見滝原に微笑む刹那(まど☆マギ×ネギま!)

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1 :暗黒史作者 ◆FPyFXa6O.Q [saga]:2017/04/02(日) 02:21:47.23 ID:9L/CZpKL0
お断り

本作では、まど☆マギ側の原作設定に就いて
こちらの都合で一つ意図的に変更した部分があります。

かなりの部分、特に前半は原作知識前提の内容になります。

それでは、スタートです

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1491067306
2 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/04/02(日) 02:26:55.80 ID:9L/CZpKL0
==============================







何故






彼女なのか?







何故






彼女は微笑むのか?












3 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/04/02(日) 02:32:52.32 ID:9L/CZpKL0








心から









そう思うのなら









魔法少女に









なりなさい




4 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/04/02(日) 02:38:26.01 ID:9L/CZpKL0

 ×     ×

「………夢オチ?」

鹿目まどかは、眠たい声で確認していた。
お気に入りのぬいぐるみがあって、
朝の太陽が花柄のカーテンを透かしているいつもの寝室。

ひどく、殺伐とした夢を見たと思った。
廃墟の中で痛々しく、余りにも痛々しく戦い、傷付く少女。
どちらかと言うと子どもっぽいと自覚しているまどかから見て、
長い黒髪の、華奢にも見えるけど何処か大人びて、
そして言い知れぬ悲壮感が突き刺さる少女がいた、そんな夢。

いつもの寝室、いつもの日常の光景を寝ぼけ眼にとらえるだけで、
それは優しい日常の片隅へと遠ざかる。

ーーーーーーーー

「あーさ、あーさっ」

両親の寝室では、三歳になる鹿目タツヤが、
ベッドの布団をぽかぽか叩いて楽し気に叫んでいた。
飛び跳ねヘアーのパジャマ姿で家庭菜園の父への挨拶を済ませたまどかは、
その寝室の引き戸を気持ちよくすぱーんっと開く。

「おっきろぉーっ!!」
「うっひゃあぁーっ!!!」

そのまますぱーんっとカーテンを開き、陽光と共に布団を引っぺがすまどか。
ベッドの上で悶絶する鹿目詢子、まどかとタツヤの母。

「おきたねー」

鹿目家の朝は愉快に始まる。
5 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/04/02(日) 02:43:45.36 ID:9L/CZpKL0

ーーーーーーーー

「最近どんなよ?」

洗面台で並んで歯磨きをしながら、詢子は娘に尋ねた。

「仁美ちゃんに又ラブレターが届いたよ、
今月になってもう二通目」
「直かにコクるだけの根性もねぇ男は駄目だ」

母と娘の女子トーク。

志筑仁美は小学校以来のまどかの友人、詢子とも知らない仲じゃない。
ちょくちょく頂くラブレターへの対応に困っている、と言うのも分かる、
ふんわりと気立てのいい可愛らしい本当の意味でのお嬢様。

まどかの担任の早乙女和子は詢子の個人的な友人だったりする。
まどか曰く、何でも和子先生は昨日現在で彼氏の事をのろけまくりなので
ぼちぼち継続期間が新記録、との事だが、世の中そんなに甘くはない。
と、付き合いの長い親友鹿目詢子の直感が囁く。

でもって、問われるままにそんな面々の恋愛模様をお話ししているまどかは
そっちの方には全く以て疎かったりする。
姉御肌の詢子としては、それが歯痒かったり微笑ましかったり。

1、2、3、4、5、6、7、8、9、10

つい先ほどまでの寝坊助が何処に出しても恥ずかしくない、
大人に言わせれば、とてもこれだけの子持ちには見えない
バリキャリ美女にメタモルフォーゼする。
毎朝の事ながら、そんな母の、一人の格好いい女性の姿に、
鹿目まどかは惜しみなく憧憬の眼差しを送る。
6 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/04/02(日) 02:47:07.06 ID:9L/CZpKL0

ーーーーーーーー

「どうかな?」
「ああ、いい感じ」
「うん、美味しい」

しっとりとしながら心地よい歯ざわりも残る。
家庭菜園発の茄子の浅漬けは、好評を以て朝食のお供に迎えられた。

まどかの父、鹿目知久は、まどか曰く家事の天才であり、
素晴らしい菜園の主でもあった。
それはそのまま、こうやって白いご飯が美味しい浅漬けに直結している。

まどかの知る限りパン食の時期も長かったと思うが、
何かのきっかけでこうなっている。
どっちにしろ、父の天才っぷりが微動だにしていない事を実感しながら、
まどかはいつも通り美味しい朝食を堪能する。

インゲンの味噌汁にオクラの和え物。
まどかはそのどれもこれも大半が自家製である事に今更ながら感心しつつ、
野菜多めのメニューでもネバネバオクラは元気の素だと
何時ぞや詢子が笑ってウインクしたのを思い出す。

「コーヒー、お代わりは?」
「おー、いいや」

知久の誘いに、時間を確認した詢子がぐーっとコーヒーを飲み干し、
家族とのスキンシップを交わして出勤に就く。
まどかに残された時間も、決して長いものではなかった。
7 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/04/02(日) 02:51:06.75 ID:9L/CZpKL0

ーーーーーーーー

朝の通学路で、友人の志筑仁美に母からのアドバイスを伝えたり、
自分には少々派手だ、と思いつつ
気合いの入った母に押し切られる様に装着したリボンを
友人の美樹さやかに手荒く褒められたり。
何時もの様に姦しく、
鹿目まどかは見滝原中学校の自分の教室に到着する。

朝のHRでは、担任の早乙女和子先生が
彼氏に振られて爆発すると言うまどか達にとっては割とよくある光景を経て、
転校生紹介と言うイベントが開始される。

一日の授業を終えて放課後、
まどか達が行きつけのフードコートで一服していた時には、
美樹さやかは快活に大笑いしていた。

確かに、まどかの知る限り今朝初対面の筈の転校生が
夢の中で出会った様な気がしたり、
その転校生が自分に対して何やら意味深に運命的な発言をしたり、
実際たった今まどかがそうした様に、
それをさやかに伝えれば、それはさやかなら裏表なく笑うだろう。

その事はまどかにもよく分かる。
しかも、その転校生がストレートの黒髪も見事な美少女で、
勉強OKスポーツOKのハイスペック万能選手と来たら尚の事。

もう一人、同伴している志筑仁美は、くすくすと可愛らしく笑いながらも、
或は本当に何所かで会った事があるのでは、と、
落ち着いた分析を披露する。

かくして、お嬢様らしくお稽古事に向かった仁美と分かれ、
まどかとさやかは行き着けのCDショップへと足を運んだ。
さやかは、級友である上条恭介へのお見舞いを選ぶのだと言う。

