八幡「やはり俺のアイドルプロデュースはまちがっている。」凛「またね」

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81 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/11(土) 15:24:01.26 ID:Xw0hlOL7O
>>80
めっちゃ早口で言ってそう
82 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/11(土) 16:23:03.72 ID:r1C1FI5hO
>>80
このSSも魔法も超能力のような異能もない、宇宙人とか異世界人も関係ない千葉と東京のお話なんですがそれは
83 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/11(土) 17:43:31.94 ID:GnUt1Z4so
はまちの舞台設定が「現実に近い世界観」と評されたことにすら噛みつくのは流石にお門違いだろ。
むしろ、>>76の中では一体どんなぶっ飛んだ世界設定になっているんだろ。
84 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/11(土) 17:47:05.68 ID:6v8eCdG/o
>>83
えっ
85 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/11(土) 19:14:53.62 ID:rJLcTWqpo
>>82
現実とそう変わらない世界のはずなのに、作者の都合で登場人物の言動や世界そのものがおかしな方向に歪められているからそこを突っ込まれているんじゃないか。
登場人物に現実ではありえない行動を取らせるなら最低限言い訳を用意すべきだったのに、そういうフォローが一切ない点は自分も何だかもにょる。
86 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/11(土) 20:29:13.17 ID:qiOxR05CO
雑談スレで純文学に挑戦とか言ってる奴と同じ匂いがする
87 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/11(土) 20:34:34.63 ID:jwCHgnqko
SSなんだから気楽に読もうや・・・そもそもこんなとこで批評家気取ってる時点でどうなの
88 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/11(土) 21:12:06.76 ID:a1e76vyA0
虚偽の情報を流した内通者は懲戒処分されたのですが
八幡もプロデューサーに復帰するみたいなんですが
89 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/12(日) 12:08:00.66 ID:eFsTvOK4o
昨日のツイート
>>もう寝よ。明日は更新するぞ。
90 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/12(日) 20:05:22.31 ID:SZcE+OADo
気持ち悪いSSのスレには気持ち悪い読者ばかりが集まってるってのがよくわかるな、ここ見てると
91 : ◆iX3BLKpVR6 [saga]:2016/06/12(日) 20:23:23.84 ID:ViqRwwEc0
所詮は二次創作のSSだし、多少の気持ち悪さと展開に無理あるくらいは大目に見てくださいな。ガハハ!
あ、でも好みや趣味は人それぞれなので、SSや1へはともかく読んでくださる方への批判はやめてくださいね。

今夜更新します! いつも通り日付は変わると思うけど!
92 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/12(日) 21:14:45.80 ID:wBcd9r5co
よっしゃー
93 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/12(日) 21:21:02.26 ID:jI3zkZKAo
やったで
94 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/12(日) 21:31:59.51 ID:9+K33zPLo
自演にしたってもうちょい上手くやれよ
95 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/12(日) 21:56:37.72 ID:/ixP60V3O
わーい
96 : ◆iX3BLKpVR6 [saga]:2016/06/13(月) 00:44:21.78 ID:EZXQYtyb0
投下します!
97 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/13(月) 00:44:50.01 ID:cIcKFKrko
気持ち悪い書き込みだからふつーに作者だと思ってた
98 : ◆iX3BLKpVR6 [saga]:2016/06/13(月) 00:48:01.16 ID:EZXQYtyb0










女将さんへと連れられ、懐中電灯と防寒着を取りにいく事になった一同。正確には俺と楓さんに凛という面子だが、正直やっぱり多い気もする。

というか、俺としては一人の方が何かと都合が良かったんだけどな。荷物を取りに行くだけとはいえ、あんましアイドルに危険を負ってほしくもない。それに……


と、そこで背後から突然肩をちょんちょんされた。少し驚きはしたが、別に幽霊とかではない……はず。恐らく。
今の俺たちの配置はライトを持った女将さんが先行し、その後を俺、更にその後ろに楓さんと凛が続くといった形。なので、自ずとアイドル二人のどちらかになるだろう。
振り返ってみれば、案の定顔を寄せてくる楓さんの姿があった。……あの、暗いとはいえそんなに近づかれると色々と困るんですが……なにこの良い匂い。

しかしそんな俺の思いを知ってか知らずか、楓さんは妙に楽しげな様子で話しかけてくる。



楓「ねぇ、比企谷くん」

八幡「なんすか」



何故か小声の楓さんに対し、俺も何となく同じ声量で返す。



楓「……こうしてると、何だか肝試しているみたいじゃない?」



うふふ、っと小さく笑いを零す楓さん。

あーまぁ確かにな。ライトは女将さんが持ってる一つだけだし、こうして縦に並んで進む様はそう見えなくもない。何より、この真っ暗な旅館内を少人数で歩くってのがな。正直さっきから怖くて仕方ないです。


99 : ◆iX3BLKpVR6 [saga]:2016/06/13(月) 00:49:11.70 ID:EZXQYtyb0



八幡「確かにちょっとそんな気分にもなりますね。一人だったらキツかったかもしれません」

凛「へー。あのプロデューサーが一人は嫌だなんて、そんな台詞を言うなんてね」

八幡「はん、別に怖くなんてないぞ? ないけど、たぶん一人だったら常にわーわー声を上げて平常心を保とうとするってだけだ」

凛「それ怖がってるよね」



凛が突っ込み楓さんが笑うと、つられたように前方からも笑い声が漏れる。



「……暗いので、足下に気をつけてくださいね」



女将さんが取り繕うようにそう言ったが、何となく声音からその表情を察する。……なんか恥ずかしい所を見られたな。



そのまま廊下を歩いていくこと数分。特に急いではいなかったが、それ程かからずに目的の倉庫へと辿り着くことが出来た。女将さんが鍵を開け扉を開いてみれば、その中には様々な備品がしまってある。

しかし思ったよりも大きい部屋だ。毛布やシーツがある所を見るに、恐らくはリネン室も兼ねているのだろう。



「今探しますので、少々お待ちください」



そう言って、倉庫の奥の方へと進んでいく女将さん。
勝手に漁るわけにもいかないし、ここは大人しく待機だな。



八幡「……凛。あまり中に入り過ぎるなよ」

凛「? なんで?」

八幡「いや。こういう時に全員倉庫の中に入ると、大体扉が勝手に閉まるのがお約束だからな」

凛「さすがに無いと思うけど……」


100 : ◆iX3BLKpVR6 [saga]:2016/06/13(月) 00:50:55.92 ID:EZXQYtyb0



と言いつつ、しっかり中へは入らない凛。まぁこう暗いし、さしもの凛も多少の恐怖感は感じているのだろう。それに比べて……



楓「早苗さんたち、もう先にお酒開けていたりしないかしら……」



不安そうな表情で言う25歳児楓さん。

能天気なもんだな……いや、ある意味じゃ恐怖を感じているとも言えるけど。正直こっちからしてみれば割りとどうでもいい。



「お待たせしました。コチラが懐中電灯と、防寒着になります」



女将さんが持ってきたのは懐中電灯が詰められた段ボールが一箱に、沢山の上着……これは、なんて言えば良いんだ。ダウンジャケット? 似たようなのを前にジャンパーって言ったら美嘉に引かれた事があるからな。気を付けねば。



八幡「んじゃ俺が段ボール持つから、上着は頼みます」

楓「良いんですか?」

八幡「まぁ、こういう時の為の男手ですし」



というかむしろ、ここで重い物持たなかったら情けないにも程がある。何しに来たか分からん。

そんな思いを汲み取ってくれたのか、楓さんと凛は上着を手分けして持ち、申し訳なさそうにしていた女将さんもそれに習った。

しかし、やっぱ人数分ともなるとさすがに多いな。……三人付いてきたのは正解だったかもしれん。



「それでは、鍵を閉めますので……」

八幡「ええ」



全員が倉庫から出て、女将さんが扉の鍵を閉める。

と、その時だった。









凛「あ」


楓「電気、つきましたね」





101 : ◆iX3BLKpVR6 [saga]:2016/06/13(月) 00:52:49.29 ID:EZXQYtyb0



声をあげる凛と、キョロキョロと辺りを見回して言う楓さん。

先程まで暗く何も見えなかった廊下が、パッと昼光色の光で明るくなったのである。どうやら無事に予備電源に切り替わったらしい。

ホッ、と。女将さんが安堵したのが分かった。やっぱ旅館側の人間としては気が気じゃなかっただろうな。



八幡「良かったですね」

「ええ。ご心配をおかけしました」

楓「これで飲み会に戻れますね♪」



そっち?



