ほむら「巴マミがいない世界」

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356 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/06(土) 19:03:44.02 ID:pYDgRGdr0
正義、正義ねぇ…まどマギ世界でこれほど無価値で虚しい言葉はないだろうな
357 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/07(日) 16:06:38.97 ID:jVxbQ0uVo
>>356
正義が無価値なのは魔法少女視点の話だよ
さやかは一般人視点から否定するだろう
358 : ◆c6GooQ9piw [sage saga]:2017/05/31(水) 18:20:41.92 ID:L/ipiLtmO
ほむら(確かに、さやかが自分で納得しているのなら、それ以上は他人が口を出す話じゃない……)

──どう生きるか、あるいは、どう死ぬか。

それを決めるのは、常に当人であることが望ましいと、ほむらは考えている。

価値観などそれぞれで異なる上に、そもそも魔法少女に正しい価値観など存在しない。
当人が本心から納得できる生き方ができれば、それが一番なのだろう。

誰よりも、ほむら自身がそうしているのだから、そこを否定するわけがない。
359 : ◆c6GooQ9piw [sage saga]:2017/05/31(水) 18:22:25.79 ID:L/ipiLtmO
ただし、それは──

ほむら(知ったことじゃないわね)

──ほむらの目的の妨げにならない場合に限る。

まどかを救える範囲内であれば、さやかの生き方を尊重することもやぶさかではない。
さやかを今日まで放置していたのは、それが理由のひとつでもある。

しかし、もうそんな余裕はない。

たとえさやかの生き方を歪めてでも、これ以上は放ってはおくわけにはいかない。

もう本当に猶予がないのだ。
この様子だと、明日にでもさやかは魔女になってしまうだろう。

やはり、何か手を打たなくてはならない、のだが……
360 : ◆c6GooQ9piw [sage saga]:2017/05/31(水) 18:24:53.68 ID:L/ipiLtmO
ほむら(……どうする?)

さやかが魔女になれば、高確率で杏子が命を落とす。
そうなれば、ワルプルギスの夜を倒すことはほぼ不可能になる。

そうなれば、まどかは──

ほむら(……ダメだ。やはり放置しておくわけにはいかない。しかし……)

……さやかが魔女化しても、杏子が死なない方法を模索するべきか?

それがどれほど難しいかは、ほむらが一番よく知っている。
既に何度も試みたが、結局確実な方法は見つかっていない。

キュゥべえは甘くない。
さやかが魔女化したという事実は、杏子に無謀な賭けへと身を投じさせるには十分なのだろう。

やはり、さやかの魔女化を避けることが最も確実なのだ。
361 : ◆c6GooQ9piw [sage saga]:2017/05/31(水) 18:34:28.72 ID:L/ipiLtmO
──この状況で?

ほむら「……」

……いや、方法はある。
最も確実な手段が、たったひとつだけ存在する。

しかし、この手段は──



このとき、ほむらは確かに揺らいでいた。
決して、ほむらは冷酷な性格というわけではない。

ただ、ほむらはとっくに覚悟を決めていたのだ。

目的のためなら、何を犠牲にしてでも前に進むという、覚悟を──
362 : ◆c6GooQ9piw [sage saga]:2017/05/31(水) 18:36:14.85 ID:L/ipiLtmO
ほむら(今の私に、手段を選んでいる余裕はなかったわね)

揺らぎが止まる。
その目は、しっかりと前を見据えていた。

ほむら(もう、迷いはない)

ほむらは、現状と為すべき条件、自身の行動原理を再確認する。

ほむら「……」

やるべきことは、決まっていた。

そしてほむらは、ひとつの決断をする。
363 : ◆c6GooQ9piw [sage saga]:2017/05/31(水) 18:37:41.27 ID:L/ipiLtmO


──さやかを殺すしかない。

364 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/31(水) 19:03:57.02 ID:nOhO4C1Io
おつ
365 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/01(木) 13:16:03.07 ID:t6aXkz35o
おつ

ふと思ったんだが、時間停止中に「穢れを貯めたソウルジェムにグリーフシードを近づけて」も穢れは吸えないのかな?
366 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/01(木) 13:18:09.74 ID:oZdj8BWuo
乙です
あぁぁぁ…って感じだな
自分の中で可能な限りの手を打ってるのにどんどん崖っぷちに追い詰められている感じがたまらないわ(いい意味でなくww)
読んでて胃と心が痛くなってくる
367 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/01(木) 13:21:25.00 ID:oZdj8BWuo
>>365
停止中はムリなんじゃないかな?
描写的に、ほむらの時間停止って停止前に接触していないものは時間が進まないっぽいし

停止中にふん縛るかジェム取り上げて停止後にやれば、とか思ったけど、こっそりは出来ないし、知られたらそれで余計に濁るかもしれんね
368 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/01(木) 13:31:18.90 ID:IZ2nJatiO
>>367
叛逆の場合は触れることで後から動かすことも出来たみたいだけどアレは既に魔女化してるせいで能力拡張されてる可能性があるしな
369 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/01(木) 19:55:21.52 ID:fIwkXVIAP

これではまどポのほむら魔女化ルートじゃないか・・・

「できる」と「やれる」は別物だもんねえ
魔法を使えば色々できるんだろうけど、魔法を使っているのが人間である以上、やれることには限りがある
370 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/01(木) 19:58:40.36 ID:fIwkXVIAP
間違えた
魔女化じゃなくて看取られエンドだった
大分昔の話だから記憶が曖昧になってる
371 : ◆c6GooQ9piw [sage saga]:2017/06/30(金) 08:07:06.26 ID:FEmLPHcTO
ここでさやかが死ねば、杏子が死ぬことはない。

杏子はさやかの死を悲しみはするだろうが、それでほむらに協力しなくなるということもないだろう。
もちろん、さやかを殺したのがほむらであることを知られなければ、ではあるが。

さやかが連日魔女と戦っていることは、杏子も知っている。
さやかの死に疑問を抱くことはないはずだ。

ほむら「……」

ほむらはいつの間にか、冷静さを取り戻していた。

殺すのなら、できるだけ早い方がいい。
また、誰にも目撃されてはならないし、知られてはならない。

──つまり、今この時が絶好のチャンス。
372 : ◆c6GooQ9piw [sage saga]:2017/06/30(金) 12:39:33.81 ID:FEmLPHcTO
さやか「話はおしまい? なら、あたしはこれで……」

さやかがほむらから目線を外す。

ここだ。

一瞬だが、このタイミングがベスト。

これ以上距離が離れては、警戒されてしまう恐れがある。

ほむらは素早く盾から拳銃を取り出し、さやかに向けて構えた。

さやか「……ッ!?」

狙いを定める。
狙うのはもちろん、さやかのソウルジェムだ。

完全な不意打ちだ。
さやかは全く反応できていない。

人を殺すということを意識しつつも、手がぶれることはなかった。

ソウルジェムを照準に収める。

この状態で、外すことはあり得ない。

自分はこんなに簡単に人を殺せる人間だったのかと、頭の片隅で思った。

思っただけだ。

そのことに対する驚きはなかった。



──銃声が響いた。
373 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/07/12(水) 15:52:06.60 ID:l+UoM5pH0
374 : ◆c6GooQ9piw [sage saga]:2017/07/13(木) 22:22:31.83 ID:3WgO0sCmO
ガキィィィン!!

ほむら「……!」

しかし、銃弾がさやかのソウルジェムを砕くことはなかった。

さやか「あ……」

ほむら「……」

ほむらが引き金を引く直前、ほむらとさやかの間に飛び込む影があった。

杏子「……何やってやがる」

乱入者は、佐倉杏子。
恐らく、ほむらの目線と拳銃の角度から銃弾の軌道を予測し、槍で防いだのだろう。

杏子の乱入。
これは、ほむらにとって最も望まない展開だった。

ほむら(ここで佐倉杏子か……最悪ね)

これでもう、このままさやかを殺すわけにはいかなくなった。
さやかを殺したのがほむらだと知っていれば、杏子がほむらに協力するわけがない。
375 : ◆c6GooQ9piw [sage saga]:2017/07/13(木) 22:24:40.77 ID:3WgO0sCmO
杏子「おいさやか、ここは逃げとけ」

さやか「……うん」

ほむら「……?」

さやかが素直に従ったことに若干の違和感を覚えたが、もう、気にする必要もないのかもしれない。

……この時間軸は、もうダメだ。

もはや、ほむらは諦めかけていた。

手詰まりだ。
ここから、ワルプルギスの夜が来るまでさやかの魔女化を防ぎ、その上で杏子と共闘し、ワルプルギスの夜を倒す……不可能だ。

さやかが魔女化しても、杏子が死なないことに賭けるべきか──
376 : ◆c6GooQ9piw [sage saga]:2017/07/13(木) 22:26:28.67 ID:3WgO0sCmO
杏子「ほむらてめえ……どういうつもりだ?」

ほむら「…………」

──いや、

まだ、終わってはいない。

運を天に任せる?
それでは、決まりきったレールから外れることはできない。

もう嫌になるほど経験した。
結局それでは、何も変わらない。

ほむら(そうだ、私の願いは──)

──自分のこの手で、まどかを救うこと。

他人任せではなく、自分自身の手で運命をねじ曲げ、変えてみせる。

それが、全ての始まりだったはずだ。

ほむらの根幹を支える願い、あるいは誓いとも言えた。

ほむら(……まだ、諦めるには早い)

