野原しんのすけ(15)「歯を食いしばれサイジャク、オラのサイキョウはちょっと響くゾ」

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20 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/04(土) 06:10:57.90 ID:QRbVihb60
まあいつの土曜日かは言ってなかったからなぁ
21 : ◆aMcAOX32KD1b [saga]:2016/06/04(土) 21:32:23.82 ID:SbOZMyGA0
お久しぶりです1です。これから投下します。

>>10
新スレ早々に間をあけてしまいごめんなさい
>>14-15
意外と言えば意外、納得と言えば納得のキャスティングでしたね
>>19
そのパターン(1のセンス)だと『夢見世界』【ナイトメア】って感じですね
でも彼女は父親が過保護気味なので学園都市の超能力開発は受けないんじゃないですかね
22 : ◆aMcAOX32KD1b [saga]:2016/06/04(土) 21:33:59.16 ID:SbOZMyGA0
どこかの部屋で、誰かのパソコンのスピーカーから、ノイズ混じりの軽快な口調が流れた。

「今日お送りするのは、そう!!一部界隈では噂になってたから知ってる奴も居るだろうが……なんと超能力者同士の決闘だ!!」

真っ暗だったパソコンの画面が第七学区の河川敷を映したものに変わる。
右にしんのすけが、左に削板が、そしてその周りにはまばらだが少なくない数のギャラリー達が映っていた。
       白ラン       ブレザー
「観えてるか?学生服の方が第七位、改造制服の方が第八位だ。そんなワケで、今夜はこの2人の対決の様子を解説付きでおとどけするぜ!!」

海賊ラジオDJは、一拍置いて言葉を続ける。

「……とは言ってもだ、俺も能力開発の専門家ってワケじゃあない。なに、心配するな、だからゲストを呼んでるのさ……この人だ!!」

「私も別に専門家ってわけではないのだけど、よばれた以上仕事はするわね」

スピーカーからの声に若い女性のものが加わった。

「私の事は……そうね、『ヘソ出しカチュ−シャ』と名乗っておくわ」

「今夜は俺達2人でお送りする海賊ラジ―って早速決闘が始まったみたいだな」

しんのすけは今日、削板と戦うにあたり、様々な準備をしてきた。
幼馴染の発明家や、昔からの知り合いである博士の元を訪ね、便利な道具を手に入れたり、
スゲーナスゴイデスのトランプを使い、強力な武器を前もって用意しておくなどだ。
そのため現在、『ユルユルの賢者の腕輪』によって改造制服の内ポケットとつなげられた空間には、幾つもの武器や道具、秘密兵器が並んでいた。

「先ずは小手調べ、喰らえ『千人殺し』!!」

内ポケットから引き抜かれた右手には、束ねられた40を超す銃口を持った、巨大かつ奇抜な銃がにぎられていた。
23 : ◆aMcAOX32KD1b [saga]:2016/06/04(土) 21:34:45.55 ID:SbOZMyGA0

ドガガン!!

引き金がひかれ、全ての銃口から一斉に弾丸が放たれ、独特の銃声が鳴る。

「はっ、初手から銃だよりか!?どうした!?お前はそんな根性なしじゃねえだろう野原!!」

真正面至近距離から撃たれた散弾を、全弾跳ね返して削板はしんのすけに語りかける。

「ぬお!?跳弾かすった……勿論だゾ、言ったでしょ?今のは小手調べだって」

懐に多連式火縄銃『千人殺し』をしまい、続いて携帯式非殺傷性ロケットランチャー『しんちゃんボンバー』を取り出す。
この間合い
「至近距離でそんなデカ物は悪手だぜ?もっと根性だせよ!!」

削板は左手でロケットランチャーを横から殴り照準を外させ、がら空きとなったしんのすけの胸に右拳を叩きこんだ。

「げほぉ!?」

その場にランチャーを残して、しんのすけの身体は後方に飛ばされる。

「流石超能力者!!初っ端からすげえな!?じゃあ解説たのむぜ『ヘソ出しカチュ−シャ』、まずあの銃はなんなんだ!?」

しんのすけと削板に距離ができたところで、海賊ラジオDJが質問を入れる。

「デザインはリボルバーが主流になる以前の銃で、ペッパーボックスピストルとか、その形状から蓮根銃とか呼ばれている物に似ているけど」

質問を受け、女性の声は解説する。

「ソレらはあくまで連射性を求めたもので、あんな風に散弾銃としては使わないものなのだけど」

「ほう、オリジナルカスタムの銃か。ところで第八位の懐からやたらデカいのがホイホイ出てくるのは?」

「彼の能力には謎が多くてね……テレポ−ターだと言う説もあるわ。私は支持してない説だけど」

「おっと、第七位が何かするようだぞ」
24 : ◆aMcAOX32KD1b [saga]:2016/06/04(土) 21:35:46.36 ID:SbOZMyGA0
削板が右腕を振りかぶる。

「すごいパーンチ!!」

技名と共に拳が突き出され、『その延長線上にある空間』が爆ぜた。

「ぬおうっ!?」

しんのすけは爆風にあおられ、更に両者の距離が空く。
              根性
「どうした!?距離があれば俺の能力が届かないとでも思ったか!?」

「ソギーったらテンション高いなあ、これで弦ちゃんやしいぞう先生、修造さんに会ったらどうなっちゃうんだろ?」

むしろそこまで暑苦しいと、逆に見てみたい気もするけど。
などと言いながらしんのすけが次に取り出した物は、オモチャの光線銃のような外見をしていた。
今夜の対決に備え、北与野博士に新しく作り直してもらったそれの名は、
『平面画像実物立体変換機・改』通称『飛び出しライトガンNEO』と言った。
その名の通り、平面画像を読み取り一分間だけ『実体の在る立体映像』に変換する機械だ。

「ほいっと」

しんのすけがライトガンの前にスマホをかざす。
するとアンチスキルでも正式採用されている盾が現れ、しんのすけはその陰に身を隠した。

「時間稼ぎのつもりか!?だとしたら、ガッカリだぜ!!」

盾もろとも吹き飛ばそうと、削板が再び腕を引き絞る。

「すごい―」

「隙あり!!」

先程の攻撃が放たれる前に、しんのすけが削板の背後から襲いかかった。
25 : ◆aMcAOX32KD1b [saga]:2016/06/04(土) 21:36:41.09 ID:SbOZMyGA0
「なに!?」

削板はすぐに反応し、振り返ってしんのすけを視界に捉えた。
しんのすけの右手は既に懐に入れられている。

「次は何を―ガッ!?」

しかしその右手は抜かれず、削板にくわえられた攻撃は左手によるものであった。
しんのすけのその手には、バチバチと放電する竹刀の様な武器がにぎられていた。

「『鋼鉄親父の電磁竹刀』……すごいな、ボーちゃんってば完全に再現してる」

幼馴染から渡されたソレは、かつてしんのすけの『もう一人の父親』が手にしていた物だ。
その性能は一言で言えば、不使用時にはボールペンサイズにまで縮小する機能を備えたスタンロッド。

「もいっちょー!!」

電流により筋肉が硬直する一瞬を狙い、しんのすけが削板に追撃をしかけるが、
削板はそれを躱してしんのすけの足元を爆発させる。

「おお!?」

再び、両社の間には十メートル弱の距離ができる。
       根性
「へっ、すげえ能力だな。まさか瞬間移動で俺の背後をとるとは」

「持ってる道具の性能だけどね、ほとんどは」

電磁竹刀の一撃を受けてなお、削板にはダメージ等無い様子であった。

「やっぱり、普通に勝つのは無理っぽいかな〜?」

そんな削板を前に、しんのすけも台詞とは裏腹に表情は余裕を崩さない。
            カクウエ
「ならどうする?相手が第七位だからって諦めるのか?」

しんのすけの出方を見つつ、削板がジョークとして訊く。
そして予想通りの返事と、予想以上の解答が、しんのすけの口から放たれる。

「まっさか〜、ちょっと普通じゃない勝ち方をすれば良いだけだしね」

しんのすけは新たな武器を両手に、勝利を宣言する。           カタパルト
先程のライトガンにも増してオモチャらしい外見をした二丁の銃は、二門の射出機構を有し、
その上には光沢のある球体が1つずつ乗っていた。

「ほい!!」

しんのすけが引き金をひく。

「効くかそんなもん!!」

撃ち出された四つのタマは削板の腕の一振りに防がれる。

「なに!?」

しかしタマはそこで割れた水風船の中身の様に変形、さらには体積を増して削板の全身を包み込んだ。

「『アクショントリモチガン・ウィズ・ヒママタージェルバレット』これでゲーム・セットだゾ。ソギー」

しんのすけの言うように、削板は自身を包む球体の中でもがき暴れるが、
そのジェルの様な液体の様な、それでいて内部で呼吸はできる、不思議な空間からの脱出は出来ずにいた。
26 : ◆aMcAOX32KD1b [saga]:2016/06/04(土) 21:37:28.24 ID:SbOZMyGA0
「おおう、コイツは番狂わせ勝負事は下馬評通りとはいかないな」

