【ダンロン】ダンガンロンパ・クエスト【オリキャラ】

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71 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2016/08/06(土) 20:31:03.16 ID:F6zOyWlAO
御影「……推薦。兄貴でいいじゃん」

赤穂「は?」

御影「だって兄貴、希望ヶ峰の76期生でこの中だと数少ない卒業生でしょ」

四方院「そういえばわたくし達のほとんどは未来機関校第1期生……卒業生は如月さんと赤穂さんだけですわ」

赤穂「ま、待ってくれ!そうは言うけど俺にはリーダーなんて……」

兵頭「しかし他に適任はいないようですよ?」

赤穂「……」

確かに歳って意味なら俺は二番目の年長者だ。

とはいっても未来機関の所属年数なら違いはないはずなんだけど……

赤穂「……わかったよ」

正直、自信があるわけじゃない。

だけど他でもない牡丹が推薦だなんて言うなら……兄としては、なぁ。

四方院「これで決まりですわ!女子はわたくし四方院奏、男子は赤穂さん……改めてこの体制でこの研修旅行をクリアいたしましょう!」

……まあ、やれるだけやってみるか。
72 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2016/08/06(土) 20:48:08.74 ID:F6zOyWlAO
赤穂「暇だ」

リーダーになったといってもやる事は実のところあまりなかったりする。

なぜなら四方院さんや佐場木がだいたいの事はやっちゃうからだ。

だから俺はお飾り……肉体労働も今となっては出来ないからそれ以下かもしれない。

赤穂「はあ……」

とはいえ何もしないわけにはいかないからな……みんなの様子でも見に行くか。
73 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2016/08/06(土) 21:29:51.05 ID:F6zOyWlAO
【ロケットパンチマーケット】

グレゴリー「見るがいい朗笑の道化師よ!この聖殿は魔術具の宝庫ではないか!」

ジェニー「あ、あう……ロウショウ?セイデン?難しくてわからないです……」

赤穂「……」

ロケットパンチマーケットに寄ってみたらグレゴリーとジェニーが品物を見ながら話していた。

だけどジェニーには難しくてよくわからないみたいだな……

赤穂「グレゴリー」

グレゴリー「ほう、聖痕抱きし英雄か」

なんだか俺の名前らしきものが大げさになってないか!?

赤穂「あのさ、ジェニーはあんまり日本語得意じゃないみたいだから何を言われてるかわからないんじゃないか?」

グレゴリー「むっ?それは真実の果実か、朗笑の道化師」

ジェニー「えと、ロウショウ?の道化師ってボクの事です?道化師はピエロってわかるですけど……」

グレゴリー「ふうむ……すまん。言の葉の魔術師の存在を錯覚していたようだ」

えっと……これは津浦がいる時の感覚で話してたって事か?

ジェニー「でもでも!グレッグはたくさんの言葉知っててすごいです!ボクもっともっと勉強して話せるようにしますです!」

赤穂「……」

グレゴリー「……」

ジェニー「あ、あれ?2人共どうしたです、か?」

グレゴリー「ふっ、朗笑の道化師は天界からの使いかもしれんな」

これは俺にも意味がわかる。

ジェニーはいい子だってな。
74 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2016/08/06(土) 21:52:25.07 ID:F6zOyWlAO
遠見「ふーむ、なかなかどうして……」

赤穂「……何してるんだ?道端にしゃがみこんで」

遠見「赤穂殿。いやはや、自分なりにこの島を調べていたのでありますが……もしもここが本当にプログラムなら相当手が込んでいるのであります」

そう言って遠見が見せてきたのは……虫?

遠見「南の島にしか生息していない昆虫であります。このような細かな生物まで再現しているレベルは聞いた事がないのでありますよ」

赤穂「確かに……動物ならまあともかく、虫まで再現ってのは聞かないな」

遠見「正直ここがプログラムだというのは自分には納得出来ない話でありまして」

遠見「そしてプログラムでないならば……このコロシアイは本物の可能性が高くなるのであります」

赤穂「そうだな……」

本当にコロシアイが起きるリスクを考えると、現実でこんな馬鹿げた研修はしないはずだ。

遠見「四方院殿は不安を取り除く意図もあってこの説を持論としているのでありましょうが……」
遠見「自分は戦場で生きてきた身として……万が一を捨てられないのでありますよ」

赤穂「……その万が一がないように佐場木や遠見は疑うんだろ?」

遠見「……そうであります」

赤穂「だったらそんな申し訳なさそうな顔するなよ。俺は最悪の事態を防ぐために疑うのは悪い事じゃないと思うからさ」

遠見「赤穂殿……」

赤穂「なに、もしもプログラムだったらそれでよかったって笑えばいいんだ。最悪の可能性が正解なら……その時はきっとその疑って調べた事が役に立つ」

遠見「……」

赤穂「な?」

遠見「そうでありますね……ありがとうであります赤穂殿!」

赤穂「一応、リーダーだからな」

遠見「御影殿の推薦は正解だったかもしれないでありますね!」

そうなら、いいけどな……
75 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2016/08/06(土) 22:25:20.37 ID:F6zOyWlAO
薄井「だからそう言ってんだろ」

如月「そうですか……」

薄井と如月さんが話してるけど……あんまり和やかな雰囲気じゃないな。

薄井「んっ?ああ、ちょうどいい。赤穂、こいつ何とかしてくれよ」

赤穂「何とかってまず何があったんだよ」

薄井「こいつ、オレにしつこく付きまといやがるんだよ……」

如月「僕はただ薄井さんと仲良くしたいだけなんですが……」

薄井「インチキ野郎と関わろうなんてどんな物好きだオマエはよ」

赤穂「と、とりあえず落ち着けって」

俺からしたら正直羨ましいぐらいだってのに……

如月「ですが薄井さんも無視はしないでくれますから、きっと仲良くなれると信じてますよ」

薄井「オマエ……本当におめでたいやつだな」

如月「前向きなんですよ。こんな世界ではそれが重要な事ですから」

前向きか……そうでもないとヒーローなんて出来ないんだろうな。

……いや、俺も一応ヒーローなんだけど。
76 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2016/08/06(土) 22:39:13.56 ID:F6zOyWlAO
兵頭「はあ……」

赤穂「……んっ?」

四方院「あら?どうしましたの兵頭さん」

兵頭「いえ、ちょっと個人的に残念でして」

赤穂「残念?」

兵頭「リーダーを決めるのは投票だと思っていましたから……」

四方院「兵頭さんは投票がしたかったんですの?」

兵頭「当たり前じゃないですか。私は超高校級の選挙管理委員なんですよ」

兵頭「ただでさえこんな場所だと投票なんて限られた機会なのに……」

赤穂「なんというか、情熱を注いでるんだな」

兵頭「それはもう、人の人生がかかった投票なんて……たまりませんから」ジュル…

赤穂「……えっ」

四方院「……はい?」

兵頭「……ああ、すみません。今のは忘れてください」

今、恐ろしく緩んだ顔してなかったか……?
77 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2016/08/06(土) 23:28:55.62 ID:F6zOyWlAO
【ホテルミライ・レストラン】

そろそろ夕食の時間だとレストランに行ってみると……窓から火柱が吹き出していた。

赤穂「……はあ!?」

四方院「ちょっとなんですのあれは!」

慌ててレストランに飛び込むと、必死にバケツで水をかけている如月さんと薄井。

静音「うわあああああああんっ!」

そして大号泣してる静音の姿があった。

赤穂「……」

まさか夕食の準備しようとして、こんな事になったのか?

四方院「な、凪!大丈夫ですの!?」

静音「ひっ、ひぐっ……奏……ぼくっ、ぼくこんな事になるなんて……」ギュウッ

四方院「ああ、わかっていますわ。貴女がわざとこんな事をするわけないのは」ナデナデ

赤穂「……」

とりあえず2人を見ててもしょうがない、俺は消火を手伝おう!
78 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2016/08/08(月) 21:59:37.02 ID:tByVVCKAO
――――

道掛「こりゃひでえ……」

結局あの後厨房は半焼……夕食前に急遽土橋中心で修理をする事になった。

土橋「誰か追加で木材持ってきてー!」

グレゴリー「ふはははははっ!!この天よりの導きこそ好機!恵みの世界を我が神殿へと再構築してくれよう!まずは厨房の扉を坂に改変……」

土橋「変な物を増やすな!」

佐場木「よくも全焼しなかったものだ」

薄井「わりとマジで焦ったっつうの……」

静音「……」

その原因を作った静音は四方院さんにしがみついて顔を見せようとしない。

四方院「そうですか……凪はわたくしのために」

赤穂「朝の事が申し訳なかったんだって言ってたよ。だから穏便に済ませてやってくれないか?」

四方院「そうですわね……凪もわざとではないのですから、わたくしは何も言うつもりはありません」

静音「奏……」

四方院「ですけれど!皆様にはきちんと謝るように」

静音「はーい……」

赤穂「まあ、怪我人も出てないし何事もなくて良かったよ」

モノクマも出てこないって事は、ルール違反にはならないみたいだしな……
79 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2016/08/08(月) 22:15:15.44 ID:tByVVCKAO
【赤穂のコテージ】

赤穂「はああ……今日は疲れたな」

厨房の修理は9時頃までかかって……夕食が終わったのはついさっき、10時のアナウンスが鳴った頃だった。

赤穂「でもみんなこの一件でいっそう団結した気もするし……結果オーライか」

このまま何事もなく済ませて、さっさと日常生活に戻りたいもんだ。

赤穂「外は今頃どうなってるんだろうな……」

少しでも平和になってれば……

そんな事を考えながら、俺は眠りについた。
80 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2016/08/08(月) 22:49:01.26 ID:tByVVCKAO
【3日目】

キーン、コーン、カーンコーン

モノクマ「7時です!さあ、起きた起きた!」

モノクマ「今日も張り切っていきましょー!」

赤穂「朝か……」

昨日の事もあるし、牡丹を迎えに行った方がいいよな……よし。

【御影のコテージ】

ピンポーン

赤穂「牡丹、迎えに来たぞー」

ガチャッ

御影「……おはよ」

赤穂「おはよう、よく眠れたか?」

御影「まあ一応。それで、迎えってなんで?私もう子供じゃないんだけど」

赤穂「昨日みたいな事があったら嫌だからな。こうしてコテージまで来れば少なくとも苦しんでるかはわかるだろ?」

御影「……」

赤穂「それに俺からしたらまだまだお前は子供なんだよ」ポンポン

御影「ちょっ、やめてよ……」

赤穂「ほら行こう。みんな待ってるだろうしな」

御影「はあ……相変わらず強引だね兄貴は」

赤穂「……なあ、なんで兄貴呼び?昔は確か」

御影「気分だよ気分。ほら行くんでしょ」

赤穂「気分ねぇ……」
81 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2016/08/08(月) 23:04:56.07 ID:tByVVCKAO
【ホテルミライ・レストラン】

四方院「皆様、少しお話があるのですがよろしいでしょうか?」

苗木「また何か決める事が出来たの?」

四方院「いえ、今回は少し提案を」

六山「提案?」

四方院「この研修旅行も今日で3日。こちらも本格的に動くのも悪くないかと思いまして」

津浦「本格的に動くとは?」

四方院「もちろんこの研修旅行を終わらせる……つまりこのコロシアイを無駄だと未来機関に思わせる事」

グレゴリー「ほう、優雅なる笛吹きには何か策が?」

四方院「ふふふ」

赤穂「……」

このコロシアイ研修旅行を早く終わらせる方法か……

四方院「未来機関に見せつけるのです。コロシアイなど起きようもないわたくし達の姿を」

四方院「それを実現する方法……」
82 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2016/08/10(水) 20:01:06.11 ID:YuzC0UkAO






四方院「未来機関第二十支部懇親会の開催を宣言いたしますわ!」






83 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2016/08/10(水) 20:14:52.78 ID:YuzC0UkAO
道掛「懇親会?」

