卯月「拝啓、忌まわしき過去に告ぐ絶縁の詩」【偶像喰種・外伝完結編】

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1 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/08/19(土) 21:34:52.78 ID:YaYYfmrb0


ごめんなさい。


止めに来てくれて…ありがとうございます。




でも……





なにも出来ないのは、もう嫌なの






SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1503146092
2 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/08/19(土) 21:37:50.57 ID:YaYYfmrb0

偶像喰種346サイドの完結編です。
たぶん、このスレで話が終わると思います。

グロテスク描写は省いていく予定ですが、
それでもアイドルの死亡シーン等ショッキングな展開がありますのでご注意ください。

前作
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1484053883/
3 : ◆AyvLkOoV8s [sage]:2017/08/20(日) 00:55:34.32 ID:0nnYzKIl0
追伸。
スレ立て予定より1週間くらい遅れてごめんね
4 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/20(日) 03:01:13.45 ID:mDkDHtVEO
待ってたぞ
5 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/08/20(日) 22:54:49.84 ID:0nnYzKIl0

――――――――――――――――――――


凛(――普通に勉強して)

凛(――普通に就職して)

凛(――普通に人間ごっこをして)


凛(――借り物の戸籍でどこまで行けるか分かんないけど)

凛(――何も難しい事はない。普通に生きればいいんだから)

凛(――いつか、殺されるまで)


凛(――半年前までの私なら、そう思っていた)


凛(――そして今は)

凛(――全力で歌って)

凛(――全力で踊って)

凛(――全力で輝いて見せるって)


凛(――そう決めて、全力でアイドルをやってる)



凛(――いつか、殺されるまで)



凛(――踏み壊されるその瞬間まで、精一杯輝き続ける光のように)

凛(――私は、舞台の上に立っていたいと思っていた)



凛(――でも、蘭子はそれを)


凛(――『呪い』だと言った)


――――――――――――――――――――
6 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/08/20(日) 22:55:36.03 ID:0nnYzKIl0

――――――――――――――――――――


武内P『――この度、企画した「笑顔の橋」の主な形式として……』

P『基本的には、参加する人間と皆さんを含む"喰種"の混合ユニットを作成します』

P『そして同じ舞台で同じ曲を共に歌ってもらうこと、またそれまでのレッスン等を通して両者の親交を深め』

P『それによって完成した共存の形をファンの"喰種"の皆さんに見てもらうことで』

P『人間と"喰種"の相互理解の形を知ってもらうことが目的となっています』

P『これらの企画は、神崎さんの意志から始まりました』

P『……神崎さん。皆さんにも、貴女の主張を伝えてください』


蘭子『うむ。感謝するわ、我が友』



蘭子『――この「儀式」は、我が僕たちを、同胞たちを「呪い」から解放せんとするものよ』

蘭子『我が右方の翼はいずれ射られ堕ち往く運命』

蘭子『そして左方の翼のみがエデンの飛翔を許される』

蘭子『我が右の同胞たちは、いずれ訪れる十二時の鐘を疑わず踊り続ける……』


蘭子『――否!!』
7 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/08/20(日) 22:56:15.01 ID:0nnYzKIl0


蘭子『我らが翼は、地に堕つる門へとつながってはいない!!』

蘭子『ヒトに射られる為に私達は飛んでるんじゃない!』

蘭子『"喰種"だから、いつかは殺されて死ぬだなんて、そんなの……』


蘭子『そんなの、当たり前みたいに受け入れないでっ!』



蘭子『私、わかるもん! こっちから話しかけたら、分かってくれる人はたくさんいるもん!』

蘭子『飛鳥ちゃんだって、美穂ちゃんだって、芳乃ちゃんだって……』

蘭子『私達が"喰種"だからって、ちゃんと変わらずに受け入れてくれるって分かるもん……!』


蘭子『だから、皆ももっと人間のみんなを見てよ……!』

蘭子『このライブで、プロデューサーが作ってくれた舞台で……!』

蘭子『一緒に踊って、ファンのみんなを笑顔にするステージを作って……』

蘭子『そしたら、わかるはずだもん……!!』


蘭子『人間も"喰種"も、何にも変わらないって……!!』

蘭子『菜々さんは殺されて当たり前なんかじゃないんだって……!!』


――――――――――――――――――――


凛(――終わりの方には、涙でぐしゃぐしゃになっていた蘭子の訴えで)

凛(――私達はまた、揺らぎ始めた)

凛(――ずっとずっと、当たり前、これだけは仕方ないって思っていたことが)

凛(――あんなに必死になって否定されたのだから)
8 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/08/20(日) 22:57:12.46 ID:0nnYzKIl0

凛(――そして、蘭子が間違ってないって証明したくて)

凛(――あの後すぐに動いた子がいた)



『――うん』

『そうだよね、らんらん』

『私も、そう思う。受け入れてくれる人は、ちゃんといるよ』



凛(――そう言った翌日に―――――)


『…美嘉姉の話を聞いてさ。ずっと、納得できなくて』

『どうしようか迷ってたんだけど、らんらんの話を聞いてやっと踏ん切りがついたんだ』

『ほら、皆』


『受け入れてくれる人は、ちゃんといたよ』



未央『ね、茜ちん!』



凛(――未央が)

凛(――あっさりと、垣根の一つを飛び越えてしまった)
9 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/08/20(日) 22:58:43.23 ID:0nnYzKIl0

凛(――流石に、蘭子の訴えから自分の正体をバラしちゃう子が出たのは予想外だったのか)

凛(――未央のあまりの行動力に、プロデューサーがすごく慌てていたのを覚えてる)

凛(――あれだけ狼狽えてたのは……プロデューサーには悪いけど、ちょっと面白かった)


P『こっ……今回は、日野さんが本当に"喰種"を受け入れられる方であり問題は発生しませんでしたが』

P『やはり、隣にいる仲間が"喰種"だった時のショックは…人によって簡単に計り知れるものではないと思います』

P『ですので、これからは皆さんの安全を確実に守るため、これ以上の人間の皆さんへの秘密の暴露を禁止します』


P『……………………せめて』


P『……せめて舞台に立つまでに、隣に立って歌う方に十分触れて、その方を理解するまで』

P『待ってはいただけませんか……』


凛(――プロデューサーの必死な訴えが効いたのか、それとも)


杏『杏も今は正体バラすのやめといた方がいいと思う』

杏『人間よりの生活してた未央ちゃんだから判別出来たことだし』

杏『今、杏たちが同じことやって即通報ルートって危険性はゼロじゃないしね』

杏『少なくとも今はやめとこ。うん』

杏『いや、未央ちゃんはバラしていいって話じゃないからね』

杏『未央ちゃんもこれ以上はやめてね?』


凛(――めずらしく慌ててた杏の制止が効いたのか)

凛(――それ以上、人間に直接正体を明かす子は出なかった)


凛(――私も……まだ、未央みたいに一線を飛び越える度胸はなくて)

凛(――奈緒にも加蓮にも、私が"喰種"だってことは言えてない)
10 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/08/20(日) 22:59:49.74 ID:0nnYzKIl0

凛(――でも)

凛(――蘭子が泣きながら主張して、未央が裏付けを取ってしまった二日間で)

凛(――菜々さんが死んでから、ずっと引っかかってた胸のつっかえが)

凛(――いつのまにか、無くなっていた)


凛(――「もしかしたら、受け入れてくれるかもしれない」)

凛(――「目の前にいる二人は、分かってくれるかもしれない」)


凛(――そんな願望が、少しでも現実に近づいたからなのかな)



凛(――「笑顔の橋」の告知から、みんなは人間の誰と組もうかって)

凛(――すごく、楽しそうに話してる)

凛(――それはシンデレラプロジェクトだけじゃなくて、ほかの皆も)


凛(――ああ)

凛(――きっと皆、現実を受け入れようとしていただけで)

凛(――本当は、この世界に変わって欲しかったんだ)


凛(――そういう、私だって)
11 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/08/20(日) 23:01:05.66 ID:0nnYzKIl0

凛(――卯月は、美穂と一緒に歌いたいって嬉しそうに笑ってる)

凛(――未央はもちろん、茜と藍子と)

