姫王子「黒翼のハルピュイア娘……」青花エルフ「王子、姫になる」

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356 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/23(水) 02:43:02.15 ID:VobCF2Cy0
357 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/23(土) 06:28:10.60 ID:LWOlzQbh0
待ち
358 : ◆tHMiOqNMgmiR [sage]:2018/06/26(火) 10:33:09.27 ID:sxNrRDGzo


タタタ


??? 「おお、これはこれは」

魔法使い2 「蒼き丸三角の耳さまではありませんか!」


ろうそく職人 「ゥオッホン。いかにも」



姫王子 (また見るからに魔法使いらしき人物がやってきた)

姫王子 「きせきのみみ……?」


貝殻の勇者 「甲板での戦い以降、ろうそく職人さんはこの船の魔法使いたちの尊敬を集めています」

貝殻の勇者 「通り名もたくさんいただいたようです」


姫王子 「へえ、大出世じゃないか」

姫王子 (葉巻の弟子になってあまり経っていないのに、他の魔法使いから尊敬されるほどとは)

姫王子 (すごい才能があったのだろうか。それとも、葉巻の指導の賜物なのだろうか)

姫王子 「お供が高名な魔法使いで、勇者さまも誇らしいかな?」


貝殻の勇者 「私は友の名声など気にしませんが」

貝殻の勇者 「微笑ましいというか、気持ち良いものですね」


姫王子 (妹を見守るような心境なのだろうか)

姫王子 (……王子姫、どうしているだろうな)

姫王子 (そろそろ暑くなる頃だし、また視察の途中で農家の土作りに参加して、従者を困らせているのだろうか)





359 : ◆tHMiOqNMgmiR [sage]:2018/06/26(火) 10:52:05.58 ID:sxNrRDGzo


タタタ


??? 「ややややや、これはこれは!」

太魔法使い 「隠れえぬ尻尾さまではありませんか!」


ろうそく職人 「ゥエッヘン。その通り」



姫王子 「おや、また」

姫王子 「今度はきせきのしっぽか」



タタタ


魔法使いC 「おやおやおや」


魔法使いD 「これはこれはこれは」


タタタタ


ろうそく職人 「ゥオッホン、エッヘン、アッハン」



姫王子 「どんどん集まってくるな」


瓶詰め妖精 「果物にたかる虫みたいね」


ハーピィ 「…………」


360 : ◆tHMiOqNMgmiR [sage]:2018/06/26(火) 11:30:53.38 ID:sxNrRDGzo


ワラワラ 


ろうそく職人 「ゲェーッホ、ゲホッ。その通り、いかにも……」


ワイワイ


姫王子 「すっかり囲まれてしまったな、ろうそく職人」


貝殻の勇者 「ええ。魔法使いは厭世的であると聞きますが」

貝殻の勇者 「顔を輝かせてあれこれ話す様は、まるで好奇心あふれる子供のようです」


姫王子 「ふむ……」

姫王子 「しかし困った。魔法使いたちの談義が終わるのを待っていたら、葉巻に会いに行けるのはいつになるか」


貝殻の勇者 「そうですね」

貝殻の勇者 「置いていく……のは少しかわいそうですし……」


フヨヨ


瓶詰め妖精 「じゃあ、貝ちゃんが残ると良いのよ」


姫王子 「貝ちゃん?」


貝殻の勇者 「瓶詰め妖精さん」


瓶詰め妖精 「王子さまは私がちゃんと送ってあげるわ」

瓶詰め妖精 「大事な瓶に傷をつけないか見張らないといけないし」


姫王子 「これは心外だ」

姫王子 「……貝ちゃんとは?」


貝殻の勇者 「いえ、しかし、病み上がりの王子どのを……」


ハーピィ 「…………」





姫王子 「ハーピィ」

姫王子 (身体を支えてくれているのか)


