多分、素直になると、死んでしまう病気(艦隊これくしょん)

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136 : ◆yJGN1SPTmzFo [sage saga]:2019/03/11(月) 00:23:12.20 ID:n52VVqhm0
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137 : ◆yJGN1SPTmzFo [sage saga]:2019/03/11(月) 00:26:16.87 ID:n52VVqhm0
明石「あ、二人が帰ってきましたね」

明石「うーん、遠目から見てもわかる、何かあった風な雰囲気……曙ちゃんの時と同じ……」

明石「良かったんですか、満潮ちゃん」

満潮「何がですか」

明石「叢雲ちゃんに傘を渡して、仕事を代わってあげて……」

満潮「私は別にそういうのじゃないから。いいんです」

明石「……本当に?」

満潮「疑うなら、あの眼鏡で私のことを見てみたらどうです? あれで見れば艦娘が何を思ってるのかわかるのでしょう?」

明石「いやー……まあ……そうです、はい。よくわかりましたね」

満潮「あの鈍感男が、妙な眼鏡をかけたら急に気の利いたナンパ男になった。誰だっておかしいと思います」

明石「いえ、誰も思ってなかったみたいですけど……」

満潮「みんな頭が悪いんですね」

明石「提督がメガネをかけていたのは三日だけで、しかも満潮ちゃんの前ではかけてなかったんですけど……」

満潮「だから?」

明石「満潮ちゃん、どれだけ提督のことを見てたんです?」

満潮「当然でしょう? 私はあの司令官の艦娘なのだもの」

明石「……やっぱり眼鏡で見てみてもいいです? 満潮ちゃんを」

満潮「ふん」
138 : ◆yJGN1SPTmzFo [sage saga]:2019/03/11(月) 00:27:41.25 ID:n52VVqhm0
――叢雲と共に、鎮守府の正門の前へとたどりついた……。

叢雲「あーあ、結構濡れちゃったわ。まずは軽くお風呂に入って……。……? 司令官?」

叢雲「まだ曙のこと、気にしてる? ……そうよね」

叢雲「でも、ね。ほら」

――急に叢雲に手を握られ、引っ張られる。

――叢雲はこちらを向かないまま、鎮守府の中へと自分を引っ張っていく……。

叢雲「またいつかさ。会えばいいじゃない」

叢雲「そうね。たとえば。戦争が終わったら」

叢雲「平和になったら、会えるでしょ」

叢雲「どんなに後ろを向いても、もう見えないわ」

叢雲「だから、前を向いて歩いたら、きっといつか……ね」

叢雲「だから……」


――――――――
139 : ◆yJGN1SPTmzFo [sage saga]:2019/03/11(月) 00:28:23.70 ID:n52VVqhm0


 そして三年後。

140 : ◆yJGN1SPTmzFo [sage saga]:2019/03/11(月) 00:29:23.04 ID:n52VVqhm0
――季節は夏。叢雲と共に、駅前へとやってきた。

――まだ少しだけ時間がある。日差しの中に、二人で並んで立った……

叢雲「はあ……」

――叢雲は妙に不満そうなため息をついている。

叢雲「……嫌ってわけじゃないわよ。ついてきたいって言い出したのは私なんだから」

叢雲「というか、司令官にだって私のため息の理由くらいわかるでしょ」

叢雲「……はあ? わからない? ああ、そう。そうですか」

叢雲「本気で言ってるのかしら、この男」

叢雲「……暑いから駅の中に入らないか? 駅の中で突っ立ってたら邪魔でしょ」

叢雲「というか、別に暑いからため息をついているわけじゃないわよ」

叢雲「あのねえ、私は……」
141 : ◆yJGN1SPTmzFo [sage saga]:2019/03/11(月) 00:31:05.71 ID:n52VVqhm0