凛(――私も、奈緒と加蓮と歌いたい)


凛(――同じステージに立って、全てを打ち明けられる関係になりたい)


凛(――誘おう)

凛(――会ったらすぐに、いつものマックで)

凛(――あの鼻を刺す揚げ物の匂いも、今は待ちきれない)


凛(――はやく、2人に会いたい)





――――――――――――――――――――





凛(――その日は結局)


凛(――奈緒も加蓮も、いつまで待ってもマックに来なかった)


凛(――次の日になっても会えなくて、連絡も取れなかった)



凛(――そして茜も姿を消した)


――――――――――――――――――――
12 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/08/20(日) 23:02:15.21 ID:0nnYzKIl0

今日はここまで。

前スレでは地の分モノローグ形式で進めていきましたが
段々辛くなっていったので元のセリフ形式に戻しました。
13 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/08/29(火) 03:22:00.29 ID:5TIwooOI0
乙です
これで完結なら結構長くなりそうですね
続きを楽しみに待ってます
14 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/08/30(水) 23:31:51.56 ID:a7a4yjAC0

〜「笑顔の橋」企画発表と同日、橘美樹と市原ギンによる忠告の翌日 346プロダクション〜


セクギルP「……休暇、ですか?」

早苗「そ! 菜々ちゃんが死んじゃって、皆も落ち込んでるから」

早苗「あたしに近い人だけでも、郊外連れ回して元気になってもらえたらなって思ったの」

早苗「だから、今日の予定だけでいいからキャンセルして欲しいのよ。突然のことでビックリさせちゃってるのはごめんだけど」


P「……」

P「……まあ、早苗さんのワガママは今に始まった事じゃないですし」


P「仕事はこっちで何とかしますから、『ちゃんと』皆を元気づけてやってくださいね」

早苗「む! ちゃんとって、あたしはいっつもちゃんとしてるわよー!」

P「どうだか」


――――――――――――――――――――
15 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/08/30(水) 23:32:20.21 ID:a7a4yjAC0

――――――――――――――――――――


早苗「――よっし! 全員乗ったわね!」



早苗(――あたし、雫ちゃん、ありすちゃん、仁奈ちゃん)

早苗(――拓海ちゃん、有香ちゃん、桃華ちゃん、友紀ちゃん、心ちゃん)

早苗(――あたしが『人間』って断定できる子は、とりあえず全員車に乗せられた)


早苗(――皆にはひとまず、プロデューサー君に話したまま『日帰り旅行』って言ってる)

早苗(――あたしの嘘に気付いてるのは、たぶん心ちゃんだけ)

早苗(――本当は、CCGの本局に真っすぐ向かう)



早苗(――あ…駄目)

早苗(――残してきた子達のことがずっと頭をぐるぐる回ってる)

早苗(――もっと連れてこれる子もいたんじゃないかって)

早苗(――里奈ちゃんや夕美ちゃん、美優ちゃんのことじゃない)

早苗(――あの子たちは"喰種"だってほぼ確信してる)

早苗(――CCG本局にはRc判別ゲートがあるし、連れてきた子は検査を受けなくちゃいけない)

早苗(――連れてきたら、あの子たちは確実に死ぬ)


早苗(――あたしが悩んでるのは、有香ちゃんや友紀ちゃんのユニット仲間のこと)

早苗(――ゆかりちゃん、法子ちゃん、幸子ちゃん、紗枝ちゃん)

早苗(――なんでもっとあの子たちと関わらなかったんだろって、すごく後悔してる)

早苗(――もしあの子たちが人間だったら、危険な場所に置いてきたってことになるんだから)

早苗(――でも、もしあの子たちが"喰種"で、こっちに連れてきてたとしたら……)

早苗(――菜々ちゃんみたいな終わり方を目の前で見せられるなんて、有香ちゃんや友紀ちゃんには惨すぎる)


早苗(――だから、あの子たちに何も起きないことを願って)

早苗(――あたしは、ゆかりちゃん達を車に乗せなかった)


――――――――――――――――――――
16 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/08/30(水) 23:32:59.49 ID:a7a4yjAC0

――――――――――――――――――――



早苗(――この時の判断を、あたしは死ぬほど後悔することになる)

早苗(――理由はふたつ)

早苗(――ひとつは、あたしがゆかりちゃんと法子ちゃんを車に乗せなかったせいで……)

早苗(――有香ちゃんの人生を壊してしまったこと)


早苗(――そして幸子ちゃんを連れてこなかったせいで)



早苗(――346プロダクションを壊してしまったこと)



――――――――――――――――――――
17 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/08/30(水) 23:33:38.26 ID:a7a4yjAC0

〜「笑顔の橋」企画発表の翌々日、未央から茜へのカミングアウト翌日―――





―――茜および奈緒・加蓮失踪の翌日 CCG本局〜





橘「片桐さん」

橘「輿水幸子さんの身柄を、無事保護しました」

橘「喰種に襲われていたところを捜査中のギンが発見し、検査の結果『人間』と確定したため」

橘「彼女も皆さんと同じく、十分な説明のもと施設への入居を同意していただきました」


橘「そして、輿水さんの証言により」





橘「キャッスルの正体が判明しました」





――――――――――――――――――――
18 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/08/30(水) 23:35:08.34 ID:a7a4yjAC0

――――――――――――――――――――



凛「……茜も?」

未央「……うん。…その、しぶりんがいつも話してる奈緒ちゃんと、加蓮ちゃんも?」

凛「うん。連絡が取れない」

未央「……それって」

凛「……3人とも、攫われた」


未央「もしかして、私が正体を話したから……?」

凛「そうかもしれない。…誰が何のために攫ったのかは分かんないけど」

凛「346プロに"喰種"がいるってことを人間に知られたくない人がいたのかもね」


未央「……! ど、どうしようしぶりん!」

未央「私のせいで、茜ちんが……奈緒ちゃんと加蓮ちゃんまで……!」


凛「落ち着いて未央。未央は何も間違ったことなんかしてない」

凛「茜に話しただけなのに、奈緒と加蓮まで攫う意味も分かんない」


凛「悪いのは未央じゃない」
19 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/08/30(水) 23:35:37.28 ID:a7a4yjAC0

未央「……しぶりん?」

凛「未央。悪いけど、付いて来てくれる?」

凛「卯月は巻き込めない」


未央「……? いいよ。いいけど……」

未央「ついて行くって、どこに?」

凛「茜と奈緒と加蓮のところ。……あの子達を攫った奴らのところ」

未央「…???」

未央「場所……分かるの?」

凛「探せるよ」





凛「私の嗅覚で、奈緒と加蓮の匂いを追う」



凛「3人を取り戻すよ、未央」
20 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/08/30(水) 23:39:02.52 ID:a7a4yjAC0

今日はここまで。
未央がかみやんかれん呼びじゃないのは、ここまで未央が奈緒加蓮と出会ってなかったので
会う前から渾名呼びしても不自然かなーと思ったからです。
21 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/08/30(水) 23:44:58.60 ID:a7a4yjAC0

http://imgur.com/a/u1xjl

つらい

一応蘭子・森久保担当Pです
22 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/30(水) 23:54:43.11 ID:Xqt6GGNw0
フリスクが半分だけグールなのほんときつい
残された柚と穂乃香トラウマ不可避やで
23 : ◆AyvLkOoV8s [sage]:2017/08/31(木) 00:42:34.11 ID:DZlpiiFh0
>>22
出身地も学校も何もかも違う四人が集って仲良くなるという
「出会いの奇跡」がフリスクの魅力だと思っているので、
この四人は人間・喰種混合ユニットじゃなきゃダメだなと思って設定を作りました

3人とも喰種のNWや
喰種Pとの関係を考えて四人とも人間にしたGBNSとかと差別化して設定つくるのすごく楽しかったです

色々ドラマが生まれてきますねえ
24 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/31(木) 00:51:03.75 ID:N4Hu/p9gO
おつ
ふと思ったんだが飛鳥って今までのやつで出てたっけ
25 : ◆AyvLkOoV8s [sage]:2017/08/31(木) 10:36:01.33 ID:DZlpiiFh0
>>24
外伝後編からの出番ですね。はじめにちょろっと出しました

