姫王子「黒翼のハルピュイア娘……」青花エルフ「王子、姫になる」

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14 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2016/04/17(日) 08:08:31.67 ID:1UOAJ9Eno


>>13 ミスごめんなさい
15 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/04/17(日) 08:12:50.36 ID:1UOAJ9Eno


…………


魔法の馬車? 御者台



カラ カラ カラ カラ


ハーピィ 「…………」


王子 「…………」

王子 (甘ったるい、花のかおりがする)


葉巻エルフ 「…………」

葉巻エルフ 「なあ、王子さま」


王子 「何だ、葉巻」


葉巻エルフ 「オレとハーピィが、崖から落ちそうだとする」


王子 「………うん?」


葉巻エルフ 「もしもの話さ」


16 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/04/17(日) 08:22:17.01 ID:1UOAJ9Eno


王子 「珍しいな」

王子 「毒のパイプをふかしながら、今の世の中がいかに泥にまみれているか話すことしか興味のないお前が」

王子 「もしもの話なんて」


葉巻エルフ 「……オレとハーピィが、崖から落ちそうだとして」


王子 「はいはい、聞くよ。拗ねるなよ」

王子 (どこかで聞いたことあるな)

王子 (どちらか一方しか助けられないとして、どちらを助けるかって話か)


葉巻エルフ 「お前はすでに崖の下に落ちて」

葉巻エルフ 「死んでいるとして」


王子 「……うんっ?」


葉巻エルフ 「オレとハーピィ、どっちを引きずり落とす?」


王子 「待て待て待て」



17 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/04/17(日) 08:46:30.54 ID:1UOAJ9Eno


ハーピィ 「…………」


王子 「何だよ、引きずり落とすって」


葉巻エルフ 「答えろよ。オレにしては、どう答えても救いのある質問を用意してやったんだぜ」


王子 「救いが無さすぎるだろ」

王子 「選んだら死んで、選ばなかったら離れ離れじゃないか」


葉巻エルフ 「選べよ」


王子 「………」


葉巻エルフ 「…………」


王子 (葉巻。城下で違法な薬を売りさばいていたエルフの商人)

王子 (おれはこいつをはじめとした犯罪者どもを一網打尽にするため、領主の放蕩息子として近づいたが)

王子 (正義も考え方も違うのに、こいつほどしっくりくる友人はいないだろう)

王子 (そして……)


ハーピィ 「…………」


王子 (ハーピィ。両腕が黒い翼の、ハルピュイアという珍しい種族の少女)

王子 (葉巻に誘われて行った奴隷市で、不吉な淫魔の商人から譲り受けた)

王子 (流れる金髪が美しく、やることなすこと全てが愛らしい)

王子 (ハルピュイアという種族の特性により、おれが嘘をついたときにしか話さない)


ハーピィ 「……て、何でやねん」


王子「!!??」



18 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/04/17(日) 09:00:33.93 ID:1UOAJ9Eno


王子 「……ハーピィ?」

王子 「いま、話して……」


ハーピィ 「普通、そこは崖の上からどっちを助けるか、やろ」

ハーピィ 「ほんま、葉巻のあねさんにはかなわんわぁ」


王子 (何ということだ。ハーピィが、流暢に話している)

王子 (はんなりと)


ハーピィ 「でも、王子さまも王子さまや」


王子 「……お、おお」

王子 (ハーピィの口から、おれの名が出るときが来るとは)


ハーピィ 「葉巻のあねさん、優しい質問してくれはってるよ」

ハーピィ 「死んでも一緒におりたい人と、離れ離れでも生きとってほしい人」

ハーピィ 「どっちを選んでも、どっちも大事に思うとるってことや」


王子 「……な、なるほど」


ハーピィ 「ちゃんと気づいてあげないかんよ」

ハーピィ 「王子さまは、王子様なんやから」

ハーピィ 「葉巻のあねさんの王子さまは、王子さまだけなんやから」

ハーピィ 「同じように、王子さまの葉巻のあねさんも、葉巻のあねさん一人だけなんやで」


王子 「……お、おう」

王子 (説教された)

王子 (はんなりと)


19 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/04/17(日) 09:07:08.26 ID:1UOAJ9Eno


御者? 「……それで?」


王子 「うん?」

王子 (この馬車の御者台に、おれたち三人以外に人が乗っていたか?)


御者? 「君はどちらを選ぶのだろう」

外套者 「ともに死を歩む者として」


王子 「…………」



カラ カラ カラ カラ



20 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/04/17(日) 09:19:04.60 ID:1UOAJ9Eno


王子 (死を歩む……か)

王子 (恥ずかしい言葉だ。葉巻の関係者に違いない)


外套者 「どちらを選んでも、試練はつきまとう」

外套者 「人生は旅であり、物語であり、それは葛藤なのだ」


葉巻エルフ 「さあ、どっちだ?」


ハーピィ 「どっちにするん?」


王子 「…………」

王子 (おれが決めるのか。過ぎた権利をいただいたものだなあ)


外套者 「選択がいつも正しいとは限らない。真実とも限らない」


王子 (…………)

王子 (そうか、おれは……)


外套者 「そして君は今」

外套者 「大きな真実をひとつ、奪われている」


21 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/04/17(日) 12:48:35.21 ID:lw3qgVJfO
乙!
22 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/04/17(日) 16:51:08.89 ID:HE4DdtmL0
おう…ハーピィー私語のときははんなりなのか…
23 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/04/17(日) 19:27:04.80 ID:1UOAJ9Eno


カラ カラ カラ

カラ カラ

ガラ

ガラガラガラ


…………



魔法の船 船長室



ガラ ガラ ガラ



王子 (……何か聞こえる)

王子 (そろそろ目を開かなくては)

王子 (……気だるい。まだ眠っていたい)


モゾ モゾ


男の声 「……起きてください」

男の声 「さあ、早く」


王子 (男の声だ。聞きおぼえがある)

王子 (はて、誰だったか……ああ)


謎の声 「……馬車幽霊?」


王子? 「………?」

王子 (別の声。聞きおぼえがない。他に誰かいるのか)


24 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/04/17(日) 19:41:10.82 ID:1UOAJ9Eno


男の声 「ああ、良かった。意識が戻った」

馬車幽霊 「ようですね。さあ、起きてください」

馬車幽霊 「きっと、この事態はあなたでなければ収められない」


王子 (……そうか)

王子 (たしか鏡の魔女との交戦中だった)

王子 (それでたしか、葉巻とハーピィもろとも魔女の魔法の鏡に挟まれて……)

王子 (いかん。こうしてはいられない)


ムクリ


王子? 「…………ッ」

王子 (ううむ、身体が重いな。起き上がるだけでも一苦労だ)


馬車幽霊 「おはようございます、王子どの」


謎の声 「おはよう、馬車幽霊どの」


王子 (……またあの声。しかもすぐ近くから)


謎の声 「なあ、馬車幽霊どの……」


王子 (……うん?)

王子 (この謎の声、まさかおれの声なのか)

王子? 「? ……??」


馬車幽霊 「混乱しているようですね」

馬車幽霊 「新しい身体になったのだから無理もない」


王子? 「……新しい」

姫王子 「身体?」


25 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/04/17(日) 19:44:54.54 ID:1UOAJ9Eno


馬車幽霊 「まあまあまあ、落ち着いてください」


姫王子(王子) 「待て待て待て待て」

姫王子 「頼む。ちょっと、待ってくれ」


馬車幽霊 「いえ、時間が無いのです」


姫王子 「しかし、何だこれ」

姫王子 「おれの声が……高……というか、女……」

姫王子 「声が……」

姫王子 「!!!!」


ムニュ


姫王子 「胸が!!」

姫王子 「ひゃっほう!」


馬車幽霊 「落ち着いてください」


26 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/04/17(日) 20:02:04.78 ID:1UOAJ9Eno


姫王子(王子) (どういうわけか、女性の身体になっている)

姫王子 「いやいや、本当に何なんだ、これは」

姫王子 (自分の声に慣れない)

姫王子 (葉巻は魔法で身体を乗り換えるとき、いつもこんな感じなのか)


馬車幽霊 「道すがら話します」


姫王子 「あ、ああ……」

姫王子 「ぅう゛っ!?」

姫王子 (吐きそうなほどひどいにおいが、鼻をついた!)


