卯月「拝啓、忌まわしき過去に告ぐ絶縁の詩」【偶像喰種・外伝完結編】

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206 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/15(金) 13:08:22.18 ID:ZGZy65VF0

美樹「―――中野さん」

美樹「お二方は、もう……」

有香「……ッ!」

有香「もう、どうなったんですか……!?」

有香「まさか、食べられて……」


美樹「いいえ、2人とも生きています。今はただ、こちらの病院施設で入院しています」

美樹「……それでも、重症です。一命こそ取りとめていますが、担当医いわく以前と同じ生活は困難だと」

有香「……そんな」


有香「……あの」

美樹「面会はできません」

美樹「全てが終わるまで、皆さんにはこの宿舎からの外出、連絡を許可できませんし……」

美樹「我々の口頭によるもの以外、外部情報はこれまで通り一切遮断させていただいております」

美樹「どうか、ご理解ください」


美樹「……お力になれず、申し訳ありません」


有香「……ッ……」

有香「……いえ。今の2人のことだけでも、教えてくれてありがとうございます」

有香「……生きてるん、ですよね。それが知れただけでも……」


美樹(――仲間や、家族)

美樹(――本当のそれらを、"喰種"のせいで失う人達がいる)


美樹(――私は、一人の喰種捜査官として)

美樹(――こんな悲劇を、ひとつでも無くさないといけない)

美樹(――いえ。『ひとつだけでも』じゃない)

美樹(――『すべて』無くさないといけない)
207 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/15(金) 13:10:48.78 ID:ZGZy65VF0

美樹(――でも)

美樹(――中には、背負う必要のない罪、罪ですらないものの意識に苦しむ子もいる)


幸子「……なんですか、友紀さん。ボクは別に、そんなにべったりくっつかれなくても……」

友紀「いーじゃんいーじゃん。あたしが幸子ちゃんにくっついてないと、不安でしょーがないんだよー。たすけてさっちー」

幸子「……仕方ないですねえ。ボクは優しいので、イヤがったりしませんけど……!」

幸子「…………」カタカタ

幸子「……ありがとう、ございます」

友紀「なんの話かなー」


美樹(――輿水さんは、緒方智絵里の正体をギンに伝え、キャッスルに繋がる入口を伝えてくれた英雄)

美樹(――でも、本人からすれば……友達を間接的に殺した、人でなし)

美樹(――それは間違ってるって言っても……耐えられる人ばかりじゃない)


美樹(――辛いのは、本当の友達を失う人だけじゃない)


美樹「……片桐さん。向井さんも」

美樹「いま中野さんにご説明した通り、キャッスルへの捜査が完了するまでは一切の外出・連絡を許可できません」

美樹「窮屈な思いをされることは承知しています。どうか、ご協力下さい」


拓海「……言われなくても分かってるよ、ンな事」

早苗「連絡なんてしたくても、出来やしないようになってるから安心しなさい」

美樹「ご協力、感謝します」


美樹(――片桐さんも、向井さんも。もしくは、佐藤さんも)

美樹(――恐らく、仲間の誰が"喰種"だったか見当がついている)


美樹(――今、それを聞き出す必要はない)

美樹(――最後には頼らなければいけないかもしれない)

美樹(――でも、今ほかに情報源を得られるなら)

美樹(――たとえまやかしでも、友達を売る辛さを強制することはない)


美樹(――ただでさえ、これから346プロは崩壊する)

美樹(――仲間や親友、思い出の場所が全部、虚像となって消えていく)

美樹(――その様を見せてあげることすらできない。何も分からないまま、失ってしまう)


美樹(――引き金を引くのは、刃を振り下ろすのは私達)



美樹(――その事実に、向き合わないといけない)
208 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/15(金) 13:11:34.79 ID:ZGZy65VF0

美樹(――それでも)ガチャ


桃華「……あら! お帰りなさいませ、ありすちゃんのお母様」


唯「ミキミキおかえりちゃ〜ん、今ちょーイイとこに帰って来たね〜」ニヤニヤ

雫「おかえりなさい〜。仁奈ちゃん、すごく幸せそうですよ!」


美樹「…ふふ。本当に幸せそうね」



仁奈「えへへー♪ ママのお膝に乗ったの、すげー久しぶりでごぜーます!!」ニコニコ

ギン「……………………おう」タジタジ



仁奈「早苗おねーさんから聞いたですよ! ママはしばらくお仕事ねーから、いーっぱいお休み出来るって!!」

仁奈「ママ、いつも忙しくてたいへんでやがりましたから、仁奈うれしーです!」

心「お? 仁奈ちゃん、この隙にたくさんママと遊んでもらうつもりだな? この甘えん坊め〜☆」ニヤニヤ

仁奈「えへへー、ママには仁奈のダンスも歌もたっくさん見てほしーです! アイドルやって、色んなきもちになれたですよ!!」


ギン「い、いや……別にアタシが見る必要ねェし……」

心「見ろよ☆」

ギン「う……」


仁奈「…ママ……仁奈と遊ぶの、イヤですか?」

ギン「は? ち、ちげーよ。遊びたいに、決まってるだろうが」


仁奈「じゃあ仁奈と遊んでくだせー!」

仁奈「ママ、いっつもつらそーにしてやがるです。皆言ってたですよ、アイドルになったらみんなを笑顔に出来るんだって!」

仁奈「ママも笑顔になってくだせー!」


ギン「……仁奈……」


ギン「……分かったよ。悪かった。……仁奈がそれでいいって言うんなら、気が済むまで遊ぶから」

仁奈「!!!」


仁奈「わーい! ママとやりたいこといっぱいあるですよ! ウサギの気持ちにもなるですしゾウさんの気持ちにもなるですし、あとあと―――――!!」



美樹「……なんとか、うまく行ってるみたいね」



美樹(――それでも)

美樹(――この幸せな親子を、幸せな人たちを、壊させたくない)
209 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/15(金) 13:12:24.58 ID:ZGZy65VF0

美樹(――何より)


「……」ギュ

美樹「!」

美樹「……ふふっ」


美樹「どうしたの、ありす?」



ありす「……あっ」


ありす「ち、違います! 今のは、その、つい裾を握ってしまっただけで……」

心「お? ありすちゃんもママに甘えたいのかな? 甘えたいんだろ☆」

ありす「ただのクセです! 別に仁奈ちゃんが羨ましくなったとかじゃ……! …ハッ」


美樹「…そうね。私も実さんも、ありすのこと一人で大丈夫だって思っちゃって」

美樹「甘えちゃってたのは、私の方ね。ごめんね、今まで寂しい思いさせちゃって」

美樹「今日から、しばらくお休みだから。ギンと仁奈ちゃんみたいに、私もありすとたくさん遊んじゃおうかな」


ありす「……!!」


ありす「お、お休みなら……いい、んだよね」

ありす「……どうしても、じゃないんだけど……お話ししたい事があって……」


ありす「……聞いてくれる?」


美樹「うん。ありすのお話、たくさん聞きたいな」




美樹(――喰種捜査官として、こんなことを考えるのは駄目かもしれないけど)

美樹(――それでも、何より)

美樹(――この子に幸せになって欲しい)

美樹(――この子が、笑顔で生きていけるように、戦いたい)
210 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/15(金) 13:14:00.16 ID:ZGZy65VF0



美樹(――どうか、叶うなら)



美樹(――ありすと実さん、そして私の3人で)



美樹(――"喰種"のいなくなった世界を迎えたい)



美樹(――まやかしなんかじゃなく、本当に幸せでいられる日を迎えたい)



美樹(――もし、それが叶わなくても。私や実さんが、奴らの牙にかかって、あの子のそばにいられなくなっても)



美樹(――せめて)



美樹(――この子の未来を、幸せに生きていける未来だけは、絶対に守りたい)



美樹(――喰種捜査官として……いえ、それよりも、この子の母親として)



美樹(――この子の幸せだけは、絶対に守らなきゃいけない)


211 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/15(金) 13:15:04.09 ID:ZGZy65VF0



美樹(――そのためなら――――――――――)



ありす「お母さん」

ありす「このお仕事が終わったら、お母さんに紹介したい人がいるの」

ありす「私ね。唯さんと一緒に、美城常務のところで『プロジェクトクローネ』ってグループに入ったんだよ」

ありす「そこで、素敵な人と出会って……」


ありす「鷺沢文香さんって言ってね」

ありす「すごい人なんだよ。知的で、おしとやかで……」

ありす「いつも、勉強になることをお話してくれて」

ありす「私の憧れの人で……」


ありす「お母さんがその時、忙しくなかったら、でいいの」

ありす「だから、全部終わったら文香さんに会って、仲良くなって欲しいな……」


美樹「……」

美樹「……本当に好きなのね。文香さんのこと」


ありす「……!!」カア

ありす「そ、尊敬してる人ですっ!」


――――――――――――――――――――
212 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/15(金) 13:16:14.57 ID:ZGZy65VF0

――――――――――――――――――――


心「ママー!」

ギン「いきなり何やってんだお前」

心「なにって、察しろよ☆ ありすちゃんが甘えやすくするために、少しでも周りが幼児退行してやってんだよ☆」

ギン「頭おかしいんじゃねえのお前」

心「恥を忍んでやってんだよ☆ おい無表情で中指立てんな☆」

ギン「悪かったな。FuckFuckFuckFuckFuckFuckFuckFuck」

心「ボケ過ぎたのは謝るから娘の前でFワード連発すんな! 仁奈ちゃんが真似したらどーすんだ!?」

ギン「あっヤベ、いつものクセが……! 今のは忘れろ仁奈!」

仁奈「ふぁっくって何でごぜーますか?」

ギン心「「忘れろ!!」」


心「もー。仁奈ちゃんと距離を置きたがった理由は身をもって分かったけど、も少し言葉遣い考えろよ☆」

ギン「……そうだな。仁奈に真似させねーように、気ぃ付けねえとな」

心「少しは上司を見習えよ☆ あっちはTHE・レディってかんじなのに」

ギン「……あんたらの前じゃな」


心「お? なんか引っかかるもの言いだな? 美樹ちゃん、意外と私生活はだらしないとか?」

ギン「そういうワケじゃねーよ。ただ、あのヒトの仕事っぷりがえげつねえんだよ」

心「……えげつない?」

ギン「ああ」


ギン「美樹サン、過去に尋問官もやってたことがあってな」

ギン「アタシもパートナー組んでから、何回か美樹サンの尋問に立ち会ったことあるんだけどよ……」



ギン「あの人は"喰種"の前じゃ、アタシよりえげつねえ」


ギン「……まあ、同情する気なんかねえけどな」


――――――――――――――――――――
213 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/15(金) 13:17:48.63 ID:ZGZy65VF0

