勇者「ハーレム言うなよマジで」戦士「5だぞっ!」

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2 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/06/18(土) 04:44:06.27 ID:lfUZ9G4a0




〜あらすじ〜


タイトル詐欺になりました




3 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/06/18(土) 04:44:35.64 ID:lfUZ9G4a0



−幕間−


【敵バラモスを想起せよ】


4 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/06/18(土) 04:45:06.03 ID:lfUZ9G4a0


騎士団長「事態は深刻です」




――ランシール・中央神殿――


 −世界首脳会議・会場−



「何か事態に悪化するような事態が?」

騎士団長「いえ、特にそういうわけではありません」

騎士団長「ただ、無さ過ぎるのです……進展があまりに無い」


騎士団長「賢者ガルナの末裔が魔族にかどわかされてからもうじき一年経ちます」


騎士団長「しかし彼女の行方どころか、オーブの一つも発見されておりません」


騎士団長「聖地アリアハンの王の失権は未だ続いておりますし、国連勇者の行方不明者も出ています」


騎士団長「このままでは我々人類が魔族に大きな遅れをとってしまうのでは、と思いまして」



−国連の勇者席−


ポルトガ勇者(……よく言うぜ)

イシス勇者「……」

エジンベア勇者「ふぁーあ……」

ムオル勇者「……」

ジパング勇者「……それでー?どうしたんじゃよそれが」


騎士団長「ですから、こちらも……失礼、“サマンオサ”も色々と積極的に体制を変えて取り組まなければならないと考えております」

騎士団長「……エジンベア大臣」

エジンベア大臣「はっ」

ガタッ

エジンベア大臣「えー、では少々お時間を頂きまして……支援物資の計画案を」


……。…。


ポルトガ勇者(……まるであいつがサマンオサの……いや)

ポルトガ勇者(サマンオサが軍備拡大で現状世界一の強大国家になった今、まるであいつが国連の仕切り役だ)

ポルトガ勇者(着実にまずい方向へむかってやがるぜ……)


エジンベア大臣「……――と、そこでポルトガ領の国連港を経由します」

騎士団長「では、その際は物資補給の支援を。ポルトガ王。お願い申し上げます」

ポルトガ王「……わかり申した」

イシス勇者(……毎回毎回、あれじゃポルトガが本当に奴隷だ)
5 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/06/18(土) 04:45:32.92 ID:lfUZ9G4a0

スッ


ロマリア王「……少しよろしい感じ?」


騎士団長「?はい、どうされました?」

ロマリア王「エジンベアの物資の流通資料を見せていただいてもよろしい感じ?」

騎士団長「……」

エジンベア大臣「……」

ロマリア王「いやー、ちょっと失念しちゃった系の出来事あった系でー」

ロマリア王「このままじゃうちの大臣が四足歩行の生き物になってしまう……」

ロマリア大臣「なんねえよお前ほんとあのこういう場でやめて」

ロマリア大臣「……しかし、私からもお願いします」

ロマリア大臣「サマンオサへの麦の輸出と、春種の事で少々考えたいことが」

騎士団長「……」

ニコ

騎士団長「どうぞどうぞ。エジンベア大臣」

エジンベア大臣「……は」

すっ

ロマリア王「テンキューテンキュー……キスする……?ミラクルキッス欲しい……?」

エジンベア大臣「や、やめて下されロマリア王様やめて下され」

パラッ

ロマリア王「そんじゃ大臣全部覚えておくんじゃ」

ロマリア大臣「全投げっすかアンタ本当最低だな!!」

ロマリア王「だってぇー、お前記憶力いいしー。頭いいシー」

騎士団長「はぁ……」

騎士団長(どうにも苦手ですね……ロマリアの人間は)

エジンベア大臣「ですのでポルトガ大臣様、そちらの財務大臣に……」

……。…。

ロマリア大臣「あーもう、恥かきましたよ」

ロマリア王「全部覚えたら色々あげちゃうぞ☆爪とか☆」

ロマリア大臣「きめえよ」

パラッ

ロマリア大臣「……ちょっと静かにしててください」

ロマリア王「全部覚えろ」ボソ

ロマリア大臣「……はい」ボソ

ロマリア王「特に……鉄の欄」ボソ

ロマリア大臣「…………仰せのままに」ボソ
6 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/06/18(土) 04:46:04.43 ID:lfUZ9G4a0
エジンベア大臣「それと……皆さん御存知かと思われますが、近頃海賊の被害が相次いでおります」

エジンベア大臣「なので、物資を奪われぬように警備を固めるようにお願いします」

騎士団長「そうですね、先月だけでも国連の船七隻が被害に遭いました」

騎士団長「各国の貿易船は十分お気をつけて下さい」

騎士団長「では、何か他に論のある方おられますか?」

ランシール神官「……では、私も少々時間を頂こう」

騎士団長「どうぞどうぞ」

ランシール神官「有難く」

スクッ…

ランシール神官「……先ほど騎士団長殿が仰ったとおり、今は窮地。我々は何か手をうたねばなりません」

ランシール神官「そこで……」チラッ


ジパング勇者「……」


ランシール神官「……」


騎士団長「……」


ランシール神官「……――人類の切り札を一つ、出さねばばるまいと考えております」



ザワッ

「……人類の……」

「切り札……?」



ランシール神官「皆さんは我らが敵。バラモスをご存知だと思われる」


ランシール神官「そう。魔王だ。……我々が倒さねばならない相手」


ランシール神官「今は奴に対抗する術は無い。情報も少なすぎる……そう」


ランシール神官「我々はバラモスについてもっと色んな事を知るべきである」


ランシール神官「……イシス女王様」


イシス女王「は、はいっ!!?」ビクッ


ランシール神官「貴女様にお願いしたい事があります」


イシス女王「……お願いしたい、事?」

イシス側近「それは一体」


ランシール神官「……バラモスについて、我々人類は何も知らない」


ランシール神官「しかし、ただ一人……ただ一人だけ」
7 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/06/18(土) 04:47:03.23 ID:lfUZ9G4a0





ランシール神官「バラモスと対峙し、生きて帰った男が居る」




8 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/06/18(土) 04:47:35.66 ID:lfUZ9G4a0



第七章


9 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/06/18(土) 04:48:05.01 ID:lfUZ9G4a0

――どこかの海域・船上――



ざぁーん… ざぁーん…


ミャー ミャー




戦士「……」グデー


魔法使い「……」グデー



「「……」」


戦士「なあ魔法使い……なんか見えたか」

魔法使い「なんにもみえないよぉ」

戦士「そっか……」

魔法使い「ねーねー戦士。なにかつれた?」

戦士「……アタシの竿、引いてるように見えるか?」

魔法使い「……釣れないねえ」

戦士「釣れないな……」


「「暇だねぇ……」」


ポルトガ姫「……今日も二人は相変わらずっすね」

武道家「私もあいつらの事言えないんだけどね……」

僧侶「ポルトガ姫ちゃん、航路は順調ですか?」

ポルトガ姫「まあ、風があまりないんで停滞気味っす」

武道家「……舵とってないしね」

盗賊「……」

ポルトガ姫「……盗賊ちゃん」

盗賊「……」

ポルトガ姫「盗賊ちゃん」

盗賊「……はっ、な、何?……」

ポルトガ姫「本が逆さですよ」

盗賊「……あ……」


ポルトガ姫(ポルトガを出発してそろそろ一年すぎるんすけど)


ポルトガ姫(みんな本調子には戻らないみたいっす)
10 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/06/18(土) 04:48:34.02 ID:lfUZ9G4a0

魔法使い「……しりとりする?」


戦士「……りんご」


武道家「いい天気ね……」


僧侶「……お祈りしていようかな……」


盗賊「……」




ポルトガ姫「……」

ポルトガ姫(この人らにとって、仲間が欠けるってのは相当な致命傷みたいっすね……)


魔法使い「ごはん」


戦士「しりとり終了じゃん……」



ポルトガ姫(しかし覇気無さすぎっす)



ヒョイッ


遊び人「呼んだ?」


ポルトガ姫「あ、遊び人ちゃん」


魔法使い「よんでないよ?」

遊び人「でも今ごはんって」

戦士「ああ、しりとりだよ」

遊び人「あ、そうなの。てっきり催促かと思った」

遊び人「でもお昼ご飯できたからみんな食べよ?」

戦士「食べる!!」

魔法使い「やったぁ」

ポルトガ姫(ごはん好きすぎっすねこの人ら)

ポルトガ姫「でも私も好きっす!!!ごはん!!!!」

遊び人「いきなりの告白された」

遊び人「それじゃ、ちょっと待っててね。すぐに」






ドオオオン!!!!!





「「「「!!!!?」」」」

11 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/06/18(土) 04:50:02.49 ID:lfUZ9G4a0

ガタッ!!

武道家「何の音!?」

戦士「魔物か!?」


タッタッタ


女勇者「皆!!なんだい今の音は!?」


盗賊「……女勇者!それが私達にも……」

僧侶「……!あ!あれ見てください!!」

女勇者「あれ……?」

ポルトガ姫「…………!!!」

魔法使い「……な」

戦士「なんだ……?あの」



バタバタ…

オォォオォォォ……



戦士「ドクロの旗を掲げた……でかい船は……」


ポルトガ姫(あれは……!!!)




