ほむら「巴マミがいない世界」

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211 : ◆c6GooQ9piw [saga]:2016/03/18(金) 20:08:05.68 ID:SM89dPfeO
落ち着きさえすれば、こっちのものだ。

さやかの予想通り、魔女の強さは大したことはなかった。
契約したての頃ならともかく、今のさやかなら問題なく倒せるレベルだ。

さやか「これで……終わりよ!」

さやかの斬撃が直撃し、魔女はふたつに切り裂かれた。
ほぼ間違いなく、これでとどめを刺せたはずだ。。

しかし、まだ警戒は解かない。
確実に倒したとわかるまでは、魔女を相手に気を緩めてはならない。

結界の崩壊を確認し、ようやくさやかはわずかに息を吐いた。
やはり、普段に比べれば張り詰めていた部分はあったのだろう。
しかし、それでこれだけ冷静に動けたのだから、上出来だ。

さやかは、これまでの戦闘経験により、未熟ながらも安定した強さを身に付けつつあった。
212 : ◆c6GooQ9piw [saga]:2016/03/18(金) 20:12:54.75 ID:nRwpWRkhO
さやか「まどかっ!」

さやかは、倒れているまどかに駆け寄った。

まどか「……さやか、ちゃん?」

反応があったことに、思わず胸を撫で下ろす。
外傷もないし、まず大丈夫だろう。

さやか「無理しないで。あんた、魔女に襲われたのよ。もう倒したから安心して」

まどか「……」

どうやら少し混乱しているようだ。
無理もない。

さやかも、自分が魔法少女じゃなければ魔女を見ただけで逃げ出すだろう。
魔法少女として戦った経験がある今だからこそ、魔女の恐ろしさがわかる。

以前、魔女の口づけを付けられた人を追いかけようとしたことがあったが、それがどれだけ危険なことだったか。
改めて思い出すと、背筋が冷たくなる。

さやかとは違い、まどかは今日初めて魔女の恐ろしさを目の当たりにしたのだ。
ショックがあって当然だろう。

しばらくすると、まどかはどうやら現状を把握したようだった。

さやか「まどか、大丈夫?」

まどか「うん、助けてくれたんだね。ありがとう」

さやか「どういたしまして」

助けられてよかった。
もし間に合っていなかったらと思うと、ゾッとする。
213 : ◆c6GooQ9piw [saga]:2016/03/18(金) 20:15:30.83 ID:nRwpWRkhO
さやかが胸を撫で下ろしていると、ふとまどかが何かを思い出したかのように口を開いた。

まどか「あ、そうだ。仁美ちゃんもここにいたんだ。魔女の口づけで、おかしくされちゃってて」

さやか「え……仁美が?」

仁美の名前を聞き、さやかは思わず今日のことを思い出した。

まどか「そうなの。他にもたくさんの人が操られて、一緒に死のうとしてて……」

さやか「……」

まどかの声が遠くに聞こえるようだった。
妙に現実感が薄れていく。

さやか(そうか、仁美が……)

思考が、途切れる。

魔が差した、としか言えないのかもしれない。

さやか「……」

しかし、そのとき確かにさやかの心に、ひとつの考えが浮かんでしまった。
214 : ◆c6GooQ9piw [saga]:2016/03/18(金) 20:16:34.16 ID:nRwpWRkhO



───だったら、助けなければよかった?


215 : ◆c6GooQ9piw [saga]:2016/03/18(金) 20:19:00.60 ID:v30v4Rp4O
さやか「ッ!?」

ゾクリ、と体が震えた。
心臓の音が、やけに大きく聞こえる。

さやか(あたし、今……)

足元が崩れたかのような錯覚を覚えた。
視界が揺れる。

さやか(……何を、考えた?)

理性は否定しようとした。
そんなはずがない、そんなことを考えるはずがない、と。

しかし、他の誰でもない自分の心情だ。
誤魔化せるはずがない。

さやか「あ……」

さやかは、自分が何を思ったのか、改めて知ってしまった。
自分で自分が信じられなかった。

さやか(あたし、は……)
216 : ◆c6GooQ9piw [saga]:2016/03/18(金) 20:21:11.92 ID:v30v4Rp4O
まどか「……さやかちゃん?」

さやか「!」

まどかに声をかけられ、ハッとする。
さやかの様子が変わったことを不審に思ったのだろう。

さやか(まずい、今は……)

顔を合わせられなかった。
今まどかに顔を見られたら、全てを見透かされてしまう気がした。

まどかには、こんな自分の汚い部分、卑怯な部分を知られたくなかった。

さやか「……ごめん、魔力の反応があった。あたし、もう行かなきゃ」

顔を背けたまま、早口で伝える。
幸いにも、まどかはそれを緊迫した状況故のことだと受け取ったようだった。

まどか「えっ? あっうん、わかった。頑張ってね」

さやか「ッ……」

まどかの優しさが、今のさやかにはつらかった。
言葉が胸に刺さる。

さやか「……ありがとう。仁美のこと、よろしくね」

まどか「うん、任せて!」

返事を聞くや否や、さやかは駆け出した。

魔力の反応などありはしない。
ただ、1秒でも早くこの場所を離れたかった。
217 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/03/19(土) 12:44:26.06 ID:ljYZHXIMO
よく上条が叩かれてるのを見るがさやかが可愛く見えるのは視聴者視点であって設定的には普通若しくはブスの可能性だってあるんだからな
ブスにはどんなに親しくても優しくされても惚れないだろ
218 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/03/19(土) 12:57:11.98 ID:btdJYUwgo
例え相手がドブスだろうと、親切にされたらまずはありがとうだろ
その上で恋愛が成就しないのはしゃーないが

ちゃんと告白した上でふられたならさやかはあんなに堕ちなかっただろうとも思うけどね
こうして箱の魔女と戦う前なら、仁美を助けなければ……と思う事もなかっただろうし
だって仁美が生きてても死んでても自分がふられた事実に変わりはないから
219 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/03/19(土) 21:10:44.80 ID:F3ePMwmbO
嫌な考えがへばりついたときって、ホント最悪。乙です
220 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/03/19(土) 21:20:26.64 ID:BibHSGrU0

まあまどぽの各ルートとか見るにさやかが告白できない意気地無しで、(しかも自分でもわかっているのにどうしようもできない)言い方は悪いが潔癖のいいかっこしいの部分がある所為で自分で自分を追い詰めてるんだよな・・・
高すぎる理想と現実の差で絶望したわけだし。本当に不器用で馬鹿な奴だよ、良くも悪くも。
221 : ◆c6GooQ9piw [saga]:2016/03/23(水) 22:22:25.76 ID:Pfshhs6BO
さやかは、全力で走り続けた。
まるで、見えない何かから逃げるように。

しかし、その声がやむことはなかった。

──仁美さえいなければ、こんなことにはならなかったのに。

さやか(……違う)

──仁美さえいなければ、こんなふうに悩まされることもなかったのに。

さやか(……違う!)

──仁美さえいなければ……

さやか「違う!!」

大きく叫んで、さやかはようやく立ち止まった。
呼吸が荒い。
いつの間にか、見たこともないような場所に来てしまっていた。

さやか「……っ」

さやかは、無理やり呼吸を押さえ付けた。
自分の心と向き合う覚悟を決めようとした。

だが、できない。

息が整っても、まだ心が鎮まらない。
魔女と戦っていたときの方が、まだ平静を保てていた。

さやか(……あたし、一体どうしちゃったんだろう)

本気で、仁美を助けなければよかったと思ったわけではない。
だが、少しでもそんな気持ちがなかったかと言われれば、否定はできなかった。

さやか(どうして……)

さやかは、自分の本心がわからなかった。
222 : ◆c6GooQ9piw [saga]:2016/03/23(水) 22:24:35.30 ID:Pfshhs6BO
仁美が恋敵だから、思わずそんなことを思ってしまったのだろうか。

もちろんそれは原因の大部分ではあるだろうが、さやかはそこに引っ掛かりを感じていた。

さやか自身、『恋愛は早い者勝ちみたいなもの』とも言ったし、そう思っていたことも嘘ではない。

もし、さやかの知らないうちに仁美が恭介と付き合っていたとしても、さやかは恋心を隠して笑えたはずだ。

……ひとつの要素さえ、そこになければ。

さやか(何か、が……)

納得できない何かが、そこにある気がする。

仁美が言っていたように、自分の方が長く恭介を想っていたから?

