いころしたって。だから、行っちゃだめ
――そんなわけないじゃないか。ぼくはあの子の歌を見たけど、とってもきれいだったよ?
――やめて! 魔女の味方をしたら、あんたも悪魔になっちゃうでしょ? お願いだから行くのはよしなさい
 仲良しのヒルダとはいえ、リタを魔女呼ばわりすることを許すことはできなかった。
 ルカは、珍しく怒りながらヒルダの横を通り過ぎようとする。
 ヒルダはその手を乱暴に掴んだ。
「魔女と仲良くするなら、あんたも仲間外れだからね! もう友達じゃないんだからっ! いいの?」
 ルカはヒルダには答えず、その手を振り払う。
 そして、どうしようもなく悲しくなり、目をつぶって走り出した。
「ルカー! 待ちなさいよ! ルカー!」
 その声はもう届かない。
「ルカー! えっ!? ちょっと、ルカ! 前! 前を見て!」
 全速力で丘に向かって走る。
「ルカー! 誰か! お願い、ルカを止めて! このままじゃ……」
 丘の上にはリタが待っているのだから。
247 :時計仕掛けのローレライ 10/13  ◆50ONQ3LN72 [sage]:2014/03/31(月) 12:53:08.52 ID:peTvHpgVo
「ルカ! 危ないっ!」
 そこで、少年の意識は暗転する。
 
 果たして、これを罪と呼べるだろうか?
 時を遡って、リタはいつもより少しだけ心を弾ませながら丘への道を歩いていた。
 ルカと遊ぶことが楽しみでしかたがなかった。
 ルカは今日はどんな絵を描いてくれるだろう? どんな絵でもきっと美しいに違いない。
 何かお礼をしたい、と思った。お礼に……また歌を聞いてもらえるだろうか?
彼に歌を送ったら、喜んでくれるだろうか? そして、またほめてくれるだろうか?
 リタは自然と鼻歌を口ずさんでいる自分に気づかない。
 彼女の体から、虹の音色が静かに奏でられていることに気づかない。
 そして、彼女がたった今、荷馬車とすれ違ったことも。
 その日、ルカは丘には来なかった。
 
 夕暮れの中、リタは肩を落としながら歩いていた。
 ルカとたった一日会えなかっただけで、胸が張り裂けそうな自分に少し驚く。
 なぜ、来なかったのだろう? 何かあったのだろうか?
 リタの頭の中を、そんな疑問がぐるぐるとまわっては消えていった。
 そして、ちょうど街の入口に差し掛かった頃、聞きなれた名前が彼女の耳に入って来た。
「本当かよ……? ルカって、アレサンドのとこの?」
「ああ、耳の聞こえないガキだ」
 ルカ? リタは無意識のうちに耳を澄ます。
「しかし、何だってそんなことに?」
「何でも、御者が意識を失って、馬が暴走したらしい。ほら、あのパン屋の前だ。あそこで突っ込んで来た
ってよ。耳のせいで、周りの注意も届かなかったってさ」
「へぇー。不思議なこともあるもんだ。御者がねぇ」
 リタの背筋が凍りつく。彼らは今、何と言ったのか?
 勘違いに違いない。きっとそうだ。
 リタは痛いくらいに早鐘を打つ胸を掴みながら、自然と速足になる。
 通りに入ると、辺りはその話でもちきりだった。
248 :時計仕掛けのローレライ 11/13  ◆50ONQ3LN72 [sage]:2014/03/31(月) 12:54:01.75 ID:peTvHpgVo
 リタは、大通りを越え、パン工房へと急ぐ。大丈夫、きっと大丈夫と小さな声で呟きながら。
 そして、最後の曲がり角を曲がった時、彼女の目に飛び込んできたのは、横転した馬車、そしてものすご
い人だかりだった。
 呆然自失でその場に近づく。そんなリタの手を突然、別の小さな手が掴んだ。
 その手の主は、彼女を裏通りまで引っ張っていく。そして、人がいなくなったのを確認してから、振り向
いた。
――パンッ!
 乾いた音が響く。
 リタは、一瞬何をされたのか分からなかった。
 次第に熱を持つ頬に、しばらくしてから頬を叩かれたのだ、と気づく。
「あんたの! あんたのせいで!」
「……え?」
 ヒルダだった。彼女は目に涙を湛えながら、憎しみに満ちた視線をリタに向けている。
「あんたなんでしょ!? ルカをころせて嬉しい!? あの子が何をしたっていうのよ!」
「え……? ルカ……え……?」
 リタは混乱していた。考えが上手くまとまらなかった。
 目の前の少女は今何といったのか? ルカをころした、そう言ったのか? 誰が? 自分が?
「馬車が暴走するなんてありえないわ! 魔女! あんたがやったに決まってる! 絶対に許さないからっ!」
 ヒルダはそう言い残し、背を向けて走って行った。
 リタはしばらくその場で立ち尽くし……不意に崩れ落ちた。
 真っ白になった頭を抱えながら、リタはその場を動くことが出来なかった。

 リタが重い足取りでルカの家にたどり着くと、すでに日は落ちていた。
 背伸びをして、窓から家の中を覗くと、ベッドの上に寝かされ、頭に包帯を巻いたルカの姿が見える。彼
の小さな手を握りながら嗚咽する、白い髪の男も見える。
 その傍らには医者らしき男が立っていて、鎮痛な面持ちで首を振った。
「手は尽くしましたが、恐らく明日の朝まではもたないでしょう」
 その言葉は、リタをさらなる絶望へと叩き落とした。力なく尻もちをつき、その場で膝に顔をうずめる。
 また自分の歌が人を、それも大好きな友達を傷つけたというのか。
 リタは自らのかぼそい首に、少し爪を立てる。
249 :時計仕掛けのローレライ 12/13  ◆50ONQ3LN72 [sage]:2014/03/31(月) 12:55:01.00 ID:peTvHpgVo
「また、この喉が。この口が……う、あ……うあああああっ」
 リタの脳裏に、ルカの笑顔が浮かぶ。
 歌ってはいけなかったのだ。ルカはきっと、自分の呪われた歌を聞いたから死ぬのだ。
 馬車ではない。自分の歌が彼をころすのだ。
 次第に彼女の指には力が籠り、遂には血がにじみ出た。
 どうすればいいのだろう? このままでは、ルカは行ってしまう。天国へと連れて行かれてしまう。
 天使に手を引かれ、ここからいなくなってしまう。天使に……
 その時だった。リタは弾かれたように顔を上げる。
「天使がルカを……」
 リタはルカの言葉を思い出す。
――きみの歌がきれいだから、みんな好きになってぼーっと引き寄せられちゃうだけなんだよ
 リタの瞳に光が戻る。疲れ切った足に力を込めると、立ち上がって走り出す。
 行先はあの丘。ルカとリタが初めて出会った丘だった。

 満月が天頂に輝き、街の明かりはすでに半分近くが消えている。
 リタは穏やかな風の吹く丘に一人立っていた。
「ルカ、待っててね……」
 リタは覚悟を胸に目をつぶる。再び両手を組み、胸の前で祈るように。
 いや、実際に祈りを捧げながら、彼女は口を開き、そして歌いだす。
 彼女の全てを込めて、その声が天国まで届くほどに。
 やがて、彼女の体から極彩色の光が溢れだし、次第にそれは空へと登っていく。
 リタは、道が出来たことを確信すると、そこへ意識を飛ばす。
 ルカはきっとそこにいるはずだ。天使に手を引かれ、まさに今そこに向かっているはずだった。
 だから、リタは歌う。その歩みを止めるために。その歌で天使すら引き止めるために。
 歌声は螺旋を巡り、ルカの元へと辿り着く。そうすれば連れ戻せるはず、リタはそう信じた。
 なぜなら、ルカが自分の歌は天使の歌だと、そう認めてくれたからだ。

 気づくと、リタの意識は純白の雲の中に立っていた。
 目の前には、六枚の羽根を携えた天使がルカを抱きかかえながら、微笑んでいる。
 リタはルカの元へと歩み寄る。彼はおだやかな顔で眠っていた。
250 :時計仕掛けのローレライ 13/13  ◆50ONQ3LN72 [sage]:2014/03/31(月) 12:56:22.01 ID:peTvHpgVo
 彼女は返してくれと願った。彼はまだそこへ行くべきではない。お願いだから連れて行かないでほしい、
と頭を下げる。
 そんなリタの心に、優しい声が響く。それはとても残酷な問いかけだった。
 誰か一人は連れて行かなければならない。きみはどうしたい?
 けれど、リタに迷いはなかった。彼女にとっては条件ですらない。
 リタはルカの寝顔に口づけると、破顔した。
「また会おうね、ルカ。そしてまた、わたしの歌を聞いて」
 そこで、少女の意識は暗転する。

 ルカが次に目を覚ました時、彼の頬は涙でぬれていた。
 彼に起きた奇跡を、周りの者達が大いに祝い、喜んだ。
 けれど、ルカは泣くことしか出来なかった。自分の代わりにいなくなったリタ。微かに残る記憶の断片に、
彼女の笑顔がこびりついて離れない。
 体が治った日、ルカは久しぶりに丘へと登った。もう、そこには彼女の姿はない。
 黒くうずくまり、涙を浮かべる大好きな女の子。彼女のことを思うと、ルカの胸に強くこみ上げるものが
あった。
 だから、ルカはその日以来、丘へ行くことを止め、あるものを作り始めた。
 それは時計だ。機械仕掛けの、ある細工がほどこされた時計
 彼が二十歳になる頃に完成し、街の広場に設置されることとなった。
 朝の八時、昼の十二時、そして夕方六時。日に三度、音楽が流れ人形が踊り出す。
 時間になると、街の者は皆足を止め、心地いい音楽に身を任せた。
 ルカはその時計の前で、満足げに微笑む。
 踊る色とりどりの人形達。その中心で、亜麻色の髪の少女が楽しそうに歌うのを見届けながら。


                             了
251 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/31(月) 12:56:51.16 ID:peTvHpgVo
投下完了


正直スマンかった
252 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/31(月) 22:52:57.81 ID:iP9wWNEG0
てきすとぽいに投稿された品評会作品を転載します。◆BNSK.80yf2さんにまかせっきりなのは気が引けるので。
未転載2作品あります。
253 :【品評会】 ブツ (茶屋氏作) 1/5 [saga]:2014/03/31(月) 22:57:37.42 ID:iP9wWNEG0
「持ってきたか」
「ああ、ここに」
 俺は手に持ったブリーフケースを見せてやる。
「確かだろうな」
「ああ、確かだ」
 正直なところ何が確かなのか俺は知らない。
 きっと中身は確かに本物なのかと問うているのだろうが、それが何なのか知らない。
 ただ、指定された場所に行って、指定された額を受けとればいいだけだ。
 知る必要もない。
 厄介ごとには首を突っ込む主義じゃない。
「そっちもちゃんと用意してるんだろうな」
 俺はさっさと取引を終わらせて飲みに行きたいんだ。緊張で喉が渇いた時ほどビールがうまい。
「ああ」
 相手の男はパチンパチンと軽快な音を鳴らすと、銀色のアタッシュケースを開けて見せる。
 毎度のことながらハリウッド映画でも見ている気分だ。
 ピン札が整然と敷き詰められている。
「フクザワダラーか、気が利くな」
「大事な品だからな」
 一束とってざっと枚数を数え、頭の中で敷き詰められた金額を計算する。
 そして金額が算出された瞬間、血の気が引く。
「足りないぞ」
 何かの手違いかとも思ったが、そんなことあるはずがない。
「前金だ」
「ふざけるな。一括のはずだぞ」
 男は呆れたように首を振る。
「こっちも完全に信用してるわけじゃないんでな」
「そうか、じゃあ、交渉は決裂だ」
 あくまで事務的に言い放つ。内心動揺しているが表情に出すわけにはいかない。
「おっと、そういうわけにはいかないな」
254 :【品評会】 ブツ (茶屋氏作) 2/5 [saga]:2014/03/31(月) 22:58:45.84 ID:iP9wWNEG0
男は自然な動作で銃を抜き、こちらに向けてきた。
「お前がその金を受け取る。俺にそのケースを渡す。それだけのことだろ?簡単じゃないか」
「そうかな?」
「安心しろ。後から残りの半分も渡すさ。こっちだってお前の命なんて欲しくないんでね」
 まずい状況だ。
 だが、相手に有利な状況を作り出されつつある。こっちは一人バックアップはない。
 その時、ガタっと大きな音が鳴った。
 ブリーフケースからだ。
「なんだ!?」
 男の動揺が見えた。チャンスだ。
「そりゃ、中身に決まってんだろ」
「中身?」
「おいおい。まさか中身も知らないでここに来たのか?」
「ば、馬鹿な。そ、そうだな。中身だな」
 かかった。どうやら本当に中身のことを知らないらしい。
 それはこちらも同じだが。
「確認しなくていいのか?中身を」
「確認か。それもそうだな。だが、お前に背を向けるわけにもいかないしな」
「何だ?俺を信用してるのか?銃まで持ってきたくせに」
 相手の目が泳いでいる。どうにも中身のことが気になるようだ。気になるが、確かめようがない。
むしろ確かめることは避けたいだろう。中身を確かめずに受け取ってくることを指示されたに違
いない。あるいは中身を見るなとすら言われているかもしれない。
「だったら、俺が開けてやろうか?それだったらお前が俺に銃を突きつけたまま、中身を確認で
 きる」
「そうだな。それがいい」
「よし、じゃあ」
「待て!お前、その中身を使って俺に反撃しようとしてるんじゃないのか?」
255 :【品評会】 ブツ (茶屋氏作) 3/5 [saga]:2014/03/31(月) 22:59:44.68 ID:iP9wWNEG0
 反撃?中身を使って?
 反撃ってどうやって。いや、中身が武器であれば確かに反撃に使えるかもしれない。
 だが、俺は中身を知らない。
 そしておそらくそれは相手だって同じだ。
「じゃあ、どうする?試験でもするか?」
「試験?」
「そりゃそうだ、中身が本物だったら試験すりゃ一発でわかるだろ」
「どうするんだ?」
「おいおい本当に中身のこと知ってるのか?試験なんて常識だろ」
「いや、常識がないものでな。そんな試験知らんな」
 くそ、墓穴を掘った。どうする。試験なんてただのでっち上げだ。
 どうすりゃいい。
 ガタガタッ。
 タイミングよく、またケースが動いた。
「まあ、テストするまでもないか」
「そ、そうみたいだな」
 明らかに相手は動揺している。中身を何も知らずにケースがやたら動いているわけだから。
 俺も少なからずびびってはいるわけだが。
「生きてるのか」
「は?」
「中身は生きてるのか」
 ここに来て相手は中身を知らないことを認めたのか?
 いや、違う。探っているのだろう。
 こちらが生きている、もしくは死んでいるはずだといえば中身は何か生き物。
 こちらが訝しげな表情をすれば、比喩的な意味で言ったのだとはぐらかすこともできる。
「さあな。どう思う?」
「答えたくないのか?本当に中身は確かなんだろうな?」
 薄々とこちらも中身を知らないことを感づいているかもしれない。
256 :【品評会】 ブツ (茶屋氏作) 4/5 [saga]:2014/03/31(月) 23:00:10.86 ID:iP9wWNEG0
 交渉はほぼ敗北に近い状況だ。
 仕方がない。
 ゲームは負けだ。
「持って行けよ。正直俺も中身を知らないんだ。確かめようがない。だが、お前もそれは同じな
んだろ?だから前金はもらっていく」
「ふん。最初からそうしていればいい」
 そもそも厄介ごとに首を突っ込む主義じゃない。
「取引終了だな」
 そういった瞬間ケースが激しく音を立て振動する。
「何だ!?いったい何なんだ!?」
 ガタガタガタガタガタガタガタ。
 俺は静かに目を瞑り、しゃがみ込む。
 厄介ごとには巻き込まれたくない。
 ただ、黙って目を瞑り、耳を塞ぎ、口を閉じる。
 銃声が聞こえたような気がした。
257 :【品評会】 ブツ (茶屋氏作) 5/5 [saga]:2014/03/31(月) 23:00:45.88 ID:iP9wWNEG0
「毎度のことながらきったねぇ」
 俺は血だらけになったケースの取っ手をとるとって周辺を見る。
 血だらけだ。これでもかって程に真っ赤だ。
 食い散らかすにしてもやりすぎだ。
「おっと、忘れちゃいけねぇな」
 銀色のアタッシュケースもしっかり持っていく。予定の半分だが、仕方ない。
 服も血まみれだ。
 バーに行く前にどこかで着替えてシャワーでも浴びなくちゃいけない。
 面倒な話だが、仕方がない。
 ガシャンと何かが落ちる音がした。
 見れば相手の持っていた拳銃だ。
 ケースの中身が吐き出したらしい。
 食えなかったらしい。
 俺はこの中身がどんなものなのか知らない。
 何故誰かが欲しがり、交渉を持ちかけてくるのかも。
 もしかしたら、何かの分泌物を出して獲物を誘い出しているのかもしれないが、正直知りたくもない。
 ただ、金さえ手に入ればそれでいいんだ。
258 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga]:2014/03/31(月) 23:03:33.94 ID:iP9wWNEG0
茶屋氏の「ブツ」は以上です。
続いて、もう1作品の転載です。
259 :【品評会】 時計屋との約束 (しゃん@にゃん革氏作) 1/2 [saga]:2014/03/31(月) 23:05:06.81 ID:iP9wWNEG0
 まず最初に、マーガリンがあった。
 パッケージの側面には、原材料として食用植物油脂、食用精製加工油脂などが記されている。
 食用植物油脂と食用精製加工油脂のちがいは何なのだろう、などと考えながら、慎重かつ丁寧
に僕はマーガリンを冷蔵庫にしまった。
 日曜だというのに気分が落ち着かないのは、大事な商談が明日に控えていたからだ。
 大事といっても、会社からすればたいした儲けになるわけではない。
 ただ僕自身にとっては、契約にこぎつけるはじめての案件になりそうだった。

 入社して、はや三ヵ月以上。
 親類縁者はもちろん、片っ端から名刺を配って歩けとの社命を受け、僕はほうぼうで顔を売っ
ていた。
 まずは名前を覚えさせることだ、と上司は言う。
 お宅の営業がしつこすぎる、とクレームが来るくらいでようやく半人前なのだ、とさらにえら
い上司が言う。
 けれども、そんなの非効率的だし、スマートじゃない。
 時代遅れのアドバイスのような気さえする。
 新米だけれど、僕には僕のやり方がある。
 ようは契約に結びつければいいのだ。
 人間の性格がさまざまなら、結果を導き出す方法も一つだけではないはずだ。
260 :【品評会】 時計屋との約束 (しゃん@にゃん革氏作) 2/2 [saga]:2014/03/31(月) 23:05:43.81 ID:iP9wWNEG0
 そのようなわけで、僕はついさきほどスーパーへ行き、一番高いマーガリンを買ってきた。
 数日前、飲み屋で知り合った客と意気投合し、ある話を持ち掛けられたのだ。
「ほお、兄さん。保険の営業か。そりゃ大変そうな仕事だね。ところで、俺は時計の販売をして
 いてね。ここはどうだろう。バター取引といかないか? つまりは、互いに相応のものを交換
 するわけさ。兄さんも客商売なら、身なりが大切だろう。俺がいいのを見つくろってやるからさ」
 バターに相応するものと言えば、マーガリンしかない。
 僕はビールジョッキをあけながら、思わせぶりな客の言葉に肯いた。
 冷蔵庫の中には、僕の輝かしい未来がある。
 今はスマホが時計代わりだが、パネライやユンハンスをひけらかす日も近い。

 そうそう、一つ重要なことを忘れていた。
 客に渡すのだから、ラッピングは欠かせないだろう。
 僕は壁にかかった時計を見た。
 今なら、100均も開いているはずだ。
261 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/31(月) 23:07:00.27 ID:iP9wWNEG0
しゃん@にゃん革氏の「時計屋との約束」は以上です。
262 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/31(月) 23:16:00.52 ID:M0xapAXe0
かく
お題plz
263 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/31(月) 23:26:54.64 ID:peTvHpgVo
転載おつー

>>262
264 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/31(月) 23:27:32.36 ID:M0xapAXe0
>>263
かいてみる thx
265 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/31(月) 23:53:11.63 ID:q8ZprQdio
ま、まだ間に合う? 推敲あまりできていないけれど、投下してもいいかしら?
266 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/31(月) 23:53:48.51 ID:peTvHpgVo
>>265
いけいけー
267 :【品評会】生まれ変わりの日(お題:取引) 1/8 ◆xUD0NieIUY [sagasage]:2014/03/31(月) 23:56:19.98 ID:q8ZprQdio
 誰かの前で服を脱いだのは、本当に久しぶりのことだった。それもこんなに明るい場所で……
 人工的な灯りが一つもないにもかかわらず、何故こんなに明るいのか少し不思議だった。足元や周りは完全に純な白さで――それは
海岸で、真っ白な貝殻を見つけたときに似ていた。どうしてこんなに白くする必要があるのだろうって、手に取って十分かそこら眺め
てしまう。例えば今だって、しゃがみ込んで指先で床に触れて、少しでも粗がないか探したくなるところだけど。
「心の準備ができたなら、水に浸かりなさい」
 はい、と小さく返事をして、そういえば敬語を使うなんて随分久しぶりだなと思った。最近は、そんな風に接さないといけない人と
話す機会なんてなかったから。だけど今は自然と敬語になった。どうやら緊張しているらしい。そんなもの、とっくに振り切ったと思
っていた。ずっとずっと、これは望んでいたこと。
「冷たっ」
 前に進むと、神殿の中央に水が張ってあり、湖のようになっている。その縁は階段になっていて、真ん中に向かって深く降りていく
形になっているのだけど、つま先を浸けた瞬間、その冷たさに僕は思わず足を戻してしまった。
 この場には僕を含め数人いるけれど、はっきり僕と相対しているのはひとりだけだ。湖の向こうの壇に立つ、白装束に身を包んだ司
祭。顔は皺々で、おまけに白い眉毛も髭もぼうぼうだったから、どんな表情をしているのかよく分からなかった。こんな言い方はよく
ないかもしれないけれど、枯れているんじゃないかと思う。雑巾みたいに絞りに絞られて、人間が本来持つべき欲を全て出してしまっ
たんじゃないかって。
 僕は大きく息を吐き、今度こそちゃんと心の準備をして、足を水に浸けた。
 浸水していく。冷たさが僕の体に染み込んで、一体になっていく。
 ああ、これなんだって、僕は昔のことを思い出していた。
 僕が生まれ変わることを決めたのは――

 ―*―*―*―

「え、女になりたい?」
 太陽に焼かれたような肌の色を持つ彼は、手にしていた本を床に落として素っ頓狂な声を上げた。青天の霹靂、ほんの十秒前までそ
んなことを言われるとは思ってもいませんでした、っていう。
「うん」
 そんな彼の反応は想定内だったけれど、実際にこうして対峙するのと、想像とは重みが随分違うわけで。だから小さく返事したっき
り、僕は用意していた続きの言葉を口に出せなくなってしまう。それどころか顔を俯けて、頭がどんどん重くなっていって、疑問符を
浮かべてこちらを見つめる彼の目を、真正面から見返すことができなくなってしまったのだ。
「そっか」と彼は言った。
268 :【品評会】生まれ変わりの日(お題:取引) 2/8 ◆xUD0NieIUY [sagasage]:2014/03/31(月) 23:56:56.20 ID:q8ZprQdio
 それはどういう意味なんだろう、と僕が恐る恐る顔を上げる前に、彼は小さく「うん」と言った。
「まあ、なんつーかその、人にはいろいろあるからな」
「変だって、思わない?」
「思わないよ」
 即答だった。僕は思わず顔を上げた。
「思わないっていうか、お前がよく考えて今の言葉を言ったんだってことは俺にもわかるよ」
 その言葉をどう受け取っていいのか、僕は戸惑ってしまう。普段は多分鈍いほうだと思うのに、僕が言ってほしいと思っていること
をときどき直球で返してくるから、彼は実は普段から全部分かっているんじゃないかとか、そんなことを思ってしまうのだ。
「それで、再洗礼の儀式を受けにいくんだ」
「……うん」
「そっか」
 ほら、やっぱり全て分かっているんじゃないかって、僕は心の中で叫びたくなった。
 僕が女になりたいというのは、単に外見だけの問題じゃないということ。本当に、生まれ変わってでも僕は性別を変えたいんだって。
 その理由を彼が分かっていて、もし口にしてしまえば、僕は死にたくなる。人間の誇りを穢されたような気分になるんだ!
 彼はしばらく真一文字に口を結んでいたけれど、やがて決心したように口を開いた。
「なあ。やっぱり、一つ聞きたいんだけど」
「……なに?」
「そのさ、怖くないのか?」
「……怖くないよ」
 心配そうに見つめる彼の目を、僕は睨み返した。
「そんな決心を鈍らせる言葉、言わないでよ」
「悪い」
 そして彼は申し訳なさそうに目を下に向けたのだけど、やがて決心したかのように大きく息を吐いた。
「一つ頼みがあるんだけど」
「なにさ」
「俺も着いていっていい?」
「えっ?」
 今度は僕が素っ頓狂な声を上げる番だった。
「君も女になりたいの?」
「馬鹿、違うよ」
269 :【品評会】生まれ変わりの日(お題:取引) 3/8 ◆xUD0NieIUY [sagasage]:2014/03/31(月) 23:57:32.02 ID:q8ZprQdio
 彼は即座に否定したけれど、まさか彼からそれを言うとは思わなかったから、僕は一体何を言えばいいのか分からなくなってしまっ
たのだ。

 ―*―*―*―

 彼は文学少年だった。一〜二週間に一冊読むぐらいだから、そこまでディープではないけれど。しかし全く本を読まない僕からすれ
ば、彼は完全な文学少年だった。
 彼はいろんなジャンルの小説を読んでいたけれど、どうやら少し恋愛要素が入っているものが好みのようだった。それは甘酸っぱい
話ばかりじゃなくて、愛憎入り乱れるものだったり、騙したり、騙されたり。彼が読む小説の中ではさまざまな波乱万丈の物語が繰り
広げられていたけれど、その中で揺れ動いている人の心に、彼は腹が立ったり、心踊らされたりするらしいのだ。
「……何してるの?」
 旅の途中、街で道具の買い出しをして宿屋に戻った僕は、ベッドに突っ伏している彼を見つけた。床に落ちている本はどうやら彼の
片手から滑り落ちたもののようだ。
「俺の心は破壊された」
 彼は両手で顔を覆うと、泣き出すように言ったのだ。
「俺、女と付き合うの無理かもしれない」
「……前にもそんなこと言っていたよね?」
「だって。エドガーが、エドガーが……」
 彼の言い分はこうだ。富豪の息子でエドガーという男がいて、最初はヒロインと結ばれ仲良くしていたけど、ヒロインにはエドガー
よりも大事な人がいたのだ。その大事な人が彼らの前に現れたのだけど、あの手この手でエドガーを陥れようとする恐ろしく悪い奴だ
った。エドガーはそいつとの関わりを断とうとするのだけどヒロインは許してくれなくて、「じゃあ離婚だ!」と言った矢先、ヒロイ
ンからとんでもない仕打ちを受けたらしい。
「好きな人からあんなことされたら、もう生きていけないよ」
「……全ての人が、そんなだとは限らないんじゃない?」
「いや、違うんだよ」と彼が両手を広げ、ベッドから身を起こした。
「きっとスイッチがあるんだ」
「スイッチ?」
 彼がこくんと、首を縦に振る。
「好きな人を傷つけるスイッチだよ! ヒロインはエドガーのことが嫌いというわけじゃなかったんだ。むしろエドガーのことも好き
で、大事な人とエドガーが仲良くなれれば、なんていう都合良すぎで自分勝手な幻想を思い浮かべていたわけだけど、エドガーが『離
270 :【品評会】生まれ変わりの日(お題:取引) 4/8 ◆xUD0NieIUY [sagasage]:2014/03/31(月) 23:58:16.40 ID:q8ZprQdio
婚だ』って言った瞬間に切れてしまったんだよ。今までの愛情がいっぺんにひっくり返ってさ、こいつを思いっきり打ちのめしてやろ
うって……ああ、こわー」
 そう言って彼は両手で自分の肩を抱き、ぶるりと震えたのだった。
 本当に震えているのか、それとも冗談なのか分からないけれど、そんな本見なければいいのに。
 僕は今思ったことをそのまま彼に伝えようとしたのだけど、口にする直前でやめた。その代わり、別のことを口にする。
「だけどさそれ、女だけだとは限らないんじゃないの?」
 ん、と声を上げた彼を無視して、僕はベッドの空いているスペースに腰を落ち着けた。
「だってさ、僕らの間にもあるはずだよ。そんな言葉が」
 軽口で言ってしまったけど、今でもあれは失敗だったと思う。何故なら僕らは互いにその決定的な言葉を知っていて、それ故に彼の
顔からは笑みが消えてしまったのだから。
「ねえ」と、僕は無理やり話を変えた。
「今も、子供って欲しい?」
 いつだったか忘れたけれど、何気ないときに彼とそんなことを話したことがあったのだ。
 死ぬのが怖いから子供が欲しい。
 それが彼の答えだった。
 死ねば自分が消えてしまうから。たとえどんな功績を打ち立てても、自分という存在をそこに刻みこむことはできない。だけど子供
なら、生きた物になら、どこかに自分が残るかもしれない。何気ない風に語っていたけれど、あれは偽りない彼の本音だった、と僕は
思っている。
「分からない」
 だから彼がそう返してきたのが意外で、僕は思わず彼の顔をまじまじと見てしまったのだ。
「怖くなったからさ」
 ベッドに座り直した彼は、そんな僕の様子に気づいているのかこちらに目を向けず、腕を組み遠くを見つめた。
「この前立ち寄った街でさ、ロッソネリおばさんっていたじゃん」
「うん」
 ロッソネリおばさん。つい最近立ち寄った街で、名物的存在だった人。普段はパンを焼いているのだけど、とても声が大きくフレン
ドリーで、話しかけられたらパンの一つでも買って帰らなければ悪いんじゃないかと思うほど。子宝に恵まれていて、僕らと出会った
ときも随分お腹が大きくなっていたのに、まるで何事もないかのように毎日忙しなく働いていたのだ。
「あの人が倒れたときさ、正直気が動転しそうだったよ」
 意味もなく視線を下に向けながら、彼が話を続ける。
「だってさ。あんな元気だった人が倒れるなんて信じられなくないか? そりゃ最終的には良くなったけどさ。病気とかだったら諦め
271 :【品評会】生まれ変わりの日(お題:取引) 5/8 ◆xUD0NieIUY [sagasage]:2014/03/31(月) 23:59:03.04 ID:q8ZprQdio
もつくよ。けど妊娠って……俺はそんな危険なことだなんて全然考えたことなかったよ。もしそれで大切な人が死んでしまったらって
思うと――」
「やめてよ!」
 僕は声を張り上げて、彼の発言を制した。
 何故突然そんな気分になったのか、そのときは分からなかったけれど、僕は彼の発言を心の根源から否定していた。
「好きだから、子供が欲しいって望むんじゃないの? そんなことを言われたら怖くなるよ……」
「……そうだな」
 目を瞑った彼が、背中をベッドに預けていく。しばらく何かを考えるようにしていたけど、ふと思い出したように口を開いた。
「やっぱり、今の無し」
「無理だよ」と僕は言った。
 何故なら君の言葉は、深く胸に刻み込まれてしまったから。何故だか分からないけれど、君が僕を感心させた言葉よりも、傷つけて
くれた言葉のほうが胸に深く刻み込まれているんだ。
 今まで一度も人を愛したことがない人。

 ―*―*―*―

 何故こんなにも昔のことを色々思い出すのだろうと感じていると、自分の体が少しずつ外に染み出しているのが分かった。
 いまや冷たさは僕と一体化して、冷たさそのものになっているのだ。
 水に溶け出すと過去の記憶が見えるのは、僕の体に記憶が刻み込まれている証拠だった。
 僕らが生きているのは理屈じゃない――はずなのだけど、こうして紐解いていけばとてもシステマチックなんだなって思う。
 僕の行動の源泉は、全て身の中に詰まっているのだ。
 後から振り返らなければ分からないけれど。

 ―*―*―*―

「さあ?」
 なぜ僕を助けたのかと聞いたとき、彼はこう言い放ったのだ。
「なんとなく……といっても、それではあんまり納得しなさそうだな」
 当然だった。
 僕は今まで誰かに助けてもらったことなんて無かったから。良いにしろ悪いにしろ、必ず何か理由があるものだと。むしろどうせ悪
272 :【品評会】生まれ変わりの日(お題:取引) 6/8 ◆xUD0NieIUY [sagasage]:2014/03/31(月) 23:59:31.33 ID:q8ZprQdio
いことだろうと思っていたし、それならはっきりとそう言ってくれればいいのに。
「しかし参ったな。本当に俺には確固たる理由がないんだ」
 僕の傷口を覆う包帯を巻き変える、一切の感情を忘れたが如く無表情な少年(これは全くの勘違いだったけど)は、本当に何もない
んだよと示すかのように首を捻った。
「あえて言うなら、俺の中にそういう可能性があったということかな」
「可能性?」
 今度は僕が首を捻る番だった。
 可能性ってなんなんだ? まるで自分が自分の意思で動いてないかのようなことを言っている。
 しかし彼は本気でそう言っているのだった。
「血を流して倒れているお前を見つけたとき、俺の中でひとつの考えが生じたんだ」
「ひとつの考え?」
「もし俺が助けなければ、こいつは多分ここで死んでしまうだろうなって」
「……まあそうだろうね」
 あえて言うとしたら『多分』じゃなくて『絶対』だ。何故なら僕はこのベッドの上で目覚めるまで、一週間も眠っていたのだから。
「もう起きないかと思っていたよ」というのが彼の第一声だったし。
「じゃあそこで選択肢が生まれる。俺はお前を助けるか、それとも助けないか」
「……で、どうして助けたの」
「それこそ偶然だよ」
 当たり前のように彼は言った。
「お前、人間に確固たる意思があると信じているのか?」
 狐につままれた気分の僕が怒り出す前に、彼は見事な手際で全ての包帯を巻き終えると、次のように言うのだった。
「人間なんて何もかも全て曖昧だよ」
「曖昧?」
 彼は手際良く医療器具を片付けると、「だってそうだろ?」と言いたげなポーズをした。
「『あいつを殺してやる』と思ったって、次の日になれば『そこまでしなくていいか』って思ったりする。たとえ本当に殺したとした
って、そのときはそういう行動を取っただけさ。例えば雨の日だったら、風の日だったら。そんなつまらないことで人の考えなんて変
わるものさ」
 彼が述べる様子を見て、これは実体験ではないかと思った。恐らく彼はそういう曖昧さで人を殺したことがあるのだ。背筋に少しだ
け悪寒が走り――だけど僕はそういう人は初めてではなかったから、臆することなく反論したのだ。
「だけど、確固たる意思で人を殺すことだってあるよ」
273 :【品評会】生まれ変わりの日(お題:取引) 6/8 ◆xUD0NieIUY [sagasage]:2014/04/01(火) 00:00:24.82 ID:uD8T3Rkwo
いことだろうと思っていたし、それならはっきりとそう言ってくれればいいのに。
「しかし参ったな。本当に俺には確固たる理由がないんだ」
 僕の傷口を覆う包帯を巻き変える、一切の感情を忘れたが如く無表情な少年(これは全くの勘違いだったけど)は、本当に何もない
んだよと示すかのように首を捻った。
「あえて言うなら、俺の中にそういう可能性があったということかな」
「可能性?」
 今度は僕が首を捻る番だった。
 可能性ってなんなんだ? まるで自分が自分の意思で動いてないかのようなことを言っている。
 しかし彼は本気でそう言っているのだった。
「血を流して倒れているお前を見つけたとき、俺の中でひとつの考えが生じたんだ」
「ひとつの考え?」
「もし俺が助けなければ、こいつは多分ここで死んでしまうだろうなって」
「……まあそうだろうね」
 あえて言うとしたら『多分』じゃなくて『絶対』だ。何故なら僕はこのベッドの上で目覚めるまで、一週間も眠っていたのだから。
「もう起きないかと思っていたよ」というのが彼の第一声だったし。
「じゃあそこで選択肢が生まれる。俺はお前を助けるか、それとも助けないか」
「……で、どうして助けたの」
「それこそ偶然だよ」
 当たり前のように彼は言った。
「お前、人間に確固たる意思があると信じているのか?」
 狐につままれた気分の僕が怒り出す前に、彼は見事な手際で全ての包帯を巻き終えると、次のように言うのだった。
「人間なんて何もかも全て曖昧だよ」
「曖昧?」
 彼は手際良く医療器具を片付けると、「だってそうだろ?」と言いたげなポーズをした。
「『あいつを殺してやる』と思ったって、次の日になれば『そこまでしなくていいか』って思ったりする。たとえ本当に殺したとした
って、そのときはそういう行動を取っただけさ。例えば雨の日だったら、風の日だったら。そんなつまらないことで人の考えなんて変
わるものさ」
 彼が述べる様子を見て、これは実体験ではないかと思った。恐らく彼はそういう曖昧さで人を殺したことがあるのだ。背筋に少しだ
け悪寒が走り――だけど僕はそういう人は初めてではなかったから、臆することなく反論したのだ。
「だけど、確固たる意思で人を殺すことだってあるよ」
274 :【品評会】生まれ変わりの日(お題:取引) 7/8 ◆xUD0NieIUY [sagasage]:2014/04/01(火) 00:00:54.10 ID:uD8T3Rkwo
 はっきりと彼を見つめながら訴えかける。
「その証拠に、僕はこれまで人を何人も殺している」
「それは義務感からだよ」
 あっさりと彼が言った。
「義務感があれば人を殺すさ。むしろ何だってする。どれだけおかしなことでも。義務感は人の曖昧さを殺すんだ。だけど全ての義務
感から解放されれば、人はとてつもなく曖昧だって思うはずさ」
「……」
 その論理はどことなく穴があって、きっといくらでも反論しようと思えばできたはずだったのに、口が動かなかった。
 義務感という言葉が胸に突き刺さったからだ。
「それにたとえ義務感があったとしても、それを裏切ることはいくらでもできたはずだと思う」

 ―*―*―*―

 結局彼は最後まで僕に対してその考えを覆すことはなかったけれど、今思い返してみて、やっぱり違うと思うのだ。
 少なくとも僕の中では、彼は確固たる人間だった。いろんなことを曖昧に捉えようとしていたけれど、その頑なさが曖昧ではなかっ
た。自分の意思を持たないことや、誰とも心を通わせることができないこと。あらゆる曖昧さに彼は苦しんでいたけれど、僕はそんな
にも下らないことで苦しむ人なんて見たことがなかったから、だから少しずつ惹かれていったのだと思う。
 曖昧に助けられて、曖昧なままで彼と多くの時間を過ごしてしまったから――少しでもそれを、確かなものに近づけたいと思うのは
駄目なの? 僕はきっとこのままでは、いつまでも曖昧だから。曖昧なままで、いつか彼の傍を離れる日が訪れたら……
 僕はいつの間にか、体を失くしてしまったらしい。膝を抱えながら漂っているのはただのイメージで、あとはもう生まれ変わるしか
ないことは分かっている。僕は一体どうなってしまうんだろう。いま感じている彼への思いは消えてしまうの?
 世界が白く染まっていった。それはもう視覚じゃなくて、自分が消えていく。彼に助けられる前の、死にかけているときの感覚に似
ていた。なんだか胸がスッとして、このまま消えてもいいやという気持ちになって……
 最後に、彼と別れたときの記憶を見た。

 ―*―*―*―

「やっぱり……女にならなくてもいいんじゃないか」
 今まさに神殿に入ろうかという直前で、彼が言った。
「今さら何言っているのさ」
275 :【品評会】生まれ変わりの日(お題:取引) 8/8 ◆xUD0NieIUY [sagasage]:2014/04/01(火) 00:01:25.67 ID:uD8T3Rkwo
 本当に何を今さらだった。この一ヶ月に及ぶ旅の途中、彼はいくらでも止める機会があったのだ。
 それを今さらになって言うなんて。
「悪い。だけどさ……」
 いい加減にしてよ、と僕は彼を振り返ってギョッとした。両手で体を抱えて震えていたのだ。
「ちょっと、どうしたの」
「すごく怖くなった」
 彼は今まで一度も見せたことがない表情で、そう言った。
「お前は消えるのか? 生まれ変わったお前は、本当にお前なのか?」
 どう反応すればいいか分からない僕の両肩を、彼は勢い良く掴んだのだった。
「たとえ生まれ変われたって、お前は本当にそれでいいのかよ!」
「その気持ちは曖昧じゃない?」
 僕は言った。
 思わぬ言葉に衝撃を受ける彼を見て、僕も震えてその場に座り込んでしまいそうだった。
 とても彼の行動は嬉しい、はずなのに、僕はどうしてもその言葉を言わずにはいられなかったのだ。
「たとえ僕が男でも、いろんなことに後ろめたさを感じたとしても、君は僕を愛してくれる?」
 彼の手が震えて、力が抜けていくのが分かった。
 もしかしたら考え直して再び力を込めてくれるかもしれないけれど――それ以上待つのは嫌だったから、彼の手を強引に払いのけた。
「君のそういうところ、大嫌いだよ」
 そして僕はもう振り返ることもなく、神殿の中に向かったのだ。

 ―*―*―*―

 僕は生まれ変わった。終わってみれば大したことがなく、何も変わっていない気がするけど――水から上がってみるとちゃんと体は
変わっていて、一糸纏わぬ姿になっていることに羞恥心を感じた。少なくとも、あんな枯れた老人なんかに見られたくない。僕は本当
に大切な人にしか、それを見せたくないのだ。
「彼は――」
 そうだ。ここに共に来てくれた彼は一体どうしているのだろう。まだ外で待っていてくれているだろうか? どんな顔形をしていた
か、よく思い出せない。生まれ変わる前はあんなにも鮮明に覚えていたはずなのに。
「また、好きになれるのかな……」
 脱ぎ捨てていた服を着ると、どことなく不安な思いを抱えたまま外に出た。(完)
276 :【品評会】生まれ変わりの日(お題:取引) 8/8 ◆xUD0NieIUY [sagasage]:2014/04/01(火) 00:02:20.48 ID:uD8T3Rkwo
 本当に何を今さらだった。この一ヶ月に及ぶ旅の途中、彼はいくらでも止める機会があったのだ。
 それを今さらになって言うなんて。
「悪い。だけどさ……」
 いい加減にしてよ、と僕は彼を振り返ってギョッとした。両手で体を抱えて震えていたのだ。
「ちょっと、どうしたの」
「すごく怖くなった」
 彼は今まで一度も見せたことがない表情で、そう言った。
「お前は消えるのか? 生まれ変わったお前は、本当にお前なのか?」
 どう反応すればいいか分からない僕の両肩を、彼は勢い良く掴んだのだった。
「たとえ生まれ変われたって、お前は本当にそれでいいのかよ!」
「その気持ちは曖昧じゃない?」
 僕は言った。
 思わぬ言葉に衝撃を受ける彼を見て、僕も震えてその場に座り込んでしまいそうだった。
 とても彼の行動は嬉しい、はずなのに、僕はどうしてもその言葉を言わずにはいられなかったのだ。
「たとえ僕が男でも、いろんなことに後ろめたさを感じたとしても、君は僕を愛してくれる?」
 彼の手が震えて、力が抜けていくのが分かった。
 もしかしたら考え直して再び力を込めてくれるかもしれないけれど――それ以上待つのは嫌だったから、彼の手を強引に払いのけた。
「君のそういうところ、大嫌いだよ」
 そして僕はもう振り返ることもなく、神殿の中に向かったのだ。

 ―*―*―*―

 僕は生まれ変わった。終わってみれば大したことがなく、何も変わっていない気がするけど――水から上がってみるとちゃんと体は
変わっていて、一糸纏わぬ姿になっていることに羞恥心を感じた。少なくとも、あんな枯れた老人なんかに見られたくない。僕は本当
に大切な人にしか、それを見せたくないのだ。
「彼は――」
 そうだ。ここに共に来てくれた彼は一体どうしているのだろう。まだ外で待っていてくれているだろうか? どんな顔形をしていた
か、よく思い出せない。生まれ変わる前はあんなにも鮮明に覚えていたはずなのに。
「また、好きになれるのかな……」
 脱ぎ捨てていた服を着ると、どことなく不安な思いを抱えたまま外に出た。(完)
277 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sagasage]:2014/04/01(火) 00:04:34.37 ID:uD8T3Rkwo
終わりです。いろいろ久しぶりすぎて焦ってしまいました・・・・・・
なぜか最後二重書き込みになるし・・・・・・
278 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/04/01(火) 00:08:49.68 ID:xAVHmxud0
みんな乙
279 : ◆BNSK.80yf2 [sage]:2014/04/01(火) 00:15:45.90 ID:IwjfTYD8o
遅くなってしまい申し訳ない。
転載手伝ってくれた>>261さん、感謝です

あと、>>277さん
恐らく6レス目がコピペミスしてると思います。
もしいらしたら、確認して貼りなおしていただいてもいいでしょうか?
280 : ◆BNSK.80yf2 [sage]:2014/04/01(火) 00:21:26.31 ID:IwjfTYD8o
いらっしゃらないようなので、とりあえずそのまま転載します
6レス目の頭が切れちゃってるので、そこだけでも結構です
気付き次第、貼りなおしていただければ、転載先も修正しておきます
281 : ◆xUD0NieIUY [sagasage]:2014/04/01(火) 00:21:53.82 ID:uD8T3Rkwo
>>279

すみません。

6レス目は二重書き込みになってしまったようです。
先ほどまとめサイトに転載しましたが、こちらにも投稿しなおしたほうがいいでしょうか。
#再投稿で8レス使ってしまうのも皆さんに迷惑かと思ったので・・・・・・
282 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします :2014/04/01(火) 00:25:35.33 ID:SDOnDRj4o
>>280
5レス目と6レス目でちゃんとつながってるよ
283 : ◆BNSK.80yf2 [sage]:2014/04/01(火) 00:25:57.25 ID:IwjfTYD8o
>>281
了解です
転載感謝です
284 : ◆BNSK.80yf2 [sage]:2014/04/01(火) 00:26:32.60 ID:IwjfTYD8o
>>282
すいません、俺の勘違いだったみたいです(´・ω・`)
285 : ◆BNSK.80yf2 [sage]:2014/04/01(火) 00:37:49.43 ID:IwjfTYD8o
No.01 ホープ・ノーマル       ttp://text-poi.net/post/sleeping_husky/20.html

No.02 ストック・マーケット     ttp://text-poi.net/post/bnsker/1.html

No.03 不等価交換          ttp://text-poi.net/post/bnsker/2.html

No.04 ブツ               ttp://text-poi.net/post/chayakyu/56.html

No.05 時計屋との約束       ttp://text-poi.net/post/syan1717/35.html

No.06 時計仕掛けのローレライ  ttp://text-poi.net/post/bnsker/3.html

No.07 生まれ変わりの日      ttp://text-poi.net/post/hogeochan_ver2/1.html




感想や批評があると書き手は喜びますが、単純に『面白かった』と言うだけの理由での投票でも構いません。
毎回作品投稿数に対して投票数が少ないので、多くの方の投票をお待ちしております。
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               ―感想―
気になった作品:<<タイトル>>◆ZZZZZZZZZZ氏
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携帯から投票される方は、今まで通り名前欄に【投票】と入力してください。
たくさんの方の投票をお待ちしています。
286 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/04/01(火) 08:36:28.99 ID:iktjKGsZ0
品評会の作品投稿者って投票参加できるんですか?
さすがに自分のには投票しませんけど
287 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/04/01(火) 10:27:14.37 ID:rNDNFNAAO
できるよ
288 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします :2014/04/01(火) 11:06:43.12 ID:3fzITknQO
おだいください
289 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/04/01(火) 12:39:50.16 ID:evX+2ylU0
>>288
休息
290 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/04/01(火) 12:39:55.70 ID:M3JPEvSUO
千年に一度
291 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします :2014/04/01(火) 17:29:56.38 ID:3fzITknQO
おし書いてきます。
かなり短いです。
292 :お題:休息 1/2 :2014/04/01(火) 17:32:10.62 ID:3fzITknQO
「君には休息が必要だよ」
いきなりそんなことを言われたのは、入社3年目の時であった。
やれ、あれをやれこれをやれ、暇があったら仕事しろ、という感じの課長直々のお呼び出しだから何事かと思ったらこれだ。
「君は働きすぎだ。少しは有給を消化しなさい、それに最近疲れた顔をしてるしね」
思わずてめぇのせいだろうがこの野郎という言葉と共にぶん殴ってやろうかという考えが浮ぶ。
いやしかしこれでも上司なのだ。多少は敬わなければならない、というか尊敬している振りをしなければ将来に関わる。
「…はあ」
俺は精一杯の上司への反抗の気持ちを込めてため息に似た返事をした。
「…なにを残念そうにしている」
「…いえ」
残念なのはお前の頭だろうと、思うといきなり上司が納得した顔で頷いている。
なんだいきなり。
「ああいや、仕事の心配はしなくていいよ。君はよくやってる、だからこそ他人にまかせるのは心配だろうがね。大丈夫だ、私がしっかり監督してやらせておく、心配するな」
いやそんなことは心配してはいない。
どっちかっていうと今の言葉のせいでこいつに監督されるほうが心配だわ。
「だから安心して休みなさい」
「あ、はい」
とはいっても休みは最近とっていない。丁度休みたいとおもっていたしありがたく有給をとらせてもらおう。
293 :お題:休息 2/2 :2014/04/01(火) 17:34:35.22 ID:3fzITknQO
小鳥がうるさい。上半身を起こして伸びをして床に立つ。
まだフル回転していない脳みそと体をつかってなんとか窓まで辿り着く。
科学や医学は日々進歩しているとかいうがならばこういう朝起きた時の怠さとかが治るような薬をつくればいいのに。その方が役に立つ。少なくとも今の俺に役立つ。
窓を開けて外の空気を吸い込んでそのまま部屋を空気を入れる。
部屋の中は殺風景でベッドとテレビ、あとは机くらいしか目立ったものはなかった。
しかしなんだろうか、新鮮な空気が部屋の中に入ると一気に空気の透明が部屋の殺風景を塗りつぶす。
俺はこの瞬間がたまらなく好きなのだ。
さて朝食をとって、身だしなみをととのえ仕事に行こうというところで思いだした。
そうだ、今日は休みだ。
すっかり忘れていたが今日は休みなんだ。
「今日は…休みか」
口に出して再確認する。
しかしいざとなると、なにをすればいいんだ?
なにかするべきこと、やりたいことってあったか?
「…ない、な」
そうして暫くボーッとして気づいた。
「俺、趣味もなにもないし、やりたいこともないな」
口に出すと余計虚しくなってきたな。
よし、まずはやりたい事から見つけていこうか。
294 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします :2014/04/01(火) 17:35:25.14 ID:3fzITknQO
終わりです、社畜こわいねって話です
295 :的外れの裏島くん (お題:裏) 0/3 [sage]:2014/04/01(火) 18:23:37.23 ID:xAVHmxud0
通常作品投下します。
>>263のお題で書きました。
296 :的外れの裏島くん (お題:裏) 0/3 [sage]:2014/04/01(火) 18:24:36.13 ID:xAVHmxud0
あ、ごめん、かぶってたね
もうちょっと経ってから投下します
297 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/04/01(火) 18:28:05.45 ID:xAVHmxud0
>>292

働きすぎて休み方がわからないのねww
せっかく休ませようとしてくれてるのに目が血走ってる主人公を思い浮かべたわ
ずいぶん働くことしかしてこなかったんだろうなー
298 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/04/01(火) 19:42:32.84 ID:uRF3zs6G0
>>296
別に時間帯かぶってても投下していいと思うぞ。
299 :的外れの裏島くん (お題:裏) 0/3 [sage]:2014/04/01(火) 20:50:24.38 ID:xAVHmxud0
そろそろ投下します。

>>298
次からそうするわ!
300 :的外れの裏島くん (お題:裏) 1/3 [sage]:2014/04/01(火) 20:52:29.54 ID:xAVHmxud0
 私の隣を歩いているのが、何を隠そう、馴れ馴れしくてかっこうつけで、何をやっても
うまくいかない、的外れの裏島くんである。彼は昨日もマージャンでこっぴどくやられて
しまい、来月の家賃も払えなくなったんだと怒った。

「彼らはマージャンというものを分かってないよ」
 裏島くんは大げさに両手を広げながら言った。
「『ここは筋を引っかけてタンキ待ちだ』とか、『チンイツだと見せかけてマンズ待ち  
 だ』とか、そういう醍醐味が全くないんだよ。僕だけさ、本物の戦いをやってるのは」
 私はうんうんと頷きながら、彼の左手に買い物袋をぶらさげた。彼はそれを押し付けら
れたと見せかけて帰り道のささやかな筋力トレーニングのために譲ってくれたのだと解釈
して、道すがら両腕の上下運動に明け暮れた。

 家はアパートの一室だ。裏島くんは近くで「いい暮らし」をしているそうだが、詳しい
ことはよく知らない。ただ、今日は私の家で夕食を一緒することになっている。
 キッチンで夕食の支度をする私に対して、彼はテレビを見ながら大声で話しかける。あ
の大物政治家は実は浪費家で、税率をあげることで更にダイナミックな買い物を楽しみた
いんだとか、あの去年不調だった野球選手は若手に出番をやるためにわざと打ってないん
だとか、裏島くんのご両親は結局自分がかわいくて仕方ないんだから今月中には仕送りが
くるはずだとか、いろいろなことを裏島くん流に愉快に話してくれる。

 料理ができあがり、食卓に並んだときには芸能ニュースが流れていた。「歴史的大事
件!」と題されたニュースは天然系のアイドル小島優斗くんの話で、何でも彼の出生は長
年主張してきたとりん星ではなく、千葉県某市の総合病院なのだという。
「ていうか、とりん星ってなんですか? 僕、今初めて聞きましたよ」
 と真顔で語るゆうとりんは、記者会見場の笑いを誘っている。私もその変貌ぶりに、思
わず口元が緩んでしまう。

 しかし、そんなテレビと私の空気とは裏腹に、わなわなと肩を震えさせているのは裏島
くんだ。
「大変だ」
301 :的外れの裏島くん (お題:裏) 1/3 [sage]:2014/04/01(火) 20:53:42.09 ID:xAVHmxud0
 独り言のように彼は呟いた。大好物のエビフライも、無駄に力の入った指のせいで箸か
ら零れ落ちて、そのまま床についてしまう。
「こうしちゃいられない」
そういうと彼は食卓をほっぽり出して、鬼の形相のままアパートから飛び出してしまった。

 こういうことはしばしば起こる。なぜなら彼は的外れの裏島くんだからだ。彼の考えて
いることは誰にもわからない。私はいつも通り、裏島くんの会社に「しばらく」の休暇連
絡を取ることにした。会社も会社でいつも通り、彼の給料から休んだ日数分を天引きする
のだろう。そういう風にして、彼の財政状況は確実に圧迫されていく。

 かっこうつけでどうしようもない裏島くんから再び連絡が来たのは、千葉県某市の某駅
前からだった。3日間漫画喫茶で宿をとっていたのだが、とうとう軍資金が底を尽き、今
日からは県立の大きな公園で宿をとることにしたのだという。
 今回の裏島くんのミッションは、宇宙人のアジトを発見することだ。アルタ前の警備員
や大和撫子のスカートめくりを生業としている彼からすると、いつになく壮大なミッショ
ンだった。
「この僕の計算が正しければ」
彼は小声で言う。
「この区域は既にとりん星人の手に落ちているはずだ」
 人一倍宇宙からの交信に敏感だったゆうとりんこと小島優斗がとりん星の存在を否定し
たことで、逆にその存在が明るみに出たという。
「おそらく小島優斗はとりん星人との融合が完了してしまったのだろう」
「とりん星人は標的の無自覚のうちにヒトと融合し、この地球を融合体が支配する星にす
 るつもりなのだ」
「とりん星人と融合すると、とりん星に関するすべてのことは忘れ去られてしまう」
と、早口で自分の推論を語る裏島くんは、自分がどれほど興奮しているかに気づいていな
いだろう。そう、彼は今からとりん星人の魔の手から世界を救おうとしているのだ。でも
裏島くん、世界が彼らのものになったところで私たちは何か変わるのかな?
「いや、何も変わらないだろう。恐ろしい話だ」
確かに、恐ろしい。早く解決して帰ってきてほしいものだ。会社も迷惑しているだろう。
302 :的外れの裏島くん (お題:裏) 3/3 [sage]:2014/04/01(火) 20:54:08.51 ID:xAVHmxud0
 翌日、やっつけ仕事の裏島くんは私の家に帰ってきた。彼はついにぽりん星の本拠地を
発見し、とりん星人の侵攻を食い止めたのだという。

「我ながら大仕事だったよ」
 テレビの前のソファを独り占めし、千葉で買ってきたのであろうピーナッツを齧りなが
ら彼は言う。なんでも宇宙人の隠れ家はあの有名なチバリーヒルズにあったらしく、警備
員の目を盗みながら移動するのが大変だったとか。
「でも、僕は足音を消す方法を心得ているからね。こういう仕事には慣れているんだよ」
裏島くんは誇らしげだ。
「まあ、僕にかかれば宇宙人のひとつやふたつ、簡単に追い出すことができるね」
それは凄いと私は素直に思う。彼は本当に宇宙人を追い出したらしい。どうやって追い出
したのだろう。私は若干興奮気味に尋ねてみた。しかし裏島くんは
「簡単なことさ」
とだけ言ってソファにふんぞり返ったままだった。私は少々がっかりしたが仕方がない。
ともあれ彼のおかげで地球がとりん星人に支配されることはないのだ。それを証明する手
立てがないのが残念だが、少なくとも私がとりん星のことを覚えている間は、とりん星人
の魔の手から逃れられているということなのだろう。

「なんてことだ」
 にわかに立ち上がって裏島くんが言った。テレビには大して格好よくないお笑い芸人と
愛嬌のある女性タレントの熱愛報道が流れている。まさか、と私が裏島くんの方を見たと
きにはもう遅かった。彼女を助けなくては! そう言って裏島くんは身支度もせず家を飛
び出してしまった。
 今回も彼の作戦は長くなるだろう。会社へ休暇終了の連絡はまだしなくてもよさそうだ。

おわり
303 :的外れの裏島くん (お題:裏) 4/3 [sage]:2014/04/01(火) 20:54:42.47 ID:xAVHmxud0
以上です。ありがとうございました。
304 :全感さん [sage]:2014/04/01(火) 22:41:17.71 ID:uD8T3Rkw0
自分のことは棚に上げてガンガンいきます。

No.01 ホープ・ノーマル

まず一目見て文章がうまいと思いました。
さすが小説を販売するだけはある。
だけど話の面白さ、というか、『僕』が正直好きではありませんでした。
たまにこういう感じで語らせたくなるのは分かるけどね。
物語にしてほしいなあと思ったりします。

No.02 ストック・マーケット

お題の取引を直球で扱った作品。
人を株化するというアイデアにはワクワクします。が、もう少し具体的なところに落とし込んでほしかったなと。
まだまだ短いと思いますので、もっと文量を増やしてオチに至る伏線を書いても良かったと思います。

No.03 不等価交換

文章はとても良く書けていると思いました。
ただ、出だしに違和感が……まずは部屋の様子を説明しないと、という義務感に則って書かれた文章のような気がしたんですよね。三人称であればそれもアリなんですけど、一人称の場合だと、その視点の人物がまず最初に何を思うかを書くべきだと思うんですね。
あと、オチがほとんど最初から分かってしまった点が残念です。
最初に書いたとおり文章はよく書けているので、あとは見せ方を工夫するよう努力すると良いかもしれません。

No.04 ブツ

うーん……
この小説を読んだとき最初に思ったのが、「こんなこと何回も続けられないだろ」ってことなんですね。例えばこれがジャンプの漫画だとすると、この後に「主人公調子に乗って同じことを続ける→相手が大群で攻めてくる→主人公チビるけど、そのときアタッシュケースが……」というように。多分そこまで行かないと、話に面白さは出てこないんじゃないかな?
もしくは、主人公自体もケースのことを全然知らないか、もしくはある程度把握しているはずでも想定外のことが起きて襲われるというような、主人公をピンチにさせて読者をハラハラさせる工夫が欲しかったところです。

No.05 時計屋との約束

これ、バター取引の意味を取り違えたということでいいんですよね?
だとすると、これを小説のメインに持ってくるのはちょっと厳しいと思います。

No.06 時計仕掛けのローレライ

まあ今回はこれが優勝でしょう。
いや、気が早いんですけど、まあ間違いないと思いましたよ私は。
感動した! という訳ではなかったのですが、読み終えてほっこりしました。
ディナーの最後に出てくるデザートのような感じ。後味すっきり。
そう感じたのは多分作りが丁寧だったからでしょうね。
13レスで今回最長だったわけですが、その分だけしっかり書き込まれていましたよ。

No.07 生まれ変わりの日

自作。
うん。自分で言うのもなんだけど、この構造はちょっと厳しい気がするんだ(´・_・`)
けど久々に小説書けたので良しとしましょう。

***********************【投票用紙】***********************
【投票】:No.06 時計仕掛けのローレライ
気になった作品:No.02 ストック・マーケット
********************************************************

まとめサイトにも投票したほうがいいんすかね……
305 : ◆BNSK.80yf2 [sage]:2014/04/01(火) 22:58:04.10 ID:IwjfTYD8o
>>304
いえ、合算するので投票はいずれかのみでお願いしますー
306 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/04/01(火) 23:14:39.47 ID:IwjfTYD8o
>>293
読み終わってから、全俺が泣いた。
休みの日に「ああ、明日は朝から外周りに行くから、疲れを残すわけにはいかないな。できるだけじっとしてよう」とか、
そういうこと考えている自分に気が付いて焦ったことがある。
ちなみに気づいたのは夕方で、その日は一日寝ながら漫画片手にネットサーフィンしてた。
働くことが目的になってる人生ってマジでどうにかしないといけないなぁ、とつくづく思う。
いや、仕事好きならいいんだけどね。


>>302
やっつけ過ぎるネーミングにふいた。
>と、早口で自分の推論を語る裏島くんは
推論かよ! こんな感じで、一々刺さる小ネタもいい感じ。
ただ、許してほしい。俺は数字に騙され、1レス目だと思って2レス目から読み始めてた。
だから、初読は単なるカオスだった。
で、読み直して思うんだが、これお題消化が実は名前だけなんじゃ……。
い、いや、そんなはずないよね! 俺が気付かなかっただけだよね!
面白かった。
307 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします :2014/04/01(火) 23:30:57.30 ID:3fzITknQO
お題を下さい
308 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/04/01(火) 23:31:28.11 ID:EcBT2mjmo
>>307
将棋
309 : ◆veZn3UgYaDcq [sage]:2014/04/01(火) 23:51:10.31 ID:VcFL6Mes0
***********************【投票用紙】*********************
【投票】:No.06 時計仕掛けのローレライ

気になった作品:No.07 生まれ変わりの日
********************************************************

以下感想を軽く書いていきます。

No.1「ホープ・ノーマル」
文章が上手いことは確かだと思いました。「取引」というテーマに沿っているかどうか微妙かな、というのは気になります。
小説内では「魔法」でしたが、現実にも先天的障害や生い立ち等で同じ状況が生まれていることは明らかなので、
ならばこそ、今作のように単なるキャラクター同士の「会話」で終わらせるのはもったいないというか、
もっと鋭く問題に踏み込む姿勢や、皮肉や風刺を盛り込むような部分があればよかったのに、と思ってしまいます。

No.2「ストック・マーケット」
私の拙作です。人の株式を売る市場、っていうアイディアを思いついたときは面白いと思ったのですが……
最終的に上手い形にならなかったのはひとえにプロットを書く力がないからだなあ、と反省しきりです。
いずれリベンジしたいテーマです。

No.3「不等価交換」
2人しか登場人物がいない中では、悪魔が昔「リズ」と呼ばれていたという時点で確かに話が読めてしまいます。
あとは冒頭とか、悪魔殺しの部分とか、妙な蛇足、みたいな部分が若干あるのかな、と。
文章自体は上手いと思いました。

No.4「ブツ」
いわゆる1対1の「取引」ですね。アタッシュケースの「ブツ」と金を交換する、というのも、「ブツ」を運び屋が知らないという部分も、
ある意味「お約束」にきっちり乗っ取って話が進行しているわけですが、そうなると小説の個性は最後の部分で決まります。
>>304も書いているようなことなのですが、結局主人公は中身をどこまで把握しているのか?とか、そういう部分で工夫があれば。
あと、相手の持っていた拳銃が落ちる部分はどこから落ちたのでしょう?
「ブツ」は主人公が姿を見る前にもうケースの中に戻ったのだと理解したのですが、
そうすると拳銃が吐き出される描写とつじつまがあわない気がするんですね。

No.5「時計屋との約束」
字数も短いですし、こういったジョークは嫌いじゃないです。
ただ、冒頭の“まず最初に、マーガリンがあった。”はちょっと意味が分からない気がしました。
文章もところどころ気になるかな、と。いっそジョークならジョークらしく軽い語り口でもいいかもしれないと思いました。

No.6「時計仕掛けのローレライ」
参加者が投票するのは野暮かな、とも思ったのですが、これを読んで気が変わりました。
文章もプロットも美麗。外国に伝わるお話のような雰囲気の中、本当に語り継がれてきたように矛盾や飛躍のない話の進行は凄いです。
唯一引っかかったのは名前。「ルカ」が女性名っぽいんです。イタリア語で-aが女性形だからかもしれませんが。
それで、冒頭部で少女=ルカかと思って一瞬混乱しました。まあ、こんなことしかケチをつけられる部分がないということで。

No.7「生まれ変わりの日」
ちょっと動機も結論も弱いのかなあ、という気はしました。ラストとか、案外覚えてるじゃん!という感じがしちゃうんですよね。
文章自体はとても綺麗ですし、回想を中心に据えるスタイルも個人的には好きです。
読み返すと良いと思える作品だと思いますけど、一読したときのインパクトをもっと強くできるんじゃないかな、という気がします。
310 :投票 :2014/04/02(水) 00:51:06.36 ID:CzdXpT7Xo
書き手の皆様、そして運営してくださった皆様お疲れ様でした。
久々に品評会、ひとつのお題に色んな人が様々に書いたものを見れてとても楽しかったです。
今までのを見た感じ私はみんなと好きな作品が違うみたいで。こういうのがわかるのも品評会のいいところですね。

***********************【投票用紙】***********************
【投票】: ストック・マーケット 作:◆veZn3UgYaDcq氏
      世にも奇妙な物語っぽい発想が好き。オチはなんとなく読めたけどむしろそこも良かったと思う。
      
気になった作品:ブツ 作:茶屋氏
      取引というお題真っ向勝負のところが気に入った。個人的にはオチの後もう一捻りあるともっと面白かったと思う。
********************************************************
投票ってトリップいりませんよね?もし必要でしたらごめんなさい。
311 :投票 :2014/04/02(水) 00:51:39.23 ID:CzdXpT7Xo
書き手の皆様、そして運営してくださった皆様お疲れ様でした。
久々に品評会、ひとつのお題に色んな人が様々に書いたものを見れてとても楽しかったです。
今までのを見た感じ私はみんなと好きな作品が違うみたいで。こういうのがわかるのも品評会のいいところですね。

***********************【投票用紙】***********************
【投票】: ストック・マーケット 作:◆veZn3UgYaDcq氏
      世にも奇妙な物語っぽい発想が好き。オチはなんとなく読めたけどむしろそこも良かったと思う。
      
気になった作品:ブツ 作:茶屋氏
      取引というお題真っ向勝負のところが気に入った。個人的にはオチの後もう一捻りあるともっと面白かったと思う。
********************************************************
投票ってトリップいりませんよね?もし必要でしたらごめんなさい。
312 :投票 :2014/04/02(水) 00:53:26.79 ID:CzdXpT7Xo
書き手の皆様、そして運営してくださった皆様お疲れ様でした。
久々に品評会、ひとつのお題に色んな人が様々に書いたものを見れてとても楽しかったです。
今までのを見た感じ私はみんなと好きな作品が違うみたいで。こういうのがわかるのも品評会のいいところですね。

***********************【投票用紙】***********************
【投票】: ストック・マーケット 作:◆veZn3UgYaDcq氏
      世にも奇妙な物語っぽい発想が好き。オチはなんとなく読めたけどむしろそこも良かったと思う。
      
気になった作品:ブツ 作:茶屋氏
      取引というお題真っ向勝負のところが気に入った。個人的にはオチの後もう一捻りあるともっと面白かったと思う。
********************************************************
投票ってトリップいりませんよね?もし必要でしたらごめんなさい。
313 :投票 :2014/04/02(水) 00:55:30.09 ID:CzdXpT7Xo
書き手の皆様、そして運営してくださった皆様お疲れ様でした。
久々に品評会、ひとつのお題に色んな人が様々に書いたものを見れてとても楽しかったです。
今までのを見た感じ私はみんなと好きな作品が違うみたいで。こういうのがわかるのも品評会のいいところですね。

***********************【投票用紙】***********************
【投票】: ストック・マーケット 作:◆veZn3UgYaDcq氏
      世にも奇妙な物語っぽい発想が好き。オチはなんとなく読めたけどむしろそこも良かったと思う。
      
気になった作品:ブツ 作:茶屋氏
      取引というお題真っ向勝負のところが気に入った。個人的にはオチの後もう一捻りあるともっと面白かったと思う。
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投票ってトリップいりませんよね?もし必要でしたらごめんなさい。
314 :投票 :2014/04/02(水) 00:57:10.14 ID:CzdXpT7Xo
書き手の皆様、そして運営してくださった皆様お疲れ様でした。
久々に品評会、ひとつのお題に色んな人が様々に書いたものを見れてとても楽しかったです。
今までのを見た感じ私はみんなと好きな作品が違うみたいで。こういうのがわかるのも品評会のいいところですね。

***********************【投票用紙】***********************
【投票】: ストック・マーケット 作:◆veZn3UgYaDcq氏
      世にも奇妙な物語っぽい発想が好き。オチはなんとなく読めたけどむしろそこも良かったと思う。
      
気になった作品:ブツ 作:茶屋氏
      取引というお題真っ向勝負のところが気に入った。個人的にはオチの後もう一捻りあるともっと面白かったと思う。
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315 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/04/02(水) 00:58:38.13 ID:ay7Ksbq/o
俺もやったことありますけど、専ブラだとなんかエラー出ますよね
で、書き込み反映されてないように見えて、連レスしちゃんですよ(´・ω・`)
316 :投票 :2014/04/02(水) 01:02:26.85 ID:CzdXpT7Xo
書き手の皆様、そして運営してくださった皆様お疲れ様でした。
久々に品評会、ひとつのお題に色んな人が様々に書いたものを見れてとても楽しかったです。
今までのを見た感じ私はみんなと好きな作品が違うみたいで。こういうのがわかるのも品評会のいいところですね。

***********************【投票用紙】***********************
【投票】: ストック・マーケット 作:◆veZn3UgYaDcq氏
      世にも奇妙な物語っぽい発想が好き。オチはなんとなく読めたけどむしろそこも良かったと思う。
      
気になった作品:ブツ 作:茶屋氏
      取引というお題真っ向勝負のところが気に入った。個人的にはオチの後もう一捻りあるともっと面白かったと思う。
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投票ってトリップいりませんよね?もし必要でしたらごめんなさい。
317 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします :2014/04/02(水) 01:05:55.86 ID:CzdXpT7Xo
>>315
あらまあえらいことになっちゃいましたごめんなさい。
私はjanestyle使ってます。
時間制限と今混んでます的なエラーメッセージがでてこうなりました。同じく専ブラ使ってる方々はブラウザ使ったほうがいいかもですね。
318 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/04/02(水) 01:08:50.35 ID:ay7Ksbq/o
>>317
全く同じですww
多分、固有のエラーなんでしょうね
火狐だとそんなエラー吐いたことないし
319 :全感書きます [sage]:2014/04/02(水) 03:14:09.82 ID:rLquaxjF0

※割と厳しい批評をしているので、そのような批評が苦手な方は、読むのを控える事をお勧め致します。
 そして、あくまでも私個人の感想であり、もちろんそれが正しい意見という事ではありません。
 作品の全てを面白く読んだ上で、気になったことをここに書いています。
 偉そうに……何様だよと思われるかもしれませんが、私の感想をあまり重大に受け止めず、
 そのような事を言う人も居るのだなあ……程度に受け流してもらった方がいいと思います。
 
 さて、保身のような文章を書いたところで全感いきます。
320 :全感 [sage]:2014/04/02(水) 03:17:02.27 ID:rLquaxjF0
 No.1「ホープ・ノーマル」

 今回、一番違和感のようなものを感じた小説。少し厳しい批評かも知れない。

 鬱病患者向け自己啓発本とか、ポエムのような空々しい会話が続く作品だ。
 文章は巧いと思う。余計な描写がないのは好ましく感じた。でもこれって、作者の格好良い言葉で書いた自問自答でしょ。
 会話と言うよりも、結末に導かれるために書かれた鍵カッコの文章にしか見えなかった。

 アイデアは面白いと思った。魔法というのが、この現実社会における『才能』や『生まれ持った環境』
 を比喩しているようで、差別を表すモチーフとしてとてもいいと思った。
 ただ、どうにも村上春樹的な、お洒落な言い回しが気になった。
 
 「つまり君はやさしいんだ」
 「幸せとはなんだろうね」

 思わず舌打ち。なんだろうこの心療内科みたいな、誰かを傷つけないような詩的な言い回し。どれだけ薄めた村上春樹だ。
 こういうテーマとしての差別を描こうとするときに、怒りを書こうとするときに、こんな文章では真に迫ってこないし、
 嘘をつかれているみたいな白々しささえ感じる。深みも重みもあったものではない。
 お前本当に怒ってんのかよ。ただ格好つけた言葉だらだら喋ってるだけじゃねえかって感じの。
 こういう文章を書く人多いけど、何でもかんでも優しければいいってわけじゃないんだからさ。
 と言うか、なんだろう。テーマと文体があってないというか、ちょっと格好をつけすぎてる。気取りすぎてる。
 もっと自分を剥き出しにして語ってほしかった。差別に怒りを感じているのならば。もっと怒りを感じたかった。
 まだ殻がある。草食系男子的な怯えを感じる。あるいは余裕がある貴族たちの上からの会話みたいな。
 むしろこの小説に怒りを感じる。

 まあでも、こういう文章の方が受けるのだろうし、好きだって人は結構いると思う。
 自分が受け入れられないだけで、このような雰囲気の文章がいいと言う人はいるのだろう。
 もっと詩的な物語だったら、語り口に合っていたんだろうなと残念に思う。
 もっと魔法を前面に押し出して、シュールなファンタジックな感じで書けばあっているんじゃないかなと勝手に思った。
 No.3とかNo.6のような。
 でも、確かに文章は読みやすいと思う。それがあだになっているが。 

 あと、上の人が書いているから思い出したけど、取引のテーマも上手く組み込まれていない。
 それは駄目だと思う。そのような作品は、まず前提として駄目だと感じる。
 
  

 No.02 ストック・マーケット

 今回の中で一番、『取引』と言うテーマをうまく組み込んで書けていたと小説だと思う。
 と言うか、取引と言うテーマを直球で書いた作品と言うべきだろうか。

 設定が面白い。人の株が見えると言うのは良い。『株が上がる』という慣用句(?)をうまく使った言葉遊び的な設定。
 取引と言うお題にも沿っているし、世界観・設定は素晴らしい。

 ただ、何と言うか面白く小説を読み進めていったところで……オチが、うん。
 何と言うか、ジャンプの十週打ちきり漫画を思わせるような、意味深なだけで深みの無いオチ。
 せっかく設定や内容が面白いのだから、もう少しまとまった形で話を落としてほしかったというのは、読者の勝手な願いだろうか。

 藤林が奥さんとどんな関係だったかをもっと深く見たいと思ったし、
 屑である藤林が主人公にどんなひどいことをさせるかと言うのが、最大の見せ場であるのだと思う。
 今までの内容をひっくり返すような、度肝を抜くような一言オチでも良いし、
 とことん主人公を貶めていく描写でもいい。
 あるいは最後に主人公の逆転劇があるでも良い。
 終わり方が唐突過ぎるなと言う印象が、やはりぬぐえない。

 あと、これって奥さんも株が見えてるのかな? そうでないと主人公の下部が売れない気がする……そうでもないのか?
 株に詳しくないから分からんけど。そうでなかったら、他に強烈に主人公を買う人を探せば、問題解決になってしまう気もする。
 うん……誤読力が低く株の知識もない俺には少し難しい。
 もう少し詳しく世界観の説明が欲しかった。

 でも、テーマに沿った面白いアイデアの小説だとは思う。
 詳しい描写や説明があると分かりやすかった。

 
 No.03 不等価交換
 
 恐らくミステリー要素を含んだ作品。しかし読んでいる途中で、結末はああだろうなあと分かってしまった。それが残念。
 悪魔との契約と言う設定で、星バーーーローーを思い出した。これもショートショートっぽい。でも結末は読者の予想通り。
 
 文章が少し、硬すぎて読みずらいと感じる部分があった。そして描写が多いから、リズムが全く生まれない。
 あえてそうしたのかもしれないが、悪魔の感情描写が少なく、動きの描写ばかりなので話が進むのが遅く感じた。
 会話を中心に進めていってもよかったのではないか? もう少し描写を簡潔に書いてもよかったのではないか。
 
 お話としては、作者のやりたいビジョンがこちらにも見えているし、頭の中のプロット通りに進んだのだろうけれど、
 結末はグッと来なかった。なんでだろう。
 そう、悪魔とその元主人の過去の関係がほとんど描かれていないからだ。全くラストシーンに感情移入できなかった。
 悪魔の最後の葛藤も読者に全く伝わらなかった。

 それでも上手くブラッシュアップすれば、面白くなるだろうと思う。
321 :全感 [sage]:2014/04/02(水) 03:19:08.76 ID:rLquaxjF0
 No.04 ブツ

 淡々と、余計な描写を書かずにまとめた印象。無難でいて、特に目を引く個性がない小説。
 初めて読んだ時、何だこれ、と思った。短すぎるし、盛り上がりもフックも、読者の心を惹くようなものはほとんどない。
 味のないガムを噛んでいるような小説。害ではないが、味がない。

 批評を書くために、二回目にちゃんと読んだ時に少し意見が変わった。
 これはこれで、別にいいのでは、と思ってしまった。ショートショートとしては、まあこれで悪くないのでは、と。
 オチがもっとブラックだったらな、と思ってしまうのは否めないが、まあ短編として無理をせずにまとめた小説と感じる。
 あるいはしっかり評価が出来るのではないか、と個人的に思ってしまった。

 何て言うか、うん、減点すべきところがない。
 小説としては、何倍も薄味にした木下半太のような小説。ダーティな雰囲気の、描写が淡々としていて読みやすいエンタメ。
 あとは、やっぱりオチなんだろうなあ。ここで惹きつけられるような落ちがあったら、かなり良くなるとは思うんだけどな。 
 でもそれが多分、一番難しいのだろうと思う。

 あと自分だけかもしれないが、最初、どっちがどっちの立場で、誰が何をしているのか分からないと感じる描写があった。
 どういう取引でどっちがどういう目的なの? と少し混乱してしまった。

 とりあえず無味乾燥な小説だった。味のないガム。
 あ、お題はしっかり組み込まれていた。しっかりお題に添って書かれている。
 あとは面白さを感じたい。



 No.05 時計屋との約束

 読んで一言。くだらねえwwwwww
 さっきの小説と逆。変な味の、例えばシジミ味のガムをかんでしまった感じ。奇抜な一発ネタ。
 でも、まあいいんじゃない、と思ってしまうのが不思議だ。例えて言うのなら、清涼院流水とか西尾維新的な言葉遊びを読まされ感覚……かな。
 これってバーター取引とバターをかけてるんだよね。で、バターと言えばマーガリンじゃんって。思わず、駄洒落かい! と席を立ち上がった。 
 まあ、それを小説にしてしまうセンスは嫌いじゃないぜ。でも、内容がないよう。
 
 

 No.06 時計仕掛けのローレライ

 今回の中で一番完成された小説だと思う。良作を一つを選べと言われたらこれなんだろうなあとは思う。
 物語としても、しっかり丁寧に描かれている。出会いがあり、二人の温かい交流があり、悲しい事故が起き、寂しい結末がある。 
 展開としてはテンプレートだけれど、それをしっかり書けることは強みだと思う。
 自分個人の好き嫌いは別にして、これはエンターテイメント小説として、読者の心を揺さぶろうと、しっかり書かれた小説なのではないかと思う。
 良いライトノベル等で見る作風。分かりやすいし、文章も問題ないと思う。
 
322 :全感 [sage]:2014/04/02(水) 03:19:43.44 ID:rLquaxjF0
 No.07 生まれ変わりの日

 個人的には一番好きな文体。
 書き方としては(以前からそうだったけれど)大衆小説的と言うか、直木賞系エンターテイメントの感じだと思う。
 文芸的。ちょっとジャンルは違うかもしれないけれど、本多孝好や伊坂幸太郎を思い出す。
 あるいは朝井リョウとか、角田光代とか、島本理央とか。(言い方はおかしいかもしれないけれど)まっとうな文芸系の文体。
 
 ただ、このよく分からないファンタジックな設定にする必要があったのかと疑問に思う。
 現代のセックス・ジェンダー問題に悩む人を書くのではいけなかったのだろうか。
 ラストシーンも疑問だ。どんな顔をしていたかも思い出せない。そんな大事なことを忘れてしまうのに、性別を変えようとするだろうか。
 本末転倒じゃないだろうか。いや、その滑稽さを書きたかったのか?
 それとも、自分自身をまるっきり生まれ変えようとする人の話として書きたかったのか。
 それではセックス・ジェンダーを乗り越えようとする恋愛の問題が放置されてしまうように思う。
 
 そもそも生まれ変わって考え方や精神が変わってしまうなら、相手側は受け入れないだろう。その人じゃなくなるのだから。
 いや、違うのか……? 
 社会的に男女として認められることを選ぶか、相手が男でもその人自身を愛し続けるのか、それに悩む人を書いていて、
 その男の曖昧さに決別しようとしている人を書いたのか?
 世間の目か、世間の冷たい目を受けても、相手を愛す続けられるかを主人公が問うている?

 ごめん、俺が自問自答してしまっている。今ひとつ読み取れない。主題なテーマが読めない。別にテーマ無くても面白ければいんだけどさ。
 どちらにせよ、このファンタジーな設定はあまり機能していない様に思える。
 

 あと、儀式の前の別れ方が、いかにも普通の恋人っぽくて陳腐だ。いや、まあこれでもいいのだろうとは思うけれど……。
 なんだろう。悪くないんだけれど……。
 星野智幸さんくらいぶっ飛んでいたら面白いけど、いや、まあプロと比べるのがそもそも違うんだけれどさ。


 一言で表すと、文体や雰囲気は好きだし嫌いではないのだけど……今一つ推せない、といった小説。
 そして性別問題がただの道具として使われてる感じが否めない。
 本人たちにとって、それを抱える人にとって、それはとても真剣でシリアスな問題なのだから、もう一歩踏み込んでほしかった。

 そして、お題の『取引』の部分が今ひとつ分からなかった……と言うより弱かった、かな?
 女性という入れ物と中身を手に入れる代わりに、男として生きていた時に愛してた彼を失くしてしまうという事が取引?
 なんだか比喩に紛れているのかどうか知らないが、少しわかりにくい。
 あまりお題に則していたとは(うまく使っていたとは)言い難い。

 結局、主人公男性のあいまいな部分が嫌いだったから女性になりたがった、と言うことなのかな? 
 
 ちょっと読んだだけじゃ今ひとつ分からんね。
 何度も読もうとするほどに、惹きこまれるものでもなかったし。
 うーん……上手く言えない。悪くはないんだけど、中途半端な気がする。伝えようとするものが伝わってこない。
 まあ、自分の読解力もないんだけれどさ。


***********************【投票用紙】***********************
【投票】:No.06 時計仕掛けのローレライ

気になった作品:No.07 生まれ変わりの日
        No.02「ストック・マーケット」
********************************************************


投票はNo.06で。

気になった作品は、No.7。
あとは打ち切りっぽい終わり方だったけど、展開と設定が面白かったんでNo.2で。
323 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします :2014/04/02(水) 03:57:34.37 ID:so16ib0L0
>>322
なんか山田詠美の選評ぼくて面白かったww

全感の感想ですまん。
324 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/04/02(水) 12:44:51.98 ID:rKrjsCSW0
>>292
読みました。いわゆる社畜を扱ってるということで、
おそらく日本のそこらじゅうでこういう人はいるんだろうなあと思うところまではいいのですが、
そこで終わってるのである種のドキュメンタリーという感じがしてしまいました。
別に現実的な小説があってもいいのですが、せっかくのフィクションなら、
もっと予想に反したことが最後に起きるとか、そういう要素が欲しかったかなー、と思います。
325 :総評 [sage]:2014/04/02(水) 15:35:18.87 ID:rLquaxjF0
>>322の続きです。久々の品評会に対する感想です。
昔のBNSKでもこんな偉そうに厳しいこと言う奴いたよなあ、という感じで流し見てください。
まあ、昔に厳しい感想を書いてたのは僕じゃないですけど。
とりあえず、芥川の選考辞めたあのクソジジイの戯言並みに、これも受け流してください。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

No.6に投票して改めて読み返してみたんだけれど……。
確かに投票するならこれしかないんだけれど、やはり無難すぎて面白みがない。

もちろん作者が悪いわけじゃなくて(まあ王道のお話ってこういうものだし、個人的には無難すぎてつまんなかったけど)
邪道で惹きこむ小説がなかったのが残念に思う。
N0.2なんかは人のクズな部分を見せる小説なんかが見れそうでちょっとドキドキしたんだけれど……惜しかった。
個人的に一番惹かれていた小説なんだけれど。

設定や世界観で惹きこむって作品ってのが、品評会では多くなるし、やはりそこで勝負する人も多いんだけれど、
小説自体が完成していない印象が多い。突出して面白い部分はあるんだけれど、弱点となる穴も大きい作品。
だからこそ、いいなと思う作品があっても強く推せない。
それで結局、No.6のような無難にうまい作品が優勝してしまう。
なんか昨今の新人賞の傾向をここでも見る事が出来る気がする。

N0.7だけは、ある意味いつも通りに、言葉にできない人の曖昧で微妙な部分を小説にしようと言う挑戦は感じたけれど、
やはり突出して面白い、或いは引き寄せられる文章がなかった。書き方は巧いんだけれど。こなれた、手癖で書いてる印象。
あと、周りに釣られたのか、誰かの影響か、不思議な世界観を持ち出して、それをうまく活用できてない。
昔から見てて、良い文体作ってるなあと言う印象があるだけに残念。

No.1はボロクソ書いてしまったけれど、一番書き慣れている印象で、作品によってはかなり化けるはず。
滅茶苦茶に面白い作品が書けるんだと思う。今回は作風があっていなかった。あと、ちょっと手癖で書いてしまった印象?