瓶詰め妖精 「ほら、この子も心配ないって言ってる」


ハーピィ 「…………」


361 : ◆tHMiOqNMgmiR [sage]:2018/06/26(火) 11:43:10.86 ID:sxNrRDGzo


貝殻の勇者 「ですが……」


ろうそく職人 「うわーん、勇者さまあ」


魔法使いF 「勇者?」


太魔法使い 「ん? よく見ると、そこの女性」

太魔法使い 「朝日の揺れる海面をとかしたような美しい髪……甲板の戦いに現れたという勇者どのでは!」


魔法使いB 「おお! よく見るとたしかに!」


魔法使いD 「やや! よく見るとそれっぽい!」


ゾロゾロ


貝殻の勇者 「え、あの……」


魔法使いたち 「勇者どの!」

魔法使いたち 「ぜひ勇者どのにもお話を!」


ワラワラ


貝殻の勇者 「ああっ!」

362 : ◆tHMiOqNMgmiR [sage]:2018/06/26(火) 12:12:29.86 ID:sxNrRDGzo


ワラワラ ヨイショ

ワイワイ ヨイショ


姫王子 「ううむ、勇者どのもあっという間に魔法使いたちに囲まれてしまった」

姫王子 「人気者も大変だ」


瓶詰め妖精 「人気が無くて良かったわね」

瓶詰め妖精 「じゃあ行きましょ」


姫王子 「うむ」

姫王子 「……では勇者さま、黒花の弟子さま、あとで会いましょう!」


貝殻の勇者 「えっ、ちょっと王子どの、お待ちなさ……」

貝殻の勇者 「きゃあっ!?」

貝殻の勇者 「誰ですか、鎧の隙間に手を突っ込んだのは!」


ワイワイ


姫王子 「うーん、やはりこの瓶、見れば見るほど、そこはかとなくそこはとない物を感じるな」


瓶詰め妖精 「ちょっと、べたべた触らないでよ」

瓶詰め妖精 「あんただって、巨人の指垢に頬ずりしたいと思わないでしょ?」


姫王子 「そういうものか。ごめんよ、布で包むとしよう」

姫王子 「して、貝ちゃんとはいったい……」


瓶詰め妖精 「ウキウキ、早く瓶風呂を試したあい」


テク テク テク



貝殻の勇者 「王子どのぉ!」



…………



363 : ◆tHMiOqNMgmiR [sage]:2018/06/26(火) 13:51:48.02 ID:sxNrRDGzo


…………


ロブスターの船

魔法の馬車へ続く通路



テクテク フヨ フヨ



瓶詰め妖精 「今回のことも吟遊詩人たちなんかは歌うでしょうね」

瓶詰め妖精 「夜の海で、恐ろしい魔女やドラゴンの群れにたちむかった人間と英雄の物語として」

瓶詰め妖精 「それが時間の流れによって磨かれ輝きを増していくか、すり潰されていくかは知らないけれど」


姫王子 「英雄の物語か……」


瓶詰め妖精 「まあ、どうでも良いことだけどね」

瓶詰め妖精 「妖精の私にとっちゃ、人間の歌声より早起きした森の音の方がまだ興味をひくわ」


姫王子 「おやおや」

姫王子 「でも、吟遊詩人は皆、君のような相棒の祝福を受けている」

姫王子 「なんて話を聞くけど」


瓶詰め妖精 「妖精の恋人ね」

瓶詰め妖精 「まあ、詩人の肩に乗っかって一緒に旅する妖精も一人や二人じゃ無いけどね」

瓶詰め妖精 「何が良いんだか。妖精の恋人どころか、妖精の変人よ」

瓶詰め妖精 「妖精の中でもはぐれ者」


姫王子 「そうなのか」


瓶詰め妖精 「人間は恋をすれば皆詩人になる、とか言うけど」

瓶詰め妖精 「人間の歌声なんて発情期の獣の鳴き声みたいなもんよ」

瓶詰め妖精 「人間以外が聞けば、間抜けでしかないもの」


姫王子 「ほう」

姫王子 (エルフの長老たちの歌が、おれたちには音痴の大合唱にしか聞こえなかったのと同じ感覚かな)


364 : ◆tHMiOqNMgmiR [sage]:2018/06/26(火) 14:25:15.32 ID:sxNrRDGzo


姫王子 (ハーピィが歌ったら、どう聞こえるのだろう)


ハーピィ 「…………?」


姫王子 (疑いようも無いな。きっと可愛らしいに違いない)

姫王子 (しかし……)

姫王子 「君は何と言うか……たくましいね」


瓶詰め妖精 「ふふん。まあ、人間ともそれなりに渡り合っているもの」


姫王子 「あはは……」

姫王子 (そう言えば、初対面のときも葉巻相手にひるまず交渉していたな)

姫王子 (物怖じせず、人の輪に積極的に入っていける性格のようだ)

姫王子 (……いっぽう葉巻は態度がでかいわりに、わりと人見知りだ)

姫王子 (人間の町で人間相手にカスみたいな商売をしていたが、人の輪に入り込もうとはしなかった)

姫王子 (酒場の隅で余裕ぶってグラスを傾けていたが、オレ以外に軽口をふっかけるところを見たことが無い)


ハーピィ 「…………」


姫王子 (…………心が弱いのだろうな)

姫王子 (態度のでかさも、人見知りの裏返しなのかもしれない)

姫王子 (そんなんだから、大事なときに人質にとられたりするんだ)

姫王子 (ひょっとして、奴に魔法の才能が無かったら、城にいた時のろうそく職人のようになっていたんじゃないか?)


365 : ◆tHMiOqNMgmiR [sage]:2018/06/26(火) 15:04:23.48 ID:sxNrRDGzo


魔法の馬車




姫王子 「……久しぶりの旅の我が家だ」

姫王子 「親しみ深い外観に魔物の襲撃の跡は無いな」


ハーピィ 「…………」


瓶詰め妖精 「到着ね」

瓶詰め妖精 「私の瓶を返して」


姫王子 「うん?」


瓶詰め妖精 「あんたはこれからあの面倒くさいエルフのとこに行くでしょ」

瓶詰め妖精 「付き合っていたら、瓶のお風呂が遠のいちゃう」


姫王子 「ははは……なるほど」


ヒョイ


瓶詰め妖精 「はい、どうも」

瓶詰め妖精 「部屋の場所は分かってるんでしょ」

瓶詰め妖精 「じゃあねえ」


フヨ フヨ フヨ……

ピタ


瓶詰め妖精 「瓶運び、ご苦労さまだったわね」


フヨ フヨ フヨ



366 : ◆tHMiOqNMgmiR [sage]:2018/06/26(火) 15:26:28.19 ID:sxNrRDGzo


魔法の馬車

廊下



テク テク テク


姫王子 「…………」

姫王子 (葉巻の部屋か)

姫王子 (……ほとんど御者台にいるから、馴染みはあまり無い)

姫王子 (むしろ、あいつが町で暮らしていたときに拠点としていた宿の一室の方が印象に残っている)


ハーピィ 「…………」


姫王子 (あいつが魔法使いだとにおわせるようなものは何も置いていなかったっけ)

姫王子 (何か窓際で栽培していると思ったら野菜だったし)

姫王子 (エルフの部屋ということで密かに幻想的な品々を期待していたら、がっかりさせられたものだ)

姫王子 (おれが魔法に疎いから気づいていなかっただけだったのかもしれないが)

姫王子 (……ああ、エルフの森ではあいつの家に世話になったんだっけ)