――――――――――



「おかしらぁ!目標の手前に着弾しました!!」


「狙い通りです!!」



?「よくやった。すぐに船を寄せな」



「見たところ、数人は武装してるみたいです」


「抵抗する場合はどうしますか?」



?「せっかちだね……まずは話をしてからだ」


?「……まあ」



しゅらっ

ジャキィッ



?「話の内容次第なら、アタイが切り伏せるさ」



12 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/06/18(土) 04:50:28.35 ID:lfUZ9G4a0
今日はおしまいです
13 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/18(土) 06:45:18.59 ID:NZP9CB7pO
こっちも乙
14 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/18(土) 08:53:59.89 ID:Jh9gMWc8o
たくさんおつですー
女海賊さんキタ!
15 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/18(土) 13:15:34.23 ID:EOvrU5IV0
乙でございます
16 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/18(土) 13:19:50.57 ID:zAu3GuAfo
乙 待ってた
17 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/18(土) 20:46:45.95 ID:piYrqXifo
乙ですー
新展開キタコレ
18 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/19(日) 13:45:06.75 ID:VaHg9nNDO
おつおつ!!
19 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/06/20(月) 23:58:35.91 ID:PNyN17bE0
まってる
20 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/21(火) 00:01:49.99 ID:paXUFu95O
待ってる
21 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/22(水) 00:41:33.50 ID:YWNWESg+O
なんかコメントの雰囲気から自分以外1人くらいしか見てないんじゃないかと思いはじめた
とにかく楽しみにしてるし応援してるので頑張ってくれ
22 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/22(水) 00:58:50.11 ID:c53rdmrSO
7バツで見てやっと追い付いたよ
SSと>>1のイラスト楽しみに丸呑みしつつ乙
23 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/22(水) 08:21:28.11 ID:TFuFxeSP0
ずっと楽しみに読んでるけどあんまレスするの鬱陶しいと思うのでレスしとらんだけ
24 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/22(水) 23:26:10.70 ID:AgClVdiDO
1レス付いたらその10倍くらいは見てると思う
25 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/06/23(木) 01:08:27.67 ID:gbrSoyW70
武道家「……いっぱい人が乗ってるみたい」

魔法使い「ねえ、ポルトガ姫……あれって」

ポルトガ姫「……あれは、多分“海賊”っす」

盗賊「……海賊……!!」

ポルトガ姫「しかも相当大きな船っす。鉢合わせちゃうなんて……!!」


ザザ…


僧侶「!!こっちに来ます!」

ポルトガ姫「に、逃げましょう!!流石に分が悪すぎます!!」

遊び人「でも、逃げられるの!?」

女勇者「あんなでかい船なら、すぐに追いついて来るんじゃないかい?」

ポルトガ姫「それは……っ」

戦士「ポルトガ姫」

ザッ

戦士「下がってろ」

武道家「ここは私達の専売特許よ」

女勇者「迎え撃つ覚悟はある」

ポルトガ姫「はいっ!?」

魔法使い「まかせといてっ!あぶないから船内にいてねっ」

盗賊「……遊び人、お願いね……」

ポルトガ姫「ちょっ、いやいや無謀っすよ!!」

ポルトガ姫「あれは多分最近話題の大海賊っす!みんなみたいな女の子が――……」

ガシッ

遊び人「ポルトガ姫は私と船内!行こ!」

ポルトガ姫「ちょっと!遊び人ちゃん!」

遊び人「安心して。みんな本当に強いんだから」

スタスタ

女勇者「……さて」


ザザァ……


女勇者「皆、気を引き締めて」
26 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/06/23(木) 01:09:17.75 ID:gbrSoyW70


ガタァン


「渡り橋かかりました!!」

「おかしら!準備OKです!!」


「よし!乗り込みな!!」


「「「「応っ!!!!!」」」」



ザカザカザカザカザカザカ!!!!!


ズザァッ!!!!


海賊手下達「「「「……」」」」



武道家「……」


戦士「……」


魔法使い「……」


盗賊「……」


僧侶「……」


女勇者「……」

女勇者(囲まれた……か)

女勇者「さて……何の用だい?」


海賊手下「大人しくしろ」

海賊手下2「動いたり大声出さなけりゃ何もしねえ」 
27 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/06/23(木) 01:09:54.24 ID:gbrSoyW70
女勇者「君らは私達が大人しくないように見えるのかい?」


海賊手下「……」

海賊手下(ただの小娘達じゃねえな、肝が据わりすぎてる)


女勇者「私の問いに答えてもらえるかい?何の用か聞いているんだ」

女勇者「君らの頭を出してもらおうか」



「……偉く肝の据わったヤツだね」



海賊手下「おかしら!」


戦士「え?……は?」

武道家「えっ」


スタスタ…

「あたいらにここまでびびらなかった奴は初めてだ」


魔法使い「お、おかしら?」

僧侶「って」

盗賊(……この人が……?)


ズザッ



女海賊「あたいがこいつらの頭領さ。ちょいとお邪魔するよ」



――船内扉の陰――


遊び人「女の人ぉ……!?」

ポルトガ姫「みたいっすね……」
28 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/06/23(木) 01:10:21.17 ID:gbrSoyW70
女勇者「……なんの用かな」

女海賊「はっ!本当に肝が御行儀の良い事だよ!」

女海賊「端的に言うけど、アンタらこれ、なんの船だい?」

女勇者「……」

女海賊「……答えたくないのかい」

女勇者「……ただの旅船だけど?」

女海賊「……」

女勇者「……」

女海賊「…………嘘だね」

女海賊「嘘をついてる目だ、それは」


戦士(なんだこいつ……)

武道家(何が目的なの……?)


女海賊「でも質問が悪かったね、じゃあもう率直に聞くよ」



女海賊「アンタら、国連の関係者?」


戦士「っ!?」

武道家「……」

魔法使い(なんでかいぞくがそんなことを……)

僧侶(どうしましょう……関係、ないというか)

盗賊(……間接的には関係してるというか……)


女勇者「……」

女海賊「……」

女勇者「……関係、無いとは言い切れない。けど」


ギッ


女勇者「国連は、私達の敵だよ」


女海賊「……!」


ポルトガ姫「……っ」ドキドキ

遊び人「……」


ジャキッ

女海賊「そうかい。邪魔して悪かったね」


ポルトガ姫「へっ?」


女海賊「アンタら!!引き揚げだよ!!」

「「「応っ!!!!」」」


ポルトガ姫「えっ、えぇぇえ!!?そんなあっさり……!!?」
29 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/06/23(木) 01:11:06.51 ID:gbrSoyW70


ザカザカ!!


女海賊「早く乗り込みな!すぐに出るよ!」

戦士「おいおい」

女海賊「ん?なにさ」

戦士「お前ら、本当に何が目的だったんだよ」

武道家「やけにあっさり引き揚げるわね」

女勇者「……略奪目的じゃなかったのかい?」

女海賊「はっ、あたいらにはあたいらで事情があるのさ」


「おかしら!!全員乗り込みました!」


女海賊「それじゃ、あたいも行くよ。悪かったね」

スタ…

女勇者「……本当に変な人だね」


ピタ


盗賊手下達「「「あ」」」


女海賊「……」

クルッ

女海賊「……変?」

スタスタ

ザッ


女海賊「……」


女勇者「……」


女海賊「アンタ、あたいが変って言った?」

女海賊「アンタもあれか?」

女海賊「……女のあたいが、海賊やってるのが変だと思うタチかい」

女海賊「女のあたいが海賊のお頭だなんて、おかしいかい?」


「あっちゃあ……」

「おかしらのスイッチ入っちゃったよ」


ポルトガ姫(な、なんか女勇者ちゃんがあの海賊女の逆鱗に触れちゃったみたいっすね……)ビクビク

ポルトガ姫(女勇者ちゃん、なんとか上手いこと取り繕ってくだ)




女勇者「ああ、変さ。とてもね」




ポルトガ姫「ブフンッ」
30 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/06/23(木) 01:11:37.74 ID:gbrSoyW70


女海賊「……」


「「「「「(おかしらを刺激しやがった――!!!!!)」」」」」


女勇者「それが何か?」

女海賊「……そうかい」

女勇者「というか、ちょっと違うな」

女海賊「え?」


女勇者「女だからとかそういうんじゃない」


女勇者「海賊やってる事が、変なんだよ」


女海賊「……」


女勇者「女だからって、何をやっても関係ないさ。私達も女だけどいろんなことが出来る」

女勇者「でも、海賊をやってる貴女を、私はまともだとは絶対に思わない」


女海賊「……」


女勇者「……」


「「「「……」」」」


遊び人「わー……女勇者らしい回答ですこと」

ポルトガ姫「言ってる場合っすかぁ!!!せっかく海賊たちが大人しく引き揚げようとしてたのに逆に怒らせ――……」


女海賊「……ぷっ」


ポルトガ姫「えっ?」



女海賊「あっはっはっはっはっは!!!」


女海賊「あ、アンタっ、面白い奴だね!あっはっはっはっは!!!」



ポルトガ姫「えぇ……?めっちゃ笑ってるんすけど……」

31 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/06/23(木) 01:12:27.48 ID:gbrSoyW70
女海賊「ずいぶんはっきりと言ってくれるじゃないの。ぷふっ、あはははっ!」


ポルトガ姫「めっちゃニコニコしてるんすけど……なんすかアレ――……」

ゴトン

ポルトガ姫「ん?」

遊び人「今……何か揺れた?」


―――――――――


戦士「お?」

魔法使い「なんか、いま」

僧侶「変な揺れが」

武道家「……下」

僧侶「え?」

武道家「…………――下に、何か居る」


―――――――――


海賊手下「ん……?」

海賊手下2「おい、見ろ」


ズズ…


海賊手下2「船の下……影が」

海賊手下「……――っ!!!?」

ダッ!!

海賊手下「おかしらぁッ!!!」

海賊手下「特大の魔物だ!!!この影……」


女海賊「でも気に入ったわ。アンタ」



ざぱぁぁあぁあああん!!!!!!!!!!




クラーケン「ゴアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!」




海賊手下「“クラーケン”だッ!!!!!!!!」



女海賊「……――名前は?」
32 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/06/23(木) 01:13:43.34 ID:gbrSoyW70


ヒュンッ!!!

ヒュンッ!!!!




クラーケン「ゴアッ  ギュッ 」



ザザンッッッ!!!!!!!!






女勇者「……私は、女勇者」




女海賊「……アタイは女海賊」






ドパアアアアアアアアアアアアアン!!!!!



33 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/06/23(木) 01:14:10.37 ID:gbrSoyW70
戦士「うびゃあああああああ!!!!!」

武道家「ちょっ、つめたああああっ!!!!」

魔法使い「わわわっ」

僧侶「きゃ――っ!!!」



ポルトガ姫「ぎにゃぁ――っ!!!!揺れッ、ゆれぁ――!!」

遊び人「もっ、ほんとっ、女勇者容赦無さすぎ――っ!!!」



海賊手下「うわああぁぁぁぁっ!!!?」

海賊手下2「す、すごすぎるぜ見たかオイ!!!!」

海賊手下3「あのクラーケンが人間二人に……!!!!」

海賊手下4「お頭以外に、あんなに強い人間いたのか……!!」


ザッ

ザァァァン……!!

ザァン…





女勇者「……」


女海賊「……参ったね」

女海賊「こんなに強い奴、男でも見た事ないよ」

女海賊「気に入った……」


スタスタ

ガシッ!!


