八幡「神樹ヶ峰女学園?」

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169 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/01/18(水) 18:36:57.44 ID:1zhkurzx0
番外編「明日葉の誕生日前編」


今日は1月18日、楠さんの誕生日である。星守クラスのみんなは楠さんを驚かせるために教室を飾り付けしたり、プレゼントの準備をしたりと朝早くから元気に動いていた。俺も準備に駆り出され、馬車馬のごとく働かされた。そのほとんどが芹沢さんが用意した大量のプレゼントを運ぶためだったのだが…あの人、どんだけプレゼントに力入れてるんだ。気合の入れようが尋常じゃなくて軽く引くレベル。

そして、放課後、俺はそんな教室の後片づけをさせられていた。てか、なんで誰も手伝ってくれないの?俺の事便利屋か万事屋かなんかだと思ってるの?死んだ魚の目をしてるとこくらいしか共通項ないよ?いや、けっこう大きいぞこの共通項…

明日葉「あ、先生、ここにいらしたんですね」

そうやって文句を心の中で垂れ流していると、今日の主役だった楠さんが教室に入ってきた。

八幡「楠さん。なんか用ですか?」

明日葉「はい、ちょっと生徒会室に来てほしいんですが、お忙しいですか?」

八幡「いや、今片付けも終わったんで大丈夫ですよ」

明日葉「そうですか。では行きましょう」

そうして俺たち二人は教室を出て生徒会室へ歩き出した。

八幡「あのー、生徒会室で何やるんですか?」

明日葉「ふふふ、着いてからのお楽しみです」

ん?年上の生徒会長と放課後の生徒会室でお楽しみ!?しかも楠さんは今日が誕生日。これは、つまり、そういうことですか、ごくり。

明日葉「さ、着きましたね。入ってください」

八幡「は、はい、失礼します」

そうしてドアを開けた向こうに待っていたのは。

八幡「…書道?」

明日葉「はい、ぜひ先生と一緒にやりたいと思いまして。ダメでしょうか?」

八幡「い、いえ、全然大丈夫ですよ」

俺の俗世にまみれた考えとは真逆の、心を落ち着かせることでした!いや、そりゃ楠さんがいかがわしいことを、しかも学校内でやるわけないでしょ。でもちょっとは期待しちゃうよね、だって男の子だもん!

明日葉「よかったです!では早速始めましょうか」

八幡「でも俺、書道なんて学校の授業でしかやったことなくて、うまく書けないんですけど」

明日葉「書はうまい、ヘタではなく、自分の心、気持ちをいかに文字に乗せるかです。その心によって相手の感情を揺さぶる、それが書道だと私は思っています」

八幡「なるほど」

そう言われると書けそうな気がしてきた。だが

八幡「何を書いたらいいんだろうか…」

明日葉「そうですね、少し日にちも経ってしまいましたが年も改まったので、目標を書いてみるのはどうでしょうか」

八幡「目標か…」

目標と言われたら、書くものはひとつだ。俺は筆を持ち、心を入れて文字を書いていった。
170 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/01/18(水) 18:38:38.31 ID:1zhkurzx0
番外編「明日葉の誕生日後編」


明日葉「先生、書けましたか?」

八幡「えぇ、なんとか書けました。楠さんはどうですか?」

明日葉「私も書けましたよ。これです」

そういって見せられた紙には、達筆すぎる文字で「日進月歩」とあった

八幡「うますぎる…」

明日葉「いえ、そんなことは。書も、星守としても、それ以外でも日進月歩で成長していきたいと思っているんです」

真面目だなぁ。とてもまっすぐにモノを考えていることが、この書にも表れているように思える。

明日葉「では先生の書も見せて頂いてもよろしいですか?」

八幡「えぇ、これです」

楠さんは俺の書いた書をじっと見て、それから目を伏せてしまった。

明日葉「先生、この書の説明をしてもらえませんか?」

八幡「楠さん、この言葉の意味がわからないんですか?」

明日葉「いえ、知っていますが、私が聞きたいのはどうしてこの文字を書いたか、ということです」

八幡「それは『専業主夫』こそが俺の信念だからですよ」

そう、俺が書いた文字は『専業主夫』。新年だけに、信念を書いてみました!

明日葉「…専業主夫が、ですか」

八幡「えぇ。古人曰く、働いたら負けですからね。だからより少ないリスクで最大のリターンを得るためには、働かずに家庭に入る、つまり専業主夫になることが最もいい方法だと思うんです。それに、現代は女性も男性も平等ですからね。外で仕事をする女性がいるならば、家庭で家事をする男性がいてもなんらおかしくはありません」

どうだ、この見事な論理は。一部の好きもない完璧なロジック。

明日葉「うーむ、確かに、そう言われると、そういう関係もありなのかもしれないと思えてきました…」

八幡「そうでしょう?」

明日葉「それに、私が仕事をしたとして、家に旦那さんがいるというのも悪くないかもしれない。そ、それが、先生のような方だったらもう言うことなしかな…い、いけない、何を考えてるんだ私は」

八幡「ん、何か言いましたか?」

明日葉「い、いえ、何も言ってないですよ!あ、もう下校時刻になりますね、早く片付けないといけませんね!」

なぜか楠さんは突然慌てふためいて、そそくさと書道道具をしまって帰り支度をしはじめた。

明日葉「さ、もう出ましょうか」

八幡「そうですね」

俺たちは生徒会室を出て、昇降口まで歩いていく。

明日葉「私は帰りますが、先生は帰られますか?」

八幡「いや、俺はまだやらなきゃいけないことが残ってるんです」

明日葉「そうですか…ではここでお別れですね」

そういって楠さんは靴を履き替え昇降口を出ようとする。さ、俺もさっさと書類片付けますか…

明日葉「先生!」

不意に楠さんに呼び止められた。

八幡「なんですか?」

明日葉「先生の目標、悪くはないと思いますけど、この学校で私たちとこうして接しているときの方が、ずっと輝いて見えますよ!今日は、ありがとうございました!」

そう言い残して楠さんは夕日のほうへ駆け出していった。意表を突かれた俺はしばらく立ち尽くすほかになかった。

後に残るのは、まだうっすら鼻の奥に残る墨の香りと、吹き抜ける冷たい風。でも不思議と寒くはなくむしろ顔は火照っている。その原因は明らかだが、思いだすのも恥ずかしい。だから落ち着くまでもうしばらくここで夕日を眺めていよう。
171 : ◆JZBU1pVAAI [sage]:2017/01/18(水) 18:39:46.40 ID:1zhkurzx0
以上で番外編「明日葉の誕生日」終了です。明日葉お誕生日おめでとう!
172 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/01/18(水) 20:55:29.04 ID:X3B72VwDO
乙です。

>>168
数日構わないでいたらきつく詰め寄られて疑問符を浮かべるひっきーみたいな?
すみません、言っといてなんですがこっちもうまくイメージできてないので難しいようならいいです。

あと席替えや特訓で稀によくあるボッチ飯とか面白いんじゃないかなーとか性懲りもなく言ってみる。
173 : ◆JZBU1pVAAI [saga ]:2017/01/19(木) 17:23:20.07 ID:8EpGdnVB0
本編2-1


藤宮の家での勉強会、イロウス討伐から数週間。未だ南は八雲先生のテストに合格できていないらしいが、俺はここの生活にも慣れてきて、いかに早くこの交流を終わらせられるかについて考えていた。

まず何をもってして交流が終わるのかがわからない。ゴールが見えない以上、こっちが交流不能の状態になるしかない。突然不治の病にかかったり?それは俺が死ぬからヤダな。全治何ヶ月かのケガは?でもそれも日常生活に支障をきたすな。やはりサボるしかないのか…

などと、無理難題を考えながら歩いていると、廊下の角でフードに大きな耳がついた白いパーカーと、大きな薄紫のリボンが揺れているのが見えた。あんな特徴がある人物はあいつらしかいないだろうが、なんであんなところでコソコソ人目を気にして隠れてるのだろうか。ま、俺には関係ないし、さっさと帰ることにしよう。

何か外をじっと見ている2人の横を通ろうとした時、両腕を掴まれてしまった。

八幡「なんだよ」

ミシェル「今外に出ちゃダメだよ!」

楓「そうですわ。慎重に行動しないと見つかってしまいますわ」

八幡「は?何、かくれんぼでもしてるの?」

楓「当たらずとも遠からず、ですわね」

ミシェル「楓ちゃんの執事さんたちに見つからないように学校から出ようとしてるの!」

八幡「なんだそれ…」

ミシェル「あのね、今日楓ちゃんと帰り道に寄り道をして行きたいの」

八幡「あ?別に好きにすればいいだろ、それくらい」

下校途中に寄り道。いかにも青春じゃないか。俺の中2の頃なんて、寄り道してくれる相手なんかいなかったから、いつも家に直帰して、コスプレしたり、ノートに色々書いたりして中二病全開だったぞ。いや、寄り道もしてたな。だが、そうは言っても1人で異界との扉を探してたくらいだな。うん、あの頃は若かった…

楓「いえ、そうは行きませんの。ワタクシは学校が終わるとすぐ家のものが迎えに来て、そのまま帰らされてしまいますの。ほら、現にそこでワタクシを探している人がいますわ」

千導院が指差す先には黒いスーツを着た人たちが「お嬢様ー!」と叫びながら歩いているのが見える。

楓「ですからワタクシ、彼らに見つからないようにここを出なければなりませんの」

ミシェル「だから先生も協力して?」

八幡「いやなんで俺が…」

ミシェル「だってミミたちの先生なんだから、助けてくれるよね?」

楓「もしここでワタクシたちを助けなかったら、どうなるかわかっていますか?」

怖、千導院が言うと冗談じゃすまなくなる。最悪戸籍を消されて聞いたこともない孤島に流されかねない。

まぁそんなことはないにしろ、自分の生徒が困ってることには違いない。少しくらいなら手助けしてもいいかな。ホントに俺は年下の女の子のお願いにつくづく甘い。

八幡「…わかった。で、何をすればいいんだ?」

楓「うふふ、ワタクシにとっておきの作戦がありますの!」
174 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/01/19(木) 17:29:19.10 ID:8EpGdnVB0
本編2-2



八幡「で、これがとっておきの策なの?」

楓「もちろんですわ!この前見たドラマでやってましたもの!」

ミシェル「ミミたちぬいぐるみさんになったみた〜い!」

八幡「…」

何をしてるかというと、大きなダンボールの中に、綿木と千導院が縮こまって入っている。そのダンボールを俺が運ぶ、というべタな隠蔽工作である。

八幡「おい、これじゃ多分すぐバレるぞ」

ミシェル「大丈夫だよ〜、ミミたちじっとしてるから!」

楓「そうですわ!さ、先生、早くワタクシたちを外に出してください」

これは絶対バレる。なんならバレて俺だけ怒られる場面まで想像できる。なんで俺はあの時協力すると言ってしまったんだ…

ミシェル「じゃあミミたち隠れるからよろしくね、先生!」

そう言って2人はダンボールの中に入ってしまった。マジかよ…いやもうこうなったら運ぶしかないよな。もうどうなってもしらん!と俺は半ばやけくそになって2人が入ったダンボールが載った台車を押していく。

黒スーツ「あの、すみません」

八幡「ひゃ、ひゃい」

突然ガタイのいい黒スーツの人に声をかけられ、思わず声が裏返ってしまった。

黒スーツ「わたしたち、楓お嬢様を探しているのですが、あなたどこかで見ませんでしたか?」

八幡「い、いえ、別に俺は何も見てないですけど」

黒スーツ「…失礼ですが、あなたはどのような人物ですか?この学園に男性はいないはずですが」

八幡「お、俺は、その、他の学校から連れてこられたといいますか、そう、交流です、交流」

黒スーツ「怪しいですね、お嬢様のおられる学校にこのような人物がいるのは少々危険ですね…」

八幡「いえ、別に俺はそんな人間じゃないですよ?あ、ほら、俺星守クラスにいますから、千導院のことも知ってますし」

黒スーツ「…ますます怪しいですね。もしや、この学校を探るスパイなのでは?そのダンボールの中にも何か危険なものが入っているのでしょう?」

八幡「いや、そんなことないですよ…?別にこの中にも何もやましいものは入ってません…?」

黒スーツ「それなら私にも見せられるでしょう。さ、開けてください」

やばいやばいやばい。これで中にいる綿木と千導院が見つかったら一巻の終わりだ。

すると中から何か声が聞こえてきた。

楓「ミミ、もうワタクシ、我慢が…」

ミシェル「楓ちゃん、もう少し頑張って…」

黒スーツ「あ!お嬢様の声が聞こえます!お嬢様!今お開けします!」

楓「ハクション!」

黒スーツがダンボールに手をかけた瞬間、千導院が箱から飛び出しくしゃみをした。そして黒スーツは顎に千導院の頭がクリーンヒットしたらしくとても痛がっている。

楓「もう、ミミのフードが鼻をずっとくすぐって…」

ミシェル「ごめんね楓ちゃん」

楓「いえ、ミミのせいではないですわ。我慢できなかったワタクシのせいですわ…」

八幡「…お前ら、いいのか?」

ミシェル「何が〜?」

八幡「いや、もう取り囲まれてるぞ…」

見渡すとすでに黒スーツ部隊が360度隙間なく俺たちを包囲している。もちろんどこにも逃げ道はない。

楓「はっ、いつの間に!」

八幡「当たり前だろ…」

黒スーツ「いたた…さ、お嬢様、帰りますよ」

こうして俺たちはすぐ捕まり、迷惑をかけたとして八雲先生に叱られた後、すぐ帰るよう言われて解散させられた。
175 : ◆JZBU1pVAAI [sage]:2017/01/19(木) 17:38:09.55 ID:8EpGdnVB0
>>172
なるほど。書けるかどうかわかりませんが、少し考えてみようと思います。ありがとうございます。
176 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/01/19(木) 22:21:03.73 ID:a6HAct2Po
乙です
177 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/01/20(金) 07:57:27.59 ID:cfBjYOVgO
本編2-3


その翌日、朝から俺は綿木と千導院に問い詰められていた。

ミシェル「むみぃ、先生!先生がもう少し早くミミたちを運んでたらあんなことにはならなかったよ!」

八幡「そんなこと言われてもあの状況じゃ無理だろ…」

楓「作戦はカンペキでしたのに…」

八幡「いや、穴だらけだろあの作戦は」

そもそも作戦と言えるのか?作戦ってのは戦車同士が戦う時に「こっつん作戦」とか「もくもく作戦」とかで使うんだろ?

楓「では、ワタクシたちはどうすればよかったのですか?」

八幡「そうだな…だいたい、寄り道しようとするのが行けないんだろ?じゃあ休みの日に出かけるんじゃダメなのか?」

ミシェル「そっか!お休みの日にお出かけすれば寄り道にもならないね!」

楓「なるほど、盲点でしたわ!さすが先生!」

あれぇ〜?そんなことにも気づかないなんてこの子たちちょっとアホな子?

ミシェル「じゃあじゃあ、明日は学校もないからお出かけしようよ!」

楓「そうですわね、休日ですから1日中いろんなところへ行けますわね」

ミシェル「むみぃ、楽しみ!あ、先生はどこか行きたいとこある?」

八幡「あ?俺も行くの?」

なんで?休日は休む日でしょ?休むために俺は明日は一歩も外へ出ない覚悟だったんだが。

楓「せっかくですから先生のよく行く場所へ連れてってもらいたいですわ」

八幡「は?なんで?」

ミシェル「楓ちゃん、気分転換に街歩きするのが好きなの!それでミミもよく付き合うんだけど、ミミたちだけだと行けるところも少ないから、先生に来て欲しいなって」

楓「ぜひ先生に庶民の遊び場を教えていただきたいですわ!」

八幡「ムリだって…」

ミシェル「むみぃ…」

楓「しょうがないですわね、では明日の朝、先生の家に昨日の人たちを行かせて強引に連れて来るしかありませんわ」

何それやめて!家まで来られたらどうしようもないから!それに昨日の人に会ったら俺何されるかわからない…

八幡「わかった。行くよ…」

ミシェル「わぁ〜!やった〜!」

楓「ありがとうございますわ、先生!」

八幡「はは…」
178 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/01/20(金) 13:58:14.56 ID:rfqYe2OJO
本編2-4


そうして迎えた週末。俺と言えば千葉。千葉と言えば俺、にはならないが俺が人を案内できるとしたらもうそれは千葉以外にはありえない。
そして、これから行くところは俺たち3人が行きたいところに1つずつ行くことになっている。

いやね、いくら千葉とは言え、中2の女の子が行きたがるところなんて俺がわかるわけないから無理だと言ったんだが、2人は聞き入れてくれなかった。おかげで小町にアドバイスを貰わざるを得なかった。くそ、あの時の小町の俺を小馬鹿にした笑顔、許さん。いや、可愛かったから許すか。

そんなこんなで、時間より10分ほど前に待ち合わせ場所の千葉駅に着くと、すでに綿木が到着していた。学校の外ではさすがにあのうさ耳パーカーは着ないのね。よかった…

ミシェル「あ、先生!」

八幡「おう、早いな」

ミシェル「えへへ〜、今日が楽しみだったから早く来ちゃった!」

八幡「そ、そうか。で、千導院はまだか?」

ミシェル「楓ちゃんももう来るはずだよ〜」

八幡「ほぉ」

そして少し経つと、見たこともないような黒塗りの高級車が俺たちの前に止まって、中から千導院が出てきた。いかにもお嬢様らしい登場だ。

楓「ミミ、先生、ごきげんよう。お待たせして申し訳ありませんわ」

ミシェル「大丈夫だよ!ミミたちが早かっただけだから!」

八幡「ま、そうだな。まだ時間よりかは前だし」

楓「そうですか。では早いですが揃ったので行きましょうか」

八幡「行くのはいいが、まずはどこにいくんだ?」

ミシェル「まずはミミが行きたいところに行きたい!」

八幡「どこだ、それは?」

ミシェル「むみぃ、それはね…」
179 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/01/21(土) 23:39:19.30 ID:j4sK55xQ0
本編2-5