四方院「簡単に言えばパーティーですわね。お互いを知り、交流を深めるためのものです」

ジェニー「パーティー!みんなでパーティーするですか!」

四方院「もちろん全員参加です!交流しようというのに不参加など認めないのでそのおつもりで」

御影「私パス」

赤穂「却下だ。牡丹は少しみんなと仲良くしろ」

御影「横暴だ……妹には優しくしてもバチは当たらないよ」

赤穂「妹のために心を鬼にするのも優しさだ」

四方院「あちらは放置でいいでしょうから……他に何かあるなら聞きますわ」

遠見「開催場所はどこにするのでありますか?」

四方院「それはまだ決めてませんの。今日1日使って候補を絞ろうかと」

六山「今日やるんじゃないんだ?」

四方院「ふふふ、色々準備もあるでしょうから明後日を予定していますわ」

静音「楽しみにしてるんだな!奏が開くなら最高のパーティーになるんだから!」

だからなんで静音が偉そうなんだよ……
84 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2016/08/10(水) 20:31:08.45 ID:YuzC0UkAO
四方院さんのパーティー開催宣言の後、みんなはその日に向けてバラバラに散っていった。

赤穂「だけど意外だったな。佐場木や薄井は反対しそうだったのに」

佐場木「ふん、四方院なりのやり方だ。犯罪でもなければ俺は何も言うつもりはない」

薄井「反対出来る空気じゃねえだろアレは」

赤穂「まあ、確かにな。この場合牡丹がむしろマイペースなのか……」

佐場木「だが懇親会をやると言うなら危険物の管理を徹底しなければな……遠見とチェックリストの見直しが必要か」

薄井「真面目だな……少しは肩の力抜いてもいいんじゃねえか?」

佐場木「これは俺の軸だ。今さら変えられはしない」

赤穂「……佐場木は裁判官になる前からそうだったのか?」

この3日間で佐場木の真面目というか、一種頑固と言ってもいい性格は見てきた。

いったいどんな生き方をすればこんな……

佐場木「ふん、お前達も見た事があるだろう?この世界に絶望によって広がる悲しみを」

薄井「そりゃ、まあな」

佐場木「俺は幼い頃からそれを見てきた。それだけの話だ」

幼い頃から、今世界に広がってるような光景を……?
85 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2016/08/10(水) 20:53:21.60 ID:YuzC0UkAO
土橋「こんなんでいい?」

ジェニー「はい!ありがとうです!」

赤穂「何してるんだ?」

土橋「ジェニーがパーティーで芸をやるんだって」

ジェニー「ミキにそのためのアイテムを作ってもらいました!」

赤穂「へー、何をやるんだ?」

今ジェニーが持ってるのは木で出来た少し大きめの箱みたいだけど。

ジェニー「ダメでーす!パーティーまでの秘密です!」

土橋「アタシも自分で作っといてなんだけど、何に使うかわかんないんだよね」

赤穂「大丈夫なのかそれ」

土橋「安全性は保証するよ!地震が来ても壊れないレベル!」

赤穂「そんなのをこの短時間で作ったのか!?」

土橋「えっ?別に普通じゃない?アタシちっちゃい頃からよく木で小物は作ってたし」

赤穂「普通ではないと思うぞ……」

ジェニー「ミキはスゴいです!ボクなんて危ないからってハンマーとか持たせてくれませんです……」

土橋「アハハ、そんな褒めないでよ。照れちゃうって」

少し赤くなってる土橋を横目にジェニーの持つ箱を見る。

うーん、怪我がなくてもやっぱり俺には作れそうにない……

でも才能がある人間にとっては普通なのかもな。
86 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2016/08/10(水) 21:12:55.06 ID:YuzC0UkAO
津浦「Mr.赤穂。ちょうどいいところに」

赤穂「んっ?どうした?」

津浦「Mr.苗木を捜しているのですが、心当たりはありませんか?」

赤穂「苗木を?レストランを出てからは見てないな……」

津浦「そうですか……」

赤穂「苗木に用事なら俺から伝えようか?」

津浦「お願い出来ますか?」

赤穂「わかった。それで苗木に何の用事なんだ?」

津浦「なんでもMr.グレゴリーの言葉に理解できない物があるので教えてほしいと」

ああ……確かにグレゴリーの言葉はよくわからないもんな。

津浦「しかしそんなに難解でしょうか?ワタシにはよくわかりません」

赤穂「むしろ俺にはなんで津浦がわかるのかがわからないぞ」

津浦「同じ日本語なのですから、まだわかりやすいと思うのですが……」

津浦は本気で疑問らしい……さすが【超高校級の通訳】。
87 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2016/08/10(水) 21:26:08.19 ID:YuzC0UkAO
赤穂「苗木はどこに行ったんだ?」

頼まれた以上早い方がいいと俺は苗木を捜す事にした。

赤穂「……おっ、いた」

苗木「あっ、あっ、ちょっと待って!」

六山「一度始まったゲームにポーズはなしだよ」

苗木「ああ、また負けた……」

どうやらロビーの筐体で六山と対戦していたらしい。

赤穂「苗木」

苗木「あれ?赤穂クン、どうしたの?」

六山「増援かな?」

赤穂「違う違う。苗木、津浦が捜してたぞ」

苗木「あっ!そういえば津浦さんに頼み事してたんだった……」

六山「そうだったの?ごめんね、付き合わせちゃって」

苗木「あはは、ボクもゲームしたかったから六山さんは気にしないで」

赤穂「……対戦成績0勝8敗か。やっぱり六山強いんだな」

六山「場数が違うのだよ場数が」

苗木「赤穂クンもやってみたら?もしかしたら運良く勝てるかもしれないよ」

赤穂「運で苗木がこれならダメじゃないか」

苗木「あはは……ほら、ボクは幸運って言っても本当に平々凡々だから」

その後苗木と入れ替わりに六山と対戦した。

結果は……まあ、言わずもがなだ。
88 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2016/08/10(水) 21:41:20.17 ID:YuzC0UkAO
道掛「いやっほおおおおおおおうっ!!」

赤穂「あれは……」

道掛「おっ、赤穂じゃん!一緒にサイクリングしねえか!」

赤穂「いや、俺はこの足だから」

道掛「あっ、そういやそうだな……なんつうか自転車乗れねえって俺には耐えらんねえや」

赤穂「道掛は根っからの自転車バカって感じだしな」

道掛「自転車はバカじゃねえよ!」

赤穂「いや、そういう意味じゃない」

道掛「そうなのか?自転車バカにしたんじゃねえの?」

赤穂「言い方変えるなら、道掛は自転車が好きなんだなって事だよ」

道掛「おぉ、そういう意味か!俺は確かに自転車に青春かけてるからな!」

赤穂「それは見てればよくわかる」

道掛「やっぱ青春って大事だよな!友情!女の子!自転車!」

どういうラインナップだそれ……

でも道掛は本当に楽しそうに自転車に乗ってて、青春してるんだなっていうのは伝わってくる。

道掛「あっ、ところで赤穂」

赤穂「んっ?」

道掛「牡丹ちゃん紹介し――」

赤穂「却下だ」

道掛「とりつく島もねえ!」
89 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2016/08/10(水) 21:56:54.63 ID:YuzC0UkAO
静音「奏の凄さが皆に伝わってない!」

赤穂「……はあ」

牡丹を紹介しろとすがり付く道掛を振り切って島を歩いていたらいきなり静音に捕まって港に連れてこられた。

そして小さなコンテナによじ登ると開口一番そんな事を言ってくる。

静音「奏は優しくて綺麗で可愛くて頭も良くて料理も美味しくて優しくて綺麗で可愛いのに!」

いくつか2回言ってるぞ……

静音「はあ、ぼくが男の子だったら絶対奏のお婿さんになるのにな」

赤穂「……静音は四方院さんをそういう意味で好きなのか?」

静音「違う!男の子だったらって言ってるだろ!ぼくにとって奏はそれだけ大切なの!」

赤穂「うーん……なんでそこまで四方院さんを?」

静音の四方院さんに対するそれは崇拝にも近い……正直何が彼女をここまでしたのか興味が湧いてくる。

静音「奏がいなかったら……ぼくは指揮者になってなかったからな」
90 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2016/08/10(水) 22:36:16.64 ID:YuzC0UkAO
赤穂「そうなのか?」

静音「ぼくは今でこそ天才指揮者なんて言われてるけど、元々音楽なんて興味の欠片もなかったんだ」

静音「むしろ悪戯ばっかりしてて親にはよく叱られてたな」

静音「そんな日々の中で親に少しはおとなしくなるようにって演奏会に連れてかれたんだ」

静音「もちろん興味なんてないぼくは逃げ出してな……知らない間に演奏者の集まる楽屋に来ちゃったんだ」

静音「迷って泣きそうになって……そんな時にフルートの音色が聞こえてきた」

静音「その音色はスッとぼくの中に入ってきて、ぼくは導かれるようにその音の鳴る場所に行って……」

静音「奏と、出会ったんだ」

静音「その時奏と話して、もっと話してみたいと思うようになった」

静音「話すからには喜んでもらいたいから音楽を勉強してはみたんだけど、楽器は全く出来る気がしなくて」

静音「そんな時にオーケストラを見てたら、なんか棒振り回してるすごく楽そうなのがあったからそれをやる事にしたんだよ!」

そんな理由で【超高校級の指揮者】は生まれたのか……

静音「やってみたら難しくて、それ以上に楽しくなったんだけどな!」

静音「つまり奏は今のぼくを作った存在……」

静音「お母さんなんだ!」

……いや、それでいいのか?
91 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2016/08/10(水) 22:52:11.56 ID:YuzC0UkAO
赤穂「やっと解放された……」

静音に四方院さんの魅力を散々語られてたらもうこんな時間か……

御影「……あれ?どしたの、疲れてるけど」

赤穂「色々あってな……牡丹はこんな所でどうしたんだ?」

御影「ちょっとパーティーを中止させるために色々と……あ」

赤穂「ほー、俺の前でそれを言うか」ワシャワシャ

御影「ちょっ、だから頭なで回すのやめ!」

赤穂「全く。我が妹ながら何を考えてるんだ」

御影「だってさぁ……いきなり交流しようとか言われても困るって」

赤穂「まるで友達がいなかったみたいに言うんだな……」

御影「そりゃ、あんな生活してたら友達なんて……」

赤穂「は?あんな生活?」

御影「……あっ、私用事思い出した。じゃあね兄貴!」

赤穂「おいこら、ちょっと待て!牡丹!あんな生活ってなんだ!?」

くそっ、逃げられた……!
92 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2016/08/10(水) 23:07:37.04 ID:YuzC0UkAO
赤穂「牡丹の奴、ただの家出だと思ってたけどなんか雰囲気が違うぞ……」

白くなった髪……あの苦しみよう……薬……あんな生活……友達なんて……

赤穂「……」

いや、まさか……牡丹がそんな事するわけ……

鞍馬「……」

赤穂「うわっ!?い、いたのか鞍馬」

鞍馬「えぇ、先ほどから」

赤穂「もしかして俺達の話も聞いてた?」

鞍馬「僕がいたところにあなた達が来ましたからね」

赤穂「そ、そうか」

鞍馬「……」

なんというか、鞍馬って掴み所がないな……

鞍馬「彼女は別に依存性の薬物には手を出していませんよ」

赤穂「は?」

鞍馬「それを危惧していたのでは?」

赤穂「いや、それは……というかなんでわかるんだ?」

鞍馬「見ていれば区別はつきますよ」

赤穂「そんな、ものなのか」

よくはわからないけど……それなら、牡丹はいったい……

鞍馬「……」
93 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2016/08/10(水) 23:20:11.20 ID:YuzC0UkAO
キーンコーン、カーンコーン……

モノクマ「えー、オマエラ!今すぐ第二十支部に集まってください!」

モノクマ「全員だからね!来なかったらオシオキだよ!」

赤穂「……なんだ?」

モノクマが呼び出し……嫌な予感がするな。

赤穂「とにかく全員集合なら行かないとな……」


【未来機関第二十支部】

苗木「いったい、なんの呼び出しなんだろう?」

兵頭「諦めた、ならいいんですけどね」

四方院「どうなのでしょう……いくらなんでも早すぎる気もしますが」

佐場木「それは本人に聞けばいいだけだ……来るぞ」

モノクマ「来たみたいだねオマエラ!」

道掛「なんなんだよ!これから飯って時に呼び出しやがって!」

モノクマ「大丈夫大丈夫。すぐに終わるからさ」

赤穂「すぐに終わる……」

モノクマはいったい何を……

モノクマ「えー、ではこれより」
94 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2016/08/10(水) 23:22:04.38 ID:YuzC0UkAO






モノクマ「厨房の破壊を行ったルール違反者静音凪さんの処刑を執行します!!」






95 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2016/08/10(水) 23:37:09.14 ID:YuzC0UkAO
静音「…………えっ?」

四方院「な……何を仰っていますの!?」

モノクマ「あれ?ルールになかったっけ?島に設置された物をむやみやたらに壊すなって」

遠見「た、確かにルールには許可なく設置された物を壊すなとあるにはあるでありますが……」

土橋「ちょっと待ってよ!厨房はきちんと直したよ!?」

グレゴリー「それになぜこの機なのだ!?厨房が業火に包まれし時には沈黙を貫いたではないか!」

モノクマ「別にすぐにやっても良かったけど?お別れの時間くらいはあげようかなって思ったんだよ」

モノクマ「あと直したからって壊した事実がなくなる訳じゃないんだよ!あの火事がコロシアイのためならともかく今回の事はれっきとしたルール違反!」

赤穂「モノクマ、お前……!」

薄井「クソッタレ、よりによってオレ達全員集めてやりやがるか!」

モノクマ「これは見せしめも兼ねてるからね!それじゃあ早速……」

静音「ひっ……」

四方院「待ってください!凪はわたくしのためにあのような事をしたのです!処刑ならわたくしを……」

静音「だ、だめだよ奏!そんな……」

モノクマ「そうだよ?今回ルール違反したのは静音さん。だから死ぬのも静音さん」

モノクマ「オマエが入る余地なんてどこにもないんだよ!」

四方院「っ……!」

くそっ!まさか1日経ってからルール違反に言及するなんて!

