永琳「あなただれ?」薬売り「ただの……薬売りですよ」

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229 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/07(日) 10:49:14.91 ID:qbKvk9zbo


(――――ふん、いい気味よ)


 その日からと言う物。レイセンは今迄と打って変わって、随分と真面目に働くようになりました。
 問題の新人から一変。あれよあれよと出世を果たし、いつの間にやら番人兎のリーダーにまで上り詰めていたのです。
 しかし何故でしょう。問題兎が改心したにも関わらず、職場の雰囲気はどこか、どんよりとした”陰り”がありました。
 誰も口にこそしませんが、なんとなく居心地が悪い……その正体は、レイセンだけが知ってました。


(まぁた泣いてやがる……ったく、しっかりして欲しいわね)

(たかが人間の一人や二人……そんなのより大事な物が、あるだろっつの)


 永琳は、段々と仕事をレイセンにまかせっきりにするようになりました。
 周りの兎は、それはレイセンが頼りにされているからだと、そう思い込んでいました。
 それはある意味で間違いではありません。
 しかしその真相は……周りのイメージとは、ほんのちょっとだけ、違った物だったのです。


(永琳……永琳……助けて永琳……)


(暗いよ……怖いよ……一人はやだよ……助けて……タスケテ……)


 レイセンは自分の声を乱し、誰かに似せた声を出せると言う芸が出来ました。
 都の人気者だった頃に披露していた、芸の一つです。
 そしてその芸を、久しぶりにまた使うようになりました。
 その声を聞かせる相手はただ一人。
 毎日、毎日、上司である永琳に聞こえるように……いなくなってしまった、姫の声に似せて。


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