腐った幼竜の死体A 「…………」

腐った幼竜の死体B 「…………」

腐った幼竜の死体の群れ 「…………」


姫王子 (船長室にたくさんの幼竜の死体が転がっている)

姫王子 (どれも無残に腐り果てて……ひどい有様だ)

姫王子 (こんな中で、おれは寝こけていたのか)

姫王子 「……ハーピィがいない」

姫王子 「船長も、あの魔女も」

姫王子 「……葉巻も」


馬車幽霊 「それも話します」

馬車幽霊 「さあ早く、甲板へ」


27 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/04/17(日) 20:12:43.51 ID:1UOAJ9Eno


魔法の船 船内城下



タ タ タ タ タ


馬車幽霊 「……鏡の魔女との交戦中、あなたは隙をつかれ」

馬車幽霊 「鏡の魔女の罠にかかってしまいました」


姫王子 「あの黒と白の魔法の鏡か」


馬車幽霊 「本来は一枚の鏡です」

馬車幽霊 「ただの魔法のアイテムではない」

馬車幽霊 「超常の存在が作り出したとしか思えない、幻のアイテムの一つ」

馬車幽霊 「名前を、真実の鏡」


姫王子 「真実の……」


馬車幽霊 「あなたはその鏡に、真実を奪われてしまったのです」


28 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/04/17(日) 20:22:29.80 ID:1UOAJ9Eno


姫王子 「奪われて……こうなったと?」

姫王子 「この……鏡を見るのは色々な意味で恐ろしいけれど……女性の姿に」


馬車幽霊 「そうですが、ふむ……」

馬車幽霊 「あの魔女は真実の鏡の使いかたを、私たちより詳しく知っていたようです」

馬車幽霊 「黒と白の二つの鏡に分けて、鏡面で対象を挟むことで」

馬車幽霊 「……おそらく、凶悪な形で真実を奪い取る」


姫王子 「……?」


馬車幽霊 「何から話せば良いか……」

馬車幽霊 「まず、これをご覧ください」


ギラリ


鏡のかけら


姫王子 「……鏡の破片?」


馬車幽霊 「恐ろしい魔女の持っていた真実の鏡」

馬車幽霊 「その破片です」


29 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/04/17(日) 21:18:32.22 ID:1UOAJ9Eno


馬車幽霊 「本来ならば、魔女が真実の鏡を我々の目にさらしたときに」

馬車幽霊 「私が隙をついて奪う予定でしたが」

馬車幽霊 「予想外の事態が続き、このような結果に」


姫王子 「幻のアイテムなのだろ」

姫王子 「壊れるのかい」


馬車幽霊 「あのとき鏡に挟まれたのは、王子どのだけではありませんでした」


姫王子 「……ああ」


馬車幽霊 「お嬢様とハーピィどの」

馬車幽霊 「最終的にこの二人は、真実の鏡の力が及びませんでした」

馬車幽霊 「とくに、ハーピィどのは無傷で事なきをえています」


姫王子 「その割には、二人とも姿が見えないが」


馬車幽霊 「その話はすぐ後ほど」

馬車幽霊 「……その二人のせいでしょう、真実の鏡は割れてしまったのです」

馬車幽霊 「そして魔女は鏡の本体を深くしまい、私は鏡の破片を手に入れた」


30 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/04/17(日) 21:30:18.33 ID:1UOAJ9Eno


馬車幽霊 「破片は鏡そのものではありませんでしたが」

馬車幽霊 「幸い、鏡が、つまり魔女が奪ってきたであろういくらかの真実を有していました」

馬車幽霊 「その中に、王子どのの真実もあった」


姫王子 「おれの……」


馬車幽霊 「魔女が王子どのから奪ったものは」

馬車幽霊 「魂といえるべきものと、身体でした」


姫王子 「身体と……魂?」


馬車幽霊 「この場合は心とか、意識とか、そういうものだと思ってください」

馬車幽霊 「……私はどうにか、その鏡の破片から王子どのの魂を取り出しました」


姫王子 「……どうにか取り出せたのか」


馬車幽霊 「ええ、どうにか」


姫王子 「じゃあ、身体は?」


馬車幽霊 「取り出していたら、あなたは死んでいたでしょう」

馬車幽霊 「凶悪な形で奪い取られたのは、あなたの身体でした」

馬車幽霊 「誤解を恐れずに言うならば、幸運にも」


31 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/04/17(日) 21:35:59.61 ID:1UOAJ9Eno


馬車幽霊 「あなたの身体はこの鏡の中に囚われたままです」

馬車幽霊 「バラバラに割られて」


姫王子 「何だと」


馬車幽霊 「本当に、その物が映った鏡ごとバラバラに割ったようでした」


姫王子 「それは……いや、ショックだな」


馬車幽霊 「そうでしょうね。あなたの苦痛を汲み取れないことを、歯がゆく思います」

馬車幽霊 「しかし、本当に幸運ではあったのです」

馬車幽霊 「バラバラにされたのが魂でなかったことは」


姫王子 「…………」



32 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/04/17(日) 21:53:20.25 ID:1UOAJ9Eno


タ タ タ タ タ


馬車幽霊 「鏡に真実を奪われ倒れた王子どのは」

馬車幽霊 「程なくして今のその姿となりました」


姫王子 「ふむ」


馬車幽霊 「おそらく、鏡に奪われた真実は」

馬車幽霊 「まったく別の物にすり替わってしまうと思われます」

馬車幽霊 「つまり、もし王子どのの魂まで鏡に囚われたままだった場合」


姫王子 「ここにいるのは全くの別人で」

姫王子 「おれはこの世から消えてしまっていたということかい?」


馬車幽霊 「ええ」

馬車幽霊 「虚実ある魔女と鏡の逸話の数々を照らし合わせてみた場合」

馬車幽霊 「そうなっていたでしょう」

馬車幽霊 「王子としての身体と、王子として培ってきた経験やらを失って」

馬車幽霊 「あなたは自分のことを王子どのだと、つゆにも思わないでしょうね」


姫王子 「……ぞっとする」


33 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/04/17(日) 22:11:04.06 ID:1UOAJ9Eno


馬車幽霊 「少々ややこしい経緯はありましたが」

馬車幽霊 「結果としてあなたは今、真実の鏡に身体を奪われた状態です」


姫王子 「なるほど」


馬車幽霊 「とは言え身体にも、ところどころ、王子どのの面影があります」

馬車幽霊 「もしかしたら、魂を取り戻せたことが何か作用しているのかもしれません」


姫王子 「ふむ」

姫王子 「……どちらにしても、今までのおれは終わってしまったわけか……」


馬車幽霊 「落胆するのは早いようですよ」

馬車幽霊 「王子どのの身体も、こちらの手の中にある」

馬車幽霊 「……私の特技をお忘れですか?」


姫王子 「まさか」

姫王子 「思い出すだけで、貫かれた腹の底が疼くよ」


馬車幽霊 「さまざまな死体をつぎはぎして作る人に近い人形、フレッシュゴーレムの極意」

馬車幽霊 「バラバラになった一人の人間を一人の人間の形に戻すのは」

馬車幽霊 「おこがましくも容易なことなのです」


姫王子 「頼もしいね」

姫王子 「封印したのでは?」


馬車幽霊 「いまいちど、解かねばなりませんね」


姫王子 「ははは……」



34 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/04/17(日) 22:20:53.84 ID:1UOAJ9Eno


姫王子 「そして、ハーピィと葉巻だ」

姫王子 「どうしておれの傍にいない」


馬車幽霊 「ご安心を」

馬車幽霊 「変わり果てたあなたに失望したわけでもない」


姫王子 「おれが心配しているのは、二人のことだ」


馬車幽霊 「ええ、もちろんですとも」

馬車幽霊 「鏡に殺されたわけでもありません」


姫王子 「では、何故」


馬車幽霊 「二人は鏡の魔女と交戦中です」


姫王子 「何だと」

姫王子 「二人が?」

姫王子 「ハーピィが?」


馬車幽霊 「お二人とも、竜を食い殺さんばかりの勢いでしたよ」


姫王子 「……急ごう」


馬車幽霊 「両手に花どころではありませんでしたね」


姫王子 「いや、葉巻は……」

姫王子 「おお、なるほど、黒花の長老エルフということか」

姫王子 「うまいね」


馬車幽霊 「いえ、そういうわけでは……」



タ タ タ タ タ



35 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/04/17(日) 22:27:13.64 ID:1UOAJ9Eno



タ タ タ タ タ


姫王子 「…………」


ユサ ユサ 


姫王子 「……やっぱり走りにくいよ、この身体」

姫王子 「揺れるし、尻も、腰のあたりも変な感じだし」

姫王子 「どうして葉巻はあんな風に、自分以外の身体を使いこなせるんだ」


馬車幽霊 「慣れてください」


姫王子 「はあ……」

姫王子 「でも、すぐに元に戻れるんだろう?」

姫王子 「おれの身体をなおして、どうにかして」


馬車幽霊 「もちろん、どうにかしますとも」


姫王子 「さすが、腕利きのゴーレム職人さまだ」


馬車幽霊 「…………」


姫王子 「…………」


馬車幽霊 「…………」

馬車幽霊 「どうにか、しますとも」


姫王子 「沈黙と一言が余計なのだが」


タ タ タ タ タ


36 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2016/04/17(日) 22:31:42.82 ID:1UOAJ9Eno



姫王子(王子)
http://i.imgur.com/uXSD22t.jpg


真実の鏡に男性としての身体を奪われた、王子の姿。
元の姿に加え、妹である王子姫の特徴もまじっている。
画像はフィクションです。
37 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/04/17(日) 23:14:15.80 ID:lw3qgVJfO
乙!
38 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2016/04/17(日) 23:40:54.43 ID:JRdEjcsio
無駄にハイスペックな身体だなw
39 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/04/18(月) 01:50:04.68 ID:yNauuXcDo
ひゃっほう!じゃねぇよwwww

…でもこの身体なら仕方ないか
40 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/04/22(金) 07:08:53.72 ID:LD1v6N7/o
ハーピィが戦ってるだと...
41 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/04/23(土) 11:20:08.83 ID:zAg+ZJLTo
乙です
こっち側もひゃっほう!

