卯月「拝啓、忌まわしき過去に告ぐ絶縁の詩」【偶像喰種・外伝完結編】

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345 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/02(月) 21:11:15.23 ID:GZXcOG7g0

P「…島村さん? なぜ、泣いて……」


飛鳥「なんで泣いてるか、だって? よくものうのうと言えたものだな」

飛鳥「ボク達のプロデューサーを殺しておいて」

飛鳥「…今まで散々、ボク達人間を虐げておいて」


P「! なぜそれを……」


夏樹「…全部、親切なヒトが教えてくれたんだよ」

夏樹「財産の事も、キャッスルの事も、最終隠匿プロトコル…だっけ? の事も」

夏樹「アンタら……裏でとんでもなく悪いことしてたらしいな」


夏樹「安心しなよ、楽屋で待ってる子達は多分まだ知らない」

夏樹「チクるつもりもない。そんなのアタシらが決めていいことじゃない」


夏樹「その代わり、だりーと卯月はアンタがなんとかしろ」

夏樹「さっきからずっと、自分のことばっか責めて泣いてるんだよ」


P「自分を……せめて……?」
346 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/02(月) 21:13:55.66 ID:GZXcOG7g0

夏樹「…頼むから、なんとかしてくれよ」

夏樹「アタシらじゃ何言っていいか分かんねえよ……」



卯月「グスッ……ヒグッ……」

P「島村さん……どうして、ご自分を責めるのですか」

P「島村さんは、何も悪い事をしていないのに」


卯月「……だって……だって……!!」

卯月「私がアイドルになりたいなんて言ったから……」

卯月「プロデューサーさんは、そのためにっ、たくさんの人を殺したんですよね……?」

卯月「私のせいで……みんなが死んだのも、全部私のわがままが原因で……!!」


P「!!!」

P「…ち、違います。どうして島村さんが悪いと言えるのですか」

P「島村さんは、ただ当たり前の願いを持っただけです。罪は全部、それを奪わせないために手を尽くした私のものです…!」

P「私は、皆さんが心の底から安心してアイドルを続けてもらうために……!!」



卯月「―――――友達を殺してまでアイドルなんてやりたくないっ!!!」



P「……え」
347 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/02(月) 21:14:56.98 ID:GZXcOG7g0

卯月「私がアイドルやりたいなんて言わなかったら、プロデューサーさんに拾ってもらえなかったらっ……」

卯月「まだっ、死んだ誰かは、死んだアイドルの人は、まだ生きていられたんですよね……!?」

卯月「それなのに、私がアイドルやってることでっ……」

卯月「なにもわるくないのにっ、プロデューサーさんや、周りの喰種の人にっ、アイドルが殺されて……ひどいことされて……」

卯月「プロデューサーさんにっ、たくさん人殺しさせてしまって……」


卯月「どうやって、償ったらいいんですか……?」


卯月「もう、私のせいで死んだ人は帰ってこないのに……」


P「……あ……」


李衣菜「……プロデューサー」

李衣菜「私、喰種に生まれたからって大人しくしてるのが嫌で」

李衣菜「せっかく生まれたんだから、ロックなアイドルになりたいって、好きなものになりたいって」

李衣菜「そう思って、アイドルになったのに」

李衣菜「なのに、何も考えないでみくちゃんとケンカして、みんなと仲良くなって」

李衣菜「少しは、お客さんとか、仲間の皆に何かあげられたかなって思ったのに」


李衣菜「私がアイドルやるために、何人も死んだんですよ」

李衣菜「なつきち達の、大切な人まで」

李衣菜「もう少しで、私がアイドルやってることでなつきちまで死んじゃうところだったんですよ」


李衣菜「何が『笑顔の橋』ですか」


李衣菜「こんなことになるなら、アイドルなんてやらなきゃよかった……!!」
348 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/02(月) 21:16:07.34 ID:GZXcOG7g0

P「……そんな」

P「…わ、私は、ただ」

P「皆さんに、違う世界を見て欲しくて」

P「それで、これからも、生きてさえいてくれば」

P「また、笑顔を取り戻してくれると……」


P(――あれ)

P(――その結果、私は何をした?)

P(――『笑顔の橋』などと言っておきながら、アイドルの皆さんの、大切な人を殺そうとした)


P(――そして、多田さんを苦しめて)


P(――島村さんを泣かせた)


P(――笑顔でいてほしかった、だけなのに)



P(――挙句、そのために神崎さんにまで苦痛を与えて―――――)


P「……あ」


P「……神崎、さんは?」

P「それに、アナスタシアさんは……」


飛鳥「出ていったよ」

飛鳥「アーニャは、蘭子にしがみついて無理やり付いて行った」


飛鳥「……『私がやらなきゃ』って言いながら」

飛鳥「ボクから逃げるように出ていった」

飛鳥「自分を化け物扱いして、泣きそうな顔でいなくなった」


飛鳥「ボクは声をかける事すらできなかった」



飛鳥「蘭子は……」
349 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/02(月) 21:17:38.78 ID:GZXcOG7g0





「346プロへ人間のみんなを助けに行った」





「まるで罪滅ぼしをしに行くようだった」







飛鳥「……止められなかった、蘭子に何も言ってやれなかったボクの気持ちが分かるか?」



――――――――――――――――――――
350 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/02(月) 21:23:30.06 ID:GZXcOG7g0

今日はここまで。

あと一週間でラストまでいけそうでいけなさそう

351 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/02(月) 23:06:16.68 ID:sJ1FJFx40
歯茎むき出しでおなじみ鉢川準特等の顔の傷は、速水奏にキス&喰いちぎりを食らった過去のせいだと考えると滾る
352 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/10/03(火) 02:19:32.01 ID:8fvEuvIt0
乙です
蘭子強いな
たぶん楓も乱入するだろうし、1人でも多くアイドル達を救って欲しい
353 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/03(火) 23:26:24.01 ID:fRPw4LRD0

〜346プロ本社 内部〜


ちひろ(――現在、9時45分)

ちひろ(――人間アイドルの最初の殺害まであと15分……)


ちひろ(――プロデューサーさんはまだ戻ってこない)

ちいろ(――楓さん、来るなら今のうちに来て欲しいんだけどなあ)


藍子P「……ちひろさん」

藍子P「何か白鳩のやつら…捜査官の一部が移動してますが」

藍子P「……特等捜査官も、何人か移動しています」

ちひろ「えっ? ……本当ですね。ここを放棄して何処にいくつもりで……」


ちひろ(――もしかして『あっち』に?)

ちひろ(――人質を諦めてまで、実利を取りにいきましたか?)


ちひろ(――あくまで念のための『保険』とはいえ)

ちひろ(――智絵里ちゃん達に手を出されるのは気持ちのいいものではありませんね)

ちひろ(――プロデューサーさんはまだ向こうに残っているはず)

ちひろ(――それなら皆の護衛を任せられるし、そもそも予定ではアイドルの皆ももう移動している筈だし)

ちひろ(――よほどのことが無ければ、シンデレラプロジェクトの皆が死ぬことはないはず……)


ちひろ(――ごめんなさい、プロデューサーさん)

ちひろ(――貴方には説明しなかったけど……智絵里ちゃんが"喰種"って、白鳩にはとっくにバレてるんです)



ちひろ「白鳩がTOKYO MIX スタジオを狙いにいく危険性があります」

ちひろ「人質の殺害予定を早めて警告を入れましょう」


ちひろ「……それで向こうが留まらないようなら、智絵里ちゃん達に殿を押し付けた意味があったというだけです」
354 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/03(火) 23:28:42.75 ID:fRPw4LRD0

ちひろ「関ちゃんをここに」


藍子P「はい」グイッ

裕美「うっ……」


ちひろ「残念でしたね、裕美ちゃん」

ちひろ「捜査官達があなたを見捨てなければ、あと15分は生きていられたのに」

裕美「えっ……え?」

ちひろ「ご安心を」


ちひろ「出来るだけ醜い跡をつけて殺してあげますから」グッ

裕美「……え」


裕美「やだ」

裕美「た たすけて」



ちひろ(――これで後戻りはできなくなる)

ちひろ(――『あの人』が来ても、言い訳が効かなくなる……)

ちひろ(――プロデューサーさんが戻ってきていない今、かなり危ない橋を渡ろうとしている……)

ちひろ「……」


ちひろ(――来ませんよね?)

ちひろ(――裕美ちゃんを殺した直後に来るとかナシですよ?)

ちひろ(――来るなら今のうちですよ?)

ちひろ(――ここまで待ったんですから、もう殺しても来ませんよね?)グググ



夕美P「! 来ました! ビルの上を跳ねて異動しています!」

夕美P「ちひろさん! 羽赫の喰種がこっちに向かってきてます!」



ちひろ「―――――あっぶなああ!!!!」パッ


裕美「ッ!? かはっ、はあっ……!」


ちひろ「ほんっとにギリギリに来ますねあの人は!」

ちひろ「もう少しで怒りを買うところだったじゃないですか! 助けるつもりならもっと早く来てください!」

ちひろ「美優Pさん、迎えに行ってあげて!」



ちひろ「―――人質の解放を条件に、楓さんを説得して白鳩を殲滅してもらいます!!」
355 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/03(火) 23:31:20.22 ID:fRPw4LRD0

ちひろ「藍子Pさんは裕美ちゃんを皆の部屋に戻して! 念のためまだ拘束は解かないでくださいね!?」

ちひろ「ああもう殺されなくて良かったですね裕美ちゃんは! 死ねば良いのに!」


藍子P「ほら、立ちなさい。君も俺達も運が良かった」グイッ


裕美「…え、あ…」

裕美「……たす、かった……?」


――――――――――――――――――――


ちひろ「…もう、本当に心臓に悪い……」


ちひろ(――最初の人質を殺さず、時間を置いたのにはちゃんと理由がある)

ちひろ(――それは『隻眼の喰種』の楓さんが救助に来た時、取り返しがつくようにしたから)


ちひろ(――もし楓さんが人間アイドルを助けに来て、数人でも私達がアイドルを殺していたなら)

ちひろ(――間違いなく、私達は彼女の怒りを買って容赦ない殲滅を喰らったでしょう)

ちひろ(――そうなれば完全に詰み)

ちひろ(――実際、プロデューサーさんはまだ到着していなかった)


ちひろ(――でも、プロデューサーさんの遅れを考慮して一時間待ち)

ちひろ(――それで誰も殺していないうちに楓さんが間に合ったのなら)

ちひろ(――交渉と説得で、楓さんを白鳩と戦う味方にできる望みがある)

ちひろ(――先ほど放送で言った通り、白鳩の殲滅だって目的の一つ)

ちひろ(――『アイドルを守るため』なら、協力してくれる可能性がある)


ちひろ(――人間アイドルを全員解放することが協力の最低条件になるだろうから、目くらましと口封じは出来なくなるけど)