蘭子が喰種とは知らずに仲良くしてます
26 : ◆AyvLkOoV8s [sage]:2017/08/31(木) 13:24:17.91 ID:DZlpiiFh0

〜凛、未央による捜索開始と同時刻〜


美穂「『笑顔の橋』?」

卯月「うん! プロデューサーさんが企画してくれたライブなんだけどね」

卯月「その宣伝のために、音楽番組で歌わせてくれることになったの!」


美穂「へー! いいなあ、楽しそう!」

卯月「えへへ……それでね。美穂ちゃんにも出て欲しいの!」

美穂「え? …私も!?」

卯月「うん!」


卯月「プロデューサーはね、宣伝のために私、李衣菜ちゃん、蘭子ちゃんを代表として出してくれたんだけどね」

卯月「その時に……」



武内P『「笑顔の橋」は、表向きは人と人をつなぐメッセージを人に届けるライブをコンセプトとしていますが』

P『本当の目的は「人と喰種」を繋ぐメッセージを喰種に届けるライブです』

P『ですので、今回の宣伝には人間アイドルの皆さんと仲の良い島村さん、多田さん、神崎さんに』

P『その人間アイドルの方と共に出演していただくことで、視聴した喰種に皆さんが構築した「信頼の形」を見ていただきます』



卯月(……えっと、"喰種"の話は喋っちゃダメだから……)


卯月「大切な友達と出演することが大事だって言われたんです!」


美穂「! 卯月ちゃん……!」
27 : ◆AyvLkOoV8s [sage]:2017/08/31(木) 13:24:45.24 ID:DZlpiiFh0

卯月「だからね、その宣伝は1週間後で、すごく大変なレッスンに美穂ちゃんを突き合せちゃうんだけど……」

美穂「いいよ! やろうよ!」

卯月「!!」

美穂「私、卯月ちゃんに誘ってもらってすごく嬉しいんです!」

美穂「卯月ちゃんに『大切な友達』とまで言ってもらえるなんて……!」

美穂「えへへ。宣伝だけど、やっと卯月ちゃんと一緒のステージに立てるんだなって思ったら……」

卯月「美穂ちゃん……!」


卯月「うんっ! よろしくお願いします!」

美穂「こちらこそよろしく、卯月ちゃん!」


――――――――――――――――――――


卯月(――よかったあ。ほんとに急なお仕事になっちゃったから、受けてもらえるか不安だったけど……)

卯月(――美穂ちゃんが『一緒にお仕事ができて嬉しい』まで言ってくれるなんて)


卯月「……」


卯月(――『喰種が殺されて死ぬのが当たり前なわけがない』)

卯月(――私は、そんなこと思ってたつもりじゃなかったんだけどなあ……)

卯月(――自分で、気付いてなかったのかな)


卯月(――私も、"喰種"だからアイドルになれないって言われて、だけど必死で頑張って)

卯月(――プロデューサーさんに拾ってもらえて、それでアイドルになれて……)

卯月(――結局、アイドルになったその先も)

卯月(――いつ殺されて死ぬか分からない、そんな厳しい世界だったけど……)


卯月(――もし、そうしなくても済む道があるなら)

卯月(――私はそのために、皆のために何かしたい)


卯月(――私なんかに何が出来るかなんて分かんないけど、出来ることがあるなら)

卯月(――島村卯月、全力で頑張ります!!)
28 : ◆AyvLkOoV8s [sage]:2017/08/31(木) 13:25:39.74 ID:DZlpiiFh0





卯月(――それにしても)

卯月(――なんで未央ちゃんは宣伝メンバーに選ばれなかったんだろ?)

卯月(――茜ちゃんに正体まで話して、一番うまくいってると思うのになぁ……)


卯月(――プロデューサーさんに、何か考えがあるんでしょうか?)


――――――――――――――――――――
29 : ◆AyvLkOoV8s [sage]:2017/08/31(木) 13:31:34.01 ID:DZlpiiFh0

――――――――――――――――――――


未央(――"喰種"は元々)

未央(――人間と比べて、視力や聴覚、嗅覚がずっと強い)

未央(――私が人間と"喰種"を見分けられるのも)

未央(――人間には分からないくらい僅かな"喰種"の匂いをかぎ取れるから)


未央(――ただ、才能の違いなのかな)

未央(――"喰種"の中には、他の喰種よりずっと強い感覚を持ってる子もいるみたい)

未央(――例えば杏ちゃんは目も耳も鼻も、他の皆よりずっと良い)

未央(――私達には聞こえないほど遠くにいた、きらりんの足音を聞きとって咄嗟に隠れたくらい)

未央(――ほかにも、りーなは耳がすごくいい)

未央(――何百メートルも離れたみくにゃんの悪口を、きっちり聞き取り怒って走って行ったくらい)


未央(――そしてしぶりんは、すごく鼻がきく)

未央(――一度嗅いだ人の匂いは、絶対に忘れなくて)

未央(――らんらんが半喰種だって気付いてた数少ない子だったし)

未央(――合宿の水鉄砲合戦では隠れても無駄無駄だったし)

未央(――私やしまむーが迷子になった時は、何度も正しい場所に連れ戻してくれた)
30 : ◆AyvLkOoV8s [sage]:2017/08/31(木) 13:34:18.26 ID:DZlpiiFh0

未央(――だから、しぶりんの鼻に間違いはなくて)

未央(――今回もしぶりんに任せれば、茜ちんも、奈緒ちゃんや加蓮ちゃんも、すぐに取り戻せるって思った)

未央(――私は甘かった)


未央(――今回だけは、しぶりんが間違っていて欲しかった)





未央「……あのさ、しぶりん。これ、冗談なんだよね?」

凛「…こんなことで冗談は言わないよ」

未央「じゃ、じゃあ、今日は体調が悪かったとか……」

凛「……熱を出した時も、匂いを間違えたことなんてない」

未央「……本当に、ここから3人の匂いがするの?」


凛「…………うん」





凛「346プロダクションの地下入口」



凛「……信じられないけど、3人は346プロの地下にいる」
31 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/08/31(木) 13:36:22.24 ID:DZlpiiFh0

一旦ここまで。

取り返しのつかない道を歩いてるこの感じ超楽しい
たまんねえ
32 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/08/31(木) 21:59:14.11 ID:DZlpiiFh0

フリスクグール
NW喰種
クインクスGBNS

妄想でもいいのでください
33 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/01(金) 00:54:41.12 ID:5j0s4SgA0
野暮かもしれないけどこれひょっとして内部崩壊するのか?前述されてた怪物って所属アイドルの誰かなんじゃ…
34 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/01(金) 12:01:02.91 ID:GXSjOIe50

凛「……」

未央「しぶりん……」



未央(――前に、プロデューサーやちひろさんから話を聞いたことがある)

未央(――喰種組織『キャッスル』)

未央(――大きさもアジトの場所も、何も分からない組織)

未央(――分かっているのは、あちこちのプロダクションから可愛い人間アイドルを誘拐してるってことだけ)

未央(――その被害者には346プロも入ってて)

未央(――人間でも大事なアイドルを攫って行く『キャッスル』は絶対に許せないって)

未央(――ちひろさんが怒っていたのを、よく覚えてる)


未央(――茜ちん、奈緒ちゃんや加蓮ちゃんを攫ったのも『キャッスル』の仕業じゃないかって)

未央(――私は思ってた)


未央(――正直、わけの分かんない組織に立ち向かうことはすごく怖かったけど)

未央(――それでも、しぶりんのおかげで、場所が分かりさえすれば)

未央(――戦いを避けて、ささっと友達3人を連れ戻すくらいなら)

未央(――私は怖くない)

未央(――臆病な私でも、それくらいは勇気を振り絞ってやるって)

未央(――私らしくもなく、息巻いてたんだ)


未央(――それが)


未央(――こんなところにたどり着くなんて)
35 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/01(金) 12:01:33.71 ID:GXSjOIe50

未央(――346プロダクション)

未央(――お姫様になりたい女の子の夢を叶える場所)

未央(――たとえ、"喰種"であっても)


未央(――しまむーは、ただ純粋にアイドルになりたくて)

未央(――私は、"喰種"の私でも出来ることがあるって知りたくて)


未央(――しぶりんは―――――)


凛「……」


未央(――"喰種"だからって諦めてた、一生懸命になれることを探したくて)

未央(――この346プロに来たんだっけ)


未央(――それなのに)

未央(――ここは……)



未央(――346プロに、何があるっていうの?)



