姫王子「黒翼のハルピュイア娘……」青花エルフ「王子、姫になる」

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88 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/06/24(金) 04:09:53.34 ID:MZ4hMNSYo



ドラゴンA 「グオォオン……!」


腐ったドラゴン 「…………」


ボト ボト ボト


鏡の魔女 「御所車、松葉崩し……!」

鏡の魔女 「おのれ、忌々しき湖のエルフの残り香が……」


ハーピィ 「#”%$!」


鏡の魔女 「……!」

鏡の魔女 「ええい、邪魔な。いくらやろうとも貴様の腕は届きはせぬ……!」


血の首の化物 「あああああ゛!!」


ゴオオオ グズズズズ


姫王子 「……葉巻」


89 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/06/24(金) 04:35:29.63 ID:MZ4hMNSYo


血の首の化物 「死、ね゛ええええ゛!!」


ゴオオオ



馬車幽霊 「お嬢様、なんと愚弱な」

馬車幽霊 「手当たりしだいに呪いと血を、おのれの命すら貪って」

馬車幽霊 「ご自分の覚悟すらお忘れになられたか……」


姫王子 「……出るぞ」


チャキ


馬車幽霊 「お待ちください」

馬車幽霊 「いかにあなたといえど、そのまま結界の外に出たら無駄死にです」


姫王子 「だとしてもだ」


馬車幽霊 「落ち着いてください」

馬車幽霊 「あなたが本当に死んでしまっては、お嬢さまは戻れなくなるでしょう」


姫王子 「落ち着いてなど……」

姫王子 「戻れるの?」


馬車幽霊 「戻さねばなりません」

馬車幽霊 「お嬢さまなくして、魔王の驚異は退けられないのです」


姫王子 (それもそうか。勇者でもないくせに)

姫王子 「まあ、いまやあいつが魔王みたいな見た目だが」

姫王子 「では、どうやって戻す」

姫王子 「あのこんがらがった首を切り落とすとか?」


馬車幽霊 「力をそぎ落とすのは良いでしょう」

馬車幽霊 「一大国の総力をもって休みなく戦えば、可能かもしれません」


姫王子 「なんだと……」


馬車幽霊 「王子どの、だからあなたなのです」

馬車幽霊 「ハーピィさまを戻せるのがあなただけであるように」

馬車幽霊 「お嬢さまを元に戻せるのは、必ずやあなただけなのです」


90 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/06/24(金) 04:56:21.83 ID:MZ4hMNSYo


姫王子 「おれだけ……まあ、あいつ、おれ以外に友だちいなさそうだものな……」


馬車幽霊 「このために、魔力を温存してきました」

馬車幽霊 「お嬢さまの代わりとしては不足でしょうが、私が援護します」

馬車幽霊 「お嬢さまと向き合い、正気に戻してください」


姫王子 「……あれに近づくのか」

姫王子 「地獄の大釜に顔つっこむようなもんだな」

姫王子 「女三人の修羅場など……」


馬車幽霊 「この風さえやめば、甲板室や船内の戦力を活かせます」

馬車幽霊 「敵の数が減った今なら、押し切ることができるでしょう」


姫王子 「ふむ」

姫王子 「しかし、どうだろうか」

姫王子 「このような姿になりはてた今のおれの言葉は、はたして葉巻に届くのだろうか」


プリン ムチッ


馬車幽霊 「大丈夫です」

馬車幽霊 「そんなに変わっていません」


姫王子 「どうだろうか」


91 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/06/24(金) 05:13:09.04 ID:MZ4hMNSYo


チャキ カチャ


姫王子 「館で手に入れた魔法の剣と、ここで手に入れた海老骨の剣」

姫王子 「双剣の心得はあるにはあるが、自然の声を聞きながらは初めてかな」


貝殻の勇者 「ええと、王子どの?」


姫王子 「ああ」

姫王子 「詳しい説明はあとでするよ、勇者どの」


貝殻の勇者 「そっ、それは良いのですが」

貝殻の勇者 「申し訳ありません、このようなときに役に立てず」

貝殻の勇者 「私やろうそく職人さんの言葉では駄目でした」

貝殻の勇者 「どうか、黒花どのをよろしくお願いします」


姫王子 「結界から飛び出し、おれを助けてくれたことは忘れない」

姫王子 「まかせておいてくれ」


馬車幽霊 「王子どのを魔法の壁で囲みます」

馬車幽霊 「ある程度自由に動いて結構ですが、あまり無理はなさらぬよう」


姫王子 「うん」

姫王子 「では、行くぞ」


92 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/06/24(金) 07:30:57.12 ID:MZ4hMNSYo


…………


ゴオオオオ

ギシ ギシ ギシ



姫王子 (暗い、重い)

姫王子 (馬車幽霊の壁がなければ、押しつぶされそうだ)

姫王子 「……ひどいにおいだ」



ハーピィ 「…………!」


鏡の魔女 「…………!」


バサ カキィン

ヒュン ヒュン



姫王子 (そんな中でも、ハーピィは平気で戦っている)

姫王子 (空を自在に飛び回って)


ゴオオオ


姫王子 (……ハーピィが魔女とドラゴンを抑えている今のうちに動きたいが、さて)

姫王子 (葉巻を元に戻すといっても、どうするか)

姫王子 (説得するとして、おれの言葉をすんなり受け入れるとも思えん)

姫王子 (というか、言葉が通じる気もしない)


血の首の化物 「うがああああ゛あ゛」


ゴオオオオ ヒュゴオオオ


姫王子 「届かないところに浮いているし」

姫王子 「……帆桁を利用してみるか?」


馬車幽霊 「壁で足場をつくります」


姫王子 「ありがたい」


93 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/06/24(金) 07:47:32.09 ID:MZ4hMNSYo


キイン シュタ

キイン シュタ


姫王子 「よっ……ほっ……」

姫王子 「はは、見えない階段か」

姫王子 「下を見ると目眩がしそうだ」


馬車幽霊 「踏み外しても大丈夫ですよ」

馬車幽霊 「ちゃんとそこに足場を足しますので」


姫王子 「頼もしいことだ」


シュタ シュタ


姫王子 「さて、そろそろ黒花さまとご対面かな」


グニョル グニョル


姫王子 (葉巻の下半身……ドラゴンの首たちが生々しく蠢いている)

姫王子 (……やはり血だ。血のにおいだ)

姫王子 (これは、血によって他者の体を渡り歩く葉巻の力が作用しているのだろうな)


血の生首A 「…………」


ギョロ


姫王子 「!!」

姫王子 「おい、このドラゴンの首生きて……」


血の生首B 「…………」


血の生首C 「…………」


血の生首たち 「…………」


ギョロ ギョロ ギョロ……


姫王子 「おいおいおいおい……」


94 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/06/24(金) 08:11:34.11 ID:MZ4hMNSYo


姫王子 「どうする、斬るか?」

姫王子 「斬り殺して良いのか? 喜んで斬るが」


馬車幽霊 「いえ、その必要はなさそうです」


血の生首C 「……ォォ」


血の生首D 「……グ゙ュルル」


グニョル グニョル


姫王子 「……苦しそうだ」


馬車幽霊 「お嬢様の呪いによって魂ごと縛り付けられているのでしょう」

馬車幽霊 「それぞれの魂の記憶を宿したままひとつに圧縮され、そして、魔法の養分にされている」


姫王子 「養分……おぞましいな」

姫王子 「いよいよ化物じゃないか」

姫王子 「……む」


グニュル ボコ ボコ


姫王子 (生首たちの表面で、血が波打って……)


ズルン


血の首の化物 「…………」


姫王子 「血まみれの少女が生えた」

姫王子 「……その崩れ方。自分まで腐らせているのか」

姫王子 「なんという有様だ、葉巻」


血の首の化物 「…………」

血の首の化物 「カハアアア……!」


95 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/06/24(金) 08:20:17.49 ID:MZ4hMNSYo


キイイイイ


姫王子 「………!」

姫王子 (魔法! いかん、距離を……)