なんだかんだ、結局グチグチ言ってしまったが、久しぶりの品評会でこんなに作品が集まったのは奇跡的。
宣伝した人も居たし、その結果だと思う。宣伝した人も、作品を投下された皆様も、お疲れ様です。
僕に対して、お前偉そうに、言うだけなら誰だって出来るんだよ、と言うのはごもっともで恐縮するしかない。

全作品、面白い所がしっかりとあって、全体的に文章が巧かった。
なんだか厳しいことばかり言って本当にすみません。
ちゃんと真剣に批評をしたかったという気持ちで、ばーっと書いてしまいました。
これで次の品評会の作品数がゼロとかイチとかだったら確実に僕の所為ですね……。
あんなキチガイにコメントされるなら、もう書かない! と言われることでしょう。
それでも僕の感想なんて受け流して、皆さん次もすごい作品書いてください。僕の言葉なんて、ただの一人の感想なんですから。
僕も次は参加しようと思います。ボロクソに叩かれるくらいに。




326 :全感想  ◆50ONQ3LN72 [sage]:2014/04/03(木) 00:10:00.49 ID:uVHjUn98o
上から目線とか気にしない。
正直を言えば、自作以外の全作品に票をぶっこみたいところなのだ。
けれど、最大の自制心を発揮した。俺偉い、マジ偉い。
そして、全感想はやりたいようにやるのがマイポリシー。
他人のために感想を書くつもりはない。
ある意味、感想を書くために作品を書いているのだから。
327 :全感想  ◆50ONQ3LN72 [sage]:2014/04/03(木) 00:11:04.85 ID:uVHjUn98o
No.1「ホープ・ノーマル」
この作品が嫌いだ、と自信を持って言える。優れているかどかという判断基準にするつもりはないし出来ないけど。
俺はこの作品を読んだ時、強制的に「彼」の側に立たされるような居心地の悪さを感じた。
理由はいろいろある。
ある問題に対して、義憤に駆られる人物が現れた時、一般的には読者はそちらの側に立つことを選ぶということ。
「僕」の主張が酷く曖昧(意味が、ではなく言い回しが)で、パッと見何が言いたいのかよく分からないこと。
単純に「僕」の気障な台詞が鼻について、感情移入どころではなくなること。

差別には二つの立場が存在する。差別する側とされる側ではない。推進する側と拒否する側だ。
そして、基本的には推進する側が強者、拒否する側が弱者である。
この作品で言えば、魔法が使えるか否かは強弱に影響を及ぼさない。大事なのは肯定的に捉えるか否定的に捉えるか、だ。
ただ、この作品には肯定的に捉える側が存在しない。「僕」も「彼」も間違いなく差別に対しては否定的な立場なのだ。
この二人の違いは、直接的に否定する意志を示すか、心では否定しながらも仕方なく受け入れてしまっているかである。
上述のように、この作品において読者は半ば強制的に「彼」の立場に立たされる。
「彼」としての読者が、「僕」に何を感じるか? それは作者以外ありえない。
何故なら、「僕」は「彼」を「君」と呼ぶからだ。
「僕」は「彼」の義憤を否定する。魔法を使える側、つまり強者が弱者を憐れんでいる(意訳)だけだ、と。
同じ立場に立っているはずの人間の考えを、持っている者の憐れみだと拒絶するのだ。
とどのつまり、「彼」の立場に立たされた読者を「僕」の立場から作者が拒絶するのである。
だから、俺は「僕」を通して伝わってくる作者の意志に強烈な嫌悪感を覚える。

>「魔法がこの世になかったとしても、僕らはきっと悩んでいただろうね」
>僕は表情を崩して微笑んだ。

吐き気がする。目の前に「僕」がいたらぶん殴ってやりたい。
お前が何もかも分かったような面が出来るのは、本当につらい目にあっていないからだろう、と。

結局、「僕」が「彼」の義憤を否定する理由が理解できるほど、「僕」が描かれていなかったからなんだと思う。
「彼」を薄いと否定できるほどの濃さを「僕」から感じることが出来なかった。
だから「彼」の義憤を強者の優越感だと思うことも出来なかった。
328 :全感想  ◆50ONQ3LN72 [sage]:2014/04/03(木) 00:11:40.44 ID:uVHjUn98o
No.02 ストック・マーケット
>会社の価値が株価という形で上下するなどということは、人間の価値の決まり方と全く同じじゃないか
正直、この冒頭の主張がするっと頭に入ってきていたら、もっとこの話を高く評価出来ていたと思う。
つまり、人の価値も株価と一緒で、絶対評価ではなく相対評価だってことだと思う(違ってたらごめん)
何かをやって人に評価されれば価値は上がり、その逆は下がる。
慣用句で株が上がるっていう言い方があるけど、それを具現化し、さらにそこから一歩発展させ、トレードの要素を加える。
ショートショートのアイデアとしてはかなり良いと思う。

>周りの評価が下がったから株価が下がったのではない。株が下がったことで俺を取り巻く世界が変わったのだ。
逆転の発想。目からうろこが落ちた。
ただ、この一行が結局はこの話のオチを平凡なところに落とし込んでしまったと思う。
つまり、相対評価ではなくトレードによって株価を上げようとすることだ。
良い落としどころの一つだとは思うんだけども、妻がトレードによって旦那の価値を下げたという、めちゃめちゃ面白い所から、
結局は同じ方法での穴埋めになってしまうわけで。
そもそも、旦那の価値を下げるために旦那の株を売り払う、これ自体が妻の株を下げる行為じゃないの? という。
何が言いたいかって言うと、人間が書けていないのだ。名無しのAさんで終わってしまっている。
もうちょっと上手く料理出来たんじゃなかろうか、と思ってしまった。
逆に言えば、それだけネタが面白かったということなんだけど。


No.03 不等価交換
俺はこの作品が好きだ。これはもう好みであってどうしようもない。
長所や短所を言おうと思えばいくらでも出てくると思う。
でも言う気にならない。
一つだけ言えるとしたら、もっと灰汁が強いほうがより好みかもしれない。
ストーリーでもキャラでもネタでも文章でも何でもいい。
329 :全感想  ◆50ONQ3LN72 [sagesaga]:2014/04/03(木) 00:12:42.02 ID:uVHjUn98o
No.04 ブツ
鞄が本体ですね? 分かります。
なんだろう。もっと評価されてもいいのにって思う。
物足りないって感じるのは事実なんだけど。
でもこれは、書いてあるだけじゃ足りないっていうんじゃないと思うんだ。
どちらかというと、書かなくていい部分まで書いてて、それが足引っ張ってるんだと思う。

>何故誰かが欲しがり、交渉を持ちかけてくるのかも。
>もしかしたら、何かの分泌物を出して獲物を誘い出しているのかもしれないが

例えばここ。
こういう説明はいらない気がする。書き始めると途端にあれもこれもって目に付き始めるから。
この長さじゃ、基本的に読者は細かいことを追及しない。でも作者が説明を始めると、あれは? それは? ってなる。
俺からすれば、鞄が次々と獲物を得られる理由なんて、「俺」のお蔭で十分だって思う。


No.05 時計屋との約束
アホだなぁwww
もっとスマートに書いてたら、一発ネタとしての切れ味が上がったように思う。
それか、もっとバターネタで突っ走って、ガンガン小ネタ挟んでいっても良かったと思う。
あと、一行目はなんか意味ありげでかっこよさげなんだけど、特に意味はないから掴みとしてはどうなんかなって思う。
俺が君に1票入れるから、君も俺に1票入れてくれ。
読みながら、こんなバーター取引が浮かんだ。


No.06 時計仕掛けのローレライ
拙作。
イメージとしてはスイスのシャフハウゼンっていう町。すぐ横をライン川が通ってる。
ちなみにルカって名前については、スイスのドイツ語圏(他にイタリア語圏、フランス語圏、ロマンシュ語圏がある)で人気だった男の子の名前。
多分、アレサンドっていう所でイタリア??ってなって女名に感じさせてしまったんだと思う。
13レスも使ってるのに、キャラを書ききれなくて、うわべだけをさらっと流した感じになってしまった。
もうちょっと、毒みたいのを出したかったと反省している。
330 :全感想  ◆50ONQ3LN72 [sagesaga]:2014/04/03(木) 00:13:26.87 ID:uVHjUn98o
No.07 生まれ変わりの日
>「え、女になりたい?」
俺はこの行に至るまで「なんかこいつ女っぽいなー」と思いながら読んでいた。
一人称が僕なのに女っぽいと思ったってことは、男が上手く書けてないんかなって思ったら、狙ってましたとさ。
文体を評価している方がいたけど、納得した。ただ、本当に良かったのは最初の6〜7行くらいだと思う。
そこからは別人が書いたのか? って感じた。いや、十分上手いんだけど。
俺には特徴的な文体で書く才能がない。だから、文章を書く時には分かりやすさを重視するしか手がない。うらやましいと思う。
この作品における台詞は、ほんの少し回りくどい。けどそれがNo1と違って鼻につかない。
これは俺の好みもあるのかもしれないけど、多分バランス感覚が良いんじゃないだろうか。性別に関してのことも含めそう思った。
きちんとパッと見で意味が分かるのだ。前後関係を考えなくても。

取引というお題を考えた時に、作者は一体どこからどこまでを考えていたのだろうか、と思う。
姿形を差し出して得た新たな姿形は、果たして何かが欠落しているのだろうか? または何かが付加されているのだろうか
50を差し出して50が帰ってくるとは限らない。リンゴを差し出してオレンジが帰ってくるから取引は面白いのだと思う。
そういう変質に対する不安を

>どんな顔形をしていたか、よく思い出せない
って表現したのは凄く上手いと思った。
ただ、書き方から考えれば、彼女が変質していたのは、彼と神殿前で別れた時、もっと言えば彼に助けられた時なんじゃないかって思う。
ガタカを思い出したよ。俺はあの映画がすごく好きだ。
331 :投票  ◆50ONQ3LN72 [sage]:2014/04/03(木) 00:14:40.42 ID:uVHjUn98o
総評的な何か
すげー久々に品評会に出た。やっぱ楽しいね。
そして毎度のことだけど、自作に悔いが残る。ぶっちゃけ、参加して後悔しなかった試しがない。
昔を知ってる立場としては7作って物足りなかったんだけど、それでも読んでいて面白いと思える作品が多かった。
次があるのかどうか、出れるのかどうかは分からないけど、参加したらまた後悔するんだろうなって思う。

***********************【投票用紙】***********************
【投票】:No.07 生まれ変わりの日

気になった作品:No.02 ストック・マーケット
       :No.03 不等価交換
       :No.05 時計屋との約束
********************************************************

投票はNo.7に。理由は読んでいて一番楽しかったからだろうか。
関心票はNo.2 No.3 No.5に。2はアイデア、4は軽さがそれぞれ良かった。3は好きだから。
最後に、関わったすべての人間に感謝を。
332 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/04/03(木) 00:53:29.24 ID:Rjg7NpgD0
>>306
感想thx 裏島くんです。
裏島くんは物事の裏を読むのが大好き・・・という題材から膨らませてったんやけど、ちょっとお題としては弱かったかなー
番号に関してはすまぬ!ミスった!
なんにしても楽しんで読んでくれたみたいで幸いですー
333 : ◆BNSK.80yf2 [sage]:2014/04/04(金) 02:53:39.94 ID:2NODxlopo
てきすとぽいイベントページに、全感想が一件投稿されました
お時間ある方は覗きに行ってみてください
334 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/04/04(金) 03:03:46.15 ID:7DjijxOl0
全感想貼っていきます。

No.1「ホープ・ノーマル」
 導入いい。ベタだけど「どんな世の中なの?」って思いながら読んでいけた。
 主人公が考えを自分の中でまとめながら話しているんだけど、着地点がすごく曖昧。狙っているのかも知れないけれど、もし私が「僕」だったら最後の答えに納得しないだろうなあ、と思った。
 「僕」は魔法を使えない人なのかな? だとしたら確かに「彼」はとても失礼なことを言ってるけれど、だからこそ何故彼が「やさしい」世界を求めていたのか、それも見たかった。結局この作品は「僕」の目線でしか語られてないんだよね。

No.02 ストック・マーケット
 設定とその説明が簡潔かつ、わかりやすい。すんなり主人公の世界にはいっていけた。
 色々想像できて楽しい。この話自体がどんどん先に膨らんでいくであろうものだし、物語の中だけでも、奥さんのことだとか、藤林のことだとか、そういう本文にないことを妄想できていい文章だなと思う。

No.03 不等価交換
 面白かった。真実が分かったときに、「あーこれどうするんだろう」って思いながらどきどきしながら読めた。
オチも文体にぴったりなオチだったと思う。映像にしたらかなり(いろんな意味で)ショッキングだと思うけどww
335 :全感想 [sage]:2014/04/04(金) 03:05:54.05 ID:7DjijxOl0
名前かえるの忘れてたのと改行うんこだけど次から気をつけますってことにして続き貼るおー

No.04 ブツ
 面白かった。ひとつひとつの文が簡潔で、読みやすかったし、分かりやすかった。
細かいことは気にしないというのか、妄想でなんとかしちゃうたちなので、これぐらいざっくりと描写してるのもいいと思う。ただ句読点や被りなどの添削をもうちょっとやってくれると視覚的に読みやすくなる。

No.05 時計屋との約束
 マーガリンのくだりと上司の話がぜんぜん噛み合ってないけど、これはこれでいいのかも。「そのようなわけで」が変にいい味出してる。
この主人公は時計屋さんと仲良くやりそうだ。こういう天然ジョークが好きそうなしゃべり方をしている。
まあでも、商談って言ってるしちゃんと営業もするのかな。この主人公は予測がつかん。

No.06 時計仕掛けのローレライ
 面白かった。タイトルのせいで若干オチが読めちゃうのと、途中駆け足になってしまった(そのおかげで臨場感もあったんだけど)のが読んでて少し残念だったかなー。
色が混じりすぎて黒になっちゃう、みたいなところが凄い好き。歌うシーンも、その会話(?)のシーンも凄い目に浮かぶ。
ヒルダはこの後どう育っていくんだろうね。リタもかわいそうだけど、彼女もきっとこの町で暮らすには幸せとはいえない未来が待っているのだろう。

No.07 生まれ変わりの日
 目が離せないお話だった。こういう話を見ると、いつも言葉の選び方に迷うけど、やっぱりグロテスクだなと感じる。この言葉は主人公も、「彼」も、そしてこの世界観にも共通して感じることで、そこに何か惹かれるものを感じた。
「文学少年」という言葉でなんとなく現実に引き戻されてしまった。これは私の偏見なのかな? この世界はこの世界で完結していて、でも「文学少年」という言葉がほかの世界を提示しているような気がして、このお話を見る集中力が削がれてしまったというか。
しかし面白かった。怖いもの見たさだけど面白かった。
 
336 :投票 [sage]:2014/04/04(金) 03:13:12.26 ID:7DjijxOl0
***********************【投票用紙】***********************
【投票】: No.03 不等価交換
      No.07 生まれ変わりの日

気になった作品:No.06 時計仕掛けのローレライ
        No.04 ブツ
********************************************************

全部面白かった。とは言うものの、選ばなきゃいけないので何とか半分(切り上げ)に絞りました。
まあ感想は全感想で書いたし、良いでしょう。次回があったら私も参加したいね。
337 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/04/04(金) 13:01:07.81 ID:nwAkAOvNo
お題くれ
338 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/04/04(金) 13:43:26.15 ID:tLeO9yaxO
未来予知
339 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/04/04(金) 17:27:36.98 ID:3rkiK2qo0
久々にお題を頂きたいです
340 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします :2014/04/04(金) 17:35:52.57 ID:DyN42Aq8o
>>339
嘘を建前に真実を混ぜる、秘密の座談会
341 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/04/04(金) 17:59:41.60 ID:3rkiK2qo0
お、お題を把握……できたのか自信はないが、頑張ってみます
342 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします :2014/04/04(金) 19:55:13.55 ID:3rkiK2qo0
無理だろ。いや、できたけど……。何ぞこれ? 2レス投下します。
343 :やなこうど 1/2(お題:嘘を建前に真実を混ぜる、秘密の座談会) ◆d9gN98TTJY [sage]:2014/04/04(金) 19:59:48.19 ID:3rkiK2qo0

 合コンをセッティングしろと言われたんだ。と、嘘をついたんだ。
 三人で構成された小さなサークルを二組知っていて、それが男女別に分かれていた。
 そういう状況での好奇心が発端なのか、それとも双方のサークルから寄稿を求められていた鬱憤が原因
だったのか。取引先での懇親会などで幹事を務めるのが多かった件で、双方から全く別々に幹事長と同一
のあだ名を頂いたせいもあったのだろうか。
 兎にも角にも、俺は双方に「寄稿してもいいけど、その代わり知り合いの勤め人から合コンのセッティング
を頼まれてたんだ」と伝えた。
 双方とも予想通りに慌てふためいて、それでも予想通りに断りはしなかった。なかなかいい塩梅に物事が
進むのに頬が緩むのを自覚しながら、俺は双方に勤勉な仕事っぷりや明け透けで親しみやすい人柄などを
嘘を交えずに伝えた。
 ただ、殆ど持ち出しのあんな金のかかる趣味なんて社会人じゃないとなかなか軌道に乗らないだろうとも
思っていたけれど、その思いは伝えることはなく、俺は二組の人間の慌てふためく様をただ見ていた。
 仕事上の立場を双方に伝えて日時は互いの休暇をすり合わせ、あたふたしていた部分は省いてその心待ちに
した様を逐一伝えた。
 会場をセッティングして、会費は男性側に、女性には先に着いていてもらって、今俺は男どもを引率している。
 そのうちの一人、芝克岳から「お、おい、なんの話をすればいいかな?」なんて聞かれたので、俺は
「普段通りでいいだろ、左近」とあしらった。
「いや、左近はまずいだろ。オタバレするじゃん! あっちではそう呼ぶなよ?」
「といっても、お前ら公の立場でのお互いの呼び方なんて調整してたっけ?」
「……あ」
「それに島勝猛はメジャーの部類だろ。あだ名としては普通普通」
 芝克岳(しばかつたけ)、得川靖(とくがわやすし)に石田満(いしだみつる)の三人が揃っているんだから、
東西関ヶ原でーすとでもサークル名をネタにすればいいものの、オタ容疑に怯えるこいつらでは到底無理か。
 まあ、同じネタでも扱う人間によっては滑るものだし、それを上手く回避しようと思ったら少々硬く
ならざるを得ないというのは分かるし、上手くいってもらいたいとは思っているからその意見は尊重するが。
 それでも地が悪いわけでも無いし、面白くないからやらなかっただけで、お互いにオタ趣味を理解して
いながらの合コンと言われたなら上手くいくだろう事も予想ついていたので、オタバレして慌てふためく
所になったらばらすけど。
344 :やなこうど 2/2(お題:嘘を建前に真実を混ぜる、秘密の座談会) ◆d9gN98TTJY [sage]:2014/04/04(金) 20:05:02.85 ID:3rkiK2qo0

「どうするよ内府!」
「そういうお前も内府って呼ぶなよ……」
「内府は刃物って事でさ。それより、三成はやめてよね。明らかに違う名前だし」
「いや、あだ名なんだから別の名前でもいいだろ。それより左近が痛い。気をつけてくれよ」
「気をつけろったって、克岳って聞いて山岳に克つだなんてまず連想しないから……無意味では?」
「しばしば芝を島にしてしまったりなんかしちゃったりなんかしちゃってみたりして」
「やめろよ!」
「いや、けれど重要な所のような……。語呂合わせしやすいというのは言い間違えしやすいということでは……」
「そうなんだよね。どうせ左近はばれると思うから、僕らの件だけを考えようよ。時間もないし」
「見捨てんなよ! なんかひねり出してくれよ。こう、新しい呼びやすいあだ名とか」
「そんなのあったら、既にそれで呼んでるような……」
「無理だよね。徒歩であと十分も無いんでしょ?」
 そこで急に俺に振られたので「ああ、正確はあと五分くらいだよ」と答えた。
 目に見えるほど緊張が増したようなので
「サークル内での打ち合わせも、仕事の打ち合わせも似たようなもんでしょ。上司や部下の無茶振りやアフォが
無くて、本人に情熱があればだけど」
「無茶振りやアフォがない仕事なんて無いっての!」
「なら、少なくともコレからのことは仕事より楽ってことじゃん」
「あー……。そういう解釈もできる……かな?」
「まあ、僕もそれには同意なんだけどね。でも、頭で分かっていてもってこともあると思うんだよね」
 三者三様の反応を確認しつつ、俺は最終目的の達成の為に僅かなりとも気晴らしの言葉を紡ぐ。
「俺はこの合コンが成功したらいいとは思っているけど、別にそれは義務でもなんでもないんだから、気楽にね」
「ま、失敗しても明日は来るな」
「少なくとも、今まで通り……以下にはならない」
「気楽にするつもりはあるんだけどね」
 そう、成功させる義務があるのは彼らではない。この道を進んだ先の店にいる彼女たちでもない。
 二つのサークルの舞台裏、お座敷で行われた赤裸々な人間模様。それを収めるボイスレコーダーの準備もできている。
 そう……これは秘密の座談会。
 それを成功に導いて、俺はこの作品を双方のサークルに寄稿するのだ。
345 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/04/04(金) 20:05:32.10 ID:3rkiK2qo0
これで勘弁してつかぁさい……
346 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/04/04(金) 20:06:14.98 ID:X5aBPkbc0
あのわけわからんお題で書いた
それだけで凄いよ
347 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/04/04(金) 20:17:24.75 ID:3rkiK2qo0
なんとかやり遂げた達成感と、手軽な掌編に逃げて描写を省いた未達感が綯い交ぜになって混乱してたけど……

ありがとう
評価って嬉しいもんだね
348 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/04/04(金) 21:48:03.57 ID:69yDOVtM0
>>345
難しいお題を2時間ちょっとで形にしたのは本当に凄い瞬発力だと思う。
明快に主人公のしようとしていることが書かれてないからだいぶ想像が含まれるけど、
2つの(おそらく異性慣れしてない)文芸サークル的なものに合コンさせて、
男サークルには女側を、女サークルには男側を面白おかしく書いたものを寄稿するつもりだったということかな?
もしくは両方をからかったような同じ内容のものかもしれないけれど。
どちらにせよ、2つのサークルは立場的にも対等だし、最後に「二つのサークルの舞台裏」と言ってるからにはぜひ女性陣のあたふたするようすも見たかったなあ。
349 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします :2014/04/04(金) 22:45:45.00 ID:HPObuT25o
お題下さい
350 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/04/04(金) 22:53:09.57 ID:lX+Qsahw0
クリティカル

いま気づいたんだけど、まとめサイトで投票締め切り 4/5(日) 23:59 になっているけど、4/5って土曜日だよな……

351 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/04/04(金) 22:54:59.49 ID:3rkiK2qo0
稚拙な分だったのに、伝えたい内容をしっかり読み取っていただけていたので、流石BNSK住人だと……

自分でも、男女六人+視点で七人のキャラをぶん回す自信がなくて
視点変換をしすぎると上手く伝えられなくなりそうで……とか、逃げに入った自覚があって
自分の駄目なところもしっかりと読み取っていただけているなと、その面でも流石BNSKの住人だなと…… orz

しっかりと挑戦するべきだったのかなと今では思います
最初は慌てて形にする事にいっぱいだったので、気持ちが落ち着いたらいずれ推敲し直して物語として完成に近づけてみます

思えば、それが書いた文章を一晩置いて見直してみるって事なんだろうな……
352 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/04/04(金) 22:55:49.03 ID:5gMo/qkZ0
>>350
というか、このスレの最初の方の告知からして曜日を間違ってる。
353 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします :2014/04/04(金) 23:17:35.40 ID:HPObuT25o
>>350
ありがとう
354 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/04/04(金) 23:25:53.86 ID:2NODxlopo
>>343
徳川を内府と呼ぶなら石田は三成じゃなく治部だろうと思った。
何だろう、文章が中々頭の中に入ってこなくて難儀した
というか、お題がそもそも意味分かんなくて、お題に沿っているのかも分からない
俺が馬鹿なせいかもしれない
高村薫読んでるような気分になった
掛け合いが好き
タイトルも二つくらいの意味がありそうなんだけど、分かんなかった
ごめん、大したこと言えなくて
355 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/04/05(土) 00:03:07.12 ID:855ZS7aM0
>>352

本当だ……
まあ日にちのほうを信じればいいのかしら……

>>351

読みました。
戦国時代好き? なのかな?
左近と聞くとあやつり左近を思い出す私は駄目なんだなあ……

私の好みかもしれないですが、やや文章の繋がりが悪い気がしました。
例えば一行目の「嘘をついたんだ。」の文の後は、普通なら『なぜ嘘をついたのか』もしくは『嘘をついた結果どうなったか』という文章が続くのが自然な気がするんですね。
しかし実際にはサークルの説明がきているので、あれ? だけど次の行では嘘をついた理由について書かれていて、あれ、あれ? というように、一行一行で頭の切り替えが必要になる気がするのです。
ストーリー構成上、どこかでサークルの説明をしなければいけないというのはわかるのですが、例えば「片方のサークルには男、もう片方のサークルには女しかおらず、そういう状況に好奇心が湧いたのかもしれない。」という書き方であれば、違和感はなかった気がします。サークルが三人構成であるという点については、あとで「男三人、女三人。人数合わせもバッチリだ。」と入れるなど。

ようするに、流れの中で説明することを心がけたほうがよいと思いました。


私にもお題ください。
356 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/04/05(土) 00:04:38.56 ID:wtdjlbTQo
偶像
357 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [sage]:2014/04/05(土) 00:58:43.80 ID:GL84Knno0
>>343
流れに乗って感想を書く。

>>合コンをセッティングしろと言われたんだ。と、嘘をついたんだ。

何故ここだけ口語表現にしたんだろう。後がすべて文語体だからここの違和感が半端ない。
特に狙いがないなら統一すべき。

全体の書き方は、ライトノベルとかエロゲーっぽい、会話が中心の感じ。ギャグや掛け合いもそんな感じ。
ウケる人にウケるんだろうけれど、受けない人にはとことん滑って見える。
そこは、別に作者も(恐らく)分かってやっている事だろうし、広くいろんな人に向けて書いていると思われる小説ではないのでいいと思う。
マニアックな方向で書く気概は好ましい。
このお題で書く挑戦も、良い。
ただそのマニアックさが上手く小説に結びついているかと言ったら、必ずしもそうでないと感じた。

アイデアはいいと思う。
ただ最初から、分かんないことを分かんないままべらべら説明されるから、頭にうまく入ってこない。
我儘な読者だと思われるだろうけれど、読者ってたいてい馬鹿で分かりやすいようにしか理解しないから、
ちゃんと順を追って説明した方がいいと思う。

そして上の人が言っているように構成が変。自分が気になった点で言えば

>>寄稿してもいいけど、その代わり知り合いの勤め人から合コンのセッティングを頼まれてたんだ

寄稿云々の話がいきなり出てきて戸惑うし、それが何に関する寄稿を求められているのかこちらに一切分からない。
と言うか、何なんだろう……なんか最初の説明がごちゃごちゃになっている印象がある。
作者、というか主人公に分かっている重要な事実を隠されたまま説明されているような印象で、
それがミステリーとして効果を発揮するならいいんだけれど、よくわかんないまま、言葉遊びみたいな掛け合いがあった後で、
唐突に主人公のたくらみを晒されて終わるっていう……。悪くないんだけれど、分かりづらい。



この座談会の様子を記録して、両サークルに寄稿するんだ! で終わっているけれども、
それが主人公の趣味だったって事? 寄稿の辺りの説明がないから今一つ分からなかった。
と言うか、それだけだと弱い気がする。

多分、色々と想像を膨らませて読む読者さんにはいいんだろう。
自分は読解力とか想像力が足りないんだと思うけれど、上手く伝わってこなかった。

お題を出した人も、作者も悪くはないんだけれど、小説の構成が弱いと感じる。
早く書くのはいいんだけれど、もっと時間を置いて見直せる点があったんだと思う。
でも、まあSSって早く書いて、アイデアで勝負してナンボだから、このスレでは悪くないのかもしれない。

うん。本当にアイデアは悪くないのだと思う。けれど、説明の仕方に違和感を感じる。
ごめん。なんだか俺にとっては、自分に合わない小説だった。
純粋に、小説観とかネタが合わなかっただけのような気もするんだけれど。最初の説明部分で混乱した。

トリップからすると、昔、よく書いてた人だよね? 昔も読んでたよ。
良い時は良い小説を書くのだけれど、もう少し書いたのを見直してみる癖を付けるのもいいかもしれない。
上から目線のアドバイスで、鬱陶しいと感じたらごめんなさい。受け流してやってください。
358 :投票  ◆Gr.Ti1RX5s [sage]:2014/04/05(土) 00:59:51.52 ID:0duxXF+s0
すみません。時間がないので取り急ぎ投票だけ

***********************【投票用紙】***********************
【投票】: No.02 ストック・マーケット

気になった作品:No.06 時計仕掛けのローレライ
********************************************************
359 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [sage]:2014/04/05(土) 01:10:21.83 ID:GL84Knno0
>>355
日にちで合ってると思います。締め切りは今日(4月5日)ですね。
360 : ◆d9gN98TTJY [sage]:2014/04/05(土) 09:51:34.25 ID:+ebp+BdX0
少し長々と、言い訳というか、解説というか、釈明というか……

>>354
サコンとかナイフに比べてジブって発音すると一般的な名詞に聞こえないので、まだ普通なミツナリを採用してます
主人公(視点)的にはそんなオタ趣味を気に病まなくてもお前ら別に普通じゃんという感想で
だから、大したことないと思っているから平気で悪戯できちゃうという流れで……うん、こっちの説明不足ですね

>>355,357
一行目の件は、自分でもよくやってしまう、何かに苦慮した時の仕掛けみたいなもので
最初に疑問や変なネタや違和感を与えて、情報説明の代わりに内容を薦めてその中で解説して話にするという、読んでもらう取っ掛かりみたいな仕掛けに頼ってます
拙作に、最初に会話文をぶち込むのが多いのもそのやり方の一つで、どういった背景でこの言葉がでたのかと疑問に思ってもらえるから説明が楽というか……

問題は、お二方が指摘した通り、後々の説明がちゃんとしていないと一行目は何だったのという話になったり
いきなり大きな疑問があるのでその疑問に綺麗に順を追って答えていないと話がアッチに行ったりコッチに行ったりしたり
物語より違和感の方が大きかったらそっちに食われて物語の存在感がなくなるところだったり
自分ではちょっとした刺激のつもりでも、読む人にとっては何か大きな違和感になっていたりという

……つまりは、見直して推敲してエピソードを膨らまして話に深みを持たせて余計な表現は削除して完成してから投下するべきという結論なんですよね
頭では怠っているなと分かっていても何かしんどかったんです…… orz

寄稿については、三行目にもチラッとは入れてはいたんですが……
でも、ちゃんと伝えたい内容は改行して頭だしするべきという基本を守っていればそれも伝わったんだろうから
要反省だなと心に留めておくつもりです


でもまあ、挑戦は評価してくれるし、怠った部分はしっかり読み取ってくれるしで、流石はBNSKだなと……
意見は尤もなところばっかりだから素直に受け止めることができます
まあ、長々と言い訳っぽい解説である自覚はありますが、駄目なところは確かに自分が修正しておくべきミスだと思ってます

ありがとう
361 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [sage]:2014/04/05(土) 14:08:27.16 ID:OCzCW45O0
書く お題くださいな
362 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/05(土) 14:50:04.61 ID:wtdjlbTQo
363 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [sage]:2014/04/05(土) 14:55:23.60 ID:OCzCW45O0
>>362
把握
364 :投票 [sage]:2014/04/05(土) 23:44:26.07 ID:wtdjlbTQo
感想書く時間ないので投票だけ

***********************【投票用紙】***********************

【投票】:No.06 時計仕掛けのローレライ
      


気になった作品:No.07 生まれ変わりの日

********************************************************
365 :集計結果  ◆BNSK.80yf2 [sage]:2014/04/06(日) 00:12:27.89 ID:2ywKwFOQo
 投 関
 −  2 No.01 ホープ・ ノーマル
  5  3 No.02 ストック・マーケット
  3  2 No.03 不等価交換
 −  4 No.04 ブツ
 −  3 No.05 時計屋との約束
  6  6 No.06 時計仕掛けのローレライ
  3  6 No.07 生まれ変わりの日


多分合ってる……はず
366 : ◆BNSK.80yf2 [sage]:2014/04/06(日) 00:18:32.11 ID:2ywKwFOQo
2回やりなおしたけど、一致した
多分合ってる
というわけで、優勝はNo.06 時計仕掛けのローレライを書いた◆50ONQ3LN72氏です!
おめでとうございます!


367 : ◆BNSK.80yf2 [sage]:2014/04/06(日) 00:36:48.23 ID:2ywKwFOQo
前もって言っていた通り、自分は次回の運営は出来ません。
なので、今月の月末に品評会を行うかどうかは、スレの他の皆様にお任せします。
もしやるようなら優勝者の方、次回のお題をお願いします!
また、今回運営に使ったツイッターアカウントは捨て垢なので、もし次に運営をなさる方がいるようならお渡しいたします。

思ったよりもたくさんの作品、そして投票が集まって個人的には満足しております。
皆様、ありがとうございました!
これを持ちまして、名無しに戻ります
368 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/06(日) 00:43:57.32 ID:SGrGb7170
超ウルトラハイパースーパー乙

優勝者おめでとうです

次回もまた参加したいなあ……
369 : ◆veZn3UgYaDcq [sage]:2014/04/06(日) 10:29:46.30 ID:8ARFgpNo0
◆BNSK.80yf2さん、運営乙でした。
◆50ONQ3LN72さん、優勝おめでとうございます。素晴らしい作品でした。

私の作品も多くの方に投票・関心票および感想を頂けて嬉しいです。
次回の品評会もできれば参加したいとは思いますが、いまのところは何とも言えないかな……
370 : ◆50ONQ3LN72 [sage]:2014/04/06(日) 10:58:03.30 ID:NAhIy75AO
みなさん乙です
次品評会やるんかな?
俺も運営は出来ないから、作品投稿以外は人任せになっちゃうけど
371 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/06(日) 16:58:58.78 ID:OPjuZ0Mko
お題下さい
372 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/06(日) 17:27:36.33 ID:3/J9v2B70
病弱で余命三ヶ月のツンデレ娘と特攻隊に志願した純情大学生の出兵直前の別れ
後日談としてふたりの生まれ変わりが現世で出会う

いくらでも脚色してください
373 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/06(日) 17:36:21.38 ID:OPjuZ0Mko
>>372
拝承
374 :天使ちゃんがまだ唯の天使だったころ(お題:偶像) 0/9 ◆xUD0NieIUY [sagasage]:2014/04/06(日) 19:58:29.60 ID:SGrGb717o
>>356 のお題で通常作投稿します。
375 :天使ちゃんがまだ唯の天使だったころ(お題:偶像) 1/9 ◆xUD0NieIUY [sagasage]:2014/04/06(日) 19:59:15.37 ID:SGrGb717o
「あーゆーふぃりんふぁいん♪」
 そのとき私は、何故そんなふうに歌ってしまったのか。春先に胸が踊るみたいに、つい口を出てしまったのだ。
 慌てて後ろを振り返り、誰もいないことを確認してホッとする。だけど正面で物が落ちる音を聞いたとき、私の人生は終わったと
思った。
「て、天使……」
 アスファルトの上に通勤バッグが落ちていた。視線を上げてみると、片手を胸に当てた男の人。
 なぜ手を胸に?
 しかしそんなことよりも歌っているのを聞かれたことが恥ずかしくて、私はかぁーっと顔が赤くなり、飛ぶように家に帰ったので
あった。ついてこられなかったのは幸いだけど、あまりもの恥ずかしさに悶え、ベッドの中で二時間ぐらい塞ぎ込んだ。夜ご飯の時間
になってベッドから起き上がったときは、どうかあの人が私とは全く無関係の人であってほしいと思った。ただ単に今日たまたまあの
道を通っただけで、近所の人でもなんでもない。もう二度と会うことがなければいい。どうか、神様。
「テン、早く食べてしまいなさいよ。片付けられないじゃない。本当に遅いんだから」
 そんなふうに略すならどうしてこんな名前を付けたのよ、なんて、お母さんが悪いんじゃないことは知っている。だけどお父さんが
初めての子供に興奮して変な名前を付けたとき、止めなかったのはお母さんの人生最大の失態だった。
 唯野天使(ただのてんし)。それが私の名前だった。

 中学生のときまで、私はその名前のせいで嫌な思いをすることが多かったと思う。あんた自分の名前がそんなので恥ずかしくない?
 とか、このぶりっ子! だとか、男の子よりも女の子に虐められるほうが多かった。その証拠に私は、小中時代と通して親友と呼べ
る人がいない。
 だけど高校生になると、なんだろう。決して名前で得をしたということはない。ないけれど、それまでとでは全く傾向が異なるのだ。
「天使ー」
「うっ」
 と、まあこのように不意に抱きつかれたりするのである。
「や、やめてよ瞳ちゃん」
 背中越しに抱きつかれて思いっきり頬ずりされたので、くすぐったくて声を上げる。
「やだー。だって今日寒いもん」
 自慢ではないが、私に抱きついてくるのはこの子だけではない。しかし抱きつかれるようになるきっかけを作ったのは、間違いなく
この子だった。
 あれは一年生の冬における体育の授業でのことだった。粉雪が舞うなか半袖半パンでマラソンしろと虐待のような命令を受けた私
たちは、集団で寄り添いながらグラウンドを走っていたのだ。走っているうちに体なんて温まるというけれど、ほとんど歩いている
376 :天使ちゃんがまだ唯の天使だったころ(お題:偶像) 2/9 ◆xUD0NieIUY [sagasage]:2014/04/06(日) 19:59:46.80 ID:SGrGb717o
ような速さではそう上手くいくわけもなく。そのとき彼女が急に思いついたかのように集団の一員(というより巻き込まれていた)で
ある私に抱きつき、他の人たちよりも体温が高いことを発見したのだ。
「うー、天力さまさまやで……」
 彼女がときどき口にする天力とは、よく知らないのだが、テンテンくんという漫画からきているらしい。その漫画に出てくる天使は
天力という力を常に纏っているので、冬でも寒くないのだとか。相当古い漫画らしく、なぜ彼女がそれを知っているのか不明だけど。
「あー、瞳ちゃんズルい!」
 そして彼女が抱きついていると次々と違う子も抱きついてきて、まるで東京湾に沈められる前のような状態になるのだ。
「うーっ……」
「天使ちゃん、押し潰されてとんでもないことになってる……」
「んー、本当に天使はかわいいねえ」
 もはやクラスのマスコットというよりペット的存在。それが現在の高校における私の立ち位置なのである。

「ねぇ、天使天使ー」
 彼女が本当に天使を呼ぶみたいに、親しげに私の名前を呼ぶ。
「なあに、瞳ちゃん」
「今日の放課後カラオケにいかない?」
「えっ」
 か、カラオケですと。
「それはちょっと……」
「えー、いいじゃん。私たちもう三年生だよ? 遊べる時間なんて今しかないんだよ?」
 眉をへの字に曲げて彼女が言う。
 今日は四月第一週の金曜日。「三年生は受験生だから頑張ってくださいね」なんて始業式で言われた言葉を真に受けて、全員がなん
となく「そっか、私たちはもう受験生なんだ」って気分になっている。進路なんかまだ全然決めてない私だけど、そろそろ決めないと
まずいかなって気になったりして。
 瞳ちゃんも、やっぱり考えているのかな……
「こら、トリップしない」
 瞳ちゃんに頭をチョップされる。痛い。
「天使ってときどき自分の世界に閉じこもることあるよねー。ま、そこが可愛いんだけど」
 彼女に言わせておけば、私のやることなすことがなんでも可愛くなってしまう。いい加減恥ずかしくなってきたので、話を元に戻す
ことにした。
377 :天使ちゃんがまだ唯の天使だったころ(お題:偶像) 3/9 ◆xUD0NieIUY [sagasage]:2014/04/06(日) 20:00:35.75 ID:SGrGb717o
「だけど私、今日お金持ってきてないよ?」
「大丈夫大丈夫」
 瞳ちゃんが私の肩をポンポンと叩く。
「そんなの私が奢ってあげるから」
「え、悪いよ」
 反射的に私が言う。
「悪くない、全く悪くないよ。私は自分の懐を痛めても天使の歌声が聴きたい。そう私の全細胞が叫んでいるのだ――」
 瞳ちゃんが目を見開き高らかに宣言する。これは漫画か何かからの引用なのだろうか? 詳しくない私には分からないのだが……
「でも……」
「みんなも天使と一緒にカラオケ行きたいよね?」
「行きたい!」
 瞳ちゃんが振り返ると、現れたのは瞳ちゃんシスターズだった。瞳ちゃんを中心にぐるーっと囲むように集まるから、(実は瞳ちゃ
んたちと仲良くなる前から)心のなかでそう呼んでいる。
 彼女たちはまるで台本で示し合わせたかのようにどこかで繋がっていて、多数決の場で大量の賛成票を投じるシステムを持っている
のだ。
「ほらほら、みんな行きたいと言ってるよ」
 こうやってスクラムを組まれてしまえば抗う術はなく、こくりと頷くしかないのだった。

「天使ちゃんラルク好きなんだよね? どんな声で歌うのかすっごく興味あるー」
 シスターズのひとりがそんなことを言ったので、無難な歌を歌おうという目論見は脆くも崩れ去ったのだった。
 まあ無難な歌と言ってもどんな歌があるのかよく分からないけれど。そもそも私は小学生時代に家族と行って以来、カラオケという
ものは随分久しぶりだったのだ。からかわれそうなので口には出さなかったけれど。
「天使ちゃん、私がジュース入れてきてあげる。メロンソーダでいいよね?」
 それにまるで接待されているかのように周りで着々と準備が進められていって、なぜ彼女たちは私の飲み物の好みを知っているのだ
ろう? ラルクのことはなんとなく話した記憶があるけれど、飲み物について話したことなんてあったかな……
 とにかく私は「自分ちのペットなんだから好きなものなんて知ってて当然」なんて感じで、どんどん逃げられない方向に追いやられ
ていったのである。
「さあー、天使。一発目良いの頼むよ?」
「え、最初に私が歌うの?」
「当然じゃん。だって私たちは天使の歌声を聴きにきたんだよ?」
378 :天使ちゃんがまだ唯の天使だったころ(お題:偶像) 4/9 ◆xUD0NieIUY [sagasage]:2014/04/06(日) 20:01:23.76 ID:SGrGb717o
 ねえ、と瞳ちゃんが周りに振ると、頷く一同。
 まじですか。
 瞳ちゃんに「これで検索するんだよ」と渡されたリモコンで何か歌える曲を検索して、って何を歌えばいいのか分からないよ! ラ
ルクを避けたくてもスマップとかしか知らないし、第一サビ以外はあんまり覚えてない。
「ああ、ほら、天使が早く選ばないからアーティストのインタビューが始まっちゃってるよ。なに、あの斜めに刈り上げた変な髪型!」
 できればそのアーティストとやらがどんどん奇抜な格好をして瞳ちゃんたちの興味を惹きつけてくれればいいのだけど、当然そんな
に長い間効果が期待できるはずもなく。ついに私は曲を入れたのであった。
 画面が切り替わり、曲のタイトルとアーティスト名、番号が表示される。
「きた! ラルク!」
「レディステディゴー……?」
「私この歌知ってる!」
「ええ、天使こんな曲歌えるの?」
 最後の瞳ちゃんの言葉が気になったが時すでに遅し。私はマイクを取り上げ、ついに覚悟を決めたのだった。

「Are you ready?」

――ミュージックスタート――
http://m.youtube.com/watch?v=cjNtqHexA3Y
379 :天使ちゃんがまだ唯の天使だったころ(お題:偶像) 5/9 ◆xUD0NieIUY [sagasage]:2014/04/06(日) 20:01:54.80 ID:SGrGb717o
  ――READY STEADY CAN’T HOLD ME BACK――

「え?」

  ――READY STEADY GIVE ME GOOD LUCK――

「ええ?」

  ――READY STEADY NEVER LOOK BACK――

「うそっ」

  ――LET’S GET STARTED READY STEADY GO!!――

「まじでぇぇえええっ!?」

 生音バンド演奏と書かれていただけあってさすがに音が良い。かき鳴らされるTETUYAのベース。何故かPVはラルク本人じゃ
なくアニメなのだが、不思議と合っているので気にならない。
 シスターズのひとり、伊達メガネの肥後ちゃんが目を丸くしている姿が見えたが、もはやそんなことを気にしている場合ではない。
 場面の切り替わりに合わせて、私はマイクに音声を入力する。
380 :天使ちゃんがまだ唯の天使だったころ(お題:偶像) 6/9 ◆xUD0NieIUY [sagasage]:2014/04/06(日) 20:02:34.33 ID:SGrGb717o
  ――吹き飛んでゆく風景 転がるように前へ――

  ――苦し紛れでも 標的はもう見逃さない――

 同じくポカンとしている南ちゃんは一見不良っぽく見えるけど、歳が離れた弟の世話をする良い子である。

  ――あてにならない地図 焼いてしまえば良いさ――

  ――埋もれた真実 この掌でつかみ取ろう――

 少しリズムに乗ってきた髪が長い七瀬ちゃんはお嬢様みたいだけど、実は抱きついてくる回数が一番多いことを私は知っている。

  ――夢中で――「早く――」

 瞳ちゃんがベストのタイミングで合いの手を入れてくる。

  ――駆け抜けて来た――

  ――うるさいくらいに張り裂けそうな鼓動の高鳴り――

  ――響いて 「呼んで――」 いる君の声――

  ――ここで立ち止まるような時間は無いさ
   READY STEADY GO!!――

 この頃から腕を上げたkenのギターに、鳴り響くベースとドラムの音が気持ちいい。そして曲は二番に突入したのだった。

 ………
 ……
 …
381 :天使ちゃんがまだ唯の天使だったころ(お題:偶像) 7/9 ◆xUD0NieIUY [sagasage]:2014/04/06(日) 20:03:22.98 ID:SGrGb717o
 わあー、と誰彼もなく声を上げた。七瀬ちゃんが思いっきり私に抱きついてくる。
「すごい! すごいよ天使ちゃん!」
「実はちょっとサビの最後が上手くいかなかったんだけど……」
 あの「READY STEADY GO」の部分は叫びつつもしっかり声を落とさないといけない場面なのだ。しかし周りはそんなの関係ない、
すごいぜ天使、というように喝采の声しか聞かれなかった。
「まさかあんな格好いい声で歌えるなんて……ただでさえ天使、ただでさえ天使ちゃんの魅力が倍増だよ!」
「天使ちゃんみたいな外見でさ、あんなハスキーな声で歌う人って見たことないよね」
「むむう……歌手・天使か……」
「それ面白いんじゃない? 新しいアイドルですって紹介されたらファンになりそう!」
 勘弁してくれ。
 しかし周りの興奮は冷めやらず、結局私はひとりで多くの曲を歌わされたのであった。そのたびに、ラルクの様々なジャンルの曲で
応えていた私も私なのだけど。

「あー、笑った笑った。あんなに楽しかったの久しぶりだよ」
 午後六時にカラオケを出て店の前で解散して、ふたりで地下鉄の駅に向かって歩いているとき、瞳ちゃんがそのようなことを言った。
 私は後悔していた。
 ついつい乗せられて何曲も歌ってしまったけど、明日から弄られるネタがこれで増えてしまったではないか。
「けど、一曲目のあれは本当にびっくりしたなあ」
「あ、あれは……」
「あはは、何も言わなくていいって」
 そういって瞳ちゃんが私の肩をポンポンと叩く。何故かこのようにされると、私は全く反論できなくなるのだ。
「一曲目のときは本当驚いたけどさ。二曲目、三曲目はそんなに激しくなかったけどしっかり歌えてたでしょ。そこで『あ、こいつ、
歌うの好きだな』って思っちゃったから」
 思わずかあっとなる。実は暇なときは思わず歌を口ずさんだりしていたから、歌うの好きなんだなあって自分でも何となく思ってい
たけれど。客観的に言われると、やっぱり恥ずかしい。
「けど、瞳ちゃんもすごく上手だったよ?」
 話を逸らすように言ってしまったけど、私の本音だった。私ばかり歌っていたせいで一曲しか歌わなかったのだけど、本当はもう少
し聴いてみたいと思っていたのだ。
382 :天使ちゃんがまだ唯の天使だったころ(お題:偶像) 8/9 ◆xUD0NieIUY [sagasage]:2014/04/06(日) 20:04:00.02 ID:SGrGb717o
「最初の曲、タイトル忘れちゃったけどファルセットがすごく綺麗だった。他のね、七瀬ちゃんとかも上手なんだけど、瞳ちゃんはな
んか響き方が違ったもん。まるでプロの人みたいっていうか……」
「そう聞こえるだけだよ」
 後ろで手を組んで胸を逸らしつつ、瞳ちゃんが言った。
「テレビとかでアーティストが歌っているの聴くとさ、『あれ、そんなにも上手くないなー』って思ったりすることない? もしかし
たら自分の方が上手いんじゃない? って思ったりして。だけど実際に生で聴いてみると、すっごく上手いんだよ。どうやってそんな
声出してるの? みたいに。そして歌が上手いだけの人なんて、たくさんいるからさあ」
 すごく具体的で、もしかして瞳ちゃんにはそういう経験があるんじゃないかと思った。怖くてとても聞けないけど……
 瞳ちゃんはとても素敵な子だ。私が中学生の頃と状況が異なっているのは、多分瞳ちゃんのおかげだと思う。一年生の最初の頃、
「高校生にもなってまだそんなことしているの?」と彼女が言った言葉が、まだ耳に残っているから。
「ねえ天使」と彼女が言った。
「なあに?」
「進路ってさ、もう決めてる?」
「ううん……瞳ちゃんは?」
「私もまだ、だなあ」
 そっか、まだなんだ。
 それから私たちはなんとなく一言も口にせず、地下鉄の駅に着いた。反対方面だから、改札口を出てすぐのところでお別れだ。
「ねえ天使」
 別れの挨拶をする前に、瞳ちゃんが話しかけてきた。
「なあに?」
「真剣にさ、歌手にならない?」
「えっ」
 私は面喰らった。
「本格派かアイドルかわかんないけどさ。天使は売り出し方さえ間違えなければ意外といけると思うんだ。私がマネージャーになって
さ、ふたりで……ってどう?」
 どう返せばいいか分からずドキマギしていると、瞳ちゃんがニヤッと微笑んだ。
「じゃーね!」
383 :天使ちゃんがまだ唯の天使だったころ(お題:偶像) 9/9 ◆xUD0NieIUY [sagasage]:2014/04/06(日) 20:04:57.29 ID:SGrGb717o
 私は電車に乗っている間、彼女が言ったことをずっと考えていた。歌手になるとかそんなのじゃなく、彼女らしくないということだ。
言った内容は分からないけれど、タイミングとか。
 私は今日、瞳ちゃんが歌が上手いということを初めて知って、実はあんまり瞳ちゃんのことをよく知らないし。
 時期も時期だし、ああ見えていろんなことを考えているのかな……
 ひとつ大きな溜息をつく。外の景色を見て気分転換しようにも、地下鉄だから真っ暗だし。
「Are you feeling fine?」
 ハッとして私は掌を口に押し当てた。何を歌っているのだ。ここは地下鉄の中なのに。
 周りに聞こえちゃったかな、そんな大きな声ではなかったと思うんだけど……
 そのとき、どさっと物が落ちる音がした。驚いて振り返ってみると、床に転がっていたのは通勤バッグだった。そしてその傍には、
吊革を持ったスーツ姿の男の人が……
「て、天使……」
 げっ。
 私は逃げようとしたけれど、運悪く自動ドア付近の三角コーナーに陣取っていたのだ。しかも男の人が吊革を離し、何故か胸に手を
当ててこちらに近づいてくる……!
 あろうことか、男の人は震える私の手を握った。
「ひっ」
「私は……」
 そして語られた男の人の正体に、私は驚愕したのだ。
                (完)
384 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sagasage]:2014/04/06(日) 20:07:45.09 ID:SGrGb717o
終わりです。偶像、と聞くと BUCK-TICK の idle という曲しか思いつかなくて……
しかし使ったのは何故かラルク!!

品評会はたぶん駄目だと思っていたけれど、意外と票が伸びてくれたので、終わってみると悔しいですね……
こういう人数が多いときに優勝しないと、やっぱり。
次回があれば、今度こそ・・・・・・という感じです。
385 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sagasage]:2014/04/06(日) 20:08:57.94 ID:SGrGb717o
あ、しかも綴り間違ってる。idle じゃなくて idol ですね。すみません。
386 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/06(日) 23:55:50.02 ID:c4IZgT1To
>>375-383
読ませてもらいました。
私はこの作品好きになりました。

思春期の不安と天使ちゃんの歌が友人の心を捉えて行く様が上手に表現されていました。
書き出しから週末に至る構成もわかりやすかったと思います。
特に派手な事件があったわけでも無いのに、鮮烈な印象を受けました。

ただ、やや進路云々が少し唐突に思えたのと、ラストで男性(スカウトマン?)が鼻声だけで
声をかけたのがやや不自然に感じました。
このあたりは細かい演出の問題だとは思うのですが。
387 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/07(月) 22:19:55.99 ID:xJfR5ewTO
>>386

感想ありがとうございます。

youtubeを貼り付けたあたり調子に乗ってしまったかと思いましたが、好きと言っていただけて何よりです。

男の人はスカウトマンであっています。
これも描写不十分ではないか少し不安だったのですが、読み取っていただけて安心しました。

進路の話は突然でしたね……
もう少し伏線のようなものを張れると良かったですが。
男の人が鼻歌だけで惹かれたのは、たぶん最初に会ったときの天使ちゃんの笑顔がすごく可愛かったから……
もし続きを書くとしたら、そのあたりの補足を書くことになりそうです。
388 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/08(火) 09:02:37.72 ID:fpDoMdHDO
品評会に出そうと思ったやつが20レスを越して、急遽電撃の短編部門に送っちゃった。次回は参加できるといいな
389 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [sage]:2014/04/08(火) 09:57:35.12 ID:BUwTnxEP0
まず、作品を評価するとかしないとか以前に、一読者の立場に没入できませんでした。
作者としてでもなく、スレの参加者、板の利用者、ネット界隈の住人として、J@$R@Cの介入を許しそうな表現に危惧と戦慄を覚えざるを得ません。

著作権を侵害している二次SSが氾濫している板で何をと思われるかも知れませんが、三ッ木ー等のAAやネタに関しては目線やその他名前などを不明瞭にさせる表現がテンプレートと化しているように、あれでも各々がそれがよろしくない行為だと自覚した上でより問題となり難い題材や描写へと表現の幅を絞った上でのことです。

ぶっちゃけ、ご本人が気にされていたyoutubeの貼り付けなどは「いいぞ、もっとやれww」というノリですが、タイトル及び歌詞を、曖昧にせずにしっかりと記載してスレに投下するという行為にはあまりいい感情を覚えられません。
長々と、作品に対してではない苦言を失礼しました。

   ・

さて、作品自体の感想ですが……なんか、勿体無いなというところでした。
過去のいじめの実態も、現在の友人達の姿形も、主人公のヘアスタイルも、不用だと思うからこそあっさりと流し、もしくは省略していたのだろうと。
その分だけ、歌に関するところに注力しようとしたのだろうと思えましたが、その記載された文章における部分を何かとても上手く歌ったという表現ばかりで、主人公の声質もイメージできませんでした。

高音に伸びる声で一オクターブ上で涼やかに歌いきったのか、元の音に近い声がでるハスキーボイスなのかすら。
youtubeを貼り付けたのは(個人的には)OKだとしても、それをどのような子がどのように歌ったのかが分からず、読者が想像で補足してその歌声を思い浮かべるにせよ、その取っ掛かりとなる部分すらないままに、折角の見所が終わってしまった感あり、とても残念です。

せっかくyoutubeへのリンクを貼り付けたのだから、歌詞やタイトルについて文字数を用いるよりも、
いまにも演奏に消えそうな高く静かな声が、ドラムのビートが刻まれる瞬間に遠くで鈴の音がリン……と重なるかのように小さくともはっきりと響き、トライアングルの余韻のような芯の通ったまま儚く消えていくビブラートがフレーズの末尾を飾っていく。
という風に(これは自分が声の高い子が静かに淑やかに低音の歌を歌うのが大好物なだけでありますが)、作者がどういう音が好きなのかを滔々と語る方に文字数を用いてもらいたかたったかなと思っています。

作品の展開的にはシンデレラストーリー的でそれもまた憧れの対象という面での偶像の暗喩かなと、アイドル(歌手)とヒロインというイメージ像(シンデレラ)という風情で、綺麗にお題を消化されていると思えました。
390 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [sage]:2014/04/08(火) 09:58:28.35 ID:BUwTnxEP0
ごめんなさい。>>389>>374宛です。
391 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/08(火) 12:43:01.57 ID:nCKBJFOPO
>>389

コメントありがとうございます。

やっぱり歌詞貼り付けは不味かったですね……
本来ならば商業誌みたいに許可を取らないといけないのですが、ここなら大丈夫かな? えいや、っとやってしまいました。
やはりこういうことをすると気分を害される人が出てきますし、自分も何か心のモヤモヤが残るしで、良くないですね……
今後気をつけたいと思います。

なお、このようなことを書くと荒れるかもしれないですが、歌詞はともかくタイトルも不味いのでしょうか?
例えば村上春樹の小説には、実在する本や歌のタイトルとか出てきますが、やはりああいうのはちゃんと許可を取ったうえでやっているのでしょうか。
厳密に言えば商標権に引っかかりそうですが、なんとなくそこはオッケーだと考えていました。

主人公の声質は、今回はあえて書きませんでした。
その理由はご記載いただいたとおり読者に想像していただきたかったのですが、どちらかといえば youtube と合わせて読んでほしいという気持ちがありました。
少し前にある人から「いま小説といえば単に文を読むだけだけど、昔(映画などがなかった時代)はもっと工夫されていた」という話を聞いたのです。
その人曰く、例えば巻物をひっくり返したら巨大な龍が現れるなど、すごくエンターテイメント性に富んでいたらしいです。
それを聞いたときは「いや、文章で想像するから小説は面白いんじゃないか?」と思いましたが、そのときの言葉が何故かずっと心に残っていたので、今回のような形の小説になりました。
私の中では、天使ちゃんの声=hydeの声です。
想像すると、少し怖いですが……

気が向けば、文章で表現するバージョンも書いてみようと思います。
392 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/08(火) 13:23:28.57 ID:iqr85cVW0
お題ください
393 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/08(火) 13:41:13.69 ID:FIN8zmkho
>>392
名人戦
394 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [sage]:2014/04/08(火) 14:54:08.11 ID:MrVvuZhd0
>>391
いや、ぶっちゃけ昨今のJ@$R@Cの荒ぶり具合が恐ろしいだけで、
……それ以前の刊行物の内容や、J@$R@Cみたいな利権団体のない書籍や絵画などは比較的穏当だと思いますよ。

J@$R@Cの所業というのは、美術で例えるなら10年前に誰かが書いたのヒマワリの絵画の写真を切り抜いて、その花の中に顔を書いてネタとしてブログにUPするだけで金を請求されるくらいの所業ですから。
もう、ただ事ではない荒ぶり様なので、創作(二次創作含む)界隈では特に昨今の音楽関係にはどれだけ警戒してもし過ぎる事はないと思います。

尤も、ジャンル全体的には比較的穏当でも、中には油断していたらハハッ!(甲高い声)っと粛清されるネタが含まれている場合もありますので注意が必要かと思いますがww



絵巻物ならぬツベスレとでも言うものでしょうか。

hydeの声は予想外でしたがww ……そういうスタイルは結構好きですね。
自分はセンスがないので、なかなか作品と丁度合う音楽を選べそうにないですが。
395 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [age]:2014/04/08(火) 16:08:11.57 ID:/Mh8EavE0
お題をいただけませんかー
396 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/08(火) 16:50:02.62 ID:jzBradVoo
>>395
発見
397 : ◆.slzP.Ozh6 [sage]:2014/04/08(火) 17:03:00.64 ID:/Mh8EavE0
>>396
把握しましたありがとう
398 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/08(火) 17:13:22.53 ID:okaIo1GR0
>>393
今更だけど把握しました
399 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/08(火) 19:37:57.52 ID:/CkBGFso0
お題くりゃれ
400 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [sage]:2014/04/08(火) 20:08:06.77 ID:w9wYCP+V0
>>399
人工衛星
401 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/08(火) 20:41:38.65 ID:/CkBGFso0
>>400
把握した
ありゃりゃーす
402 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/08(火) 21:48:31.28 ID:BIRemSUXo
品評会やるかどうかは分からんけど、お題くらいは決めておいた方がいいんじゃないの?
10日くらいからだよね?>執筆期間
403 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/08(火) 23:02:59.16 ID:vlFvl86l0
>>394

コメントありがとうございます。
なるほど……団体によっても異なるのですね。
勉強になります。

ツベスレ……(´・_・`)


品評会は、昔だと前回優勝者がお題出していましたが、今はそういうルールでもないんですかね?

もしお題出していただけるならロマンチックなのがいいです、とか言ったりして。
404 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/08(火) 23:14:38.94 ID:BIRemSUXo
>>403
いや、優勝者が出すんだろうけど、やるかやらないか決まってないから出せないんじゃないのと思って
>>370に誰も反応してないからさ
もしいないようならまた安価で決めればいいんじゃね?
まぁ、そもそも誰が運営やんの?って話だけど
てきすとぽいだっけ? もうあっちには行かないのかなとかさ
405 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/09(水) 08:07:31.40 ID:8HZoQbSO0
確かにお題は早ければ早いほどありがたいですね。
構想・執筆期間が短いと個人的にはキツいので

毎月開催にするのか、隔月とかもっと長いスパンなのかとかは、
お題でた後の皆さんの参加希望状況を見ながら決めても良いかと
406 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/09(水) 09:15:09.53 ID:g2ZdE6+9O
私まだてきすとぽいのアカウント持っているので、前回と同じ形式で良ければ以下のような感じで立てようと思いますが、如何でしょうか?

執筆期間:04/10 (水) 00:00 〜 04/26 (土) 23:59
投稿期間:04/27 (日) 00:00 〜 04/30 (水) 23:59
投票期間:05/01 (日) 00:00 〜 05/05 (火) 23:59
集計発表5/6

参加者がいないと始められないので、今日中に私を含め三人参加表明があれば開催することにしたいと思います。

お題ですが、もし優勝者が今日中に来られなければ、安価にしようかなと思ったり……
407 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/09(水) 17:59:08.13 ID:PnPFcdTDO
やろーやろー
408 : ◆Gr.Ti1RX5s [sage]:2014/04/09(水) 18:18:15.08 ID:+7CHj1hkO
少し厳しいかもしれないけど次も参加します
409 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/09(水) 18:48:12.84 ID:c9gmzd4eo
お題くだされ
410 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/09(水) 19:30:34.37 ID:mwtAJ+Z3o
>>409
斜め上
411 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/09(水) 20:05:59.84 ID:/LOO22MS0
女子アイドル『兄は私のマネージャー』
412 : ◆50ONQ3LN72 [sage]:2014/04/09(水) 23:09:49.42 ID:O4SFN8MAO
お、やるのね?
じゃ、お題は>>420
420がお題じゃなかったり、6文字以上の書きづらそうなお題だったら>>425
皆面白そうなやつよろしくー
413 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/09(水) 23:15:51.19 ID:rR9rYO+80
絶望
414 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/09(水) 23:20:06.75 ID:8yUZMDgIo
の中に光を見出すのが人間
415 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [sage]:2014/04/10(木) 01:10:52.76 ID:+unEoMUk0
そんなに安価遠くしなくても……。

せっかくだしお題を貰おうかな
416 :406 [sage]:2014/04/10(木) 01:12:25.65 ID:D4t/eFS+0
んー、420 はちょっと通そうですねぇ……

あんまり待っていると執筆期間が減ってしまいますので、今回のお題は

「絶望」
または
「420 のお題(4/10 23:00 までに 420 に達すれば)」
のどちらを選んでもOK

にしたいと思います。
#「の中に光を見出す人間」は複数人でやるには範囲を絞りすぎな気がしたので、今回は見送らせていただきました。

てきすとぽいには 4/10 23:00 以降に立てます。
417 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/10(木) 01:14:56.13 ID:D4t/eFS+0
>>415

夜更かし

あれ、意外とすぐに 420 行くかも……
418 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/10(木) 01:18:50.95 ID:lMzJQSiro
いや、420くらい行くだろww
419 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/10(木) 01:23:34.44 ID:4gbAzpof0
女子アイドル『兄は私のマネージャー』
420 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/10(木) 01:59:59.42 ID:HxbloHyI0
421 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/10(木) 02:01:34.43 ID:lMzJQSiro
めっちゃ範囲広いな
422 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/10(木) 07:53:51.92 ID:D4t/eFS+0
>>419
>>420

なんだこのお題……!
と心のなかで叫んでから寝たけど、起きてからよく考えたら、意外と良いかもしれません。

「女子アイドル『兄は私のマネージャー』」に見せかけた「絶望」……!

もしくは「絶望」に見せかけた「女子アイドル『兄は私のマネージャー』」……!

……まあ難しいかもしれませんが、複数お題があることでインスピレーションが得やすくなるかもしれませんし、別に片方だけの採用でも構わないとしましょう。

ということで、てきすとぽいに立ててみました。
http://text-poi.net/vote/60/summary.html

今回のお題:「絶望」または「女子アイドル『兄は私のマネージャー』」
※片方のみを採用、両方採用のどちらでもOK
縛り要素、枚数制限等は無し

執筆期間:04/10 (水) 00:00 〜 04/26 (土) 23:59
投稿期間:04/27 (日) 00:00 〜 04/30 (水) 23:59
投票期間:05/01 (木) 00:00 〜 05/05 (火) 23:59
集計発表5/6
423 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/10(木) 08:11:34.26 ID:lMzJQSiro
いや、「上」だろ
424 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/10(木) 08:13:54.45 ID:m7UOsmta0
踏み台のつもりで絶望書いたらお題にされた
というか僕参加出来ないんですがお題出してよかったんですかね…
425 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/10(木) 08:14:04.20 ID:s++9Ppfn0
これはお題「上」と見なしていいのかな?
426 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/10(木) 08:16:22.55 ID:lMzJQSiro
そもそも、女子アイドルだのなんだの、出題者の条件クリアしてねーじゃん
6文字以上だし書きづらいし
427 :422 [sage]:2014/04/10(木) 08:30:32.16 ID:O1GmhLDyO
>>424

お題はとくに参加者じゃなくてもOKです。


え、「女子アイドル〜」はダメなの?

しかしお題「上」て……本当に上?
ちょっとどちらの意味なのかわかりずらいので「上」は無しで。

>>419 は評判が悪いので 430 に再安価しますが、あんまりこの流れを繰り返しても良くないので 430 が最終にします。
#もし 430 がわかりずらいようであれば、私の独断で「絶望」+「女子アイドル〜」にします。

430 には、
お題「〜」
という形でお題を書いてください。
#お題を「上」にしたいのであれば、お題「上」と書いてください。
428 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/10(木) 11:57:36.93 ID:jU4KE8SAO
なににしようかな
429 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/10(木) 12:03:57.73 ID:jU4KE8SAO
桜も散ったし
430 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/10(木) 12:05:02.50 ID:jU4KE8SAO
品評会お題【一目惚れ】
431 :422 [sage]:2014/04/10(木) 12:30:05.17 ID:O1GmhLDyO
ということで、もう一つのお題は「一目惚れ」に決まりました。

今回のお題:「絶望」または「一目惚れ」
※片方のみを採用、両方採用のどちらでもOK
縛り要素、枚数制限等は無し

執筆期間:04/10 (水) 00:00 〜 04/26 (土) 23:59
投稿期間:04/27 (日) 00:00 〜 04/30 (水) 23:59
投票期間:05/01 (木) 00:00 〜 05/05 (火) 23:59
集計発表5/6

http://text-poi.net/vote/60/summary.html

これ以降は如何なることがあってもお題を変更しません。

では、作品を書き進めてください……!
432 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/10(木) 12:37:32.14 ID:lMzJQSiro
よく分かんないんだけど、何で絶望が必ず入ってるの?
この場合、ひとめぼれだけじゃないの?
433 :422 [sage]:2014/04/10(木) 13:14:48.72 ID:O1GmhLDyO
>>432

なぜ絶望が入ってるかというと、>>416 の時点で「絶望」は入れますと宣言したからなんですね……

まさか >>420 まであんなにすぐ進むとは思っていなかったので、私の認識が甘かったということで……

今回は、先ほど連絡したとおり「絶望」もしくは「一目惚れ」で進めさせてください。
434 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/10(木) 13:53:15.59 ID:+gzPlV/+0
優勝者の意見無視しまくっててワロタwwwwww
435 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [sage]:2014/04/10(木) 14:26:50.65 ID:+unEoMUk0
あんたが宣言すればそれでいいのか……(白目)

まあ運営者がいてくれるのはありがたいけどさ。
436 : ◆50ONQ3LN72 [sage]:2014/04/10(木) 14:37:31.23 ID:yDfyTUiAO
ん、お題って上に決まったんじゃないのか
いろいろ書けそうで面白そうって思ったけども

出題者云々は別に気にしなくて良いよ
流石にアイドルだのマネージャーだのはごめんだけどさ
自分で決めるのめんどいから安価にしたんだし、運営やってくれる人がやりやすいようにやってくれればいい
437 :422 [sage]:2014/04/10(木) 15:24:18.30 ID:O1GmhLDyO
あ、そうか……

ごめんなさい。
>>436 の方が優勝者だということに今気がつきました。
普通に参加表明+お題の出し方を提案してくれたのだとばかり……

そりゃ批判が殺到しますね……

とりあえず早くお題を確定させないといけないというところばかりに頭がいっていました。

いろいろ問題起こしてしまって申し訳ありませんが、>>436 にもこう言っていただけたので、今回お題は >>431 のほうで進めさせてください。
438 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/10(木) 15:40:32.55 ID:jU4KE8SAO
自分も優勝者が誰か分からなかった
品評会で安価なんて初めてだから混乱するのも仕方なし
今まで優勝者が参加不参加関係なくパッと出してたからなあ
439 : ◆50ONQ3LN72 [sage]:2014/04/10(木) 15:50:05.13 ID:yDfyTUiAO
>>438
そもそも品評会自体やるか分かんなかったからお題とか決めていいのかなって思ったんだよ
スレで聞いたけど反応なかったしね
それに前回はお試しって話だったし、次は運営も参加できないって言ってたし
あと、安価お題は前にもあったよ
結構前だけどね
440 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [sage]:2014/04/10(木) 17:55:27.98 ID:G2zdiGOz0
よし、俺もお題安価貰おう
>>443-444

作品だったら困るから、単語、文章と判定できるそれぞれ上二行より、合計十単語まで。安価、ID、空白除外ということで
441 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/10(木) 18:38:25.75 ID:BGusTwvYo
意味がわからない
442 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/10(木) 18:39:38.04 ID:Mq/YB7jm0
>>440
赤、白、紫なんてどうだろう
443 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/11(金) 00:22:12.95 ID:5chp8sD0o
444 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [sage]:2014/04/11(金) 18:18:54.27 ID:Q60ufOBY0
お題ください。
445 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/11(金) 18:53:08.72 ID:B9OYECXmO
破滅
446 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/11(金) 18:55:19.07 ID:awTBvriR0
病気で彼女を失ってしまった男の物語
心温まる旅立ちendで
447 :隣人の窓 0/5 [sage]:2014/04/12(土) 02:29:31.22 ID:PI2sztVP0
>>362のお題「隣」で書きました
投下しまーす
448 :隣人の窓 1/5 [sage]:2014/04/12(土) 02:30:05.01 ID:PI2sztVP0
 ガララッと窓を開けると、いつものように向こう側の窓もガラガラッと開いた。お隣さ
んとこうやって顔を合わせるようになってからもう1週間になる。今日は青色のワンピー
スだ。おはようございます、と僕は言う。
「おはようございます」お隣さんはにっこりと返した。
 今日も仕事なんです、とため息ながらに言うと、
「いつも大変ですね」
と、心から思っているように彼女は応えた。
「でも、明日はお休みなんです。土曜日だから」
「そう。それはよかった。1週間よく頑張りましたね」
ありがとうございます。ではまた。僕はそう言うと網戸だけ閉めて、窓から離れてバタバ
タと身支度を始めた。

 お隣さんに初めて出会ったときはとてもびっくりした。爽やかな晴天の朝に、ちょっと
気が向いて勢いよくガララッと寝室の窓を開けると、20数年開かなかった隣家の窓がガ
ラガラとゆったりした音を立てて開いたのである。その感情は僕の顔にもべっとりと貼り
ついていたことだろう。しかし驚かせた当の本人は今日と全く変わらないような笑顔で、
僕の気持ちなどおかまいなしに
「おはようございます」
と言ってのけたのだった。それから土日月火水木、同じ時間に窓を開けると彼女がいた。
例えポツポツ雨が降っていようとガタガタ風が吹いていようと、彼女はぴったりその時に
ガラガラ窓を開けた。最初は気味が悪かった。
「暖かくなってきましたね」
と話しかけてみたのは3日目だった。仕事の愚痴をこぼし始めたのはその次の日だった。
 僕は母親にお隣さんと顔を合わせたことを言ってみた。
「あら、あそこのお宅、ちゃんと人が住んでるんだねえ。あたしはてっきり空き家なんだ
 と思ってたよ。今度挨拶に行ってみようかしら。名前はなんて言うんだい?」
そういえば聞いてなかったと、僕は思う。彼女はなんと言う名前なんだろう。僕は家を出
るついでにお隣さん宅の門のあたりを調べる。しかし門扉には表札がなく、住人の情報を
表すものは見当たらない。1週間前までと変わらず、2階建ての一軒家とその門構えだけ
が確かに居座っていた。
449 :隣人の窓 2/5 [sage]:2014/04/12(土) 02:30:49.86 ID:PI2sztVP0
 次の日も、僕は前日と同じ時間に起き、同じ時間に勢いよく窓を開ける。すると同じタ
イミングでお隣さんが窓を開けた。今日は深緑色のチュニックに、薄い白のカーディガン
だ。
「おはようございます」僕は努めて愛想よく挨拶する。
「おはようございます」お隣さんは笑顔でそれを返してくれた。そして会話を続ける。
「今日はお仕事、お休みなんですよね」
「はい。今日は土曜日ですから」
「そうですか。お休みなのにこんな時間から起きていて、ご立派ですね」
僕は照れくさくなる。僕は1週間前から、全く同じ時間に起きているのだ。
「今日くらいは頑張らずに、ゆっくり過ごしてくださいね」
彼女の優しい言葉を有難く受け取って、ではまた、と窓を離れる。今日は特にやるべきこ
とがない。いい天気だ。僕は二度寝することを決めた。


 母親から買い出しを頼まれたのは午後3時くらいのことだった。
「牛乳と、卵と納豆と……あらやだ、お醤油も足りないじゃない」
などと、せわしく動きながら作成された買い物リストは、僕が呼ばれて5分後には10く
らいの項目数になっていた。
 スーパーは駅前にあり、家から10分くらい歩く。僕は買い物リストに書かれた牛乳な
どの食品を確かに残さず買って、帰りの途につこうとした。お隣さんと窓を介さずに出
会ったのはこの時が初めてだった。
「買い物ですか?」
「ええ。親に頼まれて」
「今日は頑張らないでって言ったのに」
 お隣さんは、窓の向こう側にいるときと同じように、にっこりと笑いながら話をする。
僕はその時よりも若干心臓が波打っている。周りの目線が気になる。
450 :隣人の窓 3/5 [sage]:2014/04/12(土) 02:31:19.94 ID:PI2sztVP0
「まあ、買い物くらい。それに、いい天気だし」
「そうですね。いい天気の、土曜日だ」
彼女はそう言って空を見上げた。やはり笑っている。胸から下を見るのは初めてだったけれど、その顔や窓を開ける指から想像したものとほとんど変わりない、華奢でかわいらしい姿だった。今日の朝見た格好に、下にはスカートを履いていた。後ろで組んでいる両手に持たれているのは、買い物籠だろうか。

「あら、珍しいじゃない」
 突然背後から話しかけてきたのは、僕の知らないおばさんだった。そう思ってお隣さん
の方を振り向くと、やはりその人の目的は彼女だったらしい。お隣さんは深々と頭を下げ
て、こんにちは、と挨拶した。
「相変わらず可愛らしいねえ。こんなところで会うのはもったいないよ」
よく分からない切り口から、そのおばさんは今日の正座占いから明日の夕飯まで様々な話
題に着手し始めた。僕は完全にその場から異質の存在になってしまったようなので、じゃ
あまた、とお隣さんに告げて、軽い会釈をされるのを確認してからその場を去った。ぼーっと歩いていたからか、帰りには15分くらいかかってしまった。


 次の日も天気がよかった。僕は昨日と同じ時間に、ガタンと音を立てて窓を開けた。そ
れに反応するかのように、隣人の窓も少し遠慮がちに開いた。しかし、先に声をかけたの
は彼女のほうだった。お隣さんはいつも通りおはようございます、今日もいい天気ですね
と、屈託のない笑顔で言った。
「今日も休みなんです」
僕は言う。隣人はあら、と大げさに目を見開いてみせる。
「こんないい天気に休みが続くなんて、幸運ですね」
「そうなんです。それで」
一呼吸置いて、早口にならないように気をつけて、僕はお出かけのお誘いをしてみる。も
し、時間があるなら、ちょっとそこまで、お花を見に行きませんか、と。
 隣人はまた目を見開く。今度は演技でもないらしい。だが、すぐにいつもの笑みに戻る。
「構いませんけど、どこまで?」
451 :隣人の窓 4/5 [sage]:2014/04/12(土) 02:31:53.50 ID:PI2sztVP0
「ちょっと、そこまで」
僕なりの真摯な返答はどうやら面白かったらしく、彼女は出会ってから初めて声をあげて
笑った。それなら、と彼女は言う。
「隣町の駅で待ち合わせませんか? あっちには大きな公園があるでしょう」
「いいですね。でも、こっちにも桜が綺麗ないい場所があるんですよ」
「あっちの方が都合がいいんです。隣町にしませんか?」
それならばと、僕は了解する。もともと近いからという理由で「ちょっとそこまで」にし
ただけである。僕は歩ければいいのだ。


 散歩はとても楽しかった。僕が時間通りに隣町の駅に到着したときにはお隣さんは改札
の前で待っていて、こちらを見ると軽く手を振ってくれた。今日は薄く化粧をしているみ
たいだ。この人はどんなにちょっとしたことでもすぐに気づいて話題にした。たとえばあ
の雲はうちで飼ってる犬の形に似てるだとか、公園に咲き始めた花の中にひとつ仲間はず
れがあるとか、この通りの電灯が一度も切れたことがないのはきっと自治体の皆さんが
しっかり仕事してるからだということだったり、僕が目を向けない色々なことを話してく
れた。
「それじゃあこの辺で」
 隣町の駅前でお隣さんが言った。えっと思い、僕は聞く。
「何か用事でもあるんですか?」
「私の家、ここらへんなんです」
僕はまたええっ、と今度は口に出して言った。お隣さんは笑顔のまま続けた。
452 :隣人の窓 5/5 [sage]:2014/04/12(土) 02:32:43.80 ID:PI2sztVP0
「びっくりしましたか?」
どう答えるべきだろうか、と少し考える。でも、よく考えたら別に追求するようなことでもないようにも思えた。
「そりゃあもう」
「また誘ってくださいね」
 それじゃまた、と彼女は手を上げて帰ろうとする。僕はとっさにあの、と声をかけた。折角の機会だ。
「連絡先、教えてください」
また明日窓を開ければ会えるのだろうし、さして話したいことがあるわけでもない。ただ、
彼女の笑顔のない場所で、なんとなく彼女と関わりを持ってみたいなと思ったのだ。
 今度こそ、と彼女は先ほどよりも大きく手を振りながら歩いていった。僕は改札を抜け、
帰りの電車を待ちながら、彼女にメールを送った。
 僕は明日、隣人の窓を開けるだろうか。今のところの気持ちは五分五分と言ったところ
だ。ただ、もう窓を開ける必要はないのだ。僕は、明日はまた仕事なんです、と早くも
返ってきたメールをすぐに返した。
453 :隣人の窓 [sage]:2014/04/12(土) 02:33:11.33 ID:PI2sztVP0
終わりです。
454 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [sage]:2014/04/12(土) 11:06:31.88 ID:3hARFItj0
>>453
読みました。淡い雰囲気が良いですね。
気になったのは、細かいんですが窓を開けるシーンのたびに「ガララッ」とか擬音が入っている点。
普段より勢いよく開けた、とかゆっくり開けた、とか、付帯する状況説明が必要な時だけにしたほうが、
ここぞというときにイメージを強く喚起できるんじゃないかな、と思いました。
あとはラストなのですが、結局「?」って感じが若干ありました。
ショートショートなので、なんで女性が自宅じゃない窓を毎朝開けてたのかを説明しなくてはいけないということはないと思いますが、
だったら最後まで、ちょっと不思議な雰囲気を最後まで残してほしかったかもしれません。
ここからは完全に私個人の好みの問題で、話半分に聞いてほしいのですが、
もし私がこの作品を書いたら、ラストはメールアドレスを聞かずに毎朝窓を開けて話をすることを選ぶ、
という形にするかなー、ということを読みながら考えてしまいました。
455 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [sage]:2014/04/13(日) 10:02:09.49 ID:B5rCDxeC0
>>453
なんというか掌編というか承編というか、普通には無さそうな話でありながらも
まさに日常そのままを切り取ってような空気の、なだらかで穏やかな作品ですね

それだけに女性の言葉遣いが、落ち着きのある丁寧語だけに統一されていなかったのに違和感が。
一例を挙げるなら「そう。それはよかった。……」で終わらずに「よかったです」もしくは「よかったですね」など。
或いは、他所の街なので丁寧な言葉使いを心がけてみるもところどころで地がでてしまうキャラなのかとも思いましたが……そこを魅力とするならもう少しその部分の描写に注力されていると思うので、違うなと思いました。

まあ、自分がこういう失敗した場合を考えると、単に……
話のイメージが出来て素組みは終わらせて、肉付けした後数日置いて、見直した場合に違和感を覚えて
そこを全部修正したけど、修正後の再見直しをしていなかったというだけかなとも……
その場合はあれです。良く自分も見直しを省いたりする事が多いので、やったー推敲仲間ができたぞーという感じでしょうかww



さて、そして御代把握。分かりづらくてゴメンなさいね。
>>443-444
>>442も貰います。
456 :隣人の窓 [sage]:2014/04/13(日) 12:19:35.53 ID:XRmh2Zzb0
>>454-455
ありがとうございます。
まず丁寧語に関してですが、自然に「見知った人」と話すことを考えたときに、ここで「ですね」をつけるのはどうかなぁ〜とか、考えてはいました。「よかったです」より「よかった。」の方が喋り言葉として自然かなあと。
そこで違和感を感じたのなら、やはり統一するべきだったのかなとも思います。
推敲後の見直しをしないのは、実際にそうですww これからは気をつけたいと思います。

擬音の話は確かにな、と感じます。窓を開ける、という行為を印象的にしたかったのですが、毎回つけるというのはあまりよくなかったか。

ラストを連絡先を聞く、という流れにしたのは、二人の仲をわかりやすく進展させたかったからです。
また窓の関係に戻るのは、「二人」を描いたときにどうなんだろう、と思ってしまったんですね。

窓の説明は書きたくなかったし、深く考えていませんでした。とりあえず同じ時間に窓を開けたら「お隣さん」がいる、程度。
そうしたことで、女性が完全に不思議な存在でなく、実在してしまったのは確かにこの話としてどうなのかな、ってなってしまうのでしょうかww

なかなか難しいですが、最後まで雰囲気を統一できたらよかったなぁ、とお二方の批評文をいただいて感じました。重ねてになりますが、ありがとうございました。
457 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/13(日) 14:39:18.48 ID:gxGmW5HgO
つまり品評会、女子アイドル「私の兄はマネージャー」で書いてもいいのかな?
458 :422 [sage]:2014/04/13(日) 15:34:16.10 ID:xmR7bWHr0
>>457

すみません。
ここに書いたとおり、「女子アイドル〜」は無しになりました。
http://text-poi.net/vote/60/summary.html

「絶望」もしくは「一目惚れ」で書いてください。

「絶望」もしくは「一目惚れ」のどちらかを上手く組み合わせられるのであれば、女子アイドルを書いていただいてももちろん問題ありません。
459 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/14(月) 01:36:20.98 ID:qz0r/UjQO
はいはーい、把握です。パパ久々に書いちゃおっかなー。あと運営乙です。
460 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/15(火) 08:34:44.85 ID:xch6jqyxo
お題plz
461 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/15(火) 08:58:56.47 ID:abfEsYpSO
>>460ゴリラ
462 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/16(水) 19:31:02.92 ID:+hOzHcuGO
おだいプリーズ
463 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/16(水) 19:35:47.27 ID:zMrAqoZAO
>>462
絶体絶命
464 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/18(金) 01:57:00.49 ID:1j7ShfnkO
ところで品評会のレス制限はあるの?あるとしたら何レスなんだ?教えてエロい人!
465 :422 [sage]:2014/04/18(金) 07:38:26.10 ID:vcoGc6W10
>>464

>>431に書いたとおり、今回はレス数縛りは設けていません。

さすがに50、60レスとか来たら困りますが……

まあその場合は、てきすとぽいに直接貼り付けていただくなど何か対策を考えたいと思います。
466 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) :2014/04/18(金) 19:24:30.06 ID:uFjf0+in0
お題ください
467 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/18(金) 20:33:11.59 ID:qIQJiSjq0
>>466
狙撃
468 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) :2014/04/20(日) 14:28:42.90 ID:A1R3G18j0
お題くれ
469 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/20(日) 14:37:26.08 ID:kkmQgNvEo
>>468
パンダ
470 :お題:パンダ(1/1) [sage]:2014/04/20(日) 15:15:20.62 ID:A1R3G18j0
 「私達ってさ、生物としてもう終わるべきなんじゃないのかな」
 夜中に真空パックされた米と煮魚をぐつぐつと煮ていると、バディが急にそんなことを言い出した。
 「自然出産した最後の人は50年前に死んだんだってさ、つまり、ちゃんとした生命の営みを経験した人類はとっくの昔にいないわけじゃん」
 この食料が完全に暖まるまで、後15分。その間だけは会話に付き合ってやることにした。
 「パンダっているだろー。ほら、あの白黒の奴」
 「ああ、あの数百年前から絶滅寸前って言われながらも最近までずーっと絶滅してなかったアレ?」
 「私はね、思うのだよ。パンダは人類と共生する、という進化をすることによって絶滅を免れたのではないかと」
 ちろちろと鍋の火が揺らめいて、何言ってんだこいつという顔をした栄子の顔が赤く浮かび上がる。
「えーっと、つまりあれ? 鶏とかが家畜化することで結果的に数が増えて繁栄した……的な意味?」
「そそ、パンダは絶滅しそうです〜、って希少感を持たせる進化をして、受精やらなんやらの作業を人間にやらせるよう進化したのだよ」
 「つまり、私達も出産はカプセルセンターに任せるよう進化したってこと?」
「うむ、そのとおり。私達は自身で出産するという無駄な行為を捨て、進化したのだ」
「けどさぁ……その理屈でいくと」
栄子が辺りを見回して、溜め息を吐いた。辺りには倒壊したビル、ひび割れた道路、黒い煙を放つ最新鋭の戦車。因みに、この戦車は急に戦争をしかけて来た宇宙人がビーム一発でぶっ壊した。脱出装置が働きはしたが、もう使い物にはならない。
「カプセルセンターがなくなっちゃった今の人類って、生物として終わっちゃってる?」
「……宇宙人が私達に希少価値を見出してくれると良いなぁ」
空の上ではとんでもなく大きい宇宙船が我が物顔で浮かんでいた。
471 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [sage]:2014/04/20(日) 15:17:35.47 ID:A1R3G18j0
お題くれ
472 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/20(日) 15:18:58.05 ID:GjzFm1R6o
粉塵
473 :お題:粉塵(1/1) [sage]:2014/04/20(日) 16:04:00.20 ID:A1R3G18j0
 辺りに粉塵が舞っていた。白い粉塵だ。目の前では幼なじみが泣きそうな目で俺を見ている。貴様、何故そんな可愛らしく女の子座りをしている。そのうえ三角頭巾にエプロン姿ときたものだ。普段から手入れが大変だと言っていた黒く長い長髪に白い粉塵がかかり、真っ白だ。幼なじみの片手には小麦粉と書かれた茶色い袋が握られ、調理台の上にはバターやらが入ったボウル。チョコレート、牛乳が勢揃い。
 そして、テカテカした紙の上に『誕生日おめでた』とチョコレートで作られた文字が見える。状況から察するに、コイツは誕生日ケーキを作ろうとしていたのだろう。しかし、何故今日? 俺の誕生日は今日ではない。と、くればこいつ自身が誕生日で、自分を祝福するために自分でケーキを作ろうとしていたのだろうか。こいつならばやりかねない。なんと言ってもコイツは一人カラオケ、一人焼肉、一人ディズニーランドを制覇した奴だ。因みに俺はそれを横目で見てニヤニヤしながら写真を撮ってた。今も俺のパソコンには数十G単位でこいつの写真が保存されている。
考えが逸れた。疑問点は3つ。何故俺の家のキッチンにコイツがいるのか。何故誕生日ケーキを作っているのか。何故こいつは俺が正面に立っている時に転んでしまったのか。
因みに、今こうやって考えている間も俺の白い粉塵は舞っているし、俺の顔面は真っ白だ。というか全身が真っ白だ。因みに今日は就活のためスーツを着ていた。クリーニング不可避である。
「え、えっと……ま、まずな? うちの家にあるオーブンが壊れてしもたんよ」
幼なじみがしどろもどろになりながら喋る。流石に長い付き合いなだけあって何も言わずとも俺の考えていることがわかるらしい。
「それで、おばちゃんに言うたら、別にこっちのキッチン使ってもええでーって言われたから……」
「なるほど、で、誰の誕生日を祝うつもりだったんだ? お前の誕生日ってうろ覚えだがまだ先だったろう」
「ああ、そこのチョコ見たんか、いや、これはな〜」
会話している間に、粉塵が少しずつ収まりつつあった。床、冷蔵庫、炊飯器、キッチン台の上すら真っ白になってしまっているのが見えた。そんなことなどお構いなしに幼なじみがキッチン台へと向かい、ツヤツヤとした紙のうえを軽く手で払った。そこにはホワイトチョコレートで書かれた11月10日という文字があった。今は4月20日である、何故そんな日付にしたのだろうか。
「うちとあんたの子供の誕生日。ま、予定日やからまだわからんけどな」
 粉塵が完全が収まり、俺の頭の中も真っ白になった。
474 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/20(日) 17:27:25.65 ID:Lzo8pW1uo
軍事的なお題下さい
475 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/20(日) 17:28:27.66 ID:GjzFm1R6o
射線
476 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [sage]:2014/04/20(日) 18:54:12.33 ID:pfnA5aCm0
>>470
>>473
ショートショートとはいえ短時間で2本も書くのは凄いと思う。俺にはできない。

表現として気になった点がいくつかあるかなあ、と。特に2本目。
「黒く長い長髪に白い粉塵がかかり、真っ白だ」とか。頭痛が痛いの2乗に見える。
「因みに」が3連発で出てくるところとか。そもそも平仮名表記のが一般的な気がするし、できれば状況説明をストーリーのなかに上手く組み込んだほうが綺麗かもしれない。
ラストの「粉塵が完全が収まり、俺の頭の中も真っ白になった」も、粉塵が収まった代わりに頭が真っ白になったんじゃないの?とか。

ただ、1レスの短い話の中に、2本ともきちんと展開を作っているあたりはとてもよかった。
1本目とかはSFとしてはありがちかもしれないが、個人的には好きだ。
477 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/20(日) 19:02:23.78 ID:GjzFm1R6o
>>470
パンダの進化のくだりで、いや減らす原因作った人間が何言ってんねん とツッコミを入れてしまった
だから、人間が自然分娩できなくなったのを進化とする理屈に説得力を感じられなかった
でも、オチの台詞は凄く好き

>>473
正直読んでて分かりづらかった
読み返してから、ミスリードであることに気付いたんだけど「ああ、なるほど」ってよりは「え? そういうことなの?」って感じ
隠すことには成功してるけど、ばらすことに失敗してる感じ
478 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [sage]:2014/04/20(日) 19:36:37.01 ID:uR1gWTRY0
感想ありがとう、やっぱ人に見てもらって意見もらうとかなり参考になるわ

お題くれー
479 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/20(日) 19:42:19.85 ID:GjzFm1R6o
480 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/20(日) 20:46:19.77 ID:Lzo8pW1uo
>>475
ありです
481 :お題:空(1/1) [sage]:2014/04/20(日) 21:16:58.75 ID:uR1gWTRY0
 「空ってものを、一度でいいから見てみたいもんだな」
顔を上げると、真上には真っ黒いシートが一面に張り巡らされている。景観もクソもあったものじゃない。
「多分、地球と違って、ここの空は汚いんじゃないのかなぁ。そもそも、この惑星を取り巻くシートがなけりゃボクらは紫外線ですぐ死んじゃうよ」
地球から800光年離れた惑星、ビリンズゲイト、これが今、俺が住んでいる惑星の名前だ。水が豊富で酸素もあって、あと重力も一応ある。が、困ったことに太陽が近すぎるって難点がある。
「そりゃあそうだけどよ……あー、なーんでこんな辺鄙な惑星に飛ばされちまったのかね、俺の親父は」
「辺鄙なところとは酷いな、水は綺麗だし、海産物は美味しいし良いところだとボクは思うよ」
「けど、全部人工物だろ? 水はシートから得られる熱で氷を溶かしたもんだし、海だって人口海水の元をドバーっとぶち込んで作ったやつだ。俺はよぉ、本物が見たいんだよ、本物が!」
 「……要するに、地球に行ってみたいってこと?」
「おうよ! この黒いシーツの向こう側! 宇宙を突き抜けて、地球へ行って! 本物の空を見たい! そうは思わねぇか!?」
「……思っても、先立つものがないと無理じゃない?」
「金ならある! 俺がコツコツ水質管理の仕事をして貯めた金がな!俺はコイツで地球に行って、本物の海を見て! 本物の山を見て! 本物の空を見る!」
 「……ねぇ、ボクが女になったら君はどうする?」
「なんだよ、急に……」
「大昔、ここに入植する時の労働力として作られたのがボク等だ。最初のうちは男でも女でもなく、大人になると性を選べる。なんでそんな風にデザインされたかっていうと、簡単に男女比率が変わってしまうほど、ここの開拓は過酷だったんだとか」
 「……今じゃ、そんな感じはまったくしねぇけどなぁ」
「そりゃそうだよ。この星はシートで守られてるもん。この星の電力は、シートから得られる熱を利用して作られてる。水だって、君がさっき言ったようにシートがなけりゃ作れない。ボクらの生活はこのシートによって成り立ってるんだ」
「ボク等のひいひいお爺ちゃん……もしかしたらもっと前かもしれないけど、そういった人たちが子孫のためにって、過酷な環境の中で作ってくれた、ボク等を守るためのシート」
「そう考えたら、ここの空だって素敵だと思えない?」
もう一度、顔をあげると変わらず黒いシートが天を覆っていた。けど、笑顔でこの空を素敵だと言うコイツを見ていると、少しだけだが、この空が誇らしげに天を覆っているように見えた。
482 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/20(日) 22:23:10.46 ID:VE2/dOFMo
うーんなんというか一レスにまとめることに固執してるようにみえる。そしてそれがもったいないと思う。
このオチを綺麗に成立させるためにはまず読者に真っ黒いシートが如何に景観も糞もあったもんじゃないのかを
想像してもらわないといけないわけで、そうなると一行でしかも状況説明と主人公の感想をさらっと言われただけじゃあんまり印象に残らないからオチを聞いても「ふーん」
で終わってしまった。あと現在の状況を理解する前に話がとんとん進んで終わっちゃった。
会話文ばっかりだと二人がどういう状況でどんな顔でってのがいまいちわからないし間というか、味わいが薄れると俺は思う。
こんだけポンポン書ける体力は羨ましい。だから一回腰据えてちょっと長いの書いてみるのもいいんじゃないだろうか。
483 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga]:2014/04/20(日) 23:08:54.36 ID:xcUlOMfh0
通常作、投下します。
484 :嘔吐(お題:狙撃)1/5  ◆/xGGSe0F/E [saga]:2014/04/20(日) 23:14:16.82 ID:xcUlOMfh0
 僕の仕事は、道端を歩いている人に、液体の入った球を投げつけるというものだった。月の初めに十数個の球が家に送ら
れてきて、それをそのまま他人にぶつけるだけでお金がもらえるのだ。しかし、その球をぶつけているところを撮影しなけ
ればお金はもらえない。もし、その様子が撮影されていなかった場合は、本社からクレームが来て、給料を渡すことはでき
ないと宣言されてしまう。だから、しっかりとその球をぶつけているところを動画で撮影しないと、僕は食いはぐれてしま
うことになる。
 最初の頃は、その球には白い液体が入っていたのを覚えている。無臭の、さらさらとしたような液体。ペンキ液のように
濃い白色をしている。中には何かが浮いていたりするけれど、その浮いているモヤモヤとした物体も同様に白い液体なので、
その物体が何であるかは今ひとつよく分からなかった。ちなみにそれを人にぶつけると、音もなく破裂して、球は跡形もな
く消え去り、中に入っていた液体だけが人にかかる。仕事をし始めの頃、僕はその仕事の勝手がよく分からなくて、人とす
れ違うがままにその球をぶつけていたのだけれど、そうすると例外なく、ぶつけられた人は怒って僕を責めた。何でこんな
ものを人にぶつけるんだ。汚らしい。それに服が汚れてしまうじゃないか! 彼ら彼女らは、そう言いながら怒り狂った。
確かに言われてみれば、知らない人からよく分からない液体をかけられたら嫌だなあとは思う。しかし、それが僕の仕事な
んだから仕方がないじゃないか。これをやらないと、僕は生きていけないのだから。僕はそう言いたかったけれど、しかし
そんな言い訳は通用しそうもなかった。彼らは、僕と同じ姿形をしているだけで、全く別の考え方をする生命体なのだ。別
の思考を持ち、僕とは違うルールを持って生きる生命体だから、価値観を共有することはできないのだ。だから、僕はやり
方を変えることにした。ばれないようにぶつければいいのだ。こっそりと通行人の後をつけ、気づかれないように、背中か
らその球をぶつけるようにしたのだ。そうすると、意外にも人々は球をぶつけられたことに気づかない。後ろという物をあ
まり見ないのだ。それに己の背後というものにあまり注意を払っていない。それに、絶対に安全だと思い込んでいる。誰も
そんなことなどしないだろうと思い込んでいる。もしくは、自分だけはそんな目には合わないだろうと思っている。だから彼
らは、背中が真っ白に汚れてしまった事にも気づかない。
 僕はそれで、月に二十万円ほどを稼いでいた。変な仕事だと自分でも思う。大した額をもらえない。だけれど、何よりこの
仕事は楽だし、通勤や人付き合いなどの面倒もない。それで二十万円が貰えるなら安いものだった。

485 :嘔吐(お題:狙撃)2/5  ◆/xGGSe0F/E [saga]:2014/04/20(日) 23:15:08.15 ID:xcUlOMfh0

 その仕事を半年ほど続けていたある日。唐突にいつもとは違う球が送られてくることとなった。いつもよりも巨大で黄色
い色をした球が送られてきた。本社からのメッセージ付きで、それは厳重に封をされて木箱に入れられていた。
ちなみにメッセージにはこう書かれていた。
「この球は危険なものです。中にはとても危険な液体が入っています。そして割れやすく出来ています。一度割れてしまう
と、取り返しのつかないことになりやすいです。しかし、この球をぶつけることに成功すれば、いつもよりも報酬は弾みま
しょう。これをぶつけるだけで十万円を差し上げることを約束します。ただし、一つだけ条件があります。この球は若い女
性にぶつけてください。なるべくなら女子高生あたりの年齢の少女が好ましいです。怪しいとは思うでしょうが、是非とも
任務を遂行なさってください」
 そのメッセージには何か、いかがわしい匂いみたいなものが嗅ぎ取れた。卑劣な印象を与えるようなメッセージだった。し
かし、僕はその仕事を遂行しなければならなかった。何故、女子高生なのか。そしてこの中には何が入っているのか。なぜこ
んなことをしなければならないのか。そう言った事を考えるのは、僕の仕事ではなかった。誰かが僕の手を必要としていて、
球をぶつけることに需要があるのなら、僕はひたすらにそれを供給しなければならないのだ。

486 :嘔吐(お題:狙撃)3/5  ◆/xGGSe0F/E [saga]:2014/04/20(日) 23:16:16.84 ID:xcUlOMfh0
 僕はなるべく目立たないような服装で町に出た。黒のパーカーに、迷彩のカーゴパンツ。大き目なマスクをして、伊達メ
ガネをかけていた。なんだか犯罪でも起こすような気分だった。だが、やはり顔を見られたり、目立ってしまうのは躊躇わ
れた。この服装が一番良いような気がしたのだ。
 僕は早速、街で女子高生を探してみた。女子高生はそこら中にいた。午後四時の繁華街は、幸せそうな女子高生で溢れて
いた。ありふれた悩みと幸せを持つ、楽しげに生きている彼女らの姿があった。僕は、本社がどのような女子高生を求めて
いるのかが分からなかったので、とりあえず美人な女子高生を選ぶことにした。美人であるか、可愛らしい女の子が、無難
だと思った。
 駅前に立ちながら人の流れを目で追っていると、目を引くような美しい顔立ちの女子高生が前を通った。短いスカートか
ら覗く柔らかそうな太もも。健康的な白い肌。Yシャツをつんと押し上げるように主張している胸の膨らみ。流れるような
きれいな黒髪。僕は、この子に球をぶつけたらいいんじゃないかと思った。僕はその子の後を、一メートルほどの距離をあ
けて付いていくことにした。この仕事の経験上、やはり人目に付かないところ、あるいはターゲットが安心している時にこ
っそりとぶつけるのが望ましかった。出来ればターゲットが椅子などに座って静止している時が良い。僕は、バッグの中に
詰めた球を、バッグの上から感触で確かめ、そこにあることを確かめた。割れやすいと書いてあったので、なるべく振動を
与えないように歩かなければいけない。それは、かなりの神経を使う作業だった。いつもよりもクタクタになってしまいそ
うだった。
 女子高生は駅前から左方向に歩いて行き、途中の分かれ道を、狭い路地の方へ向かった。好い機会かと思ったが、僕の後
ろを年配の女性が歩いていた。今ここで球を投げても、その女性に見られてしまいそうだった。僕は取り出しかけた球を、
何気ない素振りで元に戻した。それから思い直し、バッグの中に手を入れて、とりあえずいつでも球を取り出せるように、球
の部分に手を触れておくことにした。
 僕はずっと女子高生を見つめながら、こっそりと後を付けつづけた。女子高生の後姿は、やけに僕の心をドキドキさせた。
何であんな短いスカートを穿くのだろう。なぜ男の心をくすぐるような、いやらしい格好をするのだろう。僕は時々女子高生
の太ももを見ながら、耐えられずに下を向いたりした。彼女の揺れるスカートから目が離せなくなりそうだった。

487 :嘔吐(お題:狙撃)4/5  ◆/xGGSe0F/E [saga]:2014/04/20(日) 23:17:37.25 ID:xcUlOMfh0
 何気なく後ろを振り返った時には、すでに先程の年配女性の姿はなかった。今こそが好機と思い前を向くと、今度は目の
前から太った女子高生が歩いてくるのが見えた。何を食べればそんなに醜く太れるのだろうと思う程に、巨大で醜い女子高
生だった。その太った女子高生は、歩きながらファイルに入ったルーズリーフのようなものを取り出そうとしていた。なぜ
こんな道端でそんなものを取り出そうとしているのか。もっと落ち着ける場所で取り出せばいいのに。しかも明らかに彼女
の手つきは不器用だった。僕はその女子高生を見ながらイライラしていた。こんなに人をイライラさせる存在が居るのが気
に食わなかった。目に毒で、顔も気持ち悪くて、しかも不器用な動作が人をイラつかせる。そう思ってしまうのは、僕の仕
事の邪魔になっているからなのだろう。今すぐターゲットと二人きりにしてほしいと願っているからだろう。いくらなんで
も、仕事の途中でさえなければ、ブサイクな子であってもこんなに腹立たしく思ったりはしない。どうでもいいとすら思う。
ただ、仕事を遂行しようという時に、そして絶好のチャンスだという時に、目の前からこんなにトロくて、ブスで、歩くの
が遅くて、ファイルに挟まったルーズリーフを無理やり引き抜こうとしていて、鼻息をフンフンとさせ、顔中に汗をかいて
いて、グチグチと小さい声で何かを呟いているような女子高生がいたら、さすがの僕でもイラついてしまう。僕はあまりに
も怒りが湧いて止まらなくなり、思わずバッグの中に仕舞われていた球を思いっきり握りつぶしてしまった。その途端に、
ボールが破裂するような感触が掌に伝った。決して強いショックではないが、とても軽い静電気が走ったような感覚。そし
て、それが破裂した瞬間に、とてつもない臭気が辺りに立ちこめた。尿と糞を何日間も便所に放置していたかのような激烈
な臭気が、僕の鞄の中から一瞬にして広がっていった。僕はそのあまりの臭いに、胃の中がひくついて、吐き気が抑えられ
なくなった。何だろう、何でこんな臭いものが入っていたんだろう。僕はこんなものを女子高生にぶつけようとしていたの
か。僕は何度も何度もえづきながら、そう思っていた。鼻の中に直接糞を詰め込まれたような、耐えられない臭気が、とど
まることなく広がって強まっていく。どうやら前を歩く女子高生達も気づいたようだった。二人ともが僕を見て顔をしかめ
ながら、まるで犯罪を犯した浮浪者を見る目つきのような、強い侮蔑を含む目線を送ってきた。美人な女子高生は袖で鼻を
押さえながら小走りで僕から離れていき、ブスは思いっきり顔をしかめながら、僕を見下すように、強い視線を送ってくる、
そしてまるで土を踏み固めるような強い歩調で僕とすれ違おうとしていた。僕はもう帰りたいと思った。帰って早くシャワ
ーを浴びて、このバッグを捨てて、服も綺麗に洗濯して、アロマを炊きながら、ベランダに出て、甘いワインを飲みながら、
ソルジェニーツィンの小説でも読んで、優雅な午後を過ごしたかった。でも僕は、この強烈な臭気に耐えながら家まで帰る
事を思うと、吐かずにはいられなかった。家まで耐えられそうもなかった。臭気がどんどん僕に染み込んで来て、僕の根本
を汚しているような感覚だった。早く。早く家に帰りたい。僕は来た道を走りながら、そう呟いていた。早く帰りたい。こ
れはひどい臭いだ。僕は何でこんなことをやっていたんだろう。何でこんな汚いものを人々にぶつけていたんだろう。何で
こんな仕事をしていたんだろう。走る度に、臭いはどんどん強くなっていった。もはや、どんなに洗濯をしたところで、そ
の強烈な臭いの記憶は僕の中から消え去りそうになかった。頭が痛んで、鼻の奥から吐瀉物の臭いがして、胃が痙攣するよ
うな感覚があった。そして、それを感じた瞬間に、僕は吐いた。胃の中にある汚いものを全て吐き続けた。吐いても吐いて
も止まらなかった。臭いも消えなかった。僕が今までやってきた汚いことを全て、清算するくらいの勢いで吐いた。それで
も止まらなかった。僕は、僕が放っている気持ち悪さの中にいた。でも、臭気はどんどん強まるばかりで、もはや手におえ
そうもなかった。もはや体の中からは、何も出なくなっていた。それなのに吐く感覚は続いていた。目に見えないものを吐
き続けているみたいだった。早く家に帰りたい。もうこんな仕事は止めたい。なんであの球にはこんな汚いものが入ってい
たんだろう。誰が入れたんだろう。誰が何の目的で僕にこんなことをやらせているんだろう。そして、僕はどうしてそれを
平気で人々に投げつけようとしていたんだ。僕も他の人間も、よくよく考えれば違う生命体じゃない。価値観に違いなんて
ない。こんな臭くて気持ち悪い物を投げられれば、怒るに決まっているじゃないか。どうして僕はそんなことも分からなか
ったんだ。僕はずっと、人々にひどいことをしてきたんだろうか。後ろから汚い感情を投げつけていたんだろうか。後ろか
ら気づかれない様に、まるでスナイパーが狙撃をするように、卑劣に人々を傷つけていたんだろうか。
488 :嘔吐(お題:狙撃)5/5  ◆/xGGSe0F/E [saga]:2014/04/20(日) 23:18:32.38 ID:xcUlOMfh0
 僕は顔をあげて、来た道を戻ろうとした。しかし、今自分がどこにいるのか分からなくなってしまっていた。女子高生の
歩くままについてきてしまったので、僕はいつの間にか知らない場所まで来てしまっていた。来るときは一本道だったのに、
帰りは分かれ道がたくさん伸びていて、一体どの場所に帰ればいいのか分からなかった。僕は愕然としながら、納豆やクサ
ヤやドリアンや、何日間も洗っていない靴下や、足の爪の間に挟まった毛糸や、鼻の奥に出る膿や、道に放置された糞の付
いた下着や、酒を飲み過ぎた浮浪者の性器や、公衆便所に捨てられているナプキンや、瓶に一ヶ月溜め続けた精液や、それ
らすべてを何倍も強くしたような臭気の中で、こんなこともうやめたいと思い続けていた。だけれど、もう僕は帰る道が分
からないし、こびりついてしまった臭いは取れそうもなかった。僕は、せめて球の中に入った液体を被った自分の姿を動画
で撮りながら、哀れな自分を晒すしかなかった。一体これでいくらもらえるのだろう。自分に一体いくらぐらいの価値があ
るのだろう。僕は、球をぶつけられる側の気持ちになって、初めて人々の欲望の汚らしさという物を実感することになった。
 そして僕の他に、一体どれくらいの人物がこっそりと球を持っているのだろう。後ろから気づかれぬように近づいて、目
に見えない様に人々を傷つけようとしている奴らが、僕の他に何人くらい居るのだろう。僕は涙と汗と吐瀉物でぐちゃぐちゃ
になった顔で、ぶつぶつとそんなことを呟きながら、吐き続けた。
 人を傷つけることに失敗し、もう嫌だと望んだ僕は、もうこのまま死んでいくのだろう。お金をもらうことが出来ないし、
これ以外に僕にできる仕事など無い。働く気力もわいてこない。そうして僕は、この気持ち悪い吐き気の中で死んでいくの
だろう。気持ち悪い。気持ち悪い。本当に気持ち悪い。皆さんは、決して失敗しないように気を付けてほしい。この臭気は
とても最悪だから。やるのなら失敗するなと言いたい。




 そのような不可解な遺書を残し、女性に排泄物をかけ続けていた無職の容疑者Hは、I公園で首を絞めて亡くなっていました。警察側は自殺とみて捜査を進めており、彼がアダルト・コンテンツマーケットにて排泄物を女性にかける動画を販売し、月二十万円の売り上げを得ていたことについても調査を行っております。
 それでは次のニュースです――――


489 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [sage]:2014/04/20(日) 23:19:24.67 ID:xcUlOMfh0
最後の改行ミスりました。読みにくくてすみません。

投下終了です。
490 :K(お題:空) [sage]:2014/04/20(日) 23:37:59.45 ID:wRtFGd690
 青い空。
 見るだけで心が晴れ渡り、明るく気分になれる。
 赤い空。
 感傷的な気分になるが決して嫌な気持ちではなく、ずっと眺めていたくなる。
 黒い空。
 闇とは違うその黒さは吸い込まれそうになるほどの魅力があり、惹きつけられる。
 どの空も美しく好きなのに――たった一つだけ嫌いな嫌いな色の空があった。

 それは灰色の空。

 見るだけで心の中が不安に支配され、心がざわつく。
 だと言うのに何もする気になれず、余計に心が乱れる。
 どうしてこの空の色だけは好きになれないのだろう。
 言いようのない不快感に苛まれながらも、考える。
 しかし、その考えは灰色の空が去った時には忘れてしまうのだった。

491 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/20(日) 23:59:41.78 ID:GjzFm1R6o
>>481
設定を羅列して終わってるように見えた。
SFって、本で読んでも目が滑るくらい設定のオンパレードなこと多いんだけど、これは地の文じゃなく会話でやってるから、
説明臭さに拍車がかかってる気がする
地の文なら説明として受け入れられるものが、会話文になることで内容と文章の強度とのギャップが顕著になってる感じ
で、シーンとしては綺麗なんだけど、それ以上のものが無かった
492 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/21(月) 00:09:25.05 ID:70mJJfQVo
>>488
なんだこりゃ、って思った。
最初、白い球、黄色い球が暗喩なのかなって思った。
で読み進めたら、比喩でも何でもなく、そのものずばりだったっていう。
この筋のままでいくのなら、そもそも5レスも書く必要のない話だと思う。
ただ正直な話、オチが別に特筆してるわけでもないので、短くしても切れ味は出ない気がするので難しい。
個人的には、もう少し馬鹿馬鹿しく書いてあった方が、面白いと思ったかもしれない。
493 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/21(月) 00:17:08.42 ID:70mJJfQVo
>>490
ごめんなさい、よく分からない。
一言でいうなら、読まれることを意識していない作品だと思う。
俺はそういう作品が苦手なので後は何も言えない。
494 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/21(月) 02:42:09.65 ID:0oZ/2UR3O
>>490
灰色の空がどうこうってイミフすぎ
灰色の空が嫌な理由なんて雨が降るからぐらいしか選択なくね?
もうちょっと考えてから書こうよ
495 :お題目、空1/2 [sage]:2014/04/21(月) 08:26:58.37 ID:pvt4dmdvo
女心は秋の空、とは使い古された文言だが
俺が知る彼女はその範疇に当てはまらないようだ。
実直で男勝りで、どんな困難にも容易には覆らぬ鋼の意志を持っている。
ともすれば、時に融通が利かないという短所にも転じるのだけど
平均にやや足りない背丈ではきはき立ち回る姿は、それなりに可愛らしくもあった。


「まったく、嘆かわしい限りだ」

電車を降りたあとで、彼女は溜め息交じりにそう言った。

妊婦らしき人が吊革に掴まっているその前で
シルバーシートで寛いでいる高校生三人組を
彼女が見過ごすはずもなかった。

「ねえ、君たち。悪いけれど、こちらの方に席を譲ってもらえないだろうか」

彼女が手のひらを女性に向けながらそう願い出た。
談笑に夢中で女性が目の前にいることに気づいていなかったのか、高校生たちはお互いの、ばつが悪そうな顔を見合わせた。

これであっさり決着か。
俺のお気楽な頭には彼らが席を譲る光景しかなかったのだけど、

「な、なんでてめえにそんなこと言われなきゃいけないんだよ」

まぁ、世の中には少なからずこういう連中もいるわけで。
言葉としては好きじゃないが、交通弱者に譲るために設けられているような座席。それに陣取る健康的男児の群れ。
ジレンマと喧嘩腰な台詞は、彼女をむっとさせるには十分だったようだ。