まどかにとってさやかが小学校からの幼馴染なら、
上条恭介とさやかは幼稚園以来の幼馴染。
実際、割と長い付き合いのまどかともそうであるが、
特にさやかとは、男女にしては気の置けない間柄、
それがまどかの知る上条恭介。
8 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/04/02(日) 02:54:25.98 ID:9L/CZpKL0

だけどまどかは知っている。
男勝り、お転婆、そう言って、周囲も本人すら、
何処からも否定する声は出ないだろう。

そんなさやかが、何時しか恭介の話をする時に見せる様になった、
それは紛れもなく女の子の顔。
そちら方面には疎い、と自認しているまどかでも
見ているだけで胸の高鳴りを覚える、そんなさやかの表情。

そして今、その表情は些か陰りを帯びている。
それは、別に失恋した訳ではなく、
当の上条恭介が入院してしまったから。

それも、将来を嘱望されたヴァイオリニストの卵である恭介が、
交通事故でまともに動かせない程に左手を痛めた。
その事にさやかは心を痛め、回復を祈っている。
まどかも又、二人の友人として

「………助けて………」

まどかは、CDの試聴を止める。

「………助けて………」
「?、?、?」

聞こえる。
余りのダイレクトさに、当初は試聴していたCDの音声かとも思ったが、
まどかは確かに聞いていた。
それも、頭の中に直接響く様な未体験の救援要請。
戸惑うのも当然だった。
9 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/04/02(日) 02:57:59.34 ID:9L/CZpKL0

ーーーーーーーー

「まどか、こっちっ!!」
「さやかちゃんっ!」

まどかは、白煙と共に親友美樹さやかの叫びを聞いていた。
謎の声に誘われる様にショッピングモールからその改築エリアに侵入し、
そこで、半ばボロ雑巾と化した謎生物と、
それを追跡していたらしい謎の転校生暁美ほむらと遭遇した。

今朝、転校生として同じ教室で遭遇したばかりで
少々言葉も交わしているので謎と言う程でもない筈なのだが、

少なくとも今朝彼女が着用していた見滝原中学校のものとは違う学生服、
どう見てもコスチュームプレイの類に見える服装で
狐だか猫だかなんだかよく分からない謎の小動物を追跡している、
でもって虐待している疑いが濃厚なのだから
謎の転校生と言っても差し支えは無いだろう。

しかも、同級生として言葉を交わしたら
尚の事謎が深まるのが暁美ほむらだったりする。

少なくとも美樹さやかはそう受け取ったらしいが、
それでこちらに向けて消火器を噴射すると言う
相変わらずの有り余る行動力決断力にまどかは改めて感心する。
そして、さやかと共に文字通り逃走しながら、まどかは異変に気付いた。

「あれっ? 非常口は? どこよここっ?」

さやかも気付いたらしい、気付かない方がおかしい。

「変だよ、ここ。どんどん道が変わって行く」
10 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/04/02(日) 03:01:19.76 ID:9L/CZpKL0

まどかもさやかも、彼女達、中学生に限らず、
実体験としてこの状況を言語化する事は簡単ではないだろう。
強いて言うならば、改装中の殺風景なビルディングを走っていた二人は、
いつの間にか、何やら不気味な絵画の中を思わせる、
そんな得体の知れない奥行き不明の空間の只中に存在していた。

そんな不気味な空間の中で、
まどかとさやかは更に不気味に何かに包囲されていた。
一見すると蝶々の様な。

但し、その大きさは少なくとも人間の子どもに匹敵するバカでかさ、
羽を使って歩行し髭の様な変な飾りがあり。

更に、その化け物蝶に加えて
自律行動するハサミやら鉄条網やらがうじゃうじゃと現れて二人に迫る。
まどかもさやかも、これが自分に対して友好的なファンタジーである、
と受け取る事は出来なかった。

「冗談だよね?
あたし、悪い夢でも見てるんだよねっ?
まどかっ!?」
「?」

叫ぶさやかの横で、まどかは何かを目で追っていた。
何かが二人の側を飛んで、ひゅんっ、と通り過ぎる。

「何、これ?」

さやかが発した問いへの直截な答えは独鈷、と言う事になるが、
生憎、それはさやかの語彙には含まれていなかった。
三口の独鈷が二人を囲み、一口が二人の真上に向かう。
次の瞬間、二人の周囲は衝撃波に飲み込まれたが、
二人は直接的な打撃を感じなかった。
11 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/04/02(日) 03:04:50.24 ID:9L/CZpKL0

ーーーーーーーー

「何、これ?」

巴マミも又、問いを発した。
パトロール中、魔女の痕跡を察知して
改装中のエリアに侵入、魔女の結界に突入した。
そして、どうもまずい事になっているらしい、
と察知して救助を急いだ。

そこまでは割とよくある流れだった。
しかし、その地点に到着する少し前に強烈な攻撃が行われた。
そして、到着した時には、
桜花の余燼を僅かに残し、
獲物に群がっていた少なからぬ使い魔は見事に一掃されていた。

「危ない所だったわね」

抱き合って震えていた二人の後輩に、マミは声を掛けた。

「その制服、あなた達も見滝原の生徒なのね。二年生?」
「あなたは?」
「自己紹介したい所だけど、今はそれどころじゃないわね。
使い魔は魔女と一緒に引っ込んだ? 確かめなきゃいけない事がある」

ぶつぶつ呟く先輩を、まどかとさやかは怪訝そうに眺める。

「弱まってる今なら、あっちに逃げたら逃げられるから。
後でお話ししましょう」

そのまま、マミは結界の奥へと走り去った。

(新手の魔法少女? 確かめないと………)

「うひゃあっ!!」
「さやかちゃんっ!?」

まどかがさやかの視線を追うと、そちらでは長く艶やかな黒髪が翻っていた。
まどかは何かを言おうとしたが、
取り敢えず、たった今告げられた先輩からの助言を
正反対に無視して突っ走るさやかを追跡するのが先だった。
12 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/04/02(日) 03:08:20.23 ID:9L/CZpKL0

