卯月「拝啓、忌まわしき過去に告ぐ絶縁の詩」【偶像喰種・外伝完結編】

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58 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/02(土) 23:07:20.45 ID:SEAxogu10
>>57
その発想は無かったわ

一気に投下します
59 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/02(土) 23:07:48.12 ID:SEAxogu10

早苗(――美城常務が語った真相は、簡単に言えばこういうことだった。



346プロダクションは"喰種"の身体能力に目を付けた人間の美城一族が、

その能力と、お金や生活補助との交換を吹っ掛けたことで生まれた会社。


美城一族以外の幹部や管理職、プロデューサー、女子寮の管理人、事務所の清掃員まで、

運営に関わらないような事務員を除いたほぼ全てのポジションで"喰種"が働いてる。


また、当然っちゃ当然だけどアイドルもその半分以上が"喰種"。

人間と"喰種"のアイドルを両方置いておくことでCCGや人間へのカモフラージュを作って、

「ご飯」を定期的に供給したり学校や教育を手配したりすることで、

ほかのアイドル事務所と比べて"喰種"が安心して生活しアイドル活動を続けていける環境を作った。


……ここまでが、表向き"喰種"アイドルや常務が元々聞かされていたお話。



ああ、あと346プロの秘密を知った人間はこっそり始末してるって話だけど、

良い悪いはともかく、目撃者は消さざるを得ないって言うのは、私もまだ納得できる……

問題はここから。



346プロが人間アイドルを雇うのはカモフラージュのためだって言ってたけど、

本当はもっとおぞましい理由がある。
60 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/02(土) 23:08:21.30 ID:SEAxogu10

346プロは、"喰種"アイドルを守るために色々な事をしなくちゃいけない。


狩りの出来ない"喰種"のために、ご飯を用意する。

学校にいけない"喰種"のために、教材や勉強場所を用意する。

"喰種"としての正体を隠すために、偽の戸籍やRc検査診断書を用意する。

職員やアイドル個人の正体がバレた時、ほかのアイドルまで捜査が行かないよう根回しやもみ消しをする。

(分かりやすい例が菜々ちゃんの時のこと)

荒っぽい野良喰種が346プロに来ないよう牽制する。


そして、完全に"喰種"アイドルの正体を隠すには346プロだけの力じゃ足りない。


だから周りの喰種組織と協力して完璧な情報を隠す形態を確立した。



でも、周りの喰種組織はタダで協力してくれるわけじゃない。

346プロにしか出せないものがあるから、みんな協力してくれる。


346プロは、それを『財産』って呼んでる。





346プロは協力の報酬として、人間のアイドルを誘拐して報酬にしている。
61 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/02(土) 23:08:47.01 ID:SEAxogu10

周りの"喰種"にとって、可愛い女の子はそれだけで価値のあるご飯になる。

アイドル事務所なんだから、可愛い女の子が集まるのも当然。

それにレッスンで鍛えられて、エナジードリンクや『レシピ』で整えられたしなやかな身体は評価が高くて、

346プロを手伝えばそれが貰えるようになるんだから、皆喜んで仕事をする。


でも定期的に自社のアイドルが減っていけば、誰だって不審に思う。


そのために、346プロは『キャッスル』って言う架空の組織を作り上げた。


あちこちのアイドルを攫い、どこかに出荷する極悪組織。

その実は、346プロが自分のところのアイドル失踪を誤魔化すために他所の子もまとめて攫ってるだけ。


そして、346プロから喰種組織に売り飛ばされた人間は、一部のお金持ちの喰種に―――――





―――――その先を聞いて、あたしは吐いた)


――――――――――――――――――――
62 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/02(土) 23:09:15.34 ID:SEAxogu10

――――――――――――――――――――


ちひろ「―――っと、こんなところですかね」

ちひろ「どうです? 自分を支えた皆のやってることを知った気分は?」


凛「…………」

凛「……あ……」


ちひろ「…あーらら。絶句しちゃってますね」

ちひろ「一応補足ですが、『キャッスル』として攫った他所の子は346の子より肉質がずっと劣るため」

ちひろ「適当に下っ端にばら撒いて処理してます」


ちひろ「あと、普通なら346から出す子は『レシピ』に従って施術を行うのですが」

ちひろ「奈緒ちゃんと加蓮ちゃんに関してはビッグリリィの要望により、施術を行わずそのまま提供してるんですよね」

ちひろ「あそこの場合、再生能力は邪魔にしかなりませんからね」

ちひろ「…おーい? 今何気にすごい伏線貼りましたよー?」

ちひろ「聞こえてますかー?」


ちひろ「……ダメですかねこれ」
63 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/02(土) 23:09:42.54 ID:SEAxogu10

――――――――――――――――――――


早苗「ッ……おえっ……うええっ……!!」


橘「…大丈夫ですか、片桐さん」


早苗「ぐっ……はあ、はあ」

早苗「ごめ、なさ……美樹ちゃ、ん……」


橘「いいえ、片桐さんの心情を鑑みず聴取を行った私にも責任があります。本当に申し訳ありません」

橘「すぐに医務室までお連れします。少しだけお待ちください」


早苗「はっ、はあっ……」


美城「……」

美城「……すまない、片桐君。君への配慮が欠けていた」

美城「堀裕子の居場所を除いて、君が知りたい筈の情報はすべて話した」

美城「彼女の居場所までは、私も突き止められなかった」


早苗「……ぐっ……う、う……!!」


早苗「……どう、して……?」


美城・橘「「?」」


早苗「どうして、あいつらは……!」

早苗「こんなひどいことを、平気で出来るの……!?」


美城「……」


美城「……そうだな」


美城「理由だけなら、私にも推測できる―――――」


――――――――――――――――――――


凛「どう、して……」

ちひろ「お」


凛「どうして、そんな、残酷なことが出来るの……?」


ちひろ「……まーだ分かりませんか」

ちひろ「何度も言ってる筈なんですけどねえ」


ちひろ「私達がここまでする理由なんて、ひとつだけですよ」


――――――――――――――――――――
64 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/02(土) 23:10:11.13 ID:SEAxogu10










「すべてはアイドルのため」










ちひろ「これくらいやらなきゃ、"喰種"はステージに立てないんですよ」


美城「そして、このような吐き気を催す行為の支えなしに輝きを得られないなら―――」





美城「―――――"喰種"にくれてやる城やドレスなどない」

美城「骸を礎にしなければ保てない血まみれの城など、壊して当然の害悪だ」


――――――――――――――――――――
65 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/02(土) 23:10:44.62 ID:SEAxogu10

――――――――――――――――――――


ちひろ「……さて、お仕置きとお説教はこれまでにして」

ちひろ「とりあえず、凛ちゃんも未央ちゃんもこのまま帰っていいですよ」

ちひろ「命なんて奪いません。ちゃんと出口まで案内します」


ちひろ「誤解しないでほしいんですが、私達にとっては」

ちひろ「お二人も守るべき大切なアイドルだって事は変わらないんです」


ちひろ「未央ちゃんは"喰種"としての自覚がちょーっと足りなかったみたいなので、厳しい躾をしてしまいましたけど」



ちひろ「……さて」

ちひろ「分かっているとは思いますが、ここで見たこと、聞いたこと、知ったこと、気付いたことは全て他言無用でお願いします」

ちひろ「もしお二人以外のアイドルの誰かに、このことを伝えたのなら……」


ちひろ「今度は卯月ちゃんと美穂ちゃんが」

ちひろ「その次は李衣菜ちゃんと夏樹ちゃんが」

ちひろ「これは骨が折れそうなので勘弁してほしいんですけど……さらに次は蘭子ちゃんと飛鳥ちゃんが」

ちひろ「未央ちゃんと茜ちゃんの代わりになります」


ちひろ「大切なお友達にこんな気持ち、させたくないでしょう?」

ちひろ「ね、未央ちゃん♪」



ちひろ「……それでは、今日はお疲れさまでした」

ちひろ「また明日から、夢に向かって頑張ってくださいね♪」

ちひろ「我々はその姿勢を、心より応援します♪」


――――――――――――――――――――
66 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/02(土) 23:11:19.24 ID:SEAxogu10

――――――――――――――――――――


美城「……片桐君の様子は」

橘「とりあえず落ち着きました。…聴取を続けても?」

美城「構わない。だが、証言は一通り済ませた筈だ。まだ何か聞きたい事があるのか?」

橘「ええ。あと一つだけ」



橘「どうして貴女がそこまで知っている?」



美城「……何かおかしいか?」

橘「ええ。『キャッスル』……いえ、346プロダクションは長い間、その正体を隠し続けていた」

橘「我々の捜査の糸にすらかからなかった」

橘「忌まわしいことに奴等は我々の目を他所に逸らし続け、我々は騙され続けた」


橘「その346プロが、貴女に情報をリークされる可能性を考えていなかったとは思えない」

橘「一朝一夕の調査で手がかりなしの状態から得られる情報にしては、あまりにも精密かつ大きすぎる」

橘「……どうやって知った?」
67 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/02(土) 23:12:02.23 ID:SEAxogu10

美城「……やれやれだ。『あの情報』だけでは信用してもらえないのか?」

美城「わざわざ担当アイドル4人を君たちに売ったと言うのに」

美城「一人は捕獲したと聞いているぞ?」


橘「ええ。貴女が我々の信用を得るために提供した情報……」

橘「『速水奏、塩見周子、宮本フレデリカ、鷺沢文香の4匹は"喰種"である』」

橘「4匹が揃って行動しているときに、ギン達に襲撃してもらって」

橘「前3匹には逃亡を許したものの、鷺沢文香の捕獲には成功した」

橘「……それぞれの赫眼も確認して、残る一人『大槻唯』の検査と保護も行い」

橘「大槻唯が人間だということも含め、貴女の提供した情報は嘘偽りない真実だと証明された」


美城「……それでもまだ、私が君たちを嵌めようとしていると?」

橘「怪しい箇所がひとつでも見つかれば疑うのは当然だ」

橘「なぜ知った。なぜここまでの情報を手に入れられた」

橘「答えろ」
68 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/02(土) 23:13:18.75 ID:SEAxogu10