凛「……未央」



凛「行こう」


36 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/01(金) 12:02:04.13 ID:GXSjOIe50

未央「ッ……!!」

未央「行こう、って……」

未央「待ってよしぶりん!」

凛「…未央も付いて来て。歩きながら話すから」


凛「この入口、たしかただの通路だったはず」

凛「ただ、長い道が続いて……そのまま進めば、普通に346プロの内部に出る」

凛「……多分、あれだと思う。未央も見たことあるでしょ?」


凛「赫子の壁」


未央「!!」


凛「莉嘉たちが使ってた、勉強部屋のそれとは全然違う」

凛「私でも、匂いで気付けないくらい精巧なカムフラージュがされてる」

凛「奈緒と加蓮の匂いを辿らなきゃ、私もここが分からなかっただろうね」


凛「……ここだ。ここで2人の匂いが途切れてる」

未央「……ここが……」


未央(――しぶりんが言った、匂いの途切れた場所は……)

未央(――ただの、レンガでできた壁にしか見えなかった)

未央(――触っても匂いを嗅いでも、周りの壁と何も変わらないように感じた)

未央(――これが赫子でできた壁だなんて、証明する方法なんてない)


未央(――この1個以外には)


凛「……下がってて、未央」ビキ


未央(――しぶりんの首筋から、鋭くて赤い羽がいくつも飛び出して、壁に刺さった)

未央(――そしたら、壁はウネウネと動いて……)

未央(――信じたくは無かったけど……)


未央(――さらに下に続く道が、現れた)
37 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/01(金) 12:07:53.37 ID:GXSjOIe50

凛「……嘘でしょ?」

未央「……」


未央(――道が開けた瞬間、しぶりんの表情が変わった)

未央(――それまでは、まだ迷いがあるって感じの顔だったんだけど)

未央(――まるで、想像してた以上にひどい真実を聞かされたような……)


凛「信じたかったけど、もう駄目だよ。未央」

凛「346プロは、こんな道を隠してた」

凛「奈緒と加蓮の匂いも、ずっと強くなった」


凛「もう信じられない。ちひろさんも、今西部長も……」

凛「……プロデューサーも」



凛「3人の匂いがする」

凛「3人とも、ここを通ってる」


未央「!!?」


未央(――プロデューサーまで!?)
38 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/01(金) 12:08:20.74 ID:GXSjOIe50

凛「…ずっと、そんなわけないって思ってた」

凛「ここで、知らない誰かが、勝手に悪い事をしてて」

凛「プロデューサーは、ただ346プロで仕事をしてるだけで、関係ないって」


凛「……なのに」

凛「プロデューサーの匂いが、すごく強いんだよ」

凛「一回だけじゃない。何度もここを通ってる」

凛「他の匂いにも、覚えがあるんだ」

凛「共演した同じ346のアイドルのプロデューサー」

凛「たまに顔を合わせる、役員の人」

凛「一緒にお仕事をしたことがある、346プロや他所の人間アイドル」

凛「……みんな、記事に載ってた人だ」


凛「『キャッスル』に攫われて行方不明になった人たちだ」
39 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/01(金) 12:09:18.60 ID:GXSjOIe50

凛「未央」


凛「どうしよう、気付いちゃった」


凛「…『キャッスル』は――――――――――」





凛「キャッスルの正体は346プロなんだ」



凛「346プロのアイドルが攫われてるのは……」





凛「全部、346プロの自作自演なんだ」





未央「―――――!!」
40 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/01(金) 12:09:47.03 ID:GXSjOIe50







「さすがに予想外でした。匂いだけでそこまで推理できちゃうなんて」






41 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/01(金) 12:10:13.71 ID:GXSjOIe50

凛・未央「「……え?」」


未央(――周りを見渡しても、誰もいなかった)

未央(――なのに、声だけが聞こえた)

未央(――どこから聞こえたのか、誰の声なのか)

未央(――その答えはすぐに分かった)


未央(――長く続く通路の天井)

未央(――私達の頭のすぐ上から)


未央(――ぶよぶよとした赫子が垂れて)


未央(――真っ赤な目をしたちひろさんが、私達を目掛けて飛び降りてきたんだ)



ブスッ


未央(――それが分かった次の瞬間、目に激痛を感じた)

未央(――痛くないもう片方の目を必死に動かすと)

未央(――注射器の針が刺さっているのが見えた)

未央(――ちひろさんが、右手に持った注射器で私を)

未央(――左手でしぶりんの目を、それぞれ突き刺して)


未央(――そしたら、ちひろさんが今度は両手を放して)

未央(――私達2人の顔に手を添えて)



未央(――2つまとめて地面に叩きつけた)



未央(――それが、気絶するまでに見たものの全部だった)


――――――――――――――――――――
42 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/01(金) 12:12:04.69 ID:GXSjOIe50

一旦ここまで。

あと>>17をちょっと修正。
43 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/01(金) 12:13:02.41 ID:GXSjOIe50

〜「笑顔の橋」企画発表の翌々日、未央から茜へのカミングアウト翌日―――





―――茜および奈緒・加蓮失踪の翌日 CCG本局〜





橘「片桐さん」

橘「輿水幸子さんの身柄を、無事保護しました」

橘「喰種に襲われていたところを捜査中のギンが発見し、検査の結果『人間』と確定したため」

橘「彼女も皆さんと同じく、十分な説明のもと施設への入居を同意していただきました」


橘「そして、輿水さんの証言をきっかけに」





橘「キャッスルの正体が判明しました」





――――――――――――――――――――
44 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/01(金) 23:00:10.95 ID:GXSjOIe50
>>33
見返したところ「怪物」って言葉は多分使ってないので美城常務が言っていた「346プロにいる化け物」や
小梅が語っていた「346を壊す化け物」についての話でしょうか?

詳しい事は近いうちに書けると思うのですが、
前者の「化け物」は裏でえげつねえ事してる346プロと知らないうちにその恩恵を受けている346の喰種アイドル全体を人間視点で形容した言葉であり、

後者の「化け物」はその346プロをまるで塵のように潰すほどの力を持って生まれた、
ある者にとってはこれまでの歴史や研鑽、組織維持のための努力に無意味の烙印を押して消し去るような災害、
そしてある者にとっては抗えない呪われた運命をいともたやすく崩してしまう福音や奇跡とも称されるような存在の、一人のアイドルを指しています。

どっちか怪物にして呼び分けた方が分かりやすかったかも知んない


人間視点で形容したとか無意味の烙印とかすげえポエミーで恥ずかしいけど
この言い方結構楽しい
45 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/02(土) 00:51:12.94 ID:nPOdthQdO
どんどん終わりに近付いてる感あって楽しいような寂しいような
そしてちひろ強すぎわろた
46 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/02(土) 09:56:50.38 ID:SEAxogu10

〜CCG本局〜


早苗「『キャッスル』の正体が分かった……!?」

橘「はい。…と言っても、まだ証言と状況証拠から『キャッスルである可能性が最も高い団体』を絞り込めたと言う段階ですが」

早苗「…幸子ちゃんが、キャッスルの正体を知ったの?」

橘「いいえ」


橘「正確に申し上げれば、輿水幸子さんの証言の一部に気になるところがあり」

橘「調査を進めたところ、『キャッスル』と思われる団体の手がかりを得た……と言うべきでしょうか」

早苗「…?」

橘「…すみません。今のことは確定事項ではなく、皆さんの混乱を避けるため捜査対象の名前をぼかしてお話しする必要があったんです」



橘「そして、早苗さんにお伝えしたい事がもう一つ」

橘「輿水さんとは別に、もうひとり『キャッスル』について情報提供をしたいと言う方が現れました」

橘「私はこれから、その情報提供者と面会を行います」


早苗「…それは誰?」

橘「今お話しすることは出来ません」

橘「…ただし、例外として」



橘「片桐さんも面会に立ち会っていただけるのであれば」



橘「捜査対象の名前を含め、今現在『キャッスル』について知りうる全ての情報を片桐さんに開示できます」


――――――――――――――――――――
47 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/02(土) 09:58:12.46 ID:SEAxogu10