綿木の提案により俺たちが向かったのはゲームセンターだった。入ってみると午前中とはいえ、週末のためかそこそこ人がいて賑わいを見せている。

ミシェル「ミミ、ゲームセンター来てみたかったんだ!」

楓「すごいですわね、とても騒がしいところですわ」

八幡「まぁ、こんだけゲームがあればそうだよな」

楓「これ全部遊べるんですの?」

八幡「お金入れればな」

ミシェル「ミミ、今日はパパからおこづかいもらったからたくさん遊べるよ!」

楓「それなら、ミミ、先生。わたくしこれがやってみたいですわ!」

千導院は近くにあったよくあるカーレースゲームの椅子に座り、ハンドルを持ってうずうずしている。

ミシェル「うん!やろやろ!ほら、先生も!」

八幡「え…」

楓「ほら、これ周りの人と対戦できるのだそうですよ!3人でやりましょう!」

あぁ、もう今日はこの2人に従うしかないか…グッバイ俺のおこづかい。

八幡「はぁ、わかった。だが、やる以上手加減しない」

楓「もちろんですわ!」

ミシェル「負けないよ!」

結果は俺が1位、綿木が2位、千導院が3位だった。順位以上に俺が圧勝を収め、綿木と千導院はわーわーきゃーきゃー言いながら壮絶なビリ争いを繰り広げていた。

ミシェル「やった〜、楓ちゃんに勝った!」

楓「うぅ、先生にもミミにも負けましたわ…」

八幡「初めてなら仕方ないだろ」

楓「いえ、それでも悔しいですわ!さぁ、もう一度対戦しますわよ!」

ミシェル「むみっ、次は先生にも負けないんだから!」

八幡「はいはい…」

それから何回か対戦したのち、次はこれまたゲームセンターの定番、太鼓の達人をやることになった。

楓「ゲームセンターでは太鼓をたたくこともできるのですか?」

八幡「まぁ、曲に合わせて叩いていくだけで本物の太鼓を演奏するわけではないがな」

ミシェル「ミミ、これやってみたかったんだ〜楓ちゃんもやろ?」

楓「えぇ、これも面白そうですわ」

だが2人ともうまくたたくことが出来ず、ほとんどコンボが続かない。

ミシェル「むみぃ、これ難しい…」

楓「それにかなり疲れますわ」

八幡「こういうのは慣れだからな。何回かやればそれなりにできるようになる」

ミシェル「じゃあじゃあ、先生もやってみてよ!」

楓「そうですわね、ぜひ拝見したいですわ!」

やったことがないわけではないが、自慢できるほどうまいわけでもない。俺がゲーセンでやるのはクイズゲーか上海か脱衣麻雀だからな。

八幡「一回だけな…」

だが、一回で終わるはずもなく、俺がやり終わるとまた2人がやり始め、終わりには3人で交代しながら遊んでしまった。これは明日両腕筋肉痛確定だな…
180 : ◆JZBU1pVAAI [sage]:2017/01/22(日) 01:44:26.38 ID:bWCoVSzG0
>>1は千葉には住んでいないので地元の店舗までは書けません。原作だとムー大とかシネプレックス幕張とか出てきますが、よくわからないので普通のゲーセンを想像してます。これから先、千葉関係のことが出てきても基本原作に出てきた地名、店舗を使おうと思ってるので地理的矛盾があっても気にしないでください。
181 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/01/22(日) 10:50:26.24 ID:S0mIQTAjo
乙です
182 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/01/24(火) 23:10:19.82 ID:j8CTTqre0
本編2-6


ひとしきりゲーセンを楽しんだ後、次に俺たちが向かったのは千導院の希望によりボウリングである。

楓「本当はワタクシ、カラオケに行きたかったのですが、ミミがせっかくだからやったことのないことをしようと言うので、ボウリングにしましたわ」

歩きながらそんな文句らしきことを言う千導院を見て、綿木が俺に耳打ちをしてくる。

ミシェル「むみぃ、実は楓ちゃん、歌があんまり上手じゃないの…カラオケ行ったらずっと楓ちゃんの歌聴かないといけないから、なんとかやりたいことを変えてもらったの…」

八幡「なるほど…」

綿木がここまでして千導院とカラオケに行きたくないということは、そうとう千導院の歌が酷いのだろう。うん、聴かなくてよかった。綿木グッジョブ。

そうして俺たちはボウリング場に着き、受付を済ませ、靴を履き替え、指定されたレーンに荷物を置いた。

それから俺は2人に球の選び方や、投げ方について簡単にレクチャーした。途中周りの目線が痛かったが、別に俺は悪いことはしていない、はず…ただ中2の女の子2人と遊んでるだけ!うん、字面だけ見たらマジ犯罪。

楓「なるほど!大体わかりましたわ!早速ワタクシからやってみますわ!」

そう言って千導院が放ったボールは少し曲がりながら転がり、ピンを5本倒した。

ミシェル「楓ちゃんすご〜い!」

楓「やりましたわ!」

八幡「ほら、もう一投あるぞ」

楓「えぇ、さらに倒しますわよ!」

しかし二投目はピンをわずかに外れてしまい、虚しくボールは奥に消えていった。

楓「うぅ、外れてしまいましたわ…」

八幡「惜しかったな」

楓「次こそは全部のピンを倒してみせますわ!」

そうして千導院はあーでもないこーでもないとぶつぶつ呟きながらイメージトレーニングを始めた。どんだけやる気なんだよこいつ…

ミシェル「次はミミの番だね!」

そう言って綿木は重そうにボールを持ち上げ、よたよた歩きながらレーンに向かう。そのまま綿木はボールを投げるというより落とすが、すぐボールはガーターに落ちてしまう。

ミシェル「むみぃ、難しいよ〜」

楓「ミミ、もう少しこうするといいですわ」

そう言って千導院は綿木の手を取り腰を取りフォームの指導を始める。美少女2人が密着しながら練習し、時にじゃれ合っている姿、微笑ましいことこの上ない。眼福眼福。

ミシェル「ありがとう、楓ちゃん!もう一度やってみる!」

そうしてボールはかなり曲がりながらもかろうじて1本のピンを倒した。

ミシェル「むみぃ、1本だけかぁ」

楓「でも先ほどよりもかなりよくなりましたわ!」

ミシェル「ありがとう!じゃあ次は先生だね!」

八幡「あぁ」

仕方ない、ピンに愛されている男の実力を見せるしかないか。愛されすぎていつもピンで行動してるし。それは愛されているとは言わないか。

八幡「そらっ」

俺の投げたボールは軽やかにレーンを滑り、見事9本のピンを倒した。

ミシェル「すごーい!」

楓「さすが先生ですわ!」

八幡「このくらいお前らも少ししたらできるようになるって」

本当は9本も倒すことはあまりないが、褒められ慣れてないためについカッコつけてしまった。

でもこうして女の子に褒められるのも悪くはない。妹よりも年下の子たちにだが…

楓「ゲームセンターでは負けましたが、ボウリングではもう負けませんわ!」

ミシェル「うん!ミミも頑張るよ!」

そんな2人に気を取られ集中を切らした俺は二投目にガーターを決めてしまい、盛大に笑われてしまった。
183 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/01/25(水) 08:40:51.01 ID:7EpUAcVx0
そういえば歌が下手な設定あったね…
アイドルやってるけど
184 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/01/25(水) 21:21:29.94 ID:frB6j7IDO
>>183
イベントでもその辺の下りが何故か無かったよな。
185 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/01/25(水) 22:32:48.06 ID:AJxMqaVYO
まぁ影で猛特訓したんやろ…きっと…

ふふ〜ん、ふ〜ん♪からのギ〜、ギギ〜ギ〜ッ♪はほんま謎
186 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/01/25(水) 23:51:07.07 ID:jVwZULjU0
番外編「星守センバツ試験@」


この神樹ヶ峰女学園星守クラスには特別な試験が存在する。それが「星守センバツ試験」である。これは3人1チームでの対決型試験であり、それぞれのチームのイロウス撃破数、タイムを数値化し競い合うものだ。星守ではない俺はどのチームにも入らないということだったから、俺は試験に苦労する星守たちを対岸の火事として見ていることができる。いやー。よかった、俺先生で。

などと朝のHR中他人事のように思っていると、試験の説明をしていた御剣先生が突然俺に話しかけてきた。

風蘭「比企谷、今回アンタも試験に参加してもらうぞ」

八幡「はい?」

なぜ?なんで?意味がまったくわからない。

風蘭「当たり前だろ。アンタは星守クラスの担任なんだから」

八幡「いや、俺は戦えないんで無理じゃないですか?」

風蘭「別に戦えとは言っていない。彼女たちのサポートをしてもらいたいんだ。」

八幡「サポートですか…」

まぁ、そのくらいならいいか。てっきり俺も武器を持たされ戦えと言われるのかと思った。

風蘭「だが、ただサポートするだけではいかんな。比企谷は先生だから、特別ルールを設けたいと思う」

八幡「特別ルール?」

風蘭「あぁ。比企谷には全チームの試験にサポートで参加してもらう。そして各チームの合計点がアタシが設定した基準点をクリアしてほしい」

八幡「なんなんですか、そのルール…」

風蘭「せっかく縁があってこの学校に来たんだ。どうせなら楽しんでもらいたいからな。あ、基準点をクリアできたら何か賞品をあげようと思うが、逆に下回ったら罰ゲームがあるぞ」

八幡「横暴だ…」

風蘭「心外だな。比企谷のために考えたんだぞ」

みき「御剣先生!その賞品や罰ゲームは比企谷くんだけにやるんですか?」

風蘭「今のところそのつもりだが、」

みき「なら、私も比企谷くんと一緒の条件で試験を受けます!比企谷くんだけそんなルールがあるのはかわいそうです!」

サドネ「おにいちゃんと一緒に頑張る」

ミシェル「ミミも賞品欲しい〜!」

あんこ「そうね、賞品があるなら燃えるわ。絶対基準点をクリアしてみせるわ」

明日葉「では、私たちも先生と一緒の条件で試験に臨む、ということでいいかな」

楠の言葉にクラスのみんなは一様に頷く。そんな光景を見て御剣先生も楽しそうに笑い、

風蘭「ほぉ、面白くなってきたな。では、今回は全員これまでよりもさらに努力して、賞品を勝ち取ってくれ」

星守「おぉー!」

星守たちはやる気に満ち溢れた返事をして、にわかに教室中が活気づいてくる。

八幡「…あれ、俺の意志は?」

風蘭「アンタの参加は決定事項だ。ではみんな、お待ちかねのチームの発表だ」
187 : ◆JZBU1pVAAI [sage]:2017/01/25(水) 23:55:17.01 ID:jVwZULjU0
せっかくセンバツ試験が開催されているのでぞれに便乗してみました。ゲーム本来の「先生同士の点数対決」はできないので、名前だけ同じのオリジナル試験だと思ってください。

あと、これから忙しくなるので更新が遅くなります。すみません。
188 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/01/26(木) 00:48:10.83 ID:F4Ldpv5uo
乙です
189 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/01/26(木) 09:17:38.59 ID:U5gAMuuHO
番外編「星守センバツ試験A」

風蘭「発表と言っても、チームはこれから決める」

八幡「どういうことですか?」

風蘭「だから今から決めるんだよ。これでな」

そう言って御剣先生は箱を取り出す。

風蘭「この中にアンタたちの名前が書いてある紙が入ってる。これからその紙を3枚ずつ引あて、その紙に書いてある名前の3人がチームだ」

望「面白いね!」

うらら「うららは誰が一緒でも1番輝くんだから!」

ひなた「桜ちゃん、大変だよ!ほら起きて!」

桜「zzz」

風蘭「では始めるぞ〜」

御剣先生が箱に手を入れると教室中が静かになってその行方を見守る。俺もなんだか緊張してきた…

風蘭「よし引けた。まず最初のチームは、蓮華、みき、ゆり、この3人だ」

蓮華「あら〜、2人ともよろしくね〜」

みき「よろしくお願いします!」

ゆり「1番目指して頑張りましょう!」

風蘭「どんどん行くぞ。次のチームは、詩穂、心美、望だ」

心美「私、大丈夫かな…」

詩穂「3人で頑張れば大丈夫よ、朝比奈さん」

望「そうそう!望ちゃんにお任せあれ!」

風蘭「よーし、次だー。えーと、次は、桜、楓、昴!」

桜「おぉ。2人がいれば安心じゃ。わしは寝る」

楓「桜も戦うのですわよ!」

昴「罰ゲームだけは避けたい…」

風蘭「はいはい次引くぞ。ふむ、明日葉、あんこ、サドネか」

明日葉「やるぞ、あんこ、サドネ」

あんこ「賞品があって、点数もつくなら負けられないわ」

サドネ「負けられない、ですわ」

風蘭「大分決まってきたな。では次は、花音、うらら、ミシェル」

花音「やるからには1位目指すわよ」

うらら「当然よ!ね、ミミっち?」

ミシェル「うん、うん!」

風蘭「さ、そして最後のチームはひなた、遥香、くるみ」

ひなた「ひなた頑張っちゃうよー!ね、遥香先輩!くるみ先輩!」

遥香「うふふ、そうね」

くるみ「えぇ、頑張りましょう」
190 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/01/26(木) 12:24:15.03 ID:C9wv+W9pO
何がクロスだよくっだらねえ
どうして八幡豚と京豚って他所様にも手を出すわけ?自分とこの女キャラじゃ満足できねーのか?
191 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/01/26(木) 12:27:31.72 ID:sXGkXRDMO

今回もツイバレで御剣先生角ハメしたんねん
192 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/01/26(木) 13:43:37.81 ID:3ixsRYqs0
おつ
>>1もセンバツ頑張ってるかい?Sランカーだと踏んでるけど
193 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/01/26(木) 16:41:01.80 ID:usvBj6cjO
番外編「星守センバツ試験B」


風蘭「さて、チームも決まったところでステージの発表だ。今回のステージはHPもMPも1の状態でバトルをスタートしてもらう特別ステージだ」

ゆり「かなり厳しい条件ですね」

蓮華「ゆりちゃんなら大丈夫よ〜、蓮華もサポートするから」

おいおい、HPもMPも1ってのはとんだ縛りプレイだな。気合入れすぎだろ御剣先生。

風蘭「その代わり、イロウスは全武器種で相性が得意になるように設定されている。まぁ体力はかなり多くしてしまったが」

遥香「そうなるとどのような戦法でいけばいいのかしら」

くるみ「そういうことは先生とも一緒に考えればいいと思うわ」

八幡「え?」

おい、いきなりこっちに話を振るな。反応に困っちゃうだろうが。特に常磐の声は雪ノ下にそっくりだから余計にビビるんだよ。

風蘭「えー、それから武器は全員どれを使ってもいい。だがスキルはチームメートのスキルは自由に使っていいが、他のチームのスキルは使ってはダメだ」

花音「なら私は詩穂のスキルを使えない訳ね」

詩穂「花音ちゃんが私のスキルを使って大活躍するところ見たかったわ」

相変わらずあそこは百合百合してますねぇ。国枝の愛が重いのが時々怖いけど。うっかりブチ切れたら白い髪に赤い目なんかに変身しそう。

風蘭「では説明はこのくらいにして、早速試験を始めるぞ。まずは蓮華、みき、ゆり。試験会場に移動するから付いて来てくれ」

みき「緊張しますね」

ゆり「普段の実力を出せば必ず勝てるぞ、みき!」

蓮華「れんげも普段通り、2人の可愛い姿を観察してるわ〜」

みき「蓮華先輩も戦ってください!」

…大丈夫なのか、このチーム。いやこのチームだけじゃなくて全部のチームに言えることなんだが、急造チームで倒せるのだろうか。まぁそれも御剣先生の狙いなんだろう。

風蘭「ほら、後もあるから早く行くぞ。比企谷、何してる。アンタも来るんだよ」

そう言って御剣先生は俺の襟を掴んで強引に引っ張っていく。

八幡「わ、わかりました、わかりましたから引っ張らないで」

風蘭「 わかったならいい。さ、行くぞ」
194 : ◆JZBU1pVAAI [sage]:2017/01/26(木) 16:43:29.07 ID:usvBj6cjO
>>192
一応今の順位はSクラスですけど、多分残れないと思います。復活花音持ってないので、今回取り上げた「総合試験異界」のタイムが削れないんです。
195 : ◆JZBU1pVAAI [sage]:2017/01/26(木) 16:51:11.07 ID:usvBj6cjO
それと、これから先のスコアは>>1が実際に手持ちのカードでやってみた結果です。チームによっては酷い点数にもなりますが温かく見守ってください。
196 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/01/26(木) 23:41:57.11 ID:F4Ldpv5uo
乙です
197 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/01/27(金) 09:14:21.26 ID:ySgH3zAX0
面白い試みだね
198 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/01/28(土) 18:30:34.47 ID:1xaMF35t0
番外編「星守センバツ試験C」


俺たちは御剣先生に連れられ、バーチャル空間に移動していた。

八幡「相変わらずすごいなここ」

VRなんか目じゃないほどのリアルさ。まるでSAOの世界の感じ。でもこのままログアウトできないで、アインクラッド編が始まるとかは勘弁してほしい。まずはじめに死ぬのは多分俺だし。

