野原しんのすけ(15)「歯を食いしばれサイジャク、オラのサイキョウはちょっと響くゾ」

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1 : ◆aMcAOX32KD1b [saga]:2016/05/12(木) 01:03:38.44 ID:DANHmsYH0
三(四)スレ目です
前スレ
1スレ目
野原しんのすけ(15)「ベランダに女の子が引っかかってたゾ」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1378302253
2スレ目
野原しんのすけ(15)「ねえヘタレのオジさん、言葉のままに歪めてみれば〜?」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1384085516
2.5スレ目 外伝集
酢乙女あい(15)「『乱雑解放』【ポルターガイスト】を調査しますわ」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1409836335

・クレしん未来パロ×とあるです
・原作再構成と言う名の原作ブレイク
・カプはしんあいと上インの予定
・パロネタ多数

以上がよろしければお付き合いください

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1462982618
2 : ◆aMcAOX32KD1b [saga]:2016/05/12(木) 01:04:39.27 ID:DANHmsYH0
前スレまでのおさらい

野原しんのすけ
今年の春から学園都市にやって来た『原石』で長点上機学園の1年生。
学園都市第8位の超能力者でありながら
第七学区の武装集団のリーダーである駒場利徳に出会い『本物のスキルアウト』を目指すようになる。

超能力『法則無視』【トルネードコール】
物理法則に全く従わない謎のエネルギーを生産する能力
このエネルギーの影響下にある物質、現象も物理法則に従わなくなる為
実質的には『あらゆる物理法則を無視する能力』であり
将来的には『あらゆる法則を無視する能力』になりうるが
しんのすけが使いこなせていない事と多くの研究者が彼の能力を理解出来ない為に第8位という序列である ※元ネタは劇場版 超時空!嵐を呼ぶオラの花嫁

スゲーナスゴイデスのトランプ・レプリカ
使用者の正義の心に応じてあらゆる願いを叶えるトランプ。
使うたびに減っていく。残り42枚+JOKER
※元ネタは劇場版 ヘンダ―ランドの大冒険

タイムパトロールユニフォームジャージSP
キーワードに反応して3回だけ変身する朱色のジャージ
また、襟を立てる事でその場に最適の服装に変わる機能を持つ
残り変身回数 2回   ※元ネタは劇場版 雲黒斎の野望

護り刀・第七沈々丸
斬るべき敵に対して抜き放つと3メートルを超す戦太刀になる懐剣
※元ネタは同上

スパイツール・アクションヨーヨー
自動で回転しリールを巻き取る鉤付ヨーヨー
リールは大人二人分の重さにも耐える ※元ネタは劇場版 嵐を呼ぶ黄金のスパイ大作戦

ゆるゆるの賢者の腕輪
この腕輪をつけた手で扉や戸を開けると任意の扉や戸に空間を繋げられる
学園都市で一人暮らしを始めた時に惑星ヒマワリのサンデー・ゴロネスキー大王から送られてきた。
※オリジナルただし元ネタは劇場版 嵐を呼ぶオラと宇宙のプリンセス

魔法軍手【アスクレピオス】
昔妖精から貰った軍手のレプリカ
触れた物をナオス(直す・治す)効果がある
とあるヘタレの錬金術師の手で魔改造され
回数制限も時間制限も無くなった
 ※元ネタは原作34巻登場『ひとりでなおっ太くん』

酢乙女あい
長点上機学園1年生。しんのすけの幼馴染の少女
世界一大きな財閥グループの令嬢であり、幼い頃から英才教育を受けた
そのためあらゆる学問、武道を一通り身につけている
しんのすけの事を十年間想い続け、最近はしんのすけも気を許してきた

強能力『女帝君臨』【エンプレス】
周囲の人間が酢乙女あいに対して若干好意的になるという精神感応系の能力
本人いわく『かろうじて異能力では無い程度』の『荒事には向かない』能力

ボー
長点上機学園1年生。しんのすけの幼馴染の少年
かつて別の時間軸での未来の自分が造ったロボを再現するため
駆動鎧の技術を学びに学園都市に来た

低能力『自在化鞭』【パンゴリンズタン】
水塊を『一つだけ』『触れ続けている間』『ある程度塩分を含んだ液体に限り』思いのままに操る水流操作系の能力
それ以外の能力制限がほぼ無いため本来は大能力級のはずだが低能力とされているのは
本人は自分を『能力者』では無く『開発者』だと考え
能力判定時は早く終わらせる事を前提に受けているため

野筆ヨハネ(自動書記)
しんのすけが『ダイアナお銀』と『トッペマ・マペット』の記憶をヒントに
魔法で構築召喚した機械人形に
インデックスから分離した『自動書記』を再封印した事で生まれたアンドロイド
外見は15歳くらいの和服美人
通称ペンデックス。自称『禁書目録』の『管理者』
3 : ◆aMcAOX32KD1b [saga]:2016/05/12(木) 01:05:28.70 ID:DANHmsYH0
投下まで少しお待ちください
4 : ◆aMcAOX32KD1b [saga]:2016/05/12(木) 01:31:42.82 ID:DANHmsYH0
学園都市第七学区のとある河川敷、そこでは今『内蔵潰し』と呼ばれるスキルアウトと
全チーム中、最大勢力を誇るチームのリーダー駒場利徳との決闘が行われようとしていた。