八幡「そんじゃ戻るか」

凛「そうだね。……でも、これはどうするの?」



手に抱える防寒着を見て言う凛。



八幡「まぁこの後も何があるか分からんから、念のため持ってった方が良いかもな」



と、言ってから女将さんに視線を向ける。
よく考えれば、俺が決めていい事ではない。ホテルの備品だし。



「そうですね。お手数ではありますが、格部屋へお持ち帰りして頂く方が宜しいかと思います」

八幡「だ、そうだ」

楓「それじゃ、すぐに戻りましょうか」



凛も頷き、一同は荷物を抱えたまま夕食会場の和室へと戻る事にする。
今頃はあっちも安心している事だろう。

戻る途中、ふと楓さんが思いついたように話し始める。


102 : ◆iX3BLKpVR6 [saga]:2016/06/13(月) 00:55:37.84 ID:EZXQYtyb0



楓「けれど、案外あっさり解決してしまったわね」



けれど、という言い回しが本当に雪ノ下そっくりだったのだが、それはひとまず置いておく。



八幡「と、言うと?」

楓「ほら。こういう時って電気が回復するまでの間に、何か事件が起きたりするじゃない?」



悪戯っぽい笑顔で言う楓さん。
何か事件とは、また物騒な事を言い始める。まぁ言いたい事は分かるけど。



楓「暗がりに生じて、か弱い少女を……ぐわぁっと!」

凛「ひゃっ……! ちょっ、楓さん!?」



凛のらしくも無い悲鳴に、思わずバッと振り返る。え、今なに。何されたの!?



凛「ど、どこ触ってるんですか」

楓「ごめんなさい。後ろ姿が無防備だったから、つい」



顔を赤くしてジト目で抗議する凛。対する楓さんはにこやかである。完全に親父キャラやないですか。……で? 一体どこを? 凛のどこをどう触ったんですかねぇ!? プロデューサー気になります!

どうやら明るくなった事で気が緩んでいるらしい。こうやって遊ぶ余裕も出て来た(一人に関しては元々な気もするが)。


しかし楓さんが言った、こういう時は何かしらの事件が起きるものだという台詞。
冗談めかして言ったであろうが、実は案外的を射ていたりする。



というのも……


103 : ◆iX3BLKpVR6 [saga]:2016/06/13(月) 00:57:10.19 ID:EZXQYtyb0



凛「あれ?」



元の和室へと戻り、襖を開けた凛が声をあげる。



文香「……お帰りなさい」

凛「ただいま。……文香だけ?」



凛の後を追って中を除いてみれば、確かにそこには鷺沢さんしかいない。



凛「他のみんなは?」

文香「それが、電気がついた途端、部屋から飛び出していきまして……」



部屋から飛び出してった? 鷺沢さん以外?
なんでまた……と思っていると、そこに上機嫌に鼻歌を歌いながら一人戻ってくる。



早苗「いや〜危なかったわ。あ、比企谷くんたちお帰りなさい。電気戻って良かったわね!」

八幡「早苗さん。どこ行ってたんすか?」

早苗「もう、そんなの女性に訊く事じゃないわよ? トイレよトイレ。それよりも武蔵を……」



と、どうでもいいとばかりにそそくさとお酒の元へと行ってしまう。あの、一応さっきまで非情事態だったんですが……

まぁ、平気そうなら別に良いか。他のメンバーも同じ理由かもしれないしな。それならば確かに早苗さんが言うように野暮な詮索だ。



八幡「懐中電灯と防寒着は各々で部屋に持ち帰るとして、とりあえずは部屋に置いておきますか」

「ありがとうございます。……こちらの和室のご利用時間は当初の予定通りに?」

八幡「いえ。さすがに申し訳ないんで、飯だけ食べてすぐに各自部屋へ戻ることにします」


104 : ◆iX3BLKpVR6 [saga]:2016/06/13(月) 00:59:27.15 ID:EZXQYtyb0



なんか点検とか、問題が無いかチェックとかやりそうだしな。迷惑にならないよう早く寝てしまった方が良いだろう。

女将さんにそう言った所で、チラと楓さんを伺ってみる。
何か異を唱えるかとも思ったが、特段そんな様子は見えない。



楓「事態が事態ですし、仕方ありませんね……」



お、おお……ちょっと感動した。

いや、そりゃ楓さんだって大人だし、そうだよな。こんな時くらいは自重するよな。



楓「改めてお部屋で飲みましょう」

八幡「そう来るか」



期待を裏切らない人だった。



「それでは私は戻りますが、何かあればお声がけ下さい」

八幡「ええ。ありがとうございました」



一度深く礼をして、女将さんはその場を後にする。

しかしこんな不足の事態になってもお客さん第一に行動しなきゃならんとか、本当に大変そうな仕事だ。それこそミステリーなんか起きよう日には堪ったもんじゃないだろうな。……これまであったりしたんだろうか。



八幡「そんじゃ、さっさと飯食って…」

早苗「ぎいぃえぇぇーーーーーーーーーーーっ!!?」

八幡「……………」


105 : ◆iX3BLKpVR6 [saga]:2016/06/13(月) 01:01:21.94 ID:EZXQYtyb0



早苗さんの、悲鳴。

だが何故だろう。とてつもなくギャグ臭がハンパないのは。全然危機感が襲わない。



八幡「今度はどうしたんすか早苗さん。そんなアイドルらしからぬ声出して。凛との歳の差が干支一回り以上って事実に恐怖でもしたんすか?」

早苗「え? 嘘だぁ……ひい、ふう、……で、だから……うん。あ、マジだ。…………って違うわよ! 殴るわよ!?」



しっかり殴られた。グーで。



早苗「そんな事より、これよこれ! 見てよ!」



ずい、と早苗さんが差し出してきたのは、俺が持ち寄った例の桐箱。開かれたその箱の中には、しかしお酒の瓶は入っていない。

そう、空であった。









早苗「無いのよ! 剣聖武蔵がっ!!」









部屋の中へと木霊する、早苗さんの叫び。






八幡「あ。そうすか」

早苗「反応薄っ!? そんだけ!?」

八幡「いやそう言われても……」



正直どうでもいい……という反応の俺と凛(鷺沢さんはよく分からん)。しかし、過敏に反応する人物が一人。言わなくても分かるな。



楓「……早苗さん。それは本当ですか?」


106 : ◆iX3BLKpVR6 [saga]:2016/06/13(月) 01:02:56.73 ID:EZXQYtyb0



静かに、だがしっかりと、焦りの色を浮かべている。
下手をすれば、彼女がこんなに感情を露にしているのを見るのは初めてかもしれない。それで良いのか現役アイドル。



早苗「ホントよホント! ほら!」

楓「確かに空ですね……この中に入っていたんですか?」

早苗「ええ。確かに中……に…………?」



記憶を辿るように思い出していた早苗さんは、そこではたと気づく。そして、そのまま視線はゆっくりと俺へ。あ、これまずいやつだ。



早苗「……比企谷くん! 確か、最後に持ってたのあなただったわよね!?」

八幡「最後に箱にしまったのは俺ですけど…」

早苗「その時本当はどこか別の所に置いたんじゃないの!? どうなの!?」

八幡「あがががががががが」



強引に掴まれ、がっくんがっくんと肩を揺すられる。いやちょっと落ちついて痛い痛い痛い!



八幡「ちゃ、ちゃんと箱に入れましたよ。見てなかったんすか?」

早苗「あんな暗い中で見えるわけないでしょ!」

楓「まぁあぁ。とりあえず、部屋の中を探してみましょうか」



楓さんが早苗さんを宥め、仕方なく部屋の中でのお酒捜索が始まる。と言ってもただの広い和室だからな。探せる所など殆ど無い。5分とかからず終えてしまった。



早苗「やっぱり無いわねー」

凛「仲居さんが持ってったとか?」

文香「待っている間、他の方が入ってくる事は無かったので、それはないかと……」



鷺沢さんの証言通りならば、俺たちが部屋を出てからは誰もここへ立ち寄ってはいない。つまり誰かが持ち出す事は不可能という事だ。……いや、


107 : ◆iX3BLKpVR6 [saga]:2016/06/13(月) 01:04:46.49 ID:EZXQYtyb0



八幡「……明かりついて出ていった人たちなら、一応持ち出す事は出来るな」

凛「!?」

早苗「っちょ、あなた、みんなを疑う気!?」

八幡「別にそこまでは言ってないですよ。あくまで可能性の話です」



と、そこで襖が再び開けられる。
皆が視線を向けてみれば、そこにはいなかったメンバー全員が戻って来ていた。



レナ「ど、どうしたの。みんなしてそんなに見て」

幸子「はぁー……一時はどうなる事かと思いましたよ……」

莉嘉「あれ? みんなまだご飯食べてなかったの?」



見た感じ、特に怪しい所は無い。

俺が早苗さんを見ると、彼女はとても真剣な表情で、本当に仕事の時にしてくれと言いたくなる程に真剣な表情で、呟いた。






早苗「これは、事情聴取の必要があるわね……!」






そこまでの事か。


その後戻ってきたメンバーに事のあらましを説明。お酒の行方を知らないか訊いてはみたが、残念ながら誰も知らないようだった。



レナ「なるほど……これは確かに事件ね」

早苗「そうでしょう!? 誰か、無意識に持ってったりしてない?」



一体どれだけお酒が好きなら無意識にそんな行動に出るのか。むしろあなたの方があり得そうじゃありません?