〜夜〜


橘「……もしもし。ええ、私です御坂監獄長」

橘「申し訳ありません。ありすが寝付いてから、仕事に移りたくて……」

橘「はい、休暇中です」

橘「ですが、あと一つだけ…どうしても今やっておきたい仕事がありまして」

橘「……ありがとうございます」



〜コクリア 独房〜


「……はあ、はあ……」


ガチャ


「……!」



橘「……こんばんは。こんな時間だけど」


橘「捜査に協力してもらうわ」



橘「鷺沢文香さん」


214 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/15(金) 13:18:49.45 ID:ZGZy65VF0

文香「……!!」

文香「……あ、あああ……!!」


橘「今日は『シンデレラプロジェクト』のメンバーおよび小日向美穂、木村夏樹、二宮飛鳥について」

橘「この中に、『緒方智絵里』以外で"喰種"はいる?」


文香「……い」

文香「…………いえ、ません」


文香「……何度も……言っています……」

文香「……友達を、売ることは……できません……!!」


橘「……そう」ジリ


橘「」グイッ


文香「ひっ……!」



橘「…知識量の割に、学習能力のない子ね」

橘「今度は何をしてあげましょうか?」


橘「また目に火箸を刺されたい?」

橘「また爪を延々と剥がされ続けたい?」

橘「また耳に虫でもいれてあげましょうか?」

橘「また人間の料理を延々とねじ込んだ方がいい?」


橘「拷問のレパートリーなら、あなたが本で読んだ以上に知ってるわよ」


文香「……っ……く、う……!!」



文香「……殺してください……」

文香「私から……あなたに、あげられる情報なんて……ないんです……」

文香「私のページは、もう、ここで終わりだって、知ってます……」

文香「はやく……殺してください……楽にしてください……」


文香「殺して……もう……解放、してください……!!」
215 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/15(金) 13:19:46.85 ID:ZGZy65VF0

橘「頼まれなくても、もうあなたは用済みよ」

橘「もう廃棄することにした。何を言っても言わなくても、近いうちにあなたは死ぬ」

橘「その日まで、あなたはずっと身体を抉られ続ける」

橘「……同類を売った方が、まだ楽に死ねるわよ」


文香「……いやです」

文香「もう、それしか……縋れるものが無いんです……」

文香「友達を裏切ったら……もう……本当に何も、なくなってしまうから……」

文香「だから……このまま、殺してください……!!」


橘「……つまらない自己満足ね」



橘「安心しなさい。別にもう、あなたに期待することなんてない」

橘「情報を得られれば幸運、くらいに思っていただけ……」



橘「……だけど、そうね。もし、今日私が求める情報を差し出してくれたなら……」







橘「最後に、ありすに会わせてあげる」


216 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/15(金) 13:20:54.59 ID:ZGZy65VF0

文香「――――――――――っっ!!!」



橘「娘が言っていたわ。尊敬してる人だって、知的でお淑やかな女性だって」

橘「とても会いたがってたわ。あなたも、ありすに会いたくないかしら?」


文香「っあ……あああ……!!」


橘「この資料を見て。今必要な情報は、シンデレラプロジェクトの誰が"喰種"なのか」

橘「どうせ庇っても、あなたには何の得もない。あなたはそのまま、ひとりで死んでいく」

橘「情報をくれても、あなたは死ぬ。でも、最後にありすに会うことは出来る」

橘「当然、情報が一言一句正確だったことが条件だけど」

橘「あなたが売るのは、シンデレラプロジェクトのメンバーだけ。他の仲間には逃げられるでしょうね」


橘「……どっちがいいかしら?」



文香「あ……」


文香「あああああ……」

文香「ありす、ちゃん……うう、ああああああ…………!!!」



文香「……あ……」


文香「……ごめんなさい」


文香「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい……」


文香「許して……くださ、い……!!」



橘「……それで? 誰が"喰種"なの?」


文香「……」


文香「…………」


文香「…………ぜ」
217 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/15(金) 13:22:04.66 ID:ZGZy65VF0





文香「……全員、です……」





文香「美穂、さん。夏樹さん、飛鳥ちゃんは……3人は、人間です」

文香「でも、シンデレラプロジェクトは……全員、"喰種"です」

文香「人間は、ひとりもいません……」


橘「そう」



文香「……約束です。ありすちゃんに会わせてください」

文香「一目でいい……一目見られるだけで、いいんです……」

文香「ありすちゃんは、ずっと私を慕ってくれて……すごく、可愛らしくて、愛しくて……!!」

文香「もう何もいらないから、ありすちゃんに会いたい……」


文香「お願いです……ありすちゃんに会わせてください……!!」



橘「……」


橘「……可哀想に」

橘「痛みでまともに物を考えられなくて、ただ一つ仲間に縋ることでしか、現実に耐えられなかった」

橘「そのたった一つの支えを手放してまで……ありすに会いたかったのね」


橘「ありすが愛しかったのね……」スッ



橘「あなたは、十分役に立ってくれた。これで、黒井上等達の作戦もやりやすくなるわ」

橘「だから…………」


218 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/15(金) 13:24:06.12 ID:ZGZy65VF0



ズパッ



文香「……え?」



橘「ご苦労様。そのまま楽に死になさい」


橘「何もいらないからありすに会いたい? 何様のつもり?」


橘「会わせられる訳がないじゃない。娘をたぶらかしておいて、取り入っておいて……」



橘「娘を惑わす害獣が」





文香「そ、んな……」


文香「……あり……す、ちゃ……」


文香「――――――――――」



――――――――――――――――――――



橘「……もしもし、黒井上等?」

橘「私よ、橘準特等。夜遅くの連絡だけど、どうせ残業していたんでしょう?」

橘「あなた達の助けになる情報を得たから、電話させてもらったわ」



橘「……ええ、そうよ。サギサワからようやく得た情報」

橘「極限状況で、唯一の希望に縋ってようやく出した情報だから、信憑性は高いはずよ」


橘「……ええ。オガタの偽造診断書があんなに精巧だったのも納得ね」
219 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/15(金) 13:25:34.76 ID:ZGZy65VF0







橘「『シンデレラプロジェクト』のアイドルは全員"喰種"よ」







橘「小日向さん、木村さん、二宮さんの3人さえ保護できれば……」



橘「あとはもう、気遣いも容赦もいらないわね」



――――――――――――――――――――
220 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/15(金) 13:26:56.67 ID:ZGZy65VF0

今日はここまで。


次でようやく笑顔の橋、キャッスル討伐作戦が始まります。

一挙放送の前にここまで書けて良かったです。


来週から少し忙しくなるので、ちょっと書くの遅れると思います。
221 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/15(金) 17:35:44.62 ID:BXP3+nfOO
戸影「橘は俺が育てた」

ふみふみ悲しいなぁ
原作買いに行こ
222 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/15(金) 21:46:09.21 ID:ZGZy65VF0

ちょっと補足。

346プロの中では、智絵里だけでなくシンデレラプロジェクトのメンバー(ついでに美嘉姉)の偽造診断書はかなり手間をかけて作られています。

理由は2人目の隻眼であり最重要秘密事項の蘭子がいたから。

喰種アイドル内で格差をつけたかったわけではないのですが、万が一蘭子、ひいてはそれに繋がるCPを探られて蘭子の正体がバレたら
ウサミンのように単純な切り捨てでは済まずCCGが更に踏み込んでくる危険があったため手を掛けざるを得ませんでした。


……にしては智絵里の喰種バレのきっかけが結構お粗末じゃないかと自分でも思ってはいるのですが、
キジマさんの言う通りヘマと言うのは総じて目も当てられぬお粗末なものと言うことにしておいてください。
223 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/15(金) 21:48:14.06 ID:ZGZy65VF0
×手を掛けざるを
〇手間を掛けざるを
224 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/09/16(土) 07:32:09.32 ID:uB8nqJJ60
乙です

今日も読んでいて心にきたわ
原作からしてそうだけど、やはりCCGの喰種捜査官達は正真正銘のキチガイ揃いだよな
225 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/16(土) 09:10:07.86 ID:xrn5Ur1f0
フレちゃんなら「実の娘を喰種相手の交渉の餌にするなんてどんな気持ち?ねぇどんな気持ち?」
くらい煽りそう
226 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/09/16(土) 09:47:23.73 ID:RSDyn9crO
CCG喰種捜査官のイカレっぷりがよく表現出来ているな
ありすには悪いがこの橘準特等にも惨たらしい最期を遂げて欲しい
227 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/16(土) 12:50:36.26 ID:Cds2i5VZO
隻眼3人もいるし余裕感はあるな
228 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/17(日) 00:07:55.12 ID:CGkyHtWH0

アニマスムビマスデレアニ24時間一挙放送完走した。デレアニ6話あたりで一度落ちかけたけど頑張ったよ。

やっぱ前編とかちゃんとアイドルやってるところを書き足して直したくなるね。


とりあえず完結編を終わらせるために頑張ります。
229 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/17(日) 04:57:05.01 ID:Ewky98Nu0
24時間乙!
とりあえず48時間寝てたから書けよ!
230 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/17(日) 20:58:35.32 ID:k7OiRDcd0
>>橘「また人間の料理を延々とねじ込んだ方がいい?」
(いちごパスタを出しながら)
231 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/09/17(日) 23:34:18.52 ID:Sa0bu2c10
ありすの母親も爪を全部剥がされて耳の中に虫を入れられて火箸で目を刺されて廃棄物を食べさせられるくらいの目には遭ってもらわないとな
因果応報って大事
232 : ◆AyvLkOoV8s [sage]:2017/09/18(月) 19:07:21.69 ID:2VjjfZxM0
>>230
このネタで原作単行本みたいな4コマできるな

誰か作って(他力本願)


続きはそろそろ書けるようになるのでもうちょっとだけ待ってね
233 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/18(月) 20:24:23.60 ID:PFduS97Y0
>>201
原作から出張してくる程の人材不足、及び登場の見込みが薄いキャラの出番兼ねての提案だったがそういうことなら仕方ない
キャッスルの絡繰りに気付いたまゆの方が異端ってことかなるほどー
234 : ◆AyvLkOoV8s [sage]:2017/09/19(火) 17:24:36.11 ID:hctkBx/p0
宝くじ5等が1枚でした。
前回もSRスカチケ賞一枚当たったし何気に運いいのかもね

くるみにしました
235 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/09/20(水) 01:38:58.80 ID:cdbORAmL0
同じく5等1枚でした
これで担当の恒常SRが☆14まで来た!
236 : ◆AyvLkOoV8s [sage]:2017/09/23(土) 15:45:33.83 ID:fvrq08M/0

――――――――――――――――――――



そして、魔法の解ける日が来る



――――――――――――――――――――
237 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/23(土) 15:46:05.52 ID:fvrq08M/0