第八位が第七位を下すという結果に、海賊ラジオDJが本音をこぼす。

「もっとも、超能力者の序列と言うのはその能力を研究したことによってもたらされるであろう利益の順、つまり戦闘力とは関係ないのだけど」

「まあそれこそ俺たちには『関係ない』話さ」

「そうね自分の仕事をするだけだわ」

「じゃあ解説たのむぜ。まず盾を出したと思ったら背後からの強襲だ」

「上手いてね、ただ背後に移動するだけじゃなくてその直前に盾に隠れるから、相手はそこに居ると思うもの」

「そしてスタンロッドの一撃だ」

「今まで右手でばかり攻撃していたから、左手での暗器攻撃がはまった形ね。追撃には失敗したけど」

「そしてこの『決まり手』だぁ!」

「ホロゥポイント弾の様に着弾時に変形するよう造られてる弾丸はあるし、ネットを撃ち出す捕縛用の銃器もあるけど、あんなのは初めて観るわ」

「じゃあ最後に全体を通して、ズバリ第七位の敗因は?」

「あら、それにはまだ早いと思うけど」

「おや、それまたどうして?」

「削板軍覇には、こんな終わり方はありえない」
27 : ◆aMcAOX32KD1b [saga]:2016/06/04(土) 21:38:48.01 ID:SbOZMyGA0
ギャラリーの一人がしんのすけに声をかけた。
                   アッチ側   ケリ
「野原さん、今浜面さんから連絡あって、駒場さんの方も決着がついたそうッス」

その男は、スキルアウトの下っ端新人のものであった。

「で、結果は?」
 モチ
「勿論、ウチらの大将の勝ちッス!!」

駒場と横須賀の勝負が終われば、しんのすけと削板が闘う理由もなくなった。
そう考えてしんのすけが武器を懐にしまいこんだ、その時。

「未だだ!!未だ俺とお前の勝負は!!俺の根性は未だ終わって……無えぇぇぇ!!!!」

叫びの食後に爆発音。
そしてそれと共に削板を包んでいた球体が四散する。
      なか
「おわ、あの内部って『概念レベルで『力づく』の否定』がされるのに……」

かつて自分の両親には解く事が出来なかった拘束を打ち破ってみせた削板に、しんのすけは驚きと敬意をいだく。

「モツ鍋が負けちまったなら、俺と野原が戦り合う意味なんてもう無えのかもしれねえ……けどな!!」

一息置き、ジッとしんのすけと眼光をぶつけ合わせる。

「こんな終わり方、俺の根性が認めねえんだ……お前だってそうだろう!?野原!!」

「うん、そうだね」

しんのすけは上着を脱ぎ捨て、先程の戦闘により解けかかっていたネクタイを締め直すと、
その場に一度しゃがみこんでから大きく背のびする様に両手を左右斜め上に突き出しながら立ち上がった。

「宇宙キターーー!!」

ぶおん、と。しんのすけを中心に風が吹いたように周囲の者達には感じられた。

「すげえな、それがお前の本気か?」

気配の変わったしんのすけに、削板が訊く。

「このネクタイはコズミックエナジーの力で装着者が持つ全ての身体能力を63倍に上げるんだゾ」

「勝負するってことで良いんだな」

「おう、タイマンはらせてもらうゾ!!」

右拳を、胸を軽く二回叩いて前に突き出す。

「いくぜぇぇ!!超……すごい……」

固く握りしめた右拳を、削板はゆっくりと力を貯めるように大きく引きしぼる。

「ぬおおおおおおぉぉぉ!!」

対するしんのすけはその場に両手をつき、胸を中心に脚を大きく振り回す。
いわゆるブレイクダンスの様な動きをしていた。

「パンチ!!」
ローリングケツダケアタック
「回転式唯尻撃!!」

両者の攻撃はほぼ同時に放たれた。
削板の突き出した拳がその先にある空間を爆砕し、それによって生じた爆風を切り裂きながら、しんのすけの全身が砲弾のように削板に迫る。
そして……
28 : ◆aMcAOX32KD1b [saga]:2016/06/04(土) 21:40:07.79 ID:SbOZMyGA0

ドバァン!!!

豪腕メジャーリーガーの投じた100マイルボールがキャッチャーミットにおさまった時の音を、
数十倍にしたかのような轟音をあげて、削板の拳と、しんのすけの臀部中央がぶち当たった。

「うわ、あんなのバラエティー番組のケツバットやタイキックの比じゃないだろ。こりゃあ第七位の逆転勝ちか?」

海賊ラジオDJの言葉を、しかしヘソ出しカチュ−シャは否定する。

「いや、アレをよく見ろ!!」

「なっ!?嘘だろオイ!?」

しんのすけと削板の両者は、互いの最高の技をぶつけ合ったままの姿勢で動かずにいた。
削板は拳を前にし、しんのすけはその拳の先で空中に浮いているかのように。

「あれも第八位の能力か!?」

「そうだ、ただし超能力なんかじゃなく、純粋な身体能力だけど」

「なに?どういうことだヘソ出しカチュ−シャ!?」

「解説しよう、先程一見ぶつかり合った様に見えた互いの一撃だが、野原しんのすけは削板軍覇の拳をくらってはいない」

「あん?ならどうなったんだ?」

「受け止めたのよ、まるで真剣白刃取りの様にね」

「は!?じゃあ今第八位は拳を挟んだ尻で全体重を支えているってことかよ!?」

「その通り、削板軍覇の右手は今、常人ならば拳が砕けるほどの力で締め上げられているはずよ」

「マジかよ……」

「そしてこうなった以上、勝負はもうプライド……意地の問題ね」

しんのすけは腰を少しでもひねれば削板の手首をへし折れるだろう。しかしそれは自身の大臀筋が、削板の拳を砕けないと認めるに等しい。
削板は腕を振りしんのすけを地に叩きつける等の追撃も可能だろう。しかしそれは己の拳の、相手の大臀筋に対する敗北を認めるに等しい。
故に、両者は動かない。いや、動けない。

「……ぐっ」

そして……遂に決着の時が訪れた。
 ・
「俺の負けだ……お前の勝ちだ、野原!!」
29 : ◆aMcAOX32KD1b [saga]:2016/06/04(土) 21:41:20.99 ID:SbOZMyGA0
右手を下げ、削板は自身の敗北を宣言する。
わっと、周囲から歓声と悔し気な声が上がる。
前者が駒場の、後者が横須賀の傘下の者達だろう。

臀部から拳を解放し、しんのすけは削板と向き合い握手する。

「良い……勝負だった!!」

「おう、またいつか……リベンジするぜ!!」

超能力者2人の決着がつき、その様子を映すパソコンのスピーカーから流れる海賊ラジオも、締めに入る。

「今度こそ終わったな、じゃあ改めて第七位の敗因は?」

「削板軍覇はあのジェルによる拘束を弾き飛ばすのに、だいぶ体力を使ってしまっていたのかもしれないけど」

「はうほう、やっぱりアレが決め手になったんだな」

「とは言え、ここは素直に野原しんのすけに賞賛をおくるべきかしら」

「と、今夜はそろそろお別れだ。お相手は海賊ラジオDJと」

「ヘソ出しカチュ−シャでした」
30 : ◆aMcAOX32KD1b [saga]:2016/06/04(土) 21:42:08.85 ID:SbOZMyGA0
マイクのスイッチが切られ、DJが退室し、ヘソ出しカチュ−シャこと『雲川芹亜』は思案する。
彼女は表向きはただの一学生の身分だが、その実態は統括理事会の一人『貝積継敏』から相談役【ブレイン】として雇われている程の才女だ。

(今回、内蔵潰しは自分が負ければおとなしく傘下に入ることを条件にしていた……)

ならば、それに助っ人として参加した削板軍覇はどうなのだろう?
もし、彼も駒場利徳の傘下に加わることになれば最下位とその一つ上とは言え、超能力者二名を擁する組織の出来上がりだ。
いくら『野原』のネームバリューに守られていようとも、いよいよ手を出す者が出てくるかもしれない。
そもそも『野原一家』【アンタッチャブルファミリー】の情報は、それを知る者達の間でも不確かで信憑性は高くないと思われている。
それどころか統括理事会メンバーでも全員がその存在を知っているわけでもない。
抑止力としては頼りないものだ。

(せめて第五位と第三位の二人も自警団の活動に巻き込んでレベル5が四人在籍する組織にられば……)

