P「ゲームの世界に飛ばされた」FINAL2

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354 : ◆bjtPFp8neU [sage]:2016/07/31(日) 14:23:59.29 ID:uFHmjAGF0
ここまでです
次回はやっとラスダン突入…のはずです
355 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/07/31(日) 14:45:02.14 ID:xBnvoDkRO
乙ー次回は早めに来てくれるのをアイドル育成しながら待ってる
356 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/25(木) 20:58:24.68 ID:PBS/ypTGO
まだか?もうすぐ一ヶ月やで
357 : ◆bjtPFp8neU [sage]:2016/08/28(日) 17:42:57.39 ID:VRt3rZWL0
>>353で月の女神が「地下7階」と言ってますが地下8階の間違いです
358 : ◆bjtPFp8neU [sage saga]:2016/08/28(日) 17:45:14.11 ID:VRt3rZWL0
ー トロイアの町 パブ『迷宮』 ー


黒井「…………なに? 月へ向かう手段がないだと?」

北斗「予想のつかない展開になっているのではっきりとは言えませんが、すでにやよいちゃんたちが魔導船で月へと渡ってしまっているので、それ以外に方法はないかと……」

高木「つまり、我々は置いてきぼりを食ってしまったのか」

黒井「……ちっ、765プロめ。この私をのけ者にしおって!」

翔太「まあまあ黒ちゃん、今さら言っても仕方ないでしょ。やよいちゃんが僕らを召喚してくれれば、やよいちゃんのために戦えるんだからさー」

黒井「そもそも、なぜ私が高槻やよいにいちいち呼び出されなければならないのだ! 私は召使いなどではないのだぞ!」

翔太「いや、もともとそーいう契約だったし、黒ちゃんも結構ノリノリで戦ってたじゃん……」

黒井「まったく、この世界は間違っている! 何もかも!」

高木「はは……まあ、ここは実際には存在するはずのない世界だからねぇ……」


冬馬「……見苦しいぜ、黒井のおっさん」


黒井「なに……!?」

冬馬「翔太の言う通り、俺たちは高槻と契約を交わしたんだ。ルールは守るのが大人だろ?」

冬馬「あんたは俺たちの王だ」

冬馬「王だったら王らしく、いつもみたいに余裕ぶって構えてればいいじゃねえか」

黒井「む……」

冬馬「それに、黒井のおっさんは高槻の最終兵器でもあるんだ。……切り札ってヤツだな」

冬馬「だからきっと高槻も出し惜しみなんてしないと思うぜ?」

黒井「………」

黒井「…………フン、分かったような口を聞きおって」

黒井「だがお前の言う事も一理ある。私に頼らなければ事務員一人も倒せない765プロめ、せいぜいこの王に泣きつくがいい!」

黒井「クックック……!」

359 : ◆bjtPFp8neU [sage saga]:2016/08/28(日) 17:49:25.96 ID:VRt3rZWL0

北斗(……冬馬。お前、なかなか黒井社長のコントロールが上手くなってきたな)

冬馬(まあな。伊達に長い時間を一緒にやって来てねーよ)

翔太(ま、御し易いのは冬馬君も同じだけどね〜)

冬馬(お前は一言余計だこのやろ)



「…………それは、本当ですか!?」



冬馬「…………あん?」チラッ



トロア「このような時勢にミシディアへ戻られるなど……。しかもお一人でなんて危険です!」

長老「世界を背負って戦うあの子らのために、この老いぼれのできることなど一つしかないからのぅ」

長老「……もう、決めたことじゃ。ワシは祈りの館へ入る」

トロア「し、しかし……!」



冬馬「……なんだあの爺さんは」

翔太「うーん……セリフから察するに、重要なキャラっぽい気もするよねー」

冬馬「まあ、俺たちにゃカンケーねぇか」

北斗「………」

冬馬「……おい北斗。どうかしたのか?」

北斗「……冬馬。俺たちのやるべきことが見つかったかもしれない」

冬馬「…………え?」

360 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/08/28(日) 17:53:35.51 ID:VRt3rZWL0
ー ミシディアの村 ー


長老「……すまんの、二人とも。ジジイのわがままに付き合わせてしまって」

技師1「いえ、とんでもないです!」

技師2「飛空艇の操縦は我々の仕事ですから」

技師1「それに……」

技師1「オレたちも親方たちのことはずっと心配してました。気持ち的には長老さんと一緒です」

技師1「ですから、その……オレたちも共に祈ります!」

長老「気持ちは嬉しいが、そなたらにはそなたらの務めがある。そなたらはトロイアへ戻るんじゃ」

技師2「長老さん、しかし……!」

長老「祈りの館へ篭るとなれば、長い時間自由がきかないことになる」

長老「ファルコン号を動かすことの出来るそなたらがいなくなってしまっては、アン殿をはじめとするトロイアの人々に迷惑がかかってしまうじゃろう」

技師1「………」

長老「なに、ワシのことは心配するでない。それよりも、アン殿を手伝ってやってほしいんじゃ」

技師2「……分かりました。でも、定期的に様子は見に来ます」

技師1「あと、何か必要な物資があったら、なんなりと言ってください!」

長老「……ありがとう」ニコッ




ババババババ…


技師1「それでは長老殿、お体に気をつけて!」

技師2「また……来ます!」



長老「うむ」

361 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/08/28(日) 17:58:43.33 ID:VRt3rZWL0

長老「……さて」クルッ


長老(村は相変わらずひどい光景じゃ。バロンの者が攻めて来た時とは比べものにならんほどの……)

長老(皆……すまんの。しばらく待たせてしまって)

長老(祈りの館へ入る前に、まずは形だけでも弔いを済まさねば)

スタスタ…



ザッ… ザッ…

長老「………」ザクッ




翔太「……ねえ、こっそりついて来たはいいけど、あのおじいさん、何かはじめちゃったみたいだよ?」

冬馬「穴掘ってるみたいだけど……いったいなんのために掘ってんだ?」

北斗「……きっと、死者の為の墓なんだろう」

冬馬「死者……?」

翔太「それってもしかして、魔物にやられちゃった人たちの?」

北斗「おそらくな」

高木「酷いものだ。村ひとつ丸ごと滅んでしまうとは」

黒井(……これが力無き者の末路、か。惨めだな)

黒井「………」

362 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/08/28(日) 18:01:04.20 ID:VRt3rZWL0

黒井「……北斗、どうするつもりだ。あの老人を追うと言ったのはお前なのだぞ」

北斗「まずはあの人と接触しようと思ったのですが……。すみません、機会を逸したみたいです」

翔太「……確かに、今はちょっと声かけづらいよね」

黒井「……仕方がない、ほんの少しだけ時間をやろう」

翔太「えっ? 黒ちゃん本気?」

黒井「私とて鬼ではない。無様なあの老人に後悔する時間くらいはくれてやる」

北斗「社長……」

翔太「へぇ〜、黒ちゃんいいとこあるじゃん! 僕、見直しちゃったよ!」

黒井「……フン」プイッ

高木「ふふ……」ニコッ

高木「…………ん?」チラッ

冬馬「………」

高木「鬼ヶ島君、どうかしたのかい?」

冬馬「いや……」

冬馬「この村ってさ、こないだ会った月から来たっていう魔物に滅ぼされたんだよな?」

高木「……!」

冬馬「俺、あの時はとっさに魔物を助けちまったけどさ。……もしかしてこの世界の人間のためにならねー事をしたんじゃないかって……」

翔太「冬馬君……」

北斗「冬馬……」

黒井「………」

363 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/08/28(日) 18:04:35.65 ID:VRt3rZWL0

黒井「だからなんだというのだ?」

冬馬「……黒井のおっさん……?」

黒井「いっとき魔物の味方をしてしまった。だから敵対関係にある人間とは接触できない」

黒井「……そう言いたいのか?」

冬馬「いや、そうは言わねえけど……。俺たちがした事は正しい事だったのか、って分からなくなっちまってよ」

黒井「くだらん。この世界にいちいち感情移入してどうする」

黒井「そんな事を考える暇があるなら、次に高槻やよいに召喚された時のために作戦でも考えておくのだな!」

冬馬「………」

高木「鬼ヶ島君。『正しい事』の定義なんて人の価値観次第だ。それこそ人の数だけ正義がある」

高木「誰かの正義と自分の正義が矛盾することは度々あるだろう」

高木「だが、我々はお互いに歩み寄ることができる。歩み寄り、価値観を近づけることができる」

高木「君の尊い価値観を理解してくれる者は、きっと現れるだろう」

冬馬「………」

黒井「……それはただの妥協だがな」

高木「む……」

翔太「もうっ! 黒ちゃんは一言余計だよー」

黒井「冬馬。私はお前のように後悔などしたりしない。後悔とは、弱者のすることだからな」

冬馬「………」

高木「鬼ヶ島君、君はまだ若い。悩む事もあるだろうが、悩んだ事は必ず君の力になる」

高木「だから、たくさん悩むといい」


黒井「高木、お前は何も分かっていない」ゴゴゴ

高木「分かっていないのはお前だ、黒井」ゴゴゴ


翔太「ちょ、ちょっと二人とも、こんなところでケンカはダメだってば!」



長老「……ワシの村で暴れんでくれんかのぅ。召喚獣たちよ」



黒井「!」

高木「!」

翔太「……ほ〜ら怒られた」

364 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/08/28(日) 18:08:08.51 ID:VRt3rZWL0

長老「……幻獣が揃ってこんな廃村に何用じゃ?」

翔太「おじいさん、僕たちの事知ってるの?」

長老「もちろんじゃよ。アスラにオーディン、そして幻獣王リヴァイアサン」

長老「まさかこの様な豪華な面子に会う事になるとはな」

長老「お主ら、トロイアからずっとワシを追って来たのじゃろう?」

高木「おや、気づいておられたのか。なかなか鋭い勘をお持ちのようだ」

長老「ワシとて月の民の端くれ。気配を読む事ぐらいは出来る」

長老「じゃが、この村は見ての通りすでに滅んでおる。幻獣であるお前さんたちの求めるものなど何も無いと思うのじゃがのぅ」

冬馬「………」

黒井「……おい、北斗」

高木「ここは伊集院君の判断に任せるよ」

北斗「はい、分かりました」



北斗「……長老さん。俺たちも祈りの館へ入れてもらえませんか?」



長老「………」

長老「なぜ、お主らのような幻獣が? 詳しい話を聞かせてもらえるかの」

北斗「はい」

365 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/08/28(日) 18:10:42.65 ID:VRt3rZWL0
ーーーーーー

ーーー


長老「……そうか。お主らもまた、ハルカたちの仲間じゃったのか」

北斗「はい。もう月へ行く手段はありませんが、あなたの力をお借りすれば俺たちの『想い』を彼女たちへ届ける事ができると思ったんです」

長老「ふむ……」

長老「お主らの気持ちは分かった。本当ならワシひとりで祈るつもりじゃったが……」

長老「こうしてここにお主らが訪れたのも、何かの縁じゃろう。共に来るがよい」

北斗「はい、ありがとうございます」

長老「少し待っていてくれ。すぐにやることを終わらせてくる」

スタスタ…



冬馬「……なあ、じいさん、待ってくれ」



長老「……ん?」クルッ



冬馬「何人分の墓を作るつもりか知らねえけど、あんたひとりじゃ大変だろ? 俺にも手伝わせてもらえないか?」



長老「………」

長老「不思議じゃな、お主は。幻獣が召喚士でもないワシの為に力を貸すなど」

長老「ありがとう。ならば、頼んでも良いかの?」

冬馬「おうっ!」

366 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/08/28(日) 18:14:59.53 ID:VRt3rZWL0
ー 地下水脈 ー


カイナッツォ「……と、いうわけなのだ」

オクトマンモス「ふーん、人間と魔物が和解かぁ。オレの知らない間にいろいろあったんだなー」

カイナッツォ「今後人間を見かけても襲わぬようにな」

オクトマンモス「カイナッツォの旦那が言うんじゃ従わないわけにはいかねーな」

オクトマンモス「よし、ここいらの魔物にはオレから伝えておくぜ!」

カイナッツォ「うむ、さすがは私の部下。もの分かりが早くて助かる」

オクトマンモス「じゃあ、オレはまたダラダラと寝て過ごすからよ。じゃあな、旦那!」

ズズ…


カイナッツォ「……まったく、ぐうたらな奴だ」




ー アントリオンの巣 ー


アントリオン「……えっ、マジかよ! じゃあ、バトルとかもダメなのか?」

スカルミリョーネ「……だ、ダメ。人間を傷付けることにな…る……」

アントリオン「ちぇー。オレ様の唯一の楽しみだったのによー」

スカルミリョーネ「……ひ、ヒマな時にオレが相手になってやるか…ら……」

アントリオン「ホントだぞ! 絶対だかんな!?」

スカルミリョーネ「……ぞ、ゾンビ、嘘つかな…い……」

スカルミリョーネ「……ちゃ、ちゃんとみんなに知らせておくんだ…ぞ……?」

アントリオン「……了解」

アントリオン「ところでスカルミリョーネ様、砂漠の光、持ってくか?」

スカルミリョーネ「……い、いらな…い……」

367 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/08/28(日) 18:17:03.98 ID:VRt3rZWL0
ー バロンの町 ー