ーーーーーーーー

「どうしてここにいるのかしら?」

後輩にたった今言われた事を真正面から無視されては、
マミの声に怒りがこもるのも無理からぬ所だった。
さやかもまどかも、それはよく分かる。

「い、いや、その、あっちに敵がいた、と言いますか………」
「そう。じゃあ、ここを動かないで」

マミはすっぱり会話を切り上げ、正面を見る。

「見て、あれが魔女よ。
さっき、あなた達を襲っていたのは使い魔。
魔女を倒せば使い魔も消える」
「倒す、って………」

三人がいるのは、得体の知れない空間の中で、
ホールの中二階に繋がる通路、
そのホール入口周辺、の様な場所だった。
そして、そのホールのど真ん中に巨大な怪物がいる。
その形状は辛うじて蝶々と何か、と呼べる意味不明な代物で、
少なくとも一人の少女が「倒せる」相手には見えない。

「下がってて」

マスケット銃で床を突き、二人の後輩をバリアで守ったマミは、
そのまま人間離れした跳躍でホールの真ん中に降下した。

(いる………)


真正面に薔薇園の魔女、周囲に使い魔、それはいい。
問題は、
13 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/04/02(日) 03:11:45.09 ID:9L/CZpKL0

(もう一人、いる)

マミは、その事を察知していた。
魔女や使い魔ではない、恐らく自分達と近い存在。
それがこの近く、このホール内にいる筈だが、
現時点では視界に入らない、敵か、味方か?

マミは少々の苛立ちを交えて小さな使い魔を踏み潰し、
憤激した魔女の椅子アタックを交わし砲火を交えて
戦いの火蓋は気って落とされた。
使い捨てのマスケットが次々と火を噴き、
マミにとっては順当に魔女を追い込んでいく。

「ああっ!!」

美樹さやかが叫び声を上げた。
状況的に言って自分達を助けてくれた、
そして、魔女と言うらしい化け物相手にも
不思議な技で丁々発止対抗していた謎の先輩。

そんな先輩に使い魔なるものが群がり、
その使い魔の群れはぶっとい蔓と化して先輩をぶうんと持ち上げ、
ホールの壁に叩き付けていた。

実の所、これもマミにとっては想定内の出来事だったが、
次の瞬間に異変は起きた。

「?」

自分を締め付ける力が緩み、マミは訝しむ。
見ると、蔓は根本から切断され、
そのままバラバラの使い魔の死体と化して消滅していった。
14 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/04/02(日) 03:14:48.68 ID:9L/CZpKL0

(見つけた)

マミが、心の中でひとりごちる。

どちらかと言うと小柄な少女、
背負っている筈が背負われている様な馬鹿でかい刀、
見る人が見れば野太刀と分かる代物を携えている事が、
彼女をより小柄に見せる。

そんな少女が不意にマミの視界に現れ、魔女に一撃加えていた。

「神鳴流奥義・斬岩剣っ!」

距離を取った魔女に瞬時に追いつき、
野太刀の一撃で巨大な魔女を揺るがす。
少なくとも、人間業ではない。

「凄い………」

最初から想像の埒外とは言え、更なる展開に
まどかもさやかも見入っていた。
小柄な少女の背丈程もある巨大な刀。
その一振り一振りが又、
常識外れな衝撃を放って巨大な魔女をぶん殴っている。

「神鳴流奥義・百烈桜華斬っ!!」

舞い散る桜華と共に、強烈な斬撃が魔女を押す。
そして、魔女がホール内の一点に追い込まれている事をマミは見逃さない。
果たして、野太刀少女が大きく飛び退いたそのすぐ後に、
魔女は地面から噴出したリボンによって雁字搦めに拘束されていた。
15 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/04/02(日) 03:18:29.30 ID:9L/CZpKL0

ーーーーーーーー

「ティロ・フィナーレッ!!」
「やった………」

到底抱え切れていない巨大な抱え筒が魔女とやらに致命傷を与えるのを見て、
美樹さやかは脱力しながら呟いた。

「さやかちゃんっ」

そして、親友鹿目まどかの声に、さやかは我に返る。

通路にいるまどかとさやかに、ホール側からざしざしと接近して来る者がいる。
それは、たった今までホールにいた筈の、
背丈程もある野太刀を担いだ一人の少女。

さやかと同年代にも思える華奢な少女がそんな野太刀を正確に振るっていた、
その事からして尋常ではないのだが、
今、さやかが感じている彼女の佇まいは戦場の軍人か侍か。
ピン、と張り詰めたものがさやかを震わせる。
こうして見ると色白で端正な顔立ちである事が、
より鋭く、清冽なイメージをさやか達に突き付ける。

まどかとさやかが息を飲んでいる間に、
バリアの境界真ん前で足音は止まった。
16 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/04/02(日) 03:22:10.91 ID:9L/CZpKL0

「………ケガはありませんか?」

さやかは、目をぱちくりさせてその問いを聞いていた。

「………あ、あのっ………
大丈夫です、有難うございましたっ!!」

ぱたん、と、体を折り、まどかは叫んでいた。

「………良かった………」

顔を上げたまどかは、優しい微笑みを見た。
まどかがそう思った時、小さく礼を返された。
真面目で、そして、少し寂し気な表情をまどかは見ていた。

「あ、えっと、はい大丈夫です、ありがとうございました」

さやかも慌てて頭を下げる。

「あなた、何者?」

背後からの詰問に対しても、
彼女は静かな微笑みと共に振り返った。
振り返りながら何かを摘み上げ、
マスケットの銃口を向けている相手に向けて放り出す。

「見つけておきました、差し上げます。
そちらの邪魔をするつもりはありませんので」
「有難う。他所の魔法少女なのかしら?」
「申し遅れました」

巴マミが真正面から見たその眼差しは、
自分が向けている銃口にも何に対しても余りにも静かで、
マミが息を飲む程に落ち着き払っていた。

「桜咲刹那、退魔師です。
そちらのあなたも、そろそろこちらに加わりますか?」
17 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/04/02(日) 03:25:23.94 ID:9L/CZpKL0
==============================

今回はここまでです>>1-1000

続きは折を見て。
18 :全知全能の神未来を知る金髪王子様の須賀京太郎様 [二次元美少女達は金髪王子様の須賀京太郎様の嫁]:2017/04/02(日) 06:37:42.59 ID:zovpxJst0
まーた駄作うんこホモ実写と紐絶番朝鮮人実写版がクロスとか

シュタクソのダルしか得しねぇぞ白糸台創設者SS早よ建てろよ底辺婦女子提督艦これ動画バッドしてんじゃねぇぞ考え剥げ

30代以上の男性声優は松潤ギアス様以外全員禿か髭ボーボーの叔父さん
19 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/04/05(水) 01:34:23.22 ID:bWoO1rCm0
それでは今回の投下、入ります。

