P「ゲームの世界に飛ばされた」FINAL2

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11 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/12/26(土) 23:00:42.93 ID:D7OA6XJDO
>>10
誕生日なら1日前だぞ?
12 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2015/12/27(日) 21:26:29.90 ID:i5cmhxw/O
ー 魔導船 コクピット ー



キラキラキラ…



美希「すごーい! 星が、キラキラなのー……!」

響「ホントだ。きれいだなー……」

真美「真美たち、ホントのホントにうちゅーにいるんだねー……」

真「なんか、感動だなぁ!」

春香「これが、宇宙かぁ……」



やよい「うちゅーって、とってもしずかなところなんですね」

やよい「さっきから、わたしたちの声しか聞こえないですー」

伊織「当たり前じゃない。宇宙空間には音を伝える空気がないんだから」


やよい「えええっ!? 空気がないの!?」ガタッ


やよい「た、たいへんです! 空気がないとわたしたち、生きていられないですー!」アタフタ

雪歩「だ、大丈夫だよ、やよいちゃん。この船には空気があるみたいだから」

やよい「そ……そうなんですか? うー、よかったですー」ホッ

13 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2015/12/27(日) 21:30:35.12 ID:i5cmhxw/O

やよい「でも、やっぱり音がないと、なんだかさみしいですよねー」

千早「そうね。ここまで無音だと、私でも落ち着かないわ」

貴音「……いえ、宇宙に全く音が無いわけではありません」

やよい「えっ? そーなんですか?」

貴音「宇宙に散りばめられた星々の中には、地球のように大気を持つものもあります」

貴音「ただわたくしたちに聞き取れないだけで、その星には確かに音が存在するのでしょう」

やよい「えっと??」

伊織「つまり、この広い宇宙を探せば、地球みたいな星があるかもしれないって事よ」

やよい「じゃあ、その星にもわたしたちみたいな人間がいるんですねっ!!」

貴音「わたくしたちとまったく同じとは限りませんが、何らかの生物が繁栄している星はあるでしょう」

貴音「そして、音が存在する星ならば、音楽があってもおかしくはありません」

貴音「その星ならではの、音楽が」

やよい「うっうー! ほかの星の歌とかもきいてみたいですー!」

伊織「そうね。もし歌を歌う宇宙人がいるなら、会ってみたい気もするわね」

貴音「見知らぬ星の、言葉の通じない方々とも、音楽という共通言語でわたくしたちは会話をする事ができるでしょう」

貴音「そう考えると、やはり音楽というものの偉大さを改めて感じられますね」

千早「………」フム





やよい「……ちい〜さな〜〜♪ ての〜ひらにこぼ〜れた〜♪ 」

やよい「ま〜んげつのっ♪ かけらに〜もすこしにた〜♪ 」

やよい「みじかいいのちぼくだけの〜たからもの〜っ♪ 」



春香「やよい、なんだかご機嫌だね?」

伊織「さっきの貴音の話を聞いて、遠くの星の人たちに歌を聴いてもらうんですって」

春香「……ふふっ♪ そっかぁ。やよいらしいなぁ」

千早「高槻さんの歌なら、きっと届くと思うわ」ニコニコ

14 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2015/12/27(日) 21:34:51.62 ID:i5cmhxw/O

貴音「………」

貴音(わたくしたちは、少しずつ確実に、月へと近づいています)

貴音(もうすぐあの方との約束を果たせるというのに、何故こうも胸がざわつくのでしょうか)

貴音(……やはりわたくしは、後悔しているのですね)

貴音(浅はかだった、自分の行動を……)


「……かね。たーかーねっ!」


貴音「ひぅ!?」ビクッ


響「あ、ご、ごめん。驚かすつもりじゃなかったんだけど」

貴音「……響ですか。心臓が止まるかと思いました」ドキドキ

響「だから悪かったってばー」

響「それよりさ。月に着いたら、みんなが貴音にガイドして欲しいって!」

貴音「……がいど? わたくしが、ですか?」

響「うん! だって、月は貴音の故郷なんでしょ?」

貴音「………」

響「……あれ? もしかして、イヤだった?」

貴音「いえ、そのような事はありません。……そうですね、わたくしで良ければ、案内役を務めさせていただきます」

響「ホントか! ……おーいみんな! 貴音が月を案内してくれるってさー!」

春香「わぁ、やったぁ!」

雪歩「四条さんの案内……うふふふ」

伊織「ま、ガイドがいないと観光も楽しめないわよね」

真「ねえ貴音、月ってどんなところなの?」

美希「おにぎりとかある?」

やよい「あの、もやしはありますか?」

律子「こらこら、そんなにいっぺんに話しかけても貴音だって困るでしょう?」

律子「それに、遊びに行くわけじゃないんだから」

P「いいじゃないか、少しくらい。月に行くなんて、一生にあるかないかなんだからさ」

律子「って言っても、ゲームの世界の月ですけどね」

15 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2015/12/27(日) 21:36:54.84 ID:i5cmhxw/O
あずさ「……そういえば、月には貴音ちゃんのお友達はいるの?」

貴音「………」

響「……貴音?」

貴音「……ええ。月の民自体が少数民族のようなので、知り合いは少ないですが」

あずさ「うふふ♪ 貴音ちゃんのお友達に会うの、楽しみねぇ」

貴音「………」



亜美「ねーねーお姫ちん、ハミングウェイにはもう会ったー?」

貴音「はみんぐうぇい……ええ、会いましたね。皆一様に同じ歌を口ずさんでいて、何やら楽しそうな方たちでした」

千早「…………歌?」ピクッ

真美「お? 千早お姉ちゃんが食いついた」

千早「四条さん。その、ハミングウェイというものについて是非詳しく聞かせて欲しいんですがっ」ズイッ

春香「ああ、千早ちゃんに火が点いちゃったよ」

貴音「ふふ……。そう焦らずとも、じきに会えます」

貴音「それに千早。あなたの歌声に敵う者など、そうはいません。安心してください」

千早「い、いえ、私は別にそういう意味で言ったつもりでは……」

真「歌の事になると、ホント千早は生き生きとするなぁ」



亜美「んじゃ、月に着いたらとりあえずハミーたちのところに行こっか?」

やよい「わあ、すっごく楽しみですー!」

律子「ちょっと、勝手に決めないの!」

P「まあまあ。一通り貴音の知り合いに会って行くのも悪くないさ」

律子「もう、プロデューサーは呑気なんだから……」

伊織「諦めなさい、律子。これは完全に月観光の流れよっ♪ 」

律子「……わかったわよもう」

律子「その代わり、羽目を外し過ぎない。月の民の人たちに迷惑をかけない」

律子「この二つは守る事。いい?」



アイドルたち「はーーい!!!」



貴音「………」

16 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2015/12/27(日) 21:40:26.28 ID:i5cmhxw/O

律子「……さて、月に着くまでまだ時間がかかるみたいですけど、この後どうします?」

P「じゃあ、一旦解散にするか。見たところ船室はたくさんあるみたいだから、みんな適当に休むといいよ」

P「月に着いたら、またしばらく休むヒマはないかもしれないからな」

春香「あの、プロデューサーさん」

P「ん? どうした?」

春香「そろそろお腹空きませんか? 地球を出発してから、私たち何も食べてませんよ?」

P「あ、忘れてた。それじゃあ、誰か料理を……」

美希「はいっ! ミキがやるの!」バッ

P「美希……気持ちは嬉しいが、ひとりでやるつもりなのか?」

美希「うん!」

真「美希、いつになくやる気だね?」

美希「もちろんなの! これも、将来のタメに必要な事だもん!」

律子「でも、さすがに美希ひとりに任せるわけには……」

あずさ「あの〜、私も美希ちゃんと一緒にお料理してもいいですか〜?」

やよい「あ、それならわたしもお手伝いしますっ!」

律子「そうね。あずささんとやよいが一緒なら、心配いらないでしょう」

美希「あずさ、やよい、よろしくお願いしますなの」ペコリ

あずさ「頑張りましょう♪ 」

やよい「よろしくお願いしまーす!」ガルーン



P「それじゃ、料理ができるまで一旦解散だ」





貴音「………」スタスタ


響「……貴音、どこ行くんだ?」

貴音「少々散歩をして参ります。探さないでください」ペコリ

響「いや、そんな、家出じゃないんだから」


貴音「………」スタスタ


響「貴音……?」

17 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2015/12/27(日) 21:45:13.74 ID:i5cmhxw/O
ー 魔導船 船室1 ー


亜美「ねえねえ真美。ヒマだし、魔導船の中をタンケンしてみない?」

真美「……亜美。真美はね、もうそーゆー子どもっぽい事は卒業したんだよ」

亜美「えっ?」

真美「真美は『お姉ちゃん』だかんね。いつまでも遊んでらんないのさっ!」

亜美「……どしたの? 真美、なんかヘンなもんでも食べた?」

真美「食べてないよ。あと、もうこれからは好き嫌いもなくす!」

真美「イタズラもやめるし、兄ちゃんやりっちゃんを困らせたりもしないんだ!」

亜美「うあうあ〜! 真美がおかしくなっちゃったよ〜!」

真美「んっふっふ〜♪ 亜美、困ってる事はない? お姉ちゃんになんでも言ってごらん?」

亜美「真美がヘンになって困ってる。あと、いっしょにタンケンしてくんない」

真美「ヘンじゃないもん! あと、タンケンなんて子どもっぽいからやんない!」

亜美「ぬぅ……このわからずやめっ! いいもんね! ひびきん誘うから!」

亜美「真美のバカっ!」

タタタ…


真美「亜美っ……」


ガチャ…バタン!


真美「行っちゃった……」



真美(……まあ、亜美はそーカンタンに甘えてくんないってわかってたよ)

真美(真美は『お姉ちゃん』に目覚めてまだまだ日があさいモンね。まずは姉経験値をかせがなくっちゃ!)

真美(そして……)

真美(いつか、亜美にめっちゃヒザまくらしてやるかんね……!)



真美(亜美、首輪を洗って待っているのだ……!)


真美「ふっふっふっふ……」

18 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2015/12/27(日) 21:48:17.12 ID:i5cmhxw/O
ー 魔導船 船室2 ー


春香「……きーらいーなものでもーすきーになーりーたーい♪ 」シュッシュッ

春香「ふふんふーん♪ 」ポンポンポン


…コンコン


春香「……はーい、どうぞー」


ガチャ…


律子「春香、ちょっといい?」


春香「あ、律子さん」

律子「……何してたの?」

春香「はい、少し剣の手入れを」チャキッ

律子「はぁ……。見事にこの世界に染まってるわね」

律子「剣を手入れするアイドルなんて、聞いた事ないわよ……」

春香「そ、そうですよねぇ、あはは……」

律子「でも、これからの事を考えれば、それも必要な事なのよね。月は小鳥さんの庭のようなもの。魔物たちの攻撃も激しくなってくるでしょうから」

春香「……そう、ですね」



律子「あのね、春香……」

春香「はい?」

律子「………」

春香「? ……律子さん、どうかしたんですか?」

律子「その……」

律子「春香のお父さんって、どんな人だった?」

春香「お父さん……あ、もしかして、この世界でのお父さんの事ですか?」

律子「ええ」

春香「えーっと、そうですねぇ」

春香「明るくて、優しい人でしたね。ちょっとえっちなところもあるけど……」

律子「ふーん……」

春香「本当のお父さんじゃないのに、なんだか安心するんです。……えへへ♪ 不思議ですよね」

春香「あ、そういえばこの剣、お父さんが使ってたものなんですよっ!」チャキッ

律子「そう、なのね」

春香「……でも、どうして急に私のお父さんの事を聞いたりするんです?」

律子「えっと、まあ……やっぱり気になるもの」

律子「…………春香のお父さんは、私にとっての父でもあるみたいだし」

春香「そうなんですかぁ〜。律子さんにとっても……」



春香「………………え?」

19 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2015/12/27(日) 21:51:43.47 ID:i5cmhxw/O

春香「あ、あの、律子さん? それってどういう意味ですか?」

律子「どういうって、そのままの意味よ」

律子「この世界での春香と私の父親は同じなの。つまり……」

律子「私とあなたは、姉妹って事になるわね」

春香「わ、私と律子さんが、姉妹……?」

律子「その様子だと、プロデューサーから何も聞かされてないみたいね。……私も、この事はついこの間知ったばかりなのよ」

春香「は、はぁ」

律子「ま、だからって今さら何が変わるってわけでもないし、これまで通りでよろしくね?」

春香「………」

律子「……春香?」

春香「……あ、あのっ」

春香「お姉ちゃんって呼んでも、いいですか!?」

律子「」



律子「いや……だから、姉妹っていうのはあくまでこの世界の設定の話であって」

春香「いいんです、この世界だけで」

春香「私、一人っ子だから、姉妹とか憧れるんですよね!」

春香「だから、律子さんさえ良かったら……お、お姉ちゃんって呼ばせてもらえないかなって……///」モジモジ

律子「………」

律子「……わ、わかったわよ。これまで姉らしい事なんて何ひとつできなかったし」

春香「わぁ! ありがとうございます、お姉ちゃん!」

律子「……///」

春香「えへへ……///」

律子(う〜……。これ、涼に呼ばれるのとはまた違って、何か新鮮な響きがあるから変な気持ちになるわね……)


律子「……って、これじゃまるで、私が春香にお姉ちゃんって呼ばせに来たみたいじゃない!?」

春香「え? 違うんですか? お姉ちゃん」

律子「違うわよ! 私はその、一応事実だけをあなたに伝えようと思って……」

春香「わざわざありがとうございます、お姉ちゃん!」

律子「ちょっと春香、連続で呼ぶのやめて。すっごい恥ずかしいから」

春香「え〜、いいじゃないですかぁ。せっかくの姉妹なんだから♪ 」

律子「はぁ……やっぱり言わなきゃ良かったわ……」

20 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2015/12/27(日) 21:58:41.06 ID:i5cmhxw/O
ー 魔導船 コクピット ー


雪歩「……こう来たら」

雪歩「こう、返す」シュッ

雪歩「こっちから来たら……」

雪歩「こうっ!」シュッ


バキッ!


