会長「音が紡ぐ笑顔の魔法」

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46 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2017/03/18(土) 23:09:00.47 ID:v6tlhwdrO
>>44
綺羅星ソニアで見つかるとは…!

>>45
未完です。プロットが消えた為


更新はもう少しお待ちください
47 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/19(日) 01:50:02.06 ID:uhnge4uro
消えてしまったのか残念だ気が向いたらお願いします
更新も楽しみに待ってる
48 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/26(日) 02:45:36.27 ID:gZY7b9pho
会長のアイドル名?ってなんで変更したんだ
49 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2017/03/27(月) 00:26:05.29 ID:VJO5l2BJO
男「よしっと……」

HRが無事終了した所で部室に向かう前の事だった。
何となくなのか、冷やかしなのか、友が俺の事を呼び止める。

友「男」

男「ん?」

友「これから軽音部でライブやるんだってな」

男「あっ、あぁ……」

突然の出来事に動揺してしまったが……そうか、自由天文部は周りの人間からは軽音部として認識されているのか、最初から軽音楽部として売り出せば良いのにも関わらず。

友「俺も行くよ」

男「ありがと」

友「……友達が応援してやるってのにも関わらず、反応薄いな」

男「それどころじゃないからな、俺も必死なの」

友「……頑張れよ」

男「おうっ」

タッタッタ

友「あいつ、かわいいのにカッコイイな……」ボソッ

友「あれ?俺ってホモ?レズ?」
50 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/27(月) 23:40:57.10 ID:qFpkvVeqo
素でもかわいいのか男
おつ
51 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2017/03/29(水) 00:42:34.48 ID:JPXu+AQkO
男「あれ?」

遅れた筈なのに部室にはまだ誰も居ない。

不良「準備、出来てるってさ」

背後からかけられる不良の言葉、それは俺をどうしようもなく興奮させた。

男「リハは?」

不良「ロリ先輩は部長のバンドでとっくに弾いてるよ」

男「会長は?」

不良「自分の世界に入ってるから何言っても駄目だな、あれは」

男「心配だ……」

不良「じゃあ二人でやるか、セッション」ダンダンダン

不良は隅に置いてある古びたドラムを前にして、軽快なリズムを刻み出した。

男「頼む」

俺はすがるように、弦を弾く。

まだ、何も目覚めていない、
52 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2017/03/29(水) 20:19:13.70 ID:GesQH15pO
体育館はそれなりの盛り上がりを見せていた。

ロリ「……」

部長「あんがとなー!」

「「ひっこめノッポー!!」」

部長「うっせー!!」

ギャハハ

ロリ「……」

この子も“あの人”の器では無かった。

求めるのが酷な話と言う物だろう、“あの人”は常人の物差しでは測れない世界に生きていたのだから。

部長「じゃあさ、次は俺達の後輩が演奏するから!!」

ロリ「……」

まさか、こんな短い間でまた会えるとは思ってもいなかった。

部長「バンド名はまだ決まってない!!聞いてくれ!!じゃっ!」

「「おおーー!!」」

部長や副部長の友達が居て良かった、安心して歌ってもらう事が出来る。

会長「人人人人人人人人人人人人」ガタガタ

部長、副部長、副会長と入れ替わるように新入部員が入場した。

「「覆面だー!!」」アハハ

ロリ「さぁ、落ち着くにょ」ギュ

慌てふためいた覆面会長の手を握ってあげる。
緊張が解けるのなら何だってしてあげよう。

男「ここがスタートライン……」

不良「よっと」

ダダンッダダッ

ロリ「!」

不良のドラムが場を支配する。
この子は本当にいい音を持っている。

会長「――歌います」

ロリ「うんっ」ニコッ

ロリ「みんな、始めるにょ!」
53 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/30(木) 00:36:26.54 ID:6x4mVzyBo
アイドルやってたのに緊張する会長かわいい
おつ
54 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2017/03/31(金) 01:04:19.79 ID:C/8qz1JWO
シイィィィンッ

曲が始まるまでの静寂を感じたのは何年ぶりだろう、随分と長かった気がする。

ロリ「……」

あの時を思い出す。

あの人を思い出す。

あの一瞬を――








先輩「準備はいいかー!?」

観客は“そこそこ”集まっている。

初めての緊張、初めての胸騒ぎ、初めてのライブ、全部が初めてだった。

あの時、私は誰よりも緊張していた。

ロリ「……下手くそがよくもまぁ偉そうに」

先輩「皆に笑われるかな?」

ドラム「笑ったらぶっ飛ばしてやる!」

キーボード「ちゃかちゃかちゃーん、ぽんぽんぽーん」

先輩「自由天文部の門出だー!!」
55 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2017/03/31(金) 04:26:55.43 ID:y2Ys6JWAO
ホームプラネタリウムが置いてあるのなんて誰も気にしていないだろう、そもそも光が弱すぎて置いても意味がない。

先輩「いえええええい!!!!」

ロリ「本当に派手好き……」

「「早く歌えーー!!!」」

先輩「皆、署名ありがとう」ピシッ

集まってくれた生徒達の前で先輩は深々と礼をする、私を含む三人も続くように礼をした。

天文部として功績を挙げた私達がこうして演奏できるのも、周りの人間が協力してくれたからこそだ。

先輩「Ahaaaaaaaaaaaaa!!!!」

耳を劈くような絶叫が教室全体に響き渡る。

それでも心地が良い先輩の声、聴く者全てと自分の世界を共有する先輩の声、胸に訴えかける声は誰にも負けない。

ドラムが小気味の良い律動を刻む、簡単だがセンスもある。

私以外は初心者であるにも関わらず、良くもここまで演奏できるようになった物だ、先輩がギターもやると言い出した時はどうなるかと思ったが、結果としては成功だ。

キーボードは先輩のギターと私のベースにぶつかっていく、そうだ、そうやって強く出していこう。

私が繋ぎ止めればもっといい曲になる。

私が繋ぎ止めれば――









「「アンコール!!」」「「アンコール!!」」

会長「あんこーる?」
56 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2017/03/31(金) 16:31:45.87 ID:zdtqK85+O
男「――っ!」

まさか、ここまで、ここまでなんて。

不良「この短期間でここまで歌えんのかよ……!」ハハッ

「てか、あの覆面すごくない?」「凄く良い声してるよね〜」

ロリ「あの人以上……」

会長「あんこーる、だそうだ」キョントン

会長「正直に言うと、初めての事で驚いている」

男「……」

アンコール貰った事無いのか、まぁ、アレじゃあな。

ロリ「作った曲で歌ってみるにょ?」

男「そう言えば、あの曲作ったのって誰ですか?」

ロリ「内緒だにょ〜」

男「えぇ……」

ロリ「きっといつか会えるにょ〜」

ダダンッダダッ

不良がドラムをかき鳴らして急き立てる、せわしない奴め。

俺も続くように弦を弾いた。

会長「アンコールありがとう」

会長「――」スウゥ

ロリ「困った奴等だにょ〜」

57 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/31(金) 17:07:53.70 ID:q49Xo9sHo
ロリというお母さん
58 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2017/03/31(金) 20:42:09.81 ID:zdtqK85+O
パチパチパチ

「良かったよー!」「覆面すごーい!」

暖かい声援を受けて、体育館を後にする。

男「……」

手ごたえはある、でも、会長だけが一つ飛び抜けている。あれが初心者の歌なんて言っても誰だって信じてくれないだろう。






部長「……」

副部長「始めたばかりなのに凄いね!」

副会長「不良さん……とても上手です」

部長「なにあれ?」

副部長「え?どうしたの?」

部長「あれ、初心者だろ?」

副部長「会長も良かったよね!初心者には思えないや!」

部長「どうなってんだよアレ……」

副会長「……」

副部長「?」

部長「別次元だ……ハハッ、やる気なくしちゃうね」
59 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/04/01(土) 08:59:12.60 ID:xtXWBux0o
男は複雑ね
おつ
60 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2017/04/01(土) 21:36:03.95 ID:oQZew76TO
〜〜〜

