P「ゲームの世界に飛ばされた」FINAL2

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710 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/07/09(日) 22:43:14.33 ID:GrUnCP8WO
ー 月の地下渓谷 B6F ー


リルマーダー「……そりゃっ!」ブンッ


ザシュッ!!


伊織「ぐっ……!」ヨロッ


リルマーダー「へへっ。どうしたイオリ? さっきと段違いに動きが鈍くなったんじゃねーか?」


伊織「よ……余計なお世話よ!」ブンッ


リルマーダー「ふんっ」ヒョイッ



伊織「……はぁ、はぁっ……」


リルマーダー「無理もねーぜ。お前はオイラの6倍サンダガを受けたんだからなっ」

リルマーダー「超電撃を受けたお前は身体が思うように動かないはずだ。むしろまだそれだけ動けるのは大したもんだぜ」


伊織「………」

伊織(ただの変態だと思ってたけど、とんだ策士だったわね……。自分の弱点をさらけ出してわざとそこを突かせるなんて……)

伊織(あいつの言うとおり、手足がちゃんと言うことを聞いてくれないんじゃ居合も使えない。雷迅を撃ってもカウンターを食らう)

伊織(状況は良くないわ)

伊織(どうする……?)


リルマーダー「けど、オイラは負けねえ。負けられねえんだよ」


伊織(見逃してくれるわけないわよね。何よりそんなのは私自身が許せないし……うーん……)


リルマーダー「オイラはさ、ずっとひとりだった」


伊織「……え?」



711 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/07/09(日) 22:45:51.58 ID:GrUnCP8WO

リルマーダー「小さい頃からゴブリン族の王として育てられてきたけど、ゴブリン族なんて魔物の中で最弱の種族だ。周りのヤツらからはずっと馬鹿にされ続けてきた」


伊織(なんなのコイツ、いきなり身の上話なんか始めちゃって)


リルマーダー「悔しかった。すげー腹が立った。オイラは王の器のはずなのに、周りは認めてくれないどころかよってたかってオイラをいじめた」


伊織「………」


リルマーダー「……だから、決めたんだ。絶対にオイラを馬鹿にしたヤツらをいつか見返してやるって」

リルマーダー「オイラという存在を、いやでも認めさせてやるって!」


伊織「……!」


リルマーダー「ひとりでたくさん修行して、強くなった。オイラは王だから、誰にも負けるわけにはいかないから」

リルマーダー「もちろんイオリ、お前にもな!」


伊織(……そうか、そうだったのね。コイツを見てるとなぜかイライラすると思ったら……)

伊織(似てるんだわ、コイツは。私に)

伊織(誰かに認めてもらいたい一心でがむしゃらに突き進んで、差し伸べられた手に気づくことができなくて)

伊織(でも、本当は……)


712 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/07/09(日) 22:49:42.35 ID:GrUnCP8WO

リルマーダー「楽しかったぜ、イオリ。オイラとまともにやり合った人間はお前が初めてだ」

リルマーダー「けどもう終わりだ。どっちが強いかはっきりさせてやるっ!」スッ


伊織「………」スクッ

伊織「……そうね。ここにもいい加減長居しすぎたわ。そろそろみんなを追いかけないと心配するでしょうし」

伊織「いい頃合いねっ……!」


リルマーダー「何言ってやがる。お前はここでオイラに負けるんだ!」


伊織「はぁぁあああっ……!」バリッ


リルマーダー「イオリ……? お前、バカなのか?」

リルマーダー「お前の雷迅の術はさっきオイラが倍にして返した。オイラに対して雷属性攻撃は無意味どころか自滅を招くだけだ」


伊織「ご忠告どうも。でもね、アンタが知ってる世界だけが全てじゃないってこと、教えてあげるわ!」バリバリッ


リルマーダー「……ガッカリだぜ。イオリはもっと頭のいいヤツだと思ってたのによ……」

リルマーダー(今降参すれば許してやったのによ……)

リルマーダー(そうすればイオリは命が助かって、それで……)

リルマーダー(……いや、何考えてんだオイラは。イオリは敵だぞ)



リルマーダー「……いいぜ。撃ってこいよ、イオリ! 望み通り返り討ちにしてやるっ!!」


713 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/07/09(日) 22:53:09.05 ID:GrUnCP8WO

伊織(あんまりスマートな方法とはいえないけど、思い付いちゃったんだからしょうがないわよね)


伊織「…………伊織ちゃん最大級の雷よ! 受けてみなさいっ!!」

伊織「雷迅ッッ!!」バッ


ズガガガピシャァーンッッ!!!



リルマーダー「……ぐっ!!」ヨロッ

リルマーダー「…………へへっ……い、いてーじゃねーか……」

リルマーダー「だがよ……」バリバリッ

リルマーダー「放った雷の威力が強ければ強いほど、より強い雷がお前を襲うことになるんだぜっ!」


伊織「はぁ、はぁ……」

伊織(赤い悪魔たちもそうだったけど、魔物がこんなに人間くさいなんて思ってもみなかったわよ)

伊織(でも、だからこそ私はあいつに……)


伊織「……っ!」ザッ


714 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/07/09(日) 22:55:00.58 ID:GrUnCP8WO

伊織(赤い悪魔……アンタは分が悪すぎる賭けだって笑うかしら?)

伊織(……いいえ、アンタならきっとこう言ってくれるわね)

伊織(『お前の信じた道を進め』……って!)

伊織(チャンスは一回。それ以上はたぶん私の体がもたない)

伊織(あいつに勝つには……)



伊織(………………あ私も、あいつの雷を利用するっ!)



伊織「来なさい、リルマーダー!!」



リルマーダー「うおおぉぉおっ!! ……2倍サンダガッ!!」


ズガガガピシャァーンッッ!!!



伊織「うぅっ……!!」ヨロッ


…ドサッ



715 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/09(日) 22:57:26.15 ID:GrUnCP8WO

リルマーダー「……はぁ、はぁ……」



伊織「………」グッタリ




リルマーダー「………」

リルマーダー「ちぇっ……」

リルマーダー「イオリ、お前なら……」

リルマーダー「ともだちになってやってもよかったのによ……!」グスッ




伊織「…………バカね……」ヨロッ



リルマーダー「!」



伊織「敵に涙を見せるなんて、アンタにはプライドってものがないワケ……?」ザッ



リルマーダー「イオリ……!」

リルマーダー「ち、ちげーよ! これはえっと……」ゴシゴシ



伊織「まだ……私のターンが終わってないわ……っ!」



リルマーダー「そんなものはねえ。お前はもう立つことすら…………」

リルマーダー「!!」

リルマーダー「なん……だと……!?」



伊織「スーパー忍者アイドル伊織ちゃんを、なめるんじゃないわよっ……!」バリバリッ…


716 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/09(日) 23:00:07.31 ID:GrUnCP8WO

リルマーダー「帯電……!? あいつ、オイラの技をパクりやがった……!」



伊織「敵の雷を受けてそのまま体に纏う……」バリバリッ

伊織「要は赤い悪魔が常に炎を纏っているのと同じ要領ってことよね。こんなの、伊織ちゃんにかかれば楽勝よっ!」バリバリッ



リルマーダー「イオリも倍返しってことかよ……! いい度胸じゃねーか! こうなったらどっちが先に倒れるか、根性比べだっ!」



伊織「………………はぁ。やっぱりアンタってひとつのことしか見えていないのね」

伊織「この伊織ちゃんがただの猿真似で終わるわけないじゃない!」



リルマーダー「ど、どういうことだ!」



伊織「………………この世で一番速いもの、なんだか分かる?」



リルマーダー「……あん?」



伊織「それは…………光よっ!」



ピカァァァーーーーーー!!



リルマーダー「うおっ!? まぶしっ! 急にイオリの胸元が光って……!」

リルマーダー「……あとでこも」ボソッ



伊織「うっさい!! おでこは光らないわよ!!」プンスカ


717 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/09(日) 23:01:59.94 ID:GrUnCP8WO

伊織「私が纏ったこの雷は私に光の速さを与えてくれるわ……!」


リルマーダー「バカ言ってんじゃねー! 光速で動くなんてそんなことできるわけないだろ! それにお前はもう動ける力なんて残ってねーはずだ!」


伊織「……だから『無理やり動かす』のよ……!」チャキッ

伊織(どんなに体がボロボロだって、人間の体は反射には逆らえない)

伊織(雷で脊髄反射を起こして、雷を纏った私はそのまま光の速度を手に入れる……)

伊織(いける……はず!)


…バチッ!


伊織「きゃっ……!」ビクンッ

伊織「ぐっ……!」フラッ


…ドサッ



リルマーダー「…………へ、へん! やっぱりムリだったじゃねーか!」



伊織「……ぅ……」

伊織「ざん……ねん……もう行った、わよ……」



リルマーダー「…………へ?」



…ブシュッ!!



リルマーダー「がっ……は……!」ヨロッ



…ドサッ


718 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/07/09(日) 23:06:03.52 ID:GrUnCP8WO

リルマーダー「……うぐ……ちくしょう……」グッタリ



伊織(まだ息はあるみたいだけど、あの状態じゃ反撃はできないでしょ)

伊織(……とりあえず任務完了ってところね)

伊織(私もさっきの無茶で体動かないけど……)

伊織(うぅ……身体中がまだビリビリするわ……)



リルマーダー「こんなのウソだ……オイラが負けるわけがねえっ……!」



伊織(…………ったく)

伊織「………」ゴソゴソ

伊織「ゴクッ……ゴクッ……」

伊織「…………ふぅ」

伊織「…………よしっ」スクッ

スタスタ


伊織「負けを認めなさい。アンタじゃこの伊織ちゃんには勝てないわ」


リルマーダー「ぐ……! オイラは……王なのにっ……!」


伊織「なんでアンタが私に勝てないかわかる?」


リルマーダー「え……?」


伊織「アンタはひとりだって……頼れるのは自分しかいないって思い込んでいるからよ」


719 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/09(日) 23:09:17.86 ID:GrUnCP8WO

リルマーダー「な……なに言ってんだよ。戦いにおいて頼れるのは自分の力だけだ。そんなの当たり前じゃねーか……」


伊織「………」

伊織「誰にもすがることなく自分ひとりで生きていこうとするアンタのそのプライドは立派だと思うわ」

伊織「私もね、昔はアンタと似たような考え方だった。でも気づいたの。ひとりで出来ることには限界がある。ひとりで強くなるには限界があるってね」


リルマーダー「そ、そんなことはねー! オイラは、ひとりだってここまでやってきた!」


伊織「強情なやつね、まったく……」

伊織「私がアンタにやられてピンチになっても立ち上がれたのは、このクリスタルのおかげなの」スッ


リルマーダー「クリスタル……? そういえばそれ、急に光り出したよな」


720 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/09(日) 23:11:41.86 ID:GrUnCP8WO

伊織「これは、ひとつのクリスタルから仲間で分け合ったもの。いわば仲間との絆の証」

伊織「このクリスタルの欠片が、私に力をくれた。みんなと分け合ったクリスタルが私を再び立ち上がらせてくれたの」

伊織「私には仲間がいる。でも、アンタはひとりで戦っていた。……それがこの戦いの勝敗を分けたのよ」


リルマーダー「……仲間……」


伊織「アンタも小鳥の部下なら耳にしてるんじゃない? 仲間との絆こそが本当の強さだって」

伊織(アイツなら……小鳥ならきっとそう言うはずよ。だってアイツは……)