あるいは統括理事会の三分の一、四人以上がバックに付けば、少なくとも他の統括理事はは手を出さないだろう。

(貝積に自警団を支援するよう言っておくか)

不確かな情報だが、亡本裏蔵と誰かもう一人、既に二名の統括理事を味方に付けているらしい。
ならばあと一人くらい―――

(ダメだな、抑止力になりうるのは先の案を両方とも実現した場合だ)

圧倒的な武力等、よほど理解しやすいものでなければ抑止力たりえない。
何故なら駒場利徳率いる自警団は、本当なら既に充分『手を出すべきでは無い』組織だ。
背後には統括理事があり、超能力を有する武装集団。
これを相手に事をかまえようとするのは余程のバカだけだろう。
つまり「所詮レベル5の中では最下位だ」と侮るような連中だ。
逆にそういう輩にとっては、今までは『手を出す価値も無い組織』だったわけだが……
それも今夜の決闘で状況が変わった。

(はぁ、そんな馬鹿達のせいで学園都市そのものが滅びかねないんだから、勘弁してほしいのだけど)

兎に角、自分がすべき事は貝積を動かして可能な限り自警団の味方になっておくことだ。
雲川芹亜は連絡用の携帯端末を取り出した。
31 : ◆aMcAOX32KD1b [saga]:2016/06/04(土) 21:42:50.50 ID:SbOZMyGA0
「この……新装備が無ければ……あるいは……負けていたのは俺の方だったかもな」

コピー機が用紙を吐き出すような単調なしゃべりかたで、駒場利徳は自身の足元に仰向けに倒れている横須賀に話しかけた。
   ハードテーピング
「ぐっ『発条包帯』ではないな、なんなんだそれは?」

『発条包帯』とは警備員の駆動鎧等に使用されている人工筋肉で、装備者の身体能力を大きく強化してくれる。
しかし駆動鎧には付いているリミッターが無いため、装備者の身体にかかる負担は駆動鎧の比では無い。
いわゆる『ジャンク品』の域を出ないものだ。

「しんのすけの……幼馴染の作品だそうだ……もっとも……オリジナルでは無いそうだが」

『発条包帯』はその名が示すように帯状で、服の下で体に張るようにして装備する物なのだが、
今の駒場は服の上から橙色のチューブ状の人工筋肉に包まれていた。

「親分さん、大事無ぇようで」

しんのすけがやってきて、駒場に話しかけた。

「お前もな……しんのすけ」

「このネクタイがなきゃ危なかったゾ」

正直、このネクタイには良い思い出は無い。
初めてこのネクタイの影響を受けた日は、病気になったと思い込み寝込んだほどだ。
後日父親から話を聞き安堵したが、当のネクタイはいつの間にかなくなっており、今身に着けているのはスゲーナスゴイデスのトランプで用意した物だ。

「でも思ったより早く終わったから、この後時間空いちゃったゾ」

「あ、じゃあ手伝ってくれないか」

駒場と横須賀の対決を観ていたため近くにいた浜面が、しんのすけに言った。

「手伝うって何を?」

「最近、路地裏にマネーカードがよく落ちてるんだとよ。」

「探して拾い集めるってこと?」

「そうそう、デート資金貯めたくてさ」
32 : ◆aMcAOX32KD1b [saga]:2016/06/04(土) 21:43:31.17 ID:SbOZMyGA0
今夜はここまで、次回は木曜の夜の予定です
リア充爆ぜろ
しんのすけって如月弦太朗(仮面ライダーフォーゼ)、熱繰椎造(幼稚園の先生)、松岡修造(何故かテニスではなく水泳コーチ)と知り合いなんですよね……

↓今回出てきた装備・技の(元ネタの)原作登場回
多連結式火縄銃『千人殺し』・映画雲黒斎の野望
非殺傷性ロケットランチャー『しんちゃんボンバー』・アニメSPクレヨン大忠臣蔵
平面画像実物立体変換機『飛び出しライトガン』・原作22巻
鋼鉄親父の電磁竹刀・映画ガチンコ!逆襲のロボとーちゃん
アクショントリモチガン・映画アクション仮面VSハイグレ魔王(桜リリ子が使用)
ヒママタージェル・映画嵐を呼ぶ!オラと宇宙のプリンセス(おつまみ大臣マーキュンが使用)
スーパーネクタイ・原作40巻
ブレイクダンスからのヒップアタック・映画嵐を呼ぶジャングル

橙色のチューブ状の人工筋肉・映画ガチンコ!逆襲のロボとーちゃん
33 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/04(土) 21:45:32.70 ID:eolegVJJo
乙です
34 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/06/04(土) 21:47:59.67 ID:un65rGAmO
乙です
ネクタイを締め直したあたりは、しんのすけつながりで仮面ライダードライブの泊進ノ介のオマージュかと思った
35 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/04(土) 21:59:33.48 ID:xDPZeSfAO
乙です
おお、ロボとーちゃん縁の品が二つも
超電磁砲のロボ繰歯が学園都市版ロボとーちゃんって感じだったしタイムリーな
しかしこれはしんのすけ絶対首つっこむな…
36 : ◆aMcAOX32KD1b [sage saga]:2016/06/10(金) 00:46:21.96 ID:jAO8W5jM0
1です。これから投下します。
>>34
「ひとっ走りつきあえよ」もいつかやります
>>35
コピーが、自分がコピーと気づいてしまった時の絶望。アイデンティティの崩壊……
メカ繰歯ちゃんは今後どうなるんでしょうね
37 : ◆aMcAOX32KD1b [saga]:2016/06/10(金) 00:47:45.81 ID:jAO8W5jM0
浜面に連れられてやってきた路地裏では、噂の通り探せば早々にマネーカードが見つかった。
「もう三枚目だゾ、結構簡単に見つかるもんだね」

「室外機の影とかが狙い目みたいだな。金額にバラツキがあるから幾ら儲かるかは運次第だけどよ」

「お、コレ五万円のやつだゾ」

浜面としんのすけが話しながら、カードを次々に見つけていく。

「しかし、なんだってマネーカードが見つかるようになったんだろな?」

ふと、浜面が疑問を口にする。

「そりゃ誰かがばらまいてるってことでしょ。確かお金を捨てるのは犯罪だけどカードは違うとかって法律も在ったような気がするし」
         くに       このまち
この街の中での事は日本の法律では無く学園都市の条例が優先されるが、カードをあちこちに隠してまわっている何者かが
ソコを気にして現金では無くマネーカードにしたのであれば、おそらく条例でもそうなのだろう。
38 : ◆aMcAOX32KD1b [saga]:2016/06/10(金) 00:48:40.22 ID:jAO8W5jM0
「何が目的なんだろうな?まあ俺としちゃ儲かるから良いんだけどさ」

「シークレット・サンタ的なアレ?とかじゃ無いなら……」

「とかじゃ無いなら?」

善意の寄付でないのなら、理由は何なのだろう。
浜面はしんのすけの予想を聞くべく、その先をうながした。
            コト
「第七学区で、何か大きな事件を起こす気か、あるいはこれから起きるから阻止したいのか」

「真逆の二択かよ。なんでそう思った?」

「さっきから何人かと狭い中をすれちがってるけど、普通は路地裏ってそんな人多くないでしょ」

「えと、だから?」

その説明では理解できず、浜面がさらなる補足を求めた。

「普段人の目が向かない所に、不特定多数の人が出入りすることで後ろ暗い事をできなくする……ってことだゾ」

「ああ成程。じゃ、その逆に事件を起こす気ってのは?」
 スキルアウト  ストレンジ
「自警団の仲間達で第七学区外に引っ越して行ってる人達も多いんじゃないかな」

「まあそりゃガチの路地裏生活の連中にとっては暮らしにくくなっただろうな。噂の出る前と後じゃ」

「そしてそれは、第七学区で活動する自警団員の人数が減っているってことだゾ」
シマ
縄張りが増えたのと同程度、自警団員の数も増えたが第七学区と第十学区では、元の治安を考えれば
第十学区により多人数を置くべきなのだろう。
しかしそれで、第七学区での活動がおろそかになってはたまらない。
      ジャッジメント アンチスキル
「まあ正規の風紀委員や警備員がいるから、それだけじゃ前準備としてはオソマツだけどさ」

そこまで言われれば、浜面も納得する。

「逆に言えば同様に何かしらの手を、風紀委員や警備員にもしているなら……ってことか」

「そう言うこと。じゃ、集めたカード渡しとくゾ」

しんのすけが重なったカード数枚を浜面に手渡した。
             の
「オイオイ今夜お前が拾った奴全部じゃねえかよ、良いのか?」

「うん、オラもう帰って寝る。そんで明日は昼間からカード探すゾ」

浜面に別れを告げ、しんのすけは帰宅した。
39 : ◆aMcAOX32KD1b [saga]:2016/06/10(金) 00:49:49.68 ID:jAO8W5jM0
そして、その翌日。