美城「……"喰種"とは言え恩人だから、できれば命だけは見逃してやりたかったのだがな」

美城「良いだろう、話そう」


美城「私がこの真実にたどり着いたのは、私自身の裏付けによって得られたものでもあるが……」

美城「そもそものきっかけは、とある"喰種"アイドルによるリークだった」

美城「内容は、『彼女』が独自に掴んだ346プロの違和感」

美城「そして、そこから構成された『彼女』自身の推論」


美城「制裁を恐れて証拠を掴めなかったため、裏付けを私に丸投げしたのだろうが」

美城「驚くことに、彼女の推理はほぼ当たっていた」

美城「あとは簡単だ。仮説さえ立てられれば、あとは証拠を集めるだけでいいのだから」

美城「奴等の武器は『気付かれないこと』。真実の欠片にさえ気付いてしまえば、容易に辿り着ける」


橘「……『彼女』の名前は?」

美城「…………」



美城「―――『佐久間まゆ』」



美城「佐久間曰く、彼女は君たちが346プロ職員から輿水幸子を保護したことを知ってリークを決意したようだ」

美城「"喰種"とは言え、大した先見の明だ。346プロの対応を予期し、私に集めた情報と推理を渡したのだからな」


橘「……」
69 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/02(土) 23:14:21.03 ID:SEAxogu10

橘「…分かりました。ひとまず、貴女が一人の"喰種"を見逃すなどと堂々と宣ったことについては、後回しにしましょう」

橘「それはそれとして、意味が分からない。なぜ"喰種"がそんなことをしたのですか?」

橘「自分の安全な居場所を壊すだけだと言うのに。気が狂ったのですか?」


美城「その理由までは聞けなかった」

美城「……ともあれ、私にとっては十分に信用できる情報だ」

美城「そちらでも情報の裏付けを取ると良い。あまり難しくはないだろう?」

橘「ええ。当然です」


橘「……最後に確認しますが、美城さんが"喰種"だと把握している346プロのアイドルは」

橘「リークした4人に加え、佐久間まゆの合計5人のみ」

橘「間違いはありませんか?」

美城「ああ。それ以上は本当に知らない」


橘「分かりました。ではこれで、美城さんへの聴取を終わります」

橘「これより美城さんにはCCGの保護下に入っていただきます」

美城「構わない。君たちの許可なく、私から346に連絡など取らないと誓おう」

橘「…ご協力、感謝いたします」


――――――――――――――――――――
70 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/02(土) 23:14:49.10 ID:SEAxogu10

――――――――――――――――――――


早苗「……ん……」

「お、目が覚めたか」

早苗「……ギンちゃん?」

市原「おう。体は平気か?」

早苗「なんとかね。…聞いたわよ。幸子ちゃんをあいつらから守ってくれたって」

早苗「ありがと」


市原「ハッ、別に構わねーよ。仕事だ仕事」

市原「こっちこそサンキューな。奴らが動く前に仁奈たちを連れてきてくれて、すげー安心した」

早苗「……もう。そんなに娘を心配するなら、ちゃんと会ってやればいいのに」

早苗「すぐ近くで皆と遊んでるわよ」


市原「…出来ねえよ。アタシは仁奈に会う資格なんかねえ」

市原「こんなクソでバカな母親よりアンタらの傍にいた方が……アイツにとってずっと良い」

市原「アタシに出来ることは、仁奈のために金を稼ぐことだけだ」


市原「…知ってんだろ? 仁奈の親父のこと」
71 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/02(土) 23:15:17.69 ID:SEAxogu10

早苗「…うん、知ってる」

早苗「仁奈ちゃんのお父さん……あなたの夫は、海外になんて行ってない」

早苗「治療費にお金がかかるから、あなたがずっと喰種を倒して稼がなきゃいけないって……」

市原「……そこまで知ってンなら、分かるだろ?」

市原「アタシは、仁奈を親父に合わせてやりてえ」

市原「アイツ見殺しにして仁奈のところにノコノコ行けっていうのかよ」

早苗「……あのねえ」


早苗「お金が必要なら、私達がいくらでも稼いであげるわよ……」

早苗「資格とか寝ぼけたこと言ってないで……母親らしく仁奈ちゃんと遊んであげなさいよ」

早苗「仁奈ちゃんはずっと、ママが大好き、ママに会いたいって、言ってるんだから……」

市原「……!!」


市原「……どっちにしろ、今は無理だ」スクッ

市原「まず346プロを追い詰めなきゃいけねえ」


市原「早苗サン。アンタはゆっくり寝てろ」バタン


――――――――――――――――――――
72 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/02(土) 23:16:33.75 ID:SEAxogu10

――――――――――――――――――――


ちひろ「……おや。プロデューサーさん、こんばんは」

ちひろ「ええ。凛ちゃんと未央ちゃんが、こっちに気付いちゃいまして」

ちひろ「釘は刺したのですが……きっとプロデューサーさんにはご迷惑をおかけすると思います」


ちひろ「……ああ、それともう一つ。あの二人について」

ちひろ「少し状況が怪しくなったので、ご報告したい事が」


ちひろ「神谷奈緒と北条加蓮の捕獲の際、一匹の人間アイドルに現場を目撃されました」

ちひろ「…ご存知でしたか。ええ、輿水幸子です」

ちひろ「規則に従って、幸子ちゃんを排除しようとしたのですが……」

ちひろ「運悪く、近辺を捜査していた白鳩に保護されてしまいました」

ちひろ「その後、交戦したときに一名、マスクが外れたらしく……」


ちひろ「万が一、あれに職員の顔を特定された場合……証言によって我々346プロが窮地に陥る危険があります」

ちひろ「もしそうなった時のため……例の職員を、その担当アイドルを含め切り捨てる準備を行ってください」

ちひろ「よろしくお願いします」


――――――――――――――――――――
73 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/02(土) 23:18:38.93 ID:SEAxogu10

――――――――――――――――――――


(――事実、輿水幸子さんが保護されることで)

(――その後の動きに触発された常務の行動――翌日の出来事だったため、この時は知る由も無かったのですが――を含め)

(――346プロダクションは崩壊の道を辿ることになりました)

(――ですが、それは職員の正体が露見した事ではなく)

(――もっと別の方向……私にとっては、予想もつかない場所であり―――――)



(――私にとって考えられる限り最悪の方向から、シンデレラの城は崩れてしまうのです)



――――――――――――――――――――
74 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/02(土) 23:19:25.92 ID:SEAxogu10

〜CCG本局 輿水幸子保護直後〜


ギン「輿水幸子、だよな。落ち着いたか?」

幸子「は、ははは、はいっ……! ぼ、ボクはもう平気です!」

ギン「んなガタガタ震えなくても殺しやしねーよ。もう検査で人間だって分かってんだぞ」

幸子「え……そ、そうなんですか?」

ギン「おう。…つか、本気で殺されると思ってたのかよ……」

幸子「し、仕方ないじゃないですか! ボクは実際殺されかけたんですからね!!?」

ギン「"喰種"にな」



ギン「……で。美樹サンも到着が遅くなるらしーし、今からアタシが簡単に質問する」

ギン「取り調べだ」

幸子「…あの。取り調べって普通、容疑者に使う言葉じゃ」

ギン「うるせーぞ意味がわかりゃいいんだよ」


ギン「…ともかく。幸子、お前を殺そうとした奴を追い詰めるために必要な質問だ。分かるな?」

幸子「わ、わかりました」

ギン「ん、オッケー。じゃあまず……お前を襲った奴の顔は見たか?」

幸子「…見ることには、見ました」

ギン「じゃあ、そいつの顔や声に見覚えは? どっかで会ったことあるか?」

幸子「……いいえ。あんまりにも特徴のない顔でしたから、会ったかどうかなんて……」


ギン「……ま、そうか。アタシもちらっと見たが、あれはモンタージュ作っても特定キツいぞ」

ギン「わりいな幸子。とりあえず取り調べは終わりだ、あっちで仁奈たちが待ってるから行ってこい」
75 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/02(土) 23:19:59.91 ID:SEAxogu10

幸子「えっ? もう終わりですか?」

ギン「つっても奴らの情報なんて持ってねーだろ? お前があんなのと関わりがあるとも思えねーし」

ギン「……あ、悪い待った」


幸子「? まだ何か?」

ギン「美樹サンに取り調べン時は絶対これ聞いとけってやつ忘れてたわ」

ギン「いつも美樹サンに任せっきりだったからな」

ギン「座れ幸子。もうちょい付き合え」

幸子「ええ……なんですかそのいい加減な指示は」

ギン「うっせ」


ギン「まあ、なんだ。一応聞きたい事があんだよ」

ギン「えーと……ちょっと待て。これだ」パラパラ


ギン「……『あなたの周りに、変わった子供はいませんか?』」


幸子「はい?」
76 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/02(土) 23:22:14.97 ID:SEAxogu10

