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モバマス海東青鶻 -
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1 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/27(土) 21:55:21.28 ID:SdAjZjOk0
・このSSは、中国北宋時代を舞台にした作品です。
・史実とは異なる点があります。ご注意下さい。
SSWiki :
http://ss.vip2ch.com/jmp/1419684911
1.5 :
荒巻@管理人★
(お知らせ)
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チノ「(ドラクエの)マヤさん好きです」ココア「(チマメ隊の)マヤちゃんが?」 @ 2025/01/23(木) 07:20:54.62 ID:61JcRy5CO
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1737584454/
橘ありす「四葉村殺人事件」 @ 2025/01/22(水) 23:55:17.10 ID:/j+tA0Fk0
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【安価】いつも、何度でも。─千と千尋の神隠し その後の物語─ @ 2025/01/20(月) 23:24:27.24 ID:YHu7yDPj0
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寒いにゃ!!!!!!! @ 2025/01/20(月) 20:05:02.18 ID:QyCOCCxBO
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1737371102/
シマエナガの日 @ 2025/01/20(月) 06:47:15.05 ID:YuudJY1t0
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aaorz/1737323234/
ハンジ「リヴァイって本当に人類最強なのかな〜?」 @ 2025/01/20(月) 05:54:10.29 ID:L78gBgUkO
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1737320050/
【学マス】星南「…」 @ 2025/01/18(土) 18:19:22.07 ID:ppoNmHJ/0
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1737191961/
コナン「女児のパンツが生んだ二つの悪!」 @ 2025/01/18(土) 02:11:21.49 ID:yDKw41+dO
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1737133881/
2 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/27(土) 21:56:43.50 ID:SdAjZjOk0
〜燕京〜
耶律休哥(渋谷凛)「……」ボ~
耶律斜軫(前川みく)「……」ポケ~
凛「ねえ、みく」
みく「にゃあ?」
凛「将軍になるのって、大変なんだね……」
みく「うん……武挙に受かったから、すぐに採用されると思ったのに……」
凛「私たち、頑張ったよね?」
※武挙(ぶきょ)…武官を登用するための国家試験。
3 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/27(土) 21:57:39.33 ID:SdAjZjOk0
みく「まさか、同期の大半がふるい落とされるなんて、思ってもみなかったにゃ」
凛「昼間の軍事調練は勿論、夜間進軍や三日間水も食料も
自分で調達する訓練とか……」
みく「それに軍学書の丸暗記に、軍編成の遣り方、
軍需物資の調達方法……」
凛「軍人になったのに、教養まで求められるとは……」
4 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/27(土) 21:58:31.35 ID:SdAjZjOk0
使者「耶律休哥殿、耶律斜軫殿」
凛「あ、はい」
みく「まだ研修は続くのかにゃぁ……もう勘弁してほしいにゃ」
使者「太后様は、お二人が優秀な成績を修めていることについて、
大変お喜びのご様子。これが、最後の課題です」
みく「やったにゃ! これで地獄の特訓からはおさらばにゃ!」
凛「喜ぶのはまだ早いよ、みく……それで、最終課題は?」
使者「最終課題は、実地試験となります。
お二人には、それぞれ別の課題に挑戦していただきます」
5 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/27(土) 21:59:08.84 ID:SdAjZjOk0
みく「内容は?」
使者「籤を作っておきました。引いてください」
凛「わかった。それじゃあみく、同時に引くよ?」
みく「わかったにゃ」
二人「「せーのっ!!」」
ペラッ
凛「……」
みく「……」
6 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/27(土) 22:00:08.50 ID:SdAjZjOk0
凛「ねえ、みくはどんな課題だった?」
みく「みくの籤は、『賊徒討伐』って書いてあるにゃ」
使者「現在、宋との国境付近に、怪しげな武装集団がおります。
雑軍だと思われますが、おそらく宋に扇動された部隊と考えられます。
そのため実際に軍を率いていただき、賊を討伐していただきます」
みく「いずれ経験するとはいえ、もう実戦に放り出されるのかにゃあ」
みく「それで、凛チャンの方はどんな課題だったにゃ?」
7 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/27(土) 22:00:55.54 ID:SdAjZjOk0
凛「私の方は……『反乱鎮圧』って書いてあるんだけど……」
使者「つい先日、回跋部(ふいばぶ)において女真族が反乱を起こしました。
それを鎮圧していただきます。耶律斜軫殿と同様、軍権も与えられますのでご安心を」
使者「また、実際に軍権を与えられるということは、お二人は将軍として扱われます。
もし敗北を喫したり、軍法に反することがあれば、厳罰に処されますのでご注意下さい」
凛「さすが最終試験……難易度も高いし、責任までついてくるのか」
みく「下手すれば打ち首ってことになるのかにゃ」
8 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/27(土) 22:01:54.98 ID:SdAjZjOk0
使者「また期限は、それぞれの任地に就かれてから一月以内とします。
使える物資は任地の鎮台に保管されている物のみとし、
所望品があっても申請は認められません。
しかし、略奪以外の方法で自ら物資を得ることは、特に禁じられておりません」
使者「それから、本国より軍監が送られて来ます。それだけ留意して下さい」
使者「太后様は、有能な将を求めておられます。
この課題は、太后様ご自身でお考えになったものですから、
これぐらいこなして欲しいというわけでしょう」
凛「分かった。やってみる」
みく「困難だけど、これを乗り越えれば正式に将として採用されるにゃ!
やる気出てきたにゃ!」
9 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/27(土) 22:02:34.20 ID:SdAjZjOk0
使者「説明は以上です。何か質問は?」
凛「特に無し」
みく「同じにゃ」
使者「それでは、私はこれで失礼します……」
みく「それじゃあ早速、みくは行ってくるにゃ」
凛「みく。ここまで来たんだから、しくじらないでよ?」
みく「みくは有能だから大丈夫にゃ! 凛チャンの方こそ」
凛「ふふっ。お互い、頑張ろう!」
みく「うん!」
10 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/27(土) 22:03:24.88 ID:SdAjZjOk0
〜回跋部・野営地〜
凛(この地域に入ってから、もう五日が経つ……)
凛(斥候を放って調べさせてみたけど、反乱部隊はどれも軍備が貧弱。
それに兵糧も少ないみたい。私が何もしなくても、自滅していくだろう……)
凛(でも普通に考えれば、こんな状態で挙兵しようなんて思わないはず……
反乱するなら、成功するっていう計算あればこそだけど、
今回の場合はやむにやまれず、という感じがする)
凛(もしかしたら、相当追い詰められているのかも。だとしたら、かなり問題だね。
今回は武力で押さえつけても、今後再発する可能性が高い)
11 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/27(土) 22:04:27.06 ID:SdAjZjOk0
斥候「耶律休哥将軍! 帰還しました」
凛「お疲れ様。で、どうだった?」
斥候「やはり、反乱の指導者は郝里太保(かくりたいほう)城にいる模様。
各地の反乱部隊にたいして、かの城から頻繁に伝令らしき騎影が出入りしております」
凛「ありがとう」
凛(反乱というものは、頭を叩けば後は散り散りになる。
太守の膝元である、郝里太保城から反乱の指揮を執るなんて、なかなかやるな)
凛(そういえば、郝里太保城には、女真族を統括する役所があるんだっけ?)
12 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/27(土) 22:05:25.96 ID:SdAjZjOk0
凛「全軍に通達。明朝、騎兵隊は私とともに郝里太保城に向けて出撃する。
歩兵はこの地において野戦陣地を構築し、
物資の防衛、退路の確保、帰還する騎兵の収容準備を」
斥候「かしこまりました」
軍監「耶律休哥殿、郝里太保城の周囲に敵はいないとはいえ、
それまでの道中は、騎兵のみで敵中を突破することになりますぞ」
13 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/27(土) 22:06:08.66 ID:SdAjZjOk0
凛「私はこの数日間の偵察により、反乱軍の装備・錬度は劣悪だと判明した。
だから遼の正規軍の敵じゃないし、何かあればこの陣地まで逃げ帰ることもできる」
軍監「まあ、采配は貴方に一任されておりますが」
凛「それに、一つ確かめなきゃならないことが……」
軍監「今何か?」
凛「ううん。なんでもない」
14 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/27(土) 22:06:56.50 ID:SdAjZjOk0
〜郝里太保城・広場〜
太守「おお、貴方が耶律休哥将軍ですか。わざわざこんな北地まで、ご足労をおかけしました。
宴会の席を設けております。今夜はお休みください」
凛「まだ反乱は治まってないよ。そして私は、この城が怪しいと思うんだ」
太守「私が治めている城ですぞ。怪しいところなど、何もありませんが……」
凛(この城の雰囲気はおかしい。民は皆、死んだ目をしている。
女真族は遼に従属しているけど、決められた税を払い、徴兵の義務を守れば良いだけのはず。
税も、生活に支障が出るほどの額ではないはずだし……)
15 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/27(土) 22:08:00.69 ID:SdAjZjOk0
若者「お待ち下さい!」
凛「誰?」
若者「これが遼のやり方ですか!? 遼は、我らに死ねとおっしゃるのですか!?」
凛「どういうこと?」
若者「俺達は、そこの太守に税以外のものを払わされているんです!
こんなんじゃ、生きていけません!」
太守「誰か、こやつを捕らえろ!……申し訳ございません、将軍。
この者は少し気が狂れておるようでして……ささ、政庁にお入りください」
凛「すこし待って。宴会の前に、調べなきゃならないことがあるよ」
太守「な、なにか?」
16 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/27(土) 22:08:49.10 ID:SdAjZjOk0
凛「あんた、太守の屋敷がどこにあるか知ってる?」
若者「は、はい……」
凛「兵を何人か派遣するから、案内できる?」
若者「わかりました!」
太守「将軍! 勝手なことをされては困ります。
な、何か欲しいものはございませんか?