……違う。

もっと、わかりやすい何かが。

仁美が恭介と付き合うことが許せないと、理不尽だと思ってしまう、何かが……

さやか「………………」

そして、さやかは気づいてしまう。

さやか(あぁ、そうか……)

自分の本心に。

さやか(つまり、あたしは……)
223 : ◆c6GooQ9piw [saga]:2016/03/23(水) 22:27:29.10 ID:Pfshhs6BO


──恭介の腕を治したのはあたしなのに、他の誰かが恭介と付き合うなんて、許せない。

224 : ◆c6GooQ9piw [saga]:2016/03/23(水) 22:43:33.70 ID:Pfshhs6BO
さやか「……あはは」

自分でも驚くほどに空虚な笑い声だった。

始めから狂っていたのだ。

正義の魔法少女?
なんて笑い話だろう。

あたしが魔法少女になったのは、自分のためでしかなかったっていうのに。

さやか(あたしは、何をしていたんだろう)

今までの自分が揺らいでいく。
こんな自分が正義を語っていたことが、茶番にしか思えなかった。

さやか(……もう、どうでもいいや)

これ以上は考えたくなかった。
心が沈む一方だ。

さやかは、フラフラと歩き始めた。

ソウルジェムに、穢れが溜まりつつあった。
225 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/03/24(木) 13:48:00.21 ID:FQ7LQiTPO
自分をごまかしてはいけない。

同時に、欠点を見つけても、

自信を喪失させたり、

自尊心を傷つけるまで

自分を責めてはいけない。


くさるなさやかちゃん、乙乙
226 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/03/24(木) 20:51:49.63 ID:ZdVSzehRP

『最初から間違えてるモノ』は、
第三者がどう横槍を入れても最終的には必ず破綻しちゃうよね

繰り返す時間の中で僅かな違いこそあれど、運命の車輪は冷徹に回る。
227 : ◆c6GooQ9piw [saga]:2016/03/27(日) 10:07:20.97 ID:X5WB82RZO
しばらく歩いたところで、ソウルジェムが反応した。

魔力の反応だ。

さやか(魔女? 使い魔? どっちでもいいか……)

さやかは、もはや無視しようかとも思った。

今の自分に、正義の真似事をする資格などあるはずがない。

さやか「……」

しかし、さやかはしばらくの逡巡の後に、反応があった地点へ歩き始めた。

他の誰かのためじゃない。

戦闘に没頭すれば全てを忘れられるかもしれないという、歪んだ考えからの行動だった。
228 : ◆c6GooQ9piw [saga]:2016/03/27(日) 10:12:10.95 ID:X5WB82RZO
***

そのとき、杏子はパトロールの最中だった。
最近は気分が優れないことが多いが、魔法少女である以上、魔女を狩らないわけにはいかない。

魔力の反応がありその地点へ向かうと、そこには杏子を悩ませる原因の人物がいた。

杏子(……さやかか)

杏子は、隠れて様子をうかがった。

さやかとの二度目の戦闘から数日間、杏子はさやかのことを避け続けていた。

ああいう結果になった以上、杏子にはもうごちゃごちゃ言う気はなかった。

正義の魔法少女なんていつまでも続けていられるとも思わなかったが、いけるところまでいってほしいという思いがなかったと言えば嘘になる。

同時に、かつての自分と重なりを感じるところもあり、似たような挫折を味わえば杏子の気持ちをわかってもらえるのではないかという期待も多少あった。

いずれにせよ、杏子からさやかに対して直接行動を起こす気はもうなくなっていた。

だが……

杏子は、さやかの様子がおかしいことに気づく。

杏子(……なんだ? さやかの奴、いつもと違う……?)
229 : ◆c6GooQ9piw [saga]:2016/03/27(日) 10:15:25.95 ID:X5WB82RZO
その要因はいくつかあったが、杏子が一番違和感を覚えたのは、さやかの戦闘方法であった。

さやかは、相手の強さによっては、痛覚を遮断して多少の傷を負うことをいとわない。
だが、当然それは必要最小限のダメージで済ませており、決して、受ける必要のない攻撃をむざむざ受けていたわけではない。

また、痛覚遮断はあくまでも戦術のひとつであり、さやかも好んで使っていたわけではないはずだった。

しかし──

杏子(あいつ、何してやがんだ……!?)

今のさやかは、そんな取捨選択を行っているようには見えなかった。

明らかに、避けられるはずの攻撃を避けていない。
防げるはずの攻撃を防いでいない。

魔女の攻撃に対し、そもそも反応すらしていなかった。
その姿は、わざと全ての攻撃を受けているようにすら見えた。

さやか「……」

防御を一切行わず、攻撃に意識の全てを向ける今のさやかは、凄まじかった。

魔女「ガァ……ッ」

一方的に攻撃され続けているようなものだ。
敵うはずがない。
魔女は為す術もなく、あっという間に倒されてしまった。

だが、その代償は大きい。
さやかは全身傷だらけで、ボロボロだった。

回復魔法を使い、服も新品同様になり、見かけ上は完璧に元に戻る。

だが、それを見た杏子は鳥肌が立った。

その姿は、人として何かが狂っているようだった。
230 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/03/28(月) 00:37:05.03 ID:kUpqDM0No
231 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/03/28(月) 00:37:20.12 ID:uysmXeBqO
232 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/03/28(月) 01:56:46.22 ID:eUyn2TAGO
乙!
233 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/03/28(月) 03:30:49.40 ID:7XxKArh4O
乙。イラついたら戦闘に没頭するしかないよな
234 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/03/29(火) 22:02:57.26 ID:wNDEo4K30

まあ助けたっていう事実と誰を好きになるか、助けたからって好きになってもらえるかはまったく別問題だしな

それに正義の魔法少女って言っても具体的にさやかはどうしたかったんだろうか。魔女より悪い人間がいるなら戦う。例え魔法少女でもといっているが杏子をどうする気だったんだろう。叩きのめしたからって変わるとは限らないし、殺したらただの人殺しだし、仮に弾みでも殺してしまえばきっと壊れてただろうし・・・そしてこうやって人間がみんな当たり前に醜さを受け入れることもできず・・・馬鹿な奴だな。
235 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/03/30(水) 22:44:16.96 ID:2mtSg9KIP
236 : ◆c6GooQ9piw [saga]:2016/04/01(金) 20:09:19.19 ID:yJ7QJF/qO
***

次の日、さやかは学校を休んだ。
気分が悪い、頭痛がするなどと親に伝えると、あっさり納得してくれた。
仮病だが、あながち嘘というわけでもない。

さやかは、ベッドの上でぼんやりと天井を眺めていた。

今日の放課後、仁美は恭介に告白する。
恐らく、ふたりは付き合うことになるだろう。

恭介が断れば話は別だが、たぶんそれはない。
女のあたしから見ても、仁美は魅力的だ。
告白されて戸惑いはするかもしれないが、最終的には受け入れるはずだ。

……そのことを、あたしはどう思うんだろう。

さやか「……」

嫌に決まっている。
たとえ仁美であろうと、恭介が自分以外の女子と付き合うなんて、想像したくもなかった。

しかし、それならば学校を休むべきではない。
受け入れてもらえるかどうかはともかく、さやかには告白する以外の選択肢はないはずだ。

なのに、さやかはベッドから起き上がる気にもならなかった。

自分の本心を知ってしまったからだ。
こんな自分が恭介と付き合うなんて、許されるはずがない。
そう思ってしまった。

かと言って、そう簡単に諦められるはずもない。
堂々と仁美に『あたしは恭介のことを好きではない』などと言えれば格好も付くだろうが、それもできなかった。

結果、相反する感情がさやかの中で攻めぎ合い、どちらの行動もとれなくなっていたのだ。

結局さやかは、学校を欠席することを選んだ。

もう、自分の手の届かないところで物事を勝手に進めてもらって、自分ではどうにもならない状況にしてほしかった。

具体的には、さっさと仁美に告白してもらって、恭介と付き合ってほしい、なんてことを薄々考えていたのだ。

さやか(……あたし、最低だな。結局あたしは、自分の本当の気持ちと向き合えなかったんだ)

さやかは、こんな選択しかできなかった自分を、嫌悪していた。
237 : ◆c6GooQ9piw [saga]:2016/04/01(金) 20:13:03.58 ID:yJ7QJF/qO
『おい、聞こえるか?』

さやか「!」

不意に、テレパシーで呼び掛けられた。
この声は……

杏子『ちょっと話がある。出てこいよ』

さやか「……」

なんであたしの家を知っているのかとか、学校はどうしたのかとか……いろいろと思うところはあったが、今のさやかに噛み付く気力はなかった。

さやか『……何の用?』

杏子『そろそろ、正義の魔法少女だなんて言っていたことを後悔してるんじゃないかと思ってな』

さやか『……』

一気に出ていく気が失せた。
さやかは返事をするのも面倒になり、布団をかけ直そうとする。
反応がないことにあわてたのか、杏子が再度テレパシーで呼び掛けてきた。

杏子『おい無視すんなよ、悪かったって。こんな時間に家にいるってことは、今日は学校には行かないんだろ? 魔法少女が体調不良ってこともないだろうし、暇なら付き合えよ』

さやか『……あたしに文句があるんなら、別の日にしてくれない? そんな気分じゃないの』

杏子『喧嘩を売りに来たわけじゃねーよ。言ったろ、話があるって』

……本当だろうか。
しかし、暇を持て余していたのも事実だ。

杏子『いいから出てこいよ。危害を加える気はないからさ』

さやか『……ちょっと待ってて』

しばらく迷ったが、さやかは杏子に付き合うことにした。
親は夕方まで帰ってこないし、少しくらいなら大丈夫だろう。



着替えてから外に出ると、私服姿の杏子が立っていた。
そういえば、魔法少女以外の姿を見るのは初めてだ。

杏子「ついてこい」

そう言って、杏子は歩き出した。
238 : ◆c6GooQ9piw [saga]:2016/04/01(金) 20:19:33.83 ID:yJ7QJF/qO
***

杏子がさやかを訪れたのは、昨日のさやかの様子が気になったからだった。
まるで鬱憤を晴らすかのような戦い方であり、これまでの彼女とは明らかに違っていた。

なぜそうなったのかはわからないが、大体の想像はつく。
自分に失望したか、願いを否定してしまったか、あるいは信念が折れるような出来事があったのか……

かつての杏子と同じなら、そんなところだろう。
だからこそ、放ってはおけなかった。

さやか「……」

さやかは、すたすたと杏子の後を歩いている。

杏子(こいつ……)