風蘭「ふふ、アタシの自信作だからな。さぁ、試験を始めるとしようか」

ゆり「まずは戦略を立てなければな!」

蓮華「そうねぇ、HPもSPもないとなると、まずはそれをどう確保するか考えないと。ね、先生?」

八幡「…えぇ。タイムを縮めるためにはスキルを使うことが必須ですからね」

みき「小型ゲルを倒せばSPを回復できるんじゃないんですか?」

蓮華「うーん、でもそれだけだとどうしても足りなくなるわ。他のやり方も考えないと」

ゆり「SPを回復するにはイロウスを攻撃するしかないですよね!」

みき「そうですね!ならどんどん攻撃しちゃいましょう!」

八幡「あぁ、それがいいと思う。っつーかそれしかない」

蓮華「でもただ攻撃するだけじゃダメよね?」

八幡「そこはあれです、SP回復効率を高めればいいんです」

ゆり「どうやるんだ?」

八幡「手は色々ある。嵐や雷なんかで攻撃の手数を増やす。武器にSP回復の効率がよくなるものをセットする、とかな」

蓮華「それとSPの使用量自体を減らせるようにしておくことも大事かしら」

みき「なるほど!だんだん方向性が見えてきましたね!」

八幡「あとはそうだな…メインとなるスキルを決める必要がある」

ゆり「今の私たちにできるスキルから考えると、1番威力の高いのは蓮華先輩のスキルですかね」

みき「ガンからレーザー出すやつですよね!」

八幡「あれは確かに強力だな。ならそのスキルを軸にしていこう。芹沢さんがメインにスキルを使ってイロウスに攻撃、星月と火向井はその補助ってとこか」

蓮華「いいと思うわ〜」

ゆり「燃えてきました!」

みき「頑張ります!」

風蘭「お、決まったか。ではイロウスを出現させるぞ」

八幡「ちょっと待ってください。その前にクリアしなきゃいけない基準点を教えてほしいんですけど」

風蘭「ん?それはすべてのチームの試験が終わってから発表する。だからお前らは各々の全力を出して試験に臨んでほしい」

みき、ゆり、蓮華「はい!」

……なんかうまく煙に巻かれたような気がするが、御剣先生がそう言う以上、目の前の試験に集中するしかないだろう。ま、俺にできることはここまでだし、あとは彼女たちに任せるしかない。

八幡「じゃあ3人とも、頼んだ」

蓮華「え〜先生、もう少し気持ちを込めて応援してくれないとれんげたち頑張れないかなぁ」

何言ってくれてるんだこの人。俺のピュアっぷりを弄んでやがる。顔もニヤついてるし…

八幡「あー、星月、火向井、芹沢さん、頑張ってきてください…」

みき「もちろん!」

ゆり「必ず高得点を取ってくる!」

蓮華「行ってきま〜す」

3人はそう言い残すと俺のもとから離れていった。はぁ、恥ずかしかった…さて、俺はしばらく見学しときますかね。
199 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/01/29(日) 02:06:45.13 ID:LFpSOtI/0
番外編「星守センバツ試験D」

数十分した後、3人が戻って来た。かなり激しい戦いだったのか、全員かなり疲れ切った顔をしている。

八幡「お疲れ様」

みき「つ、疲れた…」

ゆり「私の力が及ばなかったばかりに蓮華先輩にはご迷惑を…」

蓮華「あら、そんなことないわ。2人が頑張ってフォローしてくれたから倒せたのよ」

八幡「イロウス、倒せたんですね」

ゆり「あぁ、だがほぼ時間いっぱいかかってしまった」

みき「想像以上にイロウスがしぶとかったよ…」

風蘭「ははは、かなり苦戦していたな、お前ら」

御剣先生が得意げになりながらこちらへ歩いてくる。

ゆり「御剣先生!今回の試験は難しいですよ!」

風蘭「当たり前だ。簡単に倒されたら試験にならんしな」

蓮華「れんげたちが苦しむところ見たかったんですか〜?」

風蘭「別にそんな趣味はないが…とにかく、これを機にもう一度特訓を見直して、さらなるレベルアップに励んでくれ」

みき「はい!」

八幡「そういえば、点数はどうだったんですか」

風蘭「おぉ、そうだな。では発表しよう。みき、ゆり、蓮華のチームの得点は」

みき、ゆり「ごくり…」

風蘭「…1887点だ」

八幡「それは、、、いいんですか?」

なにせトップバッターだから、この点がいいのか悪いのか判断できない。星月や火向井を見ても腑に落ちない顔してるし。

蓮華「うーん、正直あまりいい点数とは言えないわね。制限時間内とはいえ撃破までかなり時間がかかってしまったし」

風蘭「まぁ、そうだな。他のチームを見てないから何とも言えないがそこそこ低いスコアではある」

ゆり「くっ、私がもっと素早くイロウスを攻撃できていたらもっと早く撃破できたのに」

蓮華「終わったことを言っても仕方ないわ。ひとまずれんげたちのできることはやったんだし、イロウスは撃破できてるわけだから落ち込むことはないはずよ」

みき「蓮華先輩…」

さすが最上級生、後輩が落ち込んでるのを見てすぐフォローの言葉をかけている。

蓮華「それに、みきちゃんもゆりちゃんも笑ってた方がずっとかわいいんだから、もっとれんげの前で笑って〜」

前言撤回、この人はただ可愛い子の笑顔が見たいだけでしたね。思考回路はエロオヤジ並だなマジで。

八幡「ま、芹沢さんの言う通り、倒せたんだからひとまずいいんじゃないか。急造チームだし、スキルにも制限があったわけだし」

みき「比企谷くん…ありがとう!」

ゆり「あぁ、でも私は自分の力不足が許せない!今からもう一度鍛え直してくる!」

蓮華「うふふ、先生も言うようになったわね」

八幡「…とにかく、もう試験は終わったんだ。3人はゆっくり休んでくれ」

みき「はい!」

蓮華「じゃあじゃあ、疲れをとるために3人でシャワー浴びにいきましょうよ!」

ゆり「い、いいですけど、変なところは触らないでくださいね…」

蓮華「え〜、それなら見るだけにするわ〜」

みき「それもどうかと思いますけど…」

そんなことを言いながら3人はバーチャル空間を後にしていく。それにしても星月と火向井と芹沢さんでシャワーか。絶対よからぬことが起きる気がする。主に芹沢さんが暴走しそう。つか、ここバーチャル空間なんだからそもそも体汚くなってなくない?あの人絶対わかってて誘ったよね。手口が巧妙で恐ろしい…
200 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/01/30(月) 21:26:53.32 ID:A1P4zIiW0
番外編「星守センバツ試験E」



星月たちが退出してからしばらくして、次のチーム、国枝、朝比奈、天野が入ってきた。

望「お、八幡お疲れー!」

朝比奈「よ、よろしくお願いします…」

詩穂「緊張しますね」

八幡「おう。じゃあ早速作戦立てるか」

望「ふふーん、今回のアタシたちの作戦はもう決まってるのだ!」

八幡「そうなのか?」

朝比奈「は、はい。さっきまで3人で話してたんです」

八幡「ほぉ」

望「その名も、『1に詩穂、2に詩穂、3.4に詩穂で、5にも詩穂!』どう八幡?」

…天野が何を言ってるのかわからない。とりあえず国枝のことを言ってるのだけは伝わるが、それ以上は意味不明だ。権藤権藤雨権藤的な?

詩穂「つまり、私のスキルを中心にして戦うということです」

俺が理解していないことを察したのか、国枝が俺に苦笑しながら説明してくれる。

八幡「なんだよ、それならそうとちゃんと言ってくれなきゃわからん」

望「え〜、八幡になら伝わると思ったのに」

天野は口をとんがらせて不満げにしている。

八幡「わかるか…」

心美「それで先生、作戦の方はどうですか?」

八幡「それについては反対する理由はない。国枝のスキルはかなり強力だったしな」

詩穂「ふふ、ありがとうございます、先生」

八幡「と、とにかくそれでやってみよう。今回のイロウスは体力がめちゃくちゃある。国枝のスキルで毒にできれば、好スコアが期待できるんじゃないか」

しまった、国枝の不意の笑顔に動揺して少し口ごもってしまった。

心美「先生、顔赤いですよ?」

八幡「いや、なんでもない、なんでもないぞ朝比奈。さ、話は終わったろ。試験行ってこい」

望「八幡〜、もっと気持ちを込めて言ってくれないとアタシたち頑張れないなぁ」

八幡「…お前、それ誰に習った」

心美「さっき蓮華先輩に…」

この場にいなくても俺のメンタル削ってく芹沢さんマジ悪魔。期待に満ちた目をされても困るんだが、特に朝比奈…

八幡「…天野、朝比奈、国枝。頑張ってこい」

望「んーじゃ、行ってくるよー!」

心美「が、頑張ってきます!」

詩穂「すぐに終わらせます」

3人は笑顔でそう言うと試験に向かっていった。うん、こういうのはホント、メンタルにくるからやめてほしい。ぼっちに人を励ます言葉をかけさせないでほしい。慣れてないんだから…
201 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/01/30(月) 21:28:05.44 ID:A1P4zIiW0
番外編「星守センバツ試験F」


程なくして試験から3人が戻ってきた。

心美「ふぅ…」

望「疲れたね〜!」

詩穂「大変だったわね」

八幡「おぉ、お疲れ」

心美「先生、詩穂先輩のスキル凄かったんですよ」

望「さすが詩穂だよね!」

詩穂「いえ、お2人が助けてくれなければイロウスを倒せなかったわ、天野さん、朝比奈さん、ありがとう」

望「詩穂!」

心美「詩穂先輩…」

そうして3人はひしっと抱き合う。うん、どことは言わないけどものすごい盛り上がってますねぇ、いい感じにたわわですねぇ。どことは言わないけど。

風蘭「比企谷、見るなとは言わんが顔には気をつけたほうがいいぞ…」

気がつくと隣に御剣先生が立っていて、俺に呆れながらつぶやいていた。

八幡「…すみません」

くっ、気づかれていたか。ステルス機能には定評のある(八幡調べ)俺が他人に気持ち悪い顔を見られるとは…不覚だ。

詩穂「あら、御剣先生」

3人も御剣先生に気づいたのかお互いに離れてしまう。

風蘭「3人ともお疲れ様」

望「点数の発表ですか?」

風蘭「あぁ。時間もないからな、さっさと発表するぞ」

心美「点数が悪かったらどうしよう…」

八幡「さっき国枝のスキルがすごかったって言ってたじゃねぇか」

心美「すごいのはすごいんですけど、でも点数がいいかは自信がないです」

風蘭「大丈夫だ心美。アンタたちの点数は3887点。そこそこいい点数だぞ」

心美「ほ、ほんとですか?」

八幡「やるじゃん、お前ら」

望「やったね!」

詩穂「悪い点数じゃなくてよかったわ」

八幡「さっきよりもかなり点数が高いですけど、やっぱり国枝のスキルがよかったんですか?」

風蘭「そうだな。あの威力と毒の効果でかなり早くイロウスを倒せていたな。そういう点では詩穂のスキルはかなり有効だったろう」

詩穂「そうやって面と向かって褒められると照れますね」

心美「はぁ、安心した」

望「よかったね、心美」

風蘭「さ、次の試験もそろそろやらないといけないから、3人は次のチームを呼んできてくれ」

詩穂、望、心美「はい!」

そうして3人はバーチャル空間を後にしていった。
202 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/01/31(火) 06:36:01.03 ID:SC/0o99Ko
元ネタわからなかったからとりあえずバトガ始めてみた
203 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/02/01(水) 14:00:54.04 ID:LWoZdRAE0
番外編「星守センバツ試験G」



次に入ってきたのは千導院、藤宮、若葉だった。

八幡「おう、来たか」

桜「やっとわしらの番か。退屈で眠くなってしまったぞ」

楓「桜はいつも寝てるじゃありませんの…」

昴「と、とにかくこれから3人で協力して頑張ろう!先生、アタシたちはどうすればいいですか?」

八幡「そうだな。まずは攻撃のメインを決めなきゃいかんのだが、」

桜「今のメンバーなら楓か昴かのお」

八幡「おい、ナチュラルに自分を抜かすな」

桜「わしはレベルも高くないし、スキルも強くないからのお。今回はサポートに徹するかな」

八幡「お、おう」

楓「そうは言われてもワタクシも昴先輩も強力なスキルは持ってないのですけど…」

昴「そうだよね、どうしようか…」

八幡「ひとつ、手がある」

昴「なんですか?」

八幡「ひたすらv-ハンマーで殴る、だ」

楓「ハンマーのチャージ攻撃で、ですか?」

八幡「そうだ。あれなら一回の攻撃力も高いし、SPも必要ない。時間はかかるがやってみる価値はあると思う」

桜「うむ、わしも八幡の意見に賛成じゃ。今のわしらにできる最大の攻撃手段はv-ハンマーじゃろ」

楓「すると、ハンマーのレベルが1番高い昴先輩にやっていただきたいところですわね」

昴「え、アタシ?」

桜「じゃな。昴頼む」

昴「桜まで⁉︎うぅ、せ、先生はどう思う?」

なんで俺に話振るの?もう2人が答え出してるじゃん。俺の意見なんて別に必要ないだろ…

八幡「ん?ま、俺も若葉が妥当だと思うぞ」

昴「そっか…」

楓「あら、昴先輩顔が赤くありませんか?」

昴「そ。そんなことないよ」

桜「ふふ、昴、よかったのお」

昴「桜うるさい!ほら、2人とも行くよ!」

若葉は俺からプイと顔を背けてしまい、そのまま千導院と藤宮を引っ張って試験に向かってしまった。いや、聞いたら少しは反応してくれないとちょっと傷つくなぁ…嫌なら俺に聞かなければ良かったのに…
204 : ◆JZBU1pVAAI [sage]:2017/02/01(水) 14:29:23.19 ID:LWoZdRAE0
ゲームでのセンバツは終わりましたが、こちらはまだ続きます。もう少しお付き合いお願いします。
205 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/02/01(水) 18:12:50.67 ID:LWoZdRAE0
番外編「星守センバツ試験H」


しばらくして3人が戻って来た。千導院と藤宮はそうでもないが、若葉はかなり疲労しているように見える。

八幡「おぉ、お疲れさん」

桜「厳しい戦いじゃった…」

楓「ワタクシの攻撃も桜の攻撃もほとんど通じませんでした…」

昴「あはは、仕方ないよ。アタシのサポートに回ってたんだから。おかげでハンマー攻撃はそこそこ効いてたし」

八幡「でも若葉、お前かなり疲れてないか?」

昴「そりゃああんだけハンマー振り回せば疲れるよ。アタシいつもはフットサルやってるからこんなに重いもの持たないもん…」

八幡「まあそうか」

楓「でも昴先輩のハンマーさばきは素晴らしかったですわ!」

桜「そうじゃな、かっこよかったぞ昴」

昴「かっこいいって褒められてもなんか素直に喜べない感じがする…」

八幡「ま、なんだ、星守として考えればそうやって後輩から褒めてもらえるのは悪くないんじゃないか」

昴「先生は、ハンマーをかっこよく振り回せる女の子はどう思いますか?」

八幡「あ?いや、まぁ単純にすごいな、と思うが」

昴「き、キライになったりしませんか!?」

八幡「なるわけねえだろ…」

昴「…それならよかった」

おい、最後声が小さくて全然聞こえねえよ。いつもみたいにもっとはっきり話せよ。

楓「昴先輩、また顔が赤いですわよ?」

桜「そういう反応をする所はかわいらしいな昴」

昴「もう!からかわないでよ!」

すまん、若葉。俺も少し女の子らしいな、と思ってしまった。

風蘭「さ、みんな、そろそろ結果発表するぞ」

そう言いながら御剣先生がこちらへやって来た。

楓「いよいよですわね」

桜「どんな点数でも受け入れるぞ」

昴「何点なんだろ」

風蘭「お前らの点数は、2194点だ」

昴「それは良いんですか!?」

八幡「今までのチームの中では2番目だな」

楓「微妙ですわね」

桜「まぁそんなもんじゃろ」

風蘭「ハンマーを使うのは悪くなかったが、やはりそれだとタイムが縮まらなかったな」

昴「そうですか…」

八幡「しょうがないだろ。よく頑張ったと思うぞ」

昴「先生…いえ、もっとアタシは強くならないと!これから特別特訓をしてきます!ほら2人もやるよ!」

楓「い、今からですか?」

昴「そうだよ!もっと強くなって先生に今度こそいいところ見せるんだから…」

桜「今日は勘弁してほしいぞ…」

昴「ダメ。桜も行くよ!ほら急いで!」

そういって強引に若葉は2人を連れて特訓へ向かっていった。さっきまで疲れてたのにこれから特訓なんて、すごいな。千導院と藤宮はかわいそうだがな…
206 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/02/01(水) 19:01:24.16 ID:LWoZdRAE0
番外編「星守センバツ試験I」


サドネ「おにいちゃん!」

若葉たちが出るや否やサドネがこちらへ走り寄って来た。

八幡「次はサドネたちか」

サドネ「うん!サドネ、頑張るよ!」

そんなサドネの後ろから粒咲さんと楠さんの姿も見える。

あんこ「ふふ、腕が鳴るわ」

明日葉「やけにやる気だなあんこ」

あんこ「当然よ。ゲーマーとしてこの試験、ハイスコアを出さないことには終われないわ」

サドネ「ハイスコア?」

八幡「ようするに一番になるってことだ」

サドネ「サドネ、一番になっておにいちゃんに褒めてもらいたい!」

明日葉「そうだな。ではそのために戦略を練ろう」

あんこ「ふふ、もうワタシの中で最適解は出ているわ」

明日葉「さ、さすがだなあんこ」

あんこ「今回のキーマンは、、、サドネよ!」

サドネ「サドネが、キーマン?」

あんこ「そうよ。あのレーザーを出すスキルを中心に、ワタシと明日葉がそのサポートをする、それが最適解よ」

明日葉「それで勝てるのか?」

あんこ「勝てるわ!これまで数えきれないゲームをクリアしたワタシがたどり着いた必勝法よ。間違いないわ」

サドネ「アンコ、かっこいい」

明日葉「私は異存はないが、サドネはどうだ?」

サドネ「サドネも大丈夫」

あんこ「なら早速殲滅しにいくわよ!」

そういって粒咲さんと楠さんは試験会場に向かうが、サドネは俺のそばから離れない。

八幡「どうしたサドネ、試験受けないのか?」

サドネ「おにいちゃんと一緒に受ける」

八幡「あー、今回はダメなんだ。俺がいると試験の邪魔になるからな」

サドネ「うにゅ…」

そんな残念そうな顔をされてもなぁ。どうしようもないんだが。

八幡「ま、俺はここで待ってるから。頑張ってこい」

サドネ「うん!」

明日葉「先生、私たちのこと、忘れてませんか?」

そう言う楠さんのほうを見ると、明らかに不機嫌そうな顔をしている。俺何かしたっけ?