だが、どうするか。
正攻法ではもう無理だ。

ここから、やれることがあるとすれば、それは……
377 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/07/17(月) 12:21:07.54 ID:SL16IcPg0
378 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/20(木) 00:42:56.46 ID:eyv4Ea6V0
この場面で切れるカードがあるとすれば、魔女化のカミングアウトかね
「さやかが魔女化すればいずれ杏子がケジメをつけようとするだろうから、魔女になる前に殺してやるつもりだった」ってでも主張すれば何とかなるか・・・?
379 : ◆c6GooQ9piw [sage saga]:2017/08/20(日) 13:16:32.00 ID:go5q8SprO
ほむら「……佐倉杏子。あなたも魔法少女なら、腕ずくできたらどう? そうよ、私と勝負しなさい」

ほむらの突然の提案に、杏子は戸惑いを見せた。

杏子「はぁ? お前、突然何を……」

ほむら「あなたが勝てば、美樹さやかを狙うのはやめてあげる。どうかしら」

杏子「なんだと……」

これしかない。

決闘という形をとり、半ば強引にでもさやかを殺すことを認めさせる。
そしてさやかを殺した後で、魔法少女が魔女になるという真実を明かし、さやかを殺すしかなかったと納得させる。

ほむら(事前に話したところで、杏子がさやかを殺すことに同意するわけがない。でも、ことが済んだ後なら……)

さやかが死ねば、杏子は少なからずショックを受けるだろう。
そのショックを和らげるためにも、さやかの死が避けられないものだったという言葉は、よく響くはずだ。
380 : ◆c6GooQ9piw [sage saga]:2017/08/20(日) 13:20:09.70 ID:go5q8SprO
もちろん確実ではない。
策というより、賭けに近いかもしれない。

しかし、たとえどれほど薄い可能性であっても、ほむらに諦めるという選択肢はなかった。

杏子「……」

わずかに思案する様子を見せてから、杏子が口を開いた。

杏子「……わかった。約束は守れよ?」

ほむら「えぇ、もちろんよ」

お互い、馬鹿正直な人間ではない。
そこにはそれぞれの思惑がある。

たとえほむらが勝っても、杏子は全力でほむらを阻もうとするだろう。

それはほむらもわかっている。
重要なのは、そういう約束があったという事実だ。
381 : ◆c6GooQ9piw [sage saga]:2017/08/20(日) 13:23:58.28 ID:MAPqlOtvO
ほむら「始めましょうか。せっかくだし、決闘形式でいきましょう。このコインが地面に着いたら、スタートよ」

杏子「……いいぜ。やりな」

ほむら「……」

ピンッ

ほむらは、コインをはじいた。

ほむら(……これが、最後の足掻きね)

コインは回転しながら宙を舞い、最高点に到達し、やがて落下を始め──

キィン

──地面へと到達した。
382 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/18(月) 03:10:27.66 ID:94Q23K5mo
383 : ◆c6GooQ9piw [sage saga]:2017/09/29(金) 17:13:19.87 ID:ZwAUqzOvO
ほむらは、即座に能力を発動させた。

『時間停止能力』

魔法少女の中でも、トップクラスに強力な能力だ。
この能力を用いて攻撃された場合、対処は極めて困難である。

ソウルジェムという弱点を持つ魔法少女が相手なら、ほぼ確実に相手を仕留めることができるだろう。

ほむら(……もっとも、今回はそういうわけにはいかない。杏子を殺してしまっては、この決闘の意味がなくなる)

この能力に弱点があるとすれば、発動する前に攻撃されること。
つまり、不意討ちだ。

しかし、今回ほむらは決闘の形式を用いることで、どのタイミングから戦闘が始まるのかを明確化した。
そして、戦闘開始直後に能力を発動することで、そのリスクを極力排除したのだ。

無事能力を発動できた時点で、ほむらは勝利を確信していた。

拳銃を構える。
384 : ◆c6GooQ9piw [sage saga]:2017/09/29(金) 17:15:57.32 ID:ZwAUqzOvO
ほむら(この決闘で私に求められるのは、勝つことだけではなく、杏子の動きをしばらく封じること)

その理由は、さやかを殺すためだ。
たとえ決闘に負けても、杏子がさやかを殺すことを素直に了承するはずがない。

だから、この決闘が終わったらすぐにさやかを見つけ出し、始末する。

その際に妨害されないように、ここで杏子にはすぐには動けないほどの傷を負わせておかなければならない。

ほむら(……手足を撃ち抜いておきましょう。魔法少女とはいえ、動けるほどに回復するには、ある程度の時間はかかるはず)

ほむらは狙いを定めた。

罪悪感がないわけではない。
ほむらが自分の都合でひとりの少女を殺そうとしているのに対し、杏子はその少女を必死で守ろうとしている。
そんな杏子に、邪魔をさせないがためだけに、動けなくなるほどの傷を負わせようとしているのだ。

全てを承知の上で、しかしほむらの手に震えはなかった。

全てはまどかを守るためだ。

そのためなら──

ほむら(私は手段を選ばない)

引き金に掛けた指に、力を込める。

ほむら「……ごめんなさい」
385 : ◆c6GooQ9piw [sage saga]:2017/10/31(火) 21:51:18.22 ID:5Xc7cQz4O


「おいおい、そいつはやり過ぎじゃねーの?」

386 : ◆c6GooQ9piw [sage saga]:2017/10/31(火) 21:54:32.80 ID:5Xc7cQz4O
ほむら「……ッ!?」

ほむらが引き金を引く、その直前だった。

背後から、声が響いた。

ほむらが弾かれたように振り向くと、そこには当然のように、杏子の姿があった。

ほむら「……あなた、どうして……!」

杏子「すました顔して、しれっと人の手足を撃ち抜こうとしやがって。恐ろしいねぇ」

ほむら「っ……」

内容とは裏腹に、からかうような口調だ。
しかし、ほむらは自分ののどが干上がるのを感じていた。

横目で、先程まで杏子が『固まっていた』位置を確認したが、既にその姿は消えている。
387 : ◆c6GooQ9piw [sage saga]:2017/10/31(火) 21:56:13.12 ID:5Xc7cQz4O
──あり得ない。

ほむらの能力は間違いなく発動している。
現に、ふたりの周囲からは物音ひとつしない。

しかし、明らかに杏子はその影響を受けていない。

ほむら「……」

ほむらの思考に空白が生じる。
あまりにも予想外の事態だった。

未だかつて、ほむらの能力が正面から破られたことはなかった。
これまで数多の時間軸を渡り歩いてきたほむらは、それこそ数え切れないほどに、この能力を使用してきた。

発動前に防がれてしまったことならある。
しかし、能力自体が効かないというのは、初めての経験であった。
388 : ◆c6GooQ9piw [sage saga]:2017/11/27(月) 09:26:09.09 ID:wr82tVGwO
ほむら(……ダメだ、糸口が見えない。一体何が起こっているのか、見当もつかない……!)

そして、杏子がわざわざほむらの思考を待つはずもない。

杏子「さぁ、どうする? 頼みの綱の能力が破られて、次はどんな手を繰り出してくる?」

杏子の言葉に、ほむらの表情が歪む。

ほむら(次の手なんて、あるはずがない……かと言って、正面から戦って、私が杏子に勝てるとは到底思えない……!)

ほむらの強さは、決して能力一辺倒というわけではない。
能力を使わずとも、大抵の魔女は倒せる自信がある。

だが、今回ばかりは相手が悪い。

先程杏子は、銃弾を槍で防ぐという離れ業を見せた。
いくら魔法少女であろうと、簡単にできる芸当ではない。
しかし、杏子は事も無げにやってみせた。

つまり、正面戦闘における杏子の強さは、その域にまで達しているのだ。
389 : ◆c6GooQ9piw [sage saga]:2017/12/31(日) 17:37:42.28 ID:c9uaaNApO
ほむら(……このまま戦えば、勝ち目がない。何か、何か策は……!)

なんでもいい。
この状況をひっくり返すことができるのなら、どんなものでも──

ほむら(……ここで杏子に勝てなければ、もうこの時間軸でまどかを救う手立てはない。絶対に、負けるわけにはいかない──)

周囲を見渡す。
焼け付くほどに、思考を加速させる。

ほむら(──諦めたく、ない──!)

しかし、考えれば考えるほど、結論は固まっていく一方だった。

やがて、悟る。

──ここからの逆転策など、あるはずがない。
390 : ◆c6GooQ9piw [sage saga]:2017/12/31(日) 17:42:35.22 ID:c9uaaNApO
杏子「さあ、どうする!?」

ほむら「……………………」

ほむらの中で、張り詰めていたものが切れたような感覚があった。

ほむら(終わり、ね……)

ほむらは、能力を解除した。

ほむら「……私の、負けよ」

杏子「……」

ほむら「もう美樹さやかは狙わない。あなたの邪魔もしない。それで文句はないでしょう」

ほむらはそう言い捨てて、その場を去ろうとする。

しかし杏子としても、そのままほむらを逃がすはずがない。

杏子「待てよ、そんな言葉だけで……」

ほむら「……」

ほむらは時間を止めようとして、たった今その能力が通用しなかったことを思い出す。

杏子に振り返り、答える。

ほむら「……悪いけど、今はひとりにさせてくれないかしら。少し、疲れたわ」

杏子「……ッ!?」

ほむらの顔を見て、杏子が表情を強張らせた。

ほむら(……あぁ、私は今、どんな顔をしているのかしらね)

今や、全てがどうでもいい。

ほむら(少し、休みましょう……)

ほむらはフラフラと歩き出し、その場を後にした。
391 : ◆c6GooQ9piw [sage saga]:2018/01/27(土) 17:28:56.66 ID:ozixwMScO
***

杏子「くそっ、なんだってんだよ……」

取り残された杏子は、困惑していた。

ほむらを問い詰めるつもりだったが、あんな顔を見せられては何も言えなかった。

杏子(全てを諦めたような表情をしやがって……さやかを殺せなかったのが、そこまでのことだったってのか?)