竿がないから葉巻が怒ったのか
42 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/15(日) 15:42:40.70 ID:rlYJuJn0O
この格好に仮面つけたら

へ、変態だぁーーーー!?
43 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/24(火) 23:27:10.13 ID:w8ojAjTgo
こりゃ王子姫の可愛さも期待できるな
44 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/03(金) 20:42:23.24 ID:8l9BzYw5O
そろそろ書いてくれていいんだよ?
45 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2016/06/06(月) 22:42:13.56 ID:oJLtKlUoo


ザワザワ ザワザワ


姫王子 「……うん?」

姫王子 (そろそろ甲板に出るというところで)

姫王子 (人だかりができいている)


ザワ ザワ


軽戦士 「ああ、くそ、武器が全部だめになっちまった」


戦士 「鎧もダメだ。なおすよりも、新しいやつにした方が良さそうだ」

戦士 「向こうで売っていると良いんだが」


弓戦士 「それも、この状況を生き延びられたらだけれど」


あの教徒 「怪我をした人はいませんか!」

あの教徒 「少しですが、疲労回復の奇跡なら使えます!」


包帯戦士 「うう、ありがたい……」


ザワ ザワ



王子 (潮くさい。甲板で戦っていた連中かな?)

王子 (……見慣れた顔はないようだ)


46 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/06/06(月) 23:00:42.54 ID:oJLtKlUoo


ザワ ザワ


姫王子 「……よいしょ」

姫王子 「すまない。通してくれ……」

姫王子 「よいしょ……」

姫王子 (くそう、人が多すぎて甲板までが遠いぞ)

姫王子 (骨の仮面をしていたころは、人を避けて歩く必要はなかったのに)


馬車幽霊 「通ります。すみません、よいしょ……」


姫王子 (……馬車幽霊も、窮屈そうに人を避けているが)


馬車幽霊 「私も、さすがに人をすり抜けて移動するわけにもいきませんかれね」

馬車幽霊 「悪霊と間違われて余計な混乱を招くことになってもことです」


姫王子 「ふむ」

姫王子 (人をすり抜けることもできるのか)


馬車幽霊 「すり抜けられるというのは、気持ちの良いものでは無いようですし」


姫王子 「そうなのか」


馬車幽霊 「とくにエルフは嫌がるようです」

馬車幽霊 「お嬢様も例外ではないようで」


姫王子 (やったのか)


馬車幽霊 「スペクターやバンシー、デュラハンなど、ゴーストに近いものとの仲は」

馬車幽霊 「あまりよくないようです」

馬車幽霊 「エルフが穢れるとオークになる、という言い伝えに関係しているのかもしれません」

馬車幽霊 「私はそちらの方にはあかるくないので、即興寝物語の類ですが」


姫王子 「オークになった葉巻か」

姫王子 「……ふはははは!」


馬車幽霊 「その姿で、その笑いかたはいかがなものかと」


47 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/06/06(月) 23:14:26.60 ID:oJLtKlUoo


長髪剣士 「君、まさか甲板に向かっているのか」


姫王子 「ああ」

姫王子 「まだドラゴンというものを見ていなくてね」


ハゲ拳士 「やめたまえ、お嬢さん」


姫王子 (お嬢さん……)


ハゲ拳士 「もはやあそこに、人の居場所はないのだ」


アマゾネス 「おや、言ってくれるねえ、この紳士さまは」


ハゲ拳士 「ドラゴンに魔女たち」

ハゲ拳士 「物語や悪夢から抜け出してきたようなものの世界だ」


姫王子 「その魔女に用がある」

姫王子 (……たち?)


48 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/06/06(月) 23:31:32.19 ID:oJLtKlUoo


姫王子 「……ドラゴン。ずいぶんと激しい戦いだったようだ」

姫王子 「武具もそんなにボロボロになって」


アマゾネス 「ああ、これかい」

アマゾネス 「たしかに、鉄をぶん殴ってる感じだったけどね」


長髪剣士 「魔女のしわざさ」


姫王子 「魔女」


アマゾネス 「ああ」


長髪剣士 「そいつが現れたとたん、鉄の武器や防具が役立たずになってしまった」


ハゲ拳士 「うかつだった。悪い魔女は他者の無理解と孤独を好むと思い込んでいたが」

ハゲ拳士 「まさか、二人目の魔女が現れるとは」


姫王子 「二人目」


馬車幽霊 「悪い魔女」


ハゲ拳士 「一目にはあどけない少女だった」

ハゲ拳士 「空を舞う、どこか人ならざる少女を連れていたが、あれが使い魔というものなのだろう」


長髪剣士 「まるで、地獄から吹く風のようだったよ」


姫王子 (バランス悪いな、この二人)


49 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/06/07(火) 00:12:54.34 ID:DDpbAQrSo


姫王子 「なるほど。それでそんなに、ボロボロに……」


ハゲ拳士 「どこを見ているのだね」

ハゲ拳士 「私の武器は髪ではないぞ」


姫王子 (……まったく、何をやっているんだ、葉巻)


アマゾネス 「と、いうわけさ。諦めて引き返しな」

アマゾネス 「お上品な顔立ちのお嬢様は特にね」


姫王子 (ほう)

姫王子 「上品か。貴重な体験だ」

姫王子 「あなたのような美人にそう言われるとは」


アマゾネス 「なっ……」


ハゲ拳士 「これは冗談では無いんだ」


姫王子 「ここにいる、腕に自信のあるだろう戦士さまたちの重苦しい表情を見ていると」

姫王子 「たしかに、そのようだ」

姫王子 「……甲板にいるという仲間の姿が見えないのだけど」

姫王子 「まさか」


ハゲ拳士 「この船の乗組員の一部や魔法使いをはじめ、まだ甲板に残っているものもいる」

ハゲ拳士 「だが……」


長髪剣士 「このままでは、時間の問題だろう」

長髪剣士 「甲板に残った者の中に、勇者と噂される者残っているが」

長髪剣士 「そんなうまい話は……」


姫王子 「……そこまでか」

姫王子 「急がなくては」


アマゾネス 「お、おい。だからやめとけって」


姫王子 (失礼ながら意外と女性らしい)

姫王子 「それは無理だ。ここの全員を敵にまわすことになっても行かせてもらう」

姫王子 「守るか叩き割られるかの盾になりたいわけじゃ無いがね」

姫王子 「どうやら甲板にあるのは、おれの命や誇りより重いものばかりなんだ」


50 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2016/06/07(火) 00:21:04.77 ID:DDpbAQrSo


ザ ザ ザ


馬車幽霊 「お嬢様に聞かせたい言葉でしたよ」


姫王子 「仮面があればね」

姫王子 「……上品か」


馬車幽霊 「王子どのの姉君と言っても信じられそうです」


姫王子 「似ても似つかない、上品な……といったところかな」


馬車幽霊 「さきほどのようなことばかり言っていたら、どうでしょうね」

馬車幽霊 「……経験があるので?」


姫王子 「よくできた妹や親を持つと、耳にする機会は多い」

姫王子 「分厚い石壁の部屋にいても」


51 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2016/06/07(火) 00:39:03.45 ID:DDpbAQrSo


甲板への扉前



姫王子 「さて、行くか」


馬車幽霊 「その前に、王子どの、装備などは大丈夫でしょうか」


姫王子 「……。うん、問題ない」

姫王子 「なれない体に不安はあるが、そうも言っていられない」

姫王子 「……風呂でじっくり確認……もとい、風呂くらいには入っておきたかったな」


馬車幽霊 「ふむ」

馬車幽霊 「では、これを試してみますか」


ガチャ


海老骨の魔剣
英雄の腰当て


姫王子 「これは」

姫王子 (ク魔エビ娘を介して船長から貰った装備)

姫王子 「持ってきてくれたのか」


馬車幽霊 「強い魔力を秘めたアイテムですね」

馬車幽霊 「どのようにつくられたのか、まったく分からない」

馬車幽霊 「よってあまり勧めたくはないのですが」


姫王子 「馬車幽霊どのをもってしても分からないか……」


カチャ カチャ スチャ


姫王子 「……なんだか」

姫王子 「以前よりしっくりくる気がする」

姫王子 「もともとは女性用……だったか」



52 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2016/06/07(火) 00:50:05.12 ID:DDpbAQrSo


姫王子 「ふむ……」


馬車幽霊 「何かおかしなところはありませんか」


姫王子 「……いや」

姫王子 「とくにないな」


馬車幽霊 「ああ、良かった」


姫王子 「無性にズボンを脱ぎたくなったくらいかな」


馬車幽霊 「微妙に呪われているようですね」


姫王子 「腰当ての下にズボンをはいているのが」

姫王子 「とても恥ずかしいことのように思えてくる」


馬車幽霊 「別に脱いでかまいませんが」

馬車幽霊 「王子どのとしての人生は確実に最期を迎えるでしょうね」


姫王子 「それは困るな」

姫王子 「もう最期はむかえた気もするが」


馬車幽霊 「他には何かありませんか」


姫王子 「節操なくえびを茹でたい」

姫王子 「気を抜いたら、えびゆで師の力が暴れだしそうだ」

姫王子 「この剣のせいかもしれない」


馬車幽霊 「そこは判断に困りますが」


53 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2016/06/07(火) 01:18:16.54 ID:DDpbAQrSo

ガチャ 

キイイン


ロブスターの船 甲板


ゴオオオ

ゴオオオ


姫王子 「まるで砲弾の雨を受けたようだ」

姫王子 「腐臭もするし、幽霊船みたいだ」

姫王子 「想像以上にひどいな」


馬車幽霊 「……お嬢様はどのあたりに」


??? 「馬車幽霊さま!」


馬車幽霊 「おや、この声は」


??? 「い、いったいどうなっているのでしょうか」

ろうそく職人 「生きた心地がしないのですが!」


姫王子 (甲板室の上に、ろうそく職人がいる)