響「うぎゃっ!?」


雪歩「あっ」


雪歩「あわわわわ!」

響「雪歩……いいパンチだったぞ……」グッタリ

雪歩「ごっ、ごめんね響ちゃん! わ、私、別に当てるつもりじゃなくて……」

響「うん、わかってるさー。あいたたた……」サスサス

雪歩「うぅ、やっぱりこんなところでカウンターの練習なんてするんじゃなかったよぉ」

雪歩「響ちゃんを殴っちゃう私なんて……私なんて……」チャキッ

響「わあああ! 雪歩ダメ! ここ宇宙だから!」ガシッ

雪歩「そ、そうでしたぁ」

21 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2015/12/27(日) 22:01:11.76 ID:i5cmhxw/O

響「……雪歩、ひとり?」キョロキョロ

雪歩「うん。みんなはきっとお部屋にいるんじゃないかなぁ」

響「………」

雪歩「響ちゃん、なんだか元気ないね。どうかしたの?」

響「貴音見なかった?」

雪歩「四条さん? ……見てないけど、いないの?」

響「散歩に行くって言ったっきり、どっかに行っちゃったんだ」

雪歩「そうなんだ」


亜美「……あ、ひびきん見っけ!」


響「亜美」

雪歩「亜美ちゃん」

亜美「お、ゆきぴょんもいっしょだったんだね」

響「亜美、貴音見なかった?」

亜美「お姫ちん? 見てないよー?」

響「そっか……」

亜美「なになに? ひびきん、もしかしてお姫ちんとケンカしたの?」

響「いや、そういうのじゃないんだ」

響「ただ、今日の貴音は様子がおかしい気がするんだよなー」

亜美「そーかな?」

響「うん。うまく言えないんだけど、いつもよりテンションが低いような……」

雪歩「そういえば、魔導船に乗り込んでからの四条さん、物思いにふける事が多い気がするよ」

亜美「んー、でもさ、お姫ちんっていっつもそんなカンジじゃない?」

雪歩「そうなんだけど、今日は特に表情が真剣っていうか、色っぽさが増してるっていうか」

雪歩「何か心配事があるのかなぁ……」

響「………」

亜美「………」

22 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2015/12/27(日) 22:04:01.76 ID:i5cmhxw/O

亜美「あ、もしかして……」

響「亜美、なんかわかったのか?」

亜美「ほら、この世界ではお姫ちんのふるさとは月って事になってるっしょ?」

雪歩「うん、そうみたいだね」

亜美「だから、ふるさとに帰れるから、ちょっとキンチョーしてるんじゃない?」

雪歩「うーん、それだけなのかなぁ……」

亜美「ヘーキヘーキ、心配ないって!」

雪歩「だといいけど……」



響「………」

響(たまに貴音がホームシックになったりするのは、自分も知ってる)

響(でも、それは現実世界での事だし、今回はそういうのとは違う気がするんだ)

響(何かもっと、深刻な事で悩んでるような……)

響(貴音……自分たちには話せない事なのか……?)

響(…………自分、貴音の力になりたいぞ)



亜美「それより2人とも、いっしょに魔導船の中タンケンしてみない?」

響「探検か。……そうだな。貴音は探さないでって言ってたけど、ちょっと心配だし」

雪歩「私は、遠慮しておこうかな」

亜美「ダメだよ! ゆきぴょんもいっしょに行くの!」ガシッ

雪歩「えっ? で、でも……」

亜美「モンク言うなら真美に言ってよね! 付き合い悪い真美がいけないんだから!」

響「よーし! じゃあ行くか!」

亜美「おー!」


スタスタ…


雪歩「ひぃーん! なんで私までー!」ズルズル

23 : ◆bjtPFp8neU [sage]:2015/12/27(日) 22:07:57.05 ID:i5cmhxw/O
短いですがここまでです
24 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/12/28(月) 02:50:23.97 ID:nzqSv7A2o
お疲れ様です
初期バンプ好きな高槻さんかわいい!
25 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/01/08(金) 23:26:17.95 ID:CvdDjGBvO
ー 魔導船 船室3 ー


真「……9974……っ」グッ

真「……9975……っ」グッ


…ガチャ


真美「まーこちん♪ 」

真「あ、真美」

真「……よっと」スタッ

真「ふぅ。……どうしたの?」

真美「真美のヒザはいらんかえ?」

真「えっ? 意味がわからないんだけど……」

真美「んもう、まこちんはニブいですな〜。ヒザまくらですよ、ヒザまくら!」

真「膝枕? いや、ボク、まだトレーニングの途中だし……」

真美「そんなツレナイ事言わずにためしてみてよ〜。ソンはさせないよ〜?」

真「なんの勧誘だよそれ……」

真美「ほらほら早く〜」グイッ

真「あ、ちょ、ちょっと真美、引っ張らないでよ!」



真美「ねーねーどう? 真美のヒザまくら」ナデナデ

真「……うん、気持ちいいよ」

真美「まこちん、トレーニングで疲れてるんでしょ? 寝ちゃってもいーよ? 真美が起こしてあげるからさ」

真「うん……」

真(真美の太もも、柔らかくて、あったかくて、本当に眠くなっちゃうかも)

真(あー……なんか、落ち着くなぁ……)



真「zzz……」

真美「……まこちん?」

真美「………」

真美「んっふっふ〜♪ むぼーびな寝顔しちゃって……」ナデナデ

真美(……これで、ちょっとはお姉ちゃんに近づいた……かな?)

26 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/01/08(金) 23:28:29.22 ID:CvdDjGBvO
ー 魔導船 船室4 ー


カン、カン、カン…


P「……ふぅ。このくらいの大きさでいいかな」

P「あとはこれに紐を通せば完成だな」


…コンコン


P「ん? 空いてるぞー」


…ガチャ


伊織「……お疲れ様」


P「お、伊織か。どうした?」

伊織「ちょっと話があるんだけど」

伊織「……って、何やってるのよ?」

P「あ、これか? 手持ち無沙汰だったから、少し工作をな」

伊織「ふーん……。ヒマなのねぇ、アンタも」

P「俺に出来る事なんて限られてるからな。まあ、ヒマ潰しも兼ねてるけど」

27 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/01/08(金) 23:29:51.78 ID:CvdDjGBvO

P「……で、話ってなんだ?」

伊織「………」

伊織「アンタに、謝ろうと思って」

P「え? 俺、伊織に何かされたっけ?」

伊織「ほら、巨人に潜入した時の事よ」

伊織「あの時、私、ヒドい事言っちゃったじゃない。『アンタはお気楽でいいわね』なんて」

伊織「よく考えてみれば、アンタみたいに過保護なやつが、私たちがこんな事になってお気楽でいられるわけがないのよね」

伊織「あの時の私、ちょっといろいろあって……」

P「知ってるよ」

伊織「えっ……?」

P「俺の方こそ、伊織に謝らなきゃいけない」

P「ルビカンテの事、ひとりで悩んでいたんだよな。気づいてやれなくて、ごめん」ペコリ

伊織「ちょ、ちょっと、頭上げなさいよ。アンタは何も悪くないんだから」

伊織「私が思慮の浅い発言をしちゃったのが悪かったの!」

伊織「……それに」

伊織「赤い悪魔の事は、すでに決着が着いた事よ」

P「……うん。そうだったな」

28 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/01/08(金) 23:31:50.97 ID:CvdDjGBvO

伊織「私、今では感謝してるの。……赤い悪魔に出会えた事に」

伊織「……ううん。この世界へ来れた事に」

P「伊織……」

伊織「この世界へ来て、いろんな人に会って、いろんな事を教わった」

伊織「それは、普段の生活の中じゃ気づけなかった事かもしれないわ」

伊織「だから、その……」

伊織「…………あ、ありがと。この世界へ連れて来てくれて」モジモジ

P「……うん」

P「伊織、いい顔になったなぁ」

伊織「ふ、ふんっ。私がいい顔なのは元からよ!」


…ポンッ


伊織「あっ……」

P「嬉しいよ。伊織がこんなに頼もしくなってくれて」ナデナデ

伊織「……///」

伊織「ま、まあ、今だけは頭を撫でる事を許してあげるわ……」

P「はいはい」ナデナデ

伊織「〜〜♪ 」

29 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/01/08(金) 23:36:10.98 ID:CvdDjGBvO

…ガチャ


千早「プロデューサー、頼まれていた物を持ってきまし……」


P「……お、千早、早かったな」ナデナデ

伊織「んなっ!?」ビクッ


千早「……何をしているんですか?」ジト


伊織「ち、千早、違うのよこれは!!」

伊織「ちょっとアンタ、いつまで撫でてるのよっ!!」バッ

P「ええぇ……。嬉しそうにしてたじゃないか伊織……」

伊織「ば、バカっ! あ、アンタが撫でたいって言ったから撫でさせてあげたんじゃない!」

伊織「千早、勘違いしないでよ!?」

千早「え、ええ……」

千早(満更でもない表情だったのに取り繕おうとする水瀬さん、可愛い……)



千早「プロデューサー、どうぞ」スッ

P「お、ありがとな、千早」

伊織「……何よそれ。紐?」

千早「ええ。丈夫で細い紐を探してきてくれって、プロデューサーに頼まれて」

伊織「ふーん……」

P「この細かく砕いたクリスタルの欠片に、紐を通して……」スッ

P「クリスタルの首飾りの完成だ!」

千早「首飾り、ですか」

伊織「アンタはさっきからそれを作っていたわけなのね」

P「ああ。ちなみに、ちゃんと人数分あるぞ」

P「戦いはみんなに任せるしかない。だから、俺はせめてこういう形でみんなの力になれたらと思って」

千早「プロデューサー……」

伊織「それはいいけど、アンタ、モノづくりのセンスないわねぇ」

P「う、うるさいなぁ」

伊織「……ま、完成したら、ありがたく使わせてもらうわ。その首飾り」

伊織「アンタの気持ち、充分わかったから」

P「伊織……ありがとな」ニコッ

伊織「ふ、ふんっ」プイッ

千早「ふふっ」ニコッ

30 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/01/08(金) 23:40:08.89 ID:CvdDjGBvO
ー 魔導船 厨房 ー


美希「それじゃあ2人とも、ご指導よろしくお願いしますなの☆」ペコリ

やよい「こちらこそよろしくお願いしまーす!」ペコリ

あずさ「うふふ♪ よろしくね〜」



美希「……で、まずはどうするの?」

あずさ「まずはお米を炊きましょうか」

美希「お米! さすがはあずさ、わかってるの!」

美希「……んー、でも、ここにはアレがないみたいだよ?」キョロキョロ

あずさ「あれって……もしかして炊飯器の事かしら?」

美希「そう、それ。ミキ、家で自分でお米炊いたりする時は、いつもそれを使ってるの」

あずさ「炊飯器がなくても、お鍋があれば大丈夫よ〜。洗ったお米とお水を入れて、ぐつぐつ煮ればいいの」

あずさ「ただ、火力が強すぎるとお米が焦げちゃうから、気をつけないといけないけど」

あずさ「炊飯器はボタンひとつで全部やってくれるから、便利よね〜」

美希「ふーん。炊飯器がないと、なんだか難しそうだねー」

あずさ「美希ちゃん、お米を研いでもらえる?」

美希「わかったの」



美希「おいしくなぁれなのー」ジャバジャバ

美希「ねえあずさ、これくらいでいい?」

あずさ「ええ。それじゃ、洗ったお米をこのお鍋に移してね」

美希「はいなの」ザバー

あずさ「それじゃ……」

あずさ「ファイア」ボッ

美希「あ、そっか。コンロがなくても魔法で火を起こせばいいんだね」

あずさ「そうよ〜。あとは私に任せて、美希ちゃんはやよいちゃんを手伝ってあげてね〜」ボォォ

美希「りょーかいなの!」

31 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/01/08(金) 23:42:49.73 ID:CvdDjGBvO

美希「やよいー」

やよい「あ、美希さん! ちょっと手伝ってもらってもいーですか?」

美希「うん。ミキは何をすればいいの?」

やよい「スープを作ろうと思ってるので、お肉とお野菜を切ってもらえますか?」

やよい「お肉もお野菜もたくさんもらってきたので、どんどん切っちゃってください!」

美希「わかったの!」



美希「………」ザクザク

美希「……んー、なんかちゃんと切れてないカンジなの……」

やよい「美希さん。包丁を使う時は、左手はネコの手ですよ?」

美希「ネコの手?」

やよい「はい! こう、にゃんにゃんって」

やよい「ゆびを切らないようにするためです」

美希「そーなんだね」

やよい「あと、包丁を入れたら少し引いたほうが、ちゃんと食材が切れるかなーって」

美希「ふーん。さすがはやよいなの」

32 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/01/08(金) 23:46:25.58 ID:CvdDjGBvO

美希「えっと、包丁を入れて」ザク

美希「少し引く」スッ

美希「……あ、ホントだ。ちゃんと切れてるの」

やよい「それじゃあお願いしますね」

やよい「わたしはスープのおダシを取っちゃいます」

やよい「おナベに水とトリガラを入れてー」ジャー

やよい「いふりとさん、お願いします!」


スゥーー…


イフリート「久しぶりだなヤヨイーー!! オレに任せろおお!!」

イフリート「うおおおお!!」ボオオ


やよい「はわわっ! ちょっと火が強いかも」

やよい(もう少し、小さくしないと……!)グッ


ボオオオォ!!


やよい(ど、どうしよう!? 火が小さくならないですー!)


やよい「こ、このままじゃスープが!」

やよい「えっと、えっと……」オロオロ



あずさ「ブリザガ!」

パリパリッ……シャキーン!

