卯月「拝啓、忌まわしき過去に告ぐ絶縁の詩」【偶像喰種・外伝完結編】

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257 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/24(日) 07:04:46.29 ID:GqKxECQN0
>>256
常務の密告は完全に本人の独断ですね。
美城一族は喰種に協力している一族と説明しましたが、キャッスルやその他のあくどい事についてもズブズブに関わってます。真っ黒です。

常務の父親含むほかの美城一族は、
長い歴史の中で喰種と協力するうちに「人間を犠牲にしてでも喰種を輝かせる」思想に染められた狂人か
346プロに長く関わって弱みを握られたため密告したくても自分も罪人になってしまうため出来ない臆病者のどちらかであり
一族の中ではまともな価値観を持ちかつ特に弱みを握られていない常務の方が異端でした。

346プロはこういう「まともな人」が出ることも考慮して
常務には必要最低限の情報とプロデュースの権利(クローネ)だけを与え
仕事の中で常務の弱みを作ったあと裏の面を教え本格的な一族の仕事に加えるつもりだったのですが、

CCGが幸子を保護し智絵里や紗枝の情報を得て捜査した動きをまゆが察知し、秘密裏に346プロが追い詰められていると判断して常務に自分が探った情報を与え
常務が予定より早く346の核心に気付き346プロはまんまと密告されてしまったのです。

だから幸子が智絵里のことを話していなければ346が捜査されずまゆも今まで通り静観し、常務が真実を知ることも無かったと思います。
346が常務の密告を防げなかったのも「自分たちが与えた表向きの情報だけで常務が密告に踏み切るわけがない」と油断していたからです。


ちなみに常務は幼少期から美城が喰種と関わっていることを知っていましたが、346は喰種に手を差し伸べ輝かせる優しい場所と教えられており
まゆに推理を披露されるまでは「喰種は生まれ方が違うだけで輝く権利はある」と346の在り方を肯定していました。めちゃくちゃピュアでした。
故に真実を知った時はマジギレして内部告発に踏み切りました。多分ちょっと泣いてた。イメージはヘルシングで吸血鬼化実験知った時のペンウッド卿。

あとアメリカでは経営を学んでいただけで、本格的に喰種に関わったのは帰国してからのことでした。


前常務については特に考えてません。
たぶん他の幹部と同じように喰種が勤めていて、普通に346に協力している他の企業とかに異動したんじゃないかな。
258 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/09/24(日) 18:36:17.77 ID:INFh10i60
>>257
>>256ではないけど乙です

アニメでの美城常務のあの性格を考えたら後に弱みを握られたところで告発に踏み切りそうな気がする
今後美城常務が奏たちと再会することはありますかね?
奏との関係性は良好だったように見えるけど
259 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/24(日) 20:52:08.11 ID:GqKxECQN0

〜渋谷家〜


渋谷父「……持っていくものはこれで全部か」

渋谷母「凛ー? 準備できたー?」

凛「…うん。荷造りはもう終わってるよ」

凛「行こっか、ハナコ」



渋谷父母「「……」」


渋谷父「……凛」

凛「どうしたのお父さん?」


渋谷父「お前も知ってる通り、この車にはちゃんとカーテレビが内蔵されてる」

渋谷父「だから、卯月ちゃん達のライブ放送を見ることも出来るんだが……」


凛「……別にいいよ。見ない」

凛「……見ると、辛くなるから」

凛「もう会えるかどうかも分かんないしね」


渋谷父「……そうか」
260 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/24(日) 20:53:05.26 ID:GqKxECQN0

凛「……ごめんなさい」

父母「「?」」


凛「私が……アイドルになりたいって言わなかったら」

凛「こんな風に、夜逃げしなくても済んだのに」


渋谷父「……そんなことは」



渋谷父(――そんなことはない、と言いたかった)

渋谷父(――凛がアイドルになると決めた時から……すべてを捨てる覚悟はできていた)

渋谷父(――家も、仕事も、妻も……私の命も)

渋谷父(――妻も同じだ)


渋谷父(――退屈な世界を押し付けていたことに、ずっと悩んでいた)

渋谷父(――だが娘は、そこから一歩を踏み出すきっかけを掴んだ)

渋谷父(――それは私にとって、とても嬉しい事だった)


渋谷父(――娘が笑顔でいてくれるなら、それで良かった)



渋谷父(――だが……本当に、私は私が情けない)

渋谷父(――今まで信じていた物の真実を知って絶望する娘に、かける言葉が見つからない)
261 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/24(日) 20:53:35.05 ID:GqKxECQN0

渋谷父(――このままでは、凛はきっと後悔をひきずって生きていく)

渋谷父(――私は、父として親として、この子の傍にいてあげることしかできない)

渋谷父(――だが―――――)



「……あ、あのー………」

「もしかして、今出るところ……だった?」


渋谷父「……?」

渋谷父「!」


渋谷父「君は……!!」



凛「……未央?」



未央「……どうも! しぶりんにしぶりんのお父さんお母さん、みんなの未央ちゃんです」


未央「テレビ見れるところが見つからなくて、いけたらしぶりん家で放送見せてもらおうかなって、思ってたんだけど……」

未央「……そう、だよねー。そんなヒマなかったですよねー」
262 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/24(日) 20:54:03.07 ID:GqKxECQN0

渋谷父「……!」

未央「…じゃ、家族に水いれるのも悪いし、未央ちゃんはこれで……」


渋谷父「待ちなさい」


未央「は、はいっ!?」


渋谷父「……家でテレビを見せてあげることは出来ないが、車にもテレビはついている」

渋谷父「家庭の事情は、凛から聞いている」



渋谷父「あと一人くらいは乗れるから、未央ちゃんも一緒に逃げよう」



渋谷父「卯月ちゃんも一緒だ。楽しい逃避行にしよう」



――――――――――――――――――――
263 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/24(日) 20:55:05.67 ID:GqKxECQN0

――――――――――――――――――――





「…………」





「……」スッスッ



三条馬『目標1、渋谷家が車での移動を開始しました』

三条馬『目標2、本田未央も同乗しています』


黒井『報告御苦労。車種とナンバープレートは確認したか?』

三条馬『ナンバープレートを識別できる写真を撮影しました。添付します』

黒井『確認した。別動隊のヘリに追跡させるから、三条馬一等は報告に従って先回りしろ』

黒井『私も「潰し」を終わらせてから合流しよう』

三条馬『承知しました』


北斗『黒井上等。これ本当に向こうにはバレてないんですか?』

黒井『ああ。勘は当たっていたようだな』

黒井『丸井のやつに連絡をとったが、346がこっちに向かう様子はない』


黒井『シンデレラプロジェクトのクズどもやその親は、最早スケープゴートとして扱われている』

黒井『その他のアイドルごっこをしている喰種どもを確実に逃がすために、二十にも三十にも手を打っているな』

黒井『スタジオの小娘共はともかく、その親にまで見張りをつける気はなかったようだ』

264 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/24(日) 20:57:07.86 ID:GqKxECQN0

冬馬『なあオッサン』

黒井『どうした冬馬』

冬馬『このLINEでの連絡、今すげー辛いんだけど』

翔太『冬馬君、話聞いていなかったの?』

翔太『音声通信は感覚に優れた喰種に聞かれる危険があるから出来ないってクロちゃん言ってたじゃん』

冬馬『それは分かってるよ!』

冬馬『そうじゃなくてだな、周りの野郎どもの視線が痛いんだよ! この時間になってもまだスマホ弄ってるから!』

北斗『耐えろ冬馬。マナーより任務だ』

翔太『僕らには関係ないもんね〜♪』

冬馬『翔太てめえ!』


三条馬『まあまあ……マナーが悪くて目立ってもダメだし、早く作戦の最終確認に移りましょう?』

三条馬『3人の待機場所の確認だけど』

三条馬『翔太君はCP楽屋付近、北斗君は舞台裏、冬馬君は観客席よね?』

翔太『うん』

北斗『はい』

冬馬『おう』

三条馬『ちなみに、北斗君に確認とるけど……今3人の保護は出来る?』

北斗『いえ、無理ですね』

北斗『エンジェルちゃんたちの担当Pが離れないので、ライブ前の強行突破は危険かと』

北斗『やっぱり作戦通り、放送終了後を狙うしかなさそうです』

三条馬『了解』

三条馬『翔太君はまだ待機ね、強襲は出演組と楽屋組同時にやるから』

翔太『おっけー』

三条馬『そして冬馬君は、何か舞台に変わったところはある?』

冬馬『ねえな。予定通り放送が始まるみてえだ』

冬馬『で、俺のやることはライブ出演組が何か変わった動きをしてねえか見張る』

冬馬『放送が終わったら北斗と合流』

冬馬『その頃には北斗が小日向美穂、二宮飛鳥、木村夏樹3人の人間を保護してるはずだから』

冬馬『俺は残った出演組を死なねえ程度に痛めつけて確保……だろ?』

三条馬『よろしい!』

翔太『楽屋組は殺していいんだよね?』

黒井『遠慮はいらんぞ。証言を引き出すのは出演組の数人でいい』

黒井『1対多のハンティングはお前が最も得意とする戦闘だからな』

三条馬『運よく生き残った喰種がいたら、それは確保しておいてね』

翔太『りょうかーい』
265 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/24(日) 21:01:18.74 ID:GqKxECQN0

冬馬『作戦の確認も終わったし俺は切るぞ』

冬馬『放送が終わる8:55に一回メッセージを確認するから、何か変更があるならそれまでに言えよ』

北斗『了解』

翔太『ライブ楽しんでね〜♪』

冬馬『ふざけんな。喰種のライブなんか楽しめるわけねえだろ』

北斗『魅了されるなよ☆』

冬馬『しねえよ。喰種はお袋の仇だ。放送が終わり次第あいつらの全てをぶっ壊してやる』

黒井『フン、それくらいのやる気を持ってくれなければ困る』


黒井『では武運を祈る』



――――――――――――――――――――


冬馬「……」ブツッ

冬馬「すまん、悪かった。ほら電源切っただろ、こっち見んな」

冬馬「……」


冬馬(――お袋は)

冬馬(――お袋は何も悪くねえのに、喰種に喰われて死んだ)

冬馬(――その日から俺は決めた)

冬馬(――何年かけてでも、喰種共を一匹残らず駆逐してやるって)


冬馬(――俺の才能を見抜いて、鍛えてくれた黒井のオッサンには)

冬馬(――上に取り計らって俺みてえな子供を特別入局させてくれたオッサンには感謝してる)

冬馬(――おかげで一人の戦力として、こうして作戦に参加できた)

冬馬(――本当は討伐戦で活躍したかったが、贅沢は言わねえ)


冬馬(――俺はこの場で、一人の喰種捜査官として)

冬馬(――正義を執行する)
266 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/24(日) 21:01:48.43 ID:GqKxECQN0

冬馬(――喰種は一匹残らず駆逐すべき敵だ)


冬馬(――神崎蘭子、多田李衣菜、アナスタシア)

冬馬(――そして、島村卯月だったか)


冬馬(――『笑顔の橋』だと? くだらねえ)



冬馬(――俺が)


冬馬(――喰種なんかに)



冬馬(――笑顔なんかに、絶対に魅了されたりなんかしねえ―――――!!)



――――――――――――――――――――
267 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/24(日) 21:03:55.94 ID:GqKxECQN0

今日はここまで。DAYS OF Jupiter面白いよ(宣伝)。ジョバちゃんかわいい

>>258
再会させるかどうかはちょっと迷ってます
外伝が終わってから常務の出番を作れるかどうかによりますね
268 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/25(月) 12:26:55.29 ID:fCJXkzH7O
これは魅力されますわ(確信)
269 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/25(月) 17:53:44.44 ID:w/Ci7sMw0

――――――――――――――――――――



卯月「美穂ちゃん! おまたせ!」

美穂「あっ、卯月ちゃん! 衣装すごく似合ってるよ!」

卯月「ほんと? えへへ、ありがとう!」



卯月(――小日向美穂ちゃん)

卯月(――会った時は尊敬する先輩で、今は大切な友達)

卯月(――最初はたしか……)


卯月(――そうだ)


卯月(――デビューライブのときに、アドバイスをもらったんだ)



卯月(――凛ちゃんと未央ちゃん)

卯月(――ニュージェネレーションズで出た、デビューライブのとき)
270 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/25(月) 17:55:10.84 ID:w/Ci7sMw0

卯月「……」

美穂「? どうしたの卯月ちゃん?」

卯月「…うん、ちょっとね。未央ちゃんと凛ちゃんのこと思い出してて……」


美穂「そういえば今日は二人とも来てないんだね。具合が悪いの?」

卯月「うん……今日は、えーと……体調不良で、応援に行けないって」

美穂「そうなんだ……残念だなあ。今日の卯月ちゃんを2人にも見て欲しかったのに」

卯月「……ううん、大丈夫! 二人ともテレビで見てくれてるって信じてますから!」

美穂「! そっか! じゃあテレビの向こうで応援してくれてる二人のためにも頑張らなきゃね!」

卯月「はい!」



卯月(――『このまま終わりたくない』って、言ってたんです)

卯月(――いちど挫折したとき、未央ちゃんが、凛ちゃんが)

卯月(――"喰種"に生まれたことに、負けそうになったけど)

卯月(――まだアイドルやめたくないって、言ってたんです)



卯月「―――プロデューサーさんっ!」

武内P「はい。島村さん」


卯月「私っ……プロデューサーさんにアイドルにしてもらえて」

卯月「本当に嬉しいですっ! 本当にありがとうございますっ!」

卯月「だから私がもらったもの……ここで全部だして」


卯月「みんなに、笑顔になってもらってきます!!」


271 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/25(月) 17:55:54.99 ID:w/Ci7sMw0

卯月(――そして、サマフェスのとき)

卯月(――私達に、ファンレターが届いたとき)


卯月(――未央ちゃんは、泣きながら笑ってました)


卯月(――『アイドル、やめなくて良かった』って)


卯月(――泣きながら喜んでくれたんです)



卯月(――今は、凛ちゃんも未央ちゃんも)

卯月(――大切な友達を失って、すごく苦しんでます)

卯月(――でも、それで今までを否定してほしくないから)


卯月(――あの時の気持ちを忘れてほしくないから)

卯月(――また、あの時みたいに笑ってほしいから)


卯月(――だから、私も今日、笑顔で)


卯月(――たとえ最後のライブになっても、最高の笑顔で)


卯月(――歌って、踊って見せます)



P「はい。最後まで、ちゃんと見ています」


P「いってらっしゃい」

卯月「いってきます」



卯月「―――島村卯月、頑張ります!!」



――――――――――――――――――――
272 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/25(月) 17:56:31.60 ID:w/Ci7sMw0

――――――――――――――――――――





「きいてください」





「「「 Take me☆Take you !!!!!!! 」」」





――――――――――――――――――――
273 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/25(月) 17:57:01.45 ID:w/Ci7sMw0

――――――――――――――――――――



冬馬「……!?」


冬馬(――今出てるアイドル9人のうち、誰が"喰種"で誰が人間なのか)

冬馬(――俺はちゃんと、確認していたはずだった)

冬馬(――気を抜くつもりは無かった)

冬馬(――だが、見ればわかると思っていた)

冬馬(――人間と、醜悪な"喰種"の違いなんて)



冬馬(――だから俺は、目を疑った)



冬馬(――見分けがつかなかったんだ)

冬馬(――"喰種"どもの、特に島村卯月の)


冬馬(――そいつらの浮かべる笑顔が、あまりにも)

冬馬(――隣で人間が浮かべてるはずのそれと、全く変わらないくらい)



冬馬(――目を奪われるような、心を握られるような笑顔だったんだ)



――――――――――――――――――――
274 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/25(月) 17:57:41.95 ID:w/Ci7sMw0

〜渋谷家 車内〜


未央「……ほら、見なよしぶりん」

凛「うん」

未央「しまむーは変わらないなあ」

凛「……うん」


凛「出会った時と変わらない」



凛「すごく綺麗な笑顔だよ、卯月」



凛「……最後に、見れてよかった」


――――――――――――――――――――
275 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/25(月) 18:01:04.02 ID:w/Ci7sMw0

今日はここまで。

ここで歌わせる曲はススメ☆オトメかtmtyか迷ったのですがtmtyにしました。

tmtyは歌詞のいくつかが喰種にとってすごく響く歌だと思うのです
276 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/09/25(月) 21:47:04.29 ID:Z45gPPLi0
乙です!

いよいよという感じですね
本編に出てきたクインケ「シマムラ」があるから卯月の言葉が辛い
あれは実は卯月ではなく卯月の家族かもしれないけどそれはそれで
アイドルのみんなには極力1人でも多く生き延びて欲しいし、
特に人間のアイドルにはこれ以上犠牲になってもらいたくない
そして346プロの職員とありすの母親には相応の因果応報を

期待しています!
277 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/26(火) 17:21:25.97 ID:wXlrPCRN0

――――――――――――――――――――





そして、幻想の壊れる時が来る





――――――――――――――――――――
278 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/26(火) 17:26:15.71 ID:wXlrPCRN0

〜346プロダクション本社付近 『キャッスル』殲滅部隊〜


望元「ンン……橘ボーイ」

望元「結局、ワイフと市原レディは今回の作戦に参加しないんだね?」

実「ええ。妻の役目は終わりました、これ以上美樹に仕事を押し付けるわけにはいきません」

実「あとの実戦くらいは、夫の私がやらないと」

望元「エクセレンッ! 妻想いのいい夫じゃないか、だが生き残って初めてよきハズバンドとなりパパとなるのだ」

望元「それを忘れちゃいけないよ」

実「ええ。分かっています」


実「ありすのためにも、生きて346プロを……『キャッスル』を殺しつくします」



ザザッ


丸手『田中丸特等。伊集院二等から連絡が来ました。8時55分、予定通り放送が終わったようです』

丸手『あとは向こうの要求通り……』


望元「ナイスジョブ伊集院くん! と伝えておいてくれ!」

望元「確かこの後は、『346プロ所属のプロデューサー4匹が帰還するまで待て』だったね?」

望元「そしてマンキー4匹が本社に入ったのを確認次第……」


丸手『はい、作戦開始です。帰ってこなかった場合は黒井達に任せて作戦決行します』


望元「OK! それと偵察隊からの報告も受けているよ!」

望元「奴等の資料に記載されている346プロ職員は、例外を除いてほぼ全員、今日までに346プロに入ってから一切外出していないようだ」

望元「数日の偵察の間、本社には徒歩で進入し、その際なにかおかしいものを運搬している様子もなかった」

望元「大人しく狩られに戻って来たのは確かだね」

丸手『例外ですか? 俺は聞いてないんですけど、4人のプロデューサー以外にも誰か戻ってきてない奴がいるんです?』

清子「『今西』という男と『佐久間まゆ』の担当プロデューサーよ」

清子「この2匹と佐久間まゆは美城常務の密告前から姿を消して、一度も本社に戻ってきていないわ」

清子「例外はそれだけね」

丸手『誰だよ報告サボりやがったの……まあいいか、後だ後』

丸手『346の周辺組織は既にマークしてる……プロデューサーや役員ひとりでどうにかできるとも思えませんし』

丸手『そいつらは無視して作戦を進めます』

清子「了解」
279 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/26(火) 17:28:39.16 ID:wXlrPCRN0

――――――――――――――――――――


丸手「……」

丸手(――あと1分で9時か)

丸手(――くそっ)


丸手(――キャッスルの奴等の思い通りにことが進んでるからか)

丸手(――どうもイライラしてきやがる)


丸手(――いや、それだけじゃねえ)

丸手(――何だこの……何か見落としてるような感覚は)

丸手(――まだ奴らが、何か切り札を隠してるような……)


丸手(――大体、何かおかしくねえか)

丸手(――奴等は資料にこう書いてた)

丸手(――『アイドルを確実に逃がすため、人間と喰種を混ぜこぜにして避難させる』と)

丸手(――こんなもの、簡単に対処できる)


丸手(――一旦アイドルを逃がした後で『喰種の疑いがあるからRc検査するぞ』と日本全国に散らばったアイドル共へ通達すりゃ済む話だろうが)

丸手(――無実なら出てくりゃいい、わざわざ"喰種"と勘違いされて殺されたい人間がいるはずもねえ。いるとしたらよっぽどのバカだ)

丸手(――所属アイドル183人の名簿くらいどこからでも手に入る)

丸手(――来た奴は人間、で検査に来なかったアイドルを"喰種被疑者"として捜査すればいい)

丸手(――喰種を庇うやつも出そうだが、全員ってわけでもねえだろう。証言を引き出すことも不可能じゃない)

丸手(――時間がかかるのは変わらねえだろうが、それでも確実に捜査は進む)


丸手(――こんなもの、一時しのぎにしかならねえ筈だ)



丸手(――346プロは老舗だ。今まで俺達の目を逸らしてきた奴らだ、それぐらい分かってるはず)

丸手(――じゃあ何でこんな穴だらけの方法を……)


ザザッ



『―――えー。マイクテス、マイクテス』

『会場にお越しのみなさーん。こーんばーんはー!』


丸手「……あ?」

丸手(――放送? どこからだ?)


丸手(――346プロのスピーカーからか!?)
280 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/26(火) 17:31:30.18 ID:wXlrPCRN0

『本日は346プロダクションにお越しいただき、誠にありがとうございます』

『私、事務員の千川ちひろと申します』

『「笑顔の橋」のライブ放送は見ていただけましたかー?』

『とっても素敵な舞台でしたね!』


実「……千川ちひろ?」


『喰種対策局の皆さん』

『本日まで私達の準備を待っていただき、本当にありがとうございました!』

『おかげでアイドルの皆さんの避難もほぼ無事完了しました!』

『感謝感激です! ゆかりちゃん達の苦労も報われるというものです!』


宇井「……どの口が……!!」ピキ


『……ところで』



『お察しの良い捜査官……たとえば、対策U課の方はお気付きかもしれませんが』

『実は私達のやり方、結構な穴があります』

『人間と喰種を一緒に逃がしても、検査の通達をして人間を呼び戻せば』

『検査に来なかった子は"喰種"って分かっちゃうんですよね』

『もちろん、来ないでくれる人間の子がいないとも限りませんが……』


丸手(――気付いてる?)


『……そ、こ、で!』

『346プロダクションの先輩方は、本社にある改装を施しました!』


『知ってましたか? 346プロの地下にはたくさんの部屋や通路があること』

『皆さんが突き止めた「保管所」だけでなく、あらゆる建物への抜け道が存在することを』


丸手(――抜け道!?)