姫王子 (あれはさすが妖精の家、といった感じだったな)

367 : ◆tHMiOqNMgmiR [sage]:2018/06/26(火) 16:52:55.48 ID:sxNrRDGzo


魔法の馬車

黒花エルフの部屋前



姫王子 (……今回のあいつはアレだった)

姫王子 (おれに船内を無駄に走らせ)

姫王子 (しまいには錯乱して暴れて……一歩間違っていたら全滅だったんだ。友だちとしてビシッと言ってやらないと)

姫王子 「……ん?」


ガチャム

ハタハタ


ブラウニー 「……あら」


姫王子 (葉巻の部屋からブラウニーが出てきた)


ハタタタタ


ブラウニー 「帰ってきていたんですね、王子さん」

ブラウニー 「おかえりなさい!」


姫王子 「ただいま、ブラウニー」

姫王子 「さっそく働いているのかな」


ブラウニー 「おうちのことは大好きですから」

ブラウニー 「大丈夫ですか? 少し顔が青ざめていますね」

ブラウニー 「元気の出るスープを温めましょうか」


姫王子 「そんなにひどい顔色かな。見た目よりもずっと元気だよ」

姫王子 「そうだな、葉巻との話が終わったら、ぜひスープをいただきたいけど……」

姫王子 「君はよく働くね。ずっと馬車内を走り回っているんじゃないかな」


ブラウニー 「おうちのことをしていないと病気になっちゃいそうで」


姫王子 「すさまじいな……」

姫王子 (妹とは気が合いそうだな)


ブラウニー 「黒花さんとお話しですか。良いときに来ましたね」

ブラウニー 「黒花さんは今ちょうど、起きてご飯を食べたところです」


368 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/26(火) 18:29:59.80 ID:Gu5vU7DeO
ワイフの復活か
369 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/27(水) 00:02:15.64 ID:5AVjbmDV0
なんという気になる引き完全にプロの仕業ですね…
370 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/22(日) 09:34:29.90 ID:u9o5LeZH0
371 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/24(火) 22:23:50.00 ID:zaD+aTZ9o
>鎧の隙間
鎧が隠せてる部分ってそんなに無かったような
372 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/22(水) 02:54:21.69 ID:7UxRVwYa0
373 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2018/08/29(水) 19:50:31.44 ID:V2wXQBLZo


姫王子 「ご飯、ね……」

姫王子 (食べる元気はあるんだな)

姫王子 (強めにビシッと言っても大丈夫そうだ)



ブラウニー 「ハーピィさんと種帽子さんは、何か食べますか?」


ハーピィ 「…………」


種帽子 「…………」


ブラウニー 「泥水ですね。あとで持ってきます」



姫王子 「さて、それじゃあ面会といきますか」

374 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2018/08/29(水) 19:55:12.21 ID:V2wXQBLZo


葉巻エルフの部屋の扉


姫王子 (…………)

姫王子 (ビシッと……)

姫王子 (ふむ……)


ブラウニー 「…………」

ブラウニー 「入らないんですか?」


姫王子 「え?」

姫王子 「入るけど、うん」

姫王子 「あいつの様子、どうだったかな」


ブラウニー 「?」


姫王子 「いつもと違う、とか、落ち込んでいる、ような……」


ブラウニー 「特に変わりは……ああー、そういえば」

ブラウニー 「角が生えていました」


姫王子 「角!」


375 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2018/08/29(水) 20:24:34.29 ID:V2wXQBLZo


姫王子 「角って、あの角かな」

姫王子 「肥溜めマイマイとか肉食ツノガイとかの頭に生えている、あの」


ブラウニー 「角です、角です」

ブラウニー 「ユニコーンとかカブトムシとかの頭に生えている、あの」


姫王子 「あいつ、角まで生えちゃったか……」

姫王子 「馬になったり女になったり、あいつも忙しい奴だが、ついに角か」

姫王子 「そうかあ……」


ハーピィ 「…………」


ブラウニー 「…………」


姫王子 「ビシッと言ったら突き殺されたりしてな」

姫王子 「ははっ」


ハーピィ 「…………」


姫王子 (あんなこと起こしたあとだしな。冗談とも言い切れないんだよな)

姫王子 「…………」


ハーピィ 「…………」


姫王子 「ねえ、本当に角だった?」

姫王子 「耳じゃなかった?」


ブラウニー 「入らないんですか?」


376 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2018/08/29(水) 20:38:51.81 ID:V2wXQBLZo


姫王子 「いや、いざ会うとなると。結構なことが起きたあとだしね」

姫王子 「何を話したものやら」

姫王子 「……外見だけじゃなく、その、雰囲気的なもので、変わったところは無かったかな」


ブラウニー 「あはあ、雰囲気ですか……」

ブラウニー 「うーん、何だか落ち着きが無かったような」


姫王子 「落ち着きが……」


ブラウニー 「髪や頬っぺたを気にしていたり、毛布のすそをいじったり」

ブラウニー 「まあ、王子さんの変化に比べたら大したことありません」


姫王子 「ははは……」


ブラウニー 「今の王子さんは、野生の女さんみたいです」

ブラウニー 「とっても寝心地が良さそう」


姫王子 「寝心地」


ブラウニー 「お胸のところがフカフカです」

ブラウニー 「もうずっとこのままで良いんじゃないですか」


姫王子 「あ、言ったな、このお」


ブラウニー 「きゃー」


ハーピィ 「…………」


377 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2018/08/29(水) 21:44:28.83 ID:V2wXQBLZo