将軍には、耳墜などお似合いかと……」
凛「皆、この広場を固めて。一人も出入りさせるな!」
太守「何をなさるおつもりですか!」
凛「いいから。少しだけ、待ってもらおうか」
※耳墜(じつい)…イヤリングのような装飾品。
17 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/27(土) 22:09:43.83 ID:SdAjZjOk0
兵「耶律休哥将軍」
凛「あ、戻ってきたんだ。意外に早かったね」
兵「太守の屋敷を調べましたが、敷地内には倉が幾つも建てられ、
中には金銀財宝や食物などが大量に保管されており、とても運び出せません」
太守「な……!」ブルブル
凛「今回の反乱の原因が、ようやくわかったね」
太守「小娘が、ワシを甘く見るなよ! ワシは都の太后様から覚えもあり……」
凛「残念でした。私は今回、その太后様からの命令で
『反乱鎮圧』を任されているんだ」
太守「者共、何をしておるか! 早くこいつを捕らえろ!」
18 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/27(土) 22:10:23.80 ID:SdAjZjOk0
凛「この期に及んで、度し難い」
ズバッ ボトッ
「うわぁ、あの人やっちまった!」
「どうしよう……俺達全員、処刑されてしまうんじゃ……」
ガヤガヤ
19 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/27(土) 22:11:15.28 ID:SdAjZjOk0
凛「皆聞いて!」
凛「さっきも言ったけど、私は太后様からの命令で、反乱の鎮圧に来た。
だからこの責任は全て私が負うべきものだし、皆のことは私が必ず守ってみせる!」
凛「そして、この太守が不当に徴発したものは全て、皆に分配する。それで良いね?」
ザワザワ ヒソヒソ
凛「でも、反乱を扇動した人がこの中にいるはず。前に出てきて」
男「はい…俺です」
凛「どんな理由であれ、反乱を起こしたことは事実。責任を取ってもらうよ?」
男「覚悟は出来ています」
20 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/27(土) 22:12:27.16 ID:SdAjZjOk0
凛「本当に戦う気があるなら、正々堂々と名乗りを上げて前に出るべきだった。
民衆の中に隠れて反乱を扇動するなんて、卑怯だよ」
凛「でも、ちゃんと名乗り出てきたことは評価する。
あんた一人の首で、事は収まる」
男「本当に、俺の首一つで皆を許してくれるのですね」
凛「約束する。命に代えても、今回の件は全て太后様に報告する」
男「わかった。首を刎ねてくれ」
凛「……」
凛(可哀相だけど、許すわけにはいかないからね……)
21 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/27(土) 22:13:31.55 ID:SdAjZjOk0
〜長老の家〜
長老「将軍、助かりました。何とお礼を申し上げれば良いのか……」
凛「頭を上げて……そもそも、今回の件は私たち遼に責任があるよ。
あんな腐った役人は、まだどこかにいるはずだけど」
凛「私は公平な税、公平な裁きを心掛けただけ。
だから不正を為した役人も、反乱の首謀者も処刑した」
凛「確かに、女真族は遼の支配下になっている。
でも、だからと言って生活を奪っても良いわけじゃない。
私は、この国をもっと良くしたい。契丹族も女真族も、関係ない国に変えていかなきゃ」
22 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/27(土) 22:14:31.10 ID:SdAjZjOk0
長老「いやいや、そういう考えをお持ちの将軍がいらっしゃるというだけで、
私たちは感謝しております」
凛「それは……どう致しまして」
キィ キィ
凛「……あれ? この鳴き声は?」
長老「おお、外でやっとるみたいですな。
せっかくですから将軍、見物されますか?」
凛「何……?」
23 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/27(土) 22:15:43.02 ID:SdAjZjOk0
バサッ バサッ
若者「こらっ! 暴れるな!」
鷹「キィ キィ キッキ キッキ」ジタバタ
凛「鷹を調教しているの?」
長老「はい、これは“海東青鶻(かいとうせいこつ)”、
または“海東青”と呼ばれる鷹です。
我ら女真族は、古くからこの鷹を使役しておるのです」
24 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/27(土) 22:17:01.35 ID:SdAjZjOk0
凛「へえ、そうなんだ。確かに、前に鷹狩りを見物したとき、
王室の人がこの鷹を使役していたような……」
長老「遼の王室や貴族の方々の間では、鷹狩り用に好まれており、この羽も珍重されております。
我らは毎年、海東青鶻を税として遼に納めております」
凛「そうなんだ……でも、鷹を捕獲して調教するなんて、大変なんじゃないの?」
長老「その通りです。それに、海東青鶻は断崖絶壁に巣を作るので、
雛を採るために崖から墜落して死ぬ者も多い」
長老「ですが、しかたありません。これも、我ら女真族が生き残るための犠牲なのです」
凛「……」
25 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/27(土) 22:18:05.94 ID:SdAjZjOk0
凛(この鷹は、何者にも屈する鳥じゃない。
誰にも従わず、もっと力強く、この大空を羽ばたくべきだ……)
長老「いかがされました?」
凛「いや、その、少し珍しかったから……」
長老「まあ我々以外は、あまり間近で目にすることはありませんな」
26 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/27(土) 22:18:55.55 ID:SdAjZjOk0
〜燕京・宮殿〜
凛「耶律休哥、帰還しました」
衛兵「耶律休哥殿ですね。中にお入り下さい。太后様がお待ちです」
27 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/27(土) 22:20:18.29 ID:SdAjZjOk0
蕭太后(高橋礼子)「お帰り、凛ちゃん。先に提出された報告書、読ませてもらったわ」
凛「どう……かな?」
礼子「文句無しね。貴方はこの場で、正式に将軍として認められるわ。
それにしても、私の見えないところでこんなに腐った役人がいたなんて。
反省しないと……
凛「ありがとうございます」
礼子「ふふふ……正直、将軍の見習いでここまで優秀な成績を修めた者はいないの。
だから凛ちゃんの今後の活躍には、期待させてもらうから」
凛「ふふっ。まかせて」
28 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/27(土) 22:21:33.52 ID:SdAjZjOk0
凛「あ、それで、みくの方はどうだったの?」
礼子「ああ、みくちゃんも合格よ。
貴方より帰還が早かったけど、任地が凛ちゃんより近かったこともあるわね」
凛(良かった。みくも合格できたんだ)
礼子「それと、今後のことだけど」
凛「はい」
礼子「凛ちゃんには早速、兵が与えられるわ。これは所謂旗本ってことになるわね。
そして有事の際には情況に応じて、国から別の軍の指揮権が与えられるの」
凛「わかった」
29 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/27(土) 22:22:35.96 ID:SdAjZjOk0
凛「わかった」
礼子「それで、凛ちゃんは正式に将軍という扱いになるわけだけど、
旗はどうする?」
凛「旗?」
礼子「そう。将の目印になる、牙門旗というものね。
普通は、その人から一字を取ることが多いかしら。
例えばみくちゃんなら、耶律斜軫の『斜』の旗に決まったけど」
凛(旗か……)
30 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2014/12/27(土) 22:22:38.14 ID:dC4QJ7cAO
毎回お疲れ様です。スレタイの漢字が読めないので読み方を教えてもらえますか?
31 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/27(土) 22:23:41.33 ID:SdAjZjOk0
凛「あの、それって、文字じゃなきゃダメなの?」
礼子「別に、何かの絵でも良いけど」
凛「そっか……少し、考えさせてほしいな」
礼子「時間はあるから、ゆっくり考えてね」
凛(旗か……どんな旗にしようかな……)
32 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/27(土) 22:24:45.70 ID:SdAjZjOk0
>>30
海東青鶻(かいとうせいこつ)です。
33 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/27(土) 22:25:29.65 ID:SdAjZjOk0
〜数日後・凛の家〜
凛「旗か……あんまり奇抜なものは笑われそうだし、
『休』の旗で良いかな? でもなぁ……」
凛「蒼旗とかどうだろう? う〜ん悩む……」
従者「耶律休哥様、お客様がお見えですが」
凛「誰?」
従者「郝里太保の老人だと言えば、将軍には分かると」
凛「長老が? 分かった。客間に通して」
34 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/27(土) 22:26:26.44 ID:SdAjZjOk0
長老「おめでとうございます」
凛「いきなり、何?」
長老「此の度、正式に将軍に昇格されたとか」
凛「耳が早いね。どうしてそんなこと知ってるの?」
長老「これでも、私は回跋部のまとめ役をしておりますので。
いろいろと、方々に耳目を持っておるのですよ」
凛「さ、流石だね……」
長老「おお、こんな話をしに来たのではございません。
昇進のお祝い品を届けに参りました」
35 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/27(土) 22:27:19.86 ID:SdAjZjOk0
凛「別に良いのに」
長老「いえいえ、これは私どもが勝手にすることです。
もし将軍がお気に召しましたなら、是非使っていただければ」
バサッ
凛「蒼旗か。これは……この旗に描かれているものって……」
長老「はい。海東青鶻の旗でございます。
将軍になったからには、ご自身の旗が必要でございましょう?」
凛「どうしてこれを?」
36 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2014/12/27(土) 22:28:06.12 ID:s5vjPD26o
北宋時代でも趙匡胤とかじゃなく遼の話か
37 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/27(土) 22:30:37.67 ID:SdAjZjOk0
長老「郝里太保で、耶律休哥様は熱心に、海東青鶻を見つめておられました」
凛「ばれてたんだ。恥ずかしいな……」
長老「もしかしたら、将軍が海東青鶻をお気に召したのではないか、と思いまして」
凛「でも、海東青鶻は女真族の象徴でしょ?