女海賊「気に入ったわ!!アンタ!!」

女海賊「アンタあたいと海賊やらないかい!!!?」
34 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/06/23(木) 01:14:37.02 ID:gbrSoyW70
女勇者「……さっきまでの私の話聞いてた?」

パシッ

女勇者「私は海賊にはならない。他を当たってくれないか」

女海賊「あら……つれないねぇ」

女海賊「んー、まあいいさ」

クルッ

スタスタ

女海賊「女勇者……名前は覚えたからね!」

女海賊「あたいの名前も覚えてくれたろ?」

女海賊「もしまた会う事があって、その時困ったことがあったら私を頼りな!」


スタッ


女海賊「全力で力になったげる!!!」


女勇者「頼る事はないさ!」


女海賊「へへっ♪ますます気にいった!……さあ」


女海賊「野郎共!!!!錨を上げろ!!!出発だよっ!!!」


「「「「応ッッ!!!!」」」」



…………
……




……
…………



ザザァン……

ミャー ミャー


僧侶「……見えなくなっちゃいました」

魔法使い「……いっちゃったねえ」

ポルトガ姫「な、なんか……白昼夢を見てるようだったっす……」
35 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/06/23(木) 01:15:08.03 ID:gbrSoyW70


女勇者「……」


武道家「女勇ー者」

女勇者「え?」

コツン

女勇者「あてっ、デコピンはやめてよ!」

武道家「あほう!あのイカはもっとまともな倒し方あったでしょうが!!」

戦士「お前にしては珍しく荒っぽい倒し方だったな?」

女勇者「いや、それは……」

遊び人「ムキになってるのまるわかりだったよ、女勇者」

女勇者「あ、遊び人ちゃん」

遊び人「まだまだよのう?女勇者さーん?」

ぐにー

女勇者「あいははは、ひょっほ!ほっへはふはははいへ!」

パッ

女勇者「いたた……悪かったよ」

女勇者「どうもああいう手前を見ると感情的になっちゃって……まだまだだね私も」

戦士「でもさ……なんか」

魔法使い「どしたの戦士?」

戦士「いや…………なーんか、あいつどっかで見た事ある気がするんだよな」

女勇者「え?今の人とかい?」

武道家「気のせいじゃない?流石に縁はないでしょ」

僧侶「あの―……」

女勇者「ん?なんだい僧侶ちゃん。何か心当たりが?」

僧侶「ううん、そうじゃないんですけど……」チラッ


盗賊「…………」ズーン…


僧侶「あの、『海賊をやってるのが変』ってくだりから盗賊ちゃんが……」


女勇者「わ――――っっ!!!!!ちがうちがうよ盗賊ちゃん!!!!」

盗賊「……あ、ううん……大丈夫だよ……ちゃんとわかってる、から……」

女勇者「あれは盗賊ちゃんの事とは全然違くてっ、本当にごめんよ!!!!」

盗賊「……大丈夫だよ……女勇者は優しい子だね……」

女勇者「うわぁぁぁそんな哀しい目をしないでおくれよぉぉ!!!!」
36 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/06/23(木) 01:15:49.56 ID:gbrSoyW70
盗賊「……でも、私も戦士と同じ……」

女勇者「え?」ピタッ

戦士「ん?何が?」

盗賊「……私も、あの人どこかで見た事ある気がする……」

戦士「盗賊もか!?」

武道家「えー?盗賊まで?」

魔法使い「ふたりともみたことあるっていうなら、どこかであってるのかなあ」

盗賊「……うん。たぶん、ずっと昔だと思うんだけど……」

戦士「え?最近じゃないか?」

盗賊「……え?……」

戦士「え?」


戦士・盗賊「「……」」


武道家「……気のせいね。多分」

遊び人「まあ、気のせいでも気のせいじゃなくても、気にしないのが一番よ」

スタスタ

遊び人「みんな、ご飯にしましょ!さっきの揺れから鍋守るの大変だったんだから!」

戦士「それもそうだな!めし!」

魔法使い「そういえばごはんわすれてたよぉ」

武道家「あんな事があれば、そりゃあねぇ」

僧侶「もうおなかペコペコですー」

盗賊「……女勇者、ちゃんと手を洗わなきゃだめだよ?……」

女勇者「ああ。分かってる。大丈夫さ」

ポルトガ姫「あ、なんかイカ臭いなと思ってたら女勇者ちゃんすか」

遊び人「その言い方やめてっ」

女勇者「ちょっと洗ってくるから、先に食べておいてよ遊び人ちゃん」

遊び人「うん。早く来てね」
37 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/06/23(木) 01:16:17.87 ID:gbrSoyW70
――――――――――――

――甲板隅・水樽傍――

パシャッ


女勇者「……」スンスン

女勇者「よし……と」

女勇者「さて。行くかな」

スタスタ

女勇者「……」

女勇者(なんだか嵐のような出来事だった)

女勇者(しかし……なんで)



女海賊『質問が悪かったね、じゃあもう率直に聞くよ』

女海賊『アンタら、国連の関係者?』



女勇者(なんであの海賊は国連の船を狙っていたんだろう?)

女勇者(そしてなんで国連の関係者じゃない事を知って引き揚げたのか)

女勇者「……」

ピタッ

女勇者「……」



ザァァン… サパァン…

ミャー ミャー


女勇者「……」

女勇者(……国連、か)

女勇者「……」

女勇者「……」

女勇者「……」

女勇者「……」


女勇者(……――お義兄ちゃん)


女勇者(今は、どこで、何をしているんだろう……)


…………
……

38 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/06/23(木) 01:16:47.61 ID:gbrSoyW70
今日はおしまいです
39 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/23(木) 01:23:39.08 ID:90VfXazg0
乙でございます
40 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/23(木) 08:07:45.19 ID:sWb+ZOPJO
乙です
41 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/23(木) 10:20:20.34 ID:vg220EtCO
女勇者って強いんだ…
42 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/23(木) 11:48:45.41 ID:ryMgmevE0

やっぱ更新続くと嬉しいな
43 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/23(木) 22:41:40.34 ID:qVe0XYJro
乙乙
イカくさい女勇者か・・・
44 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/23(木) 22:50:45.26 ID:fOkUc/0DO
最近ハーレム感が足りない…
45 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/24(金) 00:25:37.10 ID:xz5ity0No
百合方向でも良いんだぜ?
46 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/06/26(日) 11:33:48.40 ID:yzIlHqkc0
舞ってる
47 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/26(日) 21:14:44.06 ID:ZRuv24Lm0
まさかここまで早く続きが読めるとは思わなかった
ただただ乙
48 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/06/27(月) 02:35:07.75 ID:yrQHbGn90


……
…………


――ムオル地方・街道――


ザッザッザッ



ムオル勇者「……」



ザッザッザッ

ムオル勇者「……」

ザッザッザッ

ムオル勇者「……」

ザッザッザッ

ムオル勇者「……」


ザッザッザッ

ザッ……






ヒョコッ


イシス僧侶「……まだまだ歩いてるみたい」

ポルトガ勇者「おい、イシス勇者。ダーマを発ってからどのくらい経った?」

イシス勇者「もう四日目だね……ムオルってこんなに遠かったんだ……」

イシス魔法使い「ムオル勇者様、ずっと歩きっぱなしよね」

イシス戦士「イシス勇者様、大丈夫ですか?おぶりましょうか?」

イシス勇者「イシス戦士はいつまでも僕を子供扱いして……」

ポルトガ勇者「でもまあ、時々休憩してやがるしこっちも休めて助かるぜ」

イシス勇者「だね……」

ポルトガ勇者「とにかく途中で魔物に絡まれて騒いじまったら気付かれるかもしんねぇ。聖水は切らさないように頼むぜ」

イシス勇者「ああ。分かってる」
49 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/06/27(月) 02:35:39.11 ID:yrQHbGn90

スタスタ


イシス僧侶「でもさあ、本当にムオル勇者様を尾行して勇者くんの居所掴めるのかなぁ」

イシス魔法使い「うーん、勇者くんをどこかに連れて行ったのはあの人だし……手がかりくらいはあるんじゃないかしら」

イシス僧侶「でもでも、何を聞いても教えてくれなかったじゃないさー」

イシス僧侶「『お前たちに教える事では無い』つってー」

ポルトガ勇者「だから跡をつけるしかねえんだ。ちょっとばかし耐えてくんねえかイシス僧侶」 

イシス僧侶「や、まあいいんだけどさ……ただそんな簡単にあのムオル勇者様が隙を見せるかなぁって思って」

イシス勇者「今の所はまだ気付かれてないみたいだから、この調子でいけば大丈夫そうだよ」

ポルトガ勇者「行き着いた先に居ればいいんだけどな。勇者」

イシス魔法使い「そうね……」


スタスタ


ムオル勇者「……」



イシス勇者「……」

イシス勇者(勇者くんがムオル勇者さんに連れられて僕らの前から姿を消したのがおよそ一年前)

イシス勇者(それから何の音沙汰も無いままだったから、流石に痺れを切らしてしまった)

イシス勇者(あの一年前の事件からすぐ、色んな事があった)

イシス勇者(まず、国連の勢力図の変遷)

イシス勇者(サマンオサの重役でもあり、現状アリアハンの実権を握っている騎士団長の持つ力が余りにも膨れ上がってしまった)

イシス勇者(つまり、サマンオサが国連の指揮を執る機会が増えてしまったという事)

イシス勇者(おそらくナジミ様の仰る“魔物”の一人であるのが彼であれば、人間側は大きいハンデを負った)

イシス勇者(次に、国連勇者の席が二人分空いてしまった)

イシス勇者(まず一人がランシール勇者さん)

イシス勇者(あの事件で勇者くんを見逃そうとした彼女は特別騎士……“勇者”の称号、資格を剥奪)

イシス勇者(今はランシールに戻り監視の下で暮らしているらしい)

イシス勇者(そしてもう一人がスー勇者ちゃん)

イシス勇者(彼女はあの事件の直後、すぐに行方不明になってしまった)

イシス勇者(捜索隊も多く組まれたけれど、なんの手がかりもないまま半年が経ち、規定により除名)

イシス勇者(そしてまた半年が経って今に至る)

イシス勇者(一向に……――手がかりは無い)
50 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/06/27(月) 02:36:06.62 ID:yrQHbGn90
イシス勇者「……」