あれから五年の月日が経った。

会長「ソニア、早く行こう」

「うん!」

どうやら“私”は今まで自分の性別に嘘を吐いていたようだ。

去年に男と偽っていた自分とおさらばして、新たな自分に生まれ変わった。

そう、女に。

タイは偉大である。

会長「ふふっ……」ギュッ

女「会長……」ジッ

会長と付き合う事になったのは四年前だった。

可愛ければ性別など関係無いと豪語する会長は、私が女になっても受け入れてくれた。

綺羅星ソニアとしての活動を再開する事になった私のマネージャーもやってくれる事になった。

会長「思い出すな、自由天文部の日々を」

難病によって命を失ったロリ先輩、無限極焉流との戦いで命を失った副部長、眼鏡になってしまった副会長、タンバリンに頭を叩かれ寝たきりになってしまった不良、チェスボクシング日本代表になった部長、本当に幽霊だった幽霊部員、皆が掛け替えのない思い出だ。

ソニア「目指せトップアイドル!」




            お わ り
61 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2017/04/01(土) 22:05:52.57 ID:oQZew76TO
飽きたのでこのシリーズは終わりです。

次回作は地獄少女四期を記念したSSです。



天国少女「四月馬鹿」


よろしくお願いします。













勿論エイプリルフールです。
62 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/04/02(日) 00:47:30.25 ID:RqqPBtIFo
ブッ飛びすぎて笑った
確かに可愛いのならば性別は関係ないな
タイは偉大だ
63 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2017/04/05(水) 18:26:04.84 ID:tNCK4cqsO
ロリ「お疲れ様だにょ!」

体育館裏、ロリ先輩はライブの成功が余程嬉しいのか、何度も飛び回っている。

会長「生徒からの反響も上々でした」

ロリ「もぉう!そんなお堅い事言ってちゃつまらないにょ!」ピョンピョン

不良「……」

不良も違和感を感じているのか、ライブが終わってから一言も発していない。

男「足引っ張ったな……」

不良「……だな」

そう、もう少し、俺に実力さえあればこのライブが会長の歌に押し負ける事は無かった。

ロリ「……」
64 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/04/05(水) 20:49:19.61 ID:xJ8a2QdAo
受付がすごいのか会長がすごいのか
男がアイドルに全降りしたのか
おつおつ
65 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2017/04/07(金) 07:47:21.06 ID:LQicMOeIO
男「そういえばロリ先輩、ライジングロックの開催は6月の何日ですか?」

ロリ「1日だにょ」

不良「もうすぐだな」

ロリ「本当は男達が入部してからすぐにライブでもさせようかと思っていたんだにょ」

とんでもない事を聞いた。

練習に時間をかけた甲斐があって恥をかかずに済んだが、すぐにライブをしていたらと思うとゾッとする。

部長「お前らが入部してからだいぶ経ったな」
66 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2017/04/07(金) 07:49:44.17 ID:LQicMOeIO
部長達のおでましだ。

男「随分と余裕ですね」

部長「やめろよ、俺達も必死なんだ」

男「ふーん……」

副会長「ええ、特に私は必死です」

副部長「頑張ってるよねー」

男「副会長は間違いないですね」

副部長「私は!?」

男「いや、なんか胡散臭くて」

部長「ひっでー後輩」

「なんだかんだで今は5月28日っすね」

馴染みのない顔が部長の後ろからひょっこりと顔を出す。この人が話には聞いていた部長バンド最後のメンバー、幽霊部員……なのか?

67 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2017/04/07(金) 07:50:43.69 ID:LQicMOeIO
副会長「幽霊部員、今日のライブには出てほしいと何度も……」

幽霊部員「ごめんね、副会長ちゃん、幼馴染みのよしみで許して欲しいっす」

副会長「私は良くても……!」

どうやら、副会長と幽霊部員は幼馴染みらしい、副会長の敬語が崩れている所を見るとかなり仲が良いことも伺える。

部長「良いから良いから」

幽霊部員「それでも!沢山ゴロゴロしたおかげでインスピレーション湧いてきたっすよー!ちゃかちゃかちゃーん!ぽぽぽぽん!」

副部長「ゴロゴロしてたんだ……」アハハ

「…………………」

「素晴らしい歌声だったね、私の歌詞はどうだったかな?」

「あんた、ギターなんてやってたのね」

これまたキャラの濃い3人組が現れる、残りの部員だろう。
68 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2017/04/07(金) 07:51:33.37 ID:LQicMOeIO
1人顔見知りが居た気がするが気のせいだろう、きっと俺の勘違いだ。

それにしても、相変わらず子供みたいな体型をしているな、こいつ。

「ちょっと、無視する訳?」

男「はぁ……なんで幼馴染みがこんな所に居るんだよ」

認めたくはないが、黒髪ツインテールの貧相な身体をした強気な女はまさしく俺の幼馴染みだ。

幼馴染み「元々部員だからよ、あんた、私の後輩だったのね」

副部長「2人は知り合いなのー?」

幼馴染み「幼馴染みよ」

不良「マジで?」

男「幼馴染みと言うよりは親の友達の娘ですね」

会長「その場合は、大体が幼馴染みだな」

ロリ「幼馴染みが男と昔馴染みの仲だとは意外だにょ〜」

「ははは、うんうん、とても面白い関係性じゃないか、それでね、まだ紹介をしていない人間が2人も居るんだよ?良いのかい?大事な部員の1人を無視しても」

「……」
69 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/04/08(土) 23:59:56.77 ID:RDwiTPe/o
波乱の予感
70 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2017/04/11(火) 19:38:58.78 ID:/RVd8vklO
男「そうそう、俺は幼馴染みよりも2人が気になりますね」

幼馴染み「最低っ!」

「良かった、話の解る子だ」

「……」

作詞「私は作詞、3年生、歌詞は私が担当しているよ」

部長「楽器はギターな」

作詞「分からないことがあったら聞いておくれよ、男君」

この人、俺の事を知っているのか?

作詞「副部長とロリから話は聞いているよ、とても面白い子が入ってきた、と」

副部長「作詞先輩はとっても変な人だけど、とっても優しい人だよ!」

作詞「うん?優しい人には概ね同意だけど、変な人には同意しかねるね」

特徴的な言葉回し、そしてろくろ回しなるほど変な人だ。

作詞「今、変な人だと思っただろう?全てお見通しだからね?」

不良「変な奴」

作詞「今私の事を変な奴と言ったパンクちゃん、そこまで言う事はないだろう、多少のズレは認めるが根本的に私達は同じ人間であり、ましてや……」

作曲「私は作曲……3年生、楽器は演奏しない」

ぶった切ったーー!!

作詞「同じ部活動に所属する仲間を変な人間と罵るのは人間性に大きな疑問を抱かざるを得ない、外見で人を判断するのは好まないが咄嗟にあのような」

続けるのかよ!
71 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/04/12(水) 13:46:14.50 ID:BVoDyko7o
集中力が高いのはいいことだ
おつ
72 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2017/04/16(日) 01:15:56.78 ID:gfj1ho7bO
ロリ「作曲ちゃんはパソコンを使って作曲するにょ」

副会長「作曲先輩が作る曲には驚きばかりです」

作詞「言葉を吐いてしまうのは、君自身の人間形成がよろしく無かったという証拠であり、こうして君の外見にも現れてしまっているのではないか」

俺達が最後に演奏した曲、あれは作曲先輩と作詞先輩が作った物だったのか。

作曲「皆の個性が強いから……作りやすい」

不良「分かったから、私が悪かったって」

不良もこれにはたまらず謝罪をする。
敵に回してはいけない人を敵に回してしまった感覚だろう、凄い嫌な顔をしている。

作詞「うん、良いだろう、君の謝罪を受け取ろう。言葉の使い方、目上に対する礼儀、まだまだ君には課題が山積みではある、でもどうしてだろうか、君は自由天文部の中で一番の常識を兼ね備えた人間な気が……」

先輩、大正解です。
73 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/04/16(日) 02:53:15.00 ID:pxffE0Jto
常識を疑え!
74 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/04/16(日) 19:31:54.63 ID:Jny7LVyTo
続々と新キャラがでますな
おつおつ
75 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2017/04/23(日) 00:41:52.58 ID:G7iCqc3hO
不良「私が常識人?んな訳……」