幸子「なんですか、それ?」

ギン「お前の周りに"喰種"らしき奴がいないかって質問だよ」

幸子「いえ聞きたいのはそっちじゃなくて、なんで手帳を朗読して」

ギン「続けんぞ」


ギン「『いつも見すぼらしい恰好、学校に行ってる様子がない』」

ギン「『年齢の割に言葉をあまり知らない、食べ物の好き嫌いが異常に多い』」

ギン「あとは…『粗暴な面が目立つ子』とか。お前の周りにそんな奴いないか?」

幸子「拓海さん」

ギン「バカ野郎そいつは人間だってさっき言っただろ」

幸子「友紀さん」

ギン「今の証言そのままそっくりあいつらに教えてやろうか?」

幸子「すみませんでした」



幸子「いや……そんな子いませんよ。346プロの皆はちゃんと学校に行ってますし、優しくて良い子ばかりですし」

幸子「まあボクには敵いませんけどね!!」

ギン「はいはいカワイイカワイイ」

幸子「ちょっと!!」
77 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/02(土) 23:22:40.49 ID:SEAxogu10

幸子「…で、なんですそれ? そんなので"喰種"かどうかなんて分かるんですか?」

ギン「そりゃ、"喰種"は人間と違ってまともな教育受けてねーからな」

ギン「もちろん学校に行ってやがる例外もあるが、普通なら正体がバレるからそんなとこ行かねえ」

ギン「あと、まともな金もねーしな」

ギン「だから、"喰種"は学校に行かなかった結果、文字もろくに読めねーのがほとんどなんだよ」

幸子「へー……」

幸子「……」










幸子「……文字が、読めない?」
78 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/02(土) 23:24:05.36 ID:SEAxogu10

ギン「!」

ギン「……なんか知ってんのか。思い当たるやつがいるな?」

ギン「お前の知り合いに字が読めない奴がいるんだな?」

幸子「!! い、いえ、そんなことは……!!」

ギン「嘘をつくなよ。"喰種"を庇うのは重罪だぞ」

幸子「庇ってませんって! だ、大体……」

幸子「ボクの周りは皆優しくて良い子ばっかりって言ったじゃないですか!!」

幸子「あの人が"喰種"なわけない!!」

幸子「大体、あの人は、幼いころ病気だったから、ろくに勉強できなかったって……!!」

幸子「紗枝さんがそう言ってたんです!!」

ギン「……」


ギン「……別に、そいつを疑ってるわけじゃねえよ」

ギン「逆に考えろ、幸子。お前が今考えた奴を調べて、それで無実の人間だったら」

ギン「疑惑は晴れる。拓海たちと同じように、そいつは絶対人間だって安心できる」


ギン「だから話してみろ。本当に優しくて良い子なら、そいつは人間のはずだろ」


幸子「ッ……!!」
79 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/02(土) 23:24:33.06 ID:SEAxogu10

幸子「……本当に、無実だって証明してくれるんですよね?」

ギン「ああ」

幸子「み、見たことがないから疑えるんです! 実際あの人を見たら、そんなわけないって思うんですから!!」

ギン「分かったよ。お前を信じる」

幸子「きっ……聞きましたからね!? その言葉、信じますよ……!?」


幸子「……」



幸子「……ち……」




80 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/02(土) 23:25:01.25 ID:SEAxogu10










幸子「…………ちえり、さん」










幸子「……………………緒方、智絵里さん」
81 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/02(土) 23:25:41.82 ID:SEAxogu10

今日はここまで。

またしばらく投稿が空くと思います。
82 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/02(土) 23:27:29.26 ID:BxnJyu0T0
悲しいなぁ

ふみふみもちえりんも無惨やなぁ
83 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/03(日) 01:01:04.62 ID:USk6Kyrb0
前にもちらっと書きましたが、市原ギン一等はシラズをモデルにして描いてます。
シラギンと幸子の絡みはちょっと見てみたい

>>82
実に無惨ですね
http://blog-imgs-74.fc2.com/c/g/g/cggekijo/518.jpg
84 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/03(日) 08:19:22.37 ID:SJF4bC/u0
上田の鈴帆しゃんなら、うろんな母でも着こなせそう
85 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/03(日) 10:44:26.10 ID:USk6Kyrb0

とりあえずデレステ2周年迎える前に幸子の書きたかったシーンまでいけました。


「笑顔の橋」宣伝ライブまでだいたい一週間。

最終隠匿プロトコル発動までだいたい一週間。

346プロ崩壊までだいたい一週間。

時系列とか上手く書けてませんが、「笑顔の橋」開催が翌年で宣伝ライブはデレアニのクリスマスライブと同日って考えてます。


内容的にここから最後まで一気に突き進めると思うけど書くこと多くて長引くかもしんない。

出来れば駆け抜けたい。可能なら今月中に外伝完結させたい。流石にもう分割はしない。たぶん。


改めて書きたいことまとめたくなったので、また数日ほど投稿開けます。早ければ今週末には復活します。休筆長引いたらゴメンね。
86 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/09/04(月) 15:55:08.48 ID:B1sG/OWO0
乙です
346プロの諸行を考えたら常務の内部告発は当然と言えるな
正直に言ってちひろを始めとして3466プロの裏の部分は胸糞悪過ぎる
続きを楽しみにしてます
87 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/04(月) 20:48:13.11 ID:mw1D6iJK0
あー凛の後悔云々ってそういう…裏切られて情報売られるかなと思いきや飼い殺しで上を行きやがった…
喰種カミングアウトされた時の茜のリアクション、どんな心境だったんだろ…
88 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/04(月) 21:27:22.41 ID:zC+cUJk9o
デレマスキャラだからキャッスル許すまじってなっちゃうとこあるけどちっひの言うことも間違ってないんだよなぁ…
本編でもそうだけど一方的に100%喰種側が悪だって言い切れない感じが…
武内Pは今回の件にはまだ関わってないのかな?
89 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/04(月) 22:52:28.95 ID:ZdTkOoWbO
そろそろ武内さんの本気が見られるんですね
90 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/09/05(火) 01:45:23.48 ID:hESSfC040
346プロがやっていることは誘拐・殺人・人身売買だからなぁ
人間だろうと喰種だろうと紛れもない凶悪犯罪のオンパレード
生きるために人間を食べるだけなら仕方無いけどこれは明らかにアウトでしょ
現状346プロの闇の部分には一切の同情の余地が無い
カモフラージュと「財産」のために用意された人間のアイドルはもちろんのこと、喰種のアイドル達もあまりに憐れで見ていられない

91 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/05(火) 22:42:51.63 ID:ASgX/GtX0
キャッスルのこれまで活動はともかく、流石に担当アイドルが痛めつけられるのを黙って了承はしないと思うから>>41以降のちひろの独断だと思う…けど茜の一件は間違いなく
報告してるだろうから実際関わったようなもんだしなあ…
後見返してて気付いたけど、>>44みたいな作者の語りで先の展開示唆するような発言は、人によってはセルフネタバレされてるようで萎えるかもしれんから気をつけた方がいいかもしれんな
92 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/07(木) 21:14:01.38 ID:i7c+7Ubm0

〜1年前〜


「紗枝。すまん、お前に謝らなきゃいけない事がある」

紗枝「…はい? いきなりどないしはったん、そない頭さげて」

「俺は……紗枝のほかにも、プロデュースしたい子が出来たんだ」

「そして、その子は人間だから……俺は『準1級プロデューサー』の申請をする」

「だが、準1級Pは人間のプロデュースと引き換えに、様々なリスクを負う」

「…紗枝。お前にも危険が付きまとう」

「どうか、俺が人間を……輿水幸子と、姫川友紀をプロデュースすることを、許してくれ」


紗枝「……へー」



紗枝「えらく度胸のある御方やわあ。そないな風に堂々と浮気する人、初めてやなあ」

「!?」
93 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/07(木) 21:14:31.41 ID:i7c+7Ubm0

「うっ、浮っ……!? ち、違うぞ紗枝! 浮気とか、そういうことじゃ!!」

紗枝「いややわあ、プロデューサーはん。ほんの冗談どす」

紗枝「プロデューサーはんは、うちがついて行くって心に決めたお人」

紗枝「プロデューサーはんが決めたことやったら、反対する理由なんかあらへん」

紗枝「その…幸子はんと、友紀はん? が、プロデューサーはんの惚れた方なんやったら、うちもお傍で見守りますえ」

「紗枝……」

紗枝「でも……せやなあ」

紗枝「うちをずっと支える言うてくれたお人が、他の子によそ見するんをただで許すんは……なんや惜しいなあ」

紗枝「……あ!」


紗枝「そうや、プロデューサーはん。代わりに……」



紗枝「プロデューサーはんが隠してること、うちに全部教える言うんはどうどす?」
94 :僕は大阪人です。だから京都弁がおかしくても許して ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/07(木) 21:15:36.76 ID:i7c+7Ubm0

「…は? 隠してる、って……」

紗枝「なんやプロデューサーはん、会社のことや思うしうちのためやって分かってたから今まで黙っとってんけど」

紗枝「うちに隠れて悪いことしとるなー思うてて」

「…!!」

紗枝「…うちは、プロデューサーはんを見損なったりしまへん」

紗枝「うちのために悪いことして、それをうちに隠して、苦しまんといて」

紗枝「プロデューサーはんなら、お話するのに、周りに聞いてる人だれもおらん所知ってはるやろ?」

紗枝「プロデューサーはん。プロデューサーはんの抱えてること、うちにも抱えさせてください」

紗枝「……な?」

「紗枝……」


「……分かった。全部話すよ」

「だが……紗枝、ごめん。お前を苦しめることになる」


――――――――――――――――――――
95 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/07(木) 21:16:39.37 ID:i7c+7Ubm0

