うしおとセイバー

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619 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/11/13(月) 03:48:42.10 ID:Qz7TCnNO0


少女「えっ……!?」

切嗣「な……!?」




ガッポォ、ガッポォ


少年「…………」




少女「あっ……あっ……」


切嗣「お、おい!! 君、駄目だ!! この沼は危険なんだ!!」

切嗣「何をしてるんだい!! 戻ってくるんだ!!」




少年「…………」


ポフ



620 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/11/13(月) 03:58:02.03 ID:Qz7TCnNO0


ガッポォ、ガッポォ


少年「ん!!」


少女「あっ、ありが」


切嗣「……待ってくれ、どうしてだい」

少年「ん?」

切嗣「どうして君は帽子を取りに行ったんだ」

切嗣「あれは救うことが出来ない少数、助けられないんだよ」

少年「……?」

切嗣「駄目なんだ……諦めるしかないんだよ……」


ビュゥゥウ


少年「あっ……!?」


少女「また帽子がっ……!!」



621 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/11/13(月) 04:04:59.30 ID:Qz7TCnNO0




切嗣「くっ……!!」




バシャ、バシャ、バシャ、バシャ


バシャァァァァ




切嗣「…………」




切嗣「……やった」




切嗣「間に合った!! 帽子に泥はついてない!!」



622 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/11/13(月) 04:19:50.10 ID:Qz7TCnNO0


少女「わ、私……」

切嗣「今日は風が強い日だ。もう飛ばされないようにね」

少女「はいっ」


少年「へへ」


切嗣「君は……。いや、教えてくれないかい」

少年「ん?」

切嗣「その格好は結婚式かなにかの服だ、しかも下ろし立ての」

切嗣「きっと君は、今から親御さんに酷く怒られるだろう」

少年「うっ……」

切嗣「計算しなかったのかい?」


少年「だって……。大事なんだろ、それ?」


少女「う、うん」


少年「それならさ」




切嗣「たった、それだけの理由で…………泥だらけに…………?」



623 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/11/13(月) 04:36:51.73 ID:Qz7TCnNO0




少年「…………!!」




切嗣「今、なんて……」


少年「でもオジサン、変なこと聞くんだね」


切嗣「え?」




少年「オジサンだって、泥だらけじゃーないか」




切嗣「えっ…………あ…………」




グイグイ


少女「あの……てんびんのはなし分からなくてごめんなさい……」


少女「でも、帽子を取ってくれて……」




少女「ありがとう!!」




切嗣「……っ……」






ああ……




僕は……




僕は、本当は…………





624 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/11/13(月) 04:51:06.25 ID:Qz7TCnNO0




斗和子「そろそろ終わりかしらねぇ?」


切嗣「………………ぃ……」


斗和子「な、なにィ……?」


切嗣「……て…………」


斗和子「あっ……ありえない……御方の極大の呪いを受けて……」


斗和子「人間が立ち上がれるはずがない……!!」




斗和子「聖杯の泥を浴びて……!!!!」




切嗣「…………だ……い……」






切嗣「泥なんて、なんだい……!!」





625 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/11/13(月) 14:09:18.49 ID:jxQVKFeYO
乙ー
626 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/13(月) 15:52:48.76 ID:Nviu0g8CO
627 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/11/13(月) 19:26:03.25 ID:W4YHcz7FO
泣いた
628 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/11/13(月) 20:12:02.83 ID:jxQVKFeYO
下げ
629 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/11/22(水) 00:14:28.76 ID:Nw0QlOgW0


斗和子「魔術師ごときがァ……!!」


切嗣「…………」

カチャ


斗和子「ふ……ふふふ……」


斗和子「いいわよ、何度でも撃ちなさいな」

斗和子「私も何度だって溺れさせてあげる……」


ドゥゥン!!


斗和子「ッ……!?」


斗和子「こ、これは…………!?」


切嗣「貴様の能力は、もう分かってる」



630 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/11/22(水) 00:33:01.69 ID:Nw0QlOgW0


切嗣「その弾は反射出来ないだろう?」


切嗣「僕の起源弾と紫暮の念を合わせた、特製弾さ」


斗和子「た、たかが特殊な銃弾で……御方の分身である私がァア……!!」




ドゥゥゥゥン!!




斗和子「きええええええええ!!!!!!」




切嗣「いつか貴様に会ったときにお見舞いするために準備していたんだ」


切嗣「遠慮せず味わうといい」



631 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/11/22(水) 00:52:12.02 ID:Nw0QlOgW0


斗和子「そう……そうよねぇ……」

斗和子「準備していたのは貴方も一緒なのね、セイバーのマスター」

斗和子「でも貴方が何をしても勝者は私よ」


斗和子「あの聖杯……御方の泥は、貴方には止められない」


斗和子「ふふ、この周辺は灼熱地獄になり、人間は全て悶え死ぬことになる……」


切嗣「僕には止められない、か……。ああ斗和子、確かにその通りだ」

切嗣「でも、それならば僕以外が止めてくれればいいさ」


斗和子「なに……。おのれ、以外……?」


切嗣「まだ気付かないのかい。この会館の周りに人の気配を感じないか?」


斗和子「な、なんだ、あれは……。大勢の人間が会館を囲っている……」


斗和子「まさか……光覇明宗の法力僧!?」


切嗣「貴様の言葉だ。僕はこの聖杯戦争に準備をしてきたと」



632 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/11/22(水) 01:08:03.67 ID:Nw0QlOgW0


斗和子「おのれ…………おのれええ…………!!!!」

斗和子「魔術師でありながら、本当に法力僧と繋がっていたのかァァ!!!!」


切嗣「これは驚かされるな斗和子。貴様は魔術師の事情に詳しいらしい」

切嗣「でもね、およそ僕ぐらい魔術師から程遠いところにいる魔術師もいないんだよ」


斗和子「きききき!! 謀ったなセイバーのマスター!!」


切嗣「炎の、尾……!?」


斗和子「法力僧のちゃちな結界など内側から破壊してくれるわ!!!!」


ドゥゥゥゥン!!




斗和子「かっ…………まだ……その、弾が…………」




切嗣「そんなことはやらせはしない。戦友との約束があるからね」


切嗣「斗和子……。貴様は聖杯ともども、ここで燃え尽きるんだ」



633 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/11/22(水) 01:25:10.58 ID:Nw0QlOgW0


紫暮「なんなのだ……あの炎の渦は……!!」


紫暮(切嗣、お前は聖杯を破壊したらすぐに脱出するのではなかったのか……!?)

紫暮(まさか一人で白面の使いと……。お前はこうなると知っていたから私を外に……)


紫暮「くっ……。通せ!! 通してくれ!!」


法力僧「し、紫暮様!? いけません!!」

法力僧「結界内には誰も通すなとお達しが出ております!!」


紫暮「私はそんな命は出していない……!!」




御角「私が出しました、紫暮」




紫暮「お…………お役目様…………」



634 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/11/22(水) 23:43:06.95 ID:gZAdzuNfO
乙ー
635 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/11/23(木) 00:43:15.77 ID:z6USdcTE0


和羅「お役目様、やはり本山で待たれたほうがよかったのでは……」

御角「いいえ和羅。白面の使いが現れたというのなら私は出向かねばなりません」

御角「白面を三百年封じた二代目お役目、日崎御角として」

和羅「しかし……いえ、分かりました……」


紫暮「申し上げます、お役目様」

紫暮「あの炎上する会館のなかに逃げ遅れた者がおります」

紫暮「ご命令いただければ、今すぐに私が救出に」

紫暮「ですので、結界を……」


御角「紫暮、それは出来ません」


紫暮「で、ですが……!!」


四師僧「紫暮っ!! 貴様ァ!!」

四師僧「お役目様に意見する気かァ!!」

636 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/11/23(木) 01:02:35.56 ID:z6USdcTE0