ございます。ただ服装と言動が派手なだけ。

作詞「いや、いい。私の勘違いだったらそれでいいんだ」フッ

作詞先輩は緩やかな笑顔を不良に向けるが、同情の色が強い。

幽霊部員「ちゃんちゃかちゃかちゃか、きゅるりきゅらきゅら、たかたんたかたん♪」

幽霊部員先輩は独り言のような歌を歌い始めてから止まる様子が無い、ずっとあんな感じなのだろうか。

幼馴染み「相変わらずね、あんた達とは、ほんっとに!馬が合わないわ」

男「なに?お前友達いないの?」

幼馴染み「そんな訳無いでしょ!バカッ!」

幼馴染みは声を大にして否定する。
何もそこまでムキにならなくたって良いだろう。

ロリ「男も失礼な……私は幼馴染みちゃんとは凄い仲がいいにょ!」

幼馴染み「そうよそうよ!」

作曲「私も……」

幼馴染み「少しは見直したかしら!?」

作詞「ははっ、男君、失礼な事を言ってはいけないよ。幼馴染みはとても話のわかる子さ」

幼馴染み「そっ、そうよっ!」

幽霊部員「僕と幼馴染みは親友っすよ〜ぽぽんぽんぽん〜♪」

幼馴染み「あんたは黙りなさい!」

男「極めつけのサイコさん達しか居ねぇ!!!」
76 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2017/04/26(水) 18:35:06.38 ID:aPb2PHVKO
ロリ「サイコじゃないにょ!」

部長「い――ぶべらっ!」

「い」だけは聞き取れた、それだけで部長は殴り飛ばされてしまった。

どうせ碌でもない事を言おうとしたのだろうと、予想が出来た。

作曲「……サイコ?」

作詞「ははは、男君は酷い事を言う。私達を一体全体何だと思っているのかな?」

幽霊部員「私は否定しないっすよ」

幼馴染み「否定しなさいよ!!」

幼馴染みは昔から変な奴、もとい、普通の人とは少し違う人間に好かれやすい。

変人は嫌だ嫌だと言いつつも相手にしてしまう辺り、お人好しなのだろう。
77 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2017/04/26(水) 22:59:04.38 ID:aPb2PHVKO
副部長「じゃあ今日はもう解散だねー!」

幽霊部員「え?もうっすか?せっかく僕が来たのに?」

副会長「流石にこれからはしっかりと練習しましょう」

部長「ん〜〜〜そうだな」

男「……」

副部長と部長からは全くやる気が感じられない、相変わらず適当な事をやっているのか。

ロリ「じゃあ私も行くにょ〜」

不良「なんだこいつら……」

不良も呆れている。

作詞「あれでも予選には参加できるなんて驚くよ」

作詞先輩も割って入る。
この部活に4人も幽霊部員が居る理由がわかった気がする。

会長「私は先生の所に」

幼馴染み「あっ!良い事を思いついたわ!」

男「やだ」
78 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2017/04/27(木) 18:08:38.70 ID:Sd4LrEHjO
ロリ「……」チラッ

幼馴染み「最後まで聞きなさいよ!!」

男「絶対にやだね!」

ロリ(幼馴染み達が居たら会長のバンドは安泰……)





先輩『良い感じじゃん』

ロリ「うん……でも……先輩の夢は叶えられないかも」

先輩「あはは、難しいか〜」

ロリ「会長が居るから大丈夫……だと思う」

先輩「男って奴も良いじゃん」

ロリ「かな?」

先輩「一番良いよ」

ロリ「???」

先輩「カタログスペックじゃあ決められないっての」




部長「おーい!置いてくぞー!」

ロリ「っ!」ハッ

ロリ「今行くにょー!」
79 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/04/28(金) 04:55:05.47 ID:F6wfeGIao
見事に変人しかいねぇ!
おつ
80 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2017/04/29(土) 01:56:08.73 ID:XfifjcXhO
男「それなりに大規模なんだな」

ワアアアアァァ

6月1日、ライジングロック予選。
地域の選考に選ばれた高校生バンドがこの場に集まっている。

幼馴染み「近い内に男達も出れるわよ」

幼馴染み「あんな部屋持ってたら、ね?」ニヤニヤ

男「頼むからもう来ないでくれ……」

前回のライブ以来、幽霊部員4人まで俺の家に上がり込むようになってしまった。

作曲「今日も……機材……使って……良い?」

常に自由天文部員が入り浸る状況になってしまい、休まる時が無い俺は、家で横になっていたくて仕方がなかった。
早く帰してくれ。
81 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2017/04/29(土) 01:57:58.62 ID:XfifjcXhO


不良「あいつら、大丈夫なのか?」

会長「心配が最初に来てしまうな」

作詞「ほら、そんな事を言ったって意味が無いだろう?部長達の出番だ」

まばらな歓声と共に部長のバンドがステージに登場するする。

ワアアァ

不良「頑張れー!」

男「しっかり応援すんのな」

不良「しっかり……」

不良「こっちがやれる事をやらないでいたら後味悪いだろ?」

邪険にされたとしても、か。
こいつ、こういう所は本当に素直だな。

会長「その通りだな……がんばれ!」

男「会長まで……」

男「はぁ……」

男「がんっ……☆」
82 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2017/04/29(土) 01:59:22.26 ID:XfifjcXhO
会長「……」

不良「あれ?すごい可愛い声が聞こえたような」

男「がんばれー!!」

やべ、素で間違えた。

作曲「がっ……がんばれー!!!!」

幼馴染み「普段大声を出さない作曲まで……」

幼馴染み「……」

幼馴染み「落ちたら承知しないわよーー!!」

作詞「ふふっ……皆して必死になってるね……」

作詞「全力だ!!!全力で走り抜け!!!」

男「……」

なんだかんだで全員が応援をするハメになってしまった。
こんな応援の仕方で良いのかな、俺には分からないや。

俺としてはロリ先輩達に声さえ届けば良いと思っているが、果たして届いているのかどうか。



83 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2017/04/29(土) 02:00:57.38 ID:XfifjcXhO







ロリ「……」

本当に良い部員……後輩を持った。

本当は諦めてたけど、これじゃあ……

ロリ「諦め切れないよ……」ボソッ

副部長「わぁ」

副部長「すごいねー!人がたっくさん!!」ドキドキドキドキドキ

副会長「落ち着いてください、副部長」ドキドキドキドキドキドキ

部長「いつ来ても慣れない通らない」

部長「けど、歌うしかねーよな」
 
副部長「……」コクリッ

ロリ「皆、今日は通過点に過ぎねーにょ」

ロリ「絶対に本選へ選ばれる演奏をするにょ!!」

副部長・副会長・部長・幽霊部員「うん!」「はい!」「おうっ!」「おっす!」

部長「皆、こんな俺に着いて来てくれてありがとな、持てる限りを発揮しよう」

ロリ「がんばるにょ!」

副部長「負けられないよ!」

副会長「これで、廃部かどうか……決まる」

幽霊部員「なんとかならないもんすかね……」

ロリ「……」

ここまで奮い立たせてどうなるか……部長も役目を果たしてくれたけど……

「自由天文部さーん!!お願いしまーす!」

部長の独唱から始まると、後から合わせるようにドラム、キーボード、ギター……“私”の音が重なって行く。



――最後の足掻きが始まった。
84 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2017/04/29(土) 02:20:04.59 ID:XfifjcXhO






うちの学校の地区から今年のライジングロック本選に選ばれたバンドは10組。

今年の予選は様々な会場を使い、300組を1日で演奏させる。

その様子は動画投稿サイトにも配信され、視聴者にも投票権が与えられていた。

さらに凄いのは本選。

今年の本選は全部の地区を合わせて50組らしい。

その盛り上がりは予選の比では無く、投票も来場者限定と聞いた。

50組中の30組にはレコード会社がスカウトに来る程の待遇まで付いている。

そして、結論。

結論を言うと。

自由天文部の廃部は、ほぼ確実な物になった。

自由天文部は本選に勝ち進む10組の中にすら選ばれなかった。

どうにかしない限りは廃部だ。
85 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2017/04/29(土) 02:21:27.10 ID:XfifjcXhO
今回の分はここまでです。
86 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/02(火) 07:55:13.86 ID:+rfEtIxdo
やる気の無い奴を立てなきゃいけないのは納得いかないよなぁ
もうこの部は潰して別で活動しよう
87 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/07(日) 07:13:39.33 ID:lgZa6Xzwo
現実は非常やね
おつおつ
88 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2017/05/12(金) 00:48:06.63 ID:n0De40w5O
男「……」