姫王子 「さてと、行くか」


ブラウニー 「私も種帽子さんの泥水を用意してきますね」


種帽子 「…………」


ウネウネ ピョン


ブラウニー 「おやや、一緒に来ますか?」

ブラウニー 「それでは、まずは野菜家事娘さんのところに行きましょう」


ハーピィ 「…………」


ブラウニー 「ハーピィさんは、本当に何もいらないんですか?」


ハーピィ 「…………」


ブラウニー 「分かりました」


姫王子 「分かるのかい」


ブラウニー 「はあ、何となく」


姫王子 (妖精には分かる何かが、ハーピィから出ているんだろうか)

378 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2018/08/29(水) 21:47:50.74 ID:V2wXQBLZo

>>377訂正ごめんなさい



姫王子 「さてと、行くか」


ブラウニー 「私も種帽子さんの泥水を用意してきますね」


種帽子 「…………」


ウネウネ ピョン


ブラウニー 「おやや、一緒に来ますか?」

ブラウニー 「それでは、まずは野菜鍛冶娘さんのところに行きましょう」


ハーピィ 「…………」


ブラウニー 「ハーピィさんは、本当に何もいらないんですか?」


ハーピィ 「…………」


ブラウニー 「分かりました」


姫王子 「分かるのかい」


ブラウニー 「はあ、何となく」


姫王子 (妖精には分かる何かが、ハーピィから出ているんだろうか)


ブラウニー 「五回に一回は当たります」


姫王子 「勘か」


ブラウニー 「それではー」


ハタタタタタ



…………


379 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2018/08/29(水) 21:52:25.57 ID:V2wXQBLZo



姫王子 「……さて」


コン コン


姫王子 「…………」


ハーピィ 「…………」


姫王子 (返事がない……)

姫王子 「おや?」


カチャ キイ


姫王子 (扉が勝手に開いた。入れってことか?)

姫王子 「入るぞ」


キイイ

ト ト ト 



380 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2018/08/30(木) 01:41:52.06 ID:vmRWZ2txo


ト ト


姫王子 「……これは」



黒花エルフの部屋



姫王子 (壁の模様や、部屋のにおい……エルフの森にある、葉巻の家みたいだ)

姫王子 (広くはないが、馬車の中とは思えない)

姫王子 (木の息遣いが聞こえてきそうなテーブルと椅子……窓際にベッド。ベッドの上には……)


幼竜エルフ 「…………」


姫王子 (……いる。また姿が変わっているが、きっと葉巻だ)

姫王子 (窓の外を見ている)


ハーピィ 「…………」


姫王子 (ここは、葉巻の寝室なのか。魔法で繋げたのだろうか)

姫王子 (ブラウニーたちの馬車とも繋げたのだし、できてもおかしくは無さそうだが)

姫王子 (だとしたら何でもありじゃないのか)


幼竜エルフ 「…………」


姫王子 (窓の外は……あの森でも、船の中でもない)

姫王子 (夜の海だろうか)

姫王子 (……どこの?)


381 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2018/08/30(木) 04:17:56.47 ID:vmRWZ2txo


幼竜エルフ 「……行儀が良いじゃないか、王子さま」


姫王子 (葉巻の声だ)

姫王子 (姿形は変わっても、耳と声は葉巻なのだな)

姫王子 「葉巻」


幼竜エルフ 「ノックをするなんて」


姫王子 「……これでも領主の息子なものでね」

姫王子 (もっとも、おれの知る葉巻が真実なのかは知らないが)

姫王子 (先生の声も簡単に真似るような奴だ)


幼竜エルフ 「剣を振り回すのが好きなくせに」

幼竜エルフ 「ろくな領主にならないぜ」


姫王子 「たいへん優秀な妹君がいましてね」

姫王子 「鼻は高いが肩身がせまいよ」


ハーピィ 「あなたは嘘をつきました」


姫王子 「うん。ちっとも気にしていない」

姫王子 「どうでも良いことさ」

姫王子 「おれがいてもいなくても、帝国北東領はうまくいくのさ」


幼竜エルフ 「あきれた王子さまさ」

幼竜エルフ 「そう、どうでも良いんだ」



382 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2018/08/30(木) 04:41:25.88 ID:vmRWZ2txo


姫王子 (こっちを向く気配が無い)


幼竜エルフ 「お前の国のこと、魔王の軍勢のこと」

幼竜エルフ 「この世界のあらゆることがどうでも良いんだ」

幼竜エルフ 「善悪どちらがのさばろうが、おれは知ったこっちゃない」

幼竜エルフ 「本当に、どうでも良い」


姫王子 「おいおい、勇者どのが聞いたら穏やかじゃないぞ」

姫王子 「どうでも良いのは構わないが、だからって船を丸ごと腐らせようとするなよ」


幼竜エルフ 「お前のせいだよ」


383 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2018/08/30(木) 15:32:54.74 ID:vmRWZ2txo


姫王子 「…………」

姫王子 「おれ?」


幼竜エルフ 「…………」

幼竜エルフ 「こんな腐った世界だが」

幼竜エルフ 「いてもいなくても良いお前がいなくなると、いよいよどうでも良くなるんだ」

幼竜エルフ 「おれでも、オレでも、どうでも良い」

幼竜エルフ 「水面を跳ねる魚の一匹も我慢ならないくらいに、どうでも良い気分になるんだ」


姫王子 「…………」


ハーピィ 「…………」


幼竜エルフ 「……お前が悪いんだ」

幼竜エルフ 「お前が死ぬから……」


姫王子 「葉巻……」


幼竜エルフ 「お前が勝手に死ぬから」


姫王子 「おい」


384 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/30(木) 23:09:36.47 ID:ILwn2ai+0
待ってました!流石の正妻パワーがすごい
385 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/31(金) 11:57:35.27 ID:0Wk854Syo
まだー?
386 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2018/08/31(金) 18:51:46.90 ID:TaTeWAENo