リルマーダー「……けっ。そんなのもう忘れちまったぜ」


伊織「……ホント強情ね、まったく」



リルマーダー「……イオリ、次は負けねーぞ。次に戦う時はオイラ、もっともっと強くなってるからな!」


伊織「………」

伊織(『次』なんてきっとない。あってはならない)

伊織(けど……)



伊織「ま、せいぜい頑張りなさい。アンタが強くなるって言うなら、この伊織ちゃんはもっともーっと強くなってるんだからっ!」

伊織「……にひひっ♪」



リルマーダー「…………ちぇっ」


721 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/09(日) 23:17:00.51 ID:GrUnCP8WO
ー 月の地下渓谷 B5F ー


プリンプリンセス34「はあっ!!」ダッ


響「……よっ」ヒョイッ


プリンプリンセス35「えいっ!!」ダッ


響「……ほいっ」ヒョイッ



プリンプリンセス33「くっ、ちょこまかと……!」

プリンプリンセス34「相変わらずすばしっこいですわね……」

プリンプリンセス35「これだけ長い時間動きが衰えないなんて……」

プリンプリンセス36「貴女、本当に人間なんですの?」



響「失礼だなー、自分はちゃんと人間だぞ!」

響「それに、これくらいでへばってたら長時間のライブなんて到底持たないからね!」

響「アイドルは身体が資本! 常識さー!」


響(……とは言うものの、やっぱり倒しても倒してもプリ江たちはあとから湧いてくるなぁ。もう何匹倒したかわかんないぞ……)

響(ナンクル砲も無限に使えるわけじゃないし、早いとこアラームってやつを見つけ出して壊さないと)

響(でも、いったいどこに隠してあるんだ……? この部屋のどこかだってことは間違いないと思うんだけど……)キョロキョロ



プリンプリンセス33(うふふ、アラームをいくら探しても無駄ですわ。この部屋の壁の中に隠してあるのですから)

プリンプリンセス34(それも一つや二つではなく、無数のアラームが壁に埋まっているのです!)

プリンプリンセス35(いくら彼女が私たちの攻撃を躱し続けても、いずれ限界が来る……)

プリンプリンセス36(その時こそ本当にあいどるの最期ですわ……!)


722 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/09(日) 23:19:14.24 ID:GrUnCP8WO

響「……ひとつ、質問いい?」


プリンプリンセス33「なんでしょう?」


響「ピヨ子はさ…………あ、えっと、小鳥はプリ江たちのこと、こき使ったりしてるの?」


プリンプリンセス34「? そのようなことはありませんが? コトリ様は私たちのことを大切に思ってくれていると信じています」


響「……そうなのか」


プリンプリンセス35「それと、コトリ様は私たちのことを『コトリ様のぷろでゅーすするあいどる』だと仰っていました」

プリンプリンセス36「だからこそ、貴女方と私たち、どちらが本物のあいどるか決着を着けねばなりません」


響「………」


プリンプリンセス33「貴女のダンスは本当に素晴らしい。けれど、私たちだって負けたくない!」

プリンプリンセス34「私たちをあいどるだと仰ってくれたコトリ様の思いに応えねばなりません!」

プリンプリンセス35「さあ、勝負を続けましょう、ヒビキ!」



響「………」

響「…………よし、決めた!」





響「この部屋ごと…………全部ふっとばす!!」





プリンプリンセスたち「…………えっ?」


723 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/09(日) 23:21:28.22 ID:GrUnCP8WO

響「プリ江たちの話を聞いて、ピヨ子が優しいピヨ子のままでいてくれて自分ホッとしたぞ」

キュィィィィン…!!


プリンプリンセス36「! エネルギーが彼女の手に集中していく……!」


響「それで、やっぱり早くピヨ子に会いたい、会って話をしたいって思ったんだ」

響「だから、悪いけどもうこの戦いは終わらせるっ!」


プリンプリンセス33「貴女の砲撃では私たちのうちひとりを倒すのが精一杯のはず! この部屋ごとなんて無理に決まってますわ!」


響「いや、方法がないわけじゃないぞ」

響(……ただ、本当ならあんまり使いたくなかった技なんだけどね)

響(エン太郎、ごめん。すっごくイメージの悪い技だけど、許してね……!)



響「はああああああっ……!!」



響「ナンクル……波動砲っ!!」バッ




ーーーーカッ!!



ドッゴオオオォォォオオォォオンッッ!!!




724 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/09(日) 23:25:07.20 ID:GrUnCP8WO
ー 月の地下渓谷 B2F ー



真「おおおおおおっ!!」タタタタ



ベヒーモス「おらあああああっ!!」ドドドド





ベヒーモス「身だしなみには細心の注意を払ってる!」ブンッ

ズドオオオオンッ!!


真「お風呂は一回二時間! 寝る前に笑顔の練習も忘れずにっ!」ブンッ

ドゴオオオオンッ!!


ベヒーモス「女の子っぽい趣味だって持ってる!!」ブンッ

ズドオオオオンッ!!


真「料理やカワイイぬいぐるみ集め!! 最近じゃ響に裁縫を習いはじめた!!」ブンッ

ドゴオオオオンッ!!


ベヒーモス「こんななりだけど、苦手なものだってあるんだ!!」ブンッ

ズドオオオオンッ!!


真「ゴキブリとか大っきらいだし、お化けも怖い!!」ブンッ

ドゴオオオオンッ!!





ベヒーモス「はあっ、はあっ……」


真「はあっ、はあっ……」


725 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/09(日) 23:26:31.50 ID:GrUnCP8WO

ベヒーモス「ふ、ふふっ……どうしたマコト。ずいぶん息が上がってきたじゃないか」


真「へ、へへ……そういう君だって攻撃が鈍ってきたんじゃないかい?」


ベヒーモス「ふふふ……」


真「へへっ……」


ベヒーモス「………」


真「………」





ベヒーモス「うおおおおおおっ!!」ダッ


真「うああああああっ!!」ダッ



ズガアアアァァアン…!!




726 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/09(日) 23:28:08.73 ID:GrUnCP8WO

ベヒーモス「見た目が凶暴そうだからって怖がるんじゃねぇぇぇええっ!!」ブンッ

ドゴオオオオンッ!!


真「ボクは好きで男の子っぽくなったわけじゃないんだあああっ!!」ブンッ

ズドオオオオンッ!!


ベヒーモス「アタイだってカワイイ服やメイクに興味があるんだ! それを鼻で笑いやがってぇぇぇ!!」ブンッ

ドゴオオオオンッ!!


真「なにが真王子だ! ボクが憧れてるのはキャピキャピのお姫様なんだああああっ!!」ブンッ

ズドオオオオンッ!!


ベヒーモス「アタイを……!」


真「ボクを……!」





真・ベヒーモス「もっと女の子扱いしやがれええぇぇぇええええっ!!!」





ドッカアアアアン…!!!




727 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/09(日) 23:30:34.88 ID:GrUnCP8WO

ベヒーモス「はあっ、はあっ……」


真「はあっ、はあっ……」


ベヒーモス「………」


真「………」




真「ベヒーモス……」

真「次の一撃が、たぶんボクたちの最後の別れになるだろう……」

真「互いに目指した女子力、いまだ消えずにこの心に焼き付いているよ……!」


ベヒーモス「……いいだろう。だったらあんたの女子力、砕いてみせよう……! この拳にアタイの女子力の全てを込めて!」


真「うおおおおおおっ……!!」ゴゴゴゴ


ベヒーモス「はああああああっ……!!」ゴゴゴゴ





ドゴオオオォォォオオオン……ッ!!!




728 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/09(日) 23:45:14.50 ID:GrUnCP8WO
ー 月の地下渓谷 B3F ー


ゴオオオオッ…!!


雪歩「……!」チャキッ

ブンッ!!


ズドオオオオンッ!!!



魔人兵(……参ったな。どの兵器も全てあのスコップ一本で弾かれてしまう)

魔人兵(それにあの子の堂々とした立ち振る舞い……。最初の頃の怯えた様子なんて見る影もない)

魔人兵(あらゆる兵器を備えているオレが、たった一本のスコップを持った少女に圧倒される……)




雪歩「はああああっ……!」チャキッ

雪歩「スコップ波!!」ブンッ

ズドオオオオオン!!


魔人兵「くっ……!」ジャキッ

魔人兵「……波動砲!!」コォォ

ドゴオオオオオオオオンッ!!!



雪歩「えいっ……!」ブンッ


ドカアアァァァアアンッ!!!




雪歩「………」チャキッ



魔人兵(大切な人たちの想いに応えたい、か)

魔人兵(……そうか、彼女の本当の武器は……)


729 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/09(日) 23:46:48.76 ID:GrUnCP8WO

雪歩「あの、時間稼ぎはもうやめにしましょう。私には果たさなきゃいけない約束がありますから」チャキッ



魔人兵「……その前に、君の名前を教えてくれないか?」


雪歩「………」

雪歩「雪歩。萩原雪歩です」


魔人兵「ユキホ。君のおかげでオレは大切なものに気づくことができた」

魔人兵「ありがとう」ニコッ


雪歩「私なんかをお手本にしてもためにならないと思いますけど……。でも、そう言ってもらえるのは素直に嬉しいですぅ」ニコッ




魔人兵「どんなに考えても、これしか思いつかなかった」


雪歩「?」


730 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/09(日) 23:48:01.38 ID:GrUnCP8WO

魔人兵「これで終わりだ。オレの生命をもって、君に勝利する!」

キィィィン…!!


雪歩(えっ? なんかすっごく光ってる……?)

雪歩(生命をもってって……ま、まさか……!?)


魔人兵「オレにだって大切なものはいる。そいつの想いに、オレは応えたいっ……!」


雪歩「死ぬつもりですか!? 死んだらなにもかもおしまいになっちゃいますぅ!」


魔人兵「終わりじゃない。思い出は残る。そういう報い方があってもいいんじゃないかって、オレは思うんだっ……!」ゴゴゴゴ


雪歩「や、やめ……!」


魔人兵「君を巻き込んで本当にすまないと思ってるが、これでも根は真面目なんでね」

魔人兵「与えられた仕事は……完遂しなければならない!」





魔人兵「さよならだ…………自爆!」



雪歩「!」



ーーーーカッ!!




731 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/09(日) 23:51:13.91 ID:GrUnCP8WO



ヒュゥゥ…



魔人兵「………」

魔人兵「…………」

魔人兵「………………どういうことだ……なぜオレは生きてる……?」



魔人兵「!?」



雪歩「……!」ギュッ

魔人兵「! ユキホ……!」

雪歩「死んで報いるなんて、そんなの認めませんっ!」ダキッ

魔人兵「オレの自爆を止めたのか……? どうやって……?」

雪歩「私のオーラであなたごと包みました。覚えたてだからとっても雑だと思いますけど……」

魔人兵(そういえば、なんだか温かいな。これがユキホのオーラとやらなのか……)


732 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/09(日) 23:53:13.16 ID:GrUnCP8WO

魔人兵「今の君なら、少なくともオレを助けずに全力で逃げればかすり傷程度で済んだはず。怪我を負ってまでなぜオレを助けた?」

雪歩「……あ、あなたの大切な人たちを、悲しませたくないから!」

魔人兵「!」

雪歩「残された方だって、辛いんですっ……ぐすっ……悲しい思いを、もう……誰にもしてほしくないっ……!」

魔人兵「………」

雪歩「ううっ……ひぐっ……」

魔人兵「オレの……負けだ」

雪歩「ぐすっ……」

魔人兵(他人のことにすら命をかける……これもまた、あいどるの強さなんだろうか)




…ゴゴゴゴ




魔人兵「……ん?」


733 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/09(日) 23:55:31.04 ID:GrUnCP8WO



ドゴオオオオンッ!!!