私がその旗を使うのは、皆に悪いよ」
長老「いやいや、そんなことはございません。
私はこの年まで生きながらえてきましたが、
将軍ほど民のことを考えていらっしゃる軍人はおりませんでした」
長老「言うなれば、将軍は我ら蒼茫の希望なのです」
38 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/27(土) 22:31:37.10 ID:SdAjZjOk0
凛「そんな大げさな」
凛(でも、私はこの鷹を気に入ったんだと思う。
海東青鶻のように、自由に、力強く蒼穹を羽ばたくことができたなら……)
長老「まあ、それは建前で」
凛「えっ」ガクッ
長老「本音を言えば、私は耶律休哥将軍が、
将来有望な軍人だと思えばこそ、ここまでしているのです。
ここで将軍と親しくなっておけば、いずれ女真族の利益にも繋がるかもしれぬ、
というところですかな」
39 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/27(土) 22:32:31.79 ID:SdAjZjOk0
凛「それって、年の功っていうものなのかな? まあ、別に良いけど」
長老「おお、それでは……?」
凛「私、海東青鶻の旗を使うよ。
この鷹のように、どこまでも遠く、どこまでも高く飛べるようになってみせる!」
長老「ありがとうございます。ご入用とあらば、後で何枚でもお届けしましょう」
凛「ありがとう。こんなに目立つ旗を使ってたら、戦場で下手なことできないしね」
40 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/27(土) 22:33:15.08 ID:SdAjZjOk0
長老「気に入っていただいて良かった。それでは私はこれで」
凛「あ、もっとゆっくりしていけば良いのに」
長老「長居はご迷惑になりますから」
凛「そんな遠慮しなくても……」
パカラッ パカラッ
凛「この蹄音は!」
長老「はい。数は単騎。しかも跑足(だくあし)ではなく、駆け足。
火急の用件のようですな」
41 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/27(土) 22:34:24.25 ID:SdAjZjOk0
凛「さっきから聞こえてたの?」
長老「はい。老いぼれたとは言え、私の耳は地獄耳だと、里では煙たがられています」
長老「それに、その用件が召集命令であるということも、良くわかっておりますとも」
使者「耶律休哥将軍はご在宅でしょうか!?」
凛「ここにいるよ!」
使者「太后様より、召集命令が下されました! 至急、宮殿までお越し下さい」
凛「わかった。すぐ行く」
42 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/27(土) 22:35:02.36 ID:SdAjZjOk0
凛「……で、どうして召集命令ってわかったの?」
長老「軍人に対しての火急の用件なんて、軍事命令しかありえないでしょう?」
凛「あ、そっか」
凛(まったく、老獪な人だな……)
43 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/27(土) 22:36:09.05 ID:SdAjZjOk0
〜宮殿〜
みく「しぶにゃん! 無事に合格できたのかにゃ!」
凛「あ、みく……どうでもいいけど、しぶにゃんってなに?」
みく「つれない返事だにゃあ! 一緒に昇進できた喜びを、分かちあうべきにゃ!
ほ〜ら、猫耳つけて!」
凛「まったく、そんなことしてる場合じゃないでしょ」
礼子「そう。そんな場合じゃないわね」
みく「うう……怒られたにゃあ」
44 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/27(土) 22:37:09.62 ID:SdAjZjOk0
礼子「凛ちゃん。燕京に帰ってきたばかりで悪いけど、宋が北伐を開始したの。
貴方にも従軍してもらうわよ」
礼子「でも、凛ちゃんの旗がまだ用意できていないの。
しょうがないから、『耶律』の旗でも使ってもらえる?」
凛「その必要はないよ。旗なら用意してある」
礼子「どんな旗を?」
凛「海東青鶻」
45 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/27(土) 22:38:11.27 ID:SdAjZjOk0
礼子「海東青鶻って……凛ちゃん、回跋部に行ったときに何かあったの?」
凛「何でもないよ。お礼に貰っただけ」
礼子「ま、遼軍に一人くらい、そんな将軍がいても良いわね」
みく「むむむ……」
凛「どうしたの、みく?」
みく「みくは最初、猫の旗を申請したのにゃ」
凛「え、猫?」
46 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/27(土) 22:39:08.92 ID:SdAjZjOk0
みく「みくの先祖は猫なのにゃ。
でも、契丹族の先祖は天界から降り立った天女と、神仙の間に出来た八人の子供だから、
それはおかしいって却下されたのにゃ」
凛「そ、そうだね」
みく「でも、みくの先祖は猫って言ったら猫なのにゃ!
みくは自分を曲げないよ!」
礼子「そこ、私語は慎みなさい」
凛「……」ジー
みく「凛チャンひどいにゃ!」
47 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/27(土) 22:40:25.94 ID:SdAjZjOk0
耶律奚低(高峯のあ)「話が進まない……私の方から、状況説明させてもらう……」
凛「な、耶律奚低将軍! いつの間に」
みく「にゃあ! 遼軍の総指揮官にゃ! 全然気配を感じなかったにゃ!」
のあ「かしこまらなくても良い……私のことは、のあと呼びなさい。
名前に、意味など無いのだから……慮るべきは、物の本質……」
礼子「あのね、話が余計にそれているわよ? もういい……
私が、現在の戦況について説明するわ」
48 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/27(土) 22:41:24.43 ID:SdAjZjOk0
礼子「現在宋軍は、宋主を総大将としている。つまり、親征ということね。
目的は言うまでも無く、“燕雲十六州”の回復よ」
凛「と言うことは、北漢は既に?」
礼子「そう。河東路の北漢は宋の軍門に降ったわ。
事実上、中華において宋の天下統一が成し遂げられたということ」
みく「でも、北漢には“楊家軍”がいたはずにゃ。
先年の宋の北征でも、楊家軍がいたから宋は攻めきれなかったのにゃ」
49 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/27(土) 22:42:46.19 ID:SdAjZjOk0
のあ「国境の鎮台の報告によれば、宋軍の中に『令』の旗があったらしい……」
凛「楊令公……あの忠勇の人が、宋に降るなんて思わなかったよ」
礼子「どうやら宋主は、北漢の帝と楊令公との確執の間隙を突いて、
何とか楊令公を説き伏せたらしいわ。
今回の戦いで最も警戒すべきは、楊家軍でしょうね」
みく「正規軍相手の初めての実戦か……緊張するにゃ。
で、宋軍は今どこに向かっているのかにゃ?」
のあ「会戦予定地点は、高梁河……我ら遼軍も、燕京の軍勢を率いて南下する……
そして、河を挟んでの対陣になるはず」
みく「河か……長期戦を覚悟しなきゃだめにゃ」
50 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/27(土) 22:43:44.36 ID:SdAjZjOk0
凛「そういうことなら、私に考えがあるんだけど、いいかな?」
礼子「いいわよ。何でも言ってみて」
凛「高梁河の上流には一箇所だけ、騎兵がぎりぎり渡渉できる地点がある」
みく「そんなの初耳だにゃ!」
のあ「……続けて」
凛「だから、のあさんとみくは本隊を率いて宋軍を釘付けにする。
その間に、私が別働隊を率いて上流の渡河点を渡渉し、宋軍の側面を突く」
のあ「その作戦ならば……しかし……」
51 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/27(土) 22:44:40.91 ID:SdAjZjOk0
みく「そんなの危険にゃ! 下手すれば、渡渉中に溺死する兵も出てくるし、
渡渉した後は敵側に孤立してしまうにゃ!」
凛「そんなこと、わかってるよ。
でも、国力と兵力でまさる宋相手に、尋常な手段で勝てると思う?」
凛「私は、礼子さんの考えを聞きたいな」
礼子「私も正直、凛ちゃんにそんな危険な役目を負わせたくない。
でも、凛ちゃんのこの国を思う気持ちを、無碍にできないわ」
52 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/27(土) 22:45:46.87 ID:SdAjZjOk0
のあ「太后が承認した……」
みく「むぅ……オイシイところを持っていかれたような気がするにゃ」
凛「そう言わずに、私にまかせてよ」
凛(そうだ。これが第一歩なんだ……)
凛(私は、こんなところで死んだりしない。
その程度じゃ、海東青鶻の旗が泣く。
この試練も、きっと乗り越えてみせる……)
53 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/27(土) 22:46:42.86 ID:SdAjZjOk0
〜高梁河・上流渡河点〜
ゴォォォォ
「おいおい、物凄い急流じゃねえか……」
「こんなところを渡河しようなんて、命知らずにも程があるぜ」
凛「皆、こんなところを渡渉できないって思ってるでしょ?」
「……」
凛「私が最初に渉るから、皆は後について来て」
54 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/27(土) 22:49:09.09 ID:SdAjZjOk0
凛「よし、行くよ!」
ザバッ
凛(馬の足が取られる……でも……)
ジャバ ジャバ
凛「皆見たでしょ? 思ったより簡単に渉れるよ!」
「おいおい……指揮官に先行されたら、行くしかねえじゃんか」
「だよなぁ……」
ジャバ ジャバ
「何だ、流れは早いけど、見た目より深くないぞ!」
「慎重に手綱を捌けば、渉れないことはないな!」
55 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/27(土) 22:49:58.02 ID:SdAjZjOk0
凛「よく聞いて! 今から戦う宋軍も、この河の流れと同じようなものなんだ!」
凛「確かに、宋軍の方が私たちより兵力が大きい。でも、それは見た目だけのこと!
北の大地で生まれ、戦ってきた私達の敵じゃない!
この程度の相手に、燕雲十六州の肥沃な大地を奪われてなるものか!」
凛「私達の国を守ろう! 共に戦い、そして、共に死のう!」
凛「全軍突撃隊形! 攻撃目標は宋軍側面、そして宋主の首だ!」
凛「全軍……突撃!!」
56 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/27(土) 22:51:03.76 ID:SdAjZjOk0
〜高梁河・遼軍本陣〜
みく「のあにゃん! 対岸の宋軍の側面が混乱しているにゃ!」
のあ「好機……戦鼓を叩け…………」
凛「どけ! 私の邪魔をするなっ!」
ズバッ ザクッ
凛「はぁはぁ……宋軍が壊乱している。次の攻撃で、宋軍を攻めつぶす!」
総員、一時後退! 態勢を整えた後に、本隊の総攻撃にあわせて再度突撃する!」
凛「……いや、後方から敵の新手が来たね。旗は……『令』……楊家軍か」
57 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/27(土) 22:52:14.12 ID:SdAjZjOk0
楊業(木場真奈美)「この迂回作戦は、お前の発案か? 小娘」
真奈美「まさかと思っていたが、
本当にあの急流を渡渉してくるとはな。こちらに来て正解だった」
凛「あんたが、楊家軍の総大将、楊令公?」
真奈美「世間ではそう呼ばれているね」
凛「なら、あんたを斃せば大手柄ってわけだね!」
真奈美「愚かな……身の程を知るがいい」
58 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/27(土) 22:53:30.20 ID:SdAjZjOk0
スパッ
凛(槍が折られた……いや、斬られた!)
凛(この剣の切味は……まさか、あの剣は……)
真奈美「おや、私の剣を防ぐとはな。だがこれで終わりだ!」
ブンッ
59 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/27(土) 22:54:24.37 ID:SdAjZjOk0
凛(斬撃が躱せない……ならば……!)