マグ「バルバリシア様……!」

ドグ「お会いしとうございました……!」

ラグ「こうして再びその美しいお姿を拝見する事ができて、我らは感激にございますっ!」

バルバリシア「良かった、無事だったのね、三人とも」



バルバリシア「ところで、こんな場所でいったい何をしていたの?」

マグ「それが……。ゾットの塔の爆発から命からがら逃げ出したのは良かったのですが……」

ドグ「目が覚めると、見知らぬ土地に横たわっておりまして……」

ラグ「歩けど歩けど仲間の魔物や人間すらも見つからず、途方に暮れていたのです……」

バルバリシア「大変だったのねぇ、あなたたちも」

バルバリシア「ま、この町にもう人間はいないみたいだし、ここを根城にするのもいいんじゃないかしら?」

マグ「いえ、せっかくこうして再び出会えたのです。我らもバルバリシア様と共に行きます!」

バルバリシア「その前に、他の魔物たちに伝えてもらいたいのよ」

バルバリシア「もう人間と争う事はない、って」

ドグ「……それは、本当なのですか? ルビカンテ様ともあろうお方が人間と手を結ぶなど、にわかには信じられませぬ……」

バルバリシア「ひと昔前のあいつならそうだったかもね。でも、あいつは変わったわ」

ラグ「そうなのですか?」

バルバリシア「ええ。これからは魔物も人間も争いの無い、新しい時代が来るわよ」

バルバリシア「全てが終わったら、どこかいいところを見つけてみんなで暮らしましょう」

マグ「……分かりました。それを楽しみに、私たちは言いつけを果たして来るとします」

マグ「行くぞ、ドグ、ラグ!」

ドグ・ラグ「はっ!!」

タタタタ…



バルバリシア「……新しい時代、か」

バルバリシア「その前に、ミキたちに頑張ってもらわないとね」

バルバリシア「……さて、あいつはしっかりやっているかしら」

368 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/08/28(日) 18:26:22.58 ID:VRt3rZWL0
ー バブイルの塔 1F ー


…ザッ

ルビカンテ「……酷い有様だな。崩れていないのが不思議なくらいだ」

ルビカンテ「ここももうアジトとしては使えまいな」

ルビカンテ(あれだけ激しい戦いがあった後だ。それも仕方ない、か)



「…………ルビカンテ様」



ルビカンテ「……生きていたか、ルゲイエよ」

ルゲイエボーグ「はっ。このルゲイエ、こうしてルビカンテ様に再びお会いできるのを待ちわびておりましたぞ!」

ルビカンテ「…………そうか」

ルビカンテ「このバブイルの魔物はどれだけ残っている?」

ルゲイエボーグ「数は半分程に減ってしまいましたが、戦力として使えそうな者もまだおりますじゃ」

ルゲイエボーグ「人間を攻めるのですかな?」

ルビカンテ「いや、人間とは和平を結んだ。もう憎しみ合う事もないだろう」

ルゲイエボーグ「なんと……」

ルビカンテ「残っている者たちに伝えてくれ。これからは平和に生きるのだと」

ルゲイエボーグ「それが、ルビカンテ様のお望みとあらば」

ルビカンテ「頼んだぞ」クルッ

スタスタ…

369 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/08/28(日) 18:28:55.75 ID:VRt3rZWL0







ルゲイエボーグ(……なーんて素直に従うと思うなよ? この木偶がぁ!)


ルゲイエボーグ「……死ねぇ、ルビカンテっ!」ブンッ


…ザシュッ!!


ルビカンテ「! ……ルゲイエ、貴様……」


ルゲイエボーグ「お前さえいなければ、ワシは四天王になっていたんじゃあ!」

ドゴォ!! ズバァ!!

ルゲイエボーグ「お前のせいで、お前のせいでっ!!」

バキッ!! グシャァ!!


ルゲイエボーグ「っ……はぁ、はぁっ……」

ルゲイエボーグ「ど、どうじゃ、思い知ったか!」


ルビカンテ「………」

ルビカンテ「……やはり、お前だけは生かしておけんようだな」


ルゲイエボーグ「なっ……!? ワシの攻撃が効いてないだと……!?」


ルビカンテ「私利私欲の為にしか動かないお前は、弱い」

ルビカンテ「オレは本当の強さというものをあいどるたちから学んだ」

スタスタ…


ルゲイエボーグ「ひっ、く、来るなっ!」ズサッ


ルビカンテ「お前がイオリにした事を、今度はオレがお前にしてやろう」ポキポキッ



ルゲイエボーグ「お、お助けぇ〜〜!!」



ドカバキベキグシャ!!



ルゲイエボーグ「」



ルビカンテ「……地獄で反省するんだな、ルゲイエよ」

370 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/08/28(日) 18:32:38.70 ID:VRt3rZWL0
ー 深夜 月の民の館の外 ー


亜美「……ちぇすとぉ!!」

ゴオオオオォォ!!


ドサッ

魔物1「」


亜美「もいっちょ!!」

ゴオオオオオ!!


ドサッ

魔物2「」


亜美「ラストっ!!」

ゴオオオオォオオ!!


ドサッ

魔物3「」



亜美「…………ふぃ〜」



真美「おつかれ亜美ー。ほい、エーテル」スッ

亜美「さんきゅ、真美」

亜美「んく、んく……」

真美「なかなか板に付いてきたカンジじゃない? 亜美の『れんぞくま』も」

亜美「……いや、まだまだっしょ。亜美ひとりじゃ使える魔法は限られてるし、お姫ちんやミキミキの火力には届いてないよ、きっと」

亜美「それに連続じゃなくていちおー同時に出してるんだよ? 真美だって同じっしょ?」

真美「おっと、こりゃしっけい」

真美「でも、火力が足りないからなん個も同時に魔法出して撃ってるんだよね?」

真美「それでもまだあの二人にかなわないって、ツラいねー」

亜美「だって……ミキミキは最初っからホーリー使えたみたいだし、はるるん助けに行った時なんかはアルテマ使ったっぽいし……」

真美「ねー。それを聞いた時は真美もチョーびっくりしたよー」

亜美「お姫ちんはお姫ちんでいつの間にかメガフレアとか覚えてるし……」

亜美「もうね、くやしいを通り越して笑いが出てくるよね……」ズーン

真美「ま、まあホラ、あの二人はいろいろとキカクガイだからさ」

亜美「でもさー、ウチらの中でキッスイの黒魔道士は亜美だけなんだよ? やよいっちの火力にはかなわなくても、せめてミキミキやお姫ちんの火力には追いつきたいよー……」

亜美「……あーあ、亜美も二人みたいにすんごい魔法が使えるよーにならないかなぁ」

真美「たいへんだねぇ、黒魔道士も」



貴音「…………精が出ますね、亜美、真美。このような夜更けに」



亜美・真美「……お姫ちん?」

371 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/08/28(日) 18:37:58.44 ID:VRt3rZWL0

亜美「どったの? こんな時間に」

真美「お姫ちんもしゅぎょー?」

貴音「いえ、そうではありません」

貴音「明日、わたくしたちは中心核を目指してここを発ちますが、その前にこの光景をしっかりと目に焼き付けておこうと思いまして」

亜美「この光景って、月の?」

貴音「ええ」

真美「そーいえばお姫ちんって、いっつも月を見てたよね」

貴音「わたくしにとって月とは、無くてはならないものですから」

真美「ふーん……」



貴音「……時に亜美」

亜美「……ほぇ?」

貴音「何やら自分の魔法の威力に自信が持てないようですね?」

亜美「…………まあ、ね」

亜美「てか、お姫ちんのせいでもあるんだよ?」

貴音「……なんと、そうでしたか。それは申し訳ない事をしてしまいました」

亜美「いや、マジにあやまらないでよ……。なんか自分がミジメに思えてきたよー……」

真美「亜美……」ナデナデ

貴音「………」

貴音「亜美。もう少し自分に自信をお持ちなさい」

亜美「えっ……」

貴音「わたくしが保証します。あなたのその力は決して誰にも引けを取ってはいません」

亜美「………」

亜美「うーん……お姫ちんが言うと、なーんかホントっぽく聞こえるんだよねぇ」

貴音「……はて? わたくしは真実を申し上げているつもりですが?」

亜美「……ホント、その自信はどこからくるんだろ」

貴音「ふふ……」ニコッ

372 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/08/28(日) 18:42:00.27 ID:VRt3rZWL0

貴音「では、僭越ながら、わたくしから一つ助言を差し上げます」

貴音「亜美。あなたはわたくしや美希に魔力が劣っていると思い込んで焦っている……」

亜美「………」

貴音「ですが、それは大きな間違いです」

亜美「……え、なんで? だってお姫ちんもミキミキも、亜美が使えない魔法とか使えるじゃん」


貴音「……例え話をしましょう」

貴音「白魔道士である美希は『けあるが』や『へいすと』、『ほーりー』などが得意ですね」

亜美「あと、アルテマもね」ムスー

貴音「片や、同じ白魔道士の真美は『れびてと』や『ぷろてす』、『しぇる』、『ぶりんく』などを好んで使用します」

真美「……ん、そーいやミキミキってあんましサポート魔法使わないんだね」

貴音「ええ。全く使用しない、という訳でもないと思いますが、美希は回復や攻撃、真美は自身の強化や仲間のさぽーとが得意なのだと感じました」

真美「へー……真美、そんなのゼンゼン気にしてなかったよー」

亜美「……んじゃあ、他のみんなは?」

貴音「そうですね。あずさは特に『てれぽ』の魔法が得意なようです」

真美「あれは、得意ってゆーのかなぁ……」

貴音「わたくし自身は白黒併せて大体の魔法を使う事ができますが、それでもその中で得手不得手というものがあります」

貴音「『ぶりざど』系の魔法は得意ですが、『さんだぁ』系の魔法はあずさに、『ふぁいあ』系の魔法は亜美に威力で劣るでしょう」

亜美「えっ、そーなの?」

真美「知らなかった……。しょーげきのジジツってカンジ」

貴音「それに、『とーど』や『ぶれいく』の魔法を使えるのも亜美、あなただけです」

貴音「それ以外にも、あなたには魔法を同時に複数発動するという特技も持っています」

373 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/08/28(日) 18:45:21.46 ID:VRt3rZWL0

真美「……あれ? なんか、お姫ちんの話を聞いてたら亜美がそこまでダメダメってカンジはしなくなってきたよ?」

貴音「魔法というものも一つの個性。使用者によってその力は様々な形に変化します」

貴音「つまり、わたくしにはわたくしの、美希には美希の……」

貴音「そして、亜美には亜美だけの戦い方というものが必ずあるはずなのです」

貴音「それはもちろん真美、あなたにも同じ事が言えるでしょう」

真美「………」

貴音「他人を真似するのではなく、あなた方にしか出来ない自分だけの戦い方を見出してください。二人の柔軟な発想力ならば、きっとそれを見つけることが出来ると信じていますよ」

亜美「………」

真美「お姫ちん……」


亜美(亜美だけの戦い方、かぁ……)

亜美(……そーだね。誰かのマネして強くなっても、きっとイミないよね)


亜美「……ありがとね、お姫ちん」

亜美「亜美、自分がどーすればいいかがなんとなくわかった気がするよ!」ニコッ

貴音「……共に精進致しましょう、亜美、真美」ニコッ

真美「うーむ……。さすがお姫ちんってカンジだね。カユいところに手が届くっていうか」

亜美「あ、そんじゃあお姫ちんはマゴの手ってコトだね!」

真美「おお、そーだね! マゴの手ちんだね!」

貴音「あ、あの……それは果たして褒め言葉なのでしょうか?」



真美「……っと、そうだ」

真美「そーいえば真美、ピヨちゃんと戦うに当たってお姫ちんに言っておかなきゃいけないことがあるんだった」

貴音「わたくしに……ですか?」

真美「うん。すっごく大切な話なんだよ」

貴音「……分かりました。拝聴致しましょう」

374 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/08/28(日) 18:49:02.71 ID:VRt3rZWL0
ー 月の民の館付近の丘 ー


真「…………せいっ!」バッ



…ドガアアァァアアン!!




雪歩「わぁ……山が一つなくなっちゃった……!」

雪歩「やっぱりすごいね、真ちゃん」


…スタッ

真「そんなことないさ。気の流れを上手く操ることができれば、こんなの誰にだってできるんだ」

真「特に、今までずっとボクの修行に付き合ってくれていた雪歩なら、もう気の流れっていうものを理解しているはずだよ?」

雪歩「で、でも私、まだよく分からなくて……」

真「……うーん」



真「……いいかい雪歩。気っていうのは誰だって自分の体の中に持っているものなんだ」

真「大切なのは、どうやってそれを外へ出してやるか」

雪歩「体の外へ……?」

真「うん。頭で考えるんじゃなくて、感じるんだ。自分の中に揺らいでいるエネルギーを解放するイメージを思い描くんだよ」

雪歩「自分の中の、エネルギー……」

真「そのエネルギーを……」ユラ…


真「…………拳に込めて、撃つッ!!」ブンッ


ドゴオオオオォォオン!!!