八幡「いえ、別に忘れたりなんてしてませんよ?」

明日葉「なら、私たちにも励ましの言葉をかけてください!」

八幡「え?」

あんこ「そ、そうね。ワタシも欲しいかな…」

八幡「マジですか…」

まぁ、サドネにだけってのも不公平か。でもまさかこの2人がこんなことを言うなんて、なんか意外、だな。

八幡「…楠さん、粒咲さんも頑張ってきてください」

俺が言い終わるとほぼ同時に2人はサドネを抱えて試験会場に走っていった。なんなんだよ一体…
207 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/02/02(木) 17:28:38.18 ID:dI3Q46/t0
番外編「星守センバツ試験J」


さて、しばらくあいつらは帰ってこないだろうし、なんか眠くなってきたな…

「おにいちゃん!おにいちゃん!」

…なんか、声が聞こえるな。小町か?

サドネ「おにいちゃん!」

八幡「うおっ、早いな」

あんこ「速攻でクリアしてきたわ」

明日葉「あんこ、一応試験なのだからゲームみたく言うのはどうかと思うぞ…」

あんこ「倒すべき敵がいて、その撃破タイムまでスコアになるのならもうそれはゲームよ!」

サドネ「サドネもゲームみたいで楽しかったよアンコ!」

八幡「ま、何はともあれイロウスを倒せたんならいいんじゃねぇの?つかお前ら倒すのめちゃめちゃ早くないか?」

あんこ「だから言ったでしょ。ハイスコアを出す必勝法があるって」

ドヤ顔でそういうことを言う人、秋山深一以外に初めて見たぞ…

風蘭「まったく、アンタたちには驚かされたよ」

明日葉「御剣先生」

サドネ「サドネたち、すごい?」

風蘭「あぁ、もう脱帽だよ」

八幡「スコアは何点だったんですか?」

風蘭「スコアは、6964点だ!」

明日葉「高得点ですね」

八幡「高得点なんてもんじゃないですよ。4チームの中でダントツだ」

サドネ「おにいちゃん、サドネ頑張ったでしょ?」

八幡「あぁ、すごいなお前ら」

あんこ「ふふ、ワタシにかかればこんなものよ」

八幡「さすがっすね、粒咲さん」

あんこ「へ、あ、ありがとう…そ、そんなはっきり褒められると恥ずかしいわ…」

八幡「え?」

あんこ「な、なんでもないわ!」

明日葉「しかし、ほんとうに私たちのスコアは圧倒的に見えますね」

風蘭「そうだな。サドネのスキルはもちろん、明日葉とあんこがうまくサドネをサポートできたからこそのスコアだな」

あんこ「ということは、これで賞品にはかなり近づいたわね」

サドネ「賞品!」

八幡「そうかもしれないですけど、他のチームのスコアのスコアにもよりますから。まだわからないですよ」

明日葉「そうですね。全チームが力を出し切らないことには賞品も手に入らないでしょう」

風蘭「あぁ、まだ2チームあるからな。最後までどうなるかはわからん」

サドネ「おっしたら早く次のチーム呼んでこないと!」

明日葉「よし、行くか」

あんこ「ワタシそうは言っても疲れたんだけど…」

明日葉「ダメだ。あんこも一緒に行くぞ」

サドネ「じゃあおにいちゃん、バイバイ!」

明日葉「次のチームに声かけてきます」

あんこ「じゃ…」
208 : ◆JZBU1pVAAI [sage]:2017/02/02(木) 17:34:26.44 ID:dI3Q46/t0
訂正

誤…サドネ「おっしたら早く次のチーム呼んでこないと!」

正…サドネ「そしたら早く次のチーム呼んでこないと!」
209 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/02/03(金) 01:10:44.94 ID:MhyLBX1v0
番外編「うららの誕生日前編」


今日2月3日は蓮見の誕生日である。ずっと前から蓮見にはこの日を空けておくように言われ続けており、俺は律儀にも言われた通り予定を入れず、放課後に1人教室に残って蓮見を待っている。べ、別に単純に予定が入らなかったんじゃないからね!勘違いしないでよね!

うらら「はっちー何ブツブツ言ってるの…」

顔を上げると蓮見がジト目になってドア付近で俺を見ていた。

八幡「お、おぉ、いるならいると一声かけてくれ」

うらら「いや、さすがにあんなひどい目つきしながら独り言つぶやいてる人には、うららでも声かけづらいかな〜って…」

八幡「俺の目をそれ以上悪く言うのはやめてくれ、さらに腐る」

うらら「それ以上腐るの?」

八幡「いい加減にしろよ…つか、これからどこ行くんだよ」

うらら「言ってなかったっけ?今から視聴覚室に行くよ!」

八幡「視聴覚室?そんなとこで何するんだよ」

うらら「それは着いたらわかるわ!」

そういう蓮見についていき、俺らは視聴覚室にたどり着いた。

うらら「今からここでアイドルのライブ映像を見るわ!」

八幡「ライブ映像?」

うらら「そう!うららの大好きなCOLO GIRLSの伝説と言われるライブよ!」

八幡「…それは俺と一緒に見ないといけないのか?」

うらら「だってはっちーアイドルの事なーんにも知らないんだもん。今日はうららが一から教えてあげる!」

八幡「いや、別にそんなこと頼んでないんだが」

うらら「ダメ!今日ははっちーはうららの言うこと聞くの!一緒にライブ映像見て!」

八幡「でも俺ほんとになんにも知らんぞ」

うらら「大丈夫!きっとすぐ好きになるから!」

そう言って蓮見は鼻歌を口ずさみながら慣れた手つきでAV機器を操作する。

八幡「なぁ、なんでお前ここの機器の使い方知ってんの?」

うらら「もちろんここでたまにDVDを見るからに決まってるじゃない!まぁ、この前ばれてすごい怒られたけど…」

八幡「おい、まさか今日も無断でここ使ってるのか?」

うらら「今日はちゃんと八雲先生から許可得たわよ!『うららの誕生日だしね、今日くらいはいいわ』って許してくれたの」

八幡「さいですか」

うらら「さ、準備万端!早速再生するわよ!」

蓮見は映像が始まるや否やいつの間に用意していたのかサイリウムを持ちつつ、画面を食い入るように見つめている。2時間ほどの間、時にはコールを入れ、時には画面と同じ振りをやり、とても楽しそうだった。でも、やっぱりこの場に俺いらなくね?

うらら「ふぅ、楽しかった!」

八幡「なぁ、俺はここにいる意味あったのか?」

うらら「COLO GIRLSのライブを可愛いうららと一緒に見れたんだよ、楽しかったでしょ?」

八幡「……いや、特には」

うらら「なんでよ!」

八幡「だってもともと俺そんなにアイドルに興味ないし、お前ずっと画面見ていろいろやって楽しんでたから、俺置いてぼりだったよ?」

うらら「ふーん、でもはっちー、うららのことはちゃんと見ててくれてたんだ?」

八幡「え?」

うらら「だってうららがどうやってライブ楽しんでたか知ってるじゃん!」

八幡「あ…」

うらら「ま、可愛いうららのこと見ててくれてたんなら、許してあ、げ、る」
210 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/02/03(金) 01:15:17.46 ID:MhyLBX1v0
番外編「うららの誕生日後編」


く、こんな反応をされるとは予想外だったが、これから俺はある計画を遂行しなければならない。まずは、

八幡「さて、映像も終わったし、今度は俺に付き合ってもらうぞ」

うらら「なになに?デートのお誘い?そういうのはもっと前もって言ってくれなきゃうららスケジュールが〜」

八幡「うるせぇ…ひとまず行くぞ」

うらら「ど、どこ行くの?」

八幡「ふっ。着いてからのお楽しみだ」

そうして俺はぶーぶー文句を言う蓮見をなんとか体育館まで連れてきた。

うらら「こんなとこで何するの?」

八幡「ま、いいからひとまずステージの上に登れ」

うらら「もうっ、はちくん強引!」

八幡「いいから、早く…」

うらら「しょうがないなぁ…」

八幡「登ったな。よし、みんな出てきていいぞ」

うらら「え、みんな?」

俺の声に反応して、蓮見以外の星守クラスの生徒たちが一斉にステージの前を囲む。

うらら「み、みんな、何やってるの!?」

花音「今日はうららの誕生日だから、特別ライブがあるって言われて来たのよ」

うらら「特別ライブ?誰の?」

ひなた「うらら先輩のだよ!」

うらら「うららの?」

蓮華「先生がね、ずっと前からうららちゃんのために、今日この体育館を使えるよう話をつけてたのよ」

うらら「ハチくんが?なんで?」

心美「それは、うららちゃんのライブのためだよ!」

うらら「うららの、ライブ?」

望「ほらほら、今日はアタシたちみんなが観客だから、うららのアイドル姿を存分に見せてよ!」

ミシェル「うらら先輩のダンス、早く見たーい!」

そうして星守たち全員がステージ上の蓮見にむかって温かい声をかける。

うらら「みんな…ありがとう!うらら、最高のライブを披露するね!」

そう言い残すと蓮見はマイクをもってステージの真ん中に立つ。すると体育館全体が暗くなり、蓮見にだけスポットライトの光が当たる。手筈通り八雲先生と御剣先生がやってくれたようだ。さ、準備も整ったし、そろそろ俺は一番後ろに下がりますかね。

うらら「みんな、うららのためにこうして集まってくれてありがとう!今年の誕生日は一生忘れない!あと、ハチくん!うららの誕生日に、素敵なプレゼントありがとう!それじゃあ聞いてください『わたしたちのスタートライン!』」

光り輝くステージの上で蓮見がそれ以上に明るく、魅力的に歌い、踊る。さっき見た映像のアイドルよりも、こうして生で見るほうがよっぽどいいように思える。やっぱり一番後ろにいてよかった。俺にはこの輝きはまぶしすぎる。

…だがさっきの蓮見への答えを訂正しなくちゃいけない。今、この瞬間だけならアイドルを見るのも悪くないかな。
211 : ◆JZBU1pVAAI [sage]:2017/02/03(金) 01:17:26.72 ID:MhyLBX1v0
センバツ試験の番外編も途中ですが、ひとまず番外編「うららの誕生日」は以上で終了です。うらら、お誕生日おめでとう!
212 : ◆JZBU1pVAAI [sage]:2017/02/03(金) 01:21:24.99 ID:MhyLBX1v0
うららの八幡に対する呼び方が統一されてないのはミスです。好きな方に統一して読んでください。でも今さら、呼び方を変にしたことを少し後悔しています。「先生」のままのほうがよかったかも…
213 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/02/03(金) 06:00:30.55 ID:BKIKKcba0
まあ、すぐあだな付けるのがうららだし
立場上先生とはいえバトガの先生と違って八幡は年近いし活用してもいいんじゃない?
214 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/02/03(金) 07:46:32.04 ID:2BfPqjk9O
楓ちゃんがさいかわ
215 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/02/03(金) 18:03:06.73 ID:GNcS3q7DO
乙です。

うららの前で山本リンダの狙い撃ちを歌い上げてみたい。
216 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/02/04(土) 14:15:03.26 ID:PUYI0VyJ0
番外編「星守センバツ試験K」



花音「だから、私がメインに攻撃するからうららはサポートをしなさいよ」

うらら「うららがセンターなのは確定なの!かのかの先輩こそうららをサポートしてよ!」

次のチームの蓮見と煌上が口論しながら入ってきた。

八幡「おい、何言い合ってるんだあの2人は?」

ミシェル「むみぃ、2人とも自分がチームの中心だって言って譲らないの…」

八幡「あほらし…」

うらら「もう、そしたらハチくんに誰がセンターにふさわしいか決めてもらお!」

花音「こいつに?あんまり気が進まないけど、この際しょうがないわね」

八幡「は?いや勝手に俺を巻き込むなよ」

うらら「いいから!早く決めて!」

花音「ほら、時間もないんだからもたもたしないでよ」

なんで俺が2人から文句を言われなきゃいけないんですかね?俺全く関係ないのに…

八幡「あー、まぁこの3人でなら、中心になるのは煌上じゃないか?」

うらら「えー、なんでー」

八幡「単純にレベルが高いし、スキルも強力だし…」

花音「ま、当然ね」

うらら「くぅ…」

ミシェル「うらら先輩、一緒にサポートがんばろ?」

うらら「しょうがないわね…」

花音「ほら、これで方針は決まったでしょ?早く試験受けに行くわよ」

その時、綿木が思い出したように「あっ」とつぶやき俺に顔を向けてきた。

ミシェル「そういえば先生、点数の方はどう?」

八幡「ん?点数はすげぇ高い点とったチームもいれば、あんまりよくなかったチームもいて、この先どうなるかさっぱりわからん」

ミシェル「むみぃ、それならミミたちも頑張らないとね!」

うらら「うららたちが高得点をとって賞品ゲットよ!」

花音「そうね。それに、私が結果を出さないとあいつも罰ゲームをすることになるんだし…それはちょっとかわいそうというか…」

八幡「え?」

煌上の声が小さくてよく聞き取れなかった。特に最後のほうが。

花音「な、何よ!別にアンタのためになんて微塵も思ってないんだから!もう…うらら、ミミ、行くわよ!」

うらら「待ってよかのかの先輩〜」

ミシェル「むみぃ、早いよ〜」

煌上は俺にそう言い放って、すたすた歩いていき、それを蓮見と綿木があわてて追いかけていった。大丈夫かな、このチーム…
217 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/02/05(日) 13:13:06.67 ID:8OSBHRA80
番外編「星守センバツ試験L」


さっきとは打って変わってかなり時間が経ってから3人が戻ってきたのだが、

八幡「お疲れ」

花音「はぁ…」

うらら「はぁ…」

ミシェル「むみぃ…」

3人とも完全に意気消沈している。

八幡「どうした…」

花音「どうしたもこうしたもないわよ。全然ダメだったわ」

うらら「なんでこっち見ながら言うのよ!」

花音「別に見てない」

うらら「ふーん、そういう風に言うけどね、かのかの先輩だってミスしてたでしょ?うららがどれだけサポートしたか」

花音「あれはミスではないわ!わざとタイミングをずらそうとしたの。そういううららこそ何回も私の邪魔をしたじゃない!」

うらら「だってかのかの先輩がなかなか攻撃しないからうららが代わりに攻撃したの!」

ミシェル「2人とも、その辺でやめようよ…」

花音、うらら「ミミ!」

花音「あなたももっと周りの状況を把握して、自分の役割を果たさなきゃダメよ」

うらら「そうよ!もっとミミは積極的にならなきゃ!」

ミシェル「むみぃ、ごめんなさい…」

うらら「なんだかもう一度試験受けたくなってきたわ」

花音「奇遇ね、私もよ」

そう言って蓮見と煌上は綿木を置いて試験会場へ歩き出す。

八幡「おい待て、お前らそろそろ落ち着け。試験を受けなおすことなんてできないだろ」

うらら「ハチくん、これはうららたちの気持ちの問題なの!邪魔しないで!」

花音「いいこと言うわねうらら。そういうことだからアンタは口出ししないで」

ミシェル「あの、うらら先輩?花音先輩?」

うらら「ほら、ミミも行くよ」

ミシェル「あの、後ろ、見て?」

花音「後ろ?」

蓮見と煌上が振り返るとそこには御剣先生が物凄い形相で立っている。

風蘭「お前ら、その自分たちの出来に納得いかないのはわかるが、まずは現実を受け止めろ」

花音、うらら「はい…」

風蘭「それでお前たちの点数だが、1843点だ」

八幡「今のところ最下位ですね…」

ミシェル「むみぃ、悔しい…」

花音「受け入れられないわ…」

うらら「やっぱりもっと戦略から立て直さないと」

花音「じゃあ早速教室で話しあうわよ」

うらら「もちろん!」

ミシェル「ミミも!」

そう言って3人は口論しあいながらバーチャル空間を出ていった。
218 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/02/08(水) 11:43:40.07 ID:VdesdLfc0
番外編「星守センバツ試験M」


さ、やっと最後のチームか。なんかものすごく時間がかかったような気がするが多分気のせいだろう。そうだろう。

ひなた「やっとひなたたちの出番だよー!」

遥香「待ちくたびれましたね」

くるみ「こんにちは、先生」

八幡「おう、じゃあちゃっちゃと準備するか」

早く終わりたいしね。そろそろ飽きてきたし…

遥香「ではどのように戦いましょうか」

八幡「そうだな、まずはレベルの高い人をメインに…」

ひなた「八幡くん!」

八幡「ん?」

ひなた「イロウスなんてひなたがばばっとががっとやっつけるよ!」

八幡「…あぁ、」

ひなた「だから、ひなたがやっつけるってば!」

八幡「わかったよ…」

何回も繰り返さなくてもわかるっつうの。

くるみ「もしかしてひなたさん、自分をチームの中心にしてほしいんじゃないでしょうか」

八幡「え、そうなの?」

ひなた「うんうん!」

めっちゃ笑顔で頷かれても、こっちはわからなかったからね?

