P「ゲームの世界に飛ばされた」FINAL2

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766 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/30(水) 00:51:04.01 ID:eKm/UeYuO

亜美(すごい……なんかわかんないけど、力がわいてくるよ……!)

亜美(亜美も真美も、もうけっこうボロボロなのに……)

真美(そんなの決まってるっしょ、亜美)

亜美(えっ……?)

真美(真美は、亜美がいるから最高の力が出せる。……亜美は?)

亜美(あ…………。へへっ♪)

亜美(亜美は、真美がいるから最高の力が出せる!)

亜美・真美(だからもう……亜美(真美)たちに敵はいないっしょ!!)

真美(行こう、亜美! 真美たちの究極魔法を金銀ぴょんに見せてあげよう!)

亜美(うん! …………お姉ちゃん!)




亜美・真美「……虚栄の闇を払い、真実なる姿現せ……あるがままにッ……!!」




亜美・真美「これが亜美(真美)たちの究極だーーーー!!」




亜美・真美「…………アルテマッッ!!!」





キラキラキラ…!!



金銀竜「あ……」




ーーーーカッ!!




ズドオオオオォォォオオンッッ……!!!




767 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/30(水) 00:54:27.40 ID:eKm/UeYuO

金銀竜「………」

金銀竜「…………ふ」

金銀竜「………………ふふふふ」




真美「はぁ、はぁっ……!」

亜美「ど……どうだっ……!」



金銀竜「素晴らしき姉妹の絆……み、見事……だ……」


…ドサッ




亜美「………」

真美「………」

亜美「……か……勝った……」

真美「……真美たちの……勝ちだ!」

亜美「や、やった……」フラッ

ドサッ

真美「あ、亜美、しっかり!」

真美「あっ……」フラッ

真美「やば……ちょっとねむい……かも……」

ドサッ

768 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/30(水) 01:04:59.67 ID:eKm/UeYuO
ー 月の地下中心核 ー



『……真美たちの……勝ちだ!』



P「亜美、真美……よくやった!」

小鳥「………」



小鳥「……さて、と」スクッ

P「? 音無さん、どうしたんですか?」

小鳥「はい。みんな頑張ってますし、私もそろそろ最終決戦に向けてみんなをお出迎えする準備をしておこうかと思いまして」

P「みんなを出迎える準備……ですか」

小鳥「あ、そうだ。プロデューサーさんにひとつ確認したいことがあったんです」

P「なんです?」

小鳥「今回このゲーム世界へ飛ばされた私たちに適応されるルールについてです。『私たちがこの世界でどんな目に遭っても現実世界には全く反映されない』っていうルール、ご存知ですか?」

P「ああ、それはあの妖精から聞いてますよ。だから俺もそこまで不安はなかったんです」

P「えーと、もしかして音無さんも妖精から聞いたんですか?」

小鳥「はい。私は配役的に特別待遇だそうで、そういう裏ルールは事前に教えてもらってました」

P「そうだったんですか」

P(だとすると、ここまで音無さんがこの世界で無茶をしてきたのは、現実世界に影響がないことを知った上で最大限にあの子たちを楽しませようと考えた結果なのかもしれない)

P(やっぱり本当にみんなと楽しみたいだけなんだな、音無さんは)

769 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/30(水) 01:07:01.30 ID:eKm/UeYuO

小鳥「それで、そのことをあの子たちは?」

P「あ……そういえば誰にも言ってませんでしたね。すっかり忘れてました」

小鳥「そうですか。まあ、その方が好都合ですね」

P「えっ?」

小鳥「それじゃ私、ちょっとだけ席を外します。プロデューサーさんはみんなの様子を見ててあげてくださいね?」

スタスタ


P「………」

P(現実世界に影響がないとはいえ、みんなと戦うにはそれなりに心構えも必要なんだろうな。音無さんはああ見えてとても真面目な人だし)

P(邪魔しちゃいけないし、音無さんのことはそっとしておこう)

P(俺の役目は、最後の戦いを見守ること)

P(そして……)

P(最後の最後の瞬間に、みんなが笑っていられるようにすること)

P(最終決戦ももうすぐか……)


770 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/30(水) 01:10:42.60 ID:eKm/UeYuO

小鳥(予定通りアイドルのみんなは勝ち進んでいる。着々と私のもとへ歩みを進めているわね)

小鳥(私が育てた子たちはどんどんアイドルたちに負けていく……)

小鳥(分かってたことだけど、春香ちゃんたちを応援する気持ちよりも……あの子たちに申し訳ないって気持ちの方が大きくなってる)

小鳥(『みんなを楽しませる』って言ってはいるけど、私は結局、親衛隊のみんなやバハムートさんをダシにして、アイドルのみんなすら巻き込んで……)

小鳥(……あれ? おかしいわね。春香ちゃんたちと戦うの、すっごく楽しみだったのに……)

小鳥(今は、そんな気分になれない)

小鳥(なんで……?)



小鳥(私、どんな気持ちでみんなを迎えるつもりだったんだっけ? ……わからない……)

小鳥(私は……765プロの事務員、音無小鳥? それとも、月の民でありながら深い憎しみを湛えた暗黒生命体、ゼロムス……?)

小鳥(私は……)




小鳥(深い憎しみ、か)

小鳥(そうね…………やっと気づいた)

小鳥(私は憎む側ではなく、憎まれる側だったんだ。全てから憎しみを受け、それを飲み込んで、そして……)



小鳥(宇宙の塵のひとつとなって……)



ズズズ…

771 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/09/03(日) 19:26:38.34 ID:a98BiHTBO
ー 月の地下渓谷 B6F ー


冬馬「うおおおおおっ!!」

ズドドドドドドッ!!


ブルードラゴン「ぐっ……」

ブルードラゴン「……ふっ、どうした? 先ほどよりも攻撃力が落ちているように見えるが?」


冬馬「くそっ……!」

翔太「なんで!? 冬馬くんの攻撃があんまり効いてない……?」

北斗「わからないけど、もしかしたらやよいちゃんの魔力が弱まってきているのかもしれない……」

翔太「そ、そんなぁ!」

北斗「高木社長次第だけど、最悪のケースも考えなければならないのかも……」

冬馬「バカヤロウ! 高槻を信じろ、北斗、翔太! あいつは全面的に俺たちを信じてくれてる」

冬馬「仲間を信頼することも戦いのうちだ。……だろ?」

翔太「冬馬くん…………うんっ!」

北斗「そうだな。それがせめてもの……」



772 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/03(日) 19:28:37.05 ID:a98BiHTBO

黒井「どけ冬馬。次は私が行く」

冬馬「おっさん……おう!」

黒井「私がいつまでもやられっぱなしではないということをあの化け物に教えてやる……!」

北斗(黒井社長の『大海衝』は水属性。あのドラゴンには通じないはずだけど……)

北斗(社長のことだ、何か考えがあるんだろう)



黒井「はああぁぁぁ……!」ザァァ


ブルードラゴン「懲りずにまた津波か。幻獣王の肩書きも地に落ちたな……」

ブルードラゴン「その津波、凍らせてやる……!」

ブオオオオッ…!!


冬馬「やべぇ、吹雪が来るぞ、おっさん!」


黒井「わかっている! ……頼むぞ、シルフ!」


シルフ「はい、おじ様!」

シルフ「……風のささやきっ!!」


ビュオオオオッ…!!



773 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/03(日) 19:30:05.33 ID:a98BiHTBO

ブルードラゴン「ワシの吹雪にそのようなそよ風など無駄だ」



シルフ「く……!」

シルフ(そんなのわかっています!)

シルフ(一瞬でいい……おじ様が津波を蓄える時間を少しでも稼げれば……!)


ビュオオオオッ…!!


ブルードラゴン「粘りおる……。結果は見えているというのに……」



黒井「よくやった、シルフ。もう十分だ」ザァァ


シルフ「おじ様っ!」


黒井「化け物よ、高槻やよいに歯向かったことを悔いるがいい!」

黒井「……大海衝!!」



ザァァァァ…!!



ブルードラゴン「……無駄なことだ」



黒井「…………ノワール」

ズズズ…


ブルードラゴン「なに!?」



ザァァァ…



冬馬「津波が……真っ黒になりやがった!?」

翔太「うわぁ、なんか大量の墨汁みたいだね〜」



ザッパァァァァン…!!




774 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/03(日) 19:31:41.36 ID:a98BiHTBO

ブルードラゴン「……ぐっ、馬鹿な……! ワシにダメージがあるだと……!?」



黒井「ハッハッハッハァ! ノワールは全てを黒く塗りつぶす! 属性すらもな!」

黒井「私の津波は無属性の水となった。もう貴様も余裕ではいられんぞ!」

黒井「高槻やよいにふざけたことをしてくれた罪、この私が贖わせてやろう……!」ゴゴゴゴ

シルフ「素敵ですわ、おじ様っ」

北斗(属性を塗りつぶすなんてめちゃくちゃだけど、今はそのめちゃくちゃが心強い!)

北斗(オレたちには時間がない。ここは攻めるべきだ)

北斗「冬馬、黒井社長に続くぞ!」

冬馬「っしゃああああああっ!!」ダッ



ブルードラゴン「………」



775 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/03(日) 19:33:04.54 ID:a98BiHTBO

ブルードラゴン「お前たちは肝心なことを忘れていないかの?」



冬馬「……あん?」

ブルードラゴン「お前たち幻獣の力の源はそこの召喚士だ。つまり攻撃力は召喚士の魔力に依存している」

ブルードラゴン「彼女がなぜあんな状態になってまで魔力を放出できるのかは理解できないが、彼女の生命は確実に終わりへと近づいている」

ブルードラゴン「弱まっているのじゃ、お前たちの力は」



冬馬「うるせぇっ!!」ブンッ

ドゴオッ!!


ブルードラゴン「っ……ふふ、お前の拳はその程度だったかの?」


冬馬「く……!」

北斗「本当に弱まっているのか……!」

翔太「うぅ……やよいちゃんが復活してくれれば……!」

黒井「冬馬、次は二人で行くぞ!」

冬馬「おっさん!」

シルフ「私も、お手伝いさせてくださいっ!」


黒井(まだなのか、高木……!)

黒井(やよいちゃんっ……!)



776 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/03(日) 19:37:28.78 ID:a98BiHTBO

やよい(………)

やよい(…………わ…たし……)

やよい(……どらごんさんの……ふぶきで……)

やよい(……さむい……)




やよい(……どらごんさん、安らぎは死ぬことだって言ってました……)

やよい(わたしの答えはまちがってるって……)

やよい(死ぬのが安らぎなんて、そんなのダメって思うのに、うまく言えなくて……)

やよい(………)

やよい(……死んだら、本当に楽になるのかな……?)

やよい(しあわせに、なれるのかな……?)






『…………やーよいっ♪』





やよい(!)



777 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/03(日) 19:39:40.49 ID:a98BiHTBO

『やよいちゃんっ』

『やよい!』

『やよいー!』

『『やよいっちー!!』』

『……高槻さん』

『……やよい』

『うふふ、やよいちゃん♪』

『しっかりね、やよい!』



やよい(……みなさん……!)


『ヤヨイィィィ!!』

『ヤヨイさん……』

『ああ、私のかわいいヤヨイ……』

『あなたは私のご主人様なんですからっ』

『……ヤヨイさんはばあさんの若い頃そっくりじゃ』


『やよいちゃんっ』

『……やよいちゃん』

『高槻っ!』

『高槻君……!』

『………………高槻やよい……!』



やよい(…………わたし……わたしっ……!)



『今のアンタならもう大丈夫。……そうでしょ、やよい!』



やよい(伊織ちゃんっ……!)


