元お嬢様「安価とコンマで最終決戦?」元メイド「8ですぅ」

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798 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/21(土) 22:13:53.82 ID:MNgcxS0jO
リアルタイムで追いかけてくのと後から読み直すのだとやっぱり違うんだよな自分の場合……無意識のうちに飛ばし読みになってて細かいところまで読めてなかったりする……

読み返す事自体は楽しいけど安価に参加できる自信はないかもなぁ……
799 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/05(土) 08:50:56.97 ID:3KckSs9+0
どうにか何とかなったか。乙。

しかし、やっぱり革命軍と六勇のまともな奴で新体制作って黒幕に立ち向かうのがハッピーエンドへの道かな。
800 : ◆k9ih1s9J/w [saga sage]:2018/05/05(土) 18:20:24.70 ID:AvuCY+ZUo
>>797 読み直しまでしてくれるとは…これは絶対に完結させないといけませんね。
>>798 重大な安価はしばらく無いので大丈夫です。通りすがりが安価取ってもいいレベル。

気が付いたら一月経っていた。
ソピアちゃんの出番はまだです。
801 : ◆k9ih1s9J/w [saga sage]:2018/05/05(土) 18:22:16.48 ID:AvuCY+ZUo
ソピア、逃亡39日目の夜。

鉱山の町シスヤタ市での戦いが始まるよりも少し前。

ミルズの兄で岩魔術師のクルトは、フルフィリア市の端の方にある小さな店を訪れていた。


店番「こんばんは、ジェンスさん」

クルト「ああ。今日の成果はどうだ?」

店番「杖は2本完成しました。惑星シリーズもいよいよ揃いますね。今日の売り上げはポーションだけですけど」

クルト「構わん。大手以外では装備品はたまにしか売れないものだ」


ジェンス魔導具店。

ニッチなデザインの杖や、ボードゲーム、カードゲーム等を扱う、知る人ぞ知る小さな店だ。

入り口前にはチェスの駒を模した杖が飾られている。

別名義を使う商人はとても多い。

だがクルトは、自身が小さな店のオーナーである事を妹や親しい者にも伝えておらず、後ろめたい思いを抱いていた。


店番「明日は大統領選ですけど、ジェンスさんは誰が大統領になると思いますか?」

クルト「まあ元帥だろうな。しかし俺は明日それどころでは無さそうだ」

店番「この間言っていた夢中草の件ですか」

クルト「うちも夢中草を買っている。用途が違うとはいえミルズ達にはあまり知られたくないな」

クルト「夢中草は調合素材でもあるし、魔導具との親和性が高い繊維素材の一種だ」

クルト「仮に全面規制されれば中小魔導具店、ポーション店は大打撃を受ける」

クルト「ハーブを乱用していない俺たちの生活をも脅かす、奴らは決して許されない」

ドンドン ガチャッ

配達屋「配達屋カモメメールですー。ジェンスさんにお手紙っすー!」

店番「カモメさんが来たという事は、ミリエーラの件ですか」

配達屋「はいっす。『通達“ミリエーラ”側の新情報』ですと」

クルト「ふむ……」

店番「ミリエーラの新店舗を学園都市スクーニミー市に確認。ラヌーン戦争特需を予測していたかのような動き……」

クルト「“死の商人”らしい動きだ。まさか裏で糸を引いていたわけではあるまいが……」
802 : ◆k9ih1s9J/w [saga sage]:2018/05/05(土) 18:23:36.30 ID:AvuCY+ZUo
半年前、クルトの知人の防具商人が死んだ。首吊り自殺だった。

しかしクルトには腑に落ちなかった。知人が死ぬ一か月前に、知人の店のすぐ近くに別の装備品店がオープンしていたのだ。

クルトは店主の目を盗んでその店の事務所に潜入し、責任者の名を見た。

その名を一目見た瞬間、知人の死は仕組まれたものだと確信した。

以来、クルトは同業者と協力してミリエーラの動向を可能な限り探り、手紙で情報交換を行っていた。

次の犠牲者を生まないために。


配達屋「あれ? もう一通あるっすけど……」

クルト「『通達“ミリエーラ”より』……。……本人から、だと!?」

店番「封筒の中を見ましょう!」

クルト「ああ!」

『妹と仲間の命が惜しければ、誰にも告げずに一人でファナゼへ向かえ』

店番「これは脅迫状……」

クルト「店番に見せてしまった!!」

配達屋「き、きっと妹と仲間に伝えなければセーフっすよ」

クルト「配達屋にも見られてしまった!!」

店番「ど、どうしましょう。僕も殺される……!?」

クルト「……心配するな。責任者は俺だ」

クルト「俺が決着を付けに行く」

店番「それでは、妹さんたちが……」

クルト「この文面とタイミングから推測して、恐らく夢中草の黒幕もミリエーラなんだろう」

クルト「下っ端を仲間に任せて俺は黒幕を叩く。ミルズ達には……この店の事も含めて後で説明するしかあるまい」
803 : ◆k9ih1s9J/w [saga sage]:2018/05/05(土) 18:25:26.43 ID:AvuCY+ZUo
配達屋「大変そうっすねー。無事を祈ってます。そいじゃっ」サッ

クルト「配達屋、お前も来るんだ」

配達屋「ぎょえ! 捕まった!」

クルト「お前は旅人ギルドの所属だろう? 町の出入りにはギルド員か軍人の同行が必要になるが、わざわざ今から探すのも面倒だ」

クルト「赤の他人を巻き込むのは忍びないが、事情をよく知っているお前なら問題ない」

配達屋「カモメまだ死にたくないっすー!」

クルト「俺はお前の実力を買っているんだぞ」


配達屋のカモメは鉄鋼の町モスボラ市の旅人ギルドに所属しており、手紙や荷物の速達を請け負っている。

脚の速さと高い戦闘能力を有し、これまで一切の紛失・破損・遅配無し。ただし料金は高め。

クルトと同業者達はその実力を買ってミリエーラの動向に関する手紙をすべて彼女に頼んでいた。


クルト「お前が首を縦に振るまで、俺はこの手を離さない」

配達屋「む、無理っすよ。会長に怒られますし」

クルト「俺にはもう……お前しか考えられないんだ!」

配達屋「……もしかしてカモメ、口説かれてる?」

クルト「俺と共に行こう。さあ……!」ニッ

配達屋「はい!」

店番「ジェンスさんどうしたんだろう……」

クルト「ふっ、俺はな……。イメチェンがマイブームなのだ」

店番「そういえばメガネ変えましたね」

クルト「己の殻を破るため、色々な事を試したが、一つ達成できていないことがあった」

クルト「俺はインテリ商人からイケメン商人に転向しようと思う」

店番「えっインテリ商人だったんですか」

配達屋「あー、なるほどね。恋がしたいんすね」

配達屋「いいっすよ。カモメがファナゼに連れてってあげるっす」

クルト「よし! 一人目を落としたぞ!」

配達屋「落ちてませんけど!?」

クルト「ラミィはモンスターだったから残念ながら失敗したが、この旅で今度こそ、俺は恋愛を成し遂げる」

クルト「そして築き上げるぞ、クルトハーレム!」
804 : ◆k9ih1s9J/w [saga sage]:2018/05/05(土) 18:26:45.19 ID:AvuCY+ZUo
一方、フルフィリア市からファナゼ市に続く街道。

12歳の天才商人フローラは、オネエ日魔術師のキュベレが魔法で照らす道を歩いていた。

彼女はリンクス商会の経営を義父から受け継ぎ、所有する複数の店舗で冒険者のための装備品の生産・販売を行っている。

先日、義理の祖父母が開いていた雑貨店が、実の叔父によって半ば強引に潰されるという事件が起きたため……

その真意を、ファナゼにいる実の祖父に尋ねに行くのが彼女の目的だ。

祖父はフルフィリア共和国のほとんどの産業を支配するグリエール商会の会長である。


キュベレ「マニーマーケットを建てるために、ねぇ……。でも偶然とは思えないわよ」

フローラ「マニーさんは関係ないとおっしゃっていました。けれども一応、確認が必要でございます」

キュベレ「元妻の再婚相手の親にまでちょっかいかけるなんてサイテーね」

フローラ「いえ、母は結婚しておりませんの」

フローラ「彼は多くの女性と子をつくり、最も優れた子を産んだ女性と結婚したと聞いております」

キュベレ「あら、フローラちゃん優秀なのに、見る目ないわね!」

フローラ「『優秀』の条件のひとつが、男性であること、でした」

キュベレ「……古臭い男ってイヤねぇ。アタシのお父さんも男なら誰でも女より優秀って考えだし」

キュベレ「我慢ができずにすぐ暴力で従わせようとする。だから男って嫌いよ」


キュベレことジーク・オーグロスの父親はフルフィリア最強の軍人の一人、陸軍大将『鬼顔』である。

彼は同世代と比べても特に古い考えの持ち主であり、力、強さ、男らしさというものを重視し、息子のジークにもその考え方を押し付けようとしていた。


キュベレ「でもお母さんはご立派ね。今のお父さんと出会うまでは一人でフローラちゃんを育てたんだもの」

フローラ「いいえ立派ではございません。謙遜でなく、心の底から大嫌いです!」

フローラ「幼い私の面倒を見ていただいたのは保母ですので!」

キュベレ「あらら……。天才児にも反抗期はあるのね」

フローラ「私は一生反抗期でございます!」

キュベレ(寂しかったんでしょうね……)