八幡「あぁー、でもなぁ…」

正直不安しかない。できれば成海か常磐に任せたいんだが、という気持ちを込めて2人を見てみると

遥香「私はいいですよ、ひなたちゃんのサポートをしますから」

くるみ「私も、ひなたさんを助けます」

ひなた「ありがとう、遥香先輩、くるみ先輩!」

八幡「お前ら、いいのか?」

遥香「これだけやる気になってるんですから、やらせてあげたいじゃないですか」

くるみ「そうですね」

なんかこの2人、大人だなぁ。まぁ2人がいいっていうならいいか。

八幡「そしたら、南がメインで、成海と常磐がそのサポートってことでいいか?」

ひなた「頑張っちゃうよ!」

遥香「わかりました」

くるみ「はい」

ひなた「遥香先輩、くるみ先輩、早く行こっ!」

遥香「うふふ、元気ねひなたちゃん」

くるみ「あの、引っ張らないでください…」

南が成海と常磐を引っ張るようにして試験会場へ連れて行った。うん、これで俺のやれることはすべて終わったな。俺の試験終了!何もしてないけど…
219 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/02/18(土) 14:48:52.97 ID:nu/c1HeY0
番外編「星守センバツ試験N」


八幡「遅い…」

待てども待てども2人が帰ってこない。いったいどこで何してるんだ。いや、試験を受けていることはわかってるんだが、それにしては遅すぎる。

八幡「もう帰ろうかな…」

いいよね、帰っちゃっても。だって戻ってこないんだもん。

風蘭「おい、比企谷。どこに行く」

八幡「え、いや、あの、ちょっとトイレに…」

風蘭「トイレはそっちにはないだろう。ほらまだ3人が帰ってきてないんだ。待ってろ」

八幡「でもあいつらいつまでたっても戻ってこないじゃないですか」

風蘭「もう戻って来るよ。ほら」

そう言う御剣先生の指さす先には、元気いっぱいな南と、その後ろで成海と常磐がぐったりとしている。

ひなた「八幡くん!すっごく楽しかったよ!たくさんバァーン、ズサーッてやっつけたんだ!」

八幡「あぁ、それはよかったな。で、後ろの2人はどうしたんだ?」

成海「私たち、疲れてしまって…」

くるみ「ひなたさんが一人でイロウスに突撃するのでサポートが大変で…」

八幡「…お疲れ様」

ひなた「もう、遥香先輩もくるみ先輩ももっと元気出してよ!」

八幡「おい、お前のせいで2人はこんなに疲れてるんだぞ、少しは労われ」

ひなた「えぇ〜」

風蘭「お前たち、そろそろ点数の発表をしたいんだが、いいか?」

くるみ「あ、御剣先生」

遥香「お願いします」

風蘭「このチームの点数は…1099点だ」

ひなた「それってすごいの?」

八幡「いや、最下位だ…」

くるみ「そうですか…」

遥香「正直、そんな気も少しはしていました…」

ひなた「なんでひなたちがビリなの!」

風蘭「それはなひなた、お前がむやみにスキルを連発するから時間を短縮できなかったんだ」

遥香「私たちがもっとうまくサポートできていれば…」

八幡「それでもスキル自体がそこまで強くなかったんだろ?ならどっちみち同じ結果になってただろ」

くるみ「残念です…」

風蘭「ま、いまさら何言ってもどうしようもないけどな。ひとまずこれで試験は終了だ。みんな、お疲れ」

八幡「あの、それで俺の結果は?」

風蘭「比企谷の結果はまた後で発表する。とりあえずくるみたちと一緒に教室に戻っておいてくれ」

八幡「はぁ、わかりました」

くるみ「では先生、戻りましょうか」

遥香「ひなたちゃんも、行くわよ」

ひなた「みんな待ってよ〜」

最後が最も悪い結果で、かなり落ち込んだまま、俺は教室に戻っていった。
220 : ◆JZBU1pVAAI [sage]:2017/02/18(土) 14:50:31.59 ID:nu/c1HeY0
お久しぶりです。間が空いてすみません。次くらいで「センバツ試験」終わりにします。
221 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/02/18(土) 20:17:14.90 ID:K+AhFiaV0

無理せずゆっくりでも書いてくれたら嬉しい
失踪が一番怖い
222 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/02/19(日) 02:06:11.51 ID:+Rb/pRc2o
乙です
223 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/02/22(水) 16:07:04.11 ID:QqOURr2f0
番外編「星守センバツ試験O」


風蘭「さぁ、お待ちかねの最終結果発表の時間だ」

最後のチームまで試験が終わり、教室で一息ついていたみんなの雰囲気が一気に張り詰める。

八幡「いよいよか…」

あんこ「今回、ワタシは自信あるのよね」

遥香「私たちはあまり良い点数が出せませんでした…」

楓「ワタクシも不安ですわ…」

おいおい、お前らがそんな弱気でどうするんだよ、俺まで気持ちが落ち込んじゃうだろ。

みき「で、でも私は楽しかったですよ!」

ひなた「ひなたも〜!」

サドネ「サドネも!」

蓮華「れんげも楽しかったわ〜、試験後のシャワーも、ね」

ゆり「うぅ、あんなに触られて…もうお嫁に行けない…」

望「な、なにがあったの…」

俺も気になる。火向井があんなになるなんてどんなことしたんだ芹沢さん…

昴「と、とにかく、御剣先生!アタシたちの結果はどうだったんですか!」

風蘭「うん、今回のアンタたちの結果は…合格だよ。よく頑張ったな」

みんな「やったー!」

風蘭「数チーム危なかったけどな、合計点で見れば基準はクリアだ」

心美「やったね、うららちゃん!」

うらら「当然よ!」

桜「罰ゲームをせずにすんでよかったわい」

くるみ「確かにそうですね」

ミシェル「御剣先生〜、そういえば賞品って何〜?」

風蘭「ふふ、よくぞ聞いてくれた。賞品は、新型チャーハン製造機によるチャーハンフルコースだ!」

花音「なによそれ…」

風蘭「作れるチャーハンとしては王道の卵チャーハンはもちろん、醤油ベースの和風チャーハン、香ばしい香りの焦がしニンニクチャーハン、魚介類豊富な海鮮チャーハン、さらには」

明日葉「いえ、花音はそういうことを聞きたいわけではなかったと思いますが…」

詩穂「でも美味しそうね、試験もあったからお腹空いてますし」

風蘭「そうだろう詩穂。だから今からみんなでチャーハンパーティーだ!」

八幡「またチャーハンですか…」

風蘭「文句あるなら食べなくてもいいぞ比企谷」

八幡「八幡チャーハンダイスキー」

風蘭「そうかそうか。じゃあみんなでラボに移動だ」

待ってましたとばかりに何人かの生徒がラボ向かって走って行った。

こういう展開になることはある程度予測できたな。ま、食べられるものが賞品なだけマシだ。なんだかんだ言いつつ御剣先生のチャーハン美味いし。

それに早く行かないとあいつらにチャーハン全部食べられかねない。俺も急ご。
224 : ◆JZBU1pVAAI [sage]:2017/02/22(水) 16:11:25.61 ID:QqOURr2f0
以上で番外編「星守センバツ試験」終了です。これからは本編を進めていきます。ちなみに>>1は初めてセンバツでSクラスに入れました。SクラスではなくAクラスだったら罰ゲームの展開にしようと思ってましたが賞品を与えられてよかったです。
225 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/02/22(水) 17:47:15.04 ID:VLZq5NdDO
乙です。
罰ゲームの内容が少し気になるな。
226 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/02/23(木) 00:22:42.68 ID:y6GN2FsMo
乙です
227 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/02/24(金) 13:35:19.12 ID:n0W01wG4O
本編2-7


ボウリングを3ゲームほど楽しんで、俺たちはボウリング場を後にした。

ミシェル「いっぱい動いたからお腹空いたね〜」

楓「そろそろお昼にしませんか?」

八幡「あぁ、いい時間だしな。で、お前らは何か食べたいものあるの?」

ミシェル「先生と楓ちゃんに任せるよ」

楓「それでしたらワタクシ、是非食べてみたいものがあるんですが…」

八幡「な、なんだ?」

先導院の食べたいものって、A5ランクのお肉とか、フォアグラとか、特上寿司とかしか思いつかない。俺の所持金ではその欠片でさえ食べられないぞ…

楓「あの、ラーメン屋に行ってみたい、です」

八幡「…ラーメン屋?」

楓「何故か無性に先生とラーメン屋に行きたくなりましたの」

ラーメン屋か、これまたお嬢様なイメージとは反対のものだな。正直、俺は助かったどころか食べたいものだし大賛成だ。

八幡「俺は別にかまわないんだが、綿木はどうだ?」

ミシェル「ミミもいいよ!」

八幡「そういうことなら行くか。俺がよく行くところでいいか?」

楓「はい!」

ミシェル「楽しみ〜」

ということで俺たちはここ「なるたけ」にやってきた。

楓「ここではどんなラーメンが食べられるのですか?」

八幡「ここはこってり系ラーメンが有名だ。最初は驚くかもしれんが、けっこう美味いぞ」

ミシェル「ミミこういうラーメン初めて!」

八幡「じゃ入るか」

そうして注文を済ませ、少し待つとラーメンが運ばれてきた。

楓「こ、これはすごいですわね…」

ミシェル「想像以上だねぇ」

八幡「いただきます」

これだよ、この背脂。若いうちにしか食べられない味。

八幡「ほら、早く食べないと冷めるぞ」

楓「えぇ、そうですわね、いただきます」

ミシェル「い、いただきます」

そうして2人はラーメンを口にして、

楓「美味しいですわ!庶民はこんなに美味しいものをいつも食べているのですか??」

ミシェル「むみぃ、美味しいけど、ミミこんなに食べられるかなぁ…」

八幡「なんだかんだ食べられるぞ。あと先導院、そんなに感動するものでもないと思うんだが…」
228 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/02/24(金) 21:17:45.06 ID:fWPMiKoq0

よくあるミスだけど"千"導院ね
辞書登録しとくといいんじゃない?
229 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/02/25(土) 06:43:31.71 ID:MPODaahDO
本編2-8


楓「美味しかったですわ!また食べに来ましょうね」

ミシェル「ミミはしばらくいいかなぁ…」

楓「先生は?」

八幡「俺もしばらくは来ない。ああいうのはたまに食べるから美味いんだ。俺だって毎度毎度食べてるわけじゃない」

楓「そうですか…」

八幡「…ま、まだ他にも美味いラーメン屋はある。今度はそこに行けばいいんじゃないか」

楓「はい!」

ミシェル「で、先生、次はどこ行くの?」

楓「次は先生の行きたいところでしたわね」

八幡「俺の行きたいところは…」

ここで「1人で家に帰る」、と言えれば一番いいんだが、それはできない。こいつら下手したら家に押しかけて来そうだし。さて、そんなぼっちな俺も心安らぎ、かつ中2の女の子たちも楽しめるところといえば、

八幡「ショッピングセンターだ」

ショッピングセンターなら色々な店があるからどんな人でも楽しめるし、それゆえ人から離れて1人で行動しても問題ない場所だ。ゲーセンにボウリングで俺のHPは瀕死状態だ。これ以上リア充っぽいイベントをされたらたまったもんじゃない。ここらへんで俺はフェードアウトさせてもらおう。

楓「お買い物ですわね!」

ミシェル「ミミ買いたいものいっぱいあるんだ〜」

八幡「よしじゃあ行こう、すぐ行こう」

ミシェル「先生もお買い物楽しみなんだね!」

楓「庶民のお店をたくさん見られるチャンスですわ!」

ふ、もう今日の俺の役割も終わりが見えてきたな。ショッピングセンターに着いたらするっといなくなってやる。そして帰ってやる。ステルスヒッキーの本領発揮だ!
230 : ◆JZBU1pVAAI [sage]:2017/02/25(土) 06:45:00.56 ID:MPODaahDO
>>228の通り誤字でした。次から気をつけます。教えてくれてありがとうございます。
231 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/02/25(土) 07:47:59.28 ID:MPODaahDO
本編2-9


そうして俺たちは駅前のショッピングセンターに移動した。

さぁ、切り出すなら早いに越したことはない。さっさと別れていざ帰路へ。

八幡「よし、ここからはひとつ自分の見たい店に別々に行くというのは…」

ミシェル「先生!楓ちゃん!かわいいお店がいっぱいあるよ!」

楓「ええ!どのお店も見て回りたいですわ!」

あれー、なんでこの2人俺の話聞いてくれないのぉ。勝手に盛り上がっちゃってるし。

ミシェル「じゃあじゃあ端から順番に見て行こうよ!」

楓「そうですわね!そうと決まれば早速行きますわよ」

ミシェル「うん!ほら先生も早く!」

八幡「え、いや、俺他に見たいものあるんだけど」

楓「先生にも選んで欲しいものがあるんですの。さぁ行きましょう」

八幡「ちょ…引っ張らないで…」

俺は千導院と綿木の2人にファンシーショップに連れられてしまった。

ミシェル「かわいい小物がいっぱーい!」

楓「ミミ、このクッションとってもかわいいですわ!」

ミシェル「それかわいいよね〜、ミミ、その種類のクッションいっぱい持ってるよ」

楓「そうなんですの?」

ミシェル「今度見せてあげるね!」

楓「待ってますわ!」

八幡「あの〜」

ミシェル「どうしたの先生?」

八幡「その会話、俺を挟んでする意味ある?」

店に入ってからも、綿木と千導院が俺の両脇をがっちりキープして逃げ道を塞いでいる。なんなら物理的にすごい密着されてて、身動きしようにも2人の身体の色々なところに当たりそうでそれもできないし、周りの視線も痛い。

楓「こうでもしないと先生逃げてしまいそうなんですもの」

俺の魂胆バレてました。

ミシェル「だからこうやって楓ちゃんとミミで先生をキープしてるの!」

八幡「…わかった。もう逃げないからせめてこんなに密着するのはやめてくれ」

楓「どうします、ミミ」

ミシェル「う〜ん、ミミはもう少しこのままがいいかなぁ」

楓「ワタクシもそう思いますわ」

ミシェル「じゃあごめんね先生、もう少しこのままでいさせてね」

八幡「…はぁ」

もう俺に選択権はないのね。まぁいつものことなんだけど…
232 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/02/25(土) 22:41:26.55 ID:9tq8XnZY0
番外編「エヴィーナの誕生日前編」


どうしてこんなにイライラするのかしら…最近ずっとイライラするけど、今日は特にひどい。何か原因があったかしら…いえ、思い出せない…

あぁ、とにかくイライラする。何かして発散しなければ…そうだわ。星守の誰かにイロウスをけしかけようかしら。でもそれを倒されてしまったらイロウスのムダになるわね。

ん、あれは、

八幡「ふぅ…」

確か最近神樹ヶ峰に来た比企谷、だったかしら。1人で歩いてるわね、ちょうどいいわ。あいつで少し遊ぶとするか。

エヴィーナ「ねぇ、そこのあんた」

八幡「…」

エヴィーナ「ねぇったら!」

八幡「え、俺ですか?」

エヴィーナ「あんた以外周りにいないじゃない」

なんなのこいつ、私の声が聞こえててあえて無視したっていうの。いい度胸じゃない。

八幡「はぁ、なんか用ですか」

エヴィーナ「えぇ。ちょっと私と遊ばない?」

八幡「は?」

エヴィーナ「文字通りの意味よ。ここじゃなんだから移動するわ」

八幡「へ、いや、何を言ってるんですかあんた…」

ごちゃごちゃうるさい奴ね。ま、私の部屋に入れちゃえばこっちのものだしさっさと連れ込んじゃいましょう。
233 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/02/25(土) 22:42:05.51 ID:9tq8XnZY0
番外編「エヴィーナの誕生日後編」


八幡「ここは…?」

エヴィーナ「ここは私の部屋。これから楽しいことを始めましょう、比企谷八幡」

手始めに手足を縛っときますか。反抗されたら面倒だし。

八幡「痛っ、なんだいきなり…」

エヴィーナ「お遊びよ、星守と仲良くしてるあんたが私は気に入らないの。これ以上調子に乗らないようにしてあげる」

八幡「あんた誰だよ…」

エヴィーナ「私はエヴィーナ。イロウスの親玉だとでも思ってくれればいいわ。つまりあんた達の敵よ」

ふふ、さぁ恐れおののくがいいわ。

八幡「待て、俺は別にあんたの敵ではない」

エヴィーナ「どういう意味よ」

八幡「確かに俺は星守たちと同じクラスで生活しているが、だからといって俺とあいつらが同じとは限らないだろ」

エヴィーナ「何が言いたいのかしら」

八幡「つまりだ、俺は仕方なく星守たちの手伝いをしているだけであって、俺自身はイロウスに手をかけてるわけではない。それに、あんた達と言われたが、俺はあいつらと同じ空間にいて同じことをしているだけだ。一緒の存在にされるのは不服だ」

エヴィーナ「なんて屁理屈を並べるのかしら…」

八幡「そういうことなんでそろそろ解放してもらってもいいですかね」

エヴィーナ「そういうわけにはいかないわ」

八幡「ですよね…でも俺を縛ったところでこれ以上面白いことなんて起きないですよ」

エヴィーナ「どうだか」

八幡「ほんとですよ。俺は何を言われても働かない専業主夫を目指す人間ですから」

エヴィーナ「ならなんで男子のあなたが神樹ヶ峰にいるのかしら」

八幡「俺の高校の先生と神樹ヶ峰の先生たちの飲み会の席で勝手に話が進んだ結果ですね」

エヴィーナ「ぷっ、なにそれ、意味がわからないわ」

八幡「はぁ、でも当事者の俺もよくわかってないんで」

エヴィーナ「ふふ、いいわ。今回はその状況に免じて解放してあげる。せいぜい学校生活楽しみなさい」

八幡「皮肉かよ…」

エヴィーナ「ほら、出口も作ったからさっさと出ていきな」

八幡「…どうも」

そうして比企谷八幡は部屋から出ていった。

なんで私はあいつを逃がしたんだろう。ここで始末したほうが星守たちへの打撃にはなったはずなのに。別にあいつの状況に本当に同情したわけじゃない。じゃあ、どうして?