――――――――――――――――――――


早苗(――立ち会いを断る理由なんてなかった)

早苗(――美樹ちゃんも、私の返事は最初から分かってたみたいで)

早苗(――あたし達はそのまま、もう1人の証人が待っている応接室に向かった)


早苗(――美樹ちゃんが言ったことを要約すると)

早苗(――その証人は、いわゆる『内部告発者』)

早苗(――"喰種"が運営している組織で働いていた人間だったけど)

早苗(――その組織について、ある情報を知ってしまったことで)

早苗(――告発を決めた……って感じね)


早苗(――美樹ちゃんは、証人に会うまでキャッスルの正体を教えてくれなかった)

早苗(――でも、もうすぐ分かる)

早苗(――この扉の向こうに、関係者がいる)

早苗(――ユッコちゃんを攫った犯人に、もうすぐたどり着ける)


早苗(――さあ)

早苗(――今までの悪事のツケ、全部清算してもら――――――――――)





「…君は、片桐早苗か」

「こうして直接話をするのは初めてだな」

「君を含む我がプロダクションのアイドル数名が、CCGに保護されていると言う情報は本当だったんだな」



早苗(―――――え?)

早苗(――この人が……)

早苗(――『内部告発者』)


早苗(――ってことは)

早苗(――『キャッスル』って)

早苗(――まさか)


早苗(――まさか!!)



「……気付いたようだな」


「真実は君の想像している通りだ」



「初めまして、橘美樹準特等捜査官」

「貴女の御息女は、短くも良い活動をしてくれた」





美城「346プロダクション所属、常務の美城だ」


――――――――――――――――――――
48 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/02(土) 09:58:38.08 ID:SEAxogu10

〜346プロ地下潜入の同日・夜 346プロダクション地下〜


凛「……」

凛(――ここは……?)

凛(――真っ白で小さな個室……何も置いてない)

凛(――私は確か……346プロの隠された地下入口を見つけて)

凛(――ちひろさんに襲われて、目に針を刺されて……)


凛「……!」


凛(――そうだ! 346プロは……!!)


「お目覚めですか?」


凛「ッ……!!」

凛(――この声は……!!)



ちひろ「こんばんは、凛ちゃん」

ちひろ「よく眠れましたか?」
49 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/02(土) 09:59:05.43 ID:SEAxogu10

凛「ッ!」ギリッ

凛「…ふざけた、こと、言わないでよ……!!」ググ

凛「……返して……!」

凛「奈緒と加蓮を……茜を、返せっ!!」


凛「ッ!?」ズルッ


ドシャ


凛(――なにこれ)

凛(――身体が、思うように動かない)

凛(――力が入らない……?)


ちひろ「あまり無理をしない方がいいですよ」

ちひろ「ただでさえRc抑制剤のせいで、しんどい思いをしているのですから」

凛「Rc……?」

ちひろ「凛ちゃんも知ってると思いますが、私達"喰種"の身体能力はRc細胞によって底上げされています」

ちひろ「これは白鳩も使ってる、Rc細胞の活動を抑制するお薬ですよ」


ちひろ「……まったく忌々しい」
50 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/02(土) 09:59:34.68 ID:SEAxogu10

凛「……アンタ……!!」

ちひろ「ん? どうしましたか? 何か聞きたい事でも?」

ちひろ「ああ! 奈緒ちゃんと加蓮ちゃん、あとついでに茜ちゃんの居場所を知りたいんですね?」

ちひろ「それもそうですよね、わざわざこんな所にまで3人を取り戻しに来たんですから!」

ちひろ「それとも未央ちゃんの居場所でしょうか?」

ちひろ「優しいですねえ、凛ちゃんは」

ちひろ「あっちはあの子の自業自得だと言うのに」


凛「!!」

凛「未央をどこにやったの!?」

凛「あんた達は私達に隠れて何をしてるの!?」


ちひろ「まあまあまあ、がっつかなくても全部説明しますよ」


ちひろ「どうせ口止めするんです」


ちひろ「それなら最初から、大切なアイドルの知りたいことを教えてあげる優しさはあるんですよ?」
51 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/02(土) 10:00:03.11 ID:SEAxogu10

凛「…どの口が……!!」

ちひろ「はいはい。…えっと、まずは神谷奈緒ちゃんと北条加蓮ちゃんの行方ですね」


ちひろ「あの2匹は、今回協力していただいたマダムの一人にお礼として差し上げました」

ちひろ「ああ、協力って言うのは菜々ちゃんが死んだときそれ以上346を詮索されないようにするため」

ちひろ「『安部菜々と言う"喰種"は「清廉潔白の346プロ」に潜り込んでいた』と言うストーリーの作成を手伝ってもらったってことです」


ちひろ「協力者の名前は『ビッグリリィ』」

ちひろ「少女同士、あるいは美少年同士の触れ合いを眺めるのが大好きらしくて」

ちひろ「ちょっと変わった方法で日々の癒しを得ている方です」


ちひろ「本人曰く、買った人間の少女2人を同じところに監禁して」

ちひろ「毎日少しずつ少しずつ身体のパーツを切り取って食べながら」

ちひろ「為す術もなく体を失い死にゆく絶望の中、唯一の救いである互いの存在を求めあい」

ちひろ「互いに縋るように身を寄せ合う姿が最高に尊い、だとか」


ちひろ「そうですねえ……今頃あの2匹は」


ちひろ「手足のない身体で互いを慰め合っているんじゃないでしょうか?」


ちひろ「これが『なおかれ』なんですねえ」
52 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/02(土) 10:01:22.31 ID:SEAxogu10

凛「―――――」


ちひろ「…おや? どうしました?」

ちひろ「凛ちゃんには、まだ刺激が強すぎましたか?」


ちひろ「…まあいいでしょう。じゃあ次、未央ちゃんの安否ですね」

ちひろ「とりあえず五体満足ですよ。ほら」グイッ


未央「……」ドサッ


凛「! 未央!!」


ちひろ「凛ちゃんはともかく、未央ちゃんは少し悪い事をしちゃいましたからね」

ちひろ「まさか、あんなにも堂々と自分が"喰種"だとバラすなんて」

ちひろ「いや危ない危ない。こっちの事まで知られたら取り返しのつかないことになってましたよ」

ちひろ「なので未央ちゃんには、少しばかり、肉体的にも精神的にもきついお灸を据えてあげました」


ちひろ「でも、人間に育てられたとはいえ喰種。素晴らしい回復力ですね」

ちひろ「お腹に大穴を開けられたと言うのに、食事さえすればもう傷一つない」
53 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/02(土) 10:01:55.60 ID:SEAxogu10

凛「未央、未央!? 大丈夫!?」

未央「……あ……」

未央「しぶ、りん……」


凛「未央……あいつらに何をされたの!?」

未央「何、って、あ……」

未央「っう……!」


未央「ごめんっ、ごめんなさい、しぶりん」

未央「わたしのせいで、茜ちん、が……!!」


凛「……茜?」



ちひろ「そしてこれが次の答え」

ちひろ「茜ちゃんはこうなりました。はいっ」



凛(――あの女は、未央を連れてきた入口から)

凛(――ボーリング玉ほどの何かを鷲掴みにして、私と未央のところまで放り投げた)

凛(――思わず受け取ると、細い糸がいくつも生えている感触が手から伝わって来た)

凛(――すぐに、髪の毛だって分かった)


凛(――これを持ったのは、初めてじゃなかった)



ちひろ「そうそう、これは未央ちゃんに向けて話してますけど」

ちひろ「茜ちゃんがどうやって死んだか、凛ちゃんに話すかどうかは未央ちゃんが決めていいですよ」
54 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/02(土) 10:02:55.74 ID:SEAxogu10

凛(――もう、限界だった)