キュベレ(フローラちゃんが今こんなに大人なのは、自立せざるを得ない環境だったことも影響してるのね、きっと)
805 : ◆k9ih1s9J/w [saga sage]:2018/05/05(土) 18:31:48.14 ID:AvuCY+ZUo
キュベレ「話変えましょっか! 逆に好きな人はいないの?」

フローラ「フィナさんは好きですよ」

キュベレ「そういうのじゃなくって! 恋のお相手よん♪」

フローラ「は、はい?」

キュベレ「ちなみにアタシが狙ってるのは魔法局の男の子よ」

フローラ「あの……おっしゃらなくても大丈夫ですわ」

キュベレ「アタシ言ったからね! 次はフローラちゃんの番よ!」

フローラ「ええっ……?」

キュベレ「ごめんね。早かったかしら。普通は恋をするお年頃だけど、フローラちゃんはまだなのね」

フローラ「むっ……。い、いますよ」

キュベレ「へえ、どんな男の子?」

フローラ「年上の、同業者の方です」

キュベレ「カッコいいの?」

フローラ「背が高くて、顔も整っていると思います」

キュベレ「どんなところが好きなの?」

フローラ「優しくて、理知的で、でも時に大胆なところ、でしょうか」


フローラは以前、エルミスの誕生会でソピア・フィナ・エルミスに同じ話をした事があった。

しかし、大人のオネエさんであるキュベレの『好きな人特定力』はそこらの小娘とは比べ物にならない!


キュベレ「もしかして……クルトくんじゃない?」

フローラ「んっ!? しまっ、その、コホン。ちっ違いますよ。……キュベレさんの知らない方でございます」

キュベレ「あらやだ、アタシの恋敵なのねっ!」

フローラ「うそっ……」

キュベレ「なんてね。冗談よ♪ 初恋をゲイに邪魔されるなんてトラウマになるわよ」

フローラ「どうして……クルトさんがお店を持っていることを?」

キュベレ「知ってるわよぉ。気になった子の秘密はどうしても知りたくなるものじゃなぁい?」

フローラ「……キュベレさんの顔の広さを甘く見ていました。不覚です」

キュベレ「決め手になったのはフローラちゃんがメガネフェチだってことね。この前会った時もメガネの男の子をチラチラ見てたでしょ?」

フローラ「キュベレさん、怖いです……」

キュベレ「ソフィアちゃんはトールくんとくっつきそうだから、今がチャンスよフローラちゃん! フローラチャンスよ!」

フローラ「恥ずかしいので……もう、やめてください……!」
806 : ◆k9ih1s9J/w [saga sage]:2018/05/05(土) 18:33:33.72 ID:AvuCY+ZUo
キュベレ(思ったより楽しい旅になりそうだけど、本題を忘れないようにしなきゃね……)

キュベレ(アタシの役目はグリエール商会の監視)


キュベレがフローラの付き添いを引き受けたのには理由があった。


キュベレ「ファナゼ市に……ですか? 強者の勲章を持つ者はシスヤタ市の監獄の警備を行うのでは?」

鬼顔「お前には期待していない」

キュベレ「力不足ですみません」

鬼顔「……グリエール商会の動きが不自然なのだ」

鬼顔「大統領選の日に家族全員が本社に集まると、俺の耳に入った」

鬼顔「迂闊な真似が出来ぬよう、お前を俺の代理として商会に派遣する」

キュベレ「まさか、グリエール商会が共和国軍へ反意を抱いていると?」

鬼顔「『造船王』パニー・グリエールは知っているな」

キュベレ「はい。陸軍および海軍に装備・兵器を納品している、製造業の有力者です」

キュベレ「彼は革命以前から現共和国軍を支持していました」

鬼顔「俺も懇意にしているが……奴は重度の兵器マニアだ」

鬼顔「大量の兵器を所有している事に加え、趣味で世界各地で起きた戦争の記録を収集している事も分かっている」

キュベレ「……パニー氏が商会を動かして国を戦争へ導く可能性がある、ということですか?」

鬼顔「一つの可能性だ。だが、仮に商会が物流を止める等の挑発を行えば、周辺諸国との緊張が高まる」

鬼顔「戦争が激化するほどに奴は儲かり、そして楽しむだろう」

キュベレ「……お父さんは、魔導帝国ノーディスとジャルバ王国の領土へ侵攻する予定があるとおっしゃっていましたが」

鬼顔「主導権を握るのは俺だ。奴じゃない」

キュベレ「……はい」

鬼顔「相手は所詮、金しか持っていない商人共。力の足りんお前でも出来る仕事だ」

鬼顔「ジーク。この程度の任務もこなせんようなら……分かっているな」ゴゴゴゴ
807 : ◆k9ih1s9J/w [saga sage]:2018/05/05(土) 18:38:01.39 ID:AvuCY+ZUo
それぞれの目的で商業都市ファナゼへと向かう、クルト、フローラ、キュベレ。

しかしその町ではすでに幾多の組織が動き出そうとしていた……。

陰謀渦巻くかもしれないファナゼ編、スタート。
808 : ◆k9ih1s9J/w [saga sage]:2018/05/05(土) 18:42:36.40 ID:AvuCY+ZUo
深夜、街道。

配達屋のカモメが暗いグレーの車を引いて走っていた。

金属光沢があるその車の中にはクルトが座っている。


クルト「ふむ、馬車より速い上に揺れが少ない。快適だ……」

クルト「車、重くないのか?」

配達屋「見た目より軽いっすよ。それに、カモメはドワーフとのハーフなんで怪力なんです」

クルト「車は岩魔術で作っているのか? 生成魔法だと思うが、俺の知らない金属だな」

配達屋「あ、企業秘密っす」

クルト「そうか。……ふわあ」

配達屋「着いたら起こしますんで、寝てていいっすよ?」

クルト「お言葉に甘えさせていただこう……」

配達屋「クッションなくてすいません。代わりに安眠魔法かけときますね」


商業都市ファナゼは早朝から賑わっている。

商人たちの朝は早い。朝市では買い付けに来た業者に交じって主婦の姿も見られる。

一方、夜間働いていた眠らぬ町の労働者たち、警備員、娼婦、パフォーマーはこれから睡眠時間だ。

今でこそ大きな都市に成長したファナゼ市だが、かつて王国東部はあまり栄えていない地方だった。

度重なる大国の小競り合いによって国境が頻繁に変わる不安定な地域であり、人々は痩せた土地に村を作り主に酪農を営んで生活していた。


今のファナゼ市を作り上げたのが、市民の誰もが知るグリエール三兄弟である。

長男、ミッキー・グリエール。モットーは『みんなの笑顔のためならなんでもする』

旅芸人達を束ね上げて芸能産業を確立、メカニックギルドに投資しテレビや遊園地の開発を支援した“芸能王”。

次男、ビリー・グリエール。モットーは『誰かが損を被る商売は長続きしない』

地道な交渉で街道と市場を整備、町の礎を作った現会長であり“ファナゼの父”。

三男、ゼニー・グリエール。モットーは『強欲は力なり』

類まれなる商才で富を増やし兄の活動を支援、行く先々で出会った女と多くの子を作りついには性病で帰らぬ人となった“絶倫王”。
809 : ◆k9ih1s9J/w [saga sage]:2018/05/05(土) 18:44:07.75 ID:AvuCY+ZUo
クルト「俺はファナゼに来いとしか指示されていないが、これからどうすればいいんだ?」

クルト「歩き回ってミリエーラに存在をアピールするか?」

配達屋「しっ。人前で名前言っちゃダメっすよ!」

クルト「そうか、迂闊だった」

配達屋「カモメ達が動かなくても、たぶん手紙の差出人から接触して来るんじゃないっすかね?」

クルト「ならば人の少ない場所に移動するか? ここでは差出人も話しづらいだろう」

配達屋「そんなに焦らなくても、呼んだからには無視しませんって」

クルト「そうだな……。すでに差出人の部下に見張られている可能性を考慮すべきだった」

クルト「配達屋、襲撃に備えるぞ」

配達屋「いや、襲うつもりなら街道で寝込みを襲うと思いますよ」

クルト「いつ戦闘が始まってもいいように、歩いて体を温めておこう」

クルト「地理の把握と食事も必要だ。さあ、まずは中央市場へ行くぞ」

配達屋「あれ? この人もしかして遊びたいんすか……?」


朝食と市場の物色を済ませたクルト達は、ファナゼ市立博物館を訪れた。

各国から集めた珍しい物品が保管・展示されており、考古学に興味が無くても楽しめる観光名所だ。


■ドラゴンブース

●古代竜の鱗 産出地:北サロデニア大湿原

※お手を触れないで下さい 針が刺さる恐れがあります

古代の北サロデニア大湿原には毒針を持つドラゴンが多く生息していたと考えられています。


●竜脈の模型 製作:魔導帝国ノーディス 皇都大学 ○○教授

竜脈とは、地中の奥深くに閉じ込められたドラゴンの生体です。

長く生きる程に生命力を増すドラゴンは、長期間の睡眠中に堆積した土砂や溶岩によって地中に封じられます。

竜脈には膨大な量の精霊(魔力)が残存します。一部の魔術師は竜脈から精霊を補充します。

竜脈が何らかの要因で地上に現れ目覚めた場合、古の神竜と呼称され、人類の脅威となります。


●竜の化石 産出地:プエルトマリハラ市郊外の地層

現生のドラゴンとの骨格の比較から、ファイアドラゴンの先祖と推測されています。

プエルトマリハラ市は周辺地域に比べて極めて温暖です。

魔法局は、火または日の精霊王もしくは竜脈が環境に影響を与えている学説を支持しています。
810 : ◆k9ih1s9J/w [saga sage]:2018/05/05(土) 18:47:03.17 ID:AvuCY+ZUo
配達屋「ドラゴンっぽいオーラの謎の精霊源を調べてみたら、本当にドラゴンだったってやつっすね」