「涙子ちゃん、なにやってるの」

しんのすけは昼間から四つん這いになり地面の匂いを嗅いでいる友人を見かけ、
数秒悩んだ後に声をかけることにした。

「あ、野原さん」

「こんにちは、涙子ちゃん」

「野原さんもマネーカード探しですか?」

「うん、涙子ちゃんも?」

「はい、だからこうして匂いをたどって……」

「日中の街中で女子中学生がしちゃダメなポーズだと思うゾ!?」

夜間人気の無い場所でしていてもそれはそれで危険だが。

「けど『匂い』か……その手が在りましたな」

しんのすけが懐に手を入れ、自宅の犬小屋で寝ていた愛犬をその場に取り寄せた。

「ワウン!?(何するのしんちゃん、ワープホール越しに連れて来られるのってすっごく怖いんだよ!?)」

「い、犬がしゃべった!?」

正確には首輪から声が出ているのだが、初めて出会う光景に佐天が驚く。

「シロっていうんだゾ。シロ、この子は佐天涙子ちゃんだゾ」

「よろしくねー。シロちゃん」

「(よろしくお願いします)」

初対面の一人と一匹が挨拶を交わす。
40 : ◆aMcAOX32KD1b [saga]:2016/06/10(金) 00:50:56.40 ID:jAO8W5jM0
「涙子ちゃん、例のカード……できれば封筒も持ってる?」

マネーカードは口の開いた封筒に一枚ずつ入れられた状態で隠されていた。

「あ、はい。両方持ってます」

佐天が四枚の封筒を取り出す。おそらく中にはマネーカードが入っているのだろう。

「よしシロ、この匂いを覚えるんだ」

「シロちゃんってそんな事が出来るんですか?」

「雨とか降らないかぎり大丈夫だゾ」

「(別に、本職の警察犬のようには行かないけどね……ん!?)」

しんのすけの腕の中で、シロが毛を逆立てた。

「どうしたシロ!?」

「(何か嫌な感じがする人が近づいてきてる!!)」

「あら佐天さんと野原」

「御坂さん」

シロの言う『嫌な感じがする人』とは第三位の超能力者、『超電磁砲』【レールガン】の御坂美琴であった。
    エレクトロマスター
「ああ、発電能力者のAIMか」

「え、何が?」

「シロちゃんが急におびえちゃって」

御坂の疑問に佐天が答えた。

「シロちゃん?」

「こいつだゾ」

しんのすけが御坂にシロを見せる。

「あー、昔から動物には嫌われちゃうのよねー」

「まあAIMなら仕方ないよ」

しんのすけがシロを懐に戻す。

「そんなワケで、呼んで早々にゴメンねシロ」

「御坂さんもカード探しですか?」

「うん、手伝ってもらおうと思って」

佐天の問いに、本人では無くしんのすけが決定事項であるかのように答えた。

「え?」

「美琴ちゃん、前に大怪獣倒した時に言ってたでしょ?形状や大きさが判っているならソナーセンサーみたいなことも出来るって」

「わあ、沢山見つかりそうですね!!」

御坂はまだ了承していなかったのだが、佐天の喜びように、既に断れる空気ではなくなっていた。
41 : ◆aMcAOX32KD1b [saga]:2016/06/10(金) 00:51:51.22 ID:jAO8W5jM0
「今度は初春達も交えてやりましょーねー。んじゃ、ウチこっちなんで」

陽もすっかりくれた頃、佐天は二人と別れ帰っていった。

「ぐ、結局一日潰してしまった」

「何か予定でもあったの?ゴメンね」

「まあ買い物とか、別に今日じゃ無きゃできないってことじゃないけど」

手にしたカードを数えるしんのすけと、金銭には困ってないしどうしたものかとカードを持て余す御坂。
そんな対照的な二人もそれぞれの自宅と学生寮に帰ろうかという時、ガラの悪そうな男達がしんのすけに声をかけてきた。

「ああ、野原さん!!」

男達は自警団のメンバーであった。

「ん?何」

「見つけたんすよ。マネーカードを隠してる白衣の女をヒコイチが見たって」

「白衣の?はぁ、木原一族じゃ無きゃいいけど……」

「雑居ビルみてーなのに入っていきました、この近くっす」

「だってさ、美琴ちゃんも来る?」

マネーカードが原因で、まだ大きな事件は起こってないが、件の人物が怪しい事この上ないのは事実だろう。
故に、正義感の人一倍強い友人にも同行するかとしんのすけは問う。

「ええそうね、なんでこんな事してるのか、私も気になるもの」
42 : ◆aMcAOX32KD1b [saga]:2016/06/10(金) 00:53:04.73 ID:jAO8W5jM0
男達の言うとおり、雑居ビルはほど近くにあった。

「テツたちは外で待ってて」

相手が『木原』である可能性を考え、男達に待機するよう伝える。

「ウス、ならその女いや女生徒さんは……」
       レベル5
「美琴ちゃんは超能力者だゾ」

「なぁ!?」

驚く男達を尻目に、二人はビルの中に入って行く。

「で、最上階。この部屋にいるみたいだね」

「行くわよ野原」

二人が踏み込むと、中にいた白衣の女が振り返った。
    つけ
「Oh 尾行られてたのかしら」
43 : ◆aMcAOX32KD1b [saga]:2016/06/10(金) 00:55:20.45 ID:jAO8W5jM0
今夜はここまでです。続きは日曜の夜を予定しています。
Qジト束さんではないのですか?
Aギョロ束さんです。1はギョロ束さん派です
44 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/10(金) 01:01:27.44 ID:i6kfWjtYo
乙です
45 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/10(金) 19:26:12.36 ID:HHsBYcEAO
乙です
ところでムスメカの装備って出す予定ありますか?
あの「本気のおふざけ」感はこの作品の雰囲気に合ってる気がするので
46 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/10(金) 20:16:35.56 ID:P+9zuU8So
>>45
こんなマクロスのクランが巨大化状態でぶっぱなすマシンガンレベルの速度でレールガンぶっぱなしそうな美琴じゃ強すぎてストーリーにからめられんわ
47 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/06/15(水) 01:55:53.52 ID:pyzfUylr0
そういえば、まだ先になると思いますが、
"とある科学の一方通行"での話は
この物語に組み込むのでしょうか?

おそらく原作とは異なるのでしょうけど、
亡本が登場しているので
この物語では亡本がDAに関わっているのか気になります。
48 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/15(水) 01:56:23.69 ID:udMCgMCXO
作者でもないのにageて長文とかふざけてんのかゴミカス
49 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/06/18(土) 00:26:01.53 ID:Ua6D55Wh0
>>48
sageを入力するのを忘れていました。すいません。
50 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/18(土) 01:54:30.52 ID:bUYkqK34O
ネタでやってんのか?
51 : ◆aMcAOX32KD1b [saga]:2016/06/19(日) 23:30:17.90 ID:DLLjxubW0
1です。これから投下します。
>>45
妹達の方は出てくると思いますが美琴の方は多分出てこないです
というのもあの装備はどう見ても重力下での持久戦には適しているとは思えないので
>>46
それでも、一通さんにはかなわない。
雑魚には過剰でもボス級には役立たずのガラクタになる装備や能力って『とある』には多い気がします
>>47
屍食舞台は原作と変わらず配下で、さらにこのSSの亡本は原作と違って駒場利徳の自警団もある程度は動かせる立場なので
DAの支援者になる理由が無く、DAは別の理事(後に舌ピアスさんにアレされる人達の内の誰か)に拾われています
ただヒルミの研究をDA以外の組織でもやっていればこのSSでも本編に絡ませられる……のかな?
恐らくこのSSが追いつくその頃には一方通行のスピンオフは完結ないしエステルのエピソードは終えているでしょうから
その終わり方次第です
52 : ◆aMcAOX32KD1b [saga]:2016/06/19(日) 23:31:36.09 ID:DLLjxubW0
おそらく高校生位と思われるが、独特な目つきをした女がそこに立っていた。

「アンタがマネーカードを隠してまわってるの?何が目的」

御坂が白衣の女に話しかけた。

「……」

「な、何よ?」

女は御坂をしばらくじーっと見た後に口を開いた。

「あなたオリジナルね」
53 : ◆aMcAOX32KD1b [saga]:2016/06/19(日) 23:32:17.56 ID:DLLjxubW0
「へ?オリジナル?」