「横須賀……覚悟は……良いな?」

「ふっ……駒場よ、貴様はこの期に及んで未だ語る口を持っているのか?生憎だがこの『内蔵潰し』の横須賀、語る物は拳のみ!!」

語るは拳のみと言いつつ、駒場の数倍の台詞量である。

「ふっ……そうだな……では行くぞ!!」
           ツッコム
駒場は特にそのことに触れることもなく拳を握りしめ一息に距離をつめた。
5 : ◆aMcAOX32KD1b [saga]:2016/05/12(木) 01:32:38.57 ID:DANHmsYH0
一方、その場からそう遠くない、同じく河川敷にて、こちらでは二人の超能力者
第七位と第八位が雌雄を決しようとしていた。

「お、どうやらホルモンと駒場さんも始めたみたいだね」

しんのすけの言葉を受けて、その一部を学園都市第七位の超能力者『削板軍覇』は否定する。

「野原、ホルモンじゃないぞ。アイツの名前は『モツ鍋』だ」

それもまた間違っているのだが、削板の中では彼は完全にモツ鍋で定着しているようだ。

「ところで……意外ですな、こうしてソギーとオラが戦うことになるなんてね」

削板軍覇の人柄、普段の言動はある程度有名であり、馬鹿正直で人助けに励む彼をしんのすけは好ましく思っていた。
そんな二人が戦わんとしているのには勿論理由が在る。
6 : ◆aMcAOX32KD1b [saga]:2016/05/12(木) 01:33:18.42 ID:DANHmsYH0
そもそものきっかけは、敵対スキルアウトチーム『大蜘蛛』が警備員によって大量に逮捕、壊滅したことによって
彼等がねぐらとしていた第十学区『ストレンジ』が駒場利徳の縄張りに加わったことだ。
元々しんのすけがチームに居た事で統括理事会からも数人ほど資金面では援助をしていた所に、
廃墟ではあるが一応まだ居住可能な多数の家屋を含めたそれなりに広い土地、それらが手に入ったことで、自警団員の大幅増加につながったのだ。
これにより駒場利徳のチームの勢力は拡大、今や第七学区内において集団での活動的なスキルアウトは存在せず、
むしろ一部では『武装集団』【スキルアウト】と言えば自警団をさす言葉として使われ始めていた。
しかしこれに待ったをかけたのが『内蔵潰し』であった。      サシ
スキルアウト達の間ではそれなりに名の知れた存在である彼が駒場に一対一での勝負を申し込んだのだ。
7 : ◆aMcAOX32KD1b [saga]:2016/05/12(木) 01:34:08.19 ID:DANHmsYH0
自分が駒場に勝てば、これ以上の人員増加や活動範囲の拡大やめろ。その代わり自分が負けたらおとなしく傘下に入る。という条件で。
本来受ける必要の無い話。
勝って手に入るものと、負けて失うものがつり合って無い勝負。
しかし駒場は横須賀の挑戦を受けた。
一人の漢が、不退転の覚悟で挑むのならば、それには応えるべきだと。
応えるに値する漢だと、駒場利徳は横須賀に対しそう思ったのだ。
しかししんのすけがこれに異を唱えた。
         でば         ケンカ
「駒場の親分さんが出番るまでも無ぇ、この拳華ぁ……アッシに任せてくだせぇや」

映画好きで任侠物もよく見るしんのすけは、駒場をはじめ浜面などスキルアウト仲間達が相手だと時々このような芝居がかった話し方をする。
8 : ◆aMcAOX32KD1b [saga]:2016/05/12(木) 01:34:56.81 ID:DANHmsYH0
横須賀の相手は、駒場では無く自分がするとしんのすけは言ったのだが、そこに更に削板がしんのすけの相手は自分がすると言い出した。
こうして、今夜の決闘が二組行われることになった。

「モツ鍋は根性のある奴だ。あの駒場って奴もな、ならそんな根性ある二人の決闘、俺は根性ある男として、誰にも邪魔はさせねえ」

横須賀は過去30回以上も削板に挑み、返り討ちにあっている。
そしてそれでもなお諦めない横須賀を、削板は気に入っていた。

「どうしてもと言うんなら俺を倒すことだな野原、お前の根性を俺に見せてみろ!!」

ドンッと、削板の台詞と共に彼の背後の地面が七色の煙を上げ爆ぜる。

「はあ、やれやれだゾ。相変わらず話してると『根性』ってワードがゲシュタルト崩壊だし」

腕輪をした右手を改造制服の懐に入れ、しんのすけは言った。

「でも、『正義』『勇気』『努力』『ド根性』は……オラも大好きな言葉だ、ゾッ」

片手を服に隠したまま、しんのすけが削板に向け走る。

「来い!!野原ぁぁぁぁぁ!!」

学園都市第七位の超能力者が拳を握り吼える。
本来そちらがメインイベントであるはずの駒場対横須賀戦を横目に、超能力者同士の対決がはじまった。
                   カネ な
そしてソレは、一部の者達にとっては正に銭の実る大樹であった。

「みんな元気かー?今夜は映像付きで生放送、リアルタイム配信。海賊ラジオDJだ」
9 : ◆aMcAOX32KD1b [saga]:2016/05/12(木) 01:35:50.70 ID:DANHmsYH0
今夜はここまでです
続きは多分土曜日の夜九時の予定です。
GW中にとりためしてた日朝一気視してから海賊ラジオDJがCVぐっさんで脳内再生される…
10 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/12(木) 01:40:03.34 ID:tldaAXTlo
乙です!やっぱり次スレ突入すると気分が滾るな!
11 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/12(木) 02:01:02.21 ID:OekC/ruKo
乙です
12 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/05/12(木) 02:56:46.08 ID:0d089UOD0
13 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/05/12(木) 02:57:52.49 ID:0d089UOD0
乙乙
14 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/12(木) 02:59:55.16 ID:BnaqUHaho
復活した救いのヒーロー
腐女子に媚びてるだのなんだの言われるけどあの容姿で萌えられたらそれは腐女子ではなく801の奥様方なのではないのだろうか
15 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/12(木) 07:14:14.74 ID:uDRZwhx50
塩沢さんもそういう奥方様達からの人気も有ったそうだし必然なのかもしれない