血の首の化物 「ル゛ラ゛ァアアアア゛!!」


ゴオオオ


姫王子 「………!」


バリン バリン バリン

ガシャン


姫王子 「……魔法の壁の重ねがけか」


馬車幽霊 「すぐに修復します」

馬車幽霊 「はやく説得を」


血の首の化物 「死、ね゛ッ! ぜんぶ……死゛……!」


姫王子 「これ相手にか」

姫王子 「無茶を言う」


96 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/24(金) 08:30:48.28 ID:LjvXn29W0
久しぶりの生中継に立ち会えた。
ドキがムネムネする!
97 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/06/24(金) 08:39:57.43 ID:MZ4hMNSYo


姫王子 「おい、葉巻!」

姫王子 「聞こえるか、葉巻エルフ、黒花エルフ!」


血の首の化物 「う゛る゛さい゛、雌の肉豚゛!」


姫王子 「ばっさりか」


ブンッ


姫王子 (殴りかかってきた)


ガシャン バリン


馬車幽霊 「この程度の攻撃にも魔力を込めて……」

馬車幽霊 「このままでは、本当にいけません」


姫王子 「葉巻、違う。聞け」

姫王子 「おれだ、おれおれ」


馬車幽霊 「詐欺師か何かですか」


血の首の化物 「ら゛あぁああああ゛!!!」


ブン ブオン ブン

ガシャン バリン ガシャン


姫王子 「くそっ。こんな哀れなものが、あの葉巻なのか」


ガシャン バリン バキン


姫王子 「おい、聞け、葉巻! 正気に戻れ!」


血の首の化物 「死ね! 死ね! 死ね! 死ね!」

血の首の化物 「こんな残りカスみ゛たいなゴミだめ、みん゛な……!」


ガシャン バリン バリン


姫王子 「おれのことも目に入らんか! おれだ!」

姫王子 「王子だ!」


血の首の化物 「………!!」


ピタ


98 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/24(金) 14:57:32.84 ID:s0KKQoyR0
乙!
99 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/24(金) 16:14:36.21 ID:6Dwm9HwFO
100 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/24(金) 18:16:10.96 ID:O9c7fGSiO
やっぱ面白いわ
101 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/24(金) 20:36:11.35 ID:lp5M258+O
おっぱいのおっきい王子を、はたして王子として認識してくれるのか…
102 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/06/29(水) 01:04:05.43 ID:Uyzy/uj5o


血の首の化物 「…………」


姫王子 (魔法の壁を殴っていた葉巻の動きが止まった……)

姫王子 「……葉巻」


血の首の化物 「……王子」

血の首の化物 「…………?」


姫王子 「ああ、そうだ……」


馬車幽霊 「…………」


血の首の化物 「…………」


ジロ ジロ ジロ


姫王子 (いろいろな角度からおれを見ている)


血の首の化物 「……王子の服を着ている」


姫王子 「ああ。けっこう傷んじまった」

姫王子 「ほ、ほら、見ろ、お前にもらった首巻きは綺麗なままだぞ」


血の首の化物 「……首巻き」

血の首の化物 「王子に渡した」

血の首の化物 「この世で、王子しか持っていないものだ」


姫王子 「ああ、そうだ」

姫王子 「なんだったらお前から貰った仮面もつけてやる。割れちまったが」


血の首の化物 「……王子」

血の首の化物 「王子」


姫王子 「ああ、そうだ。おれだ」


血の首の化物 「……胸がでかい」

血の首の化物 「だれだきさま」


姫王子・馬車幽霊 「おぅ……」


103 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/06/29(水) 01:18:09.86 ID:Uyzy/uj5o


血の首の化物 「王子の服を盗んだな、このコソ泥」

血の首の化物 「大事な首巻きまでつけてノコノコ現れるなんて……」

血の首の化物 「殺してやる!!」


ガツン

ガシャン バリィン


馬車幽霊 「……くっ。拳に付与した魔法が強くなっている!」

馬車幽霊 「魔法の壁を厚くしなくては……」


姫王子 「くそ、何か巻いていれば良かったか……!」


血の首の化物 「うがああああ゛!」


ガシャン ガシャン


馬車幽霊 「王子どの、説得を続けてください!」


姫王子 「……待て、葉巻! 聞け!」

姫王子 「おれの胸はもともとこんな感じだ!」


血の首の化物 「嘘だ!」


姫王子 「ああ」


血の首の化物 「うがあああ!」


ガシャン ガシャン


姫王子 (しまった。嘘をつかない暮らしに、思いのほか馴染んでしまっていた)

姫王子 「……くそ。ほかに打つ手はないのか……!」



104 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/06/29(水) 01:27:59.27 ID:Uyzy/uj5o


ガシャン ガシャン


姫王子 (何か……葉巻を元に戻せる何か……)


キイイイ

ガシャン ガシャン バリン


馬車幽霊 「お嬢様……! あなたの使命をお忘れか」

馬車幽霊 「私に語ってくれた覚悟は、この程度で……!」


血の首の化物 「うるさい!! そんなもの、もうとっくに意味なんかない!!」


馬車幽霊 「……っ」

馬車幽霊 「ええ、そうでしょうとも……」


ガシャン ガシャン


姫王子 (何か)

姫王子 (葉巻とおれしか知らないような……)

姫王子 (…………)

姫王子 (………………あったぞ)


105 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/06/29(水) 01:39:05.25 ID:Uyzy/uj5o


姫王子 (しかしあれは、おれへの精神的なダメージが強い)


血の首の化物 「死ね! 死ね! みんな死ねばいい!」

血の首の化物 「このくそみたいな身体の魔力ぜんぶつかって、みんな殺してやる!」

血の首の化物 「世界中の魔力が枯れるまでみんな殺してやる!」


ガシャン ガシャン バリンバリンバリンバリン


血の首の化物 「その前にお前だ、コソ泥の豚ぁ!!」


姫王子 (迷っている場合じゃないか)

姫王子 「……おお、なんということだ。まるで、月が美しい錫色の輝きそのままに」

姫王子 「人のかたちになって迷いおりてきたようだ」


馬車幽霊 「王子どの?」


血の首の化物 「…………ッ」


ピタ


106 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/06/29(水) 02:22:32.36 ID:Uyzy/uj5o


ゴオオオ オオオオオ


血の首の化物 「…………」


馬車幽霊 「お嬢様の動きが止まった……?」


姫王子 「なんということだ。誰に促されるでなく、おれの心の全ては」

姫王子 「あらかじめ祈り方を知っているように膝を折り、指を組み、目をつむってしまった」

姫王子 「これだ。そうだ、これこそが、まことの信仰であり、よろこびなのだろう」


血の生首たち 「…………」


馬車幽霊 「血の竜たちも、うっとりと目を閉じている」

馬車幽霊 「これはいったい……」


姫王子 「この歓喜の、なんと静かで厳かなことか」

姫王子 「あした無実の罪で殺されることになっても、おれは少しも不幸ではない」

姫王子 「今夜、この輝きを心に刻めたのだから……」


血の首の化物 「…………」


107 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/06/29(水) 02:47:26.22 ID:Uyzy/uj5o


ヒュオオオオ ギシ キシ 



血の首の化物 「…………」

血の首の化物 「……ありがとう」


馬車幽霊 「……!」

馬車幽霊 「お嬢様が、王子どのの気持ち悪い言葉にこたえた……」


血の首の化物 「今日みたいな夜に、きらびやかな言葉を贈ってくれる人は」

血の首の化物 「何人かいたけれど、あなたの言葉はその中でも一番多くて、輝いています」

血の首の化物 「つまり、一番愚かということです」


姫王子 「そうか、しかたないさ」

姫王子 「月をひとときでも長く夜空にかえさないためだ。どんな愚か者にだってなる」


血の首の化物 「本当に口のへらない人ね」

血の首の化物 「ワタシの正体も知らないくせに」

血の首の化物 「ワタシが見た目どおりの、ただの若いエルフだとでも?」


姫王子 「エルフだろうが、化物だろうが、何であろうが構わない」

姫王子 「おれは君が好きなのさ」


108 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/06/29(水) 02:58:47.12 ID:Uyzy/uj5o