御坂にはなぜ女が自分をそう呼ぶのかわからなかったが、しんのすけにはその呼び方に心当たりがあった。

「つまりお姉さんは、『量産計画』の関係者ってこと?」

「『量産計画』?」

聞きなれぬ単語に御坂が聞き返す。
すると逆に、白衣の女が御坂に訊いた。
54 : ◆aMcAOX32KD1b [saga]:2016/06/19(日) 23:33:06.46 ID:DLLjxubW0
「あなたも噂くらいは聞いた事があるでしょう?」
    レールガン
曰く、『超電磁砲』のDNAを使ったクローンが製造されている。
曰く、軍用兵器として開発されていて近い内に実用化予定。
曰く、同時に複数個所で、御坂美琴が目撃された。

「アンタも野原も、アノ噂についてなにか知ってるの!?」

その噂については御坂も耳にした事があった。
実際に御坂を見たと言う人から話を聞いたりもした。

「出所って言うか、元ネタについてはね。そっちのお姉さんは、その関係者っぽいけど」

「exactlyそう言うあなたは何者なのかしら」
55 : ◆aMcAOX32KD1b [saga]:2016/06/19(日) 23:33:57.07 ID:DLLjxubW0
「オラ、野原しんのすけ15歳。ところでお姉さんって『長点』でしょう?」

白衣の女がわずかに驚いたようなそぶりを見せる。

「どうしてそう思ったの」

しんのすけは自身の改造制服のエリについた校章を人差し指でトントンと叩きながら言った。

「オラも長点上機なんだゾ。そしてお姉さんの胸元のリボンはウチの女子制服だ、白衣の下はブレザーだったりするんじゃない?」

「ええ、その通りよ。よくわかったわね」

制服を見せる為か、女は白衣を脱ぎ、それを鞄の乗った机の上、鞄の横にたたんで置いた。

「まだ名乗ってなかったわね、布束砥信よ」

「オーケー、布束先輩だね」

「それにしても……」

「何?」

しんのすけが着ている服を見て、布束には思うところがあるようだ。

「unbelievableよくそこまで改造したわね。言われなければ長点上機の制服だとわからないわ」

今まで黙っていた御坂が、ついに耐えきれなくなり叫んだ。

「だあぁぁぁーーーもうっ!!アンタらが同じ高校だとかどうでもいいわよ!!」

「と、ゴメンね。噂の元ネタだっけ。でもオラから聞くより、関係者だけあって布束先輩からの方が詳しく聞けるんじゃない?」

キッと御坂が布束をにらむが……

「but私には全てを話す気は無いわよ?」

彼女には効果が無かった。
56 : ◆aMcAOX32KD1b [saga]:2016/06/19(日) 23:34:41.99 ID:DLLjxubW0
「ハア!?あの噂は私にとっては他人事じゃ済まないのよ!?知る権利くらい有るでしょうが!?」

「確かにあなたは深く関わってる……」

布束はそこで一度言葉を切り、目を閉じて首を横に振った。

「howeverだからこそ知るべきでない事も在ると言う事よ」


二人がにらみ合いになり、しんのすけが沈黙を破った。

「まあ布束先輩に話す気が無くても、ここに全部書いてあるんだけどね」
57 : ◆aMcAOX32KD1b [saga]:2016/06/19(日) 23:35:28.73 ID:DLLjxubW0
今夜はここまでです。続きは明日を予定しています
58 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/19(日) 23:55:36.68 ID:rTHRLD+Go
乙です
59 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/19(日) 23:58:14.93 ID:tCYVDfiyo
乙です
ルー布束先輩可愛い
60 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/20(月) 00:00:40.18 ID:G/RT+sl2o
乙です
三人の小気味良いやり取りが良かった
ジト束さんは安定した可愛さがあるけどギョロ束さんには上手く表現出来ない魅力がある
61 : ◆aMcAOX32KD1b [saga]:2016/06/20(月) 23:20:07.26 ID:2LEOvZyt0
1です。これから投下します。
皆大好き、あのキャラが最後に登場
>>59-60
ギョロ束さん原作で再登場して欲しいけど、絶望的なんですよね
木山先生も布束さんも、アニメではフォロー入ったけど原作だとフェードアウト組ですし
62 : ◆aMcAOX32KD1b [saga]:2016/06/20(月) 23:21:10.13 ID:2LEOvZyt0
「え?」

「っ!?」

しんのすけが、手にした紙束をトントンと叩きながら言った言葉に、二人がそれぞれの反応を見せる。
          こ
「goddamn私がこの娘に注意を向けている隙に……!!」

「ザッツラーイ、でもガッデムよりシット程度にしときなよ……ファッキンじゃないだけましか」

「野原?その紙は?」

御坂が紙束に目を向ける。
しんのすけの手が邪魔で全ては読めないが、一番上の紙には『量産型〜』と書かれているようだ。
63 : ◆aMcAOX32KD1b [saga]:2016/06/20(月) 23:22:06.08 ID:2LEOvZyt0
「その鞄と白衣の置かれてる机の中にあったんだゾ」

しんのすけの指さす机を見れば、引き出しが開けられており、おそらくその紙はそこにあったのだろう。

「何故―」

「なんでわかったかって?」

何故その紙の隠し場所が判ったのかと問う布束の言葉をさえぎって、しんのすけが説明する。

「最初オラ達がこの部屋に入ってきた時に後をつけられてた事に布束先輩は気づいて無かったからね」

つまり机の上にあった場違いに小綺麗な鞄は布束の持ち物であり、それは白衣を鞄と並べていることからも確実だろう。

「で、無警戒な時に鞄を置いた机なら……怪しいと思うよね?」

「でかしたわ野原、さあ、それをコッチへ渡して」

御坂がしんのすけに手を伸ばす。

「ま〜ま〜、布束先輩の言い分も気になるし、先ずはオラが読んでからね」
64 : ◆aMcAOX32KD1b [saga]:2016/06/20(月) 23:23:13.40 ID:2LEOvZyt0
数秒後、しんのすけは紙束を懐にしまい、言った。

「あ〜、これは美琴ちゃんは知らない方が良いんじゃないかな?」

「なっ!?アンタまでそういうこと言う!?」

怒りと驚きを見せる御坂に、しんのすけがなだめるように話す。

「ここで知らせて、美琴ちゃんが怒って暴れたら大変だからね」

「つまり、私が知ったら怒って暴れそうな事が書いてあったのね」
   プロジェクト ・・・
「こんな計画が昔あったってだけで、本人にはキツイだろうね。色々」

「その『色々』を、アンタには教える気が……無いのよね?」

流石に一応は友人を相手に、拷問などしたくはない。
それに自分と同じく超能力者であるしんのすけを相手にすれば戦闘は避けられないだろう。

「ま、オラは美琴ちゃんが自分で調べて真相にたどり着く分には邪魔しないゾ」

「調べる?」

「じゃあヒントだけね。クローンを作るには『遺伝子情報』が必要だ。美琴ちゃんは過去何処かでそれを誰かに渡している筈だゾ?」

製薬会社とか怪しいんじゃない?と、しんのすけは続けた。

「あっ!?」

どうやら御坂にも思い当たる事があったようだ。

「心当たりがあるなら、直ぐに行った方が良いよ?」

と、しんのすけが言い、

「そうね、彼等もいつまでも『計画』の証拠を残してはおかないでしょうし」

と布束が続けた。

「あーもー!!解ったわよ。野原、あとで覚えときなさいよ」

御坂は捨て台詞を残して部屋から走り去っていった。

「……役者ね」

「それほどでも」

御坂のいなくなった部屋で、二人の会話はなおも続く……。
65 : ◆aMcAOX32KD1b [saga]:2016/06/20(月) 23:24:14.95 ID:2LEOvZyt0
学園都市某所、樋口製薬・第七薬学研究センター。
その中の電子的に隔離された一室にて、機械を操作する人影が在った。

「幾つか消されちゃってるけど、これくらいなら復元可能ね」
エレクトロマスター
電気使い系最高位、御坂美琴である。
あの後、布束の顔と名前から長点上機学園のデータにアクセスし、彼女がこの研究施設に所属していた事を突き止めたのだ。
そして身元を隠すために着替えてから忍び込み、まさに今知りたかった情報を手にしようとしていた。
66 : ◆aMcAOX32KD1b [saga]:2016/06/20(月) 23:25:06.30 ID:2LEOvZyt0
「あ!」
       レールガン     シスターズ
御坂の目に、「超電磁砲量産計画『妹達』最終報告」の文字が写る。

(本当にあった、私の……クローン計画)

振るえと、冷や汗が止まらない。
しかし、自分は確かめなければならない。
あの噂の出所、その全容を。
彼女はモニターに書かれている内容を読み進めていく。
超電磁砲量産計画のおおよその流れはこうだ。