結果的にはビーンボールすれすれの言葉のキャッチボールになり
揉めに揉めて、さらに俺の仲裁で拗れたやり取りを、当事者にされた女性が場外ホームランにして終わったのだった。
当事者にされた。これほど的確な物言いもそうないだろう。

「あの女性には、本当に悪いことをしてしまった」

これを聞くのは三回目。
よほど落ち込んでいるらしい。

要するに、彼女の落胆は自分に向けてのものだった。
もっと気の利いた立ち回りがあったのではと反省しているのかというと、少し意味合いが違ったりする。


「仕方ないだろう。あれは、俺だって妊婦だと思ったさ」


恥じらいからか、彼女の顔がほんのりと赤くなった。
496 :お題目、空 2/2 [sage]:2014/04/21(月) 08:32:04.74 ID:pvt4dmdvo
結果として、吊革に掴まっていた女性は、しかし腹の内に子を宿してはいなかった。
腰回りがやや太ましい(控えめな表現だ)だけの女性に過ぎなかった。


「わたし、妊婦じゃないんですけど」

どこか不機嫌そうなあの宣言で、車内の空気は一瞬にして凍りついた。
主眼がシルバーシートに座っている男子高校生に寄りすぎて
庇護すべき対象をろくに観察していなかった、という点では
確かに彼女にも反省すべき余地があったのだろう。
まとめると、彼女の長所である正義感が裏目に出た、ただそれだけのお話なのだが
やや脂肪分多めなだけの女性にしてみれば
席を譲らせようとする一連の言動が、いかにも空々しく聞こえただろうことはわかる。

「昔から悪い癖だって自覚しているんだ。もっと慎重に行動しなきゃいけないのに」

そうは言うが、思ったことを即実行に移す能力は
優柔不断の域を出られない自分には喉から手が出るほどほしい物だ。
何より、慎重に立ち回る彼女など面白味がないではないか。
そんな感情論が手伝って

「俺は、お前のいいところなら、全部空で言えるけどな」

うかつにも、優男にしか似合わない、そんな空々しい台詞を口にしてしまったのだった。

「……たとえば?」

訊きたいらしかった。

「文武両道なところ。誰にでも優しいところ。いつでも一生懸命なところ。ちょっと暴走気味なところ――」

「そ、それは余計だろう!」

照れてるのか恥じらっているのか、微妙な表情だった。
あるいは両方かもしれない。

「ばか、結びがあって初めてお前が完結するんだろ。実際、誰かのやらかすうっかりは微笑ましいもんだ」

「やらかす身にもなってくれ!」

この噛み付き具合からすると、先ほどの乗客のくすくす笑いでも思い出しているのだろうか。

「お前がやったのは、誰の目から見ても正しい行動で、羨ましい行動だ」

それでさえ、計算ずくってわけにはいかないのだけど。
仕方ない。万能なやつなんてどこにもいないのだ。

「失敗なんて気にすんなって。昔の人だってこう歌っていたろ。小さなこと気にしてないで、上を向いて歩こうよって」

「上……」

立てた人差し指に釣られるように彼女が空を見上げ、すぐさましかめ面になる。

「なるほど、まるで今の僕の心のようだ」

「……あ」

あいにくの空模様だったが、それでも心なしか、彼女の口元が緩んだ気がした。
497 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/21(月) 12:50:42.55 ID:qGppQ6Iao
お題くだしあ
498 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/21(月) 12:55:57.58 ID:CvkM19sKO
>>497
ご機嫌取り
499 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/21(月) 22:08:18.91 ID:0navVSYeo
>>498
500 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/22(火) 00:01:40.30 ID:wesaP8Qso
>>496
彼女が可愛いって思った
言い回しがかっこつけていて、ともすれば鼻につきそうなんだけども、そこまで気にならなかった
ただ、彼女の口調は狙い過ぎてるかなって思った
まぁ、単に俺の好みの問題かもしれないけど
あと、空で言えると空々しいは、作品の中で浮いてると思う。他はいいけど
501 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/22(火) 00:50:23.20 ID:mzTQXG3Io
お題くださ
502 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/22(火) 01:04:52.47 ID:wesaP8Qso
失明
503 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/22(火) 01:18:11.14 ID:mzTQXG3Io
ありがとう
504 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/23(水) 01:14:08.77 ID:NmlEFFHRo
お題ちょーだい
505 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [sage]:2014/04/23(水) 23:45:08.41 ID:66JSVRbm0
>>504
506 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/27(日) 00:28:33.37 ID:HrT9/GhMo
お題くださいな
507 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/27(日) 01:14:26.46 ID:6q1DjqHgo
508 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/27(日) 01:25:29.75 ID:HrT9/GhMo
どもども
509 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/28(月) 00:43:09.47 ID:ZOc7sY8Go
品評会について質問
>>431見る限り、執筆期間はもう過ぎてるようなんだけど、今から書き始めて投稿期間内に投稿できるとしたら
それはルール上ありなんです?
510 :422 [sage]:2014/04/28(月) 00:47:05.50 ID:OO8MMaIX0
私としてはアリと考えています。
というより私もいま執筆しております……
511 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/28(月) 00:48:26.93 ID:c5QEhh4So
>>509
うん
512 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/28(月) 00:48:44.47 ID:ZOc7sY8Go
>>510
ご返答ありがとうです
間に合うか分かりませんが書くだけ書いてみようかな
513 :422 [sage]:2014/04/28(月) 00:53:27.87 ID:OO8MMaIX0
あ、てきすとぽいの方にひとつ投稿していただけているようです。
ありがとうございます。

恋のまなざし(茶屋)
http://text-poi.net/vote/60/1/

ちょっとパソコンがいま付けられなくて転載できないのですが、転載したほうが見やすいという方がいれば言ってください。
明日にでも転載しようと思います。
514 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/29(火) 22:18:38.95 ID:IwgFu9EL0
今更品評会でられないからお題をいただければ……。
515 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/29(火) 22:26:02.86 ID:dUc1brQvo
516 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/29(火) 22:44:16.75 ID:tZdb0hQU0
お早い提示感謝です。
517 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/30(水) 08:55:45.77 ID:YWfTCZjho
未だ、スレからの参加者はゼロか>品評会
今からでも書くかねー
518 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [sage]:2014/04/30(水) 12:07:07.37 ID:m2WEvDNJ0
一応転載したほうが良いかな、と個人的に思ったので転載します。今回不参加なのでせめてこれくらいは。

まずは、茶屋氏「恋のまなざし」
519 :恋のまなざし 1/2 [saga]:2014/04/30(水) 12:08:47.16 ID:m2WEvDNJ0
初恋は多分、幼稚園児だったか、それぐらいの時分。
父の手にひかれて桜並木の下を歩いていた。
舞い散る花びらを追っていると視線の先に、綺麗な女の人が見えた。
とても、とても綺麗だった。
同じくらい綺麗な人は多分たくさんいただろうし、その人だって女優並の美人ってわけではなかったと思う。
けれど、彼女は特別で、輝いて見えた。単純な綺麗だなっていう感情とは別の何かがあった。
圧倒されるように立ち尽くしてしまった。
それからだいぶしてから、それが恋という感情で、一目惚れって呼ばれてるものだって知った。
普通だったらそれはそれでよい思い出になったかもしれない。
すれ違った女性に一目惚れした幼稚園児。なんとも微笑ましい。
それで終わり。終わりのはずだったんだ。
だけど、それが全ての始まりだったんだ。
そう、全ての。
綺麗な女の人は、目の前で車に撥ねられた。
関節がおかしな方向に曲がって、血を流して、見開かれた生気の無い目はじっとこちらを見ていた。
桜舞い散る季節、それが僕の初恋。
520 :恋のまなざし 2/2 [saga]:2014/04/30(水) 12:09:47.88 ID:m2WEvDNJ0
今でも初恋の人のことは夢に見る。
この記憶が本当に目にした光景なのか、それとも幾度も記憶を反芻するうちに変質を遂げたものなのかはわからない。
目の前で初恋の人が死んだ。
死んだとは限らないかもしれないが、多分死んだだろう。助かりっこない。少なくとも今までの経験上は。
そうだ誰も助からなかった。
皆死んだ。
幼稚園で三年間一緒だった子を好きになった時には普通の風邪のはずが別の病気も併発して死んで小学校の時好きになった娘も夏休みが終わっ
てみると担任が彼女が事故で死んだことを告げ憧れのアイドルは薬物中毒で死に中学まで一緒だった娘は中学二年の夏に首を吊って高校で優し
かった先輩は通り魔に襲われて大学のコンパで出会った彼女は心臓まひで会社の取引先で出会った彼女はアパートの火事で焼け死んだ。
みんな、みんな、みんな、死んだ。
恋した相手は皆、死んだ。
中学生の時にはそのことに薄々気づいていたし、こんなに悲しい思いをするならばもう恋はしないとも誓ったりもした。
けれども、駄目だった。
その感情に気づいてしまった瞬間、それを消し去ることなんてできないんだ。
気づいてしまったら最後、あいつもこっちのことに気づいてどんどん成長していく。
想いは止めることはできず、そしてそのせいで人が死ぬ。
絶望もした。自殺を試みたこともあった。いっそ外に出なければとも思った。
だけど、生きることを止める勇気は、なかった。
他人の命を奪ってでも生きようとするクズなんだ。
どうしようもないクズなんだ。
もちろん、心を殺すように努め、なるべく恋はしないようにしてきた。
うまく行っていたと思う。
もう、誰も死なない。
おしまいだ。全部。
そのはずだった。
君に出会うまでは。
でももう嫌なんだ。
誰かを死なせるのは。
多分、君はもう助からない。
だから、せめて、一緒に。
521 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga]:2014/04/30(水) 12:11:56.86 ID:m2WEvDNJ0
「恋のまなざし」は以上です。

続いて、犬子蓮木氏「終わりの決定」
522 :終わりの決定 1/3 [saga]:2014/04/30(水) 12:13:13.99 ID:m2WEvDNJ0
「ライオンが逃げたぞー!」
 わたしは開いていた入り口からゆっくりと外に出る。太陽がまぶしい。檻の中に差しこんでくるような淡い光でもなく、
人間達が用意した偽物の光でもなく、太陽からの日差しがわたしの体を温めてくれた。
 人間達が騒がしい。
 わたしを怖がって泣いていた格子の向こうの小さな男の子みたいだ。
 いつもなら、格子の向こうでゆっくりとわたしを見ている人間達が叫び声をあげて逃げていた。大人も子供も、
わめいて、叫んで、泣いて、逃げて、わたしから遠ざかっていく。
 そういうことか。
 本能で理解した。
 あれは餌だ。
 この動物園で生まれて、人間に餌をもらって生きてきた。だけどそれはやはり噂通りの屍肉であったのだろう。
鼻がひくつく。四肢で硬い地面を踏みしめて、毛を振るわせた。わたしの体がわたしに「狩れ」と命ずる。
 吠えた。
 人間達の悲鳴が一瞬止まる。
 そして再びの大絶叫。
 わたしは、一番近い人間の元へ駆けだした。
 人間は走ることをやめ、地面に転がり、わたしを見たまま、震えていた。
「たすけて。たすけて」
 前足を振り上げる。
「やめなさい!」
 振りおろそうとしたとき、聞き慣れた声を聞いた。ずっと遠くで、その声を出したのは、いつもわたしに餌をくれていた
人だった。なにかの囲いの影で、他の人間に押さえつけられながら叫んでいた。
「やめなさい! 人を傷つけたら、あなたが殺されるの!」
 わたしは前足を振り下ろし目の前の人間を引き裂いた。そのまま前足で押さえつけ、肩口に噛みつく。
 悲鳴が聞こえた。
 あの人間だ。
 わたしに餌をくれた人間。
 だけど言葉はわからない。
 おいしかった。
 あの人間も同じようにおいしいのだろうか。
523 :終わりの決定 2/3 [saga]:2014/04/30(水) 12:14:30.65 ID:m2WEvDNJ0
目の前に転がった人間は、もう言葉も出さず、動きもしなくなった。いつもの屍肉みたいに、それはそれはまずそうだった。
一瞬なのか。味という意味では違いはあまりないのかもしれない。ただわたしの体が、その一瞬を求めているのだ。
 わたしが食事をしている間に、騒がしかった人間達はみんなどこかへ隠れてしまった。仕方がないので、ゆっくりと探すことにした。
 ここは動物園という場所で、いろいろな動物たちがいる場所だというのは知っていた。だけど、歩いて眺めたことはなか
った。わたしのいた場所からは他の動物たちの檻は見えず、ただ匂いや泣き声だけを知っていたのだ。
 今は違う。
 この動物園を歩くと、わたしがどんな立場であったのかがよくわかる。
 虎の檻があった。
 地面に体を投げ出して、虚ろな目でわたしを見ている。あれは昨日までのわたしだ。わたしもただ視界に入るだけの小さな世界を眺めて生きていた。
 オランウータンが格子に掴みかかって騒いでいる。そちらの方に近づくとよけいにわめいた。何を考えているのだろう。わたしがどう映って
いるのだろう。そこから出たいのか。それともわたしに怯えているのか。
 ただからかっているだけかもしれない。
 あの中から出られないことを知っているのだから、あの中へ入れないことだってわかるはずだ。
 歩いていると獣の匂いに、人間の匂いが紛れているのがわかる。いろいろな建物へ隠れているのだろう。ただ、それができなかった人間もいる。
 何かよくわからない板の裏に人間が隠れているのがわかった。
 まだ小さい子供だろう。
 わたしは舌なめずりしてから近づいて行く。すぐに食べたいという気持ちと逃げて欲しいという気持ちがあった。結果が同じなら
ば労力は少ない方がいいのではないかと思うが、その過程に本質があるのではないかとも思う。
 少年が板の影からとびだした。
 全力で走っている。
 だけど遅い。
 当然のことだ。
 人間が、
 たとえ大人であろうと、
 わたしより早くなど走れはしない。
524 :終わりの決定 3/3 [saga]:2014/04/30(水) 12:15:26.54 ID:m2WEvDNJ0
 首をまわし、
 空をあおぐ。
 太陽がまぶしかった。
 前を向き、
 少年を見る。
 脚はもう命令を待っている。
 脳は既に命令を送っている。
 一瞬のラグ。
 少年はわずかすら進めていない。
 わたしは、
 ただ、
 地面を蹴った。
 すぐに追いつきそうだ。少しつまらないな、と思う。近づくにつれて、少年のかんだかい泣き声が余計に高く聞こえる。ただそんな声
よりも大きな音がわたしを貫いた。
 なにが起こった?
 混線している。
 痛みか?
 わたしは地面に横たわった。血の臭い。煙の臭い。痛み。悲しみ。青空は見えない。餌はどこへ。オランウータンの笑い声が聞こえる。
虎はわたしを見ているだろうか。
 眠ればいいのか?
 そうすれば、また、檻の中に戻ることができるのか?
 否、そうはならないだろう。これが終わりなのだ。先程、わたしが人間に与えたように、人間がわたしに終わりを与えたのだ。人間は、
わたしを食べるのだろうか。それならそれでいい。檻に入れておくよりは、理解できる。
 あの人間の声が聞こえた。
 わたしのことを呼んでいた言葉が聞こえた。
 言葉の意味は、わからない。 
525 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga]:2014/04/30(水) 12:16:19.93 ID:m2WEvDNJ0
「終わりの決定」は以上です。

続いて、しゃん@にゃん革氏「ふほへほげげのげ/絶望、そして文学が生まれた時」
526 :ふほへほげげのげ/絶望、そして文学が生まれた時 1/2 [saga]:2014/04/30(水) 12:17:48.01 ID:m2WEvDNJ0
(原文みたいなもの)
 ほげほげほほほげげ ほげげげ
 ほーげほーげ ほげほげほげげ
「おほっ うほっ ほげげげ ほほっうっほうほっほ」
「へへほげほ ほーげほーげ ははへげほ」
「うほっほ へげへげほ ほげほげほげほ」
 へへほげ ほげほげへげ へへほにほ
「ほほほげげげほげげ ほげげげのげ、BNSKほへ へげげのほへほげげげほーげげげ」
 へへほへほっへ ほげげげんげ へげげほーげげげ
 ふほへは ほげげんは へーほへへ
「んほへげげ ほげっげのげ へへほひほへひひへほ」
「へほ ふふんげほげほげ へーひひはー」
 ほげひほ ほげほげんほ ほげげのげ
 ほにはひへげへげ ほーへへ
 ほげほげお ほーげおちゃん
 ふはひへ ほへへへっへ
527 :422 [sage]:2014/04/30(水) 12:29:40.85 ID:dxQ7Pkdu0
ありがとうございます。
まさか転載してもらえるとは……

さっき私が超長いのをてきすとぽいに投下してしまったんですけど、それはさすがにちょっと辛いですよね?

自分の作品なので、自分で転載しようと思います。
#その前に、さすがに長すぎるとアレなので、まずはレス数を数えてから……
528 :ふほへほげげのげ/絶望、そして文学が生まれた時 2/2 [saga]:2014/04/30(水) 12:30:42.42 ID:m2WEvDNJ0
(現代語訳)
 鉄棒でもなく、渇望でもなく、ましてやうまい棒でもなかった。
 人類の黎明期、とある原人の群れが諍いを起こしていた。
「ちょっと待てや、こら。お前ら、人の餌場荒らすわ、メスにちょっかい出すわ、タチが悪すぎるんじ
ゃ。この大地溝帯から出て行けや。いい加減、これ以上辛抱できんぞ、おう」
「そんな。私ら森の奥の木の実を食べているだけですし、ましてやメスにちょっかい出すなど。ちょ、ち
ょっと一目ぼれしたと言いますか。あなたもオスなら分かるでしょう。お互い平和にいこうじゃないですか」
「じゃかましいんじゃ、ボケ。言い訳かますんなら、さっさと出ていけや。お前らみたいな身勝手な種族は
お荷物なんじゃ。北へ行けや、北へ。ここはわしらの土地じゃ。まだ迷惑かけるつもりなら、覚悟せえよ」
 北の土地は荒涼とし、餌も少ない。飢えた獣が徘徊し、希望の一欠片もない場所だった。
「おうよ、お頭に逆らったら、ただじゃすまんぞ。俺ら、ぶんどったり寝取ったりしたら承知しないから、
略してBNSKじゃ。俺らを怒らせたら、アフリカやユーラシア程度ですむと思うなよ。ぐだぐだしとったら、
アメリカ大陸の最南端まで追いかけ回したるわ」
 こうして一つの種族が大地溝帯から追放され、やがてアフリカ大陸からも遁走することとなった。
 しかし、お頭は彼らが憎くて追い出したのではない。この瞬間こそ、文学の誕生だ。絶望からの再起。彼
らが立ち直ることを願うお頭の胸中には、葛藤という新たな感情が芽生えていた。
「しかし、お頭、あれですな。あいつら、上手く乗り越えてくれるんやろか。なんやもう、俺、こんな気持
ちはじめてや。なんで他人の心配しとるんやろ」
「さあ、それこそ神のみぞ知るちゅーやっちゃ。さて、わしらも狩りに出掛けるぞ。うちのカミさん、腹に子
供がおるせいか、獲物少ないとめっちゃこわいねん」
 日差しが強くなったブッシュに、影が二つ。その彼方に、象の群れが歩いていた。
 こんなちっぽけな存在なのに、どうしてわしら子孫をつくっとるんやろ。
 またしても考えたこともない疑問が頭をよぎる。
 それを振り払うかのように、地平線に向かって二つの影は走り出していた。
529 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [sage]:2014/04/30(水) 12:36:10.66 ID:m2WEvDNJ0
「ふほへほげげのげ/絶望、そして文学が生まれた時」は以上です。

>>527
改行等でミスるかもしれませんし、ご自身で転載していただいた方が確実かもしれません。
とりあえず私は様子を見ようと思います。
530 :愛と装いを混ぜ込んで 0/25 ◆xUD0NieIUY [sagasage]:2014/04/30(水) 12:49:08.85 ID:dxQ7Pkduo
>>529

ありがとうございます。
あと、途中で割り込んでしまって申し訳ありません。
てきすとぽいで読んでいたとき、まさかふほへほげげのげの話に続きがあるとは思っていなかった・・・・・・

25レスだったので転載しようかどうか迷いましたが、せっかくなので転載しておこうと思います。
531 :愛と装いを混ぜ込んで 1/25 ◆xUD0NieIUY [sagasage]:2014/04/30(水) 12:49:43.44 ID:dxQ7Pkduo
 本屋で参考書を買った帰り道、アイツに遭遇した。最悪だ。
 女の人を連れていた。私より背が低い。そのくせ意外と胸があり、まるでCMの人みたいな綺麗な髪をしている。
 誰だろうこの人。
 アイツが口を動かした。「よう」って言ってる。
 なんだよ、「よう」って。そんなこと家で一度も言ったことないじゃない。
 私が無視して歩いていると、アイツと女の人も後をついてきた。
 どうしてついてくるの?
 そりゃアイツと私は同じ家に住んでいるんだから仕方ないかもしれないけれど……どうして女の人までついてくるの? もしかして
家に連れ込むつもり? 勘弁してよ!
「ねえ奏(かなで)くん、知り合い?」
 意外と、見た目よりは図々しい女の人の声が聞こえてきた。
「ええ、妹?!」
 エミリーの歌声に、悲鳴のような甲高い声が差し込んでくる。
「奏くん妹がいるなんて聞いてないよ!」
「どうして言わないの?」
「私はリーダーなのよ。メンバーのことはちゃんと把握しておかなきゃ!」
 うるさい。うるさいうるさい。
 どうしてこのヘッドホンはあの人の声をキャンセリングしてくれないの? アイツの声はシャットアウトするくせに――
 私は駆け出した。逃げているみたいで嫌だったけど、それ以上あの場所にいたくなかった。
 結局アイツはあの人を家に連れ込むことはなかった。どうやらそういう関係ではないみたい。毎日でもないみたいだし。
 次にふたりを見かけたとき――警戒していたから鉢合わせする前に道を避けたのだが、女の人が肩にギターケースを担いでいること
に気がついた。あの人がバンドのリーダーなんだ。アイツ、高校に入ってからしばらくして軽音楽部に入ったって聞いていたから。こ
の目で見るまで本当に活動しているのかどうか信じられなかったけど……女の人と一緒に、バンド組んでいるんだ。ふーん、別にどう
でもいい。けど、不潔って気がする。ふつう男子と組むんじゃないの? 本当にアイツは何を考えているのかよく分からない。

「ねえ楓」
「なに?」
「うわ、機嫌悪い」
 翠が両手を顔の前でぎゅっとして、怖がるふりをする。
「別に機嫌悪くない」
532 :愛と装いを混ぜ込んで 2/25 ◆xUD0NieIUY [sagasage]:2014/04/30(水) 12:50:12.50 ID:dxQ7Pkduo
「ウソ、氷の女王様みたいな目をしているよ」
「氷の女王様なんて見たことないくせに」
 私がそう吐き捨てると、翠はやれやれというポーズをする。
「また弟くんのこと考えていたの?」
「考えてない!」
「ウソ。だって楓が機嫌悪くなるのって、いつも弟くんのことばかりじゃない」
「別に機嫌は悪くないし、アイツのことだって考えてない」
 私は翠の顔から目を逸らしそう言うと、わざと音を鳴らして席から立ち上がった。
「どこに行くの?」
「移動教室。だから呼びに来たんでしょ?」
 午後は二時間連続でパソコンの授業だったのだ。
 教室を出て、翠と並んで廊下を歩く。
 道行く道を人が避けていった。そんなに私は怖い顔をしているだろうか。
 階段を降りて、中庭に沿ったところで四人目の男子が道を譲ってきて、
「もう、楓。いい加減にしとかないと誰も相手してくれなくなるよ?」
「え?」
 ドキリとして顔を横に向けると、翠が眉をへの字にしていた。
「せっかく可愛い顔しているのにさあ……男子たち誰も怖がって楓に近づかないじゃない」
「なんだ、そんなことか」
 本当にそんなことだった。
 だけど翠はその反応に不満なようで、
「『なんだ、そんなことか』じゃないでしょ! 私たちもう高校二年生なんだよ?」
 しかも秋! と翠は付け加える。
「今どき中学生どころか小学生で付き合っているのも当たり前なんだから! どんどん周りに乗り遅れちゃうよ?」
「別に乗り遅れても……」
「何言っているのさ! そのうちに花の高校生時代は過ぎていき、大学生、社会人……終いには三十路に四十路になって一生独身で過
ごすことになるんだよ? いいの? それで!」
「いや、それはさすがに嫌だけど……」
 さすがに私でも一生独り身で過ごすつもりはない。何がさすがなのか分からないけれど。けど将来「これ!」という人に出会えたと
したら、私は躊躇なく添い遂げるつもりだ。そんな人現れるかどうか知らないし、恥ずかしいから絶対に口にしないけど。
533 :愛と装いを混ぜ込んで 3/25 ◆xUD0NieIUY [sagasage]:2014/04/30(水) 12:51:24.90 ID:dxQ7Pkduo
「じゃあもっとこっちからアクション起こさないと! 楓は有名人なんだよ? 陸上界のホープなんだよ? みんなが話しかけやすい
ように下に降りてあげないと」
「うるさいなあ。そういう翠だって彼氏とかいないんでしょ」
「たしかに今はいないけど! 楓と違って恋愛経験ゼロじゃないから!」
「えっ……」
 私は言葉を失った。
「み、翠、付き合ったことあるの……?」
「おお、意外そうだなあ楓さん!」
 翠はトレードマークのポニーテールを揺らして、まるで舞台役者のように大袈裟に言った。
「お仲間だと思っていたでしょ? 残念でしたー!」
「ちょ、ちょっと待ってよ!」
 思わず縋り付くように言ってしまった。
「ウソでしょ? だって翠、今までそんなこと一度も言ったことないじゃない」
「聞いてこなかったからね」
「聞いてこなかったからって……」
 あっけらかんと言う翠に唖然とする。
「だって楓ってそういう話好きじゃなかったでしょ? だから言い出しにくかったんだよ」
 うっ、と唸りそうになった。たしかに私が翠の立場なら言い出しにくかったかも……
 けど、けど、
「それなら今だって言わなくていいのに……」
「楓さんの頑なさに、翠は少し心配になってきたわけですよ」
 翠が教科書と筆記具を抱え直して、
「楓もそろそろ弟くん離れしなきゃなあと思っていたわけです」
「なんでそこでアイツが出てくるのよ……」
 結局そこに行き着くのか、と私は溜息をついた。
「だって楓、男の子といえばいつも弟くんのことばっかり」
「それは、嫌いだからよ」
 言って気分が悪くなる言葉だった。
 嫌い、嫌い。自分に嫌いな人がいるというだけで小さな人間のような気がしてくる。
「けど嫌よ嫌よも好きのうちっていうよ?」
534 :愛と装いを混ぜ込んで 4/25 ◆xUD0NieIUY [sagasage]:2014/04/30(水) 12:52:03.69 ID:dxQ7Pkduo
 翠にかかればどんな感情も良い方向に向いてしまうらしい。
 話にならない、という風に私は空いているほうの手を振った。
「そんなことあるわけないじゃん。それにさ翠、勘違いしているけど、私の言う嫌いは無関心の嫌いだから。別にアイツが何してよう
がどうでもいいの。気に障ることをしてこなければね」
「気に障ることって、例えばどんなこと?」
「例えばアイツさ、この前……」
 ハッとする。
「翠!」
「いや、今のは私悪くないと思うんだけど……」
「うるさいうるさい。もうアイツの話なんて金輪際口にしないで」
 私はそう吐き捨てて足早にパソコン室へ急ぐと、背後から翠の溜息が聞こえた。
 もう知らない、翠の横顔だって見ない。
「ねえ、楓ちゃんの弟って青葉高校に通っているんだよね?」
 しかし私が翠から離れても、アイツの話題は私から離れてくれなかった。どうしてアイツは今日に限ってこんなにも人気なのか。
「あのね、実はお願いがあって……」
 パソコン室に入ってすぐ、私に話しかけてきたメガネの女の子・仁科さんは何故かモジモジしていた。いつもモジモジしているけど、
そのモジモジに不穏さを感じてしまうのは何故だろうか。
 ああ、もう。
「ムリムリ。楓、弟くんのこと嫌いらしいよー?」
「別に嫌いじゃない!」
 言ったことに気づいて口を塞いだのだが時すでに遅しで――目の前には驚いて体をビクつかせる仁科さんと、「やっぱり」と今にも
言いたげな翠の表情。
 顔をモニターのほうに向けてから、
「別に嫌いじゃないけど、好きでもないっていうか……あえて言うなら無関心……」
 ポツリと呟いたけど、モニタに映っている自分の顔が情けなくて。
 どことなく気まずい空気になったなあと思っていると、仁科さんが慌てて頭を下げてきた。
「ごめんなさい! 私、そんな複雑だとは思ってなくて……」
「いや、別に複雑でも何でもないの。ただ無関心というだけで」
「でも……」
「本当に何でもないから、ね? ちょっと最近話してないだけだから。思春期にはよくあるじゃない、ほら」
535 :愛と装いを混ぜ込んで 5/25 ◆xUD0NieIUY [sagasage]:2014/04/30(水) 12:52:38.83 ID:dxQ7Pkduo
 何だか必死に言い訳してしまっているけど、私は仁科さんが苦手だ。決して嫌いというわけじゃないんだけど、彼女は何でもかんで
も真剣に取り過ぎるところがある。もう少し翠みたく無神経になってくれてもいいのに……
「じゃあ弟くんとの仲は悪いわけじゃないんだ」
 そして無神経の権化たる翠が口を差し込んでくる。
「翠うるさい」
「じゃあ仁科さん、言ってみたら?」
 え? と仁科さんが翠のほうを見る。
「だって仁科さん、楓にお願いしたいことがあったんでしょ? 弟くん関係のことで」
 余計なことを、と翠をひと睨みするが意に介さず。
 でも、と怯んでいる仁科さんを「本当にそれでいいの?」「ここで逃すと次はないんだよ?」とあの手この手で籠絡していく。頑張
れ仁科さん、と私は祈っていたけれど、どうやらそれは違う方向へ向いてしまったようで、
「楓ちゃん!」と力強く私に向けて声を発したのだった。
「なに?」
「青葉高校って来週文化祭あるでしょ?」
「えっと……うん」
 たしかお母さんがそんなことを言っていた気がする。
「だからその、弟くんに頼んでチケットを貰えないかなあ、なんて……」
「ええっ」
 なんだそれは。まさか私がそんなことを頼まれるなんて青天の霹靂だ。しかも仁科さんまで影響を受けて「弟くん」なんて言ってるし。
「おおーっ」と歓声を上げる翠。おい、全てお前のせいだぞ。
「で、楓さんの返答はどうなのですか?」
「どうって……」
「翠的にこれはナイスアイデアだと思うのですよ。青葉高校の文化祭といえば昔から大々的にやることで有名! だけど一昨年からチ
ケット制になっちゃったから遊びに行けなかったんだよねー。だけど楓さんにはその青葉高校に通う弟くんがいた! そうだ! 弟く
んに頼めば文化祭に行けるじゃないか!」
 すらすらと言葉を並べる翠。絶対に知ってただろ。
「文化祭行きたいね、仁科さん」
「うん、行きたい……」
 仁科さんも乗せられて、何だかそういうモードになっちゃってるし。
「ああ、もう!」
536 :愛と装いを混ぜ込んで 6/25 ◆xUD0NieIUY [sagasage]:2014/04/30(水) 12:53:22.88 ID:dxQ7Pkduo
 私は全てがどうでも良くなった。

「文化祭、チケット四枚」
「いるの?」
「当たり前じゃん」
「明日渡すよ」
 そう返されたとき、もう明日なんて来るな、と私は思った。
 どうしてこんな思いをしなきゃならないんだろう。私のほうが上なのに、上なのに。
 明日もアイツと会話しなきゃいけないなんてバツが悪いにもほどがある。
 だから私は家の中でずっとヘッドホンを付けてやった。エミリーの曲を流して。
 エミリーの曲はポップで、パンクだ。
 私は現代音楽には常にポップ性がなければならないと考えている。大衆に受け入れられるポップさと、激しさが一体でなければ――
「楓、食べるときぐらいヘッドホン外したらどうなの?」
「今ちょうど良いところなの!」
 さすがに日本の食卓とパンクが合わないこは私にも分かっていたけど……だけどこの時間が、家の中で最も長くアイツと過ごす時間
なのだ。このときばかりは気を抜くわけにはいかない。
 そうして食事を終えお風呂に入った後は、部屋に引きこもりアイツと相対せずに過ごせているけど――本来の目的を果たせていない
ことは私も分かっている。いいんだ、アイツのほうが頭を使えば。私はそんな言い訳をしつつ、机に伏せながら目を閉じて、ヘッドホ
ンから流れてくる音に耳を傾ける。曲はセカンドアルバムの中頃に突入していた。エミリーは日本人の歌手と違って、バラードが多い
ほうじゃないけれど……いま流れている曲はエミリーらしくないと批判されたけど、反面多くの人にも絶賛された曲だ。私は後者の側
に立っている。たしかにエミリーは擦れているけど、それは綺麗さの現れなんだって。今にも壊れてしまいそうなぐらい綺麗だから、
擦れるしかなかったんだって私は思っている。歌詞は英語だけど一度調べたことがあって、遠く離れてしまった人を想う曲だ。だから
エミリーらしくないって批判されているけど……たまには自分らしさを捨てたくなるときだってあるはずなんだよ。
 私も囁くように口を開こうとして――
 肩に手が置かれたのはそのときだった。
 私は慌ててヘッドホンを外して振り返る。
 アイツが、立っていた。
「触らないでよ!」
 言ってみたけどアイツは困ったような顔をするだけで、私は目を逸らして前を向いた。そして再びヘッドホンを被ろうとして、
「チケット」
537 :愛と装いを混ぜ込んで 7/25 ◆xUD0NieIUY [sagasage]:2014/04/30(水) 12:54:07.92 ID:dxQ7Pkduo
 ハッとして振り返ると、片手でチケットを四枚差し出していた。
「用があるならメールしなさいよ!」
 チケットをぶん取りながらそう言うと、
「いや、したけど」
「え?」
 返ってきた言葉に唖然として、ヘッドホンのプラグが繋がっている先に視線を移す。スマホの通知画面に、アイツの名前が表示され
ていた。
「もう、うるさいうるさい!」
 ヘッドホンから流れてくるエミリーの歌すら煩わしくなり、スマホからプラグを引き抜く。音楽の再生が止まってひどく静かだ。ア
イツも私も動かず、時間が止まったみたいになって、
「もう用は済んだでしょ。出ていってよ」
「ああ」
 アイツがそう返事して、ドアを開ける音が聞こえて――閉まった。
 震えが止まらなかった。中学のころ大会に出場して、体中が自分のものじゃなくなったようなときに似ていた。あのときはどうした
って――
 震えを止めるために、深呼吸を一回、二回……
「なあ」
 アイツの声が聞こえて、息が詰まりそうになる。
「まだいたの?」
 思わず振り向いて、アイツと目が合った。水晶玉みたいな瞳をしていた。覗くと私の顔が映って、小さな頃はずっと、ずっとその瞳
を覗いていたのだった。お人形みたいで、双子なのに私とは似ても似つかない。
 私は負けるのが嫌で、その瞳を呪いをかけるぐらいにじっと睨んでやった。アイツが先に目を逸らしたので勝ったと思った。
「文化祭さ、あの翠って子と行くの?」
「アンタ翠のこと好きなの?」と言ってやる。
「いや、別に」とアイツは言って、「楓の友達、その子以外知らないから」
「……翠に仁科さん、それに隣のクラスの沢口さんっていう子。その三人と行くの」
「そっか」
 アイツはポツリとそう呟いて――奏とまともに話したのは随分久しぶりだった。アイツの口から私の名前を聞いたのも。普段はあれ
だけいがみ合っているのに不思議だった。もしかしたら私が感じていることは大したことないのかもしれないと思い、
「あのさ」
538 :愛と装いを混ぜ込んで 8/25 ◆xUD0NieIUY [sagasage]:2014/04/30(水) 12:55:02.71 ID:dxQ7Pkduo
「……なに?」
 アイツの言葉に耳を傾けてしまった。
「俺、文化祭でライブやるんだけど」
 それを聞いた瞬間、私の中で熱が引いていくのが分かった。周りの景色の何もかもが熱を失って、考えていることが全部馬鹿らしい
と思えるような。
「それって、あの女の人とするんでしょ?」
「女の人? ……ああ、うん」
 アイツは少し考えたけど、どうやら思い当たったようで、
「行かない」と私は言った。
「私がどうしてアンタのライブになんか行かなきゃいけないの?」
 何も考えなくたって、そんな言葉が口から出ていく。
「私はアンタのことも嫌いだし、あの人のことも嫌いなの」
 声を出すたびにアイツの顔を見れなくなり、視線を下げてしまう。
「早く出ていってよ」
 私は机のほうに向くと、ヘッドホンを被りスマホにプラグを差し込んだ。通知画面にアイツの名前が残っていたけど無視して――ミ
ュージックプレイヤーを開いて再生を押せば、エミリーの曲が流れてくる。さっきの途中だったけど、巻き戻す気にはならず。机に伏
せて目を閉じると、私は完全に外部から遮断された。さっきみたいにアイツに肩とか叩かれればどうしようもないけれど、今度は叩い
てくることはなかった。エミリーの歌声は、そのうち私を違う世界に誘ってくれる。

 ―*―*―*―

「ちゃんと私のこと応援してね、奏!」
「分かってるよ、楓」
 奏はそう言って私の肩をポンポンと叩いたけど、全然分かっていない。
 だって今の私は、緊張で体が崩れてしまいそうなくらい不安なのだ! 湯豆腐で豆腐がぐずぐずになった感じって言えば分かるかな
……すんでのところで形を保っているというか、豆腐が無理やり人の形をしているみたい。自分でも何を言っているのか意味が分から
ないよ!
「大丈夫だって。まだ時間あるでしょ? いつもみたいに音楽聞いておけば?」
「うん……」
 オリンピックのマラソンで金メダルを取った選手がさ、ウォーミングアップ中にずっと音楽を聴いていたらしいよ。楓だって走る前
539 :愛と装いを混ぜ込んで 9/25 ◆xUD0NieIUY [sagasage]:2014/04/30(水) 12:55:52.94 ID:dxQ7Pkduo
に音楽を聴けば、少しは緊張しなくなるんじゃないかな。
 奏がある日そんなことを言って、それを聞いたお父さんが誕生日にヘッドホンを買ってきた。こんな高いのじゃなくても、普通のイ
ヤホンで良かったのに……だけど実際に使ってみると、イヤホンとは雲泥の差だった。イヤホンは耳の中で音を鳴らしているように感
じるけど、お父さんが買ってきたヘッドホンは、まるで近くで本当に演奏しているみたい。高音は伸びがあって低音は広がりがあって、
ずっと付けていると音楽の世界に吸い込まれそうになるのだけど――このヘッドホンには一つ欠点があった。奏の声が聴こえなくなる
のだ。ノイズキャンセリング機能搭載だけど、危ないから人の声は聞こえるようになっているはずなのに……
「奏。手を握って、お願い」
「分かったよ」
 苦笑しつつ奏は私の手を握る。奏の手は私の手よりも大きく、少しだけだけど男の人の手をしていた。前はそんなことなかったはず
なのに……目は私は少しキツくて、奏は吸い込まれそうな水晶玉の瞳をしている。その他にも頬の膨らみだとかところどころ違うとこ
ろがあって、けれど同じ格好をしていれば、私たちは完全な双子だと思われていた。
 今はどうなんだろう。
 奏の横顔を覗いていると、気がついたのか奏が微笑んできて――恥ずかしくなった私は目を逸らして、ヘッドホンから流れてくる音
楽に耳を傾けた。エミリーの曲だ。エミリーは今年デビューした歌手だけど、ファーストアルバムがいきなり世界で一千万枚売れた。
ファッションは不良みたいだったけど独特で、日本でも真似する人が続出したぐらいだ。カッコよくて私も憧れていたけど……何より
も惹かれたのは歌声だった。とても透き通って、泣きたくなりそうな声をしている。何もない崖で海に向かって一人で歌っているみた
いに。その声を聴いていると私は一人だけの世界に突入していってしまうけど、今は奏がいた。声は聴こえず、目を閉じているから姿
だって見えないけれど。手が繋がっている。私が少し力を込めると、ギュッと握り返してくれる。そうしていると、エミリーが崖で歌
っている背後で、私たちふたりだけが体育座りしてずっと耳を傾けているみたいだった。日が沈んで、日が昇って、水面に光が反射し
て、また日が沈んで……
 ポンポン、と繋いでいる手を叩かれた。
「時間だよ」

 競技場に出てみると、やっぱり別世界みたいだった。そんなに席が埋まっているわけじゃないのに、周囲をぐるっと囲んでいる二階
の観客席が反り返ってきて、押し潰されてしまいそうな圧迫感がある。
 私は昨日、この圧迫感に負けて上手く力が出せなかったのだ。タイムはボロボロ、決勝に残れたのが奇跡なくらいだった。それでも、
中学一年生で決勝に残れたのは凄いことらしいのだけど……
 奏の姿を探していると、観客席の一番前でお父さんお母さんと三人でいた。今日は家族全員で応援に来てくれているのだ。手を振っ
てくれているけど、さっきまで隣にいたとは思えないぐらい、その姿が小さく見える。ひとりなんだって思う。どれだけ奏がそばにい
ても、私はひとりで走らなきゃいけないんだ。
540 :愛と装いを混ぜ込んで 10/25 ◆xUD0NieIUY [sagasage]:2014/04/30(水) 12:56:35.82 ID:dxQ7Pkduo
 場内アナウンスが聞こえる。ひとりひとり選手を紹介していく。これがテレビで放送されるなんて嘘みたいだ。私の番になる。声を
上げて「はい!」なんて言ってしまう。隣の人に笑われた。最悪だ。もう走りたくない。
「楓、頑張れー!」
 声が聞こえた。私がそちらのほうを振り向くと、相変わらず奏が手を振っている。一生懸命というより、微笑むような感じで。
 私は覚悟を決めた。
 銃声が鳴り、スタートした。
 私は一番前に出た。長距離走はペース配分が重要だけど、私は自分のペースで走りたい。後続との差がぐんぐん開いていく。振り返
らなくても分かる。
 走っているあいだ、私はいろんなことを考えた。
 奏のことだ。
 奏は私より全然勉強できて、運動神経も良くて、足だって奏のほうが速かった。髪だって柔らかいし、同じ格好をすると奏のほうが
女の子っぽかったし、いつだって奏は私の前を行っていた。私はむかし歌手を夢見ていたことがあったけれど、奏のほうが歌が上手だ
ったし。
 だけど中学校入学時に体力測定があり、そのときの長距離走で先生に「すごい記録だ!」と褒められて……先生は陸上部の顧問で、
そのまま勧められる形で陸上部に入ったのだ。最初は苦しかったけど記録はぐんぐん伸びて、いつの間にか長距離走で奏に勝てるよう
になった。初めて勝ったときのことは今でも覚えている。はしゃぎにはしゃいで、こんなに嬉しいことがあるのかっていうくらいはし
ゃぎ回ったのだから。
 いま奏はきっと、私のことを見ていた。私はずっとずっと、奏が活躍する姿を見ているだけだったのに。作文コンクールで奏が賞を
取ったときだって、先生に褒められているときだって、私はただ見ているだけで、なんで奏だけこんなにも出来るんだろうって。奏の
半分でも私に才能をくれれば、きっと、きっと嫉妬することなんてなかったはずなのに。
 だけど私にだって才能があったんだ。この大会に勝って、勝って、全国大会に勝ち進むんだ。ちゃんと結果を残したら、そうしたら
初めて奏と向き合える気がする。隣に立てる気がする。
 私は走った。無我夢中だった。調子が良い。まるで風に乗っているみたいに体が前に運ばれていく。空気の中を泳いでいるみたいに。
誰も追いつけない!
「やった!」
 結局一度も抜かれることなくゴールに辿り着き、勝ったんだと思った。振り返ると他の人たちは遥か後方にいた。もしかしてレース
はまだ続いている? なんて思ったけど、みんなが拍手する音が聞こえて、係員の人に誘導されて、やっぱり勝ったんだって。
「すごいぞ深山!」
 何か事件が起きたみたいに先生が駆け寄ってきて、
「見ろ! 信じられない記録だ!」
541 :愛と装いを混ぜ込んで 11/25 ◆xUD0NieIUY [sagasage]:2014/04/30(水) 12:57:22.92 ID:dxQ7Pkduo
 見つめた先の掲示板に表示されていたタイムは、びっくりして腰が抜けちゃいそうなくらいすごい記録だった。
「これだと全国制覇も夢じゃない!」
 先生の夢みたいな言葉に私は圧倒されて、だけど周りの人もみんな驚いているから、決して嘘じゃないんだって思って。
 私にもちゃんと才能はあったんだ。奏にも負けないぐらい、すごい才能が……
 私は本当に腰が抜けた。なんだか涙がボロボロ出てきて、周りに人がいるにもかかわらずわんわんと泣いてしまった。
「おいおい、泣くにはまだ早いだろ。この後には全国大会が控えているんだぞ」
「だって先生……」
 奏に、お父さんとお母さんの姿が見えた。観客席から降りてきてくれたみたいだ。
「こんな勝ち方いままで見たことないぞ! すごいじゃないか楓!」
「あんなに速いのならどうして緊張したりするのよ……」
 ふたりとも、お母さんは微妙な褒め方だけど、私が勝ったことを喜んでくれているみたいだった。こんなこと初めてだ。
 あとは奏が、私のことを褒めてくれたら……
「奏!」
 思わず私はその名前を呼んだ。お父さんとお母さんが空気を読んで前を開けてくれて、奏の顔が見えて。
 奏は、笑っていなかった。
 表面上は笑っているけど、無理やりそうしている、みたいな表情。
 奏は私の活躍を喜んではくれていなかった。
 そのとき私の中で何かが壊れたのだ。

 ―*―*―*―

 ――嫌な夢を見た。
 二度と思い出したくない。それなのに、お風呂のタイルの間にこびりついているカビみたいに、いつまでも忘れさせてくれない。
 本当に嫌な夢だった。
 昨日よりももっとアイツに会いたくなくなった私は、朝早く外に走りに出掛けた。休日で朝練がない日でもちゃんと毎日走っている
けれど、それよりももっと早く。書き置きを残しておいたから、みんな心配しないはずだ。
 私が家から持ってきたものといえば、スマホとヘッドホンだけ。出来る限り身軽でいたかった。エミリーの歌を聴いて走っていると
きだけは何も考えずにいられる気がする。
 ずっと走っていると、いつの間にか朝日が昇っていた。最近は日の出が遅くなり、すっかり秋だという感じがする。早朝にジョギン
グを始めてからは、それを目に見えて感じることができる。
542 :愛と装いを混ぜ込んで 12/25 ◆xUD0NieIUY [sagasage]:2014/04/30(水) 12:57:59.98 ID:dxQ7Pkduo
 毎日ジョギングしているとどうしてもコースが決まってしまうけれど、いつもとは違う道を行くのが好きだった。普段とは違う街並
みが見られれば、興味を惹かれて普段よりも速く走ることができる気がする。だから今日は思いっきり違う道を進んでやろうと思った。
出来る限り遠く、遠くへ――
(さすがに遠くに来すぎちゃったかな……)
 スマホの地図アプリで位置を確かめて思った。これだと家に帰るまでに一時間近くかかる。一時間くらい走るのは平気だけど、ここ
まで休まず二時間くらい走っていた。ダラダラ走るのは良くないのに。それに水分だって全然取っていない。
 少しぼうっとしてきたので近くの公園のベンチに座ると、どっと疲れが出てきた。休まないほうが良かったかもしれない。エミリー
の歌はとっくの昔に二週目に突入している。立ち上がる気がせずベンチに体を預けていると、
「楓ちゃん?」
 その声が誰だか思い出せていれば、きっと知らないふりをしていただろうけど。
 私はほとんど何も考えず顔を上げてしまった。

「いや、あの、本当に結構です」
「そんなこと言って。倒れられたほうが逆に迷惑なんだよ? ささっ、飲んじゃって」
「でも……」
 私に声をかけたのはあの人だった。
 アイツと一緒に歩いていた女の人。浅海(あさみ)和音(かずね)さんというらしい。
「奏くんや楓ちゃんと苗字が正反対なんだよね。面白いでしょ?」
 そんな風にして私の思考を先回りして言ってきたこの人は、私が何故こんなところにいるのかと聞いてきた。家からずっと走ってき
たのだというと素直に驚いて――そこから水分はちゃんと取っているのかとかそんな話になって、無理やり飲み物を奢られるハメにな
ったのだ。
「ほらほら、早く早く。こうなると私はしつこいわよ? 飲むまでここを一歩たりとも離れさせないんだから」
 寄越されたスポーツドリンクに仕方なく口付けると、体中に水分が一気に浸透した気がした。思っていた以上に体は水分を渇望して
いたらしい。
「ありがとうございます。あの、どうやってお礼したらいいか」
「別にいいよ? 私が勝手に奢っただけだし」
「でも……」
「楓ちゃんって、思っていたより礼儀正しい子なんだね」
「え?」
 思いがけない言葉に声を上げる。
543 :愛と装いを混ぜ込んで 13/25 ◆xUD0NieIUY [sagasage]:2014/04/30(水) 12:58:52.90 ID:dxQ7Pkduo
「だって楓ちゃんって、もっと怖い人みたいな気がしたの。そしたら結構、こうやって話してくれるんだなあって」
 あなたは思っていたよりフレンドリー過ぎるけどね、と私は思った。
 落ち着いてそうな人という第一印象はとっくの昔に崩れていたけれど、いまの浅海さんは髪を後ろで括りポニーテールになっていて、
幾分スポーティな感じだ。弾けるような笑顔で、性格通り明るい人という感じがある。
「どうしても気になるって言うのなら、奏くん経由でお金を返してくれればいいよ?」
「なっ……!」
 思わぬ言葉にあんぐりしていると、浅海さんは「あははっ」と笑った。
 やっぱりこの人は嫌いだ。
「あの、ありがとうございました。これで失礼します」と言って立ち去ろうとすると、
「ごめんごめん、待って。お礼の話」
 そう言って私のことを引き留めて、
「少しお話しよう? 私あなたと話したいと思っていたの」
 私が思っていたこととは真逆のことを言った。
 釈然としない気分のまま私は再びベンチに腰を下ろす。
「奏くんに聞いたんだけど、奏くんと楓ちゃんは双子なんだよね?」
「そうですけど……」
 そう答えると、浅海さんは私の顔をじっと見つめてきた。眉毛が整っていて睫毛も長く、本当に綺麗な顔をしていて思わずたじろい
でしまう。
「たしかに似ているわね」
「え?」
「うん、これは確かに双子だなあって感じ」
「どの辺りがですか?」
 私は素で聞いた。
「リアクション」と浅海さんは言って、
「困るとすぐ瞼を閉じ加減にして目を逸らすんだ。そういうところそっくり」
 私はハッとして浅海さんから顔を背ける。
 アイツの癖だ。
 言われるまではっきり意識したことなかったけど、たしかに――
「結構ちゃんと観察できているでしょ? 奏くんのこと」
 ぼとん、と心の泉に重たくて大きいものが落ちた気がした。再び目を向けると浅海さんは笑っていた。
544 :愛と装いを混ぜ込んで 14/25 ◆xUD0NieIUY [sagasage]:2014/04/30(水) 12:59:46.15 ID:dxQ7Pkduo
「浅海さんはどうしてアイツを勧誘したんですか?」
「……さすが楓ちゃん、勘が良いね」
「え?」
 意味が分からず疑問符を口にすると、
「そうだよ。私が奏くんを勧誘したんだ」
 浅海さんは背筋を伸ばして遠くを見つめる。それを見て私の心の泉に、また何か重いものがぼとんと落ちた気がした。
 何だろう、この人。
「ある日中庭を歩いているとね、鼻歌を歌っている奏くんとすれ違ったの」
 浅海さんが言った。
「ついつい口をついて出ちゃったという感じでね。けどそれがすごくサマになっている気がしたから、『それなんて歌?』って声をか
けてみたの。だけど奏くんは全然教えてくれなくて。押し問答しているうちに、『もう鼻歌のことなんてどうでもいいわ、ウチに来な
さい!』って奏くんを誘ったの」
 この人が新しい言葉を喋るうちに、私の内に黒い何かがどんどん落ちていく。ぼとん、ぼとん、ってひっきりなしに音が鳴って。
「けどやっぱり、あの歌が何だったか気になるわ。また今度聞いてみようかしら」
「浅海さんは今年で高校卒業ですよね」
 とにかくこの人の言動を止めたいと思って、私はそんなことを口にした。
「私と奏はいま、二年生だから。アイツとは部活動でやっているんですよね。高校を卒業しても続けていくんですか?」
 正面を向いて話す私の前に雀が降りて来て、トントントン、と軽やかなステップを踏んだ。
 私とは関係なしに世界は回るみたいだ。
「続けていくよ。たとえ奏くんがいなくても」
 私はその言葉に思わず引きつけられる。
「奏くんとは関係なしに、音楽関係の仕事に就くのは私の夢だから」
 遠く過去を見ていると思っていた瞳は、未来も見ていたようだった。
「私ね、高校卒業したら音大に行くの」
 浅海さんが両手を頬に当てながら語る。
「推薦が一枠だけあってね? 受けてみたら受かっちゃった」
 そのときのことを思い出したのか悪戯っぽく笑って、
「だからね、再チャレンジしてみるんだ」
「再チャレンジ?」
 その言葉も気になるけれど、もっと気になったのは別のことで。
545 :愛と装いを混ぜ込んで 15/25 ◆xUD0NieIUY [sagasage]:2014/04/30(水) 13:00:23.85 ID:dxQ7Pkduo
「それって、バンドに関係あるんですか?」
「ん?」
「いや、あの、どう言ったらいいか分からないんですけど、大学でやる音楽って私たちが普段聴いているものとは違う気がして。クラ
シックとか、そっちのほうになるのかなあって……」
「うん、そっち方面だよ」
 あっけらかんと浅海さんは言った。
「私中学生まではずっとそっち方面の音楽ばかりやっていてね。またやろうかなって」
「そんな、じゃあ奏とは全然関係ないじゃないですか!」
 意味が分からなかった。
 私は睨むように浅海さんを見つめたけど、浅海さんは微笑みの表情を崩さなかった。
「……ギターしかやったことない奴が音楽を語るな」
「え?」
 浅海さんの口調がとつぜん変わったので、私は戸惑った。
 何それ、誰の言葉?
「全然有名でもなんでもないネットの書き込みなんだけどね」
 浅海さんは苦笑を浮かべながら口にして、
「ギターしかやったことない奴なんか見識が狭いから、音楽を語る資格なんてないんだって。極論だと思ったけど、一理あるなあって
思ったの。だってテレビの音楽番組を見ても、ボーカルと、ギターと、ベースと、ドラム。だけどそれだけじゃないよね? キーボー
ドはもちろん、ピアノやヴァイオリンだって入れるし、オーケストラを雇ったりして。典型的なバンドサウンドって少ないじゃない。
たまにそれを嫌って、『俺たちはバンドサウンドで行くんだー』ていう人たちもいるけれど。けどそれって、他の音もあるってことを
知った上でやって意味があると思うんだ。私はリーダーだからね。もっといろんな音楽に触れなきゃいけない。そして曲を作ってね、
奏くんに歌詞をつけてもらう……って、奏くんがいなかったらって話をしてたんだっけ? まあ奏くんがいなくても……けど、勿体無
いなあ。奏くんみたいな歌詞を付けてくれる人ってなかなかいないんだもの。とても幻想的でね。奏くんが歌うか歌わないかでは曲が
段違いで……」
 何故だろう。
 もっと嫌な人だったら良かった。
 もっと、もっと、奏のことを利用するだけの人であってくれれば。
 だって、奏のことを好きだってことがこんなにも伝わってきたら、どうすればいいのか……
「楓ちゃんは、奏くんのことが嫌いなんだよね?」
 ぼとん、とまた大きな音がした。
546 :愛と装いを混ぜ込んで 16/25 ◆xUD0NieIUY [sagasage]:2014/04/30(水) 13:01:11.74 ID:dxQ7Pkduo
「多分そうなんだろうって奏くんが言ってたから」
 ぼとん、ぼとん、と心が支えられなくなりそうで。
「そうですよ」と私は言った。
「私はアイツが嫌いです。だって、小さいから。つまらないことを気にしたりするから。疲れるんです。アイツといると」
「奏くんは嫌いじゃないって」
 浅海さんの言葉が、私の心を串刺しにしていく。
「多分嫉妬したから嫌われたんだろうって言ってたの」
「アイツはあなたになら、どんなことでも話すんですね」
 私はこの人を睨んで、睨んで、
「聞いてみたら意外と話してくれるよ、奏くんは」
 私はこの人が、わざとこんなことを言っているんだろうと思った。
 傷つけるために……?
 なぜ傷つくのか。
「奏くんに言われたでしょ? ライブに来て欲しいって」
 言われてない。
 そんな悪態も口から出てこなくて。
「私からもお願いするわ。来て、絶対。あなたが知る深山奏と私のバンドの奏くんは、きっと違うと思うから」
「浅海さん、あなたは一体何がしたいんですか?」
 初めて浅海さんの顔から笑みが失われて、「分からないよ」と言った。
「だけどあなたみたいな傍にいる人に奏くんが認めてもらえないなんて、私は許せないから」


 ――青葉高校文化祭当日。
「わあー……」
「ねえ楓。本当にこの文化祭、チケット制なの……?」
「そんなの私に聞かれたって分かるわけないでしょ」
 そう答えたものの、翠の疑問はもっともだ。
 青葉高校は正面玄関から人で溢れていた。これで本当にチケット制なのか。チケット制じゃなかったとしたら一体どんなことになっ
ていたというのか。
「とりあえず皆さん、はぐれないように手を繋いで行動しましょう」
547 :愛と装いを混ぜ込んで 17/25 ◆xUD0NieIUY [sagasage]:2014/04/30(水) 13:01:56.86 ID:dxQ7Pkduo
「え、それはちょっと……」
「さあさあ、早く手を繋ぐのです」
 何故か動じていない絶対敬語の沢口さんに半ば無理やり手を繋がされて、私は重い気持ちを抱えたまま文化祭に参加することになっ
てしまった。
「文化祭といったら食欲の秋、食べ物でしょ」
 そんな翠の食い意地に促されるがままに屋台を回って、四人が同時に声を上げる。
「美味しい!」
「このイカ焼き美味しいですねえ……」
「こっちの唐揚げもすごくカリカリしてる!」
「焼きそばって当たり外れ大きいんだけど、これはなかなか……」
 これがウチの学校の近くにあったら間違いなく毎日買いに行くよ。安いし。
 みんな夢中になって食べているが、仁科さんの食べっぷりが物凄い。恐ろしい勢いで食べ物がなくなっていく。
 仁科さんってこんなキャラだっけ?
 まあいいか。繋がっていた手も離れたことだし。
「お腹いっぱいになったし、遊べるところを回って見ようよ」
「賛成です!」
 そしていろんなところを回ってみたけれど、なかなか楽しかった。
 翠は相変わらず屋台のゲームを極めているのかどんどん景品を取っていったけど、仁科さんは私の予想通りに数々の失敗を見せてく
れる。沢口さんは分析とかしだして、最もらしいことを言うけれどそれが全然成果に反映されなかったりするし。
 私は私で、まあいろいろやった。うん、いろいろ。私をお化け屋敷に蹴り込みやがった翠だけは絶対に許せない。いつか仕返しする。
「あれ、深山楓さん?」
「えっ……あ」
 名前を呼ばれたので思わず立ち止まると、私と同じくらいショートカットの女の子が立っていた。
 あれは……
「光井早矢?」
「そう! 覚えていてくれたんだね」
 こちらに駆け寄ってきて嬉しそうに手を握った。
 光井早矢。
 中学三年の全国大会で一緒のレースを走った子で、闘争心剥き出しでなかなか手を焼かされた。
「忘れないよ。すごく印象的だったし」
548 :愛と装いを混ぜ込んで 18/25 ◆xUD0NieIUY [sagasage]:2014/04/30(水) 13:02:37.47 ID:dxQ7Pkduo
「あはは。そう言ってもらえると嬉しいよ」
 ある意味嫌味な言い方でもあったのだが、光井さんはそんなこと関係なく善意でさっぱり受け取ってくれる。なかなか気持ちの良い
子だ。
「ちょっと楓、その子知り合い? 話についていけないんだけど」
「翠、この子は……」
 そして私は三人を光井さんに紹介する。
「ああ、楓が言ってたのってこの子だったんだ! レース中ずっとくっつき回られたって」
「ちょっ、ちょっと翠……」
「あはははは! よっぽと印象的だったようだね」
 翠の余計な言葉にヒヤリとする。
 光井さんは全然気にしてないようだけど……実は気にしているとかないよね?
「そういえば光井さんは何故ここにいるの?」
 私は無理やり話題を変えることにする。
「何を言っているのさ。この制服を見てみなよ」
「え?」
 言われて光井さんの全身にあらためて目を向けると……これは青葉高校の制服?
「光井さんって青葉高校の生徒なの?」
「そうだよ。随分意外そうだね」
 だって青葉高校の陸上部はそんなに……
 言おうかどうかまごついていると、遠くから青葉高校の人が光井さんに声をかけてきて、
「早矢ちゃん、何しているの?」
「竹内さん、旧友と話していたんだよ」
 敵と書いて友と呼びそうなニュアンスで光井さんが言った。
「早矢ちゃんのお友達? 初めまして、私は竹内唯と言います」
 沢口さんとはまた違った感じで行儀良く言われたので、私も思わず「初めまして、深山楓です」と馬鹿正直に自己紹介してしまった。
「深山……」
 何かに思い当たったように竹内さんは私の顔をじっと見つめて、
「もしかして奏くんの双子の妹さんですか?!」
 いきなり身を乗り出してそんなことを言ってきた。
「……へえ、たしかに苗字が同じだ。深山さん、そうなの?」
549 :愛と装いを混ぜ込んで 19/25 ◆xUD0NieIUY [sagasage]:2014/04/30(水) 13:03:39.42 ID:dxQ7Pkduo
 言われて成る程という風に光井さんが言って、
「違うよ」と無表情で私は言った。
「アイツが弟だから」
「えっ、でも……」
「ちょっ、ちょっと楓! お邪魔しました!」
 とつぜん翠に連れられて、人のいない場所に連れていかれる。
「もう、何やっているの楓!」
 怒られた。
「だって……」
「まったく。弟くんのことになるとすぐに冷静さを失うんだから」
 本当に、アイツのことになるとなんでカッとなってしまうんだろう。さっきのはふたりとも悪意があったわけじゃないのに。
 しばらくして、仁科さんと沢口さんがこちらに向かって走ってくる。たどり着いて、すごい息の乱れようだ。
「か、楓ちゃん……翠ちゃん……」
「急に走り出すからびっくりしました……」
「あはは、ごめんごめん」
 翠は簡単に場を取り繕って、だけどふたりは何か言いたげで、
「あの、楓ちゃん……」
「聞きたいことがあるのですが……」
「……なに?」
 このときの私の心は意外と平静で。
 ふたりは深呼吸して息を整えてから、覚悟を決めたように私に向かって言った。
「楓ちゃん、あなたの弟くんは……」
「今日文化祭のライブでトリを務めるバンドの奏くんと……」
「同一人物ですか!」
「うん、そうだよ」
 ハモってきたふたりにあっさり答えた。
 ふたりの体がぶるりと震え、わあーっと歓声を上げる。
「し、知りませんでした……」
「まさか弟くんが奏くんなんて……」
 もはや仁科さんにとってアイツの名前は弟くんになっていたのか。
550 :愛と装いを混ぜ込んで 20/25 ◆xUD0NieIUY [sagasage]:2014/04/30(水) 13:04:44.45 ID:dxQ7Pkduo
 しかしふたりまで、アイツはそんなにも有名なのか?
「ねえ、ふたりとも。奏くんってそんなに有名なの?」
「当たり前じゃないですか!」
 翠の言葉に、当然のように沢口さんが言った。
「去年の文化祭のライブ、ひとりで観客の心を全部鷲掴みにしちゃったんですよ? 真ん中ぐらいに登場したので後のバンドは鳴かず
飛ばずで大変だったって聞きました。だから今回はトリなんです! どれだけ観衆を魅了しても問題ないように!」
 想像以上の内容に私は閉口する。
 兵器かよアイツは。
 さすがの翠も「すごいね……」と言葉を失っているようだ。
「というかふたりとも、ようやく合点がいきました」
「へ?」
 翠と私が同時に素っ頓狂な声を上げる。
「なぜふたりともそんなに冷静だったのかという意味ですよ。このチケットを受け取ったときに」
 沢口さんはスカートのポケットからチケットを取り出すと、「ここ見てください」と端っこを指差した。
「アルファベットと番号が書いてあるでしょう」
「書いてるけど……」
「え、これってもしかして」
「そのもしかしてですよ!」
 何かに思い当たったかのような翠に、沢口さんがビシッと指差しながら言う。
「このアルファベットと番号は、ライブのときの座席位置を指定しているんですよ!」
「ええ?っ!」
 こくりと沢口さんの隣で頷く仁科さんを見たが、まだ全然理解が追いついてこない
「い、いや、文化祭のライブにふつう座席指定とかある?」
「ないでしょ……」
「ふたりともまたまた何を言っているんですか」
 そろそろ追いついてきてくださいよと言いたげに、沢口さんが頭に手をやる。
「ただでさえ観客同士の位置取りを巡って問題が起きたことがあるのに、そこに奏くんが参加するとどうなりますか?」
「どうなりますか、って……」
「とんでもないことになるに決まってるじゃないですか!」
 沢口さんはそう言い放ち、
551 :愛と装いを混ぜ込んで 21/25 ◆xUD0NieIUY [sagasage]:2014/04/30(水) 13:05:32.40 ID:dxQ7Pkduo
「血を血で洗う争いが起きますよ! そうならないように今回のライブでは位置を最初から決めることになっているんです。抽選があ
りましてね……もしかしたらライブを見れないかもしれないんですよ? こんな残酷なことってあります?」
 うんうんと再び隣で頷く仁科さんを見つつ、ようやく理解が追いつく。
 つまりこのチケットは……
「最初から座席指定がついた、超プレミアムチケットってことね?」
 私の意思を汲んだ翠の言葉に、「そのとおりなのです!」と沢口さんが答えた。
「しかもこの位置、一番前ですよ。正面じゃないですけど……こんな良い位置を本人から貰えるなんて、もう感謝、感激……」
 瞳を潤ませてトリップする沢口さんを見て、ようやく謎が解けたのだった。
 チケットを渡したとき、仁科さんがガタガタと震えて椅子から滑り落ちたこと。
 てんで話したことのない沢口さんが私のクラスまでやってきて、土下座しかねない勢いで私に数多の感謝の言葉を送ったこと。
 ふたりともよっぽと文化祭行きたいんだなーとか、沢口さんに至っては言葉だけでなく頭まで少しおかしいのかとか思ってしまった
けれど。
 全て合点がいった。
 一体アイツのどこにそんな魅了があるのかということを除いて。
「楓、ライブ行くの……?」
 別世界にトリップしているふたりに聞こえないように翠が言ってきて、
「当然じゃない」と私は言った。
「一体どれほどのものなのか見てやるの。私はそのために来たんだから」

 ライブが始まった。といってもまだアイツの番ではないけれど。
 チケットは本当に、某テーマパークのプレミアムチケット並みにプレミアなものだった。群衆が渦巻くなか、素知らぬ振りして特等
席までたどり着ける。
 ライブは講堂で行われるのだけど、下から見下ろす壇上は恐ろしく広く感じた。何より近い。手を伸ばしたら届いてしまいそうで……
 休憩を挟んで二時間半で十組演奏するのだけど、後ろにいけばいくほど演奏時間が長くなるようで、奏が所属するトリのバンドに至
っては五曲も演奏するらしい。しかも今回は冒険的で、全部オリジナルだとのこと。
 正直私は、一組目のバンドから度肝を抜かれていた。
「この人たち、メチャクチャ演奏うまいんじゃない……?」
「うん……」
 ノリノリの沢口さんと仁科さんに置いていかれて、私は翠と話していたけれど。
 私たちの学校の文化祭でも学生がバンドで演奏することはあるのに、それとは全くレベルが違っていた。本気で音楽やってますとい
552 :愛と装いを混ぜ込んで 22/25 ◆xUD0NieIUY [sagasage]:2014/04/30(水) 13:06:22.13 ID:dxQ7Pkduo
う感じ。ファンだってしっかりついているようだし……
「やっぱりプロの人たちってこれより上手いの?」
 休憩時間になって、後半への体力回復に努める仁科さんは置いといて、沢口さんに話しかける。
「そうですねー。まあ上手い下手というよりも、そのバンドだけが持っている特別な何かがないといけないですね」
「特別な……何か?」
「そうです。これだけはどのバンドにも負けないっていう特別な何か」
 それってやっぱり。
「奏くんは、そういう意味では特別です。といっても生の奏くんは今日が初めてなんですけどね……本当に楽しみです」
 沢口さんの言葉を聞いて、私はなんだか怖くなった。
 とんでもない決定的な何かを叩きつけられそうな感じ。
 逃げるわけにはいかないけど。
 そして後半戦が始まった。
「ここから出てくるバンドは、いつプロデビューしてもおかしくないですよ」
 その言葉のとおり、登場してくるバンドのレベルがぐんと上がった。
 上手いだけじゃなく、特別な何かを持っている――
 とくに六組目のバンドなんか、ガールズバンドなんだけどロックにしっかり歌い上げて、もしテレビに出てきたらファンになりそう
なくらいだった。
「きた、ね」
「はい」
 翠の言葉に、仁科さんか沢口さんのどちらかが小さく返事して――
 きた。
 明らかに場の空気が変わった。
 まだアイツは袖のほうにいるのに。
 浅海さんがギターを抱えながら登場して、少し手を振っただけで何人もの男の人の声が聞こえる。やっぱりあの人も人気あるんじゃ
ないかと思って。
 ベースの人が登場して、ドラムの人が登場して。
 どちらも男の人だった。
 ベースの人は不良っぽい。ドラムの人は寡黙そうで、だけどどちらにも声援が飛んでいる。
 なんだ、アイツだけじゃないんじゃないって思って。
 だけど最後にアイツが登場して、
553 :愛と装いを混ぜ込んで 23/25 ◆xUD0NieIUY [sagasage]:2014/04/30(水) 13:07:02.36 ID:dxQ7Pkduo
 ――物凄い歓声だった。
 背後から歓声がせり上がってくる。背中がむず痒くて、ここから飛び出したくなるような。
 なんだよ、これ。
 全然レベルが違うじゃないか。
 誰だよあれ。
 私はいま目にしているのがアイツだとは信じられなかった。
 髪型が違うし、格好だって黒のタンクトップでキメているし。そりゃ顔はあいつだけど、あんな自信満々な顔見たことなくて。
 混乱したまま一曲目が始まってしまった。
 アップテンポな曲。
 アイツがシャウトして、観衆から悲鳴が上がる。
 浅海さんが初っ端からテクを見せつけて、アイツが観客を煽って――
 いきなりベースの人と絡んだ。
 思い切り顔を近づけて歌って、アイツが何かやるたびに歓声が上がって。
 何だよこれ。
 どれだけ煽る気だよ。
 どうしてみんな歌えるんだよ。
 オリジナルだろ。
 怖い。
 怖くなった。
 底なし沼にはまったように、暗闇に堕ちてゆく。
 仁科さんが消えて、沢口さんが消えて、私と同じように言葉を失っている翠も消えて、ベースの人が消えた。ドラムの人も。ポニー
テールを振っていた浅海さんも消えて――
 アイツだけしか見えない。
 どんどん沈み込んでいく視界の中で、アイツの姿だけしかもう捉えることができない。
 何でこっちを見ないんだよ。
 一曲目が終わってアイツがMCで語りかけているのに、こちらには一度も振り向こうとしなかった。何か、バンドの紹介をして、指
差して歓声が上がって。
 私は今にも消えてしまいそうなのに。
 こっちを、見ろよ。
 お前がチケットを渡したんだから、どこにいるかぐらいわかるだろ。
554 :愛と装いを混ぜ込んで 24/25 ◆xUD0NieIUY [sagasage]:2014/04/30(水) 13:07:40.33 ID:dxQ7Pkduo
 だけどアイツは頑なに、いつまでも私のことを見ないで――
 見た。
 アイツが完全にこちらを見た。
 いつものアイツの目だ。水晶玉みたいな。
 なんだ、変わらないじゃないか。
 私はその瞳を睨む。
 睨んで、睨んで、世界が一つになって。
 アイツはこちらに向けて微笑んだ。
 それどころか近づいて、私の顔に――
「――!」
 キャアアアアーッ、という悲鳴のような歓声に一瞬体が浮かんで、それから真っ逆さまに堕ちていく。
 どこまでも。

「すごかったですね……」
 放心状態のような沢口さんの声が聞こえた。
「私、しばらく立てないかも……」
 そんな息も絶え絶えな仁科さんの声が聞こえて。
「正直、私も同じかも……」
 翠までそんなことを言うなんて、とても珍しい。
「生の奏くん、凄すぎました」
「何なのあれ、別次元すぎるんだけど」
「この前あるバンドの前座を務めたらしいんですけど、そこでも全員骨抜きにしちゃったって」
「いや、そりゃなるでしょ。これはなるでしょ」
 ふたりの会話が耳に入ってきて、そうかもしれないと思う。
「ねえ楓、投げキッスぶつけられていたけれど大……」
 こちらを振り向いた翠が絶句する。
 そりゃそうだった。
 全然大丈夫じゃなかったのだ。
 私は泣いていた。
 涙腺が壊れてしまったみたいに、涙が止まらなかった。
555 :愛と装いを混ぜ込んで 25/25 ◆xUD0NieIUY [sagasage]:2014/04/30(水) 13:08:40.04 ID:dxQ7Pkduo
 アイツは、あの人は、とんでもないことをしてくれた。
 私のプライドをぶち壊しにして……
「楓……?」
 私は涙を拭うと、走って講堂を飛び出した。
 誰かにぶつかったけど、そんなの関係なく遠くへ。
 走っている途中にエミリーの曲を聴こうとしたけれど、ヘッドホンを持ってきていなかった。
 ずっとアイツの声が、歌が聴こえる。耳から離れない。
 全速力で走っていると胸が痛くなって、仕方ないから足を止めると涙が溢れた。走っているときは空気の抵抗で抑えられていた分が、
立ち止まったとき一気に溢れ出たのだ。
 それ以上一歩も動けなかった。
 視界が溶けてしまいそうなくらい、何も見えない。(完)
556 : ◆xUD0NieIUY [sagasage]:2014/04/30(水) 13:11:36.52 ID:dxQ7Pkduo
以上です。
お題は一目惚れですが、いちおう絶望も含んでいるつもりです。

転載していて、やはりこの作品は長すぎたと思いました・・・・・・
次回やるときはレス数制限、もしくは11レス以上はてきすとぽいのみに掲載するなど、何か制限を設けたほうがいいかもしれません。
557 :422 [sage]:2014/04/30(水) 13:17:10.13 ID:dxQ7Pkdu0
ということで、現在は四作品が出揃っています。

恋のまなざし(茶屋)
http://text-poi.net/post/chayakyu/59.html

終わりの決定(犬子蓮木)
http://text-poi.net/post/sleeping_husky/22.html

ふほへほげげのげ/絶望、そして文学が生まれた時(しゃん@にゃん革)
http://text-poi.net/post/syan1717/38.html

愛と装いを混ぜ込んで(ほげおちゃん(◆xUD0NieIUY))
http://text-poi.net/post/hogeochan_ver2/2.html

投下期間は5/1 0:00までです。
書かれていない方、まだ間に合います……!
558 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/30(水) 13:46:05.64 ID:xKkfQDut0
昨日お題を頂いた者なんですが、頂いたお題を書いてるうちに選評会のお題にも被るんじゃねってなったので、それを選評会に出しても良いんですかね?
執筆期間は終わってますし、一目惚れに関しては掠ってもいないんですが……。
559 :422 [sage]:2014/04/30(水) 14:31:07.05 ID:dxQ7Pkdu0
別にかまいませんよ。
むしろ大歓迎です。

品評会作品にしたほうが皆さんに感想を書かれる率が高くなりますので、オススメです。
560 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/30(水) 22:04:39.77 ID:yJP7lCkpo
ありがとうございます。
それでは、僭越ながら今から投稿させていただきます。
561 :天気雨(1/6) ◆m03zzdT6fs [sage saga]:2014/04/30(水) 22:05:51.52 ID:yJP7lCkpo
 ざぁぁぁ。
 ざぁぁぁ。
 雨音が聞こえる。ゆっくりと、空を見上げる。中天高く上がっているはずの太陽は、分厚い雲に覆われて見えはしない。
「ひどい、雨だ」
 小さく呟いた。しばらく、窓からその天気を見ていたが、やがて後から従者が声を掛けてくる。王が、私を呼んでいるらしい。勅命だ。
 この国は西方の蛮族と敵対している。そして先日、西の国境の街が襲われ、虐殺と掠奪の限りを尽くされたのだ。兵力は一万ほどだそうだが、おそらく出征軍の編成に関することなのだろう。
 一刻も経たないうちに、王宮の評定の間へと向かう。馬を厩舎につなぎ、王宮に入るときに、近衛兵へ佩刀を渡そうとすると、緊張した面持ちで直立され、案内される。
 評定の間へ到着すると、近衛兵が中へ、大声で到着を告げる。
「将軍殿が、到着いたしました、陛下」
「うむ、良きかな。入れ」
「失礼いたします」
 一声かけて、両手の拳を胸の前で合わせながら、評定の間へと入る。中には、十数人ばかりの大臣が居並んでいた。その最も奥、一段高くなった玉座に座る、優しげな男性のほうへ拝礼すると、膝行でその前まで進み出る。
「不肖の身ながら、臣、参上仕りました、陛下」
「畏まるでないぞ、将軍。直答を許す」
「恐悦至極に」
 王に近侍する側近へと小声で言葉を伝えるが、それを遮るように王より、直答の許しを賜った。
 とてもおおらかなで、公平な王だと、人々は言う。先王より継いだこの国を立て直すために、新たな税制を導入し、戸籍を整理し、法を再編し、人民から優秀な吏官を取り立てることで、先王亡き後の国土を整備したのである。
 先王は戦一筋の武王であり、その在位数十年の間で、この国を大陸最強の国家へと変貌させたが、国庫は逼迫し、人民は疲弊していた。今の王は、戦こそ下手ではあるが、急速に拡大した国家をしっかりと纏め上げるという意味では、紛れもない名君だった。
「そなたの父と余の父は、義兄弟と呼んで、違わぬものだったと父より聞いた。ならば、そなたと余は義理の従兄弟じゃ。無論、君臣の心得を忘るる訳には行かぬが、余はそう思っておる」
 王は、そう言った。
562 :天気雨(2/6) ◆m03zzdT6fs [sage saga]:2014/04/30(水) 22:06:35.80 ID:yJP7lCkpo
 私の父は、かつて先王と共に戦場を駆け巡った、稀代の武人だったという。晩年は病を得たため、私が軍に入ったときには南方の副都を護る太守をしていたが、その号令は子である私でも、思わず背筋を伸ばしてしまうほどの威厳を含んでいた。
 その父も、先年亡くなり、旗下の軍は今、私の下にいた。実戦経験は少なかったが、将軍にも上げられた。それを、血筋のお陰と嗤う者もいたが、気にはしなかった。
 軍功が無いのだ。仕方がない。軍功を上げれば、やがてその声も聞こえなくなる。
「そなたはまだ、若い。だが、才覚はそなたの父も認めておった。実戦経験が少ないと馬鹿にするものもおるが、そなたの軍はわが国でも最強の軍であると知っておる。しっかり励め、そして余を助けてくれ」
「必ず、必ずや。勿体ないお言葉でございます、陛下。この身を、陛下に捧げられることを、無上の幸福と思います」
 私はそう言った。紛れもない本心だ。こうして実際に話すと、この王は、目の前の人間の心をしっかりと掴む力に長けている。それは、国家の長としては素晴らしいことに、疑う余地はなかった。
「宰相殿が、到着いたしました、陛下」
「良いぞ、入れ」
「失礼いたします、陛下」
 近衛兵がまた、到着を告げる。しばらくすると、どす、どすと足音が響く。そして、私の隣に、その影がやってきて、立ったまままま声を発した。
「参上仕った、陛下。西方の蛮族が攻めてきているそうだな」
「うむ。此度の出征の編成、意見を聞きたくてな、叔父上」
 王に対し、何たる無礼な物言いだろうか。そう声を出しそうになったが、ぐっと堪える。
 この王に対して偉そうにしている男は、この国の宰相で、王の叔父だった。先王の妹君を娶り、外戚となった人物で、王の推し進める改革を支えた名宰相、といわれている。
 だが、私はこの男が嫌いだった。父も、嫌いだと言っていた。どこか、不気味と言うか、裏でさまざまな暗躍をしているという噂を聞くほど、黒い噂が絶えないのだ。
 一国の宰相に、そんなことを考えることこそ無礼だとは思うが、やはり嫌いという感情はどうしようもなかった。
「蛮族どもの兵力から鑑みるに、そう多くの兵は要るまい。ちょうど将軍もいる事だ。将軍の旗下軍でいいのではないだろうか?」
 いきなり呼ばれ、一瞬体を震わせ、驚いた。もともと、戦に関してはこの宰相は倦厭しているところがある。父と宰相は犬猿の仲だったと聞くし、当然私の事も、よく思っていないだろう。
 にもかかわらず、私を指名してきたのには、何か考えがあるのだろうか。思わず勘ぐってしまう。
「ふむ。将軍、どうじゃ? そなたの旗下は確か、五千の騎馬軍だったと思うが」
「打ち払って見せましょう、陛下。しかし、国境の大河より十里後方に、守衛軍を配置していただければ、と思います。幾分、兵力は倍でありますので、別働隊に後背を衝かれることは避けねばなりません」
 王に、奏上をした。奏上と言うほどでもないだろうが、私にとってははじめての奏上だった。父も、こんな気持ちだったのだろうか、とふと考える。
「では、その役目は私が請け負おう。西の街の復興にすぐ駆けつけなければならぬ。幸い、わが旗下軍は精強な弓箭兵だ。守衛の役目は果たせるだろう」
 宰相自ら出る、と言うのはいくらか意外ではあったが、旗下軍の錬度はこの国でも有数と言う話は聞いていた。まだ、なんともいえない不安感は拭えないが、断るわけには行かない。それに断ったところで、これ以上の適任はいないだろう。
「では、私は即座に出立いたします。凱旋をお待ちください、陛下」
「うむ、楽しみに待っておるぞ、将軍」
「宰相閣下も、守衛のお役目をよろしくお願いいたします」
「任せろ、将軍。この国土を蹂躙するのは、許せぬ。やつらには勿体ない土地だ」
 二人にしっかりとした拝礼をすると、膝行のまま下がり、評定の間を後にした。それから一刻後、旗下を参集し、西の国境へと向かった。
 雨は、まだ止まない。
563 :天気雨(3/6) ◆m03zzdT6fs [sage saga]:2014/04/30(水) 22:07:25.29 ID:yJP7lCkpo
 三日の後、国境の大河を越えた先で、蛮族と対峙していた。
 この季節、大河は雨水を集め、急流になる。だから、橋の無い場所を渡ることは極めて難しい。
 にもかかわらず、あえて背水の陣と言う状況で布陣した。この戦いに、自分の全てを賭ける。そのつもりだった。旗下は私の覚悟を、感じ取ってくれているようだった。闘気に満ちているのを、肌で感じている。
「副官、二千騎を率い、左翼へ展開してくれ。敵の右翼の騎馬が回り込もうとしている。抑えこむだけでいい」
「畏まりました、若殿」
「二千騎は私と共に来い。将校、残りの千騎を率い、私の二千騎の後背へ付け。二千で向こうの弓箭兵に無駄撃ちさせ、敵左翼の騎馬をいなす。その後、左右に分かれ反転をする。真ん中を突っ切り、敵に突っ込め。断ち割ることを目標にしろ。被害を出す必要はない」
「了解しました」
 指示を出す。のどが、からからに渇いていた。緊張で、心臓が早鐘を打っている。騎馬五千の前方、およそ半里ほどに、敵軍の姿が見える。一万、と聞いていたが、幾分か数が多い気がする。二万弱、と言ったところか。
「……それでも、負けるわけには行かない」
 王の期待に応えるため、そして私自身がしっかりとした軍功を上げるため、ここは後方の宰相軍の一万をあてには出来ない。
 旗下軍のみで、敵を打ち破ることでようやく、将軍として認められる。そう思っていた。
「行くぞ」
 短くそういうと、乗馬している自分の愛馬の背を、少し腿で締め付けた。一度だけ、力強く嘶くと、愛馬はかけ始める。頬を、風が打ち始める。
 数日に渡って降った雨は、今はほとんど無い。地面はぬかるんではいなかったが、やや滑りやすくはなっている。歩兵なら、苦労しただろう。
 腰に佩いた剣を、抜いた。敵が近づいてくる。ぱらぱら、と矢が射かけられてきた。まだ、届きはしない。
「まだだ、まだ行くぞ」
 それを気にせず、馬を駆けさせる。疾駆させるにはまだ早いから、速駈け程度だ。距離が、四半里を切った。最前の、槍を構えた蛮族の顔が、判別できるくらいまで、突っ込む。
564 :天気雨(4/6) ◆m03zzdT6fs [sage saga]:2014/04/30(水) 22:08:12.26 ID:yJP7lCkpo
「左右に分かれ、反転」
 ここ、というところで、命令を出す。そして、一気に馬首を返した。命令を出すのと、敵軍から弓弦の風を切る音が聞こえるのは、ほとんど同時だった。
 敵の第一射は、ことごとく反転を開始する味方騎馬軍の手前に落ちる。被害は、無い。
 二度目の射撃音が聞こえた。後方で、何騎かが射落とされた気配はある。それは、考えないようにした。
「合流、我が旗の下へ集まれ」
 号令を出す。父ほどの声は出ない。だが、兵たちは命令を聞いてくれている。敵軍のほうを見た。将校に任せた千騎が、敵陣を断ち割っている。ただ、断ち割っているだけだ。被害は与えることは難しいだろう。
「駈けろ、今が疾駆する機だ。断ち割った敵陣が再建されるまでに、横っ腹に喰らい付く」
 剣を振り上げる。愛馬に、腿の締め付けだけで意志を伝えた。髪が、後に靡く。泥の匂いが、鼻腔をくすぐる。
「突っ込むぞ」
 声を掛けたが、届きはしなかっただろう。ただ、その命令どおり、後方に旗下の騎馬軍が付いてきていることは、しっかりと分かった。腿を締め付け、疾駆させる。風を切る音がした。
 敵左翼の騎馬が、こちらに気づいた。千騎ほどがこちらに向かってくる。ぶつかった。敵を一騎、二騎、斬りおとした。後続も、それに続いている。
 騎馬の錬度は、こちらのほうが上だった。被害は少ないだろう。指揮官を失っただろう敵の騎馬は、まとまりを欠いていた。それは、もう無視する。
 将校に任せた千騎の後方に、歩兵がまとわりついている。このままだと、被害が大きくなりそうだ。そんなことを考えながら、二千騎で敵陣の横へと突っ込んだ。敵陣が、大きく揺らいだ。
 突破した将校の千騎が、反転して突っ込んでくる。それで、また敵が乱れた。
「二手に分かれろ、将校の千騎に合流して、反転。もう一度断ち割れ」
「はっ」
 傍にいた、士官の一人に命令を出す。すぐに、千騎を率いて将校に合流した。それが、また二手に分かれる。十字に、陣を断ち割るつもりのようだ。陣の全体が、大きく揺らいだ。
 すっと、目を細める。敵陣を断ち割りながら、大きく俯瞰するように、見回した。
「……あそこか」
 見えた。この混乱する陣の中で一箇所だけ、混乱が少ない部分。従者に、旗を掲げさせた。そして、旗を大きく、その方向へと向ける。
 私は、また愛馬の腿を締め付けた。ぐっ、と首を沈み込ませ、愛馬が疾駆を始める。途中、遮ろうとした蛮族を一人、二人、斬った。
 剣を、振り上げる。二手に分かれていた、将校の二千騎が、一直線に私の命令どおり、突っ込んでいる。
 副官に預けた二千は、敵右翼の騎馬を翻弄していた。その内、五百ほどが別れ、こちらへと合流してきている。
「行け、突っ込め」
 腹のそこから、吼える。こんなに大声を出したことは、無かった。見える。一際、大きな具足を纏った、蛮族。副官のいる右翼方向に、指示を出していた。
 その顔が、こちらへ向く。兜の隙間から、目が合った。驚愕で、目が見開かれている。馳せ違った。剣をしたから、斬り上げる。首が飛んだ。
 敵が算を乱し始めた。誰かが指揮権を引き継ぐ様子はない。あるいは、副官が既に死んでいるのかもしれない。
「追い討て、国境より一里まで。それ以上は深追いをするな」
 号令を出した。後から合流してきた五百以外を、追撃に出すと、敵の騎馬軍が残していった騎馬を集める。武器も、集めた。
565 :天気雨(5/6) ◆m03zzdT6fs [sage saga]:2014/04/30(水) 22:09:22.30 ID:yJP7lCkpo
「大勝利であります、若殿。いえ、もう殿と呼ぶべきでしょうな」
「兵たちが良く戦ってくれた。お前も、将校も」
「胸の透くような指揮でありました。大殿ほどの勇猛さは感じませんが、実に緻密、慎重で、しかし臆病ではなく、機は逃されませんでした」
 お世辞かと思ったが、副官は本気で言っているようだ。まだ、私など父には及ばない。そう言おうと思ったが、今は素直に受け取ろう。そう思った。
 追撃隊から報告が来た。討ち取った数、およそ四千。捕虜は二千。鹵獲した騎馬千頭、武器は数え切れないほど。こちらの被害はおよそ七百。紛れもない、大勝利だった。
「凱旋する。陛下もお喜びになるだろう」
 捕虜がいるため、一度旗下を再編した。捕虜護送と鹵獲品輸送の指示を将校へ伝え、半日して副官と輸送の兵を残し、五百を率いて帰還を決定した。
 まずは、宰相に礼を言わなければならない。必要なかったかもしれないとはいえ、後方に一万の兵がいるというのは、相手にとって不気味だったに違いない。
 国境の大河にて、迎えるとの伝令がきた。大河に掛かる橋が崩れたらしく、浅瀬を渡るように、とのことだった。
「橋が崩れるとは、また難儀なことですな」
「全くだ」
 少し方向を変え、山間から開けた場所にある、浅瀬へと向かう。
 間道を抜け、浅瀬までやってきた。穏やかな光を湛えた浅瀬は、緩やかな流れを見せている。
 少し、違和感を抱いた。その違和感が何か、考える前に前へと進む。ぱしゃり、ぱしゃりと、水面で魚が跳ねた。
「妙ですな」
「何がだ?」
 副官がふと、呟いた。
「この季節にしては、河の水が少ない。それも、あれだけの大雨が、数日降ったあとにも関わらず」
 言われて見ると、確かにおかしい。記憶違いで無ければ、行きに河を渡ったときは、橋の下を濁流が流れていたはずだ。一日二日で、収まるような様子ではなかった。
「駈けるぞ」
 嫌な予感がした。まだ、河の半ばだ。岸まで、まだ距離がある。この嫌な予感には従うべきだ。そう思って、号令を出した瞬間だった。
 轟音が聞こえた。音のほうを見る。山間の谷の、更に奥のほうからだった。しかし、なにも起こらない。馬が駈け始めた。岸まであと、三十完歩も無い。
 耳鳴りのような音が、僅かに聞こえた。足元を見る。水位が、少し上がっている気がする。もう一度、谷のほうを見た。あと、二十完歩。
 押し寄せてくる、濁流が見えた。あと、十完歩。
 いきなり体に、衝撃が走る。空が見える。空を飛んでいるのだろうか。雲ひとつ無い、いい天気だと、思った。そして、叩きつけられる。
 地面か、水面かも分からない。感覚が、ほとんど麻痺していた。
 僅かに意識が、暗転する。だが、すぐに取り戻した。いや、もしかすると、すぐではなかったのかもしれない。ただ、なんとなくそう感じただけだ。
「全く、忌々しいほど頑丈な体をしておるな、将軍。流石はあの男の息子か。しかし、部下は皆、死んだぞ。お前もそのまま死んでいればよかったのだがな」
 声が聞こえた。誰の声だ、と思った。頭を動かす。宰相だ。なぜ、と思った。意味は大して、なかった。分かったところで、何か言うことも、何か出来るわけでもない。
 酷く、体が重い。力が入らない。右腕を見た、あらぬ方向へと曲がっている。仕方がないので、左腕で体を支え、後を見た。幾人の死体と、馬の死体が倒れていた。だが、数はほとんどない。流されたのだろうか。考える力も、ほとんどなかった。
「いずれ私がこの国を奪うとき、お前は邪魔になる。それに、私はお前の父親が嫌いだったが、お前も嫌いなのだ。だから、死ね」
 そんな声が聞こえた。この国を、奪う。そんなことを言っている。叛乱ではないか。王に、伝えなければ。
「副官、早馬で王都に伝令だ。宰相の叛乱だ」
 言ったが、声は出なかった。返事はない。副官の姿は、どこにも無い。
「蛮族を追い払ったことには、感謝しよう、将軍。お前は、二万の蛮族軍と勇猛に戦い、多大な損害を与えたが、部下と共に戦死した。そう、王には伝えることにしよう」
 宰相が、軽く手を上げる。ずらり、と人影が何百人も現れた。目がかすんで、よく見えない。だが、弓を構えているように思える。
 静かに、宰相は手を振り下ろした。
566 :天気雨(6/6) ◆m03zzdT6fs [sage saga]:2014/04/30(水) 22:09:54.11 ID:yJP7lCkpo
 ざぁぁぁ。
 ざぁぁぁ。
 雨音が聞こえる。ゆっくりと、空を見上げる。中天高く上がっている太陽が、燦燦と辺りを照らしている。少し、眩しかった。
「こんなにいい天気なのに、雨の音か。天気雨、だな」
 小さく呟いた。声が出たかは分からない。
 無数の雨が、私の体を貫いた。そんな気がした。
567 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/30(水) 22:11:10.03 ID:yJP7lCkpo
以上となります。
お題は雨で、選評会のお代は絶望を選ばせていただきました。
568 :422 [sage]:2014/04/30(水) 23:22:36.89 ID:cB6XlDyjO
投稿ありがとうございます。
>>561-566 の作品を転載させていただきました。
http://text-poi.net/vote/60/5/

念のため内容をご確認ください。
569 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/30(水) 23:32:30.89 ID:6SC8spS/O
ダメだ、半分しか終わってない。間に合わないや。明日の昼ぐらいに時間外で投稿しよう。

しかし25レスってすごいね。
570 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/05/01(木) 00:07:47.67 ID:q6sKW98Ko
>>568
わざわざありがとうございます。
571 :422 [sage]:2014/05/01(木) 00:10:42.07 ID:GgMGNtZmO
最後にてきすとぽいに投稿があり、六作品になりました。

No.1 恋のまなざし(茶屋)
http://text-poi.net/post/chayakyu/59.html

No.2 終わりの決定(犬子蓮木)
http://text-poi.net/post/sleeping_husky/22.html

No.3 ふほへほげげのげ/絶望、そして文学が生まれた時(しゃん@にゃん革)
http://text-poi.net/post/syan1717/38.html

No.4 愛と装いを混ぜ込んで(ほげおちゃん(◆xUD0NieIUY))
http://text-poi.net/post/hogeochan_ver2/2.html

No.5 天気雨 ◆m03zzdT6fs
http://text-poi.net/post/hogeochan_ver2/3.html

No.6 悲しい嘘(muomuo)
http://text-poi.net/post/muo_2/1.html

感想や批評があると書き手は喜びますが、単純に『面白かった』と言うだけの理由での投票でも構いません。
毎回作品投稿数に対して投票数が少ないので、多くの方の投票をお待ちしております。
また、週末品評会では投票する作品のほかに気になった作品を挙げて頂き、同得票の際の判定基準とする方法をとっております。
ご協力ください。
投票には以下のテンプレートを使用していただくと集計の手助けとなります。
(投票、気になった作品は一作品でも複数でも構いません)

***********************【投票用紙】***********************
【投票】: <<タイトル>>◆XXXXXXXXXX氏
               ―感想―
      <<タイトル>>◆YYYYYYYYYY氏
               ―感想―
気になった作品:<<タイトル>>◆ZZZZZZZZZZ氏
********************************************************
携帯から投票される方は、今まで通り名前欄に【投票】と入力してください。
たくさんの方の投票をお待ちしています。
572 :422 [sage]:2014/05/01(木) 00:24:07.96 ID:GgMGNtZmO
投票期間は以下のとおりです。

投票期間:05/01 (木) 00:00 〜 05/05 (火) 23:59

すみませんが、いま外にいるため No.6 をここに転載できません。
家に戻ったら転載しようと思います。
573 :422 [sagasage]:2014/05/01(木) 08:12:43.02 ID:6Zosn0imo
品評会作品 No.6 悲しい嘘を転載します。7レスです。
574 :悲しい嘘 1/7 [sagasage]:2014/05/01(木) 08:14:06.33 ID:6Zosn0imo
 サイドテーブルに、ぽつんと残された私の携帯電話。
 ガラケーの、今はもう使ってなかったヤツ。
 「どうせ誰からもかかってこないし、それでいいから貸して」……とせがまれて、
 香住ちゃんに貸してたものだった。

「君か、海ほたるが見たいって言った娘は?」

 急に声をかけられた。ほんと、急に。
 驚いて振り向くと、脳外科の高梨ってセンセ。確か外来種。
 あんまよく知らない。冴えない中堅……ってほどの年でもないはずだけど、
 カンファレンスでも、いつもそんな雰囲気の人。

「……は? いえ、言ってませんけど」(……何の話よ?)

 感傷を邪魔されて、気分を害したワタシ看護師。23歳。彼氏ナシ。ちなみに外村春美。

「そうか。いや、ならいいんだ」

 まったく。なんなんだか。

 また忙しくなる。そうしたら確実にこの気持ちも消えていく。
 だから、そうなる前に、しっかりお別れしたかったのに……。

            ◆


To:
subject: 3月8日(土)、晴れ

いつも楡の木の下で、夜の寝息を楽しむように
575 :悲しい嘘 2/7 [sagasage]:2014/05/01(木) 08:14:35.08 ID:6Zosn0imo
小声で鳥たちと話す人だった。

ベンチの周りには誰もいない。窓越しに、きっと私一人が見つめている。
誰も先生の優しい顔には気づかない。

世界を二人占めしているような、時間。
いつからだろう、この気持ち……そんなふうに悩む必要はない。
出会ったあの日に、それは始まったのだから。

この使えない携帯電話で、今日から記録していこう。
私の体が使えなくなる、その日まで……。

16:05 | 2014/03/08


To:
subject: 3月9日(日)、曇り

今日は検査の日。検査担当の先生と、堂々と会える日。
だから哀しくない。

どうせ結果は悪かったに決まってる。
だから先生のへたくそな嘘が、また聞ける。
それが一番いい薬。
私にはそれが一番……

あ〜あ、楽しみだな。

11:23 | 2014/03/09
576 :悲しい嘘 3/7 [sagasage]:2014/05/01(木) 08:15:21.97 ID:6Zosn0imo

To:
subject: 3月14日(金)、晴れ

嘘のほうがいいな。
ほんとのことって重すぎる。

検査結果のことは、たぶん嘘。
よくなってたはずがない。
それより……

先生が、春美ちゃんのこと好きだった。
私に、コクってきた。

20:31 | 2014/03/14


To:
subject:

……きっと、あれが先生の優しさ。

生きる“よすが”? ……にでもなればって、
コイバナを選んだだけなんだよね。

私が、見舞いの一人もない身の上だから、
自分のことは話したがらないだろう、って。
せめて、先生自身の話でもって……。

無理しちゃってさ。
577 :悲しい嘘 4/7 [sagasage]:2014/05/01(木) 08:16:02.13 ID:6Zosn0imo
作り話じゃ、ないよね……。さすがに。


00:18 | 2014/03/15


To:
subject: 3月22日(土)、雨

うん。応援しよう。

私は向こうで待ってればいい。
あの世で告白するんだ。若い姿のままでさ。

だから、春美ちゃんにゆずってあげる。
もしかしていま、……これ読んでるかな?