姫王子 (甲板に残った人は、皆そこに集まっているようだ)


馬車幽霊 「生きるためには必要なことです」


貝殻の勇者 「はやく、こちらへ!」


姫王子 (無事か)

姫王子 (他は……)


ヒュルルルル


ドラゴン 「…………」


ドバシャ


王子 「!!」


ザパン

グラグラグラ


ろうそく職人 「うひゃあ! 落ちるう!」


ク魔エビ娘 「おっと」


ガシ


ク魔エビ娘 「気を抜かないでくれよ。魔法使いが減るのは困るから」


姫王子 (何かが船の近くに落ちた)

姫王子 (ドラゴンのようだったが……)

54 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2016/06/07(火) 01:46:42.56 ID:DDpbAQrSo


馬車幽霊 「行きましょう」


姫王子 「ああ……」


ドシャ


姫王子 「!」

姫王子 (今度は甲板に)


ワイバーン 「……グルルル」


姫王子 「ドラゴン」


馬車幽霊 「腕に翼のある、いわゆるワイバーンですね」


姫王子 (船長室のトカゲじみた大きさのものとは違う)

姫王子 (なまなましくぎらつく牙と、殺しがいのありそうな分厚さ。これこそドラゴンだ)

姫王子 (傷だらけのようだ。翼も破れて……)


ワイバーン 「グルルル!」


ドシャドシャドシャ


姫王子 (四つん這いで駆けて襲いかかってきた!)

姫王子 「トカゲが往生際の悪い!」

姫王子 「ならば思い切り残酷に殺してやろう!」


ワイバーン 「ギャオオオオ゛……!」


貝殻の勇者 「……でやああああ!」


姫王子 「!」

姫王子 (勇者どのが一飛びで)


貝殻の勇者 「あああああ!」


ドシュ ズバン


ワイバーン 「!!」


ドシン


ワイバーン 「…………」


貝殻の勇者 「……ふう」


王子 (勢いにのせて、槍でドラゴンの頭を一突き)

王子 「……お見事」



55 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2016/06/07(火) 01:48:43.94 ID:DDpbAQrSo


名前表記ミスごめんなさい
王子→姫王子


56 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/07(火) 02:21:22.38 ID:K9AKel+m0
乙!
57 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/06/07(火) 20:31:44.90 ID:5b6nasos0
おつ
58 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/06/23(木) 01:03:11.17 ID:823kJsvmo


姫王子 (やはり、モンスターには容赦ないのだな)


貝殻の勇者 「大丈夫ですか」


姫王子 「おかげさまで」


貝殻の勇者 「では、はやく甲板室の上へ」

貝殻の勇者 「今、ここで安全な場所はそこだけです」


姫王子 「それでは戦えないんじゃないか?」


貝殻の勇者 「駆けつけていただいたのはありがたいですが」

貝殻の勇者 「もうそれどころではありません」


姫王子 「なんと……」


馬車幽霊 「結界はもちそうですか」


貝殻の勇者 「ええ。幸いにも、心強い魔術師のかたが何人か残ってくださっています」

貝殻の勇者 「ろうそく職人さんも頑張ってくれています」

貝殻の勇者 「……それで、王子どのは?」


姫王子 「ああ」

姫王子 「問題ない。死んでも元気だよ」


貝殻の勇者 「?」

貝殻の勇者 「……は、はあ、そうですか」


姫王子 (……ん?)


59 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/06/23(木) 02:15:32.53 ID:823kJsvmo


貝殻の勇者 「魔女の本体を倒すという言葉を最後に連絡が途絶え」

貝殻の勇者 「怒り狂った黒花どのとハーピィさんだけが甲板に姿を現し、魔女が健在で」

貝殻の勇者 「もしや王子どのに何かあったのかと思いましたが」


姫王子 (連絡はとれていたのか)

姫王子 (……魔女の本体とは)


馬車幽霊 「あるにはありましたが」

馬車幽霊 「ひとまず命はつなげたと言ったところです」


貝殻の勇者 「そうですか……」


姫王子 (おお、ほっとした表情。美しいな)

姫王子 (しかし、これはもしや……)


貝殻の勇者 「こういった場であの人の存在を感じられないのが」

貝殻の勇者 「これほど頼りないことだとは思ってもみませんでしたが」

貝殻の勇者 「弱気になってはいけませんね」


姫王子 (ああ……やっぱりか)


貝殻の勇者 「……と、ごめんなさい」

貝殻の勇者 「今はこのような状況ですが、きっとあなたの剣が必要になるときが来ます」

貝殻の勇者 「それまで耐えましょう」


姫王子 「あ、うん」

姫王子 (おれのことに気づいていないな)


60 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/06/23(木) 02:47:12.87 ID:823kJsvmo


タ タ タ タ

ヨジリ ヨジリ


姫王子 「よいしょ……と」

姫王子 (くそ、胸の脂肪が邪魔だ)


フヨヨヨヨ フヨヨヨヨ


魔ーレラ 「…………」


クル魔エビ娘 「…………」


ろうそく職人 「ムムムム……」


魔法使いたち 「…………」


フヨヨヨ フヨヨヨ


姫王子 (魔法使いか。祈るように杖を持っている……)


ク魔エビ娘 「……やあ、来たか」


馬車幽霊 「申し訳ありません。思わぬ事態で」


ク魔エビ娘 「良いさ」

ク魔エビ娘 「まだ余裕がある」

ク魔エビ娘 「思わぬ強力な助っ人も登場したし」


悪魔紳士 「ははは……」


淫魔幼女 「…………」


姫王子 (船長室にもいた二人だ)

姫王子 「ここに来ていたのか」


悪魔紳士 「はっはっ……柄にもないことばかりする日ですな」

悪魔紳士 「ねえ、可愛な黒の君?」


淫魔幼女 「……オレは女ではない」


ク魔エビ娘 「まあ、守る分にはだけどね」

ク魔エビ娘 「攻めのきっかけはいまだに掴めない」



61 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/06/23(木) 03:03:15.41 ID:823kJsvmo


傭兵A 「なあ、やっぱり船に戻った方が……」


傭兵B 「中に行こうが船を沈められたら終わりだ」


ガシャアン

ゴオオオ


姫王子 「!!」

姫王子 (空で大きな音が……)


ヒュルルル


姫王子 (何か落ちてくる……)


ヒュルルル……


姫王子 「……!!」


ドラゴン 「…………」


姫王子 (ドラゴンだ)

姫王子 「おい、このままじゃ……」


ロブスター 「心配ない」


ポム


姫王子 「マスターロブ……」



ヒュルルル

ドグシャ


ドラゴン 「…………」


姫王子 (落ちてきたドラゴンが、何もないところで止まった)

姫王子 (というか、かたいものに叩きつけられたみたいだ)

姫王子 「……結界か」


ロブスター 「そういうことだ」


姫王子 「……どうしておれの肩に手をまわしているんだ」


62 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/06/23(木) 03:21:58.97 ID:823kJsvmo


ロブスター 「女の肩に手をまわすのは、男の病気なのさ」


姫王子 「もとがおれだと知っているのでは?」


ロブスター 「はて」


貝殻の勇者 「落ちてきたドラゴンにとどめ……」

貝殻の勇者 「……は、必要なさそうですね」


ク魔エビ娘 「ああ。しかし、まいったね」

ク魔エビ娘 「手出しができないというのは」


姫王子 「いったいどうなっているんだ」

姫王子 「ここに来てからドラゴンが二匹も降ってきた」


馬車幽霊 「二人の仕業です」


姫王子 「二人……」


63 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/06/23(木) 04:41:24.30 ID:823kJsvmo


ク魔エビ娘 「ボクたちが必死に戦っているところに」

ク魔エビ娘 「例のひねくれた半分エルフと不思議な魔力を帯びた少女が飛び出してきて」

ク魔エビ娘 「魔女とドラゴンに襲いかかったのさ」


姫王子 (葉巻、ハーピィ……)


ク魔エビ娘 「そこからはもうメチャクチャだったよ」

ク魔エビ娘 「とくにエルフの方は、味方を巻き込むのも構わずに魔法をぶっぱなすんだ」

ク魔エビ娘 「いまボクたちを守るこの結界も、じつはあのエルフの魔法から逃れるためというのが大きい」


姫王子 「…………」

姫王子 「その二人は?」


ク魔エビ娘 「お空の上さ」


64 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/06/23(木) 04:59:36.52 ID:823kJsvmo


ロブスター 「いったい何者なんだ、あの二人は」

ロブスター 「ただのエルフと従者の少女にしては、少々はみ出しすぎている」


姫王子 (……おや、船長がなんだか格好よく見える)

姫王子 「そろそろ肩から手をどかしていただけないかな」

姫王子 「まあ、ただの二人じゃあ……」


ヒュルルル


姫王子 「む……」

姫王子 (また落ちてくる。だがドラゴンとは違うようだ)


ヒュルルル


鏡の魔女 「…………!」



姫王子 「あれは……鏡の」



ヒュルルル


姫王子 (鏡の魔女を追いかけるように、もうひとつ人影が……)


ヒュルルル


ハーピィ 「…………」



姫王子 「……ハーピィ」


65 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/23(木) 05:56:07.82 ID:E57abWv9o
珍しく格好良い場面だな
66 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/23(木) 11:47:45.03 ID:ryMgmevE0
67 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/23(木) 16:29:52.16 ID:UrTaVGPfO
2人の王子への愛が重い
いい意味で
68 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/23(木) 17:56:46.81 ID:mI2jTmuf0
乙!
69 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/06/23(木) 23:21:20.37 ID:823kJsvmo


鏡の魔女 「……小娘が……」



姫王子 (よく見ると、鏡の魔女はぼろぼろだ)

姫王子 (ハーピィのしわざなのか?)