――――――――――――――――――――


紗枝「……そういうこと、やったんやなあ」

紗枝「『キャッスル』、『財産』、『人間アイドルを雇う理由』……」

紗枝「えらいこと、聞いてもうたなあ」

「…すまん」


紗枝「うちは大丈夫…どす。今聞いたことは、ちゃーんと誰にも言わんで内に秘めときます」

紗枝「うちが会う人間の子が、財産にされるって分かっても……うちはちゃんと、その上を歩きます」

紗枝「やることも、目指すことも、変わりまへん」

「……」


紗枝「……それで、プロデューサーはんが準1級になる言うことは」

「ああ。紗枝も知っている通り、プロデューサーは一人の例外を除いて全員が喰種だ」


「そのうち戦闘能力の高い喰種は、喰種アイドルを受け持つ1級P」

「弱い喰種は、人間アイドルを受け持つ2級Pに割り振られる」

「そして1級Pは、申請を行い準1級Pとなることで喰種と人間アイドル両方を担当できるようになり」


紗枝「準1級のプロデューサーはんは、担当の人間アイドル……幸子はんと、友紀はんを『財産』の候補から外してもらえる」

紗枝「…その代わりに、担当する喰種アイドルは人間に近付く分、正体を見破られる『りすく』が上がる……」

紗枝「せやから、うちにあない必死になって頭下げたんや」


紗枝「ほんまに、惚れた人には真っすぐなお方やなあ」
96 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/07(木) 21:17:24.43 ID:i7c+7Ubm0

紗枝「…ふう」

紗枝「プロデューサーはん。幸子はんと、友紀はんに会うときを楽しみにしてます」

紗枝「うち以外に、プロデューサーはんが惚れた子がどないな子なんか。今から楽しみやわあ」

「……」

紗枝「…? どないしたん、プロデューサーはん」

紗枝「もう、隠してることはない思うてたんやけど…?」

「……ああ。隠してることは、もうない」

「だが、話せることはある」

紗枝「……?」



「紗枝。今から話すことは、出来るだけ一言一句間違えずに覚えて欲しい」

「もし紗枝が白鳩に捕まって、346プロについて尋問された時は……」

「この情報の価値が、紗枝をあいつらから助けてくれる筈だ」


「……もし、この情報が必要になった時は。俺がどれだけ時間をかけてでも紗枝を助けに行く」

「俺を信じて、戦い続けてくれ」


――――――――――――――――――――
97 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/07(木) 21:18:54.47 ID:i7c+7Ubm0

〜美城常務による内部告発の2日後・CCG本局〜


〜特等捜査官会議〜


―――和修吉時/喰種対策局 局長

―――安浦清子/特等捜査官

―――御坂矜持/コクリア監獄長

―――田中丸望元/特等捜査官

―――橘実(ミノル)/特等捜査官

―――丸手斎/対策U課 特等捜査官

―――宇井郡/準特等捜査官

―――篠原幸紀/特等捜査官

―――法寺功介/準特等捜査官

―――黒磐巌/特等捜査官


―――橘美樹/準特等捜査官



望元「ンン…まさか特等会議に3人もの準特等が参加するとは」

清子「能力を見込まれてのことでしょう。何か問題でも?」

吉時「何も問題はないよ田中丸特等。宇井準特等も法寺準特等も、期待の逸材だし……」

望元「いやいや、反対などしていませんぞ。橘レディが残した功績は、ここを参加する名誉にも匹敵するさ」

黒磐「うむ」

美樹「…ありがとうございます」

丸手「呼ばなくたってどーせあの非常識女の席が空くだけだろ」

篠原「まあまあマル…舞ちゃんもケガあっての引退でもあるんだし、ちゃんと娘も育てなきゃいけないんだから」

宇井「でも日高特等……たまに来ますよね」

法寺「訓練所に突然現れては捜査官達を叩きのめしていく様は…すっかり皆のトラウマになっているようですね」

実「彼女でさえ仕留められなかった『リトルバード』……奴は死んだのか、未だ生きているのかすらわからんな」
98 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/07(木) 21:20:35.59 ID:i7c+7Ubm0

吉時「…まあ、関係のない話はここまでにしようか」

吉時「橘準特等には、輿水幸子さんの証言から『キャッスル』の正体を突き止めた経緯を事細かに説明してもらいたい」

美樹「承知しました」ガタ


美樹「判明のきっかけは輿水さんの証言より」

美樹「『年齢にしては漢字の能力が低い』様子を見せた緒方智絵里」

美樹「また、緒方智絵里の様子を『幼いころ病気だった』とフォローした小早川紗枝」

美樹「以上、346プロ所属のアイドル2人に喰種容疑が掛かったことです」


美樹「『キャッスル』につながる可能性があるとして2人の戸籍や提出されたRc診断書を精査したところ」

美樹「両方、巧妙に作成されたフェイクであることが判明しました」



美樹「小早川紗枝に関しては、現時点で捕獲済みであり」

美樹「検査の結果、喰種だと判明」

美樹「有益な情報を持っていると判断し、コクリアに収監しました」

美樹「小早川紗枝の尋問については御坂監獄長に一任しています」
99 :最初はsideMの人達を捜査官にしようとしましたが↓ ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/07(木) 21:23:32.70 ID:i7c+7Ubm0

篠原「紗枝ちゃんがキャッスルの正体をバラしたってことかい?」

丸手「篠原。喰種を『ちゃん』付けすんな」

篠原「…ごめん。うちのチビ達がファンだったんだよ。正直ショックだ…」

黒磐「気を落とすな篠原。美里も安部菜々のファンだった」

実「……」

望元「死して尚、捜査官の純粋な心にさえ爪痕を残す喰種アイドル……厄介ですな」

法寺「橘準特等。説明の続きをお願いします」


美樹「…失礼しました。篠原特等の心境を考慮し、以降小早川紗枝をS、緒方智絵里をCと言い換えます」

美樹「確かにSは346プロの情報を所持していましたが、キャッスルが346プロだと突き止めた結果は我々の捜査によるものでありSの捕獲以前の話です」

美樹「先ほども述べた通り、SおよびCの戸籍や診断書は巧妙に作成されたフェイクでした」


美樹「しかし京都の地主である小早川家の娘であるSはともかく…」

美樹「Cの家族関係を調査したところ、ホームページで紹介されていた家族構成とは異なり、両親との関わりが一切見られませんでした」

美樹「恐らく親すらいない野良喰種だったCですが、その程度の喰種が用意できるような精度のフェイクではなかったのです」


美樹「Cが346プロに潜り込む際、何者かの手引きがあったと考え」

美樹「346プロ内部にまだ喰種が混ざっていると見て、捜査を続けていましたが―――」


清子「現実は混ざっているどころではなく、喰種そのものの組織だったと」

美樹「安浦特等の仰る通りです」
100 :あの子らをちょっと知って「なんか違うな」と思ったので原作のオッサン連中に出てきてもらいました↓ ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/07(木) 21:24:44.06 ID:i7c+7Ubm0

宇井「その後に、346プロダクションの常務が内部告発した……んでしたっけ」

美樹「ええ。それまでの捜査の結果では、キャッスルの第一容疑者として346プロが挙がる程度に留まっていましたが」

美樹「美城常務の告発とその後の裏付けにより、346プロの職員がキャッスルとして少女誘拐を行っていると正式に確定しました」

美樹「また御坂監獄長のご報告によると、Sの尋問によって得られた情報から……」


御坂「そこからは私が直接話そう。こは…Sは美城さん以上に346プロの運営等について詳しかった」

御坂「同じく346プロに所属するアイドルのうち、誰が喰種かまでは話そうとしないが」

御坂「それ以外…346プロが利用している喰種組織や、あとは346プロと類似した…」

御坂「つまり、346と同じように喰種が運営しているアイドル事務所の情報がぽんぽん出て来る」

御坂「今後も有益な情報源になると判断し、Sの廃棄は当分見送りだな」


御坂「『誰に仕込まれたのか、交渉が上手くて下手に拷問も出来ない』と灰崎が嘆いていた」


法寺「…346プロに所属する喰種アイドルは、全員事情を知っているということですか?」

御坂「いや、それは違うだろう。S本人も


『アイドルやったら、多分知っとるのはうちくらいちゃう?』


と主張していた」


美樹「それに、私が所有権を主張し私の手で尋問している鷺沢文香…」

美樹「『H』は、キャッスルについていかなる情報も持ち合わせていませんでした」

美樹「Sが例外と言うだけで、本来346プロに所属する喰種アイドルはキャッスルについて一切知らされていないと見るべきでしょう」
101 :各捜査官の階級は無印12巻あたりで亜門、真戸親子、滝沢、有馬以外の捜査官は大体出す予定 ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/07(木) 21:27:16.00 ID:i7c+7Ubm0

黒磐「そういえば、おが……Cの話がまだだが、そっちはどうしたんだ」

美樹「止むを得ない事情があり、放置しています」

黒磐「…止むを得ない?」


丸手「こっからは俺が言う。346プロが人間アイドル雇ってる目的は聞いてるんスよね?」

清子「…カモフラージュと、周辺組織への『餌』としての提供ね」

望元「聞けば聞くほどひどい。もはや人間を道具としか思っていない」

丸手「実際そうっスよ望元さん。…んで、346プロの人間の使い方はもう一つある」

丸手「万が一、捜査が入った時に使う保険……言っちまえば、人質だ」


丸手「あんたらも聞いてんだろ。今朝、こいつがCCG本局の正門前に放り投げられてた」ドサ

篠原「ああ。確か……」

丸手「SおよびCの調査を任せた局員と、その風景の写真だ。こっちの動きを完全に把握してやがる」

丸手「…連中、事務所のセキュリティはほぼザルだっつーのにアイドルの事となるとガードがクソみたいにかてえ」

丸手「CやSでさえこっちが最初から疑ってたから、ようやくそれっぽい情報を掴めたレベル」

丸手「どっちか分かんねえ状態で捜査を始めたら、何日かかるか分かったもんじゃねえ」


丸手「それだけならまだいい」

丸手「あのクソ野郎共……資料だけじゃなくとんでもねえ置き土産していきやがった」





丸手「『水本ゆかり』、『椎名法子』」


丸手「橘ンとこで保護した中野有香のお友達で、今は人間だって判明してるが―――――」
102 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/07(木) 21:28:55.60 ID:i7c+7Ubm0