〜12月25日 TOKYO MIX 放送スタジオ〜

〜楽屋〜



美嘉「凛と、未央は……来れない?」



武内P「…はい」

みく「そんな……どうして!? シンデレラプロジェクト最後のお仕事なのに……!」

P「……」



P「……先日、日野茜さんと神谷奈緒さん、北条加蓮さんが行方不明になりました」

P「346プロでは『キャッスルの仕業だ』と結論付けられています」


P「……本田さんも渋谷さんも、そのことに責任を感じてしまい」

P「独自のルートで脱出を行う、と連絡を受けました」


P「よって……島村さん、神崎さん、アナスタシアさん、多田さんが『笑顔の橋』に出演し、放送が終わったあとは」

P「渋谷さんと本田さんを除く皆さん……そして、城ヶ崎美嘉さんの計13名で東京外への脱出を行います」
238 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/23(土) 15:46:32.78 ID:fvrq08M/0

みく「……っ!!」

みく「じゃ、じゃあ……茜チャンは、未央チャンが喰種だって話したからいなくなったってことですか!?」


P「はい。キャッスルにとって、本田さんやアイドルの皆さんが"喰種"だと」

P「人間に知られては都合が悪かったため、日野さんに手を掛けたと思われます」


美嘉「…なにそれ。茜がCCGにアタシ達のことバラすとでも思ってたの!?」

美嘉「先に手を出してるのは向こうじゃんか……未央が可哀想だよ……!!」

美嘉「未央はただ、アタシたちを勇気づけようとしてくれただけなのに……!」


P「……止められなかった、私の責任です」

P「申し訳ありません」


アーニャ「プロデューサー……」



卯月「……」



卯月「……間違い、なんですか?」
239 :訂正。 ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/23(土) 15:47:15.44 ID:fvrq08M/0

みく「……っ!!」

みく「じゃ、じゃあ……茜チャンは、未央チャンが喰種だって話したからいなくなったってこと!?」


P「はい。キャッスルにとって、本田さんやアイドルの皆さんが"喰種"だと」

P「人間に知られては都合が悪かったため、日野さんに手を掛けたと思われます」


美嘉「…なにそれ。茜がCCGにアタシ達のことバラすとでも思ってたの!?」

美嘉「先に手を出してるのは向こうじゃんか……未央が可哀想だよ……!!」

美嘉「未央はただ、アタシたちを勇気づけようとしてくれただけなのに……!」


P「……止められなかった、私の責任です」

P「申し訳ありません」


アーニャ「プロデューサー……」



卯月「……」



卯月「……間違い、なんですか?」
240 :訂正。 ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/23(土) 15:47:54.48 ID:fvrq08M/0

美嘉「えっ?」


卯月「未央ちゃんが、茜ちゃんと、本当の仲間になろうとしたことは……」

卯月「ほんとに、間違いなんですか?」


みく「卯月チャン…?」


卯月「私、どっちかというと世間知らずで……もしかしたら、間違ったことを言ってるのかもしれません」

卯月「……それでも、未央ちゃんは、いつも私や凛ちゃんを助けてくれて……」

卯月「裏ではずっと悩んでて、サマフェスでファンレターをもらった時、すっごく嬉しそうに笑ってて……!」


卯月「そんな未央ちゃんが、私達のために、みんなと私達を繋いでくれたことが」

卯月「間違いだったなんて思いたくないですっ!!」


卯月「私は、あきらめたくないですっ! 人間のみんなと仲良くなること、未央ちゃんや凛ちゃんだって、ずっと願ってたこと!」

卯月「私だって、美穂ちゃんと本当の友達になって、今日だけじゃなくって、また一緒に歌いたいから……!!」

卯月「もう『喰種だから』って、好きな事を我慢しなくてもいいようになりたいからっ……!!」


卯月「だから、未央ちゃんや凛ちゃんが来れないなら、見せたいんです!」

卯月「私は、こんなに美穂ちゃんと仲良くなれたよって」

卯月「喰種とか、人間とか、そんなの関係なくて……秘密を話すことは出来ないけど、これだけ仲良くなれたんだよって」

卯月「未央ちゃんが悩んで、出した答えは、間違いなんかじゃないって……!!」


卯月「この最後のライブで、2人に見せたいんですっ!」



李衣菜「卯月ちゃん……!」


李衣菜「……うん、その通りだよ卯月ちゃん! 今更"喰種"がどうとか言って縮こまるのはロックじゃないよ!」

李衣菜「私だって、ちゃんと皆に見せてあげたい! なつきちとこんなに仲良くなれたって!」

李衣菜「ちゃんと分かってくれる人はいるんだって!」

李衣菜「ね、蘭子ちゃん!」


蘭子「……!」

蘭子「……ククク。感謝するわ、雷鳴の姫君よ。笑顔の姫君よ」

蘭子「我らこそ、下僕たちに道を示すもの。暗闇に双翼の軌跡を示すもの」

蘭子「我が翼。白銀の妖精に、我が共鳴者」

蘭子「今こそ始めましょう。我らが大翼の舞う舞台を!!」
241 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/23(土) 15:48:41.30 ID:fvrq08M/0

莉嘉「……えーと」

莉嘉「蘭子ちゃんが言ったのって、アーニャちゃんと飛鳥ちゃんのこと?」

みりあ「そうだよ! どっちも大切って言ったんだよ!」

きらり「…それが、蘭子ちゃんの答えなんだね」


美波「……『なにも変わらない』って、言ってくれたもんね」

美波「頑張ってね、蘭子ちゃん。李衣菜ちゃんに、卯月ちゃんも」

美波「アーニャちゃんも、蘭子ちゃんのこと支えてあげてね」


アーニャ「ダー! ランコも、アスカも、アーニャも……なにも変わらないです」

アーニャ「ミナミ、言ってくれました。あの時の笑顔は、私もランコも、変わらなかったって……」


美波「うん! だから、胸を張って行ってきて」

美波「ここからちゃんと見てるから!」



かな子「あ、あのね蘭子ちゃん」

蘭子「む?」

かな子「今まで秘密にしてたんだけど……じゃんっ!」

蘭子「……これはっ!?」


かな子「えへへ。今日のために、ちょっと時間つくって……」

かな子「蘭子ちゃんの大好物、プリンを作ってきました!」

蘭子「わあ!」

かな子「今日のライブが終わったら、飛鳥ちゃんたちとはしばらくお別れになっちゃうから」

かな子「だから、その前に……蘭子ちゃんの大好きなプリンを一緒に食べて欲しいなって思ったの」

智絵里「わ、私もお手伝いしましたっ」

蘭子「かな子ちゃん、智絵里ちゃん……」


智絵里「蘭子ちゃん。私も、蘭子ちゃんに勇気づけられました」

智絵里「だから、精一杯のエールです……ふ、ふれーっ、ふれーっ!!」


蘭子「……!!」
242 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/23(土) 15:49:33.38 ID:fvrq08M/0

美波「……よし! じゃあ皆、円陣組むよ!」

美嘉「お、やっちゃう?」

美波「ええ! 凛ちゃんと未央ちゃんはいないけど……2人にも届くって信じてるから」



美波「……改めて言うね」

美波「私達は、"喰種"だけど」

美波「合宿の時……あんなに楽しそうに笑ってた顔は、人間と何か違うだなんて思わない」

美波「346プロはなくなっちゃうけど、また皆歩き出せる」

美波「私達は、それを知った」


美波「だから、みんなにも教えてあげましょう!」

美波「人間と喰種は、ちゃんと仲良くなれるって!」

美波「卯月ちゃんが、李衣菜ちゃんが、蘭子ちゃんが作った絆を、みんなに見てもらいましょう!」


卯月「はいっ!」

李衣菜「おうっ!」

蘭子「うんっ!」



美波「今日のことは、ずっと忘れない!」

美波「ライブに出れない皆も、蘭子ちゃんたちをしっかり見守りましょう!」

「「「はーい!!!」」」


美波「行くわよ! シンデレラプロジェクトー……」


「「「ファイト! オー!!!」」」

243 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/23(土) 15:50:09.67 ID:fvrq08M/0

――――――――――――――――――――


ワイワイ

ガヤガヤ


杏「……」

杏「……ねえ、みくちゃん」


みく「……ん? どうしたの杏チャン」

杏「みくちゃんはさ。人間と喰種が分かり合えるって思う?」

みく「思わないよ」

杏「バッサリいったね」


みく「だって信じられないものはしょーがないんだモン」

みく「夏樹チャンや美穂チャンだって、みくたちのこと通報するかもしれないって。まだ思ってる」

杏「……」


みく「でもね」


みく「りーなチャンや卯月チャンを信じることは出来るよ」

みく「人間と仲良くなったりーなチャンのこと、卯月チャンのこと、蘭子チャンのこと……」

みく「みくは大好きだよ」

みく「……それに、ナナチャンも人間が大好きだったから」

みく「助け合って暮らした人間が大好きって言ってたナナチャンのこと、みくも大好きだから……」


みく「……だから、みくは人間を信じないけど!」

みく「人間を信じた友達は信じるにゃ!」


みく「だから、もし夏樹チャンや美穂チャン、飛鳥チャンが裏切って、通報なんかしたら……」

みく「その時はみくが食べてあげるにゃ♪」


杏「怖っ」
244 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/23(土) 15:50:37.43 ID:fvrq08M/0

杏「……ま、いいや。みくちゃんが問題起こしそうになくて安心した」

杏「ただのノロケだったよ」

みく「の、ノロケってなんにゃ!」

杏「ばいばーい」


杏「……」

杏「……よっ、プロデューサー」


P「……双葉さん」


杏「なんか固い顔してるよー。もっとダラっとしなよ」

杏「……ま、無理も無いか」





杏「ちょっと顔かしてくんない?」

杏「話したい事があるんだけど」
245 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/23(土) 15:56:00.88 ID:fvrq08M/0

一旦ここまで。

前編に起こった話については後で書き足し修正するとは何度もお話していますが、
とりあえずみくの偶像喰種においての立ち位置はこんな感じかなと結論だけ先に出しました。

人間に対してはどこまでも不信感を抱いてるけど、仲間が信じるならそれでいいやってキャラは一人くらいいてもいいと思うのです

喰種のみくはあくまで、なつきちは大嫌いです。
246 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/23(土) 19:48:58.07 ID:fvrq08M/0