778 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/03(日) 19:41:49.78 ID:a98BiHTBO

やよい(……おかしいな、さっきまでさむかったのに……)

やよい(えへへ……みなさんの声をきくだけで心がぽかぽかです……)



やよい(わたしはどらごんさんの悲しみがどんなに深いのかわかりません)

やよい(いくら考えてもわかりません)

やよい(でもでもっ……)







やよい(やっぱり……どれだけ考えても、死んだら楽になれるっていう考え方は、ぜったいにまちがってるかなーって!!!)






779 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/03(日) 19:44:41.40 ID:a98BiHTBO

ラムウ「……まさか本当に氷だけを斬るとは……。いやはや、驚いた……」


やよい「………」グッタリ


高木「失敗するとは微塵も思っていなかったよ。私だけの力じゃないのだからね」

高木「だが、早く高槻君を起こさねばな。黒井たちも苦戦しているようだ」チラッ

イフリート「ヤヨイィィィッ!! 起きろーーーっっ!!」ボオオッ

やよい「………」グッタリ

ミストドラゴン「ヤヨイ……!」

シヴァ「………」


シヴァ「私は……なんて無力なの……!」

シヴァ「こんな私にとても優しくしてくれた友達に、何もしてあげられないなんてっ……!」ウルッ

ポタ…ポタ…

シヴァ「ヤヨイさん、どうか起きて……!」

シヴァ「また私たちに、笑って見せてっ……!」



…ポタッ




…ピカァァァ!!




シヴァ「!?」


780 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/03(日) 19:46:27.37 ID:a98BiHTBO

イフリート「ど、どうしたんだ!? いきなりヤヨイが光って……!」

高木「まさか高槻君の身に何か!?」

ミストドラゴン「……いえ」


やよい「………」ピカァァァ!!


ミストドラゴン「見てください。光はどうやらヤヨイの胸元から発しているようです」

ミストドラゴン「ヤヨイが首からかけているネックレス……おそらく……」

ラムウ「……クリスタルじゃ……!」



やよい「………」ピカァァァ!!



シヴァ「ヤヨイさん! ヤヨイさんっ……!」


781 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/03(日) 19:48:32.85 ID:a98BiHTBO

やよい「………」ピクッ

シヴァ「! 今……!」

やよい「………………ぅ」

高木「高槻君の意識が戻りかけている! みんな、呼びかけるんだ!」

イフリート「ヤヨイィィィッ!!!」

ラムウ「ヤヨイさん……!」

シヴァ「ヤヨイさん、起きて……!」

ミストドラゴン「どうか……!」



やよい「……………………う…………」



やよい「……………………うぅっ……」











やよい「うっうーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」








一同「!!!」

782 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/03(日) 19:53:13.42 ID:a98BiHTBO

シヴァ「や……ヤヨイさんっ!」ダキッ

ミストドラゴン「ヤヨイっ……!」ウルッ

イフリート「うおおおおおおおお!! ヤヨイィィィィィィッッ!!」

ラムウ「よくぞ……よくぞ戻ってきてくれた……!」

高木「た、高槻君! 身体の方は大丈夫なのかね!?」

やよい「へっちゃらですっ!」

やよい「あの、みなさん。心配かけちゃってすみませんでした!」ペコリ

やよい「わたし、じぶんの思ってることが本当に正しいのかわからなくなっちゃって……」

やよい「でも、もうだいじょーぶです!」ニコッ

シヴァ「良かった……! 本当に良かったっ……!」

イフリート「っしゃあああああっ!!」ボオオッ

ラムウ「ヤヨイさん、復活したばかりで申し訳ないが、まだ戦いは終わっていないのじゃ」

高木「ああ。今は黒井たちが魔物を食い止めてくれている。高槻君、行けるかね?」

やよい「はい! 行きましょうっ!!」グッ

ミストドラゴン「さあ、私の背中に乗ってください、ヤヨイ」

やよい「わかりました!」


783 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/03(日) 19:54:49.35 ID:a98BiHTBO

冬馬「おい、おっさん。気づいたか?」

黒井「うむ。この漲る力……ヤツが復活したのだな」



ブルードラゴン「……馬鹿な……ワシの氷の棺を自力で破るなどあり得ぬ……!」



冬馬「言ったはずだぜ。高槻は吹雪なんかにやられちまうようなタマじゃねーって」

黒井「さて、貴様には望み通り死を与えてやるとするか……!」



ブルードラゴン「………」

ブルードラゴン(死……。そうじゃ、ワシは望んでいたはずじゃ)

ブルードラゴン(ならばここで果てるは本望と思うべき)

ブルードラゴン(………)



784 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/03(日) 19:56:17.58 ID:a98BiHTBO

やよい「じゅぴたーさん、黒井社長、しるふちゃん!」

翔太「やよいちゃん!」

北斗「やよいちゃん……!」

シルフ「もうっ! 何してたんですか! 心配したんですからねっ!」グスッ

黒井「………」

冬馬「高槻……!」

やよい「みなさん、ごめんなさい! それと、ありがとうございました!」ペコリ

黒井「話はヤツを倒してからにしろ、高槻やよい」

やよい「あ、はい!」

やよい「………」チラッ


やよい「どらごんさん……!」



ブルードラゴン「…………殺せ。もう現世に未練はない」



やよい「………」

黒井「……何を考えている、高槻やよい」

やよい「あの、黒井社長。ちょっと耳をかしてもらえますか?」

黒井「?」

やよい「ごにょごにょ……」


785 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/03(日) 19:58:06.33 ID:a98BiHTBO

黒井「………………なんだそれは。そんなことできるかどうか知らんぞ」

やよい「だいじょーぶです。きっとできます!」

黒井「まあ、貴様がそう言うならばやるだけやってみるか」

黒井「はああああっ……!」ゴゴゴゴ



ブルードラゴン「……先程の黒い津波か……」

ブルードラゴン(これでようやく逢える。家族に、友に)

ブルードラゴン(…………だというのに、何故じゃ)

ブルードラゴン(この気持ちは……何なのじゃ……?)



やよい「みなさん、黒井社長にパワーをあつめてくださいっ!」ゴゴゴゴ

北斗「えっ……? そんなことが出来るのか?」 

翔太「出来るに決まってるじゃん! やよいちゃんが言うんだからさ!」

冬馬「ああ、翔太の言うとおりだぜ!」

冬馬「うおおおおおおっ……!!」ゴゴゴゴ

冬馬「おっさん! 俺たちのパワー、使ってくれ!」

パァァァ……!



黒井「! 津波に色が……!?」ザァァァ…



786 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/03(日) 19:59:21.38 ID:a98BiHTBO

ラムウ「さて、ワシらも続くとするかの……!」ゴゴゴゴ

高木「ああ、そうだね!」ゴゴゴゴ

イフリート「うおおおおぉぉおおぉぉぉおおおっっ!!!!」ゴゴゴゴ

シヴァ「……っ!」ゴゴゴゴ

シルフ「はああああっ……!」ゴゴゴゴ

ミストドラゴン「クロイ殿……。私たちも助力致しますっ……!」ゴゴゴゴ


パァァァ……!



黒井「くっ……! 私に集まった津波が色とりどりに輝いているだと……!?」ザァァァ

黒井「これが……力を合わせるということなのか……!」

パァァァ……!



ブルードラゴン(…………そうか、そういうことか……!)

ブルードラゴン(気づいてしまった……この気持ちの正体に……)



787 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/03(日) 20:01:42.63 ID:a98BiHTBO

やよい「黒井社長、行きましょうっ!!」ゴゴゴゴ

黒井「よし……!」

黒井(高槻やよいが魔力を練るだけでこうも力が湧き上がってくるとは……!)


黒井「食らえ化け物……!」

黒井「大海衝……!」




黒井「…………カラーズ!!」

やよい「うっうーーーー!!!」



ザァァァ…!!




ブルードラゴン(目の前に起こっていることが全て……つまりはそういうことなのだ)

ブルードラゴン(ワシは死に場所を求めていたつもりだったが、あの召喚士に気づかされてしまった)

ブルードラゴン(『死にたくない』と思ってしまった……!)

ブルードラゴン(あの娘が、あんなに楽しそうに笑うから……!)



ブルードラゴン「ぬおおおおおおお!!」




…ザッパアアアァァアアンッッ!!!




788 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/03(日) 20:06:51.78 ID:a98BiHTBO
やよい「はぁ、はぁっ……」

ミストドラゴン「大丈夫ですか? ヤヨイ」

やよい「だ、だいじょーぶです! ……ごほっ……」

黒井「無理をするな。我々をこちらに長時間顕現させているだけでも相当堪えるはずだ。一旦術を解け」

やよい「いえ……それじゃ、いみがありませんから!」

黒井「……まったく、意外と強情なのだな」




ブルードラゴン「……ぐっ、ぬぅ……」

ブルードラゴン「…………何故じゃ」

ブルードラゴン「何故ワシを殺さない……?」



やよい「それは……」

やよい「どらごんさんにも、安らぎを知ってほしかったからです」



ブルードラゴン「………」



789 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/03(日) 20:08:46.81 ID:a98BiHTBO

やよい「わたし、かんがえました」

やよい「どらごんさんはわたしよりもたくさんたくさん長生きだし、わたしよりもたくさんたくさんつらいことをけいけんしてきたって言ってましたし……」

やよい「そのどらごんさんが、安らぎが死ぬことって言うのなら、それは正しいことなのかもって」

やよい「でもわたし、どうしてもなっとくがいかなくって……」

やよい「だって、やっぱりわたしにとっての安らぎは、みなさんと笑ってすごすことですから」



ブルードラゴン「………」



やよい「だから、まちがってるかもしれませんけど、わたしはどらごんさんをころしたりはしません」

やよい「どらごんさんにもいますよね? いっしょにがんばる仲間が」



ブルードラゴン「!」



やよい「前にたたかった時、思ったんです。しんえーたいのみなさんも、わたしたちと同じなんだなーって」

やよい「みんなできょうりょくして、がんばってるなーって」

やよい「大切な人たちと笑い合える安らぎ……。それを、知ってほしくて」

やよい「……ううん、わたしが言わなくても知ってるはずなんです、どらごんさんも!」

やよい「だから……どうか思いだしてくださいっ!!」



ブルードラゴン「………」


790 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/03(日) 20:10:38.22 ID:a98BiHTBO

ブルードラゴン「思い出す必要などなかったのじゃ」



やよい「えっ?」



ブルードラゴン「そなたらと戦っている最中に、すでに理解していたのだから」

ブルードラゴン「いや、最初から……。もしかしたらそなたに会った瞬間に気づいていたのかもしれん。安らぎというものに」

ブルードラゴン「ヤヨイ……そなたのひたむきな心、そして果てのない優しさのおかげじゃ……」

ブルードラゴン「……ありがとう」



やよい「……えへへっ♪ どういたしましてですっ!!」ニコッ



冬馬「……一件落着ってところか?」

翔太「だね! まあ、やよいちゃんが負けるなんてあり得ないって思ってたけど」

北斗「結局、天使の微笑みに敵うものなんていなかったわけだ」

高木「いやあ、やはり高槻君はとても良い子だねぇ……!」ホロリ

黒井「………」


791 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/03(日) 20:14:54.97 ID:a98BiHTBO

黒井「……さて、帰るぞ」

冬馬「……だな。これ以上高槻に負担かけるわけにもいかねーし」

高木「うむ。そうだね」

翔太「僕たちは次の出番までまたミシディアでお祈り、だね!」

北斗「……エンジェルちゃんたち、帰ろう」

シヴァ「……ええ」

イフリート「いよっしっっ!!」

ラムウ「ヤヨイさん、また必要になったらワシらを呼んでくれ」

シルフ「仕方ないのであなたのために待機していてあげますよ〜」

ミストドラゴン「可愛いヤヨイ。……また会えるのを楽しみにしています……」



スゥゥゥーー…



やよい「みなさん、今回もありがとうございましたっ!」


やよい「…………あっ、あの! 黒井社長!」



黒井「……なんだ?」



やよい「また、よろしくおねがいしますね?」



黒井「……ふん」



やよい「えへへっ♪」ニコッ



792 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/09/10(日) 20:45:02.11 ID:E6eoG1uYO
ー 月の地下渓谷 B8F ー


ガキィン!! キィンッ!!


