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風俗嬢と僕

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924 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/03/13(水) 11:55:12.48 ID:LVxpLFWso
まだかな
925 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/04/18(木) 01:42:36.51 ID:rKJ85Sm1O
それからの話を少しだけしようと思う。

まず、サキの話からだ。

マリッズ戦を終えて次の練習日、練習前に彼女はお姉さん一緒に来た。

「謝りたいの」

彼女はそう言った。今まで見たことがない、真っすぐな目だった。

語り始めた彼女の物語は、正直なところ、遠い異世界の話に思えた。女優のお姉さんがいる、ってことすら知らなかったわけだし。

それにもう、昔の話だ。

ヒロさんも僕も「気にしないでほしい」とだけ伝えた。それ以外に伝えられる言葉もなかった。

帰ろうとする二人に向かって、「せっかくだし、練習を見ていきませんか?」とエリカとミユが誘ったのは意外だったけど。

でもそれは成功だったのかもしれない。華のある二人がいるおかげで、その日の練習は今までで一番盛り上がった。

不純な動機かもしれないけど、それでもプラスはプラスだ。
926 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/04/18(木) 07:46:02.93 ID:Nhcj15Qk0
待ってた!
927 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/04/18(木) 19:46:53.99 ID:4iyCxTOBO
練習中もその後も楽しそうに話す四人を見ると、今までに起きていたごたごたが嘘のように思える。ミユがエリカをビンタしたことなんて、遠い昔のことのようだ。

練習後にダウンを終えて着替えていると、エリカとサキが一緒に僕のところに来た。普通なら修羅場だよね、元カノと今の彼女が一緒にいるなんて。

「今、この子と付き合ってるんだ?」

いきなり本題に触れるエリカに苦笑しながら、僕は肯定する。

「そっか。……幸せそうでよかった。私が言えることじゃないんだけどね」

「初めて会ったとき、サキさんに振られたショックで泣きそうでしたからね、カズヤ」

「それは盛ってる!」

僕の突っ込みに、一瞬の間を空けて三人で笑った。それができるくらいには、僕と彼女たちの間にわだかまりは無くなっていた。

「都合のいい話だけど、私はカズヤに会えて良かった」

「うん。僕もエリカと会えて……良かったと思う。今となっては、だけど」

「やっぱり傷つけた?」

「うん、ショックで泣きそうになるくらいには」

その言葉に、もう一度三人で笑った。

「……最後に、お別れの握手を?」

そう言って、彼女は手を差し出してきた。エリカはそれを見ながら、僕に微笑みかける。どうやら「任せた」という言外のメッセージらしい。

「握手……はいいけど。でもさ。最後に、ではないでしょ?」

「え?」

「これからも応援してよ。うちのチームのこと。みんな、美人姉妹が来たって喜んでるから」

その言葉に、彼女はおかしそうに笑った。今までで一番、心の底から見せる笑顔だと思った。

「喜んで」
928 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/04/18(木) 20:15:43.34 ID:4iyCxTOBO
そして迎えた天皇杯の次戦、僕はいよいよ憧れの選手と対面をする。

子供の頃、サッカーを始めるきっかけになった人だ。ヨーロッパ最強のチームを決める大会で赤い悪魔にフリーキックを沈め、僕は彼の虜になった。

今となっては不惑を迎えた彼は、チームではレギュラーとは言えない立場になってしまっている。それでも天皇杯ではターンオーバーということで、スタメンで試合に出てきてくれた。

試合は僕たちが負けてしまった。マリッズに勝って燃え尽きていたとか、自力の差だとか、いろいろな要因はあるんだけど。

僕たちの挑戦はそこで終わってしまった。

世間から見ると、たまに出てくるアマチュアの割には健闘したチーム、という形なのかもしれない。

それでも僕はこの一年で多くのものを得た。

タカギという友人に、好敵手たちとの好ゲーム。憧れのナカムラにもらったユニホームは、きっと一生褪せることはない。
929 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/04/18(木) 20:24:12.92 ID:4iyCxTOBO
大会に敗れてしばらくすると、タカギから僕に連絡が来た。

『うちのチームに練習参加しないか』

最初は冗談だと思ったその言葉も、スカウトの人から直接連絡が来たあたりから現実味を帯びてきた。

どうやら天皇杯で当たって以降、うちの試合を何試合か見に来てくれていたらしい。

ヒロさんに相談すると「俺も同じ話をもらってる」とのことだった。

「どんどん遠い人になっていくね」

エリカはそう言って嘆いていたけど、僕は何も変わってはいない。

タカギ経由で連絡をとるようになったオカモトやマツバラからも『早く一部に来い。ていうか、代表に来い。一緒にやれる日を楽しみにしてる』と連絡が来た。

代表なんて、現実味がなさすぎる。でも、天皇杯前の僕からすると、プロの練習参加なんてそれ以上に現実味のない話だった。

だから、いつかきっと。
930 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/04/18(木) 20:31:14.01 ID:4iyCxTOBO
周りは就職活動の準備で忙しくなっている中、僕がこんなに夢を追い続けていいのだろうかと思うこともあった。