やはりおかしい。
確定的だ。

普段と様子が違い過ぎる。
行き先も話さず歩いてるのに文句ひとつ言わず付いてくるなんて、これまでのさやかではあり得ない。
相手が杏子ならなおさらだ。

杏子「どうしたんだよ、元気ねーな。何かあったのか?」

さやか「……別に」

杏子「ったく」

聞いてはみたものの、その内容に興味があるわけではない。
重要なのは、さやかが正義の魔法少女として戦い続ける気があるかどうかだ。

杏子(もし、そうでなくなったのなら、もしかすると……)

うまく言いくるめることができれば、杏子の仲間にできるかもしれない。
そうすれば、これまでのような無茶もしなくなるだろう。

……と、まるでさやかのために行動を起こしたかのような言い方だが、杏子は、自分の本心に薄々気がついていた。

あまり認めたくはないが、どうやら自分は仲間を欲しているらしい。
あえて目を逸らしてはいたが、やはりどこかに寂しいという感情が残っていたようだ。

自分から別れたものの、マミと一緒に過ごした時間を忘れたわけではない。

杏子(……お前なら、こんなときどうしたんだろうな)

その答えは、もはや知りようがなかった。
239 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/04/02(土) 10:48:53.12 ID:w5B+eq9dO
ここもまた今のところ同じだが心情描写が味よね、乙
240 : ◆c6GooQ9piw [saga]:2016/04/08(金) 23:43:10.20 ID:Dq/yhV0IO
杏子「……着いたぜ」

さやか「……」

さやかは、ぼんやりとその建物を見上げた。

さやか「……教会?」

杏子「あぁ」

杏子がこの場所を訪れるのは久しぶりだ。
いろいろと思い出してしまうということもあり、当時は近寄り難かった場所だが、今はもう懐かしいという感情の方が強い。

杏子「ちょっと長い話になるぜ。ほら、食えよ」

そう言って、杏子はさやかにリンゴをひとつ投げて渡した。

さやか「……」

受け止めはしたものの、食べ始める気配はなかった。
ぼんやりとリンゴを眺めるさやかからは、何の感慨も読み取れない。

杏子(……さやかは今揺れている。このまま赤の他人のために戦い続けることに疑問を持ちつつある。ここで、あたしというもうひとりの例を知れば……)

……わかってもらえるはずだ。
241 : ◆c6GooQ9piw [saga]:2016/04/08(金) 23:47:38.93 ID:Dq/yhV0IO
杏子「……」

杏子は、一旦心を落ち着かせた。

こうして誰かに話すのは初めてだが、自分の中で既に整理は済んでいる。
今更当時を思い出して涙ぐむなんてことはないだろう。

杏子(……よし)

杏子は、静かに話し始めた。

杏子「……ここは、あたしの親父の教会だ。いや、正確には、教会だった、というべきなんだろうな……」

さやか「……」

そして、杏子はかつて自分に起こったことを全て話した。

自分がどうして魔法少女になったのか。
何を思って魔法少女になったのか。

その結果、何が起こったのか。
何を失ってしまったのか。

……何を、わかっていなかったのか。
242 : ◆c6GooQ9piw [saga]:2016/04/08(金) 23:52:28.40 ID:Dq/yhV0IO
……

杏子「……とまぁ、そんなわけで……あたしのせいで、家族はメチャクチャになっちまったのさ」

さやか「……」

杏子「そのとき決めたんだよ、二度と、他人のために魔法を使わないって。自分のためだけに使い切るってね」

杏子はそこで、一度間を置いた。
さやかの反応をうかがう。

さやか「……ごめん。あんたのこと、誤解してたよ。そんなことがあったなんて、想像もしてなかった」

杏子「……」

悪くない反応だ。
以前の彼女ならあり得ない。
これまで魔法少女として生きてきて、多かれ少なかれ共感する部分があるのだろう。

杏子は、言葉を続ける。

杏子「もうあんたもわかってんだろ? 他人のために魔法を使うのは間違いなんだ。奇跡を祈れば、その分絶望を撒き散らしちまう。そういう風にできてんだよ」

さやか「……」

この世界そのものがそのようにできている。
だから、どうしようもない。
抗いようがない。

そう、印象付ける。
243 : ◆c6GooQ9piw [saga]:2016/04/08(金) 23:54:36.43 ID:Dq/yhV0IO
さやかが、杏子に問いかけた。

さやか「……どうして、あたしにこんな話をしてくれたの?」

杏子「見ちゃいられねーからだよ。あたしもあんたも、同じ間違いから始まった。あたしはそれなりにわきまえちゃいるが、あんたは違う。現に、苦しんでるじゃねーか」

さやか「……同じ間違い?」

杏子「そうだろ、他人のためなんかに魔法を使っちまって、そのことを後悔してるんだろ?」

一歩、踏み込む。
さやかの口から、自分が間違っていたと認めさせる。
そうすれば……

さやか「……」

さやかは、しばらく考える素振りを見せ、ゆっくりと口を開いた。



さやか「違うよ。あたしとあんたは違う」
244 : ◆c6GooQ9piw [saga]:2016/04/08(金) 23:55:07.41 ID:Dq/yhV0IO
さやかが、杏子に問いかけた。

さやか「……どうして、あたしにこんな話をしてくれたの?」

杏子「見ちゃいられねーからだよ。あたしもあんたも、同じ間違いから始まった。あたしはそれなりにわきまえちゃいるが、あんたは違う。現に、苦しんでるじゃねーか」

さやか「……同じ間違い?」

杏子「そうだろ、他人のためなんかに魔法を使っちまって、そのことを後悔してるんだろ?」

一歩、踏み込む。
さやかの口から、自分が間違っていたと認めさせる。
そうすれば……

さやか「……」

さやかは、しばらく考える素振りを見せ、ゆっくりと口を開いた。



さやか「違うよ。あたしとあんたは違う」
245 : ◆c6GooQ9piw [saga]:2016/04/08(金) 23:57:04.31 ID:Dq/yhV0IO
あちゃ、二重投稿失礼
246 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/04/09(土) 01:11:37.75 ID:/Mz0M4Nl0
自分は杏子のように他人のためにではなく、自分自身のための契約だったと・・・
247 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/04/09(土) 07:34:36.62 ID:6EjrY0Qgo
完璧に利己的な理由で助ける人間を選抜しようとしちゃったわけだからな、もうごまかしようもないくらい
自分のための奇跡だったって気付いてるだろ。
自分を痛めつけるような戦い方も、案外罰でも受けてるつもりなんじゃないか?
248 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/04/14(木) 14:04:13.69 ID:20NOeDW5O
やっと追いついたと思ったら安定のバッドルーテナント
ハーベイのオリジナルじゃなくてニコラスリメイク版みたいに上手くいかねぇもんかな乙乙
249 : ◆c6GooQ9piw [saga]:2016/04/23(土) 17:54:14.43 ID:GL279vN+O
杏子「……っ」

さやかの言葉に、杏子は少なからずショックを受けた。

わかってもらえなかったのだろうか。
杏子は自分の全てをさらけ出した。
さやかに仲間になってほしいという打算があったことは否定しきれないが、それでも正直な思いを吐き出したつもりだ。

これでダメなら、もう……

杏子(さやか……)

……しかし、そうではなかった。

さやか「……あんたは、紛れもなく自分以外の誰かのために魔法を使ったんだ。だからこそ、今はその反動で、自分のためにしか魔法を使っていない」

杏子「……?」

さやか「立派だよ。結果がどうであろうと、その行為自体は称賛されるべきだと思う」

杏子「……何が言いたい」

そんな言葉がほしいわけではない。
むしろ、杏子の話を聞いた上でそんなことを言うなど、馬鹿にしているようにしか受け取れない。

さやかは、わずかに笑って、一言呟いた。

さやか「……あたしとは、違う」
250 : ◆c6GooQ9piw [saga]:2016/04/23(土) 18:06:00.39 ID:GL279vN+O
杏子「……」

さやか「あたしは結局、自分のために恭介の腕を治したんだ。他人のために魔法を使ったあんたとは、根本的に違ったのよ」

さやかは、自嘲気味な笑顔を浮かべていた。

……そういうことか。
杏子は内心ほっとした。

杏子「いいじゃねーか、それで。そっちの方が正しかったんだよ。これからは、そうやって生きていけばいい」

さやか「……」

杏子の言葉に、さやかはわずかな逡巡を見せ、やがて口を開いた。

さやか「……そうね。あんたと一緒にそうして生きていくってのも、悪くないかもね」

杏子「……!」

さやかの言葉を聞き、杏子は歓喜に打ち震えた。

杏子(やった……!)

やっと、わかってもらえた。
同じ境遇の仲間ができる。

その事実は、杏子にとって非常に喜ばしいものだった。

さやかの手前、なんとか平静を装う。
顔を背けて表情を隠し、感情を抑えて言葉を返す。

杏子「あぁ、そうしろよ。悪いようにはしないからさ」
251 : ◆c6GooQ9piw [saga]:2016/04/23(土) 18:17:45.59 ID:GL279vN+O
さやか「……うん、ありがとう」

素直に礼を言われ、戸惑う。

杏子は、自分の表情が戻ったことを確認し、改めてさやかの方を振り向いた。

杏子「やめろよ、別に、礼を言われるようなことじゃ……」

言いながら、杏子はさやかの顔を見返して……

杏子(なっ……!?)

──気づいてしまった。

さやか「……」

その目には、光がなかった。

かつて、正義のために戦っていた頃は眩しいほどに輝いていたさやかの目が、今は見る影もなかった。
昨日魔女と戦っていたときでさえ、今よりは光が残っていた。

杏子(なんだ、どうしたって言うんだ……?)