『ああいえ、職員の我々は一人たりとも逃げてませんよ?』

『……失礼。まゆちゃんのプロデューサーと今西部長は例外ってことで』

『ただ、ここ数日は「あるもの」を運ぶためにこの地下通路を利用していました』


『何を運んでいたか、分かりますか?』
281 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/26(火) 17:32:32.52 ID:wXlrPCRN0

丸手(――まさか)


丸手「……おい。大至急、本局に待機させてる戦力でもう一個部隊を編成しろ。任務は潜入と救助だ」ザザッ

丸手「あ? いきなりすぎる? うるせえぞ緊急命令だっつってんだろ!」

丸手「そうだよ、救助用の部隊だ!」


丸手「あいつら……最初から『見逃す』気なんか無かったんだよ」



『実はですね。その346の地下通路が繋がってる建物、ちょっとしたゲストが来ておりまして』

『私達はゲストを捕まえて、地下から346に戻ってもらったわけです』

『ああ、ゲストって言い方じゃ分かりづらいですねごめんなさい』

『要するに、「人質」ってことですよ』


『ほら。皆さんにご挨拶してあげてくださいよ』



『関裕美ちゃん?』


282 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/26(火) 17:33:21.77 ID:wXlrPCRN0

「「「―――――!!!」」」



裕美『っ……やだっ! 離して! 触らないでっ!』


『分かりますよね?』

『そう。避難したはずの関裕美ちゃん本人です』

『この子だけは正体を話しておきますが……ちゃんと人間ですよ?』

『検査していただければ、私の言っていることが本当だと分かってもらえるはずです。……まあ』


『生きて取り戻せれば、の話ですけどね』


実「……まさか、他にも」


『そう! 今「まさか」と思っていただけた方は大正解です!』

『私達はロケと称して人間、喰種問わず指定した建物に向かってもらいました』

『そして関ちゃんのように、こちらの方々だけを捕まえて……こっちに連れ戻した』



『ですよねえ!』パチンッ





『―――人間アイドルのみなさん!!!』




283 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/26(火) 17:37:43.50 ID:wXlrPCRN0

ザザッ



『ンーっ!』


『ンウー!』


『むっ……うー、うー!』


『んむー!!』





『喋られては困るので、猿轡ごしの御挨拶となりましたが!』

『こちらでもがいていらっしゃる方全員、当346プロダクションの人間アイドルとなっております!』

『その数、実に50匹以上! そちらで保護されていないほぼ全員です!』

『誰が人間アイドルかまではお話できません! だって目的に反してしまいますから!』


『ん? 目的は何ですって……? よくぞ聞いてくれました』

『目的は3つ! 口封じ、あなた方喰種捜査官の殲滅、そして目くらまし!』


『まず検査で呼び出した人間アイドルにシンデレラのことを喋られては困るので、口封じに殺します』

『次に、我々は人質を取っており……ついでに報道ヘリも呼ばせてもらってます』

『つまりここで逃げれば……CCGは人質を見捨てたクズとしてニュースに載る!』

『そうしてこの子達を取り返すしかなくなったあなた達を、我々がホームで迎え撃ち殲滅する……これが二つ目』

『100%とはいかないでしょうが、大打撃を与えることはできるでしょうね』


『そして3つ目の目くらましですが』

『これが関ちゃん以外の名前を出せない理由です』

『我々は最終的には、人間アイドルの皆を!生きたまま!残さず!食べてしまいます!!』

『私達の胃袋に収まってしまえば、それがどのアイドルだったかまでは分からない……』

『そうして残ったシンデレラたちが行方をくらましてしまえば、誰を追えばいいかすら分からなくなる……』


『最高の夜明けになりますよね!』
284 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/26(火) 17:44:49.10 ID:wXlrPCRN0

『さて、前置きはここまでにして―――――』

『とりあえず、あなた方には1時間あげましょう』

『こちらの時計で午後10時になったと同時に、まずは関ちゃん含む4人をいただきます』

『あとは、夜明けちょうどに全員平らげられるようペースを調整して人間アイドルを食べていきます』

『そうならないためにも! 捜査官の皆さんは死ぬ気でかかって来てください!』


『迎え撃つは我が346プロ自慢の一級・準一級プロデューサー、またまた50名以上!』

『少ないと思いますか? いえいえ、その分実力は保証しましょう』

『なにせ一人一人が最低SSレート! すくなくとも特等単体と互角に渡り合える猛者の方々です!』

『でも100人もいないのは確かですからねー……もしかしたら勝てるかも知れま』ズレロオォォ


裕美『ひいっ……やっ……嫌っ……!』ズリュゥ


『……あー、失礼しました。今のは一級Pのひとりが耐えきれず関ちゃんの丸いやつを舐めた音です』

『よりにもよって舐めるのがそこですか……流石に引くわぁ……』


『じゃあ、気を取り直しまして』

『大事な人間アイドルが殺されないように、頑張って戦ってくださいね!』

『では……これより「最終隠匿プロトコル」を開催いたします』


『会場の皆さんが素敵な魔法に包まれますように』ブツッ


――――――――――――――――――――
285 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/26(火) 17:45:21.10 ID:wXlrPCRN0

――――――――――――――――――――


丸手「っ好き勝手言いやがって……!!」ビキビキ

望元『……どうする、丸手ボーイ? 私は奴らへの怒りで自慢のヘアスタイルが爆発しそうだ』

丸手「…『死んでもいい優秀なヤツ』で隊を組み、346本社へ先行させてください」

丸手「最大でも死者が隊の2割を切ったら帰還、こっちで相手の戦力と攻略法を割り出します」

望元『分かった。では私が隊長を務めよう、実ボーイとは違って独身だからね』

丸手「頼みます」ブツッ


丸手「……てめえらの思い通りにいくと思うなよ……!?」ギリギリ


――――――――――――――――――――


ちひろ「……ふう」プツッ


ちひろ(――さてさて始まりました『最終隠匿プロトコル』)

ちひろ(――とりあえず、ここまでは予定通りですね)


ちひろ(――一級Pの皆さんは、自分の担当アイドルを守るために喜んで仕事してくれる)

ちひろ(――準一級Pの皆さんについては担当アイドルを、たとえ人間であっても例外として本当に避難させている)

ちひろ(――『準一級Pの担当する人間アイドルは、例外として財産の候補および最終隠匿プロトコルの殺害対象から除外する』)

ちひろ(――個人的には癪だけど、それが準一級Pの正式な権利であり人間に惚れたPの反逆を防ぐための策だから大目に見ましょう)

ちひろ(――その条件を飲む以上、担当外の人間アイドルには我関せずでプロトコルに協力してくれますしね)
286 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/26(火) 17:48:18.17 ID:wXlrPCRN0

ちひろ(――そして人間アイドル担当の、二級Pは―――――)



乙倉P「―――出せ! ここから出せえ!!」

ビートシューターP「聞いてないぞこんなの! 話と違うぞ!」

響子P「言ってたじゃないか!『最終隠匿プロトコル』の時は人間アイドルも一緒に逃がすって!!」

GBNSP「さっき裕美のこと舐めやがったクソ野郎出せコラア!! ぶっ殺してやる!! その舌引っこ抜いて口の中串刺しにしてやる出てこいオラア!!」

メロイエP「……」

セクギルP「……」



ちひろ(――彼らは所詮、精々Aレートの弱い喰種から選んだ方達)

ちひろ(――カモフラージュのため探させた人間に情がうつり、惚れこんで全てを捧げる喰種が出るのはいつの世も同じ)

ちひろ(――でも、この世は弱肉強食)

ちひろ(――勝手を振る舞えるのは強者の権利)

ちひろ(――二級Pを捕らえて一か所に放り込むのも、一級Pなら容易くできる)


ちひろ(――彼らがどれだけ人間を愛しても)

ちひろ(――その脆い爪は私達には届かない)
287 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/26(火) 17:49:51.61 ID:wXlrPCRN0

ちひろ(――すべて計画通り)

ちひろ(――ただ懸念があるとすれば)



ちひろ(――『隻眼の喰種』、高垣楓の乱入)



ちひろ(――彼女には特別遠くへと避難してもらった)

ちひろ(――だけどもし、楓さんがこの中継を見ていたなら)

ちひろ(――楓さんが、気まぐれで人間アイドル達を助けようと思い至ったなら)

ちひろ(――何の対策も無ければ、少なくとも日が変わる前に)

ちひろ(――かつての『隻眼の王』が降臨して、状況はひっくり返される)

ちひろ(――作戦は確実に潰される)


ちひろ(――この状況を予想して、近くで待機していないとも言い切れない)


ちひろ(――彼女に対抗できるのは、私達の側で彼女を封殺できるのはただ一人)


ちひろ(――高垣楓の到着に、『彼』が間に合わなければ全て終わる)



ちひろ「……だから、あまり余裕が無いんです」


ちひろ「はやく『お仕事』を終わらせて帰って来てくださいね……?」



ちひろ「プロデューサーさん」



――――――――――――――――――――
288 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/26(火) 17:51:11.17 ID:wXlrPCRN0

一旦ここまで。

まゆPが人間だという訂正を一切していないのは単なるちひろの嫌がらせです。
289 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/26(火) 18:13:10.46 ID:Lo9MI3+GO
フリスクは無事で良かった(震え声)
劇場型犯罪者グールって原作だと思い当たらないから新鮮
ピエロはただの享楽主義だし
290 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/26(火) 19:13:51.89 ID:Lo9MI3+GO
このちっひなら爆弾とか地雷も躊躇なく使いそう
アニメグールでアオギリがやってたみたいに

そもそもこのプロデューサー達もスタドリエナドリで無限回復しそう
291 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/26(火) 23:01:18.52 ID:wXlrPCRN0

〜同日午後8時57分 TOKYO MIX スタジオ出口〜


武内P「―――これで、本日のお仕事は終了です」

P「皆さん、本当にお疲れさまでした」

「「「ッ……」」」

美穂「お、お疲れさまでした! 来年のライブも頑張りましょうね!」

飛鳥「ああ、お疲れ様。初めて蘭子と立った舞台だが……愉しかった」

飛鳥「ライブ本番では何が見れるか、期待してるよ」

夏樹「アタシも今日は全力を出し切った!」

夏樹「……楽しかったぜ、だりー。皆もな」


蘭子「……!!」

蘭子「我が友っ……プロデューサー……飛鳥ちゃん……!」タッ


グイ


李衣菜「…ダメだよ、蘭子ちゃん。もう皆全力でライブして、疲れてるんだから」

李衣菜「あの、プロデューサー! 今日は本当にありがとうございました!」

李衣菜「なつきちも! 今日はすごく楽しかった!」

李衣菜「……」


李衣菜「……またねっ!」


夏樹「!」

夏樹「……ああ。アタシが紹介したバンド、ちゃんと聴いとけよ?」

李衣菜「うんっ!」


アーニャ「……行きましょう、ランコ」

アーニャ「プロデューサー」

P「はい」

アーニャ「やみに、のまれよ!」パッ

P「!」

アーニャ「……ほら、ランコも。挨拶、しましょう」

蘭子「アーニャ、ちゃん……」


蘭子「っ……我が友よ。そして共鳴者よ」

蘭子「我が授かった翼はいずれ進化をとげ、この世界を支配するものとなろう」

蘭子「それまでしばし別れの時ッ!」


蘭子「―――闇に呑まれよ!!」


P「……ええ」

P「私の翼を、あなたに授けます」

P「アナスタシアさんにも。もちろん、多田さんにも島村さんにも、アイドルの皆さんすべてに」


飛鳥「……? 別れの時とは、随分と変な例えをするな」

飛鳥「まあいい。君の翼の進化とやら、楽しみにしているよ」ニヤ
292 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/26(火) 23:01:47.05 ID:wXlrPCRN0

卯月「プロデューサーさん」

卯月「本当に、本当に……ありがとうございました」

P「こちらこそ」

P「……」


P「とても素敵な、あなただけの笑顔です」

P「どうか忘れないでください」


卯月「はいっ!」


卯月「美穂ちゃんも……またね!」

美穂「うん! またね!」


P「……それでは」

P「私は本社に戻ります。シンデレラプロジェクトの皆さんは、新田さんと城ヶ崎美嘉さんのご指示に従って移動してください」

「「「はいっ!」」」



李衣菜(――私達は"喰種"だってバレちゃいけないから)

李衣菜(――お別れの時に、泣くことは出来なかった)

李衣菜(――これで、プロデューサーとはお別れ。なつきちとも)

李衣菜(――プロデューサーとは、もう二度と会えなくなるかもしれない)


李衣菜(――でも)

李衣菜(――私、頑張りますよ。頑張りますから)

李衣菜(――プロデューサーからもらったもの、346プロでもらったもの、全部持って)

李衣菜(――前に進んでいきますから)

李衣菜(――だから……メソメソしてるなんて、ロックじゃないよね!)


李衣菜「……行こっか。みんなが待ってる」


李衣菜(――また会おうね、なつきち)

李衣菜(――また二人で組んで……)

李衣菜(――どこかにいるかも知れないプロデューサーに、今度は私達の歌を届けるんだ)


――――――――――――――――――――
293 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/26(火) 23:02:15.14 ID:wXlrPCRN0

――――――――――――――――――――


P「……さようなら」


美穂「え? 何か言いましたか?」

P「いいえ。ただの独り言です」


P(――シンデレラプロジェクトのプロデューサー)

P(――その仕事は、今終わった)

P(――最後に、皆さんの笑顔を見られてよかった)

P(――本当は、全員に登場してほしかった)

P(――……)


P(――せめて)

P(――私の事は恨んでくれていい)

P(――ただ、あの笑顔が……渋谷さんと本田さんの元へと、届いて欲しい)


P(――それだけは、願わせて欲しい)



P(――あとは)

P(――皆さんの命を守るため)


P(――ひとりの"喰種"として、仕事をするだけだ)
294 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/26(火) 23:04:25.22 ID:wXlrPCRN0

P「小日向さん。二宮さん、木村さん」

P「本日のライブに協力していただいた皆さんに、担当プロデューサーからお伝えしたいことがあるようです」

P「機密事項のため、下の防音設備が整った収録スペースを借りています」

P「皆さんのプロデューサーには、私も連絡事項がありますので……どうかそちらで待機していてください」


飛鳥「? そうなのかい?」

美穂「わ、分かりました」

夏樹「! ……分かった。待ってるぜプロデューサー」


美穂P「?」

飛鳥P(――なんだ? 機密事項?)

夏樹P(――そんなの予定にないぞ。たしかこの後は、4人そろって346に戻るんじゃ……)

美穂P(――このまま何も言わずに別れるつもりだったんだけどな)


P「担当プロデューサーの方々は、こちらに」


――――――――――――――――――――


美穂P「……なあ、シンデレラプロジェクトの担当さん」

美穂P「もしかして俺達に気を遣ってくれたのか?」

夏樹P「! 最後に正体を明かす時間と場所をくれたってことか?」

武内P「……」

夏樹P「だったら余計なお世話だぞ。罪滅ぼしのつもりかもしれないが、別に346を恨んでるわけじゃないしな」

飛鳥P「同感。今まで犠牲になった子達のことは悲しいけど……結局は担当アイドルに関係のないことだ」

美穂P「俺達は別れを言う気も秘密を話す気もないよ。美穂をこっちの事情に巻き込みたくない」

武内P「……」



武内P「余計なものかどうかは」
295 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/26(火) 23:04:58.39 ID:wXlrPCRN0







「あなたたち『弱者』が決めることではありません」






296 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/26(火) 23:06:19.60 ID:wXlrPCRN0

〜TOKYO MIX 収録スペース〜


美穂「言われるままに来ちゃったけど……」

飛鳥「プロデューサーの話って何だろう?」

夏樹「……」


夏樹「……アタシもよくわかんないけどな」

夏樹「ただ、今のうちに思い出しておいた方がいいんじゃないか」

夏樹「プロデューサーと出会って、一緒に歩いてきた道を」


美穂「プロデューサーさんと?」

飛鳥「おいおい……君も何を言うんだ、夏樹さん?」

飛鳥「まあ、初めて出会った時のことは思い出しておくにこしたことはないが……」


ガチャ


飛鳥「おや。噂をすれば」





ギイイイイイイイ


美穂「プロデューサーさん!」

美穂「あの、お話って一体……」

美穂「……え?」


美穂(――少し時間が経って、待っていた防音ルームに入って来た人は)

美穂(――私のプロデューサーさんじゃなくて、卯月ちゃん達のプロデューサーさんでした)


美穂(――そして、何かがおかしいと思いました)


美穂(――心なしか、瞳が濁っているように見えました)

美穂(――まるで深い闇のように)


美穂(――目線を少し下にずらして、ようやく何がおかしいのかに気付きました)


美穂(――真っ黒なスーツに、なにか赤いものが飛び散っていたんです)


美穂(――これは、何?)
297 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/26(火) 23:06:45.42 ID:wXlrPCRN0

P「……本日は、シンデレラプロジェクトの皆さんにご協力いただき」

P「本当にありがとうございました」


P「……そして、申し訳ありません」ギョロ

P「皆さんには、CPの皆さんのために―――――」バキキ





P「今ここで、死んでいただきます」





――――――――――――――――――――
298 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/26(火) 23:11:59.50 ID:wXlrPCRN0

今日はここまで。

ユニットはモバやデレステに色々あるためどのユニットが同一のPに担当されているか全てをハッキリ決めているわけではないのですが、
とりあえず設定上フリスク、ブルナポ、KBYDの三つが準一級P担当の混合ユニットだと確定させています
299 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/27(水) 00:14:25.97 ID:MI53UYkP0

――――――――――――――――――――


李衣菜「……ふー」

李衣菜(――終わっちゃったなあ)

李衣菜(――346プロでのアイドル活動も)

李衣菜(――プロデューサーとのアイドル活動も)


李衣菜(――やっぱり、ちょっときついなあ)


≪―――9時になりました≫


李衣菜(――ん)


李衣菜「もう9時か、皆のとこに急がなきゃね」

アーニャ「シトー? リーナ…時間、分かるんですか?」

卯月「時計なんてありませんよね?」キョロキョロ

李衣菜「あ、そっか。これ聞こえるの私だけなんだ」


李衣菜「前に話したでしょ。私は周りより耳がいいみたいでさ」

李衣菜「たぶん、↑の部屋でテレビのアナウンスか何かが聞こえたんだと思う」

李衣菜「……あっ。今、何か中継やってるみたいで―――――」



≪―――えー。マイクテス、マイクテス≫

≪会場にお越しのみなさーん。こーんばーんはー!≫



李衣菜「……えっ?」
300 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/27(水) 00:15:25.20 ID:MI53UYkP0

蘭子「…李衣菜ちゃん?」

李衣菜「い、いや何でもないよ? ちょっとびっくりしただけ」

李衣菜「何か、ちひろさんのアナウンスが聞こえてきてさー」

李衣菜「おっかしいなー。私達が最後の仕事だって聞いてたけど、何やってるんだろね? あはははは」


≪―――ですよねえ!≫


≪―――人間アイドルのみなさん!!≫


李衣菜「は、はは……」


李衣菜「…は?」


李衣菜(――え、なにこれ)

李衣菜(――人質? 口封じ?)

李衣菜(――これって、今の346プロの中継ってこと?)

李衣菜(――『最終隠匿プロトコル』? 何の話をしてるの?)


李衣菜(――人間アイドルを全員……殺す?)


卯月「あの、李衣菜ちゃん? 皆のところに……」


李衣菜「……待ってよ」


李衣菜「なに、やってんの? ちひろさんも、プロデューサー達も」

李衣菜「アイドルみんなで避難するって言ってたじゃん」

李衣菜「なのに、人間アイドルだけ連れ戻したって……」

李衣菜「アイドルのみんなを食べる、って……?」

李衣菜「……!?」



李衣菜(――ニュースの内容がよく分からない私の耳に)

李衣菜(――今度は、別の声が飛び込んできた)

李衣菜(――くぐもった声だった)

李衣菜(――私は、こんな響き方をする音を知ってる)


李衣菜(――みくちゃんや未央ちゃんがレコーディングしてる時)

李衣菜(――外にいた私の耳には、ちょうどこんな風にくぐもった歌声が届くんだ)

李衣菜(――防音設備の整った部屋から、聞こえてくる時の声だ)


李衣菜(――でも、今聞こえてきた声は歌声なんかじゃなかった)

李衣菜(――なにかケガをしたときのような、叫び声だった)


李衣菜(――そして、声にも聞き覚えがあった)





李衣菜(――なつきちの声だった)




301 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/27(水) 00:16:33.23 ID:MI53UYkP0

ちょっとだけ追加。
302 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/27(水) 01:01:04.64 ID:cVOnZQ9L0
>>257
あー…ある意味常務も被害者だったんだな
常務が一番キツい立場になりそうだな地位があるだけに中途半端に逃げることも出来ず、一族の軋轢と財産が貰えなくなる喰種組織、それこそ生き残ってたら元職員にも狙われかねんし
とりあえず凛達から恨まれなさそうってことが分かっただけでもマシな気分だ
303 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/09/27(水) 02:38:16.30 ID:1tGEhWsV0
乙です!
平日なのにこんなに進めてくれて感謝

346プロは原作のアオギリの樹や嘉納や和修家や旧多が可愛く見えるレベルの悪逆非道っぷりだなぁ
かと言って原作同様CCGを応援出来るわけでもないというのがもどかしいところ
つまり楓さんの活躍に期待!
304 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/09/27(水) 04:05:45.08 ID:CuaCaAWJO
笑顔の橋などと綺麗事を宣いつつ人間のアイドルは利用するだけ利用して[ピーーー]武内Pのクズっぷりにはもはや草生えるわ

ちひろの言葉が本当なら346プロの戦力はCCGを余裕で越えてないか?
有馬ポジションの舞さんが無双でもしない限りは勝ち目無いよな
そしてSSSレートの楓に対抗どころか「封殺」出来るとの武内Pヤバすぎww
305 : ◆AyvLkOoV8s [sage]:2017/09/27(水) 23:19:43.90 ID:owAJtE020
今日はちょっと更新無理そうです。

>>303
大学生にとっては夏休み最後の1週間なのでいつもより気張って書けるだけ書いてますね!
今月中は無理かもしれないけど来週には完結できそうかなあ出来たらいいなあ
306 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/09/28(木) 01:03:25.01 ID:kOBNoIbe0
こちらは20日から授業始まったので羨ましい
その分後期は少し長めなのでしょうけど

外伝の346プロを見ていて1つ質問なのですが、
本編の765プロの高木社長や小鳥さんも裏で非道な振る舞いをしているのでしょうか?
307 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/28(木) 21:01:27.43 ID:xuTUYJ3U0
今日もちょっと更新できなさそうです。多分明日は書ける。ラピュタ始まる前に更新なかったら察してください。

>>306
346プロは長年の成長と資産により、こういった財産制度を基にした運営を可能としているので
765プロのような弱小事務所の規模では真似したくても出来ないと思います。

あとピヨ子はちひろと違って人間が好きな喰種であり、偶像喰種でも本質は間違いなく善人です
308 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/28(木) 22:30:21.89 ID:yRHx+wuh0
>>304
P「『笑顔の橋』も、神崎さんの願いを最大限(ここ重要)尊重したい一心で企画しました」 とか言ってるし、本心じゃそんなんやりたくねーっての表れてるしな
しかし今西も一件冴えない風貌してながら超極悪任務任されたり見かけによらんもんだな、まあ実際人じゃない訳だけども
309 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/29(金) 19:31:39.23 ID:aBqgUD9y0

〜TOKYO MIX 楽屋〜


莉嘉「……終わっちゃったねー」

みりあ「終わったねー」

きらり「みんな綺麗だったねえ」

智絵里「……うん」

みく「…これからどうする?」

美嘉「どうするもこうするも、まずは生き抜くだけだよ」

美嘉「大丈夫! 生き方はちゃんとアタシが教えたげるから」

かな子「……きっと、また戻れますよね」

美波「戻れる、はちょっと違うかな。少し時間はかかるかもしれないけど……必ずここに来れるよ」

杏「……ま、生きてりゃ何でも出来るでしょ」


杏「……」



杏(――今は9時か)
310 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/29(金) 19:33:16.48 ID:aBqgUD9y0

≪―――えー。マイクテス、マイクテス≫

≪会場にお越しのみなさーん。こーんばーんはー!≫



杏(――あー。結局、最終隠匿プロトコルは予定通り始まるんだ)

杏(――でも杏たちは皆、今この放送を見る手段がない)


莉嘉「ちゃんと皆、蘭子ちゃん達のライブ見てくれてるのかなー?」

かな子「感想、気になるよね……」

きらり「でもスマホはPちゃんに預けちゃったから、きらり達は見れないにぃ……」


杏(――杏たちのスマホは、プロデューサーに没収された)

杏(――『足がつく可能性があるから処分する』)

杏(――『代わりに出演組に、こっちで用意したスマホを持って行ってもらう』)

杏(――って建前だったかな)


杏(――よく言うよ)


みりあ「蘭子ちゃん達まだかなあ。迎えにいっていい?」

杏「やめときなよ。蘭子ちゃん達、もうスタジオ出てこっち来てるよ」

杏「入れ違いになると思うし、待ってた方がいいんじゃない?」
311 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/29(金) 19:33:46.51 ID:aBqgUD9y0

杏「……それに」

杏「すぐそこを全裸の男がうろうろしてるみたいだよ」


かな子「ええっ!?」

莉嘉「なにそれヤバくない!?」

杏「あははウソウソ」

みく「杏ちゃん! 変な冗談はやめるにゃあ!」

杏「ゴメンゴメン。怪しい人は誰もいないよ」


杏(――いないよね?)