ほむらは明確な目的があって動いている。
それは間違いない。

さやかが生きていることが、その目的の妨げになるということだろうか。

杏子(……そんなことがあり得んのか? 逆ならわかる。ワルプルギスの夜に対する戦力の確保のために、さやかを死なせたくないってんなら理解できる)

しかし、さやかを殺そうとしていたとなると、話が変わってくる。
思い返してみれば、ほむらは始めからワルプルギスの夜とは、杏子とふたりだけで戦おうとしていた節があった。
392 : ◆c6GooQ9piw [sage saga]:2018/01/27(土) 17:42:11.83 ID:ozixwMScO
杏子(今の状況を見越していた? 確かに、最近のさやかはいつ死んでもおかしくないような戦い方をしている。戦力として数えるには、あまりにも不確かかもしれない)

もちろんこれは、さやかを生かさなくていい理由であり、さやかを殺さなければならない理由にはなり得ない。
ほむらの目的がわからない以上は見当もつかないが、何らかの理由があってさやかを殺そうとしたのだろう。

杏子(……だとしても、やはりおかしい)

仮に、さやかが生きていることに不都合があったとしても、なぜ、ほむらがわざわざ手を下す必要がある?

放っておけば死ぬ可能性が高いのに、杏子に反感を買うリスクを負ってまで自ら殺そうとしたのはなぜだ?

どうせ魔女と戦い続けて力尽きるなら、その前にとどめを刺したところで大して結果は変わらない。
多少さやかの死が早まるだけだ。

杏子(……そこに違いがあるとでも?)
393 : ◆c6GooQ9piw [sage saga]:2018/02/28(水) 21:03:23.91 ID:2jxc5yBsO
ほむらは感情で行動するタイプではない。
自分が引導を渡してやろうなどと考えるとは思えない。
必ず、さやかを殺さなければならない明確な理由があったはずだ。

杏子「……」

これ以上は考えても仕方がない。
ほむらはまだ情報を隠しているはずだ。
前提が揃ってないうちにあれこれ考えを巡らせたところで、想像の域を出ることはない。

杏子「……どうすっかな」

ほむらを問い詰める必要があるのは確かだが、先程の様子だとまともに答えるかどうか。

それに、さやかの様子も気になる。
状況が状況だけに構っていられなかったが、さやかは本来、逃げろと言われて素直に逃げるような性格ではない。

──さやかを探そう。

ほむらも、さやかに手出しをしないという約束は守るはずだ。
今のほむらに、行動を起こそうという気概はないだろう。

杏子「……間に合ってくれよ」

なぜか、嫌な予感が頭から離れなかった。
394 : ◆c6GooQ9piw [sage saga]:2018/03/31(土) 22:15:42.35 ID:NRMu+G8YO
***

さやか「……」

さやかは、あてもなく走り続けていた。
ほむらが追ってくる様子はなかったが、立ち止まると、嫌な考えが頭を埋め尽くしてしまう予感があった。

気付いてはいけないことに、気付いてしまう。
知ってはならないことを、知ってしまう気がした。

さやか(……考えるな)

しかし、それでもさやかの中の冷静な部分は、結論を導き出しつつあった。

先程のほむらの殺気は本物だった。
間違いなく、さやかを殺そうとしていたはずだ。

そのことで怯えているわけではない。
決していいことだとは思わないが、魔法少女として魔女と戦っていたことから、命のやり取りにはある程度慣れてしまっている。

さやかが気にしていたのは、そこではなかった。

さやか(あのとき、ほむらが拳銃で狙っていたのは……)
395 : ◆c6GooQ9piw [sage saga]:2018/04/01(日) 18:39:02.29 ID:R5ntGRlkO
ほむらの目的がさやかを殺すことだったとしたら、狙うのは普通、頭か胸ではないだろうか。

しかし、あのときほむらは、確かにさやかのソウルジェムを狙っていた。

さやか(それは、つまり──)

ソウルジェムを破壊されると、魔法少女は死ぬ?

──いや、そんな単純な話ではない。

さやか「……」

点と点が線で繋がっていく。

自分が痛覚を遮断していたことの、本当の意味を察していく。

気付いて、しまう。

さやか「あぁ……これが……」

ソウルジェムを見つめ、呟く。

さやか「『これ』が、あたしなんだ……」

恐らく、ほむらに言われても信じなかったであろう真実。
しかし今のさやかには、なぜか自然に受け入れられた。

始めは綺麗だったはずのそれは、今やほとんど濁りきり、見る影もない。

さやか「ここにきてやっと気付くなんて……あたしって、ほんと……」

そして、わずかに残った透き通るような青い部分も──穢れに犯されつつあった。
396 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/29(日) 22:10:02.57 ID:k4w0Ch2O0
さやさや・・・
397 : ◆c6GooQ9piw [sage saga]:2018/05/31(木) 19:32:05.08 ID:iOV+WDJnO
杏子「──さやかっ!」

さやか「!」

もはや、ほとんど意識すら手放そうとしていたさやかだが、杏子の声に我を取り戻す。
振り向くと、そこには息を切らせた杏子が立っていた。

さやか「あんたか……どうしたのよ」

いつもの調子なさやかの言葉に、杏子はほっとした表情を見せた。

杏子「どうしたのよじゃねーよ……心配させやがって」

ため息をつきながら、さやかの隣に座る。

杏子「あいつには、もうお前を襲わないように約束させた。安心しな」

さやか「……そう」

杏子「つれねーな。まぁお前らしいけどよ」

そう言いつつどこか嬉しげな杏子の様子に、さやかの胸が痛む。

どう考えても、隠しきれるとは思えない。
それなら、これ以上だまし続ける方がよほど残酷だ。
398 : ◆c6GooQ9piw [sage saga]:2018/07/06(金) 23:26:26.43 ID:4HQQUpz3O
さやか「……杏子、見て」

杏子「?」

ソウルジェムを手に掲げる。
それを見た杏子の様子が一変した。

杏子「お前……っ!」

さやか「もう限界みたい。最後にあんたに会えてよかったよ」

杏子「待ってろ、今グリーフシードで回復を……」

さやか「いいよ」

震える手で、あわてる杏子を制止する。

さやか「たぶん、無駄だよ。自分のことは、自分が一番よくわかる」

杏子「……ッ」

杏子の顔が歪む。
歯を食い縛り、悲痛な面持ちを見せた。
399 : ◆c6GooQ9piw [sage saga]:2018/07/31(火) 19:20:06.06 ID:/hiK/WChO
さやかは杏子から目を逸らし、ひとりごとのように呟いた。

さやか「もう今さらどんな事実を突きつけられても気にならないと思ってたんだけどね……やっぱり、少しはショックがあったみたい。とどめになっちゃったのかな」

杏子が眉をひそめる。

杏子「……何を言ってんだかわからねえよ」

さやか「……」

ここで、さやかが気付いたことを杏子に伝えておくべきなのだろうか。
杏子なら、精神的にもソウルジェムの状態からしても、問題はないかもしれない。

さやか(……違うな。今あたしが杏子に伝えたいことは、そんなことじゃない)

時間はあまり残されていない。

杏子「……」

杏子はうつむき、落ち込んでいるように見えた。
あのときの、さやかへの言葉を後悔しているのだろうか。

さやか「杏子」

杏子「……なんだよ」

だからこそ、終わってしまう前に、何も伝えられなくなってしまう前に、ここで言っておかなければならない。
400 : ◆c6GooQ9piw [sage saga]:2018/08/28(火) 02:06:33.42 ID:+QeVpCD0O
さやか「ありがとう。あたしが最後まであたしでいられたのは、あんたのおかげだよ」

杏子「……!」

未練がないわけではない。
こんな結末になってしまったことが、悔しくないわけではない。

しかし、杏子にそれを悟られたくはなかった。

杏子「……本心か?」

さやか「うん」

嘘ではない。
仮に、さやかがあのまま自分を見失っていたら、こんな気持ちで終わりを迎えることはできなかっただろう。

杏子がいたからこそ、さやかは──
401 : ◆c6GooQ9piw [sage saga]:2018/08/28(火) 02:11:13.28 ID:+QeVpCD0O
さやか「だから、あんたが気にすることは……何も……ッ!?」

不意に、声が途切れた。

息が苦しい。
体が震える。

全身の力が抜け、倒れ込む。

感触から、杏子に支えられたのだと悟った。

杏子「さやか!??おい、さやか──」

杏子の声が遠くなる。

すでに限界だったのだろう。
いや、杏子がいなければ、もっと早かったのかもしれない。
402 : ◆c6GooQ9piw [sage saga]:2018/08/28(火) 02:13:39.70 ID:+QeVpCD0O
さやか(……大丈夫だよ)