御角「下がりなさい」

四師僧「うっ……」

四師僧「は、はい……」


御角「紫暮、貴方にこそ聞こえているはずですよ」

御角「あの炎のなかで戦う彼の者の叫びのような念……」


紫暮「そ、それは……」


御角「自分に構わず結界を張り続けろと、聖杯の泥を一滴とも外に出すなと」

御角「この念が聞こえないとは言わせませんよ」


紫暮「お役目様……」


御角「紫暮、彼の者の名前を教えてはもらえませんか?」


紫暮「はっ……。名前は、衛宮切嗣……」


紫暮「魔術師殺しの異名を持つ魔術師であり……私の……戦友です……」

637 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/11/23(木) 01:27:25.43 ID:z6USdcTE0


御角「衛宮、切嗣……」

御角「その名、このお役目がしかと覚え込みました」


紫暮「お、お役目様が……」


御角「我が光覇明宗の長い歴史のなかでも、今日は特別な日になります」

御角「おそらく魔術協会は、聖杯戦争に白面の使いが紛れ込むという失態を隠蔽するでしょう」

御角「ですが、我が光覇明宗だけは語り継ぐのです」

御角「いつか獣の槍を抜くといわれる伝承者……その者が現れる前に……」


御角「白面からこの世界を護った彼の者の名を」


四師僧「い、いけませんぞ!! お役目様……!!」

四師僧「仏門光覇明宗に西洋魔道の輩の名を残すなどと……!!」


和羅「……お役目様、確かに受け賜りました」


御角「頼みましたよ、和羅」


四師僧「そ、僧正様……」


和羅「………………」



638 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/11/23(木) 01:49:12.83 ID:z6USdcTE0




紫暮(切嗣……。お前はなったのだな…………)


紫暮(世界を救う……正義の味方に…………)




和羅「聞けえい!!!! 光覇明宗の僧たちよ!!!!」

和羅「あの燃え盛る泥を外に出すでないぞ!!」


和羅「念を振り絞れええい!!!!」


法力僧「はっーー!!」

法力僧「はっーー!!」


紫暮「お役目様。私も結界の列に加わりたいと思います」

御角「そうですね。紫暮、頼みます」


御角(御髪が……。また貴方には心憂い戦いをさせてしまいましたね……)


紫暮「よし……!!」


紫暮(切嗣、お前がそこで戦うというのなら……私もここで戦うぞ……!!)


紫暮(場所は違えども最後まで、お前と、ともに…………!!!!)



639 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/23(木) 12:09:54.38 ID:NPPLF39hO
お役目様かっこいい
640 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/11/24(金) 01:28:44.79 ID:fvVmTm7F0


切嗣「はぁ……はぁ……」

切嗣「どうした斗和子、もう暴れ回るのは終わりかい?」


斗和子「ふ……ふふ……そうねぇ……」

斗和子「これだけ撃ち込まれたら……さすがの私も動けないわ……」

斗和子「喜びなさい。聖杯戦争の勝者は貴方よ、セイバーのマスター」


切嗣「勝者だと? そんなものは存在しない……」


斗和子「それならやはり私の勝ちかしらねえ。私は得るものがあったのだから」


切嗣「な、に……?」


斗和子「西洋魔道……ホムンクルス……」


斗和子「ふふ、この聖杯戦争で手に入れた知識は使えそうだわ」


切嗣「き、貴様ァ……!!」

641 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/11/24(金) 01:39:49.21 ID:fvVmTm7F0


斗和子「まさか魔術師……」


斗和子「私の計画が、この聖杯戦争の一つだけなはず……」




斗和子「ないわよねぇ……?」


ニヤァア




切嗣「斗和子っ……!!」


斗和子「ふ、ふふふ…………ほほほほ…………」


切嗣「ホムンクルスだとォ……。やめろ、イリヤにはっ……!!」


斗和子「かか……」


切嗣「貴様は何を企んでいる!!!! 言えっ!!!!」




斗和子「かかかか、かかかかかか!!!!」




切嗣「斗和子ォ!!!!」



642 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/11/24(金) 01:59:33.14 ID:fvVmTm7F0




切嗣「……っ…………」


切嗣(炎と煙で、僕は意識を失って……)


切嗣(斗和子は……。そうか、完全に燃え尽きたか……)


切嗣(いや、ヤツは白面の分身……。ここで消滅しても本体がいる限り……)

切嗣(だが妖怪の復活にはそれなりの時間がいるはず……)


切嗣「ぐっ……う……」


切嗣(身体に魔力を通して、無理やり動かそうとしても駄目か……)

切嗣(あんな化け物を相手にしたんだ、当然といえば当然……)


切嗣(だけど、紫暮が上手くやってくれたみたいで……よかった…………)




切嗣(ああ……本当に、安心した……よ…………)



643 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/11/24(金) 02:17:20.77 ID:fvVmTm7F0




紫暮『……なぁ切嗣、もしもの話だ』


切嗣『なんだい急に、紫暮』



644 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/11/24(金) 02:32:41.62 ID:fvVmTm7F0


紫暮『なーに、ただの暇つぶしだ』

紫暮『いつの日か現れるといわれる獣の槍の伝承者、お前はどんな人間だと思う?』


切嗣『伝説の獣の槍、その伝承者か……。そうだね……』


切嗣『あの白面を滅ぼす力があるといわれる槍の使用者だ。屈強な身体の人間だろうな』

切嗣『いや待て……。おそらく、それだけではないはずだ』

切嗣『槍を補助する近代兵器の技術……いや、それよりも妖怪に対しての知識が……』

切嗣『そうだ。きっと僕よりも爆薬に』


紫暮『ふふっ、はははは!!』


切嗣『……紫暮、これでも僕は真面目に』


紫暮『すまんすまん、あまりにもお前らしい答えだからついな』




紫暮『だが、本当にどんな人間なのだろうなァ、伝承者とは』




切嗣『獣の槍を抜き、白面の者を倒す人間か……』



645 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/11/24(金) 02:43:53.67 ID:fvVmTm7F0




そうか……


今なら分かる……




獣の槍の伝承者……


白面の者を倒す人間というのは……




きっと…………


あの少年のような…………






「……ああ。ただいま、アイリ」




「その、一つ聞きたいことがあったんだ」




「君は、僕といて……幸せだったかい?」




「そうか……」






「ありがとう」





646 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/24(金) 16:44:37.41 ID:O1jlozw1O

幸せに逝けるのが藤田作品
647 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/24(金) 22:55:31.72 ID:IHziz2RGo
藤田先生は好きなキャラを最高にカッコよく死なせるからな
648 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/11/25(土) 01:45:07.94 ID:GiaGRL0h0






法力僧「はい、そうです。二名発見しました」



法力僧「おいお前、何か着るものを」


法力僧「は、はいっ」





649 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/11/25(土) 01:53:20.91 ID:GiaGRL0h0




言峰「…………ここは?」




ギル「やっとお目覚めか、綺礼よ」

言峰「ギルガメッシュ……。これは、どうなっている?」

ギル「どうもこうもない。あの薄汚れた聖杯が我たちを結界の外に吐き出したのだ」

言峰「結界……?」

ギル「見るほうが早かろう」


言峰「なんだ、あれは……」


言峰「馬鹿なっ、あんな建物一つ炎上しただけで終わるはずがない!!」

言峰「聖杯は……白面の泥は……この周辺全てを焼き尽くすほどの……!!」


ギル「セイバーのマスター、あれが何か仕組んでいたようだな」


言峰「衛宮切嗣……。ヤツが……!!」

650 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/11/25(土) 02:09:01.28 ID:GiaGRL0h0