血の首の化物 「もうやめてください。悪酔いしてしまいそう」


姫王子 「それは好都合」

姫王子 「だが、大きな声じゃ言えないが、この酒場には良い酔い方のできる酒はない」

姫王子 「……………」


血の首の化物 「…………」


姫王子 「…………」


馬車幽霊 「…………?」


姫王子 「……馬車幽霊どの」


ボソ


姫王子 「声がでかいぞ、王子さま」

姫王子 「と言ってくれ」


馬車幽霊 「はあ……?」


姫王子 「はやく」


馬車幽霊 「…………」

馬車幽霊 「声がでかいぞ、王子さま」


姫王子 「おっと、失礼。ここが狭いことを忘れていた」


109 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/06/29(水) 03:09:15.60 ID:Uyzy/uj5o


血の首の化物 「………ほんと……本当に」

血の首の化物 「よく、まわる口……」

血の首の化物 「何だったら、あなたの口を止められるんでしょう」


姫王子 「意外と多いと思うけどね」

姫王子 「酒とか、うまい料理とか……」


姫王子・血の首の化物 「唇とか」



110 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/06/29(水) 03:18:07.12 ID:Uyzy/uj5o


ヒュオオオ オオオ


ハーピィ 「……! ……!!」


バシン ビシッ


鏡の魔女 「ええいっ、もう良い」

鏡の魔女 「貴様は後回しに……」

鏡の魔女 「……む?」


ヒュオオ オオ

キシ ギ キィ……



魔ーレラ 「…………むぅ?」


ク魔エビ娘 「船の軋みが弱くなっていく……」


ロブスター 「風がやむ、か」


貝殻の勇者 「王子どの、うまくいっているのでしょうか」


ろうそく職人 「…………ほう」

ろうそく職人 「ほっほう……!」


貝殻の勇者 「……ろうそく職人さん?」



ヒュオオ オオオ



111 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/06/29(水) 03:33:24.33 ID:Uyzy/uj5o


キシ ギシ キイィ


姫王子 「………う」

姫王子 「ガフウッッ!!」


ビチャ ボタタタ


馬車幽霊 「王子どの!」


姫王子 「……だ、だいじょうぶだ」


馬車幽霊 「しかし、口から血が……!」


姫王子 「大丈夫。胃のあたりの心の傷がひらいて、闇が漏れ出しただけだ」


馬車幽霊 「ただならぬ印象を受けますが」


血の首の化物 「…………」

血の首の化物 「……王子」


キイイイ


馬車幽霊 「………!」

馬車幽霊 「……いや、これは」


キュロリン ピロン


姫王子 「癒しの魔法だ」

姫王子 「……葉巻」


血の首の化物 「……ケケケ」

血の首の化物 「何だよ、髪なんか伸ばして」

血の首の化物 「そんな醜い脂肪の塊までぶら下げやがって」


姫王子 「我ながら、張りはある方だと思うんだけどな」

姫王子 「やっと正気に戻ったか、馬鹿やろうめ」


112 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/06/29(水) 03:50:59.82 ID:Uyzy/uj5o


馬車幽霊 「先ほどの茶番は、何かの呪文だったのでしょうか」


姫王子 「茶番……」

姫王子 「なに、おれと葉巻の友情にも、それなりに歴史があるということだよ」


血の首の化物 「今は懐かしき、出会いの思い出というやつさ」


馬車幽霊 「なるほど……」


姫王子 「くれぐれも思い出させないでくれよ。状況が状況だし、そして傷口が開く」


馬車幽霊 「察しましょう」


血の首の化物 「ケケケ……」


血の生首 「……グルルル」


シュウウウ ボト

ボロロ


姫王子 「葉巻の下半身で生々しくうごめいていた竜の生首たちが、崩れていく……」


血の首の化物 「気持ち悪い言い方するな」


ボロ ボトト


姫王子 「おい、お前も崩れているじゃないか」



113 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/06/29(水) 04:13:52.23 ID:Uyzy/uj5o


血の首の化物 「そうらしいね。ひとまず死ぬしか無いようだ」


姫王子 「おいおい」


血の首の化物 「どのみち崩れかけていたんだ」

血の首の化物 「新しいのにかえた方が良いだろ?」


馬車幽霊 「いったい、私はいつになったら禁断の秘術を秘せるのでしょうか」


血の首の化物 「その時が来たらさ」


姫王子 (体の乗り換えはできるということか)

姫王子 「人騒がせなやつめ。あっちの魔女はまだぴんぴんしているぞ」


血の首の化物 「なあに、麗しの王子さまが頑張ってくれるんだろ」

血の首の化物 「うるさいトカゲどもはほとんど殺しておいてやったから、うまくやりな」


姫王子 「さすが、エルフの長老さまは深い泉のような知恵者でらっしゃる」


114 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/06/29(水) 04:48:26.23 ID:Uyzy/uj5o


血の首の化物 「ため息つくなよ。これはお前のためでもあるんだぜ」

血の首の化物 「こんな血みどろの化物がそばにいたら、王子さまは怖がってしまうだろ?」


姫王子 「出会いかたひとつで関係が変わるのは、よくある話だが」

姫王子 「お前がお前である限り、どんな姿であろうが、おれにとっての葉巻は葉巻のままだ」


血の首の化物 「……言うじゃないか、色男」

血の首の化物 「ここにハーピィがいないのが悔やまれるね」


ボロ ボロロ

シュウウウ


姫王子 (みるみる崩れていく。本当に死ぬわけじゃないと分かっているが)

姫王子 「葉巻……」


血の首の化物 「さっさとハーピィをお前のうしろに戻してやれよ、王子さま」

血の首の化物 「もっとも、お前だと気づかれないかもしれないが」


シュウウウ

ボロロ



115 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/06/29(水) 06:06:51.65 ID:Uyzy/uj5o


ギイイ ギイイ

シュウウウ


血の首の死体 「…………」

黒い髪飾りの白骨 「…………」


姫王子 「……葉巻」


馬車幽霊 「ご安心を。お嬢様の身体はすぐに用意します」


姫王子 「うん。……死体が残るのは良いことかもしれないな」

姫王子 「厄介なことをしでかした本人は死んで終わった」

姫王子 「と、ほかの者たちに思わせられる」

姫王子 「しかし、さて……」


バサ バサ


姫王子 (風がやみ、星空にドラゴンらしき影が三つ)

姫王子 (ハーピィと戦っている魔女と、それが乗る仮面のドラゴン)

姫王子 「やれるものかね」


馬車幽霊 「お嬢様の魔法が消えたことで、上空に逃れた竜たちもすぐに戻ってくるでしょうが」

馬車幽霊 「こちらの戦力も自由になります」

馬車幽霊 「無茶では無いかもしれません」


キイン キイン

ガチャ ガチャ ガチャ


傭兵 「……おお! 結界から出ても大丈夫だ」


ク魔エビ娘 「敵はまだ残っている」

ク魔エビ娘 「が、もはや壊滅状態だ!」

ク魔エビ娘 「これが最後にしよう。戦う心が残っているものは」

ク魔エビ娘 「どうか今一度、この船のために剣をとってほしい!」


貝殻の勇者 「守ることができるのなら、何度でも戦いましょう」


魔ーレラ 「魔法使いたちも、結界に必要な人数を残して戦闘に加われ!」

魔ーレラ 「若いとはいえ、竜。殺しすぎるほどに死力を尽くしてかかるのじゃ!」



116 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/29(水) 09:38:47.12 ID:U6toxZKYO
乙!
王子がこの恥ずかしい出会いかたからなんで葉巻を男だと思っているのか謎だな
117 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/29(水) 11:31:14.83 ID:301+PWPwO
この会話をした当時の体が男だったはずだしこの後さんざんからかわれたんだろう
118 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/29(水) 15:13:59.34 ID:TW8eHX3XO
早く結婚しろよ馬鹿野郎
119 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/29(水) 17:07:49.75 ID:6SUtEeTso
殻を剥いたらついててそれで口を塞がれたんだろう
120 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/29(水) 18:23:02.36 ID:piEynFzI0
これは俺のおごりだ つ軽く炙ったハラミ
(姫王子が葉巻を孕みますように)
121 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/06/30(木) 21:07:11.47 ID:euGACsK8o


