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千早「綺麗とは言い難い空ですね」 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2014/05/20(火) 22:50:56.35 ID:xkzuxKSgo

ときおり耳にする「月が綺麗ですね」をぼかしたわけでもなく

ただ率直に

都会の不透明な空の感想を言う

「……確かにそうかもしれませんね」

空を見ようと誘って来た彼女からしてみれば

私の言葉は少し嫌なものに聞こえたかもしれない

でも、彼女は嫌な顔どころか

自分もそう思うというような意味を込めて

微笑みを向けてきた

「………………」

「………………」

黙って見つめ合うのがなんだか嫌で

私はもう一度空を見上げて口を開く

「……月、あまり見えませんね」

「ええ……普段は真、良き月夜なのですが。どうも今宵の月は恥じらっているようで」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1400593856
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第五十九回.知ったことのない回26日17時 @ 2024/05/10(金) 09:18:01.97 ID:r6QKpuBn0
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ポケモンSS 安価とコンマで目指せポケモンマスター part13 @ 2024/05/09(木) 23:08:00.49 ID:0uP1dlMh0
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今際の際際で踊りましょう @ 2024/05/09(木) 22:47:24.61 ID:wmUrmXhL0
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誰かの体温と同じになりたかったんです @ 2024/05/09(木) 21:39:23.50 ID:3e68qZdU0
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A Day in the Life of Mika 1 @ 2024/05/09(木) 00:00:13.38 ID:/ef1g8CWO
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真神煉獄刹 @ 2024/05/08(水) 10:15:05.75 ID:3H4k6c/jo
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愛が一層メロウ @ 2024/05/08(水) 03:54:20.22 ID:g+5icL7To
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2 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [sage]:2014/05/20(火) 22:57:16.37 ID:WX+Yjseo0
期待
3 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/05/20(火) 22:58:29.79 ID:xkzuxKSgo

彼女はクスクスと妖艶な笑みをこぼしながら

私と同じように空を見つめる

「貴女がいるせいかもしれません」

「それは酷い言い掛かりだと思うのだけれど」

「そうとも言い切れませんよ」

彼女の視線に気づき

私もまた体の向きを変えて

彼女と向き合った

「なぜ?」

「貴女が如月千早だからですよ」

久しぶりに聞くフルネーム

懐かしさと今はない距離感が蘇ってくる

……が、言葉に意味は解らなかった
4 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2014/05/20(火) 23:07:09.76 ID:xkzuxKSgo

「月を貴女が奪い去ってしまったからですよ」

「え……あっ」

「ふふっ、ようやくお気づきですね」

彼女は嬉しそうに笑う

なるほど

如月千早の中に月が収まっている

だから、姿を見せない

「中々に柔軟性が必要な問題ですね」

「お気に召して頂けたようで何よりです」

得意げな彼女はその赤い瞳を私へと向ける

じっと見ていたら魅了されてしまいそうな気がして

逃れるように視線を逸らす私はちょっと……臆病者ね
5 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2014/05/20(火) 23:17:03.68 ID:xkzuxKSgo

自分に対して厳しい評価をぶつけても

相も変わらない空模様

まぁ、当然のことなのだけれど

「……部屋、戻ります?」

「いえ、月だけが空の魅力ではありませんから」

「星も……見えませんよ?」

「ええ、ですが……まだこの果てしなく続く空がありますから」

彼女はそう言いながら空を見上げる

その視界にはこの光のない大空

黒の中に薄い白

その絶妙な色合いが眠気を呼び出す
6 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2014/05/20(火) 23:21:02.24 ID:xkzuxKSgo

「……おや、横になられますか?」

「もうなってますよ」

「そうではなく」

言葉に続くポンポンッという小さな音

膝枕をしてくれるというのだろうか

それなら――い……やっぱりダメよね

少し考えて首を振る

膝を借りて寝るか

このまま起きて話を続けるか

こういう時間を中々取れない今

優先するべきなのは圧倒的に後者だったのだ

「もう少し……話がしたいわ」

「ふふっ、お付き合いいたしましょう」
7 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2014/05/20(火) 23:27:34.17 ID:xkzuxKSgo

「そういえば……今日は歌を歌っていないわ」

「……はい?」

「……その。歌を歌っていないのよ」

月に関する問題への返しの問題

考えてみたけれど問題以前の問題だった

「ふむ……」

彼女は少し考えてから

何かに気づいてクスッと笑う

「では、歌ったりしても良いのですよ?」

「……ダメよ。音が盗まれてしまったわ」

「おやおや、それは真、面妖なことです」
8 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2014/05/20(火) 23:35:36.45 ID:xkzuxKSgo