言峰「私はヤツに撃たれた……何故……。心臓の鼓動が、ない……」


ギル「あの泥に飲み込まれ、お前は生き返り、我は受肉した」


言峰「そんなことが……有り得るというのか……?」

言峰「だが確かに、私の身体から溢れるこの黒い力は、聖杯の……」


ギル「あの女がセイバーのマスターにやられる寸前で計画を変更したとも考えられる」


言峰「斗和子が……。そうだ、それしか説明が……」


ギル「妖の分際でしたたかな女だったからな。しかし、もしかしたら……」

ギル「聖杯のなかにある確かな意思が、同属のお前をそうさせたのかもしれないな」


言峰「白面が……私を生き返らせ、炎のなかから逃がした……?」


ギル「クックックッ、ヤツはまだお前に何かをやらせたいようだぞ、綺礼よ」


言峰「フフ……。そうか……白面が、私に……!!」

651 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/11/25(土) 02:20:56.04 ID:GiaGRL0h0


ギル「我もヤツには興味が湧いた」

ギル「綺礼よ。白面を海底から引き上げ、我の前につれて来い」


言峰「いいだろうギルガメッシュ。契約は継続だ」


言峰「白面が自力で起き上がるか、それとも次の聖杯戦争が先かは分からぬが……」


言峰「必ずや私は、白面を世界に解き放とう」




言峰「それこそが、私が産まれながらに持つ疑問の……」




言峰「答えなのだから……!!」



652 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/11/25(土) 02:47:10.63 ID:GiaGRL0h0






・大橋歩道橋・出口






セイバー(……キリツグに何があったのか、私に知るすべはない)


セイバー(だが、これだけは言える)


セイバー(やり方は違えど、確かに貴方と私が目指した場所は同じだったと)




セイバー(ならば、迷うことなどない)




うしお「どうしたんだセイバー? 急に立ち止まって」


セイバー「ウシオ、先ほどの話の続きになるのですが」


セイバー「私は……白面から世界を救おうと聖杯を破壊したワケではありません」


うしお「そう、なのかい……?」


セイバー「はい。ですが、もしこれから同じことが起きようとしているのなら……」


セイバー「今度は私の意思で、聖杯を破壊します」


うしお「ああ……!!」


うしお「セイバーならそう言ってくれると思ってたぜ!!」


セイバー「はい、マスター」



653 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/11/25(土) 05:21:00.34 ID:GEG9kHLeO
乙ー
654 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/12/19(火) 23:19:32.08 ID:Ru2+CkF0o
655 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/12/21(木) 23:36:44.48 ID:U3ImgoxB0


【第二十三話 白面と聖杯『この世全ての悪』 】

656 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/12/22(金) 00:07:09.34 ID:5bO41AvZ0


・教会中庭


ギル「クックックッ」


ランサー「まだ、まだァ……」

ジャラ……


ギル「鎖に繋がれ狗らしさが増したな、ランサーよ」

ギル「退屈よなァ。我が手を下すまでもなかったわ」


ランサー「どこに行く……。待ちやがれェ……!!」


ギル「ランサークラスといえど、マスターを失ったあとに宝具を連発すれば魔力は尽きる」

ギル「猟犬よ。そのまま身動き出来ずに、己の無力さを噛み締めながら逝くがいい」


ランサー「待てって……言ってんだろォ……!!」


ギル「ククッ……フフフ……ハーッハッハッハッ!!!!」

657 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/12/22(金) 00:29:07.83 ID:5bO41AvZ0


・蒼月家付近


真由子「それで凛先輩が録画のやり方を教えてくれって」

麻子「え〜? あの凛先輩が〜?」


言峰「これはこれは……。探す手間が省けたか」


麻子「あれ? 言峰さん?」


言峰「このような場所で会うのは珍しい。米次店主は壮健かな?」

麻子「あはは……。また言峰さん用に新しい激辛麻婆を試作してるみたいです……」

言峰「それは楽しみだ。是非伺わせてもらうとしよう」


真由子「麻子、その……」


麻子「あぁ真由子ごめん。こちらは言峰さん、ウチの常連なの」


言峰「そう警戒することはない、井上真由子」


真由子「どうして私の名前……」

658 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/12/22(金) 00:41:40.65 ID:5bO41AvZ0


言峰「私はこの土地を任された教会の神父だよ」

言峰「いわば光覇明宗の蒼月紫暮と同じ立場の人間だと思ってくれるといい」


真由子「うしおくんの、おじさんと同じ……」


言峰「無論、私も君のお役目の力は知っている」

言峰「魔術協会……いや、世界中の組織が狙っていることも」


真由子「それは……」


言峰「君をホルマリン漬けの標本にしようとする連中がいるなど許し難い」

言峰「しかし井上真由子、安心していい」

言峰「この国の光覇明宗はもちろんのこと、私もそんなことはさせはしない」


真由子「は、はい……。ありがとう、ございます……」


言峰「フフ、分かってもらえたようで嬉しいよ」

659 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/12/22(金) 00:54:40.78 ID:5bO41AvZ0


言峰「ところで、君たちはどこに行こうとしていたのかな?」


麻子「それはうし……同級生に会いに芙玄院に」


言峰「なるほど。実は私も芙玄院には行くつもりだったのだよ」


麻子「言峰さんも? 教会のお仕事で?」


言峰「ああ、そんなところだ」

言峰「道すがら君たちに同行することになるかな」


真由子「それは……そうですね……」


言峰「では、行こうか」

660 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/12/22(金) 01:15:01.46 ID:5bO41AvZ0


麻子「そういえば言峰さんっていったら前にお父さんが変なこと言ってたわ」

言峰「ん……?」

麻子「商店街の催し物で空手をやったじゃないですか?」

言峰「ああ、米次店主が主催したものだ」

言峰「参加者が少なく、私も無理やり出場させられて困りものだった」

真由子「そんなことが……」

麻子「それがお父さん、言峰さんはもっと強いんじゃないのかって言ってましたよ?」


言峰「フ……。それは米次店主の買いかぶりだ」

言峰「私も昔はそれなりだったんだが、衰えていた」


麻子「やっぱり言峰さんなにかやってたのね」

麻子「でもお父さん残念がってたなァ」

麻子「言峰さんは得体の知れない強さがあるから、きっと強いって」


言峰「得体の知れない、か……。フフフ……」

661 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/12/22(金) 01:37:34.17 ID:5bO41AvZ0


言峰「さて、芙玄院はすぐそこだ。人通りも消えた」

言峰「頃合いだ」


真由子「え……?」

ガシィッ


真由子「な……んで……」

言峰「結界を張るのが一瞬遅れたな、井上真由子」


麻子「言、峰さん……? なに、してるの……」


言峰「感謝しよう中村麻子」

言峰「お前が警戒を解いてくれなかったら、こうも簡単にはいかなかった」


麻子「放して……。真由子を放して……!!」

662 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/12/22(金) 02:41:54.01 ID:5bO41AvZ0


麻子「はぁ……はぁ……」


言峰「悪くない蹴りだ」

言峰「娘が空手をやめてしまったと相談されたが、なるほど……」

言峰「才能はある。そのまま鍛えていれば凛に及ばずとも、それなりには」


麻子「きぃえええ!!」

ビシィッ


言峰「無駄だ」

麻子「そ、そんな……。う、あ……」

真由子「あ……麻子ぉ……」

言峰「衰えたといってもお前のような小娘に負けることはない」


麻子「言、峰……さん……どう、して……」


言峰「フフ、いい顔だ中村麻子」

言峰「その顔が見れるなら地域のくだらん交流というのも時間の無駄ではなかったな」


麻子「うぅ……あ……ぁ……」

663 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/12/22(金) 03:11:59.62 ID:5bO41AvZ0


麻子「…………」

真由子「…………」


言峰「なに、殺しはしない」


言峰「お役目の力は最も厄介だが……」


言峰「同様に、最も魅力あるものなのだから」




言峰「フフフ……!!」



664 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/12/23(土) 00:48:36.77 ID:nGJHk2hU0