ドサッ
真奈美「ほう……自ら落馬して躱すとは。
だが、窮地には変わりない」
伝令「楊業将軍!」
真奈美「どうした? 今良いところなのだが?」
伝令「本隊の楊延昭将軍から、お味方の後退準備が完了したとのことです!」
真奈美「そうか……これから面白くなりそうだったのだが。仕方ない」
60 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/27(土) 22:55:10.90 ID:SdAjZjOk0
真奈美「海東青鶻の旗を掲げた小娘よ。名を聞いておこう」
凛「……遼軍の将、耶律休哥」
真奈美「耶律休哥か、覚えておく。次に相見える時を楽しみにしているぞ」
パカラッ パカラッ
凛「くそっ! あいつさえいなければ、完勝だったのに!」
61 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/27(土) 22:56:14.42 ID:SdAjZjOk0
凛「……それで、戦はどうなったの?」
伝令「本隊は渡渉の後、宋軍に痛撃を与えました。
しかし楊家軍が殿軍となり、我が軍の追撃は悉く撥ね返されております」
凛「そう……」
伝令「それから、耶律奚低将軍から、戦が終わった以上
早急に本隊に合流するようにとのことです」
凛「わかったよ。すぐに合流する」
62 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/27(土) 22:57:06.48 ID:SdAjZjOk0
〜遼軍・本営〜
みく「凛チャン、無事だったかにゃ!」
凛「私は大丈夫」
のあ「今回の戦功は、凛が第一…………」
凛「でも、あの楊令公に簡単にあしらわれたよ」
みく「あぁ、楊業はそっちに行ってたのかにゃ。
楊家軍は最初から、上流から別働隊が迂回してくることを見抜いていたようにゃ」
凛「そっちも、楊家軍に阻まれたって聞いたけど」
63 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/27(土) 22:58:08.46 ID:SdAjZjOk0
のあ「楊業の子、楊延昭が殿軍の指揮を執っていた……」
凛「でも、楊令公が迂回を読んでいたのなら、
どうして私の側面攻撃を防げなかったのかな?」
みく「楊家軍は外様にゃ。
それでなくても、高梁河の急流を騎馬だけで渡渉しようなんて、誰も思いつかないにゃ」
凛「それって、私を褒めてるの? 馬鹿にしてるの?」
のあ「何にせよ、楊家軍の強さは本物……」
64 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/27(土) 22:59:40.29 ID:SdAjZjOk0
のあ「『父子皆名将為リ、其ノ智勇モテ無敵ト号称ス。
今ニ至リテ、天下ノ士、里巷ノ野竪ニ至ルマデ能ク之ヲ道ウ』……」
(楊家の全員が名将であり、その智勇をもって無敵と呼ばれる。
天下の誰もが、彼らの活躍を賞賛する)
凛「楊家軍、か……」
65 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/27(土) 23:01:06.00 ID:SdAjZjOk0
〜燕京〜
凛(う〜ん。楊家軍をどうすべきか……全然良い案が浮かばない)
「りんおねえちゃん?」
凛「え、誰?」
聖宗(遊佐こずえ)「なにか、なやみごと?」
凛「そうだけど……」
こずえ「ねえねえ……“えんうんじゅうろくしゅう”ってなあに?
どうして“そう”はせめてくるの?」
凛「こずえには、まだ難しいよ」
こずえ「……」ジー
66 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/27(土) 23:02:19.73 ID:SdAjZjOk0
凛「わかったわかった。説明してあげるから」
凛「そもそも燕雲十六州というのは、五代十国の頃、
晋の石敬塘(せきけいとう)から遼に献上された土地なんだ。
そしてこの国にとっては、生命線とも言える土地なんだよ」
凛「何故かって言うと、この土地より北に……
つまり遼の本来の国土では、麦作ができない。
それに燕雲十六州は豊富な鉄の鉱脈を持っている。
いま私たちがいるこの燕京も、燕雲十六州の中にあるけど、遼の首都でしょ?
どれだけ大切な土地か、わかるよね?」
67 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/27(土) 23:03:14.51 ID:SdAjZjOk0
凛「でも、燕雲十六州は万里の長城の南側にある。
漢民族からすれば、万里の長城より南は全て中華の天下って感覚だから、
宋主はこれを奪還しようって思ってるわけ」
凛「先代の宋主は、“封椿庫”っていう特別予算を編成して、
金で燕雲十六州を買い戻そうとしていたらしいよ。
今の宋主は、封椿庫を対遼戦の軍事費に回してるけど……」
こずえ「えんうんじゅうろくしゅうは、ぜったいにわたしちゃだめなの?」
凛「そういうこと」
68 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/27(土) 23:04:58.20 ID:SdAjZjOk0
こずえ「じゃあ……みんながはなしてる“ようかぐん”ってなあに?」
凛「楊家軍っていうのは、代々河東路の北漢に仕えていた楊一族の軍閥のことだよ。
のあさんも言ってたけど“父子皆名将為リ、其ノ智勇モテ無敵ト号称ス”
と言われてるぐらい精強な軍団なんだ。
特に、現在の当主・楊業は、“楊令公”と呼ばれ、恐れられているね」
凛「楊業は忠誠心の篤い人だけど、戦功を立てすぎたために北漢の帝に疑われ、
処刑されそうになったんだ。
そして、ほぼ同時期に宋主から投降の呼びかけがあったから、
宋に寝返ることになったっていう経緯があるんだよ」
69 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/27(土) 23:06:41.29 ID:SdAjZjOk0
凛「だから、燕雲十六州を巡る戦いはこれからも続くだろうし、
その戦いで一番気をつけないといけない相手が、楊家軍だってこと」
こずえ「よくわかんない。むずかしいはなしは、ぜんぶおかあさんがやってくれるし……」
凛(やっぱりこずえには、まだ早いか……)
凛「礼子さんは……お仕事で大変だと思う。
だから私はもっと実力をつけて、礼子さんのために戦いたい。
ううん、礼子さんの為だけじゃない。
こずえのためにも、民のためにも、この国のためにも……」
70 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/27(土) 23:07:40.91 ID:SdAjZjOk0
こずえ「……おねえちゃん、ちょっとかがんでみて?」
凛「何?……よいしょっと」
ナデナデ
凛「え?」
こずえ「よしよし……」
凛「……ふふっ。ありがと」
凛「いい? こずえは将来、この国の帝になるべき存在なんだからね?
今は無理でも、将来礼子さんを楽にしてあげれるように、
これからもいっぱい勉強しなきゃだめだよ?」
こずえ「うん……わかった」
71 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/27(土) 23:09:01.51 ID:SdAjZjOk0
〜数日後〜
礼子「ねえ凛ちゃん。今、ちょっといいかしら?」
凛「何?」
礼子「前の戦いで、楊令公と一騎打ちをしたって聞いたけど」
凛「う……ごめん。将として、軽率だったと思うよ」
礼子「まあ、それは置いといて。やっぱり楊業は、“吹毛ノ剣”を持っていたの?」
凛「うん。噂通りの……いや、それ以上の切れ味だったよ」
※吹毛ノ剣(すいもうのけん)
・「水滸伝」に登場する剣。青面獣の楊志が所有しており、楊家伝来とされる。
銭を重ねて斬っても刃毀れしない。人を斬っても血脂が刃に残らない。
吹きつけるだけで、髪の毛が真っ二つになる程の切れ味。等の特徴がある。
72 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/27(土) 23:09:45.72 ID:SdAjZjOk0
凛「この世に、あんな剣が存在するなんて……」
礼子「ふふふ」
凛「どうしたの?」
礼子「もし、あの剣に対抗できる剣があるとすれば、どうする?」
凛「まさか……」
礼子「そのまさかよ。この剣を抜いてみて」スッ
凛「う、うん」
73 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/27(土) 23:10:53.59 ID:SdAjZjOk0
シャキン
凛(この剣は……!)
凛(長さと重さが、絶妙なつくりになっている。それに、馬上で扱いやすいように、反りがある。
柄は、長年愛用してきたかのように馴染むし、刃も湖面みたいに綺麗だ……)
凛「これは?」
礼子「その剣は、私が遼王室に嫁いできた時に、既に倉の中に眠っていたわ。
王室のものだから、おいそれと誰かに渡すことも出来ないし。
良い剣みたいだから、恐れ多くて誰も持ち出そうとしないし」
74 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/27(土) 23:11:49.38 ID:SdAjZjOk0
礼子「それで、楊業の吹毛ノ剣の話を聞いたときに、ふと思い出したのよ。
もしかしたら、あの剣ならば吹毛ノ剣に対抗できるかもしれないって」
凛「見ただけで、稀代の剣だということはわかったよ。
この剣の由来とか、わからないの?」
礼子「それがわからないの。王室の蔵書を調べさせたけど、何の記述も無い。
一番経歴の長い侍従に聞いたけど、その人が仕え始めたときには、
すでに倉の中にあったそうよ」
75 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/27(土) 23:13:19.52 ID:SdAjZjOk0
凛「この剣の銘すら分からないの?」
礼子「いいえ。刃をよく見て」
凛「えっと……“劈”……“風”……」
礼子「そう。“劈風刀”というところかしら」
※劈風刀(へきふうとう)
・「水滸伝」に登場する剣。方臘配下の武将、石宝が愛用する。
作中では、石宝はこの剣と流星槌を用いて、梁山泊の好漢十三人を討ち取った。
名前の由来は、風を薙ぐように具足を両断できることから。
76 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/27(土) 23:13:57.73 ID:SdAjZjOk0
凛「試し斬りは?」
礼子「ふふふ……してみたい?」
凛「うん」
礼子「だれか、鎧を持ってきてくれる?」
従者「どうぞ」ゴトッ
凛(ちょっと……いくらなんでも用意が良すぎるよ……)
凛(って、そんなことはどうでもいいや)
凛「いざ!」
77 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/27(土) 23:14:53.63 ID:SdAjZjOk0
ザンッ
凛「……」
ピシッ カッシャーン
凛(凄い切れ味……鎧が遅れて真っ二つになった!)