クルト「竜脈術は俺が使っている、大地から力を借りる系統の岩魔術の延長にある」

クルト「俺も将来的にサロデニアにある竜の縦穴へ行く機会があるかもな」


■スカイブース

●魔法プリズム装置 製作:魔導帝国ノーディス 禁術研究所 所属研究員

※お手を触れないでください 手がランダムに変色し二度と元の肌色に戻りません

無水滴・無電磁気状態で、精霊操作のみで虹・オーロラの再現を試みた実験装置です。

日と風の精霊の濃度によって、光の反射率が変化し、人の認識する色が変わる事が分かっています。

色の人工的制御は困難を極めており、ノーディスでは無許可での日・風精霊合成実験が禁止されています。


●隕石 採取地:コホーテン国北部 クレーター群

この隕石は未知の金属で出来ています。

鋼鉄を上回る重量と硬度を持ち、よく磨かれた表面は鏡のような性質がありますが、通常の鏡面とはずれた景色を映します。

ぜひ持ち上げて重さを確かめてみましょう。


クルト「手が奇妙な色をしている、というのは個性に含まれるだろうか?」

配達屋「個性的じゃなくただの変な人だから展示品触らないでくださいっす」

クルト「何事も経験だ……」スッ

配達屋「絶対後悔しますって!」

クルト「おや、この隕石、お前の作る車に似ているな」

配達屋「んっ」

クルト「正面から覗くと向きによって天井、床、左右のどれかが映る鏡か。凸面鏡に似た使い道がありそうだ」

配達屋「そんな使い方できるほど隕石はいっぱい無いっすよ」

クルト「お前ならいくらでも作れるだろう?」

配達屋「うっ」
811 : ◆k9ih1s9J/w [saga sage]:2018/05/05(土) 18:48:53.22 ID:AvuCY+ZUo
クルト達がのんきに観光を楽しんでいる頃……

フローラとキュベレは、ファナゼ市中央の高層ビルの7階にいた。


グリエール商会本社ビル(フルフィリア共和国 商人ギルド本部)。

社員「一家の皆さんはこちらの扉の奥でお待ちです」

キュベレ「案内ご苦労さま。もう戻っていいわよ」

キュベレ(軍の施設と比べるとびっくりするくらい綺麗な建物ね。清掃員何人雇ってるのかしら)

フローラ「行きましょう? キュベレさん」

キュベレ「そうね」


扉の向こうは豪華絢爛な大広間だった。

床には高級な絨毯が敷き詰められ、天井にはシャンデリアが輝いている。

新品の真っ白なテーブルクロスがかかった長テーブルの左右には、宝石をあしらった金メッキの椅子がずらりと並ぶ。

何も知らない人が見たら、貴族、あるいは王族の晩餐会と誤解するだろう。


パニー「誰かと思えば……確か、フローラ、だったか?」

フローラ「……パニーさん、お久しぶりですね」

パニー「少し見ない間にずいぶん大きくなったな。……失敗作め」

不動産王「はははっ、父さん、それが自分の娘にかける言葉かよ!」

キュベレ(『造船王』パニー・グリエール……会長のビリーの長男で、次期会長と目されていた元不動産王)

キュベレ(フローラちゃんのお父さん、よりによってパニーだったのね……)

不動産王「で? 誰だよこいつ呼んだの。生まれながらの一家の恥を会議に招くとかどうかしてるぜ」

パニー「会長だ。忌々しいことに、会長は追放した者も血縁者だと分かれば社内へ入るのを許すんだ」

キュベレ(『不動産王』トミー・グリエール、20歳。顔は好みだけど、性格が最悪なのよね)

キュベレ(40億Gの男なんて言われてるけど、陰湿な嫌がらせで土地を奪ったり、脅して賃料を強引に釣り上げたりするのはねぇ……)

不動産王「会議じゃないなら何しに来たんだ。マニーおじさんを殺したのは私ですって自白しに来たのか?」

フローラ「……! ……私は、リンクス雑貨店を潰したのはあなたの指示なのか尋ねに参りました、パニーさん」

パニー「知るか。お前なんぞわざわざ相手にするものか」

パニー「なぜ今更金にもならない嫌がらせをせにゃならん?」

フローラ「……そうですか」
812 : ◆k9ih1s9J/w [saga sage]:2018/05/05(土) 18:52:29.23 ID:AvuCY+ZUo

パニー「待たせた、ジーク君。私に用があるんだろう?」

キュベレ「お世話になっております、パニーさん」

キュベレ「本日は、陸軍大将の特命で参らせていただきました」

パニー「君の父は大統領選当日で忙しいからな。君が来るのは理解できる」

キュベレ「失礼ながら、グリエール家の方々が一堂に会するのは珍しいことですね」

キュベレ「全員で一体どのような事について話し合うのか、父は大変興味を持っております」

パニー「一つは、自殺した弟のマニーの遺産分与についてだ」

キュベレ(『小売王』マニー・グリエール。会長の次男で、気のいい働き者として商会の中では市民に慕われてる方ね)

キュベレ(恨まれる人じゃないし、なんで自殺なんてしたのかしら……?)

パニー「そしてもう一つが、共和国体制における、今後の営業戦略に関する意見のすり合わせだ」

パニー「処刑された貴族の中には行政に携わる者も多かった。我々商会のノウハウを活かして今後の行政への助言ができないか、とも考えている」

キュベレ「新政府はギルドや大学と連携して改革を進めていく方針ですが、貴方がた商会の力を借りる日が来るかもしれません」

キュベレ「その時は、どうぞよろしくお願いいたします」

パニー「ああ。選挙では君の父に投票させてもらったよ。よろしく言っといてくれ」



フローラはゴージャスな装いの女性を訝しげに見つめていた。

彼女は、両手のすべての指にはめられた指輪、ネックレス、腕時計、髪飾り、靴に至るまで、大量の宝石が用いられたアクセサリで自身を飾っている。


宝石おばさん「あら、何をじろじろ見ていますの、貴女」

フローラ「いえ……。その杖、ノーディス製の魔法杖でございますね?」

フローラ「魔法使いではない方でも上位魔法が使える杖は、ノーディス国外に流通していないはずです」

フローラ「しかも危険な空間操作魔法の杖……。その杖は、どちらで?」

宝石おばさん「親切な魔導師の殿方に譲っていただいたの、オホホ」

宝石おばさん「貴女ずいぶん武器に詳しいのね? いやだわぁ物騒!」

フローラ(『宝石女王』ルブーラ・グリエール。私の叔母に当たります)

フローラ(美しいものに目がない宝石コレクターで、富裕層を相手にしか商談を行わないとか……)

フローラ(彼女も自分の子を一家から追放しているので、好きになれません)
813 : ◆k9ih1s9J/w [saga sage]:2018/05/05(土) 18:53:56.63 ID:AvuCY+ZUo
美食家「フローラちゃん、私のドーナツはいかがかな?」

フローラ「……よろしいんですか?」

美食家「食に差別なし! 美味しいものは分け合うべきだ。ただし通常は対価をいただくよ」

フローラ(『食の探究者』ポンディー・グリエール。私の叔父で、三男)

フローラ(フルフィリアに様々な外国料理を紹介した、商人としてはまともな人ですが、料理人ギルドには嫌われてます)

美食家「来週発売するポンディーリングのブルーベリー味だよ。変なハーブ料理より美味しいに決まってる!」

フローラ「友人へのお土産におひとついただいてもよろしくて?」


黒マント「久しいな、我が好敵手よ!」

黒マント「我は先日、ついにフルフィリアの全てのブルーベリー畑を手中に収めたぞ! 青果征服の夢もそう遠くはない……!」

黒マント「貴様はどうだ? 装備征服は順調か?」

フローラ「何度も申し上げているように、私は征服に興味がありません」

フローラ「勝手にライバル視なさらないでください。迷惑です」

フローラ(自称『青果の支配者』キノミー・グリエール。ポンディーさんの息子で私より2つ年上の14歳)

フローラ(一家の間では天才児と呼ばれていますけど、やってることは一定地域の特定の作物の畑を全部買って値段を釣り上げるだけ……)

フローラ(従わない農民の畑に薬品を撒いて、汚染された土地を強引に安く買い取る大悪党)

フローラ(結局は不動産王と同じ、家の力がないと何もできない人……)ジロッ

黒マント「そう見つめたとて、我は魅了されんぞ。控えよ」

黒マント「だが、もしも貴様が我が配下となるならば、貴様に青果の半分をやろう」

黒マント「おい、我を無視して立ち去るんじゃない。不敬なり。……待てっての!」
814 : ◆k9ih1s9J/w [saga sage]:2018/05/05(土) 18:56:21.63 ID:AvuCY+ZUo
パニーと不動産王に話を打ち切られたキュベレは、他の来席者から情報を探ることにした。