イシス僧侶「ん?どったのイシス勇者様」


――――――――――


スー勇者『イシスさん!イシスさん!』


――――――――――


イシス勇者「スー勇者ちゃん……無事だといいなぁ……」グスッ

イシス僧侶「泣きなさんなよ」

イシス魔法使い「でも確かに、スー勇者様も心配ねぇ」

イシス僧侶「あの子はみんなのアイドルだったし余計にね」

ポルトガ勇者「あいつがいねえと国連の集まりがギスギスしてたまらねえんだよな……」

ポルトガ勇者「軽口叩くランシール勇者もいねえし……やりにくいったら無いぜ」

イシス戦士「!!皆っ」

イシス僧侶「え?何――……あっ!」



――最果ての村・ムオル――



イシス僧侶「村が見えてきた!!」



―――――――――――



イシス僧侶「……――と喜んだのも束の間」


――ムオルの村近くの運河――


スタスタ


ムオル勇者「……」



イシス僧侶「村には入らんのかいっ!!!」

イシス魔法使い「あれからまたずいぶん歩いたわね……」

イシス戦士「目的は村ではなかったのか……?」

イシス勇者「とりあえず、もうちょっと跡をつけてみよう」

イシス僧侶「今日、朝暗いうちから歩き始めたよね……もう太陽が天辺にあるんですけどぉ……」

イシス戦士「弱音を吐くな」

イシス僧侶「ふぁい……」
51 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/06/27(月) 02:36:51.60 ID:yrQHbGn90


ポルトガ勇者「!おい、あれ見ろ」



ギィ……


ムオル勇者「……」



イシス戦士「小船が数隻……」

イシス魔法使い「って事は、ムオル勇者様この運河を渡るつもりなのかしら」

イシス僧侶「しっ!船を出そうとしてる!」



ギッ

ザザ……


ムオル勇者「……」


ザプッ

ザプッ…


ポルトガ勇者「……行ったな」

イシス勇者「渡った……って事は、向こうに何かあるんだ」

イシス僧侶「ねえイシス魔法使い。地図で向こうって何か載ってる?」

イシス魔法使い「えっと……」

パラッ

イシス魔法使い「……ダメね。ろくな情報は書いていないわ」

ポルトガ勇者「多分向こうはろくに人が出入りしたことのないエリアだったはずだ」

イシス戦士「しかし、何故こんなに広いのにあまり調査が入っていないんだ?」

ポルトガ勇者「えっと、なんだったかな……昔あの大陸は聖地だったんじゃなかったっけか」

ポルトガ勇者「それが魔族に攻めいれられてからは、魔族が住み着くようになって誰も入らなかったとかなんとか」

イシス僧侶「……ちょっと待って。私達今からそんな所に行こうとしてるの?」

イシス魔法使い「というか、そんな所に行って勇者くんは大丈夫なのかしら……」

イシス戦士「…………回復する術がほぼ無いに等しいあいつが、そんな所に行ったのなら」


「「「…………」」」


イシス勇者「っ!は、はやくムオル勇者さんを追いかけよう!」

ポルトガ勇者「まあ待て。船だとあいつから見つかりやすい。あいつが運河を渡ってからだ」

イシス勇者「そ、そうだね……くそっ」

イシス勇者(勇者くん……大丈夫だといいんだけど……)



――茂みの陰――


ガサ…


「…………」

52 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/06/27(月) 02:37:21.16 ID:yrQHbGn90


……
…………



――ムオル地方北西・謎の大陸――


チリチリ……

ギャー ギャー


ザッザッザッ…



イシス勇者「……」


イシス僧侶「……」


イシス魔法使い「……」


イシス戦士「……」


ポルトガ勇者「……」



ザッザッザッ…

ポルトガ勇者「……なあイシス僧侶」

イシス僧侶「なんですか……」

ポルトガ勇者「聖水はまだ残ってるか」

イシス僧侶「……あと瓶1本分ですね」

ポルトガ勇者「……そうか」

イシス僧侶「そうです……」

イシス戦士「……イシス魔法使い」

イシス魔法使い「何……?」

イシス戦士「この大陸に足を踏み入れてから、どのくらい経った……?」

イシス魔法使い「……えっと……三日だったかしら……」

イシス戦士「……そうか」


ザッザッザッ


イシス勇者「……ポルトガ勇者君」

ポルトガ勇者「なんだ」

イシス勇者「……これ、あれだよね」

ポルトガ勇者「……ああ」


ザッ




「「「「迷ったね」」」」



53 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/06/27(月) 02:37:46.40 ID:yrQHbGn90
イシス僧侶「わぁーもうどうすんのさこれ!!ちょっと限界近いんですけど!!」

イシス魔法使い「確かに、流石にお風呂に入りたいわ……綺麗な水場はおおいから、水浴びはできるけど……」

イシス戦士「ムオル勇者様も見失ったし……手がかりも無し、か」

ポルトガ勇者「すまねぇな、俺があの時船を出すのを止めなかったら」

イシス勇者「いやいや、ポルトガ勇者くんのせいじゃないよ」

ザッ

イシス勇者「……しかし」


ギャァ ギャァ


イシス勇者「……本当に妙な森だ……」


ポルトガ勇者「お前もそう思うか?」

イシス勇者「ああ。なんというか……こう、常に見られている気がするというか」

イシス勇者「でも嫌な感じでもなく……野生の動物達の気配でもないし」

ポルトガ勇者「だな……。こりゃ昔聖地だった時の名残なのか、それとも……」

イシス僧侶「ちょっと二人共怖いこと言わないで下さいよ!!!」

イシス魔法使い「嫌な感じはしないにしろ、あまり長居はしたくないわね」


……


ピタッ


イシス戦士「……」


イシス勇者「……イシス戦士」

イシス戦士「はい……聞こえました」

ポルトガ勇者「……結構遠くだが、確かに聞こえた」

イシス僧侶「えっ?なになに、何が?」

イシス魔法使い「三人とも何が聞こえたの?」


イシス戦士「剣が触れ合う音だ」


イシス勇者「あんな音、こんな森の中で自然に鳴るものではないよ」


ポルトガ勇者「……近くに、居やがる」


ザッ

イシス勇者「多分こっちからだった!みんな!急ごう!」

ポルトガ勇者「おうっ!」

イシス魔法使い「さすが戦闘職ね。進行方向は任せたわ!」

イシス僧侶「あっ、待って待ってー」


…………
……

54 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/06/27(月) 02:38:56.49 ID:yrQHbGn90


……
…………

ザッザッザッ!!

――ムオル地方北西・謎の大陸・北方――


ザッザッザッ!!

ザッ

イシス勇者「はぁっ、はぁっ……」

ポルトガ勇者「くそっ、何にもいやしねえ!」

イシス戦士「恐らくあの音は移動している……同じような音がいろんな方向から聞こえた」

イシス僧侶「ちょっと、少しだけ、休ませて……」

イシス魔法使い「私も限界が近いわ……お願い」

イシス勇者「そうだね……もう日が沈みかけてる」

ドサッ

ポルトガ勇者「今日はこの辺りで野宿するか……」

イシス戦士「では私は水場を探してくる」

ポルトガ勇者「ああ、頼んだ。まあすぐに見つかるだろ」

スタスタ…

ポルトガ勇者「イシス勇者。そんじゃ火を熾そうぜ」

イシス魔法使い「それなら私がやるわ。ポルトガ勇者様は寝床の準備をお願い」

ポルトガ勇者「はいよ任せた。んじゃ、今日はイシス勇者は俺と一緒で良いか?」

イシス勇者「いっ、いいいい良いわけないだろう!!!!」

ポルトガ勇者「お前こんな時くらい愛人離れしろよ……女達だって女達だけで寝てえだろ、なあ?」

イシス僧侶「いやいやいや!!!大丈夫!!大丈夫ですから!!」

イシス魔法使い「きょ、今日もポルトガ勇者様は一人で眠ってもらえるかしらっ!?ねっ!お願いっ」

ポルトガ勇者「いや、いいけどよ……俺だって寂しいんだけど……」

イシス組「「「ごめんなさい……」」」

ポルトガ勇者「いやいいってば。ま、お前そういや男苦手って言ってたしな。しゃあねえよ」


タッタッタ!!

イシス戦士「皆!!」


ポルトガ勇者「お、戻って来た」

イシス魔法使い「良い水場あった?」

ザッ!!

イシス戦士「それどころではない!!……あれを見ろ!!」

イシス勇者「あれ?……」

イシス魔法使い「あれって?何……が……」

イシス僧侶「……ちょっと待って」

ポルトガ勇者「おいおいおい」


モクモク


ポルトガ勇者「煙……!!」

55 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/06/27(月) 02:40:16.94 ID:yrQHbGn90
ダッ!!

タッタッタ!!

イシス勇者「人の気配がやっと……!!」

ポルトガ勇者「イシス戦士!!もうあの煙の下には行ったか!?」

イシス戦士「まだだ!しかしそう遠くはない!」

イシス僧侶「やっと……!やっとの手がかりだよぉぉ!!」

イシス魔法使い「急ぎましょう!日が沈まないうちに!」

イシス勇者(勇者くん……!!)





「こんにちはっ」





ズザァァッ!!!!!


イシス勇者「……」

イシス僧侶「……」

イシス魔法使い「……」

イシス戦士「……」

ポルトガ勇者「……おい、誰だ?今の声」

イシス僧侶「……私じゃないよ」

イシス魔法使い「私でも……というか」

イシス戦士「聞き覚えの、無い……」


ジャキッ!!!


イシス勇者「……皆」


ポルトガ勇者「ああ、分かってる」


イシス魔法使い「敵じゃないといいんだけど……」


イシス戦士「もし敵なら切り伏せるまでだ」


イシス僧侶「……だね」




「こんにちはっ」



イシス戦士「っ!!!そっちだっ!!!」


バッ!!!

イシス僧侶「……」

イシス魔法使い「……」

イシス戦士「……」

ポルトガ勇者「……」

イシス勇者「………………――え?」
56 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/06/27(月) 02:40:49.56 ID:yrQHbGn90








スライム「……」








イシス僧侶「……」


イシス魔法使い「……」


イシス戦士「……」


ポルトガ勇者「……」


イシス勇者「……」




スライム「……」


スライム「こんにちはっ」




「「「「えっ」」」」



イシス勇者「え、えっと、あ」

イシス戦士「こ、こんにちは……?」



スライム「んふふーっ」ニコー



イシス僧侶「……」


イシス魔法使い「……」


イシス戦士「……」


ポルトガ勇者「……」


イシス勇者「……」





「「「「えぇ……」」」」



57 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/06/27(月) 02:41:18.84 ID:yrQHbGn90
イシス勇者「ス、スライムが喋った……?」

イシス魔法使い「こんな……事ってあるの……?」

ポルトガ勇者「言葉を喋る魔物は数多く見てきたが……喋るスライムってのは初めてだ」

イシス僧侶「……しかも、挨拶って」

イシス戦士「…………かわいい……」

イシス僧侶「えっ」


スライム「みんなっ、はじめましてだっ」

ピョンピョンッ


イシス勇者「こ、こっちに来た!」

ポルトガ勇者「っ!」ジャキッ!