凛「礼子さん、この剣なら吹毛ノ剣にも対抗できるよ!」
礼子「気に入ってもらってよかったわ」
78 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/27(土) 23:16:06.99 ID:SdAjZjOk0
凛「え、どういうこと?」
礼子「その剣は、凛ちゃんに貸してあげる。
楊業に対抗できるのは、凛ちゃんだけだと思うから」
凛「私なんて、のあさんに較べればまだまだだよ。将軍になってからも、日が浅いし」
礼子「そんなことないわ。
高梁河で負けないにせよ、誰もあそこまで宋軍に大勝できるとは思っていなかったわ。
それを実現させたのは、凛ちゃんの実力よ」
礼子「だから、貴方に期待させてもらうわ」
凛「あ、ありがとう……」
礼子「でも、贔屓してるわけじゃないの。
楊家軍を何とかしないと、この国の滅びに繋がっちゃうんだから♪ 責任重大ね?」
凛(うわぁ。軽々しく試し切りなんてするんじゃなかった……)
79 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/27(土) 23:17:20.25 ID:SdAjZjOk0
〜代州〜
楊延昭(関裕美)「真奈美さん。今、急使が着いたんだけど……」
真奈美「おや、どういった用件かな?」
裕美「今度陛下が、五台山に行幸されるらしいの。
だから、代州の楊家軍にも護衛を頼むって」
真奈美「五台山か……」
裕美「遼とは戦争状態なのに、行幸とかしてる場合じゃないと思うんだけどなぁ」
真奈美「陛下はそこまで愚かではない。何か考えがあってのことだろう。しかし……ん?」
80 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/27(土) 23:18:17.07 ID:SdAjZjOk0
裕美「どうかしたの?」
真奈美「五台山から北に進めば、
大石塞(だいせきさい)を通って燕雲十六州に入ることができる」
裕美「まさか、行幸に見せかけた親征ってこと?」
真奈美「多分そういうことだろう。
行幸であれば、陛下のお近くを固めるのは禁軍ではなく、飾り立てた儀仗兵だ。
遼も油断すると思ったのだろう」
※禁軍(きんぐん)……近衛軍のこと。
81 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/27(土) 23:19:19.65 ID:SdAjZjOk0
裕美「それに地方への行幸には、禁軍や地方軍が動員されてもおかしく見えない。
遼が、今回の大軍の動員目的は、
五台山への行幸だと思い込んでいる隙を突いて、ということ?」
真奈美「しかし、遼も馬鹿ではない。そんなに上手くいくだろうか?」
裕美「でも使者が持ってきたのは、勅命だったよ? 勅命は絶対だし」
真奈美「決定されたことは仕方ない。外様の我らが、口を挟めることではないしな。
精々、陛下をお守りすることだけを考えよう」
82 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/27(土) 23:20:23.00 ID:SdAjZjOk0
裕美「真奈美さんと楊家軍が有る限り、遼とは互角以上に戦えるよ。
高梁河の戦いでは、全体としては負けちゃったけど」
真奈美「だといいが……」
裕美「やっぱり、あの人のことが気になるの?」
真奈美「ああ。耶律休哥……
あの小娘は、今にとんでもない武将に成長しそうな気がする」
裕美「遼の将軍なのに、海東青鶻の旗を掲げてたっていう人?
私は、直接は知らないけど」
83 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/27(土) 23:21:47.60 ID:SdAjZjOk0
真奈美「前回の戦の後、気になって経歴を調べてみた。
与えられた任務は全て完遂しているし、
調練の模擬戦では、他の遼将を寄せ付けない用兵をするらしい」
真奈美「それに最近では、太后の許しを得て、
遼軍の中から特に実力のある者を選抜し、
“蒼騎兵”という精強な騎馬隊を編成しつつあるという」
裕美「青い騎兵?」
84 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/27(土) 23:22:49.22 ID:SdAjZjOk0
真奈美「違う。他人に“青騎兵”と間違えられたとき、
剣を抜いて“蒼騎兵”だと言い切ったらしい」
裕美「何か……ごめんなさい……」
真奈美「そんなことはどうでもいい。これは噂に過ぎないが、蒼騎兵は、
かの名将・陳慶之が率いていた“白袍隊”に匹敵するほどの強さと聞く」
※陳慶之(ちんけいし)
・南北朝時代の梁の名将。わずか七千の白袍隊(はくほうたい)
という白備えの精鋭部隊を率いて、魏への北伐を成功させた。
しかし本人は、武術も馬術も不得意だったという。
85 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/27(土) 23:23:43.69 ID:SdAjZjOk0
裕美「白袍隊に匹敵するなんて……
噂とは言え、少し話を盛りすぎじゃないかな?」
真奈美「ただの噂であれば良いのだが……」
真奈美「よし。いつまでも世間話をしているわけにはいかん。
裕美、全軍に出撃準備を」
裕美「うん!」
86 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/27(土) 23:24:52.37 ID:SdAjZjOk0
〜燕京〜
みく「う〜ん」
のあ「……」
凛「どうしたの? 二人して、地図と睨めっこして」
のあ「宋主が、五台山へ行幸するらしい……」
凛「行幸?」
みく「そうにゃ。なんだか、きな臭いにゃ」
凛「ふーん。それで、宋軍はどんな風に動いてるの?」
87 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/27(土) 23:26:02.77 ID:SdAjZjOk0
のあ「五台山へは、儀仗兵一万と禁軍五万のみ……」
みく「楊家軍は、宋主が五台山に近づいた時、
儀仗兵や禁軍と合流するみたいにゃ」
凛「ただの行幸なのかな?」
のあ「わからない……
輜重部隊の動きが、大軍の遠征にしては少ない……」
礼子「凛ちゃんはどう思う?」
凛「礼子さん、いたんだ!?」
みく「びっくりしたにゃ!」
88 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/27(土) 23:26:55.25 ID:SdAjZjOk0
礼子「皆が真剣に悩んでいるから、声をかけずらかったのよ」
のあ「気配を感じられないとは……まだまだ……」
凛「むぅ……」
凛「まあいいや……
情況を考える限り、ただの行幸としか考えられないけど……」
こずえ「みんなで……なにをみてるの?」
凛「こずえまで……宋軍が、国境付近でなにやら怪しい動きをしてるから、
皆で考えてるんだよ」
89 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/27(土) 23:27:49.61 ID:SdAjZjOk0
凛「ほら、どうぞ」
こずえ「……」
凛(地図を見たって、何がわかるわけじゃ……
各地の兵や物資の数まで書き込んでいるんだから……)
こずえ「“ごだいさん”は、“たいせきさい”にちかいんだねー」
凛「うん。そうだね」
こずえ「でも、うしろにある“がんもんかん”や
ひがしにある“ゆうしゅう”には、たくさんたべものがあるみたい」
凛「……え?」
90 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/27(土) 23:29:09.97 ID:SdAjZjOk0
こずえ「“りょうぐん”のへいたいさんのはいちは、
ひがしとにしにかたまってるねー」
みく「こずえチャンは、さっきから何を言ってるのにゃ?」
こずえ「“えんうんじゅうろくしゅう”のまんなかの、
“うつしゅう”は、だれもいない……からっぽでさびしい……」
のあ「まさか……」
こずえ「ことしはおてんきぽかぽかだったから、“そう”はたべものいっぱい……
みんなおなかいっぱいで、だから、たべものあまってる……」
凛「そういうことか!」
礼子「私だけかしら? まったく分からないんだけど?」
91 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/27(土) 23:30:17.86 ID:SdAjZjOk0
凛「燕雲十六州の、西の要である応州や、東の要である易州には、
それなりの規模の遼軍が配置されている。
それぞれに呼応する宋軍の拠点は、西の大石塞や東の雄州(ゆうしゅう)だけど、
これらにもやっぱり宋軍が多く配置されている」
みく「だったらどうなるのにゃ?」
凛「燕雲十六州の中心にある蔚州(うつしゅう)は、がら空きになっている。
もし西と東の、それぞれの拠点から同時に宋軍が北上してきて、
五台山の宋主が直率する軍が、蔚州に雪崩れこんできたら……」
のあ「蔚州は容易に陥落……燕雲十六州の遼軍は、東西に分断される……」
みく「つまり今回の行幸は、親征を隠すためのものだったのかにゃ!?」
92 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/27(土) 23:32:09.93 ID:SdAjZjOk0
礼子「でもおかしいわ。のあはさっき、輜重の数が少ないって言ってたじゃない」
のあ「宋は、今年は豊作……
国境の各地に、古くなった備荒用の兵糧が、大量に余っているはず……」
礼子「それを流用すれば、本国から国境まで輸送する手間が省けるし、
遠征であることを隠すこともできるというわけね」
礼子「それで、どうして我が軍の蔚州の防備が薄いのかしら?」
みく「あそこは、だだっ広い平原にぽつんと取り残された古城にゃ。
今までの戦略上、何の価値も無い城だったのにゃ」
93 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/27(土) 23:32:52.20 ID:SdAjZjOk0
礼子「そういうこと……
それにしても貴方、地図を見ただけで宋軍の戦略が分かったの?」
こずえ「ううん……こずえはねー、むずかしいことはわかんないの……」
みく「でもすごいにゃ、こずえチャン!」
凛「宋軍が、この作戦を取ってくる可能性は高い。
だから、これを逆手に取ろう」
礼子「何か良い案が浮かんだのね?」
のあ「傾聴しよう……」
凛「いい? 宋軍の本隊が、蔚州を狙ってるということは……」
94 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/27(土) 23:33:29.43 ID:SdAjZjOk0
〜五台山・霊廟〜
真奈美「陛下、ただいま参上しました……」
真奈美「これは?」
趙光義「見ての通り、燕雲十六州の地図じゃ」
真奈美「やはり、今回は行幸に見せかけた親征なのですね?」
趙光義「さすがは楊令公。見抜いておったか」
真奈美「手始めに、どこを攻めるおつもりですか?」
95 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/27(土) 23:34:59.38 ID:SdAjZjOk0
趙光義「蔚州じゃ」
真奈美「何故蔚州を?」
趙光義「蔚州は燕雲十六州のほぼ中心にある。
西と東から同時に別働軍を北上させ、遼軍が東西に兵力を傾注している隙に
蔚州を攻め取れば、燕雲十六州の遼軍は東西に分断される」
真奈美「しかし、逆に考えることもできます」
趙光義「逆とは何じゃ?」
96 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/27(土) 23:36:05.44 ID:SdAjZjOk0
真奈美「陛下が直率する本隊を蔚州まで引き込み、突出させれば、
逆に我らを東西の両翼の軍から切り離すことができるでしょう。
そうなれば我らは、敵地で孤立することになります」
趙光義「その心配は無い。我らの兵力は、遼軍の二倍ほどもある。
もし東西に軍を割けば、中央の我らに向ける兵力が足らず、
中央に兵力を割けば、燕雲十六州の東西を攻略され、中央軍が孤立することになろう。
それに東の易州を攻略すれば、すぐ北の燕京に刃を突きつける形になる」
97 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/27(土) 23:36:53.86 ID:SdAjZjOk0
真奈美「戦の勝敗は、兵力で決まるものではありません。
高梁河での敗戦をお忘れですか?」
趙光義「もうよい、楊業。お主をここに呼んだのは、楊家軍の配置を伝えるためじゃ」
真奈美「我らは、どのように?」
趙光義「楊家軍は、朕が率いる蔚州攻略軍の先鋒とする。
お主の戦働きに、期待しておるぞ?」
真奈美「御意……」
98 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/27(土) 23:38:32.46 ID:SdAjZjOk0
〜楊家軍・本営〜
裕美「あ、真奈美さんお帰りなさい。で、どうだったの?」
真奈美「やはり今回の行幸は、親征を隠すためのものだ」
裕美「真奈美さんの言う通りだったね……それで、私たちの配置は?」
真奈美「楊家軍は、蔚州攻略の先鋒を仰せつかったよ」
裕美「やっぱり蔚州か。上手くいくかな?」
真奈美「大軍を擁する身としては、ごく真っ当な戦略だろう。
しかしいくら大軍とはいえ、軍を三つに分けるのは、
兵力分散の愚を犯していることになる」
99 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/27(土) 23:39:45.06 ID:SdAjZjOk0
真奈美「用兵の基本は、兵力の集中だ。
例えば、全軍を遂城あたりに集結させ、
そのまま一気に北上してしまえばいいと思うのだが。
何なら、燕雲十六州を西側から席巻するのもありだな」
裕美「それは、陛下に奏上したの?」
真奈美「いや、聞き入れてもらえなかった。
何としても、ご自身でお考えになった戦略で、燕雲十六州を奪還したいのだろう。
先代からの悲願だからな」
裕美「何だか、嫌な予感がする」
真奈美「こら、出陣の前だぞ。戦の前に、不吉なことを言うものではないよ」
裕美「うん……ごめんなさい」
100 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/27(土) 23:40:41.63 ID:SdAjZjOk0
〜蔚州〜
伝令「陛下、城内を全て確認したところ、残敵はおりません」
趙光義「うむ。大儀であった」
趙光義「どうじゃ、楊令公よ。
朕の言うとおり、遼は蔚州に攻めてくるとは思いもしなかったようじゃな。
その証拠に、この大軍を見た途端守兵どもは逃散したではないか」
真奈美「はい……しかし、幾つか気になる点があります」
趙光義「まだ何か引っかかっておるのか?