ジュゥゥ…

33 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/01/08(金) 23:51:22.38 ID:CvdDjGBvO

やよい「……あ、あずささん!」

あずさ「危なかったわね〜。やよいちゃん、ケガはない?」

やよい「は、はい。でも、スープが……」チラ

あずさ「……大丈夫、スープはまだ使えると思うわ〜」

やよい「よ、よかったですー」

やよい「あの、すみません、あずささん」ペコリ

やよい「わたし、火を小さくしようとしたんですけど、よわくならなくて……」

やよい「いつもは、こんなことないんですけど……」

あずさ「………」

あずさ「もしかして、やよいちゃん……」

やよい「え?」

あずさ「ごめんなさい、なんでもないわ」



美希「2人とも、へーき? なんかすっごい燃えてたけど」

あずさ「ええ、大丈夫よ美希ちゃん。心配しないで」

やよい「うー……」ショボーン

あずさ「……さ、気を取り直して、続きをやりましょう?」ニコッ

やよい「は、はい……」

あずさ「お米の方は、あとは蒸らすだけだから、スープは私がやるわね」

あずさ「やよいちゃんは美希ちゃんと一緒に下ごしらえをお願いね?」

美希「やよい、失敗なんて気にする事ないの。一緒にガンバろ?」

やよい「あずささん、美希さん……」

やよい「わかりました。わたし、ガンバりますっ!」グッ



グツグツ…

あずさ(う〜ん……やよいちゃんが火加減を間違えるとは思えないわね〜)

あずさ(とすると、やっぱり考えられるのは〜)

あずさ(自分の力を抑えられなくなった……かしら)

あずさ(優しいやよいちゃんに、こんな強力な力が備わっているなんて)

あずさ(……少し、心配ね)

34 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/01/08(金) 23:53:46.44 ID:CvdDjGBvO

あずさ「……それにしても美希ちゃん」メラメラ

あずさ「どうして急にお料理を覚えようって思ったの?」

美希「うん」ザクザク

美希「ミキね、トロイアでファンの人の結婚式を見てて、思ったの」

美希「ミキも、あんな風に幸せになりたいって」

美希「それで、きっとそのためには花嫁修行が必要かなって」

あずさ「まあ、そうだったのね〜」

やよい「美希さん、すごいです!」

美希「んーん。やよいやあずさの方が全然すごいの」

美希「だって、ミキはまだまだ花嫁としてはミジュクだもん。2人がいないと、お料理なんてまったくできないし……」

美希「でもミキ、ガンバるって決めたの! ミキもいつか、みんなに祝福されて、幸せになりたいから!」

あずさ「うふふ♪ 私で良ければ、美希ちゃんのお手伝いをさせてもらうわ〜」

やよい「わたしも、お役に立てるかわかりませんけど、ガンバりますっ!」グッ

美希「2人とも……ありがとうなの!」

35 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/01/08(金) 23:58:01.76 ID:CvdDjGBvO
ー 魔導船 船首 ー


貴音「………」


貴音「月が、あんなに紅く……」

貴音「あのような色になってしまったのも、やはり魔物のせいなのでしょうか?」

貴音「………」



貴音(……ばはむーと殿。わたくしはこれから、仲間たちと共に月へ向かいます)

貴音(貴方との約束通り、皆の力を合わせて小鳥嬢を……)



貴音「………」



貴音(ばはむーと殿。わたくしは、今でもあの時の事を悔やんでおります)

貴音(あの時わたくしが、軽はずみな気持ちで小鳥嬢に会おうなどと考えていなければ……)

貴音(わたくしが、己の力を過信していなければ……)

貴音(恐らくばはむーと殿は、犠牲にならずに済んだのでしょう)

貴音(あんなに良くしてくれた友を、わたくしの所為で……)



貴音(…………無力)

貴音(わたくしはなんと無力なのでしょうか)

貴音(そして、なんと心の弱い人間なのでしょうか)

貴音(長らく共に戦ってきた戦友を失った響は、今や悲しみを乗り越えて大きく成長しています)

貴音(それなのにわたくしは、未だ過去の過ちに囚われたまま)

貴音(今のこの気持ちのまま、小鳥嬢に会ったら……)



貴音(…………わたくしは、自分を抑えられるかどうか分かりません)ゴゴゴ




亜美(お姫ちん、やっと見つけたけど……)

響(あんなおっかない貴音、初めて見たぞ……)

雪歩(四条さん……)

36 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/01/09(土) 00:03:01.60 ID:PFotBv2HO
ー 魔導船 食堂 ー


真「ズズッ……」

真「……うん、すごくおいしいよ! このスープ」

美希「ホント!? あは☆ ガンバったかいがあったの!」

雪歩「美希ちゃん、すごいなぁ。あずささんとやよいちゃんに手伝ってもらったとはいえ、初めてでこんなおいしいお料理作っちゃうんだもん……」

美希「ミキ、もっとガンバるよ! もっともっとガンバって、早くハニーのお嫁さんになるの!」

あずさ「うふふ♪ 愛の力ねぇ〜♪ 」



真美「むむむ……」

真美(ここへきてミキミキが花嫁シュギョーとか、真美、出遅れもいいとこっしょ〜)

真美(……でも、ダイジョーブ。まだあせる時間じゃないっぽいよ)

真美(真美が『お姉ちゃん』をキワめれば、きっと妹のミキミキにも、ひとりっ子のはるるんにも負けないもんねっ!)

真美(兄ちゃんのハートをゲットするのは、真美なんだから!)



春香「お姉ちゃん! はい、あーん」スッ

律子「は、春香、やめなさいよ恥ずかしいから……」

春香「えー? いいじゃないですか別に。なんてったって私たち、姉妹なんですから♪ 」

律子「もう……///」



千早「春香……」

響「いつの間に姉妹になったんだ? あの2人……」モグモグ

伊織「所詮ゲームの設定でしょ。まったく、いちゃつくなら他所行きなさいよね……」

37 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/01/09(土) 00:06:08.87 ID:PFotBv2HO

やよい「はぁ……」

伊織「……やよい、どうかしたの? あんた、全然食べてないじゃない」

やよい「うー……わたし、お2人とお料理作る時に、失敗しちゃって……」

伊織「珍しいわね。やよいが料理で失敗するなんて」

伊織「でも、あんまり気にしないでいいと思うわよ? やよいは今までずっと私たちのために一生懸命に食事を作ってくれてたんだから」

伊織「ちょっと失敗したからって、誰もあんたを責めないわよ」

やよい「うん。……伊織ちゃん、ありがとう」

やよい「………」



美希「ハニー、ミキの作ったスープ、おいしい?」

P「うん、おいしいよ。ありがとな」

美希「あは☆ おかわりたくさんあるからね?」

P「うん」

P「……それより美希、貴音見なかったか?」

美希「貴音? 見てないけど、そういえばいないの」

亜美「あー、お姫ちんなら……」

亜美「ごはんだよーって呼んだんだけどさ、なんか、いらないって」

P「えっ!? 貴音が? ……う、ウソだろ!?」

雪歩「それが、ホントなんですぅ。四条さん、なんだかずっと上の空で、全然私たちの話も耳に入らないみたいで……」

響「……あんな貴音、初めて見たぞ」

38 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/01/09(土) 00:08:28.80 ID:PFotBv2HO

真「あの貴音が食事を摂らないなんて、よっぽどだよね」

真美「うんうん。あんなに燃費悪いお姫ちんがゴハン抜いちゃったら、すぐにガス欠になっちゃうよ?」

伊織「確かにそうね。何かあったのかしら」

千早「四条さん、ひょっとして具合でも悪いのかしら……」

やよい「カゼでも引いちゃったんでしょーか……?」

春香「そういえば、今日の貴音さんはいつもと雰囲気が違ってた気がするなぁ」

あずさ「心配ねぇ……」



響「ねえプロデューサー。自分、貴音の事が心配なんだ。何か悩みがあるんじゃないかな」

P「………」

P「俺、ちょっと貴音のところへ行ってくるよ」ガタッ

響「ホント? じゃあ自分も……」

P「響は飯食っててくれよ。月に着いたら魔物との戦いになるかもしれないんだから、ちゃんと食べないと持たないぞ?」

響「でも……」

P「大丈夫だよ。もしかしたら貴音、ダイエットとかしてるのかもしれないし」

響「そうなのかなぁ……」

P「とりあえず、貴音の事は俺に任せてくれ」

響「うーん……ちょっと頼りないけど、わかった。プロデューサーに任せるさー」

P「ありがとう、響」

39 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/01/09(土) 00:11:56.91 ID:PFotBv2HO
ー 魔導船 船首 ー


貴音「………」



P「……貴音、ここにいたのか」



貴音「あなた様……」

貴音「すみません。食事でしたら、わたくしは遠慮させていただきます」

P「そっか……」

貴音「………」



P「月が、大きいなぁ……」

貴音「……ええ。もう目と鼻の先。決戦の地は、すぐそこですね」

P「貴音。緊張してるか?」

貴音「緊張……いえ、そのような事はありません。寧ろ、月が近づくに連れ、魔力が高まっていくのを感じます」

P「そうか。それは頼もしいな」

貴音「………」

P「………」



貴音「あの、あなた様」

P「なんだ?」

貴音「わたくしは……」

貴音「その……」

貴音「………」

40 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/01/09(土) 00:16:30.26 ID:PFotBv2HO

P「貴音の様子が変だって、みんな心配してたぞ? 響なんか特に」

P「何か、心配事があるんじゃないか?」

貴音「………」

P「……まあ、無理に話そうとしなくていい。貴音が話したくなったら話してくれればいいよ」

P「それまで、待ってるから」

貴音「あなた様……申し訳ありません」ペコリ

P「でも、忘れるなよ。貴音には、いつも仲間が側にいるって事を」

P「俺たちには、何者にも負けない強い絆があるんだ」

貴音「………」

P「……って、ホントはちゃんと貴音の話を聞いて、不安を取り除いてやれるのが一番なんだけどな」

貴音「いえ、あなた様や皆の気持ち、とても嬉しゅうございます」

貴音「それで、その……」モジモジ

貴音「少しだけ、あなた様の胸をお借りしても宜しいでしょうか……?」

P「えっ?」

貴音「………」ピトッ

P「貴音……」

貴音「……今だけ、今だけですので……」ギュッ

貴音「……うっ…………く……」

P「………」

P(こんなしおらしい貴音、初めて見たかもしれない)

P(……貴音だって、年頃の女の子だもんな)

P「………」ダキッ



貴音「うぅっ…………ぁ……!」


41 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/01/09(土) 00:19:06.40 ID:PFotBv2HO
ーーーーーー

ーーー


貴音「………」

P「……少しは落ち着いたか?」ナデナデ

貴音「……はい」フキフキ

貴音「見苦しいところをお見せしてしまい、申し訳ありませんでした……」

P「そんな事ない。誰だって泣きたい時くらいあるさ」

P「辛い時はさ、ちゃんと辛いって言ってほしい。周りをもっと頼ってほしい」

P「貴音は、そういうところをもっと直した方がいいと思うぞ?」

貴音「う……精進致しますが、これはわたくしの元々の性格ゆえ……」

P「……うん。まあ、簡単には直せないか」

貴音「あなた様……」

P「ん?」

貴音「お気遣い、ありがとうございます」

貴音「おかげさまで、気分が晴れました」

P「……そっか。役に立てて良かったよ」

貴音「しかし、落ち着いたら今度はお腹が減ってきました」グゥゥ

P「……はは。やっと普段の貴音に戻ったなぁ」ニコッ

P「じゃあ、みんなのところへ行こうか」スッ

貴音「はい、参りましょう」ニコッ

42 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/01/09(土) 00:22:24.15 ID:PFotBv2HO
ー 魔導船 食堂 ー



アイドルたち「ごちそうさまでしたーー!!!」



貴音「なかなかに美味でした。あずさとやよいは言わずもがな、美希にも料理の素質があるのやも知れませんね」ニコッ

美希「ふっふーん! とーぜんなの!」ドヤッ

響「っていうか、結局、途中から来た貴音がほとんどひとりで食べてたぞ……」

真「まあまあ、いいじゃない。貴音も普段の調子に戻ったって事でさ!」

貴音「むっ」

貴音「見くびってもらっては困りますね、真。わたくしはまだまだ本調子ではありません」

貴音「わたくしが本気を出せば、この船の食糧など一瞬にして胃袋に収めてしまうでしょう」ビシッ

真「……あー、なんかボク、心配して損したかも」

美希「自慢する事じゃないって思うな……」

響「うーん……貴音が元に戻って喜ぶべきなのか……」

43 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/01/09(土) 00:30:56.66 ID:PFotBv2HO

P「えー、ちょっと聞いてくれ」

P「そろそろ月に到着するわけだけど、到着する前に、みんなに渡したいものがあるんだ」

春香「渡したいもの……なんですか? 一体」

P「ちょっと待ってくれ……」ゴソゴソ

P「……これだ」ジャラッ

雪歩「プロデューサー、それってもしかして、首飾り……ですか?」

P「うん。クリスタルを少し加工して作ったんだ」

亜美「兄ちゃん、そんなコトしてたんだー」

伊織「やっぱりアンタって、センスないわねぇ……」

P「うぐっ……ま、まあ、見た目は気にしないでくれよ。これは、お守りみたいなものなんだから」

真美「お守り? もしかしてヒッショーキガンってやつ?」

P「いや、どっちかっていうと安全第一の意味合いが強いかな。みんなでお揃いのお守りって、なんか心強いだろ?」

雪歩「安全第一……ふふっ♪ いい響きですぅ」

あずさ「みんなでお揃いなんて素敵ですね〜♪ 」

P「それに、みんなはもうわかってると思うけど、クリスタルは不思議な力を持っていて、とても重要なものなんだ」

真「……確かに。魔物たちは、クリスタルを使って巨人を地球に呼び寄せたんでしたよね?」

P「ああ。だから、何かご利益があればいいなぁと思ってな」

P(……それに、クリスタルは最後の戦いでも必要なものだし、な)




美希「ハニーの手づくりのプレゼント……これはもう、婚約指輪代わりって言っても過言ではないって思うな!」

響「美希だけじゃないぞ! 自分だってもらったんだからな!」

春香「でも、なんかいいよね! みんなでお揃いってさ!」

千早「ええ。心なしか、力が湧いてくるような気がするわ」

やよい「キラキラで、とってもキレイですねー!」

伊織「ま、見た目はともかく、あいつにしてはいい仕事したかしらね」



律子「…………あら、いつの間にか地表が迫ってるわね」

律子「みんな、準備して。そろそろ着陸よー」



アイドルたち「はーーい!!!」


44 : ◆bjtPFp8neU [sage]:2016/01/09(土) 00:33:40.69 ID:PFotBv2HO
今回はここまでです
45 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/09(土) 05:41:50.73 ID:J+iiiyjDO
もうまじのラストかと思うとあれだな…1スレ目が懐かしく感じる
46 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/01/21(木) 22:14:43.17 ID:5tm1zcRzO
ー 月 ー


響「到着だぞー!」

亜美・真美「月だー!!」

やよい「うっうー! 月ですー!」

ワイワイキャッキャッ


律子「あんまりはしゃがないのよー。月の民の人たちの迷惑になるでしょー」

響・亜美・真美・やよい「はーい!!!」



美希「ふーん……」キョロキョロ

美希「月って、なーんにもないとこなんだね。ハニー?」

P「まあ、住んでる人自体少ないからなぁ」

美希「でもミキ、結構気に入っちゃった☆ ここ、すっごく静かで、快適にお昼寝できそうだし」

P「わかってると思うけど、今寝ちゃダメだぞ?」

美希「はーいなの」



貴音「………」

貴音(懐かしい匂いです。わたくしが居た時と、少しだけ雰囲気が違っているようですが)

貴音(ばはむーと殿。わたくしは再び戻って来ました)

貴音(貴方との約束を果たすためと、もう一つ。小鳥嬢の真意を問いただすために)

貴音(わたくしたちが迷わずに小鳥嬢に逢えるよう、どうかそのお力をお貸しください)


美希「……貴音、どうかしたの?」

貴音「美希……」

貴音「いえ、少々感慨に耽っていただけですよ」

美希「ふーん。里帰りってカンジ?」

貴音「ええ、そうですね」ニコッ

47 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/01/21(木) 22:19:26.98 ID:5tm1zcRzO