いつからそうなってしまったのか。
決まっている。

杏子の仲間になり、同じ生き方をすると宣言したときからだ。

さやか「……」

杏子「……ッ」

杏子はその目に、どうしようもないほどの越えられない壁を感じた。

杏子(……そんなにか? 魔法少女なんかになっておきながら、他人を気にせず自分のためだけに生きることが、お前にとってはそんなにも耐え難いことなのか……!?)

さやかは、自分の変化に気づいているのだろうか。
252 : ◆c6GooQ9piw [saga]:2016/04/23(土) 18:37:45.63 ID:GL279vN+O
確かに、さやかがこのまま正義を貫き続ければ、近いうちに死ぬ可能性は高い。

杏子のように自分のためだけに生きるようになれば、それは回避されるだろう。

だが、そもそもさやかの精神は、そんな生き方を受け入れられないのだ。

杏子「……っ」

杏子は、ここにきてようやく気付いた。

杏子(……あたしとさやかは、違うんだ)

それは、奇しくもつい先程さやかが杏子に思ったことでもあった。

同じ生き方をすることはできない。
やはり、杏子が初めに思ったことは正しかった。
さやかは、魔法少女になるべき人間ではなかったのだ。

杏子「……」

さやか「……どうかした?」

急に黙り込んだ杏子の様子を不審に思ったのか、さやかが問いかけてきたが、杏子は言葉を発することもできなかった。

さやかは特に気にもせず、ふと手に持っているリンゴを眺め、口を開いた。

さやか「……そういえば、あんたそんな境遇なのに、このリンゴはどうしたの?」

杏子「!」

責めるような口調ではない。
単に、疑問に思ったことをそのまま口に出しているような表情だった。

杏子「っ、それは……」

杏子が言い淀む。
しかし、そもそもさやかは答えを気にしていなかった。
253 : ◆c6GooQ9piw [saga]:2016/04/23(土) 18:40:09.33 ID:GL279vN+O
答えるまでもない。
家族のいない杏子がこの年でまともに働けるわけがなく、そうなると、リンゴを手にいれる手段は限られる。
誰にでも想像はつくだろう。

さやかにも、それはわかったはずだった。

さやか「……」

そのとき、杏子にはある種の期待が芽生えていたのかもしれない。

心のどこかで、盗みを非難されることを望んでいたのだ。

杏子の間違いを正すことで、さやかが以前のように、目を輝かせて正義を語るようになることを期待したのだろうか。

しかし──

さやか「……まぁ、どうでもいいか」

杏子「……!」

杏子が期待した展開にはならなかった。

思わず、愕然とする。
さやかの口からそんな言葉が出てきたことが、信じられなかった。

さやか「……」

盗まれたリンゴであることはわかっているはずだ。
しかし、さやかに気にしている様子はない。

何の躊躇いも見せず、さやかはリンゴを食べようとする。

杏子「……ッ!」

さやかの口が、リンゴに近づいていく。

その光景は、まるで何かの象徴のように思えてならなかった。
254 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/04/23(土) 20:14:29.88 ID:vB1ZfH88o
おつん

さやかは言わずもがなだが、杏子も割とめんどいな
実は一人が辛い、でも正義の魔法少女とは共に歩めない、しかしさやかの闇堕ちは嫌

壮絶な半生を振り返ると、どれも不思議じゃないんだけどさ
255 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/04/23(土) 20:20:10.07 ID:lTjDVUnH0
まあ杏子がさやかを救おうとするのは過去の自分を救いたいからで自分のためだしな
それが悪いとは思わないけど
256 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/04/23(土) 20:37:14.90 ID:O94ckrDqO
0ー2 後半ロスタイム、ここからの逆転ハットトリックを杏子に期待する
257 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/04/23(土) 20:39:54.52 ID:WlSvRI4kP
あんこちゃん、内心ではさやかに負けたいと思ってたみたいな節があったしね
258 : ◆c6GooQ9piw [saga]:2016/05/03(火) 21:58:36.54 ID:MDONGe0PO
杏子「やめろっ!!」

杏子は、さやかからリンゴを奪い取った。
完全に無意識からの行動だった。
勝手に体が動いたとしか表現できない。

さやか「……何?」

怒るわけでもなく、さやかはキョトンとしていた。
杏子の突然の行動を、純粋に疑問に思ったのだろう。

杏子「……」

杏子は、何も答えられなかった。
自分の行動が、自分で理解できなかった。

杏子(どうして、あたしはこんなことを……)

自分でも矛盾した行動をとっていることはわかっている。
だからこそ、言葉では説明できなかった。

気づけば杏子は、呻くように声を漏らしていた。

杏子「……どうしたんだよ。お前は、そんなんじゃなかっただろうが。正義の魔法少女になるって、言ってたじゃねーか」

さやかはポカンとして、あきれたように答えた。

さやか「何を言ってるの? それが間違いだったって、たった今あんたが教えてくれたんじゃない……」

杏子「っ……」

その通りだ。
しかし……

杏子(……本当に、それでいいのか?)
259 : ◆c6GooQ9piw [saga]:2016/05/03(火) 22:00:53.66 ID:MDONGe0PO
あたしは一体何がしたいのだろう。
さやかに、どうあってほしいのだろう。

杏子「……」

今のさやかは、自分で物事を決められる状態ではない。
ここでの杏子の言葉は、さやかに大きな影響を及ぼすはずだ。

だからこそ、慎重に言葉を選ばなければならない。

どの道が正しいか、間違っているか。
もはや、そんな言葉では語れない。
魔法少女になった時点で、正しい道などあるはずがないのだ。

すぐには選べなかった。
仲間になってほしいという自分の感情と、どこまでも正しくあってほしいというさやかへの願望が、混ざり合う。

両立は不可能だ。
どちらを優先するかを決めなければならない。

杏子「…………」

そして、杏子は選択する。

杏子「……さっきの話はなしだ」

さやか「え?」

杏子「お前はあたしとは違う。どこまでも正義を貫いていけよ」

さやか「……」

さやかが戸惑いを見せる。
突然正反対のことを言われたのだから、当然だ。

さやか「ふざけないでよ……何を勝手なことを言って……」

杏子「……」

結局杏子は、さやかを正義の道に押し戻すことを選択した。

決め手となったのは、今のさやかの姿だった。
こんな状態のさやかを見ていたくないという思いが、それ以外の感情を上回ったのだ。
260 : ◆c6GooQ9piw [saga]:2016/05/03(火) 22:03:34.60 ID:M5GsA7PKO
さやか「誰かのために魔法を使うのは間違ってる……その通りよ。今なら、あたしにも理解できるわ」

杏子「……それは、あたしが出した結論だ。お前には、お前の答えがあるんじゃないのか?」

さやか「同じよ。今まであたしは他の誰かのために戦ってきたつもりだったけど、結局それは自分のためでしかなかった。そもそも願いからして、間違っていたのよ」

杏子「そのお前の願いは、本当にお前のためだけのものだったのか? その男は、全く喜んでいなかったのか?」

さやか「……そういう話じゃないわ。あたしが何を思ってその願いを選択したかが問題なのよ」

杏子「何を思って……か。そいつの怪我を治すことで、そいつの恩人になりたいという気持ちがあったってことか?」

さやか「そうよ。そのときは気づいてなかったけどね」

杏子「……本当にそうか?」

さやか「……」

言葉を交わし合う。
互いの気持ちをぶつけ合う。

さやかに、迷いが生じつつあった。
261 : ◆c6GooQ9piw [saga]:2016/05/03(火) 22:07:17.12 ID:M5GsA7PKO
杏子「その男に関してだけじゃない。お前が今まで魔女や使い魔と戦ったことで、救えた命は確実にあるんじゃないのか? それらが全て、お前自身の自己満足に過ぎなかったとでも言うつもりか?」

さやか「……ええ。あたしは正義のために戦っていたわけじゃなかった。恭介のために願いを使ったように見えて、実際は自分のためでしかなかったようにね」

杏子「……」

やはり、そこを基準に考えてしまっている。
願いの意味をずらさなければ、さやかを説得することはできない。

そのための言葉を、杏子は持ち合わせていた。

杏子「……違うね。お前は勘違いをしている。まだ思い出せねーのか?」

さやか「えっ……?」

杏子「……」ギリッ

杏子は、歯を食い縛った。
自分が、さやかにどれだけ過酷な道を歩ませようとしているのかはわかっている。
だが、もう止まれない。

杏子(あぁそうさ、これはあたしのわがままでしかない。一旦楽な道を示しておいて、後から別の険しい道を勧めるだなんて、自分勝手もいいところだ。あげく、自分はその道を歩まないってんだからな)

しかし。
それでも……

杏子(だが、こいつの始まりは、正義の魔法少女を目指すことだった。魔法少女のあたしを見て、それでも怯まずに言い返してきやがったんだ。そんなこいつが間違っていたなんてこと、あってたまるかよ!)
262 : ◆c6GooQ9piw [saga]:2016/05/03(火) 22:09:25.14 ID:M5GsA7PKO
感情論だ。
さやかに『こうあってほしい』という願望が先にきている以上、論理的ではない。

