やはり俺の脳内選択肢が青春ラブコメを全力で邪魔しているのは間違っている。

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351 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/20(火) 21:24:34.24 ID:ho+iwlUAO
4しかないな
352 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/21(水) 11:28:51.95 ID:dSqFKQpfO
これは4
353 : ◆0KQMVLQguk3L :2016/09/24(土) 20:55:23.56 ID:U/dlH3DS0
奏「平塚先生に話してみよう。八幡が将来の相手に会いに行くって」

 さして迷うこともなくこの選択肢を選んでいた。

 雪乃さん(お姉さんも選択肢にいるのでここではわかりやすく)と由比ヶ浜さんは、八幡と絶賛きまずい雰囲気。

 陽乃さん(説明省略)は、なぜか本当に電話とかかけてきそうで怖い。俺あの人の連絡先知らないけど。

静「おう、比企谷と甘草じゃないか。おはよう」

 平塚先生が後ろから、高そうな車に乗ってやってきた。

奏・八幡「おはようございます」

 平塚先生は俺たちの横に車をつける。

八幡「ここ止めていいんすか? あれ駐禁の看板じゃ……」

静「す、少しなら大丈夫だろ。……たぶん」

 前にやってしまったことがあるのか、平塚先生は額に汗を浮かべていた。朝なのになぁ。
354 : ◆oUKRClYegEez :2016/09/24(土) 20:57:06.57 ID:U/dlH3DS0
奏「あ、そういえば平塚先生」

静「ん? なんだ?」

 本当は八幡に言うだけの選択肢で実際に言う必要なんて微塵もないけれど、話すことで八幡がフォローしてポロっと漏らすかもしれないし、……ちょっと反応に興味あるし。

奏「八幡が今日の放課後、将来の相手に会いに行くって言ってるんですよ。どう思いますか?」

八幡「おい、ちょっ……」

静「ん? 私と約束してはいないだろう比企谷?」

 聞かなきゃよかったと今更後悔している自分がいる。

八幡「あれですよ、友達付き合いってやつですよ」
355 : ◆oUKRClYegEez :2016/09/24(土) 20:59:42.19 ID:U/dlH3DS0
静「比企谷……嘘は良くないぞ。本当のことを話したまえ」

 平塚先生が優しい目で八幡を見る。

八幡「いや……別に嘘ついてはいないんですけど……」

 八幡も、自分でおかしなことを言っているという自覚のあるような顔だった。おかしいのに嘘じゃないのか。

八幡「葉山に誘われたんですよ」

静「それだけで君は行かないだろう」

八幡「……釘を刺されたんですよ。陽乃さんに」

 選択肢の陽乃さんはこういうことか。

 というか平塚先生には言うんだな、八幡。少しショックだ。

静「そうか……お前も大変なんだな……」

 あ、同志を増やしたかっただけか?
356 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/25(日) 21:28:39.39 ID:ndzMWmmfo
乙です
357 : ◆oUKRClYegEez :2016/10/01(土) 15:14:14.75 ID:maWYzKGH0
八幡「そろそろ学校行かなくていいんすか」

 八幡が平塚先生に言った。

静「おお、そうだな。お前たちも遅れるなよ」

 平塚先生はそう言い残すと、スポーツカーを走らせ学校の方へと行ってしまった。

 八幡がスタスタと先を歩き始める。

奏「あ、ちょっと待ってよ! さっきの話詳しくぅぅぅ!」

八幡「……」

 そしてそのまま、話をすることはなかった。
358 : ◆oUKRClYegEez :2016/10/01(土) 15:15:34.79 ID:maWYzKGH0
 放課後。

 俺は

【選べ
1、ゴーグルを身につける

2、パーティー眼鏡を身につける  】

 という選択肢を乗り越え(だから今俺は季節外れ・場所違いのゴーグルを首につけている)、どこかに向かう八幡をつけていた。

 場所は駅前。

 平塚先生にした話の通り、葉山君と一緒にいる。誰かを待っているようだった。

 と、不意に後ろから肩を叩かれる。

 驚いて振り返るとそこには、

陽乃「あ、君文化祭で見たねえ! どうし……まあなんとなくわかったけど」

 俺と同じように「こちらからは見えるけど八幡たちからは見えない建物の影になっている場所」に、俺と同じやや前かがみの体勢で様子をうかがう雪ノ下さんの姿があった。

陽乃「ねえ、君もあの子たち気になるんでしょ? 一緒に尾行してみない?」
359 : ◆oUKRClYegEez :2016/10/01(土) 15:17:49.74 ID:maWYzKGH0
奏「え、え!?」

 陽乃さんが俺ににやっといたずらっぽく笑いかけて近い近い近いいい匂い近い!

陽乃「もし君が見つかってもわたしが絶対に成し遂げるから! お金いるならわたし出すから! 大学生だし! どう?」

 魅力的すぎる。提案が。

 でも

奏「そんなに頼っていいんですか?」

陽乃「大丈夫! これが比企谷君や雪乃ちゃんだったら裏があるって疑ってかかるところなんだけど、君は素直でいいね〜!」

 ですから近い近いいい匂い!

奏「貸しとかですか?」

 ありそう。

陽乃「今回はそんなの気にしなくていいから! だって、他人の恋愛事情ほど面白いことってなかなかないでしょ!?」

 雪ノ下さん……そんな動機か……。あと今回は、って……。

陽乃「それに……隼人がなにするのか、ってことも気にはなるし、ね」
360 : ◆oUKRClYegEez :2016/10/08(土) 19:27:23.82 ID:o06bT7xI0
陽乃「あ、映画館入ったよ甘草くん!」

奏「ですね」

 俺は、ニヤニヤが止まらない陽乃さんと共に尾行していた。

 かく言う俺も、陽乃さんにおされて段々楽しくなってきている。

陽乃「さ、私たちも入るよー!」

奏「え、でも俺余裕あるわけじゃ……」

陽乃「わたし出すって! 観察行くよー!」

奏「え、ちょ、雪ノ下さん!?」

 美人の女性に全額出してもらっている冴えない高校生男子が、そこにいた。というか、俺だった。
361 : ◆oUKRClYegEez :2016/10/08(土) 19:28:10.63 ID:o06bT7xI0
 映画館の中。