「お久しぶりですね、提督、叢雲」


142 : ◆yJGN1SPTmzFo [sage saga]:2019/03/11(月) 00:33:26.55 ID:n52VVqhm0
叢雲「え」

――ふと、見覚えのない女性に声をかけられた。

――白いワンピースに、大きな帽子、手提げのカバンにも、見覚えはない。

――しかし、その茶色の瞳と黒い髪は……どこかで見た記憶がある。

叢雲「えっ……まさか」

叢雲「貴女が、曙!?」

「はい。元、ですけど。二人とも元気そうですね」

叢雲「え、え、嘘でしょ……」

――その顔には、常に気を張ったような意地っ張りな表情はどこにもなく、ただ和やかなほほえみが浮かんでいる。

――叢雲よりも小さかった背も、頭ひとつぶん大きい。

――体つきも、遥かに女性らしくなっていた……。

叢雲「た、確かに艤装を外したら成長するって聞いてたけど……」

「ふふ。自分でも、変わったなって思いますよ」

叢雲「変わりすぎでしょ」

――曙だった彼女は、やわらかに自然な笑みを浮かべている……。

「そう言う叢雲は変わってないですね」

叢雲「はあ!? ケンカを売っているのかしら?」
143 : ◆yJGN1SPTmzFo [sage saga]:2019/03/11(月) 00:34:25.81 ID:n52VVqhm0
「いえ。羨ましいなって」

叢雲「え?」

「3年……いえ、最初から。ずっと提督と一緒にいたんですね」

叢雲「あ……」

――言葉をつかえさせた叢雲を見て、彼女は楽しそうに笑ってみせる。

「本当に叢雲は変わってませんね。悔しいくらいに」

叢雲「……そうね」

叢雲「そうよ。結局、私は変わらなかったわ。関係もね」

「あら」

叢雲「ふんだ」

――楽しそうに笑う彼女に、叢雲が不満げに鼻を鳴らした。

叢雲「……ほら、さっさと行きましょ。満潮を待たせたままじゃ悪いでしょ」

「満潮も来ているんですね」

叢雲「車を用意してくれてるの。少し先の道路で待ち合わせてるわ」

――三人で少し歩くと、道路脇に古めかしいセダンが停まっている……。

満潮「来たわね。さ、さっさと乗って」

「はい。お久しぶりです、満潮」

満潮「そうね。久しぶり、曙……今は違うか」

叢雲「……満潮は、この姿にリアクションはないわけ?」

満潮「この程度のことでいちいち驚かないわよ」

「満潮も変わってないですね」

満潮「でしょうね。……全員乗った? ベルト締めた? じゃあ出すわよ」


――叢雲が助手席に乗り、後部座席には自分と彼女が乗り込んだ……。

――車が10分ほど走ると、目的の砂浜が見えてきた。

――平和になった海で、大勢の人々が泳いでいる……。


「本当に終わったんですね。戦争」
144 : ◆yJGN1SPTmzFo [sage saga]:2019/03/11(月) 00:35:43.02 ID:n52VVqhm0
叢雲「今更? 最後の戦闘はもう半年も前の話よ」

「本当かどうか、わからなかったので」

満潮「ま、元々、軍にいた人間なら疑うところでしょうね。でも、実際に深海棲艦はそれ以降確認されてない」

叢雲「7月には終戦宣言もあったでしょ?」

「そうですね。でも、実感がなかった……」

「……え? そんな、提督。私は」

叢雲「たまにはいいこと言うじゃない。司令官。そうよ、『私たち』が勝ち取った平和よ。あなたもね」

満潮「そういうこと。せいぜい誇りに思っておけばいいの。あんたがどう思ったって、誰も損はしない」

「……ありがとう。みんな」

――その言葉に、叢雲と満潮が吹き出した。

叢雲「ふふっ! それ、初めて言われたんじゃないかしら!」

満潮「さすがにこれは驚きね! いい響きじゃない!」

「……な、も、もう、私は真剣に……!」

「……ふん。そうね。そうよ。私は素直になったんですよ。二人と違って」

「ねえ、提督?」

叢雲「あっ! ちょっ、なに手を握ってるのよ!」

「叢雲も握ったらいいんじゃないですか? 満潮も」

叢雲「あ、あんたね!」

満潮「私はハンドルを握ってるの。というか興味ないし」

「素直になったらどうです?」

満潮「私は最初から素直なのよ」

「あーあ、素直になったら死んじゃう病気ですね」

満潮「それはあんたの病気だったでしょうが」

叢雲「むむむ……」
145 : ◆yJGN1SPTmzFo [sage saga]:2019/03/11(月) 00:38:49.56 ID:n52VVqhm0
――駐車場に車を停め、全員で砂浜へと向かった。