姫王子 (いや、葉巻か……)



ハーピィ 「(#)##!%!”!」


ドギャ


鏡の魔女 「うぐっ!」



姫王子 「!!」

姫王子 (ハーピィが、勢いそのままに翼で魔女を殴った!)



ハーピィ 「”!!$#$!!」


バキョ バシ

バシ ドガ ドガ

ズガン バコン


鏡の魔女 「……! ………ッッ!」


ハーピィ 「…………!」



姫王子 (ハーピィが、魔女に猛烈な殴る蹴るの暴行を繰り返している!)

姫王子 「…………ふぅ」


フラ


ロブスター 「おっと」


ガシ


ロブスター 「どうした、急によろけて」


姫王子 「いや、一瞬気が遠く……」


70 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/06/23(木) 23:31:29.15 ID:823kJsvmo


ドゲシ ガシッ ガシッ

ゴギャ

ゴキン ボギャギャッ



貝殻の勇者 「ハーピィさん……」


ロブスター 「いやはや、主人の後ろに隠れた大人しい少女だと思っていたが」

ロブスター 「これほどまで苛烈に戦うとはな……」


姫王子 「違うんだ……本来は理性的で優しい、可憐な子なんだ」

姫王子 「ああっ、そんな蹴り方をしたら、公衆の面前で下着が……」


オロオロ


姫王子 「いったいどうしてしまったんだ、ハーピィ」


ロブスター 「ここに現れてからずっとそうだぞ」


姫王子 「なんだと」

姫王子 「………あ!」



ヒュルルル


ドラゴン 「グルアアア」



姫王子 (ドラゴンがハーピィ目掛けて空から突っ込んでくる)

姫王子 「いけない、ハーピィ……!」



71 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/06/23(木) 23:38:58.62 ID:823kJsvmo



ドラゴン 「グバアアア」


ギュイイイ


ハーピィ 「!$#$””$#$$!」


ベギャ ボギン


ドラゴン 「グゲッ!!」



姫王子 「!!!」


貝殻の勇者 「平手打ちで一撃……!」


ク魔エビ娘 「致命傷だ。あれは首の骨がイッたね」


馬車幽霊 「難なくあしらって、鏡の魔女への殴る蹴るを再開しましたね」


姫王子 「…………ふぅ」


フラ


ロブスター 「おっと。気絶癖でもついたか、我が弟子よ」


72 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/06/24(金) 00:10:30.13 ID:MZ4hMNSYo


鏡の魔女 「……ええい、鬱陶しい小娘が」


キイイ バシュン

スカッ


ハーピィ 「…………」


鏡の魔女 「どういうわけだ。なぜわらわの魔法がかすりもせぬ……」


メキョ バキ

ヌチャ グチャ ベヂュッ



野生の女 「くっそー、女の子が戦ってるってのに、アタシは見守ることしかできないのか」


ニワトコ娘 「はあ、いま目の前に物語が……幸せ……」


貝殻の勇者 「ハーピィさん……。ああ、王子どのがいてくれたら……」


馬車幽霊 「……王子どの」


姫王子 「何だね」


貝殻の勇者 「なんとっ」


馬車幽霊 「ハーピィさまは暴走状態にあると思われます」


姫王子 「あれで冷静だったらおれは死ぬところだ」


馬車幽霊 「ハーピィさまと王子さまの間に、何かしら魔法的な絆、契約があるとして」

馬車幽霊 「大抵の場合、どちらかの死によって無力化されることが多いのですが」

馬車幽霊 「今回、鏡やゴーレム術など、王子どのの身に降りかかった特殊な魔法が」

馬車幽霊 「その絆に干渉し……」


姫王子 「ああなった……と」


馬車幽霊 「確信はありませんが」


73 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/06/24(金) 00:29:05.82 ID:MZ4hMNSYo


姫王子 (あの商人なら、何か知っているのだろうか)


淫魔幼女 「…………」


馬車幽霊 「王子どの」


姫王子 「うん」


馬車幽霊 「誰かが彼女を元に戻せるとしたら、あなただと思われます」


姫王子 「そうか」

姫王子 「……しかし、そうだろうか」

姫王子 「このような姿になりはてた今のおれは、はたしてあの子を止められるのだろうか」


ポヨン ムチッ


馬車幽霊 「大丈夫です」

馬車幽霊 「そんなに変わっていません」


姫王子 「そうだろうか」


74 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/06/24(金) 00:50:31.58 ID:MZ4hMNSYo


貝殻の勇者 「あの……その女性が王子どのとは、いったい……」


姫王子 「……まあ、やってみるか。ハーピィを元に戻せるなら……」


ロブスター 「待て、美しき弟子よ」


姫王子 「マスターロブ」

姫王子 「……なんの弟子だって?」


ロブスター 「あの子が状態異常にあるとして」

ロブスター 「ここで元に戻すのはいかがなものかな」


姫王子 「……どういうことだ」


ロブスター 「彼女のおかげで、竜の唸り声が少なくなったのも事実だ」

ロブスター 「元に戻すのは、もう少しだけ後でも構わないのではないか」


姫王子 「ありえないな」


ロブスター 「船には多くの人々が乗っている」


姫王子 「もしもハーピィが死ぬことで世界中の人々が救われるとして」

姫王子 「おれは世界中の人々を一匹残さず殺し尽くすだろう」


ロブスター 「……なるほど」

ロブスター 「勇者には向かんな」

ロブスター 「だが、それでこそ私の弟子だ」


75 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/06/24(金) 00:57:30.85 ID:MZ4hMNSYo


ロブスター 「しかし、やはりお前は彼女を元に戻すべきではない」

ロブスター 「いまや、彼女は最も貴重な兵士の一人だ」


姫王子 「彼女は兵士ではない」

姫王子 「女神だ」



淫魔幼女 「……ハルピュイアだ」


悪魔紳士 「?」



姫王子 「貴重な兵士ならいるじゃないか」

姫王子 「結界の中で牙と爪を持て余している者たちが」


ロブスター 「彼女を元に戻したところで、彼らは結界から出ることはできない」


姫王子 「…………」


ロブスター 「……来るぞ」



キイイイ


76 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/06/24(金) 01:04:49.36 ID:MZ4hMNSYo


キイイイ パキイイイ

ゴオオオ


姫王子 「これは……風か」


ギシ ギシ


姫王子 (船が悲鳴をあげるように軋んでいる……)



ハーピィ 「…………! っっ!」


ドガ バキ ガシ


鏡の魔女 「むぅ……っ。おのれ、調子に……」

鏡の魔女 「…………!」


ゴオオオ オオオ

グズ グズズズ


鏡の魔女 「いかん、これは……」



グズズズ ズズズズズ


王子 「なんだこれは……」

王子 「ひどいにおい……空気が腐っていくような……」


ク魔エビ娘 「みんな、絶対に結界から出るな!」

ク魔エビ娘 「今度はさらに強い魔法だ。魂も残さず腐り果てるぞ!」


77 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/06/24(金) 01:14:51.41 ID:MZ4hMNSYo


ゴオオオ ギシ ギシ ギシ

ゴオオオオ


傭兵E 「うっぷ……血の海に叩き落とされたような気分だ」


シュウウ ボロ ボロロ


傭兵F 「う、うわっ、おれの剣が崩れる……」


クル魔エビ娘 「結界が破られてる……!?」


魔ーレラ 「うろたえるでない。結界を厚くする。魔力を少し強めよ」


淫魔幼女 「…………」


王子 「武器破壊の魔法……」


狩人 「……見て! 降ってくる!」



ヒュルルルル

バラ バラ バラ


竜の骨たち 「…………」


腐ったドラゴンたち 「…………」


ボトトトト

ボチャ ボチャ ボチャ

ドポン ボチャ



盗賊 「腐った竜の肉と骨だ。次々に降ってくらあ……」


僧侶 「おお、神様。なんという光景か……」


姫王子 「……葉巻」


78 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/06/24(金) 01:29:55.58 ID:MZ4hMNSYo


ロブスター 「このおぞましい風が荒れ狂う中で、彼女だけが戦えている」


姫王子 「……ハーピィ」



ハーピィ 「”!$#$”!$#$”!$#$……!!」


バキ ドガ ドガ ドガ


鏡の魔女 「いかん……障壁が……」


パキ ドガ パキキ

バリィン


鏡の魔女 「……ぬぉ」


ハーピィ 「&<”!!!!〜〜!!」


ドゴン

グシャ


鏡の魔女 「ッッッ……ッ!!」



姫王子 (ハーピィの翼が、魔女の腹をぶち抜いた……!)