千早「…………はっ!」ブンッ


月の女神「えいっ!!」ブンッ


ガキィンッ!!



…スタッ



月の女神「……はぁ、はぁっ……!」


千早「………」

千早(あの子の息が切れはじめた……。それに、こちらの攻撃を躱さずに受け止めるケースが多くなってる……?)

千早(もしかしたら、このまま押し切れるかもしれないわ)

千早(ここは攻撃の手を休めないのがベスト!)


ダッ…


793 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/09/10(日) 20:46:11.86 ID:E6eoG1uYO

千早「はあああっ!!」ブンッ


月の女神「……くっ!」ガキィンッ


千早「そろそろ体力の限界かしら。でも手加減はしないっ……!」ブンッ


ザシュッ!!


月の女神「ううっ……!」ヨロッ


月の女神「……はぁ、はぁっ……!」


千早「………」チャキッ




月の女神「………………ふふ、うふふふふっ」



千早(……わ、笑ってる……?)


794 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/10(日) 20:47:36.04 ID:E6eoG1uYO

月の女神「ねえチハヤ。チハヤはあーてぃすとっていうのになりたいって言ってたよね?」


千早「え、ええ。それがどうかしたの?」


月の女神「じゃあさ…………チハヤにとってあいどるってなんなの?」


千早「……えっ?」


月の女神「あーてぃすとになるためなら捨てても構わないって思ってるくらい、チハヤにとっては別に大切じゃないものなのかな?」


千早「そ、それは……」
 

月の女神「チハヤにとって、あいどるってなに?」


千早「………」

千早(まさか、動揺を狙う作戦?)

千早(……いいえ、ここまで戦ってきたから分かる。この子は純粋な力比べにそんな水を差すようなことをする子じゃない)

千早(おそらく、ただ疑問に思ったことを口にしているだけなんだわ)

千早(…………私にとっての、アイドル……?)


795 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/10(日) 20:49:34.55 ID:E6eoG1uYO

月の女神「私ね、悔しいんだ」

月の女神「チハヤの方が体力があるとか、私が負けそうだとかそういうことじゃなくて」

月の女神「せっかく仲良くなれたのに、想いを共有できないのが……」



月の女神「……とっても悔しいっ……!」メキメキッ

ボゴオッ!!



千早「!」

千早(な、なに……あれ……)

千早(あの子の腕がまるで大木のように膨れ上がった……!?)



月の女神「はぁ、はぁっ……」

月の女神「ごめんね、チハヤ」

月の女神「本当は私、『こう』なるつもりはなかった。普通に戦ってチハヤに負けちゃうなら、それはそれで仕方ないかなって思ってた」

月の女神「……でも、だめだね……!」ギラッ



千早「っ……!」ゾクッ

千早(なんて……目つきなの……!)


796 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/10(日) 20:51:21.99 ID:E6eoG1uYO

月の女神「私は、あいどるが好き。キラキラ輝くあいどるに私はなりたい」

月の女神「コトリ様にあいどるの話を聞いてから、私の中であいどるが絶対になった……」


千早「………」


月の女神「あいどるを軽んじる人を私は許さない。あいどるを利用することを私は許さない」

月の女神「あいどるは至高の存在であって、穢されてはならないもの。貶められてはならないもの」

月の女神「だから、あいどるなのにあいどるを大事にしていないチハヤを……」



月の女神「私は……壊さなきゃっ……!」
 


千早(人の数だけ考え方あるのだから、中にはこういう偏向的な考えの人がいても当然)

千早(とはいえ……これは流石に異常……!)

797 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/10(日) 20:53:58.12 ID:E6eoG1uYO

月の女神「覚悟してね…………チハヤ!」

月の女神「いっくよーっ♪」ブォンッ



千早「くっ……!」チャキッ


ドゴオォッ!!


千早「っ!?」


ヒューー…ズドォォォン…!!




月の女神「……あははっ、ちょっと殴っただけなのにすっごい飛んでっちゃった」




千早「……っ……く!」

千早(なんて無茶苦茶な威力……! 防御がまるで意味をなさないなんて……)


798 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/10(日) 20:55:41.78 ID:E6eoG1uYO

月の女神「防御なんてムダだよ。だってガードごと吹き飛ばしちゃうもんねっ」

月の女神「うふふ……まだまだだよっ!」ダッ

タタタタ…



千早(受けることが出来ないなら、避けるしかない……!)

千早「…………くっ!」タンッ

フワッ…



月の女神「ふふ、やっぱり空中に逃げるよねっ!」タンッ



千早(来た……)

千早(近づかれるのは危険。……なら!)

千早「……ホーリーランス!!」チャキッ

キラキラキラ…!


ドゴゴゴゴオオォォォンッ!!!




…スタッ

千早(攻めの手を緩めてはダメね、きっと)

千早「……もう一度!」チャキッ



月の女神「……あははははっ!!」

タタタタ



千早「えっ……!?」




月の女神「つーかまーえたっ♪」ガシッ



799 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/10(日) 20:57:45.27 ID:E6eoG1uYO

千早「み、身動きが……取れないっ……!」グッ

月の女神「当たり前だよー。だって今の私の腕力は、元の何倍にもなってるからね♪」

月の女神「絶対に離さないよー!」

千早「っ……!」

月の女神「さーて、どーしよっかな?」

月の女神「チハヤってかなり華奢だから、ちょっと力入れたら簡単に折れちゃいそうだね♪」

千早「くっ……!」

千早(まずいわ……このままじゃ……!)


メキメキッ!


千早「うあああっ!!」


月の女神「あははっ♪ 歌が好きなだけあって、本当にいい声してるよね! 悲鳴までキレイ!」

月の女神「……チハヤがいけないんだよ。チハヤはあいどるなのに、あいどるのことを大切にしないから」

千早「ぅ……!」



千早(私にとっての……アイドル……)


800 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/10(日) 21:00:03.11 ID:E6eoG1uYO

千早(いったいなに……? 私にとってのアイドルって……)

千早(私はたまたまアイドルになったけど……それは、自分の歌を認めてもらう為の手段に過ぎなくて……)

千早(そう、私にとってアイドルはただの通過点)

千早(ちゃんと自分の歌を世界に届けられるようになるまでの繋ぎ)

千早(それ以上に思ったことなんて、今まで……)



『だから私、思ったの。この世界のみんなに、お礼がしたいなって』



『それでは、聴いてください……』



千早(あ…………)



801 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/10(日) 21:02:10.15 ID:E6eoG1uYO

月の女神「絶体絶命ってカンジだね、チハヤ。もう自慢の槍どころか、腕一本動かすこともできないでしょ?」

千早「………」

月の女神「せっかく仲良くなれたけど……お別れだねっ!!」グッ


メキメキッ!!


千早「くっ……!」グッ

月の女神「! ……ふふっ♪ そうだよね。死にたくないよね、チハヤだって」

月の女神「でもダメ。だってチハヤ、あいどるを大切にしないんだもん!」


千早「……まだ……武器はあるわ……!」


月の女神「えっ?」







千早「あーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」







月の女神「〜〜〜ッッ!!?」


802 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/10(日) 21:03:46.73 ID:E6eoG1uYO

月の女神「くぅぅ……み、耳が……!?」キーン

月の女神「な、なんだったの、今の……?」




千早「はぁ、はぁっ……」

千早「……自慢じゃないけど、私、声量には少しだけ自信があるの。鍛えてるから」



月の女神「チハヤ……」



千早「もちろん、声だけでダメージを与えられるなんて思ってはいないわ。でも、少しは驚いてもらえたみたいね」



月の女神「……うん、びっくりした。まさかそんな風に攻撃してくるなんて」



千早「……あなたの質問の答えになるかわからないけれど」



月の女神「え?」


803 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/10(日) 21:06:13.20 ID:E6eoG1uYO

千早「私は今まで、私のために歌を歌ってきた。自分の歌を認めてもらうために、一人で歌ってきた」

千早「でも、アイドルになってからは、それでは通用しなくなってしまった」

千早「何故なら、アイドルは……一人じゃ存在できないものだから」



月の女神「一人じゃ、存在できない……?」



千早「アイドルはね、自分のために歌うのではなく、聴いてくれるファンの人たちのために歌うものなのよ」

千早「アイドルはファンの人たちがいなければ存在できないの」



月の女神「………」



千早「アイドルになって私は、誰かのために歌うということを知った」

千早「自分だけのものだった歌がそうじゃなくなって、最初は戸惑いを覚えた。……でも、誰かと共有するということが、どこか温かく感じられて」

千早「だから、私にとってのアイドルは……」



千早「歌で誰かと繋がることを教えてくれた…………とても、大切なもの」



月の女神「………」

804 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/10(日) 21:12:07.14 ID:E6eoG1uYO

月の女神「………」

月の女神「…………ふふふっ♪」

月の女神「なぁんだ、じゃあチハヤにとってあいどるはいらないものじゃなかったんだね」



千早「以前はそうは思わなかったわ」

千早「今は……大切だと思える。ファンの人たちとの繋がり、仲間との絆。誰かと繋がること、その温かさを私に教えてくれたのがアイドルだから」



月の女神「誰かと、繋がること……」



千早「でも、やっぱり私には歌しかないから、いつまでもアイドルでいるつもりもないの」



月の女神「えっ……なんで? なんで大切なものなのに捨てちゃうの? そんなのおかしいよ!」



千早「夢だから。自分の歌を世界のいろんな人たちに聴いてもらうのが」

千早「そしてそれは、アイドルのままではきっとできないことだと思うから」



月の女神「夢……」




千早「あなたがアイドルに憧れるのと同じように、私にも目指すものがある、ということなの」



月の女神「………」

月の女神「…………正直、よく分からないよ。けど、ちょっとだけわかった気がする。チハヤのこと、あいどるのこと」



千早「……ありがとう」



月の女神「ねえ、もうひとつ訊いてもいい?」



千早「何かしら」


805 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/10(日) 21:14:36.95 ID:E6eoG1uYO

月の女神「チハヤがアイドルになって仲良くなった子たちは、チハヤがあーてぃすとになったらどうなるの?」

月の女神「せっかく仲良しになったのに、いつかはお別れしちゃうってことなの? チハヤは……悲しくないの?」



千早「………」



千早「……ふふっ」ニコッ



月の女神「!」



千早「悲しくなんかないわ。だって、消えないから」



月の女神「えっ……」



千早「苦しいレッスンも、大変な仕事も、みんなで頑張って成功させたライブも……」

千早「仲間と過ごしたかけがえのない時間は、一生消えることなくこの胸に生き続けるって……そう、信じてるから」



千早「だから…………悲しくなんて、ない」


パァァァーー!!



月の女神「っ……ち、チハヤ……?」


806 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/10(日) 21:19:00.53 ID:E6eoG1uYO

千早「温かい光……これはいったい……?」パァァ

千早(……なんだろう、とても気分が落ち着く)

千早(………)

千早(……そう、そうなのね。私の出した答えを褒めてくれるんですね)

千早(…………ありがとうございます)ギュッ




月の女神「ねえ、チハヤ。チハヤはやっぱり強いんだね」



千早「私が……? いえ、そんなことはないと思うわ」



月の女神「ううん、強いよ。だって今の千早、とってもいい顔で笑ってるもん」



千早「そ、そう……なの?」



月の女神「いいなぁ。私も千早みたいなカッコいいあいどるになりたい!」

月の女神「えへっ♪ ますます負けられなくなっちゃった!」スッ



千早「私も、簡単に負けるつもりはないわ!」チャキッ



…ザッパァァァァ!!