春香「おーい、雪歩ー! 大丈夫だから降りて来なよー!」


雪歩「ほ、ホントに? 身体が破裂しちゃったりしない……?」ビクビク


春香「平気だってばー! ほら、みんなだって平気なんだからさー!」フリフリ


真「……さ、行こう、雪歩」スッ

雪歩「あ、ありがとう、真ちゃん」ギュッ



あずさ「……えーっと、こっちから降りればいいのかしら〜?」スタスタ

伊織「ちょっとあずさ! そっちじゃないわよ!」グイッ

あずさ「あら〜」ズルズル



千早「………」キョロキョロ


春香「……どうしたの? 千早ちゃん」

千早「春香。……さっき亜美が言ってたハミングウェイという人たちが、少し気になって……」

春香「ああ、歌を歌ってる人だったっけ? えへへ、実は私もちょっと気になってるんだー」

春香「ハミングウェイさんのところにも立ち寄るって言ってたから、楽しみだねっ!」ニコッ

千早「ええ」ニコッ




律子「……えー、というわけで」

律子「まずはハミングウェイって人たちのところへ立ち寄って、次に貴音の友達のところに向かうわ」

律子「そして、あの遠くの丘に見える大きな神殿」スッ

律子「あそこが、小鳥さんがいる地下渓谷への入口よ」

律子「最終的にはあの神殿を目指す事になります」

律子「……で、いいんですよね?」

P「ああ」

律子「何か質問ある人ー?」



アイドルたち「ないでーーす!!!」



律子「よし。じゃあ出発よ!」

律子「貴音、道案内よろしくね?」

貴音「承知しました。参りましょう」

スタスタ…

48 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/01/21(木) 22:22:19.21 ID:5tm1zcRzO
ー 月の地下中心核 ー



小鳥「ーーーーはっ!?」ピクッ



クルーヤ「……どうしたんですか、コトリさん?」

小鳥「…………来た」

クルーヤ「え?」

小鳥「ついに……みんなが来たわ! この、月にッ!」

クルーヤ「そうですか」ニコッ

ダークバハムート「クク……漸くか」



小鳥「本当に、長かったわ…………ぐすん」

クルーヤ「コトリさん、ずっと楽しみにしてましたもんね」

クルーヤ「我慢して待ってた甲斐がありましたね?」

小鳥「はいっ♪ 」ニコッ

小鳥「うふふっ♪ みんな元気かなー? たくましくなってるのかなー?」ウズウズ

ダークバハムート「まるで久々に我が子に会う親のようだな」

小鳥「し、失礼な! 私、まだそんな歳じゃないですからねっ!」プンスカ

ダークバハムート「そ、そうか。済まぬ」

クルーヤ(言ったじゃないか、バハムート。妙齢の女性の前では年齢の話題は禁句だって……)

ダークバハムート(何故人間の女は若く見られたがるのだ。経験を重ねる事で見える物の方が多いというのに)

クルーヤ(女性はいつでも綺麗に見られたいものなんだよ。特に、近しい人には、ね)

ダークバハムート(我には理解出来ぬ思考だな)

49 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/01/21(木) 22:26:15.53 ID:5tm1zcRzO

小鳥(はぁーあ……。やっとみんなと会えるっていうのに、もう物語も最終局面なのよねぇ)

小鳥(なんだかさみしいなぁ……)シュン

小鳥(……ううん、ダメよ小鳥。悲しい顔をしてちゃ!)ブンブン

小鳥(せっかくみんなと遊べるんだもの。しっかりとおもてなししなきゃね!)

小鳥(…………よしっ!)グッ


小鳥「みんな、いる?」


…ゾロゾロ


小鳥「女神ちゃん」

月の女神「はーいっ♪ コトリ様、私、ガンバるね!」

小鳥「レッドドラゴン君」

レッドドラゴン「うっしゃ! 待ってたぜ!」

小鳥「リルマーダーちゃん」

リルマーダー「オイラ、やってやるぞっ!」

小鳥「魔人兵君」

魔人兵「オレに任せてくださいっ!」

小鳥「プリンちゃん」

プリンプリンセス「パーティの時間ですわね!」

小鳥「暗黒魔道士君」

暗黒魔道士「……!」コクリ

小鳥「ブルードラゴンさん」

ブルードラゴン「……さて、老兵の出番か」

小鳥「金竜君」

金竜「力戦奮闘、我の力、振るう時ぞ!」

小鳥「銀竜君」

銀竜「あいどる、木っ端微塵にしてくれよう!」

小鳥「ベヒーモスちゃん、みんなの事をお願いね?」

ベヒーモス「了解だよ、コトリ様!」



小鳥「みんな、ここまでよくレッスンを頑張ってくれました」

小鳥「あなたたちはもう、どこに出しても恥ずかしくない、私の立派なアイドルよ!」

小鳥「さあ……みんなに挨拶していらっしゃい!」



ベヒーモス「気合い入れて行くよ! 野郎共!」

ベヒーモス「出撃ぃ!!」


魔物たち「うおおおおおぉぉおおっ!!!」


ドドドド…



小鳥「………」

小鳥(頑張ってね、みんな)

50 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/01/21(木) 22:31:16.47 ID:5tm1zcRzO
ー 月 表面 ー


真「……せいっ!」ビュッ

バキィッ!

魔物1「」

響「ほぁたーっ!」ブンッ

ドガッ!

魔物2「」



真「ふぅ……」

真「ここまで来ると、魔物もそこそこ強いなぁ」

響「でも、その分自分たちも強くなったし、なんくるないさー!」

真「響、油断してるとやられちゃうかもよ?」

響「ふふーん! 自分だって今まで修羅場をくぐり抜けて来たんだ。簡単にやられたりしないぞ!」

響「モタモタしてると、自分が真の活躍も取っちゃうからね?」

真「あ、それはダメだよ! ボクだってこの間の巨人との戦いでは不完全燃焼だったんだから!」

響「じゃ、どっちが多く魔物を倒せるか、勝負する?」

真「お、いいね! 受けて立つよ!」


響「よぉーっし、いっくぞー!」タタタ

真「うおおおおっ!」タタタ

51 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/01/21(木) 22:36:24.99 ID:5tm1zcRzO

春香「……ねえ。魔物、真と響ちゃんだけに任せてもいいのかなぁ?」

千早「あんなに元気なんですもの、心配いらないと思うわ」

やよい「真さんも響さんも、すっごく強いです!」

伊織「それに、こういう時こそあの体力バカ2人の出番じゃない」

春香「うーん……」

真美「だいじょーぶだよ、はるるん。まこちんとひびきんが疲れたら、真美とミキミキが回復してあげるからさっ」

美希「あふぅ……」

春香「うん、そうだね」

春香(……本当は、強くなった私をプロデューサーさんに見てもらいたいって気持ちもあるんだけどなぁ)



亜美「ねえ兄ちゃーん。亜美たちの出番はないのー?」

P「無いって事はないけど、今はあんな雑魚に無駄な魔力を使う事はないだろ」

P「エーテルの数も限られてるし、魔道士組は今はお休みだ」

亜美「でもさー、ヒマヒマだよー」

P「まあ、この先いやでも戦う事になるさ」

律子「この人数でいっぺんに戦っても仕方ないですからね」

P「ああ。それに、真と響がすごいやる気なんだよなぁ」

あずさ「頼もしいですね〜」

雪歩(私も、真ちゃんと一緒に戦いたかったなぁ……)


貴音「……さあ、参りましょう。はみんぐうぇいの住処はもうすぐです」

スタスタ…

52 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/01/21(木) 22:40:04.10 ID:5tm1zcRzO
ー ハミングウェイ一族の住処 ー


ガチャ…


真「……ごめんくださーい!」

響「はいさーい!」



……シーーン



真「……あれっ?」

響「誰も……いないぞ?」



春香「どうしたの?」

真「いや、いないんだよ。誰一人」

春香「ホントだ……」キョロキョロ

やよい「どーしたんでしょう? お出かけしてるんですかねー?」

あずさ「迷子にでもなっているのかしら〜」

雪歩「も、もしかして、魔物にやられちゃったんじゃ……」

千早「そんな……」ガックリ

千早(楽しみにしてたのに……)



亜美「なぁんだ、ハミーいないのかぁ。つまんないのー」

真美「キタイしてたのになー」

亜美「ねー」

亜美「……あっ」

真美「ん? どしたの亜美」

亜美「真美、気安く話しかけないでよねっ。亜美、まだあの時のこと、怒ってるんだから!」

真美「えっ?」

53 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/01/21(木) 22:42:32.44 ID:5tm1zcRzO


亜美「ほら、亜美といっしょにタンケンしてくんなかったじゃん!」

真美「だからー、それはあの時言ったっしょ? 真美はお姉ちゃんだから……」

亜美「お姉ちゃんだからなんなのさっ!」

真美「あ、亜美?」

亜美「今までの真美は、いつも亜美と遊んでくれたのに、急にオトナぶっちゃってさ! そんなのゼンゼン似合ってないかんね!」

真美「むっ!」

真美「亜美こそ、いーかげんそーゆー子どもっぽいのやめれば? わがままばっか言ってさ!」

亜美「なんだとー!」

真美「なにおー!」

ギャーギャー…

伊織「……こらこら、アンタたちは何ケンカしてんのよ。今はそんな場合じゃないでしょうが」

亜美「いおりん……。だって、真美が」

真美「亜美だってー」

伊織「いいから、今は少し大人しくしてなさい」

亜美・真美「……ふぇ〜い」



P「貴音、これはどういう事だ?」

貴音「確かに、わたくしが月を発つ前は、はみんぐうぇい殿たちがここにいたはずなのですが……」


律子「………」ジーッ

律子「……ねえ、この洞窟、よく見ると壁がボロボロじゃない? 床も所々穴が開いちゃってるし」

律子「これじゃまるで、ここで戦いがあったみたいな……」

貴音「!」

P「戦いって、まさか……」



「……待ちわびたよ、あいどるとやら」



貴音「っ……何者!?」クルッ

54 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/01/21(木) 22:49:20.58 ID:5tm1zcRzO

ベヒーモス「ふふ……」ヌッ



雪歩「ひいぃっ!?」ビクッ

春香「ま、魔物っ!?」

あずさ「あらあら……」

やよい「わ……お、大きいですー!」

律子「出たわね……」

美希「……zzz」




ベヒーモス「初めまして、だね。アタイは……」



亜美「そのひん曲がったツノ、シュミの悪い体の色(紫)……もしかして、ベヒーモス?」



ベヒーモス「へぇ、アタイを知っているのかい?」

ベヒーモス(初対面なのにいきなり趣味悪いって言われた……)



亜美「FFっていったら、やっぱベヒーモスっしょ〜」

亜美「いやー、亜美たちもとうとうここまで来たんだねぇ」

春香「亜美、知ってるの?」

亜美「ケッコー有名なモンスターだからね。なめてかかると、イタイ目みるっぽいよ!」

春香「そ、そっか……!」グッ

55 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/01/21(木) 22:53:36.62 ID:5tm1zcRzO

ベヒーモス「……なるほど、こちらの情報は筒抜け、か。まあいいさ、一応自己紹介しておくよ」

ベヒーモス「アタイはベヒーモス。……コトリ様の親衛隊の頭をやらせてもらってる」



アイドルたち「……っ!!?」



響「ピヨ子の……」

真「親衛隊……?」

律子「意外に早かったですね。小鳥さんの刺客がいつかは来るだろうとは思っていましたけど……」ヒソヒソ

P「ああ……」

P(さて、音無さんはどういう手を打ってきたのか……)




雪歩「あ、あの、その親衛隊さんが、私たちに何のご用なんでしょうかぁ……?」ビクビク

真「雪歩、聞くまでもないよ。きっとこいつは……」



ベヒーモス「あんたたちは、コトリ様を倒しに行くつもりなんだろう? だが、アタイたちはコトリ様を守る親衛隊だ」

ベヒーモス「あんたたちはアタイたちを倒さなけりゃ、コトリ様の元へは辿り着く事はできない」



雪歩「そ、そんなぁ……!」

真「……やっぱりか」



ベヒーモス「もし、あんたたちが勝てば、あんたたちはコトリ様に会えるだろう。でも、もしアタイたちが勝てば……」



雪歩「どっ、どうなるんですかぁ……?」ビクビク



ベヒーモス「アタイたちが、真のあいどるだ!」



真「…………えっ?」

伊織「ちょ、ちょっと! 意味わかんないんだけど!?」

56 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/01/21(木) 22:58:05.07 ID:5tm1zcRzO

ベヒーモス「……別に難しい事を言ったつもりはないんだけどね」



伊織「いや、だから……言葉の意味は理解できてるわよ! 意味わかんないのは、なんでアンタたち魔物がアイドルになるのかって事!」



ベヒーモス「おかしいかい? コトリ様は本気でアタイたちをあいどるにするつもりみたいだ」

ベヒーモス「アタイたちも、れっすんとやらをやっていくうちに、あいどるに興味が湧いてきてね」



亜美「あー……ピヨちゃん、きっとひとりでさみしかったんだろーね……」

伊織「だからって、ふざけすぎでしょうが」

響「……でも、あんなスタイルじゃアイドルに向いてないと思うけどなー」ボソッ



ベヒーモス「…………なん…だって?」ピクッ



響「あっ……い、いや、なんでもないさー!」



ベヒーモス「さっきから失礼な連中だね」

ベヒーモス「どうやら、死にたいらしい……!」ゴゴゴゴ



貴音「……ひとつ、質問があるのですが」



ベヒーモス「……なんだい?」



貴音「ここに、はみんぐうぇいという方たちがいたと思うのですが、会いませんでしたか?」



ベヒーモス「……ああ、あの貧弱な連中なら、喰ってやったよ」



貴音「なっ……!?」

57 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/01/21(木) 23:01:28.43 ID:5tm1zcRzO

ベヒーモス「コトリ様の指示なのさ。逆らう者は殺せと」



春香「そ、そんなっ!」

やよい「ひ、ひどいですー!」

千早(音無さん、そこまでするんですか……?)



ベヒーモス「……ああそうだ。そういえばこの近くには、もうひとつ家があったね。確か、ガキが2人ほど住んでいた……」



貴音「っ!?」



ベヒーモス「『別働隊』は、うまくやっているかねぇ……?」ニヤリ



貴音(駄目です……!)

貴音(その幼子らは、ばはむーと殿の忘れ形見……!)

貴音「……っ!」グッ



貴音「ぷろでゅうさぁ、律子嬢! 申し訳ありません、わたくしは行かねばなりませんっ!」ダッ

タタタタ…

律子「えっ!? ちょっと貴音!?」

P「お、おい貴音!」

58 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/01/21(木) 23:04:36.64 ID:5tm1zcRzO

ベヒーモス「そう簡単に行かせると思うかいっ!?」ダッ



貴音「むっ……!」


ドゴオッ!!