杏子もそれはわかっていた。
その上で、吠える。

杏子「お前が魔法少女になったのは、その男の腕を治すためじゃねえ。ましてや、そいつの恩人になるためなんかじゃねえ!」

杏子「正義の魔法少女になって、あたしみたいな悪者をブッ飛ばすために、お前は魔法少女になったんだよ!!」

さやか「…………」

無茶苦茶だ。
理屈も何もあったものじゃない。

だが、その飾らない杏子の言葉は、間違いなく本心からきたものだった。

だからこそ、さやかの心を動かした。

さやか「正義の魔法少女、か……」

気づけば、さやかの目には光が戻っていた。

それは、これから先ふたりの歩む道が、二度と交わらないであろうことを意味していた。

杏子「……」

手放しには喜べない。
しかし、これが杏子の選択の結果だ。
今更後戻りはできない。

さやかは、先程までとは別人のような表情をしていた。

さやか「ありがとう。目が覚めたよ」

杏子「……そうかよ、ならとっとと失せな」

さやか「うん……さよなら」

仲間にならない以上、もうここで話すことはない。

さやかもわかっていたのだろう。
そのまま、何も言わずに教会を後にした。
263 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/04(水) 08:33:39.71 ID:/HIffTMZ0

これ、さやかちゃんホストとか悪人皆殺しにしちゃうようになるんじゃ…
264 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/04(水) 09:19:55.52 ID:UUzJ0CQfo


さすがに独善で一般人を[ピーーー]ような馬鹿ではあるまい
原作のどん底状態ですら別に殺してないよって虚淵が言っているし
265 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/04(水) 11:42:30.83 ID:/HIffTMZ0
>>264
でもクズ野郎相手とはいえ丸腰の一般人に襲い掛かることじたいはしているわけで…
本当のヒーローは人間の醜さまで愛せなくちゃだめなんだろう…潰れずに頑張ってくれよ、さやか
266 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/05(木) 11:01:11.26 ID:Pa5wJN7no
市民「本物のヒーローは人間の醜さまで愛せなくちゃだめ」

市民「でもお前が闇堕ちしたらブッコロス」

市民「あと正義が間違ってたらバッシングする」

市民「ヒーローの孤独?俺の知ったことじゃないし」

市民「でも正体探ったりゴシップ読んだりはするから!」

こらダークヒーローやアンチヒーローが流行りますわ
267 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/11(水) 12:52:27.94 ID:OLH14Gk7O
おつー、心情描写って下手だから感心するわ今回の杏子とか
268 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/11(水) 17:22:52.35 ID:HbmLZVMco
>>264
新房がきっと殺してないと思います
虚ぶちはうーん、どうでしょう(笑)
ハノカゲ(脚本どうりなら)ぶっ殺してます
だから虚淵は殺してないとは言ってないよ
269 : ◆c6GooQ9piw [saga]:2016/05/18(水) 18:08:06.70 ID:19PX2CMeO
さやかが去り、杏子はひとり物思いに耽っていた。

さやかが食べなかったリンゴに、何の躊躇いもなくかぶりつく。
自らのその行動に、さやかとの違いを認識せずにはいられなかった。

杏子(……本当に、これでよかったのか?)

いいはずがない。
たとえば、あいつなら。

巴マミなら、もっといい選択ができていただろう。

すなわち、共に正義の魔法少女としての道を歩み、近くでさやかを支えることができたはずだ。

だが、杏子にはそれはできなかった。
無責任に、明るく険しい道だけを示しておきながら、自分はそこについていくことができなかったのだ。

杏子「……」

今更、この生き方を変えることはできない。
杏子にも、様々な経験をして、その上で見つけた答えがある。

だから、これは当然の結果だ。

元々、さやかは杏子の仲間になれるような人間じゃなかった。
ただそれだけの話なのだ。

自分に言い聞かせる。

杏子(……あたしとさやかは、違う)

杏子の胸には、喪失感だけが残っていた。
270 : ◆c6GooQ9piw [saga]:2016/05/18(水) 18:11:07.30 ID:19PX2CMeO
***

次の日、さやかは学校に登校した。
仁美に、伝えなければならないことがあった。

まどか「さやかちゃん、おはよう」

さやか「おはよう、まどか」

さやか(……そう言えば)

まどかの顔を見て、さやかは一昨日のことを思い出した。
自分に余裕がなくなっていたことを、改めて思い知らされる。

さやか「一昨日、あの後大丈夫だった? ごめんね、全部押し付けちゃって……」

まどか「ううん、いいよ。わたしは倒れた人たちの発見者ってことで大したことしてないし。むしろ大変だったのは、色々聞かれてた仁美ちゃんの方じゃないかな」

さやか「そうだよね。仁美は魔女を知らないわけだから何も説明できないだろうし、そもそも何も覚えてないだろうし……」

まどか「うん。結局、集団催眠とかそういうのじゃないかってことになったみたい」

さやか「ふぅん……」

まぁそんなところだろう。
いくら警察でも、魔女の存在を知っているとは思えない。
真実を知っているのは、さやかとまどかだけということだ。
271 : ◆c6GooQ9piw [saga]:2016/05/18(水) 18:14:02.81 ID:19PX2CMeO
まどか「それで、さやかちゃんは大丈夫だったの?」

さやか「……何が?」

ドキリ、と心臓が跳ねる。
一昨日、まどかと別れたときはうまくごまかせたと思っていたが、甘かっただろうか。

まどか「……」

さやか「……えっと」

まどかは、さやかの顔をしばらく見つめ、やがて口を開いた。

まどか「ううん、ごめんね。なんでもないよ」

さやか「そ、そう?」

危なかった。
たぶん昨日杏子と会ってなかったら、まどかに全てを見透かされていただろう。

まどか「昨日は体調が悪かったって聞いたよ。あまり無理はしないでね」

さやか「……うん、ありがとう」

昨日までとは違い、今のさやかに迷いはない。
まっすぐに前を見て歩けているという自覚はある。

だが、その見つめる先は、果たして希望に満ちているのだろうか。

それとも……

さやか「……」

考えないわけではない。
しかし、さやかの考えはもう決まっていた。

さやか(……杏子が、背中を押してくれた)

この道の先がどうなっていようと、さやかはこの道を歩むと決めたのだった。
272 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/19(木) 17:36:30.82 ID:g3wPBIvm0

TDS読んだ身としてはマミさんがいたとしてもさやかは潰れるんと思う
273 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/20(金) 11:31:57.45 ID:9c7SJ4TqO
てす
274 : ◆c6GooQ9piw [saga]:2016/06/03(金) 01:42:13.69 ID:966iIJr9O
***

その日、またしてもさやかは仁美に呼び出された。
さやかとしても、仁美には話さなければならないことがあったので、好都合ではあった。

仁美「……お待たせしましたわ」

さやか「ううん、あたしも今来たところだから」

仁美「それならよかったですわ」

仁美は椅子に座り、一呼吸置いてさやかの顔を見つめた。

さやか「……っ」

その表情に、さやかは思わず怯んでしまう。

仁美「一応、確認しておきますわ」

……仁美の笑顔が怖い。

仁美「さやかさん、あなたは昨日、本当に体調が原因で欠席したんですのね?」

さやか「……」

……昨日休んだことに対して、後ろめたさを感じていないわけではない。

まどかとは違い、仁美はさやかが休む理由に心当たりがあるのだ。
さすがに気付かれて当然か。

さやか「ごめん」

仁美「……」

その一言で、察してくれたようだった。
仁美がため息をつく。

仁美「……急な話でしたし、そうなるかもしれないと思ってはいましたわ。あなたはどこまでも真っ直ぐですが、その分、精神的に脆いところもありますから」
275 : ◆c6GooQ9piw [saga]:2016/06/03(金) 01:44:38.16 ID:966iIJr9O
……耳が痛い。
思わず苦笑してしまう。

さやか「自覚はあるよ……仁美は、あたしなんかと違って強いよね」

仁美「そんなことありませんわ。私がこの数日間、どれだけ悩んでいたか知っていますの? 」

さやか「……悩んでたの?」

仁美「もちろんですわ。正直今でも、自分の選択が正しかったかどうかはわかりません。間違った道を歩いていないか、何度も不安になりましたわ」

さやか「間違った道、ね……」

さやかも同じだ。
自分の選択が正しいのか、それとも間違っているのか……

誰かが保証してくれるわけではないが、それでも選択はしなければならない。

いや、正しいかどうかという面で判断するなら、さやかの選択は、むしろ……

さやか(……関係ない)

さやかにぶれはなかった。

正しいかどうかではない。
自分がどうしたいか、どうありたいか。
それが最も大切なことなのだ。

仁美「そういった観点で語るなら、私の知る中で最も強いのは……まどかさんでしょうか。彼女には、私たちにはない強さがありますわね」

さやか「あー、まどかね。確かに……」

精神的な強さ。
芯のある強さとでもいうのだろうか。

本人は否定するだろうが、親友のあたしたちは、まどかの強さをよく知っている。

仁美「彼女は、何が大切なのかをよく知っている。そのためなら、どんなことでも躊躇いなくできるのでしょうね。他人のために行動し過ぎるきらいはありますが……見習いたいところですわ」

さやか「うん、そうだね……」

さやかにしてみれば、そのように自分にはない他人の強さを素直に認めることができるのも、ひとつの強さだ。
自分が親友に恵まれていることを改めて実感する。
276 : ◆c6GooQ9piw [saga]:2016/06/03(金) 01:47:01.84 ID:966iIJr9O
仁美「……話が逸れましたわね。さやかさんは、もう大丈夫なんですの?」

さやか「うん、もう整理はついたよ。ありがとう」

仁美「なら、よかったですわ」

あえて冷たく振る舞おうとしているのだろうが、仁美の目は安心を隠しきれていなかった。
結局、あたしはどれだけ仁美を悩ませてしまったのだろう。

仁美「……けれど、これが最後ですわよ。私は今日の放課後上条くんに告白します。行動を起こすなら、それまでにお願いしますわ」

さやか(……え?)