丸手「―――――資料と一緒に半殺しで転がされてやがった」







丸手「特に水本ゆかりは両手の指全部ぶった切られてて」

丸手「椎名法子は意識が戻る見込みすらねえらしい……クソが」
103 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/07(木) 21:30:38.86 ID:i7c+7Ubm0

今日はここまで。

構想が大体ととのった!ので今日から書き始めます。


まるすき
104 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/07(木) 21:33:26.56 ID:i7c+7Ubm0
>>91
失礼しました。以降気を付けます
105 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/07(木) 21:38:58.47 ID:Zcz0GDmG0
>>望元「聞けば聞くほどひどい。もはや人間を道具としか思っていない」

クインケの材料ってなんだっけ?
106 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/08(金) 07:33:25.95 ID:3dLC7Jct0
>>105
望元「マンキーさ!」

書き忘れたけど什造も翔太とポジション被るので出てこないと思います。
什造好きだけどね
107 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/09/08(金) 14:51:47.05 ID:4sn8hNo30
乙です

黒井→真戸、冬馬→亜門、翔太→什造
なら
北斗→滝澤、玲音→有馬
かな?
あの北斗が滝澤ポジというのは想像がつかんが
108 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/08(金) 19:35:04.83 ID:ltTXtEIT0
あれ、アイマス世界に喰種がいたらって話だと思ってたら普通に原作のキャラも出てきて世界観ややこしくなったぞ…
一応今回初出だよな?これ以前に原作キャラ出てないよな?
109 : ◆AyvLkOoV8s [sage]:2017/09/08(金) 20:46:18.71 ID:3dLC7Jct0

今日はちょっと更新できなさそうです。バトルシップ見たいので


>>108
…外伝の方に注意書き入れてなかったですね。本編第二章のラストあたりで初登場してもらうつもりだったのですが、
予定が狂って外伝でいきなりの登場になってしまいました。ややこしくなっちゃったなら申し訳ない。

CCG側の原作キャラはアイマスキャラと被るところを除いてだいたい存在しており、
アオギリ、ピエロ、あんていく、嘉納等喰種側の主要キャラは個人的に好きな脇キャラ以外ほとんど存在しない世界観設定で書いてます。
捜査官側をアイマスキャラだけで回すのはちょっと無理があったので篠原さん達に出演してもらいました。

ただ話のメインはあくまでアイドルや346,765プロの話なので、旧多とか和修の真実とかにはあんま触れない方向で設定ちょっと弄って話考えてます。

これ以前は本編でカズオやマダム、小倉を出したくらいですね。


>>107
有馬ポジは日高舞ですね。
玲音は出すかどうか考え中、北斗はうまいポジションが思いつかなかったので本編の夢子みたくオリジナルの立ち位置です。


白滝ポジのキャスティングはちょっと自信あり。でも出番はずっと先。


ネタバレにはならないように書くならこんな感じでしょうか
110 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/09(土) 16:47:03.11 ID:I/+amali0

黒磐「SやCを調査した仕返しか」

吉時「その二人を攻撃したのは…橘準特等のところで保護された中野有香さんへの当てつけってことかな」

宇井「なんですかそれ……!! そんな理由で!?」

法寺「落ち着いてください宇井くん」


法寺「…しかし、これでは捜査も確保もやりようがありませんね。強制介入を行ってもアイドルの何人かは確実に巻き添えを喰らいます」

篠原「問題は何より『所属アイドルが人間か喰種か分かってない』うえに『調べさせてくれない』、か」

清子「…まさか、人質を助けられないからって346プロを見逃す気じゃないでしょうね?」


実「方法がないわけでもないだろう。時間効率は悪くなるが、奴等に見つからずにアイドルの情報を探ることも不可能じゃないはずだ」

実「…一人二人の犠牲を前提とするなら、この事実を公表して346プロの信用を失わせることもできる」

御坂「奴らも保護したアイドルと収監したアイドルの様子までは監視しようが無い。そこから情報を得ることも可能だな」


丸手「そうっすね。時間をかければかけるほど奴等は利を失っていく」

丸手「……元々、長期戦に持ち込む気も無えみたいですが」パサッ
111 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/09(土) 16:52:36.69 ID:I/+amali0

丸手「置き去りにされた資料は調査風景だけじゃなかった」

丸手「ご親切にでかでかとタイトルまで書いてやがる」


法寺「…『346プロアイドル避難計画書およびCCGに許可する捜査一覧』、ですか?」ペラ

清子「内容を要約すると……


『346プロダクション全職員のプロフィール。また、それらが全て"喰種"であることの証明』

『人間、喰種問わず所属する全アイドルの「野外ロケ」と称した避難計画、および避難完了予定日』

『避難完了までにCCGに対して許可する行動一覧……職員プロフィールの精査や346プロが支援を受けている周辺組織に対しての捜査など、所属アイドルに関係しない行動。そして速水奏、塩見周子、宮本フレデリカ、佐久間まゆ、以上4名の指名手配と捜査』

『「避難完了日には全職員を346プロダクション本社に待機させる」という旨の誓約書』


……そして、二言だけの手書きメモ。


『姫を置いて城を去る家臣などいない』

『1週間だけ時間をくれ 罪も罰も我々が負う』」



宇井「人間も喰種も、アイドルは全員遠くにやって職員だけ残る?」

篠原「マル。これってつまり、346プロ『自体』は……」


丸手「完全に掌の上で転がされてて気に入らねえが、そう言うことだ」

丸手「アイドルを盾に活動を続ける気なんざさらさらねえ。…346プロは―――――」



丸手「―――大事なお姫様だけ逃がして自壊する気だ」



丸手「『お姫様』に人間は入ってねえみたいだがな」


――――――――――――――――――――
112 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/09(土) 16:55:11.66 ID:I/+amali0

〜小早川紗枝 確保直後 346プロダクション深部〜


ちひろ「…KBYDPさん。先ほどの行為を深く謝罪します」

ちひろ「あなたの拘束には、もはや何の意味もありませんでした」

ちひろ「もう少し早く、美城常務が内部告発に足る情報を掴んでいたと把握できていれば……」


KBYDP「…過ぎたことに怒っても意味なんかありませんよ」

KBYDP「それに俺は…準1級Pの申請をした時すでに、幸子や友紀を通していつか紗枝が捕まるかもしれないってことも」

KBYDP「そのとき俺はあんたらに押さえつけられて、紗枝を助けにいけないだろうってことも想定してました」

KBYDP「だから、俺は殺させないために346プロの全部を紗枝に教えました。だからおあいこです」


KBYDP「失礼します。今から俺は、紗枝の情報が尽きないうちにコクリアから助け出さなきゃいけないので」

KBYDP「紗枝は仲間を売る子じゃないし今は売る必要も無いと思いますけど、他の子についてはまあ祈っててください。では」


ちひろ「ええ、紗枝ちゃんを無事に助け出してください。応援しています」
113 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/09(土) 16:56:05.99 ID:I/+amali0

ちひろ「…もう。幸子ちゃんや友紀ちゃんが保護されてるのを良いことにペラペラと好き勝手言っちゃって」


ちひろ「それに、私の知らないところでアイドルが全滅しかねない情報をあっさり話しちゃうんですから」

ちひろ「これだから、プロデューサーというものは侮れないんですよ」


ちひろ「本当に、担当アイドルの笑顔のためなら」

ちひろ「世界中の誰を犠牲にしたってかまわない人たちばかり……」


ちひろ「ですが許します」

ちひろ「あっさりとした裏切りには困りましたが、その意志には敬意を払いましょう」

ちひろ「我々に歯向かえど、その心は同じなのですから」
114 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/09(土) 16:58:39.59 ID:I/+amali0

ちひろ「…さあ、1級および準1級プロデューサーの皆さん。お話はすでに聞いていますね?」

ちひろ「当然のことですが、あなた達が働くのはは幹部のためでも346プロのためでもない」


「ええ」


JKTP「すべてはアイドルのため」

肇P「自分が見つけたシンデレラのためなら、自分の命など惜しくもない」


早耶P「すべてはアイドルの笑顔のため」
         ユメ
日菜子P「お姫様に幻を見せてあげられるなら、代わりに命を喰らい屍を背負うことも厭わない」


輝子P「すべてはアイドルの輝きのため」

美優P「全てを捧げた少女がお城で輝けるなら、喜んで血の河を渡り骨の階段を積み立てる」

            タベル     タベル     タベル     タベル
留美P「喰べるしかない、奪うしかない、守るしかない、失うしかない、間違うしかない」

NWP「ならば、運命を呪い涙を流す少女に代わって我々が喰べましょう」

ガルパP「灰に塗れても運命に抗い精一杯生きようとするシンデレラを、血に濡れた俺達の手で最期まで守り続けよう」


ブルナポP「そして、命を奪った報いを受ける時が来たら」

フリスクP「愛した子達、無実の子達に降りかかる断罪の刃を、すべて我々が飲み込み静かに失せましょう」

藍子P「お城を失ったシンデレラが、何の罪も知らず何の罰も背負わされずまた歩き出せるように」



ちひろ「素晴らしい心がけです!!」

ちひろ「愛する担当アイドルのためなら、何だって出来てしまう」

ちひろ「ここのプロデューサーは全て、そんな気狂い喰種の集まりだと私は知っています」


ちひろ「微力ですが、私も皆さんが見つけたシンデレラのため」


ちひろ「この手を血に染め、精一杯の策略をめぐらせましょう」





ちひろ「……とりあえず、我々を探る白鳩にご自分の立場を分からせるため」

ちひろ「そうですね。保護された有香ちゃんに因んで、ゆかりちゃんと法子ちゃんでも攫って痛めつけますか」

ちひろ「ゆかりちゃんはフルートを嗜むそうですし、演出のために指でももいでしまいましょうか」


ちひろ「では……」
115 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/09(土) 17:01:20.48 ID:I/+amali0