千早「!?」

千早「な、なに!? いきなり天井から大量の水が……!?」



ザァァァ…!!



千早「と、とにかく、逃げなきゃ!」タンッ

フワッ…


807 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/10(日) 21:22:08.78 ID:E6eoG1uYO

…スタッ

千早「……とりあえず、ここまで高いところに登ればひとまず安心かしら……?」


ザァァァ…!!



千早(水はすごい勢いで流れ落ちてきている)

千早(なぜ急に上から水が? 上で何かあったの?)チラッ


千早(……もしかしたら、誰かが上の階で戦っているのかもしれないわね)

千早(誰かはわからないけれど、無事だといいのだけど……)


千早「……あ、そういえばあの子は?」キョロキョロ



千早「………」

千早「……見当たらない。今の水流に呑まれてしまったのかしら……?」

千早(あの子がいない今なら、下の階へ進むことができる)

千早(少し待って、水の流れが落ち着いたら先へ進みましょう)

千早(………)

千早(でも、もしあの子は溺れているのだとしたら……)

千早(……いいえ、あの子だって魔物だし、溺れたくらいで死んでしまうことはないはず)

千早(というかそもそも、私が敵であるあの子の心配をする必要がないのよ)

千早(………)

千早(…………)

千早(………………こんなことをしている暇、本当はないんだけれど……)

千早「……ふっ!」タンッ


…ザッパァァン!!


808 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/10(日) 21:28:37.86 ID:E6eoG1uYO
ー ミシディア 祈りの館 ー



冬馬「戻ったぜ爺さん!」



長老「……おお、よくぞ戻ってきてくれた。ずいぶん長かったの」

冬馬「まあ、いろいろあってな」

冬馬「…………って」チラッ


ルビカンテ「……ほう、お前たちが翁の言っていた幻獣か」


冬馬「……誰だ?」


カイナッツォ「ふっふっふ……! 我こそは水のカイナッツォ!」

スカルミリョーネ「……つ、土の、スカルミリョーネ……」

バルバリシア「風のバルバリシアよ、坊やたち。よろしくね?」

ルビカンテ「火のルビカンテだ」


北斗「へぇ、まさか四天王がここにいるとはね」

冬馬「四天王ってもしかして……」

北斗「ゲームでは主人公たちの行く手に立ち塞がる敵キャラだけど……」

翔太「見た感じ、敵対してる様子はないよね」

冬馬「ふーん……」

長老「彼らもまたハルカたちに影響を受けた者たちじゃ。ここで共に祈りを捧げてくれることになった」

冬馬「おー、まあよろしくな」

長老「……あっさりと受け入れるんじゃのう。魔物と共に祈ることを」

冬馬「今さらだぜ、そんなの。天海たちと関係があるってんなら、少なくとも敵じゃねーんだろ? だったら何も言うことはねーよ」

カイナッツォ「ほう、幻獣とはもの分かりがいいのだな。まあ、せいぜい私たちの足を引っ張らないことだ!」

スカルミリョーネ「……ひ、一言多い……!」

冬馬「足を引っ張るとかそういうんじゃねーだろ? 俺たちもあんたたちも、あいつらに力を貸したいと思ってるからここにいる」

冬馬「ダチに協力するのに幻獣も魔物もねーんだよ」

カイナッツォ「ふん……!」

スカルミリョーネ「……い、いいこと言う……!」

バルバリシア「へーぇ……」

ルビカンテ「………」


809 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/10(日) 21:30:57.43 ID:E6eoG1uYO

翔太「……へへっ、冬馬君、なんかカーッコイイ!」

北斗「ああ、カッコイイぜ、冬馬!」

冬馬「べ、別に、俺は思ったことを言っただけだ」

高木「嬉しいねぇ。あの子たちに力を貸したいと思ってくれるのは。どうか、よろしく頼むよ」

ルビカンテ「乗りかかった船だ。最後まで見届けさせてもらう」

黒井「……さあ、さっさと祈りとやらを再開するぞ。時間は限られているんだ」

バルバリシア「し、シブい……! もろ好みだわ……!」ガーン


長老「ふふふ……」ニコッ


長老「っ……ごほっ、ごほっ!」


高木「だ、大丈夫かね? ご老人」スッ

長老「す、すまん……大丈夫じゃ。…………ごほっ!」

冬馬「いや、血ぃ吐いてるじゃねーか! どう見てもヤバいだろ!?」

長老「心配は……いらんよ……」

翔太「ねえ、おじいさん、少し休んだ方がいいんじゃ……」

長老「アミとマミが頑張っているんじゃ。ワシだけ何もしないわけにはいかんのじゃ」

長老「ワシはこんなところでは死なんよ。……なにせ、あと500年は生きねばならんからの」ニコッ

冬馬「……は?」

長老「こっちの話じゃ。……さあ、祈りを捧げよう」



810 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/10(日) 21:34:19.64 ID:E6eoG1uYO
ー 月の地下渓谷 B7F ー



…バシャァッ!


千早「……っぷはぁ、はぁ……!」

千早「くっ……!」ガシッ

…ドサッ


千早「……なんとか……見つけることはできたわね」チラッ

月の女神「………」グッタリ

千早「死んでしまってるわけではないみたいだけど、意識をなくしているみたい」

千早「この子、泳げなかったのかしら……?」

千早(……私、なんで助けたんだろう。放っておいてもいいはずなのに)

千早(この子がアイドルに憧れているから? 私のことを友達と言ってくれたから?)

千早(それとも……)




千早「…………ゴク、ゴク」

千早「……ふぅ」

千早「いつまでも休んでいるわけにはいかない。先へ進まないと」

千早「………」チラッ


月の女神「………」グッタリ


千早「………」

千早(とどめを刺すなんてことはしないし、これ以上あなたを助けることもしない)

千早(……でも)

千早(今はとても心が軽いの。きっと、あなたが私に気づかせてくれたからね)


月の女神「……とっぷ……あいどる……」ムニャ


千早(……あなたの夢、叶うといいわね)



千早「…………さよなら、月の女神」クルッ

スタスタ…



月の女神「……チハ…ヤ……」ムニャ



811 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/10(日) 21:36:14.78 ID:E6eoG1uYO
ミス
>>810は地下8階の間違いです
812 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/10(日) 21:38:31.76 ID:E6eoG1uYO
ー 月の地下渓谷 B9F ー


美希「……はぁ、はぁ……」ヨロッ



暗黒魔道士「……まだ立ち上がるのか。本当にキミは負けず嫌いなんだね」



美希「違うの。負けたくないんじゃなくて、負けられないの」

美希「みんなでコトリに会いに行くのに、ミキひとり遅刻じゃカッコ悪いもん」



暗黒魔道士「………」

暗黒魔わ道士「……まあいい。どちらにしろキミは立っているのがやっとだろう?」

暗黒魔道士「今度こそ終わりだ」バッ

ゴオオオオッ!!


美希「!」


暗黒魔道士「もちろんキミがこれを避けても、ボクには次の一撃がある」

暗黒魔道士「ミキ、キミにはボクの連撃をやり過ごす体力は残っていまい」


美希「……やってみなきゃ、わからないの!」ザッ


暗黒魔道士「……いいだろう。さあ、行くよ」


暗黒魔道士「…………ファイガ」


ゴオオオオッ!!



813 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/10(日) 21:40:38.38 ID:E6eoG1uYO

美希(たぶんアンコクさんが連続で使える魔法は3コか4コまでだよね……!)

タタタタ…


ドゴオオォォンッ!!



暗黒魔道士「…………ブリザガ」


コォォ…シャキーン!!



美希(これもなんとかやり過ごして…………っ!?)

美希(熱い……!? なにコレ……?)

美希「…………あっ」スッ

美希「さっき拾った石……?」




暗黒魔道士「…………トルネド」


ビュオオオッ…!!



美希「…………そっか。なんで今まで気付かなかったんだろ……!」



ビュウウウウッ!!



暗黒魔道士「…………よし、直撃したっ……!」

暗黒魔道士「ふふ……乱気流に捕らわれたキミは地面に叩きつけられて今度こそ終わりだ……!」

暗黒魔道士「ボクの…………勝ちだッ!」




「…………んーん、それは違うよ?」




暗黒魔道士「!?」


814 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/10(日) 21:43:08.26 ID:E6eoG1uYO

暗黒魔道士「な、なぜボクのそばに!? 一体どうやってここまで……?」


美希「あずさに聞いたの。テレポは建物とかから脱出するだけじゃなくて、ちょっとした距離の移動にも使えるって」


暗黒魔道士「そ、それでこの暗闇の中をボクのところまで真っ直ぐ来たっていうのか……? いや、そういえばキミはボクの位置を把握していたんだったね……」

暗黒魔道士「だとしても、ならばなぜ今までテレポを使わなかった? 幾度となく危ない瞬間はあったはずだ」


美希「……アンコクさん、ユダンしすぎなの。ミキ、もうとっくに詠唱終わっちゃったよ?」


暗黒魔道士「…………え?」


美希「…………ホーリー!!」バッ


キラキラキラ…!!


暗黒魔道士「しまっ……!」



ズドドドドドドッ!!!


815 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/10(日) 21:45:27.80 ID:E6eoG1uYO

暗黒魔道士「っ……ぐはっ……!」ヨロッ

暗黒魔道士「く、くそ……!」



美希「ふーん、やっぱりアンコクさんって魔法はスゴいけど、運動神経はあんまり良くないみたいだね」

美希「魔道士って大変だよねー」



暗黒魔道士「……はぁ、はぁ……!」



美希「さっきの質問だけど、テレポでの移動は大事な時だけにしようって思ってただけだよ。最初の方に使って対策を用意されたら厄介だし」



暗黒魔道士「それがキミの切り札ってわけか……。でも、ミキの言うとおりだ。テレポは考慮させてもらう……!」



美希「いいよ、べつに。たぶん、もうすぐ夜も明けると思うし」



暗黒魔道士「え?」



…パキッ!


暗黒魔道士「!!」



パリンッ…!



暗黒魔道士「ま、まさか……!?」



美希「……『これ』だったんだね。全ての原因は」スッ



暗黒魔道士「や、やめろ、『それ』が壊れてしまったらボクは……!」


…キラッ!


暗黒魔道士「う…あ……ひ、光が……!」



パァァァーー!!



816 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/10(日) 21:51:15.91 ID:E6eoG1uYO

美希「っ……まぶしっ……!」

美希「………」

美希「………」

美希「……ふぅ。ようやく明るくなったの。もう何時間も夜みたいだったから、なんかすごくヘンなカンジ☆」


暗黒魔道士「うぅっ……! な、なぜ……なぜキミがそれを持っているんだ……? くそ、全て破壊されている……!」


美希「ここへ来る途中の階段でたまたま拾ったの」

美希「アンコクさんのパワーの源で、この階が真っ暗だった原因は、この石だったんだね」


暗黒魔道士「いつだ……いつ気づいた……?」


美希「気づいたのはついさっきだよ。アンコクさんが魔法を使う時にこの石が熱くなってて、『あれ? もしかして』って」

美希「ホントはもっと早く気づいてもよかったはずなんだけど、まさかこんな石が関係してるとは思わなくて」

美希「ねえ、この石ってなんなの?」


暗黒魔道士「………」

暗黒魔道士「……ダークマター。宇宙の欠片だ」

暗黒魔道士「ダークマターの漆黒の輝きはボクのような闇属性を持っている者のパワーを増幅させる。そして、ある程度の数を集めれば一時的に宇宙空間を作り出すこともできる」

暗黒魔道士「戦いの前にコトリ様からいくつか借りて、予めこの階をボクの戦い易いようにしておいたんだ。……キミたちを倒すためにね」


美希「ふーん……」


817 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/10(日) 21:53:45.74 ID:E6eoG1uYO

暗黒魔道士「……悔しいけど、どうやらボクの負けみたいだ。こう光が多いと、ボクは満足に戦えないだろう」


美希「じゃあミキ、先に進んでもいい?」


暗黒魔道士「ああ……。好きにするといい」


美希「ありがとーなの!」ニコッ



美希「バイバイ、アンコクさん! なかなか強かったよ? あはっ☆」

スタスタ…



暗黒魔道士「………」









暗黒魔道士「………………ククク……」



暗黒魔道士「…………アスピル」


シュイィィィィンッ!!