仁美の言葉に、さやかは思わず顔を上げて問いかけた。

さやか「仁美は、昨日恭介に告白したんじゃなかったの?」

さやかの言葉に、仁美は半ば憮然とした表情で答えた。

仁美「……するはずがありませんわ。もし、さやかさんが体調等のどうしようもない理由で学校を休んだのなら、私が告白するのはアンフェアだと……そう思うのは当然でしょう」

さやか「仁美……」

仁美「まぁ杞憂でしたけど」

さやか「本当に申し訳ありませんでした」

仁美「……」ハァ

仁美が、あきれたようにため息をついた。

仁美「……私への謝罪はもういいですから、今は、少しでも長く御自分の気持ちと向き合って下さい。できるだけ、後悔なさらないであろう道を選ぶことを望んでいますわ」
277 : ◆c6GooQ9piw [saga]:2016/06/03(金) 01:49:09.64 ID:966iIJr9O
さやか「……」

仁美は、さやかの恭介への想いを確信している。
つまり、言外に仁美は、さやかに告白するべきだと主張しているのだ。

それは間違ってはいない。
これまで色々と悩むこともあったが、それでもさやかの恋心は、一切揺らいでいない。

しかし──

さやか(……もう、決めたんだ)

もはや、迷う必要はない。
さやかの答えは、既に決まっていた。

……仁美には、伝えなければならない。

さやか「仁美。聞いて」

仁美「……どうかされました?」

さやかの雰囲気に、ただならぬものを感じたのだろう。
仁美は、改めて真剣な表情を作った。

さやか「……」

さやかは一度深呼吸をした。
大丈夫だ。もう間違えない。

さやか「仁美」

さやかは正面から仁美を見据え、はっきりと言い切った。



さやか「あたしは、恭介とは付き合えない」
278 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/03(金) 21:27:39.90 ID:4/qPy+iAO

やっぱりさやかちゃんは本質的にMだな
279 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/19(日) 23:28:14.63 ID:zlRlxrXQO
280 : ◆c6GooQ9piw [saga]:2016/06/23(木) 23:12:26.68 ID:F2JCRW64O
仁美「……」

仁美の表情が固まった。

仁美「……何を、言っていますの?」

さやか「やらなきゃならないことができたんだ。そのためには、誰かと付き合っている余裕はない」

仁美の顔が、困惑で満ちる。

仁美「……もしかして、私のために嘘を吐いていますの?」

さやか「違うよ。これがあたしの答え。嘘なんかじゃない」

仁美「やらなければならないこととは、何ですの?」

さやか「……それは、言えない」

仁美「……」

仁美の表情が怪訝なものに変わる。
これで信用しろというのが無理な話だ。

とはいえ、さすがに魔法少女のことは話せない。
それこそ信じてもらえるとは思えないし、何より、仁美を巻き込むわけにはいかない。

仁美「……この期に及んで、ふざけてますの?」

さやか「……」

仁美は、信じるべきなのか迷っているようだった。

正直さやかは、仁美に信じてもらえず、怒鳴られても仕方ないとさえ思っていた。
しかし、仁美が頭ごなしに否定するようなことはなかった。

恐らく、さやかに少しでも迷いが残っていれば、信じさせるのは難しかったはずだ。
逆に言えば、ここで仁美を納得させつつあることが、さやかに迷いがなくなっていることの証明でもあった。
281 : ◆c6GooQ9piw [saga]:2016/06/24(金) 03:13:08.07 ID:3STh6K47O
仁美「……もうはっきり言いますわ。さやかさん、あなたは恭介さんのことをお慕いしていますわよね?」

これまではあえて暗に示していた部分に踏み込んでいく。
昨日までのさやかなら、これを認めるだけでも簡単ではなかっただろう。

さやか「うん、そうだよ。あたしは恭介のことが好き。この想いがぶれたことなんて、一度もない」

……思えば、こうして自分の想いをはっきり口にするのは初めてかもしれない。

はっきりと答えられたことで、仁美は更に困惑を増したようだった。

仁美「……それなのに、その恋心よりも優先しなければならないことがあると言うんですの?」

さやか「本気だよ。もう、決めたんだ」

仁美「……」

仁美がわずかに黙り込んだ。
やらなければならないことがあること自体は、多少は信じてもらえただろうか。

だが、まだ終わりではない。
それだけでは、仁美を納得させるには足りない。

仁美「……百歩譲って、それが本当だったとして」

仁美が、さやかに鋭い視線を向ける。

仁美「やるべきことができたから、付き合えない。だから、告白もしない……そういう言い訳をしているだけではありませんの?」
282 : ◆c6GooQ9piw [saga]:2016/06/24(金) 03:19:42.48 ID:3STh6K47O
相変わらず、いいところを突いてくる。
しかしこの辺りの問答についても、さやかは昨日自分の中で済ませていた。

さやか「そんなことないよ。このことがなければ、あたしは間違いなく恭介に告白していた。これは本当だよ」

さやかの恭介への想いは、先程口にした通りだ。
ここを否定することはできない。
それはもはや、さやかへの冒涜にすらなり得てしまう。

実際さやかは、魔法少女のことがなければ恭介に告白していただろう……というと、多少語弊はあるが。

昨日までの、さやかの細かな心情の変化をここで説明するのは難しいし、その必要もない。
さやかとしても嘘を吐いているわけではないし、今の自分の正直な気持ちを語れているという自覚もある。

仁美「…………」

仁美はしばらく考え込んでいたが、やがて、観念したように大きく息を吐いた。

仁美「さやかさんの言い分はわかりました。全て信じます。話せない事情があることも、この際問いませんわ」

さやか「……ありがとう、仁美」

本当は、もっと問い詰めたいことが山ほどあるはずだ。
なのに、いくつもの言葉を飲み込んで、それでも信じてもらえたことに、さやかは感謝していた。

仁美「ですが、最後にこれだけは言わせて下さい」

さやか「……何?」

仁美「付き合えないことが、告白しない理由になりますの?」

さやか「……」

ここに関しては、突っ込まれるとは思っていた。
最後まで、さやかが迷った部分でもあった。

さやか「……ならないよ。でも、告白したところで、あたしは恭介とは付き合えないんだ。だったら……」

仁美「いいではありませんの。今すぐに付き合えなくても、想いを伝えておくだけでも意味はあると、私は思いますわ」

さやか「いや、でもそうしたら仁美が……」
283 : ◆c6GooQ9piw [saga]:2016/06/24(金) 03:25:18.27 ID:3STh6K47O
さやかはそこまで言いかけて、あわてて口を閉じた。
これは、さやかが仁美に言うべきことではない。

だが、遅かった。

仁美「私が、何ですの?」

さやか「……」

あえて、さやかに言わせようとしている。
今度はさやかが観念する番だった。

さやか「……あたしが恭介に告白して、万が一にも受け入れられたところで、あたしは付き合えないんだよ。そんなのは恭介に悪いし、それで恭介が仁美を振ったりしたら、それこそ仁美にも悪いじゃん。そんなことになるくらいだったら、こんな想いは、伝えない方がいい」

仁美「……どうせ、そんなことだろうと思いましたわ」

さやか「……」

やはり、これは伝えるべきではなかった。
こんな話をされては、素直に仁美が恭介に告白するはずがない。
仁美がさやかに遠慮するなんてことは、望んでいなかった。

……いや、恐らく話すまでもなく、仁美はさやかの心情を理解していたのだろう。
だからこそ、それをわざとさやかに言わせるように仕向けたのだ。

仁美「さやかさんの気持ちはわかっているつもりです。だからこそ、私も同じ気持ちだということをわかってもらいたかったですわ」

さやか「……え?」

仁美「私も、自分が原因で、さやかさんに遠慮してもらうことは望んでいません。当然ではありませんの」

さやか「……わかってたよ。仁美ならそう言うと思ってた。だから、言いたくなかったのに……」

仁美「それこそ甘いですわね。私はそんなに鈍くありませんし、あなたはそれほど嘘が上手くはありませんわ」

さやか「……」

ぐうの音も出なかった。
ここまで見透かされては、覚悟を決めるしかなかった。

仁美「それで、企みが私にバレた今、さやかさんはどうするんですの?」
284 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/26(日) 19:49:02.08 ID:O4GZyYgAO
更新してたか
285 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/07/21(木) 03:29:54.48 ID:RMX5FZmWO
続きはまだかね?
286 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/07/22(金) 21:53:12.86 ID:hUn7rYfTP
マダカナー・・・
287 : ◆c6GooQ9piw [saga]:2016/07/24(日) 00:00:27.67 ID:o6Ht5rqoO
さやか「……」

さやかがやるべきことは変わらない。
その決心自体は、全く揺らいでいない。

だが……

仁美「さやかさんは、やらなければならないことが『できた』と言われましたわね。それは、始めから御自分で望んで選んだ状況ですの?」

さやか「……そういうわけじゃないかな」

そういうわけではない、が……結局全ての原因は、自分の愚かさだった。
だからこそ、その責任はとらなければならない。

仁美「そして、このことがなければ間違いなく上条くんに告白していた、とも言われました」

さやか「……」

仁美が何を言いたいのかは、なんとなくわかる。

仮に偶然でさやかが恭介を諦め、代わりに仁美に付き合えるチャンスが回ってきたのだとしても、それは仁美の望むところではないということだろう。
288 : ◆c6GooQ9piw [saga]:2016/07/24(日) 00:10:56.82 ID:o6Ht5rqoO
仁美「私は別に、さやかさんを気遣っているわけではありません。ただ、もしさやかさんが、偶然何かに巻き込まれたのだとしたら……」

一瞬、仁美は言葉に迷ったようだった。

さやか「……仁美?」

仁美「……ごめんなさい。話してもらえない以上、私としては想像で補うしかないので、もしかしたら失礼なことを、あるいは見当違いのことを言っているのかもしれませんが……」

仁美がわずかに、苦しげな表情を見せた。

仁美「……たとえば、たとえばですが……もし、さやかさんが、望まない不幸に見舞われているのだとしたら……」

さやか「……!」

仁美の言葉に、さやかは一瞬固まった。

今のさやかが置かれている状況は、『不幸』などと、一言で簡単に表せるようなものではない。

しかし……

仁美「……そのせいで御自分の想いを諦めるなんてことは、あってはならないと思いますわ」
289 : ◆c6GooQ9piw [saga]:2016/07/24(日) 00:28:37.97 ID:o6Ht5rqoO
さやか「……」

仁美が知っているはずはない。

仁美にはキュゥべえが見えていなかった。
つまり、魔女の姿も見えないはずだ。
魔法少女という存在を、仁美が知っているはずがないのだ。

さやか(仁美なりに想像して……あるいは、あたしの様子からなんとなく感付かれて……?)