とにかく、静音を守らないと……!
96 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2016/08/10(水) 23:47:01.83 ID:YuzC0UkAO






ガンッ!






97 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2016/08/11(木) 00:00:58.77 ID:P0g2HE6AO
赤穂「えっ」

気が付いた時、モノクマの頭には鉄パイプみたいな物が突き刺さっていた。

そしてそれを持っていたのは……

六山「はぁ、はぁ……」

ジェニー「モ、モモカ!?」

六山「……ボス撃破、だね」カチカチ

津浦「そんな時までゲームをするその胆力……凄まじいですね」

御影「……でもさ、これ当然スペアいるんじゃ」

モノクマ「もちろんいますとも!あーあー、もう嫌になるよ!」

六山「あ……」

モノクマ「どうしようかな……ボクとしては見せしめは1人に抑えたいし……」

鞍馬「……」

モノクマ「よし!事故と故意って事で……六山さんだけの処刑で許してあげましょう!というわけで出でよモノクマ戦車ー!」

キャタピラの音を響かせてモノクマの顔をマークにした戦車がやってくる。

そしてモノクマはそれに乗り込んで六山に、砲口を向けた。

六山「……!」

モノクマ「それではこれより六山百夏さんの処刑を開始します!」

四方院「っ……どうか考え直してください!」

モノクマ「イヤだよーだ!まあ、もしもボクをいっさい傷つけずに戦車を破壊したらその努力に免じて助けてあげてもいいよ?」

佐場木「貴様……!」

モノクマはそんな事が出来ないとわかってて言ってる……どこまでこっちを馬鹿にすれば……!

モノクマ「それではまいりましょう!」

六山「あ、あああ……!」

モノクマ「オシオキターイム!」
98 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2016/08/11(木) 00:04:05.94 ID:P0g2HE6AO






如月「なるほど、ならばその条件を達成させていただきましょうか」






99 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2016/08/11(木) 00:20:26.50 ID:P0g2HE6AO
赤穂「如月さん!?」

六山と戦車の間に割って入るように現れた影。

それが如月さんだと理解したのは、戦車から砲弾が発射されたのとほとんど同時だった。

如月「……はあっ!」

その砲弾を……如月さんは、明後日の方向に蹴り飛ばした。

グレゴリー「なんと!?」

薄井「……マジかよ」

モノクマ「いくらなんでも無茶苦茶すぎない!?」

如月「これぐらいでなければ、あなた達には対抗出来ませんから」

ジャンプした如月さんは戦車の上に着地、モノクマを中から引きずり出す。

モノクマ「うわわわわっ!?」

そしてモノクマを空に向かって投げ飛ばした如月さんは……

如月「一・撃・必・滅!でいいいいいいいやぁ!!」

戦車に拳を突き入れた。

四方院「はっ……皆様、伏せて!」

四方院さんの言葉に咄嗟に伏せた瞬間、戦車が爆発を起こして風が吹く。

その爆炎の中から……

如月「これでいいでしょうか?モノクマ」

モノクマ「……」

無傷のモノクマを抱えて、如月さんは現れた。
100 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2016/08/11(木) 00:32:41.95 ID:P0g2HE6AO
モノクマ「……いやいやいやいや」

モノクマ「普通本気でやる?あり得ないって……」

如月「可能性がある以上僕はやるだけですよ。これで問題ありませんよね?」

モノクマ「ぐっ、ぐぐぐ……今回だけは、見逃してあげるよ!」

モノクマが消えた後も、俺達は沈黙を崩せなかった。

如月「……六山さん、大丈夫ですか?」

六山「う、うん……」カチカチ

気を落ち着けるためか撃たれた後もずっとゲームをしていた六山もこれには動揺しているみたいだ。

赤穂「……」

これが……【超高校級のヒーロー】。

俺とは、全く違う。

次元の違う、存在だった。
101 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2016/08/11(木) 00:33:53.12 ID:P0g2HE6AO
本日はここまでです。
102 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2016/08/13(土) 21:07:11.82 ID:GEV5xk8AO
【赤穂のコテージ】

赤穂「……」

夜のアナウンスが流れてもう1時間くらい経つ。

だけど俺は未だに眠る事が出来ずにいた。

赤穂「……」

あの時、危うく誰かが殺されかけて。

それを如月さんは誰1人欠けさせる事なく終わらせてみせた。

【超高校級のヒーロー】……如月さんはこれからもその名に恥じない生き方をしていくんだろう。

赤穂「……」

なら俺は?

俺は【超高校級のヒーロー】として何が出来るんだ?

赤穂「……はあ」

少し外に行くか……風でも当たって気分を切り替えよう。
103 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2016/08/13(土) 21:35:14.37 ID:GEV5xk8AO
【ホテルミライ・プールサイド】

赤穂「星が凄いな……」

日本にいた頃は青空や星なんてまるで見る機会がなかった。

それはそれだけ余裕がなかったのもあり、絶望達の爪痕が空からそういったものを消してしまったからでもある。

赤穂「だけど……少し離れればまだこんな空は広がってる」

俺には【超高校級のヒーロー】なんて大それた肩書きだけど……少しであの赤茶けた空をこの空みたいに戻るように出来れば。

赤穂「……少し難しく考えすぎてたな」

戻ろう、そう思って俺は夜空を見上げていた顔を戻し――
104 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2016/08/13(土) 21:36:30.91 ID:GEV5xk8AO






赤穂「…………っ!?」






105 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2016/08/13(土) 21:44:02.91 ID:GEV5xk8AO
再び空を見上げる。

月や星は相変わらず輝いていて、何も変わってない。

赤穂「なんだ今の……」

だけど今強烈な違和感……そう、違和感を確かに覚えた。

まるで間違ったピースを無理やりはめて作ったパズルを見せられてるような……

赤穂「……」

だけどその違和感がまた芽を出す事はなく……

赤穂「気のせい、だったのか?」

俺は首をかしげながら、コテージに戻るしかなかった。
106 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2016/08/13(土) 22:04:23.59 ID:GEV5xk8AO
【4日目】

キーン、コーン、カーンコーン

モノクマ「7時です!さあ、起きた起きた!」

モノクマ「今日も張り切っていきましょー!」

赤穂「……」

結局あの違和感が気になってほとんど眠れなかったな……

だけどいくら考えても何がおかしいのかはわからなかった。

赤穂「ああ、ダメだダメだ!明日はパーティーなんだし頭を切り替えないと……」

きっと気のせいだったんだろうなと首を振る。

赤穂「よし、とにかく今は牡丹を迎えに行こう」


――――


御影「……おはよ」

赤穂「なんだ、外で待ってたのか」

御影「いちいちコテージに乗り込まれるのもアレだし」

赤穂「まっ、待っててくれたって事は嫌がられてる訳じゃないみたいで良かったよ」

御影「……別に。先に行って兄貴が待ちぼうけしてるのもかわいそうなだけだし」

赤穂「そうかそうか」

全く素直じゃないな……
107 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2016/08/13(土) 22:41:15.84 ID:GEV5xk8AO
赤穂「懇親会の準備は順調なのか?」

四方院「えぇ。会場もだいたい目星をつけました」

静音「どうだ!奏はパーフェクトだから2日あれば凄いパーティーが出来るんだぞ!」

四方院「ふふ、ありがとう凪」

静音「それにこのぼくと奏の特別演奏会があるんだから、他の何がなくても成功するに決まってるよ!」

赤穂「特別演奏会?」

四方院「懇親会の時わたくしと凪で演奏をしようと思いまして」

静音「奏ならぼくの指揮がなくてもパーフェクトな独奏出来るんだぞ!」

四方院「そんな事ありません。凪の指揮はわたくしにとって欠かせないものですわ」

静音「そうなの?」

四方院「えぇ、だから懇親会の時も素晴らしい指揮をお願いしますわ」

静音「えへへ、奏がそう言ってくれるならぼく頑張る!」

本当に仲がいいなこの2人は……
108 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2016/08/16(火) 22:57:30.47 ID:j66ykSxAO
今日もみんなは明日のパーティーに向けての準備をしているらしい。

俺は見回りも兼ねて様子を見る事にした。

赤穂「あれは……遠見とグレゴリーか?」

グレゴリーが遠見に何か渡してるみたいだけど……

グレゴリー「祭宴に向けて我が天具を授けよう……さあ千里眼の担い手よ!封印から解き放つがいい!この雲裂き海を割る恵みの刃を!」

遠見「……ただの包丁に見えるのでありますが」

グレゴリー「甘い!甘いぞ千里眼の担い手よ!この恵みの刃は我が秘術によって時空間をも両断する魔剣なのだ!」

遠見「えー……つまりはよく切れる包丁でありますか?」

グレゴリー「然り!故に神からの恵みを儀式の器に捧げ振るった時……器さえも暗黒の彼方へと消し飛ばす!!」

遠見「それまな板も切れるって事でありますか!?」

グレゴリー「ふっ……千里眼の担い手も我が天界の言霊が視えるようになってきたようだな」

遠見「そんなの使えるわけないでありましょうが!」

グレゴリー「なん、だと……」

赤穂「……遠見、大丈夫か?」

遠見「赤穂殿!グレゴリー殿を何とかしてほしいのであります!」

グレゴリー「ええい、ならば時空転移を引き起こす冷気の宝物庫か灼熱の力を持ちし鍋はどうだ!」

赤穂「どれもこれも危険な匂いしかしない……!?」

遠見「却下に決まっているであります!」

グレゴリー「なんと……!」

グレゴリーが目に見えて落ち込んでるけど……まあ、しかたないよな。
109 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2016/08/16(火) 23:29:08.10 ID:j66ykSxAO
あれからグレゴリーの天具……もとい危険物は佐場木と遠見によって回収された。

赤穂「なんなんだよ、冷蔵と冷凍が入れ替わる冷蔵庫とかバーナー内蔵型の鍋って……」

冷蔵庫の方なんてどこかの街に大型の物があるらしいし。

六山「むにゃむにゃ……」

まだ危険物がないか見ると佐場木と遠見に引きずられていったグレゴリーの事を思い返してると、砂浜のヤシの木にかかったハンモックで六山が寝ているのを見つけた。

六山「んー……むにゃ」

赤穂「……」

また随分と気持ちよさそうに寝てるな……

六山「んっ……大丈夫……もっとゲーム……ぐぅ」

夢の中でもゲームか……六山らしい、のか?

六山「……んう?」

赤穂「あっ、悪い。起こしたか?」

六山「あれ……あー…………そっか、夢か」

六山はキョロキョロと辺りを見回して今の状況を思い出したのか、露骨にガッカリしている。

赤穂「ゲームの夢でも見てたのか?」

六山「そうだよー。せっかく長年続編を待ち望んでたゲームの続編発売日だったのに……」

赤穂「あー、それは確かにガッカリするか」

六山「世の中ままならないよね。続編が欲しいゲームに限って出ないし、ハッピーエンドのゲームをわざわざバッドエンドの続き設定で続編出したり」

赤穂「……六山?」

なんか様子が……

六山「他にも露骨に裏側の意図が見えてるやつとか攻略できないキャラクターに限って魅力的なやつとか……」

もしかして、まだ寝ぼけてるのか!?