真「……まあ、雪歩にはアダマンアーマーと伝説のスコップがあるし、あんまり必要ないのかもしれないけどね」

雪歩「……ううん、そんなことないよ。真ちゃん、私に教えて!」

真「……へへ、分かったよ」ニコッ

真「ただ、明日にはもう出発だ。時間的に教えてあげられるのは簡単な事だけになっちゃうけど、それでもいいかな?」

雪歩「よ、よろしくお願いします、師匠!」

真「し、師匠?」

真「……ま、まぁいいや。それじゃ、もう一度ボクの動作をよーく見ててね?」スッ

雪歩「お、押忍っ!」

375 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/08/28(日) 18:52:10.00 ID:VRt3rZWL0
ー 深夜 月の民の館 1F 図書室 ー


やよい「………」

やよい「………」

やよい「………」

やよい「………」

やよい「………」



やよい「……………うー」



伊織「…………やよい、眠れないの?」


やよい「あ、伊織ちゃん……。ごめんね、起こしちゃった?」

伊織「ううん。ちょうど私も眠れなかったところよ」

やよい「そっかぁ……」

伊織「………」

やよい「………」

伊織「……考え事でもしてたの?」

やよい「……うん」

伊織「………」

やよい「………」

やよい「えっとね……」

やよい「ちょっと、小鳥さんのことを考えてたんだ」

伊織「…………そう」

やよい「わたし、あんまりよくわからないままここまできて、今までずーっとおかしいなー、なんでだろーって思ってたことがあって……」

やよい「でも、春香さんが『小鳥さんのおかげでわたしたちが成長できた』って言ったときに、思ったの」

やよい「小鳥さんは、やっぱり小鳥さんでいてくれたんだなーって」

伊織「………」

やよい「だから、わたしもちゃーんと小鳥さんにお礼をしなきゃって思って」

やよい「わたしも最後までしっかりわたしの役をえんじて、小鳥さんを……」

伊織「……やよい」

376 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/08/28(日) 18:54:43.87 ID:VRt3rZWL0

伊織「アンタの決意は分かったわ。だから、無理しなくてもいいの」

やよい「えっ? わたし、ムリなんかしてないよ?」

伊織「嘘よ。……だったらなんでアンタは泣いているの?」

やよい「わ、わたしっ……こ、これは泣いてるんじゃなくて……!」ゴシゴシ

伊織「………」

伊織「……お願いよ、やよい」ダキッ

やよい「い、伊織ちゃん……?」

伊織「私の前では無理しないで。本当のあなたを見せて」

やよい「っ……ううっ……!」ポロポロ

やよい「伊織ちゃん……わたしっ……!」

やよい「ほんとうは、小鳥さんと戦いたくないよっ……!」ポロポロ

伊織「やよいっ……!」ギュッ

やよい「ほんとうは、ごわぐでっ……かなしくてっ……えぅ……!」ポロポロ

伊織「ええ……そうね……」ナデナデ


伊織(『自分の役を最後まで演じきる』。春香の言葉は確かに聞こえはいいけれど、小鳥との戦いをそういう風には考えられない子だってもちろんいる)

伊織(やよい……。アンタはどこまでも優しいから、割り切ることができないのね……)

伊織(でも、だからこそアンタは今より強くなれる。やよいなら、その優しさを強さに変えることだってできるわ)

伊織(乗り越えるのよ。……それはアンタが自分の力で越えなければならない、壁なんだから)



やよい「……ぅうううぅぅうううぁああん……!!」

377 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/08/28(日) 18:57:46.78 ID:VRt3rZWL0
ー 深夜 月の民の館 B1F クリスタルルーム ー


律子「………」



律子(春香のおかげで、あの子たちも小鳥さんと戦う覚悟を持つ事ができた)

律子(でも、それはきっとみんながいるから。自分は一人じゃないって思う気持ちから来るもの)

律子(地下渓谷ではどんな戦いになるか分からない)

律子(もし、一人になってしまった時。誰からも助けてもらえなくなった時)

律子(その時にこそ、あの子たちの真価が試される事になる)



律子(それにしても、プロデューサー殿の言葉が気になるわね)

律子(小鳥さんを真の意味で助ける……。心の支えになるっていうのは確かにそれっぽく聞こえるけど、イマイチしっくりこない)

律子(プロデューサー殿には何か別の思惑がある。……そう思えて仕方がないのよね)



美希「……あれ、律子…さん?」



律子「美希……」

律子「……眠れないの? 早く寝ないと明日に響くわよ?」

美希「えーっとね、寝すぎて寝れなくなっちゃったの」

律子「あのねぇ……。明日起きなかったら置いて行っちゃうわよ?」

美希「それはへーきなの。ミキ、こー見えて自分の睡眠時間はちゃーんと調整できるんだよ?」

律子「……本当に大丈夫なんでしょうねぇ?」

美希「あ、ヒドいの! 律子…さん、ミキのこと信じてないんだ」

律子「そういうわけじゃないけど……」

美希「………」

律子「………」


…キラーン!


美希「……キレイだね、クリスタルって。見てるとなんだか不思議な気持ちになってくるの」

律子「そうね……」

378 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/08/28(日) 19:00:17.21 ID:VRt3rZWL0

律子「……美希、あなたに訊きたいことがあるんだけど」

美希「なーに?」

律子「その……プロデューサーがいなくなってさみしくないの?」

律子「あなたっていつもプロデューサーにベッタリだったし、どうしてそんなに落ち着いているのかなって気になってね」

美希「んー…………」



美希「じゃあ、律子…さんは?」

律子「えっ?」

美希「ハニーがいなくて、さみしい?」

律子「えっ…と……」

律子「……そりゃあ、誰にも相談せずにいきなりいなくなったのはどうかと思うけど……」

律子「まあ、どこにいるのかは分かっている訳だし、小鳥さんのお守をしてもらってると思えばいいし」

律子「……それに、彼には彼なりの考えがあるみたいだし」

美希「そう!」

美希「ハニーにはハニーの考えがあるんだよ」

美希「ミキも、ハニーがどうするつもりなのかまでは分からないけど」

美希「……でもね、『信じて』ってハニーが言った以上、ミキはそれを信じて、自分にできることをガンバるだけなの」

美希「だから、ミキもさみしがってるだけじゃダメって思ったんだよ?」

律子「………」

律子「強いわね、美希は」

美希「? ……別に特別なことじゃないと思うな」

律子「いいえ、特別よ」

律子「仲間の言葉を信じるのはとても大切な事だけど、簡単じゃないわ」

律子「心のどこかで不安を抱いてしまう。疑心暗鬼に陥ってしまう」

律子「ただ真っ直ぐにそれができるのは、美希、あなたが本当に純粋に強い人間だからよ」

美希「……ミキはよく分からないけど、律子…さんが言うなら、そうなのかな」


…キラーン!

379 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/08/28(日) 19:02:59.58 ID:VRt3rZWL0

律子「……ねえ、美希。あなたは不安に感じない? 小鳥さんと戦うことを」

律子「春香はああ言ったけど、仲間と戦うというのはやっぱりそう簡単に割り切れる事じゃないわ」

律子「それに、小鳥さんはどうやら本当に本気みたいだし……」

美希「……あは☆ なんだかおかしいの」

律子「えっ……」

美希「これじゃ、いつもと逆だね」

律子「逆? ……どういう意味?」

美希「だっていつもは、分からない事をミキたちから質問することが多いのに、今日の律子…さん、ミキに質問してばっかりだよ?」

律子「あ…………」


律子(そうか…………そうだったのね)


美希「みんな、難しく考えすぎなの」

美希「小鳥と戦うことになったからって、別にミキたちのカンケイが変わっちゃうってわけじゃないでしょ?」


律子(質問ばかりするのは、不安の裏返し)

律子(みんなの事を心配しつつも、その実は……)


美希「戦って、小鳥を倒して、それで元の世界に帰って。でも、元の世界に帰っても小鳥は小鳥だし、ミキはミキだよ?」

美希「それはこの世界にいても同じだって思うな」


律子(私自身が一番、小鳥さんと戦う事に不安を……いえ、恐怖を抱いている)


美希「戦う過程で痛い思いや苦しい思いもするかもしれないけど、それはみんな同じなの」

美希「ミキ的には、全部終わって元の世界に戻ればまたみんなで楽しく過ごせるって思うなっ」ニコッ


律子「美希……」


律子(……ここがクリスタルルームだからそう思うのかしら)

律子(今は、目の前のこの子が眩しくて仕方ない)

380 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/08/28(日) 19:05:13.47 ID:VRt3rZWL0

美希「えっと、こーいうのなんて言うんだっけ? 喉元過ぎれば……」

律子「……熱さ忘れる、ね」

美希「あは☆ さすが律子!」

律子「さん、でしょ?」

美希「むー……ごめんなさいなの」


律子(喉元過ぎれば……か)

律子(私は美希みたいには考えられない。でも、この子たちの強さには、本当に勇気をもらえるわ)

律子(私も、もっとしっかりしないとね)



美希「ミキね、地球の……ばろん、っていう国でみんなで集まった時に、誓ったの」

美希「ハニーと離ればなれになっても、もうゼッタイに弱音は吐かないって」

美希「だから、もう何があっても恐くないよ。どんな壁だってきっと乗り越えてみせる!」

律子「………」


律子「……はぁ……」

律子「やっぱり大物だわ、あんたは」

美希「そう?」

律子「さ、そろそろ戻りましょう。眠れないって言っても、横になって目を閉じてるだけでも体は休まるから」

美希「あ、じゃあじゃあ、今夜はミキと一緒に寝る?」

律子「そうね、たまにはそれもいいかもしれないわね」ニコッ

美希「えへへ、やったぁ!」

381 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/08/28(日) 19:07:40.59 ID:VRt3rZWL0
ー 月の民の館付近の洞窟 ー


響「……はっ!」ブンッ

ドゴッ!

ドサッ

魔物1「」


響「…………ふぅ」



響「……えーと、これで何体目だっけ。50体までは数えてたんだけどなー」

響「なんか、魔物を倒しすぎて気持ち悪くなってきたかも……」

響「でも、まだまだだぞ。こんなのじゃ全然足りない」

響(みんな、最初の頃に比べてすっごく強くなってる)

響(それぞれに得意な分野があって、それをちゃんと自分で理解してて)

響(今のみんななら、きっと魔物なんかに負けたりしないって確信できるぞ)



魔物2「グギャァー!」


響「………」

響「……たぁーーっ!」ブンッ

ドゴォ!

ドサッ

魔物2「」



響(……でも、じゃあ、自分は?)

響(体術では真に敵わないし、伊織や千早みたく得意な武器があるわけでもない)

響(それに、自分は魔法も使えない)

響(エン太郎もファル子もいない今の自分に、何がある? 何ができる?)

響(……みんなの足手まといにだけは、絶対になりたくないぞ)グッ



「……ーー♪ 」



響「……あれ、この声……」

382 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/08/28(日) 19:09:39.30 ID:VRt3rZWL0

…ザッ

響「……千早?」


千早「……我那覇さん? どうしたの? こんな夜遅くに」

響「それはこっちのセリフだぞ。……こんなところで歌の練習?」

千早「なんだか落ち着かなくて。眠れないから、歌えば少しは気が楽になるかも、って思って」

響「そっか。やっぱり千早も落ち着かないのかー……」

千早「我那覇さんも眠れないの?」

響「自分は……」



響「自信が持てないんだ」

響「自分、真みたいに強くないし、魔法が使えるってわけでもないし……」

響「この先ちゃんとみんなについて行けるのかな……って」

千早「……珍しいわね。そんなに弱気な我那覇さんは初めて見たわ」

響「そりゃ、自分だって自信をなくすことくらいあるよ」

響「こないだ戦った親衛隊の魔物たちはすっごく強くて、自分は攻撃をよけることで精一杯でさ」

千早「………」

響「よく考えたら自分、今までみんなほど魔物と戦って来なかったんだ」

響「エン太郎やファル子、それにまど香。飛空艇のことだったら、誰にも負けない自信はあるつもりだけど……」

千早「……ええと、ごめんなさい。まど香って誰の事だったかしら?」

響「も〜、まど香は魔導船の名前だぞ。千早、忘れちゃったのか?」

千早(いつの間に決まったのかしら)

383 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/08/28(日) 19:11:41.60 ID:VRt3rZWL0

千早「……まあ、それはともかく」

千早「我那覇さんは、魔物との戦いにおいて自分に秀でているものがないから悩んでいるのね?」

響「うん……」

千早「そうね……。だったら、発想を変えてみてはどうかしら」

響「発想を変えるって?」

千早「あなたの得意分野ーーつまり、飛空艇で戦うの」

響「えっ、でも、ファル子は地球に置いてきたし、まど香も今は近くにいないし……」

響「……エン太郎は、ずっとずっと遠くに行っちゃったし……」

千早「遠くにいるのなら、地球にいた頃みたいに呼びかけるのよ」

響「いや、宇宙を越えられるのはまど香だけだぞ?」

響「それに、エン太郎はもう……」

千早「………」



千早「……私ね、今だから言うけれど、最初はあなたとエン太郎の仲を疑っていたのよ」

千早「飛空艇なんてどれも同じじゃないか、たかが乗り物と人間が心を交わす事なんて本当に出来るのか、って」

響「ちょ、ちょっと千早、いきなり何を言い出すんだ?」

千早「……でも、あなたたちの絆は決して偽物なんかではなかった」

千早「エン太郎を操縦している時の我那覇さんは本当に楽しそうだったし、一度カイポではぐれてしまった時だって、エン太郎はちゃんとあなたの元へ戻って来た」

千早「それに……私はその場にいたわけじゃないけれど、最後の最後までエン太郎は命がけであなたを守り抜いた」

千早「その話を聞いた時、私、心の奥底が震えるような気持ちになったの」

響「………」

千早「だから、エン太郎がもうこの世にはいないとしても、遠く離ればなれになってしまったとしても……」

千早「きっと、心の深いところで我那覇さんと繋がっているんじゃないかしら」

千早「姿は見えなくても、遠い空で見守っていてくれている……」

千早「そう思う……いえ、そう信じたいの」

響「千早……」


千早(……なんて、まるで私自身に言い聞かせているみたい)

千早(なんだか自分が滑稽ね)


響「!」

千早「……我那覇さん、どうしたの?」

響「……魔物だ!」

384 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/08/28(日) 19:16:34.37 ID:VRt3rZWL0

魔物3「グルル……!」



千早「……!」チャキッ

響「千早、ここは自分に任せて」

千早「でも……」

響「自分、試してみようと思うんだ。千早が言ったみたいに」

千早「えっ?」

響「行くぞっ!」ダッ

タタタタ…


魔物3「ガアア!」ブンッ


響「……っと」ヒョイッ

響「そんな攻撃、食らわないぞ!」


魔物3「グアアア!」ダッ


響「………」


響(千早の言う通りだ。自分には自分の得意分野がある)



響(……エン太郎)



響(お願い、力を貸してっ……!)



魔物3「グアアアッ!」ブンッ



千早「我那覇さんっ!」

385 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/08/28(日) 19:17:34.01 ID:VRt3rZWL0

ゴオオ…



響「……これが、自分の戦い方だぁっ!!」

響「ナンクル砲っ!!」バッ


ズドオオオオンッ!!