もう、声も出ない。

杏子は、必死にさやかに呼び掛けていた。

杏子「────」

あぁ、なんて顔をしているの。
そんな顔をさせたくない。

あなたに伝えたい気持ちは──

杏子「……!」

思いっきり、笑顔を見せつけてやる。
ここ数ヵ月はできなかった、満面の笑みだ。

さやか(……ありがとう)

杏子「────」

あぁ、なのになぜ、あなたはそんなに悲しい顔をしているのだろう──



そして、さやかは静かに、意識を手放した。
403 : ◆c6GooQ9piw [sage saga]:2018/11/14(水) 18:10:32.98 ID:qYAZn7wJO
***

ほむら「……」

ほむらは、家でひとりうなだれていた。

終わった。
これで、ワルプルギスの夜を倒す道は完全に潰えたとみていい。

ここから杏子がとる行動は決まっている。
キュゥべえに誘導され、ありもしない希望にすがり、その命を落とすことになるだろう。

ほむらにそれを阻止する手立てはない。
特にこの時間軸では、杏子はほむらよりキュゥべえを信用する可能性が高い。

あの悪魔は容赦をしない。
確実に杏子を死に導くはずだ。

ほむら「……ッ」

すでに何度も見た結末だ。
詰みだとわかっているのに、わかっていたのに、どうあがいても抜け出すことができない。

だが、切り替えるしかない。
もうこの時間軸は諦めるしかないのだから。

次こそは──
404 : ◆c6GooQ9piw [sage saga]:2019/01/04(金) 04:43:53.86 ID:Si5e7ne+O
ほむら「……」

そう呟いて自分を誤魔化すのも、何度目だろう。
何度でもやり直せるから、失敗を糧にできるから、だから、いつかは必ず──

本当にそうだろうか。

同じ結末を回避できないのなら、繰り返したところで意味はない。

偶然などない。
そんな曖昧なものに頼っていては、ほむらに勝ち目はない。
そもそも、ほむらが繰り返してきた回数は、偶然などに希望を見出だせなくなるには十分だ。

キュゥべえは違う。

あの悪魔は、常に全てを計算して動いている。
何があろうと自分の目的を果たせるように、確実な手を打ってくる。

キュゥべえに『次がある』などという甘えはない。
だからこそ、決して手を抜くようなことはない。

同じ土俵に立てていないのだ。
ほむらが毎回出し抜かれるのも、当然だろう。
405 : ◆c6GooQ9piw [sage saga]:2019/01/04(金) 04:47:57.77 ID:Si5e7ne+O
ほむら(でも、だからといって……)

それでも、何度もやり直すことができるのはほむらの唯一の強みだ。

あのときの願いが間違っていたとは思わない。
時間を巻き戻せなければ、それこそ確実に終わっていた。

しかし、それがときに足枷になっているのもまた事実だった。
行動を選択するとき、そこに命を落とす危険性があれば、ほむらは容易には踏み込めない。

たとえまどかを救えなくても、ほむらが生きてさえいれば巻き戻しは可能だ。
だが、ほむらが死んでしまえばそれまでだ。

長い目で見れば間違った選択ではない。
全てはまどかを救うためだ。

しかし──

それはまどかを犠牲にして、自分が無駄に生き長らえていることに他ならないのでは?
406 : ◆c6GooQ9piw [sage saga]:2019/03/26(火) 09:10:32.52 ID:piYOyBD9O
ほむら「……っ」

ほむらの胸が痛む。
どのような理由があろうと、まどかを苦しませるのはほむらの本意ではない。

本当にこの方法しかなかったのだろうか。

矛盾した行動をとらざるを得ない現状に、疑問を抱かないわけではない。
だが、この類いの問答は数えきれないほど繰り返してきた。

結論はいつも同じだった。

ほむら(ここまできて別の方法を試すなど、できるはずがない)

それはもはや、まどかを見捨てることと同義だ。

たとえ間違っていようが、ほむらは走り続けるしかないのだ。
407 : ◆c6GooQ9piw [sage saga]:2019/03/26(火) 09:11:58.29 ID:piYOyBD9O
ほむら「……」

ただ、それは必ずしも前向きな感情からくる結論ではない。

もしかしたらほむらは、他に道はないからと、半ば逃げるような気持ちで繰り返してはいないだろうか。
もはや今のほむらには、その問いを自信を持って否定することができなくなっている。

もしそのように流されるように繰り返していても、決して成功するはずはないし、いつかほむら自身が擦りきれてしまう。

結局、シンプルな話ではある。
こうして繰り返していることで、少しずつ成功に近付いているという実感があれば、ほむらも希望を持って次に挑めるだろう。

しかし現状、ほむらが繰り返せば繰り返すほど、まどかを助けることなどできないのではないかと思わされてしまう。

それなのに、もはや目の前に他の手は残されていない。
どうにかしなければならないのに、これ以外の手段ではまどかを助けられないという確信だけがほむらの中にある。

──どうすればいいのか、わからない。

そんな後ろ向きな感情が、じわじわとほむらの心を蝕んでいく。
ソウルジェムの穢れが、ほむらの心情を明確に示していた。
408 : ◆c6GooQ9piw [sage saga]:2019/07/28(日) 19:35:48.13 ID:VkMOFHkb0
ほむら「……!」

突然の人の気配に、ほむらは素早く振り向いた。

杏子「よう」

ほむら「あなた……」

侵入者は、佐倉杏子。
その背には、美樹さやかの姿があった。

いや、正確に言えば──『それ』はもはや、美樹さやかそのものではないはずだ。

ほむら「……」

予想はしていたことだ。
ほむらに落胆はなく、やはりそうかと府に落ちる思いすらあった。

すでに幾度となく見た光景だ。
杏子の心情を思えば胸にくるものはあるが、ほむら自身に動揺はなかった。

ただ、ここで考えるべきは──

ほむら(……杏子は、どこまで事態を正確に把握しているのかしら)
409 : ◆c6GooQ9piw [sage saga]:2019/07/28(日) 19:42:53.09 ID:VkMOFHkb0
ほむらも、この状況から杏子を騙して協力させようとは、もう思っていない。
杏子は情に熱い一面はあるが、それで目を曇らせるほど愚かではない。

ある程度は──おそらく、さやかが魔女となってしまったことまでは、察しているはずだ。
そこをごまかすのはさすがに無理だろう。

そして、真実を知った杏子の行動は、もう決まっている。

ほむら「……」

この時間軸で失敗が確定した以上、この後のほむらの行動は特に考える必要はない。
杏子を追い出して、家でひとりワルプルギスの夜の襲来を待つのも悪くない。

ほむら(……だからといって、完全に放置するわけにもいかないでしょうね)

万が一、杏子がこの場でほむらに逆上して襲いかかる可能性も、なくはない。

杏子は本質的には理性的な魔法少女だが、さすがにこの状況で、ほむらに全く敵意を抱いてないということはないはずだ。

そういう意味でもやはり、今の杏子を放っておくわけにはいかないだろう。
410 : ◆c6GooQ9piw [sage saga]:2019/11/22(金) 23:12:23.37 ID:MAd8f5eGO
ほむら「何の用かしら?」

杏子「聞きたいことがある」

ほむら(……でしょうね)

キュゥべえの誘いに乗らないように一応忠告はするつもりだが、それで引き留められないことはもうわかっている。

ほむら「……」

ほむらの目的に繋がらない以上、ここで適当なことを言って煙に巻くのは簡単だ。

だが、もはやほむらに嘘をつく気はなかった。
贖罪というわけではないが、杏子の疑問に正直に答えるくらいのことはするつもりだった。

杏子「さやかに、何が起こったんだ?」

ほむら「予想はついているんでしょう?」

杏子「……」

険しい表情だ。
状況が状況だけに仕方ないのかもしれないが、元凶はあの悪魔だとわかっているのだろうか。
万が一にもほむらに一因があると思われているのなら、その誤解だけは解いておきたい。
411 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/11/23(土) 23:40:30.71 ID:nYl+Wymho
おお、続いてたのだな 読んでるよ
412 : ◆c6GooQ9piw [sage saga]:2019/11/24(日) 21:38:02.23 ID:iKvy3stU0
杏子「さやかが倒れた……いや、死んだ。そして、魔女が現れた」

ほむら「……それで?」

杏子「お前は知っているはずだ。さやかに、何が起こった?」

ほむら「……」

否定してもらいたいのだろうか。

いや、杏子はそれほど弱い人間ではない。
すでに、現実を受け入れる覚悟ができているのだ。
その上で、解決の手段を模索するために、まずは状況を正確に把握する必要があると考えているのだろう。

目の前の絶望から目を反らすほど、杏子は愚かではない。

──だからこそ、キュゥべえはそこにつけこんでくる。

ほむら「……あなたの想像の通りよ。さやかは、魔女と化してしまった。これからは、絶望を振り撒いて生きていくことになるわ」

杏子「……!」

ほむら「元に戻すことは不可能よ。バカなことは考えないことね」

忠告だけはしておく。
これで万が一にも杏子が生き残るならありがたいが、まずあり得ない。
413 : ◆c6GooQ9piw [sage saga]:2019/11/24(日) 22:23:07.85 ID:iKvy3stU0
杏子「……次の質問だ」