真「……ふんっ!!」ガシッ


貴音「真……!」



ベヒーモス「……ほう、アタイのタックルをまともに受け止めるとはね」ググッ



真「へへっ……! コケにされたままじゃいられないからねっ!」ググッ

真「……行きなよ、貴音。大切な人がいるんでしょ?」


貴音「……恩に着ます、真!」クルッ

タタタタ…



響「た、貴音、待ってよ! 自分も行くぞ!」タタタタ


律子「ちょ、ちょっと響まで!」


真美「ま……真美も行くっ!」

真美(姉として名を上げるチャ〜ンス!)

律子「えっ!?」

真美「だって、今のお姫ちん、なんか危なっかしーし、ひびきんだけじゃ心配だもん!」

やよい「真美、わたしも行くよっ!」グッ

やよい(……わたしも、だれかの役に立ちたいですっ!)

真美「やよいっち! ありがと!」

律子「ま、待ちなさい! 駄目よ! これ以上バラバラに行動したら……」

真美「りっちゃん! 今は言ってるバアイじゃないっしょ!?」

59 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/01/21(木) 23:08:52.76 ID:5tm1zcRzO

P(もうひとつの家……多分、バハムートの住処の事だな)

P(あそこには、確かに子供が2人いたはずだ)

P(バハムートと親しくしていた貴音には、きっと見過ごせないよな……)

P(それに真美の言う通り、さっきの様子を鑑みるに、貴音は我を忘れてしまっている)

P(……よし)


P「雪歩、『アレ』はまだ持ってるか?」

雪歩「は、はい? アレ……?」

雪歩「あ……もしかして、これの事ですか?」スッ

P「ああ。ちょっと貸してくれ」ガシッ

P「真美っ!」


真美「えっ?」


P「これを持ってけ!」ヒュッ


真美「……おっと」パシッ

真美「これは…………
あ、そっか!」

真美「兄ちゃん、さんきゅ!」


P「真美、やよい……貴音と響を頼んだぞ!」


真美「りょーかいっ! んじゃ、行ってくるよん♪ 」

やよい「行ってきまーすっ!!」


タタタタ…



律子「プロデューサー、真美に何を渡したんです?」

P「連絡手段だ。大丈夫、あの子たちなら」

60 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/01/21(木) 23:12:29.85 ID:5tm1zcRzO
ベヒーモス「泣かせるじゃないか。自分を犠牲にして、仲間たちを行かせるなんて」ググッ

ベヒーモス(こいつ、人間のクセに……!)



真「別に、犠牲になるつもりはないよ……!」ググッ

真(……すごい力だ)

真「せいっ!!」グイッ

…スタッ



ベヒーモス「………」

ベヒーモス(コトリ様の言う通りにこいつらを煽ってみたけど、単純なんだねぇ、あいどるって)

ベヒーモス(とりあえず、戦力を分散させる作戦は成功だ)

ベヒーモス(それにしてもあいつ、なかなかやるじゃないか)

ベヒーモス(ふふ、これは楽しくなってきたよ……!)



真「……それで、どうするの? まさか君ひとりでボクたちと闘り合うつもりじゃないよね?」


春香「っ……!」チャキッ

千早「………」チャキッ

雪歩「うぅっ……!」チャキッ

亜美「えっと、お姫ちんとひびきん、真美、やよいっちが行っちゃったから、こっちは……ひい、ふう……9人パーティかぁ」

亜美「さすがに負ける気がしないっしょー!」

伊織「さっさと終わらせるわよ!」チャキッ

美希「……zzz」

あずさ「プロデューサーさん、律子さん……」

P「とりあえず、目の前の敵を倒して貴音たちと合流しましょう」

あずさ「ええ、そうですね」

律子「もう、いきなりパーティを分裂させる羽目になるなんて……」

春香「大丈夫、貴音さんたちならきっと心配いりませんよ、お姉ちゃん!」

律子「春香……。そうね、今はあの子たちを信じるしかないわね」

61 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/01/21(木) 23:14:38.39 ID:nF5cyq/DO
ナチュラルに律子をお姉ちゃん呼びするのが板に付いてるはるるん
62 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/01/21(木) 23:18:07.66 ID:5tm1zcRzO

ベヒーモス「さすがにアタイひとりであんたらの相手をするのはキツいかもね」

ベヒーモス「野郎共、出番だよっ!」



ゾロゾロ…

月の女神「……ふぅ、やっと出番だよ〜」

プリンプリンセス「待ちわびましたわっ」

レッドドラゴン「前置きが長げーよ、ったく……」

金竜「とっぷあいどるになるのは、我らである!」

銀竜「今こそ我らの絆を見せる時!」



春香「な、なんかたくさん出て来た!?」

真「……でも、数じゃまだこっちの方が多いのかぁ」

千早「相手が誰であろうと、倒すだけよ」

伊織「ええ、そうね」

雪歩「と、特訓の成果を見せますぅ!」

亜美「真美よりカツヤクしてやるんだもんねっ!」

あずさ「私も、張り切っちゃおうかしら〜」



律子「みんな、頼んだわよ!」



ベヒーモス「行くよ! 野郎共!」



アイドルたち「うあああぁぁあああっ!!!」



魔物たち「おおおぉぉぉおおおっ!!!」



ドドドド…!!

63 : ◆bjtPFp8neU [sage]:2016/01/21(木) 23:23:15.78 ID:5tm1zcRzO
おそくなりました
ひさびさに投下しました完成の
目処はまだ立っていませんがラスダンが
ちょっと長くなりそうなよか


64 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/01/21(木) 23:27:51.25 ID:nF5cyq/DO
お久しぶりですね
ひさびさでも楽しめます
めどこたってないのか…
ちゃんと更新してくれるだけでも嬉しい
んです!
65 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/01/30(土) 15:46:45.65 ID:TX82EAV4O
遂に月かぁ
完結まで頑張ってください
66 : ◆bjtPFp8neU [sage ]:2016/02/19(金) 20:58:29.57 ID:W8o4yBzFO
ー バハムートの住処 ー


男の子「……たあっ!」ビュッ

リルマーダー「へへん! 遅いぜっ!」ヒョイッ


リルマーダー「……そりゃっ!!」

ドゴオォ!!

男の子「ぐあ……!」ガクッ


女の子「っ……ケア」


魔人兵「……ほっ!」バキッ


女の子「あ……ぅ……!」ガクッ



男の子「はぁ、はぁ……くそっ……!」

女の子「うぅ……!」



リルマーダー「どうした? 手も足も出ないか? お前ら弱っちいなぁ!」

暗黒魔道士「………」

ブルードラゴン「……ふむ」


男の子「く、くそ……!」


魔人兵「子どもにしては良くやったよ。だけど、君たちじゃ相手にならないな」

魔人兵「さあ、諦めてオレたちと一緒に行くんだ」



男の子「だ、誰がお前たちの仲間になるかっ!」

女の子「あなたたちと一緒に行くくらいなら、死んだ方がマシだもんっ!」



魔人兵「君たちのご主人様だって待っているんだぞ?」

魔人兵(……なーんて言ってみたりして)



男の子「……!」

女の子「……!」

67 : ◆bjtPFp8neU [sage saga]:2016/02/20(土) 20:05:27.46 ID:8cf2vR7YO

魔人兵「さっきも言ったけど、君たちのご主人様、バハムートは、既に闇へと堕ちた」

魔人兵「今はオレたちと同じ、コトリ様の配下なんだ」

魔人兵「君たちが来るのを待っていると思うよ。さあ……」スッ



女の子「そ、そんなぁ……」

男の子「……ふ、ふざけるなっ!」

男の子「バハムート様は、気高くて光に満ちあふれたお方だっ!」

男の子「お前たちみたいな魔物と一緒にいるわけなんか、ないんだっ!」グッ



魔人兵(……やれやれ、強情だなぁ)

魔人兵(ま、こうして遊んでれば、そのうちあいどるたちが来るよな)


ブルードラゴン「これ以上苦しめる事もない。楽にしてやるのが良かろう」

魔人兵「えっ?」

暗黒魔道士「っ……!」

リルマーダー「でも、殺しちゃいけないんだろ? コトリ様が言ってたぞ?」

ブルードラゴン「子供が苦しむ様は見るに耐えん。ワシが楽にしてやろう」

スゥゥー


魔人兵「お、おい、じいさん! 殺しちゃダメだって!」

68 : ◆bjtPFp8neU [sage saga]:2016/02/20(土) 20:34:10.02 ID:8cf2vR7YO

ブルードラゴン「………」



男の子「く……!」チャキッ

女の子「っ……!」ギュッ



ブルードラゴン「……主らに問おう」

ブルードラゴン「真の……とは、何か?」


男の子「……は?」

女の子「な、何言ってるの……?」


ブルードラゴン「………」

ブルードラゴン「こんな幼子に答えを求めるという方が無理な話か」

ブルードラゴン「答えを持たぬのならば、もう用はない」

ブルードラゴン「ワシの吹雪で、永遠の眠りにつくといい」


ブワッ…


ビュオオォォ…!



男の子「うわっ!」バッ

女の子「シェルっ!」

ポワッ



ブルードラゴン「無駄じゃ。魔法などで防げるものではない」


コオオオォォ…!

男の子「く、くそぉ……か、体が……!」ガクガク

女の子「さ、寒いよぉ……!」ブルブル




「…………ふぁいが!!」




ボオオオォォオオ!!




ブルードラゴン「む……?」

69 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/02/20(土) 20:38:21.95 ID:8cf2vR7YO

「……そこまでです! 物の怪共よ!」



男の子「その声……! まさか……?」ヨロッ

女の子「た……タカネちゃん……?」グッタリ




貴音「響、2人を頼みます!」

響「任せろっ!」ダッ

タタタタ…


響「2人とも、もう大丈夫だぞ!」ダキッ

男の子「お、お前は……?」

響「貴音の友達さー!」

女の子「そ、そうなん…だ……」



ブルードラゴン「………」

リルマーダー「なあ、あれってもしかして……」

魔人兵「ようやく到着か。ベヒーモスがうまくやってくれたみたいだ」

暗黒魔道士「………」




貴音「これ以上わたくしの大切な者たちを傷つける事は、許しませんっ……!」ゴゴゴゴ

響「貴音、自分も戦うぞ!」

貴音「響はその子らを頼みます!」

響「え? でも!」

70 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/02/20(土) 20:44:18.40 ID:8cf2vR7YO

魔人兵「いやあ、探す手間が省けて良かったよ。オレたちはコトリ様の親衛」


貴音「さんだが!」

ズガガピシャァーン!!


魔人兵「ぐあっ!?」ビリビリ

魔人兵「ちょ、ちょっと待て! 話を聞いてくれって!」


貴音「問答無用! とるねど!」


ブオオォォ…!!


リルマーダー「うわっ……!」ヨロッ


暗黒魔道士「……トルネド」バッ


ブオオォォ…!!


貴音「っ! ……同じ魔法を!」ググッ


暗黒魔道士「……!」ググッ


ブルードラゴン「……後ろがガラ空きじゃのぅ」ブンッ


ドゴオッ!


貴音「ぐっ……ぁ……!」ヨロッ


響「貴音っ!!」


リルマーダー「さっきはよくもやったなー!」チャキッ

リルマーダー「くらえー!」


貴音「……すろう!」

カタカタ…シュルン


リルマーダー「きかねーよ! でえい!」ブンッ

ザシュッ!

貴音「う……っ!」



リルマーダー「……なんだあんまり強くねーな。期待はずれだぜ」



響「貴音、大丈夫か!? やっぱり自分も……」

貴音「……平気です!」グッ

響「でも、いくら貴音でも4対1じゃ分が悪いぞ! やっぱり自分も戦うよ!」

貴音「……いえ。それではわたくしの怒りが収まりません……」

響「た、貴音……」

響(まただ……。また、自分の知らない貴音になっちゃってる……)

響(自分、どうすればいいんだ……?)

71 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/02/20(土) 20:48:28.28 ID:8cf2vR7YO

貴音「………」ザッ



ブルードラゴン「お主……ひとりでワシらと戦うつもりか」



貴音「……許せないのです」

貴音「地球だけでなく、月の民にまで手をかけるとは……」



ブルードラゴン「ならば、どうする?」



貴音「あなた方を、今ここで、わたくしの手で滅してくれましょう……!」



ブルードラゴン「ふむ……」

魔人兵「なんだか勘違いされてる気もするけど、まあいいか。あいどるのお手並み拝見ってところだな!」ジャキッ

リルマーダー「あんまり期待はしないけどなー」

暗黒魔道士「……っ」



貴音「……滅びゆく肉体に、暗黒神の名を刻め……」ゴゴゴゴ



魔人兵「……お?」

リルマーダー「な、なんだ?」

暗黒魔道士「!」

ブルードラゴン(この魔力……!)



貴音「始原の炎、甦らん! ……ふれあ!」バッ



ブゥゥン…

ババババババッ!!

ドゴオオォォオオン!!


72 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/02/20(土) 20:51:31.88 ID:8cf2vR7YO

貴音「………」



響「……貴音っ!」

男の子「や、やったのか……?」

貴音「いえ。あの程度で倒せるとは思いません」

貴音「それに、あちらにも魔法の使い手がいるようでした。何か対策を打たれているかもしれません」

女の子「そんな、あんなにすごい魔力だったのに……」

貴音「ともかく、今のうちに二人は安全な場所へ……」

響「!」



リルマーダー「……うりゃあああっ!」ダッ



響「貴音、危ないっ!」バッ


ドガッ!!


響「うあ……!」ヨロッ

貴音「ひ、響っ!」ダキッ

貴音「このっ……!」ブンッ


リルマーダー「……おっと!」ヒョイッ



魔人兵「……火炎放射!」


ゴオオオオオオ!!


貴音「ぐっ……ぅ……!」ヨロッ

男の子「タカネ!」

女の子「タカネちゃんっ!」

73 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/02/20(土) 20:54:41.65 ID:8cf2vR7YO

貴音「ひ、響……今、回復を……」スッ



暗黒魔道士「……アスピル」


シュイイィィン!


貴音「!? ……こ、これは……魔力が、吸い取られている……!」

貴音「このような魔法があるとは……!」ガクッ


魔人兵「残念だったね。君たちじゃオレたちには敵わないみたいだな」チャキッ

リルマーダー「オイラたちを甘く見すぎだぞ!」チャキッ

ブルードラゴン「さあ、ひと思いに楽にしてやろう」バッ



響「うぅ……」グッタリ

男の子「くそー!」

女の子「いやー!」

貴音「魔法が使えれば……!」



「…………右手にプロテス。左手にシェル」

「合わせて、ウォール!」

…パキーン!!