千早「!」





…ドサッ

魔物3「」


響「…………よしっ!」



千早「我那覇さん、今のは?」

響「ナンクル砲は、飛空艇の砲撃。エン太郎の武器だったんだ」

響「きっと、天国からエン太郎が自分に力を貸してくれたんだ」

千早「そう……」

響「ありがとね、千早。千早のおかげで自分なりの戦い方を確立できたぞ!」

千早「いえ、お礼を言われることではないわ」

千早「その力は、きっと我那覇さんとエン太郎の絆の証だと思うから」

響「うん……そうだな!」



響(……ありがとう、エン太郎)

響(自分、頑張るからな。天国でちゃーんと見ててよねっ!)

386 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/08/28(日) 19:19:09.71 ID:VRt3rZWL0
ー 月の民の館 屋上 ー


キラキラ…


春香「はぁ……」

春香「宇宙ってホントにキレイだなぁ……」ボーッ

春香「数えきれないくらいたくさんの星が瞬いていて……」

春香「……ふふっ、まるでサイリウムみたい」


春香(……こうして悠然とした宇宙を見上げていると、なんだか不思議な気持ちになる)

春香(ゲームの世界へ飛ばされて、いろんな場所を旅して、慣れない武器を持って魔物と戦って)

春香(普通のアイドルだった私たちは、今まで知らなかったことを知ったり、考えもしなかったことについて考えさせられたり)


『……お前たちアイドルが、物語を紡ぐんだ』


春香「………」



春香(プロデューサーさん、私たちはしっかりできているんでしょうか?)

春香(この物語は、ちゃんとハッピーエンドへと向かっているんでしょうか?)

春香(演劇やドラマのお仕事みたいに……ううん、今までやってきたどのお仕事よりもリアルで、現実味に溢れていて)

春香(ここは本当ならあり得るはずのない世界だから、今まで起こったことは全部夢なんだよって言われても、信じられないかもしれません)

春香(私たちの向かう先には、いったい何が待っているんでしょうか……)



あずさ「…………春香ちゃん?」



春香「……あれっ? あずささん?」

あずさ「もしかして春香ちゃんも眠れないの?」

春香「えっと、はい。最後の戦いの前で、少し緊張してるのかもしれませんね」

あずさ「うふふ♪ その割にはずいぶん落ち着いて見えるわよ?」

春香「そ、そうですか?」

あずさ「ええ」ニコッ

あずさ「なんだか春香ちゃんがいつもよりも大人っぽく感じられるわ〜」

春香「そう、ですか……。えへへ、嬉しいなぁ」ニコッ

387 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/08/28(日) 19:22:11.38 ID:VRt3rZWL0

あずさ「……綺麗な空ね」

春香「そうですねぇ……。家に持って帰りたいくらいです」

あずさ「もしもこの宇宙を家に持って帰ることができたら、プラネタリウムは必要なくなっちゃうわね〜」

春香「ふふっ、ホントですねっ!」

あずさ「………」

春香「………」



春香「……あの、あずささん?」

あずさ「……なぁに?」

春香「あずささんって、今は……腕とか再生したりとか、回復魔法が効かなかったりとか……」

春香「なんていうか、その……」

あずさ「えーっと、ゾンビっていうことかしら?」

春香「す、すみません、変な事言って」

あずさ「いいのよ、気にしないで? もうだいぶこの体にも慣れたし」

あずさ「スーさんが私のために分けてくれた命ですもの。私、とても大切に思っているのよ?」

春香「………」

春香「あずささん。私、あずささんに謝らないとです」

あずさ「あら、それはどうして?」

春香「今日、みんなの前で私は、自分の役を最後まで演じきりたいって言いました」

春香「でも、私たちの中で一番大変な役を与えられたのは、あずささんだったんですよね」

春香「それなのに私、あずささんの事も考えずに軽はずみな事を……」

あずさ「……そうねぇ」

あずさ「私も、まさか自分が死を体験するなんて思ってもみなかったけど……」

あずさ「うふふ。でも、これも貴重な体験よね?」

春香「……なんでそんなに軽く話せるんですか? あずささん、怖くなかったんですか……?」

あずさ「う〜ん……」

388 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/08/28(日) 19:27:05.47 ID:VRt3rZWL0

あずさ「……少し前に、ドラマの撮影で知り合いになった役者の方がいてね」

春香「えっ……?」

あずさ「その方が仰っていたの。『自分には主人公を張る器はない。でも、脇役として主人公を引き立てることならできる。だから、自分は自分にしかできないやり方でドラマを良くしていきたい』って」

あずさ「その方の言葉を聞いて私、思ったのよ。ああ、そういう考え方もあるんだなぁ、って」

春香「あ、あの……?」

あずさ「私ね、今までお仕事で与えられた役に対して特に疑問を持ったりしたことはなかったんだけど、その方の言葉を聞いてから、少しだけ考え方が変わったわ」

あずさ「主人公だけが主人公じゃない、どんな脇役にだってちゃんとした意味があるって」

あずさ「それからは私、どんなお仕事でも楽しくって。……ううん、楽しくやらなきゃ損よねって思えるようになったのよ」

春香「あずささん……何の話を?」

あずさ「私が一度死んだことも、きっと物語を盛り上げる何かしらの意味があった」

あずさ「……物語を盛り上げるのは、役者の務めよ?」ニコッ

春香「あずさ…さん……」

389 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/08/28(日) 19:28:13.34 ID:VRt3rZWL0

あずさ「さあ、春香ちゃん。終わった事は忘れて、今は前を向きましょう?」

あずさ「主人公の春香ちゃんが後ろを振り返っていては、物語が先に進まないわ」

あずさ「春香ちゃんには、この物語を終わらせる使命があるんだから」

春香「………」

あずさ「…………ねっ?」

春香「……はい、分かりました。私、もう絶対に後ろを向いたりしません!」グッ

あずさ「うふふ♪ それでこそ春香ちゃんよ」ニコッ



春香「あの……ちなみにあずささんって、スーさんのこと、ちょっと気になったりしてるんですか?」

あずさ「あらあら……」

あずさ「スーさんは私にとっていいお友達よ? でも、私の運命の人は別にいるのかなって思っているわ〜」

春香「で、ですよね。……あはは、私ったら何言ってるんだろ」

あずさ「うふふ、心配しなくても、春香ちゃんの大切な人を横取りなんかしないわよ〜?」

春香「えっ!? い、いやいや、何を言ってるんですか! プロデューサーさんの事は今は関係な……」

春香「…………あっ」

あずさ「春香ちゃんは本当に楽しいわね〜」ニコニコ

春香「も、もう! からかわないでくださいっ」カァァ

390 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/08/28(日) 19:30:29.98 ID:VRt3rZWL0
ー 翌日 月の民の館 1F 図書室 ー


月の民「……もう、行かれるッスか」

貴音「ええ」

貴音「あなたには本当にお世話になりました。わたくしのいない間この館を守ってくださったり、快く皆を迎え入れていただいたり……」

貴音「それに、このようなお弁当まで頂いて……感謝してもし足りません」ズッシリ



響「……ていうか、貴音のお弁当だけ大きすぎだよね。自分たちの3倍くらいあるぞ」ヒソヒソ

春香「それは仕方ないんじゃないかな。月の民さんもさすがにもう貴音さんが食いしん坊だっていう事実に気づいてると思うし……」ヒソヒソ



月の民「自分、信じてるッス。タカネ様やみなさんがきっとこの世界に光をもたらしてくれるって」

月の民「だから……きっと、無事でまた……!」

貴音「……はい、約束します。誰も欠けることなく、無事に帰ってくると」ニコッ

月の民「タカネ様っ……!」ウルッ



貴音「……それで、相談なのですが、もう少しお弁当の量を増やしていただけないかと思うのですが……」

月の民「……えっ?」



律子「……感動の旅立ちのワンシーンが台無しね」

伊織「ま、予想はできたけどね」




貴音「……それでは、行って参ります」ペコリ

月の民「はい! 行ってらっしゃいッス! 自分、ここでみなさんのご無事を祈っているッス!」



貴音(……思えば、わたくしがこの世界へ来て途方に暮れていた時、最初に声を掛けてくれたのがこの方でした)

貴音(わたくしたちは、本当にたくさんの方の想いを託されています)

貴音(これは最早、わたくしたちだけの戦いではありません)

貴音(げぇむの世界を救う戦いでもあるのです)

391 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/08/28(日) 19:33:29.93 ID:VRt3rZWL0
ー 月の民の館 B1F クリスタルルーム ー


律子「……さて。みんな、準備はいい?」


響「いつでもいいぞ!」

春香「準備万端ですよ、準備万端!」

千早「行きましょう、律子。プロデューサーと音無さんが待っているわ」

律子「……よし」

律子「ここには、全部で13のクリスタルがある」チラッ

律子「各自クリスタルの前に立って、クリスタルに向かって祈るのよ」

律子「想いを受けたクリスタルは、きっと私たちに応えてくれるわ!」



アイドルたち「……はいっ!!!」



春香「えっと……」

春香(……お願いします、クリスタルさん。私たちをどうか地下渓谷へ連れて行ってくださいっ……!)

春香「っ……!」ギュッ


……



…………チカッ




春香「……わっ、プロデューサーさんにもらったクリスタルの首飾りが、光ってる……!」



…パァァーー!



真「……春香の前にあるクリスタルも赤く光った!」

貴音「まるで、クリスタルが首飾りの輝きに共鳴しているかのようですね……」

雪歩「プロデューサー、もしかしてこの事も想定してたのかな?」

伊織「もしそうだとしたら、あいつにしてはなかなかいい仕事したわね」

千早(……よし、私も……)



千早(私にできるのは、前に進む事だけ。みんなと同じ方向を向いて、ただ一つの結末へ向かって)

千早(そこへ辿り着く為に必要な道は、自分の力で切り開くっ……!)

千早「……っ!」グッ



…パァァーー!!

392 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/08/28(日) 19:44:45.65 ID:VRt3rZWL0

亜美「おおぉ! 今度は千早お姉ちゃんのクリスタルが青く光ったよー!」

真美「やるね、二人とも!」

やよい「春香さんも千早さんもさすがですっ!」




亜美「真美、亜美たちもいくよっ!」

真美「りょーかいっ!」ビシッ


亜美(……いでよ、クリスタル!)

真美(そして、真美たちの願いをかなえたまえー!)



…パァァーー!!




伊織「………」

伊織(……さあ、このスーパー忍者アイドル伊織ちゃんのために、しっかり輝きなさいっ!)



…パァァーー!!



伊織「……よしっ」

伊織「やよいは大丈夫かしら……」チラッ




やよい「……!」グッ


…パァァーー!!



伊織(……問題はないみたいね)

伊織(前に進むことができたのね、やよい)

393 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/08/28(日) 19:46:56.68 ID:VRt3rZWL0

律子「赤、青、黄色、桃色に橙……」

律子「順調みたいね」



あずさ「律子さ〜ん♪ 」フリフリ


…パァァーー!!



雪歩「わ、私たちもなんとか……」


…パァァーー!!



真「準備できたよ!」


…パァァーー!!



律子「……これで9人分。あとは……」チラッ



貴音「モグモグ……」


…パァァーー!!



美希「……あふぅ」


…パァァーー!!



響「うぎゃー! 二人とも、大事な場面なんだからちゃんとやるさー!」


…パァァーー!!




律子「……これで12人。残りは私だけか」

律子「……よし!」グッ



律子(お願い、クリスタル。私たちを導いて……!)



……



…………



……シーーン



律子「あれっ……な、なんで?」

394 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/08/28(日) 19:49:09.09 ID:VRt3rZWL0

真「律子のクリスタルだけ光らない……?」

響「なんでなんだ……?」

伊織「……とにかくもう一度よ、律子!」



律子「え、ええ!」

律子(クリスタル……私の願いを聞き届けてっ……!)

律子「……っ!」グッ



……



…………



……シーーン……



律子(……また、ダメ……。いったい何がいけないっていうの?)



雪歩「ど、どうしちゃったんでしょう……?」

あずさ「律子さん……」

やよい「ううっ……律子さん、がんばってくださいっ……!」グッ

美希「律子…さん、もう一回やってみるの!」



律子「………」コクリ

395 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/08/28(日) 19:50:16.89 ID:VRt3rZWL0

律子(……こんなところで止まっている暇はないの。私たちには会わなければならない人がいる)

律子(お願いだから、言うことを聞いて……!)



……



…………



……シーーン……



千早「また……光らない? なぜ、律子のだけ……」

亜美「……ねえ、真美」

真美「うん……。もしかしたら、クリスタルはゲーム通り、暗黒騎士には使えないんじゃ……」

千早「そんな……。それじゃ、どうすればいいの?」

亜美「わかんない。でも、これって全部のクリスタルを光らせなきゃダメなんだよね?」

真美「もし、このままりっちゃんのだけ光らなかったら……」

千早(律子……)

春香「………」

396 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/08/28(日) 19:53:19.99 ID:VRt3rZWL0

律子(私はやっぱり、小鳥さんの言っていた『ゴルベーザ』って人と同じ運命を辿るというの……?)

律子(それが私の運命だっていうなら私はどうなってもいい。でも、せめてあの子たちだけは……)


……ギュッ


律子「えっ……?」クルッ


春香「私も一緒です。一緒に祈りましょう、お姉ちゃん!」

律子「春香……」

律子「…………わかったわ!」



律子(お願いします……!)


律子・春香(私たちを、地下渓谷へ連れて行ってくださいっ……!)



……



…………



………………



……パァァーー!!



響「……やった! 緑色に光ったぞ!」

亜美「ナイスはるるん、さっすが妹!」

伊織「これで全員分よね?」

真美「うん。そしてたぶん、クリスタルの光が集まったところが……」チラッ



…………カッ!!



真「なんだ? 部屋の中央の床が……!」

貴音「ええ、一際激しく輝いております……!」

やよい「はわっ! まぶしーですー!!」ギュッ



パァァーーーーッ!!