美希「っ……ぁ……!?」ガクッ


818 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/10(日) 21:56:40.14 ID:E6eoG1uYO

暗黒魔道士「ミキ。キミみたいに才能があるっていうのは一概に有利とは言えないのかもしれないね」

スタスタ…


美希「ううっ……!」


暗黒魔道士「何故なら、大抵の者は自分の才能に慢心して油断してしまうからだよ」

暗黒魔道士「その点、ボクのように才能の無い者は決して慢心したりしない。自分の底を知っているからね」

暗黒魔道士「用心深く敵を観察し、周到に罠を張り巡らせて、本当に勝てると思った時にしか戦いを仕掛けない」

暗黒魔道士「キミが魔道士で良かった。『アスピル』で魔力さえ吸い取ってしまえば無力なんだから」



美希「………」スッ



暗黒魔道士「……ブリザガ」

コォォ…シャキーン!!


美希「あぅ……!」



暗黒魔道士「エーテルを持っているんだね。だけど回復はさせないよ」



美希「む〜……」



暗黒魔道士「本当にキミはボクを驚かせてくれた。でも、これで本当に終わりだ。今この瞬間こそ……」


暗黒魔道士「天才が凡人に負ける瞬間だッ……!」ゴゴゴゴ


ビュオオオッ…!!



美希「………」


819 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/10(日) 21:58:42.03 ID:E6eoG1uYO

美希「……もー、わかってないなー」スクッ

美希「言ったでしょ? ミキ、負けられないって」



暗黒魔道士「強がりはよすんだ。魔力を失った今度こそ、キミに成す術はないんだから……!」

暗黒魔道士「…………トルネド!」バッ

ビュオオオッ!!




美希「アンコクさんってさ、その風の魔法好きだよね」



暗黒魔道士「……ああ。トルネドはボクが最も得意とする魔法だからね」


ビュオオオッ!!



美希「でも、ザンネン。そんな風じゃ、ミキは怯まない」ザッ



暗黒魔道士「負け惜しみかい? ボクに負けるのが悔しいかい……!」


ゴオオオオオッ!!



美希「そうじゃないよ……!」ゴゴゴゴ

美希(たぶん、できる。だってミキ、一度見てるもん)

美希(お願い、力を貸してほしいのっ……!)


…パァァァーー!!



暗黒魔道士「! な、なんだ……? 魔法……?」

暗黒魔道士「そんなはずはない……! ミキはすでにケアルすら使えないはず……!」


820 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/10(日) 22:02:02.94 ID:E6eoG1uYO

美希「ハニーにもらったネックレスが光って……」

美希「……うん、わかった。強く願うんだね……!」ギュッ




美希「力を貸してほしいの! ……シアちゃんっ……!」バッ


ビュオオオッ…!!




暗黒魔道士「!?」

暗黒魔道士「この風は一体どこから……!? ま、まさか……!?」



美希「そんな扇風機みたいな風、すずしいだけだって思うな!」

美希「ホントの風……ミキが教えてあげるのッ!」

美希「はあああああっ……!」

ビュオオオッ!!




美希「…………ミールストームッ!!」


ゴオオオオオオッ!!




暗黒魔道士「ば、バカな……!? これは魔物の技……!?」

暗黒魔道士「ぐっ……! ぼ、ボクの魔法が押されて……!」



ゴオオオオオオーーッ!!




暗黒魔道士「うわぁぁあああぁぁっ!!」



ドゴオオォォンッ…!!!


821 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/10(日) 22:05:07.27 ID:E6eoG1uYO

暗黒魔道士「……ぐ…は……!」ヨロッ

暗黒魔道士「……はぁ、はぁ……! くそっ……」

暗黒魔道士「ぼ、ボクは……負けたのか……?」

暗黒魔道士「あんなに……周到に用意したというのに……」


美希「……はぁ、はぁ……」

美希「……まだ、やる?」


暗黒魔道士「………」

暗黒魔道士「正真正銘、ボクの負けだ……」

暗黒魔道士「ミキ、まさかこんな技を隠していたなんて……」

暗黒魔道士「ボクが勝てる要素なんて、最初から無かったようだね……。キミはボクと違って本当に天才だったんだ……」


美希「……それは違うよ。アンコクさんに勝つことができたのはミキだけの力じゃないもん」

美希「ミキね、貴音から聞いてたから知ってたの。アンコクさんがアスピルっていう魔法を使うこと」

美希「だから、事前に対策を考えることができたんだ」

美希「それに、この……ダークなんとかっていう石を見つけられたのは、春香が階段で転んでくれたおかげだし」

美希「テレポの使い方だって、あずさに教えてもらわなければ知らなかったの」

美希「最後の技もそう。ミキの大切なお姉ちゃんの力を借りて、やっとできたんだよ?」

美希「だから、これはミキひとりの勝利じゃないの」


暗黒魔道士「………」

822 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/10(日) 22:06:41.92 ID:E6eoG1uYO

美希「それとね? ミキ、天才って言われるのあんまり好きじゃないの。だってミキ、天才なんかじゃないし」


暗黒魔道士「……勝者ゆえの余裕にしか聞こえないよ、ミキ。キミがボクの力を上回っていたのは確かなんだ」

暗黒魔道士「妬ましい……。キミのその才能が、妬ましいよ……」


美希「才能がどうとか、ミキ的にはカンケーないって思うな。がんばらなきゃなーんにもできないし、がんばればなんだってできる」

美希「最後に笑うのは、たくさん努力した人なんじゃないかな?」


暗黒魔道士「………」

暗黒魔道士「…………ふふ。キミは本当に残酷だ……」

暗黒魔道士「まあいい……。キミたちはすぐに死ぬことになるんだから……」

暗黒魔道士「……コトリ様の手によってね……!」


美希「!」


暗黒魔道士「せいぜい束の間の勝利を喜ぶといい……」


スゥゥゥーー…



美希「…………消えちゃったの。あふぅ」

美希(……小鳥、ホントにノリノリなんだね)

美希(そういえば、死んだらどうなっちゃうのかな。前に貴音が死んじゃった時はミキが生き返らせたらしいけど、ミキ、その時のこと全然覚えてないし)

美希(ミキ、そーいう魔法使えるのかな……?)


823 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/21(土) 08:12:20.76 ID:udhaJQTNo
824 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/04(土) 10:51:39.87 ID:Ijlr45TlO
遅れてごめんなさい
待ってくれてる人はもういないかもですけど一応今日か明日の夜投下します
825 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/04(土) 14:15:42.83 ID:0g11BZLOo
ふざけんな居るっつーの!!
ずっと待ち続けてるっつーの!!

お疲れ様です、ご無理はなさらず
826 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/11/04(土) 20:16:17.22 ID:Ijlr45TlO
ー 月の地下渓谷 B10F ー


貴音「…………ふれあ!」バッ


ブゥゥゥゥン…

ババババババババッ!!

ドゴオオオオオンッ!!

 

ダークバハムート「……ククッ、効かぬわ」


ダークバハムート「……ふんっ」ブンッ

ザシュッ!!


貴音「っ……ぐぅ……!」ヨロッ

貴音「……けあるが」

シャララーン! キラキラキラ…!


ダークバハムート「……ほれ、早くせぬと後手に回るばかりだぞ?」シュンッ


貴音「! ……へいすと!」

カタカタ…シャキーン!


ダッ…!


貴音「……ふれあ!」バッ


ブゥゥゥゥン…

ババババババババッ!!

ドゴオオオオオオンッ!!



ダークバハムート「…………」バサッ


827 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/04(土) 20:18:28.76 ID:Ijlr45TlO

ダークバハムート「我に通常の魔法など通用せぬ。我を倒したくばメガフレアで来い、タカネ」



貴音「………」

貴音「……どうやらそのようですね。次からはそうすることにします」


ダークバハムート「お前のことだ、敢えてフレアを撃ってきたことに何か理由があるのだろう?」


貴音「はい。『ふれあ』と『めがふれあ』は何か共通項があるのではないか、と思ったのです」

貴音「わたくし自身はまだ『めがふれあ』を扱い慣れておりません故、参考になる部分があれば、と」


ダークバハムート「ふっ……頭の回る女よ。その様子だと、骨は掴めたようだな」


貴音「おかげさまで」ニコッ

貴音「めがふれあの太陽爆発のいめぇじが自分の中で固まってまいりました」


ダークバハムート「ククッ……!」

ダークバハムート(魔法を使う上で一番重要なのはイメージ。頭にイメージを思い浮かべ、それを魔力でもって展開していくことになる)

ダークバハムート(新しく習得した魔法を想像し発動するのは、普通ならばなかなか慣れぬものだ)

ダークバハムート(タカネほどの者にもなると覚えたての魔法であっても短い時間で自分のものにしてしまう、か)

ダークバハムート(だが……)


828 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/04(土) 20:21:11.50 ID:Ijlr45TlO

ダークバハムート「タカネよ、言っておくがお前は我に勝利する為の条件を一つクリアしたに過ぎぬ」


貴音「ええ、十分に存じております」

貴音(めがふれあをものにするのは、あくまで最低条件。それよりもその次の段階の方が厄介と言えましょう)

貴音(そう。武器の扱い方を理解したとしても、それを撃つ機会がなければ意味は無い)

貴音(如何にして隙を全く見せないばはむーと殿を欺き、隙を作るか……)


ダークバハムート「そういうことだ。自らを脅かす攻撃が来ると分かっていて、それをみすみす見逃す者などいない」

ダークバハムート「隙など見せぬ。全力で止めさせてもらうぞ……!」


貴音(やはり、心を読まれるというのは厄介ですね……。こちらが何をしようとしているのかが全て筒抜けなのですから)

貴音(いっそここは無心に……)

貴音(! ……いえ……)


ダークバハムート「む? どうした? 何か良い策を思い付いたのか?」


貴音「……ええ」ニコッ

貴音(これならば、或いは……!)


829 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/04(土) 20:23:56.31 ID:Ijlr45TlO

貴音「………」



ダークバハムート(動かぬ……何を考えている……?)



貴音「………」



ダークバハムート(……タカネの心の声が聴こえぬ。いや、これは……)



貴音(……醤油、味噌、豚骨、塩……)



ダークバハムート「……?」



貴音(……葱、めんま、海苔、もやし、ちゃあしゅう、白菜、胡椒……っ!)ゴゴゴゴ



ダークバハムート(なんだこれは? 一体何の呪文なのだ……?)



貴音(……めんかたからめやさいだぶるにんにくあぶらましましッ!!)クワッ



ダークバハムート(意味は理解できぬ……が、何やらタカネから鬼気迫るものを感じるぞ……!)