ちひろ(――楓さんなら……救助のために集まってくれた白鳩の大隊を容易く蹴散らせる)


ちひろ(――解放した人間アイドルだって……確実性は下がるけど、あとから殺しに行くことだってできる。職員が無事なのだから)

ちひろ(――手間がかかるから、出来れば来てほしくなかったんですけどね)


ちひろ(――ああでも、CPの皆のところに白鳩を行かせずに済むからある意味良かったのかも)

ちひろ(――でもすごく複雑な気分)


ちひろ「……あーもー。こんだけ悩むことになるから嫌なんですよ」

ちひろ「楓さんと言い日高特等といいかつてのリトルバードといい、規格外の存在……」


ちひろ「『化け物』って言うのは」
356 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/03(火) 23:32:31.62 ID:fRPw4LRD0

捜査官「なんだ……?」

捜査官「何か飛んできたぞ」

捜査官「――!! 羽赫の喰種!?」

捜査官「奴等の増援か!?」


ザザッ

美優P『楓さんが到着したようです』

美優P『暴れられる前に、中に入れて事情を説明します』


ちひろ「ええ。よろしくお願いします」

ちひろ(――はあ。ちゃんと交渉に乗ってくれればいいけど)


美優P『楓さん。まずは中にどうぞ』

美優P『お話したい事があって―――――』


美優P『……ん?』

美優P『……あれ?』



美優P『楓さん、なんでそんなに身長が縮んでるんですか?』



美優P『……いや違う。どう見ても楓さんじゃない。だれだ、おま―――――』



美優P『ぐあああああああああっ!!!』ブツッ


357 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/03(火) 23:34:36.81 ID:fRPw4LRD0

ちひろ「!!!?」ガタッ


ちひろ「玄関近くを担当してるプロデューサーさんに緊急の連絡です!」

ちひろ「謎の羽赫喰種を相手に美優Pさんの通信が途切れました!」

ちひろ「羽赫喰種の素性確認をお願いします!!」


ちひろ(――楓さんじゃない!?)

ちひろ(――それなのに、今のは―――――)

ちひろ(――美優PさんだってSSレートの喰種ですよ!?)

ちひろ(――それを、こんなにもあっさりと……)


輝子P『ウグッ!』

留美P『ま、待ってくれ! せめて話を聞いて……うがああああああ!!?』

日菜子P『ちひろさん! 正体が分かった! あの子はシンデレラプロジェクトの……っうわあああっ!!』


『―――――』ザザッ


ちひろ「……シンデレラプロジェクトの?」


『―――――通信機? だれか、聴いてるんですか』


ちひろ「……この声は」



『―――安心してください。殺してはいません。……殺したくもないです』

『でも、プロデューサーにやったように……少し回復まで時間のかかるケガをしてもらってます』


ちひろ「あなたは……」


『傷つけてごめんなさい。でも……』





ちひろ「蘭子ちゃん?」


蘭子『みんなを返してもらいます』
358 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/03(火) 23:36:44.99 ID:fRPw4LRD0

ちひろ(――通信機は、それが放り投げられる音を立てて)

ちひろ(――あとはもう、だんだん遠くなっていく爆発のような破裂音と、悲鳴だけを響かせていました)


ちひろ(――蘭子ちゃん?)

ちひろ(――なんで、蘭子ちゃんがここに?)

ちひろ(――プロデューサーさんはどうしたの?)

ちひろ(――万が一、CPの誰かに計画がバレた時は)

ちひろ(――プロデューサーさんが無力化する手はずだった)

ちひろ(――それは蘭子ちゃんが相手だったとしても同じこと)

ちひろ(――むしろ蘭子ちゃんがいたからこそ、あの人はCPの担当に回ったのに……!!)


ちひろ(――楓さんを封殺できる人ですよ?)

ちひろ(――『隻眼の王』とまで呼ばれる喰種ですよ?)

ちひろ(――まさか勝ったと言うの?)



ちひろ(――蘭子ちゃんが、『隻眼の王』に?)


――――――――――――――――――――


NWP「ぎゃっ!」パアンッ

ガルパP「ぐえっ!」ドオンッ

JKTP「何だよこのっ……ぐはっ」ガシャアアア



アーニャ「……」

アーニャ(――ついて行くって、無理やりしがみついたものの)

アーニャ(――本当について行くだけで精いっぱい……)

アーニャ(――ランコ、本当に強かったんですね)



「うっ……」

「なんて無茶苦茶な子だ」

「この様子じゃ……一級Pと二級Pの区別すらついてないな」

「強くてもまだ、何も知らない子供ってことか……」

「目についた端から……俺にまで赫子を撃ち込みやがった……」

「…まあ、いいか……」



アーニャ「?」
359 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/03(火) 23:37:20.15 ID:fRPw4LRD0

アーニャ「……ニキュウ?」

「! あんたは、蘭子ちゃんと同じシンデレラプロジェクトの……」

アーニャ「……アーニャも、あなたを見たことあります」

アーニャ「だれかの、プロデューサー」


アーニャ「……本当に、346プロのプロデューサーは……人間のアイドルを、殺そうとしていたんですね」


「……」


「……ちがうさ。いや、確かに最初はそのつもりだったが」

「よく見ろ、ここは檻の中だ。喜んで担当アイドルを殺そうとしてる奴が、こんなところにいるもんか」

「たとえ人間でも……担当したアイドルを危険に追いやりたいプロデューサーなんか、この346プロにはいない」


「笑いたいなら笑ってくれ。俺たち二級Pは、弱いから」

「弱い奴に喰種アイドルのプロデュースはさせられない。二級Pは人間のオーディションやスカウトに回される」

「周辺組織へのエサ探しだ」

「その子へのプロデュースだって、ただのカモフラージュ」

「いつか出荷されるだけだってのに、必死こいてレッスンやってるのを見守って」

「ムダになるって分かってるのに、仕事みつけるために走り回って」


「それでな。皆いつの間にか、担当アイドルに情が湧いてくるんだ」

「自分に守ってやれる力もないのに、どうかこの子が財産に選ばれませんようにって、毎日祈るようになるんだ」

「だから……蘭子ちゃんだったか。あの子が来てくれて、このクソみたいな組織を潰してくれて、二級Pの皆は感謝してる」

「実際は俺達も一緒に痛めつけられたが……これは何もしなかった罰だと思うことにする」

「むしろ、お釣りをあげたい気分だ」
360 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/03(火) 23:38:21.90 ID:fRPw4LRD0

アーニャ「……アーニャの、気のせいですか?」

アーニャ「あなたは……ぜんぜん、嬉しそうじゃないです」


「嬉しいさ。一級Pのクソ野郎どもが、為す術なく転がされるのを見るのは」

「一矢報いたんだ……嬉しいに、決まって……」


「……」


「……畜生……」

「なんで、もっと早く助けてくれなかった」

「こんなに強いなら、なんでもっと早く気付いてくれなかった」

「こんなに簡単に立ち向かえたなら、あんな事させやしなかったのに……!!」


「……ゆかり……」

「……法子ぉ……!!」


「ごめん……何もしてやれなくて、助けてやれなくて……!!」


「何でもっと早く、あの子に助けを求めなかったんだ……!!」


――――――――――――――――――――
361 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/03(火) 23:42:19.44 ID:fRPw4LRD0

――――――――――――――――――――


メロイエP『……ごめん。いい大人が、愚痴ってるところ見せてしまった』


メロイエP『人間アイドルの皆が監禁されてる場所は音で大体わかるだろう』

メロイエP『だが無理に助け出さない方がいい。この状況なら、待たせてれば白鳩の奴らが勝手に救助してくれる』

メロイエP『周囲の一級Pさえ排除すれば、自分で脱出させるよりむしろ部屋の中にいた方が安全かも知れないしな』


メロイエP『……君が付いてきた理由は何となく想像がつく』

メロイエP『蘭子ちゃんが心配で仕方なかったんだろ。ちらっと見たが、あれは罪の重さから逃げたくて仕方がない奴の顔だ』

メロイエP『……あの子は、この先どうなるんだろうな』


メロイエP『大事な人なら守ってあげてくれ。失ってからじゃもう遅いからな……』


――――――――――――――――――――


アーニャ「……」

アーニャ(――プロデューサーが、倒れた後)

アーニャ(――現れた『あの人』に、真実を聞いてから)

アーニャ(――ランコ、すごく苦しそうでした)

アーニャ(――私も、つらかった。でも、ランコは、もっと)


アーニャ(――ミナミ、ごめんなさい。何も言わないで、出ていって)

アーニャ(――でも、あんなランコを、ひとりにしたくなかった)
362 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/03(火) 23:42:57.07 ID:fRPw4LRD0

早耶P「うう……」

雪美P「無茶苦茶だ、あんなの……!」



アーニャ(――ランコが走って行ったあとは)

アーニャ(――プロデューサーのみんなが、倒れています)

アーニャ(――強い人ばかりだと、聞きました)

アーニャ(――それを、こんなに簡単に……)



アーニャ(――ちひろさんも)



ちひろ「……うう」


ちひろ「最初は……隻眼とはいえ、なんで、こんな……」

ちひろ「戦ったこともない子供がと、思いましたが……」

ちひろ「その、赫子の使い方を、見て……実際に喰らって……やっと分かりました」


ちひろ「無尽蔵の刃」

ちひろ「止まることのない、洪水のような羽赫の波で、まるごと飲み込んで……」

ちひろ「……そうですよね。津波に勝てる戦士なんか、いるわけないですもんね」

ちひろ「『隻眼の王』も、そうやって……」

ちひろ「…いえ。こうなってしまえば、あなたが新しい『隻眼の王』になるのか……」


ちひろ「そんなのを、50人以上を相手に、わざわざひとりひとり……本当に無茶苦茶……」

ちひろ「その体のどこに、そんなものが……ああ。命を削れば……」
363 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/03(火) 23:43:53.98 ID:fRPw4LRD0

ちひろ「……台無しだ」

ちひろ「お前のせいで、全部台無しだ」

ちひろ「用意した策も、かき集めた屈強なプロデューサー達も、こんなのがひとりいれば全部台無しにされる」

ちひろ「いつもいつも、強い人は勝手ばかり……自分の都合で、全部ぐちゃぐちゃにして持って行ってしまう……」

ちひろ「くだらないワガママを、力づくで押し通して……」

ちひろ「暴虐に付き合わされる、身にも、なってくださいよ……!」



ちひろ「……化け物め……!!」



アーニャ(――本当に)

アーニャ(――みんなを逃がすために、ここの人たちを倒して、本当に……)


アーニャ(――本当に『あの人』が言った通りに、なりますか?)


アーニャ(――みんなランコを、怖がらずにいてくれますか?)