不動産王に次ぐ商会の年商ナンバーツー、人材派遣会社の女社長に狙いをつける。


キュベレ「共和国軍の“輝鬼”ジーク・オーグロスです。ドーラさん、お時間ございますか?」

女社長「ん? ああ。まだ会議までは余裕がある」

キュベレ(ドーラ・グリエール。故ゼニー氏の娘の一人で、職種問わずどんな依頼でも受け付ける派遣会社の社長)

キュベレ(ギルドから仕事を奪いつつも市民からの評価は上々だけど、地下の奴隷市場の元締めとしての顔もある怖ーい女)

キュベレ「失礼ながら、今日の会議ではどのような議題に関して話し合う予定があるか、お聞かせいただいてもよろしいですか?」

女社長「パニー達から聞いていないか? 議題は今後の一家の方針とマニーの遺産分与だ」

女社長「心配せずとも、パニーの独断専行は私たちが食い止める。私のように、ファナゼを戦場にされると困る家族の方が多いんだ」

キュベレ(あぁ、バレてんのね……)

キュベレ「お気遣いありがとうございます。ドーラさんは今後の方針についてどのような意見をお持ちなんですか?」

女社長「政府への全面的協力だ。ただし私たちも相応に扱ってもらわなければ困る」

女社長「共和国軍とグリエール商会、二人三脚でフルフィリアを立て直していこうじゃないか」

キュベレ(嘘偽りがあるような語りには思えないけど、この人、よくない噂いっぱいあるのよねぇ)

キュベレ(社員からもう少し情報を引き出せないかしら?)

キュベレ「お願いがあるのですが。会議の間、ドーラさんの派遣会社を見学させていただけませんか?」

キュベレ「私個人として、総合ギルドというギルドの形態に大変興味がございまして……」
815 : ◆k9ih1s9J/w [saga sage]:2018/05/05(土) 18:57:47.52 ID:AvuCY+ZUo
女社長「それは嬉しいな。ぜひ見ていってくれ。主任!」

社畜「はい」

女社長「お前と同じ強者の勲章をお持ちのジーク氏だ。会社の中を案内してやりなさい」

社畜「かしこまりました」

キュベレ(強者『社畜』……。百兵の試練では開始直後に100人全員が謎の力で倒され、一歩も動かずに勲章を得た男の人……)

キュベレ(派遣会社のPRのために試練を受けたのに、『私は……社畜だぁ!!』と、自ら不名誉な二つ名を要望したのよね)

キュベレ「……なんとなくシンパシーを感じるわ」



投資家「ジーク君。少し話しても構わないだろうか?」

キュベレ(投資家の……名前が出てこないわね)

投資家「オージー・グリエールだ。よろしく」

キュベレ「すみません。あまりお見掛けする機会が無いですよね?」

投資家「……ああ。今まで会食や会議に参加していないからね」

投資家「僕もゼニーの息子なんだが、実力を示して彼らの承認を得ないと本家には入れないんだ」

投資家「ようやく投資家としての功績が認められて、こうして初めて会合に招待されたのだよ」

キュベレ「グリエールの出であることを隠して暮らしている人も大勢いると噂されてますね」

投資家「ゼニーの子は多いよ。僕も全員知っているわけではないがね」

投資家「さて、本題に入ろう」

投資家「お察しの通り、僕たちは君に会議の本題を隠している」

投資家「だが僕たちの企みは、君たち、軍による統治を助けるものだ」

キュベレ「……話していいんですか?」

投資家「ジーク君には話しておくべきだ。陸軍大将を怒らせるリスクを負うのは得策じゃない」

投資家「作戦の決行は正午。大統領選の中継が始まる前に、町を離れておきたまえ」

投資家「陸軍大将に話しても構わない。まあ話す前にすべてが終わるだろうがね」

キュベレ「アンタ達、何をするつもりよ……?」

投資家「話はここまでだ。君に知るすべは無いさ」
816 : ◆k9ih1s9J/w [saga sage]:2018/05/05(土) 19:02:25.77 ID:AvuCY+ZUo
社畜「もうすぐ会長とミッキーさんがお着きになります……。外へ出ましょうか……」

キュベレ「そうね」

ガチャッ

着ぐるみ「ル〜ルル〜ル、ルー! シェルルーだルル♪」

会長「皆、揃っているね?」


会長は身なりのいい、けれども高級過ぎない装いの、雰囲気のいい中年男性だ。

一方、芸能王はいつも通り、ファナゼワンダーパークのマスコットキャラクター、シェルルーの着ぐるみに身を包んでいる。


フローラ「お祖父様」

会長「おお、フローラ。いらっしゃい」

フローラ「会議前にあなたにたずねたいことがございます」

フローラ「マニーさんが、ファナゼのリンクス雑貨店を潰してマニーマーケットの敷地を確保したのは、ご存知ですか?」

会長「何? 初耳だな。マニーめ、なんてことを……」

フローラ「あなたは何もご存じではなかったのでございますね?」

会長「誓うよ。命をかけてもいい。私はフローラに対する嫌がらせを決して容認しない」

会長「そもそも私はフローラに本家へ戻ってきて欲しいと思っている。それは認めてくれているね?」

フローラ「……はい」

会長「マニーが生きていたら相応の責任を取らせた。他に関与した者がいないか、私からも聞いてみよう」

着ぐるみ「YOU! 愉快な仲間たちが席について待ってるよ!」

会長「フローラ。また会議の後でゆっくり話そう」

フローラ「最後にもう一つ聞きたい事がございます!」


会長は反応しなかった。

フローラとキュベレ、社畜を残して扉が閉まる。


フローラ「大伯父様は会議中、着ぐるみをお脱ぎになるのですか!?」

キュベレ「えっ!? そんなこと!?」




着ぐるみ「……着ぐるみじゃなくって貝殻だルル!!」

扉越しに60代男性の裏声が聴こえた。
817 : ◆k9ih1s9J/w [saga sage]:2018/05/05(土) 19:04:06.71 ID:AvuCY+ZUo
派遣会社、ロビー。

受付「いらっしゃいませ。ご依頼の受付でしょうか?」

クルト「いや、見物だ」

配達屋「ねえこれ見て。社長の肖像画っすよ! 本人絶対こんな綺麗じゃないっすよね?」

クルト「それは分からんが……来歴も載っているな。幼少期を『契約の国』で過ごし、資本主義を学ぶ」

クルト「ギルドの権限を縮小し誰もが自由に起業できる社会をフルフィリア政府に提案し続けている、か……。若いのに立派だな」

配達屋「あれ? でもおかしいっすね。契約の国って商売人よりもむしろ詐欺師の国っすよ」

クルト「詐欺だと?」

配達屋「契約の効力が強すぎて騙したもん勝ちになってる国だって、外国を周ってる旅人さんから聞いたっす」




派遣会社 二階、総務課事務室。

女性社員「弊社が取り扱う依頼は大きく分けると戦闘系と専門系に分けられますが、ほとんどは戦闘系です」

女性社員「剣士ギルド、魔法局、何でも屋、陸軍、消防団……どこに頼めば正解か分からないという市民の声に応えるべく弊社は設立されました」

キュベレ「確かに……モンスター討伐を陸軍に頼んでいいって知らない人、多いわね」

フローラ「迷子の捜索依頼がなされた時、何でも屋は消防団に連絡すると耳にしたことがございます」

レンジャー「討伐、護衛、探索、採取、配達、何でも屋以上に何でもやらされるんだ」

弓士「何でも引き受けるからいつまで経ってもノルマが終わらねぇんだよ」

レンジャー「依頼を達成して戻ってくると、行く前より依頼の数が増えてんだよな……」

弓士「もう俺は20日も家に帰ってないぜ」

社畜「ふふ……まだまだですね……」

レンジャー「社畜さん?」

社畜「私の今週の労働時間は180時間です……」

レンジャー「っ!」ゾクッ

社畜「実質413連勤であるということも、付け加えておきましょうか……」

弓士「ま、まさかそこまでとは……!」
818 : ◆k9ih1s9J/w [saga sage]:2018/05/05(土) 19:14:16.99 ID:AvuCY+ZUo
フローラ「7日間は、168時間しかございませんが……?」

弓士「その気になれば一日に24時間以上働けるんだよ、この人は」

社畜「実演して見せましょうか……」

社畜「こちらの書類の山に、注目してください……」


くたびれたスーツ姿の男は、腕に装着した機械にカードを挿入し、『出』のボタンを押した。

次の瞬間、書類の山がすべてファイルに綴じられた。男は『退』のボタンに指を添えている。


キュベレ「時間を止めて作業したのね?」

社畜「いいえ……。タイムカードをご覧ください……」

『09:09-09:21 結果:書類253枚のチェック・保管』

フローラ「今は……9時10分でございますね」

社畜「仕事の結果だけを残して、仕事を始めた時間に戻ってくる……これが私の『時間外労働』……!」

社畜「私が黙々と事務作業を行っているのを、くだらなさそうに眺めていた貴方がたも存在していたんですよ……」

キュベレ「あー、『注目してください』って言った後、普通に仕事を始めたらそうなるわねぇ」

社畜「私がその場にいなければならない仕事以外は、これで終わらせるように命じられています……」

フローラ「なんとももったいない能力の使い方ですね」

社畜「もちろん、時間外労働分の給料は出ません……。この時空に労働中の私を見た者は一人もいないのですから……」

フローラ「タイムカードを提出なされては?」

社畜「社長は信じていません……。私が会社の人件費削減のために一瞬で仕事を終わらせたと、都合よく解釈しています……」

キュベレ「もう会社やめちゃいなさいよ。アナタならどこに行っても稼ぎ放題でしょ?」
819 : ◆k9ih1s9J/w [saga sage]:2018/05/05(土) 19:16:23.46 ID:AvuCY+ZUo
社畜「できるならそうしてますよ……」