79 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/06/24(金) 01:41:34.48 ID:MZ4hMNSYo


姫王子 「は、ハーピィ……」

姫王子 「やってしまったのか……?」



ハーピィ 「…………」


鏡の魔女 「………お」

鏡の魔女 「おおおおおおおおお」


ガク ガク ガク ガク


鏡の魔女 「うあああああああ……」


ピシ

パキン ビシ ビシ パキキキ


鏡の魔女 「あ…………」


バリィン



姫王子 「魔女が、割れた……?」



80 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/06/24(金) 01:50:31.61 ID:MZ4hMNSYo



ろうそく職人 「やったあ!」


クル魔エビ娘 「ま、まだですようっ。集中を切らさないで……」


姫王子 「断末魔とともに、魔女が粉々に砕けた……」

姫王子 「これはいったい……」


ヒュルルル


姫王子 「……また空から」



ヒュルルルル

バサッ


仮面の竜 「…………」



姫王子 「ドラゴン。生きているやつか」

姫王子 「その首の上に……」



バサ バサ


鏡の魔女 「…………」

鏡の魔女 「おのれ、小虫どもが……!」



姫王子 「鏡の魔女……?」


81 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/24(金) 01:55:28.10 ID:LV79sQrq0
ちょっとワイフ達荒ぶり過ぎじゃないですかね…
頼もしすぎるだろ
82 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/06/24(金) 02:26:36.36 ID:MZ4hMNSYo


ハーピィ 「…………」


鏡の魔女 「真実の鏡のかけらを奪い、可愛いしもべたちの命を奪い」

鏡の魔女 「さらに虚像とはいえ、わらわの姿を砕くとは」

鏡の魔女 「つくづく、この海はわらわを愚弄してくれる……!」



姫王子 「鏡の魔女が砕けて、すぐに空から鏡の魔女が現れた」

姫王子 「竜に乗って」


馬車幽霊 「あれこそが、船長室に現れ、あなたの命を奪った魔女です」

馬車幽霊 「ドラゴンをともなって圧倒的に現れた虚像の裏で」

馬車幽霊 「けちなコソ泥のように動いていた」


姫王子 「なるほど……」

姫王子 (なんというか、恐るべき魔女だな)


馬車幽霊 「伴ったしもべをほぼ失い、半身を失ったとは言え」

馬車幽霊 「あれは強大な魔女であることに変わりありません」

馬車幽霊 「あれの魔法がハーピィさまをとらえることはありませんでしたが」

馬車幽霊 「ハーピィさまの翼も、虚像は砕けてもあれには届きませんでした」

馬車幽霊 「いずれ決着はつくのでしょうが、それではその前に船が沈むでしょう」


姫王子 「ふむ」

姫王子 「……困ったこの風を吹かす奴は、今どこにいるんだい」


馬車幽霊 「いません」


姫王子 「……はあ?」


馬車幽霊 「我を忘れているのです」

馬車幽霊 「お嬢様は今、渦巻く嵐のように、ただの猛威に成り果てています」


83 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/06/24(金) 02:58:36.02 ID:MZ4hMNSYo


姫王子 「葉巻も、どうかしちまったのか」


馬車幽霊 「はい」

馬車幽霊 「抱えきれないほどの大きな虚無感と怒りに……」


ゴオオオオ

ズズズズズ


姫王子 「……!?」

姫王子 (空気が重たく潰れていくような……)


悪魔紳士 「むうっ……ははは、これはなんと禍々しい」

悪魔紳士 「少々、胸焼けがいたしますな」


淫魔幼女 「……ふむ」


魔ーレラ 「また膨れたか。エルフとは思えぬ穢らわしさよ……」

魔ーレラ 「降りてくるぞ。みな、気を抜くでないぞ」


キイイイ


ロブスター 「やれやれ。とんだ船旅になったな」


姫王子 (……降りてくる)


ズズズズズ

ズズズズズ


??? 「…………」

血の首の化物 「…………」


ズ ズ ズ ズ


姫王子 「…………」

姫王子 (血が滴る、蛇、いや、ドラゴンの首が絡まりあったような塊……?)

姫王子 (……の、上に、どす黒い少女が生えている)


血の首の化物 「………ぐ」

血の首の化物 「がら゛る゛ぁあああ゛あ゛!!」


ゴオオオ

ズズズズ

ギシ ギシ ギシ


84 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/06/24(金) 03:19:35.59 ID:MZ4hMNSYo


ズシ

グズズズ ブシュウ


隻眼射手 「ううっ、義眼がうずく……」


格闘家 「うおわああ!?」

格闘家 「お、おれの髪が抜け……!」


槍傭兵 「あれ、何か男が魅力的に見えてきた……」


盾兵 「くそっ、耐魔の鎧が黒ずんでいく。腐っていくみたいだ……!」


ゴオオオ

ブス グシュウ


血の首の化物 「る゛ら゛ああああああ゛……!」


ゴオオオオ

グズズズ


姫王子 「……葉巻なのか?」


馬車幽霊 「そう見えるのならば、ええ」


姫王子 「何をやっているんだ、馬鹿……」


ゴオオオオ

ズズズズズ


魔ーレラ 「これほどの……これはまるで……」

魔ーレラ 「ク魔よ、蒸気杖をもて」


クル魔エビ娘 「! 魔ーレラ婆さま……!」


ク魔エビ娘 「良いのかい」

ク魔エビ娘 「忌まわしい力に頼っても?」


魔ーレラ 「なりふりかまっていられんよ」

魔ーレラ 「相手は、魔の領域にさえあってはならん力なのだ」


ク魔エビ娘 「へえ……」


淫魔幼女 「…………」


85 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/24(金) 03:33:39.02 ID:LV79sQrq0
全然関係無かったら申し訳ないんだけど、エルフ「私の前に道はない 私の後ろに道は出来る」の作者だったりしないよね?
86 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/06/24(金) 03:47:15.29 ID:MZ4hMNSYo


淫魔幼女 「…………」


猫耳の札


淫魔幼女 「…………」


ヒラ キイイイ


魔ーレラ 「……む?」


クル魔エビ娘 「結界が安定した……」


淫魔幼女 「……結界としては効果が無いが、結界を強める札だ」

淫魔幼女 「式を問わずほとんどの結界に使えるということだが」

淫魔幼女 「どうやら、この結界にも効くようだ」


悪魔紳士 「ほう、これはこれは」


ろうそく職人 「やった! 楽ができる!」


半熟魔法使い 「はあ、助かったあ……」


魔法使いA 「こらっ、集中を切らすな、そこ!」


クル魔エビ娘 「呪符使い……珍しい」

クル魔エビ娘 「それにこのような呪符は、見たことありません……」


淫魔幼女 「がっかりさせるようで悪いが、おれは旅の商人だ」

淫魔幼女 「旅をしていれば、そのようなものも見つかる」

淫魔幼女 「珍しいものだから、できれば使いたくはなかったが」


魔ーレラ 「ありがたいことに変わりない」

魔ーレラ 「これで何とかもつじゃろ」


淫魔幼女 「…………」


悪魔紳士 「いやはや」

悪魔紳士 「これは、先を越されてしまいましたな」

悪魔紳士 「黒いお嬢さん」


ボソ


淫魔幼女 「……オレは男だ」


87 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2016/06/24(金) 03:58:28.95 ID:MZ4hMNSYo
>>85
ごめんなさい、違いますごめんなさい
私がそのスレタイで立てたら
旅のエルフが行く先々でいろんな物を排泄もとい撒き散らかしていくクソみたいな話になるから違いますごめんなさい
88 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/06/24(金) 04:09:53.34 ID:MZ4hMNSYo



ドラゴンA 「グオォオン……!」


腐ったドラゴン 「…………」


ボト ボト ボト


鏡の魔女 「御所車、松葉崩し……!」

鏡の魔女 「おのれ、忌々しき湖のエルフの残り香が……」


ハーピィ 「#”%$!」


鏡の魔女 「……!」

鏡の魔女 「ええい、邪魔な。いくらやろうとも貴様の腕は届きはせぬ……!」


血の首の化物 「あああああ゛!!」


ゴオオオ グズズズズ


姫王子 「……葉巻」


89 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/06/24(金) 04:35:29.63 ID:MZ4hMNSYo


血の首の化物 「死、ね゛ええええ゛!!」


ゴオオオ



馬車幽霊 「お嬢様、なんと愚弱な」

馬車幽霊 「手当たりしだいに呪いと血を、おのれの命すら貪って」

馬車幽霊 「ご自分の覚悟すらお忘れになられたか……」


姫王子 「……出るぞ」


チャキ


馬車幽霊 「お待ちください」

馬車幽霊 「いかにあなたといえど、そのまま結界の外に出たら無駄死にです」


姫王子 「だとしてもだ」


馬車幽霊 「落ち着いてください」

馬車幽霊 「あなたが本当に死んでしまっては、お嬢さまは戻れなくなるでしょう」


姫王子 「落ち着いてなど……」

姫王子 「戻れるの?」


馬車幽霊 「戻さねばなりません」

馬車幽霊 「お嬢さまなくして、魔王の驚異は退けられないのです」


姫王子 (それもそうか。勇者でもないくせに)

姫王子 「まあ、いまやあいつが魔王みたいな見た目だが」

姫王子 「では、どうやって戻す」

姫王子 「あのこんがらがった首を切り落とすとか?」


馬車幽霊 「力をそぎ落とすのは良いでしょう」

馬車幽霊 「一大国の総力をもって休みなく戦えば、可能かもしれません」


姫王子 「なんだと……」


馬車幽霊 「王子どの、だからあなたなのです」

馬車幽霊 「ハーピィさまを戻せるのがあなただけであるように」

馬車幽霊 「お嬢さまを元に戻せるのは、必ずやあなただけなのです」


90 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/06/24(金) 04:56:21.83 ID:MZ4hMNSYo