複数の画面から実体化(&分身)が出来るんだっけなぶりぶりざえもん
16 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/12(木) 07:21:16.39 ID:9lUacvUo0
待ってた、期待
17 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/12(木) 17:35:31.22 ID:tjM3C68io
しんのすけの概念としてのぶりぶりと電子生命体ぶりぶりどっちも好き
18 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/12(木) 20:28:13.93 ID:lbbN62udO
おつ
19 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/29(日) 12:40:33.14 ID:c2twl6lAO
しんのすけとひまわりの能力名の元ネタは映画のタイトルだし、サキちゃんが能力者になったら能力名はやっぱり夢幻世界(ユメミーワールド)とかになるんだろうか
20 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/04(土) 06:10:57.90 ID:QRbVihb60
まあいつの土曜日かは言ってなかったからなぁ
21 : ◆aMcAOX32KD1b [saga]:2016/06/04(土) 21:32:23.82 ID:SbOZMyGA0
お久しぶりです1です。これから投下します。

>>10
新スレ早々に間をあけてしまいごめんなさい
>>14-15
意外と言えば意外、納得と言えば納得のキャスティングでしたね
>>19
そのパターン(1のセンス)だと『夢見世界』【ナイトメア】って感じですね
でも彼女は父親が過保護気味なので学園都市の超能力開発は受けないんじゃないですかね
22 : ◆aMcAOX32KD1b [saga]:2016/06/04(土) 21:33:59.16 ID:SbOZMyGA0
どこかの部屋で、誰かのパソコンのスピーカーから、ノイズ混じりの軽快な口調が流れた。

「今日お送りするのは、そう!!一部界隈では噂になってたから知ってる奴も居るだろうが……なんと超能力者同士の決闘だ!!」

真っ暗だったパソコンの画面が第七学区の河川敷を映したものに変わる。
右にしんのすけが、左に削板が、そしてその周りにはまばらだが少なくない数のギャラリー達が映っていた。
       白ラン       ブレザー
「観えてるか?学生服の方が第七位、改造制服の方が第八位だ。そんなワケで、今夜はこの2人の対決の様子を解説付きでおとどけするぜ!!」

海賊ラジオDJは、一拍置いて言葉を続ける。

「……とは言ってもだ、俺も能力開発の専門家ってワケじゃあない。なに、心配するな、だからゲストを呼んでるのさ……この人だ!!」

「私も別に専門家ってわけではないのだけど、よばれた以上仕事はするわね」

スピーカーからの声に若い女性のものが加わった。

「私の事は……そうね、『ヘソ出しカチュ−シャ』と名乗っておくわ」

「今夜は俺達2人でお送りする海賊ラジ―って早速決闘が始まったみたいだな」

しんのすけは今日、削板と戦うにあたり、様々な準備をしてきた。
幼馴染の発明家や、昔からの知り合いである博士の元を訪ね、便利な道具を手に入れたり、
スゲーナスゴイデスのトランプを使い、強力な武器を前もって用意しておくなどだ。
そのため現在、『ユルユルの賢者の腕輪』によって改造制服の内ポケットとつなげられた空間には、幾つもの武器や道具、秘密兵器が並んでいた。

「先ずは小手調べ、喰らえ『千人殺し』!!」

内ポケットから引き抜かれた右手には、束ねられた40を超す銃口を持った、巨大かつ奇抜な銃がにぎられていた。
23 : ◆aMcAOX32KD1b [saga]:2016/06/04(土) 21:34:45.55 ID:SbOZMyGA0

ドガガン!!

引き金がひかれ、全ての銃口から一斉に弾丸が放たれ、独特の銃声が鳴る。

「はっ、初手から銃だよりか!?どうした!?お前はそんな根性なしじゃねえだろう野原!!」

真正面至近距離から撃たれた散弾を、全弾跳ね返して削板はしんのすけに語りかける。

「ぬお!?跳弾かすった……勿論だゾ、言ったでしょ?今のは小手調べだって」

懐に多連式火縄銃『千人殺し』をしまい、続いて携帯式非殺傷性ロケットランチャー『しんちゃんボンバー』を取り出す。
この間合い
「至近距離でそんなデカ物は悪手だぜ?もっと根性だせよ!!」

削板は左手でロケットランチャーを横から殴り照準を外させ、がら空きとなったしんのすけの胸に右拳を叩きこんだ。

「げほぉ!?」

その場にランチャーを残して、しんのすけの身体は後方に飛ばされる。

「流石超能力者!!初っ端からすげえな!?じゃあ解説たのむぜ『ヘソ出しカチュ−シャ』、まずあの銃はなんなんだ!?」

しんのすけと削板に距離ができたところで、海賊ラジオDJが質問を入れる。

「デザインはリボルバーが主流になる以前の銃で、ペッパーボックスピストルとか、その形状から蓮根銃とか呼ばれている物に似ているけど」

質問を受け、女性の声は解説する。

「ソレらはあくまで連射性を求めたもので、あんな風に散弾銃としては使わないものなのだけど」

「ほう、オリジナルカスタムの銃か。ところで第八位の懐からやたらデカいのがホイホイ出てくるのは?」

「彼の能力には謎が多くてね……テレポ−ターだと言う説もあるわ。私は支持してない説だけど」

「おっと、第七位が何かするようだぞ」
24 : ◆aMcAOX32KD1b [saga]:2016/06/04(土) 21:35:46.36 ID:SbOZMyGA0
削板が右腕を振りかぶる。