貴音「……!」ダッ

タタタタ…



ダークバハムート(来るか……! しかし全く行動が読めぬ)



貴音「……れびてと」ポワッ

ビュィィンッ…


ダークバハムート「……上か!」タンッ

バサァッ…


830 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/04(土) 20:26:04.36 ID:Ijlr45TlO

貴音「……はああああっ!」ゴゴゴゴ



ダークバハムート「莫迦め、遅いわ!」ブンッ


ーパシュンッ


ダークバハムート「分身……! 本物は……」キョロキョロ



貴音「下におりますよ、ばはむーと殿」



ダークバハムート「! ぬんっ!」ブンッ


貴音「……てれぽ」

…シュンッ



ダークバハムート「今度は瞬間移動……! 何処へ消えた……?」



貴音「……咄嗟に理解できない物事に直面した時、一瞬人間の頭は真っ白になり判断が鈍ってしまうといいます」

貴音「それは神である貴方も同じなのですね」



ダークバハムート「ちっ! また上に!」タンッ



貴音「……間一髪、詠唱が間に合いました」




貴音「…………めがふれあ」バッ



ダークバハムート「!」



ブゥゥゥゥン…

ババババババババッ!!!


ドッゴオオオォォォオオンッッ!!!


831 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/04(土) 20:27:54.59 ID:Ijlr45TlO

貴音「……はぁ、はぁ……」

貴音「……手応え……有りっ……!」




ダークバハムート「…………ぐ……」

ダークバハムート「……ククク……!」

ダークバハムート「我に傷を付けるか、タカネよ……!」



貴音(深手を負わせるまでには至りませんでしたが、ようやく一撃)

貴音(戦いは、これからです!)



ダークバハムート「ククク……! ハァーッハッハッハ!!」

ダークバハムート「愉快だぞタカネ……!」



貴音「ばはむーと殿……?」



ダークバハムート「遂にお前はメガフレアを会得し、我に傷を付けるに至った」

ダークバハムート「これで漸く我らは対等になったのだ……!」


ダークバハムート「待っていたぞ、この時を!」ゴゴゴゴ



貴音「!」

貴音(ばはむーと殿の魔力が……恐ろしいほど膨れ上がっていく……!?)


832 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/04(土) 20:29:59.92 ID:Ijlr45TlO

ダークバハムート「お前に時間をやろう」



貴音「? どういう意味です?」



ダークバハムート「今から五つ数える。その間にお前が我を倒せなければ……」

ダークバハムート「今度は、我のターンだ……!」



貴音「………」

貴音(あの方は心から戦いを愉しんでいるように見受けられます。次は本気を出されることでしょう)

貴音(本気のめがふれあをまともに受ければ、恐らくわたくしの敗北は必死……)

貴音(ならば、こちらも全力を尽くさねば……!)




貴音「……はあああああっ……!」ゴゴゴゴ


833 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/04(土) 20:32:41.17 ID:Ijlr45TlO

ダークバハムート「さあ、足掻いてみせよ、気高き人間よ。神である我を討てる力を見せてみよ……!」

ダークバハムート「…………ひとつ」



貴音(考えるに、手数での勝負は恐らく悪手。ようやく慣れてきたとはいえ、めがふれあを何度も撃つのは流石に堪えます)

貴音(ならば……!)ゴゴゴゴ



ダークバハムート「……ほう、一撃に賭けるか。時間一杯を魔力の練成に使うつもりなのだな」

ダークバハムート「それもまた一興……!」

ダークバハムート「…………ふたつ」



貴音(まだ……これではまだ足りません……)

貴音(もっと……あの方に対抗し得る力を……!)ゴゴゴゴ


834 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/04(土) 20:34:31.42 ID:Ijlr45TlO

ダークバハムート「ククッ……! 恐るべき魔力……! 人の身でここまでの魔力を持つ者などそうはいまい……」

ダークバハムート「血が沸き立つぞ……!」

ダークバハムート「…………みっつ」



貴音(身体が熱い……。まるで太陽に焼かれる様な気分です……)

貴音(全てを焼き尽くす、原始の炎……)

貴音(今は焼かれてもいい……。それでばはむーと殿に勝てるのなら……! ばはむーと殿を救えるのならっ……!)ゴゴゴゴ



ジュワァァ…!!



ダークバハムート「! ……ふ、タカネの魔力で大気の温度が上昇しているか……」

ダークバハムート「もはやお前は、人を超える者よ!」

ダークバハムート「…………よっつ!」



貴音「………」

貴音「………」

貴音「………」

貴音「………………整いました……!」ゴゴゴゴ



貴音「貴方を討ち、その魂をお救いできるのならば、わたくしは鬼にでも悪魔にでもなりましょう……!」

貴音「…………全ての魔力を、この手にっ!!」

貴音「…………めがふれあ!!」バッ



ーーーーカッ!!



835 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/04(土) 20:36:53.45 ID:Ijlr45TlO
ー 月の地下渓谷 B1F ー


真「おーーい! あずささーーん!!」

雪歩「どこですかーー!」



真「……うーん、見当たらないなぁ」

雪歩「隅から隅まで探してもいないってことは、これってもしかして……」

真「………」

雪歩「あ、あずささん、大丈夫かなぁ」

真「……雪歩、ちょっとついて来て!」

雪歩「? う、うん」

タタタタ…




雪歩「ここは……私たちが最初に来た場所?」

真「ボクたちってさ、クリスタルの力でここまで来ただろ? だからもう一回クリスタルを使えばあの館に戻ることもできるんじゃないかと思って」

真「……クリスタル、ボクたちをあの館へ帰してくれ!」スッ


…シーーン


雪歩「…………何も起こらないみたいだね」

真「ダメかぁ」

雪歩「あの時はみんながいたし、やっぱり私たちが全員揃わないとクリスタルの力を発揮できないんじゃないかな?」

真「どうやらそうみたいだ」

真「でも、そうなるとあずささんがあの館に戻った可能性はなくなったね」

雪歩「あ、そっか。真ちゃん頭いい!」

真「へへっ、まあね!」


836 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/04(土) 20:39:59.69 ID:Ijlr45TlO

真「……状況を整理しようか」

真「まず、最初にあずささんをこの地下1階にひとり残してボクらは先に進んだ」

雪歩「それで、次は真ちゃんが地下2階に残って戦ったんだよね」

真「うん。でも、今こうして雪歩とは合流できた」

雪歩「私がいたのは真ちゃんのすぐ下の階みたいだったから、地下3階ってことになるのかな?」

真「そうだね。そして、雪歩はあの後他のみんなとは会ってないようだから、他のみんなは地下3階よりももっと下の階にいるってことになる」 

雪歩「ここで戦ってたはずのあずささんも、きっとそうだよね……」

真「……だと思いたいんだけど、あの人はたまに物理法則とか無視するからなぁ」

雪歩「あ、あはは……」

真「とにかく、地下4階以降をしらみつぶしに探せばきっとみんなと合流できるはず。……いや、もしかしたらもう小鳥さんのところに誰かたどり着いているかも」

雪歩「それじゃ、私たちも……」

真「うん。先へ進もう」

スタスタ…


837 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/04(土) 20:42:12.24 ID:Ijlr45TlO

真「……ところで雪歩。ずっと気になってたんだけど、アダマンアーマーはどうしたの?」

雪歩「えっと……魔物さんと戦ってる時に壊されちゃって……」

真「そうだったんだ……。でもすごいじゃないか。アダマンアーマーなしで魔物に立ち向かったってことなんでしょ?」

雪歩「……やっとね、分かったんだ。私もいつまでも臆病なままでいられない……って」

真「見つけたんだね、自分の大切なもの」

雪歩「うん。でも、きっと私ひとりじゃ手に入れられなかったかも。たくさんの人たちに支えられて、私は生きてるんだなあって」

真「……いい顔になったね、雪歩!」ニコッ

雪歩「そ、そんなことないよぅ……///」

真「でも、大切なものを見つけたのはボクだって同じだよ。ベヒーモスとの戦いで勝ち取った女子力で小鳥さんに勝負を挑むつもりさ!」

雪歩「う、うん、期待してるね」



…ドゴオオォォン…!!



雪歩「!」

雪歩「真ちゃん、今の……!」

真「……魔力がないボクでも分かったよ。とてつもない魔法だって」

雪歩「……急いだ方がいいのかも」

真「……だね!」


タタタタ…


838 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/04(土) 20:44:14.77 ID:Ijlr45TlO
ー 月の地下渓谷 B11F ー


ヒュゥゥゥ…


ガラ…



貴音「……っ」ヨロッ

貴音「はぁ、はぁっ……」

貴音(……骨を掴んだとはいえ、全力のめがふれあは身体への負担が普通の魔法とまるで違う……)

貴音(やはり人の身には過ぎた魔法、ということなのでしょう……)

貴音「………」チラッ

貴音(地形がかなり変わってしまいましたか。太陽爆発を以てすれば、それも当然……)

貴音(破壊に於いて最強の威力を発揮する魔法……。さしずめ神の裁きといったところですか)




「…………違うな。神の裁きはこれからだ」




貴音「!!」


839 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/04(土) 20:46:23.37 ID:Ijlr45TlO

ダークバハムート「…………ククッ!」


貴音「ばはむーと殿……っ!」


ダークバハムート「よもやここまで使いこなすとはな……。流石に今のは効いたわ……!」

ダークバハムート「………………いつつ。時間だ……」



貴音「く……届きませんでしたか……!」ガクッ



ダークバハムート「……ククク、躰の奥底から湧き上がる……! この得体の知れぬ感情は何だ……?」ゴゴゴゴ


貴音(全力でも届かないとは……甘く考え過ぎていたようです……)

貴音(やはり人が神を超える理など、存在しない……!)

貴音(皆……申し訳ありません……。わたくしでは神に勝つことなど……)
 


ダークバハムート「さあ、悔い改めよ。我が力の前にひれ伏せ……!」



ダークバハムート「ーーーーメガフレア」



貴音「ーーっ!」



ーーーーカッ!!



840 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/04(土) 20:50:58.57 ID:Ijlr45TlO
ー 月の地下渓谷 B5F ー


ビューーン…


亜美「うわー! メッチャ楽チンだよこれー!」

真美「んっふっふ〜♪ レビテトとヘイストを同時にアレすればこんなカンジに武○術っぽくなるのだ!」

亜美「むー、白魔法もなかなかベンリなのが多くていいな〜」

真美「えー、でも黒魔法の方がハデっぽくてうらやましいけどな〜」

亜美「………」

真美「………」

亜美「……ま、どっちもどっちってカンジかね」

真美「そーだね。どっちにもいいトコロがあるっしょ」



真美「……それにしてもさ、さっきのすごい音」

亜美「うん。はげしすぎて思わず飛び起きちゃったよね」

真美「ずーっと下の方から聞こえたけど……誰かが戦ってるんだよね」

亜美「そーだと思う。それに亜美、なんとなく思うんだ。さっきの爆発、メガフレアなんじゃないかって」

真美「ってことは……お姫ちん?」

亜美「たぶん……」


841 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/04(土) 20:55:18.26 ID:Ijlr45TlO

亜美「ねえ真美、お姫ちんはバハムートと仲良しなんだよね?」

真美「うん。バハムートの家の子たちとも仲良かったっぽいし」

亜美「お姫ちんが戦うとしたら、やっぱバハムートになるのかな……」

真美「………」

真美「……信じるしかないっしょ。あのお姫ちんが負けるなんて想像できないし」

亜美「ん……そーだよね」




真美「…………っと」キキーッ

亜美「おわっ……急に止まってどーしたのさ?」

真美「見て、亜美。この部屋だけメッチャボロボロになってる」スッ

亜美「……ホントだ。ここで戦いがあったのかな?」

真美「そーだと思う。誰かいるかもしんないし、見てみる?」

亜美「うん! 誰かいるといいね!」

真美「よーしっ、タンサク開始ー!」


842 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/04(土) 20:59:20.01 ID:Ijlr45TlO
ー 月の地下渓谷 B10F ー