ガキィン!!


ブルードラゴン「何? 魔法の……壁じゃと!?」

74 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/02/20(土) 20:57:28.94 ID:8cf2vR7YO

真美「せくしー美少女白魔道士真美、さんじょー!」シュタッ

真美「真美の目が社長くらい黒いウチは、お姫ちんとひびきんに手出しはさせないかんねっ!!」ビシッ



貴音「真美っ……!」



リルマーダー「……お? あいつもあいどるか?」

魔人兵「仲間を助けに来たのか……」

魔人兵(これが、コトリ様の言ってた『キズナ』ってやつかな?)

ブルードラゴン「あの娘……なかなかやりおる」



貴音「真美、危険です! 下がってください!」



真美「いや、どー考えてもキケンなのはお姫ちんたちの方っしょ。待ってて、今助けるからっ!」



魔人兵「って言っても、白魔道士君に何ができるっていうんだ? せいぜい味方のサポートくらいだろう?」



真美「んっふっふ〜♪ 甘い、甘すぎる! はるるんのお菓子より甘いよ!」

真美「……へい! やよいっち、かもーん!」

75 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/02/20(土) 21:00:14.91 ID:8cf2vR7YO

やよい「うっうーーー!!」ピョコン

やよい「らむさん、しばさん、いふりとさん! 出てきてくださいっ!!」


スゥゥー…


イフリート「うおおおおおっ!!地獄の火炎んんんんぅ!!」

ゴオオオオ!!

シヴァ「……絶対零度!」

コォォ…パキィィィィン!!

ラムウ「裁きの雷!」

ズガガガガッ!!



魔人兵「召喚士! しかも、三体同時召喚だと!?」

リルマーダー「あ、あれはヤバそうだぞ!?」

ブルードラゴン(ほう……)

暗黒魔道士「シェル」スッ

ポワーン


ズドドドドオオオオン!!!




真美「……うひゃ〜! やるねーやよいっち!」

真美「一気に3体もしょーかんするなんてさ! けっこーダメージあたえたっぽいよ?」

やよい「えへへ、なんだかできそうな気がしたんだー」

やよい「……って、そんなこと言ってる場合じゃないよ、真美! 早く貴音さんと響さんを助けなきゃ!」

真美「おっと、そーだった!」

タタタタ…

76 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/02/20(土) 21:05:31.76 ID:8cf2vR7YO

真美「……ケアルガ!」

シャララーン! キラキラキラ…


貴音「……すみません、やよい、真美」ペコリ

響「うぅ……助かったぞ」ムクッ

やよい「2人とも、ぶじでよかったですー!」

真美「まったく、ムチャしやがって……」



真美「……で、お姫ちんはその子たちを助けに来たって事なの?」

男の子「………」

女の子「………」

やよい「この子たちは、貴音さんのお友だちなんですね?」

貴音「……ええ。わたくしの大切な友人、ばはむーと殿の……家族です」

響(バハムートって確か、こないだ貴音が話してくれた……)


貴音「それよりも、今は話をしている場合ではありません。今のうちに、彼奴らに止めを刺さねば!」スクッ

やよい「えっ?」

真美「お、お姫ちん?」

響「待ってよ貴音! 一人じゃ危険だ!」

貴音「いえ、この戦いは、わたくしがやらねばならないのです」

貴音「月の民は、わたくしの同胞。同胞の借りは、わたくしが返します!」

やよい「た、貴音さん……」

真美「でも、さすがにあの魔物たちは強いよ? ここはみんなで力を合わせて……」

貴音「いえ、申し訳ありませんが」

響「…………貴音っ!!」ガシッ

貴音「っ……響……!」

77 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/02/20(土) 21:10:04.15 ID:8cf2vR7YO

響「仲間を傷つけられて悔しい貴音の気持ちは、すっごくわかる」

響「でも、なんでも一人でやろうとしないで、自分たちの事ももっと頼って欲しいぞ!」

響「自分たち、仲間じゃないか!」

貴音「………」

やよい「……あの、貴音さん。わたしも、響さんと同じキモチかなーって」

真美「そーだよお姫ちん。お姫ちんがいなくなって、ひびきんは真っ先にあとを追いかけてったんだから」

真美「ひびきんのキモチ、ちゃんとわかったげてよ。あ、モチロン真美とやよいっちのキモチもね?」

貴音「………」

男の子「……あのさ、タカネ。オレたちの事を心配してるなら、平気だぞ?」

男の子「オレたち、ちゃんとタカネたちの邪魔にならないように、安全なところに隠れてるからさ」

女の子「タカネちゃん。バハムート様の手紙を思い出して? バハムート様は、みんなで力を合わせて欲しいって言ってたはずだよ?」


『……そしてもし、この月と、青き星に危機が訪れた時は、皆で力を合わせ立ち向かうのだ』


貴音(ばはむーと殿……)


貴音「…………そう、ですね。どうやらわたくしは、周りが見えていなかったようです」

貴音「申し訳ありません」ペコリ

響「うん、わかってくれたならいいさー!」ニコッ

やよい「みーんなでたたかいましょう!」

真美「そんじゃいっちょ、魔物たちをやっつけますかね!」

78 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/02/20(土) 21:14:12.23 ID:8cf2vR7YO

貴音「待ってください、真美」

真美「え?」

貴音「先ほどのあの魔道士に気をつけてください。彼奴は、魔力を吸い取る魔法を使うようです」

真美「あー、それってきっと『アスピル』かな。真美たち魔道士にとってはやっかいな魔法だよねー」

やよい「えっと……そのまほう? からにげるには、どーすればいいんでしょう?」

貴音「ええ、問題はそこです。彼奴の魔法を封じる事ができれば良いのですが、恐らく『さいれす』の魔法は通用しないでしょう」

真美「だね。ここまで来たら、敵さんにはそこらへんのセコセコ魔法は効かないって思ったほーがいいっぽいよ」

貴音「あの魔道士をどうにかできれば良いのですが……」

やよい「うー……」

響「………」

響「……あのさ、みんな。ちょっと自分に考えがあるんだけど」

貴音「響……?」

響「みんな、ちょっと耳貸して」

79 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/02/20(土) 21:18:02.46 ID:8cf2vR7YO
ーーーーーー

ーーー


真美「……いや、真美は別にいーけど、その作戦だとひびきんが……」

やよい「そ、そーですよ! 響さんがきけんです!」

響「この方法ならあの魔道士の事も気にしなくていいし、貴音も思う存分魔法を使える」

貴音「しかし、それでは響が……」

響「同胞の仇を取るんでしょ? 自分、貴音の力になりたいんだ!」

貴音「響……」




魔人兵「……あー効いた、今のは……」

リルマーダー「お前、なかなかやるじゃんか!」

暗黒魔道士「………」

ブルードラゴン「もっと力を見せてくれ。あいどるたちよ……」




響「……来るぞ! みんな、手はず通りに!」

真美「むー、やるしかないみたいだね」

やよい「響さん、ムチャはしないでくださいね!」

響「うん。もちろんさー!」

貴音「……恩に着ます、響」

80 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/02/20(土) 21:21:50.22 ID:8cf2vR7YO

タタタタ…

響「はあああぁぁぁぁ!」

真美「おりゃーー!!」

やよい「うっうー!!」



リルマーダー「! ……三人来たぞ!」

魔人兵「あれ? 銀髪の子がいないみたいだ。何か企んでいるのかな」

リルマーダー「へへん! 浅知恵で勝てるほどオイラたちは甘くないぞっ!」

ブルードラゴン「三人のうち2人は魔道士。坊主、頼むぞ」

暗黒魔道士「……!」コクリ


暗黒魔道士「……アスピ」


響「させるかーっ!」ビュンッ

ドゴォッ!!

暗黒魔道士「っ!?」ヨロッ


魔人兵「お、速いな!」

魔人兵「火炎放射!」

ゴオオオォォオ!!

響「うわっ!」


リルマーダー「行っくぞーー!!」ダッ

リルマーダー「うりゃっ!」ブンッ

…ガキィン!

真美「真美もいるんだかんね!」

リルマーダー「白魔道士が肉弾戦? なめんなよ!」ブンッ

真美「おわぁ!?」ヒョイッ



やよい「うっうー! こっちですよー!」フリフリ

ブルードラゴン「ふむ」ブンッ

ドガァ!!

やよい「はわわっ!?」ヒョイ

やよい「あ、あぶなかったですー……」

81 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/02/20(土) 21:23:54.64 ID:8cf2vR7YO

響「たあああっ!」ビュッ

魔人兵「……おっと!」ガキィ

魔人兵「君の狙いは暗黒魔道士か。そうはさせないぞ!」

響「自分のスピードについて来れるか?」ザッ

響「っさー!」ダッ

ビュンッ…

魔人兵「げ!? 速い!」

響「……はっ!」ブンッ

ドゴォッ!!

暗黒魔道士「っ……!」ヨロッ

響「よし! 魔法さえ使わせなければあいつは恐くないぞ!」




真美「へいへーい! こっちだよー!」フリフリ

やよい「こっちですよー!」フリフリ


リルマーダー「ちょこまか逃げ回りやがってー!」

ブルードラゴン「……おかしい」

リルマーダー「え?」

ブルードラゴン「あの娘らは白魔道士と召喚士じゃ。何故魔法を使わない……?」

リルマーダー「あ、そういえば……」

ブルードラゴン(それに、姿が見えない銀髪娘の動向も気になる)

ブルードラゴン「……まさか」





貴音「………」ゴゴゴゴ


貴音(ありがとうございます、響。貴女のお陰で、わたくしの本気が出せます……!)

82 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/02/20(土) 21:28:18.32 ID:8cf2vR7YO

ブルードラゴン「皆、この3人は囮じゃ! ワシらの足止めをしているだけじゃ!」

魔人兵「……そうか! あの銀髪の子を止めないと!」

ブルードラゴン「ワシが行く! お主らは此奴らを!」ブワッ

リルマーダー「こっちは任せろ!」

魔人兵「じいさん、頼んだぞ!」



魔人兵「……さあ、そろそろ遊びは終わりにするか」ガコンッ


響「!」


魔人兵「いくら君が速いって言っても、レーザーの速度には追いつけないだろ?」

キュイイイン…!


響「………」ジリッ


魔人兵「発射!」

チュドドドドドドッ!!


響「っ……!」ダッ





貴音「………」ゴゴゴゴ



ブルードラゴン「……なかなかの魔力じゃのぅ」



貴音「!」



ブルードラゴン「どうやらそなたが本丸のようじゃな。遠慮なく潰させてもらうぞ!」ブンッ


…ガキィンッ!!


ブルードラゴン「……な!? また、魔法の壁だと……!?」



真美「んっふっふ〜♪ 真美の防御壁は、何者にもやぶれないのだー!」ドヤッ


ブルードラゴン「お主は……さっきの白魔道士! 何故ここに?」

83 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/02/20(土) 21:30:51.35 ID:8cf2vR7YO

リルマーダー「……おりゃっ!」ブンッ

真美「あっ……!」

パシュンッ…


リルマーダー「え? 消えた……?」

リルマーダー「もしかして……」チラ


やよい「うぅ……」


リルマーダー「とりゃっ!!」ブンッ

やよい「あぅ……」

パシュンッ


リルマーダー「やっぱりだ。この2人、分身だったんだ!」

魔人兵「なるほど。だから魔法を使わなかったのか」



響「はぁ、はぁ……」

響「さっきのレーザー、危なかったぞ……」


魔人兵「すごい反射神経だな。さすがはあいどるってとこか」


響「それより、今さら分身に気づいても、もう遅いぞ!」

響「あの青いドラゴンは、貴音たちが倒してくれるからな!」

魔人兵「………」

魔人兵「まあ、じいさんなら問題ないよな」

リルマーダー「うん。……それより、お前一人でオイラたちに勝てるのか?」

暗黒魔道士「……!」グッ


響「………」

響(全員倒すのは無理だけど……)

響(なんとか、凌いでみせるさー!)グッ

84 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/02/20(土) 21:33:07.07 ID:8cf2vR7YO

ブルードラゴン「……ふんぬ!」ブンッ

バキィン!!


真美「げっ、真美のウォールが……」


ブルードラゴン「ワシを見くびるでない。この程度の魔法壁、破るなど容易い」

ブルードラゴン「さあ、今度はこちらの番じゃ!」


やよい「……お母さん、おねがいしますっ!!」バッ

スゥゥー…

ミストドラゴン「……ミストブレス!」

シュオオオォォ…!


ブルードラゴン「! ……霧か!」

ブルードラゴン(聖属性の召喚魔法などワシに通用せぬが、これでは視界が……)



貴音「…………真美、やよい。ありがとうございました」

貴音「準備は、整いました!」

真美「お姫ちん!」

やよい「貴音さん!」



貴音「……時は来た」バッ

貴音「許されざる者達の頭上に、
星砕け降り注げ!」



貴音「……めてお!!」



ブルードラゴン「!」



……ヒュー …ヒュー

…ヒュー …ヒュー …ヒュー



ドゴゴゴゴゴゴゴゴオオン!!


85 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/02/20(土) 21:36:11.42 ID:8cf2vR7YO

響「……く……はぁ、はぁ……!」ジリッ



魔人兵「……まったく、しぶといな。3人がかりでこれほどまで手を焼くとはね……」

リルマーダー「でもあいつ、逃げてばっかだぞ!」

暗黒魔道士「………」



響「……それでいいんだ」

響「自分が持ちこたえれば、真美と、やよいと……」

響「……貴音が、きっとなんとかしてくれるからな!」



魔人兵「………」

魔人兵(……ずいぶん仲間を信頼しているんだな。やっぱり、これがあいどるの強さの秘訣……なのか)



タタタタ…

貴音「……響っ!」

真美「ひびきん!」

やよい「響さんっ!」


響「みんな……!」



貴音「さあ、皆で戦いましょう!」

やよい「はい! がんばりますっ!」グッ

真美「真美たちは、ピヨちゃんに会いにいかなきゃいけないかんね!」



ブルードラゴン「…………待て」

86 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/02/20(土) 21:43:30.96 ID:8cf2vR7YO

真美「うわ、しぶとい!」

貴音(最大の魔法、めておでも一発では倒せませんか……)



ブルードラゴン「……さっきのメテオはさすがに効いわ」

魔人兵「………」

魔人兵「そろそろ引き時だな」

リルマーダー「え? もう帰るのか!?」

暗黒魔道士「………」

魔人兵「元からそういう予定だったろ? コトリ様は、あいどるたちに挨拶してこいって言ってただけなんだから」

リルマーダー「まあ、確かにそうだけどよー」

ブルードラゴン「……そうじゃの」

ブルードラゴン(思わぬ収穫があった。あいどるには、ワシに幕を引くほどの力がある)



貴音「……逃げるのですか?」



魔人兵「そういうわけじゃないさ。君たちとは、必ず近いうちにまた戦う事になる」

魔人兵「地下渓谷で待ってる。そこで決着を着けよう」

魔人兵「………」クルッ

スタスタ…




やよい「……行っちゃいましたね」

貴音「できればこの場で決着を付けておきたかったのですが……」

真美「ひびきん、へーき?」

響「うん、なんとか……」



貴音(……小鳥嬢の親衛隊、ですか)

貴音(小鳥嬢の元へ辿り着く為には、避けては通れぬ道のようですね)

貴音(それに……)

貴音(わたくしは、まだまだ弱い……)

87 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/02/20(土) 21:46:19.57 ID:8cf2vR7YO
ー ハミングウェイ一族の住処 ー



真「……うおおおおおっ!!」

ベヒーモス「うらあああああっ!!」

ドガアアァァン!!