397 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/08/28(日) 19:55:53.15 ID:VRt3rZWL0

千早「……凄まじい光だったわね」

雪歩「うん……。私たちの光が、全部あの床に集まって……」

美希「色とりどりで、すっごくキラキラだったの!」

亜美「これで道ができたよ!」

真「道って……あの床が?」

亜美「あそこがワープゾーンになってるんだよー」

伊織「ってことは、あのワープを抜けた先が……」

あずさ「地下渓谷、ということなのね〜」

真美「あとは、勇気だけっぽいよ!」



律子「ありがとう、春香。あなたのおかげで道が開けたわ」

春香「いいえ、どういたしまして」ニコッ

律子「………」

春香「……お姉ちゃん、気にしてるんですか? クリスタルが輝かなかった事」

律子「……昨日、小鳥さんの分身に言われた事をちょっと思い出しちゃって……」

律子「今まで暗黒騎士として闇に手を染めていた私じゃ、やっぱりダメなのかもって……」

春香「そんなことありませんっ!」

春香「お姉ちゃんが何者だろうと、お姉ちゃんは私のお姉ちゃんです」

春香「それに、お姉ちゃんにはみんながついてます!」

春香「だから、不安に思う必要なんてないんです!」

律子「春香……」

律子「ふふっ。なんか、あなたにお姉ちゃんって呼ばれるのにも慣れてきたわね」

律子(まるで、本物の妹みたいな……)

律子(……って、ただのゲームの設定よ。深く考えちゃダメ、私)ブンブン

398 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/08/28(日) 19:57:12.60 ID:VRt3rZWL0

律子「……それじゃ、先へ進みましょうか」

あずさ「あの〜、ちょっとだけ待ってもらえませんか〜?」

律子「あずささん……どうしたんです?」

あずさ「いえ、こういう時は、みんなの気持ちを一つにしてからの方がいいんじゃないかな〜って思って」

あずさ「……ねっ、春香ちゃん?」

春香「みんなの気持ちを……? あっ!」

真「そうだね。戦いの前にひとつ気合入れておくのもいいかもね!」

美希「あは☆ なんだかライブが始まる前みたいにわくわくするの!」

やよい「うっうー! わたしも、めらめら〜ってもえてきましたー!」

律子「それじゃ春香、号令かけてもらえる?」

春香「はいっ!」



…スッ



春香「ついにここまで来たね」

春香「……長い長い旅だった」

春香「でも、ここまで来たらあとはひたすら前に進むだけだよ」

春香「私たちの旅、私たちの手で決着をつけよう!」


一同「……!」コクリ




春香「いくよっ……!」スゥー




春香「765プローーーー!!」




春香「ファイトぉぉーーーーっ!!!」





一同「おおーーーーーーッッ!!!!」


399 : ◆bjtPFp8neU [sage]:2016/08/28(日) 20:00:36.73 ID:VRt3rZWL0
ここまでです
次回こそ本当にラスダン突入です
400 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/28(日) 22:36:43.07 ID:ZSOF9AT/O
おつん、やっぱFFWは名作だってはっきりわかんだね
401 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/22(木) 13:16:31.39 ID:CTmoysOA0
402 :♯はるるん [sage saga]:2016/09/23(金) 01:17:20.40 ID:97jAJlAtO
ー 月の中心核 ー


P「……それで音無さん、バハムートが音無さんに味方しているっていうのは、まあ洗脳ってことで理解できるんですけど」

小鳥「ゴクゴク……」

P「クルーヤはなぜ音無さん側にいるんです? 彼はこのままだと自分の娘たちと戦うことになるんですよ?」

小鳥「……ぷはぁ!」

小鳥「も〜う、そんなのしりませんよぅ〜。しりたいんだったらほんにんにちょくせつきけばいいじゃないれすかぁ〜」ヒック

P「いや、本人に訊いても答えてくれなかったから……ってああもう、バッカスの酒のビンが倒れちゃってるじゃないですか」

P「まったく……」フキフキ

小鳥「……どーせわたしはわるものですよー」ゴクゴク


P(俺がここへ来てからというもの、飲んでいる音無さんしか見ていない気がする)

P(こんなんで本当にラスボスが務まるのだろうか。ちょっと不安だ)


小鳥「……ふぅ」

小鳥「プロデューサーさん、私を悪役にしておけばぜーんぶ丸く収まるって思ってるんでしょう?」

P「い、いや、そんなことは思っていませんよ。音無さん、飲み過ぎじゃないですか?」

小鳥「……ふんだ」
403 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/23(金) 01:22:23.39 ID:97jAJlAtO
トリの付け方忘れた…
というか書き溜めはできているんですが新しいスマホが使いにくくて四苦八苦しています
もう残りはそんなにないのでトリップは付けずに行きます
404 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/09/23(金) 01:35:09.78 ID:97jAJlAtO

…コトッ

小鳥「……わたしだって……」

小鳥「私だって、本当は正義の味方がやりたかったです」

P「えっ……」

小鳥「……ひっく」

小鳥「そりゃあ、私は聖人君子なんかじゃありませんよ?」

小鳥「朝起きて身体がダルかったりすれば『あー、仕事行くのしんどいなー』とか思いますし、たまーにアイドルのみんなの若さに嫉妬しちゃう時もありますし……」

小鳥「律子さんのお説教を無心で聞き流したり、なかなか有給をくれない社長にムカッとする時だってあります」

小鳥「でも私、こう言ったら驚かれるかもしれませんけど、みんなの事、本当はは大好きなんです」

P「………」

小鳥「私だってこんな役、イヤなんです」

小鳥「こんな風に……みんなを苦しめて……」ウルッ

小鳥「みんなを傷つけたりヒドいことしたりなんてもう、イヤなんですよぅっ!」

P「音無さん……」

小鳥「もう……やだ……」

小鳥「はやく、かえりたいよぅ……!」ポロポロ

P「音無さんっ……!」ダキッ

小鳥「ううっ……!」グスッ

小鳥「わたしをなまえでよんでくれないプロデューサーさんなんて……きらいですっ」プイッ

小鳥「……うぅぅううあああぁぁんっ……!」ポロポロ

405 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/09/23(金) 01:42:36.33 ID:97jAJlAtO

P(俺は……勘違いをしていた)

P(『音無さんならきっとラスボスをどこか楽しんでやっているんじゃないか』)

P(そう軽く考えていた)

P(でも、誰だってこんな嫌われ役よりは、仲間たちと手を取り合って光に満ちた道を進む方がいいに決まってる)

P(この人は、優しいから)

P(いつでもみんなを陰から支えてくれる、優しい人だから)

P(きっと、ずっと一人で抱え込んでいたんだろう)


P「……大丈夫、俺があなたの側にいます」ギュッ

小鳥「うええぇぇええっ……ううっ!」





小鳥「…………うぇっぷ」

P「………」

406 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/09/23(金) 01:45:24.74 ID:97jAJlAtO
ー 月の地下中心核 コトリの部屋 ー


小鳥「……zzz」

407 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/09/23(金) 01:55:19.63 ID:97jAJlAtO
ー 月の地下中心核 コトリの部屋 ー


小鳥「……zzz」

小鳥「……zzz」

小鳥「……zzz」

小鳥「……うーん……プロデューサーさ〜ん……」

小鳥「……zzz」

小鳥「……zzz」

小鳥「……zzz」

小鳥「……もう、違いますよぅ……。高木社長が攻めの方が絶対にステキですってばぁ……」ムニャムニャ

小鳥「……zzz」

小鳥「…………zzz」

小鳥「………………zzz」



小鳥「………………はっ!」ガバッ

小鳥「……あれ、私、どうしてたんだっけ……」

小鳥「えっと確か、あの子たちが自分の持ち場について、クルーヤさんやバハムートさんも行っちゃって……」

小鳥「それから……プロデューサーさんと二人きりで飲んで……」

小鳥「うぅ……頭がガンガンするわ……」

小鳥「水でも飲もうっと」スクッ



小鳥「…………あっ」



P「……zzz」

408 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/09/23(金) 02:07:09.84 ID:97jAJlAtO

小鳥(プロデューサーさんが私のベッドにもたれかかるようにして寝てる……)

小鳥(そういえば、自分でベッドに移動した記憶がないって事は、プロデューサーさんが私の事を運んでくれたのよね、きっと)

小鳥(飲んでいる時の記憶がさっぱり抜け落ちちゃってるけど、私、またプロデューサーさんにたくさん迷惑をかけちゃったのかなぁ)

小鳥(すみません、プロデューサーさん。迷惑かさるのはもうこれっきりにしますから)


P「……音無…さん……」


小鳥「ひょへっ!?」ビクッ

P「……だいじょうぶ……です……」

小鳥「えっ……」

P「……みんなまとめて……トップアイドル……音無さんも……」ムニャムニャ

小鳥「……なぁんだ、寝言ね。びっくりしたぁ……」

小鳥「ふふっ、プロデューサーさんったら私までトップアイドルにするつもりなのかしら」

P「……zzz」

小鳥(プロデューサーさんの寝顔、かわいいなぁ)


小鳥(私はともかく、みんなをトップアイドルにするには早く元の世界へ帰らないと)

小鳥(でも、その前にやる事がある)

小鳥(避けては通れない必須イベントがあるわ)

小鳥(さあ、小鳥。一世一代の大舞台よ!)

409 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/09/23(金) 18:47:40.86 ID:5Q4MvESvO
ー 月の地下渓谷  B1F ー


…ザッ

春香「……ここが、月の地下渓谷……」キョロキョロ

春香「広ーい……! しかもすごい眺め! ねえ見て、千早ちゃん!」

千早「……そうね。神秘的というか、不思議な雰囲気が漂っているわね」

真「なんか、言葉を忘れちゃうくらい絶景だなぁ!」

春香「ホントだよね!」

亜美「なんてったってラスダンだからねー。プログラマーの人とか、チョー気合い入れてグラフィック作ったんだよ、きっと!」

響「いや、それってゲームの中の話でしょ? 今自分たちがいるのは本当のゲームの世界なんだから、ゲームの世界の話をされても……」

響「……ってあれ? 亜美の言ってるのが合ってるのか? なんかよく分からなくなってきたぞ」

あずさ「でも、地下っていう割にはそれなりに明るいのねぇ。私、もっと真っ暗なのかと思っていたんだけど〜」

伊織「もしかして、この見たことない壁や地面が自発的に光っているのかしら」

律子「他に光源らしきものは見当たらないし、そうかもしれないわね。この調子なら暗闇で視界が遮られるってことはなさそう」



貴音「ここ、地下渓谷は、月に空いたとても巨大な空洞です。そこかしこに崖があり、最下層まではかなりの深さもあります」

貴音「誤って谷底へ落ちてしまわぬよう、用心して進むべきでしょう」

真美「ちなみに、いちばん下は地下12階だよー」

雪歩「そんなに深いんだ……」

美希「落ちたらきっとぺしゃんこなの」

やよい「うぅ、なるべく下を見ないようにしなきゃ……」

春香「やよい、頑張ろ!」

やよい「はいっ!」グッ

410 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/09/23(金) 18:55:36.59 ID:5Q4MvESvO

千早「地下12階……。そこで音無さんが私たちを待っているのね」

真美「そゆこと。長い長いダンジョンだから、回復アイテムとかセツヤクしていかないとだね!」

律子「真美の言う通りね。ジュピターの三人からもらったポーションやエーテルも、さっきみんなで分けたのが最後よ。大事に使っていきましょう」


アイドルたち「………」コクリ



春香「それじゃお姉ちゃん、出発しましょうか」

律子「ええ。貴音、先導お願いね?」

貴音「承知しました」




伊織「……雪歩、何してんのよ?」

雪歩「うん、ちょっと地質を確かめてるんだよ」

コツコツ

やよい「雪歩さーん、出発しますよー?」フリフリ

雪歩「あ、はーい」

タタタタ…

411 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/09/23(金) 19:10:21.45 ID:5Q4MvESvO

スタスタ…

貴音「…………む」



魔物たち「………」

ワラワラ…



真「……お、さっそくお出迎えだね」

千早「結構な数がいるみたい」

春香「やっぱり、簡単には進ませてくれないんだね」

伊織「魔物たちからすれば私たちは侵入者ってことになるもの、仕方ないわよ」

伊織「ま、私たちの相手になるかどうかは別としてね」チャキッ

響「よーしっ! 一番乗りは自分だぞっ!」ビュンッ

タタタタ…

亜美「むっ! 亜美も行くよっ!」ダッ

タタタタ…



響「とりゃーー!!」ブンッ

ドゴッ!!

…ドサッ

魔物1「」

響「こんなザコ、ナンクル砲を使うまでもないぞ! 次、かかって来るさー!」ビシッ




亜美「んっふっふ〜、亜美たちの前に立ちはだかるなんて10億万光年早いっぽいよ!」ゴゴゴ

亜美「右手にファイガ、左手にファイガ……!」ボゥッ

亜美「くらえーーっ!!」バッ

ゴオオオォォォオオッ!!

…ドサドサッ

魔物2「」

魔物3「」

亜美「……うむ、ぜっこーちょー!!」v



律子「みんな、二人に続くわよ!」

アイドルたち「はいっ!!!」

412 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/09/23(金) 19:24:28.86 ID:5Q4MvESvO

魔物4「ギギィ!」ガバッ

ガキィ!!

雪歩「っ……き、効かないですぅ!」チャキッ

雪歩「ごめんなさいっ!」ブンッ

ガコンッ!!

…ドサッ

魔物4「」

雪歩「……ふぅ」



魔物5「ウウゥウ……!」

魔物6「アアア……!」

伊織「………」チャキッ


ーーシャキィンッ! ズバシュッ!!


…ドサドサッ

魔物5「」

魔物6「」

伊織「………」スチャ

伊織「三下に用はないわ。私たちを止めたいのなら、もっと強いヤツを出しなさいっ!」



春香「……やぁぁぁぁっ!」タタタタ

春香「…………たぅあっ!?」ズルッ

ドンガラガッシャーン!!