キュベレ「そう……脅されてるのね」

社畜「いえ……そういうわけではなく……」

レンジャー・弓士「…………」

フローラ「契約書の効果で縛りつけて、逆らえなくされているのでしょうか」

キュベレ「契約書ってそんなマジックアイテムだったかしら?」

フローラ「魔法ではございませんね」

フローラ「暗示によって運命を操る占い師……その上位職の内、自分の思い込みで超常現象を起こすのが、エスパー」

フローラ「反対に相手に思い込ませて行動を操るのが、詐欺師。それが派遣会社社長……ドーラさんの正体です」

フローラ「ドーラさんより精神力が低く、契約書にサインした方は、もはや騙されたと分かっていても抜け出せません」

社畜「よくご存じですね……」

フローラ「ドーラさんについて知っている事を話すのも制限されていらっしゃったのでしょう?」

社畜「おっしゃる通りです……」

キュベレ「酷い事するものね。なんとかならないの?」

フローラ「契約書を処分するか、処分したと思い込ませるかのいずれかの方法で暗示は解けます」

キュベレ「当然本人は契約書に触れないのよね。記憶操作は高位魔法だし、難しいわね……」

キュベレ(もし商会が何を企んでいるか知っていても、契約書があるから彼らはそれを教えられない)

キュベレ(他を当たった方がいいわね)
820 : ◆k9ih1s9J/w [saga sage]:2018/05/05(土) 19:17:56.01 ID:AvuCY+ZUo
派遣会社 玄関前。

クルト「まだ差出人は現れないのか。いっそ派遣会社に捜索を依頼してみるか?」

配達屋「手がかりは名前しかないんすよ……。……あっ!!」

クルト「現れたか!?」

配達屋「会長! お疲れっす!」

フローラ「カモメさん!? なぜこちらに……」

キュベレ「あらぁ奇遇ね! ク……」

キュベレ(口元に指を当ててるわ。黙っときましょ)

配達屋「知ってるかもしれないっすけど、この人は配達屋カモメメールのアドバイザー、リンクス商会会長のフローラさんっす!」

クルト「ああ。前に会った事がある。印象的だったからよく覚えているぞ」

クルト「久しいな、フローラ。インテリ商人のジェンスだ」キリッ

キュベレ(その名乗りと決め顔はなんなのよ!)

フローラ「アンブラーズのクルトさんでしょう?」

クルト「うぐっ」

フローラ「新聞に載っておりましたよ。魔法競技会で優勝なされたんですね。おめでとうございます」

クルト「有名になるというのも良い事ばかりではないな」

クルト「すまない。騙す意図は無かったんだ。ただ商人ギルドに所属していないとはいえ、兼業と見られるのは世間体が悪いのでな……」

フローラ「お気になさらず。よくあることです」
821 : ◆k9ih1s9J/w [saga sage]:2018/05/05(土) 19:23:07.56 ID:AvuCY+ZUo
キュベレ「どういうセンスよ。インテリ商人のジェンスって……」

クルト「頭の良さそうな名前だろう?」

キュベレ「逆に頭が悪そうよ! バレバレよ!」

フローラ「そうでしょうか? 私は新聞を読むまで気づきませんでした」

キュベレ「このくらい察しなさいよ。あまりにひねりが無さ過ぎるじゃない」

キュベレ「まっ、アタシが言えた事じゃないけどね。オネエのキュベレって結構そのまんまなのよ。でもアタシはあえて分かりやすくしてるの」

キュベレ「いい? フローラちゃん。そのまんまな名前は大抵偽名よ。気を付けなさい!」

フローラ「別に偽名でもよろしいのでは? クルトさんは頭が良さそうですし、よくお似合いでした」

フローラ「とても良いセンスだと思います」

クルト「嘘を許してくれるばかりか、俺を立ててくれるとは……どこまで大人なんだ」

キュベレ(あっ違うわ、この子……偽名に気付いてたけど好きな人の肩持ってるだけよ!)


クルト「まさか配達屋があの天才少女の傘下だったとはな……」

配達屋「カモメの適性を見抜いて配達屋を提案してくれたんすよ! 会長と出会わなかったらカモメは今も浮浪者でした」

フローラ「カモメさんはリンクス商会の最高戦力ですのよ。私も頼りにしています」

クルト「そうか。年下に甘えっぱなしではないんだな」

配達屋「心外な評価っすね」
822 : ◆k9ih1s9J/w [saga sage]:2018/05/05(土) 19:26:06.75 ID:AvuCY+ZUo
キュベレ「ねえ、アタシ達は一応用事を済ませたんだけど、クルトくんは今から仕事かしら?」

クルト「ああ。少し急ぐ必要がある」

配達屋「ジェンスさん、じゃなくクルトさん。会長には話していいっすか?」

クルト「フローラにも無関係ではないか……」

キュベレ「なぁにぃ、仲間外れぇ? 別にいいけど」

クルト「いや、情報通のキュベレさんにも聞いてもらいたい」

クルト「聞くと危険に巻き込まれる可能性もあるが……」

キュベレ「そんな事は全然気にしなくていいわよ。聞かせなさぁい! オネエさんは強いのよ♪」


配達屋カモメが魔法で金属製の車を出現させ、全員で乗り込む。

どうやら中は防音になっているようだ。


クルト「俺は今、ミリエーラという人間を探している」

クルト「そいつから、妹の命が惜しければファナゼに来い、という内容の手紙が届いたんだ」

配達屋「いつの間にか荷物の中に紛れてたんすよ……」

キュベレ「どうして脅迫されてるのか、心当たりはあるの?」

フローラ「もう少しその方の情報はございませんか?」

クルト「武器防具屋で、同業者に何らかの圧力をかけて潰す商人だ」

クルト「俺の店も魔導具を扱っているから、恐らくそれが狙われた理由だろう」

キュベレ「グリエール商会っぽいわね。でもそんな名前の人いたかしら?」

キュベレ「パニーと売り物も被ってるじゃないの」

フローラ「無関係の方かもしれません」

配達屋「グリエール商会とお客さんが被っていない、闇の武器商人……ってことは」

フローラ「その方は地下街にいらっしゃると思います」

配達屋「行き先は決まったっすね。会長の言う事に間違いはないっす」

キュベレ「強引ねぇ……」

クルト「しかし他に当てはない。俺も賛成だ」
823 : ◆k9ih1s9J/w [saga sage]:2018/05/05(土) 19:31:58.89 ID:AvuCY+ZUo
地下街へ向かう道中、一行は二組に分かれていた。

男性の中でも脚の長いキュベレとクルトに対して、ドワーフとのハーフで身長が低いカモメと12歳のフローラ。

必然、普通に歩いているだけでも距離が開いてしまう。


フローラ「なぜ私の所へ連れて来たんですかっ……!」

配達屋「会長、クルトさん好きだったじゃないすか?」

配達屋「クルトさんも恋がしたいと言ってたんで、せっかくの機会なのでぜひ会長に引き合わせてあげようと」

フローラ「カモメさんにはウベローゼンで仕事を頼んでいましたでしょう?」

配達屋「クルトさんに強引にファナゼまで一緒に来るように頼まれたんすよ!」

配達屋「お膳立ては済んでますし、仕事の方はカモメ達がいなくても何とかなるでしょ」

フローラ「あなたは、いつも勝手なことをしますね……」

配達屋「会長のことを考えてのことっすよ」

フローラ「防音の車を出してください……仕事の連絡をします」


キュベレ「あら、カップル割引20%オフですって。気前のいいカフェね」

キュベレ「クルトくん、今はフリーなの?」

クルト「ああ。……俺の恋愛対象は女性だけだが」

キュベレ「今はね。いずれ必ず、アタシに落ちるわ♪ クルトくん年上好きそうだもの」

クルト「年齢は関係なく思慮深い人が好きだ。友人としてもな。だが、年上との恋愛は子供扱いされそうで難しそうだ」

キュベレ「若くて大人っぽい子がいいのね」

クルト「キュベレさんとは正反対だな」

キュベレ「ええ♪ クルトくんの言う通り、アタシは少女のように純粋な心の持ち主なのよ☆」

クルト「なんて前向きなんだ……!」

キュベレ「でもアタシ8歳の天文学者を知ってるんだけど、流石に子供過ぎるでしょ? クルトくん的には何歳までセーフ?」

クルト「そうだな…………11歳までだろうか」

キュベレ「随分守備範囲広いのねぇ」

クルト「中身は、年上とも言えるのでな……」

キュベレ「あらら、本当にいる人なのね。アタシの恋敵!」

クルト「しかし恋愛感情ではなく憧れに近いものだ。最初は侮っていたが、今では俺が目標にしている……」

キュベレ(そんなに若くて、クルトくんが認めるくらい大人っぽくて実力のある子なんて、あんまりいないわよ)

キュベレ(フローラちゃん、脈ありね♪)


残念ながら、ソピアのことである!