姫王子 「散々人を駆けずり回らせておいて、それは無いだろ」


幼竜エルフ 「おれと一緒に行動したのはお前の判断だろ」


姫王子 「その通りだけども」


ハーピィ 「………」


幼竜エルフ 「森の館のときだって、腹に穴を空けたままのこのこ地下までやってきやがって」


姫王子 「腹の穴が何だ。北東領の男は、首を落とされても平気で百歩は歩けるようにできているんだ」


ハーピィ 「あなたは嘘をつきました」


姫王子 「うん、首を落とされたら無理だね」

姫王子 「まあ、そのくらい丈夫なんだよ」


387 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2018/08/31(金) 19:22:14.27 ID:TaTeWAENo


幼妻エルフ 「胸に大きな脂肪の塊を二つぶら下げて、何が男だよ」


姫王子 「これは……一時的なものだよ」


幼妻エルフ 「どうだか。髪もだらしない伸ばし方をしやがって」

幼妻エルフ 「どっかの娼婦が、お前の首巻きをかっぱらってきたのかと思ったぜ」


姫王子 「仕方ないだろ、切る暇なんて無かったんだから」

姫王子 「近く切るか整える見込みだよ」


幼妻エルフ 「その声」

幼妻エルフ 「無理して低くしているのがバレバレだぜ」


姫王子 「それは……」

姫王子 (普通に喋ると、混乱するんだよな)

姫王子 (聞けば聞くほど、今までのおれの声と違う、女の声なんだ)

姫王子 (おれが考えて話す言葉が、女の声で聞こえ続けると、おれが分からなくなりそうになる)

姫王子 (元のおれの声を意識して話している)

姫王子 「……葉巻、お前は本当のお前の声をおぼえているのか」


388 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2018/08/31(金) 19:24:24.49 ID:TaTeWAENo


>>387訂正ごめんなさい夏だからごめんなさい




幼竜エルフ 「胸に大きな脂肪の塊を二つぶら下げて、何が男だよ」


姫王子 「これは……一時的なものだよ」


幼竜エルフ 「どうだか。髪もだらしない伸ばし方をしやがって」

幼竜エルフ 「どっかの娼婦が、お前の首巻きをかっぱらってきたのかと思ったぜ」


姫王子 「仕方ないだろ、切る暇なんて無かったんだから」

姫王子 「近く切るか整える見込みだよ」


幼竜エルフ 「その声」

幼竜エルフ 「無理して低くしているのがバレバレだぜ」


姫王子 「それは……」

姫王子 (普通に喋ると、混乱するんだよな)

姫王子 (聞けば聞くほど、今までのおれの声と違う、女の声なんだ)

姫王子 (おれが考えて話す言葉が、女の声で聞こえ続けると、おれが分からなくなりそうになる)

姫王子 (元のおれの声を意識して話している)

姫王子 「……葉巻、お前は本当のお前の声をおぼえているのか」
389 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2018/08/31(金) 20:15:27.67 ID:TaTeWAENo


幼竜エルフ 「本当のオレの声?」


姫王子 「お前は姿と一緒に声も変わるが、いつの間にか、おれの知っているお前の声で話している」

姫王子 (ついでにいつの間にか耳も尖っている)


幼竜エルフ 「これは、お前が初めてオレと会ったときの声を出してやっているだけだよ」


姫王子 (……ということは、やはりおれは葉巻の真実の姿をまったく知らないということか)


幼竜エルフ 「頭のかたい、友だち、に対する、オレなりの気遣いさ」

幼竜エルフ 「オレがどんなに姿を変えようと、お前にとってのオレはいつまでも、酒場で会った美少年なのだろ」


姫王子 「そりゃどうも……」

姫王子 (ずいぶん刺のある言い方だな)


幼竜エルフ 「さてね、どんな声で、どんな姿だったかな」

幼竜エルフ 「どうでも良いことさ」


姫王子 「そんなものなのか」

姫王子 「おれは、自分の声を忘れるんじゃないかと思うと、良い気分じゃないよ」

姫王子 「今はまだはっきりとおぼえているが、頭の中でだけなんだ」

姫王子 「はっきりとした形を捉えきれない。できたと思っても、声を出した途端にあやふやになる」

姫王子 「このまま今のおれの声が頭に響き続けると、消えてしまう気がする」

姫王子 「そして、一緒におれそのものも、だ」

姫王子 「現に、筋骨隆々で強さと逞しさを備えていた本当のおれの姿を、今はもう幽かにしか思い出せない……」


ハーピィ 「あなたは嘘をつきました」


幼竜エルフ 「いないんだよ、その本当のお前は」


390 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/31(金) 22:06:42.16 ID:8fv8igUjO
疲れててもツッコミを忘れない姿勢は素晴らしい
391 : ◆9eN28dDkrjul [saga]:2018/10/19(金) 18:49:21.03 ID:ls7xm4I90
復活おめでとんかつ
392 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/01(木) 02:46:49.73 ID:eCTm90ty0
待ち
393 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/12/16(日) 06:25:44.19 ID:PVpupeCc0
うむ
394 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/18(金) 10:34:33.54 ID:9f6mozuEO
あけましておめでとうございました
そろそろお願いします…
395 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/03/01(金) 10:35:05.04 ID:kbtHxx1a0
あの先生…3月に…待つ
396 : ◆9eN28dDkrjul :2019/09/04(水) 05:24:19.91 ID:KPSTQ5X70