 ふと、飲み物に手を出した時、そこに肘をついていた雪ノ下さんに触れてしまった。

奏「あ、すみませ……」

陽乃「ねえ、甘草くん」

奏「はい」

 陽乃さんは、純粋な疑問で、完全にそうであるとわかる顔、口調で、こう尋ねた。

陽乃「君はどうして、彼と付き合おうとしているのかな」

奏「えっ?」

陽乃「変な意味じゃなくて。どうして彼と一緒にいたいと思うの? わたしは彼が面白いと思うからだけど。自分で言うのも変だけど、わたしは変わってる。どうして君は、彼を見ようとしてるのかな」

 彼とはだれか。そんな質問はしなかった。

 俺が葉山くんにそんなことを思うはずもないし、彼女自身、今回は葉山くんはおまけのように話していた。

 どうして。

 それは……
362 : ◆oUKRClYegEez :2016/10/08(土) 19:28:36.46 ID:o06bT7xI0
奏「たぶん、同じ気がするからです」

陽乃「続けて?」

奏「あいつは、ちょっと前の俺とそっくりなんです。何かあった時には、自分を落とすことで他人を救おうとする。でも俺は、俺と似たことをするあいつを見て、思ったんです。そのやり方には、どうしても限界がある、って……」

陽乃「うん」

奏「どうしてもそうしないと解決しないようなこともあります。けど、全てにおいての選択肢がそうと決まっているわけじゃない。だから、あいつがそれに気づくまで、俺だけでもそばにいてやろうって思うんです」

陽乃「ふぅーん、そっか……」

奏「どうしました?」

陽乃「いや、なんでもないよ。あ、さっき君、爆発のときキョドってたよね?」

奏「ほっといてくださいよ……」
363 : ◆oUKRClYegEez :2016/10/08(土) 19:29:45.88 ID:o06bT7xI0
かおり「爆発の時の比企谷、超きょど、って、て……っ!」

 結局ポップコーンまでごちそうになった俺だったが……。今は精神的にとても辛い。

陽乃「ひぃ……! 比企谷君と、キョドるところ、一緒……!」

 お腹を抱えてまで笑わないでください。

陽乃「お、次は買い物かあ」

 切り替えがはやすぎる……と思ったけど、まだ顔が笑いでひくひくしてる。

陽乃「わたしたちも行っくよー!」

奏「え、ちょ雪ノ下さん!?」

 俺は雪ノ下さんに手を引かれて、人ごみの中へと足を踏み入れた。

陽乃「甘草くん、手離さないでね」

えっ……?

陽乃「でないと、君と尾行している意味がなくなるから。君ついてこれなくなるから」

 ご配慮、感謝します。大丈夫、期待なんてしていませんから。
364 : ◆oUKRClYegEez :2016/10/15(土) 18:50:56.22 ID:XKsncbv00
 八幡たち……いや八幡は一緒にいるのにハブられているような雰囲気だからここは葉山君たち、と言った方がいいだろうか、がエスカレーターを半分ほど過ぎたところで俺と陽乃さんもエスカレーターに乗る。

 間に数人、人がいるのでふとした拍子に目に入る、ということはないだろう。

 気になるのはエスカレーターですぐ隣にいる陽乃さんだが……なにも起きない。常に肩が当たっているが、逆に言えばそれだけ

【選べ

 1、雪ノ下陽乃によろめいたふりをして密着する

 2、よろめいたふりをしてそのまま落ちる      】
365 : ◆oUKRClYegEez :2016/10/15(土) 18:53:38.11 ID:XKsncbv00
 どっちを選んでも死にそうだな……。

 1番なら殺されるし、2番ならまだ生きる可能性はあっても尾行が確実に終わる。

 2番が一番迷惑をかけな……いや、後ろもうひと乗ってるから巻き込むことになるのか。

 なら、俺一人が……。

 ……正確には俺なんかに密着される陽乃さんもだろうけど……。

 よろっ。

奏「あっ、陽乃さん、すみません」小声
366 : ◆oUKRClYegEez :2016/10/15(土) 18:54:17.51 ID:XKsncbv00
陽乃「ん? いいよ」

 ……あれ? 俺生きてる? ……生きてる!

陽乃「くっついて感極まるのはやめてもらえるかな」

奏「あ、すみません……」

 顔は笑顔なのにすごい威圧感があった。これが八幡たちが恐れる所以だろうか。

陽乃「さて、隼人たちはどこに……っとあれは」

奏「あ」

 向こうは気づいていないみたいだけど……三浦さんと海老名さんだ。

 このままだと、葉山君と会うことに……あ、八幡が葉山君にそれとなく話しかけて移動させようとしてる。

陽乃「修羅場ならずか〜。比企谷くん働き者だね〜」

 本人が聞いたら全否定しそうですけどね。
367 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/16(日) 13:21:04.90 ID:yOEvsIBCo
乙です
368 : ◆oUKRClYegEez :2016/10/22(土) 22:55:53.77 ID:Ro6PrgTM0
 と思ったのもつかの間。八幡たちが移動した先に

翔「いろはす〜、やっぱムラスポいくべ?」

いろはす「えー、あっちにもラなんとかスポー……あるじゃないですかー」

翔「ライスポは野球用品店だしさ」

 一色さんと戸部くんだ。

いろはす「あー、先輩方も買い物ですかー?」

 一色さんが先に気づいた。もうさっきの様には逃げられない。
369 : ◆oUKRClYegEez :2016/10/22(土) 22:56:42.09 ID:Ro6PrgTM0
 一色さんが八幡によって、その袖をぐいとつかむ。

陽乃「あの子は? 甘草くん」

奏「一年生の一色さんです。今ちょっと奉仕部に依頼してます」

陽乃「へー。どんな?」

奏「流石にそれは」

 この人は総武高のOGらしいから、『生徒会長にならないようにしてほしい』なんて依頼、知らない方がいい。

 知ったらやばいことになりそう、という思いもあるが。

いろはす「〜〜」

八幡「〜〜」

 お互いに葉山君たちに聞こえないようにするためか、小さい声で話すからこっちまで聞こえない。

いろはす「葉山先輩。私達とも一緒に遊びませんか?」

 八幡を解放した一色さんが葉山君に言った。


隼人「でも、二人ともまだ買い物あるんだろ?」

翔「だべ。いくべいろはすー」

 わー。空気読めねー戸部君。君この前恋愛がらみで告白しようとしてたのに他の人のことには無頓着なの?