魔人兵「なんだ!? 天井が崩れる……!」

雪歩「えっ?」

魔人兵「ユキホ、オレの後ろに隠れているんだ!」スッ

雪歩「は、はいっ!」



ドカアアアアァァアアンッ!!!



ドサドサッ


真「…………はあ、はあっ……!」


ベヒーモス「…………はあ、はあっ……!」




雪歩「ま……真ちゃんっ!?」


魔人兵「ベヒーモス!」



ベヒーモス「凄まじい……女子力だった……マコト……。アンタが……女子力No.1だ……」フラッ

ドサッ


真「ベヒーモス……手強い女子力を持った相手だった……」



雪歩(えっ、どういう状況?)


734 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/09(日) 23:58:06.06 ID:GrUnCP8WO

雪歩「ま、真ちゃんっ!」

タタタタ

真「雪歩!? どうしてここに?」

雪歩「どうしてもなにも、真ちゃんたちの方が上から落ちてきたんだよ?」

真「えっ、そうだったの?」

雪歩「ともかく、無事で良かったっ……!」ダキッ

真「……うん、雪歩の方もね」ニコッ



魔人兵「………」ザッ



真「! 雪歩、下がって」スッ

雪歩「あ、大丈夫だよ真ちゃん。その魔物さんはもう、敵意はないみたいだから」

真「そうなんだ。じゃあ、雪歩の方も終わったんだね」



魔人兵「……いや、まだ終わってない」



雪歩「えっ?」



魔人兵「まだオレには、やり残したことがある」チラッ



ベヒーモス「………」グッタリ


735 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/10(月) 00:00:47.29 ID:pmiZAnOYO

雪歩「な、何をする気なんですか……?」



魔人兵「…………ベヒーモス!」



ベヒーモス「…………なんだ甲斐性無し、いたのか……」

ベヒーモス「その様子だとアンタも負けたのか。はっ、無様だね……」


魔人兵(オレは、ユキホに勇気というものを教わった。今がきっとその勇気を出す時なんだ……!)



魔人兵「ベヒーモス……」


ベヒーモス「うるさいね……聞こえてるよ……」




魔人兵「……結婚しよう!」



ベヒーモス「えっ!?」


真「えっ?」

雪歩(ああ……もうわけがわからないですぅ……)


736 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/10(月) 00:02:07.56 ID:pmiZAnOYO

魔人兵「子供まで作っておきながら、君のことをずっとほったらかしだった。いい歳して仕事もなく、ずっと燻っていた自分に自信が持てなくて……君のこと、腹をくくることができないでいたんだ」

魔人兵「でも、もう決めた。待たせてすまない。絶対に幸せにする!」



ベヒーモス「…………バカ、遅すぎだよ……」グスッ

ベヒーモス「でも……アタイ、嬉しい!」ダキッ



真「いい話だなぁ……!」グスッ

雪歩「う、うん、そうなのかもね……」


737 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/10(月) 00:04:39.71 ID:pmiZAnOYO

真「……さて、と。ボクたちの勝ちってことでいいんだよね?」



魔人兵「ああ。オレたちの負けだ」

ベヒーモス「ふふっ♪ あんたたちは先へ進むがいいよ!」ニコニコ


雪歩「すっごい幸せそうだね」

真「ね」



ベヒーモス「あんたたちには、なんだか世話になっちまったね」

魔人兵「ありがとう。君たちがいなければオレたちはこうして寄り添うことはなかった」

真「ボクたちは何もしてないさ!」

雪歩(っていうかこんな展開、絶対に予想できないよね)



真「それじゃあボクたちは行くよ」

雪歩「えっと……末永くお幸せに?」


魔人兵「ああ。君たちの武運を祈っているよ」

ベヒーモス「マコト、あんたも早くいい人見つけなよ!」



真「よ、余計なお世話だよ!」


738 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/10(月) 00:07:36.62 ID:pmiZAnOYO

真「さて、ずいぶん時間食っちゃったから少し急ごう。体は平気かい? 雪歩」

雪歩「うん、大丈夫だけど……。真ちゃん、一度上に戻ってみない?」

真「えっ、何か忘れものでもしたの?」

雪歩「ううん、そうじゃないんだけど……。私、あずささんの様子を見に行った方がいいと思うんだ」

雪歩「あずささんはまだ私がいた階には来てないけど、もし地下1階で魔物さんに苦戦してるんだとしたら心配だし……」

雪歩「魔物さんを倒した後だとしても、それはそれでその後の行方が心配だし……」

真「あー…………なるほど」

真「確かにボクがいた地下2階にもまだ来てない……となると、あずささんはまだ地下1階にいる可能性が高いね」

真「よし、じゃあ地下1階に戻ろうか」

雪歩「うんっ」

タタタタ…


739 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/10(月) 00:10:39.52 ID:pmiZAnOYO

真「……ああーーっ!!」

雪歩「ひぅっ!?」ビクッ

雪歩「ど、どうかしたの? 真ちゃん」

真「いや、ベヒーモスのやつ、旦那さんどころか子供までいたんだなーと思って」

雪歩「あ、うん、そうみたいだね」

真「よくよく考えるとボク、なんだか試合に勝って勝負に負けたって気がする……」

雪歩「えっと、それってもしかして女子力がどうのっていう?」

真「ベヒーモスと決めたんだ。戦いに勝った方が女子力高いってことにしようってさ」

雪歩「ふ、ふーん。なんか変わった戦いだったんだね……」

真「あー! なんかモヤモヤするなぁ!」

雪歩(真ちゃんはこんなふうにちょっぴりズレてるところがとっても可愛いって思うんだけど……)

雪歩(自分じゃ気付かないんだろうなぁ……たぶん)

740 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/10(月) 00:13:31.38 ID:pmiZAnOYO
ー 月の地下渓谷 B6F ー


伊織「……ふぅ。親衛隊も退けたし、早いところやよいのところに向かわないと」

フラフラ

伊織「……なんでかしら。心なしかうまく歩けないような気がするわ……」

フラフラ

伊織「……はぁ、はぁ……」

伊織「……あっ」ヨロッ

ドサッ



伊織「ぐぬぬ……! 手足が動いてくれない……!」ググッ

伊織「もう、どうなってんのよこれ! さっきポーションで回復したばっかりじゃない!」

伊織「私は……こんなところで地面に這いつくばっているわけにはいかないのよっ……!」

伊織「ぐぎぎぎ……! 動きなさいよ私の手足っ!!」ググッ



…ドッゴオオオォォォオオンッ!!!


741 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/10(月) 00:14:56.79 ID:pmiZAnOYO

伊織「きゃっ!? な、なによ今の爆発!?」キョロキョロ

伊織「……上?」チラッ



…ヒューーー



ドサッ



伊織「むぎゅ」




「…………ふー、下にクッションがあってなんとか怪我しないで済んだぞ……」


伊織「ちょ、ちょっとアンタなんなのよ! いきなり人の上に降ってくるなんて!」ジタバタ


「あっごめん! クッションじゃなくて人間だったのか、自分気付かなかったぞ」

「……って」 



伊織「アンタ……!」




響「……伊織!?」

伊織「……響!!」




742 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/10(月) 00:17:00.29 ID:pmiZAnOYO

響「伊織ぃぃぃ〜!!」ウルッ

響「良かった……無事だったんだね!」ダキッ

伊織「まあ、おかげさまでね。っていうかアンタ、すぐ上の階にいたのね」

響「うん。ちょうど今親衛隊を倒したところさー! もしかして伊織も?」

伊織「ええ、まあ……」

伊織「……ふぅ」

伊織(なんか、響の顔を見た途端に力が抜けちゃった……)

伊織(……あ……ちょっと……眠いかも……)

響「伊織? どうしたんだ伊織?」

伊織「響……ごめんなさい……。この下の階に……やよいが……」

響「えっ? 下にやよいがいるのか?」

伊織「アンタ……だけでも……やよい……を……」

ガクッ


響「伊織!? ちょっと伊織!」ガシッ

伊織「………」

響「起きて! 起きてよ伊織っ!!」



「……安心なさいな。その方は死んでしまったわけではありませんわ」


響「えっ?」


743 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/10(月) 00:21:24.20 ID:pmiZAnOYO


プリンプリンセス「はぁ、はぁ……」


響「プリ江! 生きてたのか!」


プリンプリンセス「ええ、まったくひどい目に遭いましたわ……」

プリンプリンセス「それよりも、そちらのおでこの方、危険かもしれませんわよ?」


響「危険ってどういうこと?」


プリンプリンセス「見たところ手足が麻痺しています。このまま麻痺が全身に回れば……」


響「ぜ、全身にまわったら、どうなるんだ?」


プリンプリンセス「命の保証はできませんわね」


響「そ、そんな! うぅ、でも自分は白魔法使えないし、回復するアイテムももう持ってないし……」

響「早く白魔法使える誰かのところに連れて行かないと……!」

744 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/10(月) 00:23:20.44 ID:pmiZAnOYO

響「伊織、すぐに治してあげるからな!」ダキッ

伊織「………」グッタリ


プリンプリンセス「お待ちなさいな。私はまだ貴女に負けたつもりはありませんわよ?」


響「!」

響(まずい、もう自分もナンクル砲を撃てるだけの体力が残ってないぞ……)

響(今襲ってこられたら……)


プリンプリンセス「貴女にやられていった仲間たちの仇、討たせてもらいます」

プリンプリンセス「貴女はその方を守りながら私と戦わねばならないのです!」


響「……!」

響(……伊織、ちょっと待っててね)スッ

伊織「………」



響「わかったぞ。どこからでもかかってこい」

響「自分はここから動かない。伊織には絶対に指一本触れさせないからなっ!」ビシッ



プリンプリンセス「………」



745 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/10(月) 00:27:52.82 ID:pmiZAnOYO

プリンプリンセス「…………ふふっ、冗談ですわ」



響「……えっ」



プリンプリンセス「確かに貴女は敵ではありますが、私が守護する地下5階を突破された以上、負けを認めます」

プリンプリンセス「ルールの無い勝負ほどつまらないものはありませんから」


響「プリ江……!」

響「ねえ、プリ江も自分たちと一緒に来ないか? みんないい子たちだからきっとすぐ仲良しになれるぞ!」


プリンプリンセス「勘違いしないでくださる? あくまで貴女は私の敵。馴れ合いなんて勘弁ですわ」

プリンプリンセス「それに、私が仕える主はコトリ様ただ一人……。主君の敵に降るなんて無様な真似をしたら、コトリ様にあわせる顔がありませんもの」


響「……へへ、そっか。なんかカッコいいな!」ニコッ


プリンプリンセス「先を急いだ方がよろしいのではなくて? そちらのおでこの方、手遅れになってしまいますわよ?」


響「あ、うん。じゃあ自分、もう行くね!」

響「よっ……と」

伊織「………」




響「プリ江ーー! 自分たちは敵同士かもしれないけど、もう友達だからなーー!!」フリフリ



プリンプリンセス「………」

プリンプリンセス「本当に、変わった方でしたわね……」


746 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/10(月) 01:07:53.12 ID:B9v77NChO
正直な話、オーラとかいらなかった思う…雪歩のスコップは最強の武器で攻撃弾くんだし
だったらオーラなんかじゃなく、雪歩の土木で鍛えた目と勘の鋭さで自爆装置の部分をピンポイントで破壊
それにより自爆を阻止っていう方がまだアイマスとFFクロスぽかったかなーって
オーラじゃまるでハンターハンターの念みたいでアイマスぽくもFFぽくもないなーっと感じた
747 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/10(木) 23:43:12.55 ID:8Tz6gHKyO
ー 月の地下渓谷 B4F ー


亜美「くらえー! ファイガ×2!!」バッ


ゴオオオオッ…!!