蘭子「……」

蘭子「……行こっか、アーニャちゃん」

蘭子「大丈夫。これでみんな、助かったから……」


蘭子「これを見れば、黒井さんの言った通り……」



蘭子「捜査官のみんなも、私達"喰種"を見直してくれるから……!!」


364 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/03(火) 23:48:39.63 ID:hOsUw4PE0
はい絶望
365 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/03(火) 23:49:29.21 ID:fRPw4LRD0

今日はここまで。

BLEACHの破面編読んでた人なら
「白哉の吭景・千本桜景厳を一級Pひとりひとりに連続でぶっぱした」と言えば
蘭子のやった事のヤバさを分かってもらえると思います
366 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/04(水) 08:42:36.54 ID:WRDUIj6MO
数年後
エロいバトルスーツを着て、メリケンサック型のクインケを振るう中野有香捜査官の姿があるんだろうなぁ
367 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/04(水) 12:16:33.09 ID:N/cHD4on0
黒井…ああ…うわぁ…
368 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/04(水) 16:04:30.46 ID:eyKGJ1/c0
騙して共倒れさせる狙いとか…えげつな
一方でちひろの言葉のこのブーメラン感も凄い
369 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/04(水) 21:53:22.27 ID:4Qn4Dpkl0

――――――――――――――――――――


「……あんた、焦りすぎだ」

「……とどめを刺すのを忘れてたぜ……」



北斗「……」スッ



〜個人 北斗⇔黒井〜


北斗『CPのプロデューサーが無力化されました』

北斗『二宮飛鳥ちゃん達を巡って、CPメンバーの神崎蘭子と衝突したみたいです』

北斗『動画も撮影しましたから、載せておきます』


黒井『報告ご苦労。私も到着した』

黒井『ざっくりとだが、動画も確認した。神崎蘭子は隻眼か』

北斗『隻眼って2年前のですか?』

黒井『あれは左が赫眼だ。2匹目ということだろうな』

黒井『我々で対処できる相手ではない。奴には立ち去ってもらう必要がある』


北斗『どうやるんですか?』

北斗『あと、まだ来てませんけど冬馬どうしましょうか』

黒井『長年培った業を見せてやる。耳を塞いでおけ』
370 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/04(水) 21:54:58.05 ID:4Qn4Dpkl0

〜グループ『jupiter』〜


冬馬『悪い! 何か火事がおきたみたいで、他のスタッフや出演者がパニック起こしてやがる!』

冬馬『人込みでそっちに行くのは時間がかかりそうだ……!!』

北斗『こっちの問題はしばらく気にしなくて良さそうだよ』

北斗『内部分裂を起こしてCPプロデューサーが自滅した』

黒井『私も合流したからお前の仕事はまだない』

黒井『だがCPのプロデューサーが復活した時は冬馬の出番だ』

黒井『その時に備えて、お前には避難者の誘導を任せる』

冬馬『分かった』


翔太『さっきの火災ベル、なんかすごく大きくなかった?』

翔太『黒ちゃん何か弄った? けっこー耳痛いんだけど』


黒井『喰種の聴覚対策だ。昨日忍び込んでやった』

黒井『聴覚に優れた喰種がまともに聞けば、耳が使い物にならなくなる』

黒井『コクリアで実証済みだ』


黒井『これで出演者組と楽屋組は互いの様子が察知できなくなる』

黒井『安心して任務に移れ』


翔太『了解〜』



黒井「……さて」
371 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/04(水) 21:55:46.26 ID:4Qn4Dpkl0

〜収録スペース〜


ジリリリリリリリリ……



蘭子「はっ……はっ……はっ……」


アーニャ「ランコ! 大丈夫、ですか?」

蘭子「…大丈夫。大丈夫だよ」


蘭子「それより、李衣菜ちゃん。さっきの『最終隠匿プロトコル』って、どういう……?」

李衣菜「ッ……!!」

蘭子「……李衣菜ちゃん?」

李衣菜「……ごめん。さっき打たれた注射のおかげなのかな」

李衣菜「耳が悪くなってるみたいだから、まだマシなんだけど……」

李衣菜「……頭がガンガン言ってる……」

卯月「李衣菜ちゃん……」

李衣菜「……大丈夫、話せるよ。今はもう聞けないけど、さっきニュースじゃ……」





黒井「そこから先は私が説明しよう」


「「「!!!」」」
372 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/04(水) 21:56:19.82 ID:4Qn4Dpkl0

黒井「ウィ、346プロのアイドル諸君」

黒井「私は黒井崇男、こっちは伊集院北斗だ」

北斗「チャオ☆」


黒井「ともに、喰種捜査官だ」


夏樹「!」

飛鳥「……喰種、捜査官」


卯月「え……!?」ジリ



黒井「ノンノンノン、心配はいらないよ喰種のアイドル諸君」

黒井「殺そうと思ってここに姿を現したわけじゃない」


黒井「私は君……蘭子ちゃんだね? 君の仲間を守らんとする姿に感銘を受けてね」

黒井「君に『あるお願い』をしに来たんだ」



黒井「まずは全てを教えよう」

黒井「キャッスル、財産、最終隠匿プロトコル……私達CCGが掴んだ情報を」

黒井「君達のいた346プロの正体と、その目的について」


――――――――――――――――――――
373 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/04(水) 21:57:31.91 ID:4Qn4Dpkl0

――――――――――――――――――――


卯月「『キャッスル』の正体が、346プロのプロデューサー……?」

李衣菜「『財産』は人間のアイドルの事で……協力してる組織に売ってるって・・・・・」

アーニャ「最後は、人間のアイドルをみんな、ころす……」

蘭子「……プロデューサーも、裏でずっと……」



黒井「……彼らも、仕方のないことだったのかもしれない」

黒井「ああでもしなければ、君達アイドルの秘密を我々から隠せなかっただろうからね」



黒井「すべて君達のためにやったことだ」

黒井「特に、蘭子ちゃん。君の存在はとても珍しい」

黒井「君のような隻眼の喰種がいると分かれば、もみ消しも簡単なことではなくなる」

黒井「君の正体を隠すためには、益々多くの犠牲を払う必要があっただろう」


蘭子「……!」

蘭子「そんな……私の、せいで……?」


黒井「……悲しい事だ。皆が君を憎んでいる」

黒井「君のためと言って、彼らがどれだけ多くの命を弄んだことか……」

黒井「犠牲になった人にも、家族がいたはずなのに」


蘭子「……あ……」


黒井「……だからこそ、君に頼みたい」

黒井「これは君の、君達の名誉を取り戻すためのお願いでもある」





黒井「346プロで戦って、人間アイドルの皆を救ってはくれないか」





黒井「そうすれば、君はきっと……みんなの英雄になれる」


――――――――――――――――――――
374 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/04(水) 21:58:37.08 ID:4Qn4Dpkl0

〜9時50分 346プロ正門前〜


捜査官「おい、降りて来たぞ!」

捜査官「さっきの羽赫喰種だ!」


実「……カメラの様子だと、あの喰種が中の職員たちを片付けたらしい」

実「本当にやるとは……」


蘭子「……」スタッ



蘭子「―――待たせたわね。我が片翼よ」


蘭子「御覧の通り、我が半身を為す少女達はその命を脅かされず」

蘭子「魂を救済したわ」

蘭子「我が名は神崎蘭子。ヒトの身と喰種の牙を共に持って生まれし存在」


蘭子「―――我こそは、ヒトと喰種を繋ぐ『隻眼の王』!!」


蘭子「さあ、同胞たちよ。こちらは我が盟友アナスタシア」

蘭子「此度の救済を以て、我等は其方の下に親愛の橋を架ける……」


蘭子「今こそ祝杯を挙げる時よ」



蘭子(――黒井さん)

蘭子(――私、やったよ)

蘭子(――みんなを助けられたよ)

蘭子(――だれも死んでないよ)


蘭子(――私、知らなかっただけなの)

蘭子(――私のことを隠すために、プロデューサーたちが人を殺して)

蘭子(――私のせいで人がたくさん死んでるなんて、分からなかっただけなの)


蘭子(――だから、その分私は人を助けるから)

蘭子(――今まで悲しませたぶん、今度は私が皆のために戦うから)


蘭子(――もう、いいんだよ)

蘭子(――もう、喰種も人間も、泣くことなんか無いんだよ)


蘭子(――もう、人間と喰種は仲良くなれるんだよ……!!)



実「……君が、346プロを倒してくれたんだな」

蘭子「うん!」

実「人質も、全員無事なんだな」

蘭子「はい!」


蘭子「―――さあ! この手をとりなさい!!」



実「……ああ」
375 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/04(水) 21:59:08.77 ID:4Qn4Dpkl0







実「攻撃準備」







実「撃て」







――――――――――――――――――――
376 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/04(水) 22:00:00.24 ID:4Qn4Dpkl0

――――――――――――――――――――



(――私がちょうど、346プロについた時)

(――CCGの捜査官達が、二人の女の子を取り囲んでいるのが見えました)

(――一人はよく知ってる子。神崎蘭子ちゃん)

(――もう1人も、知ってる子。アナスタシアちゃん)


(――蘭子ちゃんは、涙ぐみながら)

(――嬉しそうに、捜査官達に語り掛けていました)


(――でも次の瞬間)

(――いきなり、アーニャちゃんの表情が青ざめて)

(――蘭子ちゃんに覆いかぶさって)


(――そして、二人を取り囲んだ捜査官達が銃を構えて)



(――蘭子ちゃんとアーニャちゃんの体は、羽赫でバラバラになってしまいました)



――――――――――――――――――――
377 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/04(水) 22:00:22.61 ID:+NZ1Gb760
法寺さん...
378 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/04(水) 22:00:52.72 ID:4Qn4Dpkl0

〜TOKYO MIX 楽屋〜



杏「ぐっ……ああっ、クソッ……!!」

きらり「杏ちゃん? 大丈夫? ねえ、杏ちゃん!?」

杏「やめろきらり……大声出すな……!!」

きらり「うゆっ……ご、ごめんなさい」

杏「……くっそ……」


杏(――なんなんだよ、さっきのバカでかいサイレンは!!)

杏(――耳が痛い、冷や汗が止まらない、頭が痛くてまともに立ってられない……!!)

杏(――どう考えても普通のサイレンじゃない)

杏(――誰だか分かんないけど、仕込んでやがったな……!?)


杏(――蘭子ちゃん達の様子がもう聞こえない)

杏(――蘭子ちゃんがプロデューサーに勝った、それ以降のことがもう何も分からない!!)

杏(――杏の勘が言ってる。このまま何もしなかったら間違いなくやばいことになる! 絶対!!)