凛「―――――ふざけるなッ!!!」

ちひろ「…はい?」

凛「あんた達は一体何なの!? なんでこんなひどい事が出来るの!?」

凛「頭おかしいよ!! 狂ってるよ!! 人間を何だと思ってるの!?」

凛「こんなっ……346プロがこんなところだって知ってたら!」

凛「私はここでアイドルになんかならなかった!!」


ちひろ「……」


ちひろ「……はーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」


ちひろ「今まで散々散々、346の恩恵を受けておいてひっどい言い様ですね」

ちひろ「自分も化け物だって自覚、あります?」


凛「はあ!?」


ちひろ「…あー、そう言えば」

ちひろ「私達がこれだけ裏でがんばってるの、ほとんどのアイドルは知らないんですよね」

ちひろ「まあ、私達はアイドルの笑顔が生きがいですから文句も言いませんけど……」


ちひろ「……いいでしょう」

ちひろ「凛ちゃんが知りたがってる346プロの事、全部教えてあげます」


ちひろ「答え合わせの時間といきましょうか」


――――――――――――――――――――
55 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/02(土) 10:04:16.30 ID:SEAxogu10

――――――――――――――――――――


美城「とあるきっかけにより、私は知った」

美城「長大な歴史を誇る老舗ブランドを謳った、我が美城プロダクションは」

美城「その実、美しい城などではなかった」


美城「あれは無垢なる人間の少女で身を隠し、少女を喰い荒らし」

美城「そうして放り棄てられた人間の骸を礎にして作られし穢れた城」


美城「片桐早苗。君も存分に聞くがいい」



美城「私の知る全てを話そう」


――――――――――――――――――――
56 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/02(土) 10:07:53.22 ID:SEAxogu10

一旦ここまで。

ウサミンに続き死者2人目です


ビッグリリィは原作喰種っぽく作れたと思うのですがいかがでしょうか?

ほぼ一発ネタですがクレイジー百合厨のキャラクターは設定作ってて楽しかったです
57 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/02(土) 11:12:34.92 ID:BxnJyu0T0
ちっひがミッシーに意地悪したから(前スレ)腹いせにグールを白紙にしようとしているようにしか見えないwwwwww
58 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/02(土) 23:07:20.45 ID:SEAxogu10
>>57
その発想は無かったわ

一気に投下します
59 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/02(土) 23:07:48.12 ID:SEAxogu10

早苗(――美城常務が語った真相は、簡単に言えばこういうことだった。



346プロダクションは"喰種"の身体能力に目を付けた人間の美城一族が、

その能力と、お金や生活補助との交換を吹っ掛けたことで生まれた会社。


美城一族以外の幹部や管理職、プロデューサー、女子寮の管理人、事務所の清掃員まで、

運営に関わらないような事務員を除いたほぼ全てのポジションで"喰種"が働いてる。


また、当然っちゃ当然だけどアイドルもその半分以上が"喰種"。

人間と"喰種"のアイドルを両方置いておくことでCCGや人間へのカモフラージュを作って、

「ご飯」を定期的に供給したり学校や教育を手配したりすることで、

ほかのアイドル事務所と比べて"喰種"が安心して生活しアイドル活動を続けていける環境を作った。


……ここまでが、表向き"喰種"アイドルや常務が元々聞かされていたお話。



ああ、あと346プロの秘密を知った人間はこっそり始末してるって話だけど、

良い悪いはともかく、目撃者は消さざるを得ないって言うのは、私もまだ納得できる……

問題はここから。



346プロが人間アイドルを雇うのはカモフラージュのためだって言ってたけど、

本当はもっとおぞましい理由がある。
60 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/02(土) 23:08:21.30 ID:SEAxogu10

346プロは、"喰種"アイドルを守るために色々な事をしなくちゃいけない。


狩りの出来ない"喰種"のために、ご飯を用意する。

学校にいけない"喰種"のために、教材や勉強場所を用意する。

"喰種"としての正体を隠すために、偽の戸籍やRc検査診断書を用意する。

職員やアイドル個人の正体がバレた時、ほかのアイドルまで捜査が行かないよう根回しやもみ消しをする。

(分かりやすい例が菜々ちゃんの時のこと)

荒っぽい野良喰種が346プロに来ないよう牽制する。


そして、完全に"喰種"アイドルの正体を隠すには346プロだけの力じゃ足りない。


だから周りの喰種組織と協力して完璧な情報を隠す形態を確立した。



でも、周りの喰種組織はタダで協力してくれるわけじゃない。

346プロにしか出せないものがあるから、みんな協力してくれる。


346プロは、それを『財産』って呼んでる。





346プロは協力の報酬として、人間のアイドルを誘拐して報酬にしている。
61 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/02(土) 23:08:47.01 ID:SEAxogu10

周りの"喰種"にとって、可愛い女の子はそれだけで価値のあるご飯になる。

アイドル事務所なんだから、可愛い女の子が集まるのも当然。

それにレッスンで鍛えられて、エナジードリンクや『レシピ』で整えられたしなやかな身体は評価が高くて、

346プロを手伝えばそれが貰えるようになるんだから、皆喜んで仕事をする。


でも定期的に自社のアイドルが減っていけば、誰だって不審に思う。


そのために、346プロは『キャッスル』って言う架空の組織を作り上げた。


あちこちのアイドルを攫い、どこかに出荷する極悪組織。

その実は、346プロが自分のところのアイドル失踪を誤魔化すために他所の子もまとめて攫ってるだけ。


そして、346プロから喰種組織に売り飛ばされた人間は、一部のお金持ちの喰種に―――――





―――――その先を聞いて、あたしは吐いた)


――――――――――――――――――――
62 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/02(土) 23:09:15.34 ID:SEAxogu10

――――――――――――――――――――


ちひろ「―――っと、こんなところですかね」

ちひろ「どうです? 自分を支えた皆のやってることを知った気分は?」


凛「…………」

凛「……あ……」


ちひろ「…あーらら。絶句しちゃってますね」

ちひろ「一応補足ですが、『キャッスル』として攫った他所の子は346の子より肉質がずっと劣るため」

ちひろ「適当に下っ端にばら撒いて処理してます」


ちひろ「あと、普通なら346から出す子は『レシピ』に従って施術を行うのですが」

ちひろ「奈緒ちゃんと加蓮ちゃんに関してはビッグリリィの要望により、施術を行わずそのまま提供してるんですよね」

ちひろ「あそこの場合、再生能力は邪魔にしかなりませんからね」

ちひろ「…おーい? 今何気にすごい伏線貼りましたよー?」

ちひろ「聞こえてますかー?」


ちひろ「……ダメですかねこれ」
63 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/02(土) 23:09:42.54 ID:SEAxogu10

――――――――――――――――――――


早苗「ッ……おえっ……うええっ……!!」


橘「…大丈夫ですか、片桐さん」


早苗「ぐっ……はあ、はあ」

早苗「ごめ、なさ……美樹ちゃ、ん……」


橘「いいえ、片桐さんの心情を鑑みず聴取を行った私にも責任があります。本当に申し訳ありません」

橘「すぐに医務室までお連れします。少しだけお待ちください」


早苗「はっ、はあっ……」


美城「……」

美城「……すまない、片桐君。君への配慮が欠けていた」

美城「堀裕子の居場所を除いて、君が知りたい筈の情報はすべて話した」

美城「彼女の居場所までは、私も突き止められなかった」


早苗「……ぐっ……う、う……!!」


早苗「……どう、して……?」


美城・橘「「?」」


早苗「どうして、あいつらは……!」

早苗「こんなひどいことを、平気で出来るの……!?」


美城「……」


美城「……そうだな」


美城「理由だけなら、私にも推測できる―――――」


――――――――――――――――――――


凛「どう、して……」

ちひろ「お」


凛「どうして、そんな、残酷なことが出来るの……?」


ちひろ「……まーだ分かりませんか」

ちひろ「何度も言ってる筈なんですけどねえ」


ちひろ「私達がここまでする理由なんて、ひとつだけですよ」


――――――――――――――――――――
64 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/02(土) 23:10:11.13 ID:SEAxogu10