金竜「その技はもはや見切った!」シュンッ

金竜「ふぬっ!!」ブンッ


ーパシュンッ


金竜「! 消えた!?」


亜美「んっふっふ……残像だ」キリッ


金竜「おのれ小癪なっ……!」


銀竜「隙ありっ!!」ブンッ


亜美「うわぁっ!?」


真美「真美を忘れてもらっちゃ困るよっ!」

真美「右手にプロテス……左手にシェル……」

真美「合わせて、ウォールっ!!」


ガキィンッ!!


銀竜「くっ……防御壁か!」


真美「亜美、カッコつけてる場合じゃないっしょ〜!」

亜美「だって言ってみたかったんだもん〜」


…シュルルッ! 

真美「おわぁっ!?」ヨロッ


金竜「ふっふっふ、捉えたぞ!」


ーパシュンッ


真美「んっふっふ……残像だ」キリッ


金竜「ぐっ……!」


748 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/12(土) 00:53:45.13 ID:LTZ//tVA0
ブリンクかな?ww
749 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/29(火) 23:57:46.41 ID:6ogvSAp7O

銀竜「あの白魔道士、マミといったか。ブリンクにプロテス、ヘイスト……補助魔法が厄介だな、兄者」

金竜「………」

銀竜「……兄者?」

金竜「閃いたぞ銀竜! 我らも分身するぞ!」

銀竜「あの、嫌な予感しかしないんですけど……」



亜美「へいへいどーしたー!?」

真美「真美たちの強さにビビッちまったのかーい!?」



銀竜「ぐぬぬ……奴らにこれ以上でかい顔はさせん! 兄者の作戦に乗るぞ!」

金竜「よし! それでこそ我が弟!」



ユラ…


亜美「ん……?」


ビューーンッ…!


真美「お……?」


グルグルグル…


亜美「金ぴょんと銀ぴょんが……」

真美「すんごい速さで真美たちの周りを回りだした……?」


750 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/30(水) 00:00:28.53 ID:eKm/UeYuO

金竜「ふはははは! どうだ、手も足も出まい!」グルグル

銀竜「これぞ本物の残像だ!」グルグル



亜美「ま、真美どうしよう!? 動きがメッチャ速いから魔法の狙いが定まんないよ〜!」

真美「むむむ、さっきの仕返しってわけだね……!」



金竜「お前たちを囲む円はどんどん小さくなってゆく……」グルグル

銀竜「我らが円の中心……つまりお前たちの元へ辿り着いた時がお前たちの最後だ……!」グルグル


シャシャシャシャ…


亜美「な、なんかそれっぽいこと言ってるよ〜! これ、もしかしてヤバいっぽい?」

真美「こんな時は…………アレだよ亜美!」

亜美「アレって?」

真美「ほら、心の目で見れば本物が見える的な!」

亜美「あ、そっか!」


751 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/30(水) 00:02:35.97 ID:eKm/UeYuO

亜美「む〜……!」じーっ

真美「む〜……!」じーっ


金竜「ふはははは!」グルグル

銀竜「ふはははは!」グルグル


亜美「うあうあ〜! 金と銀ばっかで目がチカチカするよ〜!」

真美「真美……ちょっと気持ちわるくなってきたかも……」オェッ










金竜「ううむ……目が回った…………オェッ」フラフラ

銀竜「……ですよねー……」ガックリ


752 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/30(水) 00:05:01.21 ID:eKm/UeYuO

亜美「…………と、茶碗はここまでだよ!」ビシッ


銀竜「茶番だ」


真美「真美たち、ここからは本気中の本気で行かせてもらうかんねっ!」ビシッ


銀竜「……はぁ……。次こそは真面目にかかってくるのだろうな?」


亜美「あったりまえじゃん!」

真美「あっと驚く為五郎もチョービックリの戦いを見せてあげるよ!」


銀竜「期待はあまりできんな。お前たちはふざけてばかりだ」

銀竜「真面目にやるのが馬鹿らしくなってくる……」



亜美「ええぇー!! 銀ぴょんノリ悪いよ〜!!」

真美「そーだそーだー!!」



金竜「まだわからぬか、銀竜よ」

銀竜「? どういう意味だ、兄者」

金竜「奴らは決してふざけているのではない。あれで真面目に戦っているのだ」

銀竜「……なに?」


753 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/30(水) 00:08:10.35 ID:eKm/UeYuO

金竜「ここまで戦ってきて理解した。奴らのパワーの源は『遊び心』だ。この命を賭けた戦いすら、奴らは心から楽しんでいる」

金竜「もちろんアミマミに戦うことに対しての疑問や戸惑い、命の危険に対しての恐怖心が全く無いわけではないだろう」

金竜「だが、それらを上回る遊び心が奴らを戦わせ、その気持ちが強くなる程奴ら自身も更に強くなる……!」

銀竜「まあ、それに関しては兄者も大概だとは思うが」

銀竜「遊び心か……」

金竜「奴らと戦っているとこちらまで心躍る。そうは思わぬか?」

銀竜「………」チラッ



亜美「……で……を……してー……」ヒソヒソ

真美「……おおっ!? それナイスアイデアだよ亜美ー!」



銀竜「…………ふっ、真面目にやるのが馬鹿らしくなってくる……!」ニヤリ

金竜「我はもう決めたぞ。何があろうとこの戦いを心から楽しむ。……奴らと共にな」

金竜「お前はどうする?」

銀竜「……愚問だ。我の魂は常に兄者と共にある!」

金竜「……流石は我が弟だ」ニヤリ


754 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/30(水) 00:11:46.63 ID:eKm/UeYuO

銀竜「……聞け、アミ、マミよ!」

銀竜「我が名は銀竜! 金色の竜の片割れとしてお前たちに改めて決闘を申し込む! 返答や如何にッ!!」ビシッ


亜美「えっ? えっと、タコに!」

真美「じゃあシジミに!」


銀竜「………」



銀竜「ま、まあ良い。では行くぞっ!」

金竜「銀竜よ……本気でやるぞ!」

銀竜「兄者……あの手で行くのだな、了解した!」



亜美「よっしゃー! かかってこーい!」

真美「返り討ちにしてやるぜー!」



金竜「お前たちに我らの真の力を見せてやろう……」

銀竜「しかと目に焼きつけよ!」






金竜・銀竜「……合体ッッ!!」シャキーン






亜美・真美「な、なんだってー!!?」ガビーン



755 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/30(水) 00:14:06.34 ID:eKm/UeYuO




金銀竜「…………ふぅ、待たせたな」ゴゴゴゴ




亜美「金ぴょんと銀ぴょんが……」

真美「フ○イザード将軍みたいにひとつになっちゃった……!」

亜美「あんましカッコよくないけど、でもなんかすごそう!」



金銀竜「カッコよくないって言うな!!」

金銀竜「我らがこの姿になった以上、もはやお前たちに勝ち目はないっ!!」

ビュゥゥゥ…



真美「来るよ、亜美!」スッ

亜美「うんっ!」ギュッ

真美(金ぴょんと銀ぴょんが『そう』来るのは、もはやキョーダイのサダメってヤツだよね)

亜美(でも、亜美たちの方が強いってこと、思いしらせてあげるよっ!)

亜美・真美(バシッと決めるよ! 亜美(真美)たちのサイキョーの技、『ふたりがけ』で!!)


756 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/30(水) 00:16:21.95 ID:eKm/UeYuO

亜美・真美「はぁぁぁぁぁあああっ……!!」ゴゴゴゴ



金銀竜「凄まじい魔力……! 二人の魔力を統一し更に高次元の魔法を放つ、ふたりがけ……厄介だ」

金銀竜「だが……」


ーーシュンッ!!


ドゴオッ!!



真美「うわぁっ……!」ヨロッ

亜美「あ……真美!?」

真美「へ、へーき、ちょびっとかすっただけだから」



金銀竜「……む、速すぎたか」

金銀竜「魔法というものは不便だな。発動するまでに詠唱、魔力の錬成と手順を踏まなければ発動しない」

金銀竜「それに引き換え、物理攻撃にはそういったタメを必要としない」


757 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/30(水) 00:18:33.55 ID:eKm/UeYuO

亜美「今、金ぴょんたちの動きがゼンゼン見えなかったよ……!」

真美「う、うん……」



金銀竜「それはそうだろう。我らの力は合体してこそ真価を発揮する。単純に力が二倍になるのではなく、二乗になるのだからな!!」



亜美「なん……」

真美「だと……!?」










真美「ニジョウってなに? すごいの?」

亜美「さあ?」



金銀竜「力が足し算じゃなくって掛け算になるってことー!!!」ガビーン


758 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/30(水) 00:21:43.22 ID:eKm/UeYuO

亜美「ふーん……確かに100+100より100×100の方がすごいけど……。だったらこっちは100億万倍だもんね!」

真美「100億万×100億万パワーで、えーっと…………メチャスゴパワーだよ!」



金銀竜「またハッタリか。もうそれは聞き飽きたぞ」



真美「ハッタリかどうか!」ゴゴゴゴ

亜美「見せてあげるっ!」ゴゴゴゴ



亜美・真美「いっけーーーー!!! ……メテオーッ!!!」



ヒュー… ヒュー… ヒュー…

ヒュー…… ヒュー… ヒュー…



金銀竜「ぬおおおおおおっ!!!」



ズドドドドドドドッ!!!!




759 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/30(水) 00:27:06.89 ID:eKm/UeYuO

真美「……どうだ! まいったか!」



…ヒュンッ



真美「……えっ?」



ドゴォッ!!



真美「あ……ぅ……!」

…ドサッ


亜美「あっ……真美!」



ビュンッ…ズガッ!!



亜美「ぐぇ!?」

…ドサッ



金銀竜「ふふふ……流石は双子、よく息の合った魔法だ。最初のメテオよりも効いたぞ……!」



亜美「な……なんでピンピンしてんのー!?」



金銀竜「この状態の我らは能力が強化されている。力、素早さ、体力、防御……全てにおいてだ」

金銀竜「生半可な攻撃では我らは倒せん!」



亜美「そ、そんなぁ! ふたりがけがきかないなんてずるいよ〜!」

真美「くそ〜……!」

亜美「絶体絶命の大ピンチっしょ……」


760 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/30(水) 00:29:35.57 ID:eKm/UeYuO

金銀竜「アミにマミよ。ここまでよく戦った。お前たちは立派な戦士だ」

金銀竜「悔いることなど何もない。我ら兄弟の絆の方が上だった……ただそれだけのことなのだから」

金銀竜「我ら兄弟こそが最強! 我ら兄弟こそが究極なのだ!!」



亜美「!」

亜美(……そっか、もしかしたら……!)