ザクッ

魔物7「」

春香「……うぅ、いたたた……」

春香「……え、えーと、よしっ!」



魔物8「オアアアー!!」

真美「うあー! 真美んとこにきたー!」

真美(あんましMPのムダ使いはできないから、ザコ相手にホーリーとかはやめたほーがいいかな。真美の唯一の攻撃手段だけど)

真美(えーっと、そんじゃ……)

真美「……ポーキー!」バッ

…ボンッ

ブタ「フゴフゴ」

真美「……ふぃ〜、あぶないあぶない」

413 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/09/23(金) 19:39:51.86 ID:5Q4MvESvO

魔物9「ガアウ!」ブンッ

美希「……〜〜♪」ヒョイッ

魔物10「ウアウッ!」ブンッ

美希「……あは☆ 見えてるよ?」ヒョイッ

美希「ごめんね、ミキたちのジャマするなら容赦はしないの!」ギリッ

ヒュンヒュンッ!!

ドスドスッ!!

魔物9「」

魔物10「」

美希「ん〜、なんだか物足りないってカンジかな」



ヒューー…

千早「…………はっ!」

ーーザシュッ!!

…スタッ

千早「ふっ……!」ブォンッ

ズシャッ!!

…ドサドサッ

魔物11「」

魔物12「」

千早「……まだまだ出てくるわね」チラッ
 


あずさ「……コンフュ」


魔物13「ガア…ァ……?」

魔物13「ガアアアッ!!」ブンッ

ビシュッ!!

魔物14「ウ……!」

…ドサッ

魔物14「」


あずさ「本当に数が多いわね〜」

414 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/09/23(金) 19:58:19.32 ID:5Q4MvESvO

…ドガッ!! バキッ!!

ドサドサッ

魔物15「」

魔物16「」

真「……ふぅ」

真「ところで律子、ここを攻略するにあたって何か作戦はあるの?」ブンッ

ドゴォ!!

魔物17「ァ……」

ドサッ



律子「作戦? 特にこれといってないわよ?」ブンッ

ズバッ!!

…ドサッ

魔物18「」

律子「なるべくみんなで協力し合って下を目指す。何かトラブルがあったら各自臨機応変に対応ってところ……」チラッ

魔物19「……グアアッ!」ヌッ

律子「……かしらねっ!」ブンッ

ドスッ!!

魔物19「グ……!」

…ドサッ



真「そっか」

真「ま、こっちは完全にビジターだし、親衛隊の出方も分からないし、仕方ないのかな」

真「……せいっ!」ドゴォ

真「やぁっ!」バキィ

…ドサドサッ

魔物20「」

魔物21「」




亜美「……ねえ、見てよ真美。あの化け物ふたり」

真美「まるで呼吸をするように戦っているね」

亜美「りっちゃんとまこちんがラスボスじゃなくてホントよかったよねー」

真美「ねー。もしもあのふたりのどっちかがゼロムスだったら、真美が100人いても勝てる気がしないよー」

伊織「こら、亜美、真美。ぼさっとしてんじゃないの。次が来るわよ!」

亜美・真美「いえっさー!!」ビシッ



ドゴォン!! ドカァン!!

ドンガラガッシャーン!!

ギャーギャー…

415 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/09/23(金) 20:12:18.75 ID:5Q4MvESvO

貴音「……ぶりざら」

コォォ…パキィン!!

魔物22「」

貴音「………」チラッ



魔物たち「………」

ワラワラ…



貴音「はて……まるで数が減っている気がしませんね」

貴音(以前わたくしがばはむーと殿とここを訪れた時は、魔物の数もここまで多くはありませんでしたが……)

貴音(それだけ小鳥嬢も全力で来ている、ということでしょうか?)

貴音(しかし、これでは時間ばかり取られて一向に先へ進めませんね)


貴音「……律子嬢、このままでは消耗戦になってしまいます。魔物共を一挙に片付ける方法を考えねば」

律子「確かに、一体ずつ相手してたら日が暮れちゃうわね」

律子「亜美、真美、何かいい手はない?」

亜美「そりゃー魔物を一気にやっつけるっていったら……」

真美「ここはやよいっちセンパイの出番っしょ!」


やよい「うっうー!!」ピョコン


やよい「律子さん、わたしにまかせてくださいっ!!」

律子「そうか、やよいの召喚魔法なら……」

やよい「うー……!」ゴゴゴ



やよい「高木社長、おねがいしまーすっ!!」バッ


スゥーー…


416 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/09/23(金) 20:22:31.39 ID:5Q4MvESvO

高木「……やあ、みんな頑張っているようだね」



律子「社長!」


高木「ここは私に任せたまえ」チャキッ


高木「…………斬鉄剣!」

ーーズパァンッ!!

…ドサドサドサッ



亜美「出たー! FF名物斬鉄剣!」

春香「あんなにたくさんいた魔物が、一瞬で……!」

伊織「社長もなかなかやるわね」

真美「でも、ゲームだとあんまり使うキカイはないんだよねー」



高木「とうとう音無君の近くまで辿り着いたのだね?」

律子「はい。ここまで来るのに時間はかかりましたが、もうあと少しです」

高木「……すまないね、君たちにばかり大変な思いをさせてしまって」

高木「私にはこれくらいしか出来ることはないが、声をかけてくれればいつでも力になるよ」

律子「ありがとうございます!」ペコリ

やよい「社長、ありがとうございましたー!!」ガルーン


高木「うむ。みんな、また元気な顔を見せてくれたまえよ!」


スゥゥーー…


417 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/09/23(金) 20:32:16.13 ID:5Q4MvESvO

春香「……ふぅ、やっとひと段落ついたね」

千早「ええ。高槻さんのおかげよ」ニコッ

やよい「えへへっ、そんなことないですよー。社長のおかげですから!」

伊織「その社長を従えてるのがアンタなんだから、やよいはもっと胸を張っていいのよ?」

やよい「うー、そーなのかなー?」

雪歩(私、初めて見たけど、やよいちゃんに呼び出される社長ってなんかすごくシュールかも)

亜美「ねえ、これもうやよいっちって完全に社長より上だよね?」

真美「ってことは、やよいっち会長だね!」

亜美「やよいっち会長バンザーイ!!」

真美「バンザーイ!!」

律子「いや、そういう問題じゃないと思うけど」



律子「……ま、それはそれとして」

律子「みんな、進軍を再開しましょう」


アイドルたち「……はいっ!!!」


スタスタ…

418 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/23(金) 20:35:15.78 ID:5Q4MvESvO
諸事情で一気に投下できません
また明日投下します
419 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/23(金) 23:05:09.16 ID:7ZBSC/4FO
もうすぐ終わると考えたら寂しくなるな…
このSSいつくるかいつくるかワクワクしながら待ってるのが好きだったけどな
今度は]でやってほしいがそうなるとアーロンは社長か黒ちゃんしか合わないから無理だな
Wと違いラスボス「シン」以外にも隠しボスなどもいるし「ユウナレスカ」なんか合うやついないよな
]だとWより多いからそれこそ876とかミリオンとかも出さなきゃな…
420 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/09/24(土) 22:21:05.04 ID:MBd2/upBO

スタスタ…

亜美「……ふぅ、ふぅ……」パタパタ

亜美「ちょびっと歩いただけなのに、なんでこんなにあついんだろ……」ダラダラ

真美「亜美、汗ふいてあげよっか? すんごいことになってるよ?」
421 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/09/24(土) 22:34:44.69 ID:MBd2/upBO

亜美「うん……。でも、そーいう真美こそつゆだくってカンジだよ?」

真美「えっ、マジ?」

春香「……そういえば、なんだか気温が上がってるような気がするね」

千早「……そうね」

千早「亜美、真美。少し水分を取った方がいいと思うわ。……はい」スッ

亜美「ありがと〜千早お姉ちゃ〜ん」

真美「千早お姉ちゃんもちゃんと飲んでね?」

千早「ええ。……高槻さんもどうぞ」スッ

やよい「ありがとうございます、千早さん。でも、わたしはへっちゃらです!」

亜美「やよいっちは元気だねぇ」

律子「………」

422 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/09/24(土) 22:43:20.19 ID:MBd2/upBO

律子「みんな、平気?」

春香「私たちはなんとか大丈夫ですけど……」

真「亜美と真美が辛そうだね。あと響も」チラッ

亜美「あっぢ〜……しぬ〜……」ヨロヨロ

真美「さっきまでひんやりしててカイテキだったのに、なぜこんなことにぃ……」フラフラ

響「うぅ……ダメだー……。自分、頭がクラクラしてきたぞ……」フラフラ

伊織「なんでいきなりサウナみたいになってんのよ……。この近くに溶岩でも湧いてるわけ?」

貴音「いえ、溶岩などはなかったはずですが……」

雪歩「この暑さは異常だよね。進めば進むほどヒドくなってる気がしますぅ」

春香「そういう雪歩は平気なの? 一番暑そうな格好してると思うんだけど……」

雪歩「うん、私は特になんともないよ。アダマンアーマーが熱気も遮断してくれているみたい」

春香「ホントにすごいんだね、その鎧」





423 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/09/24(土) 22:53:57.73 ID:MBd2/upBO

美希「ん〜、あずさがひんやりしてて気持ちいーの〜♪」ピトッ

あずさ「あらあら、美希ちゃんったら〜」

律子「あ、そうか。今のあずささんは……」

あずさ「ええ。おかげさまで私はみんなのように暑さに苦しむ事はないですね〜」

あずさ「……それより律子さん。私、この先に魔物さんが待っているような気がするんです〜」

律子「魔物って……さっき社長に片付けてもらった魔物とは別にですか?」

あずさ「はい。……え〜っと……。あら、あの魔物さんたちは何ていったかしら〜」

律子「……もしかして、小鳥さんの親衛隊ですか?」

あずさ「はい、そうです。その親衛隊の方だと思いますよ〜?」

貴音「……なるほど、この異常な暑さはその魔物が原因、ということですか」

あずさ(私、なんとな〜くその魔物さんのこと知っている気がするのよね〜)

424 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/09/24(土) 23:08:33.88 ID:MBd2/upBO

スタスタ…

…ピタッ

律子「……広間に出たわね」



「……よう。待ってたぜ、あいどるども!」



律子「! ……出たわね!」

真「あいつは確か……こないだハミングウェイの住処で見たヤツだね」



レッドドラゴン「オレ様はコトリ様親衛隊の特攻隊長、レッドドラゴンだ!」

レッドドラゴン「さっそくでわりーが、お前らここで全員死んどくか?」メラメラ



春香「うわぁ、めちゃくちゃ燃えてるよ……」

亜美「うえぇ……あれじゃあついわけだよ〜」グッタリ

あずさ(あらあら、やっぱりそうだったのねぇ……)


律子「……私たちも黙ってやられるつもりはないわ」

律子「あなたが邪魔をするっていうなら、無理やり通らせてもらいます!」チャキッ

タタタタ…

春香「あっ、お姉ちゃん!」


律子「……はっ!」ブンッ

レッドドラゴン「うおっと!」ガキィン


響「律子、自分も手伝うぞ!」ダッ

響「くらえ、ナンクル砲っ!!」コォォ

…ドゴオオォンッ!!


レッドドラゴン「……ってーなてめえ!」

レッドドラゴン「熱線っ!!」ゴォォ


響「ふふーん、そんな攻撃よけ……」ガクッ

響「あっ……!」フラッ


あずさ「……響ちゃんっ!」ガバッ


ズドオオォォォン!!

425 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/09/24(土) 23:16:31.49 ID:MBd2/upBO

律子「あずささん、響!」



響「……うぅ、いたたた……」

響「ご、ごめんね、あずささん……」

あずさ「良かった……。響ちゃん、無事なのね?」ボロッ

響「あっ、あずささん、腕が……!」

あずさ「心配しないで? 私は再生できるから」ニコッ

…ニョキニョキッ

響「うげ……ホントに腕が生えてきたぞ……」



レッドドラゴン「出やがったな、ゾンビ女!」



あずさ「うふふ、またお会いしましたね〜」



千早「律子、私も戦うわ」チャキッ

春香「私も!」チャキッ

律子「……ええ」


あずさ「……待って、みんな」


律子「あずささん……?」

426 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/09/24(土) 23:25:36.18 ID:MBd2/upBO

あずさ「律子さん、みんなを連れて先へ進んでください」

律子「えっ、何言ってるんですか!」

あずさ「私はこの前あの魔物さんと戦ったので分かっているんですけど、さっきのあの攻撃、触れたものをみんな溶かしてしまうんです」

律子「!」

あずさ「……多分、この中であの攻撃に耐えられるのは、私しかいないと思います」

律子「で、でも……」

あずさ「お願いします、律子さん。私、みんなを危険な目に遭わせたくないんです」

律子「あずささん……」

春香「………」



『……物語を盛り上げるのは、役者の努めよ?』



春香「………」グッ


春香「行きましょう、お姉ちゃん!」

律子「春香……?」

春香「あずささんなら、きっと大丈夫です!」ニコッ

律子「………」

律子「……分かりました。その代わり絶対に無茶はしないでくださいね?」

あずさ「は〜い、任せてくださ〜い♪」

427 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/09/24(土) 23:32:05.25 ID:MBd2/upBO

亜美・真美「あずさお姉ちゃんっ……!」

真・響「あずささん!」

雪歩「あずささん……!」

貴音「あずさ……」

やよい「うぅ、あずささん……!」

美希「………」

千早「………」

伊織「……頼んだわよ、あずさ!」



あずさ「……ええ!」ニコッ

あずさ「………」チラッ


春香「………」コクリ


あずさ(……ありがとう、春香ちゃん)



律子「駆け抜けるわよ、みんな!」


タタタタ…

428 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/09/24(土) 23:38:03.68 ID:MBd2/upBO

レッドドラゴン「……獲物が一匹になっちまったか」


あずさ「あの〜、なんでみんなを行かせてくれたんですか?」

あずさ「あなたが本気を出したら、私たち、大変なことになっていたと思うんですけど〜」


レッドドラゴン「おう、まあな! オレ様にかかりゃお前らを全滅させるのは簡単だ」

レッドドラゴン「だがよ、仕方ねーんだ。これはリーダー命令だからな」

レッドドラゴン「『獲物はみんなで仲良く分けろ』ってな」


あずさ「まあ……」


レッドドラゴン「オレ様の熱線に耐えたのはあんたが初めてだからな」
429 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/09/24(土) 23:43:33.74 ID:MBd2/upBO