108 : ◆iX3BLKpVR6 [saga]:2016/06/13(月) 01:10:32.50 ID:EZXQYtyb0



八幡「ってか、早苗さんも部屋からすぐに出てったんですよね。それこそ酒に目が眩んで持ち出したんじゃ…」

早苗「なんですってぇ!」



再び、がっくんがっくん揺らされる。今度は胸ぐらだ。段々余裕無くなってきてるぞこの人……!



早苗「さっきも言ったけど、あたしはトイレに行ってただけよ! そりゃ、アリバイは無いけど……とにかく元婦警のあたしがそんな事しないっての!」



力説する早苗さん。
正直、こんなしょうもない事でアリバイうんぬんとか言わんでほしい。なんか嫌だ。



レナ「私は部屋に携帯電話を取りに行ったけど、それも特に証明は出来ないわね」

莉嘉「アタシも、部屋に戻って電話してたよ? お姉ちゃんに報告しておこうと思って」

幸子「ぼ、ボクは、えぇっとー……そう、トイレ! トイレに行ってました!」



約一名焦り過ぎな気もするが、一応は全員が知らないと言っている。しかし、証明は出来ない。



八幡「…………」

早苗「あれ? でもあたし幸子ちゃんとトイレで会ってないわよ?」

幸子「うぇっ!? いや、あの、えっと……そう、ボクは一人じゃないと集中出来ないんですよ! だから部屋まで戻ったんです! ええ!」



そんな情報は別にいらん。っていうか君アイドルだよ? もうちょっと言い方ない?



凛「そもそも、明かりがついた後に持ってったらさすがにバレるんじゃない?」

八幡「どうなんですか?」

文香「……正直、皆あっという間に出て行ったので、何とも」

早苗「あー……確かに、そこまで気に留めてなかったわね」



じゃあ、どさくさに紛れて持ち出した可能性は否定できないわけだ。
まぁ俺以外は全員浴衣だし、瓶はデカイが隠そうと思えば隠せるか。……なんかエロいな(小並感)。



八幡「……とりあえず、ちゃっちゃと飯にしちゃいましょう。片付けられないんで」

早苗「うう……折角良いお酒で晩酌出来ると思ったのに……」

八幡「ちなみに飯食ったらすぐ部屋に戻ってくださいね。二次会も無しで」

早苗「嘘でしょぉッ!?」


109 : ◆iX3BLKpVR6 [saga]:2016/06/13(月) 01:12:05.14 ID:EZXQYtyb0



そんなこんなで、喚く早苗さんを宥めつつ、夕食をなんとか終える。
ちなみに撮影が遅れる事はこの時に伝えた。危ねぇ……普通に忘れる所だった。



レナ「嵐で来れない……いよいよサスペンスじみてきたわね」

文香「三日も何もしないでいて、大丈夫なのでしょうか……?」

八幡「予備日があるのでその点は心配いらないそうです」

早苗「うう…武蔵……」



まだ言ってんのかこのアラサーは。



凛「その間って、私たちは何してればいいのかな」

莉嘉「ヒマになっちゃいそうだよねー」

八幡「まぁ、台本とか読んで……ゆっくり休んどきゃいいんじゃないか」



正直俺も特に指示する事は無いし、する事も無い。休んでくれとしか言いようが無かった。

しかし、さっきから一つ気になる事が。



楓「…………」



飯食う前あたりから黙りこくってる楓さんである。

珍しく、その表情は思い詰めてると言える。……まぁ、何となく想像はつくけどな。



レナ「それじゃあ、そろそろお開きにしましょうか」

八幡「ええ。お酒を飲むのも良いっすけど、各自自己責任でお願いします」

早苗「くっ……子供のくせにまともな事言っちゃって……!」



大人のくせにまともじゃない人が多いんです。とは言えない。また鉄拳制裁くらっちゃう。

そして自分の部屋へ戻る間際、件の楓さんがそっと耳打ちしてきた。思わず、バッと後ずさる。






楓「――後で部屋に行きますね」






そう、彼女は言っていた。

これが何も無い場合の台詞なら何と心くすぐられた事だろうか。しかし、実際はそんな色気づいたものではない。


……一体何を言い出す事やら。





110 : ◆iX3BLKpVR6 [saga]:2016/06/13(月) 01:15:09.23 ID:EZXQYtyb0
相変わらず短いですが、今回はこの辺で。ミステリーだと思った? 残念、ギャグだよ!
楓さん編はこのままずぅーっとこんな感じなんで、期待していた方には正直申し訳ないと思っている。
111 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/13(月) 02:38:29.33 ID:E9dWFJ8Ko
乙です
112 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/13(月) 02:56:11.79 ID:tgGCv9780
屑山達に制裁希望します。
113 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/13(月) 03:00:53.23 ID:4BoVeAUq0
>>112
また明日から学校でリア充にイジメられる1週間が始まるのかwwww大変だよなwwwwwwww
114 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/13(月) 03:07:45.71 ID:nWU61D2eO
115 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/13(月) 04:17:26.49 ID:JdZUqxkko
>>112
ここの葉山たちはいいキャラなんだよなぁ
116 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage ]:2016/06/13(月) 06:24:50.18 ID:2k4N9e7v0

楓さん編が終わったらあの9人のようにヒッキーと楓さんをニアミスさせてほしい
117 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/13(月) 07:50:47.70 ID:O0qHHmNmo
乙乙
カワイイボクの事情は何だろう?
118 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/13(月) 09:20:54.99 ID:n6rF90g+o
おっつん
119 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/13(月) 10:14:33.17 ID:amhlj4Y2o
なんかもう久しぶりすぎて楓さん編の冒頭忘れてるわ
120 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/14(火) 03:35:01.07 ID:izNH6JfH0
>>112 >>113地獄のような日々の作者さんだ!
地獄のような日々の作者さんオッスオッス!
121 : ◆iX3BLKpVR6 [saga]:2016/06/19(日) 16:24:51.14 ID:8d0eLXFJ0
微妙な時間帯だけど投下しますー
122 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/19(日) 16:26:39.10 ID:1BIrqdw6o
やったー
123 : ◆iX3BLKpVR6 [saga]:2016/06/19(日) 16:28:07.38 ID:8d0eLXFJ0










“後で部屋へ言く”。

そう俺に告げた楓さんは夕食を終え別れた後、30分程で宣言通り俺の部屋を尋ねてきた。


……二人のお供を連れて。



楓「こんばんは」

八幡「どもっす。……で、どうしたんすか。凛と鷺沢さんまで連れて」



楓さんの後ろには、何とも複雑そうな表情をした凛と相変わらず感情を読み取り辛い鷺沢さんが控えている。何と言うか、巻き込まれました感がハンパない。俺含めて。



楓「まぁまぁ。とりあえず、中に入れさせれ貰ってもいいかしら?」

八幡「そりゃ、まぁ……どうぞ」



特に断る理由も無いので、入室を許可する。……いやーでもこれなんか長くなりそうだなぁ。だって手になんかビニール袋持ってるもん。あれ缶的なもの入ってるよシルエットで分かる!