杏(――うん。白鳩も敵対する喰種もいないはず)


杏(――あとは、杏たちの近くの楽屋でスマホ弄ってる子が気になるけど……)



翔太「……」スッスッ


翔太『ねー北斗君。もうキャッスル討伐作戦は始まってるんでしょ?』

翔太『まだ楽屋組殺しに行っちゃダメなの?』

北斗『少し待ってくれ。CPと離れたエンジェルちゃんとそのPが移動してる』

北斗『確保・駆逐・保護は同時だ』

北斗『俺はエンジェルちゃんの保護に向かうから』

北斗『冬馬はCP4人の確保を頼む』


翔太「……」プツッ

翔太(ヒマだなー)ウロウロ



杏(――足音からして、まだ子供。…男?)

杏(――出演者の親戚とかかな)

杏(――白鳩にこんな子供がいるとも思えないし……)





杏(――それより蘭子ちゃん達だよね)

杏(――早く戻って来てよ)

杏(――みんなが真実知りそうでヒヤヒヤす……)



李衣菜≪なのに、人間アイドルだけ連れ戻したって……≫

李衣菜≪アイドルのみんなを食べる、って……?≫



杏(――げっ)
312 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/29(金) 19:37:47.36 ID:aBqgUD9y0

李衣菜≪なつきちっ!≫

アーニャ≪リーナ!?≫

蘭子≪い、何処へ向かう!?≫


杏(――あー)


李衣菜≪なつきちがケガしてる!≫

李衣菜≪よく分からないけど、なつきちが叫んでるのが聞こえた!≫

李衣菜≪下の収録スペースに行ってくるから、みんなは先に戻ってて!≫


杏(――あーあー)


蘭子≪まっ……待って! 私も行く!≫

アーニャ≪私も行きます!≫

卯月≪じゃ、じゃあ私も……!!≫


杏(――あーあーあー!!!)



杏(――あんのバカプロデューサー!)

杏(――焦るのも分かるけどさ! 李衣菜ちゃんの耳の良さ分かってなかったな!?)


みりあ「ねー、迎えに行っちゃダメ?」

杏「ダメ。絶対出ないで」

みりあ「…杏ちゃん? どうしてピリピリしてるの?」

杏「……何でもないよ」


杏(――あーもー……杏知らないからね)

杏(――蘭子ちゃん達が凛ちゃん達みたいに真実を知ろうと、それでショック受けようと杏なにも出来ないからね)

杏(――せめて楽屋の皆には何も知らせないようにしてあげるから)



杏(――そっちはプロデューサーが何とかしなよ)


――――――――――――――――――――
313 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/29(金) 19:55:04.28 ID:aBqgUD9y0

短いけど今日はここまで。

李衣菜は耳がいいけど、杏と違って346深部の様子は聞こえてません。
ちょっと説明に無理があるかもしれないけど、
李衣菜の聴力は開けた空間中なら遠くの小さい音でも拾って聞き分けられる代わりに
密閉された空間から地面など固体を伝わって届く振動を聞き取るのが苦手って感じに考えてます。
加えて346では地下スペースと地上スペースに大きな階層の隔たりがあるためコツを掴まないと何が起こってるか聞き取れない、
せいぜい「地下にも部屋があるんだなー、集めた自殺死体でも保管してるのかな?」と疑問に思う程度です。

今回は聞きなれた人の声、防音設備があるとはいえ比較的近場、あと単純で大きな悲鳴だったから聞き取れました。
314 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/30(土) 12:09:02.08 ID:tOgUoRhE0

〜収録スペース〜


李衣菜「……あ……」


李衣菜(――収録スペースへの分厚い扉を開けると)

李衣菜(――そこにはさっき別れたばっかの4人がいた)

李衣菜(――プロデューサー、なつきち、美穂ちゃん、飛鳥ちゃん)

李衣菜(――なつきちたちのプロデューサーは見当たらない)


李衣菜(――美穂ちゃんと飛鳥ちゃんは、部屋の隅で震えていた)

李衣菜(――追い詰められて、それ以上逃げ場がないって感じだった)


李衣菜(――なつきちは、プロデューサーの目の前で蹲ってた)

李衣菜(――左手を押さえてて……)

李衣菜(――なつきちの足元には血が垂れてる)


李衣菜(――プロデューサーは、赫子を出してた)

李衣菜(――鋭くて分厚い甲赫の刃)

李衣菜(――先っぽには、赤い血が付いてた)



李衣菜(――プロデューサーが、なつきちを殺そうとしてた)



李衣菜「……プロデューサー……」


李衣菜「……な、に……」





李衣菜「―――何やってんですかっ!?」


315 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/30(土) 12:11:37.35 ID:tOgUoRhE0

蘭子「我が、友?」

卯月「プロデューサーさん……?」

アーニャ「プロデューサー……」


武内P「……!」

P「なぜ皆さんがここに……!?」


P「……」


P「……新田さん達に合流してくださいと、言ったはずですが」

P「どうしてここに?」


李衣菜「聞こえたんですよ、なつきちの叫びが……!」チラ

李衣菜「…防音設備で防いだつもりですか? これくらいの距離なら聞こえるんですよ」


李衣菜「そんなことより、これはどういうことですか!?」

李衣菜「ワケ分かんないですよ、何でプロデューサーがなつきちたちを殺そうとしてるんですか!?」

李衣菜「最終隠匿プロトコルって何ですか」

李衣菜「人間アイドルの皆を集めて、殺そうとしてるって……」


李衣菜「全部説明してくださいっ!!」


蘭子「……!?」

蘭子「人間アイドルの、みんなを?」


P「……」


P「皆さんの命を守る為です」

P「どうか、このまま新田さん達のところへ戻ってください」

P「皆さんはもう、逃亡する身である自覚を持ってください」


P「……いえ、多田さんは勘違いをしています」

P「私は木村さん達を殺すつもりはありません」
316 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/30(土) 12:12:44.21 ID:tOgUoRhE0

李衣菜「いやですっ!!」

李衣菜「そんな見え見えの嘘までついて……殺す気がないなんて、信じられるわけないじゃないですか!!」

李衣菜「なつきちから離れてくださいっ!」

李衣菜「離れないなら、力づくでも引きはがします……!」ジリ


蘭子「っ……!」ジリ

蘭子「…プロデューサー。飛鳥ちゃんから離れてください」

アーニャ「……」ジリ


卯月「プロデューサー、さん……」



P「……そうですか」

P「……申し訳、ありません」グッ




李衣菜(――そこからのプロデューサーの動きは、まるで見えなかった)

李衣菜(――足に力を込めたかと思うと、いつの間にか私の真横に立っていて)

李衣菜(――目で追う前に、右目に焼けるような痛みが襲った)


李衣菜(――そしたら力が抜けて、立っていられなくなって)

李衣菜(――やっと後ろを向けたと思ったら)

李衣菜(――卯月ちゃん、アーニャちゃん、蘭子ちゃんまでもが、同じように倒れこむのが見えた)


李衣菜(――あとはプロデューサーの両手に、合計4本)

李衣菜(――空っぽの注射キットが握られているのが見えた)


李衣菜(――どう動くことも出来なかった)



P「……Rc抑制剤です。"喰種"に打てば、赫子だけでなく身体能力をも抑えられます」

P「これでもう、皆さんは私を止めることが出来なくなりました」


P「……申し訳ありません。皆さんには、まだ夢から覚めないでいて欲しかった」
317 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/30(土) 12:14:10.45 ID:tOgUoRhE0

P「すぐに終わります」

P「すべてが終われば、皆さんを楽屋へとお連れします」

P「せめて、目を瞑っていただけませんか」



李衣菜(――身体が動かない)

李衣菜(――プロデューサーが、なつきち達に歩み寄っていく)

李衣菜(――立てない)

李衣菜(――甲赫を振り上げて、なつきちを叩き切ろうとしてる)

李衣菜(――息もまともに出来ない、苦しい)

李衣菜(――なんで。どうして?)

李衣菜(――プロデューサーは、人間と喰種を繋ぐために)

李衣菜(――こんな仕事を持ってきてくれたのに)

李衣菜(――ずっと、応援してくれたはずなのに)

李衣菜(――なのに、人間みんなを殺すって)

李衣菜(――私の大事な人まで)

李衣菜(――なんで)



李衣菜(――全部、嘘だったの?)
318 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/30(土) 12:16:17.52 ID:tOgUoRhE0

(――やめて)


(――お願いやめて)


(――殺さないで)


(――立ってよ)


(――お願い動いてよ)


(――このままじゃ殺される)


(――やだ)


(――やだ)


(――そんなのやだ)



(――大切な人なの)



(――お願い)





(――飛鳥ちゃんを殺さないで)





李衣菜(――その瞬間だった)


李衣菜(――何かが、プロデューサーを横から殴りつけた)


李衣菜(――プロデューサーは咄嗟にガードして、それでも壁に叩きつけられ)


李衣菜(――壁を破って、隣の部屋に落ちていった)


李衣菜(――『それ』は、大きな赤い翼に見えた)




李衣菜(――すぐに羽赫だと分かった)


李衣菜(――だれの?)
319 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/30(土) 12:17:22.92 ID:tOgUoRhE0

P「かっ……!?」


P(――赫子?)

P(――誰か、また来てしまったのか?)

P(――違う。神崎さん達以外はここの事に気付いていない)

P(――じゃあ、誰が……)


P「……?」


P(――今破った壁を乗り越えて、誰かがこちらに歩いてくる)

P(――いったい……)


P「―――――!!」


P(――そうか)

P(――Rc抑制剤は、確かに全員に打った)

P(――だが、『彼女』には効かなかったんだ)

P(――彼女があまりにも強い赫子を持つから)



P「……神崎さん……!!」



P(――神崎さんが、『隻眼の喰種』だから)



蘭子「……プロデューサー」


蘭子「もう一度伝えるわ」ビキ



蘭子「飛鳥ちゃんから離れてください」



――――――――――――――――――――
320 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/30(土) 12:25:56.32 ID:tOgUoRhE0

〜収録スペース付近〜


北斗「……」

北斗「」スッスッスッ


北斗『冬馬。今どこにいる?』


北斗『冬馬?』


冬馬『悪い。LINEを開くのが遅れた』

冬馬『もう観客席から退場して、今玄関にいる』

北斗『分かった。エンジェルちゃん達とCP出演組は今一緒に行動してる』

北斗『俺達も合流しよう。一階の収録スペースだ』

冬馬『了解。すぐ行く』

北斗『急いでくれ、ちょっと余裕がない』

冬馬『どういうことだ?』



北斗『CPのプロデューサーが、思ったよりずっと強そうだ』

北斗『今は仲間割れが起きてるらしく時間がありそうだが、いつまでもつか分からない』

北斗『冬馬が間に合わなかった場合、俺一人でエンジェルちゃん達の救助に向かう必要がある』


北斗『俺は死ぬかもしれない。死んだらごめんよ』


――――――――――――――――――――
321 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/30(土) 12:27:36.22 ID:tOgUoRhE0

一旦ここまで。

次回、隻眼のらんらんvsSSSレート武内P
322 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/30(土) 19:59:25.67 ID:tOgUoRhE0

――――――――――――――――――――


飛鳥(――神崎蘭子)

飛鳥(――自身を『魔王』と称し、ゴシックに身を包む少女)

飛鳥(――ボクと同じ、セカイを切り取る者)


飛鳥(――しかし、共に食事や遊戯を重ねるうちに)

飛鳥(――これはただの人懐こい少女だと気付くようになった)

飛鳥(――言葉を組み換えて空気を飾る)

飛鳥(――よく言えばデザイナー、悪く言えば臆病者)


飛鳥(――表層こそ異質だが、その根は至極単純な存在)


飛鳥(――それが神崎蘭子だと思っていた)


飛鳥(――彼女が"喰種"かもしれないとは、考えたこともなかった)

飛鳥(――ボクだって"喰種"について全くのド素人というわけじゃない)

飛鳥(――かつてはそのヒトと異なる存在に興味を持って、ボクなりに調べたこともあるんだ)

飛鳥(――だから、"喰種"はヒトやコーヒー以外の食物を拒絶することぐらい識っている)


飛鳥(――奏さん達が"喰種"として指名手配された時、ボクは)

飛鳥(――『ああ、確かに』と思った)

飛鳥(――あのような『孤高』の字が似合う人のそれこそ、"喰種"が持つ特徴なのだろう……と)

飛鳥(――呪いを持って生まれた存在を、ボクはただ憐れんだ)


飛鳥(――一方、ハンバーグやプリンを蕩けた笑顔で頬張る彼女の姿は"喰種"の姿と一致するはずもなく)

飛鳥(――それが演技とも思えず、ボクは当然、喰種容疑者から彼女の名前に×を引いた)


飛鳥(――蘭子は悲劇とも、血の匂いとも無縁の、ただの等身大の14歳と思って付き合っていた)
323 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/30(土) 19:59:56.33 ID:tOgUoRhE0

飛鳥(――だから)

飛鳥(――だから、ボクは目の前の光景を信じることが出来なかった)


飛鳥(――神崎蘭子の衣装は首筋にヒビが生じ、赫い翼が噴出していた)

飛鳥(――ボクから見えた左目は、ただの赤い瞳だったから、あれは"喰種"とはまた別の存在なのかと思った)

飛鳥(――だが蘭子がボクに振り向いた時、それは違うと直ぐに分かった)


飛鳥(――黒い眼球)

飛鳥(――赤ではなく、赫い瞳孔)

飛鳥(――無機質な恐怖がにじみ出るような右目と)

飛鳥(――ヒトとして光を反射する優しい左目の両方で)

飛鳥(――蘭子はボクを、ボク達を見つめていた)



蘭子「……飛鳥ちゃん」

蘭子「今まで隠してて、ごめんね」


蘭子「飛鳥ちゃんは、皆の事は殺させないから」


飛鳥(――微かに震える声で、彼女はそう言った)


飛鳥(――そして壁に空けた穴に手をかけ、乗り越えようとする姿は)



飛鳥(――このまま蘭子が、どこか別の場所に消えていくように見えた)


飛鳥(――ボクはただ、蘭子の言葉に返事も出来ず)


飛鳥(――黙って見つめることしかできなかった)



――――――――――――――――――――
324 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/30(土) 20:03:31.48 ID:tOgUoRhE0

とりあえずここまで。

評判いいみたいなので実写版亜人見て来る
325 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/10/01(日) 00:53:48.24 ID:dYtGvjMcO
おつ
326 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/01(日) 18:34:44.25 ID:McMGTohp0

――――――――――――――――――――


美嘉「……なんか、音しなかった?」

美波「うん……遠くで何かぶつかった音……かな?」


杏「スタッフさんがケンカしてるみたいだよ」

杏「うわー激しい殴り合いだー」


みく「ええ……?」


杏「聞いてる限り、大したことじゃないよ。待っとこうよ」



杏(――蘭子ちゃん、派手にやるなあ……)

杏(――ちょっと皆も怪しみだしてるじゃんか)


杏「……」


杏(――もう話しちゃおうか?)

杏(――どのみち報道されてるなら、遅かれ早かれ皆真実を知る)

杏(――知ったころには問い詰める相手が死んでるってだけだ)

杏(――それに蘭子ちゃんが戦ってくれるなら、みんなで加勢すればあるいは……)



杏(――いや、ダメだ)

杏(――蘭子ちゃんでもプロデューサーには勝てない)


杏(――プロデューサーはただの"喰種"だ)

杏(――ただの喰種なのに、隻眼の王って呼ばれてる)


杏(――それはプロデューサーが、『元』隻眼の王を)

杏(――高垣楓を倒してスカウトした、ただ一人の喰種だから)


杏(――そんなプロデューサーと蘭子ちゃんとじゃ、実力が違いすぎる)


杏(――蘭子ちゃんは勝てない)


――――――――――――――――――――
327 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/01(日) 18:35:23.15 ID:McMGTohp0

――――――――――――――――――――


P「……神崎さん」


P(――引き離されてしまった)

P(――今は私と小日向さん達の間に、神崎さんが立ち塞がっている)

P(――彼女達を殺すには、神崎さんをどかさなければいけない)


P「それは、できません」

P「離れるのは貴女です」


P(――難しく考えることはない)

P(――ただ近付いて、押しのければいい)

P(――戦う必要など、何処にも―――――)


蘭子「ッ!!」ビキキ


ゴッ


P「ッ!?」ズサ


P(――近づけない)

P(――今のは、神崎さんの羽赫だ)


P(――なんだあの量は)

P(――まるで大河のようだ)

P(――一度にあれだけの赫子を放出して、私を近づけさせない)
328 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/01(日) 18:35:53.90 ID:McMGTohp0

P(――羽赫の弱点は長期戦)

P(――歩を止めず、神崎さんに赫子を出させ続ければ、あるいは―――――)

P(――いや)


P(――時間がないのは私も同じ)

P(――時間をかければ、多田さん達が抑制剤から回復する)

P(――異変に気付いて、新田さん達が合流するかもしれない)

P(――そうなれば、皆はきっと小日向さん達を逃がしてしまう)


P(――そして、また―――――!!)



P「……神崎さん」

P「お願いします。そこをどいてください」

P「私の最後の仕事を、妨害しないでください」


P「あなた達のためです。……きっと小日向さん達は、いずれ恐怖に負けてあなた達を売ってしまう」

P「もしくは、人間にとって重罪の圧に負けて」

P「そうなる前に、手を打たないといけないのです」


蘭子「そんなわけない!」

蘭子「飛鳥ちゃんも美穂ちゃんも夏樹さんも、大事な友達だもん!」

蘭子「私達のことを売るわけない!!」


P「……」


P「……最終警告です」

P「そこをどいてください」


P「さもなくば、私は神崎さんを傷つけてでも無力化しなくてはいけない」


蘭子「どかない!!」


P「……」



P「わかりました」

329 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/01(日) 18:36:34.06 ID:McMGTohp0

――――――――――――――――――――


李衣菜「……!」


李衣菜(――私はただ、聞こえてくる音で2人の様子を掴んでいた)

李衣菜(――蘭子ちゃんが、プロデューサーの『最終警告』を断った瞬間)

李衣菜(――プロデューサーの雰囲気が、変わった気がした)


李衣菜(――ビキビキバキバキと音が聞こえてくる)

李衣菜(――この音を知ってる。赫子……甲赫を出す時の音だ)

李衣菜(――でも、なにかおかしいと思った)

李衣菜(――音が長いんだ。あまりにも長い時間、甲赫を変化させる音が聞こえてくる)


李衣菜(――そして)

李衣菜(――何かを切る音が聞こえた)

李衣菜(――何かを二本、たぶん肉と骨。切り離されて飛んで行った)


李衣菜(――すぐ後に、何か重いものがドサリと落ちる音が聞こえた)



李衣菜(――蘭子ちゃんの両足が切り飛ばされた音だと気付くのには、しばらく時間がかかった)

330 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/01(日) 18:37:52.76 ID:McMGTohp0

――――――――――――――――――――


杏(――遂にやったか)

杏(――ああもう、蘭子ちゃんパニックになってんじゃん)

杏(――プロデューサーはプロデューサーで、精神的にダメージ受けてるの丸わかりだし)


杏(――蘭子ちゃん)

杏(――こっからじゃ何も言えないけど、大人しく引いた方がいい)

杏(――つーか普通は戦えなくなる。お願いだから戦えなくなって)

杏(――もしかしたらとは思うけど、そこから再生できるようなら)

杏(――蘭子ちゃんは更に地獄を見ることになるよ)


杏(――だって)


杏(――プロデューサーは)



杏(――『赫者』だ)


――――――――――――――――――――
331 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/01(日) 18:38:45.23 ID:McMGTohp0

――――――――――――――――――――


蘭子「えっ? あっ、え……」

蘭子「あし、私の、あし……どこ……」

蘭子「……あ……」


蘭子「あ、あ、ああ、……あああああああああああ!!!」



P「『甲赫』で『羽赫』の喰種を貫けば、再生が効かなくなります」

P「個人差こそありますが、食事なしで足は再生しないでしょう」

P「……申し訳ありません。仕事が終わればすぐに、回復を……」グジュリ


P「…!?」


蘭子「あっ……あっ、あっ……!」ジュグ

蘭子「うあっ、痛、つ、うああああ」ズズズ

蘭子「はっ、はあっ、はあ……ふー、ふー、ふー……」ズル



P(――なんだと?)


P(――何もなかったかのように、神崎さんの足が再生した)
332 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/01(日) 18:40:02.15 ID:McMGTohp0

P「神崎さん」

P「お願いです、もう止まってください」

P「立ち向かわないでください」

P「また、貴女を傷つけなければいけなくなります」

P「もうやめてください」


蘭子「ああ、あ……!」

蘭子「……い」

蘭子「いや、だ……」


蘭子「飛鳥ちゃんは、わたしがまもるんだ」

蘭子「ともだち、なんだもん」

蘭子「みすてるなんて、できないもん」

蘭子「だから……あ、ああああ、あああああああ」



蘭子「―――ああああぁぁああああぁぁああ!!!」ビキキキキ



P「―――――ッッッ!!!」


P(――なんだ、この赫子の『量』は!?)

P(――こんなの、普通じゃない)

P(――神崎さんが、『隻眼』だから……ば……)


P(――今なにを考えた!?)

P(――違う、違う違う違う!!)

P(――神崎さんを化け物扱いするな!!)

P(――何も変わらないと言ったはずだ!)

P(――神崎さんも、私の大切なアイドルには変わらないと!)

P(――島村さんや、アナスタシアさん達となにも変わらない筈だと理解したはずだ!!)
333 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/01(日) 18:40:51.58 ID:McMGTohp0

P(――それで、どうする?)

P(――また、足を切り落とすのか?)

P(――それで神崎さんが止まるのか?)

P(――そんなはずがない)

P(――なら、どうしろと?)

P(――刻み続けろとでも言うのか?)


P(――やるしかない)


P(――何度も何度も切り続けろというのか!?)

P(――守ると決めた相手を?)

P(――見ただろう、あの苦しむ姿を)

P(――何があっても守ると決めた筈のアイドルが、目の前で足を失い痛みに泣く姿を!!)

P(――あれをやり続けろと言うのか!?)


P(――だがやるしかない)

P(――何をしてでも、アイドルの命を守ると決めた)

P(――どんな犠牲を払ったとしても、生きてさえいれば、笑顔を取り戻せると知った筈だ)

P(――あの三人みたいな目に、神崎さん達を遭わせたいのか?)