・蒼月家居間


凛「桜、イズナ見なかった?」

桜「イズナさんなら先ほど、妙な臭いがするから仲間を呼んで来ると言って出て行きましたけど」

凛「なにそれ……。ま、妖怪には妖怪の事情があるか」


凛「書庫にいたはずのセイバーは急に消える。とらとは連絡つかない。今日はどうなってるのよ」

凛「うしおくんも勝手に出歩いてるみたいだし、これは帰ったらお仕置きね、お仕置き」

665 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/12/23(土) 01:04:04.36 ID:nGJHk2hU0


凛「あっキリオくん、いいところに……」

キリオ「え?」

凛「ちょーっと聞きたいことがあるのよねぇ」

キリオ「うん、お姉ちゃん」

凛「蔵を整理してたら綺麗な石が出てきたじゃない?」

キリオ「綺麗な石……。お祓いを頼まれてる宝石のことかな……」

凛「そうっ、それ!!」

キリオ「う、うん」

凛「それって光覇明宗のお祓いが済んだら、ど、どうなるのかしら?」


キリオ「詳しいことは紫暮様に聞かないと分からないけど……」

キリオ「多分持ち主に返したり、処分したりしてると」


凛「しょ、処分!?」

666 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/12/23(土) 01:35:54.59 ID:nGJHk2hU0


凛「…………」


凛「キリオくん、実は私は魔術でお祓いが」

桜「姉さんっ!!」

凛「さ、桜!? 聞いてたの!?」

桜「いくら金銭的に厳しくなったとしても、お祓い品を宝石魔術に使うなんて!!」

凛「冗談よ冗談っ!!」

凛「キリオくんも今のは忘れて、ね?」

キリオ「お姉ちゃん、僕も分かるよ……」

凛「え?」

キリオ「本当は僕もスーパーカーのプラモデルが欲しかったんだ……」

凛「キ、キリオくん……?」


キリオ「お金って、大事だよね……」


凛「よく分からないけどキリオくんも苦労してるのね……」

桜「姉さんのとは少し違うような感じですが……」

667 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/12/23(土) 01:48:19.53 ID:nGJHk2hU0


凛「……っ……!?」

桜「姉さん……?」


イリヤ「リン」

凛「分かってる。さてと、これはどういうことかしらねぇ」

セラ「すでに正門は越えられています」

リズ「迎撃、する」


凛「なーんでとらもセイバーもいないときに限ってこれなのよ……!!」


凛「うしおくん、早く帰ってきてくれないと本当に怒るわよっ」



668 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/12/23(土) 05:39:31.30 ID:0LZZ2yOWO
乙ー
669 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/12/27(水) 00:22:09.28 ID:/XXi9kGY0


・蒼月家玄関前


言峰「どうした凛。そのように身構えて」


凛「……綺礼…………」


麻子「…………」
真由子「…………」


凛(後ろの二人に目立った外傷はない。おそらく魔術で操られてるだけ……)


凛「それで、説明ぐらいしてくれるんでしょうね?」

言峰「お前のことだ、大体の予想はしているのではないか」

凛「まぁね。でも監督役がゲームに参加するなんて、ルール違反なんてもんじゃない反則よ」

言峰「ルール違反か……」

言峰「フフ……。凛、お前は未だ聖杯戦争をしているようだな」

凛「どう、いう意味よ……」

言峰「聖杯戦争とは聖杯を降臨する儀式のことだ」

言峰「ならば、この聖杯戦争は始めから聖杯戦争ではないのだよ」

凛「なにワケの分かんないことを……。とにかく二人を解放してもらうわよ」

言峰「出来ない相談だな、凛」

670 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/12/27(水) 01:06:54.69 ID:/XXi9kGY0


イリヤ「待ちなさい監督役」

凛「イリヤ……」


言峰「うむ、アインツベルンが用意した器か」


イリヤ「私が必要なんでしょ。だったら連れて行けばいいわ」

セラ「お嬢さまっ!!」

リズ「イリヤ、駄目」

イリヤ「ウシオやキリオには悪いけど、いつかこんな日が来るかもって覚悟はあったわ」

イリヤ「アサコとマユコをどう聖杯の器にする気だったかは知らないけど、私のほうが適任よ」

イリヤ「だから二人を解放しなさい」

凛「イリヤ、アンタ……」

イリヤ「勘違いしないでリン。二人を巻き込めばウシオが悲しむ、だからよ」

イリヤ「それに、アサコとマユコのお弁当は美味しかったから」


言峰「フフフ……!!」

言峰「勘違いをしているのはお前だ、アインツベルンの器よ」

671 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/12/27(水) 01:27:22.85 ID:/XXi9kGY0


言峰「私が必要としているのは聖杯を受け止める器ではない」

言峰「包み込む、皮だよ」


イリヤ「えっ……な、なにこれ……」

凛「この黒い靄……まとわり、ついてっ……!?」


言峰「なに拒むことはない。お前たちはそれを求めて戦っていたのだから」


リズ「魔力、吸われて」

セラ「こ、こんなこと……」


言峰「素晴らしいな、この力は」


??「くっ……」


言峰「どうした少年。出てこなくていいのか、では」

イリヤ「うっ……あ……」


キリオ「や、やめろっ!!」


言峰「引狭霧雄、いや、今は井上霧雄か」

言峰「その後ろ手の千宝輪、練っている念を解除してもらおうか」


キリオ「気付いて……」


言峰「フ、法力僧と戦うのはお前が初めてではない」

672 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/12/27(水) 01:47:56.98 ID:/XXi9kGY0


凛「綺礼……アンタねぇ……」


言峰「凛、お前がもう少し出来の悪い弟子ならばな」

言峰「まさか雷獣を召喚するとは予想外だった」


凛「アンタの予想なんか裏切り続けてやるわよ……」


言峰「それでこそだ凛。最後に何か言い残すことはあるか?」


凛「逝き場に迷えクソ神父っっ!!」


言峰「フフ、まさか親子二代に渡って引導を渡せるとはな」


凛「…………」


凛「……そう。父さんを殺したのは、アンタだったんだ」


言峰「当然だろう。恩師であったからな。騙まし討ちは容易かった」


凛「……っ……!!」


言峰「凛、お前は最期まで私を愉しませる」

言峰「真相を知った瞬間のお前の顔は格別だったぞ」

673 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/12/27(水) 01:58:20.10 ID:/XXi9kGY0


言峰「ん……?」




「凛姉ちゃーーん!!」

「リン!! どこですか!!」




言峰「……手を抜いたな、ギルガメッシュ」

言峰「まぁいい。儀式に必要なものは手に入っている」

言峰「雷獣のマスターを仕留めていないのは懸念事項だが……」

言峰「ギルガメッシュの言葉を借りるなら、これも沸き立たせる要素か」


凛「アンタ……いったい、何を考えて……」


言峰「言っただろう凛。これは聖杯戦争ではないと」

言峰「この儀式、いや、この戦争は……」


言峰「白面の者を降臨させる、白面戦争なのだから」


凛「……なに、を…………うぅ…………」

674 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/28(木) 17:51:50.48 ID:ri+ba3GKO
675 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/28(木) 22:45:44.49 ID:D1ShRCNYo
676 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/12/29(金) 01:15:15.03 ID:v+WYFzSi0


・蒼月家居間




凛「……ここは…………」




うしお「凛姉ちゃん、気がついたのかい!?」


凛「うしおくん……。ええ、なんとかね……」


凛「私はどのくらい気を失ってたの?」

セイバー「ほんの数分です。おそらく魔力を奪われたのではないかと」

凛「多分そうでしょうね。他のみんなは?」

うしお「イリヤたちも無事さ」

うしお「隠れてた桜姉ちゃんが今みんなを介抱してくれてる」

凛「桜、私が言ったとおり隠れててくれたのね。良かったわ」

677 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/12/29(金) 01:41:03.59 ID:v+WYFzSi0