赤穂「お、おい六山……」

六山「だいたい―ー」

…………

六山「んっ……?そっか、わたし寝てたんだっけ……あれ?」

赤穂「……」

六山「赤穂くんどうしたの?顔色悪いよ」

赤穂「い、いや……ちょっと愚痴を聞いててな」

六山「そうなんだ?」

赤穂「あ、ああ」

……覚えてないのか。

あれだけの言葉の洪水を浴びせかけて……

なんか、脱力感が……
110 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2016/08/20(土) 22:09:48.15 ID:oFUsg17AO
【港】

鞍馬「……」

赤穂「んっ?」

鞍馬の奴、あんなところで何してるんだ?

赤穂「鞍馬」

鞍馬「なんでしょうか?」チクチク

赤穂「いや、何をしてるんだ?」

鞍馬「ぬいぐるみの作成です」

赤穂「ぬいぐるみ……そのウサギみたいなやつか」

鞍馬「ウサミです。未来機関のマスコットになる予定だとか」

赤穂「マスコット……」

正直このウサミとやらを見てると、モノクマの影がちらつくんだが……

赤穂「もしかして、前にマーケットで探してたのってこいつを作るための材料とかか?」

鞍馬「そうです」チクチク

赤穂「……」

鞍馬「……」チクチク

会話が続かない……鞍馬は長い髪で表情がわかりにくいし、なんかなに考えてるかよくわからないからな……

鞍馬「……出来ました」

でも牡丹の事といい、悪い奴ではなさそうだ。

鞍馬「ノルマは後10体ですか」

……変わった奴ではあるけど。
111 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2016/08/20(土) 22:42:27.29 ID:oFUsg17AO
【ロケットパンチマーケット】

鞍馬の作業を邪魔するわけにもいかずマーケットに行くと佐場木が不機嫌そうにケースを台車に乗せていた。

佐場木「グレゴリーめ……よくもあれだけの危険物を」

赤穂「回収は終わったのか?」

佐場木「赤穂か……奴のコテージにあった物は押収した。これからこのケースに入れて保管する」

赤穂「4つのケースってそんなにあったのか……」

佐場木「あの男は一度思い付くとそれがどんなものであれ、作らずにはいられないようだ」

赤穂「全部自作なのか!?」

佐場木「そのためだけにあらゆる分野のプロに弟子入りしていたようだな。全く呆れるほどの情熱というべきか」

赤穂「……」

情熱というなら佐場木も相当だけどな……

如月「おや、赤穂さんもいましたか」

赤穂「き、如月さん!?」

佐場木「……その言いぐさからして俺に用か」

如月「遠見さんから聞きました。佐場木さんが危険物を保管するケースを取りに行ったと」

佐場木「……余計な事を」

如月「お手伝いしますよ。僕達は仲間なんですからね」

如月さん、佐場木に敵意向けられてるのに……さすがヒーローだ。

佐場木「仲間?はっ、笑わせるなよ」

赤穂「お、おい佐場木」

佐場木「俺は貴様を仲間などと認めるつもりはない」

佐場木「いい機会だ、はっきり言ってやる如月怜輝……俺は必ず貴様を地獄に叩き落とす」

佐場木「法の裁きでな!」

佐場木は如月さんを睨み付けると、台車を押してマーケットから出ていってしまった。

如月「……まいりましたね。どうやら僕は嫌われてしまっているみたいだ」

赤穂「……如月さん」

如月「すみません、赤穂さんにも嫌なものを見せてしまいました」

赤穂「き、気にしないでください!俺にとっては如月さんは憧れのヒーローですから!」

如月「……ありがとうございます赤穂さん。そう言ってくれるだけで僕は救われますよ」

赤穂「そ、そんな救いだなんて……」

如月さんにそう言われるなんて……感激だ!
112 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2016/08/20(土) 23:10:21.29 ID:oFUsg17AO
【赤穂のコテージ】

如月さんとしばらく話してから俺はコテージに戻っていた。

赤穂「はあ……」

どうして佐場木はあんなに如月さんを敵視するんだ?

俺には全くわからない。

「……!」

赤穂「んっ?」

誰か外で騒いでるのか?

【ホテルミライ】

道掛「だからさ、俺としては清く正しい恋愛ってマジ大事だと思うわけよ!」

苗木「青春だから?」

道掛「そういうこった!」

道掛と苗木か……2人はプールに足だけつけて雑談してるみたいだな。

道掛「だけどここの女の子って可愛い子ばっかだから、俺としても誰にアタックしようか迷うんだよなぁ」

苗木「あはは……それは大変だ」

道掛「苗木もそう思うか!?だよな、可愛い子に囲まれるのも困っちゃうよな!」

苗木「あはは……」

道掛「俺としてはなぁ……やっぱり牡丹ちゃんが気になるんだよなぁ」

は?

苗木「ああ、それはなんとなくわかるかも」

は?

道掛「あの儚げな雰囲気!それでも赤穂の前では気の強い妹でいようとするいじらしさ!何より可愛い!」

は?

道掛「よっしゃ、俺は決めた!牡丹ちゃんにアタックす……」

赤穂「牡丹になんだって?」

道掛「うおわっ!?」ザバァン!

苗木「み、道掛クン!」

全く、油断も隙もあったもんじゃない……!
113 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2016/08/20(土) 23:27:35.52 ID:oFUsg17AO
【ホテルミライ・レストラン】

御影「あのさ……近いよ兄貴」

赤穂「気にするな。お前のためだ」

御影「いや、意味わかんないって」

赤穂「いいからいいから」

御影「よくないよくない」

いつ牡丹に毒牙がかかるかわかったもんじゃない……兄としては心配だ。

兵頭「……どうしたんですか?ずいぶん距離が近いですけど」

赤穂「ちょっとな」

御影「わけわかんないって……」

兵頭「ああ、なるほど。私にはわかるかもしれません」

御影「えっ、この兄貴の奇行が?」

兵頭「お2人は何年かぶりに再会したんでしょう?だから赤穂さんは御影さんに構いたくてしかたないんじゃないですか?」

赤穂「なっ……」

御影「えっ、マジで?」

赤穂「い、いや違うぞ兵頭!俺はただ悪い虫がつかないようにだな」

兵頭「なるほど、そういう理由でしたか」

はめられた!?

御影「悪い虫?」

赤穂「何でもない!牡丹は気にしなくていいからな!」

御影「いや、気にするって……」

兵頭「ふふっ、お兄さんは大変という事ですよ御影さん」
114 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2016/08/20(土) 23:56:47.36 ID:oFUsg17AO
【ホテルミライ・ロビー】

土橋「えーと……」

津浦「そこはですね……」

土橋と津浦が耳にイヤホンを片方ずつつけながら何か話している。

時々2人が英語を口にしているのが聞こえるから、多分勉強か?

土橋「いやあ、難しいなぁ!もっと勉強しとけばよかったかも」

津浦「会話となると授業で習うものとは違うポイントが必要になる場合もありますから」

土橋「そうかぁ」

赤穂「勉強してるのか?」

津浦「Mr.赤穂。はい、ここが拠点となるなら海外の方々と話す機会も増えるだろうからと」

土橋「その時にいちいち琴羽に頼るわけにもいかないしね」

赤穂「ああ、それもそうだな……」

津浦「Mr.赤穂もよろしければ日常会話ならお教えしますよ?」

うーん……この先の事を考えたら確かに必要になるか。

赤穂「それじゃ、俺も教えてもらおうかな」

土橋「アタシも頑張らないとね!」

津浦「それではまずは……」

その後津浦に英会話を習った。

慣れない事したから頭が痛いな……
115 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2016/08/21(日) 21:35:12.96 ID:RIn6K8jAO
【赤穂のコテージ】

キーン、コーン、カーンコーン

モノクマ「夜10時になりました!」

モノクマ「そろそろお休みした方がいいよ!」

モノクマ「うぷぷ、また明日……」

赤穂「いよいよ明日が懇親会か……」

色々あったけど、この4日間俺達は特に問題なく過ごせてると思う。

赤穂「懇親会がうまくいくように頑張らないとな……」
116 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2016/08/21(日) 21:55:12.19 ID:RIn6K8jAO
【5日目】

キーン、コーン、カーンコーン

モノクマ「7時です!さあ、起きた起きた!」

モノクマ「今日も張り切っていきましょー!」

赤穂「よし、行くか!」

【ホテルミライ・レストラン】

四方院「皆様おはようございますわ。いよいよ本日未来機関第二十支部懇親会を開催いたします!」

兵頭「会場はどうなさるんですか?」

四方院「港に1つちょうどいい倉庫がありましたの。あそこを使わせてもらいますわ」

薄井「倉庫って、オイオイ……」

静音「むっ!薄井、そんな風にしてて後からギャフンってなっても知らないからな!」

薄井「へいへい」

四方院「開始時間は7時頃を予定しています。それまでの間、料理や飾り付けをしたいと思いますので手伝ってくださる方は港に来てください」

道掛「よっしゃ!俺も最終調整といきますか!」

ジェニー「ボクもがんばりますです!」

みんな張り切ってるな……俺も出来る事はしないと――
117 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2016/08/21(日) 21:55:52.47 ID:RIn6K8jAO






キーン、コーン、カーンコーン…






118 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2016/08/21(日) 22:04:02.70 ID:RIn6K8jAO
苗木「えっ、こんな時間にチャイム?」

モノクマ「うぷぷぷ、オマエラ今すぐ中央の島にある第二十支部に集合してください!」

土橋「ちょっとちょっと……今度は何する気よ」

佐場木「コロシアイ学園生活を思い出せば想像はつくがな」

津浦「このタイミングで動機を……!?」

グレゴリー「ふむ、絶望の化身が行使する鍵としては妥当ではある」

六山「えっと、とにかく行こう。この前みたいな事言われたらたまらないよ」

静音「うっ、震えが……奏ぇ」

四方院「大丈夫です凪。もうあんな事にはさせませんわ」

遠見「それでは行くとするでありますか」

赤穂「そうだな」

動機……いったい何をしてくるつもりなんだ?
119 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2016/08/21(日) 22:25:00.80 ID:RIn6K8jAO
【未来機関第二十支部】

モノクマ「お待たせー!きちんと集まってるみたいだねオマエラ!」

道掛「こちとら忙しいってのに!何の用だクマ!」

モノクマ「クマじゃなくてモノクマ!間違えないでよね!」

如月「いいから早く話してください。どうせろくな事ではないんでしょうが」

モノクマ「せっかちだなぁ……わかったよ、さっさと本題に入るよ……」


モノクマ「オマエラの中に裏切者がいまーす!」


赤穂「……は?」

モノクマ「オマエラってほとんどが第八十期……未来機関第一期生なわけだけどさ」

モノクマ「実はなに食わぬ顔して紛れ込んでる大嘘つきがいるんだよ!」

兵頭「大嘘つき……」

モノクマ「うぷぷ、でも誰かはオマエラにはわかんないよね?オマエラはコロシアイ学園生活の教訓から各支部で指導されてきた……同期生と言っても今まで顔すら知らなかったんだから!」

御影「それは……」

モノクマ「あっ、それともう1つ」
120 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2016/08/21(日) 22:35:02.06 ID:RIn6K8jAO






モノクマ「このコロシアイ研修旅行は未来機関によるテストでも新世界プログラムでもありません!」






121 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2016/08/21(日) 22:49:42.07 ID:RIn6K8jAO
四方院「っ……!」

静音「な、何を言ってるんだ!奏が間違えたって言うのか!?」

モノクマ「うぷぷ、四方院さん自身本当にここが新世界プログラムだなんて思ってたのかな?」

静音「えっ……」

四方院「……」

佐場木「ちっ、今まで訂正しなかったのは懇親会というこの日を狙っていたな……」

道掛「ちょっと待ってくれよ!えっ、マジで……俺達コロシアイやらされてん、のか?」

鞍馬「そういう事ですね」

土橋「でもここは未来機関の支部だよ!?どうやって……」

モノクマ「未来機関は今それどころじゃないからねー!だって……おっとこれはオフレコだった!」

津浦「まさか、ワタシ達だけでは……ないんですか!?」

モノクマ「どうだろうね!コロシアイしたら教えてあげよっかなー!」

グレゴリー「絶望の化身、貴様……!」

モノクマ「それではオマエラ!改めてリアルとわかったコロシアイ研修旅行を楽しんでください!」

モノクマ「アーハッハッハッハッハ!!」
122 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2016/08/21(日) 23:26:35.13 ID:RIn6K8jAO
六山「このコロシアイがリアル……」

薄井「未来機関がそれどころじゃねえってどういう事だよ……!」

赤穂「くそっ……!」

モノクマの奴、よりによってこのタイミングで……!