まぁ、ただの気まぐれかしらね。なんだかんだ暇つぶしにもなったし、イライラもなくなったから今日は意外と良い日かも。
234 : ◆JZBU1pVAAI [sage]:2017/02/25(土) 22:47:08.20 ID:9tq8XnZY0
エヴィーナさん誕生日おめでとう。twitterで今日が誕生日だと知ってなんとか書きました。Aqoursのライブ物販待ちのおかげで時間があって助かりました。
235 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/02/25(土) 23:00:27.93 ID:+PsA0tVjo
乙です
236 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/02/28(火) 01:40:33.05 ID:7LIrVPUN0
本編2-10


ミシェル「次はあのお洋服屋さんに行きたい!」

楓「こ、こんな服見たことないですわ!」

八幡「おい、俺こんな店入りづらいんだけど」

ミシェル「ミミたちのそばにいれば大丈夫だよ!」

八幡「だからそれもいやだって言ってんだろ…」

そんなことを言ってるとポケットの中でスマホが鳴りだした。ディスプレイに表示される名前を見ると「小町」とある。

八幡「悪い、ちょっと電話」

そばにいる2人に声をかけて、少し離れたところで電話に出る。

八幡「なんだ小町」

小町『おにいちゃん!いつもより電話出るの遅いから小町心配しちゃったよ』

八幡「お前は俺のヤンデレ彼女か。で、なに」

小町『いやぁ、そういえばおにいちゃんに今日のお土産をお願いするのを忘れちゃったな、と思って』

八幡「そんなことくらいメールで連絡すればいいだろ」

小町『でもおにいちゃん、メール見ないこと多いじゃん』

八幡「まぁ、確かに」

小町『せっかく神樹ヶ峰の女の子たちと遊んでるんだもん、小町にもその楽しさを少しでも分けてほしいしね!』

八幡「俺は振り回されているだけだ、で、何が欲しいの」

小町『話が早くて助かりますねぇ、小町は…』

ん?小町の声が聞こえなくなった。どうしたんだ?

八幡「おい小町、どうした」

すると別のポケットに入っている通信機が鳴りだした。こんなタイミングでかかってくるということはまさか…

八幡「はい、もしもし」

樹『あ、比企谷くん?大変なの、千葉駅付近で突然イロウスが大量発生しているの!』

八幡「マジですか…」

樹『それで、今比企谷くんの近くにミミと楓がいるはずよね?急いで3人には現場に向かってほしいの』

八幡「それは良いんですが、なんで俺が2人と千葉にいること知ってるんですか」

樹『ここ数日、あの2人その話ばかりするんですもの、嫌でも耳に入るわ。とにかく、事態は急を要します。すぐイロウスのところへ向かってください』

八幡「わかりました…」

そう返事をすると通信は切られた。

おいおい、なんでイロウスがこの千葉に出現するんだよ…でも不幸中の幸いか、こいつらがいるからな。まだなんとかできるかもしれない。

ミシェル「あ、先生!」

八幡「2人とも。かなりやばいことになった」

楓「イロウスが近くに現れたのですよね。今ワタクシたちのもとへ御剣先生から連絡が入りました」

八幡「なら話は早いな。すぐイロウスのところへ向かうぞ」

ミミ「ミミたちのお買い物の邪魔をするイロウスは許さないんだから!」

楓「それに一般の方々も大勢いますから、早く助け出さないと」

八幡「あぁ、そうだな」

千導院の言う通り、今は一般人の避難も考えなくてはならないだろう。そのためにもまず状況把握をしなくてはならない。

八幡「急ぐぞ」

楓、ミシェル「はい!」
237 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/03/02(木) 00:14:13.12 ID:IJ5WQkJh0
本編2-11


俺たちが外に出てみると、まだ町の人たちに混乱している様子は見られなかった。

八幡「まずはどうやってここらへんから一般人を遠ざけるかだが…」

楓「ワタクシの家の者にやらせますわ。呼べばすぐ大勢の人が来ますから、彼らに任せれば大丈夫だと思います」

頼もしすぎるぞお嬢様パワー。

ミシェル「じゃあミミたちはイロウスを探せばいいんだね!」

八幡「あぁ、そしたら一般人の保護は千導院家の人に任せて、俺たちはイロウスの種類の特定と、大型イロウスの殲滅に向かおう」

楓「わかりましたわ」

八幡「それから、これからは一人一人別れて捜索しよう。大型イロウスを見つけたらお互いの通信機で連絡をすること。いいか」

ミシェル「わかった!」

八幡「よし、じゃあいこう」

こうして俺たちは別れてイロウスを探すことになったのだが、

八幡「時間がないとはいえ、俺1人になったのはまずかったな…」

こうして1人でイロウスを探して、もし出くわしたら逃げられる自信がない。今日は午前中から2人につき合わされて疲れているんだ。遅い小型イロウス相手でも危ないかもしれない。

ヒューン

と、突然何かが飛んできて、俺の前に小さなクレーターのような穴が出来た。

八幡「なに…?」

飛んできた方向を見ると、道の真ん中で植物のようなものがユラユラ動いているのが見えた。

八幡「あれが今回のイロウスか…」

あれは確か、シュム種だな。幸か不幸か小型イロウスは発生した場所から動かない。つまりあいつの射程距離外にいれば俺が攻撃されることはない。ここはまだ安全なはずだ。今のうちに2人にも伝えておこう。

八幡「俺だ。この付近に現れているイロウスはシュム種だ。2人とも、気を付けてくれ」

楓『わかりましたわ』

ミシェル『ミミやっつけちゃうよ!』

八幡「倒すのもいいが、最優先は大型イロウスの発見と殲滅だ。小型イロウスは少々ほっといてもそこから動くことはない。避難した人に害を与えそうなら倒してほしいが、それ以外は無視していい」

ミシェル『は〜い』

八幡「それと、大型イロウスを見つけたらすぐに連絡してくれ。1人で戦うのはダメだ」

楓『もちろんですわ、では切りますね先生』

ミシェル『また連絡するね先生』

そうして通信は切れた。俺も大型イロウスを探さないといけない。倒せない分、せめて発見くらいはして役に立たないといけないだろう。

八幡「まずはあのイロウスを超えないと…」

自分とイロウスとの距離感を測り、息を整えてから

八幡「いざ…!」

猛ダッシュでイロウスの横を駆け抜け、種が飛んでこない距離までなんとか離れることができた。

八幡「あと何回こんなことやらなくちゃいけないんだ…」

シュム種相手でもめちゃめちゃ走るじゃん、やっぱイロウス討伐きつすぎる…
238 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/03/05(日) 01:50:35.79 ID:1iahUa8o0
本編2-12


こうして俺は千葉駅周辺を走り回りながら小型イロウスの発生頻度を見ていく。

八幡「キツイ…」

すでにかなり体力を消耗してきている。だが俺が3人の中で1番ここらへんの土地勘を持ってるし、2人には危険な小型イロウスも倒してもらわないといけないから捜索は俺が率先してやらないといけないことだろう。

そうやって考えながら俺はなんとか大型イロウスがいそうな場所を絞り込んできたのだが、どうしても見つけることができない。

八幡「いったいどこにいるんだ…」

だが立ち止まって考えているとすぐに小型イロウスが出現してきた。

八幡「くそっ、また逃げなきゃ」

この数分、こうしてずっと通りをグルグル回っているのだが一向に姿を見ることができない。

ミシェル「あ、先生!」

さらに移動していると綿木に会った。

八幡「おう、大型イロウス見つけられたか?」

ミシェル「見つかんないよぉ〜、絶対このへんにいると思うんだけど…」

八幡「そうだよな。だけどもうどこにもいないぞ…」

大型イロウスだからすぐに見つかるような大きさだとは思ったんだが違うのか。もっと細い路地も探す必要があるな。仕方ない、この道を入ってみるか。

八幡「ん?おかしい」

ミシェル「先生どうしたの?」

八幡「この道は向こうの大きな道まで続いてるはずなんだが、途中で何かが邪魔している」

ミシェル「ほんとだ〜」

八幡「……まさか」

ミシェル「先生?」

俺は行き止まりまで走っていき、一瞬その行き止まりに触れ、また綿木のもとに戻ってきた

八幡「綿木、あの行き止まりが大型イロウスだ」

ミシェル「むみっ、アレが??」

八幡「そうだ。路地の中で隠れてて一部しか見えてないんだ。だから全体像をイメージして探してた俺らには発見できなかったんだろう」

ミシェル「よーし、じゃあミミやっつけてくる!」

八幡「おい待て。千導院が合流してから攻撃しないと、やられるだけだぞ」

ミシェル「むみっ、そうだった。楓ちゃん呼ばないと!」
239 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/03/08(水) 23:49:04.06 ID:gwbJA+j30
本編2-13



楓「つまり、大型イロウスはあの路地の中にいるということですか?」

八幡「そうだ。だが、まずはあいつを路地の中から大通りにおびき出さないといけない」

ミシェル「どうして?」

八幡「そもそも全体が見えてないとどうにもならないだろう。それにあいつは自分のツタを使って、俺たちの真下から攻撃を仕掛けてくる。見えてないと対処のしようがないだろ」

ミシェル「なるほど」

楓「ではどうやって大型イロウスを大通りに誘い出すのですか?」

八幡「それなんだが、ガンなどの遠距離攻撃が出来る武器を使い、なるべく大通りに近いところから攻撃をして注意をひきつけていくしかないだろうな」

楓「そうですわね」

八幡「そして大通りに誘い込めたらソードで一気に倒してしまおう」

ミシェル「わかった!」

八幡「よし、じゃあ始めるぞ」

楓、ミシェル「はい!」

こうして2人は俺の指示通り、ガンで狙えるギリギリの距離から攻撃を始めた。

楓「さぁ、こっちへ出てきなさい!」

ミシェル「ミミの攻撃をくらえ〜!」

だが、攻撃をはじめてすぐに、2人の真下からツタが出てきて反撃されてしまう。

楓「あぁっ」

ミシェル「大丈夫、楓ちゃん?」

楓「えぇ、まだいけますわ。でもあのイロウス、ワタクシたちを正確に攻撃してきましたわね」

ミシェル「どうしよう、やっぱりこのまま路地に入っていくしか、」

八幡「いや、それだとイロウスの攻撃を避けられない。なんとかして広い場所へ誘い込まないと」

楓「でも今のままではどうしようもないですわ」

さっきの作戦ではダメだったか。あんなに2人のことをうまく攻撃してくるとは想定外だった。もっと慎重にいかなければ。

八幡「そういうことなら、こっちは動き続けながら撃っていこう」

ミシェル「動き続けながら?」

八幡「止まって攻撃していると、どうしてもツタの標的にされやすい。だから動き続けながら攻撃することで、こっちの居場所の把握を困難にさせておびき出すんだ」

楓「わかりました、やってみますわ」

八幡「だが、やみくもに動いたらダメだ。この大通りからは外れないように、『こっちにいるんだ』とイロウスに悟らせるんだ」

ミシェル「わかった!」
240 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/03/13(月) 10:19:19.31 ID:dMvpeeOy0
本編2-14


楓「はぁっ」

ミシェル「やぁっ」

2人は指示通りに走りながら大型イロウスを打ち続けていく。ときおりツタが地中から出てくるが、動いている2人には当たらない。

八幡「まだか…」

かなり動きながら打ち続けているために、俺たちはかなり疲労していた。というか、俺がただ単純に疲れてるだけなんだが…

とその時、突然地面が大きく揺れだした。

八幡「これは」

楓「きますわね」

ミシェル「むみぃ〜」

大通りの地面が大きくヒビ割れ、大型イロウスが姿を現した。

八幡「デケェ…」

顔の半分以上が口だし、そこから俺の背と同じくらい長い舌が気持ち悪く動いている。ツタはもっと長くて、俺の背の数倍はありそうだ。それが5本くらいウネウネしている。

ミシェル「ここからが本番だね!」

楓「いきますわよミミ!」

そう言って2人がガンで攻撃し始めると、大型イロウスの口が大きく開いて、そこから紫色のガスが出てきた。

ミシェル「うわぁー!」

楓「きゃっ」

八幡「大丈夫か??」

少し離れたところにいた2人だが、ガスがかなり広範囲に広がってきたために、当たってしまった。

楓「一応は大丈夫ですが」

ミシェル「むみぃ、なんだか体力が減っている気がするよ…」

八幡「毒か…」

毒状態になるとどんどん体力が削られていってしまう。このまま遠距離からチマチマ攻撃していてはこっちの体力がなくなってしまうだろう。一か八か短期決戦に持ち込むしかない。
241 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/14(火) 02:35:17.78 ID:fOwRzSuBo
乙です
242 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/03/15(水) 00:32:26.48 ID:0uF/a5pn0
番外編「みきの誕生日前編」


八幡「そっちのトマト取ってくれ」

みき「これですか?」

八幡「あぁ、サンキュ」

俺は星月に取ってもらったトマトを使いサラダを作り、隣では星月がフライパンで食材を炒めている。

今、俺たちは家庭科室で2人、料理を作っている。なぜそうなったかというと……


数十分前、教室

みき「先生!今から時間ありますか?」

八幡「あ?時間はないぞ。俺は今から帰って、溜まっているラノベやアニメを消化しないといけないんだ」

みき「つまりヒマってことですよね?それじゃあ私に付き合ってください!」

八幡「話聞いてた?俺ヒマじゃないんだけど」

みき「先生、今日何の日か知ってますか?」

八幡「お前の誕生日だろ?昼にクラスで祝ったじゃないか」

みき「そうです!そんな私のお願いを、先生は聞いてくれないんですか?」

そう言って星月は顔を赤らめながら、大きな目を潤ませて俺を見上げてくる。

八幡「わかったよ、聞くよ…」

そんな顔されたら断れるわけないじゃないかよ…

みき「ホントですか!?そしたら家庭科室に行きましょう!」

八幡「え、今なんて言った?」

こいつの口から聞こえてはいけない場所の名前が聞こえた気がしたんだが…

みき「家庭科室ですよ!これから私が腕によりをかけた料理をふるまうので、それを先生に食べてもらいたいんです!」

八幡「いや、普通誕生日の人は作ってもらうものじゃないのか?」

みき「私は誕生日だからこそ作ってあげたいんです!ほら先生、早く行きましょう!」

俺はこうして強引に星月に引っ張られて家庭科室に連行されてしまった。すでに中には星月が準備したと思われる食材と調理器具が並んでいる。いくつか怪しいものが見えた気がするが、気のせいだと思いたい。

みき「♪〜」

星月はというと、制服の上からこれもまた準備してきただろうエプロンをつけている。うん、やはり制服エプロンは素晴らしいですね。制服だけ、エプロンだけ、だとそんなでもないのに、制服エプロンになると一気に背徳感が増したように思うのは気のせいですか?

八幡「で、何作ってくれるの」

みき「今日は私の特製オムライスを作ります!」

オムライスなら別に俺も嫌いではない。むしろ好きな部類に入るのだが、いかんせんこいつの「特製」オムライスになると話は別だ。全力で避けなければならないものである。だが、今日はもう付き合うと宣言してしまった以上、退くことは許されない。ならばせめて自分の傷が最小限になる道を進まなければ。

八幡「わかった。だがお前だけに料理させるのも何か申し訳ない。俺も一緒にやる」

みき「先生料理作れるんですか?」

八幡「まぁ、簡単なものならそれなりに作れる。一応お前の誕生日だしな。少しは協力させてくれ」

みき「先生がそう言うなら。是非お願いします!」

八幡「おう」

よし、なんとかこっちの誘導に乗ってくれたな。これでこいつが余計なことをしないかどうか見張りやすくなった。

ピーピー

みき「あ、ごはんが炊けました!わぁ、おいしそう。先生、これ見てください!」

八幡「ん。ん?ナニコレ」

みき「ごはんに決まってるじゃないですか!」

八幡「これが、か?」

炊飯器の中には何故だか黒いご飯が湯気を出している。百歩譲ってオムライスだから赤いごはんなら納得できるが、黒って何?
243 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/03/15(水) 00:32:59.72 ID:0uF/a5pn0
番外編「みきの誕生日後編」


みき「よし、そしたらフライパンで先に他の食材を炒めないと」

星月は食材の山からウインナーとピーマンをとってくる。いったいこいつは何を作ろうとしているんだ…せめてお腹に優しいものを作らなければ。

八幡「星月、俺はサラダを作るから野菜を取ってくれ」

みき「野菜ですか?」

八幡「そっちのトマトをとってくれ」

みき「これですか?」

八幡「あぁ、サンキュ」

あとはテキトーにレタスやキュウリやなんかを盛りつければいいだろう。

みき「さぁ、そろそろ卵を焼きますよ!」

先ほど炒めたウインナーとピーマンを黒いご飯と混ぜ合わせた星月は卵をボールに入れて素早くかき混ぜている。

八幡「手際良いな」

みき「料理は練習してますから!お菓子もよく作って遥香ちゃんや昴ちゃんに食べさせてますし」

そう言いながら星月はフライパンに卵を流し込んでいく。でも星月の作ったお菓子を食べるなんて味覚音痴の成海はいいにしろ、若葉はかわいそうだな。ナマンダブナマンダブ。

みき「そろそろ完成ですよ!」

フライパンで卵がいい感じに半熟になったのを確認して、黒いご飯を包むように乗せていく。

みき「仕上げに」

星月はケチャップで大きくハートを書いて満足げに頷く。

みき「さ、先生。特製オムライスの出来上がりです!熱いうちに食べてください!」

八幡「あ、あぁいただきます…」

とりあえず一口食べてみるか。いざ、参らん!