ガチャ



翔太「失礼しまーす。…さっきのベルすごくうるさかったけどさ。みんな大丈夫?」


杏「あ……?」

杏(――何だこの子)

杏(――さっきまで近くの部屋にいた子か)


翔太「おねーさん達が心配で来ちゃったんだけど……あれ」


翔太「そのテーブルの上にあるのって……何かのお菓子?」



かな子「! そ、そうなの! 蘭子ちゃんが帰って来た時のために、プリン作ってきたんだけど……」

かな子「あなたも友達を待ってるのかな? 良かったら、あなたも食べる……?」


翔太「えっ、いいの!?」


かな子「うん、いいよ! 作りすぎちゃったから、おすそ分け!」

翔太「ありがとう! おねーさん優しいね!」



翔太「…でも、いらないや。ボク甘い物苦手だし」



翔太「それに」





翔太「"喰種"の作ったものとかさ。食べる訳ないじゃん」
379 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/04(水) 22:02:18.73 ID:4Qn4Dpkl0

かな子「……えっ?」





ズパッ





智絵里「……えっ」

杏「……え」


杏(――耳が痛くて、まともに音が聴けなかった分、こっちが働いたのかな)

杏(――その光景は、すごくゆっくりと杏の目に焼き付けられた)


杏(――まだ中学生くらいの子供が、かな子ちゃんのプリンを叩き落として)

杏(――そのまま、かな子ちゃんの髪をひっつかんで)


杏(――もう片方の手には、いつの間にかナイフを握ってて)

杏(――引き寄せたかな子ちゃんの首に、ナイフを当てて……)





杏(――そして、かな子ちゃんの首が落ちた)


――――――――――――――――――――
380 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/04(水) 22:03:03.47 ID:4Qn4Dpkl0

――――――――――――――――――――



黒井「もしもし。私だ丸手特等」

黒井「そっちに送った化け物はどうだ? ちゃんと仕事をしてくれたか?」

黒井「…はははははっ!! そうかそうか、うまく行ったか!!」

黒井「化け物と言えど所詮小娘だな! あんな演技に騙されてくれるとは!」


黒井「……ところで丸手」

黒井「人間アイドルが全員生きて救助されたんだ。さっきの賭けは私の勝ちだろう?」

黒井「ならこっちの奴等は……よし許可を出したな。言質は取ったぞ」

黒井「アデュー」ブツッ



黒井「……」


黒井「……さて」





黒井「楽しいクリスマスパーティーをしようじゃないか」





黒井「―――殲滅戦だ」



――――――――――――――――――――
381 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/04(水) 22:06:22.65 ID:4Qn4Dpkl0

今日はここまで。


黒井も武内Pも蘭子対策や李衣菜対策や杏対策に頭悩ませて作戦練ってました。

僕も頭悩ませてプロット練ってました。

そとなみさんヒナミの超感覚無かったことにしすぎやねん
382 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/10/04(水) 23:47:08.24 ID:vxCcG6tf0
乙です!
旧多とS3班がどうやってあの場に先回りしたのか謎過ぎる

>>376の独白は楓かな?
383 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/10/05(木) 01:25:50.04 ID:zt79TDG6O
楓さんは勝手に鱗赫のイメージだったけど羽赫だったのか
リトルバードこと小鳥さんも羽赫だろうし、今のところSSSレートクラスは羽赫が多いですね

喰種アイドルの赫子一覧表ってありません?
384 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/05(木) 15:07:42.67 ID:9ZY2Twcv0
>>383
表は作ってないので直書きになりますが


今のところCPの赫子設定

羽赫:凛、蘭子、智絵里、杏
甲赫:未央、李衣菜、美波、きらり
鱗赫:かな子、みりあ、杏(2種持ち)
尾赫:卯月、みく、莉嘉、アーニャ

加えてCP外のアイドルで確定してる赫子設定

羽赫:楓、瑞樹、奏、里奈、菜々(出せない)
甲赫:武内P、輝子、今西、フレデリカ、藍子、美玲
鱗赫:美優、小梅、文香
尾赫:美嘉、ちひろ、周子、夕美、忍

一応決まってるけど変わるかも:紗枝(羽赫)、まゆ(尾赫)、肇(甲赫)、鈴帆(羽赫)


って感じになってますね

385 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/05(木) 15:11:18.57 ID:9ZY2Twcv0
>>384
あと今回抑制剤やらなんやらで出番がないのでですが、李衣菜は万丈と同じく回復赫子使える設定にしてます。
386 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/05(木) 19:50:45.49 ID:9ZY2Twcv0

――――――――――――――――――――


凛(――お父さんと、お母さんとのお別れは)

凛(――突然やって来た)



三条馬「黒井上等。渋谷凛と本田未央を捕捉しました」

三条馬「渋谷家の父親、母親は共に先制攻撃で死亡」

三条馬「これで北海道の双葉家と大阪の前川家を除き」

三条馬「島村家、三村家、新田家、多田家、赤城家」

三条馬「シンデレラプロジェクトの血縁者はすべて駆逐しました」



凛(――卯月達のライブが終わって、346プロの様子が映って)

凛(――それから、車で走り続けていたとき)


凛(――いきなり、フロントガラスに槍が二本、飛んできて)

凛(――運転席と助手席にいたお父さんとお母さんごと、車を貫いた)


凛(――車は道路の端に衝突して、動かなくなった)



三条馬「これより、渋谷凛と本田未央の駆逐に移ります」



凛(――破壊された車と私達は)

凛(――白鳩たちに囲まれていた)


未央「……あ……」

未央「……そういう、ことなんだ」

未央「ずっと追いかけられてたんだ……」


凛(――逃げ道はない)

凛(――逃げる場所も)


凛(――逃げる意味も)

凛(――逃げて、生きる理由も)


凛(――もういいや)


凛(――殺すなら、さっさと殺して)


凛(――うん。それでいいよ。銃を構えて)


凛(――私達に銃口を向けて)


凛(――引き金を引いて)


凛(――やっと、死ねる)


未央「……」


未央「……やっぱり、できないなあ」
387 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/05(木) 19:51:14.54 ID:9ZY2Twcv0

凛(――え?)


凛(――なんで)


凛(――なんで、死んでないの)


凛(――銃声は聞こえたのに)


凛(――なんで未央が、私に覆いかぶさってるの)


凛(――なんで未央だけ、血まみれなの)



未央「……あー……」

未央「やっぱり、ダメかあ」

未央「しぶりんに、トラウマ、あたえちゃうから」

未央「ここで死に、たくは、なかったんだけどなあ」


未央「私の赫子じゃ、両方守るのは、無理かあ」



凛「……み、お?」


未央「ごめんね、しぶ、りん」

未央「しぶりんの、しに、たい、気持ち、わかるから」

未央「ほんと、は、このまま……らくにさせてあげたかったん、だけど」


未央「でも、しまむーの、笑顔、みてさ」

未央「しぶりん、を、このまま、終わらせたく、なかったから」

未央「死なせ、たく、なかったから」


未央「……お願い。しぶりん。生きて、ほしいや」

未央「できれば、あんな風に、わらって、しんでほしいんだ」


未央「ごめんね、しぶりん」


未央「いきて」
388 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/05(木) 19:51:43.59 ID:9ZY2Twcv0

凛「……そんな」


凛(――『勝手な事しないで』って、言いたかった)

凛(――でも、未央は自分の言いたい事ばっかり言って、私の話を聞いてくれなくて)

凛(――最後の力を振り絞るように、跳ねて)


凛(――目の前にいた女の人を、その甲赫で刺したんだ)

凛(――人間にとっては、間違いなく致命傷。ためらいもしなかった)


凛(――人を殺したことなんか、なかったはずなのに)



捜査官「三条馬一等!!」

捜査官「虫の息だ! 殺せ!!」



未央「しぶりんっ……走れええ!!」


凛「っ……!!」


凛(――血まみれで叫ぶその姿に)

凛(――私は、まともに考えることも出来なくて)

凛(――気が付けば、必死で走っていた)


凛(――未央が開けてくれた道を)

凛(――振り返ることもできずに、走っていた)



凛(――背後で、大量の血の匂いがした)

凛(――未央のものだと、すぐに分かった)


凛(――もう助からない時の匂いだと、私は知っていた)


――――――――――――――――――――
389 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/05(木) 19:52:10.53 ID:9ZY2Twcv0

――――――――――――――――――――


杏(――周りみんなの叫び声)

杏(――今は頭が痛くて仕方なくなる音のはずなのに、何も痛みを感じない)

杏(――まるで、幻覚を見てるみたいだ)


翔太「……んー。クロちゃんは確か、耳の良い喰種ならダメージが半端ないって言ってたけど……」

翔太「この中じゃ、そこのおチビちゃんになるのかなあ?」


杏(――かな子ちゃんを殺した子供が、杏の方を見る)


翔太「ごめんねー、万が一逃がしたら不味いかもしれないし」

翔太「チビちゃんが―――次ねっ!!」


杏(――子供が、杏の方に飛んでくる)

杏(――杏は、まともに逃げられなかった)

杏(――ナイフが、杏の首に向かってくのを、ただ見てるだけで―――――)


智絵里「杏ちゃんっ!!」


杏(――それなのに、杏がまだ生きていられたのは)


杏(――智絵里ちゃんが、一番に動いて杏を庇ったから)



翔太「……あれー、ハズレかあ」



杏(――あれ)


杏(――なんで智絵里ちゃんが倒れてるんだ?)
390 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/05(木) 19:53:00.71 ID:9ZY2Twcv0

翔太「まあいいや、次」


智絵里「……あっ……」


智絵里「……させ、ないっ!!」


翔太「えっ」



杏(――倒れたはずの、智絵里ちゃんが)

杏(――子供に、しがみついた)

杏(――子供に必死に、抱き着いて、離さない)


杏(――子供は、智絵里ちゃんに)

杏(――智絵里ちゃんから離れようとして、何度も何度も、ナイフを刺す)

杏(――智絵里ちゃんは、涙をぼろぼろと流しながら)

杏(――絞り出すような声で、必死に叫ぶんだ)



智絵里「にっ……にげ、てえ」

智絵里「はや、く」

智絵里「はや、げ……ぶ、あ……!!」


美波「……はっ!」

美波「美嘉ちゃん! きらりちゃん! みくちゃん!」

美波「皆を連れて逃げて!!」


杏(――美波ちゃんが、一番最初に我に返って)

杏(――美波ちゃんの指示で、みんな部屋から慌てて逃げてく)


みく「……杏チャン! ぼーっとしてないで逃げーや!!」


杏(――杏は、その場から立てなくて)

杏(――みくちゃんに引きずられながら、楽屋を出ていく)
391 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/05(木) 19:53:30.03 ID:9ZY2Twcv0

杏(――最後まで残ってたのは、美波ちゃんと、きらり)

杏(――美波ちゃんは、智絵里ちゃんを助けようとしたけど)

杏(――きらりちゃんに止められて、無理矢理外に追い出された)


杏(――肉を断つ音と、智絵里ちゃんの首が転がる音が聞こえた)

杏(――智絵里ちゃんの時間稼ぎで、みんな外に出られた)


杏(――いや、違う)

杏(――きらりだけ、ドアのすぐ近くに)


杏(――まるで中から誰も出さないように、突っ立ってた)