佐場木「……四方院」

四方院「……わかってますわ。これでは、懇親会どころではありません」

苗木「中止って事……?」

遠見「仕方ないでありましょう……」

土橋「そうだね……色々落ち着いて考えたいし」

鞍馬「……」

俺達は改めて突きつけられた今の状況に混乱していた。

確かに、こんなんじゃ懇親会どころじゃ……
123 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2016/08/21(日) 23:29:40.90 ID:RIn6K8jAO






静音「……ぼくはやる」






124 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2016/08/21(日) 23:47:11.56 ID:RIn6K8jAO
四方院「凪……?」

静音「奏どうしちゃったの!?このコロシアイが本当なら、ぼく達はもっともっと仲良くならないといけないからパーティーやるっていつもの奏なら言ってるはずなのに!」

四方院「それは……しかしこの状況では」

静音「大丈夫だよ奏!奏の考えたパーティーやったらきっと誰もコロシアイなんて出来なくなるって!」

四方院「……」

静音「ぼく、準備あるから行くよ!奏、待ってるからね!」タタタッ

赤穂「静音……」

ジェニー「ナギ、すごいです」

兵頭「現状を重く受け止めてないとも言えますが……」

道掛「……だけど俺には響いたぜ!確かにこんな時に暗くなってなんていられねえよな!」

苗木「それじゃあ道掛クンも?」

道掛「おう!凪ちゃんと2人だけでもパーティーやるぜ!」

苗木「あはは、それは無理だよ。ボクを入れて最低でも3人だからね」

静音の言葉に同調する奴が出始める。

それは俺も例外じゃない。

こんな時だからこそ、懇親会をやるべきなのかもしれないって思ったからだ。

赤穂「……いいや、4」

御影「5人、だね」

赤穂「えっ?」

御影「私強制参加なんでしょ?それじゃ、行くしかないじゃん」

赤穂「牡丹……お前って奴は!」クシャッ

御影「髪がグシャグシャになるからやめてってば……」
125 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2016/08/25(木) 21:46:43.33 ID:FQAAxuLA0
如月「四方院さん」

四方院「……」

如月「僕は静音さんの気持ちを汲みたいと思います……あなたはどうしますか?」

四方院「……凪にあそこまで言われて、それを裏切るなんてわたくしには出来ません」

四方院「皆様申し訳ありません。わたくしはやはり懇親会を決行したいと思います」

四方院「皆様に無理強いはいたしません。ですがもしよろしければ……来ていただけると嬉しいですわ」

四方院さんは一礼すると静音を追いかけていく。

佐場木「……ふん、勝手な事を言う奴らだ」

赤穂「おい佐場木……」

佐場木「そのために危険物を管理するのは俺達だというのに……遠見、予定通りにやるぞ」

遠見「わ、わかったであります……」

兵頭「どうやら、佐場木さんも懇親会をお手伝いしてくださるみたいですね」

グレゴリー「絶望の化身よりまかれし絶望の種、しかしそれをまた打ち払う事も我らなら容易い……ならば真実への扉は1つのみ!」

ジェニー「パーティーやるです!ボクいっぱいいっぱい頑張ってスマイルを届けます!」

土橋「……この際何も考えられなくなるぐらい騒ぐのもありかな!」

六山「それじゃ予定通り、パーティーだね」

薄井「やるしか、ねえか」

津浦「皆さんは強いですね……ワタシは未だに混乱してます」

土橋「全員同じだって。だけどさ、悪い事ばかり考えてもしかたないでしょ?」

津浦「しかし……」

土橋「モノクマの思い通りになるのも癪だし、ね?」

津浦「……そうですね、そうかもしれません」

みんな懇親会をやる方向で固まったみたいだな……


鞍馬「…………」スタスタ……
126 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2016/08/25(木) 22:12:23.30 ID:FQAAxuLA0
【港・第三倉庫】

赤穂「ここが会場か……」

広さは確かにあるな……テーブルとか持ち込めば問題はなさそうだ。

だけど窓がないから暗いな……

静音「なんだ、来たのか」

奥にいたらしい静音が俺を見て寄ってくる。

四方院さんが先に来たはずだけど……いないのか?

赤穂「全員参加だよ。みんな静音に感化されたみたいだ」

静音「ふーん……ああ、それよりちょっとそこにあるスイッチ押して」

赤穂「これか」

入り口の横にあるスイッチを押すと倉庫が明るくなる。

とはいっても、やっぱり少し暗いな。

静音「うーん、奏の言った通り照明持ってきた方がいいかな」

赤穂「照明?」

静音「マーケットに電気スタンドあるだろ」

赤穂「……あったかそんなの?」

四方院「ありましたわ」

静音「奏!」

四方院「ありがとう凪。貴女のおかげでこの四方院奏はまた立ち上がりました」

静音「えへへ」

赤穂「それが照明か?」

四方院さんが持ってきた台車には大小3つぐらいの電気スタンドが並んでいた。

……だけどこのスタンドガラス製っぽいのになんか大きいな。

四方院「ブレーカーの関係でこれしか使えないみたいですの。電源はコンセントが奥にあるようですわね」

赤穂「どれどれ……」

一番小さな照明……それでも高さ2メートルはあるやつだ。

それについたコードを持って奥に行くとコンセントの穴が確かにあったから差し込む。

するとパッと倉庫が明るくなった。

静音「わあ、明るい!これが3つあるなら十分だね奏!」

四方院「ふふ、そうですわね」
127 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2016/08/25(木) 22:33:24.86 ID:FQAAxuLA0
苗木「……あれ?」

スタンドの電球が1つ切れかかっていたからマーケットに向かうと、苗木が首を傾げていた。

赤穂「どうした?」

苗木「あっ、赤穂クン。いや、なんかガラスの壺とか置物がなくなってるんだよね」

赤穂「そうなのか……誰かが倉庫に持っていったのか?」

苗木「ああ、倉庫だけあって殺風景だもんね……じゃあ問題ないか」

赤穂「なんだ、見張りでもしてたのか?」

苗木「あはは、ちょっとした自主休憩だよ」

赤穂「おいおい、サボりか?」

苗木「ごめん!見逃して!」

赤穂「はあ……ほどほどにしとけよ?」

苗木「もちろん!あと少しにしとくよ!」

いや、出来れば見つかった時点でやめてほしいんだけどな。
128 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2016/08/25(木) 22:47:34.18 ID:FQAAxuLA0
土橋「えーっと、後は……」

グレゴリー「土塊の錬成師よ!今すぐ思考の波をせき止めるのだ!そしてこの天界の囀りを……」

土橋「却下、というか邪魔」

グレゴリー「ぐ、ぐううう……冷気の障壁を張られたか!」

赤穂「何してるんだいったい……」

土橋「凪と奏が演奏やるからちょっと木材で簡単なステージをね」

グレゴリー「演舞の祭壇ならばやはり地より這い出す異世界のゲートを錬成するべきではないか!」

土橋「そんなもの作ってたら間に合わないって言ってんの!」

多分グレゴリーは舞台の奈落を作りたいんだな……まあ、あの対応だと無理っぽいけど。
129 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2016/08/25(木) 23:11:12.45 ID:FQAAxuLA0
結局土橋にグレゴリーの案は全部却下され、木で出来た長方形のステージが完成した。

コンセントの関係上奥に置かれたそのステージの両サイドに大きめの電気スタンドを置く。

小さな電気スタンドは中心に置いて、それを囲む形でテーブルを置いていく。

そうして準備に追われて……気がついたらもうすぐ開始時刻の夜7時だった。

赤穂「……で、これはなんなんだ?」

四方院「カスタネットですわね」

赤穂「まさか俺に鳴らせっていうのか?」

四方院「えぇ、凪の指揮を生かすにはやはりわたくし1人というのも味気ありませんし」

赤穂「いや、だからといって俺1人増えても……」

四方院「ご安心くださいな。苗木さんにトライアングルをまかせてますので」

いいのか、それで……
130 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2016/08/25(木) 23:28:56.17 ID:FQAAxuLA0
赤穂「……んっ?」

なんか揉めてるのか……?

佐場木「……テーブルにあるこのガラスの置物や壺は誰が持ち込んだ?」

道掛「俺だけどなんかまずかったか?」

佐場木「割れれば……いや、これそのものも凶器になるだろう」

兵頭「そこまでするんですか?」

佐場木「仮にも動機のような物を出された後。警戒はするべきだ」

薄井「あんなに身体検査までしといてそこまでする必要あんのか?」

遠見「佐場木殿、割れないように見張れば大丈夫でありますよ。自分がしっかりと見張るでありますから!」

佐場木「……ならいいがな」スタスタ

道掛「なーんかピリピリしてるよな佐場木」

如月「佐場木さんは責任感が強いんでしょうね。このコロシアイ研修旅行……誰も死なないように気が張ってるんでしょう」

道掛「なるほどねぇ」

赤穂「……」

うーん、あんなに警戒して佐場木は楽しめるのか……?
131 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2016/08/25(木) 23:48:13.42 ID:FQAAxuLA0
御影「もうすぐ7時だね」

赤穂「そうだな。だけど意外だったよ」

御影「何が?」

赤穂「お前が参加するって自分から言い出したのがだよ」

最初はあんなに嫌がってたのにな。

御影「別に……強制だからだし」

赤穂「はいはい、わかってるよ」

御影「ちぇ……あっ」

赤穂「どうした?」

鞍馬「……」

御影「あいつも来たんだ」

赤穂「ああ、鞍馬か。なんだかんだで全員での集まりには参加するんだよな」

御影「ふーん……」

赤穂「なんだ、鞍馬が気になるのか?」

御影「……ちょっとだけ、ね」

赤穂「えっ、嘘だろ!?」

御影「いや、兄貴は気になんないの?あいつの才能」

赤穂「……ああ、そういう話か」

鞍馬の才能か……確かにあいつは才能を話そうとはしないけど……

赤穂「別に気にはならないな」

御影「裏切者かもしんないのに?」

赤穂「だったら適当な才能騙るだろ」

才能を話そうとしないなんて怪しんでくださいって言ってるようなもの。

だから鞍馬は違うと思うんだよな……

赤穂「だいたいそれ言い出したらお前はどうなんだよ」

御影「それは……」

赤穂「というかそうだよ。お前いったい何の才能なんだ?」

少なくとも俺が知る牡丹は運動苦手だし勉強も普通だったよな……?

御影「……ペット」

赤穂「は?」

御影「【超高校級のペット】とか」

赤穂「……」

御影「いや、冗談だからひかないでよ」

赤穂「変な冗談言うなよ……」

冗談。

冗談か、そりゃそうだよな。

……本当に冗談なんだよな?