 ……いやあるいは、気づいて葉山君に気をつかっているか。

いろはす「は〜い。ではまたー。先輩、また今度話聞かせてくださいね?」

 一色さんが別れ際に放った八幡への一言で、八幡が軽く震えるのが見えた。
370 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/23(日) 02:38:12.06 ID:5aQpf0fjo
乙です
371 : ◆oUKRClYegEez :2016/10/29(土) 13:32:46.15 ID:LvrJ1EUV0
お店を出てから一行は、すぐ近くにあるカフェに入った。

陽乃「さ、行くよ甘草くん!」

奏「は、はい……」

 結局尾行ついでに買い物をした陽乃さんに荷物持ちにされ、俺は両手に荷物を抱えて陽乃さんについて行く。……あれ、俺なにしにここに来たんだっけ? そうだ、八幡の尾行じゃん……。
372 : ◆oUKRClYegEez :2016/10/29(土) 13:33:40.34 ID:LvrJ1EUV0
 八幡たちがテーブルに着いた時、俺と陽乃さんは喫煙可能のカウンター席の隣同士に座った。

 陽乃さんが小さく八幡に向けて手を振り、八幡が陽乃さんを確認してその隣にいる荷物持ちを見た。

八幡「ぶっふぉ!?」

 コップに口をつけた状態だった。

かおり「ちょ、比企谷汚いしwwww」

隼人「どうした比企谷君? 大丈夫か?」

八幡「あ、ああ、悪い……ちょっと気管に入ってな」

 苦しいいいわけだな……。思いっきり吹いてたじゃないか……。

陽乃「く……は、はっ……! 比企谷君、面白すぎ……!」

 隣には大笑いをこらえている陽乃さん……。

奏「どうしてバレるようにしたんですか?」

陽乃「ん? 面白そうかなーって」

 だと思いました。
373 : ◆oUKRClYegEez :2016/10/29(土) 13:37:20.57 ID:LvrJ1EUV0
 注文したコーヒーも飲み終わるころ(これも陽乃さんが出してくれた。本当にいいのか、俺?)、話題が尽きてきた女子がこんなことを話し始めた。

かおり「しかし、サイゼはないわー」

仲町「だねー」

かおり「ねー、隼人君はどう?」

隼人「俺もあんまり好きじゃないな」

かおり「だよねー!」

 あ、八幡がみるみるしぼんで……。

隼人「いや、俺が言っているのは君たちのことさ」
374 : ◆oUKRClYegEez :2016/10/29(土) 13:38:00.92 ID:LvrJ1EUV0
かおり「え?」

隼人「来たか」

 葉山君が手を上げる、その視線の先には

八幡「……おまえら」

結衣「ヒッキー」

 制服姿の由比ヶ浜さんと雪ノ下さんがいた。

陽乃「わーお雪乃ちゃん。来るんだ」

 陽乃さんが少し意味深につぶやいた。

八幡「なんで……」

隼人「俺が呼んだんだ」
375 : ◆oUKRClYegEez :2016/10/29(土) 13:38:44.47 ID:LvrJ1EUV0
隼人「比企谷は君たちが思っている程度のやつじゃない。こんな素敵な人たちと親しくしている。表面だけ見て、勝手なことを言うのはやめてくれないかな」

 八幡の顔が、暗く、より暗くなっていく。

かおり「……ごめん、帰るね」

仲町「わ、わたしも……」

 二人が店から出ていく。お勘定はしろよ、と場違いなツッコミが脳裏をよぎる。

雪乃「生徒会選挙の打ちあわせ、と聞いていたのだけれど」

結衣「隼人君に会長に立候補してもらえないかなー、って……」

隼人「俺はただ、できることをやろうとしただけだよ」

【選べ
 1、雪ノ下陽乃の袖をつかむ

 2、雪ノ下陽乃の座っている椅子を引く      】
376 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/29(土) 16:15:18.39 ID:cmpBdRIfo
乙です
377 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/29(土) 16:16:00.39 ID:cmpBdRIfo
2
378 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/29(土) 18:00:47.77 ID:l9mkAhnWO
これは2ですわ
379 : [sage]:2016/11/05(土) 06:46:07.71 ID:p8WxhfI6O
すみません、今週の更新は都合でおやすみです。
今日もこの時間にしか浮上できないです…m(_ _)m
380 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/11/05(土) 10:59:03.37 ID:C1UqjAJzo
待つ
381 : ◆oUKRClYegEez [sage]:2016/11/12(土) 19:08:28.66 ID:d0h8h3xq0
※お待たせしました。
382 : ◆oUKRClYegEez :2016/11/12(土) 19:08:58.04 ID:d0h8h3xq0
 ……雪ノ下さんにケンカを売れと。

 そういうことですかそうですか。

 まず、袖を引いた時。

 〜予想〜

陽乃「……ん? どうしたの甘草くん」

奏「あ、え、声大きくないですか陽乃さ……」

八幡「……奏」

 〜予想終了〜

 見つかって面倒なことになるって俺思うな!

 でもこれって椅子を引いた時でも同じような……?
383 : ◆oUKRClYegEez [sage]:2016/11/12(土) 19:11:23.91 ID:d0h8h3xq0
※ごめんなさい修正です

 ……雪ノ下さんにケンカを売れと。

 そういうことですかそうですか。

 まず、袖を引いた時。

 〜予想〜

陽乃「……ん? どうしたの甘草くん」

奏「あ、え、声大きくないですか陽乃さ……」

隼人「……甘草くん」

結衣「奏君……と陽乃さん?」

雪乃「……」


 〜予想終了〜

 見つかって面倒なことになるって俺思うな!

 でもこれって椅子を引いた時でも同じような……?
384 : ◆oUKRClYegEez :2016/11/12(土) 19:12:21.37 ID:d0h8h3xq0
 ――頭痛。

奏「痛っ……」

 どちらかを、選ばなきゃ。

 ……予想していない椅子引きをやってみようか。

 そう思って、俺は勢いよく陽乃さんの椅子を引いた。
385 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/11/12(土) 19:30:16.86 ID:KpaFe/CA0
ガタッ
386 : ◆oUKRClYegEez :2016/11/12(土) 19:54:01.35 ID:d0h8h3xq0
 がっ(椅子を引いた音)

 どっ(陽乃さんが椅子を掴んで座ったまま引かれる音)

 しゅるっ(陽乃さんが勢いに乗って椅子を回る音)

陽乃「どうしたの?」

 バケモノ過ぎるよう……!?