>>17

==============================

「………あ………」

さやかが周囲を見回す。
得体の知れない空間は現実的な改築中のビルに姿を戻していた。
そして、桜咲刹那の言葉に応じる様に、暁美ほむらが姿を現す。

そして、まどかが気づいた事がある。
今日転校して来たほむらとはその朝のHRが初対面の筈で、
幾度か直接顔を合わせてもいるが、
まどかが知っていたほむらの表情は鉄面皮そのもの。
それ以外の表情は知らなかった。

だが、今のほむらは戸惑っている。それを隠し切れていない。

「まどかぁ」

そして、さやかが小さな声で危険を促す。

「あなた、この子、キュゥべえの事が見えるのね?」

マミは、ほむらを無視する様にまどかに声を掛ける。

「助けてくれてありがとう。この子は私の大切な友達なの」
「は、はい。私、呼ばれたんです。助けて、って、直接頭の中に」
「ふうん、そういう事」

そして、マミは改めてまどか、さやかとほむらを見比べる。

「生憎だったわね、魔女はもう片付いたわよ」
「私が用があるのは………」
「呑み込みが悪いのね、見逃してあげるって言ってるの」

マミが放った威嚇の言葉に、場の空気は再び張り詰めた。
20 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/04/05(水) 01:39:47.43 ID:bWoO1rCm0

「お互い、余計なトラブルとは無縁でいたいと思わない?」
「………後悔するわよ」
「次は、お友達になれそうなタイミングで会いたいわ。
お互いのためにも」

微笑みと共に告げたマミに、ほむらは無言のままで踵を返した。

「あなたは………タイマシ、って言ったわね。
魔法少女じゃないのかしら?」
「違うね。僕は彼女と契約した覚えは無いし、
魔法少女とは違う様だ」

マミの問いに答えたのはキュゥべえだった。

「はい、私は退魔師。
あなた達マギカ、魔法少女とは少々別の存在です。
そして、彼女達は救兵衛に見込まれた様ですが、
少し、話をすり合わせた方がいいのでは?」
「そうみたいね」

頭の回転が速い。
桜咲刹那と名乗った少女にその事を感じながら、
マミも最初からそのつもりだった提案に同意する。
そして、まどかに抱かれたキュゥべえに治癒の魔力を施術する。

「助かったよ、マミ」
「お礼はこの子たちに、私は通りがかっただけだから」
「どうもありがとう。僕の名前はキュゥべえ」

キュゥべえはマミとの問答通り、まどかに礼を言った訳だが、
言われたまどかにして見ると、
ぬいぐるみの様な謎の生物が人語を喋っている時点で
その奇怪さに一歩退いてしまう。

「あなたが、私を呼んだの?」
「そうだよ。鹿目まどか、それと美樹さやか」
「何で、私達の名前を?」

名前を呼ばれ、怯みを見せながらさやかが尋ねる。
21 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/04/05(水) 01:45:31.19 ID:bWoO1rCm0

「僕、君達にお願いがあって来たんだ」
「お、お願い?」

まどかがやや怖々と聞き返す。

「僕と契約して、魔法少女になってよ」

愛らしく頷き、告げるキュゥべえを
桜咲刹那は涼し気な眼差しで眺めていた。

ーーーーーーーー

「美味しい、マミさんこれ美味しいです」
「これめちゃうまっすよ」
「美味しいです」

マミが一人暮らしをしているマンションのフラットで、
彼女が差し出したシフォンケーキとハーブティーは
三人の訪問者から惜しみない賞賛を以て迎えられた。

キュゥべえに選ばれた以上他人事ではない、
と言う事で、マミはまどかとさやかに
魔法少女に関する基本的な知識を教える。

ソウルジェムから魔法少女、魔法少女から魔女、
願いの対価としてソウルジェムを得て結界に潜む魔女と戦う。
マミとキュゥべえの口から、
世界の秘密の一端がその様に語られる。
22 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/04/05(水) 01:51:13.28 ID:bWoO1rCm0

「あの転校生も、えっと、その、魔法少女なの?
マミさんと同じ?」
「そうね、間違いないわ。かなり強い魔力を持っているみたい」

話は進むが、魔法少女同士、正確には魔法少女であるほむらが
契約を司るキュゥべえを襲撃した事に就いて、
まどかとさやかはなかなか理解が出来ない。

「これがグリーフシード、魔女の卵よ」
「た、卵………」
「運が良ければ魔女が何個か持ち歩いている事があるの」

マミが取り出したグリーフシードを、
まどかとさやかは怖々と眺める。

「大丈夫、その状態では安全だよ。
むしろ役に立つ貴重なモノだ」

キュゥべえがそういう中、
マミは再び自分のソウルジェムを取り出し、グリーフシードを近づける。

「見てて」
「あ、綺麗になった」

「こうやって、消耗した魔力を元通りにする。
それが、魔女退治の見返り。
だから、同じエリアに魔法少女が増え過ぎると、
魔女、グリーフシードの奪い合いなんて事も起こる。
それを避けるために、鹿目さんの契約を阻止しようとして………」

「それで、あんな風にキュゥべえを?」

ここまでの行きがかりで、
ほむらに対して余り虫が好かないさやかが非難を込めて言った。

「多分、そういう事でしょうね。ところで………」

その辺りまで黙って聞いていた刹那にマミが声を掛けた。
23 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/04/05(水) 01:57:02.05 ID:bWoO1rCm0

「あなたは一体どういう人なのかしら?
助けてくれた事は感謝するけど、退魔師、って」

マミの問いに、刹那が向き直る。

「夕凪」の銘を持つ野太刀を前から肩に掛け、
目を閉じてじっと聞くだけの刹那は眠っている様にも見えたが、
それにしては独特の緊張感を漂わせていたのも確か。

制服と銃士の様な魔法少女スタイルを忙しく行き来していたマミに対して
刹那はカジュアルなパンツにシャツのスタイル。

ロングとまではいかなそうな綺麗な黒髪を
サイドポニーに束ねているのはやや個性的とも言えるが、
それだけに背丈に余りそうな夕凪の、
そしてその普通の格好で魔女を半ばぶちのめした行動の違和感は只事ではない。

「大きく言えば、魔法使いと言う事になります」
「………」

その言葉を聞いた三人が三人、反応に困っていた。

「救兵衛との契約で魔法の力を得るあなた達魔法少女、
こちらでは主にマギカと呼びますが、
そのマギカに対して、私達は言わば土着の存在です。

古今東西の物語に出て来る魔術師、魔法使い。
その伝承の中には過去に存在したマギカに就いて語ったものもある様ですが、
そうでないものもかなりの数に上る。

その、そうではないもの、
マギカとは別の所で科学とも違う力を発展させて来た。
それが我々であると理解して下さい」

「………」
「ええっと、その………」

マミとさやかが言葉を探している中、まどかが怖々口を開く。
24 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/04/05(水) 02:03:09.93 ID:bWoO1rCm0