自由天文部室には明らかに活気が無かった。部長と副部長も意外と気は使ったいたのか、盛り上げてくれていたのか……今となっては分からないな。

幽霊部員「部長と副部長とロリちゃんは部活に来なくなったっすね〜」

作詞「怠け者の末路としては妥当だね」

作曲「……」

幼馴染「当然よ、あんな奴等居なくなっても」

男「あのさ、あんたらがそこまで言う必要は無いだろ」

幼馴染み「あんたに何が……!」

男「今を変える努力をせずに、幽霊部員になって不貞腐れてた奴等には言われたくないんだよ!!」

会長「男、話を聞く所によると前からおかしかったんだ。そこまで言うな」

不良「はぁ……」

男「……」

そう、聞く所によると自由天文部は数年前から目立ちたいだけの人間が集まっていたらしい。

練習を重ねずに、まともに活動をしない人間ばかりだった。

そして、会長から聞いた新事実もある。

ロリ先輩は“去年も3年生”だった。
89 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/17(水) 20:41:11.25 ID:qFRkhTWoo
17年位3年生として君臨してそう
90 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/21(日) 01:32:33.55 ID:eJdTWWHho
つまり合法ロリか
おつおつ
91 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2017/05/30(火) 00:26:38.25 ID:jh3CXQcQO
ガララ

ピシャッ

副会長「……」

何とも言い難いタイミングで副会長のお出ましだ。

話を聞いていたのかも知れないが、彼女の表情を読み取る事は出来なかった。

何を考えているのか、どうしたいのか。

そもそもの話、どこにでもある軽音楽部が規模の大きなフェスで入賞するなんて最初から無理だったんだ。

そうだろう?副会長。

副会長「部長は引退するそうです。副部長は……っ」

副会長「……私が連れ戻します」

言い淀んだ、と言う事は副部長はもう辞めるんだろうな。
部長も副部長もロリ先輩もそこまで気負わなくたって良いだろう、ただの部活なんだから、プロじゃあるまいし。
92 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2017/05/31(水) 23:24:13.06 ID:KQ0NYUVFO
幽霊部員「戻ってきてくれると嬉しいっすね」

副会長「……うん」

副会長「幽霊部員や先輩方はどうしてまたこの部活に……?」

うん、これは俺も一部員として気になっていた事だ。

彼女質がこの部活に来なくなった理由もはっきりと分かる気がするからだ。

また、一度離れた人間が二度離れないとは限らないからだ。音楽性の違いも有り得る、どちらにせよ理由さえ分かれば接し方も変わってくる。

一緒にいる時間が増えたとしたも、幼馴染み以外はどうにも知り得る事が出来ないでいた。鈍感?違う、個性が強いあの人達が悪いのさ。

幽霊部員「僕は単純に面白いバンドが作れそうだと思ったからっす」

幼馴染み「私は会長達がしっかりと活動していたからよ」

作詞「右に同じく、だね。それと会長だ」

作曲「すごい曲が………作れそうだから……」

幽霊部員、作詞、作曲の先輩方は会長の才能に魅せられたのか、自分本位だった。

幼馴染みは……昔から責任感の高い奴だ、そうだろうとは思っていた。

副会長「そう……ですか」

会長「副会長、その質問は余計だ」

副会長「……」

すっかりと会長がまとめ役になってしまったな、収まるべき所に収まったと言うべきか。

会長「三学期が終わるまでは軽音楽部として活動することが出来る」

会長「新たにバンドを作るのはどうだろう?」
93 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/03(土) 06:40:32.20 ID:+MzlTUsso
青春は短いんだ部長たちの事は折り合いつけて先に進んだ方がいい
(ストーリー的にも)
94 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/12(月) 02:11:15.38 ID:RJ1+1C1ao
主人公たちだけ笑顔になる魔法
部長たちに笑顔は訪れない
95 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/14(水) 01:44:18.34 ID:aJM8HkkXo
また笑顔になればいい
おつおつ
96 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2017/06/21(水) 04:31:16.54 ID:wLMlW9QXO
会長「バンドを組みたい者同士で集まってくれ」

男「ん?」

どこかがおかしい。

作詞「ふふっ」クスクス

作詞先輩も微妙な違和感に気付いているかのように見える。

男「あ」

肝心な事に気付いていなかった、言った本人が気付かなければ仕方の無い問題だ。
97 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2017/06/21(水) 04:31:57.40 ID:wLMlW9QXO
男「会長、それだと……」
幽霊部員「ピルピルピル〜テテテンッ!!」トテトテ

会長「む?どうした?どうして全員が私の周りに」

幽霊部員「そりゃあそうっすよ!今この部活に居るボーカルって会長だけっすからっ!!」ギュッ

会長「抱きつくな、重い」

幽霊部員「私、重いっすか?」

作詞「ははは、幽霊部員は胸に無駄な脂肪が多いからね?」

副会長「作詞先輩、男君が居る中でその発言は不適切かと」

作詞「少し毒づいたって良いだろう?私と幽霊部員ちゃんはとても仲良しなんだ、それに……」

幽霊部員「天才ボーカルは渡さないっすよ〜」ギュッ

作詞「あの子には何を言っても無駄さ」

副会長「……ですね」ハァ
98 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2017/06/21(水) 04:33:34.38 ID:wLMlW9QXO
会長「離れてくれると助かる、嘘ではない」

幽霊部員の豊かな胸がこれでもかと会長に押し付けられる。

それにしてもあそこまで不機嫌な会長は珍しい、胸か?胸なのか?いや、胸だな。

会長と作詞先輩の恵まれない身体について今更言及するのもおかしな話だろう、とにかくあの二人は……

副会長「それでは全員でバンドを組むのは如何でしょうか?私はサポートに回ります」

副会長は人差し指を立てながら提案をする。それなら上手くまとまりそうだな。

作詞「私も久しぶりに弾いて良いかな?」

男「ん?」

作詞「同じギターの後輩が1人増えたからね、最上級生として後輩には何かしてあげたいと思うのが普通だろう」

会長「男、良かったな」

男「その気持ちは嬉しいけど……作詞先輩って今までサボってたんですよね?」

作詞「私は今でもこの部活で1番ギターが上手い、大船に乗ったつもりでいておくれよ」

男「1番……」

作詞「ふふふっ、信頼出来なくとも無理は無い。ぽっと出のサボり魔が偉そうに垂れる講釈を……」
幼馴染み「それじゃあバンドの構成はそれなりに大所帯になるわね」

作詞「……」

ナイス幼馴染み。
99 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2017/06/21(水) 04:34:13.52 ID:wLMlW9QXO
幼馴染み「ボーカルは会長、ベースが私、ギターが男と作詞、キーボードが幽霊部員、ドラムが不良……ちゃん」

幼馴染み「あとは作詞と作曲の二人が曲の制作、サポートに副会長。どうかしら?」

不良「まとまりゃいいーな」

不良が悪態をつく、楽器だけでも6人でバンドを組もうとしている、俺だって不良の気持ちは分かる。

会長「あくまでも臨時だ、自分から望んでいるとは言え、副会長にサポートばかりやらせるのも悪い」

副会長「気にしないでください、私が望んでいる事です」

会長「しかし……」 

副会長「私が望んだ事です」

作詞「副会長本人もそう言ってるじゃないか、まずは次に進むべきだね」

会長「……」

幽霊部員「流石は3年生っすね〜」

作詞「ははは、まともな3年生が私ぐらいしか居ない今、誰がまとめるというのさ?」ドヤァ

作曲「会長……」

幼馴染み「同じ3年生が言うのなら間違いないわね」

作詞「……」
100 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2017/06/21(水) 04:34:47.84 ID:wLMlW9QXO
男「じゃあ、とりあえずは練習しませんか?」

作詞先輩のリズムに付き合っていたらいつまで経っても練習は始まらない、丁度俺も作詞先輩の1番宣言は本気かどうかも気になっていたからな。

不良「あ、私も言おうと思ってた」

会長「うん、始めよう」

作詞「真面目だね、いい事だ」

幼馴染み「しっかりと練習するのね」

幽霊部員「このメンバーだとどんな音になるんすかね〜」

作詞「それじゃあ私は彼と一緒に弾こうかな」ルンルン

男「お手柔らかにお願いします」

作詞「ギターにね、お手柔らかなんて無いんだよ、まぁ……こればかりは口で言っても仕方ない」

作詞「弾いてごらん」

男「……」

まさかここに来て真面目な発言が飛び出てくるとは夢にも思わなかった。
101 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2017/06/21(水) 04:35:30.05 ID:wLMlW9QXO
ギュィ-ン