御影「……」

なあ、牡丹。
132 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2016/08/26(金) 00:20:40.73 ID:RBhPKvCA0
次回事件発生します。
絶望編でとうとう生徒会が出ましたがこっちの設定の生徒会はパラレルって事でよろしくお願いします。
133 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2016/08/26(金) 21:45:53.66 ID:RBhPKvCA0
そして7時……

四方院「皆様、お待たせいたしました」

四方院「これより未来機関第二十支部懇親会を始めたいと思いますわ!」

四方院「モノクマによるこの状況は決してよきものとは言えませんが……」

四方院「この懇親会で団結を深め、明日からより一層この状況の打開に努めましょう!」

四方院さんのそんな挨拶で懇親会は始まった。

赤穂「みんな楽しんでるみたいだな……」


道掛「うおおお!やっぱり飯がいつもよりグレード高いぜ!」

苗木「み、道掛クン落ち着いて食べないと危ないよ」

六山「うんうん、喉に詰まらせたら大変大変」カチカチ

苗木「六山さんもゲームしながらなんてやめなって!?」

グレゴリー「むうっ!?」

四方院「どうしましたの?」

グレゴリー「堕落をもたらす果実酒がなぜここに!?」

津浦「【これはもしかしてリンゴジュースですか!?】とのことです」

四方院「ああ、確かにそれはリンゴジュースですわね……お嫌いでしたの?」

グレゴリー「ぐうううっ……」

静音「なんだ、だったらこのオレンジジュースならどうだ?」

グレゴリー「その果実ならば問題はない……感謝するぞ鎮魂の指揮者」

静音「ぼくも玉ねぎ嫌いだから気持ちはわかるぞ!」

四方院「凪、それは自慢気に言う事ではありませんわ」


赤穂「……」

一部大変みたいだけどな。
134 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2016/08/26(金) 21:59:58.28 ID:RBhPKvCA0
佐場木「…………」

土橋「ねえ、懇親会なのに眉間に皺寄せて壁の花はどうなの?」

佐場木「浮かれているわけにもいかん。ここは敵地と変わらないんだ」

ジェニー「ハンジはスマイル見せてくれないですか?」

御影「やめときなって。ああいうタイプは笑ったら人殺せるほど酷いから」

赤穂「牡丹、さすがに言い過ぎだぞ。佐場木の笑顔が想像出来ないのは確かだけどさ」

佐場木「貴様ら、俺をなんだと思っている」

土橋「日頃から仏頂面だからそう思われるんだよ。ちょっとは笑ってみたら?」

ジェニー「ハンジのスマイル!ボク見てみたいです!」

佐場木「……改まって見せるようなものじゃない」

御影「あっ、やっぱり酷いんだ」

おいおい、牡丹のやつ煽りすぎだぞ……

佐場木「赤穂、貴様は妹にどんな教育をしている……!」

赤穂「い、いや、俺が教育したわけじゃ……ちょっと牡丹こっち来い!」

御影「うわっ、ちょっと兄貴」

佐場木「……」

ジェニー「ハンジ怒っちゃったです……」

土橋「さすがにやり過ぎたね……」

佐場木「笑顔など簡単に…………」

佐場木「ちいっ、笑い方を忘れたか……」
135 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2016/08/26(金) 22:17:23.24 ID:RBhPKvCA0
御影「後少しで笑わせられたのに」

赤穂「俺には爆発する予感しかしなかったぞ……んっ?」

薄井「……」

薄井のやつ、上の空みたいだな……あっ、如月さんが……

如月「薄井さん」

薄井「なんだよヒーロー」

如月「せっかくのパーティーなのに楽しまなくていいんですか?」

薄井「外がどうなってるかわかんねえのに楽しめるかよ……付き合いで来てんだからそれでいいだろ」

如月「じゃあ薄井さんはどうするんですか?今は団結してモノクマに立ち向かわなければいけないと僕は思いますが」

薄井「……」

如月「コロシアイに乗りますか?」

薄井「……はっ、アホか。オマエにそんな疑われてる時点で学級裁判なんか乗りきれるかよ」

如月「それは乗らないと捉えても?」

薄井「好きにしろよ……」

如月「それでは話し相手になってください。1人でいるよりは有意義ですよ」

薄井「強引だなオマエ……」

……薄井は如月さんに任せれば大丈夫そうだな。

御影「兄貴どうしたのさ」

赤穂「いや、なんでもない」
136 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2016/08/27(土) 22:55:03.33 ID:chbv7ouA0
遠見「異常なしでありますね」

兵頭「遠見さん、飲み物どうぞ」

遠見「感謝であります兵頭殿」

赤穂「見張りなんて大変な役割をよく引き受けたな……交代するか?」

遠見「いえ、自分は慣れてるでありますから適任でありましょう」

御影「あー、慣れちゃうと楽な事ってよくあるしね」

遠見「肯定であります。それにこの会場の入り口で身体検査した時などもっと大変でありました……」

兵頭「ああ、あれですか」

遠見「鞍馬殿や薄井殿は何も語らず雰囲気がキツかったでありますし……」

遠見「道掛殿は自転車で入り、グレゴリー殿は仮面を外す気はないと大騒ぎ……」

遠見「かと思えばジェニー殿がいつの間にやら箱を持ち込んでいる始末」

遠見「本当に大変だったでありますよ」

赤穂「そんな事があったのか……」

遠見「しかしこれもまた何事もなく過ごすためと考えれば……隊長も同じ状況ならこの役割を選んだでありましょうから気合いも入るというもの」

さあ、もう一度見回りであります!と遠見は走っていった。

なんだか頭が下がるな……
137 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2016/08/27(土) 23:17:42.36 ID:chbv7ouA0
鞍馬「…………」

赤穂「そんな隅っこで何してるんだ鞍馬」

鞍馬「特に何も」

御影「本当に無愛想なやつだね……私も人の事言えないけど」

鞍馬「…………」

御影「怒りもしないし」

赤穂「……鞍馬、1人でいようとしてると何かあった時孤立するぞ?」

鞍馬「ご心配なく。僕は孤立しようとやっていけますので」スタスタ

御影「……なにあれ」

赤穂「……」

一匹狼なのか、それとも何か理由があるのか……

いるだけでもまだマシなのか……?
138 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2016/08/28(日) 07:49:20.14 ID:CqkxAOnA0
ジェニー「レディースアンドジェントルメーン!」

赤穂「んっ?」

懇親会が始まってから30分……ステージに上がって会釈をしているジェニーにみんなの視線が集中する。

ジェニー「今からボクの芸を披露したいと思いますです!」

ジェニーの隣には土橋が作った木箱がある。

少し大きめの、それでもせいぜいジェニーでも腰まで入るのが関の山だろう大きさの箱。

ジェニー「今からこのボックスに入ってみせますです!」

ジェニーは笑顔でそう言うと、箱の蓋を開けてその中に入った。

さっき言ったように腰までしか入らない箱……だけど。

御影「どんどん箱に入ってるね……」

まるで飲み込まれていくみたいに、ジェニーの身体が箱の中に消えていく。

如月「どうやら身体を上手く曲げて箱の中に入っているようですね」

そしてとうとうジェニーの頭まで箱の中に収まった。

津浦「……大丈夫なんでしょうか?」

グレゴリー「ふむう」

箱からジェニーの腕が出てきてまるでお辞儀をするかのような動きの後、蓋を掴んで箱は完全に閉じられた。

次の瞬間。

道掛「うおっ、回った!」

薄井「ステージを転がってやがる……目回さねえのか?」

土橋「ジャンプまで……あの箱でよく出来るなぁ」

ステージを縦横無尽に動き回る箱に俺達は目が離せない。

しばらくして箱は段々と動きを遅くして、ステージの中央で止まった。

六山「あっ、止まったね」

御影「……」

動きを止めた箱の蓋が開いてジェニーが脚から飛び出してくる。

そして身体を捻りながら蓋を閉めたジェニーは……箱の上に座るように着地した。

ジェニー「イエイ!」

苗木「凄い!凄いよジェニーさん!」

兵頭「【超高校級の道化師】の名は伊達ではないという事ですね」

ジェニー「ありがとうです!」

佐場木や鞍馬も表情こそ変わらないけど、ジェニーに拍手を贈っていた。

だけど……俺この後にカスタネット叩くのか……
139 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2016/08/28(日) 08:42:23.59 ID:CqkxAOnA0
四方院「ジェニーさん、素晴らしかったですわ」

ジェニー「少しでもみんなをスマイルに出来たら嬉しいです!」

静音「奏、ぼく達も負けてられないよ!」

四方院「そうですわね。赤穂さん、苗木さん!こちらに来てくださいな」

赤穂「とうとうやらされるのか……」

御影「なに、兄貴もなんかするの?」

赤穂「ちょっとな……笑うなよ?」

静音と四方院さんの所に苗木と向かう。

赤穂「カスタネットか……叩くのいつ以来だっけかな」

苗木「トライアングルなんて小学校の時ぐらいしか鳴らした事ないなぁ……」

静音「大丈夫だ、ぼくの指揮通りにやればな!」

四方院「任せましたわ凪。それでは皆様行きましょう」

ステージに上がると早速牡丹が笑いをこらえているのが見える。

わかってるよ、カスタネット似合わないのは!

静音「えーっと……ああ、ここか」

静音がステージの中央に立つと俺達の方に向き直って指揮棒を構える。

その時の静音はいつも騒いでる姿とはまるで別人に見えた。
140 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2016/08/28(日) 08:53:00.18 ID:CqkxAOnA0
いざ演奏が始まるとさっきまで話し声も聞こえていた会場は静まり返っていた。

フルートに合わせてカスタネットとトライアングルの音が鳴る。

四方院さんのフルートは聞いているだけで心が落ち着いて、俺も苗木も聞き惚れて演奏を忘れそうで。

それをさせずに演奏を続けていられるのはひとえに静音の指揮があるからだ。

本当に別人みたいだよな……

静音「……」チラッ

赤穂「……?」

静音、何を見てるんだ?

その方向を俺も見ようとしたその時。

バチィッ!!

ブツンッ!

辺りが暗闇に包まれた。
141 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2016/08/28(日) 09:28:40.01 ID:CqkxAOnA0
赤穂「は!?」

「停電!?」

「漆黒の闇が世界を覆い尽くすか……ふははははっ!これもまた一興か!」

「なんで扉閉まってんだよ!?真っ暗じゃねえか!」

「遠見!どこにいる!」

「中央!今から倉庫の扉を開けに行くであります!」

「えっ、なんで?こんなの聞いてな……」

「と、とにかくみんなトライアングルでも聞いて落ち着いて!」

「うるさいからトライアングル連打はしないでよ!」

「六山さん、ゲーム機の明かりを使えませんか?」

「ごめん、ビックリして落としちゃった……」

「暗闇に目が慣れるには時間がかかります……ここはしばらく様子を――」
142 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2016/08/28(日) 09:29:38.93 ID:CqkxAOnA0






ガシャアアアアンッ!!






143 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2016/08/28(日) 09:49:07.54 ID:CqkxAOnA0
「な、何の音ですか今の……?」

「ガラスの割れる音……?」

「ね、ねえ、なんか飛んできたんだけど……これ、血の臭いがするよ!?」

「血……!?」

「これは、まさか……」

「遠見!まだか!」

「今開けるであります!」

ガラガラガラ……

遠見が扉を開けたらしい……外の光が差し込んで倉庫の中が見えるようになる。

赤穂「……!」

見えるようになったせいかはっきりと感じた。

血の臭い……

この数年でわかるようになってしまった死の気配を。
144 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2016/08/28(日) 09:56:21.91 ID:CqkxAOnA0






【その胴体はガラスの電気スタンドに押し潰されていた】

【胸元、腹部に突き刺さるガラスの破片】

【超高校級の指揮者静音凪……】

【その身体から流れる血はステージを真っ赤に染め上げていた】






ピンポンパンポーン…!
145 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2016/08/28(日) 09:58:07.74 ID:CqkxAOnA0






モノクマ「死体発見!死体発見!」

モノクマ「捜査タイムの後学級裁判を始めまーす!」






146 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2016/08/28(日) 10:03:48.21 ID:CqkxAOnA0






CHAPT.1【正義という名の××】(非)日常編 END

生き残りメンバー17→16人

NEXT→非日常編






147 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2016/09/02(金) 20:02:28.21 ID:plPzIAJA0






CHAPT.1【正義という名の××】非日常編






148 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2016/09/02(金) 20:21:19.17 ID:plPzIAJA0
なんだよこれは……

俺達はさっきまで懇親会をしていて、和やかな雰囲気だったはずなのに……

四方院「……な、ぎ?」

苗木「う、うわあああああっ!?」

なんで、静音は血まみれで倒れてるんだよ……!?