「すごいパーンチ!!」

技名と共に拳が突き出され、『その延長線上にある空間』が爆ぜた。

「ぬおうっ!?」

しんのすけは爆風にあおられ、更に両者の距離が空く。
              根性
「どうした!?距離があれば俺の能力が届かないとでも思ったか!?」

「ソギーったらテンション高いなあ、これで弦ちゃんやしいぞう先生、修造さんに会ったらどうなっちゃうんだろ?」

むしろそこまで暑苦しいと、逆に見てみたい気もするけど。
などと言いながらしんのすけが次に取り出した物は、オモチャの光線銃のような外見をしていた。
今夜の対決に備え、北与野博士に新しく作り直してもらったそれの名は、
『平面画像実物立体変換機・改』通称『飛び出しライトガンNEO』と言った。
その名の通り、平面画像を読み取り一分間だけ『実体の在る立体映像』に変換する機械だ。

「ほいっと」

しんのすけがライトガンの前にスマホをかざす。
するとアンチスキルでも正式採用されている盾が現れ、しんのすけはその陰に身を隠した。

「時間稼ぎのつもりか!?だとしたら、ガッカリだぜ!!」

盾もろとも吹き飛ばそうと、削板が再び腕を引き絞る。

「すごい―」

「隙あり!!」

先程の攻撃が放たれる前に、しんのすけが削板の背後から襲いかかった。
25 : ◆aMcAOX32KD1b [saga]:2016/06/04(土) 21:36:41.09 ID:SbOZMyGA0
「なに!?」

削板はすぐに反応し、振り返ってしんのすけを視界に捉えた。
しんのすけの右手は既に懐に入れられている。

「次は何を―ガッ!?」

しかしその右手は抜かれず、削板にくわえられた攻撃は左手によるものであった。
しんのすけのその手には、バチバチと放電する竹刀の様な武器がにぎられていた。

「『鋼鉄親父の電磁竹刀』……すごいな、ボーちゃんってば完全に再現してる」

幼馴染から渡されたソレは、かつてしんのすけの『もう一人の父親』が手にしていた物だ。
その性能は一言で言えば、不使用時にはボールペンサイズにまで縮小する機能を備えたスタンロッド。

「もいっちょー!!」

電流により筋肉が硬直する一瞬を狙い、しんのすけが削板に追撃をしかけるが、
削板はそれを躱してしんのすけの足元を爆発させる。

「おお!?」

再び、両社の間には十メートル弱の距離ができる。
       根性
「へっ、すげえ能力だな。まさか瞬間移動で俺の背後をとるとは」

「持ってる道具の性能だけどね、ほとんどは」

電磁竹刀の一撃を受けてなお、削板にはダメージ等無い様子であった。

「やっぱり、普通に勝つのは無理っぽいかな〜?」

そんな削板を前に、しんのすけも台詞とは裏腹に表情は余裕を崩さない。
            カクウエ
「ならどうする?相手が第七位だからって諦めるのか?」

しんのすけの出方を見つつ、削板がジョークとして訊く。
そして予想通りの返事と、予想以上の解答が、しんのすけの口から放たれる。

「まっさか〜、ちょっと普通じゃない勝ち方をすれば良いだけだしね」

しんのすけは新たな武器を両手に、勝利を宣言する。           カタパルト
先程のライトガンにも増してオモチャらしい外見をした二丁の銃は、二門の射出機構を有し、
その上には光沢のある球体が1つずつ乗っていた。

「ほい!!」

しんのすけが引き金をひく。

「効くかそんなもん!!」

撃ち出された四つのタマは削板の腕の一振りに防がれる。

「なに!?」

しかしタマはそこで割れた水風船の中身の様に変形、さらには体積を増して削板の全身を包み込んだ。

「『アクショントリモチガン・ウィズ・ヒママタージェルバレット』これでゲーム・セットだゾ。ソギー」

しんのすけの言うように、削板は自身を包む球体の中でもがき暴れるが、
そのジェルの様な液体の様な、それでいて内部で呼吸はできる、不思議な空間からの脱出は出来ずにいた。
26 : ◆aMcAOX32KD1b [saga]:2016/06/04(土) 21:37:28.24 ID:SbOZMyGA0
「おおう、コイツは番狂わせ勝負事は下馬評通りとはいかないな」

第八位が第七位を下すという結果に、海賊ラジオDJが本音をこぼす。

「もっとも、超能力者の序列と言うのはその能力を研究したことによってもたらされるであろう利益の順、つまり戦闘力とは関係ないのだけど」

「まあそれこそ俺たちには『関係ない』話さ」

「そうね自分の仕事をするだけだわ」

「じゃあ解説たのむぜ。まず盾を出したと思ったら背後からの強襲だ」

「上手いてね、ただ背後に移動するだけじゃなくてその直前に盾に隠れるから、相手はそこに居ると思うもの」

「そしてスタンロッドの一撃だ」

「今まで右手でばかり攻撃していたから、左手での暗器攻撃がはまった形ね。追撃には失敗したけど」

「そしてこの『決まり手』だぁ!」

「ホロゥポイント弾の様に着弾時に変形するよう造られてる弾丸はあるし、ネットを撃ち出す捕縛用の銃器もあるけど、あんなのは初めて観るわ」

「じゃあ最後に全体を通して、ズバリ第七位の敗因は?」

「あら、それにはまだ早いと思うけど」

「おや、それまたどうして?」

「削板軍覇には、こんな終わり方はありえない」
27 : ◆aMcAOX32KD1b [saga]:2016/06/04(土) 21:38:48.01 ID:SbOZMyGA0
ギャラリーの一人がしんのすけに声をかけた。
                   アッチ側   ケリ
「野原さん、今浜面さんから連絡あって、駒場さんの方も決着がついたそうッス」