ダム ダム ダダム

ガキン ギイン

ワアアアア


青ドラゴン 「グロロロロ」


ブオン バサ バサ


大槌の傭兵 「むう、かたい鱗におおわれた、太いトゲつきの尻尾。背後をとっても、安心できんな!」


老傭兵 「包囲を崩すな。空に逃がすな! 囲んだら、一気にぶっ潰すぞ!」


傭兵たち 「おおー!」


ガイン ガキン

ゴオオオ


赤ドラゴン 「キュオオオン」


船員たち 「さっさと船からでてけ、トカゲの化物!」


ク魔エビ娘 「だいぶ動きが鈍くなっているな」

ク魔エビ娘 「翼を狙っていこう」

ク魔エビ娘 「だけど無理をするな。守りを固めながら、だ」

ク魔エビ娘 「魔法使いは、攻撃よりも防御の魔法を切らさずに頼む!」


カキン ギン ギィン


122 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/06/30(木) 21:23:13.97 ID:euGACsK8o


ドタタタ バシュン

キン キイン ゴオオオオ

ワアアア


姫王子 「おお、さすがは甲板に踏みとどまった猛者たち」

姫王子 「ドラゴン相手に怯まない」


馬車幽霊 「では、ハーピィ様のもとへ行きますか」


姫王子 「ああ」

姫王子 「けれど、葉巻の身体のことは良いのか」


馬車幽霊 「ええ。いますぐにでも馬車に戻って用意をしたいのですが」

馬車幽霊 「お嬢様を欠いた今、私もこの場にいませんと」


キイイイイ

シュオオオ ギュロロロロ


姫王子 「……おお」


馬車幽霊 「守りと力の魔法です」

馬車幽霊 「お嬢様の魔法になれた王子どのには、なじみにくいかもしれませんが」


姫王子 「いや、頼もしい」

姫王子 (あいつ、大事なところで頼りないし)


123 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/06/30(木) 21:28:09.63 ID:euGACsK8o


馬車幽霊 「ああ、それと」


キイン キュロリロン


姫王子 「うん?」

姫王子 「何の魔法だい?」


馬車幽霊 「胸の揺れを軽減する魔法です。おつらそうだったので」


姫王子 「……助かるよ」


馬車幽霊 「戦神の胸当てと名づけました」


姫王子 「名づけちゃったか……」


124 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/06/30(木) 21:35:07.02 ID:euGACsK8o


バササ バサ

バシン


ハーピィ 「%##"=#!'!%"!$#"$$!!」


鏡の魔女 「ぬううう……ええい、鬱陶しい!」

鏡の魔女 「乱れ牡丹、焼き尽くせ!」


仮面の竜 「キャオオオオ」


バフ バフ

ゴオオオオ


ハーピィ 「#)##!"!!」


スカ


鏡の魔女 「ええい、当たらんか」

鏡の魔女 「いまいましい! 悪霊にとりつかれたようだ!」


125 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/06/30(木) 21:42:00.86 ID:euGACsK8o


鏡の魔女 「何度も何度も、いったい何なのか、この生き物たちは……!」

鏡の魔女 「む……!?」


タタタタ

ヒュオ 


??? 「…………!」

姫王子 「えやぁっ!」


鏡の魔女 「!!」


ガキイン


姫王子 「むう……魔法の壁か」


鏡の魔女 「……貴様!」


126 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/06/30(木) 21:58:49.50 ID:euGACsK8o


馬車幽霊 「空中ではなるべく立ち止まらずに」

馬車幽霊 「足場は私が作ります」


姫王子 「うん」


鏡の魔女 「ほほ……そうか、お前か」

鏡の魔女 「どうやって舞い戻ってきたのか知らんが」

鏡の魔女 「死を味わってなお、死に向かうか」


姫王子 「味わう暇もなかったものでね」


タン タタン


鏡の魔女 「空を跳ねるか……小ざかしい」

鏡の魔女 「しかし、お前の従者はしつけがなっておらんな」

鏡の魔女 「小うるさいハエのようだ」


姫王子 「これはこれは、美しき魔女どのの目は調子がお悪いようだ」

姫王子 「女神をハエとは」


鏡の魔女 「ほほっ……何を言うか、可愛そうな坊や」

鏡の魔女 「お前が従うものの正体さえ、見えておらぬのに」


127 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/30(木) 23:32:06.60 ID:G4MHMLt90
乙!
128 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/07/01(金) 00:21:59.64 ID:wQtrD+mro


姫王子 「見えたところで、だろ」

姫王子 「どうだい、もうじゅうぶん暴れたんじゃないか」

姫王子 「ここらで退いてくれるとありがたいのだが」


鏡の魔女 「甘い男だ。いや、ほほほ……今は小娘か」

鏡の魔女 「そうだな……考えてやっても良いぞ」

鏡の魔女 「この目障りな小娘と、あのエルフの命をわらわに差し出すならば」


ハーピィ 「#"%$!!」


バシン バシン


姫王子 「無茶な話だ」

姫王子 (ハーピィがこちらに攻撃をしかけてくる様子はない)

姫王子 (というか、目に入っていないようだ)

姫王子 (本当に、我を忘れているようだな)

姫王子 (さて、どうやって正気に戻すか)


仮面の竜 「……コオオオ」


姫王子 (ドラゴンがたっぷりと炎を咥えて、天を仰いだ)


仮面の竜 「オオオオオ!」


キイイン

バシュン

ゴオオオ ゴオオオ


姫王子 (無数の火の玉が降り注ぐ!)


129 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/07/01(金) 00:39:30.57 ID:wQtrD+mro


ゴオオオ 

パキ バキン ガシャン

ガシャン


姫王子 「噴水のようだ」


馬車幽霊 「噴火ですね」

馬車幽霊 「足場の魔法の壁は、数発で破られます」

馬車幽霊 「お気をつけて」


姫王子 「ああ」

姫王子 「ハーピィは……」


ハーピィ 「……! っ!」


スカ スカ スカ


姫王子 「うん、大丈夫のようだ」

姫王子 「困ったな。火の玉が邪魔で、どこからもドラゴンに近づけないぞ」


馬車幽霊 「おそらく、竜の呼気の長さ以上は続かないでしょうが」


姫王子 「いったん距離を置くか……」


キイイイ パシュン

ヒュカカカカ

ガシャンッ


姫王子 「……うっ!?」

姫王子 (降り注ぐ火の玉に紛れて、輝く矢のようなものが連続で飛んできた)

姫王子 「魔法か」


鏡の魔女 「…………」


キイイイ


馬車幽霊 「厄介ですね。強力な上に連射がきくようです。一度で壁が破られました」

馬車幽霊 「なるべく防ぎますが、かわすつもりでいてください」



130 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/07/01(金) 00:51:11.66 ID:wQtrD+mro


姫王子 「おれを殺した鏡は、使われないのかな」


馬車幽霊 「壊れた状態の強力なアイテムを使う度胸があれば」

馬車幽霊 「分かりませんが」


姫王子 「ふむ」

姫王子 「ハーピィの攻撃も、魔女にまったく届いていないようだが」


馬車幽霊 「つねに守りの魔法が張られているようです」

馬車幽霊 「しかし、まったく届かないというのはおかしいですね」

馬車幽霊 「ハーピィどの以外の者……できれば物理的な一撃があれば、何か分かるかもしれませんが」


姫王子 「ふむ」

姫王子 「火の玉がやんだら、しかけてみるか……」


ザパン 


緑のドラゴン 「ギャオオオ」


姫王子 「!」

姫王子 (ドラゴンに背後をとられた)

姫王子 「海にいたか……!」


131 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/07/01(金) 00:56:00.06 ID:wQtrD+mro