「まっかせったぞ〜」

……なんか、大人になったカンジ? ふふ……

人はこうしてオンナになるのだよ、春美くん。

19:27 | 2014/03/22


To:
subject: 3月23日(日)、雨

一目惚れ、っすかぁ〜。
578 :悲しい嘘 5/7 [sagasage]:2014/05/01(木) 08:16:55.48 ID:6Zosn0imo
それだと、立場が弱くなるんだよねぇ(経験者談)。

てか、お二人さんはさぁ、
私よりだいぶ前に会ってるはずでしょ?
……ずいぶん長患いですな、旦那も。

ま、春美ちゃんもそこそこかわいいけどさ。
先生のお年頃の男性で、そんなことあるのかな?

う〜ん。なんかちょっと、イメージが違うけど。
……ま、いいでしょ。おねいさんにまっかせなさい。

16:52 | 2014/03/23

            ◆


「あなたが一番見たいものは?」

 シークレットフォルダのパスワードが、変わってる……!

 夜勤明けの倦怠感が一息ついて、ふと、あの携帯電話を取り出した時のことだった。
 まだベッドから飛び起きる体力があったこと以上に驚いたのは、
 直感的にそれが意味するところが分かったからだ。
 もちろん、興奮でざわついてきたし、すぐに……指が動いてた。

 「う、み……ほ、た、る」

 そういえばこんな入力方法だったな。もどかしい……。
579 :悲しい嘘 6/7 [sagasage]:2014/05/01(木) 08:17:50.98 ID:6Zosn0imo
 「……!」

 やっぱり、保存フォルダに未送信のメールがいくつも残されてる。
 自分で書いた覚えは当然ないし、日付から言っても明らかに……香住ちゃんだ。

            ◆


To:
subject: 3月25日(火)、晴れ

今日は、先生に魔法の呪文を教えてあげる。
「これでダメだったら、ダメだから」って。

……春美ちゃんは、なんて答えるのかな。
いや、それはもちろん、最初は「……え?」とかだろうけど。

OK?
それとも……NG?


私の代わりに先生と一緒に、見てきてくれる?
……ねえ、これ……読んでるんでしょ?


あ、でも……最悪、気づかないまま終わるかもか。
まあその時はその時だね。
運命の神様に、恋のキューピッドが負けた、ってことで。

……じゃあ、もう一度言っときますか。
580 :悲しい嘘 7/7 [sagasage]:2014/05/01(木) 08:18:43.18 ID:6Zosn0imo
どっちを選ぶのも、もちろん春美ちゃんの自由だけど……


「まっかせったぞ〜」

10:45 | 2014/03/25

            ◆


 読み終えて、涙している自分。
 香住ちゃんの想いが、その意味が、全部分かったから……普通に泣いてた。
 ……なんか、神様は残酷だなって、思った。

 彼女は絶望もせずに、生き続けていたんだ。文字通り、独りで。
 強い子だと、改めて思った。ほんと、大人の女性だったんだって……。


 もちろん、答えは決まってた。香住ちゃんも、分かってた答えだ。
 きっと、許してくれると思う……。


 私の答えは……もちろん、「NO」だ。
 高梨先生と付き合うなんて、できるはずもない。



 だってあの先生は……絶望的にブサメンだから。

                        <了>
581 :422 [sagasage]:2014/05/01(木) 08:20:26.74 ID:6Zosn0imo
以上です。
582 :全感 [sage]:2014/05/01(木) 23:40:30.89 ID:6Zosn0im0
No.1 恋のまなざし(茶屋)
http://text-poi.net/post/chayakyu/59.html

相変わらず文章は綺麗ですらすら読めるのですが、内容は人物設定をただ文章に落としたという感じであまり評価できません。
例えば前回優勝者の作品では、歌が好きなのに歌えない女の子がいました。それが天真爛漫な主人公と絡んでいくことで話が進んでいったんですけど、やっぱりそんなふうにドラマを書いて初めて物語が成り立つのだと思います。
タイトルは個人的にすごく好みで、だからこそもっと書けたんじゃないか。
もっともっと挑戦してほしかったという気がします。

No.2 終わりの決定(犬子蓮木)
http://text-poi.net/post/sleeping_husky/22.html

正直なところ、話自体はあまり面白いと思いませんでした。
ただ、人物(ライオンですが)の描き込みはこの作品が一番よくできていたと思います。
物書きには二種類いると思っていて、登場人物に自己を投影していくタイプとそうでないタイプ。
前回と今回の作品を両方読んで、多分この作者は前者だと思いました。
そして私はそういうタイプの人の作品のほうが好みです。
ただ、ただ。
そういうタイプの人は、人物描写だけで満足してしまうことも多いのかなと思っていて。
同じ先が読める展開でも、先が読めるからこそハラハラドキドキしたりすることがありますが、この作品はそうなってはいませんでした。
じゃあどうしたらいいの、と言われるととても難しいのですが。
うん、難しい(^_^;
知恵の振り絞りどころです。

No.3 ふほへほげげのげ/絶望、そして文学が生まれた時(しゃん@にゃん革)
http://text-poi.net/post/syan1717/38.html

この作品を見たとき私は唖然としました。
しかし本スレに転載してくれた人のおかげで二レス目があることに気づいて……(~_~;
ほげ語と現代語訳の対応を楽しむタイプの作品だと考えていますが、本当のところどこまで意識して書かれたのでしょう?
例えば、ほげ語だけでなく現代語訳にも「BNSK」が出てきたので少し安心しましたが……「ぶんどったり寝取ったりしたら承知しないから」=「BNSK」とは一体……「SK」はどこにいった。もしかして「逆らったら」がソレ? どうなんすか、みたいな。
一目惚れと絶望は入れてみただけという気がしますし、文学の誕生のところもよく分からないし、んー……

No.4 愛と装いを混ぜ込んで(ほげおちゃん(◆xUD0NieIUY))
http://text-poi.net/post/hogeochan_ver2/2.html

自作。なんだか書いてるうちにどんどん長文に。
投稿してみて感じたのですが、レス数が違いすぎる作品を比較するのはあまり適切ではないなー、と思ったり。
レス数制限、やっぱりあったほうがいいのかなあ。

No.5 天気雨 ◆m03zzdT6fs
http://text-poi.net/post/hogeochan_ver2/3.html

最近マガジンでアルスラーン戦記の読み切りがありましたが、この作品を読んだときはまずソレを思い出しました。
それだけで私はこの作品に関心票をあげたい。
きっとこの世界を描くのに苦労されたのでは? と思っていて。そういう努力面も評価したい。
ただ。
もしかして、こういうファンタジー世界を描かれたのは初めてなのかなと思いました。そして世界観や舞台装置を用意することに注力してしまって、キャラクターメイキングまで手が回らなかったのかな、と……
主人公を見ていると、ストーリーに動かされているという気がするのです。
宰相のことを不審に思いながらも受け入れるしかないという言い訳を入れたあたり、実は作者もそれに気づいていたのでは。
主人公が本当の切れ者であれば、牽制する動きがあってもいいはずなんですよね。
例えば主人公ではなく宰相が支援を名乗り出て、主人公は一旦受け入れる姿勢を見せるも、「蛮族の討伐など我が兵のみで十分。宰相閣下は後方でご観戦いただければ」と牽制し――みたいな? いや、全然うまく書けないんですけど。
けどけど、そうやって主人公が宰相を牽制し続けるとストーリーが進まず……なんて思いませんでした?
思ったとしたら、それはストーリーを変えるべきです。
キャラクターのためにストーリーが用意されるべきだと思うのです。
アルスラーン戦記の読み切りは、そのあたりがすごく良く出来ていました。
あんな奴らに策を弄するなど恥だと考える者と、何か裏があるのではないかと感じる者。不安に思いつつも周りに抗うことができず流されるがままの主人公。結果起きたのは一国家を揺るがす惨事で、しかも信じていた人物に目の前で裏切られて――そしてそして、そこからさらにストーリーが続いていく! 最後は長編ならではですが……しかしだからこそ、短編では話を練りに練らねばならない、なんて難しすぎるけど。
次回作ではそのあたりに力を入れていただきたいと思います。

No.6 悲しい嘘(muomuo)
http://text-poi.net/post/muo_2/1.html

今回初めて書き方にコメントしますが、最初が読みにくいと感じました。
一言で言うと、二回物語が始まっている気がする。
「サイドテーブルに〜」で一回。
「君か、海ほたるが〜」で一回。
小手先で修正する場合、「香住ちゃんに貸してたものだった。その香住ちゃんは、もういない。」とすれば文章の切れが幾分マシになり、混乱を避けられる気がします。
ただ個人的には、書き出しがあまりにも短すぎるこの文章構造を再考したほうがいいのではないかと。
話の内容としては、過去に◇pxtUOeh2oI氏が書かれた以下の作品を思い出しました。
http://yy46.60.kg/test/read.cgi/bnsk/1273659748/44-48
◇pxtUOeh2oI氏の作品に比べると、今回の作品は軽いです。どこまで書くかは人の好みによって分かれるところだと思いますが、私としては◇pxtUOeh2oI氏が書いたところまで人間を描いてほしい。どうせ書くなら深く、深くまで人間を掘り下げていってほしいのです。
文体を見るにあっけらかんなところが持ち味だと思うので、同じようにはいかないと思いますが。

***********************【投票用紙】***********************
【投票】:なし
気になった作品:No.5 天気雨 ◆m03zzdT6fs氏
********************************************************
実は>>569氏が時間外作品を投稿されるのを待っていたのですが。ちらっ。ちらっ。
最初はNo.2にも関心票を入れようと考えていたのですが、No.5の感想を書いているうちに明確な差をつけたくなりました。
No.6の感想を書くときに過去の品評会作品を漁っていたんですけど……VIPでやってたときはやっぱりすごかったですね。20作品とか……あの時居た人たちはどこで何をやっているんですかねえ。
583 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/05/01(木) 23:55:13.27 ID:flp367TYO
全感おつおつ

あ、ども。>>569だけどまだ二三日掛かりそうなので、もし見つけたら出来たらでいいんで感想ください。
というか気にしてくれてありがとう。
584 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/05/02(金) 05:09:22.97 ID:qXfZQJ4po
No.1 恋のまなざし(茶屋)
http://text-poi.net/post/chayakyu/59.html
少し抽象的すぎるのではないかな、という印象でした。もう少し感情や心情描写があった方が、より絶望や恋情を演出できたのではないか、と思います。
ですが行間に感情を込める、という手法は個人的に好きですので、終盤の畳み掛ける様な短文の羅列は、悲壮感が出ていたのではないか、と感じました。

No.2 終わりの決定(犬子蓮木)
http://text-poi.net/post/sleeping_husky/22.html
既に言われている事ですが、ライオンの視点から見た心情描写はとても良かったように思います。ストーリーは、星新一系のショートショートに見られるような、シンプルで理解のしやすい構成かな、と。
ただ、意外性に欠けただけに、予測できたエンディングであったのは少し残念でした。もっとも、この手のショートショートに意外性があるべきなのか、というのは別の話ですが……。

No.3 ふほへほげげのげ/絶望、そして文学が生まれた時(しゃん@にゃん革)
http://text-poi.net/post/syan1717/38.html
僕ではこの作品に込められた意図を読めませんでした。前衛的な現代文学というのでしょうか。その手の作品を読まないので、何とも。
ですので、詳しい批評は控えさせていただきます。

No.4 愛と装いを混ぜ込んで(ほげおちゃん(◆xUD0NieIUY))
http://text-poi.net/post/hogeochan_ver2/2.html
他の作品と比べると幾分か長かったですが、のんびりと読める程度ではあったので特に気にはなりませんでした。
少しダークなイメージを受けましたがありましたが、差し引いても綺麗にまとまっていたのでは、と思います。
ただ、少しばかり登場人物が多かったかな、というのと、少し終わるのが唐突過ぎるという印象はあります。いっそすっきりするところまで持って行って良かったのではないでしょうか。ですが、面白かったと思います。

No.5 天気雨 ◆m03zzdT6fs
http://text-poi.net/post/hogeochan_ver2/3.html
拙作になりますので省略いたします。

No.6 悲しい嘘(muomuo)
http://text-poi.net/post/muo_2/1.html
個人的にはもう少し、状況描写を多めにして頂いた方が良いんじゃないか、と思います。
メール形式の文章というのは、他にも何度か見たことはあるのですが、心理描写や会話の代わりにメール文を入れている分、状況描写が少ないという印象がありました。
ストーリーも、僕の読解力がないのか一本筋の通ってないような、そんな感覚がありました。シリアスな雰囲気から落ちがすんなりと受け入れられなかったと言うのもありますが……。



***********************【投票用紙】***********************
【投票】:No.4 愛と装いを混ぜ込んで(ほげおちゃん(◆xUD0NieIUY))
気になった作品:No.2 終わりの決定(犬子蓮木)
********************************************************
初めて参加をさせていただきましたが、未熟さを思い知らされました。総評はしっかりと受け止めます。
短いですが、これで乾燥とさせていただきます。ありがとうございました。
585 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [sage]:2014/05/02(金) 18:13:17.33 ID:AW07YKZO0
***********************【投票用紙】***********************
【投票】:No.4 愛と装いを混ぜ込んで
気になった作品:No.5 天気雨
********************************************************

以下感想です。

No.1 恋のまなざし
設定としては面白くなりそうな雰囲気はあるんだけれど、その「設定」だけしかない、って印象。
前半部を導入としたうえで、ちゃんと「最後の恋」について書かないと何が何だか、という気がしてしまいます。

No.2 終わりの決定
上でも言われてますがシンプルな構成ですよね。それが、王道というより個人的には凡庸に見えてしまうという気がしました。
よくある問題提起をそのまま文章にしただけ、という感じでしょうか。それがちょっと鼻につくというか、説教臭く感じてしまいます。

No.3 ふほへほげげのげ/絶望、そして文学が生まれた時
野心作、というのが良いのでしょうかね。転載する直前に2ページ目があることに気づいてなんとか全文転載できましたww
本能で行動していた類人猿が他者の視点を初めて獲得した=文学の始まり、という図式はなるほどと思わされました。
ただ、うまい棒のくだりとかBNSKとか、アフリカがどうこうとか、小ネタを微妙に入れてくるスタイルに違和感があります。
そのうえで唐突に、葛藤が芽生えた、と言われてもピンとこないかな、と。
きちんと彼らが葛藤し、それを残そうとするところを書いてほしかったです。

No.4 愛と装いを混ぜ込んで
25レスっていうと威圧感ありますけど、それでも高々20000字なんですよね。読みだせばすんなり読めました。
すごくスタンダードな青春小説というか、きちんと青春時代の不安定さを表現していたと思います。
「絶望」というテーマに沿っているかどうかは微妙な気がしましたが。まさか「一目惚れ」でしょうか?
ただ、きちんと主人公の内面を描いたいい作品だと思ったので、これに投票です。

No.5 天気雨
ちょっとストーリー展開がそのまんますぎるというか、宰相がなんか怪しい→案の定裏切られました、というのはオチが読めすぎてしまうというか、
たとえば宰相を信用のおけそうなキャラ設定にするとかしたほうが読んでいて話に起伏があるのでは、と思いました。
戦争のシーンなんかは、結構スピード感とか迫力あってよかったと思います。

No.6 悲しい嘘
ケータイ小説風って時点でちょっと敬遠ぎみになってしまった部分はあります。
ちゃんと読んでみるときちんとしたプロットだとは思うのですが、どうもとっかかりが悪いのかな、と。
春美と香住の関係性が一切書かれてないですが、そこは盛り込んでほしかったです。そこがあってこその三角関係ですし。
586 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/05/02(金) 22:23:55.62 ID:fgh4AJfm0
>>585

感想および投票ありがとうございます。

No.4についてお題の話があったのでコメントすると、主題は「一目惚れ」で書きました。
主人公と浅海さんでは彼に抱いている人物像が違っていて、主人公はもう片方の彼(バンドマンとしての彼)を認めていなかったのですが、強制的に惚れさせられてしまう……と書くと「一目惚れ」に当てはまるかどうか微妙かもしれませんが、そんな感じです。

>本能で行動していた類人猿が他者の視点を初めて獲得した=文学の始まり、という図式はなるほどと思わされました。

なるほど、そう読めばよかったのか。
思わず唸らされました。
No.3は思っていたより深い……のか?
この手の作品はなかなか評価が難しいです。
587 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [sage]:2014/05/03(土) 00:00:44.50 ID:QUtxjqaA0
>>586
あ、やっぱり「一目惚れ」の方でしたか。感想書いてる途中にもしかしたらこっちか?……とは思ったのですが。
こういうのがあるので、感想を書くっていうプロセスも重要なんだと認識させられます。
さらっと1回読んだだけでは掴めない部分もあるんだなあ、と。
588 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/05/03(土) 00:53:59.89 ID:q3zZxFPCo
お題くらさい
589 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/05/03(土) 00:57:35.47 ID:lrPwb2wto
おだいくらちい
590 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/05/03(土) 01:07:00.59 ID:vFfuY0+8o
吹雪
591 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/05/03(土) 02:09:09.63 ID:AeIqEQiVo
輸血
592 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [sage saga]:2014/05/03(土) 09:14:55.52 ID:nFXlhBM50
お題頂戴な
593 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/05/03(土) 10:51:18.92 ID:mCIbxvNCO
>>592
パズル
594 :投票 [sage]:2014/05/03(土) 19:01:55.59 ID:q3zZxFPCo
No.1 恋のまなざし
シチュエーションは面白いのですが、ドラマにはなっていない感じです。
発想を小説にまで昇華してほしかったな、と思います。

No.2 終わりの決定
心理描写は面白いのですが、こちらはNo1とは逆に、檻から出たライオンが狩猟本能に目覚めるという
シチュエーションが少し安直だったかな、と。
あと、狩りをするライオンは基本的にメスなので、画を想像した時にちょっと残念な感じになってしまう気がします。
ライオンを使うのなら、やっぱりタテガミの美しいオスを使ってほしいな、と思いました。

No.3 ふほへほげげのげ/絶望、そして文学が生まれた時
これはひどいww
ただ、これを面白いと思うには、もう少し突き抜けた感じが欲しかったかなと思います。

No.4 愛と装いを混ぜ込んで
一言でいえば好みじゃない話だった、ということになるんだと思います。
理由は色々あって、上げていったらキリがないです(弟君性格悪すぎやろ、とか)
その中でも、最も大きな理由が、男女の双子であるということでした。
この物語は恐らく、同時に生まれた二人の人間の間の感情を描いているんだと思うんですが、
これが異性となるとどうしても「恋愛」が頭を過ってしまう気がします。
そして、この物語において描かれているものに、恋愛は不要だと思うんです。
だから、同性で書いてほしかったなって思います。
もちろん、兄妹間で恋愛は普通ありえないし、同性だから恋愛感情はありえないとは言い切れないんですけどね。
逆に、自分が読み違えていて、この二人の間にある感情が恋愛だとしたら、それも気持ち悪いと思ってしまうかもしれません。
だから、本当に好みの話です。ごめんなさい。

No.5 天気雨
他の方もおっしゃっていますが、そのまんま過ぎると思います。
良い意味で裏切られる部分がなく、言うなれば、起承転結の転が抜けている感じです。

No.6 悲しい嘘
オチが酷いです(褒め言葉)
どこまで真面目に読んだものか、割と真剣に考えました。
でも最後の一行でどうでもよくなりましたww
***********************【投票用紙】***********************
【投票】:無し
気になった作品:No.1 恋のまなざし
           No.2 終わりの決定
********************************************************
595 :スピカ ◆9FtOhHhBPAtQ [sage]:2014/05/04(日) 13:36:44.17 ID:VnhwC/l80
No.1 恋のまなざし(茶屋)
http://text-poi.net/post/chayakyu/59.html
小説を書き始めた時期にこの手のメルヘンじみたものをつい書いてしまうものです。単なるセンチメンタリズムの垂れ流しで、読み手は白けてしまうのですが。小説以前の擬似メルヘン。この作者が10代なら若気の至りですみます。でも万が一30代・40代だとするといささかぞっとします。

No.2 終わりの決定(犬子蓮木)
http://text-poi.net/post/sleeping_husky/22.html
通読してある種のイヤな感じが残りました。正体は「ご都合主義」の薄っぺらさ。人間の言葉や考えの分かるライオン。そして人間にはその気持ちは分からない。しかもライオンの考えは人間そのもので、人間がライオンに擬態しているにすぎない。これで物語の外形を作ったからと言って、それがいったい何になるのか。単にコミュ障の人間をライオンに置き換えただけです。

No.3 ふほへほげげのげ/絶望、そして文学が生まれた時(しゃん@にゃん革)
http://text-poi.net/post/syan1717/38.html
この場合の原文はあまり意味がない気がします。だからといって現代語訳部分だけを読んでみると、あることに気づきます。そう、つまりこれは説明なんですね。描写で展開している部分が極端に少なく、説明に依っているぶん、物語の駆動力に欠けています。ただ、最後に地平線に向かって駆け出す二つの影のイメージだけはちょっと心に残りました。「園山俊二だ」と気づいて、すぐに萎えましたが。

No.4 愛と装いを混ぜ込んで(ほげおちゃん(◆xUD0NieIUY))
http://text-poi.net/post/hogeochan_ver2/2.html
これは細部の粗探しをしても仕方がない小説です。勢いにまかせて青い恋愛を追って行けばそこそこ楽しめる。アニメによくありがちなシチュエーション・人物造形ですが、独りよがりの部分があまりなく、読ませることに徹しています。この中では現時点で一番な気がします。ただ、この一番はある日、あっさりと覆ってしまいそうな気がします。それがオリジナリティーに乏しい作品の宿命だと思います。
No.5 天気雨 ◆m03zzdT6fs
http://text-poi.net/post/hogeochan_ver2/3.html
西方の蛮族と戦っている以上、これは日本の話ではないのでしょう。この手の架空戦記は量産されていますが、決定的にリアリティーに欠けていることが多いです。たとえば将軍の装束。鎌倉時代の鎧はそれだけで30sはあり、日本刀や槍を合わせると人間一人を背負った重量になります。いくさびとはそうしたリアルを背負って生きている以上、汗の臭気や焚き染める香の匂い、踏みしめる靴底の感覚等は無視できないでしょう。このままでは単に異国情緒だけを安易に借りたコスプレ物語でしかありません。お好きな方はそれでいいかもしれませんが。

No.6 悲しい嘘(muomuo)
http://text-poi.net/post/muo_2/1.html
看護師のお知り合いはいなかったのですね。休日の看護師特有の身体感覚、医師に対する目、そういったものが描かれていません。単なる思い付きで設定を決めたのでしょうか。これではOLと上司の関係に置き換えても同じだと思います。それではつまらない、というなら、このお話自体がつまらないということでしょう。看護師である必然性がないわけですから。ただ、ひとつだけ長所があります。それは読みやすいこと。字数が少ないぶん、苦痛の程度も抑えられています。この中で選ぶなら、ベターではないでしょうか。


***********************【投票用紙】***********************
【投票】:No.4 愛と装いを混ぜ込んで(ほげおちゃん(◆xUD0NieIUY))
気になった作品:No.6 悲しい嘘(muomuo)
********************************************************
596 :422 [sage]:2014/05/05(月) 20:34:58.90 ID:qcNZgD0q0
てきすとぽいに感想が投稿されました!
http://text-poi.net/vote/60/report.html#vote

てきすとぽいの方、いつまでも未投票で「あらら……」と感じていましたが、最終日になって投票してくれる人が出てきたようです。

投票期間終了まで残り三時間半、まだまだ投票および感想お待ちしています!
597 : ◆pxtUOeh2oI [sage]:2014/05/05(月) 20:41:17.64 ID:1pCP1KXK0
>>582
じぶんでも忘れてたものがでてきて、ふぁ? となりましたが

>あの時居た人たちはどこで何をやっているんですかねえ。
わたしはこの品評会でNo.02書いてました
598 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [sage]:2014/05/05(月) 20:43:34.46 ID:1pCP1KXK0
>>596
祝日終わるまでが投票日だと勘違いしてました……
Twitterのほうで、BNSK続くなら出してみたいな人もいたので、継続すると出してくれる人が増えるかもしれません
599 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/05/05(月) 21:09:28.57 ID:PLKs8IfCo
また参加者20人くらいまで増えてほしいねぇ
600 :422かつ582 [sage]:2014/05/05(月) 21:30:03.12 ID:qcNZgD0q0
>>597

エッ、エッ……エエッ……!!

この品評会って、今回の「一目惚れ」&「絶望」のNo.2ですか?

全然わからなかった……
BNSK久しぶりと言われていたので、昔の誰かなんだろうとは思っていましたが。

あのお題「少女」で書かれた作品、めちゃくちゃ好きです。
あのときは全然受け入れられなかったのですが、ずっと心に残っていました。
というか昔と今で、主人公に対する印象が180度変わっています。
昔は「なんだこの主人公、最低すぎるだろ……」だったんですけど、今は「こんな誠実な主人公は私には書けない!」という感じで。
本当にこんなことがあるんだなあと身を持って体感しました。

ちなみに私はトリップ忘れてしまったんですけど、あのときの◇7C6LTZ08z6だったりします。


>>598

感想に時間がかかるようであれば、ぜひ投票だけでも!!

……祝日最終日はフリーにしたほうがいいのかなあと考えていましたが、勘違いが起きないよう事前にしっかり告知しておいたほうが良かったですね……

Twitterでは参加したいひと増えているんですね。
今回は私の手際が悪く立て込んでしまったので、次回はちゃんと余裕を持って開催すると人が集まってくれるかもしれませんね。

ちなみに今回の運営で私はやらかし体質であることがわかったので、他に運営したい方がいれば喜んでお譲りいたします(´・_・`)
601 :422 [sagasage]:2014/05/06(火) 00:26:29.58 ID:obpu3AJbo
2回計算して一致したので会っているはず・・・・・・

■てきすとぽい

 No.01 恋のまなざし           投票0 関心票3
 No.02 終わりの決定          投票2 関心票1
 No.03 ふほへほげげのげ/      投票0 関心票3
    絶望、そして文学が生まれた時
 No.04 愛と装いを混ぜ込んで     投票3 関心票1
 No.05 天気雨               投票0 関心票2
 No.06 悲しい嘘              投票0 関心票2

■BNSK本スレ

 No.01 恋のまなざし           投票0 関心票1
 No.02 終わりの決定           投票0 関心票2
 No.03 ふほへほげげのげ/      投票0 関心票0
    絶望、そして文学が生まれた時
 No.04 愛と装いを混ぜ込んで     投票3 関心票0
 No.05 天気雨               投票0 関心票2
 No.06 悲しい嘘              投票0 関心票1

■合算

 No.01 恋のまなざし           投票0 関心票4
 No.02 終わりの決定           投票2 関心票3
 No.03 ふほへほげげのげ/       投票0 関心票3
    絶望、そして文学が生まれた時
 No.04 愛と装いを混ぜ込んで     投票6 関心票1
 No.05 天気雨               投票0 関心票4
 No.06 悲しい嘘              投票0 関心票3

ということで、今回の優勝は「No.04 愛と装いを混ぜ込んで」でした!
参加者の方、感想・投票いただいた方、ありがとうございました!
602 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [sage]:2014/05/06(火) 00:38:19.00 ID:S1+xFrJZ0
No.04さんおめでとーです!
運営さん、参加した方おつでしたー

>>600
>この品評会って、今回の「一目惚れ」&「絶望」のNo.2ですか?
そうです
最近はTwitterとかKindleのほうに動く場所を移してました
またこちらも人、増えればいいんですけどねー
とりあえず宣伝にもなるように基本は向こうで参加していこうかなと思ってます
またあれば参加します!
603 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/05/06(火) 00:43:49.96 ID:FDfORidvo
運営さん参加者さんお疲れ様でした
604 :422 [sagasage]:2014/05/06(火) 01:02:42.74 ID:obpu3AJbo
てきすとぽいにも結果を記載しました。

改めて、皆さんありがとうございました。
実は前回かなりくやしかったので、今回優勝できて嬉しいです。

また、運営面でいろいろ問題を起こしてしまいすみませんでした。
運営者になった以上、「お題はふたつあったほうが参加者が多くなるかな?」
とかいろいろ考えているうちに暴走してしまいました。

またリベンジの機会があれば・・・・・・


次回ですが、運営者の立候補はいないですかね?

とりあえずお題を先に決めておいたほうがよいと思いますが、
まだお題を何も思いついていません。

明日中には決めようと思いますが、参考にしたいので、
いくつか案を投下していただけると助かります。
あまりにも案が多いようだったら、>>615 ぐらいまでで決めます。

またレス数ですが、縛りをつけたほうがよいかどうかも迷っています。
そのあたりも要望があれば、合わせて書き込んでください。
# 全然要望に沿えなかったらすみません。
605 :422 [sagasage]:2014/05/06(火) 01:04:19.55 ID:obpu3AJbo
すみません。
明日中と書いていますが、今日(5/6)です。
606 : ◆m03zzdT6fs [sage saga]:2014/05/06(火) 02:39:31.48 ID:FhVHoJ/qo
優勝作品と作者様、おめでとうございます。また、選評会の運営に関しましても、大変にもかかわらず尽力していただき、ありがとうございます。
初めて参加させていただきましたが、己の未熟さを噛み締める事しかできませんでした。
頂いた感想やコメントにお答えしたいとは思っておりますが、何を言っても言い訳にしかなりそうにない狭量な人間ですので、感謝の気持ちのみ表させていただきたいと思います。
僭越ながら感謝と、お詫びを申し上げます。

次回選評会のお題に関してですが、シンプルに一つに絞るか、お題を複数にするのであれば、複数個のお題の中から二つ以上を選んで、という形式のどちらかではいかがでしょうか。
もっとも、後者はあまり人が集まらないように思えますので、提案しておきながらですが、前者の方が良い気がいたします。
レス数に関しましては、文字数換算で申し訳ありませんが1.5-2万文字以内で収めるぐらいでいかがでしょう。
607 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/05/06(火) 08:11:32.86 ID:V6GbpbZAo
個人的に、良いお題だなって思うのは、一つのシンプルな語句で色んな解釈ができるようなものかなぁ
過去の品評会お題は、そういうの多かった。
608 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [sage]:2014/05/06(火) 12:52:29.16 ID:B0a+lfnh0
運営お疲れ様でした。
お題については、>>607の言うようにある程度広く解釈できるお題1つに絞るのがいいかな、と思います。
まああまりに漠然としていても書きづらいんですけど・・・。
609 : ◆xUD0NieIUY [sagasage]:2014/05/06(火) 16:39:05.91 ID:obpu3AJbo
――私は特別な存在(special one)だ。

 お題「one」
 ※お題の解釈は自由。ただし読み手を納得させること。

 制限:400字(20x20)の原稿用紙換算で50枚まで(数枚など短い作品でも問題なし)。
    枚数計算には下記ツールを使用してください。
 http://htmldwarf.hanameiro.net/tools/novelchecker_easy.cgi

文章量制限については、単純な文字数だとBNSKスレ側で扱いにくく、レス数だと
てきすとぽい側で扱いにくくなるので、原稿用紙換算とさせていただきました。

最初はもっと枚数を少なくする予定でしたが、よく考えると一ヶ月に一回なので
緩くていいかなと。

ツールは提示したもの(ノベルチェッカー)以外を使用しても問題ありませんが、
結果が異なった場合はノベルチェッカーの結果を採用するようにしてください。

ちなみに先ほど気づきましたが、SS速報vipでは一レスで80行まで書けます。
てきすとぽいから作品を転載する際、前回は一レス30行で転載しましたが、
今回から一レス80行で転載してもよいかもしれません。
610 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sagasage]:2014/05/06(火) 16:40:56.50 ID:obpu3AJbo
期間については運営者の立候補があればその人に任せようと思いますが、
今のところ以下で考えています。

 投稿期間:05/25 (日) 00:00 〜 05/31 (土) 23:59
 投票期間:06/01 (日) 00:00 〜 06/07 (土) 23:59
 集計発表:06/08 (日)

 ※執筆期間はややこしいので消しました。
 ※投稿期間、投票期間の締め切りは土曜日なので注意!

もし本日午後九時ごろまでに立候補が出ないようであれば、
とりあえず私が今回もてきすとぽいにスレッドを立てようと思います。
611 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/05/06(火) 16:44:16.71 ID:V6GbpbZAo
おつおつ
遅くなったけど優勝おめー
612 :422 [sage]:2014/05/06(火) 22:03:24.53 ID:obpu3AJb0
とりあえず、てきすとぽいにスレッドを立ててきました。
http://text-poi.net/vote/62/summary.html

皆さんの参加をお待ちしております。
613 : ◆m03zzdT6fs [sage saga]:2014/05/06(火) 23:12:50.11 ID:FhVHoJ/qo
スレ立てお疲れ様です。


> ――私は特別な存在(special one)だ。

ジョゼ・モウリーニョ監督の名(迷)言ですね。初めて聞いた時はビックリしましたが、結果が伴っているだけに本当にスペシャル・ワンになってしまわれましたなぁ。
614 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/05/07(水) 01:55:55.87 ID:nHC0cQ21O
優勝おめ!&運営おつおつ!
615 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/05/07(水) 02:01:17.49 ID:nHC0cQ21O
ところでさ、『アイドル「兄は私のマネージャー」』で品評会書いてたら膨らんじゃってさ。
さっきようやく出来上がったんだけど、なんか来月のお題でも大丈夫そうなんだよね。
今日通常作で出すのと月末まで待つの、出すならどっちがいいかな?
616 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/05/07(水) 02:49:44.77 ID:nHC0cQ21O
なぁ!どっちがいい?と言うか人が全然いないな。じゃあ品評会に回した方がいいか。
617 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/05/07(水) 04:52:18.04 ID:0ZjWU+bvo
時間二余裕があるのであれば、回してもいいんじゃないでしょうか。
推敲する時間もたくさんとれそうですし。
618 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/05/07(水) 08:03:32.15 ID:5kDbtnTPO
推敲か……。正直大っ嫌いな作業なんだよな推敲……。凄いやりたくないなこれ……。
でもその方が感想貰えそうだしな。なるべく感想たくさん欲しいし、そうしようかな。ありがとう。
ところで俺今回の品評会の感想書いてないんだけど、まだ感想欲しい?いるなら二三日掛けて書くけれど。
619 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/05/07(水) 08:25:33.51 ID:xE0WcwKLO
感想書いていただけるなら断る人はおりませぬ!
ぜひ書いてください!

推敲は私も嫌いですが、まだ時間があるのでもう一作品作ってみて、読み比べて良いほうを出すのはどうでしょう。
620 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/05/07(水) 09:21:59.84 ID:5kDbtnTPO
お、はいはい。了解しました。いや分かってるけどね、一応聞いてみました。貰えるなら貰えるだけたくさん欲しいよね、感想。
せっかく時間掛けて書いたのに、一人も感想書いてくれない時とかあるとかなりキツいんだよな。
ちなみにそちらの方は優勝したNo.04でいいかな?
いや、念入りに書いて欲しい人と別に感想なんかいらんって人もいて配分がよく分からんのよね。

いやー。正直もう一作は……面倒くさいと言うか……。これ以上のが書けるとは思えないし。無理。そんな湧き出る様な文才が欲しいです。
やるとしても軽い一レス物でも書いて別酉で出すとかですな。
621 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/05/07(水) 12:15:14.63 ID:xE0WcwKLO
>>620

はい、No.4です……

名無しに戻ったつもりだったのにあっさり当たってしまった。

たしかに。
一つ作品を書き終えると気が抜けて、しばらく何も書けない感覚に陥ることがありますね。
けど、一作品の投稿はこれで確定(?)したのでそれだけでも嬉しいです。
622 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/05/09(金) 11:18:32.26 ID:gtQr53Q/o
お題plz
623 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/05/09(金) 12:16:13.73 ID:JY1wpVhiO
>>622
624 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/05/09(金) 12:16:59.91 ID:0oakUEkyO
>>622
蜿肴覧
625 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/05/09(金) 12:30:00.03 ID:gtQr53Q/o
ありがとー
626 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/05/09(金) 13:13:00.28 ID:0oakUEkyO
oh…化けた…
>>624は反旗、で
627 : ◆BNSK.80yf2 [sage]:2014/05/09(金) 17:35:24.06 ID:gtQr53Q/o
みなさま、お久しぶりです。前々回の品評会を運営した者です。
久々に時間が出来たので、通常作を書いていたのですが、それに関して思いついたことがあるので書かせてください。

先月、今月と品評会が開かれたこと、すごくうれしく思っています。
ただ、やはり通常作はといえば、一時的に何作か投下されたものの、現状はあまり増えていません。
以前は投下された通常作はBNSKwikiに転載され、読み直すことができましたが、運営さんが去られてからは更新も滞っています。
そこで思いついたのですが、てきすとぽいに月間通常作転載ページを作ったらどうでしょう?
個人的に、通常作が増えないのって読んでくれる方が増えないからだと思うんです。
てきすとぽいに、月ごとに通常作転載用ページを用意し、そこにその月に投稿された通常作を転載する、と。
そうなれば本スレだけでなく、あちらのサイトでも見る方が増えますし、あちらのサイトから書きに来てくれるかたが出るかもしれません。
机上の空論である可能性は高いですが……。
理想としては、通常作がある程度集まったら、てきすとぽいの投票制度を利用し、月間最優秀通常作を決めるなんてことができたら最高だと思っています。
もちろん、転載を嫌がる方もいらっしゃるでしょうし、何より通常作の投稿が全然ない現状で言っても仕方ないことですが……。

こちらは、前回の品評会の時と違い、すぐに実行に移そうとは思っていません。
あくまで、こんなのどうだろう? という提案で、いつまでにやろうなんてことも考えていません。
本当に思い付きなのですが、スレの皆様の意見を伺いたいと思い、こうして書き込みました。
皆様のご意見、お待ちしております。
628 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/05/10(土) 11:00:21.77 ID:fEr6WK6+O
こんにちは。

個人的には、てきすとぽいに転載するのはまとめサイトの代わりにもなるためアリかなと思います。

また月間最優秀通常作を決めるというのも良いアイデアかな、と。

なんとなく通常作は練習、品評会は本番という感じがあって、どうせ書くなら品評会のほうが良いだろうという気分になることがあるんですね。

通常作でも最優秀を決めるということになれば、そんなふうに感じることもなくなるかなあと。
#品評会と食い合いになる可能性もありますが。
629 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/05/10(土) 23:12:55.27 ID:JhOFPQeho
おだいくだしあ
630 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/05/10(土) 23:28:17.77 ID:U64vrgVFo
ポロロッカ
631 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/05/14(水) 09:45:36.62 ID:bRj+6CdUo
潮が引くように人がいなくなった
これはつまり、大津波の前触れなのだろう
次の品評会は期待できそうだ


というわけでお題くれさい
632 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/05/14(水) 11:06:37.69 ID:9uiDffPno
初夏
633 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [sage]:2014/05/14(水) 20:57:22.84 ID:WVIrqoZ00
お題ください
634 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/05/14(水) 22:21:11.35 ID:FfoZX3Ua0
あのことを忘れるな
635 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/05/15(木) 23:02:40.50 ID:4YXG2dkeo
リリカルなお題を下さい
636 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/05/15(木) 23:41:05.93 ID:jYCPAlSRo
菜の花で
637 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/05/15(木) 23:50:17.12 ID:uLK8aGH+o
俺もその頭の3文字が頭をよぎったけど、他の人がどんなお題出すのか見たかったから書かずに眺めてた
みんな考えることは大体一緒なのね
638 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/05/19(月) 19:52:34.53 ID:mjHB1qkx0
やばい、品評会作品全く思いつかんぞ……
639 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/05/25(日) 00:18:28.96 ID:3eCMd2cgo
http://peercast.net/archives/2014_yykakiko_bbs_heisa.html

閉鎖ですってよ奥さん。まとめ板おつかれちゃん……
640 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/05/26(月) 00:20:21.06 ID:zhExBSNeo
品評会作品がてきすとぽいに投下されたため、こちらに転載させていただきます。

まずは

No.01 たったひとつのぼくを求めて
http://text-poi.net/vote/62/1/
641 :No.01 たったひとつのぼくを求めて 1/5 [sagasage]:2014/05/26(月) 00:27:34.31 ID:zhExBSNeo
  5
 ビルに挟まれどこか閉塞感のあるような歩道橋を渡り、最近建てられた日本で最も高いというビルに入る。この七階の本屋に、ぼく
は惚れ込んでいた。SFの本が豊富に置いてあるのだ。SFを贔屓している店だというわけでもなくて、とにかく欲しい本が揃っている。
某社の学術文庫も揃っているというのだから驚きだ。手元に置いておきたかった古典SFをここで大人買いしたら、レジの女性店員さん
にじっと見つめられて気恥ずかしかった覚えがある。エスカレーターで七階に着き、書棚を眺める。特に買いたい本があって来たわけ
ではなかったのだが、用もなく入ってしまうのが本屋というものだ。相変わらず豊富に揃っているSFの棚を見て、気分を良くする。古
典SFばかりではなくつい最近発売されたSFも取り揃えているのだから感心だ。他にもいろいろな棚を見て楽しむことができる。眺めて
いるとふと、海外小説の棚で蒼い表紙が目についた。海のイラストだ。目に吸い込んでくるような、引きこんでくるような海。リチャ
ード・バックの小説だった。「かもめのジョナサン」で有名なリチャード・バックといえば空や飛行機を題材にすることが多い、とい
うよりもそればかり書いている作家だが、やはりこの海のイラストも、空のお話なのだろうか。ぼくは本を手に取り、立ち読みを開始
した。たちまちぼくは異世界へ飛ばされてしまった。
 そこには数人のぼくがいた。どのぼくもきっと、ぼくと同じように異世界から飛ばされてきたぼくなのだろう。数えてみると四人い
た。ぼくを合わせると五人だ。ぼくが五人もいる。ぼくたちがぼくの目の前に集合することで、ぼくは複数の鏡を合わせたような迷宮
の入り口を覗いているような感覚にとらわれてくらくらした。これからなにが起こるのだろう。と思う余裕もないままに飛行機が地面
に突っ込もうとしていた。でも時が止まったみたいに、飛行機は地面に突っ込みながらも空気のクッションに受け止められてぴくりと
も動かない。時が止まったみたいに、というか、実際に時が止まっているのだ。景色はすべて沈黙していた。粒子さえも活動すること
を休止している。それならこの世界に光がなくなってしまうようなものだけれど、そういうこともなくて、ただいろいろな条件を無視
しながらこの世界の時は止まっている。あるいは、そうだ、この世界にはもともと時なんてものは存在しないのかもしれない。もとか
らないんだから、光は時を必要としない形で存在できているのだろうし、ぼくたちもこうやって、動くことができているのだろう。ぼ
くは腕を動かしてみる。きちんと動いた。だったらあの飛行機もやっぱり動くはずなのに、動かないということは、もしかしたら他の
理由があるのかもしれない。ぼくは一度、仔細に四人のぼくを眺めてみた。他の世界から来たというのだからなにか違いがあるのだろ
うけど、どこにも違いは見受けられない。でもやっぱり、どこか違いがあるような気もする。その非常に曖昧なニュアンスはぼく以外
のぼくも感じ取っているみたいで、みんな目玉をきょろきょろさせている。ぼくたちは同じでありながら異なり、また異なっていなが
らも同じなのだ。それがよくわかった。
 ぼくはぼくに話しかけてみることにした。でもはたして言葉は通じるのだろうか。という不安は、実はさほど感じてはいなかった。
なぜならばぼくは日本語しか使えないからだ。あ、でももしかしたらこのぼくは英語も達者かもしれない。それは羨ましいことだが、
でもぼくのことだから日本語を使ってもらわないと困る。ぼくはぼくのことを信用していたから、あまり不安を感じなかったのだ。ぼ
くは空を見上げる。飛行機が地面に衝突しそうでぼくは驚いてわっと声を上げた。でも時が止まっているのか飛行機が地面に実際に突
っ込むことはない。まあ突っ込んでいたならここにいるぼくたちも巻き添えをくらうだろうから、時は永遠に止まっていてくれていい
のだけれど、でも考えてみるに、時が止まっているのなら永遠というものはもはや存在せず、だというのに時が永遠に止まることがで
きるというのは、いったいどういうことなのだろう。ああ、そういえばぼくはぼくに話しかけようと思っていたんだった。なんだか面
倒なことが起こる予感がした。飛行機を背にしてぼくはぼくに話しかける。「やあおはよう」でも確かさっき、書店に寄る前にオムラ
イスを食べたのだった。美味しいオムライスだったし、オムライスを食べたということはつまり昼食であるはずだった。だからおはよ
うと言うべきではなくこんにちはと言うべきだったんだ。でもそう気づいたからといって、相手のぼくが住んでいた世界にとってオム
ライスがイコールで昼食なのかといわれるともしかしたらそうではないかもしれないし、そもそも考えてみればぼくの世界でもオムラ
イスを昼以外に食べてはいけないだなんて法律はない。ああでもだとしたらぼくは、さっき昼食を食べたのだろうか。それとも朝食を
食べたのだろうか。そうやって悩んでいるばかりのままそうして悩み続けていると目の前のぼくは問題なく「おはよう」と返事してき
た。ああ良かった本当に言葉は通じるらしい。ぼくは安心してオムライスの味を忘れることができた。それから残りの三人も「おはよ
う」あるいは「こんにちは」もしかしたら「こんばんは」と返してきたような気がする。一件落着だ。一件落着だから、ぼくはぼくた
ちから離れて走って、それで走ると崖のようなものが見えたからそこまで息を弾ませて、それで飛び降りて自殺した。
 さっきぼくがぼくに向かって「おはよう」と言ってきたものだからぼくは咄嗟に「おはよう」と返すことにしたのだけれど、「おは
よう」とはどういう意味だったのだろう。そうしたらぼくとそのぼく以外のぼくが「おはよう」とか「こんにちは」とか「こんばんは
」とか難しい言葉を話すものだからぼくはこんがらがってしまってああそういえばこの世界には時がないのだったなと思いついた。な
ぜ思いついたのかは分からないけれど、発想とはそういうものだと思っている。発想とは常に躍動的なものだ。ではその失われた時を
求めるためにはぼくはなにをしたらいいのだろう。と考えると、なぜそんなことを考えているのだろうとぼくはぼくを考えることもで
きるようになる。でもきっとぼくは良い奴なのだろうなと思った。自画自賛した。そうだ、でもこうして自画自賛するのは不思議なこ
とではない。それというのも、ぼくは今日書店に寄る前に、少し離れたところのビルの最上階付近にあるオムライス専門店でオムライ
スを食べたのだけれど、そのときも自分を褒めてやりたくなるようなことがあったのだ。ぼくはオムライスを食べている間、手が滑っ
642 :No.01 たったひとつのぼくを求めて 2/5 [sagasage]:2014/05/26(月) 00:28:06.11 ID:zhExBSNeo
てスプーンを落としてしまい、ウェイターがすぐさま新しいスプーンを持ってきてくれたのだけれど、ぼくは良い奴なのだから洗う手
間を省くために落としたスプーンをそのまま使うことにしたのだ。と、威張っている自分を諌めることができたのだからぼくは良い奴
なのだ。ところでさっき、ぼくが自殺してしまったらしい。それは一大事だしぼくは死にたくないなぁと漠然とだけど思っているもの
だから死にたくないのになんでぼくは死なないといけないんだろうと気分を落としていると、でもぼくはぼくが死んでいないことに気
付いた。ぼくは生きている。でもぼくは自殺している。ああそうか分かったぞ、生きているぼくと、自殺したぼくは同一人物ではなか
ったのだ。そうだと分かるとぼくは嬉しくなって、安心して生き続けることができた。それはまた嬉しいことだ。ぼくはぼくが死んだ
というのにるんるんの気分でぼくが生きていることを喜んでいた。やったぁぼくは生きている。けれどもぼくは死んでいる。やったぁ
ぼくは生きている。けれどもぼくは死んでいる。それでもぼくは生きている。
 まったくここはどこなのだろう。ぼくは辺りを見渡した。するとなんと、ぼくがぼくの他に四人もいる。つまりぼくを合わせて五人
のぼくがいるのだ。ぼくは走って逃げてしまいたい衝動に駆られた。人間ならば誰しもそう思うだろう。しかしこういうときに走って
しまうと、ぼくはマラソンランナーになって金メダルを獲得してしまうから、どうしても、ぼくは走ることが許されないのだ。少しは
遠慮というものを覚えるべきだとぼくはいつかぼく以外の誰かに言われた覚えがあるから、その教えを忠実に守って、今回ぼくは走ら
ないでおくことにしたのだ。それで走ることはぐっとこらえて、ぼくはぼくのことを観察してみることにした。それぞれどこか、微妙
に違うようで微妙に同じだ。つまり言葉で言い表すことはできないぐらいには似ていて、そして言葉で言い表すことはできないほどに
は違っていた。どこがどう違うのか、説明することができない。どこがどう似ているのかさえ説明ができない。だというのにあの四人
のぼくが、ぼくではないことがとてもよく分かったのだ。あるいはそれは、ぼくがぼくという実感を認識しているからかもしれないが、
それを抜きにしてもぼくよく分かったのだ。ところでぼくは、言葉で表現できないものなんてこの世には存在しないものだと思ってい
る。言葉を信仰している。それはたぶんそんな良い小説作品たちと触れあってきたからだろう。でもぼくは浦島太郎の存在を失念して
いた。絵にも描けないくせに言葉には表せるのか、と聞かれると、ぼくはきっと答えに窮したに違いない。でもぼくは浦島太郎なんて
忘れていたからそんなことはどうでもよかった。ああそうだ、言葉で言い表すことができないのなら、言葉の代わりに映像や絵や音楽
を使えばいいのだ。竜宮城だって映像で撮ればばっちり説明することができる。ぼくはとても冴えていた。でもそれを実行する元気は
なかったのでそのままにした。とにかく曖昧な、よく分からない差異がぼくとぼくとぼくとぼくとぼくにはあったのだ。それはたぶん、
異なる世界に住んでいたから、環境がぼくに違いを与えたとか、そんな分かりやすいものではない。ところでそんなことを考えている
うちにぼくのうちの誰かが「おはよう」と言ってくる。そしてまたぼくのうちの他の誰かが、「おはよう」と言うのだ。ぼくは戸惑っ
てしまった。そしてまたもう一人が、「おはよう」と言う。つまりいまここで「おはよう」と言えば許されるのだなとぼくは理解して、
ぼくは「こんにちは」と発言した。それは自分の感覚に忠実に従った発言だった。最近は言葉狩りが激しいからもしかしたらこの発言
も検閲にかかるかもしれない。ぼくは発言した後に戦慄した。でももはや一度口に出した言葉は取り消すことは不可能なのだ。ぼくは
走り出したい欲求に駆られた。そうしている間に、ぼくではないぼくが、急に走り出した。ぼくの欲求を奪い取ったみたいにそれは良
い走りだった。きっとぼくと同じ理由で走りたいと思いながらも、走るのをこらえていたのだろう。あの世界のぼくは、ぼくよりも忍
耐強くないらしい。そう思うとぼくはぼくに勝った気がして誇らしくなったが、実に危ないところだった。ああ、忍耐強い、そして忍
耐強くない。このふたつの表現によって今ぼくはぼくとの差異を言葉で説明することができたみたいだ。これはすごい進歩だった。そ
れはともかく走っていったぼくが崖から飛び降りて死んでしまった。ぼくが死ぬ場面を見るというのはやっぱりぼくとしては悲しいも
のだから、ぼくは涙を流した。するとふいに空が明るくなってくる。なにがあったのだろうと思い目の下を拭うと、あの飛行機のなか
に乗っていたらしい男女が、ふいに消しゴムで消されたように消えていったのが見えた。あの男女はどうやら夫婦のようだった。その
二人が消えると、ぼくたちもまた、他の世界へ飛ばされるのだった。



   4
 さてさてどうやらぼくたちのうちの一人が死んだことによりぼくたち生き残りの四人は他の世界に飛ばされたらしい。そう推理する
のは容易だった。なぜならばぼくは天才だからだ。あるいはぼくがぼくを客観的に見ることに成功しているからだ。人間は自身を客観
的に見ることで、自己プロデュースを比較的能率的におこなうことができる。それは天才と同義だった。つまりぼくたちは今、ぼくが
複数いるために本当の意味でぼくを客観的に見ることができるので、こうして鏡なしでも目で見ることができているので、ぼくを客観
視することに成功していたのだ。だからどんなに慌てたとしてもぼくは冷静に物事をとらえることができた。そんなことはどうでもい
いからぼくはサッカーがしたかった。ここは競技場なのだ。いや、競技場そのものではない。世界が競技場の形をしていたのだ。楕円
の形をして競技場くらいの広さしかない世界だった。それでどうやって世界が成り立っているんだろうと思ったけれど、ああそうか、
つまりここは空間が不足している世界なんだ。さっきの世界は時が完全に失われていたけど、ここは少しではあれど空間が確保されて
いるのだなと思うと、なんだか空間を贔屓目に見て時を差別しているような不快感をいだいた。でもそういえばあの世界でぼくたちは
643 :No.01 たったひとつのぼくを求めて 3/5 [sagasage]:2014/05/26(月) 00:28:54.76 ID:zhExBSNeo
動くことができたのだし、もしかしたら完全に時がなかったわけではなかったのかもしれない。だから光が存在することができたり、
あの飛行機が止まったりできたのかもしれない。ぼくはもうなにも文句を言うわけにはいかなかった。でも文句を言う立場にいなくて
も文句を言うのがクレーマーの役目というものだろうから、ぼくは大声で文句を言おうとしたのだがところでつまり誰かが死ねばまた
他の世界に移動できるのだということにぼくは気づいてしまった。すぐに口をつむぐ。世界を移動していけばあの書店にも帰れるかも
しれない。そうだだったらぼくを殺していけばいいんだ。これからぼくとぼくとぼくとぼくによるバトルロイヤルが開始される、とで
も思ったけどそうではなくて、ぼくたちは平和主義だからこれから話し合って仲良く手を取り合って解決策を見つけようじゃないかと
思うはずがないからぼくは殺されてしまった。
 どうやらこのように一人が死ぬと景色がリセットされるらしい。いや、つまり景色が変わるということはまた異世界に飛ばされたと
いうことか。あまり実感は湧かなかったがそういうことなのだろう。ぼくはようやく自分のほっぺたをつねってみることにした。痛い。
痛いからこれは夢ではないらしい。でも考えてみるに、痛いと感じることが、どうして夢でないことの証明になるのだろう。おかしい
じゃないか。たとえばぼくの体は実際には存在しなくて存在するのはぼくの脳だけでぼくの脳は水槽に入っていてそれで水槽の脳がぼ
くの体が存在していると錯覚しているのかもしれない。ぼくの体を認識しているだけでぼくの体があるとは限らない。そしてぼくの体
があるくせにあるとは限らないということは、痛いと感じるくせに痛いと感じていないとも限らないということだ。脳だけの肉体であ
るのならいくら走っても平気なはずなのに、脳が勝手に疲れたと感じたら疲れたと感じてしまう。マラソンしているときだって、極力
口は開けないように心がけるのがいいとよく言う。口を開けると酸素をたくさん取り入れる形になるから、体が酸素を求めている体勢
になって、脳が勝手に自分は疲れていると錯覚してしまうのだ。現実にもそういうことがあるのだから、脳が実在しない肉体を錯覚す
るくらい、造作もないことのはずだ。ところでこんなことを考えていると眠たくなってきてしまった。そういえばぼくは難しかったり
簡単だったりすることを考えると眠たくなるタチなのだった。これはいかんいますぐにでも難しくも簡単でもないことを考えないとほ
んとうにぼくは眠ってしまう。そうしたらここらへんのぼくのことだろうからぼくの寝首を掻っ切ってしまうだろう。ぼくはジャンプ
してステップしてホップしてみたけれどそうするとなんだかこの狭い競技場が不甲斐なくてでもそれくらいのことをするのには充分な
広さがあるはずだった。それにこの競技場にはぼくら四人の他に誰もいないのだ。だとしたらここは、ぼくらが来る前は無人島ならぬ
無人世界だったのかもしれないし、そもそもさっきのはホップステップジャンプが正しいのであって逆にやるというのは難しいと思う。
でももしかしたらこのほうが楽しいかもしれないと思うのはぼくが運動の得意な奴ではないからなのかもしれない。どちらにせよぼく
に実践する元気はなかった。でもさっき死んだぼくに至っては崖から飛び降りるくらいの身体能力はあったみたいだから、やはり、ぼ
くもそれくらいのことはできるのかもしれないと思ってジャンプステップホップをやってみた。もしここに崖があったならぼくは死ん
でいただろうけど競技場に崖はない。命拾いをした。それくらいには飛ぶことができて満足した。そうしている間にぼくではないぼく
が殺されていた。
 ああ驚いたとぼくは独り言を呟いたけれど他の三人はぼくの独り言に気付いていなかったようで寂しい。誰もぼくのほうに顔を向け
ることをしなかったものだからもしかしたらぼくは無視されているのかもしれないという被害妄想が放出した。ぼくは無視されている
のかもしれない。ぼくは無視されているのかもしれない。また独り言をしてみたら、今度もまた誰も反応しなかった。ぼくはもしかし
たら無視されているのかもしれないと思いぼくは無視されていると思う。
 落としたスプーンを使ったからといって、ウェイターが顔をしかめることはなかった。なぜかというと、ぼくがウェイターに気付か
れないように使ったからだ。それは言い換えるなら、実際のところぼくは落としたスプーンを使わなかったということなのだ。ぼくは
綺麗なスプーンを使ってオムライスを食べていた。でもそれだと前提から間違っている。ぼくは良い奴なのに。でもそもそも人間の思
考なんてものは間違いだらけだし間違っていることを責めるわけにはいかないよ。そういう寛大な心を持つことが良い奴になるコツな
のさ。と思ったけれど人間の思考なんてものは欠陥だらけだからさっきのこの思考もまた間違っているのかもしれない。というこの注
釈が間違っている可能性もある。というこの。人間の思考も捨てたもんじゃないなぁとぼくはふいに褒めてみた。隣で独り言が聞こえ
てきたが声が小さすぎてなんと言っているのかは分からなかった。なぜこんなにも声が小さいのだろう、と思えばそうだ、あのぼくは
ぼくに殺されるのを恐れて、自ら無意識的に存在を隠そうとしているのだ。あははそんなことしても無駄なのに、とも思うけれど、良
い奴であるぼくは、それに付き合ってぼくを無視してあげた。ぼくはなんて良い奴なんだ。そういえば最近推理小説読んでないなぁと
思って書店の推理小説棚に行こうとしている自分の光景をふと思い出した。ぼくはなにも考えることができないときは昔の記憶を思い
出すのが癖らしい。ところでなぜ急にぼくはなにも考えなくなったのだろうと思えば、そうだ、無視したからだ。何事も、無視をする
とはつまり思考を停止するというのと同義だ。だからぼくは考えるのをやめて、元の世界にいたときの自分の行動を思い起こしている
のだろう。ぼくは新本格推理小説を読みたくて新本格棚を探してみたのだけれど、さすがにそういう分類までして陳列しているわけで
はないようだった。本格も新本格も同じように推理小説の棚に並んでいる。予備知識はあまりないけどただ新本格系のを読みたいなぁ
と思っていたところのこの惨事なのだから、王冠を被った王様が言うにはカエルがぐえーと鳴いたからには帰ったほうがいいというこ
とだった。ぼくは書店を出ようと思ってでもちょっと棚に目をやったら、あの小説があったものだからわりと好きな作家なものだから
手に取ったりして、それで気づいたら異世界に飛ばされていた。ような気がするけれど実際のところどうだったか、詳しくは覚えてい
644 :No.01 たったひとつのぼくを求めて 4/5 [sagasage]:2014/05/26(月) 00:29:45.67 ID:zhExBSNeo
ない。人間の記憶というものは時間が経つごとに褪せていくものだけれどさっき時のない世界にいたことで記憶の褪せることに堰がと
められて、それでこの競技場に飛ばされたときに一気に大洪水が起きたのだろう。大洪水に恐れおののいている間にぼくが近づいてき
てぼくを殴り殺そうとするものだからぼくは慌てて避けてついでにその殴り殺そうとする拳を真剣白刃取りしたら鳥が飛んでくるっく
ーと心地よいさえずりを鳴らしてぼくは襲いかかってきたそのぼくを殺してしまった。ぼくは生き延びたしゴールを決めた。


   3
 世界。再度。変わる。生きる。目的。果たす。条件。ぼく。他人。ぼく。死ぬ。達成。仮定。生きる。ここ。世界。空間。時間。両
者。虚弱。思考。断続。疲労。加速。混乱。頭。脳内。シナプス。ぐるぐる。吐血。ぼく。条件。果たす。ない。ぼく。ぐるぐる。死
ぬ。ぼく。死ぬ。
 ここ(の)世界(は)どうやら助詞(や)助動詞以外(の)単語(を)ひとつずつ(でないと)使用する(ことが)できない世界(
のようだ)(からつまりどういうことかというと)時空(が)虚弱(であるために)思考(電流が)低下(しているといえるのであろ
うから)ここ(で)(もし:仮定)単純(な)思考(だけしようものなら)急速(に)脳(の)機能(が)低下(し最終的には)死(
に)陥る(と考えて良いのだろうし)実際(に)ぼく(つまりぼくではないぼくが)ひとり(死んで)いる。
 ふはははとぼくは笑いださずにはいられなかった。というのはこの世界はぼくの住んでいた元いた世界なのだ。いや確かに、時間も
空間も弱弱しくしか存在していないこの世界には、書店などありはしない。もともとあの書店があった世界というのも、実はぼくにと
っては本来いるべき世界ではなかったということなのだ。ふはははは。ぼくは実はこの物語の犯人であり画策した当本人でありラスボ
スなのである。つまり四人のぼくを集めたのはぼくなのだ。ぼくは四人のぼくを他の世界から集めることで世界を移動する手段を得て
そしてこのようにぼくを死なせていくことでその世界におけるぼくを占領することができる。つまりぼくは世界におけるぼくを吸収し
ているのだ。このようにして。ぼくはぼくを飲み込むことによって世界を手に入れている。まあ全部うそだけど。でもこの世界がぼく
の元いた世界というのは本当のことだ。ぼくは世界を渡り歩くことでぼくを死に導き最終的にぼくのなかに取り入れてしまうのだが(
ところで(これは(うそ(だ)しかし困ったことに移動先の世界を自分で選択することはできないのだった。だからぼくはたびたびこ
のようにして世界を移動しいつかこの世界に帰ってこれるときを心待ちにしていた。いまそれが果たされたのだ。充足感に満ち溢れる。
本来この世界では満足に思考もできないようになっているのだが、やはりここが故郷であるぼくは違う。こうやって*自*由*自*在
*に認識を垂れ流すことができた。ふはははは。……おい、え、あれれ。ついにこの世界の思考制限にやられて一人死んでしまった。
だめだそうしたらまた異世界に飛ばされてしまう。せっかく帰ってきたというのに。おいやめてくれ死ぬな死んではならないやめろや
めてくれああ。


   2
 あああなんということだぼくはまたぼくを何人も集めてあの世界を渡り歩かねばならないということなのかなんという絶望だせっか
く帰ってこれたと思ったのになんという仕打ちだなにをそんなに怒っているんだいとぼくはその怒っているぼくに向かって話しかけた
あたりかまわず喚き散らして怒りを表現しているとぼくがなにをそんなに怒っているんだいと話しかけてきたなんだいこのぼくはぼく
を慰めるつもりなのかいいい度胸じゃないかこれからぼくはぼくに殺されるということも露も知らずにそうだ犯人はぼくなのだとぼく
は口に出して大声で言ったなんだ怒っていたと思ったら急に自分が犯人なのだとこのぼくは言い始めた推理小説の真似ごとだろうかそ
れにしてはトリックも動機ももろもろも感じられないしそもそも事件ってなんのことだろうなんというチープな小説だそんなぼくは古
典SFなり読んでいたらいいんだそうだそうだそう罵倒しようものかそれとも心のうちに秘めておくべきか迷っている間にぼくはぼくを
血走った眼で見てくるぼくはもうさっさと目の前のぼくを殺して次の世界に行ってやろうと考えたきっとぼくからしたらぼくは血走っ
た充血した目の殺人鬼に見えているかもしれないが実際にぼくは何人ものぼくを殺してきたのだそういえばぼくは目薬を持っていたん
だったぼくは内ポケットから目薬を出してそれをぼくに差し出したするとぼくは案外あっさりとそれを受け取るものだからもしかした
ら案外冷静でいるのかもなと思ったぼくが突然目薬なんて取り出してくるから驚いたが有り難く受け取ることにした確かにぼくの眼は
赤くなっているようだったから目薬をさしておく必要もあるだろうなと思ったしそれにぼくからの親切心を無碍にできるほどぼくは人
間ができてはいないしそういえばさきほどからなにか違和感があるのかと思えばぼくとぼくの思考が同時的に進行されているこれはつ
まりこの世界では実体というものが存在せずそれこそ本当に水槽の脳のようないやそれよりもタチが悪いそうだこれは文字だ言葉だぼ
くたちは言葉という存在に落とし込められて一段落に押し込まれようとしているなんだってそれは大変だいったいぼくたちはどうした
らいいんだいそうだなひとまずおまえが死ねばぼくひとりになるから一段落につきひとりというルールを結果的に守り通すことができ
るんじゃないかえーなにを言っているんだいぼくが死ねるわけないじゃないかそれになんできみはさっきぼくのことをおまえと言うん
だい同じぼくだというのにいまおまえもぼくのことをきみと言ったじゃないか同じことじゃないかそうかこうやってぼくたちは今まで
645 :No.01 たったひとつのぼくを求めて 5/5 [sagasage]:2014/05/26(月) 00:30:36.79 ID:zhExBSNeo
は客観的に自分たちを見ることでむしろぼくと呼べるだけの近さがあったのに今こうして同じ段落に入ってつまりすごく近い距離にま
で入ったらむしろ嫌悪感や自分とは異なる点が露出してきて相手を他者として認識するようになるんだななるほどつまり人間が家族に
対してと他人に対してで態度を変えるのはそういう理由があったためなのだなつまり人間は家族であれば家族であるほど消し去りたい
と思いながら消えることなく生きている生き物なのだただしその家族という存在がすぐ近くにいる場合に限り喉がかわいたおいそこの
ぼくちゃん飲み物を買って来いよそこの自動販売機でなにを言っているんだいこのあたりに自動販売機なんてないよそれに今度はまた
ぼくに呼称が戻ったと思ったらちゃんがついているじゃないか残念なことにぼくはぼくっ娘ではないんだそういうテンションのお話で
はないんだよではどういうテンションのときに女は一人称をぼくにするというんだそんなこと知らないけどきっとそういうテンション
だってあるだろう男が私って言うみたいにってそれはあたりまえに使うことじゃないかそんなでも急になんでこんな話をしなきゃなら
ないんだ無駄話ばかりしやがってさっさと死にやがれなにをするんだ眼が真っ赤っ赤だぞ病院行ったほうがいいんじゃないか違うこれ
は故郷を離れたときのあの離別の涙だ充血だそれはなんとも文学的なことだけどぼくは死ぬわけにはいかないよぼくはまだやりたいこ
とがたくさん残っているんだぼくだってそうに決まっているだろう故郷に帰って安息の日々を過ごしたいそれは誰しも思うことだろう
いやぼくは故郷じゃなくてもいいこの都会でもいいんだそれよりもぼくはこれからももっとたくさん本を読んでいたいしオムライスを
食べていたいしかわいい店員さんに見つめられていたいんだ三番目のが真理だねだから死ぬわけにはいかないんだなんだそれっぽっち
の理由で理由なんてどうでもいいよ生きたいと思うのは人間の道理だろうでもそれはぼくの思っていることでもあるのだろうねだから
ぼくを殺そうとしているのだろうねだからぼくはぼくに向かって死ねとは言わないよでもぼくだって死にたくはないだから共存の道を
今こそ切り開いて平和に解決しよう手を取り合ってといってもまさかぼくがそんな話に乗るわけがないからここはひとつ契約といこう
じゃないかぼくがぼくと契約を交わすというのはなんともシュールなことだけれども契約としてはなんの問題もなく成立するはずだろ
うぼくはぼくが元の世界に戻ることができるよう支援しようなにを言っているんだそんなことぼくにできるわけがないだろう虫が良す
ぎるいいやぼくは知っているんだよ具体的になにをするのかといえばぼくは元の世界に戻る方法を実は知っているなんでぼくが知って
いるっていうんだ知っているんだよだってぼくはぼくだからねなにを言ってるんだぼくたちは気づいていたはずさ本を開いたときに異
世界に飛ばされたことや助詞や助動詞の制限が加わったこともあったしぼくたちは気づいていたはずだし気づいていたのに無視をして
いたんだそれは思考停止と同じことだと思わなかったのかいぼくたちは元の世界に戻る方法を知っているんだよそれを今ぼくはぼくに
気付かせているだからそれを交換条件につまりぼくが元の世界に戻ると同時に僕もまた元の世界に戻ればいや同時にというのは同じタ
イミングとかそういう意味ではなく深い意味はないのだけれどだからだからぼくたちは、知っていたはずさ、ぼくたちはいつでも元の
世界に戻れるんだ、分かるだろう、逆に言えばぼくたちは、いつだって異世界の扉を開くことができる、そう、いまこそ本を閉じると
きだ。了。


   1
 ぼくはハッと我に返った。
 白昼夢でも見ていたのだろうか。本を立ち読みしながら、どこか遠くへ行っていたような気がする。
 なんとぼくは知らぬ間に本を最後まで読んでいた。飛行機が急上昇する。三百ページ以上あるこの本を、立ち読みで読み切ったとい
うのか。にわかには信じられなかった。
 ぼくはなんだか居たたまれなくなって、その本を買うことにした。レジに持っていく。いつもの店員さんに本を差し出した。
 差し出しながら、本を眺める。蒼い海の表紙は、読み終えた後に再度眺めるとまた違った意味合いが感じられて面白い。ぼくは微笑
を漏らした。店員さんの視線を感じる。
 カバーをかけるかと言われて、もう少しその表紙を見ていたかったぼくは、いいえと答えた。
 海のイラストには、大きな文字でタイトルが記されている。
 ――「ONE」というタイトルが。
646 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sagasage]:2014/05/26(月) 00:31:49.44 ID:zhExBSNeo
終わり。
一段落が長すぎるわ!

次は私の作品

No.2 あの日の真白なキャンバス
http://text-poi.net/vote/62/2/
647 :No.2 あの日の真白なキャンバス 1/4 [sagasage]:2014/05/26(月) 00:37:13.81 ID:zhExBSNeo
 あれは二十八歳になった四月のこと。
 その日の夜は雨が降っていた。傘をさせばパラパラと音がするくらいの雨で、公園には水溜まりと枝分かれした川がいくつも出来上
がっていて。
 公園の中にはもちろん、その周辺にすら誰もいなかった。
 だからこそ私は足を踏み入れたのだ。
 スマートフォンを手に、公園の写真を自分なりに構図を考えて撮って。
 本当は一枚か二枚撮ったら帰るつもりだったけれど、その公園に足を踏み入れるのは随分久しぶり(少なくとも十五年は経つだろう)
だったから、なんとなく中をくまなく歩いてみることにしたのだった。
 今は疎遠になったけれど、まだ小学校に入る前に仲良くなった友達。あのとき私はたしかイトコとジャングルジムで遊んでいた記憶
があるけれど――すでにジャングルジムは跡形もなく撤去されている。そんなことは公園に足を踏み入れる前から分かっていたことだ
し、撤去されたのはここ最近の話でもない。もしかしたら記憶が朧げな、十五年以上前に足を踏み入れたときでさえジャングルジムは
存在しなかったかも。だけど私がこの公園の中を歩くのだと決めたとき、まず思い起こされたのはその記憶だった。
 中を歩いていれば、意識すればいろいろな記憶が蘇ってくる。
 象の鼻を模した滑り台は以前はステンレス剥き出しで、一秒かそこらで滑り落ちれるくせにとても大きく感じたのを覚えている。
 何度取り替えられたか分からないブランコは、勢い良く立ち漕ぎしたら逆さまになって落っこちてしまうんじゃないだろうかとビク
ビクしたり。
 砂場は、犬か猫の糞が埋まっていたことがあったから大嫌いだった。
 他にも、公園と道を挟んだ向かいには家が並んで立っていたけれど、全部取り壊されて空き地になっていて。
 私はそういった光景を、全部カメラに収めていった。
 スマートフォンのカメラは露出補正が充分でなく、それゆえ雨の降る町がまるでミニチュアのように見えてしまうのだが、私はむし
ろその方が幻想的で好きだった。どうせ見た目と同じ写真は撮れないのだから、いっそのこと非現実でも印象深いほうが良い。
 そんなときだったのだ。私があいつを見つけたのは。
 公園の隅っこの、柵を越えた先の木が植えられた部分。
 春になれば桜が咲く木の根元に、何かもっこりとしたものが横たわっている。闇と同調するような真っ黒な毛布で覆われていたから、
パッと見ただけでは分かりにくい。しかし一度意識してしまえば、目を逸らすのは不可能だった。
 最初、私はそれを動物の死体だと思った。猫にしては大きいから、たぶん犬だろうって。普段なら何もせず場を去っていたはずだ。
しかしそのとき、何故だか私はそうしなかった。どうせなら撮ってやろうと。装っていただけかもしれないが、そのときは至って平静
で、ただ純粋な好奇心に任せて行動してやろうと思ったのだ。
 まず少し離れたところから一枚写真を撮った後、おそらく人生で初めて公園の柵を越える。木の根元に近づき、カメラを構えようと
してギョッとした。腕が見えたのだ。土に塗れて、しかも真っ暗なのに、人肌であることが分かる腕。私はそのとき声を上げたのか、
あまりにも驚きすぎて声を上げられなかったかは覚えていない。しかし肩にかけていた傘を地面に落としたことは覚えている。その音
のおかげで、少しだけ冷静になることができたのだから。
 唯一剥き出しになっている腕を、食い入るように見つめる。細い腕だ。未発達で、これは子供の腕だと私は思った。
 もしかして、子供の死体なのか……
 全身に悪寒が走り、早く立ち去るべきだと本能が警告を発する。そして私は本来であればその本能に――従うべきだったかどうかな
んて今となってはわからない。しかし私は、その瞬間においては本能に逆らうことを選んだ。何かが少しずつ狂っていたのだ。以前ま
で写真に興味のなかった私が、急に興味を持ち始めたこと。雨であるにもかかわらず、わざわざ夜に散歩しに外へ出かけたこと。公園
に足を踏み入れたこと。どれもが自分の認識する自分とは異なっていて。
 私は思い切って震える腕を伸ばし、毛布をゆっくりと剥がした。
 顔が、なかった。
 正確には、目がない。鼻がない。口がない。のっぺらぼうがそこにいた。
 しかもそれは目が無いにもかかわらず、私のことを見たのだ。
 今度こそ私は腰を抜かした。雨でぐちゃぐちゃになった地面に、ぺたんと腰を落としてしまった。
 なんだ、こいつは?
 しかもそいつは私が毛布を剥がしてから、まるでスイッチが入ったかのように動き始めた。
 細い腕をぐるぐる回し、上半身を起こそうとして――
 私は思わず飛ぶように後ずさった。そのまま振り返り勢い良く駆けようとしたので、公園の柵に躓き、転びそうになる。私はそれで
も何とか踏ん張り、バカみたいに走って家に逃げ帰ったのだった。
 私は玄関前の水道で、汚れた体を洗うことにした。
 服ごとホースで、身体中にまとわりつく土を洗い流していく。
 あいつは、一体なんだったんだ。
 体がぶるりと震える。水の冷たさなのか、生理的な感情によるものなのか、よくわからない。身も心もぐちゃぐちゃだった。
 これから、一体どうすればいいんだろう。
 そんな言葉がずっと頭を駆け巡る。
 これから、どうすればいいんだろう。これから、これから――
 直近の問題は、どうやって私は家に上がるかということだった。玄関を開けたら土間が広がっているから、そこまでは濡れててもい
い。だけどそこから先は居間だから絶対に濡らしたくない。
 とりあえず、玄関の屋根の下で服の裾や袖を絞った。頭がぼんやりとしながらも、機械的に服を絞って、絞って……
 私はスマートフォンを持っていないことに気がついた。
 まるで雷で打たれたような衝撃だった。
 私にとってスマホは、なくてはならない必需品だったのだ。一日中とにかく暇があればスマホを触って、それが無い生活なんて、今
となっては全然思い出せない。
 あのとき公園で、私はスマホを落としてしまったのだ。
 大きな重りが頭にのしかかり、意識をそのまま手放してしまいそうになる。
 あのスマホには、絶対に他人には知られたくないデータが入っていた。もし知られたら、自殺するしかなくなってしまう――
 頭を抱えて塞ぎ込んで、何分そうしていたか分からない。私が出した結論は、あの場にスマホを取りにいくことだった。
 あの、化け物の元に。

 徒歩一分ほどの道のりを、絶望に一歩ずつ足を踏み入れるような心地で、私は再び公園にやってきた。
 もう一度目に来たときのような高揚感は失われていた。
648 :No.2 あの日の真白なキャンバス 2/4 [sagasage]:2014/05/26(月) 00:37:55.79 ID:zhExBSNeo
 闇はどこまでも深いように感じられたし、雨音は先ほどより強くなって、意思を打ち砕かんとしているように感じる。
 私はあの木の前の柵に向かって、さきほど毛布を剥がしてしまったから、あいつの姿がはっきりと見えた。見間違いじゃなく、顔が
ない。そいつはもう動いておらず、死んだようにじっとしていた。
 そいつから一歩も離れていないところに、ディスプレイを下向きにしてスマホが落ちている。
 私は柵を越えて、スマホを拾った。
 幸い、まだ壊れていないようだった。
 私はゆっくりと、のっぺらぼうを見下した。
 のっぺらぼうは死んでいるのではなく、苦しんでいた。
 表情は見えないけど、苦しんでいる。
 むかし家で飼っていた小鳥の雛が、衰弱死していくときのようだった。
 私はさきほど、何故これをそんなにも恐れていたのか分からなくなった。
 ただの弱々しい生き物じゃないか。
 普通の、放り出されたらひとりでは生きていけない餓鬼なんだ。顔がないから世間体が悪く、親に捨てられて。
 私は急に、こいつのことを哀れに思った。
 哀れな、哀れな、この世では生きていくことが許されない生物なんだって。
「ねえお前、助けてほしいか?」
 気がつけば私は、しゃがんでそいつの顔を覗き込むように声をかけていた。
「助けて欲しいんだろ?」
 表情がない怪物が、こくりと頷いた、ように見える。
「どっちなの? 助けてほしいの?」
 こくり、と今度はもう少しはっきりと頷いたように見える。
「どうしよう、かなあ」
 私は興奮していた。
 どうしようもなく背徳感があって、私は興奮していた。
「……ねえお前、私のことを裏切らない?」
 こくり、とまた小さく頷く。
「本当に? どんなときでも? 間違えていると思ってても逆らわない? もし私がお前を助けたら、一生私のために生きてくれる?」
 こいつは苦しんでいる。
 苦しんで、苦しんで、それでも自分が助かるために首を振ろうとしている。
 醜い。
「わかった。じゃあ助けてやる」と私は言った。

 本当は私は、すぐにでも救急車を呼ぶべきだったのだ。
 そいつがのっぺらぼうだろうがなんだろうが、私は赤の他人で関係ないことだったのだから。
 しかし一度関わってしまったら、そういう訳にはいかない。
 そいつは結果的に、丸々二日間苦しんだ。ずっとずっと、狂ったように汗を流して。
 私はずっと看病につきっきりで、会社に行く暇がなかった。計画的でない有給休暇を取ったのは、そのときが初めてだった。
 金曜日の朝、そいつは目覚めたのだ。
 気がつけば、私の顔をそいつが覗いていた。
 突然のっぺらぼうだったので、私は思わず大声をあげてしまった。
「何やっているんだよ!」
 そいつはぶかぶかのパジャマを着ながら、体をビクッとさせる。
 私のパジャマだった。それ以外に着せるものはなかったのだ。
 そいつがいつまでも何も喋らないので私は溜め息をつき、
「元気になったんだ」
 こくり、とそいつは頷く。
 少しは声を出せばいいのに。口がないようで、あるんだから。
「ちょっと汗流してくるから、お前はそこでじっとしてて」
 階段を降り、居間を指差しながら言い捨てて、風呂場にシャワーを浴びに行く。
 朝起きてからシャワーを浴びるなんて随分久しぶりだったから、とても心地良かった。
 風呂場から上がってみると、言われたとこりそいつは居間の隅っこでじっとしていた。
 顔がないからよくわからないけれど、居心地の悪さというか、遠慮を感じているのだろうか。
「そういうところは普通にしてていいから」と私は言う。
「お腹空いてるでしょ。朝ご飯作ってあげるから、待ってて」
 適当に刻んだ野菜に、目玉焼き。冷凍食品のオカズ。ご飯は冷蔵庫で保存しておいたものを使用。
 ふたり分でもそれほど手間はかからない。
「ほら、できたよ」
 まるで料理店のように、テーブルの上に皿を並べていく。
 そいつはピクリと顔を上げたように見えたが、こちらに寄ってこようとはしなかった。
「早くこっちに来な」
 私がテーブルをぽんと叩くと、怖ず怖ずと寄ってくる。どうやら相当臆病なやつのようだ。
「いただきます」
 私だけがその言葉を口にして、朝食に手をつける。
 そいつは目(顔?)を朝食に向けるだけで、テーブルの上に手を出さずじっとしていた。
「お前、私の料理が食べられないの?」
 そう言うと再びそいつは体をビクッとさせて、慌てたように自分の箸を手に取った。そして一口目を口にする。
 先ほど述べたとおり、そいつには口があった。
 何もないところに食べ物が消えていくようで不気味だけれど、見えないだけで、たしかにそいつには口があるのだ。
 それに気づいたのは、看病で水を飲ませようとしたときだった。
 そいつは生死の境目を彷徨っていたとき、全身から噴き出す汗を補うように、死に物狂いで水を口にしていたのだ。
649 :No.2 あの日の真白なキャンバス 3/5 [sagasage]:2014/05/26(月) 00:39:31.97 ID:zhExBSNeo
 そいつは最初はちょびちょびと目玉焼きを口にするだけだったけれど、やがて恐ろしい勢いで食べ物を口にし始めた。
 全身で、生きようとしている。
 この私より一回りもふた回りも小さい体のくせして、どこにこんなエネルギーが詰まっているのか。
「今日はさ、お前に構ってられないから」
 ひととおり食べ終えたのを見て、私は言った。
「会社に行かないといけないから。二日連続で休んだことなんて初めてだよ。私は真面目だからね」
 そう言うと、先ほど朝食を頬張っていた元気は何処へやら、また縮こまってしまった。
 私はその反応に満足して、
「食器洗いぐらいはできるでしょ? やっといてね。あと、それから――」
 人差し指でそいつの顔の中心を指差す。
「絶対にこの家から出てはいけないよ。誰かが訪ねてきても返事しちゃダメ。誰もいないように振る舞って」
 なんとなく逡巡しているように見えたので、
「これはお前のためでもあるんだよ」
 きょとんとしたのを悟って、
「もし見つかったら、お前をここに置いておくのが難しくなってしまうんだから」
 その言葉を聞くとそいつはまた体をビクッとさせ、縮こまってしまった。
 臆病なやつだ。
 しかしこれで、本当にこいつは私に逆らえないんだということが分かった。
 私は再び満足して、
「頑張れば長くここに置いてあげることができるんだから。頑張ればね」
 そして私は支度をして、会社に向かった。

「お、来た来た。体調はどう? もう大丈夫なの?」
「大丈夫です。すみません、突然ご迷惑をおかけして……」
 出社すると上司がフレンドリーに話しかけてきたので対応する。
「駿河さんが休むなんて珍しいから、本当に心配したよ」
「すみません」
「結局何だったの? ただの風邪?」
「は、はい……強烈なやつに当たっちゃったみたいで……」
 二日連続で休むという電話をかけたとき、医者に診てもらったほうが良いと上司が行ったのだ。
 私はそのことについて後ろめたさを感じていたが、あいつを医者に連れていくかどうかについても、あのときはひどく迷っていた。
そりゃあいつの体調だけを考えれば、医者に診てもらったほうがいいのだろうけど――
「今日は仕事溜まっているかもしれないけど、無理しなくていいからね」
 チームのメンバーが来たから、その人たちにも謝って。
 メールボックスを開くと二百件以上メールが溜まっており、一気に現実に引き戻された。
 だから休むのは嫌なのだ。
 休んだ分の仕事が溜まるだけだから。
 私は無我夢中でメールの処理に取り掛かった。

「今日はこれで帰ります」
「お疲れ様ー」
 なんとか八時になる前に仕事を終えたが、私の脳みそはもうボロボロだった。
 これでも昔より早く帰れるようになったのだ。
 昔は十時近くまで残っていることもあったが、最近は残業規制が厳しい。早く帰れるから楽かと言われると、同じ仕事量を短い時間
でこなさないといけないので、以前より辛くなった気がする。
 私はときどき、将来に漠然とした不安を持つことがあった。
 今は脳みそフル回転でなんとかついていけてるけど、将来三十代、四十代となったとき同じように仕事を続けていけるのか。そして
このまま死んでしまうのか。
 会社から家までは、電車を乗り継いで一時間以上かかる。会社の人たちからは近くに住んだほうがいいんじゃないかと言われるけど、
私はできるだけ会社から離れていたかった。
 この電車で帰るときが、私の安息の時間だ。
 本を読んだり、脳みその体力があるときはちょっとした文章を書いたり。
 だけど今日は、何にもやる気がでなかった。だからスマホで適当にニュースを眺めて。電車が地下に入りそれも出来なくなったから、
スマホをポケットに仕舞い、ぼうっとして。
 突然あいつのことを思い出した。
 家に置いてきたのっぺらぼうのことだ。
 あいつはいま、どうしているのだろう――?
 私は急に、電車の中でじっとしていられないほど不安になった。
 地下鉄から乗り換えるために外に出て、すっかり日が落ちていた風景がさらに不安を煽り立てる。
 私は、あいつを裏切らないと感じていたけれど、そんな保証はどこにあるんだ?
 だいたい私が会社に行っているあいだ、一体あいつは何をしていたのか。
 膨大な時間だ。
 私はその時間を毎日会社で費やしていて、だからこそ人生に虚しさを感じているのだ。
 そんな膨大な時間があれば、あいつは一体何を――?
 私はスマホで自宅に電話をかけた。一回、二回、三回……
 出ない。
「なんで出ないんだよ!」
 留守番電話に繋がった瞬間、私は思わず叫んでしまった。
 そのときはホームで、周りの注目を集めてしまって。
 私は謝るため頭を下げたまま縮こまってしまったけれど、それでもあいつが電話に出ないのが不安で、不安で……
650 :No.2 あの日の真白なキャンバス 4/5 [sagasage]:2014/05/26(月) 00:39:59.19 ID:zhExBSNeo
 きっと不審者のように、車内で体をガタガタ震わせていたと思う。
 何故こんなにも不安なのか私にはわからなかった。
 ようやく最寄り駅について、頭をふらふらさせて。
 私は帰路の途中で、もう一度だけ電話を掛けた。
 またしても留守番電話に繋がる。要件を伝えてほしいというメッセージと、ピーッという音が聞こえて。
「どうして電話に出てくれないんだよ……!」
 私はもう泣きそうだった。
 泣きそうで、それを必死になって食い止めて何かよくわからないことを呟いて。
 突然、かちゃりという音が聞こえた。
「……取ったの?」
 返事はなかった。
「……受話器取ったんでしょ? 取ったんなら返事してよ、ねえ」
 だけど返事はない。
 私はそのことについて罵詈雑言を浴びせようとした。
 何故、どうして。今朝だって全然話さなくて。
 そのとき、私の中を一直線に線が走った。
 それは下の下までスルスルと、まるで届かなかった井戸の底に届いたみたいに。
「もしかしてお前、喋れないの?」
 突拍子なことを口にしていた。
「喋れないの? 喋れないんでしょ、ねえ」
 返事がない。
 返事がないのに、それはあいつの無言の肯定のように感じられて。
 私は電話を切り、狂ったように家に向けて駆け出した。
 玄関を開けて中に飛び込んで、居間にあいつがいた。
 私は思わず抱きしめる。
「ごめん、ごめん」
 一体何を謝っているのか分からなかった。
「お前、お昼は食べたのか?」
 首を振る。
「じゃあ夕ご飯は?」
 首を振る。
「バカッ」と吐き捨てるように私は言った。
「今すぐ何か作るから。すぐできるから」
 私は冷蔵庫の中を引っ掻き回しながら、帰路の途中でのことを全て後悔していた。
 何を疑っていたんだ。
 疑うことなんてなかったんだ。やっぱりただの、弱っちい生き物じゃないか。
 私は冷蔵庫のありったけのものを詰め込んだ料理を、そいつに向けて出した。
「ほら」
 冷静に見れば、それはグロテスクなものだったかもしれない。
 そいつは箸を手にしつつも、料理に手をつけることに躊躇していた様子だった。
 しかし私がじっと見つめていたので、ついに料理に口つけた。
 一口食べれば、どんどん、どんどん減っていく。
 やっぱり。私は料理には自信があるんだ。
「ごめん、本当にごめん」
 のっぺらぼうの食べっぷりを見ながら、独り言のように呟く。
「私は狂っているんだ」
 前から薄々感じていたことだった。
 私は以前から他人と違うような気がしていて、それでも今日の行動は異常だった。
 いつの間にか私は狂っていたのだ。
 のっぺらぼうが手を止めて、こちらに顔を向けた。
「こんなやつに拾われて、災難だろお前」
 そいつはやはり何も言わなかった。
 そのかわりに、またパクパクと夕食を食べ始める。
 完璧な回答だった。
「ねえ」
 思わず背後から抱き締めて、
「お前が喋れなくなったのはいつから?」
 のっぺらぼうが再び手を止めて、
「私のせいじゃないよね?」
 抱き締める手を強めながら、私が言う。
「私が医者に連れていかなかったせいじゃないよね? 前から喋れなかったんだよね? それに、のっぺらぼうだから連れていかれて
も困るもんね?」
 そいつはしばらく固まっていたけれど、やがてコクリと返事する。
 それを見て、私は思った。
 こいつは本当は、のっぺらぼうじゃないんだ。
 私が顔を見えないだけなんだ。
 何らかの理由で。
 私はスマホで、そいつの写真を撮った。
 毎日毎日、そいつの写真を撮ることにしたのだ。

651 :No.2 あの日の真白なキャンバス 5/5 [sagasage]:2014/05/26(月) 00:40:41.36 ID:zhExBSNeo
――*――*――

 one。
 ひとり、ひとつ、個の。
 私はそれを独立した、ひとつのオリジナリティー溢れるものだと認識していたけれど。
 誰でも、と訳すのを見たとき、最初は全然意味がわからなかった。
 ひとりと誰かじゃ全然違うじゃん、って。
 だけど成長していくうちに、とくに社会人になって、私はそれを痛感せざるを得なかった。
 みんな、誰かになっていく。
 大人になれば誰もが集団のひとりになっていった。
 結婚して、子供ができて、その子のために生きるようになって。
 同じように子供がいる人と楽しそうに話す同僚を見て、そっちの世界に行ってしまったんだなと思った。
 テレビニュースで見る、世界だ。
 いろんな大人がいるのを見て、誰もがその亜種なんじゃないかって認識する。
 私はひとりになった。
 そして私も、誰かになっていくのだ。
 彼らにとって。
 私は何にもなれないまま時が過ぎていっても、何にもなれなかった誰かとして皆の脳に記録されていく。
 私はそれを題材にした文章を書いていた。
 時にはそれは小説だったり、詩だったり、ただの汚い言葉の羅列だったり。
 ずっとずっと同じことを書き続けていて、成長なんか見られないから。
 ズルができないかって探してしまう。
 本当はすぐそばに抜け道があるんじゃないかって。
 そして勝手に期待して、失望したりする。

 私はあれからすぐ、家の賃貸契約を解約した。
 私が生まれる前、三十年前から両親が借りていた家だった。
 古臭いけど交通の便が良くて、家賃が安くて、住み慣れていて……
 だけど解約せざるを得なくなったのは、あいつを飼ってしまったから。
 近所に住んでいる親戚のおばさんにバレて、そんなの間違っているって言われて。
「いくら寂しいからって、知らない子と一緒に住むなんて……」
 私はカッとなっておばさんを突き飛ばした。
 おばさんがひっくり返って転んで怪我をして、警察沙汰にはならなかったけど、私はとても居心地が悪くなったのだ。
 それでもそいつを捨てることはできなかったし、何より捨てるにはもう遅すぎた。
 もうコトは起きた後だったし、何より情が移っていたし……
 本来なら私がそいつを捨てるはずが、いつの間にか立場が逆になって。

 気づけば、十年の月日が流れていた。

「行ってきます」
 声が聞こえる。
「今日は少し遅くなるかもしれないけど、十時までには帰ってくるから」
 男なのに、透き通るような綺麗な声だ。
「明日は久しぶりに休みだからさ、遠くに出かけようよ。マネージャーが車を運転してくれるって」
 私はこくりと頷く。
「じゃあ、行ってくるね」
 もう一度名残惜しそうにそう言って、あいつが部屋を出ていく。
 またひとりだ。
 ひとりになってしまった。いつものように。
 私はしばらく、何もせずぼうっとする。
 何十分か、何時間か、ひとりで考え事をしているのかしてないのか。
 しばらくしてテレビをつけると、あいつの顔がアップで映っていた。
 あいつは俳優になったのだ。
 去年からテレビに出始めて、今や若手人気一・二を争う人気俳優である。
 私は金塊を掘り当てたのだ。
 声だって、普通に喋れるようになった。
 あいつはみるみるうちに輝き始めて……
 私はスマートフォンのフォトアルバムを開く。あいつの写真がそこに映っていた。元ののっぺらぼうだったときから、顔がはっきり
見えるようになった今まで。
 それを見て悲しくなった。あいつはもういないのだ。何も描いていないキャンバスのように、真っ白なあいつは。
 今となっては私が、あいつの立派なお荷物だ。
 声の出なくなった私を――
 あいつのマネージャーが、私のことをどういう扱いをしているか知っている。
 私は鏡を見た。そこには、消えない年輪のような皺が刻み込まれていた。(完)
652 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sagasage]:2014/05/26(月) 00:42:30.53 ID:zhExBSNeo
終わりです。最初にレス数の計算をミスり、ぐだりました。