姫王子 「おれだけ……まあ、あいつ、おれ以外に友だちいなさそうだものな……」


馬車幽霊 「このために、魔力を温存してきました」

馬車幽霊 「お嬢さまの代わりとしては不足でしょうが、私が援護します」

馬車幽霊 「お嬢さまと向き合い、正気に戻してください」


姫王子 「……あれに近づくのか」

姫王子 「地獄の大釜に顔つっこむようなもんだな」

姫王子 「女三人の修羅場など……」


馬車幽霊 「この風さえやめば、甲板室や船内の戦力を活かせます」

馬車幽霊 「敵の数が減った今なら、押し切ることができるでしょう」


姫王子 「ふむ」

姫王子 「しかし、どうだろうか」

姫王子 「このような姿になりはてた今のおれの言葉は、はたして葉巻に届くのだろうか」


プリン ムチッ


馬車幽霊 「大丈夫です」

馬車幽霊 「そんなに変わっていません」


姫王子 「どうだろうか」


91 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/06/24(金) 05:13:09.04 ID:MZ4hMNSYo


チャキ カチャ


姫王子 「館で手に入れた魔法の剣と、ここで手に入れた海老骨の剣」

姫王子 「双剣の心得はあるにはあるが、自然の声を聞きながらは初めてかな」


貝殻の勇者 「ええと、王子どの?」


姫王子 「ああ」

姫王子 「詳しい説明はあとでするよ、勇者どの」


貝殻の勇者 「そっ、それは良いのですが」

貝殻の勇者 「申し訳ありません、このようなときに役に立てず」

貝殻の勇者 「私やろうそく職人さんの言葉では駄目でした」

貝殻の勇者 「どうか、黒花どのをよろしくお願いします」


姫王子 「結界から飛び出し、おれを助けてくれたことは忘れない」

姫王子 「まかせておいてくれ」


馬車幽霊 「王子どのを魔法の壁で囲みます」

馬車幽霊 「ある程度自由に動いて結構ですが、あまり無理はなさらぬよう」


姫王子 「うん」

姫王子 「では、行くぞ」


92 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/06/24(金) 07:30:57.12 ID:MZ4hMNSYo


…………


ゴオオオオ

ギシ ギシ ギシ



姫王子 (暗い、重い)

姫王子 (馬車幽霊の壁がなければ、押しつぶされそうだ)

姫王子 「……ひどいにおいだ」



ハーピィ 「…………!」


鏡の魔女 「…………!」


バサ カキィン

ヒュン ヒュン



姫王子 (そんな中でも、ハーピィは平気で戦っている)

姫王子 (空を自在に飛び回って)


ゴオオオ


姫王子 (……ハーピィが魔女とドラゴンを抑えている今のうちに動きたいが、さて)

姫王子 (葉巻を元に戻すといっても、どうするか)

姫王子 (説得するとして、おれの言葉をすんなり受け入れるとも思えん)

姫王子 (というか、言葉が通じる気もしない)


血の首の化物 「うがああああ゛あ゛」


ゴオオオオ ヒュゴオオオ


姫王子 「届かないところに浮いているし」

姫王子 「……帆桁を利用してみるか?」


馬車幽霊 「壁で足場をつくります」


姫王子 「ありがたい」


93 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/06/24(金) 07:47:32.09 ID:MZ4hMNSYo


キイン シュタ

キイン シュタ


姫王子 「よっ……ほっ……」

姫王子 「はは、見えない階段か」

姫王子 「下を見ると目眩がしそうだ」


馬車幽霊 「踏み外しても大丈夫ですよ」

馬車幽霊 「ちゃんとそこに足場を足しますので」


姫王子 「頼もしいことだ」


シュタ シュタ


姫王子 「さて、そろそろ黒花さまとご対面かな」


グニョル グニョル


姫王子 (葉巻の下半身……ドラゴンの首たちが生々しく蠢いている)

姫王子 (……やはり血だ。血のにおいだ)

姫王子 (これは、血によって他者の体を渡り歩く葉巻の力が作用しているのだろうな)


血の生首A 「…………」


ギョロ


姫王子 「!!」

姫王子 「おい、このドラゴンの首生きて……」


血の生首B 「…………」


血の生首C 「…………」


血の生首たち 「…………」


ギョロ ギョロ ギョロ……


姫王子 「おいおいおいおい……」


94 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/06/24(金) 08:11:34.11 ID:MZ4hMNSYo


姫王子 「どうする、斬るか?」

姫王子 「斬り殺して良いのか? 喜んで斬るが」


馬車幽霊 「いえ、その必要はなさそうです」


血の生首C 「……ォォ」


血の生首D 「……グ゙ュルル」


グニョル グニョル


姫王子 「……苦しそうだ」


馬車幽霊 「お嬢様の呪いによって魂ごと縛り付けられているのでしょう」

馬車幽霊 「それぞれの魂の記憶を宿したままひとつに圧縮され、そして、魔法の養分にされている」


姫王子 「養分……おぞましいな」

姫王子 「いよいよ化物じゃないか」

姫王子 「……む」


グニュル ボコ ボコ


姫王子 (生首たちの表面で、血が波打って……)


ズルン


血の首の化物 「…………」


姫王子 「血まみれの少女が生えた」

姫王子 「……その崩れ方。自分まで腐らせているのか」

姫王子 「なんという有様だ、葉巻」


血の首の化物 「…………」

血の首の化物 「カハアアア……!」


95 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/06/24(金) 08:20:17.49 ID:MZ4hMNSYo


キイイイイ


姫王子 「………!」

姫王子 (魔法! いかん、距離を……)


血の首の化物 「ル゛ラ゛ァアアアア゛!!」


ゴオオオ


姫王子 「………!」


バリン バリン バリン

ガシャン


姫王子 「……魔法の壁の重ねがけか」


馬車幽霊 「すぐに修復します」

馬車幽霊 「はやく説得を」


血の首の化物 「死、ね゛ッ! ぜんぶ……死゛……!」


姫王子 「これ相手にか」

姫王子 「無茶を言う」


96 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/24(金) 08:30:48.28 ID:LjvXn29W0
久しぶりの生中継に立ち会えた。
ドキがムネムネする!
97 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/06/24(金) 08:39:57.43 ID:MZ4hMNSYo


姫王子 「おい、葉巻!」

姫王子 「聞こえるか、葉巻エルフ、黒花エルフ!」


血の首の化物 「う゛る゛さい゛、雌の肉豚゛!」


姫王子 「ばっさりか」


ブンッ


姫王子 (殴りかかってきた)


ガシャン バリン


馬車幽霊 「この程度の攻撃にも魔力を込めて……」

馬車幽霊 「このままでは、本当にいけません」


姫王子 「葉巻、違う。聞け」

姫王子 「おれだ、おれおれ」


馬車幽霊 「詐欺師か何かですか」


血の首の化物 「ら゛あぁああああ゛!!!」


ブン ブオン ブン

ガシャン バリン ガシャン


姫王子 「くそっ。こんな哀れなものが、あの葉巻なのか」


ガシャン バリン バキン


姫王子 「おい、聞け、葉巻! 正気に戻れ!」


血の首の化物 「死ね! 死ね! 死ね! 死ね!」

血の首の化物 「こんな残りカスみ゛たいなゴミだめ、みん゛な……!」


ガシャン バリン バリン


姫王子 「おれのことも目に入らんか! おれだ!」

姫王子 「王子だ!」


血の首の化物 「………!!」


ピタ


98 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/24(金) 14:57:32.84 ID:s0KKQoyR0
乙!
99 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/24(金) 16:14:36.21 ID:6Dwm9HwFO
100 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/24(金) 18:16:10.96 ID:O9c7fGSiO
やっぱ面白いわ
101 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/24(金) 20:36:11.35 ID:lp5M258+O
おっぱいのおっきい王子を、はたして王子として認識してくれるのか…
102 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/06/29(水) 01:04:05.43 ID:Uyzy/uj5o


血の首の化物 「…………」


姫王子 (魔法の壁を殴っていた葉巻の動きが止まった……)

姫王子 「……葉巻」


血の首の化物 「……王子」

血の首の化物 「…………?」


姫王子 「ああ、そうだ……」


馬車幽霊 「…………」


血の首の化物 「…………」


ジロ ジロ ジロ


姫王子 (いろいろな角度からおれを見ている)


血の首の化物 「……王子の服を着ている」


姫王子 「ああ。けっこう傷んじまった」

姫王子 「ほ、ほら、見ろ、お前にもらった首巻きは綺麗なままだぞ」


血の首の化物 「……首巻き」

血の首の化物 「王子に渡した」

血の首の化物 「この世で、王子しか持っていないものだ」


姫王子 「ああ、そうだ」

姫王子 「なんだったらお前から貰った仮面もつけてやる。割れちまったが」


血の首の化物 「……王子」

血の首の化物 「王子」


姫王子 「ああ、そうだ。おれだ」


血の首の化物 「……胸がでかい」

血の首の化物 「だれだきさま」


姫王子・馬車幽霊 「おぅ……」


103 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/06/29(水) 01:18:09.86 ID:Uyzy/uj5o