P(――嫌だ)

P(――絶対に嫌だ)

P(――もう、死んでほしくない)


P(――もういなくならないでほしい)


P(――なら、やるしかない)

P(――大切な命のために、手を汚し続けろ)


P(――傷つけろ。踏みにじれ)


P(――神崎蘭子の心が折れるまで、あるいは再生力が尽きるまで)


P(――彼女を切り刻み続けろ)


――――――――――――――――――――
334 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/01(日) 18:41:43.87 ID:McMGTohp0

――――――――――――――――――――



『彼はとても可哀想な男だ』


『最初から彼は、アイドルの幸せを一番に願って行動し続けた』

『はじめに担当したアイドルに対しても、それは変わらない』

『だが、彼や彼の大切な人が生きるには……世界は残酷過ぎた』

『強者が弱者を喰らう世界で、彼の大切な子達はいとも容易く命を消し飛ばされた』


『彼は力を求めた』

『力を求めて、人も喰種も関係なく、他者を喰らい、他者から奪い続けた』

『今度こそ自分の大切な人たちを奪われないように』


『346プロのプロデューサーは、皆そうだ』

『彼らが見つけたシンデレラを、その輝きを、その幸せを一番に想い……そして、守るには奪うしかないと気付いてしまう』

『そしてみんな狂っていく』


『自分が一番に想っていたはずの命の重さを、忘れてしまう』


『……どうすれば良かったんだろうね』


――――――――――――――――――――
335 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/01(日) 18:42:43.39 ID:McMGTohp0

――――――――――――――――――――


P(――正面から神崎さんが来る)

P(――右腕と右足を切り飛ばして、蹴飛ばす)

P(――すぐに再生し、また私に飛びかかる)

P(――今度はタイミングを合わせ、達磨にした)

P(――首を掴んで、地面に叩きつける)

P(――手足が生える前に、赫包を狙う)

P(――一つは残さなければいけない。数を正確に把握する)

P(――赫子の噴出口は、赫包は4つ。なら3つ抉り出せばい)

P(――羽赫の一斉掃射を受けた。距離を取られてしまった)

P(――もう肘、膝のところまで再生している)

P(――もう一度だ。もう一度くりかえせ)

P(――両腕を切り飛ばす)

P(――切り飛ばしたと同時に、また羽赫を受ける)

P(――量が衰える気配はない)

P(――それどころか、甲赫の鎧を剥がされかけた)

P(――神崎さんはボロボロと涙をこぼしている)

P(――口を引き結んで、私をまっすぐににらみつけ、痛みに耐えて私と戦っている)

P(――意識が飛びそうなのを必死に堪えて、私の前に立ち塞がり続ける)

P(――そんな顔をしてまで戦わないでくれ)


P(――なにが貴女をそこまで駆り立てる)

P(――そんなに傷ついてまで、なぜ二宮さんに執着する)

P(――自分を大切にしてくれ)

P(――もう嫌だ貴女と戦うのは苦しいんだ)

P(――なぜ守りたかった人を痛めつけ続けなければいけないんだ)


P(――はやく折れてくれ)

P(――頼むから)


P(――誰かのために苦しむのはやめてくれ)
336 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/01(日) 18:44:27.95 ID:McMGTohp0







ドスリ






337 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/01(日) 18:45:08.70 ID:McMGTohp0

P(――?)

P(――神崎さんじゃない)

P(――神崎さんは前にいる。今の攻撃は後ろからだ)


P(――誰だ?)


「……はは……」


「……気持ちは分かるが……」


「……あんた、焦りすぎだ」


「……とどめを刺すのを忘れてたぜ……」



P(――あなたは)

P(――いや、それどころじゃない)

P(――踏み潰してでもこいつを退かせ)グッ


ゴギッ


「かっ……!」
338 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/01(日) 18:54:34.82 ID:McMGTohp0

(――ああ。やっぱり、俺の力じゃ、一級Pには叶わないか)

(――その中でも、『隻眼の王』だもんなあ)

(――俺に出来たのは、ほんの数秒、気を逸らすくらい……)


(――でも、それで十分だ)



(――すごいな、あの神崎蘭子って子)

(――赫子の相性をひっくり返して、あの隻眼の王の鎧を剥いだ)

(――大量の羽赫に晒されて、中身も一撃でボロボロだ)

(――あっちは無傷。…いや、再生したのか)

(――どっちにしても化け物だ)

(――一分も持たずに死ぬだろう俺とは大違いだ)



(――『あの子』は……)

(――そうか。壁の向こうか)

(――ここからじゃ見えない。もう這いずって顔を見に行く力も残ってない)

(――ただ音を聞けば、無事だってことだけは分かる)


(――なあ、シンデレラプロジェクトのプロデューサーさん)

(――あんたには同情する。あんただって、アイドルを守りたかっただけなのは分かる)

(――気付いてたかな。あんたの表情が、蘭子ちゃんとそっくりだったこと)


(――でも、俺だってそうだ)

(――俺にとっても、あの子は俺が見つけたシンデレラだ)


(――初めは、仕事として『財産』のために適当にスカウトしてきたのは確かだ)

(――こんな所に連れてきてから、大切な人になってしまった)

(――悔やんでも遅かった。俺には力が無くて、あの子を逃がすことが出来なかった)

(――ただ逃げ切れることだけを祈り続けた)

(――力のない自分が悔しかった)



(――人間も喰種も関係ない)

(――プロデューサーなら、誰だって同じだ)

(――飛鳥Pや夏樹Pも同じだ。だから、俺に託して肉をくれた)


(――俺だって)



美穂P(――俺だって、美穂に幸せになって、生きて欲しいのは同じなんだ)


美穂P(――守れて、よかった)



美穂P(――――――――――)



――――――――――――――――――――
339 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/01(日) 18:55:41.60 ID:McMGTohp0

一旦ここまで。

亜人面白かったよ。ストーリーは大幅に端折ってたけどバトルアクション特化の魅力があった
340 : ◆AyvLkOoV8s [sage]:2017/10/01(日) 23:17:44.30 ID:McMGTohp0

ジュピター生放送見てきた。やっぱジュピターのアイドルやってる姿いいなあ、捜査官じゃなくてアイドルの立場で喰種に関わらせた方が良かったかも知れない

でもあまとうと亜門すごく合うんだよなあ


人工半喰種や半人間は寿命短いって言われてるけど、結局天然の半喰種って寿命はどうなんでしょうね?

天然隻眼は体の半分、人間の部分を削ってるから強くても短命だと思ってたけど、
なんか原作では長生きしてる隻眼が地下深くに暮らしてるとか言われてますし…
341 : ◆AyvLkOoV8s [sage]:2017/10/01(日) 23:21:38.82 ID:McMGTohp0

あんま自分で動かしてるキャラクターを自分でフォローするのは恥ずかしいからしたくないけど

翔太に「まだ殺しちゃダメなの?」とか言わせちゃったけど

あの子をファッションキチガイとして書きたいわけじゃないんですよ……
342 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/02(月) 20:13:43.01 ID:satsCMIO0
>『自分が一番に想っていたはずの命の重さを、忘れてしまう』 ←おま言う
半喰種が短命はまず設定自体が後付け感あるし原作者もそこら辺深く考えてない可能性も否めないからスルーで良いかと
343 : ◆AyvLkOoV8s [sage]:2017/10/02(月) 21:07:13.25 ID:GZXcOG7g0

――――――――――――――――――――


〜346プロ本社前 車内司令室〜


丸手「……―――……」ブツブツ

丸手「被害は―――抜け道は―――戦力は―――――…」ブツブツブツ


丸手「…クソッ」


丸手(――完全にマウント取られた)

丸手(――相手は最低SSレートの集団、戦場もあっちのホームだ。守備が盤石すぎる)

丸手(――現在9時30分、人質の最初の殺害まであと30分……)

丸手(――だが、奴らが律義に時間を守る筈もねえ)


丸手(――アイドルの犠牲者をひとりも出さず作戦遂行は不可能だ)

丸手(――畜生)


PRRRRRRR


丸手「……なんだ?」


丸手「もしもし……何だお前か」


丸手「何の用だ、崇男?」


――――――――――――――――――――
344 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/02(月) 21:08:55.37 ID:GZXcOG7g0

――――――――――――――――――――


武内P「……」


P(――ここは……)

P(――ああ、そうか)

P(――私は、神崎さんに赫子を剥がされて……)


P(――私は、収録スペースの床に寝そべっている)

P(――人間アイドルの方達が、私を取り囲んでいる)


P(――小日向さんは、担当プロデューサーの亡骸を抱えて涙を流している)

P(――私が殺した)

P(――二宮さんは、少し離れた壁に寄りかかりこちらを睨んでいる)

P(――殺されかけたのだから当然だ)

P(――木村さんは、右手だけで器用に左手を止血している)

P(――左手の指が動いていない。抵抗された時に私が斬った影響だろう)

P(――3人とも、つい先ほどまで私が殺そうとしていた)

P(――今は出来そうにない)

P(――身を起こす体力も、まだ回復していない)


P(――多田さんは、木村さんから離れて蹲っている)

P(――島村さんは……)



P(――そこで初めて、自分の頭が何かに乗せられていることに気が付いた)

P(――気付いた直後に、顔に水滴が滴り落ちたのを感じ取った)

P(――意識を真上に向けると)


P(――島村さんが、私に膝枕をしていて)



P(――そして私の顔を覗き込みながら、涙を流していた)
345 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/02(月) 21:11:15.23 ID:GZXcOG7g0

P「…島村さん? なぜ、泣いて……」


飛鳥「なんで泣いてるか、だって? よくものうのうと言えたものだな」

飛鳥「ボク達のプロデューサーを殺しておいて」

飛鳥「…今まで散々、ボク達人間を虐げておいて」


P「! なぜそれを……」


夏樹「…全部、親切なヒトが教えてくれたんだよ」

夏樹「財産の事も、キャッスルの事も、最終隠匿プロトコル…だっけ? の事も」

夏樹「アンタら……裏でとんでもなく悪いことしてたらしいな」


夏樹「安心しなよ、楽屋で待ってる子達は多分まだ知らない」

夏樹「チクるつもりもない。そんなのアタシらが決めていいことじゃない」


夏樹「その代わり、だりーと卯月はアンタがなんとかしろ」

夏樹「さっきからずっと、自分のことばっか責めて泣いてるんだよ」


P「自分を……せめて……?」
346 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/02(月) 21:13:55.66 ID:GZXcOG7g0

夏樹「…頼むから、なんとかしてくれよ」

夏樹「アタシらじゃ何言っていいか分かんねえよ……」



卯月「グスッ……ヒグッ……」

P「島村さん……どうして、ご自分を責めるのですか」

P「島村さんは、何も悪い事をしていないのに」


卯月「……だって……だって……!!」

卯月「私がアイドルになりたいなんて言ったから……」

卯月「プロデューサーさんは、そのためにっ、たくさんの人を殺したんですよね……?」

卯月「私のせいで……みんなが死んだのも、全部私のわがままが原因で……!!」


P「!!!」

P「…ち、違います。どうして島村さんが悪いと言えるのですか」

P「島村さんは、ただ当たり前の願いを持っただけです。罪は全部、それを奪わせないために手を尽くした私のものです…!」

P「私は、皆さんが心の底から安心してアイドルを続けてもらうために……!!」



卯月「―――――友達を殺してまでアイドルなんてやりたくないっ!!!」



P「……え」
347 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/02(月) 21:14:56.98 ID:GZXcOG7g0

卯月「私がアイドルやりたいなんて言わなかったら、プロデューサーさんに拾ってもらえなかったらっ……」

卯月「まだっ、死んだ誰かは、死んだアイドルの人は、まだ生きていられたんですよね……!?」

卯月「それなのに、私がアイドルやってることでっ……」

卯月「なにもわるくないのにっ、プロデューサーさんや、周りの喰種の人にっ、アイドルが殺されて……ひどいことされて……」

卯月「プロデューサーさんにっ、たくさん人殺しさせてしまって……」


卯月「どうやって、償ったらいいんですか……?」


卯月「もう、私のせいで死んだ人は帰ってこないのに……」


P「……あ……」


李衣菜「……プロデューサー」

李衣菜「私、喰種に生まれたからって大人しくしてるのが嫌で」

李衣菜「せっかく生まれたんだから、ロックなアイドルになりたいって、好きなものになりたいって」

李衣菜「そう思って、アイドルになったのに」

李衣菜「なのに、何も考えないでみくちゃんとケンカして、みんなと仲良くなって」

李衣菜「少しは、お客さんとか、仲間の皆に何かあげられたかなって思ったのに」


李衣菜「私がアイドルやるために、何人も死んだんですよ」

李衣菜「なつきち達の、大切な人まで」

李衣菜「もう少しで、私がアイドルやってることでなつきちまで死んじゃうところだったんですよ」


李衣菜「何が『笑顔の橋』ですか」


李衣菜「こんなことになるなら、アイドルなんてやらなきゃよかった……!!」
348 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/02(月) 21:16:07.34 ID:GZXcOG7g0

P「……そんな」

P「…わ、私は、ただ」

P「皆さんに、違う世界を見て欲しくて」

P「それで、これからも、生きてさえいてくれば」

P「また、笑顔を取り戻してくれると……」


P(――あれ)

P(――その結果、私は何をした?)

P(――『笑顔の橋』などと言っておきながら、アイドルの皆さんの、大切な人を殺そうとした)


P(――そして、多田さんを苦しめて)


P(――島村さんを泣かせた)


P(――笑顔でいてほしかった、だけなのに)



P(――挙句、そのために神崎さんにまで苦痛を与えて―――――)


P「……あ」


P「……神崎、さんは?」

P「それに、アナスタシアさんは……」


飛鳥「出ていったよ」

飛鳥「アーニャは、蘭子にしがみついて無理やり付いて行った」


飛鳥「……『私がやらなきゃ』って言いながら」

飛鳥「ボクから逃げるように出ていった」

飛鳥「自分を化け物扱いして、泣きそうな顔でいなくなった」


飛鳥「ボクは声をかける事すらできなかった」



飛鳥「蘭子は……」
349 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/02(月) 21:17:38.78 ID:GZXcOG7g0





「346プロへ人間のみんなを助けに行った」





「まるで罪滅ぼしをしに行くようだった」







飛鳥「……止められなかった、蘭子に何も言ってやれなかったボクの気持ちが分かるか?」



――――――――――――――――――――
350 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/02(月) 21:23:30.06 ID:GZXcOG7g0

今日はここまで。

あと一週間でラストまでいけそうでいけなさそう

351 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/02(月) 23:06:16.68 ID:sJ1FJFx40
歯茎むき出しでおなじみ鉢川準特等の顔の傷は、速水奏にキス&喰いちぎりを食らった過去のせいだと考えると滾る
352 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/10/03(火) 02:19:32.01 ID:8fvEuvIt0
乙です
蘭子強いな
たぶん楓も乱入するだろうし、1人でも多くアイドル達を救って欲しい
353 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/03(火) 23:26:24.01 ID:fRPw4LRD0

〜346プロ本社 内部〜


ちひろ(――現在、9時45分)

ちひろ(――人間アイドルの最初の殺害まであと15分……)


ちひろ(――プロデューサーさんはまだ戻ってこない)

ちいろ(――楓さん、来るなら今のうちに来て欲しいんだけどなあ)


藍子P「……ちひろさん」

藍子P「何か白鳩のやつら…捜査官の一部が移動してますが」

藍子P「……特等捜査官も、何人か移動しています」

ちひろ「えっ? ……本当ですね。ここを放棄して何処にいくつもりで……」


ちひろ(――もしかして『あっち』に?)

ちひろ(――人質を諦めてまで、実利を取りにいきましたか?)


ちひろ(――あくまで念のための『保険』とはいえ)

ちひろ(――智絵里ちゃん達に手を出されるのは気持ちのいいものではありませんね)

ちひろ(――プロデューサーさんはまだ向こうに残っているはず)

ちひろ(――それなら皆の護衛を任せられるし、そもそも予定ではアイドルの皆ももう移動している筈だし)

ちひろ(――よほどのことが無ければ、シンデレラプロジェクトの皆が死ぬことはないはず……)


ちひろ(――ごめんなさい、プロデューサーさん)

ちひろ(――貴方には説明しなかったけど……智絵里ちゃんが"喰種"って、白鳩にはとっくにバレてるんです)



ちひろ「白鳩がTOKYO MIX スタジオを狙いにいく危険性があります」

ちひろ「人質の殺害予定を早めて警告を入れましょう」


ちひろ「……それで向こうが留まらないようなら、智絵里ちゃん達に殿を押し付けた意味があったというだけです」
354 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/03(火) 23:28:42.75 ID:fRPw4LRD0

ちひろ「関ちゃんをここに」


藍子P「はい」グイッ

裕美「うっ……」


ちひろ「残念でしたね、裕美ちゃん」

ちひろ「捜査官達があなたを見捨てなければ、あと15分は生きていられたのに」

裕美「えっ……え?」

ちひろ「ご安心を」


ちひろ「出来るだけ醜い跡をつけて殺してあげますから」グッ

裕美「……え」


裕美「やだ」

裕美「た たすけて」



ちひろ(――これで後戻りはできなくなる)

ちひろ(――『あの人』が来ても、言い訳が効かなくなる……)

ちひろ(――プロデューサーさんが戻ってきていない今、かなり危ない橋を渡ろうとしている……)

ちひろ「……」


ちひろ(――来ませんよね?)

ちひろ(――裕美ちゃんを殺した直後に来るとかナシですよ?)

ちひろ(――来るなら今のうちですよ?)

ちひろ(――ここまで待ったんですから、もう殺しても来ませんよね?)グググ



夕美P「! 来ました! ビルの上を跳ねて異動しています!」

夕美P「ちひろさん! 羽赫の喰種がこっちに向かってきてます!」



ちひろ「―――――あっぶなああ!!!!」パッ


裕美「ッ!? かはっ、はあっ……!」


ちひろ「ほんっとにギリギリに来ますねあの人は!」

ちひろ「もう少しで怒りを買うところだったじゃないですか! 助けるつもりならもっと早く来てください!」

ちひろ「美優Pさん、迎えに行ってあげて!」



ちひろ「―――人質の解放を条件に、楓さんを説得して白鳩を殲滅してもらいます!!」
355 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/03(火) 23:31:20.22 ID:fRPw4LRD0

ちひろ「藍子Pさんは裕美ちゃんを皆の部屋に戻して! 念のためまだ拘束は解かないでくださいね!?」

ちひろ「ああもう殺されなくて良かったですね裕美ちゃんは! 死ねば良いのに!」


藍子P「ほら、立ちなさい。君も俺達も運が良かった」グイッ


裕美「…え、あ…」

裕美「……たす、かった……?」


――――――――――――――――――――


ちひろ「…もう、本当に心臓に悪い……」


ちひろ(――最初の人質を殺さず、時間を置いたのにはちゃんと理由がある)

ちひろ(――それは『隻眼の喰種』の楓さんが救助に来た時、取り返しがつくようにしたから)


ちひろ(――もし楓さんが人間アイドルを助けに来て、数人でも私達がアイドルを殺していたなら)

ちひろ(――間違いなく、私達は彼女の怒りを買って容赦ない殲滅を喰らったでしょう)

ちひろ(――そうなれば完全に詰み)

ちひろ(――実際、プロデューサーさんはまだ到着していなかった)


ちひろ(――でも、プロデューサーさんの遅れを考慮して一時間待ち)

ちひろ(――それで誰も殺していないうちに楓さんが間に合ったのなら)

ちひろ(――交渉と説得で、楓さんを白鳩と戦う味方にできる望みがある)

ちひろ(――先ほど放送で言った通り、白鳩の殲滅だって目的の一つ)

ちひろ(――『アイドルを守るため』なら、協力してくれる可能性がある)


ちひろ(――人間アイドルを全員解放することが協力の最低条件になるだろうから、目くらましと口封じは出来なくなるけど)

ちひろ(――楓さんなら……救助のために集まってくれた白鳩の大隊を容易く蹴散らせる)


ちひろ(――解放した人間アイドルだって……確実性は下がるけど、あとから殺しに行くことだってできる。職員が無事なのだから)

ちひろ(――手間がかかるから、出来れば来てほしくなかったんですけどね)


ちひろ(――ああでも、CPの皆のところに白鳩を行かせずに済むからある意味良かったのかも)

ちひろ(――でもすごく複雑な気分)


ちひろ「……あーもー。こんだけ悩むことになるから嫌なんですよ」

ちひろ「楓さんと言い日高特等といいかつてのリトルバードといい、規格外の存在……」


ちひろ「『化け物』って言うのは」
356 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/03(火) 23:32:31.62 ID:fRPw4LRD0

捜査官「なんだ……?」

捜査官「何か飛んできたぞ」

捜査官「――!! 羽赫の喰種!?」

捜査官「奴等の増援か!?」


ザザッ

美優P『楓さんが到着したようです』

美優P『暴れられる前に、中に入れて事情を説明します』


ちひろ「ええ。よろしくお願いします」

ちひろ(――はあ。ちゃんと交渉に乗ってくれればいいけど)


美優P『楓さん。まずは中にどうぞ』

美優P『お話したい事があって―――――』


美優P『……ん?』

美優P『……あれ?』



美優P『楓さん、なんでそんなに身長が縮んでるんですか?』



美優P『……いや違う。どう見ても楓さんじゃない。だれだ、おま―――――』



美優P『ぐあああああああああっ!!!』ブツッ


357 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/03(火) 23:34:36.81 ID:fRPw4LRD0

ちひろ「!!!?」ガタッ


ちひろ「玄関近くを担当してるプロデューサーさんに緊急の連絡です!」

ちひろ「謎の羽赫喰種を相手に美優Pさんの通信が途切れました!」

ちひろ「羽赫喰種の素性確認をお願いします!!」


ちひろ(――楓さんじゃない!?)

ちひろ(――それなのに、今のは―――――)

ちひろ(――美優PさんだってSSレートの喰種ですよ!?)

ちひろ(――それを、こんなにもあっさりと……)


輝子P『ウグッ!』

留美P『ま、待ってくれ! せめて話を聞いて……うがああああああ!!?』

日菜子P『ちひろさん! 正体が分かった! あの子はシンデレラプロジェクトの……っうわあああっ!!』


『―――――』ザザッ


ちひろ「……シンデレラプロジェクトの?」


『―――――通信機? だれか、聴いてるんですか』


ちひろ「……この声は」



『―――安心してください。殺してはいません。……殺したくもないです』

『でも、プロデューサーにやったように……少し回復まで時間のかかるケガをしてもらってます』


ちひろ「あなたは……」


『傷つけてごめんなさい。でも……』





ちひろ「蘭子ちゃん?」


蘭子『みんなを返してもらいます』
358 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/03(火) 23:36:44.99 ID:fRPw4LRD0

ちひろ(――通信機は、それが放り投げられる音を立てて)

ちひろ(――あとはもう、だんだん遠くなっていく爆発のような破裂音と、悲鳴だけを響かせていました)


ちひろ(――蘭子ちゃん?)

ちひろ(――なんで、蘭子ちゃんがここに?)

ちひろ(――プロデューサーさんはどうしたの?)

ちひろ(――万が一、CPの誰かに計画がバレた時は)

ちひろ(――プロデューサーさんが無力化する手はずだった)

ちひろ(――それは蘭子ちゃんが相手だったとしても同じこと)

ちひろ(――むしろ蘭子ちゃんがいたからこそ、あの人はCPの担当に回ったのに……!!)


ちひろ(――楓さんを封殺できる人ですよ?)

ちひろ(――『隻眼の王』とまで呼ばれる喰種ですよ?)

ちひろ(――まさか勝ったと言うの?)



ちひろ(――蘭子ちゃんが、『隻眼の王』に?)