「その、絵本の中の魔法使いって事ですか?」
「そういう事になります」

真面目に答える刹那だったが、
ふっ、と、優しい先生の様な笑みを浮かべていた。

「もちろん大雑把な答えですが、
あなた達マギカと比較するならちょうどいい定義です」
「なるほど」

さやかも、なんとなく理解した様だった。

「魔法少女がいるなら魔法使いがいてもおかしくない、
そういう事ね?」
「そんな所ですね」

マミの理解に刹那が答える。

「中でも退魔師は、それもあなた達の魔女とは別の
土着の魔物、悪霊を退治する事が本来の仕事です」

「い、いるの、そういうの?」
「ええ。まあ、大概のものは
目立った害が出る前に我々が対処していますが」
「そうなんだ………」

質問したさやかが引きつった反応をする。
25 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/04/05(水) 02:07:00.18 ID:bWoO1rCm0

「さっきも言ったけど、魔女の存在も普通の人には分からないわ。
結界の奥に潜んで普通の人には見えない。
そして、人を誘い込んで命を奪う。
一般には原因不明の自殺や行方不明として処理されてる」

マミの改めての説明に、
まどかもさやかも改めて先程の自分達の危険に息を飲む。

「そういう訳で、本来私達魔法使いとあなた達マギカは交わらない存在。
伝承上、両者が交わった事や技術的に交流した事もあった様ですが、
現状では我々はそちらには関わらない、原則としてそういう事になっています。

あなた達にはあなた達の利害がある。
只でさえ双方ともに世間に隠れた力のある存在。
それが、二つの別々の勢力が関わり合っても
トラブルの懸念の方が大きいですから」

「そうね。私達としては契約した以上、
妙な人達に邪魔されずに魔女を退治させてもらいたい所ね」

「それはこちらでも理解しています。
只、一方で我々、私達が属している組織ですが、
こちらは公益目的の活動も行っています。
ですから、最近この見滝原近辺の魔女の発生件数に就いて
懸念されるものがあるとして、実態調査のために私が派遣されました」

「組織?」
「現在は関東魔法協会と言う組織に所属しています」

マミの問いに刹那が答え、
急に、変に現実的になった事をさやかは感じ取る。
26 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/04/05(水) 02:11:44.32 ID:bWoO1rCm0

「その、関東魔法協会?」

少々戸惑っているのはマミも同じらしい。

「はい。私達の管轄する裏側の秩序を司る魔法使いの組織です。
当面の所、直接あなた達と接触するのは私だけになると思いますが。
もちろん、あなた達の縄張りを荒らすつもりはありません。
そもそも、私がグリーフシードを得ても仕方がないですから。
そういう訳ですので、
当面はあなたと協力して活動したいのですが」

「話は分かりました」

刹那の説明に、紅茶を傾けていたマミが答えた。

「助けてもらった恩もある。こちらの邪魔はしない、
と、約束してくれるなら、むしろ歓迎よ」
「助かります」

マミの言葉に、刹那はふうっと息を吐く。

「そして、鹿目さん、美樹さん」

マミが二人に向き直った。

「キュゥべえに選ばれたあなた達には、
どんな願いでも叶えられるチャンスがある。
でもそれは死と隣り合わせなの」
「ううう………」
「うわぁ、悩むなぁ………」

そして、改めてマミの魔女退治に同行して魔女退治がどういうものか、
命懸けで叶えるべき願いはあるか、
それを見定めようと言うマミの提案、それを二人が受け容れるのを、
再び眠った様な桜咲刹那は片目を開いて聞いていた。
27 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/04/05(水) 02:15:04.10 ID:bWoO1rCm0

ーーーーーーーー

「なんか、サムライって感じだったよねー」

とうに陽の沈んだ帰り道、さやかが隣を歩くまどかに言った。

「あの、桜咲刹那って人。
刀持ってたのもそうだけど、無口で礼儀正しくてとにかく固い感じで、
侍って言うか、用心棒の先生って感じ」
「ウェヒヒ………」

さやかの的確な例えにまどかは苦笑する。
しかし、まどかの印象は少々違っていた。
大体の所、一見した所は、
まどかもさやかと同じ印象は持っている。

「………でも………」
「ん?」
「桜咲さん、優しい人なんじゃないかな?」

「そうかな? うん、助けてくれた訳だし、
悪い人じゃないかも知れないけど。
悪い人って言ったら、あの転校生?
キュゥべえを襲ったりして、マミさんが追っ払ってくれたけど」

「悪い子、なのかなぁ?」
「じゃないの? それじゃあまどか、又明日」
「うん」
28 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/04/05(水) 02:18:32.57 ID:bWoO1rCm0

ーーーーーーーー

「ただ今………」
「お帰り、まどか」

普段より随分遅い帰宅のまどかだったが、
それを迎えた知久はいつも通り穏やかだった。

「ママは?」
「ああ、まだかかるみたいだね」
「そう」

知久は、先輩からお呼ばれして遅くなると言う
電話連絡をまどかから受けていた。
話している内に用意が出来て、まどかは食器をテーブルに運ぶ。

「いただきます」

まどかは少し遅い、温かな夕食を口に運ぶ。

「ご馳走様」
「お粗末様でした」

いつも通り美味しい夕食、穏やかで優しい父。
現実に戻って来た感じ、と言うものをまどかは実感していた。
それと共に、どっと疲れを感じる。
とんでもなく非常識な事が色々あり過ぎて、疲れを忘れていた感じだ。

今夜はお風呂に入って早く休もう。
その誘惑が力一杯に今のまどかを引き寄せる。
もしかしたら、今日の非常識全部が夢オチになってるかも、
なんて事まで考えたくなる、まどかにとってはそんな一日だった。
29 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/04/05(水) 02:28:16.13 ID:bWoO1rCm0

ーーーーーーーー

「………」

桜咲刹那の視線の先には、四角い一軒家が存在していた。
土地と金に余裕がある郊外の内に思い切って建てて買った、
と言う感じで細々としていない。
庭付き一戸建て二階建てとしては、
表向きガラス戸の多いどっしりとした建物に、畑の一つも出来そうな、
と言うか実際出来ている広々とした庭も魅力的だ。