杏(――かな子ちゃんが死んでから、ずっとぼーっとしてた杏の頭は)


杏(――やっと冷えていった)





杏「―――――何やってんだよきらりっ!!!」




392 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/05(木) 19:55:18.31 ID:9ZY2Twcv0

杏(――内側から、肉にナイフを突き立てる音が聞こえる)

杏(――きらりは甲赫を出して、扉を塞いでいる)

杏(――杏は)


杏(――みくちゃんの手を振りほどいて、楽屋に戻ろうとする)


みく「! 何やってんの杏チャン!? 戻ったら杏チャンまで死ぬよ!?」

杏「はなせっ……はなしてくれ!」

杏「きらり! きらりぃ!! 何やってんだよ早く出てよ!!」

杏「なんできらりが残ってんだよ! 杏が代わるからっ……はやく出てきてよ!!」


きらり「……杏ちゃん」


杏(――ドアに張り巡らされた赫子の内側から、きらりのか細い声が聞こえてくる)


きらり「ごめんねえ、杏ちゃん。きらり、ぜんぜん動けなくて」

きらり「かな子ちゃんも、智絵里ちゃんも、きらりのせいで死んじゃった」

きらり「杏ちゃんの、大切な人なのに」


杏「はあっ!? ……きらりのせいじゃない!! 全部杏のせいだ!!」

杏「杏、黙ってたんだ! キャッスルの事も財産の事も、知ってて全部黙ってたんだよ!!」

杏「それで皆をわざと部屋の中から出さなくて……そいつのことも危険だって気付けなくて……だから今こうなったんだ!! きらりの何が悪いって言うんだよ!!」

杏「杏が代わるよ!! 杏はすごく悪い事してたんだからさあ!! 杏が死ぬべきなんだよ!! きらりは杏よりずっと生きて、やりたいことあるだろうがあ!!」

杏「はなせっ、みくちゃ……はなせ、よおおおおお!!!」


きらり「……」

きらり「……杏ちゃんが、なんのこと、言ってるか、わかんないけど」

きらり「きらり、わかるにぃ。杏ちゃんは、皆に心配かけたくなくて、秘密を守ってたんだよね?」

きらり「話しちゃったら、きっとみんな、傷ついちゃうから……」

きらり「とーっても優しい杏ちゃんだから、仕方なく隠してたって、きらりは分かるゆ」


杏「っあ……そんな、こと……」


きらり「それにね。きらり、おっきいから」

きらり「いっかい、みんなに喰種だってバレちゃったら……もう隠れられなくて、おしまいなの」



きらり「もう生きていけないんだあ」



杏「あっ……」


杏(――一瞬、力が抜けた)

杏(――その隙に、みくちゃんは杏を引っ張って)

杏(――杏はきらりが、きらりの姿が、きらりの声が、ずっと小さくなっていくのを見ていた)


杏(――やっと痛みが引いてきた耳には)

杏(――大きい体が倒れる音が聞こえて、それからは何も響かなくなった)
393 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/05(木) 19:56:23.26 ID:9ZY2Twcv0

杏(――かな子ちゃん)


杏(――何も知らないでヒトを食べていた自分が嫌で)

杏(――その分、周りの人間を幸せにしようとして、お菓子作りが上手くなった女の子)

杏(――CANDY ISLANDでのお仕事で、色んなところに行って)

杏(――色んな人が、かな子ちゃんのお菓子を美味しいと言ってて)

杏(――杏はお菓子の味なんか分からないけど)

杏(――ただ、お仕事を重ねて、周りの人にたくさん『ありがとう』を言われてるうちに)

杏(――だんだん自分に自信を持っていくかな子ちゃんを見ているのは)

杏(――救われていくかな子ちゃんを見るのは、嫌いじゃなかった)


杏(――智絵里ちゃん)

杏(――アイドルになる前は、親も家も無くて、まともな女の子の暮らしも出来なかったって聞いてる)

杏(――そんな暮らしをしてても、アイドルを諦めきれなくて)

杏(――女の子の幸せを諦められなくて、346プロに来たって言ってた)

杏(――待ってたのは、バラエティの仕事ばっかりだったけど)

杏(――そんな中で、一度だけブライダルの仕事があったんだっけ)

杏(――智絵里ちゃんのために用意されたウェディングドレス)

杏(――あれを初めて見た智絵里ちゃんは……本当に嬉しそうだった)

杏(――ここに来てやっと、智絵里ちゃんは)

杏(――女の子の夢を叶えられたんだよ)


杏(――きらり)

杏(――あの変な口癖は、派手にしてれば逆に怪しまれないからって聞いた)

杏(――ずっと、怖がられるのを怖がってた)

杏(――そんな大したもんじゃないことなんて、すぐに分かるのにさ)


杏(――だってほら)

杏(――346プロのちびっ子たちには、すごく懐かれててさ)

杏(――風船できらりの像を作るなんてさ。怖がられてたら、そんなのされないじゃん)

杏(――まして)

杏(――あんなの見せられて、ちびっ子たちの前ではすごく喜んで)

杏(――その後、杏と2人っきりになったら)

杏(――『とっても嬉しい』って、泣いてるんだ)


杏(――あんなの……ただの優しい女の子じゃなくて、なんなんだよ)
394 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/05(木) 19:57:48.68 ID:9ZY2Twcv0

杏(――だからさ)

杏(――プロデューサーの気持ちも、ちょっとは分かるんだ)


杏(――この346プロは、全部嘘でできた事務所だけど)

杏(――でも、いつか覚める夢でもさ)

杏(――こんないい笑顔見てたら、壊す気になれないじゃん?)


杏(――プロデューサーも、ちひろさんも、他の人達もさ)

杏(――みんな、あんな顔が見たくて人殺ししてたんでしょ?)



杏(――みんな)





杏(――こんな終わり方したくなくて、必死だったんでしょ)





杏(――ほら)



杏(――必死こいて生きようとして、局から脱出したら)



杏(――目の前には、たくさんのサイレン)



杏(――見慣れた白い服の集まり、みんなしてアタッシュケース持ち)



杏(――杏たちの幸せは、眠りと幸せな夢だけ)



杏(――夢から覚めたら、少し泣いて、ハイ死んでください)



杏(――現実にこんなのしか待ってないんだったらさ)





杏(――黙ってる以外に、どうすりゃよかったんだよ)


――――――――――――――――――――
395 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/05(木) 19:58:20.08 ID:9ZY2Twcv0

――――――――――――――――――――










――――――――――――――――――――
396 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/05(木) 19:59:02.49 ID:9ZY2Twcv0

――――――――――――――――――――



「――ふんふふふん、ふーんふふふふふん」

「ふふふふん、ふふふん、ふふーふん」



(――鼻唄?)

(――この曲、は)


(――『おねがいシンデレラ』……?)

(――途切れ途切れで)


(――今にも、消えてしまいそうな……)


(――ここは、どこ)


(――私は……)



「……気が、付きましたか」


「おはよう、ございます、蘭子ちゃん」



ちひろ「夢は醒め、ましたか」


397 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/05(木) 20:00:49.86 ID:9ZY2Twcv0

蘭子「……ちひろ、さん?」

蘭子「なんで……」


ちひろ「なんで? 何の話、です?」

ちひろ「なんで、あんなにボロ、ボロだったのに、ここに、いるかっ……ですか?」

ちひろ「……貴女もアイ、ドルだからっ、に、決まってる、じゃないですか……」


蘭子「……?」

ちひろ「本っ当に、呑気な、子、ですね……」

ちひろ「覚えて、ないんで、すか?」


蘭子「覚えて……」

蘭子「……!!」

蘭子「私、撃たれて……!!」


ちひろ「ええ……アーニャ、ちゃん、ごと、一斉、掃射で」

ちひろ「あなたも、バラバラに、なりました」

ちひろ「……それなのに、服以外、完治、と、いうのは」

ちひろ「さすが、というしか、ありませんね」


蘭子「アーニャちゃん、ごと……っ!!」


蘭子「―――アーニャちゃんは!?」

蘭子「アーニャちゃんは、私を庇って……!!」


ちひろ「……はあ」

ちひろ「すぐ横、ですよ。横」


蘭子「横……」


蘭子「……うそだ」


ちひろ「…現実、ですよ。それが、現実」



ちひろ「その、バラバラ、死体が、アーニャ、ちゃんです」



ちひろ「まだ、首から、上がキレイで、きれいなまま、で、良かった、ですね」

ちひろ「……集めるの、苦労したんですからね」

ちひろ「なんだって、こんな、死体なんか、あつめたんで、しょうか」

ちひろ「ばかばか、しい」
398 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/05(木) 20:04:39.47 ID:9ZY2Twcv0

蘭子「ああ……そんな……やだ……!!」



ちひろ「……ヒュー……コヒュー……」



ちひろ(――もう声が出ない)

ちひろ(――指一本動かせない)

ちひろ(――ああもうくだらない)

ちひろ(――結局こんな終わり方なんて)


ちひろ(――目の前の小娘に罵詈雑言を並べ立ててぶちまけてやりたい)

ちひろ(――こんなもののために全部壊したのかって)

ちひろ(――私達の、ささやかな夢だったのに)



ちひろ(――人間を大量に使い捨てたのも)

ちひろ(――秘密を知った喰種を消したのも)


ちひろ(――秘密を探った凛ちゃんに真実を突きつけたのも)

ちひろ(――未央ちゃんに消えないトラウマを植え付けたのも)

ちひろ(――シンデレラプロジェクトの皆を殿にして、先にほかのアイドルを逃がしたのも)

ちひろ(――その、凛ちゃん以外の家族を、騙して、家に残ってもらったのも)


ちひろ(――全部、くだらない私利私欲のためだとでも思っていたのですか)


ちひろ(――いいじゃないですか、ささやかな夢くらい見たって)

ちひろ(――いいじゃないですか、喰種が輝く舞台に立ったって)

ちひろ(――いいじゃないですか、また舞台に立ってもらうために全部失ってでも生き残ってもらったって)

ちひろ(――いいじゃないですか、そのために)


ちひろ(――冷徹になってでも、残酷になってでも、打てる手をすべて打っても)


ちひろ(――きらびやかで、幸せな夢の、世界を、つくることの)

ちひろ(――何が悪いと言うのですか)
399 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/05(木) 20:06:16.41 ID:9ZY2Twcv0

蘭子「っ……そうだ……まだ、手はある……!」

蘭子「楓さんが、教えてくれた、方法が……!!」



ちひろ(――ああもう。やめろと言ってあげたい)

ちひろ(――まだ、現実を見たくなくてもがいているのですか)

ちひろ(――そんなことをしても、アーニャちゃんは戻ってこないですよ)



蘭子「やった……成功した……」

蘭子「これで、アーニャちゃんが生き返って……!!」


蘭子「……あ、あれ」



ちひろ(――ああほら)