 急に椅子を引いたら反応して座ったままでいるとか、人間の技じゃないと思う。完全な不意打ちだったのに……。

八幡「……これで、なにかやった気になってるのか」

隼人「君と同じことをしただけだよ」

八幡「……そうかよ」

 そう言い残すと八幡は、さっさと店を出て行ってしまった。

結衣「あ、ちょっと、ヒッキー!」

雪乃「用がないのなら、私も帰るわ」

隼人「……ああ、ありがとう」

 由比ヶ浜さんも雪ノ下さんも、八幡に続いて出て行ってしまった。
387 : ◆oUKRClYegEez :2016/11/12(土) 19:58:48.99 ID:d0h8h3xq0
陽乃「で? どうしたの?」

奏「いえなんでもありませんすみません」

 あるといえばあるけれど、それは言えない。

陽乃「そう。……しっかし、隼人はやっぱりつまらないわね」

 葉山君に聞こえる声で陽乃さんが言った。

隼人「……陽乃さん。いたんですか」

 葉山君がこちらに来た。

陽乃「あ。あんたのテーブルの代金はあんたが払いなよ? 自分で誘った人たちでしょう?」

隼人「俺が誘ったわけじゃあないんだけど……。まあ俺だけ残ってるし、それが当然の義務だろうね」

 凄い。リア充すごい。
388 : ◆oUKRClYegEez :2016/11/12(土) 20:10:19.50 ID:d0h8h3xq0
陽乃「飽きちゃった。私の尾行はここでおしまい。甘草くん、車呼ぶからそれまで荷物お願いできる?」

奏「はい、大丈夫です」


陽乃「ありがと。助かったわ」

奏「こちらこそ、全部払ってもらって申し訳ないです」

陽乃「いいのよ。そのかわり、今度もつきあってくれる?」

 今度があるのか。

奏「はい、その時は」

陽乃「ありがとう。じゃあ、お休み」

奏「おやすみなさい」

 そう言うと陽乃さんは、黒塗りの高級車に乗って行ってしまった。
389 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/11/13(日) 01:13:38.58 ID:2O/oRijeo
乙です
390 : ◆oUKRClYegEez :2016/11/19(土) 22:03:23.68 ID:4rrWYfl10
 休日だ。

 八幡はぐうすかと惰眠をむさぼり、小町ちゃんは受験勉強をしている。

 そして、俺はというと……。

奏「はああぁぁぁ……」

 相手がいなくなったことで、ようやく息をついた。

 俺は、朝に選んでしまった選択肢――

【選べ
 1、雪ノ下陽乃に一日連れられる

 2、比企谷小町の邪魔をする

 3、比企谷八幡を連れていく       】

 で、3を選ぼうとしたらあまりにも「行きたくない」意思を突き付けられた(完全な寝たふり)ので、仕方なく1を選んだ。

 まあ……ちょうど後悔しているわけだが。
391 : ◆oUKRClYegEez :2016/11/19(土) 22:04:28.44 ID:4rrWYfl10
 休日だ。

 八幡はぐうすかと惰眠をむさぼり、小町ちゃんは受験勉強をしている。

 そして、俺はというと……。

奏「はああぁぁぁ……」

 相手がいなくなったことで、ようやく息をついた。

 俺は、朝に選んでしまった選択肢――

【選べ
 1、雪ノ下陽乃に一日連れられる

 2、比企谷小町の邪魔をする

 3、比企谷八幡を連れていく       】

 で、3を選ぼうとしたらあまりにも「行きたくない」意思を突き付けられた(完全な寝たふり)ので、仕方なく1を選んだ。

 まあ……ちょうど後悔しているわけだが。
392 : ◆oUKRClYegEez [sage]:2016/11/19(土) 22:05:16.07 ID:4rrWYfl10
※おっとやってしまった
すみません
393 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/11/19(土) 22:08:50.20 ID:NRHINyQaO
394 : ◆oUKRClYegEez :2016/11/19(土) 22:08:53.93 ID:4rrWYfl10
 〜回想〜

 1を選んですぐ、本当にすぐ、家の前に黒塗りの高級車が止まった。

 ベルが鳴る。

陽乃「こんにちはー。奏君いるー?」

奏「陽乃さん!? ちょ、とりあえず朝ごはん食べてないんで待っ……というか事前に連絡してくださいよ!?」

 〜回想終わり〜
395 : ◆oUKRClYegEez :2016/11/19(土) 22:52:10.94 ID:4rrWYfl10
 俺を連れ出した陽乃さんは、昨日とは別の場所で、昨日しなかった買い物をするらしかった。

陽乃「奏君、これどうかな?」

奏「え、えと、似合ってますよ」

陽乃「んー。もっと捻ったというか、バリエーションつけてくれないかなー。こっちも面白くないじゃん?」

 だんだんと寒くなってくるこの時期。陽乃さんは冬服を現在試着中。

俺はその荷物持ち兼感想を言う役。

奏「でも陽乃さん綺麗だから、何着ても似合ってるじゃないですか」

陽乃「そう? ありがとう。でもそれも聞き飽きたって言えば聞き飽きたのよねー……」

 それはそれですg

【選べ
 1、「服がかわいそうですよねー。どれ着ても似合ってるから、どれも陽乃さんの特別にはならない」

 2、「あ、じゃあ。陽乃さんすっごいブサイクですよね」

 3、一輪車を漕ぎながらソフトクリームを食べる     】
396 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/11/19(土) 22:55:32.56 ID:KgqGfqxco
1
397 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/11/20(日) 20:06:32.82 ID:9GtPMMSA0
むしろ2で
398 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/11/20(日) 23:09:15.15 ID:wZacOj61O
これは3ですわ
399 : ◆oUKRClYegEez :2016/11/26(土) 18:57:02.63 ID:8XZeUB7N0
 1も2も選びにくい。

 2つとも陽乃さんを傷つけることになる。たぶん。

 なら、俺の選ぶ選択肢は一つ、なんだが……冬にソフトクリームなんて売っているとはとても思えない。

 物理的に不可能な選択肢が出ることなんて……、いや何回かあったか?