キイイ 

パシュン キュイン


姫王子 (火の玉に、魔法の矢に、ドラゴンに)

姫王子 「ええい、忙しい……!」


緑のドラゴン 「グオオオ」


ドガ ザシュ


緑のドラゴン 「!!?」


姫王子 「!」


貝殻の勇者 「やあああ!」


ロブスター 「…………」


姫王子 (勇者どのに、ロブスター船長)


132 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/07/01(金) 01:05:08.86 ID:wQtrD+mro


ヒュルルル ザブン


姫王子 (ドラゴンを、出てきた海に叩き落した)


貝殻の勇者 「やりましたか」


ロブスター 「いや、竜だ。この程度では死なん」

ロブスター 「よし、勇者どのは我が弟子の加勢を」


貝殻の勇者 「良いのですが、しかしあの竜は」

貝殻の勇者 「ああやって海に潜まれては、また奇襲を許してしまいます」


ロブスター 「奴はおれがしとめる。お望みどおり、水の中でな」



133 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/07/01(金) 01:25:40.08 ID:wQtrD+mro


ゴオオオ ヒュン

ガシゃ キイイ


姫王子 「自殺するつもりか、マスターロブ」


ロブスター 「これは心外だ、若きえびゆでの姫よ」


姫王子 「しかし、海の中でなど無茶今度姫って呼んでみろ永遠に髭を噛み千切ってやる」


ロブスター 「ふはは、その姿のお前に言われるのも心地よい」

ロブスター 「……おれにとって、荒れ狂う海で竜と戦うのは」

ロブスター 「ヘルハウンドが穴で眠る兎を狩るより容易い」


姫王子 「だったら、おれたちと一緒に鏡の魔女を打ち倒すのなんてもっと簡単だろう」

姫王子 「マスターロブ」


ロブスター 「無理だ。おれはあの魔女とは戦えん」


姫王子 「! なぜ……」


ロブスター 「なぜ……なぜかって?」

ロブスター 「おれは世界中の女性を味方にすることはできないが」

ロブスター 「世界中の女性の味方なのだからさ」


姫王子 「…………!」


……キュン


姫王子 「いや、違う、キュンじゃない」



134 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/07/01(金) 01:31:58.15 ID:wQtrD+mro


ロブスター 「では、またあとでな。誇らしき弟子よ」

ロブスター 「はっ」


ダッ


姫王子 「あっ……!」


ヒュルルルル



ロブスター 「…………」

ロブスター 「…………」

オ魔ール 「…………」



ザブン


姫王子 「……行ってしまった」


ゴオオオ ゴオオオ

ゴオオ…… オオ……


馬車幽霊 「火の雨がやみます、えびゆで姫!」


貝殻の勇者 「いきますよ、えびゆで姫!」


姫王子 「…………!」

姫王子 「………おおう!」


タタタタタ


135 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/07/01(金) 02:16:24.71 ID:OYVIcnHD0
えびゆでが付けばなんでも良いのだろうか…
136 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/07/01(金) 02:36:17.85 ID:wQtrD+mro


鏡の魔女 「ほほほ……、勇者か……」


タン タタタ

ダム タム


馬車幽霊 「足場は私が作ります」

馬車幽霊 「つねに動きながら、敵の集中力を散らすように心がけてください」


貝殻の勇者 「分かりました!」


姫王子 (言いたいことはたくさんある。たくさんあるが……)

姫王子 「このやるせなさの全てを、おれは剣に込める……!」


タタタタタ

137 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/07/01(金) 03:06:35.64 ID:wQtrD+mro


仮面の竜 「……グルルルル」


ヒュン ヒュン


姫王子 「元気な尻尾だ……!」


タン タタタ タン

キイイイ

ガシャン バリン


貝殻の勇者 「鏡の魔女どの!」

貝殻の勇者 「なぜあなたは人の姿でありながら」

貝殻の勇者 「このように魔物をしたがえ、人に仇なすのか!」

貝殻の勇者 「今、大陸が、人の世が、大きな災厄に見舞われようとしているときに!」


ゴオオ キイン

キイイイ


鏡の魔女 「ほほほ……! 可愛そうで憎らしい、何も知らぬあわれな小娘であることよ」

鏡の魔女 「ならば世界のかたちも知らぬまま、死ぬのが幸せかもしれぬな……!」


パシュン

ガカカカカカカ


138 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/07/01(金) 03:53:50.33 ID:wQtrD+mro


ガシャン バリン

ドガガガガ


貝殻の勇者 「……ッ」

貝殻の勇者 「これほどの力を持ちながら」

貝殻の勇者 「いいえ、なぜ力を持つものはこうも揃って……!」


タム タタン


鏡の魔女 「わずかばかりの力を得て」

鏡の魔女 「それを力なき他者に役立てるのもよかろう」


キイン キイン


鏡の魔女 「だが、わらわに何の関係がある?」

鏡の魔女 「小娘どもの遊びと、わらわに」


貝殻の勇者 「遊び……!!」



139 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/07/01(金) 04:36:29.85 ID:wQtrD+mro


貝殻の勇者 「てやあ!!」


ヒュン


鏡の魔女 「ほほほっ……」


キイイ ガキン


貝殻の勇者 「………!!」


鏡の魔女 「良い槍だな」

鏡の魔女 「お前よりもずっと価値があるようだ……!!」


キイイ


貝殻の勇者 「しぃッ……!」


タン タタタ

バシュン ガカカカカ

バリン バシャン ガリリリ


鏡の魔女 「ほほ……逃げる頭も持っておるか」


バサ バササ


姫王子 (勇者どのの攻撃に合わせて、魔女が杖を構えた)

姫王子 (魔法で防いだのか)

姫王子 「なるほど」


グ 

キイイイ


姫王子 (……魔法の剣の二本持ちは割と疲れるな)

姫王子 (さて、海老骨の剣の真価やいかに)


仮面の竜 「グルルル」


グオン


姫王子 (尻尾!)


140 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/07/01(金) 05:25:30.94 ID:wQtrD+mro


ガシャン


姫王子 「ええい、この……」


仮面の竜 「グルロロロ」


フオン フオン

ブオン


姫王子 「うわっ!」

姫王子 「おわっ!」

姫王子 「どわーー!」


ヒラリ タンッ

タンッ タタタン

ヒラリ


姫王子 「尻尾か、あくまで尻尾か!」


馬車幽霊 「鏡の魔女の傲慢ですね」

馬車幽霊 「竜の玉座から降りるつもりは無いようです」


姫王子 「ううむ、しかし……」


ヒラリ タンタタ

ヒラリ


姫王子 (気のせいか、身体が軽い)


141 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/07/01(金) 06:55:08.17 ID:wQtrD+mro


姫王子 (いや、軽いというか、やわらかい)

姫王子 (やっぱり軽い)


タン

ガシャン フオン バリィン

タタン


姫王子 (なんというか、馴染む……)

姫王子 (歯車がすべて噛み合っていくようだ)


仮面の竜 「コオオオオオ」


バフ ゴオオ


馬車幽霊 「竜の魔法が来ます。ご注意を!」



142 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/07/01(金) 07:19:20.11 ID:wQtrD+mro


ゴオオオ ゴオオオオ


ハーピィ 「…………!」


貝殻の勇者 「火の雨……!」


鏡の魔女 「ほほほ……どうした、もっと寄らねばわらわは貫けんぞ」


馬車幽霊 「魔女の魔法に注意してください。火の雨に紛れて撃ってきます」


貝殻の勇者 「くうっ……」


タン タタ

ゴオオオ ガシャン バリン


鏡の魔女 「勇者……」

鏡の魔女 「弱きものたちの幻想、まやかし」


貝殻の勇者 「…………」


馬車幽霊 「あまり魔女と言葉を絡ませないよう、ご注意を」


ガシャン バリン ゴオオオオ


鏡の魔女 「しかしお前は、それにもなれぬ偽者だ」

鏡の魔女 「ほほ……夢になれぬまま、夢に踊らされ、夢の果てに消え入るものよ」

鏡の魔女 「あわれなものだな」


貝殻の勇者 「喜んでそうしましょう」

貝殻の勇者 「人にあだなす全てを道連れにできるのならば」


タ タタタ ガシャン


鏡の魔女 「ほほっ……忌々しい」


ゴオオオ

キイン

リン シャン リリィン


姫王子 (自然の声もよく聞こえる)