「動かないで」

背後からの声に、刹那は素直に両手を上げる。

「桜咲刹那、退魔師とやらがここで何をしている?」
「暁美ほむらさん、と言いましたか?」
「質問に答えてくれるかしら?」
「帰宅する途中ですけど」
「死にたい訳?」
「そのつもりなら一つ忠告しておきましょう」
「!?」

ほむらが構えていたM9拳銃。その銃口の先が、ぶれた。
銃口の先が刹那の頭をとらえていた筈が、
とらえていたと言う事実が不意に、揺らいだ。
と、思った次の瞬間には、
刹那の肘を腹に叩き込まれたほむらの体が大々的に路上を滑っていた。

「か、はっ………」
「神鳴流に飛び道具は効きません………?」

びゅうっと風の様な勢いで移動した刹那は、
吹っ飛んだほむらを捕獲しようとした。
しようとしたその時には、
ほむらの姿は刹那の視界から消えていた。
30 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/04/05(水) 02:32:20.33 ID:bWoO1rCm0

「だからと言って」

ほむらの振り下ろした
4番アイアンのヘッドの下にあった筈の刹那の頭部は、
すぐ近くの地点にすいっと移動し、
その時には、ほむらが水月に拳を叩き込まれて体をくの字に折っていた。

「こちらで私に挑むと言うのは、もっと無謀でしょうね」

いかにもつまらなそうな刹那の言動に、ほむらは戦慄を覚える。
元々特殊能力の一点を除けば直接戦闘向きではないほむらだが、
魔法少女単位で考えても桜咲刹那、生半可な相手ではない。

(つっ、痛覚遮断っ!)

刹那がほむらと少し距離をとった瞬間、
ほむらは消耗を覚悟しつつ刹那から離れる。。
そうしながら、刹那の手が光を帯びているのを歪む視界にとらえる。

「匕首・十六串」
「!?」

距離を取ったほむらに、何口もの匕首が飛翔して迫って来る。

(これはっ!?)

銃器を用意しようとするが、間に合わない。
それ以前に、そういう対処が出来る代物なのか、

「稲交尾籠………」

バシュウッ、と、周囲が一瞬強い光に包まれた。

「………」

刹那が正常な視界を取り戻し、
自らが展開した捕縛結界を確認する。
果たして、その中は空だった。
31 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/04/05(水) 02:36:37.07 ID:bWoO1rCm0

ーーーーーーーー

「秘剣・百花繚乱っ!!!」

暁美ほむらを見失い、夜の住宅街で歩みを進めていた桜咲刹那は、
大きめの公園にざしざしと立ち入り、振り返り様に夕凪を振るっていた。
衝撃波が土煙を起こし、刹那は術の影響で舞い散る桜華に目を凝らす。

ぶうんっ、と、一見すると野太刀離れした非常識な勢いで、
刹那は夕凪を斬り上げる。
ギインッ、と、何か鉄棒とでも打ち合った様な手応えはあった。
刹那は夕凪の棟を肩に掛け、鋭い眼差しで気配を伺う。

「斬鉄閃っ!!」

夕凪の斬撃から強力な「気」を放った時には、
刹那は身を交わしていた。

「アデアット」

それでも執拗にまとわりつく鋭い斬撃を、
刹那は左手の「白い翼の剣」で辛うじて受け流す。

「神鳴流奥義・斬岩剣っ!!!」

そして、刹那は力一杯の一撃を叩き込む、が、
やったか、とは思わない。
手応えが無いのは最初から分かっていた。
取り敢えず、脅威は去った様だ。
32 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/04/05(水) 02:40:25.14 ID:bWoO1rCm0

ーーーーーーーー

「どうだった?」

住宅街、夜の路上で問いが発せられる。

「強いね、並の魔法少女じゃ叶わないんじゃないかな?」
「キリカでも?」
「こちらの術で作ったズルを正攻法でぶち破りかねない、
それ程の実力だったよ。
だけど織莉子がやれと言うなら、それは些細な事さ」
「そう」

美国織莉子は、ひゅっ、と、小さな水晶球を二つ放った。
一つ目の球が空に消え、少し遅れて二つ目が飛翔する。

「折り紙?」

ひらひらと降って来たものを見て、呉キリカが言った。

「かみにんぎょう、かしらね?」

それを掴んだ美国織莉子が言い、ぽいと放り出す。
その折り目のついた紙片は、
空中で、ぼっ、と紅蓮の炎に包まれた。

==============================

今回はここまでです>>19-1000
続きは折を見て。
33 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/04/10(月) 03:35:10.58 ID:GfExdfTJ0
それでは今回の投下、入ります。

==============================

>>32

 ×     ×

「ええええっ!?」
「どうしましたのっ!?」
「い、いや、なんでもないなんでもないあはははは」

朝のHR終了後、最初の休み時間にガタンと立ち上がって絶叫した美樹さやかに
友人の志筑仁美が目を丸くして声を掛け、
さやかは頭を搔いてごまかしてみせる。

「そ、そうですの」
「ウェヒヒヒ」

その側で鹿目まどかも苦笑いしているが、
さやかとまどかは目と目で通じ合っていた。

魔女やら魔法少女やらの騒動に巻き込まれた翌日。
或は夢オチでは、と言うまどかの現実逃避は、
まどかの寝室でぬいぐるみに紛れて
朗らかに朝の挨拶を決めたキュゥべえが簡単に打ち破ってくれた。

魔法少女の素質が無ければ
キュゥべえの存在を認知する事は出来ないと言う事で、
見える者には得体の知れない、でも可愛らしい小動物であるキュゥべえは
登校するまどかにまとわりついてそれを見たさやかを驚かせたり、
そんな二人を見た仁美を驚かせたりもした訳だが、
その辺りの事は割愛としておく。
34 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/04/10(月) 03:40:31.84 ID:GfExdfTJ0

実用的な面では、まどかとさやかはキュゥべえを介する形で
三年生の先輩である魔法少女巴マミと
テレパシーのチャンネルを繋ぐ事に成功した。

昨日キュゥべえを襲撃したと言う暁美ほむらも
まどか、さやかと同じ教室にいる訳だが、
学校で滅多な行動はとらないだろう、と言う予測で話を止めていた。

そして、今、もう一度マミとのテレパシーを繋いだ所、
伝わって来た話はなかなかの急展開だった。

「桜咲、さんが転校して来た、って」
「三年生だったんだ………」

ひそひそ話していたつもりのまどかとさやかは、ガタッ、
と言う物音に視線を走らせる。
そこでは、暁美ほむらが目を見開いて立ち尽くしていた。

ーーーーーーーー

昼休みに屋上で改めて鹿目まどかと美樹さやかに釘を刺したり、
その際に別の校舎の屋上から巴マミに無言の威嚇を受けたり
帰りのHRの後に同級生からのお茶のお誘いを丁重に断ったりしながら、
暁美ほむらの本日の学校生活は終わりを迎える。

(これって、本当は佐倉杏子辺りのやり方じゃないのかしら?)