レッドドラゴン「本音言うとリーダー命令なんて関係ねぇ。もう一度あんたと戦って決着をつけたかった」

レッドドラゴン「……ただそれだけだ」



あずさ「……それじゃ、私もしっかりしないといけませんね」


レッドドラゴン「本気で来いよな。オレ様も全力で行くからよ!」


レッドドラゴン「行くぜおらあああああっ!!」


あずさ「うふふ〜♪」


430 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/09/24(土) 23:56:12.38 ID:MBd2/upBO
ー 月の地下渓谷 B2F ー


スタスタ…


律子「………」


春香「……お姉ちゃん、あずささんのこと、気になってるんですか?」

律子「………」

伊織「アンタまさか、あずさの言ったことが理解出来なかったわけじゃないわよね?」

律子「……あずささんの言う通り、あの熱線って攻撃は生身の身体にかすりでもしたら致命的なダメージになる」

律子「逆に言えば、生身の身体ではないあずささんはあのレッドドラゴンと相性がいいってこと」

律子「かなり合理的な判断だったと思うわ」

伊織「……何よ、ちゃんと分かってるじゃない」

伊織「あずさは犠牲になったんじゃない。あの場面で考えうる限りの最良の選択をしたのよ」

春香「だから、お姉ちゃんが気に病むことじゃありません」

律子「……ええ、それは分かっているんだけど……」


律子(やはり、こうなってしまったか)

律子(あの時ハミングウェイの洞窟で別れた響たちの話も総合すると、親衛隊の数は10体)

律子(それに貴音と因縁があるっていうバハムートとかいう竜も合わせて、敵は全部で11体)

律子(こちらが数で上回っているとはいえ。あの魔物たちは地球で戦った小鳥さんの四天王よりも強い)

律子(本当なら何人かずつでフォローし合いながら撃破していくのが理想だったんだけど……)

律子(でも、あずささんの判断は間違っていない。いえ、伊織の言う通り最良の判断だったと言える)

律子(……もう、信じるしかないわね)

431 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/09/25(日) 00:07:19.85 ID:qLn1JxLyO

…ピタッ

律子「……あら? 行き止まり?」

千早「おかしいわね。ここまで分かれ道なんて無かったと思うけど……」

貴音「………」

スタスタ…


響「あ、どこ行くんだ貴音、そっちは壁しかないぞ?」


貴音「……いえ、一見なんの変哲もない壁ですが、実は不可視の通路があるのです」

貴音「確か、この辺りに……」ペタペタ

…ヌルッ

貴音「……ありました。ここの壁は通り抜けることが出来ます」

千早「壁の中に道があるのね」

響「なるほどな、隠し通路かー」

真美「お姫ちん、ダテにここに来るの二回目じゃないねぇ」 

貴音「この地下渓谷には、こういった目に見えない道が幾つか存在するようです」

貴音「わたくしも全てを把握しているわけではありませんので、亜美、真美、もし見落としがあったらふぉろーをお願いします」ペコリ

亜美・真美「りょーかい!!」

432 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/09/25(日) 00:20:50.95 ID:qLn1JxLyO

スタスタ…

千早「……不思議な感じね。壁の中を通っているなんて」

春香「本当だねー。なんだか忍者になった気分だよ」

真「あ、そういえば伊織は使えたよね、壁抜けの術」

伊織「使えるけど、あれはダメよ。一度に抜けられる人数に限りがあるもの。……せいぜい4、5人が限度ってところね」

真「ふーん……便利なんだか不便なんだか微妙なところだね」 

亜美「まあ、FF4のパーティの最大人数はホントなら5人だから、ちかたないね」

響「そっか。自分たち、今はあずささんが抜けたけど、それでも12人パーティだもんなー。実際のゲームからするとだいぶ多いことになるのかー」

雪歩「……それも、プロデューサーのおかげだよね。本当なら物語の途中で脱落してたはずの私たちを助けてくれたんだもん」

亜美「……兄ちゃん、元気にやってるかなぁ」

やよい「だいじょーぶ、プロデューサーならきっと小鳥さんと仲良くやってるよ!」

亜美「あ、そっか。考えてみれば兄ちゃんって今、ピヨちゃんと『二人っきり』なんだね」


春香「………」ピクッ

美希「………」ピクッ

真美「………」ピクッ


真「……あれ、どうかしたの? 三人とも」


貴音「……律子嬢、少し先を急ぎましょう」

スタスタスタスタスタスタスタ…


律子「えっ……ちょ、ちょっと貴音?」

433 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/25(日) 00:26:28.46 ID:qLn1JxLyO
ここまでです
妙に短いレスがあるのはスマホの操作に慣れず途中で書き込みしてしまってるせいです

ちなみにFFは2〜9までしか知らないです
434 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/25(日) 01:04:07.57 ID:olHZQiE1O
]やろうずvita版なら場所によっては2000円あれば買えるし
435 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/27(火) 08:52:55.07 ID:Yq1GRc7QO
オッツオッツ、もう終わりかと思うと感慨深いな
436 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/10/02(日) 20:56:42.07 ID:aKjI7yjuO

律子「……ふぅ、ようやく壁を抜けたわね」

春香「ちょっとした広間に出たみたいですけど……」キョロキョロ

春香「先へ進む道が見当たりませんね。貴音さん、次もまた隠し通路ですか?」

貴音「はい。確か、そこの壁に……」スタスタ



貴音「!」



貴音「……はっ!」クルンッ

…スタッ

ーーズドオオオオンッ!!


春香「貴音さんっ!」

響「貴音! 大丈夫か!?」

貴音「……問題はありません」

貴音「しかし……」チラッ



ベヒーモス「……なかなかいい反応してるじゃないか。ま、今のはほんの挨拶代わりだけどね」ニヤリ

437 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/10/02(日) 20:58:11.36 ID:aKjI7yjuO

律子「出たわね、親衛隊……!」チャキッ

律子「みんな、行くわよ!」

真「……待って」

律子「真……あんたまさか……」

真「……ここは、ボクが出る!」ザッ

律子「ダメよ! これ以上バラバラになったら……!」

真「自分でもわがまま言ってるっていうのは自覚してる」

真「でも、あいつとはこないだの決着を着けたいんだ」

真「……頼むよ、律子」

律子「真……」

伊織「……やらせてやりなさいよ。この戦闘バカには何を言っても無駄よ、きっと」

律子「………」

律子「……分かったわ。その代わり絶対に勝ちなさい、真!」

真「律子……! ありがとう!」パァァ

438 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/10/02(日) 21:00:25.88 ID:aKjI7yjuO

律子「みんな、ここは真に任せて行きましょう!」

春香「はいっ!」

亜美「まさか亜美たちの最終兵器の出番がこんなに早いとは……」

真美「戦力ダウンは否めないケド……ちかたないね」

雪歩「ま、真ちゃんっ……!」

千早「……とはいえ、先へ進む道はあの魔物の後ろよ。どうする?」



ベヒーモス「あんたたちはこの先へ進みたいのかい?」

ベヒーモス「……ふふん、だったらアタイが『道』を作ってやろうか?」



千早「えっ?」



ベヒーモス「……そおらっ!!」ブンッ

ゴオオオォォオオッッ!!


真「! ……気を、飛ばした!?」


…ドゴオオオォォオオンッ!!



…ガラッ



春香「わわっ……あ、足場が……!?」ヨロッ

響「く、崩れるぞっ!」

雪歩「ひぃっ!」

やよい「はわわっ、こ、こわいです〜!」

伊織「やよい、私に捕まりなさい!」

千早「まさか、私たちを地面に叩きつけて殺す気なの……!?」

貴音「………」

美希「……あふぅ」

律子「みんな!」

亜美・真美「おちるううううぅぅーーーー!!」


ヒューーーー…


真「みんなーーーーッ!!」

439 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/02(日) 21:02:20.92 ID:aKjI7yjuO

真(みんな……)


ベヒーモス「……下に落ちた仲間たちが心配かい?」


真「………」


ベヒーモス「ま、この程度でやられちまうようじゃ、所詮はそこまでだったってことさ」


真「……!」グッ

真「気を飛ばすなんていつの間に覚えたんだい? この前戦った時は使ってなかったよね、確か」


ベヒーモス「あんたの真似をしてみただけさ。人間に出来てアタイに出来ないはずがないからね」


真(簡単に言うけど、素人があんなにすんなりと気を操るなんてまず無理だ)

真(……いい格闘センスを持っているんだろうな、きっと)


真「……ボクは、みんなを信じてる」

真「ボクの仲間たちは、きっと君の仲間たちを倒して小鳥さんの元へ辿り着くって」

真「だから、不安なんて何もない!」


ベヒーモス「……そうかい」

ベヒーモス(本当に一ミリの迷いも無い……いい表情だ)


ベヒーモス「……だったら、アタイも信じようじゃないか」

ベヒーモス「アタイの仲間たちはあんたの仲間たちに負けたりしないって」


真「!」

真「……へへっ!」


ベヒーモス「ふふっ……」


真「じゃあ、勝負だ。ボクの信念と君の信念、どちらの方が強いのか!」


ベヒーモス「ああ、望むところだ!」


真「はああああぁぁぁああっ!!」ゴゴゴ


ベヒーモス「うおおおおおおおっ!!」ゴゴゴ


ズドオオオオォォォオンッ!!

440 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/02(日) 21:05:50.80 ID:aKjI7yjuO
ー ミシディアの村 祈りの館 ー


翔太「ふーん、ここが祈りの館かぁ」キョロキョロ

高木「なんだか雰囲気のあるところだねぇ」

長老「微弱ながら魔力を巡らせておるでの。ここだけは魔物たちも破壊出来なかったようじゃ」

冬馬「………」

北斗(祈りの館……)

北斗(確かゲームでは、最終決戦に望むセシルたちのために仲間たちが集った場所だったはず)

北斗(そして、ゼロムスの力に屈しようとしていたセシルたちに、仲間たちは想いをパワーに換えて月にいる彼らの元に届けた)

北斗(ゲームとは違って今は俺たちしかいないけど、そんなことも言っていられないだろう)


北斗「それじゃあ、早速始めますか?」

長老「そうじゃの。少しでも強い祈りを届けられるよう、早めに始めた方が良いじゃろう」


黒井「………」



黒井(あの時……)

黒井(音無小鳥と戦ったあの時、ヤツは全力ではなかった)

黒井(もちろん私とて手の内を全て晒したわけではない)

黒井(……が、あの時の『アレ』は単なる分身。本体はもっと強大な力を持っていると思っていいだろう)

黒井(高槻やよいやその他の連中は、本当に音無小鳥に勝てるつもりでいるのか?)

黒井(……フン、叩いても叩いても雑草のように這い上がってくる連中だ。勝ち目が薄いことなど承知の上だろうな)

441 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/10/02(日) 21:10:12.24 ID:aKjI7yjuO

黒井(『絆』とやらが信条の765プロが、仲間であった人間を倒す、か)

黒井(ゲームの世界とは、まったく不条理な世界だ)

黒井(……もちろん、私は高槻やよいなど関係なく、私自身のために音無小鳥を倒す)

黒井(しかし……私がすべき事は本当にそうなのか?)

黒井(私は、この世界で何をして来た?)

黒井(この世界で何を見て来た?)

黒井(私は……)




冬馬「なあ黒井のおっさん。これからお祈りとやらが始まるみたいだけど、あんたはどうするんだ?」

黒井「………」

冬馬「どうせおっさんはお祈りなんか興味ないだろ? 自由に行動してても構わないけど、あんまり遠くに行くなよな。迷子になられても困るからよ」

黒井「………」

黒井「お前たちの力だけで足りるとでも思っているのか?」

冬馬「え?」

黒井「王たるこの私の力無くして音無小鳥に勝てるはずがあるまい」

高木「黒井……」

黒井「いいか、決して765プロと力を合わせるのではない。あくまで力を貸してやるのだ」

冬馬「おっさん、じゃあ……」

黒井「おい、老人。やるならさっさと始めるぞ」

長老「幻獣王リヴァイアサンの力を借りられるとは、これ程心強いことはない」

長老「さ、皆、こっちじゃ」

スタスタ…



黒井(勘違いするなよ、765プロ。私はお前たちと馴れ合うつもりなどない)

黒井(今までどんなことがあろうともしぶとく生き残ってきたお前たちがこの状況をどう乗り越えてみせるのか)

黒井(ただそこに興味が湧いただけなのだ)

442 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/02(日) 21:14:48.21 ID:aKjI7yjuO

ー 月の地下中心核 ー


P「………」ソワソワ

小鳥「ズズッ……」

P「………」ソワソワ

小鳥「……ふぅ。お茶がおいしいわぁ」

P「………」ソワソワ

小鳥「………」


小鳥「プロデューサーさん、みんなのことが気になってるんですか?」

P「そりゃそうですよ。地下渓谷は最大のダンジョン。敵も強いですし」

P「みんなが負けるなんてことは思ってませんけど、痛い目にあったりしていないか心配で……」

小鳥「あのー、ここまで来て今さらだと思うんですけど……」

小鳥「今までだってみんなは辛い事をたくさん乗り越えて来たんですよね?」

小鳥「だったらあとはもう、信じるしかないと思いますよ?」

P「それは、そうですけど……」

小鳥「そんなに心配なら、見てみますか?」

P「見るって、何をです?」

小鳥「みんなの様子ですよ。みんなの姿を実際に見ればプロデューサーさんも少しは気持ちが落ち着くんじゃないですか?」

P「え? そんなこと出来るんですか?」

小鳥「うふふっ♪ 任せてくださいっ!」

小鳥「……えいっ!」バッ

パリッ…!