その男は、スキルアウトの下っ端新人のものであった。

「で、結果は?」
 モチ
「勿論、ウチらの大将の勝ちッス!!」

駒場と横須賀の勝負が終われば、しんのすけと削板が闘う理由もなくなった。
そう考えてしんのすけが武器を懐にしまいこんだ、その時。

「未だだ!!未だ俺とお前の勝負は!!俺の根性は未だ終わって……無えぇぇぇ!!!!」

叫びの食後に爆発音。
そしてそれと共に削板を包んでいた球体が四散する。
      なか
「おわ、あの内部って『概念レベルで『力づく』の否定』がされるのに……」

かつて自分の両親には解く事が出来なかった拘束を打ち破ってみせた削板に、しんのすけは驚きと敬意をいだく。

「モツ鍋が負けちまったなら、俺と野原が戦り合う意味なんてもう無えのかもしれねえ……けどな!!」

一息置き、ジッとしんのすけと眼光をぶつけ合わせる。

「こんな終わり方、俺の根性が認めねえんだ……お前だってそうだろう!?野原!!」

「うん、そうだね」

しんのすけは上着を脱ぎ捨て、先程の戦闘により解けかかっていたネクタイを締め直すと、
その場に一度しゃがみこんでから大きく背のびする様に両手を左右斜め上に突き出しながら立ち上がった。

「宇宙キターーー!!」

ぶおん、と。しんのすけを中心に風が吹いたように周囲の者達には感じられた。

「すげえな、それがお前の本気か?」

気配の変わったしんのすけに、削板が訊く。

「このネクタイはコズミックエナジーの力で装着者が持つ全ての身体能力を63倍に上げるんだゾ」

「勝負するってことで良いんだな」

「おう、タイマンはらせてもらうゾ!!」

右拳を、胸を軽く二回叩いて前に突き出す。

「いくぜぇぇ!!超……すごい……」

固く握りしめた右拳を、削板はゆっくりと力を貯めるように大きく引きしぼる。

「ぬおおおおおおぉぉぉ!!」

対するしんのすけはその場に両手をつき、胸を中心に脚を大きく振り回す。
いわゆるブレイクダンスの様な動きをしていた。

「パンチ!!」
ローリングケツダケアタック
「回転式唯尻撃!!」

両者の攻撃はほぼ同時に放たれた。
削板の突き出した拳がその先にある空間を爆砕し、それによって生じた爆風を切り裂きながら、しんのすけの全身が砲弾のように削板に迫る。
そして……
28 : ◆aMcAOX32KD1b [saga]:2016/06/04(土) 21:40:07.79 ID:SbOZMyGA0

ドバァン!!!

豪腕メジャーリーガーの投じた100マイルボールがキャッチャーミットにおさまった時の音を、
数十倍にしたかのような轟音をあげて、削板の拳と、しんのすけの臀部中央がぶち当たった。

「うわ、あんなのバラエティー番組のケツバットやタイキックの比じゃないだろ。こりゃあ第七位の逆転勝ちか?」

海賊ラジオDJの言葉を、しかしヘソ出しカチュ−シャは否定する。

「いや、アレをよく見ろ!!」

「なっ!?嘘だろオイ!?」

しんのすけと削板の両者は、互いの最高の技をぶつけ合ったままの姿勢で動かずにいた。
削板は拳を前にし、しんのすけはその拳の先で空中に浮いているかのように。

「あれも第八位の能力か!?」

「そうだ、ただし超能力なんかじゃなく、純粋な身体能力だけど」

「なに?どういうことだヘソ出しカチュ−シャ!?」

「解説しよう、先程一見ぶつかり合った様に見えた互いの一撃だが、野原しんのすけは削板軍覇の拳をくらってはいない」

「あん?ならどうなったんだ?」

「受け止めたのよ、まるで真剣白刃取りの様にね」

「は!?じゃあ今第八位は拳を挟んだ尻で全体重を支えているってことかよ!?」

「その通り、削板軍覇の右手は今、常人ならば拳が砕けるほどの力で締め上げられているはずよ」

「マジかよ……」

「そしてこうなった以上、勝負はもうプライド……意地の問題ね」

しんのすけは腰を少しでもひねれば削板の手首をへし折れるだろう。しかしそれは自身の大臀筋が、削板の拳を砕けないと認めるに等しい。
削板は腕を振りしんのすけを地に叩きつける等の追撃も可能だろう。しかしそれは己の拳の、相手の大臀筋に対する敗北を認めるに等しい。
故に、両者は動かない。いや、動けない。

「……ぐっ」

そして……遂に決着の時が訪れた。
 ・
「俺の負けだ……お前の勝ちだ、野原!!」
29 : ◆aMcAOX32KD1b [saga]:2016/06/04(土) 21:41:20.99 ID:SbOZMyGA0
右手を下げ、削板は自身の敗北を宣言する。
わっと、周囲から歓声と悔し気な声が上がる。
前者が駒場の、後者が横須賀の傘下の者達だろう。