姫王子 (……自然の声って何なんだ)

姫王子 (まあ良いか)

姫王子 (聞こえるのだから、しかたない)



143 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/07/01(金) 07:36:48.59 ID:wQtrD+mro


トン タタ トン

ズア


鏡の魔女 「……!?」


姫王子 「ぅおらッ!!」


ヒュン ガキイン


姫王子 (止められた)

姫王子 (火の玉と尻尾の攻撃をかわした勢いのまま、後ろから斬りかかってみたが)


鏡の魔女 「貴様……」


ヒュオ


鏡の魔女 「!!」


ハーピィ 「…………ッッ」


貝殻の勇者 「ぜやぁっ!!」


鏡の魔女 「おのれ……!」


ガキイン


姫王子 (ハーピィと勇者どのの攻撃も止められた。挟み撃ちだったのに)

姫王子 (だが剣はもう片方の腕にも残っている)


グルルル

ズバン


仮面の竜 「!?」


姫王子 (星魔法使いの館で手に入れた剣で)

姫王子 (思い切りドラゴンの翼を斬りつけた)



144 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2016/07/01(金) 21:09:30.96 ID:XRFA0COTo
145 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/07/01(金) 22:10:48.52 ID:3sLnDYKy0
乙!
146 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/07/02(土) 20:24:13.60 ID:cA88rkt8O
荒されてるみたいだからage保守
147 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/01(月) 02:40:46.90 ID:QeA3bV+Uo
保守
エビ茹でながら待つ
148 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/25(木) 12:53:42.93 ID:gfIcTC7qO
期待待機
149 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/08/27(土) 03:56:58.38 ID:avMWpTsao


バサッ バササ


仮面の竜 「……ッ! ………ッッ!!」


グラリ


姫王子 「おおっ……」

姫王子 (翼の動きが鈍った)

姫王子 (傷をつけることはできなかったが、剣に込められた鎧打ちの魔法は)

姫王子 (効果を発揮したようだ)


鏡の魔女 「……!?」


グラ グラ


鏡の魔女 「くうっ……魔法じかけの武器か」

鏡の魔女 「ええい、どうした、乱れ牡丹」

鏡の魔女 「この程度で……!」


貝殻の勇者 「ぜあああああっ!!」


鏡の魔女 「……!!」


姫王子 (竜の上で体勢を崩した鏡の魔女に)

姫王子 (すかさず勇者どのが攻撃をしかけた!)


150 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/08/27(土) 04:34:39.78 ID:avMWpTsao


ガキン


貝殻の勇者 「……っ!」


鏡の魔女 「…………」


姫王子 (また止められた。おそらく魔法だろうが)

姫王子 「化物か……」


仮面の竜 「ゴア゛アッ……!」


ボフンッ 


姫王子 「うわっ!?」

姫王子 (ドラゴンがこっちへ火の玉を吐いてきた)

姫王子 「くそっ、苦しまぎれか……!」


タンッ 


仮面の竜 「ギャオオオッ!」


ブオンッ ブオンッ


姫王子 「うおおおおっ!?」

姫王子 (今度は尻尾を滅茶苦茶に振り回し始めた!)

姫王子 (巨人の鞭打ちみたいだ)

151 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/08/27(土) 23:40:32.29 ID:avMWpTsao



姫王子 (しかし、鏡の魔女)

姫王子 (攻撃を防いでいるのは馬車幽霊の使うような魔法の壁かと思ったが)

姫王子 (どうも違う手応えのようだ。魔法には違いないのだろうけれど)


ヒュオンッ


姫王子 「うおっ……」

姫王子 (ドラゴンの尻尾はまだ暴れている)


仮面の竜 「グロロロロ」


ブオン


姫王子 (太いのが厄介だな)

姫王子 (自然の声を聞けば避けられないものでは無いとはいえ)

姫王子 「ええいっ、鬱陶しい」

姫王子 (もう一度、翼を痛めつけてやろう)


タンッ


鏡の魔女 「…………!」


キイン バシュ


姫王子 「!!」

姫王子 (勇者どのとハーピィを相手どりながら)

姫王子 (魔女が魔法の矢を撃ってきた)

姫王子 「うおっ……」


グイン ヒョイ


姫王子 (なんとか空中でかわせたが、体勢が崩れた)

姫王子 (仕方ない。えびゆでの剣の方からの二連撃だ)

姫王子 「うおりゃっ」


ヒュン

キイイ

バシャンッ


姫王子 「!?」

姫王子 (ドラゴンの翼を切りつけた瞬間)

姫王子 (何かが割れる音がした)


152 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/27(土) 23:42:57.46 ID:uWb+bPJf0
更新きたあああああああああああああああ
153 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/08/27(土) 23:48:46.48 ID:avMWpTsao


仮面の竜 「……!?」


姫王子 (ええい、勢いに任せてもう一撃)

姫王子 (鎧打ちの効果を味わわせてやる)


グルン


姫王子 「しいぃっ!」


ヒュン

ズ

ズパンッ


仮面の竜 「ッッッ!!!!?」


姫王子 「うおっ!?」

姫王子 (なんてことだ)

姫王子 (霧を切りつけるよりも手応えなく)

姫王子 (ドラゴンの翼を根元から断ってしまった)



154 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/08/28(日) 00:00:52.77 ID:Ot0pgQNoo


姫王子 (まずいっ、勢いをつけて切りつけたせいで着地が……)


ドシャ


姫王子 「ぐふうっ」

姫王子 (馬車幽霊の魔法の壁……というか床に助けられたが)

姫王子 「見えない分、受身が取りづらいな……」


仮面の竜 「グオォオオオオオ゛ン!!」


グラ グラ


鏡の魔女 「乱れ牡丹!」

鏡の魔女 「馬鹿な。竜の翼を断てる剣など……おのれ……!」


貝殻の勇者 「たああ!」


ヒュゴッ


鏡の魔女 「ッ!」


ガキン


仮面の竜 「オオオオオオ゛!!」


バサッ バササ……

ヒュルルル


姫王子 (片翼だけでもがきながら)

姫王子 (ドラゴンが落ちる……)


ヒュルルル

ドシン


155 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/28(日) 01:15:09.90 ID:mXwo/ge2o
この作者のほかのssなんですが時系列順になってるとこってないですか?
読みたいので…
156 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2016/08/28(日) 01:48:43.22 ID:Ot0pgQNoo
>>10あたりに前スレまでのリンクをはっていますが、
日々の何でもないことが千日分書かれた他人の日記のように、
ためて読むのは苦痛であるだろうことを先に言っておきます。
157 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/08/28(日) 02:09:14.57 ID:Ot0pgQNoo


ギシ ギシ 

モク モク


姫王子 「うっぷ……ペッ、ペッ」

姫王子 「しまった、ドラゴンが甲板に落ちたときのことを考えていなかった」


馬車幽霊 「油断なされませんよう」


姫王子 「ありがとう。もちろんだとも」

姫王子 (さて……)


仮面の竜 「……! ……っ!」


姫王子 (ドラゴンが、弱々しくのたうっている)

姫王子 (上あごと下あごを貫いて、甲板に槍が刺さっている。勇者どのの槍か)

姫王子 (槍はびくともしていない)

姫王子 (そして……)


スタ


貝殻の勇者 「王子どの」


姫王子 「やあ、勇者どの」

姫王子 「槍を手放して、大丈夫なのかな」


貝殻の勇者 「剣があります」

貝殻の勇者 「斧槍だと好ましいのですが」


姫王子 「しかし、やはり」


貝殻の勇者 「ええ」


ゴオオ キン ガキン

ワー ワー 


鏡の魔女 「…………」


姫王子 「地に引きずりおろせたけれど、無傷か」


158 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/08/28(日) 02:24:58.03 ID:Ot0pgQNoo


