【スペース・コブラ】古い王の地、ロードラン

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637 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [ saga]:2019/10/29(火) 19:40:45.23 ID:yOY1b+4D0
グウィンドリン「………」


グウィンドリン「…コブラよ。この場で落命せし巨人に、我が姉上をさらう事はできるか?」


コブラ「無理だろうな。城の護りはオーンスタインが固めているし、騎士連中もいる。第一、巨人の身体で入り込める場所なんてのは、この城には殆ど無い」

コブラ「こいつは見せしめだ。容疑も容疑者もどうでもいいのさ」


グウィンドリン「然り。録にはこの者を含め、多くの大罪者が記されてはいた」

グウィンドリン「しかしその痕跡は録に残されてはおらず、真実を暴こうとした者は暫定政府に貪欲との誹りを受け、貪欲者の烙印を押され、卑小な者へと堕とされた」

グウィンドリン「例えそれらの見せしめが、太陽の血を縛り、月の血を立てるため、ベルカが行った致し方の無い生贄であるとしても、我には許しがたい行いだ」

グウィンドリン「真実を知らぬ者達にとっては、尚のことであろう」



処刑場からコブラとグウィンドリンは転移し、再び闇だけが二者を包んだ。
グウィンドリンは語りを続ける。



グウィンドリン「太陽の血筋を重んじる者達と、月の血筋を重んじるベルカ率いる暫定政府の対立は、急速に深まっていった」

グウィンドリン「対立が闘争へと変じるのに時は要さず、戦いによって多くの神々と巨人が誅殺され、あるいは追放された」

グウィンドリン「我ら月の子らは、太陽の派閥の者が処刑される時のみ、束の間の解放を許されたが、我らはそれを恐れた」

グウィンドリン「我らは牢から放される度に、我らの前に何者が跪いているのかを想った」

グウィンドリン「そして、引きずられた者が友で無く、顔も知らぬ者であったとしても、我らの心はその者達と共に穢され、不名誉に死んでいったのだ」


コブラ「………」


グウィンドリン「戦いは終始、ベルカの優勢だった。のちに知ったことだが、ベルカは王家の者の名を皆使い、王の刃たるキアランを手駒としていた」

グウィンドリン「王家の血を絶やさぬ訳にはいかぬ身で、かつ幽閉によって政から離されていたとあれば、キアランとて、正常な判断が出来得るはずもない」

グウィンドリン「結果として、キアランの双短剣は神々の血肉に染まり、力を弱めて身体を残さぬ身となった者からは、キアランは多くのソウルを吸収することとなった」


グウィンドリン「処刑者スモウも例外ではない。大鎚を振るって神々を弑するその姿を、太陽の派閥の者達は恐れ、また忌み嫌った」

グウィンドリン「スモウは処刑に愉悦し、犠牲者の骨肉をすり潰し、もって自分の精にしていたと彼らは風潮した。酷薄な者であるがゆえに、大王も四騎士の列に序さなかったのだとも」

グウィンドリン「スモウが異形の神であり、故に吐息も吹き笑いと聞こえる事をいいことに、彼らはスモウを散々に罵っていた」


グウィンドリン「アノール・ロンドの行ったオーンスタインへの仕打ちは苛烈の一言に尽きる。竜狩りは仮にも味方たる暫定政府に疎まれ、嘲笑を浴びせかけられ、太陽の派閥にはかつての同胞ばかりがいた」

グウィンドリン「王家に忠誠を誓い、前王から雷の秘術を学ぶ程に太陽の威光を信じていた身でありながら、オーンスタインは多くの同胞をその刃に掛けるよう命じられたのだ。共に太陽を信奉し、雷を学んだ者達を」

グウィンドリン「そして、暫定政府はそのような身に陥ったオーンスタインに、報いることは決して無かった」


コブラ「………」


グウィンドリン「臣民の落命は止まることなく、神心は荒廃し、戦いは収まる気配すらも見せぬ。希望の見えぬ世にあっては、己の命の尊さを忘れる者も少なくはない」


グウィンドリン「我らが母も、その一柱であった」


コブラ「なに…?」



コブラの疑問と共に、闇には月光が差した。
月光に照らされた闇からは、夜影に染まった一室の壁が現れた。
新たな転移は、ドアから月光が差している、かつてのグウィンドリンが幽閉されていた一室に、コブラを立たせていた。


「母上……」


コブラの背には、呆けたようなグウィンドリンの声が掛かり、コブラの眼前には、オーンスタインを連れた月と太陽の女神が立っていた。

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