ちひろ「―――――『最終隠匿プロトコル』の準備をお願いします」





――――――――――――――――――――
116 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/09(土) 17:01:57.80 ID:I/+amali0

今日はここまで。

武内Pはたぶん次出ます
117 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/09(土) 21:55:23.13 ID:g+AolDgQ0
あんていくの時みたいに暴れ倒すのか
月山財閥本家みたく紳士に待ち受けているのか

まぁ高垣さんが戦うみたいだから悲劇もしょうがないね
118 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/09/09(土) 22:55:32.32 ID:HIABIPCM0
それにしてもちひろの胸糞悪さはとんでもないな
メロウイエローへの仕打ちは先の奈緒加蓮に対する仕打ちすら可愛く見えるレベル
ちひろとプロデューサー達には考えられる限りの最も惨めな最期を希望します

>>109
有馬ポジにしては舞さん年食い過ぎじゃね?と思って調べたらまさかの29歳で驚愕
可能であれば玲音も出して欲しいです
人間であれ喰種であれ最強クラスのキャラとして
119 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/09/10(日) 01:12:32.38 ID:VuaVRsUg0
乙です

質問です
ゆかりと法子に残虐行為が働かれることになってメロウイエローPはどうしたのでしょうか?
所詮は人間だからどうなろうと知ったことではないと思って反対もしなかったのか
あるいは人間しか担当出来ない2級P故に千川の決定には逆らえなかったのか
口封じに殺された茜や報酬として差し出さなければならなかった奈緒&加蓮と違ってゆかりと法子は必ずしも必要でない犠牲なので気になります

片桐は「有香の人生を壊してしまった」と言っていたけど、
有香は自分のせいでゆかりと法子が酷い目に遭わされたという自責の念から廃人のようになり果ててしまうのか
あるいは喰種捜査官になって喰種ならば誰彼構わず手段を選ばず殺し尽くすような復讐鬼と化してしまうのか
恐らくどちらかでしょうね
120 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/10(日) 10:28:40.59 ID:nATks/WC0
>>119
その辺は後で判明します >メロイエ担当P
121 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/10(日) 10:29:08.24 ID:nATks/WC0

〜凛・未央による346プロ潜入の翌日 渋谷家〜


渋谷父「…凛の様子は?」

渋谷母「今日は家にいる、って」

渋谷母「仕事は入ってないから心配しないでって言ってたけど……」

渋谷父「…そうか」


渋谷父(……夜遅くにやっと帰って来たと思ったら、あの落ち込みようだ)

渋谷父(何があった、凛?)


渋谷父「……話を聞くのは後にしよう。何があったのかは分からないが、凛にはゆっくりと休んでもらって―――」


「……あの。渋谷さんのお父様とお母様ですね」


渋谷父母「「!!」」


渋谷母「あなたは……!」


――――――――――――――――――――
122 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/10(日) 10:29:37.32 ID:nATks/WC0

〜凛の部屋〜


凛「……」ボフ

ハナコ「キューン……」

凛「……ただいま、ハナコ」ナデ


凛「私は大丈夫だよ。心配しないで……」
123 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/10(日) 10:30:05.57 ID:nATks/WC0

凛「……」


凛(――ちひろさんは)


凛(――あの後、私と未央に特に攻撃することもなく)

凛(――普通に出口まで案内した)


凛(――未央は、ちひろさんに何をされたか話してくれなかった)

凛(――お腹に穴をあけられたことだけは知ってるし、無理に聞くことでもないけど)


未央『……しぶりん。ゴメン、今日はひとりで帰らせて』


凛(――ただ傷つけられただけじゃない筈だってことは、何となく分かったんだ)

凛(――346プロの真実を聞かされた私とも、また違うことを考えてた……)

凛(――そんな風に見えた)


凛(――家に帰って、お父さんとお母さんに怒られかけて)

凛(――でも、二人ともすぐに私が変だって思ったみたいで)

凛(――すぐに何も言わなくなって)


凛(――『ご飯』だけ置いて、部屋で一人にしてくれた)



凛(――お腹がすいていたことに気が付いた)
124 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/10(日) 10:30:39.91 ID:nATks/WC0

凛(――346プロを出てから、家に帰るまで)

凛(――どこか、ふわふわした気分だった)

凛(――まるで、悪い夢を見ていたかのような)


凛(――でも、お腹がすいて)

凛(――お母さんが出してくれた『ご飯』をかじった瞬間に)



凛(――それは幼いころからずっと食べていた人肉の味だと気付いて、私は現実に引き戻された)



凛(――私は"喰種"だ)

凛(――今まで何を勘違いしてたんだろう)

凛(――346プロに入ったからって、人間みたいになれるわけがなかった)

凛(――人間みたいに、何も考えずがむしゃらに走って行けるのがおかしいことに、なんで気付かなかったんだろう)


凛(――考えてみれば、私達を隠すために)

凛(――何も悪い事をしてないなんて、そんなわけない)


凛(――分かってる)

凛(――本当に悪いのは、346プロだけじゃない)

凛(――ずっと346プロに居座り続けた、私もなんだ)


凛(――知らなかっただけだ)

凛(――私達が何も知らなかっただけで)

凛(――奈緒や、加蓮みたいに)

凛(――私や未央が悩んでいる間、ずっと人間の誰かが犠牲になっていたんだ)


凛(――私は、結局化け物なんだ)
125 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/10(日) 10:31:12.32 ID:nATks/WC0

凛(――それに気付いてからは)

凛(――まるで変えようのない事実から逃げるように)

凛(――346プロに入ってから今までのことを思い出してた)


凛(――『踏み込めば、今までとは別の世界が広がっています』)

凛(――その言葉を聞いて、"喰種"でも何かに夢中になれるのかなって思って)

凛(――アイドルになった)


凛(――デビューライブの時、卯月や未央と一緒に"喰種"が人前に立つ不安にぶつかった時)

凛(――プロデューサーが迎えに来てくれた)

凛(――プロデューサーの本音を初めて聞いた)


凛(――サマフェスの時は、すごく楽しかった)

凛(――山ほどのファンレターを貰った)

凛(――どこまでも走って行けるって、確信した)

凛(――裏で、女の子がひどい目にあってることなんか、考えもしなかった)


凛(――あの時も、あの時も、あの時も)


凛(――何も知らなかっただけで、私達のために)

凛(――罪もない人たちが、たくさん死んでたんだ)
126 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/10(日) 10:31:42.59 ID:nATks/WC0

凛(――プロデューサーに会いたい)

凛(――でも、会うのが怖い)

凛(――問い詰めてやりたい)

凛(――何も聞きたくない)


凛(――私に、世界が広がるだなんて言っておいて)

凛(――プロデューサーは、私達に真実を隠してたの?)

凛(――プロデューサーも、知ってて黙ってたの?)


凛(――プロデューサーも)





凛(――私達のために、人をたくさん殺したの?)







「……渋谷さん」
127 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/10(日) 10:32:13.09 ID:nATks/WC0

凛「!!」


「…ご両親に許可をいただきました」

「部屋に行っていいから、娘に会ってあげなさいと……」



凛「……あ……」



凛「プロ、デューサー」










武内P「……入っても、よろしいですか」
128 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/10(日) 10:33:46.63 ID:nATks/WC0

――――――――――――――――――――


凛「……どうぞ」

P「ありがとう、ございます」


P「…本日、渋谷さんのお宅に訪問したのは」

P「重要な連絡を、渋谷さんに伝えたかったからです」


P「346プロダクションの閉鎖と、アイドルの皆さんの解雇が決定しました」



凛「……そっか。…バレたの?」

P「はい。美城常務が、我々の知らぬ間に情報を手に入れ……内部告発したと聞いています」

凛「…これからどうするの」

P「346プロは、閉鎖宣言を行うわけではありません」

P「我々は1週間のうちに、表向きは野外ロケと称して」

P「人間・喰種を問わず、少しずつ郊外まで移動していただき」

P「CCGがアイドルを区別できていないうちに身を隠していただくことになっています」

P「シンデレラプロジェクトの皆さんにも、最後の仕事が終わり次第」

P「各自、脱出していただく事を説明しています」


P「渋谷さんには、シンデレラプロジェクトの皆さんと共に東京から脱出するか」

P「ご家族と一緒に東京を去るか、選ぶことが出来ます」

凛「……うん、分かった」

凛「多分、父さんと母さんと一緒に逃げると思う」

凛「…皆には、顔を合わせられないと思うから」


P「……分かりました」
129 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/10(日) 10:34:38.04 ID:nATks/WC0