八幡「…うまい」

みき「やった〜!」

八幡「正直、おいしくないと思っていたが、ほんとにうまい」

みき「えへへ。な、なんか新婚さんみたいですね。2人で料理して一緒に食べるなんて…」

八幡「ごふっ、げほげほ」

みき「だ、大丈夫ですか先生?これ水です」

八幡「ぷはっ。いきなり変なこと言うんじゃねえよ。むせちまったじゃねえか」

みき「ご、ごめんなさい…」

そんなこんなしていると、俺たちはオムライスを食べ終えた。

八幡「御馳走さん」

みき「先生。私、先生がおいしそうに私の料理食べているところ見るの好きなんだって気づいちゃいました…」

八幡「え?」

みき「で、できれば、毎日こうしてそばで見てみたいなって思います…」

そう言う星月の顔はケチャップ並みに真っ赤になっている。

八幡「…」

みき「あ、私、何言ってるんだろ、あ、あの、今の発言に他意はないといいますか、深い意味で言ったわけではなくて、でも軽い意味でもなくて、」

八幡「あの、」

みき「あぁ!私用事思い出したので帰りますね!さようなら先生!」

言うや否や荷物をもって星月は廊下へ飛び出していった。片付けの終わってない状況に残されたのは俺1人。あんなことをあんな顔で言われて今さら追いかけることなんてできるはずもない。自分で言っといてあの反応はないだろ。言われた俺もめちゃくちゃ恥ずかしんですけど。

八幡「はぁ。片付けるか…」
244 : ◆JZBU1pVAAI [sage]:2017/03/15(水) 00:35:45.38 ID:0uF/a5pn0
以上で番外編「みきの誕生日」終了です。みき、お誕生日おめでとう!

キッチンみきのカードは手に入らなかったので妄想100%で話を考えました。オムライスはサイトに載っているレシピをそのまま使いましたが、実際に作ってはないので今度やってみたいです。
245 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/15(水) 01:16:24.61 ID:LyA48pzjo
乙です
246 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/15(水) 04:58:37.84 ID:uu4qbLui0
おつ
誕生日話を挟んでくれるのは愛が感じられていいね
247 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/03/21(火) 16:56:04.58 ID:rrYb2f7OO
本編2-15


未だイロウスに攻撃を続けている2人を一旦近くに呼び戻した。

八幡「このまま時間をかけていると俺たちがやられちまう。だからこれから一気に勝負を付けたいと思う」

楓「確かに早めにどうにかしなければなりませんわね」

ミシェル「そしたらソードでどんどん斬っていくしかないよね!」

八幡「それはそうだが、無闇に突っ込んでもあのツタにやられるだけだ」

ミシェル「むみぃ…じゃあどうするの?」

八幡「あのイロウスのツタは数こそ少なくないが、全て同じ行動をする。だからその隙を突く」

楓「具体的にはどのようにするのですか?」

八幡「まずは遠距離から攻撃を仕掛けて地下にツタを潜らせる。ツタが地下から出てきた瞬間に無防備になった大型イロウスに接近してソードで攻撃だ」

ミシェル「でもでもソード使ってもすぐには倒せないと思うけど」

八幡「なるべく大型イロウスの後ろから攻撃を加えてくれ。あいつは見えてる前方への攻撃パターンは豊富だが後ろや横に攻撃することはない」

楓「なるほど、背後を取っている限りこちらに攻撃はこないということですわね」

八幡「そうだ。もうお前たちは少しのダメージも許されない。絶対に失敗しないでくれ」

楓「任せてくださいまし」

ミシェル「ミミたちのお買い物を邪魔したイロウスは絶対倒すんだから!」

八幡「頼む」

楓「じゃあミミ、いきますわよ!」

ミシェル「頑張ろうね楓ちゃん!」
248 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/03/26(日) 00:58:54.17 ID:RCw2eeVQ0
本編2-16


千導院と綿木はお互いに気合を入れてから、改めて大型イロウスに立ち向かう。

ミシェル「まずはミミたちのほうにツタをおびき寄せるんだよね」

楓「えぇ、もうしばらくの辛抱ですわ」

八幡「2人とも、そろそろ来るぞ!」

そうこうしていると、大型イロウスがツタを高く挙げて、地中へ潜らせた。そして、

八幡「今だ!」

ミシェル、楓「はい!」

ツタが地上へ出てきたことを合図に、2人は全速力で大型イロウスに突っ込んでいく。

楓「ミミは右へ!ワタクシが左に回り込みますわ!」

ミシェル「わかった!」

そうして2人は左右に分かれて大型イロウスと間合いを詰める。

楓「さぁ、ミミ、ここからが勝負ですわよ!」

ミシェル「うん!」

2人は武器をシュム種に有効なソードに変更し、ダメージを与えていく。

楓「はぁっ!」

ミシェル「やっ!」

よし、2人の攻撃はかなり効いてそうだ。予想通り大型イロウスは横や後ろからの攻撃には対応するのに時間がかかるみたいだし、このままいければ勝てそうだ。

ヒューン

ん、なんだ?何か後ろから飛んできたような…

八幡「ま、まさか」

恐る恐る後ろを振り返ると小型のイロウスがうじゃうじゃ地中から生えだして、俺に向けて種のようなものを飛ばしてきている。幸い、コントロールが悪く俺には当たらなかったが、このままここにいるとやばい。確実に死ぬ。

八幡「逃げなきゃ…」

俺はイロウスから逃げるように走り出した。綿木も千導院も大型イロウスと戦っている今、俺のことを守ってくれる人はいない。自分の体は自分で守らないといけない。

まずはイロウスに見つからないように細い路地に入って時間を稼ぐ。イロウスは俺たちのことを認識しない限り攻撃はしてこない。ならばイロウスの視野から外れることが一番の防衛策だろう。

八幡「さながらリアル鬼ごっこだな」

俺は佐藤でもないし、なんならろくに名前も覚えてもらえない存在だが、今のこの状況はあのデスゲームと同じような感じがする。だけど主人公の佐藤翼って陸上部の設定だったよな。引きこもり高校生の俺が逃げ切れるんだろうか…

って何考えてるんだ俺は。疲れと緊張で頭が混乱しているようだ。こういう時こそ冷静に、だ。イロウスと戦っている2人のためにも、このぼっち歴17年で鍛えた頭を使って絶対逃げ切ってやる。
249 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/26(日) 02:18:47.67 ID:wR8r9fVRo
乙です
250 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/03/27(月) 00:34:22.92 ID:QvEIm6Ak0
番外編「桜の誕生日前編」


ひなた「桜ちゃんお誕生日おめでとう!」

サドネ「おめでとう!」

桜「ありがとう」

ひなた「ほら先生も!」

八幡「あぁ、おめでとう…」

今は昼休み、1人で気楽なランチタイムを過ごそうと思っていたら、南とサドネに捕まってしまい、学校の中庭で藤宮を入れて4人で飯を食べている。そこ、今は春休みなんじゃないの?とか余計な詮索はやめてくれ。

八幡「てか俺がここにいる必要ないだろ。3人でご飯食べればいいんじゃねえの」

ひなた「3人じゃだめだよ!チームが組めないじゃん!」

八幡「チーム?」

サドネ「えへへ、ヒナタと2人でサクラを楽しませることを考えたの」

桜「ほぉ、それは楽しみじゃな」

ひなた「でしょ!?で、せっかくだから先生も入れて2対2で遊ぶゲームをしようと思ったの!」

八幡「いや、その理屈はおかしい」

桜「はは、もう諦めろ八幡。今日はわしらと一緒に遊んでおくれ」

くっ、藤宮にこう言われたら断れない。ま、ちょっとくらい付き合ってもいいか。どうせ食べ終わっても寝るだけだし。

八幡「わかった。で、何するの」

ひなた「それはね〜、バドミントンだよ!」

八幡「は?なんで?」

サドネ「だってサドネ、バドミントンやったことなかったからみんなとやってみたかった」

ひなた「ひなたも!」

な、なんてテキトーな考え…普通藤宮のやりたそうなことをやるんじゃないの?あ、でも藤宮のやりたいことって昼寝とかそういうものか。俺はいいけどこの2人はぜったいやりたくないだろうな。

桜「ほぉ、ではわしは八幡と組むかのお。ひなたにサドネ、手加減はせんぞ」

あれ、意外と藤宮がやる気になってるな。いつもなら自分から運動をするなんてありえないのに。

ひなた「よーし、こっちだって負けないよ!」

サドネ「がんばろう、ヒナタ!」

桜「ほれ八幡、早くラケットをもって準備せい」

八幡「あ、あぁ」

ということで、バドミントンが始まったのだが、

ひなた「やぁ!」

サドネ「あ、あ、えぃ!」

南は持ち前の運動神経ですぐコツを掴み、時には強力なショットを打ってくる。サドネもまだ不安定だが、ラリーをするには問題ないレベルである。だが、

桜「むぅ…」

聞くだけでなんでも覚え、見ただけでダンスを完璧に踊る藤宮がまったくラケットにシャトルを当てることが出来ていない。

桜「ん?なんじゃ八幡。わしの顔になにかついとるのか」

八幡「いや、別になにもついてないけど…」

おかしい…いつもの藤宮ならいやいやながらやりながらも圧倒的な力を見せつけるはずなのに、今はその真逆だ。

桜「はぁ、はぁ…」

息も上がってるし、よく見たら顔も赤い。

八幡「なぁ藤宮、どうした?いつものお前らしくないぞ」

桜「何言っとるんだ。わしはいつだってわし…」

そう言いながら、藤宮はその場に倒れこんでしまった。
251 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/03/27(月) 00:36:33.53 ID:QvEIm6Ak0
番外編「桜の誕生日後編」


桜「ん」

八幡「おう、起きたか」

桜「は、八幡?ここは…」

八幡「保健室だ。お前俺らの前で倒れたからな。急いでここまで運んで来たんだ」

桜「そうだったのか、迷惑をかけたのお。ひなたとサドネにも謝りたいのじゃが」

八幡「もう放課後だからな、2人も心配してたが先に帰らせた。明日にしとけ」

桜「そ、そんなにわしは眠っておったのか…」

八幡「まぁな。それより、昼休みはなんか様子がおかしかったよな、大丈夫か?」

桜「うむ、横になって寝ることが出来て体調も戻った感じじゃ」

八幡「そうか、ならよかった。でもなんで体調良くないのにバドミントンなんてやったんだよ」

桜「ひなたもサドネもわしのことを楽しませようと考えてくれたのじゃろ?そんな2人の好意を無駄にしたくはなかったんじゃ」

八幡「そうか…」

こいつ、周りの人のことをきちんと考えてるんだな。俺の中一の時とは比べ物にならないくらいしっかりしてる。

八幡「てかそもそもなんで体調悪くなったんだ?昨日はなんともなかったよな」

桜「…なかったのじゃ」

八幡「え?」

桜「た、誕生日が楽しみで寝られなかったのじゃ!」

え、うそ?そんな子供っぽい理由?

八幡「くく…」

桜「わ、笑うな!わしも恥ずかしいのじゃ!」

八幡「いや、お前は普段がしっかりしすぎてるからな、そういう子供っぽいところがあってもいいんじゃないか?くく…」

桜「笑うなと言ったろう!もういい、わしは帰る」

八幡「悪かったって」

桜「ふん、どうせわしは子供じゃよ」

むすっとしながら藤宮はベッドから起き上がって制服を整えている。

桜「そういえば先生」

八幡「ん?」

桜「さっき、今は放課後と言っておったが、もしかしてずっとそばにいてくれたのか?」

八幡「…まぁ、午後の授業は実技だったから俺出なくてよかったし、保健室の先生は出張でいなかったからな、それに…」

桜「それに?」

八幡「目の前で見てたのに体調悪いことに気づかなかった責任もあるから、せめて起きるまでは見てようかと…」

そう、仕方なくだ。俺の目の前で倒れられて、「運びました。じゃあ帰ります」っていうのも後味悪いし。

桜「…そうか」

藤宮は出入り口まで歩いたが、ドアに手をかけたままでじっとしている。

桜「先生、わしは今日寝てしまっておったが、いい誕生日だったぞ、ありがとう」

振り返った藤宮は年ごろの女の子が見せる明るい笑顔でそう言い残し、ドアを開けて帰っていった。

1人残された保健室の窓の外を見ると、もう外は暗くなりかけている。春分の日を過ぎ、日の入りも遅くなってきたことを考えると、かなり長い時間俺は藤宮に付き添っていたようだ。だけどまだ外は寒い。あいつ1人で大丈夫かな。

八幡「心配だし、近くまで送るか」

俺は保健室を出て急いで藤宮を追った。
252 : ◆JZBU1pVAAI [sage]:2017/03/27(月) 00:38:47.76 ID:QvEIm6Ak0
以上で番外編「桜の誕生日」終了です。桜誕生日おめでとう!なんか桜のキャラがブレブレですけどそこは許してください。
253 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/27(月) 00:59:00.21 ID:v/D1k/Tio
乙です
254 : ◆JZBU1pVAAI [sage]:2017/03/27(月) 01:03:56.89 ID:QvEIm6Ak0
今さらながら、後編で桜が八幡を「先生」と呼んでいるのはミスです。
大事なセリフをミスってしまった。ごめんなさい桜。
255 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/27(月) 07:11:30.65 ID:4ajIJe6V0
いいぞいいぞ〜
誕生日おめでとう
256 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/03/27(月) 18:05:27.13 ID:WwZknZ9DO
乙です。
これ見てるとバトガやりたくなってくるな。

そういや名前呼びなのって何気にサドネだけだよな。
それ関連で何か小ネタ無いかなー何て。
257 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/03/29(水) 01:54:09.83 ID:MtNwVsOY0
本編2-17


小型イロウスよりも遠く離れた位置にいれば俺が攻撃されることはないはず。だったらまずはひたすら遠くへ逃げればいい。ならこの千葉駅から離れることがベストなんだが、そうすると俺はあいつらを置いていくことになる。こんな戦いの場で女の子2人、曲がりなりにも自分の生徒を置いていけるほど俺は腐っていない。

だとすると俺はあの大型イロウスを視界に入れられる場所にいなければならない、かつ小型イロウスからは隠れられる場所を探す必要があるのだが、果たしてそんな好都合なところがあるのだろうか…

ヒューン

八幡「おわっ」

やばい、小型イロウスの数がだんだん増えてきている。早く何とかしないと。なにかいいところは、

八幡「あ、あった」

そうだ。ここらへんにはいくらでもあるじゃないか。都合のいいところが。

八幡「ここだ!」

俺は急いでとあるショッピングモールの中へ逃げ込んだ。

そう、別に外にいなくてはいけないなんてことはなかった。他のイロウスとは違い、移動をしてこないシュム種相手ならいったん隠れてしまえば攻撃されることはない。それにここからなら窓から周りの状況がある程度は把握できる。万全を期して2階に上がっておくか。

カツンカツン、カツン

なにか一階で音がするな。なんだ?

窓から離れて1階を覗いてみると、小型イロウスが外から種をまき散らしていたのが見える。だけどあの位置からだと俺には絶対届かない、よね?