超能力者を量産するためにその遺伝子を解析、クローンを造る。
この目的は偶発的にしか生まれない超能力者を確実に生み出す為である。
本計画の素体は『超電磁砲』御坂美琴とする。
複数種類の薬品によりクローンは十四日でオリジナルと同等の肉体を得られる。
布束砥信監修の学習装置を用いて、精神面及び脳内情報等の強制入力を行う。
成果を確認の後、量産体制を構築する予定。

おぞましい文書が続いていく、しかし―――
ツリーダイアグラム
『樹形図の設計者』の予測演算の結果、クローンは素体の1%未満の出力しか持たない事が判明。
損害を最小とする為、研究の即時停止。
当計画は永久凍結するものとする。

と締めくくられており、その後は事後処理についての指示や命令文であった。
67 : ◆aMcAOX32KD1b [saga]:2016/06/20(月) 23:25:53.35 ID:2LEOvZyt0
「はっ……ははは…何よ、やっぱ私のクローンなんていないんじゃない」

最後まで読み、彼女は安堵した。
その場に膝をつき、息を一つ大きく吐きだす。

「きっとこの計画が中途半端に漏れて、噂の元になったのね」

今思えば、先程のしんのすけも『こんな計画が昔あったってだけ』と言っていた。

「さて、帰るか」

自分がハッキングした痕跡を消して、上機嫌で御坂はその部屋から出ていった。
故に、気が付かなかった。

『昔あった』だけの計画ならば、何故布束は今になってマネーカードをばらまきはじめたのかという疑問にも。
そして、自分が退室し、程無くしてその部屋に入ってきた、自身そっくりの少女の存在にも……
68 : ◆aMcAOX32KD1b [saga]:2016/06/20(月) 23:27:39.97 ID:2LEOvZyt0
時間は戻り雑居ビルの一室、布束砥信と野原しんのすけの会話が続く。

「樋口製薬には、結局計画は実行されなかったという情報しかないわ」

「それで美琴ちゃんが納得してくれれば良いけど……」
                 クローン
テスト用の数体のみとはいえど自分の兄弟が生まれ、そして既に死んでいるなんて情報は、知らないほうがマシだと
しんのすけは経験者としてそう思う。

「questionそれで、あなたは何者なのかしら?名前と年齢だけ答えても、私の質問の答えにはならないわ」

『量産計画』の存在を知るお前は何者なのか、と言う問いは、何故『量産計画』を知っているのか、と言う意味だ。
69 : ◆aMcAOX32KD1b [saga]:2016/06/20(月) 23:28:48.02 ID:2LEOvZyt0
「友達に『暗闇』の生き残りがいてね、隣のクラスには元『白鰐』もいるし」

「『暗闇の五月』や『白鰐部隊』の被験者と交友関係が?」

「案外、『日常』と『非日常』の境目は薄くて脆いよ」

そう語る後輩の眼に、布束は底知れぬ『闇』を見た気がした。

「まあ、何が言いたいのかって言うと……オラの知識だと、さっき布束先輩も言った通り『量産計画は実行されなかった』筈なんだよね」

でも布束先輩はこうして何かをしている、と。
ソレは何故なのかと問いかける。

「……because計画が流用されたのよ」

「ああ、クローン人間がもう産み出されてて?彼女たちは路地裏で何かをしてて?それを布束先輩は止めたいと」

どうやら御坂美琴のクローンは、数体どころではすまないようだ。
70 : ◆aMcAOX32KD1b [saga]:2016/06/20(月) 23:29:34.12 ID:2LEOvZyt0
「何故……いえ、噂と今までの情報から、あなたなら解るわね」

「……今回はドッチかな?」

小声で呟いたしんのすけの言葉は、布束の耳には入らなかった。

「それで、私の目的を知ってあなたはどうするのかしら?」

自分と共に彼が、『妹達』が行っている実験を止めようと申し出たとしたら、布束はそれを拒否するだろう。
もしそうなった場合、あまりにも危険すぎる。
布束は、しんのすけが第八位の超能力者だとは知らない。
しかし知っていたとしても彼の協力を拒む事は変わらない。
敵は、学園都市そのものなのだから。

「べつにどうも?」

しかしそんな心配をよそに、しんのすけは布束に、協力しようとも邪魔しようとも言わなかった。

「あ、でも……街で偶然会ったら話を聞いてみたいかな。コレ返すね」

布束の手に懐から取り出した紙を渡し、そう言ってしんのすけも部屋から出て行った。
71 : ◆aMcAOX32KD1b [saga]:2016/06/20(月) 23:30:51.20 ID:2LEOvZyt0
「テツ、サトシ、ヒコイチもよく聞いて。これからは通信用端末の携帯を特に意識して」

しんのすけが、雑居ビルの近くで待っていた自警団員たちに指示を出す。

「ウス、けどなんでですか?」

「どっかのヤバい奴が路地裏でなんかするらしいゾ、見た奴は確実に『口封じ』される様な、ね」

「ひっ!?」

体格のわりに怖がりな性格をしているサトシがビビる。

「例のマネーカードは、ソイツ等も人目は避けるだろうって考えでまかれた物らしいよ」

「それって、下手したら逆に、口封じに殺される奴が続出するんじゃ……」

「だから端末を持っとけってこと。駒場さんにもオラから話して自警団全員に徹底させとくから」

それだけ言って、しんのすけは自警団員達と別れ帰っていった。

「……布束先輩は『流用された』って言ってたな」

一人になり、呟く。
        プロジェクト
「流用先はどんな『計画』なんだろ?まあろくなもんじゃないんだろうけど……」

そこらへんから洗ってみるかと、布束にはああ言ったがその実、首を突っ込む気満々のしんのすけであった。
72 : ◆aMcAOX32KD1b [saga]:2016/06/20(月) 23:32:52.73 ID:2LEOvZyt0
「う〜ん、北与野博士のとこにも情報無しか」

そして、その四日後の夜、あれから四日経った今でもしんのすけは『流用先』の情報を得られずにいた。
と言うのも『しんのすけが調べていた』という事が、御坂の耳に入りそうな調べ方は出来ない以上
初春飾利を筆頭に、情報収集能力の高い何人かには頼れないのだ。

「十四日どころか三分でオリジナルと同等の能力をもったクローンを作れる博士なら『この計画に協力しろ』って話が来てると思ったんだけどな〜」

本日も収穫無し、寂しく歩くしんのすけのズボンのポケットから、正確にはポケットの中のスマホから着信を知らせる音が鳴った。

「誰か遂に美琴ちゃんのクローンたちが何かしてる現場を見ちゃったか!?」

しんのすけがスマホに手を伸ばす、しかし何故かそれよりも前にスマホはひとりでに通話がオンになった。
彼に連絡を入れて来た者の声が、スマホから聞こえる。

「しんのすけ、気を付けろ。その先には指向性対人地雷がうまっているぞ!!」

「その声でその台詞はアウトじゃない!?」
73 : ◆aMcAOX32KD1b [saga]:2016/06/20(月) 23:33:53.04 ID:2LEOvZyt0
今夜はここまでです。
続きは一週間程お待ち下さい
74 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/20(月) 23:36:39.61 ID:WDk6zdr3o
ぶりぶりざえもんか