ハーピィ 「!!! ッッ!!!」


ビシ バシ


鏡の魔女 「…………」


ガキン キイン

ワー ワー


青ドラゴン 「ギャアウウ!」


淫魔幼女 「…………」


縄の傭兵 「ようし、拘束したぞ! 手を緩めるな!」


紐の傭兵 「なんだ、思ったより力が無いなあ、トカゲ野郎!」

紐の傭兵 「このまま塩漬け肉にしてやろうか!」


槌の傭兵 「ようし、ぶん殴れえ!!」


ワー ワー


赤ドラゴン 「キュオオオオ……!」


ク魔エビ娘 「翼と足を止めた!」

ク魔エビ娘 「気を引き締めろ」

ク魔エビ娘 「牙つきの魚は、釣り上げてからが手強いぞ!」


船員たち 「おーっ!!」


ワー ワー

ドタドタ


鏡の魔女 「…………」

鏡の魔女 「……ほほほ」


159 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/08/28(日) 02:40:02.59 ID:Ot0pgQNoo


姫王子 (鏡の魔女が、動きを止めている)

姫王子 (それをハーピィが殴る蹴るしているのは置いておいて)

姫王子 「……しかけたものかな」


馬車幽霊 「まだ何か、罠を隠しているかもしれません。慎重に」


貝殻の勇者 「もどかしいものですね、魔女とは」


姫王子 「ふむ……」


ゴオン ゴオン


姫王子 「うん?」


貝殻の勇者 「……地鳴り?」

貝殻の勇者 「いえ、まさか」

貝殻の勇者 「しかし、下から……」


ゴオン ゴオン ズズズズ

ド ド ド ド ド


姫王子 「また魔法か。魔女の魔法か」


馬車幽霊 「分かりません。ご注意を」


ド ド ド ド ド

ドドドドドドドド

160 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/08/28(日) 02:45:36.29 ID:Ot0pgQNoo


ドドドドドド

ドドドドドドドド

ザパン


魔カロニペンギン 「ペギャア!!」


姫王子 「海から何か飛び出してきたぞ」


貝殻の勇者 「全身鎧の……」

貝殻の勇者 「翼の小さな、鳥のような生き物です」


161 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/08/28(日) 02:55:48.42 ID:Ot0pgQNoo


魔カロニペンギン 「わーっはっはっは!」

魔カロニペンギン 「我こそは魔王軍の隊長、魔カロニ!」

魔カロニペンギン 「……フムフム。どうやら、我々の作戦通り」

魔カロニペンギン 「船は大混乱の様子!」


ワー ワー

カキン ガキイン


魔ーレラ 「……む。まだおったか」


クル魔エビ娘 「マーレラ婆さま?」


魔ーレラ 「……良い。お前は結界に集中せい」

魔ーレラ 「ク魔……には荷が重いか」

魔ーレラ 「さて……」


ガキン キイン


魔カロニペンギン 「くふふふ、おるわおるわ、裏切り者の船に、わんさかと」

魔カロニペンギン 「子エビどもが!」

魔カロニペンギン 「我々の差し伸べた手を取らぬむくい」

魔カロニペンギン 「おれの餌となることで償わせてやろう!」


162 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/08/28(日) 03:13:48.92 ID:Ot0pgQNoo


姫王子 「どうやら魔王軍の者のようだ」

姫王子 「あの鎧を見るに、エルフの森で戦ったマンボウと同等の地位なのだろうか」

姫王子 「船の中が魔物だらけだから、どこかに将がいても不思議では無いのだろうが」

姫王子 「しかし、唐突というか、妙な気もする」


貝殻の勇者 「ようし、ぶっ殺しましょう」


姫王子 「綺麗な声ですごいことを言う」

姫王子 「しかし、今のところは届かないだろう。奴は飛んでいる」

姫王子 「まずいぞ。鏡の魔女、ドラゴン、魔物の軍勢の将をいっぺんに相手どって出来ることなど」

姫王子 「逃げることくらいだ」


鏡の魔女 「…………」


ガキン キイン

ワー ワー


魔カロニ 「……竜? 甲板に見えるあれは竜ではないか!」

魔カロニ 「……ふははは! これは良い!」

魔カロニ 「竜まで従えてきたか!」

魔カロニ 「いや、うむ、このくらいは当然だ」

魔カロニ 「魔王軍に逆らうものは、徹底的に叩き潰さねばならぬ!」

魔カロニ 「わはははは、ようし、突撃だ」

魔カロニ 「魔ンボウのじじいも死に、そして古き将の時代がまたひとつ終わる!」

魔カロニ 「わはははははー!」


ゴオオオ


姫王子 「……くそ、来るぞ!」


163 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/08/28(日) 03:20:03.16 ID:Ot0pgQNoo


魔カロニ 「ははははは!」

魔カロニ 「おれさまが、魔王軍の隊長、いや将軍、魔カロニさまだあ!」


ゴオオオオ


魔カロニ 「わははははは……!」


ザバン ズルルルル


骨頭の竜 「…………」


魔カロニ 「……うん?」




姫王子 「!!」


貝殻の勇者 「海から、醜悪な黒いドラゴンが……」




骨頭の竜 「……アーン」


魔カロニ 「……な」


骨頭の竜 「…………」


バクン


164 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/08/28(日) 03:27:55.06 ID:Ot0pgQNoo


姫王子 「……お、おい、何なんだ」


馬車幽霊 「魔女に注意を」


貝殻の勇者 「……頭部が骸骨の、黒い竜が海から現れて」

貝殻の勇者 「魔王の手先を一呑みしてしまいましたが」


骨頭の竜 「…………」


バサ バサ バサ


姫王子 「翼には長い毛がびっしりと……羽毛か?」

姫王子 「いかん、こっちに来る」


骨頭の竜 「…………」


ボフ バフ


貝殻の勇者 「頭蓋骨の穴という穴から炎が漏れ出しました」

貝殻の勇者 「いけません、離れなくては!」


165 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/08/28(日) 03:38:58.45 ID:Ot0pgQNoo





骨頭の竜 「…………」


バフ バフ ジジジ

ゴゴゴゴゴ


姫王子 (さっきのドラゴンの炎が、ろうそくの火に思える激しさだ!)

姫王子 (体の大きさも、一回りかそれ以上に見える)


貝殻の勇者 「王子どの、早く!」


姫王子 (鏡の魔女は……)


鏡の魔女 「…………」


姫王子 (動かず、か)


貝殻の勇者 「王子どの!」


姫王子 「ああっ……」


ダダダダダ


骨頭の竜 「…………」


166 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/08/28(日) 03:44:52.36 ID:Ot0pgQNoo


ダ ダ ダ ダ


姫王子 「……!」

姫王子 「待て!」

姫王子 「ドラゴンが……」



鏡の魔女 「…………」


骨頭の竜 「…………」


バサ バサ



貝殻の勇者 「魔女の方へ……?」



骨頭の竜 「…………」


鏡の魔女 「…………」


骨頭の竜 「…………」


ガパ



貝殻の勇者 「魔女に向かって、口を……」


姫王子 「……まさか」

姫王子 「いけない、ハーピィ!!」



骨頭の竜 「…………」


バフ ボフ

ゴオオオオオ


167 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/08/28(日) 03:57:08.05 ID:Ot0pgQNoo


クル魔エビ娘 「魔ーレラ婆さま、船に火が……!」


魔ーレラ 「……ぬう」


ろうそく職人 「結界、大丈夫なのでしょうか。もう破られたい放題の気がするのですが!」

ろうそく職人 「絶望的な状況なのでは! 私たち、絶望的な状況なのでは!?」


ニワトコ娘 「あふう、もういつ死んでも悔いはないわ……」


野生の女 「アタシさあ、生まれ変わったら今度は十児の母くらいに生まれたいな」


魔ーレラ 「黙っとれ」


168 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/08/28(日) 04:05:38.12 ID:Ot0pgQNoo