佐場木「下がれ!」

佐場木がステージに上がって静音の腕をとる。

そして舌打ちをした佐場木は……首をただ横に振った。

佐場木「死んでいる。最も、この傷で生きていたら奇跡だがな」

津浦「み、Mr.佐場木……何かの、冗談ですよね……?」

佐場木「確かめてみるか?俺は推奨しないがな」

静音が死んだ……その事実がようやく頭で理解出来たんだろう、みんなは半ばパニックになっていた。

土橋「な、なんで!?なんでこんな事になったのよ!?」

六山「落ち着け落ち着け落ち着け……」カチカチ

道掛「ありえねえって……さっきまであんなに楽しくやってたんだぜ!?」

モノクマ「それは本当に全員そうだったのかなー?」

薄井「出やがったな……!」

兵頭「今の言葉はどういう意味でしょうか?」

モノクマ「そのままの意味だよ。だって静音凪さんはオマエラの中の誰かに殺されたんだからね!」

赤穂「俺達の誰か……この状況を見て本気で言ってるのか!?」

静音の死は、どう見ても……

モノクマ「うぷぷ、事故だって言いたいのかな?」

苗木「そ、そうだよ!これは静音さんに電気スタンドが倒れた事故にしか見えないって!」

モノクマ「だとしたらその事故を引き起こした人間がクロって事になるね!」

モノクマ「とにもかくにも人が死んだ以上、オマエラにはやってもらうよ」

モノクマ「スリルと絶望溢れる学級裁判をね!」
149 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2016/09/02(金) 20:39:01.47 ID:plPzIAJA0
鞍馬「学級裁判……」

モノクマ「たとえこれが事故だとしてもオマエラがやる事は変わりません!」

モノクマ「捜査タイムで静音さんを死に追いやったクロを見つけ出して処刑台に送る!」

モノクマ「オマエラはこの先未来機関で絶望を殺す事になるんだからデモンストレーションにはうってつけだよね!」

御影「何言って……」

モノクマ「それでは早速お約束のー……」

モノクマ「ザ・モノクマファイルー!」

モノクマ「それじゃ、ボクは準備があるんでバイバーイ!」

遠見「……どうするでありますか」

薄井「どうするも何も選択肢あるのかよ……」

グレゴリー「絶望演舞を乗りきらねば待つのは冥界への旅立ち……か」

如月「僕達は従うしかないんですか……!」

赤穂「……」

モノクマに逆らえば死ぬ、如月さんの場合は他の誰かが。

今の状況で俺達は……捜査をする以外になかった。

     【捜査開始】
150 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2016/09/02(金) 20:56:21.66 ID:plPzIAJA0
佐場木「とにかくまずは見張りを2人つけるぞ」

道掛「じゃあ俺がやるぜ。頭使うの得意じゃねえしさ……」

遠見「ならばもう1人は自分が。道掛殿が相手でも何とか出来るでありますから」

ジェニー「どうしてこうなったですか……ぐすっ」

土橋「ジェニー……」

兵頭「それを突き止めるためにも、捜査をするしかありませんね」

四方院「……わたくしは凪を殺した人を許しません」

四方院「必ず、見つけて……」

その時の四方院さんに口を挟める人間は誰もいなかった。

……もし、もしもだ。

牡丹が殺されたら俺も、同じようになっただろう。

そう思えるほど四方院さんの瞳には……家族を殺されたような怒りが滲んでいた。
151 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2016/09/02(金) 21:09:51.54 ID:plPzIAJA0
赤穂「……モノクマファイルか」

気分が悪いけど見るしかないんだよな。

【被害者は静音凪。
死体発見現場は港・第三倉庫。
死亡推定時刻は午後7時52分。
被害者はガラスで胸から腹部にかけてを損傷している。
その他の外傷はなし】

赤穂「やっぱりガラスで静音は……」

はっきり書いてある死亡推定時刻は電気スタンドが割れた時間って事か。

赤穂「……」

だけどなんだ?

何か違和感がある……

コトダマ【モノクマファイル1】を手に入れました。
〔被害者は静音凪。
死体発見現場は港・第三倉庫。
死亡推定時刻は午後7時52分。
被害者はガラスで胸から腹部にかけてを損傷している。
その他の外傷はなし〕
152 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2016/09/02(金) 21:16:37.58 ID:plPzIAJA0
静音の身体には大量のガラス片が突き刺さっている。

上を向いたまま閉じられた眼はもう開かないんだ……

道掛「転んだところに電気スタンド倒れてきたって感じだよな」

だとしたらクロは電気スタンドを倒した人間って事になるな……

赤穂「……?」

ちょっと待てよ……

さっきは事故にしか見えなかったけど……

これ、おかしくないか?

コトダマ【静音の死体】を手に入れました。
〔静音は仰向けに倒れており、胸元から腹部にかけてガラス片が突き刺さっていた〕
153 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2016/09/02(金) 22:07:38.75 ID:plPzIAJA0
赤穂「……んっ?」

何かステージに……静音の指揮棒か。

赤穂「ステージに真っ直ぐ刺さってるな……んっ?」

赤穂「……指揮棒が、真っ直ぐ?」

コトダマ【静音の指揮棒】を手に入れました。
〔静音が使っていた指揮棒。
静音の死体近くにあり、ステージに真っ直ぐ立った状態で刺さっていた〕
154 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2016/09/02(金) 22:33:59.15 ID:plPzIAJA0
苗木「ねえ、赤穂クン。ちょっといいかな?」

赤穂「どうした?」

苗木「静音さん、停電の前になんか変じゃなかった?」

そういえば……

赤穂「どこか見ているみたいだったな」

確かあっちの方を……

鞍馬「……」

赤穂「鞍馬。そこに何かないか?」

鞍馬「ありますよ……こんな物がね」

鞍馬が黒い布を取り払うとそこには……

苗木「これ……スポットライト?しかもステージに向けられてるけど」

赤穂「なんでこんな物がここにあるんだ」

しかも静音はこれのある方を見ていた……何か関係があるのか?

コトダマ【スポットライト】を手に入れました。
〔ステージ横にあったスポットライト。
黒い布を被せられていた。
ステージに光が当たるように向けられている〕
155 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2016/09/02(金) 22:54:25.65 ID:plPzIAJA0
ジェニー「これってどうしたです?」

土橋「うーん、もしかしたら……」

赤穂「何かあったのか?」

土橋「いや、ちょっとコンセントが変なんだよ」

赤穂「コンセントが?」

土橋とジェニーが見ていたコンセントは……なぜか周りが焦げたような跡があった。

赤穂「なんだこれ……」

土橋「……停電の原因これじゃない?」

赤穂「えっ?」

土橋「多分埃とか詰まってる所にコンセント差したんだよこれ。だからショートして停電した……下手したら火事になってたよ」

赤穂「ショート……」

ジェニー「でもでもスタンドはみんな点いてたですよ?」

土橋「つまり電気スタンド以外の何かって事だけど……ちょっとたどってみるね」

土橋がコードをたどって歩いていく。

あれ?あの方向にあるのは……

土橋「うわっ、何このライト!」

赤穂「……!」

あのスポットライトのコードがこのコンセントに……!?

コトダマ【焦げたコンセント】を手に入れました。
〔倉庫内のコンセントの1つが焦げていた。
土橋によるとこのコンセントのショートが停電の原因らしい〕

コトダマ【スポットライトのコード】を手に入れました。
〔スポットライトのコードは停電を起こしたコンセントに差してあった〕
156 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2016/09/05(月) 22:41:56.85 ID:ollQoY2A0
赤穂「このスポットライト……いったいなんでこんな所にあるんだ?」

遠見と佐場木なら何か知ってるか……?


――――


佐場木「あれは静音が持ち込んだ物だ」

赤穂「静音が?なんのために」

佐場木「サプライズと言っていた。内容は言えないが危ない事にはならないと頼み込んできたから許可を出して運び込んだ」

佐場木「だが、こんな事なら許可するべきではなかったのかもしれん」

サプライズか……

コトダマ【静音のサプライズ】を手に入れました。
〔静音がパーティー中に行おうとしていたサプライズ。
スポットライトを使うものだったらしいが……〕
157 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2016/09/05(月) 22:58:01.98 ID:ollQoY2A0
キラッ

赤穂「っ……?」

なんだ、今少し眩しく……

四方院「……」

赤穂「四方院さん?」

眩しさの原因は四方院さんの着ている服についた装飾が光ったからみたいだ。

そういえば気にしてなかったけど四方院さんの服……いつもと違うな。

赤穂「四方院さん、ちょっといいか?」

四方院「……なんでしょう」

赤穂「その服……いつもと違うけどどうしたんだ?」

四方院「これですか……凪が着てほしいと渡されましたの」

赤穂「静音が……」

四方院「わたくしは装飾が多すぎると思ったのですけれど、凪はどうしてもこれがいいと言って……」

四方院「……」

四方院「……すみませんけど、1人にしてくださいませんか」

赤穂「あっ、ごめんな……」

四方院「…………凪」

今静音の事を聞くのは無神経過ぎたか……

だけどなんとなく、静音のサプライズの内容が見えてきた気がするぞ……

コトダマ【四方院のドレス】を手に入れました。
〔静音にどうしても着てほしいとプレゼントされたらしい。
装飾がたくさんついており、光を反射するようだが……〕
158 : ◆DXWxLR/SkYo1 [sage]:2016/09/09(金) 23:10:50.19 ID:++sAPPVA0
明日から再開します。
159 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2016/09/10(土) 22:51:24.41 ID:Mt30N4yA0
グレゴリー「鎮魂の指揮者は不運なる檻に囚われたか……もしくは黄泉よりの使者によって煌めきの電光をその身に受けたか……」

津浦「事故か他殺かは確かに重要ですね……っ」ブルッ

グレゴリー「……言の葉の魔術師。恐怖に苛まれているならば苦行に身を任せずともよいのではないか」

津浦「い、いえ、大丈夫です」

赤穂「……本当に無理はしない方がいいぞ」

津浦の反応は普通の人間なら当たり前だ。

俺は外の世界……特にあの街で死を身近に感じすぎたから捜査なんてやれる。

だけどこれから未来機関で本格的に働こうとしていたみんなにはキツいはずだ。

津浦「Mr.赤穂……しかし、捜査はしなければ」

赤穂「別にここだけしか捜査する場所がないわけではないんじゃないか?」

津浦「そう、ですか?」

赤穂「静音のコテージとか、あのスタンドがあったマーケットとか……そういった所を捜査してみたらどうだ?」

津浦「……」

グレゴリー「言の葉の魔術師よ。我も聖痕抱きし英雄の言霊に同調する」

津浦「Mr.グレゴリー……」

グレゴリー「孤独に身を震わせるならば我も共に行こう。この惨劇の舞台では言の葉の魔術師の真価は発揮されん」

津浦「……わかりました。Mr.赤穂、Mr.グレゴリー……ありがとうございます」

赤穂「いや、気にしないでくれよ」

グレゴリー「ならば旅立つぞ言の葉の魔術師!鎮魂の指揮者の魂に報いるためにもな!」

津浦「は、はい」

行ったな……後で何か見つけたか聞いておくか。
160 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2016/09/10(土) 23:15:06.73 ID:Mt30N4yA0
遠見「……」

赤穂「遠見」

遠見「なんでこんな事になったのでありますか」

赤穂「……」

遠見「自分は何も防げなかった……隊長に顔向けが出来ないでありますよ……」

道掛「あー……」

佐場木「遠見、泣き言は全て終わってからにしろ。お前が泣こうが静音は生き返らないんだ」

遠見「っ」

道掛「ちょっ、キツくね?」

佐場木「事実を言ったまでだ。そもそも今回の事件、責があるなら俺だ」

赤穂「どういう意味だ?」

佐場木「ガラススタンドの許可、遠見を単独行動させてしまった事と間違った部分への見張りの指示」

佐場木「わざわざ映像の記録をしてまで身体検査をしたのにこれだ」

赤穂「記録?」

遠見「身体検査の時、念のためにカメラでその様子を撮影していたのであります」

佐場木「グレゴリーがビデオカメラを所持していたのでな。それを使った」

道掛「あれビデオカメラで記録されてたのかよ!」

佐場木「ふん、念のため確認しておくか……これがその記録だ」

佐場木はビデオカメラを取り出すと俺達に見せるようにして再生ボタンを押す。

そして身体検査の時の光景が流れ始めた。
161 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2016/09/10(土) 23:52:36.28 ID:Mt30N4yA0
静音『身体検査ってめんどくさいな……』