――彼女は帽子を抑えながら、海を静かな微笑みと共に見つめながら歩いている……。


「綺麗ですね。海ってこんな色をしていたんだ」

叢雲「艤装を外すとそんな感性まで戻ってくるの? 見飽きた上に人が多いったら、もう」

「私が引っ越したのは内陸のほうで、海がありませんでしたから」

「……無意識で海を避けていたところもあったかも」

満潮「もうその必要もないわ。私たちが海を取り戻した」

「そうですね」

叢雲「だからこうして、海まで来て遊べるわけね。……まあ、私たちは飽きてるんだけど」

満潮「仕事場に休日にやってくるってのも悪くないわよ、たまには」

「仕事場、か」

「……二人は、艦娘をやめる気はないんですか?」

叢雲「あー、それ聞いてくる? んんー、どうだろ」

満潮「さっさとやめれば? で、こんな風に背でも胸でも伸ばし放題すればいいわ」

叢雲「……背とか胸とか、あんたが言う?」

「満潮はやめる気はないんですね」

満潮「私は艦娘でいいわ」

叢雲「そうなの?」

満潮「こいつを放っておけないしね」

叢雲「……そういえば、司令官はやめるつもりは?」

「……え? 考えたこともなかった? そうですか……」

満潮「いいかげんなとこがある割には仕事人間だから……」

叢雲「らしいっちゃらしいけどね……でも……」

「でも、叢雲はそのせいで3年間が何のアドバンテージにもならなかったのが不満だ、と」

叢雲「何の話よ! ……将来のことくらい考えたほうがいいって言いたかったの」
146 : ◆yJGN1SPTmzFo [sage saga]:2019/03/11(月) 00:45:16.89 ID:n52VVqhm0
叢雲「艦娘も、それを率いる司令官も、一つの役割を終えたんだから。存続させておくのは社会にとってのコストよ」