とら「りん!! ここにおるのか!?」


凛「とらァ、アンタねぇ……!!」


とら「こりゃどうなってやがる……。何があった?」


凛「アンタがいないから大変なことに……!!」

うしお「ま、待ってくれ凛姉ちゃんっ。こっちも大変なことがあったんだ!!」

凛「え……?」

セイバー「この聖杯戦争は、初めから仕組まれていたものだったのかもしれません」

凛「仕組まれて……」

うしお「凛姉ちゃん。オレたちが見てきたこと、聞いたことを話すよ」

凛「ええ、お願い」


凛「それに……私も話すことがあるわ……」

678 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/12/29(金) 02:31:01.47 ID:v+WYFzSi0


凛「綺礼がギルガメッシュとランサーのマスター……」

凛「そして、白面の入った聖杯か……」


うしお「麻子と真由子が……」

とら「マユコ……ちっ……」


キリオ「ごめんうしお兄ちゃん。真由子姉ちゃんを守れなかった……」

うしお「なに言ってんだよキリオ。まだ終わりじゃねえさ」

とら「そのとおりよ。あの野郎をブッ飛ばしてマユコを取り戻す……!!」


とら「りん!! あのクソ野郎はどこにおる!?」

凛「……おそらく柳洞寺でしょうね」

セイバー「あの男は柳洞寺で聖杯を降臨すると?」

凛「キャスターが陣取った場所よ。聖杯の降臨場所として、あの場所以上はないもの」

うしお「柳洞寺に言峰神父や麻子たちが……」

とら「あの寺か。場所さえ分かればこっちのもんよォ」

679 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/12/29(金) 02:55:25.15 ID:v+WYFzSi0


凛「まだ私やキリオくんたちは動けないわ」

セイバー「リンたちは休んでいて下さい」

うしお「ああ、後は任せてくれよ!!」


凛「……うしおくん。これを持っていって」


うしお「これは……?」


凛「アゾット剣。その柄を魔術で伸ばして補強したの」

凛「ま、アゾットの槍ってところかしらね」


うしお「アゾットの槍……」


凛「アゾット剣は魔術師の世界ではよく使われるのよ」

凛「魔術の師匠が一人前になった弟子に贈ることが多いわ」


うしお「そうか、言峰神父は凛姉ちゃんの……」


凛「もちろん獣の槍みたいな能力はないから気をつけてね」


うしお「分かったよ凛姉ちゃん」


凛(でも、私の予想通りなら、きっと……)

680 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/12/29(金) 03:30:27.89 ID:v+WYFzSi0


とら「おいうしお!! なにしてやがる!!」

とら「ウダウダやってるヒマはねェだろうが!!」


うしお「おう!!」

うしお「よーし。とら、セイバー、行こう!!」


凛「とら、待って」


とら「ああ?」


凛「……アンタはランサーに刺されたのよ。魔力の補充がいるわ」

とら「わしにゃそんなもんいらねーよ」

セイバー「そうですね……。あのランサーの槍を受けて無事なはずがない」

うしお「とらはランサーを庇った後も、ギルガメッシュとも戦ったんだもんな……」


凛「うしおくんとセイバーは先に柳洞寺に行って待ってて」

凛「とらなら魔力を補充した後に、ひとっ飛びで追いつけるわ」


セイバー「分かりました。行きましょうウシオ!!」

うしお「ああ。とら、先に行って待ってるぜ!!」


とら「…………」

681 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/12/30(土) 00:26:07.88 ID:g3YUOLsr0


とら「おい。りん、おめえなに言って」


凛「私に隠してたわね。とら」


とら「……なにをだよ」


凛「さっきうしおくんは、ランサーと戦ったときに獣の槍を使ったって言ってたわ」

とら「それがどうしたってんでえ」

凛「なんで私からの魔力供給量が変わってないのよ?」


とら「そいつは……」


凛「確かに、宝具の発動や維持には私の魔力がいるのかもしれない」

凛「実際桜の体内に入ったときは、獣の槍を維持出来ずにイリヤたちに助けられたわ」

凛「でも獣の槍の、能力の魔力はいつ私から取ってるの?」


とら「…………」


凛「考えてみたら当たり前のことよ」

凛「私の思っている獣の槍の真の能力は、魔術、魔法、いや、奇跡と言っていいわ」

凛「そんなの私一人の魔力で供給出来るはずがないもの」


とら「……りん。なにが言いてえ」




凛「獣の槍は、魔力消費型じゃない」




凛「使用回数に制限のある宝具よ」



682 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/12/30(土) 00:45:30.15 ID:g3YUOLsr0


桜「そんなの、あるんですか……?」

イリヤ「別に珍しいものじゃないわ」

イリヤ「ちょっと違うけど私のバーサーカーの十二の試練だって回数のある宝具よ」


キリオ「獣の槍は、使用者の魂を喰らい力を貸す退魔の霊槍」

キリオ「そして槍に魂を全て喰われた者は、獣と化し元に戻ることはない」


リズ「その逸話を元に、宝具の獣の槍は出来た」

セラ「なるほど……。魂を奪われる回数、それが制限に……」


凛「とら……教えて」


凛「あと何回、宝具は使えるのよ?」




とら「…………」




凛「本当は前から限界だったんじゃないの?」



683 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/12/30(土) 01:05:23.27 ID:g3YUOLsr0


・蒼月家玄関前


うしお「槍か……」


セイバー「ウシオ? どうしたのです?」


うしお「あ、いや、前にイリヤが魔術で作ってくれた槍を思い出してさ」

うしお「あれもオレの部屋にあるんだ。持っていこうかと思ってよ」


セイバー「予備の得物ということですか?」


うしお「凛姉ちゃんから渡されたこの槍が壊れるなんて思ってない。でも……」


セイバー「……おそらく、これからの戦いがこの聖杯戦争の最後の戦いになるでしょう」

セイバー「戦場に万全の状態で挑みたい。その気負い、騎士として理解出来ます」


うしお「最後の戦い……。槍が、壊れ……」


うしお「すまねえセイバー!!」

うしお「やっぱりイリヤの槍を取ってくる!! 先に行っててくれっ!!」


セイバー「了解です。マスター」

684 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/12/30(土) 01:55:43.47 ID:g3YUOLsr0


凛「マスターとサーヴァントは魂で繋がっている」

凛「隠そうと思っても隠しきれるものじゃないわ」


とら「…………」


凛「直感的に分かってしまうのよ、私はアンタのマスターだから」


凛「ずっと前から限界だった。でも、うしおくんや井上さんのいるこの世界に留まるために……」


凛「ねえ、本当は分かってるんでしょ?」


凛「この次に宝具……獣の槍を使ったら……」




凛「とらは、消えるのよ?」




とら「……魔力の補充は終わりか、りん」




凛「こ……のォ……!!」




とら「ハラァいっぱいだ。わしはもう行くぜ」




凛「馬鹿……とらァ……」



685 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/12/30(土) 02:34:37.36 ID:g3YUOLsr0


・廊下








うしお「……………………」







686 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/12/31(日) 01:36:39.17 ID:fEua2Aql0


・柳洞寺山門前


ダッダッダッダッ


うしお「ハァッ……ハァッ……」


セイバー「ウシオ……?」


うしお「えっ、な、なんだいセイバー」


セイバー「予備の槍を取りに行ったのではなかったのですか?」


うしお「あ……あぁ……。いや、そのオレさ、二刀流なんてやったことねえからよ」


セイバー「それは、確かにそうですね」

セイバー「二槍使いと戦ったことがありますが、あの技術が一朝一夕で手に入るとは思えない」


うしお「そ、そうだろセイバー。槍なんていらないさ……」


うしお「槍なんて、使わなくたって……」


セイバー「……?」

687 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2017/12/31(日) 02:05:47.89 ID:fEua2Aql0