亜美「……真美」

真美「……うん。ダメだね、まだあきらめちゃ!」グッ

真美「あ……真美たちのキズナの方が、チョースゴいんだ!!」



金銀竜「……まだ心が生きているか。流石はあいどる!」

金銀竜「ならばそれも砕いてみせる。我ら兄弟が完全なる勝利を手にするのだっ!!」


761 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/30(水) 00:32:14.72 ID:eKm/UeYuO

亜美「真美、もう一度行くよ!」

真美「うんっ!」

亜美・真美「はあああああっ……!!」ゴゴゴゴ



金銀竜「……させぬぞ!!」ビュンッ



亜美「うあっ!?」ヨロッ

真美「うぇっ!?」ヨロッ



金銀竜「お前たちが手を繋ぐことでふたりがけを発動させているのは分かっている。離ればなれならばふたりがけを放つことはできまい?」

金銀竜「こちらに致命傷にはならぬが、お前たちの攻撃手段は潰させてもらう!」



真美「そ、そんなぁ!」


亜美「……く、くるっ!」



ヒュウッ…



ドガッ!!



真美「うっ……!」ヨロッ

…ドサッ


762 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/30(水) 00:34:18.56 ID:eKm/UeYuO

金銀竜「マミの白魔法がなければ、もう回復はできまい」



亜美「く、くっそ〜!」



金銀竜「アミ、マミ……本当に見事な戦いであった。せめて最後はひとおもいに楽にしてやろう!!」

ビューーン!!



亜美「うあうあ〜!!」



金銀竜「さらばだ、アミよ!!!」ブンッ











亜美「…………なんちゃって☆」



金銀竜「……え?」



亜美「右手にヘイスト、左手にヘイスト……合わせて、ヘイスガ!!」バッ

カタカタ…シャキーン!!


タンッ



金銀竜「!!?」


763 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/30(水) 00:37:18.18 ID:eKm/UeYuO

金銀竜「ヘイストだと……!? なぜアミが白魔法を……!?」



…スタッ

亜美「ケアルガ!!」

シャララーン! キラキラキラ…!


真美「……ふー、助かったよ〜」



金銀竜「どういうことだ!? アミ、お前は黒魔道士、白魔法は使えないはず!!」



亜美「それはね……こーいうことだよんっ!」シュルッ



金銀竜「あっ……!」




真美「んっふっふ〜♪」

真美「じゃじゃ〜ん! 真美は亜美じゃなくて真美でしたー!」

亜美「そんでもって亜美は真美じゃなくて亜美でしたー!」シュルッ



金銀竜「髪留めの位置を入れ替えたのか……!」




亜美「今だよ真美っ!」タタタ



真美「オッケー亜美っ!」タタタ




金銀竜「さ、させぬっ!!」ビューーンッ



ドゴォンッ!!!




亜美「う〜! あと少しだったのに〜!」


764 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/30(水) 00:41:17.10 ID:eKm/UeYuO

金銀竜「この期に及んでまだ策を隠していたとは……全く大した奴らだ」

金銀竜「だが、ふたりがけを使えぬお前たちに勝機はないっ!!」

金銀竜「……ゆくぞ!!」

ビュウッ…!



ズドォンッ!!



真美「おそいよっ!」シュタッ



金銀竜「ちっ、さっきの二重ヘイストか!」



真美「真美たちはね、負けらんないんだよ! だって、負けたらムダになっちゃうから!」

真美「ここまでみんなでガンバってきたこととか、長老っちに教えてもらったこととか、全部ムダになっちゃうから!」



亜美「だから亜美たちは負けない! たとえ負けたとしても勝つッ!!」ビシッ



金銀竜「いやそのりくつはおかしい」



真美(勝ちたい……!)


亜美(全部ムダにしないタメに、力がほしいっ……!)





…パァァーーーー!!!





金銀竜「ぬっ!? なんだこの光は……!」


765 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/30(水) 00:44:39.85 ID:eKm/UeYuO

真美「すごい……なにこれ!!」パァァ



亜美「亜美たちメッチャ光ってるよ……!!」パァァ  



金銀竜「まさか、奴らの身につけているクリスタルの欠片が……!?」



真美「今なら……きっとできそうな気がする。ね、亜美?」チラッ



亜美「うん! どっちがホントに『究極』か、思いしらせてあげるッ!!」



亜美・真美「はあああああっ……!!」ゴゴゴゴ




金銀竜「くっ! ふたりがけはさせぬ!!」ブンッ




亜美「ムダだよっ!」ヒョイッ



亜美「亜美たち、わかっちゃったんだ。……ううん、もしかしたらこのクリスタルの光が教えてくれたのかも」



真美「真美と亜美は、離ればなれでもずっと心は一緒だって!!」




キラキラキラ…!!




金銀竜「ぬおおお! なんという膨大な魔力っ……!?」


766 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/30(水) 00:51:04.01 ID:eKm/UeYuO

亜美(すごい……なんかわかんないけど、力がわいてくるよ……!)

亜美(亜美も真美も、もうけっこうボロボロなのに……)

真美(そんなの決まってるっしょ、亜美)

亜美(えっ……?)

真美(真美は、亜美がいるから最高の力が出せる。……亜美は?)

亜美(あ…………。へへっ♪)

亜美(亜美は、真美がいるから最高の力が出せる!)

亜美・真美(だからもう……亜美(真美)たちに敵はいないっしょ!!)

真美(行こう、亜美! 真美たちの究極魔法を金銀ぴょんに見せてあげよう!)

亜美(うん! …………お姉ちゃん!)




亜美・真美「……虚栄の闇を払い、真実なる姿現せ……あるがままにッ……!!」




亜美・真美「これが亜美(真美)たちの究極だーーーー!!」




亜美・真美「…………アルテマッッ!!!」





キラキラキラ…!!



金銀竜「あ……」




ーーーーカッ!!




ズドオオオオォォォオオンッッ……!!!




767 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/30(水) 00:54:27.40 ID:eKm/UeYuO

金銀竜「………」

金銀竜「…………ふ」

金銀竜「………………ふふふふ」




真美「はぁ、はぁっ……!」

亜美「ど……どうだっ……!」



金銀竜「素晴らしき姉妹の絆……み、見事……だ……」


…ドサッ




亜美「………」

真美「………」

亜美「……か……勝った……」

真美「……真美たちの……勝ちだ!」

亜美「や、やった……」フラッ

ドサッ

真美「あ、亜美、しっかり!」

真美「あっ……」フラッ

真美「やば……ちょっとねむい……かも……」

ドサッ

768 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/30(水) 01:04:59.67 ID:eKm/UeYuO
ー 月の地下中心核 ー



『……真美たちの……勝ちだ!』



P「亜美、真美……よくやった!」

小鳥「………」



小鳥「……さて、と」スクッ

P「? 音無さん、どうしたんですか?」

小鳥「はい。みんな頑張ってますし、私もそろそろ最終決戦に向けてみんなをお出迎えする準備をしておこうかと思いまして」

P「みんなを出迎える準備……ですか」

小鳥「あ、そうだ。プロデューサーさんにひとつ確認したいことがあったんです」

P「なんです?」

小鳥「今回このゲーム世界へ飛ばされた私たちに適応されるルールについてです。『私たちがこの世界でどんな目に遭っても現実世界には全く反映されない』っていうルール、ご存知ですか?」

P「ああ、それはあの妖精から聞いてますよ。だから俺もそこまで不安はなかったんです」

P「えーと、もしかして音無さんも妖精から聞いたんですか?」

小鳥「はい。私は配役的に特別待遇だそうで、そういう裏ルールは事前に教えてもらってました」

P「そうだったんですか」

P(だとすると、ここまで音無さんがこの世界で無茶をしてきたのは、現実世界に影響がないことを知った上で最大限にあの子たちを楽しませようと考えた結果なのかもしれない)

P(やっぱり本当にみんなと楽しみたいだけなんだな、音無さんは)

769 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/30(水) 01:07:01.30 ID:eKm/UeYuO

小鳥「それで、そのことをあの子たちは?」

P「あ……そういえば誰にも言ってませんでしたね。すっかり忘れてました」

小鳥「そうですか。まあ、その方が好都合ですね」

P「えっ?」

小鳥「それじゃ私、ちょっとだけ席を外します。プロデューサーさんはみんなの様子を見ててあげてくださいね?」

スタスタ


P「………」

P(現実世界に影響がないとはいえ、みんなと戦うにはそれなりに心構えも必要なんだろうな。音無さんはああ見えてとても真面目な人だし)

P(邪魔しちゃいけないし、音無さんのことはそっとしておこう)

P(俺の役目は、最後の戦いを見守ること)

P(そして……)

P(最後の最後の瞬間に、みんなが笑っていられるようにすること)

P(最終決戦ももうすぐか……)


770 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/30(水) 01:10:42.60 ID:eKm/UeYuO

小鳥(予定通りアイドルのみんなは勝ち進んでいる。着々と私のもとへ歩みを進めているわね)

小鳥(私が育てた子たちはどんどんアイドルたちに負けていく……)

小鳥(分かってたことだけど、春香ちゃんたちを応援する気持ちよりも……あの子たちに申し訳ないって気持ちの方が大きくなってる)

小鳥(『みんなを楽しませる』って言ってはいるけど、私は結局、親衛隊のみんなやバハムートさんをダシにして、アイドルのみんなすら巻き込んで……)

小鳥(……あれ? おかしいわね。春香ちゃんたちと戦うの、すっごく楽しみだったのに……)

小鳥(今は、そんな気分になれない)

小鳥(なんで……?)



小鳥(私、どんな気持ちでみんなを迎えるつもりだったんだっけ? ……わからない……)

小鳥(私は……765プロの事務員、音無小鳥? それとも、月の民でありながら深い憎しみを湛えた暗黒生命体、ゼロムス……?)

小鳥(私は……)




小鳥(深い憎しみ、か)

小鳥(そうね…………やっと気づいた)

小鳥(私は憎む側ではなく、憎まれる側だったんだ。全てから憎しみを受け、それを飲み込んで、そして……)



小鳥(宇宙の塵のひとつとなって……)



ズズズ…

771 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/09/03(日) 19:26:38.34 ID:a98BiHTBO
ー 月の地下渓谷 B6F ー


冬馬「うおおおおおっ!!」

ズドドドドドドッ!!