イシス勇者「やる気か……!?」ジャキッ!!

ガバッ!

イシス戦士「……お、お待ちになってください」

イシス勇者「え!?どうして」

イシス戦士「いや、あの、このスライムが何かを知っているかも、と、思いまして」


ピョコッ


スライム「ねぇねぇっ」

イシス勇者(普通に話しかけてきた……)

イシス勇者「な、なんだい?」

スライム「みんなおじちゃんにあいにきたの?」

イシス勇者「……おじちゃん?」

スライム「なら、こっちだよっ」


ピョンピョン


スライム「ついてきてー」


イシス勇者「あっ、ちょっ……」

ポルトガ勇者「……付いて行っていいのかこれ」

イシス僧侶「でも他に何も手がかり無いし……行きません?」

イシス魔法使い「そうね。煙を熾した主があの子の言う『おじちゃんなら』人の可能性が高いし」

イシス戦士「……」フラフラ

イシス勇者「ってイシス戦士は普通に追っかけてるし」

ポルトガ勇者「あいつ可愛いもの好きだったのか……」

ザッ

ポルトガ勇者「まあなんにせよ、行くか」
58 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/06/27(月) 02:41:58.29 ID:yrQHbGn90


ぴょん

ぴょん

スライム「♪」



――森深く・謎の祠――



ザッ


イシス勇者「……!!祠だ……」

ポルトガ勇者「でっけえ祠だな……遺跡みてえだ」

イシス魔法使い「煙もここからあがってるわね。人の気配がする」

イシス戦士「あ、スライムが入り口に……」


ぴょんっ

スライム「ただいまーっ」

スライム「おきゃくさんきたよー」

スライム「きたよー」


ポルトガ勇者「……さて」

イシス勇者「誰が出てくるか」

イシス僧侶「『おじちゃん』がムオル勇者様だといいけど……」

イシス魔法使い「勇者くんの手がかりになるかどうか……」

イシス戦士「!!」


スタスタ


イシス戦士「誰か出てくるぞ!」



ザッ



イシス勇者「……!!」


ポルトガ勇者「……!!」


イシス戦士「……!!」


イシス僧侶「……!!」


イシス魔法使い「……!!」
59 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/06/27(月) 02:42:34.44 ID:yrQHbGn90


ひょいっ





スー勇者「スラさん!おかえりなさいです!」






イシス勇者「 」


イシス僧侶「 」


イシス魔法使い「 」


イシス戦士「 」


ポルトガ勇者「 」




スライム「スーちゃんっ!」


ぴょんっ

スー勇者「わわっ」

ダキッ

スライム「ただいまっ!」

ギューッ

スー勇者「ふふっ♪すりすりですっ」

スライム「わーっ♪」



イシス勇者「 」


イシス僧侶「 」


イシス魔法使い「 」


イシス戦士「 」


ポルトガ勇者「 ……ス」






「「「「スー勇者(ちゃん)!!!!!?」」」」



60 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/06/27(月) 02:43:28.91 ID:yrQHbGn90
スー勇者「え?……わぁっ!!!?」


タッタッタ


スー勇者「みなさんっ!おひさしぶりです!」


イシス勇者「えっ、ちょ、ま、なんで」

ポルトガ勇者「なんでお前がこんなトコに居るんだよ!!?ってか無事だったのか!!?」


スー勇者「??はいっ、無事だったでした!」

スライム「んー?スーちゃんのともだち?」

スー勇者「そうですっ」

スライム「じゃーぼくもともだちー」

スー勇者・スライム「「にへー」」ペカー

イシス戦士「んふっ……!」

イシス魔法使い「ちょっと待って……理解が追いつかないんだけど……」


ザッ



「おや、お客さんかい?」



「「「「!!」」」」


スタスタ


「……おやおや」


スー勇者「おじいちゃん!」

スライム「おじちゃんっ」


ポルトガ勇者「おじいちゃん、って」

イシス勇者「……!」


イシス勇者(ホビット族……!)




ホビット「よくこんな辺境に来たね。疲れたろう」



61 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/06/27(月) 02:44:50.83 ID:yrQHbGn90
ポルトガ勇者「ノルド以外のホビット族……って、まさか……!」

イシス僧侶「え?ポルトガ勇者様何か知ってるの?」

ポルトガ勇者「ああ、多分――……」



スー勇者「あっ!」



ポルトガ勇者「え?」

イシス勇者「へっ?」


ダッ

タッタッタ!


スー勇者「おかえりなさいですっ!」


タッタッタ!!


イシス勇者「どこにっ……」

クルッ


イシス勇者「……」


イシス僧侶「……」


イシス魔法使い「……」


イシス戦士「……」


ポルトガ勇者「……」


イシス勇者「……」



ホビット「おや、帰って来たようだね」



イシス勇者「…………――ゆ」
62 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/06/27(月) 02:45:39.36 ID:yrQHbGn90


タッタッタッ!!


ガバッ!!



「わわっ!?」



スー勇者「えへへっ♪」ギューッ



「っとと……もう、危ないってばスーちゃん」



スー勇者「お帰りなさいですっ!ご主人様っ!」










勇者「ん。ただいま。スー勇者ちゃん」









イシス勇者「勇者く――……!!!!………………――――ご主人様?」









(((((   ご   主   人   様   ? ? ? )))))





63 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/27(月) 02:45:44.03 ID:eJ5z+jqO0
更新きたぁーーー
続き気になってたからマジで嬉しい
64 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/06/27(月) 02:46:23.83 ID:yrQHbGn90
今日はおしまいです
65 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/27(月) 02:47:39.18 ID:eJ5z+jqO0
お、おう来たと思ったら終わってた何を言ってるかわから(以下略

66 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/27(月) 06:40:26.17 ID:RmPsvNWK0
乙です
これはこれは、他の皆が黙っておりませんなぁ…
67 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/27(月) 21:15:12.49 ID:cNuKirzN0
乙でございます
68 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/06/29(水) 23:27:27.37 ID:0gGe503K0
69 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/06/30(木) 00:25:24.27 ID:YcLv2Ntm0
勇者「え――……?あっ!!!?」

スタ…スタ…

勇者「みんなっ!!?どうしてここに!!!?」


ポルトガ勇者「いや……うん」

イシス僧侶「えっと、なんていうか」

イシス魔法使い「心配だった、から、というか」

イシス戦士「その」

イシス勇者「………………」

ザッ!

勇者「……っと……うわー……!なんか、凄い久々だね!」

イシス勇者「……勇者くん」

勇者「イシス勇者くん!久しぶり!元気だった!?」

ガシッ!

勇者「ん?」

イシス勇者「ひ、ひさしぶり……会えて嬉しいよ……?」

イシス勇者「嬉しいんだけど、嬉しいんだけど……きみ、今のは?」

勇者「えっ?今の?」

ポルトガ勇者「今、スーの字がお前の事」

勇者「ポルトガ勇者も!本当に久しぶ――……え?スーちゃん?」


スタスタ

スー勇者「どうしたですか?ご主人様」


「「「「「…………」」」」」


勇者「……あっ」

勇者「あー…………えっと……………………これは…………違うんだよ皆」

イシス勇者「何が違うんだい?」

勇者「え、ちょっと目怖いよイシス勇者くん」

勇者「これはちょっとワケがあってさ……ね?スーちゃん」

ぎゅっ

スー勇者「?」

勇者「あ、抱きついちゃダメだってちょっとスーちゃ――……」
70 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/06/30(木) 00:25:58.94 ID:YcLv2Ntm0

がぶぅっ


勇者「あいたたたちょっとちょっと」

スライム「むーっ」

勇者「少し痛いからやめてってばスラお!」


スラお「うるさいっ!スーちゃんからはなれてっ!」


スー勇者「スラさん!だめです!」

スラお「うー……でもー」

勇者「本当にスラおったらもう……」

スー勇者「んもう!……大丈夫です?ご主人様」

勇者「うん。あま噛みだったし」

スラお「ほんきだもんっ!」

勇者「スラおは本当に僕の事嫌いだな」

スラお「きらいっ!スーちゃんすき!」

スー勇者「わたしもですっ!」ニコー

スラお「えへー」ニコー

勇者「ぐぬぬ」

スー勇者「ふふっ、でも私、ご主人様も大好きです!」

勇者「えっ!あはは!やー嬉しいなあ」


勇者「はっ」


「「「「…………」」」」


ポルトガ勇者「……」

イシス勇者「……」

イシス僧侶「……」

イシス魔法使い「……」

イシス戦士「……」


勇者「あーっ違う違う違う!!本当に違うんだよこれは!!」

イシス僧侶「ロリコン」

勇者「はぁぁ!?ち、違うよぉ!!」

イシス戦士「年端もいかない少女にそんな呼び方を強制させて……」

勇者「強制じゃないし!!」

イシス魔法使い「なんだか、スキンシップも多いように見えるのだけれど……」

勇者「違う違いますよ!?スーちゃん!ちょっと一回離れて!!」

パッ

スー勇者「でも、あっ!!」
71 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/06/30(木) 00:27:14.69 ID:YcLv2Ntm0
フラッ


勇者「はれっ……?」

ドサッ!