ヒュゥゥゥ…


ダークバハムート「………」

ダークバハムート「タカネが二発、そして我が二発……」

ダークバハムート「ふむ……壁も階段も跡形も無く消え去ってしまった。これでは後からここへ来る者が不自由するやも知れぬな」

ダークバハムート「……まあ、その様なことはどうでも良いが」

ダークバハムート「………」チラッ



貴音「………」

貴音「…………ぅ……」ピクッ



ダークバハムート「………」

スタスタ



貴音「……く……!」


ダークバハムート「まだ息があるか……」


843 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/04(土) 21:02:16.88 ID:Ijlr45TlO

貴音「……ぅ……はぁ……はぁ……」



ダークバハムート「………」

ダークバハムート「生物というものは、世に生まれ落ちてから皆等しく死へと向かっている」

ダークバハムート「我とてその全ての生物の思考を把握しているわけではないが、命が潰える瞬間にその者の胸中を支配するのは多くの場合、恐怖なのだと理解している」

ダークバハムート「タカネよ。お前は死が怖いか?」


貴音「……怖い……。そう……ですね……」

貴音「死に対する恐怖よりも……今は……後悔の念の方が強いかもしれません……」


ダークバハムート「……そうか。仲間との誓いを果たせぬことへの後悔か」


貴音「……そ、それも……ありますが……」

貴音「……一番強いのは、ばはむーと殿……貴方の想いに……応えられなかった気持ちです……」


ダークバハムート「我の想いだと……?」


貴音「はい……。そんなお姿になられてまで案じていた世界を……わたくし自身の手で救えないことへの……貴方に託された願いを叶えることができないことへの……後悔です……」


ダークバハムート「……莫迦な。世界のことなど既に我の知ったことではない。我は今や闇に身を窶した身だぞ」

ダークバハムート「タカネよ、お前は思い違いをしている。我はお前と戦うことができればそれで満足なのだ。その他のことはどうでも良い。お前が居ればこそ、我の真に存在する意味があるのだ……!」


貴音「………」

貴音「……ふ、ふふっ……。その言葉……捉え方によってはまるで愛の囁き、ですね……」


ダークバハムート「……愛だと!? 戯言を!」


844 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/04(土) 21:04:23.35 ID:Ijlr45TlO

貴音「わたくしが貴方の存在理由だと仰るのならば……わたくしを殺した後……貴方はどうなさるおつもりですか……?」


ダークバハムート「………」


貴音「……そもそも、神であられる貴方がたった一人の人間に執着するというのも不自然……うぐっ!」

ガシッ…!


ダークバハムート「……少々喋り過ぎだ」グッ 

貴音「ぁ……!」グッタリ


ダークバハムート「知った風な口の聞き方だな、タカネよ。お前は我の心の声でも聴いたつもりか?」

ダークバハムート「大人しくすれば幾許かの時間を与えてやろうと思っていたが……。今すぐにでも死ぬか?」

ダークバハムート「我がほんの少し力を籠めればお前の頭と胴体は離ればなれになるぞ?」ググッ


貴音「ぅ……ぁ……!」


貴音(ここまで……のようですね……)

貴音(後悔は残りますが……ばはむーと殿の手によってわたくしの命が終わるのならば、それは因果応報というもの)

貴音(ばはむーと殿が闇に落ちたのは、わたくしの責任なのですから……)

貴音(魂を救って差し上げることができないのであれば、せめてその手に……)






貴音(………………いえ、それは駄目です……!)

貴音(わたくしがここで諦めてしまっては、あの子たちの想いを無碍にしてしまうことに……!)

貴音(あの幼子たちの健気な願いを……無駄になどどうして出来ましょうか……!)


845 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/04(土) 21:07:38.22 ID:Ijlr45TlO

…ガシッ!


ダークバハムート「フン……どうした? やはり死が怖くなったか?」


貴音「ぐッ……!」ググッ


ダークバハムート「魔法でこそ比類無き強さを誇るお前も腕力は並の人間と変わらぬ。抵抗など無駄だと分からぬわけではあるまい?」


貴音「そ……れで……もっ……!」ググッ

貴音「おもい……だした……のです……!」

貴音「わた……くしは……しねない……っ!」


ダークバハムート「………」

ダークバハムート「……死を受け容れたかと思えば今度は抗うか。何がお前をそうさせる? お前も所詮は生に醜く縋り付く凡百の人間と同じなのか……?」


貴音「……ぐ……ぅ……」

ギリッ…!


ダークバハムート「…………フン!」

ブンッ!


…ドサッ!



貴音「がっ……は……!」


846 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/04(土) 21:10:12.52 ID:Ijlr45TlO

ダークバハムート「タカネよ、お前は足掻く姿も美しい。だがその姿は何故か我を混乱させる」

ダークバハムート「だから……もう、死ね」スッ



貴音「……お、お待ち……ください……! 一つだけ、お訊きしたいことがあります……」

貴音「……なぜ……先ほど、わたくしの思考を読まれなかったのですか……?」

貴音「そうすれば……わたくしに問わずとも、生への執着の理由が簡単にお分かり頂けると思うのですが……」


ダークバハムート「………」

ダークバハムート「死にゆく者は知る必要の無いことだ。我は邪神、冥土の土産すらも許さぬ」

ダークバハムート「ククク……! タカネよ、哭いてみせよ。お前の泣き顔が見てみたいぞ……!」



貴音「………」

貴音「……申し訳ありませんが」スッ


キラーン!


ダークバハムート「!!」




貴音「……けあるら!」

シャララーン! キラキラキラ…!



ダークバハムート「っ……愚かなっ!」ブンッ


ドゴオオオンッ!!




…スタッ

貴音「……はぁ、はぁ……!」


847 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/04(土) 21:13:37.78 ID:Ijlr45TlO

ダークバハムート「今の光はクリスタル……! 隠し持っていたのか……!」



貴音「……はい。欠片ですが」



ダークバハムート「クリスタルの輝きを目くらましに使うとはな」

ダークバハムート「闇属性の弱点を突いた、というわけか」



貴音「ばはむーと殿。冥土の土産は諦めることに致します」

貴音「それと、もしかしたらわたくしの泣き顔は貴方にお見せすることが出来ないかもしれません」



ダークバハムート「……ほう、強く出たな。相応の自信があるのだろうな?」



貴音「………」

貴音(はっきり言って策などありません。僅かに体力を回復出来たとはいえ、依然窮地は変わらず……)

貴音(ですが、気に掛かることが一つ)



ダークバハムート「ククッ! ならば行くぞ! 死んでおけば良かったと後悔させてやる!」

ブワッ…



貴音(残された魔力、大切に使わねば……!)

貴音「……てれぽ!」

シュンッ…




ダークバハムート「ぬ……! 逃げたか」


848 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/04(土) 21:17:19.40 ID:Ijlr45TlO

貴音(………)

貴音(この位置ならば瓦礫のおかげでわたくしの姿がばはむーと殿の視界には入らない)

貴音(今のうちにめがふれあの詠唱を)

貴音「っ……!」ゴゴゴゴ




ダークバハムート「隠れても無駄だ。瓦礫ごと吹き飛ばしてくれるわっ!!」

ダークバハムート「……ぬんっ!!」ブンッ

ドゴオオオンッ!!


貴音「!」


ダークバハムート「………」


ダークバハムート「……外したか」

ダークバハムート「何処だタカネ。何を考えている……?」



貴音(……やはり……)



ダークバハムート「………」

ダークバハムート「面倒だ。全て破壊してやる」ゴゴゴゴ



…ザッ

貴音「それには及びません」スッ



ダークバハムート「……現れたな!」



貴音「…………めがふれあ!」



ダークバハムート「!」



ーーーカッ!!



ドゴオオオォォォオオンッッ!!!


849 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/04(土) 21:19:35.02 ID:Ijlr45TlO

貴音「……く、はぁ、はぁ……!」ヨロッ



ダークバハムート「……ぐッ……!」ガクッ



貴音「……まだ稚拙ではあると……自覚はありますが、これでも幼き竜たちから受け継いだ力」

貴音「流石にばはむーと殿でも、三度めがふれあを受ければただでは済まないはずです」



ダークバハムート「……はぁ、はぁっ……! この我に、膝を着かせるとはなッ……!」



貴音「もちろん、これで決着とは思っておりません。ですが貴方もわたくしもお互いに手負い。ここからは五分の条件の戦いとなるはず……」



ダークバハムート「……どうやら……誤算だったようだな……。お前がここまで足掻くとは……クッ!」

ダークバハムート「……良かろう。ならば我も命を賭して戦おうぞ!」スッ



貴音「………」



ダークバハムート「………」


850 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/04(土) 21:22:44.16 ID:Ijlr45TlO

貴音「………」



ダークバハムート「………」





ダークバハムート「……いつまでそうして動かぬつもりだ。来ないのならば此方から行くぞ」



貴音「……わたくしが今、何を考えているかお分かりですか?」



ダークバハムート「…………何?」



貴音「いいえ、恐らく貴方は分からない。何故ならば……」

貴音「貴方は何らかの理由でわたくしの心を読めなくなっているのですから」



ダークバハムート「………」

ダークバハムート「……フン、だから何だというのだ。お前の手の内など限られている。今さら心を聴くまでもないわ」



貴音「………」

貴音「これは推測で、何の確証もありませんが……」

貴音「ばはむーと殿。もしや貴方から『神としての力』が何らかの理由で失われつつあるのでは? 心を読めなくなったのもその兆候かと」



ダークバハムート「………」

ダークバハムート「…………クククッ!」

ダークバハムート「先ほど言ったであろう? 我は既にお前の存在以外の事柄に興味などない!」

ダークバハムート「我自身にすら、な……!」ゴゴゴゴ




貴音「! ……これはっ……!?」


851 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/04(土) 21:24:03.09 ID:Ijlr45TlO

ダークバハムート「教えてやろう……。メガフレアの更に上を……!」



貴音(空気が……熱により膨張している!? 凄まじい魔力……!)

貴音(めがふれあは今からでは間に合わない。ならばせめて防御を!)

貴音「っ……!」ポゥ



ダークバハムート「何をしようと無駄だ。我の全てをお前に注ぐ」




ダークバハムート「受けよ。我の全力を!」



ゴオオオオオオオッ!!



貴音「くっ……!」ヨロッ




ダークバハムート「…………テラフレア」




ブゥゥゥン…




ーーーカッ!!




ズドオオオオォォォオオオオンッッ!!!