中身は72歳の老婆だが、見た目も心も11歳のソピアのことである!!
824 : ◆k9ih1s9J/w [saga sage]:2018/05/05(土) 19:38:14.69 ID:AvuCY+ZUo
ファナゼの闇、地下街。

至って平和ではあるが、表ではできないような商売が公然と行われているディープなスポットである。

派遣会社社長、ドーラによる管理の下、他国の商人たちが奴隷を売る奴隷市場が有名。

そして、闇料理研究協会という謎の組織の存在も広く知られている。


クルト「思っていたよりも随分と衛生的な環境だ……」

フローラ「下水や遺跡ではございませんもの。奴隷を使って隅々まで清掃もしているのでしょう」

キュベレ「みんな闇の商売人だから案内図は無いのね。目当ての店を探すのは骨が折れそうよ……」

配達屋「車を出せる程広くないっすね。地道に歩きましょっか」


彼らが道中で立ち寄ったのは

1.奴隷市場
2.闇料理研究協会
3.ネコかわいがり倶楽部
4.地下寝具店
5.ダークネスウェディングチャペル
6.裏芸能事務所

↓1、2、3 選択
825 : ◆k9ih1s9J/w [saga sage]:2018/05/05(土) 19:41:25.50 ID:AvuCY+ZUo
今回は選択まで。このレスは安価に含みません。

グロと絶望の違法ハーブ編から雰囲気を変えて、商会編はそこそこふざけた話になる予定。
黒幕の正体も2人判明&対峙します。途中で気付いてくれると嬉しい。
826 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/05(土) 20:03:54.21 ID:av/HqoCAo
ロリババアと化したソピアは合法
安価なら5
827 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/06(日) 04:12:08.15 ID:rmB4gOPDo
1は押さえとかないとかな
828 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/07(月) 02:46:16.06 ID:R0ViE1aPO
2
829 : ◆k9ih1s9J/w [saga sage]:2018/06/06(水) 23:58:50.60 ID:tqrCdSfho
延命報告。
830 : ◆k9ih1s9J/w [saga sage]:2018/07/07(土) 04:09:45.61 ID:NQa1fbLao
時間切れになってしまった&真夜中だけど投下。ダメそうなら次スレ立てます。
831 : ◆k9ih1s9J/w [saga sage]:2018/07/07(土) 04:10:40.97 ID:NQa1fbLao
地下街は、石のタイルが敷かれ、通路幅も広く歩きやすく整備されていた。

壁には一定間隔で魔法灯が備えられているが、地下であるためやはり薄暗い。

馬車置き場に隣接した南口のスロープから道なりに歩き進めると、柱の立ち並ぶ広間へと辿りついた。

広間には大勢の人々がおり、その中には多くの亜人が含まれていた。


ターバンの商人「手先だけは器用な草原民族の男だ。子種にどうだい?」

ローブの商人「ノーディスの白魔術都市産、身分の低いガキ共を3人セットで半額処分!」

奴隷商「いらっしゃい、観光かい? 見るだけでもいいから寄ってくれ!」


地下街の目玉、奴隷市場。

フルフィリアの富裕層も奴隷を購入しているが、どちらかといえば各国の奴隷商人同士での売買が盛ん。

人権意識の高い南のサロデニア共和国では奴隷が禁止されているため、人さらい達はここファナゼ市を拠点に活動している。

北の魔導帝国ノーディスでは亜人奴隷の人気が高く、奴隷商人達にとってはリスクを冒すだけの価値があった。

東の軍事国家ジャルバ王国では政府と繋がりの強い国民にのみ捕虜の分配がなされ、高い生産性を確保するとともに家事労働から解放されている。

権力の無いジャルバ人が裕福になるためには国外で奴隷を買う必要があるのだ。


クルト「ふむ。見てみるか」

フローラ「あら……奴隷に興味が?」

クルト「社会の事は何でも知っていて損はないからな」
832 : ◆k9ih1s9J/w [saga sage]:2018/07/07(土) 04:11:30.49 ID:NQa1fbLao
クルト達に声をかけてきた奴隷商は、『筋力値平均以上保証』の看板を掲げていた。

ギルドは能力値の測定基準として、一般人の平均を50と定めている。


クルト「適当に人間を売っていると思っていたが、品質にもこだわりがあるとは、意外だな……」

奴隷商「きちんと活躍できる場所で働かせてやらなきゃ意味がねぇ。家畜と同じさ」

クルト「筋肉質じゃない奴隷はどうしているんだ? まさか処分しているのか?」

奴隷商「いや、まず生まれてこない」

奴隷商「親のステータスが一定値を超えたら、子供はその半分の値を下回らない。ジャルバの中流階級以上じゃ常識だぜ」

奴隷商「一定値ってのは100な。一般的な特訓で上がる最大値。それ以上は上がりにくくなるってことはフルフィリアでも常識だろ?」

奴隷商「たまに手に入る優秀な奴隷を子種にすれば、一定の品質を維持できるってわけさ」

キュベレ「ジャルバと戦争した小国の捕虜ね……」

クルト「なるほど、子種と称して売られているのはそういう者か」

フローラ「彼らは、はじめから奴隷として生まれるのですわね……」

奴隷商「俺の祖父がマッチョな男の奴隷を手に入れたおかげで、こうして良い奴隷を大量生産できてるんだ」

クルト「奴隷を産むためだけに生かされている母親が大勢存在している事になる……。やはりろくな業界ではないな……」

奴隷商「母親も奴隷だから何も問題ねぇよ」

奴隷商「そうそう、奴隷鑑定士が数人いるから奴隷の能力値は偽れない。いろいろ言われることも多いが俺たち結構真面目にやってんだぞ」
833 : ◆k9ih1s9J/w [saga sage]:2018/07/07(土) 04:13:37.26 ID:NQa1fbLao
フローラ「ドーラさんが市場を開いて奴隷商人を集めた理由がよくわかりました」

配達屋「能力の高い奴隷がいたら自分の会社に引き入れて永遠にこき使おうって魂胆っすね」

キュベレ「頭のいい奴隷ってあんまりいないでしょうし、騙して契約させるならうってつけよねぇ……」


ふいに、奴隷市場の中でも特に身なりの良い男が声をかけてきた。


鑑定士「君タチ、亜人サーカス見て行かないでゲスか? 見物料は一人300Gでゲス」

クルト「サーカス……? そんなものもやっているのか」

鑑定士「適当にさらってきたものの、ステータスが低いから売り物として微妙なんでゲス」

フローラ「だから見世物に……商魂たくましいこと」

鑑定士「オヤ? あんたドワーフと人間のハーフでゲスな? 数値によっちゃ欲しいが、ドレドレ……」


男は能力解析魔法を使った。

ドワーフは西のコホーテン首長国以外ではあまり見かけない、ファナゼで活動する奴隷商人には比較的入手の難しい亜人だった。

筋力・精神力・器用さに長け、頭の回転が遅い傾向があることから、奴隷として非常に都合が良かった。


フローラ「カモメさんは売り物ではございません!」

鑑定士「売る気が無くても手段は、って……ひ、ひいっ! なんだこの化け物ども!」

キュベレ「ハーイ、化け物よん♪ 生まれつきの筋力値140。驚いた?」

キュベレ「どう? アタシを連れ去って子種にしてみる?」(^_-)⌒☆

鑑定士「滅相もございませんでゲス!」ダダダッ

キュベレ「……行きましょ。気分悪くなったわ」

フローラ「ええ。カモメさんを化け物呼ばわりされて……私も最悪の気分です」
834 : ◆k9ih1s9J/w [saga sage]:2018/07/07(土) 04:14:09.83 ID:NQa1fbLao
クルト「まさかキュベレさんと並び称されるほどの力の持ち主とはな……」

クルト「配達屋、お前、何者なんだ? お前の親もただ者ではないだろう」

配達屋「やっ。たぶん普通っす。というか覚えてないっす」

配達屋「カモメも親に捨てられたんすよ」

クルト「そうか……」

配達屋「そんで、コホーテン国の北の方、隕石がやたらと落ちてくる荒原でそこに暮らす魔女に育てられました」

配達屋「でもある日魔女さんは病気で死んでしまって、またカモメは一人になって、モスボラ市で浮浪者してたところを会長に拾われました」

フローラ「いい拾いものでした」

配達屋「カモメも会長からもらった名前っす。それまではコホーテン語で『半人間』としか呼ばれてなかったんで」

キュベレ「何か由来があるの?」

フローラ「当時から手紙の配達のお仕事をなさっていて、メールの子、と呼ばれていたので、少し追加して」

配達屋「配達屋カモメメールはカモミールが由来っす。花繋がりで」

キュベレ(ダジャレ!?)

クルト「いいネーミングセンスだ」

キュベレ「えぇ……?」
835 : ◆k9ih1s9J/w [saga sage]:2018/07/07(土) 04:14:35.58 ID:NQa1fbLao
【ダークネスウェディングチャペル】

クルト「この看板は何だ……?」

キュベレ「邪教徒のための結婚式場かしら……?」

フローラ「いいえ。ご説明いたしましょう」

フローラ「ここは、結婚相手が嫌がっている、未成年などの理由で、聖教会の神父を呼べない方々が式を挙げる場所でございます」

キュベレ「非合法な結婚式で満足するの?」

フローラ「非合法でも天使の祝福を受けたい、披露宴がしたい、そういったニーズに応えるビジネスです」

クルト「やけに詳しいな……」

フローラ「それほどでも……」ニコッ

キュベレ(調べたのね! 未成年OKの式場!)