しかし気付いた所で時既に遅し。仕方ないので、残りの二人も中へ招く。ツインルームの洋室を一人で使うという贅沢な状態のため座る所には困らない。

ちなみにアイドルたちもそれぞれ一人一部屋あてがわれているが、莉嘉と輿水のみ同室である。まぁ、あいつらまだ中学生だしね。子供扱いは嫌だろうが、実際子供なので我慢してもらうほかない。ってか、よく考えれば高校生は俺と凛だけだな。……いやだから何だって話なんだけど。



八幡「ほら」

凛「ありがと」

文香「……失礼します」



二人を椅子へ促し(楓さんは既にベッドに腰掛けていた)、全員が座ると、自然と部屋の中央を見る囲ったような位置になった。そして、何が始まるのかと楓さんへと視線を向ける。他の二人も同様だ。この分じゃ、二人にもまだ話してないんだろうな。


124 : ◆iX3BLKpVR6 [saga]:2016/06/19(日) 16:30:28.29 ID:8d0eLXFJ0



楓「それじゃあ早速だけど、ここへ来た理由を話すわね」

八幡「ええ」



俺が返事をすると、楓さんは持って来ていたビニール袋を少し持ち上げ、とても良い笑顔をつくる。



楓「まず一つは、比企谷くんたちと飲み明かしたいなぁ……と思って来たのと」

八幡「………………」

文香「(……比企谷さんが、頭を抱えています…)」

楓「あ。もちろん、比企谷くんたちの分のソフトドリンクも持ってきてるから、安心してね」

八幡「…………………………」

凛「(楓さん、たぶんそういう事じゃないと思うよ……)」



いや、うん。これは予想通り。予想通りだけど、出来れば外れてほしかったなーって。



八幡「……早苗さんと、あと兵藤さんは?」

楓「今は早苗さんの部屋で飲んでるんじゃないかしら。私は用事があると言って抜けてきたけれど」



そうか、そこだけは運が良かったな。あんだけ不貞腐れてたし、部屋に押し掛けてきて更に絡み酒とか目も当てられない。まぁまだ来ないとは限らないのだが。



楓「でも、とりあえずは本題の後ね。二つ目が重要なの」

八幡「……二つで全部ですか」

楓「全部です。……あ、でも三つあるかも…」

八幡「二つでお願いします」



絶対今この人思いつきで言っただろ。ほら、だって舌出したよ今! 
何とも良いように弄ばれてるものだ。この大人の余裕はどことなく陽乃さんを思い出す。全く違うタイプなのにな。不思議だ。



八幡「……それで、その二つ目ってのは?」

楓「ええ。みんな薄々気付いてるかもしれないけれど……」

凛「……もしかして」

楓「剣聖武蔵を、見付けましょう」


125 : ◆iX3BLKpVR6 [saga]:2016/06/19(日) 16:32:49.46 ID:8d0eLXFJ0



表情を一転、キリッとした顔つきで言う楓さん。だがあまり締まらないのは何故だろうか。
まぁ、これも予想通りだな。



楓「正確には、武蔵を隠し持っている人を暴く、と言った方が良いかしら」

八幡「……やっぱ、そうなりますよね」

凛「ちょっと待って」



そこで介入してくる凛。
どうやら楓さんの言い方に気になる点があった様子。



凛「その言い方だと、誰かが持ってるって確信してるように聞こえるけど」

楓「確信、ではないけれど、私はその可能性が高いと思っているわ」



顎に手を当て、考えるように言う楓さん。何とも絵になるな。探偵役でもいけそうだ。



八幡「確かに、あの状況じゃ自然に無くなるなんてまずあり得ないからな。第三者が介入する術も無いようなもんだし、あの部屋から出た誰かってのが有力だろ」

文香「…それで、このメンバーが集められたんですね……」



納得したように呟く鷺沢さん。
まぁ、この面子って時点で何となく想像はついたけどな。



楓「あの時私と比企谷くんと凛ちゃんは部屋を出ていて、文香ちゃんはずっと部屋にいました。なので協力を仰ぐならこのメンバーだと思ったの」

文香「ですが、皆さんが出て行った後……私にも一人の時間がありました。そこは良いのですか……?」



何故か自らアリバイが無い事を告げる鷺沢さん。それを言う時点で犯人では無さそうだが、その発言に対する楓さんの返答はこれだ。



楓「ふむ……」

文香「…………」

楓「……その発想は無かったわね」



無かったのかよ。

思わずガクッとなる。どうやら探偵役は無理そうだな。ってか本当に探す気ある?


126 : ◆iX3BLKpVR6 [saga]:2016/06/19(日) 16:34:30.67 ID:8d0eLXFJ0



八幡「……まぁ、どっちにしろ、鷺沢さんには無理だと思いますよ」

凛「何か理由があるの?」

八幡「単純に、電気が付いてから全員が居なくなるなんて分からないからだよ。突発的に行動した可能性もあるにはあるがな」



全員が部屋を出て行って、今がチャンス! とお酒を隠す行動に出る等どんな状況だろうか。いや、それを言ったらお酒を持ってく奴の動機も良く分からんって話になるんだが。



八幡「それに、俺らがいつ戻って来るかも分からんのに行動するのはリスクが高い」

凛「なるほどね。確かにそんな短い時間で隠すのは難しいかも」

文香「一応、窓から放り投げるという手も……」

楓「文香ちゃん、そんな事をしてはダメよ。絶対にダメ」



とても迫真の表情でおっしゃる楓さん。だから、そう言う時点でまずやってないって。



凛「私たち三人はいいの? 一緒にいたし、難しいとは思うけど」

楓「そうね……」



楓さんは少しだけ考え込む素振りをするが、すぐに顔を上げて告げる。



楓「そこまで考え出したら切りが無いし、私たちの中に犯人がいるとは考えないようにしましょうか」

八幡「……ノックスの十戒、とはまた違うか」

凛「ノックス……って、何?」



俺の呟きに首を傾げる凛。
それに答えてくれたのは鷺沢さんだった。


127 : ◆iX3BLKpVR6 [saga]:2016/06/19(日) 16:36:13.65 ID:8d0eLXFJ0



文香「ロナルド・ノックスが提唱した、推理小説における十個のルールのようなものです……」



さすがは鷺沢さん。色々読むとは聞いていたが、どうやら推理小説にも精通しているらしい。



凛「十個のルール……」

文香「はい。その内の一つに、“登場人物が変装している場合を除いて、探偵役が犯人であってはならない”……というものがあります。それが今回で言う、私たちのこと……ですね、比企谷さん」

八幡「ええ」



まぁ、あくまで推理小説を作る上での基本指針みたいなもんだし、現実に当てはめるのは無理があるがな。しかし可能性を絞るという意味においては、身内の可能性を排除するのは悪い手ではない。それこそ考え出したら切りが無いからだ。

すると、そこで鷺沢さんが俺に視線を向けているのに気付く。



文香「十戒をご存知という事は…比企谷さんも、推理小説をお読みになるんですね……」

八幡「まぁ、割と」

文香「そう…ですか」



何とも口数の少ない会話。

だが、初めて面と向かって彼女の笑顔を見た。僅かに微笑むその表情は、普段とのギャップも相俟って色々やばい。いや可愛過ぎないかこの人。思わず、目を逸らす。そして逸らした先には、ややジトッとした目の凛。バッチリ見ラレテター。

取りあえず、意味も無く一度咳払い。



八幡「……えー、で、何の話でしたっけ」

楓「ひとまず私たちは抜いて、残った四人の中から考えましょう。という所です」


128 : ◆iX3BLKpVR6 [saga]:2016/06/19(日) 16:37:52.63 ID:8d0eLXFJ0



そうだった。となると、残りは兵藤さん、輿水、莉嘉、そして早苗さんか。……元婦警が一番動機としては怪しいってこれどうなの。



凛「……けど、疑うのってあまり良い気がしないね」

文香「確かに、そうですね。……同じ事務所の仲間…ですから」



ばつが悪そうに言う凛に、同調する鷺沢さん。
まぁ、言いたい事は分かる。たかだか酒が無くなっただけだが、それでも誰かが盗んだじゃないかと疑うのは良い気分じゃないだろう。

しかしそこで、発起人である楓さんは言う。



楓「そうね。……でも、以前私の先生が言っていたわ」

八幡「先生……?」

楓「“信じる事と思考の放棄は別物だ。だから、信じたい奴ほど疑わないといけない時がある”」



うえっ!?