――――――――――――――――――――


NWP「ぎゃっ!」パアンッ

ガルパP「ぐえっ!」ドオンッ

JKTP「何だよこのっ……ぐはっ」ガシャアアア



アーニャ「……」

アーニャ(――ついて行くって、無理やりしがみついたものの)

アーニャ(――本当について行くだけで精いっぱい……)

アーニャ(――ランコ、本当に強かったんですね)



「うっ……」

「なんて無茶苦茶な子だ」

「この様子じゃ……一級Pと二級Pの区別すらついてないな」

「強くてもまだ、何も知らない子供ってことか……」

「目についた端から……俺にまで赫子を撃ち込みやがった……」

「…まあ、いいか……」



アーニャ「?」
359 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/03(火) 23:37:20.15 ID:fRPw4LRD0

アーニャ「……ニキュウ?」

「! あんたは、蘭子ちゃんと同じシンデレラプロジェクトの……」

アーニャ「……アーニャも、あなたを見たことあります」

アーニャ「だれかの、プロデューサー」


アーニャ「……本当に、346プロのプロデューサーは……人間のアイドルを、殺そうとしていたんですね」


「……」


「……ちがうさ。いや、確かに最初はそのつもりだったが」

「よく見ろ、ここは檻の中だ。喜んで担当アイドルを殺そうとしてる奴が、こんなところにいるもんか」

「たとえ人間でも……担当したアイドルを危険に追いやりたいプロデューサーなんか、この346プロにはいない」


「笑いたいなら笑ってくれ。俺たち二級Pは、弱いから」

「弱い奴に喰種アイドルのプロデュースはさせられない。二級Pは人間のオーディションやスカウトに回される」

「周辺組織へのエサ探しだ」

「その子へのプロデュースだって、ただのカモフラージュ」

「いつか出荷されるだけだってのに、必死こいてレッスンやってるのを見守って」

「ムダになるって分かってるのに、仕事みつけるために走り回って」


「それでな。皆いつの間にか、担当アイドルに情が湧いてくるんだ」

「自分に守ってやれる力もないのに、どうかこの子が財産に選ばれませんようにって、毎日祈るようになるんだ」

「だから……蘭子ちゃんだったか。あの子が来てくれて、このクソみたいな組織を潰してくれて、二級Pの皆は感謝してる」

「実際は俺達も一緒に痛めつけられたが……これは何もしなかった罰だと思うことにする」

「むしろ、お釣りをあげたい気分だ」
360 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/03(火) 23:38:21.90 ID:fRPw4LRD0

アーニャ「……アーニャの、気のせいですか?」

アーニャ「あなたは……ぜんぜん、嬉しそうじゃないです」


「嬉しいさ。一級Pのクソ野郎どもが、為す術なく転がされるのを見るのは」

「一矢報いたんだ……嬉しいに、決まって……」


「……」


「……畜生……」

「なんで、もっと早く助けてくれなかった」

「こんなに強いなら、なんでもっと早く気付いてくれなかった」

「こんなに簡単に立ち向かえたなら、あんな事させやしなかったのに……!!」


「……ゆかり……」

「……法子ぉ……!!」


「ごめん……何もしてやれなくて、助けてやれなくて……!!」


「何でもっと早く、あの子に助けを求めなかったんだ……!!」


――――――――――――――――――――
361 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/03(火) 23:42:19.44 ID:fRPw4LRD0

――――――――――――――――――――


メロイエP『……ごめん。いい大人が、愚痴ってるところ見せてしまった』


メロイエP『人間アイドルの皆が監禁されてる場所は音で大体わかるだろう』

メロイエP『だが無理に助け出さない方がいい。この状況なら、待たせてれば白鳩の奴らが勝手に救助してくれる』

メロイエP『周囲の一級Pさえ排除すれば、自分で脱出させるよりむしろ部屋の中にいた方が安全かも知れないしな』


メロイエP『……君が付いてきた理由は何となく想像がつく』

メロイエP『蘭子ちゃんが心配で仕方なかったんだろ。ちらっと見たが、あれは罪の重さから逃げたくて仕方がない奴の顔だ』

メロイエP『……あの子は、この先どうなるんだろうな』


メロイエP『大事な人なら守ってあげてくれ。失ってからじゃもう遅いからな……』


――――――――――――――――――――


アーニャ「……」

アーニャ(――プロデューサーが、倒れた後)

アーニャ(――現れた『あの人』に、真実を聞いてから)

アーニャ(――ランコ、すごく苦しそうでした)

アーニャ(――私も、つらかった。でも、ランコは、もっと)


アーニャ(――ミナミ、ごめんなさい。何も言わないで、出ていって)

アーニャ(――でも、あんなランコを、ひとりにしたくなかった)
362 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/03(火) 23:42:57.07 ID:fRPw4LRD0

早耶P「うう……」

雪美P「無茶苦茶だ、あんなの……!」



アーニャ(――ランコが走って行ったあとは)

アーニャ(――プロデューサーのみんなが、倒れています)

アーニャ(――強い人ばかりだと、聞きました)

アーニャ(――それを、こんなに簡単に……)



アーニャ(――ちひろさんも)



ちひろ「……うう」


ちひろ「最初は……隻眼とはいえ、なんで、こんな……」

ちひろ「戦ったこともない子供がと、思いましたが……」

ちひろ「その、赫子の使い方を、見て……実際に喰らって……やっと分かりました」


ちひろ「無尽蔵の刃」

ちひろ「止まることのない、洪水のような羽赫の波で、まるごと飲み込んで……」

ちひろ「……そうですよね。津波に勝てる戦士なんか、いるわけないですもんね」

ちひろ「『隻眼の王』も、そうやって……」

ちひろ「…いえ。こうなってしまえば、あなたが新しい『隻眼の王』になるのか……」


ちひろ「そんなのを、50人以上を相手に、わざわざひとりひとり……本当に無茶苦茶……」

ちひろ「その体のどこに、そんなものが……ああ。命を削れば……」
363 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/03(火) 23:43:53.98 ID:fRPw4LRD0

ちひろ「……台無しだ」

ちひろ「お前のせいで、全部台無しだ」

ちひろ「用意した策も、かき集めた屈強なプロデューサー達も、こんなのがひとりいれば全部台無しにされる」

ちひろ「いつもいつも、強い人は勝手ばかり……自分の都合で、全部ぐちゃぐちゃにして持って行ってしまう……」

ちひろ「くだらないワガママを、力づくで押し通して……」

ちひろ「暴虐に付き合わされる、身にも、なってくださいよ……!」



ちひろ「……化け物め……!!」



アーニャ(――本当に)

アーニャ(――みんなを逃がすために、ここの人たちを倒して、本当に……)


アーニャ(――本当に『あの人』が言った通りに、なりますか?)


アーニャ(――みんなランコを、怖がらずにいてくれますか?)



蘭子「……」

蘭子「……行こっか、アーニャちゃん」

蘭子「大丈夫。これでみんな、助かったから……」


蘭子「これを見れば、黒井さんの言った通り……」



蘭子「捜査官のみんなも、私達"喰種"を見直してくれるから……!!」


364 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/03(火) 23:48:39.63 ID:hOsUw4PE0
はい絶望
365 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/03(火) 23:49:29.21 ID:fRPw4LRD0

今日はここまで。

BLEACHの破面編読んでた人なら
「白哉の吭景・千本桜景厳を一級Pひとりひとりに連続でぶっぱした」と言えば
蘭子のやった事のヤバさを分かってもらえると思います
366 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/04(水) 08:42:36.54 ID:WRDUIj6MO
数年後
エロいバトルスーツを着て、メリケンサック型のクインケを振るう中野有香捜査官の姿があるんだろうなぁ
367 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/04(水) 12:16:33.09 ID:N/cHD4on0
黒井…ああ…うわぁ…
368 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/04(水) 16:04:30.46 ID:eyKGJ1/c0
騙して共倒れさせる狙いとか…えげつな
一方でちひろの言葉のこのブーメラン感も凄い
369 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/04(水) 21:53:22.27 ID:4Qn4Dpkl0

――――――――――――――――――――


「……あんた、焦りすぎだ」

「……とどめを刺すのを忘れてたぜ……」



北斗「……」スッ



〜個人 北斗⇔黒井〜


北斗『CPのプロデューサーが無力化されました』

北斗『二宮飛鳥ちゃん達を巡って、CPメンバーの神崎蘭子と衝突したみたいです』

北斗『動画も撮影しましたから、載せておきます』


黒井『報告ご苦労。私も到着した』

黒井『ざっくりとだが、動画も確認した。神崎蘭子は隻眼か』

北斗『隻眼って2年前のですか?』

黒井『あれは左が赫眼だ。2匹目ということだろうな』

黒井『我々で対処できる相手ではない。奴には立ち去ってもらう必要がある』


北斗『どうやるんですか?』

北斗『あと、まだ来てませんけど冬馬どうしましょうか』

黒井『長年培った業を見せてやる。耳を塞いでおけ』
370 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/04(水) 21:54:58.05 ID:4Qn4Dpkl0

〜グループ『jupiter』〜


冬馬『悪い! 何か火事がおきたみたいで、他のスタッフや出演者がパニック起こしてやがる!』

冬馬『人込みでそっちに行くのは時間がかかりそうだ……!!』

北斗『こっちの問題はしばらく気にしなくて良さそうだよ』

北斗『内部分裂を起こしてCPプロデューサーが自滅した』

黒井『私も合流したからお前の仕事はまだない』

黒井『だがCPのプロデューサーが復活した時は冬馬の出番だ』

黒井『その時に備えて、お前には避難者の誘導を任せる』

冬馬『分かった』


翔太『さっきの火災ベル、なんかすごく大きくなかった?』

翔太『黒ちゃん何か弄った? けっこー耳痛いんだけど』


黒井『喰種の聴覚対策だ。昨日忍び込んでやった』

黒井『聴覚に優れた喰種がまともに聞けば、耳が使い物にならなくなる』

黒井『コクリアで実証済みだ』


黒井『これで出演者組と楽屋組は互いの様子が察知できなくなる』

黒井『安心して任務に移れ』


翔太『了解〜』



黒井「……さて」
371 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/04(水) 21:55:46.26 ID:4Qn4Dpkl0

〜収録スペース〜


ジリリリリリリリリ……



蘭子「はっ……はっ……はっ……」


アーニャ「ランコ! 大丈夫、ですか?」

蘭子「…大丈夫。大丈夫だよ」


蘭子「それより、李衣菜ちゃん。さっきの『最終隠匿プロトコル』って、どういう……?」

李衣菜「ッ……!!」

蘭子「……李衣菜ちゃん?」

李衣菜「……ごめん。さっき打たれた注射のおかげなのかな」

李衣菜「耳が悪くなってるみたいだから、まだマシなんだけど……」

李衣菜「……頭がガンガン言ってる……」

卯月「李衣菜ちゃん……」

李衣菜「……大丈夫、話せるよ。今はもう聞けないけど、さっきニュースじゃ……」





黒井「そこから先は私が説明しよう」


「「「!!!」」」
372 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/04(水) 21:56:19.82 ID:4Qn4Dpkl0

黒井「ウィ、346プロのアイドル諸君」

黒井「私は黒井崇男、こっちは伊集院北斗だ」

北斗「チャオ☆」


黒井「ともに、喰種捜査官だ」


夏樹「!」

飛鳥「……喰種、捜査官」


卯月「え……!?」ジリ



黒井「ノンノンノン、心配はいらないよ喰種のアイドル諸君」

黒井「殺そうと思ってここに姿を現したわけじゃない」


黒井「私は君……蘭子ちゃんだね? 君の仲間を守らんとする姿に感銘を受けてね」

黒井「君に『あるお願い』をしに来たんだ」



黒井「まずは全てを教えよう」

黒井「キャッスル、財産、最終隠匿プロトコル……私達CCGが掴んだ情報を」

黒井「君達のいた346プロの正体と、その目的について」


――――――――――――――――――――
373 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/04(水) 21:57:31.91 ID:4Qn4Dpkl0

――――――――――――――――――――


卯月「『キャッスル』の正体が、346プロのプロデューサー……?」

李衣菜「『財産』は人間のアイドルの事で……協力してる組織に売ってるって・・・・・」

アーニャ「最後は、人間のアイドルをみんな、ころす……」

蘭子「……プロデューサーも、裏でずっと……」



黒井「……彼らも、仕方のないことだったのかもしれない」

黒井「ああでもしなければ、君達アイドルの秘密を我々から隠せなかっただろうからね」



黒井「すべて君達のためにやったことだ」

黒井「特に、蘭子ちゃん。君の存在はとても珍しい」

黒井「君のような隻眼の喰種がいると分かれば、もみ消しも簡単なことではなくなる」

黒井「君の正体を隠すためには、益々多くの犠牲を払う必要があっただろう」


蘭子「……!」

蘭子「そんな……私の、せいで……?」


黒井「……悲しい事だ。皆が君を憎んでいる」

黒井「君のためと言って、彼らがどれだけ多くの命を弄んだことか……」

黒井「犠牲になった人にも、家族がいたはずなのに」


蘭子「……あ……」


黒井「……だからこそ、君に頼みたい」

黒井「これは君の、君達の名誉を取り戻すためのお願いでもある」





黒井「346プロで戦って、人間アイドルの皆を救ってはくれないか」





黒井「そうすれば、君はきっと……みんなの英雄になれる」


――――――――――――――――――――
374 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/04(水) 21:58:37.08 ID:4Qn4Dpkl0

〜9時50分 346プロ正門前〜


捜査官「おい、降りて来たぞ!」

捜査官「さっきの羽赫喰種だ!」


実「……カメラの様子だと、あの喰種が中の職員たちを片付けたらしい」

実「本当にやるとは……」


蘭子「……」スタッ



蘭子「―――待たせたわね。我が片翼よ」


蘭子「御覧の通り、我が半身を為す少女達はその命を脅かされず」

蘭子「魂を救済したわ」

蘭子「我が名は神崎蘭子。ヒトの身と喰種の牙を共に持って生まれし存在」


蘭子「―――我こそは、ヒトと喰種を繋ぐ『隻眼の王』!!」


蘭子「さあ、同胞たちよ。こちらは我が盟友アナスタシア」

蘭子「此度の救済を以て、我等は其方の下に親愛の橋を架ける……」


蘭子「今こそ祝杯を挙げる時よ」



蘭子(――黒井さん)

蘭子(――私、やったよ)

蘭子(――みんなを助けられたよ)

蘭子(――だれも死んでないよ)


蘭子(――私、知らなかっただけなの)

蘭子(――私のことを隠すために、プロデューサーたちが人を殺して)

蘭子(――私のせいで人がたくさん死んでるなんて、分からなかっただけなの)


蘭子(――だから、その分私は人を助けるから)

蘭子(――今まで悲しませたぶん、今度は私が皆のために戦うから)


蘭子(――もう、いいんだよ)

蘭子(――もう、喰種も人間も、泣くことなんか無いんだよ)


蘭子(――もう、人間と喰種は仲良くなれるんだよ……!!)



実「……君が、346プロを倒してくれたんだな」

蘭子「うん!」

実「人質も、全員無事なんだな」

蘭子「はい!」


蘭子「―――さあ! この手をとりなさい!!」



実「……ああ」
375 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/04(水) 21:59:08.77 ID:4Qn4Dpkl0







実「攻撃準備」







実「撃て」







――――――――――――――――――――
376 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/04(水) 22:00:00.24 ID:4Qn4Dpkl0

――――――――――――――――――――



(――私がちょうど、346プロについた時)

(――CCGの捜査官達が、二人の女の子を取り囲んでいるのが見えました)

(――一人はよく知ってる子。神崎蘭子ちゃん)

(――もう1人も、知ってる子。アナスタシアちゃん)


(――蘭子ちゃんは、涙ぐみながら)

(――嬉しそうに、捜査官達に語り掛けていました)


(――でも次の瞬間)

(――いきなり、アーニャちゃんの表情が青ざめて)

(――蘭子ちゃんに覆いかぶさって)


(――そして、二人を取り囲んだ捜査官達が銃を構えて)



(――蘭子ちゃんとアーニャちゃんの体は、羽赫でバラバラになってしまいました)



――――――――――――――――――――
377 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/04(水) 22:00:22.61 ID:+NZ1Gb760
法寺さん...
378 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/04(水) 22:00:52.72 ID:4Qn4Dpkl0

〜TOKYO MIX 楽屋〜



杏「ぐっ……ああっ、クソッ……!!」

きらり「杏ちゃん? 大丈夫? ねえ、杏ちゃん!?」

杏「やめろきらり……大声出すな……!!」

きらり「うゆっ……ご、ごめんなさい」

杏「……くっそ……」


杏(――なんなんだよ、さっきのバカでかいサイレンは!!)

杏(――耳が痛い、冷や汗が止まらない、頭が痛くてまともに立ってられない……!!)

杏(――どう考えても普通のサイレンじゃない)

杏(――誰だか分かんないけど、仕込んでやがったな……!?)


杏(――蘭子ちゃん達の様子がもう聞こえない)

杏(――蘭子ちゃんがプロデューサーに勝った、それ以降のことがもう何も分からない!!)

杏(――杏の勘が言ってる。このまま何もしなかったら間違いなくやばいことになる! 絶対!!)



ガチャ



翔太「失礼しまーす。…さっきのベルすごくうるさかったけどさ。みんな大丈夫?」


杏「あ……?」

杏(――何だこの子)

杏(――さっきまで近くの部屋にいた子か)


翔太「おねーさん達が心配で来ちゃったんだけど……あれ」


翔太「そのテーブルの上にあるのって……何かのお菓子?」



かな子「! そ、そうなの! 蘭子ちゃんが帰って来た時のために、プリン作ってきたんだけど……」

かな子「あなたも友達を待ってるのかな? 良かったら、あなたも食べる……?」


翔太「えっ、いいの!?」


かな子「うん、いいよ! 作りすぎちゃったから、おすそ分け!」

翔太「ありがとう! おねーさん優しいね!」



翔太「…でも、いらないや。ボク甘い物苦手だし」



翔太「それに」





翔太「"喰種"の作ったものとかさ。食べる訳ないじゃん」
379 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/04(水) 22:02:18.73 ID:4Qn4Dpkl0

かな子「……えっ?」





ズパッ





智絵里「……えっ」

杏「……え」


杏(――耳が痛くて、まともに音が聴けなかった分、こっちが働いたのかな)

杏(――その光景は、すごくゆっくりと杏の目に焼き付けられた)


杏(――まだ中学生くらいの子供が、かな子ちゃんのプリンを叩き落として)

杏(――そのまま、かな子ちゃんの髪をひっつかんで)


杏(――もう片方の手には、いつの間にかナイフを握ってて)

杏(――引き寄せたかな子ちゃんの首に、ナイフを当てて……)





杏(――そして、かな子ちゃんの首が落ちた)


――――――――――――――――――――
380 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/04(水) 22:03:03.47 ID:4Qn4Dpkl0

――――――――――――――――――――



黒井「もしもし。私だ丸手特等」

黒井「そっちに送った化け物はどうだ? ちゃんと仕事をしてくれたか?」

黒井「…はははははっ!! そうかそうか、うまく行ったか!!」

黒井「化け物と言えど所詮小娘だな! あんな演技に騙されてくれるとは!」


黒井「……ところで丸手」

黒井「人間アイドルが全員生きて救助されたんだ。さっきの賭けは私の勝ちだろう?」

黒井「ならこっちの奴等は……よし許可を出したな。言質は取ったぞ」

黒井「アデュー」ブツッ



黒井「……」


黒井「……さて」





黒井「楽しいクリスマスパーティーをしようじゃないか」





黒井「―――殲滅戦だ」



――――――――――――――――――――
381 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/04(水) 22:06:22.65 ID:4Qn4Dpkl0

今日はここまで。


黒井も武内Pも蘭子対策や李衣菜対策や杏対策に頭悩ませて作戦練ってました。

僕も頭悩ませてプロット練ってました。

そとなみさんヒナミの超感覚無かったことにしすぎやねん
382 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/10/04(水) 23:47:08.24 ID:vxCcG6tf0
乙です!
旧多とS3班がどうやってあの場に先回りしたのか謎過ぎる

>>376の独白は楓かな?
383 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/10/05(木) 01:25:50.04 ID:zt79TDG6O
楓さんは勝手に鱗赫のイメージだったけど羽赫だったのか
リトルバードこと小鳥さんも羽赫だろうし、今のところSSSレートクラスは羽赫が多いですね

喰種アイドルの赫子一覧表ってありません?
384 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/05(木) 15:07:42.67 ID:9ZY2Twcv0
>>383
表は作ってないので直書きになりますが


今のところCPの赫子設定

羽赫:凛、蘭子、智絵里、杏
甲赫:未央、李衣菜、美波、きらり
鱗赫:かな子、みりあ、杏(2種持ち)
尾赫:卯月、みく、莉嘉、アーニャ

加えてCP外のアイドルで確定してる赫子設定

羽赫:楓、瑞樹、奏、里奈、菜々(出せない)
甲赫:武内P、輝子、今西、フレデリカ、藍子、美玲
鱗赫:美優、小梅、文香
尾赫:美嘉、ちひろ、周子、夕美、忍

一応決まってるけど変わるかも:紗枝(羽赫)、まゆ(尾赫)、肇(甲赫)、鈴帆(羽赫)


って感じになってますね

385 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/05(木) 15:11:18.57 ID:9ZY2Twcv0
>>384
あと今回抑制剤やらなんやらで出番がないのでですが、李衣菜は万丈と同じく回復赫子使える設定にしてます。
386 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/05(木) 19:50:45.49 ID:9ZY2Twcv0

――――――――――――――――――――


凛(――お父さんと、お母さんとのお別れは)

凛(――突然やって来た)



三条馬「黒井上等。渋谷凛と本田未央を捕捉しました」

三条馬「渋谷家の父親、母親は共に先制攻撃で死亡」

三条馬「これで北海道の双葉家と大阪の前川家を除き」

三条馬「島村家、三村家、新田家、多田家、赤城家」

三条馬「シンデレラプロジェクトの血縁者はすべて駆逐しました」



凛(――卯月達のライブが終わって、346プロの様子が映って)

凛(――それから、車で走り続けていたとき)


凛(――いきなり、フロントガラスに槍が二本、飛んできて)

凛(――運転席と助手席にいたお父さんとお母さんごと、車を貫いた)


凛(――車は道路の端に衝突して、動かなくなった)



三条馬「これより、渋谷凛と本田未央の駆逐に移ります」



凛(――破壊された車と私達は)

凛(――白鳩たちに囲まれていた)


未央「……あ……」

未央「……そういう、ことなんだ」

未央「ずっと追いかけられてたんだ……」


凛(――逃げ道はない)

凛(――逃げる場所も)


凛(――逃げる意味も)

凛(――逃げて、生きる理由も)


凛(――もういいや)


凛(――殺すなら、さっさと殺して)


凛(――うん。それでいいよ。銃を構えて)


凛(――私達に銃口を向けて)


凛(――引き金を引いて)


凛(――やっと、死ねる)


未央「……」


未央「……やっぱり、できないなあ」
387 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/05(木) 19:51:14.54 ID:9ZY2Twcv0

凛(――え?)