P「おお……! なんか壁にテレビみたいなのが現れた!」

小鳥「精神波を応用すればこのくらいわけありません!」ドヤッ

P「なんて言うか……もうなんでもアリですね」

小鳥「このくらいのハンデがあってもいいじゃないですかー! 私一人でみんなと戦うんですからー!」

P「……まあ、それもそうか」

小鳥「さてさて、それでは……」

小鳥「このリモコンをポチッとな」ポチッ


…ブゥン


P「あ、テレビが映った」


『……うぎゃあああああぁぁぁーー!!』


P「! あれは……響!?」

443 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/02(日) 21:20:39.15 ID:aKjI7yjuO
ー 月の地下渓谷 B5F ー


「…………ぅぁぁぁぁああああああーーーー!!」


クルンッ

スタッ

響「……っとと」ヨロッ

響「……ふぅ、なんとか着地成功だぞ……」

響「まさか地面を割られるなんて思ってもみなかったなー」

響「………」チラッ

響「ずいぶん下まで落とされちゃった……。もう真も魔物も見えないぞ」

響(真とあずささん、大丈夫かな。ちょっと心配だな……)

響「……ってダメダメ。自分がそんなに弱気でどうするんだ!」ブンブン

響「真もあずささんもきっと大丈夫。二人とも魔物なんかに負けないさー!」

響「……あ、そういえば他のみんなはどこへ行ったんだ?」キョロキョロ



響「おーーーい!! 貴音ぇーーー!!」

響「律子ぉーー!! 春香ぁーー!!」

響「どこにいるんだーーーー!!」



響「………」

響「………」

響「………」

響「………」

響「………」

響「うぅ……返事がない……。みんな違う場所に落ちちゃったのかなぁ……」


響(……ひとりぼっち、か)


響「……べ、別にさみしくなんかないもんねっ! 自分だって一人で戦えるってこと、魔物に教えてやるんだ!」

響「さあかかってこい、魔物ー! 完璧な自分が相手になるぞー!」

響「………」

響「………」

響「………」

響「………」

響「………」

響「……魔物すら出てくる気配がないぞ……」シュン


響「とりあえず、ピヨ子は一番下の階……地下12階で待ってるって言ってたっけ」

響「ここが何階なのか分からないけど、さすがにここから飛び降りるのは危険だな」

響「上に戻るわけにもいかないし、下に降りる階段を探すか」

響「もしかしたらもうみんなは下へ向かっているのかもしれないし」


響(……はぁ。さっきから自分、ひとり言ばっかりだぞ……)


トボトボ…

444 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/02(日) 21:24:12.95 ID:aKjI7yjuO
ー 月の地下渓谷 B3F ー


ズズ…



ズズズ…



ズズズズ…



…ザバァ!


雪歩「………」キョロキョロ

雪歩「ここにも誰もいない……」

雪歩「やっぱりみんな、もっと下の階に落ちちゃったのかなぁ」

雪歩(魔物さんに地面を破壊されて落ちる瞬間、私、咄嗟に横穴を掘って自分だけ逃げちゃったけど……)

雪歩(みんなを助ける余裕がなかったよ……)

雪歩「……きっと大丈夫だよね?」

雪歩「みんな、私なんかよりずっと強いもん」



雪歩「それより、これからどうしよう……」

雪歩「真ちゃんの助太刀に行くべきかな?」

雪歩「ここってたぶん、真ちゃんのいた階からそんなに離れていないと思うんだけど……」チラッ


雪歩「………」

雪歩「ううん、違う。真ちゃんはそんなこと望んでないよね」

雪歩「真ちゃんならきっと『ボクに構わず先に進んで』って言うはず」

雪歩「それに、みんなと約束したもん。どんなことがあっても中心核へ辿り着こうねって」

雪歩「ひとりは怖いけど、今はそんなこと言っていられないよ……!」

雪歩「私も、下を目指そうっ!」グッ



雪歩(……それにしても)

ザクッ ザクッ

雪歩(ここの地面って見たことない鉱石で出来てるんだよね。いったい何で出来てるんだろう?)

ザクッ ザクッ

雪歩(キラキラ輝いているから、宝石か何かなのかな?)

ザクッ ザクッ

雪歩(すっごく硬いけど、私にはククロさんに鍛えてもらったスコップがあるから大丈夫)

ザクッ ザクッ

雪歩(……なんだか掘ってるうちにテンション上がってきたかも。今ならこのまま小鳥さんのところまで掘れそうな気がするよ!)

ザクッ ザクッ



雪歩「よーし、どんどん掘っちゃいますぅ!」シャキーン

445 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/02(日) 21:25:40.99 ID:aKjI7yjuO
ー 月の地下渓谷 B4F 大部屋 ー


…ヒョコッ


亜美「むむむ……」チラッ


亜美「むむむむっ……」チラチラッ


亜美「……視界良好、敵影なし、っと」

亜美「……ふーむ」

亜美「ここに落ちてきたのはどーやら亜美ひとりっぽいね」

亜美「みんな大魔道士亜美とはぐれるなんてツイてないよねー」



亜美「っと、そーだ。今のうちに体力回復っと」ゴソゴソ

亜美「んく、んく……」

亜美「……ふぅ」

亜美(ま、こんな時のためにみんなでポーションとエーテル分けたし、なんとかなるよね?)



亜美「……さってと!」スクッ

亜美「まずはこのフロアをさくっとタンサクしちゃおっかな。なーんかいいアイテムがありそうなフインキだし」

亜美「できれば魔物に出会う前に手に入れたいね!」

亜美「あと、みんなのことも早く救出したげないとね」

亜美「特に真美は亜美がいなくてさびしがってるだろーし」

亜美「………」


亜美「よーし! 亜美、出撃だよっ!」

タタタタ…

446 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/02(日) 21:29:20.05 ID:aKjI7yjuO
ー 月の地下渓谷 B4F 外部 ー


スタスタ…

真美「うーん……」

真美「やっぱ誰もいないかー」

真美「真美たちをバラバラにして戦力がダウンしたところをカッコゲキハ、というわけですな」

真美「敵さんもいろいろ考えてるねぇ」


真美「ふーむ」キョロキョロ

真美「それにしても真美、この地形なーんか見覚えがあるんだよねー」

真美「確か、この階にチョー貴重な武器があったよーな」

真美「……ん? あっちに階段がある」

スタスタ…



真美「!」



真美(やっぱそーだよ……!)

真美(階段があって、なんかミョーに広々としてて……)

真美(真美のキオクが確かなら……ここは地下ケーコクの地下4階!)

真美(てことは、ここにある武器は『アレ』だね)

真美(『アレ』が手に入れば確かに楽になる。けど、今は亜美が心配だな)

真美(亜美、さっきの戦いでじゃんじゃん魔法使ってたよね。あの調子だとすぐにMPなくなっちゃいそう)

真美(もし魔物と戦ってる最中にMPゼロになってエーテルも切れたら、ウチら魔道士にとってはチメーショーだもんね)

真美(……ん、待てよ? それならなおさら『アレ』が重要になってくるのか……)

真美(……うん。やっぱここはちょっとムリしてでも『アレ』を探すべきっぽいよ!)


真美「よーし! 真美、突撃だよっ!」

タタタタ…

447 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/02(日) 21:33:06.69 ID:aKjI7yjuO
短いけどここまでです

vitaはマストソングスのために買ったんですが、今はマストソングスで手一杯で他のゲームがやれてません
鬼ムズすぎ
448 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/08(土) 04:03:18.12 ID:BhrJ70oBO
俺っちのは動かなくなったから修理に出すにも保険期間外で金取られるから放置してる
修理に出す余裕なんてない
449 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/10/12(水) 19:50:59.04 ID:VsHkcvNIO
ー 月の地下渓谷 B1F ー


レッドドラゴン「おらあああああっ!!」


ズドドドドドドッ!!


あずさ「うふふ〜、こっちですよ〜」ヒョコッ


レッドドラゴン「ンにゃろ!!」


ドゴオオンッ!!


あずさ「は〜い、今度はこっちです〜」フリフリ


レッドドラゴン「こんのっ!!」


ドドドドドドッ!!


あずさ「ほらほら、頑張ってくださいね〜」ヒョコッ



レッドドラゴン「……はぁ、はぁ……」

レッドドラゴン「……おい、ゾンビ女! てめーやる気あんのかよ! さっきから逃げてばっかじゃねーか!」


あずさ「あらあら……」

あずさ「だって、あなたの攻撃は少しでも当たったら大変なんですもの」

あずさ「それに私、逃げないなんて一言も言ってませんよ〜?」


レッドドラゴン「それじゃ勝負になんねーだろが! てめーも攻撃して来いよ!」


あずさ「あら、よろしいんですか〜?」


レッドドラゴン「たりめーだ! 一方的なのは勝負って言わねーからな!」


あずさ「では、お言葉に甘えますね〜」ゴゴゴ


レッドドラゴン「!」

450 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/12(水) 19:58:23.27 ID:VsHkcvNIO

レッドドラゴン「……けっ、持ってやがるじゃねーか! こんな大層な魔力をよ!」


あずさ「……時は、来た」ゴゴゴ


レッドドラゴン「ビリビリ来やがる……! やっぱ勝負はこうじゃなきゃな!」


あずさ「赦されざる者の……」


あずさ「………」


あずさ「………」


あずさ「………」


レッドドラゴン「…………?」


あずさ「……え〜っと」


あずさ「すみません、詠唱、ど忘れしちゃいました〜」モジモジ


レッドドラゴン「ふざけんなアホぉ!!」


レッドドラゴン「てめーはオレ様を倒してコトリ様のところへ行くんだろーが! そんなんでどーすんだよ!」


あずさ「そ、そうですよね……」シュン


レッドドラゴン「……ったく、今のはてめーの決め技なんだろ? しっかり詠唱呪文思い出せよな!」


あずさ「な、なんとか頑張ってみますね〜?」


レッドドラゴン「ってわけで、戦いの続きやんぞ!」


あずさ「は〜い」


あずさ(……どうしちゃったのかしら、私。『あの時』はちゃんと使えたはずなのに)

あずさ(それに、貴音ちゃんのお家の図書室で『あれ』について書かれた本まで読んだのに……)

あずさ(『あれ』が使えないときっと勝てないわよねぇ)

あずさ(……あら? そもそも『あれ』ってなんていう名前の魔法だったかしら?)

あずさ(覚えていたはずなのに、思い出せない……)

あずさ(困ったわね〜)

451 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/12(水) 20:01:31.40 ID:VsHkcvNIO
ー 月の地下渓谷 B2F ー


真「はあああっ!」タタタ


真「せいっ!!」ドゴォ


ベヒーモス「……ふん、軽いねぇ」

ベヒーモス「うらあっ!!」ブンッ

ドガァン!!


真「うわっ!」

…スタッ



真「……ふー」コキッ


ベヒーモス「何を出し惜しみしてるんだい? そんなんじゃアタイに傷ひとつ付けられない。それはこないだの戦いで分かってもらえたと思ったがねぇ」


真「……うん、そうだね」


ベヒーモス「全力で来な! じゃないと面白くない」


真「いいの? 全力出したらきっとボクが勝っちゃうよ?」


ベヒーモス「口の減らないヤツだ。どっちが上か思い知らせてやるよ……!」ゴオオオ


真(気を……開放した!)

真(それも、無茶苦茶な量の気だ!)


ベヒーモス「うらああああっ!!」ブンッ


ゴオオオォォォ!!


真「……覇王……」バッ

真「……翔煌拳ッ!!」


ゴオオオォォォ!!


ベヒーモス「……くっ、押し返されるか!」


ドゴオオオオォォォオオンッ!!

452 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/12(水) 20:05:34.06 ID:VsHkcvNIO

ベヒーモス「ぐっ……ふふ、やるじゃないか」ニヤリ


真「気に関しては一応君よりボクの方がセンパイだからね。簡単には負けられないさ!」ニコッ


ベヒーモス「格上の余裕か。だが、いつまでその余裕が持つかねぇ?」バッ


真「!」


ベヒーモス「確か、こう……」ゴオオオ


真「えっ!? ま、まさか……!」


ベヒーモス「覇王……翔煌拳!!」


ゴオオオォォォ!!


真「う、ウソでしょ……?」


ドゴオオオオォォォオオンッ!!



真「……ぐっ……!」ヨロッ


ベヒーモス「どうだい? 自分の技を食らった感想は?」


真「……はは、いい気分ではないね」

真「驚いたよ。気を覚えたてで覇王翔煌拳を真似するなんてさ」


ベヒーモス「なに、今のはほんの余興だよ。勝負の決め手になりはしない」

ベヒーモス「最後の最後で勝敗を分けるのは……」


ベヒーモス「……圧倒的な、パワーだ……!」ゴゴゴ


真「……!」ゾクッ


真「……ごめん、君を見くびってた。ボクも全力で戦うよ」


ベヒーモス「ああ、そうした方がいい……」ゴゴゴ


ベヒーモス「あんたほどの人間を、アタイもみすみす殺したくはないからね……!」ゴゴゴ


真(うーん、ちょっと計算外……かな?)

453 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/12(水) 20:08:42.96 ID:VsHkcvNIO
ー 月の地下渓谷 B6F ー


フワフワ…


伊織「……一時はどうなるかと思ったけど、助かったわ」

やよい「ありがとう、しるふちゃん!」


シルフ「私の主人にこんなところで落下死されても困りますからね〜」

シルフ「ま、落下の最中にとっさに私を喚び出したのは正解だったと思いますよ〜?」

シルフ「それでは、頑張ってくださいね〜」フリフリ

スゥゥーー…



…スタッ

伊織「やよい、ありがとね。アンタを守るつもりが逆に助けられちゃったわね」

やよい「ううん、わたしもうわー! ってなってて、なにがなんだかよくわかってなかったから」

伊織「……それにしても、ここは何階かしら」キョロキョロ

伊織「かなり下まで落ちてきたと思うんだけど……」

やよい「伊織ちゃん、ほかのみんなはどこへ行ったのかな?」

伊織「そうね。とりあえずみんなを探しましょうか」

やよい「うんっ!」

スタスタ…

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