臀部から拳を解放し、しんのすけは削板と向き合い握手する。

「良い……勝負だった!!」

「おう、またいつか……リベンジするぜ!!」

超能力者2人の決着がつき、その様子を映すパソコンのスピーカーから流れる海賊ラジオも、締めに入る。

「今度こそ終わったな、じゃあ改めて第七位の敗因は?」

「削板軍覇はあのジェルによる拘束を弾き飛ばすのに、だいぶ体力を使ってしまっていたのかもしれないけど」

「はうほう、やっぱりアレが決め手になったんだな」

「とは言え、ここは素直に野原しんのすけに賞賛をおくるべきかしら」

「と、今夜はそろそろお別れだ。お相手は海賊ラジオDJと」

「ヘソ出しカチュ−シャでした」
30 : ◆aMcAOX32KD1b [saga]:2016/06/04(土) 21:42:08.85 ID:SbOZMyGA0
マイクのスイッチが切られ、DJが退室し、ヘソ出しカチュ−シャこと『雲川芹亜』は思案する。
彼女は表向きはただの一学生の身分だが、その実態は統括理事会の一人『貝積継敏』から相談役【ブレイン】として雇われている程の才女だ。

(今回、内蔵潰しは自分が負ければおとなしく傘下に入ることを条件にしていた……)

ならば、それに助っ人として参加した削板軍覇はどうなのだろう?
もし、彼も駒場利徳の傘下に加わることになれば最下位とその一つ上とは言え、超能力者二名を擁する組織の出来上がりだ。
いくら『野原』のネームバリューに守られていようとも、いよいよ手を出す者が出てくるかもしれない。
そもそも『野原一家』【アンタッチャブルファミリー】の情報は、それを知る者達の間でも不確かで信憑性は高くないと思われている。
それどころか統括理事会メンバーでも全員がその存在を知っているわけでもない。
抑止力としては頼りないものだ。

(せめて第五位と第三位の二人も自警団の活動に巻き込んでレベル5が四人在籍する組織にられば……)

あるいは統括理事会の三分の一、四人以上がバックに付けば、少なくとも他の統括理事はは手を出さないだろう。

(貝積に自警団を支援するよう言っておくか)

不確かな情報だが、亡本裏蔵と誰かもう一人、既に二名の統括理事を味方に付けているらしい。
ならばあと一人くらい―――

(ダメだな、抑止力になりうるのは先の案を両方とも実現した場合だ)

圧倒的な武力等、よほど理解しやすいものでなければ抑止力たりえない。
何故なら駒場利徳率いる自警団は、本当なら既に充分『手を出すべきでは無い』組織だ。
背後には統括理事があり、超能力を有する武装集団。
これを相手に事をかまえようとするのは余程のバカだけだろう。
つまり「所詮レベル5の中では最下位だ」と侮るような連中だ。
逆にそういう輩にとっては、今までは『手を出す価値も無い組織』だったわけだが……
それも今夜の決闘で状況が変わった。

(はぁ、そんな馬鹿達のせいで学園都市そのものが滅びかねないんだから、勘弁してほしいのだけど)

兎に角、自分がすべき事は貝積を動かして可能な限り自警団の味方になっておくことだ。
雲川芹亜は連絡用の携帯端末を取り出した。
31 : ◆aMcAOX32KD1b [saga]:2016/06/04(土) 21:42:50.50 ID:SbOZMyGA0
「この……新装備が無ければ……あるいは……負けていたのは俺の方だったかもな」

コピー機が用紙を吐き出すような単調なしゃべりかたで、駒場利徳は自身の足元に仰向けに倒れている横須賀に話しかけた。
   ハードテーピング
「ぐっ『発条包帯』ではないな、なんなんだそれは?」

『発条包帯』とは警備員の駆動鎧等に使用されている人工筋肉で、装備者の身体能力を大きく強化してくれる。
しかし駆動鎧には付いているリミッターが無いため、装備者の身体にかかる負担は駆動鎧の比では無い。
いわゆる『ジャンク品』の域を出ないものだ。

「しんのすけの……幼馴染の作品だそうだ……もっとも……オリジナルでは無いそうだが」

『発条包帯』はその名が示すように帯状で、服の下で体に張るようにして装備する物なのだが、
今の駒場は服の上から橙色のチューブ状の人工筋肉に包まれていた。

「親分さん、大事無ぇようで」

しんのすけがやってきて、駒場に話しかけた。

「お前もな……しんのすけ」

「このネクタイがなきゃ危なかったゾ」

正直、このネクタイには良い思い出は無い。
初めてこのネクタイの影響を受けた日は、病気になったと思い込み寝込んだほどだ。
後日父親から話を聞き安堵したが、当のネクタイはいつの間にかなくなっており、今身に着けているのはスゲーナスゴイデスのトランプで用意した物だ。

「でも思ったより早く終わったから、この後時間空いちゃったゾ」

「あ、じゃあ手伝ってくれないか」

駒場と横須賀の対決を観ていたため近くにいた浜面が、しんのすけに言った。

「手伝うって何を?」

「最近、路地裏にマネーカードがよく落ちてるんだとよ。」

「探して拾い集めるってこと?」

「そうそう、デート資金貯めたくてさ」
32 : ◆aMcAOX32KD1b [saga]:2016/06/04(土) 21:43:31.17 ID:SbOZMyGA0
今夜はここまで、次回は木曜の夜の予定です
リア充爆ぜろ
しんのすけって如月弦太朗(仮面ライダーフォーゼ)、熱繰椎造(幼稚園の先生)、松岡修造(何故かテニスではなく水泳コーチ)と知り合いなんですよね……

