永琳「あなただれ?」薬売り「ただの……薬売りですよ」

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193 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/04(木) 20:48:35.93 ID:jSwuJJZ7o

うどんげ「穢れなき月には死の穢れがない……故にどこまでも堕ちていく」

うどんげ「極限まで薄まった寿命が、人知れず消えていくその時まで、ね」


 よいか? このあらゆる意味でかけ離れた、月人と地上人の最大の違い。
 それは――――”死生観”なのじゃ。
 我ら地上の民は、皆「命は限りある物」と捉えておる。
 修験の教義がまさにその典型例なのだが、限りある命が故に「生の限り尽くす」とは、まさにこの事よ。

 しかし月人はそこが違う。
 月人の寿命は長い。本当に長い。
 それがどの程度までかは存ぜぬが、少なくとも人の一生を「一瞬」と捉えれる程度に長い。

 故に見えぬのだ。「死」が如何様な物なのか……
 あまりに遠すぎるが故に、漠然と想像する事すらできぬのだ。


薬売り「月の民は、永劫に等しき生を、ただ流れるように生きている……」

うどんげ「あたしは嫌だった……永遠に畜生のままで、永遠にその辺の石ころと同価値の”物”として生きるのが」

 
 よって月人は死を”穢れ”と呼ぶに至る。
 よくわからぬが、何となしに汚し物。
 よく知らぬが、何となしによろしくない物。
 よく考えた事もないが、周りがそういうのだから、まぁそうなのだろうとしか思わぬ物。
 してそんな「わけのわからぬ物」に苦悩する地上は、やはり穢れた地なのだ。
 そして得体が知れぬ故に、余計に感じるのだ……「怖い」と。


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うどんげ「気が付けば、あたしは月を跳び出してた……気が付けば、あたしは穢れた地に堕ちてた」



 穢れなき都――――月。
 死の存在を知らず、「生の限り」を知らぬ月の人々は、果たして幸せと言えるのであろうか。
 玉兎はそこに「否」と答えたのだ。
 その所以こそが玉兎の曰く、体が生き続ける代わりに「心が死んでゆくから」である。
 


うどんげ「皮肉よね。あれほど穢れだなんだって蔑んでた場所に、自分が堕ちてりゃ世話ないわよ」



 月の者でありながら、その悟りに至ったのは、やはり「人」ではなく「兎」であったが故であろうか。
 得てして結果、独自の悟りを開いた玉兎は――――堕ちた。
 まさに今、激しく着いた尻餅が如く。
 穢れた地へと、その身を落ち着けるに至ったのだ。

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