ゴオオオオ


骨頭の竜 「…………」


バサ バサ


貝殻の勇者 「竜が、空へのぼっていく」

貝殻の勇者 「魔女に向かって炎を吐きましたが……」

貝殻の勇者 「仲間割れでしょうか、それとも」

貝殻の勇者 「いえ、それどころではありませんね……」


姫王子 「……ハーピィ! ハーピィ!」


ゴオオオオ

ゴオオオオ

ボハ


ハーピィ 「…………」


姫王子 「おおっ……!」

姫王子 (甲板の炎の中から、ハーピィが飛び出してきた)

姫王子 (無傷で)


馬車幽霊 「鏡の魔女の姿は見当たらないようですが」


ハーピィ 「……!? ……!?」


キョロ キョロ


馬車幽霊 「ハーピィさまも、見失っているようです」


169 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/08/28(日) 04:09:03.91 ID:Ot0pgQNoo


姫王子 「ハーピィ!」

姫王子 「おれだ、王子だ! ここにいるぞ!」


ハーピィ 「…………」


姫王子 「駄目だ。こっちに気がつかない」

姫王子 「鏡の魔女を殺すことしか頭に無いのか」

姫王子 「ハーピィ!」


ハーピィ 「……! ……!」


キョロ キョロ


姫王子 「駄目か。くそっ……」


ダダダダ


ハーピィ 「…………」


姫王子 「ハーピィ!」


ダキッ


ハーピィ 「!?」


170 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/08/28(日) 04:14:52.51 ID:Ot0pgQNoo


ハーピィ 「!? …………」

ハーピィ 「……? ……!! ……」


馬車幽霊 「ハーピィさまが、抱きつかれて戸惑っている……」


姫王子 「ハーピィ、おれだ」


ハーピィ 「……? ………」

ハーピィ 「! ……!」


ジタ バタ


姫王子 「仇討ちなんかやめておくれ」

姫王子 「君の両腕はそんなことのためにあってはいけないだろう」


ナデ ナデ ナデ


ハーピィ 「………!!」

ハーピィ 「……………。………」


姫王子 「…………」


ナデ ナデ ナデ


ハーピィ 「…………」

ハーピィ 「…………」


ダキ

171 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/08/28(日) 04:19:00.61 ID:Ot0pgQNoo


ハーピィ 「…………」


馬車幽霊 「王子どのになでられて、ハーピィさまが、正気に戻った……?」


姫王子 「寝かしつけるとき、こうやってなでていたものさ」

姫王子 「おぼえていてくれたんだな、ハーピィ」


ハーピィ 「…………」


姫王子 「ハーピィ。ちょっと見た目は変わっちまったが」

姫王子 「おれは王子だ」


ハーピィ 「…………」


コクン

172 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/08/28(日) 04:28:27.14 ID:Ot0pgQNoo


姫王子 「……なあ!?」

姫王子 「すごいだろう、ハーピィは」

姫王子 「話し合えば、こんなに素直なんだ」

姫王子 「人の言葉を信じないばかりか錯乱しだすような奴とは違うんだ」


馬車幽霊 「いえ、それは良いのですが」


姫王子 「ああ、そうだった」

姫王子 「そういえば甲板が燃えているな」


馬車幽霊 「いえ、それも……」


貝殻の勇者 「せえいや! たあ!」


ブン フオン


姫王子 (……仮面のドラゴンに刺さっていた槍を手に)

姫王子 (勇者どのが、草を刈るように炎を薙いでいる)

姫王子 「炎がみるみる小さくなっていく。いつの間に、あんな技を」


馬車幽霊 「勇者も、成長するものなのでしょう」


ハーピィ 「…………」


スリ スリ


173 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/28(日) 18:28:06.47 ID:JFA7MtQ+O
寝かしつけるとき撫でていたのか
この王子なかなかどうして色々やってんな
174 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/28(日) 21:16:52.76 ID:40dL7BhMO
>>155ですが、ハーピィのシリーズは>>10にまとめられているのは知っていたのですが、ほかのssも時系列になっているところがあればなーと思いまして
星妖精のssとても好きなので…
175 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/29(月) 16:48:16.08 ID:IqaYC31do
ttp://nanabatu.sakura.ne.jp/new_genre/tHMiOqNMgmiR.html
多分他の所の方が充実してると思うけど見ないから分からん
176 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/29(月) 16:53:02.40 ID:dY6Xu5eNO
ナナバツってまだあんのか…
懐かしい
VIPにいた頃はよく見てた
177 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/31(水) 22:08:09.23 ID:oVrHnJcwo
ありがとうございます!
178 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/15(木) 09:49:35.59 ID:74zZv4Ky0
後は嘘を付いてハーピィが喋ったら元通りだな
179 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/09/15(木) 19:26:05.34 ID:juwVt3BUo


姫王子 「ふむ。他の者たちの戦況は……おしているようだが」

姫王子 「さて、魔女は……」


馬車幽霊 「ええ、それなのですが」

馬車幽霊 「まずいですね。魔女を見失っては……」


姫王子 「ドラゴンの炎にのまれて、無事ということかい」


馬車幽霊 「まさにそれを成し遂げた方が目の前に」


ハーピィ 「…………」


姫王子 「ああ……」



カラン



姫王子 「……ん?」

姫王子 (甲板に何か落ちてきた)


ペンギンの骨


姫王子 「……鳥の、骨?」


180 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/09/15(木) 19:33:51.36 ID:juwVt3BUo


カラララ バラララ

ガシャン ガシャシャ


ペンギンの骨
鎧の破片


姫王子 「鳥の骨と、鎧の破片が降ってくる……」


ハーピィ 「…………」


姫王子 「上か」



バサ バサ バサ


骨頭の竜 「…………」


鏡の魔女 「…………」


バサ バサ バサ バサ



姫王子 「……当然のように竜の上に立っている」


181 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/09/15(木) 19:42:56.48 ID:juwVt3BUo


ヒラ ヒラ


姫王子 「……む」

姫王子 (羽ばたくドラゴンの翼から、黒い……雪のようなものが降ってくる)

姫王子 「……雪の降る時季でもあるまいし。嫌な予感がするな」

姫王子 「あれも魔女の魔法なのだろうか」


馬車幽霊 「おそらく、あの竜によるものかと……」


ハーピィ 「…………」

ハーピィ 「…………?」


ヒラ ヒラ ヒラ


182 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/09/15(木) 21:29:22.20 ID:juwVt3BUo


ヒラ ヒラ ヒラ

ポワン


ペンギンの骨 「…………」

ペンギンの骨 「…………」


カタ

カタタタ


姫王子 「……!?」

姫王子 「骨が震えだした」


竜の骨たち 「…………」

竜の屍肉たち 「…………」


カタタ カタタタタ

グズル グジュルル


姫王子 「甲板の上の亡骸が震えている」

姫王子 「……何が起こっているんだ」



183 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/09/15(木) 22:58:30.09 ID:juwVt3BUo


カタタタタ カタタタタタ

カチャ


馬車幽霊 「これは……!」


姫王子 「今度は骨が……」


カチャリ カチャチャ


ペンギンの骨 「…………」

骨ペンギン 「…………」


竜の骨たち 「…………」

骨竜たち 「…………」


姫王子 「組みあがった?」


骨ペンギン 「…………」


骨竜たち 「…………」


骨ペンギン 「カチカチカチカチ……!」


骨竜たち 「ゴチンゴチンゴチン……!」


ドタドタドタドタ


姫王子 (骨が襲いかかってきた!)


184 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/16(金) 14:57:47.29 ID:2Znn6uTWO
アンデッドは地味につらいな
てかペンギンの扱いwwww
185 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/17(土) 01:03:51.15 ID:qksBBmvzo
ペンギンの骨格は……
186 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/17(土) 02:19:21.58 ID:lzJh7zCGo
ペンギンの足は長い
これ豆な
187 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/12(水) 04:44:50.71 ID:G4YqkZDs0
ペンペン!
ペンペン!
おしりペン!ペン!
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