ちひろ(――それはもう、アーニャちゃんじゃないですよ)

ちひろ(――楓さんの物真似ですか)


ちひろ(――死体に、蘭子ちゃんの赫子を埋め込んでも)

ちひろ(――それは)



ちひろ(――ただの動く死体ですよ)



ちひろ(――あーあ。思った通り、泣きじゃくってる。泣いて、後悔してる)

ちひろ(――ああ……こんなに無様にもがいてる姿を見せられるなら)

ちひろ(――助けない方が、良かったかなあ)

ちひろ(――こんなに、傷ついた体に鞭打って)

ちひろ(――致命傷を負いながら、蘭子ちゃんと、アーニャちゃんだったものをかき集めて)


ちひろ(――もうすぐ死にゆく私が、見せられるのが、こんなものだなんて)


ちひろ(――なにが、『私が引き付けますから』、ですか)

ちひろ(――私が、死ぬのは、変わらないんじゃないですか)



ちひろ(――楓さん)
400 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/05(木) 20:09:38.87 ID:9ZY2Twcv0

たぶん今日はここまで。

杏の回想とちひろの独白とノローニャ、とりあえず書きたかったものは書けました

次の更新で346編は終了、その次の更新でエピローグやって終わりになります


リアルの事情と書く気力に限界が近付いてるのもあって、かなり巻いてます。
401 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/05(木) 20:09:49.64 ID:ArqLlc7LO
生まれたばかりの赤ん坊、みりあの妹もやられたか
402 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/05(木) 20:11:42.34 ID:9ZY2Twcv0

:reアニメ化だと
403 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/05(木) 22:39:23.95 ID:9ZY2Twcv0
>>384
ついでに765プロでは

羽赫:千早、小鳥
甲赫:真
鱗赫:響、あずさ、美希、P
尾赫:伊織

になります
404 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/05(木) 22:40:07.32 ID:qgOAQp9H0
あー遂にCPから被害者が…Pのトラウマスイッチがまた増えるなこりゃ
果たして何人生き残れるやら
405 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/10/05(木) 23:47:06.74 ID:upOFJWSm0
乙です!
まさかここまで一気に死者が増えるとは
冬馬のクインケ「シマムラ」の元が卯月なのか卯月の家族なのかは次回かエピローグまで見れば分かるのかな?

毎回更新を楽しみにしているので焦らずにじっくりお願いします
406 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/10/06(金) 02:18:25.59 ID:AGBr71CC0
>>384 >>403
ありがとうございます!
結構自分のイメージに合ってるのが多くて嬉しい
杏の2種は自分の中での格好良い赫子2つです
407 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/06(金) 03:01:05.79 ID:vpu5CsPA0
乙!
アーニャには生きて欲しかった…
408 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/06(金) 20:09:53.29 ID:hJ19nLRW0

――――――――――――――――――――







――――――――――――――――――――
409 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/06(金) 20:11:08.22 ID:hJ19nLRW0



「アーニャちゃん」

「美波さん」


「今日は、一緒に走ってくれて……その」

「ありがとう、ございました」


「今日は、その……二人に」

「お話したい事が、あって……」



「みんなは、私の赫子を見て」

「『強そう』って、『強い赫子を持ってていいな』って」

「魔王様みたいで、私にぴったりだねって言ってくれるんですけど」

「私は、この体……あんまり好きじゃないんです」


「…えっと! お父さんとお母さんからもらった身体が嫌いってことじゃないんです!」

「お母さんは、会えないけど……」

「ずっとひとりで育ててくれて、愛してくれて、今でも、大好きで」

「お父さんは、顔も分からないけど……やっぱり好きで」


「……そうじゃなくて」

「私はこの力が、ちょっと怖くて」

「私が憧れた力って言うのは、上手く言えないんだけど、何でもできて」

「一生懸命働いて、私のせいで、誰にも頼れなくて、ひとりで寂しそうにしてるお母さんも」

「物語に出てくるような魔法が使えたら、助けてあげられるから……」

「そんな魔法みたいな力に、憧れたんです」


「……私の力は、そんな理想の力じゃなくて」

「ただ、人を……傷つけるものだから」

「だから、怖くて……」


「私は、ただ」



「お母さんや、プロデューサーや、美波さんみたいに、だれかを助けられたら」



「そんな存在になれたらいいな、って……」



「だから、言葉だけでも真似したかったのかも……」



――――――――――――――――――――
410 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/06(金) 20:11:42.67 ID:hJ19nLRW0

――――――――――――――――――――


凛(――鼻の中を切り裂くような冷たい空気)

凛(――その中を漂ってくる懐かしい匂いを、必死にたどって)

凛(――親友と、大好きだった両親の匂いを、振り切って走った)


凛(――ほかに行くところなんてなかったから)


凛(――卯月)

凛(――プロデューサー)


凛(――ううん、他の誰でもいい)


凛(――好きな人の側にいたくて、ひとりぼっちでいたくなくて)

凛(――傷んでいく喉を我慢して、走り続けた)



凛(――やっと、仲間の匂いが濃くなったと思ったら)

凛(――鬱陶しくて仕方ない、あの白いコートも見えた)

凛(――回り込んで、でも道路からは回り込めなくて)


凛(――仕方がないから、建物を登ったら)


凛(――仲間の匂いは、車の中から漂っていたんだと気付いた)



凛(――それは白鳩の護送車だった)
411 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/06(金) 20:12:12.16 ID:hJ19nLRW0

凛(――卯月と、プロデューサーの匂いはしない)

凛(――あとは、何人か欠けてる)


凛(――美波。みく。杏。みりあ。莉嘉。美嘉)


凛(――匂いは、たぶんこれだけ)


凛(――あとはどこに行ったんだろう)


凛(――考えたくなかった)


凛(――考えたくなかったのに)


凛(――目の前に突きつけられた)


凛(――なんで、ここで皆を見つけてしまったんだろう)


凛(――なんで、今見つけてしまったんだろう)


凛(――目の前の有機パネルには)



凛(――卯月が映っていた)



凛(――手足を縛られて)


凛(――くせのついた髪は、乱暴に引っ張られていて)


凛(――その表情は、今にも泣きそうで)



凛(――知らない男が、その首に刃を当てていた)
412 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/06(金) 20:13:39.95 ID:hJ19nLRW0



黒井『ウィ、マダム。エ、ムッシュ』

黒井『そして各方面にまんまと逃げのび、安堵しているだろう346プロダクション喰種アイドルの諸君』

黒井『私はCCG上等捜査官の黒井だ』


黒井『これでも放送機器の扱いには心得があってね。TOKYO MIXスタジオをお借りして、こうして緊急放送をさせてもらっている』

黒井『ああ、心配はいらないよ。優しい上司がすべて責任を取ってくれると言ってくれたからね』



黒井『……さて、346プロの喰種ども』

黒井『同僚を生贄にして、まんまと自分は逃げおおせたと思っていたか?』

黒井『ざあ〜んねんっだったなあ! 計画は完全に失敗だ!』

黒井『頼りの職員共は全滅し、人間アイドルはすべて救出した』

黒井『こちらの捜査官は大して死んでいない。…ああ、失礼。ゼロではない。訂正しておこう』

黒井『ともかく、君達を守っていたものは全て消え失せた』


黒井『……さて』



黒井『次はお前たちだ』



黒井『先ほど述べた通り、捕らわれのアイドルはすべて救出済みだ』

黒井『あとは、346プロの名簿から彼女たちの名前を引くだけ―――』

黒井『残ったお前たちを、これから「喰種被疑者」として容赦なく捜査する』


黒井『勿論、猶予は差し上げよう。お前たちが本当に"喰種"だと証明されるまで』

黒井『その後どうするか? それはこの娘にやる通りだ』


卯月『……や、あ……!』


黒井『……許されるとでも思ったのか?』

黒井『みんな346プロがやりました、だから私達は人を殺していません』

黒井『だって私達はアイドルになりたかっただけだから! ただ知らなかっただけなんですう!!』


黒井『ふざけるな』


黒井『一匹残らず、探し出してやる』

黒井『346プロのクズ共も、その他のアイドル紛いのクズ共も』

黒井『すべて探し出して、我々は罰を与える』

黒井『殺しつくしてやる』


黒井『何も悪い事をしていない? なにを勘違いしている』



黒井『お前たち喰種が、生きたいと思うこと』



黒井『―――それこそが罪なのだ』
413 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/06(金) 20:14:45.91 ID:hJ19nLRW0





卯月『……ご』



卯月『ごめ、なさい、ごめん、なさい』



卯月『やだ、やだ。ころさ、ないで』



卯月『たすけ、ママ、あ、プロ、でゅ、さ』



卯月『みお、ちゃん』



卯月『りん





     ちゃ』



――――――――――――――――――――



凛(――最初に見た筈の笑顔は、もう無かった)


凛(――その笑顔だけは、ずっと変わらないでいてくれると思っていたのに)


凛(――罪悪感と、恐怖が入り混じった泣き顔だった)


凛(――どうにもならない身体を、ぎしぎしと必死でゆすって)


凛(――何も悪くないのに、ごめんなさいと繰り返して)





凛(――その姿は、まるで『処刑』だった)

凛(――卯月は、何も悪くない筈なのに)

凛(――あの男は、まるで自分が正義だとでも言うように)



凛(――断頭して、命を奪い取った)

凛(――あの子の笑顔も、夢も、全部)
414 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/06(金) 20:16:08.87 ID:hJ19nLRW0





「ごめんなさい」





「間に合わなかった」





「私のせいで、凛ちゃんの大切な人まで」





「奪ってしまいました」




415 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/06(金) 20:16:49.81 ID:hJ19nLRW0

凛「……え」



凛(――いつの間にか、隣に蘭子がいた)

凛(――いや)

凛(――本当に、蘭子なの?)