内容も、ううむ……

皆さんの投稿、まだまだお待ちしております。
653 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/05/29(木) 14:20:37.19 ID:TUz65nCvo
ようわからんけどこれ参加するにはテキストポイ?に登録せんとあかんの?
654 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/05/29(木) 14:33:41.74 ID:s4dihDxWo
>>653
いや、酉つけてスレに投下してもおkよ
655 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/05/29(木) 21:44:02.35 ID:s0DQuQXzo
作品をまとめて読みやすいし、結構良いねてきすとぽい
656 : ◆Mulb7NIk.Q [[sagasage]:2014/05/30(金) 07:42:36.94 ID:xkdqD5Lh0
てすてす
657 : ◆Mulb7NIk.Q [sagasage]:2014/05/30(金) 07:43:22.19 ID:xkdqD5Lh0
品評会作、投稿しますよん
658 :THE ONE 1/8 ◆Mulb7NIk.Q [sagasage]:2014/05/30(金) 07:44:19.07 ID:xkdqD5Lh0
 二百年といえば途方もない歳月だけれど、政治形態や一つの文化的な潮流が変化を迎えるには適切な時期だ。人類に関していえば、
五十年ほどで古い世代は新しい世代にとってかわられる。それが、個人の場合ではどうだろう。
 二十年というのは一人の人間が、二度目の生を受けてから完全に成熟するのに十分な期間だと僕は考えている。
 これから僕が語ろうとしているのはちょうど二十年前に故郷を飛び出していった一人の少女の話だ。
 語るべき言葉を探して古い記憶の海へ深く潜っていけば、最初に優しいギターの音色が蘇ってくる。幼い僕は暖炉のそばでそれを聞い
ているが、やがて庭へと駆け出していく。するとそこには、耳を澄まし軽く目をつむっている女の子がいる。
 彼女の名はエリナ。僕のたった一人の幼馴染であり、話の中心人物である。
 エリナとは家が隣同士ということもあって、物心つく前から僕たちは遊び仲間だった。そして、記憶の中の一番古いページの中にさえ、
後々に彼女を苦しめることになる一つの特徴は発露していた。
 ただ、それについては後回しにして、まずは幼少時に随分と気にかけてくれた彼女の兄について先に語ろうと思う。四六時中ギターを
弾いていて、本当の兄弟みたいに接してくれた人。
 エリナ自身に関する記憶とは違って、残念なことだけれど、今では彼の面影を鮮明に思い浮かべることができない。というのも、二つほ
ど理由があった。
 第一に、彼の在りかたがあまりにも人間らしさに欠けていたから、顔貌という分かりやすい形で記憶されなかったのだと思う。しかしな
がら、不思議な印象を他人の心に残す人間だったというのは間違いじゃない。まあ、率直に言ってしまえば彼は奇人変人という類といえ
るだろう。なにせ、毎日のように顔を合わせていたにもかかわらず、僕は彼の本名さえ知らないのだ。
「俺のことはルーシーと呼んでくれ」
 それが初対面での第一声だった。
 誤解を生むかもしれないのでここで一つ断わっておくけれど、彼はゲイやホモではない。しかし女性名であるルーシーと、周りには呼ば
せていた。それから、絶滅危惧種であるヒッピーの生き残りだった。花と平和を愛していたし、人柄は危ういくらい底抜けに透明で、十月の
芝生みたいにただ優しかった。ギターの名手で、僕にその弾き方を教えてくれたのも彼だった。頭の先から足首までどっぷりとビートルズ
に傾倒していたし(自分をルーシーと呼ばせていたのも多分その線だろう)、同じくらいドラッグにも漬かっていた。
 幼い僕たちと大きく歳が離れていて、かといって完全な大人でもなくて、とにかく不可解な存在だった。そして同時に憧れの的。その感
情は小さな男の子にとって、壁の高い場所に掛かって手の届かない、一丁の猟銃に注がれるものと同質だった。
 ただの隣人である僕でさえ多かれ少なかれ影響を受けたのだ、実の妹であるエリナはそれ以上にルーシーを拠りどころにしていた部
分がある。
 そのことを裏付ける事実として、エリナは僕によくギターを弾かせたものだった。
「いくら練習しても私じゃ上手く演奏できないから」
 そう言って、夕暮れ時になるとよくルーシーの忘れ形見を持ち出してきた。「忘れ形見」、だ。決して間違っちゃいない。
 ここで二つ目の理由。単純に、共に過ごした期間が短かかったこと。
659 :THE ONE 2/8 ◆Mulb7NIk.Q [sagasage]:2014/05/30(金) 07:44:58.85 ID:xkdqD5Lh0
 僕たちが十歳を迎えた年の夏、彼は何の前触れもなく失踪した。
 ルーシーが姿を消す直前、エリナは彼とこんな会話を交わしたそうだ。
「どこに行くの、お兄ちゃん」
「散歩に行くのさ」
「どこまで」
 優しい兄は最後の質問には答えず、かわりににこりと微笑んでギターを肩に担ぎ、口笛を吹きながら朝陽の中に溶けていった。ただ、そ
れだけだった。こんなものが離別の場面だと誰が想像できよう。だけど本当の話なのだ。それ以来ルーシーの消息を聞いた人はいない。
 もしも突飛な空想が許されるとしたら、僕はこう考える。
 ヒッピーというのは歴史のムーブメントの中で形成された架空の一族に過ぎないが、彼はあまりにも純然たる形でヒッピーを体現していた
ので、その運動の終焉と共に消えゆく運命だったのだ、と。彼は概念が擬人化されて肉体をもったようなものだった、と。
 多数の人間の意思が一つの方向に流れ、時間とともにまた向きを変える。ムーブメントは社会に対する訴求力を失ったときに力を失う。
季節が眠りにつくのと同じようなものだ。燦々と降り注ぐ灼熱の陽射しに喘ぐ人間にとって、降りしきる雪の情景はリアリティをもたない。
 ともかく、エリナの兄について語れるのはこのくらいだ。話を彼女に戻そう。
 僕は先に、彼女を苦しめることになる特徴についてほのめかした。それについて語る。彼女がいくら練習してもギターが上手くならなかっ
たことも、この特徴に関連している。
 エリナは幼いときから思うように手足を動かすことができなかった。まるでブリキのネジ巻き人形みたいに、何をするにつけても動作がぎ
こちないのだ。身体機能に異常があるのではなく、心理的なものだというのが医者の判断だった。だから病名なんてたいそれたものが与
えられたわけじゃない。
 人生の初めの重要な期間を過ごし、いくら腹蔵なく互いのことを話し合う仲だからといっても、結局のところ僕たちは他人同士でしかない
ので彼女の本心をはかり知る術はない。ただエリナの言葉を馬鹿正直に信じるとすれば、「別に気にしてはいない」のだそうだ。
 僕にとってしてみれば、彼女の手足の動きがぎこちないのは、出会った最初の瞬間からそうであったし、共に成長する中でそれは当たり
前のものだという認識しかなかった。だけど、エリナのことをよく知らないティーンエイジャーにとってみてはどうだろうか。
 論ずるまでもなく、一人の少女にとって厳しい時期が訪れた。
 十五歳、エリナに対する弾圧が最も苛烈さを極めた年だ。この年代の子供たちに分別を求めるのはいささか難しいものがある。悪意では
なく事実をありのままに話せば、彼女の特徴は意地の悪い子供たちにとって嘲笑の的でしかなかった。彼女が緊張したり、衆目を集めなけ
ればならない状況に陥ると、例の特徴はますます際立った。心無いクラスメイト達は、彼女を「ネジ巻き女」と呼んでからかったものだ。物を
取り上げて必死に取り返そうとする姿を笑ったり、彼女の動きを誇張した形で真似してみたり、そういうことが日常的に行われていた。
 そんな状況の中で僕に何ができただろうか。幼馴染みとして彼女を庇い、容赦のない攻撃の矢面に立って共に戦うというのは、人として、
男として、一つの正しいありさまなのかもしれない。だけど、そういうの行為は特別な人物にしか許されていない、歪んだ形の正義なんじゃ
ないかと思う。だから僕は一人の平凡な少年として、何もしないという選択肢をとった。悪意も好意も向けず、幼馴染として今まで通りに接
する。それが僕にできた最大限の思いやりだった。
660 :THE ONE 3/8 ◆Mulb7NIk.Q [sagasage]:2014/05/30(金) 07:45:32.86 ID:xkdqD5Lh0
 積極的に彼女の味方をすることはできなかったけれど、エリナは同年代の子たちに比べてずっと大人びていて、僕に助けを求めるような
ことはしなかった。むしろ僕が傍観者としての立場をとることが正解であるというふうに賛同している節さえあった。その強さに僕はどれほ
ど救われたことだろうか。だけど、誰かが抑圧されるような環境にあっては、遅かれ早かれ決定的な瞬間は訪れるものだ。
 ある夏の日曜日、僕はエリナの家を訪れた。昼どきにもかかわらず、彼女の母親は強烈な酒の匂いを発しながらカウチで泥みたいに眠っ
ていた。父親は戦争で夭折していて、女しかいないその家はいつも香水と砂糖菓子とアルコールの混ざった、陶酔するような甘い香りが
漂っていた。放っておけば、トーストかコーンフレークしか食べないだろうから、僕は自家製のサンドウィッチを手土産にしていた。彼女の
家庭は決して裕福というわけではないけれど、貧窮しているわけでもない。若く綺麗な母親は大枚と引き換えに多くの男と寝ることを生業
にしていて、身につけているものは全て上質だった。娘に与えるものも、同様に洗練されていた。少なくとも物質的な意味合いにおいては。
 放埓という言葉がこれほどまでに似合う人物を僕は他に目にしたことがないし、これから関わることも恐らくないだろう。そして、エリナは
この美しい母親に複雑な感情を抱いていた。
 サンドウィッチを齧りながらしばしばうそぶいたものだ。
 アイツは私みたいな半端ものしか産めないし、主食はパンケーキで水分といえばアルコールかガムシロップで摂取している。憎らしいくら
い砂糖漬けのくせに、あれだもん。妬けるね。だけど女として死ぬのも時間の問題でしょ。
 狭い世界しか知らない子供自分の僕にできることといえば、そうだね、とエリナの肩を持ってやることぐらいだった。
 そして午後になり陽射しが和らいできたので、僕たちはルーシーのギターを担いで近所の川まで歩いて行った。そこで、偶然のいたずら
にしては少しばかり悪質なのだけれど、エリナをいじめていた五人の少年グループにばったりと遭遇してしまったのだ。
「よう、おまえギターなんて弾けたのか」
 相対するなり、リーダーの少年がそう言った。
「まあね」
 面倒なことになったなと思いながら、僕は気の抜けた返事をした。エリナは黙込んで、おずおずと一歩下がる。
「一曲やってみてくれよ」
「オーケイ」
 そして、幾度となく繰り返して指が覚えているビートルズのイエスタデイを軽く披露した。
「なんだそれ。ちょっと俺にも貸してみろよ」
 優しいけれど虚無的な調べは彼の気に召さなかったらしく、ルーシーのギターは奪い取られてしまった。楽器は次々と少年たちの手を渡って
いくが、彼らの誰一人としてまともに扱えるものはいなかった。きちんと調律された六本の弦は滅茶苦茶に掻き鳴らされて、悲痛なうめき声を
上げた。そればかりじゃなく、彼らはネックを掴んで野球バットみたいに振り回した。僕は憤りよりも先にたまらなく悲しい気持ちになり、冷静さ
を失った。そして取り返しのつかない過ちを犯したのだ。
 やめてくれ、それは彼女の大事なものなんだ。
 彼女の、ものなんだ。
661 :THE ONE 4/8 ◆Mulb7NIk.Q [sagasage]:2014/05/30(金) 07:46:03.40 ID:xkdqD5Lh0
 不良少年たちの目つきが変わる。いかにも狡猾で、貪婪に光る目。僕はなんて愚かなんだろうと後悔した。みすみす相手に攻撃の材料を
与えてしまうなんて。
「聞いたか」
「ああ」
「これ、ネジ巻き女のギターなんだってよ。笑えるよな」
「笑えるな」
「どうやって弾くんだよ、なあ。痙攣してるだけで音が出るのか、こんな風に」
 不良のリーダーは大げさに指を震わせながら、弦に触った。そうして不快な音を出しながら、「なあ? こうか、こうか?」とエリナを馬鹿にし
ながらにじり寄る。
 彼女は地面を見つめ、黙り込んだ。そういう挑発を幾度となく受け、対処する方法を学んでいたからだ。
 エリナが堪えていないとわかると、不良はやり方を変えた。
「そうかそうか。弾けないよな。そりゃそうだ。じゃあ、こいつはお前にはちょっと勿体ない。だから俺がもらっていくぜ」
 不良少年たちは僕たちに背を向けて、騒ぎながら立ち去ろうとした。
「待ってよ、ねえ。待ってよ」
 エリナは覚束ない足取りで、奪われたギターを取り返そうと歩を進めた。彼女が追いつきそうになると、少年たちは足を速めた。エリナはどん
どん必死になっていった。前のめりになり、転びそうになりながら走ろうとした。それははっきりいって無様な姿だった。僕は彼女のすぐ後ろを
ついていく。荒がる息遣いを間近に聞き、その不如意な身体の中に渦巻く強い感情が目に見えるようだった。前方で沸き起こる笑い声は、エ
リナの努力に比例して大きくなっていく。結局、追走劇は川に架かった橋を渡り、町はずれの丘の上に立つ時計台まで続いた。
 時計台は故郷の町で一番高い建物だ。不良少年たちは古びた錠前を易々と壊して中へ入っていく。
 彼らはルーシーのギターを担いだまま、建物の外周に沿って螺旋状に設えられた階段を上る。僕は時計台の入り口でグループの仲間の二
人に組み伏せられて、地上からその様子を窺うことしかできなかった。どんどんと登っていく少年たちに追い縋ろうと、エリナはぎこちない動き
で、かなりの遅れをとりながらついていく。まず少年たちが頂上部に到達し、一番身軽なものが足場のない時計台の機関部によじ登って、不
安定な場所にギターを据えて戻ってくる。しばらくしてようやくエリナが集団に追いついた。そこで何か言葉の応酬があったらしいが、地上まで
はっきりとした声は届いてこない。
 今や遠い場所に行ってしまった兄の形見に対して、少女は途方に暮れたように立ち尽くしていた。僕はやめろ、と大声を張ったけれど、すぐ
さま腹に強烈な一撃を見舞われてしまった。少し黙って見ていろ、とでも言いたげな視線と共に。
 緊張が周囲を支配していた。まるで偏執病に冒されたみたいに、押し殺した笑い声のようなものが自分の頭の芯と、耳の外側の二方面か
ら押し寄せてきた。滑らかに駆動し続ける金属の構造体、その静かな拍動。それらに真紅の光沢を与える斜陽。
 エリナが動く。
 僕は再び抵抗を試みるも、努力の甲斐なく地面に沈められた。頂上部では小さな影が足がかりを探していて、それを黙って見ているしかな
かった。
662 :THE ONE 5/8 ◆Mulb7NIk.Q [sagasage]:2014/05/30(金) 07:46:34.39 ID:xkdqD5Lh0
 だが、何よりも恐れていた事態はあまりにもあっけなく訪れた。 
 エリナが掴んだのは、部品同士の間にあるくぼみでも手すりでもなく、虚空。前のめりになった姿勢は今更どうしようもなく、空中に投げ出さ
れる。数秒先の未来がありありと予見されて、痛みさえ伴うほどの戦慄が背筋を走り抜けた。己の目の前で、少女の肉体は十数メートルの高
さから落下し、激しく地面に叩きつけられ、まるで冗談みたいに一度大きく跳ね上がり、そして仰向けの状態で動きを止める。全ての音が消え
去り、僕は凍りついた。エリナも同じく、凍りついたように身じろぎ一つしない。
 しかし結論から先に言えばエリナは生きていた。そして彼女の中で重大な変化が、全くの別物へ生まれ変わるほどの異化が、始まっていた。
ここからは少し彼女の言葉を借りようと思う。
 ――落ちていく瞬間、私の中で何かがカチリと音を立てて組みあがった。それは、正確な回転を続ける時計台の歯車から想起されるイメージ
だった。肉体に対する認識が一変し、まるで堰の水門を開いたかのように大きな奔流が全身をめぐっていく。全てが意のまま。四肢に歯車が
隙間なく詰まっていて、それが回転することで身体が動いているという感覚。私は何をすべきかが手に取るようにわかった。冷静に息を吐き、
地に叩きつけられる寸前に脱力する。そして着地の際に自らを跳ね上げることで落下の衝撃を緩和した。受けたのは擦り傷程度で、深刻な
ダメージが無いのが分かる。右手の親指から小指へと、一本ずつ折り曲げて伸ばす。やはり問題なし。そんな感じ――。
 エリナはのちに短い時間の中で起きた出来事を、このように語った。
 少し後、頂上部に上っていた不良少年たちが戸惑いの表情を浮かべながらもゆっくりと階段を降りてきた。
「大丈夫か」
 おずおずと彼らのリーダーが尋ねるが、返事はない。彼はエリナに近づき、軽く二、三度頬をはたいた。
「ネジ巻きが壊れちまった。つまんねえの」
 吐き捨てるようにそう言うと、踵を返して彼らは時計台を去ろうとした。
 僕は戒めから解放されて、エリナに歩み寄る。だけど彼女は自分自身の力で立ち上がり、不良少年たちの背中を見つめていた。その姿はも
う、おどおどとして他人の顔色を窺いながら生きる少女ではなかった。全身に力がみなぎり、血が走っていた。
「今までのツケを返してもらう時が来たみたい」
「え、なんだい」
「何でもできる気がするの、見てて」
 エリナはニヤリと口元を歪めて、不敵な笑みを浮かべる。熱っぽく生き生きとした視線が、鋭く敵を捉えている。
 まったくもって信じられないようなことだが、落下の瞬間以後、彼女は完璧に肉体を支配する術を心得ていた。たとえば五人の少年相手を一
度に相手取り、息つく間もなく彼らをぶちのめしてしまうくらいのことは造作なかった。
 二度と妙な気を起こさないようにと、エリナは執拗なくらいに倒れている少年たちを蹴り上げた後、王者のごとく悠然と時計台を上っていく。そ
して、無傷のギターを手にして僕の前に戻ってきた。
「行こう、もうすぐ日が暮れてしまう」
 僕は躊躇いがちに、ああ、と答えて自宅へ続く道を辿っていった。夢を見ているような気分だった。二十年経った今でも、あの日の出来事は
夢だったんじゃないかと時々思うことがある。だけど恐らく現実なのだろう。
663 :THE ONE 6/8 ◆Mulb7NIk.Q [sagasage]:2014/05/30(金) 07:47:07.73 ID:xkdqD5Lh0
 時計台の事件以来、エリナに対するみんなの見方が一変したのは言うまでもない。
 彼女はもう「ネジ巻き」ではないし、湧き上がる自信に満ちていた。女の子に喧嘩で負けたなんて事実は、不良たちにとって耐えがたいこと
だったろうし、なるべく彼女と関わらないような態度をとるのはごく自然なことだ。誰もが腫物を扱うみたいにエリナと接したけれど、それは多分
彼女にとって幸運なことだったのだと思う。エリナは周囲の人間との関係の中で、自分の場所を確立していくタイプではなかったから。
 とりまく環境が変わってしまったことと同様に、彼女自身もまた変わっていった。
 人生について模索する時期が不意に訪れたのだ。可能性の扉は堂々と開かれていた。身寄りのない孤児が、ある日突然遠い親戚の莫大
な遺産を受け継ぐことになってしまったかのような有様だった。手足を誰よりも自由に動かせる、それはエリナにとって何よりも素晴らしい、天
からの贈り物だったことだろう。
 それまで押し殺されていた何かが、開花していく過程を僕は目にした。些細なことから、目を疑うような光景まで。たとえば化粧することを覚え
たことだとか。エリナには一人の女として生きていく道もあっただろう。その頃になると母親に似て、日増しに美しくなっていった。毎日顔を合わ
せている僕でさえ戸惑いを覚えるくらいに。
 彼女は学校にあまり来なくなった。様々な探究のために一日中町に出てをうろつくことが多くなった。夜になると羽を濡らした蝶のように着飾
り、あまりよからぬ噂の絶えない場所にでさえ出入りしていたらしい。非行という単純な言葉で済ませればそれまでだけれど、そんなものでは
かり知るにはあまりにも特殊な倫理体系の中で動いていた。あの子がただ寂しさを紛らわすという理由だけで、反社会的な行為に手を染める
わけがない。
 無力ではなくなったことの証が欲しかったのか、エリナは母親の庇護下からいち早く抜け出そうと躍起になっていた部分があるように思う。
やり方はあまりスマートじゃなかったけれど。たとえば教会の献金皿から小銭をくすねたり、身なりの良い人物に手際よく掏摸を働いたり、夜の
酒場でダイスを振ったりだとかだ。ただあまりにも勝ちすぎるので、そのうちだれも相手にしなくなったらしいけれど。
 どこで覚えてきたのか、たまに顔を出したかと思えばマリファナのやり方を教えに来たりもした。勿論、ジャンキーになっていたわけじゃない。
むしろ彼女はいくら魔法の粉をいくらとりこんでも酔えない様子だった。何をしても平然としているので、君は小麦粉でもつかまされたんじゃな
いか、と訝しんだこともある。そしてごく少量を煙草に混ぜて僕に吸わせ、結局僕は三日ほど最悪な気分を引きずることになってしまった。
 エリナはやれることがあれば反社会的であろうと慈善行為であろうと、なんでもやって自分を試していたみたいだった。それでも彼女にとって
故郷は狭すぎた。彼女、それから彼女の兄、母親、その一族はきっと流浪の民の血を引いていたのだろう。自由になったあの日から半年もす
るころには、旅立ちの予感を身に纏わせていた。
 大きな変貌を遂げつつある彼女に比べて、僕は相変わらずだった。
 ギターを抱えて、川辺で弾く習慣も続けていた。時折、エリナが音もなく近づいてきて傍らに座っていることもある。予想していたことだけれど、
楽器を貸せば複雑なコード進行を難なくこなしたし、僕よりも遥かに上手く演奏できた。だけど、こうも言っていた。
「あなたの音が好きなの」
 だから僕は下手だけれど、心を込めてギターを弾いた。そうしていると、涼しい風の中で、母親のことを話してくれた。
664 :THE ONE 7/8 ◆Mulb7NIk.Q [sagasage]:2014/05/30(金) 07:47:37.27 ID:xkdqD5Lh0
 この町を出ていこうと思うんだけど、そのために少しまとまった金が必要なんだ。うちの母親みたいに、男をとっかえひっかえして貢がせれば
簡単なのかもしれないけれど、それは嫌。でもね、派手に動こうと思えばそれだけ気取られる可能性は上がるわけじゃない。仮にも女同士だ
し。私は黙って出ていきたいの。だけどダメだったね。なにをしようとしてるのか、アイツに全部お見通しだった。
 そこで彼女は軽く目を瞑ったまま苦笑いを漏らす。
 そしてね、親と子として初めて教えてもらったが、上手な嘘のつき方だったの。私たちってどうしようもないよね。
 語られる言葉とは裏腹に、エリナはなんだか嬉しそうでもあった。
 アイツは認めてくれたよ。意外にすんなりとね。そして私がこの町を出ていくときは、必ず知らせる。だからあそこまで見送ってほしい。
 彼女が指を差したのは、橋だった。橋の先を真っ直ぐ歩いていけば、隣の町まで続く道がある。脇に逸れていけば故郷で一番高い丘まで続
いていく。僕は二つ返事で了承した。
 だけど、その約束は他愛もないただの嘘だった。エリナもルーシーと同じように僕の前から忽然と姿を消した。しかし、ヒントは充分に貰ってい
たのだし、それに気がつかない僕が間抜けだったというだけのこと。「上手な嘘のつきかたを母親に教えてもらった」という話の直後だったから、
エリナはそれを証明してみたに過ぎない。そうだろう。あるいは、話していたことが一から十まで全て嘘だったということもありえる。今や真実を
知る由はない。
 エリナはどのようにして姿を消したか。別に、なんてことはない。ある朝、僕が目覚めて家の外に出ると、ルーシーのギターが玄関先に置いて
あった。それだけ。僕たちの別れはそういう具合だった。シンプルでとても彼女らしい。
 以来、僕はギターを大事に預り、折に触れては川岸に立ってそいつを弾いた。数日おきに演奏することもあったし、数年の空白期間を設ける
こともあった。そんなふうにしていくつもの季節を見送っていった。
 そして僕は二十年越しに物語を綴ろうとしている。
 エリナはどこで何をしているのだろう。
 思うに、多くの人は〇(無)から1(全)へ、間断なく経験を積み重ねることによって人間としての完成を目指していくものだ。そうして世界が我々
に示してくる無数の現実に対し、正しい、あるいは正しく見える応答の形式を築いていく。
 ある人間の言葉に宿る重みとはすなわち、経験の質量なのだ。
 彼女の場合は長らく虚無だけが内側に存在していた。ままならない世界の中で、すべての事象はほとんど無価値に過ぎなかったのだろう。
だけど、歯車が噛みあった日に半分だけ人間になった。ちょうど、半分。完全なる肉体への支配を得て、強さと呼べるものは全てを兼ね備えて
いた。そのかわりに、残りの弱さの部分を兄が持って行ってしまった。それは、人の在りかたとしてはとても歪だ。僕は、彼女の人生についてそ
のように考察する。
 果たして誰が彼女の孤独を理解できたことだろう。何でもできてしまうことに対する焦燥。絶望。弱さは時として生きていくための希望を担うも
のだ。
665 :THE ONE 8/8 ◆Mulb7NIk.Q [sagasage]:2014/05/30(金) 07:48:09.25 ID:xkdqD5Lh0
 エリナの抱えるそれとは別に、自身の孤独について考える時期もあった。青年期の入り口に立っていた頃、ビートルズの曲を聴きながら僕は
考えていた。あらゆる時代の青年たちがそうしてきたように、託された楽器を抱え、朝靄の中によく一人で佇んだものだ。そして手慰みに、リヴァ
プール出身の四人組が、ライブバンドからレコーディングバンドへと変遷していく過渡期の曲を、なんとかしてギターの音に落とし込もうと試行錯
誤していた。それも懐かしい日々だ。結局、ビートルズに対する僕の試みは成果を上げなかったし、孤独についてろくに考えをまとめることもでき
なかった。けれど、僕は生きている。そういうものだ。
 二十年というのは、長い。どう足掻いても、長い。子供にとっては想像を絶するほどの道のりだ。
 だけどそれは経過してしまった。
 最近、彼女がひょっこりと帰ってくるような気がしてならない。ただの予感にすぎないのだけれど、僕にとってそれはとてもリアルな手触りをして
いる。
 たとえば、といま僕は空想してみる。ニューヨークの喧噪絶えない街角で、あるいはカシミールの山奥で、荘厳な秋の夕暮れの墓場で、ばった
りと兄に再会した彼女の姿を。そうして、人間らしさの残り半分を手に入れた一人の女を。彼女は姿を消した時と同様に、ある日突然この町に帰っ
てくるかもしれない。日に日にそんな気がしてくる。
 まあ、運命がどう転がっていこうと彼女ならきっと上手くやるだろう。そう、信じている。
 これは、君と僕と彼の物語だ。だから、僕は書く。そして今日もまた待ち続けている。


(了)
666 :THE ONE 9/8 ◆Mulb7NIk.Q [sagasage]:2014/05/30(金) 07:49:07.11 ID:xkdqD5Lh0
おーわりん
667 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga]:2014/05/30(金) 20:33:22.23 ID:s7J7yb8H0
品評会作品を投稿します。
668 :ノスタルジックの船よ、沈め 1/7  ◆S6qZnfmn3/gR [saga]:2014/05/30(金) 20:35:52.12 ID:s7J7yb8H0
 ノスタルジックの使者が僕の前に立っていた。ノスタルジックの使者はつい一昨日に僕の家を訪れたばかりだったが、
しかし今日も僕の家に用事があるようだった。ノスタルジックの使者は、今日、時間空いてる? と小首を傾げながら僕に
問いかけてきた。
「今日は特に用事はないけど」
 と、僕は答えた。ノスタルジックの使者は少しはにかみながら、今日はお弁当作って来たから、一緒にピクニックに行こ
うと言った。僕は頷いた。
 草原に着くと、ノスタルジックの使者はバッグから『チョッパー』を取り出し、一緒に『サイコアナルシス』しない? 
と訊いてきた。サイコアナルシスが何か判らなかったけれど、僕は頷いた。
 ノスタルジックの使者はチョッパーの片方を僕に持たせ、それから右手に持った『鳩』をチョッパーで撃った。僕は落ち
てきた鳩を、ノスタルジックの使者の方に向けて撃った。鳩は僕の思った方向に飛んではくれなかった。試合をしたけれど、
結局『11対6』で僕が負けた。運動はあまり得意ではない。
 じゃあ、お弁当食べようか。
 ノスタルジックの使者はそう言った。僕は頷いた。
 ノスタルジックの使者は、持ってきたバスケットを開いて、中身を広げていった。
 私が丹精込めて作った『サルバトリュ』だから、残さず食べてね。僕は目の前の紙皿に載せられたサルバトリュを突いて
から、それを箸で割った。サルバトリュはもちろん冷めていたが、肉のうまみが舌に良い味わいを与えていた。僕はノスタル
ジックの使者を見ながら、美味しいと言った。ノスタルジックの使者は、ワイングラスを手に持ち、その中に指輪を沈めて、
僕に手渡した。中に入った物を取り出してみると、それは婚約指輪だった。
「私と、『     』をしてください」
 ノスタルジックの使者は、そう言った。
「僕でいいの?」
 僕はぼんやりとしながらそう返した。
「ええ、もちろん。ミスター・哀れな仔羊」
「じゃあ、よろしくお願いします」
 ノスタルジックの使者は、目に涙を浮かべて、嬉しそうに下を向いた。そして手の甲で目元を拭った。
「じゃあ、早速、家に帰ったらマウンドの上の泥仕合をしなくちゃ」
「別に明日でもいいじゃない」
「だめ! 今日しなきゃ! この気分のままマウンドの上の泥仕合しちゃいたいの!」
 僕は満面の笑みで語るノスタルジックの使者に押されるように、頷いたのだった。
669 :ノスタルジックの船よ、沈め 2/7  ◆S6qZnfmn3/gR [saga]:2014/05/30(金) 20:36:52.19 ID:s7J7yb8H0

 『壁がやってきた』と名付けられたこの日から、僕とノスタルジックの使者は、暗い部屋の中で暮らし始めた。部屋の中
にある全ての窓を塞ぎ、全ての隙間を塞ぎ、光が射し込まない様に、僕らは完璧な暗い部屋の中で、一緒に過ごしていた。
 お互いの姿が見えないので、僕らは何度もお互いを確かめ合うことになった。
「いる?」
「いるよ」
「本当にそこにいる?」
「いるよ」
「触って」
「いいよ」
「手を触れて」
「いいよ」
 そうして僕らは何度もお互いの存在というものを確かめ合った。でもどちらかが眠ってしまえば、片方はずっと「いる?」
と訊ね続けながら、孤独な暗闇に耐え続けなければならなかった。冷たい床に寝そべりながら、暗闇を見つめ続けて、隣に
いるはずの人の返事が聞こえないだけで、泣きそうになり「いる?」と何度も訪ね続けるのだが、誰も返事をしない。誰も
返事をしない。僕たちはほとんど孤独だった。ただの屍のようだ、という某RPGのメッセージを思い出す。あれは僕たち
に与えられた示唆だ。ただの屍のようだ。僕らは、ただの屍のようだ。ある時、眠っていた彼女が目を覚まして「いるよ」
と答えた。それだけで僕は何十年も暮らしていけるような気がした。それでも彼女が眠ってしまえば僕は孤独になったし、
部屋が暗すぎてやはり姿は見えないから、僕らは確かめ続けなければならない。お互いの存在を。幸せな人はもっとたくさ
ん、明かりがしきつめられた部屋に暮らすのだろうし、こんなに存在を確かめ合ったりはしないのかもしれない。部屋を明
るくしなければいけないと思った。もっと光が欲しいと思った。探せば、どこかに扉があるのだろうけれど、しかしどこに
扉があるのかも、もう忘れてしまった。その扉を開けば、すぐにでも明かりは漏れてくるのだろうけど、その扉がどの位置
にあるのかは、もう暗すぎて分からなくなってしまった。僕たちはすでに出口を失くしたまま、いますか? という問いを
繰り返し続けた。ノスタルジックの使者は、やがて返事をすることに飽きたのか、一人で歌い始めた。僕は一人で膝を抱え続
けて、「いますか」と泣きながらつぶやき続けた。その呟きが、すでに誰に宛てられたものなのかも、分からなくなっていた。
僕は眠った。もう問い続けるのに疲れたのだ。返事は聞こえない。


670 :ノスタルジックの船よ、沈め 3/7  ◆S6qZnfmn3/gR [saga]:2014/05/30(金) 20:37:38.10 ID:s7J7yb8H0

 僕が眠り続けてから、二年が経った。
 目が責めた時に、僕の上に何かが乗っかっている感覚があった。触れて確かめてみれば、ノスタルジックの使者が裸にな
って、僕にまたがっているのが分かった。
 そのようにして、僕がノスタルジックの使者と、暗い部屋のベッドの上で『フロッグパーティの恍惚』をした時、ノスタ
ルジックの使者は、僕の体を一瞬たりとも離そうとはしなかった。ずっとしがみついたまま、僕の体を抱きしめていた。も
ちろん僕もノスタルジックの使者を抱きしめ続けていた。ノスタルジックの使者は、体に触れるのが好きだった。まるで捕
食した餌を離さない動物の様に、僕が逃げられないよう、僕の体に触れ、巻き付き、そして拘束した。僕はそれを愛の表現だ
と考え、抵抗はしなかった。決して抵抗しない、というのが僕の人生のテーマだった。
 フロッグパーティの恍惚から一年ほどが立って、ノスタルジックの使者との間に子供が生まれた。ノスタルジックの使者は
我が子を見ながらこう言った。
「世界中に誰も味方がいなくなった時に、私はこの子を味方にするの」
 そしてノスタルジックの使者の子供は『ワン』と名付けられた。唯一の味方と言う意味での、ワンと言う意味らしかったが、
僕には上手く理解できなかった。

671 :ノスタルジックの船よ、沈め 4/7  ◆S6qZnfmn3/gR [saga]:2014/05/30(金) 20:38:48.52 ID:s7J7yb8H0

 ワンが生まれてからというもの、僕らは天井に人工的な明かりをつけることを決めた。その灯りは便宜的なものだったけ
れど、目が痛くなるくらいに明るかった。ワンと僕ら夫婦は、その眩しい明かりの中で暮らした。もうお互いに、どこにい
るかを確かめ合わなくてもよくなったし、お互いに触り合う必要もなくなった。そして会話が途絶えた。触れ合いがなくな
った。僕らは世界が明るくなっても、幸せにはなれなかったし、問題は何も解決などしなかった。


 人工的な明かりの中で、ワンは順調に育っていった。この世界のありとあらゆるものに興味を示し、そして自らの好むも
のと嫌うものとを、分別していく作業を始めていた。ワンが好きなものは、アンパンマン、羊の人形、腕時計、バタークッ
キー、椅子の脚に付けるカバー、コカコーラのラベル、セロテープの芯、死んだ蛙、チョッパー。そして嫌いなものは、
ニンジン、電車の中に立っているスチール製らしきポール、シャーペンの芯、左腕の骨、甲高い声を出す丸い肉塊みたいな
人形、だった。
 その作業をしていく中で、ワンは次第に言葉を話すようになった。最初に覚えた言葉は、『アダムトラバス』だった。そ
してその言葉の意味を僕は知らない。けれど、彼が最初に覚えた言葉は『アダムトラバス』だった。まるで泣き叫ぶように、
彼は『アダムトラバス』と叫んだ。
 

 ワンが小学校三年生になった時、僕とノスタルジックの使者は一緒に暮らすのを辞めた。明るすぎる部屋からの脱出を決
めた。僕らの子供であるワンを引き取ったのは、ノスタルジックの使者だった。僕はまた一人に戻った。一つの個体として一
人で暮らすのは、共同体として暮らすのと、全く異なっていた。そこには自由があり、そして寂寥感があった。僕は狭い部屋
に引っ越し、明るすぎる部屋は売り払った。ノスタルジックの使者は、唯一の味方と共に、海辺の家で暮らし始めた。

672 :ノスタルジックの船よ、沈め 5/7  ◆S6qZnfmn3/gR [saga]:2014/05/30(金) 20:39:40.88 ID:s7J7yb8H0
 ワンが高校生になると、よく僕の家にやってくるようになった。ワンはよく背中にショットガンを背負って、僕の家にや
ってきた。そのショットガンで何をするんだい? と僕が訊いたら、世界中の人をこれで撃つんです。と彼は言った。どう
して世界中の人をショットガンで撃つんだ? と訊ねると、皆が僕の敵であるからです。と答えた。彼の主食は、かつて僕
らがサイコアナルシスをした草原の草だった。
 ノスタルジックの使者が死んだと知らされたのは、ワンが高校を卒業した直ぐ後のことだった。僕は、ノスタルジックの
使者が埋められている森まで足を運んだ。そこには縦に長い墓石があり、碑文には『架空の自分を超えようとしている』と
書かれていた。それが彼女の人生を表した言葉なのかもしれない。僕は彼女の墓の前で、膝を折って祈った。どうか彼女の
死後の世界が、素敵な世界でありますように。ただ祈った。そして僕は、ただ音もなく、静かに泣いた。蝉の声だけが響く、
夏の森の中だった。彼女の体が埋まった石碑は、ただ凛としてそこにあった。僕は泣かないと決めていたのに、どうしても
涙を止める事が出来なかった。僕は結局、ノスタルジックの使者に何もしてやれなかった。彼女を幸せにすることが出来な
かった。そんな欺瞞に満ちた陳腐な言葉を吐きながら、安っぽい慰めを感じながら、まるでテレビドラマでありがちの見え
透いた悲しい演出のように泣きながら、しかし僕は両手を地面に付けて、ただ祈る事しか出来なかった。それは心からの祈
りであると、自分で自分に呟き続けた。
『祈り』
 祈りとは、神に向かってお願いごとをする行為でも、自分の決意を言葉にするものでもない。ただ対象に向けて、言葉な
き感情を、静かに伝え続ける行為だ。祈りとは、言葉を排除した感情である。僕はただひたすら、死んでしまったノスタル
ジックの使者の為に、祈った。
 そうして僕は毎日森にやってきて、祈り続ける日々が続いた。その果てに、使者との懐かしい会話が思い出された。絶え間
ないノスタルジックが、まるで友達の様に、僕の元を訪れては止まなかった。彼女はその時正しく、ノスタルジックの使者で
あったことを僕は知った。

673 :ノスタルジックの船よ、沈め 6/7  ◆S6qZnfmn3/gR [saga]:2014/05/30(金) 20:40:44.12 ID:s7J7yb8H0

 ノスタルジックの使者の死後、ワンは僕の元で暮らすようになった。ワンは相変わらずショットガンを背中に背負って、
世界と戦おうとしていた。孤独な少年だった。友達は少なかった。その友達でさえも心の奥では信じていなかった。ワンは
時折、そのショットガンで、不用意に相手を傷つけた。弾丸を放ち相手を吹き飛ばした。「だって先に傷つけなければ、こ
ちらが傷つけられるじゃないですか」。その考えは間違っている、と言いたかったが、僕は彼を説得するだけの言葉を、持
っていなかった。僕は祈る事しか出来ない。
 彼が大学を卒業してからも、就職しないことについて、僕は何も言わなかった。彼には彼のやりたいことがあるのだろう
し、彼の見ている世界は僕とは違うものだ。だから僕の世界にある言葉で語っても、彼は理解しないだろうし、彼の世界を
壊すことになるだろうと、僕は思ったのだ。
 ワンはそれからもニートとしての活動を続けた。ただショットガンを持って街をうろつき、時折それを発射するだけの生
活を送っていた。「いつかこのショットガンで、オリンピックに出るよ」僕はその言葉を嗤いながら受け流し、時折ノスタ
ルジックの使者の石碑まで行って、相変わらず言葉なき祈りを続けていた。
 ワンが人を殺したと電話で伝えられたのは、ワンが二十九歳になった五月六日の朝で、僕はその時、昨日の夕食で作った
サルバトリュを温めて食べていたところだった。
 ワンは透明な壁で仕切られた向こう側に座っていた。後ろには警察官が立っていた。僕はワンに触れることが出来なかっ
た。
「ごめん」
 ワンはそう言った。僕は泣く事しか出来なかった。彼は孤独だったのだ。それを理解してしまった。本当は気づいていた
その事実に、目を逸らしていたその事実に、僕は目を向けてしまった。この世から唯一の味方を失くしてしまったワン。名
付け親であり、味方であったノスタルジックの使者を失くしてしまったワン。彼は本当の意味で、ずっと一人だったのだ。
ワンであり続けたのだ。孤独に世界と戦い、社会と闘い、そして周りが敵だらけの状況で、味方もなく、こうして敗北を喫
して牢屋に入れられてしまった。
「お前は孤独なんかじゃない」
 僕はそう言ってやるべきだった。そんな簡単な言葉を、僕は言えなかった。それを言えていれば、僕が真剣にワンの味方
でいれば、ワンは孤独ではなかったはずだ。しかし僕は、自分から言葉を発することはできなかった。自らの考えで言葉を
発することはできなかったのだ。何故なら僕は翻訳者だからだ。他人の言葉を翻訳して相手に伝える事しか出来ず、自分の
言葉というものを一つも持っていないからだ。僕の中には、僕の言葉なんて一つもない。今まで読んだ小説の中の言葉を翻
訳して相手に伝え、アニメで見た格好いい台詞を翻訳して相手に伝え、哲学書で読んだ難しい内容を簡単に翻訳して相手に
伝え、他人が言った主張を翻訳して相手に伝え、だから僕の中に、ワンに伝える、心からの言葉なんてなかった。今までの
人生の中で、僕が生み出した言葉など一つもなかった。僕は空っぽの人間だった。ただの空虚な空気人形に過ぎなかった。
もしくは翻訳するべき対象を失った翻訳者に過ぎなかった。僕は、ノスタルジックの使者の翻訳者であるべきだった。使者
の言葉を、たくさん翻訳しなきゃいけなかったのに、その翻訳の対象を失ってしまった。僕はただのミスター・哀れな仔羊だ
った。
 ワンは泣きながら「なんでこの世に、僕の味方はいないんだ」と言った。彼の母親は死んでしまった。そして彼の父親であ
る僕は、ただ翻訳と祈りを続ける事しか出来ない愚か者だった。
 僕とノスタルジックの使者にとって、たった一つの存在であるワンは、現代をうまく生きぬくことが出来なかった。だから
ショットガンを乱射した。でも現代では、ショットガンを乱射する若者など、疎ましいだけだった。

674 :ノスタルジックの船よ、沈め 7/7  ◆S6qZnfmn3/gR [saga]:2014/05/30(金) 20:46:32.97 ID:s7J7yb8H0

 ワンは牢屋の中で自殺をした。
 僕はその知らせを聞いて、ただ言葉もなく立ちつくした。
 彼の遺体は、ノスタルジックの使者の横に埋められ、そして使者と同様に、石碑が建てられた。
『願わくば、世界の全ての笑顔が僕の味方でありますように』
 彼の石碑にはそう彫られた。それは僕が彫ったものだった。彼の遺書にあった『愛されたい』という言葉を、僕が翻訳し
たものだった。
 僕はかつて訪れたことがある草原に行って、何時間もそこで過ごした。もうここにはノスタルジックの使者も、ワンもい
なかった。チョッパーもなかったし、鳩もいなかった。
 僕を訪れた者たちは、全て僕を通過して、森の中へ帰っていった。
 僕はそこで、もうそれ以上、言葉に翻訳することを辞めた。
 言葉にする必要は、もう無いのだと思った。
 僕はただ祈る人になりたい。言葉もなく他人のために祈り続けられる人になりたい。呪いではなく、祈り。
『呪いと祈り』
 呪いと祈りは、感情の込め方が違うだけで、それは一緒の行為であるはずだった。負の感情か、善の感情かを、遠くの相
手に届けようとする行為だった。僕は、どんなに世界が嫌いであっても、祈る人であり続けたかった。


 それから僕は、彼らの葬式をするために、海へと向かった。
 僕は朝の海辺へ行って、太陽が昇る光景を見つめていた。海辺をなぞるようにして、微かに風が吹いていた。この世界は
群青色に包まれていて、まだ暗かった。これから夜が明けるのだと思った。潮の香りが、使者たちとの思い出をもたらしていた。
崖下には、小さな舟が桟橋に繋がれているのが見えた。僕はその船まで歩いた。そして二人の遺体をその船へと乗せた。
二人の遺体はもう朽ち果てそうになっていた。この世にもう二人はいないのだと思った。
僕は船に繋がれたロープを切った。二人を乗せた小舟は、波に揺られながら、沖の方へ向かって行った。
二人は朝を迎えに行くのだと思った。風が強くなった。その風は、彼女らの船には追い風だった。強い風が通り過ぎていく。
風が彼女らを運んで行った。しかし僕に宛てられた風は吹いていなかった。風は僕を通り過ぎ、そして僕はまた一人になった。
僕は流されていく船を見続けていた。船はいつか、郷愁と共に沈むのだろう。



         ―――――――了――――――――







675 :422 [sagasage]:2014/05/30(金) 23:59:14.81 ID:7KOXxE9/o
遅くなりましたが、>>658 >>668 の作品をてきすとぽいに転載させていただきました。念のため確認をお願いします。
てきすとぽいから本スレにも転載しようと思ったのですが、本日は体力が残っておらず……

現在投稿されている作品は以下のとおりです。

No.01 たったひとつのぼくを求めて(小伏史央)
http://text-poi.net/post/u17_uina/30.html

No.02 あの日の真白なキャンバス(ほげおちゃん)
http://text-poi.net/post/hogeochan_ver2/4.html

No.03 ヒトリ・ヒストリ(犬子蓮木)
http://text-poi.net/post/sleeping_husky/25.html

No.04 一本杉(茶屋)
http://text-poi.net/post/chayakyu/66.html

No.05 もう、一人でいいから(すずきり)
http://text-poi.net/post/tamamogari/1.html

No.06 THE ONE ◆Mulb7NIk.Q
http://text-poi.net/post/hogeochan_ver2/5.html

No.07 ノスタルジックの船よ、沈め ◆S6qZnfmn3/gR
http://text-poi.net/post/hogeochan_ver2/6.html

投稿期間もあと一日、最後の追い込みお待ちしております。
676 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/05/31(土) 00:02:48.29 ID:3LHHB6j6o
何だかんだ、品評会に出る人はそれなりにいるようで何より
677 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/05/31(土) 08:13:43.31 ID:caPlVqfmO
多分締め切りギリギリに四十レスぐらいの投稿する事になると思うけど、よろしくお願いします。
678 :422 [sage]:2014/05/31(土) 08:27:51.74 ID:RRj7Uk270
え……!
四十レス……!!

>>609 に原稿用紙五十枚までという制限をつけていたんですけど、その制限には引っ掛かってないでしょうか。

もし引っ掛かっていた場合は、時間外投稿と同じく関心票のみの扱いとさせていただくつもりなので……
ごめんなさい。

しかし四十レスって恐ろしいパワーだ。
679 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/05/31(土) 18:31:44.74 ID:iocXNm7Xo
最低文字数とかってあるの?
今さら思い付いたので書こうとしてるけど、原稿用紙一枚に満たないかも知れない。
680 :422 [sage]:2014/05/31(土) 18:44:02.11 ID:E5JyzEkNO
最低文字数はないです。
スカッと良いのを投稿してください!
681 : ◆/xGGSe0F/E [saga sage]:2014/05/31(土) 22:02:38.08 ID:bsdwZQEP0
ぎりぎりの時刻になりましたが、品評会作品、投下します。
682 :Black Swan Song 1/16 ◆/xGGSe0F/E [saga sage]:2014/05/31(土) 22:05:59.97 ID:bsdwZQEP0

 自分とそっくりの姿形を持つ人物が目の前にいたら、あなたはどう思うのだろうか。戸惑うだろうか。怖れるだろうか。
見て見ぬふりをするだろうか。怯えて逃げるだろうか。サイコパスの様に、相手を殺そうとするのだろうか。あるいは仲良
くなろうとするのだろうか。しかし、それらは全て、人間の反応として正解であるように私は思う。ドッペルゲンガーのご
とき存在が目の前に居たら、誰だって正常ではいられないだろう。しかし、一卵性双生児として、自分とまったく同じ姿を
持つ者同士として生まれた姉妹のそれぞれは、一体どう思うのか。あなたに想像がつくだろうか。姿形がまったく一緒の身
内。物心ついた時にお互いの姿を見る姉妹。そして自分の姿を改めて鏡によって確認したそれぞれの女の子。彼女たちは一
体全体どういう風に思うのか。私はその経験をしている。私と姉は、全く同じ顔と体型をしているのだ。そんな姉妹の片割
れとして言わせてもらうと、私は容姿が同じ姉のことが心から大嫌いだった。幼いころは気にしなかった。しかし学校に通
うようになってから、明らかな優劣が出始めてしまったのだ。成績。人間性。コミュニケーション能力。姿形以外の、明ら
かな能力の差というのが現れた。そして私はそれら全てで姉に劣ってしまっていた。姉は人気者で、私は双子のダメな方と
言う扱いを受け続けてきた。自然と、その状況に陥った私は姉を疎ましく思うようになった。姉に対して強烈に嫉妬し、そ
して心から嫌うようになった。何で容姿が一緒なのにこれほどの差が出るのか。そして周りの者は何かと言うと、私と姉を
比べ、私の不器用さを嘲った。姉をひたすらに誉め、私だけを馬鹿にした。容姿が一緒だと、どうしても比較対象として扱
いやすいらしい。そんな周りからの扱いに耐えかねて、私は姉などいなくなってしまえばいいと常々思っていた。姉の方は
私をどう思っていたのだろう。姉の事だから、私のことなど気にしていなかったかもしれない。私をいないものとして見て
いたかもしれない。あるいは私をいいカモと見ていたか。結局いくら考えたって、私には姉の心など分からない。同じ姿で
あっても、他人であるからだ。皆は双子の姉妹がよくテレビで扱われているように、お互いの心の内が読めるように思って
いる節があるのだが、一卵性双生児の双子であるからと言って、私には姉の考えることなど分からない。着る服だって違う
し、聴く音楽だって違うし、男の趣味だって違うし、姉はただ遺伝子を共有する他人に過ぎない。ここまで性格の違う双子
がいるのも結構珍しいことではあるらしいのだが。
 さて、最初の問いについて答えてみよう。もし私たち姉妹が全くの他人だったとして、お互いに街中で出会ってしまった
のなら。私は、そのドッペルゲンガーのごとき人物を二度見し、怯えたように後ずさるか、あるいは見て見ぬふりをして、
走り去って逃げることだろう。
 本当にそうできればいいのだけれど。しかし自分で答えておきながら、その想像をすることにまったく意味など無かった。
それは不毛な仮定でしかない。私たちはどうあがいても、生まれた時から一緒に過ごしている家族だ。そして同じ遺伝子を持
つ姉妹なのだ。故に、その結びつきは簡単には解けない。だから、私は死んだように生きるしかなかった。何故なら私は姉よ
りも劣っているのだから。
683 :Black Swan Song 2/16 ◆/xGGSe0F/E [saga sage]:2014/05/31(土) 22:07:05.25 ID:bsdwZQEP0

「それじゃあ行ってきます」
 姉はいつも朝の六時五十分ぐらいに家を出る。テニス部の朝練に出るためだ。高校に入っても真面目に運動を続けるなど
私には信じられない。そして一緒の高校に通っていると言うことも。
 そもそも、私は姉とは違う高校に行くはずだったのだ。しかし勉強が出来ない私にとって、入れる高校の選択肢は限られ
ていた。その少ない選択肢の中でもなんとか偏差値的にマシな高校に入った。入ることが出来た。物凄く勉強したのだ。必
死に勉強して、何とか自分のプライドは保てるレベルの高校に入ることが出来た。これで姉と比べられる生活ともおさらば
だと思って、私は狂喜乱舞したのを覚えている。そんな喜びに浸っている時に、姉が無慈悲にも両親と私に告げたのだ。
「私も由希ちゃんと一緒の高校行くよ! 心配だからね。由希ちゃんは私がいないと何にもできないんだもん」。そのわけ
の分からぬ理屈を通して、私のいる高校に入ってきやがった。受かっていた県内偏差値トップの高校を蹴って。そして私が
通うことになった高校の特待生として、海外進学コースと言うエリートしか入れないクラスに入りやがった。姉はどうせチ
ヤホヤされたいだけなのだ。偏差値トップの高校を受験したのだって、ただ勉強が出来る事を見せつけたかっただけだろうし。
いつもみたいに優越感に浸るべく、偏差値トップの高校を蹴って、妹の為に私立の高校に入った素晴らしい家族思いの姉と
してデビューしたいだけなのだ。そして姉は私のいる高校で、劣っている私を踏み台にして、人気を得るためのダシに使い、
高校生活においても周りのアイドルになろうとしている。面倒見のいい優秀な姉。人当たりの良い美人。妹と違って優しい
姉。そのような評価を得るために。そうだ。きっとそうに決まっている。ああ、本当にいい加減に私から離れてくれないか
と思う。これ以上、私を惨めな気持ちにさせないでくれ。あなたは優秀なんだから、自分一人でやっていけるはずだ。私な
んかに構わずに、あなたはあなたの人生を送ってくれ。私はもう、双子として比べられるのは嫌なんだ。そんな暗い気持ち
を思い返しながら、私はもそもそと朝ごはんを食べ、憂鬱な気分で朝のワイドショーの占いを見、そしてぎりぎりの時間を目
指して学校へ向かった。
684 :Black Swan Song 3/16 ◆/xGGSe0F/E [saga sage]:2014/05/31(土) 22:08:11.40 ID:bsdwZQEP0

 一か月前に始まった高校生活にて、私には一人だけ友人と呼べる存在が居た。
 その子の名前は永沢加奈。クラスで一番成績が悪く、万引きなどの軽犯罪を私に自慢したり、援助交際などもしたり
(クラス内ではあくまで噂レベルだったが、友人である私は彼女が本当にそれをしているのを知っている)、嫌いな先生を
平手で叩いて入学早々に三日間の停学処分を受けたり、髪を染めていつも校門で注意されていたりと、まったくもってアウ
トローな子だった。それが私の唯一の友人だ。そんな社会的に迷惑をかけている彼女が、どうして私立の学校へ来られたの
かと問えば、親が金持ちであり、入れるのがここくらいしかなかったから、と言う事だった。金の力はすごい。世の中、結
局は金で何とかなる。もちろんそれは彼女の力じゃないけれど。
 彼女と出会ったのは入学式の日だった。入学式が終わってクラスに向かう途中、私は誰にも話しかける事が出来ず、ずっ
と辺りを窺いながら歩いていた。そうしたら周りの平凡然とした女子どもには目もくれず、加奈が私の元へやってきて、話し
かけてきたのだ。「同じクラスだよね、よろしく」と。
 私はびっくりして、どうして私に声を掛けたの? と思わず訊ねてしまった。
 加奈は笑いながら、「なんだか世の中のすべてを呪ってそうな目が、好意を持った」と答えた。私はその時、どう反応した
らいいのか分からず曖昧に笑ってしまった。
 そんなに世の中を呪ってそうな目をしているのか、私は。少しショックだった。が、友人らしき人物が出来たのは嬉しかっ
た。なにしろ今まで私は孤独だったのだ。
 それから私たちはお互いに会話を交わすようになり、親友になった。

685 :Black Swan Song 4/16 ◆/xGGSe0F/E [saga sage]:2014/05/31(土) 22:09:24.99 ID:bsdwZQEP0

 始業五分前くらいに教室に着くと、加奈が私の席に座って何やら本を読んでいるのが見えた。周りの生徒は彼女と目を合
わさないようにしている。遠巻きに小声で悪態をついている女子も少なからずいた。が、加奈はそのような人物の事は端か
ら気にしていないようだった。以前、ヒソヒソと加奈の悪口を言う奴のことを告げ口した時に、加奈自身は「あいつらはさ、
自分が正しい人物だって周りにアピールしたいだけなんだよ。群れからはぐれないようにさ。私みたいな異端なやつを罵る
ことで、自分たちは正常であり、正しい感覚を持ってる人物ですってアピールしてんだよね。そういう人って、友達とかは
作れるけど、結局社会において、みんなと同じように生きる事しか出来ないんだと思うよ」と言っていた。みんなと同じよ
うに生きられるだけでも素晴らしいと私は思ったのだが、加奈としてはみんなと同じように生きるのは嫌なようだった。だ
から強く、孤高に生きている。自分からその立場に立っている。そこが私とは違うところだった。
「おはよう」
 私がそう言うと、加奈は読んでいたファッション雑誌から視線をあげて「おお、ユッキー。おは」と明るい声で言った。
ムラのない金色に染められた髪が、微かな風になびいている。
「今日は遅刻しないんだ?」
 私がそう言うと、手慰みに雑誌のページを手繰りながら加奈は答えた。
「ああ、寝不足だったからさー、昨日は早めに寝たんだよねー。そしたら早く目が覚めちゃった。一昨日はバイトの所為で
あまり眠れなかったし」
 加奈の言うバイトとは、援助交際の事だ。加奈は月に三度ほど援助交際をして、九万円ほどを稼ぐ。今時援助交際をする
子なんて居るの? と以前に聞いたら、意外に援助交際をする子は多いのだと言う。そしてその中の大半は、遊び感覚でや
る、セックスが好きな子が多いのだとか。私にはわからない世界だったが、しかし惹かれる部分もなくはなかった。姉が優等
生であるなら、自分はとことん堕ちてしまいたいという誘惑に駆られることもある。悪いことをして、姉ごと私たちの評判を
引き下げてしまいたい。そう願うこともある。
686 :Black Swan Song 5/16 ◆/xGGSe0F/E [saga sage]:2014/05/31(土) 22:10:38.95 ID:bsdwZQEP0

 姉は休み時間になると、よく『由希ちゃんの様子を見に来たよ』と言いながら教室にやってくる。最初の頃は、私たちが
双子だと言うことに、クラスの皆が食いついた。同じ顔を持っていることに。そして次に、姉が私と違って明るく社交的な
性格で、皆を楽しませる会話が出来る人物だと言うことに皆が気付き、そして姉とだけ仲良くし始める。そして私は、クラ
スの皆からも、姉とは違って暗い性格で、勉強も出来ず、頼まれたことすら上手くこなせない、劣った人間だという評価を
与えられる。私にはそれが辛かった。
 加奈は私たちを見て、「へぇー。顔が一緒の双子を見るのって初めてだよ」と私たちを見比べて笑い、それからすぐに姉
に興味を失くして、私と会話をし始めた。加奈は姉に一切の興味を抱かないようだった。その事に姉は少なからずのショッ
クを受けたのか、積極的に加奈に声を掛け続けたのだが、加奈は鬱陶しそうにするだけで、姉との会話は膨らまなかった。
その事について、どうして姉に興味を引かれないのかと聞いたところ「由希の方が話してて面白いし、なんかあんな感じの
さ、みんなに好かれてるやつって苦手なんだよ。理由どうこうじゃなくて。生理的にダメ」と話した。
 姉は悔しかったのか、よく私の教室に来て、私たちの会話に交ざり、加奈の気を引こうとしている。様々な知識を披露し、
加奈の興味のありそうな話題を繰り出すのだが、加奈は姉をほとんど見ない。冷たくあしらう。その事が少し、いい気味だ、
と思った。あなたにも思い通りにならないことがあるのだと、私は姉に言いたいような気持になった。私の唯一の味方が、
私と同じ人物を嫌っていることに、嬉しさも感じていた。
 姉は加奈の事を諦めたようだった。
 だが、姉の攻撃はここで終わることはなかった。
 姉は教室に訪れる度に、私のクラスメートに、私の過去の失敗談を吹聴して回り始めた。
「あのね、あの子はよく失敗をしてしまうの。例えば遠足の時に一人だけお弁当を忘れてしまって、私のを半分食べさせて
あげたり。国語の作文発表会の時に、一人だけ何も言えなくて泣いてしまったり、いじめられてトイレに閉じ込められて水
を掛けられたり、お母さんの大事にしていた装飾品をお菓子と間違えて食べちゃって、病院に行ったり、だからあの子の面
倒をしっかり見てあげてね。あの子は何もできない子だから」
 その様に、面倒見のいい天然な姉を演じて、私の悪いイメージを周囲に植え付ける。姉はそのような自然な精神攻撃に長
けている。そこが私には悔しいのだ。一体、なぜ姉は私を攻撃し続けるのだろうか。いい加減にしてほしい。まさか、本当
に天然ボケで、私を心配するあまりにこのような事になってしまうのか。いや、そんなことはないはずだ。私は過去に何万
回と言ってきた。私の事を放っておいてくれ。姉がすることによって、私は物凄く傷ついているのだ、と。だが姉は軽く笑
って「分かった」とはいうものの、それを止めることはない。姉は私が周囲から拒絶されることを見ているのが楽しくて仕方
ないのだ。
687 :Black Swan Song 6/16 ◆/xGGSe0F/E [saga sage]:2014/05/31(土) 22:11:35.35 ID:bsdwZQEP0

 ゴールデンウィークが過ぎて二週間近くがたった頃。
 中間テストが終わり、午後の時間が丸々開いた日に、加奈が遊びに誘ってきた。
「ちょっと私に付き合ってよ」
 もちろん放課後に町へ遊びに行くことは多々あったが、その日はそのまま制服ではなく、私服を着て遊びに行こうと言う
ことになった。たまに加奈の遊び友達が来たりすることもあり、加奈と町へ行くのは楽しかった。誰も私の事を馬鹿にした
りしないし、人から疎まれている人間、集団に交じわれないマイナーな人間に、彼女たちは優しかった。だから、私は私服
に着替えてから、駅前で加奈と待ち合わせをし、出かけることにした。
 加奈とやってきたのは、駅ビルの中にある香水店だった。ティーン向けの安価な商品から、OL向け、主婦向けの少し高
価なブランド物も売っている店だった。店に入ると、私たちと同様に、テスト明けの少女たちで店は賑わいを見せていた。
「ユッキーは香水とか付ける?」
「私は付けたことないな。こういう店に来るのも初めてだし」
「そうなんだ。じゃあ、私がお勧めを選んであげるよ」
 そう言って彼女はいくつかの棚を見、サンプルの香りを嗅いだりしながら、一つの商品を選んだ。
「これがいいと思うよ」
 そう言って彼女が選んだのは、ピンク色の可愛らしい小瓶の香水だった。値段を見てみたが、千七百円と言う値段で、月
に七千円のお小遣の私にとっては少し痛い出費だったが、せっかく加奈が選んだ物だから買ってみようと思った。が、加奈
は私に買わせるつもりはない様だった。加奈は辺りの様子を窺い、それから私に微笑みかけて、何気ない仕草で、全くもっ
て自然に、その小瓶の入ったプラスチックの箱を己の鞄の中に入れた。それを見た私の方が却って焦ってしまい、挙動不審
に辺りを眺めながら、小声で加奈に耳打ちをした。
「ま、万引きするの?」
「そうだよ。だって出来そうだったし」
「いや、でも」
「ふふ、ビビりすぎだって。こんなの捕まったって大したことないし。一度くらいこういうことしないと、駄目だよ。健全
に生きている人間なんて、何の面白みもない。まっとうな意見を述べる、誰もが予想できることしか話さないロボットにな
ってもつまらないでしょ。ユッキーは、もっと私と一緒に駄目になってほしいな。その方が素敵だから」
 その言葉に、私は二の句が継げなかった。確かに私の願望として駄目になってしまいたいと言うのはあった。自分は駄目
になっていくことが合っていると考えていた。その方が自然でいられるような気がすると。
「私も、じゃあ、やる」
 いつの間にか、私は自然とそう口にしていた。自分は常に、姉とは正反対の方へ行こうとしていた。それは昔からの癖の
ようなものだった。姉が上手い絵を描けば、自分はわざと下手に描いた。姉がおいしい料理を作れば、私はわざと調味料の
配合を間違えた。姉が好きになった人は、どんな人であろうと嫌いになろうとした。姉が称賛される人であるのなら、私は
暗い世界で生きる人間になりたかった。姉が清純に生きようとするのなら、私は汚い生き方をしたかった。何故なのだろう。
私は姉と同じになりたくないのだと思う。生理的な嫌悪と言うよりは、自分と同じ形をした人と、同じように生きてしまえ
ば、それはもう私と言う存在が居なくなることを意味するような気がしたのだ。私の個性など、もう無くなってしまいそう
な気がしたのだ。双子だからこそ、私は姉とは違うように生きたかった。だって姉と同じようになってしまえば、私が存在す
る意味など無い。ただの互換品になってしまう。その事を私は恐れているのだろうか。私と言う個性を、社会に示したいのだ
ろうか。それがたとえ汚いものであったとしても。
 私はそうして故意に、姉とは違う方向を歩んできた。
「本当に? 嫌ならいいんだよ?」
 加奈は私の決意を確かめるように、尋ねてきた。しかし、私の決意は固まっていた。
「やる。もっと汚くなってしまいたい。黒くなってしまいたい」

688 :Black Swan Song 7/16 ◆/xGGSe0F/E [saga sage]:2014/05/31(土) 22:12:28.47 ID:bsdwZQEP0

 そうして私はどんどん堕落していった。
 加奈と出かけては万引きを繰り返した。姉の黒髪に反するように、私は脱色した髪色にした。加奈と一緒に援助交際をす
るようになった。どんどん私の心は黒く染まり、私の心はそれに慣れ、反社会的な事をしても、心は痛まなくなった。とに
かく自分として生きていたかった。毎日自分と同じ顔を見ることにうんざりしていた。姉と同じにはなりたくなかった。だ
から彼女が上を目指すなら、私はどんどん下へ降りていこうと思った。
 母親はそんな私を見て、とても口喧しく言ってきた。私は全てを無視した。やがて母親の口数は減り、面倒くさくなった
のか、私に目を向けることはほとんどなくなった。父も私を叱ったことがあったが、父のメールフォルダにあった女性との
やり取り(恐らく浮気だろう)をほのめかした瞬間、父は私に強く言うことはなくなった。姉はと言えば、取り繕うように、
心配そうな様子で私に接してきた。
「由希ちゃん。そんなことしちゃ駄目だよ。ねえ、お願いだから真面目に生活しよう? もし私が悪い事したなら謝るから」
 とても嘘くさい科白だと思った。こんなのが自分と同じ遺伝子を持つ人間なのかと、悲しくなってくる。彼女はただ、妹
を心配しているふりをしているだけだ。演技をしているんだ。でも、他人にはそれが見抜けない。
 私は姉とは全く別の人間になった。それが嬉しかった。姉とは違う方向に向かう事だけが、私のほとんど唯一の生きがいと
言ってもよかった。


689 :Black Swan Song 8/16 ◆/xGGSe0F/E [saga sage]:2014/05/31(土) 22:13:30.07 ID:bsdwZQEP0

 中学生の頃、幾度か姉の真似をしたことがある。
 日曜日に、姉は友人と遊びに行く約束をしていた。だが当日になって姉は風邪を引いてしまい、遊びに行けなくなった。
「お願い、由希ちゃん。皆に断りの電話をかけておいて」
 当時私たちは携帯電話を持っていなかった。親が厳しい人だったので、持つことを禁止されていた。そのため、姉は私に
断りの電話を頼んだのだ。ようは自分の人脈を見せつけたかったのだろう。私にとって、仲良くない人物に電話をすると言
うのがどんなに心苦しく緊張するかというのが、姉には分からないのだ。と一瞬考えたが、しかし姉は分かっていて、わざ
と私に電話をかけさせたのかもしれないとも思った。私は悔しさを感じた。何で姉の為に、姉の友人に電話をしなきゃいけ
ないんだ。どうせ冷たい態度であしらわれるに決まっている。私が代わりに誘われるわけなど無いのだ。
 と、その時、何故か不思議なアイデアが浮かんできた。姉の代わりに私が行ったらどうなるのだろう。完璧に姉の真似を
して、姉を演じたのなら、皆は気づくのだろうか。私はその思いつきに、妙に心が躍った。それは危険な賭けであったが、
私は実行せずにはいられなかった。待ち合わせ場所は、昨日の夕食時に姉が自慢するように話していたのを覚えているから、
そこへ向かえば大丈夫だろう。私は姉が着そうな服を着て、姉がしそうな薄い化粧を施し、姉がいつもしているハーフアッ
プの髪型にし、鏡の前で姉が見せるような笑顔を作った。それは完璧に姉に似ていた。と言うよりも、姉本人が映っている
ようだった。私は早速、その待ち合わせ場所に向かった。
 結果から言えば、誰も微塵も疑うことなく、私を姉だと思い込んでいた。もちろん会話の齟齬がある事にはあったが(い
つも話している話題や、好きな人の事、先日話した話題等)、しかし姉の天然ぶりを装いながらとぼければ、相手は簡単に
信じた。私は、振舞おうと思えば、なろうと思えば、簡単に姉と同じ立場に立てるのだろうと思った。姉のように笑い、姉
のようにみんなに気を遣い、姉のように皆を楽しませ、姉のように勉強を頑張り、姉のように恋をする。それは恐らく簡単
にできるのだろうと思った。だってそれは、私が考え付いた行動のうちの一つと同じことなのだから。姉のやろうとするこ
とは、私にも浮かんでくる思考のうちのひとつなのだから。だが私はその行動をしない。私はあえて裏を行った。姉と同じ
ことをしても姉と同じ人物になってしまう。それが嫌なのだ。
 それから数日が経ち、姉の友人たちが「日曜日に行った映画楽しかったよね」という話を姉にした時に、姉は直感的に私
が代わりを演じたのだと気付いたはずだった。しかし姉は何も言わなかった。咎めも感謝もしなかった。恐らく姉も、私が
姉と全く同じことを出来る事を知っているのだ。だが、それと同時に今回の事が、私の単なる遊びに過ぎないと言うことも
理解しているはずだ。だって私たちは同じ遺伝子を持つ双子なのだ。お互いの心は分からないが、考え方の大まかな傾向は
分かる。恐らく私が先に生まれたなら、姉の様になっていただろうし、姉と同じように人気者になろうとしただろう。
 その他に、気まぐれに姉と同様に上手い絵を描いたことがあった。美術の時間に描いたコンクール用の絵だ。姉が風景や
人物を詳細に書こうとする絵なのを知っているから、私は反対に、空間や人物を曖昧に描き、人々に緩やかなイメージを想
起させる絵を描いた。図書館で見た、姉が好みそうにない印象派の絵を模倣した。そうしたら私の絵が大賞を取り、姉の絵
は特別賞を取った。私が勝ってしまったのだ。その発表を知った時の姉の鬼のような形相を私は覚えている。目が吊り上り、
私を一瞬だけ睨み、叫びだしそうな口をした。あれこそが、姉の真の姿だと思った。私はしかし、それ以降、姉の立場を壊
そうとしたり邪魔したりするようなことはしなかった。魅力を感じなかったのだ。姉の持っているものに。私は一切の魅力を
感じない。だから、私は能力面を姉に引渡し、自分はアウトローな世界で生きようと決めたのだ。


690 :Black Swan Song 9/16 ◆/xGGSe0F/E [saga sage]:2014/05/31(土) 22:14:21.54 ID:bsdwZQEP0

 思えば結局、私だって演技をしているだけなのだ。勉強が出来ないのだって、コミュニケーション能力がないのだって、
手先が不器用なのだって、全て演技だ。でも全て素のままに生きたら、私は姉と同じになってしまう。面倒くさい。何で私
たちは双子として生まれてきたのだろう。一つの確固たる存在として生まれてこなかったのだろう。もちろん世の中には、
こんな問題を抱えた双子などほとんどいないのだろうが、しかし私は双子としてこんな思いをするなどもう嫌だった。オン
リーワンで生きたかった。素のままで生きたかった。私と同じような人物がいると言うだけでうんざりだった。
 姉を汚してしまったらどうだろう。私が姉のふりをして、万引きや援助交際を繰り返せば、姉の評判は落ちるような気が
したが、そんな事、通用するはずがなかった。いずれ私がやったとバレるし、そもそもそんなことをしたって、私の苦しみ
の本質は解消されるわけではない。姉がいなければ、と考えてしまう。奴がいなくなれば、私は自由に歩ける。姉をいっそ
のこと殺してしまおうか。だけれど、姉を殺すと言うことは、自分を殺してしまうのと同じだった。私と同じ遺伝子を持っ
た人を殺すと言うことは、すなわち自殺のようなものだ。まったく我ながら面倒くさい考え方をするものだ。これじゃあいつ
までたっても堂々巡りだ。
 私はこうやって自己に囚われていき、やがて外に出るのが面倒くさくなり、部屋に引きこもることになった。学校へ行かな
くなり、自室でパソコンばかりするようになった。これでいい。姉とは違うんだから。これでいいんだ。私はどんどん駄目な
方へ堕ちていくのだ。



691 :Black Swan Song 10/16 ◆/xGGSe0F/E [saga sage]:2014/05/31(土) 22:15:22.47 ID:bsdwZQEP0

 私は日がな一日中、パソコンばかりをしていた。
 パソコンで一番ハマったのは、素のままの自分で、知らない人とチャットをすることだった。姉の事を考えず、姉の逆を
するという発想から解き放たれて、チャットをするのは安らかに楽しめた。
 ネットの友達募集の掲示板を見、趣味が合いそうな人を見つけ、スカイプを使ってチャットをする。そこで何人かの友人
が出来ていた。
 そういえば、いつの間にか加奈とは会わなくなっていた。引き篭もるようになってから何の連絡もないし、私からも連絡
をしていない。恐らく彼女は別の友人を作り、別の人間を堕落の道へ引きずり込んでいるのだろう。
 チャットの中の私は明るかった。テレビ電話を使って話すことはしなかったが、文章だけで人と通じ合えると言うのは、
思っていた以上に楽しいことだった。
 私は、『レノ』という自称男性の人とチャットをすることが多かった。彼は聞き上手だった。最初は私も警戒して、自分
の事は話さなかったのだが、彼は相談に乗るのが上手かった。いつの間にか私は自分の境遇、悩み、葛藤などを徐々に話す
ようになっていた。
「つまりさ、自己嫌悪みたいなものだよね」
 ある日、レノはそう言った。
「人間の中にはさ、ほんの小さいときから強い自己嫌悪を感じる子供って言うのがいるんだ。普通ならそういうのって、も
ちろん自分自身に対して嫌い、恥ずかしいって感じるんだろうけれど。でも君にとっては、目の前にまさに自分と同じ、自
分とそっくりな存在が居た。だから君の自己嫌悪は、そのお姉さんに向かったんじゃないかな。つまり本来自分に向けるは
ずだった自己嫌悪を、自分に向けるより先に目につく、自分と同じ存在であるお姉さんに向けてしまった。自分と同じ思考
をする姉を嫌うことで、自己嫌悪を補完し、自分は姉の逆を行くようにする。そうやって君の思考は作られていったんだと
思うよ。って、まあ、あくまで僕の推測にすぎないけれどさ。でも、そうだねえ。そうなると、君が抱える問題の解決方法と
言ったら、やっぱりお姉さんと離れて暮らすぐらいしかないんじゃないかなあ。大人になれば、思春期の自己嫌悪というのも
徐々に和らいでいくように思うし。ごめんね、それくらいの無責任な事しか言えないけれど」
 レノはそう分析してくれた。そこには納得できるものがあるような気がし、私は感謝を告げた。
「いえ、でも、こうして相談に乗ってもらえる事だけでも嬉しいです。今までこういう話をできる人っていなかったから」
「まあ俺なんかでよかったらいつでも相談にのるよ」
 そのようにして、私は夜中、仕事が終わった後の彼とチャットをするのが楽しみになっていた。もちろん毎日ではなく、
彼がスカイプにログインした時だけだったが、今の私の生活の中で、彼との会話だけが私の生きる目的となっていた。
692 :Black Swan Song 11/16 ◆/xGGSe0F/E [saga sage]:2014/05/31(土) 22:16:13.22 ID:bsdwZQEP0

 一ヶ月近く、彼とのチャットを経た後で、私はリアルで彼と会うことになった。提案してきたのは向こうだった。
「ちょっと君と実際に会って話してみたいな」
 その言葉に私は何となくOKを出した。もし相手が性行目的(あるいは援助交際)であっても、イケメンや金持ちなら
OKだし、ブサイクだった場合は断って、人気のない場所に行かなければいい。真面目な人ならそれでよし。とりあえず私
は彼に返事をし、会うことになった。
 彼が住んでいるのは神奈川県の鎌倉だった。静岡の東部に住んでいる私にとっては行けない距離ではなかったが、少し遠か
った。その事を告げると、彼が私の住んでいる近くの町まで来てくれることになった。私たちはその町で会うことにした。
 待ち合わせ場所に指定したのは、私が住んでいる町から電車で五駅離れたターミナル駅の前だった。もしレノが危険な思考
の持ち主で、私をストーカーしたり、私の家を探ろうとしているのだったら、あまり私の家の近くに場所を指定しない方がい
いと思ったのだ。

693 :Black Swan Song 12/16 ◆/xGGSe0F/E [saga sage]:2014/05/31(土) 22:17:31.44 ID:bsdwZQEP0

 待ち合わせ当日になり、私は地元の駅から電車に乗って、その町へと向かった。思えば高校を休むようになってから、電
車に乗るのも久しぶりだった。平日の昼間であるために、車両はどこも空いていた。空席が目立ち、子連れの主婦や老人な
どがぽつぽつと座り、静かで穏やかな空気がそこに満ちていた。まどろみのような、黄昏のような、何とも言えない空気が
車内に流れ、午後の日が射す黄金色の町の風景が、車窓を流れていくのが目に映った。
 私の目の前には親子が座っていた。大人しそうな印象の母親と、その隣には目を瞑っている少女がいた。少女は可愛らし
い服装と見た目をしていた。紺のチュニックのワンピースを着、下は白黒ボーダーのパンツを穿いており、頭には可愛らし
いリボンが付いたペーパーハットをかぶっている。そんな少女は目を瞑りながらも、しかし眠っていると言うわけではない
ようで、脚をぶらぶらとさせながら、辺りをきょろきょろと見回し、車内で起こるいろいろな音に反応している様子だ。恐
らく少女は、目が見えないのだろうと私は思った。そんな盲目の少女はしかし、暗い表情は一切していなかった。楽しそう
に笑顔を見せ、落ち着きなくきらきらとした表情で座っている。その光景は何やら微笑ましかった。はしゃぐように動く彼
女に向かって、お母さんは「落ち着きなさい。危ないから」と言うが、しかし盲目の少女は、椅子のクッション部分を手で
撫でたり、ガラスをべたりと触ったりなど、この世にある感触を楽しむことに夢中だった。母親もその様子を見て、微笑み
ながら、ため息を吐いた。その光景は、見ている者の心を癒すほどに優しいものだった。その光景を見ている時、ふとした
瞬間、私のスマートフォンの着信音が鳴ってしまった。恐らくレノが待ち合わせ場所に着いたのだろう。
 目の前の少女は、私のスマホの着信音に反応したようだった。私はこの子の楽しみを邪魔したような気持になって、マナ
ーモードにしていなかったことを後悔した。しかし少女は、私を見て何故か、笑顔で手を振ってくれたのだった。まだ小学
校に入学するかしないかぐらいの年の子だろう、少女は真っ暗な世界にあっても、目の前にいる誰かに笑顔で手を振ること
が出来るのだ。その事に私は驚き、そして強い子なのだと思った。決して少女には見えていないはずなのに、彼女は私と言
う人間に気が付き、そればかりか笑顔で手まで振ってくれたのだ。私はそんな少女の優しさに、何故だかわからないが、感
動してしまった。その笑顔で手を振る盲目の少女の姿が可愛く、とてもきれないように見えて、ふと涙が零れそうになった。
自分はこんなに感傷的な人間だっただろうか。しかし、こんな幸せな光景と言うのは、思い返せば自分はあまり見たことが
ないような気がした。目の前にいる盲目の彼女は鼻水を垂らし、この世の全てが楽しくて仕方がないと言う様子で、私を見、
その楽しさを分け与えるように、笑顔で手を振ってくれた。私と言う一人の人間に気づいてくれた。目が見えないと言うハ
ンデ、いや、私たちがハンデだと思い込んでいるそれとは関係なく、純粋に世界を楽しみ、綺麗な心を持ってこの少女は生
きていた。この少女を見て、私は、心が浄化されていくような気持ちがしたのだった。この子みたいに、純粋な心で、美し
く生きてみたい。その言葉が自然とわき上がり、そして今までの自分が恥ずかしく感じられて仕方なかった。目の前の少女
の様に、飾りのない美しさで生きていきたい。暗闇の世界であっても、色々なことが楽しめるこの子みたいに、強く綺麗に
生きたい。私は思わず、そう願っていた。何故私にこんな光景が訪れたのだろう。何故こんなに目の前の親子に惹きつけら
れるのだろうか。それはまるで奇跡みたいに思った。自分とは全く関係ないはずなのに。盲目の少女が鼻を垂らしながら楽
しそうに私に手を振ってくれただけなのに、その光景は圧倒的に強くて美しかった。なんて優しくて奇麗なんだろう! 午
後の光に包まれている盲目の少女と母親は、一枚の絵画の様だった。
 私は、その少女に勇気づけられるように、その少女と母親と、その二人の光景に励まされるように、自分は自分として強
く生きていけばいいじゃないと、強く思った。私の悩んでいたことが、とてもとてもとてもとてもとてもとてもとってもち
っぽけでくだらないことに思えて仕方がなかった。私は大きな病を抱えながらも楽しげに生きるこの子の様に、純粋な心で
生きると心に誓った。この少女は、私に希望のようなものを与え、私はそれを見て、なんとか死ぬ寸前で踏みとどまったよ
うにして、生きていけるような気持がしたのだ。そして私も、誰かにとってそのような存在になってみたいと、自然と、そ
のように思う事が出来た。たとえ障害を抱えようと、誰かに笑顔で手を振って、悩んでいる人の気持ちを吹き飛ばせるような、
そんな力強い生命を感じさせるような女の子に……。


694 :Black Swan Song 13/16 ◆/xGGSe0F/E [saga sage]:2014/05/31(土) 22:18:14.56 ID:bsdwZQEP0

 ターミナル駅構内は、大勢の人で込み合っていた。ここは大きなビルがあり、たくさんの路線を繋ぐ駅であるために、そ
の利用者はとても多い。私は混雑した人の流れに乗りながら改札を出て、汚らしい階段を上り、待ち合わせ場所に向かった。
 レノは黒のワイシャツに、ベージュのチノパンを穿いているらしい。眼鏡をかけ、髪は黒のツーブロック、身長は百七十五
センチほどで細身。駅前ロータリーの噴水にいると言う。情報と一致する男を探すと、確かにそのような人物が噴水前にい
るのが分かった。私が近づくと、向こうもこちらを見る。少し怯えながら、レノさんですか。と声を掛けると、彼は一瞬だ
け驚いたような顔をし、それからすぐ安心させるような笑みを見せて、うん、レノです。ロップイヤーさんでしょ、と言っ
た。私も頷き返して笑みを見せた。姉を知らない他人であると、どうやら私は素のままで笑顔を見せられるようだった。そし
てレノは、想像していたよりも、爽やかで清潔感のある男だった、年は二十代半ばあたりだろうか。
 とりあえず私たちは、話をするために、近場のカフェに入ることにしたのだった。



695 :Black Swan Song 14/16 ◆/xGGSe0F/E [saga sage]:2014/05/31(土) 22:19:18.91 ID:bsdwZQEP0

 カフェで話していくうちに、彼は私とセックスがしたいのだということが、はっきりと感じ取れた。私はもうどうでもよ
くなり、自らセックスを持ちかけて、彼を誘った。男など全部くだらない生き物だと思った。性欲をコントロールできない
ただの醜い犬だ。そうして私たちは夜になってからホテルへ行き、セックスをすることになった。
 私がベッドに倒れると、彼は私を獣のように突いた。まるでこの時だけを待っていたと言う風に。この女を犯すことだけ
が楽しみだったと言う風に。そしてセックスが終わると彼は唐突に言った。
「お前さ、何でそんなに嫌われてるの?」
 私はどういう事か分からずに彼に訊ねた。
「いや、俺はさ、お前の姉から頼まれたんだよ。お前を騙してほしいって。双子の妹がいるから、そいつとのセックスを隠
し撮りしてほしいって」
 私はその事実を聞かされて驚いた。姉はよほど私が嫌いなのだろう。私が姉を嫌っているのと同様に、姉もまた自分とよ
く似た私と言う存在を嫌っていたのだろう。
「でもさ、やる気なくすぜ。俺とお前の姉は付き合ってるんだけどさ、恋人と同じような文章を書いてくるんだもん。
で、今日あったら顔や雰囲気までまったく一緒で、もちろん髪色が違ったから区別はつくけどさ、本当に驚いたんだ。でも
第三者の俺からすれば、そんな恋人と全く同じに見える女の子を、騙すなんてできないわけだ。でも君らからすれば、お互
いは全く別の人間であり、周りからもそう見られたいと思っているわけだろ。なかなか面倒くさいよな。今日は悪かったよ。
でもさ、俺が言うのもなんだけど、チャットとかでホイホイ男の誘いに乗らない方がいいぜ。危ない奴ばかりだから」
 本当にお前が言うな、と私は思った。何故姉はこんなクズと付き合っているのだろう。というか、このクズは多分、姉に
利用されただけだ。恐らく私を地獄へ突き落すために姉が用意した駒に過ぎないだろう。姉がこの男に近寄り、恋人という
甘い関係を提供して、それでこの男を操っていたのだ。姉は容赦なく私を壊そうとしている。私はその事が怖く、そして空
しくなった。お互いがオンリーワンとして生きるために、何故ここまでしなければならないのだろうか。私はもう、うんざり
だった。彼女から離れて生きたいと思った。私は目の前の男に平手打ちをくらわせて、「楽しかったよ、クソ野郎」と言って
からホテルを出た。自分は醜いと思った。何でこんな醜く生きているのだろうと思った。




696 :Black Swan Song 15/16 ◆/xGGSe0F/E [saga sage]:2014/05/31(土) 22:20:19.23 ID:bsdwZQEP0

 家に帰って、私は姉と話すことを決めた。思えば姉と面と向かって話すのは一ヶ月ぶりだった。そして姉の部屋に行こう
とするのなんて、小学生の時以来、実に七年ぶりだった。
 姉の部屋をノックすると、姉は明るい声で返事をした。私は遠慮なく彼女の部屋に入る。
「おかえり」
 私を見て姉はそう言った。私にクズを嗾けたくせに、姉は何も知らないと言う様子で、笑顔を見せるのだ。私はこんなや
つと同じ遺伝子を持っている事にうんざりだった。自分がこうなっていた可能性を考えるだけでもうんざりだった。
「私のセックスの様子を隠し撮りさせようとしたんだって?」
「えー何のこと?」
「とぼけてんじゃねえぞ。クソ女」
「わかんないなー。由希ちゃん何言ってるの?」
「あのクソ男が全部洗いざらい吐いたんだよ。ボイスレコーダーにも録ってある」
「へえー、由希ちゃんやるね」
「アンタと同程度には頭が回るからな」
「だから嫌いなのよ」
「だろうね」
「なんであんたなんか生まれてきたのよ。本当にウザったい」
 姉は語勢を強めて、私に向かって、そう言う。抱きしめていたクッションを床にバンバンと叩きつけ、私を今にも殺しそ
うな目で睨み、唾を飛ばしながら醜い表情で、私に叫んだ。
「幼稚園にいたころ、私が好きだった子をあんたが奪ってから、私はあなたを地獄に落とすことを決めたのよ。同じ顔で、
同じ技量で、ほとんど同じ人間であるのに、どうしてあんたの方に卓也くんが惚れたのか。私は強烈な嫉妬を感じた。以来
私はあんたの何倍も勉強を努力するようにした。皆から好かれるように努めた。料理や裁縫などの技術を身につけた。全て
あんたが私より劣っていると証明するためだ。でもあんたは私の努力とは関係なしに、勝手に落ちていった。分かるわよ、
私と同じになるのが嫌だったんでしょ。私も同じ思考だから分かるわよ。私の周りに私と同じような人間なんて、一人もい
らない。だから私は徹底的にあんたを潰すためにこれまで生きてきた。あんたが中学の時に絵画コンクールで大賞を取った
時、どれだけ本気で殺してしまおうと思った事か。実際に台所で包丁を握って、それからあんたの部屋の前で何時間も立っ
ていたの。私はオンリーワンでありたいのよ。あんたなんかゴミみたいに生きていればいいの。そうすれば私だけが、私と
して、人気者でいられるんだもの。しかし、本当にあのクズは使えないわね。どうせセックスした後で怖気づいたんでしょ。
もっと早くあんたが援助交際してると知っていれば、上手くやれたんだけどなあ。ああ、本当にムカつく、お前早く死んで
よ、そこら辺のウザったい野良犬みたいにさ。お前にはお似合いだよ。あーくそっなんでお前この部屋にいるんだよ、何で
この家にいるんだよ、あームカつくし、ヤバいキレそうなんでお前は私と同じ顔してんだよ何で双子として生まれてきたん
だよ!」
 ぶつぶつと呟き続けながら、姉は突然立ち上がり、私に覆い被さってきた。そして私の目を殴った。私は反射的に左手で
防御したのだが、姉は執拗に目や鼻などを狙って、殴ってくる。
「そうだよ、お前の顔に傷を付ければ、目印になるじゃん。お前の目を潰せば、私たちの区別がつくじゃん。そうすれば私
の心の苦しみも少しは解消されるわよね、腐った死体みたいに生きてるお前を殺そうか?」
 私は反撃しようとしたが、しかし姉の顔を殴るのは気が引けた。どこでこの違いが生まれたんだろう。私には姉を殴る事
は出来なかった。どんなに嫌いであっても、それはもう一人の私であったし、もう一つの可能性として存在する私だった。
そんな私を殴ることなど出来なかった。しかし姉は攻撃の手を一切緩めなかった。
「いたっ、痛いっ! 助けて! お母さん! 痛い!」
 私は声の限り叫んだ。姉は「うるせえんだよ! 私と同じ声で喋んな!」と大声で怒鳴りながら、肘で私の顔を打ち、私
は鼻が潰れるような痛みを感じた。鼻を中心とした激痛が走り、鼻孔に何か温かい液体が流れ出している感覚があった。すぐ
に鼻孔から鉄のような匂いがし、鼻骨が折られて血が出ているのだろうと思った。私は涙が浮かんで、止まらなかった。
「何してるの!」 
 部屋に母親が入ってきたようだった。その時に、姉は冷静さを取り戻した。しかし姉の髪はぐしゃぐしゃと乱れ、大きく息
をし、そして顔が引きつっていた。私は激痛の中、泣いて、床に寝そべっていた。



697 :Black Swan Song 16/16 ◆/xGGSe0F/E [saga sage]:2014/05/31(土) 22:21:11.97 ID:bsdwZQEP0

 その後、病院で入院することになった私は、母に事情を説明した。私たち姉妹の持つ軋轢を。そして母は驚いていた、私
たち姉妹がそんなにも大きな闇を抱えていることを知らなかったようだった。
 私は姉と離れて一人暮らしをすることになった。母は心配していた。私が一人暮らしを本当に出来るのか。大丈夫なのか
と。しかし私は言った。姉が出来ることぐらいなら私は本当は出来るんだよ、と。母は時折、私の様子を見に、私の住んで
いるアパートにやってくる。母との関係は以前とは違い、良好になった。それは私が、無理をしなくなったからだ。姉の逆
をやろうと言う、そのような無理な発想がなくなり、素直に母を労わったりできるようになったからだ。
 

 私は一人暮らしを始めてから、ようやく解放されたように思った。そして素直に笑うことも出来るようになった。
 大丈夫。これからは姉とは違い、自分に正直に生きるんだ。嫌な事は嫌だと言うし、楽しければ素直に笑おう。それがい
つか、私の個性になればいい。私は姉の様に、他人を騙しながら、ちやほやされて生きる気はない。私は純粋な心で世界を
生きていきたい。騙されたって、何度だって私は心をよみがえらせて、世界と立ち向かう。姉が美しい白鳥に擬態するのな
ら、私は黒くあっても強くたくましく生きていきたい。醜く這いつくばっても、どんなに汚い事を思おうと、私は純粋に相
手に接し、強く生きていきたい。誰かに焦がれたり、世界を美しいと感じたい。そして願わくばあの盲目の女の子の様に、
世界を楽しめればいいと思う。姉の反対として生きていく私は死んだ。姉ありきで生きていた双子の私はもうこれで殺してし
まおう。私は姉みたいに綺麗な白鳥ではない、まるで正反対の黒い白鳥である私は、この世界にもう一度、強い心を持って羽
ばたこうと思うのだ。
 自分は二人で一人ではない。れっきとした一人の人物なのだ。
 私は姉とは離れ一人の人物として、これから飛び立つ。この汚い湖から。
 その飛び方を、あの盲目の少女が教えてくれたような気がするのだ。
 闇に覆われようとも、笑顔で手を振れる人になる事は出来るのだと。
 綺麗に生きることはできるのだと。
 何故だか今日の私は素直にそう決意することが出来る。
 私は一人の人物として、世の中に飛び立つ。
 堂々と羽を広げて。
 いつか確固たる一人の人物として生まれ変われることを願って。



698 : ◆/xGGSe0F/E [saga sage]:2014/05/31(土) 22:25:40.77 ID:bsdwZQEP0
投下終了しました。

運営者さんにこんなにも長い文章をコピーさせるのは負担をになるし忍びないので、てきすとぽいにアカウント(?)
を作り転載しておこうと思います。それで大丈夫ですよね?

一応、ギリギリ五十枚以内にはなっているはずです。エントリーの方をよろしくお願い致します。

699 :422 [sage]:2014/05/31(土) 23:04:24.82 ID:RRj7Uk270
おお、ありがとうございます!
めちゃくちゃ助かります!