――――――――――――――――――――


コンコン


卯月「? はーい。どちら様ですか?」ガチャ


美穂P「こんばんは」

卯月「あれ? もしかして美穂ちゃんの……」

美穂P「そう、担当P。美穂には先に現場に行ってもらってる」

美穂P「今のうちに、卯月ちゃんにお礼を言っておこうと思ってね」

卯月「? お礼、ですか?」


美穂P「美穂が君のこと、すごく楽しそうに話すんだよ」

美穂P「すごく頑張り屋だから、一緒にレッスンしてて楽しいって」

美穂P「人間とか喰種とかそんなの関係なく、君のことを一人の友達として見てくれてる」

美穂P「…俺も、美穂のそういう姿にはちょっと救われたんだ」

美穂P「俺も卯月ちゃんと同じ喰種だけど……」


美穂P「美穂は俺のことも、こんな風に好いてくれてたのかなってな」

美穂P「それに気付けて、今すごく嬉しいんだ」


美穂P「まあ、一緒にいて楽しいのは君だけで俺の方はそうでもないかもしれないけど……」
247 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/23(土) 19:50:45.92 ID:fvrq08M/0

卯月「……そんなこと……」

美穂P「別にそれでもいいけどな! こっちはいい年したオジサンだしな!」

美穂P「……」


美穂P「…俺は。俺だけじゃなく、人間のアイドルを担当してるPは」

美穂P「このライブが終わったら、もうお別れだからな」

美穂P「一級Pと違って、もう一生会えなくなるかもしれない」

美穂P「でも美穂のプロデューサーでいられてよかった」


美穂P「……『笑顔の橋』は、人間と喰種の絆を見せるためのライブだったっけ」

美穂P「ありがとな、卯月ちゃん」

美穂P「少なくとも、3人のしがないプロデューサーは救われたよ」


美穂P「…これは、飛鳥Pと夏樹Pを含めて3人分のお礼です」

美穂P「うちのアイドルと仲良くしてくれてありがとうございました」ペコリ


美穂P「最後のライブ、俺達も精一杯応援するから頑張ってください」

248 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/23(土) 19:51:21.60 ID:fvrq08M/0

卯月「……!!」

卯月「はいっ! 私も美穂ちゃん達とはしばらく会えなくなりますけど……」

卯月「それでも、美穂ちゃんと仲良くなれてよかったです!」


卯月「島村卯月、美穂ちゃんと一緒に……みんなで頑張ります!!」


美穂P「……うん。頼んだ」



――――――――――――――――――――



卯月「…それにしても……そっか……」

美穂P「ん?」

卯月「もう、美穂ちゃんのプロデューサーさんも……美穂ちゃんに会えなくなるんですね」

美穂P「まあね。もう346の手出しは無いんだし美穂に正体を明かしてもいいんだけど」

卯月「346が?」

美穂P「…今のは忘れて。仮に美穂に正体を話して受け入れてもらっても、美穂に罪を背負わせることになる」

美穂P「あと、俺は346の職員だからね。君達を逃がすために、346に残らないといけない」

美穂P「それは君達のプロデューサーも同じだろ」

卯月「ッ……」


卯月「……はい」
249 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/23(土) 19:52:01.81 ID:fvrq08M/0

美穂P「……ああ。その様子だと、あいつともお別れになることはちゃんと聞いてたのか」

美穂P「みんな明るいから、また話してないのかと……」

卯月「……はい。避難は、美波さんと美嘉ちゃんに任せるって……」

卯月「プロデューサーさんは、放送が終わったら346プロに戻るって……」


卯月「……でも、プロデューサーさんはそれでも、このお仕事を残してくれました」

卯月「だから、ちゃんと歌いきって……もう大丈夫って、伝えたいんです」

卯月「プロデューサーさんは、私の夢を叶えてくれた人で……大切な、人だから」


美穂P「…こんなに想われてるなんて、プロデューサー冥利に尽きるな」

卯月「……それに」

美穂P「?」


卯月「ここに来る前……プロデューサーさんに、お話してもらったことがあるんです」



『……私は最後に、346プロへ戻ります』

『向こうで捜査官達の注意を引き、皆さんに避難をしていただくためです』

『……どうか、泣かないでください』


『私の最後の望みを、どうか聞いてください』
250 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/23(土) 19:52:28.81 ID:fvrq08M/0


『―――この失っていくしかない世界で』



『唯一の望みは、つながること』



『植えた種子が花を咲かせること、花がまた種子を落とすこと』



『見よう見まねで焼いたハンバーグを、美味しいと喜んでもらえること』



『私と関わったことで、少しでも皆さんが笑顔でいられること』





『自分の行動が、生きた時間が、無意味じゃなかったと思えること』





『……それが、私にとっての希望です』

『どうか、これからも笑顔でいてください』



卯月「……だから、私は最後までちゃんと」

卯月「笑顔で歌って、踊ります」

卯月「ちゃんと、皆に見てもらいます」


美穂P「……そうか」

美穂P「……なんか、自分が恥ずかしいな」


美穂P「これだけ辛い思いをしている子が、それでいて必死に頑張ってる子がいるのに」

美穂P「自分は、『逃げ切れた』なんて安心してしまっただけだなんて」


卯月「……?」

美穂P「…ごめん、こっちの話。美穂のところに戻るよ」


――――――――――――――――――――
251 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/23(土) 19:53:10.86 ID:fvrq08M/0

一旦ここまで。

四方さんは名言製造機
252 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/23(土) 21:25:54.91 ID:fvrq08M/0

〜TOKYO MIX 屋上〜


杏「ん。これ、杏の奢りコーヒーね」

P「…ありがとうございます」カシュ

P「……それで、話と言うのは」


杏「…んーとね。杏もちょっと、正直に言っとこうかなってことがあってさ」

杏「プロデューサー、さっきは上手く話したよね」

P「……?」


杏「『茜ちゃんはキャッスルに誘拐された』って話」

杏「ウソはついてないもんね」


P「!!!」

P「……双葉さん、それは……!」


杏「杏ね。全部知ってた」

杏「知ってたって言うか、聞こえてた。杏、耳すごくいいから」


杏「346プロの地下に部屋があったことも、凛ちゃん未央ちゃんのことも」

杏「キャッスルのことも、財産のことも」

杏「……人間の女の子がたくさん、殺されてることも」


杏「凛ちゃんが気付く前から、ずっと前から全部聞こえてた」

杏「……知ってて、黙ってた。プロデューサーにも、皆にも言わないで、見て見ぬふりしてた」

杏「どうにもならないことをわざわざ喋って、全部台無しにするのはバカみたいって思ってたから」

杏「だってそうじゃん。きらりや、智絵里ちゃんやかな子ちゃんが、あんなに楽しそうにしててさ……水させないじゃん」


P「……」


杏「別に、プロデューサーを責めるつもりなんてないよ」

杏「気持ちは、なんとなく分かるからさ」


杏「でも『まだやる』って言うなら……ちょっと言っておかなきゃって思った」
253 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/23(土) 21:28:50.36 ID:fvrq08M/0

P「……それは」


杏「杏、全部聞こえてたって言ったでしょ。『最終隠匿プロトコル』のこと。プロデューサーがこれからしようとしてること」

杏「やめてよ。やめようよ。せめて蘭子ちゃん達の友達だけは奪わないであげてよ」

杏「プロデューサーがトラウマ持ってるのも分かるよ。でも、今からやろうとしてることは何の意味もないんだよ」

杏「美穂ちゃん達は、杏たちのこと話したりなんかしないよ」

杏「だからっ……!」


P「……その願いは、聞けません。3人を失ってから、私は決めたのです」

P「どのような犠牲を払ってでも、皆さんが生きていられる確実な手をとると」

P「仮に、皆さんに計画を知られても……生きてさえいれば、また笑顔を取り戻せるはずですから」


P「……どうしても止めると言うのであれば」


P「力づくで私を止めてください」



杏「……」

杏「……出来る訳ないじゃん。杏だって、流石に敵わないよ」


杏「『隻眼の王』とか呼ばれてるくせに……」

杏「……まぎらわしいんだよ、その呼び方」



P「……双葉さんは、楽屋に戻ってください」



P「放送が始まります」



――――――――――――――――――――
254 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/23(土) 21:31:10.27 ID:fvrq08M/0

今日はここまで。

とりあえず杏ちゃんが346の悪行を全部知ってて黙ってたことだけ書きたかった
255 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/09/23(土) 22:06:41.08 ID:sFIdihFC0
乙です!

杏の話ぶりからすると346プロは最終隠匿プロトコルのためにまた人間のアイドルを犠牲にしようとしているということかな?
256 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/24(日) 04:04:20.17 ID:Mhfq5eT30
こっからの話の本筋に関係無さそうだし、差支えないなら1個気になることがあるから聞きたい
現常務がCCGに346の喰種情報売ったのって本人の独断?それとも一族了承済み?中には経営に深く携わってる内に会社の絡繰りに気づいててもおかしくなさそうだけど…
というか前常務のポジションにいた人物はどうなったとか背景が知りたい
257 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/24(日) 07:04:46.29 ID:GqKxECQN0
>>256
常務の密告は完全に本人の独断ですね。
美城一族は喰種に協力している一族と説明しましたが、キャッスルやその他のあくどい事についてもズブズブに関わってます。真っ黒です。

常務の父親含むほかの美城一族は、
長い歴史の中で喰種と協力するうちに「人間を犠牲にしてでも喰種を輝かせる」思想に染められた狂人か
346プロに長く関わって弱みを握られたため密告したくても自分も罪人になってしまうため出来ない臆病者のどちらかであり
一族の中ではまともな価値観を持ちかつ特に弱みを握られていない常務の方が異端でした。

346プロはこういう「まともな人」が出ることも考慮して
常務には必要最低限の情報とプロデュースの権利(クローネ)だけを与え
仕事の中で常務の弱みを作ったあと裏の面を教え本格的な一族の仕事に加えるつもりだったのですが、

CCGが幸子を保護し智絵里や紗枝の情報を得て捜査した動きをまゆが察知し、秘密裏に346プロが追い詰められていると判断して常務に自分が探った情報を与え
常務が予定より早く346の核心に気付き346プロはまんまと密告されてしまったのです。

だから幸子が智絵里のことを話していなければ346が捜査されずまゆも今まで通り静観し、常務が真実を知ることも無かったと思います。
346が常務の密告を防げなかったのも「自分たちが与えた表向きの情報だけで常務が密告に踏み切るわけがない」と油断していたからです。


ちなみに常務は幼少期から美城が喰種と関わっていることを知っていましたが、346は喰種に手を差し伸べ輝かせる優しい場所と教えられており
まゆに推理を披露されるまでは「喰種は生まれ方が違うだけで輝く権利はある」と346の在り方を肯定していました。めちゃくちゃピュアでした。
故に真実を知った時はマジギレして内部告発に踏み切りました。多分ちょっと泣いてた。イメージはヘルシングで吸血鬼化実験知った時のペンウッド卿。

あとアメリカでは経営を学んでいただけで、本格的に喰種に関わったのは帰国してからのことでした。


前常務については特に考えてません。
たぶん他の幹部と同じように喰種が勤めていて、普通に346に協力している他の企業とかに異動したんじゃないかな。
258 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/09/24(日) 18:36:17.77 ID:INFh10i60
>>257
>>256ではないけど乙です