蘭子「……どうしたの、凛ちゃん」

蘭子「ああ。もしかして、この服?」

蘭子「これはね、盗んじゃった」

蘭子「流石に、ボロボロの衣装じゃ……恥ずかしくて」


凛(――ちがうよ、蘭子)

凛(――服の事じゃない)

凛(――どうしてそんな顔をしてるの、ってことだよ)


凛(――どうして蘭子は、そんな悲しい顔で笑ってるの)


蘭子「……救えなかった」

蘭子「卯月ちゃんも」

蘭子「アーニャちゃんも」

蘭子「かな子ちゃんも、智絵里ちゃんも、きらりちゃんも」

蘭子「……プロデューサーも」

蘭子「未央ちゃんと李衣菜ちゃんは、逃げ切れたのかな」

蘭子「無事だといいな」


蘭子「……私」



蘭子「私、決めたよ。凛ちゃん」

416 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/06(金) 20:17:36.04 ID:hJ19nLRW0

凛「……蘭子?」


凛(――私が何か言葉をかける前に)

凛(――蘭子は屋上から飛び降りてしまった)


凛(――落ちていきながら、蘭子は壁を駆けて)

凛(――叫ぶように、翼がその体を押し出していく)


凛(――突き進む先は、美波達が乗せられている護送車)



凛(――そして爆発音が鳴り響いた)



凛(――焼け死んでいく人間たちと、羽に貫かれて絶命する人間たちと)


凛(――車から這い出て、息を飲む仲間たちに囲まれて)


凛(――周囲を揺らめく赤い炎に、その身体は照らされていた)


凛(――燃え盛る火と一緒に揺れる、蘭子の翼は)


凛(――どうしてなんだろう)



凛(――すごく綺麗だった)



――――――――――――――――――――
417 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/06(金) 20:20:59.20 ID:hJ19nLRW0

――――――――――――――――――――


凛(――プロデューサーには、結局会うことが出来なかった)


凛(――その後のニュースで、捕まってしまったことを知った)





凛(――私達は、とにかく捕まらないように逃げた)


凛(――必死で逃げ回っているうちに、時間は過ぎたみたいで)


凛(――ふと時計を見ると、ちょうど12時を指していた)


凛(――なんで、こんなに嫌な偶然ばかり続くんだろう)





凛(――とっくに魔法は解けているのに)



凛(――なんで今更、見せつけてきたんだろう)



――――――――――――――――――――
418 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/06(金) 20:21:32.53 ID:hJ19nLRW0

――――――――――――――――――――










――――――――――――――――――――
419 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/06(金) 20:22:38.40 ID:hJ19nLRW0





「美波さん」





「ごめんなさい」


「私、アーニャちゃんを守れませんでした」


「私のせいで、アーニャちゃんをひどい目に遭わせてしまいました」


「私のせいで、みんな死んだんです」


「346プロは、みんなを守ってたのに」


「どんなにひどいことをしても、喰種にとってはたった一つの拠り所だったのに」





「だから、もうこれ以上は奪わせません」


「私が、346プロの代わりになって戦います」


「今度は誰も死なせない」



「今度は私が、皆のために戦うから」
420 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/06(金) 20:25:25.94 ID:hJ19nLRW0










「私がみんなを守るから」










――――――――――――――――――――
421 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/10/06(金) 20:40:27.36 ID:AGBr71CC0
卯月の死亡シーンが今までで1番辛いな
まさか文字通りの公開処刑とは...
黒井は真戸ポジションだから無惨な最期を迎えるのは確定だろうけどそれでもこれはくるね
422 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/06(金) 20:49:57.07 ID:hJ19nLRW0

とりあえずこれで本編は終わりです。

曲がりなりにも蘭子の結末とCPメンバーの死んでしまう所は描写したので、

あとはエピローグとして楓さんやCCG保護組がどうなったかを書いて行こうと思います。

かなりサラっと書いてしまうので、楓さんの活躍や捜査官達の重苦しい最期を期待してくださった方はごめんなさい。

リメイク時にエピソードとしてちゃんと書くと決めているので今はこれで許してください。


>>405
時間をかけてでもちゃんと全部描写しきるのが一番いいとは僕も思うのですが、
元々技術不足なこともあり前編の時点で不満が多々残ってるところとか、原作がどんどんアレになってモチベが下がってることとか、
段々765編と時系列に矛盾が出てきてるから整理したいとか、
あとは申し訳ないことに、ダラダラ書いてるうちに大3になって就職のことをちゃんと考えなくちゃいけなくなり
のびのびとやっていく余裕がなくなってしまったこととか問題が色々できしちゃいまして……

なので、ひとまず「少なくともちゃんと展開が分かるように」「ちゃんと終わらせる」ことを第一に優先して、
細かいエピソードの数々や表現力を犠牲にしてでも一度ちゃんと区切りをつけて、

それでもやっぱり偶像喰種完結まで書きたいし楽しみと言ってくれた人のためにも満足できる話を書きたいのは確かなので、
将来の見通しがちゃんと立ってからまた前期のエピソードとかアイマスらしい要素とか、
書きたかったものをちゃんと追加して書き直そうと思います。

ちゃんと戻って来るので、申し訳ありませんが今はこれで。
423 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/06(金) 20:51:21.66 ID:hJ19nLRW0

明日の更新でこのスレは完結となります。

もう少しだけお付き合いいただければ幸いです。
424 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/06(金) 21:30:43.76 ID:43a6sQDro
奏、周子達は蘭子辺りと合流したのかな
CoのCG皆生き残ってるのか
425 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/07(土) 00:23:40.78 ID:YCek0wYq0
個人的には未央の死が一番印象深かった
藍子や家族との別れがあんなだったしアレだけフラグ立ってると逆に生存あるのかなって思ってたし
426 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/10/07(土) 00:28:09.30 ID:BiEYmoyW0
乙です!
卯月は今までで1番ショックだった
この分だと本編の方でフレデリカ達の言っていた「王様」は楓ではなく蘭子かな?

原作に対して言いたいことはよく分かります
もう随分前から原作よりもこちらの更新の方を楽しみにしているくらいで
何はともあれラストのエピローグまで頑張ってください!

ついでに質問なのですが、蘭子や楓や小鳥や武内P以外にも喰種達の強さについては決まっていますか?
各喰種がどのレート相当の強さなのかとか、765・346各事務所内での強さの序列とか
もし想定されていれば教えて欲しいです
427 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/07(土) 09:08:34.61 ID:wjaN4L4MO
おつおつ
どんな形であれちゃんと完結させてくれるだけで嬉しいぞ
428 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/07(土) 11:23:18.20 ID:OtjLsYf80

>>427
レートについては、前スレで詰まった時に作った表があります
http://imgur.com/zpYwG3a
序列については明確に決めているわけではありませんが、

とりあえず
346 その他の喰種<<楓<武内P<蘭子
765 伊織≦千早≦美希≦あずさ<<真<P<小鳥
ぐらいは決めてますね。
楓は元々それなりにあった素質と天才的な戦闘センスとそれなりの戦闘経験の積み重ね、
武内Pは赫者としての底上げと鯱のような地道な鍛錬による技術、
蘭子は経験こそないものの楓を軽く追い越す圧倒的な素質によるゴリ押しと自前の想像力をそれぞれ使い戦います。
なので蘭子はまだまだ伸び代があるのです。


皆さんコメント本当にありがとうございます。

段々リアルも厳しくなってきて、劣等感にも苦しみながら、それでも偶像喰種を書き続けていられたのは、

皆さんがコメントで楽しんでくれて、こんなssでも応援してくださったからです。

本当に励まされました。本当に本当にありがとうございます。


最後まで書けたので、これから投下します

よろしくお願いします<(_ _)>
429 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/07(土) 11:23:45.21 ID:OtjLsYf80

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430 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/07(土) 11:24:13.56 ID:OtjLsYf80

〜1月1日 某公園〜


美城「……」ペラ


美城(――346再編に当たって、問題は山積みだな)

美城(――資金も施設もスタッフも、一から集め直さなければならない)

美城(――あれは外道の巣だったが)

美城(――たしかに安定した企業だった)


美城「……」フー



「あけましておめでとう、常務」

「隣いいかしら?」



美城「!」

美城「……ああ。構わん」

美城「それと、あけましておめでとう」



美城「速水」



奏「…また仕事で悩んでるのね」
431 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/07(土) 11:24:53.29 ID:OtjLsYf80

奏「差し入れよ。缶コーヒーだけど、この辺りじゃ一番美味しいの」


美城「そうか」カシュ

美城「……確かに美味だな」


奏「お互い、やっと一息つけたみたいね」

奏「年末はそっちも慌ただしかったみたいだし……」

美城「……」


美城「…速水」

美城「私を殺しに来たのか」


奏「あら、どうして?」

奏「何か後ろめたい事でもあるの?」クスクス


美城「思い出話をしに来たわけではないだろう」

美城「聡明な君が気付いていないとは思わん」

美城「私はCCGの信用を得るため、君達4人の情報を売った」

美城「そのために、鷺沢文香は命を落とした」


美城「いつかは、その代償を払う日が来ると思っていた」
432 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/07(土) 11:26:14.38 ID:OtjLsYf80

奏「そう?」

奏「私も周子もフレデリカも、あなたの事を恨んでる訳じゃないわよ?」

奏「むしろ、財産のことを知った時は、常務らしいなって思った」

奏「それに何より……短い間だったけど、クローネでの活動は楽しかったもの」

奏「常務がいじわるされてて、下積みばっかりで終わっちゃったけどね」


美城「……そうか」

奏「今は人間だけの346プロを再編してるってところかしら?」

奏「あのまま346が無くなっちゃったらどうしようって、思ったけど」

奏「と言うか、私が言うのもなんだけど……評判とか、大丈夫なの?」

奏「世間の目はすごく厳しいと思うのだけど」


美城「その点だが、心配はいらない」

美城「確かに、346崩壊の直後は激しいバッシングを受けたが」

美城「今後の経営について、私はある勝算を持って密告に向かった」

美城「そして読みは当たっていた」


美城「喰種が経営しているアイドル事務所は、346だけではなかった」

美城「小早川紗枝が提供した情報の中には、目線逸らしのために密告する多事務所のリストもあってな」

美城「346がCCGに目をつけられかけた時は、他の喰種事務所を密告して事なきを得ていたようだ」

美城「よって346を皮切りに、喰種の経営しているアイドル事務所は次々と摘発された」


美城「今の民衆にとって、摘発されていない事務所は『喰種がいるかもしれない事務所』」

美城「そして346は一番最初に……言ってしまえば『浄化』された事務所だ」

美城「父を含む私以外の美城一族は逮捕された。裁判はまだだが、積極的に喰種に協力していたことから死刑判決が下るだろうと聞いている」

美城「今の代表取締役は私が務めている。悪逆非道の346プロを密告し、喰種の敵、人間の味方となった私が」


美城「よって、346プロは現時点で『一番信用できる』事務所になった」

美城「高価だが、新しい事務所にはRcゲートを設置し『人間だけの』アイドル事務所として再スタートを切るつもりだ」


美城「……これは想定外だったのだが、黒井上等の緊急放送を含め」

美城「シンデレラプロジェクトのメンバー数名が駆逐された事は広く知れ渡った」

美城「"喰種"だとしても彼女たちはアイドルだった。当然、人間のファンもいた」

美城「CCGが受けた批判、攻撃に比べれば、私個人の風当たりなど無いに等しかった」


奏「すごく荒れた……と言うか、今でも荒れているものね。346プロのアイドルを擁護した人が喰種扱いされていたのは……失礼だけど、ちょっと笑っちゃった」
433 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/07(土) 11:27:39.97 ID:OtjLsYf80