ブルードラゴン「ぐっ……」

ブルードラゴン「……ふっ、どうした? 先ほどよりも攻撃力が落ちているように見えるが?」


冬馬「くそっ……!」

翔太「なんで!? 冬馬くんの攻撃があんまり効いてない……?」

北斗「わからないけど、もしかしたらやよいちゃんの魔力が弱まってきているのかもしれない……」

翔太「そ、そんなぁ!」

北斗「高木社長次第だけど、最悪のケースも考えなければならないのかも……」

冬馬「バカヤロウ! 高槻を信じろ、北斗、翔太! あいつは全面的に俺たちを信じてくれてる」

冬馬「仲間を信頼することも戦いのうちだ。……だろ?」

翔太「冬馬くん…………うんっ!」

北斗「そうだな。それがせめてもの……」



772 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/03(日) 19:28:37.05 ID:a98BiHTBO

黒井「どけ冬馬。次は私が行く」

冬馬「おっさん……おう!」

黒井「私がいつまでもやられっぱなしではないということをあの化け物に教えてやる……!」

北斗(黒井社長の『大海衝』は水属性。あのドラゴンには通じないはずだけど……)

北斗(社長のことだ、何か考えがあるんだろう)



黒井「はああぁぁぁ……!」ザァァ


ブルードラゴン「懲りずにまた津波か。幻獣王の肩書きも地に落ちたな……」

ブルードラゴン「その津波、凍らせてやる……!」

ブオオオオッ…!!


冬馬「やべぇ、吹雪が来るぞ、おっさん!」


黒井「わかっている! ……頼むぞ、シルフ!」


シルフ「はい、おじ様!」

シルフ「……風のささやきっ!!」


ビュオオオオッ…!!



773 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/03(日) 19:30:05.33 ID:a98BiHTBO

ブルードラゴン「ワシの吹雪にそのようなそよ風など無駄だ」



シルフ「く……!」

シルフ(そんなのわかっています!)

シルフ(一瞬でいい……おじ様が津波を蓄える時間を少しでも稼げれば……!)


ビュオオオオッ…!!


ブルードラゴン「粘りおる……。結果は見えているというのに……」



黒井「よくやった、シルフ。もう十分だ」ザァァ


シルフ「おじ様っ!」


黒井「化け物よ、高槻やよいに歯向かったことを悔いるがいい!」

黒井「……大海衝!!」



ザァァァァ…!!



ブルードラゴン「……無駄なことだ」



黒井「…………ノワール」

ズズズ…


ブルードラゴン「なに!?」



ザァァァ…



冬馬「津波が……真っ黒になりやがった!?」

翔太「うわぁ、なんか大量の墨汁みたいだね〜」



ザッパァァァァン…!!




774 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/03(日) 19:31:41.36 ID:a98BiHTBO

ブルードラゴン「……ぐっ、馬鹿な……! ワシにダメージがあるだと……!?」



黒井「ハッハッハッハァ! ノワールは全てを黒く塗りつぶす! 属性すらもな!」

黒井「私の津波は無属性の水となった。もう貴様も余裕ではいられんぞ!」

黒井「高槻やよいにふざけたことをしてくれた罪、この私が贖わせてやろう……!」ゴゴゴゴ

シルフ「素敵ですわ、おじ様っ」

北斗(属性を塗りつぶすなんてめちゃくちゃだけど、今はそのめちゃくちゃが心強い!)

北斗(オレたちには時間がない。ここは攻めるべきだ)

北斗「冬馬、黒井社長に続くぞ!」

冬馬「っしゃああああああっ!!」ダッ



ブルードラゴン「………」



775 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/03(日) 19:33:04.54 ID:a98BiHTBO

ブルードラゴン「お前たちは肝心なことを忘れていないかの?」



冬馬「……あん?」

ブルードラゴン「お前たち幻獣の力の源はそこの召喚士だ。つまり攻撃力は召喚士の魔力に依存している」

ブルードラゴン「彼女がなぜあんな状態になってまで魔力を放出できるのかは理解できないが、彼女の生命は確実に終わりへと近づいている」

ブルードラゴン「弱まっているのじゃ、お前たちの力は」



冬馬「うるせぇっ!!」ブンッ

ドゴオッ!!


ブルードラゴン「っ……ふふ、お前の拳はその程度だったかの?」


冬馬「く……!」

北斗「本当に弱まっているのか……!」

翔太「うぅ……やよいちゃんが復活してくれれば……!」

黒井「冬馬、次は二人で行くぞ!」

冬馬「おっさん!」

シルフ「私も、お手伝いさせてくださいっ!」


黒井(まだなのか、高木……!)

黒井(やよいちゃんっ……!)



776 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/03(日) 19:37:28.78 ID:a98BiHTBO

やよい(………)

やよい(…………わ…たし……)

やよい(……どらごんさんの……ふぶきで……)

やよい(……さむい……)




やよい(……どらごんさん、安らぎは死ぬことだって言ってました……)

やよい(わたしの答えはまちがってるって……)

やよい(死ぬのが安らぎなんて、そんなのダメって思うのに、うまく言えなくて……)

やよい(………)

やよい(……死んだら、本当に楽になるのかな……?)

やよい(しあわせに、なれるのかな……?)






『…………やーよいっ♪』





やよい(!)



777 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/03(日) 19:39:40.49 ID:a98BiHTBO

『やよいちゃんっ』

『やよい!』

『やよいー!』

『『やよいっちー!!』』

『……高槻さん』

『……やよい』

『うふふ、やよいちゃん♪』

『しっかりね、やよい!』



やよい(……みなさん……!)


『ヤヨイィィィ!!』

『ヤヨイさん……』

『ああ、私のかわいいヤヨイ……』

『あなたは私のご主人様なんですからっ』

『……ヤヨイさんはばあさんの若い頃そっくりじゃ』


『やよいちゃんっ』

『……やよいちゃん』

『高槻っ!』

『高槻君……!』

『………………高槻やよい……!』



やよい(…………わたし……わたしっ……!)



『今のアンタならもう大丈夫。……そうでしょ、やよい!』



やよい(伊織ちゃんっ……!)


778 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/03(日) 19:41:49.78 ID:a98BiHTBO

やよい(……おかしいな、さっきまでさむかったのに……)

やよい(えへへ……みなさんの声をきくだけで心がぽかぽかです……)



やよい(わたしはどらごんさんの悲しみがどんなに深いのかわかりません)

やよい(いくら考えてもわかりません)

やよい(でもでもっ……)







やよい(やっぱり……どれだけ考えても、死んだら楽になれるっていう考え方は、ぜったいにまちがってるかなーって!!!)






779 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/03(日) 19:44:41.40 ID:a98BiHTBO

ラムウ「……まさか本当に氷だけを斬るとは……。いやはや、驚いた……」


やよい「………」グッタリ


高木「失敗するとは微塵も思っていなかったよ。私だけの力じゃないのだからね」

高木「だが、早く高槻君を起こさねばな。黒井たちも苦戦しているようだ」チラッ

イフリート「ヤヨイィィィッ!! 起きろーーーっっ!!」ボオオッ

やよい「………」グッタリ

ミストドラゴン「ヤヨイ……!」

シヴァ「………」


シヴァ「私は……なんて無力なの……!」

シヴァ「こんな私にとても優しくしてくれた友達に、何もしてあげられないなんてっ……!」ウルッ

ポタ…ポタ…

シヴァ「ヤヨイさん、どうか起きて……!」

シヴァ「また私たちに、笑って見せてっ……!」



…ポタッ




…ピカァァァ!!




シヴァ「!?」


780 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/03(日) 19:46:27.37 ID:a98BiHTBO

イフリート「ど、どうしたんだ!? いきなりヤヨイが光って……!」

高木「まさか高槻君の身に何か!?」

ミストドラゴン「……いえ」


やよい「………」ピカァァァ!!


ミストドラゴン「見てください。光はどうやらヤヨイの胸元から発しているようです」

ミストドラゴン「ヤヨイが首からかけているネックレス……おそらく……」

ラムウ「……クリスタルじゃ……!」



やよい「………」ピカァァァ!!



シヴァ「ヤヨイさん! ヤヨイさんっ……!」


781 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/03(日) 19:48:32.85 ID:a98BiHTBO

やよい「………」ピクッ

シヴァ「! 今……!」

やよい「………………ぅ」

高木「高槻君の意識が戻りかけている! みんな、呼びかけるんだ!」

イフリート「ヤヨイィィィッ!!!」

ラムウ「ヤヨイさん……!」

シヴァ「ヤヨイさん、起きて……!」

ミストドラゴン「どうか……!」



やよい「……………………う…………」



やよい「……………………うぅっ……」











やよい「うっうーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」








一同「!!!」

782 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/03(日) 19:53:13.42 ID:a98BiHTBO

シヴァ「や……ヤヨイさんっ!」ダキッ

ミストドラゴン「ヤヨイっ……!」ウルッ

イフリート「うおおおおおおおお!! ヤヨイィィィィィィッッ!!」

ラムウ「よくぞ……よくぞ戻ってきてくれた……!」

高木「た、高槻君! 身体の方は大丈夫なのかね!?」

やよい「へっちゃらですっ!」

やよい「あの、みなさん。心配かけちゃってすみませんでした!」ペコリ

やよい「わたし、じぶんの思ってることが本当に正しいのかわからなくなっちゃって……」

やよい「でも、もうだいじょーぶです!」ニコッ

シヴァ「良かった……! 本当に良かったっ……!」

イフリート「っしゃあああああっ!!」ボオオッ

ラムウ「ヤヨイさん、復活したばかりで申し訳ないが、まだ戦いは終わっていないのじゃ」

高木「ああ。今は黒井たちが魔物を食い止めてくれている。高槻君、行けるかね?」

やよい「はい! 行きましょうっ!!」グッ

ミストドラゴン「さあ、私の背中に乗ってください、ヤヨイ」

やよい「わかりました!」


783 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/03(日) 19:54:49.35 ID:a98BiHTBO

冬馬「おい、おっさん。気づいたか?」

黒井「うむ。この漲る力……ヤツが復活したのだな」



ブルードラゴン「……馬鹿な……ワシの氷の棺を自力で破るなどあり得ぬ……!」



冬馬「言ったはずだぜ。高槻は吹雪なんかにやられちまうようなタマじゃねーって」

黒井「さて、貴様には望み通り死を与えてやるとするか……!」



ブルードラゴン「………」

ブルードラゴン(死……。そうじゃ、ワシは望んでいたはずじゃ)

ブルードラゴン(ならばここで果てるは本望と思うべき)

ブルードラゴン(………)



784 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/03(日) 19:56:17.58 ID:a98BiHTBO

やよい「じゅぴたーさん、黒井社長、しるふちゃん!」

翔太「やよいちゃん!」

北斗「やよいちゃん……!」

シルフ「もうっ! 何してたんですか! 心配したんですからねっ!」グスッ

黒井「………」

冬馬「高槻……!」

やよい「みなさん、ごめんなさい! それと、ありがとうございました!」ペコリ

黒井「話はヤツを倒してからにしろ、高槻やよい」

やよい「あ、はい!」

やよい「………」チラッ


やよい「どらごんさん……!」



ブルードラゴン「…………殺せ。もう現世に未練はない」



やよい「………」

黒井「……何を考えている、高槻やよい」

やよい「あの、黒井社長。ちょっと耳をかしてもらえますか?」

黒井「?」

やよい「ごにょごにょ……」


785 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/03(日) 19:58:06.33 ID:a98BiHTBO

黒井「………………なんだそれは。そんなことできるかどうか知らんぞ」

やよい「だいじょーぶです。きっとできます!」

黒井「まあ、貴様がそう言うならばやるだけやってみるか」

黒井「はああああっ……!」ゴゴゴゴ



ブルードラゴン「……先程の黒い津波か……」

ブルードラゴン(これでようやく逢える。家族に、友に)

ブルードラゴン(…………だというのに、何故じゃ)

ブルードラゴン(この気持ちは……何なのじゃ……?)