ほむら「何かしら?」

杏子「魔法少女のソウルジェム……あれの正体は何だ」

ほむら「──」

ほむらはわずかに思考を走らせた。

杏子がそこに疑問を持つ場面は、この時間軸ではあっただろうか。

ほむら「……どういう意味かしら」

杏子「たぶんあれは、ただの道具なんかじゃない。あたしたちにとって大事な、いや、まさか……」

ほむら「……」

杏子「魔法少女、そのもの、か……?」

いったい、どこでそこまでの確信を得たのか。
何にせよ、ほむらに嘘をつく理由はない。

ほむら「その通りよ。ソウルジェムは、魔法少女の魂そのもの。私たちは、契約の際に身体から魂を抜き取られている」

ほむらの答えに、杏子は顔をしかめた。

杏子「くそっ、キュゥべえの奴……」

杏子が悔しがる素振りを見せるが、ほむらには疑問が残る。
414 : ◆c6GooQ9piw [sage saga]:2019/11/24(日) 22:25:27.99 ID:iKvy3stU0
ほむら「あなた、そのことにはいつ気付いたの?」

杏子「……」

ほむらを見る杏子の目に、敵意は感じられなかった。
どうやら黒幕を誤解されてはいないらしい。

杏子「お前がさやかを撃とうとしたときだ。あたしが防いだが……あのとき狙っていたのは、さやかのソウルジェムだっただろ?」

ほむら「……そうね」

杏子「あのときの殺気は本物だった。本気でさやかを殺そうとしていたはずだ」

ほむら「……」

杏子「それで狙うのが、ソウルジェム、か?」

横から防いだ杏子が気付いたのなら、狙われたさやかも間違いなく気付いただろう。

もしかしたら、それが後押しとなって──

ほむら「……彼女には、悪いことをしてしまったかもしれないわね」

杏子が何を今さら、と苦笑する。

杏子「殺そうとした奴の台詞じゃねーよ……あとはまあ、さやかが魔女になったところを見たからな」

杏子は、さやかのソウルジェムから魔女が生まれる瞬間を見たのだろう。
同時に、さやかの身体はぬくもりを失い始めたはずだ。
415 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/12/08(日) 23:43:14.40 ID:XiTXQQaT0
更新楽しみに待ってます!
416 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/12/13(金) 09:36:48.78 ID:UkstH1db0
417 : ◆c6GooQ9piw [sage saga]:2019/12/17(火) 17:08:07.76 ID:AS20VPtjO
ほむら「……なるほどね。質問は終わり?」

杏子「ああ。やらなきゃならないことができたからな」

──やはり、そうなってしまうのか。

ほむら「言ったはずよ。さやかは二度と元には戻らない」

杏子「キュゥべえは、魔法少女は奇跡を起こす存在だと言っていたぜ」

既に接触されていたか。

ほむら「嘘よ。私は魔法少女が魔女になるのを何度も見てきた。例外はないわ。魔法少女に戻ることは、絶対にあり得ない」

杏子「わからねーだろ。前例がないことはキュゥべえからも聞いた。だが……」



杏子「可能性はゼロじゃない」
418 : ◆c6GooQ9piw [sage saga]:2019/12/17(火) 17:13:18.56 ID:AS20VPtjO
ほむらの中で、何かがほとばしった。

──その台詞を、簡単に口にするんじゃない!

ほむら「無駄なのよ! 私がどれだけ絶望した魔法少女を見てきたと思ってるの!? 何度試したところで同じこと……決まりきった結末を変えることなんてできないのよ!」

杏子「……」

全く、誰に向けての台詞なのか。
ほむらは、失望感とともに幾分落ち着きを取り戻し、軽く首を振った。

ほむら「……無理なものは無理なのよ。おとなしく諦めなさい」

杏子はやけに冷静だった。

静かに、ほむらを正面から見つめ、口を開く。

杏子「100回失敗したからといって、101回目もダメとは限らねーだろ」

ほむら「……っ」

杏子の言葉が、ほむらの胸に突き刺さる。
落ち着きかけていた心が、燃え上がる。

思わず言い返そうとして──続く杏子の台詞に遮られた。
419 : ◆c6GooQ9piw [sage saga]:2019/12/17(火) 17:14:34.90 ID:AS20VPtjO



杏子「だからこそお前も、何度も繰り返してんだろ?」



420 : ◆c6GooQ9piw [sage saga]:2020/03/06(金) 06:27:10.62 ID:FJvn9tXJO
ほむら「──ッ!?」

ほむらの全身が強張った。
息をすることすら忘れ、杏子の台詞を反芻する。

──今、杏子は何と言った?

杏子「……」

言葉の羅列だけが耳に残る。
頭が理解を受け付けていない。

ほむら(……あり得ない。それだけは、絶対にあり得ない。気付くはずがない……!)

混乱する頭で、杏子がこちらを見ていることを思い出す。

ダメだ。今は考えている余裕はない。
落ち着け。平静を保たなければ──

ほむら「……繰り返している? どういう意味かしら」

杏子の表情が読めない。

どこまで知られている?
どこまで読まれている?
421 : ◆c6GooQ9piw [sage saga]:2020/03/08(日) 13:34:20.04 ID:wGdW5X1X0
数秒の沈黙の後、杏子が口を開いた。

杏子「ポーカーフェイスはさすがだがな。普段から無表情だから、逆にわずかな変化も浮き上がってしまうってもんさ。隠すなら、むしろ常に表情を作っておくべきだ」

ほむら「……っ」

杏子「しかしまさか……本当にそうだったとはな」

かまをかけられた……?

いや、いずれにせよある程度の確信はあったはずだ。
そうでなければ、繰り返しているなどと口にすることすらあり得ない。

いったい、どうして……
422 : ◆c6GooQ9piw [sage saga]:2020/03/08(日) 13:36:40.25 ID:wGdW5X1X0
杏子「お前には結末がわかってるんだろ。聞かせろよ、さやかを元に戻そうとすると、あたしはどうなるんだ?」

おそらく、杏子はわかっているのだろう。
ほむらの目的──ワルプルギスの夜を倒すことと照らし合わせれば、答えは容易に導かれる。

ほむら「……死ぬわ」

ほむらの言葉に、杏子はため息をついた。

杏子「やっぱりそうか。だから、さやかを殺そうとしたんだな」

ほむら「……」

もはや、ほむらが繰り返していることを前提として話が進んでいる。
しかしほむらとしては、今後のためにも確認しておかなければならない。

ほむら「……なぜ、わかったの?」

杏子「ヒントはあったさ」

杏子は、軽い調子でつぶやいた。

杏子「魔法少女の能力は、願いによって決まる」
423 : ◆c6GooQ9piw [sage saga]:2020/05/13(水) 22:39:45.63 ID:k7/lCzN/0
杏子「さっき、確かにあたしはあんたを打ち負かしたが、あれははっきり言って偶然だった。少しでもタイミングが違っていれば、どうなっていたかわからない」

ほむら「……」

今思えば、あれもそうだ。
杏子はどうやってほむらの能力を封じたのか。
どうして、ほむらの能力を知っていたのか。

杏子「違うな」

ほむら「……え?」

杏子「あのとき、あたしはあんたの能力を把握していなかった。ある程度絞っていたとはいえ、まさか時間を止められるとは思ってなかったよ」

ほむら「なら、どうして……」

杏子「相手の手の内が見えない以上は、発動前に勝ちきるしかない。あたしはただ、開始と同時に自分の能力を全力で発動させただけさ」

能力……まさか──

杏子「あんたがあたしの能力を知っていたら、勝敗は逆だったかもな」
424 : ◆c6GooQ9piw [sage saga]:2020/05/13(水) 22:42:08.95 ID:k7/lCzN/0
──幻惑魔法。

ほむら「いいえ、知っていたわ……でも」

知っていて、警戒していなかった理由。
想定の外に置いていた理由、それは……

ほむら「あなたは、能力を使えなかったはずよ」

そう、使えなかったはずだ。
確か、自分の願いを否定するような生き方をしていたせいで、能力を使えなくなったと──

杏子「……知っていたのか。そうさ、使えなかった。他人のために魔法少女になっておきながら、自分のためだけに生き続けるあたしには、気付けば能力を使うことができなくなっていた」

それが、佐倉杏子という魔法少女だった。

家族を失い、かつての自分を否定した。
自分のためだけに生きていれば、何も他人に期待することはないと、悲しむこともないと、ひとりで生き続ける。

杏子「だが、あたしがあんたと戦った理由は──さやかを守るためだった」

恐らく、杏子の本質は変わっていない。
そう簡単に切り替えられるものではないだろう。

しかし杏子にとって、あの一瞬だけは確かに、自分以外の誰かを守るための戦いだった。
425 : ◆c6GooQ9piw [sage saga]:2020/07/09(木) 23:00:54.93 ID:F8rkEtqD0
ほむら「だから、能力を使えたというわけね。よくやるわ。うまく発動できるかも不安だったでしょうに」