凛(――なんで)


凛(――なんで、死んでないの)


凛(――銃声は聞こえたのに)


凛(――なんで未央が、私に覆いかぶさってるの)


凛(――なんで未央だけ、血まみれなの)



未央「……あー……」

未央「やっぱり、ダメかあ」

未央「しぶりんに、トラウマ、あたえちゃうから」

未央「ここで死に、たくは、なかったんだけどなあ」


未央「私の赫子じゃ、両方守るのは、無理かあ」



凛「……み、お?」


未央「ごめんね、しぶ、りん」

未央「しぶりんの、しに、たい、気持ち、わかるから」

未央「ほんと、は、このまま……らくにさせてあげたかったん、だけど」


未央「でも、しまむーの、笑顔、みてさ」

未央「しぶりん、を、このまま、終わらせたく、なかったから」

未央「死なせ、たく、なかったから」


未央「……お願い。しぶりん。生きて、ほしいや」

未央「できれば、あんな風に、わらって、しんでほしいんだ」


未央「ごめんね、しぶりん」


未央「いきて」
388 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/05(木) 19:51:43.59 ID:9ZY2Twcv0

凛「……そんな」


凛(――『勝手な事しないで』って、言いたかった)

凛(――でも、未央は自分の言いたい事ばっかり言って、私の話を聞いてくれなくて)

凛(――最後の力を振り絞るように、跳ねて)


凛(――目の前にいた女の人を、その甲赫で刺したんだ)

凛(――人間にとっては、間違いなく致命傷。ためらいもしなかった)


凛(――人を殺したことなんか、なかったはずなのに)



捜査官「三条馬一等!!」

捜査官「虫の息だ! 殺せ!!」



未央「しぶりんっ……走れええ!!」


凛「っ……!!」


凛(――血まみれで叫ぶその姿に)

凛(――私は、まともに考えることも出来なくて)

凛(――気が付けば、必死で走っていた)


凛(――未央が開けてくれた道を)

凛(――振り返ることもできずに、走っていた)



凛(――背後で、大量の血の匂いがした)

凛(――未央のものだと、すぐに分かった)


凛(――もう助からない時の匂いだと、私は知っていた)


――――――――――――――――――――
389 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/05(木) 19:52:10.53 ID:9ZY2Twcv0

――――――――――――――――――――


杏(――周りみんなの叫び声)

杏(――今は頭が痛くて仕方なくなる音のはずなのに、何も痛みを感じない)

杏(――まるで、幻覚を見てるみたいだ)


翔太「……んー。クロちゃんは確か、耳の良い喰種ならダメージが半端ないって言ってたけど……」

翔太「この中じゃ、そこのおチビちゃんになるのかなあ?」


杏(――かな子ちゃんを殺した子供が、杏の方を見る)


翔太「ごめんねー、万が一逃がしたら不味いかもしれないし」

翔太「チビちゃんが―――次ねっ!!」


杏(――子供が、杏の方に飛んでくる)

杏(――杏は、まともに逃げられなかった)

杏(――ナイフが、杏の首に向かってくのを、ただ見てるだけで―――――)


智絵里「杏ちゃんっ!!」


杏(――それなのに、杏がまだ生きていられたのは)


杏(――智絵里ちゃんが、一番に動いて杏を庇ったから)



翔太「……あれー、ハズレかあ」



杏(――あれ)


杏(――なんで智絵里ちゃんが倒れてるんだ?)
390 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/05(木) 19:53:00.71 ID:9ZY2Twcv0

翔太「まあいいや、次」


智絵里「……あっ……」


智絵里「……させ、ないっ!!」


翔太「えっ」



杏(――倒れたはずの、智絵里ちゃんが)

杏(――子供に、しがみついた)

杏(――子供に必死に、抱き着いて、離さない)


杏(――子供は、智絵里ちゃんに)

杏(――智絵里ちゃんから離れようとして、何度も何度も、ナイフを刺す)

杏(――智絵里ちゃんは、涙をぼろぼろと流しながら)

杏(――絞り出すような声で、必死に叫ぶんだ)



智絵里「にっ……にげ、てえ」

智絵里「はや、く」

智絵里「はや、げ……ぶ、あ……!!」


美波「……はっ!」

美波「美嘉ちゃん! きらりちゃん! みくちゃん!」

美波「皆を連れて逃げて!!」


杏(――美波ちゃんが、一番最初に我に返って)

杏(――美波ちゃんの指示で、みんな部屋から慌てて逃げてく)


みく「……杏チャン! ぼーっとしてないで逃げーや!!」


杏(――杏は、その場から立てなくて)

杏(――みくちゃんに引きずられながら、楽屋を出ていく)
391 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/05(木) 19:53:30.03 ID:9ZY2Twcv0

杏(――最後まで残ってたのは、美波ちゃんと、きらり)

杏(――美波ちゃんは、智絵里ちゃんを助けようとしたけど)

杏(――きらりちゃんに止められて、無理矢理外に追い出された)


杏(――肉を断つ音と、智絵里ちゃんの首が転がる音が聞こえた)

杏(――智絵里ちゃんの時間稼ぎで、みんな外に出られた)


杏(――いや、違う)

杏(――きらりだけ、ドアのすぐ近くに)


杏(――まるで中から誰も出さないように、突っ立ってた)


杏(――かな子ちゃんが死んでから、ずっとぼーっとしてた杏の頭は)


杏(――やっと冷えていった)





杏「―――――何やってんだよきらりっ!!!」




392 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/05(木) 19:55:18.31 ID:9ZY2Twcv0

杏(――内側から、肉にナイフを突き立てる音が聞こえる)

杏(――きらりは甲赫を出して、扉を塞いでいる)

杏(――杏は)


杏(――みくちゃんの手を振りほどいて、楽屋に戻ろうとする)


みく「! 何やってんの杏チャン!? 戻ったら杏チャンまで死ぬよ!?」

杏「はなせっ……はなしてくれ!」

杏「きらり! きらりぃ!! 何やってんだよ早く出てよ!!」

杏「なんできらりが残ってんだよ! 杏が代わるからっ……はやく出てきてよ!!」


きらり「……杏ちゃん」


杏(――ドアに張り巡らされた赫子の内側から、きらりのか細い声が聞こえてくる)


きらり「ごめんねえ、杏ちゃん。きらり、ぜんぜん動けなくて」

きらり「かな子ちゃんも、智絵里ちゃんも、きらりのせいで死んじゃった」

きらり「杏ちゃんの、大切な人なのに」


杏「はあっ!? ……きらりのせいじゃない!! 全部杏のせいだ!!」

杏「杏、黙ってたんだ! キャッスルの事も財産の事も、知ってて全部黙ってたんだよ!!」

杏「それで皆をわざと部屋の中から出さなくて……そいつのことも危険だって気付けなくて……だから今こうなったんだ!! きらりの何が悪いって言うんだよ!!」

杏「杏が代わるよ!! 杏はすごく悪い事してたんだからさあ!! 杏が死ぬべきなんだよ!! きらりは杏よりずっと生きて、やりたいことあるだろうがあ!!」

杏「はなせっ、みくちゃ……はなせ、よおおおおお!!!」


きらり「……」

きらり「……杏ちゃんが、なんのこと、言ってるか、わかんないけど」

きらり「きらり、わかるにぃ。杏ちゃんは、皆に心配かけたくなくて、秘密を守ってたんだよね?」

きらり「話しちゃったら、きっとみんな、傷ついちゃうから……」

きらり「とーっても優しい杏ちゃんだから、仕方なく隠してたって、きらりは分かるゆ」


杏「っあ……そんな、こと……」


きらり「それにね。きらり、おっきいから」

きらり「いっかい、みんなに喰種だってバレちゃったら……もう隠れられなくて、おしまいなの」



きらり「もう生きていけないんだあ」



杏「あっ……」


杏(――一瞬、力が抜けた)

杏(――その隙に、みくちゃんは杏を引っ張って)

杏(――杏はきらりが、きらりの姿が、きらりの声が、ずっと小さくなっていくのを見ていた)


杏(――やっと痛みが引いてきた耳には)

杏(――大きい体が倒れる音が聞こえて、それからは何も響かなくなった)
393 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/05(木) 19:56:23.26 ID:9ZY2Twcv0

杏(――かな子ちゃん)


杏(――何も知らないでヒトを食べていた自分が嫌で)

杏(――その分、周りの人間を幸せにしようとして、お菓子作りが上手くなった女の子)

杏(――CANDY ISLANDでのお仕事で、色んなところに行って)

杏(――色んな人が、かな子ちゃんのお菓子を美味しいと言ってて)

杏(――杏はお菓子の味なんか分からないけど)

杏(――ただ、お仕事を重ねて、周りの人にたくさん『ありがとう』を言われてるうちに)

杏(――だんだん自分に自信を持っていくかな子ちゃんを見ているのは)

杏(――救われていくかな子ちゃんを見るのは、嫌いじゃなかった)


杏(――智絵里ちゃん)

杏(――アイドルになる前は、親も家も無くて、まともな女の子の暮らしも出来なかったって聞いてる)

杏(――そんな暮らしをしてても、アイドルを諦めきれなくて)

杏(――女の子の幸せを諦められなくて、346プロに来たって言ってた)

杏(――待ってたのは、バラエティの仕事ばっかりだったけど)

杏(――そんな中で、一度だけブライダルの仕事があったんだっけ)

杏(――智絵里ちゃんのために用意されたウェディングドレス)

杏(――あれを初めて見た智絵里ちゃんは……本当に嬉しそうだった)

杏(――ここに来てやっと、智絵里ちゃんは)

杏(――女の子の夢を叶えられたんだよ)


杏(――きらり)

杏(――あの変な口癖は、派手にしてれば逆に怪しまれないからって聞いた)

杏(――ずっと、怖がられるのを怖がってた)

杏(――そんな大したもんじゃないことなんて、すぐに分かるのにさ)


杏(――だってほら)

杏(――346プロのちびっ子たちには、すごく懐かれててさ)

杏(――風船できらりの像を作るなんてさ。怖がられてたら、そんなのされないじゃん)

杏(――まして)

杏(――あんなの見せられて、ちびっ子たちの前ではすごく喜んで)

杏(――その後、杏と2人っきりになったら)

杏(――『とっても嬉しい』って、泣いてるんだ)


杏(――あんなの……ただの優しい女の子じゃなくて、なんなんだよ)
394 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/05(木) 19:57:48.68 ID:9ZY2Twcv0

杏(――だからさ)

杏(――プロデューサーの気持ちも、ちょっとは分かるんだ)


杏(――この346プロは、全部嘘でできた事務所だけど)

杏(――でも、いつか覚める夢でもさ)

杏(――こんないい笑顔見てたら、壊す気になれないじゃん?)


杏(――プロデューサーも、ちひろさんも、他の人達もさ)

杏(――みんな、あんな顔が見たくて人殺ししてたんでしょ?)



杏(――みんな)





杏(――こんな終わり方したくなくて、必死だったんでしょ)





杏(――ほら)



杏(――必死こいて生きようとして、局から脱出したら)



杏(――目の前には、たくさんのサイレン)



杏(――見慣れた白い服の集まり、みんなしてアタッシュケース持ち)



杏(――杏たちの幸せは、眠りと幸せな夢だけ)



杏(――夢から覚めたら、少し泣いて、ハイ死んでください)



杏(――現実にこんなのしか待ってないんだったらさ)





杏(――黙ってる以外に、どうすりゃよかったんだよ)


――――――――――――――――――――
395 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/05(木) 19:58:20.08 ID:9ZY2Twcv0

――――――――――――――――――――










――――――――――――――――――――
396 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/05(木) 19:59:02.49 ID:9ZY2Twcv0

――――――――――――――――――――



「――ふんふふふん、ふーんふふふふふん」

「ふふふふん、ふふふん、ふふーふん」



(――鼻唄?)

(――この曲、は)


(――『おねがいシンデレラ』……?)

(――途切れ途切れで)


(――今にも、消えてしまいそうな……)


(――ここは、どこ)


(――私は……)



「……気が、付きましたか」


「おはよう、ございます、蘭子ちゃん」



ちひろ「夢は醒め、ましたか」


397 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/05(木) 20:00:49.86 ID:9ZY2Twcv0

蘭子「……ちひろ、さん?」

蘭子「なんで……」


ちひろ「なんで? 何の話、です?」

ちひろ「なんで、あんなにボロ、ボロだったのに、ここに、いるかっ……ですか?」

ちひろ「……貴女もアイ、ドルだからっ、に、決まってる、じゃないですか……」


蘭子「……?」

ちひろ「本っ当に、呑気な、子、ですね……」

ちひろ「覚えて、ないんで、すか?」


蘭子「覚えて……」

蘭子「……!!」

蘭子「私、撃たれて……!!」


ちひろ「ええ……アーニャ、ちゃん、ごと、一斉、掃射で」

ちひろ「あなたも、バラバラに、なりました」

ちひろ「……それなのに、服以外、完治、と、いうのは」

ちひろ「さすが、というしか、ありませんね」


蘭子「アーニャちゃん、ごと……っ!!」


蘭子「―――アーニャちゃんは!?」

蘭子「アーニャちゃんは、私を庇って……!!」


ちひろ「……はあ」

ちひろ「すぐ横、ですよ。横」


蘭子「横……」


蘭子「……うそだ」


ちひろ「…現実、ですよ。それが、現実」



ちひろ「その、バラバラ、死体が、アーニャ、ちゃんです」



ちひろ「まだ、首から、上がキレイで、きれいなまま、で、良かった、ですね」

ちひろ「……集めるの、苦労したんですからね」

ちひろ「なんだって、こんな、死体なんか、あつめたんで、しょうか」

ちひろ「ばかばか、しい」
398 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/05(木) 20:04:39.47 ID:9ZY2Twcv0

蘭子「ああ……そんな……やだ……!!」



ちひろ「……ヒュー……コヒュー……」



ちひろ(――もう声が出ない)

ちひろ(――指一本動かせない)

ちひろ(――ああもうくだらない)

ちひろ(――結局こんな終わり方なんて)


ちひろ(――目の前の小娘に罵詈雑言を並べ立ててぶちまけてやりたい)

ちひろ(――こんなもののために全部壊したのかって)

ちひろ(――私達の、ささやかな夢だったのに)



ちひろ(――人間を大量に使い捨てたのも)

ちひろ(――秘密を知った喰種を消したのも)


ちひろ(――秘密を探った凛ちゃんに真実を突きつけたのも)

ちひろ(――未央ちゃんに消えないトラウマを植え付けたのも)

ちひろ(――シンデレラプロジェクトの皆を殿にして、先にほかのアイドルを逃がしたのも)

ちひろ(――その、凛ちゃん以外の家族を、騙して、家に残ってもらったのも)


ちひろ(――全部、くだらない私利私欲のためだとでも思っていたのですか)


ちひろ(――いいじゃないですか、ささやかな夢くらい見たって)

ちひろ(――いいじゃないですか、喰種が輝く舞台に立ったって)

ちひろ(――いいじゃないですか、また舞台に立ってもらうために全部失ってでも生き残ってもらったって)

ちひろ(――いいじゃないですか、そのために)


ちひろ(――冷徹になってでも、残酷になってでも、打てる手をすべて打っても)


ちひろ(――きらびやかで、幸せな夢の、世界を、つくることの)

ちひろ(――何が悪いと言うのですか)
399 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/05(木) 20:06:16.41 ID:9ZY2Twcv0

蘭子「っ……そうだ……まだ、手はある……!」

蘭子「楓さんが、教えてくれた、方法が……!!」



ちひろ(――ああもう。やめろと言ってあげたい)

ちひろ(――まだ、現実を見たくなくてもがいているのですか)

ちひろ(――そんなことをしても、アーニャちゃんは戻ってこないですよ)



蘭子「やった……成功した……」

蘭子「これで、アーニャちゃんが生き返って……!!」


蘭子「……あ、あれ」



ちひろ(――ああほら)

ちひろ(――それはもう、アーニャちゃんじゃないですよ)

ちひろ(――楓さんの物真似ですか)


ちひろ(――死体に、蘭子ちゃんの赫子を埋め込んでも)

ちひろ(――それは)



ちひろ(――ただの動く死体ですよ)



ちひろ(――あーあ。思った通り、泣きじゃくってる。泣いて、後悔してる)

ちひろ(――ああ……こんなに無様にもがいてる姿を見せられるなら)

ちひろ(――助けない方が、良かったかなあ)

ちひろ(――こんなに、傷ついた体に鞭打って)

ちひろ(――致命傷を負いながら、蘭子ちゃんと、アーニャちゃんだったものをかき集めて)


ちひろ(――もうすぐ死にゆく私が、見せられるのが、こんなものだなんて)


ちひろ(――なにが、『私が引き付けますから』、ですか)

ちひろ(――私が、死ぬのは、変わらないんじゃないですか)



ちひろ(――楓さん)
400 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/05(木) 20:09:38.87 ID:9ZY2Twcv0

たぶん今日はここまで。

杏の回想とちひろの独白とノローニャ、とりあえず書きたかったものは書けました

次の更新で346編は終了、その次の更新でエピローグやって終わりになります


リアルの事情と書く気力に限界が近付いてるのもあって、かなり巻いてます。
401 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/05(木) 20:09:49.64 ID:ArqLlc7LO
生まれたばかりの赤ん坊、みりあの妹もやられたか
402 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/05(木) 20:11:42.34 ID:9ZY2Twcv0

:reアニメ化だと
403 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/05(木) 22:39:23.95 ID:9ZY2Twcv0
>>384
ついでに765プロでは

羽赫:千早、小鳥
甲赫:真
鱗赫:響、あずさ、美希、P
尾赫:伊織

になります
404 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/05(木) 22:40:07.32 ID:qgOAQp9H0
あー遂にCPから被害者が…Pのトラウマスイッチがまた増えるなこりゃ
果たして何人生き残れるやら
405 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/10/05(木) 23:47:06.74 ID:upOFJWSm0
乙です!
まさかここまで一気に死者が増えるとは
冬馬のクインケ「シマムラ」の元が卯月なのか卯月の家族なのかは次回かエピローグまで見れば分かるのかな?

毎回更新を楽しみにしているので焦らずにじっくりお願いします
406 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/10/06(金) 02:18:25.59 ID:AGBr71CC0
>>384 >>403
ありがとうございます!
結構自分のイメージに合ってるのが多くて嬉しい
杏の2種は自分の中での格好良い赫子2つです
407 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/06(金) 03:01:05.79 ID:vpu5CsPA0
乙!
アーニャには生きて欲しかった…
408 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/06(金) 20:09:53.29 ID:hJ19nLRW0

――――――――――――――――――――







――――――――――――――――――――
409 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/06(金) 20:11:08.22 ID:hJ19nLRW0



「アーニャちゃん」

「美波さん」


「今日は、一緒に走ってくれて……その」

「ありがとう、ございました」


「今日は、その……二人に」

「お話したい事が、あって……」



「みんなは、私の赫子を見て」

「『強そう』って、『強い赫子を持ってていいな』って」

「魔王様みたいで、私にぴったりだねって言ってくれるんですけど」

「私は、この体……あんまり好きじゃないんです」


「…えっと! お父さんとお母さんからもらった身体が嫌いってことじゃないんです!」

「お母さんは、会えないけど……」

「ずっとひとりで育ててくれて、愛してくれて、今でも、大好きで」

「お父さんは、顔も分からないけど……やっぱり好きで」


「……そうじゃなくて」

「私はこの力が、ちょっと怖くて」

「私が憧れた力って言うのは、上手く言えないんだけど、何でもできて」

「一生懸命働いて、私のせいで、誰にも頼れなくて、ひとりで寂しそうにしてるお母さんも」

「物語に出てくるような魔法が使えたら、助けてあげられるから……」

「そんな魔法みたいな力に、憧れたんです」


「……私の力は、そんな理想の力じゃなくて」

「ただ、人を……傷つけるものだから」

「だから、怖くて……」


「私は、ただ」



「お母さんや、プロデューサーや、美波さんみたいに、だれかを助けられたら」



「そんな存在になれたらいいな、って……」



「だから、言葉だけでも真似したかったのかも……」



――――――――――――――――――――
410 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/06(金) 20:11:42.67 ID:hJ19nLRW0

――――――――――――――――――――


凛(――鼻の中を切り裂くような冷たい空気)

凛(――その中を漂ってくる懐かしい匂いを、必死にたどって)

凛(――親友と、大好きだった両親の匂いを、振り切って走った)


凛(――ほかに行くところなんてなかったから)


凛(――卯月)

凛(――プロデューサー)


凛(――ううん、他の誰でもいい)


凛(――好きな人の側にいたくて、ひとりぼっちでいたくなくて)

凛(――傷んでいく喉を我慢して、走り続けた)



凛(――やっと、仲間の匂いが濃くなったと思ったら)

凛(――鬱陶しくて仕方ない、あの白いコートも見えた)

凛(――回り込んで、でも道路からは回り込めなくて)


凛(――仕方がないから、建物を登ったら)


凛(――仲間の匂いは、車の中から漂っていたんだと気付いた)



凛(――それは白鳩の護送車だった)
411 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/06(金) 20:12:12.16 ID:hJ19nLRW0

凛(――卯月と、プロデューサーの匂いはしない)

凛(――あとは、何人か欠けてる)


凛(――美波。みく。杏。みりあ。莉嘉。美嘉)


凛(――匂いは、たぶんこれだけ)


凛(――あとはどこに行ったんだろう)


凛(――考えたくなかった)


凛(――考えたくなかったのに)


凛(――目の前に突きつけられた)


凛(――なんで、ここで皆を見つけてしまったんだろう)


凛(――なんで、今見つけてしまったんだろう)


凛(――目の前の有機パネルには)



凛(――卯月が映っていた)



凛(――手足を縛られて)


凛(――くせのついた髪は、乱暴に引っ張られていて)


凛(――その表情は、今にも泣きそうで)



凛(――知らない男が、その首に刃を当てていた)
412 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/06(金) 20:13:39.95 ID:hJ19nLRW0



黒井『ウィ、マダム。エ、ムッシュ』

黒井『そして各方面にまんまと逃げのび、安堵しているだろう346プロダクション喰種アイドルの諸君』

黒井『私はCCG上等捜査官の黒井だ』


黒井『これでも放送機器の扱いには心得があってね。TOKYO MIXスタジオをお借りして、こうして緊急放送をさせてもらっている』

黒井『ああ、心配はいらないよ。優しい上司がすべて責任を取ってくれると言ってくれたからね』



黒井『……さて、346プロの喰種ども』

黒井『同僚を生贄にして、まんまと自分は逃げおおせたと思っていたか?』

黒井『ざあ〜んねんっだったなあ! 計画は完全に失敗だ!』

黒井『頼りの職員共は全滅し、人間アイドルはすべて救出した』

黒井『こちらの捜査官は大して死んでいない。…ああ、失礼。ゼロではない。訂正しておこう』

黒井『ともかく、君達を守っていたものは全て消え失せた』


黒井『……さて』



黒井『次はお前たちだ』



黒井『先ほど述べた通り、捕らわれのアイドルはすべて救出済みだ』

黒井『あとは、346プロの名簿から彼女たちの名前を引くだけ―――』

黒井『残ったお前たちを、これから「喰種被疑者」として容赦なく捜査する』


黒井『勿論、猶予は差し上げよう。お前たちが本当に"喰種"だと証明されるまで』

黒井『その後どうするか? それはこの娘にやる通りだ』


卯月『……や、あ……!』


黒井『……許されるとでも思ったのか?』

黒井『みんな346プロがやりました、だから私達は人を殺していません』

黒井『だって私達はアイドルになりたかっただけだから! ただ知らなかっただけなんですう!!』


黒井『ふざけるな』


黒井『一匹残らず、探し出してやる』

黒井『346プロのクズ共も、その他のアイドル紛いのクズ共も』

黒井『すべて探し出して、我々は罰を与える』

黒井『殺しつくしてやる』


黒井『何も悪い事をしていない? なにを勘違いしている』



黒井『お前たち喰種が、生きたいと思うこと』



黒井『―――それこそが罪なのだ』
413 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/06(金) 20:14:45.91 ID:hJ19nLRW0





卯月『……ご』



卯月『ごめ、なさい、ごめん、なさい』



卯月『やだ、やだ。ころさ、ないで』



卯月『たすけ、ママ、あ、プロ、でゅ、さ』



卯月『みお、ちゃん』



卯月『りん





     ちゃ』



――――――――――――――――――――



凛(――最初に見た筈の笑顔は、もう無かった)


凛(――その笑顔だけは、ずっと変わらないでいてくれると思っていたのに)


凛(――罪悪感と、恐怖が入り混じった泣き顔だった)


凛(――どうにもならない身体を、ぎしぎしと必死でゆすって)


凛(――何も悪くないのに、ごめんなさいと繰り返して)





凛(――その姿は、まるで『処刑』だった)

凛(――卯月は、何も悪くない筈なのに)

凛(――あの男は、まるで自分が正義だとでも言うように)



凛(――断頭して、命を奪い取った)

凛(――あの子の笑顔も、夢も、全部)
414 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/06(金) 20:16:08.87 ID:hJ19nLRW0





「ごめんなさい」





「間に合わなかった」





「私のせいで、凛ちゃんの大切な人まで」





「奪ってしまいました」




415 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/06(金) 20:16:49.81 ID:hJ19nLRW0

凛「……え」



凛(――いつの間にか、隣に蘭子がいた)

凛(――いや)

凛(――本当に、蘭子なの?)