凛「……連絡はそれだけ?」

P「……はい」

凛「……そっか」

P「……」

凛「……」


P「……」



P「……驚かれないのですね。346プロが無くなると聞いても」

凛「うん」

凛「そうなるだろうな、って思ったから」


P「……千川さんから、お話は聞いています」

凛「……うん」


P「……渋谷さんの御友人を、本田さんの御友人を奪いました」

P「本当に、申し訳ありませんでした」

凛「……」


凛「……プロデューサー」



凛「プロデューサーは、どこまで知ってるの」
130 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/10(日) 10:35:30.08 ID:nATks/WC0

P「…渋谷さん…」


凛「答えて。奈緒と加蓮を攫ったのはプロデューサーなの?」

凛「茜を殺したのはプロデューサーなの?」

凛「未央を傷つけたのも、プロデューサー?」

凛「プロデューサーは全部知ってて、私達に黙ってたの?」

凛「私達のプロデュースの裏で、罪もない人をたくさん攫って、殺したの?」

凛「そうしておいて、『笑顔の橋』をやろうとしたの?」


P「……」


凛「……ごめん」

凛「別に、怒ってるわけじゃないよ」

凛「一晩考えて、そうするしかなかったんだって分かった」

凛「私達の正体を隠すために、打てる手は全部打った」

凛「善悪なんて考えてる余裕はなかった……そういうことでしょ」
131 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/10(日) 10:37:33.90 ID:nATks/WC0

P「……すべて答えます」


P「本田さんへの処遇に、私は一切関わっていません」

P「あれは千川さんの独断であり、私に報告が回ったのもつい先ほどのことです」

P「ビッグリリィへの報酬に神谷さんと北条さんを選定したのも誘拐を実行したのも、私ではありません」


P「……ですが、日野さんを攫ったのは私です」

P「私があの場にいれば、本田さんに制裁など加えません。ただ、規則に従い日野さんの処分は迷わず行っていたでしょう」

P「『財産』についても……私に選択権があれば渋谷さんに近しいお二人は選ばなかっただろうというだけで」

P「対象が出来るだけ関わりのない人間アイドルに代わっただけで、誘拐や売買そのものに躊躇はしません」


P「私も他の1級、準1級Pと変わらず、346プロの真実をすべて把握しています」

P「渋谷さんをスカウトし、シンデレラプロジェクトが正式に発足してから」


P「神谷さん、北条さんを除いた3名のアイドルを『財産』として誘拐し、日野さんを除いた2名のアイドルを口封じに処分し」

P「数百の捜査官や喰種を、この手で殺しました」


P「……皆さんのプロデュースを行っていた傍らで」


P「神崎さんや、本田さんに、人間の皆さんと深い繋がりを持って欲しかったのは、紛れもなく私の本音です」

P「『笑顔の橋』も、神崎さんの願いを最大限尊重したい一心で企画しました」

P「……ですが」


P「皆さんの命を失わせないことが、第一です」

P「……大切なものには順番があります」
132 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/10(日) 10:38:22.60 ID:nATks/WC0

凛「そっか」

凛「……じゃあ、最後にひとつだけ教えて」


凛「プロデューサーが最初に担当した、3人のこと」


P「……!!」

P「なぜそれを……!?」


凛「未央がアイドルやめかけた後、今西部長が話してくれたんだよ」

凛「昔、とっても真っすぐな男がいたって」

凛「その人はアイドルの幸せを心から願ってたけど」

凛「アイドルが心から笑顔になるには、どうすればいいか真剣に考えて行動して……」

凛「その結果、プロデューサーが担当した3人は死んじゃったって」


凛「だから、プロデューサーは私達のために人を殺すようになっちゃったの?」


凛「プロデューサーの口から教えてほしい」
133 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/10(日) 10:40:49.63 ID:nATks/WC0

P「……」


P「…どこにでもあるような、つまらない話です」


P「私が最初にプロデュースした3名のアイドルは、人間が好きな方ばかりでした」

P「神崎さんや本田さんのように、"喰種"の身であっても人と対等にかかわることを心から望み」

P「大切な御友人が攫われ、346プロの真実を知った時は、泣いて私に救いを求めました」

P「私はその願いを叶えたい一心で、346プロダクションに対立しました」

P「私には、それを可能にする力がありました」

P「人間の御友人を助け出して、彼女たちはご自分が喰種であることを話し」

P「それを御友人に受け入れられた彼女たちは、本当に心からの笑顔を見せてくれました」



P「そして、1週間もしないうちに」

P「御友人は恐怖に耐えきれず、彼女たちを通報しました」


P「3人の命は、絶望と泣き叫ぶ声と共にいとも容易く奪われたのです」


P「更なる被害を食い止めるため、私は御友人を殺し」

P「積み上げたものは、すべて無意味に消失しました」
134 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/10(日) 10:42:29.84 ID:nATks/WC0

P「渋谷さん」


P「許してくれとは、言いません」

P「私は、広がっていく世界が屍の上に立つ幻だと知っていて貴女を引きずり込みました」


P「それでも、出来ることなら貴女に幸せな夢を見てほしかった」

P「それが虚構でも、広がっていく世界をその目で見て欲しかった」

P「それで貴女たちが笑顔でいられると思ったから、私はそれで良かった」


P「"喰種"に生まれたならば、喰べるしかない。奪うしかない」

P「すべての喰種が、自分の運命に苦しんでいる」


P「ならば、せめて我々が代わりに奪えばいい」

P「そうすれば、せめてアイドルは自分の運命を忘れられる」

P「我々が代わりに背負うことで、皆さんは輝ける」

P「嘘の世界でも、騙されていても」


P「私は皆さんが、生きて笑顔でいてくれるなら、それでよかった」


凛「…………」
135 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/10(日) 10:43:13.77 ID:nATks/WC0

凛「……そっか」


凛「プロデューサーも、辛かったんだね」

凛「大丈夫。恨んだりしないよ。プロデューサーのこと、とっくに許してるよ」


凛「根っこは、私が見たままのプロデューサーと全然変わらなかった」

凛「公園で言ってくれたことは、私が信じた言葉は、嘘じゃなかった」

凛「私達を守るために、ずっと優しい嘘をつき続けてくれてたんだね」


凛「……もう、私のことはいいよ」

凛「あとは皆を見ててあげて」


P「……渋谷さん」

凛「ごめん。346がなくなるまでまだ時間はあるみたいだけど」

凛「もう私はそっちにいけない」


凛「大丈夫。最後の仕事は、なんとなく想像つくから。それはちゃんと見てる」

凛「テレビの前で応援してる」


凛「卯月たちは、まだ真っすぐに夢を見続けてる」

凛「卯月や蘭子の夢は、プロデューサーが支えてあげて」




136 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/10(日) 10:43:50.45 ID:nATks/WC0

凛「プロデューサー」





凛「さようなら。元気でね」





P「…はい。渋谷さん」





P「さようなら。どうかご無事で」




――――――――――――――――――――
137 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/10(日) 10:45:19.13 ID:nATks/WC0

――――――――――――――――――――


P「……本日は、凛さんとの面会の許可をいただき」

P「本当にありがとうございました」

P「……凛さんと、あなた方の無事を願っています」


渋谷父「ああ、ありがとう。君の言葉に嘘が無いことは何となく分かる」

渋谷父「…"喰種"の聴力が恐ろしくなるな。話は全て聞いてしまったよ」

渋谷父「君が悪くないことも分かる。娘のために必死で働いてくれていたことも」

渋谷父「……感謝は、している。君のおかげでこの1年、娘は本当に楽しそうだった」



渋谷父「……君を責めはしない。だが―――――」





渋谷父「―――――二度と娘に関わらないでくれ」



――――――――――――――――――――
138 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/10(日) 10:46:08.98 ID:nATks/WC0

――――――――――――――――――――










――――――――――――――――――――
139 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/10(日) 10:46:55.21 ID:nATks/WC0



プロデューサー。



あなたに会えてよかった。あなたが私のプロデューサーでよかった。



あなたは私が信じた通り、すごくアイドルや、私の事を考えてくれる、素敵な人だった。



怯えて隠れるしかない人生だって思ってたけど。



あなたが連れ出してくれた先は、すごく楽しかった。



あなたのおかげで、卯月や未央にも会えた。大切な仲間もできた。



プロデューサーには、本当にありがとうって思ってるんだよ。



……でも。私がアイドルをやってることで。



理不尽に殺されていく罪もない人が、いたのなら。



たくさんの人が、夢を踏みにじられたなら。



私が踏み出したせいで、生きられたはずの人が泣いて死んでいったのなら―――――




140 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/10(日) 10:47:28.71 ID:nATks/WC0










アイドル、ならなきゃよかった。










――――――――――――――――――――
141 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/10(日) 10:48:24.57 ID:nATks/WC0

今日はここまで。

次ちゃんみお編です。
142 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/10(日) 11:51:17.00 ID:nATks/WC0

――――――――――――――――――――


未央『茜ちん、あーちゃん』

未央『ふたりに話したい事があるんだ』


未央『ずっと隠し続けてたけど、言わなくちゃって思って』



未央『私、本当は"喰種"なんだ』



藍子『……未央、ちゃん?』

茜『……?』
143 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/10(日) 11:51:44.65 ID:nATks/WC0

茜『"喰種"ですか? 喰種って言うと、確か……』

未央『うん。見た目は人に似てるけど、人の肉しか食べられない生き物』

未央『こんな風に、目の色も変わるよ』ギョロ

茜『……!!』


茜『……未央ちゃんが冗談を言ってるわけじゃないんですね』

未央『うん。今まで隠しててごめん』

未央『でも、茜ちんには知ってて欲しかった』

未央『本当の友達に、なりたかった』

茜『……そうですか』


茜『……つまり……』
144 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/10(日) 11:52:20.75 ID:nATks/WC0