↓今回出てきた装備・技の(元ネタの)原作登場回
多連結式火縄銃『千人殺し』・映画雲黒斎の野望
非殺傷性ロケットランチャー『しんちゃんボンバー』・アニメSPクレヨン大忠臣蔵
平面画像実物立体変換機『飛び出しライトガン』・原作22巻
鋼鉄親父の電磁竹刀・映画ガチンコ!逆襲のロボとーちゃん
アクショントリモチガン・映画アクション仮面VSハイグレ魔王(桜リリ子が使用)
ヒママタージェル・映画嵐を呼ぶ!オラと宇宙のプリンセス(おつまみ大臣マーキュンが使用)
スーパーネクタイ・原作40巻
ブレイクダンスからのヒップアタック・映画嵐を呼ぶジャングル

橙色のチューブ状の人工筋肉・映画ガチンコ!逆襲のロボとーちゃん
33 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/04(土) 21:45:32.70 ID:eolegVJJo
乙です
34 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/06/04(土) 21:47:59.67 ID:un65rGAmO
乙です
ネクタイを締め直したあたりは、しんのすけつながりで仮面ライダードライブの泊進ノ介のオマージュかと思った
35 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/04(土) 21:59:33.48 ID:xDPZeSfAO
乙です
おお、ロボとーちゃん縁の品が二つも
超電磁砲のロボ繰歯が学園都市版ロボとーちゃんって感じだったしタイムリーな
しかしこれはしんのすけ絶対首つっこむな…
36 : ◆aMcAOX32KD1b [sage saga]:2016/06/10(金) 00:46:21.96 ID:jAO8W5jM0
1です。これから投下します。
>>34
「ひとっ走りつきあえよ」もいつかやります
>>35
コピーが、自分がコピーと気づいてしまった時の絶望。アイデンティティの崩壊……
メカ繰歯ちゃんは今後どうなるんでしょうね
37 : ◆aMcAOX32KD1b [saga]:2016/06/10(金) 00:47:45.81 ID:jAO8W5jM0
浜面に連れられてやってきた路地裏では、噂の通り探せば早々にマネーカードが見つかった。
「もう三枚目だゾ、結構簡単に見つかるもんだね」

「室外機の影とかが狙い目みたいだな。金額にバラツキがあるから幾ら儲かるかは運次第だけどよ」

「お、コレ五万円のやつだゾ」

浜面としんのすけが話しながら、カードを次々に見つけていく。

「しかし、なんだってマネーカードが見つかるようになったんだろな?」

ふと、浜面が疑問を口にする。

「そりゃ誰かがばらまいてるってことでしょ。確かお金を捨てるのは犯罪だけどカードは違うとかって法律も在ったような気がするし」
         くに       このまち
この街の中での事は日本の法律では無く学園都市の条例が優先されるが、カードをあちこちに隠してまわっている何者かが
ソコを気にして現金では無くマネーカードにしたのであれば、おそらく条例でもそうなのだろう。
38 : ◆aMcAOX32KD1b [saga]:2016/06/10(金) 00:48:40.22 ID:jAO8W5jM0
「何が目的なんだろうな?まあ俺としちゃ儲かるから良いんだけどさ」

「シークレット・サンタ的なアレ?とかじゃ無いなら……」

「とかじゃ無いなら?」

善意の寄付でないのなら、理由は何なのだろう。
浜面はしんのすけの予想を聞くべく、その先をうながした。
            コト
「第七学区で、何か大きな事件を起こす気か、あるいはこれから起きるから阻止したいのか」

「真逆の二択かよ。なんでそう思った?」

「さっきから何人かと狭い中をすれちがってるけど、普通は路地裏ってそんな人多くないでしょ」

「えと、だから?」

その説明では理解できず、浜面がさらなる補足を求めた。

「普段人の目が向かない所に、不特定多数の人が出入りすることで後ろ暗い事をできなくする……ってことだゾ」

「ああ成程。じゃ、その逆に事件を起こす気ってのは?」
 スキルアウト  ストレンジ
「自警団の仲間達で第七学区外に引っ越して行ってる人達も多いんじゃないかな」

「まあそりゃガチの路地裏生活の連中にとっては暮らしにくくなっただろうな。噂の出る前と後じゃ」

「そしてそれは、第七学区で活動する自警団員の人数が減っているってことだゾ」
シマ
縄張りが増えたのと同程度、自警団員の数も増えたが第七学区と第十学区では、元の治安を考えれば
第十学区により多人数を置くべきなのだろう。
しかしそれで、第七学区での活動がおろそかになってはたまらない。
      ジャッジメント アンチスキル
「まあ正規の風紀委員や警備員がいるから、それだけじゃ前準備としてはオソマツだけどさ」

そこまで言われれば、浜面も納得する。

「逆に言えば同様に何かしらの手を、風紀委員や警備員にもしているなら……ってことか」

「そう言うこと。じゃ、集めたカード渡しとくゾ」

しんのすけが重なったカード数枚を浜面に手渡した。
             の
「オイオイ今夜お前が拾った奴全部じゃねえかよ、良いのか?」

「うん、オラもう帰って寝る。そんで明日は昼間からカード探すゾ」

浜面に別れを告げ、しんのすけは帰宅した。
39 : ◆aMcAOX32KD1b [saga]:2016/06/10(金) 00:49:49.68 ID:jAO8W5jM0
そして、その翌日。