 となると、上二つから選ぶしかないわけで。

陽乃「どう? 似合ってる?」

 さっき似合ってるって俺言ったじゃないですか。

 頭痛が催促してくる中、そんなことを思いながら俺は1を選択した。

 会話の流れ的に。

奏「服がかわいそうですよねー。どれ着ても似合ってるから、どれも陽乃さんの特別にはならない」
400 : ◆oUKRClYegEez :2016/11/26(土) 18:57:36.98 ID:8XZeUB7N0
陽乃「ほうほう?」

 陽乃さんがこっちを興味深そうに見てくる。

 ……え、いや、自分の意思じゃないことに対して続けなきゃいけないのかな……。

奏「陽乃さん何着ても似合うから、だから特別な思い入れのできるような服って、ないような気がして」

陽乃「奏君にはそういうのある?」

奏「服……は特には……」

陽乃「男子だもんねー」

 陽乃さんは軽快に笑う。

陽乃「服以外だったら?」

奏「それは、まぁ……」

 謳歌や、ふらのや、ショコラ。真っ先にその三人が浮かぶ。

陽乃「そうかー。確かに、私にはないかもねー」
401 : ◆oUKRClYegEez :2016/11/26(土) 18:58:07.99 ID:8XZeUB7N0
陽乃「昔からだいたいのことはできたし、人はわたしから近づかずとも向こうから来るし」

 口調には一切の含みがない。本心でそう思っているのだろう。客観的に見ても、それは事実だ。

陽乃「だからこそ、対等に見ようとして歯向かってくる雪乃ちゃんや、寄ってこない比企谷くんを面白いと感じるのかも」

 もちろん君も。と陽乃さんは付け足す。

陽乃「特別……ね。雪乃ちゃんにとって私は特別なんだろうけど……私にとっての雪乃ちゃんって、なんだろう?」

奏「俺に振らないでくださいよ」

 返答に困る。

陽乃「そうだね。ごめん」

 陽乃さんはぱっとそう謝った。

陽乃「特別なものは、大切にしなきゃ」
402 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/11/29(火) 14:31:05.36 ID:eOaOh90f0
403 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/11/29(火) 16:10:05.21 ID:Qkfv35Y/o
乙です
404 : ◆oUKRClYegEez :2016/12/03(土) 15:14:48.59 ID:8l/OkrBZ0
 俺にとって大切なもの。

 ショコラ。謳歌。ふらの。

 誰も優劣なんてつけがたい、俺の大切な人たち。

 こんな俺に好意を寄せてくれている女の子。

 でもいつかは、一人を選ばなければ。

 それが、彼女たちや俺にとって辛いことでも。
405 : ◆oUKRClYegEez :2016/12/03(土) 15:15:32.44 ID:8l/OkrBZ0
陽乃「ねえ――奏君はさ、どこから来たの?」

 ――そうだ。俺はここじゃないところから来た。

奏「遠いところですよ、たぶん」

 彼女たちに答えるために。まずは帰らなければ。

陽乃「ふーん……」

 Prrrrrrrrrrrr

奏「あ、すみません……」

 俺のポケットでスマホが鳴った。

陽乃「いいよ気にしなくて〜」

 陽乃さんがひらひらと手を振って出るように言った。

奏「ありがとうございます。……もしもし?」

チャラ神『……つながった! 一週間お店行かなかった甲斐があった!』

 電話の主は、あの神様だった。
406 : ◆oUKRClYegEez :2016/12/03(土) 15:16:49.48 ID:8l/OkrBZ0
奏「神様の世界にキャバクラあるのかよ」

 ツッコまずにはいられない。

チャラ神『そこは一旦おいといて! 実は、次のミッション次第で元の場所に帰れるんだよ!』

奏「……は? また唐突な」

 見ている人たちが怒りそうな超展k――もとい、急展開で。

チャラ神『前に君のことをアマノカミノソラウになんとか連絡しようとしたんだ。君の世界に目撃情報があったから、使者を送って。そうしたら、彼女の方でもイレギュラーが発生していたみたいで……。選択肢が、彼女の手を離れて暴走しているらしい』

奏「暴走……」

 これまたラノベの後付け設定みたいな……。

チャラ神『元はと言えば彼女の力である選択肢で君はそこに飛ばされている。だから、同じようにミッションで条件を満たし、彼女の力で戻ってこられるはずなんだ』
407 : ◆oUKRClYegEez :2016/12/03(土) 15:17:22.43 ID:8l/OkrBZ0
チャラ神『もしミッションに失敗すれば、今度は戻って来られなくなる。でも今回のミッションには挑戦しないっていう選択肢がある』

奏「脳内選択肢が消えなくなるってことは?」

チャラ神『ない。その時にはミッションの話自体がなかったことになる』

奏「うーん……」

チャラ神『悩むのはわかる。でも早くしてくれ。この回線もいつまで持つかわからない』

奏「わかった。やるよ」

 彼女たちを、いつまでも待たせておくわけにはいかない。

チャラ神『わかっ……。……ールで……。幸……のってる!』

 そこで電話は切れ、かわりにメールの着信が来た。

〈ミッション
 クリスマスでの決別を防ぐ〉

 誰かと誰かが、決別することが決定しているみたいなミッションだな……。

 『幸運を祈ってる』か……キャバクラの神様にそんなこと言われても、ありがたみなんて全くない。
408 : ◆oUKRClYegEez :2016/12/10(土) 16:39:45.70 ID:jYraYuME0
奏「おまたせしてすみません」

陽乃「いいよいいよ〜」

 謝ると(まあ形の上のものだけど)陽乃さんは手を振って許してくれた。

陽乃「で、誰からの電話? 故郷の彼女とか?」

奏「まさか。厄介ごとを持ち込むおっさんでした」

陽乃「はははっ! その割には長いような気もしたけど?」

奏「そうですか?」

 勘が鋭い。

陽乃「まあいいや。次のお店行こうか」

 手には、さっきの店の紙袋があった。
409 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/12/10(土) 17:37:42.89 ID:z+QCISU8o
乙です
410 : ◆oUKRClYegEez :2016/12/10(土) 19:11:25.99 ID:jYraYuME0
陽乃「今日はありがと」