思わず、変な声が出そうになった。いやいやいや、その台詞は……



楓「確かに大切な仲間を疑うのは良くないと思うけれど……信じたいから、やっていないと証明したいから調査する。そういうのもありなんじゃないかしら」

文香「やっていない事を…証明する為に……」



反芻する鷺沢さん。表情を見るに、目から鱗といった感じだ。
しかし、それに対して凛はどこか踏ん切りがつかないように見える。まだ、納得し切れていないという様子。



凛「それも分かるけど、でも……」

楓「でも?」

凛「……それでも私は、どうしたって信じたい人はいると思う。何の根拠も無く、それこそ、思考を放棄しても良いくらいに」



とてもとても真っ直ぐに、凛はそう言い切った。


今度は、俺が目から鱗が落ちるかと思ったよ。
……本当、こいつはハッキリ言ってくれるよな。そこが良いとこなんだが。

そして楓さんはと言うと、こちらも特に否定する事は無く…


129 : ◆iX3BLKpVR6 [saga]:2016/06/19(日) 16:39:34.94 ID:8d0eLXFJ0



楓「そうね。それも間違ってないわね」

凛「へ?」

楓「そう言える凛ちゃんの考えは、とても素敵だと思う」



まさかの切り返しに、逆に拍子抜けの凛。
楓さんも、恐らくはこれで本心なんだろうから敵わないよな。とらえ所の無い人だ。



楓「でも、今回はそこまで真剣に考えなくてもいいんじゃないかしら。私も、残り三日をどう過ごそうか考えて、時間もあるし、折角だから調査してみようかなって、そんな思いつきだったから」

凛「……それってつまり」



ヒマ潰し……とまではさすがに言わないが、まぁ、概ねそんな所だろう。
だが実際、そんな大した事じゃないからなぁ……正直事件とすら呼べない。物が物だけに大騒ぎしてる人はいたけど。



楓「だからそんなに重く考えないで、気楽にやってみましょう?」

凛「は、はぁ」



楓さんは楽しげだが、凛は困惑するばかり。

たぶんここで楽しめるかどうかで人柄が分かるな。本田とかはノリノリで加担しそうだし、島村は……あいつも以外と楽しみそうだな。



鷺沢「それでは…残りの三日で、お酒の行方を私たちで辿る……という事で良いでしょうか」

楓「そうね。見事探し出した暁には、皆で祝杯を上げましょう。武蔵で」

八幡「飲めるの楓さんだけですよ」



まぁ、どうせその時は兵藤さんと早苗さんも一緒だろうがな。仮に二人のどっちかが犯人でも一緒に飲むんだろう。想像つく。



凛「あの四人の内の誰か、か……」

八幡「……けど、確かに気になる事はある」

凛「気になる事?」



凛が疑問符を浮かべ、そして楓さんと、鷺沢さんも俺へと視線を向ける。


130 : ◆iX3BLKpVR6 [saga]:2016/06/19(日) 16:41:24.52 ID:8d0eLXFJ0






八幡「あの時早苗さん以外の三人は、嘘をついていた」






自分たちが何をしていたかを説明した、あの時。彼女たちは確かに嘘をついていた。

俺がハッキリそう告げると、凛たちが少なからず驚いたのが分かった。



凛「嘘をついてた……?」

八幡「ああ。輿水が出任せを言ってたのは気付いてただろうが、兵藤さんと莉嘉の証言も怪しかった」



輿水はあんだけ動揺してたからな。犯人かどうかは置いといて、何かしら隠してるのは間違いない。あれで全部演技だったらマジで女優だ。



八幡「まず兵藤さんだが、部屋に携帯電話を取りに行ったって言ってたよな。けど実際、元々持ってたんだよ。実際確認した」

凛「確認したって、どうやって?」

八幡「電気が消えた時、隣にいた兵藤さんが持ってた巾着に間違って手が触れたんだよ。あの形は携帯電話で間違いないはずだ」



恐らくは形状からしてスマートフォン。さすがにiPodなんて持って来るはずないし、そうすると何故わざわざ部屋に取りに行ったなどと嘘をついたのか。



楓「それじゃあ、莉嘉ちゃんは?」

八幡「莉嘉は部屋に電話しに行ったって言いましたけど、それもおかしい。この旅館は“三階の談話室まで行かないと電波が届かない”はずですからね」



これも俺は実際に確かめたし、何より莉嘉自身が言っていた事でもある。自分の部屋じゃ、電話をする事は不可能。


131 : ◆iX3BLKpVR6 [saga]:2016/06/19(日) 16:43:23.09 ID:8d0eLXFJ0



八幡「早苗さんがトイレに行ったって言ってたのは恐らく本当だろうな。幸子がいなかったのを知っていたし、本人も認めていた。まぁ、別の理由で行った、という可能性もあるが」

鷺沢「……洗面所に…流した、とか」

楓「ダメよ文香ちゃん。そんな事をしては絶対にダメ」



だから物の例えでしょーに。



八幡「とにかく、嘘をついてる以上、何かを隠してるのは事実でしょうね」

楓「そう。……では、やる事は一つね」



あ、今の言い方も雪ノ下っぽい。






楓「これから私たちは、剣聖武蔵の行方、及び犯人の捜索を開始します」






またもキリッとした表情の楓さん。だがやはり何故だろう、全然シリアス感が無い。ってか絶対楽しんでますよね?



楓「凛ちゃん。あなたには、これから私の助手としてサポートしてもらうわね。ワトソン君」

凛「ワトソン君!?」

楓「……ミス・ワトソン」

凛「いやそこじゃなくて!」



だから助手でもクリスティーナでもないと……



楓「文香ちゃん。文香ちゃんはあまり足で捜査という感じはしないから……情報を聞いて思考する役目をお願い」

八幡「ミス・マープルみたいだな」

文香「いわゆる…安楽椅子探偵……というやつですね」



そこでまた、目が合う。いやその微笑は本当にやばいですって……



楓「そして、比企谷くん」

八幡「…………」

楓「比企谷くんは……特に、無いわね」



無いんかい。

なんかこう、ちょっと期待しちゃった自分が恥ずかしいよ!


132 : ◆iX3BLKpVR6 [saga]:2016/06/19(日) 16:45:09.45 ID:8d0eLXFJ0



八幡「……そんじゃ、事件が解決した時は語り部でもやりますよ」

凛「誰に語るの?」

八幡「そりゃもちろん、温泉饅頭待ってる蘭子あたりに」



美味しい土産に楽しげな土産話。羨ましそうにする姿を見るのが楽しみである。
まぁ、語るに値するかはこれから次第だがな。



楓「では早速……」

八幡「…………」

楓「今夜は飲みましょうか♪」



え。

袋から缶ビールを取り出し始める楓さん。
あれれー? この流れは早速捜査を開始するんじゃないの〜?(コナンくん並感)



楓「まだ三日あるし、今日はもう遅いわ。本格的な捜査は明日からという事で」

凛「まぁ、確かにね」

文香「今夜も、長くなりそうです……」

八幡「これ明日になったら面倒くさくなってるパターンじゃないか?」



こうして、夜は更けていく。
明日から始まるは、行方をくらました高級酒・剣聖武蔵の捜索。探偵(役)が来るまでの三日がタイムリミットとは、何とも皮肉なものだ。

正直俺としては、捜査よりも毎晩行われるであろう宴会の方が厄介なのだが……


……まぁ、これもプロデューサーの役目…………じゃないよね、絶対。


133 : ◆iX3BLKpVR6 [saga]:2016/06/19(日) 16:45:47.08 ID:8d0eLXFJ0
今回はここまで。次回から本格的に捜査開始!
134 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/19(日) 16:46:38.57 ID:1BIrqdw6o
乙乙
犯人は楓さんではない……?
135 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/19(日) 17:14:57.82 ID:615o15N6o
乙乙
まあ、十戒も二十則も破られてる作品の方が多いから、楓さんが犯人の可能性もなくはない
136 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/19(日) 17:52:06.55 ID:H0wEnBEdo
乙です
137 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/19(日) 20:33:40.96 ID:+yxustjSo
正直あんまり気にしてなかったけど言われてから意識して読んじゃうときもちわるくなってきたな
138 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/20(月) 20:45:16.19 ID:TEIvKxVfO
全員犯行可能で全員証言が怪しい、全員に動機があれば開いたトランプ状態だな。
139 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/28(火) 21:17:02.08 ID:bd0zPTVuo
凛ちゃんの新SSRを輝子SSRと並べてみると割りと映える
このSS好きだからちょっとうれしい
140 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/07/19(火) 00:53:22.96 ID:T2i2bi3Q0
更新できず申し訳ありません。もう少しお待たせする事になりそうなので、その報告です…