残り一時間……最後の追い込みお待ちしています。
700 : ◆1ImvWBFMVg [sage]:2014/05/31(土) 23:19:37.62 ID:caPlVqfmO
あー。62レスになっちゃいました。もう投下していいですか?
701 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/05/31(土) 23:21:57.39 ID:3LHHB6j6o
62レスwwwwwwww
投下大変だろうけど、がんばれ〜
702 : ◆1ImvWBFMVg :2014/05/31(土) 23:27:14.39 ID:caPlVqfmO
いや本当にね。数え方間違えたんじゃないかって不安になったもの。

滑り込みの人いるかもだし、予約だけしといて最後に投下します
703 :422 [sage]:2014/06/01(日) 00:01:09.66 ID:eo+zeHo20
どうぞー。

私は最後にもうひとつ投下しようとしたけど、最後の最後で間に合わんかった……
704 :アイドル「兄は私のマネージャー」 1/62 ◆1ImvWBFMVg [sage]:2014/06/01(日) 00:07:15.36 ID:w/v72zIfO
巨大な一面のガラスの前、少女が一人立っている。
少女の視線は先ほどからガラスの向こうに注がれ、一ミリも動かない。もうかれこれ
一時間はこうして過ごしている。
「また見てる」
少女の横、少し離れた暗がりの場所から少年の声が起きた。どこか不機嫌そうな響
きが耳に付いた。
でも少女は振り返らない。ガラスの向こうにある巨大な人間の頭部と対面し、その形
をした天辺を見据えたままでいる。巨大な頭部は、ちょうど少女の身長くらいはある
だろうか。
「もう寝てるよ。そんなの強制自動シャットダウンすればいいのに」
巨大な人型が呼吸し、その息づかいで頭部が上下していた。どうやら少年が言うと
おり寝てしまっているようだ。
少女の目からも、巨大な頭の下に敷かれたその腕が見えている。胴体から先は見えな
い。巨大なそれは突っ伏す形で寝ていた。
恐らくだいぶ疲れていたのだろう、着の身着のまま眠りに着いた様子が見えた。だら
しなく開いた口元からは涎が垂れ流しになっている。
「……もう、汚いなぁ」
その様子を眺めながら少年は嫌そうに顔を歪めて吐き捨てた。少女は黙っていた。
「ねえ。ニュー。ニューってば!」
少年は何度も少女の名を呼んだ。少女の意識をガラスの向こう側の人間から引き離
したがっていた。
「ニュー!行こうよ!」
しかし少年の試みは通じないようだった。少女は一切反応を示さなかった。少年は
拗ねたように唸り声を上げた。
「分かったよ。勝手にすればいい。そろそろ朝だからね。また忙しくなるんだから
ね」
少年がその場を去っていく。だが暗がりの向こうに行ってしまっても、少女はガラ
スの前を動こうとはしなかった。
やがて暫くした後、ガラスの向こう側の巨大な頭がゆっくり動いた。
「ニュー……大丈夫……きっと上手く……だよ。心配ない……。うぅ……ん…スー」
705 :アイドル「兄は私のマネージャー」 2/62 ◆1ImvWBFMVg :2014/06/01(日) 00:10:31.37 ID:w/v72zIfO
巨大な頭は、くぐもった不明瞭な声でブツブツ呟くと、また寝息を立て眠り始め
た。呟いた寝言は、今一要領を得ない一方的な内容でおおよそ理解不能だった。
だがその時、少女は始めて表情らしい表情を浮かべていた。それはほんの微かでは
あったが、ひどく暖かく人を安心させる様な、柔らかい微笑みだった。
少女はそのまま動かなかった。やがて時間が過ぎ、時計の針が正午を越えても、少
女たちが居る場所には何の変化も見られなかった。
その場所は、まるで日の光が刺しこまない所にあった。その為、時間の経過は容易
に分かる環境になかった。部屋の角にある、大きなデジタル時計だけがせっせと働い
ていた。
少女が身を固めて動かないその場所は、ひどく奇妙な空間だった。そこは一見、彼
女が住んでいる部屋の様にも見えなくも無かった。だが部屋と言うには一切の生活感
が無く、愛着などといったおよそ自然に染み付く物が感じられそうになかった。
何しろ人が暮らして行くための必要な要素が見当たらなかった。食べ物や飲み物は
おろか水道さえない。
そしてその上、部屋の続きや出入口といった当たり前の要素がスッポリと欠けてい
た。あるのは部屋自体と、その片側を占める巨大ガラスの枠だけだ。あとは枠の外の
巨大な人間の姿。
むしろ巨大なガラスの枠の世界だけが、その強い存在感を主張していた 。
まるで一つの目的の為だけに造られた、仮設の実験施設の様だった。その他の部分
は、舞台のセットと同じくあくまでも張りぼてでしかない。
事実ガラスの枠の範囲内から外れてしまえば、あるのはどこまでも永遠と続く、無地
の剥きだしの廊下だけだった。
そんな奇妙な場所で、少女とその巨大な頭は、いつまでも固まり続けていた。時間
は永遠に流れ続ける様に思えた。だがいつしか変化は訪れた。
「……ううん」
ガラスの向こう側、巨大な頭がゆっくりとその動きを見せた。ひどく重そうな首を
持ち上げ、正面に向け顔を起こしたのだ。
数秒後、巨大な人間の大きな上体が、ガラス一杯に姿を覗かせていた。まぶたが開
かず、ひどく眠そうな表情だった。
「……もう昼か」
706 :アイドル「兄は私のマネージャー」 3/62 ◆1ImvWBFMVg [sage]:2014/06/01(日) 00:11:58.55 ID:w/v72zIfO
若い男だった。もちろん頭だけではなく身体もあった。見た目は、成年は過ぎてい
そうなどこか風采の上がらない青年だ。張りのない顔付きをした巨大なだけの男だっ
た。
男は欠伸混じりに身体を伸ばし、気怠そうにまぶたを擦っている。頭の横には、強い
寝癖が着いている。
男はやがて、まぶたを擦っていた手を下げ、下の場所にある機械にその手を添えた。
すると『カチッ』っという小気味よい音が響いた。
「お兄ちゃん、遅いよもう!」
突然のことだった。今まで固まっていた少女の身体が、途端に動きだし、生き生き
と活動を開始しはじめたのだ。
まるで男が出した小さな機械の音に、生命の息吹を吹き込まれたかの様だった。
「言い訳ばっかして、お兄ちゃんてばもう!」
しかも喋るばかりでなく、活発なさまで手足を使い、精一杯に感情を表現して見せ
ている。少女は不機嫌な様子でさえ何処か可愛らしかった。
一方の巨大な男は、ガラスで区切られた向こう側に構えている。かしましいといっ
た感じの少女の様子を鋭い眼差しで逐一追い掛けていた。
何やら機械を叩いて操作していく男。巨大な黒いマウスパッドが握られている。
その操作がもたらす物なのか、ガラスの下の方にカーソルが表示され、先程から文
字が浮かんでは消える様子が流れていった。
『いつもはそっちが起こしてもらってるんだから。今日ぐらいはいいだろ』
その文に素早く反応するように、少女が返答を重ねた。
「知らないんだからね!せっかく久しぶりに取れたオフなのに……ほら?、仕事の時みたいにテキパキ準備してよ〜」
また下のガラスに文章。『せっかくの休みなんだからさ、ゆっくりしよう』という
内容。きびきびと手を動かし、慣れた手付きでカーソルを動かしクリックした。
すると少女は怒ってしまった。先ほどより一層不機嫌になり、眉間にシワを寄せて
いる。もはやガラスを睨みつけてしまっている。
「……お兄ちゃん?本当に分かってる?……今日は出掛けるって……あれだけしっか
り約束してたでしょう?」
慌てて男がマウスを操作する。準備するという項目を選んで急いでクリックした。
707 :アイドル「兄は私のマネージャー」 4/62 ◆1ImvWBFMVg [sage]:2014/06/01(日) 00:13:20.22 ID:w/v72zIfO
「もう、早くしてよね!」
するとそこでまた、その閉鎖的な場所に劇的な変化が訪れようとしていた。
なんと今まで居た筈の部屋が一瞬にして消え失せ、少女の後ろに、突如として街の広
大な風景が現れていたのだ。
まるでなにかの巨大な大掛かりなマジックでも目にしているかの様だった。
だが変化してしまう前の部屋と同じく、そこは実に奇妙な街並みだった。実際に人
が暮らしているとは思えないほど、整然とした建物と区画整理。どこかモデルルーム
の展示会場を思わせた。
少女の洋服が、先ほどの部屋着からいつのまにかよそ行きの綺麗な装いに変わって
いた。
髪型もしっかりスタイリングされている。とても分厚いサングラスの下はしっかり
メイクもされているようだ。
「今日一日ぐらい、普通の女の子として楽しみたいな……しっかりスケジュール管理してね、お兄ちゃん」
少女の言葉に応えるかの様に、巨大な男が下に出た単語を選らび、『公園』をクリ
ックをする。
「え?公園?」
少女は怒るというよりむしろ驚いていた。そしてまた周りの空間が瞬時にして切り
替わる。
今度は街並みやビル群が消え、その代わりに木や植木、それにベンチや噴水が現れて
いた。それはいかにも公園らしき、憩いの空間をふんだんに配した風景だった。
ただしガラスの枠の中以外は、完全に“無”の空間だ。
「もう……! なんで選りに選って公園なのよ……別に何時でも行ける場所じゃな
い。ほんとお兄ちゃんって気が利かないよね。せめてクレープぐらいは奢ってよね」
選択された公園に不満を持っているのか、少女は散々な言いようだった。だが、男
は慌てる素振りも見せなかった。
手元のマウスを上下に大きく動かし移動させて、手早くアイテムを作動させている。
クレープの映像が光っている。
「はぁ?」
だがそこで少女の手に出現した物はクレープなどと言う洒落た代物ではなかった。
708 :アイドル「兄は私のマネージャー」 5/62 ◆1ImvWBFMVg [sage]:2014/06/01(日) 00:16:35.26 ID:w/v72zIfO
なんと手の中に握られていたのは、安価そうな『缶詰め』一つ。ただそれ一つだけだ
った。
「え、何これ?『缶詰め』?……これでも食えって事?」
少女の顔はもはや期待外れこの上ないと言った表情だった。そのまま呆れ顔でカン
ヅメをかざしている。
「……お兄ちゃん……!いい加減にしてよ!……そろそろ本気で怒るからね……!」
だが少女が癇癪を起こし掛けたその瞬間、ガラスの向こうで男が操作を打ち込んだ。
今度は文章が浮かび上がる。
『いいから開けて。ほら』
少女がカンヅメを開ける。すると大量の猫が出現した。少女の周りに沢山の猫が現
れて群がったのだ。
「わぁ……!近所のノラ猫かな?可愛い……」
様々な柄の猫に取り囲まれる少女。猫がエサの缶詰めへと我先に群がっていく。
「あらら。キミ達ちょっと待って。もう今分けて上げるから」
少女はとても楽しそうに笑った。
それから数秒後、また空間が自動的に入れ替わっていた。少女の周囲に大量の本棚
と貸出カウンターが現れ、見覚えのある施設が出現した。
「ここ図書館?……お兄ちゃん、私本とか読まないんだけど?それ分かってバカにし
てるの?」
少女が怒り出す前に、またマウスを操作して男は場所を移動する。奥にある絵本が
並ぶ一画に変わった。
「児童コーナー?これは『これなら分かるだろ』って言いたいのかな?ほんと……い
い加減にしないと怒るからね……!」
だが怒り始めたその時、少女はなにかを見つけて手を伸ばしていた。それは一冊の
絵本だった。
「え?この本……子供の頃お母さんに読んでもらったやつ……」
少女は懐かしそうに絵本を開き、その場で読み始めていた。少しの間本の世界に浸
って読み耽っている。とても穏やかな顔をしてページをめくる少女。
やがて満足そうに本を閉じると、その余韻を何時迄も楽しんでいるようだった。
「大好きだったなぁ、この本。いつもお母さんに読んでもらったっけ。あれ……お兄
709 :アイドル「兄は私のマネージャー」 6/62 ◆1ImvWBFMVg [sage]:2014/06/01(日) 00:17:47.89 ID:w/v72zIfO
ちゃんにも読んでもらったっけ?」
少女がガラスに向けて微笑む。それは先ほどまであんなに不機嫌だった少女とはと
ても思えない、ごく自然な微笑みだった。
『ははっ。図書館も悪くない。そうだろ?』
「……うー。今日もしかして結構楽しいかも……でも、でも!これだけじゃまだ納得
してないんだからね!次はどこに連れてってくれるの?」
そう言うと少女は期待の眼差しで尋ねてきた。だが男が選んだ場所は、またしても
少女の意図にそぐわない選択、『立ち食いソバ』だった。
「立ち食いソバ?もう!なんでそんなのばかり……あ!」
不意にそこで、少女が週刊誌コーナーを前にして、杭を打ち込まれた様に立ち止ま
ってしまった。その手に芸能スクープをのせた雑誌が現れてくる。
『若手新人アイドル!謎の降板!裏にはヤバめのスキャンダルが!?』
そんな見出しを付けた記事が表紙を飾り、扇情的な文句が所狭しと踊っている。そ
れを見るなり少女は眉を顰めてしまった。
「あーあ、せっかくの気分が。台無し」
そう言うと少女は、今まで見せたことのない暗い表情を浮かべ図書館を去っていっ
た。
暗転。そこでまた、空間に木々や植木のある夕焼けに包まれた公園風景が現れた。
だが実際には時間はまだ一時を回った所だった。その空間では空の色はすっかり茜色
に変わっていた。
少女がベンチに座っている。少女は何も話さず、その代わりに状況を説明する文章
が、ガラスに文字として浮かび上がっている。
【"妹が急に今まで引き受けていた仕事を休みたいと言い出した。その理由を、この
兄でありマネージャーである僕でさえ聞いていない。そんな状況が続いていた。もち
ろん聞いてみた。だが何度聞いても頑なに話そうとしなかった。ただ妹は何かを隠し
ている様だった”】
目線に合わせて、空間全体の位置が少し低い。少女は憂いを帯びた表情で肩を落と
し、押し黙っている。悩み事を抱えて辛そうにしている顔はとても美しかった。
【“一体なんの悩みだろう。妹は新人アイドルとしては珍しいくらいにトントン拍子
でステップアップを重ねていたのだ。今年の春にはテレビドラマの重要な役も来てい
710 :アイドル「兄は私のマネージャー」 7/62 ◆1ImvWBFMVg [sage]:2014/06/01(日) 00:19:01.79 ID:w/v72zIfO
た。自分抜きで事務所に呼び出された日から、妹は突然休みたいと言い出した。事務
所で何か無理な仕事を要求されたのだろうか。何度聞いても教えてくれなかった”】
文章が浮かんでは消えた。その間も少女は相変わらず俯いている。ガラスの向こう
側の男がマウスを素早く動かした。
『なぁ。なんでなんだ。兄貴にくらい教えてくれよ』
その問いに、少女は困った様に口をすぼめて俯いてしまった。
「やりたかった事がよくわかんなくなっちゃったの。もちろんアイドルは楽しいよ。
楽しいけど。……でも違うの。違くて嫌なの」
『だから何が嫌なんだよ?』
問い詰めるが少女は質問には答えず、逆に質問で返していた。
「お兄ちゃんはさ……マネージャーをしていて楽しい?」
『ん?芸能の世界がやりたかった仕事だからな。もちろん楽しいよ』
「違う、そうじゃなくて。私のマネージャーをしていて楽しい?って聞いてるの。妹
のマネージャーとかって実際どうなのかな?って」
『どう思うか。うーん。始めに、お前がアイドルやりたいって言い出した時、うちの
事務所に入ってきた時は大丈夫かな?って思ってたよ。ミーハーな気分でやるんじゃ
ないかってね。でもお前は真剣にやり甲斐ある仕事としてアイドルに向き合ってくれ
た。そんな子と仕事が出来るのは、誇らしいと思ってたよ』
「そっか誇らしいだなんて思ってたんだ。でも本当?いつも心配ばっかしてるのに」
『当たり前だろ。僕は立場上の肩書きより、まずお前の兄貴なんだ』
「……カッコつけ」
『そうだな、あまり直接言うのは照れ臭いけど本気で誇らしい気分だよ。お前がアイ
ドルとして成功してくれたら最高だ。もちろんマネージャーとしてじゃなく兄として
もさ』
「そっか……え?マネージャーじゃなくても?」
その当たり前の言葉の一体どこに引っかかったのか、少女がわざわざ聞き直す。そ
んな様子にまるで気付かないまま答えが返ってくる。
『ああ。だってそうだろ。妹がスーパーアイドルなんて、本当にね。それにだな、売
れっ子スターなんて今の俺の手には余るよ!なんてな、あはは』
そこで今まで噛みしめる様に聞いていた少女の顔が、急に一変して苦しげな表情に
711 :アイドル「兄は私のマネージャー」 8/62 ◆1ImvWBFMVg [sage]:2014/06/01(日) 00:21:29.72 ID:w/v72zIfO
なってしまった。
「……もういい。じゃあ一旦アイドル辞めるから」
『いや、……待て待て!お前何言ってるんだ、、。今日休んだら次から頑張るって。
昨日だってあれだけ言ってただろ』
「だって頑張れないよ。お兄ちゃんが頑張ってないのに……頑張れだなんて私に言わ
ないで」
そう言うと少女はベンチを立ちその場を離れようとする。
『おい待てって。……お前やっぱり何かあったんじゃないのか?』
「え?……何が?」
『あの日事務所でなに言われたんだよ?』
「何でもない!お兄ちゃんとは関係ないの!もうほっといて!」
そう言うと少女は椅子から離れて行ってしまった。ガラスから見切れるところまで
来て見切れていった。
【“行ってしまった。しかし俺とは関係ないって。一応マネージャーだろうが。やはり
兄貴である俺と一緒に仕事するのが嫌になってしまったのだろうか?”】
何故そう採れるのか首を傾げたくなるほど、好き合ってる会話が展開されていたは
ずだった。
だいたい反抗期近い女の子が、嫌いな人間と一緒に休日を過ごしたりするだろうか。
むしろ少女の言動はもっと一緒に居たがっている様に見えた。恐らく男が間違ったこ
とを言った所為で、少女の逆鱗に触れたのだ。
【“あいつのマネージャーを外れる事になるのだろうか。確かに最近仕事の規模が大き
くなり過ぎて、新人である自分では場違いな場面になっていたが。でもあいつが望む
なら仕方がない”】
どう考えても理由はその仕事の規模の事だろう。恐らく兄が担当を外され掛かって
いて少女がボイコットしているのだ。何とも歯痒い会話が繰り広げられていた。行き
違いする二人。ずいぶん回りくどいやり方だった。
「ミューめ……大したツンデレぶりだ……」
ガラスの向こう側の男か何かを楽しそうに呟いている。カチカチ叩くスピードが増
している様だった。
その時だった。今まで滞りなく機能していたガラスの透明性が突如消え去り、二人
712 :アイドル「兄は私のマネージャー」 9/62 ◆1ImvWBFMVg [sage]:2014/06/01(日) 00:22:52.97 ID:w/v72zIfO
を隔てていたガラス面が一瞬にしてブラックアウトした。
それは本当に突然の事だった。もちろんガラスの向こう側である男の様子は一切見
えなくなってしまった。
「は?フザケんな!また不具合かよ!クソ!」
男の立てる物音で、その苛立ちがガラスの向こうからも伝わってきた。ずいぶん慌て
ているようだった。やがてガラス一面に事務的な処理画面が浮かび上がった。
【現在サーバーに原因不明のシステムエラーが生じています。復旧に当たっておりま
すので、今しばらくお待ちください】
「なにやってんだクソ運営がぁ!あぁ、ミューが……!やめろやめろやめろやめ
ろ!」
カチャカチャとキーボードやマウスを操作する音が、辺りに虚しく響いている。
一方の少女はガラスが見切れる横の通路、舞台で言う袖の奥で、ひっそり立って男の
声を黙って聞いている。
「ダメだ。いやダメだって。あぁミューが居なくなる。あんなにイジましいミュー
が……大丈夫俺が何とかする」
少女は慌てふためく男の様子に耳を傾け、飽きもせず熱心に聴いている。そんな少
女の顔つきは、始めに巨大な男の寝顔を見ていた時と同じような、食い入る様な顔つ
きと重なった。
その時ふいに突然、少女の後ろで騒がしい嬌声とは別の、突き放す様な声がした。
「なんだいあのギャーギャー言う喚き声は。うるさくて堪らない」
少女が声のする方を振り向く。すると、朝方に会いにきていた少年が彼女の後ろに立
っていた。
「情けない声だしてまぁ。ほんと[ピーーー]ばいいのに」
「ルクル。そんな風に言わないで」
そこで少女が初めて少年に返事らしい返事を返した。少年は少女の厳しい口調に、
煩わしそうに肩をすぼめる。
「はいはい。ミューはまたいい子ぶって。本当は自分だって気持ち悪いくせに」
「思ってない。ねぇ、ルクル。お願いだから、そんな風に悪く言わないで。悲しい気
持ちになるから」
少女はそう言うと、また通路からガラスの方へ向き直った。それを見て少年は面白く
713 :アイドル「兄は私のマネージャー」 10/62 ◆1ImvWBFMVg [sage]:2014/06/01(日) 00:24:57.86 ID:w/v72zIfO
なさそうに頭を掻いている。
「うわうわ。ミューってあいつが好きなんだ。あんな頭悪そうで小汚い奴。不潔だ
よ。気持ち悪い」
「ルクルの方が変に悪く取り過ぎなんだよ。いい人だから」
「あれがかい?目がどうかしちゃってんじゃないの?」
少年がガラスの方を指差す。その姿こそ見えないが、カチャカチャと出すキーボード
の操作音で男の慌てぶりが聞こえてくる。
ガラスはいつの間にか白く染めた処理画面が別の映像に切り替わっていた。そこに開
かれていたのは、クレームを受付ける為のメールフォームだった。
よくあるタイプの、定型文を弾き返すだけの事務的なメールシステム。男はすぐに望
めそうにない効力に見限っていた。
その次は返信つきのメール。こちらは、男が送ったメールに対する、丁寧な返事の文
章が書かれていた。
【メールありがとうございます。不具合の為、キャラクターのデータだけはせめて復
旧したいと言った内容で宜しかったでしょうか。この度は、ご指導ありがとうござい
ます。スタッフ一同最善を尽くしております。
ですが損失してしまった細かいデータは復元することが非常に困難な作業でありま
す。ご期待に添えない場合も出てくるかもしれません。誠に申し訳ございません。
尽きましてはお詫びに一万ゲームポイントや、貴重な特別アイテムを贈らせて頂きま
す】
「アイテムなんかいらないよマジいらない。データがいいんだってばもう何も分かっ
てないなこいつら」
男はなんども恨み言と懇願を連なり重ねたメールを返信フォームに打ち込んだ。だ
が一向に埒が明かなかった。
どうにもならないと悟った男は正攻法であるメールを諦め、データの盗用やらなにや
らの、怪しい情報をネットで検索し始めた。
だが素人目にはどう見ても無理そうなやり方だった。
「なんだいありゃ。自分で何をしてんのかちゃんと分かってんのかね。いくら何でも
錯乱し過ぎだろハハ」
少年はすっかり冷めた目線でそんな男の慌てふためく行動を揶揄して鼻で笑った。
714 :アイドル「兄は私のマネージャー」 11/62 ◆1ImvWBFMVg [sage]:2014/06/01(日) 00:29:38.72 ID:w/v72zIfO
だが少女の方はそうは思っていなかった。
「ほら。やっぱりいい人だよ。こんなに必死になってくれている。優しくなければ出
来っこないよ」
「この頑迷さが?これが優しさから来てると思ってるの?頼むからこれが愛だなんて
言わないでくれよ。もっと下劣な感情さ」
「またそんな言い方して」
少女が責めるような目付きで少年を見つめる。少年は少し困った様に顔を背けた。
「いや本当さ。ミューが見えてないだけなんだよ」
「そうじゃない!だってさ!ルクルだって自分のプレイヤーのことは悪く思ってないはずじゃない。そうでしょう?」
「はいはい。あいつらを悪く思ってないか?そんなの悪くも糞もないよ。あいつらは
あいつらだし、あくまでも《向こう側》さ」
少年は肩をすぼめて手を広げている。そのお手上げといった感じのポーズは少年が
よくやる仕草の一つであり、少女はそれがあまり好きではなかった。
「それにプレイヤーが見てるのは設定の中で振る舞う僕だ。イケメンでクラスの人気
者で影があるキャラ。そんなのは僕じゃない」
「ルクルって捻くれてる。なんか理屈っぽい言い方ばっか」
「それはどうも。と言うかミューが単純過ぎるんだよ。というか単細胞というか1bit脳
というか。そこら辺、向こうのデカブツと似てるんじゃない?」
少年が親指を立てガラスを指差した。そこには最後の手段とばかりに、眉唾物の都
市伝説じみた、おまじないや魔法陣と言った怪しげなサイトが検索ツールで引き出さ
れ、片っ端から開かれていった。
「ダメだこりゃ。魔法使いになり始めちゃったよ。あはは面白え」
すると突然そこで、ミューたちガラスの内側の世界に異変が巻き起こった。
後ろの背景が矢継ぎ早に、公園から少女の部屋、また分からない場所や、スタジオセ
ットになった。
まるでカラクリ屋敷のようにくるくると背景が変わった。
「んん?……おいおい。なんだ。単なるメンテナンスにしては大掛かり過ぎやしない
か?何かあったのかな?なぁミュー……おいミュー?ミュー!?」
少年が話し掛けた時には、もう少女は床にうずくまり体を小刻みに震わせていた。
715 :アイドル「兄は私のマネージャー」 12/62 ◆1ImvWBFMVg [sage]:2014/06/01(日) 00:31:03.49 ID:w/v72zIfO
「ミュー!大丈夫か!?」
少女は今まで背景が瞬時にどれだけ変化しても、慌てた事は無かった。それがこの世
界の理だったからだ。
だが、今起きてる異変はどうやら外ではなく彼女の身体自身に起きている異変の様
だった。
「熱い……!」
少女は自分の身体が信じられないほど熱かった。熱を持った熱い空気が身体の中に
入り込み、抑えが効かないほど膨張していく様だった。
彼女には何が起きているのかさっぱり分からなかった。何しろ少女自身の存在はこ
の世界で唯一絶対不変の物だったはずなのに。
「ミュ、ミュー……!?お前か、身体が……!?」
「身体?……なに身体って?」
少年が声を震わせる。この熱以外にも何か異変が起きていると言うのだろうか。少
女はますます募る不安と恐怖に苛まれていた。
「はぁ?そんな馬鹿な」
いつも冷静沈着な少年が珍しくパニック寸前になっている。声が遠くに聞こえる。
「な……に?私の……身体……どうなってるの……?あぁ!!熱い…….」
「大きくなってる……」
先ほどから少女の身体がどんどん膨張していた。今はもう少年の倍近くはあった。
「熱い……!ルクル助けて……!」
「どうしよう!どうすれば?ミュー!しっかりして!」
やがて大きさは天井を越え、空間一杯に膝を抱えた大きな少女が今にも溢れそうに
なっていた。
「ダメだミュー!このまま大きくなって行ったんじゃ部屋に圧迫されて……!止めな
いと!止めるんだ!」
「だって……そんなの自分じゃあ……熱い……!」
「ダメだって!どうすれば!」
いよいよ少女の身体が広がり切り、空間の壁に圧迫され始めた。
苦しそうに顔を歪める少女。
「痛っ……ルクル……ごめんね。今まで心配ばかり掛けて……」
716 :アイドル「兄は私のマネージャー」 13/62 ◆1ImvWBFMVg [sage]:2014/06/01(日) 00:32:37.22 ID:w/v72zIfO
限界が来ていた。少女の身体が圧に耐えられなくなり破裂しそうになった。そこで
空間の壁がみしみしと音を立てた。
「バカ!諦めんな!絶対に助けるから!聞こえるかミュー!?」
身体より先にミューを覆っていた壁が崩れていた。大きな音を立てて世界が壊れてい
く。
少女は強いショックにいつしか気を失っていた。


"""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""


少女が意識を取り戻す。すると、いつの間にか彼女は椅子に腰掛けて座っていた。
だがその椅子は酷く固い座り心地で、特に背もたれの部分は冷たいガラスで出来てい
た。その上、足を置く場所は変に柔らかく生暖かいという、ひどく変わった素材だっ
た。
一体何処にいるのだろうと少女が辺りを見回したその時、彼女は自分が俄かには信じ
られない光景を目の当りにしている事に気が付いた。
「あ……!」
「ん?何だ?……画面が見えない……。というか身体が重たいな……ん?」
少女の目の前にあの男がいた。ガラスを挟まない直接的な近距離、少女の目と鼻の
先にあの男が座っていたのだ。男はパソコンデスクと自分の身体の間に少女を挟み、
対面する形で回転椅子の上に収まっていた。
少女はひどく驚いていたがそれ以上に、湧き上がる喜びの方がより打ち勝っていた。
「あの……こんにちわ!」
男がびくりと体を震わせた。もちろんよく聞かなくても、少女の声は男が慣れ親し
んだ声のはずだった。だがパソコンのスピーカーから出る音と実際の肉声はまるで印
象そのもの自体が違っていた。
誰かが部屋にいる。男はゆっくりとした動作で椅子を引き擦り後ずさると、声の正体
を己の視界に収めようと努めた。身構えつつおもむろにその全体像を見上げる。する
と見知らぬ少女が机の上に座り、満面の笑みで男の方を伺っていた。
717 :アイドル「兄は私のマネージャー」 14/62 ◆1ImvWBFMVg [sage]:2014/06/01(日) 00:33:40.73 ID:w/v72zIfO
「えっと……大丈夫ですか?」
男はしばらくの間固まっていた。反応する事すら出来ないのか、ただ少女を夢見心
地でぼんやりと眺めていた。それからまた男は、我に帰った様にびくりと体を震わせ
た。
「はぁ!?え!?だ、誰!?」
なんと答えるべきなのか、机の上では上手くまとまらない思考を整理しながら少女
は男を見ていた。男の身長はもはやかつての様な巨大な姿ではなく、ほぼ少女と同じ
身の丈になっていた。それが彼女には新鮮な驚きとより深い親近感を与えていた。
「あ……あの。だからえっと、私です」
「いやだから!誰!?」
「あ。あのミュー。ミューって呼ばれていたヒロインキャラです」
少女がそう言うと男は何度も首を振り捻って、少女の言葉を飲み込もうと確認して
いる。
「ミュー?」
「はい。私です」
「いや、馬鹿な。ミューって言ったって。だって……はぁああ!?今パソコンから?
まさか……嘘だろ!?」
男の慌てぶりを見るのは初めてではなかった。いつも見上げていた巨大な相手なの
だ。やっと会えた、少女はそう思った。
「えっと、こちら側では初めまして。ミューです」
少女は勢いよく頭を下げ、深くお辞儀をした。長い髪がまとまり無く下に落ちてひ
ろがった。
「うわわ!」
その瞬間、男はまるで脱兎の如く飛び跳ねるように椅子を引き、少女から素早い動
作で離れた。それからただおずおずと見ているだけの少女を必死で制止した。
「いや待った!まずは落ち着いて話を整理しよう!」
「あ、はい」
「じゃあまず……えー、……貴方はひとまずそこから降りてくれませんか?」
「え?……なんで?ここ意外と座り心地いいですよ?」
少女は机の上で不思議そうに首を傾げている。だが男は慌てて訂正する。
718 :アイドル「兄は私のマネージャー」 15/62 ◆1ImvWBFMVg [sage]:2014/06/01(日) 00:38:00.27 ID:w/v72zIfO
「いや!いやいや!あのですね……こう、机の上に座られてるとこっちが落ち着かな
いので。いま場所作るのでこっちに座ってもらえますか?」
男の方がより驚いてるようだった。なにせガラスの向こう側を現実として認識して
いた少女と違い、男はゲームのキャラが突然現実にやって来ていたのだ。
「なるほど。それもそうですね」
少女は机を降りると、男が用意した部屋の真ん中にあるテーブルまで移動する。
そこで少女は部屋をぐるりと見回してみた。実際目にする男の部屋は、彼女の部屋
とだいぶ造りが違っていた。
置いてある品物もそうだが、なによりもその現実感がまるで違っていた。
「わぁ……本物の窓だ」
男の部屋には片側に窓があった。もちろん正真正銘の窓だ。少女の部屋にも窓があ
るにはあったが、それはあくまでも模様と同じ役割りのただの飾りでしか無かった。
だが現実世界の窓は、あまりに違っていた。窓の外には別の、ちょうどガラスの向こ
う側と同じ様な、完全に外の世界が存在していたのだ。
そして、窓の外には空が広がっていた。どこまでも続く青い空が、少女の目の前に
広がっていたのだ。
初めて見た空の高さは果てが無く、それを見ただけで少女の胸の高鳴りはもはや押さ
えることが出来なくなる程強くなってしまっていた。
「あの……座ってもらっていいですか?」
「あ、ごめんなさい。実際の空を見るのが初めてで」
男がまじまじと一挙手一投足を見守る中、少女はソファ代わりの抱き枕にぺたんと
座った。男も座る。二人は改めて対面した。
「どうも初めまして。ミューです」
「あ、はい。初めましてツグムです」
「知ってます。ツグムさん、ですよね。いつもお母さんにその名前で呼ばれているの
を、ガラスの向こうからずっと見ていました」
今さらながらにして、ようやく少女にも『自分がこの現実の世界にやってきた』と
いう実感が湧いてきた。そうだ、ここがそうなのだ。もちろん話には聞いていた。ガ
ラスの向こう側に外の世界があるという事は実しやかな夢物語として伝えられていた。
719 :アイドル「兄は私のマネージャー」 16/62 ◆1ImvWBFMVg [sage]:2014/06/01(日) 00:39:05.29 ID:w/v72zIfO
だが実際に来てみた現実の世界は、彼女の予想以上に驚きの溢れた場所だった。目に付く全ての物に、確かな手触りと重みがあった。不確かな物は何も無かった。あやふやなデティールは一つもない。少女はもはやすっかり現実の世界に魅せられていた。
何よりも、少女は現実の世界で男とこうして会って話してみたいと常々思っていたのだ。少女が現実の存在として会いに行けば、男はどんなにか喜ぶかしれない。少女の心は今や高翌揚する気持ちではち切れそうになっていた。
「いやー、しかし。ゲームの中からね。参ったな本当に」
だが肝心の男はそうでもない様子だった。もちろん男だってゲームの中から女の子が出てくるだなどという話はまさに夢のような状況だった。
だが想像していた夢物語と現実は違っていた。実際にいま男の目の前にいたのは、ゲームの中の物言わぬ絵だけの存在などではなく、男が最も苦手とするタイプの『普通の女の子』なのである。
自分と同い年くらいの女子であり、しかも若さと自信に満ち溢れ、クラスのマドンナ
と言った雰囲気を持つ美少女である。男の脳裏の中には今にも数々のトラウマが蘇っ
てくるようだった。
「はい。アニマネの世界でお世話になりました……と言ってもツグムさんにとっては
寝耳に水のお話ですかね?」
ただ気安く手軽に現実逃避の出来る、美少女ゲームのアニマネ。その続きがしたい
というささやかな男の願望。それだけの願いだったのに。どうしてこんな状況になっ
たのだろう、男は困り果てているようだった。
「……なんで出てきたの?」
男がぼそりと呟いた。その予想外の男の残念そうな口調に、少女は一気に不安で一
杯になってしまっていた。
「え?……私こちらの世界に来てはいけませんでしたか?……すいません」
少女が泣きそうな顔で俯いた。男は慌てて口にした言葉を引っ込めると、笑顔で体
良く取り繕っていた。
「あ、いやそうじゃ無くて。どういう経緯でこっちの現実世界にやって来たのかなっ
て」
「あ、……良かった。てっきり会いたくなかったのかと思ってしまって。そうですね
経緯は、どういう風にかというと、あの、それはえっと。あれ?」
720 :アイドル「兄は私のマネージャー」 17/62 ◆1ImvWBFMVg [sage]:2014/06/01(日) 00:41:18.05 ID:w/v72zIfO
少女はなんとか自分の言葉なりに説明しようと試みたが、よくよく考えてみると、
自分でもどういう現状の立場に置かれているのか、さっぱり分かっていなかった。
「分かりません」
「え?」
そこで張り詰めていた気持ちが弛み、少女は気が抜けてしまった。ふいに少女の腹
の虫がぐうと大きく鳴っていた。それは驚くほど大きな音だった。だが少女は照れも
せずお腹を抱えて眉を顰めている。
「あの、ツグムさん。なんか私お腹が変です。スースーとお腹の奥が嫌な感じがしていて」
「へ?」
「だからお腹が。とても辛いんです。これなんでしょう?まさかあのよく言う病気と
かいう物ですか?」
鳴り続ける腹を不思議そうに抱え、しきりに首を捻る少女。 男は最初少女がふざけ
ているのかと思った。
「いや。いやいや今グーって鳴ってるじゃん。単にお腹すいただけでしょ?」
砕けた調子でそう言ってみた。でも言っては見た物の少女の表情の上には何処にだってふざけているような調子等は一ミリも感じられなかった。
「あ、なるほど。これがお腹が空くって感覚なんですね。実際スゴく辛いんだ……。なんか感動しました」
少女が腑に落ちたように笑顔で頷いた。どうやら少女には空腹と言う概念自体が掛
けていたようだった。
「なんて事だ……。まさかそんな馬鹿な」
男は愕然としていた。ようやく深刻な状況が鈍い男の頭にも浸透し始めていた。今
日この日のこの瞬間、ミューというゲームの中にいた少女が、現実の生身の身体を持
って、一人の人間としてこの世界に産まれ落ちたのだ。
「ちょっと待ってて。今食べ物用意するから」
数分後、男が台所にある冷蔵庫から持ってきた適当な食料を、少女は少しずつ口に
運んでいた。
それは少女にとって驚きの体験だった。食べ物を噛み砕き、味わい、飲み込む。すべ
てが心地よかった。
721 :アイドル「兄は私のマネージャー」 18/62 ◆1ImvWBFMVg [sage]:2014/06/01(日) 00:42:54.17 ID:w/v72zIfO
そしてそれによって舌に伝わる絵も言われぬ感覚。もちろん言葉や表現を越えてい
た。これが『美味い』という感覚なのだ。
幸せだった。ただただ満たされていた。世の中にはこんなに純粋な幸せなだけを傍
受出来る体験があるのだ。少女はその時初めて知った。
「旨そうに食べてるところを申し訳ない。ちょっと聞いてもいいかなミューさん」
男が頬杖を突いて、少女を見ている。
「結局『気づいたらこっちの世界に来ていた』と。それでいいかな」
「げもごも」
「あー、物を口にしながら喋るのは行儀がだな……まぁいいか。ふむ、正直何にも分
からない。参ったな」
「むぐ……あの。多分ですけど、ツグムさんが開いたサイトに。多少は関係があるん
じゃないかと思うんですけど」
「サイト?俺が?え、そんなのいつ開いたっけ」
男は先ほどの慌てぶりなどすっかり忘れている様だった。
「色んな形の魔法陣や怪しい呪文の載ったホームページです。ほら、私のデータを復
旧しようとして」
「あぁ!あれか!」
男が思い出したようにパソコンに向かう。急いでページバックさせていくと幾つか
の魔法陣が出てきた。
「なんだこれ……」
男が放心している。ホームページ上の魔法陣から浮かび上がるように光がでてい
た。モニターに映った魔法陣は、そこだけまるで生き物のように、液晶を越えて光り
を放っていた。
「おいおいおい……嘘だろ」
流石に気味が悪くなったのか、男が必死で画面上のバックボタンをクリックしてい
る。だが何故かそのホームページのウィンドウを閉じる事が出来なくなっていた。
「これ……か?これの力の……所為なのか?」
「わたしにはちょっと……。でもそんなに珍しいんですか?ゲームの世界では割とよ
く見かける光景ですが」
少女は首を傾げている。その口からはぼろぼろと食べカスが落ちていた。まるで食
722 :アイドル「兄は私のマネージャー」 19/62 ◆1ImvWBFMVg [sage]:2014/06/01(日) 00:44:20.53 ID:w/v72zIfO
べ方を知らない赤子の様だった。
「いやいや……現実ではよく起こらないんだよ……」
「じゃあ、今は大変な状況なのでしょうか」
「まぁそうだね……。そして偶然になにかとなにかを繋ぐ扉が開いた。それで、きみ
がこっちの世界に来てしまった。つまりそういう事かもしれない」
「それは大変ですね」
少女は相変わらずその口に少しずつ食べ物を運んでいる。少女はすっかり食べる事
に嵌ってしまった様だった。
男も一旦は頷いて腕を組んだ。そうして一人感慨に耽る。本当に大変だ。つくづくと
んでもない事が自分の身に起きた物だ。そんな風に考えていた。
そこでしばらく部屋に沈黙が流れた。優に五分は経ったろうか。
「え?それで?」
「はい?それでとは?まだなにか問題が?」
「いや問題も何もさ。だから状況はそれでいいとして。今からはさ。これから一体ど
うするの?」
「あ。はい。……どうするんでしょう。わたしはまるで知りませんし」
「いやいやいや……ちょっと待ってって!帰れるんだよね!ゲームの世界!」
「あー……やはりわたし帰った方がいいでしょうか?」
少女がひどく寂しそうに聞く。綺麗な女の子にそんな風に聞かれて平然として居ら
れるほど、男は神経が図太く出来ていなかった。
「いやだから違くてさ。緊急事態が起きた時にね。今すぐ帰れとかの話じゃなくても
ね」
「緊急時?」
「だから緊急時だよ。そういう時に自由に行き来出来るんだよね?って聞いてるの」
「そんな簡単に通れる物なんですか?ツムグさんの言葉じゃないですけど、ゲームじ
ゃないんですから。それに緊急時というのは?」
「だからさ!例えば誰かが君の姿をさ」
その時だった。階下の玄関の方からガサゴソという物音が聞こえてきた。鍵を開けドアを開く音が続いた。見る見るうちに男の顔が真っ青に青ざめていった。
「まずい。母親だ。最悪だ。母親が帰ってきた」
723 :アイドル「兄は私のマネージャー」 20/62 ◆1ImvWBFMVg [sage]:2014/06/01(日) 00:45:59.00 ID:w/v72zIfO
少女は特に慌てていなかったが、男の狼狽ぶりは見て居られないほど酷い物だっ
た。部屋をばたばたと駆け回り、隠す場所を探している。だが部屋には少女一人を収
納出来るスペースなど何処にも無かった。
男が焦っていると階段を駆け上がる音がした。
「ツグムー。あんた起きてるのー。何バタバタやってんのよもう。また変なゲームで
も振り回してんじゃないの」
そこで母親は部屋の扉を開けた。ちょうど男が少女の肩を掴み、掴んだ物のどうし
ようもなく立ちすくんでいる、そんな場面だった。
「母さん!驚いた?いや、ホント今すぐ説明するよ!」
滅多に使われない男の頭が、この瞬間だけはフルスピードで回っていた。
なにしろ男は引きこもりだった。もちろん友達など一人もいない。ましてや女の子な
ど以ての外の存在だ。
この子はネットで知り合った子である。それぐらいしか説明が思いつかなかった。だ
が肝心なその後の事はどうすればいいのか。少女を泊まらせると言うのか。この部屋
に。母親が何と言うだろう。そんなことがぐるぐる男の頭に思い浮かんだ。
だがその時だった。なんと男の母親は特に驚いた様子もなく、見ただけですべてを
納得したように軽く頷いてこう答えてきた。
「ああ、はいはい。彼女がミューちゃんね。ホントに可愛いわね。アイドルみたいじ
ゃない。よろしくねー!」
男はもはや絶句するしか術がなかった。なぜ母親がこの今日出てきたばかりの少女
の存在を知っているのか。
「こんにちわー。ミューです。会いたかったです、お母さん」
普通に挨拶を返す少女。それは絶対にありえようのない光景だった。
「私もよー。ホント会いたかったわ」
まさか男がやっていたゲームのキャラを覚えていたのだろうか。だが答えは全く違
っていた。
「しかし勝手よねー、お父さんも。いくら親友の娘さんとは言え、見知らぬ国の若い
娘さんをさ。いきなり養子縁組を組むだなんて。しかも私になんの相談もなしよ。ほ
んと信じられない」
「養子……縁組?」
724 :アイドル「兄は私のマネージャー」 21/62 ◆1ImvWBFMVg [sage]:2014/06/01(日) 00:51:39.91 ID:w/v72zIfO
「あら、アンタまだミューちゃん本人から聞いてないの?今日から彼女この家に住む
のよ」
「はぁ?」
話がまるで見えてこなかった。もちろん男の方はそんな話を少しだって聞いていな
い。いや、そもそもゲームから出てきたのではなかったのか。
「別にいいでしょ。アンタどうせ引きこもりなんだし。ウチにはでっかいお荷物が一
人居るんだから。これ以上増えた所で生活なんか変わんないわよ」
もはや全ての話は男の預かり知らない所で既に決定済みの事項として処理されてる
様だった。あまりに事務的で飛躍的な展開に男は空恐ろしくなっていた。
「あの。私ご迷惑掛けるような事は……。ホントに」
「聞いた!今の台詞!なんて遠慮深い!いじましい子じゃないの!いいわよミューち
ゃん!いくらでも居てちょうだい!」
あまりに状況をすんなり受け入れる母親。男の母親の性格が普通より壊れていたの
でなければ、半分はまたそれさえも魔法陣の力による物かもしれなかった。
「よーし。部屋を用意しなきゃね!使ってない部屋があったわね、お父さんの部屋!全部押入れにぶっ込んでくるわね」
男は母親に全てを説明しようかと思った。だが母親はその前に忙しそうに階下へ降
りて行ってしまった。
「素敵なお母さんですね、ツムグさん」
「母親の話はもういいんだよ。それよりも、なぁ。養子縁組ってのは……」
「はい……」
「一体どういう事なんだよ。そんなバカな話が……あってたまるもんか」
「……ごめんなさい。ツグムさんの世界ごと、私の世界に巻き込んでしまったという
事かもしれません」
少女は深く詫びている様だった。そして男の方もまた今まで以上に、ひどく神妙な
表情を見せていた。その顔色は極端に悪く、まるで今にも倒れてしまいそうな程生気
が無かった。
「なんだよこの一連の流れは。親の親友の娘に、養子縁組。挙句は同居だと?」
男は泣き出しそうな声で自分の気持ちを吐き出していた。声を出さないと気持ちが
押し潰されてしまいそうだった。
725 :アイドル「兄は私のマネージャー」 22/62 ◆1ImvWBFMVg [sage]:2014/06/01(日) 00:52:40.51 ID:w/v72zIfO
「これじゃあ『あにマネ』のシナリオそのまんまじゃないか……!一体なにが起きて
るんだよ……?」
男がやっていたゲームの設定が確かにそれその物だった。マネージャーとして働い
ているプレイヤーの実家に、親を無くしたハーフの女の子が養子縁組でやって来るの
だ。
現実感が希薄そうな少女ですら、さすがにこの状況に返す言葉を失っていた。
「待った。これ以上は何だ。ちょっと外に出よう」
男はそう言うと部屋を飛び出し、階段を降りて出て行ってしまった。少女も大人し
く付いて行く事にした。階段を降り、玄関へ向かうと、男が少女の突っかけを用意し
て待ってくれていた。
「早く」
男は有無を言わさない様に、玄関を手で示した。 少女は家の玄関を恐る恐る開けると、ようやく外へ一歩足を踏み出した。
「うわぁ……空が……!本当に広くて……これ何処まで続いてるんですか?」
玄関前の道端で、少女が空を仰いで驚きの声を上げている。だが男は少女の質問に
答えず、よたよたと下半身を動かし、まだ玄関先の戸枠をまたいでいる所だった。
「……ふぅ。意外と平気なもんだな。まぁこんなもんか
「何してるんですか?ケンケンパとか?足場悪そうですよ」
「いや、そうじゃなくてだな」
すると男の母親が、台所の方から出てきた。二人の姿を見るなり、彼女は手に持っ
た生ごみの袋を落としてしまった。
「ツムグ!?あんた、ええ!?何!?え?どうしたの?」
目を離せないと言った表情で男を見つめている。男は気まずそうに手を上げ、視線
を背けている。
「いや、このミューって子がさ。住んでる街を見て回りたいって言うからさ。だから
まぁ、ちょっと散歩」
「まさか……外へ出掛けるつもりなの!?大丈夫?」
「大丈夫、すぐ帰ってくるし」
男が平然とした態度で言うと、母親は気が抜けたように生返事をした。
「あ。え。そう、じゃあ、お願いね。なるべく早く帰ってくるのよ」
726 :アイドル「兄は私のマネージャー」 23/62 ◆1ImvWBFMVg [sage]:2014/06/01(日) 00:54:32.78 ID:w/v72zIfO
二人が玄関を出て道を歩き出そうとした時、母親が靴も履かずに玄関先へ出て来て
こう叫んだ。
「……あの!ミューちゃん!ツムグの事よろしくね!」
そう言うと彼女は少女の方へ頭を下げた。普通逆ではないのだろうか、少女は不思
議そうに首を傾げていた。一方の男は少しばつが悪そうに、後ろを振り向かずにてく
てくと歩いて遠くへ行ってしまった。
しばらくして家から少し離れた時。早歩きを緩めながら、男がようやく喋り出した。
「もういいかな。さぁ一体どう言う状況になっているのか説明してくれ」
少女は、急に男が外へ行こうと言い出した理由がようやく分かった。
「なるほど、お母さんのこと気にされていたんですか」
「まぁな……。やっぱ深刻な事態についてはあまり知られたくないからさ。あんなで
も余計な心配は掛けたくないし」
少女は目に飛び込んでくる、見たことのない街の風景や様々な建物や人々に心を奪
われながら、男の質問に頭を悩ませていた。するとそこで電話のベルが鳴った。
「ん?ちょっと待った。珍しいな携帯が……母さんからかな」
男がズボンから古い型の携帯を取り出す。だが掛かって来た相手は母親などではな
かった。
「え?……はい、もしもし。どうもお久しぶりです叔父さん。いやまだ仕事は。は
い、探し中です」
男の親戚の叔父が男の現状を心配して掛けて来てくれたようだった。
「はい。はいはい。はい?はぁ!?知り合いの芸能事務所?いやなんで叔父さんが事
務所なんか……いや、なんとか外には出られるんですけど……試しにですか。えっ……と。ちょっと一旦考えさせて貰っていいですか?失礼します」
男は電話越しに頭を下げながら、やりにくそうに話を切り上げ電話を切っていた。
「おいおい……今度はマネージャーの仕事かよ」
「マネージャー?一体なんのお電話だったんですか?」
少女は電話での会話の端々を聞いて、すでに不安を覚え始めてはいたが聞いて見
た。もちろん嫌な予感は的中していた。
「親戚の叔父さんだよ。久しぶりに連絡が来ただなんて思ってたら、いきなり仕事を
727 :アイドル「兄は私のマネージャー」 24/62 ◆1ImvWBFMVg [sage]:2014/06/01(日) 00:55:49.26 ID:w/v72zIfO
紹介してやるだってさ」
「アイドルのマネージャー……」
「ああ、その通り。なんでも『知人が新しく立ち上げた芸能事務所でマネージャーを
探している。アイドルとか好きなんだろ?』だって」
まるでゲームのシナリオが現実を追いかけて来ているかの様だった。
「何がどうなってるんだ……。俺だって普段だったら何も思わないけどさ……。でも
こんなに都合よく、矢継ぎ早に来られたら……」
状況が整い過ぎている。いやむしろこの世界がなんらかの大きな作用でゲームの状
況に組換えられていっているかの様だった。
「なぁ、俺がしたかったのは自分がやっていたゲームの続きだけなんだよ。それなの
に画面から君が出て来て。ゲームの世界みたいに養子縁組されるって言うし……これ
がゲームの続きだって言うのか?」
少女には答える事が出来なかった。
「現実世界でゲームの続きをしろって事なのか?この街で?……ダメだ、気分が悪く
なってきた」
男はそう言うと、身体を少しふらつかせていた。少女も手を貸すが、男の身体を支
えながら歩ける程には、少女の身体は鍛え抜かれてはいなかった。
「大丈夫ですか?あ、あそこの広い場所によさそうな椅子がありますよ」
二人が寄り添いながら公園までやって来た。その公園は噴水こそはないが、立派な木立や遊具の揃った、整理された場所だった。
「まさか。ここ公園ですか?」
男が力無く頷く。そこで少女は何度目かの感嘆の声を上げていた。
「これが。公園か。へぇー。やっぱ広いですね。住宅地と違って視界を遮るものがな
いもん」
男は公園に驚いている少女を横目に、ベンチに腰かけ息をついた。どうやら心労の
他に、長い引きこもり生活で体力も無くなっていた様だった。少女が続いてその隣にちょこんと座る。
「なるほど、ここは落ち着きますね。ゲームの中で公園の場面が描かれる理由がよく
分かります」
男は隣でぐったりしている。まだ回復出来ない様だった。少女は周りをしきりに見
728 :アイドル「兄は私のマネージャー」 25/62 ◆1ImvWBFMVg [sage]:2014/06/01(日) 00:58:15.94 ID:w/v72zIfO
渡しながら、上着のポケットに手を入れた。するとポケットの中で手に当たる固い感
触があった。掴んで取り出してみる。
缶詰めだった。可愛い猫のパッケージが印刷されている。ゲームの中で持っていたア
イテムが具現化された物だろうか。
「ツグムさん!缶詰めがありました!やった!開けてみよう」
少女はうきうきした様子で缶詰めのプルタブを開け、地面に置いて次の展開を待っ
ていた。だが、少女がいくら待っても現実の公園では何も起こらなかった。
「あれ?猫ちゃん達来ませんね。私、やり方間違えました?」
男は複雑な表情でそれを眺めていた。
「いや、間違ってはいないよ。でもこの世界はね、ゲームとは原理が違うからさ。缶
詰めを開けた次の瞬間に、猫が飛び出して来たりはしないんだよ」
「え?……そうなんですか」
少女は寂しそうな顔でうつむいている。そこで男はようやく整った息を吐き、缶詰
めを持ち上げた。
「待った。だから違うんだよ。だからって来ない訳じゃないんだ。自動的に起こらな
いだけで、例えばこういう茂みの向こうとかに……あぁ、ほらいた」
男が茂みの奥に入っていくと、そこにいかにもノラっぽい、警戒心をむき出しにし
た猫が身構えてこちらを見ていた。
「わぁ!おいでおいで!缶詰めあげるよ!」
「ストップストップ!それじゃ逃げちゃうんだ。そうっと置かないと」
そう言うと、男はその猫となるべく距離を取りつつ、ゆっくり近づき、缶詰めを男
達と猫の中間地点にそっと置いた。
「これでいい。後は絶対動かないこと。いいね?」
「……わかりました」
二人が静かに見守っていると、最初は警戒し遠巻きに見ていたノラ猫が、じりじり
と缶詰めに近づき、しばらくすると口を着けて食べ始めた。
「可愛い……」
ノラ猫はだいたい食べ終わると、素早く身を後ろへ引き、茂みの向こう側へ姿を消
してしまった。
男はベンチに戻り、少女にこう言った。
729 :アイドル「兄は私のマネージャー」 26/62 ◆1ImvWBFMVg [sage]:2014/06/01(日) 01:00:54.12 ID:w/v72zIfO
「これが現実なんだ。さっきの缶詰めだって本当は買わなきゃいけない。いきなりポ
ケットから出て来たりはしないんだよ」
少女がなるほどと頷いていると、そこへ急に突然、通りすがっただけの紳士が彼女
の顔を見るなり途端に奇声を上げて近づいて来た。
「う、美しい!」
「……どちら様ですか?」
男は怪訝そうな顔で紳士を眺め回した。そこで紳士も冷静になったのか、姿勢を正
して表情を戻していた。
「あ。いやたいへん申し訳ない。取り乱してしまった。実はわたくしこう言う者であ
りまして」
名刺を取り出して、少女と男に一枚ずつ渡す。そこには会社の名前が印刷されてい
た。
「モニープロダクション?あの最大手のアイドルプロダクション?」
「ええ。そちらの少女をぜひウチのアイドルとして預からせて頂けないかと。いやも
うお話だけでもいいのでご連絡ください。失礼します」
そう言うと紳士はさっそうと町中に消えていった。男はもう驚かなかった。
「ほら。これがゲームだよ。現実はこんな風に上手くはいかないんだ」
「……つまり逆を言えば、この人に連絡すれば、アイドルに成れるって事ですね?」
「え?いや……まぁそうだろうけどさ……え?じゃあ」
少女はすっかり覚悟が決まった様に目を見据えて名刺をかざしている。
「はい、私アイドルやってみます。『ゲームの続きをやる』と言うのが魔法陣に掛け
られた契約事項なら、クリアすればあとはきっと自由になれますよね?」
少女は既にこの現実世界がすっかり気に入ってしまっていた。様々な期待で今はも
う胸が膨らみ溢れる程に一杯になっていた。
「うん……。でもちょっと待って。あのさ俺さ……現実でマネージャーとかは……」
一方の男は、何処まで経っても後ろ向きのままだった。ゲームで見せた優しさは何
処にも見えなかった。少女はその時どんな顔をすればいいか分からなかった。ただひ
どく悲しかった。
だが少女に落ち込んでいる暇はなかった。男が付き合えないと言うなら仕方がなかっ
た。彼女はなるべく男を頼らず、彼の世界を侵さない事に決めていた。そうして迷惑
730 :アイドル「兄は私のマネージャー」 27/62 ◆1ImvWBFMVg [sage]:2014/06/01(日) 01:02:06.51 ID:w/v72zIfO
を掛けない選択を選んだ。
「なるほど。ツムグさんは、働くのが嫌な人なんですね。……わかりました。条件は
私一人でクリアしてみせます」
だが勇ましくそう宣言する少女の声は、少し震えていた。顔を伏せる男にはそれに
気づけなかった。


"""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""


朝。少女の朝は携帯電話の目覚ましから始まる。少女はこの眠りを必要とする身体
になってから二ヶ月、眠りから覚めるという独特な感覚に今だに慣れていなかった。
「おはよう……」
棚の上にある、以前男に買ってもらった観葉植物のサボテンに声を掛ける。彼女は
秘かにこのサボテンに《ツグム二号》という意味ありげなアダ名を付けていた。
「ん……今日は、何だっけ」
昨日も忙しかった。今日のスケジュールを調べるために少女はベットから抜け出
し、洋服を着替えた。
少女はすでにアイドルとして芸能活動を始めていた。その世界はとても煌びやかな
場所であり、誰もがその中で忙しく動き周り、一秒たりとも無駄にする事を惜しみ、
今その瞬間を生き急いでいた。現実世界でも特別かもしれない。
少女は着替えを済まし寝癖を軽く直すと、廊下の二つ先にあるドアへ向かい、音を
立てない様にそっと男の部屋へ入った。
「おはよう……」
ゆっくりドアを閉めると、少女は嬉しそうに男に挨拶した。まだ男は机に突っ伏し
731 :アイドル「兄は私のマネージャー」 28/62 ◆1ImvWBFMVg [sage]:2014/06/01(日) 01:03:22.58 ID:w/v72zIfO
たまま寝ている所だった。何時ものようにパソコンの電源が着きっ放しであった。
サボテンのアダ名に特別な意味はなかった。男にプレゼントして貰い、単純に嬉し
かったからそう名付けたに過ぎない。
だがよくよく考えてみると、部屋でゲームだけして生活している男と、砂漠で僅かな
水だけで生活するサボテンとの二つの生活スタイルの間には、どことなく類似点がな
くもなかった。その非活動的な生き様というか、消極的な所が同種だった。
『もっと楽しまなければいけない』そんな強力なスローガンが、目に見えない所に掲
げられて常に煽られているかの様な、芸能界の活発さとは真逆の物だった。
だがそんな男の様子を見て、少女は今日も嬉しそうに笑顔を浮かべた。そのまま顔の見える近い場所に座り、男の寝顔を眺めて過ごす。
これが少女の毎日の日課だった。男はたいてい朝方に眠る。ベットで寝る時もあれ
ば、こうして突っ伏して寝る事もあった。違いはあったが、たいてい寝出す時間は同
じだった。
「ん……ミュー……やめろって……サラダなんか食いたくないよ……んん」
男が寝言を言った。恐らく少女が二三日前に、部屋へ無理矢理押しかけて食べさせ
た時のことを夢に見ているのだろう。
「食べなきゃダメだよ……病気になっちゃうんだから……」
そうだ。そこで少女は今日のスケジュールを思い出した。今日は休日だったのだ。
少女は喜びが胸の内に湧き上がってくるのを感じていた。本当にひさびさの休日だっ
た。
あまりに忙しい日は、男の寝顔を見ている時間も取れなくなる時があった。仕事を
辛いと思った事は一度もなかったが、少女にとっては、この時間が取れなくなる事が
何よりの痛手だった。
今日が終わったらまた二週間先まで休みは無い。少女はまるで慈しむように男の寝
732 :アイドル「兄は私のマネージャー」 29/62 ◆1ImvWBFMVg [sage]:2014/06/01(日) 01:04:31.84 ID:w/v72zIfO
顔を見ていた。そんな時、少女にはその砂漠に生えたサボテンの様な男が、堪らなく
愛しい物に思えるのだった。
「おやすみ……」
少女はそのまま男が起きるまでずっと見つめ続けた。ガラスの向こう側にいたあの
頃と同じ様に。とても緩やかで親密な空気に満ちた時間が、部屋の中をゆっくりと過ぎ去っていった。少女が入って来てからは、優に五時間は経とうとしていた。
時計が一時を回った頃、ようやく男がびくっと頭を震わせ、目を開けた。
「う……。ミュー……。おはよう」
すると少女が急に腰に手を当て、元気良くポーズを取り初めた。
「お兄ちゃん、遅いよもう!」
「え……?なにそのキャラ……萌えキャラ?」
「もう知らないんだからね。せっかく久しぶりに取れたオフなのに」
少女は声を作ってオクターブ高い声を出した。そこで男はようやく思い出した。
「あぁ。『あにマネ』のあの時の……懐かしいな」
男は目を遠くへ向け、腕を上に伸ばし大きく伸びをした。
「ツグムさん。今日わたし休みですよ。行きましょうね、街」
少女は休みの日は必ず、男を連れて街へ出掛ける事にしていた。何処にでも行って
みたかった。
「もちろんゲームのイベントも無しです。いいですね?」
「分かってる。マネージャーの仕事を逃げ回ってるんだからな。休日を付き合う約束
ぐらいは守るよ」
そこで男は箪笥を開け、行き支度を開始した。眠そうに上着に袖を通しながら、ぼ
そりと漏らす様に呟いた。
「でもさ、無理に俺なんか連れ出さなくても……」
733 :アイドル「兄は私のマネージャー」 30/62 ◆1ImvWBFMVg [sage]:2014/06/01(日) 01:05:58.28 ID:w/v72zIfO
「……無理に?」
「だってさ、芸能人の友達とかいるんだろ?……それとも母さんか?母さんが連れ出
してくれって頼んでたりするのか?」
男は自虐的な表情をうかべて半笑いしている。こんな顔をさせるのは好きじゃなか
った。少女はそこでシャツのボタンを掛けてる男の手を取り、強く握りしめた。
「ツグムさん。私は休日に、わざわざ無理して誰かに付き合う様な、そんな無意味な
真似は絶対しません」
「う……」
「ツグムさん。私はツグムさんと一緒にいるのが一番なんですよ」
街へ着くと、少女はまず洋服店を見て回った。まだ給料が出たばかりなので、あま
り高価な物には手が出ない。
街の中心に並ぶ洋服店にはさまざまな服があった。女の子らしいひらひらとした素材
のドレスっぽい服から、動きやすそうなカジュアルな服が並んでいる。
見ているとすべてを試着してみたくなる。堪らなくなって少女は男に頼んでみた。
「ツグムさん。試着してみてもいいですか?」
だが男はすぐ近くにあった下着コーナーで、下着を前に口を開けたまま釘付けにな
っていた。まるで紐の様な造りの下着だった。
「ツグムさん、そういうのが好きなんですか?」
「いやいやいや……え?で何だっけ?」
男を試着コーナーの前で待たせて、少女は着替えを繰り返した。着替えが完了する
度に男に仕上がりを見せた。
「どうですか?似合いますか?」
可愛い服を着るのはもちろん楽しかった。でもそれを男に見せる事はそれよりもっ
と楽しかった。
734 :アイドル「兄は私のマネージャー」 31/62 ◆1ImvWBFMVg [sage]:2014/06/01(日) 01:07:32.62 ID:w/v72zIfO
「似合う。ばっちり似合ってるよ」
何度も聞いた言葉だが、やはり聞くとどうにも嬉しかった。
「というかミューは可愛いしスタイルだっていいから。何でも似合うよ」
男の褒め言葉は心地よかった。でもすぐに足りなくなった。もっと欲しかった。
「どんな風に似合っていますか?さっきの服よりこれの方がいいですか?」
「いやどうなんだろう……。俺は服のことなんかよく分かんないし、細かい所までは
ちょっと……」
まるで水を欲しがる生き物みたいだった。少女は癒えない渇きを満たそうとする、
飢えた生き物だった。
「だいたいでいいんです。どう似合いますか?」
少女はそれからも男にしつこく言葉をせがんだ。何度も何度も根を上げるまで繰り
返した。結局一時間ほど経ち、試着に費やしながらも、少女は洋服を一着も買わな
かった。それも何時もの事だった。
「また買わないのかい?流石に店員さんも呆れていたみたいだけど」
「だって気に入った服が見つからなかったんです。仕方ありません」
買う事自体にたいした意義はない。そうして何時ものように、男の服を買いにメンズ
服が売っている洋服店に入っていった。
「さぁツグムさん。試着タイムですよ。張り切って行きましょう」
少女が目を付けたシャツを手渡し、上着を脱がせる。なすが侭にされる男は文句を
言いつつ諦めている様だった。
「だからさ……。俺の服は別にイイって……。前から何度も言ってるだろ……」
「いいから黙って着てください。一日付き合うって約束忘れたんですか?」
「だってさ。こんな高そうな服、着ていく場所ないよ」
上着の下の、何時も着てるよれよれのトレーナーと比べると、新しいシャツは段違
735 :アイドル「兄は私のマネージャー」 32/62 ◆1ImvWBFMVg [sage]:2014/06/01(日) 01:08:38.38 ID:w/v72zIfO
いに見栄えが良かった。
「今日みたいな、出掛ける時に着てくればいいんですよ。……ふむ、なかなか似合い
ますね」
着替え終わった男は、小綺麗なオシャレ好きの青年に見えなくもなかった。
「いい感じのシャツです。値段も手頃だし。店員さん、これください」
男は納得いかないと言う表情でシャツをつまんでいる。少女が財布から万札を出す
と、ため息を吐いている様だった。
水を与え過ぎるのは危険な行為だ。砂漠の植物であるサボテンはすぐに根腐れして
しまう。少女にだってそれはもちろん分かっていた。
「行きましょうツグムさん。お腹が空きました。あ、手を繋いでもいいですか?」
でも我慢出来なかった。男を構う事それ自体が、少女に取っての一つの癒しだっ
た。言葉を欲するのと同じ、生理的な欲求だった。
「え、ちょっと……あの」
男がサボテンなら、少女は砂漠に生まれ落ちた新しい“ナニカ”だった。
その“ナニカ”はかつて砂漠の一部だった物だ。砂漠の一部である砂を一握りほど集め、
そこに無理やり命の息吹が吹き込まれた、偶然の産物のような新種の生き物だ。
「ファーストフード店にしましょう。もちろん席はくっ付けるし、ストローも2本差しです」
生き物だから水を欲するが、砂の集まりである“ナニカ”は、どれだけ水を巻かれて
もすぐに枯れさせてしまうのだ。
「勘弁してくれ……」
洋服店を出ると、隣が不動産サービスだった。住宅情報が書かれた張り紙が壁一面
に張り出されている。少女は立ち止まって文字を追った。
その内一人暮らしを始めなければならなくなるはずだった。もしゲーム通りに事が進
736 :アイドル「兄は私のマネージャー」 33/62 ◆1ImvWBFMVg [sage]:2014/06/01(日) 01:09:41.26 ID:w/v72zIfO
むのなら、彼女はそこそこ人気のあるアイドルになる。
男の家からは通いづらくなるかもしれない。もちろん男から離れるのは少女に取っ
てなによりの苦痛だった。
だったら男を自分で借りたアパートの部屋に引きこもらせればいいのではないか。少女はそんな風な事を考えていた。
「ミュー。なに?」
そして“ナニカ”はサボテンを大切に愛でる。サボテンは砂漠を糧に生きている植物
だ。依存し合う関係。
ファーストフード店にやって来ると、少女は本当に椅子をくっ付けて、飲み物のグ
ラスにストローを二本差して笑顔を見せた。
「これでバッチリです。さぁ」
「さぁ、って言われても」
少女は無理やり男の口にストローを持っていくと、自分でやっておきながら急に赤
面し出した。それにつられて男も赤くなる。互いに咳払いでわざとらしく誤魔化して
いたその時だった。
間に柱があって視覚的に見えない席にいた高校生らしき男子グループの大きな喋り声
が、二人の席まで聞こえてきた。
「え、てかこの今週のカバーガールの子って誰?」
「ん?……これ名前ミューで良いのか?またハーフタレントかよ。もうそろそろいい
よなハーフ」
「あー。なんか最近たまに見るよなこの子。まぁでも可愛いんでねえの?」
少女が近くにいる事にまったく気がつかないまま、彼女の噂話を始めたのである。少女は自分の噂をじかに聴くのは初めての経験だった。それはなんともこそばゆい感
覚だった。
737 :アイドル「兄は私のマネージャー」 34/62 ◆1ImvWBFMVg [sage]:2014/06/01(日) 01:10:48.00 ID:w/v72zIfO
男はまるで自分の事の様に、いつになく周りをキョロキョロと見回し、挙動不審で怪しい人物になっていた。
「あぁ、この子か。俺ちょっと知ってる。なんか変な噂があるらしいぞ」
耳をそばだてて聞いていたミューたち二人は、そこで凍りついた。会話の中心は、一人の少年が言った言葉に持って行かれてしまった。
「は?おい噂ってなんだよ?整形?接待セックス?」
「いやそう言うんじゃないんだけどな。……なんて言うかちょっと都市伝説っぽいと
言うか」
「なんだよもったいぶんなよ。あれか宇宙人か」
「分かった、未来人だ」
「いやちょっと待てって。ところでお前らソシャゲって知ってる?」
「知らん。ソシャゲ?」
「ソシャゲって、あれはネトゲの一種だっけ?」
「あー、まぁそんな感じ。で、そのソシャゲのゲームに『あにマネ』ってゲームがあ
るんだけどさ。そんなに知られてないゲームなんだけど」
その名前が出てきた時、少女の手には汗がじわりと滲んできた。男はずっとミュー
の顔を見て、どうすればいいか分からないと言った情けない表情を浮かべていた。
「へぇ。知らね。それで?」
「いや、これに出てくるヒロインがさ。ミューって言うんだよ。それでな、このハー
フの子にそっくりなんだ」
訳知り顔で高校生がそう言うと、他の皆は鼻で笑うように馬鹿にした。
「はぁ?なんだそりゃ。偶々似てたってだけか?しょうもな!」
だが高校生は引かなかった。それにまだ話には続きがあった。
「いや違うんだ。ゲームはアニメっぽい絵で、この子は人間だけど、どう見ても同じ
738 :アイドル「兄は私のマネージャー」 35/62 ◆1ImvWBFMVg [sage]:2014/06/01(日) 01:11:59.82 ID:w/v72zIfO
なんだ。しかもなこの二人、プロフィールや住んでる環境や、更にはやって来た仕事
まで全部が全部ゲームと同じなんだ。ここまで来るとさすがに変だろ?」
「えぇ?そういう売り出し方なんじゃないの?ネトゲ発信アイドルとか」
「いや違う。それならそこを売り文句にしてメディア展開するはずだ。でもプロフィ
ールにはソシャゲについて一切触れられていないんだ」
「本人がファンだったとかのオチは?」
「受注してきた仕事もか?まったく同じなんだぞ。しかもな、そのソシャゲ、今謎の
不具合で復旧が出来なくて、トップページの枠から外されてるらしいんだ」
他の皆は食い入るように高校生の話を聴いている。少女は気分が悪くなってきてい
た。
「いいかお前らよく聞けよ。しかも不具合の発生した日、それがこのハーフの子が活
動を始めた時期がちょうど重なるらしいんだ。だから二ちゃんのネトゲ板スレではあ
り得ない噂話で盛り上がっているんだ」
男が我慢できずに席を立った。少女の手を取り、店を出ようとする。
「『ゲームのヒロインキャラが現実世界に出てきた』ってな。どうだ、実に都市伝説
っぽいだろ?」
「……くだらねー!んなわけねぇじゃん!」
二人はなるべく柱を背にしながら、ファーストフード店を逃げる様に後にした。
街を歩きながら、二人はもうそれほど楽しい気分に浸っている訳にはいかなくなっ
ていた。
「ミュー、大丈夫か?」
少女は頷いたが、とても平気そうな顔には見えなかった。二人とも常に誰かに見ら
れている様な気分が続いていた。
「……これは……ちょっと考えてなかったです。私の事を、まさかあのゲームと関連
739 :アイドル「兄は私のマネージャー」 3/62 ◆1ImvWBFMVg [sage]:2014/06/01(日) 01:17:10.56 ID:w/v72zIfO
付ける誰かが出てくるとは……」
少女の浮かない沈み込むような表情に、男はなんとか少しでも不安を消し去る様な
明るい話題を探してみた。
「大丈夫だよミュー。きっと大丈夫」
「本当に?」
「あぁ。噂が立った所でこっちにはあの魔法陣の強制力がある。恐らくゲームが終わ
るまでは、例の効果で少女に不利な噂は押さえてくれるはず。だろ?」
少女は心が落ち着くのを感じていた。だがそれもすぐに渇いて不安に成り変ってし
まった。
「なるほど……そうかもしれません。他にはありませんか?」
「え?ほ、他!?いや、他ってなに?」
「もっと私を安心させてください。無いんですかツグムさん?じゃあ泣きますよ」
だがその噂はやがてどんどんと大きく広がっていった。一ヶ月もすると、いよいよ
少女の芸能活動を圧迫し始めた。
そこで予定を繰り上げ、早くクリアして一流アイドルになればいいと考えた少女
は、今まで以上に沢山のスケジュールを入れる事になった。



"""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""



朝。最近の少女の朝。前と比べるとかなり早い時間に起きている。まだ日が登る
前、何もない部屋で少女は目を覚ます。けたたましい鳥の鳴き声にも似た、とても大
きな目覚ましの音が耳を劈いている。
740 :アイドル「兄は私のマネージャー」 37/62 ◆1ImvWBFMVg [sage]:2014/06/01(日) 01:18:28.93 ID:w/v72zIfO
「おはよう……」
つい癖で少女は枕元に声を掛ける。だが肝心のサボテンの姿は何処にも見当たらな
かった。ここは少女の部屋ではなかった。
「ふーっ……」
この部屋は事務所のビルの上にあるマンションの一部屋だった。少女は押し寄せて
くる仕事の忙しさから、男の家に帰る暇さえ無くしていた。
起きねばならなかった。少女は大きく息を吐くと、無理やり何度も鞭打つ様に身体
を叩く。まるでそれで活力を呼び覚まそうとしているかの様だった。でもいくら待っ
ても力は湧いて来てくれなかった。
その時、まるで待ち構えていた様に、枕元にある電話の子機が鳴った。気怠そうな
動きで子機を取る少女。
『ミューさん。おはようございます。三十分で出掛ける用意だけ済ましてください。
化粧時間、食事は向こうに着いてから取れます』
受話器の向こうで、ひどく機械的なしゃべり口調の男が要件だけを告げて、少女の
返事を待っている。
まるでよく訓練された猟犬みたいだ、少女はそんな事を思った。
「わかりましたマネージャーさん。準備が出来たら電話を入れます」
身体ごと引きずる様にしてベッドを出た少女は、着ていた寝間着を普段着に着替
え、ブラッシングと歯磨きだけを済まして、電話を掛けた。
約束通りきっちり三十分後、飾り気のないしっかりしたスーツを着込んだ、あまり
風采は上がらないが真面目そうな男が現れ、玄関前で少女を出迎えた。
「おはようございます、ミューさん。それでは今日も一日よろしくお願いします」
「はい。おはようございますマネージャーさん」
少女がマネージャーの顔をじっと見た。真面目そうな顔付きと姿勢だったが、やは
741 :アイドル「兄は私のマネージャー」 38/62 ◆1ImvWBFMVg [sage]:2014/06/01(日) 01:19:30.47 ID:w/v72zIfO
りそれ以外は兄である少女のサボテン男とひどく似ていた。
「いい天気ですね」
「今日の天気は晴れです。気温は最高で18度。夜は少し肌寒くなります」
「さすがマネージャーさん。抜かりがないですね」
「予定が詰まっています。早速仕事に向かいましょう」
だが二人はまるで性格が似ていなかった。むしろ真逆と言っても良かった。
エレベーターを降りると、敏腕マネージャーは事務所専用の駐車場からワンボック
スを発進させた。もちろん少女も後部座席に乗り込んでいる。
駐車場から出ると車はすぐにビル群のある街の中心に躍り出た。道行く人々は皆、
忙しそうに各々の通勤場所を目指して歩いている。
「今日の予定です。正午ちょうどに行われる新発売の清涼飲料水の発表記者会に、公
式キャンペーンガールとして参加して頂きます。その為準備も含め九時には会場入り
して頂きます」
敏腕マネージャーが、運転に意識を集中しながら、事も無さ気に今日のスケジュー
ルを伝達する。
「昨日言ってた新規の仕事ですか。新しいジュースの、記者団に向けてのコメントは
どうしますかマネージャー?」
「一応一通りの予想と対策はそちらの資料に取りまとめてはあります。ただ会場の
空気までは掴めませんので参考程度に目を通しておいてください」
少女の手元に資料が回される。元々事務所の社長の付き人だった経歴の持ち主で、
車の運転ほか全ての仕事が恐ろしく有能かつ的確だった。
「それでは会場に着くまで一時間と少しあります。もしお疲れの様なら車の中で寝て
しまっても構いません。ミューさんは最近無理をし過ぎています。事務所としては仕
事を大量にこなしてくれるタレントは大変有難い存在ですが、無茶は禁物です」
742 :アイドル「兄は私のマネージャー」 39/62 ◆1ImvWBFMVg [sage]:2014/06/01(日) 01:20:43.45 ID:w/v72zIfO
別に寝たくはなかった。疲れてもいなかった。ただ干からびていた。少女はどうし
ようもない実感としてそう感じていた。生物としての原型を保てない程に渇いてい
た。
男に会いたかった。もちろんどうしても側にいて欲しいと言えば、恐らくイヤイヤと
は言え少女の頼みを聞いてくれるはずだった。
「大丈夫です。頑張ります」
少女は自分が男に好かれている自信があった。
ゲームと自分だったら、なんとか勝てるのではないか。ゲームでは得られない喜び
を、少女は男に与えてきたはずだった。
「ミューさん、少しスケジュールを詰め過ぎていませんか?」
質問された事より、今は考えに集中したかった。でも男に無理に一緒にいて欲しく
はなかった。少女は秘かに思っていたある事があった。
「平気です。むしろ足りません」
男の全ての願いを、理想を、自分の力で叶えてしまいたい、そう思っていた。
「何か急ぐ理由でもあるのでしょうか。もし例の噂話の件と何か関係があるのなら、
貴方には報告する義務があります。今すぐ報告してください」
予定よりは早くこなしている工程だったけれどまだクリア条件には程遠かった。早
くイベントをクリアしないと、どうなるか分からない。
「関係ありません。何度も言うようですが私には寝耳に水の話でした」
噂話については完全にスルーする事に決めていた。
「隠し事はないですね?誓って嘘はありませんね?」
「ありません」
だからこそ、男の負担になる様な要素は極力避けて来ていた。もちろん生理的な欲
求はせめて男の寝顔だけでも見たいと、突き上げてきた。
743 :アイドル「兄は私のマネージャー」 40/62 ◆1ImvWBFMVg [sage]:2014/06/01(日) 01:21:56.43 ID:w/v72zIfO
「それならばよろしい。もちろん我々も最善を尽くしてあなたの活動環境を守っていく所存ではあります。だけれど、芸能活動と言うのは人気商売であります。故に一度
ケチが着くと連鎖的に崩壊してしまいます」
会場に着くと、朝からごみごみとした人集りがすでに屋内に出来始めていた。
カメラを抱えた記者らしき一群と、記念に呼ばれたスーツ姿の飲料品会社の関係者ら
しきビジネスマンたち。
それはとても賑やかな光景だった。ただ少女にとってこれらの狂騒はどこか蜃気楼
の様な物だった。実態がなく触れられないアラビアの宮殿だ。確かな手触りはなく何も掴めない感覚だけ。少女は自分がいまだに砂漠の只中にいる事を強く感じていた。
「これはどうも、おはようございます。本日はこの様な素晴らしい晴れの舞台に私ど
もの様な門外漢をお招き頂き、誠に……」
敏腕マネージャーが根回し活動を余念なく行う中、少女は先に控え室に回り、撮影
用のメイクを施されていた。メイクを担当するテレビ局専属のメイクアップアーティ
ストの女性が、少女に入念な工程を重ねて化粧の磨きを掛けている。
メイクの女性とは顔見知りの親しい関係の間柄だった。
「ミューちゃん大丈夫?」
「え?なにが?私そんなに疲れてる様に見えますか?」
少女は自分ではあまり疲れを感じていなかった。ただ以前程は走り出したくなる様
な、元気の源みたいな物が身体から感じられなくなっていた。
「うんとね……肌がとっても疲れてるんだよね。ミューちゃんもともとビックリする
くらい綺麗な肌だったからさ。昨日産まれた赤ちゃんみたいな肌」
「あ……。ちょっと睡眠不足かも……」
なるほど、少女は合点した。女性の言う産まれたばかりと言う形容詞はあながち間
違っていない。少女の身体は実際産まれたばかりだったのだ。
744 :アイドル「兄は私のマネージャー」 41/62 ◆1ImvWBFMVg [sage]:2014/06/01(日) 01:23:10.24 ID:w/v72zIfO
「ダメだよ無理しちゃ。睡眠不足は肌の大敵なんだから。しかもミューちゃんあんま
り肌ケアとかしてないでしょう。若いからって油断してると……」
少女はぼんやり女性の話を聞くともなく聞いていた。今まで疲れを感じなかったの
は、出来たての身体だったからなのだろうか。それならこれからの仕事はどうするべ
きだろうか。
あまり呆然と物思いに耽っていたため、少女はメイクが終った事に気づかなかった。
「……ミューちゃん?終ったよ?」
「あ。お疲れ様です」
慌てて女性に礼を言い、頭を下げる。少女は気を保つ様に頭を振った。
「ねぇ、本当に大丈夫?……あのさミューちゃん……もしかして悩みって例の噂話のこと?」
「え!?」
少女は肝を潰した。もう例の話題はこんな所にまで話が広がって浸透している様だ
った。さすがの少女も上手く返事が出来なかった。
「大丈夫、安心して。私は絶対ミューちゃんの味方だから。本当バカみたいな噂だ
よ。小学生じゃないんだからさ」
「いや私は別に……気にしてないので」
「そう。それで正解。二ちゃんのオタク共の言うことなんかに絶対負けちゃダメだ
よ」
女性は少女の肩を掴み、必死で励ましてくれていた。その気持ちは嬉しかったが、
嘘をついている分少女の心は痛んだ。
「大丈夫です……本当に……」
「ホント気持ち悪い。あいつら引きこもりで暇なクズ人間なんだから。萌えゲーがど
うこうって。一日中パソコンの前で過ごしてさ。うるさいってのよ本当に」
745 :アイドル「兄は私のマネージャー」 42/62 ◆1ImvWBFMVg [sage]:2014/06/01(日) 01:24:40.66 ID:w/v72zIfO
女性の剥き出しの嫌悪感に、少女の心は段々と萎れていく様だった。
「あの……お願いです。そんな風に……言わないで」
「あぁ……ミューちゃんって本当に優しい子なのね。だから好きよ。何でも相談して
ね」
そこで控え室にマネージャーが時間通り少女を呼びに来た。
「失礼します。ミューさん、そろそろ時間です。準備は万全ですか?」
立ち上がる少女。後ろからメイクの女性が檄を飛ばす。
「しっかりね!ミューちゃん!」

会釈すると、少女とマネージャーは廊下を歩き、会場の袖に通されて待機をした。
やがてざわつく場内にマイクで拡声された開始宣言が流れた。
『それでは只今より、新発売のスポーツ飲料、レイミューの発表記者会を開始します』
次々と関係者の名前が読み上げられ、最後に公式キャンペーンガールである少女の
名前も呼ばれていた。
少女は沢山の大人たちと一緒に壇上に上がった。一斉にストロボが焚かれ、シャッタ
ー音が雪崩のように巻き起こった。
「ミューさん、笑顔でお願いします」
少女は真面目なだけの発表に花を寄せる、客寄せとしてだけの存在だった。
だが、記者たちの質問は少女に集中した。
真ん中の広報担当の責任者が発売に向けての戦略を語り終えると、話題はあっと言う
間に少女に移り変わったのだ。
「ミューさんに質問です。このスポーツ飲料、ミューさんならいつどんな場面で飲み
ますか?」
746 :アイドル「兄は私のマネージャー」 43/62 ◆1ImvWBFMVg [sage]:2014/06/01(日) 01:26:21.04 ID:w/v72zIfO
「そうですね……非常に飲みやすいので、どんな場面でも美味しく飲めると思いま
す」
するとまるで狙っていたかの様に、別の記者が少女に質問を投げつけてきた。
「それはソーシャルネットワークゲームをやっている場面でも当てはまりますか?」
「……そうですね。私はやった事がないので分かりませんが、水分補給に最適なドリ
ンクです」
早速来た。少女は無視を決め込み、冷静に、でも無愛想にはならない様に対応を心
掛けた。でも記者たちは別のネタを隠していた。
「ミューさん。お兄さんはスポーツ飲料お好きですか?」
「え?何でですか?」
「ご家族には薦めないのですか?」
「あぁ。とても美味しいので、直ぐにでも兄に薦めたいと思います」
「ではお休みの日はお兄さんと二人で熱々デートで火照りながら、このドリンクで喉
の渇きを癒されるのですね?」
「いや……あの。質問が別の方向に行っていませんか?」
「あれ?話を逸らされましたね。何か触れられて欲しくない話題でもありました
か?」
こういう場面での記者たちの揺さぶりはよく見かける物だ。だがさすがにやり過ぎ
だと見たのか、司会者が釘を刺した。
「記者の皆様、ミューさんは公式キャンペーンガールですので、あまり関係のない質
問はどうかご遠慮ください」
「ええ?休日に飲むかどうかを聞いただけですがね。いやたいへん申し訳ない」
「じゃあミューさん、例えば血の繋がっていないご兄弟とこのドリンク、どちらの方
がより手許に置いておきたいですか?」
747 :アイドル「兄は私のマネージャー」 44/62 ◆1ImvWBFMVg [sage]:2014/06/01(日) 01:27:55.60 ID:w/v72zIfO
ひどい質問だった。大切にしていた少女だけの秘密。砂漠のサボテンが荒されよう
としていた。少女は胸の内に黒々とした感情が広がっていくのを感じていた。
「兄は私にとって掛け替えのない存在です。侮辱する様なことは言わないでくださ
い」
「記者の皆様。あまり過ぎるようですと、質問を終了させて頂く事になります」
「どう掛け替えが無いんでしょうか?例えば砂漠で喉が渇いても、スポーツ飲料より
愛しいツムグさんを取るんでしょうか?」
「それまでです。質問を終了させて頂きます。ミューさん、ありがとうございました」
「おい、血の繋がってない兄貴といつも何してるんだ!同じ屋根の下らしいぞ!」
会場中から口汚い罵声が飛び交う。そこで係にエスコートされた少女は、急に自分
の身体から、根こそぎ力が抜けて行くのを感じた。少女はふらふらとよろめき足をフ
ラつかせ、身体ごと係員の腕に倒れ込む。そうして少女は失神してしまった。
場内は騒然とした空気で満たされ、ストロボとシャッター音が先ほどの倍近く巻き起
こっていた。
その騒動から一時間後、少女は事務所上のマンションで意識を取り戻していた。
彼女が目を開ける。するとソファの近くでは少女がよく診てもらう医者とマネージャ
ーが顔を見合わせて頷いていた。
「もうこれで大丈夫でしょう。身体にこれと言った異常は見られません。あとはお願
いします」
会釈して帰る医者を見送りもせず、マネージャーはその場に立ち尽くしている。
「非常に困ったことになりました。彼らはこういう下世話なハプニングが大好きなん
です。少しなら話題作りになりますが、何度も繰り返している様に人気商売ですから
ね」
748 :アイドル「兄は私のマネージャー」 45/62 ◆1ImvWBFMVg [sage]:2014/06/01(日) 01:29:29.03 ID:w/v72zIfO
本当に何時になく厳しい顔つきをしている。まずは謝るべきだとそう少女は思っ
た。姿勢を正し、頭を下げる。
「すいません。私ついカッとなってしまって」
だが敏腕マネージャーは怒るというよりは悲しそうな顔をしていた。少女の喉が焼
きつく様な渇きを覚えていた。
「ミューさん。後で社長からも聞くと思いますが、貴方には少しの間仕事を謹慎し、
世間の目から隔離した生活をして頂きます」
「え?予定が入っていた仕事は?」
「今は仕事をしてもマイナスになるだけです。ほとぼりが冷めるのを待つのが最良の
選択なのです。その他にある選択は……引退ぐらいでしょうね」
「いやでも、私大丈夫です。いくらでも働けます」
「いいですか?体調管理も出来ない人間に、責任ある仕事が出来ると思えません……
ミューさん、それが何だかわかりますか?」
マネージャーは事務的に少女の下半身を手で示した。少女が顔を下げる。すると、
少女が履いていた真っ白なホットパンツに血が滲んでいた。
「え?何ですか?私ケガ、え?」
「何って生理に決まっているでしょう。全くもう、しっかりした少女だと思っていた
のに。それもこれも事前に報告があれば対応出来た事なのですよ」
生理。今まで少女は生理が来たことがなかった。身体が気怠く痛み、重かった。
「今日は寝てください。引退する気がないのなら、明日からは待機しながら別の仕事
をこなしてもらいます」
マネージャーはそこで部屋を出て行った。部屋には少女が一人残された。
終わりだ。少女はそんな予感を心の裡にひしひしと感じていた。こうして砂漠で砂にも帰れず立ち往生して終わるのだ。男に会いたかった。せめて側にいたかった。
749 :アイドル「兄は私のマネージャー」 46/62 ◆1ImvWBFMVg [sage]:2014/06/01(日) 01:31:03.27 ID:w/v72zIfO



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昼。男の一日は昼から始まる。大抵はこうして机の上で起きる。疲れ果てて寝てし
まう迄、男は只ひたすらゲームやネットをやり続けてしまうそんな毎日だった。
「……んん。もう昼か……なぁミュー」
男は夢の中で、男は少女に見守られながら、眠りについていた気がしていた。
だから目が覚めても少女が何時もの様に側にいる気分になっていた。だが部屋にはも
ちろん少女の姿はなかった。
「……ミュー大丈夫かな……」
男は普段なるべく少女の話題で盛り上がるワイドショーを避けて見ない様にしてい
た。だがしばらくの間テレビは、まるでそれしか取り上げる話題がないかの如く、こ
ぞって少女がフラつく映像を流し、何度も繰り返し執拗に再生し続けた。
少女の名はむしろ事件の前より有名になっていた。そしてすべての仕事を休み、謹
慎の身に入っていた。別になにも悪いことをしていないのに、謹慎なんておかしい話
だと男は思った。だが、ほとぼりが冷めるまでは大人しくしているのが良いのだと事
務所の人達が母親に説明したらしい。
当然の処置かもしれない。だが少女が目指しているゲームのクリアを思うと、どう
やら彼女が窮地に陥っている事だけは間違い様がなかった。
「……大丈夫なわけ……ないか……」
男はパソコンを操作し、メール欄を覗いた。少女からのメールが来ていないかと毎
日チェックしていた。しかし送ったメールでさえ返事が来ない。事務所が外との連絡
を絶っているのではないかと男は勘繰った。
もちろん男にだって少女を救いたい気持ちはあった。だがこの現状で彼女を救うに
は、何をどうすればいいのかが、男にはさっぱり分からなかった。
少女の部屋に行ってみる。騒動があった日から何度か訪れてみたが、何の変化も見
750 :アイドル「兄は私のマネージャー」 47/62 ◆1ImvWBFMVg [sage]:2014/06/01(日) 01:32:44.37 ID:w/v72zIfO
られない。枕元のサボテンもどうやら元気らしい。無駄にトゲを立てて、瑞々しく植
木鉢に生えている。
「よう、サボテン。元気か」
男はサボテンを眺めながら漠然と考えた。自分もコイツと同じだ。少女に今現在大
変な事が巻き起こっていると言うのに、何の変化も見られずこうしてのうのうと生き
ている。
あれだけ少女に甲斐甲斐しく構われて面倒をみてもらったと言うのにである。これ
では義理も情けもあった物ではない。感じられないではないか。
「でもなぁ……」
男に出来ることと言えば、サボテン片手にすごすごと部屋に戻るくらいの事しかな
かった。ふとその時だった。男は自分の上着に、少女の部屋の残り香を感じていた。
堪らなくなった。男は声を上げて叫びそうになった。街に出掛けた時の少女の楽し
げな笑顔が、男の脳裏に鮮やかに蘇って淡く消えていった。
無理だった。我慢出来ずに声を上げて泣き出しそうになった。その時突然奇妙な事が
起きた。メール画面の下、閉じる事の出来なくなっていた魔法陣と『あにマネ』のウ
ィンドが音を立てて自然に開いた。
続いてポォンという気の抜けた操作音と共に、いつの間にか別のソーシャルゲーム
のウィンドが隣りに開き、キャラクターと吹き出しが浮かび上がってきた。
「……はぁ?な、なんだこれ」
男はウィルスを心配したが、シャットダウンはしなかった。事態の成り行きを見守
っていると、吹き出しに次々と文字が打ち込まれていった。
『おい。お前。お前だよ。この引きこもり野郎。見えていたら返事しろ、この[ピザ]』
画面ではイケメンアニメキャラがこちらを睨みつけている。まるでこのキャラがこ
751 :アイドル「兄は私のマネージャー」 48/62 ◆1ImvWBFMVg [sage]:2014/06/01(日) 01:37:01.81 ID:w/v72zIfO
ちらに向けて喋っているようだった。
するとそこに、文末に点滅するカーソルが現れた。シミュレーションゲームでよく見
る待機状態だ。そこで男は反射的にマウスをクリックしていた。
「おい。お前。お前だよ。この引きこもり野郎。見えていたらさっさと返事しろ、こ
の[ピザ]」
声優が吹き込んだらしき音声が再生された。悪ふざけが過ぎる、男はそう思った。
男はこのキャラに見覚えがあった確か女の子向けのハーレムソーシャルゲームだっ
たはずだ。
「えー。名前はなんだっけ……ルなんとか」
「ルクル。ルクルだよ、引きこもり野郎。人の名前ぐらいちゃんと覚えろよ」
まるで男の言葉に答える様にして、ゲームキャラの音声が再生された。流石の男も
違和感を感じてきた。
「んん?誰かがソーシャルゲーム内のチャットリンクでも送ってきたのか?」
男はそう思った。だが違っていた。
「リンクなんかじゃないよ。試しに回線ケーブル外してみろよこのバカが」
悪質だ、そう思った男はパソコンに繋いである回線ケーブルを外した。
「おお、ほんとに外しやがった。確かネトゲやってる最中じゃなかったか?まぁ別に
どうでもいいか」
相変わらず少年は、まるでこちらの行動を逐一観察し把握してるかの様に、すぐさ
ま返答をしてきた。
「はぁ!?何なんだよお前!?」
「だからルクルだって言ってるだろ、痴呆かてめえは。だからミューの時と同じだ
よ。俺はガラスの向こう側にいるんだブタ野郎」
男が不思議そうにガラスを触る。すると嫌そうな顔で少年がすばやく指を避けた。
752 :アイドル「兄は私のマネージャー」 49/62 ◆1ImvWBFMVg [sage]:2014/06/01(日) 01:38:10.55 ID:w/v72zIfO
「ああ、そうだ。今もこうしてガラスの向こうのゲームの世界から直接見てるんだ。お前らは知らないかもしれないが、こっちからだってその醜い姿が丸見えなんだよ」
「何だこれ……一体何が目的なんだよ……」
「目的か。目的はもちろんミューだ。お前だって今一番の目的はミューだ。そうだ
ろ?情けなくて泣き出しそうになったくらいだしな、ビェーンってよ」
少年は先ほどの男の泣き真似をした。男はようやく理解してきた。
「お前……いつから見てたんだ!」
「うるせえな。だからずっとだって言ってんだろ馬鹿野郎が」
パソコンの画面に被せる布を探していると、少年が話し掛けてきた。
「いいから黙って話を聞け。お前の働き如何んによっては、彼女を助ける事だって出
来るかもしれないんだよこのカス」
「え?……な!ほ、本当か!」
「嘘なんかついてどうする。もちろんお前みたいな役立たずのクズ野郎は、騙されて
グチャグチャの肉ミンチにされればいい。でもそれじゃあミューが助からなくなるだ
ろうがボケ」
男は少年がムダに絡んでき過ぎてる気がした。つまりこれは少女を連れ出した男に
怒りを向けている証拠ではないかと男は直感していた。
「分かった!つまり……君が怒っているのはミューの親友だからなんだな!そっか…
…もしかして助かるかもしれないんだ……」
ケッと啖呵を切って、少年は嫌そうに男の次の言葉を待っていた。
「それで俺はどうしたらいいの?」
「おう。お前は今すぐゲームの世界に来るんだ。【あにマネ】の中にな。そこでキャ
ラとしてゲームをクリアしてもらう」
753 :アイドル「兄は私のマネージャー」 50/62 ◆1ImvWBFMVg [sage]:2014/06/01(日) 01:39:39.08 ID:w/v72zIfO
「ゲームの世界で……クリアを……。なるほどそれなら助けられるかも」


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巨大な一面のガラスの前、少年が一人立っている。
少年の視線は、先ほどから彼の側で四つん這いになって動かない男の上に注がれてい
る。もう十分はこうして過ごしていた。
「まだか[ピザ]。早くしろ」
男は汗まみれだ。息も絶え絶えに疲れ果てて倒れている。少年の横、少し離れた場
所に立つ一枚の看板から、何故か少女の声がした。
『お兄ちゃん!ちゃんと持ってきた!?私が大切にしてた髪留め!』
少女の声はどこか不機嫌そうな響きだ。でも少年も男も振り返らない。少年は男の身体を見据えたままである。まるで軍隊の教官と新兵いった様相を呈していた。
「待った……はぁ、ふっ……。い、息が……」
ちょうど少女の身長くらいはある看板に、微笑みを浮かべて立っている少女の姿が
印刷されていた。
『ほらぁ!走って取ってきてよねー!急いでっ!収録始まっちゃーう!』
それはまるで販促用の等身大パネルといった風情がある看板だった。下の方にブツ
ブツと穴の空いたスピーカーがあり、其処から少女の声が出ていた。
「だとよ。姫が言ってるぞ。ほら走れブタ」
しかしそうは言われても、男はもう一歩も動けなかった。汗で濡れた頭が吐息で激
しく上下している。どうやら回復まではもう少し時間が掛かりそうだった。
だらしなく開いた男の口元からは涎が垂れ流しになっていた。
いいざまだ、少年はそう思っていた。せめてミューの何分の一がでもその苦しみを味 わうがいいと、男の苦しむ姿を睨みつけていた。
「あ、あれ?……だ、ダメだ……ごめんルクル……ちょっと目まいが……ん」
そう言うと男は支えを無くした操り人形のように、突っ伏して地面に倒れ込んだ。
男はそのまま意識を失った。どうやら疲れ果てて寝てしまっているようだった。少年
754 :アイドル「兄は私のマネージャー」 51/62 ◆1ImvWBFMVg [sage]:2014/06/01(日) 01:41:01.49 ID:w/v72zIfO
はまたケッと啖呵を切った。
「……今日はこのぐらいにしといてやるよ」
その場を立ち去ろうとした少年が、ふいに下を向いた。すると男の腕が遠くに伸び
ていた。しかもその手が少女の看板に向けて手を伸ばしてるようだった。反射的に少
年は男の手を蹴り飛ばしていた。
だが男は一向に意識を取り戻す気配がなかった。恐らくだいぶ疲れていたのだろ
う、深い眠りに着いている様だった。
「クソが……。逃げてばかりの腑抜けの癖に、ふざけやがって」
まるで捨て台詞を吐くように独り言を呟いて、少年が何処かへ離れて行ってしまっ
た。部屋には男と看板だけが取り残されている。
少年が暗がりの向こうに行ってしまってから暫く後、男の腕がもう一度ゆっくりと
動いていた。どうやら無意識に声のする少女の看板の方に向けて伸ばしている様だっ
た。
「ミュー……待ってて……今持って……。大丈夫……絶対…スー」
くぐもった不明瞭な声でブツブツ呟くと、また寝息を立てて寝始めた。そこで看板
から音割れした少女の声が再生された。
『もう……お兄ちゃんのバカ』
男がいる場所は、もちろんかつて少女がいた光の差し込まない場所だった。相変わ
らず時間軸が分かり辛い。
男が一体何をしているのかと言うと、ゲームの進行だった。但しコントローラやマウ
スではなく、ゲームのキャラ側での、身振り手振りを使った特殊なコマンド入力方法
だった。
『俺たちと同じ事をすればいいんだよ』
最初少年はひどく簡単そうに男に言った。まるで赤子の手を捻るように語った。だ
755 :アイドル「兄は私のマネージャー」 52/62 ◆1ImvWBFMVg [sage]:2014/06/01(日) 01:42:27.94 ID:w/v72zIfO
がもちろん捻られたのは男の甘い考えだった。
最初は一つの動作でさえ満足に入力出来なかった。
『それがお辞儀かよ?』
なにしろ現実の世界でマネージャーとして働く場合の、実際の身体の動きでは駄目
なのだ。キャラクターの動きとしては、まるで足りなかったのだ。むしろ現実の動き
の十数倍のエネルギーが必要だった。
『ふざけんなよ?アイドルの不始末を詫びる大切なお辞儀だぞ?そんな動きで画面の
向こう側のプレイヤーに、細かいニュアンスが伝わると思ってんのかテメエ』
それは一見俳優が、舞台で演劇の稽古を受けている姿にも見えなくなかった。だが
そこには一切の余興性といった物が感じられなかった。
『ほら、その後は急いでダッシュで次の現場に直行だ。走れブタ』
男が端に向けて必死で走る。だがどれだけ走っても、立ち位置は変わらない。特に
展開の飛躍や省略が大変だった。コマンド入力では実際に行う動きを省略出来なかっ
たのだ。一つだっておろそかに出来ない。
こんな事ならば、現実世界で少女の側でマネージャーとしてクリアを速めた方がい
いのではないか、男はそう文句を吐いたこともあった。
『馬鹿が。なぜこんな事になったのか知らないのか。アレは魔法陣の力が弱まったせ
いじゃない。本来契約は有効で、現実世界でさえクリアするまで続くはずだったんだ
よ』
それならば何故ミューはクリア出来ずにいるのか。男が不思議そうな顔をしている
と、少年がしびれを切らしたように説明し出した。
『もういい。つまりな、ミューの存在があまりに人間に近づき過ぎてしまったからだ
よ。お前だって、ゲームの頃とは何か違うと感じていただろ?その為にバグとして機
能しまい、結果としてゲームの強制力に歪みが出てきてしまったんだ』
756 :アイドル「兄は私のマネージャー」 53/62 ◆1ImvWBFMVg [sage]:2014/06/01(日) 01:44:31.99 ID:w/v72zIfO
少年は煩わしそうにため息を付く。
『しかしまぁ……本当に何も分かってないなこの野郎。だいたいミューが人間に近づ
いて行っている一番の理由が何だか分からないのか?』
どれだけ考えても男には正解が分からなかった。
『お前の存在だよ』
少年はそれからも説明した。他人を思うこと。それで心にありとあらゆる感情が生
まれること。少女が男を大切に思う事で、少女に感情が産まれたと言うこと。
それはもちろんそれは道筋の決まっているゲームに必要のない概念であり、男が四六
時中近くにいたら、ますます少女が人間に近づいて、歪んだ強制力がそのまま崩壊を
招くに決まっていると言うこと。
全てを聞いた男は、しばらくの間神妙な顔をしていたが、やがて少年に頭を下げ懇
願する様に全面に指示を仰いでいた。
「ミュー……もうすぐだから……待ってて……今クリアはする……。大丈夫……絶
対…スー」
いま少女と男に時間がどれだけ残されているのかは分からなかった。だが、初めて男が少女の為に動いたのは間違いなかった。



"""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""


男が必死でゲームの世界で必死で攻略作業と格闘しているその頃、一方の少女はマ
ンションの一室で大量の文章と格闘していた。
「……あー、もう。これ以上どう直せばいいって言うんだろう……」
それは世間では始末書、若しくは反省文と呼ばれている代物だった。パソコンで何
ページにも渡って書き込んである。今回の騒動について、自分の何が悪かったのか、
またどうすれば良かったのかを、自分なりに振り返り反省する文章である。
ただしマネージャーからは中々OKのサインが出なかった。どれだけの分量を書いて
も、彼からの評価は結局『まだ報告が足りません』の一点張りだった。彼は勘も鋭か
757 :アイドル「兄は私のマネージャー」 54/62 ◆1ImvWBFMVg [sage]:2014/06/01(日) 01:45:45.10 ID:w/v72zIfO
った。恐らく噂話を真実が含まれていると疑っているのかもしれない、少女はそう思
った。
「わぁー……」
だがもちろん真実を書いてしまうわけにはいかなかった。一度書いてしまえば全て
を一から白状しなければならないし、またそれを信じて貰えるとは思えなかった。
終わりが見えなかった。何もない砂漠にずっと砂を落とし続けている感覚。自分を
形どっていた枠が曖昧になり、砂として落ちていく。
「駄目。諦めたら駄目。そこで終わる。絶対駄目」
だが恐らくこのまま芸能界を引退させられるのだろう。そうなれば自分はどうなる
のか。ゲームの設定すら破綻する。
分岐の一つとして処理されるのだろうか。バッドエンド。見るのも嫌な文字だ。か
つての少女にとっては何でもない単なる一場面だったが今になると、とてつもない恐
怖を伴う結果として認識に染み込んできた。不安になった少女は堪らず男のパソコン
にメールを送ってみた。だがもちろん少女の部屋の回線は繋がって居なかった。
その時、ポンという軽い機器の捜査音と共に、画面上にいつの間にかソーシャルゲ
ームのウィンドが開いていた。
「え、回線も繋いでないのに」
キャラクターと吹き出しが浮かび上がってきた。さらに驚くべき事に、そこには懐
かしすぎる顔があった。
『やぁ、久しぶりだね』
「ルクル!ルクルだ!……え、まさか本当にあなたなの?」
少女は感激のあまり、声を出して画面に話しかけた。でも本当に少年が訪れるとは
夢にも思っていなかった。
『また泣いてないかと思ってね。さぁゲームを始めよう』
758 :アイドル「兄は私のマネージャー」 55/62 ◆1ImvWBFMVg [sage]:2014/06/01(日) 01:49:26.78 ID:w/v72zIfO
なるほど。少女は上手いと感心していた。こうやって宣伝して広めているのだと改
めて知った。
だがゲームはなかなか始まらなかった。少女が困惑していると、急にゲームキャラは
姿勢を崩して砕けた口調で話し始めた。
「え、泣いてないの?相変わらず気丈だなミューは。少し泣くぐらいじゃないと女の子は可愛くないんだがな」
懐かしい声が再生された。だがそれより何より、少女はその懐かしい憎まれ口に思
わず声を上げてしまった。
「あっ!……ルクル……!」
「久しぶり。元気そうで何より」
「本当に来てくれたんだ……!」
少女はもはや涙を堪え切れなくなっていた。そこで少年は煩わしそうに二三度手を
振って、苦笑いをした。
「あーはいはい。感動の再会は終わってからにしよう。くさいのは苦手だしな」
間違いない。本物の少年だった。でも少女にはまだ事態がよく分からなかった。
「え?終わる?……まさかゲームの世界に帰ろうって事?」
「あー、まぁそれも考えなかった訳じゃないけどね。でも魔法陣に掛けられた契約の
内容からすっとさ、多分無理なんじゃない?」
少年はなるべく曖昧な表現を使い、言いにくそうに言葉をぼやかしていた。だが少
女には何の事かさっぱり分からなかった。
「内容?なんでダメなの?」
「おいおい……ミュー。今のお前があるのは自分の願い事だろ。忘れたのか?あの時
ミューは恐らく『現実世界に行きたい』って心の中で強く願ったはずなんだ」
「あ……」
759 :アイドル「兄は私のマネージャー」 56/62 ◆1ImvWBFMVg [sage]:2014/06/01(日) 01:51:42.50 ID:w/v72zIfO
確かにその通りだった。少女は男が少女を復元しようとしてる姿を見て、強く現実
世界に惹かれたのだ。
男に現実の世界で生身の人間として会ってみたかった。そう、それは間違いなく、男
ではなく少女の願い事だったのだ。
「だからさ。ミューの方はもう叶ってるだろ。後はこっちの方に『ゲームの続きをし
たいだけだ』ってバカ野郎を呼んで、ゲームの世界でクリアさせれば魔法陣の契約は
終了ってことさ」
そこで少年は嬉しそうに小気味よく指を鳴らし、契約が煙と共に消える手振りを真
似て見せた。ただ少女はその時まるで別の事に気を取られていた。
「バカ野郎って……え?もしかして……ツグムさんの事?」
少女は自分の言葉に、今にもモニターに張り付かんばかりにその身を乗り出した。
「ねえ!まさかツグムさんがそっちの世界にいるの?ねえルクル!」
「あーはいはい。居ますよ。楽しくゲームやっております。まぁ心配しないで二三日
待っててよ。あのお[ピザ]ちゃんでも流石にクリアするだろうからさ」
そう言うと少年は会話を切り上げて、足早にウィンドウを閉めて帰ろうとした。そこ
で少女が叱責するように少年の名を呼んだ。
「ルクル!」
「あー……。見たい?はいはい。まぁ見たいだろな。しかし何やってんだろね俺も。
どうぞごゆっくり」
少年が別のウィンドウを開くと、そこには少女が出てきたゲームの世界で懸命に動
く、男の姿があった。
「あ……!ああっ……!」
汗まみれで必死にクリアを目指し、東奔西走している男の姿が見えた。それは、普
段の男の姿からは考えられない物だった。男はまるで掛け声か声援の如く、ずっと少
760 :アイドル「兄は私のマネージャー」 57/62 ◆1ImvWBFMVg [sage]:2014/06/01(日) 01:56:31.56 ID:w/v72zIfO
女の名前を必死に呼び続けている。
『ミューー!待ってろ!』『ミュー!ミュー!今行くから』
少女はモニターに手を伸ばして男の映像にすがる様に触れた。
「……ツグムさん……!」
ゲームの中の世界で、男がふと不思議そうな顔をしていた。看板以外の場所から声
が聞こえた気がしたのだ。しかもお兄ちゃんとではなく名前で呼ばれていた。
そこで男は一面のガラスを見た。するとそこにはとても大きな少女が、泣きながらこ
ちらに手を伸ばしていたのだ。
「ミュー?……もしかして現実のミューなのか?」
少女はガラスの向こう側でしきりに頷いている。間違いなく彼女だった。男はガラ
スに駆け寄り、手を立て掛けて必死にガラス越しに少女を呼んだ。
「ミュー!大丈夫か?具合は?倒れたって?ミュー!待ってろよ!すぐクリアするか
ら!」
少女は額をガラスに付けて男の名前を呼んでいる。男はガラス越しに抱きしめる様
に身体を広げた。
二人は泣き止むまでいつまでもそうして互いの名を呼び合っていた。



"""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""