セイバー「ん? トラが追いついたようですね」

うしお「…………」


セイバー「トラ、魔力の補充は十分ですか?」

とら「けっ、わしの心配なんかしてんじゃねーよ剣使い」

セイバー「その様子だと大丈夫のようですね」

とら「それよりこのニオイ、もう始まってやがるか?」

セイバー「はい、日も暮れ魔力の密度も高い。前回の聖杯戦争の終盤と同じです」

セイバー「聖杯の降臨は始まっていると考えていいでしょう」


とら「いいぜ。わしの食い物を奪ったクソ野郎をブッ倒せばいいだけよォ……!!」

とら「そうだよなァうしお、マユコたちを取り戻すんだろォ!?」


うしお「あ、あぁ……!!」

うしお「全部、オレに任せろってんだ!!」

うしお「お前の……お前の出番なんてねえぞ、とらァ!!」


とら「けけけけ!! 言うじゃねえか、気合い入ってんなァうしお!!」

セイバー「これは、負けていられませんね」


うしお「それじゃ行こうセイバー、とら……」

688 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/13(土) 02:03:01.67 ID:cxwlGIloO
689 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2018/01/25(木) 00:21:36.36 ID:mw6HmJPG0


・柳洞寺境内


ギル「待ちわびたぞセイバー。小僧、それに獣よ」


セイバー「英雄王……」

うしお「ギルガメッシュ……!!」

とら「てめえがここにいるってことは……。槍使いはどうした!?」


ギル「ククッ、ランサーならば狗畜生らしく鎖に繋いで躾けている最中だ」


とら「ちぃ〜〜!! あの馬鹿槍使いがァ〜〜」


ギル「この魔力の密度、頃合いは十分だ」

ギル「ようやく聖杯も化けの皮を着込み始めたとみえる」


セイバー「貴様たちは何を……。ギルガメッシュ、貴様の目的はなんだ!?」


ギル「目的などない。言っただろうセイバー、我の関心はお前だけだと」

690 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2018/01/25(木) 00:48:56.66 ID:mw6HmJPG0


うしお「一つだけ教えてくれねえか、ギルガメッシュ」


ギル「いいだろう小僧。宴の席だ、多少の無礼も許そう」


うしお「……オレは、白面のせいで変わっちまった人を知ってんだ」

うしお「もしかしたらお前や言峰神父も、聖杯のなかの白面のせいで……」


ギル「我が白面の陰の気に染められているのでは、と」

ギル「小僧、侮るな」


うしお「えっ……」


ギル「あのような見上げることしか出来ぬ小者など……」


ギル「何匹いたとしても我を染めれるものかァ!!!!」


うしお「うっ……こ、これが英雄王……ギルガメッシュ……」


ギル「クックックッ……」

ギル「しかし、言峰のほうは分からんな」

ギル「言峰の身体のなかに流れる力は紛れもなく白面のものだ」

ギル「この聖杯戦争を仕組んだのは言峰の意思か、はたまた白面の陰の気か」

ギル「それも間もなく分かる」

691 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2018/01/25(木) 01:11:33.04 ID:mw6HmJPG0


セイバー「なるほど。貴様たちの目的は見えずとも時間はなさそうだ」

セイバー「ウシオ、トラ。先に行ってください」


とら「いーや、先に行くのはおめえよ剣使い」


セイバー「トラ……?」


とら「おめえはあの日の夜に借りを返したろうが」

とら「わしはまだなのよ。槍使いの分も含めて、あの金色野郎はわしの獲物だ」


セイバー「トラ、これはもう貸し借りの話ではありません」

セイバー「貴方も分かっているはずです。貴方と英雄王の相性は最悪と言っていい」


うしお「相性……。確かサーヴァント同士にはクラス相性があるんだよな?」


セイバー「はい。トラは特殊なクラスですが英雄王の対妖怪の宝具は致命的です」

セイバー「勝率のことを考えれば、この場に残るのは私だ」


とら「相性だの勝率だの関係ねーな。わしがあいつより強けりゃいいだけよォ」

692 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2018/01/25(木) 01:42:02.01 ID:mw6HmJPG0


セイバー「ですがトラ、ここは」

うしお「ここはとらに任せよう、セイバー」


セイバー「ウシオ、これは戦局を左右する選択です。貸し借りの優先など」


うしお「ああ、セイバーの言い分のほうが正しいと思うぜ」

うしお「きっと凛姉ちゃんがいたらセイバーを残したんだろうな」


セイバー「それならば……」


うしお「オレはサーヴァントの相性とか知らねえけどよ。ただ……」


うしお「とらが同じヤツに何度も負けるなんて、オレには思えねえんだ」


とら「へっ」


セイバー「……まったく。分かりました。トラ、ここは任せます」

693 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2018/01/25(木) 02:10:33.05 ID:mw6HmJPG0


とら「けけ、おめえにしちゃ聞き分けがいいじゃねえか」


うしお「別に本当にそう思っただけさ。それに……」

うしお「お前がここに残ってくれたほうが、オレも安心出来るしな……」


とら「……?」


セイバー「トラ、一つだけ言わせてください」

セイバー「英雄王の対妖怪の宝具は確かに強力です。ですが」


とら「それなら言わんでいい。やつの原典の槍を見たときから分かっとる」


セイバー「え……?」


とら「いいから行きなァ、聖杯が完全に降臨しちまうぜ」

とら「マユコのこともあるのよ。わしもこいつをすぐにブッ倒して追いつくからよ」


うしお「そうだな、麻子たちを早く助けないと……。行こうセイバー!!」

セイバー「はい。トラ、ご武運を」

694 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/25(木) 08:34:11.25 ID:otL+smfFO

695 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/01/25(木) 09:45:55.88 ID:EtQF0pBwO
乙ー
696 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2018/01/26(金) 00:33:45.67 ID:ctZZOBd60


とら「生憎だったなァ。てめえの欲しいもんは行っちまったぜ?」


ギル「どこに行こうがあの女は我のモノだ」

ギル「むしろ自ら聖杯に染まりに行くとは……」

ギル「ククッ、泥を飲ませる手間が省けるというもの」


とら「ちっ……。計画通りってか……」


ギル「選択を見誤ったな獣よ」

ギル「我と対峙するのがセイバーならば、万が一の可能性があったかもしれぬというのに」


とら「なにも間違っちゃいねーよ」


ギル「ほう……。獣ふぜいが策を練ったか」


とら「さーて、どうだかね。それよりわしは……」

とら「そのニヤケ面をブン殴りてえだけよォーー!!!!」


ギル「その気合い……妖怪ごときでも宴を飾るに悪くないか」

ギル「よかろう、相手をしてやる。フフフ……フハハハハハハ!!!!」

697 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2018/01/26(金) 00:48:54.75 ID:ctZZOBd60


言峰「ようこそ聖杯降臨の儀式へ、とでも言おうかな」

言峰「蒼月潮にセイバーよ」


うしお「言峰神父、やっぱりここに……!!」

セイバー「あの後ろの空中に捕らわれているのはアサコとマユコ……外道め……!!」


言峰「フッ……」


セイバー「貴様の欲する物は聖杯だろう、彼女たちは関係ないはずだ!!」

うしお「そうだ言峰神父!! 麻子と真由子を下ろしてくれよォ!!」


言峰「それは出来ない相談だな」

言峰「確かにセイバーの言うとおり私の望みは聖杯だ」

言峰「しかし、それには彼女たちの力が不可欠なのだから」


セイバー「なにを……。二人は魔術師ではない、何の力も……いや……」

うしお「まさか真由子の……お役目の力……!?」


言峰「フフ、そのとおりだよ蒼月潮」

698 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2018/01/26(金) 01:11:48.15 ID:ctZZOBd60