姫王子 「……ん? おれは、おれで良かったっけ、オレだったっけ」
姫王子 「……我輩?」


幼竜エルフ 「そこまで重症か」


姫王子 「あれ、まずいな、色々と自分のことを思い出せないぞ」
姫王子 「数日前、ほんの数日前の自分のことなのに、自分をどう呼んでいたかも思い出せない」
姫王子 「ほんの数日前のことなのに……!」
姫王子 「これが鏡の呪いなのか……」


幼竜エルフ 「……そんなものじゃない?」
幼竜エルフ 「お前、わりと忘れっぽいじゃない」


397 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/09/04(水) 11:21:37.94 ID:8hlobJLbo
半年以上ですよ先生!もうこないかと…!
398 : ◆9eN28dDkrjul [sage]:2019/09/04(水) 11:55:21.87 ID:KPSTQ5X70


ハーピィ 「あなたは嘘をつきました」


姫王子 「うん、そのくらいは覚えている」

姫王子 「おれはおれだ。たぶん」

姫王子 「そんなに忘れっぽくもないはずだぞ」


幼竜エルフ 「どうだか……」

幼竜エルフ 「ああ、でも、そうだな。お前、ちゃんと覚えていたものな」

幼竜エルフ 「一言一句、間違いなく。しつこいくらいに」


姫王子 「それは。それは、お前もそうだろう」


幼竜エルフ 「…………」

幼竜エルフ 「おお、なんということだ。まるで、月が美しい錫色の輝きそのままに……」


姫王子 「やめろよ……!」


幼竜エルフ 「ケケケ……」


399 : ◆9eN28dDkrjul [saga sage]:2019/09/04(水) 12:09:29.97 ID:KPSTQ5X70


姫王子 「やれやれ、あんなことをしでかしておいて、やっぱり反省する様子はなしか」

姫王子 「お前らしいというか……」

姫王子 (甲板で馬車幽霊が回収した葉巻の遺体はどう扱われたんだろうか)


幼竜エルフ 「……しているよ」

幼竜エルフ 「反省、している」


姫王子 「お前の口からそんな言葉が……」

姫王子 (さすがに懲りたのだろうか)

姫王子 (まあ、エルフの長老としても、勇者の旅の導き手としても、お粗末すぎる行いだったろうしな)

姫王子 (おまけに弟子に手柄とられてるし)

姫王子 (それにしても、かたくなにこっちを向かないな、葉巻。合わせる顔も無いといった心境なのだろうか)


幼竜エルフ 「王子」


姫王子 「うん?」


幼竜エルフ 「もう旅やめようぜ」


姫王子 「……うん?」

400 : ◆9eN28dDkrjul [sage saga]:2019/09/04(水) 12:56:37.87 ID:KPSTQ5X70


幼竜エルフ 「そしてその辺の島で三人で暮らそう」

幼竜エルフ 「小屋を建ててさ、畑つくって、魚とか釣って、たまに流れ着く遭難者の身ぐるみはいだりして」


姫王子 「葉巻」


幼竜エルフ 「魔王討伐とか、皇帝の目とか、そういうの全部放り出してさ」

幼竜エルフ 「自由にやろうぜ」


姫王子 「笑っていこうとは言ったが、さすがにそれは笑えないぞ、葉巻」


幼竜エルフ 「考えてもみろよ。旅に出て大陸半周もしないうちに、お前」

幼竜エルフ 「森で腹に穴が空いたと思ったら、次には海で身体をバラバラにされてそんなことになってるんだぜ」

幼竜エルフ 「この調子だと、旅が終わる頃にはネバネバした手の平大の何かになっていてもおかしくない」


姫王子 「お前はほとんど人質になっていたけどな」

姫王子 「……おれが足手まといだと言いたいのかい?」


幼竜エルフ 「オレからしたら全部、オレすら足手まといだよ」

幼竜エルフ 「お前はよくやっているさ」

幼竜エルフ 「何より、ごみよりは大事な、オレの、友人ッッ、だよ」


姫王子 「お前にとって友人は念入りに足で潰す害虫か何かなの?」

401 : ◆9eN28dDkrjul [saga sage]:2019/09/05(木) 20:49:42.98 ID:XURXMcMI0


幼竜エルフ 「……ふぅ」


王子姫 (いい加減にこっちを向けよ)

王子姫 「……調子悪いのか」

王子姫 (と言って、心配してる風に歩み寄り自然に顔を覗きこむ)


トコ トコ


幼竜エルフ 「……ただの二日酔いさ」


プイイ


王子姫 (あ、おれの歩みに合わせるように、顔を背けた。くそっ)

王子姫 「おれが寝てる間に酒宴でもやってたのかな」


幼竜エルフ 「他の連中は好き好きにやってたみたいだぜ。オレはここから一歩も出てないが」

幼竜エルフ 「……鏡に映った竜の血なんて、ガブガブ飲むものじゃなかった」


王子姫 「自業自得か」


トコトコトコ


幼竜エルフ 「だから、お前のせいだよ」


プイイ


王子姫 「そうかい」


トコトコ

402 : ◆9eN28dDkrjul [saga sage]:2019/09/05(木) 21:19:07.57 ID:XURXMcMI0


>>401 訂正ごめんなさい


幼竜エルフ 「……ふぅ」


姫王子 (いい加減にこっちを向けよ)

姫王子 「……調子悪いのか」

姫王子 (と言って、心配してる風に歩み寄り自然に顔を覗きこむ)


トコ トコ


幼竜エルフ 「……ただの二日酔いさ」


プイイ


姫王子 (あ、おれの歩みに合わせるように、顔を背けた。くそっ)