“楊無敵”とか、“楊不敗”とか言われておるのに、存外心配性じゃな」
101 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/27(土) 23:41:33.22 ID:SdAjZjOk0
真奈美「一つは、東西の別働軍と連絡が取れないことです」
趙光義「東西軍とは距離があるからの。連絡が取りにくいのは仕方あるまい」
真奈美「もう一つは、この城がかなり傷んでいることです。
城壁にも、崩落しかけている箇所がありますし」
趙光義「それだけ、遼はこの城に戦略的価値を見ていなかったということじゃろう。
裏を返せば、遼の意表を衝くことに成功したということじゃ」
真奈美「やはり、これは遼軍の罠だとしか……」
趙光義「そのあたりにしておけ、楊令公。
燕雲十六州を奪還する戦は、まだ始まったばかり……」
102 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/27(土) 23:42:44.19 ID:SdAjZjOk0
斥候「陛下! 大変です!」
趙光義「何じゃ、騒々しい」
斥候「城外に遼の大軍が! その数、およそ十万!」
趙光義「何!?」
真奈美「これは……まずいな……
陛下。既に我らは、包囲されております」
趙光義「な、何じゃと……! 別働軍に伝令を出せ! すぐに救援に来るようにと!」
真奈美「陛下、まだお気づきでないのですか?
現在我らは、東西の別働軍と連絡が取れないのです。
おそらく、途中で伝令が捕らえられているのでしょう」
103 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/27(土) 23:43:59.90 ID:SdAjZjOk0
趙光義「朕は帝ぞ! 朕を助けにくる者は、この国におらぬのか!?」
真奈美「仕方ありません。彼らも勅命で動いているのです。
その軍事行動を変更させるためには、陛下の勅命を届けるしかありません。
そしていま、彼らに勅命を届ける術がありません」
趙光義「そんな……何か、良い策は無いものか?」
真奈美「一つだけ。しかし、危険な賭けです。
陛下のお命を、絶対に保障できるものではありません」
趙光義「その策しか無いのだな?」
真奈美「はい。少なくとも、私にはこれしか考えられません」
趙光義「早く教えてくれ! その策とは何じゃ!?」
真奈美「それは……」
104 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/27(土) 23:45:06.19 ID:SdAjZjOk0
〜蔚州城前・遼軍本陣〜
みく「凛ちゃんの予想した通りの展開になったにゃ!
これで宋主の首を取れるにゃ!」
凛「油断は禁物だよ。城内には、楊家軍がいるんだから……
それで、のあさん。応州や易州の防備は大丈夫なの?」
のあ「二つの城は、それぞれ耶律沙と耶律学古に任せている……
二人とも遼の宿将……城を死守するように言い含めてある……
無論、城内の物資や防備も万全……」
みく「そっか。それなら安心にゃ……よーし!
じっくり蔚州を料理してやるにゃ!」
105 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/27(土) 23:45:55.33 ID:SdAjZjOk0
凛「待って。城門が開いた! 敵が打って出てきたよ!」
のあ「野戦を挑むか……」
みく「遼軍相手に野戦なんて、自棄になったのかにゃ?」
凛「……いや、反対側の城門も開いたね。
中から騎馬隊が飛び出してきた!」
のあ「宋主を脱出させるための、別働部隊か……」
凛「のあさん、私にあの騎馬隊を追わせて!」
106 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/27(土) 23:46:45.51 ID:SdAjZjOk0
のあ「蒼騎兵は、遼軍最速……
良いわ。宋主の首を獲れ、耶律休哥……」
凛「必ず!」
みく「ちぇっ。オイシイところは、いつも凛チャンに取られてる気がするにゃ」
のあ「こちらには、楊業がいるはず……この首級は大きい……」
みく「そうだったにゃ! やってやるにゃ!」
107 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/27(土) 23:47:40.88 ID:SdAjZjOk0
凛「待て! 宋主!」
凛「我こそは遼軍の将、耶律休哥! その首を……」
真奈美「貰い受けると言いたいのだろう?」
凛「な……楊令公!」
真奈美「やはりな。隠れて逃げようとすれば、目敏い君のことだ。
すぐに追いかけてくると思ったよ」
凛「まさか……宋主は、出撃してきた本隊の方にいるの!?」
真奈美「ああ。そのまさかだ……それに、本隊を見たまえ」
108 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/27(土) 23:48:29.09 ID:SdAjZjOk0
凛「宋軍が、総崩れになっている……いくら何でも、これは早すぎる」
真奈美「固まっているより、散らばったほうが逃げやすいからね。
さて、あの分散した宋軍のどこに、本物の陛下がいらっしゃるかな?」
凛「自分の主君を、そんな危険な賭けに乗せるなんて!」
真奈美「陛下も了承済みさ。なかなか、果断な性格をしておられるからな」
109 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/27(土) 23:49:23.60 ID:SdAjZjOk0
真奈美「それに、捕らえられる心配はあまりない。
なぜなら、遼軍で最強最速の騎馬隊は、私の目の前にいるのだから」
凛「遼軍で最強最速か……
音に聞こえた楊令公に、そこまで褒められるなんてね」
真奈美「ふふふ……だが、我が旗本の敵ではない」
凛「あまり私を舐めてると、気づかないうちにあんたの首が、
地面に転がっているかもね?」
真奈美「笑止な。耶律休哥よ、我が吹毛ノ剣の錆にしてくれる!」
110 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/27(土) 23:49:58.95 ID:SdAjZjOk0
真奈美「総員……」
凛「蒼騎兵……」
真奈美&凛「「突撃!!」」
111 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/27(土) 23:50:46.17 ID:SdAjZjOk0
真奈美「はぁぁぁっ!!!」
ガキン!
真奈美「おや、吹毛ノ剣の斬撃を防ぐとはな。
その剣、稀代の一品と見た」
凛「吹毛ノ剣みたいな名剣が、
この世に一本しかないなんて思ったら大間違いだよ!」
真奈美「楽しませてくれるじゃないか」
112 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/27(土) 23:51:36.42 ID:SdAjZjOk0
ガキン! ガキン! ガキン!
真奈美「どうした? その程度の腕では、その剣が泣くぞ?」
凛(劈風刀は、吹毛ノ剣とは互角に打ち合えている……
でも、それ抜きに考えても、楊令公の膂力は尋常じゃない!)
真奈美「これで終わりだ!」
凛(ここまでか……)
みく「させにゃい!」
シュバッ
真奈美「新手か……神聖な一騎打ちに、文字通り横槍を入れてくるとはな。
それも、名乗りもせずに」
113 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/27(土) 23:52:23.24 ID:SdAjZjOk0
みく「みくは、遼軍随一の名将、耶律斜軫にゃ!
たとえお前がどんなに強くとも、凛チャンとみくの二人の敵じゃないにゃ!」
凛(みくはいつから、遼軍随一になったんだろう……)
凛「みく……宋主の方はどうなったの?」
みく「逃げられたにゃ。
だから、せめて楊令公の首だけでも取らせてもらうのにゃ」
凛「そっか……助けに来てくれたんだ。ありがとう」
みく「礼なら戦が終わった後にゃ。まずはこの化け物を何とかしないと……」
114 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/27(土) 23:53:37.74 ID:SdAjZjOk0
真奈美「化け物呼ばわりとはな……
しかし貴様ら小娘二人に、この私が倒せると思っているのか?」
ガキン! ブンッ! シュバッ!
真奈美「さっきの大言はどうした?
まさか二人がかりでも、この私を倒せないのかな?」
凛(強い……)
みく(強すぎるにゃ……人間を辞めてるにゃ……)
スパッ
凛「みく!」
みく「しまったにゃ! 槍が真っ二つに!」
真奈美「死ね! 耶律斜軫!」
115 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/27(土) 23:54:32.72 ID:SdAjZjOk0
ヒュゥゥゥゥ…
真奈美「む……?」
ドスッ
真奈美「ぐっ……」
のあ「そこまでよ、楊令公……」
凛「のあさん!」
みく「良かったにゃ〜! みく、こんなところで死ぬのは正直嫌だったにゃ〜!」ウワーン
真奈美(肘を矢で射られたか……これでは剣が使えない)
116 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/27(土) 23:55:15.29 ID:SdAjZjOk0
凛「勝負ありだね。さあ、降伏して」
真奈美「……」
凛「さもないと、まだ生き残っている部下達が死ぬことになるよ?」
真奈美(蒼騎兵だけではない。耶律斜軫や耶律奚低の軍まで集結しつつある……
まだ戦っている者達がいるが、もうこれまでだな……)
117 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/27(土) 23:56:03.85 ID:SdAjZjOk0
真奈美「わかった。これ以上、部下が死ぬところを見たくない」
凛「賢明な判断だね」
のあ「全軍に、戦闘停止を……」
みく「わかったにゃ!