「ふふっ、まだまだですね」

「残念です」

真っ暗な空の下で

純白で光を宿す彼女の微笑み

それを引き出すためなら敗者になることも厭わない

言葉では勝てないと解ってはいても挑戦するのは

それが理由……だったりしなくもない

とはいえ、勝たれるだけを好む性分ではない

「――でも」

「っ!」

ギシッ……と

二つのロッキングチェアが音を立てて

その中の一つだけがその音に重みを乗せた
9 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2014/05/20(火) 23:41:45.66 ID:xkzuxKSgo

彼女の視界に私

私の視界に彼女が映る

見下ろす私と見上げる彼女

それで優越感に浸ろうなどという小さな心ではない

「隙が多いですね……いつものことですけれど」

「……貴女という人は」

彼女の余裕の表情に少しだけ焦りが見える

普段大人びてはいるが

その時々でしっかりと女の子らしさを持っている

そんな彼女は困ったように笑みを浮かべた

「ろっきんぐちぇあが壊れてしまいますよ」

「動かなければ大丈夫ですよ」

「……なるほど」
10 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2014/05/20(火) 23:49:25.13 ID:xkzuxKSgo

私の意図を読んだのか

彼女は小さく呟き

私のことをまっすぐ見つめる

綺麗な銀髪が靡いて

妖美な赤い瞳が輝きを増す

そこでふさわしいのは

月が綺麗というよりも月が陰って見えますね。のような気がしなくもない

「無駄ですよ」

「なんと」

「からかったのがいけなかったんですよ?」

「……わたくしとしたことが不用意でしたね。千早に動機を与えてしまうとは」
11 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2014/05/20(火) 23:56:18.33 ID:xkzuxKSgo

「そして」

彼女は言葉を続けながら

含み笑いを浮かべて言い放つ

「動悸も……でしょうか」

「………………………」

彼女はやっぱり……強敵だ

自分が不利な立場にいながらも

焦りをかき消して余裕そうな笑みを浮かべるのだから

「……いつまで経っても慣れないんですよ」

「それはわたくしとて同じことです」

彼女は白い肌を薄く染めて

私へと微笑みを向けてきた
12 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2014/05/20(火) 23:59:58.01 ID:xkzuxKSgo

「……………………」

「……………………」

その状態のまましばらく見つめ合って

私は何か仕掛けることもなく

彼女の上から退いて

もう一つの方へと横になる

「焦ることはありませんよ」

「……解ってます。でも、やはり先に進むことを望む気持ちは抑えきれませんから」

彼女に背を向けながら

言葉にだけは答えを返す

やっぱり……私は臆病者のようだ
13 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2014/05/21(水) 00:08:47.17 ID:q+Dg5Mjbo

「千早」

そんな私に対して

彼女は幸せそうに名前を呼ぶ

嬉しさ、楽しさ

希望や期待……色んなものの詰まった一言

そこに続く彼女の言葉も

やっぱりそんな柔らかな感情を包み込んでいた

「今度……どこかに旅行に行きましょう」

「旅行?」

「ええ、2人で。夜景の綺麗な素晴らしい場所へと……いかがでしょう?」

彼女はそれが明日であるかのように

幸福感を漲らせて聞いてくる

それを断る度胸はない

そうでなくても、断る理由なんて特にはなかった
14 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2014/05/21(水) 00:20:59.02 ID:q+Dg5Mjbo

「また月が隠れるかもしれませんよ」

ただ、それが少し不安で

冗談っぽく呟く

それに対する彼女の答えは

「――月は貴女がいるでしょう?」

解ってはいたけれど

予想よりもずっと心に響くその言葉

「………………」

「………………」

沈黙が流れる中で痛みさえ伴いそうなほど

顔が熱くなっていて

背中にも、彼女の小さな呻きが届いた

「な、なら……行きましょう」

「はい」

「2人で」

「ええ」

恥ずかしさを身にしみて感じながらも

私達はそう約束を交わして

向かい合うようにロッキングチェアから降りた

「ふふっ」

「……もう、寝ましょうか」

嬉しそうに笑う彼女の差し出してきた手を

私は優しく握り、部屋の中へと引っ張った
15 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2014/05/21(水) 00:22:01.35 ID:q+Dg5Mjbo

終わり


貴音と千早
16 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/05/21(水) 00:33:23.34 ID:JRhIbzmAO
乙乙
17 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/05/21(水) 00:35:32.44 ID:wMBece0io
珍しい組み合わせだけどかなり好み
おつー
18 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/05/21(水) 00:37:55.17 ID:hw+IGiTDO
糞スレ乙
19 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/05/21(水) 10:56:14.30 ID:O80lfnlDo
おつおつ
この二人の静かな会話、いいよなぁ
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