杏子「……」

ほむら「あるいは、それだけさやかを助けたいという感情に自覚があったということかしら」

ほむらはわざとからかうように口角を上げた。
負けた悔しさがないわけではない。
このくらいはいいだろう。

若干の気まずさからか、杏子は舌打ちをする。

杏子「話を戻すぞ。あのときあたしがあんたに見せた幻は、『自分が敗北するイメージ』だ。内容は本人が無意識に決めるから、あたしにはわからないがな」

あのときの光景を思い出す。

ほむら「……確かに、そうだったわ」

杏子「うまく発動していて何よりだが……違和感があった」

ほむら「……?」

杏子「能力の効き具合や、そもそもお前の感覚を狂わせていたからと言えばそれまでなんだが──」

杏子「それでも、決着が『早すぎた』」
426 : ◆c6GooQ9piw [sage saga]:2020/07/09(木) 23:04:31.16 ID:F8rkEtqD0
言葉の意味がわからない。

ほむら「どういう意味かしら」

杏子「お前の降参があまりにも早かったんだ。あたしの体感では、能力を発動させてから数秒ってとこだな」

ほむら「……」

杏子「あれだけの執念を見せるお前が、そんなに早く諦めることに、どうしても違和感があった」

数秒……?
自分でもはっきりとは覚えていないが、いくらなんでもそこまでは……

しかし確証はない。
確かに、自分でもそう簡単に諦めたとは思えないが、別にそれでほむらの執念が否定されるわけでもない。

あれだけの極限状態だ。
能力による影響がなくても、時間の感覚が多少ずれていてもおかしくはない。

あるいは杏子が言っていたように、ほむらの感覚自体が、杏子の能力でずらされていただけのことではないだろうか。

そうでなければ……
427 : ◆c6GooQ9piw [sage saga]:2020/07/09(木) 23:06:38.93 ID:F8rkEtqD0
ほむら「──!」

そこまで考えて、ほむらに衝撃が走った。

違う。杏子の能力じゃない。
ずれていたのは感覚ではなく、時間の流れそのもの。

あのとき、ほむらは『何をした』?

時間のずれの原因は──

杏子「お前も同じだったはずだ。開始と同時に、能力を発動させた。そのために、決闘の形式なんて持ち出してきたんだろ?」

ほむら「……そして、互いの能力が同時に発動した」

杏子「そう、お前は……」

杏子が、真相を告げる。

杏子「自ら停止させた時間の中で、幻覚を見ていたんだ」
428 : ◆c6GooQ9piw [sage saga]:2020/09/21(月) 19:34:44.82 ID:tumhSjWG0
──そういうことか。

その結果生じた、不自然な時間のずれ──それが、杏子を真実へと導いた。

ほむらがあのとき、杏子のわずかな動揺に気付けていれば、あるいは……

いや、今さらそんなことを考えても仕方がない。

杏子「そして、能力がわかれば願いも予測できる」

ほむら「……!」

杏子「お前は、あまりにも知りすぎていた。始めは未来予測か何かかと思ったが、能力が時間停止とくれば、これしかない」

ほむらの息が、詰まる。

杏子「時間遡行──お前は過去に戻り、同じ時間を繰り返している」

あぁ、初めてだ。
これまで、いくらほむらが打ち明けても信じてもらえなかった真実に、杏子はたどり着いている。

杏子「それもたぶん、数えきれないくらいには何度も繰り返しているはずだ。違うか?」

ほむら「……なぜ、私が『何度も』繰り返していると?」

杏子「ワルプルギスの夜の出現範囲予測──あれは、範囲を絞れるくらいには繰り返したってことだ。どう考えても、1回や2回じゃないだろ」

ほむら「──なるほど、ね……」
429 : ◆c6GooQ9piw [sage saga]:2020/09/21(月) 19:48:26.87 ID:tumhSjWG0
喜びにも似た感情が抑えきれなかった。

どうせ信じてもらえない。
もう不可能だと、もはや不必要だと思っていた。

他人に理解してもらえなくていい。
それなら、自分で状況を操作してまどかを救うだけだと。
理解者など必要ないと──そう思っていた。

しかし──

ほむら(たったひとりに理解してもらえただけで、これほど心が温まるなんて)

利害うんぬんの話ではない。
まどかを救うために必要かどうかではない。

ただ、自分を理解してくれる人がひとりいるだけで、こんなにも違うとは。

ほむら(あぁ、これで──)

一度は諦めた。
もうこの時間軸では無理だと、まどかを救えないと、目を背けた。

そこに現れた、ひとりの理解者。

そんな想定外の存在を前にして、ほむらは──

ほむら(──これで、勝機が見えた)

ただ、前だけを見つめていた。
430 : ◆c6GooQ9piw [sage saga]:2020/11/29(日) 13:14:30.69 ID:jqvXxmx+0
今まで何度説明してもわかってもらえなかったのだ。
それが今は、向こうから確信を持って真相に触れている。

千載一遇のチャンス。
もう二度とないかもしれない。
これを逃す手はない。

杏子「もういいだろ。ここまできたら、全て話せよ」

今度こそ、ワルプルギスの夜を倒せるかもしれない。
まどかを救えるかもしれない。

ほむら「……えぇ、わかったわ」

正念場だ。
失敗は許されない。

ほむら「全ての元凶は、鹿目まどか」
431 : ◆c6GooQ9piw [sage saga]:2021/01/07(木) 13:35:48.26 ID:6URNH5dY0
杏子「鹿目まどか?」

杏子は思案する様子を見せた。

杏子「……あぁ、確かさやかと一緒にいたピンク髪の奴か。キュゥべえが、かなりの素質があるとか言っていたな」

ほむら「彼女の素質は、そんな言葉で言い表せるほど生易しいものではないわ」

言葉を選ぶ必要がある。
どこから説明するべきか。

ほむら「そうね……魔法少女が絶望し、やがて魔女になることは、もうわかったでしょう?」

杏子の表情が、わずかに歪む。
まだ完全には飲み込めていない部分もあるだろうが、彼女なら恐らく問題ない。

杏子「……あぁ」

ほむら「魔女の強さは、魔法少女だった頃の強さに比例する。鹿目まどかが魔女になれば、ワルプルギスの夜なんて比較にもならないわ」
432 : ◆c6GooQ9piw [sage saga]:2021/01/07(木) 13:37:13.59 ID:6URNH5dY0
さすがの杏子も、動揺を隠せなかった。
ワルプルギスの夜を超える強さの魔女というのが、そもそもあり得ない認識のはずだ。

杏子「……そんなにか?」

ほむら「えぇ、当然そんな魔女、誰も倒せるはずがない。いえ、もはやそんな対象ですらないわ」

元がまどかであることを差し引いても、ほむらは立ち向かおうとさえ思えなかった。
あの魔女には、対峙することすら敵わない。

ほむら「ワルプルギスの夜は、一般人からはその姿が見えず、災害として処理されることが多い。でも、所詮はその程度。後世に伝わる程度の脅威でしかない」

杏子「……」

ほむら「その魔女は、生まれた時点で人類の滅亡が確定する」

杏子の顔が、驚愕に染まる。

杏子「……そんな魔女が、存在するってのか」

悪くない反応だ。

ほむら「もちろん、存在させてはならない。だから、私たちでワルプルギスの夜を倒さなくてはならないのよ」
433 : ◆c6GooQ9piw [sage saga]:2021/03/15(月) 20:48:16.35 ID:QLoOq0Yg0
ほむら「確かに鹿目まどかが契約すれば、ワルプルギスの夜なんて一撃で倒せるわ。しかしそれは、伝承されるほどのワルプルギスの夜の絶望を、一身に受けることになる。魔女化は避けられない」

杏子「契約さえさせなきゃいいんだろ? もしあたしらでワルプルギスの夜を倒せなくても、そいつの契約さえ防げれば……」

ほむら「キュゥべえはそこにつけ込んでくる。ワルプルギスの夜に破壊される街を盾にして、彼女に契約を迫ってくる」

杏子「説得はできないのか? 全て話して、何があっても契約するなと説得するのはどうだ?」

ほむら「信じてもらえると思う? 無駄よ。今のあなたは、本当に例外でしかない」

杏子「だが……」

ほむら「それに、結局は同じこと。彼女は、目の前で崩れていく街を見て、じっとしていられるような性格ではないわ」

杏子「……」

ほむら「私はもう、 数え切れないほど失敗した」

杏子が思案する素振りを見せる。

杏子「……キュゥべえの目的はなんだ? あたしもあいつが仲間だとは思っちゃいなかったが、少なくとも共生関係にはあると考えていた。しかし、人類が滅亡しても構わないとなると、話が違ってくるじゃねーか」
434 : ◆c6GooQ9piw [sage saga]:2021/03/15(月) 20:50:56.40 ID:QLoOq0Yg0
ほむらは思わずため息をついた。
認識が甘すぎる。

ほむら「キュゥべえの目的は、魔法少女の感情エネルギー……らしいわ。宇宙のために必要とか言っていたけれど、それもどこまで信用していいか」

杏子「あたしらは、利用されているだけだってのか」

ほむら「あいつは、私たちのことを家畜としか思ってないわ。そこに悪意はない」

杏子「……だが家畜だとしても、利用価値はあるってことだろ。人類が滅亡すれば、奴だって困るんじゃねーのか」

本来ならその通り。
人類がこれまで生き延びてこれたのは、キュゥべえと私たちの利害が奇妙に釣り合っていたからだ。

そのバランスは、それほど強固なものではない。

ほむら「逆よ。あいつにとっては、鹿目まどかが魔女になりさえすれば、人類が滅んでも構わない」

杏子「な……」

ほむら「奴にとって、彼女の素質がそれだけ魅力的ということよ」

杏子が口をつぐむ。

話すべきことは話した。

いけるはずだ。
杏子なら感情に流されず、冷静に判断できるはず。

そんな期待が顔に出ないよう注意しつつ、杏子の言葉を待つ。

杏子「……話はわかったよ。それなら確かに、あたしはあんたに協力するしかない。人類が滅んじまうってんじゃ、他に選択肢はないよな」
435 : ◆c6GooQ9piw [sage saga]:2021/05/16(日) 16:23:26.59 ID:aU28sdYH0
ほむら(……やった)