あ、軍の収拾はみく達でやっておくから、凛チャンは楊令公を頼むにゃ」
凛「うん」
118 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/27(土) 23:56:56.16 ID:SdAjZjOk0
真奈美「……私は、遼の軍門に降ることはできない」
凛「どういうこと? 降伏するっていうのは、嘘なの?」
真奈美「知っていると思うが、まだ北漢に仕えていた頃、私は主君を裏切り宋に降伏した。
我が主は暗君だったが、その降伏が楊一族を救い、
中華の戦乱を終わらせたことになったとしても、裏切りは裏切りだ」
真奈美「ここで陛下を裏切れば、私は変節者としての謗りを受けるだろう。
私はいくらでも屈辱には耐えるが、
残された一族まで、後ろ指をさされることには耐えられない」
119 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/27(土) 23:57:59.03 ID:SdAjZjOk0
真奈美「どうか、首を刎ねてほしい。
そして私の命に代えて、生き残った部下達を逃がしてくれないか?」
凛「本当にそれで良いの?
そもそも宋と遼の戦いは、宋主が燕雲十六州を望んだから起こったものだよ?」
凛「宋は戦争さえしなければ、充分すぎるくらいに豊かな国だよ。
私たちに、こんなちっぽけな土地ぐらいくれても良いじゃない!」
凛「こんな愚かな野望の為に、あんたが死ぬ必要はない! いや、あんただけじゃない!
この長い戦の影で、両国の民は疲弊し、常に戦火に怯えている!
どうして……どうして戦なんて……」
120 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/27(土) 23:59:15.02 ID:SdAjZjOk0
真奈美「君は優しいのだな」
凛「え?」
真奈美「私ははじめ、耶律休哥という武将は、戦だけが能だと思っていた。
しかし、回跋部の反乱鎮圧のやり方を見ても、
君が常に民のことを考えていることがわかる」
凛「そんなことまで知ってるの?」
真奈美「雄敵について調べるのは当然だ。しかし、それは君の甘さと言えるだろう。
『愛民ハ煩ワサルベキナリ』と孫子も説いている」
真奈美「私たちは軍人なのだ。軍人が政を壟断し、命令に疑問を持つことは許されない」
121 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/28(日) 00:00:17.77 ID:T0GxzHHc0
凛「甘さか……確かに、私は軍人として甘いと思うよ。
契丹族のくせに、女真族に絆されて海東青鶻の旗を掲げていることが何よりの証拠」
凛「でも、私には部族なんて関係ない! 私は遼の蒼茫の為に戦っているんだ!
それが甘さだと言うなら、好きに呼べば良い!」
真奈美「ふふふ……その覚悟は、軍人としての甘さか、大器ゆえか、
或いはどちらでもないのか。
私には確かめる術も、時間も残されていない」
真奈美「さあ、首を刎ねてくれ! 君とその剣に刎ねられるなら、本望だ」
122 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/28(日) 00:01:36.87 ID:T0GxzHHc0
凛「……」
真奈美「……どうした? 早くしてくれ」
チャキ
凛「さようなら、楊令公……」
真奈美「さらばだ、耶律休哥……」
凛「……」
凛(最大の強敵、楊令公は斃した。でも、この寂寞とした思いは何だろう……?)
123 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/28(日) 00:03:43.38 ID:T0GxzHHc0
のあ「凛……全軍の態勢は立て直した」
みく「楊令公はどうなったにゃ?」
凛「本人の望み通り、斬ったよ」
のあ「そう……」
みく「結局、降伏は潔しとしなかったのかにゃ……
でも、生き残った楊家軍の兵達は皆逃がしてあげたにゃ」
凛「良かった」
のあ「斥候の報告によれば、宋軍の本隊は澶淵(せんえん)で態勢を整えている……」
みく「東西の宋軍は、本隊が敗走したことを知って慌てて陣払いしたところ、
遼軍の追撃を受けて壊滅してるみたいにゃ」
124 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/28(日) 00:04:51.22 ID:T0GxzHHc0
凛「千載一遇の好機だね」
のあ「これが……最後の戦いになる」
みく「よーし、澶淵に向けて出発にゃー!」
125 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/28(日) 00:05:31.75 ID:T0GxzHHc0
〜澶淵・宋軍本陣〜
伝令「陛下! 遼軍が、そこまで迫ってきておりますぞ!」
趙光義「もはや、これまでか……」
裕美「お待ち下さい、陛下! まだ望みはあります!」
趙光義「楊延昭か。楊令公亡き今、遼軍に立ち向かえる将は宋軍にはおらぬ」
裕美「まだ、和議を結ぶという手が残されています」
廷臣「蛮族相手に和議だと! 控えよ、楊延昭将軍」
126 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/28(日) 00:06:30.05 ID:T0GxzHHc0
裕美「ですが、本隊は甚大な被害を受けており、東西の両軍も敗走しました。
和議以外に、どのような方法があるというのですか!?」
廷臣「それは……」
趙光義「では楊延昭よ、どのような条件で和平を締結するか、申してみよ」
裕美「まず第一に、今後宋と遼はお互いの領地に侵入しないこと。
領地の境は、現在の国境とすること、でしょうか」
趙光義「お主は朕に、燕雲十六州を諦めろと言うのか?」
裕美「はい。燕雲十六州の奪還は、先帝からの御悲願です。
しかし、宋から見れば燕雲十六州など小さな土地に過ぎません。
遼に呉れてやっても良いと思います」
127 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/28(日) 00:08:18.21 ID:T0GxzHHc0
裕美「それから、宋は遼に対して、毎年決まった額の歳幣を払うという条件もつけましょう。
そのかわり、遼は宋に対して兄弟の礼を取ること……いかがでしょうか?」
趙光義「そこまで我らが譲歩しなければならぬのか……」
裕美「金で平和を買うとお考えになれば、よろしいかと存じます」
裕美「陛下。度重なる出兵により軍事費が嵩み、民は重税に喘いでいます。
どうか、燕雲十六州だけではなく、天下の民のことをお考えください」
裕美「ここで陛下が戦をお選びになれば、民は陛下を恨みましょう。
しかし屈辱に耐え、平和をお選びになれば、万民は陛下を賞賛し、今より深く敬慕するでしょう」
128 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/28(日) 00:09:21.51 ID:T0GxzHHc0
廷臣「不敬極まるぞ! 楊延昭将軍!」
趙光義「良い……分かった。お主の言葉で目が覚めた。
朕はどうやら、燕雲十六州に固執しすぎておったようじゃ。
その条件で、遼と和睦しよう」
裕美「その使者は、私にお任せを」
趙光義「お主自ら出向くと申すか」
裕美「奏上したのは私ですから。それに、我ら楊家軍は外様。
殺されたところで宋にとって、痛くも痒くもないでしょう?」
129 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/28(日) 00:10:04.50 ID:T0GxzHHc0
廷臣(嫌味な奴め……
楊令公が死んだのは、まるで我らの所為だと言わんばかりではないか)
趙光義「よし。行って参れ、楊延昭」
裕美「御意!」
裕美(真奈美さん……これで、良いんだよね……?)
130 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/28(日) 00:10:59.32 ID:T0GxzHHc0
〜澶淵・遼軍本陣〜
兵「申し上げます! 宋軍より、使者が参りました!」
のあ「通して……」
みく「今さら何の用にゃ」
凛(もしかして……)
裕美「お初にお目にかかります……
というわけではありませんでしたね。改めて、楊延昭です」
131 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/28(日) 00:11:44.28 ID:T0GxzHHc0
のあ「高梁河の……」
みく「殿軍を指揮していた人にゃ!」
凛「私は初対面だったね。私は遼軍の将、耶律休哥」
裕美「初めまして」
裕美(この人が、真奈美さんを……)
のあ「用件は?」
裕美「え、えっと……
我が主、趙光義は和睦したいとのお考えです」
凛「和睦? どんな条件で?」
132 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/28(日) 00:13:11.03 ID:T0GxzHHc0
裕美「一つ。国境は現在のままとし、以後互いの国境を侵犯しない。
二つ。宋は遼に対して、歳幣を支払う。
三つ。宋と遼は兄弟の契りを結び、遼は宋に対して兄としての礼を取ること……
おおまかには、以上です」
みく「でも、宋は先代から燕雲十六州を狙ってきたにゃ!