アニメでの美城常務のあの性格を考えたら後に弱みを握られたところで告発に踏み切りそうな気がする
今後美城常務が奏たちと再会することはありますかね?
奏との関係性は良好だったように見えるけど
259 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/24(日) 20:52:08.11 ID:GqKxECQN0

〜渋谷家〜


渋谷父「……持っていくものはこれで全部か」

渋谷母「凛ー? 準備できたー?」

凛「…うん。荷造りはもう終わってるよ」

凛「行こっか、ハナコ」



渋谷父母「「……」」


渋谷父「……凛」

凛「どうしたのお父さん?」


渋谷父「お前も知ってる通り、この車にはちゃんとカーテレビが内蔵されてる」

渋谷父「だから、卯月ちゃん達のライブ放送を見ることも出来るんだが……」


凛「……別にいいよ。見ない」

凛「……見ると、辛くなるから」

凛「もう会えるかどうかも分かんないしね」


渋谷父「……そうか」
260 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/24(日) 20:53:05.26 ID:GqKxECQN0

凛「……ごめんなさい」

父母「「?」」


凛「私が……アイドルになりたいって言わなかったら」

凛「こんな風に、夜逃げしなくても済んだのに」


渋谷父「……そんなことは」



渋谷父(――そんなことはない、と言いたかった)

渋谷父(――凛がアイドルになると決めた時から……すべてを捨てる覚悟はできていた)

渋谷父(――家も、仕事も、妻も……私の命も)

渋谷父(――妻も同じだ)


渋谷父(――退屈な世界を押し付けていたことに、ずっと悩んでいた)

渋谷父(――だが娘は、そこから一歩を踏み出すきっかけを掴んだ)

渋谷父(――それは私にとって、とても嬉しい事だった)


渋谷父(――娘が笑顔でいてくれるなら、それで良かった)



渋谷父(――だが……本当に、私は私が情けない)

渋谷父(――今まで信じていた物の真実を知って絶望する娘に、かける言葉が見つからない)
261 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/24(日) 20:53:35.05 ID:GqKxECQN0

渋谷父(――このままでは、凛はきっと後悔をひきずって生きていく)

渋谷父(――私は、父として親として、この子の傍にいてあげることしかできない)

渋谷父(――だが―――――)



「……あ、あのー………」

「もしかして、今出るところ……だった?」


渋谷父「……?」

渋谷父「!」


渋谷父「君は……!!」



凛「……未央?」



未央「……どうも! しぶりんにしぶりんのお父さんお母さん、みんなの未央ちゃんです」


未央「テレビ見れるところが見つからなくて、いけたらしぶりん家で放送見せてもらおうかなって、思ってたんだけど……」

未央「……そう、だよねー。そんなヒマなかったですよねー」
262 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/24(日) 20:54:03.07 ID:GqKxECQN0

渋谷父「……!」

未央「…じゃ、家族に水いれるのも悪いし、未央ちゃんはこれで……」


渋谷父「待ちなさい」


未央「は、はいっ!?」


渋谷父「……家でテレビを見せてあげることは出来ないが、車にもテレビはついている」

渋谷父「家庭の事情は、凛から聞いている」



渋谷父「あと一人くらいは乗れるから、未央ちゃんも一緒に逃げよう」



渋谷父「卯月ちゃんも一緒だ。楽しい逃避行にしよう」



――――――――――――――――――――
263 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/24(日) 20:55:05.67 ID:GqKxECQN0

――――――――――――――――――――





「…………」





「……」スッスッ



三条馬『目標1、渋谷家が車での移動を開始しました』

三条馬『目標2、本田未央も同乗しています』


黒井『報告御苦労。車種とナンバープレートは確認したか?』

三条馬『ナンバープレートを識別できる写真を撮影しました。添付します』

黒井『確認した。別動隊のヘリに追跡させるから、三条馬一等は報告に従って先回りしろ』

黒井『私も「潰し」を終わらせてから合流しよう』

三条馬『承知しました』


北斗『黒井上等。これ本当に向こうにはバレてないんですか?』

黒井『ああ。勘は当たっていたようだな』

黒井『丸井のやつに連絡をとったが、346がこっちに向かう様子はない』


黒井『シンデレラプロジェクトのクズどもやその親は、最早スケープゴートとして扱われている』

黒井『その他のアイドルごっこをしている喰種どもを確実に逃がすために、二十にも三十にも手を打っているな』

黒井『スタジオの小娘共はともかく、その親にまで見張りをつける気はなかったようだ』

264 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/24(日) 20:57:07.86 ID:GqKxECQN0

冬馬『なあオッサン』

黒井『どうした冬馬』

冬馬『このLINEでの連絡、今すげー辛いんだけど』

翔太『冬馬君、話聞いていなかったの?』

翔太『音声通信は感覚に優れた喰種に聞かれる危険があるから出来ないってクロちゃん言ってたじゃん』

冬馬『それは分かってるよ!』

冬馬『そうじゃなくてだな、周りの野郎どもの視線が痛いんだよ! この時間になってもまだスマホ弄ってるから!』

北斗『耐えろ冬馬。マナーより任務だ』

翔太『僕らには関係ないもんね〜♪』

冬馬『翔太てめえ!』


三条馬『まあまあ……マナーが悪くて目立ってもダメだし、早く作戦の最終確認に移りましょう?』

三条馬『3人の待機場所の確認だけど』

三条馬『翔太君はCP楽屋付近、北斗君は舞台裏、冬馬君は観客席よね?』

翔太『うん』

北斗『はい』

冬馬『おう』

三条馬『ちなみに、北斗君に確認とるけど……今3人の保護は出来る?』

北斗『いえ、無理ですね』

北斗『エンジェルちゃんたちの担当Pが離れないので、ライブ前の強行突破は危険かと』

北斗『やっぱり作戦通り、放送終了後を狙うしかなさそうです』

三条馬『了解』

三条馬『翔太君はまだ待機ね、強襲は出演組と楽屋組同時にやるから』

翔太『おっけー』

三条馬『そして冬馬君は、何か舞台に変わったところはある?』

冬馬『ねえな。予定通り放送が始まるみてえだ』

冬馬『で、俺のやることはライブ出演組が何か変わった動きをしてねえか見張る』

冬馬『放送が終わったら北斗と合流』

冬馬『その頃には北斗が小日向美穂、二宮飛鳥、木村夏樹3人の人間を保護してるはずだから』

冬馬『俺は残った出演組を死なねえ程度に痛めつけて確保……だろ?』

三条馬『よろしい!』

翔太『楽屋組は殺していいんだよね?』

黒井『遠慮はいらんぞ。証言を引き出すのは出演組の数人でいい』

黒井『1対多のハンティングはお前が最も得意とする戦闘だからな』

三条馬『運よく生き残った喰種がいたら、それは確保しておいてね』

翔太『りょうかーい』
265 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/24(日) 21:01:18.74 ID:GqKxECQN0

冬馬『作戦の確認も終わったし俺は切るぞ』

冬馬『放送が終わる8:55に一回メッセージを確認するから、何か変更があるならそれまでに言えよ』

北斗『了解』

翔太『ライブ楽しんでね〜♪』

冬馬『ふざけんな。喰種のライブなんか楽しめるわけねえだろ』

北斗『魅了されるなよ☆』

冬馬『しねえよ。喰種はお袋の仇だ。放送が終わり次第あいつらの全てをぶっ壊してやる』

黒井『フン、それくらいのやる気を持ってくれなければ困る』


黒井『では武運を祈る』



――――――――――――――――――――


冬馬「……」ブツッ

冬馬「すまん、悪かった。ほら電源切っただろ、こっち見んな」

冬馬「……」


冬馬(――お袋は)

冬馬(――お袋は何も悪くねえのに、喰種に喰われて死んだ)

冬馬(――その日から俺は決めた)

冬馬(――何年かけてでも、喰種共を一匹残らず駆逐してやるって)


冬馬(――俺の才能を見抜いて、鍛えてくれた黒井のオッサンには)

冬馬(――上に取り計らって俺みてえな子供を特別入局させてくれたオッサンには感謝してる)

冬馬(――おかげで一人の戦力として、こうして作戦に参加できた)

冬馬(――本当は討伐戦で活躍したかったが、贅沢は言わねえ)


冬馬(――俺はこの場で、一人の喰種捜査官として)

冬馬(――正義を執行する)
266 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/24(日) 21:01:48.43 ID:GqKxECQN0

冬馬(――喰種は一匹残らず駆逐すべき敵だ)


冬馬(――神崎蘭子、多田李衣菜、アナスタシア)

冬馬(――そして、島村卯月だったか)


冬馬(――『笑顔の橋』だと? くだらねえ)



冬馬(――俺が)


冬馬(――喰種なんかに)



冬馬(――笑顔なんかに、絶対に魅了されたりなんかしねえ―――――!!)



――――――――――――――――――――
267 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/24(日) 21:03:55.94 ID:GqKxECQN0

今日はここまで。DAYS OF Jupiter面白いよ(宣伝)。ジョバちゃんかわいい

>>258
再会させるかどうかはちょっと迷ってます
外伝が終わってから常務の出番を作れるかどうかによりますね
268 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/25(月) 12:26:55.29 ID:fCJXkzH7O
これは魅力されますわ(確信)
269 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/25(月) 17:53:44.44 ID:w/Ci7sMw0

――――――――――――――――――――



卯月「美穂ちゃん! おまたせ!」

美穂「あっ、卯月ちゃん! 衣装すごく似合ってるよ!」

卯月「ほんと? えへへ、ありがとう!」



卯月(――小日向美穂ちゃん)

卯月(――会った時は尊敬する先輩で、今は大切な友達)

卯月(――最初はたしか……)


卯月(――そうだ)


卯月(――デビューライブのときに、アドバイスをもらったんだ)



卯月(――凛ちゃんと未央ちゃん)

卯月(――ニュージェネレーションズで出た、デビューライブのとき)
270 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/25(月) 17:55:10.84 ID:w/Ci7sMw0

卯月「……」

美穂「? どうしたの卯月ちゃん?」

卯月「…うん、ちょっとね。未央ちゃんと凛ちゃんのこと思い出してて……」


美穂「そういえば今日は二人とも来てないんだね。具合が悪いの?」

卯月「うん……今日は、えーと……体調不良で、応援に行けないって」

美穂「そうなんだ……残念だなあ。今日の卯月ちゃんを2人にも見て欲しかったのに」

卯月「……ううん、大丈夫! 二人ともテレビで見てくれてるって信じてますから!」

美穂「! そっか! じゃあテレビの向こうで応援してくれてる二人のためにも頑張らなきゃね!」

卯月「はい!」



卯月(――『このまま終わりたくない』って、言ってたんです)