いずれにせよ、これではさやかの意図から外れてしまう。
仁美がここまで察している以上、さやかが身を退いたところで、納得してもらえる可能性は低いだろう。

仁美「いえ、回りくどいですわね。そう、つまり私が言いたいのは……」

そして、仁美が決定的な一言を口にする。


仁美「恋心より優先すべきことなど、そうそうないということですわ」
290 : ◆c6GooQ9piw [saga]:2016/07/24(日) 21:19:47.84 ID:vnrvk9SSO
その台詞は、ここまでのさやかの言葉を、全て吹き飛ばした。

さやか(……仁美らしいな)

普段は真面目だが、実は夢見がちな一面も持つ、仁美らしい台詞だった。

……結局、言い訳に過ぎなかったのだ。

さやかが仁美に負い目を感じていたのは確かだ。
一度チャンスをもらっておきながら、そこから逃げ出したことが心に引っ掛かっていたことは、否定できない。
だからこそ、やらなければならないことができたから……という言葉で誤魔化して、仁美に譲ろうとしたのだ。

しかし、それで仁美を説得できるはずがなかった。

さやか「……」

仁美の気持ちはわかる。
だが、逆もまた然りだ。

まともに恋愛ができない境遇にある自分のせいで、親友の恋愛の邪魔をしてしまうなんてことは、やはり耐えられない。

ならば、どうするか。

さやか(仕方がない、か……)

話すわけにはいかない、が……ある程度は、わかってもらう必要がある。
291 : ◆c6GooQ9piw [saga]:2016/07/24(日) 21:25:12.28 ID:vnrvk9SSO
さやか「仁美、よく聞いて」

仁美「……なんですの?」

ここまでの流れのせいか、幾分警戒している様子が見られる。

しかし、関係ない。

口を開く。

自ら聞くその声は、普段のそれとはどこか違っていた。
292 : ◆c6GooQ9piw [saga]:2016/07/24(日) 21:32:28.01 ID:vnrvk9SSO
さやか「あたしのやるべきことは、『終わらない』。これは、何かをやり遂げて、そこで終わるようなものじゃない」

さやか「あたしは、絶対にそれを投げ出すことはできない。あたしのやる気に関係なく、否応なくやり続けなければならない仕組みが、既に出来上がっている」

さやか「付き合えるかどうかの問題じゃない。あたしがこれから先、恋愛をすることは、もう二度とない」



さやか「……ごめんね」
293 : ◆c6GooQ9piw [saga]:2016/07/24(日) 22:20:06.92 ID:VQ8nvYN10
仁美「……っ!?」

一瞬……ほんの一瞬だが、仁美の目に、怯え、恐怖といった類いの感情が灯るのを、さやかは確かに見た。

仁美「さやかさん、あなたは……」

さやか「……」

仁美「……一体、何を抱えているんですの?」

……話すことは、できない。

さやか「ごめん」

仁美「っ……」

──先程の、仁美の言葉。

『恋心より優先すべきことなど、そうそうない』

つまり、それほどのことがさやかの身に降りかかっているということを、伝える必要があった。

仁美「……」

仁美が顔を伏せる。

内容を話さずに、ことの重大性のみを伝える。
難しいことではあったが、たぶんうまくいったはずだ。

本当なら、その重大性だけであっても、伝えるつもりはなかった。
さやかが何かに巻き込まれ、苦労しているということを知ってしまえば、仁美の性格からして、告白などできるはずがないからだ。

だがこうなってしまっては、仕方がない。
さやかがこれから先、表面上は何事もなかったかのように振る舞っていれば、そのうち安心して、恭介に想いを打ち明けることだろう。
294 : ◆c6GooQ9piw [saga]:2016/07/24(日) 22:21:46.13 ID:VQ8nvYN10
仁美「……さやかさん」

さやか「……何?」

仁美「さやかさんが話したくない、あるいは話せないのでしたら、私から聞くつもりはございません。ですが……」

絞り出すような声だった。

仁美「何か、私にできることはありませんの?」

さやか「……」

……やはり、優しい。

仁美がこんなに良い性格であることは、親友として誇らしく、また、喜ばしい。
同時に、そんな親友を心配させてしまったという事実に、胸を抉られる思いもあった。

だからこそ、絶対に巻き込むわけにはいかないのだ。

さやか「ありがとう。でも大丈夫。強いていうなら、これからもいつも通りに接してほしいな」

さやかの言葉に、仁美は少し寂しげな表情を見せた。

仁美「……わかりましたわ。ですが、何か私にできることがあれば、すぐに言ってくださいね」

さやか「うん、ありがとう」

……これでいい。

仁美には悪いが、今まで通りの日常を過ごせることが、さやかには何よりの助けとなる。
また、もしさやかに不幸が起こったとしても、そのときは恭介が支えてくれることだろう。

これであとは、魔法少女として戦い続けることに、専念できる──
295 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/07/25(月) 18:50:48.22 ID:oIKfv60Uo
改めてこれ、女子中学生に背負せる業じゃないよな
しかも劇場版じゃ世界か自分かどっちか選べと来たww

そりゃさやかも狂うし杏子はグレるし
何周もしたほむらなら悪魔化もするわ

マミさんは本当、例外的な存在だったんだな……
296 : ◆c6GooQ9piw [saga]:2016/08/13(土) 15:56:54.27 ID:321fPhmkO
***

まどか「ほむらちゃんが、さやかちゃんを助けてくれたの?」

ほむら「……え?」

突然の思いがけない質問に、首を傾げる。

放課後の教室。
ほむらが帰り支度をしていると、まどかが急に話しかけてきたのだ。

周囲を見渡すと、さやかはいなくなっていた。
約束でもあったのだろうか。

ほむら「……何のことかしら?」

まどか「……」

まどかは、一瞬ほむらを観察するような視線を向け、その後わずかに思案する様子を見せた。

まどか「……ううん、ごめん。なんでもない」

そう言って、まどかは離れてしまった。

ほむら(……何だったのかしら)
297 : ◆c6GooQ9piw [saga]:2016/08/13(土) 15:58:36.67 ID:321fPhmkO
さやかが助けられた?
誰に?
何から?
たとえば、魔女に苦戦していたところを助けられた、とか……

いや、それはしっくりこない。

さやかの魔女との戦闘をまどかが知るはずはないし、たとえ偶然見かけたのだとしても、それなら誰がさやかを助けたのか知っていてもいい。

また、魔女との戦闘においてさやかを助けられるということは、つまり魔法少女であるほむらか杏子ということになるが、ほむらにそんな覚えはないし、杏子がそんなことをするとも思えない。

何より今のさやかなら、独力で大抵の魔女は倒せるだろう。
あのような戦い方はあまり好ましくないが、強いのは確かだ。
ただし、やり過ぎると、手に入るグリーフシードで浄化できる以上の穢れを溜めてしまい、そもそもの魔女と戦うメリットが失われてしまう。

……問題は、さやかがそれを気にしてむざむざ魔女を見逃すとは思えないことだ。

ほむら(いや……まだ、大丈夫なはず)

決して楽観できるわけではないが、まだ、魔女化を危惧するほどの状態ではないはずだ。
298 : ◆c6GooQ9piw [saga]:2016/08/13(土) 16:00:27.31 ID:321fPhmkO
となると……精神的な面でのことだろうか。

ほむら「……」

最近のさやかの様子については、ほむらも気にしていた。
しかし、昨日さやかは学校を欠席したが、今日のさやかの様子が、欠席する以前と大きく変わっていたようには思えない、が……

ほむら(……ただ、それは私の目から見て、というだけの話──)

いくら観察しているとはいえ、限界はある。
直接会話をするわけでもなく、様子を眺めるだけではわからない変化もあるだろう。

いや、親友のまどかがさやかの変化を感じ取ったのなら、それはもはや、何かが起こったと見てまず間違いない。

しかし、ほむらではない。
あのような質問をしてきたということは、当然まどかでもない。
他に、今のさやかに影響を与え得る人物となると──

ほむら(……佐倉杏子? 彼女が、さやかに対して何かを……?)