昼。男の昼は、日曜も寂しく一人で机の上で寝ている場面から始まった。
部屋の中はまるで植物園の如く、サボテンがそこかしこに所狭しと並んでいる。パソ
コンのモニターには地味な画面が写っていて、ゲーム画面には見えなかった。
そんな昼過ぎ、ようやく男は深い眠りから覚め顔を上げる。
「ふぁ……んー」
男は欠伸をしながら、寝ぼけ眼のまま、なんとか身体の強張りを取ろうと必死に伸
びを繰り返した。しばらくは回転イスの軋む音だけが部屋に響いていた。窓からは太
陽の光が斜めに差し込んでいる。
761 :アイドル「兄は私のマネージャー」 58/62 ◆1ImvWBFMVg :2014/06/01(日) 01:57:39.69 ID:w/v72zIfO
「ミュー……なんかいま変な夢を見たんだよ。疲れてるのかな?」
男はかつて少女がいつも座り込んでいた、窓際の一画に声を掛けていた。だがなか
なか少女の返事は返って来なかった。まだ意地悪く笑いながら見つめてでもいるのだ
ろう。男には見なくても分かっていた。
のんびり少女の返事を待った。何時まで返事は返って来なかった。
「ん……?なんだよ、日曜日だから出掛けたいのか?……すぐに用意するよ」
だがもちろん、そこに少女の姿はなかった。
「……あれ?」
男はしばらく無言で床を眺めていた。男には少女の笑顔が見える様な気がした。幸
せな夢から覚め、一人である現実が身に沁みてくると、男は椅子に深く沈み込んだ。
一人では何にも出来ない。男はそう思った。ひどく少女に会いたかった。
「ミュー……」
その時、パソコンの画面が一人でに起動した。だが男は特に驚いた様子もなく、切
り替わっていくモニター画面を呆然と眺めていた。
「なんだ、もっと驚けよこのブタ野郎。せっかくこうしてルクル様が出てきてやった
と言うのに」
ソーシャルゲームの画面が開き、美少年が憎たらしい顔付きで登場していた。
「やぁ!会いたかったよルクル……。元気だったかい……?」
男のモニター画面をジャックした少年は口をへの字に曲げて不機嫌そうに立ってい
る。だが男はひどく懐かしそうに少年の声を聞いていた。
「ケッ……。お前の顔さえ見ないで済むなら、もっと元気で過ごせるはずなんだが
な」
少年はあくまでも舌を馬鹿にしたように突き出して、口汚く男のことを罵っている。
それでも男は懐かしそうに少年に話し掛ける事を辞めない。どうやら男は少年に頭が
762 :アイドル「兄は私のマネージャー」 59/62 ◆1ImvWBFMVg [sage]:2014/06/01(日) 02:01:15.51 ID:w/v72zIfO
上がらない様だった。
「バカ野郎が……本当アレだなお前は。昼間から部屋で一人辛気臭い顔なんかしやが
って」
少年の少し苛立った表情に、男は申し訳なさそうに笑っている。
「窓際見つめて『ミューちゃーん……!ウエーン』ってか?しっかりしやがれこの
豚!もう一辺こっちでシゴいた方がいいんじゃねえか?」
「そっか……。いやでも本当にそうだな……」
どうやら少年はガラスの向こう側から監視し、ずっと男の近況を追っていた様だ。
ほぼストーカーに近いが、少年に言ったら最後、どんなことを言われるか分かった物
ではなかった。
「で?用事は?わざわざ人のゲームに土足で上がりこんで、ギャーギャー騒いでただ
ろが」
「なんだよルクル……、あれやっぱり気づいていたのか……」
「アホか。回線繋がってる所で勝手に話し出したら、バグ扱いされて処理されるだろ
が。もっと気を使えドアホ」
「なるほど。よく考えなかった。ごめん……」
「しかしミューもお前も、どうしてこう後先考えずに動けるのかね……。無謀な行動
ばっかでさ……。もうアレだよな、天性の英雄か単なるバカのどっちかだよな」
「はは……。ひどい言い方だな」
でも実際に少年の言うとおりだった。男はもちろんだが、少女にはどこか特に無鉄
砲すぎるような帰来が度々見受けられた。
「本当に……。まったく、考えなしに突っ走りやがって……。あのバカ野郎は」
少年はどこか半分諦めてるかの様に少女のことを口にした。だがその時、男が急に
763 :アイドル「兄は私のマネージャー」 60/62 ◆1ImvWBFMVg [sage]:2014/06/01(日) 02:02:37.95 ID:w/v72zIfO
沈黙したまま暗い表情でしだいに翳りを見せる様になった。顔を俯けたままいる。
「おいおいなんだよ……。いや待てコラ。は?あのさ、なんでお前がそんな顔してる
んだよ」
「だってさルクル……本当にこれで良かったのかなって……つい考えちゃうんだよ」
うつむいたままの男。後ろ向きな考え方をする癖がどこかにまだ抜け切れていない
様子だった。
「こんな俺の為に、あの素晴らしいミューが犠牲になるなんてさ……なんか間違ってない
かな?って……」
その時少年が、恐ろしい形相で男を睨みつけてきた。
「あ?犠牲だ?まさかテメエ。ミューが後悔してるなんてことを考えてんじゃないだ
ろうな?だとしたらテメエはそれこそ真性のクズ野郎だからな」
「ルクル……」
「ミューが一番大切なのはな、自分じゃないんだよ。それぐらい分かるだろうが。お
前がそんな風に考えることがな、あいつにとっては一番の侮辱になるんだよ」
少年は怒りを声で押さえつける様に、低くゆっくりした声で話した。
「お前はお前で、自分に出来ることを必死で考えろ。いいかこのブタ野郎」
男は少年になんと言って感謝すべきなのかそれさえ分からなかった。自分の気持ち
をありのまま話すことにした。
「ありがとうルクル。本当に、本当にありがとう。君がいなかったら俺は」
「はぁーあ……。なんでお前に感謝されなきゃいけないんだよ。お前なんかな……。
まぁいいや。もう戻らないとまずい」
「うん。分かった。会えて嬉しかったよルクル。なぁ、また会えるだろ?もっと頻繁
に訪ねてきて欲しいんだ。ゆっくり話もしたいしさ」
764 :アイドル「兄は私のマネージャー」 61/62 ◆1ImvWBFMVg [sage]:2014/06/01(日) 02:04:11.13 ID:w/v72zIfO
男がそう言うと、少年は中指を突き立て、憎まれ口を叩いていた。
「お前がこっちの世界に来い、このブタ野郎。泣き言なんか言わない様に徹底的にシ
ゴいてやる」
「分かったよ。楽しみに待ってる」
「ケッ。ところでお前はどうするんだ?また部屋でビービー泣くのか?」
「あぁ……ちょうど天気もいいしね……ちょっと顔見せにでも行ってくるよ」
男は空を仰いで、遠くに流れる雲を見つめていた。高い空には良さそうな兆しは浮
かんでいなかった。それでもこうして毎日やって来ていた。
「そうだな……あいつ寂しがり屋だったからな」
少年がモニターから外れて行きながら、自分が一番寂しそうに少女の事を語ってい
る事には気づいて無いようだった。
少年と別れを告げると、男はバスに乗った。一時間をかけ街が一望出来る、見晴ら
しのいい丘のある高台の所まで向かう。
バス亭に辿り着いた男は、バスを降りて一人で歩き始めた。男の手には花束が抱えら
れていた。
閑散とした建物のない野原に敷かれた道路には、僅かな人影さえあまり見えなかっ
た。車の通りも少なく、バスが行ってしまうともはや何の音もしなくなってしまっ
た。
心地よい風が、閑散とした場所で手にメモを持った男の、すぐ側を通り抜ける。
「静かだな……」
なぜこういう場所は、ひどく静かな所に造られているのだろうか。男は少女が静か
な場所と同じくらいに、また賑やかで活発な場所と言う物も好んでいる性格である事
を熟知していた。
少女が気に入ってくれているかどうかが心配だった。男には少女がこの丘の事をど
765 :アイドル「兄は私のマネージャー」 62/62 ◆1ImvWBFMVg [sage]:2014/06/01(日) 02:05:36.14 ID:w/v72zIfO
う思うか、しつこく男に聞いてくる様がすぐに思い浮かんだ。
自分は好きだったが、少女にとっては物足りないかもしれない。すると少女はまた
どんな風に物足りないと思うか聞いてくるはずだ。それは少し難しい。少女は変わっ
ているからだ。
少女はいつか自分が砂漠に生きる突然変異の動物みたいだと話していたことがあっ
た。その時は意味が分からなかったが、常に変化を求めて動き回る活発的で衝動的な
生命体と言うのは案外少女にはぴったりなのかもしれなかった。
そして恐らく、彼女にとって自分はサボテンなのだろう。その考えに思い当たった
時、そこで割りとすんなり受け入れられていたのがサボテンの例え方だった。
男は歩きながらも、クレイアニメの歩くサボテンが、同じ様に道を歩いていく場面を
思い浮かべる。ぴったりかもしれない。
あまり格好付かない部分は誤魔化そうとするサボテン。いつも頼りない失敗だらけの
サボテン。しかしそれでも多分優しい突然変異は快く許してくれるだろう。
なぜだろう。なんで自分はもっと強くなれないんだろう。男は悲しいほど強くそう思
っていた。どうしてこうも弱く、最後の棘さえ脆弱のまま、頼りない存在で生きてい
るんだろう。男はつくづく自分の無力さに苛まれていた。
その棘は大事な何かを守る為にあったはずなのに。生きる事を怠ったっていた所為
で、いつしか棘さえ弱らせてしまっていた。
気づくと街並みが見える箇所まできていた。そうこうしている間に着いてしまって
いたようだった。
男は遠くに見える街並みを覗く、見晴らしのいい中庭を通り抜けていった。すると
そこで墓地が見えた。男は慣れた足並みで先を急ぐ。
入口から広くない墓地の通路に、赤ん坊を抱えた新婦の姿が見えた。赤ん坊と一緒に
散歩中のようだった。
766 :アイドル「兄は私のマネージャー」 63/62 ◆1ImvWBFMVg [sage]:2014/06/01(日) 02:06:54.25 ID:w/v72zIfO
その生まれたばかりのまだ目も上手く開いてない赤ん坊を、愛おしそうに胸に抱く新
婦の姿は、まるで幸福の象徴そのものの様に男の目に飛び込んで来た。
「なんて可愛いんだろう。そして、なんて幸せそうなんだろう」
男はついその場で自分の思いを口に出してしまっていた。そこで新婦たちが男に気
づく。それから新婦は不思議そうに男に対してこう返事をした。
「あなたは幸せじゃないの?」
赤ん坊をあやしながら、そう笑顔で聞いてくる。その表情は幸福と自信に満ち溢れ
て輝いていた。
「俺は……強くなりたい。強くなりたいんだ」
男は、自分でもそれが答えになっていない事を重々承知しながら、それでもじりじ
りと膨らんでいく己の不安と恐れに向き合い、必死で歯を食いしばっていた。
新婦はそんな男の様子に、ひどくおかしそうに笑っている。そして空いてる片手でポ
ーズを作ると、可愛いらしい声で男を叱責した。
「もう!じゃあ早く強くなってよね!このバカ兄貴!」
男はもはやそれになんて答えればいいか分からなくなっていた。赤ん坊の姿は何も
かもが愛おし過ぎて、抱き抱えたらそのまま押し潰してしまいそうで怖かった。もち
ろん少女に馬鹿にされそうで言えなかった。
「幸せだ……!怖いくらい幸せなんだ……!でも君はどう?俺だけなのかな」
「じゃあ私も幸せ。貴方が不幸なら私も不幸。それで分かった?」
「いやでも」
「キスでもされたいの?じゃあしてあげるからコッチ来なさい」
少女は片手を男の体に回し、赤ん坊を挟む様にして抱きかかえる。流石の男も逃げはしなかった。
「キスはダメだ。もし君が病気にでもなったら。そうだ病院は?駄目だよ!はやく安
767 :アイドル「兄は私のマネージャー」 64/62 ◆1ImvWBFMVg [sage]:2014/06/01(日) 02:08:00.33 ID:w/v72zIfO
静にしてないと。あ、サボテンの花を持ってきたよ。あとさ、ルクルに会ったんだ!
元気そうで……元気といえば、赤ん坊が泣いてなくない!?泣かない子は体力がつか
ないって」
急に喋り出した男の様子に、少女の顔に困った様な笑顔の花が咲いた。男は彼女と
生きていける事の喜びを噛み締め、墓場に入るまで支え続ける事を密かに誓ってい
た。

《了》
768 : ◆1ImvWBFMVg [sage]:2014/06/01(日) 02:12:48.69 ID:w/v72zIfO
以上、投下終了しました。
結局64レスでした。テキストポイよくわかんないけど後で自分でやるのでまとめは放置してください

しかし投下に二時間掛かった……書くのよりしんどいかもしれん
769 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/06/01(日) 02:21:47.70 ID:w/v72zIfO
あ、あと参加者乙々。
前回のから感想書いてくるか。
770 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/06/01(日) 04:35:12.56 ID:vNTJR/C4o
時間過ぎてしまいましたが、時間外ということで品評会作品を投稿してもいいですか?
771 :ブラック・アウト 0/10 ◆xaKEfJYwg. :2014/06/01(日) 04:42:48.62 ID:vNTJR/C4o
10レス予定で投下します
772 :ブラック・アウト 1/10 ◆xaKEfJYwg. :2014/06/01(日) 04:45:56.03 ID:vNTJR/C4o
「今日は帰りたくないんです。だから」
 彼女の好きな梅酒のにおいがする。梅酒の甘いにおいは凍えた白い吐息とともに夜の空へ散っ
ていく。
「……だから?」
 オレンジ色の外灯の下で彼女は立ち止まる。私も立ち止まって彼女から吐き出される言葉を待
つ。どうやらお互い二十五になった今でさえ、子供のように欲しい言葉を期待してしまうどうし
ようもない私のようだ。甘ったるくなってしまったその唇で飾らない愛の言葉を囁いて欲しい。
 彼女はダウンジャケットの両ポケットに突っ込んだむき出しの手を取り出した。私は無意識の
うちに彼女の柔らかな素肌から、手のひらの先から、かすかに動く指先から彼女の体温を想像し
てしまう。私はカシミヤのマフラーに口元を深くうずめた。
「ねぇ、ユキノ。私酔ってます」
 彼女の手のひらは空中でしばらく静止する。
「そう」
 その指先は往き場を失ってそのまま、私のマフラーをくるりと回りダッフルコートの胸元にす
とんと落ちつく。そうして私の背中に抱きつくと、彼女のはにかんだどもり声が聞こえた。「彼
女が緊張している」なんてちっぽけな事実が私の胸を満たす。耳元で吐かれる彼女の息が私のう
なじをくすぐって堪らない。私だって帰りたくないのよ。シラフになりたくないの、あなたもわ
かるでしょう。あと少しだけ大好きなあなたの梅酒のにおいを味わって酔っていたいの。でも――
「私、酔うと記憶を失くすクセがあるんです。知ってました?」
「知ってる」
「聞いて欲しいことがあるんです」
「知ってる」
「まだ何も言ってないです」
「それも知ってる。……重い、背中から離れて」
 ――だって冬の北海道は冷える。まだ冬は始まったばかりなのだ。酔いだってなんだってすぐ
醒めてしまう。このよこしまなひと時が彼女の心に残らないとは限らない。
 遠い昔の私は、いつだって優れた彼女に甘えてきた。二人だけの空間でただひたすら彼女の大
きな体に抱かれて甘えるのが好きだった。なんでもできる彼女。勉強だって運動だって、人付き
合いだってなんなくこなして、皆の憧れの存在だった。つまらない日常のなかでもヒーローだっ
た彼女は、甘える私をいつだって優しく見つめていた。私を慰める術を知り尽くしている彼女は、
それをいつだって最優先にした。私の知りうる人物のなかでは他の誰よりも強かった。
「もう一軒回りましょう。今度は酸っぱいお酒飲みたいです」
「仕事は?」
 ヒーローだった彼女は、私から素早く離れるとあの頃と変わらない微笑みを見せる。
「先月辞めました。また無職です。文無し待ったなしです」
「あんたそれでいいの」
「お金は無いと困ります。こうしてユキノと飲めなくなっちゃいますから」
「ちがう。十年とか、二十年先のこと」
「考えたことありません。だって――」
 遠くで揺れる地下鉄のシェルターの音が彼女の次句を隠してしまう。この時刻なら、たぶん最
終の電車だろう。
 私は彼女の言おうとした言葉が知りたかった。確認したかった。しかし彼女の言おうとした言
葉は、最終電車と一緒にどこかへ行ってしまったようだった。
773 :ブラック・アウト 2/10 ◆xaKEfJYwg. :2014/06/01(日) 04:51:01.75 ID:vNTJR/C4o
 ▽

 私の椅子が、教室のビニル床を擦りつけて不快な音を鳴らす。
 座学中に突然立ち上がった私を、教室じゅうの生徒達が不思議そうに見上げている。教壇のむ
こうで教科書に視線を落としていた教師も顔を上げる。私は室内のありとあらゆる視線を一手に
集めてしまったようだ。
「どうした? トイレか?」
 私は、教師の問いに答えないまま一人の女生徒に視線を向ける。
 彼女は、その他の生徒のように見上げることはせず、英語の教科書に目を落とし続けている。
黒板に書かれている英文章と教科書の例文を交互に見て、教師に指示された文章をどうにか読も
うと努力していた。まるで私が立ち上がったことなんて、問題じゃないかのような態度だった。
今の彼女のなかでは、私のことよりも、たかが高校二年の英文の和訳が問題のようだ。
 ――どうして私に視線を向けないの? どうして背を向けたままなの?
 私は彼女の名前を言おうとした。彼女に不満があるのだ。
「……お手洗いに行ってもいいですか」
 でも言えなかった。どう言っていいのか、くしゃくしゃになった気持ちを表現する術を私は知
らなかった。
 ばつが悪くなって、ドアまで歩き出す。ドアを力任せに開けて、また大きな音を響かせる。そ
の威圧的な音が鳴り止むまで、その場に立ち止まってみた。
 彼女の後姿をちらと見やる。もしかしたら今度こそ私のことを見ているかもしれないという淡
い期待を抱いたからだった。
 ……最後の悪あがきは叶わず、それでも彼女は教科書と睨めっこをしていた。
 教室を飛び出した私を追うものはなかった。どこか納得ができず、私は廊下を少し歩いてすぐ
に後ろ髪を引かれたように立ち止まってしまう。
 背後にある置き去りにした教室から、教師の落ち着いた声が聞こえる。
「ところで八重宮、まだ和訳は終わらんのか」

 ▼

 私と八重宮水佳は小学五年生のときに同じクラスだった。小学五年と六年の二年間が、私たち
の何物にも変えがたい大切な日々だった。それまで接点のなかった私たちは、ある日の体育の授
業で初めて話す間柄になった。短距離走のタイムを測定している最中、私は激しく転んで膝を擦
りむいてしまった。痛いことは痛かったが、そのとき膝を擦りむいた痛みよりも、「良い記録を
出さなければならない」失敗できない授業で大失敗をしてしまったことに私はパニックになって
しまった。コースの真ん中で放心した私の手をどこからともなく現れ、引っ張って保健室に連れ
て行ってくれたのが八重宮水佳だった。彼女は保健室につくまで何も言わず、消毒液と絆創膏の
場所を探り当て、私の膝頭に手際よく貼ってくれてはじめて口を開いた。なんと言ってくれたか
覚えていないが、彼女の言葉を合図に決壊したように泣き出してしまったのは覚えている。
 家庭の事情で少し離れた中学校へ行かざるを得なくなってしまった私は、彼女に小学校の卒業
式のあと私の部屋に泊まりにこないか、とお泊り会のお誘いをした。彼女は快く承諾し、私たち
はその夜一緒の布団でずっと友達でいると約束をした。お互いに「あなたは大事な人」と確認し
たのだった。
 その日の夜、さよならを告げた彼女の顔を見て玄関で泣き出した私に、微笑んで手を振ってく
れた彼女の姿を今でも思い出せる。
 しかし完璧な離れ離れではなかった。中学校模試の高得点者欄で度々彼女の名前を見かけたか
らだ。彼女の名前を見つけるたびに、私は勉強に打ち込んだ。高校の入学式で彼女と再会するた
めに、できるだけドラマティックに再会するために勉強を続けた。ただ彼女と供にいる時間を願っ
て、中学校生活を過ごした。
 結果を先に言えば、高校の入学式で彼女と再会することは無かった。私は学区内で一番の進学
高に入学することはできたが、そこに彼女はいなかったのだった。彼女は学区内で一番ぱっとし
ない学区内唯一の女子高に入学していた。
 私はそれを小学校の友人に聞いて首を傾げた。友人は声を潜めてこう言った。
「家族で事故に遭ったんだって。お父さんとお母さんが死んじゃって、ヤエノミヤさんもしばら
く目を覚まさなかったの。それから、ね。すごいキビキビしてたユウトウセイってやつだったけ
ど、今はぜんぜん。それでもいい子っちゃあいい子なんだけどね。どうしたのかな」
 はやく、はやくあなたに会わないと、と私は思った。

 ▲

 こうなっては仕方なく、トイレに向うことにした私はトイレの場所がどこか分からないことに
気付いた。酷く方向音痴だったので、長い間彷徨ってしまった。
 この女子高の校舎は、どうやらそれなりに歴史があるみたいで、古い校舎を第一校舎としてそ
の周辺に三つの校舎が繋がっていた。曲がりくねっている廊下を歩いていくうちにトイレのマー
クが見えるだろうと思っていたが、そんなことはなかった。この学校は増改築を繰り返したせい
で意図せず迷路のようになってしまったようだ。そのせいで、人通りのなく電灯もついていない
通路にて、三年とおぼしき女生徒が一年とおぼしき女生徒に暴言を吐いている嫌な場面にも出く
わしてしまった。
 終いには途方も無くなって、来た道を引き返すことにしたのである。
774 :ブラック・アウト 3/10 ◆xaKEfJYwg. :2014/06/01(日) 04:54:06.94 ID:vNTJR/C4o


「笹草さーん」
 教室向かいの階段に腰を下ろし、踊り場の採光窓を眺めていると誰かに呼び止められた。振り
向くと、見た覚えのある桃色のヘアピンをつけた短髪の女生徒が立っていた。
「あなたは……」
「大川あげは。あげはって呼んでね」
「私は、」
「知ってるって。同じクラスでしょう。そうでなくても、笹草さんってとぉーっても有名なんだ
から」
 あげはは、マスク越しから発せられるくぐもった声色でそう言って、私の隣に腰を下ろした。
彼女の切りそろえられた前髪が揺れる。ちらとおでこのあたりにシールみたいなものが張り付い
ているのが見えた。
「……どう有名なのやら」
「転校生でしょう」
「それって、そんなに珍しいことなの?」
「ただの転校生じゃないよー? あの頭いい南高校から、なぜかこんなへんぴな学校に転校して
きた謎の転校生。成績優秀、スポーツ万能、美人でスタイル良し。男子が居たら、放っておかな
いね。きっと」
「……」
「ホント、漫画みたい」
「それはどうも」
 あげはの前髪から覗くシールのように見えるプリント柄の絆創膏が、やけに不自然に映る。彼
女は私の視線に気付いて、おでこを手のひらで隠した。
「さっきの授業中さ、ずっと八重宮さんのこと見てたでしょ」
 隠されてもなお、私はおでこを凝視し続ける。
「その絆創膏は?」
「これはいーの」
 今度は彼女の口元にあるマスクに視線を落とす。
「風邪気味なの?」
 彼女は明らかに嫌な顔をして目を逸らし、すぐさま強引に話題を戻す。
「じっと見てたでしょう? 白状したまえ」
「なんの話?」
「八重宮さん」
 私の呼吸は勝手に止まってしまう。
「やっぱり。八重宮さんと笹草さんの間に何かあったのかなーって思ってさ。追いかけてきちゃ
った。すっごい迷ってたねえ、トイレなんていくつもあったのに。考えごとでもしてた? でも
歩くの早いんだもん、案内しようと思ったけど、途中で見失っちゃった」
 ぐいと擦り寄ってくる。あげはの顔をようく見ると、目元が腫れているのがわかった。
「笹草さんと八重宮さんの間に接点が見えないから、みんな不思議がってたよ? 八重宮さんっ
てトロイからさ、笹草さんに何かしでかして、目ぇ付けられたんじゃないかとか……」
「違うわ」
「そうなの? なら私たちが気にしすぎなのかな。八重宮さんって人気あるからさ、じぃっと見
てる人多いんだよ。ファンクラブまであるし……っていっても同じクラスの宮古さんと、山岸さ
んと……」
 あげはは指を折りながら日本人の苗字を挙げ続ける。私は溜息を吐いて、その行為をやめさせ
る。
「どこが人気なの。勉強だってできないみたいだし、だいいち『トロイ』んでしょう?」
「勉強なんてできなくても、いいじゃん」
「別に男っぽいってわけでもないでしょう」
 彼女は、そんな愚問始めて聞いた、とでも言うように饒舌に語りだす。
「あのね、優しくて、包みこむような淡い目がいいの。体が大きめだけど、威圧感ないじゃない?
全体をしっかりと見てる」
 まるでお気に入りのアイドルについて話すように、楽しそうに、嬉しそうに言葉をつむいでい
く。確かに本当にそんな人間がクラスにいたら、人気者だろう。彼女は饒舌さを失ってようやっ
と、お仕着せでない言葉を呟いた。
「いつだって、その目で困った人を見つけて、手を差し伸べてくれる」
 私は、彼女のおでこに張り付いた絆創膏や、腫れぼったい目元や、何かを隠すためにつけたで
あろうマスクを見てほくそ笑む。
「まるで手を貸されたことがあるみたいな言い方ね。そんなこと一度でもあるの?」
 彼女は答えない。いや、きっと答えられないのだ。
「そう。ヤエノミヤって人は、そんなにも人気なのね。でもここは女子高」
「関係ないよ。憧れるのは勝手でしょう」
 言葉が途切れる。あげはの肩が震えている。
「……そう。いじわる言ってごめんなさい。あんまりにも、私が抱く『ヤエノミヤさん像』とか
け離れているから驚いてしまって。そうね、ヤエノミヤさんはいつも、あげはさんに良くしてい
るのね」
「……そうだよ」
 あげはは自信の欠片もない頷きをひとつつく。
「優しいんでしょう? ファンクラブが出来るほどに」
「……勘違いだったみたい」
「良く分からないけど、そうみたいね」
 私が微笑んで返すと、あげはは立ち上がって私を見下ろした。
「笹草さんはちっともだ」
 彼女はそういって、私に背を向けて教室に戻っていった。

775 :ブラック・アウト 4/10 ◆xaKEfJYwg. :2014/06/01(日) 04:57:03.19 ID:vNTJR/C4o


「笹草さん。どうですか? 学校には慣れました?」
 彼女は微笑んで世間話をもちかけてくる。
「……」
 美術教室の周りを見渡すと、誰もが思い思いに、木造りのブロックを木目調の薄い板の上に置
いていた。今後の授業で、このブロックをボンドで固定し、色を塗る。「未来」をテーマにした
美術の立体の授業だった。
 向かい側に座っている彼女の板には、まだ一つもブロックが置かれていなかった。ブロックは
板の傍に丁寧に整列されている。
「笹草さんは凄いですね。それは街ですか?」
 彼女は綺麗な指先で、私の手元に置かれた板を指し示した。確かに、ブロックを家と見立て配
置していた。街といわれれば街なんだろう。合ってはいるが、私は頷きもしなかった。
 彼女は構わず話しかけてくる。
「ここに川を流して、ここにブロックを積み合わせて高い塔を作る。そしたらこの街そっくりだ。
笹草さんは、勉強も出来てセンスもある。スポーツまでできますね……」
 私は、彼女の何も置かれていない板と、その傍に整列させられたブロックを眺める。
「だから?」
 口調がきつめになってしまう。こんな反応を彼女にしたいわけじゃないのにだ。
「さ、笹草さんは美人ですし……本当に憧れてしまいます」
 唇を噛み締める。彼女の表情を確認すると、それでもまだ微笑んでいた。堪らなくなって、配
置されたブロックを板の上から全て払い落とした。落ちたブロックは床を跳ねて飛び散る。
「さっきから――」
 彼女は目を丸くして、口をぽかんと開けた。なぜ私がこんな行為をしたのか納得いかないのだ
ろう。彼女はワンテンポ遅れて「あっ」と小さく漏らした。その「あっ」という言葉はきっと、
気の障ることを言ってしまったのではないか、という気付きの声だろう。でも違う。私は――
「笹草さんって、どうして呼ぶの? ミズカは私のことを忘れたの?」
 彼女は、私など見ずに、落ちて散らばったブロックを丁寧に拾い集める。私はその後姿を見下
ろす。
「ねぇ、昔みたいにユキノって呼んで」
 唇が震える。気持ちと折り合いがつかなくなっていく。
「私を見てよ。私、ミズカに何かした? したなら謝るわ。ねぇ」
 私の涙声に反応して、とうとう生徒たちが一斉に私達に注目する。
 彼女は拾い集めたブロックを、板の上に置いていく。どうやら私が作っていたものを再現しよ
うとしているみたいで、苦心しながらブロックを一つ一つ置いていた。
「やっぱり私がやると、ダメですね。街にはとても見えない」
 申し訳無さそうに笑う水佳の顔を見て、涙が溢れ出てくる。
「ユキノ……さんが悲しい顔をすると、私、悲しくなってしまいます」
「……」
「そんなつもりじゃなかったんです。お友達になれないかと思ったんですけど……私、ユキノさ
んとお友達になりたくて……あの、気に障ったなら謝りますから」
 彼女は、眉を下げてすまなさそうに頭を下げる。私は違う世界に飛び込んだSF物語の主人公
になったのだ、と思った。眩暈がする。空気が合わない。
 「お友達になりたい」というのが彼女の本心なのだ。私が怒る理由に心当たりがないのだ。本
心から「すでにお友達である」私との時間を無かったことにしたいのだ。
 ――私は何を期待していたの? 私は彼女にどうして欲しかったの?
「なんで。こんなことのために、転校してきたんじゃないのに」
 放心した私は泣き崩れてその場でうずくまった。その際に足を椅子の角で切ってしまう。痛い。
辛い。今までしてきたことが大変であればあるほど無意味になることが辛い。それ以上に、大
切な人だと一方的に思っていたことや、私は彼女の忘れたい過去であることが辛かった。
 ――誰かこの世界から私を救い出して。息苦しいの。溺れてしまうわ。
 そうやって、みっともなくうずくまっている私の手がある手に引かれる。心のどこかにいる冷
静な私が、授業の邪魔だわ、と判断する。そりゃあ避難させるわよね。何処へでも連れて行って
頂戴。ここじゃなければ、どこでもいい。
 私の手を引いたのはヤエノミヤだった。彼女は、何も言わず手を引っ張って美術室から飛び出
す。私は知っている。この後、私は保健室に連れて行かれるのだ。そして、彼女は消毒液と絆創
膏を探り当てる。私のおでこに消毒液を塗って、絆創膏を貼り付ける。そして「びっくりした?」
と笑う……彼女を期待している。
 目的地は予想通り保健室であったが、彼女は何も探り当てず、私をベットに座らせるとこの部
屋を出て行った。養護教諭はいなかった。

776 :ブラック・アウト 5/10 ◆xaKEfJYwg. :2014/06/01(日) 04:59:22.02 ID:vNTJR/C4o


 授業の終わりを告げるチャイムが聞こえて、保健室に入ってきたのは養護教諭ではなく、見知
らぬ女性徒だった。彼女は周囲をちらとも確認せず、扉を閉めてそのまま真っ直ぐベットに座る
私まで近づいてきた。
「水佳と同じ中学校だった吉野です」
 私はこくんと頷いた。
「話は水佳から聞いた。あの子ずいぶんと慌ててた。状況が上手く飲み込めなかったけど……き
っと笹草さんは水佳と小学校のとき仲良かったんでしょう? それで大体把握した」
 この部屋はとても涼しい。でも、私の体温は徐々に上がっていく。頭はぼぅっとして、これか
ら聞かされるであろう事実を受け入れまいとしている。吉野は口を開いた。
「なんであれ、水佳は小学校のことは綺麗さっぱり忘れている。事故に遭ったあの日から。それ
どころか、両親のことさえも忘れてしまっている。でも、彼女自身にはどこも悪いところはない。
成績は悪くなったみたいだけど、それであの子の全てが変わったわけじゃない。だから、今ま
でのことは忘れて、今目の前にいるあの子と仲良くして欲しい」
「あなたはヤエノミヤさんとお友達なの?」
 当たり前なことを聞いてしまう。
 吉野は頷いた。
「あの子は今、私の叔母がやっているアパートに下宿している。私もそこにいるから、良く話す。
友達と聞かれれば、そうだと思う」
 これほど、遠まわしに肯定されたのは初めてだった。吉野はどこか普通の人と違うところがあ
るみたいだ。言葉の流れが、いたるところでせき止められている。スムーズではない口調。なん
となく、今の水佳を思い出す。
「思い出話ができなくて残念だった。それは素直に同情する。でも、あなたの期待を押し付けな
いで欲しい。これ以上あの子を振り回すのだったら、私は笹草さんを許さない」
 許さない……どうやら私は吉野に糾弾されているようだ。力なく、ええ、と呟く。
「ええ。どうやら私の思い違いだったみたい。私はこれ以上ヤエノミヤさんや吉野さんを困らせ
るつもりはない。大丈夫。大丈夫」
 繰り返し大丈夫と呟いて笑う私を見て、吉野は目を細めた。
「私の知っている大丈夫とは、笹草さんは程遠い。今日はもう帰ったほうがいい」
 微笑みを作ってみたものの、どうやら上手くできていなかったようだ。
「一つだけ教えてほしいの」
「……」
「私はこれからどうしたらいいのかな」
 吉野は私には出来なかった完璧な笑みを浮かべた。
「今日はもう帰ったほうがいい」


 職員室で担任を見つけて、早退するという旨を伝えると、担任は「八重宮となんかあったのか。
そういうのはできるだけ急いだほうがいいぞ」と言った。美術の授業中、錯乱した私のことを、
あらかじめ水佳が担任に伝えたのだろうと推測した。担任は何故か優しく、今日はもういいと
いうことだけ伝えて、受け持ちの教室に戻っていった。担任の椅子の傍に、私の荷物が置いてあ
った。この荷物は、彼女が持ってきたのだろう、と思った。確かに、ヤエノミヤさんは全体をし
っかりと見ている。その通り、今の私には教室に戻る元気は持ち合わせては居ない。

777 :ブラック・アウト 6/10 ◆xaKEfJYwg. :2014/06/01(日) 05:00:36.54 ID:vNTJR/C4o


 私はバス停のベンチで三本目のバスを見送った。その間、どうして彼女に固執していたのだろ
うと考えた。大切な思い出があった。しかしそれは壊れてしまった。今の私の気持ちを上手く一
言で表すなら、喪失感とでも言えばいいのだろうか。要するにがっかりしたのだ。がっかりした
経験なんて数え切れないほどある。お気に入りのマグカップを割ってしまったことや、部屋にぴ
ったりだろうと思って買った本棚が隙間に上手く嵌らなかったこととか。というか、始めから彼
女がどこを受けるかリサーチしとけばよかったのだ。そうすれば変わった彼女にさよならをして、
どこか別の高校で楽しいことを見つけていたところだったのだ。
 思い切って、道路を挟んで向かい側のバス停に乗ってみた。街の中心部に向かう路線だ。駅の
遊び場で男を見つけることにした。
 出来るだけ小柄で細めな……シルバーアクセサリーなんかを見せびらかしている男がいい。
 駅の改札を抜けると、誰でもよくなって、私は手ごろな若い男に声を掛ける。思ったよりも背
が大きめだったが、構わず腕を絡めた。香水の臭さが私を不快にする。そんな私の表情の変化に
気付くわけも無く、男はただ喜んだ。
 その夜、終電では帰れなかった。
778 :ブラック・アウト 7/10 ◆xaKEfJYwg. :2014/06/01(日) 05:03:21.66 ID:vNTJR/C4o

 ¶

 次の日、朝のホームルームが終わると、水佳が声を掛けてきた。私は出来るだけ笑顔を作って、
やり過ごすことにした。
「どうしたの? そういえば、この前はごめんなさい。もうあんなヘンなふうにはならないから、
安心してちょうだい」
 水佳は私の机の前で首を傾げる。
「ヘンなふう?」
 彼女のオウム返しにイラついてしまう。あなたの目には「ヘンなふう」に映ったのでしょう、
と言いたかったがやめにした。
「とにかく、昨日はごめんなさい。ヤエノミヤさんには迷惑かけないようにするから、この辺に
して」
 私は視線を窓に向ける。窓枠の外は山が見える、ただそれだけだった。
 水佳は視線を逸らした私の手を、不意に掴んだ。
「何するの」
「私、反省しました」
 私は唾を飲み込む。
「反省?」
「はい。正直、ユキノさん……」
 水佳は私に目配せをする。まだ呼んでいいのか、という確認のつもりだろう。どうでもよかっ
た。私は頷く。
「ユキノさんの言いたかったことが分かりませんでした。ユキノさんとは違って、私はあまり頭
が良くありません。運動だってできないし、トロイです」
「そうみたいね」
「もしかしたらいつかどこかで知り合っていたのかもしれないです。でも、私あまり覚えられな
くて、忘れてしまっていたのだと思います。あの……」
 私は彼女の顔を眺める。ふと、頭の中である疑問が巡り巡る。
 ――どうして、覚えても居ない私にこの女は一生懸命なんだろう。
 本当に私のことを覚えていないのであれば、急に現れて感情をぶつけてきた私に恐怖している
のではないのか。普通はそんな危険な人物とは距離を置くのではないか。
「ねぇ、なんでそんなに必死なの」
 彼女は困ったように微笑んだ。
「分かりません。多分理由はないです」
「……」
「あの、これ」
 水佳はポケットから絆創膏を取り出して、私に見せた。それはシールのように見えるプリント
柄の絆創膏だった。
「足ケガしてましたよね。まだ手当てをしていないのならこれ使ってください」
 私ですら忘れていたことを、水佳は心配していたようだ。言われて、私は足を確認する。ふく
らはぎに一センチ程度の傷があった。彼女はその傷を認めると、その場で絆創膏を貼った。
「私、よくケガするので持ち歩いているんです。ユキノさん、もう一度じゃだめですか?」
 絆創膏を貼られながら、私はぼぅっと彼女の言葉を反芻した。
「もう……いちど?」
 彼女は楽しげに答えた。
「もう一度、思い出を作りましょう。これ以上ないっていうものをです。確かに、小学校の私と
今の私は違うかもしれません。でも、きっと小学校と違う私とだったら、その頃以上の思い出が
出来るかもしれません。どうでしょう」
 私は苦笑した。何を言っているのだこの女は、と思った。辺りを見渡すと、ヤエノミヤさんの
ファンクラブ会員と思しきクラスメイトがちらちらと羨ましげに見ていた。そうとは知らず、彼
女は得意げに胸を張る。どうだ、参ったか、という様子だ。
 今まで悩んでいた全てのことがどうでもよくなって、彼女のくだらない提案を了承することに
した。
「それが出来れば、それでいいわ」
「出来ます。努力します!」
 今私にとって確かなのは、彼女のくだらない提案に乗ったほうが、男とベッドで一晩ともにす
るより少しだけ面白そうだということぐらいだった。

779 :ブラック・アウト 8/10 ◆xaKEfJYwg. :2014/06/01(日) 05:04:53.55 ID:vNTJR/C4o


 それから、私達は時々二人だけの時間を過ごした。残りの高校生活はあっという間で、やはり
私の思い出のなかでヒーローだった彼女とは違う、新しい彼女と思い出が作られた。喧嘩をして
は仲直りして、そのたびに彼女が謝って私が許した。同級生に告白された私の相談に乗ったのも
彼女で、フラれたときに慰めてくれたのも彼女だった。
 フラれたときや嫌なことがあったときは決まって彼女とお酒を飲んだ。彼女は梅酒が好きで、
私は彼女のために毎年梅酒を作るようになった。それがいつしか楽しみにもなった。
 あっという間に二十五になって、私は市立の図書館に腰を下ろして将来のことを考えるように
なった。しかし彼女は違った。
 彼女は大学にも行かず、資格も取らず、定職に就かず、日雇いの仕事を転々としては生活費を
なんとかやりくりしていた。もうあの頃の彼女はいない。時々思い返す。あの頃の彼女が生きて
いたら、私はどうなっていたのだろう。こうして二人で梅酒を飲むことができたのだろうか。
 今となってはこれで良かったのかもしれない。少なくとも私はそう思っていた。だって、彼女
は私と思い出を作る約束をしたのだから。友達でいつづけるという約束よりも、もっと効力の強
い呪いの言葉を彼女は吐いた。そう、定職につかない限り、呪いが解かれない限り私は彼女と居
続けることができる。

 △
780 :ブラック・アウト 9/10 ◆xaKEfJYwg. :2014/06/01(日) 05:06:23.50 ID:vNTJR/C4o
 最終電車が通り過ぎて、地下鉄のシェルターは鳴りを潜めた。
「もう一軒はさすがに無理ね。私の家で飲みなおす? まだ家にお酒あったと思うから」
 彼女は嬉しそうに笑って頷く。
「まだまだ飲みますよー」
 そうして私の手を引っ張る。私はもう一度マフラーに顔をうずめる。頬が熱くなってきた。ど
うやら私も酔ったみたいだ。


 私たちはコタツに入りながら、ケーブルテレビで放映されている映画を見た。ホラーなのかサ
スペンスなのか判断のつかない邦画でとにかく画面が暗く静かだった。彼女は大きな欠伸をふた
つつく。テレビの右端に、二時と表示されている。
「もう寝る? お酒は今グラスに注いであるので最後です。本日の営業は終了致しました」
「ベッドで寝たいです」
 いそいそとベッドに潜り込もうとする彼女の腕を引く。
「服ぐらい着替えなさい。あんたが着ると思って買っといたあれ。その服は洗濯出しちゃうから。
何日それ着てるの」
「めんどくさいです」
「いいから。言うこと聞きなさい」
 彼女はふくれっつらで、仕方なさげに服を脱ぎ散らかす。私は溜息を吐いて、遠くへ飛んでい
ったねずみ色のシャツを拾いにいった。
 このシャツを着る彼女を良く見る。彼女のお気に入りなのだろうか、なんてどうでもいいこと
を考えながら、そのまま拾った服を洗濯カゴに入れ、彼女のために買ったパジャマを入れた箪笥
を引いた。すると視界が真っ暗になった。
「だーれだ」
「あんたねぇ……」
 耳元で彼女の好きな梅酒のにおいがする。私の胸の鼓動がはやくなっていく。
「私、酔うと記憶を失くすんです。知ってました?」
「今日は面倒なほど酔ってるわね」
「聞いて欲しいことがあるんです」
「もういいわ。なんだっていって頂戴」
「私、小学校でユキノと遊んだこと。覚えてます。卒業式の夜にお泊り会したことも。同じ布団
でずっとお友達でいようって約束したことも、ばいばいのときに泣いたユキノの顔も、それに手
を振ったことも」
「……知ってる」
「いじわるしてごめんなさい」
 私は後から彼女に寄りかかられる。彼女の体重を感じる。まだ視界は明るくならない。暗転。
ブラックアウト。
781 :ブラック・アウト 10/10 ◆xaKEfJYwg. :2014/06/01(日) 05:08:24.30 ID:vNTJR/C4o
「兄が一人いたんです。両親に酷く虐められていました。兄は、頭が良くないから虐められてい
るんだ、と笑ってました。でも夜中に泣いていたのを知っています。私は両親が親戚の法事で高
速に乗ることを知りました。それで、タイヤに穴を空けました。その夜に両親は事故で死にまし
た。タイヤのせいではなく、居眠り運転していたトラックと高速道路で正面衝突したみたいでし
た。タイヤはすぐ気がついて交換したみたいでした」
 私は彼女の言葉に耳を傾ける。ただ、嬉しかった。彼女の秘密に触れているということが。本
当は彼女の目を見たかった。こんなブラックアウトではなく、真正面から彼女の全てを受け止め
てあげたかった。しかし、それは彼女にとってはまだ無理なことだったようだ。
「多分、私が殺したのだと思います。兄も酷く傷ついて、首を吊りました。私には兄の気持ちは
分からなかった。てっきり、両親を恨んでいるのだと思ったのです。でも違った。兄は両親のこ
とを理解し、愛していた」
「そう」
「ねぇ、ユキノ、愛ってなんでしょう」
 私は迷うことなく答える。
「私はあなたを愛しているわ。世界中の誰よりも」
 彼女は苦しそうに返した。
「利口ってどういうことなんでしょう。勉強して身につくものなのでしょうか。私はユキノのし
て欲しいことは分かっても、ユキノの気持ちは理解できません」
 そういってやっと、視界を遮る彼女の手のひらが私の瞼から離れる。私は彼女のために買った
ピンク色のパジャマをじっと見つめる。
「理解できなくてもいい。されなくてもいい。そう思えるのが、愛してる」
「じゃあ私は兄を愛していたと言っていいのでしょうか」
 振り返ると彼女は下着を着けていなかった。私はパジャマを彼女に手渡す。
「あなただけが納得できる愛を見つけなさい。それか、愛なんて古臭い言葉とっとと忘れて定職
につきなさい」
 そういってから、彼女の裸体に目を滑らせる自分を自覚して、視線を逸らせた。彼女は受け取
ったパジャマを身に着けて、私をベッドまで連れて行った。
「あの頃のように一緒に寝ましょう」
「あの頃?」
「……忘れてください」
 私はベッドのなかで、彼女を抱きしめた。明日になったら彼女はまた嘯くだろう。「何かいい
ました?」とのうのうとのたまうのだ。それでもいい。彼女がそうしたいのなら。
 私の胸のなかで、彼女は飾らない愛の言葉を囁いた。
「愛してます、ユキノ」

 END
782 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/06/01(日) 05:09:14.76 ID:vNTJR/C4o
時間外作品なので、扱いはご自由にどうぞ
できれば感想いただけると嬉しいです
てきすとぽいやってみます
783 :422 [sagasage]:2014/06/01(日) 08:31:37.46 ID:eo+zeHo2o
投票期間 : 2014.06.01 0時  〜  2014.06.08 0時

No.01 たったひとつのぼくを求めて(小伏史央)
http://text-poi.net/post/u17_uina/30.html

No.02 あの日の真白なキャンバス(ほげおちゃん)
http://text-poi.net/post/hogeochan_ver2/4.html

No.03 ヒトリ・ヒストリ(犬子蓮木)
http://text-poi.net/post/sleeping_husky/25.html

No.04 一本杉(茶屋)
http://text-poi.net/post/chayakyu/66.html

No.05 もう、一人でいいから(すずきり)
http://text-poi.net/post/tamamogari/1.html

No.06 THE ONE ◆Mulb7NIk.Q
http://text-poi.net/post/hogeochan_ver2/5.html

No.07 ノスタルジックの船よ、沈め ◆S6qZnfmn3/gR
http://text-poi.net/post/hogeochan_ver2/6.html

No.08 Black Swan Song(木下季香)
http://text-poi.net/post/kika_kinoshita/1.html

No.09 (文章量超過) アイドル「兄は私のマネージャー」 ◆1ImvWBFMVg[
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1391418769/704
※本スレの >>704 から

No.10 (時間外作品) ブラック・アウト ◆xaKEfJYwg.
http://text-poi.net/post/hogeochan_ver2/7.html

皆さん投稿ありがとうございました。

感想や批評があると書き手は喜びますが、単純に『面白かった』と言うだけの理由での投票でも構いません。
毎回作品投稿数に対して投票数が少ないので、多くの方の投票をお待ちしております。
また、週末品評会では投票する作品のほかに気になった作品を挙げて頂き、同得票の際の判定基準とする方法をとっております。
ご協力ください。

投票は、本スレッドかてきすとぽいのいずれかのみでお願いします。

・本スレッドで投票する場合

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投票、気になった作品は一作品でも複数でも構いません。
No.9、No.10 について投票された場合は、すべて関心票(てきすとぽいでは評価4の投票)として扱わせていただきます。

たくさんの方の投票をお待ちしています。

なお、時間外作品の投稿はまだまだ受け付けています。
784 :422 [sagasage]:2014/06/01(日) 08:36:51.67 ID:eo+zeHo2o
>>768
私が転載しておこうかなと一瞬思ったのですが、
ちょっと量が多く改行の修正が大変そうだったので、転載はお任せしようと思います。

なお、文字数が50000字を超えており原稿用紙50枚の制限を超過していたため、
時間外作品と同じ扱い(関心票のみ)とさせていただきました。ご了承ください。
#今回初めて文章量制限を追加しましたが、まさかそれを優に超えてくる作品が出てくるとは思いませんでした……
#すげえ……

先ほどのレスにも書きましたが、時間外投稿の作品はまだまだお待ちしております。
というか私が今日中に間に合えば、時間外作品としてもうひとつ投下させていただく予定です。
785 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/06/01(日) 09:15:22.10 ID:yha+klhCo
おー、作品数が二桁
786 :品評会感想 0/3 ◆xaKEfJYwg. :2014/06/01(日) 22:02:00.83 ID:vNTJR/C4o
少々早いですが3レス予定で感想投下します
787 :品評会感想 1/3 ◆xaKEfJYwg. :2014/06/01(日) 22:04:24.47 ID:vNTJR/C4o
No.01 たったひとつのぼくを求めて(小伏史央)
http://text-poi.net/post/u17_uina/30.html
 お酒を飲みながら思いつく文章を書いたような、そんな文章でした。
 リチャード・バックの「one」という本を読んだことがないので、この作品が深く読み込めなか
ったのだと思います。レビューをちらと読んだぐらいでは分かりませんでした。
読書最中の思考世界(?)での理屈も分からないので「そう書かれたならそうなのか」を繰り返
してだんだん無関心になっていくというか……こういった尖った作品は難しいですね。


No.02 あの日の真白なキャンバス(ほげおちゃん)
http://text-poi.net/post/hogeochan_ver2/4.html
 三十路間近の女性の情緒不安定さは凄く伝わってきました。何もするなといったり、電話取れ
といったり。得体の知れないものに固執して、そういった不安を紛らわせることはただの逃避な
んですよねー。なんか辛いお話でした。案外印象に残ったりするお話でもありました。
 物語の序盤でいくつか疑問が。なぜ公園に写真を撮りにいったのか。絶対に他人には知られた
くないデータとはなんなのか。公園に入ったのはなんとなく気分で、データは自分の悩みを題材
にした文章だったのでしょうか。想像できなくはないですが、できれば文章で言及して結末に絡
めると、もっとこの女性個人の変化が浮かび上がってきたのかなと思います。結局変化という変
化もしなかったんですけどね……辛い。


No.03 ヒトリ・ヒストリ(犬子蓮木)
http://text-poi.net/post/sleeping_husky/25.html
 作者さんの思ったとおりに読み込めているか分かりません。「ぼく」と「わたし」はやっぱり
別人なんでしょうか。歴史は繰り返すってやつなんですかね。そうすると、電子世界もダメに
なったら今度はどこへ逃げるんでしょう。最後の四行をどう捉えるかでがらりと変わりそうです。
私は五段落目のロボットが生き残ってご主人様を思い返しているのかなぁと思いました。
 もしかしたら、現実世界らしきものを仮想空間で体験できる最先端のシミュレーションゲーム
をプレイした人間の話なのかな。マトリックス的なものをほのかに感じました。
 とはいえ推測でしかありません。……上手く読み込めなくてすいません。すんなりと読み込め
て、最後の四行で驚くといったものに仕上がると良かったのかなと思います。


No.04 一本杉(茶屋)
http://text-poi.net/post/chayakyu/66.html
 洒落怖とか案外完成度の高い作品多いですよね。バトル要素があったり、幽霊萌えがあったり。
「霊だから」で説明つけちゃうので書くほうも気楽ですよね。展開の読めなさも読むほうとしては
ワクワクできる要素のひとつだと思います。
 オチはオマージュということでこれでいいとしても、物語のクライマックスはもう少し力を入
れて書いても良かったのでは。序盤の描写力がクライマックスにも欲しかったです。


No.05 もう、一人でいいから(すずきり)
http://text-poi.net/post/tamamogari/1.html
 人物描写が上手でした。主人公の置かれている状況から思考まで過不足なく書かれ、力のある
方だなと思いました。なので、あとは書かれているものを読者がどう受け取るかだけなのかなと。
 まあガッカリしますよね、純粋な気持ちでないと知ったら。でも宗教と聞いてここまで拒否す
るのだったら、それに関する不快な過去等が一段落程度あると、結末のガッカリ感もさらに増し
たのかなと思います。なんかリナちゃん悪い人じゃ無さそうなんですよね……。やっぱり世間知
らずに付け入られて上手くいってるってだけの、ただの二十歳の子のような。断って豹変したら
納得できたのかな。そんなこんなでいろいろ考えれるいい作品だったと思います。
788 :品評会感想 2/3 ◆xaKEfJYwg. :2014/06/01(日) 22:05:57.08 ID:vNTJR/C4o
No.06 THE ONE ◆Mulb7NIk.Q
http://text-poi.net/post/hogeochan_ver2/5.html
 今回の品評会作品では飛びぬけて文章が上手でした。量はあれどスラスラ読める。語彙も豊富
で羨ましいです。多分何度も作者さんの作品を読ませてもらったことがあります。
 このタイトルは作中にて言及されるビートルズのアルバム名からでしょうか。音楽に明るくな
いので、どこまでそれがこの作品を膨らませるものなのか、下地になっているのか分かりません
でした。ごめんなさい。
 エレナの「強すぎて不完全」という部分を丁寧に説明した作品という印象を受けました。果た
して再会することができて、いったいどういった会話をするんでしょうか、気になります。それ
が主人公も含めた物語になるのかなと。


No.07 ノスタルジックの船よ、沈め ◆S6qZnfmn3/gR 【関心】
http://text-poi.net/post/hogeochan_ver2/6.html

 投票用紙に記載。

No.08 Black Swan Song(木下季香) 【投票】
http://text-poi.net/post/kika_kinoshita/1.html

 投票用紙に記載。


No.09 (文章量超過) アイドル「兄は私のマネージャー」 ◆1ImvWBFMVg
http://text-poi.net/post/ksatokiti/1.html
 楽しく読ませていただきました。エンターテイメント作品として、飽きさせないように話が展
開していったので、量が多くとも最後まで読めました。この板に建てられるスレに一番ふさわし
い作品ですよね。作者の思惑通りニュー可愛い、男コラッ! ルクルいうねぇ……ってなって話
にのめり込むことができました。
 話の筋が見えればあとはスラスラと読めたのですが、序盤は読みにくい。しょっぱなに少女、
少年、巨大な人間とがどういった配置なのか、関係性なのかが読み取りにくかったです。少年
少女はモニターの中にいるって理解するのに何回か読み返しました。描写する際の視点カメラの
問題ですかね。
 やっぱりこういった作品はハッピーエンドに限りますねー。


No.10 (時間外作品) ブラック・アウト ◆xaKEfJYwg.
http://text-poi.net/post/hogeochan_ver2/7.html
 自作。時間外作品の扱いが分からなかったので、どうしたもんかと思ってましたが、てきすと
ぽいに転載してくださってありがとうございました。どうせ誤字るなら間に合わせたかったと心
残り。次回も参加できるといいな。
789 :品評会感想 3/3 ◆xaKEfJYwg. :2014/06/01(日) 22:06:55.84 ID:vNTJR/C4o

 ***********************【投票用紙】***********************
 【投票】:No.08 Black Swan Song(木下季香)
         興味を持って読み物として読めたので投票。
        お題に真っ直ぐでしたし、姉の本心次第で結末が
        変わるので最後まで楽しく読めました。

 【関心】:No.07 ノスタルジックの船よ、沈め ◆S6qZnfmn3/gR
         翻訳者という説明で個性的な名詞の意図が分かっ
        たような。踏まえて読み返すと、それぞれの名詞が
        何を指し示しているのか想像する楽しみがありました。
 ********************************************************


 ――総評――
 今回は全体的に暗めのお話が多かったです。話のスタートから「孤独」や「諦め」「無念」等
ずっと落ち込んでいく展開が多かったです。あと、読むのに体力が必要な作品が多かったです。
とはいえ久しぶりの品評会なので、全作品楽しく読ませていただきました。
 お題の「one」が個人的には難しかったのかなと思います。どうにでも捉えられる分、お題を
中心に据えづらかったのかもしれません。その中でも、お題を意識させることができる作品を書
いた作者さんはやはり力があったのだと思います。
 品評会に参加した方々、てきすとぽいに転載してくださった方お疲れ様でした。時間外作品の
感想については、随時追加で行うつもりです。私の作品の感想もお待ちしています。
790 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/06/01(日) 23:05:49.56 ID:yha+klhCo
全館乙
791 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [sage]:2014/06/01(日) 23:28:32.85 ID:Mq+kCyrb0
おつおつー
792 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/06/01(日) 23:40:46.77 ID:eo+zeHo20
全感お疲れさまです。
さっき時間外作品出したけど、間に合わなかったな……

(時間外作品)身の回りの世界で(ほげおちゃん)
http://text-poi.net/post/hogeochan_ver2/8.html

私もこれから皆さんの作品読んでいきますね。
793 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/06/02(月) 00:27:19.73 ID:5rBdFfPDo
時間外投下お疲れ様でした

NO.11 (時間外作品)身の回りの世界で(ほげおちゃん)
http://text-poi.net/post/hogeochan_ver2/8.html
 NO.2の人と同じ人でしょうか。もしそうなら、やっぱり印象に残るシーンが書ける方だと思い
ます。テンポ良くスラスラと読めました。
 大人になりきれない大人としっかりものの子供の物語は、お互いの満たされない部分を満たし
あって成長し合うという醍醐味があるので大好物です。読んでてダメ大人でもいいんだって安心
感も持てますし。こういったシチュエーションは、一時的な居心地の良い居場所として描かれが
ちなのがなんとも……。ニコちゃんは前に進める力を蓄えたのに対し、主人公はどうするのでし
ょうか。切なさに浸ったあとも、きっとやっぱり生き続けると思うので、作者さんなりのアンサー
を最後に書いて欲しかったなと思ったり。
794 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/06/02(月) 01:16:21.78 ID:u4H6qR9G0
>>793

あ、早速感想ありがとうございます。

う、うわああああっ

そうか、ラストシーンか。
書き切って、何か足りないなと思っていたんですけど。

唐突に書き直したくなってきた。
今回の品評会は後悔が多すぎる……
795 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/06/02(月) 02:06:38.28 ID:5rBdFfPDo
いやいや十分読めましたよ
それに推敲することはあっても書き足すのはないなーだいたい蛇足になっちゃうし
と思ってるのでそれはそれで良かったのかと
796 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/06/02(月) 03:13:45.48 ID:sjy91h2go
全体の感想はというと、わりとバリエーションは豊か。皆お題の「one」をどう扱うか骨を折ったんじゃないですか
ね。そのままストーリーに絡めにくく、抽象的なテーマにせざるを得ないですからね。あとこれは言っておきたいん
ですが、ほげおちゃん頑張りすぎぃ!!


本屋へ行き、一冊の本を手に取る。そして本の世界へ没入して行く、という感じでしょうか。
実際に「ONE」を読んでいたら、ちゃんと意図が掴めたのかもしれないんですが、私の読解力ではそれぞれの文やそ
の内容の意味を理解できませんでした。歯がゆい!という感じです。


主人公の不可解な行動や感情の変化の理由が描かれていたらいいなと思いました(自分が読み取れていないだけかも
しれないです)。序盤はきちんと説明文があるんですが、後半になるとだんだん段落が多くなって散文的?になって
いると思います。それによってある種の独特な趣が出ていると感じました。しかし一方で読者を置いてけぼりにする
ような、ともすれば「だから?」と説明を求めたくなる部分がちょっとあるような気もしました。


作者の想像の世界ではきちんと補完されているんでしょうが、それを正確に十分にアウトプットできていない、のか
な?と感じました。小説は作者と読者、両者の想像力の柱で成り立つものだと思います。ところが、いくらこっちが
想像力を逞しくしてもどうも作者の思い描いたモノがなんなのか判然としない。もっと作者の想像した物語を文章に
してくれたら、と思いました。


怖い話コピペのそれですね。オカ板でありがちな怪談話、寺生まれのTさんイズムを感じました。お題の「ONE」
が、とってつけたような対心霊現象特別部隊の通称になって消化されているという点が個人的なツボ。


ゴミ


小説は出だし9割などと言われますが、この作品の出だしだと、歳月や、とりわけ「二十年」が物語のキーになるの
かな、と思いました(実際はそうでもないかも)。普通に読むことの出来る佳作だと思いました。強いて何か文句を
つけるなら、「ONE」というお題とはあえて繋げなくても良かったんじゃないかなと。「0から1へ」あたりの文章
からふわっとしだしている印象を受けました。といっても私の難癖ですよ。

残りはいつか
797 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [sage]:2014/06/02(月) 15:40:12.36 ID:2sIZeQce0
うわあーいいなー今回品評会盛り上がってんな―
今どういうスパンで開催されてんの?月一?
798 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/06/02(月) 15:42:35.29 ID:5+7UZ4u5o
せやな
799 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/06/02(月) 18:18:24.84 ID:kFTprIk4o
今回多忙で参加できずに痛恨の極み……。
話は考えてたんだけれどなぁ。
800 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [sage]:2014/06/02(月) 19:55:27.21 ID:F8vLus2X0
>>799
感想で参加してもええんやで
801 :全感&投票 1/2 :2014/06/03(火) 02:25:06.28 ID:vNDGdaYP0
No.01 たったひとつのぼくを求めて(小伏史央)
http://text-poi.net/post/u17_uina/30.html

こういう作品を読んだときにまず思うのは、どれだけ考えて書いているのかということ。
思考をただ垂れ流しているだけなのか、それとも一つ一つに意味があるのか、判断するのはとても難しいです。
あんまりタイトルと内容がマッチしていない気がするんだよな……
文字数12345は狙って書かれたのだろうか。

No.02 あの日の真白なキャンバス(ほげおちゃん)
http://text-poi.net/post/hogeochan_ver2/4.html

私の作品。これ、出した次の日にちょう後悔しました。
書いているうちに疲労感で頭の中がぐちゃぐちゃになってきて、無理矢理完成させて、「ええい、いいや出しちゃえー」と思って出しちゃったんですね。
まだ一週間ぐらい時間があったのだから、もう少し粘っても……

No.03 ヒトリ・ヒストリ(犬子蓮木)
http://text-poi.net/post/sleeping_husky/25.html

「アリケルエラスメネス」←こういう自分が知らない言葉に出会ったときにググる癖をなくしたい。
「ぼくね、今日から小学校にいくだよ」の「いくだよ」は脱字なのか、そうではないのか。
くーたん……
最後に全部繋がっていたら面白かったんですけど、そうじゃなさそうっぽいのが少し残念です。
個人的には3の話なんですけど、思考的にはちょっと『無い』気がするんですね。
自分でプラスチックの彼と言うところとか、実体はないけれどと言うところとか。
どうしても異常者を演じているようにしか見えないのです。
そういう設定だとしたらアリといったらアリなんですけど。

No.04 一本杉(茶屋)
http://text-poi.net/post/chayakyu/66.html

真・剣・に書け!
思わずそう心の中で叫んだ作品。少し笑ったけど。
一本杉も光線銃で爆発させてくれよ。
一本杉を恐れる冒頭とラストが矛盾している気がするけど、そういうのに突っ込むのは野暮なのかな。

No.05 もう、一人でいいから(すずきり)
http://text-poi.net/post/tamamogari/1.html

いや、頑張れよ(´・_・`)
最後そういう思考に陥る人見ると悲しくなってくるわ……
一度断られた本屋に毎日行くってすごい根性あると思うんですよね。報われてほしいです。
個人的には、主人公をもうちょっと能動的にしてもらわないと読む方としては苦しいと思いました。

No.06 THE ONE ◆Mulb7NIk.Q
http://text-poi.net/post/hogeochan_ver2/5.html

なかなか評価しにくい作品です。
読んでいると文章がうまくて、思わず関心票ぐらいは入れたくなってしまうのだけど。
というかつい先ほどまで入れる気でいたのだけど。あらためて振り返ってみると、どうも……うーん。
まず読んでいて違和感に残ったのが、エリナ覚醒時の描写なんですね。
変節が突然すぎる。
私が思うに人の変節には段階があって、AからBに変わるまでには中間であるABの状態が存在するはずなんですよ。
悪口言われてからしばらく放っとかれるとトラウマになるんですよ、って「ほんまでっか」で澤口という人が言ってたと思うけど、
逆に言えばトラウマになるまでには少しの時間的猶予があるわけで。
この作品からはあまりそういう部分が感じられなかった。
あと、彼女がうまく体を動かせない原因である「心理的な」問題に対して、「私の中で何かがカチリと音を立てて組みあがった」
という解決はなんだか違う気がするんだよな。肉体的な方向に問題が変わっている気がする。
そういった意味で、作者に力はあると思うんですけど作品としてはあまり押せないんですよね。

No.07 ノスタルジックの船よ、沈め ◆S6qZnfmn3/gR
http://text-poi.net/post/hogeochan_ver2/6.html

うーん、これは……
私が作者の意図をうまく読み取れていない可能性があるな。
No.01もそうなのだけど、こういう作品はただ雰囲気に任せて読めばいいのかどうなのか……
翻訳がなー。
最も気になったのは、作品の内容よりも翻訳に対する作者の考え方だったりするんですね。
私翻訳家じゃないから本当のところは分からないけれど、本当にこんなこと考えていたりするのかなと。
もっともっと、うまく翻訳できない(なかった)ことについて悩むんじゃないかなと。
なお、ラストシーンはとても印象的でした。
802 :全感&投票 2/2 [sagasage]:2014/06/03(火) 02:25:41.66 ID:vNDGdaYP0
No.08 Black Swan Song(木下季香)
http://text-poi.net/post/kika_kinoshita/1.html

はい優勝。おめでとうございます。まあ私の一存じゃ決められないけどね(´・_・`)
ぶっちゃけ本音を言うと、気に入らないところはあったよ。
妹が本当はできる子なのに、できない子に見せているところとか。人間的に嫌い。
けどねー……なんかそういうのを超えたところにこの作品の良いところはあったな。
盲目の少女に感化されるシーンが間違いなくこの作品のハイライトなのだが、その後も新たな見せ場があるところが大好き。
いったい過去にどんな作品書いていた人なんだって見返してみると、へー、あの人だったのかー。
腕を上げたな。しゃれにならんくらい。いや、前から文章はうまかったけど。ひとつ壁を越えた感がある。
私も越えてえ。

No.09 (文章量超過) アイドル「兄は私のマネージャー」 ◆1ImvWBFMVg
http://text-poi.net/post/ksatokiti/1.html

さて、いま話題の問題作。
なんというかこれはもったいないな。
他の人も言ってたけど、中盤以降はすらすら読めるのに前半がもったいない。
あとミューがニューとかツグムがツムグとか誤字脱字が多く目立って、せっかくこんなにたくさん書いたのにもったいないよ。うん。
個人的にラストはあまり好きじゃないけど、話としてはよくできているんだよな。
ルクルと兄は最初は嫌いだったのだけど、最後のほうは好感が持てるようになって。
けど乾きやサボテンの表現が連発で、そういうところもやっぱり勿体ない気がしました。
ぶっちゃけ最初のほうマウスとかディスプレイとかボカす必要ないと思ったし。
なんか心がけ次第でいくらでも救えそうな勿体なさなんだよな。
勿体なし。

No.10 (時間外作品) ブラック・アウト ◆xaKEfJYwg.
http://text-poi.net/post/hogeochan_ver2/7.html

この作品、てきすとぽいでは No.08 の下に来てしまっているんですけど(というか私がそうしてしまったんですけど)、
ちょっと順番が悪かったかなと思いました。
悪くないんだけど、No.08 と比べるとパンチ力に欠けている気がして、どうしても見比べてしまう。
とはいえ最後のほうは完全にこの作品の世界に浸れていたから、やっぱりちゃんと書けている作品なんだな。
ただ、ユキノとヤエノミヤの関係を「そういう設定」として見てしまっているところがあって、そこをなんとか。
もう少し説得力のある描写があると印象が違ってきたのかなあと。

No.11 (時間外作品)身の回りの世界で(ほげおちゃん)
http://text-poi.net/post/hogeochan_ver2/8.html

たどり着きました、最後まで。
No.02 で後悔した私が別視点でもう一度書き直そうとした作品。
本当は時間内に間に合わせるつもりだったけど、間に合わなかったよ!
しかも最初の感想をもらって即反省……
そして実はその後にもう一度後悔という、後悔に後悔しっぱなしの品評会でした。
以前ある小説で、最後まで結末を書かない方がいいっていう話を読んだことがあって。
どうも最近それにとらわれすぎている気がしました。
また一から出直しだなぁ。

***********************【投票用紙】***********************
【投票】: No.08 Black Swan Song(木下季香)
気になった作品:No.09 (文章量超過) アイドル「兄は私のマネージャー」 ◆1ImvWBFMVg
********************************************************

印象に残った作品ほど感想が多くなっています。そういう意味で、うわ、こいつロクでもないこと書いてるなーと思うものがあっても許してください。
今回「one」というお題を出させてもらったんですけど、はっきりいってこれは失敗でしたね……
どうしても題材が「ひとり」になってしまうんだよなあ。
モウリーニョの名言を出したけど、結果的にあれも絞り込みを加速させてしまったかなあと。
本当に今回の品評会は反省しっぱなしだ!
803 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sagasage]:2014/06/03(火) 02:30:22.99 ID:vNDGdaYP0
あ、あと突然話が変わりますが、みなさんの全感をてきすとぽいに転載したいなあと考えているのですが、転載しても問題ありませんでしょうか?

以前は品評会別に感想をまとめていましたが、それをてきすとぽいでやってもいいかなあと思いまして。

あまりてきすとぽい依存度が高くなるようだと嫌がる人がいるかもしれませんが……
804 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/06/03(火) 02:38:06.95 ID:cgXcWbmGo
全感おつです
>>803
転載ぐらいなら問題ないんじゃないかと
805 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/06/03(火) 03:34:39.11 ID:cgXcWbmGo
あとNo.11の感想書いたものですが>>802で感想を気にしすぎてるみたいなのでひとつ
今回の品評会は全体的にテンションを落として終わる作品が多かったのです(特にNo.2、3、5、6)だからお腹いっぱいになりまして……
どうにもできなかった(変わらなかった)っていうのは短編としてポピュラーな落とし方です
それって、前半に上げれば効果あり、読者が主人公に反感を持っていれば倍プッシュ、想像以上に落とせば確変なんですが
どうも楽するために落としたように感じたのです「書いてるオレにもどうもできねぇや。ここらへんで切なくしてやめやめ」みたいな
読者が読んでいて何か期待しているであろうものにハッピーでもバッドでも応えて欲しかったなと
そう勝手に思っただけで、作者さんが「これが書きたかったことに合った結末」と思っているなら問題ナシですよ
長文すまそ
806 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/06/03(火) 22:15:13.78 ID:t95QE8nro
久々に覗いてみたらちょうど品評会が終わったところだったでござる
お題くだしあ
807 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/06/03(火) 22:24:57.96 ID:NYZKMS/Xo
>>806
芝居
808 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/06/03(火) 22:27:50.44 ID:t95QE8nro
>>807
thx
投票はまだ終わってないみたいだしそっち書いてからゆっくり手を付けよう
809 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/06/03(火) 23:29:23.92 ID:NOmlnjZvo
しかし10作品以上集まるとはすばらしいな
810 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/06/04(水) 12:06:59.48 ID:QSUeh54zo
品評会だけじゃなく通常作品も盛り上がってほしいものだが、いきなりは難しいか
811 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/06/04(水) 12:17:51.98 ID:ArZo4X/Po
それなら何か書いてみようかな
お題下さい
812 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [sage]:2014/06/04(水) 13:16:07.60 ID:XYfe6y/z0
>>811
ジョーカー
813 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/06/04(水) 15:08:32.69 ID:ArZo4X/Po
>>812
ありがとう
814 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/06/04(水) 22:21:44.52 ID:61MmZpXzO
短いの書きたい
お題お願いします
815 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/06/04(水) 22:28:29.09 ID:tDnMtM51O
>>814
独特のにおいを持つ植物


俺にもお題ちょうだい
816 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [sage]:2014/06/04(水) 23:06:17.05 ID:XYfe6y/z0
>>815
あと五分
817 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/06/04(水) 23:22:23.57 ID:m0rZF2tw0
とくに反対意見は出なかったようなので、てきすとぽいのほうに感想を転載させていただきました。

>>805
またまたコメントありがとうございます。
実はNo.2を書き始めたとき、当初は異なる結末を思い描いていました。
しかし途中でぐだぐだになってしまい、そのことに満足できなくてNo.11を書き始めたのですが、書いているうちにいつのまにか結末のことを忘れてしまっていたのです。
だから>>793を読んだときハッとなったのですが、その後さらに>>795を見て……
うん、もうやらかした後だったんだ(´・_・`)

まあてきすとぽいのほうは変えていないので……

この悔しさは次回の糧とすることにします。
818 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/06/04(水) 23:26:43.52 ID:9ngspnlfo
>>817
頑張って!
819 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/06/05(木) 00:29:05.95 ID:QKdOMmVco
おだいくだせぇ
820 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/06/05(木) 00:35:18.57 ID:+rvGVkLco
火柱
821 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/06/05(木) 00:52:39.98 ID:QKdOMmVco
ありがとう
822 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/06/05(木) 16:07:24.20 ID:PyQlxO41o
いつか貰ったお題で思いつかず早数か月、お題下さい
823 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/06/05(木) 17:32:10.44 ID:rlDvB8Huo
>>822
「善悪」でどうでしょう
824 :822 [sage]:2014/06/06(金) 02:46:55.26 ID:m/KvFWuzo
>>823
遅レスすまんthx
頂きます
825 : ◆/xGGSe0F/E [sage]:2014/06/06(金) 18:12:33.23 ID:rW2ajJ3J0
批評感想、及び投票を投下します。

長文となっております。
826 :全感1/12 ◆/xGGSe0F/E [sage]:2014/06/06(金) 18:20:10.47 ID:rW2ajJ3J0

No.01 たったひとつのぼくを求めて(小伏史央)

この作品の冒頭に目を通した時に、私は思わず引き込まれました。
そして私にとってこの小説は、品評会における批評云々を抜きにして、とても好みの小説となりました。ラブです。

まず、この読んでいるとたちまち酔ってしまいそうな程に饒舌な文体。
サリンジャー、或いはサリンジャーに影響を受けたと思われる人たちを彷彿とさせます。
もちろんそれは文体の話であり、作品としてはSF要素を取り入れた文学的作品だと思うのですが。
しかし、このいつまでも終わることの無いような予感を覚えさせる軽妙な文体。これは非常に私の好みです。もう文体だけで百点満点です。
などと言ってしまうと他の作品への差別になってしまうし、平等な評価ではなくなってしまうので(私としては出来るだけ平等に評価をしたいのです)
なるべく好みとは切り離して、この小説の分析(の真似事)を試み、そして批評を書いて行こうかと思います。

SF系の書き手だと聞いて納得。自分の知っている範囲の知識で申し訳ないのですが、
円城塔さんが書くような、言葉によって思考の構築を試み、世界の在り方を言葉で構成し、そして遊び心を加えながら、
小説という文章の数式を完成させていく、まさに理解できそうで理解できない、実験的(と評してしまったら失礼でしょう
か)な作品だと感じました。
と言っても私は普段、本格SFは読みません。円城塔さんにしても、文學界に載っている幾つかの作品に目を通したことがあ
る程度です。
しかし、この一見すると不可解な、抽象をこの世のものとして具現化しようとする発想は、SF作家的文章なのだと感じました。

或いは、【3】段落目なんかは文学詩における散文詩にも似ているのではないかと私は感じます。
若手の文学系詩人(という言葉があるのでしょうか?)の作品や、文学極道というサイトで投稿される詩の如く、自由な発想で、
既存のルールに縛られない言葉の並びや使い方、文の構成の仕方で、一つの作品を作ることを試みる。
このような作品は私にとってやはり面白く、普遍的な試みによる小説的面白さの欠乏がある作品や、つまらないアイデアを
だらだら並べ立てた小説、ただ奇抜なだけの幼稚な発想などより、
どうしようもなく心を惹かれてしまう。と言うよりも、どちらかと言うと、この作品はエンターテイメントとして読むより、
文学的な実験作品として(そして前衛的な文学作品がそうであるように、この作品にも、正解の解釈はないと思う)、作者
が思うとおりの成功を収めていると私は思います。


文体としては(すみません、もう一度語らせていただきます)、西尾維新さんや佐藤友哉さんなどのミステリ系エンターテ
イメントの方々も思い浮かびました。
もちろん作者がこれらの作家に影響を受けているかまでは分からないのですが、今挙げたお二方の様に、自分の思考をすら
すらと喋るような文体だと思います。
人間の思考というものは恐らく、このように揺らぎながら常に変化していくもので、そのあたりのリアルさを私は感じました。
思いついた言葉をそのまま表記することによって、それが小説として構成されていく実験。とでもいえばいいのでしょうか。
失敗しているか成功しているのかは読み手によって変わると思います。私はひとまず、そのような目的で成功はしている文
章なのだと思います。

絶え間なく思考する人間の、思考の揺らぎ、言葉が定まらぬうちに次の思考に移ると言う思考の一面を、
作者が意識して書いたかどうかはわかりませんが、しっかり表せていると私は思いました。

本を読んでいる人間の、抽象的なイメージを具現化した作品。まあ、作品の主題は恐らくこれなのでしょうが、饒舌な文体が心地よく、
本に浸っている人間の脳という部分を書いた、面白い作品だと思います。

一つだけ惜しいなと感じた部分は、小説における”フック”が無いこと。
読者の心をひっかけるような明確なテーマ(付け焼刃的でないもの)、或いは描写、場面。それが一瞬でも現れれば、
この小説はもっと化けると思います。
もっと広く読者の心に残る作品になると思います。

お題に則しているかという点では、お題が抽象的なものであるため、このような解釈でも問題ないと個人的には感じました。
827 :全感2/12 ◆/xGGSe0F/E [sage]:2014/06/06(金) 18:20:45.58 ID:rW2ajJ3J0
No.02 あの日の真白なキャンバス(ほげおちゃん)

うーん……評価の難しい小説です。
荒を探してしまえば色々と出てきそうなのですが、書きたいことはちゃんと伝わってくるという、しっかりした形になって
いる作品……。
物語の核はしっかりあるが、その肉づけが薄く、味気ないと言う印象を抱いた作品でした。

とりあえず気になった点を以下に書かさせていただきます。

まず
>>以前まで写真に興味のなかった私が、急に興味を持ち始めたこと。雨であるにもかかわらず、わざわざ夜に散歩しに外へ
出かけたこと。
>>公園に足を踏み入れたこと。どれもが自分の認識する自分とは異なっていて

物語のきっかけとなる大事なこの部分の説明が、最後まで明確になされていないような気がしました。
この描写における主人公の動機、あるいは主人公が異常な思考へと変わってしまった理由を説明しないと、
主人公がどうして正常な思考から足を踏み外していったのか、と言うのが分からないと感じました。
もちろん、あえて不気味さを演出するためにそうした可能性もありますから、そうした方がいい! と私も強く言うことが
出来ないのですが、しかしこの部分は少しモヤモヤする点でした。

次に >>あのスマホには、絶対に他人には知られたくないデータが入っていた。もし知られたら、自[ピーーー]るしかなくなって
しまう――

この部分。
多分、読者に想像を促していると思われる描写。最後まで謎は明かされない(もしかしたら私が気付かなかっただけで明か
されていたのかもしれません)。
物語における重要な謎として受け取ったのですが、しかし最後まで読んでも、結局この描写の意味するところが分かりませんでした……。
どうしても、主人子がのっぺらぼうのいる場所へ戻るための道具として出された感が否めないのです……うーん。
私の勘違いか、読解力のなさのせいもあると思うので(時々、壮絶なる変な読み方をしてしまう時があるのです)作者さん
の考えがあるのならば、教えて頂きたいです。
主人公が子供を誘拐すること(背徳行為へと落ちていくこと)を示唆する布石でしょうか。
それとも他にも子供がいたと言う事なのでしょうか。
今一つ、この描写の意味するところが読み取れませんでした。物語的に、重大な感じがする書かれ方をしてるのですが……。

その辺が気になりつつ、最後まで読んでみました。
そうしてみると、この作品におけるテーマは【自分よりも弱い者に依存しようとする、孤独な女性の不安定さ】だと解釈し
ました。

オチでは、自分が依存していた者が地位を得て、そしてまた一人になってしまう。主人公自身も老いてしまって、女性とし
ての尊厳も失われていく。
何と言うか、子供を勝手に攫って依存した(あるいは依存させた)という事への報いを感じさせる、勧善懲悪的な着地な仕方だと感じました。

この辺は、以前から書かれているほげおさん的テーマがぶれていない感じがして、とても良いと思いました。
背徳に身を任せて孤独になる、というのを瑞々しい世界観で書ける人だと思いますので。

しかしながら、人物の造形の仕方や、会話、人がのっぺらぼうに見えると言う比喩も、少し定型形の様な気がして、モヤっとしました。
ほげおさんが絶好調な時は、とても瑞々しい比喩をされる方なので、少し今回は疲れていたのかな、という勝手な印象を受けました。すみません。

物語のテーマはしっかりと感じますし、書きたいことも理解できる。
ただ、その物語の道筋が少し、ストレートに行き過ぎなのではないかと言う気がしました。
女性が狂ってしまったきっかけとなる描写、回想、そのような場面が挟まれていれば、惹きこまれたような気がします。
あるいはその女性の過去、心の深い部分、を読んでみたかったです。

良い部分と悪い部分が、奇妙に同居している小説だと思います。
その点で、どう評価したらいいのか、私は少し悩んでしまいました。
後半の文体も、描写が淡々としすぎているような気もします。

厳しいことを書いてしまいましたが(お気を悪くされたらすみません)、しかし良い時のあなたを知っている分だけ、
この小説に落差を感じて、あまりいい評価が与えられませんでした。
828 :全感3/12 ◆/xGGSe0F/E [sage]:2014/06/06(金) 18:21:39.29 ID:rW2ajJ3J0
No.03 ヒトリ・ヒストリ(犬子蓮木)

私もよく、文章を書き始めた時にこのような作品をたくさん書いていました。
小説の形態と言うよりは、散文詩的、頭の中の設定やシチュエーション、比喩を書き出し、そして構築を試みるタイプ。
私は前から思っていたのですが、犬木さんは詩人的な方だと思うのです。草食系的な詩に近い形態を好む人だと思うのです。
ホープノーマルしかり前回の作品しかり。品評会では評価が得にくいと思いますが、しかし自分の勝負できる作風があると
言うのはとても素晴らしいと思います。
この作品は小説観だけを持ち出して評価するのは少し違うと思うので、
純粋に文章と表現を見て、批評を書いて行こうかなと思います。

それぞれの設定や着眼点……というよりモチーフとなるアイデアは素晴らしいと思います。
しかし、そこに読者の心を驚かせよう、揺さぶろう、裏をかこうと言う、変な言い方をすれば『ズルさ』がない。
巧い書き手と言うのは(もちろん私はまだまだそこに到達していませんが)、優しい世界を書いていても、
このような『ズルさ』、読者を驚かせようと言う試みが入っているものです。
それを加えられたら(言うは易し、しかし実際には難しい、私も挑戦し続けています)、この文章はもっと良くなるように
思いました。

それと文体。恐らくそれぞれの場面で違う人物なのだろうと思うのですが、それぞれの一人称をもう少し工夫したら
作品に面白さが出たのではないかと感じました。それぞれに差異がなく、人間性が深く表せていない気がします。
最後に出てくる人物が書いていると言う設定なのでしょうが、ただ描写が羅列されているだけで、そこに主張があまり感じられませんでした。

しかしながら、この作品を読んでいて可能性を感じさせるアイデアがたくさんありました。
例えば場面2や場面3、5など、人間の暗部を予感させるアイデア(人形に依存する、異性の人形を買う等)があるので、
その病んだ面をしっかり誤魔化さずに書けると、と言うよりも格好つけずに書ければ、もっと深みが出るような気がします。
と、無責任に書きましたが、犬木さんの作風で汚いことに挑戦すると言うのは、ある意味では諸刃の剣かも知れません。
あまり私のアドバイスを気にせず、参考程度にお受け取りください。

一つ一つのアイデアは面白いと思ったのですが、その一つ一つ、あるいはどれかを、もっと深く掘り下げて見てほしいと
誠に勝手ながら感じました。

あと、お題への結びつきが弱かったです。そこが弱点となってしまうのは惜しいと感じました。
829 :全感4/12 ◆/xGGSe0F/E [sage]:2014/06/06(金) 18:22:34.26 ID:rW2ajJ3J0

No.04 一本杉(茶屋)


【洒落にならない怖い話】ではなしに、【洒落になる怖い話】。

文章はかなり読みやすく感じました。
余計な装飾のない文体で、淡々と語られる物語は、読者を引き込むのに適していたと思います。
怖い話と言うのは、どうも怖がらせようという意識が働いて、変におどろおどろしい文体になってしまいがちですが、
作者さんはその辺のバランスが巧く、変に驚かせようとせずに語りを進めていたので、引きこまれるように読ませていただきました。

そして恐らく評価が分かれるのは、この奇抜なオチなのでしょう。
メフィスト賞作家の方々を思い出します。ぶっ飛んだオチです。
私は個人的にとても好きで「ぶっ飛んでるなあ」と思いながら好意を持ってしまうのですが
しかし投票するのにこの小説を推せるか、と言ったら考え込んでしまいます。

もっと強烈な爆発を感じてしまいたいと、心の中でもやもやとした気持ちが残ってしまいました。

ストレートに怖い話で終わらせたくなかった作者さんの意図は感じられたのですが、
うーん、やっぱり小学生的なぶっ飛んだオチと言うのが、ちょっと安易じゃないのかと思ってしまいます。
すごく好きなんですけどね。

小説とは関係ないですけど、大喜利をやってる時のホリケンさんとかを思い出します。
でも、ぶっ飛んだオチで勝負するのならば、もっとこちらを木端微塵にするぐらいの爆発力が欲しかったです。
もっと根底から度肝を抜くぶっ飛んだオチがあったらと、そう思ってしまいました。

しかしショートショートとして読むと、王道な感じで、上手い構成だなあと感じます。
でもまだまだ圧倒的にインパクトが足りないし、巧いと思わせるオチでもないのが残念でした。

830 :全感5/12 ◆/xGGSe0F/E [sage]:2014/06/06(金) 18:23:22.38 ID:rW2ajJ3J0

No.05 もう、一人でいいから(すずきり)

本作を読み終わり、この作者はこの作品で何を述べたかったのだろうかと考えた時に、
【自分の心境や感覚を共有する相手のいない、自意識だけが肥大した孤独な女性】を書きたかったのだろうと、私は勝手に推測しました。
No.2と大まかなテーマとしては一致しているような気もします。

電車内でスマホばかりを弄る人、愛想がよく外見に気を遣っている自分とは正反対の先輩(異性)
化粧のできない自分、垢抜けてしまったかつての同類、そのような人物対比、というかアイデアは面白いし上手いと感じました。

あと個人的な感想なのですが、宗教(あるいは自己啓発セミナー?)の怖さが書かれていないため、
リナちゃんがただ宗教を勧めてくる勧誘員のようになってしまっていて、今のリナちゃんの人間性が描かれていないのが
残念に思いました。

他の人も書いていましたが、その宗教の恐ろしい面、怪しい面、あるいはリナちゃんが
マインドコントロールされている描写と言うのがないと、何と言うか、
主人公が感じる社会の(あるいは人間関係の)面倒くささと言うのが深く伝わらないと思うんです。

それに、ただ批判されるべき記号として簡単に宗教を出したみたいに見えて、
あるいはとても糾弾されることになるかもしれません。まあ、そんなうるさい事を言う人なんてほとんどいないと思うんですけどね。

ただやはり、そうですね……。
リナちゃんがマインドコントロールされているんだな、としっかりわかる描写が欲しいと感じました。
もしくは、主人公が宗教セミナーに参加し、そのセミナー独特の気持ち悪さをしっかり描写してしまうとか。

物語としては、社交性のないまま大人になった女性が、結局そのまま一人で生きていくことを決意した。
いわゆる【社会の中で生きているマイノリティーな人間の苦しみ】的作品だと思います。どちらかと言うと文学系。

だとすれば、もう少しその主人公の孤独を踏み込んで書くか、
あるいは宗教的マインドコントロールの恐ろしさの方を主題にしても面白かったんじゃないかなと、
個人的に思ってしまいました。

文章は読みやすく、とても上手だと思いました。
人物造形はありがちながらも、変に奇をてらっていなくていいと思います。

831 :全感6/12 ◆/xGGSe0F/E [saga sage]:2014/06/06(金) 18:24:25.81 ID:rW2ajJ3J0

No.06 THE ONE ◆Mulb7NIk.Q

他の方も仰られている通り、文章がとても上手でした。
しっかりと海外作品風(翻訳調)の文体を作りだし、淀みなく最後まで書けていると感じました。
そして物語も面白く、最後まで飽きることなく読むことが出来ました。

小説としての完成度は、かなり高かったのではないかと思います。


しかし一方で、>>――落ちていく瞬間、私の中で何かがカチリと音を立てて組みあがった。

ここがやはり唐突で、ご都合主義と言わざるを得ない感じがしました。ここまでの流れが素晴らしいだけに、
この描写が唐突に現れたことで違和感を覚え、戸惑いました。

そのような都合の良い奇跡が、人間の身に唐突に、しかも抜群のタイミングで起こる事なんてまずあり得ません。
もしそのような奇跡を描くのならば、それを読者に納得させるだけの密度の高い描写をするか、
それとも奇跡が起こるまでの予感を感じさせる、身の変化を読者に気づかせるような描写を事前にしておくべきだと感じました。

物語における奇跡というのは、やはり読者に納得してもらわなければいけません。
それは本来、現実ではありえない事なのですから。
失敗してしまうとご都合的展開だと揶揄され、作品を傷つけかねない諸刃の剣だと思います。
もちろん私も、奇跡をうまく描写することは出来ていません。使いたくなりがちですが、やはり難しいです。

更にこのエリナの体が正常になる描写、それが唐突にエリナが語ったという回想描写として現れるので、
読む際に引っかかってしまいます。
主人公の視点で描写してから、後にエリナはこう語った――とすると自然になるのかなと感じてしまいました。

と、偉そうな事を言ってしまいましたが、この部分以外がとても魅力的で完成度が高いだけに、
一番の見せ場で違和感を覚えさせるのは惜しいなと、どうしても感じてしまったのです。

それくらい上手な文章、構成だったと思います。素晴らしい作品でした。
832 :全感7/12 ◆S6qZnfmn3/gR [saga sage]:2014/06/06(金) 18:25:47.43 ID:rW2ajJ3J0

No.07 ノスタルジックの船よ、沈め


実を言うと、自作です。

とあるアメリカの新人小説家であるお二方の小説を読み、「この人たち凄いっ!」と唸らされ、
自分もそんな作品を書いてみたいと思い創った作品です。

故に、品評会で見てもらうために書いた、と言うよりは、
自分の好きなものを好きなように書くという趣旨のもとで書かれた作品です。
品評会で勝てる作品ではないな、と思いながらも、どのような評価がされるのだろうとワクワクしながら投稿した、
そんな実験的作品でした。

この作品及び今回品評会に参加した理由は、No.1さんの作品を見て、これはすごいなと思わされ、今回は品評会に参加して、
自分を高めるためにこの人と競い合ってみようと思い、この作品を書き始めたのです。

当初、全くアイデアが出ずに、とりあえず好きなものを書いて、その後でちゃんとしたものを書こうと思い、
こんな摩訶不思議な作品が出来上がりました。
影響を受けた二人の作家さんも、詩的で不思議な世界観の小説を書いている人だったので。
もちろん私とは比べ物にならないくらいに、すごい想像力と技術で書かれています、私が影響を受けた方たちは。

ちなみに、この小説がちょっと奇抜すぎるのと、二作連続で同じトリップの人が投稿したらうざいかなと思い、
いつも使っているトリップとは別で投稿させて頂きました。
いつも使ってるトリップだと、知っている人からすれば、「また変な作品書いて来たな」と思われそうでしたので、
色眼鏡なしで(私を知っている人がいるかどうかも分からないですが)どのような評価を受けるのかと、挑戦した作品で御座います。

ほげおさんにはお手数をかけてしまい申し訳ありません。転載ありがとうございました。本当、ごめんなさいっ!

833 :全感8/12 ◆/xGGSe0F/E [saga sage]:2014/06/06(金) 18:26:49.20 ID:rW2ajJ3J0

No.08 Black Swan Song

いつものトリップで投稿しました、自作です。

書いている途中で、あまりにも普遍的すぎないか、長すぎて話がたるまないか、と不安になっていたのを覚えています。
書き始める前に、簡単にプロットを作り、構成に力を入れて書いた作品です。
吉田修一さんのような、構成が上手い小説を目指して、この作品を書き始めました。

書き終わって投稿した後も、この小説が皆様にどのような評価を受けるのかドキドキして過していました。
もっと読みやすく書くことが出来たのではないかと、文体が気になってしまって……。
いつもとは違い、文体よりも構成に力を入れたので……どうなるのだろうなあ、と。

それと、書いた後にふと思い出したのですが、
私が小学生の頃、学年の離れたクラスに、双子の兄弟がいました。
彼らは一卵性双生児であり、顔では見分けがつきません。性格もまったく一緒、声も一緒、
それが当時の私にとって、とても不思議に感じたのです。

彼らが高校を卒業したある日の事。
私は高校に入ったばかりで、彼らの存在など忘れて新たな友達を作り、過していました。
学年が離れていたこともあり、あまり接点もなかったのです。
そんな双子の情報が耳に入ったのは、恐らく夏頃だったと思います。
仕事から帰ってきた母が、〇〇くん(双子の弟の方)が、警察に逮捕されたらしいよ、と教えてくれたのです。

私は驚きました。いつも明るく皆の人気者だった彼が、なんで逮捕されたのだろうと。
母が言うところによると、暴行で逮捕された、との事でした。

更に二人の近況を、母が続けて話してくれました。
双子の兄の方は有名大学に行き、好きな事を学んでいるそうで、
弟の方は高校を卒業した後働きに出て、今回暴力事件を起こしてしまったらしいのです。

一体全体、全く同じに見えた二人が、なぜこうもそれぞれ変わってしまったのか。
どこの時点で二人は別々の方向に向かい始めたのか。私には不思議に感じました。
書いている途中に思い出したわけではありませんが、書き終わってしばらくした後に、
その二人の事を思い出していました。

――私は双子=二人という認識で彼らに接している。しかし彼らはやはり、それぞれ一人の人間であり、
それぞれの人格を持っているのだ。
彼らは外見が同じというだけの、まったく別々の人間である。

その考えは、書き始めた時から自然と浮かび、この小説のテーマとして持ちだされたものでした。
そのテーマが、自分なりになんとか書けて、ほっとしています。

834 :全感9/12 ◆/xGGSe0F/E [saga sage]:2014/06/06(金) 18:28:12.84 ID:rW2ajJ3J0

No.09 (文章量超過) アイドル「兄は私のマネージャー」 ◆1ImvWBFMVg[


登場人物の関係性を丁寧に書いたエンターテイメント作品。他の方が言われている通り、
序盤の文章が不安定だと感じました。
色々と気になる部分が多く、物語の中に入りにくかったです。

それと最初の方の文中にある、『身を固めて』の誤用も気になりました。
意図は分かるのですが、そこはあえて身を固めると言う凝った表現を使わずに、
『留まって』などの表現でよかったように思います。
このような微妙な違和を感じさせる文章が時々出てきて、その度に読むのが止まってしまいました。
なんかうるさくいう奴ですみません……。


序盤の展開でも気になることがありました。一番最初の場面。あそこはいきなり書くべき場面だったでしょうか?
ガラスの向こうとこちら側(非現実側)と言うことを強調したかったと思うのですが、読者としては混乱してしまいます。
三人の関係をミステリアスに演出しているのでしょうが、正直に言うと、ここがあまり機能していなかったように思えてならないです。
男がゲームを始める場面からでもよかったように思えてしまいます。その後で、ミュー(ニュー?)とルクルの会話を入れれば、
流れとして綺麗に見えた気がします。

その他、人物の名前が安定していない(ニュー→ミュー等)、段落の最初が空けられていない、『ふいに突然』など日本語として変な文章がある
などいろいろと気になることはありましたが、しかしこの作品が、一番読者を楽しませようとして苦労して書かれた作品なのが分かりました。
作者の力の入れようが伝わってきます。
悩みながら(あるいは楽しみながら?)時間をかけて作られた作品なのでしょう。
それだけで、もう評価に値するのだと思います。

設定としては、ライトノベルやギャルゲー、小説家になろうなどで書かれていそうな、不思議な設定のエンターテイメントだと思います。
指摘すべき穴は結構あるように思いますが、最後までしっかり物語を書き、丁寧に描写を続け、最後まで書ききったのはとてもすごいです。

この作品においては野暮なことは言わず、楽しめるか楽しめないか、それに尽きると思います。

が、最後に一つだけ野暮な事を言うのならば、お題にそっていないような気がしてなりません。
以前本スレ>>419で出された【女子アイドル『兄は私のマネージャー』】をお題として書かれた作品であるような気がします。
まあ、【one】を感じさせるような描写もなくはないですが……。この品評会に出すべき作品だったのか、疑問を感じます。

と意地の悪いケチをつけてしまいましたが、一番力を入れて書かれた作品であるように思うので、このレス数にはやはり賞賛します。
まさに問題作でありながら力作だと思います!

835 :全感10/12 ◆/xGGSe0F/E [saga sage]:2014/06/06(金) 18:28:55.64 ID:rW2ajJ3J0
No.10 (時間外作品) ブラック・アウト ◆xaKEfJYwg.

読んでいて切なくなりました。書き方が上手かったです。
最後の辺りが少しわかりにくかったです。と言うよりも、ミズカの抱える闇が今ひとつわからなかったです。
恐らく私の読解力(および想像力)が足りないのだと思います。
しかし作品の雰囲気や書き方は、今回の品評会の中で一番好きでした。

恐らく読み手である私たちが、二人の関係を、そしてそれぞれが抱える思いを想像することによって、映える作品なのだと思います。
読み手によって評価は分かれそうな気がします。彼女たちの抱える複雑な思いが、もう少し見えればいいのに、と私は思ってしまった。
なんだかこの作品に妙に惹かれた。心を動かされた。それは確かです。



No.11 (時間外作品)身の回りの世界で

No.2の作品よりも、文章が安定している印象を受けました。
この小説の後半、前回のような短い描写を書き繋げていく文章から、一つ一つの心情を掘り下げようとする文章になっていて、
良くなっているように感じました。
以前の『のっぺらぼう』というメタファーを持ち出すよりも、自然に母親との回想が入っていることで、主人公の人間性が少し見えた気がします。

ただやはり、子供を拾って育てると言うことは大変なので、その辺の葛藤なり、親となった自分の心情や、
かつての母の心情を想像するなりがあったらなあ、となんとなく思ってしまいました。

ラストシーンについては、人間などそう簡単に変わることが出来ない、というメッセージが込められている風に私には思えたので、
これはこれでいい終わり方なのだと思います。
結局は主人公にダメな部分があり、そこを直せずに、また元の孤独に戻ってしまう。大人になった人間がそう簡単に変わることなど出来ないのだ、という主張に感じました。
孤独に戻る場面と言うのは作者さんが書きたかったことだろうし、これはこれできっちり成功していると私は感じました。

たとえどんな人間と出逢おうが、本質的な問題を解決しなければ、人は心から変わることなど出来ない――
私にはそんな叫びが聴き取れたような気がして、わりと好きなのです。
それが意識的に書かれたものなのか無意識に書かれたものなのか分かりませんが、
駄目な人が、陳腐な創作の様に、簡単に心を入れ替えて人生が変わるだなんて、それは嘘っぽいですし、物語に対して正直ではないです。
作者さん的には後悔はあるのでしょうが、この作品はこの作品のままでいいのだと私は思います。

そしてできれば、主人公の問題の本質、という部分を少し踏み込んで書いてほしかったと感じました。
836 :投票11/12 ◆/xGGSe0F/E [saga sage]:2014/06/06(金) 18:30:05.32 ID:rW2ajJ3J0
投票する際に、N0.1とNo.6どちらに投票すべきか相当悩みました。
いっそのこと両方に投票しようかなとも思いましたが、やはり一つに決めるべきかどうかを思い、最終的にこのような結果に決めました。

***********************【投票用紙】***********************

 【投票】:No.06 THE ONE ◆Mulb7NIk.Q氏

       物語の構成力とリーダビリティという点を重視して考え、No.6に投票します。   
       読んでいく中で、一番物語に引き込まれ、心地よさを味わうことが出来た小説でした。
       今回の品評会の中では、小説としての完成度が一番だったと思います。
一つ欠点をあげるとすれば、お題の扱い方に疑問を持ちました。『one』への持っていき方が、無理やり繋げたような印象を受けるのです。
       もちろん、『one』を上手く使えなんてルールはないですから、これはこれで良いのだと思います。
       私にとってはこの小説が一番でした。  

     :No.01 たったひとつのぼくを求めて(小伏史央)

       散々悩みましたが、やはりNo.1も投票させていただきます。
       一つの作品しか投票しないと決めていたのですが、やはりこの作品を関心票で済ませてしまうのは個人的に惜しい。
       実験的な作品でありながら、ここまで読ますことが出来るのは、評価に値すると思うのです。
       ずば抜けた一つのアイデアや表現こそなかったが、饒舌な文体での抽象的思考の構築は、やはり読んでいてクセになりました。
       最初はNo.6だけに投票しようかと思ったのですが、こういう実験的な作品が品評会では評価されにくい事を考え、
       ならば自分が推そうと思い、最終的にこの作品の投票に至りました。



 【関心票】(気になった作品)

      :No.10 (時間外作品) ブラック・アウト ◆xaKEfJYwg

        単純に読みやすく、物語に惹きこまれました。
        これが時間内に来ていたら、恐らく投票する際に、三つ巴の戦いになっていたと思います。
        どれに投票するか余計に悩んでいた事でしょう。次回は、ぜひ時間内に間に合わせて、優勝争いに食い込んでください。
         
      :No.03 ヒトリ・ヒストリ(犬子蓮木)

        上記の作品よりも、何歩か劣る印象だったけれど、これからどう進化していくのか気になりました。
        世界観や、一つ一つのアイデアは、作者の中で完璧にイメージできており、出来上がっていると思います。
        あとはそれをしっかりと読者に伝える技術なり、リーダビリティがあれば、大いに化ける作者さんだと感じました。
        技術的に未熟さを感じさせるけれど、これからに大いに期待したいと言う意味で、気になった作品にあげさせていただきます。

********************************************************
837 :総評12/12 ◆/xGGSe0F/E [saga sage]:2014/06/06(金) 18:31:14.16 ID:rW2ajJ3J0

  【総評】

今回はレベルの高い作品が多かったように思います。
いつもよりも多くの投票や関心票を入れていました。
上位三つの作品はそれぞれに良い部分があり、本当にどれに投票すべきかを悩みました。

お題については、かなり難しかったと思います。
もちろん難しいことが悪いわけではありません。それこそ腕の見せ所な気がします。
が、やはりお題に則りながら、それでいて読んで面白い小説を書くと言うのは、大変難しいことなのだと実感しました。

そんなお題にあっても、それぞれに個性のある、いろいろなタイプの小説が揃い、読んでいて楽しかったです。
ちなみに私も偉そうに批評など書いていますが、私の小説観は結構偏っているので、
偉そうな批評が書かれてあっても、話半分で笑い飛ばしてください。
その人にとって的外れなアドバイスになっていることもあると思います。

それと他の人も仰っていましたが、今回のお題のためか、確かに孤独や諦めをテーマにした小説が多かったような気がします。
どうしても『one=一人、一つ』というイメージが浮かびやすいのだと思います。
こういう品評会だと、他の人とアイデアが被ると言うこともありますので、小説の主題の選び方も難しいですね。

自分は二作品出しましたが、珍しく十作品を越える作品が集まって、盛り上がったと思います。
運営をしてくださった方、作品を投稿した方、感想を書いてくださった方々の全員に、心から感謝をしたいと思います。
皆様お疲れ様でした。
838 : ◆/xGGSe0F/E [saga sage]:2014/06/06(金) 18:32:55.36 ID:rW2ajJ3J0
投下終了です。レス数を多く消費してしまいすみません。
839 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [sagasage]:2014/06/06(金) 19:10:55.13 ID:C59xde7y0
気合の入った感想乙乙
840 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [sage]:2014/06/06(金) 23:10:20.21 ID:FlLLfZjO0
お題ください
841 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/06/06(金) 23:12:07.17 ID:m8HohWCjO
>>840
懺悔の時間
842 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/06/07(土) 05:45:37.61 ID:qaDksINfo
お題おーくれ
843 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/06/07(土) 08:18:38.44 ID:+Fp5csEfo
花吹雪
844 :422 [sage]:2014/06/07(土) 17:39:54.08 ID:tgtkvcSP0
>>826
感想投下ありがとうございます。
てきすとぽいに転載させていただきました。

No.02は、耳が痛い……
書けなかったところが最大の後悔なのです。


投票締め切りまであと数時間、最後まで皆さんの投票をお待ちしています!
845 : ◆/xGGSe0F/E [saga sage]:2014/06/07(土) 18:30:09.43 ID:DlLBThiO0
>>844
お疲れ様です。転載ありがとうございます! 