卯月(――いちど挫折したとき、未央ちゃんが、凛ちゃんが)

卯月(――"喰種"に生まれたことに、負けそうになったけど)

卯月(――まだアイドルやめたくないって、言ってたんです)



卯月「―――プロデューサーさんっ!」

武内P「はい。島村さん」


卯月「私っ……プロデューサーさんにアイドルにしてもらえて」

卯月「本当に嬉しいですっ! 本当にありがとうございますっ!」

卯月「だから私がもらったもの……ここで全部だして」


卯月「みんなに、笑顔になってもらってきます!!」


271 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/25(月) 17:55:54.99 ID:w/Ci7sMw0

卯月(――そして、サマフェスのとき)

卯月(――私達に、ファンレターが届いたとき)


卯月(――未央ちゃんは、泣きながら笑ってました)


卯月(――『アイドル、やめなくて良かった』って)


卯月(――泣きながら喜んでくれたんです)



卯月(――今は、凛ちゃんも未央ちゃんも)

卯月(――大切な友達を失って、すごく苦しんでます)

卯月(――でも、それで今までを否定してほしくないから)


卯月(――あの時の気持ちを忘れてほしくないから)

卯月(――また、あの時みたいに笑ってほしいから)


卯月(――だから、私も今日、笑顔で)


卯月(――たとえ最後のライブになっても、最高の笑顔で)


卯月(――歌って、踊って見せます)



P「はい。最後まで、ちゃんと見ています」


P「いってらっしゃい」

卯月「いってきます」



卯月「―――島村卯月、頑張ります!!」



――――――――――――――――――――
272 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/25(月) 17:56:31.60 ID:w/Ci7sMw0

――――――――――――――――――――





「きいてください」





「「「 Take me☆Take you !!!!!!! 」」」





――――――――――――――――――――
273 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/25(月) 17:57:01.45 ID:w/Ci7sMw0

――――――――――――――――――――



冬馬「……!?」


冬馬(――今出てるアイドル9人のうち、誰が"喰種"で誰が人間なのか)

冬馬(――俺はちゃんと、確認していたはずだった)

冬馬(――気を抜くつもりは無かった)

冬馬(――だが、見ればわかると思っていた)

冬馬(――人間と、醜悪な"喰種"の違いなんて)



冬馬(――だから俺は、目を疑った)



冬馬(――見分けがつかなかったんだ)

冬馬(――"喰種"どもの、特に島村卯月の)


冬馬(――そいつらの浮かべる笑顔が、あまりにも)

冬馬(――隣で人間が浮かべてるはずのそれと、全く変わらないくらい)



冬馬(――目を奪われるような、心を握られるような笑顔だったんだ)



――――――――――――――――――――
274 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/25(月) 17:57:41.95 ID:w/Ci7sMw0

〜渋谷家 車内〜


未央「……ほら、見なよしぶりん」

凛「うん」

未央「しまむーは変わらないなあ」

凛「……うん」


凛「出会った時と変わらない」



凛「すごく綺麗な笑顔だよ、卯月」



凛「……最後に、見れてよかった」


――――――――――――――――――――
275 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/25(月) 18:01:04.02 ID:w/Ci7sMw0

今日はここまで。

ここで歌わせる曲はススメ☆オトメかtmtyか迷ったのですがtmtyにしました。

tmtyは歌詞のいくつかが喰種にとってすごく響く歌だと思うのです
276 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/09/25(月) 21:47:04.29 ID:Z45gPPLi0
乙です!

いよいよという感じですね
本編に出てきたクインケ「シマムラ」があるから卯月の言葉が辛い
あれは実は卯月ではなく卯月の家族かもしれないけどそれはそれで
アイドルのみんなには極力1人でも多く生き延びて欲しいし、
特に人間のアイドルにはこれ以上犠牲になってもらいたくない
そして346プロの職員とありすの母親には相応の因果応報を

期待しています!
277 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/26(火) 17:21:25.97 ID:wXlrPCRN0

――――――――――――――――――――





そして、幻想の壊れる時が来る





――――――――――――――――――――
278 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/26(火) 17:26:15.71 ID:wXlrPCRN0

〜346プロダクション本社付近 『キャッスル』殲滅部隊〜


望元「ンン……橘ボーイ」

望元「結局、ワイフと市原レディは今回の作戦に参加しないんだね?」

実「ええ。妻の役目は終わりました、これ以上美樹に仕事を押し付けるわけにはいきません」

実「あとの実戦くらいは、夫の私がやらないと」

望元「エクセレンッ! 妻想いのいい夫じゃないか、だが生き残って初めてよきハズバンドとなりパパとなるのだ」

望元「それを忘れちゃいけないよ」

実「ええ。分かっています」


実「ありすのためにも、生きて346プロを……『キャッスル』を殺しつくします」



ザザッ


丸手『田中丸特等。伊集院二等から連絡が来ました。8時55分、予定通り放送が終わったようです』

丸手『あとは向こうの要求通り……』


望元「ナイスジョブ伊集院くん! と伝えておいてくれ!」

望元「確かこの後は、『346プロ所属のプロデューサー4匹が帰還するまで待て』だったね?」

望元「そしてマンキー4匹が本社に入ったのを確認次第……」


丸手『はい、作戦開始です。帰ってこなかった場合は黒井達に任せて作戦決行します』


望元「OK! それと偵察隊からの報告も受けているよ!」

望元「奴等の資料に記載されている346プロ職員は、例外を除いてほぼ全員、今日までに346プロに入ってから一切外出していないようだ」

望元「数日の偵察の間、本社には徒歩で進入し、その際なにかおかしいものを運搬している様子もなかった」

望元「大人しく狩られに戻って来たのは確かだね」

丸手『例外ですか? 俺は聞いてないんですけど、4人のプロデューサー以外にも誰か戻ってきてない奴がいるんです?』

清子「『今西』という男と『佐久間まゆ』の担当プロデューサーよ」

清子「この2匹と佐久間まゆは美城常務の密告前から姿を消して、一度も本社に戻ってきていないわ」

清子「例外はそれだけね」

丸手『誰だよ報告サボりやがったの……まあいいか、後だ後』

丸手『346の周辺組織は既にマークしてる……プロデューサーや役員ひとりでどうにかできるとも思えませんし』

丸手『そいつらは無視して作戦を進めます』

清子「了解」
279 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/26(火) 17:28:39.16 ID:wXlrPCRN0

――――――――――――――――――――


丸手「……」

丸手(――あと1分で9時か)

丸手(――くそっ)


丸手(――キャッスルの奴等の思い通りにことが進んでるからか)

丸手(――どうもイライラしてきやがる)


丸手(――いや、それだけじゃねえ)

丸手(――何だこの……何か見落としてるような感覚は)

丸手(――まだ奴らが、何か切り札を隠してるような……)


丸手(――大体、何かおかしくねえか)

丸手(――奴等は資料にこう書いてた)

丸手(――『アイドルを確実に逃がすため、人間と喰種を混ぜこぜにして避難させる』と)

丸手(――こんなもの、簡単に対処できる)


丸手(――一旦アイドルを逃がした後で『喰種の疑いがあるからRc検査するぞ』と日本全国に散らばったアイドル共へ通達すりゃ済む話だろうが)

丸手(――無実なら出てくりゃいい、わざわざ"喰種"と勘違いされて殺されたい人間がいるはずもねえ。いるとしたらよっぽどのバカだ)

丸手(――所属アイドル183人の名簿くらいどこからでも手に入る)

丸手(――来た奴は人間、で検査に来なかったアイドルを"喰種被疑者"として捜査すればいい)

丸手(――喰種を庇うやつも出そうだが、全員ってわけでもねえだろう。証言を引き出すことも不可能じゃない)

丸手(――時間がかかるのは変わらねえだろうが、それでも確実に捜査は進む)


丸手(――こんなもの、一時しのぎにしかならねえ筈だ)



丸手(――346プロは老舗だ。今まで俺達の目を逸らしてきた奴らだ、それぐらい分かってるはず)

丸手(――じゃあ何でこんな穴だらけの方法を……)


ザザッ



『―――えー。マイクテス、マイクテス』

『会場にお越しのみなさーん。こーんばーんはー!』


丸手「……あ?」

丸手(――放送? どこからだ?)


丸手(――346プロのスピーカーからか!?)
280 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/26(火) 17:31:30.18 ID:wXlrPCRN0

『本日は346プロダクションにお越しいただき、誠にありがとうございます』

『私、事務員の千川ちひろと申します』

『「笑顔の橋」のライブ放送は見ていただけましたかー?』

『とっても素敵な舞台でしたね!』


実「……千川ちひろ?」


『喰種対策局の皆さん』

『本日まで私達の準備を待っていただき、本当にありがとうございました!』

『おかげでアイドルの皆さんの避難もほぼ無事完了しました!』

『感謝感激です! ゆかりちゃん達の苦労も報われるというものです!』


宇井「……どの口が……!!」ピキ


『……ところで』



『お察しの良い捜査官……たとえば、対策U課の方はお気付きかもしれませんが』

『実は私達のやり方、結構な穴があります』

『人間と喰種を一緒に逃がしても、検査の通達をして人間を呼び戻せば』

『検査に来なかった子は"喰種"って分かっちゃうんですよね』

『もちろん、来ないでくれる人間の子がいないとも限りませんが……』


丸手(――気付いてる?)


『……そ、こ、で!』

『346プロダクションの先輩方は、本社にある改装を施しました!』


『知ってましたか? 346プロの地下にはたくさんの部屋や通路があること』

『皆さんが突き止めた「保管所」だけでなく、あらゆる建物への抜け道が存在することを』


丸手(――抜け道!?)


