永琳「あなただれ?」薬売り「ただの……薬売りですよ」

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294 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/20(土) 20:16:35.29 ID:vYXW/NBlo


うどんげ「面倒かけたわね……薬売り」

薬売り「いえいえ滅相もない……」

薬売り「…………おや」



レイセン「カ…………カ…………!」



うどんげ「レイセン……」

薬売り「まだ……抗うと言うのですか」


 真実を突き付けられてなお、もう一人の兎は、抗う姿勢を崩さなかった。
 過去を否定すると言う事は、すなわち過去の自分をも否定すると同義。
 自分の存在そのものを乱す「否定」。
 ともすれば、自身を守るために……如何に苦しかろうと、拒み続けるしかなかったのであろう。



レイセン「う”ぞ…………だ…………カッ! 認め”……ナ”イ”…………!」



薬売り「致し方……ありませんな」



 しかしながら、もはやレイセンに術はなし。
 抗う気持ちと裏腹に、どうにもできぬ現実が、すぐ目の前に迫っておる。
 追いつめられた鼠は、時として猫を噛む事もあるらしいが……
 はたしてそれが兎だった場合――――”逃げる”以外に何ができると言うのか。


うどんげ「待って薬売り……”レイセンは置いていかない”」

薬売り「残念ながらその命は聞けません……貴方も、薬師の端くれならわかるはず」

薬売り「これはもはや……完全なる末期。このまま放置しておけば、”直にモノノ怪と化す”のは目に見えている」

薬売り「そうなる前に手を打つのが、この場における最善なのですよ」


うどんげ「…………」



薬売り「異論は……ありませんね?」



うどんげ「…………わかった」



 兎は鈴仙を一瞬庇おうとしたものの、薬売りの問いかけに、存外素直に身を引いた。
 兎は、理解していたのだ――――鈴仙は今、”モノノ怪になりかけている”。
 自らあふれ出る程の強き情念。してその発生源が他ならぬ自分自身とあらば……
 兎に異を唱える権利など、ありはしなかったのだ。



【決着】

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