もし練習参加をして認められなくて、結局就職活動となるなら今から諦めるべきではないのだろうか、と。

でも、エリカが言ってくれた。

「私はサッカーをしているカズヤに惹かれたんだよ。カズヤを見て、私も変わりたいって思えた。それをもっといろんな人に見せてあげてほしいし、それができるのって、サッカー選手なんじゃないかな」

そうだ、僕はサッカーが好きだ。何事にも代えがたく、だからいい年をした大人になっても続けてきた。

それを仕事にするチャンスを与えられて、自分が望んでいるのに、自らそれを諦める理由なんてどこにもない。

結局、練習参加だけでは認められず、僕は年明けの冬季キャンプにも参加させてもらうことになった。ヒロさんは一足先にサインを結んだというのに。

県リーグで優勝し、地域リーグに昇格することが決まったチームメイトからは『二人も主力に抜けられたら困るんだよー』と笑われているが、それでも応援はしてくれている。
931 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/04/18(木) 20:50:05.29 ID:4iyCxTOBO
そして、一年が経った。
932 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/04/18(木) 22:34:27.65 ID:ZWg0S0hpO
>>927
サキとエリカが部分的に入れ替わってる?
933 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/04/18(木) 22:48:04.60 ID:4iyCxTOBO
>>932
ご指摘の通りです。。
脳内変換ありがとうございます。
934 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/04/18(木) 23:13:55.91 ID:4iyCxTOBO
満員のスタジアムからは各選手のコールが聞こえる。一年前の僕には想像がつかなかった光景だ。それでも僕はここにいる。

前に並ぶタカギがニヤけながら「おい、緊張してんな」と声をかけてきた。

「ダイジョーブ」

「カタコトになってんぞ」

近くにいたチームメイトがどっと笑った。うーん、自分じゃ気づいてないけどそんな固そうに見えてるのかな。

ひとしきり笑った後、「集中!」という声で再び引き締まった気持ちになる。一緒に入場する男の子と手をつなぐと、彼は僕を見ながら言った。

「ボク、カズヤ選手みたいになりたいです」

「え?」

「去年マリッズとの試合を見て、カズヤ選手みたいになりたいなって。いつかカズヤ選手と一緒にサッカーをするのが、僕の夢なんです」

そう言ってにこっと笑う彼は、昔の自分とダブって見えた。こんな僕でも、憧れの選手といわれる日が来るなんて。

「できるよ、きっと」

誰でもそうだ。叶うまで諦めないという気持ちをもって進み続ければ、いつか叶う日は来る。

「僕も楽しみにしてるよ、君とサッカーができる日を」

キラキラした目で、彼は頷いた。

入場のアンセムが鳴り始め、タカギの背中も前に進み始めた。それに合わせて、僕も足を進める。

「わぁ」

視界が開けてくると、少年が感動の声を漏らした。スタンドではなくピッチでその光景を見るのは僕も初めてで、心臓がバクバクと鳴っているのに自分で気づいた。

落ち着きなくスタンドを見回すと、そこに彼女がいた。試合を見るときは、彼女はいつもその帽子を被るから間違えようがない。関係者席よりも声を出して応援できるからと、彼女はその席を望んでいた。

聞きなれた声で名前を呼ばれた気がして、整列したままそちらにサムズアップするとタカギから「バカ、やめろ」と窘められた。

「そんなことできるなら緊張してると思ったのは気のせいか?」

「ダイジョーブ、って」

うん、もう大丈夫だ。どこにいても、サッカーはサッカーだ。そしてどこにいても、きっと彼女は僕の背中を押してくれる。

セレモニーを終えてピッチに散らばると、目の前には広大な緑と、それを囲む青い景色が改めて目に入る。

少年に恥じぬ試合をしたい。いいプレーをしたい。勝ちたい。でもやっぱり、一番は楽しみたい。

主審が時計を一瞥すると、笛を鳴らした。一斉に選手が走り出す。

さぁ、楽しい時間の始まりだ。
935 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/04/18(木) 23:23:20.88 ID:4iyCxTOBO
というわけで、本編はこれにて終了です。
四年もかけて終わり方がこれ?と思われる方もいらっしゃると思いますが……。

番外編というか、タイシ編、アキラ編も考えてはいたのですが、冗長かなということで省略していました。
イヌイ編も不要だったのかなと思う一方で、あそこもカズの一つの転機になるので入れたいな、と。
また時間があるときに、その二編は書けたらと思っています。

そしてこの板への投稿は推敲もできないまま即興で書いているところも多かったので、
矛盾や>>927のような凡ミスも多々あり、大変失礼いたしました。

しっかりと推敲、ある程度の改稿や改定をしたものを、いつかどこかでまた書きたいなと思っています。

投稿当初からお付き合いくださった方も、今回の更新でたまたま見かけた方も、
たまに見に来てくれていた方も、この話に一度でも目を通して下さった全ての方に最大限の謝辞を。

飽き性の自分がエタらずに四年かけてでもこの話を書き終えられたのは、皆さまのおかげです。

最後までお付き合い、ありがとうございました。
またどこかで自分の話を読んで頂けると幸いです。

本当にありがとうございました!