『ああいえ、職員の我々は一人たりとも逃げてませんよ?』

『……失礼。まゆちゃんのプロデューサーと今西部長は例外ってことで』

『ただ、ここ数日は「あるもの」を運ぶためにこの地下通路を利用していました』


『何を運んでいたか、分かりますか?』
281 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/26(火) 17:32:32.52 ID:wXlrPCRN0

丸手(――まさか)


丸手「……おい。大至急、本局に待機させてる戦力でもう一個部隊を編成しろ。任務は潜入と救助だ」ザザッ

丸手「あ? いきなりすぎる? うるせえぞ緊急命令だっつってんだろ!」

丸手「そうだよ、救助用の部隊だ!」


丸手「あいつら……最初から『見逃す』気なんか無かったんだよ」



『実はですね。その346の地下通路が繋がってる建物、ちょっとしたゲストが来ておりまして』

『私達はゲストを捕まえて、地下から346に戻ってもらったわけです』

『ああ、ゲストって言い方じゃ分かりづらいですねごめんなさい』

『要するに、「人質」ってことですよ』


『ほら。皆さんにご挨拶してあげてくださいよ』



『関裕美ちゃん?』


282 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/26(火) 17:33:21.77 ID:wXlrPCRN0

「「「―――――!!!」」」



裕美『っ……やだっ! 離して! 触らないでっ!』


『分かりますよね?』

『そう。避難したはずの関裕美ちゃん本人です』

『この子だけは正体を話しておきますが……ちゃんと人間ですよ?』

『検査していただければ、私の言っていることが本当だと分かってもらえるはずです。……まあ』


『生きて取り戻せれば、の話ですけどね』


実「……まさか、他にも」


『そう! 今「まさか」と思っていただけた方は大正解です!』

『私達はロケと称して人間、喰種問わず指定した建物に向かってもらいました』

『そして関ちゃんのように、こちらの方々だけを捕まえて……こっちに連れ戻した』



『ですよねえ!』パチンッ





『―――人間アイドルのみなさん!!!』




283 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/26(火) 17:37:43.50 ID:wXlrPCRN0

ザザッ



『ンーっ!』


『ンウー!』


『むっ……うー、うー!』


『んむー!!』





『喋られては困るので、猿轡ごしの御挨拶となりましたが!』

『こちらでもがいていらっしゃる方全員、当346プロダクションの人間アイドルとなっております!』

『その数、実に50匹以上! そちらで保護されていないほぼ全員です!』

『誰が人間アイドルかまではお話できません! だって目的に反してしまいますから!』


『ん? 目的は何ですって……? よくぞ聞いてくれました』

『目的は3つ! 口封じ、あなた方喰種捜査官の殲滅、そして目くらまし!』


『まず検査で呼び出した人間アイドルにシンデレラのことを喋られては困るので、口封じに殺します』

『次に、我々は人質を取っており……ついでに報道ヘリも呼ばせてもらってます』

『つまりここで逃げれば……CCGは人質を見捨てたクズとしてニュースに載る!』

『そうしてこの子達を取り返すしかなくなったあなた達を、我々がホームで迎え撃ち殲滅する……これが二つ目』

『100%とはいかないでしょうが、大打撃を与えることはできるでしょうね』


『そして3つ目の目くらましですが』

『これが関ちゃん以外の名前を出せない理由です』

『我々は最終的には、人間アイドルの皆を!生きたまま!残さず!食べてしまいます!!』

『私達の胃袋に収まってしまえば、それがどのアイドルだったかまでは分からない……』

『そうして残ったシンデレラたちが行方をくらましてしまえば、誰を追えばいいかすら分からなくなる……』


『最高の夜明けになりますよね!』
284 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/26(火) 17:44:49.10 ID:wXlrPCRN0

『さて、前置きはここまでにして―――――』

『とりあえず、あなた方には1時間あげましょう』

『こちらの時計で午後10時になったと同時に、まずは関ちゃん含む4人をいただきます』

『あとは、夜明けちょうどに全員平らげられるようペースを調整して人間アイドルを食べていきます』

『そうならないためにも! 捜査官の皆さんは死ぬ気でかかって来てください!』


『迎え撃つは我が346プロ自慢の一級・準一級プロデューサー、またまた50名以上!』

『少ないと思いますか? いえいえ、その分実力は保証しましょう』

『なにせ一人一人が最低SSレート! すくなくとも特等単体と互角に渡り合える猛者の方々です!』

『でも100人もいないのは確かですからねー……もしかしたら勝てるかも知れま』ズレロオォォ


裕美『ひいっ……やっ……嫌っ……!』ズリュゥ


『……あー、失礼しました。今のは一級Pのひとりが耐えきれず関ちゃんの丸いやつを舐めた音です』

『よりにもよって舐めるのがそこですか……流石に引くわぁ……』


『じゃあ、気を取り直しまして』

『大事な人間アイドルが殺されないように、頑張って戦ってくださいね!』

『では……これより「最終隠匿プロトコル」を開催いたします』


『会場の皆さんが素敵な魔法に包まれますように』ブツッ


――――――――――――――――――――
285 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/26(火) 17:45:21.10 ID:wXlrPCRN0

――――――――――――――――――――


丸手「っ好き勝手言いやがって……!!」ビキビキ

望元『……どうする、丸手ボーイ? 私は奴らへの怒りで自慢のヘアスタイルが爆発しそうだ』

丸手「…『死んでもいい優秀なヤツ』で隊を組み、346本社へ先行させてください」

丸手「最大でも死者が隊の2割を切ったら帰還、こっちで相手の戦力と攻略法を割り出します」

望元『分かった。では私が隊長を務めよう、実ボーイとは違って独身だからね』

丸手「頼みます」ブツッ


丸手「……てめえらの思い通りにいくと思うなよ……!?」ギリギリ


――――――――――――――――――――


ちひろ「……ふう」プツッ


ちひろ(――さてさて始まりました『最終隠匿プロトコル』)

ちひろ(――とりあえず、ここまでは予定通りですね)


ちひろ(――一級Pの皆さんは、自分の担当アイドルを守るために喜んで仕事してくれる)

ちひろ(――準一級Pの皆さんについては担当アイドルを、たとえ人間であっても例外として本当に避難させている)

ちひろ(――『準一級Pの担当する人間アイドルは、例外として財産の候補および最終隠匿プロトコルの殺害対象から除外する』)

ちひろ(――個人的には癪だけど、それが準一級Pの正式な権利であり人間に惚れたPの反逆を防ぐための策だから大目に見ましょう)

ちひろ(――その条件を飲む以上、担当外の人間アイドルには我関せずでプロトコルに協力してくれますしね)
286 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/26(火) 17:48:18.17 ID:wXlrPCRN0

ちひろ(――そして人間アイドル担当の、二級Pは―――――)



乙倉P「―――出せ! ここから出せえ!!」

ビートシューターP「聞いてないぞこんなの! 話と違うぞ!」

響子P「言ってたじゃないか!『最終隠匿プロトコル』の時は人間アイドルも一緒に逃がすって!!」

GBNSP「さっき裕美のこと舐めやがったクソ野郎出せコラア!! ぶっ殺してやる!! その舌引っこ抜いて口の中串刺しにしてやる出てこいオラア!!」

メロイエP「……」

セクギルP「……」



ちひろ(――彼らは所詮、精々Aレートの弱い喰種から選んだ方達)

ちひろ(――カモフラージュのため探させた人間に情がうつり、惚れこんで全てを捧げる喰種が出るのはいつの世も同じ)

ちひろ(――でも、この世は弱肉強食)

ちひろ(――勝手を振る舞えるのは強者の権利)

ちひろ(――二級Pを捕らえて一か所に放り込むのも、一級Pなら容易くできる)


ちひろ(――彼らがどれだけ人間を愛しても)

ちひろ(――その脆い爪は私達には届かない)
287 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/26(火) 17:49:51.61 ID:wXlrPCRN0

ちひろ(――すべて計画通り)

ちひろ(――ただ懸念があるとすれば)



ちひろ(――『隻眼の喰種』、高垣楓の乱入)



ちひろ(――彼女には特別遠くへと避難してもらった)

ちひろ(――だけどもし、楓さんがこの中継を見ていたなら)

ちひろ(――楓さんが、気まぐれで人間アイドル達を助けようと思い至ったなら)

ちひろ(――何の対策も無ければ、少なくとも日が変わる前に)

ちひろ(――かつての『隻眼の王』が降臨して、状況はひっくり返される)

ちひろ(――作戦は確実に潰される)


ちひろ(――この状況を予想して、近くで待機していないとも言い切れない)


ちひろ(――彼女に対抗できるのは、私達の側で彼女を封殺できるのはただ一人)


ちひろ(――高垣楓の到着に、『彼』が間に合わなければ全て終わる)



ちひろ「……だから、あまり余裕が無いんです」


ちひろ「はやく『お仕事』を終わらせて帰って来てくださいね……?」



ちひろ「プロデューサーさん」



――――――――――――――――――――
288 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/26(火) 17:51:11.17 ID:wXlrPCRN0

一旦ここまで。

まゆPが人間だという訂正を一切していないのは単なるちひろの嫌がらせです。
289 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/26(火) 18:13:10.46 ID:Lo9MI3+GO
フリスクは無事で良かった(震え声)
劇場型犯罪者グールって原作だと思い当たらないから新鮮
ピエロはただの享楽主義だし
290 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/26(火) 19:13:51.89 ID:Lo9MI3+GO
このちっひなら爆弾とか地雷も躊躇なく使いそう
アニメグールでアオギリがやってたみたいに

そもそもこのプロデューサー達もスタドリエナドリで無限回復しそう
291 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/26(火) 23:01:18.52 ID:wXlrPCRN0

〜同日午後8時57分 TOKYO MIX スタジオ出口〜


武内P「―――これで、本日のお仕事は終了です」

P「皆さん、本当にお疲れさまでした」

「「「ッ……」」」

美穂「お、お疲れさまでした! 来年のライブも頑張りましょうね!」

飛鳥「ああ、お疲れ様。初めて蘭子と立った舞台だが……愉しかった」

飛鳥「ライブ本番では何が見れるか、期待してるよ」

夏樹「アタシも今日は全力を出し切った!」

夏樹「……楽しかったぜ、だりー。皆もな」


蘭子「……!!」

蘭子「我が友っ……プロデューサー……飛鳥ちゃん……!」タッ


グイ


李衣菜「…ダメだよ、蘭子ちゃん。もう皆全力でライブして、疲れてるんだから」

李衣菜「あの、プロデューサー! 今日は本当にありがとうございました!」

李衣菜「なつきちも! 今日はすごく楽しかった!」

李衣菜「……」


李衣菜「……またねっ!」


夏樹「!」

夏樹「……ああ。アタシが紹介したバンド、ちゃんと聴いとけよ?」

李衣菜「うんっ!」


アーニャ「……行きましょう、ランコ」

アーニャ「プロデューサー」

P「はい」

アーニャ「やみに、のまれよ!」パッ

P「!」

アーニャ「……ほら、ランコも。挨拶、しましょう」

蘭子「アーニャ、ちゃん……」


蘭子「っ……我が友よ。そして共鳴者よ」

蘭子「我が授かった翼はいずれ進化をとげ、この世界を支配するものとなろう」

蘭子「それまでしばし別れの時ッ!」


蘭子「―――闇に呑まれよ!!」


P「……ええ」

P「私の翼を、あなたに授けます」

P「アナスタシアさんにも。もちろん、多田さんにも島村さんにも、アイドルの皆さんすべてに」


飛鳥「……? 別れの時とは、随分と変な例えをするな」

飛鳥「まあいい。君の翼の進化とやら、楽しみにしているよ」ニヤ
292 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/26(火) 23:01:47.05 ID:wXlrPCRN0

卯月「プロデューサーさん」

卯月「本当に、本当に……ありがとうございました」

P「こちらこそ」

P「……」


P「とても素敵な、あなただけの笑顔です」

P「どうか忘れないでください」


卯月「はいっ!」


卯月「美穂ちゃんも……またね!」

美穂「うん! またね!」


P「……それでは」

P「私は本社に戻ります。シンデレラプロジェクトの皆さんは、新田さんと城ヶ崎美嘉さんのご指示に従って移動してください」

「「「はいっ!」」」



李衣菜(――私達は"喰種"だってバレちゃいけないから)

李衣菜(――お別れの時に、泣くことは出来なかった)

李衣菜(――これで、プロデューサーとはお別れ。なつきちとも)

李衣菜(――プロデューサーとは、もう二度と会えなくなるかもしれない)


李衣菜(――でも)

李衣菜(――私、頑張りますよ。頑張りますから)

李衣菜(――プロデューサーからもらったもの、346プロでもらったもの、全部持って)

李衣菜(――前に進んでいきますから)

李衣菜(――だから……メソメソしてるなんて、ロックじゃないよね!)