いつものように一番慣れ親しんだ曲を弾いてみる。初心者の下手糞と罵られても構わない、全力だ。

作詞「……」

他の部員も練習に励んでいるな、幼馴染みがどれ程演奏出来るかも気になるなぁ。

作詞「ふーん」

ジャジャンッ

これが俺の全力だ、全力かつ最善。

男「どう……ですか?」

作詞「そうだね、君のギターは棒読みの大根役者だ」

作詞「全てが楽譜通りなのは決して悪い事では無い、アドリブを効かせろとは言わない……けどね、無いんだよね、君が弾くギターの音色が、リズムが、トーンが」

男「っ……」

棒読み……アイドル時代、ドラマに出た時は何度もそれで叩かれた事を思い出すな。

あぁ……ロリ先輩に歌を聞いてもらった時にも近いな、俺にはセンスが無いのか?
102 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2017/06/21(水) 04:37:32.17 ID:wLMlW9QXO
現在没頭しているギターでセンスの欠落が発覚してしまうのはかなり痛い、センスが無いと言うのは間口が狭くなると言う事、現状の俺ではそれを打開する程の技術も経験も……

作詞「でも、ここまで色が無いのは返って珍しい」

男「え?」

作詞「4月に始めた初心者がたったの2ヶ月でここまで弾けるんだ、自信を持っても良いよ」

作詞「あ、そうだ、技術と上手い下手は関係ないってのも覚えてね」

男「え……」

作詞「それじゃあ次は私が弾こう」

男「謹んで、聞かせてもらいます」

作詞「堅いなぁ、私の曲まで固くなってしまうじゃあないか……っと」

ジャ-ンッジャカッ

俺と同じ曲、知ってたのか、即興なのかは分からない。けれど、俺の弾く物とは大きく違った。

自分の想像を越えた物に対しては誰もが等しく抽象的な言葉を述べてしまう。本来、抽象的な表現が苦手な俺でも、「凄い」、「想像以上」、「リズムが正確」、「聞き染みる」、そうか、ギターってこうやって弾くんだな。

副部長のギター、ロリ先輩のギターと俺の違いはコレだったのか……まだまだ差は大きいなぁ。
103 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2017/06/21(水) 04:38:15.32 ID:wLMlW9QXO
幼馴染み「思い出すわね」

副会長「何を……ですか?」

幽霊部員「そうっすね〜」

副会長「幽霊部員まで……」

幼馴染み「私達が入部した時も男のようにひたむきに打ち込んでたなぁ……って」

幽霊部員「私、副会長、副部長、幼馴染みの4人で入部した時も男君のような感じで頑張ってたっす」

副会長「………………私はてっきり4人でバンドを組む物だとばかり……」

幽霊部員「もう遅いっすかね〜?」

幼馴染み「遅くなんかないわよ……っ」ボソッ





104 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2017/06/21(水) 04:39:22.81 ID:wLMlW9QXO






会長「先生、今日もよろしくお願いします」カラランッ

部活終わり、通い慣れた扉を開ければいつもそこには先生が居る、最高の先生、私にとっては理想的な指導者だ。

受付「もうこんな時間かい、部活はどうだった?」

会長「ほんの少し、止まっていた物が動き始めました」

受付「うん、悪くない、止まるって事は一番やっちゃいけないからね、全ては動いている、血の巡りもそう」

会長「仰る通りです」

受付「じゃあ歌いな、はい」ポロンッ

先生がピアノでリズムを取る中、私は教えられた事全てを声に乗せる。

会長「〜♪」

先生が私を叱らなくなる瞬間こそがレッスンの終わりと言っていた、それこそが昇華の瞬間だと私は確信しているが――
105 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2017/06/21(水) 04:39:55.61 ID:wLMlW9QXO
受付「早い!!!!」

会長「!」ビクッ

受付「もう1度」ポロロンッ

会長「〜♪」

受付「遅い!!!」

会長「〜♪」

受付「そうそう、そう、そのままそのまま!!やめるんじゃないよ!!あながち沢山の楽器をやって来たってのも嘘じゃなさそうだね……」

会長「〜♪」

受付「なぁ、またビンタされたいのかい?」

時折、先生の指導には熱が入り過ぎてしまう事もあるが、私はそれも含めて素晴らしい先生があるのだと考えている。

受付「……」ピタッ

会長「〜♪」

先生?まさか……

受付「ごほっごほっ!ごほっ!!!かはっ!!!」
106 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2017/06/21(水) 04:42:10.49 ID:wLMlW9QXO
会長「先生!!」

先生は前から持病を持っていたらしく、私の指導中にも発作が起きてしまう時が多々ある。

受付「――最近は良く来てくれるねぇ」

「……」

受付「近い、のかい」

「……」

会長「……」

あとは、1人とは思えない独り言、先生は時折見えない誰かと話している時がある。

受付「ごほっ!!!ごほっ!!!」

アルバイト「先生!!大丈夫!?」ガチャッ

受付「ごほっ!見えるかい?ならおめでた……」

アルバイト「御託はいいから!!」

このスタジオのアルバイトさんは会長の元教え子の1人だそうだ、練習中に先生が発作を起こした時はいつもこの人が先生を介抱する。

アルバイト「私が部屋に運ぶから会長ちゃんは待っててね」ニコッ

会長「しかし……」

アルバイト「もう、そのやり取りは飽きたよっ」グイッ

アルバイトさんは先生を簡単に持ち上げると、先生の部屋まで運んで行った。

アルバイト「先生、軽くなったね……」

先生「……」

会長「……」

この時間はいつも先生にしてあげられることは何か1つでも無いのかと長考するが、答えは見えない。

アルバイト「先生に頼まれた分私が教えるからね、安心して」ニコッ

会長「私に何か……出来る事は」

アルバイト「ふふっ、それはね〜」

アルバイトさんは何かにつけて勿体振る癖がある。

アルバイト「少しでも歌えるようになる事だよっ」

会長「!」

アルバイト「妬けちゃうなぁ、先生がここまで入れ込む人って、久しぶりだから」ポロンッ
107 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2017/06/21(水) 04:43:27.48 ID:wLMlW9QXO







部長「よいしょっと」ドスッ

副部長「大変だねー!」

副会長「ひ、酷い……」

ロリ「おらー!キビキビ働くにょ!!」

部長「テメーも戦犯だろうが!!!」

男「元気ですね」

幼馴染み「呆れるほどね」

6月の下旬、文化祭当日、“自遊”天文部騒がせ3人組は今日も元気だ。

騒がせ3人組が戻ってきたのは先週の出来事。3人が戻って来て早々行った事は副会長を巻き込んでの土下座と謝罪だった。
108 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2017/06/21(水) 04:46:22.89 ID:wLMlW9QXO
更に、部長とロリ先輩は俺達に対する挑戦状を抜け抜けと叩き付けて来やがったのである、緊迫した時間を返せ。

俺と不良を含む新世代がこれからの自由天文部を引っ張って行けるかどうかを、文化祭のライブで白黒つけようと言うのである。

部長が勝つ為には何でもするとも言っていたのが気掛かりではあるが、俺と不良と会長とロリ先輩。

え、おばさんがしれっと二人居る?ロリ先輩に関してはツッコんだら負けだ。

ロリ「えいっ」バキッ

男「あ゛っ」

男「痛い!!どうして急に腹を殴るんですか!?」

ロリ「悪口を言われた気がしたからにょ」

男「エスパーかよ……」ボソッ

が、このままでは全員の収まりがつかないので、とりあえずは文化祭に関連する雑用を設営から諸々やってもらう事になった。

ロリ先輩は体が弱い事と、未経験者に教えて来た事、今までの貢献を顧みて雑用免除となったのは当然の運びだろう。
109 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2017/06/21(水) 04:47:31.26 ID:wLMlW9QXO
部長「まぁ、いい勝負になると良いな」

幼馴染み「さっさと運びなさいよ木偶の坊!!」

部長「んだと!?このチビ助!!」

幼馴染み「キーッ!何よ!!」

副部長「うーん……会長達に勝てるかなぁ?」

ロリ「生徒が贔屓目無しで良かった方に投票してくれるらしいからこの勝負、どうなるかは分からないにょ〜」

男「待ってくださいロリ先輩」

男「部長と副部長って……友達が物凄く多い人気者だから絶対に贔屓目が入りまくりますよね!?」

不良「それって卑怯じゃねーか!!」

ロリ「悔しいなら友達を増やすにょ〜」

不良「……」

男「……勝つぞ」

不良「……おう」

作詞「この学校、現生徒会長の支持率が凄い事になっていたと思うけど……」

会長「男と不良は私の事を生徒会長と認識していません、恐らくは碌でもない存在と認識しています」
110 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2017/06/21(水) 04:48:06.05 ID:wLMlW9QXO
副部長「設営終了〜っ!!」

副会長「」

部長「」

部長と副会長との2人は仲良く伸びている、雑用自体も副部長が殆どこなしたのにも関わらずだ。こんな状態でまとも演奏なんて出来るのか?