考えていても仕方がない。

ほむら「……確認の必要があるわね」
299 : ◆c6GooQ9piw [saga]:2016/09/08(木) 00:36:53.19 ID:53bSqqQ4O
杏子を探さなければならない。
戦闘中である可能性を考え魔力を探ってみたが、反応はなかった。
まだ魔女が活発に活動する時間帯ではない。

心当たりがそう多くあるわけでもない。
ほむらはとりあえず、杏子がよく通っているゲームセンターへ向かった。

運のいいことに、杏子はすぐに見つかった。

ほむら「こんにちは」

杏子「……またてめえかよ。今度は何の用だ?」

杏子と最後に顔を合わせたのは、杏子とさやかの二度目の戦闘の直後だ。
杏子にとってはあまり思い出したいことではないだろう。
だが、聞かないわけにはいかない。

ほむら「美樹さやかと、何かあったの?」

杏子「……」

ほむらの言葉に、杏子の顔つきが変わった。

杏子「……どういう意味だ」

ほむら「ただの確認よ。何もないのならそれでいいのだけど」
300 : ◆c6GooQ9piw [saga]:2016/09/08(木) 00:38:19.13 ID:53bSqqQ4O
杏子「別に、何もねーよ」

ほむら「……そう」

言葉通りに受け取っていいものかどうか。

杏子の様子が変わったのは確かだが、それが図星を突かれたからなのか、あるいはさやかを話題に出されたからなのかの判断が付かない。
しかし、何の見当も付いていない現状では、鎌の掛けようもない。

ほむら(気のせいだったのかしら……?)

実際、ほむらが観察する限りでは、さやかに変化は見られない。
まどかがわずかな変化を感じ取ったとはいえ、逆に言えばその程度の変化ということだ。
あまり気にする必要はないのかもしれない。

そこまで考えたところで、ほむらはハッとした。

──いや、違う。

さやかに変化は見られない。
それが、どういう意味を持つか。

そうだ、気づくべきだった。
変化がないことがおかしいのだ。

これまでの時間軸で、この時期に、さやかがあれほど落ち着いていたことがあっただろうか。

ほむら(明らかに、これまでの時間軸とは別の展開を見せている。その原因は……やはり、佐倉杏子……?)

ほむらは、改めて杏子に向き直った。

ほむら「言い方を変えるわ」

杏子「……」

ほむら「美樹さやかに何を吹き込んだの?」
301 : ◆c6GooQ9piw [saga]:2016/09/08(木) 00:42:14.13 ID:53bSqqQ4O
杏子が舌打ちをした。

杏子「……てめえに関係あんのかよ。ワルプルギスの夜と戦うのに、あいつは必要ないんだろ?」

ほむら「いろいろと事情があるのよ。その様子だと、やはり心当たりがあるのね」

杏子「……」

杏子の機嫌が、みるみる悪くなっていく。

これ以上踏み込むのはまずいだろうか。
しかし、できればさやかの状態は細かく把握しておきたいのだが……

そんなことを考えていると、杏子がため息を吐いた。

杏子「……もういいだろ。あいつのことは放っておいてやれ」

ほむら「……どういう意味?」

杏子「あいつはあたしらみたいな、魔法少女になるべくしてなったような人間じゃねーんだよ。いや、あんたのことは知らないけどよ……」

ほむら「……」

これは、わかりにくいが……さやかのことを評価しているのだろうか。
自分とは違い、真っ当な道を歩める人間という評価は、彼女にとっての称賛に値するはずだ。

しかし、それにしては投げやりな態度というか……どこか、諦めたような印象を受けるのは気のせいだろうか。
302 : ◆c6GooQ9piw [saga]:2016/09/08(木) 00:44:57.08 ID:53bSqqQ4O
ほむら「美樹さやかのこと、ずいぶん気に入っているのね。いつの間にそんなに仲良くなったのかしら」

杏子「……誰がそんなこと言ったよ。身の程をわきまえずに契約したことに、あきれてるって言ってんだ」

ほむら「……?」

……だからこそ馬が合わず、ああして争っていたのでは?

ほむら「話が見えてこないわね。それでなぜ、彼女を放っておこうなんて結論になるのかしら。あなたは、そんな気に入らない人間を無視していられるような性格ではないでしょう?」

杏子「……勝手に人のことを決めつけてんじゃねーよ」

ほむら「あら、違っていたかしら」

杏子「……」

どうも杏子の様子がおかしい。
ここまで言われれば、普段の彼女なら必ず反発してくるはずだ。

一体、さやかと何があったのか──
303 : ◆c6GooQ9piw [saga]:2016/09/08(木) 00:48:04.88 ID:53bSqqQ4O
ほむらが黙って杏子を観察していると、観念したかのように、杏子が口を開いた。

杏子「……あいつは、どこまでも真っ直ぐなんだよ。本来なら、あたしなんかと道が交わることはなかったはずだ」

ほむら「美樹さやかがそんな性格だったからこそ、あなたと衝突したのではなかったの?」

杏子「そうじゃねえ。そもそもの話、あいつは魔法少女なんかになるべきじゃなかったって言ってんだ」

……そんなことを言い出したら、魔法少女になるべき人間なんて存在しないと思うが。
まぁ杏子としては、自分がそういう人間であり、さやかはそうではなかったと言いたいのだろう。

確かに、大抵の時間軸でさやかが魔女化してしまうことを考えれば、杏子の言うことも、一理はあるように思える。

ほむら(もし、さやかに魔法少女としての素質がなかったら……)

もしさやかに魔法少女の素質がなかったら、それこそ杏子と知り合うことすらなかっただろう。
魔女の存在も知らず、杏子の言うように真っ直ぐ、明るい日々を過ごしていたはずだ。

いや、さやかだけではない。
これまで魔法少女になった少女たちは、なまじ素質があったせいで、運命をねじ曲げられてしまったのだ。
もちろん元凶はキュゥべえだが、もし素質が備わっていなかったらと考えると、やはり運が悪かったとしか言いようがない。
304 : ◆c6GooQ9piw [saga]:2016/09/08(木) 01:05:05.34 ID:53bSqqQ4O
ひとつだけ訂正するとすれば、素質があったことが悲劇かどうかは、当人が決めることだということか。
いうまでもなくほむらは、自身に素質があったことを悲劇だとは思っていないし、契約したことも後悔していない。
むしろ、あの場でまどかを救う手立てを有していた幸運に、感謝していたくらいだ。

ほむら「……」

杏子「もうあいつには、何を言っても無駄さ。あたしは諦めたよ。気の済むまで、好きにやらせておくつもりだ」

ほむら「好きに、とは?」

杏子「正義の魔法少女さ」

ほむら「……なるほどね」

これまでの時間軸で、さやかが素直に正義を目指せていたことは少ない。
この時間軸でも、何も起こらなければ、さやかはそうなっていた可能性が高いはずだった。

つまり、杏子が行動を起こしたのだ。

自分は関与せず、さやかの好きにさせるという言い方をしているが、実際は逆だろう。
恐らく、杏子がさやかの背中を押したのだ。

別に、そこをつつこうという気はない。
重要なのは過程ではなく結果だ。

考えるべきは、この影響で、どういった状況が生まれるかということだ。
305 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/09(金) 14:49:50.72 ID:tcNEu9ZAo
元はさやかに素質なんかなくて(アニメ1・2周目で契約が確認できない)
ほむループで因果が重なって魔法少女になったって説があったような

大概まどかの隣にいるわけだから
306 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/09(金) 17:01:00.66 ID:LeMbcTyeO
>>305
だったら終盤であんな弱いはずないでしょ
307 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/10(土) 21:18:28.81 ID:NHY47q1wo
>>305
いくらさやかとまどかが近しいとはいえ、さやかだけが特別強化されるってのは納得いかんな。
初期のさやかが契約して無いのは、さやかを魔法少女にするメリットがないからじゃね?
QBにとって、さやかを魔法少女にするのはまどかを魔法少女にする手段みたいなところがあるし。
308 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/15(木) 01:39:19.89 ID:NtLKNQhPo
メリットならあるじゃろ
QBとしちゃ誰であれ思春期の少女が絶望してエネルギーをくれるなら、それに越した事はないんだから
まどかの因果が重なったから、餌に使うさやかの優先順位が上がったってのは確実にありそうだけど

あと、あんな弱いって言うけど初戦で死ぬ方が多いクソみたいなシステムの中じゃさやかは強い部類じゃね
周りが女神まどかと、ループを重ねたほむらと、ベテランのあんことそのお師匠のマミさんだから相対的には最弱だけど
309 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/16(金) 00:04:07.69 ID:eLQvMyQao
QBは大した素質もない候補と無理に契約しようとはしないぞ。
エネルギーが取れるのは「絶望して魔女化した時」だけだから、素質のない魔法少女じゃ魔女に殺されて
エネルギーを回収できない恐れがある。
奇跡は先払いだから、収支はマイナスになっちゃうんだから。

あと、さやかは魔法少女として見たら間違いなく弱い。
初戦で死ななかったのは不意を打てたからだし、その後も戦えたのはベテランのフォローがあったから。
さやかの能力でソロだったら、すぐに魔翌力が切れて再生できずに死ぬのがオチだ。
310 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/16(金) 19:18:09.55 ID:BQVhbdjao
その理論で行くと、めがほむは契約してもらえるはずないでしょうよ
元は時間停止でリソース使い果たしてゴルフクラブ持ち出す子だったんだから
少なくともさやか>めがほむなんだから契約しない理由はない

なぜ契約しなかったかといえば、1周目や2周目ではまだ素質がなかったから
……という説は、別におかしくは思えないけどな
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