852 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/04(土) 21:33:54.51 ID:Ijlr45TlO
ー 月の地下渓谷 B7F ー


スタスタ

響「………」

響(……うぅ、さっきから何回もすごいデカい音が聞こえてて、みんなのことが心配になるんだけど……)

響(今は、自分のことに集中しなきゃいけないよね)チラッ

伊織「………」グッタリ

響「伊織、あとちょっとガマンだぞ。ちゃんと自分が助けてあげるからね!」




響「それにしても……」キョロキョロ

響「すっごい水浸しだぞ、ここ。洪水でもあったのかなぁ……?」

響「この階でやよいが戦ってるって伊織が言ってたっけ」

響「やよい、無事だといいけど……」



響「……おーーーーい!! やよいーー!!」

響「いたら返事してーーーー!!」




響「………」

響「………」

響「………………やよい……」

響「やよいーーーーっ!!」

タタタタ



ーーースゥゥ…



響「!」ピタッ



「…………お主が探しているのはこの少女かの」



響「お前は、あの時の……!」




ブルードラゴン「………」


やよい「………」グッタリ


853 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/04(土) 21:36:57.37 ID:Ijlr45TlO

響「やよいっ! ……やよいに何をしたんだっ!」



ブルードラゴン「敵意丸出しじゃのぅ。安心せい、ヤヨイは眠っているだけじゃ」

やよい「……zzZ」



響「えっ? そーなの?」



ブルードラゴン「この子は常人では考えられぬほどの魔力を放出した。それも長時間に渡ってな」

ブルードラゴン「この階層がほとんど水で埋め尽くされたのもこの子の魔力じゃよ」



響「うわ……すごいなやよい……」



ブルードラゴン「そして今は失った魔力を取り戻すために眠っているのじゃ」



響「そっか……良かった……」

響「でも、君は確かあの時襲ってきた親衛隊だよね? なんでやよいと一緒にいるの?」


ブルードラゴン「ワシはこの子と戦うことによって救いを得た。だからせめてこの子が眠っている間は魔物が襲って来ぬよう付き添っていただけじゃ」



響「そーだったのか! へへ、ありがと! やよいを守ってくれて!」



ブルードラゴン「……この子を連れて行くのか?」



響「うん。悪いけど自分たち、急いでるんだ」


854 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/04(土) 21:39:20.64 ID:Ijlr45TlO

ブルードラゴン「しかしそなたは既に一人背負っている。眠っているこの子を連れて行けるのか?」



響「ふふん! 自分完璧だから、二人くらい背負っても全然余裕だぞ!」



ブルードラゴン「そうか。ならば連れて行くが良い」



響「ありがと!」

スタスタ




響「……よっと」

やよい「……zzZ」

伊織「………」グッタリ

響「おっとっと……」ヨロッ




ブルードラゴン「……やはり厳しいのではないかの?」



響「だ、大丈夫だぞ、これくらい!」

響(伊織もやよいも頑張ったんだ。自分だっていいとこ見せなきゃだもんね!)



響「……って」バシャッ

響「うぎゃー! ここって水浸しだから歩いて渡れないぞ〜!」



ブルードラゴン(面白き娘じゃの)


855 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/04(土) 21:42:21.98 ID:Ijlr45TlO

ブルードラゴン「待っておれ。ワシが道を作ってやる」



響「えっ?」



ブオオオオオッ…!!



カチコチーン!



響「おおっ! 氷の道が出来た!」

響「助かったぞ! えっと……」



ブルードラゴン「? ……ワシの名前か? ワシはブルードラゴンじゃ」



響「ドラ左衛門、ありがとね!」ニコッ



ブルードラゴン「………」


856 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/04(土) 21:46:39.25 ID:Ijlr45TlO

ブルードラゴン「……そうじゃ。ヤヨイが起きたら伝えておくれ。ワシもまた仲間と共に歩むことにした、と」



響「? 事情がよく分からないけど、分かった。さっきのお礼に頼まれてあげる!」



ブルードラゴン「……不思議じゃの、そなたらは。見ていると何故か温かい気持ちを思い出させてくれる」



響「そう……かな?」

響「んー……そうだなー。それは、自分たちがアイドルだからだと思うぞ」

響「アイドルってさ、みんなに笑顔と元気をあげるのが役目なんだ」

響「やよいはきっと、君に笑顔をあげたんだ。心があったかいのはそのせいじゃないかな?」



ブルードラゴン「笑顔……か。ふむ」

ブルードラゴン「……引き留めてすまなかったの。さあ、もう行くが良い」



響「うん。……さよなら!」

スタスタ



ブルードラゴン「………」

ブルードラゴン(……さらばじゃ、あいどる。ありがとう、太陽の如き慈愛の少女よ)


857 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/04(土) 21:49:07.86 ID:Ijlr45TlO

ダークバハムート「………」

ダークバハムート「これが……我の全てだ、タカネよ」

ダークバハムート「我の……最後の技だ……」

ダークバハムート「テラフレアを受けて尚立っていることが出来たなら、お前は……」

ダークバハムート「……クッ……!」ヨロッ














…ザッ

貴音「………」





ダークバハムート「……クククッ!」ニヤリ


858 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/04(土) 21:51:28.48 ID:Ijlr45TlO
またやった
≫857から地下10階です
859 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/04(土) 21:53:33.92 ID:Ijlr45TlO

ダークバハムート「予感はあった。お前が欠片を持っていた時からな」

ダークバハムート「クリスタルの欠片がお前を護ったのだな」



貴音「………………はい」



ダークバハムート「クリスタルは想いを?ぐ石。お前を護りたいという強い願いがそれに籠められていた」

ダークバハムート「我にも聴こえたぞ。お前を護る声が」

ダークバハムート「そしてその声には聴き覚えがある」




ダークバハムート「願いの主は…………ぷろでゅうさぁであった」




貴音「………」




ダークバハムート「我の…………敗けだ」


…ドサッ


  

貴音「! ばはむーと殿!」

タタタタ


860 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/04(土) 21:57:38.48 ID:Ijlr45TlO

ダークバハムート「グハァッ……!」

貴音「ばはむーと殿……」

ダークバハムート「……先ほど言ったな。『我も命を賭して戦う』と」

ダークバハムート「テラフレアは生命を燃やす技……。それ故、後には何も残らぬ」

ダークバハムート「……後はただ、死を待つのみだ」

貴音「っ……!」



貴音「ばはむーと殿、わたくしは……!」

ダークバハムート「っ……ハァ、ハァ……」

ダークバハムート「無様な最期と嘲笑うか? 神と名乗った者がこの様な末路……」

ダークバハムート「……否。お前はそうは思わぬだろうな」

ダークバハムート「お前は心優しき女。我の様な成れの果てにすら慈悲を持つに違いない……」

貴音「違うのです!」

貴音「わたくしはずっと苛まれてきました。あの時、貴方を一人小鳥嬢の元へ残してしまったことに」

ダークバハムート「何を莫迦なことを。あれは我の判断だ。お前がまだコトリと戦うレベルに達していないと、そう判断しての行動だ」

ダークバハムート「お前に非があるわけがなかろう」

貴音「いいえ。『でじょん』なる魔法にて地上まで戻されたあの時、ばはむーと殿を助けに向かうこともわたくしには出来たのです」

貴音「それをしなかったのは、魔導船にて地球へ向かえる、仲間たちに会えると知って浮かれてしまったわたくしの心の弱さなのです」

ダークバハムート「……強情な女だ。それこそ我がお前に託した願いだ。重ねて言うが、お前に非があるはずもない」

貴音「……もちろん、心優しき貴方ならば、きっとそう言ってくださると分かっておりました」

貴音「だから、わたくしは無意識のうちにそれに甘えようとしたのです。貴方のその言葉で、わたくしは許されようと……!」

ダークバハムート「………」


861 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/04(土) 22:03:20.59 ID:Ijlr45TlO

ダークバハムート「……一つ、教えてやろう」

ダークバハムート「我が神としての力を失いつつあるというお前の推測は、正解だ。我は既に神の資格を失った」

ダークバハムート「何故だと思う?」

ダークバハムート「我が…………タカネ、お前を愛しいと強く想ってしまったからだ」

貴音「そう、ですか……。ばはむーと殿がわたくしを愛しいと……」

貴音「……………………え?」

貴音「なっ……///」カァァ

ダークバハムート「神は全てを平等に愛さねばならない。……だが、我はお前を……」

ダークバハムート「…………タカネ?」

貴音「おっ……お戯れを……! わ、わたくしは、そのっ……い、愛しいなどと急に言われましてもっ……///」

ダークバハムート(……愛い奴め)


862 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/04(土) 22:06:27.28 ID:Ijlr45TlO

ダークバハムート「……済まぬ。お前がそこまで初だとは思わなかった」

貴音「うぅ……その様な、あ、愛の言葉、言われたのは初めてです……」

ダークバハムート「ふ……」



ダークバハムート「……矢張り、我には後悔などない」

貴音「…………ばはむーと殿?」

ダークバハムート「お前は我がコトリに敗れ、闇へ堕ちたことに責任を感じている。或いは、神ですらなくなったことにも」

ダークバハムート「だが、それで良かったと我は考える」

ダークバハムート「何故なら、愛がこの様に素晴らしいものだと気づくことが出来たのだからな」

貴音「…………」

ダークバハムート「待つ時間は焦がれ、想いを馳せると寂しさと愛おしさの入り混じった何とも言えぬ気分になる」

ダークバハムート「だが、その辛さが会った時には天に昇る程の快楽へと昇華する」

ダークバハムート「本当に不思議な感情だ」

ダークバハムート「……それに気づかせてくれたのは、お前だ、タカネよ」

ダークバハムート「お前は我を救うことに固執していたようだが、それは全て無駄だったのだ」

ダークバハムート「何故ならば……我は最初にお前と出会った時点で既に救われていたのだからな」

貴音「その様な、勿体ないお言葉……!」


863 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/04(土) 22:10:58.43 ID:Ijlr45TlO

ダークバハムート「……もう一つ。お前はこの期に及んで隠しているつもりのようだが、敢えて言わせてもらおう」

ダークバハムート「お前は……お前たちは、この世界の人間ではないな?」

貴音「! 何故、それを……!」

ダークバハムート「分からいでか。偶に発するお前の奇妙な言動を考慮すれば容易に察知することが出来たぞ」

貴音「……すみません。何と説明すれば良いか分からなかったので……」

ダークバハムート「良い。我は滅びる運命だ。お前が本当は何処から来たのか。冥土の土産は持たずに逝こう」

ダークバハムート「それに恐らくは、我の測り知れぬ力が働いているのであろう。あのぷろでゅうさぁという男を見た時にそう思った」

貴音「………」


864 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/04(土) 22:13:45.05 ID:Ijlr45TlO

ダークバハムート「だが、お前が何者であろうと、理解を超えた存在であろうと、我の中に芽生えたこの感情は変わらぬ」

ダークバハムート「死ぬまでの僅かな時間、お前を愛することを許せ」

貴音「ばはむーと殿っ……」

ダークバハムート「……その様な悲しい顔をするな。戦っている時はああ言ったが、本心はお前の悲しむ顔など見たくはないのだ」

貴音「………」

貴音「……前言を撤回させて頂いても、よろしいでしょうか……」

ダークバハムート「……構わぬ」

貴音「貴方に泣き顔を見せないと言いましたが……」

貴音「どうやら……っ」ウルッ

ダークバハムート「………」

ダークバハムート「泣くな。……いや、存分に泣け。それで晴れるのならば」

貴音「っ……ひぐっ……!」ポロポロ

貴音「ううっ……!」


865 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/04(土) 22:18:30.54 ID:Ijlr45TlO

ダークバハムート「……ガハァッ!」

貴音「ば、ばはむーと殿っ!?」

ダークバハムート「……最期は近いようだな……」

貴音「ぅくっ……!」ポロポロ

ダークバハムート「タカネよ、頼みがある……」

貴音「は……はいっ……!」

ダークバハムート「最期は愛する女の腕の中で逝きたい……」

貴音「っ……わ……分かり……ました……」ダキッ

ダークバハムート「……ああ、温かいな……。お前はこんなにも温かいのだな……」

ダークバハムート「今この瞬間は……恐らく何ものにも勝る……」

貴音「うぅ……っ!」

ダークバハムート「……コトリに……会ったら……伝え…て…くれ……。お前との時間……悪く無かった……とな……」

貴音「は、はい……! 必ず……!」

ダークバハムート「それと……あの子たちに……済まぬ……と……」

貴音「ぐすっ……! はいっ……!」

ダークバハムート「た……タカネ……」

ダークバハムート「お……まえ……に……会え……て……」

ダークバハムート「し……あ……わせ……だ……っ……」


ダークバハムート「」ガクッ



貴音「っ……ぁ……!」




貴音「〜〜〜〜っ!!」ポロポロ


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