作曲「副部長……すごい」

幽霊部員「相変わらずの化け物っぷりすね〜」

「部長〜っ!」

「休んでんじゃねーよバーカ!!!!」

「頑張れ副部長〜!」

部長「うるせー!」ガバッ

副会長「会長、お先に失礼します」ペコッ

副部長「負けてられないよね!」

ロリ「さぁ、後輩達に私達の偉大さを見せてやるにょ!!!」

なんとか時間通りに終わったステージ設営は文化祭のメインイベントの一つ、自由天文部の演奏の始まりを予告する。

しっかりと衣装を用意した俺達とは裏腹に、部長達は制服のままステージへと飛び出した。

部長「聞いとけよ〜〜っ!!!」

副部長「♪」ギュイ-ンッ

副会長「……」ダンッダンッダダンッ

ロリ「……」ギュギュッキュインッ

俺達の勝負は部長達の先攻からはじまった。
111 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2017/06/28(水) 17:51:00.11 ID:gPuoysuqO
部長「……」チラッ

ロリ「……」ニコッ

部長(本当は廃部が決まった瞬間、辞めようと思ってたんだけどな……無理矢理連れ戻されたけど)

部長(多分だけど副部長も)

部長(ロリ……先輩は『辞めるなら先輩らしいところを見せてから』って無茶言うしなぁ)

部長(大体、俺の先輩らしい所って何なんだよ……部長としての威厳は無い、真面目さの欠片も無い、誰も着いてこない、本職の歌も微妙)

部長(どうして、俺が部長なんだろうな)

幽霊部員「はぁ……僕の事も忘れてもらっちゃあこまるっすよ」

部長(ステージに上がるのがおせーよ、幽霊部員)

部長(いつもはサボってばかりだけど、大事な時はしっかりと来てくれる)

部長(幽霊部員みたいな天才と一緒にバンドを組めるってだけで本当にありがたい)

部長(うーん……実は恵まれてたんだな……)

部長(まだこの面子で歌いたいなぁ……)

部長(もっと真面目にやれば……クソッ)

部長(――また、チェロでも弾こうかな)
112 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2017/07/08(土) 18:54:51.25 ID:/388drF/O
ワァァァァ

部長達の演奏は大喝采の元で終わりを迎えた。

「やるじゃん!!!」

「ロリちゃん可愛い〜!」

部長「次は可愛い後輩の演奏を聞いてやってくれ!!」

部長「あ!俺はこれで引退だからさ!!投票よろしく!!!」

ドッ

「部長サイテー!!」

「みなさーん!!あの男の言う事を素直に受け入れてはいけませーん!!!」

部長「本当だっつーの!!」

部長「……」

部長(呆気なかったな、最後の文化祭)

副会長「……」

副部長「……」

幽霊部員「……」
113 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2017/07/08(土) 18:56:22.19 ID:/388drF/O

男「そうか……皆は自由天文部がほぼ廃部って知らないのか」

それにしても下手なヤジだな、もう少し捻れば良いのに。

ロリ「ふぅ〜隙を見つけて抜け出してきたにょ」

男「あ、ロリ先輩」

ロリ「ちょっと休憩だにょ」ゴクゴク

ロリ先輩は裏に置いてあるスポーツドリンクを、仰向けになりながらもだらしなく飲み干した。

男「急に戻ってきてからろくに話もしていない…… 正直に言うと聞きたい事ばかりです」

ロリ「……分かってるにょ」

男「でも、まずは勝ちたいです」

ロリ「――分かってるよ」クスッ

男「あれ、口調が――」
不良「よーし!!用意できたかー!?」

不良「って、うわ……マジかー」

会長「男を見ると女としての自信が打ち砕かれてしまうよ」

ロリ「わあぁ、本当にお姫様みたいだにょ〜」

男「……」

また何かをはぐらかされてしまったかのような気分、ロリ先輩の底は知れない。


114 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2017/07/11(火) 07:19:34.75 ID:EPkOAP8AO


男「本当に嫌々ですからね、女装」

ロリ「じゃあ、幽霊部員達の演奏の間に私も着替えてくるにょ〜」トテテ

作詞「うわぁ、女装すると本当に可愛いね。体つきも女性のようで……」

幼馴染み「?……相変わらず……女みたいな顔ね」 

幼馴染み(ソニアに……似てる?)

作曲「綺麗……」

男「はぁ……どうもご好評なようで」

女装とか、するつもり無かったんだけどなぁ。不良が『あ、そ、そうだ、お、お、おとこは女装してみれば!?』とか抜かして下さった結果こうなってしまった。ご丁寧にくどいウインクもおまけでついてきた。

不良「しっかし、フリフリだなこの衣装」

会長「派手なドレスだ」

作曲「舞踏会がイメージ……会長には仮面も……」

そうか、会長がステージに立った時のマスクが作曲先輩のインスピレーションになったのか。
115 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2017/07/11(火) 07:31:10.17 ID:EPkOAP8AO

作詞「作曲は何かと衣装を集めるのが趣味だからね、いつも助かるよ」

作詞「男君……似合ってる」ニコッ

男「そんな喜ばれても……あはは……」

幼馴染み「男……下着、どーなってんのよ?」

男「今回は男物だよ」

幼馴染み「え、えぇ、うん?」

不良(今回は?)

幼馴染み「アンタ普段……」

作曲「幽霊部員が……待ってる……」

幼馴染み「そうだったわね、早く行きましょ」

作詞「それでは、君達の前座を丁重に勤めさせて頂くよ」グッ

幼馴染み「ぜっっっったいに!!!勝ちなさいよ!!」ビシッ

作詞「学園生活最後の文化祭が前座なんてね、全国の軽音楽部員の中でこんなにも不幸なのは私ぐらいかな?」

幼馴染み「つべこべ言わない!!行くわよ!!」ポロッ

作詞「あ、そうだ、男君。演奏中は私の教えを少しでも思い出してくれたら嬉しいな」

男「はい、先輩」

作詞「師匠と呼びたまえ」クスッ
116 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2017/07/11(火) 08:52:05.90 ID:EPkOAP8AO

作詞先輩と幼馴染みが舞台へと上がっていく。
幽霊部員先輩との3人でボーカル無しのスリーピースで演奏をするそうだ。

男「あれ、幼馴染みがなんか落としていった……」ヒョイッ

男「って、これは……」

マジですか……

幼馴染みの思わぬ落し物は衝撃的だった。出来る事ならば見て見ぬ振りをしたかったのだが、そういう訳にはいかないのだろう。

男「俺、気付けよ……」

しかし、あの幼馴染みがまさか……ね。

似ているとは思っていたが、普通は誰かが勘付くだろう……俺が言うなって話ではあるが。

つい最近まで会っていなかったとは言え、これは酷い。

男「このまま上手に隠せませんかね?」ボソッ

男「ははっ……」

会長「……大丈夫か?」

男「ええ、大丈夫ですよ、大丈夫ですとも……」

不良「熱中症か?ウィッグ取るか?」オロオロ

男「大丈夫。ちょっと疲れただけ」

そうだ、俺の秘密を握っている人が居たんだったな、相談するのは気が引けるがこの人は信頼出来る……と思ったが、話したくない。

そうだ、大体この人が俺の秘密を知ったのもカマかけに近いやり口、あれ以来この人には強く言う事も逆らう事も、脅され
男「会長、後で話が」

会長「……分かった」

あ、口が滑った。

俺はどうしてしまったのかなぁ……本当。

初夏の熱が頭髪を越え、脳天に突き刺さる。自由天文部に入ってから、会長とのやり取りが一瞬にして思い起こされた。

脅された事は無かったな。
117 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2017/07/11(火) 08:52:48.60 ID:EPkOAP8AO
一旦ここまでです。

ここまで何か質問などございましたら、どうぞ。
118 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/11(火) 21:43:03.99 ID:2NIVw2Zio
ようやく皆が先に進めそうで今は只単にとにかく筆を進めてくれ
119 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/05(土) 04:55:55.46 ID:dzyK6WUMo
会長の名前が変わったのはどうしてなんだぜ
更新待ってる
おつおつ
120 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/18(金) 08:43:54.91 ID:+jxpM1SHo
続きが早く読みたいぜ
121 : ◆MOhabd2xa8mX [sage]:2017/08/23(水) 04:02:58.80 ID:sr6f0GtVO
更新はお待ちください、申し訳ございません
122 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/23(水) 23:43:41.84 ID:VcY6JiIyo
続きが読める幸せよね
123 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/01(金) 21:51:30.70 ID:TfiRPZjvo
まだかしら
124 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/11(月) 01:46:15.66 ID:3iHFgRdQo
そい
125 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2017/09/12(火) 09:20:26.13 ID:lLMIBJDBo
男「幼馴染、お前がツンデレだったなんて……」ボソッ