本当は3年丁度か凛ちゃんとヒッキーの誕生日に会わせて終わらせたかったんですが、それも恐らく無理そうです。
出来るだけ早く更新するように頑張りますので、何卒よろしくお願いします!
141 : ◆iX3BLKpVR6 [saga]:2016/07/19(火) 00:55:46.06 ID:T2i2bi3Q0
>>140
すいません酉つけ忘れてました。1です!
142 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/07/19(火) 01:10:36.36 ID:5IRstHHgo
待ってます!
143 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/07/19(火) 01:35:38.03 ID:xZyvJ/FSo
待ってるよん
144 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/07/19(火) 19:47:36.51 ID:NAkAp7yP0
屑山グループに制裁あるなら希望。
145 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/07/19(火) 20:17:34.20 ID:QH0ZUF5aO
それ前も聞いた
146 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/07/27(水) 01:36:31.76 ID:wygAmVNdo
ここ最近はこのフレーズ八幡厨を煽るために使われてるから
147 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/07/27(水) 21:08:43.14 ID:F4o68rvb0
学校でいじめられる度に書いてるからな
148 : ◆iX3BLKpVR6 [saga sage]:2016/08/09(火) 00:08:34.76 ID:4x3+3sm80
ヒッキー、凛ちゃん、誕生日おめでとう! 更新無くてごめんね!
お盆には、お盆中には更新します。マジで。
149 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/09(火) 01:37:23.16 ID:4F1w5BQTo
待ってる
150 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/09(火) 01:41:09.43 ID:7TU1aRqco
了解
151 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/16(火) 00:17:13.03 ID:HGCaY2X3O
お盆っていつまでだー
152 : ◆iX3BLKpVR6 [saga sage]:2016/08/16(火) 22:58:54.76 ID:ZTKCzdsa0
ごめんなさいね、明日を予定してますんでお待ちを。
153 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/16(火) 23:42:48.17 ID:MTGRmOKKo
まちます
154 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/17(水) 00:43:12.30 ID:IAyxXl3ao
なったぞ
155 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/17(水) 00:50:53.47 ID:cHVOEyUEo
待つ
156 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/17(水) 18:20:07.82 ID:GEMEwIMOO
いつもの明日(明後日)だろなあ
157 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/17(水) 23:04:40.92 ID:xCKVaJ1GO
更新しないなあ
158 : ◆iX3BLKpVR6 [saga sage]:2016/08/17(水) 23:18:16.03 ID:iMzgEq5O0
ごめんよ……今急いでるから!
159 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/17(水) 23:21:46.07 ID:0Fstl/bWO
まぁお盆、お盆とはいったが、今年のお盆とは一言も(ry
160 : ◆iX3BLKpVR6 [saga sage]:2016/08/18(木) 01:23:26.46 ID:+yIuGarD0
ごめん! 遅くなった! 更新します!
161 : ◆iX3BLKpVR6 [saga]:2016/08/18(木) 01:25:55.03 ID:+yIuGarD0










カタカタと、耳障りな音に目が覚める。


薄らと目を開けてみれば、薄暗い部屋の天井が目に入った。音の出所を確認すると、軋むように揺れているのはどうやら窓。相変わらず風は強く、雨がガラスへと打ち付けているのが見えた。

ベッドから身体を起こし、枕元に置いてある携帯電話を確認する。



八幡「6時……」



撮影二日目。朝の六時。

……いや、撮影してないからこの言い方は間違ってるな。現場入りして二日目だ。


ドラマ撮影の為に現場入りしたその夜、嵐のせいで撮影延期、停電騒ぎに消えた高級酒、そして捜索する事に決まってしまうという、何とも濃い初日を終え、一夜明けた翌日。

なんというか、あまりいい目覚めではないな……



八幡「……とりあえず、シャワー浴びるか」



確か昨日聞いた話じゃ、朝7時から9時までの間は朝食が用意されてるとか。場所は夕食の時と同じ一階の和室。食わなくても問題無いんだろうが、俺は食いたい。折角の上手い飯を食い逃すのも勿体ないしな。

着替えを用意して、部屋に備え付けの浴室へ向かう。
そういえば、結局昨日は大浴場へは行かなかった。なんか楓さん主催の飲み会がスタートしたらそのままタイミングを失ったのだ。あの人やっぱ酒強ぇな……俺は飲んでいないとはいえ結構付き合わされたぞ。


さらっとシャワーを浴びて、身支度を整える。今日こそは広い大浴場へ行こうと気持ちを昂らせ、何とか気持ちを自ら鼓舞する。そうでもないとやってられん。

今日から、剣聖武蔵の捜索開始だ。


162 : ◆iX3BLKpVR6 [saga]:2016/08/18(木) 01:28:46.18 ID:+yIuGarD0



最低限の貴重品と部屋の鍵を持ち、部屋を出る。向かう先はもちろん朝食会場。

しかし、特に時間指定は無かったが何時頃から捜査を始める気だろうか。やっぱ朝飯食った後か? というか、あの人はちゃんと起きてるのか? 強いとはいえ翌日に持ち越すタイプの人もいるからな。楓さんがどうかは俺は知らないが、二日酔いで延期なんて笑い話にもならない。いやなるか。むしろ語る事が増える。


どうでもいい事をボーッと考えながら歩き、やがて一階の和室へと辿り着いた。
中を除いてみれば……おお、なんつーか分かり易いな。

昨日と全く同じ配置に座っているのは4人。入り口から向かって右側にある食膳の列、そこに鷺沢さん、莉嘉、凛、輿水の未成年組4が揃って座っていた。ってかもう食べてた。

そして向かい側の大人組は……悲しいかな、誰も座っていない。兵藤さんくらいは期待したんだがな。

いや、うん。まだ朝食の時間は終わってないしね。きっとこれから来るよ。うん。
と、謎のフォローを心中で送っていると、一番手前に座っていた輿水が俺に気付く。



幸子「あ、比企谷さん。おはようございます」



特にボケる事のない(普段から本人はボケてるつもりはないだろうが)、ごく普通の挨拶。
しかし俺はちゃんと見ていた。


俺に気付いた後、輿水は口に手を当て、口に含んでいたものを咀嚼し、きちんと飲み込んでから声を発した。


なんというか、品があった。当たり前の事だと思うか? 違うね。そんな当たり前の事を出来る奴が案外少ないんだ。その辺の飲食店で見てみろ。女子中高生なんて平然と口に物入れながらくっちゃべってるぞ。

別にそれが下品だとまでは言わない。俺は別にマナーにうるさい方でもないし、ぶっちゃけ俺もやったりする。俺はそこまで女子に理想を抱いたりはしない。現実を注視してしまう所はあるが。

しかしだからこそ、行儀良く食べる輿水のそんな所が目についた。なんつーか、こいつはこういう素の所で時たま魅力をみせるよな。本人に自覚が無いのが残念極まりない。……いや、そこも含めて魅力なのか?



幸子「比企谷さん?」

八幡「……いや、なんでもない。おはようさん」



返事もせず突っ立ってた俺を不審に思ったのか、怪訝な表情になる輿水。
しかし、朝っぱらからたったあれだけのワンシーンを見てここまで考えるとは、俺もいよいよ気持ち悪いな。これも一週の職業病か?


163 : ◆iX3BLKpVR6 [saga]:2016/08/18(木) 01:31:23.57 ID:+yIuGarD0



幸子「フフーン、もしかして見蕩れてたんですか? 朝からこんなにカワイイボクを見れるなんて、比企谷さんは幸せ者ですね」

八幡「……まぁ、そうな」

幸子「ええ、そうでしょう!」

八幡「輿水」

幸子「はい?」

八幡「食べカスついてんぞ」

幸子「えぇッ!? 嘘!?」

八幡「ああ。嘘だ」



超・ドヤ顔☆ から一転、アイドルらしからぬ面白顔で焦りまくる輿水。
本当にからかい甲斐があんなコイツ。プロデューサー壷でも買わされないか心配だよ?