言峰「聖杯などという小さな器では白面の泥は溢れてしまう」

言峰「前回の聖杯戦争で、光覇明宗が結界で泥を阻止したときから考えていた」

言峰「あの白面の泥を余すことなく受け止める術はないのかと」


セイバー「それがマユコの力か……!!」

うしお「それで白面の泥を全部手に入れて何をしようってんだよ!?」


言峰「私の望みは変わっていない」


うしお「変わって、ない……?」

セイバー「ここにきて虚言か」

セイバー「貴様の前回の望みは、白面を解き放つことだったはずだ」

セイバー「その白面はウシオとトラによって滅ぼされている」


言峰「うむ、そうだなセイバー。確かにその白面はすでに存在しない」


うしお「それなら……!!」


言峰「ならば新しく白面を生み出し、この世に解き放つ。それが私の望みだ」

699 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2018/01/26(金) 01:31:00.46 ID:ctZZOBd60


セイバー「白面を生み出すっ……!?」

うしお「そ、そんなこと出来るはずがねえっ……!!」


言峰「フフ……」

言峰「聖杯のなかにある白面の体の欠片は、龍脈の力を吸い上げ続け、すでに聖杯を乗っ取っている」

言峰「最早あれは聖杯と呼ぶようなものではない。まさに白面の力そのものと呼ぶに相応しいものだ」


言峰「その白面の泥を、白面の毛皮に形作ったお役目の結界に流し込めば……」


うしお「白面が生まれるっていうのか……!?」


言峰「そうだ蒼月潮」

言峰「私が誕生させるのだ。『この世全ての悪』を」

言峰「私が生み。私が生かす。私が傷つけ私が癒す」


言峰「これこそ我が望み、我が願望……」

言峰「初めからこの世に望まれなかったもの……」




言峰「白面を……!!」




言峰「私が、誕生させるのだよ……!!!!」



700 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2018/01/26(金) 02:14:15.76 ID:ctZZOBd60


セイバー「ば、馬鹿な……」

うしお「また白面が生まれる……。あの白面が復活する……」


言峰「それも間もなくだ。すでに聖杯の降臨は始まっている」


うしお「やらせるかよ……。やらせねえぞォ言峰神父!!」

セイバー「そもそも白面の皮の結界など、マユコが手を貸すはずがない!!」


言峰「それはどうかなセイバー」

言峰「中村麻子の首を圧し折る仕草を見せたら、井上真由子は快く引き受けてくれたが?」


セイバー「外道、貴様ァ……!!」

うしお「真由子を言い聞かすために麻子をォ……!!」


言峰「フフフ……」


言峰「さあ、そろそろ宴を……白面の誕生祭を始めよう」


言峰「この白面戦争、お前たちが最後のマスターとサーヴァントだ」

701 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/01/26(金) 11:16:40.96 ID:1LVSvN2Ho
乙ー
702 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2018/01/27(土) 01:11:07.61 ID:IAKDcm/Z0


うしお「えっ!? な、なんだ、この黒い靄は……!?」

セイバー「次第に輪郭がハッキリと……。気をつけてくださいウシオ!!」


黒炎「ケケ……ケケ……」


うしお「こいつらは、黒炎……っ!?」


言峰「ほう、この力がここまで実体化するとは……」

言峰「フフ……。そうか白面よ、間もなくなのだな」

言峰「間もなくお前は完全に具現化する……!!」


うしお「そんな……本当に、白面が復活しちまうのかよ……」


黒炎「キシャァァァァ!!」

セイバー「ウシオっ!!!!」ザシュッ!!


うしお「す、すまねえセイバー!!」


セイバー「この黒い鬼たちは私に任せてください」

セイバー「ウシオ、まだ聖杯は完全に降臨したわけではありません」

セイバー「泥を受け止める結界さえなければ白面の復活はない」


セイバー「ウシオはあの男を倒し、アサコとマユコを助けるのです!!」


うしお「よし……分かった。セイバーここは頼んだぜ!!」

703 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2018/01/27(土) 01:34:00.97 ID:IAKDcm/Z0


うしお「言峰神父……!!」


言峰「フフ……。開幕の夜から予感があった」

言峰「蒼月潮、最後にお前と対峙することになると」


うしお「え……」


言峰「私の身体のなかには白面の力が流れている」

言峰「つくづくお前と白面は縁があるらしい」


うしお「白面との縁か……。確かに縁がないなんて言わないさ」

うしお「最後に聞かせてくれ言峰神父。白面の復活なんてやめないかい?」


言峰「フッ、出来ない相談だ」


うしお「そうかい……。だったら……」


うしお「行っくぞォォーーーー!!!!」


言峰「さあ……。真の開幕を告げよう……!!!!」

704 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2018/01/27(土) 02:09:30.59 ID:IAKDcm/Z0


ドガガガガガガ


ギル「……向こうも始まったか」


とら「余所見してんじゃねえーーっ!!」


ギル「王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)」

パチンッ


とら「ちぃぃ〜〜〜〜!!!!」


ギル「なんだそれは……。以前と変わらず対妖の宝具を避けるだけか」

ギル「無様な、それでは宴は盛り下がるというもの」


とら「けっ、好き放題言いやがるぜ」

とら(あの宝具の雨をかわして、金色野郎に近づけりゃ……)


ギル「まさか獣よ、このまま一芸の披露もなしではあるまいな」


とら(近づけりゃあとはどうにでもなる。だが、どうやって近づくかよ……)

705 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2018/01/27(土) 02:16:30.08 ID:IAKDcm/Z0


うしお「うおおおおおおおお!!!!」


言峰「その槍……。いや、その剣は……」

言峰「フフ、どこぞの小娘にやった物だが。なるほど、意趣返しのつもりか」


うしお「ああ!! だから、負けられないのさァーー!!」


言峰「脇目も振らずに槍の突進、実にお前らしい。だが……」


うしお「あ、あれは……っ!?」

うしお「ぐっ……!!」


言峰「ほう、黒鍵を防いだか」

言峰「今のは知っている動きだったな、蒼月潮」


うしお「それを使う姉ちゃんと一緒に戦ったことがあってさ!!」


言峰「代行者と……。それでは黒鍵は有効ではなさそうだ」

言峰「しかし、それはこちらとしても……。フ……ッ!!」


うしお(はやっ!?)

うしお「が……はっ……。こ、拳…………」


言峰「ふー……。私としても、こちらのほうが得意だがね」

706 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2018/01/27(土) 02:31:04.64 ID:IAKDcm/Z0


黒炎「ケケケケーーーー!!」


セイバー「はああああああ!!」


ザシュッ!!


黒炎「ケケ……ケケ……」


セイバー「際限がない……。黒炎といったか、無数に増え続ける……」

セイバー「おそらく大元の聖杯を破壊しなければ、この増殖は止まらない」


セイバー「早くウシオの援護に行かなければ……!!」


黒炎「キシャァァァァ!!」


セイバー「くっ……!!」


セイバー「ウシオ……トラ……!!」

707 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/01/27(土) 04:22:40.15 ID:riLbTxtSO
乙ー
708 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2018/01/28(日) 15:13:09.74 ID:zHsm64mJ0


ギル「どうした獣よ。もう逃げ場がないぞ」


とら「わしが逃げるかよォ!!」


ギル「この国の言葉で袋のネズミといったか、まさにそれだな」


とら「ちぃっ、こっちもかァ〜〜!!」

ドスッッ!!


とら「ぐぅぅうおおおお!!!!」


ギル「すでに身体中は穴だらけ、そろそろ終わりか」

ギル「くだらん見世物だったな」


とら「まだまだァ、終わりじゃねえ……!!」




『わたし達を使え』




とら「……やっぱそれしかねえか」



709 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2018/01/28(日) 15:41:05.68 ID:zHsm64mJ0


とら「わしだけの力でやりてえのによォ」


とら「しっかし本当におめえら使って上手くいくのか、それ次第だぜ」




『力を、さらなる力をやる。とら、わたし達を使え』




とら「けっ、しゃあねえな。使ってやらあ!!」




『そうだ。そうすれば、おまえは強くなる……!!』



710 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2018/01/28(日) 16:04:01.87 ID:zHsm64mJ0


とら「雄ぉ鳴ぉ雄ぉ鳴ぉ雄ぉ鳴ぉ雄ぉ!!!!!!」




ギル「追い詰められ、最後は苦し紛れの真正面から特攻か」


ギル「所詮は獣よ。これで終わりに……なっ……貴様、その姿は……!?」




とら「ひゃーっはっはっはっはっ!!!!」




宝具『字伏の鎧』!!!!