奏「いえ、この程度ならいつでも」

陽乃「雪乃ちゃんは……選挙、どうするのかな」

奏「……?」

陽乃「生徒会選挙。雪乃ちゃんは、今まで姉である私を追いかけてきた。でも、文化祭の実行委員長にはならなかった。私がなったのに」

奏「……」

陽乃「彼と会って、雪乃ちゃんは変わったよ。あるいはあの女の子か、その両方か」

奏「俺には、変わったようには見えませんけど」

陽乃「そう? まあ君は昔の雪乃ちゃんを知らないしね。でもだからこそ。中心に近い位置にいながら、決して中心足りえない君に、頼みたいんだよ」

奏「傷つきますね……。……でも、おせっかいじゃ……」

陽乃「かもしれない。だから、もし雪乃ちゃんが行き場をなくしてしまうようなことがあったら……。もし比企谷君たちと仲たがいしちゃったときは、君が間に入ってくれないかな?」

奏「酷い役目ですね」

陽乃「お願い」

 今日初めて見る、軽い冗談を言っていた時とは全く違う目。

 真剣そのものの顔だった。

奏「……わかりました」

陽乃「私は、大切なものの扱い方を間違えたみたいだから」
411 : ◆oUKRClYegEez :2016/12/10(土) 19:13:07.19 ID:jYraYuME0
奏「違います」

陽乃「え?」

奏「そう考えることが間違っているんです」

 俺は、自分の選んだ選択肢を後悔したことはない。

 もちろん、嫌なことはたくさんあった。

 でも、俺が傷つくことで他の誰かが笑ったままなら、それでいいと思うんだ。

奏「だから、今までの自分を後悔しないでください。それが嫌なら、後悔したいのなら、これからを変えてこれからを努力してください」

陽乃「……うん。そうするよ」

 最後に陽乃さんは、ふわりと微笑んだ。
412 : ◆oUKRClYegEez :2016/12/17(土) 17:19:53.39 ID:nmgck8ud0
静「……比企谷。あとで職員室にこい」

 月曜日。

 重たい教室の雰囲気の中、チャイムの後の平塚先生の言葉で4時間目の授業は終わり、昼休みになった。

 俺は八幡が平塚先生について教室を出ていったのを確認してから、この空気を作っている一人に話しかけた。

奏「葉山くん。ちょっといい?」
413 : ◆oUKRClYegEez :2016/12/17(土) 18:52:41.06 ID:nmgck8ud0
隼人「どうした?」

奏「教室……なんか重たいよね」

隼人「……そうだな」

奏「葉山くん。俺は金曜日、君をつけてた」

隼人「陽乃さんから話は聞いた。……陽乃さん、随分と君を気に入っていたよ」

奏「そう?」

隼人「ああ。それに、何か今までとは違う雰囲気になってた」

 ……どうしてだろ?

奏「葉山くん。雪ノ下さん、由比ヶ浜さんから連絡あった?」

隼人「どうして?」

奏「あ……いや、なんでもないよ」

 ミッションのことを気にしすぎたか……。まだクリスマスにはしばらくあるのに。

隼人「二人をあの場に連れてきたこと、間違いだったとは思ってないよ」
414 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/12/19(月) 01:43:35.82 ID:BXazvas1o
乙です
415 : ◆oUKRClYegEez :2016/12/24(土) 20:28:25.57 ID:Z9u4TiK80
奏「え?」

隼人「比企谷君は自分の力で彼女たちの信用を勝ち取った。それなのに、彼のことを何も知らないでこの間の彼女たちは彼のことを馬鹿にしていた。俺には、それが許せなかった」

 ――ああ。だからか。

 八幡が、葉山君と友達になれないのは。

 八幡は、自分を犠牲にすることを厭わず、依頼を解決しようとする。それがどんな形であれ、本人たちの意向が叶うならそれでいい、という考え方。

 葉山くんは、自分たちの今の関係を崩したくないから、自分がそうでありたいと思ったことをそのままにしておいたい、という考え方。

 つまるところ――彼らは同族嫌悪なんだ。

 立場の違い故、異なるやり方で。しかし同じところを目指す彼らは、「ああはなりたくない」と思うと同時に、お互いのやり方に憧れて、そして同族嫌悪する。

奏「……そう」

 ここでもし、葉山君に「八幡に頼まれた?」と聞けば、十中八九「違う」と返ってくるだろう。

 八幡がそうであるように――彼もまた、自分の信念をしっかりと持っているから、悪びれなんてするはずがない。
416 : ◆oUKRClYegEez [sage]:2017/01/01(日) 12:10:59.32 ID:iRQ7Z3iM0
明けましておめでとうございます。
更新遅れてすみません
417 : ◆oUKRClYegEez :2017/01/01(日) 12:14:00.09 ID:iRQ7Z3iM0
奏「ごめん、変なこと聞いた」

隼人「いや、気にするなよ。まあ、あの空気は何とかしないといけないと思うけど」

奏「付き合ってくれてありがとう」

隼人「いや。俺も話せてよかったよ」

 そう言って俺たちは別れた。
418 : ◆oUKRClYegEez :2017/01/01(日) 12:14:42.55 ID:iRQ7Z3iM0
 放課後。

 さっさと教室を出ていった八幡と、それを慌てて追いかける由比ヶ浜さんを横目に俺も荷物をカバンに詰め、部室に向かう。

奏「こんにちは」

 部室が開いていることを確認しながらドアを開けた。中には、雪ノ下さんだけがいた。

雪乃「あら、甘草くん。部活は自由参加なのに、一体どうしたの?」

奏「……あ」

 すっかり忘れてた。

 だから八幡と由比ヶ浜さんがいないんだな。

奏「すっかり忘れてた。雪ノ下さんはどうして部活に?」

雪乃「私は、生徒会選挙のことで城廻先輩に相談しようと思って。……でも、そうね。先にあなたに相談しようかしら」

 雪ノ下さんは俺に椅子に座るよう促し、紙コップと紅茶の準備を始めた。
419 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/01/01(日) 20:16:23.07 ID:awpUG/uYo
乙です
420 : ◆oUKRClYegEez :2017/01/07(土) 15:33:34.18 ID:e1fpQld00
奏「相談って?」

 お茶を飲んで一息入れてから、俺は雪ノ下さんに尋ねた。

雪乃「私、生徒会長に立候補するべきかしら?」

奏「どうして?」

雪乃「一色さんの依頼を達成するには、それが一番手っ取り早いからよ」

 一色さんの依頼は信任選挙で悪い結果は出したくないけど会長にはなりたくない、というもの。

 あるいは、

雪乃「私が相手で選挙に負けるというのなら、彼女のメンツも保たれるでしょう?」

 誰もが納得するような、「この人が相手なら仕方ない」という負け方をすること。

 他の人、例えば俺なんかが立候補すると、誰もが納得するどころか一色さんに負けることすらあるだろう。

 でも、雪ノ下さんならそんなこともないのかもしれない。

奏「雪ノ下さんは、それで大丈夫なの?」
421 : ◆oUKRClYegEez :2017/01/07(土) 15:34:52.51 ID:e1fpQld00
雪乃「どういうこと?」