ベヒーモス「ぐっ……!」ヨロッ



真「! ……チャンス!」

真「……はああぁぁああ!!」ゴオオ

真「覇王……翔吼拳ッ!!」バッ


ゴオオオオォォオオッ!!



ベヒーモス「なめんじゃ……」

ベヒーモス「ないよっ!!」ダッ

ドドドドッ!!


真「……げ! 真っ向から突っ込んで来た!?」


ベヒーモス「……うらぁ!!」

ドゴォッ!!

真「ぐあっ!!」


ドサッ



真「…………いてて……」スクッ

真「はは……なかなかやるね、君。まさか覇王翔吼拳をものともしないなんて」ニコッ


ベヒーモス「ふっ、あんたこそ、なかなかの技だったよ。アタイと互角に渡り合うなんておよそ人間とは思えないね!」ニヤリ

真「でも……ボク、負けないよ!」

ベヒーモス「ふん! それはアタイのセリフだ!」

88 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/02/20(土) 21:49:31.80 ID:8cf2vR7YO

月の女神「あ〜、ベヒーモスちゃんいいなぁ〜! 私もそのカッコいい人と戦いた〜い!」

千早「……待ちなさい。あなたの相手は、私よ!」チャキッ

月の女神「んー……。まあ、仕方ないか」

月の女神「それじゃあ、楽しもうね♪ 」チャキッ


月の女神「えいっ!」ブンッ

千早「……ふっ!」ガキィン

月の女神「あいどるの実力、見せてね?」ググッ

千早「くっ……!」ギリッ

千早(この子、見かけによらずすごい力……!)

千早「っ……!」タンッ

…スタッ

月の女神「……えへっ♪ 逃がさないよ?」ダッ


千早(力では敵いそうもない。ならば……)

千早(速さで、かき乱す!)


千早「……水平ジャンプ!」タンッ

ビュンッ…


月の女神「……わっ、速い!?」

月の女神「っとと!」ガキィン

千早「っ……!?」ググッ

千早(受け止められた……? 水平ジャンプの速度に反応するなんて……!)

千早(それなら、槍の間合いを利用するっ!)


…ザッ


月の女神「あっ……」

千早「はっ!」ビュッ

月の女神「ひゃっ!」ヒョイッ


月の女神「む〜、剣対槍じゃ、ちょっとこっちが不利かもね」

月の女神「うんっ♪ あなた、なかなかいいね! もっともっと楽しもう?」チャキッ


千早「……私は別に、楽しむつもりはないわ!」チャキッ

89 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/02/20(土) 21:52:51.98 ID:8cf2vR7YO

雪歩「えいっ! えいっ!」ザクザクッ


プリンプリンセス「うふふっ♪ 痛くも痒くもありませんわよ?」


雪歩「うぅ……効いてない……」

雪歩「それに、なんだかブヨブヨで気持ち悪いですぅ」


プリンプリンセス「今度はこちらの番ですわ!」

プリンプリンセス「さあ、私と一緒に踊りましょうっ♪ 」

プリンプリンセス「王女の歌!」

ラララ〜♪


雪歩「ひぃっ!?」ビクッ


プリンプリンセス「ラララ〜♪ 」


雪歩「っ……!」


雪歩「………」


雪歩「………………?」



プリンプリンセス「さあ、これでもうあなたは、自分の意思で身体を動かせない」

プリンプリンセス「生ける屍ですわよっ!」

プリンプリンセス「……って、あら?」


雪歩「あ、あの〜……私、なんともありませんけど……」


プリンプリンセス「そ、そんな馬鹿な!?」

プリンプリンセス「はっ!? あなた、その鎧まさか……」


雪歩「えっと……確か、『アダマンアーマー』っていう鎧だって、亜美ちゃんと真美ちゃんに教えてもらいましたぁ」


プリンプリンセス「」


雪歩「あ、あの、私、なんかダメだったんでしょうか……?」


プリンプリンセス「まさか、私の歌に対策をしているなんてっ……!」

プリンプリンセス「こうなったら、破れかぶれですわっ!」ダッ


雪歩「ひっ!?」ビクッ

雪歩「く、来るなら来いですぅ!」チャキッ

90 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/02/20(土) 21:55:36.83 ID:8cf2vR7YO

レッドドラゴン「うりゃっ!」ブンッ

ドゴオォン!!


あずさ「……うふふ、こっちですよ〜?」ヒョコッ


レッドドラゴン「……ンのやろっ!」ブンッ

ドカァン!!


あずさ「……残念、ハズレでした〜♪ 」ヒョコッ


レッドドラゴン「ちっ……! 逃げ回ってばっかでラチがあかねえ!」

レッドドラゴン「こうなったら……くらえ、熱線っ!!」コォォ


あずさ「あらあら……」


ズドドドドドドッ!!


レッドドラゴン「うっし! 手応えありだぜ!」

レッドドラゴン「加減してやったからまだ息はあるだろーがな」

レッドドラゴン「さあ、出てきやがれ!」



あずさ「……今のは、ちょっとびっくりしちゃったわ〜」ボロッ



レッドドラゴン「どうだ、思い知ったか! 身体半分吹っ飛ばしてやったぜっ!」


あずさ「ええ、すごかったですね〜」

あずさ「でも……」


ニョキニョキッ


あずさ「私、再生できるんみたいなんです〜」ニコニコ


レッドドラゴン「」


レッドドラゴン(あいどるって、人間じゃねぇのかよ……)

91 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/02/20(土) 21:59:44.38 ID:8cf2vR7YO

金竜「今まで我らは、千の人間を殺してきた……」

銀竜「我ら兄弟の姿を見て無事だった者は、いない!」

金竜「さあ、あいどるたちよ。念仏でも唱えるがいい!」


春香「せ、千人も……!」ゴクリ

亜美「んっふっふ〜♪ 」

亜美「亜美たちなんか、今まで一億万体の魔物を殺してきたんだもんね!」

春香「……えっ? そ、そうだっけ?」

亜美「亜美たちの姿を見て、今までブジだった魔物などいないのだー!」バーン!


金竜「なん…だと……?」

金竜「桁が、違いすぎる……!」ワナワナ

銀竜「……ま、待て兄者。ただのハッタリかもしれぬぞ? さすがに一億は数が多すぎる」

金竜「そ、そうか! 我らと同じく向こうもハッタリで相手の戦意を喪失させる作戦なのだな!」

金竜「ふはははは! 残念だったな! お前たちの策は破れたぞ!」ビシッ

銀竜「あ、兄者! ハッタリとバラしては作戦の意味がないぞ!」


春香「えっ? ハッタリだったの!?」

亜美(…………勝った!)グッ

92 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/02/20(土) 22:02:35.80 ID:8cf2vR7YO

金竜「……ええい! こうなったら実力で黙らせてくれるっ!」

金竜「行くぞ、銀竜!」

銀竜「おうっ!」


亜美「来るよ、はるるん!」

春香「うんっ! 私に任せて!」チャキッ


春香「たあああああ!」タタタタ


銀竜「一直線に向かってくるとは……愚かなり!」ビュンッ


春香「……わわわっ!」ズルッ

ドンガラガッシャーン!


銀竜「……え?」


ザシュッ!!


銀竜「ぐはぁ!!」

金竜「銀竜!?」


春香「痛たた……」

亜美「よしっ! ナイスドンガラ!」

春香「うぅ……カッコよく行こうと思ったのにぃ……」ムクッ


銀竜「な、なんだ今の太刀は……? 在らぬところから斬られたぞ……?」

金竜「恐ろしや、あいどる!」



春香「き、気を取り直して……」

春香「……天海春香、行きますッ!」チャキッ

亜美「よーし、亜美もやったるぜー!」

93 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/02/20(土) 22:06:39.84 ID:8cf2vR7YO

ガキィン! キィン!

ドゴオォン! ドカァン!



伊織「………」


伊織「……ちょっとプロデューサー。美希はともかく、なんでこの伊織ちゃんが控えなのよ!?」

美希「……zzz」

P「あ、いや……別に控えってわけじゃないんだけど、こちらの人数の方が多いからな」

P「暇なら、今からでも誰かの助太刀に行くか?」

伊織「イヤよ! 2人がかりなんてダサい真似、できるわけないでしょ!」

P「そ、そうか。まあ、今は力を温存しておいてくれよ。伊織も美希も、ウチの重要な戦力だからさ」

伊織「……ったく、仕方ないわね」

伊織「はぁ……美希の呑気さが羨ましいわよ」チラ

美希「……むにゃ……」



律子「……あの子たち、ちゃんと魔物と戦えているみたいですね」

P「みんなもそれだけ成長したって事だよ。戦いを覚えたアイドルっていうのもどうかと思うけど」

律子「ええ…………でも、腑に落ちないんですよね」

P「? ……どういう事だ?」

律子「あの魔物たち、小鳥さんの親衛隊だって言ってましたよね?」

P「ああ、言ってたけど……」

伊織「……もしかして、小鳥の差し金にしてはうまく行きすぎてるって事?」

律子「ええ。考えすぎなのかもしれないけど、まだ何か裏があるんじゃないかって思うのよ」

伊織「……まあ、貴音がどこかへ行ってしまったのも、あの野獣みたいな魔物が貴音を誘導した、とも取れるわよね」

P「……確かにそうだな」

律子「いずれにしても、これ以上バラバラに行動するのは、できるだけ避けたいわね」

94 : ◆bjtPFp8neU [sage]:2016/02/20(土) 22:15:14.17 ID:8cf2vR7YO
今日はここまでです
キャラいすぎてよくわからなくなってきた
95 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/20(土) 23:16:43.06 ID:iF/yTOiDO
乙、しゃーないさFFやし
96 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/22(月) 16:02:59.06 ID:9OcqmFvEo
乙です
97 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/03/15(火) 06:19:42.95 ID:9ZPc0ShDO
まだかな
98 : ◆bjtPFp8neU [sage]:2016/03/18(金) 22:37:47.01 ID:/YzkdG/dO

春香「……うわわわっ!」ダッ


ドゴオオン!!


銀竜「もらった!」

ビシュッ!!


春香「あぅっ!」

春香「……うぅ、痛たた」


金竜「逃げ足は一人前か。しかしそういつまでも逃げられるなどと思わない事だ」



春香「……よし、私、本気だす!」スッ

亜美「あ、はるるん、ひょっとしてそれは……」

春香「うん。ヤミちゃんのリボンだよ」キュッ

亜美「ほぅ、なんか変身っぽくていいねぇ」

春香(ヤミちゃん、力を貸して……!)


…パアアァァァァ!!



金竜「ぬ? なんだこの眩い光は……!」

銀竜「目が……!」


シュゥゥ…

春閣下「…………うふふ♪ 可愛がってあげるよっ♪ 」チャキッ


銀竜「あの娘、様子が変わったような……?」

金竜「よくはわからぬが、その程度で怯む我らではないっ!」

金竜「銀竜、行くぞ!」

銀竜「応っ!」

ビュウゥゥ…
99 : ◆bjtPFp8neU [sage]:2016/03/18(金) 22:39:24.88 ID:/YzkdG/dO

亜美「来たよ! はるるん……じゃなくて、ヤミるんは金色の方をお願い! 亜美は銀色の方をやっつけるから!」

春閣下「……ちょっと、私に指図しないでよ。ガキのクセに」

亜美「えっ?」

春閣下「さて、と。今回はプロデューサーさんが見てる事だし……」チラ



P「春香……?」



春閣下「いいところ、見せなきゃねっ♪ 」チャキッ

春閣下「亜美、邪魔しないでよね!」

亜美「………」

亜美(……カンジ悪っ!)



金竜「ずええぇぇいっ!!」ブンッ


春閣下「ふん……」ヒョイッ


銀竜「馬鹿め! もらった!」ブンッ


バキィィ!!


春閣下「……ま、こんなもんだよね」ガシッ

春閣下「はっ!」ザシュッ


銀竜「ぐあ……!」

金竜「銀竜! ……貴様っ!」ブワッ


春閣下「無駄だよ!」ガキィン


金竜「ぬ……!」



金竜「く、この娘……!」

銀竜「先ほどとはまるで動きが違うぞ!」


亜美「ヤミるんつえ〜。これ、一人で倒しちゃうんじゃ……」

亜美(……あり? まさか亜美っていらない子?)


亜美「うあうあ〜! そんなんヤダよ〜!」

亜美「亜美だって、カツヤクするんだからぁ!」ダッ

タタタタ…
100 : ◆bjtPFp8neU [sage]:2016/03/18(金) 22:43:52.83 ID:/YzkdG/dO

春閣下「……よーし、今度はこっちの番だよ!」チャキッ

春閣下「はあああぁぁああっ!!」

タタタタ…


銀竜「ええい、返り討ちにしてくれるっ!」


春閣下「たああぁぁーー!」

春閣下「……ぅわあああっ!?」ズルッ

ドンガラガッシャーン!!



銀竜「!」

銀竜「…………っ!」

銀竜「…………む? 攻撃が来ない……?」

銀竜「先ほどはあの妙な攻撃にやられたが、今度は不発だったか」


金竜「ぐはぁ!」


銀竜「あ、兄者ああっ!!」



春閣下「うぅ……こけちゃった……」



銀竜「おのれあいどる! 兄者の仇!」

銀竜「我が炎を食らえ……ブレイズ!!」

ゴオオオオォォオオ!!



春閣下「わわっ! ちょ、ちょっと待ってよ……」



亜美「ヤミるん、亜美にまかせて!」

亜美「ファイガ!」バッ

ゴオオオオォォオオ!!


銀竜「そのような魔法で我が炎に刃向かうとは、愚かな!」ググッ


亜美「んっふっふ〜……」ボッ

亜美「も一つオマケに、ファイガ!」ボッ

ゴオオオオォォオオ!!


亜美「アーンドもう一丁!」ボッ

ゴオオオオォォオオ!!