やよい「みなさん、黒井社長にパワーをあつめてくださいっ!」ゴゴゴゴ

北斗「えっ……? そんなことが出来るのか?」 

翔太「出来るに決まってるじゃん! やよいちゃんが言うんだからさ!」

冬馬「ああ、翔太の言うとおりだぜ!」

冬馬「うおおおおおおっ……!!」ゴゴゴゴ

冬馬「おっさん! 俺たちのパワー、使ってくれ!」

パァァァ……!



黒井「! 津波に色が……!?」ザァァァ…



786 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/03(日) 19:59:21.38 ID:a98BiHTBO

ラムウ「さて、ワシらも続くとするかの……!」ゴゴゴゴ

高木「ああ、そうだね!」ゴゴゴゴ

イフリート「うおおおおぉぉおおぉぉぉおおおっっ!!!!」ゴゴゴゴ

シヴァ「……っ!」ゴゴゴゴ

シルフ「はああああっ……!」ゴゴゴゴ

ミストドラゴン「クロイ殿……。私たちも助力致しますっ……!」ゴゴゴゴ


パァァァ……!



黒井「くっ……! 私に集まった津波が色とりどりに輝いているだと……!?」ザァァァ

黒井「これが……力を合わせるということなのか……!」

パァァァ……!



ブルードラゴン(…………そうか、そういうことか……!)

ブルードラゴン(気づいてしまった……この気持ちの正体に……)



787 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/03(日) 20:01:42.63 ID:a98BiHTBO

やよい「黒井社長、行きましょうっ!!」ゴゴゴゴ

黒井「よし……!」

黒井(高槻やよいが魔力を練るだけでこうも力が湧き上がってくるとは……!)


黒井「食らえ化け物……!」

黒井「大海衝……!」




黒井「…………カラーズ!!」

やよい「うっうーーーー!!!」



ザァァァ…!!




ブルードラゴン(目の前に起こっていることが全て……つまりはそういうことなのだ)

ブルードラゴン(ワシは死に場所を求めていたつもりだったが、あの召喚士に気づかされてしまった)

ブルードラゴン(『死にたくない』と思ってしまった……!)

ブルードラゴン(あの娘が、あんなに楽しそうに笑うから……!)



ブルードラゴン「ぬおおおおおおお!!」




…ザッパアアアァァアアンッッ!!!




788 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/03(日) 20:06:51.78 ID:a98BiHTBO
やよい「はぁ、はぁっ……」

ミストドラゴン「大丈夫ですか? ヤヨイ」

やよい「だ、だいじょーぶです! ……ごほっ……」

黒井「無理をするな。我々をこちらに長時間顕現させているだけでも相当堪えるはずだ。一旦術を解け」

やよい「いえ……それじゃ、いみがありませんから!」

黒井「……まったく、意外と強情なのだな」




ブルードラゴン「……ぐっ、ぬぅ……」

ブルードラゴン「…………何故じゃ」

ブルードラゴン「何故ワシを殺さない……?」



やよい「それは……」

やよい「どらごんさんにも、安らぎを知ってほしかったからです」



ブルードラゴン「………」



789 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/03(日) 20:08:46.81 ID:a98BiHTBO

やよい「わたし、かんがえました」

やよい「どらごんさんはわたしよりもたくさんたくさん長生きだし、わたしよりもたくさんたくさんつらいことをけいけんしてきたって言ってましたし……」

やよい「そのどらごんさんが、安らぎが死ぬことって言うのなら、それは正しいことなのかもって」

やよい「でもわたし、どうしてもなっとくがいかなくって……」

やよい「だって、やっぱりわたしにとっての安らぎは、みなさんと笑ってすごすことですから」



ブルードラゴン「………」



やよい「だから、まちがってるかもしれませんけど、わたしはどらごんさんをころしたりはしません」

やよい「どらごんさんにもいますよね? いっしょにがんばる仲間が」



ブルードラゴン「!」



やよい「前にたたかった時、思ったんです。しんえーたいのみなさんも、わたしたちと同じなんだなーって」

やよい「みんなできょうりょくして、がんばってるなーって」

やよい「大切な人たちと笑い合える安らぎ……。それを、知ってほしくて」

やよい「……ううん、わたしが言わなくても知ってるはずなんです、どらごんさんも!」

やよい「だから……どうか思いだしてくださいっ!!」



ブルードラゴン「………」


790 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/03(日) 20:10:38.22 ID:a98BiHTBO

ブルードラゴン「思い出す必要などなかったのじゃ」



やよい「えっ?」



ブルードラゴン「そなたらと戦っている最中に、すでに理解していたのだから」

ブルードラゴン「いや、最初から……。もしかしたらそなたに会った瞬間に気づいていたのかもしれん。安らぎというものに」

ブルードラゴン「ヤヨイ……そなたのひたむきな心、そして果てのない優しさのおかげじゃ……」

ブルードラゴン「……ありがとう」



やよい「……えへへっ♪ どういたしましてですっ!!」ニコッ



冬馬「……一件落着ってところか?」

翔太「だね! まあ、やよいちゃんが負けるなんてあり得ないって思ってたけど」

北斗「結局、天使の微笑みに敵うものなんていなかったわけだ」

高木「いやあ、やはり高槻君はとても良い子だねぇ……!」ホロリ

黒井「………」


791 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/03(日) 20:14:54.97 ID:a98BiHTBO

黒井「……さて、帰るぞ」

冬馬「……だな。これ以上高槻に負担かけるわけにもいかねーし」

高木「うむ。そうだね」

翔太「僕たちは次の出番までまたミシディアでお祈り、だね!」

北斗「……エンジェルちゃんたち、帰ろう」

シヴァ「……ええ」

イフリート「いよっしっっ!!」

ラムウ「ヤヨイさん、また必要になったらワシらを呼んでくれ」

シルフ「仕方ないのであなたのために待機していてあげますよ〜」

ミストドラゴン「可愛いヤヨイ。……また会えるのを楽しみにしています……」



スゥゥゥーー…



やよい「みなさん、今回もありがとうございましたっ!」


やよい「…………あっ、あの! 黒井社長!」



黒井「……なんだ?」



やよい「また、よろしくおねがいしますね?」



黒井「……ふん」



やよい「えへへっ♪」ニコッ



792 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/09/10(日) 20:45:02.11 ID:E6eoG1uYO
ー 月の地下渓谷 B8F ー


ガキィン!! キィンッ!!


千早「…………はっ!」ブンッ


月の女神「えいっ!!」ブンッ


ガキィンッ!!



…スタッ



月の女神「……はぁ、はぁっ……!」


千早「………」

千早(あの子の息が切れはじめた……。それに、こちらの攻撃を躱さずに受け止めるケースが多くなってる……?)

千早(もしかしたら、このまま押し切れるかもしれないわ)

千早(ここは攻撃の手を休めないのがベスト!)


ダッ…


793 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/09/10(日) 20:46:11.86 ID:E6eoG1uYO

千早「はあああっ!!」ブンッ


月の女神「……くっ!」ガキィンッ


千早「そろそろ体力の限界かしら。でも手加減はしないっ……!」ブンッ


ザシュッ!!


月の女神「ううっ……!」ヨロッ


月の女神「……はぁ、はぁっ……!」


千早「………」チャキッ




月の女神「………………ふふ、うふふふふっ」



千早(……わ、笑ってる……?)


794 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/10(日) 20:47:36.04 ID:E6eoG1uYO

月の女神「ねえチハヤ。チハヤはあーてぃすとっていうのになりたいって言ってたよね?」


千早「え、ええ。それがどうかしたの?」


月の女神「じゃあさ…………チハヤにとってあいどるってなんなの?」


千早「……えっ?」


月の女神「あーてぃすとになるためなら捨てても構わないって思ってるくらい、チハヤにとっては別に大切じゃないものなのかな?」


千早「そ、それは……」
 

月の女神「チハヤにとって、あいどるってなに?」


千早「………」

千早(まさか、動揺を狙う作戦?)

千早(……いいえ、ここまで戦ってきたから分かる。この子は純粋な力比べにそんな水を差すようなことをする子じゃない)

千早(おそらく、ただ疑問に思ったことを口にしているだけなんだわ)

千早(…………私にとっての、アイドル……?)


795 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/10(日) 20:49:34.55 ID:E6eoG1uYO

月の女神「私ね、悔しいんだ」

月の女神「チハヤの方が体力があるとか、私が負けそうだとかそういうことじゃなくて」

月の女神「せっかく仲良くなれたのに、想いを共有できないのが……」



月の女神「……とっても悔しいっ……!」メキメキッ

ボゴオッ!!



千早「!」

千早(な、なに……あれ……)

千早(あの子の腕がまるで大木のように膨れ上がった……!?)



月の女神「はぁ、はぁっ……」

月の女神「ごめんね、チハヤ」

月の女神「本当は私、『こう』なるつもりはなかった。普通に戦ってチハヤに負けちゃうなら、それはそれで仕方ないかなって思ってた」

月の女神「……でも、だめだね……!」ギラッ



千早「っ……!」ゾクッ

千早(なんて……目つきなの……!)


796 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/10(日) 20:51:21.99 ID:E6eoG1uYO

月の女神「私は、あいどるが好き。キラキラ輝くあいどるに私はなりたい」

月の女神「コトリ様にあいどるの話を聞いてから、私の中であいどるが絶対になった……」


千早「………」


月の女神「あいどるを軽んじる人を私は許さない。あいどるを利用することを私は許さない」

月の女神「あいどるは至高の存在であって、穢されてはならないもの。貶められてはならないもの」

月の女神「だから、あいどるなのにあいどるを大事にしていないチハヤを……」



月の女神「私は……壊さなきゃっ……!」
 


千早(人の数だけ考え方あるのだから、中にはこういう偏向的な考えの人がいても当然)

千早(とはいえ……これは流石に異常……!)

797 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/10(日) 20:53:58.12 ID:E6eoG1uYO

月の女神「覚悟してね…………チハヤ!」

月の女神「いっくよーっ♪」ブォンッ



千早「くっ……!」チャキッ


ドゴオォッ!!


千早「っ!?」


ヒューー…ズドォォォン…!!




月の女神「……あははっ、ちょっと殴っただけなのにすっごい飛んでっちゃった」




千早「……っ……く!」

千早(なんて無茶苦茶な威力……! 防御がまるで意味をなさないなんて……)


798 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/10(日) 20:55:41.78 ID:E6eoG1uYO

月の女神「防御なんてムダだよ。だってガードごと吹き飛ばしちゃうもんねっ」

月の女神「うふふ……まだまだだよっ!」ダッ

タタタタ…



千早(受けることが出来ないなら、避けるしかない……!)

千早「…………くっ!」タンッ

フワッ…



月の女神「ふふ、やっぱり空中に逃げるよねっ!」タンッ



千早(来た……)

千早(近づかれるのは危険。……なら!)

千早「……ホーリーランス!!」チャキッ

キラキラキラ…!


ドゴゴゴゴオオォォォンッ!!!