奏「文化祭の時も雪乃さんは仕事を多く抱えすぎて倒れてる。あの時とは違うんだろうけど……それでも、雪ノ下さんの性格というか、特性というか、できることを自分一人でしようとするところは、簡単に変わるものでもないよね」

雪乃「あなたが私を押し倒そうとしたときのことね」

奏「それは本当にごめんなさい」

 脳内選択肢のせいだから……。

【選べ

 1、雪ノ下雪乃を押し倒す

 2、雪ノ下雪乃を突き倒す 】
422 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/01/07(土) 18:28:05.97 ID:oCnQfaXNo
1
423 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/01/08(日) 09:49:10.66 ID:YAT/FdHoO

424 : ◆oUKRClYegEez :2017/01/14(土) 17:18:12.68 ID:3fVOm7Qq0
 あああああ……。フラグ立ててしまった……。

 前に雪ノ下さんのマンションの部屋で似たような選択肢が出た時は、雪ノ下さんが俺を投げ飛ばして拘束したんだったっけ……。もうずいぶんと前のように思える。

 って、そんなことじゃなくて。

 これ、どっちを選んでもあの時と同じようなことになる気がする。

 突き倒すのと押し倒す……どっちが悪いだろうか。

 どっちもいいわけないから、「どっちがいいか」なんて考え方はしない。

 まず、押し倒す方。

 長く密着する。つまり、雪ノ下さんが技をかけやすい。以上。

 次に突き倒す方。

 触れる時間が短い分、技はかけにくいだろうけど……椅子に座っている雪ノ下さんは、こけたりすると危ないだろう。

 なら……。
425 : ◆oUKRClYegEez :2017/01/14(土) 17:18:52.51 ID:3fVOm7Qq0
奏「雪ノ下さん」

 俺は立ち上がり、雪ノ下さんの座っている近くに行く。

雪乃「なにかしら」

奏「えっと……ごめんっ」

 謝りながら、雪ノ下さんを押し倒した。
426 : ◆oUKRClYegEez :2017/01/21(土) 22:28:53.97 ID:rk9WrJwV0
雪乃「……なにかしら」

奏「……え?」

 雪ノ下さんはそれはもう嫌そうな顔をしていたが……でも、俺に押し倒されていた。

 そして――

奏「いだだだだだだ!?」

 指の関節を極められていた。

 もう一度雪ノ下さんが聞いてきた。

雪乃「なにをしているのかしら?」

奏「いででででごめんなさいどきますごめんなさいっ」
427 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/01/22(日) 10:50:15.05 ID:S0mIQTAjo
乙です
428 : ◆oUKRClYegEez :2017/01/28(土) 10:06:35.26 ID:rLQYm3GN0
雪乃「甘草くん……懲りないわね」

奏「ごめんなさい」

 説明したいけど、選択肢のことは説明できない。

雪乃「で、押し倒してまであなたが言いたかったことはなにかしら?」

 あ、そういう風に解釈してくれたんだ。

奏「え、えと、それは……」

雪乃「ごまかさずにはっきり言って」

奏「雪ノ下さんに、生徒会長に立候補してほしくない」
429 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/30(月) 19:26:31.00 ID:2lu5tYde0
430 : ◆oUKRClYegEez :2017/02/04(土) 18:59:28.86 ID:OIc1yYja0
雪乃「それは、どうして?」

 どうして、だろうか。

 ミッションがあるから?

 いや、生徒会選挙は、彼女たちの決別に直接関係はしないだろう。

 もっとも、俺は何が原因で決別するかなんてまったくわからないけど。

奏「雪ノ下さんに無理してほしくないから、かな」
431 : ◆oUKRClYegEez :2017/02/04(土) 19:00:01.66 ID:OIc1yYja0
雪乃「……続けて?」

奏「と言われても……偽らざる本音なんだけど」

 いくら雪ノ下さんが優秀だとしても、いや実際優秀なんだけど、それでも女の子に無理はしてほしくないというか。

奏「前の学校で、俺が仲いい人たちがさ」

 ……まあ、実際には世界すら違う? らしいけどさ。

奏「自分勝手に気ままに、楽しくやってたからさ。仕事もするにはするけど、みんなで分担してさ」

 雪ノ下さんは無言で促す。

奏「でも、雪ノ下さんは違う。どうしても、たぶん、一人で抱え込んでしまうんだ。信頼をおく人ができても、いやきっとその人にこそ、頼らないんだと思う。たぶん、雪ノ下さんはそういう人だよ」

雪乃「たぶん、が多いわね」

奏「仕方ないよ。まだ会ってそう時間も経ってない」
432 : ◆oUKRClYegEez :2017/02/04(土) 19:08:34.70 ID:OIc1yYja0
雪乃「まあ、確かにそうね」

奏「でも、たぶんをつけていても、俺はほぼ確信に近い思いだよ」

雪乃「……時間、経っていないのに、ど」

奏「わかるよ。これでも結構、個性豊かな人たちと仲いいんだ」

 雪平ふらの。遊王子謳歌。ショコラ。他、生徒会の人たちやお断り5の人たち。

 個性豊かな、俺の知っている人たち。

奏「経験値、じゃないかもしれないけど、俺なりに、理解しているはずだよ」

 それはきっと八幡や、由比ヶ浜さんや、平塚先生も。

 だからこそのこの奉仕部で、生徒会になって雪ノ下さんがたとえ体を崩さずに仕事ができたとしても、いままでの奉仕部はたぶん、消えてしまうから。

奏「だから、俺は雪ノ下さんに立候補してほしくない」
433 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/02/04(土) 21:03:34.17 ID:sGSnL1a50
いきなり人を押し倒した奴の話を真面目に聞いてあげる人間の鑑
434 : ◆oUKRClYegEez [sage]:2017/02/04(土) 21:54:10.83 ID:OIc1yYja0
>>433
に、二回目だから(震え声)
435 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/02/05(日) 11:03:36.52 ID:6nVAi4URo
乙です
436 : ◆oUKRClYegEez :2017/02/11(土) 18:28:53.42 ID:v+y7baiA0
雪乃「……まだ理由が薄いわね」