「ス↓ネ↑ーク↓気を付けろそこにはク↓ルェイモア地↓雷↑がセッットされている…」の色っぽさは以上
75 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/20(月) 23:56:09.82 ID:zAuX+dEmo
乙です
76 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/21(火) 00:41:48.89 ID:Rb6LtkQLO
北与野博士のチートっぷりがよくわかる話。
そしてとうとう接触したかぶりぶりざえもん
77 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/22(水) 20:30:08.06 ID:iwOqMT/AO
乙です
しんのすけはどのくらい制服を改造してるんだろうか
78 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/07/09(土) 00:29:34.10 ID:hh4cLpmAO
クレヨンしんちゃん対シン・ゴジラってなんやそれ…
しんのすけの経歴がさらにとんでもないことに
79 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/07/12(火) 14:14:57.15 ID:d3hdlbH30
昨日まとめサイトで1スレ目を読んで、今追いついた
なんというか、凄いな。クレしんに対する愛情がひしひし伝わるわ
80 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/07/15(金) 21:33:35.90 ID:iwBbJxI00
シンゴジラマジかよw 見てきたけどヤバイだろコレ。
スパロボにも出たし最近凄まじいなクレしん。
81 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/07/16(土) 10:30:08.16 ID:iS/f0aCAO
そういやカンタムロボで参戦してたな
綺羅星十字団がしんのすけの言い間違いでキラキラ星注意団になったんだっけ
82 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/07/20(水) 00:38:31.78 ID:tzScYVxv0
世界の国の学習まんがで登場した酢乙女愛号は出ないかな
数人は乗れて世界中のあらゆるところに1時間以内に行ける凄い超小型飛行機
83 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/07/20(水) 03:45:45.56 ID:vhYnIsfd0
丁度アマゾンプライムで劇場版が見れるから作業用BGM代わりに見直してるけど、意外と忘れてること多いな。
オトナ帝国と戦国、ロボとーちゃんあたりは見たら確実に泣くだろうから見れないんだが
84 : ◆aMcAOX32KD1b [saga]:2016/07/21(木) 23:18:30.72 ID:HouDWmDk0
お久しぶりです、1です。これから投下します。
>>74
皆大好きなあのヒーローですね
パロディの元ネタがちゃんと通じて良かったです
>>76
学園都市製のクローンが十四日かけてオリジナルの百分の一以下の性能なのにたいして
北与野博士のインスタントクローンは三分でオリジナルと同等の性能ですからね……
ただし83分後には水と麺状の蛋白質に分解されてしまいますが
>>77
それがブレザーであることはわかる、というくらいには原型をとどめていません
袖口など各所に暗器を隠せるように、更にはいつでも取り出せるように改造されています
しんのすけの原作での妙な衣装はほとんど自作(たしか原作公式設定)なので、彼の裁縫技術はチート級の設定です
>>78>>80
流石にパラレルみたいですけどね。
正史だったら、トール「アレとヤッたことあるとか羨ましすぎんだろ!?」とかネタにできたんですけど
>>79
おお、新しい読者様ですか。今後もよろしくお願いします
>>82
似たようなのは、とあるサイドにもあるので……
>>83
今年の映画も涙腺崩壊ものでしたよ……みさえサンマジ聖母
85 : ◆aMcAOX32KD1b [saga]:2016/07/21(木) 23:19:21.77 ID:HouDWmDk0
しんのすけはその『声』に聞き覚えがあった。
しかし記憶の中の、その声の持ち主は確かにあの日、死んだ筈だ。

「あんた誰?名前は」

「ジャン・ピエール・アンドレイ・ジョセフド・シャトーぶりアンヌ……貴様のファンさ」

そこで通話はブツリと切れた。

「今の声……本当にアイツが?」

あの世から帰ってきたとでもいうのだろうか。

「そう言えば、飾利ちゃんが言ってたっけ」

データとして、一度存在したものは完全に消去することはほぼ不可能らしい……
つまり大抵の場合、復元可能なのだそうだ。
 このまち
「学園都市の技術なら電子生命体の蘇生くらい簡単なのかな」

だが、だとしたら何故こんなコンタクトのしかたをするのだろう。
堂々と正面から、会いに来てくれれば良いものを何故、偽名を名乗り謎の人物を演じるのか。

「……まあ大方アレのパロディなんだろうけどさ」
86 : ◆aMcAOX32KD1b [saga]:2016/07/21(木) 23:20:23.40 ID:HouDWmDk0
彼と声が似ている人物が登場する某作品の、その登場シーンを模したのだろう。
そしてしんのすけの知る彼ならば、その再会をより劇的に演出したいと考えていたとしても納得できた。
だとしたら再会は近い。
その作品ではその人物も、主人公からは死んだと思われており、まず謎の通信、次にフルフェイスマスク姿で登場し
終盤になってようやく仮面が外されて正体が明かされるというストーリーだった。

「ウォーターゲートの密告者の名前じゃ別の方向にアウトだから、あんな変な偽名使ったのかな?」

彼がどこまでこのパロネタを続ける気なのかは解らないが、もしガチならこの後しんのすけは、戦車に襲われることになるだろう。

「いやいや、流石にまさかね」

街中で戦車はないだろうと思った矢先、ドーンという爆発音が聞こえてきた。
87 : ◆aMcAOX32KD1b [saga]:2016/07/21(木) 23:21:23.76 ID:HouDWmDk0
「本当に対人地雷が埋まってたのか!?そして誰かが踏んじゃったのか!?」

急ぎ、音のした方へ走るしんのすけが、現場に着き目にした光景は、
御坂美琴によく似た、片足の無い少女が、空から降ってきたコンテナに圧し潰される。
と言うものだった。

(今のが布束先輩が言ってたクローンか!?)

なんでコンテナが降ってきたんだ!?
そもそもあのクローンの少女はここで何をしていた!?
驚きながらも、考えねばならない、確かめなければいけない事へと頭を働かす。
しかし、それは結果としてみれば悪手であった。
88 : ◆aMcAOX32KD1b [saga]:2016/07/21(木) 23:21:53.80 ID:HouDWmDk0

「なっ……美琴ちゃん!?」

直後、しんのすけのすぐ横を御坂美琴が走り抜けていった。
その向かう先には、白髪で細身の少年が立っている。

ガガガガガガガガッ!!!!

御坂から放たれた雷撃が少年の周囲を暴れ回る。
しかしその攻撃は白髪の少年には一発も当たっていないように、しんのすけには見えた。
いや正確に言えば『当たっているのに届いていない』と言ったところか。
おそらくは少年の能力に因るものなのであろうが、しかし今はあの白髪の少年の能力についてよりも
何故、御坂美琴がここに居て、あの少年に攻撃したのかだ。
布束砥信は『樋口製薬に在るのは結局計画は実行されなかったという情報のみだ』と言っていたが、
御坂はその後どうしてか計画の流用とクローン達の存在をしったのだろう。
それでこの場に来た、ここまではいい。
では何故あの少年に攻撃している?そもそもあの少年は何者だ?何故ここに居る?
情報があまりにも不足している。
89 : ◆aMcAOX32KD1b [saga]:2016/07/21(木) 23:22:51.79 ID:HouDWmDk0

(戦闘を止めさせて二人から話を訊くべきかな)

簡単に話してくれれば良いが……

「おおっ、スゲェスゲェ、何だ新ワザかァ?」

白髪の少年が、独り言のように訊く。
御坂は単純な電撃による攻撃をやめ、磁力を操り、砂鉄でできた砂嵐いや鉄製の竜巻を創り少年へとぶつけた。

「ふーン磁力で砂鉄を操ってンのか。おもしれー使い方だ」

荒れ狂う黒い竜巻の中、少年は先程雷撃に囲まれた時と変わらず、一切のダメージなど無い様子でワラっていた。
いや事実ダメージなど無いのだろう。

「タネが割れたらどーってことねェがな」

少年のその言葉と共に、砂嵐はかき消された。
90 : ◆aMcAOX32KD1b [saga]:2016/07/21(木) 23:23:42.55 ID:HouDWmDk0

(今のって……上条君と同じ!?)

それを見てしんのすけは、驚きながらも考察を続けようとした。
しかし御坂が奇声を上げたためにそれは中断される。

(美琴ちゃんに何が……アレは!?)

どうしたのかと彼女の視線を追えば、そこには一本の人の足があった。
靴と靴下から、先程コンテナの下敷きになったクローンのものだと思われる。

(あの片足は地雷で吹き飛んだんじゃなかったのか?)

地雷を踏んだのはクローンでは無く少年の方だったのだろう。
彼の能力であれば、地雷の爆発も平気なのかもしれない。
ということは、彼の能力は上条当麻のそれとは違い、純然たる物理現象すら無効化しているということ。
そして地雷を埋めたのがあのクローンなのだろう。
まず、しんのすけに地雷の存在を教えたアイツが犯人だということは在り得ない。
少年が自分で埋めた地雷を踏むとは考えられず、そもそも御坂美琴と比較すれば1%以下の性能だと言っても
それでも約一千万Vもの電圧を扱える異能力者の電撃使いだ。
つまり自身の近くに地雷が埋まっていればそれに気付くし、踏もうとしている者が居れば止める筈だ。
にもかかわらず、地雷は爆発した。
つまり、クローンが少年に地雷を踏ませたのだ。

(ああいう『無敵バリア』系の相手にはバリアの張って無い所を探すのが定石だしね)

おそらく白髪の少年と御坂のクローンの二人は、ここで戦闘していたのだろう。
コンテナを空から落としたのもクローンの片足を斬りおとしたのも、少年の能力を使ってのことであれば納得できる。
勿論、地雷の爆発は少年が踏んだからでは無く、クローンが能力を使って遠距離からの爆発物処理に失敗した可能性もあるが、
それではクローンの怪我や、降ってきたコンテナの説明ができない。
91 : ◆aMcAOX32KD1b [saga]:2016/07/21(木) 23:24:25.42 ID:HouDWmDk0
「とりあえず、一旦二人を止めるとしますか」

少年と御坂の戦闘、と言っても現状は御坂が攻撃しているだけだが、それは激しさを増していた。
近くにあった幾本もの鉄道レールが、磁力によって絡み合いながら浮かび上がり、さながら一本の巨腕の様であった。
それが、いやそれらが、白髪の少年に襲い掛かった。