叢雲「いきなり放り出されてから後悔したら遅い。ちゃんと考えておかないと」

「そうですね。未来を思い描く……曙だったころの私には想像もできなかった」

「だから私は、艦娘をやめたんでしょうね」

満潮「………………」

満潮「……え? どうかしたのか、って? 別に……」

満潮「……いや、今更よね。遠慮する必要もないわ。このメンツに」

叢雲「なに? どうしたのよ」

満潮「ねえ、二人とも」

叢雲「ん?」

「なんですか?」

満潮「艦娘には……未来がないと思う?」

――満潮の問いかけに、思わず三人で顔を見合わせる。

――確かに、叢雲や彼女の言葉は、そういう結論に繋がっていたように思えたかもしれない。

――叢雲は、少し考えて答えた。

叢雲「そうは言ってないけど。どうなるかはわからないとは思っている」

「確かに。でも、どうなるかわからないのは、みんな同じですよね」

「私が艦娘をやめたのは単に、私の限界だったんだから」

満潮「なるほど、ね」

――満潮が頷いて、立ち止まった。

――その視線の先には、空と海の境がある……

満潮「それなら私は、今のまま、艦娘のまま、もう少し先を見てみたいと思う」

「満潮……」
147 : ◆yJGN1SPTmzFo [sage saga]:2019/03/11(月) 00:46:42.02 ID:n52VVqhm0


満潮「ずっと思ってた。私たちは本当に、単に深海棲艦と戦うためだけに生まれたのか」

満潮「もし、それだけじゃないんだとしたら……」

満潮「……え? そ、そうなの?」

満潮「……そっか、あんたもそう思ってたんだ」

満潮「……はあ? さすがに楽観的すぎない? まったく、これだからほっとけないのよ」

満潮「だから、付き合ってあげる! で、まあ……これからもよろしくね! あ、司令官がいつやめても私は構わないんだからね!」

148 : ◆yJGN1SPTmzFo [sage saga]:2019/03/11(月) 00:49:00.47 ID:n52VVqhm0


「……悩みどころですね、叢雲」

叢雲「うー」

149 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2021/06/30(水) 00:19:20.92 ID:SYTLpyDi0
終わり?
150 :以下、VIPにかわりましてVIP警察がお送りします [sage]:2021/06/30(水) 02:56:40.34 ID:AXyKFgQQ0
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151 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/06/21(水) 04:04:11.26 ID:eNQTcyQw0


――施設を使い、全員で水着に着替え、砂浜へと降りていく。

――サンダル越しに砂の熱さが伝わってくる。

――海に、来た。実感が今更ながらに湧いてきた……。


「どうですか? この水着。……ふふ、似合ってますか。ありがとうございます」

叢雲「なぁにデレデレしてんのよ! 秘書艦を放っておいて元艦娘にかまけてるんじゃないわよ!」

満潮「まったく、隙だらけね。鼻の下伸ばしちゃって。シャキっとしたら?」


――三人はそれぞれに、自分を海の方へと引っ張っていく。


「あー! 海ですね! テンションが上がってきました! 泳ぎましょう!」

叢雲「ちょっと、その前に準備運動よ! 司令官は当然だけど、あんたも艤装を外してるんだから」

満潮「そのもう一つ前に荷物とパラソルの設置を手伝いなさいよ、こんなもの誰が用意したんだか……あ、私か」

「なんですかそれ、満潮。平和ボケですか?」

満潮「そうかもねー。昔よりも気を張らずに生きられる気はする」

叢雲「へえ。その割に、鎮守府では変わらずうるさいけど」

満潮「当然でしょ。平和だからって仕事を真面目にやらない理由にはならない」

「満潮らしいですね」

叢雲「三つ子の魂百までって言うしね」

満潮「なにそれ?」

叢雲「変わらないものもあるってこと」

満潮「ふうん。それはそうでしょ」

「……そうですね。ああ……海も空も、こんなにも青いまま……変わってなかった」

満潮「……ずっとそうだったわ」

叢雲「……ええ。ずっと、ね」


――少女たちの横顔は、青い空と海に、いつかどこかの遠い記憶を写し出しているようだ。

――水平線の向こうから吹く風が、彼女たちの髪をなびかせた。

――熱をはらんだ潮風に夏が香る。

――遠い、いつかのどこかのように、今年もまた、夏が来たのだ……。


叢雲「司令官? いつまでぼーっとしてるわけ? ほら、海に入りましょ」

満潮「しっかりしてよね、司令官」

「さあ、行きましょう。提督」


――いえ、と彼女は小さく首を振って笑う。

――耳元に顔を近づけて、自分の名前を呼ぶ。

――自分も笑って、彼女の名前を呼んだ。

――風が吹いて、三人の髪がなびくのが見える。

――それでやっと、自分も素直になれる時がきたのだと、そう思った。




おわり
152 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2023/06/21(水) 04:11:43.19 ID:eNQTcyQw0
最後に何を書けばいいのかずっとわからなかったのですが、数年ぶりに読み返して書けました。

最初は気軽にツンデレを書きたいなと思っていただけだったんですけど、急に曙が(自分の中で)告白したいと言い出して、させたら急に死の気配をまといはじめ……。
その結果、思いもよらぬ方向へと行ってしまった作品になってしまいました。人生というのはわからないものですね。

叢雲は長年の付き合いのある妻とか相棒
曙は恋する女の子
満潮は理不尽な妹

……みたいな書き分けを試みたのですが実際はよくわかりませんね!

ここまで読んでくれたみなさまに感謝します。ありがとうございました。
153 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/06/24(土) 13:33:59.68 ID:An/cJqKVO

久々だしちょっと読み返すわ
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