奏「それにしても……浄化って、随分とひどいことを言われたものね」

奏「でも、そっか。それならありすちゃんと唯はアイドルを続けられるのね」

奏「良かったら『応援してる』って伝えておいてくれないかしら?」


美城「……」

美城「……その話だが」


美城「『最終隠匿プロトコル』にて保護したアイドルと、その後検査のために招集し人間だと証明されたアイドルに意志を確認したが」

美城「左手首から先を欠損した木村夏樹、意識不明の椎名法子、両手の全指を欠損した水本ゆかり、重傷で保護された神谷奈緒、北条加蓮を除いて」

美城「生還した90名の人間うち10名が346プロから退社した」

美城「輿水幸子、五十嵐響子、中野有香、脇山珠美、森久保乃々、桐生つかさ、片桐早苗、浜口あやめ、向井拓海」

美城「そして橘ありすだ」


奏「……!」

奏「……あら。CCGもまだ、346プロのアイドルを全員判別できたわけじゃないのね」

奏「裕子が攫われる直前なら、346プロに所属していた人間アイドルは100名よ」

奏「裕子と、殺された茜、あとケガした人を含めても3人足りないわ」

奏「…まあ、一人はグレーだからカウントしていいのか分からないけど」

奏「誰が人間アイドルって分かってるの?」


美城「辞退者やけが人を除き、346プロでの活動続行の意志を表明した80名は」

美城「小日向美穂、櫻井桃華、道明寺歌鈴、乙倉悠貴、関裕美、白菊ほたる、福山舞、今井加奈、奥山沙織、横山千佳」

美城「太田優、棟方愛海、大原みちる、遊佐こずえ、大沼くるみ、相原雪乃、西園寺琴歌、楊菲菲、柳清良、榊原里美」

美城「安斎都、大西由里子、古賀小春、丹波仁美、池袋晶葉、原田美世、二宮飛鳥、上条春菜、佐々木千枝、松永涼」

美城「大和亜季、荒木比奈、松本紗理奈、松尾千鶴、岡崎泰葉、高橋礼子、服部瞳子、木場真奈美、水野翠、八神マキノ」

美城「浅利七海、高峯のあ、篠原礼、氏家むつみ、藤井朋、結城晴、桐生つかさ、鷹富士茄子、十時愛梨、市原仁奈」

美城「大槻唯、姫川友紀、及川雫、龍崎薫、難波笑美、依田芳乃、佐藤心、並木芽衣子、沢田麻理菜、矢口美羽」

美城「愛野渚、真鍋いつき、小関麗奈、メアリー、的場梨沙、財前時子、若林智香、ナターリア、相馬夏美、槇原志保」

美城「杉坂海、北川真尋、小松伊吹、三好紗南、キャシー、村上巴、首藤葵、冴島清美、南条光、イヴ・サンタクロース」

美城「付け足すと、木村夏樹は怪我こそしているものの復帰の意志をはっきり示している」


奏「志希と穂乃香と柚が欠けてるわね。あと80人の名前を何も見ずに言えるのは……ええ、流石ね」

美城「さらっと欠けた3人を指摘できる君が言えた立場ではない」


美城「……ところで、グレーと言うのは?」

奏「志希よ。あの子『半人間』だもの、流石に検査を受けるのは危ないと思ったのかしらね」
434 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/07(土) 11:29:12.77 ID:OtjLsYf80

美城「そうか。まだ捜査対象には人間が混じっていたのか」

美城「上条春菜、佐々木千枝、荒木比奈、松本紗理奈は保護後の呼びかけで戻って来た」

美城「あれで全てだと思っていたのだがな。『準一級制度』は、この時のための保険でもあったか」

美城「……そして、奴らの殺戮は意味があったと言うことか」


奏「…ああ、少なくともその場で駆逐はされないように、ってことね」

奏「人間嫌いのちひろさんが、やけにあっさり譲ったなと思ったら」


奏「……それで」


奏「良かったのかしら? 私に、そんなに情報をペラペラと喋っちゃって」

美城「私の目的は346プロダクションの完塞だった。それは既に達成している」

美城「君こそ、まだ判明していなかったアイドルの情報を喋ってよかったのか?」

美城「私がまた密告するとは思わなかったのか」

奏「貴女がそうするなら、大人しく受け入れるわ。これでも常務の事は結構好きだもの」


奏「……さっき、『思い出話をしに来たわけではないだろう』って言ったでしょ」

奏「いいえ、思い出話をしに来たの。多分これが、常務に会える最後のチャンスだと思ったから」

奏「これから増々、余裕がなくなって来ると思ったから」





奏「教えてくれないかしら。346プロの最終隠匿プロトコルが失敗に終わった後」


奏「CCGに何があったのか、ありすちゃんに何があったのか」





常務「いいだろう。だが、そちらの情報も寄越してもらう」


常務「シンデレラプロジェクトに何があったのか、高垣楓が何をしたのか」


常務「君も知ってる全てを話してもらうぞ」





――――――――――――――――――――
435 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/07(土) 11:29:53.77 ID:OtjLsYf80







「皆さん」


「私は"喰種"です。正確に言えば、2年前皆さんにご迷惑をおかけした『隻眼の喰種』です」


「最後に一回、皆さんに遊んでほしくて……今日カミングアウトを決意しました」


「CCGの皆さん。これから346プロの喰種の皆を探し、なぐーる、そうですね」


「かつてのお城で待ちます。私の強さは知ってる筈ですから、ちゃんと準備をして来てくださいね」



「私を殺しに来てください」





「私もそうします」




436 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/07(土) 11:30:28.98 ID:OtjLsYf80





「ああもう」


「何でこんな、痛い目に遭うことが分かってたのに」


「わざわざこんなところに首を突っ込んだのかしら」


「346は最悪な組織だったし、楓ちゃんは相変わらず自分勝手だし」


「私は、こんなマヌケな死に方しそうだし……」


「……ああ、でも」



「正しいとか、間違ってるとか」


「そもそもそんなモノないのかもしれない」


「自分が今まで選んできたことは、自分の罪に出会えたことは」


「あの手のかかる子と346プロに入った事は」


「バカな小娘4人と、子供みたいにはしゃいだ事は」


「……今日、誰かのために死ねることは」


「『良かった』と思うわ」





「……うん」

「……今日なら死ねる」

437 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/07(土) 11:31:08.20 ID:OtjLsYf80

奏「白鳩が蘭子を蜂の巣にした時、どうしてちひろさんはあの子を助けられたのか」

奏「それは、ある喰種が乱入して代わりに戦ってたからなの」

奏「誰なのかは言わなくても分かるわよね」


奏「その後、その場では一人も殺さないで」

奏「撮影していたヘリに向かって宣言をした」

奏「『346プロで待つから、殺しに来なさい』って」


奏「白鳩は346プロ相手の時よりもしっかりとした編成で、楓さんを殺しに来た」

奏「でも、楓さんも一人で立ち向かったわけじゃない」


奏「川島瑞樹さんに、三船美優さん」

奏「この2人も一緒に戦っていたの」


奏「…それと、白鳩は正体に気付かなかったみたいだけど」

奏「カメラで宣言をしたことで、楓さんのファンだった喰種が大勢集まって来た」

奏「結果、白鳩は予想以上に大人数を相手に戦うことになって」

奏「結局、楓さんは倒されちゃったけど……代わりに白鳩は多くの捜査官を失った」


奏「噂では、特等の何人かが『タケウチ』って言う鎧を使っていたみたいね」
438 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/07(土) 11:31:36.24 ID:OtjLsYf80

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439 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/07(土) 11:32:30.96 ID:OtjLsYf80





「……美樹サン? 早苗サンか?」


「あんた、誰だ」


「何でなんにも言ってくれねえんだ……?」


「みんなどこにいるんだ」


「仁奈は……」





「いやだっ」


「仁奈に会いてえ」


「頼むから、仁奈に会わせてくれ」


「一緒にいたいって、言ってくれたんだ」


「もう寂しい思いはっ、させねえって、決めたんだよ」


「どこだ、仁奈っ」





「に……な……」




440 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/07(土) 11:33:33.06 ID:OtjLsYf80

美城「確かに、高垣楓は重大な被害をCCGに与えた」

美城「だが、以前の業務が不可能になるほどではなかった」

美城「それだけCCGは何事もなく復活し、346の枷を失くした今、君達をすぐ追い詰めていただろう」


美城「だが、そうはならなかった。何故か?」

美城「それは高垣楓討伐作戦と同時に起こった」

美城「ある"喰種"たちによって、CCG本局が襲撃されたからだ」


美城「機材も局員も問わず、奴らは捜査局の基盤に壊滅的な被害を与えた」

美城「本局防衛に回っていた捜査官達も、その強大な力に容易く命を摘み取られた」


美城「その犠牲の中には、橘美樹準特等と市原ギン一等も含まれていた」


美城「万が一のことを考え、娘を一人にしないために」


美城「彼女たちは、比較的安全なはずの本局警備についていた」
441 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/07(土) 11:34:03.69 ID:OtjLsYf80

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442 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/07(土) 11:34:35.02 ID:OtjLsYf80





「……あ」


「あー」


「へえええい、かもーん」


「べいべー、さんきゅううう」


「べりいストロング、サイキックパわー、いえーす」




「うしみたい」



「おさかなくわえた」



「さなえさああああん」




443 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/07(土) 11:35:48.98 ID:OtjLsYf80

美城「高垣楓討伐作戦を含め、すべてが終わった後」

美城「残った局員をかき集め『キャッスル』に誘拐されたアイドルの捜索が行われた」

美城「……『死亡が確認されなかった』アイドルはたった3名だった」


美城「ビッグリリィに提供された神谷奈緒、北条加蓮」

美城「救助され、『生還』はした」

美城「だが、ビッグリリィの嗜好により、まるで手を繋いだ2人を反時計回りに削るかのように」

美城「神谷奈緒は右足を、北条加蓮は左腕以外の手足を切断されていた」

美城「現在、神谷と北条は入院中だ。リハビリこそ受けているが……」


美城「神谷はともかく、北条のアイドル復帰は絶望的だと言われている」



美城「そして、生存を確認されていないものの死体も発見されなかったアイドルがもう1人」

美城「通称『マッド』と呼ばれる喰種に提供された堀裕子だ」

美城「『マッド』の居住地に置かれていた資料によると、奴は『レシピ』なる技術を346プロに提供していて」

美城「自身も堀裕子にいくつかの実験、施術、拷問を行っていた」

美城「本人の日誌曰く、『4つ全て埋め込めた』らしい」


美城「そして、捜査官達が突入した時には……『マッド』は頭部を破壊され、絶命していた」

美城「そして窓は鉄格子ごと砕かれていた。まるで何かが脱走したかのようだったと聞いた」


美城「……『マッド』が346に提供した『レシピ』の詳細も、同場所に保存されていた」

美城「どうやらこれは、人間に施すことでその肉質を喰種にとってさらに美味にする効果があるようだ」


美城「堀裕子は現在、行方不明として扱われている」
444 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/10/07(土) 11:36:15.70 ID:OtjLsYf80

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