幼馴染は現在も絶大な人気を誇っているアイドルグループ、ダブルフェイスのセンター、ツンデレだったのだ。

これで幼馴染が自由天文部に顔を出す頻度が少ないのも頷ける。アイドル活動に精を出していたのだろう、作曲先輩が“仮面を出した”時から直感のような物が働いていたのは確かだが、直感が確信に変わったのは幼馴染が落としたネックレス。

男「期間限定ユニットの時は一緒に着けてたな」

合わせるとハートになる銀のネックレス。

俺が綺羅星ソニアだった頃、ツンデレにあげたプレゼントだ。

男「まだ大事にしてたのか……確かに特注の高額な物だけど」

片割れのネックレスどこにやったかな?捨ててない筈だけど、もし、万が一正体が明らかになりネックレス無くしましたじゃあ許されないだろうな、只でさえツンデレは綺羅星ソニアを狂気的に愛しているのだ、正体が幼馴染の男君でしたとなれば去勢されかねない。

青嵐が逆風となって吹き抜けるとドレスの裾が激しく靡く、遠くない未来に何かが起きるかを暗示しているかのように、夏を告げる爽快な風は新たな問題も知らせていた。

男「……」ギュッ

仮面で顔を半分隠しているとは言え、幼い時からずっと一緒にいた幼馴染に気が付かないなんてな、会長と言い化粧で変わりすぎだろ……俺も人の事は言えないが。
声と仕草が丸っきり違うのは幼馴染の演技力か、性格だけは瓜二つ。

俺は先程拾ったツンデレのネックレスを強く、恨めしく握った。
どうせなら落とさないでいてくれれば方が良かった、何も知らなかった方が……

不良「やっぱりどっか悪いんじゃ……ぼーっとしてると困るぜ男ぉっ」オロオロ

会長「考え事だろう、もし倒れたらやめよう」

不良「倒れたらおせーだろ!」

作曲「……」オロオロ

126 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/13(水) 00:22:51.15 ID:PoAX38C2o
去勢されちゃうからね
おつおつ
127 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2017/09/14(木) 16:25:10.73 ID:kiyqW8d8O
男「おっと」

みんなが心配している、早く取り繕わなければ。

男「ゴメン、ゴゴメン」

男「ちちちっと考え事をしていたで候、拙者、考え事をすすっと、ぼーっとしてしまうくせがおなーりー」

不良・会長「「カウンセリングが必要ですね……」」

作曲家「『後輩 鬱』で検索してるから……待って」

男「だだ、だいじょうぶ、ですよ僕は大丈夫」

会長「男」グイッ

会長は俺の肩を持って傍に引き寄せる。

顎が当たる、いい匂いだ。

会長「作詞先輩には色々教えて貰ったのだろう?」

男「会長」

会長「しっかりと見よう」
128 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/16(土) 11:36:53.01 ID:pbyisC+oo
イケメンかよ会長
129 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/04(水) 18:08:00.54 ID:sl7oA84tO
まつぞ
130 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2017/10/06(金) 16:31:09.69 ID:LUPzOmcBO
優しく頭を撫でられた気がした。
ぼくの、俺の気のせいか分からない。

でも、ほんのすこしだけ落ち着いたよ。

ほんのすこし、ほんのすこしだけ、お母さんを感じた気がする。

男「……離してください」

会長「いい匂いがする」

不良「……」

舌打ちのようなものがどこからか聞こえてきたのは気のせいだろうか、俺の中の何かが会長との僅かな接触を盛り立てる。



キャ-サクシサマ-

作詞「うーん、いつ見てもこの景色は最高だね、そう思わないかい?」

幽霊部員「あーそっか、作詞ちゃんは今年で最後っすね」

作詞「最後が前座でも悪い気分じゃない」

幼馴染「感慨深いかしら?」

作詞「そうだね、歌があれば完璧だったけど可愛い後輩とならば何だっていいさ」

作詞「さっ、弾こうか」
131 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2017/10/08(日) 06:45:06.93 ID:qJDs1U2pO
幽霊部員「盛り上がってきたっすよ〜!」

幼馴染「……」

カイチョ-

幼馴染「まって」

作詞「んー?」

幽霊部員「だんだだっ、だっだっ」

幼馴染「私が歌っても良いけど」プイッ

作詞「いいよ、歌う?」

幼馴染「かるっ、それでいいの?」

幽霊部員「あー……………盛り上がっている所悪いっすけど、幼馴染ちゃんの声じゃあ私達の曲に合わないっすね」

幼馴染「早く言いなさいよ!!」

作詞「ははっ、歌まで即興になったら滅茶苦茶だからね」

幼馴染「……………」

幼馴染「――始めるわよ」ギュインッ

幽霊部員「楽しむっす」ポ-ンッ

作詞「今まで……ありがとう」

作詞「うんっ、悪くない」







そうさ、何もかもが悪くない。

私はこうして可愛い後輩に囲まれて引退出来る。

ロリ……先輩、部長(OG)、ごめんなさい。

私は本当に何も役に立てなかった。

花を咲かせずに枯れ落ちる徒花にも劣る無意味な蕾。それが私、後悔は先に立たず、時間は終わりを告げる。

その事実を噛み締めながら自由天文部の3年生として可愛い後輩に恵まれたと宣い、そんな可愛い後輩の道を閉ざすのだ、私は。

許して欲しい訳ではない、ただ、音楽を嫌いにならないで欲しい。

幽霊部員「……」ニコッ

ロリ「……」ニコッ

作詞「!」

二人が振り向きざまに私へと微笑みかける。

そうか、最後の演奏も終盤に差し掛かったのか。私は最後の最後に無意識で演奏していたのか……そうか、なら、せめて、せめて最後のソロパート、私のソロは私を音に乗せて――
132 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2017/10/10(火) 18:11:23.21 ID:fzHcOgHsO


キャ----

3人の天才が織り成すメロディーは音だけでも聴き入ることが出来る、実に素晴らしい物だった。

聴きやすくて、分かりやすい。
そして、何よりも特徴的なのがこの3人を表している。

スタンダードにとどまらない、彼女達なりに新しい何かを追い求めていた。

男「これも、作曲先輩が?」

作曲「ううん、私はほんの少し手伝っただけ」

男「……」

そして、作詞先輩のソロに移る。






男「そうか……うん……」

俺でも分かる。

作詞先輩は後悔している。
133 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2017/10/11(水) 04:32:14.24 ID:lIlYdtOQo
違う、俺だ、俺だからこそ分かるのか。

作詞先輩からほんの僅かな期間でも教わることができた俺だからこそ分かる。
音から分かるなんて大それた話ではない、即興で生まれたであろう弾き方とテンポ……何よりも表情。
先輩は鬱陶しい程に満足げな顔をして俺の隣でギターを語っていたんだ。それが何だ、部活に顔を出す回数も少なかった癖に、今まで何をしてきたのかも分からないサボリ魔があんな顔をしてしまったら駄目なことぐらい先輩だって理解しているだろ?