「もーう何ですかー!」とプンスコ怒る輿水を放っておいて、俺は誰もいない向かって右側の食膳の列へと向かう。一応昨日と同じ席に座っておくか。

残りの数人とも挨拶を交わし、俺も食べ始める。



八幡「…………美味いな」



ポツリと、思わず声に出た。
白いご飯にみそ汁、焼き魚に漬け物、おひたしに卵焼きと、絵に描いたような朝食メニュー。特段豪勢というわけでもないのに、とても美味しく感じられた。


……というか、最近朝飯が美味いんだよな。
ここの旅館が単純に料理が上手いというのもあるだろうが、働き始めてからというもの、妙に朝飯が美味しく感じる。前は抜いてもさほど気にしないくらいだったのに。

やはり、これも働く事によって生まれたストレスを食で発散してるのだろうか。なんか聞いた事あるからな、食事を摂ると幸せ成分みたいなもんが脳で出るんだっけ? かなりうろ覚えだが。

17からこんなに食に対してありがたみを感じるのもどうなんだと複雑な所だが、まぁ、無頓着よりは良いだろう。


164 : ◆iX3BLKpVR6 [saga]:2016/08/18(木) 01:33:11.12 ID:+yIuGarD0



凛「そういえばプロデューサー、昨日は大丈夫だった?」

八幡「ん? ああ……まぁ、な」



向かい側に座る凛からの質問、大丈夫だったかとは、もしかしなくてもあの後の飲み会の事だろう。
日付けが変わる前くらいには凛と鷺沢さんは部屋へ戻ったのだが、楓さんはその後もしばらくは残ったのだ。必然部屋の主である俺は付き合わされる。そうか、だから俺の部屋で飲んだんだな……確かにあれじゃ逃げられん。

程なくして楓さんも部屋へは戻ったのだが、かなりいい感じに酔っていた。っていうか部屋まで送ったかんね俺! 



八幡「あの分じゃ、今日は起きるの遅いんじゃないか」

凛「確かに来てないね……そっち側の人が主に」



大方早苗さんと兵藤さんも大分飲んだんだろう。武蔵が無くなってヤケ酒でもしたのかもしれない。酒無くなって酒飲むってもうすげぇな。


と、そこで鷺沢さんが「あ……」と小さく声を漏らしたのに気付く。

その視線を追ってみれば、その先はこの和室の入り口。そしてそこに立つのは……






楓「――待たせたわね」






ニヒルに微笑む、楓さんであった。顔色最悪だ。






凛「なんで無駄にそんなカッコいい登場を……」

楓「探偵は、遅れてやってくるもの、でしょう……?」



いやなんかハァハァいってますけど。完全に具合悪そうですけど。二日酔いですよね?



八幡「ほら、とりあえずこっち座ってください。そんな襖に寄りかかってたら倒しますよ」

楓「え、ええ……」

八幡「……………」

楓「………ふぅー…」

八幡「……………」

楓「……お水、貰えるかしら」



二日酔いですよね?


165 : ◆iX3BLKpVR6 [saga]:2016/08/18(木) 01:35:28.01 ID:+yIuGarD0



グロッキー状態でも微笑みを絶やさないその淑女の精神は立派だが、青白いし逆に怖い。ほら、未成年組も若干引いてるし。つーか本来は俺も未成年組なんですけどね!


話を聞くと、どうやら部屋へ戻った後に結局早苗さんたちに合流したらしい。あ、あれれー? 俺が送った意味……



八幡「よくもまぁ、そんだけ飲めますね」

楓「うふふ、好きですから。それに……」



そこで、少し声のトーンを小さくする楓さん。どうやら、向こう側の彼女たちに聞こえないようにという配慮らしい。
正確に言えば、莉嘉と輿水に、だろうが。



楓「どのみち、何か理由を付けて部屋へはお邪魔するつもりでしたから」

八幡「……なるほど」



それならば仕方がないな。……いや仕方なくない。飲む必要なんて無いし、やっぱそっちメインですよね!

それから体調が落ち着いたのか、少量ながら朝食を食べ始める楓さん。ちなみに兵藤さんはもう少しで来るらしい。早苗さんは多分ダメだと言っていた。あの人も相当強いはずなんだけどな……どんだけショックだったんだ。



莉嘉「ねーねー八幡くん」

八幡「ん、なんだ」

莉嘉「朝ごはん食べ終わったらさ、アタシたちは自由って事でいいの?」



莉嘉のその質問に、部屋にいる全員が俺の方を見る。視線痛い。



八幡「そうだな……まぁ、ハメを外し過ぎないようにな」



我ながら歯切れ悪くそう言うと、隣に座っていた楓さんがフッと笑みを零す。そういやそこ兵藤さんの席なんだが……まぁいいか。

俺が視線を向けると、楓さんは口に手を当て、可笑しそうに言う。



楓「比企谷くん、何だか担任の先生みたいね」

八幡「先生?」


166 : ◆iX3BLKpVR6 [saga]:2016/08/18(木) 01:37:04.09 ID:+yIuGarD0



また何とも、突拍子も無い事を言う。
しかし、楓さんのその発言は思いの外共感を得るものだったようで…



文香「確かに…そんな雰囲気を感じましたね……」

莉嘉「八幡くんが先生だったらすっごい楽しそう!」

凛「反面教師には向いてるかもね」

八幡「オイ」



クスクスと、面白可笑しく談笑してくれる彼女ら。
いやいや、普通に考えていないでしょこんな先公。



八幡「プロデュースするだけでも大変なのに、教師なんて絶対無理だ。輿水みたいな生徒」

幸子「なんでボクだけ名指しなんですか!」



しかし中学生、高校生、大学生に25歳児と、よくよく見てみればかなり多岐に渡る面子だよな。あと二人程いるってんだからヤバみを感じる。というかバブみを感じる。



八幡「とにかく、だ。基本的には自由行動だが、台本の読み合わせとか、他の仕事を抱えてる奴もいるだろうし、あー……そこは、各々に任せる」

凛「つまり、自由行動ね」

八幡「そういう事だ」



仕方がない。だってする事が無いんだもん!
窓の外では未だに暴風雨が吹き荒れている。予報を信じて、あと三日耐え忍ぶしかないな。……まぁ、俺たちはまた別だが。


隣の楓さんを見る。


考えていた事は一緒なのか、彼女も俺へと視線を向けていた。
その不適な笑みは、この先の珍道中を物語るようだった。



……まだちょっと顔色悪いな。





167 : ◆iX3BLKpVR6 [saga]:2016/08/18(木) 01:38:20.83 ID:+yIuGarD0










楓「それじゃ……せーのっ」



楓さんのかけ声で、バッと、4人が一斉に手を差し出した。
その手の平の上にあるのは、瓶ビールの王冠。



文香「アサヒ……です」

凛「私もアサヒ」

八幡「……キリンっすね」

楓「決まりね。私もキリンなので、このペアで行きましょう」



ニコッと笑う楓さん。

同じメーカーの王冠が二個ずつで、それをランダムに四人で引く。まぁつまり、ペア決めのくじ引きだ。他の何か無かったの? とか言ってはならない。
つーか楓さんとペアか……凛のが気が楽だったんだが、仕方ないか。



楓「……ごめんね、凛ちゃん」

凛「な、なんで私に謝るの……?」



そうそう。むしろ俺が楓さんに謝りたいくらいだ。俺なんかがペアですみませんね……ペア決めっていう単語がもう既に心の暗い部分を刺激する……



楓「それじゃあ、張り切って剣聖武蔵の捜索を始めましょうか♪」

凛・文香「「お、おー……」」



俺は言わない。


168 : ◆iX3BLKpVR6 [saga]:2016/08/18(木) 01:39:47.70 ID:+yIuGarD0



とりあえず最初の捜査として、旅館内をくまなく探すという基本から始める事にした。


誰かが持ち出さないと無くならないような状況ではあったが、それでも本当に何かの偶然という事はある。探し物をしていたら「なんでここに……?」みたいな所で見つかるなんて珍しい事じゃないからな。ホント何なんだろうねあの現象。

そしてその捜索に当たって、一応は二人編成の方が都合が良いという話になり、ペア決めをしたのが先程の事。こうすればお互いをお互いが見張る事も出来るしな。4人の中では疑わない方針にしたとはいえ、一応の処置だ。用心に越した事はない。