希望が繋がった。
これで、この世界線でもまだ戦える。

ほむら「じゃあさっそく、ワルプルギスの夜の対策についてだけど」

杏子「その前に」

杏子に制される。

後から思えば、このときの私は少々油断してしまっていたのだろう。

杏子「まだ、隠してることがあるよな?」

ほむら「ッ!?」

杏子の刺すような視線に虚を突かれ、思わずたじろぐ。
しかし、嘘はついていない。

ほむら「……ないわ。あなたの説得のためとはいえ、今話したことは全て真実よ」

杏子「そうか? それなら、もっと簡単な方法があるじゃねーか」

ほむら「……え?」

他にどんなやり方があるというのだ。
ほむらがどれだけ繰り返して、あらゆる手段を試し尽くしたかを、杏子は知らない。

しかし、続く杏子の言葉は、確かにほむらの予想を裏切るものであった。



杏子「鹿目まどかを、殺してしまえばいい」
436 : ◆c6GooQ9piw [sage saga]:2021/05/16(日) 16:25:17.38 ID:aU28sdYH0
ほむら「──ッ!」

恐らくは本気ではない。
ほむらの様子をうかがうための一言だろう。
そうわかっていながら、ほむらは沸き上がる怒りを抑えることができなかった。

杏子「それで全て解決だ。そうだろ?」

ほむらが思い付くはずがない。
それでは、ほむらの一番の目的が果たせない。

ほむら「彼女は何も知らないのよ。何も悪くない。そんなひとりの少女を殺してまで、目的を果たそうとまでは……」

苦しい言い訳だ。

そして、言った直後に気付く。
ダメだ、この返答では──

杏子は、ゆっくりと口を開いた。

杏子「──さやかは殺そうとしたのにか?」

ほむら「……」

今度こそ、返す言葉がなかった。
437 : ◆c6GooQ9piw [sage saga]:2021/07/09(金) 17:54:52.20 ID:7HjWDTiE0
杏子が鋭い目で、ほむらを見据える。

杏子「もう察しはついてるがな。言えよ、お前の本当の目的はなんだ?」

見透かされている。
これ以上、欺くことはできない。

ほむら「……」

口先だけの弁明なら、できなくはない。
しかし、なぜかそんな気にはなれなかった。

これまで自分がどれだけ人を欺き、いいように利用してきたかはわかっている。
そんな自分には、到底似合わない感情かもしれない。

しかし、なぜか今だけは、杏子の強い想いに応えたくなった。

ほむらは唇を震わせ、確かな意志を込めて、その言葉を口にする。

ほむら「まどかを、救うことよ」

声に出すことで、改めて自分の目的を胸に刻み込む。
これだけは、決して揺らぐことはない。

ほむらの言葉に、杏子はわずかに目を見開いた。

杏子「初めてお前の本音を聞いた気がするよ」
438 : ◆c6GooQ9piw [sage saga]:2021/07/09(金) 17:57:00.44 ID:7HjWDTiE0
そう、まどかを救うこと。
全ての始まりだ。
それだけがほむらの目的だった。

それはこの時間軸でも、諦めたわけではない。

ほむら「……目的も知れて、これで少しは納得してもらえたかしら」

杏子「そうだな。今のお前の言葉が本心だってのは、十分わかったよ」

問題はない。
確かにほむらは自身の目的を語ったが、それで杏子の行動が変わるわけではない。

まどかが魔女化すれば、人類は滅びるのだ。
それが嘘ではないことは、杏子もわかっているだろう。

ほむら「……じゃあ、改めてワルプルギスの夜の対策を説明するわ。頭に叩き込みなさい」

たとえ杏子と共闘したところで、ワルプルギスの夜を撃退できるとは限らない。
しかし、この貴重なチャンスを無駄にするわけにはいかない。
できるだけのことはやって、仮に失敗したとしても、必ず次につなげなければならない。

全ては、まどかを救うために──



杏子「いや、その必要はねーよ」
439 : ◆c6GooQ9piw [sage saga]:2021/07/09(金) 18:02:02.98 ID:7HjWDTiE0
ほむら「……え?」

杏子の言葉に、ほむらの思考が遮断された。
いったい、何を言っているのだろうか。

ほむら「必要がないって……どういう意味かしら?」

狼狽するほむらに対し、杏子は、少々あきれたような表情を浮かべていた。

わかりきったことを説明させるなとでもいうような口調で、杏子は答える。

杏子「どうもこうも、そのままの意味だろ。そんな話は、あたしが無事に戻ってきてからにしてくれよ」
440 : ◆c6GooQ9piw [sage saga]:2021/09/26(日) 06:59:19.62 ID:t8r4Odp60
ゾクリ、と。
ほむらの背中に、冷たいものが走る。

──無事に?

まさか。

まさか、杏子は……!?

杏子「あたしはさやかを助けたい。もし無事に戻ってこられたら、そのときは共闘でもなんでもしてやるよ」

言葉の意味が理解できない。
頭がくらくらする。
意味がわからない。

ほむら「──ッ」

もはや、ほむらは限界だった。

ほむら「ふざけないで! あなた、自分が何を言っているのかわかってるの!?」

杏子「……」

ほむら「言ったでしょう!? 死ぬのよ! 美樹さやかは絶対に助けられない! これだけ言われて、まだわからないの!?」

杏子に動揺はなかった。
ほむらが叫べば叫ぶほど、その感情の隔たりから、より一層杏子との距離を感じるようだった。
441 : ◆c6GooQ9piw [sage saga]:2021/09/26(日) 07:04:17.91 ID:t8r4Odp60
視界が揺らぐ。
足元がふらつき、まともに立っていられない。

ほむら「……ああ、私の言ったことを疑っているの? でも、わかるでしょう? これが嘘だったとしたら、私があなたを止める理由がないでしょう?」

すがるようなほむらの言葉に対し、杏子は首を振って応える。

杏子「別にあんたを疑ってるわけじゃない」

ほむら「じゃあ、なんでよ!?」

気づけばほむらは、涙を流していた。
これほど感情を表に出したのは、いつぶりだろうか。

杏子「言ったろ。可能性はゼロじゃない」

ほむら「……あなた、本気で言っているの?」

杏子「……」

ほむら「確かにゼロだとは言わないわ。私も、その考えのもとに何度も繰り返している。いつか必ず、まどかを救えると信じて」

その通りだ。
しかし、ほむらと杏子では事情が違う。

ほむら「でも、あなたは何度もやり直せるわけじゃない。たった一度のチャンスで、本当にほんのわずかな可能性をつかみ取れるとでも思ってるの? 賭けにしても分が悪すぎるわ」
442 : ◆c6GooQ9piw [sage saga]:2021/09/26(日) 07:06:18.10 ID:t8r4Odp60
今度は杏子も、ほむらの言葉を否定しなかった。

杏子「わかってるよ。あたしもそこまでバカじゃない。あんたの言う通りだ。あんたの見てきた通りだ」

ほむら「……ッ」

杏子「まあ……無理だろうな」

ほむら「だったら!!」

懇願するかのようなほむらの叫び。
しかし、杏子の表情は変わらなかった。

もう、とうに覚悟は決まっていたのだろう。
杏子は、わずかな笑みさえ浮かべていた。

杏子「あたしが死ねば、今度こそ、あんたは完全に手詰まりなんだろ?」

ほむら「……?」

一瞬、意味がわからなかった。
しかし、次の杏子の言葉で理解する。

杏子「できれば、次はさやかのことも助けてやってくれよな」
443 : ◆c6GooQ9piw [sage saga]:2021/11/30(火) 13:09:17.06 ID:mkSBAl5bO
──ああ、そういうことか。

やっと、全てが府に落ちる。

杏子は死ぬつもりなのだ。

仮にこの時間軸でワルプルギスの夜を倒せたとしても、それは杏子が望む結末ではない。
いや、むしろそれは、さやかが救われない結末を確定させてしまうことに他ならない。

結局、ほむらの時間溯行を杏子が知ってしまった時点で、杏子の協力は望めなかったのだ。

ほむら(これで、完全に勝ちの目は消えた)

全身の力が抜ける。
ほむらは、その場に崩れ落ちた。

終わりだ。
この時間軸では、まどかを救えない。
また、失敗した。

ほむら「……」

ほむらの様子に痺れを切らしたのか、杏子はほむらから目を離す。

杏子「……じゃーな。もう行くぜ」

杏子が踵を返し、歩き出す。



ほむら「待ちなさい」
444 : ◆c6GooQ9piw [sage saga]:2021/11/30(火) 13:26:09.46 ID:mkSBAl5bO
ほむらの言葉に、杏子が足を止める。

杏子「……何だよ。もう十分だろ」

煙たがるような杏子の声は、ほむらの耳には入らなかった。

立ち上がり、杏子をしっかりと見据える。

これだけは、言っておかなければならない。
これだけは、言っておかなければ気が済まない。



ほむら「必ずさやかを救ってみせなさい」
445 : ◆c6GooQ9piw [sage saga]:2021/11/30(火) 13:28:28.09 ID:mkSBAl5bO
杏子「は……?」

杏子は、唖然とした表情を見せた。

しかし、ほむらは止まらない。

ほむら「諦めるなんて許さない。私にここまで語ったからには、奇跡を起こしてみせなさい!」

ほむら「ワルプルギスの夜を倒すためには、あなたが必要なのよ! 必ずさやかを救って、ここに戻ってきなさい!」

ほむら「誓いなさい! そうでないと、行かせるわけにはいかないわ!」

杏子「……」

息を切らし、杏子に訴えかける。

始めから死ぬつもりで挑むなんて、絶対に許さない。
それでは、本当に可能性はゼロになってしまう。

これまで、数え切れないくらい失敗した。
いくつの時間軸を繰り返したかなんて、もう覚えていない。

でも、始めから諦めて挑んだことなんてない。
一度たりともだ。
本当に最後の最後まで、あらゆる可能性を探り続けてきた。

そうでなければならない。

それでこそ──奇跡を起こせるってものでしょう?