奏「…………」

【選べ

 1、「雪ノ下さんともっと話したいから……かな」

 2、「生徒会で時間を取られるようになったら、雪ノ下さんを攻略できないじゃないか」  】
437 : ◆oUKRClYegEez :2017/02/11(土) 20:21:26.94 ID:v+y7baiA0
 なぜ二つとも口説くような文言なのか。

 『理由』になってないわけじゃあないけど……違う気がする……。

奏「雪ノ下さんともっと話したいから、かな」

雪乃「たとえばどのような?」

奏「……世界平和?」

雪乃「比企谷君と同じような思考回路ね」

 クスリと雪ノ下さんは笑った。

雪乃「一生の?」

奏「……少なくとも、八幡と由比ヶ浜さんに相談してからにしてほしい。俺なんかより、あの人たちの方が雪ノ下さんのことを知ってるから」

 一生のお願い、と言わせたかったのかな……。

雪乃「……わかったわ。明日、二人に聞いてみることにするわ」
438 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/02/12(日) 00:55:27.68 ID:FKIX/GzOo
2
439 : ◆oUKRClYegEez :2017/02/18(土) 13:42:27.53 ID:1/d0bfd50
結衣「な、なにかな」

奏「今日、奉仕部の部室に来てほしいんだ」

結衣「どうして?」

奏「雪ノ下さんが、話があるって」

結衣「ふーん……。ゆきのん、どうしてメールとかで教えてくれなかったんだろう……」

奏「もし雪ノ下さんから連絡来てたら、どうしてた?」

結衣「それはもちろん、すぐになんの話か聞いて……」

奏「でしょ? あくまで、雪ノ下さんは部室で話したがってた。でも由比ヶ浜さんに尋ねられたら、自分で話してしまうかもしれないって言ってた」

結衣「……。じゃあ、どうして奏くんには言ったのかな」

奏「昨日、部活が休みになったことすっかり忘れててさ……。で、たまたまそういう話を聞いて、だったら伝えるって請け負ったんだ」

結衣「ヒッキーには?」

奏「家で言ってる」
440 : ◆oUKRClYegEez :2017/02/18(土) 13:42:54.66 ID:1/d0bfd50
 と由比ヶ浜さんに言ったものの、実を言うと八幡から「行く」という言質をとってない。

 俺は言ったけど、八幡は乗り気じゃない返事だったし、放課後逃げようとしたら捕まえて引きずってでも連れて行こうと思っている。
441 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/02/19(日) 02:06:02.74 ID:+Rb/pRc2o
乙です
442 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/02/20(月) 06:31:17.90 ID:q1JmlTJB0
オイラー乙ゥ〜
443 : ◆oUKRClYegEez :2017/02/25(土) 17:21:52.66 ID:twr3JhCv0
奏「八幡」

 授業が終わってするっと帰ろうとしている八幡を取る。

八幡「なんだよ」

奏「奉仕部、行くよ。昨日言ったでしょ……。雪ノ下さんから招集かかったって」

八幡「その雪ノ下が自由参加にしたんだろうが」

奏「雪ノ下さんだって前言撤回くらいするさ」

八幡「行かないと言ったら?」

奏「平塚先生を呼ぶ。結婚してくれるっていう若い男性がいるって」

八幡「やめろよ……。本当に食いついてきそうだろ……」
444 : ◆oUKRClYegEez :2017/02/25(土) 17:23:04.30 ID:twr3JhCv0
奏「連れてきたよー」

雪乃「……本当に連れてこられたのね……」

結衣「やっはろー」

八幡「……」

奏「やっはろー」

 無言で椅子に座る八幡を俺含む三人は横目で見ながら、挨拶を交わした。

八幡「それで、話って?」
445 : ◆oUKRClYegEez :2017/03/04(土) 22:12:01.81 ID:IFyOdzSE0
奏「雪ノ下さん」

雪乃「……ええ、そうね。集まってもらったのは、私の相談を聞いてもらうためよ」

結衣「ゆきのんの?」

雪乃「ええ。……私、生徒会長に立候補しようと思うの」

八幡「どうしてだ?」

雪乃「あなただってわかっているでしょう。一色さんを傷つけないように会長にしないためには、これしかないって」

八幡「それは最悪応援演説で……」

結衣「それはダメだって結論つけたよね?」

八幡「……」
446 : ◆oUKRClYegEez :2017/03/11(土) 12:34:38.61 ID:I1TkvR3G0
結衣「私、ずっと考えていたんだけど……。私が、立候補したらいいと思う」

八幡「……」

 知ってたな。

雪乃「それは――」

奏「当選は、できると思う。でも、それじゃあ雪ノ下さんが立候補することとかわらない」

八幡「……ああ」

 八幡だって、わかってないはずない。

 二人のどちらかが欠けても、奉仕部は成り立たなくなる。

 八幡も、たぶんそう。

 ……じゃあ、俺はどうなのだろう。

 俺は――。
447 : ◆oUKRClYegEez :2017/03/18(土) 12:32:59.60 ID:iE2K0pGf0
 ……もしかして、俺だけは。

 この奉仕部において、「例え欠けても奉仕部が成り立つ存在」なんじゃないのか?

 なら、俺が。会長に立候補すればいい。たったそれだけのことが、どうして今まで思いつかなかったのだろう?

 俺が、本来はこの学校にいてはいけない存在だからか?

 そうだとしても、今だけは――!

奏「俺が、立候補するよ」
448 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/20(月) 15:05:13.58 ID:+BpvOuNh0
こんな変態が当選できるわけないだろ!いい加減にしろ!
449 : ◆oUKRClYegEez :2017/03/25(土) 21:20:08.66 ID:DBqd1WW+0
八幡「……お前が立候補しても、勝てる見込みはないだろ」

 そうでしたー!

 学園祭の件はそこそこ知れ渡ってて、かといってその悪い印象を挽回するようなこともしていない。

 そもそもの問題、俺は一色さんの「対等な敵」足り得ない。

雪乃「……」

結衣「……」

 二人は黙ってしまい、八幡はため息をついた。

 なにもそこまで飽きれなくてもいいじゃないか。
450 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/26(日) 23:58:02.21 ID:5Dw/ncTw0
(当選は)駄目みたいですね…(達観)
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