ギル「貴様ァ…………。獣の分際で鎧を着込むのかァァーー!!」




とら「こいつらの力を借りるのはちょいと気に入らねーが……!!」


とら「てめえのその驚く顔が見れるなら悪かァねえなァ!!!!」



711 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2018/01/28(日) 16:33:17.12 ID:zHsm64mJ0


ギル「戯れ言をォォーーーー!!!!」




ドガァッ!!

字伏『ぐぅぅ……!!』

とら「お、おい!!」

字伏『わたし達のことは案ずるな。やつに近づくまで必ず保たせる』

字伏『しかし、このような方法が通じるのは一度だけ』


字伏『これで決めるのだ、とら』




とら「言われるまでもねえーーーー!!!!」




ギル「くっ……!!」



712 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2018/01/28(日) 16:58:06.17 ID:zHsm64mJ0


ギル「クッ……ククク……」


とら「なんだァ!?」

とら「もうやつは目の前だってのに身動き出来ねえ!?」


ギル「フフフ……」


とら「こ、こいつァ……」

とら「わしの身体を無数の鎖が縛ってやがるのかよ!?」


字伏『ぐっ、がっ……』バキバキィ


ギル「フハハハ!! ハァーハッハッハッハッ!!!!」


とら「金色野郎!! てめえの宝具かァ!!」

713 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2018/01/28(日) 17:28:07.64 ID:zHsm64mJ0


ギル「褒めてやるぞ獣よ。我はこれを使う気はなかったからな」


とら「ちぃぃ〜〜!!」

とら「こんな宝具も持ってるかよ……!!」


ギル「ククク……。しかし、最後の一芸はなかなかに愉しめた」

ギル「獣が鎧を着込むなど珍奇な見世物だが、王としては褒美をやらんとな」


とら「くっそっがァァ〜〜!!」


ギル「暴れても無駄だ。その鎖は妖怪の貴様でも引き千切ることなど出来ん」


ギル「フフフ、褒美だ。受け取るがいい」


とら「そ……そいつァ……!!」


ギル「やはり貴様を消滅させるなら……」




ギル「この獣の槍の原典でなくてはな」



714 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2018/01/29(月) 23:36:33.28 ID:IPri3ih30


ギル「聞くところによると貴様は多くの異名を持つらしいな」

ギル「長飛丸、わいら、雷獣、字伏……。そして、黄金の獣」

ギル「これで妖怪ふぜいの貴様も理解出来たであろう」

ギル「黄金の名に相応しい英霊は我だけよ」


ギル「終わりだ」


ドスッ……


ギル「ククッ……。フフフ……ハァーハッハッハッハッ!!」




とら「……けけ、けけけ……。けけ……」




ギル「な……。笑っている……?」


ギル「何故、獣の槍で刺されて消滅しない……!?」


とら「なーんだ、やっぱりかよ。なんのことはねえ」


とら「けけっけっけっ!!」

715 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2018/01/29(月) 23:53:36.84 ID:IPri3ih30


ギル「生前、貴様は獣の槍を忌み嫌っていた……」

ギル「サーヴァントとなった貴様の弱点は、獣の槍のはずだ……!!」


とら「けけ……。ああ、そうだぜ」

とら「わしら妖にとって獣の槍は忌々しいクソ槍よォ」


とら「だが、そりゃてめえの持ってる槍じゃねえよなァ?」


ギル「な、に……」


とら「獣の槍の原典だと、けけっけ」

とら「タコが、そんなモンあるわきゃねーだろ」


ギル「この原典の槍が、獣の槍ではないだと……?」


ギル「妖怪ごときが戯れ言を抜かすな……っ!!」

ギル「獣の槍を辿って行けば、必ずこの原典に辿り着く……!!」


とら「けけけ……。いいぜ……」

とら「そこまで言うならよォ、その槍を真名解放してくれねえか」

716 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2018/01/30(火) 00:04:35.41 ID:ihjbVzSx0


ギル「真名解放、だと……?」


とら「その槍にゃ封印の赤布がねえ、獣の槍が出来たときのように暴走してねえワケだ」

とら「だったら使用者が能力を解放しねえとなァ」


ギル「……お…………」


とら「獣の槍は認められた人間が使わなきゃ、ただの頑丈な槍だ」

とら「てめえがその槍の使用者だって言うなら真名解放してくれよォ」




ギル「……お……のれ…………」




とら「けけえけっけっけっ!!!! 出来るわきゃねえよなァ!!!!」


とら「槍を手に持ってるのに髪がまったく変化してねえんだからよォォーー!!!!」




ギル「おのれええええ!!!!」




とら「笑わせるぜェ!!!! おめえは宝具を持ってても使えねえのよォ!!!!」


とら「英雄王とやらのくせによォ!!!!」




ギル「おのれおのれおのれおのれおのれおのれぇぇ!!!!」




とら「ひゃはははは!!!! 怒りやがった!!!!」


とら「英雄王が怒りやがったぜええ!!!!」



717 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2018/01/30(火) 00:20:37.43 ID:ihjbVzSx0


ギル「首を伸ばして、自身の四肢を噛み切るだと……っ!?」

ギル「おのれバケモノめええーーーー!!!!」


とら「そうだァ!! わしはバケモノだぜェ!!」

とら「これだけ近づかれりゃ得意の宝具の撃ち出しは出来ねえよなァ!!!!」


ギル「ぐぅぅ……くっ……!!」


とら「たわけえ!! そのねじれた剣は使わせねえ!!」


ギル「がっ……」


とら「そいつがてめえの真の宝具なんだろうが使わせるかァーー!!」

とら「わしは剣使いと違って騎士道精神なんて持っとらんのよォ!!!!」


ギル「おのれええ……っ!!」


とら「慢心したなァ英雄王!!」

とら「わしを殺すのにわざわざ獣の槍を使おうとするからこうなるのよォーー!!」




ギル「おのれおのれおのれおのれおのれおのれぇぇーーーー!!!!」




とら「妖殺しの逸話のある剣でも弓でも出しときゃ勝負は違ってたぜェェ〜〜〜〜!!!!」




ギル「おのれええええええええええええええええええええええええ!!!!」




とら「おのれの…………負けだ…………!!!!!!」



718 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2018/01/30(火) 00:35:22.88 ID:ihjbVzSx0


ギル「ククク……」


サァァァァ


ギル「いつの時代も、バケモノは我を愉しませる」


とら「けっ、こんな決着で納得出来るかよ」

とら「ただのまぐれ勝ちじゃねえか」


ギル「早く行くがいい。小僧とセイバーだけではアレには勝てぬ」

ギル「獣よ、あのときと同じだ」


とら「あのときだァ?」


とら「……待てよ……。そうだ、あのときもおかしいと思ったぜ」

とら「白面との最終局面、なんで北の土地神や雪妖があんな簡単に南の海に来れた」


とら「空は婢妖と黒炎に覆われてたってのに……!!」


ギル「フフ……舞台を盛り上げるのは、なにも演者だけではない」


ギル「ときには観客の一声で盛り上がることもある」


とら「てめえ……っ!!」




とら「……ちっ……いろんな人間を喰ってきたが……」




とら「ここまで喰えねえやつは初めてよ、英雄王」




ギル「クックックッ…………フフフフ…………」




ギル「ハァーーーーハッハッハッハッハッハッハッハッ!!!!!!」



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