姫王子 「おれが寝てる間に酒宴でもやってたのかな」


幼竜エルフ 「他の連中は好き好きにやってたみたいだぜ。オレはここから一歩も出てないが」

幼竜エルフ 「……鏡に映った竜の血なんて、ガブガブ飲むものじゃなかった」


姫王子 「自業自得か」


トコトコトコ


幼竜エルフ 「だから、お前のせいだよ」


プイイ


姫王子 「そうかい」


トコトコ


幼竜エルフ 「そうさ」


プイイ クル


姫王子 (ついに身体ごと背けだした。そんなに顔を見られたくないのか)

姫王子 「力不足だったよ。魔女相手というのは、嫌だね。注意してもし足りないし、まったくの見当違いだったりする」


ハーピィ 「…………」


幼竜エルフ 「お前はよくやっているよ」

幼竜エルフ 「分もわきまえず旅に憧れる領主のハナタレ息子なんて」

幼竜エルフ 「いざちょっと家を離れたらぶるぶる震えてオレに縋り付いて馬車に引きこもると思ってたのに」


姫王子 「おれを何だと思ってたんだよ」

403 : ◆9eN28dDkrjul [saga sage]:2019/09/05(木) 21:56:54.01 ID:XURXMcMI0


トコトコ

クル

トコトコ

クル


幼竜エルフ 「…………」


姫王子 「…………」

姫王子 (おれから顔を背け続けた結果、葉巻はとうとう毛布から這い出し、枕に膝を乗せて正座する格好となった)

姫王子 (……思ったより幼い、というか、全体的に細いな。肌がほんのり赤い気がするが、灯りのせいかな)

姫王子 (なんか、子供がむくれて背を向けているようだ)


幼竜エルフ 「……なに」


姫王子 「……うん?」


幼竜エルフ 「急に黙り込んで」


姫王子 「ああ……喋るのと同じかそれ以上に黙っているのも好きなんだ」


トコトコ


幼竜エルフ 「…………」


クル


姫王子 「…………」


トコト……


幼竜エルフ 「もう何なんだよさっきから」

幼竜エルフ 「ベッドの周りを嫌らしくねっとり歩きやがって」


姫王子 「お前こそどうしてベッドの上でオルゴールの人形みたいに回ってるんだよ」


幼竜エルフ 「軽い運動だよ。ベッドの上で生活してると、身体がなまっちまうから」


姫王子 「ふうん」

姫王子 「…………」


幼竜エルフ 「…………」


ハーピィ 「…………」


404 : ◆9eN28dDkrjul [saga sage]:2019/09/05(木) 22:11:16.19 ID:XURXMcMI0


姫王子 「おら、こっち向け、おら! 顔上げろ!」


幼竜エルフ 「やだよ、やめろ、背中に脂肪の塊くっつけてくんな!」


姫王子 「前髪滝みたいに伸ばしやがって、顔見せろ、角見せろ!」


幼竜エルフ 「お前だって髪ツンツンさせやがって、やめろ、何かにおいも変になってるぞお前、やめろ!」


姫王子 「この、この、この!」


幼竜エルフ 「やだ、こら、きゃあ!」


ドタ バタ


ハーピィ 「…………」


405 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/09/06(金) 12:48:51.73 ID:sSnb1OmQ0
待ってました!しかしさっそくGOKURI…
406 : ◆9eN28dDkrjul [saga sage]:2019/09/07(土) 06:33:11.87 ID:QEbEoxur0


…………


姫王子 「ふう、はあ……」


幼竜エルフ 「はっ、ひい……」

幼竜エルフ 「何だよもう、余計な汗かせやがって。姿と一緒に性格も変わったんじゃ無いの?」


姫王子 「死んで生還できたんだ、はしゃぎもする」

姫王子 「あとで身体を拭こうか。この姿のおれに拭いてもらえるなんて、良いものなんじゃないか」


ハーピィ 「あなたは嘘をつきました」


姫王子 「うん、拭くつもりは無い。冗談だ」

姫王子 「すまない、病み上がりに」


幼竜エルフ 「……途中からくすぐった」


姫王子 「ごめん」

姫王子 (弱点は変わっていなかったな)


幼竜エルフ 「後ろからいきなりとか、卑怯だろ、このすけべ……」


姫王子 「悪かったよ」


407 : ◆9eN28dDkrjul [saga sage]:2019/09/07(土) 07:05:11.25 ID:QEbEoxur0


姫王子 「でも何だって、そんなに顔を隠したがるんだよ」


幼竜エルフ 「べつに」


姫王子 「ふうん」

姫王子 (額に一本、小さな角が控えめにはえていて、肌がやっぱり赤いくらいで、とくに変なところは無かった)

姫王子 (つんとして、全体的に幼めの顔立ち)

姫王子 (……だったと思う。すぐに前髪で隠れてしまった)

姫王子 「何か理由があるなら、教えてもらえると助かるんだけどな」

姫王子 「髪が桃色の子供になったり、下半身が馬になっても堂々としていたというのに」


幼竜エルフ 「……良いだろ、もう。気にするなよ、あとでちゃんと顔を見せてやるから」

幼竜エルフ 「今はちょっと、そういう気分なだけさ。あるだろ、そういうこと」


姫王子 (ブラウニー娘にはいつも通り接していたくせに)

姫王子 (……おれに何かあるのだろうか)


408 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/09/07(土) 18:05:53.78 ID:svkT9nnXO
今の葉巻の参考画像はよはよはよはよ
409 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/05/09(土) 01:47:31.85 ID:LfgQqQjpo
あれ?この作者生きてる?
410 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/01(月) 21:44:14.98 ID:u9Oaic+4o
作者死んだのでは
411 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2022/03/19(土) 17:33:40.00 ID:BER/8E5Zo