血の首の化物 「王子の服を盗んだな、このコソ泥」

血の首の化物 「大事な首巻きまでつけてノコノコ現れるなんて……」

血の首の化物 「殺してやる!!」


ガツン

ガシャン バリィン


馬車幽霊 「……くっ。拳に付与した魔法が強くなっている!」

馬車幽霊 「魔法の壁を厚くしなくては……」


姫王子 「くそ、何か巻いていれば良かったか……!」


血の首の化物 「うがああああ゛!」


ガシャン ガシャン


馬車幽霊 「王子どの、説得を続けてください!」


姫王子 「……待て、葉巻! 聞け!」

姫王子 「おれの胸はもともとこんな感じだ!」


血の首の化物 「嘘だ!」


姫王子 「ああ」


血の首の化物 「うがあああ!」


ガシャン ガシャン


姫王子 (しまった。嘘をつかない暮らしに、思いのほか馴染んでしまっていた)

姫王子 「……くそ。ほかに打つ手はないのか……!」



104 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/06/29(水) 01:27:59.27 ID:Uyzy/uj5o


ガシャン ガシャン


姫王子 (何か……葉巻を元に戻せる何か……)


キイイイ

ガシャン ガシャン バリン


馬車幽霊 「お嬢様……! あなたの使命をお忘れか」

馬車幽霊 「私に語ってくれた覚悟は、この程度で……!」


血の首の化物 「うるさい!! そんなもの、もうとっくに意味なんかない!!」


馬車幽霊 「……っ」

馬車幽霊 「ええ、そうでしょうとも……」


ガシャン ガシャン


姫王子 (何か)

姫王子 (葉巻とおれしか知らないような……)

姫王子 (…………)

姫王子 (………………あったぞ)


105 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/06/29(水) 01:39:05.25 ID:Uyzy/uj5o


姫王子 (しかしあれは、おれへの精神的なダメージが強い)


血の首の化物 「死ね! 死ね! みんな死ねばいい!」

血の首の化物 「このくそみたいな身体の魔力ぜんぶつかって、みんな殺してやる!」

血の首の化物 「世界中の魔力が枯れるまでみんな殺してやる!」


ガシャン ガシャン バリンバリンバリンバリン


血の首の化物 「その前にお前だ、コソ泥の豚ぁ!!」


姫王子 (迷っている場合じゃないか)

姫王子 「……おお、なんということだ。まるで、月が美しい錫色の輝きそのままに」

姫王子 「人のかたちになって迷いおりてきたようだ」


馬車幽霊 「王子どの?」


血の首の化物 「…………ッ」


ピタ


106 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/06/29(水) 02:22:32.36 ID:Uyzy/uj5o


ゴオオオ オオオオオ


血の首の化物 「…………」


馬車幽霊 「お嬢様の動きが止まった……?」


姫王子 「なんということだ。誰に促されるでなく、おれの心の全ては」

姫王子 「あらかじめ祈り方を知っているように膝を折り、指を組み、目をつむってしまった」

姫王子 「これだ。そうだ、これこそが、まことの信仰であり、よろこびなのだろう」


血の生首たち 「…………」


馬車幽霊 「血の竜たちも、うっとりと目を閉じている」

馬車幽霊 「これはいったい……」


姫王子 「この歓喜の、なんと静かで厳かなことか」

姫王子 「あした無実の罪で殺されることになっても、おれは少しも不幸ではない」

姫王子 「今夜、この輝きを心に刻めたのだから……」


血の首の化物 「…………」


107 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/06/29(水) 02:47:26.22 ID:Uyzy/uj5o


ヒュオオオオ ギシ キシ 



血の首の化物 「…………」

血の首の化物 「……ありがとう」


馬車幽霊 「……!」

馬車幽霊 「お嬢様が、王子どのの気持ち悪い言葉にこたえた……」


血の首の化物 「今日みたいな夜に、きらびやかな言葉を贈ってくれる人は」

血の首の化物 「何人かいたけれど、あなたの言葉はその中でも一番多くて、輝いています」

血の首の化物 「つまり、一番愚かということです」


姫王子 「そうか、しかたないさ」

姫王子 「月をひとときでも長く夜空にかえさないためだ。どんな愚か者にだってなる」


血の首の化物 「本当に口のへらない人ね」

血の首の化物 「ワタシの正体も知らないくせに」

血の首の化物 「ワタシが見た目どおりの、ただの若いエルフだとでも?」


姫王子 「エルフだろうが、化物だろうが、何であろうが構わない」

姫王子 「おれは君が好きなのさ」


108 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/06/29(水) 02:58:47.12 ID:Uyzy/uj5o


血の首の化物 「もうやめてください。悪酔いしてしまいそう」


姫王子 「それは好都合」

姫王子 「だが、大きな声じゃ言えないが、この酒場には良い酔い方のできる酒はない」

姫王子 「……………」


血の首の化物 「…………」


姫王子 「…………」


馬車幽霊 「…………?」


姫王子 「……馬車幽霊どの」


ボソ


姫王子 「声がでかいぞ、王子さま」

姫王子 「と言ってくれ」


馬車幽霊 「はあ……?」


姫王子 「はやく」


馬車幽霊 「…………」

馬車幽霊 「声がでかいぞ、王子さま」


姫王子 「おっと、失礼。ここが狭いことを忘れていた」


109 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/06/29(水) 03:09:15.60 ID:Uyzy/uj5o


血の首の化物 「………ほんと……本当に」

血の首の化物 「よく、まわる口……」

血の首の化物 「何だったら、あなたの口を止められるんでしょう」


姫王子 「意外と多いと思うけどね」

姫王子 「酒とか、うまい料理とか……」


姫王子・血の首の化物 「唇とか」



110 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/06/29(水) 03:18:07.12 ID:Uyzy/uj5o


ヒュオオオ オオオ


ハーピィ 「……! ……!!」


バシン ビシッ


鏡の魔女 「ええいっ、もう良い」

鏡の魔女 「貴様は後回しに……」

鏡の魔女 「……む?」


ヒュオオ オオ

キシ ギ キィ……



魔ーレラ 「…………むぅ?」


ク魔エビ娘 「船の軋みが弱くなっていく……」


ロブスター 「風がやむ、か」


貝殻の勇者 「王子どの、うまくいっているのでしょうか」


ろうそく職人 「…………ほう」

ろうそく職人 「ほっほう……!」


貝殻の勇者 「……ろうそく職人さん?」



ヒュオオ オオオ



111 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/06/29(水) 03:33:24.33 ID:Uyzy/uj5o


キシ ギシ キイィ


姫王子 「………う」

姫王子 「ガフウッッ!!」


ビチャ ボタタタ


馬車幽霊 「王子どの!」


姫王子 「……だ、だいじょうぶだ」


馬車幽霊 「しかし、口から血が……!」


姫王子 「大丈夫。胃のあたりの心の傷がひらいて、闇が漏れ出しただけだ」


馬車幽霊 「ただならぬ印象を受けますが」


血の首の化物 「…………」

血の首の化物 「……王子」


キイイイ


馬車幽霊 「………!」

馬車幽霊 「……いや、これは」


キュロリン ピロン


姫王子 「癒しの魔法だ」

姫王子 「……葉巻」


血の首の化物 「……ケケケ」

血の首の化物 「何だよ、髪なんか伸ばして」

血の首の化物 「そんな醜い脂肪の塊までぶら下げやがって」


姫王子 「我ながら、張りはある方だと思うんだけどな」

姫王子 「やっと正気に戻ったか、馬鹿やろうめ」


112 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/06/29(水) 03:50:59.82 ID:Uyzy/uj5o


馬車幽霊 「先ほどの茶番は、何かの呪文だったのでしょうか」


姫王子 「茶番……」

姫王子 「なに、おれと葉巻の友情にも、それなりに歴史があるということだよ」


血の首の化物 「今は懐かしき、出会いの思い出というやつさ」


馬車幽霊 「なるほど……」


姫王子 「くれぐれも思い出させないでくれよ。状況が状況だし、そして傷口が開く」


馬車幽霊 「察しましょう」


血の首の化物 「ケケケ……」


血の生首 「……グルルル」


シュウウウ ボト

ボロロ


姫王子 「葉巻の下半身で生々しくうごめいていた竜の生首たちが、崩れていく……」


血の首の化物 「気持ち悪い言い方するな」


ボロ ボトト


姫王子 「おい、お前も崩れているじゃないか」



113 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/06/29(水) 04:13:52.23 ID:Uyzy/uj5o


血の首の化物 「そうらしいね。ひとまず死ぬしか無いようだ」


姫王子 「おいおい」


血の首の化物 「どのみち崩れかけていたんだ」

血の首の化物 「新しいのにかえた方が良いだろ?」


馬車幽霊 「いったい、私はいつになったら禁断の秘術を秘せるのでしょうか」


血の首の化物 「その時が来たらさ」


姫王子 (体の乗り換えはできるということか)

姫王子 「人騒がせなやつめ。あっちの魔女はまだぴんぴんしているぞ」


血の首の化物 「なあに、麗しの王子さまが頑張ってくれるんだろ」

血の首の化物 「うるさいトカゲどもはほとんど殺しておいてやったから、うまくやりな」


姫王子 「さすが、エルフの長老さまは深い泉のような知恵者でらっしゃる」


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