ほむら「私は、ここであなたを待っているわ」

目を丸くしていた杏子が、にやりと笑う。

杏子「ああ、待ってろ。必ずさやかを救ってやるよ」

そうして、彼女は姿を消した。
446 : ◆c6GooQ9piw [sage saga]:2022/02/08(火) 06:48:15.18 ID:LFTSgn+s0
……

どれほど経ったのだろう。

数時間、あるいは、もっと──

明確な時間の感覚はもはやなかったが、ほむらは思考を続けていた。
それだけの時間は、ほむらが冷静さを取り戻すのには十分だった。

もし、杏子が生きて帰ってきたら、ワルプルギスの夜に二人で挑める。
そのためのシミュレーションは、決して無駄にはならないはずだ。

仮に、この時間軸でそれが叶わなかったとしても──

ほむら「……」

ほむらは、自らの思考を反芻する。

これは、杏子の覚悟に対する冒涜だろうか。
あのような言葉をかけておきながら、ほむらは杏子が生きて帰ってくることを、決して信じてはいない。

いや、より正確に言うなら、杏子がどのような結末を辿ろうが、ほむらは構わないのかもしれない。

ほむらはただ、その状況に応じて、ベストだと思われる行動を──あるいは、それを探るために、まだ試していない行動を──ひたすらに選び続けるだけだからだ。
447 : ◆c6GooQ9piw [sage saga]:2022/02/08(火) 06:53:57.78 ID:LFTSgn+s0
それはまるで、ゲームのシナリオを網羅するための、機械的な作業のようだ。

しかし、それでいい。
いつかは、正解に辿り着けるはずだ。

問題は、ほむらの精神がどこまで耐えきれるか。

ほむら(……自分に嘘はつけない)

どちらでもいい?
そんなはずはない。

言うまでもなくほむらは、杏子が生きて帰ってくることを望んでいる。
当然だ。

──だが、祈ってはいない。

その希望に、依存してしまうからだ。
もし杏子が帰ってこなかったときに、立ち上がれなくなってはならないからだ。

パンドラの箱を開けてはならない。

ただ──奇跡を信じてはならないが、奇跡が起こる可能性くらいは信じてもいい。

今はまだ、この時間軸での攻略を考えていてもいいだろう。

可能性は、ゼロではないのだから。
448 : ◆c6GooQ9piw [sage saga]:2022/05/20(金) 17:07:25.97 ID:gFGYNPlR0
そして、そのときは訪れた。

ほむら「……!」

ほむらは目を見開いた。
背後に気配を感じたのだ。

──逡巡。

ほむらは、振り向くのをわずかにためらった。

来訪者が杏子であれば、希望は残る。
いや、それ以上だ。
幾度となく繰り返してきて、初めてと言ってもいいかもしれない、勝算が見えてくる。

まどかを、救えるかもしれない。

しかし──

QB「やぁ、ずいぶんと久しぶりな気がするね」

ほむら「……」

そこにいたのは、杏子ではなく──悪魔だった。
449 : ◆c6GooQ9piw [sage saga]:2022/05/20(金) 17:15:04.66 ID:gFGYNPlR0
QB「杏子は死んだよ」

ほむら「……ッ!」

まるで世間話のような調子で、あっさりと口にする。

感情はないというその目に、やはり悪意は感じなかった。
こいつは常に、純粋に目的のために動いている。

つまり、ほむらの心を折りにきたわけだ。

QB「これで、ワルプルギスの夜に勝つのは相当厳しくなったね。どうするつもりだい?」

ほむらは、キュゥべえの言葉を聞き流した。

──ショックはない。

ほむらは精神を落ち着け、自問自答する。

わかっていた。
杏子が生きて帰ってくることなど、あるはずがない。
期待してはいなかったのだ。
想定内の事象に過ぎない。

だから──大丈夫。

ほむらは、自身のソウルジェムを一瞥し、穢れが溜まっていないことを確認して、一呼吸した。
450 : ◆c6GooQ9piw [sage saga]:2022/05/20(金) 17:19:04.08 ID:gFGYNPlR0
QB「……聞こえなかったかい? 無視しないでくれよ」

ほむら「あぁ、悪かったわね。報告ありがとう」

当然皮肉だが、キュゥべえに通じたかどうか、非常に怪しい。

QB「それで、どうするんだい?」

答えはとうに決まっていたが、わざわざ教えてやることもないだろう。

ほむら「さあ、どうしようかしらね」

QB「……」

キュゥべえは珍しく……本当に珍しく、わずかに怪訝な様子を見せた。

QB「おかしいな。君の目的と、おおよその状況は把握してるつもりだったんだけど」

内心、相変わらずの情報通ぶりに舌を巻く。

ほむら「……何かおかしなことでも?」

QB「そうだね、正直不可解だ」



QB「どうして君は、まだ絶望していないんだい?」
451 : ◆c6GooQ9piw [sage saga]:2022/05/20(金) 17:26:34.08 ID:gFGYNPlR0
ほむらは思わず目を丸くした。
浮かれているつもりはない。
むしろ、この時間軸での失敗が確定して、落ち込んでいるというのが正解に近いはずだ。

ほむら「……そう見えるかしら。そもそもあなたは、人の感情を理解できないのではなかったの?」

QB「理解はできなくても、統計からある程度は割り出せる。特に魔法少女の希望と絶望は、僕たちも最重要視している事項だからね。研究も進めているのさ」

よくも、ぬけぬけと。

ほむら「それなら、その研究結果が的外れだったということね」

過去に戻ることが確定しているからといって、時間遡行や、ほむらの知っていることを教えてやる気はない。
どんな手を用いてくるかわからない以上、油断はできない。

キュゥべえにも、ほむらが情報を与える気がないことは、伝わったようだった。

QB「そうかい。君がここからどう足掻くのか、見せてもらうよ」

その言葉を最後に、キュゥべえは姿を消した。
452 : ◆c6GooQ9piw [sage saga]:2022/05/21(土) 19:29:46.12 ID:cQQyCtVH0
***

──そして。

ほむらは、ワルプルギスの夜に敗北した。

あらゆる手段を駆使したが、わずかな勝機すら見えることはなかった。
せめて先に役立てるものを見つけられればよかったが、わかったことは、独力でのワルプルギスの夜討伐は、ほぼ不可能だということだけだった。

しかしほむらは、全力で戦った。
そうしなければ、杏子に悪い気がしたのだ。

見届けてはいないが、恐らく杏子は、最後まで諦めなかったはずだ。

ならばほむらも、たとえどれほど低い可能性だとわかってはいても、本気で挑まないわけにはいかなかった。

そう、これからも。
453 : ◆c6GooQ9piw [sage saga]:2022/05/21(土) 19:32:18.67 ID:cQQyCtVH0
QB「全く、わけがわからないね。一体君は何がしたかったんだい?」

ほむら「……」

QB「勝てないとわかっていただろうに……正直、自暴自棄になっているようにしか見えなかったよ」

ほむら「……」

QB「まぁいいよ。君の状態はいまいち釈然としないけれど、とにかく僕は目的を果たした。それで十分だ」

ほむら「……」

QB「終わりだね。さようなら、暁美ほむら」
454 : ◆c6GooQ9piw [sage saga]:2022/05/21(土) 19:33:21.55 ID:cQQyCtVH0
キュゥべえがその場を去り、姿が見えなくなってから、ほむらはひとり呟いた。

ほむら「……まだ、終わりじゃない」

ほむら「終わらせない。絶対に、救ってみせる」

ほむら「運命を、変えてみせる!」

そして、ほむらは──
455 : ◆c6GooQ9piw [sage saga]:2022/05/21(土) 19:34:51.46 ID:cQQyCtVH0
繰り返す。

何度だって繰り返す。

未だに突破口は見えないが、それは諦める理由にはならない。

杏子の台詞が頭をよぎる。

『100回失敗したからといって、101回目もダメとは限らねーだろ』

──えぇ、その通りよ佐倉杏子。

100回だろうが、1000回だろうが、何度でもやり直してみせる。

そうすれば、いつか──
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