クルト「? なぜ顔をそむける?」

フローラ「……なんでもございません」ニヤニヤ

キュベレ(ニヤけてるわ! まだ一歩も進展してないのに妄想してるわ! この子スケベね!)
836 : ◆k9ih1s9J/w [saga sage]:2018/07/07(土) 04:15:23.52 ID:NQa1fbLao

闇料理研究協会。

クルト「……!」ピタッ

フローラ「どうしました?」

クルト「少し、寄って行かないか?」

配達屋「闇料理……? 物好きっすねぇ」

キュベレ「別にいいけど……顔怖いわよ? クルトくん」

クルト「きっとお前たちも病みつきになる」ジュルリ


魔術師集団アンブラーズのチームリーダー、クルト。

彼もまた、特殊な料理の虜であった。


売人「クックック……いらっしゃい」

売人「ここは闇の料理人が集い己の腕を磨く、秘密結社のアジトだ」

配達屋「普通に入れるんすね、アジト」

売人「大歓迎さ、ここは勧誘の場でもあるからな」

売人「真の美食を体験していくといい」


実食。

キュベレ「あらー! たしかに地上では食べたことない味ね!」

フローラ「ええ。とても美味ですわね」

配達屋「どっすか? クルトさん」

クルト「…………違う」

クルト「味気ない! こんなもの闇の料理ではない! ハーブを足すんだ!」

闇ウェイター「ハーブ、だと……?」

闇ウェイトレス「貴様、さてはハーブ舌だな!」

闇料理人「表の料理界は腐っている! 料理に毒を混ぜ、彼のようなハーブ舌を量産している!」

闇料理人「ハーブは悪だ! ノー・モア・ハーブ!」

闇ウェイター「イエス、シェフ! ノー・モア・ハーブ!」

闇ウェイトレス「ノー・モア・ハーブ! 料理界を取り戻す!」

クルト「ハーブこそ正義だ! ノー・ハーブ・ノー・ライフ!」

配達屋「……?」

キュベレ「……何よこれ?」

クルト「お前たちも続けぇええ!」

フローラ「の、のーはーぶのーらいふ……?」
837 : ◆k9ih1s9J/w [saga sage]:2018/07/07(土) 04:15:54.96 ID:NQa1fbLao
闇料理人「我々はハーブ舌共から料理界を取り戻すべく結成された組織なのだ」

闇ウェイター「フルフィリアの料理界は、ハーブと調理道具捌きに頼り切り、食材を蔑ろにしている」

闇ウェイトレス「良質な食材が良質な料理を作る。そう主張し、料理人ギルドから追放されたレジスタンス、それが私達」

闇ウェイター「毒草や無機物を食材に使う国なんてフルフィリアくらいだ。我が国は大きく遅れている」

闇ウェイトレス「料理界のグローバル化を! 私達はポンディー氏の下、主張し続ける!」

闇料理人「分かったら出ていけ! このハーブ舌共め!」


キュベレ「追い出されたわ……」

配達屋「闇料理研究協会、ポンディー・グリエールが会長だったんすね」

クルト「グリエール商会が国を支配したら、カフェ:アンブロシアが潰される可能性があるのか。許せんな……」

クルト「徹底抗戦だ。俺はハーブ料理を友人に広めていこう。皆アンブラーになるべきだ」

フローラ「よく分かりませんけど、自分の信念を貫く姿勢は素敵だと思います」

キュベレ「……いい食材といいハーブを組み合わせれば一番美味しいんじゃないの?」
838 : ◆k9ih1s9J/w [saga sage]:2018/07/07(土) 04:16:30.96 ID:NQa1fbLao
キュベレ「結構寄り道しちゃったわねぇ」

フローラ「あら……あの屋台」

配達屋「怪しいっすね! 行ってみましょう!」

クルト「……そうか?」


闇武器店。

地下街の南口付近の広場の端にその店はあった。

看板は掲げておらず、床に敷かれたシートに各国の軍で採用されている武器や上位職ギルドで配布されている武器が並んでいる。

椅子にはクルトと同年代に見える一人の美女が脚を組んで腰かけていた。

どこかの国の女性士官制服を改造した衣装に身を包み、胸元を大きく露出させたその女は、クルトを見るなり口元を吊り上げて笑んだ。


女「ジェンス魔導具店のクルトさんですね。お待ちしておりました」

女「私が死の商人こと、ミリエーラです」

クルト「…っ!」バッ


すぐさまクルトがフローラの前に立つ。

カモメは腕をミリエーラへと向けて構えた。


ミリエーラ「構えを解いていただかなくても結構ですが、貴方達に危害を加えるつもりはありません」

クルト「……彼女らはお前の言う『仲間』ではないだろう?」

ミリエーラ「はい。私も、本当に一人で来るとは思っていませんよ」
839 : ◆k9ih1s9J/w [saga sage]:2018/07/07(土) 04:17:24.51 ID:NQa1fbLao
配達屋「当たりだったっすね」

キュベレ「腰に携えた革の鞭……戦争で儲ける商人、そしてその名前……」

キュベレ「人違いだったら申し訳ないんだけど、まさかアナタ、海軍大将の?」

ミリエーラ「はい。娘です。初めまして、ジーク・オーグロスさん、母がお世話になっております」

キュベレ「まさか女帝の話してたミリちゃんが、闇の武器商人だったなんてね。誰も会った事がないのも納得だわ」

配達屋「へー。あの人、娘がいたんすか」

クルト「……キュベレさん、どういうことだ?」

キュベレ「この子、あの六勇の海軍大将“女帝”フリンデルの娘なの。アタシがいれば話の通じない相手じゃなさそうよ」

クルト「いや、それは知っていたんだ。キュベレさんが軍の関係者とは初耳だ」

クルト「まさかあの陸軍大将の子だったとは……いや、特に問題は無いのだがな……」

キュベレ「アタシはお父さんとは違うわよ!」

ミリエーラ「お互い大変ですね。親の事で偏見を持たれて」

キュベレ「あら? アナタのは偏見じゃないでしょ? なんたってクルトくんを脅すお手紙を送ったそうじゃない」

クルト「ああ。よくも妹を脅しの材料に使ってくれたな……」

クルト「ウベローゼン市で違法ハーブを流行らせているのもお前だろう」
840 : ◆k9ih1s9J/w [saga sage]:2018/07/07(土) 04:18:54.66 ID:NQa1fbLao
ミリエーラ「夢中草の販売を指示したのは確かに私です。ですが、もうやめます」

クルト「何?」

ミリエーラ「数日後に私達死の商人グループは、フルフィリアを出ていきます」

ミリエーラ「軍とグリエール商会の影響力が拡大し、ギルドの力が低下すると、武器商人としては非常にやり辛いんですよ」

配達屋「夢中草販売の目的は、外国で活動するための資金源作り、もしくはコネ作り。そういうことっすね?」

ミリエーラ「はい。ですので、安心してください」

ミリエーラ「もう私におびえて手紙で情報をやり取りする必要も無くなります」

クルト「……お前の手によって、俺の知人は自殺に追い込まれた」

クルト「違法ハーブの騒動で、ミルズは殺されかけ、俺も一度重傷を負わされたんだ」

クルト「お前のような悪逆非道の疫病神を、責任も取らせず、外国に押し付けて満足すると思うか?」

クルト「お前の罪はこの国で裁かれねばならん。そうだろうキュベレさん!」

キュベレ「そうね……。いくら女帝の娘でも、いや、だからこそ余計に許される行動じゃないわね」

フローラ「カモメさん。この方に触れずに縛ってください」

配達屋「了解っす!」バッ


カモメが魔法で出現させた縄が、空中を自在に動き回りミリエーラを縛った。

しかし彼女は縛られながらも余裕の表情を見せている。
841 : ◆k9ih1s9J/w [saga sage]:2018/07/07(土) 04:19:52.58 ID:NQa1fbLao
配達屋「魔法防御みたいなのは無かったっすね……」

クルト「……俺を呼び出した理由は何だ? いなくなると宣言するだけが目的なら手紙にそう書けばよかったはずだ」

ミリエーラ「……国を離れる前に、クルトさんと話しておきたかった」

ミリエーラ「クルトさん、貴方に、ウベローゼン市の商人達が私を警戒するようになった、最初の事件について語らせてください」


彼女は、母に憧れており、母を助けられる仕事に就きたかった。

しかし彼女には体力が無かったため、軍人を目指す事はできなかったのだ。

それでも軍に関わる仕事をしたかった彼女は武器商となり、地下街やスラムなどで武器を求める人々に武器を売った。

彼女が武器を売った人々によって傷害事件が起きたこともあり、いつしか彼女は『闇の武器屋』『死の商人』と恐れられるようになっていた。


キュベレ「お母さんの強さは遺伝しなかったのね。……アタシが譲れるなら譲ってあげたいわよ」

クルト「だがやはり、ろくでもない商売人だな」


地道な行商を続け、とうとう彼女は店舗を持つに至った。

しかし、フリンデルの悪名と死の商人の肩書きは、その名を知った者に恐怖を与えた。

彼女の何気ない言動はプレッシャーを与え、近所の防具店店主は恐ろしい拷問や戦場に送られる未来を想像し、その運命が訪れる前に自ら死を選んでしまった。

クルトもまた、ミリエーラ・フリンデルの名を見て悪い想像を膨らませた内の一人であった。


クルト「俺たちが勝手に誤解しただけだと、そう言うのか?」

クルト「言い訳も大概にしろ。武器やハーブの販売を通じて、社会を混乱させたのは歴とした事実だろう!」

ミリエーラ「本当に……申し訳ございません。私は、道を誤ったんです……」
842 : ◆k9ih1s9J/w [saga sage]:2018/07/07(土) 04:21:34.41 ID:NQa1fbLao
クルト「では、この女を軍の基地へ連れて行こうか。全軍大忙しだろうが誰もいないということはあるまい」