蘭子「……どうしたの、凛ちゃん」

蘭子「ああ。もしかして、この服?」

蘭子「これはね、盗んじゃった」

蘭子「流石に、ボロボロの衣装じゃ……恥ずかしくて」


凛(――ちがうよ、蘭子)

凛(――服の事じゃない)

凛(――どうしてそんな顔をしてるの、ってことだよ)


凛(――どうして蘭子は、そんな悲しい顔で笑ってるの)


蘭子「……救えなかった」

蘭子「卯月ちゃんも」

蘭子「アーニャちゃんも」

蘭子「かな子ちゃんも、智絵里ちゃんも、きらりちゃんも」

蘭子「……プロデューサーも」

蘭子「未央ちゃんと李衣菜ちゃんは、逃げ切れたのかな」

蘭子「無事だといいな」


蘭子「……私」



蘭子「私、決めたよ。凛ちゃん」

416 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/06(金) 20:17:36.04 ID:hJ19nLRW0

凛「……蘭子?」


凛(――私が何か言葉をかける前に)

凛(――蘭子は屋上から飛び降りてしまった)


凛(――落ちていきながら、蘭子は壁を駆けて)

凛(――叫ぶように、翼がその体を押し出していく)


凛(――突き進む先は、美波達が乗せられている護送車)



凛(――そして爆発音が鳴り響いた)



凛(――焼け死んでいく人間たちと、羽に貫かれて絶命する人間たちと)


凛(――車から這い出て、息を飲む仲間たちに囲まれて)


凛(――周囲を揺らめく赤い炎に、その身体は照らされていた)


凛(――燃え盛る火と一緒に揺れる、蘭子の翼は)


凛(――どうしてなんだろう)



凛(――すごく綺麗だった)



――――――――――――――――――――
417 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/06(金) 20:20:59.20 ID:hJ19nLRW0

――――――――――――――――――――


凛(――プロデューサーには、結局会うことが出来なかった)


凛(――その後のニュースで、捕まってしまったことを知った)





凛(――私達は、とにかく捕まらないように逃げた)


凛(――必死で逃げ回っているうちに、時間は過ぎたみたいで)


凛(――ふと時計を見ると、ちょうど12時を指していた)


凛(――なんで、こんなに嫌な偶然ばかり続くんだろう)





凛(――とっくに魔法は解けているのに)



凛(――なんで今更、見せつけてきたんだろう)



――――――――――――――――――――
418 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/06(金) 20:21:32.53 ID:hJ19nLRW0

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419 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/06(金) 20:22:38.40 ID:hJ19nLRW0





「美波さん」





「ごめんなさい」


「私、アーニャちゃんを守れませんでした」


「私のせいで、アーニャちゃんをひどい目に遭わせてしまいました」


「私のせいで、みんな死んだんです」


「346プロは、みんなを守ってたのに」


「どんなにひどいことをしても、喰種にとってはたった一つの拠り所だったのに」





「だから、もうこれ以上は奪わせません」


「私が、346プロの代わりになって戦います」


「今度は誰も死なせない」



「今度は私が、皆のために戦うから」
420 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/06(金) 20:25:25.94 ID:hJ19nLRW0










「私がみんなを守るから」










――――――――――――――――――――
421 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/10/06(金) 20:40:27.36 ID:AGBr71CC0
卯月の死亡シーンが今までで1番辛いな
まさか文字通りの公開処刑とは...
黒井は真戸ポジションだから無惨な最期を迎えるのは確定だろうけどそれでもこれはくるね
422 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/06(金) 20:49:57.07 ID:hJ19nLRW0

とりあえずこれで本編は終わりです。

曲がりなりにも蘭子の結末とCPメンバーの死んでしまう所は描写したので、

あとはエピローグとして楓さんやCCG保護組がどうなったかを書いて行こうと思います。

かなりサラっと書いてしまうので、楓さんの活躍や捜査官達の重苦しい最期を期待してくださった方はごめんなさい。

リメイク時にエピソードとしてちゃんと書くと決めているので今はこれで許してください。


>>405
時間をかけてでもちゃんと全部描写しきるのが一番いいとは僕も思うのですが、
元々技術不足なこともあり前編の時点で不満が多々残ってるところとか、原作がどんどんアレになってモチベが下がってることとか、
段々765編と時系列に矛盾が出てきてるから整理したいとか、
あとは申し訳ないことに、ダラダラ書いてるうちに大3になって就職のことをちゃんと考えなくちゃいけなくなり
のびのびとやっていく余裕がなくなってしまったこととか問題が色々できしちゃいまして……

なので、ひとまず「少なくともちゃんと展開が分かるように」「ちゃんと終わらせる」ことを第一に優先して、
細かいエピソードの数々や表現力を犠牲にしてでも一度ちゃんと区切りをつけて、

それでもやっぱり偶像喰種完結まで書きたいし楽しみと言ってくれた人のためにも満足できる話を書きたいのは確かなので、
将来の見通しがちゃんと立ってからまた前期のエピソードとかアイマスらしい要素とか、
書きたかったものをちゃんと追加して書き直そうと思います。

ちゃんと戻って来るので、申し訳ありませんが今はこれで。
423 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/06(金) 20:51:21.66 ID:hJ19nLRW0

明日の更新でこのスレは完結となります。

もう少しだけお付き合いいただければ幸いです。
424 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/06(金) 21:30:43.76 ID:43a6sQDro
奏、周子達は蘭子辺りと合流したのかな
CoのCG皆生き残ってるのか
425 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/07(土) 00:23:40.78 ID:YCek0wYq0
個人的には未央の死が一番印象深かった
藍子や家族との別れがあんなだったしアレだけフラグ立ってると逆に生存あるのかなって思ってたし
426 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/10/07(土) 00:28:09.30 ID:BiEYmoyW0
乙です!
卯月は今までで1番ショックだった
この分だと本編の方でフレデリカ達の言っていた「王様」は楓ではなく蘭子かな?

原作に対して言いたいことはよく分かります
もう随分前から原作よりもこちらの更新の方を楽しみにしているくらいで
何はともあれラストのエピローグまで頑張ってください!

ついでに質問なのですが、蘭子や楓や小鳥や武内P以外にも喰種達の強さについては決まっていますか?
各喰種がどのレート相当の強さなのかとか、765・346各事務所内での強さの序列とか
もし想定されていれば教えて欲しいです
427 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/07(土) 09:08:34.61 ID:wjaN4L4MO
おつおつ
どんな形であれちゃんと完結させてくれるだけで嬉しいぞ
428 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/07(土) 11:23:18.20 ID:OtjLsYf80

>>427
レートについては、前スレで詰まった時に作った表があります
http://imgur.com/zpYwG3a
序列については明確に決めているわけではありませんが、

とりあえず
346 その他の喰種<<楓<武内P<蘭子
765 伊織≦千早≦美希≦あずさ<<真<P<小鳥
ぐらいは決めてますね。
楓は元々それなりにあった素質と天才的な戦闘センスとそれなりの戦闘経験の積み重ね、
武内Pは赫者としての底上げと鯱のような地道な鍛錬による技術、
蘭子は経験こそないものの楓を軽く追い越す圧倒的な素質によるゴリ押しと自前の想像力をそれぞれ使い戦います。
なので蘭子はまだまだ伸び代があるのです。


皆さんコメント本当にありがとうございます。

段々リアルも厳しくなってきて、劣等感にも苦しみながら、それでも偶像喰種を書き続けていられたのは、

皆さんがコメントで楽しんでくれて、こんなssでも応援してくださったからです。

本当に励まされました。本当に本当にありがとうございます。


最後まで書けたので、これから投下します

よろしくお願いします<(_ _)>
429 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/07(土) 11:23:45.21 ID:OtjLsYf80

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430 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/07(土) 11:24:13.56 ID:OtjLsYf80

〜1月1日 某公園〜


美城「……」ペラ


美城(――346再編に当たって、問題は山積みだな)

美城(――資金も施設もスタッフも、一から集め直さなければならない)

美城(――あれは外道の巣だったが)

美城(――たしかに安定した企業だった)


美城「……」フー



「あけましておめでとう、常務」

「隣いいかしら?」



美城「!」

美城「……ああ。構わん」

美城「それと、あけましておめでとう」



美城「速水」



奏「…また仕事で悩んでるのね」
431 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/07(土) 11:24:53.29 ID:OtjLsYf80

奏「差し入れよ。缶コーヒーだけど、この辺りじゃ一番美味しいの」


美城「そうか」カシュ

美城「……確かに美味だな」


奏「お互い、やっと一息つけたみたいね」

奏「年末はそっちも慌ただしかったみたいだし……」

美城「……」


美城「…速水」

美城「私を殺しに来たのか」


奏「あら、どうして?」

奏「何か後ろめたい事でもあるの?」クスクス


美城「思い出話をしに来たわけではないだろう」

美城「聡明な君が気付いていないとは思わん」

美城「私はCCGの信用を得るため、君達4人の情報を売った」

美城「そのために、鷺沢文香は命を落とした」


美城「いつかは、その代償を払う日が来ると思っていた」
432 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/07(土) 11:26:14.38 ID:OtjLsYf80

奏「そう?」

奏「私も周子もフレデリカも、あなたの事を恨んでる訳じゃないわよ?」

奏「むしろ、財産のことを知った時は、常務らしいなって思った」

奏「それに何より……短い間だったけど、クローネでの活動は楽しかったもの」

奏「常務がいじわるされてて、下積みばっかりで終わっちゃったけどね」


美城「……そうか」

奏「今は人間だけの346プロを再編してるってところかしら?」

奏「あのまま346が無くなっちゃったらどうしようって、思ったけど」

奏「と言うか、私が言うのもなんだけど……評判とか、大丈夫なの?」

奏「世間の目はすごく厳しいと思うのだけど」


美城「その点だが、心配はいらない」

美城「確かに、346崩壊の直後は激しいバッシングを受けたが」

美城「今後の経営について、私はある勝算を持って密告に向かった」

美城「そして読みは当たっていた」


美城「喰種が経営しているアイドル事務所は、346だけではなかった」

美城「小早川紗枝が提供した情報の中には、目線逸らしのために密告する多事務所のリストもあってな」

美城「346がCCGに目をつけられかけた時は、他の喰種事務所を密告して事なきを得ていたようだ」

美城「よって346を皮切りに、喰種の経営しているアイドル事務所は次々と摘発された」


美城「今の民衆にとって、摘発されていない事務所は『喰種がいるかもしれない事務所』」

美城「そして346は一番最初に……言ってしまえば『浄化』された事務所だ」

美城「父を含む私以外の美城一族は逮捕された。裁判はまだだが、積極的に喰種に協力していたことから死刑判決が下るだろうと聞いている」

美城「今の代表取締役は私が務めている。悪逆非道の346プロを密告し、喰種の敵、人間の味方となった私が」


美城「よって、346プロは現時点で『一番信用できる』事務所になった」

美城「高価だが、新しい事務所にはRcゲートを設置し『人間だけの』アイドル事務所として再スタートを切るつもりだ」


美城「……これは想定外だったのだが、黒井上等の緊急放送を含め」

美城「シンデレラプロジェクトのメンバー数名が駆逐された事は広く知れ渡った」

美城「"喰種"だとしても彼女たちはアイドルだった。当然、人間のファンもいた」

美城「CCGが受けた批判、攻撃に比べれば、私個人の風当たりなど無いに等しかった」


奏「すごく荒れた……と言うか、今でも荒れているものね。346プロのアイドルを擁護した人が喰種扱いされていたのは……失礼だけど、ちょっと笑っちゃった」
433 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/07(土) 11:27:39.97 ID:OtjLsYf80

奏「それにしても……浄化って、随分とひどいことを言われたものね」

奏「でも、そっか。それならありすちゃんと唯はアイドルを続けられるのね」

奏「良かったら『応援してる』って伝えておいてくれないかしら?」


美城「……」

美城「……その話だが」


美城「『最終隠匿プロトコル』にて保護したアイドルと、その後検査のために招集し人間だと証明されたアイドルに意志を確認したが」

美城「左手首から先を欠損した木村夏樹、意識不明の椎名法子、両手の全指を欠損した水本ゆかり、重傷で保護された神谷奈緒、北条加蓮を除いて」

美城「生還した90名の人間うち10名が346プロから退社した」

美城「輿水幸子、五十嵐響子、中野有香、脇山珠美、森久保乃々、桐生つかさ、片桐早苗、浜口あやめ、向井拓海」

美城「そして橘ありすだ」


奏「……!」

奏「……あら。CCGもまだ、346プロのアイドルを全員判別できたわけじゃないのね」

奏「裕子が攫われる直前なら、346プロに所属していた人間アイドルは100名よ」

奏「裕子と、殺された茜、あとケガした人を含めても3人足りないわ」

奏「…まあ、一人はグレーだからカウントしていいのか分からないけど」

奏「誰が人間アイドルって分かってるの?」


美城「辞退者やけが人を除き、346プロでの活動続行の意志を表明した80名は」

美城「小日向美穂、櫻井桃華、道明寺歌鈴、乙倉悠貴、関裕美、白菊ほたる、福山舞、今井加奈、奥山沙織、横山千佳」

美城「太田優、棟方愛海、大原みちる、遊佐こずえ、大沼くるみ、相原雪乃、西園寺琴歌、楊菲菲、柳清良、榊原里美」

美城「安斎都、大西由里子、古賀小春、丹波仁美、池袋晶葉、原田美世、二宮飛鳥、上条春菜、佐々木千枝、松永涼」

美城「大和亜季、荒木比奈、松本紗理奈、松尾千鶴、岡崎泰葉、高橋礼子、服部瞳子、木場真奈美、水野翠、八神マキノ」

美城「浅利七海、高峯のあ、篠原礼、氏家むつみ、藤井朋、結城晴、桐生つかさ、鷹富士茄子、十時愛梨、市原仁奈」

美城「大槻唯、姫川友紀、及川雫、龍崎薫、難波笑美、依田芳乃、佐藤心、並木芽衣子、沢田麻理菜、矢口美羽」

美城「愛野渚、真鍋いつき、小関麗奈、メアリー、的場梨沙、財前時子、若林智香、ナターリア、相馬夏美、槇原志保」

美城「杉坂海、北川真尋、小松伊吹、三好紗南、キャシー、村上巴、首藤葵、冴島清美、南条光、イヴ・サンタクロース」

美城「付け足すと、木村夏樹は怪我こそしているものの復帰の意志をはっきり示している」


奏「志希と穂乃香と柚が欠けてるわね。あと80人の名前を何も見ずに言えるのは……ええ、流石ね」

美城「さらっと欠けた3人を指摘できる君が言えた立場ではない」


美城「……ところで、グレーと言うのは?」

奏「志希よ。あの子『半人間』だもの、流石に検査を受けるのは危ないと思ったのかしらね」
434 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/07(土) 11:29:12.77 ID:OtjLsYf80

美城「そうか。まだ捜査対象には人間が混じっていたのか」

美城「上条春菜、佐々木千枝、荒木比奈、松本紗理奈は保護後の呼びかけで戻って来た」

美城「あれで全てだと思っていたのだがな。『準一級制度』は、この時のための保険でもあったか」

美城「……そして、奴らの殺戮は意味があったと言うことか」


奏「…ああ、少なくともその場で駆逐はされないように、ってことね」

奏「人間嫌いのちひろさんが、やけにあっさり譲ったなと思ったら」


奏「……それで」


奏「良かったのかしら? 私に、そんなに情報をペラペラと喋っちゃって」

美城「私の目的は346プロダクションの完塞だった。それは既に達成している」

美城「君こそ、まだ判明していなかったアイドルの情報を喋ってよかったのか?」

美城「私がまた密告するとは思わなかったのか」

奏「貴女がそうするなら、大人しく受け入れるわ。これでも常務の事は結構好きだもの」


奏「……さっき、『思い出話をしに来たわけではないだろう』って言ったでしょ」

奏「いいえ、思い出話をしに来たの。多分これが、常務に会える最後のチャンスだと思ったから」

奏「これから増々、余裕がなくなって来ると思ったから」





奏「教えてくれないかしら。346プロの最終隠匿プロトコルが失敗に終わった後」


奏「CCGに何があったのか、ありすちゃんに何があったのか」





常務「いいだろう。だが、そちらの情報も寄越してもらう」


常務「シンデレラプロジェクトに何があったのか、高垣楓が何をしたのか」


常務「君も知ってる全てを話してもらうぞ」





――――――――――――――――――――
435 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/07(土) 11:29:53.77 ID:OtjLsYf80







「皆さん」


「私は"喰種"です。正確に言えば、2年前皆さんにご迷惑をおかけした『隻眼の喰種』です」


「最後に一回、皆さんに遊んでほしくて……今日カミングアウトを決意しました」


「CCGの皆さん。これから346プロの喰種の皆を探し、なぐーる、そうですね」


「かつてのお城で待ちます。私の強さは知ってる筈ですから、ちゃんと準備をして来てくださいね」



「私を殺しに来てください」





「私もそうします」




436 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/07(土) 11:30:28.98 ID:OtjLsYf80





「ああもう」


「何でこんな、痛い目に遭うことが分かってたのに」


「わざわざこんなところに首を突っ込んだのかしら」


「346は最悪な組織だったし、楓ちゃんは相変わらず自分勝手だし」


「私は、こんなマヌケな死に方しそうだし……」


「……ああ、でも」



「正しいとか、間違ってるとか」


「そもそもそんなモノないのかもしれない」


「自分が今まで選んできたことは、自分の罪に出会えたことは」


「あの手のかかる子と346プロに入った事は」


「バカな小娘4人と、子供みたいにはしゃいだ事は」


「……今日、誰かのために死ねることは」


「『良かった』と思うわ」





「……うん」

「……今日なら死ねる」

437 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/07(土) 11:31:08.20 ID:OtjLsYf80

奏「白鳩が蘭子を蜂の巣にした時、どうしてちひろさんはあの子を助けられたのか」

奏「それは、ある喰種が乱入して代わりに戦ってたからなの」

奏「誰なのかは言わなくても分かるわよね」


奏「その後、その場では一人も殺さないで」

奏「撮影していたヘリに向かって宣言をした」

奏「『346プロで待つから、殺しに来なさい』って」


奏「白鳩は346プロ相手の時よりもしっかりとした編成で、楓さんを殺しに来た」

奏「でも、楓さんも一人で立ち向かったわけじゃない」


奏「川島瑞樹さんに、三船美優さん」

奏「この2人も一緒に戦っていたの」


奏「…それと、白鳩は正体に気付かなかったみたいだけど」

奏「カメラで宣言をしたことで、楓さんのファンだった喰種が大勢集まって来た」

奏「結果、白鳩は予想以上に大人数を相手に戦うことになって」

奏「結局、楓さんは倒されちゃったけど……代わりに白鳩は多くの捜査官を失った」


奏「噂では、特等の何人かが『タケウチ』って言う鎧を使っていたみたいね」
438 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/07(土) 11:31:36.24 ID:OtjLsYf80

――――――――――――――――――――



――――――――――――――――――――
439 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/07(土) 11:32:30.96 ID:OtjLsYf80





「……美樹サン? 早苗サンか?」


「あんた、誰だ」


「何でなんにも言ってくれねえんだ……?」


「みんなどこにいるんだ」


「仁奈は……」





「いやだっ」


「仁奈に会いてえ」


「頼むから、仁奈に会わせてくれ」


「一緒にいたいって、言ってくれたんだ」


「もう寂しい思いはっ、させねえって、決めたんだよ」


「どこだ、仁奈っ」





「に……な……」




440 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/07(土) 11:33:33.06 ID:OtjLsYf80

美城「確かに、高垣楓は重大な被害をCCGに与えた」

美城「だが、以前の業務が不可能になるほどではなかった」

美城「それだけCCGは何事もなく復活し、346の枷を失くした今、君達をすぐ追い詰めていただろう」


美城「だが、そうはならなかった。何故か?」

美城「それは高垣楓討伐作戦と同時に起こった」

美城「ある"喰種"たちによって、CCG本局が襲撃されたからだ」


美城「機材も局員も問わず、奴らは捜査局の基盤に壊滅的な被害を与えた」

美城「本局防衛に回っていた捜査官達も、その強大な力に容易く命を摘み取られた」


美城「その犠牲の中には、橘美樹準特等と市原ギン一等も含まれていた」


美城「万が一のことを考え、娘を一人にしないために」


美城「彼女たちは、比較的安全なはずの本局警備についていた」
441 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/07(土) 11:34:03.69 ID:OtjLsYf80

――――――――――――――――――――



――――――――――――――――――――
442 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/07(土) 11:34:35.02 ID:OtjLsYf80





「……あ」


「あー」


「へえええい、かもーん」


「べいべー、さんきゅううう」


「べりいストロング、サイキックパわー、いえーす」




「うしみたい」



「おさかなくわえた」



「さなえさああああん」




443 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/07(土) 11:35:48.98 ID:OtjLsYf80

美城「高垣楓討伐作戦を含め、すべてが終わった後」

美城「残った局員をかき集め『キャッスル』に誘拐されたアイドルの捜索が行われた」

美城「……『死亡が確認されなかった』アイドルはたった3名だった」


美城「ビッグリリィに提供された神谷奈緒、北条加蓮」

美城「救助され、『生還』はした」

美城「だが、ビッグリリィの嗜好により、まるで手を繋いだ2人を反時計回りに削るかのように」

美城「神谷奈緒は右足を、北条加蓮は左腕以外の手足を切断されていた」

美城「現在、神谷と北条は入院中だ。リハビリこそ受けているが……」


美城「神谷はともかく、北条のアイドル復帰は絶望的だと言われている」



美城「そして、生存を確認されていないものの死体も発見されなかったアイドルがもう1人」

美城「通称『マッド』と呼ばれる喰種に提供された堀裕子だ」

美城「『マッド』の居住地に置かれていた資料によると、奴は『レシピ』なる技術を346プロに提供していて」

美城「自身も堀裕子にいくつかの実験、施術、拷問を行っていた」

美城「本人の日誌曰く、『4つ全て埋め込めた』らしい」


美城「そして、捜査官達が突入した時には……『マッド』は頭部を破壊され、絶命していた」

美城「そして窓は鉄格子ごと砕かれていた。まるで何かが脱走したかのようだったと聞いた」


美城「……『マッド』が346に提供した『レシピ』の詳細も、同場所に保存されていた」

美城「どうやらこれは、人間に施すことでその肉質を喰種にとってさらに美味にする効果があるようだ」


美城「堀裕子は現在、行方不明として扱われている」
444 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/07(土) 11:36:15.70 ID:OtjLsYf80

――――――――――――――――――――



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445 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/07(土) 11:37:11.55 ID:OtjLsYf80





「……早苗さん」


「あんたも見ただろ。CCGを襲撃した奴らの顔をよ」


「アタシも、言っちまえば弾かれ者だからよ。あいつらの気持ちも分かる気がするんだ」


「……里奈はどんな気持ちなんだとか、考えねえわけじゃねえんだ」


「でもよ……だからっつって、あいつらのやった事を許すことは出来ねえ」


「橘も、仁奈も、家族を奪われたんだ」


「もしあいつらが、これからも同じことをするって言うんなら……」


「アタシは、それを黙って見逃すわけにはいかねえ」

446 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/07(土) 11:37:59.56 ID:OtjLsYf80