遠見『まあまあ、パーティーを円滑に進めるためでありますから』

佐場木『それよりこのスポットライトはなんだ?』

静音『ちょっと意見もあったからサプライズに使う!』

遠見『サプライズでありますか?内容は……』

静音『内緒内緒!ステージの横に置くだけだからいいだろ!』

佐場木『……ふん、まあいいだろう』

――――

道掛『いやっほう!』

遠見『なっ!?ストップストップであります道掛殿!』

道掛『おっ、どうした?』

佐場木『貴様……いきなり自転車で飛び込んできてなんの真似だ』

道掛『何ってパーティーで俺の華麗なテクニックを見せるんだよ!盛り上がる事間違いなしだぜ!』

佐場木『今すぐ降りろ……!』

道掛『えっ!?』

――――

兵頭『厳重警戒ですね』

遠見『時期が時期でありますから……我慢してほしいであります』

兵頭『ふふっ、別に異論はありませんよ。私も何事もなくすんでほしいので』

佐場木『……』

――

グレゴリー『その願いは聞き届けられん!』

佐場木『なんだと?』

遠見『グレゴリー殿、そう言わずに……ちょっとその仮面を外してほしいだけでありますから』

グレゴリー『この仮面は我が皮膚と同じ!外すなど残虐なる一手よ!』

佐場木『くだらん事を言ってないで外せ……!遠見、押さえつけろ!』

グレゴリー『うおっ!?やめろ、我が封印を解くな!ぬおおおおおっ!?』

――――

津浦『はい、どうぞ』

遠見『はぁ、はぁ……確かに』

佐場木『くそっ、手こずらせてくれる……!』

津浦『あの、何かあったんですか?』

遠見『あはは、ちょっとした大捕物を……』

――――

遠見『ステージ用の木材、確かに確認したであります。次は身体検査を』

土橋『えっと、身体検査はいいけど半次も一緒なの?』

佐場木『なにか問題があるのか』

土橋『いや、こういうのって服脱ぐんでしょ?さすがに男の子の前でそれは……』

佐場木『……そこまでしなくていい』

遠見『自分がしっかり服の上から改めるでありますから!』

土橋『あっ、それなら良かった』
162 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2016/09/11(日) 00:28:31.96 ID:dTyoMSsA0
薄井『……』

遠見『なんだか不機嫌でありますね……』

薄井『……』パチパチッ

佐場木『んっ?静電気か?』

遠見『というよりは、空気がピリピリしてるであります……』

――

苗木『ボク身体検査なんて初めてだよ』

遠見『そうなのでありますか?』

苗木『うん、ボクはごく普通の生活してきたからね』

佐場木『海外に出た事もないのか』

苗木『うーん飛行機ってちょっと怖くて』

遠見『気持ちはわかるであります……空爆は怖いでありますよ』

佐場木『おそらく意味が違うぞ』

――

六山『ゲームセットでーす』

遠見『リュックにゲーム以外がないであります』

佐場木『依存症だな』

六山『むっ、そんな事ないよ。ゲームは1日20時間って決めてるもん』

遠見『立派な依存症であります……!』

――

四方院『ご苦労様ですわお2人共』

遠見『いつものドレスとは違うのでありますね』

四方院『凪からの贈り物ですの。わたくしは派手な気がしたんですけれど』

佐場木『……あいつは張り切っているようだからな』

四方院『ふふふ、そうですわね。だからわたくしは応えてあげたいと思いますわ』
163 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2016/09/11(日) 00:40:43.70 ID:dTyoMSsA0
――――

如月『どうぞ』

佐場木『ふん、貴様は存在そのものが危険物だがな』

遠見『佐場木殿、そう身構えないで……』

佐場木『……ちっ、さっさと終わらせるぞ』

如月『はい』

――――

ジェニー『今日は頑張るです!』

遠見『ジェニー殿!?』

佐場木『いつの間に入った……!』

ジェニー『ハンジとレイキが忙しそうでしたから……ダメだったですか?』

遠見『と、とにかくジェニー殿ちょっとこちらへ!その木箱も一緒に!』

佐場木『……ちっ、そこまで冷静さを欠いていたか俺は』

――――

鞍馬『……』

遠見『……』

佐場木『何をしている』

遠見『隙が見当たらないであります……!』

鞍馬『……』

佐場木『普通に調べればいいだけだろう……おい鞍馬』

鞍馬『どうぞお好きに』

――――

赤穂『身体検査か……なあ、この杖も凶器になるのか?』

遠見『さすがにそこまでは……』

佐場木『したいところだがな』

御影『それしたら兄貴どうやって歩くのさ』

赤穂『……牡丹に支えてもらうか』

御影『無茶言わないでよ』

――――

赤穂「これが身体検査の記録か……」

道掛「この時はこんな事になるなんて思わなかったよな」

遠見「そうでありますね……」

佐場木「……」

コトダマ【身体検査の記録】を手に入れました。
〔パーティー前にビデオカメラで記録されていた身体検査の様子。
内容は>>161-163
164 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2016/09/11(日) 00:45:18.94 ID:dTyoMSsA0
本日はここまでで。

調子が取り戻せない……
165 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2016/09/13(火) 23:08:53.97 ID:O5sdpNWA0
如月「ふむ……」

赤穂「如月さん、何かわかりましたか?」

如月「僕も悪を探すために日常的に捜査はしていますが……停電の瞬間の静音さんを見ていないのは痛いですね」

赤穂「見てなかったんですか?」

如月「薄井さんと話している最中急に彼がトマトジュースを吐きまして……グラスを変えにテーブルにいく薄井さんを見ていたので」

赤穂「トマトジュースを吐いたってどうして?」

如月「多分僕が好きだと言ったからですね。友人としてという意味でしたが勘違いさせてしまったようで」

何をやってるんですか如月さん。

如月「ただ、その時のテーブル付近にいた人ならわかりますよ」

赤穂「立ち位置は重要かもしれないですね……誰ですか?」

如月「まず今言ったように薄井さん。それと見張りをしていた遠見さんに1人でいた佐場木さん」

如月「別のテーブルでは土橋さん、津浦さんに道掛さんが話しかけていました。後グレゴリーさんと六山さんが何やら話していました……ああ、御影さんも1人でしたね」

如月「僕が見落としたのでなければテーブル付近にいなかったのはジェニーさん、鞍馬さん、兵頭さんですね」

ステージには俺と苗木、静音と四方院さんがいた……

手がかりになればいいけどな……

コトダマ【如月の証言】を手に入れました。
〔如月はトマトジュースを吐いた薄井を目で追い、停電直前テーブルの方を見ていた。
ジェニー、鞍馬、兵頭以外はテーブル付近にいたようだ〕
166 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2016/09/13(火) 23:26:28.01 ID:O5sdpNWA0
赤穂「……んっ?」

薄井「ゲホッ!クソッ、あいつのせいでまだ喉がいてえ……」

赤穂「大丈夫……じゃなさそうだな」

薄井「当たり前だろ!」

咳き込む薄井のシャツは胸元から濡れている……確かトマトジュースだよな?

黒だからまだ目立たないけど白かったら大惨事だなこれ……

薄井「兵頭のヤツには実は血じゃありませんよね?とかふざけた事言われるしよ……あのヒーローのせいで踏んだり蹴ったりだ!」

赤穂「それはまた……ところで薄井は何か見てたりしてないのか?」

薄井「何かって言ってもこの有り様でそれどころじゃ……いや、待てよ」

薄井「そういや停電のちょっと前、ジェニーのヤツがステージ横で何かしてたみたいだぜ?」

赤穂「ジェニーが?」

薄井「アイツの性格ならすぐテーブルに来るだろうから気にはなってたんだよ。で、ちょっと見回したらいやがったんだ」

赤穂「……ステージ横に、か」

コトダマ【薄井の証言】を手に入れました。
〔ジェニーが停電直前にステージ横で何かをしていたらしい〕
167 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2016/09/13(火) 23:36:04.52 ID:O5sdpNWA0
兵頭「しかしわざわざ置物まで見張らせたというのにスタンドが凶器になってしまうとは思いもしませんでしたね」

赤穂「さすがに予想外だったな」

兵頭「テーブルに置かれた置物は6つありますが全て無事……遠見さんが見張らなければ誰かが凶器にしたんでしょうか」

赤穂「どうだろうな……持ち運ぶにしても使いにくいだろ」

兵頭「音もするでしょうしね……」

コトダマ【ガラスの置物】を手に入れました。
〔倉庫に持ち込まれたガラスの置物や壺。
6つあるが全て割れたりはしていない〕
168 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2016/09/13(火) 23:50:46.04 ID:O5sdpNWA0
赤穂「牡丹、大丈夫か?辛いなら外に……」

御影「いや、大丈夫……」

そういう牡丹の顔は蒼白で今にも倒れてしまいそうだ……

やせ我慢してるなこれは……

御影「ねえ兄貴」

赤穂「んっ?」

御影「私、これでも楽しんでたんだよ」

赤穂「……」

御影「なのにこんな事になって……なんか、なんて言えばいいのか……」

赤穂「……」ポンッ

御影「っ」

赤穂「辛いんだろ?静音がこんな事になって」ナデナデ

御影「……うん。もっと話しとけばよかった」

赤穂「そうか」ナデナデ

御影「……一応何かしようと思って、用意したんだけどな」

赤穂「なんだそれ?ストップウォッチ?」

御影「1分ピタリで止めるやつ。私結構得意なんだよ」

赤穂「いつの間にそんな特技を身に付けたんだ……」

御影「兄貴達の演奏中に練習がてらやってたんだけどあのガラス割れる音した時につい止めちゃったんだよね」

赤穂「ふーん……」

御影「そういえばそのままだったから初期化しとこ」

赤穂「……んっ?」

牡丹の持っているストップウォッチ。

そこに映った時間……なんとなく気になる。

赤穂「牡丹、ちょっと待て」

御影「えっ?」

赤穂「もしかしたら重要になるかもしれないからその表示そのままにしてくれないか?」

御影「まあ、いいけど」

コトダマ【ストップウォッチ】を手に入れました。
〔御影が使おうとしていたストップウォッチ。
タイマーは3分で止まった事を示している〕
169 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2016/09/19(月) 00:33:38.96 ID:WvOSwc0A0
六山「はあ……」カチカチ

赤穂「六山……こんな時までゲームはどうなんだ」

六山「わたしだってしなくてすむならしてないよ……だけど怖い」

赤穂「……」

六山「怖くてたまらないんだよ。今すぐ逃げ出したいし、捜査なんてできる気がしない」

赤穂「……だよな」

六山「でもこのままじゃダメな事はわかってる……だからせめて落ち着きたいんだよ」

六山がゲームを精神安定のために使ってるのは今まで見てきてる。

それを責めるのはさすがに冷たい、か。

六山「……そういえば赤穂くん」

赤穂「どうした?」

六山「停電した時ステージがボンヤリ光ってたけどあれなんだったの?」

赤穂「……ステージが、光ってた?」

六山「うん、本当にボンヤリだけど」

あの時そんな事になってたのか?

ステージ……もう一度調べる必要があるな。

コトダマ【六山の証言】を手に入れました。
〔停電の時ステージがボンヤリ光っていたらしい〕
170 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2016/09/19(月) 00:50:16.24 ID:WvOSwc0A0
赤穂「……」

六山の話だとステージが光ってたらしいけどどこにそんな……んっ?

赤穂「静音の靴になんか薄く緑色のものが……」

近くで見ようと近づいてみると影で暗くなった静音の靴底がボンヤリ光る。

これは……夜光塗料?

なんで静音の靴底に夜光塗料なんて……

赤穂「そういえば静音はステージに立つとき何かを目印にしてたよな……」

静音の脚の先……演奏の時静音が立っていた場所を見ると×の形にテープが貼ってあった。

そこに手をかざして暗くしてみると……ボンヤリと光りだす。

赤穂「このテープに薄く夜光塗料が塗ってあったのか……」

静音はこれを踏んでたから靴底に夜光塗料がついてたんだな……

赤穂「…………は?」

ちょっと待て。

静音は仰向けに倒れてる。

そして脚は入り口側に、頭はステージ奥……演奏中四方院さんがいた方向に向けられている。

赤穂「……おかしい」

この倒れかた……どう考えてもおかしい……!

コトダマ【夜光塗料】を手に入れました。
〔ステージについていた夜光塗料。
×の形に貼ったテープに塗られており、それを踏んだらしい静音の靴底にもついていた〕

コトダマ【静音の倒れかた】を手に入れました。
〔静音は脚を入り口に、頭を四方院のいる方に向けて倒れていた〕
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