イシス勇者「勇者くん!?」

ポルトガ勇者「お、おい!大丈夫かお前!」

勇者「あてて、ごめんちょっと……」

スー勇者「もうっ!だから言ったです!」

サッ

スー勇者「……今日は、怪我したの少ないですけど、無理するはダメですっ」

勇者「うぁ、ご、ごめん……」

イシス勇者「どうしたんだい……!?よくみたら体中に怪我が」



「…………ここで何をしている。お前たち」



イシス勇者「!!」

ポルトガ勇者「……ム、ムオル勇者」


スタスタ

ムオル勇者「何故お前達がここに居る」


勇者「ムオル勇者さん」

スー勇者「お帰りなさいです!」

スライム「ムーくん!」


イシス勇者「えっと、これはその」

ポルトガ勇者「……悪い、勝手に後を追わせてもらった」

イシス僧侶「申し訳ありません!」

イシス魔法使い「勝手は謝罪します!ですから――……」
72 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/06/30(木) 00:27:40.93 ID:YcLv2Ntm0
ムオル勇者「……いつからだ」

イシス勇者「…………この間の国連首脳会議の直後です」

イシス戦士「ムオル勇者様がダーマ神官様を護送されてから、そのまま……」

ムオル勇者「…………」


スタスタ

ホビット「まあまあ、いいじゃないかムオル勇者」

ムオル勇者「ホビット殿……」


ガバッ

勇者「……先生!今日の夕の鍛錬終了しました!」


ホビット「うん。お疲れさま」


イシス勇者「先生……?」

ポルトガ勇者「じゃあやっぱりお前、ここで修行を」


ホビット「この子達も勇者の事が心配だったんだろう。仕方が無いさ」

ムオル勇者「しかし……」

ホビット「ムオル勇者」

ムオル勇者「……」

ホビット「……――いいのさ」

ムオル勇者「…………了解」

ザッ

ホビット「さ。お客人も来たし……勇者もお腹が減ったろう?」

ホビット「中に入ってご飯にしよう。スー勇者ちゃんが作ってくれたご飯が冷めるから」
73 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/06/30(木) 00:28:10.16 ID:YcLv2Ntm0


――ホビットのほこら・大広間――


オォォオォ…


イシス勇者「……本当に広い、不思議な所だね……」

勇者「でもいいところだよ」

ポルトガ勇者「ああ。なんか落ち着くな」

ボボ…

ホビット「勇者、そっちの蝋燭にも火を灯してくれるかい?」スッ

勇者「はい」パシッ

ボッ…

ホビット「さて、これで少しは明るくなったろう」

ホビット「しかしすまないね。客人をもてなすような立派な席は無いんだけど」

イシス魔法使い「いえ!私達こそ急にお邪魔してしまい……」

イシス僧侶「本当に申し訳――……」


ギュルルル


イシス戦士「……本当に申し訳ない」

イシス僧侶「アンタか」

ホビット「ふふ。いや結構な事さ。少し待ってもらえるかな?今スー勇者ちゃんが――……」

スタスタ

スー勇者「準備できたです!」

ホビット「おお、来たようだ」

イシス魔法使い「運ぶの私達も手伝います!」



〜〜スー勇者の☆愛情いっぱい晩ごはんメニュー〜〜


・銀魚の塩焼きにムオルアッリオの根を散らしたもの

・トウモロコシとムオルビーンズと小麦粉をペーストしたものに何かの肉の細切れを混ぜ込んで一旦醗酵させ、その後ソースで香ばしく焼いたもの

・何かの臓物


イシス勇者(なんか一個インパクト凄いものあるな)

ポルトガ勇者(なんだあれ)

ホビット「それではいただこうか」


「「「「いただきます」」」」


イシス魔法使い「でもその……本当にいいのですか?私達まで」

ホビット「いいのさ。スー勇者ちゃんもいいと言ってくれているしね」

スー勇者「みんなで食べるはたのしいですっ!」ニコー
74 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/06/30(木) 00:28:48.75 ID:YcLv2Ntm0
イシス戦士「んうっ!?」

イシス僧侶「っ!これおいしいっ!」


ざふっ

ほくっ……

イシス勇者「ほふっ……!これっ、なんだろう……パン?じゃないし、でも」


パリッ

しゃほっ じゅわっ

ポルトガ勇者「んっ。……はー、この魚もすげーうめえな。やたら肉が甘い」

ポルトガ勇者「この上に散ってる根っこみてえなの何だ?香り強えけど癖になるな」


勇者「おいしいでしょ。スーちゃんの故郷の食べ物なんだってさ」

スー勇者「えへへ……少し作りやすくした所もあるですが、わたしの好きの料理です」

イシス勇者「スー勇者ちゃんは凄いね……うん?」

ポルトガ勇者「お?」

勇者「ん?どうしたの二人共――……」


スッ


勇者「……」


スー勇者「はいっ!ご主人様っ!あーん!」


勇者「……スーちゃん。一人で食べるって」

スー勇者「でも体ふらふらしてるです!食べさせてあげるです!」

勇者「うん。ありがたいんだけどさ、いつも言ってるけどそれって」


何かの臓物「……」


勇者「あーんされても一口じゃ無理かな……」

スー勇者「あーん!あーん!です!あーんっ!」

勇者「もご」

ざむっ

じゃもっ じゃもっ

勇者「んぷっ……もっ、っくこ」

ゴクン

勇者「んぷ、ぱふっ!だはぁっ!!!」

スー勇者「まだあるです!」

勇者「うんっ!!待ってね!!」
75 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/06/30(木) 00:29:16.35 ID:YcLv2Ntm0
イシス勇者「ねえスー勇者ちゃん、なんだいそれ?」

スー勇者「鹿の内臓を胃袋に詰めて煮たのです!」

イシス勇者「うわあ想像以上にワイルドだ」

スー勇者「栄養がいっぱいだからいいものです!」

スー勇者「わたしの村の戦士たちは、これを食べて強くなるです!」

勇者「ぷぉぽっ、おぽぴゅぉっ……」ザムザム

ポルトガ勇者「お、おい勇者が血で溺れかけてんぞ」


…………


カラン

ポルトガ勇者「……さて、そろそろ聞かせてもらってもいいか?」

勇者「ん?何を?」

ポルトガ勇者「まず一つは、なんでスー勇者がここに居るのかって事」

イシス勇者「次に何故スー勇者ちゃんは君をご主人様って呼んでるのかって事」

ポルトガ勇者「被せてくるなよ……そして、最後に」チラッ


ホビット「ん?」


ポルトガ勇者「……このホビットが、何者かって事」

スラお「おじちゃんはおじちゃんだよっ!」

ポルトガ勇者「……あとこの喋るスライムがなんなのかも」

ホビット「ははは、沢山疑問があるね」

勇者「……」

ホビット「いいさ勇者。話してあげなさい」

勇者「……はい」


カラン


勇者「――じゃあ、話すよ」






……
…………
76 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/06/30(木) 00:32:00.69 ID:YcLv2Ntm0



――およそ一年前――




――ホビットの祠――


ザッ


ムオル勇者『……ここだ』

勇者『やっ……と……』

ドサァッ

勇者『着いた……はぁっ……』

ムオル勇者『立て。情け無い』

勇者『す、すみませんっ……』

勇者(でも……なんなんだろうここ……?)

勇者(具体的な事は何も聞いてないけど……本当にここが僕に縁のある――……)


『ムオル勇者』


ムオル勇者『!』

勇者『え?』


スタスタ


ホビット『やあ、久しいね』


勇者『!』

勇者(ホビット……ノルドさん以外にも居たんだ)

ムオル勇者『……お久しぶりです』

ペコッ

ムオル勇者『突然申し訳ない。ポルトガ王を介してノルド殿に伝言を頼ませて頂いた』

ホビット『いいさ。元気そうで何よりだよ』


ザッ


ホビット『……』


勇者『……は、はじめまして』


ホビット『……君が、勇者かい』

勇者『え?は、はい!僕は――……』

ナデ

勇者『え?』

ホビット『……』

ナデナデ


ホビット『…………大きくなったね』


勇者『……』

77 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/06/30(木) 00:32:34.94 ID:YcLv2Ntm0
ホビット『……さ。今日からここが君の修行場だ。案内しよう』

勇者『……?はいっ』


…………


――ホビットの祠・小部屋――


勇者『こんな部屋まであるんだ……』

勇者(祠って言うよりちょっとした神殿みたいだな)

ホビット『ここが君の部屋だよ。……さて、一通り説明したね』

ホビット『ここまでで何か質問はあるかい?』

勇者『……あの』

ホビット『ん?』

勇者『……さっき、大きくなったねって仰ってましたが……』

勇者『僕に、以前どこかで……?』

ホビット『……』

ホビット『……ん。最初に説明しないとね』

ホビット『勇者』



ホビット『君を拾ったのはわしだ』



勇者『……』

勇者『……』

勇者『……え』


勇者『……えええええええええええええ!!!?』


ホビット『あはは。驚いたかい?』

勇者『え!?でもっ、僕を拾ったのは父――……オルテガが』

ホビット『ああ。オルテガに任せたのさ』

ホビット『あの時、わしらの中で一番適任だったからね』

勇者『……はい、え』

勇者『と……いう事は』

ホビット『そうだね』

ホビット『オルテガの旅のお供、サイモン、カンダタ――……』

ホビット『そしてわしさ』

勇者『……父さんの……旅の……!!』

ホビット『……おいで。もう一回外に出よう』

勇者『えっ?は、はい』
78 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/06/30(木) 00:33:21.15 ID:YcLv2Ntm0


サァァァァ…


ホビット『ん……今日は風が気持ちいいね』

勇者『……』

ホビット『……さて』

スッ

ホビット『ここだよ』

勇者『……ここ?』

勇者『普通の地面に見えるんですが、ここが何か』

ホビット『君を見つけた場所』

勇者『……』

勇者『……』

勇者『……』

勇者『……』

勇者『……』

勇者『……』

勇者『……』

勇者『……え』


ホビット『君は生まれたばかりの時に、ここで捨てられたんだ』


ホビット『ここが君のはじまりの場所なんだよ』


79 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/06/30(木) 00:33:54.18 ID:YcLv2Ntm0
今日はおしまいです
80 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/30(木) 00:50:08.49 ID:x0fSsxDX0
おおお…乙です…きになる…
81 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/30(木) 01:17:32.18 ID:f8ogYBSUO
82 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/30(木) 21:12:42.79 ID:ruxhoos70
乙でございます
83 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/07/03(日) 08:06:51.13 ID:wEYnVtvL0
舞ってる
84 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/07/05(火) 00:53:48.89 ID:UQZyA7gU0
とても楽しみ
85 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/07/07(木) 02:54:19.77 ID:5IBcjZYP0
勇者『…………ここで僕が』

勇者『……』

スタスタ

スッ…

勇者『……』

勇者『……』

勇者『……』

勇者『…………あのっ』

ホビット『すまないが、今話せるのはここまでだよ』

勇者『!!?なんでですかっ!?』

ホビット『……何が起因となるか、分からないからね』

トントン

ホビット『君のその、“中”のモノは』

勇者『っ……!!!』

ホビット『まあそんなに焦らないでおくれ勇者。急くと良い事は無いよ』

ホビット『わしも協力するから、“それ”を制する為に一緒に強くなろう。その為に君はここに来たんだ』

勇者『……』

勇者『っ』

スクッ

勇者『よろしくおねがいします!!!』

ホビット『ふふ……さて』

クルッ

ホビット『……まだ紹介しなくてはいけない子も居たね』

勇者『え?』

ホビット『スラお。さっきから陰に隠れてどうしたんだい?出ておいで』

『……』

ぴょん

勇者『!!!』


スラお『……うー』
86 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/07/07(木) 02:54:45.93 ID:5IBcjZYP0
ジャキィッ!!!