李衣菜「……行こっか。みんなが待ってる」


李衣菜(――また会おうね、なつきち)

李衣菜(――また二人で組んで……)

李衣菜(――どこかにいるかも知れないプロデューサーに、今度は私達の歌を届けるんだ)


――――――――――――――――――――
293 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/26(火) 23:02:15.14 ID:wXlrPCRN0

――――――――――――――――――――


P「……さようなら」


美穂「え? 何か言いましたか?」

P「いいえ。ただの独り言です」


P(――シンデレラプロジェクトのプロデューサー)

P(――その仕事は、今終わった)

P(――最後に、皆さんの笑顔を見られてよかった)

P(――本当は、全員に登場してほしかった)

P(――……)


P(――せめて)

P(――私の事は恨んでくれていい)

P(――ただ、あの笑顔が……渋谷さんと本田さんの元へと、届いて欲しい)


P(――それだけは、願わせて欲しい)



P(――あとは)

P(――皆さんの命を守るため)


P(――ひとりの"喰種"として、仕事をするだけだ)
294 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/26(火) 23:04:25.22 ID:wXlrPCRN0

P「小日向さん。二宮さん、木村さん」

P「本日のライブに協力していただいた皆さんに、担当プロデューサーからお伝えしたいことがあるようです」

P「機密事項のため、下の防音設備が整った収録スペースを借りています」

P「皆さんのプロデューサーには、私も連絡事項がありますので……どうかそちらで待機していてください」


飛鳥「? そうなのかい?」

美穂「わ、分かりました」

夏樹「! ……分かった。待ってるぜプロデューサー」


美穂P「?」

飛鳥P(――なんだ? 機密事項?)

夏樹P(――そんなの予定にないぞ。たしかこの後は、4人そろって346に戻るんじゃ……)

美穂P(――このまま何も言わずに別れるつもりだったんだけどな)


P「担当プロデューサーの方々は、こちらに」


――――――――――――――――――――


美穂P「……なあ、シンデレラプロジェクトの担当さん」

美穂P「もしかして俺達に気を遣ってくれたのか?」

夏樹P「! 最後に正体を明かす時間と場所をくれたってことか?」

武内P「……」

夏樹P「だったら余計なお世話だぞ。罪滅ぼしのつもりかもしれないが、別に346を恨んでるわけじゃないしな」

飛鳥P「同感。今まで犠牲になった子達のことは悲しいけど……結局は担当アイドルに関係のないことだ」

美穂P「俺達は別れを言う気も秘密を話す気もないよ。美穂をこっちの事情に巻き込みたくない」

武内P「……」



武内P「余計なものかどうかは」
295 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/26(火) 23:04:58.39 ID:wXlrPCRN0







「あなたたち『弱者』が決めることではありません」






296 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/26(火) 23:06:19.60 ID:wXlrPCRN0

〜TOKYO MIX 収録スペース〜


美穂「言われるままに来ちゃったけど……」

飛鳥「プロデューサーの話って何だろう?」

夏樹「……」


夏樹「……アタシもよくわかんないけどな」

夏樹「ただ、今のうちに思い出しておいた方がいいんじゃないか」

夏樹「プロデューサーと出会って、一緒に歩いてきた道を」


美穂「プロデューサーさんと?」

飛鳥「おいおい……君も何を言うんだ、夏樹さん?」

飛鳥「まあ、初めて出会った時のことは思い出しておくにこしたことはないが……」


ガチャ


飛鳥「おや。噂をすれば」





ギイイイイイイイ


美穂「プロデューサーさん!」

美穂「あの、お話って一体……」

美穂「……え?」


美穂(――少し時間が経って、待っていた防音ルームに入って来た人は)

美穂(――私のプロデューサーさんじゃなくて、卯月ちゃん達のプロデューサーさんでした)


美穂(――そして、何かがおかしいと思いました)


美穂(――心なしか、瞳が濁っているように見えました)

美穂(――まるで深い闇のように)


美穂(――目線を少し下にずらして、ようやく何がおかしいのかに気付きました)


美穂(――真っ黒なスーツに、なにか赤いものが飛び散っていたんです)


美穂(――これは、何?)
297 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/26(火) 23:06:45.42 ID:wXlrPCRN0

P「……本日は、シンデレラプロジェクトの皆さんにご協力いただき」

P「本当にありがとうございました」


P「……そして、申し訳ありません」ギョロ

P「皆さんには、CPの皆さんのために―――――」バキキ





P「今ここで、死んでいただきます」





――――――――――――――――――――
298 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/26(火) 23:11:59.50 ID:wXlrPCRN0

今日はここまで。

ユニットはモバやデレステに色々あるためどのユニットが同一のPに担当されているか全てをハッキリ決めているわけではないのですが、
とりあえず設定上フリスク、ブルナポ、KBYDの三つが準一級P担当の混合ユニットだと確定させています
299 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/27(水) 00:14:25.97 ID:MI53UYkP0

――――――――――――――――――――


李衣菜「……ふー」

李衣菜(――終わっちゃったなあ)

李衣菜(――346プロでのアイドル活動も)

李衣菜(――プロデューサーとのアイドル活動も)


李衣菜(――やっぱり、ちょっときついなあ)


≪―――9時になりました≫


李衣菜(――ん)


李衣菜「もう9時か、皆のとこに急がなきゃね」

アーニャ「シトー? リーナ…時間、分かるんですか?」

卯月「時計なんてありませんよね?」キョロキョロ

李衣菜「あ、そっか。これ聞こえるの私だけなんだ」


李衣菜「前に話したでしょ。私は周りより耳がいいみたいでさ」

李衣菜「たぶん、↑の部屋でテレビのアナウンスか何かが聞こえたんだと思う」

李衣菜「……あっ。今、何か中継やってるみたいで―――――」



≪―――えー。マイクテス、マイクテス≫

≪会場にお越しのみなさーん。こーんばーんはー!≫



李衣菜「……えっ?」
300 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/27(水) 00:15:25.20 ID:MI53UYkP0

蘭子「…李衣菜ちゃん?」

李衣菜「い、いや何でもないよ? ちょっとびっくりしただけ」

李衣菜「何か、ちひろさんのアナウンスが聞こえてきてさー」

李衣菜「おっかしいなー。私達が最後の仕事だって聞いてたけど、何やってるんだろね? あはははは」


≪―――ですよねえ!≫


≪―――人間アイドルのみなさん!!≫


李衣菜「は、はは……」


李衣菜「…は?」


李衣菜(――え、なにこれ)

李衣菜(――人質? 口封じ?)

李衣菜(――これって、今の346プロの中継ってこと?)

李衣菜(――『最終隠匿プロトコル』? 何の話をしてるの?)


李衣菜(――人間アイドルを全員……殺す?)


卯月「あの、李衣菜ちゃん? 皆のところに……」


李衣菜「……待ってよ」


李衣菜「なに、やってんの? ちひろさんも、プロデューサー達も」

李衣菜「アイドルみんなで避難するって言ってたじゃん」

李衣菜「なのに、人間アイドルだけ連れ戻したって……」

李衣菜「アイドルのみんなを食べる、って……?」

李衣菜「……!?」



李衣菜(――ニュースの内容がよく分からない私の耳に)

李衣菜(――今度は、別の声が飛び込んできた)

李衣菜(――くぐもった声だった)

李衣菜(――私は、こんな響き方をする音を知ってる)


李衣菜(――みくちゃんや未央ちゃんがレコーディングしてる時)

李衣菜(――外にいた私の耳には、ちょうどこんな風にくぐもった歌声が届くんだ)

李衣菜(――防音設備の整った部屋から、聞こえてくる時の声だ)


李衣菜(――でも、今聞こえてきた声は歌声なんかじゃなかった)

李衣菜(――なにかケガをしたときのような、叫び声だった)


李衣菜(――そして、声にも聞き覚えがあった)





李衣菜(――なつきちの声だった)




301 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/27(水) 00:16:33.23 ID:MI53UYkP0

ちょっとだけ追加。
302 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/27(水) 01:01:04.64 ID:cVOnZQ9L0
>>257
あー…ある意味常務も被害者だったんだな
常務が一番キツい立場になりそうだな地位があるだけに中途半端に逃げることも出来ず、一族の軋轢と財産が貰えなくなる喰種組織、それこそ生き残ってたら元職員にも狙われかねんし
とりあえず凛達から恨まれなさそうってことが分かっただけでもマシな気分だ
303 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/09/27(水) 02:38:16.30 ID:1tGEhWsV0
乙です!
平日なのにこんなに進めてくれて感謝

346プロは原作のアオギリの樹や嘉納や和修家や旧多が可愛く見えるレベルの悪逆非道っぷりだなぁ
かと言って原作同様CCGを応援出来るわけでもないというのがもどかしいところ
つまり楓さんの活躍に期待!
304 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/09/27(水) 04:05:45.08 ID:CuaCaAWJO
笑顔の橋などと綺麗事を宣いつつ人間のアイドルは利用するだけ利用して[ピーーー]武内Pのクズっぷりにはもはや草生えるわ

ちひろの言葉が本当なら346プロの戦力はCCGを余裕で越えてないか?
有馬ポジションの舞さんが無双でもしない限りは勝ち目無いよな
そしてSSSレートの楓に対抗どころか「封殺」出来るとの武内Pヤバすぎww
305 : ◆AyvLkOoV8s [sage]:2017/09/27(水) 23:19:43.90 ID:owAJtE020
今日はちょっと更新無理そうです。

>>303
大学生にとっては夏休み最後の1週間なのでいつもより気張って書けるだけ書いてますね!
今月中は無理かもしれないけど来週には完結できそうかなあ出来たらいいなあ
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