「すべてはアイドルのため」










ちひろ「これくらいやらなきゃ、"喰種"はステージに立てないんですよ」


美城「そして、このような吐き気を催す行為の支えなしに輝きを得られないなら―――」





美城「―――――"喰種"にくれてやる城やドレスなどない」

美城「骸を礎にしなければ保てない血まみれの城など、壊して当然の害悪だ」


――――――――――――――――――――
65 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/02(土) 23:10:44.62 ID:SEAxogu10

――――――――――――――――――――


ちひろ「……さて、お仕置きとお説教はこれまでにして」

ちひろ「とりあえず、凛ちゃんも未央ちゃんもこのまま帰っていいですよ」

ちひろ「命なんて奪いません。ちゃんと出口まで案内します」


ちひろ「誤解しないでほしいんですが、私達にとっては」

ちひろ「お二人も守るべき大切なアイドルだって事は変わらないんです」


ちひろ「未央ちゃんは"喰種"としての自覚がちょーっと足りなかったみたいなので、厳しい躾をしてしまいましたけど」



ちひろ「……さて」

ちひろ「分かっているとは思いますが、ここで見たこと、聞いたこと、知ったこと、気付いたことは全て他言無用でお願いします」

ちひろ「もしお二人以外のアイドルの誰かに、このことを伝えたのなら……」


ちひろ「今度は卯月ちゃんと美穂ちゃんが」

ちひろ「その次は李衣菜ちゃんと夏樹ちゃんが」

ちひろ「これは骨が折れそうなので勘弁してほしいんですけど……さらに次は蘭子ちゃんと飛鳥ちゃんが」

ちひろ「未央ちゃんと茜ちゃんの代わりになります」


ちひろ「大切なお友達にこんな気持ち、させたくないでしょう?」

ちひろ「ね、未央ちゃん♪」



ちひろ「……それでは、今日はお疲れさまでした」

ちひろ「また明日から、夢に向かって頑張ってくださいね♪」

ちひろ「我々はその姿勢を、心より応援します♪」


――――――――――――――――――――
66 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/02(土) 23:11:19.24 ID:SEAxogu10

――――――――――――――――――――


美城「……片桐君の様子は」

橘「とりあえず落ち着きました。…聴取を続けても?」

美城「構わない。だが、証言は一通り済ませた筈だ。まだ何か聞きたい事があるのか?」

橘「ええ。あと一つだけ」



橘「どうして貴女がそこまで知っている?」



美城「……何かおかしいか?」

橘「ええ。『キャッスル』……いえ、346プロダクションは長い間、その正体を隠し続けていた」

橘「我々の捜査の糸にすらかからなかった」

橘「忌まわしいことに奴等は我々の目を他所に逸らし続け、我々は騙され続けた」


橘「その346プロが、貴女に情報をリークされる可能性を考えていなかったとは思えない」

橘「一朝一夕の調査で手がかりなしの状態から得られる情報にしては、あまりにも精密かつ大きすぎる」

橘「……どうやって知った?」
67 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/02(土) 23:12:02.23 ID:SEAxogu10

美城「……やれやれだ。『あの情報』だけでは信用してもらえないのか?」

美城「わざわざ担当アイドル4人を君たちに売ったと言うのに」

美城「一人は捕獲したと聞いているぞ?」


橘「ええ。貴女が我々の信用を得るために提供した情報……」

橘「『速水奏、塩見周子、宮本フレデリカ、鷺沢文香の4匹は"喰種"である』」

橘「4匹が揃って行動しているときに、ギン達に襲撃してもらって」

橘「前3匹には逃亡を許したものの、鷺沢文香の捕獲には成功した」

橘「……それぞれの赫眼も確認して、残る一人『大槻唯』の検査と保護も行い」

橘「大槻唯が人間だということも含め、貴女の提供した情報は嘘偽りない真実だと証明された」


美城「……それでもまだ、私が君たちを嵌めようとしていると?」

橘「怪しい箇所がひとつでも見つかれば疑うのは当然だ」

橘「なぜ知った。なぜここまでの情報を手に入れられた」

橘「答えろ」
68 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/02(土) 23:13:18.75 ID:SEAxogu10

美城「……"喰種"とは言え恩人だから、できれば命だけは見逃してやりたかったのだがな」

美城「良いだろう、話そう」


美城「私がこの真実にたどり着いたのは、私自身の裏付けによって得られたものでもあるが……」

美城「そもそものきっかけは、とある"喰種"アイドルによるリークだった」

美城「内容は、『彼女』が独自に掴んだ346プロの違和感」

美城「そして、そこから構成された『彼女』自身の推論」


美城「制裁を恐れて証拠を掴めなかったため、裏付けを私に丸投げしたのだろうが」

美城「驚くことに、彼女の推理はほぼ当たっていた」

美城「あとは簡単だ。仮説さえ立てられれば、あとは証拠を集めるだけでいいのだから」

美城「奴等の武器は『気付かれないこと』。真実の欠片にさえ気付いてしまえば、容易に辿り着ける」


橘「……『彼女』の名前は?」

美城「…………」



美城「―――『佐久間まゆ』」



美城「佐久間曰く、彼女は君たちが346プロ職員から輿水幸子を保護したことを知ってリークを決意したようだ」

美城「"喰種"とは言え、大した先見の明だ。346プロの対応を予期し、私に集めた情報と推理を渡したのだからな」


橘「……」
69 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/02(土) 23:14:21.03 ID:SEAxogu10

橘「…分かりました。ひとまず、貴女が一人の"喰種"を見逃すなどと堂々と宣ったことについては、後回しにしましょう」

橘「それはそれとして、意味が分からない。なぜ"喰種"がそんなことをしたのですか?」

橘「自分の安全な居場所を壊すだけだと言うのに。気が狂ったのですか?」


美城「その理由までは聞けなかった」

美城「……ともあれ、私にとっては十分に信用できる情報だ」

美城「そちらでも情報の裏付けを取ると良い。あまり難しくはないだろう?」

橘「ええ。当然です」


橘「……最後に確認しますが、美城さんが"喰種"だと把握している346プロのアイドルは」

橘「リークした4人に加え、佐久間まゆの合計5人のみ」

橘「間違いはありませんか?」

美城「ああ。それ以上は本当に知らない」


橘「分かりました。ではこれで、美城さんへの聴取を終わります」

橘「これより美城さんにはCCGの保護下に入っていただきます」

美城「構わない。君たちの許可なく、私から346に連絡など取らないと誓おう」

橘「…ご協力、感謝いたします」


――――――――――――――――――――
70 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/02(土) 23:14:49.10 ID:SEAxogu10

――――――――――――――――――――


早苗「……ん……」

「お、目が覚めたか」

早苗「……ギンちゃん?」

市原「おう。体は平気か?」

早苗「なんとかね。…聞いたわよ。幸子ちゃんをあいつらから守ってくれたって」

早苗「ありがと」


市原「ハッ、別に構わねーよ。仕事だ仕事」

市原「こっちこそサンキューな。奴らが動く前に仁奈たちを連れてきてくれて、すげー安心した」

早苗「……もう。そんなに娘を心配するなら、ちゃんと会ってやればいいのに」

早苗「すぐ近くで皆と遊んでるわよ」


市原「…出来ねえよ。アタシは仁奈に会う資格なんかねえ」

市原「こんなクソでバカな母親よりアンタらの傍にいた方が……アイツにとってずっと良い」

市原「アタシに出来ることは、仁奈のために金を稼ぐことだけだ」


市原「…知ってんだろ? 仁奈の親父のこと」
71 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/02(土) 23:15:17.69 ID:SEAxogu10

早苗「…うん、知ってる」

早苗「仁奈ちゃんのお父さん……あなたの夫は、海外になんて行ってない」

早苗「治療費にお金がかかるから、あなたがずっと喰種を倒して稼がなきゃいけないって……」

市原「……そこまで知ってンなら、分かるだろ?」

市原「アタシは、仁奈を親父に合わせてやりてえ」

市原「アイツ見殺しにして仁奈のところにノコノコ行けっていうのかよ」

早苗「……あのねえ」


早苗「お金が必要なら、私達がいくらでも稼いであげるわよ……」

早苗「資格とか寝ぼけたこと言ってないで……母親らしく仁奈ちゃんと遊んであげなさいよ」

早苗「仁奈ちゃんはずっと、ママが大好き、ママに会いたいって、言ってるんだから……」

市原「……!!」


市原「……どっちにしろ、今は無理だ」スクッ

市原「まず346プロを追い詰めなきゃいけねえ」


市原「早苗サン。アンタはゆっくり寝てろ」バタン


――――――――――――――――――――
72 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/02(土) 23:16:33.75 ID:SEAxogu10