「……捜査官の皆さんが、教えてくれました」


「ゆかりちゃんと法子ちゃんがあんな目に遭ったのは、CCGへの牽制だったけど」


「2人が犠牲になった理由は、一人で逃げたあたしへの当てつけだったって」


「それ以外は、特に意味なんか無かったんだって」


「……それだけの理由で、ゆかりちゃんは一生フルートを吹けなくなって、自分で出来たはずのことが、たくさん奪われて」


「法子ちゃんは、大好きなドーナツも食べられない、お話することも出来ない」


「何もできない身体にされてしまいました」



「あたしは、絶対にあいつらを許せません」


「何の罪もない人を平気で犠牲にした346プロも」


「その犠牲の上に平気で胡坐をかいて、へらへらとアイドルを続けていた奴らも」


「……二人が傷つけられていた時、何もできなかった、傍にすらいなかったあたし自身も」



「……それと。あたしに、ちょっとしたお話がありました」


「もしかしたら、ゆかりちゃんと法子ちゃんを治せるかも知れないってお話が」


「ただ、その技術はすごく危なくて……下手に手術をしたら、その人を不幸にしてしまうかもしれないから」


「だから被験者が欲しいと言っていました」


「あたしは『適性アリ』でした」
447 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/07(土) 11:38:37.64 ID:OtjLsYf80





「……父も母も、私の誇りでした」


「私を守るために、皆を守るためにいつも喰種と戦って」


「両親は最期まで、その務めを果たしました」


「だから、悲しくなんてありません」


「泣くこともしません」


「それは、お父さんとお母さんへの侮辱です」





「……桃華さん」


「誘ってくれて、ありがとうございます」


「仁奈ちゃんのこと、よろしくお願いします」


「……でも」





「私は大丈夫です」



「一人で歩けます」
448 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/07(土) 11:40:06.65 ID:OtjLsYf80

美城「高垣楓討伐作戦では、橘実特等捜査官が殉職し」

美城「CCG本局防衛では、橘美樹準特等捜査官と市原ギン準特等捜査官が命を落とした」


美城「『奴等』によって、二人の少女が天涯孤独となった」


美城「櫻井家の申し出によって、市原仁奈は櫻井家の養子として迎えられたが」

美城「橘ありすはそれを断った」


美城「橘はCCGジュニアアカデミーへの編入を決めた」

美城「同時に、向井拓海と中野有香はCCGへの入局を決めた」


美城「…さきほど述べた通りCCGは一部の346アイドルのファンにバッシングを受けている」

美城「よって、同じく346のアイドルで喰種の被害を受けた橘や中野に」

美城「CCGの一員として宣言を行ってもらうことで、CCGの支持を回復しようとする動きがある」


美城「また、これはただの噂に過ぎないが」

美城「現在、346プロの残骸として発見された『レシピ』を応用し」

美城「喰種捜査官に喰種の能力を付与する計画が進行しているらしい」


美城「……どちらにしろ」


美城「君達と橘は、次に会うときは敵同士だと思いなさい」


奏「……」
449 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/07(土) 11:40:32.96 ID:OtjLsYf80

――――――――――――――――――――



――――――――――――――――――――
450 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/07(土) 11:41:26.56 ID:OtjLsYf80





「だりー、喰え」


「そうだ、アタシの左手だ」


「あんたのプロデューサーに斬られそうになった時、咄嗟に突き出しちまってな」


「おかげで即死しないで済んだけど……アタシには分かる。もうこの手は動かねえ」


「だからよ、だりー。こいつを喰って、お前は逃げろ」


「ちゃんと生き延びて……あとアタシの手はこんなのだから、ギターもちゃんと練習しろ」


「ついでに言えば、どうしてもって時以外は人を殺すなよ?」


「そして、何年かけてでもいい」


「生きて戻って……絶対アタシと、またセッションしようぜ」
451 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/07(土) 11:42:29.19 ID:OtjLsYf80

奏「……ちゃんと仲良くなれた人間と喰種だっていたのに」

奏「私達は、そうはならなかったのね」


奏「知ってる? シンデレラプロジェクトの大半が死ぬか、捕まるかしたのに」

奏「どうして多田李衣菜だけは逃げられたのか」


奏「表じゃ、木村夏樹を食べて逃げたって言われてるけど」

奏「本当は、『食べさせてくれて』、『逃がしてくれた』って言ってたわ」

奏「私達は、李衣菜みたいにはなれないけど……」


奏「悪い喰種になりたくなくて頑張ってる『良い喰種』がいることも、忘れないであげてね」


美城「……君は『悪い喰種』になると?」


奏「ええ。もう、戻れないもの」

奏「私も参加したの。そのCCG本局襲撃にね」

奏「文香が死んだかどうかだけ、確かめたかった」

奏「……ある捜査官の持ってたクインケから、文香の匂いがしたわ」


奏「私らしくもなく、その時だけは冷静じゃなくなってた」


奏「殺した後で、その捜査官がありすちゃんに似てることに気付いたの」


奏「……これでいい人でいようだなんて。ありすちゃんが可哀想だと思わない?」
452 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/07(土) 11:43:00.83 ID:OtjLsYf80

美城「……」

奏「さてと。色々教えてくれてありがとう、美城常務」

奏「これから私達は、『悪い喰種』としてCCGと戦う予定なの」

奏「私達の王様の意向でね。……だから、もうこれっきりにして会わない方がいい」

美城「……どういうことだ。なぜ戦う」


奏「王様が言ったのよ。『キャッスルがいたから、CCGはそっちとばかり戦ってたから、346プロの皆は安心できた』」

奏「『だから、私も同じことをする。残った皆が安心して暮らせるように、私がキャッスルの代わりになって戦う』って」


奏「組織の名前も決まってるみたい」

奏「ドイツ語で『蝕むもの』を表す言葉」



奏「エクリプス」



奏「……王様にとっては、色んな思いが詰まった名前らしいわね」
453 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/07(土) 11:44:00.20 ID:OtjLsYf80

美城「私に口出しをする権利がないのは分かっているが、それでも言わせなさい」

美城「……その先に幸せなどないぞ」


奏「……そうね。きっと、惨たらしい最期が待ってる」

奏「それでも、今この辛さから逃れるために……せめて、仲間の無事に縋り続ける」


奏「そんな王様を見てられないから、私達も一緒に行ってあげるの」

奏「一人になるのは、誰だって怖いもの」



奏「さようなら、美城常務。どうか無事でいてちょうだい」

奏「346プロの子達はなるべく巻き込まないようにするから……そっちも、危ない所には行かせないでね」


美城「……ああ。さようなら。……もう、どうにでもなればいい」


美城「君も塩見も、宮本も。その手を止めるつもりがないのなら」



美城「―――神崎蘭子とともに、堕ちてしまえばいい」



――――――――――――――――――――
454 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/07(土) 11:44:33.58 ID:OtjLsYf80

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455 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/07(土) 11:45:02.33 ID:OtjLsYf80










この世界は、間違っている









456 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/07(土) 11:45:32.89 ID:OtjLsYf80


この世界は、間違っている


タベル
奪うしかない


タベル
守るしかない


タベル
失うしかない


タベル
間違うしかない





……私の救いは



眠りと、幸せな夢だけ





……私の救いは…………



――――――――――――――――――――
457 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/07(土) 11:46:36.09 ID:OtjLsYf80

〜高垣楓討伐作戦 当日〜



「……お願い」


「行かないで」


「私、ちゃんと言ったのに」


「アーニャちゃんも、蘭子ちゃんも」


「何も変わらないって」


「『隻眼の喰種』だからって」


「蘭子ちゃんが戦う必要なんて、どこにもないのに」


「だから」





「……後生よ……」


「行かないで……」


「私達のためなんかで、人殺しにならないで……!!」
458 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/07(土) 11:47:21.43 ID:OtjLsYf80

「……」


「ほんとに、強いんだね」

「美波ちゃん……杏たちのなかじゃ、結構強かったと思うんだけど」

「まるで手も足も出ないなんて」



「……美波ちゃんも、ああ言ってんだしさ」


「ねえ、蘭子ちゃん」

「蘭子ちゃんが『それ』、やる必要ないんじゃないの」



「生き延びればいいじゃん、ふつーにさ」

「待ってる人達も、ちゃんといるんだよ」

「死んじゃった人たちだって」



「みんな、蘭子ちゃんに生きて欲しいって思ってるよ」

「……杏だって、力づくで止めることは出来ないけど」

「蘭子ちゃんにこんなこと望んでるの、蘭子ちゃん以外にいないと思うよ」
459 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/07(土) 11:47:55.21 ID:OtjLsYf80

「……うん」


「でも、私が全部壊しちゃったから」


「だから、責任はちゃんと取ろうって思うんです」


「もう死んじゃった人たちは、取り返せないけど」


「これから誰かを助けられる力があるなら、それを使いたいから」


「もう誰も、失いたくないから」





「美波さん」

「杏ちゃん」



「止めに来てくれて、ありがとう」



「……でも…………」




460 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/07(土) 11:48:28.25 ID:OtjLsYf80















蘭子「なにも出来ないのは、もう嫌なの」















偶像喰種外伝 Cinderella Ghouls



〜終〜
461 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/07(土) 12:07:45.19 ID:OtjLsYf80

色々と伏線をまき散らしつつ、とりあえず偶像喰種外伝はこれで完結となります。

2年前のデレアニ放送終了直後から書き始めた外伝ですが、めちゃくちゃダラダラ書いてしまった挙句

色々と描写をカットしてなんとかそれっぽい形で完結まで持ち込めました。

このスレやツイッターなどで時々応援して下さる方々のおかげで、

なんとかここまでやってこれました。

読んでくださった皆さん、応援してくださった皆さん、そして構想のお喋りに付き合ってくださった某さんにも、

もう感謝の言葉をどう言っても足りないくらい感謝してます。

本当に本当に本当にありがとうございます。


予告した通り、偶像喰種の外伝はほぼ完全な悲劇で終わりました。

アイドルが結構死にました。幸せな最期ですらなかった子もたくさんいます。

生きていても、地獄を背負うことになってしまった子もいます。

僕の実力不足で扱いが雑になってしまった子も結構いると思います。

それぞれ担当Pの方には怒られても仕方のない話を書いてきましたが、

それでも続きを楽しみに読んでくださる方々はいました。

中には原作より楽しんでると言って下さる方もいて、正直複雑ですが、やっぱり楽しんでくれたことは嬉しかったです。



さて、この先の予定ですが

リアルに余裕がなくなったこともあり、まずは完結させることを第一に考え

完結はしたものの、前期エピソードとかそれぞれのアイドルの心情描写とか、アイドルとしての活動とか一部アイドルの喰種としての悩みとか

足せなかったものが色々あります。喰種らしい話は書けても、アイマスらしい話かと言われれば自分でも首を捻る出来なので……

また、第二章がまだ残っており終わらせても第三章、それから先の構想もあるのですが、

どうも話を書きながら矛盾のないように練り続けた構想と765編の内容で時系列の食い違う所が所々出てきてしまったこともあるので、

何度もしつこく言うようですが第二章が終わり次第、pixivなりノベマスなりで第一章、第二章、外伝のリメイクをやりたいと考えています。


ただ、今は就職活動を真面目に考えなくちゃいけない問題もあるため

そっちの解決にめどが立つまでは、しばらく続きの執筆を休もうと考えています(でも関係ない話で短いやつは気晴らしに書くと思います)。


すでに1年以上放置している第二章ですが、将来のことに不安が無くなったら、

その時改めて続きにかかろうと思います。

また読んでくださる皆さんをお待たせしてしまうと思いますが、必ず戻ってきます。

その時はまた読んでくださると嬉しいです。


ここまで読んでいただきありがとうございました。

書くときはちゃんと手を抜かず書いていくので、どうかこれからもよろしくお願いしますm(__)m
462 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/07(土) 13:02:53.64 ID:OtVdFnWZ0

まさかのシコラエユッコ
本局襲撃はピエロその他?
463 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/07(土) 16:14:13.93 ID:OtVdFnWZ0
フリスクが今も四人一緒でいるであろうと推測できる描写がすごく嬉しい

ありすがクインケ「サギサワ」を使いこなす未来も妄想すると尊い


>>230
を元に勝手に作った(言い出しっぺの法則)
本編終了後に4コマでシリアス成分を中和するのが東京喰種原作リスペクト

https://i.imgur.com/yJFRUUJ.jpg
https://i.imgur.com/WtOrDSS.jpg

就活がんば
>>1
464 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/07(土) 16:46:44.49 ID:aqMuBVt5O
>>463
ありがとう

超ありがとう

就活がんばる
465 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/07(土) 17:41:19.39 ID:YCek0wYq0
乙、このタイミングのアニメ化発表は謎過ぎて正直悪意すら感じ取れるんだよなあ…
今回常務と奏の再開もいいがまゆとの絡みも見てみたかった
終わるに当たっていくつか聞いておきたい
今回CPメンバーの生死っていつ頃に、どうやって選んだの?
それと昔ちひろがP止めたって時点はまだ赫者なる前の段階なんだよな?その時ですら止めるの大変だったって当時からだとこの話までにどれくらいPは強くなったんだ?
466 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/10/07(土) 17:53:31.72 ID:uwKypxd9O
乙!
ありすはさすがに自分の母親が文香に酷い拷問をした挙句に自分を取り引き材料にした上で騙して殺したことまでは知らないだろうからそれを思うと辛いな
仮にサギサワを受け継ぐことになればその際に赫子の主が文香であることくらいは知ることになるだろうけど

長い間お疲れさま!
765プロ本編の方も楽しみにしているのでまずは就活頑張って!
467 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/07(土) 18:28:44.18 ID:OtjLsYf80

皆さんコメントありがとうございます!

>>462
本局を襲撃したのは蘭子で、奏たちは文香の生死を確認するついでに協力したって感じでしょうか
ユッコは最初の予定では惨たらしい扱いを受けて、見つかったころには死んでいた予定だったのですが、
「ユッコなら半喰種になったら強いんじゃないか、天才的なセンスで赫子を使いサイキックを再現できる強キャラになれるんじゃないか」と考えて
彼女には生きてもらいました。

>>465
ハッキリと決まったのは去年の今頃くらいでしょうか。
当初は卯月未央智絵里かな子きらりアーニャの他に李衣菜もみくをかばって死んでしまう予定だったのですが、
アスタリスクはユニットで固まってるというより平行線で一緒に走ってる(後期OPで唯一手を繋いでいない)ってイメージがあり
相方が死んだのを引きずるタイプのユニットじゃないなと思ったこと、
夏樹の左手やるから帰ってこいネタをどうしてもやりたくて、そのためには生きててもらわなきゃ意味がないなと思ったことなどの理由で李衣菜は生還しました。

ちなみに卯月は凛にとって幻想が壊れ現実に叩きのめされる瞬間、
未央は本人の「喰種の自分でも優しい人でいられる」という願いが壊れていく過程とそれを凛に見せつけること、
智絵里、かな子、きらりは杏が見守って来たものの残酷な喪失(全部失って初めて杏に取り返しのつかないダメージを与えられると思いました)、
アーニャは蘭子を一番に理解していた存在、そして彼女の間違った選択の重い代償として死を書いてます。

武内Pは赫者になる前から結構強かったです。元々S~レートくらいはありました。
タイマンなら346内で負けなしって程度でしょうか。流石に楓さんには勝てなかったでしょうが。
それでも昔は多人数でかかればなんとか抑え込めたのであり、
今の実力で同じことをやれば2ケタ単位の人数で抑え込んでも返り討ちにされるんじゃないかと思います。

>>466
誰にどのアイドルの赫子で作ったクインケを与えるかはもう考えているので
今からそのシーンを書くのが楽しみです
468 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/07(土) 18:30:54.86 ID:9mTl5avuO
おつおつ
ついに終わってしまったけどまた新しいやつ待ってるぞ!
469 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/07(土) 18:33:44.87 ID:OtjLsYf80
>>463
フリスクについて、最初は4人バラバラになる予定だったんですけどね。
あるモバマス能力者パロディ漫画のフリスク回で
どうしてもアイドルを続けたかった忍のわがままに3人が付き合って4人で旅をしてる描写がすごく好きになりまして。

それに影響を受けて、柚と穂乃香には人間の身ながらも忍とあずきについて行ってもらいました。
470 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/07(土) 20:06:43.12 ID:OtjLsYf80
>>468
アザス!!
471 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/07(土) 23:04:47.64 ID:OtjLsYf80
>>463
何気にお母さん‘sのお山のサイズが考えてた通りなのが素敵
ありすが美樹とギンのバストサイズを比べて将来性に落ち込むネタとか考えてました
472 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/10/07(土) 23:30:53.07 ID:BiEYmoyW0
お疲れさまでした!
美城常務と奏たちとの再会が見たいと書いたらエピローグがそうなって嬉しいです
読んでいて本気で心にくる辛い場面がいくつもあったけど、それだけに引き込まれたしおもしろかった!

ではお互いに就職活動を頑張りましょう!(こちらはまず卒業研究が難航していますが)
本編の方も楽しみにしています
473 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/08(日) 01:58:01.12 ID:hyyCvrpjo

ありすが両親が文香真相を知ったら発狂し別人になりそう
蘭子覚悟決めた結末が女王様か、お互いに救いのない結末が待ってるんだろうな

474 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/08(日) 02:21:43.45 ID:ggjx92WMO

ありすの母親は来世はGに転生して
ふみふみに叩き潰されてください
475 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/08(日) 09:37:10.53 ID:V4hcKhhSo
ありす母の件は文香とありすの事情知らない当時の同僚・先輩とかがサギサワのクインケ渡す時にポロッと言っちゃいそう
476 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/10/09(月) 04:22:26.94 ID:9v/Vj9/k0
長い間お疲れ様!

>>445
>「橘も、仁奈も、家族を奪われたんだ」
>「もしあいつらが、これからも同じことをするって言うんなら……」
>「アタシは、それを黙って見逃すわけにはいかねえ」
原作でも昔から思っていたことだけど、喰種捜査官が喰種に殺されたからといってその近しい人達が喰種を恨むのはお門違いだよな
その給料で食べていけている捜査官の家族は特に
喰種捜査官は喰種を[ピーーー]ことが仕事なんだからそれで喰種に殺されても恨みっこ無しでしょ
真戸が嫁さんを殺したエトを執拗に恨んでいるのは意味が分からなかったわ
その点、喰種への恨みは特に持っていなかった瓜生には好感が持てた
この拓海の台詞も一方的に喰種が悪いように言っているけど単にお互いに戦って殺し合っただけなんだよな
逆に有香みたいなパターンなら十分理解出来るんだけどね

ではこの後も楽しみにしているのでまずは就活ガンバ!
477 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/09(月) 19:38:48.96 ID:UtL1U6i60
https://www.youtube.com/watch?v=J1DlQX1CBgs
この曲聴いてたら今回のエピソードに凄い合うなと思ったので晒しとく
ひょっとして話作りの参考にでもなったんだろか

>>467
元々ユッコに白羽の矢が立った理由、早苗絡み以外での事情があるなら聞きたい
早苗絡みにしても他のキャラじゃなくユッコじゃなくちゃ駄目だったとかもあれば是非
478 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/09(月) 23:08:54.17 ID:4eI/GtaK0
皆さん就活の応援までしてくださってありがとうございます…!
あと二つほど気になるコメントがありましたのでコメ返し。


>>476
少し考えてみたのですが、人間サイドからすれば「凶悪犯を追って無残な姿になって帰って来た刑事の家族・仲間」と似たような心境なんじゃないかと思います。
人間にとってはこちらが人々を守るために戦う正義なので、その代償に死んでしまうことは理不尽なことなのではないのかと。

問題は追って始末する相手が凶悪犯とは限らないことですね。


>>477
この曲は聞いたことがありませんね。この後聞いてみます。
ただ魔法少女育成計画のOPテーマ「叫べ」を知り合いから紹介されて聞きまくってました。
影響があるならそっちになりますね。

ユッコを犠牲にしようと思った理由はまず早苗を動かすため、
次にデレアニでは新人アイドルだったので奈緒・加蓮と同じく財産として差し出しやすかった(美穂達と違ってファンの混乱が起きにくい)、
あとはユッコ等パッション勢は「日常のありふれた幸せ」の象徴と考えていて、
特にユッコは毎日アホ可愛くて柔らかい笑顔を見守っていたら「平和だなあ」と実感できるんだろうなと思うので
冒頭で平和な日々の終わりを表すにはこの子が最適かなと判断してキャスティングしました。

Fateシリーズの藤村大河について「士郎にとって日常の象徴であり、この人が危険な目に遭っていれば本気でヤバイ」みたいな紹介を見てすごく気に入ったのがこの>>1の考え方に繋がってるんだろうなと思います。
479 : ◆AyvLkOoV8s [sage]:2017/10/10(火) 18:31:16.46 ID:a7Xt4MTn0
>>478
あとはギルティクラウン後期OP「The Everlasting Guilty Crown」やPSYCHO-PASSED「名前のない怪物」もよく聞いてました。

MV妄想するの凄い楽しい
480 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/10/11(水) 03:42:34.56 ID:UQothy2Q0
大変遅ればせながら乙です!

>>428を見るに真がなかなか強い設定で真Pとしては嬉しい
赫子は大したことないけど身体能力を鍛えて戦う鯱タイプというのも真らしくて良い

補足を読んでいてもよく考えられているのが分かって長い間読んできて良かったと本当に思います

では外伝書き直しも本編の続きも楽しみにしているのでまずは就活頑張って!
481 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/11(水) 21:09:30.79 ID:q3BkHFUuO
乙!そして就活頑張って!
Twitterフォローしたいレベルで応援してますよ!
482 : ◆AyvLkOoV8s [sage]:2017/10/13(金) 23:06:54.55 ID:Qphpalt00
>>1のツイ垢貼っておきます。
https://twitter.com/ninninninjin

普段RTくらいしかしないけど偶像喰種で何かやる時は告知するので、良かったらフォローお願いします。
偶像喰種の内容について質問あったら答えるよ。

誹謗中傷は傷つくからやめてね
483 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/10/14(土) 17:37:49.99 ID:iT5VlvMJO
おつー
484 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/21(土) 00:50:35.90 ID:iJOTqmwX0
今更ながらこの作品を知って読んだけど面白かった

差し支えない範囲でいいから346退社組10名のその後を教えてくれるとありがたいです
485 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/21(土) 09:54:54.85 ID:WodA/G4lO
>>484
ありがとうございます!
有香、拓海、ありすはCCGに入りました。3人はシャトーで暮らしています。

あやめと珠美も喰種捜査官になろうとしたのですが、
18になっておらずいきなり実戦に向かう許可も親から貰えなかったので
ジュニアで訓練してます。

幸子は智絵里達が死んだことを聞いて、証言した張本人と言うこともありショックで引きこもってます

乃々はPや喰種だった仲間たちがいなくなり引き止めてくれる人がいなくなったことで本当にアイドルを辞めて
以前の生活に戻っています。

早苗は現在無職で、今後どうしようか考え中。

つかさは支えてくれるPがいなくなったことで元の社長業に戻りました。

響子はPが喰種だった(つまり手料理を美味しいと言ってくれたのは嘘だと知った)ショックでアイドルを辞めましたが、
有香の紹介で喰種孤児の面倒を見るボランティアをやっています。
結構な頻度でシャトーにもご飯を作りに行ってます。

こんなところですかね。
486 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/22(日) 00:32:13.97 ID:2bm+O5su0
>>433と喰種振り分け表を見比べて気付いたんだけど、

・つかさが退社組と続行組の両方に入っている
・夕美と洋子が>>433のどこにもない

以上2点が気になりました
重箱の隅をつつく感じですみません
487 : ◆AyvLkOoV8s [sage]:2017/10/22(日) 00:47:45.50 ID:E9K1smI60
>>486
確認しましたがマジですね。

夕美は喰種です。表を作る時に間違えました。

つかさ社長は某同人の影響で「つかさはPいなかったらアイドル続けられないかもな」と思い後から変更を加えたので、
その際に続行組から名前を消し忘れてたみたいです。

洋子さんは素で抜けてました……この人は人間です。
488 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/23(月) 02:09:10.32 ID:5OxZON4JO
東京喰種もうめちゃくちゃになってるね(震え)
489 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/11/05(日) 14:52:34.55 ID:dIG1radiO
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