勇者『魔物っ』

スラお『ぴっ!!!?』ビクゥッ!!!

ザッ!!

勇者『なんでこんな所に――……』

スッ

ホビット『待ちなさい勇者』

勇者『えっ!?』ピタッ

ホビット『この子は違う。わしの友人さ。剣を収めなさい』

ぴょんっ

スラお『おじちゃん!こいつこわいっ!』

勇者『って、ええっ!!!?えっ、喋った!!!?』

ホビット『……勇者。剣を収めておくれ』

勇者『でもなんで魔物が』

ホビット『……この子は魔物じゃない』

勇者『え?でも』

スラお『おじちゃんっ!ぼくこいつきらいっ!』

ブルブル

ホビット『……よしよし』ナデナデ

勇者『……』

ジャカッ

勇者『……す、すみませんでした』

ホビット『いいよ。スラおも気にして無いさ』

スラお『するもん!こわいもんっ!』

ホビット『では改めて紹介するよ。わしの友人のスラおだ』

スラお『ぐるるー!』

勇者『は、はぁ……』

勇者(喋るスライム……そんなに知能の高いスライム種が居たんだ……)

勇者『でも、その、見た感じスライムですよね……?魔物なんじゃ』

ホビット『さっきも言ったが、魔物じゃないさ』

ホビット『意思疎通もできるし、魔族が精神の根本に持つ残虐性も加虐心も持っていない』

ホビット『確かに種族はスライムだが、優しくて良い子なんだ。よろしくね』

勇者『……』

スッ

勇者『えっと……スラお、だよね』

勇者『ごめんね、いきなり……これからよろし』

がぶっ

勇者『あたたたた、あっなにこれ微妙な痛さいたいいたい』

スラお『ぐもー』

勇者『ちょっとやめてスラおやめてってば』

ホビット『ふふふ、仲良くするんだよ』
87 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/07/07(木) 02:55:11.36 ID:5IBcjZYP0
ザッザッ

ムオル勇者『……もう一人紹介しておく』

勇者『ムオル勇者さん。どこへ行ってらしたんですk――……』


ヒョコッ


スー勇者『……』


勇者『!』

ホビット『お?』

ムオル勇者『少し、こいつを捕まえに行っていた』

ムオル勇者『何か妙な気配がすると思っていたら……どうやら俺達がこの大陸に入った時から後をつけて来ていたようだ』

スー勇者『す、すみませんっ!』

勇者『君は、あの時の』

スー勇者『……』

スタスタ


ザッ


勇者『!!!!?』


スー勇者『……』


ホビット『おやおや。いきなり勇者にひれ伏すとは』

勇者『えっ、ちょっと君!?いきなりどうしたの!?』

スー勇者『……ご主人様』

勇者『へっ』


スー勇者『貴方様、わたしの、ご主人様です』

スー勇者『わたし、スー勇者いいます……ご主人様』

スー勇者『なんでも、命令する、ください』


勇者『』

勇者『』

勇者『はんっ?』

ムオル勇者『……俺にも分からんが、お前に仕えると言って聞かんのだ』

スー勇者『…………私の、お師匠様の、命令です』

スー勇者『それしか、話す、できないです……でも』

バッ

スー勇者『なんでも、お手伝いするです!』

スー勇者『お傍に、置く、ください!』

勇者『え、えぇ……?』

ホビット『あっはっはっは!これまた賑やかになりそうだ』


ホビット『いい事だね。それじゃあ、しばらくはこの面々で頑張ろうじゃないか』

88 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/07/07(木) 02:55:41.24 ID:5IBcjZYP0
…………
……




勇者「……というわけで、今に至るんだ」


「「「どういうワケだ」」」


勇者「ですよね……?」

ポルトガ勇者「まあ、大抵謎のままだったが」チラッ


ホビット「?」


ポルトガ勇者「……この人が、オルテガさんの仲間の、凄い人だって事は分かった」

イシス勇者「まさか、お会いできるなんて……」

ホビット「ふふ、凄くは無いさ。……君はポルトガ勇者だね?大きくなったなぁ」

ポルトガ勇者「えっ!?俺を知ってるんすか!?」

ホビット「そうだね。君とは昔一度だけ会った事があるんだ」

ホビット「……私はオルテガ達と旅をしていた時は他の人間達からは隠れるように過ごしていたから、知人は少ないんだけど」

ホビット「君の父親とは友人なのさ。ポルトガ王が一度君を抱いてオルテガの船に乗って来た事があってね……その時に、一度」

ポルトガ勇者「そ……そうなんすか……」

ホビット「みんなの子が無事に大きくなっているようで、安心だ」

イシス勇者「でも、結局スー勇者ちゃんはどうしてここに?そのお師匠様の命令って」

スー勇者「……」

イシス僧侶「……スー勇者ちゃん?どったの?」

スー勇者「……すみません、言えないです」

スー勇者「でも、悪い事は企んで無いです!本当です!」

ポン

ナデナデ

スー勇者「う?」

勇者「…………最初は、どうしようかとも思ったんだけどさ」

勇者「今では、この子に本当に助けてもらってるんだ」

勇者「まだ詳細は聞いていないんだけど、スー勇者ちゃんが居てくれて良かったって思ってるよ」

スー勇者「……えへへ」

スー勇者「えへへへー♪」ポワワ

イシス戦士「かわいい」ボソッ

スー勇者「ご主人様……♪」スリスリ

勇者「あっ、ちょっとタンマ今ダメだって、本当」

イシス勇者「……」

ポルトガ勇者「イシス勇者目がこわいけど」
89 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/07/07(木) 02:56:07.33 ID:5IBcjZYP0


カチャッ

スー勇者「それじゃ、片付けるです!」

イシス魔法使い「スー勇者様、私も手伝うわ」

スー勇者「いーえ、休んでいてくださいです!」

イシス戦士「そうはいかん」


<……!…!


イシス勇者「……思ったんだけどさ」

勇者「ん?どしたの?」

イシス勇者「スー勇者ちゃん、共通語上手くなったね?」

ポルトガ勇者「ああ、俺も思った。最後に会った時はもっとカタコトだっただろアイツ」

勇者「あー、本当に上手くなったよね」

ホビット「ははは、勇者が教えてあげているからね。共通語を」

ポルトガ勇者「え?お前が教えてんのか?」

勇者「うん。色々お世話になってるから、何か返せないかと思って」

勇者「スーちゃんに何かないかって聞いたら、『じゃあ共通語を教えて欲しい』って言われてさ」

勇者「教えたら本当に要領良くって驚いたよ。このまま半年もすればペラペラになってるんじゃないかな」

イシス勇者「本当にあの子は凄い子だね……12歳……いや、今は13歳か。そんな年齢とは思えないよ」

勇者「だね。でもそっか、スーちゃん13歳なのか……すごいなあ」

ホビット「んー……少し違うかな」

イシス勇者「え?」

勇者「えっ、と、いいますと」

ホビット「この世界は齢の数え方が独特な国というのが数あってね。スーやジパングが有名かな」

ホビット「君たちとは年齢の感覚が少し違うんだよ」

ポルトガ勇者「えっ……って事はアイツ俺らの感覚で何歳なんすか?」

ホビット「ええと、確かスー族は、生まれた時に一歳で……その次の儀礼でまた……だから」


ホビット「国連規定齢算でいうと、あの子は今11歳だね」


勇者・イシス勇者・ポルトガ勇者「「えっ」」


イシス勇者「えっ、ちょっと待ってください。確かに見た目が幼いなあと思ってましたが」

ポルトガ勇者「って事は、あいつ9歳くらいでもう上級魔法使えて勇者資格取ってたって事か!!?」

ホビット「ああ。そうなるね」

スタスタ

スー勇者「呼んだです?」

勇者「…………本当に凄い子なんだなあ」

ナデナデ

スー勇者「??、?、えへへ?」ポワワ

90 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/07/07(木) 02:56:33.86 ID:5IBcjZYP0
…………


ぴょんぴょん

スラお「おさらのかたづけ、おわったよぉ」

ホビット「みんなでやると早いね」

クルッ

ホビット「さて、それじゃ勇者。お風呂に入っておいで」

勇者「あ、はい!」

イシス魔法使い「お風呂っ!?」ガタッ

イシス僧侶「うわビックリしたっ」

イシス戦士「驚いたな。ここは風呂もあるのか?」

イシス僧侶「ちょっと失礼だぜイシス戦士ちゃんよぉ」

ホビット「外に作ってあるんだ。お風呂はとても大事なものだからね」

ホビット「体に纏わりついた病の兆候を洗い流せる上に、体もほぐせる」

ホビット「体温が上がって睡眠の助けにもなるし、気持ちがいい。良い事しかないんだ」

イシス魔法使い「その通りですねっ!」

ポルトガ勇者「イシス魔法使いの姉ちゃんテンションがおかしいな」

イシス僧侶「この人お風呂大好き人間だからね……」

勇者「水は昼の間に運んで水釜の中に入れおいたので、後は火を焚いて水を温めて、風呂の木桶に」

スタスタ

スー勇者「もう準備できたです!」

勇者「スーちゃん」

イシス僧侶(良妻かよ)

スー勇者「それじゃ、ご主人様」

勇者「ん?」

スー勇者「バンザイするです!」

勇者「えっ」

スー勇者「脱ぐの、お手伝いするです!」

「「「えっ」」」

ガシッ

スー勇者「それじゃ脱がせるですー」

勇者「わー!!!ちょっとタンマタンマって!!!」

スー勇者「え?あ、すみません!皆さんの前だったでした!」

勇者「いやそれもだけど、自分一人でやるって!!!」

スー勇者「だめです!だってまだ訓練のお疲れで、ふらふらしてるです!!」

イシス僧侶「やはり幼な妻……そしてロリコン……」

勇者「何を言ってやがる!!やめて下さい言いがかりです!!」

イシス勇者「ス、スー勇者ちゃん。勇者くんは男なんだからあまりそういうのは」



スー勇者「でも、まだ一回しか、一緒に入った事ないです」

スー勇者「また一緒にお風呂したいです」



一同「「「  」」」

勇者「ン―――――――スーちゃんン―――――――――ッッ」
91 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/07/07(木) 02:57:19.47 ID:5IBcjZYP0
ポルトガ勇者「勇者……お前」