午前と午後でペアを変え、今日一日は捜索に費やす予定。どうせ時間はある。


……なんか、唐突にハルヒを思い出したぞ俺は。



凛「探してる時に他の人たちに会ったら、何て説明すればいいの?」

八幡「あー……そうだな…」

楓「……変に誤摩化すよりは、正直に言った方が良いかもしれないわね」



確かに、コソコソと調査されていたなんて知ったらあまり気持ちの良いものじゃないだろう。それならば言ってしまった方がまだマシかもしれない。



楓「時間があってヒマだったから、探検がてらお酒を探してました、くらいで良いと思うわ」

文香「あくまで……誰かが持ち出した線で捜査しているとは言わずに……ですね」

楓「ええ」



昼食は11時から1時の予定となっている。

とりあえずはそれまでを午前の部として、俺たちは捜査の為別れた。最初は一階だ。



楓「それじゃあ比企谷くん、頑張りましょうか」

八幡「ええ」

楓「お酒の為に」

八幡「……ええ」


169 : ◆iX3BLKpVR6 [saga]:2016/08/18(木) 01:41:42.93 ID:+yIuGarD0



いちいち言ってくれるな。逆にやる気が減る。
さっきまであんだけやられていたのに、もうこんな元気なんだもんな。こりゃ今日も飲むな……

俺たちは表玄関、エントランス側とは逆の、奥側の方の捜索となる。昨日毛布や懐中電灯を持ってきた倉庫もこっち側だな。



八幡「倉庫は……今は鍵がかかってますね。後で借りに行きますか?」

楓「そうね。……でも、全部見て回ってからの方が良いかもしれないわね。旅館の方に迷惑をかけてしまうし、先に見つかる事に期待しましょう」



俺は首肯し、倉庫はひとまず置いておく事にする。この辺はロッカーとか物置は多いが、勝手に漁ると悪そうだな。何とも探し辛い。



八幡「………」

楓「〜〜♪」

八幡「………楓さん」

楓「? どうかした? 比企谷くん」



キョトンと、楓さんは声をかけた俺の方へと顔を向けてくる。



八幡「さっきの、見つかる事に期待するって台詞ですけど」

楓「ええ」

八幡「……本当に、見つかると思ってますか」



俺は楓さんの方を見ずに、目は辺りを見回しながら、声だけを彼女に向ける。
楓さん「うーん…」と小さく唸ると、同じように探しながら会話を続けた。



楓「……正直、厳しいかな、とは思ってます」

八幡「まぁ、そうですよね…」



あんな状況で、偶然こんな所にお酒が転がり込むわけがない。
どっちかってーとオカルト系だ。安斎より白坂を呼んだ方が良いかもしれない。


170 : ◆iX3BLKpVR6 [saga]:2016/08/18(木) 01:43:28.64 ID:+yIuGarD0



楓「一応、凛ちゃんたちが旅館の方に持っていってないか確認をしてくれるそうだけど、それも可能性として低いわね」

八幡「この辺に落ちてるよりは高いとは思いますけどね」

楓「ふふ、それは確かに」



少しの間、沈黙がその場を満たす。
さっきまで聞こえていた楓さんの鼻歌も、今は聞こえない。

やがて、今度は楓さんから質問が飛んできた。



楓「比企谷くんは…」

八幡「はい?」

楓「比企谷くんは、誰かが持ち出したと思う?」



チラッと、楓さんに視線を向ける。
彼女はこちらを見ていない。何故か少しだけ安堵して、俺は一つ間をあけて答えた。



八幡「どうですかね。正直、よく分かりません」

楓「そう」

八幡「……ただ」



そこで、ようやく楓さんと目が合う。



八幡「俺としては、動機が気になりますかね」

楓「動機?」

八幡「ええ。だって、莉嘉や輿水からしたら興味なんてきっと無いでしょう?」



あの二人は中学生。もちろんお酒なんて飲めないし、飲みたいとすら思ってないだろう。ってかカクテルとかならまだしも、日本酒に興味を持つ女子中学生なんて嫌だ。


171 : ◆iX3BLKpVR6 [saga]:2016/08/18(木) 01:46:56.58 ID:+yIuGarD0



八幡「早苗さんと兵藤さんだって、お酒好きとはいえ独り占めしようなんて思う人たちじゃない。疑うだけの動機が無いんです」

楓「なるほど……」

八幡「…………」

楓「…………」

八幡「……いやでも、早苗さんならもしかしたら…」

楓「そこは信じてあげて比企谷くん」



まぁ、一応あの人元婦警だからな。普段の行いのせいで忘れそうになるけど。

……けど、それを抜きにしたってあの人はそんな事は絶対しないだろうな。



八幡「何にせよ、もし持ち去った奴がいたとして、それが悪意によるものだとは思い辛いですね」

楓「不可抗力によるもの、という可能性ね」



本人に意志は無くとも、“持ち去らなくてはならない”理由が出来た。そう考えれば、いくつか考えは思い浮かんでくる。



楓「……少し、何となくだけど、見えてきたような気がするわ」



いつになくシリアスな表情を作る楓さん。
その横顔が無性に様になっていて、俺は思わず笑ってしまった。



八幡「本当に、どこぞの探偵みたいですよ」



俺の戯言に、楓さんは目を丸くした後、薄らと微笑む。



楓「あら。今の私は探偵ですよ、語り部さん」

八幡「また、素敵な言い回しで…」

楓「私たちは高垣探偵団」

八幡「急に児童書感が……」



その後もしらみ潰しに探しはしたものの、剣聖武蔵は見つからなかった。
凛と鷺沢さんに期待はするが、望みは薄い。

午後の部に何とか期待しよう。



……しかし、なんでだろうな。

事件も、やってる捜査も子供じみたものなのに。
不思議と、ちょっとだけ楽しいのだから、本当に困る。



……池袋に探偵バッジでも作ってくれるよう頼もうかしら。





172 : ◆iX3BLKpVR6 [saga]:2016/08/18(木) 01:50:45.27 ID:+yIuGarD0
短くて申し訳ないが今夜はここまで!

それと一つ訂正とお詫びを…
前回描写するのを忘れてたんですが、夕食後全員で各自の部屋をチェックしてます。もちろんお酒は見つかりませんでした。
あまり良くはありませんが、渋にまとめて投降する際は加筆修正しておこうと思いますので、何卒よろしくお願いします。
173 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/18(木) 02:00:07.10 ID:7mhQvAqDo
乙乙
174 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/18(木) 02:10:03.81 ID:3qj56K3G0

次回予告!(今回の担当はシド!)

やぁ皆。
当分出ないからという理由で駆り出されちまった。

次回!
それぞれが抱いた思いが入り乱れ、彼等の運命は激しく絡み合う。
彼等はその時何を思うのか。

そして動き出した時は何処へ向かうのか!
次回
番外編『それぞれの思い、それぞれの後悔』

観てくれよな。



あとがき

八幡の噂が粗方片付きました。
由比ヶ浜への復讐はまだ続き、葉山は死ぬほうが楽だと思う程に地獄へたたき落とすつもりです。

今回も読んで下さってありがとうございました!
175 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/18(木) 02:28:22.11 ID:Mfoju0XQo
乙です
176 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/18(木) 04:05:36.61 ID:F5TgvCvuo

幸子は可愛いなあ!
177 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/18(木) 08:10:25.98 ID:mWv4XKa7o
乙乙
楓さんが犯人では無いかもしれないと思えない
178 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/18(木) 22:34:43.78 ID:Qfwl1cet0



次回予告!(今回の担当は…え、誰ですかアンタは!( ^o^)<うわぁぁあ!)

ゴラムゴラム、このコーナーは我が占拠した!崇めたてよ!
ジークジ…。あ、はいすいません。

ちょっ待って我も出番欲しいのだ!
我にも我にも出番を…ぴぎゃあ!?
※作者権限により抹殺

八幡「材木座ェ…。」

八幡「そんな事より次回予告しろよ!」

※時間ですよ八幡さん!
次回!
八幡の噂は全て誤解だと知れ渡る。

※材木座?知らない人ですねぇ(笑)


あとがき

次回予告ェ…。
マジで材木座ェ…。
179 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/19(金) 13:48:27.80 ID:F8P28QvfO

怪しい人物が今のところわからんな…
180 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/19(金) 19:43:55.18 ID:0YOCeJxw0
DESU002016年8月19日 19:16
(´・ω・`)これは愚山達が活動するだびに悪化&自滅するな…偽奉仕部…か人生の破滅部でいいじゃない?
返信する

dr2502016年8月19日 19:03
校内には葉山信者が多いから不平等評価の山ですね。ヨウザンどもの馬鹿さ加減もリミッター解除で青天井!あまりチョーシこくとお家がつぶれるよ?
八幡たちは依頼失敗の尻拭いが大変そうだ、紙オムツでも差し入れしてあげれば?
返信する

ガゼル2016年8月19日 19:02
屑山達の頭の中には蛆虫でも詰まってるんですかねぇ…?確かにサキサキが年齢偽ってたのは悪いがサキサキの事情も聞かず一方的にバイトを止めさせてアフターケアもせず解決した気になりやがってよぉ?テメェらはこれでも飲んでろ!( ・∀・)ノθ劇薬
返信する

ikkun2016年8月19日 18:52
もう八雪で良いんじゃないかな!葉山グループは地獄に落ちよう!当然陽乃さんも加わって屑山グループ崩壊させる
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