カツンカツン

それにしても種が散らばるな。何がしたいんだイロウスは。

ピキッ、グググ

え、まさか、嘘だろ?なんで種からイロウス出てくるの?一瞬で小型イロウスの大きさになっちゃうし、

ヒューン

俺の居る方へまっすぐ種を飛ばしてきた。ということは、種で増殖しつつ俺のところまで到達しようとしているのか。

八幡「やばい…」

このままここにいたら巨大な密室空間に閉じ込められることになってしまう。すぐにここを出なければ。目の前の出入り口はイロウスに封鎖されているから別のとこを使わなきゃ。

八幡「てかなんで俺ばっかり狙われるんだよ…」

まぁ周りに他の人はいないからですよね、ほんとみんな避難出来てよかった。千導院家の人には感謝しないと。

で、外に出たのはいいけどいったいどこに行けばいいのか。建物の中入ってもまたこんな状況になったら意味ないし。いや、道は一つしかなかったですね。

八幡「右しかない」

だって左側イロウスがうじゃうじゃいるのが見えたんだもん、もうこっちしかないよね。

八幡「ってやば」

正面にイロウスがいるのが見えた。次の角を左に曲がらないと。

八幡「ま、またかよ…」

今度は正面と左にイロウスが見えた。今度は右に曲がらないと…

八幡「あれ、この道ってもしかして」

イロウスに追い立てられながら走った先に見えたのは、大型イロウスの姿と、それと戦う2人だった。

ミシェル「先生!」

楓「ど、どうなさったのですか?」

八幡「はめられた…」

俺は逃げていたんじゃなく、逃がされていた、そしてまんまとこの場所へ戻されたわけだ。くそっ、頭使って逃げるどころか逆にイロウスに捕まっちまったじゃないか…
258 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/29(水) 06:36:52.15 ID:hNu/05KL0
種で増殖はおもしろいな
実際やられたらめんどくさそうだけどww
259 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/29(水) 10:31:05.28 ID:Qsy4E2YJo
乙です
260 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/03/30(木) 00:10:30.87 ID:LFw+m70b0
本編2-18


八幡「いや、まぁ、小型イロウスから逃げようとしてたんだが、ちょっとな…」

ミシェル「?」

綿木は何が何だかわからない様子で首をかしげている。

八幡「そんなことより、大型イロウスをなんとかしないと」

楓「あれ?」

八幡「どうした千導院」

楓「いえ、先生がいなくなってからはしばらく小型イロウスは見なかったのですが、またチラホラ向こうの方に姿が」

ミシェル「あ、ほんとだ」

見渡すと確かにどの方向にも小型イロウスがうごめいているのが見える。多分、俺が連れてきましたゴメンナサイ。

八幡「このままだと挟み撃ちにされるぞ」

楓「ミミ、今こそスキルを使うときですわ!」

ミシェル「そうだね楓ちゃん!ミミに任せて!」

八幡「スキル?」

楓「ミミのスキルは広範囲にダメージを与えられるんですの」

ミシェル「いっくよー『フル♪フル♪ラビッツ』!」

綿木がスキルを発動させた瞬間、彼女の周りにウサギのぬいぐるみが現れ、それと一緒に綿木は踊り出す。すると上空から大量のウサギがイロウスの居る方向へ降り注いでいく。当然、俺たちのいるところにも降ってくる。

八幡「やべえ、当たる…」

俺はその場でしゃがみ込み頭を抱えて防御態勢をとる。が、ぬいぐるみは見事に俺をスルーしていく。

楓「先生、何やってるのですか…」

八幡「いや、俺にも当たるんじゃないかと思って…」

ミシェル「スキルはイロウスしか攻撃しないから先生は大丈夫だよ!」

八幡「そ、そういうものなのなのね」

できればもっと早くそのこと教えてほしかったなぁ。まぬけな姿晒しただけじゃん…

八幡「で、スキルの効果は?」

ミシェル「見てのとおり、小型イロウスは全滅だよ!」

確かに、ぱっと見小型イロウスは視界には入らない。

八幡「上出来だ綿木。あとは大型イロウスだけだな」

できればこの流れのまま一気に倒してしまいたい。時間をかけるとまた小型イロウスが湧いてくるかもしれない。

楓「先生、今度はワタクシがスキルを使いますわ」
261 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/03/31(金) 00:15:36.49 ID:/qZ45Qtf0
本編2-19


楓「『クルーエルスクラッチ』!」

千導院はスキルを唱えると、大型イロウスに向かって素早く近づいてまるで切り裂くかのように攻撃を加える。大型イロウスはまともに攻撃を受けたためにその場に崩れ落ちるように倒れた。

楓「ふぅ、これで大型イロウスも討伐できましたわ」

ミシェル「やったよ楓ちゃん!」

楓「ミミが周りの小型イロウスを倒してくれたおかげで、ワタクシは大型イロウスに攻撃を集中できたんですのよ」

なんとか倒せたか。今回も疲れたなぁ、なんもしてないけど。

八幡「2人ともお疲れさん」

俺の声に反応して2人がこちらへやって来るが、その背後でゆっくりと大型イロウスのツタが動いているのが見えた。

八幡「伏せろ!」

だが俺の叫びは2人には届かない。こうなったら強硬手段だ。

八幡「うおお」

イロウスのツタもかなり2人に迫っている。だがこの攻撃を体力が無い2人が受けるとヤバい。もう体ごと突っ込んで2人を抱え込んで回避するしかない。一度回避できれば、まだ戦えるかもしれない。

八幡「間に合え!」

俺は2人を両腕で抱きかかえて、そのままの勢いで横へ跳びのいた。間一髪間に合ったが、今の衝撃で俺はもちろん、2人も体を強打してしまった。

ミシェル「いたた」

楓「な、なにが起こったんですの」

八幡「まだ大型イロウスは動けてて、今、ツタが後ろからお前らに向かってたんだ」

楓「では先生はワタクシたちを助けるために…」

八幡「あぁ、だけど一回しか助けてやれそうにない。もう俺は動けないし、2人も限界だろ」

ミシェル「でも、限界とか言ってられないよ!なんとかしなきゃ!」

楓「そうですわ!」

八幡「やめろ、今のうちに逃げろ…」

2人は今にも倒れそうにふらふらになりながらもイロウスと対峙する。

ミシェル「今、ミミたちが逃げるわけにはいかないの!」

楓「だってワタクシたちは星守だから!」

そう言って構える2人に向かって大型イロウスのツタが襲いかか、

らなかった。2人の目の前でツタは落ち、そのまま大型イロウスとともに消えていった。

ミシェル「消えた…」

八幡「なんでだ?」

楓「もしかして、ワタクシのスキルでイロウスは猛毒にかかっていたのかもしれませんわ」

八幡「猛毒?」

楓「えぇ、スキルの攻撃自体ではダメージが足りませんでしたが、猛毒を与えることには成功できたようで、そのダメージで倒せたんだと思いますわ」

ミシェル「楓ちゃんのスキルが猛毒を与えるもので助かったね」

八幡「あぁ。だな」

大型イロウスから毒をくらってピンチだったのに、最後は逆に猛毒で倒すとはな。ちょっと思うところがあるな。

楓「今連絡がありまして、周囲の小型イロウスも消滅したらしいですわ」

ミシェル「よかった〜、ミミたち勝ったんだ!」

2人は抱き合って喜んでいる。その笑顔をなんとか最後は守れたのはよかったけど、今は俺のことも気にしてほしいなぁ。もう全身痛くて動けないから早く助けて。
262 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/31(金) 01:08:39.02 ID:6rKFjyJCo
乙です
263 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/31(金) 14:09:50.90 ID:y5JICni20

そういえば回復や支援効果付きのスキルは八幡にも効くんかな?
264 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/04/02(日) 23:33:09.48 ID:r/WNV3U20
本編2-20


千葉で壮絶な戦いを繰り広げた(綿木と千導院が)次の日の朝、やっと俺は待ち望んだ平和な休日を家で堪能していた。

プルルル

小町「はいはい、今でますよーっと」

こんな朝早くに電話か、珍しいな。

小町「もしもし、あっ、いえ、こちらこそお世話になってます。え、はい、大丈夫です!はい!お待ちしてます!」

そう言って小町は受話器を置いて、俺に不敵な笑みを浮かべながら話してきた。

小町「おにいちゃん、急いで出かける支度して」

八幡「え、なんで。今日は家から一歩も外出ないぞ。たとえ小町の頼みでも」

小町「いやぁ、小町の頼みじゃないんだよなぁ。とにかく急いで!来ちゃうから!」

八幡「誰が、」

その時、ピンポーンと玄関のベルが鳴った。

小町「ほらおにいちゃんがもたもたしてるからもう来ちゃったよ!今ドア開けまーす!」

小町が小走りで玄関のドアを開けると、いつぞやの千導院家の黒スーツ軍団が乗り込んできた。

黒スーツ「さ、比企谷先生。楓お嬢様とミシェルさんがお待ちです。すぐに千葉駅までご同行願います」

やだ!小町助けて!と小町をすがるような思いで見つめると

小町「あ、兄は強引に連れてってくれて構いませんので、力ずくで連れ出してください」

黒スーツ「わかりました」

小町、兄への扱いが虫けら同然なんだけど?それにスーツの人、小町の意見わかっちゃだめでしょ。なんていう心の叫びは聞こえるはずもなく、ましてや抵抗などできないまま、俺は車に乗せられた。うん、犯罪を犯して逮捕された人が移送されるときってこんな感じなんだな。なんて思っていると車は千葉駅に到着した。

黒スーツ「さ、比企谷先生、お降りください」

最後だけやたら丁寧に車を降ろされると、遠くから2人の少女が走り寄って来た。

楓「先生!遅いですわよ!」

ミシェル「ほら早く行こ!」

八幡「どこにだよ、つかなんで俺は強制連行されたんだ」

ミシェル「昨日のお出かけの続きだよ!まだショッピングセンター全部回れてないし!」

楓「それに昨日の所以外のおいしいラーメン屋も連れてってくれると言ってくれたではありませんか」

八幡「え、いや、確かに言ったし、言ってたのも聞いてたけど、今日やるの?」

楓「当たり前です!昨日イロウスに邪魔されて不完全燃焼だったのですから」

ミシェル「だから今日はほんとに1日中、3人でお出かけするの!」

こう、中学生ってほんと元気だな。昨日の疲れなどまるでないかのように、ましてやイロウスが出現した場所にも関わらず楽しそうにしている2人をちょっと尊敬した。

八幡「はぁ、わかったよ、行けばいいんだろ行けば」

ミシェル「やった!」

楓「では早速買い物から始めましょ!」

八幡「おい、昨日のショッピングセンターはこっちだ。勝手に行動するな。はぐれるぞ」

勝手にどっかに行こうとする2人に俺は声をかけた。すると2人はこっちへ戻ってきてから俺の両脇に密着する。

ミシェル「なら先生とくっついてれば大丈夫だね!」

楓「ワタクシたちの引率、お願いしますわね先生」

暑い苦しい歩きずらい恥ずかしい。でも

八幡「今だけな」

口に出した言葉はそのどれでもなかった。
265 : ◆JZBU1pVAAI [sage]:2017/04/02(日) 23:36:15.28 ID:r/WNV3U20
以上で本編2章終了です。次は番外編投下します。

>>263一応八幡はただの人間なのでスキル効果はかからないつもりで書いてます。後になって変えるかもしれませんが。
266 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/04/02(日) 23:37:03.08 ID:r/WNV3U20
番外編「合宿所@」


八幡「合宿所の見回り?」

樹「えぇ、ここ最近忙しくて私たち教員の目が行き届いていないのよ。だからお願いできない?」

八幡「別にいいですけど、俺行ったことないんですよね合宿所」

樹「学校の敷地内にあるし、ここからそんなに遠くないわ」

八幡「はぁ、てかなんのためにあるんすか、そこ」

樹「一応、星守たちのためにって建てられたけど、全然使われてないのよね。設備自体は今でも時々追加されてるからかなりいい施設なのだけれど」

八幡「へぇ」

ま、今は使われていない、しかも見回りだけっていう仕事なら楽そうだな。なんならこれをダシにして雑務をサボることもできそうだな。

八幡「ま、そういうことならとにかく行ってみましょうよ。早く行くことに越したことはないですし」

樹「そうね。では行きましょうか」

そうして歩くこと十数分、それらしき建物が目に入ってきた。

八幡「けっこうきれいですね」

樹「えぇ、建てられたのはかなり最近だから」

八雲先生はポケットからカギを出してドアを開けると俺に中に入るよう促す。

八幡「失礼します」

中は暗く、がらんとしていて人の気配はない。すぐ右手には上と下に続く階段とミーティングルームがあり、左手にはトイレや風呂などがあるようだ。奥に進むと4つのドアがある。これがここに泊まる人の部屋だろう。

八幡「かなりしっかりしていますね」

樹「2階もすごいわよ」

八雲先生に促され2階に上がってみると、すぐのところに大きな遊戯室があり、その向こうには音楽室、そして1階と同じように部屋のドアが4つ見える。

八幡「すげぇ」

樹「極めつけは地下のフロアよ」

これよりすごい設備があるのか?いったいなんだろうか、と少しワクワクしながら階段を下りてみた先に広がっていたのは大きなプールだった。

八幡「なんなんだこの施設…」

使わないのがもったいない。使わないなら俺がここに住みたいくらいだ。ここに住めば学校近いから遅くまで仕事できるしな。…はっ、今の俺の思考回路、完全に社畜のそれだった。まさか八雲先生、俺を社畜に洗脳しようとここに…

樹「うん、特に異常はないわね」

八幡「まぁどこも埃っぽいですけど」

使われていないためか掃除はされていないのでかなり汚い。拭いたり掃いたりすれば落ちそうな汚ればかりだが。

樹「それもそうね。あ、そうだわ。比企谷くん、せっかくだからここの掃除、お願いしてもいいかしら」

八幡「え」

樹「星守クラスの子たちにも協力してもらうから。もともとあの子たちの合宿所としてここは建てられたのだし」

八幡「なら別に俺がやらなくても、あいつらにやらせれば、」

樹「ダメよ。比企谷くんはあの子たちの担任なんだから。掃除監督として、お願いね」

これはもう断れるものじゃないな。ならさっさとテキトーに終わらせて帰るとするか。

樹「あ、任せたとは言ってもしっかりやってるかどうか確認には来るから、サボろうなんて思わないでね」

八幡「ももも、もちろんですよ」

やべ、この人俺の心の中読んでるの?

樹「なんでそんな慌ててるのよ。とにかく、頼んだわ」

八幡「…はい」

さて、どうしたものか。
267 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/04/02(日) 23:37:46.19 ID:r/WNV3U20
番外編「合宿所➁」



次の日、朝のHRで合宿所の掃除についてみんなに話すことにした。

八幡「昨日、八雲先生と合宿所に行ったんだが、予想外に汚くてな。今日の放課後に掃除をすることになった。星守クラスのための合宿所みたいだから、俺たちで掃除するぞ」

俺がこう言うとところどころから不満の声が上がってきた。

ひなた「ひなた掃除きらーい」

うらら「うららたちが汚くしたわけでもないのに、なんで掃除やらなきゃいけないのよ」

あんこ「今日の夕方からイベント走らなきゃいけないんだけど」

うんうん、みんなの不満はよくわかる。だが、そんなことで俺はお前らを自由にはしない。面倒な仕事はなるべく分担して早く済ませるのが俺流。悪いが犠牲になってもらうぞ。

明日葉「みんな、そんなこと言うな。私たちのために学校が建ててくれた合宿所だ。これを機に一度しっかりきれいにしよう」

みき「明日葉先輩の言う通りですよ!」

よしよし、ナイスアシストだ楠さん、星月。

昴「でもアタシたちで掃除しても、使わないんじゃ意味ないよね」

楓「そうですわね。学校の施設なら千導院家の人を使って管理させるのも無理ですし」

八幡「確かに…」

掃除をするのはそこを綺麗に保つ必要があるからだ。だが合宿所はこれまで使われていない。だったら汚いままでもいいのかもしれない。別に汚いことで迷惑は掛かってないわけだし。

蓮華「ふふ、先生、それなられんげに考えがあるんですけど」

八幡「なんですか芹沢さん」

蓮華「その合宿所ってれんげたちのためにあるんでしょ?なら、掃除して綺麗にしたられんげたちに自由に使わせてほしいの」

心美「合宿所を自由に使うってどういうことですか?」

蓮華「文字通りの意味よ。今使われてないってことは普段の特訓なんかでは必要ない施設ってことよね。だかられんげたちで好きなように使っちゃおうってことよ。どう先生?」

八幡「さすがに俺1人の考えではどうにも言えない。放課後までに八雲先生や御剣先生から許可を得られたらそうしよう」

桜「おお、これで昼寝の場所が増えるわい」

望「アタシもちょうど、服を置くスペースも欲しかったんだぁ」

八幡「おい2人とも、まだ使えると決まったわけじゃないぞ。とにかく、放課後に合宿所の入り口に集合だ。いいか?」

みんな「はーい!」

268 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/04/02(日) 23:38:14.62 ID:r/WNV3U20
番外編「合宿所B」


八幡「全員いるか?」

みんな「いまーす!」

放課後になり、俺たちは合宿所の前にやってきていた。掃除後にここを使う許可については「いいんじゃない?あんたたちで自由に使いな〜」という御剣先生の一言で言質が取れた。それにしても軽いよなぁあの人。

明日葉「では行きましょう先生」

八幡「えぇ、でもその前に一つ確認したいことがあるんですけど」

くるみ「なんですか先生」

八幡「どうしてみんな体操服なんですか…?」

そう、まだけっして暖かいとは言えないこの時期になぜかみんな体操服なのだ。俺にしては、別にスカートひらりを期待していたわけでは全然ないのだが、やはり気になる。

遥香「合宿所はかなり汚れていると先生が言ってましたので、汚れてもいい服のほうがいいのではないかと蓮華先輩が」

ミシェル「制服が汚れちゃったらイヤだもんね、さすが蓮華先輩!」

…いや、あの人がそんな親切心だけで服装の提案をするわけがない。それにこの合宿所を自由にする、という案も芹沢さんが言い出したことだ。何か裏があるはず。

蓮華「あら、先生、れんげをそんなに見つめて、何かご用ですか?」

八幡「いえ、別に」

ま、今は考えなくてもいいか。

花音「ねぇ、寒いんだけど、早く中に入れてくれないかしら」

八幡「あ、すまん。今開ける」

ガコーン

詩穂「へぇ、中はずいぶん広いわ」

みき「ここを私たちで使っていいんですか?」

八幡「あぁ。掃除したらな」

ひなた「すごいすごい!2階には卓球台とかバンドの楽器とかあったよ!」

サドネ「ここ面白い!」

ゆり「2人とも、まずは掃除だぞ。遊ぶのはあとだ」

ひなた、サドネ「えー」

あんこ「そういうゆりもなんかそわそわしてない?」

ゆり「わ、私は風紀委員としてみんなが掃除をしっかりやるかどうか見張るんです!けっして楽しみなわけではありません!」

あんこ「はいはい、そういうことにしておくわよ」

八幡「よーし、じゃあとっとと掃除始めようぜ」

ミシェル「ミミほうきで掃く〜」

うらら「うららもほうき!」

昴「じゃあアタシはぞうきんで…」

詩穂「みなさんストップ!」

うらら「詩穂先輩、どうしたんですか?」

詩穂「みなさん、掃除は心をこめて、かつ効率的にやらないと綺麗にはなりません!まずはきちんと役割を決めるところから始めましょう」

八幡「すごい気合の入りようだな、おい」

花音「こうなった詩穂は止まらないわ。私たちも本気でやるわよ」
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