「涙子ちゃん、なにやってるの」

しんのすけは昼間から四つん這いになり地面の匂いを嗅いでいる友人を見かけ、
数秒悩んだ後に声をかけることにした。

「あ、野原さん」

「こんにちは、涙子ちゃん」

「野原さんもマネーカード探しですか?」

「うん、涙子ちゃんも?」

「はい、だからこうして匂いをたどって……」

「日中の街中で女子中学生がしちゃダメなポーズだと思うゾ!?」

夜間人気の無い場所でしていてもそれはそれで危険だが。

「けど『匂い』か……その手が在りましたな」

しんのすけが懐に手を入れ、自宅の犬小屋で寝ていた愛犬をその場に取り寄せた。

「ワウン!?(何するのしんちゃん、ワープホール越しに連れて来られるのってすっごく怖いんだよ!?)」

「い、犬がしゃべった!?」

正確には首輪から声が出ているのだが、初めて出会う光景に佐天が驚く。

「シロっていうんだゾ。シロ、この子は佐天涙子ちゃんだゾ」

「よろしくねー。シロちゃん」

「(よろしくお願いします)」

初対面の一人と一匹が挨拶を交わす。
40 : ◆aMcAOX32KD1b [saga]:2016/06/10(金) 00:50:56.40 ID:jAO8W5jM0
「涙子ちゃん、例のカード……できれば封筒も持ってる?」

マネーカードは口の開いた封筒に一枚ずつ入れられた状態で隠されていた。

「あ、はい。両方持ってます」

佐天が四枚の封筒を取り出す。おそらく中にはマネーカードが入っているのだろう。

「よしシロ、この匂いを覚えるんだ」

「シロちゃんってそんな事が出来るんですか?」

「雨とか降らないかぎり大丈夫だゾ」

「(別に、本職の警察犬のようには行かないけどね……ん!?)」

しんのすけの腕の中で、シロが毛を逆立てた。

「どうしたシロ!?」

「(何か嫌な感じがする人が近づいてきてる!!)」

「あら佐天さんと野原」

「御坂さん」

シロの言う『嫌な感じがする人』とは第三位の超能力者、『超電磁砲』【レールガン】の御坂美琴であった。
    エレクトロマスター
「ああ、発電能力者のAIMか」

「え、何が?」

「シロちゃんが急におびえちゃって」

御坂の疑問に佐天が答えた。

「シロちゃん?」

「こいつだゾ」

しんのすけが御坂にシロを見せる。

「あー、昔から動物には嫌われちゃうのよねー」

「まあAIMなら仕方ないよ」

しんのすけがシロを懐に戻す。

「そんなワケで、呼んで早々にゴメンねシロ」

「御坂さんもカード探しですか?」

「うん、手伝ってもらおうと思って」

佐天の問いに、本人では無くしんのすけが決定事項であるかのように答えた。

「え?」

「美琴ちゃん、前に大怪獣倒した時に言ってたでしょ?形状や大きさが判っているならソナーセンサーみたいなことも出来るって」

「わあ、沢山見つかりそうですね!!」

御坂はまだ了承していなかったのだが、佐天の喜びように、既に断れる空気ではなくなっていた。
41 : ◆aMcAOX32KD1b [saga]:2016/06/10(金) 00:51:51.22 ID:jAO8W5jM0
「今度は初春達も交えてやりましょーねー。んじゃ、ウチこっちなんで」

陽もすっかりくれた頃、佐天は二人と別れ帰っていった。

「ぐ、結局一日潰してしまった」

「何か予定でもあったの?ゴメンね」

「まあ買い物とか、別に今日じゃ無きゃできないってことじゃないけど」

手にしたカードを数えるしんのすけと、金銭には困ってないしどうしたものかとカードを持て余す御坂。
そんな対照的な二人もそれぞれの自宅と学生寮に帰ろうかという時、ガラの悪そうな男達がしんのすけに声をかけてきた。

「ああ、野原さん!!」

男達は自警団のメンバーであった。

「ん?何」

「見つけたんすよ。マネーカードを隠してる白衣の女をヒコイチが見たって」

「白衣の?はぁ、木原一族じゃ無きゃいいけど……」

「雑居ビルみてーなのに入っていきました、この近くっす」

「だってさ、美琴ちゃんも来る?」

マネーカードが原因で、まだ大きな事件は起こってないが、件の人物が怪しい事この上ないのは事実だろう。
故に、正義感の人一倍強い友人にも同行するかとしんのすけは問う。

「ええそうね、なんでこんな事してるのか、私も気になるもの」
42 : ◆aMcAOX32KD1b [saga]:2016/06/10(金) 00:53:04.73 ID:jAO8W5jM0
男達の言うとおり、雑居ビルはほど近くにあった。

「テツたちは外で待ってて」

相手が『木原』である可能性を考え、男達に待機するよう伝える。

「ウス、ならその女いや女生徒さんは……」
       レベル5
「美琴ちゃんは超能力者だゾ」

「なぁ!?」

驚く男達を尻目に、二人はビルの中に入って行く。

「で、最上階。この部屋にいるみたいだね」

「行くわよ野原」

二人が踏み込むと、中にいた白衣の女が振り返った。
    つけ
「Oh 尾行られてたのかしら」
43 : ◆aMcAOX32KD1b [saga]:2016/06/10(金) 00:55:20.45 ID:jAO8W5jM0
今夜はここまでです。続きは日曜の夜を予定しています。
Qジト束さんではないのですか?
Aギョロ束さんです。1はギョロ束さん派です
44 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/10(金) 01:01:27.44 ID:i6kfWjtYo
乙です
45 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/10(金) 19:26:12.36 ID:HHsBYcEAO
乙です
ところでムスメカの装備って出す予定ありますか?
あの「本気のおふざけ」感はこの作品の雰囲気に合ってる気がするので
46 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/10(金) 20:16:35.56 ID:P+9zuU8So
>>45
こんなマクロスのクランが巨大化状態でぶっぱなすマシンガンレベルの速度でレールガンぶっぱなしそうな美琴じゃ強すぎてストーリーにからめられんわ
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