幼竜エルフ 「椅子、使えよ。その辺の」


姫王子 「ああ、どうも。じゃあハーピィ、こっちの……」


ハーピィ 「…………」


トコトコトコ

ギシ


ハーピィ 「…………」


王子 (ハーピィが、葉巻のベッドに腰掛けた)


幼竜エルフ 「…………」


王子 (何も言わない葉巻。良いのか)


ハーピィ 「…………」


王子 (こっちを見てくる)


ハーピィ 「…………」


王子 「おれもそこに座れってことかな」


ハーピィ 「…………」


コクリ


王子 「……ふむ」


412 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2022/03/19(土) 17:36:18.96 ID:BER/8E5Zo

>>411 訂正ごめんなさい



幼竜エルフ 「椅子、使えよ。その辺の」


姫王子 「ああ、どうも。じゃあハーピィ、こっちの……」


ハーピィ 「…………」


トコトコトコ

ギシ


ハーピィ 「…………」


姫王子 (ハーピィが、葉巻のベッドに腰掛けた)


幼竜エルフ 「…………」


姫王子 (何も言わない葉巻。良いのか)


ハーピィ 「…………」


姫王子 (こっちを見てくる)


ハーピィ 「…………」


姫王子 「おれもそこに座れってことかな」


ハーピィ 「…………」


コクリ


姫王子 「……ふむ」




ツカツカ ギシ


姫王子 「…………」


ハーピィ 「…………」


幼竜エルフ 「……何これ」


姫王子 「さあ……」



413 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/03/19(土) 18:00:16.99 ID:co8CPr3tO
生きてたんかわれ
414 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2022/03/19(土) 19:04:08.03 ID:BER/8E5Zo


幼竜エルフ 「何で、よりによってベッドに三人腰掛けているんだよ」


姫王子 「まあまあ、もう顔を覗こうなんてしないから」


ハーピィ 「…………」


姫王子 (何だろう。ハーピィの瞳から圧力のようなものを感じる)


幼竜エルフ 「ふん」


姫王子 「……そういえば、お前、外を歩き回れるかい?」


幼竜エルフ 「問題ない」

幼竜エルフ 「足腰は今までのどの身体よりも丈夫だし」

幼竜エルフ 「この姿のオレが歩き回ったところで、誰も気に留めない」

幼竜エルフ 「馬車幽霊がうまくやってくれたさ」


姫王子 「そうか」

姫王子 「それじゃあ、今すぐという訳じゃ無いが、買い物に付き合ってくれよ」


幼竜エルフ 「リボンが良い。角に合うやつ」


姫王子 「……分かったよ。そのときは角、見せろよな」



415 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2022/03/19(土) 19:35:10.10 ID:BER/8E5Zo


姫王子 「色々と揃えなきゃならないからな。下着とか……細々したやつ」

姫王子 「この姿で過ごさないといけないし」

姫王子 「あくまで一時的とはいえ」


ハーピィ 「………ぁ」


姫王子 「え?」


ハーピィ 「…………」


姫王子 「……ハーピィ?」


ハーピィ 「…………」

ハーピィ 「…………」

ハーピィ 「…………」


姫王子 (気のせいかな……と、口に出す勇気が、何故か出ない)



幼竜エルフ 「この馬車には、オレよりも適任な奴がいると思うけどな」

幼竜エルフ 「脂肪の塊をぶら下げた奴とかさ」

幼竜エルフ 「何か、オレでなきゃいけない理由でもおありで?」


姫王子 「あ、ああ」

姫王子 「……身体の乗り換えの先輩に、ご教授願いたくてね」


幼竜エルフ 「ふうん。そういうことなら……」


ハーピィ 「あなたは嘘をつきました」


姫王子 「うん? ああ……」

姫王子 (嘘だったのか。そんなつもりは無かったけど)

姫王子 「別に理由は無いよ。気楽にぶらぶらしたくなっただけだよ、お前と」


幼竜エルフ 「帰れ」


姫王子 「えっ!?」


416 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2022/03/20(日) 10:42:42.54 ID:LuBfPig5o


姫王子 「何だよ、いきなり。帰れ? 何で?」


幼竜エルフ 「買い物は明日の夜明け前からだな」


姫王子 「あ、買い物は付き合ってくれるんだな」

姫王子 「朝飯の後で良いだろう」


幼竜エルフ 「船員が気まぐれでやっている魚市場の食堂の、朝一番に水揚げされたばかりの魚を使った料理が美味いらしい」


姫王子 「ほう。北東の海の幸を飽きるほど味わったおれの舌を」

姫王子 「果たして満足させることができるか楽しみだな」


幼竜エルフ 「よし、帰れ」


姫王子 「いや、まだ話すべきことは色々あると思うんだけど」

姫王子 「これからのこととか、あの魔女についてとか……」


幼竜エルフ 「いいから、今日のところはここまでだ」

幼竜エルフ 「お前も疲れているだろ」


姫王子 「寝起きだ。軽い運動をして目も冴える一方だ」

姫王子 「……お前の方こそ、実はまだどこか具合悪いのか?」

姫王子 「だったら、明日も無理せず……」


幼竜エルフ 「その後は服飾を取り扱う店を全部まわるぞ。ああ、美容アイテムも揃えなきゃな」

幼竜エルフ 「昼はあの恐ろしくつまらない出し物がある店で良いだろ」


姫王子 (やる気なさげにスラスラと予定を組み立てている)


幼竜エルフ 「昼が済んだら、無人島で暮らすためのアイテムも揃えよう」

幼竜エルフ 「そういえば練り石材を売ってる店が出ていたな」


姫王子 「こら」



417 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/02/16(金) 14:14:18.86 ID:f55TUb2ko
一年来てないしもう来ないかな
418 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/02/16(金) 14:49:13.93 ID:wfT5o46No
残念だ
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