茜『……今まで私相手に手加減していたと言うことですね!?』





未央『えっ』





藍子『……そっち!?』
145 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/10(日) 11:53:10.47 ID:nATks/WC0

茜『なめないでください! 私も知っています! "喰種"は人間の何倍も速く走れると!!』

茜『しかしそのようなポテンシャルを持っていながら、私と走った時はあんなに遅かった!』

茜『本気を出せば私など追い抜けるはずなのに!』

茜『こうしちゃいられません、未央ちゃん! 勝負です!』

茜『喰種の未央ちゃんと私、どちらが速いか!!』

茜『今一度手加減なしの真剣勝負で決めようじゃないですか!!!』


未央『ちょ』

未央『ちょっと待って待って待って待って!? 問題はそっちじゃないよね!?』

未央『私言ったよね!? "喰種"だって! 人の肉しか食べられないって!!』

未央『食べられるかもしれないって考えなかったの!?』

茜『何ですって!? 私食べられちゃうんですか!?』

未央『食べないよ!?』

茜『そうでしょう!!』

未央『……え? あ、あれ?』
146 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/10(日) 11:54:12.54 ID:nATks/WC0

茜『未央ちゃん! あえて話すなら、私は未央ちゃんに一つだけ言いたい事があります!』

未央『は、はい』


茜『…未央ちゃんや藍子ちゃんが私に隠し事をしてるって、私はちゃんと気付いてました』

茜『聞かれたくない事みたいでしたから、黙ってましたけど……』

茜『でも、寂しかったです。本音で語り合えてない気がして』

茜『私は、未央ちゃんと藍子ちゃんと仲間じゃないような気がして』


未央・藍子『『……!!』』


茜『でも、未央ちゃんが秘密を話してくれました!』

茜『怖かったと思います! でも話してくれました!!』

茜『私と本当の友達になりたいとまで言ってくれました!!』

茜『私はそれがすごく嬉しいです! 未央ちゃんと本当の仲間になれたから!!』

未央『茜ちん……』
147 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/10(日) 11:55:40.46 ID:nATks/WC0

茜『だから藍子ちゃんも!』

藍子『!』

茜『藍子ちゃんが何を隠してても、私は藍子ちゃんを嫌いになったりはしません!!』

茜『もちろん、無理には聞きませんが……』

茜『それでも、藍子ちゃんが私を傷つけるだなんて考えてません! 未央ちゃんが私を食べるだなんて考えません!!』

茜『未央ちゃんや藍子ちゃんがどんな子でも、私はお二人が大好きです!!!』


藍子『茜ちゃん……!!』



藍子『…ごめんね、茜ちゃん』

藍子『私も、隠してた。私も、未央ちゃんと同じ"喰種"なの』

藍子『……"喰種"の私でも、今まで通り友達でいてくれますか?』


茜『……』



茜『……何っ!? 藍子ちゃんまで"喰種"だったんですか!!?』


未央『いや気付いてなかったんかい!?』
148 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/10(日) 11:56:22.57 ID:nATks/WC0

茜『ま、まあ、藍子ちゃんまで"喰種"だったことには驚きましたが……』

茜『変わりません!! むしろ、今まで以上に強く結ばれた仲間!! 戦友!! マブダチです!!!』

茜『今から本当の本当に全力で走りましょう!! 自分を隠す必要なんてどこにもありません!!』

茜『行きますよっ……ボンバー!!』


藍子『……』

未央『っ……』


茜『ほらどうしたんですか二人とも!! 私は一緒に走りたいです!!』

茜『行きますよ! ボンバー!!』


藍子『ぼ、ぼんばー!』

未央『……あはは』


未央『…うっし! 走るか! ボンバー!!』


茜『その意気です未央ちゃん! 藍子ちゃん!! 体をほぐして!! 位置について!!』

茜『走る先をまっすぐ見て!! 思いっきり息を吸って……!!』



『『『ボンバー!!!』』』



――――――――――――――――――――
149 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/10(日) 12:05:10.16 ID:nATks/WC0

――――――――――――――――――――


藍子(――なんであの日、茜ちゃんに正体を話したか聞いたら)

藍子(――蘭子ちゃんが『受け入れてくれるに決まってる』って言ってくれて)

藍子(――だから、蘭子ちゃんが正しいって証明したくて)

藍子(――茜ちゃんに全てを知ってもらおうとしたって話してくれました)


藍子(――『最初から信じてた』って、未央ちゃんは言ってましたけど)

藍子(――あのとき、未央ちゃんは)

藍子(――すごく、怖かったんだと思います)


藍子(――私が同じ"喰種"だって思われないように、話し方に工夫をつけて)

藍子(――もしもの時は、自分だけ犠牲になろうとした)

藍子(――それだけ怖かったのに、勇気を振り絞って一歩を踏み出してくれたから)

藍子(――私も、茜ちゃんともっと仲良くなれました)


藍子(――ありがとうって、言いたいんです)

藍子(――今までの不安を、取り払ってくれた未央ちゃんに)

藍子(――抱えてた不安を、簡単に壊してくれた茜ちゃんに)


藍子(――なのに)


藍子(――どうして2人とも、346プロに来てくれないんですか)


――――――――――――――――――――
150 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/10(日) 12:06:47.77 ID:nATks/WC0

続いた。

多分今日はここまで。


そして茜ちんは意外といい勝負をした。
151 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/10(日) 13:27:12.42 ID:GSdg4EFqO
おつおつ
最近更新多くて嬉すぃ
152 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/10(日) 19:38:17.73 ID:RboVbaT20
藍子が蚊帳の外の様で…謝罪が必要なのは少し前の財産及び口封じも一緒なんだよなあ
凛はTPの2人を諦めたのか、このまま出番無さそうな感じすらあるし
メロウイエローPは前の話だからうろ覚えだけどまゆPがまゆの正体知らなかった(と記憶してる)ように、会社の実態を知らん可能性もあるか?
153 : ◆AyvLkOoV8s [sage]:2017/09/11(月) 00:03:51.11 ID:sYHaExIf0
>>152
TPについて作中でもうちょい触れとけば良かったかもしれません。

凛はもう奈緒加蓮の救出を諦めてます。
武内Pに必死に頼めばビッグリリィからの救出を手伝ってくれたでしょうが、まだ生きているのかもう既に死んでいるかすら分かっていないし
何より余計なことをすれば茜のように美穂まで殺される、まだ真実を知らず夢を見ていられる卯月たちまで壊してしまうと分かっていたので
凛は喰種の友達の笑顔をとって人間の友達を見捨てることを選びました。
154 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/11(月) 12:24:17.31 ID:sqGzCiZXO
隻眼3人の活躍が楽しみ
155 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/11(月) 16:03:21.60 ID:sYHaExIf0

〜凛・未央による346プロ潜入から4日後 346プロ〜


藍子「……閉鎖?」

藍子P「ああ」


P「……すまない、どうやら白鳩は346プロの秘密に気付いてしまったらしい」

P「上が『これ以上の活動は不可能』と判断してな」


P「藍子をトップアイドルにしてやりたかった」

P「でも、俺がプロデュースしてあげられるのはここまでみたいだ。ごめんな」
156 :振り分け画像見返したら夕美が人間扱いになってた。夕美は喰種設定です。 ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/11(月) 16:05:37.46 ID:sYHaExIf0

藍子「ッ……」

藍子「……ううん。分かってます」

藍子「覚悟は、してました。いつまでも、このままアイドルを続けられるとは、思ってませんでした」

藍子「私だって、346プロに来るまでは……"喰種"がこんな世界にいられるなんて思ってなくて」

藍子「だから…こんな優しい世界にいられたことが……本当に夢みたいでっ……!」

藍子「……」


藍子「……本当に、終わりなんですか?」

P「終わりじゃないさ」

藍子「…えっ?」


P「確かに、346プロは終わりだ」

P「だが藍子の人生が終わるわけじゃない」

P「俺も346プロも、全力でお前を逃がす」

P「ここは無くなるけど、藍子が生きている限り夢を見ることはできる」

P「見た夢を実現するための時間だってある」


P「それは藍子の仲間だってそうだ」

P「生きていればまた会える。またやり直せる。また作り直せる」

P「ただちょっと危険から逃げて、しばらく身を隠すだけだ」


P「忘れるな、藍子」

P「君の未来はまだ無限に広がってる」

P「ここでの思い出や、いつか隣に立った仲間たちが、また立ち上がらせてくれる」

P「……そうだろ?」
157 : ◆AyvLkOoV8s [saga]:2017/09/11(月) 16:08:50.04 ID:sYHaExIf0

藍子「…プロデューサー、さん」

P「だから藍子。泣かないでくれ」

P「十二時の魔法が解けても、シンデレラはまだ頑張れるだろ?」

藍子「……」

藍子「……はいっ」


P「よし良い子だ。さすがは俺の見つけたシンデレラ」

P「じゃあ脱出方法を簡単に説明する」


P「藍子にはこれから、野外ロケの仕事が入る」

P「これは全員同じだ。喰種も、人間も」

P「わざわざ『仕事』の名目にするのは、人間アイドルから事情を隠すため」

P「あとは、全員同じ理由にすることで誰が人間で誰が喰種か判別させなくするためだ」


P「すごく急な話だが……藍子には明朝までに必要な荷物をまとめて、バスを使って指定の場所まで動いてほしい」

P「俺はついて行けないから、ちゃんと一人でやる事を覚えて動いてくれ」

P「できるな?」
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