いまさら和睦なんて信用できないにゃ!」
裕美「その点は、信用していただくしかありません。
しかし陛下は、心から和睦を望んでおられます」
133 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/28(日) 00:13:59.42 ID:T0GxzHHc0
のあ「こちらとしても好都合な条件ね……
しかし、我らだけでは判断できない。都に急使を派遣する。
しばし待ちなさい……」
裕美「ありがとうございます。私はこれで失礼します。
良いお返事を、お待ちしております」
凛「ちょっと待って! 陣の外まで、私が送っていくよ。
話したいこともあるし」
裕美「は、はい……」
134 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/28(日) 00:15:10.77 ID:T0GxzHHc0
凛「もう知っているかもしれないけど、楊令公の首を刎ねたのは私なんだ」
裕美「はい……しかし、武門に生まれた者は誰でも、戦場で死ぬ覚悟はしています」
凛「そうだ、もっと砕けた話し方で良いよ。凛って呼んでくれて良いから」
裕美「あ、うん……私のことも、裕美って呼んで」
裕美「あの……一つ聞いても良い?」
凛「何?」
裕美「真奈美さんは、どんな最期だったの?」
135 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/28(日) 00:16:10.74 ID:T0GxzHHc0
凛「楊令公は、わずかな旗本を率いて、遼軍を足止めした。
私は自ら楊令公を討とうとしたけど、逆に討ち取られそうになって……
結局、私とみく、それとのあさんの三人掛かりでようやく捕縛できたんだ」
凛「降伏を勧めたんだけど、生き残った部下を逃がすかわりに、
自分の首を刎ねてくれって……
遺骸は、丁重に埋葬させてもらったよ」
裕美(そうか……真奈美さんはそんな情況になっても、最後まで負けなかったんだ……)
136 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/28(日) 00:16:53.61 ID:T0GxzHHc0
凛「それから、これを」
裕美「これは……吹毛ノ剣?」
凛「楊令公の愛剣だったからね。
やっぱり、楊家軍の人に返すのが筋だと思って」
裕美「ありがとう……」
凛「……」
裕美「……」
137 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/28(日) 00:17:45.98 ID:T0GxzHHc0
凛「……多分、都の礼子さん……じゃなかった。
太后様は、この和睦をお認めになると思うよ」
凛「遼軍も、こんなところまで宋軍を追撃するなんて考えていなかったからね。
正直なところ、兵は疲れてるし、物資も不足気味だし……」
裕美「それは、こっちも同じだよ」
凛「そっか……」
裕美「うん……」
138 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/28(日) 00:18:52.38 ID:T0GxzHHc0
凛「ねえ、裕美。平和になったら、もう裕美と会うことも無いよね?」
裕美「そうだね」
凛「じゃあ、これでお別れか」
裕美「私も、もし宋の軍人じゃなかったら、
凛ちゃんとは友達になれたと思うけど……」
凛「同感。万が一、どこかで会うことがあれば、よろしく。
例え、戦場でも……」
裕美「こちらこそ、よろしくね。
戦場で会うことになったとしても、負けないよ?」
凛「ふふっ……じゃあ、これで」
裕美「さようなら……」
139 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/28(日) 00:20:00.15 ID:T0GxzHHc0
〜燕京・宮殿〜
凛「……」
みく「……」ソワソワ
凛「みく、少しは落ち着きなって」
みく「でも、どんな恩賞が貰えるかって考えたら、ワクワクしてくるにゃ!」
凛「礼子さんのことだから、それ相応の恩賞をくれると思うよ」
みく「凛チャン、宋との戦いが終わった後から、
妙に落ち込んでいるように見えるにゃ」
凛「それは、みくが能天気なだけだよ」
140 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/28(日) 00:20:46.52 ID:T0GxzHHc0
みく「ひどい言い草にゃ。凛チャンは敵に感傷しすぎにゃ」
凛「みくの方こそ、もっと敵に敬意を払うってことを覚えた方が良いよ」
みく「にゃにを!」
凛「やる気?」
衛兵「お二人とも、そこまでにしてください。太后様がお呼びです」
凛「はい」
みく「やっとにゃ!」
141 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/28(日) 00:21:36.86 ID:T0GxzHHc0
礼子「此度の戦、二人の活躍は瞠目すべきものだったと思う。
よって、耶律斜軫を“魏王”に、
耶律休哥を“宋国王”に封じ、それぞれに“剣履上殿”を許す」
みく「お、王かにゃ!?」
凛「王!?」
※ 剣履上殿(けんりじょうでん)
・昇殿する際に靴を脱がずとも良く、佩剣したまま天子に謁見できる特権。
142 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/28(日) 00:22:53.71 ID:T0GxzHHc0
みく「あれ? でも何で“魏王”に“宋国王”なのにゃ?
魏も宋も遼の国土外にあるにゃ」
礼子「理由は二つあるわ。まず王の位だけど、二人の活躍を見る限り、
これぐらい奮発しても良いと思ったからよ。
それから、魏と宋については、宋を威圧するためなの」
みく「威圧?」
凛「ああ、そういうことか」
礼子「魏も宋も、宋のことを指している。
だから、貴方達二人が魏王や宋国王に封じられることによって、
いつ遼が攻めてくるかわからないという、不安を与えることになるわ」
礼子「ふふっ。もし貴方達が望むなら、本当に攻め取っても良いのよ?」
143 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/28(日) 00:23:56.34 ID:T0GxzHHc0
みく「せっかく平和になったんだから、もう戦はお腹一杯にゃ」
凛「同じく……って、あれ?」
礼子「どうかした?」
凛「のあさんは、どうなったの?」
礼子「辞退したわ。自分は王の器に非ず、だって」
みく「のあにゃんも、もったいないことをするにゃ」
144 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/28(日) 00:25:09.20 ID:T0GxzHHc0
凛「王って言っても位だけなんだから、そういう考えもありかも」
礼子「ごめんね。いくら“澶淵の盟”で歳幣が支払われるといっても、
まずは戦で傷ついたこの国を、立て直さないといけないの」
凛「わかってるよ。私達のことは、お構いなく」
礼子「これからも、よろしくね」
みく「まかせるにゃ!」
145 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/28(日) 00:26:12.95 ID:T0GxzHHc0
〜燕京・城壁上〜
凛「ふう……風が心地良いな……」
キィ キィ
凛「あれ? この鳴き声は……?」
長老「お久ぶりです、将軍……いや、殿下」
凛「長老、久しぶり……って、殿下って?」
長老「聞きましたぞ、此度の戦功により、宋国王に封じられたとか」
凛「耳が早いね……」
長老「私の耳は地獄耳だと、里では煙たがられおりますので。
はっはっは!」
146 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/28(日) 00:27:20.94 ID:T0GxzHHc0
凛「ふふっ……それで、どうして燕京に?」
長老「王室の方々に、海東青鶻をお届けに参りました」
凛「そうなんだ」
長老「それと、太后様にお礼を申し上げねばならぬと思いまして」
長老「澶淵の盟の締結により、国庫が潤い、
我らも減税されることになったのです」
凛「海東青鶻も?」
長老「はい。献納する数を、減らしていただきました」
凛「良かったね」
147 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/28(日) 00:28:17.81 ID:T0GxzHHc0
長老「これも、殿下のお口添えあればこそです」
凛「な、何のことかな?」
長老「隠す必要はありませんぞ。
殿下が太后様に働きかけてくださったこと、私はわかっておりますとも!」
凛「さ、さすがだね……」
長老「どうです? 私もどうしてなかなか、目利きだと思いませんか?」
凛「かなわないなぁ、長老には。おみそれしました」
長老「今や回跋部にも、殿下の令名は轟いておりますぞ!」
148 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/28(日) 00:29:39.55 ID:T0GxzHHc0
凛「ねえ、長老」
長老「いかがなさいました?」
凛「私は、海東青鶻のように、羽ばたくことができたのかな?」
長老「勿論です! さながら、海東青鶻が蒼穹を舞うが如く、
高く、速く、遠く、強く、この天下を飛翔されましたなぁ」
凛「そう……かな……」
149 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/28(日) 00:30:53.81 ID:T0GxzHHc0
みく「おーい! 凛チャン!」
凛「ここにいるよ! どうしたの?」
みく「そろそろ戦勝祝いの宴会が始まるにゃ!
礼子さん達が待ってるにゃ!」
凛「うん! わかった!」
長老「では、私はこれで」
凛「もう行っちゃうの?」
長老「殿下もお早く、宴会に向かわれませ。
いつかまた、お会いできるでしょう」
凛「うん。またね」
150 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/28(日) 00:31:43.42 ID:T0GxzHHc0
みく「何してるにゃ! 早く来ないと、
宴会でみくと一緒に猫耳つけて、しぶにゃん芸を披露してもらうにゃ!」
凛「わ、わかったって! 今行くから!」
おわり
151 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/28(日) 00:35:05.51 ID:T0GxzHHc0
・読んで下さった方、ありがとうございました。
・耶律休哥は、北宋時代の遼の武将で、燕雲十六州を巡る対宋戦で活躍しました。
「于越(耶律休哥の官命)が来た」と聞けば、子供が皆泣き止むと言われる程に宋人に恐れられ、
太宗の北征を幾度も挫き、その戦功によって宋国王に封じられました。
・一方、燕京の統治を任された際、よくこれを治めて人民から敬慕されたそうです。
また、誤って遼の国境に入り込んでしまった民がいれば、丁重に送り返したりするなど、
愛民の為政者としての側面も持ち合わせていました。
・耶律休哥、耶律斜軫の死後、聖宗(耶律隆緒)は蕭太后の後見を受けつつ宋との戦を有利に進め、
最終的に“澶淵の盟”という和平条約を締結します。
この盟により、遼は莫大な歳幣を宋から受け取り、聖宗は遼の最盛期を築きます。
152 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/28(日) 00:38:26.02 ID:T0GxzHHc0
【海東青鶻について】
・海東青鶻は、女真族が古くから使役しており、遼の王族や貴族に人気があったので
税として献納させられていました。
しかし、海東青鶻は断崖に生息するため、捕獲するときに墜落死する人も多かったようです。
また、農作業に手が回らなくなる程に調教が難しく、
それ故に女真族は多大な犠牲を強いられていました。
・これが後に、完顔阿骨打(ワンヤンアクダ)の挙兵、及び金建国の遠因となります。
そして弱体化した遼を狙って、金宋間に“海上の盟”が締結され、遼は金の攻撃により滅亡してしまいます。
153 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/28(日) 00:39:52.44 ID:T0GxzHHc0
以下は作者の過去作です。
歴史・古典ものですが、興味のある方はどうぞ。
モバマス太平記
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1396429501/
モバマス太平記 〜九州編〜
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1399632138/
モバマス・おくのほそ道
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1400847500/
モバマス徒然草
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1402232524/
モバマス方丈記
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1403442507/
モバマス枕草子
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1404649529/
モバマス海賊記
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1405427187/
モバマス土佐日記
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1407070016/
モバマス雨月物語
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1408107058/
モバマス竹取物語
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1410021421/
モバマス源氏物語
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1411908026/
モバマス五輪書
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1413117041/
154 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2014/12/28(日) 00:40:13.65 ID:GCHbYufqO
グラブル衣装の凛で脳内再生されたw
関ちゃんはまさかの登場だったけど、遺志を継いで見せるところ、関ちゃんらしい活躍だった。
乙!
155 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2014/12/28(日) 00:41:26.44 ID:T0GxzHHc0
以下は中国の歴史・古典作品です。
モバマス史記
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1414934626/
モバマス蘭陵王
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1417351292/
156 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2014/12/28(日) 00:41:46.27 ID:gZtsBaedo
耶律イズミンが後にでてくるんですね
157 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2014/12/29(月) 13:25:12.22 ID:bnCp9hQio
おつー
158 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2014/12/31(水) 13:12:32.45 ID:ry0AY7Wto
唐突な蒼の強調で顔が緩みっぱなしだった
乙、歴史物はやっぱり面白い
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[ Aramaki★
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