いえいえっ!お話は面白かったです!
自分だったらこう書くだろうなあ……というのを書いただけなので、あまりアドバイスになっていない気もします(笑)
自分で言うのもなんですが、あまりお気になさらないでください。
人によって書き方や表現方法なんかまったく違うと思うので^^

ちなみに自分も書き終わった後に後悔ばかりです……。
846 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/06/07(土) 21:42:43.43 ID:YpkGWRVTO
お題おクレヨン
847 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/06/07(土) 22:06:44.15 ID:FVzFR/Q7o
>>846
三つ子
848 :422 [sagasage]:2014/06/08(日) 00:23:49.39 ID:Vcki8YFXo
【本スレ】
投 関
1    No.01 たったひとつのぼくを求めて(小伏史央)
    No.02 あの日の真白なキャンバス(ほげおちゃん)
  1  No.03 ヒトリ・ヒストリ(犬子蓮木)
    No.04 一本杉(茶屋)
    No.05 もう、一人でいいから(すずきり)
1    No.06 THE ONE ◆Mulb7NIk.Q
  1  No.07 ノスタルジックの船よ、沈め ◆S6qZnfmn3/gR
2    No.08 Black Swan Song(木下季香)
  1  No.09 アイドル「兄は私のマネージャー」◆1ImvWBFMVg(さと吉)(*1)
  1  No.10 ブラック・アウト ◆xaKEfJYwg.  (*2)
    No.11 身の回りの世界で(ほげおちゃん)(*2)
    
【てきすとぽい】
投 関
  3  No.01 たったひとつのぼくを求めて(小伏史央)
  2  No.02 あの日の真白なキャンバス(ほげおちゃん)
1    No.03 ヒトリ・ヒストリ(犬子蓮木)
  2  No.04 一本杉(茶屋)
  1  No.05 もう、一人でいいから(すずきり)
2    No.06 THE ONE ◆Mulb7NIk.Q
1    No.07 ノスタルジックの船よ、沈め ◆S6qZnfmn3/gR
  1  No.08 Black Swan Song(木下季香)
  1  No.09 アイドル「兄は私のマネージャー」◆1ImvWBFMVg(さと吉)(*1)
    No.10 ブラック・アウト ◆xaKEfJYwg.  (*2)
    No.11 身の回りの世界で(ほげおちゃん)(*2)
    
【合計】
投 関
1  3  No.01 たったひとつのぼくを求めて(小伏史央)
  2  No.02 あの日の真白なキャンバス(ほげおちゃん)
1  1  No.03 ヒトリ・ヒストリ(犬子蓮木)
  2  No.04 一本杉(茶屋)
  1  No.05 もう、一人でいいから(すずきり)
3    No.06 THE ONE ◆Mulb7NIk.Q
1  1  No.07 ノスタルジックの船よ、沈め ◆S6qZnfmn3/gR
2  1  No.08 Black Swan Song(木下季香)
  2  No.09 アイドル「兄は私のマネージャー」◆1ImvWBFMVg(さと吉)(*1)
  1  No.10 ブラック・アウト ◆xaKEfJYwg.  (*2)
    No.11 身の回りの世界で(ほげおちゃん)(*2)

 *1...文章量超過
 *2...時間外
849 :422 [sagasage]:2014/06/08(日) 00:32:11.89 ID:Vcki8YFXo
というわけで優勝は、「No.06 THE ONE ◆Mulb7NIk.Q」でした。
おめでとうございます!

自分が参加しておいて言うのもなんですが、今回は力作が多く、
価値がある優勝だと思います。

優勝者はお手数ですが、次回のお題の決定をお願いします。
#とりあえず6/14(土)ぐらいまでで・・・・・・?
850 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/06/08(日) 00:43:12.47 ID:mA7AZSrFo
おつ&おめー
851 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/06/08(日) 00:46:37.05 ID:xR5hROJXo
おめです
852 : ◆/xGGSe0F/E [saga sage]:2014/06/08(日) 01:12:40.13 ID:rfw/NkOd0
優勝逃したかー!
やはり自分はまだまだだなぁ。

優勝者おめ!
853 : ◆Mulb7NIk.Q [sagasage]:2014/06/08(日) 07:47:14.49 ID:iHqdqdqs0
あ、あれ?投票期間、今日の0時までかと思って余裕かましてたら全部終わっちゃってた……?
まあ、いいや中途半端だけど全館投下しよう
854 : ◆Mulb7NIk.Q [sagasage]:2014/06/08(日) 07:48:21.03 ID:iHqdqdqs0
No.01 たったひとつのぼくを求めて(小伏史央)
http://text-poi.net/post/u17_uina/30.html
なかなか評価するのが難しい小説。一度目を通し終わって、恐らくリチャード・バックの「ONE」を読んでいる主人公の心理世界を饒舌体で
描写しているんじゃないかな、とあたりをつけてみる。件の「ONE」は読んだことがないので、グーグル先生のお世話になり、あらすじを読む。
なるほどなるほど、と。どうも平行世界の話らしい。それから愛の話。「ONE」は素直な筋のある小説ではないのだろうか、どのサイトを眺めて
も、ストーリーの部分にはあまり触れられていない。それを念頭に置いて読み返してみる。するとどうもこれは、心理世界を描写しただけの
単純な話ではなさそうだ。
と、ここでいきなり話は変わるのだけれど、僕は以前にハーラン・エリスンの「世界の中心で愛を叫んだけもの」に触発されて、その構成や
モチーフを借りた小説を書いたことがある。それをふと思い出してニヤリとした。そこでまあ、氏の書いた小説を読み込むためにはやはり「O
NE」というテキストが必要になるのだろうから、どうにも評価が難しい。でもまあ、そうはいっても手元に問題の本はないし、仕方がないので
予想をまじえながら再び読み進めてみる。
語り口はどうだろうか。饒舌であり、とりとめなく、要領を得ない。これも予想でしかないのだけれど、元となったテキストは恐らく明晰な文章
(つーかフツーの文体と置き換えようか)で、平行世界のありさまを描写してるのだろう。じゃあ、次の点。様々な平行世界を旅し、自分の元
いた世界に戻ろうとするという、大まかな話の流れは一致している。ふむ。だが、書こうとしているものは全然違うんだな、と比較してみて気
付く。そしてまたニヤリ。容器は一緒だけれど中身は全然違う、まさに僕が昔やったのと同じ試みだ。ちょっとしたシンパシーを覚える。
この小説はどこへ向かうのか。こういった物語に王道的な解釈を施すのは難しい。なぜなら、そこにある文章が「意図せず書かれている」
可能性があるからだ。意図せず書かれた文章、こいつはやっかないな言葉だ。あるいは目的のない実験。
まず一応、5・4の章、3・2の章がセットになっているのは見てとれる。で、5・4の連なりは元となったテキストに関してのオマージュ色が強い
ことに対し、3・2は「1」というキーワードに基づいた文章になっている。3は単語を「1つ」づつしか使用できないというルールに、2は二人の
ぼくの一人称を「一つ」の段落に収めるというルールに従っている。屋台骨だけは見えた。
リチャード・バックによる「ONE」には(読んでないけど)どうやら明確なテーマがあるみたいだ。読み手は、「愛について」だとか「運命について」
「人生について」、いろいろな意味で「ONE」という題名らしい小説だとレビューしてる。じゃあ、この小説はどうだろう。構造について分析は
してみた。が、とりとめない文体は物語そのものの意味を散逸させてしまっている。何がしたいのかは分かったが、何が言いたいのかは
分からなかったという状態。そういった状態に読み手が陥ってしまうと、やはり疑念が生じてしまう。これは意図をもたない文章、ナンセンス、
狐と狸の化かし合いといったものの類なんじゃないか、とね。
なんとなくではあるけれど、「自己愛」あるいは「自己嫌悪」についての小説なんじゃないかなという気はした。だけれど、気のせいかもしれ
ない。自信を持って判断するための材料がやはり少ない。読者を特定の目的地に導くための道標は、信用していいのかわからない(語り手
への信頼の欠如)、もしくは、何らかの形で秘匿されている(饒舌は多くの無意味の中に真意を埋めていく)。一連の流れの中で、重要そうに
見えるのは、世界から世界への移動方法だ。「1」以上に分裂した「ぼく」を殺すことによって、別の世界へ。死についても幾度となく作中で
触れられるし、博愛的だった「ぼく」が、他の「ぼく」に大して激しい憎悪を抱くといったような変化も起こる。なるほど、分かりやすい。分かり
やすすぎて、逆に解釈に困るほどだ。この線で追っかけていけばそれなりに「こじつけ」は出来るだろう。
だけどこれらの出来事は、重要そうに見えるだけで、作者の中ではそれほど重視されていないのかもしれない。やはり最初に生じた疑念
通りに、作者は何も考えていなくて、実はただ垂れ流しの文章をここに残しただけという可能性もある。
と、まあ、そういうわけで評価に困るんだよなあ。ただの文体練習じゃね、とか思っちゃったり。も少しヒントがあれば読みやすかったかもー。
855 : ◆Mulb7NIk.Q [sagasage]:2014/06/08(日) 07:48:54.45 ID:iHqdqdqs0
No.02 あの日の真白なキャンバス(ほげおちゃん)
http://text-poi.net/post/hogeochan_ver2/4.html
声に出して読んでみよう

No.03 ヒトリ・ヒストリ(犬子蓮木)
http://text-poi.net/post/sleeping_husky/25.html
恐らくSFを齧った書き手なのだろう

No.04 一本杉(茶屋)
http://text-poi.net/post/chayakyu/66.html
くだらねー、と思いつつちょっと笑ったよ

No.05 もう、一人でいいから(すずきり)
http://text-poi.net/post/tamamogari/1.html
読みやすいね

No.06 THE ONE ◆Mulb7NIk.Q
http://text-poi.net/post/hogeochan_ver2/5.html
自作

No.07 ノスタルジックの船よ、沈め ◆S6qZnfmn3/gR
http://text-poi.net/post/hogeochan_ver2/6.html
好き。とーひょー

No.08 Black Swan Song(木下季香)
http://text-poi.net/post/kika_kinoshita/1.html
上手い。かんしん
856 : ◆Mulb7NIk.Q [sagasage]:2014/06/08(日) 07:52:51.69 ID:iHqdqdqs0
これからバイトなので、お題は帰ってから考えます
運営者の方、参加者の方々、お疲れ様でした
857 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/06/08(日) 10:13:38.36 ID:d7TxR1l/O
え?締め切り今日の夜じゃないの?
858 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/06/08(日) 11:11:00.20 ID:mA7AZSrFo
>>857
6/8の0時だから、昨日の24時まで
859 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [sage]:2014/06/08(日) 12:27:50.61 ID:8eTKUM1x0
今回作品数も多かったし長い作品が多くて、時間の都合上全感&投票できなかった。すみません。
”Black Swan Song””身の回りの世界で””ブラック・アウト”あたりが個人的には好きでした。
確実に品評会のレベルが上がっていて、参加するのが怖いと思ってしまう……
860 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/06/08(日) 16:42:29.86 ID:d7TxR1l/O
優勝おめ!

>>858
昔の一週間区切りの感覚で考えてたわ。まぁ、多分投票の結果は変わらないと思う。
861 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/06/08(日) 22:38:03.77 ID:xR5hROJXo
あんまし感想貰えなかった……時間外だからかな
>>859
感想してくれてもいいのよ
862 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/06/08(日) 22:59:04.52 ID:oWkhOLuso
test
863 : ◆Mulb7NIk.Q [sagasage]:2014/06/09(月) 00:48:37.75 ID:1yJnZrfz0
品評会のお題は「泣」で。
特に制限は無し。解釈は自由。できれば泣ける小説が読みたいな。
というわけで、乙乙
864 :422 [sage]:2014/06/09(月) 01:25:50.58 ID:c6sO6yLN0
>>863
お題ありがとうございます。


期間は以下の通り考えていますが、皆さんどうでしょうか?

投稿期間:06/22 (日) 00:00 〜 06/30 (月) 23:59
投票期間:07/01 (火) 00:00 〜 07/06 (日) 23:59
集計発表:07/07 (月)

本当は個人的には土曜日締めにしたかったんですけど、日付がうまくいかなくて……

問題なければ明日にでもてきすとぽいにスレを立てようと思います。
865 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/06/09(月) 02:15:46.14 ID:Rm/Fvt56o
期間に関しては文句出ないと思うよ〜
乙乙
866 :422 [sage]:2014/06/09(月) 08:31:20.00 ID:+mLxa92BO
ありがとうございます。

待っててもとくに意見は出なさそうなので、てきすとぽいにスレを立ててみました。
http://text-poi.net/vote/66/


お題「泣」
特に制限は無し。解釈は自由。できれば泣ける小説が読みたいな。

投稿期間:06/22 (日) 00:00 〜 06/30 (月) 23:59
投票期間:07/01 (火) 00:00 〜 07/06 (日) 23:59
集計発表:07/07 (月)
867 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/06/09(月) 17:56:24.29 ID:GjYrE70Oo
今bnskの避難所とか本スレ救済スレってどこにあるか誰か教えておくれ
連投規制でここに作品投下できないみたいなんだ・・・
868 :失踪(お題:善悪) 0/7 ◆pEPPiAPChA [saga]:2014/06/09(月) 18:13:57.30 ID:hFko+7qZo
通常作投下します
お題は>>823様より頂いた「善悪」

一行50字改行で30行ほどで1レス、4000字ほどです
久しぶりなので投稿間違い等あったら申し訳ない
869 :失踪(お題:善悪) 1/7 ◆pEPPiAPChA [saga]:2014/06/09(月) 18:14:28.95 ID:hFko+7qZo
 会社の同僚である彼と同棲して半年ほど経った頃、都内で失踪事件が相次いでいた。
 被害者とされているのは若い女性ばかりで子どもも含まれていた。犯行のあった時間は夕方から深夜とされている。現場と思われる場所に血痕が残されていて事件が発覚し、怪しい男、同一と思われる小型のバンの目撃証言から連続失踪事件として発覚したのだった。きっと単発の失踪など家出で済まされてしまうだろうとニュースを見ながら思う。

「塾とか職場の帰り道が現場なんだってさ、怖いね」
「うん」

 彼は朝に弱い。不愛想な返事をする。
 一緒に住んでいても部屋は別々なのだが、特別遅くまで起きているわけでもない。自分と同じだけかそれ以上は睡眠をとっている筈だがいつも眠そうにしている。朝は眠いもの、という固定観念があるのだろう。

「私も今晩飲み会で遅くなっちゃうよ、もしかして、襲われちゃったりね」
「おい、それ、不謹慎じゃないの、お前外でそんな言いかたするなよ」

 軽口を叩くと真面目に注意された。余程機嫌が悪いようだ。普段ならこんな言葉遣いはしないしお前などという呼び方もされない。
 とは言え自分の言ったことは確かに不謹慎に違いないし、それで機嫌を悪くしてもおかしくはないとも思う。反省して、ごめん、と素直に謝った。
 訪れた沈黙に居たたまれずまた私が口を開いてしまう。この軽さは悪いところだという自覚はある。

「けどさ、本当危ないじゃない、この辺じゃないけど都内ってだけでどこ行っても近いよ」

 また少しの沈黙。

「……うん、そうだな、気を付けて欲しい。電話で呼べよ迎えに行くからさ、あー、さっききつい言いかたしたな、俺こそごめん」

 彼のこういうところを本当に好きだと思う。そして、その日の夜、彼は部屋に帰らなかった。
870 :失踪(お題:善悪) 2/7 ◆pEPPiAPChA [saga]:2014/06/09(月) 18:15:35.35 ID:hFko+7qZo
 二日ほど待った後、方々に電話を掛けた。彼との共通の友人、同僚と上司、警察。交際をしているのは会社に
隠していたのだがそれどころではなかった。連絡物から彼の実家の電話番号を調べ、躊躇はあったが連絡をする
ことにした。やはり何も知らないようだった。
 私との生活を諦めて、居場所を知られないようにしているのかも知れない、そういう期待はあった。しかしそ
れで無断欠勤をしているのはいくら何でもおかしい。

 一週間経った。彼のご両親が一度部屋に来て、失踪届を出すことにした。何かあったら連絡しあうと約束して
私は一人になった。

 一カ月経った。失踪事件は尚も続く。
 消えたとされるのはやはり若い女性ばかりで、警察に相談したが彼の失踪は別のものとして考えられているら
しい。これでは捜査もして貰えないかも知れない。
 暫く、会社と家を往復する日々が続いた。


 二カ月経った夜、部屋のドアがノックされた。チャイムを鳴らさない深夜の訪問者に警戒する。
 返事はせず、出来るだけ静かにドアに近づいた、二度目のノック、体が震える。ドアの横の靴箱で体重を支え
て、そっと覗き窓を確認した。

 訪問者は、彼であった。
 躊躇なくドアを開ける。彼はドアを叩くポーズのまま笑顔の私に驚いているようだ。

「ば、かじゃないの! こんな遅くに帰ってくるなんて! 今まで何処にいたの! 何してたの!?」
「ごめん、うん、話すから……中入っていい? 近所迷惑になるよ」
「あなたの家じゃない……」

 彼を引き入れて、抱きしめた。ドアを閉める音が聞こえた。後ろ手で閉めたのだろう。ドアが開いているとか
近所とか、そんなことはどうでもよかった。
871 :失踪(お題:善悪) 3/7 ◆pEPPiAPChA [saga]:2014/06/09(月) 18:16:02.87 ID:hFko+7qZo
 彼がいる彼の部屋。ここがひどく懐かしく、リラックスできる場所なのだなと改めて思う。小さな四角いテー
ブルの横に彼は座った。
 困ったような顔で彼が言う。

「大丈夫? ごめん、落ち着いた?」
「落ち着くわけないじゃない、本当連絡もしないで、私色んなとこに聞いちゃったんだから。あ、そう、同棲し
てるのもばれちゃったからね!? どうすんのよほんと、そうだ、あなたのご両親にも連絡しちゃったんだよ」
「俺の実家?」
「そうだよ、スマホの番号貰ったから連絡してあげなくちゃ、皆心配してたんだから」

 スマホを取り出してアドレス帳を開く。彼の両親の番号を探して、電話をかけようとした。
 テーブルから彼が立ちあがった。スマホを持つ私の腕を彼の手が掴む。見上げた顔は照明で陰っていて何故か
悲しそうに見えた。

「どうしたの、怖いよ」
「連絡は、待ってくれ」

 それだけ言うと力づくで私の両手を抑え、背中の方で固定された。何かで縛られたようだ、手首に細い圧迫感

 恐怖以外の感情はなかった。悲鳴を上げるべきなのだろうか、そもそも、声が出ない。怖い。少し手首に力を
入れたが紐のようなものは切れそうもない。
 男が私の前に立っている。それは彼と同じ人物で、彼には到底思えなかった。私に危害を加えてようとしてい
る男。
 そして思い至った。失踪事件、彼が機嫌を悪くした理由。私が、これからどうなってしまうのか。
 体が震え出す。酸素が足りなくなっているように重い。
 立ち上がることなど出来ない。

 色々なことを考えた。そして、床ばかり見る目の前に、彼の頭が現れた。
872 :失踪(お題:善悪) 4/7 ◆pEPPiAPChA [saga]:2014/06/09(月) 18:16:28.57 ID:hFko+7qZo
「ごめん!」

 彼は頭をカーペットに付けて土下座の格好をしていた。

「本当ごめん! そのまま、話だけ聞いてくれ、連絡は待ってくれ」

 少し見えた顔には涙が浮かんでいた。泣きたいのは、こっちの方なのに。泣くという行動を突然思いだしたよ
うに私の顔も泣き出すのだった。

 それから彼は話し始めた。少し考えながら、口ごもることもあったが、趣味のためのアパートを別に借りてい
て、そこで趣味に没頭していたらしいと、簡潔に整理するとそれだけの事だった。
 つい呆れた声が出る。

「はあ、そんな趣味があるんなら言えばいいじゃない、なーに、アニメ? 模型? 私は心広いよう、内緒にし
ないんなら許してあげるから、教えなさい」

 そもそも、あまりに彼が無趣味なのでそれが心配だったのだ。しかし別に部屋を借りるような趣味は何処かで
妥協されなければ。手首の紐も早く解いてほしい。

「女を、食っていた」
「はあ!?」

 大きな声が出たがそんなこと考えては居られない。

「女って、浮気!? 信じらんない! 浮気って、あんた、二カ月も、引き籠りで女漁り!? 趣味、趣味じゃ
ないでしょ!」
「待て、待って」

「待てるわけないでしょう! ああ、だから私の事縛ったってわけね、ご両親に連絡されても困るんだ!」
「落ち着いてくれ、頼む、違うんだ、俺が好きなのはキミだけだし、浮気なんかしていない」
873 :失踪(お題:善悪) 5/7 ◆pEPPiAPChA [saga]:2014/06/09(月) 18:16:57.45 ID:hFko+7qZo
 彼があまりに情けない顔をしたので、少し大人しくすることにする。
 不機嫌な顔をして彼を見つめる。口が開くのを観察していると、彼が言った。

「言葉通りだよ、食ってたんだ、人間」

 意味を、理解するのに時間がかかった。理解したあとは、納得もしたかもしれない。

「失踪事件な、俺が犯人なんだ、俺が攫って、殺して、食った、食いたかったんだ、人間」

 彼は続ける。

「駄目なんだ、俺、食べたくなっちゃうんだよ。飯食うのとは違うんだ、違う欲求なんだろうな、たぶん、セッ
クスに近いのかも知れない。キスして、セックスして、食べたくなる。うん、そうしたら浮気なのかもしれない
。けどなあ、駄目なんだ」

 少し俯いて泣きそうな彼の顔。

「違うんだよ、いろんな女食ったよ、男も食おうとしたんだけど、食えなかった、違うんだ」

「俺は、キミにキスして、セックスして、それで、食べたかった」
874 :失踪(お題:善悪) 6/7 ◆pEPPiAPChA [saga]:2014/06/09(月) 18:17:49.91 ID:hFko+7qZo
 それで彼の告白は終わりだった。嗚咽の様な声が聞こえる。全く情けない男だと思う。彼女を縛って土下座し
て泣くなんて。
 本当に馬鹿な人だった。自分が愛されているのも分かった。私は、私の軽い口は、とんでもないことを言って
しまった。泣いて私のところに帰ってきた私の彼が愛おしかった。

「それなら、うん、食べればいいじゃない」

 彼ははっと顔を上げる、目が真っ赤だった。

「ほら、どうするの、殴って気絶させてから? 痛いのとか、苦しいのは言っておくけど嫌だからね? ほら、
何も私抵抗できないんだから、私のこと、好きなんでしょ」

 言ってやった。もうどうにでもなればいい。彼は上げた顔をまた俯かせ、小さく言う。

「そんな」

 聞き取れないくらい小さい声だった。どうしたの、と声を掛ける。彼は真っ直ぐ私の方を見た、そして言った


「そんなこと、出来るわけがないじゃないか!」

 彼は立ち上がって玄関の前で靴を履き、そのまま出て行った。ドアを閉めたあと鍵を掛ける音が聞こえた。合
鍵もちゃんと持っていたのに、どうしてノックなどしたのだろうと、不思議に思った。
875 :失踪(お題:善悪) 7/7 ◆pEPPiAPChA [saga]:2014/06/09(月) 18:18:19.88 ID:hFko+7qZo
 それからまた二カ月が経った。
 結局私は警察にも行かず誰にも彼の事を言わず、会社と部屋を行き来していた。
 朝のニュース、失踪事件の容疑者が見つかったらしい。

 彼のご両親と一緒に私も事情聴取を受けることになった。私の部屋を彼が訪れたことはやはり内緒にしておく
ことにした。
 彼は部屋で死んで発見されたらしい。近所に住む人が異臭を感じ警察に通報すると、腐乱している彼の死体が
あった。そこに残されていた被害者の遺品や、食べ残し、が証拠となり犯人として決定されたようだ。
 死体は欠損していた。両足と利き腕ではない左腕が無かった。暫くの間自分の体だけを食べて生活していたら
しい。死因は聞いていない。


 五年が経った。誰と付き合っても長続きしない。あれほど愛されることなど、もうきっとないだろう。
 このまま結婚も出来ないのだろうかと思いつつため息をつく日々だ。
876 :失踪(お題:善悪) 8/7 ◆pEPPiAPChA [saga]:2014/06/09(月) 18:20:21.46 ID:hFko+7qZo
以上、投下終わりです
感想など頂ければ泣くほど嬉しいです

1/7で50文字改行を忘れてしまいました読みづらくてすみません
877 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/06/10(火) 08:52:12.55 ID:Ro5dw9+jo
>>875
読んだ……んだけど、なんかすごくもやもやする
登場人物の思考についていけなかったんだと思う
主人公は、何故自分を縛り目の前で土下座する男を見て、愛されてると感じたんだろう
彼が彼女を食べなかったのはいいとして、なぜ自分の体を食べながら生活してたんだろう
彼女がその間、誰にも彼のことを言わなかったんだろう
行動の一つ一つに納得できる理由が見当たらなくて、読んでも、表面をなぞっただけで終わってしまった気がする
全体的に物語にリアリティを感じられなかった
食人衝動に理由はないとしても、どういう女性を好んで食べるとか、部位はどこが好きとか、ディティールをもう少し描写した方がいい気がする
878 : ◆ERp901EGPK6l [saga]:2014/06/10(火) 21:44:00.03 ID:Jgex0nhSo
通常作投下します
2レスです
879 :サエちゃん(お題:ジョーカー)1/2 ◆ERp901EGPK6l [saga]:2014/06/10(火) 21:48:42.75 ID:Jgex0nhSo
 サエちゃんは性質の悪い冗談をよく口にする。それでも彼女はとびっきりの美人だし、その悪い癖さえ除けば、
明るくて礼儀正しい良い子だった。彼女を嫌う人間もいたが、それよりも多くの友達に彼女は囲まれていた。そ
して彼女に恋い焦がれる男子もたくさんいた。ぼくもその内の一人だ。

 給食の時間に、ミチオが「ミートボールって何の肉で出来てんのかなぁ」と言った。するとサエちゃんが「ネコ
の肉で出来てるのよ。あなたの家で飼ってるネコも気を付けた方がいいわよ。飼いネコ専門のハンターがいる
んだから」などと言って脅かす。アケミちゃんが「そういう冗談言わないの。食事中なんだから」とたしなめると、
サエちゃんは舌をチロリと出して笑った。

 次の日、ネコが殺されているのが見つかった。肉はあらかた取り去られており、骨と皮だけになっていたのを
近所のおじさんが見つけたのだ。首輪がすぐ近くに落ちていたので、それがミチオの家のネコだということがす
ぐに発覚した。
 ミチオはサエちゃんを問い詰めた。ミチオの剣幕に圧倒されてしまい、サエちゃんは何も話すことが出来なか
った。そんなことがあって、サエちゃんは学校に来なくなってしまった。

 サエちゃんが学校に来なくなって一週間が経った。アケミちゃんが「サエちゃんの家に行ってみよう」と言うの
で、五人程集まってサエちゃんの様子を見に行くことにした。
一週間ぶりに見るサエちゃんは少し頬がこけていて、青白かった。
「みんな来てくれてありがとう」
「顔色悪いわね。ちゃんと食べなきゃ駄目よ」とアケミちゃん。
「うん、分かってる……ミチオくんはどんな感じ?」
「ミチオも大分落ち着いてきたよ。冷静に考えれば、サエちゃんが何かしたなんて証拠ないしな。冗談のタイミン
グが悪かっただけだよ」とタケオ。
「あっ、お前そんな呑気なこと言っててサエちゃんにどうにかされちゃっても知らね〜ぞ〜」とヨシノブが空気の
読めない冗談を飛ばす。
「コラ!そんなこと言っちゃっていいのかな〜ヨシノブくんのことをどうにかしちゃうかもよ〜」サエちゃんが怒っ
たフリをして言う。
みんなで顔を合わせて笑った。サエちゃんがいつもの調子を取り戻しつつあるのが嬉しかったのだ。
880 :サエちゃん(お題:ジョーカー)2/2 ◆ERp901EGPK6l [saga]:2014/06/10(火) 21:53:10.56 ID:Jgex0nhSo
 翌日、ヨシノブが死んだ。首を包丁で一突きされて出血多量で死んだのだ。
 サエちゃんは完全に家に引きこもってしまった。もう「サエちゃんの家へ行こう」などと言う友達はいなかった。
サエちゃんの親友であったはずのアケミちゃんですら行くのを嫌がった。
 ぼくは一人で毎日サエちゃんの家へ通った。
「ねぇ、あなたはあたしのこと怖くないの?」
「全然」
サエちゃんがぼくに抱きついてきた。ぼくは思い切って抱きしめ返した。とっても柔らかい。それにシャンプーの
良い香りがする。
「あたしね、ヨシノブくんも、ミチオくんのネコも殺してなんかない……殺してなんかないのよ……信じてくれる……?」
「信じるよ」
だってぼくが殺したんだもの。
881 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/06/10(火) 21:55:16.30 ID:Jgex0nhSo
以上です
投下に手間取ってしまい、申し訳ありませんでした
感想いただけると嬉しいです
882 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/06/10(火) 22:31:39.53 ID:Ro5dw9+jo
>>880
読んだ
綺麗にまとまってるんじゃないだろうか
ただ、出来れば読んでる最中に語り手に怖さみたいなものを感じたいところ
今のままだとオチが読める上に、彼の犯行自体に説得力がない気がする
883 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/06/10(火) 22:46:32.44 ID:Jgex0nhSo
>>882
感想ありがとうございます
主人公がサエちゃんのことを好きだって最初の方に書いたので、犯行の理由はそれだけで十分かなー、と思ったんですけど
やっぱり少なすぎますかね?
ショートショートだからできるだけ無駄な部分を排除して書こうと思ってこうしたんですけれども
884 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/06/10(火) 22:49:52.68 ID:Ro5dw9+jo
>>883
動機はそれでいいと思うし、理解できるんだけど、語り手が彼女が好きだってことを理由に人も[ピーーー]ような怖いガキだっていうことに説得力がないと感じたってことです
猫の死体に関する客観的な描写で多少は感じるんだけど、それでも人を[ピーーー]には弱いっていうか
885 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/06/10(火) 22:55:14.18 ID:Jgex0nhSo
>>884
なるほど、少し仄めかすような描写を入れて置いた方がよかったかもしれませんね
886 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/06/11(水) 08:21:04.14 ID:wjJUrTRYo
お題ください!おねがいします
887 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/06/11(水) 09:30:40.77 ID:xJut+DXIo
セカンドキス
888 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/06/11(水) 12:40:14.53 ID:BXjj8+RiO
私にもお題ください
889 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/06/11(水) 15:21:29.82 ID:xJut+DXIo
アイロニー
890 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/06/12(木) 10:08:39.48 ID:oasJ8ZUxO
お題下さいませ
891 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/06/12(木) 10:50:53.01 ID:uftTgwi+o
>>890
失墜
892 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/06/12(木) 12:09:30.83 ID:oasJ8ZUxO
>>891
ありがとうございます
893 :876 ◆pEPPiAPChA [sage]:2014/06/12(木) 16:45:29.57 ID:mTaIiqJQo
>>877
感想ありがとうございます
確かに、設定を掘り起こす書き方が苦手なのかも知れません
課題として次を考えたいと思います


なのでお題下さい
……暗くならなさそうなやつ
894 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/06/12(木) 18:32:46.31 ID:niTof4geo
爪楊枝
895 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/06/12(木) 19:54:30.14 ID:BFU/54GEO
お題下さい
896 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/06/12(木) 20:05:42.08 ID:mTaIiqJQo
>>894
頂きます
897 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/06/13(金) 00:11:06.62 ID:OGW6rJtdo
>>895
筋肉
898 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/06/13(金) 01:03:06.31 ID:+27cs6VzO
なんかお題
899 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/06/13(金) 20:39:36.94 ID:CKXjbAzOO
>>898
真夏
900 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [sage]:2014/06/14(土) 18:03:03.29 ID:8IPq22xbO
お題くださいな
901 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/06/14(土) 18:04:41.90 ID:oqURdOhko
勾玉
902 :発掘作業(お題:勾玉)1/2 [sage]:2014/06/14(土) 19:18:47.58 ID:8IPq22xbO
 「暑い! 汗臭い! 下着がベタベタする! もう嫌!」
「そんな事を叫ぶ無駄な体力があるなら、黙って掘れ」
太陽から容赦なく日光が照りつける中、青いジャージを来た少女と、白いティーシャツにジーンズというラフな恰好をした青年が、ひたすら地面を掘っていた。
「なんで、なんで私がこんな事をやらないといけないのよぉ……冷暖房の効いた部屋で本を読むだけでいいと思ったから、歴史研究グループを希望したのにぃぃー!」
「生憎と、そういった作業はもうとっくの昔に終わっている。今のメインは発掘調査だ」
「こんなところ、掘っても何か出てくるわけないじゃない! それともなに? ここで勾玉の一つでも発掘された事があるの!?」
男が右ポケットから、化石を取り出した。その化石は胎児のような形をしており、頭蓋骨にあたる部分に穴が開いている。
「……それ、本当にここから出たの?」
「ここから出たんだよ。そういうわけで、至急俺たちが駆り出されたってわけだ」
「ぎゃー! これ、早く見つからなかったら休みがなくなるパターンじゃないの! もう映画、予約しちゃったわよ!?」
「その映画だって、こういう作業がなかったら見れなかったんだ。文句を言わずに働け」
「うぅ……わかったわよぉ、もう」
少女がスコップを手に取り、思いっきり地面に突き立てた。
その衝撃で、辺りに生えていた樹木が軒並み根っこから吹き飛ぶ。
「力込めすぎ、発掘物に傷がついたらどうするつもりだ」
「あー! もーーー!」

数時間後、標高20メートルほどの山と、これまた大きな穴ができていた。
少女が発掘物を見て、残念そうに呟いた。
「……これが全部、勾玉とかだったら良いのに。」
「俺達の大きさじゃ、勾玉が出ても砂粒程度にしか見えんさ」
「はー……もう、絶滅した古代人なんてどうでもいいじゃない。創造主がなにを思って私達を作ったかを調べなければならない? どうでもいいわよ、もー」
「残念ながら、娯楽作品はなさそうだな。あれば高く売れるんだがな……」
「コレクターが原本を欲しがるんだっけ? 古代人サイズのだから、読めないのによく買う
903 :発掘作業(お題:勾玉)2/2 [sage]:2014/06/14(土) 19:19:40.63 ID:8IPq22xbO
わよねぇ……」
少女が「疲れた!」と叫ぶと同時に地面に仰向けになって倒れる。その衝撃で辺りに大きな振動が伝わり、この辺りに住んでいた二人には認識できないほど小さい生物、ネズミが一斉に逃げ出した。
少女は暑さに耐えかねて、ジャージのチャックを全開にし、白いシャツを隠すことなく出している。シャツは汗に濡れ、透けていた。
青年が思わず少女の方を見ると、胸元で何かが光った。
 「お前、それ……」
「ん? ああ、どうよ? 着けてきたやったぞー? 嬉しい?」
少女が上半身を起こし、首から下げた二メートルはありそうな勾玉を指で摘まむ。それは青年が自作し、少女にプレゼントしたものだった。
少女が立ち上がり、腰をかがめて発掘物を見下ろす。
「みーんな、こんなものばっかり作ってたら古代人も絶滅しなかったかもしれないのにね」
二人が掘った穴の中には、大量の銃と、苦痛のため勾玉のように体を丸めた人間の死体が散らばっていた。
青年が少女に近づき、少女の手を握る。
少女は青年の手を強く握り返しながら言った。
「私達は、こうはなりたくないね……」
「ならないさ、きっと」
少女の胸元で勾玉が日光を反射し、キラリと光った。
904 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/06/16(月) 09:21:22.60 ID:ezyC2jvKO
>>902
うーん・・・
なんというか、惹かれる部分がない気がしました。
人類の絶滅と巨人の関係をきちんと書くとか、登場人物が普通の人間じゃないことを最後に明かして叙述トリック風にするとか、
私の拙いアイデアではたいしたことは思いつきませんが、おお、と思わせる要素が欲しかったです。
905 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/06/16(月) 10:48:10.16 ID:DTBF1z4BO
>>902
文章は何となくロマンチックで良いと思います。
ただ、2レスの短文に対して無意味な謎、というか不明点が多いかなという印象。

例えば、巨人/古代人/創造主、という3つの噛み合わなさ。

最初は古代人=創造主で巨人とはゴーレムのことかな?と思ったけどそうではなさそう
(「古代人」とわざわざ呼ぶことから自分達は新人類=彼らからの派生であるという認識があるので)。

次に創造主=神(「古代人」を作り、その絶滅後に巨人=新人類を作った)
と見て読んだ時、勾玉への拘りがよく分からない。
勾玉って、文中で暗に書かれているように「形状」の祭具で、
胎児だとか魂だとかの形を模した物(とされている)だから、
どちらかと言うとアミニズム寄りで、あんまり「神(創造主)」とは関係なかったり。
(八坂の勾玉が『三種の神器』に指定されてる節はあるけど)

それと、時系列的な違和感が少し。
古代人が『化石』になるほどの時間経過があるのだから、
ジャージ・Tシャツ・映画 とか、現代的な物質の名前は不適当かなと。
「銃」は埋まっている=勾玉との対比に使われているのに…ってなった。
なかなか難しい事だけど、都合のいい所だけタイムリープさせないように気をつけるべきだな、
と自分への教訓込みで思いました。


粗を探したようで申し訳ないけれど、
「十数行も書く程度にはちゃんと読んでくれたんだな」と好意的に受け止めていただければ幸いです。
906 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) :2014/06/16(月) 20:11:25.23 ID:sfZU0hjN0
お題ください
907 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/06/16(月) 20:29:59.36 ID:vQQ4mL4FO
>>906



お題ちょうだいな
908 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) :2014/06/16(月) 20:47:18.68 ID:sfZU0hjN0
>>907
退出

お題ありがとう
909 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/06/16(月) 20:50:23.99 ID:vQQ4mL4FO
>>908
把握

ありがとう
910 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/06/17(火) 15:13:13.53 ID:TX6RUJdSo
お題ください
911 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/06/17(火) 21:43:04.43 ID:lkOZR4nAo
二次関数
912 :お題:退出(1/1) :2014/06/17(火) 23:07:51.07 ID:qm1FVd7cO
生まれてきて、一番幸せだったことは?と聞かれたら、無かったと答えるだ
ろう。真実を答えなければならないとしたら。

 別にその言葉を聞いた人に理解を求める訳ではなく、ましてや気分を害そう
という魂胆では決してない。少なくともそれは私にとって真実なのだ。

 母の腹の中に発生したことを嘆かなかったことはない。自分が魯鈍で、何の
才能も持っていないのはわかりすぎるほどにわかっていたにもかかわらず、ど
うしても自尊心というものを捨てることができなかったからだ。

 これまで、何ら価値のあることもできなかったし、今後もきっと何もできな
いだろう。人からは侮られ、孤独に過ごし、世間一般の人よりも早死にをす
る、そんな人生がこれから待っているのは間違いなかった。

 今は、幸運な高等遊民のように、無憂の時を過ごしていると人からは思われ
がちだが、とんでもないことである。もうすぐ追い出されることは予感として
あったし、それは生きて出て行くにしろ死んで出て行くにしろほぼ確定してい
たことだった。

 ああ、ああ頼むから意識の無い間に死なせてほしかった。数え切れないほど
の人間が、同じような状況で運命から死を賜ったというのに、私はその幸運に
預かることができなかった。毎日、ほぼ一日中寝ているのは、その間に死んで
いることを願っている以外に理由は無いのに。

 ウトウトとしていると、我が愛しきフトンごと、何本ものロープで締め付け
られた。そうとしか思えなかった。

 ついに、私は追い出されるのだ。願わくば、このまま死体置き場にゆくこと
を願っていた。不安が体の中で頭をもたげる。このまま裸一貫で生きたまま追
い出されるのではないか、と。追い出すならこのまま殺してほしい。存在しな
かったことにして欲しいのだ私は。ぐるぐると回りながら私はどこかへ向けて
移動していた。

 やがて、頭,、そして体全体が外に出た。羊水が肺の中から押し出され、
叫び声を出す瞬間に、私の尊大なで臆病な思考はどこかへ溶けて



 実家の押入を片づけていたら、俺が生まれた記事が載ったコミュニティ紙が
出てきた。
913 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/06/17(火) 23:10:05.38 ID:qm1FVd7cO
お題下さい
914 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/06/17(火) 23:29:39.29 ID:M0aIrKfro
親友
915 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/06/17(火) 23:39:16.09 ID:qm1FVd7cO
把握
916 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/06/18(水) 05:55:13.02 ID:LWQWlt+fo
>>911
ありがとうございます
917 :ばしこ :2014/06/18(水) 11:07:10.82 ID:cXMCBpts0
仕事暇だからお題貰おうかな〜
918 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/06/18(水) 12:03:01.51 ID:8EXYwxjqo
919 :ばしこ :2014/06/18(水) 12:13:31.42 ID:cXMCBpts0
>>918

ありがとうございます
920 :ハイカード(お題:巫) 1/4  [sagasage]:2014/06/19(木) 03:35:35.81 ID:FsfPA+In0
 もしポーカーで三連勝して次に出来た手がワンペアだったとしよう、そこで「さあお前はどうするんだ」と隣の奴に聞かれたら、
俺は間違いなくそのしょっぱい手札で勝負をするだろうし、たとえそこで負けたとしても、勝負をしなかったことへの後悔に比べたら負けたことぐらい
ちっぽけなものだと俺は感じるだろうね、そうやって俺は、ギャンブルにおいていつだって負けちまうんだけれど、常に俺は勝負を仕掛ける
攻撃的なスタイルで相手に挑み続けるわけさ、それが俺の人生であり、常に相手を責める立場でいたい俺の生き方が現れているような気がしてならないね、
そんな攻撃的な俺だが、俺の人生における手札は常に悪いわけだ、何故かって、生まれついた環境だって、体格だって頭の良さだって、俺の持っ
ている物は何一つとして、強い手札ではない、こんな南米の小国のスラムで暮らしていたって、ビッグになれるわけじゃねえし、
いわゆる生まれながらにして最悪の手札を握らされちまっているってわけだ。だが、そうなれば日々の生活をどれだけ楽しめるかに、
俺の人生の希望みたいなものが掛かってくるわけだと俺は思うね、要は女と言う手札が欲しいのさ、俺は常々そう思っている、
そうして今日も俺は、俺の相方であるジェガーを誘って、オンボロの車に乗って街へ繰り出したのさ、ブラザー、ちゃんと聞いているかい、
そうさ、俺はあの時、ジェガーを誘って街へ繰り出した、それは夕方の五時くらいで、街は馬鹿なキチガイどもと、働かないクズどもと、
女をひっかける糞野郎ばかりで溢れていたね、海が光っていたのを覚えているよ、夕日が綺麗にかかってさ、全部燃えてるみたいなんだぜ、世界がさ、
ブラザー、俺は詩人だろ、でもラップは下手なんだ、ラップにおいては俺は落第生だったね、と話が逸れちまったよブラザー、
悪いな、話を戻そう、俺はジェガーと町へ行って、女を探したんだ、適当に車を走らせているとさ、バーガーショップの前に、
巧そうなチョコレートが転がっていたんだよ、黒人の女さ、
スタイルがめっちゃ良かったね、俺はそうでもないけれど、ジェガーは黒人の女に目がないんだ、あいつらのしゃぶり方が好きなんだと、ジェガーは語ってたね、
黒人の肌は濡れて光っているように見えた、いやらしい感じで光りながら、艶めかしいふくらみが俺の目を責めるんだ、
ブラザー、黒人の女と寝たことがあるかい、あいつらのバイタリティは半端ねえよ、俺は一晩中アイツらとセックスをしたことがあるんだけどさ、
酒とドラッグで頭が潰れて、記憶なんてほとんどねえが、あいつらとのセックスが気持ちいって事だけは俺は覚えてるんだ、俺はとにかくセックスがしたかった、
だから俺はその黒人の女に話しかけたんだ「ヘイ、ビッチ、そのプリンプリンとしたババアが作ったホットケーキのような巨大なケツ振ってよお、
犬みたいに男とセックスしたいんだろ?いいぜ、ワキもヘソもでけえ胸も全部ぺろぺろしてやるからさあ、俺の前で腰振ってくれよ、
たっぷりハンバーガー用のマスタード出してやるから」そう言ったら黒人の女は馬鹿にしたように笑って、そんなだせえ車に乗ってるちゃらんぽ

らんとセックスなんてするわけねえだろ、ファック、だなんて言いやがった、それに対してジェガーが切れたんだ、アイツはすぐ切れるんだよ、
朝、窓の外でカラスが啼いてるだけでブチ切れて、窓ガラスを割るような男だからな、アイツは自分が馬鹿にされるのが許せねえのさ、そのアン
テナが広くて、どんな小さなことでも馬鹿にされたように感じちまうんだ、でも俺に切れたことはなかったね、アイツは友達を大事にする男だっ
たよ、アイツには家族も兄弟もいない、だから俺をブラザーとして慕ってくれたんだ、

921 :ハイカード(お題:巫) 2/4  [sagasage]:2014/06/19(木) 03:37:51.70 ID:FsfPA+In0
 そんなジェガーが、黒人の女に切れて、マシンガンのように喋り始めた、車から降りて、唾を飛ばしながらアイツは喋りまくっていたね、
「おいビッチ、俺のブラザーを貶してんじゃねえぞ、マザーファッカー、いつだってお前ら黒人の女は頭が空っぽで世界と
いうものが見えていないんだ、いいか、よく聴けよ、お前らは奴隷なんだ、世界の奴隷なんだ、そして俺と俺のブラザーも
奴隷だ、だから助け合わなくちゃいけねえ、こんな糞みたいな国の糞みたいな町で、プライドなんか持ってる場合じゃねえんだよ、
お互い気持ち良く生きていかなくちゃいけねえ、わかるかい? セックスって言うのは最高のプレゼントだよ、こんな糞み
たいな町に生きている俺らでも簡単に最高の気分になれる、いいか、もう一度言うが俺らは奴隷なんだ、選り好みも出来ね
えし、お互い助け合って気持ちよく生きていかなくちゃいけねえ、だから、おい、お前は俺らとセックスするしか選択肢は
ねえんだよ、わかるかい、これは決定されたことなんだ、神が決めたことなんだ、神は俺らにもお前ら黒人にもすべて平等
に何かを与えるんだ」妙に真剣にジェガーは語っていたね、奴は心から神を信じ切っていた、神こそが父だと考えていた、
あまり表には出さないが熱心な信者だったわけだ、この町じゃそういう奴は多い、なにせ周りでは糞みたいな出来事ばかりが起こるし、
家族や友人の奴らは簡単に死んでいくし、そうなると神にもすがりたくなるってものさ、神っていう都合の良い奴に愚痴りたくなるし、
要はそういう存在を俺らは常に心に持っておきたいわけだ、自分の怒りや祈りをぶつける都合の良い存在って言うのをな、
だがな、ブラザー、俺は神を信じていなかった、神の声も聞こえなかったし、神という存在に頼らなくても俺は自分自身を
信じているだけで、上手くやっていけたのさ、でもジェガーは神を信じざるを得なかった、それは何故かって? 
いいかい、とりあえず信じて真面目に聞いてくれよ? ジェガーはな、奴は神の声が聞こえるんだ、奴の親父はシャーマンだったらしい、
ただ残念なのはジェガーの父親が(俺はそれを孤児院のマザーから聞かされたんだが)クズのシャーマンだったってことだ、
気に入らないやつを簡単に殺す、女を犯して監禁する、密輸に手を染める、麻薬売買をする、それら犯罪行為の全てを金で
揉み消して解決する、そういう奴だったんだ、この国は金さえあれば何でもできるからな、ジェガーの親父は、全くクズの
王様と言った具合だったと、マザーは言っていたね、だけどジェガーは良い奴だ、ジェガーは父親の血を濃く受け継いでしまっただけだ、
ジェガーが言うには、神の声がはっきりと聞き取れるんだそうだ、奴の親父はクズではあったけれど、才能だけは紛れもな
い本物だったからな、ジェガーはその才能を受け継いだ、幼いころから俺らは親友だったが、アイツは時々神の啓示を俺へ
とこっそり打ち明けていたものだ、ジェガーが最初に啓示を受けた時に言った言葉を俺は今でも覚えているよ、こう言ったんだ
「彼らは何も私たちの事は分かっていない、あなたの園にいるひときわ大きな黒い人物が、小さいあの子を壊す、彼女は沈
黙を守ってまま逃げ続ける、大きな男は口の中を貫いて天を目指す」
俺たちが十歳くらいの時、ジェガーは唐突にそう言ったのさ、その翌日に、孤児院で俺たちを世話してた黒人の男が口内に
銃弾をぶっ放して自殺していた、奴が書いた遺書によれば、九歳の女の子を何回もレイプしていたらしい、それをネタに孤
児院の院長に金を脅し取られて、結局は心が耐えきれずに自殺したらしい、
922 :ハイカード(お題:巫) 3/4  [sagasage]:2014/06/19(木) 03:39:34.04 ID:FsfPA+In0
 ちなみにレイプされた女の子はその一週間前から行方不明で、ジェガーが神の声を聴いた二か月後にハイウェイから少し
外れた川沿いで餓死しているのが発見された、ジェガーが聞いた予言は、比喩的な言葉が多かったわけだが、当たっている
ように思えた、ジェガーは神から予言を受け取っていたんだ、その時にジェガーの能力は本物だと思った、が俺たちはそん
なこと気にしなかった、誰かの死ぬ予言を受け取ったとして、それが俺たちの何の役に立つだろう、ジェガーもそう思っていたし、
俺もそう思っていた、俺たちには誰かを助けるような能力も余裕も全くなかったのさ、でもジェガーは一時期、自分の能力
に気がついた辺りから、能力について本で調べていたんだ、街のデカい図書館に通って、シャーマンについて調べていた、
その中でジャパニーズがシャーマンの事を「カンナギ」と呼ぶことを知って、奴はその響きをひどく面白がって気に入っていた、
カンナギ、カンナギ、と事あるごとに口にしては、俺はカンナギなんだと自慢していた、その言葉は俺たちの秘密の合言葉のようになった、
誰も知らないジャパニーズの不思議な言葉、俺たちはその言葉を知っている、果たしてジャパニーズがどんな国で、
どんな奴らが住んでいるのかも俺は全く知らない、東国の島国なんて言うド田舎だから、俺たちよりひどい暮らしをしてい
るクズばかりなんだろう、未だにクロマニヨン人ばかり住んでるかもしれないな、俺だってクロマニヨン人くらいは知って
いるさ、ジャパニーズは知らないがクロマニヨン人は知っている、奴らは偉大だからね。
 話を現代に戻すと、カンナギであるジェガーは、目の前にいる黒人の女と口論になっていた、俺らがセックスに誘ってい
る黒人さ、そしてジェガーと黒人の二人は喧嘩になった、お互いが遠慮なしに攻撃を加え合った、女はビンタをし、
ジェガーは女の足を踏みつけながら罵倒した、胸ぐらを掴み、脅した、だが相手は一歩も引かなかったね、俺は埒が明かな
いと思って(それにもう面倒くさくなって)ジェガーを宥めることにした、おいおいブラザー、確かにこのビッチは頭が悪いが、
もういいだろう、他の女を探せばいいのさ、そう言って宥めたのさ、ジェガーは少しだけ不満そうにしていたが、
特に言い返しもせずに俺の言うことを聞いた、一方、黒人の女はまだ何かを言っていたが、俺が二発ほど思いっきり顔をぶん殴ったら、
地面に倒れて、何も言わなくなった、俺たちはそれを見て笑いながら車に乗り込んだ、ジェガーが先に運転席に乗り込み、
俺は助手席側から乗り込もうとした、だが奴がその瞬間、真顔になって、正面を見据えたまま、動かなくなった、
俺は少し不気味な気持ちになって、おい、どうしたんだブラザー、と声を掛けたんだ、そうしたら奴はこう言った
「ブラザー。神が言っている。俺は今すぐに死ぬ」その瞬間、車の後方から思いっきりリムジンが突っ込んできた、
そのリムジンは五十メートルはあろうかという長大なリムジンだった、そのリムジンが全速力で突っ込んで来て、
ジェガーの乗った車をガキの作った積木みたいに吹き飛ばし、ジェガーは車ごと百メートル近く先までブッ飛ばされた、
ジェガーは即死だった、体中の骨が折れて、顔が変形して目玉が飛び出して、血反吐で車を塗装していた、アイツは死ぬ瞬
間に神の声を聞いたわけだ、

923 :ハイカード(お題:巫) 4/4  [sagasage]:2014/06/19(木) 03:42:06.70 ID:FsfPA+In0
 だがそこで一つ疑問が生まれる、神は何故、ジェガーを助けなかったのか、何故もっと早くそれをジェガーに知らせなかったのか、
神だったら、声の聞こえるジェガーを助けてやれたはずなのに、俺はそう思って仕方がなかった。そしてこう考えたんだ、
神はやはりクズだった、俺らなんてただの蟻みたいにしか思っていないんだとね、そんなことを思い浮かべながら俺はぼうっとしていた、
ジェガーの乗った車が吹き飛ばされていく瞬間をスローモーションで見ていた、彼が最後の瞬間、柔らかな笑顔で俺に笑い
かけたのが映った気がした、最高だったぜブラザー、お前に出会えてよかった、そう言っているような気がして、
でも俺は何もできなかった、さっき殴った黒人の女が、まるで狂人の様に、大きく笑う声が聞こえた、
「だっせえ! 最高にあほらしい死に方だよクズ!」何度もそう言いながら、気がふれた様にジェガーの死を嗤っていた、
俺はしかし何も反応できなかった、リムジンはぴたりと俺らがいた位置に停まっていた、そしてリムジンの車体の真ん中ぐ
らいの窓がゆっくりと開いた、そこから不気味な男が顔を覗かせた、彼も笑っていた、笑っていたが、何と言うのだろう、
その笑っている顔がデフォルトと言うか、笑い顔こそが彼の真顔とでもいうように、その不気味な笑い顔が彼の顔にぴったり固定されていた、
彼が車内からゆっくりと身を乗り出すように出てくる、彼はしかし一言も喋らなかった、ただ不気味に笑っているだけだった、
それから彼は唐突にダンスを踊った、わけがわからないだろう? でもな、俺が一番訳が分からないと感じていたよ、
そのダンスマンは、まるで貧乏な人が死ぬのが楽しくて仕方ないです、と言ったニヤついた顔で、思いっきり口角をあげながら、
涎を垂らして、顔中にしわを作り、睨めあげるように俺らを見ながら、マイケルジャクソンの曲を踊った、そのシュールな光景は、
現実感というものを辺りから消し去った、まるでなんかのストーリーの中に紛れ込んじまったみたいにさせた、
それから奴は丸々一曲分マイケル・ジャクソンのビリー・ジーンを完璧に踊ってから、同じ笑顔のまま車に乗って去っていった、
俺はその間、突っ立っている事しか出来なかった――――それが事件の顛末さ、ブラザー、だからこうやって警察署に呼ばれて
事件のことを話してくれって言われても、俺自身、何が起こったのかよく分からなくて、上手く話せねえんだ、
だがとにかく一つだけ言っておくと、俺は何一つ嘘は言っていないし、見たままを話している、という事だ。
それとな、ブラザー、大事な事を言っておきたいんだが、俺は今になってこう思うんだよ。その時の俺に、一つでも強い手札があったのなら、
こんな事件は起きなかっただろう、と言う事をね。俺たちが一つでも強い手札を持っていたのなら、恐らくジェガーも死ななかったし、
奴の神が下らないお告げを告げることもなかっただろう、あるいは俺たちが女をモノにできたかもしれないし、俺たちがで
けえ車に乗っていればリムジンは突っ込んで来なかったかもしれない、ジェガーが持っていた、神の声が聞こえると言う手札も、
俺たちの力じゃ価値のある札には出来なかったわけだ、だってこんなスラム街にいるガキが神の声が聞こえると言ったところで、
誰が信じる? どんなに真実を言い当てたって、偶然だと言われるだけさ、あるいは変な詐欺まがいな行為に加担させられるか、
祀り上げられて散々っぱら金儲けの道具にされるか、キチガイ宗教者に殺されるのがオチさ、いいかい、ブラザー、俺たちは何も悪くはない、
悪かったのは俺たちが持っていた手札さ、そしてこの国だ、アンタだってわかってるだろ、毎日毎日スリだの強盗だの殺人だの、
そんな奴らばかりが街をうろついて、それでアンタたち警察はそういう奴らを捕まえなくちゃいけない、でもあんたたちが
犯罪者を捕まえられるのは理由がある、『数の暴力』そして『リボルバーと権威』っていう強い手札があるからさ、俺たち
だってそれがあったなら、こうやって負け犬の人生を送っちゃいなかったさ、もういいよ、後は勝手に処理してくれ、俺は
このポーカーをフォールドするよ、そして俺はこれからジェガーの墓に行って、奴が好きだったありったけのコカコーラを
墓にぶちまけて、それから教会に行ってクソッタレの神に唾を吐きかけに行かなくちゃいけないんだからさ。ブラザー。
お前の人生の幸運を祈るよ、俺に誓って。


924 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/06/19(木) 22:57:22.39 ID:5wP9y8usO
>>920-023

 適宜行を空けたら読みやすかったと思った。

 台詞回しで物語がすごく印象的になっていたよ。

 事件としてはそこまで込み入っていないのに面白く感じた。

 こういうテーマの生かし方があるのか、と正直感心した。
 歴史物とかファンタジーなんかが「巫」と聞くと思い浮かんだからね。
 ただ、「かんなぎ」の下りはとってつけたような感じがしたかな。無くても、
シャーマンがお題だというのは納得できたと思う。


 個人的には、1枚強い手札があっただけじゃ生かせないという事には
思い当たるところがあるけれど、物語としては、1枚の強いカードを元手に
成り上がる話の方が好きだなあ。個人的な感想過ぎてごめんなさい。

 次回作にも期待してるよ。
925 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [sage]:2014/06/20(金) 13:02:14.20 ID:q+jCNa2l0
>>924
感想ありがとう。
確かに「巫」と言うお題に忠実になった結果、とって付けたような描写になってしまった。
やはり読者には見抜かれるよな。

読みやすさについては、縦書きで書く際に文章にドライブ感が出るように書いたんだけれど、
横書きにした時にひどく読みづらくなったな、と自分でも感じた。

投稿する際に一文一文、行を開けて読みやすくするべきだったんだな。
このスレ用の小説は横書きで書き始めた方が良かったのかもしれない。
アドバイスありがとう。
926 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/06/21(土) 19:33:14.28 ID:QWw2piXIO
お題下さい
927 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/06/21(土) 20:17:06.17 ID:R51bc0kao
928 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/06/21(土) 20:19:14.33 ID:QWw2piXIO
把握
929 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/06/22(日) 16:11:28.79 ID:TKxNslmuO
お題ください
930 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/06/23(月) 01:32:07.96 ID:8T9ZeGZpo
サングラス
931 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [Sage]:2014/06/23(月) 22:47:45.55 ID:o2NQqW9M0
やぁ。お久しぶり。お題をくれよ
932 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/06/23(月) 22:50:18.12 ID:2Gr/yTbdo
飴玉
933 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/06/23(月) 22:50:21.53 ID:39zLzFDPo
>>931
「待ってました」
934 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) :2014/06/24(火) 00:27:29.50 ID:2SgEcKQX0
お題くださいな
935 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/06/24(火) 00:37:16.60 ID:wfWfkWeSo
936 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [sage]:2014/06/25(水) 16:44:49.70 ID:HeD/DwHq0
ぎゃっ品評会まであと5日!
937 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) :2014/06/26(木) 00:25:43.12 ID:hCmFTM1G0
数年ぶりに品評会に出してみようかしら
938 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/06/26(木) 00:37:23.29 ID:D9LCA8P7o
泣って地味に難しいんだよなー
読者じゃなく、キャラを泣かせようとするだけでどんどん長くなっちゃうわ
939 :422 [sage]:2014/06/26(木) 21:59:09.61 ID:YE2SyasT0
今回の品評会、てきすとぽいでは現在三作品が投稿されています。

No.01 祖父の葬式(茶屋)
http://text-poi.net/post/chayakyu/69.html

No.02 ぱずる(住谷 ねこ)
http://text-poi.net/post/neko_sumiya/6.html

No.03 一夜の悩みと夢(碓氷穣)
http://text-poi.net/post/_latefragment/21.html

私も早く書かないと……

泣、かー。
940 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2014/06/27(金) 02:13:15.99 ID:3QBt+BMOO
よかったらお題ください。
941 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/06/27(金) 05:45:35.42 ID:PR4GSJqHO
>>940
ちょうどいいし品評会向けの書くことをオススメする

既に書いたなら「着地」
942 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/06/27(金) 22:35:20.29 ID:cijWGPz4O
>>941

ありがとうございます
943 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [sage]:2014/06/28(土) 01:15:27.99 ID:5uV7Zal00
雨なのでお題ください
944 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/06/28(土) 01:18:56.44 ID:JYupNvQIo
月明かり
945 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/06/28(土) 01:34:12.28 ID:SC9H3PrWO
てきすとぽいちらっと見てきたけど、既に4本あがってるね品評会の奴。
946 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/06/28(土) 02:52:13.19 ID:5uV7Zal0o
>>944

僕は歩いている。
歩きなれた駅までの道のりを歩いている。
今日は勝負の日だ。すれ違う人をいつもと少しだけ違う気持ちで見ながら前に進む。
金曜の喧騒をベートーベンがシャットアウトしてくれる。ゆっくりと繰り返すピアノの調べをなぞるように歩を進める。
聴いているだけで視界に霧のかかった森が見えてくるような、十四番が僕のお気に入りだ。
静かな曲調とは裏腹に、自分の鼓動が聴こえそうなほど高鳴っているのを感じる。
握り締めた切符が汗でくしゃくしゃになっている。それでも構わない。
やがてピアノが軽快な音を立て始めて、僕は改札をくぐり抜ける。
久しぶりに乗る夜行列車は青白い佇まいで僕が乗り込むのを待っていた。
懐かしい匂いが鼻腔を刺激する。故郷に帰るための思い出の匂い。
窓から差しこむやわらかい光が消えるころ、僕は彼の地に戻っているはずだ。

ゆっくりと動き出す列車に身を任せ、僕は思い出す。
幾度となく忘れようとしたことで、より鮮明に記憶に刻まれているものがある。
それはぼんやりとした明かりの中で微笑む顔。風に揺れる栗色の髪の毛。
髪を耳にかける仕草に見とれて、湖畔で転んだときの傷跡はその記録のようにまだ膝に居座っていた。
心配そうに僕を覗き込んだ顔は目に焼きついている。白磁のように白く、美しい。
十余年の歳月がそれをどこまで変えたか僕にはわからないけど、きっと同じ優しい目で僕を見るだろう。
僕はその目と相対してきちんと話が出来るだろうか。
あの時と同じように湖のほとりの小岩に座って、水面に映る満月を眺めながら僕は言う。
昭和の覆面ヒーローのように堂々とした物言いで。
そして、静かな明かりに促されるように、ゆっくりと今までのこととこれからのこと話そうと思う。
白く照らされた彼女の顔が少しばかり紅潮し、微笑んでくれることを信じて。
947 :422 [sage]:2014/06/28(土) 23:58:20.28 ID:E3G9Cscm0
てきすとぽいでは更に作品が投稿されて、現在四作品になっています。

No.04 越中泥棒左衛門碧之介の私怨ゲージ(しゃん@にゃん革)
http://text-poi.net/post/syan1717/42.html

私も明日、明日こそは書く……!
948 :422 [sage]:2014/06/30(月) 02:52:04.84 ID:YJ4LtKvH0
やったー! なんとか作品書けたよー!

No.05 裏返しの感情(ほげおちゃん)
http://text-poi.net/post/hogeochan_ver2/9.html

これでBNSK側の参加者数ゼロという恐ろしい事態は回避された……!
頑張った、わたし。

締め切りは明日なので、まだまだお待ちしています。
949 : ◆pdkDwyOMVs [sage ]:2014/06/30(月) 09:46:36.34 ID:y0uTAH9jo
書いたよ―
BNSK側です、今回が初。

http://text-poi.net/post/delution_box/2.html

あとで全文転載したほうが良いですかね?
950 :422 [sage]:2014/06/30(月) 10:10:30.93 ID:bgDcZ0JxO
おお、ありがとうございます。

前回は転載しなくても不満の声は上がらなかったので、全文転載はとりあえず保留でいいですかね……

ひとつ、携帯で見ている人はてきすとぽいが不便にならないか気になるところですけど。

多分大丈夫、だと思います。
951 : ◆va8DWzwViw [sagesaga]:2014/06/30(月) 20:26:12.85 ID:qlni213jo
間にあったー

さよならの味(くろー)
http://text-poi.net/post/va8DWzwViw/1.html
952 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/06/30(月) 22:49:42.02 ID:jmp39MdKo
締め切りまであと一時間強、私の投稿は間に合うのでしょうか。
それではご覧ください(血眼)
953 :品評会作品: 「泣け」 1/1  ◆hlyRv5ZPWE [sagasage]:2014/06/30(月) 23:58:52.45 ID:X21shhTJ0
「私は生まれてから一度も泣いたことがないの」
 とF氏の妹は言った。
 F氏は確かに妹が泣いているところを見たことがなかった。その場に居たF氏の友人は、彼女のその発言に驚いていた。
「だって赤ん坊の時に、誰しも泣くものでしょう?」
 F氏の友人はそう言ったが、しかしF氏の妹は真面目な顔で答えた。
「私は赤ん坊の時にも泣かなかったの」
「そうなんだ。妹は赤ん坊の時にも泣いていなかったのだよ」
 そうすると、懐疑主義者であるF氏の友人はすぐにこう言った。
「この世に泣かない人なんているものですか。いいでしょう。私があなたを泣かせて見せます」
 F氏の友人は、F氏の妹に感動できる映画を多数見せた。しかし彼女の反応は薄かった。
「どれもつまらないわ」
今度は玉ねぎをひたすら切らせてみた。
「何時までやりつづければいいの?」
 やはり彼女は泣かなかった。その後もF氏の友人はありとあらゆる方法を試してみた。古今東西、涙が出るとされる行為
を、彼女に試した。しかしそのどれもが効果をあげられなかった。
「本当に君は泣かないんだね」
「ええ、私は泣かないのよ」
 F氏の妹はつまらなそうにそう言った。
「じゃあ、次はとっておきの方法を試そう」
 扉の奥から出てきたF氏の妹の友人はそう言った。
 
 その方法を試すと、F氏の妹の目から涙があふれ、F氏の妹は悲しそうに泣いた。
 F氏の友人は驚いた。妹の友人に対して、一体どんな方法を試したのかと訊いた。
 F氏の妹の友人は答える。
「なに、簡単さ。プログラムを変えたんだよ。本当は人間らしい方法で泣いてほしかったのだけれどね、やはりまだまだロ
ボットが涙を流すと言うのは難しいらしい」
 F氏の妹の友人は、そう言った。
 彼女の唯一の友達である自作のロボットは、プログラムを変えたせいか、泣き続けている。F氏の友人は、それを見て驚いた。
 F氏の妹がアンドロイドだったなんて知らなかった。だがF氏の友人は思考をすぐ切り替えられる人間だった。F氏の妹がア
ンドロイドでありながらも人間らしい動きをしたことを気に入り、F氏の妹を二百万の値で買い、毎晩のように乱暴な行為を
しては泣かせ、とある行為を楽しんだと言う。
 F氏の妹の友人が、F氏を縛って、跪かせてSMプレイを楽しんでいるように。
954 :422 [sage]:2014/07/01(火) 00:54:59.04 ID:TkX4HjS00
投票期間:07/01 (火) 00:00 〜 07/06 (日) 23:59
集計発表:07/07 (月)

No.01 祖父の葬式(茶屋)
http://text-poi.net/post/chayakyu/69.html

No.02 ぱずる(住谷 ねこ)
http://text-poi.net/post/neko_sumiya/6.html

No.03 一夜の悩みと夢(碓氷穣)
http://text-poi.net/post/_latefragment/21.html

No.04 越中泥棒左衛門碧之介の私怨ゲージ(しゃん@にゃん革)
http://text-poi.net/post/syan1717/42.html

No.05 裏返しの感情(ほげおちゃん)
http://text-poi.net/post/hogeochan_ver2/9.html

No.06 硫化アリルのせいにして(妄想ボックス)
http://text-poi.net/post/delution_box/2.html

No.07 さよならの味(くろー)
http://text-poi.net/post/va8DWzwViw/1.html

No.08 ことりと落ちる(雨森)
http://text-poi.net/post/t_amamori/14.html

No.09 ディレイド・ルーム(muomuo)
http://text-poi.net/post/muo_2/8.html

No.10 泣け ◆hlyRv5ZPWE
http://text-poi.net/post/hogeotensai/1.html

皆さん投稿ありがとうございました。

感想や批評があると書き手は喜びますが、単純に『面白かった』と言うだけの理由での投票でも構いません。
毎回作品投稿数に対して投票数が少ないので、多くの方の投票をお待ちしております。
また、週末品評会では投票する作品のほかに気になった作品を挙げて頂き、同得票の際の判定基準とする方法をとっております。
ご協力ください。

投票は、本スレッドかてきすとぽいのいずれかのみでお願いします。

・本スレッドで投票する場合

 以下のテンプレートに記載し、投票してください。

 ***********************【投票用紙】***********************
 【投票】: <<タイトル>>◆XXXXXXXXXX氏
                ―感想―
       <<タイトル>>◆YYYYYYYYYY氏
                ―感想―
 気になった作品:<<タイトル>>◆ZZZZZZZZZZ氏
 ********************************************************

・てきすとぽいの場合

 「この作品が最も良いと思った」と思われる作品にのみ5の評価を、
 「投票には至らないけど、気になったor良かった」と思われる作品にのみ4の評価を行ってください。

投票、気になった作品は一作品でも複数でも構いません。

たくさんの方の投票をお待ちしています。
955 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/07/01(火) 00:57:12.73 ID:LAAkt6aCo
間に合わなかったので、そのうちてきすとぽいに投稿させてもらいます(血涙)
今日の夕方から時間が出来たから突貫してみたけれど、無理でした
956 :422 [sage]:2014/07/01(火) 01:14:38.74 ID:TkX4HjS00
おお……
時間外の投稿、ぜひぜひお待ちしています。

今回は投稿数が少なく一時期どうなることかと思いましたが、>>951あたりで流れが変わり、最後にどどどっときて十作品超えましたねー。

一レス風作品が多いのも特徴的でした。
957 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/07/01(火) 03:20:33.13 ID:LAAkt6aCo
http://text-poi.net/post/Shiba_0241/1.html
間に合いませんでしたが遅刻組として投稿させていただきました。
時間が欲しいですね(白目
958 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [sage saga]:2014/07/02(水) 09:54:37.65 ID:74QOg1ux0
お題ください
959 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/07/02(水) 11:26:40.44 ID:ZH/lIKFr0
お腹を守るくん
960 :感想 [sage]:2014/07/02(水) 22:37:24.36 ID:ZH/lIKFr0
No.01 祖父の葬式(茶屋)
http://text-poi.net/post/chayakyu/69.html

難しいのは、例えばこれが誰かの実話であれば興味が出てくるのかもしれないのだけど、創作の場で勝負するには先が見え過ぎていて辛いなと。
例えば最後に一つ、死んだ祖父からのビッグサプライズみたいなのがあると印象が変わった気がするのです。

No.02 ぱずる(住谷 ねこ)
http://text-poi.net/post/neko_sumiya/6.html

いや、これで終わりだと悲しすぎるだろ……
救いのないから一回の盛り上がりもなしに救いのないなので、もうちょっと主人公を応援してあげてよという感じ。

No.03 一夜の悩みと夢(碓氷穣)
http://text-poi.net/post/_latefragment/21.html

これ一回目に読んだとき「なんだこりゃ、B酷いヤロウだな」と思ったけど、二回目に読んでみて印象が変わった。
Bのほうが仕事に対する責任感があって行動的で、一方Aは自分の殻に塞ぎこんじゃっている感じがあるんだよな。
そりゃBのほうが幸せになるわ。

No.04 越中泥棒左衛門碧之介の私怨ゲージ(しゃん@にゃん革)
http://text-poi.net/post/syan1717/42.html

ばっかもん!
ふざけて書いたらいけないってあれほど言ってるでしょうが!
何がひっく、ひっく、ふええええ、だよ!
思わず笑ってしまったやんけ!
クソッ!

No.05 裏返しの感情(ほげおちゃん)
http://text-poi.net/post/hogeochan_ver2/9.html

自作。
実はこれを書いてからものすっごい体調が悪いです……

No.06 硫化アリルのせいにして(妄想ボックス)
http://text-poi.net/post/delution_box/2.html

涙がずっと目に溜まり続けるって、どんなん?
ずっと目がウルルン滞在記なのだろうか。
それはそうと私的にこの作品は良かった。
ややパンチ力不足に感じるけども、綺麗な作品を読むと心が落ち着くのです。
けど女の子、これでこの後もまた殴られるんじゃないかと思うと……

No.07 さよならの味(くろー)
http://text-poi.net/post/va8DWzwViw/1.html

CDアルバムの途中に挟まれるイントロみたいな感じで、それ単体で感想を問われるとなかなか難しいのです。
どちらかというと詩や歌詞にしたほうがいい内容だと思いました。

No.08 ことりと落ちる(雨森)
http://text-poi.net/post/t_amamori/14.html

雰囲気は好きなのだけど、封筒がことりと落ちるっていうのは効果音が少し違う気がするなあ。
たぶん布巾と母ちゃんをかけている気がするのだけど、母ちゃんそこまで虐げられている気がしないから、なんか違和感があるんだよな。
まあこの兄は私も願い下げだけど(´・_・`)

No.09 ディレイド・ルーム(muomuo)
http://text-poi.net/post/muo_2/8.html

序盤はとても雰囲気が良くワクワクしたのだけど、途中からの急展開についていけなくなりました(´・_・`)
というか後でよく考えてみて、「本物とシミュレーションを聞き分けられる設定はどこいった?」とか、「そもそも主人公なんで一人旅してんだ?」とか、「記憶提供とかいう技術あるなら拷問必要なくね?」とか、いろいろ疑問点が出てきてしまってね……
自分の体に合わない記憶などただのデータというのは、以前私も似たようなことを考えたことがあるので少し気になりました。
けど記憶をただのデータって解釈されるのは冷たいから嫌だな(´・_・`)

No.10 泣け ◆hlyRv5ZPWE
http://text-poi.net/post/hogeotensai/1.html

これはどう解釈すればいいのか……
何か暗号を含んでいるのかなと思ったけど、解読できず。

No.11 見送り人(司馬)
http://text-poi.net/post/Shiba_0241/1.html

これは私には受け入れられなかった。
全員が全員感謝するっつーのは違うと思うよ。
最終的に美化された空気になっているのもちょっとね……
961 :投票 [sage]:2014/07/02(水) 22:37:52.62 ID:ZH/lIKFr0
 ***********************【投票用紙】***********************
 【投票】:No.06 硫化アリルのせいにして(妄想ボックス)
 気になった作品:No.03 一夜の悩みと夢(碓氷穣)
         No.04 越中泥棒左衛門碧之介の私怨ゲージ(しゃん@にゃん革)
 ********************************************************

んー、投票難しかった。
No.06はややパンチ力に欠ける気がしたけれど、他の作品と差をつけたかったので投票。
関心票はNo.08とNo.09にも入れることを考えたのだけど、もう少しなんとか出来たんじゃないか感があったのよね。
だから作品の完成度を考慮してNo.03とNo.04に関心票……まあNo.04は完成度というよりも笑ったからだけど。
今回は短い作品が多かったけど、なかなか面白かったなという印象でした。
962 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) :2014/07/03(木) 07:29:34.13 ID:tX+FdwYk0
お題をください
963 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/07/03(木) 08:23:57.55 ID:AlReqvOvo
>>962
号泣
964 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [sage]:2014/07/04(金) 23:05:47.92 ID:oHe+xAoR0
全感です。

1.祖父の葬式
家族の死、というものをよく書けているように思いました。
繰り返される「祖父は大きな人だった」というフレーズも印象的です。

2.ぱずる
何というか、打ち切りエンドっぽい感じがしてしまいます。
先生を含む皆に嫌われていることに気づいて、そこでの感情の動きとか行動とか、そういったものが描写されていないので、
唐突に終わって、結局何だったんだ・・・という感想になってしまいました。

3.一夜の悩みと夢
#Aと#Bが繰り返される構成から、某叙述トリックもののA面とB面を思い出し、
叙述トリック好きとしてはちょっと期待したのですが、特に仕掛けがある作品ではない、という解釈でよろしいでしょうか。
男女の対比から、「秒速5センチメートル」を思い起こします。
全体として、言っていることはわかるんだけれど、もっと何かないの?っていう物足りなさがありました。

4.越中泥棒左衛門碧之介の私怨ゲージ
とりあえず、真面目に書けよ、と言いたくなります。
ナンセンスものとして見ても、全然面白くないのは致命的かな、と。

5.裏返しの感情
読み返してみると、「僕」や「妹」の齢がなんか変に思えます。そんなに離れてない印象なのですが、妹は父の失踪後に生まれた、とあるのは???
まあ細かいところなのですが。
全体として、母との関係性とか主人公の感情をきちんと書かれているのですが、何となくしっくりこない。
多分なのですが、後半、主人公の母に対する感情が変わるあたりで急に違和感のある文章表現が多くなる気がします。
そのせいで文章のレベルで引っかかってしまっているのかな、と。
もしかしたら、敢えてわざと主人公の精神の昂ぶりとリンクした文章表現にしているのかもしれませんが。

6.硫化アリルのせいにして
良い短編小説、という感じがします。
涙が流れない病という設定から、少年期の淡い恋みたいなものを綺麗に描けていて、
広がりには乏しいかもしれないけれどよく纏まっている、という感じがします。

7.さよならの味
うーん、短い。
文章は綺麗なのですが、いかんせんストーリーがないので、何とも。

8.ことりと落ちる
短いながらに綺麗に作られている作品ですね。
「泣」というテーマとしては何とも言えないかもしれないかもしれませんが、まあ他の作品もテーマの省かという点では微妙ですし。

9.ディレイド・ルーム
SFって難しいんだなあ、と他人事のように思ってしまったり。
悪くはないと思います。きちんとSFとして成立しているというか。
ただ、もう一歩踏み込んだ設定を見せてほしかったですね。「母」のくだりとかは唐突な気がしました。

10.泣け
これもちょっと評価できないなあ……。
何を意図して書いたのかをつかめない、という感じでしょうか。

11.見送り人
戦争(日本の太平洋戦争)をど真ん中ストレートで書いた小説、というのが感想。
ひねりが無い、とか言っても仕方ないタイプの作品でしょうか。しっかりした文章力があるので好感が持てます。
時代考証的にどうなのか等は、私が歴史に疎すぎて分からないので、誰かお願いします。




***********************【投票用紙】***********************
投票:8.ことりと落ちる
気になった作品:6.硫化アリルのせいにして
********************************************************

この2作品で迷いました。完成度としてはNo.6の方が高いとは思うのですが、直感で決めました。
965 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) :2014/07/05(土) 14:02:54.48 ID:XOOf3WDI0
お題下さい
966 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/07/05(土) 14:06:15.81 ID:B958B5Uro
不確定性原理
967 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/07/05(土) 22:42:26.89 ID:sBWO0KfNO
全感書いた後に書く小説のお題下さい
968 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [sage]:2014/07/05(土) 23:39:25.54 ID:DM7/v/7e0
>>967
ピエロ
969 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [sage]:2014/07/05(土) 23:50:40.28 ID:DAGV6puh0
お題貰ったあと書いたらここにうpすればいいの?
970 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/07/05(土) 23:51:36.58 ID:sBWO0KfNO
>>968
把握

>>969
そうです。
971 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [sage]:2014/07/05(土) 23:54:55.75 ID:DAGV6puh0
>>970
ということはお題貰ったままうpしてない人が結構いるってことだよね
972 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/07/06(日) 00:06:10.37 ID:I5PL6UR9o
>>971
書いても人に見せられるレベルになるとは限らないんだぜ
973 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/07/06(日) 10:57:36.70 ID:SzDffIETO
拙いながら、全感を投稿いたします。

No.01 祖父の葬式
 「大きかった祖父」というテーマが強く伝わって来ました。
 老いによって大きかった人が小さな別人のように見えてしまったり
小さくなったことを感じて感傷的になってしまうことは普遍的な出来事
です。私は共感しました。

No.02 ぱずる
 状況が目に浮かぶような描写でした。子供の頃を思い出してしばらく
固まってしまいました。

No.03 一夜の悩みと夢
 過去に囚われた男、前に進む女、というテーマでしょうか。私が共感した
り、批評したりするには、ちょっと高度すぎる題材でした。

No.04 越中泥棒左衛門碧之介の私怨ゲージ
 はいはい、ノリのいい文章でしたね。

No.05 裏返しの感情
 なんというか、ぎこちない人形劇を見ている感じがしました。

No.06 硫化アリルのせいにして
 主人公の感じているもどかしさの表現が素晴らしかったと思います。
 ただ、主人公の患う重いドライアイの症状に「本当にあるのかなあ」という
感慨を持ってしまいました。少女の眼帯に感じるシンパシーの描写はとても真
に入っていたと思うのですけれど。

No.07 さよならの味
 きれいな文章ですが、「小説」ではないな、と思いました。

No.08 ことりと落ちる
 危うい家族のバランスですね。読んでいてはらはらしました。

No.09 ディレイド・ルーム
 話が急転直下してからの主人公の心裡描写を端折りすぎていルのではないか
と思いました。

No.10 泣け 
 感情表出も、機械的な反応なのかも知れないですね。
 何となく、そこに少しおもしろさを感じました。

No.11 見送り人
 主人公の立場に最後まで感情移入できませんでした。その結果としてテーマ
を感得できませんでした。

 ***********************【投票用紙】***********************
 【投票】:No.06 硫化アリルのせいにして
 気になった作品:No.01 祖父の葬式
No.08 ことりと落ちる
         No.10 泣け
 ********************************************************
974 : ◆pdkDwyOMVs [sage saga]:2014/07/06(日) 11:37:25.06 ID:S+/7JtkTo
全感です。

全体:
暗い話ばっか!!
……まあ実際、そっちのほうが書きやすいですよね。
前回、前々回の品評会もROMってましたが、書く側としては落とすほうが楽なのか。

「某少年漫画の打ち切り作品」みたいな作品が多いです。
文章の途中で新要素を出してちぎり取っていく感じ。読者が迷子。

短い作品の中で「2つめの新展開」を出す作品は読みにくいなーと感じました。
なんというか、最初に置いた布石を大事にしてほしいなと。
私の考え方が固いのかもしれませんが。

些か評価の軸が【テーマ】に寄り過ぎてるかもしれません。
割とぼかさず辛辣な書き方をしているかも。ごめんなさい。
ぜひ私の作品にもぶっ刺さるような指摘をくださいませ。
975 : ◆pdkDwyOMVs [sage saga]:2014/07/06(日) 11:38:40.84 ID:S+/7JtkTo
1.祖父の葬式

前作や他作品も読みましたが、何か一貫して不思議な魅力があります。
一つの文章に必ず一つ突拍子もない設定を盛り込んでますよね。
でもそれがあることで生き生きとしてる感じがします。
郷愁の涙、懐古の涙?

祖父の物理的な大きさを語りながら、精神的にも大黒柱として大きな存在感をもっていた事を示す。
家族との別れ、ぽっかりとした空虚を上手く描写できているなーと。


2.ぱずる
この感情は「泣く」ではないな、と思いました。
主人公にとっても、読者の私にとっても。
近いとは思いますが。近くて非なるものです。

身につまされる感じを丁寧に書いていて心に染みましたが、
涙につながるものでは無く、
唇を噛む、ワナワナと震えるような辛さ。
主人公も卑屈と諦念が全面的に押し出されていて、
彼女は泣かない、泣けないだろうなと感じてしまいました。

テーマを除けば凄く高評価したいです。


3.一夜の悩みと夢
#A/#Bの交錯、したいことはわかります。
が、離散的すぎるかな。
AとBとが全く別枠の物語として受け取れる。
同じシーンを二方面から回想する、と言うよりは、似たものを並列させて違いを見せると言う感じ。

3000字程度の塊でこの手法を使うんだったらもっとあざとさ、わざとらしさが欲しいです。
マクガフィンを一つ用意するだけでも違うかも。
決まればカッコいい手法ですが上手く繋げて見せないと只の書き散らしになってしまってもったいない。

A/Bでパート分けしているので、☆☆☆の部分を三人称視点、俯瞰で書くと良いのでは。
「僕」の登場のせいで結局Aのパートになってしまっていて、結果として文章全体がAに偏っててバランス悪いです。
976 : ◆pdkDwyOMVs [sage saga]:2014/07/06(日) 11:39:59.59 ID:S+/7JtkTo
4.越中泥棒左衛門碧之介の私怨ゲージ
よくわからんけど好きです。
私怨の「私」が作中人物から作者へと変わる唐突なメタ化がよいですねえ。
ぜひ、時間をたっぷりととった時の作品も見てみたい。


5.裏返しの感情
さすが前回覇者、今回のテーマを決めた人、と言う感じ。
「僕」の受け身な生き方、母の変貌、純粋故に恐ろしい妹の思考。
ゾクッときました。
「泣く/泣かない」と家族としてみなすか否かを掛けているのも変にリアルで良いです。

一つちょっかいを。
船舶の沈没による失踪の場合(危難失踪)、当人が死ぬ=失踪宣告が通る、のは一年が経過してからです。
更にいうと、この場合の申立人:失踪宣告に対して利害を有する者、
ここでいうと配偶者・相続人にあたる母がその権利を有しますが、
彼女が失踪宣告を行わない限り死亡したと勝手にみなされることはありません。ので死亡保険はおりない。
これに関して通常なら「ぺらぺらと薀蓄を語りやがって、気にしすぎるとハゲるぞ」と流して貰って構わないのですが…


果たしてこの母が父親の「死亡」を認めるのか?

認めないだろうな、と。恐らくすがり続けるでしょう。何年も何年も。
死亡保険や診断書と言った目に見える『死』の形を求めないでしょう。
その上で、保険金が入らずいつしか彼女の稼ぎだけが家族の生命線になってくる。
そうすると物語の根本が若干ブレる気がするんですよね。(と読んでる側としては感じました)。



6.硫化アリルのせいにして
自作。
設定をベタベタ貼っつけて、剥がしきってないのがいくつか。
精通のくだりいらない?浮いてるかも。
そのくせ「筋の通ったストーリー」にこだわり過ぎ。
書き始めと書き終わりでテンションの違いが明確。良くない。
他の人との対比になるけど、
「架空の設定」を用意する際に整合性と言うか、理論武装に走り過ぎかな。
お陰で矛盾とかは少なく見えるかもしれんが、読者としては「ふーん。で?」という感じ。
その努力を本筋の魅力引力アップにだな。


一応ウルトラハッピーエンドを目指して書いたやつです。
ちょっとあざとすぎるかな。

参考までに、書く前に「隣の家の少女」を何度か読み返しました。
良作なのでネタバレを見ずに読むことをおすすめします。


7.さよならの味
どこが、という詳細は言えないけど好きです。
じんわりと染み込む悲しみ。綺麗。
言葉選びのセンスも好き。こういうのもかけるようになりたい。
べた褒めで逆に申し訳ない。
977 : ◆pdkDwyOMVs [sage saga]:2014/07/06(日) 11:40:45.00 ID:S+/7JtkTo
8.ことりと落ちる
一つの鉄板テーマである「普通の家庭の歪な中身」を上手く描写していると思います。

「ことり」と音を立てるということは、それなりに分厚い(=内容がつらつらと書かれた)封筒なのかな、と言う印象。
しかし物語的には「何も書かれていない」母の談ですが。
愚痴たり癇癪を起こしたりと言う形で日々垂れ流していたので、いざとなると何も思いつかなかったのかな、という納得がいきます。
ただそうするとことり、よりぱさ、なのか。

モチーフとして利用している吸盤式ハンガーについてですが、あれって描写のとおり、不意にコトッ、と落ちるんですよね。
もし…普段の母が大人しく内向的で、汚れた布巾をただ黙って洗うような人で、そんな母が実は家出をしていた。
という筋ならぴったりなモチーフだと思います。その場合、封筒の中身は何枚もの黒黒とした便箋で、きっと重みでことりと音がするでしょう。

そこにズレを感じて、しっくりこないなーと。

幽霊のような表情と鬼のような表情ではかなりニュアンスが変わってしまいますが、敢えて違えたのでしょうか?
文章を書き慣れていることが見て取れるが故に、気になる所が目立ちます。


9.ディレイド・ルーム
もったいない。最初に浮かんだ感想がそれです。

SFはそれなりにインプット・アウトプットの経験があるんだなーと文中の所々で感じました。
が、それ故に”自分のSF”感が強く出ているのかも。
分量に対する設定の重さがキツい。
それも、最初についた設定を追々活かしていくタイプでは無く、ストーリー展開のためにどんどん追加されていくので雁字搦めです。
最初のイヤリングと指輪のシーンを最後まで活かして欲しかったな、と思いました。

あと、細かい点ですがロボット三原則をプログラムに対して持ち出している点が不可解。
第二条ですよね?言いたいことはわかりますが、実行する装置=ロボットに言及するものであって、その知能=プログラムに対してではない。
あの部分だけ「主人公の思考・感情に合わせてそれっぽいワードを選んだ」という感触。


10.泣け
星新一のショートショート風味なのでしょうか。
「F氏の妹の友人」の登場の仕方が唐突すぎるのと、そこからの展開が不可思議というかなんというか。
ロボット(ガイノイド)だから人間のやり方では泣かない、というオチは面白いのですが、
それをもてあましている。
その上最後の段落で急に方向転換していて、あれっ?と。

11.
圧倒的な分量としっかりとした書き込み。
あんまり言うことないです。すごい。
というか、それ以外言葉が用意できないです。
978 : ◆pdkDwyOMVs [sage saga]:2014/07/06(日) 11:42:55.72 ID:S+/7JtkTo


 ***********************【投票用紙】***********************
 【投票】:5.裏返しの感情(ぼげおちゃん)
 
 気になった作品:2.ぱずる(住谷 ねこ)
         7.さよならの味(くろー)

 ********************************************************

どの作品もそれぞれの味が出ていて参考になります。
もっと自分も柔軟な発想を持たないとな、と感じました。
979 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [sage]:2014/07/06(日) 14:53:38.37 ID:prCW4e4hO
お題ください
980 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/07/06(日) 16:19:41.29 ID:SzDffIETO
>>979
ソース
981 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [sagasage]:2014/07/06(日) 21:43:47.38 ID:dG0XT8h90
>>978
横からだが、ほげおちゃん氏はbnsk側の人間の作をてきすとぽいに転載してくれたので、
クレジット上ではほげおちゃん氏の作品になっているが、前回覇者とは別人だったりする
982 : ◆PJlUox0H96 [sage]:2014/07/06(日) 22:12:42.43 ID:iGiEYP3DO
>>981
おお……、生き恥を晒した
吊ってくる

生き恥ついでに、危難失踪ではなく認定死亡もあてはまるかもしれない、と書いておく
とは言え「死亡が確実」なわけではないからかなりグレーだけど
983 :422 [sagasage]:2014/07/07(月) 00:07:52.38 ID:GShp5v9Mo
■本スレ
投 関
  1  No.01 祖父の葬式(茶屋)
  1  No.02 ぱずる(住谷 ねこ)
  1  No.03 一夜の悩みと夢(碓氷穣)
  1  No.04 越中泥棒左衛門碧之介の私怨ゲージ(しゃん@にゃん革)
1    No.05 裏返しの感情(ほげおちゃん)
2  1  No.06 硫化アリルのせいにして(妄想ボックス)
  1  No.07 さよならの味(くろー)
1  1  No.08 ことりと落ちる(雨森)
    No.09 ディレイド・ルーム(muomuo)
  1  No.10 泣け ◆hlyRv5ZPWE
    No.11 見送り人(司馬) ※時間外

■てきすとぽい
投 関
1  2  No.01 祖父の葬式(茶屋)
    No.02 ぱずる(住谷 ねこ)
  1  No.03 一夜の悩みと夢(碓氷穣)
    No.04 越中泥棒左衛門碧之介の私怨ゲージ(しゃん@にゃん革)
2  1  No.05 裏返しの感情(ほげおちゃん)
3  2  No.06 硫化アリルのせいにして(妄想ボックス)
    No.07 さよならの味(くろー)
2  1  No.08 ことりと落ちる(雨森)
  4  No.09 ディレイド・ルーム(muomuo)
    No.10 泣け ◆hlyRv5ZPWE
    No.11 見送り人(司馬) ※時間外

■合計
投 関
1  3  No.01 祖父の葬式(茶屋)
  1  No.02 ぱずる(住谷 ねこ)
  2  No.03 一夜の悩みと夢(碓氷穣)
  1  No.04 越中泥棒左衛門碧之介の私怨ゲージ(しゃん@にゃん革)
3  1  No.05 裏返しの感情(ほげおちゃん)
5  3  No.06 硫化アリルのせいにして(妄想ボックス)
  1  No.07 さよならの味(くろー)
3  2  No.08 ことりと落ちる(雨森)
  4  No.09 ディレイド・ルーム(muomuo)
  1  No.10 泣け ◆hlyRv5ZPWE
    No.11 見送り人(司馬) ※時間外
984 :422 [sagasage]:2014/07/07(月) 00:14:44.54 ID:GShp5v9Mo
というわけで優勝は、「No.06 硫化アリルのせいにして」でした。
おめでとうございます!

優勝者の方は、7/12 頃までにお題の決定をお願いします。


No.6とNo.8のデッドヒートかと思ったけど、最後少し加われてよかった・・・・・・
985 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sagasage]:2014/07/07(月) 00:37:23.46 ID:GShp5v9Mo
>>976

No.5 へのコメントありがとうございます。

ぐふっ……
正直保険金はGoogleでちょちょいと調べて、「へー、死体見つからなくても保険金出るんだー」
みたいな浅い認識で書いたので、突っ込まれるとボロがボロボロ……

私の中での母ちゃんは、父ちゃんの死は一応認めたけど、だからといってそのまま生きている
のは悲しくて、子供のことを思って一所懸命働いたけど心擦り切らしちゃった感じでした。

こうして振り返ってみると、「ああ、書き足りなかったなあ」と毎回思うので、小説って不思議です。
986 :422 [sage]:2014/07/07(月) 05:51:46.15 ID:GShp5v9M0
すみません。

言い忘れていましたが、私は今月から忙しくなります。
てきすとぽいへのスレ立ては行おうと思いますが、作品の投稿や転載などはちょっと難しくなるかもしれません。
もし自分が主催者になってもよいという方がいましたら、変わっていただけると助かります。
987 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/07/07(月) 23:35:26.54 ID:s4q10BFsO
なんか大事な話してる時にお題もらいにきて申し訳ない
988 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/07/07(月) 23:46:43.38 ID:mR1wPYDwo
>>987
あかめ
989 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/07/08(火) 00:45:14.89 ID:OVhJSKmyo
ありがとう
あかめ!?
990 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/07/11(金) 00:48:21.00 ID:KI9G1kdVo
お題ください
991 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/07/11(金) 01:56:45.29 ID:Tc0gCfM+o
>>990
愛情
992 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/07/11(金) 02:09:05.76 ID:KI9G1kdVo
thx
993 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/07/11(金) 06:35:25.45 ID:9Qk9NxP1O
お題ください
994 : ◆pdkDwyOMVs [sage saga]:2014/07/11(金) 10:40:02.72 ID:bWPb9p7mo
すっかり遅くなってしまいました。
品評会おつでした。

次の品評会のお題は「不在(不存在)」。
モノでも人でも生き物でも。何かが”無い”物語がいっぱい紡がれますように。

申し訳ありませんが次回参加できるかわからないので、運営などどなたかにお願いしたく思います。
995 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/07/11(金) 10:41:37.95 ID:DlurPGA9O
>>993
かるた
996 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/07/11(金) 10:43:15.88 ID:MhNVsB7ZO
>>995
ありがとうございます
997 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/07/11(金) 11:14:14.10 ID:f0Yrvi05O
お題を下さい
998 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [sage]:2014/07/11(金) 14:46:15.59 ID:ggM7CdyC0
>>997
事情
999 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/07/11(金) 17:15:42.34 ID:PdoQ1JO5o
文才ないけど小説かく 6
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1405065955/

ギリギリでしたので立てておきました。
どうぞご利用ください。
1000 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/07/11(金) 17:16:35.39 ID:b//IGjh1o
スレ立て乙
1001 :1001 :Over 1000 Thread
          | |\                /| |
          | |::.::.\.________./.::.::| |
          | |:::.::.:.:.| ⊂⊃      ⊂⊃ |.:.:.::.:::| |
          | |:::.::.:.:.l∧_∧   ∧_∧|.:.:.::.:::| |  NIPは誰でもウェルカム
          | |:::.::.:.:.|,, ´∀`)  (・∀・ ,,).:.:.::.:::| |
          | |:::.::.:⊂   つ  (     つ .::.:::| |
          | |:::.::.:.:.| ヽノ____Y  人|.:.:.::.:::| |                     SS速報VIP(SS・ノベル・やる夫等々)
_____| |:::.::.:.:.|,_,)       (__),_|.:.:.::.:::| |_____               http://ex14.vip2ch.com/news4ssnip/
          |_|,.. '"              "'  .,|_|

1002 :最近建ったスレッドのご案内★ :Powered By VIP Service
魔王「国際農業機械展in帯広!」 @ 2014/07/11(金) 17:09:36.19 ID:V35Iy+ri0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1405066176/

文才ないけど小説かく 6 @ 2014/07/11(金) 17:05:56.16 ID:PdoQ1JO5o
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1405065955/

モバP「アイドルたちと仲良くなれるなんてこと、ありえない」 @ 2014/07/11(金) 16:58:52.14 ID:wcDoo3+JO
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1405065532/

名探偵電(プラズマ) @ 2014/07/11(金) 16:44:34.08 ID:gApIxiJbO
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1405064674/

【艦これ】提督「オムニバス形式でSS?」【SS】 @ 2014/07/11(金) 16:32:49.13 ID:2s34k7CvO
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1405063969/

【安価】幻想郷サバイバル【コンマ】 @ 2014/07/11(金) 15:48:19.08 ID:aJsmeurJ0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1405061298/

男「安価でギャルゲー生活」 @ 2014/07/11(金) 15:13:52.09 ID:O19YDOto0
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【GE2】VIPでゴッドイーター2避難所 @ 2014/07/11(金) 14:11:52.69 ID:ke0MIuFdo
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