亜美「いっけーーーー!!」


銀竜「魔法を同時に三つだと!?」

銀竜「バカなぁっ!!」



ドッカアアアアァァン!!

101 : ◆bjtPFp8neU [sage]:2016/03/18(金) 22:48:02.32 ID:/YzkdG/dO

春閣下(……へぇ、なかなかやるね、亜美)

春閣下(プロデューサーさんも見てる事だし、これは私も負けていられないね!)

春閣下「プロデューサーさん! 私、いいところ見せますからねっ!」チラ




美希「……うーん、ハニー……」ダキッ

P「こ、こら美希、今はみんなが戦ってるだろ。起きろ」ユサユサ

美希「……むにゃむにゃ……えへへ……」スリスリ

律子「まったく……マイペースにも程があるわね」

伊織「まあ、今は美希の出番はなさそうね」




春閣下「ちょっと、なによあれ!」

春閣下「なんでプロデューサーさんとイチャイチャしてんの、美希……!」ゴゴゴゴ


春閣下(……ああ、そっか。そうだったね)

春閣下(すっかり忘れてたよ。私が本当にやるべき事を)

春閣下(思い出させてくれてありがと、美希!)



金竜「ぬぅ……油断したわ」

金竜「あいどる……聞きしに勝る武勇よ!」

銀竜「しかし、我らも負けてはおれんっ!」



亜美「わ、もう復活しちゃったよ!」

亜美「ヤミるん、来るよ!」チラ



春閣下「美希……」

春閣下「プロデューサーさんは渡さないッ!!」ダッ

タタタタ…



亜美「え!? ちょ、ちょっとヤミるん、どこ行くのさーー!?」



金竜「行くぞ、銀竜!」

銀竜「応っ!」


ブワッ…


亜美「あああ、ま、待って! ちょっとタンマー!」
102 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/03/18(金) 22:51:41.91 ID:/YzkdG/dO

P「こら美希、起きなさい!」ユサユサ

美希「……んん……あと2時間 ……」ムニャムニャ



春閣下「……プロデューサーさん、そんな役立たずは放っておきましょうよ」



P「……えっ、春香?」

伊織「春香、あんた亜美と一緒に戦ってたんじゃないの?」

春閣下「どうでもいいよ、そんなの」

律子「どうでもいいって……ちょっと春香、あなた何言ってるの?」

伊織(! ……この言動……)



春閣下「……プロデューサーさんは、誰にも渡さないッ!」バッ



春閣下「……さあ、プロデューサーさん。行きましょう」

P「お、おい春香、どうしたんだよ? 行くってどこへ?」

春閣下「えへっ♪ 誰にも邪魔されないで二人っきりになれるところ、ですよ?」グイッ

P「ちょ、ちょっと待て、おい!」

タタタタ…



律子「こら、春香! 戻りなさい!」

伊織「あのバカ……!」

律子「ど、どうなってるの? 春香ってあんな事する子じゃなかったわよね……?」

伊織「律子は確か知らなかったわよね。あの春香は……春香であって春香じゃないのよ」

律子「? ……どういう事?」

伊織「話してる時間が惜しいわ。私が連れ戻して来る!」グッ

美希「……待って、でこちゃん」ギュッ

伊織「美希? あんた、いつの間に起きて……?」

美希「ミキが追いかけるの」

美希「ねえ、いいでしょ? 律子…さん」

律子「………」

律子(伊織の言う通り、考えているヒマはないわね)

律子「……わかったわ。プロデューサーと春香の事はあなたに任せる。でも、無茶はしないでね?」

美希「うん。ありがとうなの!」

タタタタ…
103 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/03/18(金) 22:58:48.86 ID:/YzkdG/dO


ガキィン! キィン!


…スタッ


月の女神「……ふぅ。強いね、あなた。ワクワクしちゃう♪ 」

千早(リーチでは私が有利だけど、あの子、腕力がすごくてこちらが押され気味……)

千早(何か、決め手が欲しいわね)




春閣下「あはははっ♪ 」タタタタ…

P「おい春香、戻れ! 今は戦闘中だぞ!」

春閣下「つれない事言わないでくださいよ、プロデューサーさん♪ 」




千早「え……?」

千早(あれは……春香? なぜプロデューサーを担いで走ってるのかしら)



美希「春香、待つの! ハニーを返して!」タタタタ…




千早「美希……」

千早(返してって……まさか)

千早(……今、春香は黒いリボンを着けていた)



月の女神「戦いの最中によそ見するなんて、ずいぶん余裕なんだね!」ブンッ

ドガァ!!


千早「きゃっ……!」ヨロッ


千早「……そ、そうだわ。今はよそ見をしている場合では……」チャキッ


千早(……黒いリボンを着けているという事は、今の春香はヤミさんが表に出てきている)

千早(ヤミさんは春香よりもずいぶんプロデューサーに固執していたようだった)
104 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/03/18(金) 23:00:24.55 ID:/YzkdG/dO

千早「……はっ!」ビュンッ


月の女神「……ほいっと!」ガキィン


月の女神「えいっ!」ブンッ


千早「くっ……!」ヒョイッ


…スタッ


千早(それに、こう言ってはなんだけど……)

千早(彼女は、春香と違って仲間意識がまるでないような発言を繰り返していた)

千早(春香とプロデューサーが心配だわ。私も2人を追いかけたい……)




律子「………」

律子(千早の動きが急に鈍くなった……)

律子(春香が心配なのね)

律子(……確かに、美希一人に任せるのは酷かもしれないわ)

律子(かと言って、私が追いかけるワケにはいかない)

律子(またバラバラになってしまうけど……仕方ないか)

105 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/03/18(金) 23:02:59.60 ID:/YzkdG/dO

月の女神「えいっ!」ブンッ


千早「くっ!」ガキィン


月の女神「……ねえ、あなた、最初よりも動きが鈍くなってない? 気のせいかなぁ」


千早「………」

千早(やはり相手にはわかってしまうものなのね……)


月の女神「もう、ちゃんと本気でやってくれなきゃ殺しちゃうよー?」



律子「……悪いけどあなたには千早は殺せないわ!」



月の女神「……え?」


千早「律子!」


律子「ここは私に任せて行きなさい。春香の事、気になってるんでしょう?」


千早「でも……」チラ



月の女神「ふーん、2対1って事かな? 楽しめれば別になんでもいいよ、私は」



律子「美希が追いかけて行ったけど、あの子一人じゃ不安だわ」

律子「千早。あなたが美希について行ってくれれば安心なんだけど」


千早「………」

千早「律子、ありがとう!」ダッ

タタタタ…


月の女神「あっ! 逃がさないよー!!」ブンッ


ガキィン!!


律子「ごめんなさいね。選手交代よ!」ググッ


月の女神「っ……!」ググッ

月の女神(この人……とっても強い!)


月の女神「いいよ……! たくさん遊ぼう!」ギラッ
106 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/03/18(金) 23:05:29.23 ID:/YzkdG/dO

タタタタ…

美希「春香……じゃなくて、なんだっけあの子。名前忘れちゃった」

美希「とにかく、ハニーは絶対に返してもらうの!」

美希(それに……)

美希(『あの』春香の分身みたいな子、ミキの勘だときっと……)

美希(でも、もしそうだとしたら、春香はどうなるの……?)

美希(春香の気持ちは……)



美希「……!」グッ



タタタタ…

千早「…………美希!」



美希「……千早さん!? どうして?」

千早「私も一緒に行くわ」

美希「ありがとうなの。千早さんがいればとっても心強いの!」

千早「2人がどっちの方角へ行ったかはわかる?」

美希「うん。ハニーの気を追いかければカンタンなの」

千早「それじゃ、道案内お願いね。……急ぎましょう!」

美希「りょーかいなの!」

タタタタ…
107 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/03/18(金) 23:07:01.16 ID:/YzkdG/dO
ー 巨大クレーター ー


春閣下「ふぅ……。ここまで来ればもう大丈夫かな」

春閣下「プロデューサーさん、すみません。勝手にこんな事しちゃって」

P「……なあ、今の春香はいつもと少し違うんだよな?」

春閣下「あ、もしかしてみんなから聞きました? 私の事」

P「うん。リボンを付ける事で闇と合体するんだよな、確か」

P(本来なら、試練の山で闇とは決別しているはずだが……)

P(優しい春香の事だ。きっと闇を切り捨てる事ができなかったんだろうな)

春閣下「はい、そうです」

春閣下「……でも嬉しいなぁ。こうして『私』としてプロデューサーさんにお会いするのは、これが初めてですから♪ 」ニコッ

P「初めて……そうか。一応そうなるのか」

春閣下「『私』は、今まで長い間ずーっと『わたし』の中にいました」

春閣下「『わたし』の中で、『わたし』がプロデューサーさんと楽しそうにお話しているのを、指を咥えて見ている事しかできませんでした」

春閣下「私は、ずっとあなたとこうしてお話したかった。あなたと触れ合いたかった」

春閣下「……『わたし』じゃなくて、『私』として」

春閣下「プロデューサーさんに、『私』を見てもらいたかった」

春閣下「……でも、やっとチャンスが巡って来たんです!」

P「………」

春閣下「……ねえ、プロデューサーさん。私、あなたが大好きです」

P「は、春香……」

春閣下「プロデューサーさんは、私の事好きですか?」

P「……『君』の事はまだよく知らない。だから、答えられないよ。……ごめん」

春閣下「そんなの、これから知ってもらえばいい事です! 時間はたくさんあるんですから!」

P「いや、そんな時間は……」



美希「そんな時間はないの!」

千早「ヤミさん、やっと追いついたわ!」



P「美希、千早……!」

春閣下「……あーあ。もう邪魔が入っちゃいましたね」
108 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/03/18(金) 23:09:49.66 ID:/YzkdG/dO

春閣下「完璧に撒いたと思ったんだけどなー。よくここがわかったね?」


美希「そんなの、あなたには関係ないの」


春閣下「あはは、嫌われちゃってるんだね、私って」

春閣下「……それとも、『私』も『わたし』も両方嫌いなのかな? 美希は」


美希「……答える必要なんてないって思うな」


春閣下「ふふっ♪ ……まあ、私はどっちでもいいけどね。でも、『わたし』は、美希に嫌われてるとわかったら傷つくだろうなぁ」

春閣下「『わたし』は、美希の事も大好きだもんねー 」


美希「………」

美希「……そんな事より、早くみんなのところへ帰るの。ハニーも解放してあげて!」


春閣下「……いやだなぁ。はいそうですかって簡単に戻るわけないでしょ?」

春閣下「そんなの愚問ですよ、愚問!」


千早「今は遊んでいる場合ではないの。それはヤミさん、あなたもわかっているでしょう?」

千早「こうしている間もみんなが魔物たちと戦っている。早く私たちも戻らないと」


春閣下「……くどいよ。私は戻らない。ここでプロデューサーさんと2人っきりで過ごすんだもん!」


千早「……ヤミさん、あなたは春香の意思には逆らえないはず。春香がこんな事を許すはずがないわ」


春閣下「うん、そうだね。『私』は『わたし』には逆らえない。『わたし』がその気になれば、私はまた、深い深い意識の底に沈んじゃうだろうね」

春閣下「何もない、闇の底に」

P「………」

春閣下「ねえ、千早ちゃん、美希。なんで私がプロデューサーさんを連れて逃げたか、わかる?」


千早「それは……」

美希「ハニーの事、好きだから……なんでしょ?」

千早「……えっ?」


春閣下「………」
109 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/03/18(金) 23:19:25.92 ID:Az1TjUeTO

美希「ミキ、気づいてたよ。あなたはミキたちには全然キョーミない」

美希「あなたがキョーミあるのは、ハニーだけだって」


春閣下「……あはははっ♪ さっすが美希。こういう事は目ざといなぁ!」


千早「ヤミさん。あなた、始めからプロデューサーだけを狙っていたの……?」


春閣下「うん、そうだよ。私の目的は最初からたったひとつだけ」

春閣下「プロデューサーさんとずっと二人っきりで過ごす事。……ただそれだけなんだよ」

春閣下「やっと二人きりになれたんだもん……私、この瞬間をずっと待ってたんだもんっ……!」ギュッ

P「は、春香……」


美希「春香もハニーの事が好きだもんね。あなたが春香の分身なら、好きな人が同じでもまったく不思議じゃないの」

美希「でも、さっき千早さんが言った通り、あなたは春香に逆らえないはずでしょ?」


春閣下「……それは、あくまで『私』と『わたし』の意見が食い違った時の話」

春閣下「もし、今の『わたし』が『私』と同じ気持ちだったとしたら……?」

春閣下「プロデューサーさんとずっと一緒にいたい。……みんなを捨ててでも」

春閣下「そう、『わたし』も望んでいるとしたら?」


千早「そんなの、あり得ない!」

千早「確かに、春香がプロデューサーに恋心を抱いているのは知っているわ」

千早「でも、だからと言って春香がみんなを見捨てるなんて事は、絶対にない!」


春閣下「言い切るねー千早ちゃん。さすが親友ってとこかな?」

春閣下「……でもね、考えてみて。『わたし』だってアイドルである前にひとりの女の子なんだよ?」

春閣下「女の子にとって恋する気持ちがどれだけ大切か。……二人ならわかるんじゃないかな?」

春閣下「美希はあえて言うまでもないし、千早ちゃんだって、密かにプロデューサーさんに尊敬以上の想いを抱いてる事、私知ってるんだよ?」


千早「そ、それはっ……///」
110 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/03/18(金) 23:21:35.42 ID:Az1TjUeTO

春閣下「それでも私『たち』を連れ戻すつもりなら……」

春閣下「私『たち』の大切な想いを無視するっていうなら……ッ!」チャキッ



春閣下「……相手になるよ!」ゴゴゴゴ



千早「! ……すごい、殺気……!」

美希「春香……!」



P「やめろ! 味方同士で争う事ないだろ!?」

春閣下「ごめんなさい、プロデューサーさん。今は大人しくしていてくださいね?」スッ

…チュッ

…ボンッ!

P「!?」



千早「なっ……!?」

美希「ハニーに何をしたの!?」



春閣下「カエル状態を治すアイテムで『乙女のキッス』っていうものがあるんだけど、今のはそれの逆バージョン」

春閣下「あえて言うなら、『魔女のキッス』ってとこかな」

春閣下「まあ、二人に話してもわからないと思うけどね」

P「くそ……」

春閣下「プロデューサーさんにはべろちょろになってもらった。二人とも、これで心おきなく戦えるでしょ?」ニコッ


美希「……!」

千早「春香もプロデューサーも、返してもらうわ!」チャキッ


春閣下「ふふ、いいよ……」

春閣下「格の違いを見せつけてあげる!」
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