…スタッ

千早(攻めの手を緩めてはダメね、きっと)

千早「……もう一度!」チャキッ



月の女神「……あははははっ!!」

タタタタ



千早「えっ……!?」




月の女神「つーかまーえたっ♪」ガシッ



799 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/10(日) 20:57:45.27 ID:E6eoG1uYO

千早「み、身動きが……取れないっ……!」グッ

月の女神「当たり前だよー。だって今の私の腕力は、元の何倍にもなってるからね♪」

月の女神「絶対に離さないよー!」

千早「っ……!」

月の女神「さーて、どーしよっかな?」

月の女神「チハヤってかなり華奢だから、ちょっと力入れたら簡単に折れちゃいそうだね♪」

千早「くっ……!」

千早(まずいわ……このままじゃ……!)


メキメキッ!


千早「うあああっ!!」


月の女神「あははっ♪ 歌が好きなだけあって、本当にいい声してるよね! 悲鳴までキレイ!」

月の女神「……チハヤがいけないんだよ。チハヤはあいどるなのに、あいどるのことを大切にしないから」

千早「ぅ……!」



千早(私にとっての……アイドル……)


800 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/10(日) 21:00:03.11 ID:E6eoG1uYO

千早(いったいなに……? 私にとってのアイドルって……)

千早(私はたまたまアイドルになったけど……それは、自分の歌を認めてもらう為の手段に過ぎなくて……)

千早(そう、私にとってアイドルはただの通過点)

千早(ちゃんと自分の歌を世界に届けられるようになるまでの繋ぎ)

千早(それ以上に思ったことなんて、今まで……)



『だから私、思ったの。この世界のみんなに、お礼がしたいなって』



『それでは、聴いてください……』



千早(あ…………)



801 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/10(日) 21:02:10.15 ID:E6eoG1uYO

月の女神「絶体絶命ってカンジだね、チハヤ。もう自慢の槍どころか、腕一本動かすこともできないでしょ?」

千早「………」

月の女神「せっかく仲良くなれたけど……お別れだねっ!!」グッ


メキメキッ!!


千早「くっ……!」グッ

月の女神「! ……ふふっ♪ そうだよね。死にたくないよね、チハヤだって」

月の女神「でもダメ。だってチハヤ、あいどるを大切にしないんだもん!」


千早「……まだ……武器はあるわ……!」


月の女神「えっ?」







千早「あーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」







月の女神「〜〜〜ッッ!!?」


802 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/10(日) 21:03:46.73 ID:E6eoG1uYO

月の女神「くぅぅ……み、耳が……!?」キーン

月の女神「な、なんだったの、今の……?」




千早「はぁ、はぁっ……」

千早「……自慢じゃないけど、私、声量には少しだけ自信があるの。鍛えてるから」



月の女神「チハヤ……」



千早「もちろん、声だけでダメージを与えられるなんて思ってはいないわ。でも、少しは驚いてもらえたみたいね」



月の女神「……うん、びっくりした。まさかそんな風に攻撃してくるなんて」



千早「……あなたの質問の答えになるかわからないけれど」



月の女神「え?」


803 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/10(日) 21:06:13.20 ID:E6eoG1uYO

千早「私は今まで、私のために歌を歌ってきた。自分の歌を認めてもらうために、一人で歌ってきた」

千早「でも、アイドルになってからは、それでは通用しなくなってしまった」

千早「何故なら、アイドルは……一人じゃ存在できないものだから」



月の女神「一人じゃ、存在できない……?」



千早「アイドルはね、自分のために歌うのではなく、聴いてくれるファンの人たちのために歌うものなのよ」

千早「アイドルはファンの人たちがいなければ存在できないの」



月の女神「………」



千早「アイドルになって私は、誰かのために歌うということを知った」

千早「自分だけのものだった歌がそうじゃなくなって、最初は戸惑いを覚えた。……でも、誰かと共有するということが、どこか温かく感じられて」

千早「だから、私にとってのアイドルは……」



千早「歌で誰かと繋がることを教えてくれた…………とても、大切なもの」



月の女神「………」

804 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/10(日) 21:12:07.14 ID:E6eoG1uYO

月の女神「………」

月の女神「…………ふふふっ♪」

月の女神「なぁんだ、じゃあチハヤにとってあいどるはいらないものじゃなかったんだね」



千早「以前はそうは思わなかったわ」

千早「今は……大切だと思える。ファンの人たちとの繋がり、仲間との絆。誰かと繋がること、その温かさを私に教えてくれたのがアイドルだから」



月の女神「誰かと、繋がること……」



千早「でも、やっぱり私には歌しかないから、いつまでもアイドルでいるつもりもないの」



月の女神「えっ……なんで? なんで大切なものなのに捨てちゃうの? そんなのおかしいよ!」



千早「夢だから。自分の歌を世界のいろんな人たちに聴いてもらうのが」

千早「そしてそれは、アイドルのままではきっとできないことだと思うから」



月の女神「夢……」




千早「あなたがアイドルに憧れるのと同じように、私にも目指すものがある、ということなの」



月の女神「………」

月の女神「…………正直、よく分からないよ。けど、ちょっとだけわかった気がする。チハヤのこと、あいどるのこと」



千早「……ありがとう」



月の女神「ねえ、もうひとつ訊いてもいい?」



千早「何かしら」


805 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/10(日) 21:14:36.95 ID:E6eoG1uYO

月の女神「チハヤがアイドルになって仲良くなった子たちは、チハヤがあーてぃすとになったらどうなるの?」

月の女神「せっかく仲良しになったのに、いつかはお別れしちゃうってことなの? チハヤは……悲しくないの?」



千早「………」



千早「……ふふっ」ニコッ



月の女神「!」



千早「悲しくなんかないわ。だって、消えないから」



月の女神「えっ……」



千早「苦しいレッスンも、大変な仕事も、みんなで頑張って成功させたライブも……」

千早「仲間と過ごしたかけがえのない時間は、一生消えることなくこの胸に生き続けるって……そう、信じてるから」



千早「だから…………悲しくなんて、ない」


パァァァーー!!



月の女神「っ……ち、チハヤ……?」


806 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/10(日) 21:19:00.53 ID:E6eoG1uYO

千早「温かい光……これはいったい……?」パァァ

千早(……なんだろう、とても気分が落ち着く)

千早(………)

千早(……そう、そうなのね。私の出した答えを褒めてくれるんですね)

千早(…………ありがとうございます)ギュッ




月の女神「ねえ、チハヤ。チハヤはやっぱり強いんだね」



千早「私が……? いえ、そんなことはないと思うわ」



月の女神「ううん、強いよ。だって今の千早、とってもいい顔で笑ってるもん」



千早「そ、そう……なの?」



月の女神「いいなぁ。私も千早みたいなカッコいいあいどるになりたい!」

月の女神「えへっ♪ ますます負けられなくなっちゃった!」スッ



千早「私も、簡単に負けるつもりはないわ!」チャキッ



…ザッパァァァァ!!




千早「!?」

千早「な、なに!? いきなり天井から大量の水が……!?」



ザァァァ…!!



千早「と、とにかく、逃げなきゃ!」タンッ

フワッ…


807 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/10(日) 21:22:08.78 ID:E6eoG1uYO

…スタッ

千早「……とりあえず、ここまで高いところに登ればひとまず安心かしら……?」


ザァァァ…!!



千早(水はすごい勢いで流れ落ちてきている)

千早(なぜ急に上から水が? 上で何かあったの?)チラッ


千早(……もしかしたら、誰かが上の階で戦っているのかもしれないわね)

千早(誰かはわからないけれど、無事だといいのだけど……)


千早「……あ、そういえばあの子は?」キョロキョロ



千早「………」

千早「……見当たらない。今の水流に呑まれてしまったのかしら……?」

千早(あの子がいない今なら、下の階へ進むことができる)

千早(少し待って、水の流れが落ち着いたら先へ進みましょう)

千早(………)

千早(でも、もしあの子は溺れているのだとしたら……)

千早(……いいえ、あの子だって魔物だし、溺れたくらいで死んでしまうことはないはず)

千早(というかそもそも、私が敵であるあの子の心配をする必要がないのよ)

千早(………)

千早(…………)

千早(………………こんなことをしている暇、本当はないんだけれど……)

千早「……ふっ!」タンッ


…ザッパァァン!!


808 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/10(日) 21:28:37.86 ID:E6eoG1uYO
ー ミシディア 祈りの館 ー



冬馬「戻ったぜ爺さん!」



長老「……おお、よくぞ戻ってきてくれた。ずいぶん長かったの」

冬馬「まあ、いろいろあってな」

冬馬「…………って」チラッ


ルビカンテ「……ほう、お前たちが翁の言っていた幻獣か」


冬馬「……誰だ?」


カイナッツォ「ふっふっふ……! 我こそは水のカイナッツォ!」

スカルミリョーネ「……つ、土の、スカルミリョーネ……」

バルバリシア「風のバルバリシアよ、坊やたち。よろしくね?」

ルビカンテ「火のルビカンテだ」


北斗「へぇ、まさか四天王がここにいるとはね」

冬馬「四天王ってもしかして……」

北斗「ゲームでは主人公たちの行く手に立ち塞がる敵キャラだけど……」

翔太「見た感じ、敵対してる様子はないよね」

冬馬「ふーん……」

長老「彼らもまたハルカたちに影響を受けた者たちじゃ。ここで共に祈りを捧げてくれることになった」

冬馬「おー、まあよろしくな」

長老「……あっさりと受け入れるんじゃのう。魔物と共に祈ることを」

冬馬「今さらだぜ、そんなの。天海たちと関係があるってんなら、少なくとも敵じゃねーんだろ? だったら何も言うことはねーよ」

カイナッツォ「ほう、幻獣とはもの分かりがいいのだな。まあ、せいぜい私たちの足を引っ張らないことだ!」

スカルミリョーネ「……ひ、一言多い……!」

冬馬「足を引っ張るとかそういうんじゃねーだろ? 俺たちもあんたたちも、あいつらに力を貸したいと思ってるからここにいる」

冬馬「ダチに協力するのに幻獣も魔物もねーんだよ」

カイナッツォ「ふん……!」

スカルミリョーネ「……い、いいこと言う……!」

バルバリシア「へーぇ……」

ルビカンテ「………」


809 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/10(日) 21:30:57.43 ID:E6eoG1uYO

翔太「……へへっ、冬馬君、なんかカーッコイイ!」

北斗「ああ、カッコイイぜ、冬馬!」

冬馬「べ、別に、俺は思ったことを言っただけだ」

高木「嬉しいねぇ。あの子たちに力を貸したいと思ってくれるのは。どうか、よろしく頼むよ」

ルビカンテ「乗りかかった船だ。最後まで見届けさせてもらう」

黒井「……さあ、さっさと祈りとやらを再開するぞ。時間は限られているんだ」

バルバリシア「し、シブい……! もろ好みだわ……!」ガーン


長老「ふふふ……」ニコッ


長老「っ……ごほっ、ごほっ!」


高木「だ、大丈夫かね? ご老人」スッ

長老「す、すまん……大丈夫じゃ。…………ごほっ!」

冬馬「いや、血ぃ吐いてるじゃねーか! どう見てもヤバいだろ!?」

長老「心配は……いらんよ……」

翔太「ねえ、おじいさん、少し休んだ方がいいんじゃ……」

長老「アミとマミが頑張っているんじゃ。ワシだけ何もしないわけにはいかんのじゃ」

長老「ワシはこんなところでは死なんよ。……なにせ、あと500年は生きねばならんからの」ニコッ

冬馬「……は?」

長老「こっちの話じゃ。……さあ、祈りを捧げよう」



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