永琳「あなただれ?」薬売り「ただの……薬売りですよ」

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271 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/16(火) 22:12:29.15 ID:fw8gKZ+Qo


レイセン「人の話を聞かない奴だとは思ってたけど……まさかこの期に及んでまだ、そんな態度かましてくるとはね!」

薬売り「何をおっしゃいますか。ちゃんと聞いたじゃないですか……」

薬売り「貴方の、真と、理とを」

レイセン「だからそれは剣を……ああっ! い、イラつく!」

レイセン「ほら、あんたも黙ってないでなんとか言いなさいよ! 今あたしら二人、まとめてコケにされてんのよ!」


 わざわざ内から這い出てまで、二羽共々コケにされるとは……この内なる玉兎も、よもや露も思わなかったであろうて。
 確かに、聞いてくれと頼んだのは玉兎の方である。
 だがその経緯は、薬売りが「退魔の剣を抜く条件」を、あらかじめこうこうこうと伝えておいたが故であろうに……
 やれやれ、どこまでも厚顔無恥な奴よ。
 そうでもなければ、誰がこんな面妖な薬売りに”過去”を語るものか。


薬売り「それに……先ほどから話を聞けだのとおっしゃりますが」

薬売り「その言葉……そっくりそのまま、お返ししますよ」

レイセン「は……?」

薬売り「だって……ねえ? つい先ほど、申し上げたばかりじゃないですか……」

薬売り「斬るのは――――”幕が閉じてから”だと」



 クシャリ――――まるで薬売りの言葉に合わせるように、微かな擦音が過った。
 音の感じからしてそれは、何か薄い物同士が擦れ合う音である。
 してこの場における薄き物とは、現状ただの一つしかない。 



薬売り「芝居の準備はできましたか……”姉弟子様”」


レイセン「ウソ…………!」



 そう――――紙である。
 この内なる玉兎が、薬売りから借りた札を折り紙に変えたのと同じく、外なる玉兎もまた、同じ事をしていたのだ。
 「さっきまで呼吸に苦しんでいたとは思えない」と、薬売りは密やかにそう零した。
 夜分深くにも関わらず、見る者を思わず感嘆させる程に――――
 それはそれは見事な”紙の兎”が、玉兎の手元に出来上がっていたそうな。


 
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