(以下自分語りです)

この4年間でいろいろと環境が変わりましたが、サッカーを再び本気でやれる環境に来ました。
それも、カズヤたちと同様に、元Jリーガーたちがいる世界で本当に自分がやることになるとは思っておらず、
かなり背伸びした世界に入って来たと自分でも思っていますが、頑張ろうかな、と。

そして執筆方面でもちょっとだけ夢が叶いました。
いつかまたその話ができるようになったら、また聞いてもらえると嬉しいです。

それではまた!
936 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/04/18(木) 23:53:52.84 ID:EtpOqN/6o
おつかれさん
いい話をありがとう
自作も楽しみに待ってるがリアルでカズヤのように羽ばたいてくれww
937 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/04/19(金) 11:44:08.91 ID:qjRCL++pO
ラブコメかと思いきやガチガチのサッカー小説だった。でも当初から読んでて完結は感慨深いものがある。もう4年にもなるんだな。是非どこかでまた読みたい。カクヨムにでもまとめて上げてほしい
938 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/04/19(金) 19:18:01.29 ID:0CeShYxco
乙でした。最初タイトル詐欺かと思ったけど、サッカーやってたからずっと見てた。
>>1も新しい世界で頑張ってねー!また新作期待してます。
939 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/04/20(土) 09:32:33.01 ID:Nw3TrBk2O
>>936
ありがとうございます!
カズヤみたいな覚醒はもう難しいかもしれませんが…(笑)

>>937
本当に、こんな遅レス更新にお付き合いいただきありがとうございました。
改題してカクヨムに載せる方向で考えているので、よければ是非そちらも!

>>938
タイトル詐欺は自分でも感じていました(笑)
サッカーをやっている人に読んでもらえてたというのが励みになります!
実際にやってる人からするとリアリティなく感じるのかなとも思いつつ書いていたので……
ありがとうございました!
940 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/04/25(木) 12:59:49.42 ID:7/Roc2hq0
ずっと追いかけてたよ乙でした!
941 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/04/25(木) 21:45:34.38 ID:0UYyN3wv0
全部読んだ!最高だったよ!
他にも書いてるの、ないの?
942 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/04/30(火) 19:28:08.32 ID:W9wjuVH2O
>>940
遅くなりました!
ありがとうございました。また次回作も読んで頂けると幸いです。

>>941
ありがとうございます!
ss vipになぜかスレ立てられなくなってしまったので、相変わらずエロ要素薄目の予定ですがSS vip Rに投稿開始しています。
『二世アイドルは自由に焦がれる』というタイトルなので、よろしければそちらもぜひ!


いくつかのまとめサイトに頂いているコメントも拝見しました。
皆さま本当にありがとうございます!
943 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/05/18(土) 02:09:54.81 ID:EQra5gyS0
うお、完結してたんだな これまで楽しく読ませてもらってた ワクワクしてなんだか勇気を貰った気分だ お疲れ様 ありがとう
944 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/05/22(水) 20:12:41.61 ID:gMq+LtoDO
>>943
こちらこそ、最後までお付き合い頂きありがとうございました。
少しでも前に進む原動力になれたなら幸いです。
945 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/06/26(水) 19:09:45.51 ID:fZptZa/pO
私事の宣伝ですが、7/4発売予定の『ショートフィルムズ(学研)』内、
『カメはウサギを』という作品を掲載して頂くことになりました。

初めての商業誌掲載ですが、これをきっかけにもっといい作品を書けるように頑張ります。

よろしければぜひ、ご一読下さい。
946 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/07/27(土) 23:13:39.93 ID:I61NYSQvO
947 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/08/28(金) 22:10:13.61 ID:dS38O5zbO
続編構想中です。
近日中に始めます。
948 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/08/29(土) 07:40:43.62 ID:s6SiYEqaO
>>947
楽しみにしてるよ
949 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/09/02(水) 12:33:45.57 ID:i0nEB4BpO
続編というかは微妙かもしれませんが、こちらで続きを書き始めました。
今度はもっと短く纏まった話になるような構想ですが……

お楽しみいただけると幸いです。

https://ex14.vip2ch.com/i/read/news4ssnip/1598965268/
950 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2022/12/03(土) 13:53:29.09 ID:K2sUk4c0O
ワールドカップ盛り上がってるね
951 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2023/07/18(火) 01:36:03.13 ID:m8lMGL2OO
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