キュベレ「待って。ミリちゃんアナタ、他に部下はいないの?」

キュベレ「全員ウベローゼン市に置いてきたってことはないでしょ」

ミリエーラ「いますよ。彼らには他の仕事を任せています」

キュベレ「その仕事と、部下の居場所について教えなさい。先に止めておかなきゃねん」

ミリエーラ「こちらは人を救うための仕事なので、できれば止めて欲しくないですね」

クルト「人を救う? 何を企んでいる」

ミリエーラ「私がファナゼに来たのは、亜人NGOによる奴隷解放の支援をするためです」


『死の商人』のフルフィリアでの最後の仕事は、奴隷商人たちに誘拐された亜人の解放。

しかしそれはグリエール商会への宣戦布告を意味し、同時に共和国軍を相手にすることにも繋がる。

それを避けるため、ミリエーラはこの日を狙って計画を練っていたのだ。


クルト「大統領選で軍の目が王都に集中する隙を狙ったのは、俺たちだけではなかったか……」

配達屋「しかもこのタイミングで貴族たちが反乱を起こしました。軍を出し抜くには絶好の機会っす」

フローラ「まさかとは思いますが、グリエール商会が集まっているのも、同じ理由ではないでしょうか……?」

キュベレ「そうね……」

ミリエーラ「ジーク・オーグロスさん。貴方にだけは話しておきたい」

ミリエーラ「……グリエール商会の企みを」

キュベレ「アナタ、知ってるの……!?」
843 : ◆k9ih1s9J/w [saga sage]:2018/07/07(土) 04:35:02.57 ID:NQa1fbLao
投資家「では最終確認です。改めて、計画に賛成の方は挙手を」


商会本部ビル。

豪華絢爛な会議室にて、その計画は賛成多数で実行される事が決定した。


投資家「反対は……ルブーラ氏、ポンディー氏、そして会長、ですか」

投資家「なぜ反対を?」

宝石おばさん「賛成には条件がありますわ」

投資家「条件を教えてください」

宝石おばさん「山人ギルドの解体。あの野蛮な鉱夫たちは、ザネッティ家が没落した後もまだ宝石集めの邪魔してきますの!」

投資家「もちろん解体は可能ですよ、マダム」

黒マント「そいつは僥倖だ。山イチゴを独占する土人ギルド員は一掃せねば!」

美食家「そんな汚い言葉使っちゃいけないよ、キノミー」

投資家「貴方はなぜ計画に反対するんですか?」

美食家「単純に気が乗らないからね。私は料理人ギルドに食材の力で勝ちたかった」

美食家「ただ、決定に文句は言わないよ。多数決だからね」

投資家「会長は、止めないのですか?」

会長「いつも言っているが、家族の意思は尊重したい。だが……とても残念だ」

会長「超能力で国民を洗脳して、全てのギルドを支配下に置き、国家の支配者となる……」

会長「それは……もう、商売とは呼べないんじゃないかね……」


投資家オージーの発案した、国家乗っ取り計画。

カギとなるのは、芸能王ミッキーが強引にアイドルデビューさせた少女、ポロ。

巷ではROKKAの芸名で知られる彼女は、歌唱によって人間の心身に影響を与える特殊能力を持つ。

もう一つのカギが、大統領選当日、すべての町に設置された放送ディスプレイ。

このディスプレイの設置には商会とメカニックギルドが協力しており、映像と音声は一度ファナゼ市のTV局本社に届けられる。


この計画では、放送の音声を編集し、共和国の初代大統領が決定する瞬間を見守る国民に、ROKKAの歌を聴かせて催眠状態にする。

そして意思薄弱状態になった国民に様々な命令を刷り込み、意のままに操るのだ。

計画が成功すれば、商会は国内のすべての業種を独占することができる。

また、商会は共和国軍に全面的に協力、軍の統治は半永久的なものとなる。

武力を持つものと財力を持つものが統治し、国民はただの駒となる、名ばかりの共和国が成立してしまう。


なお、数日前、ROKKAの持つ魔力に目を付けたラヌーン国によって計画が頓挫しかけたので、彼女を無事連れ戻したソピアは商会の恩人である。
844 : ◆k9ih1s9J/w [saga sage]:2018/07/07(土) 04:36:08.00 ID:NQa1fbLao
ファナゼ中央市場。

カモメが生成、発射した隕石塊が、ディスプレイとスピーカーを粉々に破壊した。


市民「な、なんだぁ!?」

剣士「誰かがディスプレイを攻撃したんだ!」

岩魔術師「弾が消えた……生成弾よ! 近くにあたし以外の岩魔術師がいるわ!」

風魔術師「気配が探れない……。どこへ消えた?」


クルト達はカモメの生成した車で即座に現場を離れていた。

仕組みは自転車と同じであり、カモメがペダルを漕ぐと車輪が回る。


キュベレ「ここまで来れば、降りてもいいんじゃなぁい?」

クルト「ふう……便利だな、この車。周囲の景色と同じ色味に変わる迷彩効果まであるのか」

配達屋「一番の自信作っす! 砲弾はもうちょっと改良できそうなんすけどねー」

フローラ「とにかく、これで催眠音声を防ぐことができました。一安心です」

クルト「ミリエーラ……危険な女だが、今回は助けられたな」

キュベレ「ありえないくらい事情通よねぇ。カモメちゃんの運ぶ手紙の内容から、商会の内情まで知ってるなんて」

クルト「大勢の内通者がいるのかもしれん。そこら辺も詳しく聞いてみるか」

クルト「配達屋。そろそろ車を消してもいいんじゃないか?」

配達屋「あっ、消し忘れてたっすね。今消します」


魔法で作った車が消えると、中に乗っていたはずのミリエーラも消えていた。


配達屋「あれっ?」

フローラ「こういう魔法って、人ごと消えるんでしょうか?」

キュベレ「見て、ロープだけ落ちてるわ!」

クルト「くそっ……逃げられたか!!」
845 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/07(土) 14:28:25.39 ID:i1Q1yrOSO
国民総洗脳とか恐ろしい計画が進んでる
それに加担したソピアちゃんマジソピア
846 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/11(水) 12:22:29.37 ID:T3B+BftIO
きてたんか
847 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/23(月) 11:37:02.62 ID:QIgte9iIo
前から思ってたけどプロっぽい
848 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/27(月) 19:08:10.40 ID:3bJ2Y21do
久しぶりに見に来たけどやっぱりおもしろいな
849 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/10/18(木) 13:35:09.97 ID:4KDh3fE/o
850 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/12/13(木) 16:35:55.41 ID:SRTPYc1To
復旧に気付いてないのかな?
851 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/12/13(木) 21:16:07.38 ID:PTeZU5Wdo
そろそろ半年か……
852 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/02/10(日) 16:55:07.89 ID:GRSfhTNy0
お仕舞いか
おもしろかったよ
853 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/02/19(火) 19:44:28.32 ID:fQgrNkKb0
いつまでも待ってます
854 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/02/19(火) 19:56:32.54 ID:Zj4XLBjfO
更新来たかと思った
855 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/04/15(月) 04:40:08.25 ID:j1UNJ8a5o
てす
856 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/06/12(水) 02:14:54.76 ID:LWMlrfs8o
一応保守
857 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/07/21(日) 01:45:02.73 ID:j5+Yr2CY0
いつまでも待ってます
858 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/10/23(水) 14:41:39.52 ID:7WOb7abU0
マダカナー
859 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/12/16(月) 22:45:13.87 ID:ulbUrRJr0
あえ
860 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/02/19(水) 07:25:21.95 ID:Md0wuL2mo
来なくても仕方ないけど一応
861 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/04/06(月) 20:56:29.28 ID:ibOb17Zeo
きました
862 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/04/18(土) 02:27:22.90 ID:rPQJu0oPO
2ヶ月経過したなら読者の保守も無意味だぞ
863 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/06/07(日) 15:59:11.60 ID:bTcC5kafo
もうすぐ2年経つのか
864 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/09/17(木) 21:26:55.77 ID:7ykL1fNn0
865 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/09/23(水) 00:59:39.33 ID:nIWjWT5XO
866 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2021/02/24(水) 08:13:26.40 ID:IIpWgffxo
てす
867 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/07/31(土) 05:37:51.65 ID:ZbFMC15xo
マダカナー
868 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2021/08/29(日) 10:23:50.58 ID:MXxf43sko
まだあったの
869 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2023/07/08(土) 09:49:50.88 ID:Zg6NC9qlo
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