そして、時間停止を使いながら
近隣の高層ポイントに移動して双眼鏡を覗く。
35 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/04/10(月) 03:47:00.89 ID:GfExdfTJ0

ーーーーーーーー

(ここは………)

地上に戻ったほむらがしばらく歩き続け、到着した先には
解体も先延ばしにされている廃墟と化したビルが存在していた。

「何か、御用でしょうか?」

屋内に入り、エントランスで周囲を見回していたほむらは、
不意に背後から声を掛けられる。
しかし、これはほむらのシミュレーションの一つでもあった。
ほむらが、振り返り様に大振りの軍用ナイフを振り抜く。

「!?」

しかし、次の瞬間、ほむらの表情を占めていたのは狼狽そのものだった。

「それが、時間停止の絡繰りですか」

桜咲刹那が左手に握る「白き翼の剣」の切っ先は、
ほむらが左腕に装着した盾に突き立てられていた。
その盾で動き出した絡繰りが、
歯車に剣の切っ先を噛んで強制停止する。

歯車から刃が抜ける、が、ほむらはとっさに地面を転がる。
この様子では、刹那が発動を逃す事は絶対に無いだろう。

ほむらが腿に装着しておいたスローイングナイフを放った。
その瞬間、刹那がほむらの視界から消え、
ほむらはバッと振り返る。

(間に合わ………)

そもそも銃弾が効く相手なのかどうかはとにかく、
ぐわっと目の前に迫っていた刹那にM9拳銃を向けながら、
ほむらの頭はどの程度のダメージを許容すべきか、
と言う損切りを考えていた。
36 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/04/10(月) 03:52:52.98 ID:GfExdfTJ0

その、刹那がぐいっと後退し、
飛んで来た一本の棒が二人の間を槍の様に突き抜ける。

「アベアット」

次の瞬間、「白き翼の剣」はカードに戻り、
振り返った刹那が
自分に打ち下ろされた一撃を鞘のままの夕凪で受け太刀する。
タンタンターンッとエントランス中央階段に足音が弾け、
踊り場でガン、ギン、ガンッ、と打撃が衝突する。

(銃剣術、我流ですね)

相手の流儀を冷静に把握しながら、
刹那が居合抜きを一閃する。

本来、野太刀である夕凪は居合には決定的に不向き、
と言うより物理法則そのものに抵触するものであるが、
その辺りは神鳴流剣士だから、と言う事になる。

刹那が回避している巴マミの攻撃は、
無から有、空中に次々とマスケット銃を発生させて
その神出鬼没な武器でぶん殴って来ると言うトリッキーさもあるが、
その殴り合いの技量自体、決して侮れるものではなかった。

刹那は再び跳躍して階段を下り、
その後をマミが放つ銃弾が追跡する。

(敷地も含めてそこそこ広い、
騒音も含めて多少の銃声も目立たない、か)

ババンッ、と、先回りする様にエントランスの床に銃弾が弾け、
ちょっと遅れて刹那が着地する。
普通であれば、上から狙い撃ちされる方が不利。
但し、刹那は神鳴流剣士。
但し、
37 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/04/10(月) 04:00:35.68 ID:GfExdfTJ0

「神鳴流奥義・百烈桜華斬っ!」

夕凪の一閃と共に、
床からぶわっと噴き出したリボンが散り散りに刻まれた。

「アデアット………?」

そして、刹那は振り返り様に仮契約カードから匕首を呼び出し、
ほんの一瞬、心の中で小首を傾げる。
そして、目の前に現れた巴マミの姿に向けて、
その胸の真ん中に手裏剣として匕首を打ち込む。

「斬鉄閃っ!!」

次の瞬間、前方からぶわっと迫っていたリボンの群れが
刹那の斬撃が巻き起こす「気」によって細切れに粉砕される。
エントランスから見下ろしていた巴マミが、
手にしたリボンを放り出して地面を蹴る。
そのリボンの先では、
絡め取られた二体のちびせつながもがいていた。

「神鳴流秘剣・百花繚乱っ!!」

渦巻く強風、衝撃波に、ほむらは思わず腕で目を抑えていた。

「続ける?」

恐らく頸動脈のすぐ上に夕凪の刃を向けられ、
つーっと汗を浮かべながら荒い息と共にマミが尋ねた。

「魔力の塊の零距離銃撃は、厳しいかも知れませんね」

胸の真ん中にマスケットの銃口を押し付けられ、
つーっと汗を浮かべながら荒い息と共に刹那が答える。
38 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/04/10(月) 04:04:00.73 ID:GfExdfTJ0

ーーーーーーーー

「一体、どういう事なのかしら?」

双方武器を引きながらマミが尋ねた。

「仮にも見滝原の魔法少女と事を構えると言うのなら、
昨日の協力の話どころか、私と戦う羽目になるわよ」
「私も、そのつもりは全くないのですが」
「じゃあ、私の体に残る記憶はなんなのかしらね?」

しれっと言う刹那に思わずほむらが口を挟む。

「昨日から背後から拳銃を向けられたり
つけ回されてナイフで斬り付けられたり
と言った事が続いていましたので、少々手荒な対処をしましたが」
「暁美さん?」
「否定する程間違ってはいないわ」

マミにじとっとした視線を向けられ、
ほむらはファサァと黒髪を払って答える。

「その点は、お互い裏で動いている者同士。
あなた方にとって得体の知れない私が
こちらをうろついている訳ですので、
私がそちらの立場でも分からないではありません」
39 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/04/10(月) 04:06:58.73 ID:BTwGveORO
書き方でと禁の糞クロスやってるやつだとわかった
糞スレ量産すんな
40 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/04/10(月) 04:07:32.55 ID:GfExdfTJ0