ガアアン

少年に直撃したかに思えた数本のレールは、しかし弾かれたかのように動きを変え、御坂に向かう。

「まずいゾ」

しんのすけは急ぎ、御坂と飛んでくるレールの間に入る。
ネクタイをしていなければ間に合わなかったかも知れない、しかし幸いにも今のしんのすけは
全ての身体能力が63倍になるネクタイをしていた。

「護れ、『第七沈々丸』!!」

御坂の前に立ち、懐剣を抜き放つ。
現れた三メートルを超す戦太刀が飛来する鉄塊を断ち切った。

「何だァ?オマエ」

突如、眼前にあらわれた存在に、白髪の少年が尋ねる。

「オラ、野原しんのすけ15歳。アンタは?」

白髪の少年が答える。
  アクセラレータ
「『一方通行』だ、ヨロシク」
92 : ◆aMcAOX32KD1b [saga]:2016/07/21(木) 23:25:22.36 ID:HouDWmDk0
今夜はここまでです。
明日のアニメ楽しみですね
93 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/07/21(木) 23:31:37.98 ID:3x1udquM0
セリフとセリフの間が2行空くと更に読みやすい。
モノローグは一文につき1行。
94 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/07/21(木) 23:58:03.73 ID:pGrXogINo
乙です
95 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/07/22(金) 01:34:20.40 ID:1W2xF3W5o
禁書原作沿いでしんのすけ勢がお話し介入してた最初の頃は面白かったけど
オリジナル要素増えだしてから唐突に面白くなくなったなこのシリーズ
96 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/07/22(金) 01:58:45.83 ID:NS/tENZho
乙。また次回楽しみに待ってます
97 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/07/22(金) 07:46:14.47 ID:8DEDpsc8o
>>95
今のがオリジナルとな?
無知晒す前に黙ってた方がいいよお前
ボーンヴァンパイアの件ならまだたった一回だぞ?
98 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/07/22(金) 19:51:08.96 ID:j/IQr9rB0
シン・ゴジラはともかくオヤジシェンデストロイヤーやオヤジジェンデストロイヤーはネタとして使えそうね
99 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/07/22(金) 20:14:54.42 ID:TBlEHsEAO
ここのボーちゃんならマジで作れそうだな…
100 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/07/22(金) 22:04:59.43 ID:GMQBwXyV0
乙です。流石にベクトル変換相手に基本物理のしんのすけが……と思うけど、しんのすけだからなぁ
101 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/07/22(金) 22:24:38.11 ID:j/IQr9rB0
ノリで木原神拳(尻)とか出来そう
102 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/13(土) 23:47:51.82 ID:IaDucWeK0
来ない
103 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/14(日) 01:24:01.62 ID:lEcWWC12o
>>100
法則無視だからそんな法則に囚われるわけない
104 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/20(土) 23:20:02.62 ID:FVinOAM70
更新はよ
105 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/20(土) 23:20:29.90 ID:SnJjmS7vO
嫌ンゴ更新しないンゴ
106 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/22(月) 21:09:52.53 ID:yubQF7Sv0
更新しないとグロ貼るンゴよぉ
107 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/22(月) 21:17:33.90 ID:Lyu2NUPlO
グロ画像貼ってクレメンス
108 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/22(月) 21:47:02.34 ID:DukxnQPo0
だが断る
109 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/22(月) 22:13:07.28 ID:5IiMeBDyo
>>108
警察だ!(JOJO語録誤用警察)
110 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/22(月) 22:27:53.76 ID:D9wIp4v7O
ちんぽハラデイ
111 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/23(火) 19:09:13.70 ID:CdQ70cmKo
はよ書けやレス乞食
http://imgur.com/qdqZSqy.png

こんな狂乱ははやく終わらせてやる

http://imgur.com/qdqZSqy.png
112 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/23(火) 19:53:08.63 ID:j4cEqps6o
>>111
グロ
113 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/23(火) 21:16:54.74 ID:NxSnebaIO
>>111
エロ
114 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/25(木) 22:06:54.99 ID:+HgXNDdM0
幻コロ
115 :>>1 ◆aMcAOX32KD1b [saga]:2016/08/26(金) 21:04:37.88 ID:QS5Cfv830
お待たせしてすみません。
お久しぶりです。1です。
これから投下します。
>>98-99
作る理由がなさそうですし既に原作に北与野博士のデカウォーターがあるので
ただデカウォーターだと10数メートルなのに対してシンゴジラは100をこすそうですが
>>100-101>>103
しんのすけじゃなきゃ不可能な方法ですが、一応は『理屈在り』の方法を考えています
116 :>>1 ◆aMcAOX32KD1b [saga]:2016/08/26(金) 21:05:34.80 ID:QS5Cfv830
『一方通行』と名乗った少年に、しんのすけが戦いを止めるよう提案する。
 アクセラ
「一通さんね、とりあえず今夜はこれでオヒラキにしない?」

「あァン?」

一方通行にとって、しんのすけは突如現れた怪しげな乱入者だ。
御坂を守った事から、次はコイツが自分の相手をするのかと思っていた。
しかし実際に出てきた言葉は余りに予想外のものであった。
虚を突かれた一方通行に、しんのすけが続けた。

「ここでクローンと戦ってたみたいだけど、この娘はちょっと違くてさ……ならなんで襲ったのって言われたら、オラにはわかんないけど……まあとにかく、見逃してくれない?」

『ちょっと違う』と言うしんのすけの台詞に、一方通行が応える。

「あァ、やっぱりなァ。途中で気付いたぜ……ソイツ、オリジナルだろ?」

「そうそう、だから……」
                オリジナル
「けどなァ、アイツらとの戦闘は超電磁砲との戦闘の代用だ……」
117 :>>1 ◆aMcAOX32KD1b [saga]:2016/08/26(金) 21:06:22.94 ID:QS5Cfv830
しんのすけの言葉を遮り、一方通行は言葉を続けた。
        ソイツ  や
「ってェことは御坂美琴と戦ればこのダリィ作業もグッと短縮できるンじゃねぇか?」

「わーお、まさかのやる気満々?」

一方通行が足を一歩前に踏み出し、しんのすけが御坂をかばうように彼女の前に立ち、戦太刀を構える。

「お待ち下さい」

一触即発の空気の中、待ったをかけたのは一方通行でもしんのすけでも、御坂のものでもない、複数の声であった。

「計画外の戦闘は予測演算に誤差を生じるおそれがあります。とミサカは警告します」

御坂としんのすけが後ろを振り向き、声の主を確認する。

「……こんなにたくさん?」

しんのすけの呆れとも驚きともつかないこえが漏れる。
そこには三十は居ようかというほどの第人数のクローン達が並んでいた。
                レべル5
「特にお姉さまとそちらの男性は、超能力者ですので」
「戦闘により生じる歪みは」
「非常に大きく」
「期間の短縮はおろか」
「計画が破綻するおそれがあります」
「またミサカには今後予定されている実験に合わせた」
「チューニングが」
「施されており」
「計画を途中で変更する事は極めて困難であるとミサカは説得します」
118 :>>1 ◆aMcAOX32KD1b [saga]:2016/08/26(金) 21:07:14.25 ID:QS5Cfv830
彼女達がリレーして話すその様子に一方通行が舌打ち一つした後に了解の返事をする。

「分かった分かった、分かりましたよ。ちょっとからかっただけだっての」

それだけ言うと、つまらなそうに立去っていった。

「九九九五号から一○○○七号まではレールの撤去を」

「一○○○八号以降は……」

「何で!?」

二人のクローンが台詞を分割し他のクローン達へ指示をだす途中で、御坂の血を吐くような声が響いた。

「アンタ達は何なの?おかしいわよ!!何でこんな計画につきあってるの!?生きてるんでしょ!?命があるんでしょ!?アンタ達も!!あのこも!!」

しかしそんな御坂の問いかけに返されたのは、実に淡々としたものであった。

「ミサカは計画のために造られた模造品です」
「作り物の体に作り物の心」
「単価にして十八万円の」
「実験動物ですから」

その声が、複数人によるものなのか、一人が区切って言ったものなのか、御坂としんのすけの耳には、分からなかった。
119 :>>1 ◆aMcAOX32KD1b [saga]:2016/08/26(金) 21:10:23.08 ID:QS5Cfv830
短いですが、今夜はここまで
その場にしんのすけが居合わせただけで、原作とほとんど変わりませんが
そのわずかな違いがバタフライエフェクトおこしたりするのがこのSSです
次回投下は一週間後です。

話は変わりますが、アニメのひろしの声の違和感がすごいですね
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