勇者「違うの……あの時は、本当に、体動かなくて……意識も朦朧としてて……」

イシス勇者「勇者くん」

勇者「はい」

イシス勇者「何やってんだきみ」

勇者「怖ぇ」

ポルトガ勇者(なんでこいつ怒ってんだ)

スー勇者「でもでも、本当にご主人様ふらふらです!」

スー勇者「誰かが入れてあげないといけないです!」

勇者「だったら明日の朝入るってばぁ!本当に大丈夫だよ!」

イシス魔法使い「あら……だったら」

スル…


イシス魔法使い「私が、ご一緒する……?」


勇者「ザオッ!!?」

イシス勇者「な、何言ってんだ――――!!!!!!!」

イシス魔法使い「だって、確かに勇者くんかわいそうだもの」

イシス魔法使い「私もお風呂お借りしたいし……ついでに……」

スッ…


イシス魔法使い「……――ねっ……?」フゥッ

勇者「ほ、はおぉぉっ……!!!!!」


イシス僧侶(うわあ、イシス魔法使い、イシス勇者様をからかう気マンマンだぁ)

イシス僧侶(私も乗ろう)

スッ

イシス僧侶「でもぉ……勇者くんがいいなら、私も背中」

サワッ…

イシス僧侶「ながして……あげよっか……?」

勇者「な、ナオォォッ……!!!?」ドクンドクンドクン

イシス僧侶(あ、かわいいな勇者くん)

イシス戦士「っき、貴様らっ!!不潔っ!不潔だ!!!」

イシス勇者「そそそそそそそそそそうだよ!!!何を言ってるんだ!!!」

イシス僧侶「イシス戦士も勇者くんの体、洗ってあげようよー」

イシス僧侶「……――すみずみまで……ね……?」

勇者「ンブゥッ!!!!」ブチャァッ

ポルトガ勇者(鼻血が)

イシス戦士「〜〜っ……!!!!」

イシス戦士「…………っ」

スッ

イシス戦士「…………お前には、か、借りが、あるしな……」

イシス戦士「あまり……見ないで、くれるなら」

勇者「ンブブグゥ!!!!!」ブチャチャァ!!!

ポルトガ勇者(コイツよくちょっと前まで女所帯の中で旅できてたな)
92 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/07/07(木) 02:58:56.84 ID:5IBcjZYP0
イシス勇者「だ……っ」


イシス勇者「だめ―――――っ!!!」


ドンッ!

イシス魔法使い「きゃっ!?」

イシス僧侶「ぐえっ!?」

ギュッ!!

イシス勇者「ゆ、勇者くんは」

イシス勇者「勇者くんは僕と一緒に入るんだ!!!!!」


イシス魔法使い・イシス僧侶「「何言ってんだ―――――――――!!!!」」


イシス僧侶「だめに決まってるっしょ!!混乱しすぎだって!」

イシス魔法使い「ちょっと、からかったのは謝るから、落ち着いて、ねっ?」

ポルトガ勇者「いやアンタらが一緒に入るより男のイシス勇者が入ったほうが普通な気がするんだけど」

ポルトガ勇者「……」

勇者(くっ、クソっ……!!!イシス勇者くん相変わらずいい匂いがする……!!!)ギリッ

イシス勇者「っ!」ギュー

ポルトガ勇者(なんで勇者の野郎イシス勇者に抱きつかれながらしかめっ面で鼻の下伸ばしてやがんだホモかこいつマジで)


スー勇者「わたしがお供するです!」


イシス勇者「僕が一緒に入る!!」


イシス戦士「いやここは私がっ!」


イシス僧侶・イシス魔法使い「「なんでアンタが張り合ってんだ!!」」

ワーワー!!

ホビット「あははは、勇者はなかなかモテるね。オルテガの昔を見ているようだよ」

ポルトガ勇者「一人男混じってるんすけどね」

ホビット「ん?ああ……うん。そうだね。しかし賑やかで良い事だ」

ポルトガ勇者「……」

<ギャーギャー

ポルトガ勇者「……はあ」

スタスタ

ガシッ

勇者「ふぇっ?」


ポルトガ勇者「おらっ、勇者。俺と一緒に風呂入んぞ」


「「「えっ」」」


ポルトガ勇者「俺は男だし一緒に入るのが手っ取り早えだろ?ほら、掴まれ」

勇者「…………うん!!!!!」

ガシィッ!!!!

勇者「よろしくっ!!!!!」

ポルトガ勇者(なんでこんな返事が力強ぇんだよホモじゃねえよなコイツマジで)
93 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/07/07(木) 02:59:48.59 ID:5IBcjZYP0
ポルトガ勇者「っつう事で、男は男で入ってくるぜ」

イシス魔法使い「まあ、普通そうよね。お願いするわ」

イシス戦士「……そ、そうだな」

イシス僧侶「なんでテンション低くなったんイシス戦士」

ポルトガ勇者「つうワケだが、イシス勇者」

イシス勇者「えっ?」


ポルトガ勇者「お前も来いよ」


イシス勇者「…………ンッ」

ポルトガ勇者「勇者と一緒に風呂入りたかったんだろ?男同士たまには付き合え」

勇者「そうだね!イシス勇者くんももしよかったら」

イシス勇者「えっ!?いや、あのその」

イシス勇者(しまった、勢いであんな事言ってしまったけど)

イシス僧侶「あ、あのっ!やっぱりイシス勇者様は私達が一緒に入らないと」

ポルトガ勇者「ああ?何言ってやがんだよ。男嫌いつっても風呂くらいは一緒に入れんだろが」

イシス魔法使い(あ……ちょっとまずいわねコレ)

イシス戦士(どうする……!?)

イシス勇者「いや、えっと……僕は」

ポンッ

イシス勇者「え?」


ホビット「ちょっと、イシス勇者君には頼みごとがあるんだ」

ホビット「君たちだけで入っていなさい」


勇者「先生」

ポルトガ勇者「頼みごと?」

ホビット「ああ。ちょっとイシスの事で聞きたい事があってね」

ホビット「ちょっと、来てくれるかい?イシス勇者くん」

イシス勇者「は、はい!」

スタスタ

ポルトガ勇者「ま、いいか。よし行くぞ勇者」

勇者「うん……あいててててて!!」

スー勇者「ご主人様、お気をつけてです……」


イシス僧侶(た、助かった……)

イシス魔法使い(変にからかうものじゃないわね……)

イシス戦士(風呂くらいなら、その……良かったのだがな……)
94 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/07/07(木) 03:00:57.73 ID:5IBcjZYP0

――ホビットの祠の外・森――


スタスタ

イシス勇者「あの、お話というのは……?こんな森の中でする必要が」

ザッ

ホビット「……ま、ここらでいいかな。連れ出してごめんよ」

イシス勇者「い、いえ」

イシス勇者(逆に凄く助かりました)

ホビット「あのままいくと君が女の子だとバレてしまうからね」

イシス勇者「あはは……はい」





イシス勇者「――――――――え」





ホビット「ん?」

イシス勇者「なっ、なにを仰って」

ホビット「ああ、わしには隠さなくて大丈夫だよ」

ホビット「……どれ、顔をよく見せてくれるかい?」

スタスタ

スッ


イシス勇者「……」


ホビット「……ああ」

ホビット「目が、君の父さんに……――サイモンに、そっくりだ」


イシス勇者「…………御存知、だったんですか」


スッ

ホビット「……一目見た瞬間に分かったよ」

ホビット「オルテガがサイモンの娘をイシス王に預けたと言っていたしね」

イシス勇者「……」

ホビット「……無事で良かった。本当に」

ホビット「イシス王には……イシスの人々には、感謝しなくてはいけないね」

イシス勇者「…………――はい」

ホビット「と、まあそれは一旦置くとしよう」

イシス勇者「え?」

ホビット「言ったろう?イシスの事で聞きたい事があると」

イシス勇者「あ、はいっ、なんでもお聞きください!」

ホビット「では……ええと、ね」

ホビット「イシスに、ある人物が住んで居ると思うんだ」

イシス勇者「え?」

イシス勇者(ある人物……?)
95 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/07/07(木) 03:01:45.11 ID:5IBcjZYP0
――――――――――――――



――イシス・とある広場――



ガヤガヤ…


「……」


女の子「……ねーねー」

「なんですかな?お嬢さん」

女の子「なにをしてるの?」

「夜を待っているんだよお嬢さん」

女の子「よるを?でもまだあさだよ?」


「そうですな。だからこそ夜が待ち遠しい」

「このような朝など消えてしまって、夜が来ないかなぁ……と思案に耽っているのだよ」


女の子「……?」



ザッザッザッ


「……」


女の子「あー、へいたいさんだ」


「お嬢さん。おじさんはこの兵隊さんとお話があるんだ」

「さようなら」


女の子「うん!さよならっ」

タッタッタ


「……さて、何の用です?」



――――――――――――――



ホビット「特別騎士――……勇者が国連で制定された際の、最初の四人」


ホビット「この四人は、伝説の勇者としても語り継がれているから知っているだろう?」




ホビット「“明星”夜明けのオルテガ」




ホビット「“月光卿”瞬きのサイモン」




ホビット「“東方の魔女”屠リベのヒミコ」




ホビット「……――そして」
96 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/07/07(木) 03:02:59.09 ID:5IBcjZYP0




ザッ



騎士団長「……初にお目にかかります」


騎士団長「私は国連の者です」


騎士団長「貴方様に、お願いがあって参りました」






――――――――――――――







ホビット「……――“皇帝”糾えるソクラス」







――――――――――――――





ソクラス「……ああ、良かった」


スクッ



ソクラス「やっと、退屈な“朝”が終わりそうだ」

97 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/07/07(木) 03:03:28.13 ID:5IBcjZYP0
今日はおしまいです
98 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/07/07(木) 03:46:58.77 ID:rAReDLN50
更新乙です!
最近は短いスパンで交番されて嬉しいです
99 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/07/07(木) 03:58:57.91 ID:FxfzgYaw0
乙でございます
100 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/07/07(木) 06:48:34.91 ID:oT1ChlN5o
他所でハーレムしてんのバレたら死ぬな
101 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/07/07(木) 11:11:42.54 ID:LarX8tsv0
おつ
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