――――――――――――――――――――


ちひろ「……おや。プロデューサーさん、こんばんは」

ちひろ「ええ。凛ちゃんと未央ちゃんが、こっちに気付いちゃいまして」

ちひろ「釘は刺したのですが……きっとプロデューサーさんにはご迷惑をおかけすると思います」


ちひろ「……ああ、それともう一つ。あの二人について」

ちひろ「少し状況が怪しくなったので、ご報告したい事が」


ちひろ「神谷奈緒と北条加蓮の捕獲の際、一匹の人間アイドルに現場を目撃されました」

ちひろ「…ご存知でしたか。ええ、輿水幸子です」

ちひろ「規則に従って、幸子ちゃんを排除しようとしたのですが……」

ちひろ「運悪く、近辺を捜査していた白鳩に保護されてしまいました」

ちひろ「その後、交戦したときに一名、マスクが外れたらしく……」


ちひろ「万が一、あれに職員の顔を特定された場合……証言によって我々346プロが窮地に陥る危険があります」

ちひろ「もしそうなった時のため……例の職員を、その担当アイドルを含め切り捨てる準備を行ってください」

ちひろ「よろしくお願いします」


――――――――――――――――――――
73 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/02(土) 23:18:38.93 ID:SEAxogu10

――――――――――――――――――――


(――事実、輿水幸子さんが保護されることで)

(――その後の動きに触発された常務の行動――翌日の出来事だったため、この時は知る由も無かったのですが――を含め)

(――346プロダクションは崩壊の道を辿ることになりました)

(――ですが、それは職員の正体が露見した事ではなく)

(――もっと別の方向……私にとっては、予想もつかない場所であり―――――)



(――私にとって考えられる限り最悪の方向から、シンデレラの城は崩れてしまうのです)



――――――――――――――――――――
74 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/02(土) 23:19:25.92 ID:SEAxogu10

〜CCG本局 輿水幸子保護直後〜


ギン「輿水幸子、だよな。落ち着いたか?」

幸子「は、ははは、はいっ……! ぼ、ボクはもう平気です!」

ギン「んなガタガタ震えなくても殺しやしねーよ。もう検査で人間だって分かってんだぞ」

幸子「え……そ、そうなんですか?」

ギン「おう。…つか、本気で殺されると思ってたのかよ……」

幸子「し、仕方ないじゃないですか! ボクは実際殺されかけたんですからね!!?」

ギン「"喰種"にな」



ギン「……で。美樹サンも到着が遅くなるらしーし、今からアタシが簡単に質問する」

ギン「取り調べだ」

幸子「…あの。取り調べって普通、容疑者に使う言葉じゃ」

ギン「うるせーぞ意味がわかりゃいいんだよ」


ギン「…ともかく。幸子、お前を殺そうとした奴を追い詰めるために必要な質問だ。分かるな?」

幸子「わ、わかりました」

ギン「ん、オッケー。じゃあまず……お前を襲った奴の顔は見たか?」

幸子「…見ることには、見ました」

ギン「じゃあ、そいつの顔や声に見覚えは? どっかで会ったことあるか?」

幸子「……いいえ。あんまりにも特徴のない顔でしたから、会ったかどうかなんて……」


ギン「……ま、そうか。アタシもちらっと見たが、あれはモンタージュ作っても特定キツいぞ」

ギン「わりいな幸子。とりあえず取り調べは終わりだ、あっちで仁奈たちが待ってるから行ってこい」
75 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/02(土) 23:19:59.91 ID:SEAxogu10

幸子「えっ? もう終わりですか?」

ギン「つっても奴らの情報なんて持ってねーだろ? お前があんなのと関わりがあるとも思えねーし」

ギン「……あ、悪い待った」


幸子「? まだ何か?」

ギン「美樹サンに取り調べン時は絶対これ聞いとけってやつ忘れてたわ」

ギン「いつも美樹サンに任せっきりだったからな」

ギン「座れ幸子。もうちょい付き合え」

幸子「ええ……なんですかそのいい加減な指示は」

ギン「うっせ」


ギン「まあ、なんだ。一応聞きたい事があんだよ」

ギン「えーと……ちょっと待て。これだ」パラパラ


ギン「……『あなたの周りに、変わった子供はいませんか?』」


幸子「はい?」
76 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/02(土) 23:22:14.97 ID:SEAxogu10

幸子「なんですか、それ?」

ギン「お前の周りに"喰種"らしき奴がいないかって質問だよ」

幸子「いえ聞きたいのはそっちじゃなくて、なんで手帳を朗読して」

ギン「続けんぞ」


ギン「『いつも見すぼらしい恰好、学校に行ってる様子がない』」

ギン「『年齢の割に言葉をあまり知らない、食べ物の好き嫌いが異常に多い』」

ギン「あとは…『粗暴な面が目立つ子』とか。お前の周りにそんな奴いないか?」

幸子「拓海さん」

ギン「バカ野郎そいつは人間だってさっき言っただろ」

幸子「友紀さん」

ギン「今の証言そのままそっくりあいつらに教えてやろうか?」

幸子「すみませんでした」



幸子「いや……そんな子いませんよ。346プロの皆はちゃんと学校に行ってますし、優しくて良い子ばかりですし」

幸子「まあボクには敵いませんけどね!!」

ギン「はいはいカワイイカワイイ」

幸子「ちょっと!!」
77 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/02(土) 23:22:40.49 ID:SEAxogu10

幸子「…で、なんですそれ? そんなので"喰種"かどうかなんて分かるんですか?」

ギン「そりゃ、"喰種"は人間と違ってまともな教育受けてねーからな」

ギン「もちろん学校に行ってやがる例外もあるが、普通なら正体がバレるからそんなとこ行かねえ」

ギン「あと、まともな金もねーしな」

ギン「だから、"喰種"は学校に行かなかった結果、文字もろくに読めねーのがほとんどなんだよ」

幸子「へー……」

幸子「……」










幸子「……文字が、読めない?」
78 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/02(土) 23:24:05.36 ID:SEAxogu10

ギン「!」

ギン「……なんか知ってんのか。思い当たるやつがいるな?」

ギン「お前の知り合いに字が読めない奴がいるんだな?」

幸子「!! い、いえ、そんなことは……!!」

ギン「嘘をつくなよ。"喰種"を庇うのは重罪だぞ」

幸子「庇ってませんって! だ、大体……」

幸子「ボクの周りは皆優しくて良い子ばっかりって言ったじゃないですか!!」

幸子「あの人が"喰種"なわけない!!」

幸子「大体、あの人は、幼いころ病気だったから、ろくに勉強できなかったって……!!」

幸子「紗枝さんがそう言ってたんです!!」

ギン「……」


ギン「……別に、そいつを疑ってるわけじゃねえよ」

ギン「逆に考えろ、幸子。お前が今考えた奴を調べて、それで無実の人間だったら」

ギン「疑惑は晴れる。拓海たちと同じように、そいつは絶対人間だって安心できる」


ギン「だから話してみろ。本当に優しくて良い子なら、そいつは人間のはずだろ」


幸子「ッ……!!」
79 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/02(土) 23:24:33.06 ID:SEAxogu10

幸子「……本当に、無実だって証明してくれるんですよね?」

ギン「ああ」

幸子「み、見たことがないから疑えるんです! 実際あの人を見たら、そんなわけないって思うんですから!!」

ギン「分かったよ。お前を信じる」

幸子「きっ……聞きましたからね!? その言葉、信じますよ……!?」


幸子「……」



幸子「……ち……」




80 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/02(土) 23:25:01.25 ID:SEAxogu10










幸子「…………ちえり、さん」










幸子「……………………緒方、智絵里さん」
81 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/02(土) 23:25:41.82 ID:SEAxogu10

今日はここまで。

またしばらく投稿が空くと思います。
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