それじゃあまるで自由天文部のために実は頑張っていました、実はこの部活が自由天文部が――









作詞「――大好きだったなぁ」

幼馴染「最後の演奏、良かったわ」

幽霊部員「作詞ちゃんっぽくはないっすけど、いいソロだったっすよ!」

作詞「あはは、そうかい?」

幼馴染「アンコールも来てるけど……」

幽霊部員「僕はいつでもいけるっす!」

作詞「盛り上がっているところで悪いけど私はもういいかな、完全燃焼だ」

幼馴染「ホント……?」

作詞「すまない、最後の我儘だと思って聞き入れてくれないかな?」

幽霊部員「じゃあ舞台から降りるっす―」

幼馴染「このまま廃部になったら私達だって……」ボソッ

作詞「気持ちを整理したいんだ、こんな状態で弾くのは良くない」

幼馴染「え……?」

作詞「さっ、我等が誇る後輩達の出番だね。前座は前座らしく舞台から降りてしまおう」
134 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/11(水) 14:57:10.23 ID:MJx5tZgVO
めっちゃ熱いな!
135 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2017/10/18(水) 17:52:23.58 ID:kregBKZgO




部長「あいっかわらず、マイペースだな。」

作詞「うん。否定しないよ」

部長「どうしたんだよ、あっさりと認めるなんてらしくねぇな」

作詞「部長だっていつもは追い出されるまで舞台を独占しているじゃないか、らしくないのはお互い様さ」

部長「あ〜そうだっけ?」

作曲「いつもそうだった……」コクッ


副部長「あの三人がまともに話してるの、三年生になってからは初めてじゃない?」

副会長「そう言えばそうかも……」

幽霊部員「元はと言えば仲良しっすよね〜」

幼馴染「あいつ……また蹴り飛ばさなきゃ思い出せないのかしら」

副部長「あはは……去年は幼馴染ちゃんが追い出してたね」

副会長「そろそろ会長が歌うころですね……どちらが勝つと思いますか?」

幼馴染「部長のバンドの二人には悪いけど、贔屓目が無ければ会長のバンドが勝つと思うわ」

副部長「あはは……そうだよね、やっぱり観客にとってはボーカルが左右するよねぇ」

幽霊部員「全体の完成度としては私達の方が長くやってきた分上っすけど、高校生のバンドじゃあボーカルに華があればあるほど……っすね」

幽霊部員「唯一のネックである男君がどうなるか……」

副部長「……」

副会長「……」

幼馴染「まともに喋れるのね……」
136 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2017/10/18(水) 17:55:43.43 ID:kregBKZgO
>>135 訂正
幼馴染「部長のバンドの二人



幼馴染「部長のバンドの三人

です
137 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/18(水) 19:23:54.57 ID:+11kIzGBO
幼馴染辛辣過ぎる
おつ
138 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/11(土) 00:04:08.36 ID:jfeDqnh9O
まだか
139 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2017/12/20(水) 04:27:44.40 ID:KyHuQLq+O
幽霊部員「ひ、ひどいっすよ!」

副会長「幽霊部員がそう言われても仕方ないよ、普段何言ってるか分からないから」

幽霊部員「副会長ちゃんまで!?」

幼馴染「あんた達って本当に仲が良いわね。副会長の口調だって幽霊部員が居る時だけはまともだし」

副会長「私の今までの口調、変でした?……幼少の頃からの仲ですから」

幼馴染「変よ……腐れ縁ね」

副部長「そう言えば幼馴染ちゃんと男君も幼なじみだよね」
140 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2017/12/20(水) 04:31:03.80 ID:KyHuQLq+O




副会長「変だったんだ……」





幽霊部員「なになに?恋バナっすか?私大好きっよ恋バナ」

副会長「恋バナって言いたいだけでしょ……」

幼馴染「そうね、でも大した仲じゃないわよ」

副部長「仲悪いの?」

幼馴染「仲はすごく……良いと思うわ」

副会長「私はてっきり男君の事なんか嫌いとでも言うかと思っていました」

幼馴染「雄に一々腹を立てても仕方ないでしょ」ボソッ

幽霊部員「え?」

幼馴染「そうね、お互いに忙しいから会えなくなったりが続いているだけで特に何かがある訳でも無いわ。普通に幼なじみとして仲が良いわよ」

副部長「ふーん……」

幽霊部員「お互いに忙しいと言えば……幼馴染ちゃんってぜーんぜん学校に来ないっすよね?学校に来れない程忙しい事をしているんすか?」

副会長(皆が気にしている事を……)

幼馴染「そうね、高校に上がってからは特に忙しいわね。でも、これからはどうなるか分からない」

幼馴染「私は学校って行く意味が無いと思ってたの。でも、ちょっと勘違いしてたのかしら?」

幼馴染「身近にあるものを見落としていた……のかな?分からないや」

副会長「悩み事ですか?」

幽霊部員「天才の幼馴染ちゃんでも悩むことがあるんすね」

幼馴染「鬼才の幽霊部員だけには言われたくないわ」

141 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2017/12/20(水) 04:32:17.61 ID:KyHuQLq+O
副部長「何はともあれ頭がいい子は羨ましいな〜学校に来なくても勉強ができるなんてずるいよ」

幼馴染「私だってこれでも苦労してるわよ」

副会長「副部長は勉強の仕方が悪いのでは……話を戻しますが、男君の事が嫌いな訳ではなく、普通にすれ違いが続いているだけと?」

幼馴染「そうね、仲に関してもあいつが勝手に暗くなったり、明るくなったり、私を遠ざけたりするだけよ」

副部長「ふーん……」

幼馴染「私は年上のお姉さんらしくアイツに接しているだけ」

幽霊部員「お姉さん……?」

副部長「それは無茶がある……かな?」

幼馴染「うっさい!!」

副会長「二人共言い過ぎですよ、本人が思っている事を簡単に否定してはいけません」

幼馴染「」

142 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2017/12/20(水) 04:33:58.48 ID:KyHuQLq+O
幼馴染「でも……男がギターをやるなんて思ってもいなかったわ。てっきりボーカルかと」

副部長「あっ、そう言えば最初はボーカルもやるとか言ってたよ」

幼馴染「どうして歌わないのかしら?」

副部長「分からないなぁ、気付いたら会長だけがボーカルになってるもん」

幼馴染「どうしてかしら……?」

幼馴染「家が隣だった頃に何度かあいつの歌を聞かせてもらった事があるけど、凄く綺麗な声してたの。張り詰めてて儚くて……」

幽霊部員「それって声変わりの前っすか?」

幼馴染「前よ。でも……」

副部長「声変わりの前なら男性でも声は綺麗だよね」

幼馴染「むっ……大人になっても根本の良さは残るわよ、声の高さは別として…………お稽古だって沢山してたもの」

副会長「小さな時から沢山歌ってたんですね、男君」

幼馴染「音楽一家だし……って、あいつの話ばかりじゃない……」

143 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2017/12/20(水) 04:35:21.41 ID:KyHuQLq+O
幽霊部員「男君は人気者っすね」

幼馴染「でも……隣町に引っ越してからは聞いてないわね、男の歌。今度久しぶりに聞かせてもらおうかしら」

副部長「あっ!じゃあ……今度さ、皆でカラオケ行こうよ!」

幽霊部員「いいっすね〜!大部屋でパーリーピーポーっす!」

副部長「自由天文部の皆で……素敵ですね」 

幼馴染「……」

幼馴染「話を戻すけど」

幼馴染「この勝負の勝敗関係無しに……残った僅かな時間。そうね、精々8ヶ月あるかないかで自由天文部はどうなると思う?」

幽霊部員「そっすね、部長達にこれからの自由天文部とか言われてもピンとこないのが正直な話っすね」

副部長「ごめんね、もっと練習してれば……」

幼馴染「気にしないで、あれは練習どうこうじゃないもの」

幽霊部員「僕的には惜しかったと思ってるっす!」

幼馴染「あんたの感性はホントに分からない……」

副会長「私は……」



副会長「諦めたくない」ボソッ




144 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2017/12/20(水) 04:36:44.40 ID:KyHuQLq+O




男「よいしょっと……」ギュイーン

ロリ「女装して人前に立つ感想はいかがかにょ?」

男「えっ?」

男「うーん……」

と言われてもな、俺はこの舞台とは比べ物にならない人の前に立ってきた訳だから緊張をする筈がないし恥じらう筈もない。

メイクだってソニアの物とは違う。よって、ソニアバレを心配する必要がない。

男「べつに何も……」

ロリ「少しは恥ずかしがらないとつまらないにょ〜」

会長「うぅむ、堂々としているな」

不良「認めろよ」

男「何をだよ」
145 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2017/12/20(水) 04:42:29.84 ID:KyHuQLq+O





「えっ?あれ本当に男?」

友「男だよ」

「いや流石にあれは女子だろ、綺羅星ソニアちゃん並に可愛いぞ」

「ばっか、言いすぎだろ」

友「男は綺羅星ソニア並みに可愛いから言い過ぎでもない」

「でもあのバンドのギターって男だったろ?」

友「だから男だって」

「助っ人じゃね?あいつこの前ギターは始めたばっかりとか言ってたし」

友「何回言えばわかるの?男だって」

「そっか、部長のバンドと競うから初心者はいらないって事か」

友「だから男だって、耳ついてる?」

友(あの肉付き……顔の特徴は男。メイクも男の個性を出している)

友(俺……私……は男のせいで……もっと分からなくなったよ……)



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