八幡「神樹ヶ峰女学園?」

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574 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2018/01/05(金) 15:18:14.29 ID:cigdtzRv0
本編6-21


明日葉の母「失礼します。お茶のおかわりをお持ちしました」

明日葉「ありがとうございます。お母様。そういえばお菓子をまだ頂いていませんでした。みんなでいただこう」

タイミングがいいのか悪いのかわからないが、楠さんの母親が部屋に入ってきた。それを合図に、楠さんは話を終えた。

明日葉の母「今日はみなさんが来るということで、有名な老舗店のお菓子を用意したんです」

蓮華「すごいわ。こんな美味しい和菓子初めて食べた〜」

明日葉「お、お母様。これはかなり高価なものでは?」

明日葉の母「いいんですよ明日葉さん。せっかく先生や御友人がいらっしゃってくださったんですから」

こうして芹沢さんと楠さんが和菓子を食べている最中、楠さんの母親が俺を手招きした。それに応じて俺は隣の部屋へ移動する。

明日葉の母「いつもお世話になっております。先生。こちらから挨拶に伺わなければならないところを、わざわざお越しくださって、ありがとうございます」

そう言って楠さんの母親は袖を折って深々と頭を下げてきた。

明日葉の母「あの子、家じゃ先生のことばかり話すんですよ?それも時々顔を赤くしながら。その時の明日葉さん、先生にもご覧になってもらいたいくらいです」

八幡「はあ……」

あれ、なんで俺は娘かわいい自慢を聞かされてるんだ?そのためだけに俺はこの部屋に呼ばれたのか?

明日葉の母「今日この家へお呼びすることになってからも、ケガをしているにもかかわらず楽しみにしてましたから」

俺の背中の向こう、襖の奥にいる楠さんを思っているのだろう、楠さんの母親は少し目を細める。

八幡「……ケガをさせてしまったのはこちらの監督責任です。申し訳ありませんでした」

明日葉の母「星守である以上、ケガをするのは仕方のない事です。明日葉さんには、これを機に、さらに研鑽に努めてもらいたいところです」

やっぱり楠さんの母親なんだな。こうして1対1で話すと、ただごとじゃない雰囲気に気圧されて下手なことが言えなくなってしまう。

明日葉の母「ただ、体がよくなっても、心も治らなけば戦えません。今の明日葉さんは、決定的に心が弱っています」

八幡「心、ですか」

明日葉の母「私が聞いても何も話してくれません。おそらく自分1人で責任を抱え込もうとしているのでしょう。小さい頃から、責任感は人一倍ある子でしたから」

確かに楠さんは1人で頑張りすぎるところがある。生徒会しかり、星守のリーダーしかり。

明日葉の母「今までのあの子のやり方を否定するつもりはありません。ただ、今のやり方がいつまでも通用するとは思えません。そう思われませんか先生?」

八幡「……そうですね」

俺もどっちかと言うと1人でこなしてきたタイプだ。だが、楠さんと決定的に違うのは、俺の場合は1人だったからこそ1人でやらざるを得なかった。でも楠さんは、周りに信頼できそうな人がいるにも関わらず1人で色んなことを背負いこんできた。

明日葉の母「ですから先生。あの子のこと、どうかよろしくお願いします」

八幡「……は、はい」

もう一度頭を深々と下げてきた楠さんの母親に合わせ、俺も同じように頭を下げて返答するしかできなかった。
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