「じゃあ、こちらが余計な事をしなければ
あなたもこちらの邪魔はしない、
これは再確認させてもらっていいのね?」

「はい」

「改めて言うわ、この人は桜咲刹那さん、
普段は魔女ではない魔物を退治する退魔師。

魔法少女とは違う、
キュゥべえの契約ではない魔法使いと言うカテゴリーに入る人で、
今は、こちらでの魔女発生に就いて調査をしているそうよ。

魔法使いだからグリーフシードも必要ない。
私はこの人に協力する事に決めた。
その意味は、分かるわね暁美さん」

じっ、と、マミとほむらが目と目で押し合う。

「マミさぁーんっ!!!」

その時、表から素っ頓狂な叫びが聞こえた。

「美樹さんっ!?」
「どういう事よっ!?」

意外な展開に、ほむらも又叫び声を上げる。

「元々、鹿目さんと美樹さんを連れて
魔法少女体験コースの最中だったのよっ」
(又、っ)ギリッ
41 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/04/10(月) 04:11:02.24 ID:GfExdfTJ0

ーーーーーーーー

三人が表に飛び出すと、
美樹さやかが斜め上に指さしてわわわわと声を上げていた。

「おおおおっ!!!」

刹那が夕凪を居合抜きし、
周辺の地上にいる一同が刹那を除き腕で目を抑える。
果たして、刹那の斬撃と共に巻き上がった強風が
屋上から落下して来たOL風の女性をとらえ、空中に巻き上げる。

「やった、っ」

鹿目まどかに縋りつかれながらさやかが声に出した。

「!?」

次の瞬間、自然の強風が空中のOLの軌道を大きく狂わせた。

「くっ!」

刹那が両腕を×字に組み、指をバキッと内側に折る。
そんな刹那を、マミが風の様に追い越した。
マミが放った大量のリボンが面積をとって
OLを下からとらえ、地面に軟着陸させる。

「巴さん、彼女を頼みます」
「分かったっ!」

刹那が建物の外周を回り始め、ほむらがその後を追う。

「気づいてる?」

ほむらが尋ねた。

「ええ。確かに、波長が普通の魔物とは少し違いますが」
(と、すると、他所の魔女が移動して来たのか)

二人が非常口の螺旋階段にたどり着く。
刹那が刀印を組み印を切って符を放つ。
そして、空間の歪みに飛び込んだ。
42 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/04/10(月) 04:14:36.87 ID:GfExdfTJ0

ーーーーーーーー

結界の中は、抜ける様な青空だった。
青空のど真ん中に、大量の洗濯紐が縦横無尽に張られている。
本当はもう少し太い紐なのだが、
その紐が大量のセーラー服の袖から袖に貫通している図は
洗濯紐にしか見えない。

(こいつが来たの)
「秘剣・斬空閃っ!」

その、空中を走る紐の一つを踏みしめて暗い笑みを浮かべるほむらの側、
別の紐の上で刹那は早速に夕凪を一閃。
空から降って来た一見して教室用の机が刹那を避けて四散する。
広々とした屋外空間に騒音が響き、
結界でなければ通報殺到だろう、と刹那は思う。
かくして、機関銃の掃射を受けた使い魔が一掃される。

(天狗之隠蓑の類か)

ほむらが掃射したM249を目にして、刹那が見当を付ける。
一旦銃撃が止まったタイミングで刹那が動き出す。
降り注ぐ使い魔もざざざっと斬り伏せ、そのまま大きく跳躍する。

「(こいつが本体、魔女)斬岩剣っ!」

空中で遭遇した「委員長の魔女」、
黒いセーラー服から計六本の腕、四本の袖にスカートから二本、
を突き出した巨大で奇怪な怪物に刹那が一撃を加え、
近くの紐に着地するが致命傷とまではいかない。

「斬鉄閃っ!!」

委員長の魔女がスカートからばばはばっと吐き出した使い魔は
刹那が夕凪の斬撃から放った「気」に飲み込まれて一掃される。
43 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/04/10(月) 04:17:50.61 ID:GfExdfTJ0

(この程度なら、多少時間をかければ)

そうしながら、刹那は目算していた。
多少面倒だが経験から言って無理な相手ではない。
取り敢えず、自分が直接「飛ぶ」までの事はないと。


その時、刹那はこれまで空中に張られていた洗濯紐とは
別のものが空中をよぎるのを見た。

洗濯紐を捉えて張られたのは、細長い黄色い絨毯だった。
はっきり言って穴だらけだが、元がリボンと考えると上等。
それに、どうも見た目は穴だらけでも簡単に踏み抜けない絨毯らしい。

「桜咲さんっ!」

絨毯の出所からマミが叫ぶ。
刹那がその絨毯に飛び乗り、
そのまま委員長の魔女の真下へと走る。

「………」

刹那の足が、「空を蹴った」。

「神鳴流奥義・百烈桜華斬っ!!」

委員長の魔女を飛び越した刹那が、落下しながら放った一撃。
44 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/04/10(月) 04:21:16.14 ID:GfExdfTJ0

「え?」

委員長の魔女は、弾き飛ばされる様にある方向に斜めに落下していた。

(くっ!)
「暁美さんっ!?」

マミが新たなリボンを撒き始めた頃には、
適当な紐の上に移動して時間停止を解除したほむらが
魔女のスカートの中めがけてRPG−7の引き金を引いていた。

ーーーーーーーー

「拾ったから使わせてもらったけど、受け取るわよね」

結界の解けた非常階段周辺で、
マミがほむらにグリーフシードを手渡す。

「ええ………有難う」
「どういたしまして」

二人が、些かぎこちなく言葉を交わすのを刹那は眺めている。
儀礼的と言えば儀礼的、
三人が戦闘に関わりグリーフシードが絡む以上、
「受け取らない」事を含めて筋を通さない事の許されない状況。

刹那は、少なくとも突っ張っているほむらの方が何処か気後れしている。
そんなほむらの一端を察していた。
45 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/04/10(月) 04:24:44.59 ID:GfExdfTJ0

「巴マミ………巴さん」

じゃりっ、と、地を踏みしめてほむらが言葉を発した。

「何かしら?」
「今、協力した事にはお礼を言わせてもらう。
だけど、あの娘達を連れ回すのは反対よ。
私達の危険に付き合わせるべきではない、
それだけは言って、おきます」

「そう、あなたの考えは分かった」

ほむらの言葉にマミも真面目に応じ、
ほむらは一礼すると踵を返して裏側から敷地を離れた。

ーーーーーーーー

「ここは?」

廃ビルの入口側、待機していたさやかと交代で
マミの介抱を受けていたOLが意識を取り戻した。

「や、やだっ、私、どうしてあんなこと、っ!?」
「大丈夫、もう大丈夫です」

少しの間朦朧としていたが、その後でパニックを引き起こしたOLを
マミは優しく抱き締めていた。

「大丈夫、悪い夢を見ただけです」
「一件落着、って感じかな」

泣き崩れるOLを宥め、落ち着かせるマミ、
それを見てさやかが言う。
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